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1996-06-05 第136回国会 衆議院 厚生委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年六月五日(水曜日)     午前九時三十三分開議 出席委員   委員長 和田 貞夫君    理事 衛藤 晟一君 理事 木村 義雄君    理事 長勢 甚遠君 理事 青山 二三君    理事 石田 祝稔君 理事 柳田  稔君    理事 横光 克彦君 理事 荒井  聰君       伊吹 文明君    稲垣 実男君       狩野  勝君    熊代 昭彦君       近藤 鉄雄君    田中眞紀子君       高橋 辰夫君    竹内 黎一君       根本  匠君    堀之内久男君       持永 和見君    保岡 興治君       山下 徳夫君    赤松 正雄君       粟屋 敏信君    大野由利子君       北村 直人君    久保 哲司君       小池百合子君    高市 早苗君       福島  豊君    桝屋 敬悟君       山本 孝史君    網岡  雄君       五島 正規君    森井 忠良君       枝野 幸男君    岩佐 恵美君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 菅  直人君  出席政府委員         厚生大臣官房長 山口 剛彦君         厚生大臣官房総         務審議官    亀田 克彦君         厚生省健康政策         局長      谷  修一君         厚生省保健医療         局長      松村 明仁君         厚生省薬務局長 荒賀 泰太君         厚生省保険局長 岡光 序治君  委員外出席者         人事委員事務総局         職員局職員課長 佐久間健一君         文部省高等教育         局医学教育課長 寺脇  研君         参  考  人         (自治医科大学         学長         国立国際医療セ         ンター名誉教授         東京大学名誉教         授)      高久 史麿君         参  考  人         (聖マリアンナ         医科大学薬理学         主任教授)   小林 眞一君         参  考  人         (日本薬剤師会         副会長)    高橋 則行君         参  考  人         (東京医科歯科         大学助教授)  片平 洌彦君         厚生委員会調査         室長      市川  喬君     ――――――――――――― 委員の異動 六月五日  辞任        補欠選任   鴨下 一郎君     小池百合子君   田邊  誠君     網岡  雄君 同日  辞任        補欠選任   小池百合子君     鴨下 一郎君   網岡  雄君     田邊  誠君 同日  理事鈴木俊一君同日理事辞任につき、その補欠  として長勢甚遠君理事に当選した。     ――――――――――――― 六月五日  療術の法制化に関する請願藤本孝雄紹介)   (第二七六一号)  同(原田昇左右紹介)(第二七九二号)  同(船田元紹介)(第二七九三号)  同(船田元紹介)(第二八〇九号)  同(松本龍紹介)(第二八一〇号)  同(近江巳記夫紹介)(第二八五四号)  同(小泉純一郎紹介)(第二八五五号)  同(河村建夫紹介)(第二八八四号)  同(小泉純一郎紹介)(第二八八五号)  聴覚障害者に対する文字放送内蔵型テレビ給付  に関する請願中谷元紹介)(第二七六二号  )  同(荒井聰紹介)(第二七九四号)  同(大野由利子紹介)(第二七九五号)  同(大出俊紹介)(第二八五六号)  同(塩谷立紹介)(第二八五七号)  同(山口那津男紹介)(第二八五八号)  同(栗本慎一郎紹介)(第二八八六号)  同(田中昭一紹介)(第二八八七号)  同(野田実紹介)(第二八八八号)  肝がん検診制度化ウイルス肝炎の総合的な  対策に関する請願赤松正雄紹介)(第二七  七二号)  同(荒井聰紹介)(第二七七三号)  同(粟屋敏信紹介)(第二七七四号)  同(伊藤公介紹介)(第二七七五号)  同(石田祝稔紹介)(第二七七六号)  同(衛藤晟」君紹介)(第二七七七号)  同(小渕恵三紹介)(第二七七八号)  同(木村義雄紹介)(第二七七九号)  同(北村直人紹介)(第二七八〇号)  同(近藤鉄雄紹介)(第二七八一号)  同(笹川堯君紹介)(第二七八二号)  同(田邊誠紹介)(第二七八三号)  同(高市早苗紹介)(第二七八四号)  同(竹内黎一君紹介)(第二七八五号)  同(戸井田三郎紹介)(第二七八六号)  同(根本匠紹介)(第二七八七号)  同(福島豊紹介)(第二七八八号)  同(堀之内久男紹介)(第二七八九号)  同(持永和見紹介)(第二七九〇号)  同(山本孝史紹介)(第二七九一号)  同(伊吹文明紹介)(第二八一一号)  同(白沢三郎紹介)(第二八一二号)  同(鈴木俊一紹介)(第二八一三号)  同(田中眞紀子紹介)(第二八一四号)  同(柳田稔紹介)(第二八一五号)  同(青山二三紹介)(第二八二四号)  同(熊代昭彦紹介)(第二八二五号)  同(土肥隆一紹介)(第二八二六号)  同(五島正規紹介)(第二八三七号)  同(中島武敏紹介)(第二八三八号)  同(久保哲司紹介)(第二八八九号)  同(森井忠良紹介)(第二八九〇号)  男性介護人に関する請願外七件(井出正一君紹  介)(第二八二三号)  重度心身障害者とその両親またはその介護者及  び寝たきり老人とその介護者が同居入所可能な  社会福祉施設実現化に関する請願外七件(井  出正一紹介)(第二八三六号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  理事辞任及び補欠選任  薬事法等の一部を改正する法律案内閣提出第  七六号)      ――――◇―――――
  2. 和田貞夫

    和田委員長 これより会議を開きます。  理事辞任の件についてお諮りいたします。  理事鈴木俊一君から、理事辞任申し出があります。これを許可するに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 和田貞夫

    和田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  引き続き、理事補欠選任の件についてお諮りいたします。  ただいまの理事辞任に伴い、現在理事が一名欠、員となっております。その補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名するに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 和田貞夫

    和田委員長 御異議なしと認めます。  それでは、理事長勢甚遠君を指名いたします。      ――――◇―――――
  5. 和田貞夫

    和田委員長 この際、去る五月二十八日当委員会に御出席を願った松下参考人から、五島委員に、対する答弁中、ミドリ十字から内藤医学研究振興財団への寄附金の額、「七億二千二百七十万」を「二億二百七十四万三千円」に訂正願いたいとの申し出がありましたので、御報告申し上げます。      ――――◇―――――
  6. 和田貞夫

    和田委員長 内閣提出薬事法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  本日は、本案審査のため、参考人として自治医科大学学長国立国際医療センター名誉教授東京大学名誉教授高久史麿君、聖マリアンナ医科大学薬理学主任教授小林眞一君、日本薬剤師会会長高橋則行君及び東京医科歯科大学助教授片平例彦君、以上四名の方々に御出席をいただいております。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中にもかかわらず御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。本案につきまして、それぞれのお立場から忌揮のない御意見をお述べいただき、審査参考にいたしたいと存じます。  次に、議事の順序について申し上げます。  御意見は、高久参考人小林参考人高橋参考人片平参考人順序により、お一人十五分以内でお述べをいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。  なお、発言する際は委員長の許可を受けることになっております。また、参考人委員に対して質疑することはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。  それでは、まず高久参考人にお願いいたします。
  7. 高久史麿

    高久参考人 高久でございます。  この場をおかりして、意見を申し上げたいと思います。  これは申すまでもないことでありますけれども、すべての医薬品は基本的に作用副作用の両方を持っておりまして、作用副作用を上回っているときに、それが医薬品として採用され、臨床現場で使われているわけであります。したがいまして、薬を使う場合には、あるいはその採用に際しましては、常に副作用に関して注意を払わなければならないことは当然のことであると思います。  このような副作用防止するためにはどういうことが必要かと申し上げますと、まず第一に、製薬企業における新薬開発新薬臨床試験厚生省における審査市販後の副作用調査などについて、最大の注意を払わなければならないと思います。  そのためには、まず、製薬企業治験の質の向上を目指して、その企業としての責任を明確にすること、さらに、専門家活用についても留意すべきであると思います。  例えば、欧米製薬企業に比べまして、日本製薬企業医師メディカルドクターの数が非常に少ない。これは、企業責任というよりは、むしろ医師が余り製薬企業で働きたがらないという問題点がありますけれども、今後は、MDが積極的に製薬企業に入って、そこで、企業開発する薬の質の向上、さらに、薬の治験向上に努める必要があると考えております。  次に、治験というのは薬を試す、患者対象とする検査でありますけれども、その治験の質の向上に関しまして、まず、従来は、製薬企業患者さんを対象にして新しい薬の治験を始めるときには、厚生省業務局審査官に届けまして、三十日たちますと自動的にそれを始めることができるというふうになっておりました。  しかしながら、例えばアメリカ薬務局に当たるFDAでは、三十日以内にそれを審査して、問題点がある場合には訂正あるいはキャンセルする場合もあるというふうになっておりまして、今回の改定では、従来のように申請だけではなくて、申請して三十日以内に審査をして、問題点がある場合には訂正を要求するというふうに変わっておりますので、その点に関しては望ましい改正ではないかというふうに考えております。  それから、治験に関する相談とか指導体制を整備する必要があると私は考えております。  これも日本アメリカの相違でありますけれども、例えばアメリカFDAの場合には、企業治験を始めますときには、企業担当者治験責任者それからFDA担当者の間でいろいろ討論をいたしまして、FDA治験に対して積極的に相談に乗るという形になっております。  しかしながら、日本では、従来、先ほども申し上げましたように、治験の届けを出しますと、その後、治験のすべての経過は治験担当する医師製薬企業に全く任されていまして、すべての治験が終わった後で中央薬事審議会データを提出して、中央薬事審議会採用の可否を決めるという体制になっておりました。  そういたしますと、非常に膨大なお金と労力をかけて治験を終わって、その後に中央薬事審議会でノーと言われますと、企業はその間の努力あるいはお金をすべてむだにしなければならない。そういう体制に対しまして、従来から、特に最近では、外国製薬企業日本に随分入っておりまして、そういう企業から、FDAと余りにも違い過ぎるではないかという不満がありました。そういうことだけでありませんで、私は、やはり治験の質を向上するためにはある程度相談に乗る必要があるのではないか、そういうふうに考えております。  しかしながら、御存じの方が多いと思いますけれども、アメリカFDAあるいはドイツ、フランス、イギリスに比べましても、薬務局審査課人数は、FDAに比べますと四十分の一とか、あるいはドイツに比べましても十数分の一、あるいはイギリスに比べましても十分の一ぐらいというふうに極めて少ない。極めて少ない数の人員相談とかあるいは指導まで行うということは、ほとんど不可能であるというふうに考えております。  そういう意味で、私ども従来から、もう少し審査課あるいは薬務局担当の人をふやす必要があるのではないか、その中に専門家をふやす必要があるということを考え、かつ申してきておりましたけれども、現在もその考えは変わっておりませんで、厚生省の中の人員の配置がえ、あるいはそれをやっても足りない場合には、むしろお役所全体の再整理ということをして、もう少し国民の生活、特に医療の問題に直接関係する職員をふやす必要があるのではないかと考えております。  しかしながら、これは現実にはほとんど不可能というか、非常に難しい問題であるということは重々承知しておりまして、それを補うために、今回の改正では、正確な名前は知っておりませんけれども、副作用機構という外郭団体に近い機構がその調査あるいは相談関与をするというふうに改正されたと考えております。  私は、薬の認可はもちろん最終的には厚生省担当の課あるいは局が責任を持つべきであると考えておりますけれども、しかしながら、現在の状況では、例えば今回の改正のように、副作用機構がある程度の調査あるいは相談に乗るという体制も仕方がないのではないかと考えております。  しかしながら、その場合に、副作用機構が本来行うべき、薬剤によって起こった被害者救済ということも十分に行うべきでありまして、従来の被害者救済に加えて、今回の改正のように、ある程度、新薬治験に関する調査あるいは相談をするということも、現在の状況を考えるとやむを得ないのではないかというふうに、次善の策としてよいのでまないかと考えています。  ただ、副作用機構が行うことについての問題点もあります。しかしながら、例えば、FDAでは相談調査あるいは最後の認可まで行っておりますけれども、相談に乗る厚生省が同時にまた認可をするということも問題点がありまして、むしろ、相談とか調査副作用機構のような第三者が行う方がかえって癒着という問題が起こらなくていいのではないかとか、あるいは、お役所ですと、どうしても二年とか三年で担当の人がかわって本当の意味専門家はなかなか育たない、それが第三者機関ですと、同じところにある程度同じ人が勤めましてベテランとなるということができるとか、あるいは、必要に応じて審査料相談料などを上げることによって人数をふやすことができるとか、あるいは、従来からコントローラーなどとして治験に関係をしてきた、あるいは治験についての経験の深いMDなどを顧問として、ある程度の数の人を相談に乗ってもらうことができるとか、そういう柔軟な体制ができるという点ではいいのではないかと考えております。  次に、もう一つ重要なことは、当然のことでありますけれども、治験実施中に起こった重篤な副作用情報収集と、それに対する対応を強化する。  これも今回の改正に盛り込まれていると思いますけれども、これは副作用防止ということから考えまして当然のことでありますし、また、治験の途中だけではなくて、治験終了後の、特に市販されてから後の副作用調査とか、起こった場合の迅速な情報収集、さらに、収集するだけではなくて、実際に使っている現場への情報の伝達にもその機構強化するというふうになっておりまして、これも副作用防止するためには極めて有効な方法ではないかと考えております。  以上のほか、今回の改定の中に、有用な、しかも日本で売られていない外国の製品を緊急に輸入することができるという改正になっております。  これは、現在問題になっております血液製剤によるエイズの問題だけでありませんで、医療現場あるいは患者さん、その家族の方が以前から強く望んでいたものでありまして、外国では既に市販されて有効性が証明されているけれども、患者さんの数が少ないとか、あるいは日本製薬企業が商売といった観点から考えて余り乗り気ではないという点で、非常に困ったことがしばしば起こっておりました。しかし、今回、医薬品の特例的な緊急輸入制度ができるということは、医療現場にとっては非常に好ましいことであるというふうに考えております。  その他、いろいろ申し上げたいことはありますけれども、時間が参りましたので、あとは御質問にお答えしたいと思います。  御清聴どうもありがとうございました。(拍手)
  8. 和田貞夫

    和田委員長 ありがとうございました。  次に、小林参考人にお願いいたします。
  9. 小林眞一

    小林参考人 御紹介いただきました聖マリアンナ医科大学小林でございます。  私は、臨床薬理学専門にしておりますので、臨床薬理立場から本日の案件について意見を述べさせていただきます。  臨床薬理とは、薬物治療をいかに合理的に、科学的に行うかという学問分野でございます。患者さんが病院に来る目的は病気の治療を受けに来るわけでございますけれども、現在までの医学教育というのは主に診断学が重視されていたことから、最近では、我が国においても治療学の一分野である臨床薬理学重要性が認識されてきております。  薬物治療を合理的また科学的に実施するためには、臨床使用する薬物についての適正な科学的情報データが必要であります。つまり、薬物治療を合理的に行うためには、新薬開発を科学的適正に実施し、また、臨床的に有用な薬物であるか否かを科学的適正に評価し、臨床使用に当たっては、薬物の適正な情報医師、薬剤師、さらに患者となる一般の人々に提供することが求められております。  本薬事法の一部改正案は、これらのことを念頭に置いて考えられていると理解し、基本的に必要な改正であると考えております。  私は、新薬開発とは、人類の健康を守るための共有の財産である薬物をつくるための研究活動と考えております。この新薬開発のためには、人を対象とした臨床試験が必要となり、倫理性が要求されるわけでございます。  一九六四年に世界医師会で採択されまして、その後何回か改正を加えられましたヘルシンキ宣言というのが、現在、人を対象とした臨床試験実施倫理的規範とされておりますが、このヘルシンキ宣言の序文にも「医学進歩研究成果に基づいているが、これらの研究は一部なりとも最終的には人を対象とした試験によらなければならない」また「学術的な知識を深め、かつ苦しんでいる人々を助けるためには、研究室での試験から得られた成果を人に応用することは必要欠くべからざるものである」と述べられております。  つまり、ヘルシンキ宣言においても、適正な倫理性の配慮のもとに新薬開発等、人を対象とした臨床試験は今後とも人類にとって必要不可欠であるとしております。  しかし、人を対象とした臨床試験では被験者安全性を一〇〇%保証することは不可能であることから、臨床試験というのは治療というよりはむしろ研究的なものであります。実際、我が国においても、臨床試験実施するためにはヘルシンキ宣言で言うところの必須の三条件、一つとして、科学的・倫理的適正な臨床試験実施計画書を作成すること、二番目として、第三者性のある委員会試験実施承認を得ること、三番目として、被験者となる患者から適正な同意を得ること等が必要であり、現状においてもこのとおりの手続で実施されていることから、臨床試験治療ではなく研究的なものであることが御理解いただけると思います。  さて、我が国においては、平成元年厚生省医薬品臨床試験実施に関する基準、GCPを通知し、その後の臨床試験がより科学的・倫理的適正に実施されるようになったことは周知の事実であり、この点は評価すべきことであると考えます。しかし、GCPが施行されて以来、一方で新薬開発にかかわる臨床試験問題点も明確になってまいりました。  さらに最近、「優れた医薬品を少しでも早く世界患者に」をスローガンに、我が国、米国、Euでの医薬品規制八丁モナイゼーション国際会議が精力的に行われており、これら三極での新薬承認申請データの調和が求められております。  また、我が国ではソリブジン事件エイズ訴訟等医薬品に関する社会的問題も発生しております。  このような我が国医薬品を取り巻く状況を考えると、本薬事法等の一部改正案の趣旨である、「製薬企業が果たすべき役割の強化公的関与充実等により、治験から承認審査市販後へ至る総合的な医薬品安全性確保対策」を現時点で考えることは非常に重要であると思われます。  そこで、次に、改正概要について順に意見を述べさせていただきます。  まず最初に、治験充実強化について述べさせていただきます。  今後、我が国でも実施されるICH-GCPによると治験実施最終責任製薬企業であると明記されていること、また、GCPが施行されて以来、医療機関においてもGCP遵守についての体制が整ってきた現状において、さらなる治験質的向上を目指し、製薬企業医療機関GCP遵守を義務づけることは妥当であると考えられます。  しかし、治験研究的性格医療行為であることから、現実医療現場で規定のみでは対処できないこともあると想像されます。  例えば、治験薬薬効評価を科学的に実施するための試験デザインとして、対照群を明確にするためプラシーボの使用が必要であったり、比較する各群の被験者の年齢や病態などに差を生じないために被験者を無作為に割りつけたり、さらに、被験者医師の思い込みによる評価の誤りをなくすため盲検化などが必要です。このような試験デザイン治験に導入することが治験薬科学的薬効評価に必要であることは多くの医師も知っております。  しかし、治験対象となる疾患によっては、これらすべてのことを実際に組み入れて治験計画書を作成することは倫理的問題から困難なこともあります。  また、本来、治療とは患者個人個人によって適切に変えるべきものでありますが、治験などの研究的試験では、信頼性のある科学的データを出すために決められた試験計画を遵守して治験実施しなければ治験科学性は失われます。  このように、被験者安全性にかかわる問題と治験科学性をどこまで調和させ、治験の質を高められるかは治験実施の困難な問題として時として遭遇いたします。このようなときに、今回の改正概要の中にある、公的機関治験に対する相談指導ということが非常に重要な意味があると考えられます。  本改正では、公的機関治験開始前に治験計画についての調査、指示、さらに医薬品機構治験相談助言等業務実施することとなっており、このことは治験を科学的に、倫理的に、また迅速に実施する上で大きな進歩であると評価いたします。  また、今回の改正では、治験中に発生した副作用感染症、さらに危険防止などの問題に対しても、公的機関製薬企業医療機関に対し調査、指示できるようになったことは、治験中の被験者保護立場からは歓迎すべきことであると思われます。  しかし、現在の厚生省薬務局体制は、例えば欧米各国と比較し、明らかにその人員が少なく、今後、医薬品機構等活用によって人員の充足が必要であると考えます。このような公的機関体制充実により我が国治験が今後さらに質的に向上することを期待しております。  次に、承認審査充実強化について述べさせていただきます。  さきにも述べたごとく、GCPを遵守した質の高い治験実施され、科学的に妥当な薬効評価がなされたならば、承認審査はさほど困難なことではないと思われます。今回の改正では、GCP等の基準に沿った承認申請資料の提出を義務づけ、さらに医薬品機構活用してGCP適合性の調査をすることになっておりますが、これも現状ではさして大きな問題となるとは思いません。  ただ、承認審査を外部の審議会にゆだねている我が国現状体制では、たとえ公的機関医薬品機構体制充実強化に努めても、外部の審議会委員一人一人にその姿勢がなくては意味をなさず、今後さらに承認審査の質の向上を図るためには、この点の配慮も十分すべきであると考えております。  昨今のエイズ感染による社会問題を教訓に、今後の対策として、今回の改正では医薬品の特例的な緊急許可がうたわれております。このこと自体に反対するものではありませんし、むしろ賛成いたします。しかし、たとえ特例として許可を与えたものであっても、薬物は本来、生体にとっては有害な作用を引き起こす可能性が十分あり、この点から二次的な健康被害を起こさないためにも、現時点では許可と並行して通常の治験も必要になると考えておるわけでございます。  次に、市販対策充実強化について述べさせていただきます。  医薬品臨床での有効性安全性承認申請までに実施される治験では十分とは言いかねます。なぜなら、承認申請までに実施される治験では治験薬自身の有効性安全性に主眼が置かれ、他の要因はなるべく排除して臨床試験が行われるからです。このことは科学的にもごく当然のことですが、しかし、承認市販されると、臨床では多剤併用がごく当然のこととして行われ、また、高齢者、小児などの特殊患者、肝疾患、心疾患、腎疾患などの特殊疾患を合併している患者さんでも新薬は投与されることになるからです。  つまり、現状では新薬自身の安全性はわかっていても、他の薬物と併用されたときの安全性、また、特殊患者、特殊疾患を合併した患者さんでの新薬安全性については、承認申請時にはさほど情報が多くなく、このことが市販後の健康被害に結びつく可能性も考えられると思われます。  このような観点から、市販後の臨床試験承認申請前と同様に重要であると考えます。  厚生省市販調査実施に関する基準、GPMSPを通知して以来、再評価、再審査のために実施される調査臨床試験が以前に比べて整備されてきたことも事実でありますが、一般的にはまだ、治験薬は危険で、市販後の医薬品は安全であるという単純な誤った概念が広く存在することも事実であると思われます。  私は、現在、大学の審査委員会市販後の調査臨床試験審査にも携わっておりますが、これら市販後の調査臨床試験に関しては、甚だ不十分なものも多く、今回の改正によりGPMSPが法制化され、質的向上がなされることを期待いたしております。  また、薬物相互作用などによる有害作用防止し、たとえ不幸にして相互作用による有害作用が起きた場合も、その再発を拡大しないために、今後の対策としては、薬物相互作用試験をできる限り実施し、科学的なデータを出すとともに、再発拡大を防止するために、相互作用に関する情報医療機関から迅速に収集し、適正な情報として他の多くの医療機関に伝達することが必要であると思われます。  以上、私がかかわり得る分野改正案概要について意見を述べさせていただきましたが、本改正により、医薬品機構活用など公的機関体制強化されることは結構であると思いますが、治験被験者となる一般国民に対して、社会における治験の必要性など、正しい理解を得るための地道な啓蒙活動、また、治験に参加した被験者のメリット等についても、今後、公的機関で真剣にお考えいただきたいと思います。  以上でございます。(拍手)
  10. 和田貞夫

    和田委員長 ありがとうございました。  次に、高橋参考人にお願いいたします。
  11. 高橋則行

    高橋参考人 日本薬剤師会高橋でございます。  本日、私の陳述は、要旨をお配りしてございますので、一応その順に従って意見を述べさせていただきたいと思います。  初めにお断りしておきますが、私自身、この法案改正の引き金となった医薬品安全性確保対策検討会の委員でございますし、その後、中央薬事審議会薬事法改正等特別部会の委員もやっておりますので、原則賛成の立場でお話し申し上げることになると思います。  今回の改正の趣旨は医薬品安全性向上ということを目的としたものでありますから、この観点から考えますと、今回の改正案の骨子であります臨床試験につきましては、医薬品の人に対する有効性安全性評価の第一段階である臨床試験の適正化を図るために、その実施基準であるGCPの遵守が法制化されるということは極めて有意義だと考えます。  殊に、現在、日米EU三極の医薬品審査のハーモナイゼーション国際会議、ICHのGCP案が今ちょうど国内規制の制定を目前にしておりまして、そうした意味では非常に時宜を得た法改正であると考えます。  しかしながら、ICH-GCP案には、三極の国情の違いから、我が国現状とややかけ離れている部分もありまして、国内規制に当たっては、実施可能な具体性と同時に、やはり近未来の展望を踏まえた弾力的な施策運用が望まれるということになります。  本日の参考人には、臨床試験の権威の方あるいは臨床薬事の専門のドクターの方々がおそろいでございますので、余りこの部分については詳しく述べませんが、欧米各国日本臨床試験というものが余り信用されない幾つかの問題点、例えば、インフォームド・コンセントの不徹底、多施設共同試験での施設当たりの症例数の不足、あるいは企業と今までの治験総括医師、病院内のIRB、院内治験審査委員会等の責任分担というものが明確でないこと、それから、試験データの生物学的統計処理に合理性に欠けるものがあり、また学問的に考えまして、評価される論文として余り発表されていないということ、これがやはり諸外国から見て日本治験に疑問を投げかけるゆえんだと思います。こういった面の改正をされることを期待しております。  次に、再審査制度についてでございます。  医薬品副作用というのは、臨床試験でそのすべてを発見することは不可能でございます。これはもう症例数が明らかに不足で、臨床試験というのは大体五百例から二千例ぐらいにとどまっておりまして、まれに起こるとされる〇・一%の副作用を発見するためには明らかに例数不足でございます。したがって、再審査によってこれが検証される必要があります。  また、実地医療の場では、管理された臨床試験とは異なった状態でいろいろな事象が発生します。副作用と断定できない有害事象もこの中に含まれるわけでございます。この安全性確保の引き金になったソリブジン事件、この薬物相互作用は、極度に併用薬を禁止している今の臨床試験ではなかなか発見できない問題でございまして、この相互作用の検証ということも今後の治験における大きな課題であろうと思います。  また、現在の臨床試験では、対象患者の年齢層とか臓器健康度などに偏りが出ます。実地医療の場ではこういった患者に対して適用されるわけでございますので、市販調査でこういうことも精密に調べていき、こうした事象を早期に発見して対策を講ずるということが安全性確保の上で非常に重要であると思います。  この観点から、再審査制度における市販調査が基準に従って実施されるということは、精度の高い安全性情報収集に大いに寄与するものと考えております。  市販調査に関しましては、市販調査検討会という委員会がございまして、そこの中間報告が出されましたが、この中では、市販直後にいろいろな副作用が集中的に発見されるということにかんがみまして、今後、市販直後の重点的な情報の提供あるいは収集、そしてそのデータの公表ということを考えておられるようで、この点の推進をぜひ期待したいと思います。  ただ、問題となりますのは、市販調査というのは既に発売された医薬品の追跡調査でございますので、現実にドクターが余り興味を示さない、そういう意味でまた協力が得にくいという面から、現在、その推進に当たっている製薬メーカーが非常に苦慮しておりまして、こういう点の協力体制をどのようにとっていくかということが必要な措置だろうと思います。  それからもう一つ、皮肉なことでは、まじめなメーカーが緻密な市販調査をやりますと、副作用の発見数が高くなります。ずさんにやった方が発見率が低い。このことが、精密な調査をやったまじめなメーカーの製品の方が副作用発現率が高いような錯覚を起こさせてしまうわけです。  安全課では、この再審査制度に関して新しい再審査制度をスタートさせております。まだ新しい制度によった製品の例が上がってきておりません。これを二、三年待って、この製品のデータがどうなるか、やはりメーカー問の格差をなくすということがこの再審査の重要課題だろうと思います。  次の課題の再評価制度でございますが、医学、薬学の進歩に伴いまして、いろいろな病態生理が解明され、治療法が変遷していきます。また、その間に、新しい医薬品開発などによって、承認時に非常に有用だと考えられた医薬品でも、評価がだんだんに変わってまいります。また、過去において有効と考えられたものが、真に治療学的には余り意義がないということも今までに例がございます。  こういった点から、承認後一定期間ごとに医薬品を再評価するということは、有用性が低下した医薬品医療の場から排除するという意味で非常に有効だと私は思います。この再評価資料の基準というものが法制化されること、これは私は賛意を表する次第でございます。  また、こうした諸審査制度を円滑に推進するために、現在の行政機構ではとても対応が困難であるということから、これを補完する意味機構法の改正が並行して行われまして、厚生省業務の一部を分担することが考えられました。私は、これは現時点で最善の選択だろうと思います。  今回の法改正は、医薬品安全性確保だけでなく、承認審査の迅速化とか相談制度による開発の効率化などが志向されておりまして、これらの実効ある制度改正を実現するためには、関連する省令とか通知等の適切な運用が望まれる次第でございます。法律というのは骨組みでございまして、この骨組みのでき上がったものに魂を入れるかどうか、あるいは骨抜きにするかどうかは、やはり省令、通知等によってその効力が違ってまいります。弾力的な運用を期待したいと思います。  また、この医薬品機構の利用につきましては、屋上屋を重ねるというような意見も一部にございますが、これは行政が分担することが不適当な部分を機構が分担するということで、十分活用できるのではないかというふうに考えます。  私は、こういった機構承認審査の迅速化等で日本製薬企業の育成ということも並行して行っていただきたいと考えております。日本のような資源の少ない国で、高付加価値の製薬産業、また技術的にもかなりの高水準にありますので、こういった承認審査の合理化、効率化、迅速化ということでぜひとも製薬企業に側面からのバックアップをしていただきたいと考えます。  今回、緊急に必要な医薬品の特例輸入等の許可が盛り込まれましたが、これは本改正案の条件を満たす範囲で当然の措置だと私は考えます。  次に、医薬品安全性の確保ということは、情報充実が大変重要であります。この観点から、副作用情報の迅速な報告、適正使用に必要な情報収集、提供を製造業者に求めたことは当然の措置であると思います。同時に、努力規定ではありますが、医薬品販売業者にも販売時に適切な情報提供ということが明文化されたことは、生命関連商品としての医薬品の特性を考慮した妥当なものと考えます。  ただ、情報媒体の課題としては、現在一番頻繁に、また、ある意味では公的な意味で用いられております医薬品の添付文書というものの性格がまだあいまいな部分があると私は思います。承認事項以外は、メーカーの自主的な作成あるいは改訂に任されております。  御承知のように、一月二十三日の最高裁判決で、ペルカミンSによる事故について医師側の過失を認定いたしました。これは、添付文書に二分ごとに血圧測定をするということが書かれておりまして、それが、当時の医学的常識である五分ごとの血圧測定で行った医療側に過失を認めたということで、添付文書に書かれてあるという事実がこういった判決に影響するということ自体、添付文書内容というものにかなりの科学性を私は求めたいという気がいたします。  このほか、薬局管理者の、これは管理薬剤師でございますが、保健衛生上の職務責任を明確かつ強化して、薬局開設者はその意見を尊重しなければいけないということが今度盛り込まれました。これは、現在薬剤師会が進めております適正な医薬分業の推進に非常に有用なことであろうと思います。管理薬剤師が責務を自覚する、また責任の重さを自覚する必要があると思います。  既に、クラフトとか日本調剤、余り好ましくない大型調剤薬局チェーンが不適正な一つの業態を露呈いたしました。この中にも管理薬剤師がいるわけで、この薬剤師が本当に職能的な理念あるいは倫理を持って自分の責任感を自覚し、何とかこの開設者に意見を述べることができなかったのだろうか。被用者でありますからここには非常に難しい問題もあろうかと思いますが、やはりこういったことを法に記載していただいて、薬剤師の倫理観の向上を期待したいと思っています。  また、今回の薬事法改正に関連いたしまして薬剤師法が改正されました。これは、きょう参考人として出ている唯一の薬剤師である私どもにとっては非常に重大な問題でございます。  薬剤師法の一部改正は、薬剤師が調剤した場合には、「調剤した薬剤の適正な使用のために必要な情報を提供しなければならない。」という一文でございます。これは、従来の薬剤師法では、医師の処方の、氏名、用法、用量を薬袋に記載すればよかったわけで、これと比べますと情報提供に対する比重がかなり拡大いたしまして、我々の職能範囲の拡大、またその内容の高度化が求められたというふうに解釈しております。  しかし、これは医薬品の適正使用を推進する上で薬学専門職である我々が当然果たすべき責務だと思いまして、その遂行にこれから全力を傾注する所存であります。  ただ、ここにおける大きな課題は、医薬品の適正使用とは何なのか。私どもは、医療に携わる人間として、医学的に適正か、あるいは治療学的に適正かという評価、これが医薬品の適正使用評価だろうと思いますが、現在の高齢慢性疾患の場合の治療薬の評価というものは、本当にエンドポイントがまだ明確にされていない薬剤がまだ使用されているということ、あるいは、延命効果あるいはQOLの向上といった疫学的な調査を必要とするデータ日本に余りないとうことで、医学的な適正ということの判断は非常に難しいというふうに感じます。  それから、必要な情報の範囲というのはどの程度なのだろうか。これは言ったら切りがないかもしれません。しかし、二月末の高松高裁における逆転判決と言われる例では、高知の医療機関が退院時に患者に投与した薬剤によって極めてまれに起こる障害が起こって死亡した、これに対して高松高裁は、具体的にその障害の予兆となることを告知しなかったということで医療側の過失を認定しているわけでございます。  こういった意味では、これからの情報提供というのは非常に難しくなるということで、これがまたさまざまな理解の能力の違う患者さんにどうやったら効率的に告知できるかということは、これは私ども薬剤師にとっても非常に重要な問題でございます。こういった問題を解決しないと、この法案改正の実効が上がらないということになります。  今我々は、こういったことに関しましては、病院では入院患者対象とする病棟薬剤師活動を行っており、開局者は既に薬歴を管理して服薬情報を提供しております。しかし、これではまだ足りないということになると思います。  こうやって現実業務を考えますと、病院なんかで外来患者が多数受診いたしまして、一日に二千、三千枚というような調剤を行っておりますが、果たしてこれから病院調剤というのはできるのだろうか。すべての調剤に情報提供するとなったら、今のような、スピードをかなり要求される病院調剤というものは成り立たなくなるのではないか。そうなれば、やはりこれは院外処方発行をせざるを得ないのではないかということも我々病院の立場では考えております。  すべてこういった法改正というものが患者の利益というものを直視して行われておりますので、その道のりがいかに困難であろうとも、私どもは一応この効果的な実現に向けて努力したいと考えております。今後のいろいろな政省令その他の運用にまた期待する次第でございます。  以上で陳述を終わります。(拍手)
  12. 和田貞夫

