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1996-03-13 第136回国会 衆議院 文教委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年三月十三日(水曜日)     午後二時開議  出席委員   委員長 柳沢 伯夫君    理事 片岡 武司君 理事 塩谷  立君    理事 渡瀬 憲明君 理事 輿石  東君  理事 五十嵐ふみひこ君       稲葉 大和君    小野 晋也君       金田 英行君    栗原 博久君       栗原 裕康君    栗本慎一郎君       河野 洋平君    斉藤斗志二君       島村 宜伸君    池田 隆一君       小林  守君    坂上 富男君       濱田 健一君    山原健二郎君  出席国務大臣         文 部 大 臣 奥田 幹生君  出席政府委員         文部大臣官房長 佐藤 禎一君         文部省生涯学習         局長      草原 克豪君         文部省初等中等         教育局長    遠山 耕平君         文部省教育助成         局長      小林 敬治君         文部省高等教育         局長      雨宮  忠君         文部省学術国際         局長      林田 英樹君  委員外出席者         法務省入国管理         局警備課長   加澤 正樹君         通商産業省産業         政策局サービス         産業課長    乾  敏一君         文教委員会調査         室長      岡村  豊君     ――――――――――――― 委員の異動 三月十三日  辞任       補欠選任   小野 晋也君    金田 英行君   池田 隆一君    坂上 富男君 同日  辞任       補欠選任   金田 英行君    小野 晋也君   坂上 富男君    池田 隆一君     ――――――――――――― 二月二十七日  三十五人以下学級の実現、教育予算私学助成  の拡充、教職員定数増に関する請願(井上一成  君紹介)(第二号)  同(東中光雄君紹介)(第一八号)  同(正森成二君紹介)(第一九号)  同(近江巳記夫君紹介)(第三八号)  同(北側一雄君紹介)(第七〇号)  同(左近正男君紹介)(第九四号)  私学の学費値上げ抑制、教育・研究条件の改  善、私学助成増額に関する請願(井上一成君紹  介)(第三号)  同(山原健二郎君紹介)(第三九号)  同(高市早苗君紹介)(第一一五号)  私学助成大幅増額教育費父母負担軽減、  教育条件の改善に関する請願(緒方克陽君紹介  )(第四号)  同(愛野興一郎君紹介)(第五八号)  私学助成大幅増額に関する請願(豊田潤多朗  君紹介)(第五号)  同(穀田恵二君紹介)(第四〇号)  同(谷垣禎一君紹介)(第四一号)  同(寺前巖君紹介)(第四二号)  同(野中広務君紹介)(第六二号)  同(伊吹文明君紹介)(第一二三号)  三十五人以下学級の早期実現私学助成大幅増  額に関する請願(田口健二君紹介)(第七号)  私学助成大幅増額と高校四十人以下学級の早期  実現、障害児教育充実等に関する請願(田口  健二君紹介)(第八号)  同(山崎泉君紹介)(第三〇号)  すべての子供たちに対する行き届いた教育に関  する請願(山元勉君紹介)(第一〇号)  国庫補助の拡大、父母負担の軽減、教育条件  の改善に関する請願(丹羽雄哉君紹介)(第一  一号)  同(葉梨信行君紹介)(第一二号)  同(中山利生君紹介)(第六三号)  四十人以下学級の早期実現急減期特別助成な  ど私学助成大幅増額に関する請願外一件(岩  田順介君紹介)(第一三号)  同外二件(岩田順介君紹介)(第三一号)  同外二件(岩田順介君紹介)(第四三号)  同(楢崎弥之助君紹介)(第六四号)  同(楢崎弥之助君紹介)(第七一号)  同(楢崎弥之助君紹介)(第七五号)  同(北橋健治君紹介)(第一四一号)  同外九件(岩田順介君紹介)(第一五三号)  私学助成大幅増額、四十人学級の実現に関す  る請願(田中昭一君紹介)(第一四号)  同(矢上雅義君紹介)(第一五号)  同(野田毅君紹介)(第四四号)  私学助成抜本的拡充とすべての学校の三十五  人学級早期実現に関する請願(正森成二君紹介)  (第一六号)  同(秋葉忠利君紹介)(第三二号)  同(秋葉忠利君紹介)(第四五号)  私学助成抜本的拡充と三十五人学級早期実現  に関する請願(遠藤登君紹介)(第一七号)  同(鹿野道彦君紹介)(第五九号)  すべての学校における三十五人学級の早期実現  に関する請願(坂上富男君紹介)(第三三号)  同(白沢三郎君紹介)(第三四号)  同(小沢辰男君紹介)(第六五号)  私学への大幅公費助成実現等教育関係予算の  拡充に関する請願(工藤堅太郎君紹介)(第三  五号)  同(小沢一郎君紹介)(第九五号)  私学助成大幅増額小中高校三十五人学級の  早期実現に関する請願(岡崎トミ子君紹介)(  第三六号)  私学助成増額、行き届いた教育実現に関する請  願(土肥隆一君紹介)(第三七号)  私学助成拡充教職員増、三十五人以下学級の  実現、障害児教育の充実に関する請願(田中恒  利君紹介)(第五一号)  同(中村時広君紹介)(第七六号)  三十五人以下学級、教職員定数改善私学助成  の大幅増額に関する請願(石田勝之君紹介)(  第五七号)  小・中・高校三十五人以下学級実現教職員の  大幅増教育条件整備充実に関する請願(野  中広務君紹介)(第六一号)  同(伊吹文明君紹介)(第一二四号)  豊かな私学教育の実現を求める私学助成に関す  る請願(北側一雄君紹介)(第六九号)  義務教育学校教職員定数改善に関する請願 (中島衛君紹介)(第七四号)  同(小川元君紹介)(第九六号)  同(堀込征雄君紹介)(第九七号)  同(宮下創平君紹介)(第九八号)  同(唐沢俊二郎君紹介)(第一二五号)  同(小坂憲次君紹介)(第一二六号)  いじめ問題対策充実強化に関する請願(桜井  新君紹介)(第一二二号)  小中高三十五人以下学級の早期実現障害児教  育の充実、私学助成大幅増額に関する請願  (大木正吾君紹介)(第一四〇号)  小・中・高校三十五人学級の早期実現私学助  成の大幅増額に関する請願(石田幸四郎君紹介  )(第一四四号)  同(網岡雄君紹介)(第一五四号)  同(海部俊樹君紹介)(第一五五号) 三月七日  定時制通信制生徒に対する教科書学習書及  び夜食有償化の撤回に関する請願(高市早苗  君紹介)(第一六八号)  小・中・高校三十五人学級の早期実現私学助  成の大幅増額に関する請願(伊藤英成君紹介)  (第一六九号)  同(青木宏之君紹介)(第一七六号)  同(江崎鐵磨君紹介)(第一九〇号)  同(川島實君紹介)(第一九一号)  同(佐藤観樹君紹介)(第一九二号)  同(青山丘君紹介)(第一九九号)  同(平田米男君紹介)(第二一八号)  私学助成大幅増額小中高校三十五人学級の  早期実現に関する請願(千葉国男君紹介)(第  一七五号)  行き届いた教育の実現と私学助成大幅拡充に  関する請願(月原茂皓君紹介)(第一八八号)  同(三野優美君紹介)(第二四五号)  行き届いた教育の実現と私学助成大幅増額に  関する請願(月原茂皓君紹介)(第一八九号)  同(月原茂皓君紹介)(第二〇〇号)  同(三野優美君紹介)(第二四六号)  同(三野優美君紹介)(第三〇三号)  四十人以下学級の早期実現急減期特別助成な  ど私学助成大幅増額に関する請願(細谷治通  君紹介)(第一九六号)  三十五人以下学級、教職員定数改善私学助成  の大幅増額に関する請願(武山百合子君紹介)  (第一九七号)  同(福留泰蔵君紹介)(第三〇二号)  義務教育学校教職員定数改善に関する請願  (若林正俊君紹介)(第一九八号)  行き届いた教育に関する請願(貝沼次郎君紹介  )(第二一五号)  同(正森成二君紹介)(第三〇四号)  三十五人学級の早期実現生徒急減期特別助成  などの大幅増額に関する請願(貝沼次郎君紹介  )(第二一六号)  三十五人以下学級の早期実現私学助成大幅  増額に関する請願(西岡武夫君紹介)(第二一  七号)  同(田口健二君紹介)(第二四二号)  同(田口健二君紹介)(第三〇〇号)  三十五人以下学級の早期実現私学助成の増額  と拡充に関する請願(石田祝稔君紹介)(第二  三七号)  私立学校国庫補助制度の拡充に関する請願  (小泉農一君紹介)(第二三八号)  同(永井英慈君紹介)(第二三九号)  小・中・高校三十五人学級の早期実現急減期  特別助成など私学助成大幅増額に関する請願  (石田祝稔君紹介)(第二四〇号)  同(山原健二郎君紹介)(第三〇五号)  文教予算の増額・三十五人以下学級実現・教職  員定数改善障害児教育充実等に関する請願  (田邊誠君紹介)(第二四一号)  国庫補助の拡大、父母負担の軽減、教育条件の  改善に関する請願(大畠章宏君紹介)(第二四  三号)  私学助成抜本的拡充とすべての学校の三十五  人学級早期実現に関する請願(柳田稔君紹介)  (第二四四号)  小・中・高校三十五人以下学級の早期実現、父  母負担の軽減に関する請願(吉井英勝君紹介)  (第二八六号)   行き届いた教育の実現と文教予算大幅増額  に関する請願(岩佐恵美君紹介)(第二八七号  )  行き届いた教育の実現と教育予算大幅増額に  関する請願(不破哲三君紹介)(第二八八号)  すべての子供・生徒に行き届いた教育に関する  請願(古堅実吉君紹介)(第二八九号)  小・中・高校三十五人学級の早期実現生徒急  減期特別助成など私学助成大幅増額に関する  請願(松本善明君紹介)(第二九〇号)  小・中・高校すべての学校で三十五人以下学級  の早期実現私学助成大幅増額に関する請願  (中島武敏君紹介)(第二九一号)  私学助成の増額と抜本的拡充、三十五人学級の  早期実現に関する請願(矢島恒夫君紹介)(第  二九二号)  障害児教育の充実、教育予算大幅増、三十五人  学級実現に関する請願(穀田恵二君紹介)(第  二九三号)  文教予算の増額、行き届いた教育実現に関する  請願(東中光雄君紹介)(第二九四号)  行き届いた教育の実現に関する請願(藤田スミ  君紹介)(第二九五号)  小中高三十五人以下学級の実現、教職員定数の  抜本的改善教育予算増額に関する請願(佐々  木陸海君紹介)(第二九六号)  教育予算増・三十五人以下学級実現教職員定  数増・私学助成大幅拡充に関する請願(志位  和夫君紹介)(第二九七号)  三十五人以下学級の実現、教育予算私学助成  の拡充、教職員定数増に関する請願(山本孝史  君紹介)(第二九八号)  私学助成大幅増額に関する請願(寺前巖君紹  介)(第二九九号)  すべての子供たちに対する行き届いた教育に関  する請願(川端達夫君紹介)(第三〇一号) 同月十三日  行き届いた教育を進めるための教育条件改善  に関する請願(畠山健治郎君紹介)(第三二三  号)  小・中・高校三十五人学級の早期実現私学助  成の大幅増額に関する請願(赤松広隆君紹介)  (第三二四号)  同(早川勝君紹介)(第四五〇号)  行き届いた教育の実現と私学助成大幅増額に  関する請願(三野優美君紹介)(第三二五号)  同(三野優美君紹介)(第三六〇号)  同(三野優美君紹介)(第四五二号)  私立学校国庫補助制度の拡充に関する請願  (大出俊君紹介)(第三二六号)  三十五人以下学級の実現、教育予算大幅増、  父母負担軽減に関する請願(大畠章宏君紹介)  (第三五九号)  行き届いた教育の実現と教育予算大幅増額に  関する請願(松前仰君紹介)(第三六一号)  小中三十人学級・高校三十五人以下学級の早期  実現と私学助成抜本的拡充等に関する請願  (坂本剛二君紹介)(第四〇八号)  同(増子輝彦君紹介)(第四五三号)  義務教育学校教職員定数改善に関する請願  (村井仁君紹介)(第四〇九号)  三十五人以下学級の実現、教育予算私学助成  の拡充、教職員定数増に関する請願(西村眞悟  君紹介)(第四四八号)  同(藤村修君紹介)(第四四九号)  定時制通信制生徒に対する教科書学習書及  び夜食有償化の撤回に関する請願(高市早苗  君紹介)(第四五一号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 三月五日  義務教育費国庫負担制度の堅持に関する陳情書  (第一三二号)     ――――――――――――― は本委員会に参考送付された。 本日の会議に付した案件  文教行政基本施策に関する件      ――――◇―――――
  2. 柳沢伯夫

