運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1996-04-10 第136回国会 衆議院 農林水産委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年四月十日(水曜日)     午前九時三十分開議 出席委員   委員長 松前  仰君    理事 鈴木 宗男君 理事 二田 孝治君    理事 松岡 利勝君 理事 仲村 正治君    理事 初村謙一郎君 理事 増田 敏男君    理事 田中 恒利君 理事 井出 正一君       荒井 広幸君    金田 英行君       岸本 光造君    栗原 博久君       七条  明君    東家 嘉幸君       葉梨 信行君    浜田 靖一君       穂積 良行君    松下 忠洋君      三ッ林弥太郎君    森田  一君       山本 公一君    須藤  浩君       千葉 国男君    野呂 昭彦君       畑 英次郎君    堀込 征雄君       宮本 一三君    矢上 雅義君       山岡 賢次君    山田 正彦君       渡辺浩一郎君    池田 隆一君       石橋 大吉君    永井 哲男君       山崎  泉君    荒井  聰君       小沢 鋭仁君    藤田 スミ君       徳田 虎雄君  出席国務大臣         農林水産大臣  大原 一三君  出席政府委員         農林水産大臣官         房長      高木 勇樹君         農林水産省農産         園芸局長    高木  賢君         農林水産省畜産         局長      熊澤 英昭君         農林水産技術会         議事務局長   山本  徹君  委員外出席者         厚生省生活衛生         局乳肉衛生課長 森田 邦雄君         厚生省生活衛生         局食品化学課長 山本  章君         農林水産委員会         調査室長    黒木 敏郎君     ————————————— 委員の異動 四月十日  辞任         補欠選任   木幡 弘道君     渡辺浩一郎君   永井 哲男君     池田 隆一君   簗瀬  進君     荒井  聰君 同日  辞任         補欠選任   渡辺浩一郎君     木幡 弘道君   池田 隆一君     永井 哲男君   荒井  聰君     簗瀬  進君     ————————————— 本日の会議に付した案件  生物系特定産業技術研究推進機構法の一部を改  正する法律案内閣提出第二三号)      ————◇—————
  2. 松前仰

    松前委員長 これより会議を開きます。  内閣提出生物糸特定産業技術研究推進機構法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山崎泉君。
  3. 山崎泉

    山崎(泉)委員 社会民主党の山崎泉であります。  生研機構法の一部改正について、私なりに勉強したことについて若干質問をさせていただきたいと思います。特に、きょうは調査室資料に基づきながら農林省質問をさせていただきたいというふうに思います。  平成七年二月、農業合意に関連した対策一環として特別措置法が成立をしております。これによりますと、「生研機構は、緊急かつ計画的に行う必要があり、民間研究開発能力を活用することによって、効果的な研究開発業務を新たに実施することとなった。」というふうになっておりますが、国際化進展など我が国農林水産業をめぐる厳しい情勢に対応するためには、当然、新技術開発促進し、生産性農産物品質飛躍的向上を図ることが重要であるわけでありまして、その基礎となる国全体の試験研究については、どのような目標のもとにどのように強化をしようとしておるのか、まず第一点お伺いをしたいと思います。
  4. 山本徹

    山本(徹)政府委員 農林水産省におきましては、ただいま先生指摘のように、農林水産業及び飲食料品製造業等関連産業研究開発全般にわたる産学官を通じた研究重点化方向を示すものとして農林水産研究基本目標を策定いたしまして、試験研究の効率的な推進に鋭意努力いたしているところでございます。  その際、国の試験研究機関におきましては、基礎的、先導的な研究生産現場に直結した技術開発推進を行っておりますが、さらに、国は都道府県に対しまして普及に役立つ実用化技術開発への指導助成、また民間に対しまして生研機構を通じました出資融資、それから技術研究組合への助成、税制の優遇措置等による支援措置、また大学との関係におきましては、基礎的分野における連携、協力、交流の関係充実いたしまして、これらの関係機関を挙げて農林水産分野技術開発に取り組んでいるところでございます。  しかしながら、現在の研究基本目標と申しますのは、平成二年一月、既に六年余り前に策定したものでございまして、その後、ウルグァイ・ラウンド農業合意の受け入れや科学技術基本法制定など、農林水産業科学技術をめぐる情勢が大きく変化する中で、新しい研究開発目標を示すことが重要となっておりますので、今農林水産技術会議において新しい研究基本目標を策定することとしておりまして、鋭意検討作業を進めさせていただいております。
  5. 山崎泉

    山崎(泉)委員 農林水産分野を含む研究開発の飛躍的な進展を図るためには、国の役割が極めて重要だというふうに考えられます。  この資料によりますと、欧米諸国比較をした場合、政府負担研究費GNP比でいいますと、日本GNPで〇・六%、アメリカは一・一%、研究費割合でいくと、日本は二二%、アメリカは四二%、研究者一人当たりは日本は一千六百万、アメリカは三千三百万と大きな格差があるわけでありまして、果たして国の役割が今日まで十分なる役割を果たしてきたのかどうなのか、この資料を見る限り、非常に私は疑問を感じておるわけでありますが、今私が読み上げたこの基礎研究への投資の実態はそういうものなのか。  同時に、六十一年にこの生研機構というのは設立をされておるわけでありますが、六十一年から今日までそのような政府役割が極めて薄かったという理由はどういうところにあるのか、明確にお答えをお願いをしたいと思います。
  6. 山本徹

    山本(徹)政府委員 ただいま先生指摘のとおり、政府による研究開発投資の比率という数字は、アメリカに対しまして日本は低い水準にございます。これはいろいろなことが言われておりまして、例えば、軍事費研究開発費を算入するかどうかとか、あるいはそれぞれの国の財政事情等々もあるかと思います。  いずれにしても、私どもは、研究開発費を増額して農林水産業体質強化農山漁村活性化に役立てることは大変重要だと考えておりまして、かねてより研究開発投資充実強化に努力させていただいておるところでございますけれども、ちょうど昨年も議員立法科学技術基本法制定していただいたり、また科学技術創造立国ということで研究開発投資の増額に向けての各方面の御理解が高まっていると理解いたしております。
  7. 山崎泉

    山崎(泉)委員 農林水産分野基礎研究中心となる遺伝子組みかえ等、こういう研究は、国際的には我が国はどれぐらいの水準にあるのか、お答えを願いたいと思います。
  8. 山本徹

    山本(徹)政府委員 バイオテクノロジーの国際的な比較につきましては、この技術が非常に多岐にわたる技術でございますので、それぞれの分野ごと比較する必要がございますけれども、非常に大まかにいいますと、細胞レベルバイオテクノロジー、具体的には酵母等微生物を利用いたしました新しい食品素材開発とか、植物細胞組織の培養、これは野菜ウィルスフリー苗生産等で既に日本では大幅に実用化されておりますけれども、さらに細胞融合技術を利用した新品種育成といった細胞レベルバイオテクノロジーについては、我が国欧米先進諸国より高い水準になっており、既にさまざまな分野実用化されております。  しかしながら、遺伝子レベルバイオテクノロジー遺伝子組みかえと言っておりますけれども、バイオテクノロジー最先端技術でございますけれども、これは国際的に大変激しい技術開発競争が行われておりまして、この中で、稲の遺伝子地図を作成して稲の将来の遺伝子組みかえ等に利用するためのイネゲノムプロジェクトにつきましては、これは日本最先端成果を上げておりますけれども、特定遺伝子細胞に導入する技術とかあるいは遺伝子の働きを制御する技術といったような遺伝子レベルバイオテクノロジーの多くについては、残念ながら日本欧米先進諸国に比べて開発が立ちおくれている状況にございます。  この結果、例えばアメリカでは、遺伝子組みかえによって日もちをよくした腐りにくいトマトなどが既に市場に出回っておりますけれども、我が国では、こうした遺伝子組みかえによる高品質作物等々の開発はまだ立ちおくれているというのが、残念ながら現状でございます。
  9. 山崎泉

    山崎(泉)委員 いわゆる農林水産関係における先端技術研究分野においては、国際的な特許競争というのが激化しておるというふうに聞いております。諸外国に比べまして我が国のおくれておる分野について、将来の我が国の国益を確保する視点からも、知的所有権の確保とあわせてこれを可能とする独創的な研究強化を図る必要があるというふうに考えます。  若干勉強させていただきましたが、アメリカあたりでは、米そのものに何か空気銃みたいなものを撃ちながら品種をつくり上げて、将来的にはこれが特許ということになっていくのではないかというような話も聞きました。いずれにしましても、こういう分野での国際的な競争知的所有権をめぐって非常に激しくなっていくだろうというふうに思うのでありまして、我が国の創造的な研究強化を図るということが大変重要なことであるというふうに考えますから、その辺の決意も含めまして御報告を願いたいと思います。
  10. 山本徹

    山本(徹)政府委員 先生ただいま御指摘のとおり、稲等特定遺伝子細胞に導入いたします方法、これはアメリカパーティクルガンという方法で、空気銃のような原理でございますけれども、タングステンとか金の微粒子に特定遺伝子を付着させまして空気銃原理で空気圧でもって細胞に撃ち込む、これによって新しい形質の品種開発する技術でございますけれども、このパーティクルガンという遺伝子導入方法アメリカ特許を持っておりまして、日本バイオテクノロジー遺伝子組みかえの研究開発もこのパーティクルガン技術に依存しているというような現状が、残念ながら我が国研究水準でございます。  こういった遺伝子レベルでのバイオテクノロジー技術開発というのは大変な国際競争の中にございまして、これに日本は何としても追いつきまた追い越していくことによってこれからの農林水産業の発展を図っていく必要があると考えておりまして、今回御提案させていただいております生研機構法改正の新制度により独創的、基礎的なバイオテクノロジー等研究推進を図るとともに、さらに平成八年度予算におきまして、国の生物資源研究所等中心遺伝子組みかえの基本である遺伝子導入技術、これをパーティクルガン方法以外の生物的あるいは化学的な方法等を使った新しい、我が国独自の遺伝子導入技術開発に取り組む予算を計上しているほか、バイオテクノロジー日本開発した技術については、これを積極的に特許取得等知的所有権取得に全力を挙げてまいることにいたしております。
  11. 山崎泉

    山崎(泉)委員 そういうふうな状況の中で、今回の基礎研究推進制度の創設は今後どのような考え方に立って行おうとしておるのかということを申し上げながら、具体的な推進方法として、これは調査室資料で、「進取気性に富む独創的人材が、創造性を最大限に発揮できるような柔軟で競争的な研究環境を整備し、国内外の優秀な研究者を誘引するため、どのような点に留意し支援を行っていくのか明らかにしておく必要があろう。」というような指摘もあるわけでありますが、具体的な推進方法をどのようにお考えなのか、まず一点お聞きをいたします。
  12. 山本徹

