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1996-02-22 第136回国会 衆議院 農林水産委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年二月二十二日(木曜日)     午前九時五十分開議 出席委員   委員長 松前  仰君    理事 鈴木 宗男君 理事 二田 孝治君    理事 松岡 利勝君 理事 仲村 正治君    理事 初村謙一郎君 理事 増田 敏男君    理事 田中 恒利君 理事 井出 正一君       荒井 広幸君    岸本 光造君       栗原 博久君    七条  明君       東家 嘉幸君    葉梨 信行君       蓮実  進君    浜田 靖一君       穂積 良行君    松下 忠洋君      三ッ林弥太郎君    山本 公一君       木幡 弘道君    須藤  浩君       千葉 国男君    野呂 昭彦君       堀込 征雄君    宮本 一三君       矢上 雅義君    山岡 賢次君       山田 正彦君    渡辺浩一郎君       石橋 大吉君    永井 哲男君       山崎  泉君    枝野 幸男君       小沢 鋭仁君    藤田 スミ君  出席国務大臣         農林水産大臣  大原 一三君  出席政府委員         農林水産大臣官         房長      高木 勇樹君         農林水産省経済         局長      堤  英隆君         農林水産省食品         流通局長    中須 勇雄君         林野庁長官   入澤  肇君         水産庁長官   東  久雄君  委員外出席者         環境庁水質保全         局水質管理課長 南川 秀樹君         外務省経済局海         洋課長     高田 稔久君         大蔵省銀行局銀         行課長     村木 利雄君         大蔵省銀行局特         別金融課長   五味 廣文君         大蔵省銀行局中         小金融課長   石井 道遠君         大蔵省銀行局中         小金融課金融会         社室長     振角 秀行君         厚生省生活衛生         局乳肉衛生課長 森田 邦雄君         農林水産委員会         調査室長    黒木 敏郎君     ――――――――――――― 委員の異動 二月十六日  辞任         補欠選任   荒井 広幸君     武藤 嘉文君   木幡 弘道君     笹川  堯君   須藤  浩君     坂本 剛二君   矢上 雅義君     山本 幸三君   山崎  泉君     森井 忠良君 同日  辞任         補欠選任   武藤 嘉文君     荒井 広幸君   坂本 剛二君     須藤  浩君   笹川  堯君     木幡 弘道君   山本 幸三君     矢上 雅義君   森井 忠良君     山崎  泉君 同月二十一日  辞任         補欠選任   須藤  浩君     笹川  堯君 同日  辞任         補欠選任   笹川  堯君     須藤  浩君 同月二十二日  辞任         補欠選任   金田 英行君     蓮実  進君   須藤  浩君     渡辺浩一郎君   簗瀬  進君     枝野 幸男君 同日  辞任         補欠選任   蓮実  進君     金田 英行君   渡辺浩一郎君     須藤  浩君   枝野 幸男君     簗瀬  進君     ――――――――――――― 二月二十二日  新たな食料農業農村基本法の制定に関する  陳情書外六件  (第六一号)  米の輸入自由化をやめ、食料品安全確保と食  糧自給率の向上、農業振興に関する陳情書  (第六二号)  減反の拡大に反対し、生産調整農家自主性に  関する陳情書  (第六三号)  国際的な資源管理措置枠外国からの漁獲物輸  入禁止措置立法化に関する陳情書  (第  六四号)  森林・中山間地域の支援に関する陳情書外一件  (第六五号)  農業振興対策強化に関する陳情書外二件  (第六六  号)  学校・病院・保育所における給食の国産米一〇  〇%供給に関する陳情書  (第六七号)  国土保全奨励制度に関連する施策の充実に関す  る陳情書  (第六八号)  畑作経営の安定に関する陳情書  (第六九  号)  林業振興対策強化に関する陳情書  (第七〇号)  有害鳥獣・害虫による農林業に対する被害の防  止対策の推進に関する陳情書  (第七一号)  サケ・マス・筋子のセーフガード発動に関する  陳情書外一件  (第七二号  )  二百海里排他的経済水域全面実施に関する陳  情書外十六件  (第七三号)  水産業振興対策強化に関する陳情書  (第七四号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  農林水産業振興に関する件等農林水産業の  基本施策)      ――――◇―――――
  2. 松前仰

    松前委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件等について調査を進めます。  農林水産業基本施策について質疑の申し出がありますので、順次これを許します。栗原博久君。
  3. 栗原博久

    栗原(博)委員 先般、大臣より当面する農林行政の所感を承りまして、大臣のお考えに全くの同感とともに、ぜひひとつ全力を振り絞って日本農業のために頑張っていただきたいと思います。  さて、その中で私は、今日本じゅうをにぎわしておりますこの住専問題、これはもう何にもまさる施策を、判断を求めているものと思うのでありますが、大臣におかれまして、連日予算委員会で御答弁され、また、農協を初めとする農業団体の意を酌みながら国民各層の合意の求められる施策を、住専に対する御判断をされていることについて深く敬意を表する次第でございます。  その中で私は、予算委員会審議を通じて思いますことは、マクロ経済、これから日本経済をどうするんだ、そういうことがどうも欠けておりまして、ただ非難中傷と言うと大変語弊があるかもわかりませんが、足の引っ張り合いのような議論が続いていることに、大変私自身不満であるわけであります。  特にこの住専問題は、やはり日本経済以上に世界の経済において日本が何をなすべきかということ、金融恐慌等が万が一起きた場合、日本のその責任は未来永劫にわたって問われるわけでありまして、住専問題はその点からも敏速に措置をしなければならないと私は思うわけでございます。  ただ私は、きょうのこの委員会質問を通じながら、農林省にも要望でありますが、やはり国民から納得されるディスクロージャー中身を隠さず、すべてをあからさまに公表して、そして国民から納得、合意される措置を講じていただきたいというふうに、まずもって御要望申し上げたいと思います。  さて、国民がこの住専問題に怒っている。要するに六千八百五十億ですか、税金を使う、さらにまた、二次損失についての税の問題等が言われておりますが、なぜ国民が、この問題について非常に関心を示しながら何を怒っているかということについて大臣から御所信をお聞きしたいと思うのです。大臣の思う考えで結構です。
  4. 大原一三

    大原国務大臣 栗原委員の御質問の前提に、日本のこれからの国際的な、特に国際金融市場に対する役割等の大変重大な御指摘がございました。私は、バブル崩壊後の後遺症の中で、特に金融秩序崩壊、そういった危険性をはらんだ、いわゆる日本発国際金融不況と言われるようなものは絶対に起きてはならないという、そういう危機感からこの住専問題は解決に入ったものと認識しております。  我々は、後で御質問があるかもしれませんが、いわゆる母体責任を終始一貫主張してきたわけでございます。いろいろのいきさつがございましたが、昨年の予算編成のぎりぎりの中で、我々としてはこれ以上は負担はできない、これ以上負担しますと農協系金融秩序にひび割れが入る、そういうことで御提言を申し上げた数字が五千三百億円でございました。そういう中で、公的資金の投入ということが最終的に政府決断として決められたわけでございますけれども、これは極めて私は残念なことでございます。いいことだとは思っておりませんが、しかし、先ほど委員も御指摘ありましたように、大所高所からやむを得ない決断であったであろうと思います。  最後の御質問で大事なところでございますけれども、国民の反応ということになりますと、確かにお金持ちの金融機関がいろいろ不始末をしてかした、それに対して何で税金を投入しなければならぬかという素朴な疑問、それが今日のいわば批判対象になっているのではないのかな、中心ではないのかな、こう思っております。  だから、御指摘ございましたように、我々も今まで極力いろいろのデータを出し、ディスクロージャーをやってまいりましたが、委員指摘のように、今後もできるだけ資料の開示をし、国民皆さんの御理解を得たい、このようなつもりでおります。
  5. 栗原博久

    栗原(博)委員 私はまず、国民は一人五千円ですかの税の負担ということがよくテレビマスコミに出ておりますが、もう一つはやはり今の低金利ですね。九〇年の公定歩合六%が今〇・五%でございますから、この中で年金生活者等金利利回り運用で生活されている方もおられるわけですね。そういう中で銀行等は、母体行を中心とする銀行は、この間の利息の低減で約二十五兆円近い利益を得ているというような御批判もあるわけでありますが、そういう中でなぜ我々だけが低金利の中の苦難の道を歩まねばならぬのか、そういうのが多いのですよ。  もう一つは、住宅ローンを高いときに借りた方々、これは銀行からどんどん借りろ借りろと言われまして、実勢価格が今もう三分の一かその程度、その物件に対して毎月多額の住宅ローンを返済せねばならない、こういう方々が恐らく数千万円以上の欠損を抱えていると思うのです。そういう方々が悶々としてやり場のない気持ちを持っているということですね。これは土地政策の失敗も一つ責任を問わねばならぬと思います。  それから、やはりマスコミを通じまして、テレビの中で中傷合戦ですね。もう何せ自民党をやっつければいい、連立与党をやっつければいいという、これは私、極論かもわかりませんが、その中で理を欠く中傷合戦が余りにもマスコミを通じて国民の目の前にさらけ出されてくる。今まさしく景気の回復を求められている今日、そんなことだけを国会議員が議論していていいのだろうか、そういう嘆きも国民からも沸き上がっておることを我々は見逃してはならぬと思うのであります。  また、農家の方も、実際農協に今金は積んでいる、積んでおりますが、これは農業経営をしてためた金ではない。農業をしながら兼業しながら、あるいは地方においては建設業、土方の仕事をしながら汗水流している金を実は農協に積んでおるわけであります。その金が何か、農協が悪い、農民が悪い、こういう批判というものがもはや耐え切れない、こういう地方の声も我々国会議員は率直に感じなければならない。  また、中小企業方々も、今失業率が三・五%という中で、製造業は若干よくなっておりますが、他の流通産業等はまだまだ落ち込みがあるわけであります。その中で、いっときも早く景気を回復してほしい、こういう中でこのような方々がこういう住専の問題について厳しく批判しておる。  私、だから、五千円の国税の負担のみならず、こういう国民各層からの今の国会審議に対する不満というものを我々は真摯に受けとめねばならないと実は思っておるわけでございます。  さて、そういう中で、先ほど大臣住専の問題について、特に母体主義というものをお話をされました。私も大臣のお考えに全く同感の至りでございます。私は、国際市場国際金融機関からも、あるいはまた我が国には約百五十兆円の外国からの金が導入されておるわけでありますし、そしてまた最近の市場を見ましても、ジャパン・プレミアムを見ましても、やはり我が国信用評価が落ちますと当然国益を損なうわけでありますから、一刻も早くこの問題を解決していただかなければならないというふうに思っております。  さて、その中で、野党方々もおられますが、私も予算委員会をつぶさに拝見させていただいておるのですが、どうも母体主義母体責任を擁護する方もおられるし、あるいはまた破産をさせてやれと言う。こんなことをしたらとんでもないことなんです。あるいはまた会社更生法でやれとか、あるいはまた阪神大震災もあるからという感情的な問題で、我々も震災立法もつくっておるわけですから、十二分まだまだ対応できていないと思いますが、それなりの施策を講じている。そこに住専問題と絡めながら感情論でこの住専問題をとらえている。こういう野党に対しまして、やはり新しい党、新進党をおつくりになったわけですから、政策理念の中で新しい党をつくって堂々と一つ政策をまとめて、そして我々といろいろ政策論争でやればよろしいですが、そのときの支離滅裂な話について、それをまた各選挙区でいろいろ言われているようでございますが、十二分に私は反省を求めたいと思うのでございます。  さて、その中で改めて、大臣から先ほどもお聞きしましたが、もう一度お聞きします。重要閣僚の一人であります大臣から、住専問題についてどのように今後取り組むか、特にまた二次損失とかそういうものがあるようでございますが、それについてちょっとお聞きしたいと思います。
  6. 大原一三

    大原国務大臣 今後の取り組みでございますけれども、私は正直に申しまして、これを破産会社更生法等法的手続に訴えた場合には、御承知のように母体行百六十八、さらにそれに融資をした銀行等農協も含めてでございますが約三百、それと住専、三すくみで非常に絡み合ったいわゆる訴訟合戦というような事態も予想される。今回の住専問題がいわゆるバブル崩壊後の日本経済の再生のための一ステップであると考えたときに、なかなかそういう悠長な解決は困難ではないか、さらにまた将来に禍根を残す、さらにまた新たな金融不安を醸成する可能性も生まれるということを考えたときに、現在政府が提案しておりますスキームに沿って我々も協力をしていくべきであろう、こういう気持ちで現在我が省としては臨んでいるところでございます。
  7. 栗原博久

    栗原(博)委員 大臣あるいはまた橋本総理等の答弁の中で、国民もやはりこの責任論、そしてまた、政府がなぜ公的資金を導入してまでもやらねばならないかということについては徐々に理解の度を深めておると思うのであります。  ただ、農家方々が、私も選挙区を歩いておりますと、なぜ我々が悪者扱いのようなことを言われるのだろう、特に野党のある方は、お百姓さんはと言いながら、そういう表現の中で大変農家を中傷しているような言質も委員会質疑の中に見られることは大変私も残念でならないわけであります。  それでちょっと大臣にお聞きしたいのでありますが、一般金融機関お金を集めると預金でございますが、農協貯金と申します。それから郵便貯金貯金というのであります。これは中身に変わりないと思うのですが、大臣、この貯金預金という言葉はどういう言葉というふうにお考えになりますか。もし御所見がありましたら、なぜ貯金というか、預金というかですね。
  8. 堤英隆

    堤政府委員 一般的には、言葉意味といたしましては預金ということで金銭を預けるということでございますし、貯金というのは金銭を貯蓄することだと思います。しかしながら、法律的には金融機関金銭の保管を委託しまして、当該金融機関がこれを運用して、約定の利息を付して返還するという意味では、預金貯金ということも同義ではないかというふうに理解をいたしております。  現実法律の用語を見ますと、貯金を使用しておりますのは、御案内のように郵便貯金法と、それから農協法水協法でございます。その限りにおきましては、イメージ的には比較的零細な貯蓄性の高いものについて貯金という言葉が用いられているのではないかというふうに考えております。
  9. 栗原博久

    栗原(博)委員 私は個人投資家の認識がありませんが、預金銀行に預ける。それによって利回りはいろいろ変わると思うのですが、今は金融自由化ですから、自由化の前からこういう言葉はあるわけですが、貯金金銭を蓄えるという言葉でございますね。だから概して銀行信用金庫、信用組合に預ける金と違いまして、農協とかあるいはまた郵便局に預けるのは、むしろそれをもっと蓄えて、危険はないけれども確実に蓄えるんだ、そういうやはり言葉理念が私はあると思うのですよ。そういう中から見ますと、今回、農協等についてやはり五千三百億の負担を強いることは私は大変残念でならないというふうに思うわけでございます。  ところが、農協は九百万人農家がおられますけれども、実際六十八兆円の金を農協は預かっているというけれども、組合員はその六〇%だと。あとは準組合員が一二%だと。実に六十八兆円の約二三%は農民以外の方が預けているわけですね。あるいはまた農林中金がやっている農林債券ですか、こういうことで実に約九兆二千億も一般から集めているわけですね。  要するに、今いろいろ言われておりますけれども、万が一系統農協関係がおかしくなれば、私の推算ですが、約二十六兆円近い金が一般国民皆さんにも、農家以外の皆さんにも迷惑がかかるわけですから、そういうことを踏まえながら私はこの問題を慎重に対処していただきたいことを、この席をおかりしましてひとつお願いしたいと思うのであります。  経済局長にお聞きしたいのでありますが、この住専問題ですが、バブルが始まり、当然農家から預かっている六十八兆円ですか、その金は単協が使って信連、そして中金と行っていると思うのですが、やはりどっとバブルが始まってから農協系の金が住専に移ったわけですが、それまでは当然どこかに使っているわけですね。あのころ、私は思うのですが、バブル期の始まるころ、証券利回りですね、株とか、要するに債券を買って運用していると思うのですが、そういうものよりも住専に貸した方がそんなに有利であったかどうかということをちょっとお聞きしたいのです。その金を回すわけでしょう、持っている金はどこかから持ってこなければだめだから。
  10. 堤英隆

    堤政府委員 先生御案内のように、貯金単協ベースで六十八兆円、それから信連ベースにおきましても四十六兆円ございます。これは御案内のとおりでございますけれども、基本的には貸し出しをしていくということがこういう金融機関役割ということだと思うのですけれども、そういう意味で大体、例えば信連ベースにおきましても全体の四十六兆円のうち九兆円ないし十兆円のものにつきましては貸し出しをいたしております。ただ、この貸出先もなかなか農業情勢等厳しいものがございまして、おのずから限度があるということもございますので、一部は有価証券等にも運用していかざるを得ないというのが現実でございます。  貸し出しのときの金利とそれから有価証券のときの運用利回りというのはそのときどきで逆転したり、あるいはどちらが高いということはそのときどきで違うと思いますので、一概にはなかなか言い得ないと思いますけれども、やはり信連ベースで見た場合には比較的安全な、当時のことでございますけれども、比較的安全な、信用の置ける融資先貸し出しをしていくということで、貸し出し基本にしながら、どうしても貸し出しだけでは対応できないところについては有価証券運用をしていく、さらに、自分でそういう形で運用できないところは上位機関でございます農林中金に預けていく、こういうビヘービアであったのではないかというふうに思います。
  11. 栗原博久

    栗原(博)委員 今経済局長の御説明ではまだまだ私も納得できないのでありますが、大体農協あるいはまた系統は、預かったお金貸し付け証券運用に回すわけです。それはある程度の割合を定めて行い、危険負担を回避するように恐らく皆さん信連には指導していると思うのですが、この住専を見ますと、とてつもない金がどっと信連から住専に流れておりますね。これは皆さんの今までの農協検査指導等の中からしてやはり常識を外れている行為じゃなかったかとは私は思うのですよ。  それはそれとして、予算委員会でいろいろ審議されておりますこの総量規制の問題、あるいはまた第一次、第二次再建計画等ございますが、その中で、平成五年四月一日付の五農経A第四〇九号の大蔵省銀行局長と連名の通達でございます。これについて、どういう趣旨でこの通達がなされたかということを、農協法の改正に伴う通達だと思うのですが、それをちょっとお聞きしたいと思います。
  12. 堤英隆

    堤政府委員 御指摘平成五年四月一日の指導通達は、今御指摘のように金融一括法におきまして金融機関等の適正な競争の促進を図るという必要性から銀行法とともに農協法を改正いたしまして、一つには信託業務あるいは証券業務への参入、それから二つ目には金融機関経営健全性確保観点から、例えば自己資本比率規制、それから同一人に対しますいわゆる大口信用供与規制、それから先ほども御指摘のありましたディスクロージャー規定の整備ということの措置が施行されたことに伴いまして発出したものでございます。
  13. 栗原博久

    栗原(博)委員 その中で、自己資本の百分の三十五を貸し付けにおいて超えてはならない、あるいは十五億円を超えてはならないという規定が設けられておりませんでしたか。
  14. 堤英隆

    堤政府委員 今御指摘平成五年四月の金融一括法によりまして、金融自由化進展等に伴いまして、金融機関としての経営健全性確保するという観点から他の業態と同様に同一人に対します大口信用供与規制法律上明記いたしまして、原則として自己資本の百分の三十五以内という限度額が設けられたところでございます。
  15. 栗原博久

    栗原(博)委員 そうしますと、県信連等住専に貸しております金はこれに該当、規制の枠にはまりませんか。
  16. 堤英隆

    堤政府委員 住専向け貸し出しにつきましては、金融一括法の施行の際、既に第二次再建計画に従いまして残高維持が行われていたという事情がございまして、この大口信用供与の適用を当分の間行わないということで現在に至っているというふうに承知をいたしております。
  17. 栗原博久

    栗原(博)委員 当分の間行わないということはわかりますが、皆さん農政局を通じて信連等、あるいは県は農協に対しましていろいろ指導検査を行っているわけでありますが、その都度こういう問題については完全に指導対象から外しておったわけですか、局長
  18. 堤英隆

    堤政府委員 検査との関係で申し上げますと、住専につきましては、検査自体は二年に一度大体検査を実施しているわけでございますが、住専につきましては、平成二年までかなり高配当をしていたということ、それから一部平成三年までかなり配当をしているところもございました。  そういう状況の中で、比較的信頼の置ける安全な融資先であったということで、検査段階での指摘は余りないと思うのですけれども、御案内のように平成三年の秋ぐらいから住専経営がおかしくなるという状況の中で、三年、四年、五年、六年、最近におきましては、検査段階におきましても、そういった偏った融資をしてはいけない、あるいは債権管理に万全を期すべきだ、そういう意味での御指摘をしていたところでございます。
  19. 栗原博久

    栗原(博)委員 ぜひ、これからこういう問題におきまして、農協検査指導というものの体制が強化されなければならぬと思います。  特に東京信用組合の後始末、これも機関委任事務に基づいて指導検査というものを、私は勉強不足でわからないのですが、それが原因で東京都がああいう公的資金を課せられていると思うのですが、農協法上も、例えばこれから農協が大型合併してまいりますから、大変預金量も大きくなってくるのです。今は小さい農協ですから、ちょっとおかしい農協があれば合併させて対応できますが、大きくなってまいりますと、わずかの農協を合併させますと、万が一そこに事故が起きた場合、やはり指導監督機関であります都道府県、要するに国の農協法機関委任事務に基づくものによって検査指導をやるわけですから、そういうことが起きた場合、その機関委任事務規定に基づいて、東京の二信組のようなああいう対応を迫られる、そういう責任も今後問われるという可能性はあるのですか。
  20. 堤英隆

    堤政府委員 農協経営破綻をいたしました場合には、やはり基本的には当該農協経営に当たっております者が責任を持って対応するということで、自己責任ということが貫徹されるべきだというふうに思います。  ただ、自己責任だけでは例えば預金者や貯金者に御迷惑をかけるということがございますので、農協の自主的な取り組みといたしまして、御案内のように相互援助制度がございます。それから貯保制度もございます。そういう意味で今回も、預保制度の改正に伴いまして、貯保につきましても内容の充実強化を図りたいということを考えておりまして、そういう意味におきましては、改正の内容も今検討中でございますけれども、全体的に破綻をするような場合に、信用事業の譲渡なり他の組合との合併という形の中で、貯保制度の有効な活用ということの中で対応すべきだというふうに考えておりますが、やはり基本は自己責任の原則ではないかと理解をいたしております。
  21. 栗原博久

    栗原(博)委員 いや、私がお聞きをしているのは、万が一、東京都が行ったああいう事態も法律解釈上求められるのじゃないかということをあなた方に聞いているのですよ。ないですか。
  22. 堤英隆

    堤政府委員 仮定のことでございますので、こうこうこういう場合にはこうなるとなかなか言いにくいわけでございますが、やはり基本的には自己責任原則ということと、それから貯保制度なり相互援助制度という制度がございますので、もし破綻した場合の組合員に対する支援ということは、そういう制度がございますので、そこで対応するべきだというふうに理解をいたしております。
  23. 栗原博久

    栗原(博)委員 私が今お聞きしたがったことは、今後、農協指導あるいはまた検査等について、これを十二分に踏まえて行ってほしいということが私の質問の本当の本旨でございます。  その中で、今農協お金は、住専問題が出てまいりましたから、これからいかに農家から預かっている金を安定的に運用するかということだと思うのです。  私、今のように各単協お金貸し付けして、員外貸し付けばもう認められていますが、そして残った分の三分の二は上に上げるという規定も定款の中に記されておるわけですが、一番大事なことは、これから農協合併が進められてまいりますと、その農協が地元の産業界のためにそのお金を、預金を使われるという、そういう道をこれから広げていかなければならぬと思うのです。  今、私、資料を見ますと、都市銀行農業関係貸し付けがだんだんふえています。昭和六十年から今日まで、六十年に全貸し付けの二・六%であったのが平成五年には六・五%である。約三倍近くふえていますね。ところが、系統農協はさっぱり、そのまま同じ比率でございます。それから、例えば農協の職員一人当たりどの程度貸し付けしているか。二億四千五百万ですね。ところが一般銀行は、都市銀行は十四億ほどの貸し付けを行っているわけです。ですから私は、住専問題を飛び越えて農協はどうしてこれから生きていくか。農協の豊富なお金を地場産業に使えるという門戸を開かなければならないと思うのであります。  その場合、予算委員会でもいろいろ議論しておりましたけれども、なかなか審査等は難しいとおっしゃっている。ではその場合、大蔵省お越しと思うのですが、農林省からもお聞きしたいのですが、中小企業信用保険法があります。その中で各県に信用保証協会があるわけですが、農協お金信用保証協会の保証つきで貸した場合、事故率は極めて少ないわけでありますね、地元の自分の市町村の事情もみんなわかるわけですから。ただ、最終的な責任信用保証協会に負ってもらう、今一%の信用保証料を取られるようですが。こういう点は今の、現行法上は難しいと思うのですが、健全な農協経営をするためにはこういう門戸を開かねばならぬと思うのです。これについて農林省と大蔵省からお聞きしたいと思うのですが。
  24. 石井道遠

    ○石井説明員 今先生から御指摘がございました信用保証協会、これは先生もう既に御存じのとおり、中小企業者等の方が金融機関から貸し付けを受ける際に、その債務を保証いたしまして、中小企業者等の方に対する金融を円滑にするというのが制度の目的でございます。保証協会が保証を行いました場合には、それを原則としまして中小企業信用保険公庫の保険に付しておるところでございます。  このような制度の基本的な考え方を踏まえまして、この中小企業信用保険公庫の保険の対象となる保証債務の相手先金融機関、これは現在政令によりまして中小企業金融に広く結びついております銀行、信金、信組、商中等のいわゆる中小企業専門金融機関、これを対象といたしておりまして、御指摘のとおり現在の制度のもとでは農協等はその対象となっておりません。  それでこれは、農協等が行います貸し付けが、原則といたしまして組合員の方に対する貸し付けである。これらの貸し付けにつきましては、別途、農業信用基金協会によります債務保証あるいは農林漁業信用基金によります再保険の対象といった付保制度が現在ございますものですから、そういう制度が既に確保されておるという考え方に基づいておるものと理解をいたしております。
  25. 栗原博久

    栗原(博)委員 ありがとうございました。  だけれども、それは農業関係だけですから、あなたのおっしゃった農業信用保証協会は。私の申し上げているのは、一般の員外貸し付けのことを申し上げているので、ぜひひとつ大臣、こういう点、制度の改正をして安定的な資金の供給というものをひとつお願いしたいと思います。  それから、ちょっと申しわけありませんが、やはりこういう状況ですから農業団体もリストラをせねばならぬ。農協も、系統は約四十万人いるそうですし、農業共済が一万人、あるいは土地改良区も相当おる。これからやはり農業共済、土地改良区、農業団体もリストラをせねばならぬと思うのですが、ぜひそういうことについても御指導賜りたいと思います。  それで、私はこの前、栃木県のあるところに行きましたら、蟇沼堰という土地改良区の方が、東電からの補償金を、もらった二億幾らの金が、土地改良区で償還金に充てるのがどうもおかしくなっているような話があったのですが、私はやはり、今ウルグアイ・ラウンドとかいろいろな中で大変苦難な道がある、各農業団体、土地改良区等に適切な検査指導体制を行いまして、農家方々国民がみじんも不信を抱かないような、そういう検査体制をお願いしまして、私の質問を閉じさせていただきます。ありがとうございました。
  26. 松前仰

    松前委員長 千葉国男君。
  27. 千葉国男

    ○千葉委員 新進党の千葉国男でございます。  去る、大原農水大臣の所信表明のうち、本日は特に住専問題について絞って質問させていただきたいと思います。  質問に先立ち、私の住専問題についての基本的な考え方を申し上げたいと思います。  第一に、私たち新進党は、昨年十月十七日にペーパーを発表いたしまして、母体責任を明らかにいたしました。  第二に、小沢党首の代表質問で主張をしたとおり、六千八百五十億円の税金投入は予算案から削除せよ、住専税金を使うなと、今私たちは国民運動を展開しているところであります。私も、週末になりますと地元宮城、仙台市で税金投入反対の街頭キャンペーンをさせていただいておりまして、党政審会長の愛知和男先生ともどもに毎週街頭に出て署名運動を続けているところでございます。  こうした実態を見たときに、県民の皆様のこの住専に対する税金投入の怒りというものは大変なものがある、こういうことをよく知っていただきたい、こう思っております。  それから第三に、予算委員会質疑を通しまして新進党の同志が訴えましたように、住専の実態究明、責任の所在を明らかにするためには、法的処理が絶対必要である、このように思います。次々に明るみに出る住専のずさんな経営金融機関としての自覚のなさはあきれるばかりであります。行政は残念ながら責任のなすり合い、これでは国民皆さんの納得は得られない、こう思う次第であります。  最近の地元の新聞等の声の欄を見ても、住専経営の実態を明らかにせよ、経営者の処罰を厳しくせよ、その経過を情報開示せよ、その上で公的資金がなぜ必要か橋本総理が直接国民に問いかけるべきだ、こうした趣旨の投書が連日掲載されております。これが国民皆さんの真実の声であると思います。  若干前文が長くなって恐縮でございますが、大臣に率直にお伺いをしたいと思います。  これから九六年度の予算案を審議しようというときに、その予算案をつくった最高責任者である村山総理がいない、所轄官庁の武村大蔵大臣がいない、省の事務方の責任者である篠沢次官もいない、いないいない尽くしのこの予算案であります。  私は、そういう意味で、もう前代未聞の無責任な予算である、こう思っておりますが、大臣がこの住専国会を前に農林水産大臣に就任されたわけでありますけれども、就任に当たりまして橋本総理から、こうした状況を踏まえてどんなお話があったか、お聞かせをいただきたいと思います。
  28. 大原一三

    大原国務大臣 橋本総理から農林水産大臣をと、図らずも、私、それまで何大臣になるかよくわからなかったのでありますが、何か大臣になりそうだということは昼ごろから気配を感じておりましたけれども、いざ入りまして、農林水産大臣を引き受けろと。  それで、ちょうど久保大蔵大臣も列席をしておられましたが、よく連携をとって、特に住専問題は重要であるから真剣にこれに取り組むようにと、簡単に短い言葉でございましたが、さような指示を受けたところであります。
  29. 千葉国男

