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1996-05-31 第136回国会 衆議院 厚生委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年五月三十一日(金曜日)     午前九時七分開議 出席委員   委員長 和田 貞夫君    理事 衛藤 晟一君 理事 木村 義雄君    理事 鈴木 俊一君 理事 青山 二三君    理事 石田 祝稔君 理事 柳田  稔君    理事 横光 克彦君 理事 荒井  聰君       伊吹 文明君    稲垣 実男君       狩野  勝君    熊代 昭彦君       近藤 鉄雄君    高橋 辰夫君       竹内 黎一君    戸井田三郎君       長勢 甚遠君    根本  匠君       堀之内久男君    持永 和見君       山下 徳夫君    粟屋 敏信君       大野由利子君    鴨下 一郎君       久保 哲司君    福島  豊君       桝屋 敬悟君    山本 孝史君       網岡  雄君    五島 正規君       森井 忠良君    枝野 幸男君       岩佐 恵美君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 菅  直人君  出席政府委員         厚生政務次官  住  博司君         厚生大臣官房長 山口 剛彦君         厚生大臣官房総         務審議官    亀田 克彦君         厚生省健康政策         局長      谷  修一君         厚生省保健医療         局長      松村 明仁君         厚生省薬務局長 荒賀 泰太君         厚生省老人保健         福祉局長    羽毛田信吾君         厚生省保険局長 岡光 序治君  委員外出席者         謹言会調査         室長      市川  喬君     ————————————— 委員の異動 五月三十日  辞任        補欠選任   稲垣 実男君    水野  清君   狩野  勝君    伊藤宗一郎君   熊代 昭彦君    宇野 宗佑君   堀之内久男君    綿貫 民輔君   持永 和見君    三塚  博君   粟屋 敏信君    鳥居 一雄君   久保 哲司君    渡部 恒三君   五島 正規君    赤松 広隆君 同日  辞任        補欠選任   伊藤宗一郎君    狩野  勝君   宇野 宗佑君    熊代 昭彦君   三塚  博君    持永 和見君   水野  清君    稲垣 実男君   綿貫 民輔君    堀之内久男君   鳥居 一雄君    粟屋 敏信君   渡部 恒三君    久保 哲司君   赤松 広隆君    五島 正規君 同月三十一日  辞任        補欠選任   田邊  誠君    網岡  雄君 同日  辞任        補欠選任   網岡  雄君    田邊  誠君     ————————————— 五月三十日  廃棄物処理施設整備緊急措置法の一部を改正す  る法律案内閣提出第六九号)(参議院送付)  民間活動に係る規制改善及び行政事務の合理  化のための厚生省関係法律の一部を改正する法  律案内閣提出第八一号)(参議院送付) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  薬事法等の一部を改正する法律案内閣提出第  七六号)      ————◇—————
  2. 和田貞夫

    和田委員長 これより会議を開きます。  参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  厚生関係基本施策に関する件、特にエイズ問題について調査のため、来る六月四日火曜日午前九時三十分、旧日本トラベノール株式会社代表取締役社長山本邦松君を参考人として出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 和田貞夫

    和田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。      ————◇—————
  4. 和田貞夫

    和田委員長 内閣提出薬事法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本案審査のため、参考人出席を求め、意見を聴取することとし、その日時、人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 和田貞夫

    和田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  6. 和田貞夫

    和田委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。熊代昭彦君。
  7. 熊代昭彦

    熊代委員 薬事法等の一部を改正する法律案について質問をさせていただきます。  自由民主党の熊代昭彦でございます。質問のお許しをいただきましたこと、心から感謝するところでございます。  御承知のとおりでございますが、昭和五十四年に法律改正がございました。市販後の再審査・再評価制度緊急命令制度など、医薬品安全性確保するためのさまざまな制度が盛り込まれた。しかし、その後のエイズ問題等、推移を見まして、まだまだ足りない点があるということで、今回の改正案提出に至られたというふうに理解するわけでございますけれども、初めに、今回の法改正のねらいは何なのか、まずその概要をお聞かせ願いたいと思います。政務次官、よろしくお願いします。
  8. 住博司

    住政府委員 熊代先生の御質問にお答えいたします。  今回の薬事法の一部改正案につきましては、平成五年にありましたソリブジンによります副作用問題、これを契機といたしまして、先生も御指摘があったように、五十四年の法改正に続いて行わなければならないという観点に立ってとり行われるものでございまして、治験から承認審査市販後に至る医薬品の総合的な安全確保対策、これを充実させたいということ、それから、血液製剤によりますHIV感染問題の反省に立ちまして、緊急に必要となる措置を講ずるということを一つのねらいとしております。  具体的に申し上げますと、第一には、厚生省そして副作用被害救済等医薬品機構、こういったところが、治験計画相談でありますとか、届け出をされました治験計画に対する調査などを行うことによりまして、適正な治験実施、そして被験者の安全の確保を図ること。  第二に、薬務局体制充実を図るとともに、医薬品機構を活用することによりまして、審査体制強化を図る、そして、中央薬事審議会審査とあわせまして、審査高度化迅速化を図ること。  第三に、治験から承認審査市販後に至るまでの各段階GCP、もう先生承知のとおりの、臨床試験実施に関する基準などの製薬企業等遵守すべき基準法制化することによりまして、製薬企業の義務を強化すること。  第四に、製薬企業によります厚生省への副作用感染症情報報告不良医薬品回収報告、それを徹底することによりまして、回収命令等行政権限を行使するための情報収集を迅速に行えるようにすること。  このほか、第五に、薬局、薬剤師から患者消費者医薬品情報提供を行いまして、医薬品の適正な使用を進めること。  そして、緊急の必要性が高く、代替の治療法がないような場合、医薬品を特例的に緊急輸入、製造する道を開きまして、緊急事態における選択肢の幅を広げることができるようにすること、こういったことを主なねらいとしているところでございます。
  9. 熊代昭彦

    熊代委員 ありがとうございました。  非常に意欲的な改正中身であるというふうに評価する次第でございますけれども、私が法案をずっと読ませていただきまして、読むだけでは非常に問題があるといいますか、政令、省令に託されているところがいっぱいあるということでございまして、私ども、審議するのにいろいろ話を聞きますけれども、やはり政省令中身というのは、将来定められるところではありますけれども、今のところこの辺を考えているんだよ、こういう話をぜひ次回までに、次の厚生委員会までに資料提出を願えれば、暫定的なもので結構でございますから資料提出を願えれば、さらに委員皆様方の御理解が大変に深くなるのではないかというふうに思うわけでございますので、お願いを申し上げておきます。次に、具体的な法案中身について順次お伺いしたいと思います。  最初に、第二条の関係でございますけれども、治験定義がされておりまして、今までなぜこういう定義がされていなかったのかというような気がするわけですが、まあ、どこかで定義はされていたのでしょうが、これが冒頭に出てきたということでございまして、そのあたり経緯等を御説明願いたいということですね。そうして、実質的な中身でございますけれども、今回の改正で、治験はどのように改善されるのかということについて御説明をお願いしたいと思います。
  10. 荒賀泰太

    荒賀政府委員 現行法におきましては、治験という言葉は第八十条の二の規定にあるわけでございますが、この規定以外には出てまいりませんために、第八十条の二におきまして、「第十四条第三項の規定により提出すべき資料のうち臨床試験試験成績に関する資料収集を目的とする試験実施」というふうに定義をしておるわけでございます。  今回、改正法案におきましては、被験者安全確保という観点で、治験に対する企業責任強化していく、あるいは公的関与強化を図っていこうということで、この治験という文言が八十条の二から八十条の四までの複数の規定にあらわれるということがございまして、今お話がございました、総則に位置する第二条の規定におきまして治験ということを定義したところでございます。  今回の改正によりまして、治験につきましては、GCP法制化を行いまして、企業あるいは医療機関による遵守というものを義務づけて、その徹底を図ろうといたしております。  また、初めてその治験薬治験を行います場合に、厚生大臣は、医薬品機構を活用いたしまして治験計画届け出内容調査して、必要がある場合には製薬企業に対して指示を行うことができるようにすることといたしております。  また、治験薬使用による副作用あるいは感染症につきまして、製薬企業厚生大臣報告をしなければならないというふうにしておるわけであります。  また、治験中に重篤な副作用の発生が生じた場合には、厚生大臣GCP適合状況調査することができるものといたしまして、製薬企業あるいは医療機関に対しまして必要な指示を行うことができるものといたしております。  さらに、医薬品機構におきまして治験相談を行いまして、適正な治験実施、とりわけ被験者安全性確保を図っていきたい、このような改正内容でございます。  これらの改正を通じまして、適正な治験実施されるようにいたしまして、治験者安全性確保ということが図られますとともに、より安全で有効な医薬品開発がなされますように改善を図ったところでございます。
  11. 熊代昭彦

    熊代委員 それでは、その治験において、これは治験を受ける側、患者の側でございますが、インフォームド・コンセント日本医師会では説明同意十分知識を与えられた後の同意ということで説明同意というふうに訳しておられますが、インフォームド・コンセントが大切であると思います。  二つのことをお伺いしたいのですが、まず、インフォームド・コンセント全体について厚生省はどのように考えておられるか、医療制度としてインフォームド・コンセントをきちっと法律上定めるべきではないかというのが第一点でございます。  それから、とりわけ治験においては文書によってインフォームド・コンセントを行う、きっちりそれが後々にもわかるようにする、この二点、これが重要であると思いますが、この二点についてお伺いをしたいのです。
  12. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 まず、前段の御質問に対してお答えをさせていただきたいと思います。  今、先生お話しになりました、いわゆるインフォームド・コンセントの問題でございますが、医療担い手と受ける側との信頼関係を支える一つの非常に重要な方法だというふうに認識をしております。  この件につきましては、平成四年の医療法改正の際にも、国会の御審議の中で検討事項として修正をされて附則に入れられた経緯がありますが、これを受けまして、昨年の六月にインフォームド・コンセントの在り方に関する検討会というところから報告書がまとめられております。その報告書の中におきましても、新しい患者医療従事者関係のあり方を追求する上で、このいわゆるインフォームド・コンセントというのはなくてはならない手段であるというふうに位置づけられておりまして、医療従事者だけではなくて、患者、家族あるいは国民全般それぞれの立場において積極的な取り組みが必要であるということが求められております。  また一方、この四月の末にまとめられました医療審議会意見具申の中におきましても、いわゆるインフォームド・コンセントの問題につきましては、「医療担い手は、医療提供に当たり、適切な説明を行い、患者理解を得るよう努める旨の規定医療法に位置付けることが肝要」であるというような意見をいただいておりまして、私ども、現在、この意見具申を踏まえまして医療法法律改正の具体的な検討を行っている段階でございます。
  13. 荒賀泰太

    荒賀政府委員 治験におきます文書によるインフォームド・コンセント関係でございますが、これにつきましては、被験者人権保護自己決定を尊重するという立場で、現在は文書または口頭ということにされておりますが、治験インフォームド・コンセント文書による説明同意を必要とするという方向で、今回、厚生省令に盛り込むことを検討をいたしております。これは、日米欧三極の臨床治験実施方法の国際的な調和を図っていこうというICHGCPにも沿ったものでございます。
  14. 熊代昭彦

    熊代委員 説明文書で、同意文書でということのようでございますが、そうしますと非常に大きな進歩がある。患者人権を守るためにぜひきっちりとそれを実施していただきたいというふうに思うわけでございます。  それでは、参考までに、諸外国では治験時におけるインフォームド・コンセントをどのようにしておられるか、その状況について把握しておられるところを御説明願いたいと思います。
  15. 荒賀泰太

    荒賀政府委員 米国におきましては、一九八〇年代に治験時のインフォームド・コンセント等GCP規制というものが法制化されておりまして、欧州におきましては、一九九一年にGCPが制定をされておるわけですが、この欧米先進諸国におきますGCPにおきましては、治験時のインフオームド・コンセントは、被験者もしくはその法定代理人文書等を用いまして十分な説明がなされた上で、すべて文書による同意が行われることとされているというふうに承知をしております。
  16. 熊代昭彦

    熊代委員 同意は少なくとも文書でやるということでございますから、我が国の新しい制度ができれば、説明文書同意文書ということで、同等かあるいはより進んだものになるというふうに思いますが、それはぜひ実施していただきたいと思います。  現在の我が国治験レベルでございますけれども、現在の我が国治験レベルは諸外国ではどのように評価されているのか、そのあたりをちょっと聞かせていただきたいと思います。
  17. 荒賀泰太

    荒賀政府委員 我が国臨床試験データにつきましては、残念ながら、ほとんどが欧米諸国での申請資料としては受け入れられていない状況でございます。  その理由といたしましては、一つは、臨床試験データ科学的評価の問題がございます。  具体的に申し上げますと、治験に参加する医療機関が多くて、一施設当たり症例数が少ない、そのために施設間の評価均質性確認というものが困難であるという問題がございます。それから、有効性安全性評価指標といいますものが医師の主観に頼るところが大きい、したがって、評価があいまいで、客観性再現性に乏しいことが多いということで、臨床試験データの科学的な評価が低いことがございます。  さらに、臨床試験データ信頼性の問題といたしまして、治験依頼者医療機関での治験実施状況をモニターする制度が十分ではございませんで、データ信頼性確保が十分でないということで、そのデータ信頼性が低いわけでございます。  さらに、被験者人権保護観点からは、このインフォームド・コンセント口頭で済まされることが多くて、文書によることが徹底をしております欧米基準に適合していない、そういったことが指摘されておるところでございます。
  18. 熊代昭彦

    熊代委員 局長説明された限りではかなり評価が低いようでございますけれども、相互主義がありまして、お互いにそれほど評価していないのかなという面もあるのではないかと思います。若干割り引いて聞かないといかぬのかなという気もいたしますが、しかし、少なくとも相互主義はあるとしても余り評価されていないということでございますから、国際的な取り決めに従って物事はやっていかなければならないということだろうと思います。  GCP、グッド・クリニカル・プラクティスの法制化としまして、国際ルールでありますICH、インターナショナル・カンファレンス・フォー・ハーモニーのGCPICHGCPを踏まえてやっていかなければいかぬということだと思いますけれども、これを踏まえてどのような内容のものにしていくつもりなのか、その点について十分説明していただきたい。
  19. 荒賀泰太

    荒賀政府委員 被験者人権保護の一層の強化を図る、それから治験データ信頼性を向上させていくというために、医薬品安全性確保対策検討会という検討会を設けて今審議をいただいておるところでございます。この検討会の議論でありますとか、今お話のございましたICHGCP内容を踏まえまして、一つは、今出ております被験者人権保護徹底のために文書によりますインフォームド・コンセントを行うということ、それから第二点は、治験依頼者によります治験進行状況のモニタリングあるいは信頼性確認実施していくこと、さらに第三点は、医療機関治験審査委員会外部委員を加えることによりまして機能の強化を図ること等を内容といたしましたGCPの改定を検討いたしておるところでございます。  このような内容を盛り込みまして、現行内容GCP等を改定いたしまして、我が国治験水準を国際的に高めていきたい、通用するものにしてまいりたいというふうに考えております。  それから、治験につきましても、治験といいますのは御承知のとおり新薬開発の重要な段階でございます。これによりまして、治験に参加する患者本人の方のみならず、次の世代にとりましても治療上有益な新薬が生み出されまして医療進歩が図られる、その意義につきまして国民皆様方理解を求めたい、そのため厚生省としてもいろいろな啓発等に努めてまいりたい、このように考えておるところでございます。
  20. 熊代昭彦

    熊代委員 改善は大いにやっていただきたいと思いますが、私は、国連にも三年ほど働いておりましたけれども、日本水準というのは日本人が考えるほど世界では余り低く評価されていない、世界では相当高く評価されているのだろう、愛国心も含めてそういう気持ちもございます。ですから、今局長から御説明あった欠陥といいますか、足らざるところ、これは大いに改めていただきたいと思いますが、恐らくそれだけでは足りないのだろうと思うのですね。お互い理解を深めまして、お互い意思疎通を図って、お互いを尊重し合う、そういう国際的な努力をしつつ日本水準世界に認められる、そういうことも含めてぜひ努力をお願いしたいと思います。  次に、医薬品審査体制強化についてお伺いしたいと思います。  我が国医薬品審査体制欧米諸国と比較して不十分ではないかというふうに、これについては私は率直に思います。というのは、人の数が物すごく足りないのではないかという気がいたします。そういうことでございますが、今回の改正契機に今後どのように強化していくおつもりなのか、お伺いしたいと思います。
  21. 荒賀泰太

    荒賀政府委員 医薬品安全性を向上させていくということについては、医薬品についての評価、判断を行います体制充実を図るということがぜひとも必要であるというふうに私も考えております。  欧米諸国審査体制につきましては、アメリカでは審査担当者が約千四百人、イギリスでは約二百五十人、ドイツでは約五百人を擁しておりまして、事務局を中心にした審査が行われておるわけでございます。フランスにおきましては、この事務局審査は、事務局におきましては百五十人、そして外部専門家約四百人を活用して審査が行われる方法がとられておるわけでございます。  我が国におきましては、中薬審におきまして、五百六十人の委員から成ります中薬審で、最新の医学、薬学の専門家を活用したいわば外部審査ということで承認審査実施しておるわけでございますが、厚生省あるいは医薬品機構を合わせた事務局審査はわずかに五十名程度でございまして、外部専門家を活用いたしますフランスの百五十人に比べましても非常に少ないというふうに考えております。  このため、国の役割を十分果たしていくためには、どうしてもこの治験指導承認審査等に要する体制を整備していくということが必要でございます。これは、薬務局組織体制強化を図りますとともに、今回の薬事法改正におきましては、その業務の一部を医薬品機構でやってもらうことになっておりまして、この医薬品機構組織体制強化もあわせて図っていきたいというふうに考えております。  厚生省におきましては、平成八年度、治験業務を統括するために治験対策企画官を設置いたしますとともに、治験承認審査体制充実を図るために五名の増員を行うことにいたしております。  また、医薬品機構におきましては、承認申請資料データ照合等信頼性調査でありますとか、治験における相談治験届調査等実施を行うこととしておりまして、この治験業務の準備を行いますために、平成八年度におきましては十五名の増員を図ることといたしております。  今後、こういった承認審査市販後の調査業務に必要な人員につきましても、段階的に充実をしていきたいというふうに考えております。
  22. 熊代昭彦

