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1996-04-11 第136回国会 衆議院 商工委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年四月十一日(木曜日)     午前九時三十分開議 出席委員   委員長 甘利  明君    理事 逢沢 一郎君 理事 自見庄三郎君    理事 塩谷  立君 理事 古賀 正浩君    理事 西川太一郎君 理事 増子 輝彦君    理事 小林  守君 理事 石井 紘基君       浦野 烋興君    小此木八郎君       尾身 幸次君    岸田 文雄君       熊代 昭彦君    田原  隆君       谷川 和穗君    中山 太郎君       丹羽 雄哉君    野田 聖子君       野田  実君    野呂田芳成君       石井 啓一君    上田  勇君       小池百合子君    佐藤 茂樹君       土田 龍司君    豊田潤多郎君       星野 行男君    宮地 正介君       山名 靖英君    吉田  治君       石井  智君    大畠 章宏君       佐藤 泰介君    松本  龍君       吉井 英勝君    後藤  茂君       牧野 聖修君  出席政府委員         通商産業大臣官         房商務流通審議         官       大宮  正君  委員外出席者         参  考  人         (上智大学法学         部教授)    森嶌 昭夫君         参  考  人         (悪徳商法被害         者対策委員会会         長)      堺  次夫君         参  考  人         (日本テレマー         ケティング協会         理事長)    井関 雅夫君         参  考  人         (前日本弁護士         連合会消費者問         題対策委員会委         員長)     宇都宮健児君         商工委員会調査         室長      石黒 正大君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  訪問販売等に関する法律及び通商産業省設置沖  の一部を改正する法律案内閣提出第四八号)      ――――◇―――――
  2. 甘利明

    甘利委員長 これより会議を開きます。  内閣提出訪問販売等に関する法律及び通商産業省設置法の一部を改正する法律案議題といたします。  本日は、参考人として上智大学教授森嶌昭夫君、悪徳商法被害者対策委員会会長堺次夫君、日本テレマーケティング協会理事長井関雅夫君及び前日本弁護士連合会消費者問題対策委員会委員鳥宇都宮健児君、以上四名の方々に御出席をいただいております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用のところ本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、ただいま議題となっております本案につきまして、それぞれのお立場からぜひ忌憚のない御意見をお述べいただきたいと思います。  次に、議事の順序について申し上げます。  まず、参考人から御意見をそれぞれ十五分以内でお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと思います。  それでは、まず森嶌参考人にお願いいたします。
  3. 森嶌昭夫

    森嶌参考人 森嶌でございます。  私は先般、この法案を取りまとめる前段階としまして、産業構造審議会消費経済部会訪販法あり方についての審議をいたしました。その際、部会長として取りまとめに当たったという立場から意見を申し述べさせていただきたいと思います。  もう既に御案内のことでございますが、訪問販売法、つまり訪問販売等に関する法律は、昭和五十一年に制定をされまして、消費者トラブルを避けるために訪問販売通信販売連鎖販売取引に一定のルールを定めるというものでございます。  その後、昭和五十九年に、クーリングオフ期間を四日から七日に延長をするというような改正をいたしまして、さらに昭和六十三年にかなり大幅な改正を行っております。その際は、従来の規制対象指定商品だけでありましたものを役務にも広げる、さらには、訪問販売についてはキャッチセールアポイントメントセールにも広げましたし、また連鎖販売取引に関しましては、役務に広げたほか、委託あっせんについてもこれを適用するというような改正を行っております。クーリングオフ期間も一日延長をする、八日にするというような改正をいたしました。  このような改正の結果、一時的には訪問販売等に関する消費者苦情等は減少をしたわけでございますけれども平成二年ごろから、通産省消費者相談室あるいは経済企画庁の国民生活センター、あるいは県等消費生活センターが受け付けました訪問販売等に関する苦情相談件数増加をしてまいりました。  とりわけ電話勧誘という、販売に関して電話によって勧誘をするという方法が盛んに用いられるようになりました。電話勧誘につきましては、訪販法の建前では通信販売というカテゴリーに当たっているわけでございまして、通信販売の場合には広告規制だけがかかっているという状態でございました。ところが、電話勧誘が適当でないということから、契約を解約したいなどという苦情増加をしたわけであります。  また、連鎖販売取引に関しましては、従来、連鎖販売統括者とかあるいは勧誘者と言われる、いわば上層の者が規制対象になっていたわけでありますが、実際にはその下位の者もさまざまなトラブルを起こしているということから、下位の者の勧誘に対する苦情などが続出したわけであります。  そこで、平成七年の九月に通産大臣諮問をいたしまして、電話勧誘等による販売及び連鎖販売取引適正化のための方策あり方いかんということで、先ほど申しましたように、産業構造審議会消費経済部会で、平成七年の九月から十二月にわたりまして審議をし、答申をいたしました。そして、その結果が今日の法案提出に至ったわけであります。  その部会での検討でございますが、今申しましたように、電話勧誘それから連鎖販売取引というものに焦点を当てた諮問でございましたので、その二つを中心にして検討をいたしました。  そこにおける基本的な考え方といたしましては、悪質な勧誘行為などによります消費者トラブルの発生を防止するということが第一の目的でおりますし、その点では消費者保護の視点をまず第一に考えていくということでございますけれども、他面で言えば、特に電話勧誘につきましては、まともな業者と申しましょうか、通常商取引電話勧誘が使われるというようなこともあるわけでございまして、まともな取引についてまで過剰規制になってしまうというようなことは規制緩和の時代からいいましても適当でないということで、いわば、消費者保護をまず第一に考え、そして過剰規制にならないようにする、そのバランスの中で具体的な方策を考えていくということでございました。  まず電話勧誘についてでありますけれども、これも申し上げるまでもないことでございますが、電話というものは、対話ができるという意味で、双方向性で非常にすぐれている。そしてまた、電話という極めて迅速な、かつ容易な手段を使うことができるという意味で、これは勧誘にとっても消費者にとっても簡便だということになるわけであります。  しかしながら、他方で、消費者にとってみますと、期待していないところに突然電話がかかってきて勧誘をされるという意味で、不意打ちであるとか、あるいは周りに人がいないという意味で、密室性と申しますけれども、そのような、消費者に心の準備ができていないところに突然勧誘が来るという意味では、ちょうど訪問販売と同じような問題があるわけであります。しかも、電話でありますので情報がしばしば不正確になり、かつ書面に書いていないので、その情報消費者の頭にきちっと残らないというような問題もあります。  そこで、電話勧誘については、ちょうど訪問販売のときにそうでありましたように、急に消費者のところに訪れてそしてずかずかと踏み込んでくるというような、そこで訪問販売規制があるわけでありますが、つまり書面交付とかクーリングオフを認める、それから不実告知をしてはならないといったように、訪問販売として位置づけて、訪問販売と同様な規制を行うというふうにいたしました。  不実告知のほかは、人を威迫して困惑させてはいけないというような禁止規定も置いているわけでありまして、悪質な勧誘行為、つまり電話勧誘行為一般に禁止するというのではなくて、悪質な勧誘行為を罰則をもって禁止するという考え方をとっておりますが、ただ悪質なだけでなくて、一般的なルールといたしましても、電話をかけてくる者は、まず販売業者とか勧誘者の氏名を述べる。そして、どういう商品の種類である、それから、実はこの電話契約を締結するための勧誘ですよという趣旨を明らかにする。何のために電話がかかってきたかということを明らかにするということを義務づけております。そしてさらに、消費者の側からもう契約の締結はしませんということの意思を明らかにした場合には、再度勧誘を続けることを禁止するというような規制をいたしております。  その意味では、すべての電話勧誘についてこれを禁止するという御意見もありましたけれども、しかしそうではなくて、今申し上げたような局面での規制を行うという考え方をとりました。また、部会長としてはそれが適当だというふうに考えております。  それから連鎖販売につきましては、これも先ほど申しましたように、あっせんとか委託などにも規制対象が広がっているわけでありますけれども、こうした販売は、個人で、無店舗で、電話一本で通常取引をするということもあるわけでありまして、連鎖販売はしばしば悪徳そのものということになるわけですけれども、すべてが悪徳なマルチ商法とは限らないわけであります。  そこで、一応連鎖販売に当たるかどうかということについて、従来どおり特定負担というようなこと、つまりこういうお金を払わなければだめだというような点が一般消費者にとって問題ですので、そういう特定負担ということを条件にするような連鎖販売において、悪質な行為を禁止するということで、従来の訪販法連鎖販売取引悪質行為規定を適用していくわけでありますが、その際に、従来その規制統括者勧誘者のみに限られておりましたので、それをさらに広げて、連鎖販売を行っている者に対してこのような悪質な行為があれば規制をするということで、規制対象を広げるという形で対応いたしました。  なお、クーリングオフについては、従来十四日間でありましたけれども連鎖販売で十四日間ではなかなか判断ができないではないかということで、もう少し長くという御意見もありましたが、取引実態などから二十日間ぐらいが適当ではないかというふうに考えております。法案はそのようになっております。  そのほか、審議中の議論では、電話だけではなくてファクスとかパソコン規制対象にすべきだということでございましたけれども、現在パソコンファクスについての苦情が余りないということのほかに、余り不意打ち性がないのではないか。突然かかってきても、ファクスなどは見てほうり出してもいいわけですので不意打ち性がないのではないかという点がございまして、これは今後どういうふうに展開していくかは注目していくけれども現時点ではこれについてはおいておく、後に譲るということに考えました。  さらにそのほか、契約が成立をするためには書面を作成すべきだ、それによってはっきりさせる、そしてクーリングオフも、消費者書面をつくってそれを送りつけたときからクーリングオフ期間を開始すべきだ、そういう御主張もございましたけれども訪販法というのは民法特則として位置づけておりまして、ここで従来の民法諾成契約性、つまり合意によって成立するということを部分的に変えるにしても、全般的に書面がなければ契約が成立しないとしたのでは、普通の消費者、普通のまともな取引における消費者が一々書面をつくらない限り契約が成立しないということで、一般消費者、余りトラブルがないような消費者に対してかえって負担が大きくなるのではないか。民法特則といっても、負担がふえるような特則になる側面もあるということから、むしろ、先ほど申しましたような規制をすることによって適当な措置がとれるのではないかということでございます。  もちろん、冒頭に申しましたように、政策的にバランスをとっていくということでございますので、このバランスのとり方が唯一絶対正しいというふうに私は考えておりませんけれども現時点で、多発しているトラブルを防止するのに、考支られる限りではこの辺が妥当な線ではないかというふうに私は考えております。  どうもありがとうございました。
  4. 甘利明

