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1996-05-30 第136回国会 衆議院 決算委員会第二分科会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    分科会平成八年五月二十四日(金曜日)委員 会において、設置することに決した。 五月二十九日  本分科員委員長指名で、次のとおり選任さ  れた。       伊藤宗一郎君    宇野 宗佑君       福田 康夫君    鳥居 一雄君       前田 武志君    赤松 広隆君 五月二十九日  前田武志君が委員長指名で、主査選任され  た。 ————————————————————— 平成八年五月三十日(木曜日)     午前十時開議 出席分科員   主 査 前田 武志君       伊藤宗一郎君    岸田 文雄君       栗本慎一郎君    佐藤 剛男君       根本  匠君    福田 康夫君       千葉 国男君    鳥居 一雄君       吉田  治君    赤松 広隆君       濱田 健一君    兼務 荒井 広幸君 兼務 栗原 博久君    兼務 西  博義君  出席国務大臣         文 部 大 臣 奥田 幹生君         労 働 大 臣 永井 孝信君  出席政府委員         文部政務次官 日下部禧代子君         文部大臣官房長 佐藤 禎一君         文部省初等中等         教育局長    遠山 耕平君         文部省教育助成         局長      小林 敬治君         文部省高等教育         局長      雨宮  忠君         文部省学術国際         局長      林田 英樹君         文化庁次長   小野 元之君         厚生政務次官  住  博司君         厚生省健康政策         局長      谷  修一君         厚生省保健医療         局長      松村 明仁君         厚生省社会・援         護局長     佐々木典夫君         厚生省児童家庭         局長      高木 俊明君         厚生省保険局長 岡光 序治君         労働大臣官房長 渡邊  信君         労働省労政局長 七瀬 時雄君         労働省労働基準         局長      松原 亘子君         労働省婦人局長 太田 芳枝君         労働省職業安定         局長      征矢 紀臣君         労働省職業能力         開発局長    伊藤 庄平君  分科員外出席者         大蔵省主計局司         計課長     田頭 基典君         文部大臣官房会         計課長     矢野 重典君         文部省体育局学         校健康教育課長 北見 耕一君         厚生省老人保健         福祉局老人福祉          計画課長    吉冨 宣夫君         通商産業省産業         政策局産業構造         課産業技術企画         官       福田 秀敬君         中小企業庁計画         部振興課長   高原 一郎君         会計検査院事務         総長官房審議官 諸田 敏朗君         会計検査院事務         総長官房審議官 増田 裕夫君         会計検査院事務         総局第二局長  森下 伸昭君         会計監査院事務         総局第四局長  五十嵐清人君         環境衛生金融公         庫理事長    坂本 龍彦君         決算委員会調査         室長      天野  進君     ————————————— 分科員の異動 五月三十日  辞任         補欠選任   伊藤宗一郎君     根本  匠君   宇野 宗佑君     佐藤 剛男君   鳥居 一雄君     千葉 国男君   赤松 広隆君     竹内  猛君 同日  辞任         補欠選任   佐藤 剛男君     栗本慎一郎君   根本  匠君     岸田 文雄君   千葉 国男君     吉田  治君   竹内  猛君     秋葉 忠利君 同日  辞任         補欠選任   岸田 文雄君     伊藤宗一郎君   栗本慎一郎君     宇野 宗佑君   吉田  治君     鳥居 一雄君   秋葉 忠利君     濱田 健一君 同日  辞任         補欠選任   濱田 健一君     赤松 広隆君 同日  第一分科員栗原博久君、第三分科員西博義君及  び第四分科員荒井広幸君が本分科兼務となっ  た。     ————————————— 本日の会議に付した案件  平成年度一般会計歳入歳出決算  平成年度特別会計歳入歳出決算  平成年度国税収納金整理資金受払計算書  平成年度政府関係機関決算書  平成年度国有財産増減及び現在額総計算書  平成年度国有財産無償貸付状況計算書  平成年度一般会計歳入歳出決算  平成年度特別会計歳入歳出決算  平成年度国税収納金整理資金受払計算書  平成年度政府関係機関決算書  平成年度国有財産増減及び現在額総計算書  平成年度国有財産無償貸付状況計算書  (文部省厚生省所管環境衛生金融公庫及び  労働省所管)      ————◇—————
  2. 前田武志

    前田主査 これより決算委員会第二分科会を開会いたします。  私が本分科会主査を務めることになりました。どうぞよろしくお願いいたします。  本分科会は、総理府(防衛庁・防衛施設庁)、外務省、文部省厚生省所管環境衛生金融公庫及び労働省所管についての審査を行うことになっております。  なお、各省庁の審査に当たっては、その冒頭に決算概要説明会計検査院検査概要説明及び会計検査院指摘に基づき講じた措置についての説明を聴取することといたします。  平成年度決算外二件及び平成年度決算外二件中、本日は、厚生省所管環境衛生金融公庫労働省及び文部省所管について審査を行います。  これより厚生省所管環境衛生金融公庫について審査を行います。  まず、概要説明を聴取いたします。住厚生政務次官
  3. 住博司

