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1996-06-04 第136回国会 衆議院 商工委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年六月四日(火曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 甘利  明君    理事 逢沢 一郎君 理事 自見庄三郎君    理事 塩谷  立君 理事 古賀 正浩君    理事 西川太一郎君 理事 増子 輝彦君    理事 小林  守君 理事 石井 紘基君       浦野 烋興君    小此木八郎君       尾身 幸次君    岸田 文雄君       熊代 昭彦君    田原  隆君       谷川 和穗君    中山 太郎君       丹羽 雄哉君    野田 聖子君       野田  実君    野呂田芳成君       石井 啓一君    上田  勇君       小池百合子君    斉藤 鉄夫君       土田 龍司君    豊田潤多郎君       星野 行男君    桝屋 敬悟君       宮地 正介君    山名 靖英君       吉田  治君    石井  智君       大畠 章宏君    輿石  東君       細川 律夫君    松本  龍君       正森 成二君    後藤  茂君       牧野 聖修君  出席国務大臣        通商産業大臣   塚原 俊平君  出席政府委員        特許庁長官    清川 佑二君        特許庁審査第一        部長       菅野 利徳君  委員外出席者        外務省経済局国        際機関第一課長  鈴木 庸一君        商工委員会調査        室長       石黒 正大君     ――――――――――――― 委員の異動 六月四日  辞任         補欠選任   上田  勇君     桝屋 敬悟君   佐藤 茂樹君     斉藤 鉄夫君   大畠 章宏君     輿石  東君   佐藤 泰介君     細川 律夫君 同日  辞任        補欠選任   斉藤 鉄夫君     佐藤 茂樹君   桝屋 敬悟君     上田  勇君   輿石  東君     大畠 章宏君   細川 律夫君     佐藤 泰介君     ――――――――――――― 六月四日  石油製品安定供給に関する陳情書  (第三  二〇号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  商標法等の一部を改正する法律案内閣提出第  五五号)(参議院送付)      ――――◇―――――
  2. 甘利明

    甘利委員長 これより会議を開きます。  参議院送付内閣提出商標法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより趣旨説明を聴取いたします。塚原通商産業大臣。     —————————————  商標法等の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  3. 塚原俊平

    塚原国務大臣 商標法等の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。  本法律案は、商標制度について国際的調和商標権保護適正化等を図るとともに、商標法条約の確実な実施を確保するため、所要改正を行うものであります。  なお、本件につきましては、昨年十二月に工業所有権審議会より商標法等改正に関する答申が提出されており、本法律案はこの答申を踏まえた内容となっております。  次に、本法律案要旨を御説明申し上げます。  第一に、商標制度に係る各種手続簡素化であります。具体的には、商標権更新に関し、出願制度を廃止し、申請のみにより更新を可能とすること等、利用者負担を軽減するための所要措置を講ずるものであります。  第二に、商標権に係る登録料その他の料金について、特許印紙に加えて、現金による納付を可能とする制度を導入するものであります。  第三に、不使用商標取り消し審判の改善であります。具体的には、継続して三年以上使用されていない商標について、何人もその登録取り消し審判を請求することを可能とすること等により、取り消し審判制度を一層有効に機能させるものであります。  第四に、近年の国際的な趨勢を踏まえ、従来の平面的な商標だけでなく、立体的形状から成る商標についても登録が受けられることとするものであります。  第五に、その他商標制度簡素化国際化商標権保護適正化等を図るために必要な措置を講ずるとともに、特許法実用新案法意匠法等について、商標法改正に準ずる改正を行うものであります。  以上が、本法律案提案理由及びその要旨であります。  何とぞ、慎重御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  4. 甘利明

    甘利委員長 これにて趣旨説明は終わりました。
  5. 甘利明

    甘利委員長 これより質疑に入ります。質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岸田文雄君。
  6. 岸田文雄

    岸田委員 おはようございます。自由民主党の岸田文雄でございます。商標法の一部を改正する法律案につきまして質問をさせていただきたいと存じます。本改正でありますが、ただいま塚原大臣から提案理由の御説明があったとおり、「商標法条約の確実な実施を確保するため、」ということが一つの大きな理由となっております。  加えまして、今回の改正商標法条約の確実な実施の確保に加えまして、マドリッド・プロトコルというものを想定した、意識した改正であるということが言われるわけであります。事実、今御説明がありました提案理由の中で、「工業所有権審議会より商標法等改正に関する答申が提出されており、本法律案はこの答申を踏まえた内容となっております。」とあったわけでありますが、この答申内容を見ましても、マドリッド・プロトコルにつきまして、「加入の条件が整った際には速やかに加入することが可能となるよう準備が必要である。」とされておるわけであります。  かくのごとく、今回の改正案は、商標法条約の確実な実施に加えて、マドリッド・プロトコルというものを意識した内容になっていると考えるわけでありますが、まず最初に、外務省にお伺いさせていただきたいと存じます。  まず、商標法条約の方であります。この商標法 条約、五カ国が批准した上で三カ月経過してから効力を発するという内容になっておるわけでありますが、この効力発効の見通し、状況、これについてお伺いさせていただきたいと存じます。  加えて、マドリッド・プロトコルの方であります。現在、日本の国はこの議定書加入をしていないわけでありますが、このマドリッド・プロトコルにつきまして、現在の加入状況、あるいは日本が今加入に至っていない経過、理由等につきまして御説明をいただきたいと思います。  よろしくお願いいたします。
  7. 鈴木庸一

    鈴木説明員 今御質問ございました、まず商標法条約締結状況及び発効の見通してございますが、今先生から御指摘がございましたように、商標法条約は、五カ国が締結した後三カ月たったところで効力を発することになっております。現在のところは、五カ国目に当たります英国が本年の五月一日に本条約批准書を寄託しておりまして、したがいまして、五月一日から数えて三カ月日になります本年の八月一日に商標法条約効力を発することになっております。  次に御質問がございましたマドリッド・プロトコルでございますが、マドリッド・プロトコルとは、標章国際登録に関するマドリッド協定について、その締約国を増加させるという意味協定を修正する形で採択されたものでございます。現在のところ、本年四月一日現在でございますが、九カ国が議定書締約国になっておりまして、議定書自身は昨年の十二月一日に発効しております。  我が国につきましては、本マドリッド・プロトコル議定書締結については、国内のニーズを踏まえて今後対応していきたいと考えております。
  8. 岸田文雄

    岸田委員 ありがとうございました。  続きまして、これは通産省特許庁になるのでしょうか、このマドリッド・プロトコルそのものに対する評価をどのようにお考えになっておられるか、お伺いできますか。
  9. 清川佑二

    清川政府委員 お答え申し上げます。  マドリッド・プロトコル仕組みにつきましては先ほど話があったわけでございますけれども、この仕組みによりますと、一つ国際出願によりまして複数の指定国に対して登録の機会が与えられます。したがいまして、各指定国において一定期間内に審査がなされることが保証されるというメリットがあるというふうに受けとめているわけであります。  ただ、EU、欧州連合が域内各加盟国と独立して一票の議決権を持っているということから、アメリカ、カナダなどは加入に積極的に動いていないようでございまして、現段階では、この条約加盟国は、主として欧州諸国、そしてまたマドリッド協定加盟国に限られているという現状にございます。  ただ、私どもといたしましては、先ほど申し上げましたようなマドリッド・プロトコルメリットもございますので、国際的な環境が整った場合には速やかに対応し得るように、所要の検討を行ってまいりたいと考えております。
  10. 岸田文雄

    岸田委員 現状ヨーロッパ中心でこのマドリッド・プロトコルが進んでいるということでありますが、環境が整えば、この議定書メリットを認めた上で前向きに考えたいというようなお答えであったと理解いたします。  それであるならば、このマドリッド・プロトコルというものを前向きに考えるということであるならば、今回の商標法の一部を改正する法律案、今回の改正案でありますが、内容を見まして、確かに商標法条約に対応するべく、あるいはマドリッド・プロトコルにも対応できるような内容になっておるとは思うわけでありますが、一つ気になるところがあります。  これは、要は審査処理期間という部分であります。従来から、日本のこうした商標を初めとする知的所有権処理期間の長さがさまざまな場で問題になってきたわけでありますが、この商標部分に関しましても、従来から、審査処理期間の長さが諸外国と比べた場合大変長いという部分が問題にされてきたわけであります。マドリッド・プロトコル内容を見ますと、国際登録出願された商標について、十八カ月以内にファーストアクション、一時的判断を求めるという内容になっておるわけであります。十八カ月以内に一時的判断をしなければいけないということであるならば、日本の今の現状考えた場合に、この要求にこたえることができるのだろうか、ちょっと心配に思っております。  まず、この商標に関しまして、審査処理期間は現在どういう状況になっているか、そして、今回の改正によってどの程度改善される見込みになっておるのか、そのあたりについてお聞かせいただけますでしょうか。
  11. 菅野利徳

    菅野政府委員 商標審査期間現状についてでございます。  平成七年、昨年でございますけれども、実績といたしまして二年二カ月、二十六カ月ぐらいかかっております。御指摘のように、アメリカあるいはヨーロッパ諸国審査主義をとっております国と比較しましても、日本現状はまだ長いと言わざるを得ない状況にございます。  今お諮りしております改正法案によりまして、今までは特許庁の方で審査をいたしまして抵触する先行商標がないという場合に、一たん公告をいたしまして、それについて特許庁判断異議があるかないかという異議申し立て制度を置いていたわけでございますけれども、こういう権利付与する前の異議申し立て制度権利付与後に行っていただくということで、手続を変えるような改正案を盛り込ませていただいております。付与異議制度改正することによりまして、登録までのかなり期間短縮が図られるものと期待をしておるところでございます。  さらに、これに加えまして、未登録であるけれども先願の類似の商標がある場合には、今までは、先願商標の決着を待って拒絶理由通知をするとか登録査定をするというような判断をしていたわけでございますけれども、今回は、そういう先願がある場合にはもう先願がありますということで、登録になるかならないかということを待たずに拒絶理由通知を行うというような仕組みも導入させていただいているとか、あるいは標準文字制度というようなことで、いろいろな文字商標につきまして、文字の形にこだわらないという場合には、特許庁の指定するいわゆるJISの何番の文字ということで出願をしていただくということによりまして、中の審査処理体制が極めて効率的に行えるようになるというようなことも盛り込ませていただいております。  こうした措置によりまして、今二年二カ月と申し上げましたけれどもかなり短縮が図られる。それだけでマドリッド・プロトコル加入するための十八カ月のファーストアクションの達成が可能かということで比較申し上げますと、まだそこまでは必ずしも十分にということにならないかもわかりませんけれどもかなり近いラインまで短縮が可能であるというふうに考えておるところでございます。  以上のような法改正措置にあわせまして、私どもとしては、従来から進めております機械化処理、あるいは事務内部処理の例えば外注活用等による効率化等々も含めまして、なるべく早い時期にファーストアクション十八カ月が達成できるように努めてまいる所存でございます。
  12. 岸田文雄