    山本(徹)政府委員 今回御提案させていただいております生研機構改正案におきましては、バイオテクノロジー等基礎研究推進によって、従来の農林水産分野では着目あるいは取り組んでいなかった新しい生物機能利用等に関する研究に取り組んでいただこうとするものでございまして、先生指摘のように、若手進取気性に富んだ研究者、これは農林水産関係分野でも、毎年ポスドクと言われております、博士号をせっかく取得しても安定的な職業にまだつけないでいる若手研究者が毎年五百人程度おられますが、こういったポスドクといった若手の優れた頭脳を積極的に活用するために、こういった方がグループを組んでいただいて今回の公募制研究開発の事業に応募していただくことを私ども期待しておりますし、さらに農林水産分野のみでなくて、医学あるいは薬学、理学、工学といったような幅広い分野若手中心とした優れた研究者の知見、発想を活用して、そういった異業種の研究者の新しい研究チーム組織化を図ってもらってこの研究応募していただく、これによって独創的な研究課題研究資金を集中的に投入し、成果を上げていただくということを期待いたしておるわけでございます。
  13. 山崎泉

    山崎(泉)委員 「例えば、」ということで、「昆虫の有する機能を利用した新たな生物系病害虫防除剤の作成、微生物による有機性廃棄物浄化人工臓器移植に資する豚の開発等医療環境エネルギー等生物機能は多分野に活用することが予想される。しかしながら、このような基礎研究成果等は、これまでの経過をみる限り、情報として提供されにくいのではないかとの指摘もある」というふうに言われておりますが、特に重点を置いて強化をしようとしておる基礎研究具体的内容はどういうものなのか、明らかにしていただきたいと思います。
  14. 山本徹

    山本(徹)政府委員 具体的な、期待いたしております研究課題につきましては、この法案を成立させていたださましたら、その後において幅広く国内の研究機関研究者に公募いたしまして、その応募を待って選定するものでございます。  先生が今御指摘のように、幾つかの具体的な事例を申し上げますと、農産物には、制がん効果あるいは血圧安定効果老化防止効果等のさまざまな健康に有益な物質を含んでいると言われている農産物、シイタケとかお茶とかミカン等々ございますけれども、そういったような農産物有用物質バイオテクノロジー等技術によりまして非常に大量に、一般の作物の数倍も含んでいるような高付加価値農林水産物開発するとか、あるいは農林水産物食料品以外の用途に、例えば医療資材とか医薬品製造、例えば昆虫から人工皮膚をつくるとか、あるいは微生物植物等から医薬品生産するといったような新しい有用物質素材開発するとか、それから、炭酸ガスあるいは窒素酸化物等を除去する機能の非常に高い樹木とか微生物開発大気浄化機能の高い生物開発、あるいは水質の浄化、土壌の浄化等機能の高い農林水産物開発。  さらに、最近における地球的規模での食糧問題等に対応して、従来営農できなかったような砂漠に強い農産物とか、あるいは厳寒地、あるいは研究者によりますと、マングローブの遺伝子を稲に組み込みまして、海の上でいかだで稲作をするというような夢を持った研究にも取り組もうというようなアイデアもございますけれども、こういった地球規模での食糧環境問題、農業問題等に取り組めるような技術開発といったようなものを想定しておるわけでございます。  いずれにしても、全国の研究者から、これは国研大学等々いろいろな機関研究者、いろいろな分野研究者からの応募を期待しておりますけれども、これからの農林水産業体質強化農山漁村活性化にとって夢の持てるような、革新的な、基礎的な研究開発のテーマが出てくることを期待いたしておるわけでございます。
  15. 山崎泉

    山崎(泉)委員 今日まで我が国もそれなりに研究開発には取り組んできたわけでありますが、この法律の一部改正をやらなければならないという状況も踏まえながら考えてみると、これまでの基礎研究のあり方では、従来のやり方ではだめなんだということが一言では言えるのではないだろうかなと思うわけでありますが、今回のこの基礎的研究業務について、当面どのような技術研究、どのような効果を期待しておるのか、そしてまたどういうものを想定しておるのか、もう一度お聞かせ願いたいというふうに思います。
  16. 山本徹

    山本(徹)政府委員 期待いたしております技術分野としては、農林水産物の中でも大変付加価値の高い、あるいは高品質なもの、従来の一般的な育種では実現できなかったような新しい品種農林水産物生産とか、また農林水産物食料以外の医薬品医療資材、あるいはバイオマテリアルといったような、石油製品によるいろいろな資材というのは環境あるいは資源制約の今の地球現状の中でいろいろな問題がありますので、例えばでん粉で食器をつくるというような食料品以外のいろいろな諸資材、諸用途農林水産物を利用するとか、環境の改善あるいは維持に役立つような農林水産物開発といったような、従来の発想になかったような幅広い基礎研究を期待しておるわけでございます。  この基礎研究が三年から六年程度で一つの成果を生み出しますと、これを実用化産業化する新産業育成につなげるためには、生研機構の現在の出資融資制度の活用等々によって、できるだけ早く農林水産業の振興、国民生活向上に役立てるような産業あるいは製品として育っていくことを期待いたしております。
  17. 山崎泉

    山崎(泉)委員 最後に大臣の御見解をお伺いしたいというふうに思うのでありますが、我が国農林水産業及び農山漁村が抱える困難な状況を早急に打開し、後継者である若者に夢を与えるためには、当然、農林水産業の総生産増大及び体質強化農林漁業従事者所得向上などを図り、魅力ある農林水産業と豊かな農山漁村を創生することが重要であるというふうに考えます。  また、二十一世紀半ばの人口は百億人に達するだろうというふうに言われておりまして、地球規模での食糧環境問題への対応が重要な課題となってくるというふうに思います。そのために、さらに農林水産分野研究開発強化を、日本中心となって、特に世界の国々を引っ張っていくという立場で研究強化していく必要があるというふうに考えておるわけでありますが、大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
  18. 大原一三

    大原国務大臣 農林水産省を調べてみましたら、研究機関が二十九現存するわけであります。その中に五千七百人、研究職員だけでも三千三百人という人が働いてきているわけであります。農林省四万人の中の五千七百人ですから、かなり比重は高いわけなんですね。  委員指摘のように、どうも日本研究機関というのは、その研究機関の家の中でとぐろを巻いているという感じが非常に多いのです。私も大学研究所を見せていただいたのでありますが、そういう知恵が横に開放されない、縦割りの中ですくんでいるという感じが非常に強いわけであります。そういう意味で、今委員るる御指摘ありましたように、政府研究投資の、欧米に比べて、特にアメリカに比べて水準が低いということも大きな問題だと思います。  ただ、我々がやはりこの問題に期待しなきゃならぬのは、委員の御出身の長崎もまさにそのとおりでありますが、極めて厳しい土地条件の中で立派な作物をたくさんつくるという、そういう使命が私はやはりこういった食糧関係基礎研究の一番大きな課題ではないのかな、日本土地条件を克服するにはこれしかないんだということの認識が、まだ我々としてもコンセンサスが十分でない面がたくさんあるような感じがしてなりません。  おかげさまで今回、大学先生や、広く、農林省の中だけではなくて外の知恵を導入できるシステムを新しい予算もつけてやろうということでありますから、私はこれが百点満点だとは思っておりません、委員指摘のような今後の地球規模人口増大環境問題を考えるときに、さらにこの問題は充実をしていかなければならぬ課題だな、かように考えております。
  19. 山崎泉

    山崎(泉)委員 終わります。ありがとうございました。
  20. 松前仰

  21. 矢上雅義

    矢上委員 新進党の矢上雅義でございます。本日は、生物系特定産業技術研究推進機構法の一部を改正する法律案についての質疑を行います。  実は、何回も農林水産技術会議の方とか調査室の方にいろいろ科学的なこともお教えいただいたのですけれども、私非常に文系の者ですから、なかなか専門的な知識をきちんと吸収することはできませんでした。そこでまた、生物系特定産業とかこの法律内容も長いので、生研機構ということで簡単に省略して質問させていただきます。  まず、生研機構というものは、昭和六十一年に設立以来ちょうど十年、いろいろな機能役割を持ってやってまいりました。例えば、今までの流れとしても、かんきつの自由化、そして新農政の政策の確立UR合意影響緩和のためにどういう対策をやっていくか。具体的に申しますと、規模拡大に対応するための技術確立、つまり生産性向上とか、病害虫に強い、寒さに強い、乾燥に強いなど、新品種開発、低コスト化など、いろいろな期待を背中に背負いながらやってこられたと思いますので、生研機構が今までどのような役割農業の場において果たしてきたか、まずその辺の歴史的経緯について御説明いただければと思います。
  22. 山本徹

    山本(徹)政府委員 生研機構のもともとの前身は、農業基本法制定を背景に昭和三十七年に設立されました特殊法人農業機械化研究所でございます。この農業機械化研究所におきましては、農業機械化促進法に基づきまして、農業機械開発、改良に取り組んできたわけでございますけれども、特に昭和四十年代を中心田植え機あるいは自脱型コンバイン、耕運機、トラクター等我が国農業近代化に非常に大きく貢献した農業機械開発を行ってまいりました。  その後、バイオテクノロジー等を活用して、農林漁業食品産業等分野における技術開発促進する必要があり、また特に民間におけるそういった技術開発支援することが研究開発の幅を広げる上から大変重要となってまいりましたので、昭和六十一年にこの農業機械化研究所を新しく生研機構として設立し、業務の拡充を図ってまいったわけでございます。  この民間研究支援業務では、平成七年度までに三十八社に対して出資を行うとともに、百三十三件の融資を行いまして、従来農林水産省では手薄でございました民間農林水産業あるいは食品産業等分野研究開発促進に貢献してまいっております。  また、平成五年には、農業の一層の生産性向上の要請に対応いたしまして、農業機械化促進法の一部を改正し、農作業の効率化また軽労化労働負担の軽減を進めるための革新的な農業機械開発に取り組みまして、大型汎用コンバイン、あるいはキャベツ等野菜収穫機開発等を実施したところでございます。  さらに、ウルグアイ・ラウンド農業合意関連対策一環といたしまして、平成七年に研究開発特別措置法制定させていただきまして、民間研究開発能力を活用して、現場に直結した農業分野の革新的な新技術開発に取り組ませていただいているところでございます。
  23. 矢上雅義

    矢上委員 今いろいろ歴史的経緯を説明していただきました。  私たち国会議員農産物価格決定の際に、特に米価、乳価、いろいろやっておりますが、よく生産者の方から資材の低コスト化を図ってくれ、そういう要望を受けまして、私ども、農林水産省皆様方に、また大臣にその辺のことをよく要求しておるわけでございますが、研究のプロセスとか研究成果が、私たちも言いっ放しで、なかなか見えてこない。せっかくの機会でございますので、その辺のことを、国全体として、農林水産分野の代表的な研究成果にはどのようなものがあるか、それについてお聞きしたいと思います。
  24. 山本徹