    住政府委員 平成年度及び平成年度厚生省所管一般会計及び特別会計決算概要について御説明申し上げます。  まず、平成年度一般会計歳出決算額につきましては、歳出予算現額十三兆五十三億八千百八十二万円余に対しまして、支出済み歳出額十二兆九千百八十三億八千六百三十九万円余、翌年度繰越額四百八十六億八千六百九十八万円余、不用額三百八十三億八百四十五万円余で決算を結了いたしました。  次に、平成年度特別会計決算について申し上げます。  第一に、厚生保険特別会計につきましては、収納済み歳入額から支出済み歳出額及び翌年度繰越額を差し引いた七兆二千七十一億七千八百九十三万円余につきまして、この会計積立金として積み立てたほか、翌年度歳入に繰り入れ、また、事業運営安定資金及び特別保健福祉事業資金に組み入れることといたしまして、決算を結了いたしました。  第二に、船員保険特別会計につきましては、収納済み歳入額から支出済み歳出額及び超過受入額を差し引きました百十億千五百二十四万円余について、この会計積立金として積み立てることといたしまして、決算を結了いたしました。  第三に、国立病院特別会計につきましては、収納済み歳入額から支出済み歳出額及び翌年度繰越額を差し引きました二百四十二億三千百三十七万円余につきまして、この会計積立金として積み立てることとして、決算を結了いたしました。  第四に、国民年金特別会計につきましては、収納済み歳入額から支出済み歳出額及び超過受入額を差し引きました一兆七千二億千七十二万円余につきまして、この会計積立金として積み立てたほか、翌年度歳入に繰り入れることにいたしまして、決算を結了いたしました。  続きまして、平成年度一般会計歳出決算額について申し上げます。  歳出予算現額十三兆七千百三十一億千九百八十一万円余に対しまして、支出済み歳出額十三兆五千八百五十二億七千百四十三万円余、翌年度繰越額九百五十三億二千七百十二万円余、不用額三百二十五億二千百二十四万円余で決算を結了いたしました。  最後に、平成年度特別会計決算について申し上げます。  第一に、厚生保険特別会計につきましては、収納済み歳入額から支出済み歳出額及び翌年度繰越額を差し引いた六兆七千六十億五千八百五十七万円余について、この会計積立金として積み立てたほか、翌年度歳入に繰り入れ、また、事業運営安定資金及び特別保健福祉事業資金に組み入れることとして、決算を結了いたしました。  第二に、船員保険特別会計につきましては、収納済み歳入額から支出済み歳出額及び超過受入額を差し引いた八十七億九千七百五万円余について、この会計積立金として積み立てることとしまして、決算を結了いたしました。  第三に、国立病院特別会計につきましては、収納済み歳入額から支出済み歳出額及び翌年度繰越額を差し引きました百八十六億八千六百四十一万円余について、この会計積立金として積み立てることとして、決算を結了いたしました。  第四に、国民年金特別会計につきましては、収納済み歳入額から支出済み歳出額及び超過受入額を差し引いた一兆七千五百五十億三千六百三十一万円余について、この会計積立金として積み立てたほか、翌年度歳入に繰り入れることとして、決算を結了いたしました。  以上をもちまして、厚生省所管に属する平成年度及び平成年度一般会計及び特別会計決算説明を終わります。  何とぞよろしく御審議のほどお願いを申し上げます。
  4. 前田武志