    甘利委員長 森嶌参考人、ありがとうございました。  続いて、堺参考人にお願いをいたします。
  5. 堺次夫

    堺参考人 悪徳商法被害者対策委員会の堺と申します。  昭和四十九年の二月から、一般消費者を食い物にする悪徳商法を追及する活動あるいは被害の夫然防止活動に取り組んで今日に至ります。最初に取り組んだテーマがマルチ商法でございました。そしてまた私、このように国会の場におきまして参考人意見陳述をさせてもらうことが、きょうでちょうど十回目になります。うち七回がマルチ商法問題あるいは訪問販売法問題に絡んでおりまして、これは何を物語るかと申しますと、いかにマルチ商法問題が以前から国会で論議されながらなかなかその被害が絶てないか、こういったことを証明するものだと思います。  その観点から、マルチ商法問題、連鎖販売取引問題に絞りまして意見を述べさせていただきたいと思います。  私は、今回の法案はもちろん期待はしております。期待は申し上げますが、多々不満な点もありますし、それから懸念する材料もございます。ただ、その分だけ行政当局に果敢なる運用をしていただき、特に、取り締まり当局に積極的に頑張っていただきたいと思っております。その上で、なおかつまだ被害が後を絶たないということであるならば、もう一度これは、法の見直しということについて検討することにちゅうちょしてはならない、このように考えるものであります。  この問題を考えるに際し一番基本的なことは、旧法、つまり昭和五十一年に制定された訪問販売法は、あくまでも立法趣旨は、これは行為規制法ではあるけれども、悪質なマルチ商法については実質禁止をするということでつくられたはずでございます。ところが、実際にはその効力が上がっておりません。六十三年に法改正をしていただきましたけれども、それ以後も被害が後を絶たない。警察摘発が相次ぐ中でも、年間五千件ぐらいの被害がある。しかも、これは表面化する被害でございまして、その背後には二十倍、五十倍という被害があってもおかしくない状態でございます。  マルチ商法とは呼んでおりますけれども、私どもから見る限り、その被害実態あるいは業者実態等を勘案しますと、これは商法でも何でもなく、大衆から、しかも商売のど素人から言葉巧みにだましのテクニックで金を収奪する組織にすぎない、そういう手口にすぎないというように考えております。今回通産省がこの法改正に踏み切られましたけれども、私はまずこの点につきまして、遅過ぎるということを指摘申し上げたいと思います。  私どもは、既に平成三年ごろから、この法改正については通産省に進言申し上げました。要望もしてまいりました。電話勧誘販売につきましても、平成四年ごろから、各地消費者団体あるいは各地消費者行政機関から要望が来ているはずでございます。それがなかなか進まなかったという点につきましては、私は、怠慢のそしりは免れない、このように考えます。  特に今日、この法改正が成りました場合でも、大体十年に一回あるいは八年に一回というスパンでございまして、八年、十年というのは今の流通形態が多様化する環境の中におきましては余りにもスパンが長過ぎ、その間に悪徳商法業者脱法行為を編み出してしまって、つまり法耐用年数を過ぎてしまう。このことを考えるならば、今後は、被害者実情社会状態、そういったものに対して行政当局はもう少し敏感でなければならない、このように考えます。  続きまして、悪質なマルチ商法実質禁止する目的ということであるならば、忘れてならないのはこの第十二条でございまして、禁止行為規定でございますが、この十二条の規定内容が今回細かく定められましたけれども消費者にとりまして重要な事項というものはどういうものかといいますと、もしそれを聞いていれば入らなかったであろうという事柄であることは、これは昭和五十一年の国会審議で明らかになっております。  となれば、一番の重要な事項は、我が社はマルチ商法をやっていること、あるいはピラミッド型になった組織構造販売員構造あるいは顧客紹介あっせん組織実態、例えば何ランクあって、そのクラスごと加盟者の数あるいは収支の現実、こういったものまでを公開しないと重要な事項告知したことにはならないと思います。その点で、これを明確に通産省当局として打ち出していただきたく思います。  しかし、十二条以下がございましても、大体悪徳商法業者は第十一条の定義規定をうまく脱法する者が多いのが現実でございまして、今回は通産省が通達によりましてそれをカバーするということでございますけれどもマルチ商法法律に定める第十一条の連鎖販売取引定義に乖離がございます。これが一致するようにしていただきたく思うものであります。  もともと、私たちは、これはネズミ講商品を媒介させたものにすぎないものだから、本来は禁止されるべきものだと考えました。完全禁止を望みましたが、立法技術的に無理だということで、今日の実質禁止目的とする行為規制法におさまった経緯があるわけでございます。  それから、やはり摘発にまさる啓発なしてございまして、警察当局は大変御奮聞いただきまして、昭和六十三年の法改正以後も各地悪質業者摘発していただきました。しかし、その摘発容疑は第十二条と第十四条の書面交付義務でございましたけれども、それで捜索し、逮捕し、そして送検はされましたが、検察庁当局におかれまして、これがほぼすべてが略式起訴略式命令罰金刑処分だけに終わっております。  第十二条には一年以下の懲役刑または百万円以下の罰金というものがあるわけでございまして、この懲役刑、つまり体罰を科さないと、こうした業者幹部たちには何の意味もなさないということです。億の金を稼ぐ業者に数十万円の罰金を科してもまるで意味がない。  今度、第十四条違反書面交付義務違反に対して六カ月以下の懲役刑というものがつけ加えられましたが、これがまた同様に罰金刑だけで終わってしまったのでは、絵にかいたもちになってしまいます。ここは検察当局におかれまして、ぜひともこの被害実態、悲惨な実態を見ていただきまして、あくまでも刑事的に懲役刑を求めて起訴していただく、こういうことを望みたいと思うものであります。  評価できる点あるいは期待できる点として考えておりますのは、第十八条の二の申し出規定でございます。今回新しく加わりましたが、これによりまして、消費者からあるいは業者側から通産省当局にいろいろ申し出があるかもわかりません。特に、消費者からの申し出があった場合は速やかに対応していただきまして、「適当な措置をとる」ということでございますから、この条文を生かしてもらいたいと思うわけでございますが、そのためには、現陣容では、これは果たして実際の仕事ができるのかどうか疑問に思います。予算の措置あるいは人員の措置、こういったものをつけないとやっていけないのではないでしょうか。  このことを踏まえて、社会的被害実情にもう少し敏感になり、もし法律がこれまた今後も対応できなくなれば、さらに新しい行政施策あるいは次の法改正についても踏み込んだものとしていだきたいと思います。  どうも、立法府におかれましても、法律はつくってしまったらそこで終わってしまうということになっているような嫌いがあるように思います。ですから、法律が通った後、そのフォローアップ、つまり事後点検を適宜やっていただきまして、実際に法律立法趣旨どおり、あるいは国会議論どおりに動いているか、行政がちゃんとその意向を踏まえて行政態度にそれが反映されているかどうか、こういったことをいわば監視、督励していただきたく思うものでございます。  私が過去見てきた経験によりますと、法律が通った当初は、通産省サイドでもどこでもその立法趣旨とか国会議論が反映されて色濃い行政が展開されますが、やがて時間がたち、三年、五年とたちますと、法律は法文だけの解釈になり、しかも狭義解釈になってしまう嫌いがあります。ここをひとつ立法府におかれましてもチェックしていただきたく思うものでございます。  いずれにしましても、悪徳商法の中でも、このマルチ商法被害というものは特別なものがございます。  まず第一に、普通の悪徳商法被害構造加害者がいて被害者がいるという二者構造でござますが、このマルチ商法の場合は、被害者被害意識を持たぬまま、だれもがいともたやすく法外な金が手に入ると思い込まされまして加害者化していきます。うまり、自己増殖性がございます。その結果、被害経済的被害だけでとどまりません。しかも、その経済的被害は、大多数の者が多額の借金を背負うことになります。警視庁が摘発したサンフラワー事件を見てみましても、一千万円の借金を背負い、大企業を退職せざるを得なくなったというケースもありました。  それから、被害は、人間関係が後に破綻をするとか、あるいは社会から転落をしてしまうといったことまで起こっております。それから、毎晩のごとく閉鎖集団をつくりまして、もうかる、もうかるということを繰り返しやるものでございますから、睡眠時間も減少し、いわゆるマインドコントロール状態になりまして、それが精神に破綻を来すといったことまで達しております。  昨日も、京都の主婦から、二十歳の専門学校を出たばかりの娘さんが精神病になってしまったという訴えを受けたばかりでございます。ここまでいってしまうわけです。その先は、これは自殺事件でございまして、平成元年には広島で、娘さんが妄信状態になってマルチ商法をやめない。どんなに説得をしてもやめない。親がついに思い余って、母親が我が手で我が娘の首を絞めて殺した、自分は灯油をかぶって自殺をした、そういった事件までございました。これが商法と言えるのでありましょうか。本当に社会悪だと思います。  今、企業におかれましても、総務部人事部勤労課あたりが忙しく動いております。なぜかと申しますと、職場、独身寮あるいは取引先を舞台に、特に若い人々の間にこのマルチ商法が広がりまして、上司が説得をしますが、若い方々、社員の方あるいはOLの方が言います。マルチ商法とは聞いていないからマルチ商法ではないと言い張りまして、ついに、そこまで言うのだったらやめますと言って、持ってくるのが辞表だということです。つまり、一種の組織を破壊する、社会を破壊するところまで達しております。  これが本当にこの新しい法律によりまして、摘発がかなえられ、そしてもうこれ以上被害が発生しないように、私がまた同じようなことで十一回目の参考人に立つことがないように、そういうことを今大変望む次第でございます。  以上でございます。ありがとうございました。
  6. 甘利明

