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1996-06-11 第136回国会 衆議院 法務委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年六月十一日(火曜日)    午前十時一分開議  出席委員   委員長 加藤 卓二君    理事 太田 誠一君 理事 佐田玄一郎君    理事 志賀  節君 理事 山田 英介君    理事 山本  拓君 理事 細川 律夫君    理事 枝野 幸男君       奥野 誠亮君    白川 勝彦君       橘 康太郎君    萩山 教嚴君       福永 信彦君    古屋 圭司君       松岡 利勝君    横内 正明君       阿部 昭吾君    大口 善徳君       加藤 六月君    貝沼 次郎君       左藤  恵君    渡辺浩一郎君       石井  智君    佐々木秀典君       濱田 健一君    正森 成二君       小森 龍邦君  出席政府委員         法務政務次官  河村 建夫君         法務大臣官房審         議官      山崎  潮君  委員外出席者         議     員 錦織  淳君         議     員 永井 哲男君         大蔵省銀行局中         小金融課金融会         社室長     振角 秀行君         最高裁判所事務         総局民事局長  石垣 君雄君         法務委員会調査         室長      河田 勝夫君     ――――――――――――― 委員の異動 六月十一日  辞任         補欠選任   塩川正十郎君     松岡 利勝君   浜野  剛君     福永 信彦君   愛知 和男君     渡辺浩一郎君   熊谷  弘君     大口 善徳君   坂上 富男君     濱田 健一君 同日  辞任         補欠選任   福永 信彦君     浜野  剛君   松岡 利勝君     塩川正十郎君   大口 善徳君     熊谷  弘君   渡辺浩一郎君     愛知 和男君   濱田 健一君     石井  智君 同日  辞任         補欠選任   石井  智君     坂上 富男君     ――――――――――――― 六月十日  民事訴訟法改正における文書公開規定反対及  び修正に関する請願枝野幸男紹介)(第二  九〇六号)  婚外子差別を撤廃する民法等改正に関する請願  (石破茂紹介)(第二九〇七号)  同(細川律夫紹介)(第二九八一号)  夫婦別姓選択制法制化に関する請願金田誠一  君紹介)(第二九〇八号)  同(岡崎トミ子紹介)(第二九八二号)  同(細川律夫紹介)(第二九八三号)  法務局更生保護官署及び入国管理官署増員  に関する請願岩佐恵美紹介)(第二九〇九  号)  同(貝沼次郎紹介)(第二九一〇号)  同(穀田恵二紹介)(第二九一一号)  同(佐々木陸海紹介)(第二九一二号)  同(志位和夫紹介)(第二九一三号)  同(寺前巖紹介)(第二九一四号)  同(中島武敏紹介)(第二九一五号)  同(東中光雄紹介)(第二九一六号)  同(不破哲三紹介)(第二九一七号)  同(藤田スミ紹介)(第二九一八号)  同(古堅実吉紹介)(第二九一九号)  同(正森成二君紹介)(第二九二〇号)  同(松本善明紹介)(第二九二一号)  同(矢島恒夫紹介)(第二九二二号)  同(山原健二郎紹介)(第二九二三号)  同(吉井英勝紹介)(第二九二四号)  同(佐々木秀典紹介)(第二九四〇号)  同(坂上富男紹介)(第二九四一号)  同(佐々木秀典紹介)(第二九八六号)  同(細川律夫紹介)(第二九八七号)  裁判所の人的・物的充実に関する請願岩佐恵  美君紹介)(第二九六五号)  同(貝沼次郎紹介)(第二九六六号)  同(穀田恵二紹介)(第二九六七号)  同(佐々木陸海紹介)(第二九六八号)  同(志位和夫紹介)(第二九六九号)  同(寺前巖紹介)(第二九七〇号)  同(中島武敏紹介)(第二九七一号)  同(東中光雄紹介)(第二九七二号)  同(不破哲三紹介)(第二九七三号)  同(藤田スミ紹介)(第二九七四号)  同(古堅実吉紹介)(第二九七五号)  同(正森成二君紹介)(第二九七六号)  同(松本善明紹介)(第二九七七号)  同(矢島恒夫紹介)(第二九七八号)  同(山原健二郎紹介)(第二九七九号)  同(吉井英勝紹介)(第二九八〇号)  治安維持法犠牲者に対する国家賠償のための法  制定に関する請願細川律夫紹介)(第二九  八四号)  選択的夫婦別姓導入など民法改正に関する請  願(岡崎トミ子紹介)(第二九八五号) 同月十一日  婚外子差別を撤廃する民法等改正に関する請願冬柴鐵三君紹介)(第三〇二〇号)  夫婦別姓選択制法制化に関する請願高見裕一  君紹介)(第三〇二一号)  同(細川律夫紹介)(第三〇二二号)  同(北側一雄紹介)(第三一一九号)  同(高見裕一紹介)(第三一二〇号)  同(細川律夫紹介)(第三一二一号)  同(高見裕一紹介)(第三三〇八号)  法務局更生保護官署及び入国管理官署増員  に関する請願小森龍邦紹介)(第三〇二三  号)  同(細川律夫紹介)(第三〇二四号)  同(山本拓紹介)(第三〇二五号)  同(細川律夫紹介)(第三一二四号)  同(阿部昭吾紹介)(第三三一一号)  同(小森龍邦紹介)(第三三一二号)  同(山田英介紹介)(第三三一三号)  裁判所の人的・物的充実に関する請願小森龍  邦君紹介)(第三〇二六号)  同(佐々木秀典紹介)(第三〇二七号)  同(坂上富男紹介)(第三〇二八号)  同(細川律夫紹介)(第三〇二九号)  同(山本拓紹介)(第三〇三〇号)  同(正森成二君紹介)(第三一二六号)  同(山田英介紹介)(第三三一四号)  治安維持法犠牲者に対する国家賠償のための法  制定に関する請願山下洲夫君紹介)(第三  一二二号)  同(坂上富男紹介)(第三三〇九号)  同(山下洲夫君紹介)(第三三一〇号)  選択的夫婦別姓導入など民法改正に関する請  願(岡崎トミ子紹介)(第三一二三号)  民事訴訟法改正における文書公開規定反対及  び修正に関する請願枝野幸男紹介)(第三  一二五号) は本委員会に付託された。 六月十日  民事訴訟法改正の公文書の秘密扱いに係る修正  に関する陳情書外四件  (  第三五五号)  拘置所内における医療等処遇改善に関する陳  情書  (第三五六号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  小委員会設置に関する件  民事執行法の一部を改正する法律案保岡興治  君外五名提出衆法第四号)      ――――◇―――――
  2. 加藤卓二

    加藤委員長 これより会議を開きます。  お諮りいたします。  本日、最高裁判所石垣民事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 加藤卓二

    加藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。      ――――◇―――――
  4. 加藤卓二

    加藤委員長 保岡興治君外五名提出民事執行法の一部を改正する法律案議題といたします。  提出者より趣旨説明を聴取いたします。錦織淳君。     ―――――――――――――民事執行法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕
  5. 錦織淳