    山本(徹)政府委員 先生指摘の、研究成果がなかなか見えてこないという点については、私どもも十分反省し、研究成果の普及あるいは農業現場の段階への円滑な受け渡し、実用化にはこれから一層努力し、また、農業現場からのいろいろな要請をくみ上げながら研究を進めていくということにはこれからも一層留意してまいりたいと思っております。  これまで農林水産業に関する試験研究成果といたしましては、その具体的な例を申し上げさせていただきますと、収量の向上ということがございますが、具体的には、水稲では、戦後の五十年間で単当収量を、十アール三百キロから五百キロ、一・六倍に増加させることに成功いたしました。  また、水稲では、ササニシキ、コシヒカリを初めとする新しい品種を毎年、現在でも数品種から十品種前後、品種改良に基づく新品種生産させていただいておりますし、また、リンゴの「ふじ」などの稲作以外の園芸作物等々でも優良な新品種開発実用化に取り組んできたところでございます。  また、田植え機等の農業機械開発によりまして、水稲の十アール当たりの労働時間、これは終戦直後は二百時間でございましたが、現在は四十時間程度、約五分の一に短縮し、生産性を上げることに成功いたしました。  また、園芸作物等では、例えばトマトあるいはキュウリというようなものが、今若い子供たちはこれは夏の野菜とはだれも思わなくなっているように、一年じゅう野菜が出回る。このような施設園芸の導入、栽培技術の改善による野菜等の園芸作物の安定生産あるいは周年生産に成功いたしております。  こういった成果が具体的な成果の例であると思っております。
  25. 矢上雅義

    矢上委員 特に本日問題となっております生研機構、三業務ほどございましたが、三業務それぞれ、生研機構独自の、代表的な事例としてはどういうものがございますでしょうか。
  26. 山本徹

    山本(徹)政府委員 生研機構は、民間において行われる農林水産業食品産業等分野技術開発促進、また、農業機械開発改良を行っておるわけでございまして、最近の代表的な研究成果といたしましては、まず民間研究助成分野では、バイオテクノロジーによります醸造用米の開発。それから、近赤外線を用いた果物の糖・酸度などを評価する技術、これは光センサーによる果樹の選別機械として実用化されております。それから、サルモネラ菌の感染を防ぐ家畜用の免疫製剤等の開発が挙げられております。  また、農業機械開発では、最近、田植えとそれから防除、追肥の作業を同時に行える汎用の水田管理機械の開発。また、稲、麦、大豆等さまざまな作物に利用できる大型の汎用のコンバイン。それから、これまで機械化が困難でございましたキャベツ等野菜収穫機、これによって労働集約的な野菜の収穫作業等の軽労化が図れるわけでございます。またさらに、手作業の三倍程度の速度で野菜の接ぎ木ができる接ぎ木ロボット等の開発が挙げられます。
  27. 矢上雅義

    矢上委員 今までいろいろな成果をお話しいただきましたが、特に労働時間の低減等大きな効果が出ております。中山間地におきましては、野菜生産するにしても、それを収穫してその産地に運ぶまで大変手間暇、肉体労働でございますので、先ほど申されましたキャベツ収穫機など、野菜用の管理機というものは現場でもこれから大変喜ばれることだと思っております。  ただ、残念ながら、先ほど山崎先生からも指摘されておりましたが、政府負担研究費の割合とか研究者一人当たりの研究費が米国の二分の一であるという質問山崎先生からなされました。基礎研究というものは家をつくるに当たる土台でもございますし、砂上の楼閣にならないように土台をしっかりするという意味で基礎研究は大事である。しかし、このように政府がかかわっておる、またスポンサーとなっておる割合が小さいわけでございますので、ぜひ大臣に、基礎研究の重要性及びそれへの重点投資のさらなる必要性についてお考えをお聞きしたいと思います。
  28. 大原一三

    大原国務大臣 先ほどもお答えいたしましたが、基礎研究部門というのは、確かにこれは農林水産分野だけでなくて、日本のあらゆる産業分野でおくれていると思うのです。よく言われるのですが、ノーベル賞の数が理科学部門で日本は幾つかしかない、アメリカは百何十もあるのだということですね。この辺の日本の今までの研究システムのあり方というのがやはり今問われているのではないのかなと思うのです。予算の面もありますが、質的な面でも、応用面ではとにかく世界に冠たる能力を持っているけれども、基本技術の面では開発能力が薄いというのはとみに指摘されているところであります。  我々も、今山本事務局長からお話ありましたように今日まで数々の努力をしてきたわけでございますが、先ほども申しましたように、中山間地という極めて劣悪な生産条件の中で、どのようにしたら今後来るであろう食糧危機時代を乗り切っていけるかという大きな課題がやはりこの基礎研究部門には課せられていると思うのです。委員指摘のように、我々も、五千三百人いると申しましたけれども、さらなる今後の充実のためになお一層の努力をしていかなければならぬ、かように考えております。
  29. 矢上雅義

    矢上委員 今大原大臣指摘されたことはまさしくそのとおりだと思います。先ほど申されましたように、本当に予算だけではなく、研究システムのあり方、その質についてぜひ再検討を加えていただければとお願いするところでございます。  続きまして、この調査室資料等を見ますと、特に農林水産分野研究では、非常に市場の規模が小さいとか分野が多岐にわたる、またリスクが多いなどの理由から、特に基礎研究、いろいろな研究を含めまして、大学、国立研究所等が主力となって頑張ってきたという経緯がございます。今回は、この大学とか国立研究所に対する施設や人材に対する支援ではなくて、直接生研機構基礎的研究業務を行わせるということになっております。  ここでちょっと考えてみるのですけれども、基礎研究と申しますと、私たち素人の考え方では、大学とか国の研究所がやる基礎研究と、そしてまた、今回生研機構業務として行う基礎研究と、一体どこにどういう違いがあるのか、その辺の概念的なことについてお聞きしたいと思います。  まず、それらの規模がどのように違うのかとか、その性格、またその進め方、概念的なものになるかと思いますが、その辺に着目して御意見をお聞かせ願えればと思います。
  30. 山本徹

    山本(徹)政府委員 基礎的研究業務はこれまで主として大学、国の研究機関が実施してきたのは先生指摘のとおりでございます。  大学研究は、最も基礎的な研究でも、基礎的な分野、新しい学理とか原理原則の探求というようなところに一番の重点がございました。これに対して国の試験研究は、これは農林水産省の場合には農林水産業や飲食料品生産の振興あるいは農山漁村活性化といったような政策目的に沿った研究でございまして、農林水産業現場あるいは農林水産行政部局からの具体的なニーズに即して、一定の成果を確実に得ることを目的に、組織として研究課題を長期的視野に立って設定し取り組むものでございますが、国という立場から、県にも試験研究機関がございますけれども、やはりそういった現場からのニーズの中でも基礎的な部分あるいは先端的な部分を担当するという役割分担を行っておるところでございます。  今回、生研機構基礎的な研究業務の実施のための法改正をお願いいたしましたのは、従来の農林水産あるいは飲食料品分野で必ずしも十分着目されていなかった新しい生物機能の高度利用等のための基礎的な研究を実施することを目的にいたしているものでございます。
  31. 矢上雅義

    矢上委員 今事務局長からお話しいただきました、大学研究は学理、原則に重点がある、また国の試験場の場合には農林水産の現場のニーズに対応したという、分野が狭いということ。ただ、生研機構についての御説明が少し少なかったのですが、いろいろお聞きするところによると、国、県あたりがやろうとしますと、よき意味での機械的平等で予算の割り振りが固定してしまう。優秀な人材とか優秀な研究施設があったとしても、重点投資は困難ではなかろうか。そういう現実的な問題もあって、幅広くテーマの設定が可能であるとか、これはいけるぞというところに重点投資ができるとか、そういう可能性も含めたシステムとして生研機構役割が今回設定されたのではないかということをお聞きしておりますが、それについてはどうでしょうか。
  32. 山本徹

    山本(徹)政府委員 御説明が不十分でございましたが、生研機構の今回御提案申し上げております事業の進め方といたしましては、これは同じ基礎研究でございますけれども、大学や国が安定的な組織のもとに中長期的な展望を持ちながらそれぞれの研究課題に取り組むのに対しまして、今回の生研機構の事業では、研究課題を国立の試験研究機関あるいは大学等幅広い分野から募集いたしまして、競争的な研究条件のもとで独創的、革新的な研究課題の発掘を図ろうとするものでございます。  また、研究に取り組んでいただく専門家は農林水産分野のみではなくて、医学、薬学、理学、工学等のさまざまな幅広い分野の専門家の知見、知識、発想を活用するために、そういった方々がチームを組んでいただいて、革新的、独創的な研究に取り組んでいただこうとするものでございます。  また、ポスドク、毎年五百人ぐらい卒業されますけれども、博士課程を修了したけれども安定的な職業に従事していない若い優秀な頭脳を十分に活用するために、このポスドク皆様方も今回の研究課題への応募を期待いたしておるわけでございます。  具体的には、この生研機構予算は一応十九億円をお願いいたしておりますけれども、一つの課題当たり、ごく平均的に申し上げれば、研究費として年間一億円程度で、また実施期間はおおむね五年間で、さまざまな分野研究者、また特に若手なども含めた研究者が任意にチームを組んでいただきまして、農林水産物の高品質化とか農林水産物から革新的な新素材開発する、あるいは農林水産業環境産業としても役立つような機能を持った生物開発するといったような、これはあくまで事例でございますけれども、いろんな新しい発想に基づく農林水産業の振興、農山漁村活性化に役立つような革新的、基礎的な研究テーマが応募されてくることを期待いたしておりまして、これによって国の研究機関大学研究機関もあわせて刺激され、活性化され、研究進展に役立つことを期待いたしております。
  33. 矢上雅義

    矢上委員 大体今の説明で生研機構が行う基礎研究の概念というものはわかりました。  続きまして、生研機構全体の枠組みの中で今回の基礎的研究業務をどのように位置づけるか。ほかに産業もあるわけでございます。てんでんばらばらにやってもしようがないですし、予算、人員の効率的配分から、まず今まである既存の三業務との関係の中で今回の業務をどのように位置づけて有機的に連携させていくか、その辺のことについてお聞きします。
  34. 山本徹

    山本(徹)政府委員 生研機構は、民間の行う研究開発に対する支援のための出資融資事業、それから農業機械開発、改良、それからウルグアイ・ラウンド対策一環としての現場直結型の農業技術開発、この三つの業務を現在実施しております。  生研機構設立後十年間の情勢変化の中で、農林水産あるいは食品産業分野における革新的な新技術や新産業分野を創出するために、従来の研究機関あるいは民間などでは取り組みにくい独創的な基礎研究を一層強化推進することが重要となっておりますので、生研機構、これは民間研究開発への助成も行っておりますので、このような基礎的な新しい研究業務を行ってもらうことにしたわけでございます。  この基礎的な研究成果は、幅広く一般農業関係者を初め研究者等に情報を提供し、一日も早くこれを農林水産業現場に提供し、また新産業育成に役立てる必要があるわけでございまして、現在生研機構が行っておられます出資融資事業、これによる新産業育成等、また農業機械開発、改良といったような事業を通じまして、革新的な技術現場への実用化をできるだけ円滑にかつ迅速に行うことにより、所期の農林水産業の振興といった成果が達成されることを期待し、また機構全体の業務研究開発支援農業機械開発等業務の相互の有機的な連携、また効率的な事業展開が図れるものと期待いたしております。
  35. 矢上雅義