    甘利委員長 ありがとうございました。  次に、井関参考人にお願いいたします。
  7. 井関雅夫

    井関参考人 テレマーケティング協会理事長をやっております井関でございます。  テレマーケティングという業界の立場から、今回の訪販法改正につきましての意見を述べさせていただきたいと思います。  その前に、若干テレマーケティングというものと、テレマーケティング協会が今日どういうふうに取り組んできたかということを踏まえた上で意見を述べさせていただきたいと思います。  御案内のとおり、テレマーケティングというのは、電話ファクスなど双方向性の通信手段を用いまして、企業消費者それから顧客がダイレクトにコミュニケーションを行っていくいわゆるマーケティングシステムでございまして、その前提となるものは、相互の良好な関係を構築した上で、商品やサービスの販売消費者相談窓口、各種調査等を行っていくというのが大前提であります。したがいまして、電話による一方的な売り込みというものは、私どもテレマーケティングという範疇には入れてございません。あくまで顧客満足を最大のねらいとして、顧客との永続的な信頼関係を築いていくというものを私どもは目指しておるわけでございます。  今日の消費生活の多様化あるいは情報社会の進展に伴いまして、こういったテレマーケティングというものは、欧米や我が国でも大変な勢いで発達また発展しつつございます。一九七〇年代にアメリカで始まったこの事業でございますけれども、アメリカでは今日約四十兆円の市場と言われています。日本では、一九八〇年代にこういった事業が初めて取り入れられました。今日ではおおよそ一兆円という、まだアメリカの四十分の一でございますけれども、それでも毎年大体二けた成長をしつつある極めて発展段階にある業界というふうにお含みおきいただきたいと思います。  その中で、いわゆる電話による効用というものが幾つかあるわけでございまして、先ほど話もありましたように、企業と顧客が電話を通じて取引を迅速あるいは簡便に行うということが今日における電話取引の最大のメリットでございます。また同様に、電話取引以外でも、電話によるマーケティング調査あるいは選挙の際の世論調査あるいはお客満足度調査等々、各種サービス、調査が電話により行われており、また、各事業の効率化というものの追求の中にアウトソーシングという問題が多々発生しているわけでございますけれども、そういった中で、顧客のデータベースに基づくこういったテレマーケティングというものが今日多くの企業で取り入れられつつあるという状況であります。  そういった中で、私どもテレマーケティング協会は一九八八年に発足いたしました。現在、約百五十社の会員で協会が成り立ってございます。  協会の主な目的といたしましては、テレマーケティングに関する普及活動あるいは利用促進、テレマーケティングに関する調査研究あるいはテレマーケティングの正しい発展のための倫理意識の維持向上、倫理ガイドラインの設定、あるいはテレマーケティングに対する教育等を主な事業目的としておりまして、協会として自主的にテレマーケティングの倫理ガイドライン及び実施基準をつくってございます。また、個人情報の保護ガイドラインというものもつくっておりまして、今日問題になっているような問題に自主的に取り組んでおるわけであります。  テレマーケティング協会の倫理ガイドラインの主なポイントだけを申し上げますと、まず、今回も問題になっておりますような、最初に電話をかけることについての相手の同意を得るということ、それから当方の名前を名乗るということ、それから、提供する商品、サービスについて合法的であるということ、それから目的をはっきりさせるということ、購買等を決定するに必要な十分な情報を提供するというようなこと、あるいは深夜等の時間帯は避けるというようなことを倫理ガイドラインとして自主的に運用しております。     〔委員長退席、塩谷委員長代理着席〕  そういった前提に立ちまして、今回の訪販法改正について消費経済部会でいろいろ議論されました中で、私も委員の一員として意見を述べました問題につきまして、若干触れさせていただきたいと思います。  今回の訪販法改正は、私ども業界にとりましては極めて重大な、あるいは厳しい問題も含まれております。協会内でいろいろ議論しましたときに、協会の自主的倫理ガイドラインの実施ということで十分目的は達成されるのではないか、あえて法的規制を導入する必要があるのかという議論が当初ございました。しかしながら、今日の消費者保護の問題と、あるいは私どもにとりましても正しいテレマーケティング事業の発展のために、悪質な業者をいかに排除するかという観点に立って本問題に取り組もうじゃないかということで、種々議論を重ねてきたわけであります。  そういった中でも、クーリングオフの問題とかあるいは書面による契約の確認の問題とか、いろいろ今後、特に中小の事業者に大変な負担を強いるような問題が含まれておりますけれども、私どもとしては、あくまで消費者保護悪質業者を排除するという前提でこの問題に取り組もうということで、協会内で意見を取りまとめてきた次第でございます。  こう言ってはなんでございますけれども、本来、契約でございますから、一方では契約当事者としての自己責任というものをやはり消費者にも持っていただきたいという気持ちは大変強うございます。  そういった中で、今回訪販法が成立されましたならば、内容につきましては若干また触れたいと思いますけれども、まずもって電話による取引であるということ、それから今回の訪販法改正目的悪質業者を排除するものであるということ、そういったことを行政サイドあるいは地方自治体サイドからも十分な周知がなされないと、電話によるもろもろの行為が、正しく行われている行為が皆さんから疑念を持たれるようでは、今日の情報社会の発展に極めて重大な影響を及ぼすというふうに私どもは考えておりますので、またぜひその点の十分な御指導、御周知もあわせて行政サイドから行っていただけるように、冒頭お願い申し上げる次第でございます。  その中で、今回の訪販法の中で、もう法案の中で既に織り込まれているものもございますので、ある面では是認するという立場から、ある面では少し厳し過ぎるのじゃなかろうかという立場から、若干申し上げたいと思います。  当初、審議会の中でも、電話勧誘販売というか、電話による取引自体を禁止すべきじゃないかという意見もありましたけれども、私どもはあくまで、電話を用いたこういった販売方法自体が悪質だと否定することについては極めて問題である、電話による取引自体が悪いのではなくて、個々の勧誘の方法自体にいろいろな問題が含まれているのであるということを明確に分けていただきたいということで意見を申し上げてきた次第でございます。そういった意味では、テレマーケティング協会として、迅速な開示あるいは情報の提示といったようなことを行っておりますので、そういった前提でこの訪販法が取り組まれて考えられているということにつきましては、いろいろ審議の中身が生かされたのではないかというふうに思っています。したがいまして、あくまでも電話による販売自体の問題ではなくて、その販売のやり方自体にいろいろな問題が生じて今日の問題になったということを、ぜひ御理解をいただきたいという点が一点でございます。  それから二点目には、書面による契約の是非がございました。  電話による取引というのは、消費者の便益のためにも、迅速性とか簡便性というのが最大のメリットでございます。そういった意味では、事前に書面契約を確認するとか、そういった行為が行われては、この最大のメリットが失われてしまいます。ただ、電話による取引の事後、こういつた問題で再確認の意味も含めて確認行為が必要ではないかという意見につきまして、私ども悪質業者の排除という意味からこういった問題に取り組んできた次第でございます。  したがいまして、あくまでも事後の確認ということで取り組んでいただきたいということと、それからクーリングオフにつきましては、今回初めて事業者負担ということになります。これにつきましては、中小の事業者にとりましても、正しい行為を行っている事業者につきましても、ある意味では負担増になるわけでございます。そのときに、あくまで起算日は消費者書面を受領したときというふうに法案でもなされております。私どもは、ぜひ最低それぐらいの形にしていただかないと、消費者書面を送ってからということでは、起算日がいつになるか極めて不安定な状態に置かれるということでございます。そういった意味で、クーリングオフにつきましては、せめて消費者書面を受領した日という今回の法案の中身が生かされるようにお願いしたい。また、指定商品につきましても、法的規制というのは必要最小限にすべきだというふうに思っていますので、今日の訪販法の中の指定商品にとどめていただきたいというふうに思っております。  細かいことでは、時間的な問題も種々論議されてきましたけれども、あくまで深夜の電話取引というような、そういった常識を外れるような行為はともかくとして、何時から何時までというよろな時間設定が法律でなされるといいますのは、今日の経済活動あるいは生活活動の多様性から見ると、法律で決めるものではないというふうに私ども思っておりまして、その辺は常識的な自主的運営というものでぜひさせていただければありがたい。私どもは現在、夜九時以降は電話しない、午前九時前は電話しないというようなことで自主的に取り組んでいることを御参考までに申し上げたいと思います。  以上、幾つかのポイントを述べさせていただきましたけれども、あくまでも消費者保護悪質業者排除という点から私どもも前向きに取り組んでまいりたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。  ありがとうございました。     〔塩谷委員長代理退席、委員長着席〕
  8. 甘利明