    錦織議員 ただいま議題となりました民事執行法の一部を改正する法律案について、提出者を代表して、その趣旨を御説明いたします。  この法律案は、不動産強制競売及び担保権実行としての競売事件を処理するについて、占有者らの不当な妨害行為により、競売手続の円滑な遂行支障が生じている現状にかんがみ、保全処分及び引き渡し命令相手方範囲を拡大する等により不当な妨害行為を適切に排除することができるようにすることによって、競売手続のより適正迅速な遂行を図ろうとするものであります。  また、この法律案は、労働組合運動その他正当な活動に対しては、十分な配慮がなされなければならないことを前提とするものであります。  以下、簡単にその要点を申し上げます。  第一点は、売却のための保全処分及び最高価買い受け申し出人等のための保全処分相手方を、債務者のほか、不動産占有者にまで拡大することであります。  第二点は、売却のための保全処分を命ずる場合において、特別の事情があるときは、直ちに執行官保管命令を発することができるものとすることであります。  第三点は、売却のための保全処分及び最高価買い受け申し出人等のための保全処分を命ずる場合において、裁判所が必要があると認めるときは、労働組合運動その他正当な活動をする者などの権利主張機会を確保するため、審尋を行うことを法律上明確化することであります。  第四点は、引き渡し命令相手方を、事件の記録上買い受け人に対抗することができる権原により占有していると認められる者を除く不動産占有者にまで拡大することであります。  第五点は、不動産に対する担保権実行としての競売開始決定がされる前に、特に必要があるときは、売却のための保全処分を命ずることができるものとすることであります。  第六点は、附則において、政府は、この法律施行後五年を目途として、この法律による改正後の民事執行法第五十五条、第七十七条、第八十三条及び第百八十七条の二の規定施行状況を勘案し、必要があると認めるときは、これらの規定について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすることであります。  以上のほか、所要の規定を整備することとしております。  以上が、この法律案趣旨であります。  何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願い申し上げます。
  6. 加藤卓二

    加藤委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     ―――――――――――――
  7. 加藤卓二

    加藤委員長 これより質疑に入ります。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。細川律夫君。
  8. 細川律夫

    細川(律)委員 民事執行法改正案が出されたわけですけれども、今提案理由でも説明がありましたように、競売執行に対していろいろな妨害がなされているということはマスコミ等でもいろいろ報道をされております。特に、せんだっては桃源社佐々木吉之助社長執行妨害で逮捕されました。この執行妨害につきましては、暴力団とかあるいはいわゆる占有屋とか、そういう者たちによっていろいろな執行妨害がなされているようでありますけれども、このいわゆる執行妨害の実態はどういうものなのか、また、それに対応する形での今度の法案提案でありますけれども、その提案趣旨をいま一度説明をしていただきたいと思います。
  9. 石垣君雄

    石垣最高裁判所長官代理者 執行妨害事例といたしましては、更地でありました競売物件上に建物を建築する、あるいは、競売妨害のために看板などを設置するなどのことがございますが、中には、債務者物件所有者だけではなくて、ただいま委員指摘のように、第三者がこのような執行妨害をする例もあるわけでございます。  このような執行妨害に対しましては、民事執行法上の保全処分の活用によって対処し、第三者についても一定の場合には保全処分相手方になるとの解釈も示されてきているところでございますが、しかし、第三者に対する保全処分の発令の要件基準が明確でないなど、執行妨害の排除という面では支障がなくはなかったものと考えております。今回の法案によりますと、端的に第三者相手方とする保全処分が認められることとなりますので、より迅速適正な判断が可能となって、適切に執行妨害行為を排除することに資するものと思われます。  また、ほかにも、一般の閲覧に供するために裁判所に備え置かれている物件明細書現況調査報告書あるいは評価書の写し、いわゆる三点セットと呼んでおりますが、これらの盗み取り、書きかえ、あるいはこれらの書類への暴力団名義の名刺の挟み込みなど、あるいは、現況調査を行う執行官に対する虚偽の陳述、虚偽賃貸借契約書提示等妨害事例もございますので、これらにつきましては、裁判所としては、告発、告訴等対策を講じ今後とも厳正に対処していきたい、そういうことも一方で考えておるところでございます。
  10. 永井哲男

    永井(哲)議員 お答えいたします。  ただいま細川先生指摘のように、今また最高裁判所の方からもあったように、現在のこの執行状況というのは憂うべき状況にあるというふうに思います。  保全処分の件数を見てみましても、平成二年は百十八件、平成三年には二百七十二件であったところ、平成四年以降は四百件を上下しているというような状況にありまして、不当な妨害行為というものがふえているという現状は明白であるというふうに思います。  解釈においても、所有者及び債務者範囲を広げるという意味占有補助者ということでその幅を広げる努力はしていたところでありますが、証拠上この占有補助者と認定するのが困難な暴力団員占有屋と称される者にはこれが及ぶということができませんでした。そのために、それらの者の居座り、建物損壊暴力団占有の誇示などの価格減少行為には十分に対応できていないという現状でありました。  そういった現状にかんがみまして、我々与党においては、法的責任等検討プロジェクトチームを設けまして、今日の不動産競売をめぐる諸問題を討議、検討し、また日本弁護士連合会民事介入暴力対策委員会弁護士学識経験者関係当局等から、不動産競売をめぐって現に生起している諸問題に関する意見を聴取した結果、新たな法的手当てが必要であるとの認識に至った次第であります。  趣旨といたしましては、執行妨害を目的とした競売不動産を不法に占拠する等の昨今の不動産競売に対する妨害行為のため、競売手続の円滑な遂行支障が生じているという現況にかんがみ、このような不動産競売に対する不当な妨害行為を予防、排除し、競売手続のより適正かつ迅速な遂行を図るため、競売不動産を正当に使用収益する者の権利を損なうことのないように配慮しつつ、保全処分及び引き渡し命令対象者範囲を拡張するとともに、その内容を充実強化する措置を講ずることとしたものであります。
  11. 細川律夫

    細川(律)委員 競売に関しては、労働組合のいわゆる組合活動との関係でいろいろ問題も生じてくるだろうというふうに思います。  正当な労働組合活動が行われているそのことと、一方で、民事執行法の五十五条などには、不動産価格を減少させる行為があるならば保全処分をすることができる、こういう規定がございます。  そこで、労働組合活動価格減少行為に当たるかどうかということについて、ここで法務省の方に確認をしておきたいと思います。  私は、労働組合の正当な組合活動というのは、労働組合法の一条二項の規定は刑法の三十五条の正当行為として違法性が阻却をされる、こういうことになっておりますから、この趣旨は当然民事執行法の方にも適用されると思いますので、そうしますと、正当な労働組合活動については価格減少行為には当たらないというふうに思います。ビラ張り行為などそういう点も含めて、法務省の方ではこの点についてどう考えているのか、その見解をまずお聞かせいただきたい。
  12. 山崎潮

    山崎(潮)政府委員 この点につきまして私ども認識は、当委員会におきまして昭和五十三年から五十四年にかけまして御審議をいただきました民事執行法案について、私どもの方から御答弁させていただいた認識と変わっておりません。  具体的に申し上げますと、民事執行法五十五条に規定されております価格減少行為というタイプには二つございます。  一つは、建物を損壊したり取り壊すというような物理的な毀損行為を伴うもの、もう一つは、例えば空き家に占有屋を入れさせる、あるいは一夜にしてプレハブの建物更地に建てる等のいわゆる自由な競争を妨害するような行為、これが典型的に当たるわけでございます。  具体的にこの価格減少行為に当たるかどうかという点につきましては、個々の事案に応じまして、最終的には裁判所の御判断によるということになりますけれども、私ども一般論で申し上げたいと思います。  ただいま議員指摘労働組合運動、これは例えば抵当不動産について、企業がそこで活動をしている、不幸にしてそこで倒産という事態が起こるわけでございますが、その場合に、使用者が夜逃げして、賃金も払わないままいなくなってしまうという事態も発生するわけでございます。その場合に、労働組合といたしましては、そこの倉庫あるいは会社等占有いたします、いわゆる自主生産というような争議行為が行われることが今までにもあったわけでございます。またそれに伴いまして、あるいはビラ張りによる争議行為というものも行われていたわけでございます。  こういうものに関しまして私ども一般的な認識は、その労働組合運動が正当なものであるということであれば、そのこと自体によって価格減少行為には当たらないという理解をしております。ただ、不幸な場合には正当な範囲を逸脱するということもあり得ます。そういうような場合には価格減少行為になるというふうに判断されることもございますが、一般的には、その労働組合運動が正当なものであるということでございましたらば価格減少行為には当たらないと判断されるだろうというふうに理解をしております。
  13. 細川律夫