    熊代委員 想像しますに、国の定員は総定員法で縛られている。これは、幾ら緊要性がありましてもなかなかふえない。それから、医薬品機構事業費として思い切った定員の増を図りたいということであって、それで審査体制強化を図りたい。国の方は重要なものに集中したい。こういうことではないかと思いますが、医薬品機構もことしは十五名増ということで、国に比べれば三倍ぐらいは増をしておりますが、まだまだ少ないという気はいたします。国民の生命を守る重要なことでございますから、今後とも思い切った増員を図っていってもらいたいというふうに思うわけでございます。  時間の関係もございますので、次に参りまして、今回、治験届チェック制度導入を図る、それを、医薬品機構を活用して治験相談充実させるというようなことを含めてやるということでございますが、その具体的な方法、そして、ねらいについてもさらに説明することがあれば説明して、具体的な方法等について御説明を願いたいと思います。
  23. 荒賀泰太

    荒賀政府委員 治験につきましては、医薬品開発におきまして、人に対する有効性安全性確認する重要な試験でございます。被験者への倫理的な配慮のもとに、科学的に適正に実施をしていく必要がございます。  治験につきましては、基本的には、治験依頼者でございます製薬企業責任において計画立案をされまして実施をするものでございますが、人を対象とすることから、治験の適正な実施のためには、GCP遵守というものを義務づけますとともに、公的機関によるチェックあるいは指導助言を行うことも重要でございます。今回の薬事法等改正におきましては、治験届チェック制度導入あるいは治験相談充実を図ることにいたしておるわけでございます。  この治験届チェック制度でございますが、医薬品開発におきまして治験薬を初めて人に投与する場合に、被験者安全性確保する観点から、三十日以内に、治験開始前に必要な動物試験が行われているかどうか等についての治験届内容調査を行いまして、もし必要があれば、治験計画内容の変更とか、あるいは場合によっては中止等を求めることとしたわけでございます。  この場合に、治験届内容調査につきましては、医薬品機構に委託をいたしまして、その調査に基づいて厚生省が必要な指示を行うことといたしておるわけでございます。
  24. 熊代昭彦

    熊代委員 治験にも十分注意を払って治験段階からチェックしていこう、その趣旨を十分徹底してもらいたいと思いますが、さらに、審査自体、先ほども若干は御説明がございましたけれども、今回の制度改正によりまして、医薬品機構を活用することによって、薬の審査自体の、審査の質の高度化ということがどの程度図られるのか、その辺を御説明願いたいと思います。
  25. 荒賀泰太

    荒賀政府委員 先ほどの御質問の中で治験相談について触れておられるわけでありますが、治験実施計画作成段階から製薬企業の求めに応じて相談を受け付けるということでございますが、医薬品機構におきまして、顧問医師等の外部専門家の知見も活用をしながら、対照薬の選定、治験症例数など治験計画内容についても相談を受けることにしておりまして、これによって、科学的にも倫理的にも適正な治験実施されるようになりますとともに、被験者の安全の確保にも役立つものというふうに考えております。  審査の質の高度化の問題でございますけれども、今回の薬事法改正におきまして、医薬品機構で、申請者であります製薬企業から提出された資料につきまして、データの照合あるいはGCP調査等調査業務を行いまして、申請資料信頼性についての調査確認を行うことにいたしております。  厚生省におきましては、この機構の調査結果をもとにいたしまして、医学、薬学、獣医学あるいは統計学等の多様な専門職員によりますチーム審査を行いまして、申請医薬品有効性安全性評価に関する論点の整理、あるいは過去の事例との比較等の基礎的な評価・判断業務充実いたしまして、事務局審査強化を図ることにいたしております。  こういった事務局審査段階での評価・判断業務充実を図り、そして中薬審段階では、最新の医学、薬学等の知見に基づきまして、より高度な評価、判断が行えますように、そして、全体として審査の質の高度化迅速化を図ってまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  26. 熊代昭彦

    熊代委員 医薬品安全性につきましては、専門職としての薬剤師、薬剤師さんの専門知識を十分に活用するし、重用するということが大切であろうと思います。この件については、事前に質問通告をしていないのですけれども、二カ所ばかり取り込まれているように思いますが、薬剤師さんの重要性について今回の改正はどのように考えておられるか。概括的なことで結構でございます。局長、お願いします。
  27. 荒賀泰太

    荒賀政府委員 今回の改正におきましては、薬局、薬剤師の関係で、一つは、薬局開設者の方々におきましては、医薬品を一般に購入する人に対しまして、医薬品の適正な使用のために必要な情報を提供するように努めなければならないという規定一つ置いておるわけでございます。  それから、今回、薬剤師法の一部改正をあわせて行うよう提案をさせていただいておるわけでございますが、薬剤師が販売等の目的で調剤をいたしましたときに、患者の方々に対しまして、調剤した薬剤の適正な使用のために必要な情報を提供するといったことをお願いすることにいたしております。  さらに、薬局におきましては、薬局の管理者は、つまり管理薬剤師でございますが、薬局開設者に対しまして必要な意見を述べなければならないということにいたしますとともに、薬局開設者は薬局の管理者の意見を尊重しなければならない、そういった規定を置きまして薬剤師の役割の強化を図っておるところでございます。
  28. 熊代昭彦

    熊代委員 薬の専門家としての薬剤師の資質の向上に努めるとともに、その専門性に基づいた意見をしっかりと取り入れて重用するということを、今御説明ありました線に沿ってぜひ強化していっていただきたいと思います。  次に、緊急輸入制度でございます。  十三条の二に「承認前の特例許可」というようなことでありますが、緊急輸入制度は、どのような条件下で、具体的にどのようなものが適用対象となるのか、この緊急輸入制度内容について御説明願いたいと思います。
  29. 荒賀泰太

    荒賀政府委員 ただいま御指摘の緊急輸入制度でございますが、今回の薬事法改正案におきまして、特例許可制度として新たな規定を設けておるところでございます。  その適用条件あるいは対象につきましては、国民の生命、健康に重大な被害を与えるおそれのある疾病の蔓延を防止するために緊急に使用されることが必要な医薬品であるという条件がございます。それから二番目の条件としては、当該医薬品使用以外に適当な方法がないということでございます。それから第三点は、外国で当該医薬品の販売等が認められていること。この三点を満たす場合に、政令で指定いたしました上で、その医薬品の輸入等の許可を特例的に与えようというものでございます。  緊急に医薬品を必要とする事態といたしましては、海外からの感染症の侵入でありますとか、有害動物等の異常発生でありますとか、あるいは有害物質によります大規模な汚染等が想定されるところでございます。
  30. 熊代昭彦

    熊代委員 緊急輸入制度は、成功すれば大変にいい結果をもたらすということでございまして、そういう意味で望ましい改正だと思いますが、それとともに、失敗すれば大変な問題も出てくるということでございますので、失敗しないような手だてとしてどういうことを考えているか、それから、失敗した場合にどうするかということを若干補足的に御説明願いたいと思います。
  31. 荒賀泰太

    荒賀政府委員 確かに、こういった制度につきましては、実際の運用については細心の注意を払う必要があるわけでございます。  したがって、ただいま申し上げましたように、これについては該当する医薬品を政令で定めるということで、これは政府が一体となってこの問題に取り組んでいくということでありますとか、あるいはこの関係の被害の発生拡大を防止するときには、これは政令で定める措置を講ずることを義務づけることができる、そういった義務づけについては今申し上げました政令で定める等、そういった配慮を行っておるところでございます。
  32. 熊代昭彦

    熊代委員 次に、今回の改正の大きな一つ契機でもありましたエイズ問題について、若干のことを申し上げさせていただきたいと思います。  一つは、エイズ問題についての私の基本的な立場でございますけれども、若干の誤解もあったようでございますので、まずそれを、立場を再確認させていただきたいというふうに思います。  まず第一に、政治も行政も結果が問題であります。いい結果をもたらさなければならないということでございますので、結果が問題であり、結果責任であるということでございます。重大な結果が生じたことについては責任を持たなければならないということでございまして、このエイズ問題につきましても、重大な結果が生じたということでございますから、厚生省も政府も徹底的に責任をとらなければならない、これが私の基本的な立場であります。企業についても、製品についての結果責任が問われてよいケースであろうというふうに思います。その意味で、三月二十九日の和解成立を歓迎しまして、その中身の真蟄な実行を求めるものでございます。  第二に、それとともに、その過程に関与した人、個々の個人や企業の犯罪を立証するには、故意があった場合には当然殺人罪になるわけでございます。または、過失があった場合には過失致死罪になるわけでございます。その故意または過失を客観的な証拠によって冷静に立証しなければならない。個人や企業の犯罪を立証するには、客観的な証拠をもって冷静に立証しなければならない。それをしないで、情況証拠を言い立てまして、一方的に人や企業を悪人に仕立てる、そして社会的に葬る、それはいわゆる魔女裁判である、厳に慎まなければならないというのが私の立場であります。  しかし、申し上げておきますが、そのような言論も、厳密に言えば憲法二十一条に定める表現の自由の範囲内であろうと私は思います。憲法違反でも法律違反でも何でもない。そのような言論、私が申し上げたいわゆる魔女裁判であるような言論も、憲法違反でも法律違反でもない、しかし、できれば倫理的に慎んでいただきたい、このように申し上げるのはこれも必要なことであろう。  そして第三に、そのような状況下で非難の対象になっている人たちに対しまして、冷静に調べて、故意または過失は立証できないのではないかと意見表明するのも言論の自由の範囲内ではないか、憲法二十一条に規定されている言論の自由の範囲内ではないか、その勇気ある活用ではないかと思います。私自身は、それは許されることである、それが許されなければこの自由主義社会の言論の自由は守られないというふうに考えているところでございます。  そこで、厚生大臣にお伺いします。  これは私的なことを申し上げてまことに恐縮でございまして、差しさわりがあればお許しを願いたいところでございますが、先日、ある。パーティーでお会いしまして、いろいろ御迷惑をかけていますと非礼をおわびしましたところ、いや、熊代さんという人は真っ正直な人でというお話で、先日、本会議質問があったので、私は、事実認識において二、三、私と異なるところはあるが、いろいろな意見の表明があってよいのではないかと答弁しておきましたよというような趣旨のことをお話しいただいたというふうに記憶しております。私は、厚生大臣が自由な意見表明を寛容な精神でもって許される、非常に表現の自由を尊重される真の自由主義者であるというふうに感じました。  それに対しまして、異論や自分に対する批判を許すことができないで、暴力や他の汚い手を使ってでも社会的に葬り去ろうとする人があれば、それは右でも左でも全体主義者であって、開かれた自由主義社会の敵であるというふうに私は考えているわけでございます。敵であるといっても、これは言論戦の敵でありまして、暴力を使うということを排除して考えなければならないわけであります。  こういった意味で、大臣は真の表現の自由の尊重者であり、真の自由主義者であるというふうに理解させていただいておるわけでございますが、それで間違いないかと申し上げるのも失礼でございますが、そういう理解でよろしゅうございましょうか。一言お願いします。
  33. 菅直人

    ○菅国務大臣 熊代委員が今おっしゃった経緯は私もよく覚えておりまして、ただ、本会議ではなくて、実はこの委員会でということだったのですが、前回ですか、五月十五日の委員会で、新進党の石田委員の方から御質問いただきました。  そのとき、まだ熊代委員ちょっと席を外されていたので、できれば議事録をお読みいただければと思いますが、どういうふうに申し上げたかといいますと、今お話のあったとおりでありまして、「全体的に言いますと、私は、いろいろな議論がこういう問題ではあるのは自然だし、また、いろいろな見解をそれぞれ述べ合うのは一般的にも当然でしょうし、政治家の中ではもちろん当然なことだと思っております。」また、熊代委員の方からのインターネットの文章も、私も読ませていただいたところをちょっと読み上げまして、「厚生大臣もあやまるべきことをあやまるのは良いことですが、」云々というところについても、そういう御指摘そのものは私もそうだと思う、ただ、その中での見解について同じかと言われれば、見解については違うわけですので、それについては、問われればきちんと私は私なりの見解を申し上げているという趣旨のことをこの場でも申し上げました。  そういう意味で、私は、確かに今の日本のマスコミの報道というのは、私自身にとっても時々怖いなと思う場面もあるわけでありまして、そういう点では、いろいろなことを事実を調べるということとすべてを決めつけるということは、それは若干の差があると思いますので、そういう趣旨においては、熊代委員の今言われたことについては、私も、基本的な認識、つまり、言論の自由という面における基本的な認識は共通ではないかなと伺っておりました。
  34. 熊代昭彦

    熊代委員 言論の自由を尊重されるということで、その意味で共通である。私は、その意味で大臣の立場を大変に高く評価させていただいているところでございます。御答弁ありがとうございました。  マスコミも、言論の自由が宝でありまして、自由主義社会の宝でありますから、しっかりと言論の自由を守っていただきたい。しかし、マスコミも第四の権力としまして非常に強い力を持ってきたということでございますので、ぜひ私どもの意見とか異論にも耳を傾けて、公平な言論に徹していただきたい。これは私のお願いでございまして、これを取り上げるのも自由、取り上げないのも自由、これが言論の自由だろうと思います。言論の自由をお互いに正しくよく使っていこうではないか、日本の国のために、世界の国のためにというのが私の気持ちでございます。  それでは、エイズ問題につきましては、個々具体的な中身に入ることは避けさせていただきまして、しかし、一つだけ申し上げさせていただきますと、例えば責任のなすり合いとかいうような報道もございます。しかし、これも物によっては責任の所在というのは極めてはっきりしているものがあると思います。  一つは、例えば委員会に任命した学者の方が間違った結論を出したので、それは学者の責任だ、あるいはそれは厚生省責任だ、それで責任のなすり合いというような報道もありますけれども、これは極めて常識的に考えればわかることで、厚生省が任命した学者の方の意見が仮に間違っていても、それを採用したのは厚生省でありますから、それは行政を担当する厚生省責任をとらないといけない。責任のなすり合いの余地がないことでありまして、そういうことは論理的にしっかりと整理していただければ大変ありがたいというふうに思うところでございます。  この辺につきまして、これは全く仮定の話でございまして、誤解されると困ります、全く仮定の話でございますけれども、専門委員としてあるいは委員会委員としてお願いした学者の意見を採用して、それが例えば間違っていたという場合に、それを採用したのはやはり行政庁の責任である、この点については、大臣の御見解、相違ないかどうか、お伺いしたいと思います。
  35. 菅直人

    ○菅国務大臣 この問題は、本委員会でも多くの参考人を招致されて、いろいろな方からの話を聞いておられる。私も様子を拝見したり、あるいは議事録等で読ませていただいております。そういうことも踏まえて申し上げますと、原則的には、あるいは法律的にはといいましょうか、例えば、ある薬を危ないから、例えば非加熱製剤が危ないと認識して、その製造なり販売を停止する、あるいは回収命令をかけるというのは、薬事法上、厚生大臣の権限となっているわけですから、当然、最終的な責任は行政に、あるいは厚生省に、あるいは厚生大臣にあるというのが原則的な立場であるという意味では、熊代さんの今おっしゃったことはそのとおりだと思っております。  しかし同時に、それでは、例えばの場合に、エイズ研究班というものをつくって、お願いしてそこで検討していただいた中身というのは、血友病患者の皆さんに対して、今までどおり非加熱製剤を使っていることについていいかどうかということも含まれた議論をしていただいたわけでありますので、その中に参加された委員の皆さんは、それぞれ専門的な知識をお持ちの方でありますから、行政的な責任とか権限はお持ちではないかもしれないけれども、ある意味では専門家としての、あるいは学者としての、つまり、そういう意味における責任というのは当然感じた上で、あるいはそういうものを前提とした上で発言をされ、自分の知識の中での判断を述べられたわけでしょうから、やはりそれは行政の責任とは別の意味での責任ある発言でなければならない、これは当然のことだと思っております。  そういう点で、率直に申し上げて、責任のなすり合いというような感じが私も聞いていて幾つかの場面であったわけですけれども、その部分について、今後の問題として、つまり、専門家意見意見としてきちっとお述べいただき、それを参考にさせていただくわけですけれども、今後、行政として判断するときには、どちらが判断したのかわからないということではなくて、専門家意見はこうであった、その上で、それぞれの部署なりそれぞれの行政の責任者がそれを踏まえてどういう判断をし結論を出したかというのがそれぞれ明確になるような手続にしておかなければいけないのではないだろうか、そういう反省を含めてこの間の経緯を見守っているというのが私の今の問題についての立場であります。
  36. 熊代昭彦

    熊代委員 ありがとうございました。  それでは、少し将来に向かっての具体的な、前向きなことについてお伺いしたいと思います。  エイズ拠点病院でございますが、エイズ拠点病院を定め、これを公表していく。公表されるものと公表されないものとあるようでございますけれども、公表されなければわからないわけでございますので、エイズ拠点病院の公表をしていく、これはどこまで進んでいるのか、これについて教えていただきたいと思います。
  37. 松村明仁