    和田委員長 ありがとうございました。  次に、片平参考人にお願いいたします。
  13. 片平洌彦

    片平参考人 本日、お招きいただきまして、意見を聞いていただくことに感謝申し上げたいと思います。  私は、これまで二十年以上にわたりまして、スモンや薬害エイズなど、薬害被害者の実態を調査研究し、薬害多発の社会的要因を解明し、薬害防止対策のあり方について考察してきました。そうした立場から意見を申し述べさせていただきたいと思います。  改正案の趣旨を拝見しますと、「医薬品技術の進歩に伴い、薬理作用の強い医薬品等が増加しており、これによる健康被害を防止するため、医薬品安全性を一層向上させる必要がある。」だからこのために改正する、このように説明がされております。  これは一見当然であって結構なことのようですけれども、しかし、言葉じりをとらえるようですけれども、「医薬品安全性を一層向上させる」ということは、これまでも向上させてきたがなお一層というように読めます。果たしてそうでしょうか。それならば、薬害は少なくなっているはずであります。しかし、決してそうではないわけです。つまり、私が言いたいのは、薬害防止対策が従来の対策の延長線上でいいのだろうかということであります。  薬害は構造的なものですけれども、起きる構造をあえて短く申しますと、薬害を起こす力というのがあって、それに対して薬害を防ぐ力というのもあるわけですけれども、起こす力が防ぐ力を上回ったときに薬害が起きる、このようにとらえているわけです。その薬害を起こす力というのは依然として強く作用しておりまして、薬害を防ぐ力を思い切って強めない限り薬害は必ず繰り返されるというふうに思います。  その薬害を防ぐ力を強めるためには、企業、行政、医療研究教育のそれぞれ及び相互の関係の抜本的改革が必要であると思います。その要点として私が考えているのは以下のようなことです。  時間がないので要点だけ申しますけれども、まず企業については、医薬品にかかわる検討と意思決定を民主的、科学的に行うこと。それから、生命・健康被害への賠償額を大幅に引き上げる、これは実際には裁判所の問題だと思いますが。  それから行政ですけれども、医薬品審査・規制体制の抜本的改革を行う、情報公開を行う、さらに国民の公的な監視システムの導入を行う、それから役人の関連企業への天下りを禁止するなど企業との癒着を断つこと、これが必要だと思います。  医療の方ですが、副作用の報告を積極的に早く行う、治験の倫理化、科学化をする、薬物治療の相対化をする、それから企業との癒着をなくすというようなことです。  それから研究教育。私はその場におりますけれども、これも企業との癒着を断って、臨床薬理学とか薬理疫学とか社会薬学とか、そういう医薬品安全性確保に役に立つ研究教育を公的に抜本的に拡充することが必要だというふうに思います。  なお、ただいま申し上げましたことにつきましては、お手元に「公的規制の強化研究・教育の充実を」というタイトルの、これは一月三十一日の薬害根絶の緊急フォーラム、星陵会館で開きましたときに私が申し上げた内容ですけれども、これを御参照いただければというふうに思います。  今回の改正案は、ただいま申し上げましたうちの主として行政にかかわることで、市販対策強化など、従来に比べれば前進面は見られると思いますけれども、抜本的改革にはほど遠いと言わざるを得ません。  特に、治験審査業務などに医薬品機構活用する案は、先ほどからやむを得ないというような表現がされていますけれども、当面の苦肉の策とも考えられますけれども、この方式を固定化して厚生省自体の審査・規制体制の抜本的改革を行わないとするならば、それは非常に問題があると言わざるを得ません。  もともと医薬品機構は、薬害スモンの被害者らによる薬害被害者救済と薬害根絶を求める運動の中で、一九七九年に医薬品副作用被害の迅速な救済を目的に設立されたものであります。しかし、それが、途中から新薬研究開発などの業務を追加して、その方向がどんどん強められています。こうしたことで果たしていいのでしょうか。  医薬品機構は、その設立の原点である薬害被害者救済業務を抜本的に強化すべきであると思います。被害者の実態と発生要因の徹底的な調査とか、救済の阻害要因を解明して救済を促進することとか、恒久対策にかかわる保健福祉事業の積極的な実施など、すべきことが山のようにあると思います。そうした本来の業務を、被害者団体の代表やその推薦する人を役員に入れて行うべきであると思います。  なお、ここで、薬害エイズの未提訴被害者救済につきまして、サリドマイドの経験を生かしていただきたいということを申し上げたいと思います。  HIV訴訟の確認書ですが、未提訴者につきまして、訴えの提起を待って証拠調べをして順次和解の対象とするということになりました。しかし、私どもの調査では、医師への気兼ねなど被害者の提訴を阻む条件が存在することが明らかになっています。その克服のために、国がサポートをすべきではないかと思います。  サリドマイド事件では、和解後の一九七四年の十二月二十日付で、厚生省が次のような通知を出しています。「補償請求の申し出があれば認定の上補償を行う旨ポスターを作成したのでこれを配布すること。広報機関等を利用し訴外者への周知徹底をはかること。資料作成上の便宜をはかるため必要に応じ厚生省が適当な医療機関紹介すること。」そういう通知を出しています。こうしたことを薬害エイズでも実施していただきたいというふうに思います。  以上、被害者救済充実させるべきことについて述べましたが、こうしたことの上に立って、薬害防止策の抜本的強化が必要であると思います。  そのために、第一に行っていただきたいのは、医薬品審査・規制体制の抜本的改革と、国民の公的監視システムの導入です。そのためには、公害問題の激発の後に環境庁ができたように、医薬品庁あるいは食品と合わせて食品・医薬品庁を設立すること、それから、中央薬事審議会の片手間審査をなくして常勤の審査スタッフによる審査を行うこと、そして、そうした国の責任で行う薬事行政を薬害被害者患者、国民の立場から監視することを公的に行うようなシステムをつくることが必要であると思います。これが行政として行うべき抜本的な策であるというふうに思います。  それから、薬事法の第五十六条、第七十条に規定されていますが、厚生大臣の病原微生物汚染医薬品の廃棄・回収命令、それから第六十九条の医薬品販売停止等の緊急命令ですけれども、これが現在の薬事法では「命ずることができる。」と書かれておりますけれども、これは厚生大臣が「命じなければならない。」とすべきではないかと思います。そのようなことをしなかったために非加熱製剤の回収が大幅におくれたという事実があるわけです。  第二に、副作用が発生したときに、そのことを知った医師や製薬会社などが迅速に国に知らせて、国はその情報を公開することが必要であると思います。  この点で、改正案には、副作用等の発生や回収の際の国に対する製薬会社の報告義務は課していますけれども、その期限は記されておりません。副作用の報告期限につきましては、現在、厚生省は、三十日以内、死亡、重篤で未知なものは十五日以内というふうにしていますけれども、アメリカでは、市販後に副作用の発現頻度が著しく増加したときは直ちにFDAに報告すること、また治験段階では、死亡または致死的作用の場合は労働日で三日以内、重篤、予期しない作用は同じく労働日で十日以内にFDAに報告することとされているということでありまして、こうした期限の設定が必要と思います。  また、薬害エイズなどの教訓から、国が報告を受けても、その情報意味がないなどとして隠されてしまうのではまさに意味がないわけでありまして、国が知り得た情報を国民に公開することがぜひとも必要だと思います。  そしてまた、医薬品副作用などを最初に発見するのは、通常は医師ですから、医師副作用報告が促進されるような手だてが必要だと思います。この点につきましては、現在の厚生省副作用モニター制度を抜本的に改革して、報告をした医師医療機関に相応の報酬をするとともに、報告をしない医師医療機関には、少なくとも重篤、死亡の場合には何らかのペナルティーを科すぐらいのことが必要ではないかというふうに思います。  第三に、治験について、GCPの遵守を法制化することは必要と思いますが、その内容は、文書同意の徹底、治験審査委員会専門委員被験者の人権を守る立場の人と規定すること、GCP違反の場合の罰則規定を設けることなどが必要と思います。  治験審査委員会専門委員の選定の実態ですが、一九九二年に、鳥取大学の伊藤忠雄教授らが全国三百一施設の調査をしております。その結果によりますと、その大部分は事務長、医務課長などの事務官でありました。この点につきましては、総務庁が一九九二年に実施した行政監察でも、調査数は少ないのですが、同様の実態が指摘されておりまして、その医療機関と特別な関係にある者は不適切である、こういう指摘がされております。こうした点の改善が必要で、法制化されたGCPには、例えば、専門委員被験者の人権を守る立場第三者委員の参加を必須とするというような規定を設けるべきであると思います。  第四に、これは細かいことで、用語の問題ですけれども、「承認前の特例許可」で、「疾病のまん延を防止するため」とありますけれども、これはエイズ新薬の緊急許可なども含まれるのでしょうから、「疾病の予防、治療のため」というふうに書くべきではないかというように思います。  以上、私の意見を述べさせていただきましたので、法案審議の参考にさせていただきたく、よろしくお願いいたします。  御清聴ありがとうございました。(拍手)
  14. 和田貞夫

    和田委員長 ありがとうございました。  以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。     ―――――――――――――
  15. 和田貞夫

    和田委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。根本匠君。
  16. 根本匠

    根本委員 自由民主党の根本匠です。  参考人の皆様には、きょうは御苦労さまでございます。  私は、まず最初に、高久参考人にお伺いしたいと思います。  今回の法改正の柱の一つは治験充実強化でありまして、治験届のチェック制度、承認申請の前段階から公的な関与をするという点、GCPの遵守を法制化して義務づけたという点がございます。  私は、実際に治験を行う医療現場体制整備について、幾つかの課題があると考えております。課題は大きく二つありまして、一つは、治験対象患者が集まりにくいという被治験者の問題、それからもう一点、実際の治験を行う側の問題、例えば、現場治療などで忙しくてなかなか審査時間が十分にとれない、あるいは症例が少ないという問題も指摘されております。  最初に、被治験者の問題について、インフォームド・コンセントの問題についてお伺いしたいと思います。  最近のソリブジン等の問題で、治験を受ける側にさまざまな不安あるいは抵抗感、社会的風潮で治験をしにくい状況が生まれてきておりまして、今回の規制強化治験安全性は高まるわけですが、インフォームド・コンセントをどうしていくか、こういう問題があろうかと思います。  欧米の方では、ボランティア精神が背景にありますし、それから恩恵という意味でも、例えばアメリカは、医療費が高いのでコストインセンティブがある意味で働く。これに対しまして日本では、どうしても実験的要素があるということを、最近の風潮とか国民感情によりましてなかなか説明しにくい。それから、参加者への恩恵の問題も課題でございます。  この治験については、社会的にいかに役立つのか、必要性と意義の啓蒙啓発活動も必要だと考えておりますが、これらの治験を受ける方へのインフォームド・コンセントのあり方をどう考えて、どうやっていくべきか、この点についての御意見をお伺いしたいと思います。
  17. 高久史麿

    高久参考人 お答えいたします。  今、根本先生の御指摘になったことはまさしくそのとおりでありまして、私自身は、もうこの数年来、治験に直接は関係しておりませんけれども、しかしそれでも、医療現場にいる若い人たちから、最近は治験が非常にやりにくくなったということをしばしば耳にしております。  その一つは、今御指摘のように、インフォームド・コンセントがとりにくい。特に、アメリカなどでは医療費はただになるという恩恵があるわけでありますけれども、日本は国民皆保険なものですから、患者さんに対する直接のメリットがないという点もインフォームド・コンセントが非常にとりにくい大きな理由になっております。また、御指摘のように、医療現場医師は非常に忙しくて、なかなか十分な説明のための時間がとりにくいという声も聞いております。  しかしながら、現在、治験というのはやはり患者さんを対象にした研究の面があるわけでありますから、インフォームド・コンセントをとるということはぜひ必要なことであると考えておりますので、いろいろな困難さを克服してでも、インフォームド・コンセントをとって治験をしなきゃならないというふうに考えております。  その一つは、事務局の整備でありますとか、あるいは治験に協力する看護婦の増員とか、そういうふうな支援体制も必要であると思いますし、それから、治験対象になる患者さんに対して、治験の社会的な意味、特に、新しい薬の開発というのがいかに必要であって、そのために治験を行わなきゃならないということをよく御説明して納得していただくことが必要である、そういうふうに考えております。  しかしながら、残念なことに、マスメディアなどで非常に大きく薬のことなどが報道されますと、ますますやりにくくなっていくのが現状でありますが、これらの問題を克服して治験をする必要がある。  例えば、日本でも、解剖、死体解剖でも病理解剖でも、これは医学進歩のためということで御理解いただいて行っておりますし、神戸の大震災のときにも多くの方がボランティアで活動しておられますし、私が今まで関係してきました骨髄バンクでも、多くの方がボランティアとして、あるいはドナーとして貢献していただいておりますので、そういう日本人の一般の方々のボランティアとしての、あるいは社会に対する貢献という精神に頼ってやらざるを得ない、そういうふうに考えております。  以上でございます。
  18. 根本匠

    根本委員 ありがとうございました。  もう一点お伺いしたいのですが、今度は医療現場実施体制の問題であります。  先ほど申し上げましたように、いろいろ現場が忙しくて審査時間が完全にとれないとか、あるいは各施設で少数例で実施する治験が多くて、治験の質を低下させる可能性もあるのではないか、こんな指摘もありますし、審査時間が十分にとれないのは治験に供される品目が多過ぎる、こんな指摘もございます。要は、現場の実際の実施体制問題点と、これにどう対応していくべきか、この点についてお伺いいたします。
  19. 高久史麿

    高久参考人 お答え申し上げます。  確かに御指摘のように、一つは、新しい薬、完全に新しくなくてゾロ新と言われている薬が日本に少し多過ぎるのではないかという問題点もあります。それから、製薬企業さんの方で、市販後の販売ということを考えて、どうしても治験を依頼する機関、病院の数が多くなる。それからもう一つは、したがいまして、当然、各施設ごとに治験対象となる患者さんの数が少なくなる。これは治験の信頼度を低めることになると思いますので、今後、厚生省の方の治験の安全に関する委員会でも、ある程度治験を行える施設というのを限る必要があるのではないか、その限った施設に対しては治験の支援体制をできるような援助をする必要があるのではないかということが検討されておりまして、私自身も、今までのようにどこでもやるというのではなくて、治験に対しての体制が整った病院をある程度限定して、そこで主要な薬についてはやるべきではないか、そしてまた治験を行う医師に関しても、治験についての研修とかそういうことをして、治験の内容を高める必要があるというふうに考えております。
  20. 根本匠

    根本委員 もう一点、GCPの遵守が今回義務づけ、法制化されるわけですが、今、日米欧のハーモナイゼーションの検討の中でICH-GCPの具体的な案が出ておりまして、恐らく、これは法施行後適用される可能性が非常に高いわけであります。  ICH-GCPの主なポイントは、治験実施主体が治験総括医師から製薬メーカーに移る、あるいは治験審査委員会医療機関外の者の参加の義務がある、こういうポイントがあるわけですが、ICH-GCPが適用された場合の問題点、課題、あるとすればどのように対応すべきか、その点についてお伺いしたいと思います。
  21. 高久史麿

    高久参考人 お答えいたします。  確かに、ICH-GCPが今検討中であるというふうに聞いておりますけれども、そのままの形で非常に厳格に日本に適用するとやはりいろいろな問題が起こってくるのではないか。ですから、基本的には、国際的な八一モナイゼーションが必要であると思いますし、ICH-GCPの精神は守らなければならないと思いますけれども、具体的な実施に際しましては、やはり日本現状に応じたある程度の修正というのが必要ではないか。  例えば、今御指摘にあった治験総括医師というのも、日本現状治験を行うときには、ある程度今までは有効に機能してきたのではないかという御意見もありまして、その点などは、実際にICH-GCPが制定されて日本で行われるときには十分にいろいろ検討する必要があるのじゃないかと考えております。  以上であります。
  22. 根本匠

    根本委員 次に、高橋参考人に、治験段階を中心に、これからの薬剤師の新たな機能、役割についてお聞きしたいと思います。  今回の法改正によりまして、薬剤師の役割が多様化し、重要になってきたわけですが、私は、薬剤師の役割として四点ぐらいあるのだろう。  一つは、薬の専門家として、治験薬等の管理、治験に関する情報の管理、伝達など治験への積極的な関与がこれから出てくる。現在もやっておるわけですが、この辺の積極的な関与が出てくるだろう。二つ目は、市販後の医薬品の有用性、効果、副作用等の情報収集評価活用、提供の問題、医薬品の適正使用の責務も新たに加わっております。三点目は、薬歴管理は投薬の有効性安全性を担保するために必須の問題ですから、この薬歴管理の役割。それから四点目は、やはり開発段階から医薬品を理解して、使用についてもフォローしていくという必要も出てきておると思います。  薬剤師へのこのような新たなニーズ、役割が高まっている中で、今後の問題として、治験への薬剤師の関与のあり方など、要は、薬剤師の業務のあり方、それから、新たな役割に対応した薬剤師の自助努力、レベルアップのあり方、この二点について御意見をお伺いしたいと思います。
  23. 高橋則行

    高橋参考人 まず第一に、治験に対する関与でございますが、本来、薬学専門職の薬剤師であり、また、病院では医薬品の総合管理部門である薬局、こういったところが今まで治験に関する関与が比較的薄かったということは、私ども、薬剤師として反省しております。現在でも、IRBに参画したり、あるいは治験薬の物の管理、あるいは治験薬の払い出し、調剤管理等は行っておりますけれども、もっと本質的に関与していかなければいけないだろうということです。  先生の御指摘の事項、いずれも、今私どもが医療薬学あるいは臨床薬剤師活動と言っている部分にかかわるわけでございます。これが日本でおくれた最大の理由は、やはり薬学教育の欠陥にあると思うのです。私ども、物質薬学を習っておりまして、本当に患者のための薬学というのを大学では教わっておりません。今、こういったことを厚生省の方にも働きかけまして、厚生省の方で、薬学教育、特に医療薬学の充実と実地研修の充実、こういったことで、やはり医療にもうちょっと密着した薬剤師を養成していかなければいけないということを非常に私どもも感じております。  厚生省もいろいろバックアップしていただいておりますが、こういったことは教育の成果だけを待っていたのでは十年あいてしまうわけで、今私どもは自主研修でこれをやっておりますが、自主研修というのは、熱意のある者は毎回出てくるのですが、ない者はいつまでたっても出てこない。こういうものは、やはり制度化しないとなかなか薬剤師全体のレベルアップにはいかないのじゃないかということで、薬学教育の充実あるいは六年制一貫教育というものと研修の制度化というものを強力に進めていきまして、先生御指摘のように、薬歴のとり方、それの読み方あるいはこういった副作用情報というものに対する関与、またそれのいわゆる集積部門にならなければいけないと思いますので、今後、私どもは、現状での研修で努力いたしまして、こういった医療の期待にこたえるような薬剤師の養成に努めていきたいというふうに考えております。  以上でございます。
  24. 根本匠

    根本委員 時間が参りましたので終わりますけれども、今回の法改正、法制度の枠組みは相当強化されたわけですが、参考人の先生の御意見にもありましたように、これからこの法改正の枠組みの中で、インフォームド・コンセントのあり方あるいは医療機関実施体制への支援、充実の問題、あるいは薬剤師の具体的な内容のありようの問題、これからいかにしてこの法改正に運用上魂を入れていくか、これが私は重要な課題だと思っておりまして、私も政治家の立場で、この面でフォローしていきたいと思います。  終わります。ありがとうございました。
  25. 和田貞夫

  26. 大野由利子

    ○大野(由)委員 きょうは、参考人の先生方、大変御多忙の中を国会の方に、永田町まで御足労いただきまして、大変にありがとうございます。  薬事法の問題について私からも何点か御質問をさせていただきたい、このように思っております。  先ほど高橋先生の方から、我が国治験データが諸外国から信用されていないということで、お話がいろいろございました。なぜ信用されていないかということについて、高久先生と小林先生からもお話をいただきたい、このように思います。
  27. 高久史麿

    高久参考人 お答えいたします。  最近の日本臨床試験というのは、外国の一流誌にも随分載るようになりまして、以前とはかなり事情は異なってきていると私は思っております。  しかし、少し前までは、確かに信用されない部分もあったということも事実でありまして、その理由として、先ほど高橋先生もおっしゃいましたけれども、参加する施設の数が多過ぎる、それから、当然、各施設ごとの対象にする患者さんの数が少な過ぎるという問題もあります。それから、以前ですと被験者のインフォームド・コンセントを十分とっていないということ。それから、日本では、先ほど高橋先生は薬学の人への医学臨床に関する教育が不十分と言われましたけれども、逆に、医学の教育の中で今まで臨床薬理についての教育が必ずしも十分でなかった、そのために臨床薬理専門家が少なくて、そういう専門でない人がそういう治験のことをまとめますとしばしば科学的に見て不十分なデータが出ていたのではないか。そういう幾つかの点。  それから、外国の雑誌に載りにくかったもう一つは、日本で本当の意味の新しい薬というのはなかなか開発されなかった。もちろん、最近では幾つか出ておりますし、その薬の治験に関しては世界的に有名な雑誌に大分載ってきておりますので、あえてもう一回申し上げますと、以前と違いまして、最近では日本臨床治験の質もかなり向上してきたのではないか、そういうふうに考えております。  以上であります。
  28. 小林眞一

    小林参考人 ただいまの高久先生のことと大分重複するわけでございますけれども、まず、大きく分ければ、科学的な問題と倫理的な問題があるのではないかと思われます。  確かに、科学的な問題でいいますと、多施設共同研究が非常に多く、また、日本試験の場合ですと、欧米に比べて脱落例がかなり多いというようなことがあるようでございます。こういうことから、試験の質という、科学的質で疑いを持つこともあるわけでございます。  もう一点、倫理的なところで申し上げますと、実施医療機関にいる医者側の非常に興味のあるところはやはり科学性でございますので、必ず海外の雑誌に投稿したいわけでございます。ところが、海外の雑誌では、例えばIRBの承認が得られているか、あるいは被験者からのICがきちっととられているかということが投稿の規定に規定されているわけでございますけれども、日本の雑誌の場合ですど、その規定がないものがかなりございます。私も臨床薬理学会の学会誌の編集長を今やっているわけでございますけれども、最近になって、それはきちっと書き込まなければ皆さん守っていただけないということで書き込んだような程度でございますから、その辺の規定のおくれというのが逆にその辺の啓蒙のおくれにつながっているというふうにも考えております。  以上でございます。
  29. 大野由利子

    ○大野(由)委員 インフォームド・コンセントを守るとなかなか治験が進まない、それを大変危惧する声もございます。なぜ日本ではなかなか進まないのか、小林先生に伺いたいと思うのです。  諸外国ではインフォームド・コンセントはもう常識になっているわけでございますが、なぜ日本ではインフォームド・コンセントがなかなか進まないのかという心配があるということと、先ほど、治験に対するメリットについても国はいろいろ考えてもらいたいというお話がございましたが、小林先生は、どのようなメリットをつけるように今後改善されるといいと思っていらっしゃるのかについて伺いたいと思います。
  30. 小林眞一

    小林参考人 まず、なぜ日本でインフォームド・コンセントがとりにくいか、そして、そのことによって治験におくれが来るかということでございます。  一つ考えられることは、よく言われることでございますけれども、これは、日本医師患者の関係というところに歴史的に深く根差しているものでございまして、日本医師患者の関係というのは、よく言うパターナリズム、家父長制度というものにのっとっている場合が多いわけでございます。  最近ではICについて新聞、マスコミ等でよく言われますから知っている方もいらっしゃるのですが、まだまだ多くの方々は、例えば医者が説明いたしましても、先生がそうおっしゃるなら先生にお任せしますというような感じもあるわけでございます。そのときに、では、それがICとして、インフォームド・コンセントとして不適当なのかどうかというところがございまして、本当にインフォームド・コンセントを、説明したことを患者が理解しているかというようなことは実際調べようがないわけでございますから、これは理論で言うほど簡単なものではない。例えば、欧米の契約社会のものを日本に持ってきて、要するに、木に竹を接ぐようなことをしてもなかなかうまくいかないことがあるのではないかという想像もございます。ただ、もう少し徹底しなければいけないと私も思います。  もう一つの、治験被験者のメリットということでございますけれども、確かに我が国においては、国民皆保険でございますから、被験者治験に参加しても、いわゆる医療費の問題等での援助はなかなかないわけでございます。けれども、何らかの金銭的なメリットがあってもいいのではないか。例えば、治験をやることによって、一月一回のみ通院すればいい患者さんが月に二回になり三回になったというようなときの交通費等は当然支払われていいのではないかと思います。ただ、金銭的なものに関しては、その支払いするときの規定等を明確にしなければならないというふうに考えます。  さらに、将来的に申し上げれば、医療機関治験体制充実して、例えば治験外来等あるいはスタディーナース等を配備して患者さんの診療における便宜を図るということも、将来的には必要になると思います。  以上でございます。
  31. 大野由利子

    ○大野(由)委員 全員の先生方に簡単にちょっとお答えいただきたいと思うのです。  先日、先ほどの先生方のお話の中にもございました高松高裁の判決で、十分なインフォームド・コンセントがなされていなかったということで国が使用責任を問われる裁判があって、遺族の訴えが認められたわけです。この判決は今後医療現場に大きな影響を及ぼすと思われるかどうか、そしてまた、病院薬剤師も薬事法改正によって今回情報提供が義務づけられたわけですけれども、高橋先生は特に、高松高裁の判決と同じようなことが病院薬剤師にも適用されるというふうに認識していらっしゃるのかどうか、その辺について伺いたいと思います。
  32. 高久史麿

    高久参考人 申しわけありませんけれども、私は、高松高裁の判決の内容あるいは訴訟の内容について詳しいことを存じ上げていませんので、よくわかりません。先ほど参考人のどなたかからお話ありましたことだとすれば、医療現場にかなり大きな影響を与えるのではないかというふうに考えております。
  33. 小林眞一

    小林参考人 申しわけございません。私もその裁判の内容等を全く理解しておりませんので、正確なお答えはできないわけでございます。御容赦いただきたいと思います。
  34. 高橋則行

    高橋参考人 私は、この判決は非常に大きな影響を今後及ぼすというふうに考えております。  使用された薬剤がフェニトインとかフェノバルビタール、非常にポピュラーな薬でございます。これに一応TENの発症という警告はあるのですが、これは恐らく何万例に一例というような発生率だったと思います。ただ、こういったものまで本当に告知しないと、結局、ああいう判決が、医療側の負けになるということになりますと、本当にこれは情報提供の範囲あるいは難しさというものを非常に痛感しております。  これは実は、主治医が退院時にそういった情報を提供しなかったということで対象になりました。今、病棟薬剤師活動をやっている病院が全国で恐らく二千百六十六ございます。こういった病棟薬剤師活動をやっているところでは、退院時には大体、薬剤師が退院後の服薬指導をやっております。こういったところでもしそれが欠落したとすれば、今度、医師でなく薬剤師がやはり対象になるのではないかなというふうに考えております。  先ほど私が情報提供の範囲というのはどこまでだということを今非常に悩んでいると言ったのは、医薬の今後の展開の難しさということをやはり意識しているわけで、私は、これはある意味ではインフォームド・コンセントに対する警鐘を発したような高裁判決だというふうに解釈しております。
  35. 片平洌彦

    片平参考人 実は私は、この事件で、一審の高知地裁で、原告側から依頼されて証言を行っております。それで、経過も詳しく知っております。  時間がありませんのでポイントだけですけれども、この事例について、退院のときに、何かあったらいらっしゃいというような程度のことしか医師は言わなくて、それで、アレビアチンですけれども、飲み続けて、それで薬疹が起きたわけです。ところが、患者さんは薬のせいだと思わないで、温泉に治療に行っているわけです。それでそのまま飲み続けたということから、要するに、薬をやめるのが手おくれになって死亡という事件であるわけです。  ですから、先ほど高橋先生が言われた、予兆となるものを告知しなかったという話なんですけれども、そうではなくて、ドクターがその程度の説明しかしなかったということに関して、高松高裁が、もっと患者に薬の副作用について注意を向けさせるような程度の説明をしなさい、そういう趣旨で判決を下したというふうに理解しております。それに対して被告側が上告をしなかったので確定したというふうに理解をしておりまして、この判決はやはり非常に大きな意味があるというふうに思います。  医師は、もちろん薬剤師についても、今後、服薬指導とかそういうことのかかわりに応じて責任が出てくる問題ではないかというふうに考えております。
  36. 大野由利子