    矢上委員 次の質問でございますが、新産業創出のためにも農林水産業以外の分野を幅広く取り込んで研究を行う必要があるということでございますが、先ほど私が質問した中で出てもまいりましたし、また山本事務局長よりもお話がございましたので、この質問は割愛させていただきます。  続きまして、実は平成七年の十一月ですか、科学技術基本法でやはり基礎研究推進が六省庁で打ち出されております。同じように六省庁が基礎研究推進制度を設けて去年からことしにかけて頑張ろうとしておるわけでございますが、生研機構が行う研究事業の特色をどのように打ち出していくのか。特にこれからは基礎研究ということで、ボーダーレスになるというか、ボーダーレスにして初めて基礎研究の特徴が生かされる分野でもございます。しかし、せっかく六省庁がやって、しかもその一つに農林水産省があるわけでございますので、ぜひここはうちの省としては特色を出していくぞというポイントがございましたら、お聞かせ願いたいと思います。
  36. 山本徹

    山本(徹)政府委員 今回の出資金を活用いたしました基礎研究の事業につきましては、昨年から農水省、科技庁等六省庁で協議しながら予算に計上させていただいたところでございますけれども、農林水産省がこの生研機構の事業を通じて研究に取り組むという意義は、農林水産の研究機関また行政の分野では作物、家畜等の研究開発あるいは行政を担当しているわけでございまして、これは他省庁にはない研究、行政分野でございますし、また国の研究機関等にも大変多くの蓄積がございます。  私どもは、この生研機構を通じて、生物の生理機能あるいは生態の解明、あるいは有用物質生産に関する研究といった基礎的な研究を通じて、農林水産業、食品産業の振興に役立つような革新的な技術開発あるいは新産業の創出を図ろうとしているわけでございまして、先ほど申し上げましたように、この研究成果を十分に得るために、農林水産分野の専門家だけではなくて、医学、工学、理学等々の幅広い分野研究者がチームをつくっていただいて、組織化していただいてこの研究に取り組んでいただくことを期待いたしておりまして、そういう意味では学際的な研究という性格はございます。  これは、これからの農林水産業の発展を図っていくためにはいろいろな幅広い分野の知見、知識、蓄積を活用することが非常に重要になってきているということでございますが、あくまで基本は、私どもの重要な政策課題でございます農林水産業や食品産業の振興、または農山漁村活性化という基本的なねらいを持って行おうとするものでございます。
  37. 矢上雅義

    矢上委員 山本事務局長より御説明ありました内容は、どの分野研究をするかとか産業の振興策、農山村の活性化等、当然といえば当然のことでございますが、現実は農水省が扱うものは食べ物であるということ。食べ物というのは口に入るものでありますから、やはり安全であるとか、おいしいであるとか栄養価が高いとか、また、食べ物をつくっていただく生産者の方にとりましては、生産者の労働条件での省力化というよりも、別の意味で言うと、省力化とは別に安全性と申しますか、危険がない。もう一つさらに特色を出していただいて、食べ物に関連して、また、生産者の労働上の安全に配慮して、健康とか安全性とかいうテーマも大きく取り上げていただかなければ、ただ単に縦割りで牛をやる、馬をやる、農山村の振興活性化では、ただ焼き直しになるのではないかと思います。そこを一つ要望いたしておきます。  続きまして、行政同士の研究制度でございますので、よくありがちな行政同士の連絡不足による二重投資というむだが起こらないか、そういうおそれが指摘されておるわけでございますが、基礎研究分野の担当範囲についてとか、細かくは設定できませんが、十分な連絡調整機能が必要となってまいります。それは今回の法改正に対応しまして十分な体制がとれておるのでしょうか。その辺についてお聞きします。
  38. 山本徹

    山本(徹)政府委員 先生指摘のとおり、今回の制度は、六省庁で同じような制度のお願いをいたしておりますが、昨年来、これを六省庁で担当するのか、あるいは、例えば科技庁で一本で実施するのがいいのかという議論は私どもも行ってきたわけでございます。これは、やはり私ども六省庁で要求させていただきましたのは、農林水産業あるいは食品産業、さらに先生指摘のように、これも特に消費者の視点から安全性とか良質とか、そういった視点にも立った研究開発もますます重要になっておりますけれども、こういった分野につきましては農林水産省が最も得意とする本来の担当の分野でございますので、いわばもちはもち屋として、それぞれの事業を所管している省庁がその得意の分野研究開発に取り組むことが適当であろうというような議論の経過がございまして、六省庁でお願いをしているわけでございますけれども、こういった議論の過程では、また、これから事業を実施する段階で、先生指摘のように研究が重複したり二重投資にならないようにする、あるいは逆に、どこか重要な研究分野が欠落することのないようにすることも重要でございます。  こういったことは昨年から私どもも問題意識がございましたので、政府科学技術会議のもとに、日本を代表される学識経験者から成ります特殊法人等における新たな基礎研究推進制度に関する懇談会というものを設置いたしまして、制度の運用の基本について御意見を承りながら進めていくことにいたしております。  また、この事業の実施に当たって、実務的な連携を十分行うために、関係六省庁から成る基礎研究推進制度関係省庁連絡会が設置されております。これによって、随時関係省庁が十分連絡をとりながら、調和のある研究開発推進に取り組んでいく必要がございますが、ただ、御指摘のとおり、学際的な分野もあるものですから、似たような課題が、これは研究者にとっては、どこの省庁の事業に応募したらいいかというのは必ずしも十分に自明の理であるとは限らないわけでございますので、各省庁の制度に重複して応募をされるおそれもございますが、この辺のことについては、省庁の連絡会等の場におきまして応募状況等について情報交換を行い、また、課題研究者が申請される際には他省庁の制度への申請の有無等についてもこれを明らかにしていただきまして、重複した課題を採択するというようなことになったり、また、その審査の過程で無用な混乱が起きたりしないように十分配慮してまいりたいと考えております。
  39. 矢上雅義

    矢上委員 ただいまの問題に対しましては十分説明をいただきました。実は、研究者の方がどこに申し込んでいいかわからなくなるんじゃないかと今事務局長がおっしゃいましたが、私もちょっとうっかりしておりました。せっかく制度をつくっても、応募する際に研究者の方が迷わないように、ぜひその辺のガイドラインとか案内制度確立していただくようにお願いいたします。  次に、今回の基礎的研究業務の運用体制についてお伺いいたしたいと思います。  研究業務におきましては、どういう研究をするかという方向性、入り口論、また途中での評価、そして最終的にその成果をどうするかという出口の問題がございますが、まず、そもそも研究の入り口でもある公募の際の研究分野設定についてはどのような考えを持っておられるか。  例えば、ただいいテーマを、いいアイデアを募集しますというだけでは研究者の方も何をどうしていいか戸惑うでしょうし、やはり国民の税金を使う以上、何らかの方向性というものをきちんと確立する。それが、政府からお金が出ておるこの生研機構の一番重要な役割ではないかと思います。この辺の、公募の際の研究分野設定についてのお考えをお聞きしたいと思います。
  40. 山本徹

    山本(徹)政府委員 研究者応募をしていただく際には、御指摘のとおり、どういっだものが採択の可能性があるのかというおおよそのめどが大変重要なことでございますので、これはあくまで事例でございますけれども、公募していただくことを期待しております対象の研究の事例として、例えば、従来の一般の品種改良では実現できなかったような飛躍的な収量の増加、これによって地球食糧問題等にも解決に役立てるといったような、新しいバイオテクノロジーの活用による飛躍的な生産力の向上のための技術とか、あるいは制がん効果血圧安定効果等々の健康に非常に有益な物質を従来の農産物に比べて飛躍的に大量に含んだような高機能性の農林水産物あるいは食料品開発とか、あるいは昆虫、あるいは家畜、あるいは農産物を利用して、例えば昆虫を使った人工皮膚とか、でん粉でバイオプラスチックといったような製品をつくって環境に優しい容器、食器とか、あるいはプラスチック代替の資材をつくるといったような生物系の新しい素材開発とか、あるいは大気、水質、土壌の浄化に非常に効果の高い樹木とか微生物開発、これは御案内のとおり、石油による海洋汚染を浄化するための微生物開発などは一部実用化されつつはございますし、また、下水道の終末の浄化の仕組みというのは、これも微生物を使っているわけでございますけれども、こういった生物機能を飛躍的に高めるような技術開発、こういったものを一つの応募の参考として幅広く研究者に御紹介しながら、こういったものを一つの参考としていただいて、これに限定されるものではございませんけれども、生物機能をいろいろな、農林水産業や国民の生活、人類に役立つような夢のある立派な研究をテーマとして応募していただくことを期待いたしております。
  41. 矢上雅義

    矢上委員 先ほど御説明いただきましたが、大変わかりやすく思いました。ただ、確かに私もしっかりそういうガイドラインをつくってくれと申しましたが、余り今度は縛り過ぎてしまいますと、日本人の癖でそこに限定されるという弊害もございます。柔軟でしかも競争していただく研究体制をつくり上げるという意味で、その辺にも配慮しながらそういうようなガイドラインをつくっていただければと期待いたしております。  続きまして、先ほどお聞きしました中でもう事務局長お答えになりましたが、もう一度確認のために、平成八年度における課題の採択予定数及び予算規模はどのくらいを想定しておられるのか、改めてお聞きしたいと思います。
  42. 山本徹

    山本(徹)政府委員 これもあくまで一つの標準的な例でございますけれども、一課題一年当たり一億円程度の経費を一つの研究のめど、パターンとして想定しております。この一億円というのは、ポスドク等の若手研究者の人件費とか、あるいは研究のための最新の理化学機械とか、あるいは研究資材研究試料の購入等々に充当していただくことを予定しております。なお、本体の研究の建物、基本的な施設というのは、これは国もそういったものは備えておりますので、国の機関あるいは大学等を活用していただくことになろうかと思います。平成八年度十九億円の出資をお願いいたしておりますので、平成八年度では、平均一億円程度といたしますと、二十課題程度の採択になるのではないか。  また、研究期間は三年から六年くらいと想定しております。これもいろいろな基礎的な研究の期間はどのくらいが適当かということをいろいろ研究者とも検討いたしまして、したがって、平均が五年くらいになろうかと思いますけれども、三年−六年といったような期間を一つのめどといたしております。もちろん、これは一つのめどでございますので、これを超えるもの、あるいはこれ以下でできるものというのはいろいろできてくるのではないか。  なお、研究のグループとしては、若手研究者、それからリーダーとなる方も含めて、一般的な、標準的な姿が多分十人前後になるのではないか。これもまたいろいろ大勢であったり小人数であったりするかと思います。そんなイメージでございます。
  43. 矢上雅義

    矢上委員 平成八年度の事業の規模とかその内容は大体わかりました。  次に、実は通産省だったですか、NEDOの公募、非常に多くの応募があったというお話を聞いておりますが、今回、農林水産省がこの制度をつくられて多数応募があった場合、優秀な人材が多数農林水産省の公募に対して応募した場合に、その選択方法も大変厳しいものがあると思います。みんなやる気があって手を挙げるわけでございますので、その中でだれが選ばれるか、大変大きな問題です。そういう選択方法が公正な立場で厳格に行われるのか、そういうきちんとした審査体制が十分に今の時点で担保されるような規格はあるのでしょうか。
  44. 山本徹