    ○松村政府委員 エイズ拠点病院名は、地域の医療機関に周知いたしますとともに、エイズ患者にも明らかにすることが望ましい、当然のことでございます。  かねてより厚生省といたしましては、拠点病院の公表について、各都道府県を通じて強くお願いをしておるところでございます。四月十二日に、各県の拠点病院長の会をいたしました。さらに、五月二十二日には担当者の会もいたしました。こういったことをいたしまして、この四月以降、九県四十五医療機関が新たに拠点病院として公表ということになりました。  そこで、平成八年五月二十九日現在、全国で二百三医療機関が選定されておりますが、二十四都県百二十医療機関が既に公表されているところでございます。また、現時点ではいろいろな事情がございまして非公表でありましても、患者団体の方々あるいは医師会等専門団体の中では病院名の周知を行っている、こういうところが十六府県となっております。  以上でございます。
  38. 熊代昭彦

    熊代委員 さらに積極的に進めていただきたいというふうに思います。  次に、エイズを治療する薬でございますけれども、これは二つの問題があると思います。一つは、エイズ治療薬として開発されたものについて、できるだけ早くこれを使えるようにする、早期使用対策をするということですね。もう一つは、エイズを根本的に治す薬。かつては結核も、そしてらいも不治の病と思われていた、しかし完全に治るようになったということでございますから、エイズを治す薬もぜひ科学の力で開発してもらいたい、こういうふうに思うわけでございます。  エイズ治療薬の早期使用とエイズを根本的に治すことのできる薬の開発、これは民間の力も大いにかりないといけないところでございますが、これについて、どのような対策あるいは現状であるのか、お伺いしたいと思います。
  39. 荒賀泰太

    荒賀政府委員 この治療薬につきましては、従来から、希少疾病用医薬品に指定いたしまして、開発経費に対します助成金を交付いたしますとか、あるいは税制上の優遇措置、優先審査を行いまして、できる限り早く患者の方々が使用できるように努力をしてきておるところでございます。  また、この薬の指定を受けておりましたザルシタビンという薬でございますが、去る四月二十四日に、国内で三番目のエイズ治療薬として承認を受けまして、即日、薬価基準に収載をされ、供給が開始されたところでございます。  それから、治験の拡大ということをもう一方で考えておりまして、承認審査に必要な治験とは別の形で治験の拡大をいたしまして、これは、患者の対象範囲を拡大して、そしてエイズの治療薬が承認を待たずに使用できるように努めておるところでございます。  これにつきましては、ラミブジン(3TC)という治験薬でございますが、五月二十四日に患者に投与が開始されたのに続きまして、インジナビルというのが五月二十七日に投与を開始しておるところでございます。また、リトナビルあるいはガンシクロビルにつきましては、近日中に患者に対して投与が開始される予定でございます。  さらに、治療薬の迅速審査実施いたしますために、中薬審の中に専門の調査会、すなわちエイズ医薬品調査会というものを新設して、五月二十四日に第一回会合を開催いたしました。そして、例えば米国等で承認された医薬品につきましては、これからは、国内の治験開始と同時に米国の試験結果をもとに承認申請をしてもらいまして、この調査会の審議を開始して、その後、国内の治験の結果もあわせて審議をしていくという形で進めてまいりたいと思っております。  そういったことで治験期間の短縮化を図っていきたいと考えておりまして、承認の時期も一年程度早めることができるものでまないかというふうに考えております。
  40. 熊代昭彦

    熊代委員 早期使用にいろいろ御努力されておるようですが、画期的な医薬品の発見でエイズを治す薬の開発も官民挙げてぜひやっていただきたいというふうに思うところでございます。  時間も押してきたようでございますので、最後に、今回の薬事法改正契機にしまして今後の薬事行政に関します厚生大臣の決意のほどをお伺い申して、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
  41. 菅直人

    ○菅国務大臣 今回の薬事法改正は、医薬品開発段階承認審査段階及び市販後の各段階における医薬品安全性確保するための総合的な対策を充実することを目的としており、これら各段階において、医薬品安全性がこれまでより一層改善されるように図るとともに、常に有効で安全な医薬品が必要な情報とともに患者国民に提供されるよう最大限の努力をしてまいる、そういう趣旨でお願いをいたしているわけであります。  また、血液製剤によるHIV感染問題につきましては、現在、本院を含め国会においていろいろな調査も行われ、また厚生省内においても、厚生科学会議における議論を踏まえ、プロジェクトなどもつくって、これからの問題をどうしていくか検討いたしております。  薬事行政につきましては、今回の改正案でかなりの前進を見るのではないかと思っておりますけれども、では、それですべてが解決されたかということになりますと、それはまだ残された問題もいろいろ議論として出てくることが予想されております。  そういった点では、ついせんだってもジェンナー二百周年という式典に私も出席をいたしましたが、やはり歴史的に見ていろいろな人が、自分の子供に種痘をするといったようなある種のリスクをも含めて負いながら新しい治療や新しい薬の開発に携わってきた、そういった積極的な面も含めて、しかし同時に、安全性とかそういった点を確実にしていくという面も含めて、医薬品行政がもっと対応力を強めるという方向を含めて改革が必要ではないか、そんな感じを持っていることをつけ加えさせていただきたいと思っております。
  42. 熊代昭彦

    熊代委員 ありがとうございました。終わります。
  43. 和田貞夫

  44. 大野由利子

    ○大野(由)委員 薬事法質疑に入ります前に、二、三ちょっと質問をさせていただきたい、このように思います。  先ほど熊代議員の方から質問もございましたけれども、一昨日の報道によりますと、エイズ拠点病院が現在二百三病院指定されているにもかかわらず、公表をされていないのが非常に多い。現在、二十四道府県の中の八十五病院が非公表である。こういうことであれば拠点病院の価値が全くないわけでございまして、患者さん、心配な方が、拠点病院がどこか、いろいろ問い合わせをしても答えてくれない。あなたのお名前はとか、あなたの電話はということで、確認をされないと答えてくれない。患者さんの方は、プライバシー、できるだけエイズ感染のおそれがあることを隠したいという今の状況があるわけでございます。  こういう状況の中で、これでは拠点病院の役割が果たせていないと思うわけですが、すべての国立病院、すべての公立病院がいち早くエイズの拠点病院として指定され、また公表されるべきだ、このように思いますけれども、大臣の御意見を伺いたいと思います。
  45. 菅直人

    ○菅国務大臣 先ほど熊代委員質問政府委員からお答えしましたように、平成八年五月二十九日現在で、全国二百三の医療機関がエイズ拠点病院に選定をされておりますが、その中で公表されているのは二十四都県の百二十医療機関であります。また、公表されていないものでも患者団体や医師会など専門団体への病院名の周知を行っている、そういう自治体が十六府県というふうになっております。  この問題は、基本的には、今大野委員おっしゃるように、きちんと公表して、患者さんあるいは感染の心配を持っておられる皆さんに、いつでも、どこの病院に行けばいいかということがわかるようにすべきだというふうに考えております。  しかし同時に、このエイズ拠点病院になっていただくに当たって、それぞれの病院の協力という形でお願いをしている関係で、何とか当事者の医療機関そのものがその公表を了解していただくという形で進めているわけであります。そういった点で、それでも二百三のうちの百二十までは来たわけですが、残された医療機関については、これから何とか理解をいただいて公表していくようにさらに努力を続けたい、こう思っております。
  46. 大野由利子

    ○大野(由)委員 専門団体と連携がとれている人ばかりではないと思いますので、この点、早急にお願いをしたい。特に国立病院、公立病院は早急に対処ができるように強力な厚生省の指導が必要ではないか、このように思っております。  それから、厚生省のエイズサーベイランス委員会では、献血血液でエイズ感染した症例が報告があったということを明らかにしていらっしゃるわけでございます。  大変恐れていたことが日本でもあったということで、詳しい原因はまだ不明のようでございますが、感染をして六週間から八週間、体内に抗体ができないこのウインドーピリオドと呼ばれる期間に献血がなされるとこういうことがあり得るということで、これはある面では大変恐ろしい事態ではないか、このように思うわけですが、このことについて厚生省はどのように対処されているのか、伺いたいと思います。
  47. 荒賀泰太

    荒賀政府委員 ただいま御指摘の件は、最近発表をいたしましたサーベイランスの中で、輸血を受けた方で、しかも抗体検査が実施をされた以降のケースで、今委員お話にありましたように、六週間ないし八週間という、サイレントピリオドと言いますが、その間で感染をしていることが疑われる症例ということでございます。ただ、このケースにつきましては、なお今そういったことによるものかどうかについても慎重に調査をしていかなければならないというふうに考えておるわけでございます。  また、この問題については、検査方法といいますか、そういったウインドーピリオドがございますので、それをできるだけ短縮していく努力をしてまいりますとか、あるいは自己血液を輸血用に使うことをいたしますとか、あるいは、既に昨年からやっておりますが、日赤で献血をいたします場合の問診を強化しておりますが、そのための個室の整備等についての予算的な援助も行っておるわけであります。  いろいろなやり方を今講じておるところでございますが、委員お話しのように、この問題につきましては、私どもも大きな関心を持ち、また、今後とも対応に努力をしていかなければならないというふうに考えておるところでございます。
  48. 大野由利子

    ○大野(由)委員 今のところ完璧な方法はないのかもしれませんが、ともかく安心して手術を受けられるためにこれはぜひ積極的な対策を講じていただきたい、このように思います。  それから、厚生大臣に伺いたいのですが、先ほど熊代議員の質問にも関連した質問がございました。今回の薬事法改正は、趣旨説明の中にもございましたように、ソリブジンと抗がん剤との併用による副作用で多くの方が亡くなられたという大変衝撃的なソリブジン事件を反省といたしまして、平成六年十月に医薬品安全性確保対策検討会が発足され、そして、治験承認審査市販後の安全対策等々を検討されてまとめられた結果のものでございます。  その後、薬害エイズ事件、東京地裁と大阪地裁で和解勧告がなされ、三月二十九日に和解が成立をするという歴史的な事件があったわけでございますが、そのことから、今回、例外措置として緊急に、医薬品の特例的な緊急許可等々が盛り込まれております。  しかし、薬害エイズ事件の調査プロジェクトとか、真相究明もまだ進行中でございます。こういう中から得られた反省点というのは、今回の薬事法改正には時間的にも間に合わなくて盛り込まれていないわけでございますので、薬事法の再改正はいつごろなさるのか、いつごろから検討を始められていつごろを一つの目標にしていらっしゃるのかということについて伺いたいと思います。
  49. 菅直人

    ○菅国務大臣 今、大野委員おっしゃったとおり、今回の薬事法等の一部改正案は、平成五年のソリブジン問題を契機といたしまして、治験から承認審査市販後に至る医薬品の総合的な安全性確保対策を充実させるということが主目的といいましょうか、主な動機になっております。それに加えて、血液製剤によるHIV感染問題についても緊急に必要となる措置を講じようということで、先ほど御指摘のありました医薬品の緊急許可制度、あるいは製薬企業医薬品使用による感染症の発生の報告を義務づけるといった中身も加えているところであります。  今、この血液製剤によるHIV感染問題については、これも御指摘のあったとおり、いろいろな形での真相解明がまだまだ途中にあるというふうに認識しておりまして、厚生省におきましても、厚生科学会議における議論を踏まえて、医薬品健康被害再発防止プロジェクトチームにおいて、政策決定プロセスのあり方や情報提供のあり方、薬事行政及びその組織のあり方について検討を行っておりますし、さらに、この厚生科学会議の中で、第三者機関をつくるべきではないかという御指摘もいただいておりますので、その問題についても現在検討中であるわけであります。  こういった意味で、将来そういったところからいろいろな意見をいただきながら、さらなる薬事行政の改革ということも必要になることもあろうかと思っておりますけれども、現時点では、この法案をお願いしているところでありまして、その後の法改正が必要になるかならないか、あるいはその時期はどうかということまでは、まだ直接的な視野に入っている状況にはございません。そういう意味で、今そこまで、時期というところまでお答えするような状況にはなっていないということを御理解いただきたいと思います。
  50. 大野由利子

    ○大野(由)委員 時期は難しいかもしれませんが、その後の法改正が必要である、それはぜひそういう認識に厚生大臣立っていただきたい。必要かどうかもわからないというのじゃなくて、今回はまだ不十分だから再改正が必要であるという、その辺の認識はぜひ必要ではないかと思いますので、これは要望させていただきたいと思います。  それから、今回の改正案で、厚生大臣届け出のあった治験計画に対しまして保健衛生上の危害防止のために「必要な調査を行う」、こうなっておりますが、「必要な調査」というのはどういう調査をなさるのか、伺いたいと思います。
  51. 荒賀泰太

    荒賀政府委員 今お尋ねの件は、今回の改正の八十条の二で、今回初めて入れた規定でございますが、治験届が出た場合に、「届出をした日から起算して三十日を経過した後でなければ、治験の依頼をしてはならない。」ということになっておるわけでございます。  したがって、その三十日、これはアメリカにおきましても同じような制度を持っておるわけでございますけれども、そういった三十日の間におきまして、今お話もございましたが、治験届け出に係る治験計画、特に被験者安全性の面で十分な配慮が行われているか等を中心にいたしまして調査を行いまして、そして、もしそれが問題があるようでありましたら必要な指示を行うということにしておるところでございます。
  52. 大野由利子

    ○大野(由)委員 今お話がありました、届け出をしてから「三十日を経過した後でなければ、治験の依頼をしてはならない。」こうなっているわけですが、この間にいろいろ調査をなさるわけですが、私は、これは非常にあいまいだなと思うのです。  アメリカのFDAが行っていますのは、事前審査制度で、いろいろ事前審査を行いまして、そして、一応安全であるということで初めて治験の承認が得られる、こうなっているわけですが、アメリカのこの事前審査制度日本がやろうとしていますのは同じなのか同じでないのか、伺いたいと思います。
  53. 荒賀泰太

    荒賀政府委員 米国におきましても、先ほど御説明を申し上げたわけでございますが、我が国が今般導入をしようとしている制度と同様の制度が設けられているというふうに承知をしておりまして、そのFDAの事前のチェック制度を私どもも取り入れるというふうに考えたものでございます。
  54. 大野由利子

    ○大野(由)委員 FDAの事前審査制度をできるだけ取り入れられたにしては、何か、ただ三十日を経過した後でなければ治験の依頼をしてはならないという、これは大変あいまいで責任逃れというか、医薬品安全性確保対策検討会でも、事前審査する制度導入についていろいろ否定的な意見があった、もし国が事前審査に関与した場合、問題が起きたときに国に責任が発生する、こういうふうな観点等々からも非常に否定的な意見があった、このように聞くわけですけれども、こういうあいまいな体制のときに、また非常に責任がどこにあるのかお互い責任をなすり合う、こういうふうになってくるわけでございます。  私は、これは明確に事前承認制度届け出制じゃなくて許可制というふうに明確にすべきではないか、このように思いますが、これは許可制なのか届け出制なのか、もう一回伺いたいと思います。
  55. 荒賀泰太

    荒賀政府委員 これは届け出制でございます。  私どもも、諸外国の例をよく調べながら、今回の改正の目的が、治験承認審査市販後対策のそれぞれの面で欧米諸国規制内容と遜色のないものにしていきたいということでございまして、米国においても今申し上げたような制度をとっておるということも参考にしながら導入をさせていただきたいというふうに考えておるところでございます。
  56. 大野由利子

    ○大野(由)委員 ぜひこの点ももっと明確にする必要があるのではないか、このように思っております。  それから、GCP医薬品臨床試験実施に関する基準が今回法制化されるようになりまして、遵守することが義務づけられた、そのようになるわけです。副作用とか感染症報告義務を製薬会社に課しておりますが、医療機関とか医師にもこれを義務づけるべきではないか、こう思いますが、なぜ医療機関医師には義務づけなかったのか、伺いたいと思います。
  57. 荒賀泰太

    荒賀政府委員 治験といいますのは、やはりこれは、ICH、国際的な調和の面からいきましても、まず治験依頼者でありますメーカーが責任を持つという原則があるわけでございます。そういったことで、治験といいますのは、医薬品の製造承認を申請するために必要な資料収集するということが目的でございまして、今申し上げましたように、製薬企業がみずから責任を持って、そして、副作用等の情報を収集いたしまして厚生省報告することが義務づけられるということにすることにしておるわけでございます。  医療機関あるいは医師につきましては、GCP上におきましては、これは製薬企業から治験の依頼を受けるわけでございますので、医師等は製薬企業に対して副作用報告をすることが求められておるわけでございます。  ただ、その場合に厚生省はどういった立場であるかと申し上げますと、厚生省におきましても、被験者安全性が著しく損なわれるというような場合には、厚生省が直接医療機関あるいは医師等に対しまして報告徴収等を行うことができることにしておるものでございます。そういったことから、直接医師とか医療機関に対しまして厚生省副作用報告を行わせるということはしていないところでございます。
  58. 大野由利子

    ○大野(由)委員 製薬会社は治験医から報告がないと何も判断できないわけですが、ちょっと局長の御答弁を確認したいのですが、じゃ医療機関治験医は厚生省には義務づけられていないけれども、製薬会社には義務づけられているわけでしょうか、これま今回の法律に入っているのでしょうか。
  59. 荒賀泰太

    荒賀政府委員 これは、製薬企業医療機関治験を依頼いたします。そのときに医療機関は、このGCPという、今までは局長通知でやっておったわけでございますが、その部分につきましてはGCPを今回省令規定するわけでございまして、その中で、メーカーに対しまして医療機関ないし医師報告をするということにしておるわけでございます。
  60. 大野由利子