    ○大野(由)委員 高久先生と小林先生に伺いたいと思います。  日本新薬開発の国際的な競争力をもっと高めなければいけないのではないか、このように思っております。日本の製薬メーカー、日本治験を行うのに非常に時間もかかるし、また、なかなか国際的に信頼されるデータが得にくいというふうなこと等があって、臨床試験の空洞化というのでしょうか、海外でいろいろ臨床実験をして、そして認可を受けてという、これからハーモナイゼーションが進めば進むほど日本よりは海外に出ていくというような心配もあるのではないか、このような危惧する声も一部に聞かれるわけですけれども、この点についてどのように考えていらっしゃるか。  私はやはり、日本のメーカーは日本の中でもっと新薬開発できる力、競争力をつけなければいけないと思うのですが、そうするためにはどうあらねばならないかについて伺いたいと思います。
  37. 高久史麿

    高久参考人 お答えいたします。  今御指摘ありましたように、日本の製薬メーカーさんが治験外国で行う、治験の空洞化というのが起こるのではないかというお話でありましたけれども、まさしくそのとおりでありまして、私は治験に関してそれほど経験は深くありませんし、多くの企業を知っているわけではありませんが、私の知っている範囲でも二、三の企業で、幾つかの薬に関して、日本では非常にやりにくいから、例えば韓国あるいはアメリカ、それからヨーロッパで先にやって承認をとって、その後日本に持ってくるというようなことを具体的に計画し、既に実施をしております。  そういう点では、私は、日本製薬企業を育てるといいますか、それが日本の経済にとっても非常に重要と考えておりますので、日本の経済にとってもこの問題はかなり大きな問題ではないか、余りマスメディアは報道されておりませんけれども、現実に起こっていることは事実であります。  それに対してどうするかという問題でありますけれども、私が関係した委員会の中で、日本でもFDAと同じように治験に対しても相談をする、あるいは場合によっては指導をするというような体制をつくる必要があると申し上げまして、今回の改正医薬品機構がその一部を担うということになったと思いますが、そういうふうな相談の制度をとりますと、もう少し日本企業も積極的に治験がやりやすくなるのではないかというふうに一つは考えております。  それからもう一つは、これも企業から聞くことでありますけれども、いろいろな事件といいますか、新聞で報道されるような薬に関する事件が起こりますと、そのたびごとに厚生省に提出する書類が非常に多くなって事務的に大変だという声も随分聞いておりまして、私は、GCPを守るとか治験の安全を守るために厳重であることは必要であると思いますけれども、日本のお役所の常として書類などがいつも多過ぎるのではないか、その点はもう少し簡素化する必要があるのではないか、そういうふうに考えております。  以上であります。
  38. 小林眞一

    小林参考人 国際的な競争力の問題でございますけれども、確かに、私が聞くところによりますと、最近ではだんだん治験の空洞化、海外に治験が持っていかれてしまって、我々医師側からすると医薬品にかかわる情報が減ってきている、非常にある意味ではよくない方向に進んでいるわけでございます。  その解決方法として、私が考えますには、一つは、やはり治験の質を高めることで、今いろいろと御審議いただいているようなことができればいいのじゃないかというふうに考えます。  もう一つは、私、製薬メーカーの立場ではないわけでございますけれども、やはりよい薬を開発したらそれなりのメリットをつけるということが必要だと思います。  つまり、よい薬をつくったらそれなりのメリットがあって、そのことによってまた次のよい薬をつくる研究費が生まれる、開発費が生まれるというような体制が必要なのではないかというふうに思います。よい薬も余りよくない薬も同じような薬価で、同じようなというのは非常に語弊があると思いますが、いくのではなくて、やはりそこには当然差がつくべきなのだということから、よい薬をつくればさらによい薬をつくる意欲ができるということの方向性をきちっとつけなければいけないのじゃないか。メーカーサイドではございますけれども、そう考えております。  以上でございます。
  39. 大野由利子

    ○大野(由)委員 高橋先生に伺いたいのです。  これから、薬の適正使用というふうなこととか、また、副作用情報を的確に把握して医療機関においてそれをまとめていく、そういった意味からも薬剤師の方々の果たす役割が大変大きくなるのではないかと思いますし、また、そうなっていかなければいけない。そういう意味で、薬剤師の方々質的向上というものがなされていく必要があると思います。医師とよきパートナーシップとして、医療の薬理の面からの専門家になっていかなければいけないと思うのですが、現状ではなかなかそこまでまだ行っていないという現状もございます。  一時、薬学教育の六年教育というふうなことも言われておりましたけれども、いろいろ、一部反対する意見もあったりして進んでいないようでございますが、今後どのような方向でこれを目指そうとされているのかについて伺いたいと思います。
  40. 高橋則行

    高橋参考人 御指摘のとおり、我が国の薬剤師は、ややこういった医療に対する直接的なかかわりが希薄である。これは、先ほど申しましたように、日本では医療薬学教育が不足していたという教育欠陥はあるのですが、今先生御指摘のように、今の時代が求めている時代のニーズにはやはり現職の薬剤師が対応しなければなりません。  このためには、今私どもは、薬剤師の日本薬剤師研修センターという財団を持ちまして、そこが点数制で、年間の取得点数による評価を行うような自主研修を行っております。また、病院薬剤師会自体も、これはかなり厳しい、年間四十単位という厳しい基準で全国の薬剤師に呼びかけておりまして、昨年は、病院薬剤師の方は六千名が一年間でその四十単位を、大体これは一日夕方から行きますと一単位なんですが、それぐらいを取得しております。  しかし、これも現在は自主ということなので、本当に熱心な人は毎年やってくるのですけれども、そこら辺にまだ全体のボトムアップができないという苦労がございます。  先生御指摘のように、当面の問題としては、私は、研修制度を充実して今の変化する医療のニーズにこたえていきたいというふうに考えておりますし、将来的な展望としてはやはり六年制の薬学教育を目指すということ、これは、絶対この旗は私どもはおろさないつもりでございます。  これを実現するためには長期実習が、卒前の実習が必要でございまして、現在、医療機関での受け入れ体制の整備ということにかかっております。これは、医師、歯科医師の研修は自分の出身母校の附属施設でできるわけですが、薬剤師の研修というのは、薬学部は施設を持ちませんので、病院の理解を得て、そして、病院薬剤師がそういう協力をして受け入れてやっていかなければいけない。  このためには、私どもだけではできませんので、厚生省の中で、医療機関の管理者方にもそういった薬学生の教育に協力を願いますような御指導をお願いしつつ、私どもがそういった受け入れカリキュラムをつくってやっていくということで対応していきたいということで、六年制問題は、非常に文部省のハザードがございますが、息長くやっていくということで努力しておる次第でございます。
  41. 大野由利子

    ○大野(由)委員 小林先生に伺いたいのです。  痴呆性の薬というのは欧米というか外国には現状ではないと伺っているのですが、日本では発売されているということもございます。それで、エンドポイントというのでしょうか、何をもって有効性があるとみなすかということで、欧米日本では大分考え方が違うということもちょっと伺っているのですが、これからハーモナイゼーションを進めるに当たって、この辺はある程度すり合わせるべきなのか、日本はその辺とはちょっと土壌が違うから違っていていいのか、その辺の御見解を伺いたいと思います。
  42. 小林眞一

    小林参考人 今先生から御質問のございました抗痴呆薬というものは、確かに欧米ではこういう呼び方はないわけでございます。これはいろいろな症状を合わせた中で抗痴呆という呼び方をしているわけでございますから、そういうことから考えますと、例えば脳の血管に作用するものだとか、あるいは少し精神的な情緒の問題に作用する問題だとか、そういう症状に分けて一つ一つエンドポイントを持っていかないとなかなか評価がしにくいということは確かにあると思います。  では、その症状を一つ一つに分けていったときに、客観的にそれを評価できるかというと、なかなか難しいところもございます。そうすると、その辺が臨床の難しいところでございまして、臨床というのはそういうものをひっくるめてしまって、臨床症状がよくなったらよしとする面もございますから、一概に抗痴呆薬のエンドポイントをどうすべきかということは、現時点では非常に議論のあるところでございますけれども、少なくとも試験の方法というようなものに関しては、例えば無作為化とかプラシーボとか、いろいろな方法があるわけでございますから、科学性はある程度保たれるというふうには考えております。  ちょっとお答えと外れますが、申しわけございません。
  43. 大野由利子

    ○大野(由)委員 先ほど何人かの先生から、副作用機構は次善の策であるというお話がございました。本来なら、大きく厚生省機構を改革して抜本的に改める筋のものではないかと私も思いますが、なかなかそれが思うようにいかないという現状の中で、こういうことがなされたと思うのです。  それで、先ほど小林先生は副作用機構のことを公的機関とおっしゃったのですが、認可法人ですから公的機関なんでしょうか、でも民間の法人なんですね。国が認可した法人なんですが、あくまで民間の法人ですから、これま公的機関と言えるのかどうか。これはちょっと厚生省に聞かなければいけないのかもしれませんが。  私は、要するに非常に心配していますことは、厚生省副作用機構といろいろ責任のなすり合いがなされることがあるのじゃないかということを心配しております。  そこで、小林先生と片平先生に伺いたいのです。  この間の薬害エイズにいたしましても、研究班と厚生省が、お互いが、自分は権限ないのだ、専門家意見はそっちだったとかいうようなことがございました。今後も厚生省副作用機構の間で同じようなことが行われるのではないかということを危惧しているわけですが、この辺についてどう考えていらっしゃるか。責任を明確化し、その辺のトラブルを起こさないためにどうあるべきかについて伺いたいと思います。
  44. 小林眞一

    小林参考人 先ほどの副作用機構というのは、医薬品機構のことでございますね。(大野(由)委員「はい」と呼ぶ)それについては、私は一応分けたつもりではあったのですが、非常に言葉足らずで申しわけございませんでした。認識が足りなかったのかもしれません。  もう一つ、有害作用が起きた場合、例えば厚生省審査会の問題がどういうふうになるのかということでございます。  私の考えで申し上げますと、このような法改正が行われまして、例えば事前に厚生省等が調査をする、指導等をすることになるわけでございますから、その点からすると、厚生省責任は今よりも強まるというふうに考えるわけでございます。  ですけれども、今先生がおっしゃられるように、事前の相談医薬品機構でやられるわけだからそれは民間のものだ、そういうところで相談しても厚生省責任をとらないのではないかというようなことをおっしゃられるわけでございますけれども、その点に関しては、私は、まだそのこと自体も行われていない、もっと大きな問題で、調査というか指導さえも全く体制ができていない状況でございますから、現時点でその方向性は賛成でございます。  将来、医薬品機構厚生省の間で責任がどうのこうの、あるいは調査会でまたその責任がどうのということが起こるか起こらないかといったら、それは私はわかりませんけれども、少なくとも現時点では、そういうところの機構を使っての治験の整備がまず必要であるというふうに考えるわけでございます。
  45. 片平洌彦

    片平参考人 おっしゃるとおりのことを私も危惧しておりまして、実はそのことに関しては、五月十五日と六月三日付で、スモン被害者、サリドマイド被害者、薬害エイズ被害者の代表の人と連名で厚生省等に要望書を出しているのですけれども、医薬品機構に下請をさせるということが、結局、審査体制の分散化と無責任化を招く危険性を感ずるわけで、やはり私は、この問題についてはきちんと厚生省、国が責任を持って行うべきであるというふうに考えております。
  46. 大野由利子

    ○大野(由)委員 大変ありがとうございました。  今回の薬事法改正は、一歩前進には違いありませんが、抜本的な改正にはほど遠い。今回の薬害エイズ事件の反省点はまだまだ、十分検討する時間的ゆとりもなかったわけでございますので、抜本的な改正は今後に残された課題だと思っております。  きょう来てくださいました先生方、今後もさらにさまざまな面で御助言をいただけますようにお願いをいたしまして、きょうは大変ありがとうございました。
  47. 和田貞夫

    和田委員長 網岡雄君。
  48. 網岡雄

    網岡委員 網岡でございます。  私からも参考人の各先生に御質問をさせていただきたいと思います。  まず第一点ですが、高橋参考人にお尋ねをいたしたいと思います。  一つは、市販後の調査は今回の法改正でGPMSP基準に沿いまして行われることになりますが、市販後の副作用情報収集それから評価、伝達体制強化は薬害再発防止には不可欠であり、医療機関内部における医薬品情報、特に副作用情報収集、伝達は現在どのように行われているのでしょうか。  また、病院薬剤師に今以上の活躍の場が今回の改正によって与えられることになると思いますが、病院薬剤師の役割について、その道の専門家であります高橋先生から御意見をお聞かせいただきたいと思います。  それから二つ目は、今回の改正で、薬局の管理者の役割を強化し明確化することによって、開設者は管理者の意見を尊重しなければならないという規定が入りました。これは、第二薬局等による不適正な医薬分業の是正を目的といたしまして今回規制されたと私ども見ておるわけでございますが、医薬分業が進展していく中で、薬局の薬剤師それから病院の薬剤師にこれから期待される業務というものは一体どんなものになっていくのか、御意見をお聞かせいただきたいと思います。  それから三つ目は、薬剤師法の改正により、薬剤師の服薬指導の義務が明確にされました。薬剤師の役割と責任が大きくなりますが、その責任に応じられる薬剤師の養成が急務となっております。薬学部の卒前教育及び卒後研修、さらには生涯研修といったようなものが今後必要になってくると思いますが、実務と理論の高い見識を持たれる高橋参考人の御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  49. 高橋則行

    高橋参考人 まず第一の質問でございますが、現在、市販調査等によって発見される副作用、これは実は、病院内では余り情報活用されていない。現在、病院のDI室がこれを担当しているわけですが、DI室というのは情報担当、特にこれは厚生省発の副作用情報等ですが、こういうものを院内に周知させることがメーンでございまして、副作用収集というのは、これは病院のシステムでございますので、余りDI室単独ではできない。今の医師の行動パターンからしますと、今使った薬剤で副作用があったときに、多くの医師は、その企業の方にこういう問題の問い合わせをしてしまいます。企業はそれを受けますので、副作用の報告例は医療機関より企業の方が多いというのはそこら辺にも一つの根源があると思います。  今後、病院の中で発生した副作用はDI室に一応情報を集約して、その中で、厚生省に報告すべきもの、あるいは病院内で伝達すべきもの、こういったものを振り分けて、そういう情報活用できる方法を私どもはぜひ確立したいというふうに考えております。  それから、薬局の薬剤師の管理者、管理薬剤師の意見尊重ということで、これは実は、本来薬剤師として当然果たさなければならない者が、やはり被用者であるために、その権限といいますか、そういう責任を余り重く感じていなかったという結果、先生御指摘の第二薬局とかいわゆる調剤チェーン等では、管理薬剤師の意見というのは埋没してしまっているわけですね。ここら辺の意識改革を行う教育をやはり薬剤師会としてやっていかなければいけないというふうに感じております。  それから三番目の御質問ですが、御指摘のとおり、先ほどからも若干お答えしておりますが、現在の薬学教育の欠陥というものが日本における薬剤師の行動範囲を非常に狭くしている一つの原因であることは事実でございます。  現在、薬剤師国家試験に関しましては、厚生省の薬剤師養成問題検討委員会というところの結論に従いまして、国試改善検討委員会医療薬学の充実した国家試験に本年度から切りかえたわけでございます。薬科大学も、この国家試験という一つのハザードの前には非常に従順でございまして、おっつけ教育といいますか、即席教育でかなり医療薬学を取り入れております。  しかしながら、まだ本当の教育改革にはなっておりません。したがって、先ほどから申しております医療薬学の充実と長期の病院実習、実務実習を課して、そしてやがてはこれを六年一貫教育に持っていかなければ、私は、今ここで期待される、医療における専門職として、またドクターたちのよきパートナーとしての能力というものを十分発揮することができないのじゃないかということで、やはりこの教育改革、そして、卒業直後から一貫した生涯教育に向けての制度的な研修体制というものをぜひっくりたいと思いますので、また、こういった点におきましては先生方にもぜひ御協力を賜りたいというふうに感じております。  以上でございます。
  50. 網岡雄

    網岡委員 さらに、高橋参考人にお聞きをいたしたいのでございます。  今、巷間伝えられるところによりますと、薬学教育の期限についていろいろ文部省で検討されているというふうに聞きます。仄聞するところによると、大学四年プラス大学院二年、大学を四年で卒業して国家試験の受験資格を得る、こういうことが現時点における文部省の考え方であるという、きちっとした形は私どもわかりませんが、水面下のそんな情報が私どもの耳に入ってくるわけでございます。  今、高橋参考人もいろいろな角度から御意見をおっしゃいましたけれども、今日におきます薬学教育というものを考えてみましたときに、さまざまな薬害事故というのが頻発をいたしておりまして、著名な事件だけでももう五指を超えるような非常に重篤な副作用事件が発生をしておるという状況にございます。  そういうことからいきますと、やはり最低六年の薬学教育を修得するということは今日における薬学教育の必須条件だ、どうしても必要な体制だというふうに考えるわけでございますが、長年にわたりまして現場で事実上の指導をされておみえになりました高橋参考人立場から、今までずっと現場でやってこられました状況から見て、この薬学教育に対する現在の文部省の考え方、そして、高橋参考人が今まで実際に経験をなさった体験の中から、薬学教育というものは一体どうあるべきとお考えになっておるのか、お考えをお聞かせいただきたいと思います。
  51. 高橋則行

    高橋参考人 文部省の中に、薬学教育の改善に関する調査研究協力者会議という薬学教育改革をテーマにした委員会がございまして、私は、その委員として出ておりました。結局、厚生省では六年制ということを主張しておりましたが、文部省では、先生御指摘の、四年でまずライセンスを取らせて、そしてマスターを充実させて、そこへ行って二年やって、そこにまた一つの資格を与えればいいじゃないかというような案が出ております。  私どもは、これは根底から反対でございまして、二種の免許というのは、今看護婦さんとか栄養士さんの中で問題になっておりますが、やはりこういうものはつくるべきじゃないと思います。  それからもう一つは、国家ライセンスというものは、取得したそのときから薬剤師業ができるわけでございます。だから、薬剤師免許を取ってから勉強するからいいということで果たして国民の期待にこたえられるかどうか。薬害問題等、そういった事故発生を防げるかどうかということになりますと、非常にお寒いことになると思います。やはり六年修業してからライセンスを与えるというのがあるべき教育の姿ではないか、また、あるべき資格の姿ではないかというふうに私は考えます。
  52. 網岡雄

    網岡委員 時間がございませんので、一点だけ、各参考人の先生方に御質問申し上げたいと思います。  それは、最前からも議論がございました薬害の再発防止のためには、医薬品安全性に関する情報が迅速に収集され、適切に分析、評価され、医療機関医療関係者に迅速かつ確実に伝達される体制を整備することが最も重要な課題だというふうに思います。  そこで、医薬品情報収集評価、伝達が医療現場において適切に実施されるためには、医薬品専門家である薬剤師の活用が必要であると考えているわけでございますが、医薬品情報、特に副作用情報収集、伝達が迅速かつ的確に行われるためには一体どのようなシステムにすべきであるのか、この点について、簡潔に絞って各先生方に御意見をお聞かせいただきたいと思うのです。よろしくお願い申し上げます。
  53. 高久史麿

    高久参考人 お答えをいたします。  副作用医療現場で起こるわけでありますから、当然、担当医がそれを正確に把握して、それを病院の場合には薬局の方にも迅速に知らせる必要があると思います。これは高橋参考人もおっしゃったとおりであります。それから、その情報製薬企業厚生省の方に速やかに行って、厚生省の方から各医療現場にまたその情報が速やかに行くという体制をつくる必要があるのではないか。現在のように、Eメールとか、そういうふうに情報化時代でありますから、その体制を整備すればかなり速やかに医療現場副作用が伝達されるのではないかと考えております。  以上です。
  54. 小林眞一

    小林参考人 私が考えますに、薬剤師の活用でございますけれども、市販後のみの情報だけではなくて、薬剤師も治験の段階からある程度新薬についての情報収集しておくということになりますと、臨床に出た後に、市販後にも予測性ができるということがございますので、承認前の治験薬についてもやはり薬剤師がある程度の知識を持つということが必要なのじゃないかというふうに考えます。
  55. 高橋則行

    高橋参考人 この問題は、やはり薬剤師の関与が必要だと思いますが、今参考人の陳述にございましたように、治験の段階から本当に医薬品評価に参加していないとだめだというので、私は、今できている臨床薬剤師が治験コーディネーターのような役割を担って、いわゆるリサーチナースなどと協力して治験のチームを形成する、そして情報を共有化するということが必要で、それから市販後あるいはいろいろな副作用情報というふうに展開していくのが正しい姿だというふうに考えております。
  56. 片平洌彦

    片平参考人 実は、今ちょうど私の医科歯科大学で医学部の学生の実習をしているのですが、そのテーマがまさに医薬品情報収集評価、伝達というテーマなんですが、それを指導していただいているのは立川の民間病院ですけれども、実際に指導担当していただいているのは薬剤師の方です。やはり薬剤師の人も、いろいろ経験を積んで知識をふやして力をつければ、そういう医学部の学生の指導もできるようになるのではないかというふうに思います。そういう点で、薬剤師の人が今後大いに、教育年限も私は六年制にした方がいいと思っていますけれども、それで知識を身につけて医療現場で活躍してほしいというふうに思います。  それから、この問題で大事な点は、企業に報告が行くのですけれども、企業が因果関係がないのじゃないかと考えて報告をしなかったりする例がかなり総務庁の調査でもあるわけですね。ですから、やはりそういうことは非常に問題なので、因果関係が判断できない段階では、厚生省指導を出していますけれども、報告を出すべきだというふうに考えております。
  57. 網岡雄

    網岡委員 時間が参りましたから、終わります。
  58. 和田貞夫

  59. 荒井聰

    荒井(聰)委員 きょうは参考人の皆様、本当に御苦労さまでございます。  新党さきがけの荒井聰でございます。  昨今、住専問題などで住宅金融専門会社の問題が一つ大きな社会的問題として出てまいりました。またもう一つ、薬剤に絡んで製薬という企業の問題も出てきました。私は、この問題は両方ともある種の共通性があるのではないかと思っているのです。  と申しますのは、金融というのは経済の血液みたいなもので、金融会社というのは、特に銀行ですけれども、単なる私企業ではなくて社会的ないわば公益性を持っている、そういう企業である。その企業の動き方、働き方によって、活動によって大きな社会的影響を与えていく。だからこそ国会で、一つの私企業、単なる私企業の問題ではなくて議論されている。  これと全く同じように、製薬業界というのも公益性を持っているものだろう。国家というのは国民の生命と安全を守る機能であるとだれか偉い方が言ったように思うのですけれども、その財産の安全という問題が今住専で議論されているとすれば、生命の安全というものでこの薬事法が出てきたきっかけになったのではないかなと思うわけでございます。この意味で、製薬会社というものは、ほかの私企業と違って、私は高い倫理性が要求されるものだというふうに思うのです。  しかし、残念ながら、今の厚生行政の中では、私は、製薬メーカーに対して、あるいは製薬業界に対して、一般の私企業と同じような見方というか、そういう考え方でこの業界を指導しているのではないかというふうに思うわけでございます。  この業界は大変高い開発経費を伴うということがあります。また、この高い開発費のために諸外国では合併が非常に進んでおります。しかし、我が国では、千七百に及ぶ製薬メーカーがある。その製薬メーカーが個々に私企業としてしのぎを削っている。こういう形では、公益性を守っていく、あるいは諸外国と比べて製薬業界全体が健全な育成が果たしてされていくのだろうか。しかし、単に合併していくというだけでは私は改善されていかないのだろうと思うのです。  例えばアメリカのように、ベンチャービジネスの恐らく三分の一ぐらいは製薬の部分に集中しているのではないだろうか。バイオテクノロジーの分野などでアメリカは非常に高い成果を出していますけれども、日本は必ずしもそうではない。  そうしますと、私は、製薬業界のあり方というものが今問われているのではないか、大きな変化に来ているのではないかというふうに思うのですけれども、このあたりについての御見解をそれぞれ四先生からお伺いしたいと思います。
  60. 高久史麿

    高久参考人 おっしゃるとおりに、薬というのは国民の健康、特に病気の治療に不可欠なものでありますから、その意味では製薬メーカーさんも当然公益ということを十分に考えていなければならないと思います。  それから、御指摘のように、外国企業、特に製薬メーカーさんの間の合併というのは非常にすさまじいものがありまして、二つあるいは三つの会社が、しかも世界的に規模の大きな会社がどんどん合併をしているというのが現状であります。それから、アメリカのベンチャーと称せられる企業も急速に大企業、それも外国の大企業に吸収をされております。また、日本の製薬メーカー、独自の製薬メーカーさんの間では合併はほとんど行われておりませんけれども、しかし、日本に来ています外資系の製薬メーカーさんは、本社の合併に従いましていろいろな形の合併が日本の国内でも行われているのが現状だと思います。  これが現状でありまして、私は、恐らく、現在のように困難な時代になりますと、日本企業もこれから積極的に合併ということをやらないと生き延びていけないのではないか、それから、小さなメーカーさんは新しい薬の開発が非常に難しくなっておりますので、整理される、淘汰される可能性も十分にあるのではないか、そういうふうに考えております。
  61. 小林眞一

    小林参考人 先生がおっしゃるように、やはり製薬企業は公益性があり、高い倫理性が求められるのは当然であると思います。ですけれども、現状でいろいろと合併が行われているのが、ただいま我々がここで議論申し上げているように、例えば臨床試験の質を向上させるために本当に合併しているのかというような問題になってくると、またほかの意味合いも含まれているというふうに考えるわけでございます。  ですから、我々としては、客観的な立場に立って新薬臨床試験の質の向上ということを目指すべきであって、その目指すべき過程においていろいろな変革が求められ、そのことによってメーカーの製薬企業の合併が必要になればメーカーも合併するのではないかというふうに考えますので、今私が合併した方がいいかどうかというようなことは申し上げられない立場でございます。
  62. 高橋則行

    高橋参考人 荒井先生の御指摘のように、製薬企業のあり方というものの根本は、人類に利益をもたらす医薬品開発ということに尽きるのじゃないかと思います。  しかしながら、現実に製薬メーカーも会社、企業でございますので、やはりそこには経営という理念があり、しばしばこの利益というものと公共性というものとの相克が出てくるのではないかと思います。  先生の御指摘のように、外国では合併が進んでいるのは、やはり世界的な戦略での製薬企業を目指している、日本の場合では、日本の国内だけで売れれば食っていけるという状態が残されているために千七百のメーカーがまだ共存できているという構図があると思います。まだここら辺、世界を目指すか国内だけで食っていくかという体質の問題もあろうかと思います。  以上でございます。
  63. 片平洌彦

    片平参考人 高橋先生が言われたことと基本的に同じなんですが、公益性があるとともに、企業はやはり利潤追求をするということに伴っての問題が出てくるわけで、多国籍製薬企業の労働組合のレビンソンという人が本に書いていますけれども、製薬企業というのは何も患者の命と健康を守るために存在しているのではないという非常に刺激的な表現をしています。要するに、たばこ会社やビール会社と同じように、利潤追求に懸命な会社であることに変わりないという指摘をしているわけですね。ですから、そういう中で倫理性を求めなければいけないということだと思いますので、その点で、やはり国の薬事行政の大事な役割があるというふうに思います。
  64. 荒井聰

    荒井(聰)委員 ありがとうございました。  高久先生の御指摘で、一番最初に御指摘いただいたのですけれども、薬というのは必ず副作用が伴うものなんだ、効用と副作用との差で、効用の高いものが薬として採用されるのだというお話がございました。ですから、その結論として、やはり薬の適正な使用、それが大変大事なんだと思うのですね。  私の大変親しい方が、この方は心臓が悪いのですけれども、心臓が悪くて、ぜんそくを持っていたのですね。それで、最初の病院へ行って心臓の薬をもらうと、必ずぜんそくが悪くなって病院をかえて、三つかえて、三つ同じことをやっているのですね。これは、私は、今の薬の使い方というのはトータルで見ていない、お医者さんが悪いのか薬の使い方が悪いのかよくわからないのですけれども、どうも薬の適正な使い方というのにお医者さんも薬剤師さんも意が入っていないのじゃないかという気がするのです。  ところで、日本は、一人当たりの患者に対して薬の使用量が大変多いと言われております。先ほどゾロ新の話も出ましたけれども、この薬の使用量が多いということが結果的には薬の不適切な使用ということにもつながっていると思うのです。この点、高久先生それから高橋先生にそれぞれ、薬の使用量を適正にしていく、使用量を減らしていく具体的な手法というのはどんなことが考えられるのか、それをちょっとお聞きしたいのですけれども、お願いいたします。
  65. 高久史麿

    高久参考人 お答えいたします。  非常に難しい御質問でありますけれども、一つは、医学教育の中で、特に臨床薬理というものの教育をもう少し、これは学生の教育もそうでありますし、卒業後の研修医の教育などでそれを徹底する必要があるのではないか。  もう一つは、自由診療ということで非常にたくさんの患者さんが特定の病院に来られますと、つい医師の方も患者さんの方も、薬をもらって安心して帰っていただく。それから、もともと日本人というのは非常に薬の好きな国民だというふうに言われているということがありますように、患者さん自身もまた薬を欲しがる傾向がある。これはやはり、一般の方に対する教育というものを我々も一生懸命やらなければならないと思います。  もう一つの問題は、いろいろな病院に自由に行かれるということがありまして、行くたびの病院ごとに薬をもらう、そうすると重複したりするということもあります。  それからもう一つは、医薬分業の問題がありまして、ある一つの病院でも、Aという科とBという科、病気によって内科に行ったり整形外科に行ったりしますと、そのおのおので薬を処方してしまう。それはまだ病院の中でコントロールできるのですけれども、Aという病院とBという病院に行って、おのおのの病院の中の薬局で出されますと、患者さん自身は知らないで、二つの薬、二種類の同じようなものを飲んでしまうことになるとか、そういう意味では、やはり医薬分業をして、特定の薬局で、行きつけの薬局で薬をもらうようにするとそういう重複が避けられるのではないか。  ですから、簡単に言いますと、医師に対しては薬の使い方に対する教育をもっと十分にするということと、それから、医薬分業をして、一人の患者さんが複数の病院から複数の薬をもらってそれが重複するというようなことをなくするようにする必要がある、そういうふうに考えております。
  66. 高橋則行

    高橋参考人 やはり日本では、諸外国と比較して医薬品の使い方が多いと思います。この最大の根源はやはり出来高払い制で、大量に使っても原価が保証できるという医療制度の問題があると思います。  しかしながら、私は、定額制にすれば医薬品費が減るといって定額制を厳しくやるということが、では本当に適切な医薬品使用に結びつくかというと、これはまた疑問があると思います。  そこで、出来高払い制の中でいわゆるぜい肉を減らすような適正化ができないか。今の場合は、どちらかといえば付加しておいた方がいいだろう、加えておいた方がいいだろうという程度の薬まで処方の中に処方される例が多い。ここら辺には、今、高久先生御指摘のように、医学教育における薬物療法学あるいは処方学といったことで、医薬品の基本的な正しい使い方を教育の段階から入れていかなければいけないだろうということで、これは政府の医療政策と同時にやはり教育問題が絡んでくるというふうに私は考えております。
  67. 荒井聰

    荒井(聰)委員 時間が来ましたからやめますけれども、私は、健康とか病気を治すというのは、本来人間が、自分自身が治しているのだと思うのですね。薬というのはその補助のものだと思うのです。しかし、本人はもちろん、ある場合にはお医者さんも、薬が治しているのだという錯覚をお持ちなのじゃないかというふうに思うことがよくあります。  どうもありがとうございました。
  68. 和田貞夫