    ○千葉委員 大臣、昨年十二月十三日の衆議院予算委員会で、野呂田前農林水産大臣住専問題についての発言をしております。  時間の関係上、省略してポイントだけを申し上げさせていただきたいと思いますが、まず野呂田大臣から、母体行が破綻の原因をつくった、母体行の責任において処理すると誓約書を出した、こういうことがあるわけですが、こういう事情を聞いた上で前大臣と引き継ぎを行ったのでしょうか。
  30. 大原一三

    大原国務大臣 野呂田大臣とは大変私も親しい仲でございまして、今回の住専問題に対するいろいろの大臣のこれまでの考え方というものについては詳細に引き継ぎを受けました。  その基本的な内容の一つは、農協としては内部留保その他は薄い、母体行は内部留保が非常に厚い、そういう状況の中で今回の負担は非常に厳しい。もともとこの責任母体行が負うべきである。住専の設立経緯、そしてその経営というものには農協は、系統はタッチしておりません。平成三年そして五年、この間に至る経営内容のいろいろのひずみ、こういったものの情報の開示が我々系統には何ら行われていない。しかしながら、事ここに至っては、我々としては何らかの協力をしなければならぬが、本当は五千三百というのも非常に過重な負担だ。いろいろの信連の計数内容等を、経理内容等を調べてみますと、これで三十くらいの経常利益の赤字が出る。これ以上はとても負担することはできないぎりぎりの負担である。しかしながら、それにもかかわらず、金融秩序の維持のためには涙をのんでこの問題はやはり引き受けざるを得なかったということを非常に強く強調されました。
  31. 千葉国男

    ○千葉委員 引き継ぎの内容についてはよくわかりました。  実は、二十日の閣議後の記者会見で久保大蔵大臣が、住専母体責任について今お話があったような内容と、もう一つ農林系金融機関経営陣の責任について言及されております。農林系金融機関経営陣の責任についても、損失負担が「五千三百億円であっても、組合員にとっては損失だ。金融機関経営者としての責任を免れてよいものではない」、こういうふうに発言をされておりますが、大臣、この見解をどのようにお受けとめでしょうか。
  32. 大原一三

    大原国務大臣 予算委員会でも大蔵大臣並びに私からるる同じような御答弁を何回もいたしたわけでございますが、大蔵大臣も、第一次責任母体行にある、御承知のように、母体行は住専の出資者でございまして、その経営内容に深く関与しているわけですから、第一次責任はあくまでも母体行だ、こういう御表現であったと思います。  そしてそれに貸し込んでいった我々が、系統が無責任であったということは言えない。やはりその過程においていろいろチェックすべき事態もあったのではないのか。やむを得ざる事態もたくさんございましたけれども、私は、その結果責任は免れることはできないであろう、このような意見をるるしたところでありまして、恐らく大蔵大臣の発言と同じ考え方だと思います。
  33. 千葉国男

    ○千葉委員 今の大臣の御発言の中で、第一が母体行である、第二はというのはなかったわけですね。その中で、結果として農協系金融機関が多額の融資をした、これについての結果責任について今言及されたわけですけれども、住専というのは単なるノンバンクである。そしてもし住専が破綻した場合は、今度は住専に大きく貸し込んでいる金融機関の破綻のおそれがある。いわば二次災害であるわけです。その時点で初めて、言われているところの金融秩序に対して大きな影響が出てくる。  例えば金融機関の中でも都銀、地銀、信託、いろいろ金融グループがあるわけですけれども、ところが、この系統だけが貸出残高といいますか、五兆五千億円、多額の残高が残っている。要するに、住専が破綻した場合に民間金融機関での共倒れというのですか、それは極めて少ない。系統だけが被害を受ける。一般的には住専問題イコール系統問題である、こういうふうな批判もあるわけなのですね。ですから、今大臣がおっしゃったように、この系統の機関は各機関に比べるならば体力がない、これは皆さん認めているところでありますが、ここで初めて二次災害が出てくるのだ。  そういう意味で、今回の処理で決まった六千八百五十億円の公的資金の導入というのはやはり系統救済の性格が強いのではないか、あるいは母体行や銀行から言わせると不公平ではないか、こう言われるゆえんがあるわけなのですが、これに対してもう一度大臣考え方を明らかにしていただきたいと思います。
  34. 大原一三

    大原国務大臣 何回も申し上げますように、五千三百億円というのは、最近予算委員会でも流行の言葉になったのでありますが、ぎりぎりの負担である、こういう考え方で我々は提示をしたわけでございます。  御承知のように、系統の組合金融というものの本質、これは民間金融機関とは質的に違っております。ということは、内部留保を厚くしないでできるだけ組合員に還元するというのが組合金融の本質でありまして、ここが民間金融機関と違うところです。利益は農家へ還元しよう、金利のほかに、いわゆる利用分量分配というような配当政策によって手厚く還元していこうというのがいわゆる協同組合金融の本質であります。したがって、内部留保と申しますのは資本準備金と資本金を除きます法定準備金、これはつぶれたときに使うものでありますから、そうでない、いわゆる有価証券の含み益とか、あるいはまた貸倒引当金、任意積立金、農協では特別積立金と言っていますが、この積み立てばできるだけ薄くという形で、最悪のペイオフの場合に考えていかなきゃならぬということで、わずかに一兆三千億しかございません。  それに対して民間母体行全体を見ますと、約二十兆円という内部留保をお持ちでございます。これは昨年の三月の数字でございまして、現在、株式が一万七千円から二万一千円に上がりまして、その内部留保はさらに厚くなっておる。  こういうことを考えますと、委員指摘のように、我々としては現在の負担がぎりぎりだということはそういった面からも申し上げたわけでございまして、六千八百億円が農協救済のためにという論理は我々としては受け入れていないところでございます。
  35. 千葉国男

    ○千葉委員 ですから、その最後の、農協救済でないという理解をしていただくために、やはりもっときちっとした言い方が必要じゃないか。今のように現場サイド中心の理論を幾らやっても、皆さんに対する、一般世論に対する説得力は私は弱いと思うんですよ。もうちょっとその辺のところを、母体責任であるということについては私も異論のないところでありますけれども、やはりそういう意味で、そういう批判があることに対して、精いっぱいきちっと事情を理解できるようにお話をしていく、これが大事だと思いますし、今のように銀行農協系中身の話を幾ら言っても、これはもう当然それぞれの事情があるわけですから、そういうことであっては説得力がないと思います。  それで、今の大臣のお話にもありましたけれども、この大臣の所信表明を何度も読ませていただきましたが、私は、この質問予算委員会でしないで農水委員会でやっているというのは、あくまでも、我々農林水産を担当する者として今後どのような日本農業をつくっていくのか、あるいはまたそういう農協系金融機関があるべき姿を求めていくのか、そういう与えられた担当という立場で申し上げているわけでございます。そういう意味では、使命を自覚して、あるべき姿を目指すときには改めるのに悔いがあってはならない、やはり反省すべきところはきちっと反省するところから成長や前進があると思います。大臣の所信表明を何度も読ませていただきましたけれども、そういう農水省としての基本的な姿勢からの反省の言葉が全然ありませんけれども、その辺はどう思われているんでしょうか。
  36. 大原一三

    大原国務大臣 予算委員会でも何回も反省という言葉を私は使わしていただきました。  現在、委員指摘のように、農協系のリストラということは、既に農協それ自体が、三段階から二段階へ、これを二〇〇〇年までには実現をしたいという、思い切ったリストラ構想を出しているわけでございます。この点は、委員十分御存じのはずであります。  それにかてて加えて、今回の住専問題を契機として、やはり信用秩序、特に系統信用秩序のあり方を抜本的に見直さなければならない。それがためには、農林中金法と農協法金融秩序にかかわる統今ないしは調整というのを思い切ってやりまして、そうしてできるだけ多く農家に還元できるためにはどうしたらいいのか。先ほど自民党の委員からも御指摘ございましたように、員外貸し付けの二〇%なんというものも現状でいいのかどうか。さらにまた、組合組織である現在の仕組みの中にありながら、なおかついわゆる内部留保の層を厚くしていったり、あるいは農林中金により多くの金を集中して国際金融市場へもっと積極的に乗り出していったりするようなことも今回の改革では考えていかなければ、七十兆円という巨大な資金が農業それ自体の中にじっと居座っていては、なかなか将来の再構築は難しいんではないのかなというところまで考えていきたい、こう思っております。
  37. 千葉国男

    ○千葉委員 ぜひそういう方向性でしっかりと取り組んでいただきたいと思います。私たちもそういう基本姿勢で一緒にさせていただければありがたいと思います。  先ほど、久保大蔵大臣の、銀行経営者としての責任論が出たわけですが、大蔵省来ていますでしょうか。その久保大臣の話の中で、「住専向け債権の全額放棄が損失負担限度」としていることに対し、「これで責任が果たされているかというと、そうではない。債権放棄をさせられた被害者だという考え方があるなら、とんでもない」、こういうことで、「損失負担以外の面でも責任を取るべきだ」、こういうお話が出ているわけなんですが、この辺についてどういうふうに考えているのでしょうか。
  38. 振角秀行

    ○振角説明員 大蔵省の金融会社室長でございます。お答えさしていただきます。  先ほど先生から、久保大蔵大臣の二十日の閣議後記者会見での発言の紹介がございましたけれども、我々としても、住専問題の処理に当たりましては、住専経営責任を初めまして種々の責任の明確化等を図ることが必要不可欠だというふうに考えておるところでございます。  その中におきまして今回の処理案は、いわゆる母体行につきましては、人的あるいは資本的にいろいろ関与してきたということの経緯を踏まえまして、三兆五千億円の住専向け債権の放棄という、母体行に言わせると、法律上可能な限りの最大限の負担をしておるということでございますけれども、大臣が申しましたように、今後国会の御審議等の中でさらに法律上あるいは民事、刑事上いろいろな責任もまた出てくると思いますので、その辺が明らかになりますとまた母体行の経営責任についても、それに加えて厳正に対処する必要があるのかというふうに考えておるところでございます。
  39. 千葉国男

    ○千葉委員 今回の住専スキームは、先日の武村元大蔵大臣の参考人招致の中で、政治的決断であった、こういうふうなお話もありました。ある意味で、その中で決定的な役割を果たしてきたのが大蔵省とそれから農水省における覚書問題、あるいは誓約書問題である、こういうふうに思っております。昨日、誓約書について大蔵省の方へ資料提出をお願いしたわけなんですが、現在、いろいろなところへの了解をとっている最中なので出せない、こういうふうなお答えでございました。  一方、金融関係の中では農協系は、テークノートの問題もあって、今回の中での解決を目指してさまざまなやりとりのあった中で、かなり密室で行われてきて、後からになって明らかになってくる、こういうケースが非常に多いわけなんです。農協系方々に聞いても、今回出てきた提出資料、三百ページになんなんとする中でもほとんど農協系の資料じゃないか、大蔵省関係は全然出てない、こう言っているんですが、この情報開示の姿勢についてどこまで今腹を決めているのか、教えていただきたいと思います。
  40. 振角秀行

    ○振角説明員 お答えします。  今回の住専問題の処理につきましては、先ほど申しました責任の明確化とともに、透明性の確保、いわゆる情報開示ということが非常に重要だと考えておりまして、当方としても、先生から御批判いただきましたけれども、従来、国会からの資料要求を待って対応しておったのが従来の経緯だったのですけれども、国会開会前にもできるだけ開示できるものを開示しようということで、三百数十ページ、そのうち農林系統は、正確に覚えておりませんけれども、その半分ぐらいたしかあったと思いますけれども、大蔵省としても前向きに対処させていただいたところでございますし、それ以降、国会のいろんな要求に対してもできる限り対応したいということでやっておるところでございまして、先生の御指摘のありました母体行からの文書についても、基本的には出す方向で今母体行の了承をとりつつあるということでございますので、今後とも適切に対処してまいりたいと思っております。
  41. 千葉国男

    ○千葉委員 次に、住専の問題の経過をたどって、基本的な問題についてお伺いをしたいと思います。  私は、この経過の中でポイントは三つあると思っております。一つは、八〇年十月の、農協系住専向け融資について、いわゆる員外規制、それでまた、それを通して住専がその他の金融機関扱いになったというところ。それから、九〇年三月の、やはり総量窓口規制、これにかかわる問題。そして、九一年から二年にかけて行われた住専七社の第一次再建計画、あるいはまた、その中で行われた立ち入りの緊急調査。こういう問題の中に実はさまざまな、今回の問題の大きなかぎが潜んでいるのじゃないか、こういうふうに思っているわけです。  そこで第一番目に、まず八〇年、昭和五十五年なんですが、信用農業協同組合連合会の農業協同組合法第十条第九項第三号に規定する「その他の金融機関」ということについてちょっとお伺いをしたいと思います。  この段階、員外規制をするところで、要するに住専が「その他の金融機関」扱いになる。そこで私は、位置づけはそれはそれでいいと思うんですが、その中で、この住専から貸し出される、そういう内容について、次のような言葉遣いがあります。「その資金使途は、住宅(住宅の用に供する土地及びその土地の上に存する権利を含む。)の取得に必要な長期資金の貸付けのために必要なものに限る。」こういうふうに貸し出す方の農協系は「住宅」という言い方で書かれております。借りる方の住専規定ですけれども、そちらの方は、ほとんど同じ文章なんですが、「主として住宅(住宅の用に供する土地及びその土地の上に存する権利を含む。一の取得に必要な長期資金の貸付けを業として行う者で大蔵大臣の指定するもの」。貸す方の信連は、「住宅」と明確に言っています。借りる方の、貸金業の規制等に関する法律施行令の中で住専側の方は「主として住宅」、こういうふうな言葉遣いになっているんですが、この言葉遣いの意味について、基本的な考え方を教えていただきたい。
  42. 堤英隆

    堤政府委員 御指摘のように、貸金業法におきましては、「主として」ということで「住宅の取得に必要な長期資金の貸付けを業として行う者」ということになっております。そういう意味で、貸金業法上は住宅取得資金の貸し付け以外の業務が行い得るということになっているところでございますが、今先生もおっしゃいましたけれども、昭和五十五年に員外貸し付けの例外というふうにしました理由といたしまして、やはり一つには、一般個人に対することも含めての住宅金融を補完するものとして、信用力のある金融機関である母体行が設立し運営しているということと、大蔵大臣によって指定されているということ、それからやはり我が国の住宅政策上、住専が住宅資金の供給という重要な社会的、公共的な役割を果たしているということに着目をいたしまして指定したものですから、したがって、信連から出されますお金につきましては住宅の資金の用途に限りますよというふうにした経緯があるわけでございます。  その場合の「住宅」という範囲は、個人住宅ローンだけでなしに、住宅開発事業者等が宅地開発をするとか、あるいは住宅建設をするという場合も含めて、広い意味での住宅の資金に限るという形で対応させてきているということでございます。
  43. 千葉国男

    ○千葉委員 この議論をなぜやるかといいますと、要するに、「主として」という意味は、個人住宅ローンが七、八割で、残り二、三割が不動産関連融資、こういうふうに理解されてきたということが基本にあるんじゃないかと思うんですよ。  例えば、私、宮城県ですから、宮城県の話で恐縮なんですが、結局長い目で見たときにこの員外規制が外れて、当初宮城信連住専に対して一社に貸し出していたのが二十七億程度であった。それが今振り返って今日になると、もう一社につき八十億。わかりやすく言いますと、住専七社ということですから、八、七、五十六、五百億の金が住専に流れるようになったという一番の出発点になっているのが、まさにこの員外規制の問題にあるわけなんですね。  ですから、そのときに、貸す側としての信連基本姿勢というものが僕は問われているんじゃないかと思う。貸す方はイメージとして「主として住宅」だけだと思ったら、借りる方は住宅もあるけれどもいろんなものがありますよということが、実は後になって第一次のいろんな資料公開がある中で、総合住金の第一次立入調査の資料の融資状況を見ると、ラブホテル、パチンコ店など住宅に全く関係のない業種への融資が多いことであるとか、あるいは紹介案件がほとんどであるとか、こういうことが実際に生データで出てきております。極めて危険な状況であるとかそういうのもありまして、要するに内容的に「主として住宅」ということでいったものが、いつの間にか拡大解釈されて、あらゆるものにお金が使われていった。  だから、住専はそういうずさんな経営、放漫な経営ということでこれから糾弾されなきゃいけないと思いますが、先ほどから出ている農家方々のとうとい貯金信連へ預けられた、信連が預けられて、さっき大臣が言ったように内部留保しないんだ、還元するんだ、還元しなきゃいけない。そういう人たちのとうといものであるという姿勢からいくならば、やはり最初の基本考え方というのをもっと厳守すべきではなかったのか、こう思うんですが、どうでしょうか。
  44. 堤英隆

    堤政府委員 考え方につきましては今先生の御指摘のとおりでございますし、私どもも、運用におきましてはそういうことで住宅の取得に必要なものに限るということで通達を出していたわけでございますから、あくまでも住専からの貸し付けにつきましては、そういった住宅の用途に限られているというふうに思っております。  ただ、その際の住宅の範囲が、先ほどもちょっと申し上げましたように、個人住宅ローンから、住宅開発事業者等が、例えば私どもが住宅を取得する場合に分譲宅地という形でありますとか分譲住宅という形で購入する場合が多いわけでございますが、そういうものも含めてこれは住宅の取得に必要な資金ということととらえておりまして、そういう意味では、あくまでも信連貸し付けにつきましては住宅の資金ということで充てられたということで、かつその範囲に入っているというふうに思っております。
  45. 千葉国男

    ○千葉委員 同じく五十六年の信連協会の通達の中で、「信連の住宅金融会社貸付最高限度額の届出について」という項があるんですが、その中の「その他」という記載の中で、「先発七社に対する全国貸付限度及び信連別配分方法については、当分の間特別の枠は設定しない。」こういうのが記されているんですが、この内容はどういうことでしょう。
  46. 堤英隆

    堤政府委員 信連という民間の団体の内部文書ということでございますので、どういう経緯で五十六年ころにそういうふうな文章が書かれているかというのは、私どもとしてはちょっとはっきりし得ないところでございます。  ただ、はっきり私どもとして申し上げられますのは、五十五年通達に基づきまして、信連住専への最高限度の届け出というのは、あくまでも各信連が自主的に定めた計画額を信連協会が取りまとめた上で農水省それから大蔵省に対しそれぞれ行われたわけでございまして、行政庁として特に信連への配分に、例えば特別枠を設定する、そういう性格のものでは全くないわけでございますので、私どもはそういうことが行われたという事実を把握いたしておりません。  ただ、冒頭申し上げましたように民間団体の内部文書で、どういう経緯でそういう文章が入ったかということにつきましては、詳細は承知し得ないところでございます。
  47. 千葉国男

    ○千葉委員 ですから、信連通達を出すのに、銀行局とか経済局の了解とかそういう指導を受けないで勝手にやるということはあり得るんですか。
  48. 堤英隆

    堤政府委員 勝手にやるといいますか、信連の協会が文書を出します際に、事前に私どもがそれをチェックしたりとかそういうことはございませんので、どういう経緯でそういう文章が入ったかということについてはわからないわけでございますが、いずれにしろ、届け出業務をやっておりますので、届け出業務に当たりまして信連協会は各信連からの計画を取りまとめたということでございますが、こういった事務手続があるいはそういう文書というふうになったのかもしれませんが、それ以上の事実については、私どもとしては把握し得ないところでございます。
  49. 千葉国男

    ○千葉委員 それではちょっと次に移りますが、きょうの新聞に、「農林系「協同住宅ローン」 不良債権三千四百億円 住専処理案の枠外」、こういうのが出ておりました。  今回、住専八社ではなくて住専七社である、こういうことになったのは、協同住宅ローンは八九年ごろに一部の不動産業者との関係が社会問題化した、我が党の草川さんの質疑を通して明らかになったわけでありますが、その後の融資に慎重になり結果的にバブルの傷が一番軽かったということで、先日来二千億程度の不良債権ではないのか、こう言われていたのが、もうきょう現在になると一気に三千四百億円になっている。この実態はどうなんでしょうか。
  50. 堤英隆

    堤政府委員 協住ローンにつきましては、今先生御指摘のように、昭和六十三年ころ問題が生じましたものですから、本来の設立の目的に沿いまして事業運営を確保していこうということで、不動産関係業務を整理するとか、それから投機的土地取引に係ります融資の排除に万全を期すという形で融資基準を設けたり、あるいは審査体制の改善ということを図ってきておりまして、そういう意味では問題の拡散を比較的早い段階から防ぐことができたというふうに理解をいたしております。  ただ、ほかの住専のめぐる状況ということは協住ローンにもあるわけでございまして、協住ローンの経営自体もなかなか厳しいものがございます。大蔵省の昨年の七月から八月に行われました調査結果によりまして、不良債権額が約三千億円、うちロス分が二千億円ということでございまして、新聞の報道の数字は私どもは全然わかりませんけれども、私どもとしては、大蔵省の最新の調査データが正しいものというふうに理解をいたしております。
  51. 千葉国男

    ○千葉委員 私の理解は、そういう以前にあった都市企画設計の問題とかあるいは最上興産グループの問題を通して相当協住ローンは自覚をして、そして対応した、だから被害が少なかったんだ、こういう理解をしております。  ですから、そこでまず、自分自身の母体である農協系母体でつくった協住ローンの体験あるいは貴重な教訓を通して、不動産にかかわるものというのは非常にリスクが大きいぞ、あるいはいろいろな場面で注意深く運用していかないと大変だぞ、こういうふうなことをしっかり勉強したのじゃないか、こういうふうに思っていましたが、きょうになってみると、こういうふうにそれが何か五四%にわたってもう既にそういう危険な債権になっているということを考えると、勉強したようなつもりでいたのが、また自分のところで過ちに走る可能性のところへ行っているなと。  それだけ自分のところで要注意してやったんだから、ほかの住専七社についてもそういうことが当然行われているだろうと。そういうことを自分のところでも失敗した。いろいろ聞いたら、いや、それは信用です、もう母体行がついていてやっているんですから、住専はよく専門家もそろっているんだから、まさかうちでも注意しているようなことをあちらさんが注意しないで、そんなずさんな放漫な経営やっているとは思いませんでしたというのが、そういう農林系金融機関皆さんの、私がずっといろいろなところを歩いて回って聞いた話の共通したところですよ。  自分のところでも失敗したその経験が自分のローンにも生かされない。そういう感覚では、外に対しては、もうただただ向こうはすばらしい人なんだから、ともかく我々だまされた方は頭が悪いのは認めるけれども、だます人とだまされる人はどっちが悪いんですかというような議論で言うような金融機関の発想では私はどうしようもないと思いますが、どうですか。
  52. 堤英隆

    堤政府委員 総量規制の前後に信連からの住専への貸付額がふえていったことに対応して今御指摘の点があるというふうに思います。  当時の事情としましては、やはりこれも申し上げたわけでございますけれども、信連にとりまして、住宅の需要ということに対応していくという意味で社会的公共性が非常に強かった、そういうものにこたえていく必要があったという事情があったとか、それから、貯金量が非常にふえた中で貯貸率が非常に低下いたしまして、五年くらいの間に二〇%以上低下するという状況の中で、やはり自己の経営の努力ということで貸し出し中心に努力をしていこう、そういうような状況があったものですから、総量規制という全体の通達の中におきましても、他の業態のようには十分に効果が上がらずに融資枠が拡大していったという経緯があると思います。  そういう中におきましても、協住ローンを見ればそういうことがわかったのではないかという御指摘もあろうかと思うのですけれども、協住ローンは、先ほどおっしゃいましたようにああいう個別の事案が生じまして国会等でも御議論があって、そういう中でさまざまな手を打ってきたということの中で、比較的傷が浅いといいますか、そういう状況になっているわけでございまして、このことをもって他のことを類推すればよかったという御指摘もあるわけでございますけれども、ただ、やはりそれぞれの会社はそれぞれの会社の事情があるものですから、それでは、自分の会社がこうだからといって他もそうだということでそこの経営状況まで知り得たかということになりますと、なかなかそういう面での難しい面はやはりあったのではないかなというふうに理解をいたしております。
  53. 千葉国男

    ○千葉委員 今出ました九〇年の総量規制の問題についてお伺いをしたいと思います。  一番の問題は、通達が二通出ておりまして、一方は銀行局長名で「土地関連融資の抑制について」、もう一方が、銀行局長名と農水省の経済局長名で、同じタイトル、「土地関連融資の抑制について」、こういうふうになっているわけです。それで問題は、銀行局長の方には、いわゆる総量規制の趣旨徹底のほかに「上記の趣旨に鑑み、当面、不動産業及び建設業、ノンバンクの三業種に対する融資の実行状況を報告するよう併せて貴傘下金融機関に周知徹底方願いたい。」こう書いてある。経済局長の方にはこれが入っていない。  それで、それに対して、これまでの答弁を聞いたところ、既にそうした報告はとっているので今回通達の中には入れなかったんだ、こういうことなんですが、先ほどの一番最初の問題で出ました昭和五十五年のそういう設立の話からいきますと、結局五十五年にそういう報告書をつくるように言っているわけでありまして、この通達が発せられた背景というのは、バブルの高騰、これを何とか抑えていかなければいけないということで通達が発せられている、それが当時の橋本大蔵大臣の趣旨であった。それに対して経済局長のお話は、それは当時そういう報告書をもらっていたので外したんだ、こういうことなんですが、その辺はどうなんでしょう。
  54. 堤英隆

    堤政府委員 これは、今おっしゃったとおりでございまして、平成二年三月に施行されましたいわゆる総量規制通達におきまして、農協系統についての不動産、建設、ノンバンクの三業種に対する融資の実行状況の報告の取り扱いということでございますが、住専に限って申し上げれば、今御指摘のように、昭和五十五年に通達が出ておりました段階で、農水省それから大蔵省に対しまして貸し出し状況の報告ということが入っておりましたので、重ねての実績報告は要らないだろうということで私どもとしては報告をとらなかった、明記しなかったということでございます。  ただ、そういうことで昭和五十五年以来とっておりましたので、実績という形では把握をしておったということでございます。
  55. 千葉国男

    ○千葉委員 ですから、十年前というのは一昔ですよ。  あともう一つ。この最初のころにとっていた貸出区分別実績計画表というのがあるんですが、それから今日まで考えると、報告はもう十九年もとっているわけで、同じことをやっているからといってそうしたことになったんだろうと思いますけれども、やはりこのことについては、もしとっているとってないということであるならば、むしろ外すことよりも、今までとっていたので報告書の件は言わないけれども、こういう総量規制の件があったんだから、むしろ経済局としては、十分に監視してくださいよという文章を、むしろ外すんじゃなくて新しく入れるべきだったんじゃないか、こう思いますが、どうですか。
  56. 堤英隆

    堤政府委員 そういう御指摘もあろうかと思うのですけれども、役所から見ますと、それぞれの信連からの貸し出し状況につきましては、既に局長通達というきちっとした通達をもって報告をとるということになっておりましたので、屋上屋を重ねるような形での報告をとるという必要性はやはりなかったという意味で、従来からきちんととっていたものについて対応していこうということで、あえてまたさらに報告をとるという形にはしなかったんじゃないかというふうに理解をいたしております。
  57. 千葉国男

    ○千葉委員 私が県信連へ行きまして、じゃ皆さんのそういう実績、そういうものがどういうところへ、どういう形で報告をされているのかと聞いてまいりました。  一つは、県ルートでの東北農政局長それから東北財務局長、一方は大蔵省の銀行局長、農水省の経済局長、それから信連協会会長、実際は、県知事は、県は出すけれども、県から農政局というよりも直接信連から農政局に行っていますから、一つの報告書が七つ行っているわけですね。  この間、東北農政局に来ている書類はどういうふうになっていますか、こういうふうに聞きに行ってきました。それで驚いたことは、経済課長さんが出てきていろいろお話をしまして、毎月寄せられているこういう書類、金融機関貸付状況報告書、これは実態はどういうふうになっているんだ。そうしたら、毎月来ております。それで、中身について点検をしているのか、こうやって報告させているんだから、それを見て、いいとか悪いとか、そういうのを出しているのか。今担当者は二人です、二人で年間いろいろなものを二百件ぐらいやっている、ですから信連さんからここへ来ても、それはそのまま本当にただバインダーに積まれていくだけです、見てコメントをして、こうしよう、ああしようはありません、こういうことです。  それから、その隣に財務局がある。財務局へ行きました。それで聞いた。これはどうなっているんですか。それはもう農政局さんの方でやっているんですから、そちらの方が中心ですから我々は二の次です、こういう答えです。担当は何人でやっていますか。二人です。ほとんどだれも見ていませんよ、毎月出しておいて。  それで、本省はどうなっているのかと思って行きましたよ、この間。そうしたら今度は五人でやっている。今回の信連農協系貸し付けば五兆五千億ですよ。だから本省は、一人当たり一兆円の金額を五人で面倒見ているんです、一兆円。そうでしょう。そのくらいの値打ちのあるものですよ。だから、私はあえて申しました。食糧庁は何人いるんだ、それで米の売り上げは何ぼだ、そしたら一人当たりは何ぼの計算しているんだ。少なくともこの大きな貸し付けになっている五兆五千億に対して、一人一兆円ずつ今仕事をしているときに、そんなただ積んでおくだけで、報告とりました、とらない、十年前の古い報告やっているからやっていいんだ、こんなのでいいんでしょうか。
  58. 堤英隆

    堤政府委員 経済局なりそれぞれの地方農政局にお見えになっての御発言でございますので重たいものというふうに理解をいたしておりますが、私どもとしましても、限られた人員の中でどういう指導あるいは対応していくかということで、他方で努力をしているということもまた事実でございます。  そういう中で、それぞれの状況報告ということをできるだけ的確につかんで、それを日々の行政に生かしていくという趣旨でとっているわけでございますので、基本的にはそういう利用の仕方をしているわけでございますけれども、今おっしゃいましたような発言があったとすれば好ましいことではございません。  これからも私どもとしましては、そういう報告をとって、いわば血液に相当します金融がどういうふうに長期物、短期物、中期物が流れているか、それが全体の農業経営あるいは農村の経済社会にどういうふうにリンクしてくるのか、そういうことにつきましても、やはりそういうことのためにもそういう資料を使いながら政策の企画立案等もしていくべきだ、あるいは信連等のあるいは単協に対する指導もしていくべきだというふうに思っておりまして、これからさらに、そういう御指摘も踏まえまして、きっちりとした対応ができるよう努めてまいりたいというふうに考えております。
  59. 千葉国男