    甘利委員長 ありがとうございました。  次に、宇都宮参考人にお願いいたします。
  9. 宇都宮健児

    ○宇都宮参考人 前日本弁護士連合会消費者問題対策委員会委員長の宇都宮です。  資格商法を初めとする電話勧誘による被害の激増や、マルチ商法による被害の蔓延という事態を踏まえて、今回、電話勧誘販売について初めて規制対象に加えて、さらに連鎖販売取引に関して規制強化を行っていることは、私個人としては一定評価できると思います。また、日本弁護士連合会は本年一月十九日に、今回の訪問販売法改正に関する意見書を採択しまして、これは商工委員会の先生方にもお送りしていると思いますので、ぜひ今後の審議の中で参考にしていただけたらと思っております。  お話ししましたように、全般的に評価はしているわけですけれども、ぜひ消費者保護の観点から今回の国会審議の中で修正していただきたい点に絞ってお話ししたいと思います。マルチ商法の問題につきましては、先ほど堺さんの方からるる説明がありましたので、私は、電話勧誘販売について、ぜひ修正していただきたいと思う点をお話ししたいと思います。  まず第一点は、電話勧誘販売規制につきましては指定商品制を廃止すべきであるということです。特に、電話勧誘販売行為規制につきましては、あらゆる商品、あらゆるサービス、あらゆる権利に適用されるべきでありまして、特別に訪問販売法指定商品に限る必要はない、また限るべきではないと考えております。  今回の法案では、例えば行為規制について、電話をかける場合は氏名等を告知しなさい、あるいは契約を締結しない旨の意思表示をした者に対しては勧誘をしてはならないという行為規制、あるいは重要事項について不実告知禁止規定、さらには威迫困惑行為の禁止、こういう行為規制を行っているわけですけれども、これが訪問販売法指定商品だけでなくて、どの商品にもサービスにも、あるいは権利にも適用されるべきことは当然のことではないでしょうか。  特に、私たち消費者被害の相談に携わっている弁護士としては、今回の訪問販売法指定商品以外にも、例えば不動産取引、証券取引、先物取引などの電話勧誘についてのトラブルも多発しております。ところが、不動産については訪問販売法指定商品にはなっていませんし、証券取引、先物取引についても訪問販売法の指定権利にはなっていないわけです。これらについて、例えば威迫困惑を与えるような電話勧誘が行われてよいのでしょうか。それから、重要事項について不実告知をしてもよいのでしょうか。これらを禁止しない合理的理由はないと思われます。したがって、電話勧誘行為規制については、指定商品制を廃止すべきではないかと考えております。  それから、同じく電話勧誘販売についてもう一つぜひ修正していただきたい点は、クーリングオフの起算点について、消費者が法定書面に署名捺印して業者に返送した日から八日間としていただきたいという点であります。  これらについて、今回の改正案の規定につきましては、消費者書面を受領してから八日間というような規定になっていますが、これは訪問販売と同じような考え方に立っております。  ところで、訪問販売電話勧誘販売は同じようなものかというと、全く実態が違うと言えると思います。少なくとも訪問販売は、セールスマンや販売員が消費者と対面しております。消費者側からすれば、その販売員がどういうものを販売しようとしているのか、どういう商品あるいはどういうサービスを販売しようとしているのか明らかなわけです。それから、こういうケースでは、通常、その場で契約書が作成されます。したがって、訪問販売セールスマンの不実的な勧誘が多々あるわけですけれども、少なくともその時点において消費者の方が契約を締結するという意思は、消費者自身明確になっているわけです。  ところが、電話勧誘販売につきましては、一般的にセールスマン、販売員の姿が見えません。それから、電話ですので、一体どういうものを売りつけているのか、どういうサービスを販売しようとしているのか、そういうものがあいまいなケースが多いわけです。  それから、今回法改正の発端になった資格商法等による電話勧誘被害では、突然職場等に電話が来る。それで、消費者の方は電話を切りたいのだけれども、なかなか切らせてくれない。そのうち、早く電話を切りたいので、はいはいとか、結構ですとか、いいかげんな返事をする。当然その消費者としては契約を締結した意思はないわけ外す。ところが、その後になって電話勧誘販売業者から一定の商品を送りつけてきて、代金の督促をしつこくやるというのが被害実態であります。  したがって、電話勧誘につきましては、契約内容や契約の締結意思が消費者側からすれば極めてあいまいなケースなわけです。こういうケースにおいて、例えばその後、業者側から契約書面あるいは商品等がダイレクトメールや宅急便等で送られてきた場合に、消費者サイドも契約締結意思が明確でないので、その書類をいいかげんにほっぽっておく可能性があるわけですね。十分目を通さないで放置しておく可能性がある。そうすると、その期間クーリングオフ期間が徒過されてしまうということになる危険性が強いと思われます。  したがって、この点については、消費者契約書面に目を通して、自分がどういう商品、サービスを購入しようとしているのか、どういう契約をしょうとしているのかということを明確にする意味で、契約書面に署名捺印して返送した日から八日間というふうにしていただきたいと思います。そうでないと、このトラブルはまだまだ続くと思われますし、それから、これらのトラブルは多くは消費者センター等に相談が寄せられると思いますけれども、その際に、書面交付があったかどうかということをめぐってまたトラブルが解決されない。消費者書面を返送しているかどうかというのは、消費者サイドが明確であれば、消費者センターの相談する立場としては、そういう書面を受け取っているかどうかという確認をすればすぐに解決できるトラブルでありますが、書面交付時期の問題になりますと極めてあいまいですし、トラブルも続くものと思われます。  なお、先ほどテレマーケティング協会の方から、そういうことまですると非常に業者にとって過剰負担になるのではないかという指摘がありましたけれども、必ずしもそうではない。むしろそういうあいまいな電話による契約をやっている業者としては、消費者側から契約書面が届いていないということについては確認の電話を入れて、自分の方で督促すべきであるというふうに考えております。それが過剰な負担であるかどうかというのは、電話というのは極めて簡単に、事務所の方から無差別に消費者に対して電話をかけていく、そういう営業行為でありまして、訪問販売の方は、直接交通費も使って消費者の自宅、消費者のもとまで行って苦労して商品販売しているわけなので、その訪問販売業者と比較すれば極めてコストは安いわけですし、安易な、安易と言ったらあれかもしれませんけれども勧誘行為としては簡単なのではないか。その業者にせめて消費者契約書面を督促するというぐらいの負担を与えても、特別に過剰負担にはならないのではないか。  現に、日本資格講座協議会という業界団体がありますけれども、この業界団体の自主規制規約の中では、クーリングオフの起算点は契約者が契約書面に記入した日からというふうに定めております。それから、ECとかフランスなんかもそのようですけれども、こういう電話勧誘については、先ほどお話ししましたように契約意思が極めてあいまいになることから、書面交付かつ商品を受領した日からとする例が多いわけです。消費者の方が商品を受領して、商品を確認してからクーリングオフをスタートさせるというような消費者保護規定を置いていることが多いわけですけれども、こういう点も参考にすべきだろうと思っております。  それから最後に、電話勧誘販売については今の二点をぜひ修正していただきたいと思いますけれども、実は資格商法等による電話勧誘被害は、今回の訪販法改正だけでは十分ではないということをぜひ念頭に置いていただきたいと思います。  それはどういうことかといいますと、電話勧誘販売の場合に、これまでの調査によりますと、約六〇%ぐらいがクレジット契約になっております。今回のクーリングオフ規定等によりまして、電話勧誘販売業者との関係でクーリングオフ消費者契約から離脱できても、クレジット契約は残るわけです。クレジット業者がクレジット代金を請求し続ければ、消費者被害は終わらないし、救済されないわけです。したがって、クレジット業者に対する救済をどうするかという問題が積み残しになっております。  御承知のように、割賦販売法の三十条の四は、販売業者との関係で生じた事由をもってクレジット業者に対抗できるという、抗弁の接続規定を置いているわけですけれども、実は割賦販売法も指定商品制をとっておりまして、割賦販売法の指定商品の中には、サービス、役務、それから権利等が含まれておりません。ところが、資格商法等で多い資格講座の受講料、これは商品ではなくてサービス、役務になるわけでして、これがクレジット契約でなされた場合は割賦販売法の三十条の四が適用されないわけですね。したがって、クレジット会社は、クーリングオフがなされて契約が解除になった後にもどんどん請求を続ける、場合によれば裁判を起こしてくるというケースが考えられます。現にそういうケースはあるわけです。その点を考えれば、今回の訪販法改正案の提案と同時に、割賦販売法の三十条の四のことも考えて、割販法の指定商品を変える必要があったわけです。  むしろ私たち日弁連の立場としては、こういう割販法も含めて、指定商品制をとっていること自体が非常に問題ではないかというふうに考えているわけですけれども、こういう被害救済の観点から、ぜひ訪販法改正の後は割販法の改正についても早急に進めていただきたい。  全般的に改正点は評価するわけですけれども、これまで被害が多発してきているということを考えれば、私個人としては、今回の法改正は非常に遅きに失したと考えております。ぜひこれからもそういう改正に取り組んでいただきたいと思っております。
  10. 甘利明

    甘利委員長 ありがとうございました。  以上で参考人意見の開陳は終わりました。
  11. 甘利明

    甘利委員長 これより参考人に対する質疑を行います。  質疑者にあらかじめ申し上げます。質疑の際は参考人のお名前をお示しをいただきたいと存じます。  それでは、質疑の申し出がありますので、順次これを許します。野田聖子君。
  12. 野田聖子

    野田(聖)委員 自由民主党の野田聖子でございます。  本日は、参考人の皆様方、貴重な御意見を賜りまして本当にありがとうございました。私の方からは、時間が非常に短いので、皆様方の御意見序少し承らせていただきたいと思います。  今回は、訪問販売法改正電話勧誘販売が主でございまして、ややもすると連鎖販売取引というのは従というような立場に思えてならないのですが、私は、この従である連鎖販売取引規制強化について私の意見を聞いていただき、それに対してのコメントを賜りたいと思います。  先ほど森嶌参考人、そして堺参考人のお話を聞いておりまして、そのお話の中で、例えば森嶌参考人は、連鎖販売取引はしばしば悪徳であるといったようなコメント、並びに堺参考人はもっと激しく、連鎖販売取引というのはいわば物品のネズミ講である、だからこれは実質的に禁止しなければいけないというようなお話がございました。  私は実は、現実の消費生活を振り返ってみて、果たしてそうだろうかと。確かに、悪質な業者また取引は厳しく取り締まらなければならないと思う反面、やはり良質な業者も随分存在しているのではないか。また、その良質な業者というのは、ここ近年、この法律ができてから約二十年ですが、急激にふえているという事実がある。これは、もし本当に悪質で世の中を混乱させてしまうようなものであれば、やはりある意味で自然淘汰というのが生まれてきてしかるべきなのに、これはむしろ逆に、数字であらわすならば、例えば訪問販売の場合、この二十年、昭和五十一年から今日の二十年にわたって、売り上げというのが四・六倍に伸びているわけです。金額にすると、昭和五十一年当時は六千八百億円の売り上げであったものが、現在三兆一千億円を超えている。  これは一つには、この連鎖販売取引という形をとっている訪問販売が、現在の消費者のニーズにかなっていて、消費者の側からもそういう形態を望んでいる声があるからではないか。そして、その中で確かに悪質なものもあって取り締まられてきたけれども、むしろ大多数は、協会等の自主規制の中でいいものが育ってきているんじゃないか。  そしてまた、女性の側から見ますと、大変この訪問販売員の方は女性の占める割合が多いわけです。この理由の一つには、こういう無店舗経営というのは、経営コストがかかりませんから、非常に気軽にそのビジネスに参入できる。ましてや現在、女性というのは、御承知のように就職難であり、子供さんとか御家庭にある中で収入を得ようと思っても、なかなかそういうビジネスチャンスに恵まれない。そういう中で、こういう訪問販売というのは、そういうハンディーは背負っているけれども女性として、社会人として、収入を得たいという女性にとっては、非常に格好の業界であるわけでございます。  そんな中で、今のように一部の悪質な例ばかりが強調されまして、マルチ商法とか連鎖販売取引というのは非常にうさん臭いものである、ネガティブな業界であるというようなものが蔓延すると、良質なもの、一生懸命頑張っている人のやる気をなくしてしまって、かえって新たな産業をつぶしてしまう一つの問題になるのじゃないかと思っているのです。  先ほど堺参考人が、このような問題で、果たして政府が立てる立法で十分間に合うかどうか疑問であるというお話がございまして、私は、逆の意味でまさにそのとおりだと思っているのです。  この法律ができてから数回の改正が行われているにもかかわらず、堺参考人が望むような結論が得られていない。むしろその間、訪問販売連鎖販売取引というのは増大している中で、これはもう政府が、国が、通産省が上から押さえつけるのではなくて、むしろ、そこに携わっている業界の商道徳を自主的に育てていただくこと、そして、コインの裏表みたいなのですが、あわせて消費者、私たちがやはり賢明で強くならなければならない。  だから、消費者保護という言葉のもとでこうやって網をかけていたところで、やはり消費者がそういうところに遭遇したときにきちんと対応できるような手だてをもっともっと講じた方がいいのではないか。具体的に申し上げるならば、クーリングオフとか、例えば返品規定の義務化の方がむしろ実効性が上がるのではないか。そういう末端の人たちにまで禁止行為の網をかけますよということは、決して今回の、堺参考人森嶌参考人がおっしゃったような問題の抜本的な解決にはならないのではないかと思っているのですが、その点につきまして両参考人から御意見を賜りたいと思います。
  13. 森嶌昭夫

    森嶌参考人 森嶌でございます。  私は、当初に申し上げましたように、連鎖販売のすべてが悪徳ではないけれども、悪徳なものむあるというふうに申し上げたわけでありまして、その意味で、悪徳な連鎖販売業者の側面を眺めれば、堺参考人のおっしゃったとおりでありますし、それから、悪徳でない通常のまともな連鎖販売に携わっている者から見ますと、野田委員のおっしゃるとおりであります。  そこで、法律としてはどうするかということでございますが、法律としては、まともな業者を過剰に規制をすることのないように、かつ、悪徳な者もいることは確かでありますから、それをどろするかということで規制対象を広げておりますけれども、それはすべての業者規制しているというのではなくて、その中で禁止行為に当たるようなことをする者に対して、通産大臣が指示をして、あるいは業務を停止させるというようなことでございまして、これは、少なくともまともにやっていればこの法律を恐れることはないというふうに思っております。
  14. 堺次夫