    和田委員長 岩佐恵美さん。
  69. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 本日は、参考人の皆様には、お忙しい中御出席をいただきまして、ありがとうございました。  私、日本共産党の岩佐恵美でございます。  最初に、今、茅ケ崎の市立病院だとか、あるいはセローノ・ジャパンなどの事件で明らかになっておりますように、治験担当医師製薬企業との不明朗な癒着、これが大きな国民の関心事になっておりますし、こういうところを断っていかないと本当に国民の健康を守れないのではないか、そういう疑問があるわけですけれども、このようなお医者さんと製薬企業との不明朗な関係を断つためにどういうふうにしたらいいのかということについて伺いたいと思います。小林先生と片平先生にお伺いをしたいと思います。
  70. 小林眞一

    小林参考人 担当医師とメーカーの不明朗な癒着ということでございますけれども、本来的には、担当医師とメーカーというのは、かなり情報を密にしてコンタクトを持たなければよい治験というのはできないわけでございますから、その癒着という言い方は非常に語弊があるのですが、関係は非常に密であっても何もおかしくないのではないかというふうに思われます。  先生がおっしゃっている茅ケ崎病院の例とか、その辺がどういうものであるか、私自身も新聞報道でしかわかりませんので、具体的に、不明朗と言われる意味が何となくフィーリングでしかわからないので、的確に先生にお答えするものを持っておりませんけれども、ある意味では金銭的なもの等をおっしゃっているのかもしれませんけれども、その辺に関しては、私は、今後ともきちっとした、要するに規則を明確にしていく、研究費等を払うことが悪いことではなくて、その辺は明確にしていくのだというような体制が必要だと思います。
  71. 片平洌彦

    片平参考人 協力は必要なんですけれども、やはり癒着はいけないというふうに思います。医師はあくまでも患者立場で考えなければいけない。やはり企業は、先ほど申しましたように利潤追求をする存在ですから、副作用情報についてはマイナス情報という言い方でそういうものを出したがらない、そういう体質がありますので、医師はあくまで患者立場で物事を考えなければいけないというふうに思います。  特に大学にいる者としてこの場で申し上げたいこととしましては、大学の予算が率直に言って非常に貧困であります。うちの教室の年間予算が約四百万足らずで、人件費を含めて電話代とか光熱費とかすべて出さなければいけない。そういう実情の中で、企業からお金が入ってくるとついそちらに気持ちがいくというようなことがありがちだと思います。やはり、こういう公的な研究、教育の場を公的な予算で充実させるということが大事な点ではないかというふうに思います。
  72. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 それから、治験データの改ざんということが大きな問題になっていますけれども、なかなか治験データの改ざんを見つけるというのは難しい、どうしていったらいいのかということで非常に頭を悩ませている問題であるわけです。  この治験データの改ざんを防ぐためにどうしていったらいいのかという御提案がございましたらお教えをいただきたいと思うのですけれども、高橋先生、そして片平先生、お願いをしたいと思います。
  73. 高橋則行

    高橋参考人 提出されたデータからそのものがどこの段階で改ざんされたかというのは、これは判定が非常に難しい問題でございます。  しかしながら、現実治験医療機関で行われ、また医療機関を受診している患者に対して行われているのですから、これはカルテには少なくともうそは書けないのじゃないか。そうすれば、治験データとカルテとの照合、いわゆるGCP査察を強化していけば、特にそこら辺に疑いを持たれるような報告に対してそういう査察を緻密にやっていけば、かなりそういうものを摘発し、また防ぐことができるのじゃないか。しかし、それは私はそれほど数は多いとは思いませんけれども、やはりこういった一つの牽制というものは必要じゃないかというふうに感じます。
  74. 片平洌彦

    片平参考人 今の高橋先生の御意見に加えて申し上げたいのですが、以前、日本ケミファの事件がありました。そのときに、臨床試験の論文のデータが実は架空のものであったということが非常に問題になりましたが、その論文を私も見てみましたけれども、非常によくというか巧妙に書かれていて、その論文を見た限りではなかなか判断がつかない、まさかそのような論文とは思えない、そういうくらい巧妙に書かれておりました。  そういうものを発見するのはなかなか難しいと思いますけれども、今高橋先生が申されたようなことをやっていくこと、それから論文の査読を厳しくすること、これが大事なことであると思います。通常の学会誌というのは査読を行うわけですけれども、それを、特に治験の場合には人の命に直接かかわりますから、通常の査読以上にといいますか、厳しく審査を行うということが必要だと思います。
  75. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 中央薬事審議会のことについてちょっとさっき触れられましたけれども、中央薬事審議会委員へのアンケートで、現状では片手間の審査で丹念なチェックは無理、委員の増員を図るとともに審査の公開による透明性が必要だ、資料の内容や記載法を見直すとともに、任期の延長や役割、責任を明確にすべき、そういうふうな御意見があるようでございます。中央薬事審議会委員の皆さんの御負担というのは大変なものであろうというふうにも思います。  それと、私は、ちょっと専門的過ぎて、薬害エイズでも、血液製剤委員会の構成メンバーを聞いても、ある特定の分野のメンバーが集まっていて、一人の研究者がかなり分野を押さえていくという面もあるような気がして、中央薬事審議会委員というのは専門だけじゃなくて、先ほど専門家が必要だという話もありましたけれども、むしろ、そればかりでなくて、もっと国民の声が反映されるようなものであってもいいのじゃないかなというふうに思います。  そういう点で、そのことについて先ほどお触れになられました高橋先生と片平先生に、再度この問題についてお伺いをしたいと思います。
  76. 高橋則行

    高橋参考人 先生御指摘のように、中央薬事審議会新薬調査会、一つの薬品の資料がこれぐらいあるのですね。これを本当に読んで、やるということは大変なことなんですね。  それから、先生御指摘のように、今は医師医療専門化しておりますので、これだけの文献の中でも御自分の専門の領域として本当に読んで評価できる部分というのはある部分にすぎない。薬理の方、毒性の方、臨床の方、それぞれが見るところが違うわけですね。こういったところの分担をもう少しきちっとやれば、委員の御負担も少し軽減できるし、また的をついた評価ができるのじゃないか。これはやり方としてはいろいろ方法論は難しいと思いますが、やはり先生の御指摘のように、少し変えていく方向で検討する必要が十分あると思います。
  77. 片平洌彦

    片平参考人 食品衛生調査会を考えてみますと、この委員の中には消費者の代表の人も入っているわけですね。そういうことを考えますと、中央薬事審議会は確かに非常に専門的な内容ですけれども、いわゆる薬に素人であっても、素人なりの見方で意見を言うことができるのではないかというふうに思うのです。実際にはなかなかそういう委員を加えるのは難しいということであるならば、私が先ほど提案させていただいたように、被害者患者、国民の立場で薬事行政を監視するようなシステムをつくって、それで中央薬事審議会審査の内容に関してもそういう立場から検討する、そういうシステムをつくるべきではないかというふうに思います。
  78. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 先ほど、医薬品機構について片平先生からいろいろ御心配が指摘をされました。私たちも、ひさしを貸して母屋をとられてしまう心配があるということは、委員会の中でも指摘をしております。  それから、役員構成について、理事長は一人を除いて代々厚生省薬務局の天下りでありますし、理事の皆さんも天下りで占められている。そういう点で、機構そのもののあり方として問題があるのじゃないか、そんな気がいたします。  私の質問の残り時間はあと三分程度でございます。その範囲内で、片平先生、医薬品機構の問題、そしてまた、きょうこの点だけはちょっと最後に言っておきたいということがありましたら、御発言をいただきたいと思います。
  79. 片平洌彦

    片平参考人 先ほど話が出ましたように、この医薬品機構というのは認可法人で、いわば民間組織だと思います。先ほどどなたか第三者機関というふうに言われましたけれども、純然たる第三者機関ではないというふうに思います。やはり、費用の面でも企業から非常にお金が入っていますし、そういうところで、中立的な、患者、国民の立場に立った、きちんとした審査へのかかわりが果たしてできるのだろうかということを非常に疑問に思うわけです。  したがって、私は、この医薬品機構については、先ほど申しました、本来の被害者救済業務充実させるということをやっていただきたいというふうに思いますし、審査自体は厚生省できちんと新しい組織をつくるなりしてやってほしいというふうに思います。  それが医薬品機構に関する意見です。  最後に申したいこととしては、私、これまでスモンとか薬害エイズ被害者の実態調査をしてまいりまして、皆さんもよく御承知と思いますけれども、本当に悲惨な実態が日本全国にあるわけです。このことを繰り返さないために、私たちが本当に衆知を集めなければいけない。そのことのためには、今回の薬事法改正は部分的な従来の対策の延長線上にありますので、やはり抜本的に改革をしていかないと同じことが繰り返されるということ、このことをこの場で強調することが私自身の責任でもあるということをすごく感じておりますので、特に申し上げさせていただきたいと思います。
  80. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 終わります。どうもありがとうございました。
  81. 和田貞夫

    和田委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人方々には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二分休憩      ――――◇―――――     午後一時十二分開議
  82. 和田貞夫

    和田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石田祝稔君。
  83. 石田祝稔

    石田(祝)委員 まず、質問の前に、委員会のスタートがもう十二分おくれております。私はその分ちゃんとやりますけれども、委員長、ぜひこれは、国会、与野党が運営に責任を持つとはいえ、閣法でございますし、第一義的には与党がしっかりやっていただくのが筋だと思いますので、よろしく御注意をお願いしたいと思います。
  84. 和田貞夫

    和田委員長 この際、各会派の理事さんにお願いをいたします。  常に各会派の構成員の最低半数は委員会出席者を確保するように、自後ひとつ御協力のほどお願いいたします。
  85. 石田祝稔

    石田(祝)委員 まず、五月三十一日付で薬害エイズ問題で厚生省が幹部職員十四人処分、こういうことでございますが、その具体的な中身をお示しください。
  86. 菅直人

    ○菅国務大臣 まず、法律に基づく処分としては、事務次官に減給五分の一、二カ月、薬務局長に十分の一減給、一カ月ということでありまして、また、行政の内部としての規律のための一つの処分としては、薬務担当の審議官に訓告をしたのを初め、合わせてこの審議官を含め十二名の中、訓告が四人、文書による厳重注意が四人、口頭による注意が四人ということになっております。また、私自身、給与の五分の一、ニカ月を返上するということを決めましたし、それに加えて、局長以上の皆さんが自発的に、給与の五%、一カ月返上する、そういうことを自主的に決定していただきました。  以上です。
  87. 石田祝稔

    石田(祝)委員 今回の法律上の処分を含め、省内の処分も含めて十四名、その理由と根拠について教えてください。
  88. 菅直人

    ○菅国務大臣 今回の処分につきましては、まず、この薬害エイズに関連しまして東京地裁、大阪地裁の和解勧告が昨年十月にあったわけですが、その所見の中あるいは和解時の所見の中においても、厚生省責任についてかなり厳しい御指摘がありまして、その指摘を厳粛に受けとめ、何ら落ち度のない多くの血友病患者方々エイズ発病や死亡という悲惨な被害が生じたという特別な状況にかんがみて、厚生省全体として、組織運営の事務方の責任者である事務次官と薬事行政の責任者である薬務局長に減給処分を、また、薬務局長を補佐する立場にある薬務担当審議官に訓告処分を科したものであります。  また、これに加えまして、平成六年以来、裁判あるいは国会でエイズ研究班関係資料を求められた際に、調査の不徹底から当該資料を発見できなかったことや、今回の調査プロジェクトチーム発足以来の資料調査や報告においても適切を欠いた部分があったことについて、事務次官、薬務局長、薬務担当審議官をこの問題であわせて処分するとともに、薬務局企画課長以下の薬務局関係者について訓告以下の注意処分を科すこととした次第です。  なお、昭和五十八年から六十年当時において今回の問題にかかわる行政に携わった者に対しては、現在、本委員会を含め国会などでいろいろと調査といいましょうか、事実関係のいろいろな御議論をいただいておりますので、そうした関係者につきましては、その推移を見ながら今後どういうふうに対応するか適切に判断してまいりたい、このように考えているところです。
  89. 石田祝稔

    石田(祝)委員 今の御答弁の中で確認をさせていただきたいのですが、そういたしますと、今回の十四名の処分には五十八年から六十年当時の行政に携わった方々に対しては処分が行われておらない、こういうことでよろしいのですね。
  90. 菅直人

    ○菅国務大臣 五十八年から六十年当時この問題に直接携わった者について、判断そのものを留保した。もちろん、そういう意味では処分を行っていない。ただ、判断そのものを留保しているということであります。
  91. 石田祝稔

    石田(祝)委員 再度お聞きをいたしますが、留保というお言葉を使われまして、これはどういう意味かちょっとわかりませんが、そうすると、その推移を見守った後にその留保を解除するのですか。新たに、責任があったのか、なかったのかを判断する、こういうことですか。
  92. 菅直人

    ○菅国務大臣 基本的にそういうことです。
  93. 石田祝稔

    石田(祝)委員 そういたしますと、さらにお伺いをしたいのですが、例えば、今厚生省の中の、五十八年から六十年当時の、今回の処分を留保された方々、こういう方々厚生省の内規もしくは国家公務員法上の責任を問うことはできるでしょう。しかし、当時の方が退職されている場合、これはどういうふうな責任のとり方になるのですか。
  94. 菅直人

    ○菅国務大臣 先ほど申し上げたように、判断を留保したということで、処分する、しないを含めて判断を留保したということです。  それで、今の御質問ですが、今の国家公務員法に基づく考え方では、もう役所をやめられて民間に出られた方については、少なくとも、そういった意味で国家公務員法に基づく処分ということはできないというふうに認識をしております。
  95. 石田祝稔

    石田(祝)委員 ということは、今回処分を受けた人は当時全然関係ないところにいて、たまたま今薬務局にいる人が処分を受けて、五十八年から六十年当時の直接行政に携わった人が、今やめているということで、省として、また国家公務員法上何の処分もない。これは、私は、一般国民の感情からいって極めて納得のいかないことではないか、このように思いますけれども、厚生省の任命権者としてこれ以上はそういう人たちに対してはできない、こういうことですか。
  96. 菅直人

    ○菅国務大臣 逆に申し上げますと、今回の問題は、個々の当時携わった人の問題はもちろんですが、役所全体がやはり重く受けとめなければならないというふうに考えまして、現在の事務方の責任者を含めてそういう管理監督責任を問う、また同時に、私自身あるいは幹部職員が自主的に一部給与を返還するということで、そうした厚生省としての組織の責任を国民の皆さんに対して明確にしたというふうに考えております。  今委員がおっしゃるように、それでは、当時の関係者で既にもう公務員でなくなった人についてということは、これは他の、例えば今、東京地検、大阪地検がいろいろ捜査をされているとか、そういう他のいろいろな法制度あるいは機関によって対応されることはあり得るかと思っておりますが、今の国家公務員法に基づく考え方では、厚生省の任命権者としてそうした人たちに対しての処分を行うことができるすべがないというふうに考えております。
  97. 石田祝稔

    石田(祝)委員 ちょっと別の角度でお伺いしますが、人事院に来ていただいておりますけれども、今回の十四名の処分というのは、国家公務員法上の意味というのはどういう意味なんでしょうか。
  98. 佐久間健一

    ○佐久間説明員 懲戒処分は、懲戒権者である任命権者が、懲戒事由に該当すると考える非違行為に対して、諸般の事情を総合的に考慮して、任命権者の裁量に基づいて行うものであるというふうに考えておりますけれども、具体的には、国家公務員法の第八十二条に規定がございます。「この法律又はこの法律に基づく命令に違反した場合」「職務上の義務に違反し、又は職務を怠った場合」あるいは「国民全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあった場合」のいずれかに該当する場合はこれに対し懲戒処分をすることができる、こういうことになっております。
  99. 石田祝稔

    石田(祝)委員 この国家公務員法の第八十二条、懲戒、今御説明いただきましたが、「懲戒処分として、免職、停職、減給又は戒告」、訓告ではなくて「戒告の処分をすることができる。」ですから、今回、十四名の中の減給の二名の方のみが国家公務員法上の懲戒の対象の方であった、こういうことなんですが、厚生大臣、この八十二条に三つ理由を書かれておりますが、今回の方々はこの一、二、三のうちのどれに該当するのですか。
  100. 菅直人

    ○菅国務大臣 私として判断をしましたのは、この二号といいますか、「職務上の義務に違反し、又は職務を怠った場合」、これに該当すると考えて処分いたしました。
  101. 石田祝稔

    石田(祝)委員 そうしますと、これもまた二つに分かれているのですね。「職務上の義務に違反し、」ということと「又は職務を怠った場合」、このうちのどっちですか。
  102. 菅直人

    ○菅国務大臣 今回、その二人について、監督責任がある、その監督責任が十分に果たせなかったという意味で、「職務を怠った場合」に当たる、このように考えました。
  103. 石田祝稔

    石田(祝)委員 要するに、職務を怠った、監督責任を果たせなかった、こういうことで減給をされた。  そうすると、具体的な監督責任というのは、記者会見でも述べられておるように、資料の提出命令が裁判所から出ていてもなかなか出せなかった、それが、厚生大臣が就任以来、プロジェクトチームの発足で三日目で出てきたとか、そういうことに対して、資料の捜査というのでしょうか、調査が不十分であったということのその監督責任ということですか。
  104. 菅直人

    ○菅国務大臣 今言われたことも含まれておりますが、それに加えてといいますか、先ほど申し上げましたように、この薬害エイズの問題は、十三年前の当時から今日に至るまでいろいろな形で、厚生省、裁判においては被告という立場も含めて、あったわけでありまして、組織の管理者としての対応が従来の厚生省のいわば対応の積み重ねに基づくものでありますので、そういった意味ではいわゆる薬害エイズの問題についての対応が必ずしも十分でなかった、そういう意味での監督責任もあわせてこの処分になった、そういうふうに考えております。
  105. 石田祝稔

    石田(祝)委員 ですから、私が思うに、今回の処分は、国民の一般的な目から見て軽いという判断だろうと思いますが、結局、これは起こした責任ということが全然出ていないのですよ。見てみると、要するに、資料が発見できなかった、それが悪かったのだみたいな話で終わっているわけですね。ですから、これは委員会の推移を見てということで判断を留保されている部分に入るかと私は善意に解釈をしますけれども、結局、国民の目から見たら、この一月に厚生大臣が就任されて御努力をされた中でずっと来た、もう六月も過ぎた、今この五月の末に一応の責任を問うということでこういう判断を下された、しかしそこに、起こしたということ、これは厚生省の薬務行政の中で起きたということに対する責任が全然触れられていないわけです。  昨日の参考人招致の中で、与党の質問者は、国家による犯罪だ、こういうことをはっきりおっしゃいましたよ。ですから、大臣、国民の意識と非常に乖離をしている部分がまさしくそこだろうと私は思います。起こしたことの責任、広がったことの責任、そして、裁判においてなおかつ資料を提出しなかった、いろいろな責任がありますよ。だけれども、根本が、起こしたという、薬事行政の中で起きたという責任が全然触れられていない。これが結局、今回の処分を国民の目から見ても大変不十分なものにしているのではないか、私はこう思いますけれども、いかがですか。
  106. 菅直人

    ○菅国務大臣 率直に申し上げまして、私も、今回の問題は、これは和解の所見でも述べられていますように、かつて、サリドマイドがあり、スモンといった副作用があり、そういうことの折々に、その時々の責任者が、こういう問題を二度と起こさないように全力を尽くす、そういう厳しい反省を述べてきたわけですが、残念ながら、さらに今回のような薬害エイズを引き起こしたというその責任が和解の中でも、所見の中でも厳しく指摘をされておりますし、また、そのことを私たちも厳しく受けとめているつもりであります。  そういう意味では、そのことに対しての責任のとり方を私自身いろいろ考えたわけですけれども、現在の制度の中、例えば国家公務員法という法制度の中では、そういう行政のある意味での判断の誤りというものを正面から処分という形であらわす方法というのがなかなか法律的には用意されていないというふうな状態の中で、しかし、国民の皆さんに対して、そうした趣旨をできるだけ明確にする、あるいはそういう厚生省の姿勢を明確に示すという意味から幾つかの考え方をあわせて行ったのが、今回の処分と、それと関連して行った幾つかの自発的な対応というふうに考えております。  そういう点では、これら全体をもって厚生省の組織としての反省というふうに御理解をいただきたい、こう思っております。
  107. 石田祝稔

    石田(祝)委員 私は、最初に人事院の方にも来ていただいてお聞きをしたように、今回の処分で、国家公務員法上懲戒に当たるのは二人ですね。あとの方は、訓告とか厳重注意とかいろいろ書かれておりますけれども、これは国家公務員法上の懲戒の部分では全然ないですね。いわゆる厚生省の内部の、あなた、しっかりしなさい、こういうことではないのですか。結局、これは公務員法上、履歴に傷がつく話でもないし、昇進とかそういうものに一切関係ないわけでしょう。これだけを見たら、十四人、しっかりやってくれているなと思うけれども、これは厚生省の中の規律の話です。ですから、私は、これが国民と乖離しているということを言っているわけです。  先日、毎日・世論フォーラムというところが世論調査をやって、九州、山口の成人男女千人を対象調査をした。その中で、薬害エイズ問題は刑事責任を問え、これは八六%の人がそういう返事だった。  ですから、そういう国民感情から見たときに、大変乖離をして、厚生省責任は五十八年-六十年の人を除いて当面これで終わった、こういうことでは国民としては全然納得ができないのではないか。そこに認識のギャップを大変感ずるわけなんです。  今後、委員会参考人と進んでどういう形になっていくか、まだはっきりここで言えないかと思いますけれども、大臣として、残されたいわゆる当時の責任、こういうことについて順次やっていくお考えがあるのかどうか、この問題で最後に聞いておきます。
  108. 菅直人

    ○菅国務大臣 今、石田委員の方から、あるアンケート調査について御指摘がありましたし、私もその記事をどこかで読んだことがあります。  十分御承知の上で御質問だと思いますが、例えば刑事罰等に関しては、現在捜査当局がいろいろ捜査をされているようですが、そういったそれぞれの権限を持っている機関なりそれぞれの法律を所管しているところでそこはやっていただく、お願いするしかないわけでありまして、今の私の立場といいましょうか厚生省立場で、そういったところまで含めた処分なり形というのはとり得ない、これは制度的にとり得ないというふうに考えております。そのことで、すべてが国民の皆さんに納得されたということで、決してこれで十分ということを申し上げているわけではなくて、現在の厚生省という立場、あるいはその任命権者という私の立場の中でこういった形で姿勢を示したということであります。  そういった意味を含めて、五十八年から六十年当時のことにつきましては、この間のいろいろな国会審議の推移なども見守らせていただきながらどこかの段階に来た段階で判断をしたい、そう考えております。
  109. 石田祝稔

    石田(祝)委員 人事院の方に最後にちょっとお聞きをします。  今回の懲戒処分に対して処分説明書の写しというものが提出はされていますか。
  110. 佐久間健一

    ○佐久間説明員 先般処分が行われたという時期的なあれがございまして、これから厚生省の方から私どもの方に処分説明書をいただくことになるというふうに考えております。
  111. 石田祝稔

    石田(祝)委員 私は、これはもう当然出ていると思ったのですが、通常、懲戒処分の後に大分日を置いて出るものなんですか。
  112. 佐久間健一

    ○佐久間説明員 通常、事務的な処理も含めまして、大体一月内ぐらいに私どものところに届けていただくというような形になっております。
  113. 石田祝稔

    石田(祝)委員 では、この問題は以上で終わりたいと思います。  この法案の中身についてお伺いしたいのですが、今回の法案の提案理由説明の中に「非加熱血液製剤によるエイズウイルス感染問題を踏まえ、」ということが載っております。今回の法案は、エイズ対策ということでは今回の改正案で十分だ、こういう位置づけになっておりますか。
  114. 菅直人

    ○菅国務大臣 今回の薬事法等の一部改正案は、ソリブジン事件を契機として、治験から承認審査市販後に至る総合的な安全性確保対策を講じるということが一つの大きな柱になっております。それに加えまして、今回の血液製剤によるHIV感染問題の反省に立ちまして、緊急に必要となる措置をあわせて講じようという考え方でお願いをしているところであります。  それで、血液製剤によるHIV感染問題を踏まえた措置としては、一つは、医薬品の緊急許可制度を導入し、緊急の必要性が高く、代替治療法がないような場合には、医薬品を特例的に輸入、製造できる道を開いたことであります。もう一点は、製薬企業医薬品使用による感染症の発生の報告を義務づけたことにあるわけであります。  また、血液製剤によるHIV感染問題については、現在、本院を含めいろいろな議論が行われていただいておりますし、また、厚生省におきましても、厚生科学会議の中で議論をいただき、さらには医薬品健康被害再発防止プロジェクトチームにおきましても、政策決定プロセスのあり方、情報提供のあり方、薬事行政及びその組織のあり方について検討を行っております。  このような意味で、今回のこの事件の反省に立って、いろいろな御意見がこの間出てきている、あるいはこれからも出てくるということが予想されておりまして、そうした議論が出てくる中から、さらにどういった措置が必要になるか、国会の審議を含めて見守ってまいりたいと思っております。  そういった意味で、今、石田委員の方から、今回の法案でHIVの薬害に対する再発防止措置が十分かというような趣旨の御質問というふうに受けとめさせていただきましたが、この問題につきましては、緊急の問題についてだけ加えさせていただいて、さらなる問題は今後の問題として十分検討していきたい、こう考えております。
  115. 石田祝稔

    石田(祝)委員 そういたしますと、緊急輸入のところは確かに言っておりますが、厚生大臣も最後の方でお答えになったように、これは一言で言えば、十分か十分でないかと言われれば、現段階、この審議をしている段階とこの法案がつくられたときの状況にかんがみるとやはりこれは十分ではない、こういうことでよろしいのですか。
  116. 菅直人

    ○菅国務大臣 十分という表現でありますが、今回の改正案改正案の目的に対して一つの形になっていると思いますが、薬害エイズの問題など、今後さらなる薬事行政の改革を行っていくことの必要性などについては、まさに今、本院でも議論をいただいているところでありまして、そういう点では、この国会での御審議の推移を見守った中からさらなる措置が必要になってくることもあるいはあるのではないか、このように思っております。
  117. 石田祝稔

    石田(祝)委員 もう少し確認をしたいのですが、このソリブジン事件というのは平成五年ですね。それ以降、やはり併用による重篤な副作用が出てきた、それについて薬事法改正をしていかなくてはならぬ。ですから、市販後の調査ということも含まれているわけですね。ずっとそういう形、そういうコンセプトでこの薬事法改正が進められてきた。  ですから、今回のエイズの問題は、特にことしの一月になってから、また和解が終わってからたくさんの資料が出てきたりして、全然状況が違ってきている段階で法案はそのまま出されてきた、閣議決定をされて。だから、閣議決定をされた後、大分状況が変わって、いろいろな新しい状況もわかってきているというふうに私は思いますが、そういうことを踏まえて、現時点で十分か十分でないか、委員会の審議をこれから見守ってという意味じゃなくて、出された、審議が始まった段階で既にもうエイズに関しては不十分ではないですか、こういうことをお聞きしております。
  118. 菅直人

    ○菅国務大臣 十分であるかないかという表現は、なかなか率直に申し上げて、行政の立場で申し上げていいのかどうかというのがありますが、少なくとも今回お願いしている法案が、石田委員が今言われたように、薬害エイズのいろいろな問題すべてを踏まえた上で用意されたものではありませんので、そういった点では、今後の議論なり、あるいはその後明らかになった問題の中からさらなる薬事行政のあり方に対する改革というものが必要になることはあり得るというふうに思っております。
  119. 石田祝稔

    石田(祝)委員 終わります。
  120. 和田貞夫

  121. 大野由利子

    ○大野(由)委員 前回に引き続きまして薬事法の質疑をさせていただきたいと思いますが、法案の質疑に入ります前に、若干、私も薬害エイズに関連することを質問させていただきたいと思います。  国立予防衛生研究所が八五年七月以後もエイズウイルス感染のおそれのある非加熱製剤を国家検定に合格させていたということが判明をいたしました。六月三日の東京新聞に報道をされておりますが、八五年の七月一日と申しますと、治験が一番おくれましたミドリ十字を初めといたしまして、加熱製剤が一括承認された日でございます。  この同じ日にバイエル薬品の非加熱製剤六千五百四十五本、それから三日後の七月四日にはミドリ十字の五百八十本、それから、八月一日から九月二日までに日本臓器の六千八百九十一本を国立予防衛生研究所が国家検定合格をさせておりまして、国家検定の証という、国家検定に通ったという証紙をつけて販売することを許可しているわけですが、なぜこのようなことが起きたのか、説明をいただきたいと思います。
  122. 荒賀泰太

    荒賀政府委員 国立予防衛生研究所からの報告によりますと、今お話がございましたバイエル薬品、ミドリ十字の非加熱第Ⅷ因子製剤が、加熱製剤が承認されました昭和六十年七月一日以降、それぞれ七月一日及び七月四日に各一ロットずつ検定に合格をしておるわけであります。これらの製品は出荷されていないことが厚生省が行いました立入調査等で確認をされております。  また、加熱製剤の承認がおくれておりました日本臓器製薬につきましては、他社の加熱製剤が承認をされました昭和六十年七月一日以降、八月二日、五日、九月一日、計四ロット、検定に合格をしておるわけでございます。これらの製品につきましては、確認はできてはおりませんけれども、日本臓器製薬からは出荷されていない旨の報告を受けておるわけでございます。  この検定につきましては、血液凝固因子製剤等の品質確保の方法の一つといたしまして、試験を行うに当たりまして、高度な技術を必要とする品質基準、検定基準でございますか、その製剤が適合するかどうかを公的にチェックするということを目的に実施されておるものでございます。そういった定められた一定の手続に従って実施をされ、検定の合格不合格を検定基準に定められていない項目に基づいて行うことはできないというふうに考えておるわけでございます。  経過としてはそのような経過でございます。
  123. 大野由利子

    ○大野(由)委員 これは、出荷されていたとか出荷されていないという答弁がございましたけれども、私は、そういう性質のものではなかろう、こう思います。また、メーカーの方では出荷していない、そのように言われていても、その保証はどこもないわけでございますし、一部は、日本臓器は、オーストリアの輸入元に送り返しているとかいろいろなことを言われてはおりますけれども、輸出記録は残っていない。また、いろいろな振込記録もほかの回収分と一緒になっているということで、これ自体の回収がどうなっているかというのは何らはっきりした証拠は何もないわけでございます。  そういう意味で、そういう証拠がないメーカー側の発言だけを今薬務局長は公表されたわけですけれども、私は、出荷されたか、されていないか、そういう性質のものではなくて、本来なら非加熱製剤が直ちに回収されなければいけない、そういう筋のものであるにもかかわらず――いろいろ薬害エイズエイズウイルスによる汚染が心配をされておりました。そして、やっと加熱製剤が一括承認されて、なおかつ非加熱製剤が要するにこういう国家検定を受けるという、なぜこういうシステムになっているのか、そういうことを質問させていただいたのですが、今の薬務局長の答弁では答弁になっていない。もう一度答弁をお願いしたいと思うのです。  実は、国立予防衛生研究所は、厚生省組織令の第九十九条で、「病原及び病因の検索並びに予防治療方法の研究」、それから、「生物学的製剤」の検定、血液製剤というのはまさにこの「生物学的製剤」になるわけですが、これの検定、「その他予防衛生に関し、科学的調査研究を行うこと。」これが厚生省組織令の第九十九条にきちっと仕事として出ているわけです。  ですから、予防研の業務は、薬害エイズ対策にどこよりも早く取り組む使命があった、役割を担っていたわけでございます。世界エイズ情報収集して、対策研究が求められる立場にあった。それをどうして怠っていてこうなったのかということを質問しているわけでございます。
  124. 荒賀泰太