    細川(律)委員 正当な労働組合運動につきましては価格減少行為には当たらない、こういう見解でありますけれども現行民事執行法制定をされました昭和五十四年にはいろいろな論議がされまして、その際、保全処分規定については全会一致現行法のような内容修正をされたわけです。そのときに修正をされた理由といいますか、それについてはこういうふうなことだったと思います。  それは、保全処分相手方に、債務者だけではなくて、不動産占有者という広い占有者を含めることにいたしますと、労働組合やあるいは労働者の正当な行動を阻害するおそれが多分にあるということで、当時の社会党などを中心に修正がなされたところでございます。  先ほど法務省の方からは、正当な労働組合活動であれば価格減少行為などには当たらないのだというような御説明もありました。しかし、やはり前回の五十四年の改正のときと同じように、正当な労働組合活動を阻害するおそれがあるのではないか、そういう心配は十分にあるわけでございます。そういうことに対して今度の改正についてはどういうような配慮がされているのか、その点についてぜひ説明をしていただきたいというふうに思います。
  14. 永井哲男

    永井(哲)議員 ただいま御指摘の点は、この民事執行法改正において、提案者等においてもやはり一番悩み、最も議論されたところでございます。  先ほど申したとおり、一方で暴力団占有屋と言われる人たちがばっこしているという状況があります。日弁連の民暴委員会報告によれば、いわゆる暴力団が暴対法の関係一般の稼ぎの手段というものをなくしていく中で、この執行の分野に大分ささり込んでいるというような報告もございました。こういう中でどう対応するか。そして一方で、正当な権利者、とりわけ労働組合活動、この部分をどう守っていくのか問題になりました。  この要件を、労働組合活動の場合にはこの要件に該当しないというようなものはどうかということもプロジェクトチームでは検討したところでございますが、一方で、そういう要件を書けば、これが暴力団に悪用されないか、外形的な基準を使用して悪用されないか。また一方では、例えばその要件を明確化しようとした場合に、賃金債権等というような形で規定して厳格化を図っていけば、逆に正当な労働組合活動という保護されるものが狭められないか、正当な権利者の体系をゆがめることにならないかということが問題になりました。そして、現行のような改正案ということにしたわけであります。  具体的にどのようにこれが考慮されているかといいますと、まず第一に、先ほど提案理由説明においても申し述べたとおり、「労働組合運動その他正当な活動に対しては、十分な配慮がなされなければならないことを前提とするものであります。」ということを記載しておりますが、このようにして基本的解釈のあり方というものをまず提案理由において明記したということでございます。  次に、五十五条三項、七十七条二項、百八十七条の二第五項の中に、必要的な審尋ということを明記いたしました。この趣旨は、法五条におきましては、「執行裁判所は、執行処分をするに際し、必要があると認めるときは、」「審尋することができる。」と裁判所自由裁量としての審尋ができる旨を設けているところでありますが、五十五条三項に、そういうような一般法にかえて、「執行裁判所は、」「必要があると認めるときは、その者を審尋しなければならない」というふうに、必要的なものとして権利主張機会を確保することにあります。本来、保全処分密行性が必要とされるため、相手方審尋しないことが原則でありますが、その原則に対する大きな変革であります。  私ども立法者意思としましては、正当な労働組合運動もしくは労働組合活動であれば、裁判所は、たとえそれが少々価格減少行為に該当する場合であっても必ず審尋しなければならない、なぜならば、正当な労働運動、この正当なという解釈は微妙であり、また労働運動の背景にはさまざまな事情があるということを明らかにするためにも必ず審尋しなければならないという意味であるというふうに考えております。  三点目に、附則において、五年を目途として、改正後の五十五条、七十七条、八十三条及び百八十七条の二の規定について、施行状況を勘案し、必要な措置を講ずることとしていることであります。この規定趣旨は、主として労働組合運動に不当な規制になっていないかを検証し、必要なら是正するためのものであります。  このようにして、私たち提案者としては、正当な労働組合活動を守るために何重にも措置して、現行法が国会において成立する際、その修正の中で交わされた議論を最大限に生かす努力をした所存でございます。  つけ加えて、この改正の案に際しましても、立法者意思をより明確にするために附帯決議等でその点を補っていただければ万全な措置になるというふうに思っているところでございます。委員先生方においてよろしく検討をしていただきたいというふうに思います。    〔委員長退席太田(誠)委員長代理着席
  15. 細川律夫

    細川(律)委員 今提案者の方から説明がありました。三つばかり挙げられたわけなんですけれども、特に、提案理由の中で、労働組合運動その他正当な活動に対しては、十分な配慮をされなければいかぬということ、それから必要的な審尋規定を設けた、そして労働組合などが行う行為の中で価格減少行為に当たるような場合でも、あえて審尋をしなければいけないようなそういう説明まであったわけなんですけれども、しかし、立法者提案者の気持ちといいますか意思はそれであったとしても、実際に適用する執行裁判所裁判官がそのように解釈をしなければ、せっかくの立法者意思も無視されて、労働者あるいは労働組合の正当な活動が阻害をされる心配があるわけです。  そこで、裁判所の方にお尋ねをいたしますけれども、今提案者の方からいろいろな配慮が三点ばかり述べられました。特に今私が申し上げました二つの点について、裁判所としてどういうふうに措置をされているのか、そのことについてお伺いしたいと思います。
  16. 石垣君雄

    石垣最高裁判所長官代理者 今回の改正法案内容につきましては既に全国裁判所に通知をしてございますが、本年の九月から十月にかけて全国高裁管内ごとに、執行事件を担当する裁判官、書記官の協議会を開催する予定でございまして、先ほど来御指摘のあります審尋規定等を含めた改正法の趣旨、あるいは改正法のもとにおける運用のあり方等についても協議をすることを考えております。遺漏のないように配慮していきたいと思っているところでございます。
  17. 細川律夫

    細川(律)委員 この民事執行法改正につきまして私の方から、労働組合の正当な活動についていろいろ心配がある、こういうふうに質問をさせていただいているわけなんですけれども、そもそもそういう心配が出てくるような、法律の中に労働者賃金債権がきちんと確保されない、そういうところがあるからこういうような問題も起こってくるのではないかということになろうかと思います。特に賃金債権などは、公租公課よりも下に置かれるといいますか劣位に置かれるというような状況でもありますし、賃金債権そのものがきちんと確保される、そういう法の整備というものをまずやらなければいけないと私は思いますけれども、その点については提案者はどのように考えておられるのでしょうか。  あるいはまた法務省についてもお聞きをしたいと思います。
  18. 永井哲男

    永井(哲)議員 細川先生が御指摘のとおり、この民事執行法改正、その中で正当な労働組合活動をどのようにして守っていくのかということを議論していく中で、なぜこういうことをしなければならないのか、民事執行法という法の最終的な局面において、いわば裏から保障するということではなく、賃金債権確保そのものに正面から取り組み、そこに正当な位置づけを与えるというのがまさに抜本的な解決ではないかというふうに議論は発展いたしました。  この民事執行法改正を与党の中での手続で可決をするときに、与党において賃金債権確保のプロジェクトチームというものを発足したところでございます。それには、今先生御指摘の、税のはるか後方にこの労働債権が置かれている、これを改善する必要があるのではないか。また、ILO百七十三号条約等で指摘のそういったような部分、または賃確法で規定されているこの支払いのより額の充実等を含めてさらに強化をしていかなければならないのではないか。特に、与党の賃金債権確保のプロジェクトチームにおいては、そのような点について、この秋を目途に一定の結論を出すために努力をしているところでございます。  私どもとしては、労働債権、賃金債権というものが正当に位置づけられるように今後も全力を尽くしていきたいというふうに思っているところでございます。
  19. 山崎潮