    ○千葉委員 ですから、私が申し上げましたのは、せっかく大事なこれだけの問題を、結果的にそのころ余り問題なかったからしっかり見なかったということが言えるかと思いますけれども、わざわざそうやって毎月一生懸命計算をして、それで全体を出している。そういうものに対して、きちっと出すべきだと言って出させた以上は、見て、それは多い、少ない、この辺はどうなっているんですか、こういうきちっとしたシステムが確立されていなければ、ただ威張って、出せよ、それで十分、こういうことになるだけじゃないですか。本当に官僚の威張った姿がそこにあらわれていると思いますね。そういうものをやはりちきっと改めて、本当に実態が明らかになっていく必要がある。ですから、見てちゃんと指導したのか、指導しないのか、そういうことも含めてやっていくべきではないか。  ですから、何度も指摘されていますように、結局そういう状況の中で住専に対する貸し出しというのは、宮城県の例をとるならば、始まったのは昭和六十三年、十億から始まった。それがもう翌年になると、一気に二百億になる。それが今度は平成三年になると四百六十億になる。そして現実には、平成四年からこの問題が山積するようになったときから六百でずっと今日まで停止したままですよ。ですから、毎月、毎年の中で、そういう大きな流れがわかっているわけだから、全国規模でいったら今まで報告されたとおりの何兆円の話ですからね。ですから、そういうのをわかっていながら現実的には何にも手を施してこなかったというのが現実ではないか、こう思います。その点について、今後しっかりとお願いを申し上げたいと思います。  あともう一つ。不動産不況について、実は私、今回大口リストが匿名で発表されて、その後五十社発表されて、百社発表された。県内に、最初五十社のときに三社が該当として地元の新聞をにぎわしました。それで帰ったときに、その会社をそれぞれごあいさつかたがた実際はどうなっているのですかと言って回ってきました。  そこの中で、この不動産不況というのはいかにこの九〇年から始まった総量規制のために現場に対して大変な内容の不況をもたらしているか、こういうことを生で聞いてきたわけなんですが、そこの中の話の内容で言えることは、経営が順調であれば融資に対する返却は可能である、そういう中ですべての不動産業者が悪質と言うわけにはいかない、こういうふうに思います。  私が行った会社はたまたま東北、しかも宮城ということですが、最初の会社はビルを十二持っていて十一個売って、七十数億借りたものを四十億まで全部返済してもう何もない、要するにあの総量規制で土地が動かなくなったんだ、こういうお話でした。それから二つ目の会社は駐車場経営で、もう建って元本保証五年、それで毎月利息を二千万払う、私の会社は何も問題ありませんよ、何で名前を出されなければいけないのですか。次の会社は、七十億借りたうちマンションが三十億、商業ビルが三十億、六十億、それも動かないから払えないだけで、こんなのは今までの経営からいったら普通のことなんだ、こういうことで言われました。  この総量規制の結果、地元のそういうまじめに働いている不動産の人たちが大変な迷惑。先週行ったときにも、注文が来て、それが断られることが営業からどんどん来ている。こういう実態に対して私は、じゃ社長さん、わかりました、国会の中ではっきりしてくるから、こう言ってきました。だからもう大変な急ブレーキをかけられた。私は野球にちなんで、野茂並みのフォークのように落ちたんですか、こう言ったら、そうじゃない、フォークリフトで頭を殴られたようなものだ、こう言っていましたよ。これだけ厳しい。しかも、それだけ一生懸命やっている人たちに対してああやって名前を堂々と出した、どうしてくれるんだ、大蔵省の見解を聞きたい。
  60. 振角秀行

    ○振角説明員 お答えいたします。  主に二点の指摘を受けたかと思っております。  一つは、総量規制が不動産不況を招いたんじゃないかということについてどう考えているのかという点が第一点、それと、今回の大口貸出先リストによっていろいろ影響が出ているんじゃないかという点が一点かというふうに思っております。  まず最初の総量規制の話でございますけれども、先ほど先生は総量規制通達のことを具体的な文章を挙げつつ御説明になりましたけれども、まさしくそこに、総量規制通達に書いてありますように、当時の地価動向を見ますと、「大阪圏で著しい地価上昇が続いているほか、名古屋圏でもかなりの地価上昇がみられ、また、地方圏においても著しい地価上昇又はかなりの地価上昇を示す都市が相当数に上るなど、地価上昇の地方への波及傾向が一段と強まっている状況にある。」ということで、こうした中において土地問題が大きな社会問題となっておるということでございまして、その当時は、土地基本法というのができまして、全般的に政府としても挙げて土地問題について取り組んでいこうということでございまして、その中において金融行政においても何かできないかということでございまして、当時の海部総理等の指示を受けまして、当時大蔵大臣をしていたのは橋本でございますけれども、何かできないかということでぎりぎり考えたところが土地の総量規制ということでございます。  それ以前にもいろいろな通達の発出とか特別ヒアリングの実施等を通じまして投機的な土地取引に係る融資を厳に排除すべく指導してきておったのですけれども、それでもまだ効果が上がらないという状況下において、政府全体として取り組むということの中におきまして総量規制通達をやっておりまして、その当時におきましても、公共的な宅地開発は除こうとかいろいろ配慮しておる中でそういう措置をとったことでありまして、当時の状況にかんがみますとやむを得ないというか、そういうことではないかということで、橋本総理もその旨国会等で答弁しているところでございますけれども、確かにその後急激な地価下落を招いたことは事実でございまして、大蔵省としても、今後そういう経済実態の的確な把握と適切な政策決定に心がけるようにしていきたいと思っております。それが第一点でございます。  第二点の方は、今回の特に五十社等の大口貸出先の実名公表につきまして、中には優良な借り手もいるのでそこに迷惑がかかっているじゃないかという御指摘かと思います。  先ほど先生が冒頭に指摘されましたように、今回につきましては、国民税金を投入したということもありまして、国会等あるいは国民から資料開示をできるだけやるようにという強い要請を受けておるところでございまして、今回の大口貸出先リストにつきましては、本年二月一日に衆議院議長からいわゆる議院証言法に基づきまして大蔵大臣に対して提出要求がありまして、それに対して内閣としていろいろ検討しましたが、内部の承認を得た上で衆議院議長に対して提出したものでございまして、政府としては、今回のいろいろな処理方策の実情にかんがみまして、国会の国政調査権に対してはできる限り協力するべき立場にあるというのが基本的な姿勢でございますけれども、先生御指摘がありましたように、個人のプライバシーとか、取引先に迷惑をかけてはいけないということで、住専、金融専門会社七社上位の貸付先実名リスト等の提出に当たりましては、不良債権額とかあるいは損失見込み額がゼロの貸付先については二つの星、また損失見込み額がゼロの貸付先については一つの星印を付すなど、信用確保に十分配慮するとともに、国会に対してもプライバシーや信用の保護が十分に確保されるよう特段の配慮をお願いしたいというふうに我々としては要望しましたけれども、あくまでも国会に対しての提出資料でございますので、その上で国会がどう公表されるかは国会の御判断にお任せしますということでございまして、我々としてもいろいろな状況は聞いておりますので、今後とも住専問題をめぐる情報の開示につきましては、プライバシーや信用の保護が十分に確保されるよう引き続き努力をしてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  61. 千葉国男

    ○千葉委員 新進党としては、匿名を実名にするに当たっては十分その点を配慮するようにということを訴えていたわけでありますので、今後もそういうものをきちっと聞いて、ぜひ実現をしていただきたいと思います。  最後に、大臣にお願いしたいと思います。  こうした住専処理に至る経過を見てみますと、系統の自主規制の問題であるとか審査能力の問題であるとかあるいは農林水産省自身の指導力の欠如等がいろいろなところに見えるわけですが、こういう問題について、これからやはり一番大事なのは質的な向上ではないか、こう思いますが、最後に大臣の見解をお願いします。
  62. 大原一三

    大原国務大臣 千葉委員からるる、また現地を踏まえてのいろいろの御指摘、大変ありがとうございました。我々も、課題はまさに今後山ほど残されていると思うのです。そういった意味で、御指摘の点をも十分参考にしながら、やはり変えるものは積極的に変えていくという姿勢をしっかり踏まえていきたい、かように考えます。
  63. 千葉国男

    ○千葉委員 ありがとうございました。
  64. 松前仰

  65. 矢上雅義

    矢上委員 新進党の矢上雅義でございます。  本日は、大臣の所信表明に対する質問ということでさせていただきます。  本日は、主な項目として、水俣湾の仕切り網の問題が一つと、それと大きく民有林、国有林の管理保全に関する質問を行いたいと思います。  まず、水俣湾の仕切り網の問題でございますが、先日、二月十九日ですか、熊本県の魚介類の対策委員会におきまして、三時間に及ぶ激論がなされました。この中で、漁業を含む地域振興を急いでほしいということで地元側の委員より仕切り網の早期撤去を求められ、また国側の委員、つまり環境庁、水産庁の委員の方より時期尚早ではないかという意見が出され、相当議論になりまして、全国紙でも大きく取り扱われております。改めて申す必要もないかもしれませんが、簡単に水俣病の発生以後の経過について述べさせていただきます。  まず、昭和三十一年の五月一日に、チッソの水俣工場附属病院の院長から原因不明の脳症状として県の方に報告されております。その後、紆余曲折を経まして昭和四十三年九月、チッソのアセトアルデヒド製造の際に生まれるメチル水銀化合物が水俣病の原因であるということが国により公式に確認され、公害病と認定されております。  その後、公害病の認定として現在約三千人の方々が水俣病として認定され、またその後、未認定患者のうち約四千人が総合対策医療事業により療養費の手当を受けております。また、御存じのように、ことし一月二十二日から七月一日までの間に新たに申請をして受理されれば、一時金二百六十万円が支給されることとなっております。  その中で最後に残ったこの仕切り網の問題でございますが、これが大きな問題となっておりますので、まず水産庁に対して、仕切り網のこれまでの設置経緯について説明を求めたいと思います。
  66. 東久雄

    ○東政府委員 水俣湾の仕切り網の設置の経緯でございます。  昭和四十八年の五月に、熊本大学の研究班の発表によりまして、水俣湾内の魚介類がまだ水銀に汚染されているということが明らかにされまして、不知火海一帯の魚介類の魚価が暴落したということから大きな社会問題になるという事態が生じました。そこで熊本県は、湾内に生息する魚介類の市場流通を防止するということと、湾外の、湾の外の魚介類の安全性を明らかにするという二つの目的を持って、昭和四十九年一月に水俣湾の湾口の部分に仕切り網を設置いたしました。  その後、昭和五十二年度から平成元年度まで、環境庁の所管でございますが、公害防止事業を実施いたしまして、その湾内の水銀を含んだ汚泥の除去が行われまして、また、湾内における水銀値の高い魚介類の捕獲、廃棄処分が継続的に実施されるという形で、徐々に湾内の水銀値の低減が図られてきている、その区切りを示すところが仕切り網という形で外と遮断しているということでございます。
  67. 矢上雅義

    矢上委員 ただいまの水産庁長官の御説明のとおり、魚価の安定対策ということで、また食品の安全性を確保するということで、仕切り網は地元にとっても大変有意義なものであったかと思われますが、実は最近、気の緩みと申しますか、水銀値が規制値より以下になったものですから、そういうことが報道されました結果、現実問題として仕切り網の中で、水俣湾の湾内ですけれども、地元の市民の方々が夕方釣りに行ってそれを夕食のおかずにするとか、そういうことも起きております。  そういう、仕切り網が現実的に実効性を保つためにもその運営管理の問題が大変重要な問題になってきますし、またその経費負担をだれがするのか、また湾内で一斉漁獲等をやっておりますが、漁民の皆さん方に対してどれだけの損失を与えておるのか、また損失を与えるとして、どういう補償の処理がなされておるか。いわゆるとれた魚介類の処理、経費の負担者、また日常の管理責任者、この辺について説明をいただきたいと思います。
  68. 東久雄

    ○東政府委員 先ほどお答えしましたとおり、仕切り網の設置は熊本県が四十九年一月にやりましたが、先ほど御説明しましたが、公害防止事業、それが終わった段階でこの仕切り網そのものをチッソ株式会社に移管いたしました。現在、仕切り網の管理については、そのチッソ株式会社が熊本県に委託するという形で、経費はチッソ株式会社が負担するという形になっておりましたが、平成四年度以降、経費について、魚価対策ということもございますので県の方が一部負担しておるという状況でございます。  それから、湾内で、水俣湾内ないし網の設置の中側ということでございますが、そこで採捕された魚介類につきましては、全量をチッソ株式会社が買い上げの上処分しているという状態でございます。
  69. 矢上雅義

    矢上委員 改めて確認いたしますが、チッソが買い上げた魚介類はもう完全に外に出ることはなく、廃棄処分になっているわけですか。
  70. 東久雄

    ○東政府委員 廃棄処分ということになっているというふうに聞いております。
  71. 矢上雅義

    矢上委員 次に、平成元年ですか、十六種の魚種が指定されたと聞いておりますが、その後の魚介類の安全性の確認のための基準についてお聞きしますが、まず、検査方法は具体的にどういう方法でなされておるのか、また安全基準を超えた場合の法的措置、具体的措置について水産庁にお聞きいたします。
  72. 東久雄

    ○東政府委員 先生御承知のとおり、四十八年七月に厚生省が定めた安全基準がございまして、水銀の暫定的な規制値ということで総水銀〇・四ppmということになっています。今、熊本県がやっております検査方法ということにつきましては、水俣湾で捕獲された魚介類の中から、漁法ですとか魚のとり方、それから漁場、場所でございます、それがはっきり確認できたものをサンプリングいたしまして、その可食部分、食える部分でございますが、その百五十グラムを一検体といたしまして一魚種について原則十検体を分析いたしまして、その平均値をその当該魚の水銀として取り扱うということでございます。  もしこれがその平均値を超えるということになりますと、これは我々農林省からの通達もしておりまして、漁獲の自主規制をすぐにする。それからまた、厚生省の方の基準値を超えるというような形のときには、厚生省の通達によりまして流通、販売の規制という措置が講じられるという形になっております。
  73. 矢上雅義

    矢上委員 安全基準を超えた場合、大きく漁獲の自主規制、また販売、流通の規制が行われるわけでございますが、先ほどの厚生省の基準自体が昭和四十八年制定ということで、かれこれ二十二、三年前になりますし、一般人の感覚からすると相当昔の、一昔も二昔も前に決まったような気がしてまいりますし、また、〇・四ppmという一つの基準でございますが、これは大人を対象としておるのか、子供も含めて対象にしておるのか。また、人によっては多食する場合もございます。魚を一日一回食べる人、三回食べる人。  水俣病と申しますと、まるで沿岸の住民だけがかかったような気がしますが、現実地元に行ってみますと、水俣病が発生したころは貧しい時代でしたので、山間地の子供が毎日おやつのかわりに貝掘りに行って、そしてそれを持って帰って赤ちゃんにも自分の妹とか弟にも食べさせて、みんな子供が山間地で発病したという事実もございますので、そういうきめの細かい基準なのか、そういうことまで想定してきちんと安全性を厳しく確保しておる基準なのか、その辺について厚生省の見解をお聞きしたいと思います。
  74. 森田邦雄

    ○森田説明員 御説明いたします。  我が国の魚介類の水銀の暫定的規制値は、総水銀として〇・四ppm、メチル水銀として〇・三ppmと決めておりますが、これは昭和四十八年に設定したわけでありますが、当時の熊本大学の医学部の水俣病研究班による調査結果によりまして、水俣病の最低発症量、一日どれぐらいとっていたのかという量、それに基づくデータ等いろいろなものを勘案いたしました。また、一九七二年にFAOとWHOが合同の食品添加物専門家委員会というものを開いておりますが、この中でも水銀の毒性評価を行っております。これらのデータを評価した上で、体重五十キロの成人の方がメチル水銀を取り込んでも大丈夫だという一週間の数値、これで暫定的な摂取量限度を決めたわけでありますが、これを〇・一七と決めまして、これのもとにこの数値ができたわけであります。  したがいまして、この基準につきましては十分な安全率を見てつくっておりますので、子供であってもこれに準じて適用することとしておりまして、また、通常の食生活であるならば十分な安全性が確保できると考えております。  ちなみに、FAO、WHOの一九七二年のデータでございますけれども、これにつきましては、一九八八年に再度同じようなFAO、WHOの合同食品添加物専門家委員会で評価しておりまして、これについてはその時点で再度評価結果が変わることがないという結論を得ております。  また、多食者についてでございますけれども、これにつきましては、昭和四十八年当時から適切な食事指導をしていこうということで、全国の都道府県を通じてそういう食事指導を行っているところでございます。
  75. 矢上雅義

    矢上委員 この厚生省の基準については、これからも大変重要な基準でございますので、特に再評価は一九八八年でございますか、これも絶えず定期的に実験、研究を進めて行っていただきたいということを要請するとともに、また、多食の食事指導でございますが、熊本県に私住んでおりますが、それをしておられるのでしょうけれども、普通に生活しておりますと、これが魚の水銀汚染に関する多食を抑制する食事指導なのかなということに特に思い当たるというか、ぶつかることも少ないものですから、その辺の普及啓発活動も改めて要望いたします。  続きまして、水産庁に対する質問でございますが、こういう経過と安全基準確認行為を踏まえて、現在の水俣湾の水銀に関する、また魚介類に関する現状はどうなっておるのか、その辺の現況説明をしていただければと思います。よろしくお願いします。
  76. 東久雄

    ○東政府委員 先ほどちょっと申し上げました公害防止事業、これは水銀に汚染された汚泥を除去する事業でございまして、これが終了する年度に水俣湾内でとれる全魚種を検査いたしまして、その結果、十六魚種が先ほど申し上げました水銀の暫定基準値を超えるというのが発見されました。  そこで、熊本県といたしましては、例の締め切りの網を除去することがなかなかすぐは難しいという判断のもとに、その安全性の確認をこれからもやっていった上でということでございまして、そのために、名前は水俣湾魚介類対策委員会という知事の諮問機関を設けて安全性を確認していくということにいたしまして、県の方といたしましては、これらの十六種類の魚介類の水銀値についての追跡調査をずっとやってきております。この追跡調査の水銀値は順次下がってまいりまして、もう今では暫定的な規制値を下回っております。それは平成六年度の後期の調査以降ずっと下回っておりまして、そういう意味では改善をされているという状態がございます。また、対策委員会としてもその事実は確認されております。
  77. 矢上雅義

    矢上委員 ただいまの長官の見解ですと、仕切り網撤去についてはいろいろ反対意見、賛成意見ございましたが、水俣湾の魚介類の安全性については基本的に安全と言える状態である、そういう見解でよろしいでしょうか。
  78. 東久雄

    ○東政府委員 今申し上げましたのは、六年度の後期から基準値を下回った調査結果が七年度の後期まで、集中捕獲も含めまして四回続けてそういう結果が出ております。しかし、水産庁は実は前に一つの経験がございまして、徳山湾の事例で、三年間という水銀の基準値の低下を待った上で徳山湾の場合には措置したということがございまして、おおむね安全なレベルになっておるのですけれども、下回って約一年少々という期間ではちょっと短いのではなかろうかというような感じでございます。  先ほど委員会に私の方の担当官が実は委員会のメンバーとして熊本県の要請を受けて入っておりまして、その担当官の方から、基本的にはやはりまだこの一年強、一年半ぐらいの結果なので、我々の知見からすればもう少し慎重に対応するべきではないかという意見を申し述べておりまして、私ども水産庁としても、全体としてそういう検討の結果でそういう意見を申し述べたという経緯がございます。
  79. 矢上雅義

    矢上委員 次に、同じ質問でございますが、県の対策委員会に環境庁の方からも委員として入っておられますので、環境庁の方の見解もお聞きしたいと思います。
  80. 南川秀樹

    ○南川説明員 私ども環境庁といたしましては、かつて水銀による汚泥の除去が行われました水俣湾そのものの仕切り網の撤去の問題というものは、極めて重要な事柄であるというふうに認識をいたしております。  水産庁長官の方からも御説明がございましたけれども、他の事例なども踏まえますと、四十八年に決定いたしました暫定規制値というものを下回って三年間というものは撤去を急ぐべきではない、もし現時点での撤去ということであれば時期尚早であると言わざるを得ないと考えております。  いずれにしましても、事は安全性にかかわるものでございます。十分慎重に対応されるべきと考えておりまして、水産庁などとも連携の上、熊本県と十分な意思疎通を図ってまいりたいというふうに考えております。
  81. 矢上雅義

    矢上委員 これは補足の質問でございますが、仮に、今回の委員会の方針を受けて水俣湾の仕切り網が撤去された場合を仮定した場合ですけれども、新聞報道でも書いてあるのですが、市民としては仕切り網の撤去イコール行政側から安全宣言が出されたと理解したい、そういう報道もなされております。  今回、国側は慎重な意見で待ったをかけて、地元の方は地域振興ということでなるべく急いでくれということが出ておるわけでございますが、仕切り網を外すということは、即、環境庁、水産庁も含めて国側として安全宣言を出すことにつながるのか、その辺について見解を、簡単で結構でございますから。
  82. 東久雄

    ○東政府委員 仕切り網自身が先ほど申し上げましたとおり県が設置をして、今委託は受けておりますが県が運営しておる。それで、この委員会も県の知事の諮問委員会ということで、この委員会自身としては、「一部委員を除き、水俣湾の仕切網撤去は、適当と認める。」という答申をしながら、「ただし、環境庁、水産庁の関係委員などからは、時期尚早との意見があった。」という形で答申をいたしております。  私どもとしてはちょっと慎重に取り扱ってほしいという気持ちがいたしますが、何分県の仕切り網でございますので、ただ私ども、県といたしましてもそういうふうに撤去したとしても水銀値の追跡調査というのは続けられると思いますし、我々としては、これは御存じのとおり厚生省の方の流通規制、ないしは我々も一つの基準をそうして超えた場合には直ちに捕獲規制という措置をとらざるを得ないというふうに考えております。そういう意味で、余り安全宣言というふうに受け取っていただかない方がいいのではないかというふうに思います。  ただ、今安全レベルは下がっている、これからもやはり、もし取り払われたとしても十分注意を払っていかなければならぬ問題であるというふうに考えております。
  83. 南川秀樹

    ○南川説明員 先日の委員会での座長まとめということで、多くの委員の意見は撤去ということでございましたが、環境庁といたしましては、現時点での撤去は時期尚早というふうに強く考えております。  将来、できるだけ関係者の円満な合意のもとに撤去がなされることが望ましい、そんなふうに考えております。
  84. 矢上雅義

    矢上委員 おおむね両庁の見解は理解できました。  地元の委員さんたちから地域振興を早くという要望が出ました理由としては、多分、統計からもあらわれておるのですけれども、漁獲高、観光客数、工業製品出荷額において、一九五六年から一九九〇年の統計ですが、漁獲高におきましては、熊本県の漁獲高がプラス三五・八%と増加したのに対し水俣市はプラス七・五%、観光客数は、熊本県全体が七五九%の増に対して水俣市が一四一・五%、次に工業製品出荷額が、熊本県全体が三五〇〇%の増に対して水俣市が九〇五%というように、あらゆる経済分野で立ちおくれが指摘されておることから、この水俣病の影響がすべての問題に影響しておるのではないか、一刻でも早く水俣病の影響から脱却を図りたい、そういう地域住民の切なる願いもあるのではないかと思っております。  私自身、この問題がこれだけ長引いたのも、御存じのように国、県が一番最初にどういう対応をとられたかという、そのおくれも指摘されておるわけでありますから、今回、国、県が人の命がかかった問題として念には念を入れてほしいという姿勢で仕切り網撤去に対して臨んでいただくということが、私の考えではございますけれども、最適ではないかと思っております。  いずれにしても、地域振興策には積極的に支援をいただくと同時に、あと一年半か二年、その安全性を確認するまでの間はきちんとした対応をしていただく。そして、今回審議会の激論がテレビ、新聞等を通じてなされました。審議会と申しますとしゃんしゃん大会で終わってしまって、市民から余りよいイメージとしてとらえていただいておりませんでしたが、今回積極的に激論がされたということで、審議会のあり方また国の姿勢というものが明確に日本国民の間に知れ渡ったということで大きな意義があるのではないかと思っております。  これで水俣湾仕切り網撤去についての質問は終わらせていただきます。厚生省、環境庁の担当者の方々は御退席されて結構でございます。  次に、林野関係質問でございます。  まず、現在の国有林、民有林を含めて、昭和三十年代ごろより植林してきた人工林がそろそろ伐期を迎え、国産材時代の到来を迎えるとしきりに宣伝されております用地元に帰って林業者の皆様方に聞きますと、以前の杉、ヒノキは非常に労働力があったので手入れが行き届いていた、しかし、現在労働力が足らないので手入れが行き届かない。つまり、昔の杉、ヒノキと今の杉、ヒノキでは、同じ四十年生、五十年生といっても大人と子供ほどの違いがあるのではないか。それで果たして二十一世紀の国産材時代を迎えたときに本当に売れる木があるのか、量だけではなく質の問題まで含めて本気で手入れをしていかなければならないのではないか、そういう御指摘を受けております。  特に森林というものは国土保全、環境保全の役割がありますので、本来ならば国が全部面倒を見ればいいわけでございますが、予算の関係でできません。しかし、それでは国民が面倒を見るかといいましても、経済性の原理が一番に来ますので、なかなか自助努力だけで山の手入れをするというのは困難な状況でございます。  そういう中で、今後二十一世紀に向けて良質な木材確保のためにも、下払い、枝打ち、間伐等の適切な保育の実施が必要となってまいります。ただ、外材も輸入が増加しておりますし、材価低迷の中で、先ほど申しましたように国内の林家は非常に厳しい状況に置かれております。  そこで、現在林野庁としてとっておられる保育に関する助成策の現況と、今後さらにどういう方向で拡充もしくは強化していくおつもりか、お聞きしたいと思います。
  85. 入澤肇

    ○入澤政府委員 ただいま御指摘がありましたとおり、外材の輸入が増加しておりますし、また材価も低迷しております。そのために、本来であれば間伐しなければいけない林分も間伐されないで、間伐率が最近の数字で四六%というふうに非常に下がっております。さらに、間伐した材も利用されないで、四九%ぐらいしか利用されない、こういう状況でございます。  私どもとしましては、こういう状況の中で、可能な限り保育をきちんとやらなければいけないということで、平成四年度からは森林整備事業計画というのを閣議決定していただきまして、この計画に基づいて具体的、計画的にやっているわけでございます。  一つは、森林を管理する上で合理的な流域の広がりに着目いたしまして流域森林総合整備事業をやるとか、あるいは重点的に間伐を実施しなければいけない地域におきまして高能率機械による集団間伐を行うために新しい予算を起こすとか、いろいろなことをやっているのですけれども、十分ではありません。そこで、この通常国会におきまして新しい法案を提案させていただきまして、御審議をこれからいただこうと思っているわけであります。  特に、五ヘクタール未満の森林しか所持しない零細林家が我が国の林家の九割を占めておりますし、それから不在村の山林地主ですね、この所有面積が三百万ヘクタールを超えるようになっております。こういうふうな山が間伐あるいは保育されませんので、森林組合とか造林公社とか、あるいは意欲のある専業的な林家とか、そういう方々に施業受委託でやってもらうというふうなことを基本的内容とした法律、制度を確立したいと思っているわけでございます。  いずれにいたしましても、間伐あるいはその他の育林活動は極めて重要でありますので、予算の面でもあるいは制度の面でもこれから充実していきたいと思っております。
  86. 矢上雅義

    矢上委員 今非常に努力されておられる状況で、予算が不十分である。また、資源の有効活用、人材の育成、大変厳しい状況で、今後林野三法、大変意欲のある法律が出てまいります。長官の説明にもございましたが、農水大臣としても今後の林野行政についてのバックアップをぜひお願いいたしたいと思います。  次に参りますが、外材がなぜこれだけ輸入が増大したかという要因でございますが、一つには、品質が安定している、よく乾燥もしておる、規格が安定しておる、そして安定した数量が世界じゅうから集まってくるということで、外材の輸入が大変ふえております。  それに対して国産材も外材に負けないような生産体制を確立していく必要がありますが、良質の森林資源を育て、安定した伐採量を確保するためにも、林道及び作業道の早急な整備が望まれます。特に高性能林業機械の利用を前提とした造林作業、伐採作業に対応できる林道、作業道の整備が不可欠でございますが、現在なかなか思ったとおりに進んでおりません。  現在の林道の開設状況及び今後の整備方針について、林野庁にお聞きしたいと思います。
  87. 入澤肇

    ○入澤政府委員 マクロ的に申し上げますと、平成六年度末現在で総延長十三万キロメートルという林道なのですが、より地域の実情に合わせまして、具体的に申し上げますと、林道の整備につきまして一番問題なのは、やはり搬出コストを安くするためには林道密度を一定以上整備しなければいけないということでございまして、現在の林道密度はヘクタール当たり十二・二メートルでございます。私どもでつくっております全国森林計画、これは平成三年度から十八年度の間におきまして十五年間で整備しようとするものでありますが、この目標はヘクタール当たり十四・六メーターでございます。  林道密度と伐出コストの間には確実に正比例の関係がございまして、例えば宮崎県の諸塚あたりになりますとヘクタール当たり五十四メートルの密度がありまして、五十四メートルぐらいになりますと十分に外材のコストと対抗できる。そこで、生産基盤の整備の面で林道密度をきちんと整備していくための予算を十分に獲得するということ。  それから、外材につきましては、今先生から指摘ありました質、量の安定的なレベルの維持、これに重点を置いて政策を展開したいと思っております。
  88. 矢上雅義