    山本(徹)政府委員 先生指摘のとおり、応募されてこられた研究者に対しては、これは公正な、かつ的確な審査が大変重要でございます。現在の段階でも、この制度が実施された段階では非常に高い倍率での応募があるものと私ども想定しておりまして、本制度の的確な運営に当たっては、独創的で質の高い研究課題をどのように選定するかということがこの事業を成功させるための最も重要なポイントであると考えております。  このために、生研機構の中に、高い見識と研究実績を有する幅広い分野研究者の方々の参加を得て選定委員会を設けまして、研究課題の適正な審査、また慎重な選定を行っていただくことにいたしております。  また、審査に当たりましては、書類審査だけではなくて、直接研究者の面接審査ということも行いまして、公正、的確な審査が行えるように配慮してまいりたいと考えております。
  45. 矢上雅義

    矢上委員 有識者の幅広い参加を求めるというお答えですが、これは話が違いますが、エイズの小委員会とかいろいろ、ベテランの学者さんがおられて、若手の学者さんが幾ら言っても、固定観念とかいろいろなことで押し切られてしまう。学者の世界の方が政治の世界よりも封建的じゃないかということもあります。そういう中で、この有識者の幅広い参加という中で、偏らずにいろんな年齢の方、いろんなお考えの方、バランスをとってぜひ入れていただきまして、学者の世界の封建的な部分が排除されるように、その審査体制、十分担保していただくようお願いいたします。  続きまして、先ほどの御説明にも出てきました研究支援期間、つまり三年から六年ぐらいを考えておられる、そういうことでございますが、有望な研究であれば、途中、最終的な評価でこれはいけるぞとなった場合、これは三年から最長でしたら六年ですから、六年から自動的に更新されるのか。つまり、六年の時点でこれはいけるぞとなったら、優秀な研究であれば自動的に延長されるのか、もしくはもう一回公募によってこたえていくのか、その辺の制度的仕組みについてお願いいたします。    〔委員長退席、田中(恒)委員長代理着席〕
  46. 山本徹

    山本(徹)政府委員 この研究の実施期間を標準として三年から六年程度といたしましたのは、農林水産関係研究というのは、例えば稲の育成、収穫というのは一年に一回でございます。それで、例えば稲などの品種改良も一般には十年程度かかる、非常に長期間を要する地道な研究でございますけれども、最近のバイオテクノロジー進展あるいは分析機器の発達等により、研究手法がだんだん効率的にもなってまいっております。  こういったことも勘案いたしまして、研究課題の達成目標を明確にすることによって、三年から六年程度で一つの段階の研究目標を達成するということが可能になってきていると考えておりましてこのような期間を一応設定したわけでございますが、これは一つの区切りでございまして、研究の過程あるいは終了の段階で評価を行ってまいります。これは、国民の税金を使った研究として十分真剣に研究者によって研究に取り組まれ、またそれなりの成果を出していただいたかどうかということは、評価という作業によって明らかにする必要がございますが、最終的な、研究が一応終了した段階での評価で、この研究を発展させて、さらに研究を継続して一段すぐれた研究成果が見込まれると期待されるような課題につきましては、その時点でまた新しい課題として次のステップの研究に取り組んでいただくための応募をしていただくということは可能であると考えております。
  47. 矢上雅義

    矢上委員 今の御説明ですと、最後評価して、すぐれておれば、さらにその時点で新しい課題として応募していただくということで理解しておきます。  続きまして、今の御説明の中で、途中と、また終了段階でその研究成果に対する評価をする。これは、幾ら一生懸命やっても、評価する人の目が曇っておれば何もならないわけでございます。また、この評価というものも、一つには、農林水産業分野では大したことないと思われがちでも、よその分野では意外と重要な発明であったりする。猫に小判と申しますが、いろんな意味で、ごみみたいなものが宝になったり、宝みたいなものがごみになったりするわけでございます。その辺の柔軟な発想での評価の手法はどう考えておられるのでしょうか。お聞きいたします。
  48. 山本徹

    山本(徹)政府委員 研究開発という作業では、先ほど御指摘ございましたように、入り口の段階、研究テーマの採択の段階での適正、厳正な審査が重要であるとともに、今度は研究に取り組んでおられる過程、あるいは終了の段階での研究成果に対する評価が大変重要でございます。  このために、生研機構内に、またこれも第一線の研究者あるいは学識経験者、これも先生指摘のように、いろいろなバランス一年齢とかあるいは分野とか等のバランスを考えながら幅広い分野から課題選定・評価委員会というものを設けまして、毎年度取り組まれておる研究成果の評価を行うとともに、例えば最終段階等の段階で、さらに外国の専門家等も、すぐれた方がいる場合には、そういった方も交えて、研究目標に照らして成果の達成度はどうであったかとか、あるいは今後の、さらに一段上の研究の可能性等について評価し、これを、必要な場合には実用化の段階にできるだけ早く移す、また次のステップの研究に高めていくというような作業を行ってまいりたいと考えております。
  49. 矢上雅義

    矢上委員 きちっとした最終的な評価をしていただきませんと、研究者の意欲もなくなってしまいますし、せっかく多額の税金をかけた研究成果もまたお蔵入りになってしまいますので、この辺、評価の部分は一番重要な部分であると思いますので、ぜひ御検討をお願いいたします。  続きまして、こういう基礎研究の結果、具体的な研究成果があらわれる、その具体的な研究成果の権利、その権利はどこに帰属するのかという問題。  また、その研究成果の活用方法についてでございますが、畑に種をまくのと同じように、農林水産分野で種をまいても、それが芽が出なくても、ほかの分野で種をまくと結構よく育つとかということもございます。そういう具体的な研究成果を情報として公開する、そういう仕組みをどのように考えておられるのか。  また、広く異業種等に対してもオープンにされていくのか、その辺の取り組み方について最後にお聞きしたいと思います。
  50. 山本徹

    山本(徹)政府委員 研究成果の所属あるいは普及についてのお尋ねでございますけれども、この研究成果につきましては、生研機構研究グループ、研究機関との共有とすることを予定いたしております。  また、この研究成果、特に特許権等の知的所有権、成立する場合も多いと期待しているわけでございますけれども、これは、広くいろんな関係の学会誌とか農林水産関係機関誌等々で関係者に幅広く周知して、また、これを利用したいと希望される方には実施を許諾するということを考えてまいりたいと考えております。  また、これが農林水産現場での早い時期での実用化、または新産業育成等につながることを期待いたしておるわけでございまして、このために生研機構出資融資事業の活用等についても十分に配慮してまいりたいと思っております。     〔田中(恒)委員長代理退席、委員長着席〕
  51. 矢上雅義

    矢上委員 今、産業の空洞化等で、新しい分野産業創出が望まれておりますので、広く異業種に対してもオープンにしていただくことを望みます。  次に、これは大臣に対する質問でございますが、今後の農林水産研究推進基本的な考え方についてでございます。  実はずっとこの勉強をやっておりまして、創造性のある人材の確保、養成が急務である、これはよくわかっておりますが、最近理数系離れということがよく言われております。そこで、この理数系離れを克服して、これからの将来の宝でもある子供さんたち研究者になっていただけるような環境をどう整えるか。今までの議論の中でも、やる気を起こさせるための研究環境の整備ということが一つございます。  また、研究者というものは、研究所で一生懸命頑張っておられるので、なかなかその存在を誇示できない。特別、ノーベル賞とかもらえればまあ世に出る、そういう機会はございますが、非常に厳しい状況の中で頑張っておられる。そういう方たちの、研究者の社会的地位、ステータスの向上、これが二番目でございます。  いろいろと役所の方とも議論しておりまして、いろいろ話が出たんですけれども、私自身振り返ってみまして、山に入ってもなかなか木とか花、名前さえよくわからないことが多い。畑に行ってもなかなかその作物がすぐ答えられない。子供のころぐらいまではいろいろ見聞きしておりましたが、だんだん大人になるに従って日常生活から自然がかけ離れていって、また学校生活からかけ離れていく。子供のころからの動植物、いわゆる自然というものに触れ合う機会がなければ知的好奇心とか問題意識など持てるわけがございません。  そういう中で、これから将来の日本の宝でもある子供たちを育てていく一番の近道として、そういう自然に親しむとか農業に親しむ、そういう機会をぜひ持っていただきたい。その中で、せっかくこの農林水産研究というものが今回推進されるわけでございますので、農林水産研究推進基本的立場として、先ほど申しました、自然の摂理を応用して健康と安全を配慮すると同時に、子供たちがいかに自然とか農業に触れ合うか、また科学研究とかそういう研究の場に触れ合うことができるか、そういう場をぜひ提案していただくような配慮が望めればと思っております。  ぜひ、せっかくの機会ですので、大原農林水産大臣の力強い決意をお聞かせ願えればと思います。
  52. 大原一三

    大原国務大臣 先ほどから、委員と事務局長の議論をるるお聞きをしておりまして、非常に考えることがたくさんございます。  日本研究機関というのは、どちらかというと封鎖性、封鎖的である。これからマルチメディアの時代と言われるときに、日本人の体質がどちらかというと封鎖的でありますから、一体、マルチメディア時代にインターネットシステムというのが一番求められているのがこの研究分野ではないのかな、こう思っております。恐らく、ゴアさんが言っていらっしゃるようないわゆるスーパーハイウエーというようなものも、やはりこのインターネットができ上がらないと私はメリットは出てこないんだと思うんですね。そういう意味で、これからの技術革新の中におけるマルチメディア時代の役割というのは特に研究部門において私、要請されると思うんです。  そういった意味の議論がるるございまして、先ほどもお話がありましたが一各省間に重畳的な予算がついておって、同じことをやっているのではないか。同じことをやって隠してしまったら、まさに予算のむだでございまして、それが、少なくとも役所だけでぐらいは横並びに絶えず情報が開放できるようなシステムができ上がらないと、やはりこういった生研機構でいろいろなことをやりましても効果が上がらないのではないのかなということを、お二人の議論を聞きながらしみじみ感じたことでございました。  肝心の御質問の点でございますけれども、やはり我々、子供の時代を考えてみますと、本当に、田植えをやったり、いろいろ楽しい思い出はいっぱいあったのでありますが、今ごろの農村の子供さんというのは、そういう楽しみというのもないのですね、機械がひとりで動くのをただはたから見ているだけで。そういった意味で非常にわびしい感じが私はいたします。  それで、体験学習ということも盛んに今やっていらっしゃいます。小学校でも非常に熱心におやりになっている学校もあるし、さらに、私、農林水産委員長のときに、たまたま委員会の出張を命ぜられて、ドイツのミュンヘンでクラインガルテンというのを見ました。これはサラリーマンしか行けないのですね。農家の人は権利がないのです。それが安い賃貸料で、そこへ行って花を植えたりいろいろの植物に親しんでおるという実態、非常にドイツは成功しているのですね。こういったものを見ながら、やはり教育というのは大事だなと、子供さんたちがそこで喜々として遊んでいるわけでありまして、そういったシステムもできないものかなと。  残念ながら、これから先は農林水産大臣の発言の限界を超えていますけれども、日本の教育システムそのものに、創造性と独創性を求める教育システムがなかったのですね、今日まで。大量生産、規格品大生産のシステムをつくっていくためにこよなく適合した教育、人材を育てていくという、これがやはりこれからの教育のあり方として間違っているのではないのかなと。大学に行きますと、アメリカは、小・中学校、高等学校はだめだけれども、大学は世界に冠たる大学であるということを考えてみますと、日本は、小・中・高等学校がまあちょっとよくて、大学に行ったら全然だめだという妙な批判が起きているわけであります。  そういった意味でも、我々は、この研究開発というものに対するこれからのエネルギーの投下量が日本をまたよみがえらせていくのではないのかな。そういう意味で、農林関係としては、おっしゃったような教育問題あるいはグリーン・ツーリズムとか、そういった体験学習問題についてももっと精力的に取り組んでまいりたい、かように考えております。
  53. 矢上雅義