    岸田委員 法改正内容実施することにより、また、あわせてさまざまな努力をされることによりまして、現在二十六カ月というお答えがありましたが、この審査処理期間を極力短縮されていかれる、そういったお答えをいただいたわけであります。そして、十八カ月というマドリッド・プロトコルファーストアクションの期限に対応できるべく、近いところまで持っていこうというお答えだったわけです。  十八カ月でファンストアクションを行うということは、国内手続が十八カ月よりさらに短い期間処理を終わらなければいけないということに なるかと思いますので、十八カ月に近いところというのではちょっと心もとないなという気がいたします。もし将来、マドリッド・プロトコルをそれなりに評価し、また国際的な環境が整った場合に日本も受け入れようというお気持ちがあるのであるならば、こういった審査処理期間短縮というのは一朝一夕にできるものではないと思うわけです。今回の改正によってどれだけ効果が上がるか、それから、引き続き努力することによってどれだけ効果が上がるかといった様子を見ながら、さらなる努力が要るかどうか、そういったことを続けていかなければいけない。地道な努力が必要になるわけであります。  今現状が二十六カ月、それを、十八カ月を下回る水準まで下げるということは並大抵のことではないということをぜひ御認識いただいて、今回の改正内容実施にしっかりと努めていただきますとともに、あわせて一層の御努力を重ねていただきますことをよろしくお願い申し上げたいと存じます。よろしくお願いいたします。  続きまして、今回の法改正の中で、手続的なことを一つお伺いさせていただきたいと存じます。商標権分類のことであります。  商標権分類は、今までもその分類につきましてさまざまな改正が行われてきたわけでありますが、今回の法改正によりまして、新しい分類に移行するために、徐々に書きかえ手続を進めていくということになっておるわけであります。これは事務処理観点からも、そして商標権を得る利用者の立場からいきましても、新区分への統一整理というもの、これは大きな意味があると思うわけですが、お聞きしますと、この新分類への書きかえの手続更新登録手続のときにあわせて行われることになっておるわけですが、手続上、更新登録申請とは別途、書きかえ登録申請手続を必要とする。要するに、更新手続書きかえ登録申請手続と別々に手続をしなければいけないという、一見、随分煩雑なことをするのだなという気がする手続になっておるわけです。  まず、こうした手続分類したこと、これは商標法条約に適応するためいたし方なかったという理由があると聞いておりますが、その辺の理由についてまず御説明いただけますでしょうか。
  13. 菅野利徳

    菅野政府委員 お答え申し上げます。  御指摘のように、商標法条約の十三条の(4)の規定には、締約国更新申請を行う者に対して、条約に定められた以外の要件を満たすような要求を求めてはいけないという規定があるわけでございます。したがいまして、私どもとしては、更新申請と直接リンクした形での書きかえ申請というものは、この条約趣旨にかんがみて、できないと理解しております。  御指摘のように、更新申請の時期となるべく重ねる形で書きかえの時期を設定させていただいておりますけれども商標権者の方がなるべく同じ時期に、忘れることなくやっていただくという趣旨は非常に重要であろうかと思いまして、今御指摘あったような期間を設定させていただいたということでございます。
  14. 岸田文雄

    岸田委員 一つ確認なのですが、今、更新登録申請とは別に書きかえ登録申請手続を行うわけなのですが、もし万が一利用者書きかえ申請手続をしなかった場合には、商標権は次の期間満了日に消滅してしまうということになるとお聞きしたのですが、それは事実でありましょうか。
  15. 菅野利徳

    菅野政府委員 規定上、そういう形で規定させていただいているということでございます。  ただ、御指摘のように、商標権者にとってみますと、書きかえ申請をしていないがゆえに権利更新ができなくなるということは極めて重要なことでございますので、私どもといたしましては、そういう更新申請の時期と極力合わせることによりまして、またその際に、特許庁の方から権利者の方に対して、書きかえ期間の始まる前、数カ月前に、個別に書きかえの必要性があることを通知を申し上げる。後、書きかえの期間は一年半、十八カ月とってございますが、その終了の三、四カ月ぐらい前に、まだされていない方には改めて御通知を申し上げて、更新、維持をされたい方は書きかえをしてくださいということをまた御連絡申し上げるということで、そういううっかり忘れ等の事態が生じないように万全を期してまいる所存でございます。
  16. 岸田文雄

    岸田委員 ありがとうございました。  商標法条約規定上、この条約に適応するために更新登録申請書きかえ登録申請手続、これは別々にやらざるを得ないということになるわけでありまして、その書きかえ登録申請手続をもしゃらなかった場合は次の期間満了日商標権は消滅するということを御説明いただき、また、そうならないように御努力をされておられるということもお聞きしたわけです。  ただ、これは必要上こういった繁雑な手続になっておるわけでありますから、そして、もしうっかりということが万が一でも生じた場合には権利が消滅してしまうという重大な結果になってしまうわけでありますから、ぜひ商標権者に不利益が生じないように、混乱が生じないように、その辺の現場での対応をしっかりとお願いしたいと存じます。よろしくお願いいたします。  それから、もう一つお伺いさせていただきます。  今回商標法改正を行うわけでありますが、この商標を初めとする工業所有権あるいは知的所有権の問題でありますけれども、こうした知的所有権の問題、例えばアメリカと中国の間におきましても、この知的所有権をめぐって激しく争いが行われておるわけであります。交渉が行われておるわけであります。かくのごとく世界じゅうのさまざまな場所で、今の高度化する社会の中で、知的所有権というものをめぐってさまざまな交渉が行われておるわけであります。  日本にとりましても、この知的所有権あり方をどう考えたらいいか、どう対応していいか、これは決して軽く考えていい問題ではないと思うわけです。特に日本にとりまして、開発途上国、なかんずく世界の成長センターとして日々成長していく東南アジア諸国との関係におきまして、知的所有権をいかに守っていくか、これは大変大きな問題だと思うわけです。アメリカのように、知的所有権というものに関してかなり強硬に、制裁もちらつかせた上で知的所有権保護を迫るようなやり方もあるでしょうし、また日本の場合は、お聞きいたしますと、そういった強硬な策を講ずることではなくして、相手国に対する援助等を通じまして意識の高揚に努めておられるというような話も聞きます。  いろいろなやり方があるわけでありますが、この知的所有権保護という問題はますます大きな問題になり、日本にとっても看過することができないという問題意識に立った場合、これから商標を初めとするさまざまな知的所有権保護に関する日本の態度、考え方、この辺についてどのようなお考えをお持ちになっておられるか、お聞かせいただけますでしょうか。
  17. 清川佑二

    清川政府委員 お答え申し上げます。  発展途上国、特にアジア諸国知的所有権保護の問題でございます。私自身アジア諸国特許庁を回ってまいりまして感じますことは、一つには、それぞれの国におきまして知的所有権保護するという機運がさらに高まっていただくことが必要であるとも考えますが、さらにまた、特許あるいは商標出願などに対する審査体制、この辺も充実されることが必要でありますし、主た、登録されました権利保護される、エンフォースメントといいますけれども、このようか関係政府機関の充実、そしてまた運用もさらに望まれるということが実態かと思うわけでございます。  そしてまた、このような問題の背景に、工業所有権専門家である人材が不足しているということも非常に強く感じるわけでございます。従来、私どもは折あるごとに、二国間の関係でも知的研有権保護を十分にしていただきたいという要語もいたしておりますが、他方で、人材の教育な戸についての研修を初めとしまして協力を続けてき ておりました。  こうした現状の中で、昨年十一月、APEC大阪会合がございましたが、そこでアクションアジェンダが採択されました。そして、そのアクションアジェンダの中には、工業所有権保護水準の引き上げのために人材育成協力を推進するというようなこともうたわれているわけでございます。  このようなことを受けまして、我が国といたしましては、途上国の要請にこたえるべく、人材育成情報化、そしてまた審査調査協力という三つの柱をもとにしまして、工業所有権に関する協力を積極的に行っております。それぞれにつきまして具体的に多くの事柄をいたしておりますけれども、これからもさらにこれを引き続き進めてまいりたいと思います。特に人材に関しましては、紀元二〇〇〇年までにAPEC諸国から官民合わせて約千名の研修生を受け入れるということによりまして、人材育成にもさらに私どもは貢献してまいりたいと考えております。
  18. 岸田文雄

    岸田委員 ありがとうございました。  最後に一つ塚原大臣知的所有権保護、このあり方につきまして御所見をひとつお伺いさせていただけますでしょうか。
  19. 塚原俊平