    ○大野(由)委員 済みません。ちょっとわかりづらくて、もう一回確認させていただきたいのですが、これは法律で明記されているのかどうかを伺いたいのです。治験の依頼者と治験を受けた人の間で副作用情報があれば報告をするというのは当然でございます。当然ですけれども、これが法的に担保されているかどうか。  例えば、GCPというのは現在もあるのですね。あるのですけれども、これが守られていないというのに非常に問題があって、現在それを法制化しようとしているわけですから、治験医や医療機関がメーカーに報告するというのを法制化しないと意味がない。それだと現状と何ら変わらないわけですから、それを確認しているわけでございます。
  61. 荒賀泰太

    荒賀政府委員 法律上、今言われました医師等に義務づけはしておらないわけでございますが、これは具体的には、GCPというものを全体として法制化いたしまして、そしてそれを省令規定する、その中に、治験実施中に副作用が発生した場合には治験担当医師治験依頼者に対して文書でもって報告をするということに現在なっておるわけでございますが、今後もそのような形でやってまいりたい、このように考えておるところでございます。
  62. 大野由利子

    ○大野(由)委員 今の局長の御答弁ですと従来と変わらないわけですね。これでは意味がない。  現在もGCP、全然なされていないわけではなくて、いろいろあるわけです。ただ、これが法制化されていないものですから、これは名古屋の医師会の調査結果によりますと、GCP実施されて二年たった九二年のアンケートなんですが、GCPなんて聞いたことがないという人が結構いらっしゃる。GCP施行後二年経過しているにもかかわらず、半数の医者がGCP内容を知らない、知らないまま治験を行っている、そういう状況も明らかになっております。それから、治験薬の投与に当たっても、患者口頭のみで説明したというケースが三割ある。こういう状況で、新薬という表現を用いて説明したけれども、承認前の治験薬なんだとか、開発中の薬だ、そういう留保つきの薬なんだという説明も全くしていないというケースが多々ある。  このGCPのいいかげんさというのが明らかになったものですから、今回、GCP法制化して遵守することを義務づけることになったわけでございますので、医療機関医師からの治験依頼者である製薬会社への報告、また場合によっては厚生省への報告、この辺を義務づけないと、これは大変なことになるのではないか、このように思います。この法律の大変な欠陥ではないかと思いますので、ぜひこの点は再度検討をお願いしたい、このように思います。  それから、治験審査委員会、IRBがございますが、この治験審査委員会のうち一名は専門家以外の委員が参加できるようになっているわけですが、今、病院内の事務局、事務員さん、事務長であったりとかいう感じで非常に独立性とか公正性でいろいろ問題点がある、こういう状況でございます。この治験審査委員会医療機関から独立した権限のある委員会にすべきではないか、このように思いますが、御見解を伺いたいと思います。
  63. 荒賀泰太

    荒賀政府委員 この治験審査委員会、IRBでございますが、現行GCPにおきましては、治験実施いたします医療機関におきまして、その治験実施することの妥当性とか被験者インフォームド・コンセントの取得状況等を審議することになっておるわけでございます。その業務を遂行するに足ります医学、薬学等の専門知識を持った委員と、それから、今お話がございました少なくとも一人以上の非専門家である委員がおるわけでございます。こういったことにつきましては、ICH基準参考にして検討をしておるわけでございますが、実際、非専門家という場合には、当該治験実施医療機関の職員の中で、いわゆる医学、薬学の専門でない職員が選任されているケースがあるわけであります。  今後におきましては、この治験審査委員会の公平性とか中立性、そういったことを強化いたします観点で、治験についての審査機能、特に被験者人権保護に関します機能を強化いたしますために、当該医療機関とは別の、外部からの非専門家である委員を選任するような方向、これはICHの方向でもございますけれども、そういったことも含めて検討をしてまいりたい、このように考えておるところでございます。
  64. 大野由利子

    ○大野(由)委員 治験の依頼をする場合に、現在のGCPは、十七条で「治験への参加について文書又は口頭により、」こういうような内容になっておりまして、非常にこれが不十分だ。今回の法改正できちっとGCP法制化するわけですけれども、治験の依頼、インフォームド・コンセント、これは文書できちっとする、政省令でそういう内容になる、このように承知してよろしいでしょうか。
  65. 荒賀泰太

    荒賀政府委員 人権保護あるいは自己決定ということを尊重する立場で、現在は文書または口頭ということになっておるわけでありますが、今回、インフォームド・コンセントにつきましては、文書による説明同意というふうにいたします方向で厚生省令に盛り込みたいということで検討をいたしておるところでございます。このことにつきましては、日米欧臨床治験実施方法の国際的な調和という観点で今定められようとしておりますICHGCPの考え方にも沿ったものであるというふうに考えております。
  66. 大野由利子

    ○大野(由)委員 今御答弁で、GCPについてはインフォームド・コンセント文書できちっとするということがこれから明確にされるということなんですが、私は、治験だけではございませんで、一般の医療行為に対してインフォームド・コンセントをきちっと法制化すべきではないか、今そういう時期に来ているのではないか、このように思うのですね。お医者さんたちもそれは必要であるということをもう既に認識していらっしゃる、そういう時期に来ているのではないか、このように思います。  つい先日、二月二十七日に高松高裁で出された判決が大変注目をされている、このように伺っております。ちょっと内容説明いたしますと、高知医大附属病院に入院していて昭和六十三年に死亡された女性の遺族が、死亡したのは医師が投薬の副作用を十分に説明していなかったためだ、こういうふうにして国を相手に慰謝料の裁判を起こされた。一審では負けたわけですけれども、高裁では、その一審判決を変更して、遺族の主張を認めて慰謝料の支払いを命じた。そして、投薬に過失はないけれども、重大な結果を引き起こす副作用の危険性について説明する義務を怠った、このように高松高裁は判決を下したわけですね。  このインフオームド・コンセントについて、厚生大臣、どのように思っていらっしゃるか。GCPの中ではこれが義務づけられるわけですが、一般の医療行為についてもインフォームド・コンセントをきちっと明確にする、そういう医師法の改正が必要ではないか、このように思っております。
  67. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 先ほど、現在の薬事法改正案に関するいわゆる治験の問題についてのインフォームド・コンセントの取り扱いということについては、薬務局長の方からお答えがあったとおりでございますが、さらに、今の御質問にございますように、医療全般についていわゆるインフォームド・コンセントを義務づけるべきではないかという問題につきましては、インフォームド・コンセントそのものは医療のあらゆる場面において、治験の問題に限らず重要なものだという認識を持っております。  一方、すべての医療について法律的にいわゆるインフオームド・コンセントを義務づけるかどうかということにつきましては、昨年の六月にインフォームド・コンセントの在り方に関する検討会報告書をいただいておりますが、その中においても、個々の患者医療従事者との関係において成立をするインフォームド・コンセントというものを考えた場合に、画一性を本質とする法律というものの中に適切な内容規定を設けるということが非常に難しいのではないかということ、具体的には、一律に法律上強制をするという場合には、一方において責任回避のための形式的、画一的な説明あるいは同意確認ということに陥るのではないか、また、それによってかえって医療従事者患者さんとの信頼関係を損なう場合があるのではないかというようなことから、必ずしも適切ではないのじゃないかというような報告が出されております。  ただ一方、いわゆるインフォームド・コンセントの考え方を医療法の理念規定の中に位置づけるということについては、この四月の末にまとめられました医療審議会におきます意見具申の中でも、「医療担い手は、医療提供に当たり、適切な説明を行い、患者理解を得るよう努める旨の規定医療法に位置付けることが肝要」であるという意見がまとめられておりまして、私ども、これを受けて、現在、法律改正の具体的な検討を行っているところでございます。  なお、後段でお触れになりました高松高裁の問題につきましては、やはり医師が十分に説明をする必要があるということを問題として投げかけたものだというふうに私どもも認識をしております。
  68. 大野由利子

    ○大野(由)委員 現在、お医者さんも、三時間待って三分診療という感じで大変忙しい、大量の診察に追われていて、インフォームド・コンセントをやりたくてもなかなか時間の余裕がないという大変気の毒な状況で、日本のお医者さんは大変雑務に追われているという状況があるようでございます。  ただ、インフォームド・コンセントというのはもう世界の常識になってきている状況でございますので、日本におきましても、ドクターがきちっとインフォームド・コンセントができるような環境づくり、診療報酬制度の見直し等々も含めて、こうしたことについて早急な検討をぜひやっていただきたい、このように思っております。  続きまして、薬事法改正と薬剤師法の改正によりまして、薬剤師の医薬品情報の提供と服薬指導というものが今回明示、義務づけられたわけでございます。薬剤師の職能とか社会的責任を一変させるような大変大きな法改正だと思います。高松高裁の裁判のようなことがありますと、これからは、お医者さんだけじゃなくて薬剤師も責任を問われるという状況になってまいります。  ところで、病院の薬剤師の配置基準について伺いたいのですが、現在は調剤数八十につき薬剤師一人というような配置基準になっておりますが、こういう調剤数八十というのも何か意味があいまいでございますし、物を対象に薬剤師の配置基準を決めるというのはもうおかしいのじゃないか。そうじゃなくて、入院患者何人に対してこうというような配置基準に、人相手の配置基準にすべきではないかと思いますし、こういう医薬品情報の提供と服薬指導が義務づけられたのを契機といたしまして、薬剤師の配置基準の拡充強化というものを図るべきではないか、このように思いますが、御見解を伺いたいと思います。
  69. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 病院の薬剤師の配置基準でございますが、今お触れになりましたように、現在の医療法に基づく省令におきましては、八十調剤に一人とされております。  ただ、この問題につきましても、先ほども引用させていただきました医療審議会意見具申の中で、今先生がお触れになりましたような服薬指導あるいは薬歴管理等の病棟業務が薬剤師さんの業務としてもふえてきている、そういうことから、例えば病棟単位に薬剤師一人を配置するといったような入院患者数などを考慮した基準に見直すことが適当であるというような意見をいただいております。  私どもといたしましては、病棟業務の増大あるいは薬剤師によります情報提供、病院におきます薬剤師の業務の変化、そういうものを踏まえまして、関係者の意見も聞きながら、この具体的な配置基準というものについて検討してまいりたいというふうに考えております。
  70. 大野由利子

    ○大野(由)委員 あわせて、老人保健施設で薬剤がどういう扱いになっているかをちょっと伺いたいと思うのです。  老人保健施設、最近各所に随分ふえてまいりました。病院と家庭の中間施設という位置づけで、一応定額マルメ方式で行われておりまして、薬剤もできるだけ適正使用というか、むだな薬は使わないとか、いい方面に働いている面が多いかと思うのですが、でも私は、一部必要な薬も使わないというようなことがあればこれは大変なことになるのではないか、このように思うわけです。  そういう意味で、今は三百床までは薬剤師の配置が義務づけられていないという状況なんですが、薬の扱いがどういうふうになっているか、きちっと適正な薬の扱いがされているかどうかということについて、私は、三百床以下の老人保健施設におきましても、常勤の薬剤師を置くのが無理であれば非常勤であっても、やはり薬剤師がきちっと薬の管理をするというシステムを導入すべきではないかと思いますが、伺いたいと思います。
  71. 羽毛田信吾

    ○羽毛田政府委員 お答えを申し上げます。  老人保健施設の場合についての薬剤師の方の配置につきましては、病院あるいは専属薬剤師の配置をされております診療所に併設をされているというような場合を除きまして、入所定員が三百人以上の場合には、いわば大規模な老人保健施設でございますが、この場合については薬剤師を必置の形にいたしておりますけれども、それ以外のもの、つまり三百床未満のものにつきましては、施設の実情に応じた適当数を配置するということで、いわば配置人数を義務づける形にはなっていない、そのことは今お触れになったとおりでございます。  これは、御案内のとおり、老人保健施設に入られる方々というのは、いわば急性期の治療が終わりまして、病状の安定期にあって、入院治療をする必要はないけれども、リハビリテーションですとか看護・介護を中心にした医療ケアと日常生活上の世話を必要といたします要介護の高齢者の方々、寝たきり等の老人の方々を対象にしていくというのがこの老人保健施設の役割でございます。したがって、濃厚な治療、投薬といったようなものが必要な方々は、この施設関係からいうと想定をしていないという関係になるわけであります。  こういったことから、現に、平成五年に実施をいたしました老人保健施設経営等実態調査を見てみましても、老人保健施設の収益に対しまする医薬品費の割合というのは二%強ということで、非常に小さいものになっておるのが実情でございます。実態としてもそのようになっております。したがいまして、本来の老人保健施設の入所者の趣旨からしまして、今のような薬剤師の配置に関しまする規制になっておるということでございます。  実態はどうなっておるかということでございますけれども、平成六年の老人保健施設報告で見ますというと、十月一日現在の全国一千四の老人保健施設の中で、兼任を含めまして三百八十五人、三分の一を上回る施設には薬剤師が現実に配置をされているという実情にございます。
  72. 大野由利子

    ○大野(由)委員 もちろん急性期の患者さんはいらっしゃらないわけですが、特別養護老人ホーム、特養の場合は、病気をされた場合は処方せんをお医者さんが書いて、そして必要な場合は薬をもらえるとなっているわけですが、老人保健施設は処方せんを書いてお薬をもらえるようなシステムになっていないわけですね。そういうことを考えますと、慢性期の、健康ではない方が老人保健施設にはいらっしゃる、急性期の方ではないかもしれませんが、慢性期の方とかそういう方がいらっしゃるわけでございますので、薬等全く必要ないという人じゃないわけですから、この辺についてはぜひ御検討をお願いしたい、このように思います。  時間がないので次に行きたいと思うのですが、今、副作用情報がどう集まってきて、どういうふうに皆さんに伝わるようになっているのかということ等々がございます。  それで、今回、医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構という長たらしい名前の医薬品機構が相当新規の業務をやるようになるわけですけれども、この機構の位置づけもちょっとよくわからない面があるのですが、これは第三セクターの特殊法人と見ていいのでしょうか。  また、新規の業務をやるために相当人を採用しなければいけないと思うのですが、この人たちの人件費は一体どこから支払われるようになるのか、ちょっと伺いたいと思います。
  73. 荒賀泰太

    荒賀政府委員 血液製剤調査機構でございますが、これは民間の民法法人でございます。  お尋ねのケースは、今回八年度予算で措置をしたものでございますが、血液製剤関係のいわゆる感染症情報につきまして、私ども薬務局としても、常に内外の最新情報を収集すべく努力をしておるわけでありますけれども、この調査機構に委託をいたしまして、そしてそこで——失礼いたしました。血液関係感染症関係はそちらでございます。  今お尋ねの医薬品機構、これは厚生大臣の特別認可法人でございます。特殊法人ではございません。しかし、この内容につきましては、今回の薬事法改正におきまして、治験から承認審査あるいは市販後の対策の中で基礎的なデータチェックをしていただく、そういった意味の調査業務を委託しておるわけであります。  ただいまお話しの副作用情報につきましても、企業報告あるいは医療機関副作用モニターからの副作用情報を、本年四月までに約二万五千件のデータ医薬品機構に入力いたしておるわけでございます。このデータベースもございますけれども、私どもは、これからはさらに一般の医療機関あるいは国民の方からの直接のアクセスができますような、そういっだ副作用情報を含めた薬の関係情報の提供が手軽にできるようなシステムの構築を検討したいというふうに考えておりまして、そのようなことを通じまして、今お話のありました副作用情報の収集評価、伝達体制というものを強化してまいりたい、このように考えておるところでございます。
  74. 大野由利子

    ○大野(由)委員 時間が来ましたので質問は以上で終わりますが、ちょっと先ほどの答弁漏れ、一つだけ。新規業務に対してどこから給料が払われるのか。新しい業務がつけ加わりますから大分新しい人を採用しなければいけないと思うのですが、その辺についてだけ伺いたい。
  75. 荒賀泰太

    荒賀政府委員 これにつきましては、お話しのとおり財源が必要でございますので、手数料を製薬企業で負担していただくということでその財源を賄ってまいりたい、このように考えております。
  76. 大野由利子

    ○大野(由)委員 では、新規薬品の承認申請で医薬品機構にお金を、手数料を払う、そうなるわけでしょうか。
  77. 荒賀泰太

    荒賀政府委員 これは、医薬品機構が政令で手数料を、定められた金額を徴収できることになっておりますので、医薬品機構が政令で定めた手数料をいただくという形になるわけでございます。
  78. 大野由利子

    ○大野(由)委員 今、新薬の申請とかいうのは厚生省に製薬会社は支払っていると思うのですが、では、これからは厚生省ではなくて医薬品機構の方に払われるようになるのでしょうか。
  79. 荒賀泰太

    荒賀政府委員 ただいまの仕組みといたしましては、今お話のありました新薬の承認の費用につきましては厚生省でいただいておるわけでございますが、後発品、いわゆるゾロと言っておりますけれども、そういったことについての同一性調査医薬品機構で行っておりまして、これについては手数料で賄っておるところでございます。
  80. 大野由利子

    ○大野(由)委員 時間が来ましたので、本当はもう少し詳しく伺いたいのですが、後発品のみでしたら現在もなされているわけですね。それ以外に新規の仕事が今回加わるわけですから、後発品の申請の費用だけでは医薬品機構は仕事がやっていけるはずはないと思うのですね。その辺またぜひ検討をいただいて、答弁をお願いしたいと思います。  以上で終わります。
  81. 和田貞夫