    荒賀政府委員 先ほど申し上げましたが、予研におきましては、定められた一定の手続に従って、検定基準に製剤が適合するかどうかチェックをしておるわけでございまして、この検定基準に定められていない項目について行うことはできないというふうに考えておりまして、当時、HIVのチェックを検定項目に入れるということを仮に考えたといたしましても、血液凝固因子製剤として製品化されました医薬品については、抗体検査によってエイズウイルスの混入の有無というものは検出をできなかったものでございます。  ただ、先生がおっしゃるように、私どもも、非加熱製剤を検定不合格とすることは今申し上げたようなことで困難であったかとは思いますけれども、加熱製剤が承認されたその当時の非加熱製剤の取り扱いにつきましては、現時点からいたしますと、やはり非加熱製剤の危険性の認識が十分ではなかったものというふうに考えておるところでございます。
  125. 大野由利子

    ○大野(由)委員 薬害エイズ情報について、予防研はもう八二年の七月の時点でこの情報は知っていたはずなんですね、汚染されている可能性があるということは。アメリカの疾病予防センター、CDCが発行しています罹病死亡週報、MMWR、これの八二年七月に、血友病患者三名のエイズ感染の原因は血液製剤を媒介とする伝染にある、こういうふうにして血友病患者センターの所長に注意を喚起して調査を始めた、こういうことが掲載されております。その後も何度もCDCはこうした週報を発表しているわけでございますし、予防研も大体五日から一週間後にはこの週報が到着しているはずなんですが、どうなっているでしょうか。
  126. 荒賀泰太

    荒賀政府委員 予防衛生研究所、これはアメリカでいえばCDCに相当するということで、ウイルス関係については世界の最新情報を知り得る立場であったというふうに私も思っておるわけでございますが、そういったことで、予研におきましては、専門性を有する検定実施機関といたしまして、厚生省本省に対する十分な情報提供あるいは助言が適切に行われていなかったのではないかという指摘もございます。  そういったことで、その役割を十分果たしていけるよう、情報収集あるいは提供等の体制のあり方について検討してまいりたい、このように考えております。
  127. 大野由利子

    ○大野(由)委員 エイズウイルス感染のおそれのある非加熱製剤の国家検定に当たって、実際に予防研はどんな検定作業を行っていたのか伺いたいと思います。検査をしていたのか、していなかったのか。
  128. 荒賀泰太

    荒賀政府委員 予研の検定の手順は先ほど申し上げましたが、検定基準、品質基準がございまして、それに製剤が適合するかどうかということをチェックしておるわけでございますので、そういった定められた一定の手続に従って実施をされたというふうに理解をいたしておるわけでございます。  ただ、HIVのチェックを検定項目に入れるということを仮に考えたといたしましても、これは先生よく御承知のように、血液凝固因子製剤として製品化されました医薬品については、抗体検査によってエイズウイルスの混入の有無というものは検出ができないということも事実でございます。
  129. 大野由利子

    ○大野(由)委員 私は、チェック項目の中にこのエイズ感染がなかったから検査するとかしないとか、そういう筋のものでもないだろうと思うのですね。厚生省、また国立予防衛生研究所も国の機関でもございますし、国民の生命と健康をいかにして守るか、そういう機関であるわけです。ところがその機関が、チェック項目に入っているとか入っていないとかいう状況で、入っていないから検査しなくて何も落ち度がないというような筋のものではなかろう。もう二年以上も前から、エイズウイルスに感染しているおそれがあるということが盛んに言われていて、だからこそ、加熱製剤の治験が行われて一括承認もされているわけでございます。  そういう意味で、先ほど石田委員の方からいろいろ、今回の厚生省の処分が、単に資料を隠したとか隠さなかったとか、そういう処分だけに限定されている、そういう質問もございましたけれども、私は、この当時の厚生省責任者はどなたなのか、伺いたいと思います。予防衛生研究所の所長と、それから、厚生省のこの予防衛生研究所を直接監督していらっしゃるところはどこだったのかについて確認をしたいと思います。薬務局だったのか、それとも大臣官房の直轄の予防衛生研究所だったのかどうか、その辺を伺いたいと思います。
  130. 荒賀泰太

    荒賀政府委員 この検定を行います基準につきましては、これは薬務局が定めておるところでございます。
  131. 大野由利子

    ○大野(由)委員 危険を知りながら回収しなかっただけではなくて、薬務局の直接の監督であります予防衛生研究所がこういう状況であったということは、余りにも危機感がないというか、本当に私は、もうこれは薬務局の手落ちとかなんとかで済むような問題ではない、このように思います。厚生大臣、この辺の御見解を伺いたいと思います。
  132. 菅直人

    ○菅国務大臣 CDCのいろいろなデータがどの時点で予研に来ている、あるいは当時の薬務局に来ている、こういった問題は、この間のいろいろな調査の中で関係者の方がいろいろとお述べになっております。  そういった点では、私も、今局長からも答弁ありましたが、日本における予防研究所の機能が、こういった問題に関して、アメリカのCDCのような意味での、何といいましょうか、そうした同じような機能を必ずしも十分果たしていないというのは、これは、組織的ないろいろな力量の問題、人員や予算を含めてそういう限界もあるわけですけれども、やはり今後の薬事行政のあり方を考える中では、こういった予防研究所のある意味では積極的なあり方をどう実現できるかということもあわせて考えていく必要があるだろう、そう思っております。
  133. 大野由利子

    ○大野(由)委員 この非加熱製剤が回収されないで、血友病患者の方だけではありませんで、肝臓病とか未熟児の治療、それから手術の止血に効果があるというようなことで、非常に多くの分野患者さんに使われていたということが、今、毎日の新聞に次々と報道されております。これはもう本当に大変なことだなという実感でございます。  各医療機関は必死になって患者さんを追いかけて調べていらっしゃるようでございますけれども、移転先、引っ越し先がわからないとか、また、きょうの報道によりますと、当時、非加熱製剤を納入したけれども、今現在、病院を廃業しているところが五十もあるというのですね。そういうところは、カルテももちろんないし、全然追っかけようがない。そういう状況で、医療機関の方も、これは医療機関だけではとてもできない、行政の手をかりたい、このようにおっしゃっているわけでございます。  私ども、これはほっておくわけにはいかない。感染していらっしゃるかどうか早く調べて、それなりの治療を早くすれば、悲劇をまだ少しでも少なく食いとめることができるわけですが、本人が気がついて、いろいろ自覚症状が出てから調べたのではもう手おくれというふうになってしまうわけでございますので、病院名を公表するとか、この間に手術を受けた方はここへ問い合わせしてくださいとか、厚生省のここで問い合わせてくださいとか、そういう緊急態勢をとって、そして緊急の相談室、何でも相談室というか一一〇番というか、そういう体制をつくって対応すべき問題ではなかろうか。そして、少しでも不安のある人は検査費は無料でエイズの検査を受けることができます、そういうことを発表しなければいけない時期に来ているのじゃないか、私はこう思いますが、御見解を伺いたいと思います。
  134. 菅直人

    ○菅国務大臣 この問題は、いわゆる第四ルートという言い方がよくされていますが、今、厚生省の中にそのための調査プロジェクトをつくりまして調査をずっと進めている、その過程が一部報道されているのかなと思っております。  確かに、大野委員が今言われますように、大体、薬の製造ヌーカーからどこに納入されたかというところについては、これも一〇〇%押さえ切れているのかどうか。例えば、卸のところから漏れているとかいうケースもあり得るので、必ずしも一〇〇%と言えるかどうかわかりませんが、少なくとも、メーカーサイドからどこに卸したかということを追っかけた結果が、先日発表しましたように、第Ⅷ因子、第Ⅸ因子、合わせますと二千を超える医療機関ということになったわけであります。  ただ、その一つ一つの医療機関について、今いろいろと調査をお願いしている段階でありまして、今いろいろお話がありましたように、その調査結果が今から順次上がってくる予定になっております。また、その中で、今御指摘のような問題もあるいはいろいろと含まれている可能性は確かにあるわけでありまして、そのときに、医療機関の名前を公表して、国民の皆さん、患者の皆さんに、その時期にそこにがかった人はできるだけ検査を受けてほしい、そういうふうに発表していくというのも一つの選択として検討しなければならないのかなと思っております。  ただ、現時点ではまだ、医療機関に協力をお願いして調べているという段階でありますし、この問題、エイズ拠点病院のときも同じなんですが、なかなか医療機関そのものの方でも、この件についてはいろいろと慎重な対応を求められるケースもあるものですから、もう少し調査が進んだ段階で、今のやり方だけではカバーできない範囲が相当部分あるというときに今御指摘のあったような問題も含めて十分検討していきたい、このように考えております。
  135. 大野由利子

    ○大野(由)委員 ぜひ、この件につきましては、本当に少しでも早く対応を、また検討をしていただきたい、このように思います。  余り時間がなくなってまいりましたけれども、薬事法について少し質問をさせていただきたいと思います。  この前、業務局長は、FDAと同じだ、FDAの事前審査と同じだ、こういう回答があったわけですけれども、私は、アメリカFDAとは全く違う、このように思うわけです。  アメリカではFDAの査察官が百人いるのですが、日本厚生省の査察官というのは何人いらっしゃるか、伺いたいと思います。
  136. 荒賀泰太

    荒賀政府委員 日本GCP査察官は、残念ながら現在三名でございまして、ことしの十月から新たに三名のGCP査察官の増員が予定されておりますので、ことしの秋から合計六名が配置されるというふうに考えております。
  137. 大野由利子

    ○大野(由)委員 査察の障害になっているのは、アメリカ等々では、患者のカルテとなかなか照らし合わせられない。厚生省の査察官の場合は、照らし合わせできなければ承認しないというようなことがあって、結果的には認められているようでございますが、これはあくまで任意協力というふうになっているのではないかと思うのですね。たった三名や六名ぐらいの査察官では十分ではないわけです。  要するに、治験データが正しいか、正しくないかということをきちっと調べようと思うと、カルテと合わせるしかない。ちょっと話が前後いたしますが、午前中の参考人質疑の中でも、高橋参考人からそういう話がございました。  要するに、治験医とメーカーが癒着をして、そして大変いろいろ贈収賄が行われてという事件、茅ケ崎のお医者さんでそういうことがありました。しかし、あれはたまたま贈収賄があったものですから刑事事件になったわけですけれども、厚生省としては、今の茅ケ崎の問題は全くまだノータッチなわけですね。ですから、治験医の出してくださるデータがどこまで正しいのかどうか、改ざんされていないかどうかということをチェックすることが非常に大事な要素になってくると思います。  そういう意味で、カルテとメーカーから上がってくるデータが正しいかどうか合わせるという必要は非常に大事だと思うのですが、厚生省の査察官の方に頑張っていただくのと、厚生省承認申請が出てからでは遅いと思うのですね。メーカーの人がそれができなければいけないと思うのです。メーカーの人が、治験をお願いしているところへ行ってデータが常に正しいかどうか確認できなければいけない、そのように思うわけです。  これは、製薬メーカーとか、これから医薬品副作用機構もこの辺のチェックをするのかどうかということがありますが、査察ができるというふうにするべきではないかと思いますが、御見解を伺いたいと思います。
  138. 荒賀泰太

    荒賀政府委員 ただいまのお尋ねは、カルテとケースカード、いわゆる症例記録との照合の問題であろうかと思います。  今般、GCP法制化の一つとして、製薬企業治験の管理基準を遵守しなければならない旨の規定を設けることにいたしておるわけでございます。  この治験の管理基準を定めるに当たりましては、ICH-GCP製薬企業に対しまして治験の質の確保の責任をも求めておるということを踏まえまして、製薬企業医療機関に赴きまして治験のモニタリングを行うという制度を導入する方向で検討いたしておるわけでありますが、今お尋ねのカルテと症例記録との照合ということは非常に私どもも重要だと考えておりまして、治験データ信頼性の確認、そういった照合による確認ということにつきましても検討をいたしたいというふうに考えております。
  139. 大野由利子

    ○大野(由)委員 患者さんのプライバシーにかかわる問題もございます。名前を伏せて年齢を伏せてとかというふうにすればプライバシーの保護にはなると思いますし、カルテとの照合がきちっとメーカーもできる、この辺はぜひお願いをしたいと思います。      、  それから、現在、今まで査察官は三名であったということなんですが、査察に入って違反が判明した例はどれだけあるか、伺いたいと思います。
  140. 荒賀泰太

    荒賀政府委員 お尋ねのGCP査察調査は、平成四年十二月以降に申請されましたすべての新規有効成分を含有している医薬品について行っておるわけでございます。  その実績につきましては、治験依頼者につきまして、平成六年度が四十件、平成七年度は二十八件でございます。治験医療機関についての調査につきましては、原則として、一品目当たり、治験を行った主たる医療機関二施設を選んで実施をしておるわけでございます。平成六年度、七年度の実績は、六年度が七十七施設、七年度が五十四施設でございます。  その中で、お尋ねの、データとして採用をしないという例につきましては、GCPの不適合ということで平成六年度から通知をいたしておるわけでありますが、その件数につきましては、査察調査品目六十八品目中四品目でございます。
  141. 大野由利子

    ○大野(由)委員 では、今、四品目という御答弁がございましたが、違反された治験医の名前は公表されましたでしょうか。
  142. 荒賀泰太

    荒賀政府委員 これについては、公表をした事例はございません。  これにつきましては、GCP調査医療機関の協力のもとに行われてきたということでございますが、今後の扱いにつきましては、今回の薬事法改正案におきましては、治験医療機関あるいは治験担当医師についてもGCPの遵守というものが法律上義務づけられるということでございます。そういったことから、被験者の安全についての重大なGCP違反のケースにつきましては、お尋ねの公表ということも含めて、何らかの基準をつくり、また検討をしてまいりたい、このように考えております。
  143. 大野由利子

    ○大野(由)委員 今までは非常に、治験に甘い、そういう先生のところに治験の依頼が殺到するとか、そういうふうな矛盾もございました。こういう状況であってはならないので、もちろん、これからGCPの遵守が法制化されてだんだんに厳しくなるとは思いますけれども、私は、先ほどの茅ケ崎のドクターのように贈収賄事件で捕まったというだけではなくて、治験にいろいろな問題があったときは、それは今後は治験医としてはもう通用しないというふうなこととか、名前を公表するとか、やはりその辺のことも罰則なりそういうこともきちっとしていただいて、日本治験というものが国際的にもいろいろな面で信頼を受けることのできるものにしていく必要がある、このように思いますので、その点、またぜひ御検討をお願いしたいと思います。  時間が来ましたので、これで終了いたします。
  144. 和田貞夫

  145. 山本孝史

    山本(孝)委員 新進党の山本孝史でございます。  石田先生も御質問になりましたけれども、先ほど発表なさいました処分についてお伺いをさせていただきたいと思います。  その際の会見で、大臣、薬害エイズの被害を拡大させたのは行政的失敗だったというふうに御発言をなさっておられますけれども、どのような失敗があったということでこの御発言になっているのか、具体的なその失敗の内容についてお聞かせをいただきたいと思います。     〔委員長退席、横光委員長代理着席〕
  146. 菅直人

    ○菅国務大臣 この血友病患者のHIV感染問題に関しましては、裁判所の所見でも、いろいろと国、厚生省の不手際といいますか、そういうものが指摘をされております。  当時、血液製剤を介して伝播されるウイルスにより血友病患者エイズに感染する危険性や、エイズの重篤性についての認識が十分でなかったために、期待された有効な対策がおくれたため被害の拡大を十分防止し得なかった、このように考えております。  当時期待された対策として、裁判所の所見でも指摘をされているわけですが、国内の血友病患者エイズ感染を防止するため、十分な情報提供、あるいは薬事法に緊急命令の規定が昭和五十四年ですか、加わっているわけですが、この権限を行使して米国から輸入した材料による非加熱製剤の販売の一時停止等の措置が、現在考えてみますと、とられるようなことがあってよかったのではないだろうか。もちろん、その場合には他の手だてを同時並行的に考えておかなければならないということはあるわけですけれども、そういった意味で、こういった和解の所見で指摘をされたような厚生省に対する期待に十分こたえ得なかったことについて、本会議で申し上げたところであります。
  147. 山本孝史

    山本(孝)委員 情報提供がおくれた、あるいは緊急命令の権限を行使しなかったというような点を挙げられて、かなり問題は、あるいは当時の、大臣がおっしゃった失敗という点においては、その内容がだんだん調査が進むにつれて煮詰まってきているのではないかというふうに思うわけですね。  今回の処分の対象になった方は、たまたま今そのポストにおられた方が処分の対象になっておられるようにお見受けをするわけです。もちろん、一月のプロジェクトチーム以降の資料の公開がおくれたということについては処分の対象となり得るでしょうけれども、当時の処分ということについては、大臣も、今回は調査中だからということで処分の対象外にされておられる。そうすると、この調査というのが一体いつまで続くのか、いつ最終的に御報告をされるおつもりなのか。今の最初の質問でお聞きをしましても、その失敗の内容については徐々に、厚生省側あるいは大臣の手元でもおわかりになってきているように思うわけです。  さきの厚生科学会議で、議事録を読ませていただきましたら、尾前照雄国立循環器病センター名誉総長が、責任は個人が持つことになると思う、責任の所在の明確化が必要だという御意見を述べておられますけれども、私も全くそのように思うのです。  処分という問題と離れてみても、まずは当時の関係者の個々の方々について、どのような責任があったのか、なかったのか、そういう責任の有無をまず明確にすることが必要なのではないか。その後に、処分の対象となる立場におられる方は処分をなさればいいし、あるいは退職されておられる方は処分のすべがないとおっしゃるのであれば、そのとおりかもしれませんけれども、まずは当時の関係者の個々の方々についての責任を明確にすべきであるというふうに思いますけれども、大臣の見解をお尋ねします。
  148. 菅直人

    ○菅国務大臣 当時の関係者の責任を明確にするということは、一般的に言えば全くそのとおりといいましょうか、それが必要だと思っております。  ただ、責任というのはいろいろな性格があって、今私が処分をしたのは、あくまで行政という範疇において、先ほど国家公務員法に基づく処分を申し上げたわけですが、行政という範疇の中で期待されたことができなかった、あるいは十分な対応ができなかったという点においての責任というものを認め、処分を行ったわけです。  これがもう一つ、先ほども石田委員の方からありましたけれども、例えば刑事罰にかかわるような問題だとすれば、これは、そういった権限なり責任を持っておられる機関によっていろいろ判断がなされ、あるいは何らかの処置がなされるということになるわけであります。  そういう点では、現在、五十八年から六十年当時の担当者につきまして、そのころのいろいろな事態がこの国会等の議論の中でもさらに明らかになっている問題も出てきておりますので、そういったものがある程度まとまった段階で、行政として処分が必要であるかないかということを改めて判断したい、こう考えております。
  149. 山本孝史

    山本(孝)委員 行政としての処分ができるかどうかというのは、そのときにできる対象の方にはされるのでしょうというふうに申し上げているわけですね。調査がどんどん時間がかかっていく、ありていに申し上げれば、当時の関係者の方で今も厚生省の現職の職員でおられる方が何人かおられるわけですけれども、この方たちが時間の経過が進む中で退職をされた後に、大臣が処分をしようと思っても、もうその方は現職の職員ではないから対象外であるというような言いわけになってしまう。  だから、私が申し上げているのは、処分を早くしなさいということを申し上げているわけではなくて、五十八年から六十年当時の関係者の個々の方々について、当然行政上の責任があったのか、なかったのかという点を早急にはっきりすべきではないですかということを申し上げているのです。
  150. 菅直人

    ○菅国務大臣 山本委員もいろいろな事情をよくおわかりの上で御質問をされていると思うのですが、つまりは、個々の責任をはっきりさせるためには、個々の事実関係がはっきりしてこなければ判断ができないわけであります。  そういった点で、今、個々の事実関係を厚生省としても調べ、あるいは公表したところでありますが、必ずしもそれだけで事実関係が、いろいろな疑問が解けたということになっておりませんので、さらに本院を含めていろいろな関係者の皆さんが努力をしていただいているので、そういうことが、その中である程度問題がはっきりしてきたら判断をしたい。  ですから、現時点では、残念ながら、新たな問題、新たな事実が判明する可能性も含めてまだ十分な事実関係を把握し切れていないという認識でありますので、そういった責任について確定できないということであります。
  151. 山本孝史

    山本(孝)委員 大臣も述べておられるように、厚生省の真の責任のとり方というのはやはり真相解明をしっかりとやることだというふうに思います。  私たち新進党は、エイズ問題調査会という調査会を独自に設置いたしまして、当時の関係者の皆さんに、調査に協力をいただけるのかどうか、国会の場に来ていただいてお話を聞かせていただけるのかどうかということで調査をさせていただきました。結果から申し上げて、現に厚生省に在職をされておられる方たち、あるいは当時の保健情報課の職員の方たちの協力度合いが極めて低いというのが特徴的でございました。当時の担当者で今でも厚生省におられる方は当然ですけれども、既に退職をされておられる方も含めて、当時の真相解明というものについて積極的に協力するように大臣としても指導をすべきだというふうに思います。  きのうの委員会でトラベノールの山本社長に参考人としてのお話をお伺いする中で、私、委員長に、当時の担当者であるところの平林課長補佐あるいは藤崎課長補佐にぜひお話を聞きたいというふうにお願いを申し上げました。これはもちろん、院の立場と政府の立場とは立場が違うことはわかりますけれども、厚生省としても、やはり当時の課長補佐クラスの皆さんにしっかりとお話を聞いていただかないと、ああいうふうな文書での調査ということになりますと、正確を期すためとおっしゃってはいますけれども、いまいちしっかりとしたお話を聞くことができないというふうにも思います。  平林さんあるいは藤崎さんを初めとする、あるいは保健情報課の森尾、野崎といったような方々にぜひ協力をしていただきたいというふうに思っておりますので、協力するように私からもお願いすると言っていただけるかどうかわかりませんけれども、こういった方々への調査の協力を、ぜひお力添えをいただきたいというふうに思いますが、いかがですか。
  152. 菅直人

    ○菅国務大臣 今名前の挙がった方、すべてかどうかわかりませんが、大部分の方には、厚生省としても、この間、調査に協力をいただきたいということで、いろいろな形でその当時のことを問い合わせをいたしたわけであります。  もちろん、基本的には文書による質問と回答ということになっておりますが、担当者は直接お会いをしていろいろとお話をしているケースもたくさんあるわけであります。しかし、口頭だけですと客観性がなくなりますので、ああいった形で文書できちんと質問をして回答をいただいているわけですが、その結果があの報告書でありますので、決してこちらが協力要請をしていないということではなくて、した上での結果があの内容になっているということです。  ですから、今後ももちろん、一般的に言えば、私は協力要請を続けているつもりでありますけれども、果たして、その皆さんの対応がそのことによってどの程度大きく変わるのか変わらないのか、そこは必ずしも確信を持てないところであります。
  153. 山本孝史

    山本(孝)委員 もう一点、三十一日の処分といいますか、会見の内容で御確認をしておきたいのです。  製薬業界への厚生官僚の天下りの問題について、事務方は当面自粛だというふうにおっしゃっておられたのを、厚生大臣は永久に自粛だというふうに会見の中で訂正をされたというか、そういう御発言をされておられますけれども、大臣のお考えを確認させていただきたいと思います。
  154. 菅直人

    ○菅国務大臣 今回の製薬企業へのいわゆる天下りといいますか再就職の問題については、事務方といろいろと相談といいますか、いろいろな案が出てくる中で、一つの結論を持って、それを私があるメモを見ながら記者会見で発表したわけであります。  そういった意味で、言葉は自粛という形になっておりますけれども、特に期間を定めたわけではありませんで、つまりは、現行の国家公務員法による営利企業への就職の制限など、現在のいろいろな制度が続く限り、次官あるいは官房長あるいは薬務局長あるいは薬務のたしか担当審議官を含めて、製薬メーカーへの天下りあるいは再就職はずっと、期限を限らないで自粛をするというふうに申し上げたわけであります。  「当面」云々というのは、確かに記者に配布した中にそういう表現があったようですけれども、最終的な内容については、私が口頭で申し上げたことで御理解をいただきたいと思います。
  155. 山本孝史

    山本(孝)委員 業者に対する処分も今調査中ということでまだだというふうに思うのですけれども、この非加熱製剤の販売について、企業側が薬事法の第五十六条第六項に違反をしているのかどうか。この間来、本会議でも高市議員がお伺いをし、山本拓議員が質問主意書でお伺いをしている。きょうお伺いをしても同じ答えだと思いますので御答弁は結構ですけれども、この調査のところをできるだけ早ぐ結末をつけていただきたいというふうに思います。  薬事法改正の内容についてお伺いをしたいというふうに思います。  新進党として薬害防止対策部会を設置いたしまして、薬害発生防止対策をこれまで党内で検討してきまして、このほど最終的な案がまとまりました。薬害の発生防止策を講じるには、薬務行政全般の抜本的な改革が必要であるというふうに思います。今回は薬事法改正ということですので、我々の案の中でも薬事法に関する部分だけについて御質問をさせていただく形になりますけれども、ぜひ薬務行政全般を見直すという中でこの薬事法改正をとらえていただいて、後々、今回のエイズ薬害の調査の今後の進展度合いを見ながら薬事法の抜本的な改正も行うという修正案を出させていただきたいというふうに思っております。これは各党、お話をまとめていただけると思っておりますけれども、そういう意味で、薬務行政全般の改革はぜひ進めていただくということを前提に薬事法改正についてお伺いをしたいというふうに思います。  きのうの参考人招致の中でも明らかになった話ですけれども、非加熱製剤へのエイズウイルスの感染が判明したのでトラベノールは製品の回収をした、そのことを厚生省に報告しようということになりましたけれども、お問い合わせをした安全課は、副作用でないから報告の必要はないというふうに回答したということでございました。  今回の法律の改正では、七十七条の四の三で、業者が回収に着手したならばそのことを報告すべきだということが義務づけられているというふうに思いますけれども、七十七条の四の二の解釈でいきますと、異物が混入している、あるいはウイルスが感染している場合も厚生大臣に報告すべきなのかどうか。きのうの参考人招致では、それは必要ないということになったということなんですが、異物混入、ウイルス感染の場合も厚生大臣に報告すべきだというふうに今回の改正案ではなっているのでしょうか。
  156. 荒賀泰太

    荒賀政府委員 医薬品副作用でありますとかあるいは感染症情報につきましては、今お話のございました改正法案の第七十七条の四の二でございますが、医薬品の製造業者等は、承認を受けた医薬品等につきまして、「当該品目の副作用によるものと疑われる疾病、障害又は死亡の発生、」これは副作用報告でございますが、それから、「当該品目の使用によるものと疑われる感染症の発生」ということで、これは感染症の発生について、厚生大臣に報告することを義務づけておるわけでございます。  そういった規定に従いまして、原因が特定できないような医薬品によります副作用が疑われる場合、あるいは医薬品投与によりますウイルス感染が疑われる場合につきましても、報告を求めるということにしておるわけでございます。  今お尋ねの、異物の混入をした医薬品の扱いでございますけれども、これも副作用あるいは感染症を引き起こしている疑いがあるということで報告をされる場合もあると思いますが、これはいわば異物の混入した不良医薬品ということでございまして、これは、メーカーが回収を行わないで製造、販売などを継続いたしますと、薬事法の五十六条違反ということで罰則とか行政処分の対象になる場合がございます。したがって、刑法上の責任を問われる。また、最近、PL法の施行に伴いまして、そういったPL法上の責任を問われる場合もございまして、現在では、こういった異物混入をした不良医薬品についてはメーカーがより確実に回収を実施するものというふうに理解をいたしておるわけでございます。  先ほど先生もちょっとお触れになりましたが、今後、改正法に基づきます回収の報告というものもあるわけでございます。回収に着手した場合に報告を行うということでございますので、厚生大臣が異物の混入をした不良品の情報を迅速に把握して、そして、企業によります自主的な回収が不十分である場合、そういった場合にはさらに必要な措置が速やかに講じられるということになっておりまして、そういった面で健康被害を十分に防止できるものというふうに考えておるところでございます。
  157. 山本孝史

    山本(孝)委員 六十九条の二の緊急命令、先ほど大臣もお触れになりましたけれども、この緊急命令についてお伺いをします。  「厚生大臣は、」「保健衛生上の危害の発生又は拡大を防止するための応急の措置を」「命ずることができる。」というふうにこの六十九条の二は書かれています。「命ずることができる。」というこの書きぶりですけれども、これをどのような意味としてとればいいのか。命じてもよいし、命じなくてもよいという意味合いなのか、命じなければいけないという意味合いなのか。薬事法の趣旨に基づいて読めば、この「命ずることができる。」ということはどういう読み方をするのが正しいのでしょうか。
  158. 荒賀泰太

    荒賀政府委員 六十九条の二の規定、ただいまお話しのとおりでございます。  それで、「命ずることができる。」ということでございますけれども、この運用につきましては、やはり厚生大臣の薬事法上の権限の行使という観点で、その時点におきます医学的、薬学的な知見のもとにおきます専門的なあるいは裁量的な判断によるということがあろうかと思います。もちろんそれは、今お話のありました保健衛生上の危害の防止という観点で、その必要性とか内容についても裁量というものの内容が十分変わってくるかと思いますけれども、クロロキンの最高裁判決を見てみますと、やはり厚生大臣の権限を行使することにつきましては、「問題となった副作用の種類や程度、その発現率、予防方法などを考慮した上、随時、相当と認められる措置を構すべきもの」だということで、「その態様、時期等については、性質上、厚生大臣のその時点の医学的、薬学的知見の下における専門的かつ裁量的な判断によらざるを得ない。」というふうに述べておるところでございます。  私どもも、今回のエイズ問題の反省に立ちまして、こういった六十九条の二の規定が迅速かつ的確な権限の行使として行われるように努力をしていかなければならないと考えておりますし、またその場合に、権限を行使する上でのマニュアルの作成等を通じましてより適切な行使が行われるように努力をしてまいりたいと考えております。
  159. 山本孝史

    山本(孝)委員 今、こういう場合は権限を行使しなければいけない、こういう場合は行使しなくてもいいというマニュアルをつくるという御答弁ですか。
  160. 荒賀泰太

    荒賀政府委員 ただいま申し上げましたように、すべてについてマニュアル化することはなかなか難しいかもしれませんが、ただ、六十九条の二を発動すべき状況というものを想定し、そのときに速やかにまた適切に権限が行使できるようにあらかじめ検討しておく、こういう趣旨で申し上げておるわけでございます。
  161. 山本孝史

    山本(孝)委員 先ほど大臣もお触れになりましたけれども、この六十九条の二は五十四年の薬事法改正、スモンの大きな薬害のとうとい犠牲の上に基づいて六十九条の二の緊急命令が書き加えられたわけですね。先ほどもお述べになっていましたけれども、この緊急命令の権限の行使など期待された権限を有効に使えなかった、有効に措置を講じなかったことに厚生省の行政的失敗があるという見解を示されているわけですけれども、問題は、せっかくスモンの薬害の反省、教訓を受けてこの法律に六十九条の二の「緊急命令」を入れたのに、今回の薬害エイズのときも、結局そのときの反省は何ら生きていない、教訓は生きていない。文面としてはここにあるのに、その権限を行使しなければ全く意味がないわけです。  こういうことでいけば、幾ら法律を改正してみても、幾ら薬事法を手の込んだものにしてみても、安全な医薬品の供給だとか、国民の健康、生命を守るということの薬務行政のしっかりとしたことはできないというところに今回の薬害エイズの問題の極めて根の深さがあるように思うのですけれども、そのマニュアルをつくって準備をして、こういう場合だったらこういうふうに発動しなきゃいけないよということの事前の学習をしておけば、今後、緊急命令の権限の発動は容易になってもっと被害の拡大は防げるというふうに大臣もお考えになっておられるのでしょうか。
  162. 菅直人