    塚原国務大臣 APECにおける共同行動や二国間協力拡大等を通じ、発展途上国の取り組みに対し最大限の支援を行ってまいりたいと考えております。
  20. 岸田文雄

    岸田委員 ありがとうございました。質問を終わります。
  21. 甘利明

  22. 大畠章宏

    大畠委員 社会民主党の大畠章宏でございます。  今回提案されました商標法等の一部を改正する法律案は、現在の経済国際化に伴い、一八八三年のパリ条約、一九八九年のマドリッド協定及び一九九五年のプロトコル、議定書等を考慮した改定内容でありまして、全体としては的を得た内容であると評価をするところでございます。このような観点に立ちまして、ただいま岸田委員の方からいろいろと御質問がございましたが、そういう御質問の討議を踏まえまして、以下、その内容を確認するために質問をさせていただきたいと思います。  最初に、この改定を取り巻く環境につきましては、既に岸田委員の方からいろいろお話ございました。特に審査期間短縮について、私も質問をさせていただきたいと思いましたけれども、どうもお答えの方が、現在二十六カ月かかっているけれどもかなり短縮するのではないかという非常に抽象的なお答えでございまして、そのような対応で本当にこれからの国際化の時代に対応できるのだろうかという不安を持つところでございます。  かつて特許法改正等につきましても、同じように、国際的に非常に日本特許審査期間というのが長いという批判を受けまして、ぺーパーレス化を初め抜本的な改善をしたところでありますけれども、今、期間短縮については非常に抽象的な話しかできないというのは、そこら辺にあるのじゃないかと私は思うのですね。具体的にもうペーパーレス化を進めるとかいう方針を出さない限り、一生懸命頑張るというだけではなかなか短縮できないと思いますので、具体的にぺーパーレス化等について、特許のペーパーレス化等々の事例を考えながら、この問題についてどう取り組もうとされているのか伺いたいと思います。
  23. 菅野利徳

    菅野政府委員 商標審査期間がまだまだ長いのではないかということが第一の御質問だったかと思います。  先ほど津田委員の御質問に対してもお答えを申し上げましたけれどもマドリッド・プロトコルで、十八カ月以内にファーストアクションをとるようにという義務が課される形になっているわけでございます。今回の法改正によりまして、そこに近いラインのところまで、かなり近い時期に実現できるものと思っておりますけれども、それでもまだ欧米諸国に比べますと少し長いという事実はあるわけでございます。  そういうことも踏まえまして、今回の法改正措置に加えまして、私どもとしましても、さらなる機械化の推進あるいは内部業務の効率化策等々、鋭意努力をしていくつもりでございます。したがいまして、十八カ月のファーストアクションが近い将来に達成されるからといって、それで私どもとしてオーケーということではなくて、さらに短縮するということで鋭意努力をするつもりでございます。  それで第二の御質問の、特許、実用新案と同じような形で、ペーパーレス化をさらに商標についても推進すべきではないかという点でございます。  商標、あるいは意匠についてもそうでございますけれども、図形の処理、あるいはカラー・ハーフトーンと申しますけれどもいろいろな色彩の処理が、今までの電子計算機の中ではなかなか処理しにくかったというようなことがございまして、特許、実用新案に比べますと、機械化対応がおくれぎみであるというのは事実でございます。ただ、そういった技術的な制約も、近年のコンピューター技術の進展によりましてはぼ解消されつつあるというふうに考えております。  したがいまして、私ども特許庁の中では、商標及び意匠につきましても、特許、実用新案と同じように中でのべーパーレス化を一層推進をして、また、使っていただくユーザーの方にも電子出願というようなごとが可能になるように、今、庁内にプロジェクトチームを設けまして、近い将来にその実現を果たすべく鋭意検討を進めている。これは近い将来に、確実にほかの先進国に先んじて実現できるものと思っておるところでございます。
  24. 大畠章宏

    大畠委員 正直言って、取り組み方は非常に遅いと私は思います。  今、色をコンピューターで扱うのが大変だという話でありますが、一部には十万色とか二十万色とかという話があるのですから、色をコンピューターで扱えないということはもうありませんし、もっと積極的にペーパーレス化に取り組まないと、どんなに事務作業を効率化して機械化するといっても限界があります。これは、特許法改正のときにもいろいろな議論をしながらやったのですが、やはりペーパーレス化にしょうということを決定したわけでありまして、そういうことからしますと、もっと特許法と同等に商標法についても取り組むべきじゃないかと思います。  今のお話、いろいろございましたけれども、ぜひ積極的に取り組んで、日本商標法に関する手続というもの、日本の技術というものがまさにアメリカ、ヨーロッパにも、世界に貢献するように、さらに自信を持って努力していただきたいということを申し上げたいと思います。  さらに、料金の納入方式というのが、特許法についてもいろいろ議論をされました。いわゆる特許印紙がありまして、印紙というのは歴史をたずねると非常に古いのですけれども、何となくもう意味をなさなくなってきたような感じがしますね。特許でも電子出願というものがあって、電子出願のときにどこに印紙を張るのだという話があって、結局印紙も張らなくて済むという話にしたわけでありますが、この印紙というのがユーザーにとっては大変厄介なものであります。  今回もいろいろ工夫はされていると思いますけれども、私は、そういうものをあわせて印紙制度というものを抜本的に見直しながら、銀行振り込みですとか簡便な方法でできるように、いわゆる管理する側の都合で使い勝手の悪い制度をユーザーに押しつけているという時代はもう終わりまして、皆さんの管理しやすいという形ではなくて、まさに、こういう法律に基づいて商標を使う方々がどう便利になるかという視点から改善を図っていかなければならないと思うのですが、このことについてお伺いしたいと思います。
  25. 清川佑二

    清川政府委員 お答え申し上げます。  工業所有権制度、つまり特許商標などにつきまして料金納付の方法でございますが、大畠委員 の御指摘のとおり、従来、特許印紙による納付に限定をされていたという点がございます。  今回は、この納付に加えまして、現金による納付制度を導入するということをお願いしているわけでございます。  現金の納付制度によりまして、納付額が高額となる場合に大変たくさん印紙を買わなければいかぬとか、これを張って特許庁に持っていかなければならないといった事務負担の手間、これは今御指摘のあったとおりでございますが、そのほかにまた、金額がかさばる場合には、セキュリティー、安全上の問題もあるわけでございまして、随分問題が多いということから、実業界からは規制の緩和の声もございまして、これに応じることも含めて、今回の改正をお願いしているわけでございます。  ただ、特許印紙による納付そのものは、歴史も長いわけでございまして、利用者に十分浸透しているという点もございます。また、非常に少額なものを納付するという場合もございます。また、数々の件数を持っておみえになるという場合もございます。このように、それぞれ利用者の利便といいますか、用途もそれぞれさまざまでございますので、特許印紙制度につきましては、これはこれとして従来どおり、特許印紙による納付も併存することにさせていただきたいと考えております。  非常に大きな問題は、先ほど御指摘がありましたように現金の納付を認めるべきということでございますので、私どもは、本件につきましては、極力早く十月一日からの実施を目途にこの法案を考えているわけでございますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。
  26. 大畠章宏

    大畠委員 ぜひそういう観点から、とにかくユーザーの立場に立った形の改革をあわせて進めていただきたいと思います。  それから、具体的な法律案内容について、細かいことを何点かお伺いしたいと思います。  時間の関係上、少しはしょって御質問申し上げますが、答えの方も簡便にお願いを申し上げたいと思います。  まず、本法律案の第三条一項、「提供の用に供する物」というのがございますが、これは物の形状というふうに解釈すべきではないか、そうならば、「の形状」というのを本来は法律の案文の中に入れるべきではないかという御指摘等々が関係筋の方でありますが、この件についてまず最初に伺いたいと思います。  さらに、第二条一項の「立体的形状」と四項の「形状」とは同じ意味なのか、それとも相違する概念なのか。もしも同一の概念であれば、なぜ別の表現を使ったのかという御質問等が来ておるわけであります。  この二つについてお伺いしたいと思います。
  27. 菅野利徳

    菅野政府委員 お答え申し上げます。  最初の、改正法案の第三条第一項の中で、役務の「提供の用に供する物」という記載が、これは現行法でもあるわけでございますけれども、これは役務の提供の用に供する物の形状という趣旨であるならばそう書くべきではないかという御質問だったと思いますけれども、この条文は現行法にもある規定でございまして、役務の「提供の用に供する物」ということの中には、当然、物の形状も合意されているということで、今回立体商標を導入された場合も、物の形状ということをあえて明記しなくても差し支えばないのではないかというような法制局等々との議論もございまして、そういう規定ぶりにさせていただいたということでございます。御指摘のように、形状も含まれる概念として使わせていただいているということでございます。  あと、第二条一項に「立体的形状」という表現を今回入れさせていただいたわけでございますけれども、第四項の「形状」という表現、これは現行の法律にもございますが、これとどういうふうに違うかという御質問でございました。  それで、今回法改正によりまして立体商標、三次元の商標というものについても登録を認める形にさせていただく内容にしたわけでございますけれども、二条一項の「立体的形状」というのは、物の形状の場合でも、そういう三次元の形状を意味するものとして使わせていただいている。それで、単に「形状」と言っておりますのは、平面でも斜視図とか写真とか、あるいは陰影をつけるということで、厚みはない二次元のマークでございましても立体的な形状をあらわす場合が現行法制でもあったわけでございますけれども、そういう、平面でも立体的形状をあらわすものも合意させる概念として単に「形状」というものを使わせていただいている。そういう意味で、表現は、使い分けをさせていただいている結果としてそうなっているという御理解をいただければと思います。
  28. 大畠章宏

    大畠委員 それから、今回の法律案改正は、立体商標登録制度を導入したということでは非常に画期的だと思いますが、この立体商標登録制度を導入しているのは、現在のところ、アメリカとEU指令に基づくEU加盟国の一部しかない、こういう状況でありますが、このEU指令では、商品の形状または商品の包装の形状のうち、次のものは登録から除外すると規定されています。  一つには、商品自体の性質から由来する形状。それから二番目には、技術的効果を達成するために必要な商品の形状。そして三点目には、商品に実質的価値を与える形状。この三点を除外すると規定しているわけでありますが、今回の法律案の中には、この三点目の、商品に実質的価値を与える形状というものが明記されてないわけであります。この点については、EU指令に基づき規定すべきではないかという御意見があるわけでありますが、この件についてお伺いしたいと思います。
  29. 菅野利徳