    柳沢委員長 これより会議を開きます。  開会に先立ち、新進党及び市民リーグ民改連所属委員出席を要請したのでありますが、出席が得られませんので、やむを得ず議事を進めます。  文教行政基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。栗原博久君。
  3. 栗原博久

    栗原(博)委員 きょうのこの委員会室に参りまして、新進党の諸君が席に座していないことについては大変遺憾でありまして、また、連日予算委員会室を占拠するという暴挙はまさしく日本民主主義の否定であるわけであります。こういう中におきまして、彼らの行動につきましては、我が国の将来の政治に対して極めて暗雲が立ち込めている。彼らに強く反省を求めて、我々は、やはり国会でもって互いに議を尽くして闘うことが国会議員の責務でございますから、一刻も早くおのおの自分の席に着くように強く要請する次第でございます。  さて、そういう中で、私は今、我が国教育いじめの問題とか、あるいはまたサリン事件を初めとする中で、あれだけの高等教育を受けた者がなぜああいう行動をとるかと考えますると、日本の六・三・三制の教育制度は果たしてこのままでいいのかどうかという疑問も持つわけであります。特に我が国教育は、教育を重視する国民性、あるいはまた所得の向上に伴いまして教育も普及し、それがまた私どものこの国の経済とか社会とか文化発展の大きな原動力になってきたわけでありまして、戦後の教育システムに対して大きな評価は下されます。しかし、先ほど私が申し上げたとおり、近年の教育を取り巻く中での問題を考えますと、果たしてこれでいいだろうかと思うわけであります。  特に私は、冒頭で申し上げたいのでありますが、学校先生方いじめの問題について、私学では余りいじめがない、公立学校ではいじめがあるという傾向が見られるようでありますが、私どもが小さいころは、学校宿直先生もおられたとか、あるいはまた先生方自分学校の近くに大体住んでいらっしゃって、よく先生のお宅にお邪魔して親子の交わりのような話し合いができた。ところが、最近はそういうものが見えないわけであります。  こういう中で、文部最高責任者であります大臣もおられますが、先生方の配置の問題あるいはまた転勤等の問題についても、昔の宿直制度等もぜひとも、いろいろあると私は思うのですが、真剣にひとつお考えおき願いたいと思うのであります。  その中で、塾は、今中学生の半分以上が学校が終わったらすぐ塾に走っている、あるいはまた小学校、中学校平均しても三六%近い子供たち学校が終わってから塾に行っているということでありますが、これは一兆円産業であるとも言われておるわけであります。せんだって、日経連の根本二郎会長が塾を法律の中で規制すべきだというような、かつて一九八一年から八九年ごろ、韓国ではあのような過剰な受験ブームを規制するということで塾の廃止がなされた経緯もあるようでありますが、そこまでやはり塾問題も社会の大きな問題をはらんでいると私は思う。しかし反面、学校先生方に比べて塾の先生に対して子供たちが愛着の念を持っているということも否めない事実であるわけであります。やはり現行学校制度の中において塾の必要性もまた求められている点も、これは事実だと思うのであります。  そういう中で、しかし塾等について法的な規制とか、あるいはまた塾を開設するに当たっての認可制というものがないようでありますが、この点について、大臣日本のこれからの教育教育観並びに塾問題についてお聞きしたい点が一点。  第二点は、塾等については通産省産業施策の一環として主管されているようでありますが、こういう問題について、塾産業についてどのように今後取り組まれていくかを通産省の方にお聞きしたいと思いますが、よろしくお願いします。
  4. 奥田幹生

    奥田国務大臣 先生、主として冒頭では教育、とりわけ初等中等教育の現状を憂えられてのお話であったかと思うわけです。  これまでは、日本初等中等教育は割合行き届いて国際的にも水準が高い、そういう評価をいただいておることを私どももちょいちょい聞いてまいりました。しかしながら一方では、もう一つ画一的過ぎるのではなかろうかな、それからさらには知識偏重になっているのではなかろうかなという御批判もあることは事実でございます。  したがって、今使っておりまする学習指導要領小学校においては平成四年度から、中学校においては平成五年度から使い始めた現在の学習指導要領におきましては、いわゆる公徳心といいましょうか、加えて思いやりの心が大事だというようなことも盛り込みまして、そして従来の御批判が出ないような指導を行っておるところでございます。  それからもう一つは、やはり豊かな人間性創造力、そういうものを養える人づくりというようなことも大事でございますから、今後ともそういう点には力点を置いてやってまいりたいと思っております。  なお、二番目におっしゃいましたのは塾の問題でありますけれども、これはやはり本人なり、あるいはその生徒の親が行かせる、行かせないは決めます事柄でございます。やはり文部省とかあるいは地方教育委員会は、なるたけそういう塾に行かなくても地域なり親の期待どおり教育が公の場で行われるように、そういうことに重点を置いて取り組んできておりますし、またこれからもそうあるべきだという考えを持っております。
  5. 乾敏一

    乾説明員 お答え申し上げます。  通産省といたしましては、学習塾産業につきまして、消費者の保護という観点、そういうものを図りつつ、業者の市場における競争を確保することによりまして質の高いサービスの提供でございますとか低価格化などが実現され、そしてこういうことを通じて業界の健全な発展が図られるものと認識しております。  そのために、環境整備を図ることが大変重要であろうかというふうに考えております。そうした観点から、一部融資の制度ども創設をしておりますし、また中途解約などに関します消費者トラブルを防止する目的で、業界団体に対しまして、継続的役務取引適正化のための自主ルールを策定させることなどの指導を行ってきたところでございます。  こうした指導などを通じまして、今後ともその健全な発展に努めてまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  6. 栗原博久

    栗原(博)委員 大臣の御答弁乾課長さんの御答弁をごもっともだと思って聞いておりますが、やはり何か塾とかそういうものが何となく現行教育制度の中のはざまにありまして、どうも中途半端な形で施策が行われているのじゃなかろうかという懸念を私は持っておりますので、実はそういうことで御質問申し上げたわけであります。  次に、きょう実は時間がないので走り走りの質問で申しわけないのですが、かつて二階堂進先生アメリカのゲップハートさんが、アメリカ大学日本に持ってくるということで、特にちょうど高度経済成長の華やかなころでございましたから、それによって、当時アメリカから約百近い大学日本校分校を目指してまいったわけであります。アメリカのペンシルベニア州フィラデルフィアのテンプル大学テンプル大学ジャパン、これが一九八二年の六月二日に、八王子ですか、そこに開校して以来、地方自治体あるいはまた地方産業界が、地方教育文化の振興という合い言葉の中で、アメリカ大学日本分校の誘致に立ち上がってまいったわけでありますが、これは文字どおり我が国学校教育法認可を受けていないということで、卒業生が中途半端な形である。  アメリカには何か大学が三千数百校ある。これは高等教育機関というけれども、中には名前だけが大学であって、実質的には中等教育のようなも  のしか実施していない学校もあるようであります。我が国はその点、大学が五百六十五ですか、短大が五百九十六、一千百六十一今あるわけであります。  しかし、アメリカでは、アクレディテーションということで大学の設置については基準を設けておりまして、全米には、大学とか短大高等教育機関を認定するため全米地域に設置されている地域大学基準協会、あるいはまた医学とか工学なとにつきましてはその約百数十の専門分野資格認定機関、こういう二つの認定制度の中で、我が国文部省大学を設置しているわけであかますが、アメリカではこういう民間団体ですか、アメリカには教育省というのはありますけれども学校等高等教育の許認可は各州がやっているように伺っておりますが、アメリカ大学の母体は財団であるわけで、その財団がこのような大学資格認定制度をつくっているわけであります。  日本においてそれがどのように評価されるか。最近は、アメリカ日本留学生を見ますと、日本からアメリカに留学する人は多いけれどもアメリカから日本に留学する方は極めて少ないわけですね。なぜ日本に最近アメリカの方が余り来ないか。たしか日本からアメリカには四万人を超える留学生が行っておる。しかし、米国から日本には千人弱であるというふうに聞いておりますが、それは、日本大学を出ましても、日本の単位がアメリカでは認めてもらえない、あるいはまた日本の物価も高いということでそのようなこともあるらしいのですが、問題は、米国のこのような大学資格認定ですか、その制度があるのですが、国内の今日本にありますこういうアメリカ大学分校卒業生が、やはり日本国内において日本大学の卒業の資格を有しないということで、大変不満といいましょうか、あるいはまた日本国内におけるアメリカ大学分校の運営に支障があるわけですね。  これは法制度上であるからいたし方ありませんが、きょう実は私申し上げたいことは、こういう中でかつて百近いアメリカからの大学の進出の手が挙がって、約三十近く何か確かに国内にあった。例えば、大学ができましても、米国ワシントン州立エドモンズ大学のように、開校されてからニカ月半で閉鎖されて、被害者の会ができて、理事長が告訴されているような事例もあるようでありますし、あるいはまた福島の郡山市のように市が挙げて、テキサス大学郡山分校ですか、これを誘致するということでしたけれども、約八億近い負債を抱えて、市議会が天地返しになるような形になって、最終的には四年余りで閉校した事例もあるわけであります。あるいはまた、大阪の岸和田市の米国国際大学とか京都の亀岡市のオクラホマ州立大学京都校等とかあるわけであります。  そういう中にありましても、国内では、やはり各地方自治体がいろいろそれを育成しまして、そして優秀ないい学校もあることは文部省の方も把握をされていただいていると思うのですが、まずちょっとお聞きしたいのですが、アメリカ大学日本分校をつくっておる、こういうものについて文部省はどのようにお考えであるかということをお聞きしたいのであります。大臣がお答えになれば一番よろしいと思うのですが、よろしくお願いします。
  7. 雨宮忠