    矢上委員 ちょっと一つお聞きしたいのですけれども、林道密度が平均が十二・二メートルヘクタールですか、そして大きなところは五十四メートルとか、もっとそれ以上のところもあるとお聞きしますが、予算がないということは各市町村、県とも同じ状況で、そして多くの市町村が同じように山を持って、また林山村の振興が不可欠と言われておりますが、このように大きく林道密度の差がつく要因というものはどの辺にあるのでしょうか。町村長のリーダーシップとか森林組合の強弱とかあるでしょうけれども、その辺、もし経験上おわかりになれば……。
  89. 入澤肇

    ○入澤政府委員 林道の予算につきましても、先ほど申しました間伐、造林と同じように平成四年に新しく森林整備事業計画というのを閣議決定していただきまして、これに基づきまして三兆九千億という大きな予算規模の事業費をいただきまして計画的にやっているわけでございます。  地域によって差がありますのは、私どもも現場に行ってみますと、やはり意欲の問題が非常にあるのじゃないか。森林組合とかあるいは市町村の意欲の問題があります。  私どもの林野庁に計上される予算だけでは不十分でありますので、自治省とも十分に話し合いをしまして、ふるさと林道、これも相当の規模で予算をいただいております。平成八年度には二千億円、我が方の林野庁の予算に追加して二千億円の予算が使えるようになっておりまして、こういう予算も十分に使いながらその整備をするようにというふうに指導をしているところでございます。
  90. 矢上雅義

    矢上委員 林道は、外材と対抗するためにもこれから本当に大事な基盤整備でございますので、ぜひ他省庁とも関連させて林道整備に励んでいただきたいと思います。  次に、林道の多面的な機能と先ほど申しましたが、林道と申しますと、ただの作業用、産業用の道路とは違いまして、特に社会基盤整備がおくれた山村におきましては、例えばお年寄りに置きかえますと、お年寄りについては医療機関、福祉機関への足として道路確保は大事でございます。また、若夫婦等に対しては、山村に参りますと純粋な農業所得、林業所得、また雇用の機会も少ないので、多様な所得機会の確保のためにも通勤路としての林道の必要性、これも認識されております。特に、以前は人口をふやして過疎から脱却しようと考えておりましたが、人口が減るばかりで、今では過疎地域の山村から一時間とか一時間半かけて、都市住民と同じような時間をかけて都市部に通勤して、土日に林業なり農業なりをやるという方々もふえておられます。そういう意味で、若い人たちの定住条件を向上するための林道の必要性。また、将来の人口を支えていただく子供たちに対しては、当然学校に通学するための道路としての林道の機能もございます。  そういう中で、林業労働力としての若者の定住条件の向上が林業及び山村の振興を図るためには不可欠でございます。そのためにも、林道整備と一体となった山村の生活環境の整備がそういう諸条件を向上させることにもつながりますので、先ほど他省庁との関連も出ましたが、林野庁自身、また他省庁との関連の中でどのような施策で定住条件の向上を図っておられるか、御説明いただければと思います。
  91. 入澤肇

    ○入澤政府委員 定住条件の整備のために全国の地方農政局を通じまして調べたことがございます。若者が活発に農林漁業をやっている、嫁さんも来て笑い声が絶えない、生産性も上がり所得も上がっているという村々はどういう条件が整備されているかということで調べてみました。四つございました。  一つは、所得が安定的にふえている。この所得は、林業であれば、林業だけでなく林業プラスアルファで、特用林産と組み合わせるとか、あるいは林業と農業、林業と観光というふうに組み合わせて所得を確保することが一つでございます。  二つ目は、やはり山村と都市とのギャップがない、意識して感じられない。そのためには、生活環境の施設の整備、それからアクセス道路の整備が十分になされているということ。  それから三つ目は、山村や農村にいても都市におけると同じように自由な雰囲気を十分に享受できる。要するに、年寄りのしきたりとかなんかで圧迫感がない。老、壮、青、それぞれ役割分担して、新しい文化、新しい流行、そういうものがどんどん入ってくるような条件下にある。  それから四つ目は、各市町村長さんたちが、四年の任期の間に具体的な村づくり計画を持って計画的に推進している、こんな条件が指摘されておりました。  私ども、この四つの条件を林業政策の中でどのように整備していくかということに強い関心を持っております。特に生活環境施設の整備につきましては重要でございまして、農業では集落排水等の整備、あるいは厚生省が合併処理浄化槽の整備等をやっておりますけれども、林業におきましても林業地域総合整備事業、これは平成八年度予算額百九十九億円、対前年度比で一一〇%と高い伸び率を維持しておりますが、この中で林道の整備とあわせまして、日常生活に不可欠な用水施設だとか、あるいは林業集落排水施設等の生活環境施設の整備を積極的に進めているところでございます。
  92. 矢上雅義

    矢上委員 今非常にわかりやすく四つの項目で説明していただき、具体的に用水関係、また集落排水の関係を説明していただきましたが、私、地元を回っておりましても、山の水を利用した用水で非常に不衛生であるということと、あともう一つ、集落排水事業もなかなか採択要件に合致せずに、適切な採択要件のもとで小規模な山村でも実行できるというような、そういう要望が出ておりますので、ぜひ今後ともそういう採択要件もまた勘案しながら実行していただきたいと思います。  林道関係につきましてはあと二つほど質問の予定でございましたが、ちょっと時間の関係があります、本会議関係がありますので、この質問の四と五は要望にさせていただきたいと思います。  まず、森林の持つ機能の一つに水源涵養、そして国民の保健休養の場としての公益的機能が挙げられておりますが、これは特に各市町村におきまして、起債により山林を買い取り、自然公園として、また水源涵養林としての活用がされております。  特に地元の熊本市の環境保全局におきましては、財団法人熊本地下水基金、五千万円の基金で、地下水を将来とも守り続け、後世に残していくことという目的で、十六市町村が参加して、涵養林の造成、整備に関する助成措置、また涵養林自体を取得する、そういう事業をやっております。また、中水道の利用設備、小型合併浄化槽の普及にも助成するなど、総合的な水資源対策を各市町村でもやっておりまして、実績として三年間で広葉樹二百ヘクタール、針葉樹千六百ヘクタールの造林、整備等がなされております。  こういう地元でも大変大きな問題として関心の高いことでやっておりますので、ぜひ林野庁としても、農林水産省挙げてこういう施策を進めていってほしいという要望が一つでございます。  次に、もう一つ、最後の要望でございますが、近年、奥尻島の大震災、また長野県でも平成七年の七月十一日に豪雨による大災害が起きました。また、今回豊浜トンネル、今回は町道ですか、隣の旧国道を迂回路にしたように、非常に災害の多い地域、集落にとりましては、いざというときの迂回路、それの確保が大変でございます。大きな国道とか高速道路というものは意外と災害に弱くて、いざというときは全部とまってしまいます。それに対して県道とかが迂回路で考えられるわけですけれども、人口の少ない山村地域ではなかなか県道を通してもらえない。その中で唯一可能性のあるのは林道、農道でございます。  特に、地元の球磨川の沿川沿いで水害が起きて、避難するときにはJRのトンネルの中に隠れて落石を防いだとか、そういうこともございます。JRのトンネルというのは、球磨川沿川の場合には、洪水のときはJRもとまりますので避難できますが、そういう避難場所、また避難通路、または生活道路としての、迂回路としての観点も積極的に取り入れて、そういう地元住民から喜ばれるポイントを幾つかつくっていただくような林道設置を急いでいただければと思っております。これで林道関係に関する要望は終わらせていただきます。  次に、中山間地帯における鳥獣による被害が増加しているということで、全国規模での鳥獣による森林被害の現状、わかる範囲で結構でございますので、林野庁にお聞きしたいと思います。
  93. 入澤肇

    ○入澤政府委員 鳥獣による森林被害の主なものは、シカとかカモシカ、ノウサギ、ノネズミによるものでございまして、特に最近ではシカによる被害が増加しております。被害面積が逐年増加しておりまして、昭和六十年度以前は一千ヘクタール程度でありましたが、平成六年度には約四千ヘクタールとなっております。シカによる面積が四千ヘクタール、カモシカが一千七百ヘクタール、ノウサギが一千ヘクタール、ノネズミが八百ヘクタールというふうに、非常にふえております。
  94. 矢上雅義

    矢上委員 山の中の出来事ですので、なかなか被害金額等の確定は難しいと思いますが、被害金額はともかくとして、シカ、カモシカ等の被害に対してどのような対策を林野庁としてはとっておられるでしょうか。
  95. 入澤肇

    ○入澤政府委員 いろいろな対策を講じておりますけれども、特に被害防止対策といたしまして、シカの忌避剤、シカが嫌がる薬の散布とか、あるいは防護さくの設置などについて予算を出している。あるいは造林事業によりまして被害跡地の復旧を図る等のことをやっておりますが、これらの措置に加えまして、平成八年度から新たに、新しい防除技術といたしまして、シカの遮光ネット、光でシカをおどかして防止するというネット、それから、食害の防止チューブなどの普及を行うための動物被害新防除技術導入・普及事業なども予算化しておりますし、それからさらに、野生鳥獣による森林被害を一般的に防止するために、森林の機能発揮と野生鳥獣の共存を目指した多様な森林整備等を行う野生鳥獣共存の森整備事業、要するに、えさがなくて食い荒らすということがありますので、ブナとかクリとか、ああいうものの実を野生鳥獣が食べて貴重な森林資源を荒らさないようにするというふうなことを目的とした野生鳥獣共存の森整備事業というのも平成八年度から実施して、被害対策につきまして一工夫、二工夫しようと思っているところでございます。
  96. 矢上雅義

    矢上委員 この鳥獣の被害、ちょうど大臣も宮崎県出身ということで大変お詳しいと思いますが、実は、地元でシカの被害と同様に大きなものが猿の被害でございまして、きのうの私の質問案の段階では猿を念頭に置いて考えたわけでございますが、猿というものが山からおりてきて食い荒らすのは米とか麦とかイチゴ、メロン、おいしいデザートみたいなものまで食べてしまうものですから、その範囲が農産物である。林野庁の管轄するのは立ち木とか苗木の芽でございますので、聞いて初めてわかったのですけれども、猿は農産園芸局の担当でしょうし、シカは林野庁ということで、私は一体と考えておったのですが、やはり縦割り行政で、それぞれ動物にも所管がございます。これは初めて、勉強になりました。  それで、その駆除、管理をどうするかという問題におきましたらこれは環境庁の管轄になるそうで、ぜひ大臣に、これはお願いでございますので、農家としましては林業、農業一体でやっておりますので、総合的にどのような被害が起きているか、その研究等、それと駆除対策については農産園芸局と林野庁、また環境庁あたり、ある程度基礎的な資料だけは、今後もしょろしければ共同でやっていただければと思っております。  特に、実は、猿がなぜふえてくるかということから、自然林が減少して人工林がふえた結果、猿がおりてくるのではないかという話も出たわけでございますが、ただ、人工林がふえた時期がちょうど三十年前、そして、それからタイムラグがあってから猿とかいろいろおりてきておるものですから、その人工林の増加と鳥獣被害の増加というものをリンクさせるのがなかなか難しくて、きのう地元の農家の方に聞きましたら、猿は人間よりも頭がいいんじゃないかと。おいしいものをねらっておりてくる。特にねらわれる農産物が、その畑自体が、おいしくて安全なものをつくっている優良農家の農産物がよくねらわれて、猿が食った後食べてもあたらぬというお墨つきも農家の間で冗談で出ておるぐらいでございます。逆に言うと、優秀な農家方々が被害に遭っておるというわけでもございますので、山と鳥獣の関連、ぜひ考えていただければと思っております。  特に今、本当に町中の近い山村の裏庭まで、大体四、五十頭の猿が、それも小学生の一年生か幼稚園の年長組ぐらいの大きさの猿がごろごろ出て、巡回して何年かに一同年貢取り立てみたいにずっと回っておりますので、これは深刻な問題だと思っております。政府挙げましてその問題に取り組んでいただきたい、ぜひ大臣にお願いしておきます。  次に、先ほどから話が出ましたことと結びつけるのはちょっと無理かと思いますが、人工林への計画的な転換に伴い自然林が減少していったということ、これは客観的な事実でございますので、これについてちょっと伺いたいと思います。  特に、国有林野事業に特別会計制度が導入される際の議論で、これに反対する立場から、特別会計の維持のために過伐採が生じるのではないかという反対意見が出されております。また、地元でも林業者の間で笑い話で、新しく営林署長がかわるとまずやるのが山に入って金になる大きな木を探すということが冗談話みたいに伝わっておりますが、完全に間違った話なのか本当の話なのか、その辺のことは憶測ですのでわかりません。とにかく、これ以上、必要以上に自然林の伐採につながっていくのではないかという不安が地元でもあるわけでございます。特に、国民にとっても自然林の保護及び育成は重大な関心事でもございます。  その中で、山林の機能別に国有林を四つの機能に分けておりますが、特にこの中で国有林の二割を占める自然維持林についての取り扱いの現状、今後の方針について林野庁の御意見をお聞きしたいと思います。
  97. 入澤肇

    ○入澤政府委員 今御指摘がありましたように、国有林につきまして、森林の有する機能に着目いたしまして四つの機能に分類しました。  自然維持林は全体で百四十万六千ヘクタールで一八%の面積を占めております。これにつきましては、施業方法であるとか、あるいは施設の整備であるとか保護管理の仕方につきまして、他の林分と違った特別な扱いをしているところでございます。要するに、保護を図るべき森林生態系とか、あるいは動植物等の特性に応じまして、まず施業方法といたしましては、原則として天然林施業によるということ、それから伐採につきましては、保護を図るべき対象、特性等に応じて、必要なものを除き伐採は行わないというふうにしておりますし、それから施設の整備につきましても、保全すべき環境の悪化を来さないよう十分に配慮して、必要に応じて自然環境の保全に必要な管理のための路網の整備を行うというふうなことに配慮いたしまして、実施要綱を設けまして具体的に維持管理をやっているわけでございます。  さらに、それを具体化するために森林生態系保護地域、こういうものを自然維持林の中には設けております。全国で二十四カ所、三十一万ヘクタール、これは自然維持林の二二%に相当します。  それからさらに、希少な野生動植物を保護するために、当該動植物を対象とした巡視とか生息環境の維持整備を行う希少野生動植物種の保護管理事業というものも、予算が通りまして実施しているところでございます。  今後とも、こういう政策は充実強化していかなければいけないというふうに考えております。
  98. 矢上雅義

    矢上委員 施業計画とかいろいろの中で自然に配慮した分類、区分がされて、施業もそれに応じてされておると聞いておりますが、ただ、これからの流れとしましては、自然の推移に任せるとかいう保護管理、消極的な形もありますし、また、大事な部分だけ残して周りを切るという方法もありますが、これからは積極的に、人工林だけではなく自然林の維持拡大も図っていく、そういう施策も望まれると思います。  それはなぜかと申しますと、なかなか木材の需要も考えたほど伸びませんし、現実に、経済的に投資しようとしても最低四十年から長くて八十年かかるわけで、お金利回りとして換算すると、銀行に預けた気持ちですると一%以下の利回りではないかとか、いろいろささやかれております。なかなかもう経済的に見ても限界もございます。これ以上無理して人工林を広げても無理でございますので、今ある人工林はきちんと整備する。そして、これから余力があれば、できれば自然林の維持拡大にぜひ省庁、民間手を組んで取り上げてほしいという、これは一つの要望でございます。  ベルも鳴りましたので、あとの質問はまとめて要望とさせていただき、最後の一問だけ大臣に決意をお聞きしたいのですけれども、まず要望でございますが、昭和四十年代から材価の低迷等を含めて国有林野事業、非常に財政状況厳しゅうございます。その中で、第四次計画まで含めて、特に平成三年七月に国有林野事業の改善に関する計画が策定され、以前八万五千人おりました定員内、定員外の国有林野関係の職員の方が今二万人ですか、将来的には一万人台にまで削減するということで、また営林支局の数も、組織のスリム化も非常に図っておられて、物すごい努力をされておられるのは資料、統計等にもあらわれております。  ただし、国有林野会計の予算約五千億円のうち三千億円が借金である。そしてまたその三千億円丸々借金の返済に流れておるということで、非常に厳しい会計の状況でありますし、また累積債務が三兆円と言われております。これは多分、将来近いうちに年金改革が行われたその次に大きな問題として避けて通れない問題であると思っております。ぜひこれには積極的に早いうちからビジョンの作成等をやりまして、手おくれにならないように省庁挙げて努力していただきたいということでございます。  また、最後に大臣に対してぜひ決意をお聞きしたいんですけれども、こういう厳しい状況の中で改善計画が進行している、しかしなかなか難しい、その中で、日本の国土を守るという意味から、国有林野事業の再建及び我が国の林業及び林産業の振興について頑張りたいという大臣の決意を最後にお聞きして、私の質問を終わらせていただきます。
  99. 大原一三

    大原国務大臣 委員は熊本県でありまして、私の方は宮崎県で、山でずっとつながっているのでありますが、私も山の中をよく歩くんですが、大変実感としてこれは厳しいなと、行くたびにそういうことを考えている者の一人であります。  委員いろいろ問題点を御指摘いただきましたが、これが一〇〇%ではございませんけれども、林野庁も知恵を絞って今度林野三法をお願いしよう、こういうことで御提案を申し上げるわけであります。川上、川下、そしてまた労働者の確保、これについてできるだけ、一歩でも二歩でも前向きな対策をしたい。  さらにまた、国有林野の赤字問題は、これも委員指摘のとおり大変な問題だと思うんです。今年度予算で新たに利子補給等、幾つかの一般会計繰り入れ措置がございましたけれども、この程度ではとてもこの赤字をしのぐということには至らない。何らかのときにやはり抜本的な対策を考えなきゃならぬと、私も委員の御指摘のように、さよう思っております。  どうか御理解と、さらにまた新しい法律、積極的な御審議を心からお願い申し上げます。
  100. 矢上雅義

    矢上委員 大臣から力強い決意をお聞きしまして安心しました。  これで私の質問を終わらせていただきます。本当にありがとうございました。
  101. 松前仰

    松前委員長 午後二時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二十五分休憩      ————◇—————     午後二時開議
  102. 松前仰

    松前委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。山田正彦君。
  103. 山田正彦

    ○山田(正)委員 今輸入の魚だけで、前回もお聞きしましたが金額にして一兆七千億、言ってみれば石油に次ぐ輸入高になってしまって、漁民は魚価の低迷に大変あえいでいるわけですが、その中で、実はこの三年ぐらい野菜の輸入が大変急増している。きょうは、野菜の輸入の急増の問題と、それから二百海里の問題を聞いてみたいと思っておりますが、野菜の輸入の急増、それについてまず農林省の方で、現状どうなっているか、個々についてはタマネギとか云々また聞いていきますが、概括してまずお話しいただければと思います。
  104. 中須勇雄

    ○中須政府委員 ただいま先生御指摘のとおり、野菜の輸入が最近になって大変増加をしております。  若干経過的に申し上げますと、そもそも野菜の輸入は、消費が周年化するとかあるいは多様化する、そういう事情を背景といたしまして、従来は加工品を中心にやや増加というような形で参ってまいりました。ところが、平成五年あたりを契機といたしまして、特に異常気象による国内での不作、それから円高が大変進んだ、こういうことを背景にいたしまして、従来ふえておりました加工品に加えて生鮮野菜、生鮮物が増加をする、こういう傾向が顕著にあらわれております。  平成六年で申しますと、生鮮野菜は前年比で比べると六六%増、六十五万トンの水準まで達したわけであります。平成七年に入りますと、年の前半は不作が続きまして、前年の六年の増加傾向が続いたわけでございますが、その後、後半以降、国内産の作柄が良好なこと等を反映して、前年をやや下回る水準で現在推移してきている。一月から十一月までの輸入量の合計でいいますと、生鮮野菜で見ると対前年で同期比一〇%増、今こういうような水準にございます。
  105. 山田正彦

    ○山田(正)委員 タマネギなのですが、タマネギだけで聞いてみますと、平成四年三万五千トンが、平成五年は六万一千八百九トン、約倍ぐらいふえています。さらに、平成六年になると二十万六千八百四十九トン。またことしも、恐らく二十三万から四万トンぐらいになると思うのですが、たった三年前に三万五千トンしか入っていなかったものが約十倍ぐらい入ってきているとなると、その価格はどうなってきたか。輸入の価格は、一体国産の価格と比べてどれくらい安いのか。その影響について、また生産者への影響についてどの程度農林省の方で調べられているか、それをお聞きしたいと思います。
  106. 中須勇雄

    ○中須政府委員 野菜の輸入につきましては幾つかのパターンがございますが、ただいま御指摘になりましたタマネギについては、国内で不作だったときに輸入が急増をする、こういうような、不作時に輸入がふえるという典型的なパターンをとっております商品というか、作目でございます。輸入の増加の数字については、ただいま先生が御指摘のとおりでございまして、近年というか、平成六年、七年と二十万トンを超える輸入が続いている、こういうことでございます。  そうした中で、これは何でそういうような急増が起きたかということは、冒頭申しましたように、平成六年に御承知のとおり大変暑い夏、干ばつがございまして、国内産が大変な不作でございました。そのことが基本的に影響して価格が上昇する、それにこたえて輸入が急増をする、このような経過をたどったわけでございます。  そこで、それではタマネギの国内での価格がどうであったかということでございますが、もちろん御承知のとおり、野菜については季節によって、市場によってかなりのばらつきがございます。非常に大ざっぱに申し上げますと、市場におきます販売価格を東京卸売市場というところで仮にとってみますと、平成五年には平均値でキログラム当たり九十円、六年には百五円、七年には百七円、非常に大ざっぱに言えばそういうような水準で推移をしてきている、こういう状況でございます。  それから、もう一つございました、輸入のタマネギは幾らぐらいで入ってきているのかということでございますが、これは大蔵省の貿易統計で単価を出しますと、タマネギについては、平成五年、キロ当たり五十三円、六年では四十七円、七年では五十四円、こういうような形に相なっております。
  107. 山田正彦

    ○山田(正)委員 国内産の半値ぐらい、しかも平成六年に急激に二十万トン、それまで三万五千が六万トンになったものがこうふえたということは、そのときの干ばつでそうなったということでしたが、平成七年もそれを上回る勢いで輸入が伸びている。これは生産者に対しての影響というものはあると思うのですが、それについては今お話はございませんが、ここでどうこう今言うわけではございませんが、ぜひその実態調査に当たっていただきたい。例えば、国内産の作付が減ってきているのじゃないか、困っているのじゃないか、そう思われます。  カボチャについても、平成五年から六年にかけてかなり輸入がふえております。それについての輸入の占める割合、国内産、そしてまたその価格の変動等々について、ひとつ簡単で結構ですからお話しいただければと思います。
  108. 中須勇雄

    ○中須政府委員 ただいまのカボチャの件でございますが、先ほどの御答弁でいろいろ野菜の輸入にはパターンがあるというようなお話を申し上げたわけでございますが、カボチャの場合には典型的に端境期輸入というふうに言われておりまして、国内での端境期に、それをねらって外国から入ってくる、こういうような形でございます。  数字的に申しますと、平成四年には、対前年同期比だけで申しますと二一%増、五年はその前年に対して三%増、六年は二四%増、こんなふうな状況でございます。ただ、七年は輸出国の不作等もございまして、輸入は減少しておりまして、十一月までの輸入量というのは前年同期に比べて一八%の減、こういうような状況でございます。  それから、輸入物の比率でございますが、例えば平成六年をとりますと、国内での生産量が約二十六万トンというのに対しまして、平成六年の輸入量は十五万トン、こういうような水準でございまして、総量に占める輸入物の割合は三七%、こんなふうな状況に相なっております。
  109. 山田正彦

    ○山田(正)委員 ニンニクについてですが、平成四年に六千六百九十トンあったものが、ことしは一万二千トンを超えるのじゃないか、そう思われます。これは私の知っているニンニクの産地、長崎県の壱岐においても、つい三年、四年前までは随分ニンニクもやっておったのですが、もう採算がとれないというので随分やめていく農家を私も目にしてまいりましたが、ひとつそのニンニクについて、今言ったように輸入価格は一体どれくらいで、市場価格はどうなったか、またその辺の輸入の占める割合等も示していただければと思います。
  110. 中須勇雄

    ○中須政府委員 ニンニクにつきましては、先ほどのパターンという意味では、特段のパターンがないというか内外価格差がかなり大きいということを背景に恒常的に輸入が行われてきている、こういうような現状にございます。先生おっしゃったとおり、数字的にかなりの増加というふうな事態になっております。  ただ、実は平成五年に前年比一四五%増加した後に、ニンニクの輸出国は大部分が中国でございますが、必ずしも中身は定かではないわけでございますが、中国で輸出の入札制というものの対象にニンニクをいたしたようでございまして、輸出数量について一定の枠をはめる、こういうようなことが行われているようでございます。そのために六年は、前年に比べると三七%減で一万トン程度の水準。平成七年は、十月まではほぼ前年並みの、前年に比べて三%増というような状況でございましたが、国産物が今大変高値というか物が品不足になっているということがございまして、十一月に輸入が急増する、再び輸入増加傾向にある、こんなふうな状況でございます。  もちろん、ニンニクについては、国内にかなりニンニクに依存している特定の産地がございまして、そういうところではこの輸入物の増大によって相当価格が下がったのではないかということ、それから作付面積等についても、従来、多少減少傾向ということもあったわけでございますが、平成七年はかなり減ったのではないか、その辺の数字を今把握中でございますが、そういうことも言われております。私ども大変強い関心を持って見守っているところでございます。
  111. 山田正彦

    ○山田(正)委員 ショウガについても、平成四年は一万五千九百二十一トンだったのが、平成七年度はその倍以上、三万四千五百トンを超える数量になりつつあるようです。いわゆる主要な野菜がほとんどこうしてどんどん輸入はふえてきているわけですが、その中でもニンジンについてちょっと聞いてみたいと思います。  平成四年は二千九百六十七トンだった。ところが平成五年には、それが三倍以上の九千二百六十六トン、いわゆる三一二・三%増で輸入されて、平成六年は、それがさらに一万八千と倍増し、さらに平成七年度は五万三千八百九十一トン、ニンジンが輸入されている。物すごい勢いで輸入増というわけです。そうしますと、これによって当然のことながら国内の産地の皆さん方は大変困っておられると思うのですね。  私今長崎に住んでおりますが、長崎の大村というところは黒丸五寸ニンジンといって昔から有名なところでございまして、そこに行って一体今どれくらいの価格がしているのかとお聞きしましたら、私この統計を持ってまいりましたけれども、キロ単価六十三円、去年の十二月、平成七年の十二月、長崎中央卸売市場の価格でございます。  これは私もいろいろ聞いておりますと、ニンジンは反当たり大体五トンぐらいとれるわけですが、その中で、実際に掘り立てする場合に堀り立て班というのをつくって、機械で今やっているわけです。それがキロ当たり二十円はかかる。そして、それを集荷して洗いにかける、そして選別する、箱詰めする、それで運賃。そういった、洗いから選別から箱詰め、運賃を入れるとキロ当たり三十五円かかる。そうなりますと、それだけ合わせましても五十五円はかかっている。となれば、キロ六十七円あるいは六十三円という値段だったら、もう生産者はやっていけない、もうこれ以上ニンジンはつくれない、もう大変嘆いているわけであります。今、米の問題も、本当に米では食べられなくなるくらいになってきた。その中で辛うじて野菜だけは何とかと、野菜農家は大変頑張っておるわけですが、こういう実情になると非常に厳しくなってくる。  ニンジンの生産量と輸入量との割合、そしてまた輸入の価格はどういう程度に推移してきているか、国内産との価格の比較、また生産者に与える影響、例えば去年からことしにかけて減反したなら減反の面積とか、そういったことがわかれば、ひとつお答えいただきたいと思います。
  112. 中須勇雄

    ○中須政府委員 ただいま御指摘のございましたニンジンにつきましては、パターンで申しますと、先ほどタマネギで申しましたように、国内の不足時に輸入されるというものが従来のパターンでございました。国産のニンジンにつきましても、平成六年、干ばつでもって大変不作だった、そういうことが輸入増加の引き金になったということでございます。数字的にはたぜいま先生が御指摘になったとおりでございます。  ただ、平成七年の前半まで、おおむね六月まででございますが、やはりその不作の影響で国産が高値だったということでかなり急速に増加いたしましたが、平成七年の後半からは急速に輸入量が現在は減ってきている。各月当たり大体千トン内外、そういうような水準になっておりますが、ここまで下がってきてもなお輸入が続いているというところは大変心配な一面があることは御指摘のとおりでございます。  今ニンジンについて、需給動向全般がどういうことになっているかということでございますが、いろいろ年と年度が交錯して恐縮でございますが、平成六年度の数字で申し上げますと、生産量が約六十六万トン程度、こういうことでございます。平成六年度というベースで見ますと、輸入量が四万七千トン、こういうことでございますので、輸入物の比率は六・七%、こういうような数字に相なっております。  一方、価格面で申し上げますと、ニンジンの国内での価格、これはもちろん先ほど先生の御指摘もございましたが、地域によって、物によって、相当のばらつきがあるわけでございます。例えば東京卸売市場で昨年末ということになりますと、大体キロ当たり百円ちょっと、こういうような価格でございます。ところが、輸入されますニンジンは、同じ時期というか、昨年の十一月時点で、大蔵省の統計から計算いたしますと、キロ当たり七十二円、こういうような格差があるということでございます。
  113. 山田正彦

    ○山田(正)委員 ではもう一つだけ。シイタケについてお聞きしたいのです。  シイタケも平成四年、平成五年と、かなりの量が入ってきているようですが、実はこれによってその影響を大変受けてきたというのが、長崎県の対馬において私ちょっと調べてみましたら、昭和五十六年当時は四百七十三トン、シイタケを生産しておったのですが、平成六年度は三百二十二トン、ことしはさらに減って三百トンを切るのではないか。いわば五百トンくらいあったものが三百トンを切るまでに落ち込んできた。価格の方も、これは干しシイタケの場合ですが、平成五年度は辛うじてキロ当たり四千百円くらいだったのが、平成六年が三千五百円。平成七年度は三千円を切るのではないか。恐らく来年度もうシイタケをつくる人がいないのではないか、そこまで今言われているわけです。  ひとつシイタケについての輸入の急増、干しシイタケと生シイタケについて両方説明していただきたいのですが、その価格と輸入の占める割合、そういったものも含めてひとつ教えていただきたいと思います。
  114. 中須勇雄