    菅野政府委員 立体商標制度を導入することに伴いまして、ヨーロッパ共同体、EUの統一商標法あるいはEUの各国の法令等におきまして、いわゆる絶対的拒絶理由事項とする規定を三つに分けて規定をしている。それに対して、今回、私どもの法律では、四条一項十八号にまとめて規定をさせていただいているということでございます。  ヨーロッパでは三つに書き分けて規定をしているわけでございますけれどもアメリカ商標法体系の中では、法律的な機能性に当たるものは絶対的拒絶理由にするというようなことで、そういう書きぶりになっているという例もございます。  いずれにせよ、これは、いろいろな理由で不可避的な形状については、一定の事業者に独占的な排他的な権利を与えるということになると競争政策上問題があるということで、そういうものは登録を認めないという趣旨にしているということでございまして、趣旨としては、ヨーロッパも我が国も同旨で盛り込ませていただいているものでございます。  工業所有権審議会の議論の場でも、各国の規定ぶり、ヨーロッパの先ほど御指摘のあった規定ぶりも含めまして、そういう規定の仕方をしているというようなことも十分委員の方に御検討いただきまして、その結果として今回の法案に盛り込ませていただいたような規定ぶりにさせていただいているということでございます。
  30. 大畠章宏

    大畠委員 そうすると、書いてはないけれども、そういうEU指令の内容と同じであるというふうに解釈してよろしいのですね。(菅野政府委員「はい」と呼ぶ)  それで、あと第三条の一項三号及び六号に規定する識別力についてちょっとお伺いしたいと思うのですが、文字、図形、記号を包含しない商品の立体形状、役務の提供の用に供せられる物品の立体形状は、いわゆる使用により周知性を獲得しない限りは識別力がないと拒絶されるものと理解してよいかどうかという質問。  さらには、近似する商品または物品についての同一の立体形状が商標登録出願と意匠登録出願の両方に、それぞれ他人による出願があった場合、第四条一項十五号の適用がなされることはない か。この場合は、ともに登録となり、商標法第二十九条と意匠法第二十六条の調整規定にゆだねられることとならないか。意匠権と商標権との間で法的安定性について混乱が生じないか。  こういう疑念もあるわけでありますが、この二点についてお伺いしたいと思います。
  31. 菅野利徳

    菅野政府委員 お答え申し上げます。  まず第一点の御質問でございますけれども、商品の形状についての識別性の御質問だったと思いますけれども、今回立体商標制度を導入したことに伴いまして、指定商品との関係におきまして、その商品の形状を普通に用いられる方法で表示しただけの商標というものは、三条一項三号に当たる自他商品の識別力を有しない商標ということで登録が受けられないことになっております。  平たく申し上げますと、一般の需要家の方が、これは指定商品の形状の域を出ない、通常、例えば瓶でしたら、これは瓶の通常のありふれた形の範疇にしかすぎない、こう認識するようなものについては、そういう容器として登録を認めないというものでございます。  それで、こういうものが登録を認められるには、同じく法律の条文の三条の二項でございますけれども、その事業者が長い間使って、それによって消費者が、これはどこの事業者の使っている容器であるかとか、あるいは指定商品の形状であるかということを認識できるようになった場合、法律用語で申しますと使用による識別性を有するに至った場合ということになりますれども、そういう場合に限って登録を認めるという規定にしているわけでございます。  ただ、先ほどの御質問にもありましたけれども、そういう使用によって識別力を得た場合のほか、一般の商品の形状の範疇を超えた、非常に特殊性がある、ほかの指定商品の形状とは認識できないようなものであるというような場合には、極めて例外的な場合であろうかと思いますけれども登録されることもあるわけでございます。  こういう整理をさせていただいておりますのは、やはり同じく立体的な形状についてどういうふうに扱うかということにつきまして工業所有権審議会の場で議論をいただいた、その答申の結論に基づいてそういう整理をさせていただいたところでございます。  あと、第二番目の質問でございますけれども、いわゆる商標出願と意匠登録出願された形状がある場合に、その間に混乱が生じないかというような質問であったかと思います。  商標については、先ほど申し上げましたように、指定商品の形状等を普通に用いられる方法で表示するにすぎないものにつきましては、自他商品の識別力を有するに至っていないということで、原則として登録を受けることができないことになっているわけでございます。登録が認められるのが使用による識別性が取得された場合等に限られるということでございます。  それで、御質問趣旨は、第四条一項第十五号で、他人の業務に係る商品または役務と混同を生ずるおそれがある商標について登録できないということになっているけれども、それとの関係ということも含まれているのではないかと思いますけれども、これにつきましては、十五号に該当するかどうかということを論ずるまでもなく、冒頭申し上げましたように、物の形状の域を出ない場合には登録を認めないということになっておりますので、ほとんどの場合はそれによって拒絶をされるということではないかと思います。  意匠法についても、新規性のない意匠でございますとか、あるいは他人の業務に係る物品と混同を生ずるおそれがある意匠は登録できないというような規定になっておりますので、意匠と商標とで出願がなされた場合に、それが併存して登録されるということは現実問題としては余り多くないものと私どもとしては認識をしておりますけれども、そういった場合にも、先生先ほど御指摘いただきましたように、商標法の二十九条あるいは意匠法の二十六条ということの中に、お互いにそれぞれの意匠法、商標法で認められた権利の間での調整規定というものが設けられておりますので、この調整規定によって所要権利間の相互調整が図られるということと考えておるところでございます。  それで、この意匠権、商標権の相互調整につきましては、現在の平面商標の世界でも同じような可能性があるわけでございまして、平面商標の現実の実務におきましても、こういった調整規定によっていろいろな不都合が生じているという現状、事態にはございません。立体商標を導入した場合も、私どもといたしましては、こういった法律上の調整規定で特段の支障が生じないものというふうに考えておるところでございます。
  32. 大畠章宏

    大畠委員 ありがとうございました。  現場が混乱しないように、きちっとしたマニュアルを法施行前につくって徹底するように要望しまして、質問を終わります。  ありがとうございました。
  33. 甘利明

    甘利委員長 続いて、西川太一郎君。
  34. 西川太一郎

    ○西川委員 きょうは十時からビッグゲームがあって、何か余り観客の入りもよくないようでありますが、一生懸命トレードマークのことについて質問をさせていただきたいと思います。  実は私も、正直に申し上げまして、トレードマーク、商標につきましては余り関心がありませんでした。大体日ごろトレードマークにはたくさん接してはいますけれども、そんなに深い関心は正直に言ってございませんでした。  ところが、今回、この法律の改正に当たって、若干質疑のための用意をいたしていく過程の中で、存外この問題は大切なものだということが、特に国際社会における経済活動を我が国が活発化していくという環境の中で大変重要な問題であるということに気がついてまいりまして、質問の機会を与えていただきましたことによって一つ勉強ができて大変ありがたかったと思っているわけであります。  今調べてみますと、我が国は明治十七年に登録主義、先願主義の商標条例というものを制定をして以来、明治二十一年には欧米諸国の長所を取り入れてこれを改正し、明治三十二年には工業所有保護同盟というものに加入するための商標法を制定をし、それが大正十年に整備をされ、さらに昭和三十四年に商標権の自由譲渡制や使用許諾制度や防護標章制度、こういうものを新設した現行の法律を制定したわけであります。  一方、フランスは世界で一番初めに商標については法的整備をした国でありまして、一八〇三年に既に工場、製造場及び仕事場に関する法律とか、また一八五七年に使用主義及び無審査主義内容とする製造標及び商標に関する法律というものを制定しております。また、ドイツは一八七四年、イギリスは一八六二年、アメリカも一八七〇年、大変近代工業国家は日本よりも先んじて貿易や商取引の必要上からこうしたものをつくってきたわけであります。  文化的遺産と呼ばれるいわゆる歴史的な出土品や我が国の美術品にも今なっている刀剣類など、いわゆるそこに他人と自分との製品、作品の違いを識別させるための名前を入れたりマークを入れたりする仕組み、こんなものは人間の歴史が始まって以来そういう認識はあったわけでありますけれども、肝心なのはこれを保護する、他のものと区別をする、こういうことがトレードマークの一本来の意味であります。  今回は時間の都合で踏み込みませんが、サービスマークと呼ばれるいろいろな問題があります。例えば第一勧業銀行のハートだとかNTTだとかJALだとか、いわゆる有体物でない、商品でない、役務、サービスにかかわるそうした一種の識別権、こういうものもトレードマークの範疇に入れて保護している国もございます。それらについても、いずれ国際的なハーモナイズという観点から整備を迫られるのだろうと思いますが、今回はトレードマークに限って何点かお尋ねをしていきたいというふうに思います。  前置きはそのぐらいにしまして、まず大臣に冒頭お尋ねをいたすわけでございますが、本法案が 提案された背景には、大臣御自身の御説明にもございましたとおり、工業所有権制度国際化に向けた大きな動きがあるというふうに思われますので、この点についてまずお尋ねをいたします。  近年、企業活動が本格的にグローバル化してきておることは御案内のとおりでありますが、かつて言われた関税やいわゆる外資規制といった直接的な障害だけではなくて、工業所有権制度のような国内制度の違いが非常に大きな貿易取引上の障壁となっているということが指摘をされているわけでございます。こういう状況におきまして、日本としては、各国の制度との違いをなくして、国際的に企業活動が行いやすくしていく環境を整えていくことが非常に大事でございます。  そこで、お尋ねは、企業活動のグローバル化の進展を踏まえた工業所有権制度国際的調和の推進に向けた取り組みの姿勢を、まず責任者であられる大臣からお答えをいただきたいというふうに存じます。
  35. 塚原俊平