    ○雨宮政府委員 先生冒頭紹介にありましたような経緯を経まして、アメリカ大学日本分校というのがあるわけでございます。その中には、既に我が国教育制度上の専修学校というような位置づけのもとに運営しているところも数校ございますし、またいわゆる株式会社運営の形で、学校教育法上の教育機関云々というような位置づけではなくて、自由な形で教育事業を行っているところも数多くあるわけでありますが、いずれにしましても、意図といたしましては、専修学校というのは我が国教育制度上のことでございますので、それはさておきまして、押しなべて全体といたしまして、やはり日本教育制度のいかんにかかわらずと申しますか、教育制度の枠内において教育活動を展開するというよりは、自由な形で教育活動を展開するという意図のもとに事業を実施しているものだというように理解しておるところでございます。
  8. 栗原博久

    栗原(博)委員 確かにアメリカは、アメリカ大学の今までの創立の経緯から見ましても自由に、特にイギリスから独立する場合、彼らは宗教問題もありましたから、アメリカ大学は母国のイギリスに左右をされたくないということでへ自由闊達な学風をつくってまいったということもあろうかと思うのです。しかし、国内に厳然たる事実として大学という名前の中で、それは日本教育法に基づく大学でないとしても、大学という名の中に多くの人たちがそこへ入学をして、自分の将来をやはりバラ色の人生を描きながら学問にいそしんでいるわけでありますから、そういう子供たちがいささかの不安のないような政策をとることもまた文部省の役目であると私は実は思って、今質問をしているわけでございます。
  9. 奥田幹生

    奥田国務大臣 アメリカ大学日本分校、こういう看板が上がっております以上は、教育機関でありますから文部省との関係あり、一般の皆さんはそういう感じをお受けになりやすいと思うのでありますけれども、これは学校教育法上の枠の外で学校経営がなされております。具体的には、専修学校の扱いを受けておりますのはわずか三つの学校でありまして、あとの二十校は全然そういうものも関係なしに経営されておる、そういうふうに聞いておるわけです。  今先生おっしゃいましたように、京都の亀岡市、これは去年市長選挙がございましたときにも、学校の経営がうまくまいりませんで、市の貴重な浄財をこれまでかなりつぎ込んできた市長の責任を追及するというような非常に市長選挙の争点になりまして、困ったなと思ったのですが。  結局これは、文部省とか都道府県の教育委員会とは関係なしに、地元の自治体が直接アメリカならアメリカ教育機関と約束を結んで、そして誘致をするといったぐいのものでございますから、文部省が関心は、どうなるのだろうかな、将来どういう形に変わっていくのか、ふえるのか減っていくのかというようなことについての関心は抱いておりますけれども、タッチは全然してないということだけは御理解いただきたいと思います。
  10. 栗原博久

    栗原(博)委員 大臣が仰せのとおり、確かに政治問題にしたところもあるようでございます。  そこで、私のお願いなのでありますが、今確かに国内で三つの学校が専修学校扱いになっている。特に、私の地元でございます新潟県中条町にサザン・イリノイ・ユニバーシティー新潟校という学校がございまして、これは自治体挙げて、成功している。あるいはまた秋田にもあるわけでございますね。こういうまじめといいましょうか、地方自治体が全力を投じてやっている学校について、何とかひとつ文部省の温かいまなざしと、そしてまた財政的な措置、あるいはあた学校法人等についての的確な指導を賜りたいということで、実は今質問よりお願いであります。  この中条のサザン・イリノイ・ユニバーシティーの新潟校でございますが、この学校は毎年二百名前後の入学生があり、最近は百三十名程度でございますが、しかし在籍数が三百人を超しておりますし、極めて厳しい語学教育を受け、そして二年間中条町において一般教養は全部英語でやっている。その後本校のアメリカの方に留学するわけでありますが、この学校を何とか、地元の中条、県もそうです、新潟県も中条町も何とかこれを大学並みの学校にできないかということを検討して、私も文部省にもお願いしたことがありますが、最近は文部省から審議官が現地の学校を見ていただいたようでありますし、あるいはまた地元の町長あるいはまた大学の校長等が参りまして、確かに当初は、自由な大学でありますから日本教育法に基づく認可を余りアメリカ側も望んでなかったようでありますが、現在はアメリカ側も日本大学短大等の取り扱いを了解し、切望しているということであります。  この中条のイリノイ大学につきまして、文部省として、例えば短大の設置要件が整っているやに、私、資料しかわかりませんが、散見しているのでありますが、この点を踏まえながら、文部省で把握している範囲の中で、このイリノイ大学についてどのように対応していただけるかということをお聞きしたいと思うのでございます。
  11. 雨宮忠

    ○雨宮政府委員 現在の教育事業を行っている教育機関を母体にして短期大学をこしらえるということの具体の御相談がございましたら、当然私どもといたしまして通常の大学短大の設置の手続によりまして御相談に応じる用意はもちろんございます。
  12. 栗原博久

    栗原(博)委員 まだ地元から正式に大学設置、短大設置等について申請書が出てないかわからぬけれども文部省が地元の中条町あるいはまたこのイリノイ大学分校等との話し合いの中である程度短大として設置を認めるということは可能というふうに解釈してよろしゅうございましょうか。
  13. 雨宮忠

    ○雨宮政府委員 既に先生御案内のところではございますけれども大学短大を設置する場合の諸要件がございますし、また設置審査の場合の一般的な大学設置審議会等の審査の姿勢、態度と申しますか、取り扱い方針というものももちろんあるわけでございますが、いずれにしましても、それらの通常の手続に応じて御相談に応ずる、こういうことになろうかと思うわけでございます。
  14. 栗原博久

    栗原(博)委員 大変わかりやすいといいましょうか、大臣、私は、アメリカ大学分校がたくさんあって、いろいろ倒産したりというのがあります。株式会社というのもあります。地方自治体が第三セクターというような形でやっているところもあります。先ほど大臣がちょっとおっしゃるとおり三校国内に優秀な専修学校があるわけでありまして、これらの学校に対しましてぜひひとつ、的確な御処置といいましょうか、お取り計らいを奥田大臣に心からお願い申し上げます。  次に、留学生の問題でございますが、昭和五十八年に中曽根元総理が、国際化の中で十万人の留学生を招くということで今日に至っているわけでありますが、現在留学生が五万三千人おられると聞いております。ただ、国内的に見ましても、留学生もおられる、あるいはまた日本学校ですか、就学生の方もおられるということであるわけでありますが、かつて、今私ども日本の国を支えている多くの方々、フルブライト米国上院議員の提案によって日米間に教育交流計画が発足し、国内の政界、官界多くの方々、約六千五百名の方が米国で学んで、そして日本の中枢に立っておられるわけですね。すばらしい成果が出ているわけであります。  私は、やはり日本のこの留学生十万人計画も、このように日本が当時の留学生について今でも感謝をし、そのすばらしさを褒めたたえているわけでありますが、今十万人のこういう計画をつくっておりますが、日本から今までどの程度の方が国に帰ったかわかりません、特に、東南アジアの方が多いようでございますが、こういう方が本当に日本に学んでよかったというふうに思って帰っておられるのであろうかということを大変私は疑問に思っておるのであります。  問題は、人間の、留学生の数だけではなくて、中身の、質の問題である。中身、質であるということで、私、実はそのことについて質問をしたいのでありますが、時間がなくなったので、特に私ども田舎においても、こういう就学生の方が各中小企業あるいはまた飲食店に従事しているのがたくさんおられる。これは東京でも、無法地帯もあるようでございますが、私は、ごく一部の心ならない、心の悪い方によって留学生全体がそういうダメージを与えては間違いである、大変だと思うのであります。  ただ現実的に、法務省から資料をもらいましたら、留学生が今おられる、しかしながら、在留資格がありながら不法に今おるのが、留学生で八千二百人おられる。一年間に就学人で新規に入ってくるのが、平成五年度は一万八千人、平成六年度は一万二千人ほどであるわけですね。人数は減っている。減っているけれども、留学で不法でビザが切れてもまだ日本にいる方が八千人を超えているということですね。特に就学の場合は二万二千人もおられるということであります。そして、では違法就労しておってどうなったかということで、留学生では昨年度は約三百人近い方が不法就労をしておって本国に帰された就学者では約五千八百人、こういう数字が出ているわけですね。  この現実を見ましても、果たして十万人の計画はわかるけれども日本に留学された方が不法にまだ残っておる、帰らない、何が原因なんだろう。私は、すばらしいこの留学制度であっても、こういう現実を踏まえながら、我が国日本文化とか社会を学んで、そして日本の国費をかけておられる方もおられる。八千人近い方が国費留学されている。こういう方が、中国とか台湾とかあるいは東南アジアの国へ帰ってその地区の真のリーダーとして日本のためにも働いてもらわなければならない。そういうことにもかかわらず、このような事態があるということをどのようにお考えになっているかということを、大臣並びに法務省の方にお聞きしたいと思うのであります。
  15. 奥田幹生

    奥田国務大臣 最近ちょっと数字が落ちたという報道がございましたけれども先生おっしゃるとおり、昭和五十八年の中曽根内閣当時、二十一世紀までには十万人の受け入れという方針をお決めになって、今五万四千をちょっと切ったところまでずっとふえてきておる。中曽根内閣で決めていただいたときには一万二百人ほどでございましたから、年次計画よりも相当上回って進んできておったということは先生も御承知だろうと思うのです。ただ、期限が切れてもまだ帰らない不法滞在ということについては、私もうっかり、勉強不足で存じ上げませんでした。  ただもう一点、本当に日本で学んだ方が喜んでくれているのかというお尋ねについてでありますけれども、今から八年前、JICAが世話をされておる、とにかく技術を身につけてもらおうということで横浜の郊外に、ちょっと固有名詞は忘れましたけれども、そういう留学生、青少年を受け入れる教育機関がございまして、そこの三十周年に私、当時通産政務次官として、祝辞を述べに出席したことがございます。そうしましたら、かなりいい年の方が、二十年、二十五年前の卒業の方が大勢集まってこられまして、そして大変な感謝の言葉を述べてくださっていたことを非常に私は印象に今なお強く持っておるわけでございますけれども日本はそれなりの貢献、役割をこの面でも果たしてきたという感じを私は強く持っております。
  16. 加澤正樹