    和田委員長 鴨下一郎君。
  82. 鴨下一郎

    ○鴨下委員 薬というのは、健康に対して大変な被害のある場合もありますけれども、多くの場合には、いろいろな病気を治すという意味で大変に役に立っていることが多いわけです。特に今までの薬の中では、例えば抗生物質だとかステロイドホルモン剤だとかいうようなものはいわばもう画期的な薬であったわけです。  今度、薬事法改正で、より厳密に新薬をつくっていこうではないか、それから、国際的な規格に合わせてつくっていこうではないかというような改正だと理解しているわけですけれども、より安全な薬をきちんと提供していくという意味においては治験は厳しくあるべきだと思うし、さらに、その治験にかかわる被験者の方々はそれなりにきちんと人権を守られた形で保護されていくべきだと思うわけですが、実際に厚生省は、新しく薬事法改正になってICHGCPにのっとって治験が行われていくことになる場合に、治験そのものは従来のものよりもかなり難しくなるとお考えになっていますか。
  83. 荒賀泰太

    荒賀政府委員 治験の問題につきましては、先ほど答弁をさせていただきましたが、国際的に通用する医薬品開発していくためには、やはり治験システムのレベルにおきましても、今世界的に見てもまだ十分なものとなっていないという認識をしておるわけでございます。今回の改正におきまして、治験レベルを引き上げ、そして欧米水準と遜色のないものにしていきたいというふうに基本的に考えておるわけでございます。  その際に、治験というものがどのような形になっていくのか。今お話がございましたインフォームド・コンセント文書による説明同意ということをいたしました場合に、そういったことが直ちに実行できるのかどうか。あるいは、そういったことを通じて今までたくさんの種類の医薬品のもとになります治験が各医療機関で行われておったわけでありますが、やはりそのレベルが上がることに伴って治験というもの自体がなかなか難しくなってくる、つまり、医療機関の方で治験をするかどうかについて慎重な検討をし、そして真に患者の方々の役に立つ有用な医薬品に焦点を当てた治験というものに少しずつ変わっていくのではないか、そういった感じを持っておるところでございます。
  84. 鴨下一郎

    ○鴨下委員 今局長おっしゃっているように、これから多分、新規の薬を開発していくという意味においては、さまざまな意味で非常に大変なことが出てくると思います。  一つは、開発費そのものが、今百億とも二百億とも言われているわけですけれども、それも多分それ以上になってくるだろうと思いますし、期間も長くなってくるでしょうし、そしてなおかつ、被験者そのもののインフォームド・コンセントをきちんとするということで、文書による承諾をいただくということになるわけですよね。  これはもう私は大いに結構なことだと思うのですが、現実の現場の中では、例えば患者さんに二相試験あるいは三相試験がどういうものかということを理解いただいて、特にダブル・ブラインド試験なんかの場合に、あなたが飲んでいる薬は医者本人にもわかりません、そしてなおかつ、あなたが飲んでいる薬は治験薬なのかプラセポなのかということもわかりませんというようなことの説明の後に、ぜひ協力してくださいといったときに、どれほど理解をいただけるのかどうかということについて、現場の医者たちは非常に心配をしているわけです。  この辺について厚生省は、多分、このハードルを高く上げて、それをきちんとクリアしてくる薬でなければだめなのだというお考えなんでしょうけれども、現実に即したところではどういうふうにお考えになっているか、お聞かせいただきたいと思います。
  85. 荒賀泰太

    荒賀政府委員 この件につきましては、私どもも、この八年度、今年度の予算におきまして、GCP適正運用推進モデル事業というものを開始しようということでございまして、こういった事業を通じまして、今お話のありましたインフォームド・コンセント徹底の方策でありますとか、あるいは医療機関の中の治験を支援していく体制、そういったことについても、環境整備を図るためにどのような形のものが必要なのかというようなことも検討をしてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。  特に、適切な説明内容方法につきましては、やはり患者の方に治験というのはどのようなものなのかということをよくわかりやすく説明をするということ、それから、治験はやはり治療の面と同時に研究的な側面があるということも御理解をいただくということ、それから、患者の方がこの治験に対しますいろいろな権利といいますか、いつでも治験の参加を取りやめることができるとかそういったこと、あるいは、患者の方が持っておられるいろいろな意見とか質問に十分耳を傾けて、そしてそれに答えていくということでありますとか、あるいはまた、患者の方がその治験に参画するかどうかに際しては十分な時間的な余裕を与えていくとか、そういったことについてこのモデル事業でも検討をいたしたいと思っております。  また、今申し上げました医療機関治験の支援体制につきましては、医師だけではなくて、医師をサポートする看護婦でありますとか、あるいは薬剤師の方でありますとか、そういった全体の医療スタッフについて、やはり諸外国に比べますと、専門の治験担当の医療スタッフというのが日本の場合にはなかなか得られない、十分ではないということもございます。そういったことについても充実をしていく中で、全体として治験が適正に行われるということについて私どもも努力をしてまいりたい、このように考えております。
  86. 鴨下一郎

    ○鴨下委員 今局長はそういうふうにお答えになっていますけれども、実際に私聞いてみますと、まず現場の、治験をかつてやっていたようなお医者さんたちは、もうこれでは苦しい、実際にやるには非常に現実的でないというようなことをおっしゃっている人たちもいます。  私は、文書による承諾はいいと思っているのですよ。いいと思っているし、もちろんそうするべきだと思いますけれども、非常に現実的には厳しいというふうにおっしゃっている人たちもたくさんいます。  それから、例えば薬によっても、制がん剤だとかなんかで、もう末期の患者さんで、もう万策尽きてしまって、新薬に一縷の望みをかけるという場合には、これは協力いただける場合があるのですけれども、そうでなくて向精神薬のようなもの、例えばうつ病の薬なんかを、その患者さんは治してもらいたくて来たのに、例えば治験医が、いや、この薬は実は新薬で、これから新しく開発しようとしている薬なんだけれども、ぜひこの薬に対して協力してくれ、こういうようなことについて、私は、今の日本医療の現場の中で到底理解の得られないようなことがたくさんあるのだろうと思います。  そうすると、そういういわば欧米並みの厳しいインフオームド・コンセントをつくるということの裏には、アメリカなんかでは、高い医療費をその患者さんだけは免除しましょうとか、そういうような形での、ある種経済的なインセンティブだとかなんかが協力をしていただける一つのきっかけになっているようなこともあるわけですけれども、そういうことはまかりならぬ、しかし、ハードルはこの高いハードルを越えてくださいというような話になりますと、厚生省は、網はかぶせたはいいけれども、解答がないような、治験の言ってみれば解決策がないような厳しい承諾を課しているというふうに私は思うのです。  厚生大臣、直接専門的なお答えじゃなくて結構なんですが、現実の問題として、文書による承諾も本当に結構なんですが、そういうときに被験者にたくさん協力いただくための工夫というのは、ある意味で厚生省の方も現実に即して、現場に即して考えていただきたいと思うのです。薬によっては非常に協力をいただけない場合があると思うのですけれども、その辺についての、漠然としたことでも結構ですけれども、解決策のようなものを何かお考えになっていますか。
  87. 菅直人

    ○菅国務大臣 今、鴨下さんがおっしゃった問題は、非常に根本的な問題にもつながっていると思うのですね。  つまり、先ほど他の委員の方の答弁の中で、私、ジェンナーの話をあえてしたのは、薬の開発というのはある意味ではリスクを伴う、いろいろな国がいろいろなリスクを伴いながらいい薬を開発して、それを我が国も受け入れて、それでまさに結核は治り、ハンセン病が治癒するようになってきているわけです。  ですから、我が国においてもこういう分野で、もちろん日本自身にとってもですが、世界の中で貢献していこうという積極的な姿勢で臨むとすれば、そういうことがきちんとできる国民的な世論なり、あるいはそれをサポートするいろいろな体制を準備しなければいけないと思うのです。  そういった意味で、私は、文書による承諾というのは当然やらなければならないけれども、従来的な日本の慣習の中では何となくあいまいなままやってきたということを変えるという意味では、確かに今おっしゃるような懸念が現場であるというのは十分理解できるわけです。ですから、私はやはり、治験に参加する、あるいは協力するということ自体が一つの社会的な意味を持つ、あるいは人類の将来に向かって意味を持つことであるというような、そういう基本的な認識を共有化することがまず第一に必要ではないか。  また、治験のやり方については、私も専門家ではありませんから余り詳しくはありませんが、どうも今までは特定の分野のお医者さんにお願いをして、その人間関係の中で対応するといったようなやり方がベースであったように聞いておりまして、もう少しシステム的というか合理的というか、例えばそれこそエイズの薬をつくっていく中で、それに対してやろうと思えば、他の分野、例えばこれが半導体の研究とかなんとかの研究であれば、こういうスタッフを集めてこういうふうにやっていこうなんという体制ができるわけですけれども、どうも薬の分野では、それが非常に個人のお医者さんなり学者に依存せざるを得ないようなところが強いというふうに感じておりまして、そういうことも、治験がもうちょっと積極的にできるような治験センターといったようなものも考える必要があるのではないだろうか。  そういう意味で、透明性は非常に高くするけれども、同時に、国民の皆さんの理解をいただいて、それに参加していただく。その中に経済的メリットとかいろいろなメリットの問題は、いろいろ検討はこれまでもしていただいているようですけれども、まだ結論は出ていないところであります。今私が聞いている中では、治験をした患者さんについて、特に手厚くといったら変ですが、よく様子を見て手厚い治療、介護・看護なんかをすることによって協力をいただくというような、そういうやり方は現在でも許されていると思いますし、これからもそういうやり方を含めたことは進めていっていいのではないか、こんなふうに感じております。
  88. 鴨下一郎

    ○鴨下委員 実際に治験をやってくださいという話になると、まあ十人のうちの九人ぐらいは自分をモルモットにする気かというような形になります。それで、かなり医者と患者さんとの間で信頼関係があっても、特にダブル・ブラインドのようなものになると非常に困難になるというのが現実なんです。今大臣おっしゃっているように、ある意味で、治験をやって新しい薬を開発していくということは社会的な意義があるとか、人類の言ってみれば健康に貢献するのだという大きな使命感でもって協力してくださるような人たちがふえるのが一番いいのだろうと思いますけれども。  その点について、私は、厚生省はただ入り口だけを非常に狭くして、そして厳しくして、そこを乗り越えてこなければ治験に入れないというような状況をつくっただけで、これで安全が保たれるのだというのはこれは困った話で、むしろ大臣おっしゃっているように、積極的に治験をやるということはモルモットじゃないのだ、こういうようなことも、いろいろな国民的な理解を得られるためのさまざまな運動を厚生省も率先してやるべきですし、そういういわば環境整備をしていかないと日本の薬はどんどん立ちおくれてしまうというようなことになりかねませんので、ぜひその辺のところはお考えいただきたいと思います。  そういうことでいいますと、多分、今薬務局長もおっしゃっていましたけれども、新薬開発に関して、これから先は非常に期間もそれから費用もより一層かかってくる、そのかわりいい薬ができる可能性が出てきたわけですね。  ですから、そういうことになると、次に考えなきゃいけないのは今の薬価改定のあり方の話なんですが、今までは、日本の薬価の改定のあり方の何といいますか、新薬が出て二年ごとに薬価改定で少しずつ切り下げられていくという、この辺のあり方についての哲学みたいなものというのは、どういうような考え方で切り下げていくようになっているのか、お聞かせいただきたいと思います。     〔委員長退席、鈴木(俊)委員長代理着席〕
  89. 岡光序治

    岡光政府委員 哲学と申しましてもあれですが、一言で申し上げますと市場価格主義でございまして、実際にお医者さんが求められておる価格をベースにいたしまして、もちろんそれぞれで価格の幅がございますので、合理的な幅であればそれは許容した上で、市場価格を念頭に置いて、その取引価格をもつで薬価として保険から償還をしよう、こういう発想でございます。
  90. 鴨下一郎

    ○鴨下委員 今、いみじくも哲学はなく、むしろ市場価格だけである程度考えていくというふうにおっしゃいましたけれども、私はその辺のところが、これから先、新薬をつくるのが非常に難しくなる。そして、せっかくつくった新薬がこれから先長く大事に使われていくというようなことにおいては、これは、今のような薬価改定のあり方ですと、だんだんと薬価が切り下げられていって、とうとう最後には、薬としての生命は終わっていないのに、市場のメカニズムの中で、言ってみればメーカーは損益分岐点を切って、なおかつ、お医者さんも医療の経営上の中で余り安い薬を使うということについては苦しい状況がありますから、そうすると、結果的にせっかくいい薬なのが社会的生命を終えてしまうというようなことが今間々あるわけです。  その辺のことで、例えば、私は具体的な話として、この前も一回申し上げたのですけれども、あるセファロスポリン系の薬で、これは一九七〇年に二百五十ミリのカプセルが三百六十七円五十銭の薬価がつきました。それが、九四年の四月現在で四十円になっているのです。そういう意味で、約二十年ちょっとで大体その薬の生命が終わったということなんだろうと思います。  ところが、その薬は二百五十ミリで一日三回飲むような薬だったのですが、その後に、その会社の中で、八一年に言ってみればロングアクティングな穎粒ができまして、それの薬価が四百三十五円五十銭で、同じ薬ですよ、中身は。ただ、飲み方が一日二度で済むというのです。そのときに、同じ薬でカプセル剤は同じ時期に百四十七円だったのです。  そういうふうに考えますと、カプセルの方だと一日量で五百八十八円、そのロングアクティングの穎粒だと八百七十一円ということで、ほんのちょっとマイナーチェンジしただけで高い薬価がついてきて、そしてその薬価の薬を今度は医者もメーカーも乗りかえてたくさん使っていく、こういう仕組みになっているのですよ。  そうすると、実際には薬価が高い方を使い、薬価が低い方は使わないというような話だけの選択、多少異論としては、二回の方が便利じゃないかとか、そういうような考え方はありますけれども、でも現実問題としては、同じ薬、ただそれの用法が若干違うというだけで本当に高い値段がついて、またその薬を使っていく。言ってみれば、自動車だって、まだ乗れる車なのに、新車が出たから新しい車の方を買った方が、売った方がいい、こういうようなメカニズムが今の薬価改定の中に働いてしまっているのですね。  ですから、私は、ただ薬価差を切っていくというだけの薬価改定じゃなくて、むしろ、どこかでほかの要因、例えばこの薬はまだ使えるとか、この薬に関してはその医学的な有用性については何ら変わらない、こういうようなことでどこかで踏みとどまるような薬価改定のまた別の論理というものがあってしかるべきだと思うのですが、その辺についてはいかがでしょうか。
  91. 岡光序治

    岡光政府委員 おっしゃっている御趣旨は非常にわかるのでありますが、なかなかその辺を価格としてどう評価するかということで意見が一致しておらないのが今の段階での議論でございます。  おっしゃいますように、言葉が悪うございますが、ちょっとした組みかえで新薬として認められて高い価格がつくということについては、非常に批判がございます。したがって、何が一体画期的な新薬なのかということで、その画期性ということについてまた議論が集中してございます。  とりあえず、私ども、ことしの診療報酬改定の際の薬価の見直しにおきまして、新薬価格の設定をどうするかということで、いろいろな発想がございますが、いずれにしましても、新しい、新薬として考えられるようなものについては、いわば画期的な部分について高く評価をしようではないか。それから、そういった面期性がほとんどないではないか、今私が申し上げましたいわばマイナーチェンジ的なものと評価されるようなものにつきましては、従来の新薬に対する評価とは大分低い評価にしようではないか。こういうことで、その画期性の価格面における評価につきましては大分アクセントをつけた、そういうことが今回の薬価基準改定においては取り入れられたわけでございます。  しかし、これはあくまでも、やはり市場価格なり、どれだけの製造原価がかかったのかという、そういった評価でもって考えているわけでございまして、今先生がおっしゃいました、新薬ではなくて長く使われているものに対してどのような対応をするのか、市場価格とは何か別の判断があっていいのではないか、こういうことについては私どももそういう問題意識はございます。しかし、それをどのようにそれでは価格評価していっていいのかというところまでは詰まっておらない、もう少しそこは中医協などにおいての議論を深めていきたい、そういうふうに考えております。
  92. 鴨下一郎

    ○鴨下委員 その辺が私は一番の、これから例えば薬剤費がだんだん高くなっていくのを食いとめる一つの大きな方策だろうと思っているのですよ。実際に、今回、薬害の話の中でもさまざまありましたけれども、結果的にどんなに厳密に治験をやっても、市場に出ていったときには全く別の使い方をされるわけですよ。例えばソリブジンだって、要するにああいう配合禁忌について治験段階でなかなか予測がつかなかった。ところが、現実にはいろいろな使い方の中でさまざまな被害が出ていったわけですよね。  そうすると、私は思うのだけれども、長く使っている薬というのは何千万人も何億人もの人たちが何十年にわたって使っていて、言ってみれば大変なデータの集積があるわけですね。そういういい薬、まだまだ使える薬が一つの薬価ということだけで葬り去られてしまうということについて、私は、単なる医療費の問題だけではなくて、薬の安全性という意味においても大変もったいないことが行われているというふうに思うのですよ。  ですから、その辺のところのやり方として、多く使われている薬の中で、もちろん、さっき大臣がおっしゃっているように、いかに透明性を高めて客観的判断をしていくかということは重要ですけれども、その中で、ある程度のところまで来たら、それ以上は多少の薬価差があっても薬価を切り下げるべきでないところというのをどこかで判断していかなければいけないのだろうと思うのですが、さっき中医協の方で判断するというふうにおっしゃっていますけれども、厚生省の中ではそういう議論はないのですか。
  93. 菅直人