    塚原国務大臣 先生御指摘のように、経済活動のグローバル化、技術革新の進展の中で、知的所有権制度国際的調和の重要性はますます増大をしていると認識をいたしております。その状況のもとで、WTO・TRIPS協定において途上国を含めた知的所有権保護に関する基準が定められたことは、これは大きな成果であるという認識をいたしております。  しかしながら、途上国がWTO・TRIPS協定実施に向けた国内体制の整備を独力で行うことは困難が伴うと予想され、我が国としては、途上国に対する人材育成等、最大限の協力を行っていく所存であります。  また、先進国においても、米国の先発明主義というのがあるのだそうですけれども、その問題等が依然残っておりまして、引き続き、制度国際的調和に向けた取り組みに一層積極的に取り組んでまいりたいというふうに考えております。
  36. 西川太一郎

    ○西川委員 経済活動のグローバル化というものを受けて、特許出願、また権利取得等の企業活動もグローバル化が大変速いテンポで進んでおります。  しかしながら、これまで各国の国内法の制度というものはまちまちでございまして、例えば、先ほども大畠委員からお尋ねがありましたけれども、いわゆる立体商標というものは我が国は今日まで認めていない、音響によるトレードマークすら認めている国もあるなどなど、国際的には非常にいわゆるハーモナイズがされていないわけであります。これが、私たちの国の企業が海外での事業展開の際に大きな障害の一つになっているというふうに指摘をされておりました。例えばいろいろな統計を見ますと、日本から外国への特許、実用新案の出願件数は、年々増加の傾向にあるとはいえ、アメリカから諸外国に対する出願件数の三分の一というのが実情であると聞いております。  こうした観点から、九四年に採択されたWTOのTRIPS協定というのがあるわけでありますけれども知的所有権保護規範、または権利行使に関する最低の基準を決めたと言われておりますこの取り決め、また、知的所有権制度国際的調和に向けてこれらは非常に大きな成果があったというふうに評価をされているわけでありますけれども、このWTOのTRIPS協定の確実な実施というものが、ただいま申し上げてまいりましたとおり、我が国にとっては今後非常に重要なことだというふうに思われるわけでありますけれども、本協定については、先進国は既に履行の義務を負っているというふうに聞いているのでございますが、一月一日より履行義務が生じているということを承知しておりますけれども現状、これの実施状況はどんなふうなのか、ぜひ御説明をいただきたいと思います。     〔委員長退席、塩谷委員長代理着席〕
  37. 清川佑二

    清川政府委員 お答え申し上げます。  TRIPS協定の履行の義務は本年の一月一日から先進国において発生しているわけでございますが、我が国は昨年七月、既に対応を完了いたしております。  工業所有権制度について具体的に申し上げますと、平成六年の十二月にTRIPS協定に則して特許法等の一部を改正する法律案を国会で御審議をいただきました。特許法、意匠法、商標法に関して必要な法律改正が実現されたわけでございます。内容的には、特許期間を二十年とする、あるいはまた特許の対象を拡大する、あるいはまた商標関係でございますけれども、ワイン、スピリッツの地理的表示の他人による商標登録を禁止するというような内容でございますが、このような法改正が行われまして昨年の七月一日から実施されているということで、完全に履行している状態でございます。
  38. 西川太一郎

    ○西川委員 完全に履行しているということを伺って結構だというふうに思いますが、このTRIPS協定は、いわゆる途上国に対して紀元二〇〇〇年まで猶予の期間を認めているわけであります。  途上国と言われる国に行けば、今、先進国に必死になって追いつけということで、インフラストラクチャーと呼ばれる部門に対する投資などもう一生懸命やっているわけでありまして、かつての我が国がよく外国から訴えられたりなどした経験からいっても、この知的所有権というもの、無体財産に対してこれを保護するということに対する思いが、失礼ながら、行き届くほどゆとりがある状態ではないというふうに思うわけでありますけれども日本は、そういう途上国にキャッチアップされることを恐れるのではなくて、そういう国々とも協調しながら、時には先進国としてのゆとりを持って、いろいろな意味でこの分野でもリーダーシップを発揮していかなければいけない、他国のことも考えていかなければいけない。  そこで、そういう国々に独力でこういうものを求めていくということはなかなか容易ではない。ぜひひとつ、これらについての支援を途上国に対して行っていくことが、ひいては我が国の利益保護観点からも大切ではないかというふうに思うわけであります。特にアジア諸国、ASEAN等については、何かASEAN特許商標庁というのを域内につくろうなどという動きもあるやに聞いております。こういうような動きに対して、我が国がトレードマーク大国としてきちっとした対応をしていかなければいけないというふうに思います。  また、アジア太平洋地域の途上国を含むAPECの場においてもこの問題が取り上げられておりまして、昨年我が国が議長国となって開催をいたしました大阪閣僚会合においても、TRIPS協定の確実な履行というものを目的とした二国間の技術協力を拡大すること、または、知的所有権の適切な保護というものを確保するため、各国における権利保護現状を調査していこうという申し合わせを行動指針として採択をされたということであります。この行動指針の採択を受けて、今後、知的所有権保護拡大ということについて、今るる申し上げてまいりましたいわゆる開発途上国等も含め、アジア諸国との関係も含めどう取り組んでいかれるおつもりなのか、伺っておきたいと思います。
  39. 清川佑二

    清川政府委員 アジア諸国工業所有権保護にどのように我々は貢献するかという点でございますけれども特許庁におきましては、端的に言いますと、グローバルマインド・グローバルプロテクションというような標語もございますけれども、我々の持てる知識、経験はすべてお渡ししよう、そしてまた、すべての国において保護水準が引き上げられるようにしたい、このような気持ちでおります。  このような気持ちから、従来、ASEAN諸国とは、ASEAN諸国経済大臣と通商産業大臣の会合もございまして、その場におきまして知的財産権についての技術的支援を行うということを実施しております。ASEANの商標庁構想あるいは特許庁構想につきましても、我が特許庁の職員が内々いろいろ御相談にも応じながら進めているという状態でございます。  APEC関係につきましては、我が国がこの分野におきましては知的所有権の取りまとめ国、いわゆる議長を本年務めていることにかんがみまして、このアクションプログラムの実効的な具体化のために全メンバー国で会議をするということを既に行っております。四月に第一回、五月にフィリピンで第二回という会合が行われまして、APEC全メンバーの代表が集まって会議をしているわけでございます。この専門家の会合は、本年八月にまた東京で会合されますけれども、これに合わせまして、我が国APEC工業所有権シンポジウムを主催して、さらに知的財産権の保護に資してまいりたいと考えております。  そして、このような会議をしながら、メンバー国が協調しながらTRIPS協定が完全履行できるようにいたしたい。そのために、法律的あるいは技術的支援が不可欠でございます。私どもは、人材育成情報化審査調査協力、この三つを大きな柱といたしまして、積極的な協力活動を展開しているところでございまして、今後とも引き続きこの方向で進めてまいりたいと考えております。
  40. 西川太一郎

    ○西川委員 特許大国、トレードマーク大国として日本が今日まで参りましたけれども、冒頭申し上げましたとおり、明治十七年に明治政府が我が国の近代化政策の一環としてこの問題に手を染めたということも考えますと、アジア諸国に対して私たちの国は金や物をただ送るだけではなくて、こういう無体財産権の保護のような、人間と人間の顔が見えるような、そういうソフトな分野でも積極的に協力をしていくというのは、地味ではありますけれども大変大事なことだというふうに思いますので、ぜひ頑張っていただきたいと思います。  そこで、アジア諸国やTRIPS協定、他国間の問題については理解ができたわけでありますけれども、もう一つ大変重要な問題は、日米包括経済協議の中で、アメリカ日本との商標権の問題があるわけでございます。これについての最近の状況といいますか、または協議、特に特許の問題、アメリカとの関係では特許の問題が非常に大事でございますけれども、これの協議の進捗状況はどんなふうになっているか、お尋ねをしたいと思います。
  41. 清川佑二

    清川政府委員 アメリカ日本特許問題についての専門家の会合の関係でございますけれども、昨年の六月そしてまた十月、二回に及びまして、日米の特許審査実務の運用などに関しまして、意見交換を通じて相互の理解を深めるということを実施をいたしております。  このような会合におきましては、日米で交わした合意、それぞれアメリカでそしてまた日本でどのように実施をしているか、あるいは日本アメリカ特許制度で、特許のクレームの解釈といいますが、いわゆる特許出願の際の特許請求の範囲をどのように解釈するかといったような技術的な側面が多いわけでございますが、このような点で相当に理解を進めているわけでございます。  そのほかにも、これは審査のプロセスの問題でございますが、特許法改正いただきましたが、この新しい運用指針をどのようにするかとか、あるいはアメリカの側における分割要求といいますが、一つの技術用語でございますけれども、このようなものをどのように運用しているか、我々の方からも意見を述べ、そしてまた様子を聞くというようなことで、専門家同士の会合として相当深い突っ込んだ会合をいたしまして意思の疎通を図っているところでございます。
  42. 西川太一郎

    ○西川委員 ただいま長官からお話しのとおり、大変熱心に両国間の協議が実務家、専門家レベルで進められている。しかし、そういう協議の中で、先ごろアメリカのUSTRからスペシャル三〇一条レビューというものが発表された。我が国は引き続いて優先監視国という範疇に指定をされている。これは、知的所有権保護状況に応じてアメリカがランクをつけておりまして、一番が優先国、二番目が優先監視国、三番目が監視国という三段階の分類があります。優先国に仮に指定されますと、USTRは三十日以内に調査、協議を開始して、調査開始後半年を経過しても協議が不調の場合には制裁措置を発動する、こういう規定があるようでございます。  そこで、我が国としては、こうした何かイコールパートナーとか、ある意味ではアメリカを抜いたなどと胸を張っておられないこの分野において、お前のところは何となくうさん臭いぞと指定をされているわけですから、私はこういうことについては大変深刻に受けとめているんですよ。これには、言うべきことはきちっとアメリカにも言っていかなければいけない、こんなふうに思うんでございますけれども、このスペシャル三〇一というものに対して、長官、どんなふうに受けとめておられますか。
  43. 清川佑二