    ○加澤説明員 入国管理局でございますが、当局といたしましては、真に我が国での勉学を目的に留学、就学ということで入国しようとする外国人の方々につきましては積極的に受け入れる方針で対応しております。  しかし一方、残念ながら、勉学目的と偽って、実は不法就労目的で入国する外国人が後を絶たないのでございまして、これらの人々に対しては、厳格な入国の事前の審査あるいは上陸の際の審査でできるだけ排除したいと考えております。  また、一たん入国された方々につきましても、入国後の在留状況などを、在留期間の更新という手続が途中であります、その段階で慎重に審査しまして、こういった違反行為の発見、防止に努めていきたいと考えております。
  17. 栗原博久

    栗原(博)委員 時間がありませんが、私が言っているのは、現実の数字をどのように見るかということをあなたに聞きたかったのだけれども、抽象的な回答で残念でありますが、私は質問を終わります。
  18. 柳沢伯夫

    柳沢委員長 次に、輿石東君。
  19. 輿石東

    ○輿石委員 私はきょうは、いじめの問題をという緊急の提案もあるわけですが、先ほども栗原委員の方からもお話がありました。特に、我が国の初中教育において六・三・三制の今の制度でいいのか、小中学校子供たちにとって居心地がいいのか、塾の方がむしろ居心地がいいのかもしれぬ、そんなお話もあったわけであります。  大臣も、今までの初等中等の教育は、とりわけ画一的な偏差値偏重の、知育偏重の教育に流された嫌いがある、これからは人間性豊かな、創造性豊かな人づくりのために、創造性や人間性が育つような教育へシフトをしていかなければならない、そんな御答弁もあったわけであります。  そこで、とりわけいじめの問題も中学校高校に集中しているという現状、そうした中で、これまで高校改革と言われて久しいわけですけれども、十四期の中教審答申や、さらにはその答申を受けた形での高等学校教育改革推進会議等の最終報告もなされて、平成六年度からは高校に総合学科を導入するという形になってきたわけであります。そうした総合学科創設の経過と、それからそのねらい、背景をどのように奥田文部大臣はとらえられて認識されておるのか、最初にお聞きをしたいというふうに思います。
  20. 奥田幹生

    奥田国務大臣 確かに先生おっしゃいますとおり、今高校への進学といいますのは、ほとんど全員、九七%ぐらいが進学しております。でございますから、必要になりますのは、やはり生徒の個性を最大限に伸ばしていく教育生徒から見たら、いろいろな選択をして、そして自分がここと思ったところの科目を勉強できるようなシステムが非常に大事になってきておるのではなかろうかな。  したがって、平成三年の春でございますけれども、御指摘の中教審の答申、それからまた高等学校教育の改革の推進に関する提言、こういうようなものを踏まえまして、新しいタイプの高等学校の設置、それから先ほど申し上げた、生徒の選択幅の広い教育課程の編成、それから入学者の選抜の改善、こういうような高等学校教育の個性化といいましょうか、そして多様化、こういうものを中心にやってきたわけでございまして、いわゆる総合学科というようなものも、やはり生徒の能力、適性、趣味、あるいは将来の進路につきましても、生徒自身が自主的に、卒業の間際になってからではなくて、勉強をしておる過程で、私はやはりこういうことだから、来年は、再来年はあの方向に進もうと自主的に判断、選べるような、従来の普通科と専門科とミックスして選ぶ範囲を広げていくというようなのが非常に大事じゃなかろうかな。いわゆる総合学科、これをやはり今後も、時代の要請がそこにあると思いまして、推進していきたいなという感じでございます。
  21. 輿石東

    ○輿石委員 総合学科のねらいとその意義等について、大臣にわかりやすく御説明をいただいたわけであります。  そこで、やはり今大臣も申されましたように、この総合学科が高校改革の切り札だとか、偏差値偏重の教育を是正するための一つの効果的な方法だ、そういうような話もあるわけであります。そしてまた、個性の伸長や、生徒みずからが選択幅を広げた、そういうものをとらえられていくとか、新しいタイプの高校の一つでもあるという位置づけも話されました。さらに進路指導の問題についても触れられたわけであります。そして、高校の個性化、多様化に通じるものである、こう総合学科の創設の意義を語られたと思うわけであります。  果たしてこれがそのような高校改革の切り札に本当になり得るのかどうかというのは、今後の取り組みいかんにもよると思いますけれども、この中で特に強調されて、文部大臣が触れられなかった点について、これからは学校間の連携とか単位制の高校というふうな内容になっていく、こういう中身もあろうと思います。その点について、総合学科の中身について文部省の方で御説明をいただきたいというふうに思います。
  22. 遠山耕平

    ○遠山政府委員 お答え申し上げます。  総合学科は、ただいま大臣の方から申し上げましたように、高校教育改革の大きな柱の一つとしまして、普通科と専門学科の両者の教育内容をあわせ持つ学科として創設されたものでございます。総合学科では、生徒一人一人の主体性を伸ばし、かつ自己の将来について明確にしていくことを目標にしているわけでございます。  総合学科につきましては、普通教育それから専門教育に関するいろいろな科目の中から、生徒自身が、自分の将来を考えながら、自分の将来のために勉強していく必要がある科目を先生のガイダンスを受けながら選択をしていく、こういうものでございまして、したがって、必然的に学年制ではなくて単位制という形が主になるわけでございます。そういうぐあいに主体的に学習を進めますので、したがって、学ぶことの楽しさでございますとか、あるいは勉強したという成就感、そういうものが達成できるのではないかというぐあいに思います。また、学習に対する意欲も向上していくのではないかということで、その点でも期待ができるわけでございます。  それから、生徒が自己の将来について深く考えるということがやはり大事でございますので、これについては、先生がガイダンスをするとともに、「産業社会と人間」という科目を設定しまして、これからの産業社会のあり方と人間の生き方、そういうものを学ぶことになっておりまして、自己の将来の選択を考え、また、自分の能力を考えて勉強をしていくという意味で、私どもとしては非常に期待をしているものでございます。
  23. 輿石東

    ○輿石委員 局長の方からも、この総合学科制は進路の面でも、特にこれは原則履修科目という形になっておろうかと思いますけれども、今触れられました「産業社会と人間」というその科目も新たに入ってきた。  そこで、今その問題に触れられましたからそこの点についてお尋ねをしたいと思いますが、新しい原則履修科目として出てきた「産業社会と人間」というこの科目には、教科書はつくる予定がありますか。
  24. 遠山耕平

    ○遠山政府委員 中身としましては、先ほど申し上げましたように、現在と、それからこれからの産業社会の予測等もございますし、それから人間としての生き方、あり方というか、そういうことを考えさせる内容でもございますので、現在のところ、教科書をつくってその中身を教えるというのではなくて、企業の方々の話を聞いたり、あるいは先輩の話を聞いたりというようなことをいろいろ考えております。教科書を作成してそれを教え込むというところまでは考えていないわけでございます。
  25. 輿石東

    ○輿石委員 私も、この新たな科目は、教科書をつくって一斉に教え込むという形で成立するようなものではないし、そういう目的でつくられた科目でもないというふうに理解していますので、間違っても教科書をつくってというような方向へ行かないように文部省自身も考えていってほしいと思うわけであります。  また、私は、先ほど大臣局長も言われましたけれども、今高校は普通科と、前は職業科と言っていましたけれども、専門科という二つに分かれている。そして今度は、この総合学科が出てきましたから三つになるわけですね。そうしますと、二つが三つになって、今でも高校間格差や序列という問題が学歴社会の中で大きな弊害になり、これが入試をめぐって教育問題のすべての病理につながっているということは臨教審や中教審で指摘をしていることではありますけれども、新たな格差につながったり序列につながるという、そういう批判もありますけれども、その辺についてはどう考えられていますか。
  26. 遠山耕平

    ○遠山政府委員 この総合学科を導入した趣旨でございますが、それは、先ほどからお話が出ていますように、高等学校の段階になりますと、生徒の能力、適性、興味、関心が小中学校の時代とは格段に多様化をしてきます。差も大きくなってきます。そういうものに対して高等学校が対応できるように、選択教科をできるだけ多くするように現在も指導しているわけですけれども、そのカリキュラムの編成だけではなくて、学校のタイプとして、普通高校それから専門高校、こういう二つのタイプでは不十分ではないか、やはりもう一つの、普通教育と専門教育を両方履修させるような、そういうようなタイプの高校が必要ではないかということで提言されたものでございます。  したがいまして、考え方としましては、高等学校について序列をつくるのではなくて、なるべく多様な高等学校を横並びにつくっていきたい、こういう考え方のもとでできている高等学校でございまして、その多様な高等学校に対して、生徒の方で、自分の能力なり適性なり、あるいは将来の進路なりを考えて、自分に合った学校を選択していく、こういうことのために総合学科をつくったところでございます。
  27. 輿石東

    ○輿石委員 今局長が言われましたように、まさに現行高校改革のネック、序列化され、学校間格差があるものを、学歴社会の解体と同時にどのようにその格差をなくしていくかというのが緊急の課題で、これに対応できる総合学科だ、こういう見方もあるわけでして、そういう方向でこれは生まれ変わらないと大変なことになる、新たな格差を呼ぶようなことがあってはならないというふうに私自身も考えるわけです。  しかし、そうした「産業社会と人間」という新たな科目をつくり、人間の生き方、あり方ということをも含めて、高校時代にみずからの進路も含めて自己決定していくということは大変必要なことだろうと思うわけですけれども、そういう環境に、また格差のない状況にこれから高校が変わり得るためにはこの総合学科をどの程度ふやしていくのか、そうしたあるべき高校の姿の未来像というものがなければ、これはまたつまみ食いのようになって弊害を生むだろうとも思いますけれども、その点についてはどうお考えですか。
  28. 奥田幹生

    奥田国務大臣 私自身は、この総合学科というのは、まさに高校改革のパイオニア、そんな感じを持って非常に期待しておるわけです。  これからのお話でありますけれども、従来のまま続けるか、あるいは総合学科という新しいものを取り入れるかということは、これは文部省が決めるのではなくて、それぞれ都道府県の教育委員会が高等学校と相談をしてお決めいただくことでございます。ただ、平成六年度から始めたばかりの非常にまだ新しい行き方でありますけれども、既に二十三校、この総合学科を採用されている高等学校がある。さらに平成八年度、新年度には、新たに二十二の高等学校が採用したいというような意向を示しておられるというところから見ましても、私は、相当高等学校先生方はこの新システムに対しての意欲を燃やしてくださっているな、私どもと同じように期待してもらって採用に踏み切ってもらえるんだなという、そういう感じを持っておるわけでございます。
  29. 輿石東