    堺参考人 私も、訪問販売すべてが悪いと言っているわけじゃございません。例えば訪問販売の中でも、生鮮食料品を扱う行商であるとか、あるいは富山の配置薬制度、こういったものは消費者の支持を受けて、それこそ長年定着しているわけでございます。私どもが言っているのは、あくまでもマルチ商法の方でございます。  ただ、このマルチ商法問題につきましては、昭和五十一年に訪問販売法を制定する際に、立法に関与されました東京大学法学部の竹内昭夫先生が名言を残していらっしゃいます。今筑波大の先生でございますが。その当時、既に、完全禁止のできない理由がよいマルチと悪いマルチ商法があるということを通産省当局は述べられまして、その結果、我々は完全禁止を望んだのでございますが、実質禁止という立法趣旨のもとで行為規制法ができたということでございます。それに対して竹内先生はおっしゃいました、よいマルチというのは、無害なコレラ、安全なペストと言うに等しいと。今で言うならば、よい核実験、悪い核実験ということになろうかと思いますけれども、法概念的にそういったことはあり得ないのじゃないかということを述べられまして、私もそのとおりだと思っております。  今日、いわばよいマルチ、よい連鎖販売取引があるといたしますと、もちろんそれはトラブルがないということになるのでございましょうが、ただ、そういったものでも、これは構造的に、例えばある日突然経営方針が変わる、ある日突然経営者がかわる、ある日突然異質集団がその組織の中に入ってきて、そこから先を変えていってしまう、こういったことが起こりかねない。つまり、伝言ゲームが行われるのがこの種の組織の特徴でございまして、その点からは、よいマルチであってもやはり規制は必要であるというように私は考えます。  それから、公益法人、特に訪問販売法の中に正式に位置づけられました日本訪問販売協会というのがございまして、この中で現在自主規制というものが進められております。自主規制案が立てられまして、それが検討されておりますが、もちろんこれに期待をするのでございますけれども、アウトサイダーもいっぱいいる。それから、特にこの十条の二に定められた公益法人の目的は、単なる業界の利益代弁者でなくて、消費者利益も守ろことがうたわれておるわけですが、そこに団体加盟していた団体があるのですが、その中から警察摘発業者が相次いだ事実があるわけでございまして、やはりこの日本訪問販売協会も今後の姿勢が問われるだろうというように思います。  それから、今度は末端まで法の規制対象になるということでございますが、実は我々がこれを望みました。確かに、これまで現行法は、統括者勧誘者という、いわば販売組織あるいは顧客紹介あっせん組織の上部者だけが法の対象になっておりますけれども、それを全構成員にすべきであるというように我々も望みました。  なぜならば、ネズミ講の禁止法がそうなっているからです。ネズミ講の禁止法は、末端で加盟した人が次の人を誘った場合、そこが罪に問われます。しかし、さりとて、全国の警察の留置場が末端の加盟者で満員になったことはございませんので、これは捜査当局において適宜判断してもらえるものだと思います。むしろ、末端の加盟者が必ずもうかると思い込まされている場合は、その上の人間の責任はより強いわけでございまして、またその上の人間はより強いということになりますから、私は、これはこれでよろしいのじゃないかと思いますけれども、いかがでございましょうか。
  15. 野田聖子

    野田(聖)委員 どうもありがとうございました。  まさにそこがこれからの問題ではないかと思うのですけれども、末端といっても、現在訪問販売員というのは大体全国で約二百万人おみえになるそうです。きっと、もっともっと多いのだと思います。その末端のいわゆる統括者というのは、事実上の責任者ですから、そのことを熟知しておられるわけですから、今までの、不実告知をしてはいけないとか、威迫行為ということを了解した上でマネジメントしておられる。ただ、末端にいきますと、その威迫行為という言葉自体非常にあいまいな規定でございます。具体性がございません。  ですから、私が秘書に、このシャンプーはいいから買いなさいと、私は本当にいいと思って勧めたのだけれども、秘書とすると、代議士の勧めを断るとひょっとしたら首になるかもしれない、そういうおそれがある、そういうふうに感じたときは、やはり威迫行為になるのじゃないか。もし私が三人の人から、おどかされたというふうに言われると、威迫行為として立証されるそうなんですが、私が三人の秘書に対して言って、彼らがそれぞれ、私はいいと思って勧めたのだけれども、彼らにとっては上部者から言われた、要するに、雇い主から言われたから言うことを聞かないと困るなというような、そこら辺が非常に難しいところなのでございます。  それをやはり何百万人の人に理解せしめるということは容易ではないのではないか。そういうことよりもむしろ、それ自体で今回の問題の解決に当たるのではなくて、もっともっと統括者が責任の重さを感じてもらえるような、むしろ、彼らがそういう重さを感じることによって、自主規制、自己責任の中でいわゆる末端の人たちにきちんと教育できるような前向きな制度を促進していく方が、より――国や通産省といっても数が知れております。それだけのいわゆるマルチな人々に対しての取り組みは難しいんじゃないか、啓蒙、PRが難しいんじゃないかという現実問題がある、そういうふうに感じております。  もう一つ最後に、この相談の被害者というか、国民生活センターにせよ、そういうところに一番相談をしてくる人は、調査室のデータによりますと、電話勧誘の場合ですと二十歳代の男性が七割である。また、訪問販売の方のクレーム、苦情を言ってくる人も二十歳代が非常に多い。私たちは、これから消費者保護ということを考えていく中で、保護もさることながら、やはり教育、こういう若い人たちがそういうところでひっかかってしまっていることに、やはりもうちょっと何か別な視点を持っていかなきゃいけないんじゃないか。守ることだけがいい消費者活動ができることではない。  そういうことについてはいかがお考えでしょう。もう一回堺参考人にお尋ねしたいと思います。
  16. 堺次夫

    堺参考人 先生おっしゃるとおりでございます。私も教育、啓発の必要性は十二分に感じます。  特に今回、マルチ商法に限って申しますならば、全構成員、いわゆるビジネスをやろうとする全構成員が対象になりますから、これまで以上に業者の幹部、トップクラスは責任を問われるわけですし、国及び地方自治体におかれて実施される消費者啓発の内容につきましても、これまで以上のものが必要になってくるだろうと思います。  それから、私も陳情申し上げたことがあるんですが、文部省の方において中高校生段階からこういったものの実態を教えていっていただきたいと強く思います。今、大変若い皆さんは、私の分析では、パソコンは自由自在に操れたとしても、残念ながら社会的に無知でありまして、しかも無警戒でありまして、疑わず、断れない性格が目立ちます。そして、被害に遭った場合でも怒りませんし、文句言いませんし、すぐあきらめてしまいます。二十年前とえらい変わったなと思うんですが、そういった消費者あり方についても、やはり教育というものが大事になってくるんだろうと思います。  特に、今回のこの法改正によりまして、通産省、経済企画庁にはより一層の消費者啓発をお願いしたいと思います。
  17. 野田聖子

    野田(聖)委員 ありがとうございました。
  18. 甘利明

    甘利委員長 次に、佐藤泰介君。
  19. 佐藤泰介

    佐藤(泰)委員 社民党の佐藤泰介です。  参考人の皆さん方には、大変お忙しい中をありがとうございました。時間が限られておりますので、早速質問をさしていただきます。  まず、マルチ商法について堺参考人にお伺いしますが、堺参考人は、今述べられたように、長年マルチ商法の定点観測者として悪徳商法被害者対策に取り組んでこられたと述べられました。そして、マルチ商法に関して、法制定後も効果が上がっていないというようなことも述べられました。そして、最近の深刻な被害実態、その手口等の一部が今紹介されたと思いますが、紹介された以外にもそうした深刻な状況があればさらに紹介をしていただきたいと思いますし、そうした被害に対して対策を講ずるために、今堺参考人行政に対してどんな点を望まれているのか、それらの点についてまず堺参考人にお伺いしたいと思います。
  20. 堺次夫

    堺参考人 マルチ商法業者が一番やはりあくどい点は、人生経験も社会経験も豊かでない若者を集中的にねらっているということだと思います。いわば社会的な弱者層を集中的にねらっているということでありまして、最近聞くところによりますと、あるいは被害訴えを直接受けた段階でわかっていることは、大学生であるとかあるいは高校生、それから定時制高校生の間まで実はこの魔の手が伸びております。  それから、全盲の人を誘うそういう組織がございまして、私は、その点はこの会社の幹部に強くそれを指摘したことがございますが、その幹部は言われました。我々はすべての人にビジネスチャンスを与えているんであって、全盲の人を誘ってはいけないということになるとかえって逆差別に当たる、こういうことを言われたことで唖然とした思いがあります。ここにそういった業者の体質があらわれていると思います。ちなみに、その業者は点字の十四条書面はつくっておりません。つまり、法違反行為に当たると私は考えております。  それから、この先行政に望むことは、もちろん消費者啓発、消費者教育、そして摘発であります。同時に、通産省当局におかれましてこれまでやられた幾つかの施策をそのまま堅持してほしいと思います。例えば、平成四年五月二十六日に、通産省の方から社団法人日本クレジット産業協会に対しまして、マルチ商法により商品販売する加盟店の審査強化をしなさいと、つまり、マルチ商法等の社会的問題を起こすような商法をとっている業者を加盟店にするなという指導だと私は解釈しておりますが、これは、大変に私どもにしてみれば望むところでございました。  ところが、これが実際にその先となりますと、強制力がなくて不徹底に終わっておると聞いております。若者が悪徳商法被害に遭う場合、これはマルチ商法に限りませんが、必ずと言っていいほどクレジット、サラ金が背後に絡んでおります。こういったところを強く、もう少し何か指導ができないものでございましょうか、お願いしたいと思います。  それから、一番必要なのは、こういった問題業者の氏名公表だと思います。昭和五十二年には、通産省におかれまして、当時問題になっていたマルチ商法業者二十二社を公表した事実がございます。歴史がございます。そういったことを今後やっていただけないものかと思います。それを、今度の新しく設置されました十八条の二、申し出規定期待をしたいと思います。
  21. 佐藤泰介

    佐藤(泰)委員 ありがとうございました。  じゃ、次に森嶌参考人にお伺いしたいと思いますが、先ほど、法案提出までの審議経過その他についてのお話がございましたが、昨日の当委員会においても、このマルチ商法については、商品が何であろうとその手法そのものが問題であるというようなことも委員から指摘がございました。そしてまた、今堺参考人から、よいマルチ商法でも規制すべきだと、そして、竹内昭夫先生の言葉の例を引かれていろいろお話をされたわけでございますけれどもネズミ講については、議員立法で一九七八年に完全禁止法が制定されました。  私も、マルチ商法もある意味ではネズミ講商品がついたものだとそんな認識を持っているわけでございますけれどもマルチ商法について、そんなことから全面禁止ができないものかなというように私も思う一人でございますけれども審議会の中においてはそうした論議がされたのか。あるいは、そういった論議はされずに、これまでの法の制定以来の流れの中で実質的に禁止し、いわゆるその規制を厳しくしていくというようなことで論議が進んだのか。このあたりの審議があったのか、なかったのか。そして、あったとすればどんな意見が出されたのかというような点と、森嶌参考人はこの全面禁止についてはどのような認識、見解をお持ちなのか。こういった点についてお伺いできればありがたいと思います。
  22. 森嶌昭夫