    清川政府委員 米国のUSTRが五月一日でございましたか、スペシャル三〇一のレビューの結果をプレスリリースをいたしたわけでございますが、今回のUSTRの発表というものは、一方的措置を前提としたものでございますから、WTOなどの国際ルールに違反するものではないかというふうに受けとめているわけでございまして、今回、日本を引き続きスペシャル三〇一条の優先監視国として指定するということは極めて遺憾であるというふうに考えております。  工業所有権関係につきまして、この発表文におきます米側の指摘、これは幾つかされているわけでございますけれども、その趣旨内容は必ずしも明確ではないというふうに考えております。私どもは、先ほど御説明申し上げましたが、知的所有権分野におきましては、専門家間の協議も行い、そしてまたかねてから的確な対応を行っているわけでございますから、一方的に問題があるという指摘があることは大変に心外であると言わざるを得ないというふうに考えております。
  44. 西川太一郎

    ○西川委員 今お話がありまして、触れてはおられませんけれども日本に関連した部分としては、著作隣接権というものについてのさかのぼっての保護をWTOに紛争処理手続を継続していくというような部分もあるわけでございまして、私はアメリカの一方的な主張というものは必ずしも納得いかないものがあるんですね。  というのは、先ほど、私の冒頭の質問に大臣がお答えをくださいましたが、先発明主義というのは、大臣、アメリカしかとってないんですよ。ほかの国は先出願主義でございまして、アメリカだけがこの先発明主義にこだわっていて、特に各国との調和を妨げているということは、これはアメリカも、自分の国の物差しだけを諸外国に当てはめるというのは納得いかないという気がいたします。  特に、九四年の日米合意でアメリカ側が対処しようと言っております出願公開制度の導入とか再審査制度の充実というのは、いまだにアメリカ議会をこの法案が通らない、こういう状況も私どもは承知をしているわけでございまして、アメリカのいわゆる先発明主義、これを是正してもらうことが、制度のハーモナイズというものがなければ、これはどうしてもぎくしゃくしますよ。そこのところをきちっとしていかないといけない。  これに対して私たちの国はどういう働きかけをしているのか、特許庁がどんな努力をしておられるのか、お尋ねをいたします。
  45. 清川佑二

    清川政府委員 米国の先発明主義の是正の問題は随分長い歴史を持っているわけでございますけれども、WIPOの特許法条約交渉、いわゆるハーモ条約と言っておりますが、この交渉をずっと続けてまいりました。八年越しの検討を経て九三年に条約採択のための外交会議が開催される予定でありましたけれども、これが米国の意向によって延期になった。そしてまた、明くる年の九四年の一月に、当時のブラウン商務長官が米国は当面先発明主義を維持していくということを明らかにして以来、先願主義への移行の具体的な動きというものが見られなくなってきているということは、委員の御指摘のとおりでございます。  このアメリカの先発明主義は、今お話ありましたように、世界的にも極めて異質なものでござい ます。そしてまた問題の多い制度という認識が国際的にも高いわけでございます。現在、この問題は停滞をいたしておりますけれども、私どもは、関係主要先進国と意見の交換をいたしたり、そしてまた国際会議の場で主張いたしたりいたしまして、各般の場を通じまして米国が先願主義に移行するという機運づくりに努めてまいるということで進めているところでございます。  第二に、日米の合意の関係でございますけれども、日米の合意は、日本アメリカとそれぞれ実施することがございました。我が方の問題につきましては、国会での法律改正もいただきまして既に内容は履行しているわけでございますけれどもアメリカの側は我が国に対して早期公開制度の導入、再審査制度の改善といったものをコミットしておりますけれども、履行期限であります本年一月一日を過ぎても、まだアメリカの国会で法律改正実施されていないという段階にございます。そして、これが今日に至っているわけでございます。  米国側の不履行に対しましては、私ども、これまでも米側に対しまして再三申し入れを行ってきております。引き続き、種々の場を通じて合意の速やかな履行をしていただくように、強く求めてまいりたいと考えております。
  46. 西川太一郎

    ○西川委員 この法律改正を今回行う最大の目的は、何度も申し上げますが、国際的制度のハーモナイズである。そのことは、国際間の通商がスムーズに行われて、結果的に世界がともに豊かになっていく。我が国は、特にアジアの先進経済大国として、途上国に対してこういう分野での指導もしていく。  しかし、ストライクゾーンが違って、ルールが違って、幾らいい球を投げたって向こうの審判にボールだボールだと言われたんじゃ、これは野球にならない、ゲームにならない。しかも途上国とはまた異質の、バイオテクノロジーとかコンピューター関連とか、先進工業国家として共通の悩みをこれから抱えていかなければならない、同じレベルで勝負をしていかなければいけない日本アメリカ。これは非常に地道な御努力でございますけれども、ぜひ頑張っていただきたい。  あわせてお尋ねしたいのは、ヨーロッパ、アメリカ日本、このいわゆる三極が商標権の問題点で共通の土壌をつくっている、こういう努力をしておられると聞いておりますけれども、そこにつきまして若干御説明をいただきたい。
  47. 清川佑二

    清川政府委員 日本アメリカそして欧州がいわゆる先進国という分類に入ろうかと思うわけでございますが、工業所有権の世界、特許の世界におきましては、日本特許庁アメリカ特許商標庁、そしてまた欧州の各国の特許庁及び欧州特許庁を合わせますと全体で世界の六割程度、これがこの三つの特許庁出願されているというぐらいに、実は工業所有権関係では世界の中枢を占めているわけでございます。  このようなこともございまして、一九八三年以来十三回にわたりまして、毎年、三極特許庁首脳会合と言っておりますけれども、長官同士が定期的に顔を合わせて、そしていろいろ日ごろの問題、調整すべき問題について打ち合わせをいたしております。この首脳会合の前に準備会合、あるいはまた別途開催される専門家の会合もございまして、実務上の相互理解、三庁間の意思疎通の緊密化を図っているわけでございまして、大きな成果があったと考えております。  具体的に申し上げますと、例えば先ほど西川委員の御指摘がありましたバイオテクノロジーあるいはコンピューターソフトウェアなどの先端技術関連の発明につきましては、どのような審査基準が必要か、どのような運用が大切かという点もございますので、この運用の比較研究を三庁共同で実施しているということもございます。  あるいはまた特許審査関係で、国際出願というものがございますけれども、このような場合にどのような手順で先行技術の調査をしたらよろしいかというような点につきまして、やはり統一的な考え方が必要でございますので、私ども三庁で長い間すり合わせをしてまいりましたけれども、共通基本原則というような原則をつくったりいたしております。  そのほかにも、各特許庁におきまして膨大なデータベースを電子情報化いたしておりますが、そのコンピューター端末をお互いに他の二庁に提供して、オンラインでその情報を各国で相手方のものを検索する、このようなこともしようではないかということで合意に達しているわけでございまして、今後ともこのような形で三極の特許庁に共通する課題をすり合わせてまいりたいと考えております。     〔塩谷委員長代理退席、委員長着席〕
  48. 西川太一郎

    ○西川委員 ただいまお話を伺いまして、我が国は特にコンピューターオンラインシステムの活用に非常に適した先進的な蓄積がある、非常に心強いわけであります。  先ほど大畠先生もお触れになりまして、若干質問が重なりますことをお許しいただきたいと思いますが、そういうつまりペーパーレス、コンピューターを使っての世界をつなぐ特許のそうした流れ、こういうものをさらに進めていくということは、我が国が世界に誇れる分野ではないか、かように考えるわけでありますけれども、このペーパーレス計画の進捗の状況を伺いたいと思います。
  49. 清川佑二

    清川政府委員 ペーパーレス計画は、一言で申しますとコンピューターを導入した実務の処理ということになりますけれども、昭和五十九年から、特許行政全体の総合的なコンピューター化、データベース化を図るペーパーレス計画を推進しております。これは、出願件数が非常にふえてきまして、審査期間が長期化するということに対処するために必要であったというふうに我々は考えているわけでございます。  これまで既に、特許、実用新案につきましては平成二年の十二月から電子出願の受け付けを開始しております。これは世界で初めてのことでございますし、現在でも世界で唯一の電子出願受付国でございます。そしてまた、この電子出願で得られた特許情報その他につきまして、これを公表する、これを電子情報によって行うということがまた使い勝手という点で大切でございます。平成五年の一月から、従来の特許公報が印刷物であったのにかえまして、CDIROM公報を発行しております。このような形で、特許、実用新案につきましては、オンラインで出願されたもの、そして審査に活用され、さらにまた公報資料として情報化がなされております。  特許については以上のとおりでございますけれども、本日御審議いただいております商標あるいは意匠、さらにまた審判につきましては、まだオンライン化出願ができておりませんし、電子化も十分に進んでいるという状況にはございません。今後、これらの分野につきましても電子手続化を行う、そしてまたこの際には、ニーズ、外部からの要請、あるいはまた費用対効果ということも考えていかなければいけませんが、引き続きペーパーレス計画を推進してまいりたいと考えております。
  50. 西川太一郎

    ○西川委員 昭和五十九年の構想から平成六年のCD−ROMの公開公告公報、その過程、非常に順調に進んできているというふうに評価をいたしますが、いわゆる特許、実用新案の分野でのみではなく、今長官もお触れになったように、一日も早くこの意匠とかトレードマークの分野でもペーパーレス化が進みますことを御期待を申し上げて、御努力をぜひお願いをしたいというふうに思います。  ところで、十年間、そういう計画を進めてきていただいたわけでありますけれども特許庁の中で事務処理効率化されたとか、資料の保管が容易になったとかという効果があったわけですけれども、それは特許庁の中でだけ便利になったということでは、これは仏つくって何とやらということになるわけでありますから、国民が広く活用できるようにこれを開放する。最近のいわゆるコンピューターの発達、またそれの普及というものを 踏まえて、そうした外に開かれたべーパーレスシステムであるということが必要ではないかと思うのですが、これに対する対応はどうなっていましょうか。
  51. 清川佑二