    ○輿石委員 実は、私の山梨でも今年度からその総合学科と全日制の単位制高校というものを模索しようという動きが出ているわけです。それで、学区ともかかわるわけですけれども、この総合学科導入の問題点、課題というようなものを文部省はどのようにとらえていますか。
  30. 遠山耕平

    ○遠山政府委員 総合学科につきましては、平成六年度からスタートした制度でございますので、その制度の趣旨について、中学校先生生徒、それからその保護者によく理解をしていただくのがまず第一非常に大事なことだろうと思います。  それから、その総合学科を卒業した後、すなわち生徒が進学をしたりあるいは就職をするわけですから、やはり新しい総合学科について、進学する場合には大学の関係者、就職する場合には就職先の企業の方々、それらの関係者に総合学科の趣旨、目的をよく理解をして、それを育てていただくというのが一番現在の課題であろうと思っております。
  31. 輿石東

    ○輿石委員 現場の関係者や地域住民の理解をまず前提としなければならないというお話ですが、それは当然のことだと思います。今この総合学科導入をめぐって、もう既にスタートして、先ほど大臣もお答えいただきましたが、導入してから日も浅い。だから、その成果と課題というのもあるにはあるでしょうけれども、それよりもむしろ、これから導入する側にとれば不安の方が多いわけですね。やはりその不安を取り除くということも文部省としても必要だろう、こう思うわけであります。  それで、どんなことが今取りざたされておるかというと、幾つか私の方でもお聞きするところによりますと、全国の高校が将来は総合学科になっていくのだろうか、こういう質問。それから、一般的に今専門高校、そういう言い方をすると大変失礼ですが、ちょっと低下をしている。普通高校へ行けなかった子がそちらへ回らせられる。偏差値という尺度によって振り分けられる。そうした結果、それに加えて十八歳人口の減少期に入っているわけですから、ますます魅力のない高校へは行きたがらないという傾向が出てくるわけです。そうするとそこに統廃合という問題が出てくる。統廃合、専門高校の救済策としてやっていくのではないかという二つ目の疑問。  それから、これは進学校も総合学科に転換をさせられてしまうのか、こういうような言い方をする高校もあるそうであります。これは、やり方次第によっては、みずから自分で選択ができる幅が多くなって選択科目が相当ふえるわけですから、子供自分で時間割りをつくって選択をしていくという主体的な学習になるわけですから、それは、選びようによれば大学入試科目だけを履修していくということも、悪用すればといいますか、使い方によればそういう道も開いていくことになるわけであります。  こうした疑問に答えるのにどのような施策考えられているか、お尋ねをしたいというふうに思います。
  32. 遠山耕平

    ○遠山政府委員 まず、全国の学校が総合学科になるかどうかというお話ですが、これは、中学校卒業の段階で自分ははっきりこういう大学に進みたいという子供もいるでしょうし、それから、自分高校を卒業したらこういう職業につきたいというぐあいに考え子供もいると思いますので、そういう生徒に対しては、例えば前者に対しては普通高校というのが当然一番合っている進路だと思いますし、また、後者については専門高校に進学するのが一番その生徒に合っている進路だと思いますので、したがって、全部の高等学校が総合学科になるということは余り適当なことではないじゃないかというぐあいに思っております。  それから、普通高校に入れなかった人がこの総合学科に入るというような形にならないかというお話ですが、それは、今申し上げましたように、普通高校というのは、はっきり自分は将来高校を卒業したらこういう大学に入りたいという人に一番合っている選択でございます。総合学科というのはそういう人のためではなくて、中学卒業の段階ではまだ自分の進路をはっきり決めかねている、そういう人に対して、高校に入ってから先生のガイダンスを受けながら自分高校で勉強をしながら、自分はどういう方向に合っているのかというのを自分の将来を見きわめながら科目を選択していく、こういうものでございますので、そこはやはり中学校の進路指導の段階で先生の方とよく相談をしていただければ、普通高校に入れないような人が総合学科に行くというようなことはないんではないかと思います。  それから、専門高校あるいは専門学科の統廃合の手段として用いられることがあるんではないかというお話ですが、これも、はっきり自分高校を卒業したらある職業につきたいというような希望を持っている人にはやはり専門高校が一番ふさわしいわけですので、そういう専門高校に進む人というのはやはりかなりの割合いるんではないかと思います。  それで、現在の専門高校生徒のニーズにすべて合っているかというと、必ずしもそうとは言えない面があるんではないかと思います。その一つが例えば中退の率でございますが、現在、専門学科の方がやはり普通科よりも中退の割合が高くなっておりますので、そういう点で、はっきり自分高校を卒業したらある職業につきたいというところまで踏み切れないような生徒に対しては、この総合学科に入って自分の将来を見きわめながら科目を選択していくということがいいんではないかと思います。  それから最後に、大学入学試験のために悪用されるおそれがあるんではないかというお話ですが、これは、先ほど申し上げましたように、はっきり自分高校を卒業したらこういう傾向の大学に進みたいという生徒にとってはこの総合学科というのは余り適当ではないんではないかと思います。それは、やはり先生のガイダンスを受けながら自分自分の将来を考えて科目を選択していくわけですから、その中にいろいろ情報とかそういうものも入ってきますので、悪用されるということは、学校先生の方の指導よろしきを得ればそういうことはないんではないかと思います。
  33. 輿石東

    ○輿石委員 時間が参りました。最後に、この導入をされた経験のある先進校の校長先生たちが異口同音に言うことは、これはすばらしい理念と発想だけれども、やはりそれなりの条件整備、とりわけ人と金がなければ絵にかいたもちに終わってしまう、そのことを心配していたわけであります。  埼玉県の一つのモデルになっているとも言われる伊奈学園総合高校ですか、あそこは三千人を超える生徒の大規模校、そしてまた科目も百四十を超えているという組み立てですから、そんなものが全国にどこにでもできるはずはない。そうすると、その高校へ行きたいということで新たな格差を、集中してくるのではないかという心配も現実にはあるということでございます。  いずれにいたしましても、学校生徒に何かを教えるという形から、生徒が何を学ぶかを自分で決定していくという、この発想で生まれた総合学科をぜひ大事にし、これからの高校改革の突破口にしていただければありがたい、そんなことをお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  34. 柳沢伯夫

    柳沢委員長 次に、五十嵐ふみひこ君。
  35. 五十嵐ふみひこ

    ○五十嵐(ふ)委員 さきがけの五十嵐でございます。  まず最初に、この委員会新進党委員の皆様が出席をされておりません。その原因は、予算委員会の採決阻止のための座り込み、ピケが行われている、これが不正常な状態になっている大もとでございます。  私は、政治は最高の道徳だと言われる状況の中で、立法をすべきところにいる、権限を持つ国会議員が違法行為を平気で行うということに対する問題点を指摘しなければいけません。そしてまた、これは、国会議員であれば大抵のことはやっていいんだ、何でもやれるんだという思い上がりがあるのではないかと思います。このことがテレビを通じてあるいは新聞を通じて日本じゅうに広まり、学校生徒たちも目の当たりにしているわけであります。その悪影響を私は大変恐れるものでありますけれども、この点に対する大臣の御所見を最初に伺いたいと思います。
  36. 奥田幹生

    奥田国務大臣 確かに先生おっしゃるとおりであります。国会議員であれば何をやってもいいというものでは決してございません。現に座り込みが続いてきようで何日になりますか、私も、これがとりわけ小中学校生徒に与える影響が大きい、非常に心配をしまして、ある国対の先生にきょうの昼の時間、いつの日か座り込みは解除されるでありましょうけれども、衆人環視といいましょうか、テレビ、報道陣が大勢詰めておられるところでまたがちゃがちゃというようなぶざまなことになって、それがテレビなり新聞報道をされるとさらに子供に悪い影響を与えるので粛々と解決していただきたいということを非公式にお願いをしておったところでございまして、気持ちは先生と全く同じでございます。
  37. 五十嵐ふみひこ

    ○五十嵐(ふ)委員 ありがとうございます。  私は、違法行為は速やかに解決をされなければならないと考える者ですけれども、それがまた悪影響を及ぼすということがないように、与野党で努力をしていかなければならないと思います。  前回の私の本委員会での質問で、いじめというのは、私なりの考え方で、自己実現ができない不安と焦燥というものが背景にあって、自我が傷つく前にみずから自分の仲間のだれかを落ちこぼれにすることによって自分が落ちこぼれない側に回ろうとする攻撃的な機制ではないか、そういう意見を述べさせていただきました。  私はその後ある本を読まさせていただきましたけれども、精神科医の吉田脩二さんという方がお書きになった「いじめの心理構造を解く」という本でございまして、この中にはいじめの原因について四つのことが掲げられております。これは、日本人の社会における同質化を求める精神構造あるいは社会構造。あるいはサイレントコミュニケーションと言っていますけれども、暗黙の了解。ちょうど歌舞伎の約束事のように暗黙の了解を求める精神構造があって、それがわからない者はだめなんだ、仲間外れにする、そういう構造がある。また、集団を求める、我ではなくて我々という、その類型を大事にする、そういう精神構造、社会構造がある。また最後に、私が先ほど申しました、仲間外れの恐怖感から、逆にいじめる方も恐怖感を持っていて、いじめられる恐怖感、仲間外れになる恐怖感からいじめの側に回る、そういう構造があるんだということを指摘されているわけであります。  この指摘について、初中局長でもあるいは大臣でも、こういうことについて、お読みになったことがあるかどうか、また感想をお持ちかどうかということをまずお伺いしたいと思います。
  38. 遠山耕平

    ○遠山政府委員 私も全部読んだわけではございませんが、ちょっと四、五ページ主要なところを見させていただきますと、確かに一部、現在の子供の心理の状況を的確に把握している部分はあると思います。しかし、これですべて子供いじめの問題が解決できるかというと、それはなかなか難しいのではないかと思います。  いじめの原因、背景には、それぞれ家庭、学校地域社会のいろいろな要因がございますので、そういうものをすべてやはり結集したところに初めていじめの問題の解決の方策といいますか、そういうのが出てくるのではないかと思っております。
  39. 五十嵐ふみひこ