    矢上委員 大臣お答え、非常に気持ちがこもっていて、私もわかりやすく、いただきました。大臣も大変厳しいお立場でしょうが、教育の分野でございますので範囲も超えておりますが、ぜひ頑張っていただきたいと思います。  続きまして、この生研機構の一部改正質疑から移りまして、全酪連の牛乳の問題に移らせていただきます。  前回、私、農林水産委員会質問しまして、厚生省の立入検査には限界があって、水増しを、加工乳と成分無調整の牛乳の混入を見破ることができない。では、厚生省にだれが教えてあげたのか。厚生省にだれかが教えてあげて、厚生省から農林水産省に連絡が行って、そしてまた警察が入る、そういう仕組みではないかと思ったわけでございますが、近ごろお聞きしますところによると、宮城工場に三月十日ごろ、厚生省から依頼を受けて県の衛生課が立入検査に入った。しかし、立入検査の結果、問題なしという答えが出て、それが新聞報道に載っておりますし、全酪連の浦上忠常務さんは、まぜたのは長岡工場だけで他工場では行われていないことを八日に確認したと、全酪連レベルと厚生省レベルで、もうこれで終わりだと確認したわけですが、三月二十九日に工場長さんの自首と申しますか自主申告で、結局宮城工場も成分無調整と加工乳をまぜて成分無調整として表示して売っていた。結局、やはり出てくるわけでございます。  その辺の経過があるものですから、きょうはぜひ、長岡工場、宮城工場含めての事件の経過を、農水省の担当の方とまた厚生省の担当の方に、時間がございませんので簡単に経過を報告していただければと思います。
  54. 森田邦雄

    森田説明員 御説明いたします。  平成八年三月九日、全酪連の長岡工場で、平成五年五月ごろから八年三月八日まで、生の乳に脱脂粉乳、クリーム、水を加えて牛乳として販売していたという事実がわかりました。もちろん、県はこれに伴いまして、営業の禁止あるいは製品の回収等の措置をとったわけであります。と同時に、私ども、食品衛生法に基づく権限といいますのはすべて都道府県知事に権限委任しておりますので、私どもとしては、全国に対しまして、こういう事件がありましたので直ちに立入調査するようにと、当時、実は土曜日、日曜日でございましたけれども、全酪連の関係工場につきましては日曜日にすべて立入調査させたわけであります。  この時点では、三月十日宮城工場にも立ち入りしたわけでありますけれども、いずれにしても、帳簿を改ざんしてあるということから、これは化学的分析ができれば非常にわかりやすいわけでありますけれども、同じ牛乳成分を入れているということから非常に化学的な分析が難しい。そういうことでいくと、帳簿は、原料の受け入れから製品の出までの細部にわたった調査をさせたわけでありますけれども、すべて帳簿がつじつまが合わされているということから、この時点では発見できなかったわけであります。  いずれにいたしましても、三月二十八日、こういうことが宮城工場でまたございましたので、再度、全酪の関係工場あるいはそれ以外の全国の、八百五十前後ありますけれども、これらの工場についても立入調査するようにまた指示をいたしております。また、関係業界に対しましても、こういうことのないように、再度、業界全体での問題としてとらえるよう指導しているところでございます。  現在までのところ、私ども聞いている範囲では、この長岡工場あるいは宮城工場以外にこういう問題があったという報告は現時点では受けておりません。  今後とも、厚生省といたしましても、こういう問題が起こることのないように、いろいろな監視の手法等をさらに検討してまいりたいと思っております。
  55. 熊澤英昭

    ○熊澤政府委員 お答え申し上げます。  ただいまの経緯につきまして、厚生省の森田課長からお答え申し上げたとおりでございますけれども、私ども農林省といたしましても、まず長岡工場問題が判明したあの直後に、厚生省とも連携をとりつつ、全酪連の全工場に対して調査をいたしましたけれども、その時点では、確かに宮城工場については私ども不正の事実を発見できなかったわけでございます。その後、宮城工場の問題が判明いたしましたので、私ども、全酪連の工場に対しましては、本省の職員と地方農政局の担当官とで再度詳細な調査を実施いたしました。その結果、ほかの工場については不正はないというふうに私ども承知をいたしておるところでございます。  なお、ほかの乳業メーカーの工場に対しましても、既に全般的な調査は行っておりますけれども、再度時間をかけて所要の調査はしてまいりたいというふうに考えております。
  56. 矢上雅義

    矢上委員 今、厚生省、農水省両方に御説明いただきましたが、帳簿を改ざんされれば事務的な調査でもわからないというのが一つと、あと、成分調査をしてもわからないから化学的調査もだめと。  それで、もう一回繰り返します。長岡工場で判明したのは内部告発で、今度宮城工場でこれが発覚したのは、パイプラインが接続されておった。そのパイプライン、成分無調整牛乳と加工乳との機械がパイプラインで結ばれておったのが宮城工場で、長岡工場の方はそれぞれタンクがあって移したとか聞いておりますが、ほかの人が、生協さんとかが工場に立入検査してパイプラインが見えたのに、何で県の方が行ってパイプラインの接続が見えなかったのか。その辺の矛盾を感じるんですけれども、特に、八百ぐらいある乳業工場で、熊本とか北海道の全く関係ない乳業工場のことだったら見落とすこともあるでしょうが、全酪連のグループ工場で、県とか厚生省の関連の方々が見落として素人さんがそれを発見する、そして追い詰められて工場長が自首してくるというのは、本当に探し出すつもりがあったのか、もうこの辺で終わりにしようと思ったのか、その辺はどうでしょうか。
  57. 森田邦雄

    森田説明員 御説明いたします。  宮城工場につきましては、そのパイプラインが還元したものがつながるようになっていたということでございますが、一般の乳処理工場、大型工場におきましては、原料乳受け入れタンクあるいは還元乳タンクそれぞれを固定しないで常時流動的に使うことがあって、これはほとんどコンピューター処理で、オートバルブということで入れかえしますので、そういうことからいきますと、技術的に見ていくとそれはあっても不思議ではないのが一般的なあり方なんです。そういう意味で疑いが出てこなかったということでございます。
  58. 矢上雅義

    矢上委員 この辺は長岡工場、宮城工場、まだこれからどんどん出てくると思いますので、今ちょっと時間の関係で、長くやってもどっちみち出ません。またこれはおいおい出てきます。また、ほかの議員さんたちがこの点についてはいろいろお聞きになると思いますが、とにかく今回の問題で、全酪連としては会長が処分されたり工場長が免職になったりとか処分されております。しかし、処分をしたとしても、本問題は食品衛生法、不正競争防止法、景品表示法といういろんな分野法律に違反しまして、警察の立入捜査もされておる。そういう中で、牛乳に対する非常なイメージダウン、酪農業界というか牛乳業界に対する非常な不信感、これが大きいです。  私たちは知っておりますから、加工乳というのをただ成分無調整と偽ったということだけで済みますけれども、テレビとか新聞を見ますと、変なものがまじっているから気味が悪いとおっしゃる方もおられます。確かに、素人さんから見ると、変なものが入っているんじゃないかという気味の悪さと、よくマスコミで言うように、水増し牛乳と言いますから、成分で脂肪分が三・八とか三・五とかと書いてあっても本当は薄いんじゃないかとか、もう牛乳に対する、牛乳の表示に対する信頼というものがことごとく崩れ去ったという重大な問題をはらんでおります。  また、この長岡工場とか宮城工場に出荷しておられた生産者の方々もこれから路頭に迷うようなことも起きてきますし、全国の生産者の方々もこれからメーカーとの飲用乳の取引価格においても物すごい打撃を受けることになると思います。  こういう問題がある中で、どういう対応を農水省としては迅速にやっていかれるのか、お聞きしたいと思います。
  59. 熊澤英昭

    ○熊澤政府委員 お答え申し上げます。  まさに先生指摘のとおり、今回の不祥事が消費者あるいは関係者に対しまして、牛乳に対する信頼を損なったということはまことに遺憾なことであるというふうに私ども強く感じているところでございます。  そこで、私ども農林水産省といたしましては、両工場の問題が発生しました直後に直ちに全酪連から事情聴取をいたしまして、全酪連に対しまして、両工場の今回の事件に関します事実関係の究明、発生原因の究明さらに責任者に対する厳正な処分、全酪連の再建に向けた組織体制の整備を強く指導したところでございます。  そこで全酪連といたしましては、まず長岡工場の不祥事を踏まえまして、会長及び担当常務二名が引責辞任をいたしております。三月三十一日付でございます。さらに同日付で、当時の長岡工場長の免職、さらに次の長岡工場長の退職、そのほか、本部で管理担当部門にあった部長等の減給等の処分を行ったところでございます。  そこで私ども、まず、事件発生後、厚生省と連絡をとりまして、全工場の調査、さらには全酪連の工場に対しましては詳細な調査を再度実施いたしまして、先ほど先生から御指摘がありましたように帳簿の改ざん等の例もございましたので、そういった点も含めまして詳細な調査を行ったところでございます。今までのところ、私どもが再度調査した限りでも、ほかの工場では不正はないというふうに承知をいたしております。  他方、他の乳業関係団体に対しまして、三月三十日に、企業内部の監査体制の強化さらに団体の傘下の会員、乳業メーカーに対しましての研修会を行うようにということで指導いたしております。  また同時に、先ほど先生から御指摘がございました酪農農家への影響をできるだけ小さくするということが必要でございますので、私ども、特に配乳問題につきまして、中央酪農会議と全農に対しまして、長岡工場と宮城工場、さらにほかの全酪連の乳業工場でも販売が低下しているということもございますので、そういった工場で処理されていた生乳の円滑な配乳について指導いたしておりますが、同時に、全農さらには大手乳業メーカーに対しまして、生乳の加工処理等についての協力を要請いたしております。  私どもとしては、当面こういったことで緊急の対応をしているところでございますけれども、今後とも所要の措置をとることによりまして、飲用牛乳に対します消費者の信頼回復にぜひ全力を挙げて取り組んでまいりたいというふうに考えております。
  60. 矢上雅義

    矢上委員 続きまして、全酪連の今回の不正事件によって、せいぜい、長岡工場でしたか、ちょっとはっきり手元にないんですけれども、月二百万ぐらいもうかった、年間にならすと二千万ぐらいこれでもうかったんじゃないかとか言われております。でも、新聞をいろいろ見ますと、今度の不正事件に対してペナルティーが相当ございます。工場の営業禁止処分とか、あとジャスコさんとか生協さんからも取引の停止を食らっているとか、いろんな問題が出ております。  それで、本当に低コスト化を追求するにしてはたかだか二千万と言うのは変な言い方ですけれども、あれだけ大きな工場ですから、毎月二百万、年間二千万近くのものでこれだけの損害が逆に発生しておるわけでございます。全酪連が本問題によって今の時点でどのくらいの損害を受けておるのか、額は確定できないでしょうけれども、項目と概算、額がわかれば御説明いただきたいと思います。
  61. 熊澤英昭