    山崎(潮)政府委員 ただいま永井議員の方からも御指摘がございましたけれども、私ども、この問題につきましては、現在の労働賃金の確保、倒産状態における確保でございますけれども、破産法あるいは会社更生法という規定がございまして、その中で賃金債権をどの程度確保するか。あるいは、さまざまな債権がございますので、抵当権付債権あるいは税金、こういうようなものとどういうような序列にするか、その優劣関係、これを今定めているわけでございますが、この中で、その額をもっと拡大すべきである、あるいは他の債権との序列をもう一度考え直すべきであるというような御意見が従前からございまして、我々もその点は十分承知をしておりますし、この問題が非常に重要な問題であるということは認識をしております。  この問題、先ほど永井議員の方からもございましたが、やはり税債権との関係あるいは抵当権付債権との関係にも絡むわけでございますし、あるいは賃金の支払の確保等に関する法律におきます賃金債権の補償額の引き上げの問題、さまざまに関連してまいります。この関係から他の省庁の所管事項とも関連してまいるわけでございます。  この問題につきまして、法務省だけで検討をしていくというのは非常に難しい点、他省庁との関連もございますので、せっかく与党プロジェクトチームが今設けられたわけでございますので、その中で、その検討を通じまして我々も鋭意努力をして検討をしたい、一定の成果を見たいというふうに考えておるところでございます。
  20. 細川律夫

    細川(律)委員 最後の質問になりますけれども、住専関連の処理法案、こういう法案が成立をする、そして今回の、特に民事執行法のこの改正によっていろいろ競売の申し立てがたくさん起こってくる。その登記事務というのは私は大変な事務量になるのではないかというふうに思います。  登記の件数そのものがもう何十万の単位ではなくて何百万というようなそういう膨大な数になるのではないかというふうに予測をされます。そうしますと、法務局で働いておられる人たちの人数というのは限られておるわけですから、二遍にこういうようなたくさんの登記の仕事がふえますと、それだけ労働過重になってくるだろうというふうに思います。  その点、法務省の方ではこの法務局の人員をどのようにしていくのか。仕事の方も支障のないように、そしてまた、法務局で働く人たちに過重な負担とならないようにするにはどういうふうにその点考えているのか、最後にお聞きをしたいと思います。
  21. 山崎潮

    山崎(潮)政府委員 ただいま議員指摘の点につきましても、私ども重大な問題であるというふうに考えております。  この住専処理に関しましては、まずどういう登記が行われるかということでございますけれども、第一次的には速やかに住専の債権処理会社へ抵当権等を移転しなければならないという作業がございます。これが終わりまして、最終的に競売実行ということになりましたら、まず競売の申し立てによる差し押さえの登記、あるいはこれが売却されますとその所有権移転登記等を行うという事務があるわけでございます。  この分量はどのぐらいあるかということは必ずしもはっきりはいたしませんが、大蔵当局から伺うところによりますと、約二十万ぐらいの債権があるというふうに聞いておるところでございます。この債権につきまして、複数の不動産の抵当権が設定されているということは十分に考えられるわけでございます。それと、先ほど申し上げました登記が何回か行われるということを考えますと、非常にアバウトではございますけれども、二百万件ぐらいの事務量があるというふうに一応は今予想をしているところでございます。これを単純に登記所に当てはめますと、約三十人の職員がいる登記所、これが一年間で受けますもの、これの二十庁分に当たるというような分量になるわけでございます。  この点につきまして、私ども内部的努力はやりたいというふうに思っておりますけれども、やはり事件の推移を見て必要な措置を講ずるという必要性が出てまいったときには、鋭意努力して、実務に支障がないようにという努力を続けていきたいと思っているところでございます。
  22. 細川律夫

    細川(律)委員 終わります。
  23. 太田誠一

    太田(誠)委員長代理 大口善徳君。
  24. 大口善徳

    大口委員 新進党の大口でございます。今回の改正案について質問をしたいと思います。  まず、今回の改正案の中で、五十五条、七十七条に関して、債務者のほかに不動産占有者という形で範囲を広げたということなわけですが、これにつきましては、判例理論におきまして債務者所有者の関与ということと、それから執行妨害目的ということ等の要件、しかもかなり広く解して判例実務では対応していると思います。  そこで、この提案理由にもありますように、新しい事態に対して対応しなきゃいけない、こういうことでございますが、今回の改正によって判例実務においては保全命令を出せなかったものが出せるようになるという具体的な例を提示していただけますか。
  25. 錦織淳

    錦織議員 先生御指摘のように、この問題については判例の形成がございまして、現行法のもとでもいろいろな占有妨害行為に対して対処がなされているわけでございます。  ただ、この判例をよく検討してまいりますと、第三者占有について、債務者の関与がある、あるいは債務者との何らかの意思の連絡、こうしたものを要求しておる場合もございます。さらには、先生も先ほど指摘なされましたように、その占有をしている第三者あるいは執行妨害をしている第三者がそういう行為を通じて執行妨害の目的を有している、こういう点も判例では要件として要求をしているわけでございます。  そこで、問題は、そうした要件についてどのような立証が必要であるかということになってまいります。その点でいろいろと実務の運用を聞いてまいりますと、大変御苦労をされているということがございます。どの程度立証すれば債務者の関与があるというふうに言えるのかという点についての裁判所判断、こうしたものが必ずしも統一されているわけではない。  さらにまた、執行妨害目的、こうした点についても、この占有屋暴力団等も最近はいろいろな知恵を絞っているといいますか、工夫を凝らしておりまして、例えば、全く事情を知らない第三者を巻き込んで、うまく誘導してそういう人々に占有をさせてしまう、こういうようなことすら行われているように聞いております。したがって、そうした方々が執行妨害目的を持っているということを直ちに立証することが困難であるという面もございます。  さらに、今申し上げました二つの要件については、必ずしもすべての裁判所の判例が統一してそういう要件を要求しているわけではございませんで、力点の置き方が異なったり、あるいは第一の要件を要求しない、こういう判例もあるように承知をいたしております。また、さらに申し上げれば、全国に多数存在する裁判所あるいは裁判官には、現行法のそうした一種の拡張解釈、拡大解釈についてちゅうちょを示す裁判官もおられるやに聞いております。  そういう意味で、そうしたいろいろな実務の上で形成されてきた問題点を我々といたしましても整理をいたしまして、今後裁判官あるいは現場の法の実務においてこうした事件を処理される方々がそうした点で悩まれることのないよう、一つの統一的な方向を打ち出したい、こうした点が今回の法改正の目的でございます。
  26. 大口善徳

    大口委員 そこで、民事執行法ができましたときの審議状況を見ますと、これが八十四回国会において衆議院で可決されたわけですが、八十七回国会においてこれが修正をされた。  その修正された理由というのが、労働組合労働者権利を不当に脅かすおそれがあるとする労働界の意見があったということ、あるいは「占有者の権原の存否が未確定のまま、これらの占有者を排除し、不動産執行官占有に移す等の保全処分を認めんとするもので、不動産に対する物理的な価格減少行為を防止する法的手段は他に幾多あることを考慮いたしますと、正当な権原による占有者の立場の配慮に薄く、債権者の保護に厚いきらいがあるという批判を免れないと考えます。」こういう議論があって、結局は不動産占有者についてはこれを入れなかった、こういう経過があるわけであると思います。そういう点で、今回正当な権原による占有者労働組合の運動におきましてもそうですが、配慮をどこまでなさったのかということが議論になったのです。  先ほど細川委員の質問の結果によりますと、一つ価格減少行為というものについては、これは正当な労働運動の場合については価格減少行為に当たらない、こういうことが一つあったわけです。また、これにつきましては客観的に価格減少行為ということと、あるいは労働運動の正当性、適法性、こういうこととの絡みが論理的に少しよくわからないと思うわけです。これは細川委員と関連する形でちょっとお伺いしたいと思います。
  27. 錦織淳

    錦織議員 考え方としては、労働組合の正当な活動あるいは正当な権利行使、こうしたものは基本的に価格減少行為に該当しない。まずこういう一種の推定といいますか、そういうものが働くのではないか、このように考えております。しかしながら、さまざまなケースの中には、労働組合の正当な活動を完全に逸脱をしているというような場合も理屈の上ではあり得るかなと思いますし、そうしたものがそういう意味で正当な活動ではない、あるいは労働組合の正当な権利行使ではない、こういうふうに判断される場合もあるわけでございます。  しかし、そういう場合であっても、価格の減少行為になるかどうかということは、一応相対的に別の問題ではないかなというふうに思います。つまり、理屈の問題として正当な行為であるかどうかという問題と価格の減少行為であるかどうかということは一応区別して判定が可能ではないか、こういうふうに思います。  先ほど申し上げましたように、基本的には労働組合の正当な活動権利行使は価格減少行為に当たらない、こうした推定が働くものと思われますけれども労働組合の正当な活動を仮に逸脱している場合であったとしても、なおそれが価格減少行為になるかどうかという二重のチェックは可能ではないか、このように考えております。
  28. 大口善徳