    ○五十嵐(ふ)委員 それはそうなんですけれども、恐らく局長のおっしゃるとおりなんでしょうけれども日本社会学校社会が抱えている本質的な部分をかなりついているだろう、私はそう考えるわけであります。  ですから、例えば、原因を除去する際に、縦社会、いわゆる学校社会の中における教師の権威やあるいは規律をもってこれを解決しようと思っても恐らく無理だという指摘があります。私はそのとおりなんだろうと思います。子供たちの間の横の社会の間の決まり事、それがかなり強い規制を発生しているわけですから、逆に縦社会にすがると(それはそのまま裏切り者だ。なぜ学校先生に言わないんだ、それは、言ったら子供たちの約束事から外れるものになるからですね。だから、そこはやはり本質的なものをこの本の中では指摘をしているだろう。すなわち、この横社会子供たち社会における根本的な不安と恐怖というものを除去してやってあげないとこの問題は解決がつかない。  また、その背景にあるもの、すなわち、違いを認める。僕は悪平等というのは一番よくないと思っているのですけれども、みんな同じなのであればいいのではなくて、むしろお互いに違いを認める、そして違いを尊重するという環境が社会全体でつくられないと実はこの問題は解決されないんだろう。  それからもう一つ、これは矛盾するかのように見えるけれども、矛盾はしていません、評価からの解放。人間にいわゆる順番をつけて、そして小さいころから持たなくてもいい優越感や持たなくていい劣等感を植えつけるということから人間、子供たちを解放していかなければいけないだろうということが私は大切なことなんだろうと思います。  そのためには、学校自体が閉鎖社会からもっと開放されていかなければならない。学校の情報公開というものが私はある意味で大切なことだろうと思っております。学校がもっと自由な雰囲気の場にならなければならない、もっとオープンな場にならなければならないと考えております。学校の中では、それぞれの担任の先生があるいは教師が一つの支配者になっている。そしてかなり閉鎖された社会が形成をされている。これをもっと地域にも父兄にも開放されるというようなことが必要ではないかなと私は思っております。学校の情報公開、例えば授業についても、授業参観のときだけではなくて、かなり自由に聞けるというような、もっと開かれるというようなことがあってもいいのではないかなと思いますが、学校の開放、学校の情報公開ということについて、局長はどういうふうにお考えでしょうか。
  40. 遠山耕平

    ○遠山政府委員 その前に二つ指摘をしていただきました。  子供の間の違いを認める、これは非常に大事なことだと思いますし、現在の学習指導要領でも、子供の違いを、個性を尊重するという形で認めているところでございます。  それから、評価からの解放というお話でございますが、これは、教育あるいは指導には必ず評価というのはっくものでございまして、必要なものでございます。そして、よくいった場合にはそれを褒めてやり、失敗したとか悪い場合には別の方法、励ましてやるというようなことで、それで児童生徒を次第に向上させていくということで、評価を全然やらない教育というのはないのではないかと思います。ただ、そのときに一列に序列がつくというのは、それは余り好ましいことではなくて、その生徒のそれぞれのよさを見出していくということが大事なことであろうかと思います。  それから、学校の公開の話でございますが、子供たちの望ましい人間形成を図るためには、学校、家庭、地域社会がそれぞれの教育機能を十分に発揮することが大事なわけでございまして、そういう点で、学校教育を行うに当たっては、学校は家庭や地域社会との連携を図ることが必要なことは先生おっしゃるとおりでございます。  したがって、このような考え方に立ちまして、文部省では、学習指導要領で、地域学校の実態に応じて家庭や地域社会との連携を深めるということを明記しているところでございます。  先生おっしゃる授業の公開も、学校の実情、実態に応じて、授業参観ですとか保護者懇談会あるいは学校便りなど、さまざまな取り組みがなされているわけでございますが、父母の方が学校の授業を見るということはいいことでございますので、学校もそういう方向に努力をしていくことが望ましいというぐあいに思います。
  41. 五十嵐ふみひこ

    ○五十嵐(ふ)委員 話が前後して、ふくそうして申しわけないのですけれども、まず評価からの解放という点でいきますと、私も、目標の達成度というのを見るのは別に構わないと思っております。  しかし、例えば音楽とか美術とか体育とかいうものになりますと、生まれつきの才能というようなものがかなり影響をしてまいります。教えることは構わないのですけれども、それを点数評価に換算するというのはやはり問題があるのではないかな。それはもう、例えば教えることに対する態度の評価だけでいいというような気もしますし、ほかの教科と、別にこれは差別するとかいうことではなくて、おのずから違った評価基準というものがあっていいのだろうと思うし、そういうところでいたずらに恥をかかせたりコンプレックスを持たせたりする必要はないのではないか、私はそのようなことをまず考えるわけであります。  それからまた、類型化を強いるというようなことはいけないという意味から、いろいろな校則というものもできるだけ外していく、校則だとか規則というもの、規律というものを生徒の自主性に任せていくという方が、むしろ私は好ましい方向ではないか、これも学校の開放という意味では一つ必要なことではないかなと思います。  しつけあるいは規律というと、とかく上から縛る方向から解決をしようとする、これはむしろ間違いではないかなというふうに思うわけでありますけれども、その点についての御所見を伺いたいと思います。
  42. 遠山耕平

    ○遠山政府委員 評価のお話ですが、これは生徒に恥をかかせるとかそういうことではなくて、やはり教育した結果について適切に評価をして、それでその生徒の能力をさらに高めていくように指導するための一つの材料だと思いますので、指導者、教師の方でその点はよく心して評価をすべきものだと思います。  それから校則等の話でございますが、これは先ほど言われました縦と横の関係になるのかもしれませんけれども子供たちが、ホームルーム活動あるいは生徒会活動など自主的な活動を通じて、人間関係を育てて連帯感を培うというようなことは、集団生活の改善に向けて大変大事なことだろうと思います。  しかし、それだけですべて学校内がうまくいくかというと、必ずしもやはりそうはいかないところもあるわけでございます。特に、生育途上の子供たちでございますから、まだ未完成の状態でございますから、そういう点で、先生の適切な指導というのが非常に大事になってくるのではないかと思います。細かいところまで、余り瑣末なことまで指導しないということは大事でございますが、大まかなところはきっちり押さえておくということは、学校という集団生活を行う際にはやはり必要なことであろうと思います。
  43. 奥田幹生

    奥田国務大臣 しつけの問題をお話しになりましたが、その前に、縦、横の社会ということでございましたが、やはり縦の社会、四十人の生徒を担任しておって、なかなか一人一人の個性を先生が伸ばしていく、そこまで徹底した難しいという点は確かに私はあると思うのです。  しつけの問題になってきますとまた別の角度から考えられまして、今も局長答弁しましたとおり、私は一義的には家庭だと思うのです。一日二十四時間、その中で学校におりますのはざっと三分の一です。それ以外は家庭と地域社会子供は生活をしているわけですから。  でございますから、何でもかでも学校に責任を押しつけるのでなくて、やはり先生ももう少し自信を持って、自分の生んだ子供さんのしつけぐらいは一義的には親の務めだと思いますからもう少ししっかりお願いしますよというようなことを、私は時によっては主張していいんじゃなかろうかなと。親もやはりしっかりしてもらいたい、子供のしつけに対して。一に家庭、二に学校、三に地域社会。  地域社会もこのごろは、悪いことをした隣近所の子供を見て見ぬふりをする風潮がございます。それもやはり、僕、それはだめじゃないかというように遠慮なく、よその子供でも、他人の子供さんでも注意できるような、そういう社会になりませんと、いじめというのは完全に追放できない。だから、家庭と学校地域社会、これのやはり一番大事な、浄化といいましょうか、正常化、これに向かって私どもは取り組んでまいりたいと思っております。
  44. 五十嵐ふみひこ

    ○五十嵐(ふ)委員 それぞれ正論を言われているとは思います。  私の出た中学、高校では、かつて大変試験のカンニングがはやったことがありました。大昔になるのですけれども、そのときに生徒は、これは恥ずかしいということで、むしろ試験監督を生徒自身がやるというやり方をしたいと申し出て、それが認められてからそういう不正な行為が全くなくなって、学校全体はむしろ生徒に任せた方がいいんだということで、自由な校風が培われて非常に学校全体がよくなったという例があるものですから、私は、規律として上から覆いかぶせるよりも、自主的な、そうした子供たちが本来持っている正義感といったものを発露させた方が、道徳教育という面からもむしろいいのではないかということを申し上げたわけであります。  それから、評価からの解放という点に絡みますけれども、よく学校の図書室や保健室がそうしたいじめ問題あるいは登校拒否のお子さんたちの逃げ場になっているということが現場から伝えられるわけであります。これは、評価をしない職員だからだと私は思うわけですね。そしてまた、これからはそういうことが非常に大切になってくるのではないか。私は、学校の司書あるいは保健婦さんの役割というのはこれから非常に重要になってくると思いますし、また、スクールカウンセラーというものも今文部省が、昨年度からですか今年度からですか、おやりになられたようでございますけれども、このスクールカウンセラーの必要性というのもますます増してくると私は思います。  しかし、こういった人たちにどのような権限を与え、職責を与えるかということがやはりポイントで、ただ学校にぽつんと置けばいいというものではないのだろうと思います。どのようなスクールカウンセラー制度の活用の仕方をお考えなのか、あるいは司書の方々の身分やその権限の強化といったものについてどのようなお考えをお持ちか、お伺いをしたいと思います。
  45. 遠山耕平

    ○遠山政府委員 まず学校図書館の問題でございますが、これはまさに心のオアシスとして、そこで子供たちが自由に読書をするという読書センターの役割を果たすわけでございますので、これから非常に大事な位置を占めるものと思っております。新しい学習指導要領が、子供たちがみずから学ぶ意欲を持って自主的に判断して行動する、こういうことを目的にしておりますので、学習も、子供たち自分でいろいろな資料を調べて勉強していくということが非常に大事になっているわけでございますので、そういう点で、図書館の位置づけというのは特にこれから重要な役割を占めるものと思っております。  そこには司書教諭が置かれるというのが学校図書館法で決められているわけですが、「当分の間、」「置かないことができる。」という附則の規定によりまして、現在の配置の状況は非常に悪いわけでございます。これは、実際司書教諭の資格を持っている人が全部の学校の二〇%から三〇%にしかいないという状況もございますし、それからもう一つは、司書教諭の資格を持っている人自体がやはり少ないという状況にもございますので、文部省では、司書教諭の資格を持っている人はできるだけ多く司書教諭の発令をするように都道府県の教育委員会指導するとともに、この司書教諭の資格を得るためには大学で講習会を受けて単位を取得することが必要でございますので、講習会の会場数を、ことしは十八会場だったのを来年度は三十六会場に倍増をして、司書教諭の養成を盛んにしていきたいということで予算を組んでいるところでございます。  それからスクールカウンセラーでございますが、スクールカウンセラーは、現在の制度平成七年度から始まった制度でございますが、これは学校におけるカウンセリング機能の充実強化を図るために、学校先生だけが相談を受けるのではなくて、臨床心理士などの高度な専門家を学校に派遣をしまして、そこで児童生徒の相談を受ける、あるいは保護者の相談を受ける、あるいは先生方の相談にも乗るというようなことで始めているところでございます。現在は三億円の事業でございますが、来年度は十一億円に拡充をする予定でございます。  それで、これは外部の方に非常勤の身分で学校に来ていただくものでございますので、学校に張りつけということでは、学校の職員になるわけではございません。
  46. 五十嵐ふみひこ