    ○菅国務大臣 御承知のように、法律そのものにはもちろん厚生大臣の権限という形でこの六十九条の二が書かれ、設けられたわけですが、それじゃ厚生大臣が具体的にどのものを回収すべきかということをみずから一人で判断できるというのは、なかなか実際上は難しいわけであります。  そういう意味で、今薬務局長も申し上げたように、いろいろなケースを想定して、最低限、省内的、あるいは緊急の例えば専門家を交えての検討などを含めて何らかの措置を行う、そういったことを想定してマニュアルをつくってみたらどうか。いわば危機管理ですから、いろいろな危機を想定してつくるということは、少なくともそういうものがないよりも対応力を持てるのではないか、こう思っております。
  163. 山本孝史

    山本(孝)委員 そうすると、今の大臣の御答弁としては、六十九条の二を有効に生かすために、その前段階としていろいろな仕組みを考えていこうではないか、その一つが薬務局長がお答えになったマニュアルということであり、あるいは大臣がお答えになった専門家を交えての、どういう名称になるのか知りませんが、そういう組織的なものをつくって対応して六十九条の二をもっと有効に活用、発動できるようにしようというふうに理解をしてよろしいわけですね。
  164. 菅直人

    ○菅国務大臣 今私が申し上げたのは、具体的なことはあくまで例示的に申し上げたので、まだそういう議論を私を交えてしているわけではありませんが、一般的に言えばそういうことです。  つまりは、いろいろな想定をして、そうはいっても最低限の手続をとって、そのときにどういう形で発動するか、そういうことを想定してマニュアルをつくることが有効ではないか、こう考えております。
  165. 山本孝史

    山本(孝)委員 わかりました。  副作用情報収集、検討あるいは提供ということについてお伺いをしたいと思います。  医療機関とかあるいは薬局が副作用に気づいたときは、メーカーに知らせるのではなくて直接に厚生省あるいは厚生大臣に報告するシステムにすべきだというふうに思うのですけれども、今回の改正を経ることでそのような形になりますでしょうか。
  166. 荒賀泰太

    荒賀政府委員 先生御承知のように、この副作用報告というのは、一つは企業から厚生省へ参る場合、もう一つは医療機関から副作用モニター制度ということで報告が来る場合、二本あるわけでございます。  今回の改正におきまして、医療機関から直接副作用報告を求めるということを法律上書いてはございませんけれども、これにつきましては、この副作用モニター制度というものの重要性といいますか、これをできる限り広く、そしてカバー率を大きくしていこうということで、現在、このモニター制度の充実につきまして、各種の学術団体、職能団体などの協力を要請して、その重要性を理解していただきますとともに、このモニター施設や参加医師の拡大を図ろうということで努力をいたしておるわけでございます。  この副作用モニター施設の拡大につきましては、既に日本臨床内科医会、一万九千人を擁しますこの医会の協力を得ましてこの拡大の努力を今始めておるところでございまして、可能な限り医療機関から直接副作用症例の報告を得る制度に充実を図ってまいりたい、このように考えておるところでございます。
  167. 山本孝史

    山本(孝)委員 その副作用情報モニター制度によるところの報告は何件上がってきているのでですか。厚生省の方にお伺いすると、いつも外国ではといってアメリカではイギリスではというふうにおっしゃいますけれども、アメリカイギリス副作用情報報告に比べて日本の報告はどの程度の割合でしょうか。
  168. 荒賀泰太

    荒賀政府委員 まず日本でございますが、平成六年度で、医療関係者からの報告件数が千六百十五件、製薬企業からの報告件数が一万二千九百八十件、合わせまして一万四千五百九十五件でございます。  一方、米国におきましては、これは平成四年の数字でございますが、医療関係者からは一万五千件、製薬企業からは八万五千件、合わせて十万件でございます。また英国につきましては、平成七年で、医療関係者が一万五千五百件、製薬企業が二千三百件、合わせまして一万七千八百件でございます。さらにフランスは、平成七年でございますが、医療関係者が一万三千六百七十件、製薬企業が一万四千件、合わせて二万七千六百七十件でございます。
  169. 山本孝史

    山本(孝)委員 アメリカイギリス、フランスともに一万三千から一万五千件、医療機関からの報告がある。日本の報告は千六百十五件というふうに聞きましたけれども、日本医療機関は全部で何ぼあって、モニターは幾らあって千六百十五件上がってくるのですか。
  170. 荒賀泰太

    荒賀政府委員 現在、モニター制度は約三千の病院、診療所が参加をしていただいておりますが、全体といたしましては医療機関九万九百四十八でございます。
  171. 山本孝史

    山本(孝)委員 九万の医療機関がモニターに参加をされておられて、上がってくる副作用報告が千六百十五件。アメリカが一万五千件、フランスが一万四千件弱。随分この間に格差がありますね。  平成六年一月に総務庁の行政監察がありまして、このモニター制度が全く機能していないじゃないかという改善勧告を受けておられると思うのですけれども、その後、このモニター制度についての改善はされておられるのかどうか、その点はどうなんでしょうか。
  172. 荒賀泰太

    荒賀政府委員 総務庁の勧告におきましては、このモニター制度について、副作用情報収集、報告について組織的な取り組みを行って効果を上げている例を示すなど、副作用情報を的確に収集し、迅速に報告する指導をするという勧告要旨でございます。  私どもの方は、平成六年度から、医療機関におきます副作用情報収集情報の伝達体制を整備いたしまして、医薬品の適正使用を推進するためのモデル事業というものを開始しておるわけでございます。その結果を踏まえて、モニター施設に対しまして、副作用情報を的確に収集し、迅速に報告をするように要請をすることといたしております。
  173. 山本孝史

    山本(孝)委員 答弁、終わりですか。
  174. 荒賀泰太

    荒賀政府委員 先ほどモニター九万というふうに先生がおっしゃったかと思いますが、これは約三千でございます。
  175. 山本孝史

    山本(孝)委員 いずれにしても、一病院から一件上がってこない形になっているのですね。報告の内容を全部読み切っていないというか、読んで忘れてしまいましたのであれですけれども、たしか、自分のところの病院がモニター病院になっていることも知らない国立病院もある。あるいは、これだけ報告の件数が少ない。今局長が御答弁なさったように、諸外国で一万件を超えていく報告件数がある中で、日本の件数がいかにもこれは少な過ぎるではないかというふうに思うわけです。  先ほどの答弁では、私は、医療機関や薬局が副作用に気づいたときは即座に厚生大臣にその副作用情報を上げるべきである、そういうふうに法律をつくったらどうですかとか申し上げたことについて、モニター制度をもっと充実させてその中で対応するのですとおっしゃっているのだけれども、この総務庁の行政監察局の御指摘は、モニター制度は全く機能していませんよということを言っているわけであって、これでは全くもって頼りがいかない。だから、すべての医療機関や薬局が情報の提供の義務を負っているのだ、これは当然のことではないかと思うのですね。  薬を使っている現場の人たちが副作用に気がつけば、モニター病院であろうがなかろうが、モニター薬局であろうがなかろうが、それは一定のところにきちんと報告を上げる、メーカーではなくて薬務行政の中心であるところにこの報告を上げるということは当然のことであって、その義務づけをなぜ今回の薬事法改正の中でしなかったのかということについて、明確な御答弁をいただきたいと思います。
  176. 荒賀泰太

    荒賀政府委員 私ども、このモニター制度につきましての改善、拡大、充実ということ、これは今後とも最大限の努力をしていかなければならないと思っておるわけでございますが、これについては、法律制度ということによる義務化というよりも、今申し上げたような、副作用報告が行われやすい環境の整備というものを図っていくことが必要であるというふうに考えておるわけでございます。  こういうことについても、諸外国の例でございましても、一部の国を除きまして、例えば医師等の医療関係者から直接の報告を受け入れる制度を持っておる英国、米国等におきましても、医療関係者に対しまして副作用症例の報告義務というものは課していないというふうに承知しておるわけでございます。  しかし、私どもとしても、現在のモニター制度が決して十分に機能しているというふうに考えておりませんで、やはり参加しやすいといいますか、報告様式を簡略化して記載しやすくするとか、あるいは報告様式を学術雑誌などにも織り込みまして手軽に報告をしていただけるような方式を検討するとか、最大限の努力をしてまいりたい、このように考えております。
  177. 山本孝史

    山本(孝)委員 メーカーから医療機関に対しての情報提供についてですけれども、七十七条の三の第一項に「努めなければならない。」というふうに規定がされております。今回の薬事法改正のきっかけになったソリブジンの教訓は、副作用情報医療機関への提供が迅速でなかったというところにあると思うのですけれども、今、行政指導で行われておられる緊急安全性情報、これを今回の薬事法の中に明記しなかったその理由は何でしょうか。
  178. 荒賀泰太

    荒賀政府委員 これは、ただいま先生からもお話がございましたが、現行薬事法の七十七条の三第一項におきまして、メーカー等は、医師あるいは薬剤師等の医薬関係者に対しまして、医薬品等の安全性あるいは有効性についての情報医薬品の適正な使用のために必要な情報を提供するように「努めなければならない。」というふうにされておるところでございます。  そういった規定に基づきまして、既にメーカーにおきましては、いろいろな、「使用上の注意」の改訂等を医療機関に伝達する、あるいは緊急の場合は今お話がございました緊急安全性情報を直接医師に配布するというようなことで、この副作用の発現状況といった有効性安全性についての情報を、問い合わせに応じまして、あるいはまた自主的に医療機関に提供するようにメーカーサイドとしても努力をしておるわけでございます。  それから、今回の薬事法改正におきましては、市販対策充実ということで市販調査実施に関する基準、GPMSPと言っておりますが、このGPMSPを製造業者の遵守事項として法制化していくというふうに考えておるわけでございます。これによりまして、製造業者がこの基準を遵守しない場合には業務の停止等の行政処分の対象となるということで、この遵守を図っていきたい。  今お話がございましたソリブジンの副作用問題の教訓ということでございますが、このGPMSPの内容的なものとして、一つは、開発部門から市販調査管理部門への情報の伝達の問題がございます。そういったことについて十分な安全性情報の提供が行えなかったということがございますし、また、開発会社から共同の販売会社への情報伝達の問題もあったわけでございます。  そういった意味で、この教訓を生かして、開発部門と市販調査管理部門の連携の強化を図っていくということ、それからまた、複数の企業で共同販売をする場合には企業間の連携体制強化していく、そういった新しい規定を加えることを検討いたしておるわけでございまして、これによってGPMSPの一層の充実強化を図ってまいりたい、このように考えております。
  179. 山本孝史

    山本(孝)委員 法文にちゃんと書き込みをした方が、政令とか省令に落とすのではなくて本則に書き込みをしないとなかなかメーカーさんも意識の度合いが薄いのではないかという心配をしますので、緊急安全性情報等はぜひ本則に書き込みをしていただきたいというふうに思います。  情報の提供という意味で、国民サイドヘの情報の提供なんですけれども、今回のエイズ薬害の中で思いますのは、患者の皆さんはいろいろなルートを通じて的確な情報収集をしておられて、それを厚生省であるとかあるいは担当医師であるとかに尋ねた、その確認を求めた、しかし、実際に返ってくる答えは、誤った答えであったり、あるいは的確な回答ではなかったというふうに思うのです。そのことが今回の被害の拡大につながったのではないか、その一因であったというふうに思うわけです。  そもそも薬の副作用そのものというのは、やはり社会全体で背負わなければいけないリスクではないかというふうに思うのですが、そうであれ一ば、被害者となり得る者にその情報を与えて、みずからの身を守るすべを持たせるということが薬務行政の大変に大きな私は仕事ではないかというふうに思うのです。そういう意味で、国民がもっと医薬品情報にアクセスができやすい方策というものを講ずるべきではないかというふうに思うのですが、こういった点について今後どういう施策を講じていこうというふうに厚生省としては考えておられるのか、あるいはこういう考え方はどうなのか、大臣の御見解もお伺いをしたいと思います。
  180. 菅直人

    ○菅国務大臣 血液製剤によるHIV感染問題につきましては、裁判所の所見でも指摘されておりますように、当時、血液製剤を介して伝播するウイルスにより血友病患者エイズに感染する危険性やエイズの重篤性についての認識が十分でなく、国内の血友病患者エイズ感染を防止するに十分な情報提供がおくれたため、被害の拡大を防止し得なかった。もちろん、それに伴って対策もおくれたということであります。  そういう点で、現在、厚生省の中で、調査プロジェクトチームでは調査報告を発表いたしまして、再発防止のプロジェクトチームでいろいろと議論をしております。そういう中で、危険を警告する情報は行政の対応策の有無等にかかわらず開示する方向で考えるべきという意見もありますし、また、行政から医療機関医師に対してももっと積極的に情報を提供すべきであったといった指摘もいただいております。そういう点で、国民の皆さんに直接に、あるいは医師に向かって、国の得た情報を提供するといったような問題は大変重要な課題だと思っております。  さらに、患者への情報提供のあり方については、今回の場合、濃縮凝固因子製剤のメリットとリスクの比較考量の問題であったというような面も一部にあるわけでありますが、最終的な判断は、主治医と患者の関係を基礎とした十分な情報提供と自己決定に基づくような形が一つは考えられるのではないかと思っております。  現在、先ほど申し上げたように、省内のプロジェクトあるいは厚生科学会議の議論などを踏まえて、情報提供のあり方、あるいは薬事行政及びその組織のあり方などについて検討を行っておりまして、それらの検討の結果を踏まえ、あるいは本院の議論などを踏まえて、今後に向けて適切な対応を考えていきたいと思っております。
  181. 山本孝史

    山本(孝)委員 大臣、お疲れのようで、役所が書かれた答弁をそのままお読みになるのでは仕方がないのだけれども。  だから、申し上げているのは、全部のお医者とは言わないけれども、一部の医者が、結局、自分のある一定の意図を持って患者に接していかれるというような状況が残念ながらあるというのが今回の薬害エイズの中で出てくる話ですよ。この血液製剤は安全なんですかと医者に聞いても、安全だというふうにしか答えない。自分が一体どういう薬を飲んでいるのかということについてもなかなかわからない。大きな病院からもらう薬というのは大袋で病院に入ってくるから、小袋で窓口で渡される薬については、薬の名前も聞かなければわからないし、あるいはどういう効能があって、どういう副作用があるのかということも、これも聞かなければわからない。そういう意味で、患者の権利法というようなものもないし、インフォームド・コンセントもはっきり法定されていないという状況の中においては、残念ながら、患者というのは医者に比べれば一段低い位置にしか置かれていないのが今の日本医療体制ですよ。  そういう状況の中で、患者がみずから自分たちの命を守ろうというふうに考えれば、その薬の情報であるとか副作用情報というものにアクセスをして、そこにどういう危険性があるのだ、あるいはどういうことに注意をしなければいけないのだということを知るというのは当然の権利であって、そういう副作用情報収集あるいはその提供というのは、これは薬務行政の大きな義務だろうというふうに私は思うのです。ですから、そういう意味合いで、もっと医薬品情報にアクセスできる方策を講じるべきだというふうに私は思います。  その意味合いで、ぜひこの薬事法の中に、国の責務という形で、国は副作用情報収集、提供に努めなければならないというようなことをはっきりと書き込みをした方がいいというふうに思うのですけれども、大臣はそんなふうには思われませんか。
  182. 荒賀泰太

    荒賀政府委員 確かに、国が国民の健康の保持増進、あるいは薬の安全性ということについて重要な役割を持っているということは当然でございます。  ただ、副作用情報についての収集、提供というものを諸外国との比較で考えてみましても、やはり第一義的な責任は製造、販売をするメーカーにあるというのが基本的な考え方であろうかというふうに承知をしておるわけでございます。  したがって、私どもも、決して国の情報提供ということについて重要でないというふうに申し上げておるわけではございませんで、この医薬品情報文書を医療機関患者にお手渡しができるような具体的な内容について、今、厚生科学会議によっても報告がまとまって、そして、これからその具体化に向けて努力をいたしておるわけでございますし、それから、患者あるいは国民の方が簡便に最新の情報が入手できるようなシステムを検討して、そして容易にアクセスできるような、そういった安全情報のシステムを検討していきたい、このように考えておるところでございます。
  183. 山本孝史

    山本(孝)委員 昔と時代は変わってきておると思うのですね。厚生省が全部のことをやってくれるわけでもないし、国民もそうも期待もしていないだろうし。もっと国民一人一人の個というものを大切にして、もっと国民を信じて、いろいろ情報をまずは提供してあげるという流れにぜひしていただきたいというふうに思います。  もう一つの問題は、医薬品機構ですけれども、中央薬事審議会の改革に手をつけないで、薬務行政の人手不足をそのままにした中で、認可法人といっても民間団体であるところのこの医薬品機構にいろいろな審査の仕事というものを渡していく、委託をしていくという形で審査体制充実を図るというのは全くもって本筋ではないというふうに思います。  前回の医薬品機構法の改正のときにも御指摘を申し上げましたけれども、医薬品機構は、七十一人の役職員のうち六十三人までが厚生省から来ておられる出向組がほとんどでございますし、大体二、三年の期間でローテーションで回っておられる、長期に携わっているわけでもない、医学博士とか薬学博士という博士号を持っておられる方も少ないですし、そういう意味でも専門性は極めて少ない。  これは、大臣みずからが御質問をされて、こういう本来医薬品副作用被害の救済のためにつくられた機構に次から次から機能を付加していって拡大していくというのはもともと筋が違うのではないかというふうに大臣も思っておられたと思うのですけれども、中央薬事審議会の改革に手をつけないままに、こういうふうな医薬品機構の拡充という形で業務体制充実を図るという方向を今後とも厚生省はとるお考えなのか、あるいは抜本的な改革をするお考えなのか、御見解をお伺いをしたいと思います。
  184. 荒賀泰太

    荒賀政府委員 医薬品機構の関係でございますけれども、今回、御説明をさせていただいておりますように、治験から承認審査等の業務の一部をお願いするということで、これは今回の改正のねらいが、治験から承認審査市販後の各段階を通じての総合的な医薬品安全性を確保していく、そのレベルを欧米並みに上げていくというところに大きなねらいがあるわけでございます。  そのためには、本省の充実強化はもちろん必要でございますけれども、それについても一定の限界もございますので、やはり医薬品に関する専門的な知見を持ち、また中立公正な立場医薬品機構というものを活用していくということが最も適切な手段ではないかというふうに私どもは考えておるわけでございます。  なお、中央薬事審議会の運営におきましても、これは昨年の閣議決定も踏まえましてできるだけ透明化を進めていく、そのような努力を今審議会においてしておるわけでございます。従来非公開の議事要旨について、これを公開していくということもいたしておるわけでございますが、今後とも、この中央薬事審議会の運営の透明化あるいは情報公開については十分努力をしてまいりたい、このように考えております。
  185. 山本孝史

    山本(孝)委員 実際問題、ずさんな審査しか行われていないという形ですから、その透明性の問題ももちろんそうですけれども、しっかりとした審査ができるかどうかというのは、私は、今後この医薬品機構を膨らませる形で対応しようというのは、確かに、こういう案を考えつくのだなというふうには思いましたけれども、これはやはり根本的に考え直しをしないといけないというふうに思います。  きょうは文部省からも来ていただいているので、臨床薬理学講座についてお伺いをしたいというふうに思うのです。  八十の医科大学あるいは医学部がある中で、この臨床薬理学講座を開設しているのが、日本製薬工業協会の寄附講座があります浜松医科大を含めて五学・学部、それから授業科目を開設しているのは二十一大学・学部で、合計二十六の大学・学部というふうに思うのですけれども、これは全体からいけば三分の一にしかなりませんね。  きょうの午前中の参考人質疑の中でも、やはりお医者さんが薬というものについての知識が極めて薄い、あるいは、そういう方が治験にタッチしておられるというところで治験の内容にも極めて問題があるという御指摘があったわけですけれども、この臨床薬理学講座をもっと開設すべきではないかというふうに思うのです。認識はされておられると思うのですけれども、ここのところ、もう少し計画的にこの臨床薬理学講座の開設というものに取り組んでいただけないものだろうか、文部省の見解を聞きたいと思います。
  186. 寺脇研

    ○寺脇説明員 御指摘のように、医療現場におきまして、医師、薬剤師、さまざまな医療人が協力をしての医療というのを行ってまいるわけではございますけれども、薬物療法の重要性が増大いたしますとともに、技術革新によりまして、薬理活性の高い薬が多くなってまいりまして、適正な使用方法によらないと副作用の発生する可能性の高い医薬品が増加しているということを認識いたしております。したがいまして、文部省といたしましても、人に対して薬品の治療応用を行う力を育成いたします臨床薬理学の教育研究医学部においても充実することは重要であるというふうに考えております。  御指摘のとおり、国立大学医学部においてまだ十分な体制というのがとれておりません。臨床薬理学講座ということで明確に打ち出しておるところは、まだ三大学というような状況でございます。いろいろな形で臨床薬理学の授業科目を開設するということに努めておるわけでございますけれども、文部省といたしまして、今後とも、この教育研究重要性ということを重く認識いたしまして、この分野の教育が充実してまいりますように努力をしてまいりたいと存じます。
  187. 山本孝史

    山本(孝)委員 課長の答弁だから、その程度の答弁しかならぬだろうと思うのですけれども、薬理学講座は、この間の予算委員会で文部大臣にも直接お話もしましたが、やはりお医者さんの資質の向上というのは極めて大切で、一つほかの大学を卒業してから医学部に入るとか、もう少し大がかりな医師の資質の向上というものをぜひ検討していただきたいというふうに思います。  いずれにしましても、薬務行政、いろいろ考えてみても、いろいろ法律をあっちこっちこねくり回してみても、なかなかそれを運用している人の問題もあるだろうし、この法律だけで薬害が防げるというふうにも思いません。もっと全体的な視野でもってこの薬害の発生防止に取り組みをしなければいけない。  そういう意味では、新進党もいろいろな対案といいますか、対策の案を取りまとめをさせていただきましたので、ぜひ御参考にしていただければいいと思いますし、今後のエイズ薬害の真相解明あるいは調査が進む中で、この薬事法の見直しも、もう一度その目で見直しをして新しい法律にしていただきたい、しなければいけないということを御指摘申し上げて、質問を終わります。  ありがとうございました。
  188. 横光克彦

    ○横光委員長代理 桝屋敬悟君。
  189. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 それでは、引き続き薬事法改正案につきまして質疑をさせていただきます。  最初に、大臣も大変お疲れのようでございますが、大臣に御礼を申し上げたいのでありますが、先般、私の地元の山口においでいただきまして、心から感謝を申し上げたいと思います。何か話を聞きましたら、現場の精神薄弱者の授産施設あるいは特養等にも行っていただいたということで、福祉関係者は大変喜んでおりまして、感謝申し上げたいと思います。願わくは、この時期以外にもたびたびおいでいただくようにお願いを申し上げたいと思います。  さて、私は、時間も限られておりますので、今回の薬事法改正で、特に医薬分業について、特に現場の調剤薬局の皆さん方の声もぜひお届けしたい、この委員会の場で議論をさせていただきたい、このように思うわけであります。  薬事行政全体の流れにつきましては、この委員会でも随分いろいろな議論が出ました。同僚の鴨下議員あたりからは、薬剤費というのは二十七兆円の国民医療費の中で三〇%を占める、言ってみれば大変な公共投資だというような議論もありましたし、あるいは、昨今のいろいろな制度改正の中でやはり大きな問題は、薬価の引き下げをやりましても、実際の現場ではたくさん薬剤を使用して薬価差益を何とかというような実態があるということで、医療機関の薬価差益依存の経営体質を何とか改善できないかというような議論でありましたり、薬剤の過剰使用を何とか排除しなくてはいけない、こんな議論がずっとされているわけであります。  先ほどの八兆円の公共事業だという認識もあるわけでありまして、私はやはり、今後の少子・高齢社会の中で医療費の増嵩ということは大変大きな問題でございますから、国民の負担という問題も含めて合理化できることは何とかしなければならぬ、こんなふうに思っているわけであります。  そういう意味で、医薬分業への期待というものは私は大きいものがあったのだろうというふうに思います。すなわち、処方せんの院外発行を推し進めれば、薬価差に着目して薬剤を選択したり、あるいは使用する誘因というものは解消されるのではないかというようなことでありまして、本当の意味の医薬分業を進めていかなくてはいけないという議論が随分前からあるわけであります。  こうして取り組みが始まりました医薬分業でございますが、実態としては、医療機関現場におきましては、やはり処方を外に出すということは、処方料とそれから薬価差益の取引ということをどうしても考えてしまう。そういう実態がある。したがって、一部マスコミにも報道されましたように、リベート分業といいますか、外へ出すかわりに陰でリベートを要求する、あるいは、どっちが要求するのか、あるいはどっちが出すのかわかりませんが、悩ましい事件も起きておるということでございます。  特にこんなリベート分業のような実態というのはずっと言われているわけでありますが、厚生省としては、こうした事態に対しまして、適正な医薬分業を進めるという観点からどういう対策を今まで講じてきておられるのか、あるいは今取り組んでおられるのか、最初にお伺いをしたいと思います。
  190. 岡光序治

    岡光政府委員 まず、個別のケースにつきましては、この委員会でも既に御答弁を申し上げておりますが、監査、調査実施いたしまして厳正に処分をするということで対応いたしたいと思っております。  それから、そもそも論といたしましては、こういういろいろな事例からも考えまして、保険診療あるいは保険調剤をやる場合に、療養担当規則にのっとってやっていただくわけでございますが、この療養担当規則を改正いたしまして、特定の薬局に患者を誘導しないようにというようなことであるとか、あるいはその見返りとしまして処方せん発行に関連して金品等を収受しないように、こういうことを、療養担当規則を改正いたしまして、いわばルールをもう一度確認するということをお願いしまして、御指摘がありましたような適正な医薬分業につながるような環境条件を整えるということで現在対応しているところでございます。
  191. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 今お話のございました療養担当規則の改正が本年の三月というふうに理解をしてよろしいのですか。――よろしいですね。  今御説明がありましたように、誘導の禁止であったり、あるいはリベートを要求すること、そういうことをしてはならない、こういう療養担当規則が新たに設けられたということでありまして、この遵守をぜひしっかり監視もしていただきたいし、医療機関も守ってもらいたいと思うわけであります。  しかし、今までも当然ながら療養担当規則の中には、適正な医薬分業は進めていくのだということは、そうした内容も入っていたわけであります。しかし、ひところ言われましたように、日本調剤あるいはクラフトのような事件があったり、さらには、いろいろな話を私も聞くのですが、例えば薬局がビルを建てて、テナント料をいただかずに診療所を入れて、そしてそこから処方をもらうというような話も伺っておりますし、いろいろなことがあるのだろうと思うのです。しかし、やはりここはぜひ適正な医薬分業を何としても進めなくてはいかぬというふうに私も思うわけであります。  こうした事態を本当に解消するには、今のような療養担当規則、そしてこの監視ということもあるのでありましょうが、薬価差益をなくすという抜本的な努力も当然必要でありますし、この点については、この委員会でも大臣もかなり決意を表明していただいておりますから、そこは大きな期待を寄せたいと思います。  問題は、やはり地域の薬局が全体として医療機関の処方せんを受けていくというような、いわゆる面分業の体制がきちっとでき上がれば相当改善されていくのだろう、このように私は思うわけであります。  ところが、私も地元で随分調剤薬局の方々から意見を聞かせていただいておりますと、話を聞けば聞くほど、いわゆる門前薬局と言われる形態でありますが、門前薬局と、かかりつけ薬局を目指してしっかり努力しておられる薬局を比べますと、本当に不合理が現場に存在するなということを感じるわけであります。  いろいろな話がありますが、例えば在庫管理にしても、当然ながら、門前薬局については母体の医療機関と密接な連携があるわけでありますから、在庫の管理というのは極めて合理的にできるわけであります。それから備蓄薬剤にしても、例えば基準薬局等の指定を受けて頑張れば、どうしても五百品目用意しなくてはならない、その中には廃棄処分をするような薬も相当の量があるというような、まさに経営上の合理化の問題、合理性の問題。  あるいは、よく聞きますと、開業医さんあたりは門前薬局を持っておられるケースがよくあるわけであります。これを何とかやめていただきたいなと思うわけでありますが、いわゆる後発品の医薬品を開業医あたりはよくお使いになる。まあ門前薬局に行けばいいのですが、門前薬局というのは母体の医療機関が玄関を閉めれば門前薬局も閉まってしまう。そうすると、処方せんを扱っていただける地域の薬局に行くと、持っていったら、やはりゾロの品で、置いていないというようなこともあって利用者に不便をかける、こんなこともあるわけであります。  聞けば聞くほど、やはり門前薬局というのは一番やりやすいし、一生懸命頑張るかかりつけ薬局に比べるとまことに不合理があるのではないか、こう思うわけであります。  こうした状況に対しまして、厚生省では調剤報酬上の改正を本年やられたというふうに伺っているわけでありますが、その概要をちょっとお伺いしたいと思います。
  192. 岡光序治

    岡光政府委員 御指摘がありましたように、本年の四月に調剤報酬の改定を行いました。  その基本のところを申し上げますと、調剤した場合に調剤基本料という報酬を支払うわけでございますが、これを四つの段階に分けました。通常、処方せんの枚数が少なくて、かつ特定の医療機関からの集中度が低いというのを基本にしておりまして、今先生が御指摘されましたように、いわば面分業、多くの医療機関とおつき合いをいただくような、そういうケースを基本に考えているわけでございます。  そういうものを基本にしながら、例えば特定の医療機関からの処方せんが全体の中で七〇%を超えている、かつ一月の処方せんの枚数が四千件以上というふうに、いわば大型で、かつ、どこかの医療機関に集中、特定をしている、こういうふうに考えられる場合には、普通の場合、基本料を四十五点と考えておりますが、それを二十点に下げる、それから、規模はちょっと小さいけれどもやはり集中をしているという場合には三十五点にするとかというふうなことで、その規模と、それから特定の医療機関に集中しているかどうかという、その度合いに応じて四段階に評価を分けまして、私どもは、小型の、いわば地域に密着した調剤薬局が多くの医療機関から処方せんを受けられるように、そういうことが進むように、そこにいわばインセンティブがつくような傾斜的な配分をしてみたというのが改定の趣旨でございます。
  193. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 ありがとうございます。  これは前々から言われてきたことでありまして、いわゆる門前薬局と、さっき言いましたように一生懸命お取り組みいただくかかりつけ薬局、当然評価が違ってしかるべきだ、あるいは合理性といいますか、経営上の合理性からいって差をつけるということがあっていいのだろうということが随分言われてまいりました。今、調剤基本料に差を設けた、四段階のランク分けをした、こういう御説明でございます。  質問通告はしておらぬのでありますが、この調剤基本料というのはどういう積算なのか、内容は何なのか。当然ながら調剤料というのはあると思うのですが、この調剤基本料というのは薬局の現場では何に当たるのでしょうか、この経費は。
  194. 岡光序治