    ○中須政府委員 まず、干しシイタケにつきましては、輸入量は、基本的にやはり内外価格差が大きいことなどから平成四年以降輸入が急増しておりまして、対前年比で七一%増、五年は同じく五〇%増、こういうような水準でございました。平成六年以降はやや輸入の伸びが鈍化しておりまして、平成七年一月から十一月までの輸入量でいうと、対前年で九九%、ほぼ横ばいというか、そうような状況にございます。  こうしたことを背景に、先生御指摘のとおり干しシイタケの価格につきましても、供給過剰ぎみということでございますので、国産品、輸入品とも低下傾向で推移してきている、そういう状況でございます。  生シイタケにつきましても同様に内外価格差が大きいということで、特に冬場、生シイタケの需要期でございますが、これを中心にして輸入が急増してきております。最近の輸入量ということで平成七年で申しますと、十一月までで対前年比一一%増ということで、干しシイタケと同様にやや鈍化してきているかなという状況でございます。価格についても、先生御指摘のとおりかなり低下を見てきている、そういう状況でございます。  輸入物の占める比率で申しますと、国内での需要量に対する輸入物の割合ということでいいますと、干しシイタケの場合には平成六年で五五%、生シイタケの場合、同じ平成六年で二五%、こういうような水準でございます。
  115. 山田正彦

    ○山田(正)委員 半分以上のものがそうして入ってくる。中国からのシイタケの輸入が大半だ、そう聞いておりますが、当初は中国産のシイタケを質が悪いとか云々とか言って国産品は自信を持っておったようですが、そのうちに日本人が中国に行って日本人向けの実に品質のいいシイタケを生産するようになってきて、それを今輸入している。野菜においてはほとんど同じような形が中国とかベトナムとか東南アジアにおいてとられているのではないか、そう思われますが、これは大変大きな問題でございまして、ひとつその影響等々についてぜひ農林省にそれを詳細に調べて御報告いただければ、そう思っております。  このシイタケの問題で、実は韓国はやはり中国からのシイタケの輸入に対してセーフガードを適用して、いわばシイタケの生産者を保護したというふうに私どこかで聞いたわけですが、これは正確に調べたわけでありませんで、本当かどうかわかりません。  では、日本においても、野菜についてのセーフガード、これを考える必要があるのじゃなかろうか。実は、セーフガードに関する協定の第二条によりますと、「加盟国は、ある産品が、同種の又は直接に競合する産品を生産する国内産業に重大な損害を与え又は与えるおそれがあるような増加した数量で、及びそのような条件で、自国の領域内に輸入されていること」、そういう場合においては当該産品についてセーフガード措置をとることができる、そうなっております。そういう意味で私は、国内における野菜生産者を保護するためにセーフガードというものをぜひ農水省に検討していただきたい、そう思っております。  実は、昨年十月だったか十一月だったか、農水省の野菜流通課の担当者にひとつセーフガードの適用をできないものか、そういう御相談をしたことがございました。ことし一月二十日だったと思いますが、私、壱岐の島を歩いておりましたら、西日本新聞を開いてみますと、農水省がセーフガード適用を検討、三面でしたけれども、かなり大きな、四段抜きぐらいの記事が載っておりまして、私それを見て大変喜んだわけですが、中国産安値のニンニク等について適用を検討と書いておりました。  私ども、いわゆる農林水産委員として、こういった野菜についてのセーフガードの問題、ぜひこれから本気で農水委員会でも検討していかなければいけない問題だ、そう思っておりますが、ひとつ大臣の方から、それについてのこれからの意向と申しますか、どうしたらいいか、そういう取り組みについての一つの所信といったものでも表明していただければと思います。いかがでございましょうか。
  116. 大原一三

    大原国務大臣 山田委員質問を聞きながら、私も実は市場へ何回か行ったことがあります。ところが、市場方々が言うには、外国産が最近急に非常にふえたというお話を聞きました。  さて、市場を歩いてみますと、どれが外国産だか国内産だか実はよくわからなかったのでありますけれども、農林省の数字によりますと、今のところ九割、野菜の食糧自給率がありますという説明ですけれども、委員指摘のように、関心野菜つまり重要野菜については非常に輸入がふえておる。  こういうことに着目しながら、セーフガード措置の発動等については委員承知のとおりいろいろ難しい制約条件がございます。しかしながら、さはさりながら、現状の事態の推移を憂慮しながら、事務当局に対して、まず農林省自身が直近の野菜の輸入の状況、生産への影響について実態の把握や調査をするようにということを命じた経緯がございます。恐らく委員御存じの新聞はそういう経緯を踏まえての記事ではなかったのかな、こう思っておりますが、以上のような経緯にかんがみ、私も十分この問題については配慮をしてまいりたい、このように考えております。
  117. 山田正彦

    ○山田(正)委員 大臣からひとつ前向きに検討しようというありがたいお言葉でございまして、私どももぜひそうしてもらいたいわけですが、しからば具体的に、セーフガードはどういう手続をとって、どういう内容でいわば輸入を制限することができるものか、ひとつ事務当局の方からその中身について説明をいただきたいと思います。
  118. 中須勇雄

    ○中須政府委員 大変概括的な御説明になってしまうかと思いますが、ごくかいつまんで申し上げたいと思います。  一つは、セーフガードの発動の要件と申しましょうか、それがございます。先ほど先生、協定を言及ございましたけれども、まさにあそこに書いてあることが一つの要件でございまして、輸入量が増加をすること、これは絶対量であるか相対量かを問わず、相当量の輸入の増加がある。その輸入によって同種の産品あるいは直接競争する産品の生産者に重大な損害を与え、あるいは与えるおそれがある、そういうことが確認されなければならない。そしてさらに、それに対してセーフガードを発動することが国民経済上緊急に必要がある。こういうような要件を満たして発動が道筋としては進んでいく、こういうことでございます。  一方、手続といたしましては、セーフガードを発動するためには、現在のセーフガード協定なりあるいはそれを実施するための国内法といういろいろな手続によりますれば、例えば農林水産物資であれば農林水産省の方から大蔵省及び通産省の方へ政府としての調査の開始を要請する、そういうような手続がまずございます。それによって、大蔵省、通産省及び農林物資であれば農林水産省の三省による政府としての調査、セーフガードの発動の必要があるかどうかという調査が行われるということになります。  この調査は一年以内に結論を出すようにということになっておりますが、この調査の中では先ほど申しました要件を果たして満たすかどうか。それと同時に、さまざまな当該産品についての生産者、消費者あるいは輸入業者を含めた利害関係者と申しましょうか、そういう方々からの意見の聴取等を行うように、そういうことを含めた調査を実施いたしまして、その上で、先ほど申しました要件を満たしているということであればWTOにその旨政府として通告をし、関係国からいろいろ協議要請があった場合には事前の協議を行ってその上で発動をする、こういうような形になるわけでございます。  その場合に、発動の態様としては、関税を引き上げるか、あるいは輸入数量を制限するか、二つの方法が認められている。大変簡単でございますが、大ざっぱに言うと、以上のような形だというふうに承知しております。
  119. 山田正彦

    ○山田(正)委員 今、説明をいただきましたが、国内産業に重大な損害、これは事実、ニンジンとかニンニクとか、そういった種類については、その減反面積等々を見れば既に重大な損害を与えているということは立証できるんじゃないか、そう私は思いますが、このガットの条項でいくと、その「おそれがある」事実、実際に重大な損害がなくても、そういうおそれがあれば足りる。その辺を少し農林省としても十分検討いただいて、しかも、このガットでいきますと、調査の完了前において暫定措置をとることができる。例えば、私が最初に新聞を見たのが一月二十日なんですが、そこで大臣調査を命じておったということであれば、ぜひガットに通告していただいて、ガットに通告したら直ちに、調査完了前においても、これはもう国民にとってというか、野菜農家にとっては大変なことでございまして、ぜひ具体的にそのセーフガードの適用を図ってもらいたい、ぜひそうお願い申し上げたいと思います。  以上、野菜についての輸入の話は終わりますが、次に、いよいよ国連海洋法、これは今国会で批准される、一応閣議決定もできたようですが、これについて二百海里の設定、これがいよいよなされる。  ところで、一九七七年当時、当時のソ連、また米国、カナダ等が二百海里を線引きした。日本も当時、漁業水域に関する暫定措置法を成立させて、一応二百海里の線引きをしたいきさつがありますが、そのことについて、どういう影響が当時あったのか、簡単で結構ですから、ひとつまず説明いただければと思います。
  120. 東久雄

    ○東政府委員 先生御指摘のとおり、一九七七年、アメリカの二百海里設定をきっかけに先進各国が二百海里を引いた、その結果日本側も引きました。それで、その二百海里を引いた効果から、向こう側の海域に入る場合に許可をとって入らなければならない、しかも、その許可を得るための二国間協定が必要でございました。  それで、そのときに、当時ソ連でございます、ソ連側を中心に非常に厳しい漁獲の割り当ての削減がございまして、我が国は多数の漁船を減船するという、漁場を失うという漁船がたくさん出まして、一千隻を超える漁船の減船を行ったという経緯がございます。  そのほか、アメリカ海域でも、そのときは大きくはございませんでしたけれども、おいおい一九七七年以降、徐々に徐々にアメリカ海域からも漁獲の量の制限を受け、現在では非常に少ない。アメリカ海域では、ほとんど二百海里内での漁業は行われていないわけでございます。
  121. 山田正彦

    ○山田(正)委員 そのときの日ロ漁業協定とか、いろいろな交渉の経緯等はあると思うのですが、私が理解するところは、外交上の交渉によって二百海里をこれから批准するとなると、当然、韓国と中国との問題が生じてくると思いますが、その交渉によって決めていく外交事項と、それと、国連海洋法を批准することによって国際法上の権利として二百海里を線引きできるんだということ、この権利としての行使というものと話し合いというものとは全く質を異にするものだ、そう思うわけですが、今回、まさにこの二百海里は批准することによって生ずる権利でありますから、ぜひ、日韓、日ロ漁業交渉においてもひとつ、かつて七七年当時にソ連あるいは米国、カナダが、いろいろな協定の中でも、私は調べてみて一方的にと言っていいと思うのですがやってきた、そのときの国際的な慣行等も考えながら、ひとつそこはきちんとやっていただきたい、そう思っております。  それでその上で、択捉・国後島などの北方四島、それについて当時日本としては、今でもそうですが、北方四島の返還問題を初め、日本の領土として位置づけられている。ところが、事実上ソ連が実効支配している。その中でどういう線引きをし、どういう交渉を行ってきたのか。これは、これからの竹島、尖閣諸島の問題で大変参考になることでございまして、これは外務省がいいのか水産庁がいいのかわかりませんが、どちらからかひとつ具体的な御回答をお願いしたいと思います。
  122. 東久雄

    ○東政府委員 先生御指摘の北方四島、我が国の領土でございます。そのところに対する二百海里というのは、先生御承知のとおり、領海の基線の外に二百海里を引くというのが基本でございます。もちろん、それが他の国と接する場合には中間線ということになります。国後・択捉の領海基線から二百海里を基準にした線を引いております。それで、ロシア側もその主張を曲げないために、両方から引き合っているというのが現状でございます。  それで、これは日ロ地先の漁業協定の中で、その場合は漁業専管水域と言ったと思います、それぞれの漁業水域の中へ入る船はそれぞれの国の許可を得なければならぬというような規定ぶりを、まあ正確なところはちょっと手元にございませんが、そういうふうな規定ぶりをやっておりまして、その海域につきましては、日本船が入るときは日本側の許可と、それからロシア側の許可も今のところはとってやっておるというような形で操業が続いておるということでございます。
  123. 山田正彦

    ○山田(正)委員 この国連海洋法の批准に向けて水産庁も大変今は努力している、それはよくわかるのですが、新聞等々によりますと、今操業している韓国、中国等の漁船についてどういう扱いをするか。例えば七七年、日本も東経百三十五度より以東の方ですか、線引きをしたところ、福井県の沖より北の方を引いていますね。そのときに、言ってみれば韓国漁船、中国漁船をその日本排他的経済水域を線引きした中から適用除外した。そしてまた、東経百三十五度より以西については線引きをしなかった。これはいかなる理由でやったか、それをひとつここで明確に御答弁いただきたいと思います。
  124. 東久雄

    ○東政府委員 一九七七年に我が国が漁業水域を設定したまずその理由でございますが、これは、先ほどお話しいたしましたとおり、アメリカそれからカナダ、さらにそれに続いてソ連というのがいわゆる漁業水域二百海里を引いたわけでございまして、そのときに日本側も対ソ連の交渉という問題がございまして、これは当時、ソ連漁船がいわゆる日本の二百海里内に入って操業をしている、二百海里を引いた場合の中に入って操業しているという状況もございまして、その交渉の必要性からも一九七七年の五月に引きました。そのときに、先生御指摘のとおり、東経百三十五度から西の日本海並びに東海、黄海と言われる地域、これは東シナ海と申しましょうか、その地域につきましてはその設定をしませんでした。  それともう一つは、設定した海域につきまして中国、韓国の漁船については適用しなかった、御指摘のとおりでございます。これは当時、韓国、中国とも二百海里を引かなかった、ないしは引く予定がなかった。そこで、二百海里を引く場合には、隣接国との関係では、二百海里がはるか向こうになればいいのでございますけれども、要するに両方が接するところについてはいわゆる中間線ということをとらなければならないという事情もございます。そういうこともございまして韓国、中国の方面に水域を設定しないというようなことがありました。  それからもう一つは、当時、一九六五年に結ばれた日韓漁業協定、一九七五年に結ばれた日中漁業協定、これがそれぞれ十二海里までを漁業の専管区域と決めておりました関係上、その他の区域ではそれぞれ、ある意味での自由操業、ある程度の制限はございますけれども自主的な規制による自由な操業というようなことが行われておりまして、そういう関係で、先ほどの、百三十五度以西に線を引かないとともに、中国、韓国には我が国の設定した漁業水域の規制を適用しないという形をとったものでございます。
  125. 山田正彦

    ○山田(正)委員 その結果、今大変北海道の漁民も困っている、全国の沿岸漁民が困っておられる。実際にあの当時も二百海里の線引きを沿岸漁民としては大変主張したようですが、資本漁業の立場、いわゆる中国周辺の黄海、東海まで出るまき網船団とかあるいは以西底びき船団とか、そういった資本漁業に対する配慮もあったのじゃないかと私なりに推測しておりますが、その中で実は私どもが大変今困っている例を二、三挙げさせていただきたいと思っております。  今、北海道周辺では、例年、韓国漁船がスケトウダラをねらってトロール漁をやっているわけですが、北海道の十二組合と八十八隻の沖底漁業者らが、減少傾向にあるスケトウダラを何とか保護しようと、一九九三年から、六月から三カ月間禁漁を義務づけ、九四年には、網目を広げて規制するとか、体長三十センチ未満の魚の漁獲を二割以下に抑えるとか、資源管理に随分努力して頑張ってきている。ところが、日本側の努力にもかかわらず、韓国漁船が、稚内の西方沖の武蔵堆ですか、ここで盛んに漁業を続けている。日本の漁船が百トン規模なのに、韓国は千トン規模の船を繰り出して、ごっそりと大量に漁獲していっている。周年やっている。  これは大変なことなんですが、西日本の海の方の五島灘あたりでも、毎年一定期間、資源保護のために禁漁しているところを、韓国の船がどんどんやってきて、今、漁をしていっている。実際に、おととい私も五島の方でタコつぼ漁をやっている漁民から直接聞いた話ですが、もう二、三年前から、タコつぼをずっと海に流していくわけですが、一晩たってそのタコつぼを引き揚げに行く。その一晩、夜の間にその網を韓国の底びき漁船にずたずたにやられてしまう。それで、やむを得ず私どもは毎晩、流しているタコつぼの網の見張りに夜通し船を走らせております、これで疲れ切ってしまっております、そういうお話でございまして、今まさに韓国の違法操業は日本の沿岸、まさに日本の沿岸のすぐそばまで来てやっている。  これをどうしても、二百海里を線引きすることによって締め出さなければ大変なことになる、そういう状況でありまして、水産庁も、まずは韓国の日本沿岸での操業の実態、これをどれほど掌握しておられるか、概括的で結構ですが、調査しているほどを御説明いただければと思います。
  126. 東久雄

    ○東政府委員 韓国側の操業ということで、先生御指摘のとおり、北海道周辺には三百五十トンから一千トン規模までのトロール船十一隻が周年操業いたしております。主としてねらいはスケトウダラだと思います。それから、西日本では、相当数、これは非常に近いところですので数が入れかわったりしてなかなかとらまえにくいのでございますが、まき網と底びき網の漁船、特に小型の底びき網の漁船の操業が多数見られます。  例えば日本の中間ラインの中というような推計で、これは一つの全体の日本海としての漁獲というような形で韓国側はとらえるものですから推計で出さざるを得ないのですけれども、漁獲高としてはいわゆる西日本水域で約九万トンぐらい韓国船がとっているというふうに推計しております。いろいろな推計値を入れておりますので甚だ不正確かもしれませんが、九万トンぐらいというふうに考えております。  それからもう一つ、今、北海道のスケトウというお話がございましたけれども、それも四万トンぐらいではないかというふうな、これは大体統計はわかるわけでございますが、それぐらいの量をとっておるというふうに我々は考えております。  それからもう一つ、先生が御指摘の漁具の被害でございます。これは相当の件数になりました。平成四年が千五百件を超えております。それから、平成五年は二千二百件を超えております。ただ、平成六年、ここのところで三百二十一件と非常に減っております。これは、一つは違反に対する取り締まりが韓国側で非常に厳しくやられ始めたということもあるのかなと思いますが、平成六年は少し減っております。  しかし、件数は物すごく多いということでございまして、常に我々はこの点につきましては韓国側の厳しい取り締まり並びに指導ということを、いわゆる実務者協議等、取り締まり協議等で強く申し入れているところでございます。
  127. 山田正彦

    ○山田(正)委員 韓国の船がどんどん日本の近海でそうして漁をしていて、日本の漁民は非常に困っているということもさることながら、最近、中国漁船、これが大変目立っておりまして、中国のイカ釣りも、漁民の話を聞きますと、フェリーみたいに大きいイカ釣り船で、こっちの五トン未満の小さなイカ釣り船が火をたいてやっとイカが集まり始めたかと思うと全速力でやってくるので、大抵集めたところから結局日本の沿岸漁民は逃げ出さざるを得ないという非常に激しい闘いが近海で続いているようでございます。  この中国のイカ釣り船も、また中国の底びきもいろいろな形で、まあカツオ・マグロ船も去年は太平洋側に五百隻から六百隻が出ていったと聞いておりますが、既に、いわば青森沖から津軽海峡を通って北海道の日高沖でもイカ釣り船の大型が百五十隻ほど出てきたとか、非常に中国の船の脅威というものは、私ども漁民の話を聞いていますと、大変なことのようでございます。  このまま放置しておくと、韓国も去年の十二月、二百海里を国会で承認したのは、西沿岸が中国の船にほとんどごっそりとやられてしまったという経緯もあるようですが、そういう中国漁船の漁獲あるいは日本沿岸での実態、そういったことについて水産庁はどのように把握しておられるか、ひとつお聞きしたいと思います。
  128. 東久雄

    ○東政府委員 中国船が急激に日本近海へあらわれてきているというのは事実でございます。特に、中国は沿岸部へ相当人口移動が激しいようでございまして、魚の需要が大変伸びております。それで中国周辺のいわゆる東海、黄海の資源を相当枯渇させたというふうな感じがいたしまして、それで去年、あの中国が二カ月にわたり東海、黄海での禁漁をやったという。そうしますと、そこで禁漁になりますとどこへ行くかということで漁場を転戦したのではないかというふうに思うわけでございますが、日本海沿岸に視認した中国船が千七百隻を超えるというふうなことも聞いております。それまでに比べますと、相当の数がふえております。  それからもう一つ、先生御指摘のイカ釣りの船でございますが、これは日本海にも少し出ておりますが、北海道、三陸沖に二百トン級のイカ釣り船が相当数出ております。我が国は、今先生御指摘のとおり、百三十九トン以上の船が操業できるラインとそれからそうでないラインとを分けておりますが、そこをお構いなしに大型の船が来るということで、漁場競合等があるようでございまして、多数操業しておるようでございます。三陸沖のイカは、二百そうぐらい来ておったというふうに聞いております。  そこでまた漁具被害がやはりそういう増加との関係でふえておるようでございまして、例えば平成四年には、先ほどの韓国は千五百と申し上げましたけれども、ゼロだった中国船による漁具被害が、この平成六年には百三件に及んでおるというようなことからしても、中国船の進出が相当激しくなりつつあるということでございまして、我々、その点は大変心配しておるところでございます。
  129. 山田正彦

    ○山田(正)委員 今回、二百海里の線引きで、中国との間、韓国との間、まさに今、日中漁業協定、日韓漁業協定があるわけですが、その中で、その協定があるから、韓国との話し合い、中国との話し合いによってということになったら、これは私の推測ですけれども、合意ということになれば、いつになって解決するかわからない状況になるのではないか。  それより先に、この国連海洋法上の条約の批准は権利であるということであったら、水産庁としては、韓国・中国漁船をともあれ日本排他的経済水域の中から、いわゆる条約で限られた船以外は一たん締め出さなければ、日本の沿岸漁業は成り立たない。その辺、私は確信しているわけですが、ひとつ大臣の口から、その辺の問題についてどう考えておられるか、お聞きできればと思っております。
  130. 大原一三

    大原国務大臣 せんだっての閣議了解に基づきまして、我が国としては、外務省とも我が省は緊密な連携のもとに、この二百海里専管水域の設定に努力をしていくつもりであります。幸いに、中国も韓国もこの同じ条約を批准をすると聞いておりますので、韓国外務省筋の外務大臣の発言を見ましても、竹島問題は一時棚上げしてでもこの問題を両国で話し合って決着をしたい、こういうことでございます。  この批准によって専管水域の設定をできるだけ早急に、閣議了解は「合理的期間」、こう書いておりますけれども、それは結局、今委員がおっしゃったように、日韓、日中の両協定との絡みもありますから、それらの折衝のための合理的な期間だ、こう私は認識しております。  いずれにしても、早急にこれに結論を出していきたい、そのための法整備を急いでいきたい、こういう気持ちで対処してまいりたいと思います。
  131. 山田正彦

    ○山田(正)委員 今竹島の話も出ましたが、韓国では竹島の問題で随分扇動的な報道、そういったものがなされております。軍艦とか軍事訓練とか、あるいは波止場をつくるとか、いろいろやっているようですが、日本国有の領土ということもあり、その中で、竹島問題を今大臣は棚上げしてもというお話でございましたが、実際に棚上げして、こちらの方で二百海里線引き、そういったものがどうなるのか、どうするつもりなのか、もう少し具体的にそのあたり、竹島問題を御説明いただきたいと思います。
  132. 東久雄

    ○東政府委員 これは、いわゆるEEZの線、排他的経済水域の線を引くというのは、領海の基線から二百海里引くわけでございまして、領海問題と非常に密接に関連しているものでございます。それで閣議了解の後、官房長官の記者会見で明確にされているように、竹島についての我が国の立場は一貫したものであるという立場でございます。それから、排他的経済水域については、一部水域の除外を行うことは考えていない。それで、今後その具体的な法案作成作業を行っていくことになるということでございます。  この閣議了解ということは、これがスタートになって準備を進めていくものでございまして、私たちはこの方針でいかれるものだというふうに考えております。
  133. 山田正彦

    ○山田(正)委員 竹島も尖閣諸島もそうですが、いわば領土問題化、いわゆる政治問題化せずに互いに粛々と二百海里の線引きをする、早く線引きをする、完全実施をするということは一番大事なことではないか、私はそう考えております。  その中で、調べてみますと、同じようなことが一九七七年ですか、世界各国が二百海里線引きをして、西日本の海ぐらい、世界であと二カ所あるようですが、二百海里が線引きされずに残されましたけれども、各国でいろいろな問題が生じたようでございます。その中で、カナダ沖にあるフランスの島、サンピエール及びミケロンという二つの島ですが、そこで二百海里をフランスが線引きをする、カナダも線引きをするというところで、国際司法裁判所に提訴した。それで、国際司法裁判所が一九九二年に一つの裁決を出して解決を図っているということがあります。  ひとつそういう意味で、日本もこの竹島、尖閣諸島の問題は、粛々と線を引いた上で国際司法裁判所に提訴して解決を待つという考え方はどうか、そう思っておりますが、きょう外務省から来ていただいておりますけれども、ひとつその辺、御検討をお願いしたいと思います。
  134. 高田稔久

    ○高田説明員 ただいま先生から御指摘のございました国際司法裁判所への提訴という件でございますけれども、かつて竹島問題につきまして我が国は国際司法裁判所に提訴することを韓国側に提案したことがございます。これは一九五四年のことでございますが、韓国側はこれを拒否して現在に至っておるという状況でございます。  この国際司法裁判所は、紛争の両方の当事者が裁判所において解決を求めるという合意がありまして初めて動き出す仕組みになっておりまして、したがって、たとえ我が国が一方的に提訴をしたということであったとしても、韓国はこれに応訴する義務がございません。そうである以上、国際司法裁判所の管轄権というものは設定されないわけでございますけれども、私どもといたしましては、本件の国際司法裁判所への提訴には引き続き検討を要する側面があると認識しております。  いずれにしても、政府といたしまして、あらゆる可能性を検討しつつ、本件問題の平和的解決のために粘り強く努力してまいる所存でございます。
  135. 山田正彦

    ○山田(正)委員 まだいろいろ国連海洋法の批准についてお聞きしたいことはあるのですが、これから国会等々の審議も始まると思いますので、またいっか機会があったら詳しくお聞きしたいと思います。  時間が参りましたので、ここで終わらせていただきます。
  136. 松前仰

  137. 初村謙一郎

    ○初村委員 新進党の初村謙一郎でございます。  先日、大臣の所信をお聞きをいたしまして、ちょっと早読みで、後で読み返したわけでありますけれども、非常に頼もしい限りであります。我が国が抱えている、特に農林水産業が抱えている、国民生活に不可欠な食糧の安定供給を初めとして、農林水産業の果たす役割といったものを、非常に大臣自身決意を込められておったのだなということで認識をいたしております。高く評価をさせていただきたいというふうに思っております。  今、山田委員からもお話がありましたとおりに、この海洋法、二百海里の経済水域の設定の問題についてお聞きをしたいと思いますが、今も答弁ありましたように、私は、これは水産あるいは海洋法の問題と線引きの問題も含めて、領土問題と切り離して話をすることはできないのじゃないかという認識をいたしております。  特に、大臣も宮崎県の御出身でありますし、同じ九州でも我が長崎県は特に環東海黄海地域での操業といったものがあるわけであります。そういう意味合いも含めて、大臣の領土問題への認識、特に竹島の問題、尖閣諸島の問題、どういうふうにお考えか、明言していただきたいというふうに思っております。
  138. 大原一三

    大原国務大臣 今、水産庁長官からもお話がございましたが、官房長官も先日記者会見でも明言しておりますように、さらにまた外務大臣も発言しておりますように、私も、竹島の領土問題は、従来とも我が国の立場は一貫したものでありますと、したがって、竹島を内側に含んだ線引きをする、こういうことになると思います。
  139. 初村謙一郎

    ○初村委員 一貫したものということで、私は、大原大臣も竹島は我が国の領土であるという認識だ、そういうふうな認識をいたしておりますが、それでよろしゅうございますか。
  140. 東久雄

    ○東政府委員 ただいま大臣が御答弁なさいました点につきまして補足させていただきます。  二月十三日の予算委員会で池田外務大臣の方から、竹島につきましての我が国の立場でございますけれども、我が国は従来から一貫しまして、歴史的な観点から見ましても国際法上から見ましても我が国の領土である、こういう立場でございますとお答えになっております。これを踏まえての先ほど大臣の御答弁であったというふうに思います。
  141. 初村謙一郎

    ○初村委員 私は水産庁長官にお聞きをしておりません。  大原大臣大原大臣は、竹島は我が国の領土であるという認識を持っておられますか。
  142. 大原一三

    大原国務大臣 過日の予算委員会でも外務大臣が答えておりますけれども、竹島につきまして我が国の立場は、従来から一貫しまして、歴史的な観点から見ましても国際法上から見ましても我が国の領土である、こういう立場であります。外務大臣の発言と全く同じでございます。
  143. 初村謙一郎

    ○初村委員 ありがとうございました。  これをなぜ執拗に聞くかといいますと、要するに、外務省もこの問題については、基本的には我が国の領土であるということを認識しながらも、対中国、韓国に対して非常にある面では遠慮をしている、漁業問題と領土問題は別であるというふうな認識をある面では持っておるのではないか。  そうしますと、例えば排他的な海域を設定するにしても、いつまでも引けない状況があるのではないか。これは、恐らく一九五二年に李承晩ラインができました後、それから百三十五度以西を線引きできなかったという経緯からするとわかるわけでありますけれども、私は、今回のこの批准に当たって、あるいは二百海里の設定をするに当たって、ある面では毅然と、排他的な経済水域を設けるのであれば、今の漁民の声にありますように、韓国船あるいは中国船の違反操業、特に漁具の被害をこうむらせておるこういった操業については、徹底的に毅然たる態度で臨むべきだというふうな認識をいたしております。そういう被害が多いわけでありますから、ぜひそれに向けて完遂をしていただきたいというふうに思います。  長官にお聞きしますが、この二百海里の線引きについては、竹島の問題、尖閣諸島の問題、これは恐らく領土問題を抜きにしては、さっきも私は言いましたけれども、できない。今、この環東海の線引きを私なりにしてみました。物すごい入会なのです。台湾もあります。国連に加盟していない台湾と中国の問題、韓国の問題、日本の問題、すごい入会なのですね。先ほど山田議員への答弁の中で、中間線を引きますということでありますけれども、これは中間線で引かれるわけですか。
  144. 東久雄