    森嶌参考人 森嶌でございます。  ただいまの点につきまして部会でどういう審議があったかということでございますが、部会では、本日の堺参考人にもおいでいただきまして意見聴取をいたしました。そこでマルチ商法の問題点をつぶさに伺ったわけでありますが、一つには、私、マルチ商法という言葉の定義の問題もあると思うのですね。  つまり、階層的にといいましょうか、AからBに商品を卸して、BからCに商品を卸してというような、階層的な販売ということで、しかもそれが通常の店舗の販売ではなくて無店舗販売電話でやっていくというようなことになりますと、これは通常あるわけであります。  マルチ商法の問題点というのは、次から次へと持っていかないと収益が上がらないわけですから、そこで商品を流していくという場合、特にそれが消費用の商品であるならば、先ほど野田委員の方からもお話がありましたけれども、例えばシャンプーなんということでありますと三つか四つの段階で売るということでも売れていくわけでありまして、理論上、次から次へとマルチの段階をふやしていって、最後に、私はよく覚えておりませんが、何段階かに行くともう一億人を超えてしまうという、その意味ではマルチ講とは少し私は違うというふうに考えております。  しかし、そのような特定の負担を取る、それによって、例えば手数料を上に払え、その次にまた上に払えという、それだけが商売であって、商品を売るのがあるいは役務を提供するのが商売ではないというようなものもあり得ると思うのですが、それはやはり私はそういうマルチ商法を禁止すべきだというふうに考えております。  ただ、先ほど堺参考人もおっしゃいましたように、法技術的に、そういうものをそうでない段階的な販売と区別するのは、特定負担というものの定義をどうするかということにかかわっているわけですが、なかなか、審議をいたしましたけれども特定負担というのはもともと非常にわかりにくいのですけれども、現在二万円以上とかなんとかやっておりますけれども、これもある意味では、マルチ商法、あるいはその段階的な商法に穴るべく広く規制をかけていこうということになめまずと、特定負担というのは少し広めていかなきゃならない。  そこで一つには、その特定負担というのを、たしか政令だと思いますけれども、政令にゆだねてなるべく広くするかわりに、しかし、先ほどの昭階的な販売方法は含まないようなことをやっていくほかないのではないかという意味で、竹内先生がおっしゃったことも、マルチの言葉のある程度厳格な意味で、マルチ商法はこれはもういいも亜いもないとおっしゃるのはおっしゃるとおりだと私は思うのですが、表面上マルチ商法に似た段階的なもの、それを定義上区別するのは非常に困難なものというのはほかにもたくさんあるというふうに思いまして、審議の中では、審議をいたしましたが、結局、ある範囲のものを、悪質なものを規制するという考え方をとったわけでございます。
  23. 佐藤泰介

    佐藤(泰)委員 次に、井関参考人にお伺いしたいと思いますが、電話勧誘販売に関して苦情、相談件数が激増している実態から、今回の改正で法規制がされたわけですが、先ほども参考人が述べられたように、法で一律に規制できない部分については、法十八条の二の主務大臣に対する申し出規定によってカバーされていくことになるのであろうというふうに私は理解をします。  また、参考人も今述べられたように、自主的な管理規定を定めて、不当な勧誘行為については自主規制、管理をしている、このように述べられました。この点については、今回の法改正を契機にして、被害防止に向けてさらなるそうした自主規制、管理というものが必要になってくるのだろうというふうに私は考えますが、改めてその決意をお伺いしたいと思います。  また、最後の部分で、消費者教育、啓発が大事だということも述べられました。その消費者教育、消費者啓発に対して井関参考人行政サイドにどんなことを望まれるか、これらの点についてお伺いできればというふうに思います。
  24. 井関雅夫

    井関参考人 井関でございます。  ただいま先生からの御質問にありました点につきまして、まず第一点の自主的なガイドラインによる運営あるいは主務大臣の指示に基づく取り決めということにつきまして、特に時間帯の問題とか細かい問題について、今回の法案でもそのような形になっておりますので、そういった趣旨で取り組んでいただければと思います。  私ども、先ほど申し上げましたように、深夜帯に事業者側から電話をするということは避けるように指導しております。ただ、昨今の夜間生活といいますか、深夜時間帯での通信販売、これはお客様側から発信してくる問題でございますけれども、そういった問題もありますので、一概に、かけるのは何時がだめだ、かからないのはどうだということを法律で決めるのはいかがなものか、もう少し判断基準を自主的に持っていたいということで申し述べた次第でございまして、主務大臣による指示ということも、そういった弾力的なものが望まれるというふうに私は思っています。  それからもう一点の啓発につきましては、テレマーケティング協会といたしましても、当然、自主的なガイドラインをさらに具体的に実施するという意味、さらに訪販法改正に基づいてもう少し実効行為が伴うような指導というものが協会自体としても必要だというふうに種々議論してきておりまして、事業者団体に対しましては何回となく今回の改正趣旨等も勉強会等を開いておるところでございますけれども、一方、消費者側にも、今回の電話勧誘販売というのが事業者側からかける電話販売行為であるということ、要するに、通信販売のようにお客様側がかけてくる行為は今回の対象にならないというようなこと、あるいは電話勧誘販売という販売行為に限られた法案であるというようなことがやはり正しく啓発、認知されないと、電話におけるもろもろの行為が今回の訪販法対象になっているのではないかということになると、消費者団体等にも苦情が殺到するし、混乱するのではなかろうかということで、そういった法案の正しい理解をぜひ啓発活動として行っていただきたいということを先ほど希望として述べさせていただきました。  以上でございます。
  25. 森嶌昭夫

    森嶌参考人 先ほどのお答えでマルチ講と申し上げましたけれども、あれはネズミ講の誤りでございましたので、申しわけございません、訂正させていただきます。
  26. 佐藤泰介

    佐藤(泰)委員 時間が来たようですので宇都宮参考人に簡単にお伺いしたいと思いますが、電話勧誘販売を中心に意見を述べられましたけれども、私はちょっとお聞きしておきたいのですけわども堺参考人も言われましたが、これまでの処分が、連鎖販売の場合ですが、十四条違反で終わっているというのが実態だというふうに言われましたが、今回の法改正で十二条違反での起訴が専門家の立場からより可能になると考えられるのかどうか。また、十二条違反は直罰といいますか、即刑事罰に当たると解釈してもいいのか。ちょっと意見を述べられた点とは質問の観点が違いますけれども、専門家の立場からお教えをいただければありがたいというふうに思います。
  27. 宇都宮健児

    ○宇都宮参考人 マルチ商法規制については、十二条が一番重たい刑罰規制になっていると思いますけれども、私の考え方なんですが、これまで十二条でなぜ摘発できなかったかといいますと、実務法律家の観点からいけば、従来の規定は「連鎖販売取引の相手方の判断に影響を及ぼすこととなる重要なものにつき、故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる行為をしてはならない。」というような規定なんですけれども、この「重要なもの」の内容が極めてあいまいなんですね。一般的な行政規制等ではこの程度でもよろしかろうと思いますけれども、刑罰規定はやはり構成要件の中身がかなり厳格でないとだめなのではないか。そういう場合に、この十二条違反摘発する場合に「重要なもの」が明らかになっていない段階では、なかなか十二条違反で逮捕、起訴するというのは厳しかったのではないかと思います。  その関係で、今回はその重要な事項についての具体的例示が十二条一項の一号から五号まで規定されておりますので、こういう内容について「故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる行為をしてはならない。」ということがあった場合は、この適用がはっきりやりやすくなるのではないかと思っておりますので、今回の改正は、そういう面で十二条違反摘発を容易にしているのではないかと思っております。  それから、これについては罰則規定が適用されますので、当然直罰規定であるというふうに考えております。
  28. 佐藤泰介

    佐藤(泰)委員 どうもありがとうございました。
  29. 甘利明

    甘利委員長 次に、吉田治君。
  30. 吉田治

    ○吉田(治)委員 各参考人の皆さん、出席をいただきまして、また得がたいお話をしていただきまして、本当にありがとうございます。新進党の吉田治でございます。  この俗に言うマルチ商法並びに電話勧誘法の参考人のお話を聞いておりまして感じる点は、やはりマルチの商法というのは、どこかカルト宗教というのですか、そういうふうな部分に非常に似ているのではないかなという感じもいたしましたし、また、そこへ集まる、そこで何かいいことがあるだろうというふうに思ってしまうこの社会、そして教育というふうな問題、これは私は、この一つの法案だけでこの問題が決して解決することがない、大きくて根の深い問題ではないかなということを、考えを新たにいたしました。  やはり、日本の社会、小さいときから勉強、勉強だ。勉強できないやつは落ちこぼれだ。できる人間はそれ以外のことは覚えない。ですから、私ども子供時分は、私どもは小さな町工場をやっておりましたから、母親から、実印というもの、印鑑というものがいかに大切か、それを押すことによってどういうことが起こるかということを小さいときからずっと教え込まれておりましたが、今の子供たち、そういうことは多分教えられずに、そんなことをする暇があれば単語の一つでも覚えろと。そして、それに落ちこぼれた子たちは、今度は金もうけだと。学歴がだめならお金で価値判断をしようと。しかも、この価値判断のお金もうけの仕方が、昔よく言われました、額に汗をしてお金もうけをしょうというのではなく、連日テレビでも出ておりますように、住専の問題の大阪の某不動産業者のように、借りたら借りた者の勝ちだ、何億円という金額だ、そして、失敗すれば国が後の面倒を見てくれる。どこかおいしい話があるはずだよ、おいしい話が絶対あるはずだ、この世の中。そういうところに忍び寄ってくるのがこのマルチというふうなものではないかなという感じもいたしますし、私は、井関理事長さんには申しわけありませんが、電話勧誘というものもそういう一部分があるのではないかなという感じを強くいたしております。  その中におきまして、先ほどの委員の質問の中で、いいマルチであるとか悪いマルチであるとか、ビジネスチャンスが云々というふうな言葉が言われましたが、私個人といたしましては、幾ら年商三兆円の産業であろうと、そこへ従事される方が二百万人であろうが、これほど問題の多い産業というふうなものを、産業育成だ、そこへ働く人たちが、女性の社会進出だとか、ビジネスチャンスだという言葉において、たとえ法律規制はされようとも現状のままおくことについては甚だ疑問を感じるし、同僚議員としてそういう発言をなさるということに関しては、いらっしゃいませんが、ちょっと疑問を感じざるを得ない部分は、私は正直持っておるところでございます。  電話勧誘の方に関しましても、井関理事長さんが契約の自己責任だとか中小業者負担が云々と言われますが、現実としてこれほどたくさんの問題が起こっている、しかも法律によって規制をしなければならないという中において、業界の取りまとめ役とされて、クーリングオフのことに関しては書面受領日でなければ事業者負担が云々という言葉であったり、契約の自己責任だと。なるほど契約をなさった消費者の方にも問題があるかもしれませんが、あくまでもそう言い続けるということ、そして、では御自身のやられているこのテレマーケティング協会においてどれほどの自主規制がなされ、その有効性はいかにあるのか。また、その結果として、悪質と言われている業者を、自分たちの仲間であってもそれを公表するという御自身の強い決意、熱意というものはあるのか。それがない限りは、きょう参考人として聞かせていただいたお話は、あくまでも、ああ業者さんの集まりの代表者がそういうふうに言っているねという話にしか私には聞こえないというのは、ある意味で私は、こういう場でそういう話をするのは甚だ残念かと思います。  それで質問でございますが、それぞれ四人の方にいろいろ御質問したい点がございます。  第一点、森嶌先生にお聞かせいただきたいと思います。  消費経済部会部会長としての取りまとめ、本当に御苦労さまでございました。私、個人的なことを申していかがかと思うのですけれども、この部会に参加されておりました早稲田大学法学部鎌田薫教授というのは私のゼミの先生でございまして、十数年前に教えていただいた先生が原案をつくられて参加された法案を、こうして私ども立法立場審議させていただくというのを、非常に感激と感動を持ってさせていただいているのですけれども、十数年たって、やはり十数年前に先生が想像もされることはなかったような問題が、今度参加されて、こういうふうにさまざま起こってきた。そして、私は、この全体の流れの中で一つのキーワードがあると思うのです。  それは、規制緩和と自己責任、私どもメモをとらせていただきまして、さまざまな部分で規制緩和、自己責任という言葉が出てまいりました。井関さんの契約の自己責任、もちろん、森嶌先生が言われた規制緩和との兼ね合いがあってねというお言葉、そして、役所の書類等を見ておりましても、さまざまな部分で自己責任原則という、この辺について、取りまとめなさった段階でどうお考えになられたのか。このマルチ商法というもの、そして電話勧誘というものの中において、自己責任というものを御自身どういうふうにお考えになったかということを、私はまずお聞かせいただきたいと思います。  また、消費者の代表として堺次夫さんにおいでいただいておりますが、私は、先ほど申し上げましたように、これは非常に大きく教育の問題というのですか、どれほど皆が知っているか。先ほど参考人の方で中高から教えていただいた方がいいというふうなことを申されましたけれども、では、具体的に消費者啓発活動についての御自身のお考えというもの、そしてまた、堺参考人は改めてその自己責任原則というものをどういうふうにとらえられているのか。そして最後に、先ほどからも質問の中で出ておりました若年層、老人層、俗に弱者と言われている人に被害が大きい。では、その人たちへの消費者教育と言っていいのかどうか、それについてどういうふうにお考えなのか、お聞かせいただきたいと思います。  また、業界団体といたしまして井関理事長さん、先ほどの私の初めの話の中でも申し上げましたように、では、業界団体としてこれからの自主規制というもの、その内容、そしてその有効性というもの。協会に参加されている方々へのこれからの周知徹底はもちろんですけれども、アウトサイダーと言われている人たちの加盟の促進であるとか、その必要性について述べていただきたいと思います。  そして最後に、弁護士の立場から宇都宮先生に、日弁連が提出されております本法に関する要望書に比べましての本改正案に対する評価と、これはこういう機会で申し上げるのはいかがかと思いますけれども、先生は最後、割賦販売法三十条の四のお話をなさいました。私、今まで聞いたことがございません。なぜそんな大事なことが、これは責めているわけじゃございませんけれども、日弁連として、そういう要望書の中に入っておったでしょうけれども、言い方がいいかどうかわかりませんが、私たちに直接的に会って説明をなさるとか、またそういうふうなことを情報として流す努力というのですか、これは大変日弁連さん、いろいろな努力はされていますけれども、その辺の部分が、日弁連の組織というか形態というか、今までのやり方、いきさつというのがそういうふうなやり方なのかわかりませんけれども、ちょっと食い足らないというのですか、ちょっと足らないのかなという感じを私はいつも感じておりますが、その辺についてのお考え。  そして、指定商品制排除のことを随分言われましたけれども、その辺についてのお考えをもう一度。そして、先生の方からマルチ商法についてはお考えが述べられませんでしたけれども、何か一点か二点、マルチ商法についてこれはぜひともというのがございましたら、お聞かせいただきたいと思います。  それから、忘れておりましたが、森嶌先生のお話の中で、ファクスですとかパソコン、俗に言うニューメディア、マルチメディアは不意打ち性が低いからということで、今回この改正案の中には取り入れなかったということですけれども、もしも差しさわりのない範囲で、その辺の議論、どういうふうな議論があったのか。また、例えば今後そういう何かの方向性を持とうというふうな議論もあったのかどうかを含めて、お答えをちょうだいできればと思います。  時間が限られておりますので、簡潔にお願い申し上げたいと思います。
  31. 甘利明