    清川政府委員 特許情報を国民に広く活用していただくということは極めて重要な点でございます。特にこの特許情報は、新技術の開発あるいは新規事業進出といった事業展開などを含めまして極めて重要な情報でございますし、片や、特許庁の中にはこれまで集積されたデータベースが大変多くそろっておりまして、内外の特許文献四千万件を収録いたしました総合資料データベースが構築されておりますし、先ほど御紹介いたしましたCDIROM公報の発行といったような各種の情報がそろっております。  この情報をどのように活用していただくかという点が非常に大きな課題でございますが、本年三月、工業所有権審議会答申をいただいております。この答申の骨格は、大きく三つあろうかと思いますけれども一つ特許庁保有の電子データを全面公開すべきである、さらにまた、特許、実用新案のほかに、意匠、商標審判関係情報化を進めていくべきであるというのが第一でございますが、第二に、知的所有権センターを利用して、地域中小企業に積極的に情報の提供を図るということが大切である。第三に、西暦二〇〇〇年を目途として、閲覧施設を完全電子図書館化するという方向性が示されているわけでございます。  特許庁といたしましては、この答申をいただいておりますので、積極的な施策展開を図りまして、利用者の多くの方々が特許情報を自由かつ有効に活用していただけますように環境を整備していきたいと考えております。
  52. 西川太一郎

    ○西川委員 ただいまのお話の中で、地方や中小企業に対してこれを活用できるようにしていきたい、こういうことでありますけれども、全くそうだと思うのですよ。CD−ROM公報を公開をしても、これを利用できるのはやはりコンピューター室を持っているような大企業、中堅企業以上のところにどうしても優先的に使われる。東京や大阪のように弁理士さんが大勢いらっしゃる、そういうところならば特許事務所に相談にも行ける。しかし、地方や特に小規模企業にとっては、これはなかなか利用しづらいという面もあるのじゃないか。特にこれから新規産業の育成の中で、新たないわゆるベンチャー企業の育成なんということを考えた場合、私は、小さい企業にもまた地方にも活用できる仕組みが必要じゃないかと思うのですが、この辺もう少し詳しくお話をいただけないでしょうか。
  53. 清川佑二

    清川政府委員 特許情報、特に特許出願あるいは特許そのものでございますけれども内容が掲載されている情報、これはいわば最新技術の宝庫とも言われているわけでございますが、この情報が、大企業のみならず全国各地の中小企業で広く使っていただく、これが新しい事業の振興に役立つのではないかというふうに確信をいたしているわけでございます。  特許庁では、従来、都道府県の工業技術センターあるいは発明協会の各地の支部、全国約百五カ所を地方閲覧所と指定しまして、特許情報の普及に努めてきておりました。最近は、特許情報はCD−ROMの形で電子情報化して提供いたしておりますけれども、この電子化のメリットを十分引き出して活用していただいているとは言いがたい現状でございます。中小企業がもっと活用していただけるように、特許庁としても工夫を凝らす必要があるということを考えております。これに従いまして、各地の都道府県の機関等、本年度から知的所有権センターとして認定していくという予定でございます。  この知的所有権センターは、今年度の予算で認められました予算によるものでございますけれども、組織として新設するものではなくて、これまでの地方閲覧所の事業を機能強化する、そして特許情報を電子情報の形態で提供する、そして電子情報の形で見ることができるように電子情報の活用の方法も理解していただくというようなことを考えているわけでございます。これによりまして地域中小企業の技術開発等に、そしてまた地域産業の活性化に役立っていただきたいと期待をいたしております。
  54. 西川太一郎

    ○西川委員 ありがとうございました。ぜひひとつ、一日も早くそういう仕組みができ上がることを期待をいたしております。  そこで、時間もありませんので、具体的な法改正の中身に質問の項目を絞りながら入っていきたいと思います。  過般、数日前、本会議で外務委員会からの商標法条約の問題が可決をされたわけでありますけれども、世界のいわゆるトレードマーク大国である。これは私、ちょっと調査をしましたら、資料をいただいてみまして整理をしますと、世界の商標権登録件数は八百十四万件もあるのですね、八百十四万。そのうち日本は百二十八万件でありまして、主要先進国の中では第一位であります。アメリカが八十六万件、ドイツが三十四万件、イギリスが三十五万件、フランスが五十六万件。日本は二八%、アメリカの八十六万件は一一%、残りは四百七十五万件ということでありますけれども、こういう商標大国としてこの条約に加盟をする意義というものを、外務委員会等では十分な御質疑があったのだろうと思いますけれども、改めてこの商工委員会でもぜひひとつ聞かせていただきたいと思います。
  55. 清川佑二

    清川政府委員 トレードマーク、商標登録件数につきましては、先ほど西川委員から御指摘いただいたとおりのものでございまして、我が国は世界で最大の登録件数を持っているわけでございます。トレードマーク、商標の意義、重要性につきましては、冒頭西川委員からお話があったわけでございますが、やはり近代の商業活動、そして国際的な貿易活動の中で極めて重要な意義を持っているということは、繰り返しになりますが、私ども極めて大切なものと認識しておりまして、経済活動を遂行する上での重要なインフラであるというふうに考えているわけでございます。  そして、経済の活動がグローバル化した現在、商標制度国際的調和ということが大切でございます。どの国においても共通の、かつ簡易な手続によって商標登録ができて、しかも十分な保護が図られるということは極めて重要なものであると考えております。このような考え方から、商標法条約が採択されて、商標に関する手続簡素化、調和について国際的な合意が得られたわけでございます。  日本は、世界一の登録商標の保有国でございます。そしてまた同時に、世界の三極として世界経済全体を牽引すべき立場にあるわけでございます。イギリスが五月一日には批准書を寄託して、五カ国がそろったところで商標法条約は八月一日から発効するという運びになっているわけではございますが、今回の国内法の改正を通じまして速やかにこの条約に対応いたしまして、制度国際的調和に向けて私どもも積極的に参画をしたいと考えておるところでございます。
  56. 西川太一郎

    ○西川委員 英国に先を越されたのは残念でありまずけれども、しかし、特許大国として、日本も堂々とこの制度の中でリーダーシップを発揮していただきたい、このように思います。  そこで、今回の改正案では、ユーザーの負担が軽減するというふうに盛んに特許庁は言われているわけでありますけれども、どんな点が論拠になっているのでしょうか。
  57. 菅野利徳

    菅野政府委員 今回お諮りしております改正案におきましては、工業所有権制度全体を通じます大きな流れに沿いまして、制度の国際的な調和と、ユーザーにとってより使いやすい、ユーザーフレンドリーと申しておりますけれども、そういう制度にするということを基本的な柱としているものでございます。こういった流れは、一昨年秋に合意に至りました、先ほど御指摘のございました商標法条約の流れ、趣旨にも合致するものでございます。  それで、具体的に本条約に対応して手続が簡素 化される内容といたしましては、従来、我が国商標法の中では、権利をとっていただく場合に、商品とかサービスの分野を四十二に区分しておりまして、それぞれの四十二に区分された区分ごとに出願をしていただくということにしていたわけでございますけれども、複数の区分について権利をとりたい場合に、複数の出願をするということではなくて一本の出願でやっていただけるという、一出願多区分制度ということが可能になります。また、たくさんの権利を持っておられる方が、例えば住所変更の必要が出てきたという場合に、従来でございますと一つ権利ごとに届け出をしていただくということになっていたわけでございますけれども、これが一通の通知で済むということで、これは多件一通方式と申しておりますけれども、いずれも使っていただく方に便利な仕組みになるわけでございます。  さらに、いろいろな出願等々に当たって添付する書類あるいは記載する事項等につきましても極力簡素化をいたしまして、むだな負担にならないようにということで簡略化を図っている。あるいは、物すごく大きい点でございますけれども商標登録を十年ごとに更新する際に、従来でございますと、更新出願というのをしていただいて審査を行っていた、あるいは使用しているかしていないか使用チェックを行っていたということがあるわけでございますけれども、今後は、こういう更新出願ということを必要としないで、出願申請をしてもらえば自動更新ができるというような仕組みになるわけでございます。また、所有権を権利移転をする場合に日刊紙等に公告を出すというような義務づけもしていたわけでございますけれども、こういった点もしないでいい、こういう形になるわけでございます。そういった点で、ユーザーの方々にはいろいろな簡素化、負担の軽減というものが図られるものと期待をしております。  また、商標法条約に関連する事項で、いろいろな記載事項の簡素化あるいは多件一通方式というような事項につきましては、今回商標法条約対応ということではございますけれども特許法あるいは実用新案法、意匠法についても同じような改正を盛り込ませていただいておりまして、ほかの法律においても均てんされるようにさせていただいているところでございます。  あと、条約に対応するもののほか、先ほども御議論ございましたけれども、現金によって出願料あるいは登録料を納めるような仕組みをお認めいただくように盛り込ませていただいていることでございますとか、あるいは商標権付与後に異議申し立てを受け付ける仕組みにしていただくというようなことで、審査期間を極力短縮して早期に権利付与するというようなことで、これらにつきましても、条約対応ではございませんけれども、ユーザーフレンドリーな改正であろうかと思っているところでございます。
  58. 西川太一郎

    ○西川委員 今御説明がございましたけれども特許庁からいただいた資料によりますと、いわゆる改正後の料金というのは、現行料金に対して、区分数を掛けていくという資料なんです、私は十分説明を聞いたつもりですけれども。ということは、例えば特許出願料は現行では二万一千円だけれども、新制度は六千円と一万五千円を足したものに区分数を掛けるということになる。その他のものも、割り増しも更新もすべてそういうことになるということは、料金面では、改正されるとユーザーの負担がふえることになりはしないのでしょうか。そういうことじゃありませんか。
  59. 菅野利徳