    ○東政府委員 中間線云々というのは、一九七七年のときの引き方の御質問だったと思います。  今、国連海洋法条約は、二百海里を引き、それで他の近隣国との間で重なる可能性のある部分については協議をして引くというのが基本になっております。ロシアとの関係では中間線を引いておるという状態でございます。
  145. 初村謙一郎

    ○初村委員 そうしますと、私はこの交渉に入るときに幾つか疑問を持つわけですけれども、この線引きをやるときに、外務省なのかあるいは農林省なのか、どっちが主導権を持って線を引かれるのですか。
  146. 東久雄

    ○東政府委員 これは各省にまたがる問題でございますので、内閣の外政審議室のところに海洋法の準備室を設けておりまして、そこを中心に各省間で調整をしてやっております。そこで検討をされております。  それで、外務省の方も人を派遣、私どもの方も人を派遣しておりますし、もちろん向こうへの所属でございますが、それから海上保安庁関係、これは本当に地図の上に落とすときには、やはり水路部の知識といいますか知見をおかりしなければならないようなこともありまして、各省そういうふうな出向の体制をとって準備を進めております。
  147. 初村謙一郎

    ○初村委員 そうすると、先ほど水産庁長官からも、竹島は我が国の領土であるというふうな認識を示されましたけれども、例えば我が国が線引きを要望するとすれば、最大限竹島の向こう側、韓国側の方に二百海里の線を引かれるということでよろしゅうございますね。
  148. 東久雄

    ○東政府委員 線の引き方について、これは準備に入るということで、線を引く、それの準備をするというふうに閣議了解されておりまして、どういうふうな線を引くかということについては、まだ検討中といいますか、内閣においてその議論がこれからなされるところでございます。
  149. 初村謙一郎

    ○初村委員 私は全面設定をされるんじゃないかなというふうに思うのです。韓国も日本側に対して、韓国から見て竹島を基点にして二百海里日本側に持ってくるわけでしょう。そうしますと、今の答弁であると、いつ、どういう状況でそういう線を引かれるのか。私は、例えば交渉の中で韓国側の要望と日本側の要望の中間線をとっていく、竹島のちょうど真ん中に線を引っ張って中間線で設定するのではないかという気がしますけれども、それはどうですか。
  150. 東久雄

    ○東政府委員 韓国側の現在のこの二百海里に対する表明は、二月二十日に孔外務部長官が記者会見をされておるときのものでございます。このときに、その二百海里、竹島を云々ということは一切触れないでおられます。それらの水域も含めてこれから協議が行われていくというふうに私どもは理解しております。
  151. 初村謙一郎

    ○初村委員 そうすると、海洋法の批准は、当然私は批准をされるのだろうと思いますけれども、今みたいな話だと、韓国はもう既に、例えば竹島を領土として認識、かなり強い決意で臨むということを表明した後の今の話でありますから、私は、日本側に向けて二百海里引いてくるんじゃないかと思うのですよ。そういう認識じゃないのでしょうかね。  それともう一つ、この排他的水域を設定することと、今あります日韓漁業協定、どちらが優先されるのでしょうか。もちろん設定するまでの間は日韓漁業協定の中でやるのでしょうけれども、それを基準に設定しようとか、今のような認識で、竹島は我が国の領土であるけれども線引きはまた違いますよという話になってくると、これは、批准をし、あるいは全面設定をしよう、全面適用をしようという期待がある漁師からすると、今までと何にも変わらないじゃないかということになると思うのですが、どうでしょうか。
  152. 東久雄

    ○東政府委員 まず、現在の日韓、日中漁業協定と海洋法条約との関係について申し述べたいと思います。  まず、現在の日韓、日中漁業協定はいわば二国間特別法でございまして、いわゆるマルチの、これはちょっと外務省から聞いたことを申し上げて申しわけないかと思いますが、マルチの、いわゆる多数国間の協定よりも二国間の協定というのが特別法と一般法との関係になるそうで、そちらの方が優先をするという状態になります。したがいまして、我々といたしましては、日韓、日中の漁業協定を改定しなければならないという立場にございます。  したがいまして、この閣議了解におきましても、「韓国及び中国との漁業関係に関し、両国との協議により海洋法に関する国際連合条約の趣旨を十分に踏まえた」、ここが重要だと思いますが、国連海洋法条約の「趣旨を十分に踏まえた新たな漁業協定が早期に締結されることとなるよう」鋭意努めるということになっております。それは、国連海洋法条約の方向に沿ったというか、そちらを踏まえた新しい協定をつくれ、その努力をせいということでございます。
  153. 初村謙一郎

    ○初村委員 そうすると、中間線ではないのですか。
  154. 東久雄

    ○東政府委員 国連海洋法条約は、二百海里以内の排他的経済水域を設定することができるとなっておりまして、先ほど韓国のお話がございましたが、例えば韓国は一月二十九日に批准書を寄託いたしました。しかし、二百海里を引いておりません。まだ引いておりませんと言った方がいいかもしれません。そういう形で、これからそこの排他的経済水域を二百海里以内の中において設定していくという作業があるわけでございます。これは、この条約の関連法として御審議をいただくというふうに内閣の方から聞いております。
  155. 初村謙一郎

    ○初村委員 まあよくわかりませんけれども、私は、最終的には中間線を引かざるを得なくなるというふうに考えております。それはそれで結構なんですが、例えば中間線を引いたと仮定して、ちょっと私は今の国内対策をお聞きしたいというふうに思っております。  例えば、長崎県のまき網漁がございます。今おっしゃったように東海、黄海地区にも出ておりますけれども、その中で中間線を引いた場合に、漁場として六〇%がなくなってしまう。漁獲高としても三割か四割下がってしまう、落ちてしまう。それは魚種が違うわけですね。例えば、ちょうど今の季節、済州島沖でとれておりますサバあるいはサワラといったような高級魚、これも中国水域あるいは韓国水域でとれるわけですけれども、これもとれなくなってしまうだろう。  そうしますと、現在のまき網漁師というのは、生活あるいは今後の経営状況考えてみますと、当然のことながら減船をしていく必要性があるのではないか。あるいは国としても、今度の予算案をちょっと見させていただきましたけれども、減船対策、補償対策、あるいは輸入関税を使った基金もつくってくれぬだろうかというふうな要望が実は来ておるわけです。  その辺については、水産庁長官、見通しと言ったらおかしいですけれども、もし中間線を引いたとして、どのような対策を講じられていくのか、お聞きをしたいと思います。
  156. 東久雄

    ○東政府委員 日中、日韓それぞれ自分の、今先生の仮定をされたように真ん中という形で線を引いた場合に、日本の、特に今先生御指摘のまき網漁業等の相当の漁場が、中国、韓国側の中間ラインの向こう側になるということは事実でございます。  我々といたしましては、地元、特にまき網の関係者の方々から、たとえそういうふうな形になっても、資源管理の体制の中で、あちら側——あちら側という言い方はあれですが、そちらの水域へ入れるようなことを考えてもらえないか、そういうふうな交渉をしてもらえないかという御要望が来ております。今後、できるだけそういう急激な変化が起こらないように、その協定交渉という中で努力していかなければならないと我々は思います。ただ、これからの交渉でございますので、そういう強い要望があるというのは頭に入れてやっていかなければならない、そういう影響が出ないようにしなければいけないというふうに我々は考えております。  また、先ほどいろいろな対策がございましたけれども、今、平成八年度の対策の中に入れ込んでおる対策も一部あることはございます。それらの活用ということも十分考えられますけれども、我々は、まず第一に影響がないように、できるだけ穏やかな話し合いの中で相手方とやっていきたいと考えております。
  157. 初村謙一郎

    ○初村委員 先ほどもお話がありましたように、ちょうどサケ・マス漁業のときに、国会で北洋漁業問題特別対策委員会というのが院内に設置されて、最終的に大蔵省との交渉の中で一千四百七十六億円規模の予算が出されております。その対策の柱となっておりますのが、減船漁業者に対して政府の交付金、あるいは相互補償のための農林漁業公庫の融資事業、それから不要漁船の処分の助成金といったものが三本柱としてつくられております。  そういったことも含めて、ウルグアイ・ラウンド後の農業も非常に大変でありますけれども、この海洋法の批准、それから二百海里の設定に伴う、本当に、ある面では水産業の構造の変革期だというふうな認識をいたしておりますので、そういった対策もどうぞお願いを申し上げたいと思います。  それから、もう少し地域に関連をしてということでお話をさせていただきたいと思います。  例えば、漁師のいるところ、漁村だけではなく、例えば私のところの長崎市を考えてみましても、それに関連する生活者というのは非常に多いのです。例えば魚市場であるとか流通であるとか、あるいは船具とかそういう資材、それから加工、造船、あるいは運送業、そういったもろもろを考えますと、大体人口の半分ぐらいは関連しているのではないかなというふうな感じがいたしております。これは一漁業者あるいは特定のまき網業者とかといった問題ではなくて、地域対策としてぜひ腰を据えて頑張っていただきたいというふうに思っております。  それから、もう一度もとに戻らせていただきますけれども、先ほども山田議員からお話がありましたように、特に中国、韓国の違反操業、これについては非常に目に余るものがあります。私も十年ぐらい前に長崎県の巡視船に乗せていただきました。例えば長崎県の平戸沖だったと思いますけれども、もう平気で操業をやっているのです。その中で実は船籍が、もうどこの船かわからないように、もちろん船がさびついているということもありますけれども、例えば韓国船であればハングル文字を隠したような状況で、日本語であるいは韓国語で注意をしますと、近くに寄りますと、こちら側を見ずに網を引き揚げていく、網をしまってまた黄海の方に出ていくというふうなのが実態なのです。先ほども言いましたけれども、ぴしっとここで排他的な水域を設定しないと全然変わらないのではないか。  特にまき網業者が、今言われたように、中国側にも韓国側にも操業できるようにしてくれぬかというふうな要望があるとおっしゃいますけれども、例えばこれからの日本の漁業を考えたときには、沿岸漁業、特につくり育てる漁業といいますか、漁場をつくる、あるいは稚魚を放流する、そういったつくり育てる漁業をやっていく上においては、少なくとも沿岸の漁業それから日本の食糧の確保という意味合いからすると、先ほども言いましたけれども、何度も何度も申し上げますけれども、中間線であろうが何であろうが、設定をした後は全面的に適用をすべきだというふうに認識をいたしております。  それから、もう一つ長官にお聞きしますけれども、もしその全面設定なり線引きをしました後、例えば海上保安庁なりの巡視船の体制についてはどのようなことをやられるのか。私が聞いております範囲では、今の体制では間に合わない、もう逃げ出すのが早いわけですから。どういう巡視体制を持っていかれるのか、その対策方をお聞かせいただきたいというふうに思います。
  158. 東久雄

    ○東政府委員 まず、韓国船の違反操業の問題でございます。  まだ昨年も百八十ぐらい違反を視認して通知しております。しかし、三年前はたしかそれの五倍ぐらい、千何百件ございました。ところが、我々の実務者会議ないしは取締官会議で是正を要望してもなかなか聞かぬ。しかし、これはもう首脳間での話し合いの議題になりまして、強く日本の総理から向こうの大統領に申し入れた結果、これは向こう側の言葉でございますが、大統領から、これは韓国の恥である、徹底して取り締まれという指示が出て以来、約五分の一に減少しております。しかし、まだあるわけでございまして、これはしっかり我々もやっていかなくてはならぬところでございます。  それから、監視船の問題でございますが、これは運輸省・海上保安庁の問題でございますが、実はちょっとそういう意味で私の答弁が越える部分があるのでございますが、先日ちょっと打ち合わせのときに聞いたところ、これはやはり監視体制の充実を図っていかなければならないというふうな表明をしておられた場面に遭遇しております。  詳しくはちょっと私の方で答え切れない点がございますので、御容赦いただきたいと思います。
  159. 初村謙一郎

    ○初村委員 最後に、中国も韓国も環東海黄海地域ではかなり無謀な操業をやられているわけです。例えば以西底びきでいいますと、実はアマダイをはえ縄で日本はやっているわけでありますけれども、はえ縄でやりますとかなり大き目のアマダイがとれるわけですけれども、韓国船は底びきでがさっとやるわけですね。そうすると資源の枯渇になってくる。先ほど長官の答弁で、中国は要するに海岸側に人口が急増している、何か食糧不足でというふうなことをお聞きしましたけれども、私は決してそうじゃない。そういう面もあるかもしれませんけれども、実はこのアマダイに限っては、小さくても大きくても中国が日本に輸出をしているという問題があるのです。  例えば日本では、今申し上げましたように、中国船に対して違反操業はだめだとか、あるいは資源の枯渇はやつちゃだめだとか言いながら、中国はとっている。とっていった資源あるいはアマダイについては、実は日本の商社が買い取っているという実態があるわけです。この辺もぜひ究明をしていただかないと、幾ら中国側に、あるいは韓国の問題もそうかもしれませんけれども、違反操業だこうだと言っても、買い取り先が日本の商社であればこれは天につばかけるような話で、おかしい話になってしまうわけですね。その辺の実態も踏まえて、ぜひやっていただきたいというふうに思います。  私は、二百海里は、海洋法を批准いたしましたら、二百海里を早急に設定をしていただいて、全面適用をしていただくように強く要望申し上げたいというふうに思っております。  最後に大臣、どうでしょうか、この問題につきまして決意のほどをお願い申し上げたいと思います。
  160. 大原一三

    大原国務大臣 先日も大臣室に全国の漁業代表者の方がお見えになりまして、異口同音に全面適用という強い御要請がございました。  我々としては、今までの、どちらかというと委員申されたようないろいろ問題のある二国間の入り組んだ状況が今回の二百海里の全面設定によって少しでも解決できるし、前向きな対応ができればという気持ちでこの問題には積極的に外務省とも連携をとりながら取り組んでいきたい、かように考えております。
  161. 初村謙一郎

    ○初村委員 積極的にというよりも、漁師は全面適用、全面設定を期待しているわけです。取り締まりの強化も期待しているわけです。ある面では、そういう意味で全面適用や全面設定を推進していただきたいという要望でありますので、これはぜひ農林水産大臣として強固な意志を持って全面設定、全面適用に頑張っていただきたいということを要望して、終わりたいと思います。
  162. 松前仰

    松前委員長 山崎泉君。
  163. 山崎泉

    山崎(泉)委員 社会民主党の山崎泉でございます。  まず、質問に入ります前に、北海道古平町豊浜トンネル事故におきまして、忌まわしい事故に遭われました御家族、御遺族へすべての関係者の方々に深く哀悼の意を表する次第でございます。  先ほど新進党の方お二人が質問に立ちました。同じ長崎県、本籍は五島列島でございまして、私も本籍は五島列島です。続きまして三名がこの二百海里の問題で質問を行います。ひとつよろしくお願いを申し上げます。ただ、私は与党という立場で、大臣の所信なりそしてまた政府施策を応援をするという立場での質問になろうかというふうに思います。  前書きでございますが、まず、現在日韓、日中間ではこの二百海里の全面適用をした場合に、また現在、どのような漁業問題があるかということについて触れてみたいというふうに思います。  一九七七年に二百海里の暫定漁業水域が設定をされて既に十九年になっております。そして、この間、我が国の重立った遠洋漁業を初めとして、我が国の漁業はもう撤退に撤退を重ねてきました。三千五百隻をはるかに超える数の漁船を減船をしてまいっております。  こういう状態にかんがみ、水産たんぱく食料確保するために、我が国の周辺水域における沿岸、沖合漁業の重要性が一段と高まってきておるのは事実であります。また、こうした観点から、官民一体となって貴重な資源を保護し、管理しながら、適正に漁獲する資源管理型の漁業に今取り組んでおるというのは私も承知をしております。  韓国との間では、昭和四十年から日韓漁業協定が締結され、また五十五年から自主規制措置が取り決められております。中国との間でも五十年から日中漁業協定が締結をされておりますが、特に日韓で取り決められた自主規制措置は、両国が責任を持って自国民指導、取り締まることを約束したものでありますが、残念ながら韓国漁船による違反操業は毎年約千件近くに達しておるというのが事実であって、この日韓漁業の枠組みは十分に機能をしていないというふうに思います。そういう意味で、さきに閣議で、国連海洋法条約締結及び海洋法制整備についての所要の準備を進めるという閣議了解がされたことを私は大きく評価をしておるところでございますc  私の資料によると、韓国・中国漁船操業の問題点ということで、韓国漁船、中国漁船、そしてまた被害の内容、その背景という資料を持っております。被害の内容は一つ一つ申し上げてみますると、日本側の禁漁期をねらった操業、反復操業による漁場の荒廃、意図的な操業妨害、漁場競合による操業の支障、定置網・漁具などの被害、緊急避難に名をかりた不法行為、領海侵犯操業による資源の収奪、こういうのが被害の内容となっております。  制度上いろいろなことがありますが、やはりこれは旗国主義ということがこの被害をさらに高めておるというふうに思うのであります。現在はこういう問題点があるというふうに私は認識をしておりますが、どういうふうなお考えを持ち合わせておりますか。
  164. 東久雄

    ○東政府委員 日韓漁業協定、これは先ほど先生御指摘のとおり、一九六五年に協定されたわけでございます。そのときに、実は日本の漁船が李承晩ラインで拿捕されたりいろいろな事件があった。そこで、その取り締まり権限を、要するに旗国、日本側で持つ。それで責任ある漁業体制をとるということを中心に結ばれた協定で、先生御指摘のとおり、韓国側も日本の十二海里の、十二海里以内はこれはもう領海でございますから、これは別でございまして取り締まれるわけなのでございますが、その外側もみずから取り締まっていくというのが基本でございます。  残念ながら、先生御指摘のとおり、一千件を超す違反というのが毎年繰り返されておりました。ただ、たしか二年半ぐらい前でございますかから、いわゆる首脳会談での申し入れということから、大変な韓国側の警備ないしは取り締まり体制の強化がございまして、今は約五分の一に減っているという状態です。しかし、先ほどもお答えしましたとおり、二百件近い違反があるわけで、これは絶えず我々クレームをつけていくという形でやっていっておりますけれども、なかなか減らないというのが実情で、減らないというか、そこまで減ってきたのですけれども、まだまだあるということでございまして、確かにそこに問題があるという懸念はいたしております。  ただし、今度は、先ほどちょっとお話ございましたように、我が国の漁船も中国、韓国海域へ行っているわけで、もちろんこれは非常に我々も厳しく言っておりますので、違反ということについては大変厳しい態度で臨んではおりますけれども、向こうの海域に行っているという状態の中での相互の緊密なる連携のもとでの取り締まりその他という形になっているというのが現状でございますが、非常に大きな問題点であるというふうに我々は理解しております。
  165. 山崎泉

    山崎(泉)委員 そういう問題点が、今後二百海里の問題で、それを全面設定をすればそういう両国間の漁業問題が解決をされるのかどうか。例えば、具体的に今私が言った被害の内容、ある程度の措置はできてくるだろうというふうに考えるのでありますが、果たして長年の経緯がありまして、全面設定ということだけでそういうのが解消できるのかどうなのか非常に疑問に思っておるわけでありますが、その辺についての御見解をお聞きをしたいというふうに思います。
  166. 東久雄

    ○東政府委員 新たな海洋法体制のもとでは、排他的経済水域において沿岸国の主権的権利が認められるというのが原則でございます。そこで今のような問題についても十分対応をできる権限は持てるというふうに考えるわけでございますが、そういうことも踏まえまして、先日の閣議了解におきましても、「韓国及び中国との漁業関係に関し、両国との協議により海洋法に関する国際連合条約の趣旨を十分に踏まえた新たな漁業協定が早期に締結されることとなるよう」に鋭意努力する、ちょっと途中はしょりましたが、そういう指示をいただいております。  これからの交渉事項でございますが、こういう趣旨を踏まえてしっかりやっていきたいというふうに思っております。
  167. 山崎泉

    山崎(泉)委員 私はこの全面設定、また全面適用ということで、素人でございますから十分な考え方は持ち合わせていないのですが、私も生まれが五島列島出身でございますから、多くの方からいろいろな意見を聞きます。二百海里の線引きをして、今まで中国や韓国領海内で操業ができておった底びき、まき網、この人たちが今後の操業で、その設定いかんによっては減船をせざるを得ない状況に陥ってくるのではないか。そうした場合に今のような国の制度で果たして対応できるのかどうなのかが一点。  また、これは今から全面設定しようじゃないかというようなときに私が言うべき問題ではありませんが、したがってこの件については水産庁のお答えは求めませんが、ちょっと危惧しておりますのは、スルメイカは南西海域で卵を産んで誕生しておるというふうに聞いております。そして、その成長は朝鮮海峡を渡って、北上してサハリン沖まで行って、またずっと南西沖に下ってくるというふうに聞いております。いわゆる行動範囲が大きいわけでございまして、二百海里を設定した場合に、そういう行動範囲の広い魚、魚種についてどういうふうな扱いをしていくのか。  私は、水域の共同管理とか、または国際的なそういうものの管理とかというのは将来的にやっていかなければならないのではないだろうかなというふうに思っておりますが、今から二百海里で頑張ろうということですから、その共同管理とかなんとかということについてのお答えは必要ございません。いずれにしても、線引きをすることによって減船の対象になるまき網漁業者に対しての手当てというのは果たしてどういうふうになっていくのだろうか。  もう一点。先ほど新進党の山田議員の質問に対して、中国の禁漁期間の説明をなされておりましたが、ちょっとメモするあれがありませんでしたので、黄海、東海における中国の禁漁期間を教えていただきたいと思います。
  168. 東久雄

    ○東政府委員 これから韓国、中国と漁業の枠組みの交渉をするわけでございますが、先ほどおっしゃいましたまき網それから底びき、特に以西底びき網漁業という関係者の方から、何とか向こうでも操業ができるようにしてくれというようなお話もございます。そういうお話も受けながら、できるだけ日本の漁業に影響のないような形になるように交渉をしていきたいというふうに考えております。その交渉結果でどういうふうになるかということで、できるだけ減船というようなものも避けたいというふうに考えるわけでございますが、その交渉の状況によって検討していかなければならない事項であるというふうに認識しております。  それからもう一つ、中国の禁漁期でございますが、昨年六月から八月まで、東海、黄海での底びき網を北緯三十五度以南について、三十五度以南というのは大体青島、山島半島ぐらいのところではなかったかと思いますが、その辺から南をそういうふうな設定をしたというふうに聞いておりまして、全船出漁をとめたというふうに聞いております。
  169. 山崎泉

    山崎(泉)委員 この閣議了解事項のうち、漁業協定交渉に関連して、先ほども出ておりましたが、「合理的期間内」というような言葉になっております。きのうの産経新聞によりますと、中国、韓国との漁業交渉については「与党三党の合意で閣議了解に盛り込んだ」ものということで、「「合理的期間内の結論」とは、ほぼ一年以内ということだ」というふうになっておりますが、この辺についてどうでしょう。
  170. 東久雄

    ○東政府委員 この閣議了解をやるに当たりまして、大変いろいろな形での議論がなされました。その議論の中で、一年とか二年とかそれ以内、それをもっと短くというような議論もあったと私は記憶しております。さらに、五年、十年とだらだらやられたらかなわぬというような議論もございました。  そういう議論があったことは私どもとしてはよく承知をしておるところでございます。しかし、相手のあることでもございますので、何らかの早期の決着を図るという気持ちを込めて「合理的期間内」というふうになったという経緯を申し上げておきたいと思います。
  171. 山崎泉

    山崎(泉)委員 長官、私は与党の一員でございまして、そして今回、一年生ではございますが農林水産委員会にも所属し、当然党の部会にも所属をして、いろいろなその時々の勉強なり、また政治の状況について聞かされておりますが、与党の政策調整会議では、最大限一年を超えて長期化しない期間とする、また、これを超えて長期化が予想される場合には、既存の漁業協定を破棄し、全面適用に踏み切ることもやむを得ないとの認識に立って鋭意交渉の妥結を図ることとするというような話がされたというふうに聞いたものですから、きょうは前段にこの産経新聞を読み上げた次第ですが、そういうことはないのですか。
  172. 東久雄

    ○東政府委員 先生、いろいろな場面での議論があったと申し上げました。その与党内の調整のお話をここで申し上げるのが適切かどうか、私はちょっと疑問なしとしないわけでございますが、先ほど私が申し上げましたとおり、期間についてのいろいろな議論があったということだけ申し上げておきたいと思うのです。それで最終決定が「合理的期間」ということになっておるということを御了解いただきたいと思います。
  173. 山崎泉

    山崎(泉)委員 これ以上は詰めませんが、私はそういうふうに与党三党の中で話がされたというふうに話をお聞きしております。  今度は私の主張ですが、もしも一年以内にきちっとした全面設定というものができない場合には、中国、韓国との漁業協定は破棄をして、そして私どもはその猶予期間を待って日本独自の行動を起こしていくべきだという主張を持っておるということだけは強く申し上げておきたいというふうに私は考えます。  次に、この海洋法が定着をする、決められる、二百海里も設定されるとなった場合に、果たして今までの漁業政策でいいのか。ガット・ウルグアイ・ラウンドの後に新農政ができたように、新たな時代に対応できるような漁業政策というものが必要ではないだろうかなというふうに思いますが、具体的にどういうものが必要なのだというのは、まだ不勉強で指摘ができないのですが、このままでは漁民の方は、線引きはされたわ、やれという、大変だという部分が出てくるのではないか。新しいものをつくる必要があるのではないかなというふうに考えておるのですが、その辺についていかがでしょうか。
  174. 東久雄

    ○東政府委員 新しい海洋秩序ということにつきましては、一九九四年の十一月に国連海洋法条約が発効いたしましたときに、外務大臣が、当時代理の方でございましたが、その国連海洋法条約の批准承認案件をこの国会に提出するよう準備するというふうに申されました。それ以来、もう一年強になってございます。したがいまして、我々、その新しい体制で今見込めるような状況、今とるべき対応というものにつきましては、昨年の秋から冬にかけまして、平成八年度予算の中にもできるだけちりばめたつもりでございます。  それで、基本的には資源管理型の漁業の振興ということになります。これは徹底した資源調査それから漁獲報告をとるシステムを確立すること、それからさらに、自主的な資源管理型の漁業をやっていくことというようなことが柱になるような資源管理型の漁業の推進ということが一つの柱としております。  もう一つは、やはり資源を培養していくという立場に立ちまして、つくり育てる漁業の推進ということも大きな柱にいたしております。そういう新しい体制。  さらに、漁港につきましても、重点的な漁港に対して資源管理の拠点になるような漁港の整備を一層進めるというような形での予算編成をさせていただいて、今予算案を提出させていただいているところでございます。  これらの中にもある程度の方向を出してやっておるつもりでございますが、さらに、先ほど来先生からの御指摘もございましたような中国、韓国との交渉の状況も見ながら、さらに必要な政策があるのかどうかということも検討していかなければならぬというふうに考えております。
  175. 山崎泉

    山崎(泉)委員 水産関係はこの辺で終わりまして、今度は食糧自給の将来展望についてお伺いをいたします。  昨年の十二月に閣議決定をされた「農産物の需要と生産の長期見通し」というものがあります。これによりますと、カロリーベースの自給率は四四から四六%、主要穀物自給率は六二から六四%、穀物自給率は二八から二九%、飼料自給率は三四%という試算が出ている。ところが、次のページには、近年の生産動向を基礎に、その趨勢を継続した場合の姿が試算をされております。これを見ると、カロリーの自給率は四一から四二%、主要穀物自給率は六〇から六一%、こういうふうに下がっておるわけで、この数値のギャップは何なのか、なぜこんなに開きができるのか。  この長期見通しの前書きを見る限りは、「単なる予測とは異なり、我が国農業の持てる力の最大限の発揮による農業生産の向かうべき方向を意欲的に示したもの」というふうに書かれております。そうすると、今後の農政の転換いかんによってカロリーベースで四四ないし四六%の自給率を維持、確保することができるとの認識でよいのか、言い方をかえれば、農業をめぐる厳しい条件の中で最大限の努力をして、現状の維持の自給率がやっとだという判断になるのか、その辺についての考え方を。
  176. 高木勇樹

    ○高木(勇)政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生御指摘になりましたいわゆる「農産物の需要と生産の長期見通し」の件でございますが、まずこの中では、平成十七年度を目標年次といたしまして、各作物ごとに、そのコストなり、それから品質面での改善とか供給の安定化といったようなことを前提に置きまして、また相当な政策努力をそういう面で行うということを通じて現実に達成可能なものとして我が国農業の持てる力を最大限に発揮した場合の意欲的な生産の見通しというのが、おっしゃられました、例えば自給率でいけば平成十七年度四四ないし四六%というものでございまして、これを付表において試算数値として示したところでございます。  一方、今回初めて示したわけでございますけれども、近年の趨勢が継続した場合の趨勢試算値というものもあわせて示したわけでございます。これは、今農業をめぐる状況は大変厳しいわけでございますが、その中で食糧自給率の低下傾向に歯どめをかけるというためには、先ほど申し上げましたような政策努力が相当の程度必要なんだということを国民の皆様に御理解いただくために示したわけでございます。したがいまして、私どもとしては、例えば自給率でいけば、試算値として示しました平成十七年度四四ないし四六%というものは、現実に達成可能なものとしてお示しをしたということでございます。  いずれにしましても、今申し上げました長期見通しを踏まえまして、また平成四年六月に公表いたしました新政策というものに即した政策展開を行いまして、食糧自給率の低下傾向に歯どめをかける政策展開を行ってまいりたい、こういうふうに考えているところであります。
  177. 山崎泉