    ○菅国務大臣 今、鴨下さんの方から、いい薬であっても薬価が下がってしまうと余り使われない、あるいはその中には薬価差が小さくなっても使われないという意味もあるいは含んでいるのかと思うのですけれども、この問題につきまして、今回の薬害エイズの問題だけではありませんが、日本における薬が、全体に、一方で使用量が大変比率として多いと言われながら、一方では、今鴨下委員がおっしゃるように、従来それなりに効果を発揮していた薬が消えていってしまうというようなこともありまして、少なくとも、薬価なり薬価差益の存在によって、例えばある薬が過剰に使われるとか、逆にある薬が使われないとかという、薬の使い方に値段の問題あるいは差益の問題が影響を与えるというのは基本的には望ましいことではないのではないか。  ですから、お医者さんがその病気の治療に必要な薬を、それは多い場合、少ない場合、両方含めて必要な量だけ使えばいいという、つまり、それ以外の経済的動機がそこに余り入らないようにすることができないか、そういう問題意識を一つ持っておりまして、そういう問題も含めて、現在、保険局長責任者として薬価差益問題を検討するプロジェクトをスタートさせております。まだ結論を得るところまでは行っておりませんが、省内でも、今鴨下委員がおっしゃったような問題意識も含めて、ちょっと根底的にありとあらゆる可能性の議論をしてもらいたいということで今議論が進んでおりまして、こういった議論の中からある方向性などが出てくることができれば、中医協など関係審議会にそういう問題意識のもとでまた御議論いただくということも必要になるのではないか、このように思っております。
  94. 鴨下一郎

    ○鴨下委員 今大臣がおっしゃっているように、薬価差益だけがその薬を使われていく選択の重要な要素になるというのは、これはもう大変困った話だろうと思います。それを是正し、なおかつ患者さんにとっての薬漬けを予防していくということで多分医薬分業だとか何かが行われてきたのだろうと思うのですが、医薬分業が行われる前と医薬分業が進んできたときの一患者さんに対する処方の量だとか薬剤費だとかというのはどういうふうに変化していますか。
  95. 岡光序治

    岡光政府委員 先生がお求めのレベルに答えているのかどうかちょっとわかりませんが、とりあえず私ども試算をしておりますのは、もちろん入院外のケースにおきまして、院内で投薬をした場合と処方せんを出して院外で処方した場合、これが一体ある一定の年限でどんなふうな変化をしておるか、そういう数字をはじいてみました。これをもってお答えにさせていただきます。  平成元年におきまして、院内投薬の、これは一回平均の薬剤料で見たものでございますが、二千五百三十九円、それが院外処方の場合には二千三百四十九円で、むしろ院外の方が低かったわけでございます。院内を一〇〇にしますと、院外は九三という比率になります。これが平成五年、五年後どうなったかということでございますが、院内投薬が三千三百七十二円、院外が二千八百七十九円ということで、比率が八五ということになっています。  こういう一つの、手がかりになるかどうかわかりませんが、かつ、平成元年における分業率が一一%でございましたが、これが平成五年は一六%でございますので、母数がふえておるということもあろうかと思いますので単純比較はできないかもしれませんが、ややそういう傾向は見られると思っております。
  96. 鴨下一郎

    ○鴨下委員 今のデータをお聞きすると、ある意味で、後のが平成五年でしたか、一五%、院内と院外の差があるということ、このくらいあるというのは、薬そのものの量としては相当意義があるのだろうというふうに思いますけれども、そうすると、今、全体的な医療費、国民医療費の中で薬剤費というのは大体どのくらいになりますか。
  97. 岡光序治

    岡光政府委員 三〇%、二十七兆円でございますのでその三割でございます。
  98. 鴨下一郎

    ○鴨下委員 そうすると、八兆円ぐらいの薬剤費が使われているわけで、私は、この八兆円というのは、ある意味で八兆円の公共事業だと思っているのですよ。それは、だって厚生省が薬価を決め、その薬価に従って使われていくことなわけですから、メーカーが勝手に決めて勝手に売るわけにいかないものですから、そうすると、その八兆円の中身をいかに有効にどう使っていくかというのは、これはまさしく行政である厚生省の知恵なんだろうというふうに思います。  それで、院外処方を推進していくことが薬剤費の削減に多少役立っているのかどうかという意味では、先ほど一処方については一五%削減できているというようなデータでしたけれども、トータルの薬剤費そのもの、これは例えば院外薬局だって薬を出しているわけですし、そういうようなことを考えて、全体の中では、院外でやるということが薬剤費を減らしていく、抑止に役に立っているというふうにお考えになりますか。ほかの、言ってみれば薬局のメンテナンスのためのさまざまな費用もあるわけですから、その辺のことを含めてです。
  99. 岡光序治

    岡光政府委員 非常に形式的には、お医者さんの判断料にプラス調剤薬局の処方の手間料というのがかかりますので、そういう意味では、院内で処方したときと単純に比較しますと、その調剤薬局での手間料分が保険点数上は上積みになるわけでございます。  そういう意味では、平場での比較では、むしろ分業の方がそれだけ経済的には上がるということでございますが、もう一つは、先生おっしゃいましたように、むしろ今度は薬の使用内容が変わっていく。先ほど申し上げたのが本当に実証例になるかどうかはちょっと検討を要しますが、いずれにしましても、トータルとしての薬剤コストが減っていくというふうな動機につながっていけば、それはトータルとしての経済効果はあるのじゃないか。  ところが、そこのところがもう一つ難しい問題は、最近の大型の調剤薬局問題で端的にあらわれているわけでございますが、実は薬価差問題が隠れておりまして、薬の使用が、薬価差を念頭に置いた使用が依然として分業の段階においても行われているのじゃないかというふうにうかがわしめるような事例だと見ておるわけでございまして、そういう意味からしますと非常に問題が複雑になっている。  それで、これは菅大臣からの御指示で、とりあえずその薬価差問題をできるだけなくしていくという方向でまず理論を立てて、その上で分業という問題をどう位置づけていくのかという二段構えの議論に整理をしてアプローチしていかなければいけないのじゃないだろうか、そんなふうに考えております。
  100. 鴨下一郎

    ○鴨下委員 私も、その辺のところは、例えば薬局に納入される薬についても、平均で約一五%ぐらいの薬価差があるというようなことも聞いています。それは開業医の先生方のところに入ってくる薬とほとんど変わらないという。その辺のところがもしあるとすれば、これは、せっかくの、言ってみれば医薬分業において院外薬局で処方されている薬について、一五%全部がロスとは言いませんけれども、ある意味でその辺のところをもっと厳格にやるべきだというふうに私は思うのです、トータルの薬剤費全体のことを考えますと。ですから、その辺のところままた御検討いただきたいというふうに思います。  それからもう一つは、内外の薬価差といいますか、内外価格差のあるような薬がさまざまあるというふうに聞いていますけれども、この辺は、今回の薬事法改正を含めて国際的な八丁モナイゼーションが行われていく中で何らか検討していこうというようなことはあるのですか。     〔鈴木(俊)委員長代理退席、委員長着席〕
  101. 岡光序治

    岡光政府委員 ICHの議論を見てまいりますと、それは、治験ということで、信頼性のある治験をいかに確保するか、かつまた、得られたデータお互い利用し合えるようにしようではないかというところにポイントがあるのじゃないだろうかと思います。したがいまして、医療保険で使われる薬の値段という問題とはそこはつながっていないのじゃないだろうかな、私はそんなふうに判断をしております。  私ども、そういう意味で、保険で使われる薬の値段のありようについて、外国で既に使われているものが日本導入された場合の価格のありようにつきましては、今まではどうも外国での取引価格についてのチェックが甘うございましたが、その点については、外国価格と比較をいたしまして申請されている価格が非常に違っておるという場合には、そこは価格調整をさせてもらおうではないか、余りに外国での価格と日本での保険価格とが違っておるというのはおかしいのじゃないか、そういう観点での調整をさせていただこう、そういうシステムを今後取り入れようとしておるところでございます。
  102. 鴨下一郎

    ○鴨下委員 あともう一つは、最初にとれた適応症によって薬価のつき方がかなり格差が出てくるというような話があります。  例えば、今、日本の中で最も売れている薬の一つに、高脂血症のメバロチンという薬がありますけれども、この薬が十ミリで二百三円九十銭で、一日量がそれですからそのくらい。それが、エパデールという薬があって、これは抹消循環をよくするというようなことで最初に認可を受けて、適応症拡大で高脂血症に使われるようになった。これは八十二円八十銭で、一日量が六錠使うとすると四百九十六円八十銭になって、言ってみれば同じ薬効があるというふうに考えられていてもこんなに薬価差がある。この辺のところも、同じ適応症なのに薬価が非常に異なるというようなことについては、これはどういうふうに是正していこうというふうに思っていますか。
  103. 岡光序治

    岡光政府委員 基本的にはどういう値段のつけ方をしているかといいますと、類似薬効比較方式でございますので、今おっしゃいますように、効能が拡大した場合に、拡大した効能の分野において既に存在している薬の値段と合わせるという格好になるわけでございます。  しかし、これについては、そういう単純な作業でいいのだろうかという問題提起がございまして、私どもの今のやり方としては、非常にこれは批判を受けているのでありますが、当初、希少医薬品ということで、非常に市場が小さい、相手の患者さんが一万人とか二万人ぐらいしかいないというふうな、そういう薬があって非常に高い値段をつけておる、これが適応拡大されて患者さんの数がべらぼうに多い分野の効能を得た、こういう場合には、単に拡大された後の効能で類似薬の価格を見るというのではなくて、その薬の使われようが当初の発想よりもめちゃくちゃふえるという場合、これは少し価格面での調整をさせてもらおう、こんなふうな保険薬価としての、かなり保険経済上の要請からの対応を実はしているわけであります。  これが自然なやり方なのかどうかにつきましてはいろいろ議論がありますが、それにいたしましても、単に類似薬効比較方式で類似薬の価格をつけていくという今のやり方には、もう少し考えをいろいろ拡大して合理性を追求しなきゃいけない部分があるのじゃないだろうか、そんなふうに考えて、これも実は中医協で御相談をし始めているテーマの一つでございます。
  104. 鴨下一郎

    ○鴨下委員 今幾つか申し上げてきたことは、結局、医療費そのものというのは国民が負担しているわけですし、薬剤費もそうです。そうなりますと、その中で有効で安全で、しかも価格の安い薬をどう上手に使っていくかということが、我々が負っている責務なわけですね。そうすると、今おっしゃっているように、新薬も既存薬も、薬価の見方、どう評価するかというのは、これはまさしく一番知恵を出さなければいけないところです。そこをどっちかというと密室の中でやっていたら、これは大変なことになるわけですから、大臣、最後にお願いなんですが、薬価については、より透明性を高めて、情報をできるだけ開示して、その中での議論で一つのルールをつくっていただきたいというふうに思うわけですね。  最初に申し上げましたように、例えば新薬ができる、これから非常に高いハードルをクリアして新薬ができてくるわけですけれども、そういう新薬に高い薬価がつくというのは、新薬開発のインセンティブを与えるという意味においても重要なことなんだろうと思いますが、その辺のところが、現実には、そういう薬価がついてくればメーカーは喜んでお医者さんに売り込みます。その売り込まれたお医者さんは、それは院外処方にして薬価差が取れないにしても、さまざまなメーカーからの働きかけによって一生懸命使うようなことになってくる。そうすると、それについて今度は、院外で受ける薬局が一五%なり何%なりの薬価が取れる。そうすると、高い薬価の方がありがたいということで、新薬ができると、メーカーもありがたい、医者はマイナーチェンジの薬だって薬価が高い薬の方がありがたい、それから、薬局もありがたいというような意味で、言ってみれば三者が一両得になるのです。結果的にそれに従って、実は新しい薬でも、どんなにいいというふうに言われても未知の副作用もあるわけで、患者は、そういう意味でのリスクを背負う。それから、院外薬局の窓口で今度二割になるかもわからない医療費を負担する。そして、なおかつ保険全体のトータルの中で医療費を負担しているわけです。そうすると、その辺のところをきちんとやらないと、患者さんは三両損になってしまうわけですよね。  ですから、その辺のことをぜひ考えていただいて、私は、薬価のつけ方、それからこれからの薬のあり方というのはまさしく厚生行政が最も知恵を絞らなければいけないところだと思いますので、何とぞその辺のことをお願い申し上げたいと思います。  以上で質問を終わります。
  105. 和田貞夫

    和田委員長 網岡雄君。
  106. 網岡雄

    網岡委員 時間がおくれておりますので、できるだけ質問を絞って、あとの問題はこの次の委員会審議の中で御配慮をいただくということで進行に御協力を申し上げます。  まず第一でありますが、今問題になっておりますエイズ薬害事故につきまして、さまざまな意見なり問題が出されていたところでございますが、私は、一つこの点だけ大臣に所信を賜っておきたいというふうに思うわけでございます。  今回のエイズ薬害事故で、厚生省はエイズに関するかなりの情報を実は持っていたのであります。ところが、なぜあのような事態になったのか。私は、その原因というのは、厚生省の中に組織的な政策検討体制というものがなかったのではないか、このように思います。  例えば、薬務局血液製剤の対策、エイズ研究班、保健医療局はエイズサーベイランス委員会というそれぞれの局で検討がされていたわけですが、これが組織横断的な意思決定をしていく、または対応していく体制というものがきちっと緊密な体制でできていなかったというところにこのような問題が惹起したのではないか、このように思うわけでございます。  そこで、大臣にお尋ねをいたしますが、厚生省の今後の一つの課題といたしまして、このような薬害防止をやっていくためには、一つは、情報を的確に把握し、それらの情報から情勢を判断して必要な措置をする、このことが一番大事なことでありまして、そういう意味では、今言った、関係の部局を横断的に緊密な連携をとっていくような体制をとりながら今後処理していくというのがこの種の問題についての解決の最も重要な取り組みの仕方だと考えているわけでございますが、エイズ問題の処理を通じて、その反省の上に立って厚生大臣としてどのような所信をお持ちになっているか、お聞かせいただきたいと思います。
  107. 菅直人

    ○菅国務大臣 今、網岡委員の方からお話がありましたように、例えば、いわゆる安部研究班、エイズ研究班というのは当時の薬務局事務局でつくられて、それが終わった後、少し間を置いて、塩川先生を班長とするエイズサーベイランスというものになるわけですが、その間のつなぎなども、今になってみると必ずしもきちんとつながっていない。エイズサーベイランスの方は当時の公衆衛生局、今のまさに保健医療局になるわけです。そういうことを含めて、確かにおっしゃるとおり、いろいろな情報が一カ所できちんと掌握され、判断され、対策が練られるということが必ずしも的確に行われていなかったのではないかという思いがあります。  実は今、狂牛病という問題が起きているときにも、いろいろな部門に分かれているものですから、これもきちっと一つの部門に責任を当面集めて、他の部門の情報も最低限そこには集まるようにということで私の方から指示をしているわけです。  そういった意味では、今回の問題、今、厚生科学会議で議論いただいたり、あるいはそれを受けて医薬品被害再発防止のプロジェクトを省内にもつくって、政策決定プロセス、情報提供のあり方、薬事行政などの見直しに入っておりまして、今おっしゃったような点も含めて、どうすれば的確に対応できるのか、特に状況が変化をしていくような場合にはある種の危機管理的な感覚もあわせて必要ではないかと思っておりまして、この点は重要な検討事項だと受けとめているところです。
  108. 網岡雄

    網岡委員 今大臣からのお考えが示されたわけでございますが、どうぞひとつ、おっしゃったような反省の上に立って、今後このような薬害事故が起きないような体制をぜひとっていただきたいということを要望してまいりたいと思います。  次に、国の医薬品情報収集と伝達体制について御質問を申し上げたいというふうに思います。  この医薬品安全確保対策といたしましては、まず一つは、国の医薬品情報収集とその評価、そして政策決定と医療機関に対する伝達体制の確立というものがあると思います。二つ目には、病院などの医療の現場における医薬品情報の収集とその活用の体制の整備ということがぜひ必要だと思うのであります。  そこで、まず第一に、国の医薬品情報収集とその評価、そして、進めていきます具体的な政策決定と医療機関への情報伝達体制の現状について御質問をいたしたいと思いますが、医薬品副作用情報や安全に関する内外の文献等の収集については現在どのように行っているか、お尋ねをいたします。
  109. 荒賀泰太

    荒賀政府委員 医薬品安全性向上のために、内外の副作用情報あるいは各種文献、学会報告等を収集いたしまして、迅速な対応を行うことは必要であるというふうに考えておるわけでございます。これについては、先生御案内のように、製薬企業に対しまして、副作用情報を初めといたしまして、内外の文献でありますとかあるいは各種学会の研究報告等につきまして、厚生省報告することを義務づけをしておるわけでございます。  それから、国といたしましても、外国副作用情報でありますとか安全性の情報につきまして、直接情報を入手するように努めておるわけでありまして、これは欧米の代表的な医学雑誌を直接厚生省で入手して活用をいたしております。  また、ICH、年二回定期的に開催をされておりますが、その準備会合、またアメリカ、ヨーロッパの規制当局間の情報交換を行うほか、必要に応じまして、そういった外国規制当局との電話あるいはファクスによる情報の交換をいたしておるわけでございます。  また、WHOとの関係につきましても、定期的な医薬品副作用情報の送付でありますとか、あるいはWHOに関連をいたします国際会議の情報交換を行いまして、そういった形で安全対策に活用をいたしております。  今後とも、ICH等を通じまして、欧米諸国規制当局と連携を深めまして、外国情報の収集に努め、積極的な活動をしてまいりたい、このように考えております。
  110. 網岡雄