    ○五十嵐(ふ)委員 今のカウンセラーですが、将来は学校に張りつけが必要ではないかなと実は思っているのですね。そしてそのときの使い方は、コミュニケーションをふだんから持てる、例えばクラブ活動的なものを指導してもらうとか、そういう形で、コミュニケーションをふだん図る中で子供たちの悩みに自然に入っていけるということでないと、なかなか効果は発揮できないのではないかなと思っております。  それから司書の方も、単に図書購入の選定等々で専門知識を発揮するということではなくて、やはり子供たちの読書に関する相談相手というような形で、ふだんから接触をするということが大切なんだろうと私は思います。  それから、これからはやはり博物館機能といいますか、学校の図書館機能というのは非常に重要になってくると思いますので、「当分の間、」が何十年も続くというようなことではなくて、ここらできっちりと専任司書教諭を制度化していく、そして待遇も十分に向上させるということが必要ではないかなと私は思っております。  それから、道徳教育というのが最近盛んに言われているようですけれども、私は専門家でなくて素人なものですから、どういう教え方をされているのかよくわかりません。とかく道徳というと、形から入る、あるいはいわゆる昔からいいとされるしつけを行うというふうに思えるわけですけれども、もっと哲学的なといいますか、例えば勇気というものの価値観を教える、あるいはいろいろな価値観があると思いますけれども、物の考え方とか見方というのをもっと根源的にさかのぼって教える、本来教育というのはそういうものだろうと思うのです。  例えば算数、数学というのは数学的な考え方を身につけてもらうものであり、社会というのは社会学的な考え方を教える、身につけさせるというのが本来の目的であって、それはただ一つの答えを見つけるための道具ではないというふうに私は思うのですけれども、いわゆる哲学的なというか、そうした物の見方ということに結びつくような教え方というのが日本の道徳教育の中でされているのかどうか、お伺いをしたいと思います。
  47. 遠山耕平

    ○遠山政府委員 道徳教育のお答えの前に、まず学校図書館の司書教諭のお話ですが、これは現在の制度でも司書教諭というのは教諭をもって充てるという形になっておりまして、専任の職員ではございませんので、学校で授業などを受け持ちながら学校図書館の仕事をするという形で担当をしていただいております。  それから道徳教育でございますが、先生おっしゃるように、今の道徳教育も、児童生徒が人間としてのあり方を自覚して、人生をよりよく生きるためにその基盤となる道徳性を育成するために実施をしているものでございまして、現在の学習指導要領においては、小中学校については、児童生徒の道徳性の発達等を考慮して「内容」の再構成、重点化を図り、また各教科や「特別活動」においても、学校教育活動全体を通じて道徳教育を行うという観点から充実を図ったところでございます。  その「内容」の再構成、重点化でございますが、小中学校とも四つに分けております。  一つが「主として自分自身に関すること。」それから二つ目として「主として他の人とのかかわりに関すること。」三番目としまして「主として自然や崇高なものとのかかわりに関すること。」それから四番目としまして「主として集団や社会とのかかわりに関すること。」こういう四つに分けまして、その中において、人間としてのあり方を自覚し、人生をよりよく生きるためにその基盤となる道徳性を養うということで、小中高校を通じて、その発達段階に応じて指導しているところでございます。
  48. 五十嵐ふみひこ

    ○五十嵐(ふ)委員 ただ、効果が上がっていないのではないかなと思うのですね。いろいろな報道を見ましても、むしろ外国のあるいは途上国のお子さんなんかの方が、世の中のために役に立つ人間になりたい、大きくなったら社会のために役に立つ人間になりたいという子供が非常に多いのですけれども、その比率が圧倒的に低いのが日本だというのが、いろいろなところで統計に出てきたりしているわけですね。日本のそういった徳目といいますか、そういう教育については、やはり哲学性に欠けているのではないかなと私は思わざるを得ないところでありまして、さらに向上を目指して頑張っていただきたいと思います。  ボランティア教育等々あるいは開発教育等々、それに関連していろいろお伺いをしたがったわけですけれども、持ち時間が参りましたので、これで終了いたします。ありがとうございました。
  49. 柳沢伯夫

    柳沢委員長 次に、山原健二郎君。
  50. 山原健二郎

    ○山原委員 きょうは、二十一世紀に向かって教育をどうするかという問題で、私の経験を含めて質問をいたしたいと思います。  十五の春は泣かせないという言葉がはやりましたね。大臣京都の御出身ですから御承知だと思いますが、覚えておられますか。
  51. 奥田幹生

    奥田国務大臣 十五の春を泣かさないと言われたのは、長い間、七期にわたって京都府知事をお務めになった蜷川虎三さんでございます。
  52. 山原健二郎

    ○山原委員 そのとおりですが……。  今の子供たちが偏差値、輪切りの中でもがき苦しんでいるという事態に置かれていることは御承知と思います。過酷な受験競争の中でいらいらが募り、だれ構わずいじめる、またいじめることによりストレスを解消する、こうしたことがいじめの要因となっていることが指摘をされています。  今、子供たちのことをどう思うかという点で、過酷な受験戦争から子供たちを解放するということも大事なことではないかと思います。少しでも受験戦争の重圧から子供たちを解放してやらなければならないと私は思っているのですが、大臣はこの点、どういうふうにお考えでしょうか。
  53. 奥田幹生

    奥田国務大臣 先生の御経験からそういう御意見をお持ちだと思いますけれども、そうすると、つまり、十五の春を泣かせないためには、十二の春はどうなるのかな。もう高校もその後も試験は全然やらなくていいよ、こういうお考えなのか、ちょっとその点がわかりませんので、答弁のしようがないような感じがします。
  54. 山原健二郎

    ○山原委員 今、高校進学者、つまり中学卒業者が大幅に減っていくときを迎えているわけですが、これまでの延長線上の考え方だけではなくて、抜本的に入試制度あるいは受験体制を考えるべきときに来ておると私は思っているのです。そういう意味で質問をするわけでありますが、二十一世紀、二〇〇〇年、あとわずか四年ということになっておりまして、それまでに抜本施策考えるべきではないかという意味で、一つの提起を申し上げたいと思います。  その前に、今の高校進学率は何%になっておりますか。
  55. 遠山耕平

    ○遠山政府委員 お答えいたします。  平成七年度現在では九六・七%となっております。
  56. 山原健二郎

    ○山原委員 七年度の中学校卒業者の進学率を見ますと、今おっしゃったように、全国平均で九六・七%、極めて高い数字を示しておりまして、本来ならば、高等学校への入学を希望する者がだれでも入れる、いわゆる希望者全員入学が実現してもいい数字になっておるのではないか。  わずかの数を残して過酷な受験戦争を維持しているのが現状でありますが、例えば平成元年、一九八九年の中学卒業者二百四万九千四百七十一名をピークにしまして中学卒業生は減る一方で、昨年九五年度、平成七年ですが、百六十二万二千名と、八九年の約八二%の生徒しか進学しておりません。当時の進学率が九四・七%ですから、高等学校をふやさないでも、教室数を増さないでも、当時の高校の数、教室数で平成七年度の高校入学希望者は全員を受け入れられる条件があると思いますが、この点はどうですか。
  57. 遠山耕平

    ○遠山政府委員 施設の面だけからいえば、施設を増設しないでも受け入れられる状況にはあると思います。
  58. 山原健二郎

    ○山原委員 ところが、生徒の減少に見合ってわざわざ受け入れ人数を減らして、進学率を抑えようとしてきたわけですね。その二ないし三%のために高校へ入れないのではないかという不安が与えられまして、また高等学校を偏差値、輪切りのランクづけをきっちりと行って、いたずらに受験競争をあおっているのが現実ではないかというふうに思います。  今後の中学校卒業者の推移をどう見ているのか。例えば二〇〇一年には現在の数の何%ぐらいになるか、お答えいただきたいのです。
  59. 遠山耕平

    ○遠山政府委員 ちょっとパーセントでは出していないのですが、二〇〇一年の受験者数ですが、大体百三十五万人ぐらいというぐあいに推計をしております。
  60. 山原健二郎

    ○山原委員 試算で考えますと、二〇〇一年には九五年度卒業者と比べまして九一・二%、二〇〇二年には九五年度の八四・一%という数字になるわけでございます。中学校卒業者が大幅に減るとともに高校入学者が大幅に減るわけでございまして、大胆な改革が可能となる時期を迎えておるのではないか。  私は、この際、十五の春は泣かせないという言葉を使いましたが、高校に入りたいと願う子供は必ずどこかの高校で受け入れる、そういう制度をつくるべきではないかと考えております。本人に近い公立高校に受け入れるなり、あるいは希望者全員入学を保証する、そのような大胆なことを考えるべきではないかというふうに思いますが、その点は大臣はどうお考えでしょうか。
  61. 遠山耕平

    ○遠山政府委員 現在でも高校進学希望者のほとんどが高等学校に進学している状況にございます。実際に高校を受験して落ちて、そのまま浪人といいますかどこの高校にも行かなかったという人は平成七年度で千人強、そういう数字でございまして、ですから高校進学希望者のほとんどがいずれかの高校に進学しているという状況にあるわけでございます。  それで、今このような状況の中で、高等学校段階の青少年の能力、適性、興味、関心、進路希望は極めて多様化をしているところでございます。それらの子供たちが、どの学校でもいいということではなくて、やはりその子供の能力、適性、興味、関心に応じた学校へ進学してもらうのがいいと思うわけでございます。そしてその場合に、その高等学校でその教育課程、カリキュラムにとてもついていけないという子供については、入学を一たん認めても中途退学という形になりますから、そこはやはり入学者選抜をやって、その子供自分の高等学校のカリキュラムをこなしていけるかどうか、卒業できる見込みがあるかどうか、校長先生としては慎重に検討する必要があろうと思います。
  62. 山原健二郎

    ○山原委員 そこが違うのですね、私の考えと。それは、わずかな千人という生徒を落とすために今高等学校教育全体がゆがんでいるのです。  私は、かつて公選制教育委員をしておりまして、私の県だけではなくて幾つかの県で高等学校全員入学制度をとったことがあるのです。それは随分多くの父母の支持も得まして、しかも学校は生き生きしているのですよ。子供たちは勉強するのですよ。必ず子供たちの中には何%かの教科についていけない子供がおるという既定観念のもとにここへ絞り込むのです。それが今の偏差値をつくり、そして内申点によってランクづけをしていくという、多彩には見えるけれども学校教育そのものがゆがめられる大きな要因になっておるということを、偏見かもしれないけれども私は申し上げておきたいのです。  例えば、ここに「高校受験案内」というのを持ってきておりますけれども、これはまさに偏差値が今でも大手を振って歩いているわけですね。内申点によって学校がランクづけられている。高校も希望する高校ではなく本人の偏差値と内申点に合わせた学校を選ぶようになってくるわけですね。そして、これだけ細かく内申点や偏差値によって人格というものが評価されていいのかという問題まで起こるわけです。だから、本人の希望に従わない不本意入学ということで高校中退者が多数今出ているわけですね。  平成六年度の高校中退者はどれくらいあるか、お答えいただきたい。
  63. 遠山耕平