    山崎(泉)委員 私は、基本的には自分の国の食糧は自分の国の農産物で賄うというのが第一だろうと思います。当然、日本人の嗜好というか、それも変わってきておりますから、一概にカロリーベースとかそういうものでは比較にならない部分があるとは思うのでありますが、日本のカロリーベースでいうと、昭和四十五年は六〇%、五十年は五四%、六十年は五二%とだんだん下がってきているのですね。先進主要国というのは、フランス、ドイツ、イギリス、スイス、日本の倍近い率を持っているのですね。  次の質問に移ろうと思ったのですが、もう時間がありません。今から先、人口は恐らく二〇二五年には八十五億、二〇五〇年には百億、こういうふうになろうと言われておりますし、八四年の国連環境計画の報告によれば、毎年六百万ヘクタールの耕地が砂漠化しておる。これは我が国の耕地面積の一・二倍。同じ環境計画によれば、砂漠化には至っていないが生産力が低下している面積が毎年二千百万ヘクタール、これは我が国の耕地面積の四・一倍というふうになっておると思います。そういうことも含め、さらに炭酸ガスの温室効果による地球温暖化や肥料等の問題、汚染が非常に進んでおります。そういうこと等を考えると、今からの食糧政策というか、これは大変な問題が世界的に起きてくるというのは私が言うまでもないことだろうと思います。  どうか我が国農業を、中山間地域も含めまして、きちっとした、自活ができる農業体制をつくり上げていく必要があるのではないかということを申し上げまして、通告しておった質問がいっぱい余りましたけれども、私の意見を申し上げまして、終わらせていただきたいと思います。
  178. 松前仰

    松前委員長 永井哲男君。
  179. 永井哲男

    ○永井(哲)委員 社会民主党・護憲連合の永井哲男でございます。私は、住専問題について大臣の御見解をお伺いしたいと思います。  住専問題の意味というのは、次のようなものではないかと私は認識しているところでございます。それは、このままこの住専問題を放置しておくと、これから日本は大変なことになる。その一つは、金融システムというものが非常に混乱を起こす、そうすることによって、最終的には多くの預金者や貯金者に迷惑をかけることになる。また、今非常に景気が微妙なところにある、そういう景気が微妙なところにこういった金融の不安、そういうものを起こせば、せっかくここまで回復してきた景気、明るい兆しがやっと出てきた景気というものに腰折れをさせる。ここに至るまでにバブルの破綻以降、事業規模で六十六兆円ものお金をつぎ込んでいる、そういうことが無に帰するにも等しいようなことになる。そしてまた、国際信用日本に対して早期の不良債権の解決、ジューセン・プロブレムの解決が求められていた、年内解決、それが必要であった。そしてまた、年内に早期処理をすることによって損害の拡大を防ぎ、結果的には国民負担というものを軽くする、こういうものがこの処理であったと思います。  そして、そういう中で、三兆五千億という母体行の負担、一兆七千という一般行の負担、そして五千三百という系統負担があったわけでありますが、それは何も五千三百の系統だけがぎりぎりではなくて、三つともそれぞれぎりぎりの数字である。そう、これ以上もうどうしようもできないというふうに判断したからこそ、残った六千八百億を国の手で、先ほど言ったような公的な理由があるということでこの財政の支出というものを決断した、これが今回の処理のスキームではないかというふうに理解しているのですけれども、大臣はどのようにお考えでしょうか。
  180. 大原一三

    大原国務大臣 まさに御指摘のとおりでありまして、我々としては、今日までいろいろの経緯がございましたが、やはり基本は、母体行の今日までの住専経営、人事面に対する積極的な関係というものを考えたときに、その責任をまず明確にしてもらいたい。  実は実態調査が、資料が出されましたけれども、我々は国会に出されて初めてあの住専経営の実態を知ることができたわけであります。そういうことを考えると、なおさら我々の主張がやはり貫かれていくべきであったと思うのでありますけれども、今御指摘がありましたように今回のバブルの落とし子、御指摘が既にありましたが、六十六兆円という臨時異例の緊急対策を予算外にやりながらも、一向に景気のあかしが見えてこない。そういう状況の中で、これをさらに未解決のまま放置をしたならば日本経済はさらに危険な深みに入っていく可能性がある、それを未然に防止するためにはどうしたらいいかという決断が私は年末の決断であったろうと思います。  大変残念なことに、税を吸入してこの救済をしなければなりませんでしたが、おっしゃいましたように、一日も早い金融秩序の再構築、そしてそれが我々系統金融秩序にとっても大きな課題を投げかけていることを考えるときに、やはり我が農林水産省も、その問題に猶予なく、この再構築のためにもう少し積極的な手法をとっていかなければならぬなと今決意を新たにしておるところでございます。
  181. 永井哲男

    ○永井(哲)委員 この問題で、法的に整理をすべきだという意見があります。これは、破産手続をしろということのようでありますが、これは放置をしろというに等しい議論ではないかというふうに私は思うところであります。  私は弁護士をしておりますが、破産の手続というのはただでさえ長い期間かかるわけですけれども、この住専七社、負債規模で十三兆円。日本の一年間に起きる負債、破産の事件が総額で九兆円、それ以上のものがこの住専七社で起きるということ。二十四万件というような回収しなければいけない債権があるということ。それらは暴力団絡みというようなものも多く、非常に回収が困難である。また、換価においても、今こういうような状況の中で担保不動産を多く持っている、こういうようなことを考えれば、非常にこれが長期化をする。その長期化をする中で、配当が遅い、そういうことになり、多くの問題が生じるというふうに思っているわけですけれども、この法的整理ということについての大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
  182. 大原一三

    大原国務大臣 永井委員は私よりもその道の専門家でありますから、私がいろいろ申し上げるのもいかがかと思うのでありますが、何回も予算委員会でも御指摘がありましたように、百七十近い母体行、三百近い融資金融機関、これらが訴訟合戦に入っていきましたら、私はなかなかこれは簡単に解決できることだとは思いません。  そういう意味で、先ほども申しましたが、やはり緊急避難的に、この際長く引きずることなく問題を解決するには、こういった手法しかなかったのではないのかな。五千三百億という大変厳しい負担を我々も課されましたが、そういう意味でやむを得ない負担であった、このように考えております。
  183. 永井哲男

    ○永井(哲)委員 ここで母体行の法的な責任というものがどういうものがあるかということについて検討したいと思います。  これは、いわば五千三百億というものは少ないのではないか、こういうふうに言われております。三兆五千、一兆七千というものがあり、残った一兆一千、これは本来系統負担すべきであるのではないか、このようにマスコミ等では多く言われているところであります。しかし、母体行の三兆五千という負担が自分の問われている責任というものを本当に十分に果たしたものと言えるかどうか、こういう点に関連すると思います。  まず第一点目に、母体行としてはいわば保証の責任というようなものがあるのではないか、そういうことであります。これは、系統融資の当初には銀行保証という形で母体行が保証していたという経緯があるようであります。また、再建計画の際に保証する旨のような約束をしている書面がきのうも明らかになりました。また、これは系統において融資を引き揚げられたら直ちに立ち行かなくなるということで、母体行も一緒になっていろいろなところにあいさつに行き、行動したというようなことがあります。念書というものも取り交わされたりしているというような経緯、これは保証の責任というものがそこで明示的になかったとしても、黙示的にそういう保証の責任というものがあるのではないかということが考えられると思います。  また、母体行が住専を実質的に支配していたのではないか、これは紹介融資等の問題でも言われているところであります。これが事実上完璧に支配をしていたというような形になれば、法人格の否認というようなところにまで発展する問題であります。  そしてまた、競業避止義務、これは母体行が個人ローンに拡大をしていってその分野というものを奪っていったのではないかというところで言われているところでございます。  そしてまた、不法行為責任ということも問題になり得ると思います。不良債権の押しつけということも言われております。自己の不良債権、回収できない不良債権というものを住専に押しつけたという形になれば、これは不法行為責任というのも問題になる。また、再建計画において、実現できないということがわかっていてこういう再建計画をつくり、その実現のためにいろいろな努力をしたというようなことがもしあれば、これはいわば系統融資引き揚げを防ぐ目的でそういうことをやったのではないかというような不法行為責任も問題になり得るというふうに思います。そして、金融業界における慣行、親会社が子会社の整理においては全面的に責任を負っていた、これは慣習法とまでは言えないとしても、そういった慣行というものが大きく、母体行の責任というものを考えた場合には、果たして三兆五千というものでその責任を満たしているのかどうかというのが言えるところであります。  しかし、これらが裁判上で問題になるとすれば、一々これは立証しなければなりません。そのような資料、証拠というものが十分にあるのか。薬害エイズ訴訟でもわかるように、こういった資料というものを収集するというのはなかなか困難なところであります。そうした場合に、どういう結果になるのか。これはむしろ、法的に守られている権利、形式的に法を当てはめた状況というのは、母体行に非常に有利にでき上がっているということであります。経営に近い状況を利用して、有利な物的な担保を有するということは、これはそのまま裁判で認められる可能性が高い。債権者平等という中で、債権額に応じた、こういうような形になれば、こういった事情を一切無視した、債権額に応じた配分ということだけが正面に出る。法的な手続という中にはこういうような一面もあるということを我々は注意をしなければならないというふうに思います。  そういう中で、破産の手続というのは長期化する、そしてこれは長期にわたって金融機関の手元にお金が来ない、配当はされないということが必然的にあるわけでありますが、そこで、この解決が長期化した場合に、系統にはどのような影響が考えられるかということについてお聞きをしたいと思います。
  184. 堤英隆

    堤政府委員 法的整理の話につきましては、今御専門の立場から御指摘がいろいろあったわけでございますが、いずれにしましても、大臣先ほど申し上げましたように、法的整理にゆだねるということになれば、先ほども御指摘ございましたけれども、解決に何年もの時間を要してくるということで、一番大事な金融システム全体が長期にわたっていたずらに不安な状態になるということで、やはり国民経済にとってもいろいろと問題が生じますし、それから預金者の方々にそういう意味での不安感が生じてくるという意味で、今、系統にとってはどういう意味があるか、どういう問題が生じるかという御指摘がございましたけれども、それは系統のみならず、日本の金融システム全体の問題として、それから系統預金者も含め、他の金融機関預金者ということと同じ形でいろいろな問題が生じてくるのではないかということが心配されるところでございます。
  185. 永井哲男

    ○永井(哲)委員 信連の経常利益が千三百億という中で、この住専からの配当が約千五百あった。一年間だけ見てもこうだということで、どんな影響があるかということについては類推ができるというところで、あえてその中身は問わないことといたします。そういう中で、やはりそういった自己の部分ばかりでなく、金融全体に対する影響も考えたということだと思います。  こういうことがもし裁判になれば、これは母体行にとっても悪い影響がある。母体行と取引する相手方にとっては、これは母体行が裁判で完全に負けるだろう、そういうふうに相手の信用を評価して行動するでしょうし、また、系統に対する取引相手方も、系統は裁判で勝てないのではないか、こういうふうに思って行動するでしょう。そうすると、これはいわば不良債権が実際の額以上の、倍の形になって金融システム全体に影響を及ぼすという結果にほかならないというふうに思います。金融システム全体にとってもこれは非常に問題のある解決の方法だということにならぎるを得ないと思います。  そういう中で、ぎりぎりの負担ということで五千三百億ということを決断したわけですけれども、この五千三百億という根拠について答弁をお願いしたいと思います。
  186. 堤英隆

    堤政府委員 五千三百億の中身を御説明します前に、私どもとしましては、大臣先ほど申し上げましたように、基本的には、やはり住専の設立の経緯、その後のさまざまな住専母体行との関係、それから再建計画策定の経緯等々から申し上げまして、住専母体行の関係ということが極めて重要だということで、やはりそういう意味では、系統から見ますというと、住専には、そういう設立に参画していない、それから運営におきましても、人を送っているわけではない、役職員一人送っているわけではない。そういう意味で、住専問題の責任系統にそのままかぶせていくということはやはり違うのではないかというのが基本にまずあると思います。  しかし、その中におきましても、日本の金融システムの一員として、系統としてどれだけの協力をするべきかという意味では、やはり先ほどおっしゃいましたように、金融システムの安定ということを確保するための一員としての協力ということで贈与というふうになった、その二点をまず押さえておきたいと思うのです。  そういう意味での、贈与というふうになりました際に、私どもの考えとしましては、ぎりぎりのということで申し上げているわけでございますが、そのぎりぎりのというのを申し上げるときに、二つの点があると思います。  一つは、住専のこの協力をぎりぎりどれだけ求めていくかということをやります場合に、当然ながら信連経営に非常に大きな影響を及ぼすわけでございますが、信連の下には二千五百の単協がございます。その単協が八百九十万人の組合員から六十八兆円という膨大な貯金を受け入れております。この二千五百の農協あるいは六十八兆円という新たな信用不安が生じるということがあっては、これは大変な問題でございますので、そこをどうぎりぎり回避するかということが基本だと思います。  そういう観点から考えまして、私どもとしては、信連につきましては、当年度、ことしてございますけれども、本年度に赤字に転落する信連が経常利益ベースで過半ということはやはりやむを得ないことではないか。逆に言うと、これを超えていくようでは、先ほど申し上げたような新たな信用不安が生じる。かつ、当期利益ベースでもやはり二十程度ということではないか。さらに、今年度だけでなしに、同じ信連でございますけれども、翌年度におきましても、赤字信連数がこれをどんどん上回っていくということでは構造的な問題が生じるということで、これはやはり避けようということで、大体ことしと同数程度の赤字信連数というふうに見込む、こういうふうにして、それぞれの信連ごとに計算をいたしまして、大体二千億。  それから農林中金におきましても、有価証券の含み益の益出し、これが一千億円程度、それから貸倒引当金が二百十億円程度、それから任意積立金につきましても七百六十億円程度という形で、それぞれの含み益なり貸倒引当金を目いっぱいましていくということでもって、本年度大幅な赤字転落ということはやむを得ないというような状況の中で、なおかつ中央の系統団体としてのぎりぎりの責任を果たせる程度ということで二千億、それぞれ二千億、二千億ということで四千億というふうにしてございます。  それから、信用事業以外の共済につきましても、それぞれの共済に与える影響ということを見まして千三百億円ということで、そういうことを積み上げまして全体として五千三百億円の資金協力が現在ぎりぎりの限度だ、こういうふうに算定をしたところでございます。
  187. 永井哲男

    ○永井(哲)委員 このような説明に対して、なぜ、例えば信連の赤字をもっとふやせないのかとかいうような議論もあるようでありますが、本来的に、母体行の責任というものの追及を本来であればよりしたいところだけれども、まあいろいろな、自分における事情もあるし、金融システム全体という安定のためにも協力するという立場からのぎりぎりの選択として、この信用事業の存立の基盤を守るというのは十分に理解ができるところだというふうに私は思います。  さて次に、総量規制の経緯というものを振り返ってみたいというふうに思います。  総量規制通達のときには、三業種規制というものを系統に課さなかった理由として、信連からの報告を受けているということでありました。国が挙げて地価抑制に取り組んでいた中、報告を受けた農林水産省は、系統から住専に対する融資額が拡大した時点でなぜ指導できなかったのか。住専八社でありますが、元年度末では三・四兆のものが二年度末には五・五兆になる、三年度末には六・三兆にまで行っているということでございます。  こういうような状況の中、元年度でいえば、これは総量規制通達された直後の三月末締めで他の機関は全く伸ばしていないところで、唯一農林系統機関だけ住専に対する融資額がふえているという状況であります。こういった指導がなぜできなかったのか。そもそも、通常、信連に対してはどういうような指導をしていったのか、そして、こういうことを放置していた、抑制できなかったというようなことについて、その責任というものをどのように認識しているか、この点についてお聞きしたいと思います。
  188. 堤英隆

    堤政府委員 今御指摘のように、信連住専向け融資が当時増加していたということは事実でございます。平成二年のいわゆる総量規制通達につきましては、御指摘のように不動産業向け貸し出し総量規制を主眼とするということであったわけでございますが、あわせて住専を含みますノンバンクにつきましても報告という形で貸し出しの動向を把握する、注視することということにしておりまして、そういうことによりまして、農林水産省といたしましても、必要に応じこの趣旨を体しまして関係者に対します注意喚起を行い、あるいは理解を求めるということをやってきたわけでございます。  ただ、当時の状況といたしまして、住専会社が系統にとってどういう存在であったかということ等を考えてみますというと、やはり住専は、国民に対しまして広く住宅資金を供給していくという、かなり社会的公共性の高い存在であったということと、さらに、当時国民の間に住宅資金ニーズも非常に高かったということで、そういうものに対応していく資金融通だという理解系統の中ではかなり強かったというふうに私も理解いたしております。  それからもう一点は、農協貯金量が非常に増大する中で、農協の、特に信連でございますが、貯貸率が非常に下がってきた時期でございまして、そういう意味で、系統といたしましてもやはり自己努力ということで、貯貸率を何とか確保していかなければならないというような努力が他方でありまして、かつ、その当時住専はやはり金融機関貸し付けということでございましたので、今となってはいろいろな御指摘があるわけでございますが、系統にとりましては、比較的信用力のある貸出先ということで認識をされていたというふうに理解をいたしております。  そういう意味で、他の業態のようにはその効果が必ずしも出なかったというふうに理解をするわけでございますが、いろいろ、その後のすべての結果がわかりました現在から見まして、そういうことについてさらに踏み込んだ対応ができなかったかどうか、そのあたりはさらに検討を深める必要があろうと思いますが、ただやはり、不動産融資においてすら全体の伸び以下に抑えるというような形でやってまいりましたものにつきまして、例えば一定の量を落としていくということについて踏み込むということは、個別の経営の世界に踏み込むことでございますので、行政としてはなかなか難しい面が一面ではあったということも御理解いただきたいと思います。
  189. 永井哲男

    ○永井(哲)委員 通常、金融業を営むという中で、相手がそういうようなノンバンクなりそういう系統であれば、そこのものがどういうところに貸しているか、そういう貸し先について貸し手としても関心を持ち、例えば上位五十社だとか、そういうことを求めるのが通常であろうかと思います。こういうことがどの程度行われていたのか、こういったような問題もある。そういう貸し方、そしてその後の管理について問題もあったということは、やはり今回この住専問題を機に考えなければいけないというふうに思います。  系統金融機関が抱えているこういうような問題についてどのように感じているかということについてお聞きを申しますが、特に、一般的に資金は余ってくる、貸し出しには員外規制があるということで、貸し出し能力に乏しい信連が危ない貸し付けにのめり込んでいったのではないかというような指摘も今回されているところでございます。  金融自由化という中で、今後、系統をめぐる金融環境というのはますます厳しくなってくる、そういうような状況の中で、今後の系統金融機関のあり方というものについてどうお考えになっているか、そのことについてお聞きいたします。
  190. 大原一三

    大原国務大臣 大変大事な御指摘でございまして、我々は合弁解をする気持ちは余りありません。正直に反省して、今委員がおっしゃいましたように、平成二年、総量規制の行われた年であります、それから三年へ至る過程に非常に多くの系統資金が住専へ流れ込んだという事実は否めない事実でございます。そういったいわゆる責任も感じながら、母体責任一本やりで参りましたのでございますが、与党のプロジェクトチーム、さらには政策調整会議において協力をしろ、こういうときに、我々もその責任の度合いに応じて贈与をするということに相なったわけでございます。  最後に御指摘になりました七十兆円近い農協系統の資金、千百兆円という貯蓄の中で多いか少ないかはともかくといたしまして、これからの金融の変革の中で、自由化の嵐の中でどうこの七十兆円を生かしていくかということは御指摘のように大問題でございまして、そういう意味では、現在の協同組合金融システム、さらにその上にある農林中金、これは法体系が違うわけでございますので、これを何とか一元化し、さらにまた員外利用という制限等々もできることなら開放して、より大きな役割をこの七十兆円の上に落としめていけるならまた明るい展望も開けるのではないかなということで、一月三十一日、総理の諮問機関でございます農政審議会で、鋭意この夏場までにはその方向づけをやっていただきたいとお願いをしているところでございます。  先生にも、どうかひとつこれらの点について十分御協力をいただき、御示唆を賜りたい、かように考えております。
  191. 永井哲男

    ○永井(哲)委員 もう時間も参りましたので最後の質問とさせていただきたいと思いますが、今大臣言われたような形になればいわばリスクというものもふえてくるというような中で、農民に迷惑のかからないようなものをどうつくっていくのか、非常に難しいものだと思います。  また、この住専問題を契機に、私の近くでは特栽米の契約を破棄されたという農民の話も聞いております。六千八百五十億、そういった税金を使っている、そういう農民から高い米を買う必要はないということであったようであります。これは全く方向違いの問題であります。農民は今回において全く悪くはない。そういう中で、この住専の問題というのが農民農業に悪い影響を与えない、そういうようなことが必要かと思います。  何よりも国会の場でしっかりとこの住専問題に対する国民理解というものを求めていく必要があるのではないかと思いますが、最後にその点についてお聞き申し上げます。
  192. 大原一三

    大原国務大臣 御指摘のとおり、我々もできるだけ情報の開示に努め、そして多くの方の御意見を聞き、これからの対応を熟慮しながら、十分積極的に解決をしていかなければならぬ、このような気持ちで先生の御意見を受けとめさせていただきました。
  193. 永井哲男

    ○永井(哲)委員 終わります。
  194. 松前仰

    松前委員長 井出正一君。
  195. 井出正一

    ○井出委員 新党さきがけの井出正一でございます。  私は、国会へ出てきてちょうど十年になるのでありますが、農林委員会に所属することは今回が初めてでありまして、また、したがいまして、質問させていただくのも初めてであります。尊敬する大原大臣質問をさせていただくことをうれしく思います。  さて大臣、ガット・ウルグアイ・ラウンド合意によるWTOが昨年一月スタートし、また、昨年の秋には五十有余年続いた食管法にかわって新食糧法の施行など、農業をめぐる情勢の変化は大変厳しく、また大きいわけであります。そんな中で日本農業のかじ取り役に御就任なさったわけでありますが、本当に御苦労さまでございます。大変なお役だと思いますが、財政、農政に関しまして豊かな御経験と識見をお持ちの大原大臣であります。ひとつ、やりがいのある時期に担当するんだとお考えになられて、御活躍を期待したいと思います。  さて、私に与えられた時間は三十分しかございませんものですから、喫緊の課題である住専問題に絞って御質問を申し上げる次第であります。  住専処理に公的資金、いわゆる税金を導入したことにつきまして、大変国民皆さんからも批判のあることは事実でありますし、なかなか御理解をいただけない現在でございますけれども、本来、当事者間の協議による合意で決められればそれにこしたことはありませんし、法的措置に基づいて結論がすぐに出るならば、これまたすっきりしていいのでありますが、先ほど永井委員も御指摘のように、これはどちらも時間がかかるし、前者は恐らく不可能だと思います。結果的には先送りになってしまうわけであります。母体行の責任が大変強く指摘されるところでありますから、もっと母体行に負担をさせるべきだという御意見も一見もっともだとも思いますが、しかし、政府が民間に対して納得なしに強制的に命じることは独裁国家でない我が国にできるはずがないということを、この際確認しておきたいと思います。  さて、大臣の所信表明を先日承ったのでありますが、「住専の設立の経緯及び性格、経営破綻の原因及び再建計画策定の経緯等を踏まえれば、基本的には母体行が責任を持って処理すべきもの」である云々とおっしゃっていらっしゃいますが、私も賛成であります。しかしながら、農協系金融機関我が国金融システムの一環を担っているわけでございますから、責任なしとは言えないこともまた事実だと考えます。  よく、系統住専経営実態を知らされていなかったんだ、だから責任を負えないんだ、こういう御主張もあるようでありますが、系統母体となっておるいわゆる協同住宅ローン、後で少し触れさせていただきますが、少なくともこの協同住宅ローン経営実態は把握していたはずであります。としますれば、それとの類推からほかの七住専の状態もかなりの程度は想定できたはずではないか、こう思うのでありますが、いかがでしょうか。
  196. 堤英隆

    堤政府委員 住専は八社あるわけでございますが、そのうちの一つが協住ローンということでございます。これも、協住ローンも含めまして、所管的に言えばすべて大蔵大臣の指定に基づくものでございまして、監督といいますか、それは大蔵省の所管下にあるということで、そのこと自体、したがいまして、その経営状況を知り得るという立場には、残念ながら私どもとしてはなかったということが一つございます。それから、そういう意味では、協住ローンも、行政の権限ということから申し上げますと、大蔵省の所管下にあるということでございます。  ただ、農協系統がその子会社という形でつくっておりますので、農協系統とすれば、できるだけ投機的な土地取引というものを排除していこう、特に農家方々から集めたお金ということが一部あるわけでございますので、そういう意味で、最終的には実需につながるような案件に絞るというような形での運営をしてきたということの中で、今回、他の住専七社とは異なった経営方針という形になっていると思います。  そういう意味では、今御指摘もあったのですが、協住ローンを見ればほかの住専のあり方もわかるのではないかという点の指摘もあろうかと思うのですけれども、それぞれの経営内容というのは、それぞれ今申し上げましたような事情もありまして、やはりかなり異なっております。  そういう意味で、協住ローンの経営内容から見て、直ちに他の住専経営内容までは残念ながら把握できなかったということで、現実はやはり平成三年秋以降、住専経営問題として浮上した段階で初めてその深刻さに気づいたということが実情でございます。
  197. 井出正一

    ○井出委員 そこで、まずその協同住宅ローンについてでございますが、午前中、千葉委員質問をされておられたのを私も聞いておりましたが、経営悪化の度合いがほかの七社に比べ軽度だということは承知しております。これは、バブル期前といいましょうか、昭和六十年前後に、既に不動産融資に手を突っ込んでいったときのことがマスコミあるいは国会で取り上げられて、そんな経緯を踏まえて反省をされたために、バブル期にはある程度自粛がなされていた、こう聞いておるのですが、まあ今の局長さんのお話で既に答弁があったのかなとも思うのですが、この間の経緯と、それから、七住専融資に対してその間の反省がどうも反映されていなかったんじゃないかな、こんなふうに思えてなりません。  あわせて、この協同住宅ローンにつきまして、差し支えない範囲で結構です、資産、負債等の内容の状況、そしてまた、その中にいわゆる不良債権とみなされるようなものがどの程度あるか。午前中、千葉委員は三千四百億円云々とかおっしゃっていましたが、大蔵省調査によりますと三千億円だという御答弁もお聞きしましたが、もう一度お聞きしておきたいと思います。  そして、その上で、今後のこの協同住宅ローン経営見通しは大丈夫なのか。将来、住専処理機構にゆだねられるような大事態が生じることはないのかどうか、お見通しをお聞かせいただきたいと思います。
  198. 堤英隆

    堤政府委員 協住ローンは五十四年の八月に設立をされておりますが、目的はやはり系統農協の住宅資金貸付業務の補完ということと、それから、系統資金の効率的な運用を図るということによりまして、系統農協の事業活動の円滑な推進ということで運営をされてきたというふうに理解をいたしております。  今御指摘のように、国会等でも取り上げられました不動産投資につきましての問題が生じまして、そういう意味で、六十三年以降、設立目的に沿いました事業運営を確保するということで、不動産関連業務を比較的整理していくということをやっております。  それから二つ目には、投機的土地取引に係ります融資の排除ということに万全を期していこうということで、融資の基準でありますとか融資の審査体制をそのとき整備をいたしました。それをもとにその後の経営を展開してきているというふうに理解をいたしております。  ただ、協住ローンといえども、やはり全体の住専をめぐります厳しい環境の影響を受けておりまして、経営状況も厳しい面を持っているわけでございますが、ただ、やはり最終的な住宅の実需に結びつくような融資にできるだけ絞っていくというような比較的堅実な経営に努めてきているということでございまして、そういう意味で、今回、他の住専七社のような再建計画ということの中からは外れているわけでございます。  現在、大蔵省が昨年の八月に立入調査しました結果、不良債権が三千億円、そのうちロス懸念分が二千億円ということになっております。そういう状況の中で、厳しい面はございますが、系統とすれば協住ローンを経営としてなお存続していこうという意欲と見通しを持っているようでございます。  今申し上げましたような不良債権の処理なりロスの懸念のものにつきましては、農林中金中心になってそれを支援していこう、こういう方針で今後ともこれを存続させていきたいという意向のようでございます。
  199. 井出正一

    ○井出委員 この協同住宅ローンが設立されたのは一九七九年であったわけです。翌年の十月、通達で、住専農協法貸し出しが制限されているいわゆる員外貸し出しの適用外の金融機関として位置づけられたわけでありますが、この結果、住専信連融資対象となったわけであります。  これは、時系列的にいいますとまさにその前の年だったのですが、系統のいわゆる資金運用難といいましょうか、貯貸率の悪化といいましょうか、この解消がねらわれたものであったのかどうかということと、そして、その際にも融資目的が個人住宅ローンに限るという条件がついていたのではないかと思いますが、これも午前中千葉議員に対して局長さん、個人住宅ローンの範疇といいましょうか、概念が少し広くなられたような御答弁だったのですが、もう一度そこをお聞きしておきたいと思います。
  200. 堤英隆

    堤政府委員 個人住宅ローンとの関係で先に申し上げますと、住専に対します貸し出しは住宅資金用途に限るというふうにしているわけでございます。御案内のように、当然ながら個人住宅ローンというものからもともとスタートしたわけでございますので個人住宅ローンの実需に対応するということは当然でございますけれども、国民の皆様が住宅を取得します場合には、分譲宅地でありますとか、あるいは分譲住宅という形で住宅を手に入れられます。その際の資金ニーズということもあるわけでございまして、そういう意味で開発事業者の方々の宅地分譲のための宅地造成、あるいは分譲住宅のための宅地造成及び住宅の建設ということに伴います資金のニーズというものは、私どもの今御指摘の昭和五十五年の通達の員外貸し出し規制の目的の中にきちんと入っているという理解をいたしております。  そういう意味で、個人住宅ローンだけでなしに、いわば川上と言っているのですけれども、川上の方の宅地開発事業者の方々が分譲宅地、分譲住宅を行います場合の資金というものは、全体としての住宅資金の中に入っているということでございます。  それを超えまして、先ほど来御議論がありますようなゴルフ場でありますとか、そういうものは系統の資金用途ということについては認めていないということでございます。
  201. 井出正一