    網岡委員 次の質問に移ります。  次には、国の自前のチェック体制といいますか、医薬品情報の調査解析をする機関を持つべきであるというふうに私は考えるわけでございますが、その点について御質問申し上げます。  現在、厚生省は、承認審査体制強化市販後の安全確保体制強化、これは医薬品の安全対策のいわば二つの車輪であると思います。そのどちらが欠けても安全対策はうまくいかないと思います。  今回の薬事法改正におきまして、承認審査体制強化の一環として医薬品機構を一層活用するということにされたのであります。今回のエイズ薬害事故の調査の経過を見てみましても、安部教授等の個人的な見解によって政策決定が左右されたかのような印象を受けます。厚生省として組織的に情報を集め、かつ解析した上で政策検討がなされたのか、どうもよくわからない点がございます。はっきり言って、これはわからないということを申し上げることができます。したがって、その責任の所在も含めて、あいまいなものになっているのではないかと私は思う次第でございます。  そこで質問をいたしますが、今は、先ほど御答弁がありましたように、製薬企業を中心とするところで審査をされて、そして結論を出す、こういうことになっていますが、もう一方の歯車として、国自身も専門学会における発表、内外の医学雑誌の論文、外国政府のとった安全対策等について、製薬企業からの報告を待つだけではなく、恒常的に情報を収集し、解析するという体制を整備すべきであると考えます。このため、国の自前のデータバンクとも言うべき機関として、医薬品情報の調査解析機関とも言うべき一つの機能を設けることが必要だと考えるのでありますが、その点についての厚生省としてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  111. 荒賀泰太

    荒賀政府委員 ただいまお尋ねの副作用情報の収集評価、そして確実な伝達ということは極めて重要でございます。  先ほど申し上げました企業報告あるいは副作用モニター医療機関からの情報収集、それから医薬品機構のもとでデータベースを蓄積いたしまして解析をし、またそれを中薬審副作用調査会で評価を行い、その結果に基づいて個別の医薬品の「使用上の注意」を改訂いたしますとか、あるいはまた注目すべき副作用が出た場合には二カ月ごとに医薬品副作用情報をまとめて公表するということで、これについても日本医師会雑誌あるいは薬剤師会雑誌にも掲載をして、医療機関関係者の方々に情報伝達を図っておるわけでございます。  また、厚生省におきましても、直接医療機関に対してファクシミリによります情報提供を行う緊急医薬品情報伝達システムというものを整備いたしまして、ことし四月十二日には、このシステムによって、血液製剤副作用でありますGVHD、移植片対宿主病に関する情報を登録されております全国の四万の医療機関に対しまして伝達を行ったところでございます。  この医薬品機構では、先ほど申し上げました本年四月までに約二万五千件のデータが入力をされまして、年々充実を図っておるわけでございます。  そこで、先生のお尋ねの総合的なそういった組織の問題でございますけれども、これからは患者のプライバシーの保護等に十分注意をしながら、医療関係者あるいは国民の方々が直接アクセスして最新の情報が入手できるようなシステムの構築というものを検討したいと考えておりまして、これを通じまして御指摘の副作用情報収集体制、伝達体制強化というものを図ってまいりたい、このように考えております。
  112. 網岡雄

    網岡委員 次の質問に移ります前に確認ですが、最後の点ですが、国の自前のデータバンクをつくる機関として考えておみえになる、こういうことで受けとめてよろしゅうございますか。
  113. 荒賀泰太

    荒賀政府委員 私どもも、やはり国としてそういう総合的な大規模なものをこれから検討すべき時期に来ておる、このように考えております。
  114. 網岡雄

    網岡委員 次に移ります。  我が国承認審査体制は、欧米に比較いたしまして遜色がないということが言えるかどうかということをお尋ねいたします。  医薬品機構を活用することによってその強化を図るとするならば、機構の職員の増員を図ることが私は不可欠であるというふうに思います。私の聞くところによりますと、外国と比較をいたしました場合に、我が国審査体制というものは、非常に人員の問題から見ましても少ないというふうに見えるわけでございます。アメリカは大体千四百人、ドイツでは五百人、イギリスでも二百五十人、こういう状況でございまして、これらから見ますと、日本はその人的な配置構造からいいましてかなり見劣りをするというふうに思うわけでございます。したがって、ぜひこの際、抜本的な承認審査体制強化を図るために、厚生省としてどのようなお考えをお持ちになっているか、お示しをいただきたい。  それから、医薬品機構で申請者から調査手数料を取っているわけでございます。私は、国民の日常の生活にかかわっていく、例えば鉄道運賃とかあるいは都市の市営バスの料金とかいったような一般の国民に与える公共料金というものは、できるだけこれは抑えていくということにしていかなければなりませんが、この調査手数料というものは、このことによって製薬メーカーが一つの利益を受けていく一つのステップを踏んでいくものでございますから、したがいまして、調査手数料の引き上げをしても社会的な問題が起きるものでもないと思いますし、諸外国の例からいいましても、日本調査手数料というのは非常に少ないというふうに聞いているわけでございますが、これらの引き上げについて厚生省はどのようにお考えになっているか。  同時に、前のところで御質問を申し上げました、医薬品機構業務充実を図っていくための職員の増員について、お考えをお聞かせいただきたいと思います。
  115. 荒賀泰太

    荒賀政府委員 ただいま先生からお話がありましたように、厚生省承認審査体制、機構も含めてまだ十分なものとは考えていないわけでございまして、これから充実強化に努めてまいりたいと思っておるわけであります。  今回、この問題については、定員の増加には限界があるということもございまして、医薬品業務についての専門的な知識、実績を持ちます医薬品機構に承認申請データの照合といった調査業務を委託するということを考えておるわけでございます。  この調査業務をもとにしまして、厚生省事務局審査充実いたしまして、中薬審でより高度な評価、判断を行えるようにして、そして全体として審査の質の高度化迅速化を図ってまいりたい、そして欧米諸国と遜色のない審査体制を目指したいと考えております。  この場合に、医薬品機構調査業務を処理していただくわけでありますが、これに要する経費につきましては、今お話がありました、申請者であります製薬企業に手数料として負担をしていただくということにいたしておりまして、これによって審査の質の高度化あるいは迅速化が図られる、そのように努力をしてまいりたいと考んでおります。  それから、医薬品機構増員等の体制強化でございますけれども、これにつきましても、承認申請資料データ照合等信頼性調査あるいは治験に関する相談治験届調査等実施を行うことにいたしておりまして、その治験業務の準備を行うために、平成八年度におきましては十五名の増員を図ることにいたしております。今後、承認審査市販後の調査業務に必要な人員も出てまいりますので、段階的に充実をしてまいりたい、このように考えております。
  116. 網岡雄

    網岡委員 次に、前に鴨下先生から御指摘がございましたけれども、高松高裁の判決についてのお話がございました。  もう一つ、私は医療現場における医薬品の情報の活用の問題についてお尋ねをいたします。  もう一つの裁判の判決で、これは最高裁でございますけれども、麻酔剤の副作用の事故で判決がございます。医療機関側が敗訴をしました。これは医師が、添付文書の、二分ごとに血圧を測定しながら使用するということになっておりましたものを、通常の麻酔の注射の仕方として五分間隔ということになっているそうでございますが、その五分間隔ということで行ったために手足の麻痺状態を起こしたという事件でございます。  こういう事件はかなり私は頻繁に起きているというふうに思うわけでございます。こういう医療現場における医薬品情報を的確に活用していくような伝達体制というものを確立していかなければならぬと思っておりますが、この点について、厚生省は今後一体どのような方法でこの情報の周知徹底といいますか、そういうものについて御指導なさるのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  117. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 今先生お取り上げになりましたのは麻酔剤による麻酔中の事故だというふうに承知をしておりますが、一般的に薬剤の副作用によります健康被害の防止という観点からは、医薬品そのものの安全性確保はもちろんでございますが、実際に使われる医療機関においてそういう情報を把握していくということが必要だというふうに認識をしております。  そのためには、さまざまな情報が医療従事者に提供されるということが必要だというふうに思いますし、また一方、副作用情報の収集及びその提供が適切に行われ、かつ、その医療機関側に示されました情報について医療従事者が十分に認識をするということが必要だろうというふうに思っております。  そういう観点から、医療機関側におきましても、医薬品についての副作用あるいは重篤な健康被害の可能性といったようなことについて今後とも十分認識をされるよう、医薬品情報の提供ということが必要だというふうに認識をしております。
  118. 網岡雄

    網岡委員 次に御質問を申し上げたいというふうに思います。  それは、昨年の七月に製造物責任法、いわゆるPL法が施行されました。その結果、最近の医薬品の添付文書副作用に関する記載がこのごろ際立ってふえてきているという状況にございます。これは、副作用について警告表示をしておけばメーカー側の責任は一応免れる、こういう考え方から「使用上の注意」の記載がもう非常にふえてきているというのが一般的な傾向になっております。  PL法の施行により「使用上の注意」の記載がふえていくこと自体は、ある意味でいけばやむを得ないことかもしれません。しかし、一方において、余りにも記載がふえたり詳しくなったために、かえって医療機関ではこれを読まなくなってしまっている事態が出てきているというふうに思うのでございます。  そこで質問をいたしますが、今回の薬剤師法の改正案では、調剤時における薬剤師の患者への情報提供を義務づけることとしているのでありますが、これは当然病院の薬剤師にも適用されるものと考えられます。この五月十五日、厚生省市販調査検討会が中間取りまとめを発表いたしました。その中で、医療機関における医薬品情報の管理体制について、薬剤部の活用を図るべきとの提言がなされているのであります。極めて私は重要な提言であると思います。厚生省はこの市販調査検討会の提言をどのように実現していくおつもりなのか。  また、医療法第二次改正において、特定機能病院が必ず設置しなければならない施設といたしまして医薬品情報管理室が規定されたのでございます。現在、第三次医療法改正について審議が進められているということでございますが、この際、今言ったような事情を十分踏まえた場合に、すべての病院に医薬品情報管理室の設置を義務づけるべきではないかと考えているわけでございます。第三次医療法改正が間近に迫っている時期におきまして、この問題について厚生省は一体どのように考え、現状を踏まえておみえになるのか、この点についてお尋ねをいたしたいと思います。
  119. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 先ほどもちょっとお答えをさせていただきましたが、やはり医療機関の中における薬の情報を十分集約し、また医療機関の中でも伝達をしていくということで、薬剤師さんあるいは薬剤部の役割というのは大きいと認識をしております。  また、今お尋ねのございました医薬品情報管理室の件でございますけれども、これは御承知のように、副作用情報の収集、分類、評価あるいは提供を行う機能を持っている施設だと認識をしております。  現在、いわゆる特定機能病院につきましては、その施設設置基準医薬品情報管理室というものの設置を義務づけているところでありますが、今先生お話しのすべての医療機関にこの施設の設置を義務づけるということにつきましては、率直に申し上げて、病院というのは非常に大きな病院もございますし、非常に小さな病院もございますので、比較的規模の小さい病院について設置を義務づけることは非常に負担が大きくなるのではないかと考えております。したがって、医薬品副作用情報の提供あるいは収集ということについては、それぞれの病院で迅速にやるような形で検討していきたいと思っております。
  120. 網岡雄

    網岡委員 ちょっと申し上げたいこともございますが、時間がありませんから質問を次に移したい、こう思います。  そこで、次に御質問申し上げますが、医薬品情報の収集・管理体制強化、それから入院患者、外来患者に対する服薬指導の徹底、それから院内の医師に対する情報の提供の強化等を考えると、病院の薬剤師の配置を強化していく必要がある、このように考える次第でございます。最前の質問の中でも、病院の中におきます薬剤師の役割というものはあらゆる角度から強調されたことでございますが、その意味からいえば、その仕事を遂行するに足る薬剤師の配置というものはどうしても不可欠な問題であると思っているわけでございます。  聞くところによりますと、今、薬剤師の配置基準でございます調剤数八十に対して薬剤師一人、この基準を見直しする、こういうふうに仄聞いたしているところでございますが、この考え方が出てきた背景の中には、病院経営の面から議論をされて、そして病院経営のために人件費を節約する、こういう観点から薬剤師の数を減らす方向に検討されているやにも言われているわけでございます。しかし、本委員会においてたびたび議論がされておりますように、今日、医薬品安全性確保は極めて重要な政策課題でございます。一つ間違えますと、歯車のかけ損ないをやれば、人命をなくするという大変な事故を起こすことになるわけでございますから。  そういう点で、この問題について一体厚生省はどういうお考えをお持ちになっているのか、この点についてお尋ねをいたしたいと思います。     〔委員長退席、横光委員長代理着席〕
  121. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 病院の薬剤師の配置基準につきましては、現行医療法では八十調剤に一人とされておりますが、これにつきましては、四月にまとめられました医療審議会意見書の中でも、近年の調剤技術の進歩、それから、先ほど来お触れになっておりますような服薬指導あるいは薬歴管理等の薬剤師の業務の増大という状況を踏まえ、業務に応じて適切な数の薬剤師を配置するという観点から、例えば病棟単位に薬剤師を配置するといったような入院患者数あるいは外来患者数等を考慮した基準に見直すことが適当だという意見をいただいております。  現在、厚生省におきましては、この意見を踏まえまして、病棟業務の増大等病院におきます薬剤師の業務の変化を踏まえ、また関係者の意見も聞きつつ、具体的な配置基準検討しているところでございます。  なお、この配置基準の設定に当たりましては、今申し上げました病院におきます薬剤師数の実態に配慮するとともに、広く医療関係団体の意見も踏まえて対応していきたいと考えております。
  122. 網岡雄

    網岡委員 一点だけで質問をやめますが、最後に、第二薬局問題について厚生省としての考えをお聞かせいただきたいと思います。  第二薬局の問題はもう新聞でも随分言われているところでございまして、私としてここで大きく述べることは、時間の制約もありますから、やめます。  しかし、一点だけ申し上げておきますと、大手の門前薬局チェーン、しかもこの薬局チェーンの経営実態というのはかなり大きい状況になっておりまして、全国的にネットを張っている、こういう状況にございます。したがって、被害はかなり大きいものになりつつあるわけでございます。それから、医薬分業の観点からいきましても、これはゆゆしき問題が出つつあります。そして、新聞にも報道されたところでございますが、未公開株を医師に渡したり、あるいは医師に対して金品を提供するというような不正行為が現実の問題として起きているわけでございます。  こういうような状況を踏まえて、厚生省は、門前薬局、第二薬局の問題について、健康保険法の対策だけの措置でやるのではなくて薬事法上の問題として、これを一つは健康保険法の規制のものと、もう一つ薬事法規定に基づいて、先ほど言いましたようなことが現実の問題としてきちっとわかってきた場合には、断固たる処置をとるということをやっていただかなければならないと思います。  先ほど局長が御答弁になりましたように、医療の質を高めていきますために面として医薬分業は進めていかなければならない、これは日本におきます近代医療が確かな前進をいたしていきますためにはどうしても必要な仕組みである、このような御答弁があったわけでございます。そういう厚生省の御判断があるといたしますならば、このような行儀の悪い門前第二薬局の処置については、先ほど申しましたような二つの面で厳格な取り締まりをするように処置をしていただきたい、このように思うわけでございますが、厚生省のお考えを示していただきたい。
  123. 岡光序治

    岡光政府委員 御指摘の個別のケースにつきましては、当該の薬局、それから関係をいたしました医療機関につきまして、すべてを対象にいたしまして監査、調査を行っております。その結果に基づきまして私どもは厳正に対処してまいりたいと思います。  そもそも論といたしまして、医療機関と薬局との独立性をどうやって維持するかということでございますが、今回の四月の診療報酬改定におきまして療養担当規則を改正いたしました。これによりまして、保険薬局と保険医療機関が一体的な構造あるいは一体的な経営を行う、それから処方せんの交付に関するリベートの授受、こういったことは絶対いけないという禁止を改めて明確にいたしました。それから、調剤報酬上の手当といたしまして特定の医療機関との結びつきが強い保険薬局の報酬を大幅に減額する、こういうふうな措置をしました。これはあくまでも保険上の取り扱いでございます。  薬事法の扱いは、先生御存じのとおり、人的要件それから構造的な要件があれば薬局として認めるということでございまして、いわば経済行為とは結びついていないわけでございます。その辺をどう考えていくかというのがこれからの課題だろうと思っておりますので、先生の御指摘がありました問題意識でもって総合的にどう考えていけばいいのか、こういうことを検討させていただきたいと思います。
  124. 荒賀泰太

    荒賀政府委員 薬事法上の取り扱いでございますが、薬事法上は、都道府県知事がこの薬局の開設者に対しまして、薬事に関する法令に違反する行為があった場合には、薬局の許可の取り消しあるいは業務の停止を命ずることができるということとされているわけであります。  健康保険法では、保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則第二条の三におきまして「保険薬局は、保険医療機関と一体とみられるような運営を行ってはならない」というふうにされておりまして、この規定は、保険薬局が担当する療養の給付が保健衛生上の観点から適正に行われることを求める趣旨であることから、薬事に関する法令の中にも健康保険法が含まれるというふうに理解をいたしております。  そういったことで、健康保険法上の取り扱いについて今検討が進められておるわけでありますが、その結果を踏まえまして薬事法上の取り扱いについても検討をしてまいりたい、このように考えております。
  125. 網岡雄