    ○遠山政府委員 平成六年度の公私立高等学校の中途退学者の合計は九万六千四百一人でございます。中途退学者が年度当初の在籍者数に占める割合は二・〇%でございます。
  64. 山原健二郎

    ○山原委員 今お答えのありました九万六千四百一人に上っているわけです。しかも、それは増加傾向にあるわけです。まさに今の受験制度に対する大きな警鐘だと私は思っているんです。  今の高校中退の増大をどう見るかということは、これは文部大臣にとりましても非常に関心のあるところだと思いますが、偏差値、内申点などに細かい輪切りでふるい分けている政策を抜本的に改めないと——これは先ほどおっしゃったけれども、できない子がおるから中途退学になるという局長の御答弁でした。実際はそうじゃないんです。子供たちは輪切りされているから、そういうことになりて結局中途退学するんですよ。その方がはるかに多いんです。  できないといっても、それは医学上の問題でできない、あるいは不具あるいは廃疾とかいうような問題が出てくる可能性がありますけれども、それはまた別の問題ですね。子供たちの持っている能力というものをどう吸い上げるかという問題として考えないと、中途退学はふえるばかりです。  私の県は、私どもがやった全員入学制度を壊して、必ず子供の中には一五%のできない子がおるという、これは県議会の決議です。そんなばかなことがあるか。子供たちというのはさまざまな可能性と能力を持っているわけでして、そこに本当に手をかし、それを育てていくという、教育全体がそういう立場に立ったときに、そんな落ちこぼれの子供なんかそう出てくるものじゃないのですが、それを県議会で一五%はできない子がいるんだという観念のもとに全員入学制度を壊してしまったわけです。それが今の教育荒廃の要因になっているということを私は申し上げたいのです。  だから、今本当に生徒が減少するこういう中で、高等学校へ入れるだけの校舎もあれば教室もあるわけですから、そういう中で受験制度そのものを抜本的に考える必要があるのではないか。恐らくこの私の見解には皆さんは納得はしないと思いますけれども、今一つの大事なところに差しかかっているわけですから、お考えいただきたいと思います。  高校受験の問題は、地方の問題だけではなくて、偏差値追放のときのように文部省が一定の基準を出す必要があると思っています。例えば、先ほど言ったように希望する者にはどこかの高等学校が受け入れを保証するという大前提を打ち立てましたならば、随分事は変わってくると思います。そのときには生徒たちは生き生きとして自分たちの力をむしろ発揮できるというふうに私は思っているのです。今のようにふるい分けで、しかも近くの公立高等学校を希望する生徒を受け入れない、そしてさまざまな格差をつくるというようなことをやれば、これは際限なくいわゆる入試地獄のために生徒たちの心までが破壊されていくというのが今の現実なんです。  私は受験競争を緩和すべきだと思いますが、そういう意味で、一度日本の今の受験制度というものを考えてみる必要があるのではなかろうかというふうに思うのですが、この点について見解を伺っておきたいのです。
  65. 遠山耕平

    ○遠山政府委員 まず高校の中途退学がだんだんふえているというお話ですが、これは事実と違いまして、昨年が一番少なくて一・九%、ことしはそれより〇・一%ふえたのは確かでございますが、昭和五十七年は二・三%、昭和五十八年は二・四%ということで、それらと比べるとかなり少なくなっております。  それから、中途退学の理由でございますが、これは一番多いのが進路変更でございまして、全体の四三・三%がこの理由でございます。その中身を見ますと、そのうち四分の一の二六・四%が進学ではなくて就職を希望するということで進路変更して中途退学をしたというものでございます。  それから、先生高校ならどこへでも入ればよいというようなものではなくて、これについては先ほどから申し上げておりますように、高校生くらいの年代になりますとかなり子供の個性が出てきます。すなわち能力、適性、興味、関心が非常に分かれできますので、やはり子供の個性に合った高校を選んでもらうというのが一番大事なことであろうと思います。  それで文部省では、高校改革につきまして、三点セットといいますか、まず中学校における進路指導は、先生がおっしゃるように、偏差値による輪切りではなくて子供の個性、すなわち興味、関心、能力、適性、こういうものを考えて、子供が行きたい学校へ進学できるように指導をしていくというのが第一点でございます。それから二点目は、高校が序列化をしていてはまずいわけでございますので、高校をできるだけ特色のある高等学校にしていく、そして横並びでいろいろな特色のある高等学校をたくさんつくっていくというのが二番目の施策でございます。それから三番目にはやはり高校の入試改善でございまして、学力検査とそれから内申書だけではなくて、いろいろな、推薦入学を活用するとか、あるいはボランティア活動なりそういうものも評価をするとか、あるいは小論文あるいは作文、そういうものも評価をするというようなことで、生徒のいい面を積極的に評価をして、それでこの学校に合う生徒かどうかということをやはり校長先生としては判定をしていただきたい、こういうぐあいに思っております。
  66. 山原健二郎

    ○山原委員 いろいろ苦労されておりますね。最近は、高等学校の種類といいますか、いろいろできてきて、メニューがたくさん出るのですよね。それから推薦入学もだんだんふえていく。でも、だんだん学校がおもしろくなくなってくる。これはもう現実の問題です。学校というところは楽しゅうてたまらぬところでなければならぬ。特に小学校、中学校などはですね。学校というところは劇場のように楽しいところだという言葉がありますけれども、今は楽しゅうないのですよ。学校へ行くのがつらくてたまらぬなどという、そんな人生があってたまるかと私は思っているのだけれども。  恐らくこの問題は簡単には片のつかない問題だと思いますし、皆さんが苦労されておることもわかりますけれども、苦労をすればするほど袋小路に入っておるということも考えておかなければならぬと思いますので、きょうはその程度でおいておきます。  次に、養護教諭の問題です。  先般も取り上げましたけれども、二月の二十八日に臨時養護教諭全国会議を持っておられるそうですが、その中で複数の養護教諭の配置を切望されたと伺っておりますが、この実態はどうだったのかという点が一つです。もう一つは、報道によりますと、休み時間にたくさんの子供が保健室にやってくる、せめてあと一人養護教諭がいたらと思う。また、いじめ早期に気づいて対応することが大事と複数配置を要望したとも報道されております。現在三十学級以上の学校に複数配置を進めているわけですが、それ以下についても早期に取り組み、三十学級以下の学校にも複数配置を考えることをここで言明をしてほしいのですが、大臣、その点はどうお考えですか。
  67. 奥田幹生

    奥田国務大臣 確かに先月の二十八日に養護の先生方、各都道府県の代表にお集まりをいただいてお話を聞きました。こちら側からもお願いしましたけれども、やはりそういう会合を再三持つことができませんから、マイクを回して養護の先生方からも御意見を伺いました。  ただ、複数配置という御意見も中にはありましたけれども、今実施をしておりますのは、お話しのとおり三十学級以上の大規模校では複数の養護の先生。それから小規模校においては、四校に三人の養護の先生を何とか一校に一人ずつにならないかなという第六次の計画を進めておりまして、これが実現しておりませんから、今の六次の計画を早く完成してしまいたいというところで一生懸命やっておるところでございます。
  68. 山原健二郎

    ○山原委員 実態に即して、本当にこれは切実な要求となっておりますし、せっかく文部大臣も、なられてすぐにいじめ克服のアピールも出されたわけですから、こういう要望には具体的にこたえていただきたいということを要請しておきたいと思います。  最後になりますが、いじめの問題で大臣も、「何よりも、子どもたちとできる限り多く接し、子どもたちに信頼される人間関係をつくり、いじめの発見や予防に努めることが大事である。」というアピールを出されているわけです。この条件をつくっていくべきだと思いますが、その一つの問題としまして、いわゆる指定研究の問題があります。  予算委員会の要求資料を見ましてもさまざまなテーマで研究指定がなされまして、その指定校は多数に上っています。文部省からだけではなくて、各教育委員会による研究指定も合わせますと、多くの学校が指定校に当たるという状況が生まれています。指定校になりますと、その研究活動、報告のまとめなどに非常に多くの時間と神経を使うために、教師の多忙化に拍車がかかり、子供と接する時間が犠牲になっているということが、現場の教師から随分たくさん切実な声として出ております。  例えば岐阜県の例をとりますと、研究指定を受けると日常生活も一変し、夜中十時近くまでサービス残業を続ける日が多くなってくる、特に家庭を持つお母さん先生は深刻である、おまえは自分子供と人の子供とどっちが大切だと家に帰るとしかられ、学校では自分一人帰るわけにはいかないという状況が続いているという報告もなされております。文部省の道徳研究指定を受けた中学校は、九時までいるのは普通である、教師が焦ったりいらいらするとどうしても子供の様子にあらわれてくる、ゆっくり子供に接したり、見てやることが少なくなったことが原因だというふうにも指摘されているわけでございます。そういう意味で、指定研究発表の前後になりますと、ガラスを割ったり、いろいろと問題が起こることが多くなりましたという報告もあるわけでございます。  そうなりますと、これは苦痛以外の何物でもない。これは私も経験がありますが、研究指定校になればほとんど夜も朝もないというような状態になり、これを発表するためには大変なエネルギーを費やすわけであります。そんなことを考えますと、本当にいじめの問題を克服する意味においても、こういう問題については、少しそういうことのないような注意をする必要があるのではないかと思います。要するに、研究指定についてスリム化するといいましょうか、そういうことが今求められているのではないかと思いますが、この点についてお答えをいただきます。
  69. 奥田幹生

    奥田国務大臣 先生も経験からのことだという御発言がございましたが、私も社会科の研究発表を中学校でやったことがありますけれども、毎晩九時とか十時というようなことはなかったし、一月ほど前から準備を始めまして、そして大勢の社会科の先生、よその学校からも、あるいは指導主事さんも見に来ていただきました。それから後、講評、評価もいただいて終わるのでありますけれども、終わった後はすかっと気分さわやかで、これはやはり過度の緊張は必要ありませんし、制度的には私はあっていいのじゃなかろうかな、廃止すること自体はどうかなと思いますよ。これがやはりお互いの経験者で考えの違うところですね。あっていいと思います。
  70. 山原健二郎

    ○山原委員 これで終わりますが、随分幸せな学校におったものだと思います。見解の違いもありますけれども、実際余りにも多いのですよ、今現場の学校では。これはやはり一応整理しなければたまったものじゃないと思っておりますので、あえてその問題を取り上げました。  これで終わります。ありがとうございました。
  71. 柳沢伯夫

    柳沢委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時一分散会