    菅野政府委員 今御指摘出願料金の件でございますけれども、先ほど申しましたけれども、従来は一区分ごとに出願をしていただく。複数の区分について出願をするということを認めておりませんでした。したがって、複数の区分出願するときには、例えば三区分といった場合には三本の出願をしていただく、一本の出願について出願料金は二万一千円でございます。したがって、三本ですと六万三千円。今回は、三本を一つ出願でするということになりますので、基本料金を六千円といたしまして、あと区分数を一万五千円に掛けていただくことになりますので、むしろ多区分で出願をいたしますと逆に基本料金分だけ、二区分ですと六千円安くなる、三区分ですと一万二千円安くなるというふうな形になるわけでございます。出願料金自身については、むしろ多区分の場合には負担が若干少なくなるということでございます。
  60. 西川太一郎

    ○西川委員 まだ質問を用意してあるのですけれども、さきに質問された方々のものと重なる部分もございますから、以上で、最後に大臣に、地味な分野でございますけれども非常に大切な商標権、これについて、先ほど、世界の出願総件数の中で大変大きな分野を日本が占めている、それから、国際間の制度を調和していくということが非常に大事な時期である、特に、大臣御苦労されている日米欧の先進国におけるそういう調整も必要である。結構大変な問題を含んでいると思います。大臣の今後のこれに取り組むお覚悟を伺って、私の質問を終わりたいと思います。
  61. 塚原俊平

    塚原国務大臣 一番最初に先生から御指摘いただきましたように、我が国における経済活動の中で、この商標制度は極めて大きな役割を果たしているというふうに認識をいたしております。歴史の面からいろいろな御指摘をいただきましたが、今後とも制度運用の一層の改善を図っていくとともに、御指摘をいただきましたことを踏まえまして、国民の方々に商標の重要性について理解を深めていただきますように努力をいたしてまいりたいと考えております。
  62. 西川太一郎

    ○西川委員 どうもありがとうございました。
  63. 甘利明

    甘利委員長 正森成二君。
  64. 正森成二

    ○正森委員 今回の改正におきまして一出願多区分制とかあるいは多件一通方式というようなものが採用されまして、出願者やユーザーの利便が図られるという面は確かにあると思います。しかし、それと同時に、それに対応する特許庁の職員の仕事の形態や負担がどうなるかというのが、今後非常に配慮しなければならない問題だと思います。そこで、時間も短うございますので、その点を中心に伺いたいと思います。  まず最初に伺いますが、私ども、調査室から一定の資料をもらっておりますが、現在の出願件数がどれぐらいで、これを審査する審査官は何人ぐらいでやっておりますか。
  65. 菅野利徳

    菅野政府委員 平成七年におきます商標登録出願件数は約十八万件、うち、新規の出願が十三万八千件、更新出願が四万二千件でございます。審査官の数は、百二十六名でございます。
  66. 正森成二

    ○正森委員 審査官の数が百二十六名ということで、平成六年は百二十三名だったようですから、三名ふえたわけですね。審査件数は、今も答弁がありましたが、調査室などの調査によりますと、平成七年は出願件数が十七万九千六百ぐらいになっておるようであります。  ところで、平成七年度の出願件数と処理件数の関係を資料等から見ますと、処理件数が出願件数を二万五千件ほど上回っているように思われますが、これまでの未処理件数は全部で幾らになっていますか。
  67. 菅野利徳

    菅野政府委員 処理件数、平成七年は先生御指摘のとおり二十一万一千件でございます。したがいまして、出願件数十八万件に対比いたしますと、約三万一千件ほどこれを上回っている形になっております。
  68. 正森成二

    ○正森委員 私の方がいただいている数字と著しく違うようですが、例えば商工委員会の調査室の資料の五十三ページによりますと、未処理件数は平成六年で四十八万七千九百三十二件。出所は特許庁の公報になっております。また、私が入手した資料によりますと、平成七年度の終わりはやや減少いたしまして四十六万、四十五万八千八百ぐらいになっているようですが、どうしてそんなに数字が違うんですか。
  69. 菅野利徳

    菅野政府委員 私、処理件数と間違えまして、未処理件数は平成六年で四十八万八千件でございます。失礼いたしました。
  70. 正森成二

    ○正森委員 私も耳が余りいい方ではありません が、未処理件数と処理件数を間違えて答弁するというようなことでは、これは私の方が一応調査室の資料や本年度の数字をちゃんと知っておったからいいけれども、知らなかったら、あなたも恥をかくが、私も大恥をかくということになるわけで、もうちょっと気合いを入れて、ちゃんと耳の穴をほじくって答弁するようにしていただきたいというように思うのです。  そうしますと、大体、処理件数に比べて未処理件数はほぼ二倍半に達している状況だということが知られるところであります。そうしますと、年間処理能力に対して二倍半も未処理件数が残っている場合に、百二十六名の特許庁の職員をそのままで新しい制度に移行するとなると、非常に無理が来るということになるのではありませんか。それについてはどう考えておりますか、特許庁長官
  71. 清川佑二

    清川政府委員 未処理件数、処理件数の関係でございますが、若干過去にさかのぼるわけでございますけれども平成四年にサービスマーク制度を導入をしていただきまして、出願の増加が非常に顕著になった時期がございます。そしてまた、この時期は、処理の方針を確定する等の問題もありまして、処理が若干数字として減りまして、未処理件数が増大したというようなこともございます。そのようなこともありまして、平成六年の処理件数は一時的に低くなりましたけれども平成七年においては、その影響も解消して、処理件数も伸びております。  しかしながら、平成二年、三年あたりの未処理の件数よりはまだちょっと多いわけでございますが、今後また、この新しい仕組みも取り入れながら処理の件数も少しずつ改善していくというふうに考えております。
  72. 正森成二

    ○正森委員 確かに、平成四年度はサービス制度の導入によって従来から十万件余りふえたというのは事実のようですが、それにしても未処理件数が四十六万とか八万ということは、一年間、平成四年に十万件ふえたというだけでは説明し切れない問題だというように思います。  そこで、次の問題との関係でさらに質問したいと思いますが、今同僚委員からも質問がございましたように、マドリード・プロトコルというのが昨年の十二月一日にイギリスや中国などが批准して発効したようですが、我が国はこれに対してどういうように対処しようとしておりますか。
  73. 清川佑二

    清川政府委員 マドリッド・プロトコルにつきまして、この内容と、そしてまたそれに対しての考え方と、二つあろうかと思います。マドリッド・プロトコルそのものにつきましては、一つ国際出願によりまして複数の指定国に対して商標登録の機会が与えられますし、各指定国におきまして一定期間内に審査がされることが保証されるというようなメリットがあるというふうに受けとめております。  このように、マドリッド・プロトコルにはそれなりのメリットがあるわけでございますが、他方、そのプロトコルにおきまして、欧州連合、Euが域内加盟国とは独立してさらに一票の議決権を有しております。このようなことから、アメリカ、カナダなどは加入に積極的に動いておらず、現段階では、本条約加盟国は、主として欧州諸国及びマドリッド協定加盟国に限られているというのが現状でございます。  この現状現状といたしまして、先ほど申し上げましたようなメリットもございますので、私ども特許庁としては、国際的環境が整った場合には速やかに対応し得るように、所要の検討を図ってていきたいと考えております。
  74. 正森成二

    ○正森委員 今の答弁によりますと、EUの問題があり、我が国が堅持している一国一票というものと違うので困難な問題があるが、前向きに対処したいというように伺いました。  そこで伺いますが、マドリード・プロトコルでは十八カ月のファーストアクションというのがあるようで、指定国に対して、十八カ月以内に拒否事由があるならそれを全部明らかにしろ、それを明らかにしなければその指定国出願に対して異議がないものと認めるというような方式のようであります。  そうしますと、調査室からいただいた資料を見ますと、今我が国では大体一件当たり処理するのに平均三年近くかかっております。それを、拒絶事由を十八カ月以内に全部明らかにして通知しなければ国内、国民の権利を十分守ることができないということになりますと、一層特許庁職員の負担がふえることになるのではないかというように思われます。  そこで私は、職員関係者から資料をちょうだいしましたが、今度の商標法改正についての当局の職員に対する説明や対応は決して十分だとは思われないという点があります。  例えばアンケートによりますと、この商標法の問題について当局から説明されたことで十分だと思うかというような質問に対しては、不十分であるという回答が四九・六%に上っているという問題があります。あるいはマドリード・プロトコルの問題について、十八カ月のファーストアクション体制について当局が提示した内容では、それに対する対応を十分に確立することができないという方が四七%に上っているという状況があります。  ところが一方では、まだ批准もしていないのにマドリード・プロトコル対応の十八カ月審査体制の確立が重視されているが、これに関連して、早くも十八カ月以内を目指して処理を促進しなければならぬというように処理促進を促された人が、そう答えている人が約二〇%、暗に処理促進を促される雰囲気があると答えた人が五五%余り、合わせて四分の三の職員が、既にその点についての何らかの当局の意図あるいは圧力を受けているというように答えておりました。  そうすると、やはり十分な説明体制や、あるいは予算の関係いろいろあるでしょうが、人員の増というようなことで対処しなければ、これは法律は通しても、この法律は予算関連法案ということになっていますが、十分に対処し切れないものがあるのではないか、こう思います。  特許庁長官なりあるいは通産大臣の御答弁を伺いまして、時間が来たという連絡ですから、私の質問を終わらせていただきます。
  75. 塚原俊平

    塚原国務大臣 特許庁の業務、仕事につきまして大変に御心配をいただきまして、本当にありがとうございます。  審査処理期間短縮を図るためには、やはり機械システムをまず改編をする、それから職員の適正な配置、そして必要な人員の確保に今後とも努めてまいりたいというふうに考えております。
  76. 甘利明

    甘利委員長 これにて本案に対する質疑は終局  いたしました。     —————————————
  77. 甘利明

    甘利委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  参議院送付内閣提出商標法等の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  78. 甘利明

    甘利委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  79. 甘利明

    甘利委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  80. 甘利明

    甘利委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時六分散会      ————◇—————