    大口委員 今の答弁に関連してですが、そうしますと推定規定のようなものは考えなかったのでしょうか。
  29. 錦織淳

    錦織議員 これは先ほど提案者永井議員の方から説明を申し上げましたように、提案理由あるいはこうした立法の経緯あるいは当委員会での議論、こうしたものを踏まえた上でしかるべき適切な裁判実務の運営が行われるものである、このように期待をしておりますし、先ほど永井議員の方からお願いをいたしましたように、できれば当委員会附帯決議等をしていただきまして、そうした点をより一層明確にしていただければ幸いでございます。
  30. 大口善徳

    大口委員 もう一つ配慮といたしまして五十五条の三項を新設した、こういうことです。この五十五条の三項は、七十七条の二項あるいは百八十七条の二の五項という形で準用されているわけであります。  このことについて、これを必要的な審尋と、ちょっと言葉の言い回しを変えたようでございますけれども、必要的審尋、こういうことは、これは必ず審尋しなければならない、こういう意味であるわけですけれども、必要的審尋というのは、例えば八十三条の三項ですとかの債務者以外の占有者に対する引き渡し命令あるいは管理人、保管人の解任とか、代替執行だとか、そういうときに必要的審尋、こういうことの規定があるわけです。ところが、今永井さんの答弁によりますと、必要的な審尋、こういうことで必要的審尋とは明らかに違うわけです。そして、これは要するに必要かどうかを決めるのは裁判所の裁量であって、法律によって拘束されたものではないわけでございます。  そういうことからいきますと、これは法五条で十分であるし、立法の原案においても、要するに八十四回で出されたものについてもこの条項はなかったわけであります。そういう点で必要的審尋としなかった、あるいは、中途半端な規定といいますか、どちらかというとごまかしに近い規定を置かれたわけですけれども、そのあたりについてどうお考えになりますか。
  31. 錦織淳

    錦織議員 御指摘のように、講学上、必要的審尋という場合は裁判所に裁量の余地がないわけでございまして、必ず審尋をしなければならないということでございます。したがって、今回の改正案の例えば五十五条の三項で「必要があると認めるときは、その者を審尋しなければならない。」という規定は、今申し上げた意味での必要的審尋には当たらないと思っております。その意味では、先生の御指摘のとおりでございます。  それでは、こうした規定をなぜ置いたかということでございますが、先ほど来御論議いただいておりますように、労働組合活動、その他の正当な行為、そういうものが不当に制約をされることがあってはならないという配慮も必要でございます。その場合に、そうした場合には裁判所に、その者を審尋しなければならない、つまり審尋を義務づけているわけでありますが、そこに「必要があると認めるときは、」という規定を置くことによって、そうした事情が存在すると認められるときは審尋をしなければならない。つまり、そういう意味では、要件に当たるかどうかということについては裁判所判断によるわけでございまして、あらゆる場合に審尋をしなければならないということではないわけですけれども、そうした必要があると客観的に認められるときは裁判所審尋を義務づけているわけでございます。  こうした規定を置くことによって、裁判所が、そうした疑いがある、あるいはそうした可能性があるということが記録上明らかな場合には、債権者の申し立ての段階でそうしたことをいろいろ問いただすでありましょうし、さらには追加的な立証を求めるというような場合もあるかと思います。そのことによって事案の概要がわかる場合もあるかと思いますが、なお占有をしている者の審尋をしなければどうしてもそうした事情が明らかでない、こういう場合にはその者を審尋をしなければならない、こういう規定を置いている。言ってみれば、適当な言葉かどうかわかりませんが、片面的な義務づけというように解することもできるかなと思っております。
  32. 大口善徳

    大口委員 この五十五条の三項の「必要があると認めるとき」、それが必要があると認めるかどうかは裁判所の裁量だということですから、審尋六は義務的ではないというふうに考えるのが普通ではないか、こう私は思っております。  いずれにしましても、その「必要があると認めるとき」、これはいかなるものか。これをしっかりこの議論の中で明確に、客観的に必要があると認めるときがあるのだ、こうおつしゃったわけですから、明確に、具体的にどういう場合が「必要があると認めるとき」に当たるのか。この辺は非常に大きな基準になると思うのですね。そこを明ぢかにしていただけますか。
  33. 錦織淳

    錦織議員 こうした命令について申し立てがなされた場合は、その申立人の側にいろいろな疎明を要求するわけでございます。陳述書や報告書、その他の資料を要求するわけでございます。そうした報告書の記載等から明らかになる場合もございますし、またその申し立ての相手方、名あて人、そうしたものの記載自体から、これが組合活動の一環として行われているというようなことが明らかになる場合もございます。  そうした場合には、裁判所としては、先ほど申し上げましたように、債権者にさらにそうした点についての疎明の補充等を要求し、その点でもなお明らかでないというような場合もあるかと思われます。そうした場合には、今のような、正当な労働組合活動の一環として行われているのではないか、そうした事情が推察される場合は債務者に対して審尋を行うということでございます。    〔太田一誠)委員長代理退席、委員長着席〕
  34. 大口善徳

    大口委員 今労働組合活動ということでございましたが、それだけなのですか。まだいろいろなものがあると思うのです。そういうことについての一つ基準といいますか、これはやはり明らかにしてもらわぬといけないと思います。
  35. 錦織淳

    錦織議員 例えば、よく見られる例としては、倒産をした会社の経営者が姿を消してしまう、逃亡してしまう。そうした場合に、暴力団占有屋が入り込んだり、あるいはそうした方でなくても一般の債権者がいろいろなものを、商品あるいは資材、そうしたものを実力によって搬出してしまう、こういう場合もございます。そうした場合に、その従業員の組織する労働組合等がそうした行為を阻止するために、あるいはそうした財産、資産が散逸するのを防ぐために、この工場等を事実上占有する、そうした格好を通じてその財産の散逸を防ぐというようなことが見られるわけでございます。そうした場合、労働組合活動である場合もございましょうし、必ずしも組合活動というふうには組織されていないけれども、従業員のそうした行為として行われる場合もあろうかと思われます。  こうした場合は価格の減少行為には当たらないということになろうかと思われますけれども、必ずしもそうした場合にその占有をしている人の占有権原が法律的に明確でない場合もあろうかと思われます。例えば支援をする他の労働組合、従業員等が、支援のためにその手薄な工場等に応援に駆けつけるというような場合もあり得るかな、そうしたいろいろな場合が想定されるのではないかと思っております。
  36. 大口善徳

    大口委員 そうしますと、労働組合運動あるいは労働者の運動に絡んだことについては必ず審尋をする、こういうふうに伺っていいのでしょうか。
  37. 錦織淳

    錦織議員 提案者としては、そのように運用されることを期待し、望んでいるということでございます。
  38. 大口善徳

    大口委員 その場合、労働運動等に仮装することとの区別ですね。仮装するような場合の区別の仕方が難しいと思うのです。やはり審尋してみないとわからないということがあります。そういう仮装をするような場合についても、これは必要的な審尋となるのでしょうか。
  39. 錦織淳

    錦織議員 恐らく事案ごとに判断をするほかないと思われますが、先ほど来申し上げておりますように、申し立て書あるいは申し立て書に添付された疎明資料、そうしたもので、ある程度そうした場合については恐らく指摘がなされるのではないか。つまり、これは労働組合活動を標傍しておるけれども実態は異なるというような報告がなされるのではないかと一般的には推測されるわけでございます。  そうした場合に、これは明らかに仮装した行為であって、到底正当な労働組合活動には当たらないというような場合も理論上は存在し得るかなと思います。しかし、なおそうした申立人の側の疎明だけでは明らかでないというふうに裁判官判断した場合は、やはり審尋を必要とするということになろうかと思われます。     〔委員長退席、志賀委員長代理着席
  40. 大口善徳