    ○熊澤政府委員 お答え申し上げます。  御指摘のように、金額的に現時点で確定して申し上げることは難しいのでございますが、定性的に申し上げますと、まず、長岡工場と宮城工場が営業禁止処分となっておりますので、現在この両工場は完全に停止をしておりますので、牛乳等の製造販売活動は行っておりません。  さらに加えまして、他の全酪連の製品につきましても、大手スーパーを初めとして取引の停止、全酪連の製品の取り扱いの停止ということが生じておりますので、工場によっては二、三割ないし四、五割の操業率の低下という事態も生じております一こういったことで大変大きな損害になっております。  またさらに、学校給食用の牛乳を全酪連の工場が供給していたということがございますが、この長岡工場、宮城工場につきましては、学校給食用の牛乳を供給する者から排除されたということで、県の方から指定工場としての対象から既に除外をされております。  また同時に、私ども、学校給食用の牛乳につきましては国の補助金があるわけでございますが、この両工場につきましては、補助金の補助条件に違反をしているということでございますので、数量が確定次第、畜産振興事業団から補助金の返還を求めるということになるわけでございます。  以上、申し上げましたように、額として確定はできませんけれども、両工場の営業停止のほかに、他の工場でも操業率の低下ということもございまして、大変な損害が生じるという状態にございます。
  62. 矢上雅義

    矢上委員 農水省としては具体的な金額はまだ確定されておりませんでしょうけれども、報道とかをもとに計算しますと、長岡、宮城工場で仮に一カ月営業停止処分になると約七億六千万の損失が出る。また、この間のニュースでは、補助金返還が四千万ぐらいになるのじゃないか。これら二つを合わせても八億円。そしてまた、ジャスコさんとか生協さんから返品されたり取引停止された分を含めると数十億となると言われておりますから、今回の問題は、組織的なきちんとした対応をとるということ、もう一つ、全酪連をここまで追い詰めた理由というものを探っていかなければならないのではないかと思っております。それは、低コスト化を量販店から要求されたとか、それでとうとう持ちこたえられずにどこかでごまかしたという情報もまた流れております。  生産者サイドから言わせると、牛の生理として夏は余り乳量が出ませんが、需要は暑いから伸びる。結局、夏場は飲用乳の牛乳、成分無調整の牛乳としての在庫が足りない。しかしまた、冬になると乳量がふえますが、乳量はふえても寒いと飲む人が減る。それで加工乳の方に、原料の方に回って、脱粉とかクリームとかいろいろ出てくる。  結局、牛の生理というものは年間変動しておるわけでございますが、消費者とか量販店の営業の責任者の方になりますと、牛乳というものは今は工業製品に近い形でもございます。ですから、年じゅう通して成分無調整の牛乳をよこしてくれとかいう要望があったのかなかったのか。やはり今は量販店の方が強いですから、毎日何万本持ってきてくれ、特に成分無調整が人気があるから持ってきてくれとか言われますと、やはりどこかで無理が来る。そのような牛の生理を無視したような商取引とかがあったのか。それとも、もう最初から申しますように低コストだったのか。それとも、ただ単純に工場長が面倒くさいからやったのか。  その辺ちょっと、この不正事件によってもうけた分と損害額とのバランスから考えると、非常に納得できないものがございますので、これがまた二度、三度とありますと、本当に日本の酪農界は滅んでしまいます。どうかその辺の、なぜここまで全酪連が追い詰められたかということに対しては、農林水産省または厚生省、各関係機関の責任を持った調査を私としては望みます。  時間もやってまいりましたので、これで私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  63. 松前仰

    松前委員長 藤田スミ君。
  64. 藤田スミ

    ○藤田委員 今回の生研機構法改正は、国際的なバイオテクノロジー競争がその背景にあるわけでありますが、私は、まずこれに関連して質問をしたいと思います。  一九八九年にアメリカで、遺伝子操作技術の一つである組みかえ微生物昭和電工が製造したLトリプトファンを健康食品として摂取した消費者から好酸球筋痛症候群という病気が千五百十人も発病し、そのうちの三十八人もの死者が出るという大変な食品事故が起こりました。これに関連して昭和電工は、九四年度までで解決金千三百三十三億円を支払ったわけですが、今日もなお、その原因の究明はそれほど進んでいるとは思われないわけです。  その中で原因と考えられるものは、摂取者の体質特定栄養素の大量摂取の体への影響、トリプトファンに混入した不純物などが挙げられていますが、その中でも不純物については、問題を起こしたと考えられるトリプトファンの製造期間が八八年十二月から八九年六月であること、その時期に昭和電工が生産菌株の変更、精製法の変更などを行っていたことから見ると、原因の中でも大きなウエートを占めているのではないかと思われるわけであります。その点、厚生省はどのように原因の検討を進めておられるのか、明らかにしてください。  また、日本でも被害者が出ていると聞いておりますが、その状況はどういうふうになっているのか、明らかにしてください。
  65. 山本章

    山本説明員 御説明申し上げます。  まず、健康被害の我が国におきます状況でありますが、Lトリプトファンを含む食品を摂取した者に対する昭和電工株式会社の対応状況につきましては、これまでに合計三名の方と和解に至ったというふうに聞いております。それから、さらに一名の方とは話し合いが継続しているというふうに昭和電工から聞いております。厚生省といたしましては、このような和解や、そのための話し合いの当事者ではありませんけれども、昭和電工の方が誠意を持って対応しておるというふうに聞いております。  それから、質問へのお答えが逆になって申しわけありませんが、研究状況でありますけれども、厚生省といたしましては、このような食品に含まれておりました不純物の特定、それから動物実験等によります健康被害の発生機序の解明というふうなことを行ってきたところであります。現在までのところ、二種の不純物の特定をするというような研究成果が上がっておりますが、このような不純物と健康被害の関連性につきましては、さらに調査研究を行うことが必要であるというふうに考えております。
  66. 藤田スミ

    ○藤田委員 この昭和電工、日本の被害者のトータルは何人ぐらいいらっしゃるのですか。
  67. 山本章

    山本説明員 被害者というふうな把握の仕方をしておりませんけれども、私どもが聞いておりますのは、国内で二十名の方がLトリプトファンを摂取して何か問題があったようなことを昭和電工株式会社に言ってこられたということで、それで先ほど申し上げましたそのうちの三名の方との和解が済んだ、それから一名の方とはお話し合いが進んでいる、そういう状況だけを聞いております。
  68. 藤田スミ

    ○藤田委員 アメリカのそういう発病した皆さんに対する対応と、随分我が国の被害者に対する対応の違いを昭和電工は見せているというふうに思います。  問題は、民間企業レベルで遺伝子の操作技術によって極めて容易にさまざまな化学物質がつくられ、また製法の転換も簡単に行われる、それが野放し状態になっていて、このような大事故にならないと規制がなされないという点であります。  さらに、今回の法改正でもそうですが、その民間企業のバイオテクノロジー競争に公的支援をどんどん進める、これはブレーキのない自動車にどんどんガソリンを注ぐような状況になっているというふうに思うわけですが、その点どういうふうに受けとめていらっしゃいますか。
  69. 山本章

    山本説明員 私どもといたしましては、この問題については、たまたま国内ではこういう状況であったということで、特に問題はないというふうに思っております。
  70. 藤田スミ

    ○藤田委員 そうしたら、こういう問題が起こっても全然対応していらっしゃらないのですか。もうちょっとはっきり言ってください。全然対応していらっしゃらないのですか。おかしいですよ。
  71. 山本章

    山本説明員 Lトリプトファンを含む食品についての食品衛生上の対応でありますけれども、私の説明がちょっと抜けましたので、まことに申しわけありませんでした。  まず、平成二年三月に、特定のアミノ酸を高度に含有した健康食品を継続的に摂取いたしますとアミノ酸バランスを損ないまして健康に悪影響を及ぼすおそれがあるというふうなことを各都道府県に通知いたしまして、これらの食品についての注意喚起を行いました。また、同年四月に昭和電工等に対しまして、Lトリプトファンを原料とする食品等の回収を指導したところであります。  厚生省といたしましては、その前に申し上げた調査研究も十分行いましたし、それから、今申し上げました食品の回収ということも十分に対応しております。  以上でございます。
  72. 藤田スミ

    ○藤田委員 あなた方は、そういう対応は対応として進めながら、もう一方ではガイドラインもつくっていかれた。ところが、それでもなおこういう問題に法的な歯どめというものが全くないということを私は言いたいわけであります。  ガイドラインもつくられたけれども、ガイドラインというのは法的な拘束力というのがあるわけではありません。したがって、トリプトファン事件のようなものが起こらないという保証は、今日もって法的担保が全くないと言わざるを得ないわけであります。昭和電工はこの問題について刑事責任も問われておりませんし、責任の所在も明確ではないじゃありませんか。  私は、こういうような問題がもう再び起こらない法的な担保というものをつくっていかなければならない、法的整備ということを要求したいわけですが、いかがですか。
  73. 山本章

    山本説明員 組みかえDNA技術応用食品につきましては、この技術が高度な先端技術でありまして、食品分野への応用経験も少ないというようなことを勘案いたしまして、厚生省といたしましては、食品衛生調査会の答申を踏まえて安全性評価指針をガイドラインとして運用しております。このことは、国際的に見ましても基本的には同じような対応が行われております。  また、指針に適合しているかどうかの判断につきましては、個別の食品ごとに食品衛生調査会における検討を行うこととしておりまして、現に七品目につきましては、ことしの三月に申請に必要な資料を添えて確認の申請がございましたので、これを食品衛生調査会に諮問したところでございます。  厚生省といたしましては、今後とも、安全性評価指針等の適切な運用によりまして、食品衛生調査会の御意見を聞きながら、組みかえDNA技術応用食品等の安全確保に努めてまいりたいと考えております。
  74. 藤田スミ

    ○藤田委員 法的な担保もない中でそういうことだけを繰り返されたのでは、これは消費者としても非常に不安です。しかも、あなたは今回の法改正で特別に問題はないという姿勢ですが、これからどんどんこういうものがふえていく中で、私は法的な整備ということを改めて強く要求しておきたいと思います。  もう一つの問題で、稲の育種問題について聞いていきたいと思うのです。  バイオの技術を用いた稲の育種、これはこれまで政府機関中心になって行ってきました。種子法について見れば、臨調答申で種子生産民間活力を導入すべきだと打ち出されたのを受けて、都道府県が原種及び原原種が適正かつ確実に生産されると認定した場合には、民間企業であっても主要農作物の種子生産、販売が行われるように改正され、九一年三月には、種子法の運用に関する通達で、育成品種が奨励品種になっていたり、奨励品種決定試験、またはそれに準ずる試験を行っている場合に限り種子またはその成果物の試験販売を行うことが可能になったわけです。まさに規制緩和の一途であります。  この通達で新たに生産力検定試験が奨励品種決定試験に準ずる試験と位置づけられ、九五年度は、キリンビール、東北電力、全農、日本たばこ産業、三井東圧化学、それから三菱系バイオ企業である植物工学研究所と住友化学などがこの制度を利用しています。まさに大企業がこの制度を利用して、みずから開発した品種の種子や米の試験販売に乗り出しているのであります。  新食糧法では新たに計画外出荷米が設けられたわけですが、この計画外出荷米では、種子法で定められた種子生産の規制が外れていくということになっているのじゃありませんか。
  75. 高木賢