    岡光政府委員 端的に申し上げますと、薬局の人件費でございます。
  195. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 人件費にランクの差を設けるということ、私が先ほどから御指摘しておりますようないわゆる門前薬局と一生懸命おやりになる薬局との差ということで、人件費のランクの違いということでいいのかなという気が私はしないでもないのです。というのは、さっきも申し上げたように、まさに門前薬局の非常に合理化された経営状態、それはさっき言ったように在庫調整等が一番大きな要因だろうと私は思いますので、端的に言って、いわゆる人件費というこの調剤基本料のランクに差を設けるということで果たしていいのかなという気がしないでもありません。  それで、もうちょっとお尋ねするのですが、例えば応需率、いわゆる処方せんの割合が七〇%以下あるいは月四千回の処方回数、こういうことなんです。例えばの話ですが、一般的に四千件あるというケースで、今の一番少ないのは二十点と四十五点、これだけの差であります。倍違うわけであります。四千件というのは大型ですね、さっき局長は言われました。大型を参考にしていいかどうか。  例えば現実に四千件処方があると、どのぐらい実入りが違うのか、売り上げが違うのかというのをちょっと思うのであります。私の感覚で申し上げて、いや、それは違いますというのであればおっしゃっていただきたいのですが、例えば四千件ぐらいあれば、月の売り上げが一千万ぐらいになるのじゃないかというふうに私は思うのです。もう本当におおめっそうな話をいたしますが、粗い話をすると一千万ぐらいかなと。それで、この四十五点と二十点の差というと、四千件に積み上げますと、この人件費部分で百万ぐらい収入に差があるのかなと。全体として分母で一千万ぐらいの部分で百万ぐらいの差で、果たして門前薬局というようなばかなことはやめよう、ちゃんと一生懸命仕事をしよう、こういうふうにインセンティブが働くかどうか。  私は、本当に、この人件費の部分、調剤基本料にこうやって差をつけたことが現場でちゃんとしたインセンティブになっているのかということが気になるのでありますが、いかがでありましょうか。
  196. 岡光序治

    岡光政府委員 計算の仕方は、処方せん一枚で点数を掛けるわけでございますので、四十五点の場合で例えば四千件であれば、一点単価十円でございますから大変な額でございます。  しかしながら、おっしゃいますように、差を見た場合には余り大きな差にはならないではないかという御指摘であります。やはりそこは薬事法で、薬局を開設する場合には処方せんの枚数に応じて何人の薬剤師さんを置きなさいとか、こういうふうな規定があるわけでございまして、そういう意味では、それをカバーする必要な報酬というのは支払わなければいけないのだろうと思います。そういう意味では、この調剤基本料に差をつけることだけで門前薬局をやめてもらうというふうにすぐにはつながらない。ある意味ではインセンティブにとどまるのだろうと思います。そういう意味では、この調剤基本料のありようも、こういう差をつけるというのが一方法で、一方法にとどまるのだろうと思っております。  したがって、もっと地域における薬局の体制をいかに連携を図って整えるかとか、あるいは、先ほども御指摘がありましたが、備蓄の問題をどうするのか、個々の薬局にだけ任せないで共同で何かそういうものをやるとか、いろいろなバックアップのシステムがあって初めて面分業が可能になるのだろうと思います。そういう意味では、調剤基本料だけで対応がすべて完結するというわけにはいかない、合わせわざでやらなければならないというふうに考えております。
  197. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 局長がおっしゃるとおりだろうと思いますが、現場で薬局のオーナーが心を一番動かすのは収入でありますから、合わせわざはもちろんでありましょうが、今回まさにインセンティブを図るためにランク差を設けたということは第一歩とは私は思うのでありますが、本当に面分業を進めていく上では、私は一生懸命おやりになっている調剤薬局さんの話を聞きました。  その地域は、周りに多くの開業医があって、門前薬局がたくさんある地域でありまして、そういう地域の中で一生懸命かかりつけ薬局をやっていこうとすると、この方は基準薬局までお取りになっているわけでありますが、本当にある意味では門前薬局と医療機関、開業医さん、その連携の谷間を埋められている、あるいはおいでになった方にきちっと服薬指導をされて、場合によっては逆にこの処方が正しいのかどうかという照会まで懇切丁寧にやっておられる薬局、そういう方々から伺いますと、本当に何とか評価してもらいたい。もちろん、当然ながら最低基準の中で人員配置等がありまして、この調剤基本料、最低線というのはあるのだろうと思いますし、大きな差は設けられないということかもしれませんが、やはり評価という観点では上へ積むことは可能でありまして、これも当然ながら全体のパイがあるわけですからできないかもしれませんが、なおさらに評価の部分で差を設ける、場合によっては調剤料そのものに踏み込む。当然ながら、在庫管理等、経費に相当差があるわけでありますから、そんなことも今後の問題として御検討いただきたいというふうに思うわけであります。  それで、さらに悩ましい小さい話をして恐縮なんでありますが、今回の改正によって調剤基本料に格差が設けられたわけであります。こうした格差は、今まさに話があった四十五点と二十点、これはすなわちそのまま利用者負担にはね返ってくるのですね。  当然ながら、四十五点は四百五十円ですか、二十点は二百円、これの利用者負担分は自己負担で差が出てくるわけであります。したがって、本当に高い調剤基本料を選定した場合、これは、門前薬局ではありませんよ、一生懸命かかりっけ薬局をやります、こういう方は恐らく点数が高い。そうすると、利用者の負担も高い。そうすると、門前薬局に行った方が薬代が安いわけですね。利用者は自分の負担を出すわけですから、何か、いみじくも門前薬局に行った方が料金が安い、あそこの方が薬は安いぞということになるわけであります。  恐らく金額としては、四百五十円と二百円ですから二百五十円の三割部分、国保でいきますと七十五円ぐらい、大したことじゃありません。しかし、長期慢性患者あたりはやはり安い方へ行くわけでありまして、そういう意味では、逆に利用者のインセンティブからいくと門前薬局に行ってしまう。あるいは基準薬局の加算にしても、ことしが二十点になったわけでありますが、この二十点も当然ながら患者負担にはね返る。したがって、私がよくお話をする調剤薬局さんは、基準薬局を返上する、患者が、利用者が逃げるから返上します、ここまでおっしゃっている薬局さんもいらっしゃる。  逆にこんな悩ましい声もあるわけであります。この辺は厚生省はどのように御説明をなさるのか、ぜひお伺いをしたいと思います。
  198. 岡光序治

    岡光政府委員 金目だけの計算でまいりますと先生の御指摘のとおりでございまして、まさに出来高払いの制度下で、いろいろなサービスをすればするほどそのサービスに対する報酬が支払われます。その支払われた報酬の一定割合を一部負担するわけでございますので、そういう意味では、報酬額が上がればその一部負担額も上がるという仕組みになっておりまして、まさにそこは先生がおっしゃるとおり、患者負担の額という点からいえば、決してそういったところに行くようなことにはならない仕組みになっています。そこは本当に、金目だけで見る限りでは非常に難しい問題だと思っております。  私どもは、そういう金目の話ではなくて、御指摘がありましたように、かかりつけの薬局で自分の様子をよくわかってくれている、場合によっては夜でも処方してもらえるとか、自分の家にも来てもらえるとか、いわば人間関係ができ上がって薬歴管理もきちっとしてもらえている、先ほども御指摘がありましたが、どうもおかしい処方が来たという場合にはそれをお医者さんの方に尋ねてもらって調整もしてもらえる、こういうことで、自分の薬剤についてのすべての管理をいわばコンサルタント的にお願いするという人間関係ができればいわゆるかかりつけ薬局ということになるのだろうと思いますが、そのような形にしていくための必要な経費だろうと思いまして、そこはひとつ金目の点では患者さんに我慢をしてもらえないだろうかなという思いでございます。
  199. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 今の局長の御説明は、より多くのサービスを受けるわけだから当然の負担差だという御説明だろうと思います。もっと国民に説明する立場でいいますと、かかりつけ薬局で服薬指導を十分してもらえる、いろいろな多様なサービスをしてくれる薬局だから、そうでない薬局に比べて患者負担は大きいのですよ、そこは御理解くださいということだろうと思います。私は、その説明で何とか国民に理解をいただくべきだろうと思います。  ところが、そこはやはり医療現場に行きますと本当にお金がすべてでありまして、幾ら払うかということは直接患者の動向になるということはあるわけであります。特に長期慢性患者あたりはそんな傾向があるというふうに伺っておりまして、そういう意味では、今の局長の説明を十分国民に理解されるように、薬剤師の使命といいますか調剤薬局の使命、あるいは、これから面分業を進めていくのだというこの方向性を本当に地域医療現場患者の方に理解をしていただく努力をしなければいけないだろうというふうに思います。  そういう意味では、当然ながら、私どもが薬局で薬をもらって帰っても、いろいろな説明なんというのはほとんどないわけでありまして、私は、調剤薬局に行って懇切丁寧に投薬の説明を受けたことは余りないのであります。そこはこれから変わっていくのだろうというふうに思うわけであります。  先般公表されました医療経済研究機構、これは薬剤師さんの会でありますが、「薬剤費への提言-二十一世紀に期待される薬剤師の役割」、この中にも薬剤師の活動の中心に患者の利益を据えるという強い意欲がうかがえるわけであります。きょう午前中の参考人意見を聞きましても、やはり薬剤師さんは今後の国民医療の中で自分たちの占める役割ということを強く認識をしておられる。医薬が相互に独立した面分業をぜひ私は進めていかなくてはいけないと思うわけでありますし、特に医師優先ということではいけないのだろうと思うのですね。薬剤師もそれなりに評価をされ、権限を持って医師と対峙していく、こういう独立した面的な分業を進めなくてはならない、私はこう思うわけであります。薬剤師の努力に期待をしなければなりませんし、また、そうした活動ができる評価と権限を与えることも私は今後必要ではないかというふうに思うわけであります。  最後に、厚生大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  200. 菅直人

    ○菅国務大臣 今、桝屋委員の方から、いろいろな問題、かなり具体的に踏み込んだ、経験を含めて聞かせていただいたわけですが、私も、この問題、すっきりした一つの方向性を見出すのが非常に難しいという感じがしております。  昔から医薬分業が長く言われたわけですが、第二薬局、最近は門前薬局、そしてそういったリベートの問題、今度は使用量によって先ほどの価格差を設ける問題、何かいろいろやっていくのですが、やっていってもいってもまた新たな問題が起きて、一番本質のところの問題が、だんだんと解決されているのか、そうではなくて、問題が残ったままでいろいろな現象だけがどんどん変化しているのかというところで、お話を聞いていても大変難しいのだなという感じがいたしております。  ただ、せんだって山口県以外にもいろいろ行ったときに、今度の公的介護の問題などで、そういう認定をするようなときに、ケアの認定なんかの場合に薬剤師さんに入ってもらいたい、お医者さんとほかの人だけだと薬の使用なんかについてはかの人は意見を言いにくい、やはり薬剤師さんが入っていれば、その人に合わせて、いや、そんなにたくさん使わなくてもこういうやり方もあるのじゃないですかとか言っていただけるとか、そういう話も聞きましたし、そういう点では、薬剤師さんの役割というのは、これからいろいろな意味で大きくなるし、あるいは大きくならなければいけないのじゃないかというふうに、基本的には桝屋委員が今言われたのと同じように思っております。  そういう点で、今回薬事法改正で、御承知のように、薬局の管理者は薬局の開設者に必要な意見を述べ、開設者はその管理者である薬剤師の意見を尊重しなければならないという規定を入れたわけですし、また、薬剤師は患者に調剤した薬剤の適正な使用のために必要な情報を提供しなければならないという、こういった意味で薬剤師の権限と同時に責任強化いたしたわけであります。こういうことも、これからの面分業を推進する上で、薬剤師の役割を明確化するという意味で一つの前進というふうに受けとめていただけるのではないかと思っております。  また、診療報酬上も、かかりつけ薬局を中心とした面分業体制の推進、薬剤師業務充実に資する評価を、先ほど申し上げたように行っているわけですけれども、できれば、今もありますお医者さんに対する問い合わせなども本当に機能するような形をとることによって、本当の意味での医薬分業のメリット、いわゆる面分業体制をぜひ実現するようにこれからも厚生省としても努力をしていきたい、このように考えております。
  201. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 以上で終わります。ありがとうございました。
  202. 横光克彦

    ○横光委員長代理 網岡雄君。
  203. 網岡雄

    網岡委員 私は、先日の厚生委員会医薬品情報収集評価、伝達体制充実医療機関における情報伝達体制の問題について質問をいたしましたが、きょうは、薬害の再発防止のための医薬品安全性に関する問題などを中心にいたしまして、若干質問をさせていただきたいというふうに思います。  薬害の再発防止のために、医薬品安全性に関する情報が迅速に収集され、適切に分析、評価され、医療機関医療関係者に確実に伝達される体制を整備することが今日の最も重要な課題であると認識をいたしております。医薬品情報収集評価、伝達が医療現場において適切に実施されるためには、医薬品専門家である薬剤師の活用がぜひ必要であると思っております。  今回の薬事法等改正によれば、薬剤師や薬局が必要な医薬品情報患者に伝達することを義務あるいは努力義務化しようとするものであり、私は、極めて適切な措置が今日の課題としてとられたものだというふうに思う次第でございます。  現在の医療において大きく欠けている点をあえて挙げるといたしますならば、患者に対する医薬品を含む医療情報の提供といういわゆるインフォームド・コンセントではないかと思うのであります。私は、さきの第二次医療改正の審議におきまして、この点について医療法に明記すべきと提案をいたした一人でございますが、結果におきまして、医療法の中に附則として、今後検討していくこととなったのであります。  その後、厚生省におきましてはインフォームド・コンセプトに関する検討会、柳田座長を軸といたします検討会が設けられまして、昨年、その結果が発表されました。驚いたことに、この検討会の報告では、インフォームド・コンセントを法律上規定することは適切でない、こういう極めて消極的なまとめになったと言われているのでございます。  しかし一方、ことしの四月に公表されました、第三次医療改正について審議している医療審議会の意見具申では、法的な位置づけをすべきとされたと承知いたしております。  医薬品の安全対策の一環として、インフォームド・コンセントについての法制機能を検討すべきではないかと私は思うのでございます。  今までの経過を申し上げますと、同じ厚生省の機能の中で検討された二つの検討班、一つの検討会それから医療審議会の意見具申というものが、インフォームド・コンセントに対する対応につきまして極めて相反する、逆の意見が示されたのでございますが、きょうの厚生委員会におきます各党の質問の中にも、インフォームド・コンセントの重要性というものは、質問者の中ですべてがこのことに言及されている現状にございます。  そこで、御質問を申し上げますが、厚生省として、医療審議会の意見具申に基づいて第三次医療改正案にインフォームド・コンセントを盛り込むつもりがおありになるかどうか、まずお尋ねをいたしたいと思います。
  204. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 今お話のございましたいわゆるインフォームド・コンセントの問題につきましては、柳田先生が座長をされておりました検討会では、一律に法的に強制をするということについてはどうか、ただ、これを法律の中に何らかの形で盛り込むべきかどうかということについては改めて検討してもらいたいというような趣旨で終わっております。  今、網岡先生お触れになりましたように、四月末にいただきました医療審議会の意見具申においては、「医療の担い手は、医療提供に当たり、適切な説明を行い、患者の理解を得るよう努める旨の規定を医療法に位置付けることが肝要」だという意見をいただいておりまして、私ども、これを受けまして、現在、法律改正の具体的な検討を行っておりまして、このような内容について盛り込みたいということで検討を行っているところでございます。
  205. 網岡雄

    網岡委員 明確な御答弁でございますから、ぜひひとつ今御答弁がありました方向で、まさにこれは治療の側と患者の側との間における信頼のパイプをつなぐ重要な機能でございますから、今御答弁がありましたような方向できちっと対応していただきたいということをぜひ要望しておきます。  次に、もう一つの点で御指摘を申し上げたいと思うのでございますが、医薬品治験におきまして、インフォームド・コンセントというものもまた極めて重要でございます。文書により行うべきとの指摘がなされておりますが、これは国際的な治験実施基準でありますところのICH-GCPに沿ったものであると聞いております。  そこで、質問をいたしますが、我が国においてICHーGCPを今後遵守し、文書によるインフォームド・コンセントをとることとするように対応されるのか、この点について明確な御答弁をいただきたいと思います。
  206. 荒賀泰太

    荒賀政府委員 現行の臨床試験実施基準でございますGCPにおきましては、文書または口頭により同意を得るということになっておるわけでございます。  今回御審議いただいております改正法案におきましては、このGCP遵守法制化を図ろうということにしておるわけでございますが、この中で、今お尋ねの治験におきますインフォームド・コンセントという問題につきましては、被験者の人権保護と自己決定の観点から非常に重要だというふうに考えておりまして、文書による説明と同意を必要とする旨を厚生省令に盛り込む方向で検討をしておるわけでございます。  また、本年五月には、お話のございました日米欧医薬品規制ハーモナイゼーション国際会議、ICHでございますが、ここにおきましても、三極に共通するICH-GCPが合意されたところでございます。その中では、文書によるインフォームド・コンセントが規定されたところでございまして、国際的な調和を図ることを目的としておりますICH-GCPにも沿ったものであるというふうに考えております。
  207. 網岡雄

    網岡委員 明確な答弁をいただきました。ぜひひとつその方向できちっと対応をしていただけるように、しかとお願いをしておきます。  次に、適正な医薬分業について御質問をしてまいりたい、このように思います。  先日の委員会におきまして、私は、最前も問題になりました門前薬局、第二薬局の問題を取り上げまして、本問題に対し厚生省は毅然とした対応をとるべきである、こういうことで強く要請をいたしたところでございます。厚生省が毅然とした対応をする、こういう方針を示されたわけでございますから、この方針どおり、不適正な医薬の分業につきましては厳しい姿勢で対処していただきたいということをまず要望しておきます。  医薬分業は医薬品の適正使用の観点から欠くべからざる仕組みであり、その意味でも医療の中にきちっと位置づけられなければならないものと存じます。  高齢化が急速に進展している今日、多くの患者が複数の医療機関を受診する機会はますます多くなっています。このような患者は、同種の医薬品や飲み合わせてはいけない医薬品を別の医療機関から処方されるケースもふえてきている現状にございます。患者がかかりつけ薬局を持っていて、医療機関からは処方せんをもらって特定のかかりつけ薬局で調剤をしてもらうようにすれば、このような医薬品の服用を未然に防ぐことができるのではないかと私は考える次第でございます。医薬分業が海外のように広く浸透していけば、ソリブジン問題のような薬害は防げたと思う次第でございます。  そこで、適正な医薬分業を国民医療の中に広く浸透させる観点から、幾つか質問してまいりたいと思います。  まず、四月に公表された医療審議会の意見具申では、医療計画の見直しに言及し、かかりつけ薬局による医薬分業を医療計画において必ず定めることといたしました。そこで、御質問を申し上げますが、近く予定をされております第三次医療改正におきまして、医薬分業をどのように位置づけていかれるお考えをお持ちになっているのか、まず厚生省の考え方をお尋ねいたします。
  208. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 従来、この医薬分業については、地域医療計画の記載事項ということの中で、医薬分業の推進あるいは処方せんの応需体制の整備といったようなことをそれぞれの県において記載するといったようなことが行われてきたというふうに認識をしております。  しかし、今回、今先生がお触れになりました医療審議会の意見書の中では、かかりつけ薬局による医薬分業というような形でかなり明確に医薬分業を具体的に記載されておりまして、それに合わせて医療関係施設相互の機能や業務の連携ということを医療計画に明記する方向で医療計画の見直しが提言をされております。  私どもといたしましては、医薬分業の推進も含めた、それぞれの地域の実情に応じた必要な医療提供体制をどういうふうに確保するかという観点から、この提言を受けて制度改正を検討しているところでございます。
  209. 網岡雄

    網岡委員 重ねて、確認の意味も含めて御質問を申し上げます。  医療計画において第二次医療圏単位に医薬の分業は必ず規定されることになるのですか。そして、こういうことで進められるとすれば、遅過ぎた感じはいたしますけれども、いずれにしても、その方向で着実な医薬分業が進められていく、こういうことで対応していただきたいと思うわけでございますが、先ほど申し上げた点について、もう一度確認の意味で御質問をいたします。
  210. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 医療計画といいますものは、二次医療圏単位に、それぞれの地域の実情に合わせて、また、それぞれの地域の関係する団体あるいは関係者の意見も踏まえて策定をするものでございますので、かかりつけ薬局による医薬分業、そういったようなことも医療計画に二次医療圏単位で記載をしていく。記載の仕方というのはそれぞれの地域によっていろいろあろうかと思いますが、基本的な方針としてはそういうことで私どもは進めていきたいと思っております。
  211. 網岡雄

    網岡委員 基本的な方針として二次医療圏単位に進めるという御答弁でございますので、ぜひその答弁どおりに着実な医薬分業を進めていただきたいということをお願い申し上げておきます。  次に、今回の薬事法改正におきましては、薬剤師である管理者の役割というものが極めて強化されたと私どもは改正案を見まして感じます。  開設者に対して保健衛生上の必要な意見を述べなければならない、つまり、第二薬局の場合に、管理者である薬剤師はその開設者である経営者に対して保健衛生上必要な意見を述べなければならないというふうに今度の薬事法では規定をされるというふうに聞いておるわけでございますが、公正な医薬分業を推進していくためにはこの規定は非常に大事な規定だというふうに思う次第でございます。  そこで、御質問を申し上げますが、厚生省薬事法等改正を含めて、今後どのように適正な医薬分業を推進していくのか、お尋ねをいたしたいと思います。これは、最前も申し上げましたが、大型門前薬局などの規制などを薬事法の中でいかに具体的に強化していくような、対応ができるような仕組みになっていくのかどうか、このことも含めてお答えをいただきたいと思います。
  212. 荒賀泰太

    荒賀政府委員 この医薬分業につきましては、医師と薬剤師がそれぞれの専門性を発揮して国民医療の質の向上に貢献をしていくというふうに考えておるわけでありますが、同種の薬剤の重複服用でありますとか、あるいは飲み合わせによります副作用防止、そういった医薬分業のメリットが十分に発揮されますためには、かかりつけ薬局によります面分業の推進、そういった適正な医薬分業の推進が必要であると考えております。  ただいまお話がございました今回の改正におきましては、薬剤師であります薬局の管理者は薬局開設者に対しまして保健衛生上支障を生ずるおそれがないように必要な意見を述べ、そして、薬局開設者はその意見を尊重しなければならないこととしております。これは、薬局の管理者の役割を強化いたしますとともに、患者等に対します薬剤の適正な使用のための情報提供を行うということを薬剤師に義務づけることにしておるわけでございます。これによりまして、積極的な疑義照会等が阻害されることなく、薬剤師に課せられました責任が全うされまして、また、服薬指導の徹底が図られるものと考えております。  また、この法改正以外につきましても、厚生省におきましては、地域におきます医薬品の備蓄、医薬品情報収集と提供、夜間・休日時の調剤を行います医薬分業推進支援センターへの補助事業を行っております。また、王師会や住民の方々から成ります会議を開催いたしまして、地域における医薬分業の定着促進策を検討する医薬分業定着促進検討事業も行っておりますし、また、医薬分業に対する国民の理解を深めるための医薬分業啓発普及事業でありますとか、さらに、健康保険において面分業に資する調剤報酬上の評価等が行われてきておるところでございます。  今後、適正な医薬分業を全国的に推進していくためには、やはり地域の実情に合わせた計画的な推進が必要であると考えておりまして、本年度、医薬分業計画の策定指針を作成することにしております。具体的には、四県程度のモデル県を指定し、県内の特定地域における医薬分業計画を策定してもらいまして、それを参考厚生省において医薬分業計画の策定指針を作成いたしたいと考えております。  厚生省としては、引き続きこれらの施策を通じまして、適正な医薬分業が全国的に一層進展できますように努めてまいりたいと考えております。
  213. 網岡雄

    網岡委員 次に、薬剤師の資質向上の問題につきまして御質問を申し上げたいと思います。  厚生省の中に、薬剤師養成問題検討委員会というのが薬剤師の資質の向上の問題について検討されております。この検討委員会におきましては、現在の薬学教育につきまして、医療薬学の充実や六カ月以上の実務研修を行わせること、そのためには四年の教育年限では修まらず、六年の大学教育に移行すべきとの方向が示されているところでございます。  ところが一方、文部省では、薬学教育の充実は必要であるが、教育年限の延長は現実的でなく、当面は四年教育の内容の改善を行う方法で対応していきたい、こういうようなことになっているようでございます。  私は、薬剤師が医療人として、チーム医療の一員としての職責を全うしてまいりますためには、大学教育の大幅な改善が必須であり、研究者の養成を主な目的としてきた現在の薬学教育の内容では、単に小手先だけの変更では役に立たないと思うのであります。この問題は文部省が立ち上がらないと前に進まないのでございますから、ぜひひとつ、薬学教育の充実をどのように今後進めていくのか、文部省のお考えをこの際お聞かせいただきたいと思います。
  214. 寺脇研

    ○寺脇説明員 薬学教育の改善につきましては、文部省といたしましても、現在のいろいろな新し  い問題あるいは医療のあり方の変化に応じまして、積極的に対応しなければならないというふうに考えております。  委員御指摘のとおり、文部省の現在の考え方といたしましては、学部教育を充実させていくというのが一つの大きな方向、それから、大学院の修士課程を充実させていくということの中で内容を充実させていきたいというふうに考えております。  その内容につきまして、確かに、今までが薬理研究と申しますか、研究重視の考え方であったという反省に立ちまして、カリキュラムの改善をしていく視点といたしまして、第一に、学部段階におきましては、医薬品患者医療のために適正に使用する力を育成するところの医療薬学教育というものを充実してまいりたい、そういう考え方に立った抜本的なカリキュラム改革を推進してまいりたいと思っております。  また、大学院の修士課程におきましても、医療薬学専攻等を量的にまた質的に整備いたしまして、今御指摘のございました六カ月の病院研修といったものも受けられますように改善をしてまいりたいというふうに考えております。  当面、このような考え方でございますが、将来にわたりまして、医療人の資質向上の一環として薬剤師の資質向上に努力をさせていただきたいと存じます。
  215. 網岡雄

    網岡委員 文部省のお考えを今お聞きいたしましたが、ぜひ私は指摘をいたしたいのでございますが、今のような形で大学における薬学教育が免許取得までの間の年限ということになりますと、日本は今、国際的に、経済大国という言葉は悪いかもわかりませんが、非常に世界的な地位を占めている状況にございます。  しかし、事この薬学教育で眺めていきますと、文部省は御存じだと思いますが、東南アジアの諸国、フィリピン、インドネシア、タイといったような国々は、薬学の大学教育はいずれも六年制でございます。欧米はもう言うに及ばず六年制。一部五年制というところもあるようでございますが、大半は六年制。これはなぜ六年制になっているかというと、薬剤師として世の中に出た場合に、きちっと医療の担い手として役割を果たすことができるかどうかということの資質をとるためには、やはり今言った諸外国の例から見ましても最低六年の年限の必要性というものは、これは国際的に見てそういう状況にございます。  今、文部省のお話こよりますと、大学四年で国家試験を受けて免許を取る、さらに本人が勉強の必要性があれば大学院へ行く、こういうようなことでは、私はいつも思うことですが、私自身も反省をしているところでございますが、今の薬学における教育の年限が少ないためにどうしても臨床における知識というものが非常に乏しいわけでございます。  ところが、これからの薬剤師の職域というものは、好まざるとにかかわらずに、分業がどんどん進んでいくわけですから、どうしても服薬指導の場合でいっても、臨床の面の知識を十分身につけて話をしなければ、本当の意味の服薬指導というのはできないと思うのでございます。インフォームド・コンセントはできないと思うのです。  そういう意味で、薬学教育は今抜本的に考え直さなければいけない。これは、まず教育の主たるところであります文部省が改めていただきまして、ぜひひとつ六年制を志向していくという方向で考えていただきたいというふうに思いますので、今後とも文部省の方も鋭意検討をしていただくように要望しておきたいというふうに思います。  最後に、厚生大臣にお尋ねをいたしますが、今回の薬事法等改正を通じ、薬害の再発防止に向けて厚生大臣はどのような御決意とお考えを持って臨まれようとしているか、お聞きをいたしまして、質問を終わります。
  216. 菅直人

    ○菅国務大臣 この法案については、御議論をずっといただいておりますが、御承知のように、平成五年のソリブジンによる副作用問題を契機として、治験から承認までの審査あるいは市販後の安全性などを充実させるという目的と、もう一点、血液製剤によるHIV感染の反省に立って、緊急に必要となる措置を講じようというのがこの法案の目的であるわけであります。  そういった意味で、細々とは重ねて申し上げませんが、治験から承認までの審査あるいは市販後の医薬品のいろいろな副作用情報等の報告をきちっと上げてもらうなり、あるいは治験のルールを守っていただくなりして、一層安全性の高い医薬品が国民の皆さんに供給できるように、また逆に言えば、いろいろ危ないものについてはできるだけ早く把握して、できるだけそうした危険なものについては早い段階で排除できるように、そういう方向に向けてこの法案を含めて努力していきたいと思っております。  さらには、現在いろいろ検討していただいていることを踏まえながら、さらなる薬事行政の改革の必要性が出てくることも予想されますので、その段階ではその方向を含めて適切な対応を図ってまいりたい、このように考えております。
  217. 網岡雄

    網岡委員 終わります。
  218. 横光克彦

    ○横光委員長代理 荒井聰君。
  219. 荒井聰

    荒井(聰)委員 大臣も各局長さんも、介護保険だとかエイズだとか大変お疲れのようでございますので、なるべく簡単に御質問したいと思います。  ところで、現在、介護保険問題が大変新聞をにぎわしております。介護保険というのは実施にこぎつけるのには国民的な議論が確かに大変必要だという御指摘、そういう御指摘がある一方、なるべく早くっくらなければ、要介護老人が現在約二百万人存在していて、二十年後には恐らく五百万人にも達するであろう、そのような行政的な需要、緊急な需要にこたえるためには、相当思い切った対策を早急にやらなければならないのだというふうに私は思っております。一方、国民的な議論を十分尽くす必要があるということもまたごもっともなことでございます。  よく大臣には、地方に出かける際には、町村会や市長会の実務担当者も含めたそういう機会をつくって、よく説明をしたりあるいは議論を重ねていただきたいということを私はお願い申し上げているわけでございますけれども、現在の介護保険の検討状況というのは一体どうなっているでありましょうか。あすにも老健審に諮問をしたいというような新聞報道もなされておりますけれども、いかがでございましょうか。
  220. 菅直人

    ○菅国務大臣 荒井委員おっしゃるとおり、私もできるだけいろいろな、特に自治体関係者との話し合いには積極的に参加をするように考えておりまして、実はきょうも午前中、全国市長会がありまして、そこであいさつする機会がありましたので、その中でも、この介護保険制度を含めて市長会の皆さんに今の考え方なり、あるいは市長会の皆さんがいろいろ要望されていることについての受けとめている様子なりを私なりにお伝えしたところであります。  現在の状況ということでありますけれども、御承知のように、老健審の最終報告を四月二十二日にいただいた後に、五月十五日に試案を出させていただきまして、それをさらに与党のプロジェクトあるいはそうした関係者の御意見をいただいて、最終的な試案、修正した試案という形でさらに出させていただいたわけですけれども、週があけて、きのう、きょう、あすという段階で、できればそうした自治体を含む老健審の関係者と与党プロジェクトの皆さんの御理解を得て、あすの段階で老健審及び他の社会保障制度審議会などに正式な諮問を行いたい、こういうふうに考えておりまして、現在、最後の調整をお願いしている、こんな段階にあるわけであります。     〔横光委員長代理退席、委員長着席〕
  221. 荒井聰

    荒井(聰)委員 よく聞かれることとして、国民的な論議がまだ十分ではないという指摘がなされるわけですけれども、老健審の場でもう二年弱議論をしている、あるいは与党の福祉プロジェクトというところで八十数回議論をしている、そろそろ具体的な議論をできるような場をつくらない限り、具体的な国民的な議論にはならないと私は思うわけであります。  今回の厚生省の試案というのは、確かに本邦初演ですから、どこがどういうふうになるのかという不安を抱くような点もさまざまにあるわけでございますけれども、しかし、そこをいつまでも憶病にしていたのでは、来る高齢化社会に対応できるような施策は実施できないと私は思うのであります。  そこで、思い切った法案を提出するということが必要なのではないかと思いますけれども、この点、大臣いかがでしょうか。
  222. 菅直人