    甘利委員長 質問が多岐にわたりますが、簡潔におまとめをいただきたいと思います。
  32. 森嶌昭夫

    森嶌参考人 森嶌でございます。  私は、自己責任ということを消費者保護の場合に余り強調することは適当でないと思います。答申の中でも、別に自己責任なんだということを強調しているわけではございませんで、自己責任のもとに消費者はみずから商品、サービス等のこれこれを判断していくことが求められているが、非常にいろいろなものが多様化していて、したがって、規制緩和といっても、少なくともこういうような規制は必要であるということを申し上げているわけであります。その意味では、何から何までおんぶにだっこというそれが消費者保護だとは私は思っておりませんけれども、他方で、自己責任だから消費者がみんなしょうべきだという趣旨のことは、少なくとも消費者保護の分野では認められるべきではないというふうに考えております。  次に、ファクスパソコンのお話も多分私に当てられた質問だと思いますが、ファクスについて不意打ち性というのは、入ってくるという意味ではある意味では不意打ちですけれども、それによって心の準備ができないうちにというようなことはないと私は思うのです。パソコンにつきましては、これは今後どんどん双方向性でEメールなどで出てくると思いますが、今のところはそれほど大きなクレームがない、多数のクレームがないという意味で見送ろうということでございまして、同時に、先ほど申しましたように、このファクスとかパソコンについては将来どういうふうに推移していくかを注目しているということでございます。  そういう内容の審議をいたしました。
  33. 井関雅夫

    井関参考人 自己責任と協会の指導についてお答え申し上げます。  ただいま先生から、業界としては自己責任を主張しているのではないかという意見ですけれども、私ども一般論としては自己責任の考え方も当然あってしかるべきだなということを申し上げておりまして、協会として、今まで電話勧誘について何ら法律がなかったわけでございますから、新しい法律をつくるときに、まず規制かなということからいろいろ意見が始まったわけであります。その過程で、一般論としての意見もさることながら、今日社会問題化されている問題について、悪質なものをいかに排除していくかを前向きに取り組んでいこうということで今回の法案に臨んだということを先ほど申し上げた次第でございまして、法案の成立に何ら異論はないわけでありまして、その点、まず誤解がないようにお願いしたいということが一つ。  それから、協会の指導につきましては、あくまで自主的な団体でございますから、協会に加盟している会社についてはそれぞれの有効性はあるものの、アウトサイダーについてはやはり法律的な効力というのは当然ないわけであります。しかしながら、今後の問題もありますので、協会としても、任意団体から法人化ということも含めて、もう少し指導力を増すような、具体性を持った行動がとれるように検討していかなければならないということで、現在議論検討を進めているところでございます。  以上でございます。
  34. 堺次夫

    堺参考人 消費者啓発でございますが、国や地方自治体ばかりでなく、まず隗より始めよで、例えばマルチ商法の場合、現在、企業の中の若手社員が侵食されているわけでございますから、企業においてもこういった啓発を行っていただけないものかと思います。  これにつきましては、通産省の商務流通審議官名で、平成五年から、企業の若手社員に対する消費者教育をやってほしいという要請書が経団連及び日商に対して四年連続出ております。大手企業においてはそういったことを実施しているところはございますが、ただ、日商に回った文書はそのまま下の都道府県レベルの商工会議所に回ったのみで、その先はほとんど動いていないと聞いておりますので、このフォローアップ、事後点検が必要かと思います。  それから、高齢者及び主婦、いわゆる社会的弱者層への消費者教育、啓発も大事な問題でございますが、もう既に論議になっておりますけれども、特にこの中で必要なことは、高齢者は今後どんどんふえていきます。長生きされる方も多いのですが、中には痴呆症ぎみになられる方もいらっしゃいます。そういった方々の法的契約が、民法四条、つまり親権者の同意のない未成年者の契約は取り消すことができるというように、老人の契約においてもそういったことが必要となるのではなかろうかというように考えます。  それから、自己責任と消費者保護の問題でございますが、規制緩和ということが唱えられるたびに、我々実は戦々恐々としております。規制緩和が行われた場合、一番まずしわ寄せが来るのが社会的弱者層、消費者層でございます。  果たして、企業消費者は対等であろうか。私は対等ではないと思います。特に、だましのテクニックを自在に操る悪徳商法業者消費者が、これが対等であろうはずがございません。自己責任を消費者に求めるというのであれば、その前に悪徳商法業者一斉摘発悪徳商法業者がみずからの行状をディスクロージャーするといったことが必要になろうかと思います。
  35. 宇都宮健児

    ○宇都宮参考人 今回の法改正についての全般的な評価については、私は冒頭で申し上げたとおり、被害が激増している現状において緊急な法改正という面で一定の評価をしております。  ただ、全体的な、先ほどから出ている規制緩和とか消費者の自己責任等の関係で言えば、今堺参考人がお話ししたとおり、消費者は経済力、組織力、情報力等において圧倒的に企業、事業者と格差があります。これを対等にしないで自己責任を追求するのは、不公正、不平等であると思っております。  その点を対等にするためには、私は、規制緩和の流れは一つの流れになっていますけれども消費者に権利を与えよ、武器を与えよと。この間のPL法とかそういうのも一つですけれども、例えば情報公開法もまだ制定されておりません。そういうことも重要ですし、今回、日弁連意見書にも提案しておりますけれども、数々の業者違反行為禁止行為は、処罰とか業務停止命令、行政処分等の規定があるのですけれども、私は、何百万とある業者について行政が一々口を出して、いい業者と悪い業者を区分けして処分するのは、これは大変なことだと思います。日弁連は、違反行為があった場合は消費者契約取り消し権を認めよということをやっております。これの方が違反行為を取り締まる効果が上がるのではないかと思っておりますので、参考にしていただきたいと思います。  それから、割賦販売法の問題、初めて聞かれたということですけれども、その点については日弁連の意見書の最後にも書いております。それと、さらに、昭和六十三年に訪問販売法改正されたときに、このときは訪問販売指定商品役務とかサービス、権利が入っていなかったのでこれを追加したわけですけれども、このときに日弁連は、割販法も同時に変えるべきであるという意見書を再三出しております。そういう点についても、日弁連の努力不足は認めるわけですけれども国会の議員の方々も、もっと市民、消費者の目線に立って、立法府ですので議員立法はどんどんやっていただきたいと思っております。  それから、マルチ商法につきましては、私自身はもっと罰則を強化できないかということを考えております。私も、産構審の審議会のメンバーだったのですけれども、そこで警察庁の方が報告されたマルチの被害摘発事例によりますと、被害額が数百億を超えているのは珍しくない。  例えば、ある業者については被害人員が二十八万人、六百五十億円、それからある業者被害人員が十七万人、二百二十七億円、ある業者は九万五千人の被害人員で二百四十億円の被害が出ています。これらの業者の処罰が罰金五十万円で済んでおります。したがって、これはマルチ業者については痛くもかゆくもないわけですね。だから、こういう業者については、警察庁の報告では再犯が多いと、同じことを、やり得であると。  したがって私としては、罰則について、刑罰についても懲役刑ももう少し上げていいのではないかと思いますし、少なくとも罰金刑につきましては、独禁法とか不正競争防止法ではもう一億円クラスの罰金になっていますので、その点を改正していただいて、一度摘発されたらもう二度とやらないと、再犯を抑止するような効果のある罰則を考えられたらどうかと思っております。  以上です。
  36. 吉田治