    大口委員 今回の改正については、判例実務というもの、これを条文化をした、こういうことなんですが、ますます競売妨害というものは巧妙をきわめてきております。これは、例えば引き渡し命令の前、確定前に、ころころ占有者をかえるとかいう形で、占有屋ですとかあるいは暴力団、こういうものが非常に巧妙な手口をしますと、やはり当事者に恒定効というのですか、こういうものを認めていかないと、最終的にはいわゆる占有屋等を排除できないのではないか。そういう点で保全命令の限界ということを非常に感じるわけですが、これについてはどう考えておられるのでしょうか。
  41. 錦織淳

    錦織議員 御指摘の点は、実は私どもがこの法改正検討いたしましたプロジェクトチームでも大変議論になりました。また、私どもがいろいろと御事情を伺いました日弁連の関係者の方々や、あるいは学識経験者の方々からも、こうした点も含めて法改正をしてほしい、こういうような要望も受けたわけでございます。  しかしながら、私どもとしては、この問題は、民事保全法と民事執行法との構造上の差異、その他多くの点から検討をしなければならない問題があるということで、そうした方向もすべきではないかというような意見も当然あったわけでございますが、この国会の審議の進みぐあいの中で、ぜひとも今国会でこの法改正を、しかもできるだけ早い時期に実現をさせていただきたい、こうした実務の方々からの強い要望もございましたので、とりあえず今回はこのような法改正に限定をさせていただいた、こういうことでございまして、先生の御指摘の点は、むしろ今後積極的に私どもとしても検討をしていきたい、このように考えているところでございます。
  42. 大口善徳

    大口委員 それで、執行官による保全処分命令の公示という問題がございます。これは、民事保全法上の仮処分について不作為を命じる仮処分とともに、公示を執行官に命じることは法的に必要がないというようなことになっております。それに対して、民事執行法保全処分については、これは第三者に保全命令を発令する場合に、その認定をするのに非常に有力な根拠になるということで、保全処分の公示を命じる法的な必要性があるんだということで、この公示の必要性を認めているわけですが、今回の改正で、この保全処分の公示について、これは判例としての理論は変わるのか、このあたり、どうでしょう。
  43. 錦織淳

    錦織議員 この点についても、プロジェクトチームでいろいろと検討をいたしました。提案者としては、この法改正によって、今の判例実務で形成されました公示というものについては影響を受けるものではない、このように考えております。
  44. 大口善徳

    大口委員 また、八十三条の引き渡し命令につきまして、これも八十七回の参議院の法務委員会で、「八十三条も、引き渡し命令という簡易な債務名義により、あとう限り有利な状態で不動産を買い受け人に引き渡そうとするものでありますが、これにより、差し押さえ前より正当な権原により不動産占有する者の排除まで認容せんとすることは、これまた前同様の批判を免れず、かかる占有者の排除については、買い受け人をして通常の訴訟手続によりその権利の実現を図らしむることが、むしろ妥当と考えられるのであります。」こういうふうに八十七回の参議院の法務委員会では言っているわけですね。  これについて、要するに債務者との関係で、差し押さえ前、正当な権原を有している占有者について、引き渡し命令という簡易な債務名義でできるのか、ここら辺のところについて、特に労働組合の運動との関係も加味して御答弁願いたいと思います。
  45. 錦織淳

    錦織議員 この点につきましては、先ほど来申し上げておりますように、今回の法改正趣旨は、民事執行法制定されて以降の実務の運用、こうした点を踏まえているということでございます。また、一連の暴力団占有屋等による執行妨害が多発をしている、こういう社会現象がございます。そうした社会現象に対して、実務に携わっている弁護士の方々やその他の関係者の方々が大変御苦労をされて、何とかそうしたものについて対応をできないのかといういろいろな工夫をされている。そして、そうした工夫が判例の中に反映をされて、先ほど来議論になっておりますように、債務者範囲が事実上拡張されるというようなことがございました。  今御指摘の八十三条についても、この立法の当時にそういう御議論がなされたということは承知をしておりますけれども、そうした実務の運用、判例の形成、あるいは何よりも、そうしたものを必要とする立法事実といいますか社会的な情勢、こうしたものを踏まえて今回のような改正に至ったということでございます。  なお、御懸念の正当な労働組合活動というものについては、先ほど来申し上げているとおりでございます。
  46. 大口善徳

    大口委員 最後に、最近の不動産競売売却率の推移を見ますと、平成三年、四年、五年、六年と三〇%から四〇%ということで、非常に売却率が低うございます。やはり、もっと一般市民が競売不動産を買い受けやすくする、こういうことの制度を抜本的に改革しなければいけないと私は考えております。  そういう点で、裁判所の方でも情報提供については工夫をされておるようでございますが、提供を受けて気軽に競売物件について相談を受けられるようなシステム、それからまた、二割を保証金として払って、それで二週間以内にまた残りを払うということについて、やはり資金的な手当てが非常な問題になってくるわけですけれども、この競売ローン制度というもの、横浜方式というようなものもあったわけでございますけれども検討すべきではないか、それは提案として質問をさせていただきます。
  47. 石垣君雄

    石垣最高裁判所長官代理者 委員指摘のとおり、市民が購入しやすくするための工夫というのは大変重要なことだと私ども考えております。  現状を若干申し上げますが、一つは、競売物件情報の提供でございますが、御案内のとおり、現在、日刊新聞や住宅情報雑誌等に競売物件の情報を掲載するなど、できるだけ多くの人が競売情報に接することができるように工夫をしてきておりますが、さらに、本年の四月から、不動産執行事件数の多い大都市の裁判所を中心に、競売物件の情報をファクシミリを利用して一般の人に提供する、こういうサービスを順次開始しているところでございます。  それから相談の関係でございますが、現在でも、執行事件を担当する書記官室等において電話等による競売の相談を受けておりますが、先ほど述べましたファクシミリサービスによっても、民事執行手続の案内や「競売不動産買受けの手引」、これはリーフレットですが、これらが取り出せるようになっております。  なお、委員指摘の融資の面でございますが、これは、裁判制度というよりも、融資制度全体の総合的な検討が必要な事項ではないかというふうに思われますが、実務上行われております横浜ローン方式、これは御案内のとおり、関係者了解の上で、金融機関は抵当権の設定を受ける前に融資を行って、一方、買い受け人は融資金で代金納付をする。裁判所の方は、買い受け人への所有権移転登記手続と金融機関のための抵当権設定登記手続を同時にとらせるようにするために、登記嘱託に必要な書類を司法書士や弁護士に交付するという方法でございますが、こういうものを利用している例もあるようでございます。この方式では、通常のローン方式と異なりまして、抵当権の設定前にローンを組むということになりますので、金融機関にとって不安定であるということ、あるいは、司法書士や弁護士が当事者の代理人となって責任を持って必要な手続を行うことが前提となっているということで、頻繁に利用されているとは言えない状況のようでございます。  なおいろいろな研究が必要であろうと思っておりますが、今後とも、より多くの人が入札に参加できるような工夫を続けていきたいと思っているところでございます。     〔志賀委員長代理退席、委員長着席〕
  48. 大口善徳