    ○菅国務大臣 今御指摘いただいた点については全く私自身も同意見でありますが、特に今回の公的介護保険制度というのは、医療保険制度あるいは年金制度あるいはこれまでの措置制度による福祉制度とかなり仕組みも、ある意味ではサービスの内容も違うといいましょうか、新たな組み立てになるわけであります。  それだけに、こういう言い方をすると誤解を招きやすいのですが、法律としてはしっかりしたものを提案しなければなりませんが、しかし、実際の内容は、スタートをする中で、また関係者のいろいろな努力の中で充実していくのではないだろうか。これは、医療保険制度の歴史などを見ておりましても、最初は部分的に施行してだんだん広がっていくとか、あるいは部分的な給付からだんだん全体になっていくとか、いろいろな段階があって今日の皆保険あるいは皆年金という制度が達成されているわけですから、そういう意味ではこの介護保険制度も、まずある段階でスタートをして、そこからだんだんと育て上げていくという形が必要ではないかというふうに思っております。  と同時に、この議論は、荒井委員も今おっしゃったように、老健審の議論だけでも、昨年の二月から一年半近くにわたって相当濃密にやっていただいておりますし、実はその前から、社会保障制度審議会なりいろいろな検討委員会のようなところで議論もありますし、もっと言えば、全国民がもう既にこの介護という問題をいろいろな形で経験しているというふうに言っても決して言い過ぎではないと思うわけです。  そういった意味では、この時点において試案を出させていただきましたが、もっとはっきりした形で、法律という形でこの国会に出させていただいて、この会期がもう余りありませんので、次の臨時国会等で十分な御議論をいただくことが必要ではないか。  加えて申し上げますと、医療保険制度の問題などもう喫緊に迫ったいろいろな改革の課題がありまして、そういう改革の議論をする上でも、公的介護保険制度が、制度としてスタートというところまでは行っていなくても、法案という形で制度がきちんと見えている、そういう形がこれからの社会保障制度の構造改革を推し進める第一段階として望ましいのではないか、このように考えているところであります。
  223. 荒井聰

    荒井(聰)委員 私も市町村長によく議論をされることがあるのですけれども、市町村長さんの言われることというのは、ほとんど、国保において、国民健康保険で大変な苦労をした、その不信感、厚生省に対するこの医療保険の不信感というものが根っこにあって、ここについての信頼関係をなかなかつくり得ていないというところが今回の議論などでも大変なネックになっていると思うのですね。  ところが、介護保険そのものは、国保の重圧というものを軽減し、かつ国保の持っている欠陥というものを十分反省して新しい制度に仕組みかえたのだというふうに私などは考えるのですけれども、この点、いかがでしょうか。大臣にお聞きしてよろしいでしょうか。
  224. 菅直人

    ○菅国務大臣 私も、市長さんや町村長さんにお会いしますと、必ず、国保のようにならないのか、あるいは国保との関連でこの問題がさらなる負担にならないのかということを常に言われております。そういう点で、私は、大きく言って、国保との関係で申し上げますと二つの面があるのではないかと思っております。  一つは、つまりは、国保の保険者という立場で今御苦労いただいている場合に、財政的に直接一に、赤字が国保で出たときにそれぞれの自治体が一般会計でかぶる、あるいは値上げといったような形でそれをカバーするという、そこにおける苦労というものがあって、それと同じようにならないかという心配だと思います。  その点については、今回の制度では、委員も御承知のように、六十五歳以下の保険料については全国でプールして、いわば使った給付に応じてそれぞれに配分していくという形、あるいは六十五歳以上についても、どうしても未納等が出た場合に備えていわば再保険のような形でフォローするといった形などを含めて、実質的にそうした財政負担すべてが自治体に直接に行くという形ではない形でフォローする、そういうことをいろいろ御提案しておりまして、かなり御理解をいただけているのではないかと思っております。  もう一点、構造的に見ますと、まさに、例えば社会的入院などという言い方もありますけれども、現在の医療費、特に高齢者の医療費が増大している、それ自身も国保にとっても大きな負担になっているわけでありまして、そういった分野、あるいは自治体自身が措置費で措置しているいろいろな分野の支出が今度の公的介護保険制度によってある部分カバーされる、あるいはより効率的な形に組みかえられる、そのことによる負担の減といったようなものも将来は見通せるわけであります。  その両面を理解をいただければ、今回の制度の積極的な意味というのはもともと各自治体よく御承知ですので、そういった両面での財政的な見通しが御理解いただければ全体の制度としても十分認めていただけるのではないだろうか、このように期待もしているところであります。
  225. 荒井聰

    荒井(聰)委員 介護について、大変な緊急性がある、必要であるということは市町村長も十分認識をしているのではないかと思うのです。したがいまして、この介護保険を成案を得て今国会に提案をし、医療保険制度の次なる改革の本格的な着手をしていく、そしてさらには市町村長との間の信頼関係を再構築していくということをぜひお願い申し上げまして、この点については終わらせていただきます。  次に、薬の関係です。  午前中の参考人質問の中でも、私、質疑の中で指摘させていただいたのですけれども、金融機関と製薬メーカーというのは私企業でありながら公的な性格を非常に強く持っている。国家というのは生命、財産の安全を守る機能であるというのはだれが言ったか忘れましたけれども、そういう私企業でありながら別の特段の機能を持っているがゆえに、金融機関は通産省ではなくて大蔵省、そして製薬メーカーはこれも通産省ではなくて厚生省がその所管をしているのだというふうに思うのです。しかしながら、この製薬業界、千七百ある製薬業界に対してどのようなビジョンを持って育成していくのか。  この業界は恐らく開発経費に大変なお金がかかっている、薬の単なる製造コストだけならば大変低いコストですけれども、そのコスト計算のためには大変な開発経費がかかっているという、ほかの業界には見られない多分に特殊な業界なんだろうと思うのですけれども、これをどのように育成していこうというのか、そのビジョンがなかなか見えない。そして、一般国民には普通の私企業と同じように指導育成しているのではないかというようにしか見えないのではないだろうか。この点、厚生省としてはどのようにお考えなのか、薬務局長にお聞きしたいと思います。
  226. 荒賀泰太

    荒賀政府委員 ただいまお話がございましたように、製薬産業というのはすぐれた知的集約型産業でございまして、しかも、国民の生命とか健康に直結する製品を製造しているということの責任を全うしなければならない、そういう認識をしておるわけでございます。  これについての将来ビジョンにつきましては、やはり今お話がございましたように、他の産業に比較して非常に研究開発費率が高うございます。我が国の製薬産業のこれまでの展開を見てみますと、新薬開発数は多いわけでありますけれども、しかし、残念ながら、世界に通用する新薬というものが今まで少ない。今申し上げた売上高に対します研究開発費は高いわけではありますけれども、しかし、一社当たりの研究開発費の絶対額を見ますと、世界的に見ますとまだまだ少ないということが指摘をされておるわけでございます。  これからは、この医薬品開発というのは非常に時間とお金がかかるということはもう言うまでもないところでございますが、しかし、国内企業研究開発努力というものが徐々に実を結んでまいっておりまして、幾つかの画期的な大型新薬が上市されるという状況もあるわけでございます。そういったためにも、これから各企業が巨額の研究開発費を支出していく必要があるわけでありますが、そのための企業体力というもの、これが非常に求められるというふうに認識をいたしております。  私どもも、そういった中で、この医薬品産業の将来ビジョンというものを考えていく、そして、研究開発にインセンティブが働くような産業政策というものを講じていきたいというふうに考えておりますが、同時に、安全面には十分な配慮が必要でございますので、そういった意味での規制もあわせて行う必要があるのではないかというふうに考えておるわけであります。  具体的に申し上げますと、やはり基礎研究、これは今回、国の基礎研究の出資事業というものを創設いたしたいと思っておるわけでありますが、そういう基礎研究について国が積極的に取り組んでいくということで、それぞれの研究段階に応じた研究をどのようにして支援していくかということ。  それから、やはり国際的な調和に配慮をした、将来の規制がどうなっていくのか、そういった内容とか時期とかについてもあらかじめ示して、そして、メーカーの道しるべといいますか、そういったものを示していきたい。  それから、今回の改正でも出ておりますように、国際的に評価されます治験実施をしてまいる。さらに、画期的な新薬評価されるような、研究開発のインセンティブが働くような薬価基準制度の改善等についても必要ではないかというふうに考えておるところでございます。
  227. 荒井聰

    荒井(聰)委員 アメリカの場合には、ベンチャービジネスというのは、薬の製造のところに大変多くの企業が参入しています。極めて知的集約的な業界であります。しかし一方、治験を国際水準並みに行っていく、あるいは販売を世界全体に広げていくというような世界戦略的なことを考えれば、その資本基準というか資本規模というのは大変大きくならなければならない。  したがって、一方では大変大きな企業が存在するとともに、片一方では大変ベンチャー的な、エネルギッシュな企業が生まれてくるという非常に多様な業界でもあります。そういうような点も参考にしながら、ぜひ、日本の製薬業界をどのように指導していくのか、育成していくのかというビジョンをおつくり願いたいと思います。  さて、今回の薬事法改正というのは、エイズ問題から発生した要素もあるわけでございます。  今回のエイズ問題で、私は今までずっと審議をしておりまして大変疑問に思いますのは、例の帝京大症例と順天堂大症例という二つの症例がどちらが第一号患者かということを議論し合うわけですけれども、結果的には、帝京大症例は疑似症例ということで、エイズではないという形になったわけでございます。しかも、その後、エイズの陽性反応が出ているということで、これは紛れもなくエイズであったということになるわけですけれども、このエイズ症例を議論する過程の中で、医学界の古い体質というものが出ているのではないか、いわゆる講座制の問題がここに出ているのじゃないのだろうかというふうに思うわけでございます。医学界の非常な権威者が一人いて、その権威者のもとに全部治験をしていく、権威者が右だと言うと全体が右の方に流れるというのは、もとをたどればどうも講座制に行き着くのではないだろうかというようにさえ思うのです。  このあたり、文部省は現在の講座制というものをどのように考えているのか。そして、この講座制の弊害というものを、一般的に言われているわけですけれども、その解消をどのように図ろうとしているのか、このあたりの見解を伺いたいと思います。
  228. 寺脇研

    ○寺脇説明員 講座制というのは、医学部に限らず、大学全体で一般に行われておるわけでございます。一定範囲の学問領域につきまして、責任を持って教育研究活動を行いますことにより、教育研究組織としての自主性の確保や、また学問上の後継者の育成等の面で有意義な制度でございまして、安定した教育研究の仕組みとして、大学教育、学術研究の発展の上で長らく重要な役割を果たしてきたものでございます。  しかしながら、この制度もいいことばかりではないわけでございまして、学術研究の進展に応じまして編成が細分化し、学生に対する教育の面で偏りが生じたり、また、ともすれば、講座制という枠内での研究活動において、若手研究者の自由な研究活動や発意が抑制される場合がある等の問題も指摘をされておるところでございます。  特に、医学部の場合におきましては、学問体系として確立されましたそれぞれの領域ごとに、教授を頂点といたしました教員組織が配置され、講座を形成されておるわけでございますが、医学部の場合には他学部と異なりまして、附属病院の診療科を運営していくということと同時に行われておりますので、教育研究に加え、診療が一体として遂行されております。そのために、講座制が硬直化をして閉鎖的になったような場合においては、他の学部に比べて一層、教育研究面や人事面などにおいて硬直化が出てくるというような問題があろうというふうに考えております。  そこで、今後そういった講座制のよいところは残していかなければなりませんが、弊害を正していかなければならない。そのことで、近年は、各大学におきまして、自主的な判断によりまして、いわゆる大講座制という形で、講座を細分化するのでなく、大きな講座システムをつくっていくということが進んでおります。国立大学におきましては、平成七年度現在、八十九大学二百六十一学部で大講座制が導入をされております。医学部におきましては、現在十三大学で導入をされておるところでございます。  文部省といたしましても、このように今後とも各大学におきまして、講座制のよさはそれで生かすとしても、問題の部分につきましての弊害を正していくために、大講座制を初めといたしますさまざまな方途を各大学が講じていっていただけますような形で指導助言に努めてまいりたいと存じております。
  229. 荒井聰

    荒井(聰)委員 私は最近、非常に憤りを感ずることがあります。オウム事件のときに、大変高度な教育を受けた人たちが、オウムという大変な宗教の団体に入って、人殺しの薬をつくっていた。それをつくっていた人たちはほとんど国立大学を優秀に卒業した人たちですね。こういうような人たちをつくっているということに対して、つくってしまったということに対して、私は、文部省は深い反省をして今の国立大学の教育、そういうものに抜本的なメスを入れていくということが必要なのじゃないかと思うのです。  今後、治験を大規模にやらなければ国際的な水準に近づかないという御指摘が午前中ございました。そのとおりだと思います。しかし、治験をするのは大変難しい。しかし片一方では、国立大学があり、国立病院があり、大変な国費が投入されている。そのような病院がシステマチックに治験実施していくということでなければ、私は、本来的な意味の国立大学なり国立病院というその機能は発揮したことにはならない、国民の財産という形にはなっていないのじゃないかというふうに思います。  そんな点を指摘して、私の質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
  230. 和田貞夫

    和田委員長 岩佐恵美さん。
  231. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 まず、陣痛促進剤と排卵誘発剤問題について伺いたいと思います。  陣痛促進剤による被害を考える会の調査によりますと、子宮収縮剤の添付文書改訂後、九二年十月以降、副作用被害件数は五月末で五十七件、うち母親の死亡が六件、子供の死亡が二十六件と、わずか三年半で死亡事故が三十二件も起きています。母親が植物人間になってしまったもの二件、子供の脳性麻痺は二十三件にも上ります。減少するどころか、増加傾向になっています。  同会の指摘を受けて、厚生省製薬企業等を通じて実態を調査しているわけですが、二月十四日に公表された内容では、副作用件数は二十三件、うち死亡は母子合わせて九人となっています。つまり、同期間で比較しても、事故件数で三十件、母子の死亡件数は二十件も考える会の調査の方が多いという結果になっています。政府調査の倍以上です。どうしてこのような大きな食い違いがあるのでしょうか、その原因について伺いたいと思います。
  232. 荒賀泰太

    荒賀政府委員 陣痛促進剤の関係でございますが、平成四年十月に使用方法を限定する等の添付文書の改訂を行ったところでございます。しかしながら、その改訂後も、妊婦の方で子宮破裂等を起こしまして死亡症例あるいは脳性麻痺の子供が続発するという指摘がございまして、関係企業に対しまして、陣痛促進剤を納入しております医療機関に対する副作用発現の実態についての調査を行うよう指示して、報告を求めてきたところでございます。  平成四年十月以降に発生した症例が二十三例あったということでございますが、この新聞におきましては、陣痛促進剤の被害を考える会の調査によりまして五十四症例あるというふうに報道がなされておるわけでありますが、その相違の理由といたしましては、厚生省には、主治医が副作用またはその疑いのあると判断しました例について報告されたものが収集されておりますのに対しまして、この被害を考える会におきましては、主治医の判断とは別に副作用と考えられましたものが含まれていることがあるものでまないかというふうに考えておるわけでございます。  厚生省に報告されました中には、母体死亡、胎児・新生児死亡等の症例がありましたことから、添付文書に子宮破裂の危険性等についての警告欄を設けまして、医療関係者に対して改めて注意を促し、さらに前置胎盤等の場合には禁忌とする項を設けるように製薬企業に対して指導を行ったところでございます。  また、これに合わせまして、社団法人の日本産科婦人科学会あるいは日本母性保護産婦人科医会に対しまして、会員向けの情報誌あるいは卒後研修等を活用して、子宮収縮剤の安全で適正な使用のための知識、方法の周知徹底を図る等、適正使用の推進について協力方を依頼いたしたところでございます。  また、厚生省におきましては、本年三月に発行いたしました「医薬品副作用情報」におきまして、陣痛促進剤による副作用症例の紹介情報提供を行いまして、医療関係者に対して周知を図ったところでございます。  お尋ねの症例のうち、さらに副作用に該当するケースがあるかどうかにつきましては、この団体から提出されました症例をもとに、企業収集した副作用症例との突合でありますとか、あるいは中央薬事審議会専門家による検討などの調査を行いまして、必要に応じて対応を図ってまいりたいと考えております。
  233. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 要するに、薬を使ったからそういう状態になったのか、それとも、薬のせいではなくて、その人の持っている体質によってそうなったという見方なのかというところで分かれてくるのだと思うのですね。だから、お医者さんが副作用じゃないと言えばもうそれで報告はされないということになっていて、被害者が声を上げなければやみからやみにこの問題が葬られてしまうということになるわけです。私は、これは本当に重大な問題だというふうに思います。  そこで、この質問は大臣にお答えをいただきたいというふうに思いますが、考える会がまとめた、病院及び診療所と、助産所で生まれた出生時間帯の十年間の比較を見た場合に、助産所では、時間帯で見れば二十四時間平均的で、出生数にほとんど変化がない。ところが、病院等は十時から十七時あたり、つまり、十時から五時までの出生数が深夜帯の倍になっている。生まれる時間が、大体、助産所では二十四時間平均しているのに、病院の場合には夜間に生まれないようになっている。  日母の見解では、周産期医療は危険を伴うものだから、土日や深夜の医師のいないときより平日に産ませる方が安全な出産ということでいいのだとして、病院の都合によってコントロールは当然のことと言っているわけです。  薬による出産時間の行き過ぎたコントロールがまかり通っているというふうに思います。まさにそういう意味では適応外使用の乱用、陣痛促進剤というのは適応外使用の乱用と言うしかないと思います。添付書の改訂をしても、厚生省指導しても事故が増加している、この状態を何としても食いとめていかなければいけないというふうに思います。  そこで、会の皆さんも言っておられるのですが、カルテについて本人への開示を行ってほしい、そういう要望があっても、患者は裁判を起こさないと見ることができない。せめてどのような薬を使用したのか、患者に知る権利がある。本人へのカルテの開示をすべきだ。この開示の問題については、保団連では開業医宣言で明らかにすべきだということを言っております。それから条例でも、神奈川県藤沢市、川崎市、横浜市、大阪市、福岡市など、開示を定めているところも結構あるわけです。  こういう本人へのカルテの開示、要望があればすべきだというふうに思いますけれども、その点について大臣の御見解を伺いたいと思います。
  234. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 まず、今の陣痛促進剤の使用による出産の問題でございますが、もちろん、この陣痛促進剤を含めまして、薬剤の使用に当たって、薬剤の承認された使用法等を前提にして、医師専門的な判断のもとで適切に使用されるということが一般的にと申しますか、全般として必要だというふうに考えています。  また、陣痛促進剤の使用等によるいわゆる計画分娩につきましては、患者さんあるいは妊婦の方と医療従事者との間に十分な説明と信頼関係に基づいて適切に行われるということが必要だというふうに考えております。  また、個々の医療現場において提供される医療内容につきましては、専門家としての医師の判断のもとに行われるものだというふうに思っておりますけれども、その際におきましても、当然、患者が理解、納得をして医療を受けられるよう、医療側からの十分な説明がされることが必要であるというふうに考えております。  なお、カルテの開示ということについては、一般論として申し上げれば、本人が希望し主治医がそれを認めるという、本人と主治医との関係においては、そういうことはあり得るのではないかというふうに思っております。
  235. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 そういうことがあり得るというのは、開示をすることがあり得るということですね。
  236. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 カルテについては、患者さん個人の秘密といいますかの問題でございますが、患者さん個人がそれを望み、主治医がそれを認めるということにおいては、カルテの開示というのはあり得るというふうに考えております。
  237. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 それは当然のことなんですね。本人が望んでも開示をしないから今問題になっているわけですね、どんな薬を使われたのかわからない。だから、別に被害を訴えるとかそういうつもりがなくても、カルテを開示してほしいと言って医師に断られる、病院に断られる、それだけで裁判を起こさなければいけない、そういう実態になっていることが問題なのではないでしょうか。  ですから、そういう点について、保団連の皆さんは開示の宣言まで行っておられる、病院側としてはいいのじゃないのということで言っているし、条例でも制定されている、そういう状況にあるということで、国として、大臣の御見解を伺っているのです。本当に患者の知る権利が保障されているのであれば、何もこの委員会で聞くこともないわけですね。ですから、その辺をどうされるのかということを具体的に伺っているのです。
  238. 菅直人

    ○菅国務大臣 若干こうした質問の趣旨がこちらに伝わっていなかったので、細かいところは場合によったら後でよく調べてみますが、カルテというものの性格は、現在のところ、医師のメモという扱いになっているようでありまして、そういう意味では、医師患者さんにカルテを示すというのは、医師にそれを義務づけるという制度には現在はなっていないというふうに理解をしております。  今後、例えば薬とかを使う場合に、いわゆるインフォームド・コンセントによって、どういう薬を使ったのか、どういう薬剤を使ったのか、あるいはどういう治療をしたのかということを事前なり事後に伝えるということは、当然考えられていいことだと思っております。ただ、それが、今言いましたように、カルテそのものの開示義務という形で考えられることなのか、それとも、今いろいろ議論されておりますインフォームド・コンセントの考え方の中で、別の形である種のルールをつくるべきなのか、そこはもう少しいろいろな議論が必要ではないか、こう思っております。
  239. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 そこのところは、私たちも議論して、患者のきちっとした権利が守られる、そういう状態を早くにつくっていくべきだと思いますし、ぜひ厚生省として作業を早急に進めていただきたいというふうに思います。  同様に、副作用が大きな社会問題になっています薬として排卵誘発剤があります。  新聞報道によりますと、秋田大学附属病院では、九四年までの六年間こ、重い副作用で入院したケースが三十三例、かなりなケースですね。また、フィンレージという民間団体の調査では、五百八十一名の会員の回答によりますと、排卵誘発剤による卵巣過剰刺激症候群が二十五名、腹水がたまるなどの関連症状を含めると百十一名が副作用を起こし、重症のため入院した患者は十七名いると報告をされています。副作用の報告が義務づけられていながら、大きな社会問題になり、厚生省調査を指示しなければ報告が全く上がらないという状況になっているわけです。  不妊に悩む患者は年々増加をしています。投与患者も増加をしているわけです。したがって、副作用の発生率も増大をしています。被害情報が具体的に国民に公表されなければ、国民にとって被害を避ける手段がないということになります。国は国民に被害情報を公表する義務があると思いますし、被害情報を緊急に、起こったときにすぐする、また定期的に恒常的に公表する、そういうことなどが検討されるべきだと思いますけれども、その点、いかがでしょうか。
  240. 荒賀泰太

    荒賀政府委員 お尋ねの排卵誘発剤でございますが、今お話ございましたように、血栓症とかあるいは脳梗塞等を伴う重篤な卵巣過剰刺激症候群があらわれるということで、使用中は定期的に内診を行うなどの、重い副作用を防ぐための注意喚起を従来からしてきたところでございます。  昨年十月に、排卵誘発剤による重い副作用が発現しているという報道がございまして、製造企業に対しまして必要な調査を行うよう指導していたところでありますが、本年三月までに二十例の副作用症例が改めて報告をされました。  これを踏まえまして、厚生省におきましては、本年四月十二日に、「使用上の注意」に血栓症、脳梗塞等を伴う重篤な卵巣過剰刺激症候群について注意を促す警告を記載いたしました。また、緊急安全性情報、ドクターレターを出しまして、日本産科婦人科学会あるいは日本母性保護産婦人科医会に対しまして、排卵誘発剤の適正な使用について、会員に対する普及啓発を依頼したところでございます。  今回、改めて適正使用の徹底を促す措置を講じたところでありますが、今後は、その推移を見守りながら必要に応じて対応を図ってまいりたいと思っております。  それから、今お尋ねの患者に対します医薬品情報の提供、これは極めて重要なことでございます。私どもも、医療機関におきます医薬品患者向けの説明文書のあり方については検討を進めておるところでありまして、今、研究会の報告も出ております。そういった検討結果を踏まえて、この排卵誘発剤についても必要な対応を図ってまいりたいと考えております。
  241. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 その注意書きの問題なんですけれども、排卵誘発剤は連日の投与が必要で、しかも重い副作用を起こす危険性があるために、添付文書には、投与前、投与中は毎日内診を行い、「異常が認められた場合には、直ちに投与を中止すること。」というふうに書いてあるわけです。  関東地方の不妊専門医療機関が、一年間で少なくとも五十人の患者に対して、在宅自己注射による治療をやっていた、そういう報道がありました。これはもう大変危険な行為だと思います。認められていない腹部の皮下注射もやらせていた、そういう状況があって、まさに添付文書があるからいいということにはならない、こういう文書だけでは対処し切れない、そういう問題が出ているわけです。  こうしたことについて、今後どのような指導、対応を考えていくのか、具体的にお答えいただきたいと思います。
  242. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 医薬品副作用あるいは使用上の注意等について、医師治療行為を行うに当たりまして十分に承知をする、またそのことを患者さんに十分に知らせるということが必要だというふうに考えております。  ただ、治療行為のやり方そのものについては、基本的には、その医師専門的な判断にゆだねられている部分もございます。専門職としての医師が自己の判断と責任において行う限りにおいては、行政側が医師治療行為そのものに介入をするということはできないのではないか。  ただ、医薬品の適正な使用ということについては、先ほど薬務局長からの御答弁にもございましたように、関係学会等に対して、会員への情報の周知を依頼し、徹底をしているところでございます。そういう意味で、この問題について、やはり医薬品の適正な使用ということについては周知徹底をしていくことが必要であるというふうに認識をしております。
  243. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 いずれにしても、こういう適応外使用という薬の使い方、あるいは添付文書にはない薬の使い方、それによって事故が起こって、それこそ植物人間になる、子供が脳性麻痺になる、その人にとってもう一〇〇%、人生にとって重大な問題であるわけです。医師治療に任せるということでありますけれども、やはり事前に考えられるそういう事故については防いでいかなければいけないと思います。医師にすべて任せるというわけにはいかない。そういう社会的に大きな問題になっているものについて言えばなおさらのことです。  厚生省としてしっかりとこの問題について取り組んでいただきたいと思うのですけれども、大臣いかがでしょうか。
  244. 菅直人

    ○菅国務大臣 今、局長の方から御答弁申し上げましたが、医師専門的な判断にゆだねられている範囲と、明らかにそれを逸脱している範囲というのがあるのだと思うのです。先ほど岩佐委員から言われた自己注射などは、特別の場合を除いては多分許されない、認められてない行為だと思うのです。当然そういうものについては注意書きもありますし、場合によっては、内容によっては医師法違反等々のこともあると思います。  一方で、先ほど政府委員からも申し上げたように、医療行為というものは裁量をかなり医師に認めている制度になっているわけでありまして、そういう点につきましては、薬の使用上においては一般的な意味の周知徹底をすることはできますが、その一つ一つの行為について、その範囲に属することについて行政が直接介入というのはやはりなかなか難しいのではないか、そのあたりは一つ一つ区別して考える必要があるかなと思っております。
  245. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 それでは、薬事法の前回の質問に引き続いて細かく伺っていきたいと思います。  茅ケ崎市立病院の医師の事件もありましたけれども、セローノジャパンが治験の依頼先に寄附金攻勢をかけて、治験研究会の出席医師に日当の名目で現金を渡した、そういう報道があります。出席した医師は、出席しただけでお金をもらうのはおかしいと思われるかもしれないが、現実治験をやる方は大変、治験の仕事で残業しても医師個人には一銭も来ない、すべて病院の収入だ、ただ働きへの謝礼という意味合いもあるのでしょうと言っているわけです。また、ある医師は、それぞれ貴重な時間を割いているのだから相当の費用をもらうのは当然だと思う、どこの製薬会社でも同様に出している、そうでなければ治験に協力する医師がなくなってしまう、治験のあるべき姿についてどこかで基準をつくってほしいと発言しています。  治療を行っている医師製薬企業の間で、講演料、指導料、奨学寄附金の名目で現金が渡されている、そういう問題についてどう対応していけばいいと考えておられるのか。  きょう午前中の参考人質疑のときにもちょっとこの問題を伺ったのですが、参考人の方は、規則を明確にしていくことも必要なのじゃないか、そんな提案もありましたけれども、その辺あわせて、どうしていったらいいのか、どうお考えなのか、伺いたいと思います。
  246. 荒賀泰太

    荒賀政府委員 治験につきましては、製薬企業責任のもとで実施されるものでございまして、医療機関において治験実施する場合に、人件費あるいはいろいろな経費についてはメーカーが医療機関に支払うことが必要でございます。  この件について、治験に関する費用の透明化をどのように図っていくかということでございますが、本年度予算措置によりましてGCP適正運用推進モデル事業というものを考えておりますが、そういった事業を通じまして、治験に必要な費用の標準化あるいは費用の算定のモデル化、そういったことの検討を進めますとともに、GCPの規定といたしましては、医療機関治験審査委員会における検討の際に治験に必要な費用を明らかにすることを盛り込むということについても今後検討をすべきではないかと考えておるわけでございます。  治験依頼者からの金銭によりまして治験結果がゆがめられるということがあってはならないわけでございますが、今回の薬事法改正におきまして、治験実施時に被験者安全性の確保が問題だという場合には、関係者から報告を求めたり、また立入検査を行うことができるようになっておるわけでございます。  いずれにいたしましても、この費用の透明化の問題につきましては、適切な費用の負担と透明な形での支出ということについては今後とも検討してまいりたいと考えております。
  247. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 それから、治験データの改ざんを防ぐために学術雑誌に掲載することを指導しているということですけれども、これで本当に改ざんが防げるのか、そういう問題があります。  日本ケミファの事件では、データを握造した上、学者の名前を借用して学術誌に掲載しました。そして、名前を借りた医師に百四十万円の謝礼を支払っています。ソリブジンについて、本剤の高い安全性が認められたという事実に反する論文を掲載した学術誌「臨床医薬」は、中央薬事審議会審査を一度でパスする治験論文を判定、掲載します、そう言って宣伝をして、八五年に創刊をされました。  学術誌であったら何でもいいというのは問題だと思います。論文掲載のあり方を見直すべきだと思います。治験担当医師参考人として薬事審議会に呼んで話を聞く、内容を聞くなど検討すべきだと思いますし、また、午前中の質疑で、やはり参考人の方から、日本ケミファの事件というのは論文が巧妙に書かれていた、論文の査察を厳しくすることも必要じゃないか、そんな提案もありました。  その点についてどうお考えでしょうか。
  248. 荒賀泰太

    荒賀政府委員 承認審査過程の透明性を確認する必要があるわけでございますが、これについては、昭和五十五年の局長通知によりまして、「承認申請書に添付すべき資料のうち主要な部分は、原則として日本国内の専門の学会において発表され、又は学会誌若しくはこれに準ずる雑誌に掲載され、若しくは掲載されることが明らかなものでなければならない。」というふうにされておるわけでございます。  医薬情報誌を含めまして、学術雑誌の編集、出版というものについては、国がそういった編集方針等に何か介入をすることは困難であると考えておるわけでありますが、治験論文の水準を保つということは、治験の適切な実施を促すためには重要であると考えておるわけでございます。欧米の一流学術雑誌に匹敵するような質の高い医薬情報誌の養成といいますか、そういったものが発展をしていくように関係学会等に促していくことにしたいと考えております。
  249. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 あと一分ぐらいしかないので、きょうの質問はここで終わりたいと思います。後も十分な審議をしていきたいと思います。  これで終わります。
  250. 和田貞夫

    和田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時九分散会