    ○吉田(治)委員 各参考人、ありがとうございました。  宇都宮参考人の日弁連のことですけれども、残念ながら昭和六十三年は私どもは議員になっておりませんので、その当時のことは私、書面で知る限りでございましたので、絶えず国会も議員がかわっているということだけはよく認識をしていただきたい。弁護士さんのように、一度なった限りずっと続けられるというものであればいいのですけれども。  最後になりまして、森嶌参考人に一つだけお聞かせいただきたい。  今堺参考人のお話の中で、弱者、高齢者という話、特にこのごろ痴呆老人という問題が出てきておりまして、消費者問題の中における痴呆老人というふうなこと、今も問題ですけれども、これはますます問題になっていくのです。審議会の中で、その件に関して、この改正案のみであってもいいですし、それ以外でもそういう議論があったのかどうか。また、もしも御自身の御意見というものがあればお聞かせいただきたいと思います。
  37. 森嶌昭夫

    森嶌参考人 高齢者の問題につきましては、これは全然別の審議会でございますが、法制審議会の民法部会で成年後見についての審議を開始することになっておりまして、今準備を進めております。  私は、法制審議会の委員でもあるわけですが、これは電話勧誘等だけではなくて全般の問題にかかわりますので、産構審の、この審議会では特に議論をいたしませんでしたけれども、当然ほかのところでもっと一般的な審議が開始されるということは前提に考えております。  私自身は、これからの問題は、成年後見というようなものをどうするかということだというふうに認識しております。
  38. 吉田治

    ○吉田(治)委員 各参考人の皆さんありがとうございました。これで終了させていただきます。
  39. 甘利明

    甘利委員長 次に、吉井英勝君。
  40. 吉井英勝

    ○吉井委員 参考人の皆さんには、きょうはお忙しいところどうもありがとうございます。  私は、宇都宮参考人にお伺いしたいと思うのですが、先ほどもお話に出ておりましたけれども、自己責任原則ということになりますと、これはやはり業者の方の持っている情報量が圧倒的に多くて、その情報がよく提供されるかどうか、それによって消費者情報の受け手側の方がきちんと判断されるかどうかという点がやはり非常に大事な点だというふうに思うわけです。  それで、法律に明記するという部分と、その法律を実際にどれだけ積極的に活用したり運用していくかという、その両面からかかわる問題として少し伺いたいと思うのです。  電話の場合ですと、相手も見えないし商品ももちろん見えないわけですが、そういう中で、やはり情報の公開とか提供の義務づけといいますか、一つはそこが非常に大事ではないかな。もちろん、虚偽の情報が許されないのは当たり前ですが、不十分な情報ではこれは消費者側は判断できません。ですから、ここのところをどういうふうに義務づけて実効あらしめるかという点、これが一つお聞きしたい点です。  それからもう一つ、それに関連してやはり問題になるのは、特定の商品とか役務だけにとどまらないで、これはすべての商品役務消費者に十分情報が提供されていく、そういう点が必要ではないかという点で、この点を二つ目に伺いたいわけです。  それから今度、消費者の側になりますと、情報の量の面で保証されないといけないということとともに、その周辺の情報ですね。例えば化粧品について、化粧品の情報だけではなしに、化学の情報になりますと余り専門的に走り過ぎると逆に情報量が多過ぎて困るということもあるかもしれませんが、やはり適切で必要な周辺の情報がきちんと保証されるといいますか、その辺も必要ではないか。そして、そういう情報を受けて、検討し判断する十分な時間、期間というものがやはり保証されなければいけないのではないか。そういう点では、いつからクーリングオフが始まるかという問題とともに、どれだけの期間が本当のところ必要なのかという点で御意見を伺いたいと思うわけであります。  そしてもう一つは、そういったことを前提とした上で、公の機関として果たすべき役割とか強化していかなければいけないものについて、消費者問題に日弁連でずっと取り組んでこられた中で感じておられることなども含めて、お考えをお聞かせいただきたいと思うのです。
  41. 宇都宮健児

    ○宇都宮参考人 情報提供につきましては、今回の訪問販売法改正案では書面交付義務を課しているわけですけれども、これは販売業者が申し込みを受け、あるいは契約を締結したときは遅滞なく契約書面を交付しなければいけないということで、契約締結後でもよいことになっております。  日弁連等で検討した際の意見は、先ほどの日弁連意見書でまとめておりますけれども、少なくとも業者がどういう商品販売しようとしているのか、どういう契約を締結しようとしているのか、事前に業者書面を交付すべきであるということで、みずから販売しようとしている商品あるいは商品の中身、その代金、支払い方法等について事前の書面交付義務を課した方がいいのではないかというふうに思っております。  それから、こういう苦情が多くなるに従って、消費者としては自分が相手になっている業者がちゃんとした業者かどうかということが非常に心配になると思います。当然、電話ですと見ず知らずの業者ですし、多くは余り名前も聞いたことのない業者ではないかと思うのですね。そういう業者について、消費者センターとか国民生活センター等でかなり情報を持っていますけれども、それを、情報提供をきちっとやられるようなシステムをぜひつくられたらどうか。  もちろん、私たち弁護士が被害救済を行う場合でもそういう情報提供をしていただきたいと思うのですけれども、ところが今の業者の氏名公表が非常に制限的になっておりまして、なかなか悪徳業者について、最終的に警察等で摘発された段階では明らかになっておるようですけれども、事前の業者情報がなかなか消費者等に提供されないということになっております。あるいは裁判等の資料でもなかなか使いにくい。これは全般的な、国の持っている情報についての情報公開法の問題と絡んでくると思いますけれども情報公開法をまつまでもなく、こういう消費者に必要な情報については積極的に国が提供するようなシステムづくりが考えられないかということを考えております。  それから、先ほどの公の機関としてということですけれども、非常にこの点で重要なのは、消費者の自己責任を言うからには、対等な立場に立ち得るだけの消費者教育が不可欠である。その点で、今の学校教育なんかで十分になされているのかどうか。抽象的な知識でなく、もっと実践的な教育をやられたらどうか。アメリカ等の消費者教育の現場を私は調査したこともあるのですけれども、アメリカなんかでは、例えば子供の買ういろんな商品について、不正な商品あるいは欠陥商品があったら小学校とか中学校の子供自身が公正取引委員会に告発する、そういう手続を教えているのですね。そういうようなことをやる必要がある。あるいは、トラブルが生じた場合は消費者センターの存在とかあるいは弁護士会の相談センター、こういう情報は当然のごとく教えるべきだろうと思いますけれども、余りにも日本の教育は抽象的な理念教育になっているのではないかという点が一点です。  それと、先ほどお話ししましたように、日本においては圧倒的に消費者企業、事業者が対等でない。その辺の権利の確立なくして規制緩和とか自己責任だけを強調されると、ますます消費者被害がふえていく、弱者は泣き寝入りしていくということになりますので、その辺についてもぜひ国会等で十分検討していただけたらと思っております。
  42. 吉井英勝

    ○吉井委員 今もう二つお聞きしておいたのですが、情報を広く公開させていく、義務づけていったりする、その取り組みの中で、特定の商品役務だけに限らないで、すべてのものについて、それも周辺情報も含めてできるだけ広く知らされていくということが消費者保護という点では大事ではないかと私は思っているのですが、その点と、もう一つは、量的に保証されるだけではなしに、情報を受けた側がよく検討もすれば自分でよく判断できる、その期間が保証されなければいけないという点で、先ほどクーリングオフの始まりの時期をどうするかという点で御意見があったのですが、大体どれぐらいの期間は少なくとも保証されるべきではなかろうかという点を、これまで扱ってこられた相談の事例などにあわせて、何かお考えがあればこの機会に伺っておきたいと思うのです。
  43. 宇都宮健児

    ○宇都宮参考人 あらゆる商品についての情報が提供されるべきであるということは、先生のおっしゃるとおりだと思います。  それから、日弁連の基本的な考え方なのですけれども、そもそも訪問販売法の前回の改正のときも指摘したのですけれども、こういう訪問販売法等について指定商品制を維持していること自体が問題があるのではないか。まず全体の商品に網をかぶせて、その上で例外的なものを法律で除くというような形にすべきであろう。そうしないと、いつ新たな商品が生み出されて、そのことがトラブルになって消費者被害をこうむるかわからないというふうに考えております。  それからもう一つは、クーリングオフ期間的なことですが、少なくともクーリングオフの冷静に考えられる前提としては、まず自分がやる契約の中身とかあるいは自分が購入しようと思っているサービスの内容、代金、こういうことについて当然よくわかった上で冷静に考える期間を置かなければいけないので、その点はもう再三私の方でお話ししているとおりに、契約内容を確認してからクーリングオフを進行させるべきだ。それから、期間的には今回も八日間ということになっていますけれども、今までの私自身の経験からいえば、八日間ぐらいでもいいかなと思いますけれども、できればもう少し、二週間程度、今マルチ商法は二週間となっていますけれども、その程度あった方がいいのではないかなというふうに考えております。
  44. 吉井英勝

    ○吉井委員 同様のことについて、マルチについても伺っておきたかったのですが、商品とともに組織そのものについて情報がよく知らされないと消費者はなかなか判断できないと思うので、その点での情報の公開の義務づけとか、あるいは公的な機関がどれだけ消費者情報を提供していくかというふうな問題について堺参考人の方から御意見を伺って、時間が参りましたので、私の質問を終わりたいと思います。
  45. 堺次夫

    堺参考人 十二条に、禁止行為、重要事項告知義務がございます。今度は事細かく一応柱が立てられました。それに商品であるとか特定負担、特定利益の内容といったものが載っているのは、これはある意味では当然でございまして、その最後の項に、いわゆる入会に際しての判断に影響を及ぼす重要な事項ということになっておりますが、これにその内容をぜひとも加えていただきますよう、通産省には通達を出してほしいわけです。つまり組織の全加盟者が幾らいて、ほぼピラミッド型になった構造は何段階あって、その各段階の加盟者それから実働人数それからその地位における収支の現実、こういったものを全部公開した場合は、これは幾ら何でもそうそう入る人はなかろうと思うわけです。  実は、今回の新しい法案に一号から五号でございましたか、これがない時代においても、昭和五十二年、五十三年には第十二条違反摘発があるのです。そして送検もなされ起訴もなされ、東京地裁及び宮崎地裁においては判決が出ております。当然のことながら有罪判決でした。そして被告側は控訴しなかったので刑が確定したことがありますので、私は今回一番望むのは、検察庁当局の姿勢にかかってくる、検察当局の姿勢がこの法案の成否を決めると言っても過言ではないと思っております。
  46. 吉井英勝

    ○吉井委員 ありがとうございました。終わります。
  47. 甘利明

    甘利委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位におかれましては、お忙しい中を長時間御出席を賜りまして、ありがとうございます。また、貴重な御意見をお述べいただきました。まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、厚く御礼を申し上げます。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午前十一時三十九分散会