    大口委員 以上で終わります。
  49. 加藤卓二

  50. 正森成二

    ○正森委員 日本共産党の正森でございます。  私は、本法案議員立法でありますが、遺憾ながら、以下に述べる理由により賛成することはできないことをまず最初に申し上げておきたいと思います。  その理由は、既に先ほどお述べになりました関係委員の質問の中にもあらわれておりますが、昭和五十四年の八十七国会で、今度の法案に出ております五十五条、七十七条、八十三条関係で、対象が債務者のみならず占有者にまで拡大されておるということから、これは正当な占有者あるいは労働組合関係等の者に対して非常に権利侵害になるおそれがあるということで、先ほどもお話がございましたように、当時の社会党の参議院議員寺田熊雄氏などの提案で、全会一致で削除されたものであります。  加えて、今度御提案法案を見ますと、「不動産競売開始決定前の保全処分」というのをさらに百八十七条の二で追加されて、不動産競売開始決定前でさえ、占有者に対しても立ち退きを求めることができるというようになっております。これは、八十七国会で全会一致で削除されたものをさらに拡大するというとんでもない法案だというように思われるからであります。  現に、昭和五十四年の法案提出のときに民事執行法の立案を担当した法務省の民事局参事官であった浦野雄幸氏、現在東海大学の教授をされておるようでありますが、この方も、二月十二日の日経新聞に、  住専問題解決のために民事執行法五五条、七七条、八三条の改正が取り上げられているが、この法律ができる際、国会で保全処分を強化することが問題視されて修正され、現行法規定に落ち着いた。国会の修正にはそれだけの理論的根拠がある。また、乱用的占有妨害については、裁判所の運用でほぼ目的を達している現状にかんがみると、住専を契機に警察力と抱き合わせで基本法を十分な検討なしに改正することには賛成できない。 という意見を述べておられます。  それにもかかわらず、あえて、八十七国会で削除されたものを超えて、さらに広く占有者に対して厳しい措置をとることができるようにした理由は何か、それをまずお聞かせ願いたいと思います。
  51. 永井哲男

    永井(哲)議員 お答えいたします。  第一の違いは、現状認識というものをどのように考えるのかということにあるのではないかというふうに思います。  バブルの崩壊以降、例えば抵当権の設定された土地にプレハブ等の建物を建築して第三者占有させる、または占有させようとする、そういう行為というものがふえてきております。そういったものや、競売物件について暴力団占有する旨の立て札を立てたり、そういったものがふえておりまして、先ほど申したとおり、保全処分の件数としても、平成二年、三年における保全処分の件数と平成四年以降に起きている保全処分の件数というのはほぼ倍近くなっておりまして、それだけ執行妨害というのが現実のものになっている、そういったことが示されるデータではないかというふうに思います。  判例理論も、占有補助者というようなことでその拡大を図っておりますが、そのままの状況では実態に合わないという、そういう事実があるからこそ、そういったような判例理論というものが形成されたのではないかというふうに思います。  そういう中で、私たちとしては、特に暴力団占有屋と言われるそういった人たちが、先ほど言ったとおり、こういった執行の分野にささり込んで、そこで不当な利益を得ているということには断固としてこれは対抗しなければならない。一方で、正当な権利者というものも十分に配慮しながらこのような改正法案をつくったものでありまして、これはもとに戻るというようなことではなくて、現状認識を踏まえつつ新たな事態に対応する、そういったような改正であるというふうに私ども認識しているところでございます。
  52. 正森成二

    ○正森委員 どうやら、提案者の答弁を聞いておりますと、バブルあるいはバブル崩壊後の状況の変化に伴って本法案が必要とされるようになったという趣旨のようであります。しかし、そういう理由で、今後何十年間も国民の権利義務に対して大きな影響を与える基本的な執行法を改正することには非常に問題があるのではないでしょうか。  例えば、今度の住専関連で、債権者が回収しやすいようにということですが、調査によりますと、暴力団が逆に債権の譲り受けを受けて、その暴力団が当該物件に対して執行を行ってくるというケースも報告をされているわけであります。  また一方、私がいただいた資料を見ますと、住専の関係者は、これまで長い間債権の回収が行われなかったにもかかわらず、債権回収に必要な手を打っていないのですね。例えば、ここに本年三月四日の朝日新聞がありますが、   こうした中で住専の不良債権回収は、「ほとんど手つかずの状態」だ。「貸出先の上位百社のうち、担保物件競売しているのはゼロに近い」と、日本住宅金融の担当者は話す。こういう記事が出ております。  あるいはまた、平成七年十一月六日の日本経済新聞によりますと、債権回収に詳しいある弁護士が、  「債務者に対してもっと強い手段に出るべきだと言っても、債権者からそこまではやりたくないと言われることが多呂と話す。債務者が開き直って昔の関係を表に出したりするのを嫌うためで、「金融機関は必ずしも債権回収に手段を尽くしているわけではない」 こう言っております。  つまり、自分らが、昔の暴力団等とのくされ縁を暴かれるのが嫌だということで、強制執行あるいは抵当権の実行を十分に行っていない。日本住宅金融の担当者によれば担保物件競売しているのはゼロに近いというような状況で、国家に一般占有者権利義務に重大な影響を与える法律改正までさせて、そして、自分はやらないで住専処理機構にこれをやらせるなどということはもってのほかのことではないかというように思います。大蔵省、今私が申し上げましたが、まず大蔵省がなすべきことは、住専会社などの消極的な対応を、みずからの責任で回収させるために積極的な手段をとることではありませんか。  そのためにまず第一にやらなければならないのは、例えば、ここにことし二月十一日の朝日新聞の社説がありますが、「そのために大蔵省は、住専各社にまず次のことをやらせなければならない。不良債権の全額について、①暴力団やその関連企業がからんでいることがはっきりしている②その疑いがある③暴力団とは一切無関係、」この三つに分類させて、それを関係方面に提出させるということがまず大事だという提案をしております。  あるいは、去年の十二月三十一日の朝日新聞に、現在日弁連会長になった鬼追弁護士の一問一答談話が載っておりますが、その中でも「債権の回収で問題なのは、借り手に関する情報を開示していないことだ。実態がわかると困るのだろうか。」という問題提起がされております。  この点は、当国会でもいろいろ資料が出されましたが、暴力団関係の資料はほとんどと言ってもいいぐらい出されなかったと聞いておりますが、この点について大蔵省の答弁を求めます。
  53. 振角秀行

    ○振角説明員 大蔵省の金融会社室長でございます。私の方から答弁させていただきます。  先生の質問、暴力団関係の債権につきまして大蔵省としてもいろいろ調査すべきではないかということだったと思いますけれども暴力団につきましては、その定義が必ずしも明確でないというところがいろいろございまして、当局としても、そういうような調査というのはなかなか難しいという状況にあるわけでございます。  ただ、いずれにしましても、住専処理機構におきましては、預金保険機構と一体となって強力な債権回収を行うことといたしておりまして、仮にいろいろな問題案件がありました場合には、検察あるいは警察などの関係当局と緊密な連携を図りつつ対応を図ることとなっております。  それと、先ほど質問の前段の方で、住専の不良債権の競売等が全く行われていないというような新聞報道があるという指摘もございましたけれども、当方におきましては、住専に現段階においても積極的な債権回収を行うように適宜指導しているところでございまして、平成七年度におきましても、住専七社の競売申し立てば、総件数でいいますと二千二百件になりまして、金額ベースでも二千億円を上回る競売を申し立てているというところでございまして、新聞報道はややミスリードのところがあると思います。
  54. 正森成二