    高木(賢)政府委員 稲の種子につきましては、旧食糧管理法のもとにおきましては、取扱業者を農林水産大臣の指定制とするとともに、その流通につきましては、原則として主要農作物種子法に基づき生産された種子の流通に限定したところでございます。  新しい食糧法のもとにおきましては、米流通全体の合理化を図る中でこれらの措置が廃止されまして、計画外流通米として生産者が売り渡し数量の届け出を行うということで流通できることになったわけでございます。
  76. 藤田スミ

    ○藤田委員 結局、大企業がバイテク技術で新品種の米をつくっていったならば、企業が自由に種子やその種子でつくった米を売ることができるわけであります。そして、その企業が小売店を開設していけば、企業がつくった米をその販売店、小売店で独占的に売ることもできるわけです。そして、それを全国に広げていくこともできるわけですが、それはそういうことですね。
  77. 高木賢

    高木(賢)政府委員 制度の仕組みといたしましては今御指摘のとおりでございますが、稲の種子につきましては、やはり私どもの立場といたしましては、優良な種子の生産、普及を促進するということで、引き続き主要農作物種子法に基づきましての審査制度を維持するという基本的態度でございます。  この制度に基づきまして、公的に品質が保証された優良種子の使用を生産者などに奨励するということを通じまして、今後とも稲の種子の適正な生産、流通を確保してまいりたい、このように考えております。
  78. 藤田スミ

    ○藤田委員 私の聞いていることにまともに答えてください。  私は、これによって大企業の方が生産もできるし販売もできる、小売店を通じて全国に広げることもできる、こういうことを聞いているわけですが、そういうことでよろしいのですね。
  79. 高木賢

    高木(賢)政府委員 制度の仕組みとしては、先ほど申し上げましたように、届け出ということで可能になったということではございますが、企業が種をつくれば何でも売れるということではなくて、やはり生産者は種の品質に非常に関心を持っておりますから、主要農作物種子法に基づく品質保証のない種というものは、民間企業が販売したとしてもなかなか生産者には受け入れがたいのではないか、こう思っておるということを申し上げたわけでございます。
  80. 藤田スミ

    ○藤田委員 品質保証していくのは当たり前のことです。しかし、バイオ技術を用いた稲の育種というのは、これまでは農林省や地方の農業試験場など政府機関中心に行われてきました。ところが、相次ぐ規制緩和と新食糧法によって、大企業がバイテク技術を用いながら生産をしたもみあるいは米、そういうものをしかもみずから販売していくことができるようになったわけでありまして、私は、その方向性というのはまさに米市場を手中に握っていきたいとする大企業の思惑に沿ったものだということを言いたいわけであります。  ところで、この法案の中身に入りますが、農水省は、政府出資について建設国債の発行を財源としているわけですが、なぜ厳しい財政の中で新たに国の借金の増加につながる建設国債を財源にしていかれたのか。また、建設国債を財源にすれば投資的経費とみなされることによって、基礎研究とはいうものの、より実用化に結びつき、その研究成果によって特許実施による対価、つまり資産の帰属が期待されるテーマが選定されることになるのではないか、こういう心配をしているわけであります。  したがって、公募の選定に当たってはどういう基準を持っていかれるのか、また、選定委員会はどのような方針で運営されていくのか、明らかにしてください。
  81. 山本徹

    山本(徹)政府委員 まず、このたびの出資業務につきまして建設国債を財源とさせていただいておりますけれども、今回のこの出資金につきましては、残余財産分配請求権等の出資による権利が確保された資本的支出でございまして、それ自体国の資産と考えることができるものであるということから、建設国債の対象経費とさせていただいております。  研究課題の選定の基本的な考え方でございますけれども、研究課題につきましては、国立の試験研究機関大学、県の試験研究機関等、農林水産、食品産業に関する基礎研究を実施する能力のある機関に所属している研究者から幅広く応募していただきまして、この中から研究課題の選定をさせていただくことにいたしております。  具体的な研究分野の事例としては、高付加価値農林水産物とか食料品用途以外のさまざまな有用物質素材開発とか、あるいは環境浄化に役立つような物質、また砂漠、厳寒地での生育が期待できるような植物開発等々、さまざまな分野での独創的な基礎研究課題応募していただくことを期待いたしておるわけでございますけれども、課題の選定というのは、これは適正、厳正に行う必要がございまして、またこれがこの事業の成否を左右するものでございまして、生研機構に識見あるいはこれまでの研究実績の大変すぐれた広い分野からの専門家から成る審査委員会を設置させていただきまして、ここで選定を行っていただくことを考えております。  この審査の基準としては、独創性豊かな研究であるかどうかといったような研究計画の新規性、斬新性とか、国際的な技術水準から見た研究水準の高さとか、あるいは日本農林水産業あるいは国民生活にこれが将来本当に役立っていくものであるかどうかなどを基準に適正に審査していただくことを期待いたしております。
  82. 藤田スミ

    ○藤田委員 私は、今回の法案は基礎研究充実させるとしているわけですが、本当に基礎研究強化するのであれば、予算のシーリングや定員削減計画をやめて、経常予算を増額して直接それぞれの国立機関大学に支出するべきではないかというふうに考えているわけです。大企業がバイテクで大きな利益を上げる状況の中で、その利益を一層上げるためにだけ国費を投入することは決して好ましいことじゃない。しかも、研究予算の増額というのは、国の機関大学研究者たちにとっては今本当に切実な要求であります。  例えば、私は全く驚くわけですが、筑波の研究学園都市の研究室では、経常研究費と学会参加旅費などの大幅増額ということを大変強く求めていらっしゃいます。それはどういうことかなと思いましたら、とにかく研究費が非常に足りないために窮屈な思いをするとともに、研究室なんかもどんどん縮小されていっている。しかも、学会の参加費は、二分の一は自分たちで持って参加をするというようなことになっていると聞くわけですが、こういう点はぜひイロハのイのところで改善をしていただきたいわけですが、いかがですか。
  83. 山本徹

    山本(徹)政府委員 農林水産分野では、国の試験研究の果たす役割というのが大変大きいものであると考えておりまして、まず経常研究費、これは研究者個々の試験研究費でございますけれども、これにつきましては、これは科学技術庁で統一的に科学技術に関する経費の見積り方針の調整の基本指針というものがございまして、これで各省統一的に対応いたしておりますが、研究者研究の円滑な推進に支障を来さないように各省庁協議しながらこの経常研究費の確保に努めてきたところでございまして、具体的に申し上げますと、私どもの農学・生物学系の予算単価でございますけれども、平成七年度は一人当たり百三十六万円でございますが、平成八年度につきましては百三十七万五千円と、一万五千円の増額をさせていただいております。  また、国際化に対応して、農林水産業体質強化のための品種改良とか栽培技術の改善といったような、現場にとって大変大事な研究課題に対応し現場に直結する研究課題についてもその充実を図らせていただいておりまして、革新的、基礎的な技術等々も含めまして、私どもの平成八年度の農林水産関係科学技術振興費につきましては前年度比五・二%増の八百十億七千三百万円、またこのうちで事業費、これは人件費を除いた、人件費は統一でございますが、事業費につきましては前年度比一〇・四%増の三百六十七億七千三百万円という額を計上させていただいているところでございます。
  84. 藤田スミ

    ○藤田委員 そういう予算の増額の中で、それじゃどうして第八次の定員計画では百二十三の研究室が廃止されるということになるのですか。そしてまたどうして、国内の学会に参加をするということになったら二分の一の個人負担というものがかかってくることになるのでしょうか。
  85. 山本徹

    山本(徹)政府委員 最近の農林漁業情勢あるいは現場の要請に対応した、本当に役立つ試験研究というものを国の研究機関が実施するということは大変重要なことでございますので、本年度の組織改正によりまして、研究室を最近の研究開発のニーズに対応して大型化し、研究がよりニーズに対応して効率的に実施され、研究成果が上がるように工夫をいたしましたり、あるいは地域農業試験場に新しく総合研究部を設けまして、現場に役立つ研究を総合的、集中的に実施するというような工夫をさせていただいたところでございます。  定員が削減されましたのは、これは全体の行財政改革の課題の中で、研究機関としてもその一環として組織、定員の見直しを行った結果でございますけれども、私どもも行財政改革という課題の中でできるだけ、限られた研究員、また限られた予算ではございますけれども、これを効率的、重点的に活用しながら、国民あるいは消費者の期待にこたえる研究成果を出していきたいと思っております。  それから学会の出席の件でございますけれども、これについても、学会にたくさん入っておられる研究者あるいは少ない研究者等々さまざまございますけれども、必ずしも一〇〇%公費で出席できない場合もあるかと思いますけれども、私どもこれはできるだけ今の予算の中で工夫しながら、研究者の負担を過重にしない方向で予算の運用を図っているところでございます。  また、今回の出資金による研究につきましても、これも国の研究者、これに積極的に応募していただくことを期待いたしておりまして、この出資金の中でも、海外旅費あるいは国内の旅費等で必要な研究に取り組んでいただくことを期待いたしております。
  86. 藤田スミ

    ○藤田委員 最後になります。  今の答弁を聞いても、大変苦しいことは大臣も御理解いただけたのじゃないかと思います。旅費の問題については、しかしながらできるだけ自己負担をなくしていくということで努力をしていきたいということですので、私はそのことを期待しておきたいと思います。  私たちは、今回の法律案が正直なところ本当にいろいろな問題点を持っているけれども、しかし現場研究者たち研究予算を増額させてほしい、国の機関大学研究者たちの切実な声があってこの法案に賛成することにいたしました。したがって、私は、地道に基礎研究にいそしんでいる研究者に今回の法改正によって入ってくる研究費が本当に届いていくように政府として十分配慮をしていただきたいということを重ねて要求したいわけです。  また、農水省は基礎研究の実施に当たって、ポストドクターなどを生研機構が積極的に雇用して大学などに派遣することを強く求めたいわけですが、大臣に最後に御答弁を求めておきたいと思います。
  87. 大原一三

    大原国務大臣 大学研究機関等、つとに研究費が少ないということはいろいろな機会に我々も聞いておりますし、いろいろな方から主張されているところであります。この生研機構もさりながら、科学技術基本法なるものも制定されたばかりであり、先ほどから申しますように、基礎研究の重要性ということを考えますときに、微力ですけれども、やはり研究員の諸手当の問題、研究費用の充実等について努力をしてまいりたいと思います。
  88. 藤田スミ

    ○藤田委員 終わります。
  89. 松前仰

    松前委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  90. 松前仰

    松前委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  生物系特定産業技術研究推進機構法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  91. 松前仰

    松前委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  92. 松前仰

    松前委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  93. 松前仰

    松前委員長 次回は、明十一日木曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午前十一時五十六分散会