    ○井出委員 どうも川上に属している業者の中に必ずしも、局長さんの今おっしゃられたような皆さんだけであればよかったはずなのですが、果たしてそうだったかなと、ちょっと疑問が残ります。  もう一つ確認しておきたいのは、この一九八〇年十月の住専向け通達で、年二回、住専への融資の実行状況と、次の半期の計画を大蔵、農水両省に届け出ることが義務づけられたと伺っております。したがって各信連は、全国組織である全国信連協会を通じて大蔵、農林両省へ三月と九月に全体の住専向け融資計画を報告していたわけですね。  その報告を受けて、主務庁である農水省経済局は融資額を調整、その結果をいわゆる貸出枠の形で各信連に与えていたというような分析がなされている本を読んだことがありますが、これは事実だったのでしょうか。
  202. 堤英隆

    堤政府委員 今御指摘のように、昭和五十五年、住専を員外貸し出し規制対象外となる金融機関扱いということにしたわけでございます。それは住専信用力なり公共性ということから見てそういう扱いをしたわけですが、その際、最高限度額の届け出ということを求めております。かつそれの実績の把握ということも行っております。  これはあくまでも届け出でございまして、行政庁といたしまして具体的な額につきまして協議をするとか、あるいは調整をするという性格のものではなく、またそういう事実は行っていないというふうに承知をいたしております。
  203. 井出正一

    ○井出委員 貸し手の信連側にいたしますれば、経済局からそういうような貸出枠というのがもし出ていたとすれば、それは安全有利な保証つきの貯金枠といったような錯覚をしたのではないかな、そんなふうにも思えるわけでございますが、信連はその七つの住専への融資に当たって、その審査はどの程度きちっとしたものをしたのか、あるいは担保物件はとっていたのか、この点、おわかりだったら御答弁ください。
  204. 堤英隆

    堤政府委員 各信連住専に対しまして融資をします際には、個々の住専から出ていきます個々の貸出案件ということはできませんので、住専の全体の計画それから住専経営状況ということを総体的に判断をして、信頼のおける貸出先であるかどうかという判断のもとに貸し出しをしてきたということでございます。これは、他の一般行、母体行も基本的に全く同じでございまして、言ってみれば金融機関の扱いということの中でそういう対応がされてきたという理解をいたしております。  したがいまして、担保のとり方につきましても、個々の物件ごとに担保をとるということでなしに、住専が相手方に対しまして貸しております債権を全体として債権担保譲渡契約という形で信連としての担保の確保をしたということでございまして、これも他の一般行、母体行とも全く同じような担保のとり方をとってきているところでございます。
  205. 井出正一

    ○井出委員 次に移ります。  五千三百億円の損失負担といいましょうか、農協系統の協力額と農林省はおっしゃっておられるわけでありますが、これの算出根拠につきましては先ほどの永井議員の質問に対して堤局長が答弁されましたが、この中でちょっと確かめておきたいのであります。  一つは、具体的な算出根拠として、信連に対しては、「今年度の推定経常利益を充当する」、また「貸倒引当金は可能な限り取りますという考え方に立って、各信連別に計算」をした、その結果、「当年度に赤字に転落する信連を一定数見込み、かつ、翌年度以降の赤字信連がこれを上回らない水準の限度額として、約二千億円」という御説明でしたし、その資料を私は局の方から昨日いただいておりますが、この「一定数見込み、」というのは、「当期利益ベースで二十程度にのぼる」という、この二十でいいわけですか。  その二十の根拠を教えていただきたいということと、それからついでに、農林中金に対しましては、「有価証券含み益の益出しを行う 貸倒引当金を取ります 任意積立金を取りますという考え方に立つとともに、推定経常利益は、系統住専のいわゆる協住ローンの損失負担の一部の処理に充当することを予定する」、こうした上に立って計算して、当期利益で大幅赤字に転落することはやむを得ない、翌期以降相当厳しい決算を迫られるおそれがあるけれども、「最低水準の利益を確保できる限度額として」二千億円だ、こう言っていますが、この「最低水準の利益」というのは、どの程度を考えていらっしゃるのか。
  206. 堤英隆

    堤政府委員 私どもとして、系統につきましては、いわゆる債権放棄とかそういうことでなしに、いわゆる協力ということで対応するわけでございますが、その協力としてどれだけがぎりぎりであるかということを見てみます場合に、ある程度の信連数が赤字に転落するということはこれはやむを得ないとまず見たわけでございます。その数が例えばほとんどになってしまうということでありますれば、先ほど御説明申し上げましたように、その下に二千五百の単協がございますので、非常に不安が不安を呼ぶということで、新たな金融システムの不安を呼ぶということではこれは問題が大変だということで、そのぎりぎりなということを考えました場合に、まず一つは、当年度の経常利益ベースではいわゆる過半、半数以上はこれはやむを得ないのじゃないか。  かつ、当期利益におきましても、やはり十や五というわけにはいかないので、やはり二十程度のものはこれはやむを得ないと見よう。かつ、それは翌年度におきましても大体二十程度のものは赤字になるということを見ていこうということで、これは全体としまして、これ以上ということであればまた新たな信用不安を生ずる、惹起するおそれがある、そういうことをぎりぎり回避するものとして私どもとしてはそういうふうに置いたわけでございます。  そういうものに該当するものとして、全体幾らであるかということにつきまして、当年度の経常利益、当年度の当期利益、それから翌年度の利益ということをそれぞれ信連ごとに計算をいたしまして、今申し上げましたような数字に該当するものとして全体として二千億という数字が出たということでございます。  それから中金につきましては、先ほど有価証券の含み益なり、貸倒引当金なり、任意積立金については申し上げたわけでございますが、もう一つは、今年度の経常利益をどういうふうに見るかということでございますが、大体中金の場合には毎年五百億くらいのあるいは六百億程度の利益が出ております。ただこれは、先ほど冒頭御質問にございましたように、協住ローンの全体のロス部分が二千億ございます。これを一挙に償却をすればそれは一つの方法かもしれませんけれども、別途、この住専負担額というものは相当な大きな額でございますので、今年度におきましては、この二千億のうち八百億程度を負担をしていこうということで、その分を見込んでおるところでございます。そういうことによりまして、恐らく今年度の中金の赤字は相当な額に上るだろうというふうに見ております。  それから、来年度におきましても、この見込みは非常に実は難しゅうございます。金利水準がどうなるのかということによりますので、確定的なことは申し上げにくいところでございますが、プラス・マイナス五十から百の間、金利水準によっては若干のプラスになるかもしれませんし、金利水準いかんによってはまたマイナスになる可能性もある。そういうこととして、ぎりぎりのものというふうに見込んだところでございます。
  207. 井出正一

    ○井出委員 共済系統は、貸付残高案分で計算して千三百億ですよね。これは共済系統、大丈夫ですか。
  208. 堤英隆

    堤政府委員 共済も、全体的に系統住専への貸付額五兆五千億のうち一兆三千億程度の貸し付けをいたしております。  現在、共済系統につきましては、共済加入者へのいわゆる支払いの予定利回りというのがあるのですけれども、これが運用利回りを大幅に上回っている厳しい状況でございまして、いわば一%程度の逆ざやということになっております。かつ、これも御案内のように、共済でございますので、生命保険でありますとかそういう長期の契約として仕事をしております。  そういうことで、経営に与える影響ということも私ども試算をしたわけでございますが、実質的な経常利益で見ますれば、全共連は赤字になると思います。それから、それぞれの県の共済連も十程度はやはり赤字になるのではないかということで、この程度はもうやむを得ないというふうに見まして、千三百億円ということではじいたわけでございます。
  209. 井出正一

    ○井出委員 系統はもともと、先ほどからも申し上げておりますが、貯蓄過剰であるわけです。これには、員外利用の規制とか、あるいは農業部門への投資の減退とか、あるいは低利の制度金融の存在とか、あるいはまた農協自身の責任に帰する面もあるかもしれません。こういった原因が考えられるところに、この住専問題によっていわゆる年利四・五%の融資がなくなるわけでございますから、大変な影響が出てくるのではないかなということは容易に想像されるわけであります。となると、系統金融は、地域住民の生活金融とかあるいは中小企業向けの融資といった分野にも手を出していかなくちゃならぬ状況が来ると思いますが、果たしてその活路はあるのかどうか。  あわせて、先ほど大臣、協同組合金融の本質というのは、内部留保よりは組合員への還元だ、こういう理念も一方ではあります。これとの兼ね合いで大変厳しいのですが、果たして系統金融、うまくやっていけるのかどうか。  それからもう一つ農業部門への投資の減退、大変今農業は厳しいわけですから、ある意味ではやむを得ないと思いますが、やはり本筋としてはこの農業部門への投資がふえていく、拡大していくような方策を農政全体で考えていかれるべきじゃないかな、こう思います。  ちょっと続けて、時間がなくなりましたからもう一つ、いわゆる単協といいましょうか、農協への影響が大変心配されます。ドル箱と言われる信用・共済事業がこういうことになってしまうわけですから、一体どういうことになるのか。そのために農協に対する信用が失墜してしまうことを大変私は恐れております。例えば貯金のシフトなんかが地方で出始めてはいないかな、こんな心配もするわけですが、そこらもあわせて御答弁いただきたいと思います。
  210. 大原一三

    大原国務大臣 先ほどもお答えしたところでありますが、今井出委員指摘のとおり、四・五%が千五百億だったわけでございますから、これが長期国債に運用しても三%、短期でいきますと一%そこそこ、そういったものでございますから、これからの運用は、農協の資金需要、農家の資金需要がないということは事実でございますから、やはり地方公共団体への融資とか、あるいは地方債への融資、しっかりした社債への投資、そういったことへも多角的に融資の方向を展開をしていかなければならぬと思います。株は、ちょっとやはり農協のありようからいっていかがなものかな。株をやっていて損失を出した農協が今管理農協信連になっているわけでございますから、それ以外のことでそういったことを考えていかなきゃならぬのかな。  それと同時に、二段階をJA自身の方々が提案をしているわけでございますから、やはりこれを先取りして、信用事業の二段階を早く進める必要がある。そうして資金の効率化を図るシステムを構築する必要が早急にあるのではないのかな。  こういうことで、我々も今、この夏場ぐらいまでには将来のありようを結論を出していただき、今審議会でやっているわけでありますが、そうしますと、来年の通常国会までにはそういうスケルトンを描いて法案化できないかな、こんな気持ちで今取り組んでいるところでございます。  委員のぜひとも積極的な御協力をお願いしたいと思います。
  211. 井出正一

    ○井出委員 新聞の報ずるところによりますと、きょうですか、農政審議会の農協部会が会合を、初会合でしょうか、持たれたようでありますが、また大臣の所信表明にも今の御答弁にも、夏ごろまでには結論を出して、遅くとも来年の通常国会には関連法案を提出できるようにしたいということでございますが、ということは、秋に仮に臨時国会があれば臨時国会に提出なさるというお考えも当然お持ちだと考えていいでしょうか。  それから、これは御要望ですが、大臣の所信表明にも「農協系統とも十分連携をとって、」こうありますから、ぜひそうしていただきたいのですが、その場合、いわゆる上からだけでなく、下からの声も十分吸い上げるよう農協系統の方へも御指導をいただきたいということを、あわせてお願いをしておきます。
  212. 大原一三

    大原国務大臣 今検討を農政審議会は始めたばかりでございますが、成案がまとまれば臨時国会にもという気持ちは、十分私は持っております。  ただ最後に、井出委員指摘のとおり、これを天下りで、トップダウンでやるわけにはまいりません。四十七という信連があるわけでございますから、それぞれ経営の態様も違うし考え方も違うわけでございますので、その辺は各信連の意見を十分尊重しながら、できればレールの上へ乗っける努力をしていかなければならぬと思っております。
  213. 井出正一

    ○井出委員 終わります。ありがとうございました。
  214. 松前仰

    松前委員長 藤田スミ君。
  215. 藤田スミ

    ○藤田委員 私は、住専問題についてお伺いいたします。私は、昨年の三月十四日の当委員会でこの問題について追及をいたしました。引き続いてきょうは、住専問題のきっかけになった総量規制問題についてお伺いをしていきたいと思います。  九〇年の三月の総量規制通達の三業種規制は、極めて重要な意味を持っていました。そのことは、当時の九〇年六月二十二日のニッキンという業界紙に掲載された、大蔵省小山銀行課長の発言を見ても明らかです。こう言っています。「投機的土地取引への融資の抑制という個別取引に重点を置いて八七年から指導してきましたが、それだけでは不十分ということで総量規制という最後の拠り所のような直接的な規制を行うことにしました。直接的な規制は強いだけに難点も当然ありますが、それは当初から織り込んでいました。通達では、まず不動産業向けを規制するが、ノンバンク、建設業向け融資の係数もとるわけで、状況次第では実績をみてさらに強い行政措置があり得るという方向付けの下で量的規制を始めました。」こういうふうに言っています。つまり、住専への融資実績を見て、融資が抑制されなければ強い行政措置をとることになっていたわけであります。その点間違いありませんね、大蔵省。  また、大蔵省と農水省は、三業種規制の不動産業向け貸出実績を信連協会から報告させていたのではありませんか。
  216. 五味廣文

    ○五味説明員 ただいまの、小山元銀行課長の発言ということでございますが、この点は、私も直接これを伺っているわけではございませんが、ニッキンという新聞の記事は拝見をいたしました。  これにおっしゃったような記事が載っておりますけれども、この平成二年三月に発出されましたいわゆる総量規制通達、これは当時大きな社会問題になっておりました地価問題、この重要性にかんがみまして、前の年の十二月に施行されました土地基本法あるいは金融機関の業務の公共性、こういった一般的な問題、これらの趣旨を踏まえまして、金融面からも適切に対処をするという趣旨で、あえて個別の金融機関貸し付けの内容にまで踏み込むような、一歩踏み込んだ措置ということでとられたわけでございます。  この発言の詳細は承知しておりませんけれども、例えばこれは、この通達に違反するような事実があるとかそういったような場合には速やかに是正を求めるというような、事案に応じて厳正に対処するという趣旨の発言であったのではないかと存じます。  また、不動産業向けの貸し出してございますけれども、これにつきましては、昭和四十九年通達でもともと農水省あてに出されていたものでございますけれども、私どもこれを農水省からももちろん伺っておりましたし、また別途総量規制通達を出しましたときに、信連協会の方へお願いをして、報告を出していただくようにしておりました。
  217. 藤田スミ

    ○藤田委員 この通達が出たときに、三業種規制の不動産向け貸出実績を信連協会から報告を受けることにしていた、こういうことでしたね。そうですね。——はい。今おっしゃったのは、大臣、そういうことです。  しかし、これは全く驚くべき説明なのですよ。従来あなた方は、八〇年通達に基づく上期、下期報告と金融機関貸し出し報告で別途数字をとっていたので、あえて三業種規制信連協会向けには記載しなかったということであったわけですが、その説明は成り立たなくなるのじゃありませんか。あなた方は国会に間違った説明をしていたということにもなるわけです。  予算委員会で我が党の志位書記局長に対する橋本総理の答弁は、「農林系統に対しても、銀行局長経済局長が出しました総量規制通達は、その三業種に対しての報告をそこでは求めておりません。」というふうに、求めていなかった、農林系統には求めていなかったと明確に答えています。  また橋本総理は、ほかの委員に対しても、それは既に農水省の方で報告を徴求しておられることから、それが重複するという必要性を認めなかった、さっきも屋上屋と堤局長はおっしゃいましたけれども、そういうふうに答えておられるわけです。一国の総理が、国会に対して事実と違う答弁をしていたということになるのじゃありませんか。
  218. 五味廣文

    ○五味説明員 平成二年のいわゆる総量規制通達におきまして、農協系金融機関に対して三業種向け融資報告というものが通達上明記されておりませんのは、当時既に他の通達により報告を求めていたことによるということでございまして、こういう御説明はほかの委員会でも何度もされているところであると承知しております。  ただいまの昭和四十九年の通達によります農水省あての報告というのが一つのこの説明の根拠になるわけでございますが、それで、改めて通達にはそういった要請は書いておりませんけれども、ただ、総量規制通達というもので求められております報告とさまざまな整合性をとるという意味では、それに合った数字も知っておいた方がよろしいわけでございますので、そういう意味で、改めて別途御報告いただけるようにお願いをしたということでございます。
  219. 藤田スミ

    ○藤田委員 それは一つの理屈かもしれませんけれども、しかし、それならそれをはっきりとおっしゃるべきです。これはもう本当に総理がおっしゃっていることと全然違うわけですよ。総理は、重複をするからもうそれは必要がなくて、だから求めておりませんと言っているわけです。それを、やはり報告を求めていたということだったら、これは本当におかしいわけですよ。  これは予算委員会での問題でもあると思いますけれども、私は、一国の総理が、ずっと今日まで報告を求めていたということを明らかにされなかった、そして報告については重複するから必要がなかった、きょうも、この席でもそういうことを言われたことについては、これは重大な問題だということを指摘しておきたいと思うのです。  それにしても、総量規制通達以降、信連に対して三業種報告を求めていたのであるのだから、信連向けの総量規制通達でも三業種規制を入れても何の問題もなかったわけです。あなたのさっきの説明は、全く納得できませんよ。何で何の問題もないのに入れなかったのか。それをあえて三業種規制を外したのは、私は、実はもっと深い意味があったと言わざるを得ないわけであります。  いいですか、八〇年通達で大蔵省も農林水産省も、上期、下期についての信連からの住専に対する貸付最高限度届け出という形で融資報告を受けることになっていました。それも信連は、事前に貸出計画書という書式で、上期については三月二十五日までに上半期分を、下期については九月二十五日までに下半期分を信連協会に提出され、直ちに大蔵、農水省にそれが届けられていたわけです。したがって、総量規制が出された九〇年三月二十七日には、その二日前に、九〇年上期の住専向け貸付限度が八九年下期の四千五十六億円の倍の八千四十七億円になっていることを知っているわけです。二日前にその数字を見ているわけです。ところが、総量規制をするときに、こういう重大な総量規制に踏み出すときに、どうしてそれを知りながら放置していたのですか。
  220. 堤英隆

    堤政府委員 九〇年三月に総量規制が出されているわけでございますが、そのときに、予算委員会でも御答弁申し上げましたように、八九年下半期の限度額は四千五十六億円、それから九〇年上半期は八千四十七億円ということでございます。  私どもとしましても、この平成二年の総量規制通達が、基本的には不動産業向け貸し出し総量規制を主眼とするということでございますが、あわせて、ノンバンク向け融資につきましても、報告という形で貸し出しの動向を把握し注視するということによりまして、その牽制的効果をねらうといいますか、そういうことを考えたわけでございます。  ただ、何度かお答え申し上げておりますように、当時、系統にとりましての住専の認識というものが、住宅資金需要に対応するという非常に社会的公共性の高いもので、かつ資金ニーズが非常に高かったという事情が一方にございます。さらに、もう一方としましては、貯金量が非常にふえてくる中で貯貸率がどうしても下がっていくという中で、自己努力として自分の貸出先考えていこうという際に、金融機関扱いにされております住専で、かつ信用力のある貸出先ということで当時認識をされていたということでございまして、そういう意味で、御指摘のように、他の業態のようにはその効果が出なかった。そういう意味で量がふえたということ、そういうふうに理解をいたしております。
  221. 藤田スミ

    ○藤田委員 大蔵省。
  222. 五味廣文

    ○五味説明員 ただいま経済局長の方からお答えを申し上げましたことと大要相違はございませんが、信連から住専への貸し付け、これは、御指摘のように、昭和五十五年の通達に基づく半期ごとの報告などを受けておりましたけれども、確かに当時、住宅需要というものが非常に高いレベルにございましたし、また、そういったものへの貸し付けを行うことによって会員向けの貸し付けに特に支障を来すような状況にはなかったというようなこともございまして、住専への貸し出しは、それぞれの経営判断によって行われたもの、こういうふうに理解をしております。
  223. 藤田スミ

    ○藤田委員 そういう御説明は全く納得できないのですよ。住専は、もう九〇年三月末時点では、不動産業などの事業に向けての融資の割合は七六%という数字になっておりますから、本来の個人住宅向けの性格を完全に逸脱して不動産投機の会社に変質をしていたのです。したがって、不動産投機の中でも突出した存在で住専はあったわけであります。  信連が、農協貯金量がふえて、それから貯貸率も下がって安定的な貸出先を探していた。住専の方は、ノンバンク規制の中で銀行などからの融資が抑えられるので、安定的な融資機関を求めていた。それが信連から九〇年上期の二倍の貸し出し計画となるわけで、それを大蔵省、農水省も総量規制を出すときに認めていた。それを認めながら公の形で三業種規制など系統金融向けに明記することはできない、そういうことではなかったのですか、大蔵省。
  224. 五味廣文

    ○五味説明員 繰り返しの御答弁で恐縮でございますけれども、当時の住専の業況あるいは住宅需要、こういったものを勘案をいたしまして、それぞれが経営判断によって資金の供給を行っていったということであろうと存じております。
  225. 藤田スミ

    ○藤田委員 それぞれが経営判断というようなことなら、何で総量規制というような非常に強い措置に出たのですか。つじつまの合わないことを繰り返さないでください。  しかも、この九〇年四月から実施された総量規制というのは、都市銀行には大きな影響を与えました。都市銀行は、総量規制を残高の抑制指導と受けとめまして、ノンバンク向けも同様に三月末比で残高を減らす方針を出したわけです。そのために、不動産業、ノンバンク向け新規の貸し出しは事実上ストップしました。既存先の案件もその選別色を強めていったわけです。しかし、都市銀行は抜け道を探しました。それが海外都市銀行支店から国内に融資されるインパクトローンです。都市銀行のインパクトローンの取り扱いは、この時期急増しています。それがノンバンクにも注ぎ込まれていったわけです、インパクトローンの融資が。  そういうことから、今度、大蔵省の方は、総量規制実施後も地価の高騰傾向がおさまらないということで、検査部は、ノンバンク向け融資を含む土地関連融資状況を重点検査項目として強化をして、その中でも迂回融資を厳重にチェックすることを方針として定めて調査を行い、依然として地価が下がらない中で、検査部の調査などで明らかになったこのインパクトローンの急増が総量規制の抜け穴になっているということを認識して、九〇年の九月二十七日に事務連絡で総量規制対象にインパクトローンも含めるということにしていったわけです。この事務連絡は、総量規制強化として当時のマスコミも大きく報道しています。  このように、迂回融資も抑制し、他方、三業種規制の数字報告でも住専への信連貸し出しが急増している事実を知りながらそれを放置していたということは、農協系統の資金運用難と総量規制下の住専の資金難を結びつけていくという政策的な意図があったこと以外に説明がつかないじゃないですか。大蔵省。
  226. 五味廣文

    ○五味説明員 お話のありましたインパクトローンに関する総量規制の問題でございますが、平成二年九月二十七日付で事務連絡を発出しておりまして、いわゆる三業種向けの貸し出し報告について、金融機関の海外店舗からの居住者向け円貨貸し出し、これがいわゆるユーロ円建てインパクトローンと言われるものでございますが、これによる三業種向けの貸し出し状況を把握するということのために報告様式を改正をしたというものでございます。報告を求めるという意味のものでございます。総量規制の、増勢を規制しております不動産業向けの融資そのものの内容を変更したものではございませんで、こういった報告をとるということでございます。  なお、信連はインパクトローンというのはやっておらなかったはずでございまして、この点につきましては、信連から住専への貸し出しというのは、いわゆる五十五年通達に基づく半期ごとの報告というものを見ながら報告を徴取しておったということでございます。
  227. 藤田スミ

    ○藤田委員 答弁をそんなふうに一々そらしていかないでください。私、何も信連がインパクトローンから融資を受けていたなんというようなことも言ってませんし、後の方も繰り返しのごまかしであります。  さらに、九〇年下期には、今度はBIS基準達成に向けた都市銀行の資産圧縮による融資抑制と、農林系金融への融資殺到が出てきているわけであります。  全国銀行協会会長端田氏は、九〇年九月十九日に次のように言っています。「BIS基準の達成には、海外資産の圧縮だけでなく、当然、国内の円資産にも手をつけなければいけない。当行としても国内の資産を圧縮するよう指示し、手を付け始めている。十月−十二月期の日銀の窓口規制は、現在の経済環境を考えれば、引き締めが一段と進むのは避けられない。国内の景気はいいが、企業はエクイティファイナンス」、つまり新株発行に伴う資金調達「が難しいので資金需要はいぜんとして強い。一方で銀行は資産を落とす必要があり、下期の銀行経営は一段と難しい環境になる。」  この都市銀行によるBIS基準達成に向けた資産圧縮というのは、国際的な資金需給の逼迫を心配されるほどのものでありまして、ましてや国内の資金逼迫を招くものであったことは明らかです。  そして、都市銀行各社は、九〇年の十月に入ってから一斉に支店長会議を開きまして、収益向上のための選別融資を徹底せよ、支店にそう徹底させていったわけであります。その結果、住専を含むノンバンクは資金調達環境が一層悪化しました。資金調達のために農林系金融機関に殺到する事態がまた生まれていったわけです。  日住金は、都市銀行からの調達環境が悪化し、すべての県信連に対して調達先を広げていく、農林系金融機関からの借り入れをふやしていくということで全国行脚しています。そして、日住金に限らず、すべての住専にこういう状況は共通するものとして、この時期、当時の新聞を見てもよく出ております。  以上見たように、大蔵省は、すべての状況をこの時期ずっと把握していらっしゃるはずであります。農協系金融に対する住専への融資急増の状況政策的に位置づけて、だから放置していた、こういうことじゃありませんか。  ずっと引き締めが続いていて、そして農協系だけはずっとふえていった。にもかかわらず、あなた方は、さきの御答弁のようなごまかしの答弁をしながら、実はおなかの中では、もうこの融資の急増していくのを政策的に位置づけながら放置をしていた、そういうことじゃありませんか。
  228. 村木利雄

    ○村木説明員 お答え申し上げます。  BIS規制との関係でございますけれども、銀行融資につきましては、個々の銀行が自主的な経営判断に基づいて決定するものでありますが、一般論として申し上げますと、BIS規制導入時のBIS規制銀行融資姿勢について申し上げますと、まず、導入時点でほとんどすべての銀行がBISの最終基準を既に達成しておりました。これは、先生御案内のように、八八年の国際合意に基づきまして……(藤田委員「簡単にしてください」と呼ぶ)はい、わかりました。  それから銀行は、当時、国内貸出業務を収益の柱といたしまして位置づけまして、引き続き積極的に応じていく方針でありましたし、各行とも、一方で劣後債務の取り入れ等によりまして、いわば分子対策といいますか、自己資本比率の、自己資本の充実策を計画的に講じてきたというようなことを考えますと、一概にBIS規制の導入に伴いまして融資規制が慎重化したとは言いがたいのではないかというふうに考えております。
  229. 藤田スミ

    ○藤田委員 ここは大蔵委員会と違いますからね。そんな、もう時間も限られてますからあれですが、大臣は世に言う大蔵族なんですよ。随分言っていることがでたらめだ。というのは、当時の新聞をちょっとめくってごらんなさい、次々に出てきますよ。大変な状態になってきたということで、氷が張ったような状態になっているということをずっと私は、例を挙げる間がありませんが、そういう言い方で住専への貸し出し放置をあくまでも言いくるめようとするのは本当に許しがたいですよ。  いいですか、信連金融機関貸し付けば毎月報告になっているんです。総量規制の中で信連住専にどれだけ貸したかは毎月農水省、大蔵省はつかみ、さらに上半期、下半期の貸し出し計画も事前に報告を受け、また今回明らかになったように総量規制報告もとり、総量規制の中で信連住専に対する貸し出しが急速にふえていることを十分承知をしていた。また、BIS規制の中で、九〇年下期には都市銀行が新規融資をストップする中で、一層住専、ノンバンクが農協系金融に資金依存することを知り尽くしていて、それを認めてきた。  要するに、信連など農協系金融を総量規制、BIS規制での安全弁にしていたんです。結果責任ではなく、まさしく結果責任ではなく、政策誘導責任じゃありませんか。大臣責任を感じられませんか。
  230. 大原一三

    大原国務大臣 私も久しぶりに農林水産委員会に帰ってまいりまして、藤田委員の大変、毎回鋭い質問には感心をしておりましたが、こうして自分で答えるという立場になろうとは夢にも思っておりませんでした。  それはともかくといたしまして、私も今大変反省をしているわけでございまして、この平成二年の総量規制以後の住専貸し出しが倍増したという事実、これはやはり私は、大蔵が誘導したということを私の口から言うわけにはまいりませんが、やはり信連系統融資の甘さというものも十分我々は反省しなきゃならぬと思っております。  そういう状況の中での御指摘でございますが、今考えてみますと、やはりあのバブルの、何というか狂気といいますかユーフォリアの中で、やはり信連も、護送船団方式の一人として、非常にぬくもりの中で甘い融資をしたんではないのかなということは切実に反省しなきゃならぬと思っております。
  231. 藤田スミ

    ○藤田委員 大臣は、その政策誘導の責任ということを自分の口からは言えぬがという表現をなさいました。まして課長であられる方が、なかなかここで、政策誘導責任がございましたなんていうようなことを言えようはずがありません。そういうことを承知の上で言っておりますけれども、しかし、経緯はそれをリアルに示しているというふうに考えます。  我が党は、引き続いて母体責任、大蔵省の責任について徹底的に追及するとともに、この責任と全くかかわりのない国民負担を転嫁して税金を注ぎ込むというようなことは断固許さない、撤回を求めて頑張る決意でございます。  時間が参りました。せっかくの質問通告をしておりましたが、きょう私がもう一つ質問をしたいと思っておりましたのは、今日自給率が非常に深刻な事態になっている。そういう中で、自給率引き上げのためにあらゆる政策手段をとらなければならないこのとき、野菜や魚介類など多くの品目が輸入の影響を受けて深刻な事態になっておりまして、全国の自治体がセーフガードの発動を求める意見書の採択を次々にしてきて、急速に世論化してきております。  したがって、私は、農水省が本当に今機敏にそういう状況を把握し、そしてセーフガード発動ということで、自給率向上に向けてきっぱりとした姿勢をとっていただきたいということを主張する立場で質問を準備しておりました。要望にかえまして、きょうの質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  232. 松前仰

    松前委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時三十分散会