    ○正森委員 今答弁がございましたが、現場の弁護士や当該住専の担当者からこのような意見がマスコミ等に公然と語られているということも事実であります。  一方、この新設、改正によりまして、今まで与党からも問題点が指摘されましたが、私のところに来ておりますこれらの事件に詳しい弁護士からの要請書によりますと、例えば、  百八十七条の二の規定は、担保権者に対し、不動産競売申し立てとともに、不動産所有者占有者競売開始決定前に「保全処分命令」を出せるようにしようというのである。この担保権者は銀行やノンバンクだけではない。暴力団筋の債権者などが抵当権者になっていることが多いのはよく知られている。担保債権者はこの保全命令をどう活用することになるか。例えば、会社が倒産状態に陥った場合、会社の土地・建物労働組合や争議団が占有して、会社債権や時には不払い退職金の支払いを求めて争議状態に入ることはよくあることである。現在、会社や会社の債権者らが、労働組合や争議団の立ち退きを裁判所に求めるには、立ち退き断行の仮処分や明け渡しの本訴がある。裁判所は、解決が正当かなどを審理して命令や判決を出す。あるいは、それ以前に双方の言い分をよく聞いて和解を進め、こうして争議が解決することが多い。だが、もし不動産競売開始決定前の保全処分が認められれば、こうしたケースでも、「不動産価格を著しく減少するおそれあり」といって、担保権者、つまり中小企業を倒産に追い込んだ親会社、各種金融機関、あるいは暴力団関係などの担保権者によって、この追い出し命令を含む保全処分が利用されよう。そのことは、従来会社が用いてきた立入禁止仮処分を当該労使関係以外の第三者からも申し立てができ、しかも当事者の言い分を詳しく裁判所が聞くまでもなく、発令が可能になるということである。 云々というように私のところへ要請が来ております。  きょうの答弁を聞きますと、また法案趣旨説明のところでも、労働組合の正当な権利を侵害することがないようにするとかさまざまなことが言われておりますし、裁判所審尋をするということを言われております。また、不動産価格減少行為についても、正当な争議行為あるいは正当なビラ張りなどの場合にはこれに該当しないという答弁もございました。その点で危惧の一部は緩和されたと思いますが、今債権者等が問題にしておりますのは、そういうこと以上に、昔は右肩上がりで土地の値段が上がってきたけれども、このごろは時間がたてばたつほど価格が下がる。だから、特別に建物を壊すというような処分をやらなくても、争議団やあるいは労働組合が不払い賃金などを求めてその場所におるということ自体が価格減少行為であり、それが長引けば長引くほど地価等が下落するという意見が横行していることであります。  そういうような占有自体が価格減少行為であるというようなおそれは全くないと考えておられるのかどうか、まずその点を御答弁願います。
  55. 錦織淳

    錦織議員 百八十七条の二の新設の意義でございますが、現在の実務の実情を検討いたしますと、占有屋暴力団などが暗躍ばっこして、抵当権の実行段階に至らないそうした時期をねらってどんどん不法な占有をあらゆる手段を駆使して行う、こういうことが行われているわけでございます。それに対して、裁判所の判例等の影響もあって、現行法ではこれに打つ手がない、ただ手をこまぬいて見ていなければならない、こういうのが指摘をされているところでございまして、私ども先ほど来から申し上げておりますように、日本弁護士連合会の民事介入暴力対策委員会その他のメンバーの方々から、いかにひどいことが行われているかということについて切々と訴えを受けたわけでございます。そうした点を踏まえて、そういうものを今回の法改正の立法事実としながらこのような改正を行ったということでございます。  もちろん、先生が御指摘されております、あるいは御懸念されております正当な労働組合活動というものは、そうした意味においては当然保護されなければならないわけでございまして、先ほどの答弁の中にも具体的な例を挙げながら御説明をいたしましたように、組合の行為として行われるような行為は当然価格減少行為に当たらないというふうな推定を受けるでありましょうし、また価格減少行為になるかどうかということは、それ自体さらに独自の判定も可能である、このように考えておりますので、今先生が指摘されたようなケースの場合には、当然必要な審尋を受けて、そこで権利主張機会が与えられて、そして裁判所としては適切な判断に至るということになるはずでございます。
  56. 正森成二

    ○正森委員 この御提案の条文を見ますと、五十五条の三項に、「執行裁判所は、債務者以外の占有者に対し前二項の規定による決定をする場合において、必要があると認めるときは、その者を審尋しなければならない。」こうなっており、他のケースの場合にはこの五十五条三項が準用される仕組みになっております。  これを見ますと、やはり裁判所審尋をしなければならないとなっておりますが、その頭に「必要があると認めるときは、」というようになっているのですね。これは必ず審尋しなければならないということとは意味が違うわけであります。  そこで私は、最高裁判所に伺いたいと思いますが、執行を行う場合等に三点セットと言われるものがありまして、まず第一に物件の明細書ですか、それから現況調査報告書、それから評価書、この三つが必要だということになっております。  私が知っているところでは、現況調査報告書執行官評価書は評価人というのがやることになっているようですが、労働組合などの正当な争議行為の場合には、執行が行われるかもしらぬという場合は、私どももその経験がございますが、弁護人がついている場合にはあらかじめ執行裁判所に、万が一執行される場合には、現在この建物をこれこれこういう理由労働組合占有使用しておるので必ず審尋されたいという上申書を出して、裁判所審尋していただけるように配慮しております。しかし、すべての争議団がそういう援助者を持っているわけではございませんから、現況調査報告書というものでそういう状況にあるのだということを知らなければ、裁判所は悪意がなくても立ち退き命令等を出してしまうおそれがあります。  したがって私は、最高裁判所に、現況調査報告書を作成する執行官は必ずその点に留意して裁判所報告をするように、そしてそういう記載があれば裁判所異議なく必要があると認めて審尋を行うということでなければ、今提案者が答弁されたような御答弁の内容も実際上は効果を持たないということになるのではないかと思いますが、民事局長の答弁を求めます。
  57. 石垣君雄

    石垣最高裁判所長官代理者 委員御案内のとおり、現行の民事執行規則二十九条でございますが、この中には、執行官不動産現況調査をしたときは当該不動産占有者占有状況等を現況調査報告書に記載しなければならないと定められております。つまり、現況調査報告書には必ず占有状況等が記載される。これは執行官が現認その他の手段を講じてきちっと確認をする、こういうことを義務づけているものと思われます。  ただいま御指摘審尋等の関係につきましては、先ほど来申し上げておりますように、この法の趣旨というものを十分にそしゃくをしてもらうような手段を講じ、またこの委員会での御議論も各裁判所の方に十分理解をしてもらえるような方法を講じたいというふうに思っております。
  58. 正森成二

    ○正森委員 終わります。
  59. 加藤卓二

    加藤委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     ―――――――――――――
  60. 加藤卓二

    加藤委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  民事執行法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  61. 加藤卓二

    加藤委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     ―――――――――――――
  62. 加藤卓二

    加藤委員長 この際、本案に対し、太田誠一君外三名から、自由民主党、新進党、社会民主党・護憲連合、新党さきがけ共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  まず、提出者から趣旨説明を求めます。細川律夫君。
  63. 細川律夫

    細川(律)委員 ただいま議題となりました附帯決議案について、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。  本案の趣旨につきましては、既に当委員会質疑の過程で明らかになっておりますので、この際、案文の朗読をもってその説明にかえさせていただきます。  それでは、案文を朗読いたします。     民事執行法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   本法の施行に当たっては、労働組合運動その他正当な活動を阻害することのないよう十分配慮されたい。 以上であります。  何とぞ本附帯決議案に御賛同くださるようお願い申し上げます。
  64. 加藤卓二

    加藤委員長 これにて趣旨説明は終わりました。  採決いたします。  太田誠一君外三名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  65. 加藤卓二

    加藤委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。  この際、政府から発言を求められておりますので、これを許します。河村法務政務次官
  66. 河村建夫

    ○河村(建)政府委員 ただいま可決されました附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、本法の趣旨の周知に努めるとともに、最高裁判所にも十分に本附帯決議の趣旨を伝え、運用上遺憾のないように配慮いたしたいと存じます。     ―――――――――――――
  67. 加藤卓二

    加藤委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  68. 加藤卓二

    加藤委員長 御異議なしと認めます。そのように決しました。よって、     ―――――――――――――報告書は附録に掲載〕      ――――◇―――――
  69. 加藤卓二

    加藤委員長 この際、小委員会設置に関する件についてお諮りいたします。  行政機関の保有する情報を公開するための制度に関して司法の判断権の在り方について総合的な検討をするため小委員十三名よりなる情報開示の司法判断に関する小委員会を設置いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  70. 加藤卓二

    加藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  なお、小委員及び小委員長の選任につきましては、委員長において指名いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  71. 加藤卓二

    加藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  小委員及び小委員長は、追って指名の上、公報をもってお知らせいたします。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午前十一時三十九分散会      ――――◇―――――