    網岡委員 終わります。
  126. 横光克彦

    ○横光委員長代理 荒井聰君。
  127. 荒井聰

    ○荒井(聰)委員 本会議も迫っておりまして時間もないようですから、私は、なるべく簡単に質問をしたいと思います。  ところで、私は、今回の薬事法改正あるいは現在厚生省が進めている介護保険法の検討というのは大変時宜を得ている。特に薬事法改正については、エイズ問題で国民の信頼感を若干揺るがせた厚生省にとって大変タイムリーというか、まあソリブジンの事件もあって、今までずっと検討してきたという積み重ねもあるわけでございますけれども、エイズ問題に対応するという形で、時宜を得た問題を提案してこられたなというふうに思いまして、大変評価している一人でございます。  ただ、残念なことに、先般また厚生省職員に報酬をといったような形で、厚生省の職員がある講習会に出て報酬を得たという。これは事実かどうかわかりませんけれども、大変大事な時期にこういうような形で報道されるというのは、私は大変残念なことだなと思います。  これは別の省庁なんですけれども、そこの省庁が人事問題で大変揺れて、週刊誌事件が起きたことがございます。そのとき私は、そこの省庁の若い課長さんたち何人かに、君たちがしつかりしなきゃいかぬのじゃないか、人事問題でこんな形で週刊誌ざたになるようでは国民の信頼を喪失するじゃないか、君たちが頑張らなきゃいかぬのじゃないかという話をしたところ、その若い課長さんは涙ながらに、いや実は私もそう思っています、国民の信頼を回復するためには、我々官庁の実務担当者が国民に本当にこたえるような政策を提言することだという気持ちを持っていて、そのために今必死になって政策の立案をしておりますという話をされました。  その結果、大変強力な業界、電力業界なんですけれども、その業界を押さえて、公共料金の設定の仕方でヤードスティック方式というのを初めて日本に取り入れて、公共料金を抑制していくという大変画期的な政策の立案にこぎつけた。これなどは、私は、国民の信頼が揺らいでいる、そういうものをばねにして政策の立案を積極的にやっていったということの一つの例なんだろうと思います。  その意味で、今回の厚生省のこの薬事法改正にいたしましても、あるいは、大変困難ではありますけれども介護保険法の政策立案にしても、厚生省が一生懸命やっているということを外にあらわす大変いいチャンスであろうというふうに思います。  そこで、厚生大臣にお聞きしたいのですけれども、私は、若干揺らいでいる国民からの信頼を取り戻すためには、厚生省の職員が一丸となって活力を取り戻す、そして新しい政策に積極的に取り組んでいく、そういう姿勢が大事だろうと思うのです。  先般、国立病院の再編の議論のときに、私は、国立病院が本当に政策医療をやっていくために自分たちの立場があるのだということを、自分たちが十分理解しているのだろうかといったようなことを質問させてもらいましたけれども、その後すぐ、国立病院部長を中心に、国立病院の担当者を集めてそれらの説得に当たり、エイズの拠点病院に国立病院が大変大きな役割を果たした。大変迅速な対応をしていただいたなというふうに思っておりますけれども、これなども、職員に今何が求められているのかということがしつかり定着する、あるいは理解を得るための努力を大臣を初め幹部が一生懸命するということが大事な事例の一つだなというふうに思っております。  この意味で、大臣が厚生省の中をいかに活力を取り戻すようにするか、その方針あるいは考え方について御意見をぜひお聞かせ願いたいと思います。
  128. 菅直人

    ○菅国務大臣 この薬事法改正が非常に時を得たものだという激励の御指摘なのですが、私は、この薬害エイズの問題というのは、もう委員も御承知のように、かなり以前にいろいろな原因があり、裁判を含めていろいろな形で今日まで残されてきた問題で、そういう意味では、厚生省としては当然きちっとした対応をしなければいけない問題ではあるわけです。  ただ、そういう過去に起きた問題を現在きちんととらえて、将来に向かって患者の皆さんの治療などに対応するということはもちろんですが、同時に、厚生省として取り組まなければならない将来へ向かっての課題というものを改めてこうした中から見出して、積極的に取り組んでいくということが最も重要ではないかと思っております。  そういった点では、今回の薬事法改正の中でも、例えば、新しい有効な薬をきちっと開発していく上での制度のあり方などの改革も盛り込まれておりまして、まさにこれから二十一世紀に向けて厚生行政として取り組まなければいけない問題が多々含まれていると思います。  そういった点で、私としては、いろいろと国民の皆さんから疑問を持たれるような面もあったわけですけれども、しかし、できればそういったものにある段階一つのけじめをつけて、そして、これから再度国民の皆さんに十分信頼がいただけるような厚生省を目指して、言葉がいいか悪いかわかりませんが、厚生省のルネサンスというような言い方も時折しているのですが、そういうことを目指して私自身も頑張っていきたいと思いますし、厚生省の職員もそういった気持ちでみんな臨んでいただいている、期待を含めてそういうふうに思っているところであります。     〔横光委員長代理退席、委員長着席〕
  129. 荒井聰

    ○荒井(聰)委員 ただいまの厚生大臣厚生省ルネサンスというお言葉、大変いい言葉でもありますので、その信念で厚生省の改革というものをぜひ行っていただきたいと思います。  ところで、今回のエイズ問題、あるいはソリブジンでもそうですけれども、薬務局の行政組織に若干問題があるのではないか。それは、審査と産業振興の組織を一体として行っている、そういう局組織に問題があるのではないかという指摘がたびたびなされておりますけれども、この点についてどうお考えでしょうか。大臣にお聞きしたいと思います。
  130. 菅直人

    ○菅国務大臣 一般的に言いまして、それぞれの業界の保護育成という問題と、場合によっては消費者患者国民という立場からチェックするという視点とは、ある意味である種の緊張関係が必要な立場でありますから、それを同じ部門が同時的に行うというのは、一般的に言えば不十分な面が出やすいというふうに思っております。  ただ、この問題を薬事行政に置いてみたときに、どの部分が保護育成という分野で、どの部分が安全性あるいは国民立場で薬の安全な開発を促進していくという面なのか、この線の引き方はもう少し議論をいろいろな形でしていただかなければならないかなと思っております。  といいますのは、御承知のように、薬の作用と副作用というのは、ある意味で同じものの中で、いわばまさにコインの裏表のような問題でありますので、作用の部分だけをこちらで評価して、副作用の部分だけはあちらで評価するということにはなかなかならない側面もあるわけですので、そういった面では、それは透明性の高い形できちっと対応する。しかし、例えばいろいろな融資とか、あるいは場合によっては補助金とか、あるいは中小のそういったものにかかわっているものの育成とか、こういった問題については、場合によれば別の部門が受け持つということも十分考えていいのではないだろうか、こんなふうに受けとめております。
  131. 荒井聰

    ○荒井(聰)委員 時間が来ましたようですから、質問は次に譲りたいと思います。どうもありがとうございました。
  132. 和田貞夫

    和田委員長 岩佐恵美さん。
  133. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 きょうもこの委員会で指摘をされておりますように、きょうから世界禁煙週間が始まります。世界各国の研究者によって、たばこに含まれている成分に発がん性がある、そういうことが指摘をされてきていますし、また、研究データも積み重なってきているわけです。がんや心臓病など、健康に及ぼす影響は疑う余地がないというふうに言われています。たばこについて、吸う人の健康問題がもちろんあるわけですけれども、吸わない人の健康問題、これはもう受動喫煙といって、吸う人から受けるそういう問題というのは人権問題だということで、非常に今大きな問題になっています。  アメリカでは、クリントン大統領の指示で、食品医薬品局がたばこ自動販売機の禁止など、若者をたばこ被害から守るための規制対策を明らかにしています。また、アメリカの市民がたばこメーカーを相手取って争っていた喫煙訴訟でも、リゲットグループが和解に応じて、今後二十五年にわたって利益の五%を賠償する、単純計算で十二億五千万ドル賠償する、そういうことで合意をしているわけです。テレビのCMを許しているのは、もう日本とフィリピンくらいだと言われています。  しかも、たばこによる経済損失ですけれども、前の委員会でもたびたび指摘をしているのですけれども、アメリカの公衆衛生局は、九〇年の医療費等の損失というのは五兆二千億に上っている。そして日本でも、国立がんセンター研究所の渡邊部長は、医療費、火災などたばこが原因の損失は、やはり九〇年で五兆六千億に上る、税収などの利益を相殺しても二兆八千億円の損失が出るという試算を行っています。日本でも初めてがん克服十カ条に喫煙の禁止が盛り込まれているわけです。  昨年三月にたばこ行動計画検討会報告が出されました。テレビ広告については「全面禁止が望ましい」というふうに言っているのですが、当面「広告総量を縮減するべき」だというふうになっているのです。これについては私は大問題だというふうに思っているわけですけれども、大臣、若者の健康を守るために緊急の対策が必要なのではないでしょうか。せめてCMの問題とたばこの自販機の問題について、積極的にこれをなくしていく、そういう緊急の取り組みが必要だと思います。閣議においてこの問題について何か話題があったとかということで報道されていますけれども、ぜひ関係大臣に強力に働きかけていただきたい、そう思います。いかがでしょうか。
  134. 菅直人

    ○菅国務大臣 本日は、ちょうどWHOが定めました世界禁煙デー当日でありまして、きょうの閣議では灰皿を置かないということで、閣議の席での喫煙はございませんでした。  今委員の方からお話のありましたたばこ行動計画検討会報告が昨年三月にまとめられておりまして、これは保健医療局長の私的な検討会という形で位置づけられて、その中で、たばこの広告等についても、今御指摘があったような趣旨のことが盛り込まれております。  私自身、この問題は以前少し関心を持って調べたことがありまして、確かにテレビコマーシャルなどをしている国は非常に少ない。欧米先進国はほとんどが禁止になっている。日本でも時間制限という形で、ある時間まではしないけれどもある時間から先は認めるという、いわば自粛措置がとられているようでありますが、こういった点について、厚生省立場としては、やはり健康の問題、特に未成年者の喫煙防止の問題から、コマーシャルはできればない方がいいという立場を表明いたしております。  御承知だと思いますが、このたばこ業界の直接の所管は大蔵省の理財局ということになっておりまして、私ども厚生省としては、そうした関係省庁に対しても、国民の健康という観点から、あるいは未成年者の喫煙防止という観点から、今申し上げたような方向で対応していただけるよう協力を求めていきたい、このように考えております。
  135. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 薬事法法案審議なのですけれども、法改正を何回も繰り返しても、薬害エイズで問題になったように、厚生省自身がどういうふうな基本姿勢で仕事をしていくか、そのことが大変大きな問題を持っていると思います。  薬害エイズ問題では情報公開がきちんとされてこなかった、そのことが非常に大きな問題になっております。厚生省がファイルについて小出しにして、まあかなりの部分出てきているというふうな事態になっているわけですけれども、その出てきたファイルを見ても、例えば保健医療局が出した「AIDS調査検討委員会用ファイル」、一九八四年十一月二十九日付のエイズ調査検討委員会の第二回会議のメモですけれども、ここの大事なところ、だれがどういう発言をしたのか、そこのところが墨で塗られているわけです。  これは、参考人質疑が今行われている中で、一体どなたがこの発言をしたのかというのは非常に大きな意味を持っているのですね。プライバシーだとかいろいろそういう問題はあるかもしれないけれども、ギャロ報告についてこの十一月二十九日の時点でされていた。一体だれがこういうギャロの問題についてこういう発言をしたのかということがわかると、真相解明にとって非常に大きな前進があるわけです。  例えば、塩川氏について、参考人でお呼びをしているわけですけれども、十一月二十九日のこの会議のことについて自分は記憶がない、ギャロの報告について記憶がないというようなことを言っておられるわけですけれども、彼が委員長委員会ですから、私たちは重大な関心を持って見ているわけです。  この問題について、一体十一月二十九日の名前をどうして出さないのか、そして一体議題はどうだったのか、あるいはだれが記録をしたのか、そういうことについて明らかにしていただきたいと思います。いかがですか。
  136. 松村明仁

    ○松村政府委員 御指摘の議事メモでございますけれども、これは、昭和五十九年の九月に保健医療局長の私的諮問機関として設置されましたエイズ調査検討委員会の第二回の委員会において、栗村教授による抗体検査の結果が報告されたこと等が記載された議事メモでございます。  エイズ調査検討委員会関係資料は、いろいろ患者さんのプライバシーというような問題もあるもので、同委員会が非公開とされてきたことから、従来、公開は適当でないと判断をしてまいり、ましたけれども、御指摘のように、いわゆる帝京大症例の取り扱いが高い関心を呼んでおりましたことから、例外的、特例的に同委員会関係のファイルの四冊を公表させていただいたということでございます。  しかし、このファイルは、非公開であることを前提に検討会において皆様方が御議論をいただいたものでございます。当時は非公開ということで、それを前提に御議論をいただいたということがございます。  また、この議事のメモでございますけれども、公表を想定しないということで作成された本当のメモでございまして、その発言内容を正確に伝えているかどうかというところで正確に伝えたものとも言い切れず、不当な誤解を与えてもいかぬということ、さらには、その誤解によって発言者に不当な不利益を及ぼすおそれがあること等を勘案させていただいて、発言者の氏名の部分を黒塗りしたものでございます。
  137. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 国際機関とのやりとり、これは私信でありますというようなものについては、相手の了解を得て公表している部分もあるわけですね。それで、この二回目の会議については、非常に重要な会議なんですね。一体だれがそのギャロ報告についてどういうふうに理解をし、どういうふうな注文をつけたのかということは、この真相解明にとって非常に重要なんです。だからその名前について公表すべきだというふうに思っているのです。  恐らく御本人が公表することを拒んでいるのかどうかわかりませんけれども、いずれにしても、私は、厚生省が情報公開しない、そういうような姿勢でいる限り、薬事法のいろいろな法律上の文言を改正したとしても、本当に患者の命を救うとか、あるいは国民の命を守るというふうにならないと思うのです。その点について大臣に、そういう体質も含めてきちっとしていくという面について、考えを伺っておきたいと思います。
  138. 菅直人

    ○菅国務大臣 今、この資料については局長の方から事情は説明したわけですが、基本的には、できるだけ中身を公表するという方向で調査プロジェクトの方で進めていただいたというか、私の方からも指示したわけです。確かに、非公開を前提とした会議の固有名詞については、御本人の了解を得たものについてはそのまま出すけれども、本人の了解が得られないものについては、本人の言葉とどの程度一致しているかどうかというのがわかりませんので、その場合でも中身は出したという意味では、そういう努力のところはお認めいただきたいのですが、さらにその本人の了解を得られれば、出せるところがあれば出せるか考えてみたいというふうに思っております。  それで、一般的に、情報公開を拒むような姿勢では薬事法改正があっても薬害の根絶につながらないのではないかという趣旨の御指摘ですが、今回の法案の中でも、もちろん従来よりも透明性が高くなるような部分が幾つか盛り込まれているというふうに思っております。  これだけで十分かということは、今回の薬害エイズの問題は、まだこの法案が準備されている過程の中でいろいろなことが進行しましたし、さらに、従来から申し上げておりますように、いろいろな形での議論を本院を含めていただいておりますから、そういったものがある段階まで来たときにさらに必要であれば、これからの薬事行政のあり方というものの議論の中で、よりきちんとしたルールに基づく透明性を高めるやり方については検討すべきではないか、このように思っております。
  139. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 薬事法のちょっと細かい問題について幾つか伺いたいと思います。時間が限られておりますので、二点ばかり伺います。  一つは、医薬品安全性確保する上で治験の役割は非常に重いわけですけれども、この治験データが改ざんをされる、それを十分チェックできないということでは安全性確保できないということになってしまいます。  神奈川県の茅ケ崎市立病院の野村医師が、消化性潰瘍治療薬KU1257の治験データを改ざんした見返りとして、杏林製薬から百二十万円受け取ったとの贈収賄事件が報道されています。この事件は治験のあり方の問題点を示す典型的な事件でもあるし、また氷山の一角とも言えるそういう事件だと思います。医薬品臨床試験実施に関するGCPに基づく治験審査委員会は、この件ではどうだったのでしょうか。
  140. 荒賀泰太

    荒賀政府委員 杏林製薬と茅ケ崎市立病院の医師との間の治験に関連した贈収賄事件でございますが、現在、警察の捜査中でございまして、治験関係の書類は押収をされておるところでございます。私どもも、会社の方に連絡をして報告を受けておるわけでありますが、この当事者の身柄が拘束をされておるということで、事実関係確認が会社側においても十分できてない、このようなことでありますが、できるだけ事実関係確認報告をするように指示をしておるところでございます。  まだこの治験薬開発途上でございますから、厚生省への製造承認申請は行われておらないわけでありますが、今お尋ねの院内の治験審査委員会関係も含めて事実関係を私どももよく調査をしてまいりたい、このように考えております。
  141. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 先ほど同僚議員から指摘がありました。治験審査委員会がきちっと機能していれば、製薬企業から直接医師個人にお金が渡ることもないはずですし、病院や治験担当医師と製薬会社との癒着を断つ、そういうことが今求められているわけです。  現在、治験審査委員専門家以外の委員を一人となっていますが、その委員について厚生省GCPマニュアルでは「識見の高い一般人等の参加が望まれる。」こういうふうになっているわけです。先ほどの答弁では、外部からの委員とするというふうな答弁もあったのですけれども、専門外委員については、病院とは利害関係のない中立的な一般の人というようにきちっとしたものにすべきだというふうに思いますけれども、その点、いかがでしょうか。時間も来ておりますので、簡潔にお願いしたいと思います。
  142. 荒賀泰太

    荒賀政府委員 GCPにおきましては、少なくとも一人の専門家以外の委員を加えるということになっておるわけでございます。特段その方の資格的なものを限定すべきであるとは考えておりませんけれども、今後、先ほど御説明もいたしました施設外の委員の参加を求めて、より中立公正な、そして、ある意味で独立性も持った治験審査委員会充実していくというような方向で検討してまいりたいと考えております。
  143. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 時間が参りましたので、あと残りについては次の機会に譲りたいと思います。  終わります。
  144. 和田貞夫

    和田委員長 次回は、来る六月四日火曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時五十二分散会