    前田主査 次に、会計検査院検査概要説明を聴取いたします。会計検査院森下第二局長
  5. 森下伸昭

    森下会計検査院説明員 平成年度厚生省決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、法律政令もしくは予算に違反しまたは不当と認めた事項百四十六件、意見を表示しまたは処置を要求した事項一件及び本院の指摘に基づき当局において改善処置を講じた事項一件であります。  まず、法律政令もしくは予算に違反しまたは不当と認めた事項について御説明いたします。  検査報告番号二六号は、健康保険及び厚生年金保険保険料徴収額が不足していたものであります。  検査報告番号二七号は、厚生年金保険老齢厚生年金等支給が適正に行われていなかったものであります。  検査報告番号二八号から一二七号までの百件は、入院医学管理料処置料注射料等診療報酬支払いが適切でなく、これに対する国の負担が不当と認められるものであります。  検査報告番号一二八号から一三四号までの七件は、生活保護費負担金が過大に交付されていたものであります。  検査報告番号一三五号から一四四号までの十件は、老人福祉施設保護費負担金算定において、国庫負担対象事業費が過大に精算されていたものであります。  検査報告番号一四五号から一六二号までの十八件は、児童保護費等負担金算定において、国庫負担対象事業費が過大に精算されていたものであります。  検査報告番号一六三号から一六八号までの六件は、国民健康保険財政調整交付金が過大に交付されていたものであります。  検査報告番号一六九号及び一七〇号の二件は、国民健康保険保険基盤安定負担金が過大に交付されていたものであります。  検査報告番号一七一号は、職員不正行為による損害が生じたもので、国立病院歳入金出納事務に従事していた職員が、診療収入として受領した現金を領得したものであります。  次に、意見を表示しまたは処置を要求した事項について御説明いたします。  これは、柔道整復師の施術に係る療養費支給に関し、療養費支給対象とならないものや請求内容に疑義があったりしている事態が見受けられましたので、厚生省に対し、是正改善処置を要求したものであります。  次に、本院の指摘に基づき当局において改善処置を講じた事項について御説明いたします。  これは、政府管掌健康保険成人病予防健診事業における委託費支払いに関し、実施されなかった検査項目に係る委託費が過大に支払われていましたのでこれについて指摘したところ、改善処置がとられたものであります。  続きまして、平成年度厚生省決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、法律政令もしくは予算に違反しまたは不当と認めた事項百四十九件、意見を表示しまたは処置を要求した事項二件及び本院の指摘に基づき当局において改善処置を講じた事項一件であります。  まず、法律政令もしくは予算に違反しまたは不当と認めた事項について御説明いたします。  検査報告番号一二号は、健康保険及び厚生年金保険保険料徴収額が不足していたものであります。  検査報告番号一三号は、厚生年金保険老齢厚生年金等及び国民年金老齢基礎年金支給が適正に行われていなかったものであります。  検査報告番号一四号から一〇六号までの九十三件は、処置料入院医学管理料看護料等診療報酬支払いが適切でなく、これに対する国の負担が不当と認められるものであります。  検査報告番号一〇七号から一一〇号までの四件は、医療施設運営費等補助金算定において、補助対象事業費が過大に精算されていたものであります。  検査報告番号一一一号から一一七号までの七件は、生活保護費負担金が過大に交付されていたものであります。  検査報告番号一一八号から一三六号までの十九件は、老人福祉施設保護費負担金算定において、国庫負担対象事業費が過大に精算されていたものであります。  検査報告番号一三七号から一五六号までの二十件は、児童保護費等負担金算定において、国庫負担対象事業費が過大に精算されていたものであります。  検査報告番号一五七号から一六〇号までの四件は、国民健康保険普通調整交付金が過大に交付されていたものであります。  次に、意見を表示しまたは処置を要求した事項について御説明いたします。  その一は、児童保護費等負担金保育所分)の算定における児童の属する世帯階層区分に関し、同じ前年分の所得税課税世帯であって同程度の負担能力があると認められるのに、前年度分の市町村民税非課税世帯課税世帯との間で徴収金の額に開差を生ずる取り扱いとなっていましたので、厚生省に対し、改善処置を要求したものであります。  その二は、年金支給に係る過誤払いの防止に関し、提出されない死亡届を待つことなく、厚生省大臣官房に提出されている市町村住民死亡に関する情報を活用する方策を講じる要があり、この死亡者情報の活用ができれば、死亡後二カ月を超える期間についての過誤払いの発生を未然に防止することが可能でありましたので、社会保険庁に対し、改善処置を要求したものであります。  次に、本院の指摘に基づき当局において改善処置を講じた事項について御説明いたします。  これは、季節的業務に従事する酒造従業員に対する健康保険及び厚生年金保険の適用に関し、両保険が適用されておらず、保険料が徴収されていませんでしたのでこれについて指摘したところ、改善処置がとられたものであります。  以上をもって概要説明を終わります。
  6. 前田武志

  7. 増田裕夫

    増田会計検査院説明員 平成年度環境衛生金融公庫決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。  次に、平成年度環境衛生金融公庫決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
  8. 前田武志

    前田主査 ただいまの会計検査院指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。住厚生政務次官
  9. 住博司

    住政府委員 平成年度及び平成年度決算検査報告において掲記されております事項につきましては、会計検査院の御指摘のとおりでございまして、まことに遺憾にたえないところでございます。  御指摘を受けました事項につきましては、直ちに是正措置を講じましたが、今後なお一層厳正な態度をもって事務の執行の適正を期する所存でございます。
  10. 前田武志

    前田主査 この際、お諮りいたします。  お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  11. 前田武志

    前田主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。     —————————————    平成四年度厚生省所管一般会計及び特別会計決算に関する説明  平成四年度厚生省所管一般会計及び特別会計決算につきまして御説明申し上げます。  まず、一般会計歳出決算額につきましては、当初予算額十二兆七千六百七十億二千七百八万円余でありましたが、その後、予算補正追加額千三百二十五億五百五十二万円余、予算補正修正減少額五百三十四億四千四百六十九万円余、予算移替増加額五百五十七億三千八百六十七万円余、前年度繰越額四百七十二億二千百四十二万円余、予備費使用額五百六十三億三千三百八十一万円余、差引二千三百八十三億五千四百七十四万円余を増加し、歳出予算現額は十三兆五十三億八千百八十二万円余となりました。  この歳出予算現額に対し、支出済歳出額は十二兆九千百八十三億八千六百三十九万円余、翌年度繰越額は四百八十六億八千六百九十八万円余、不用額は三百八十三億八百四十五万円余で決算を結了いたしました。  次に、その主な事項につきまして、概要を御説明申し上げます。  第一は、生活保護費であります。  生活保護費につきましては、生活保護法による生活扶助住宅扶助教育扶助等に要する経費として、総額一兆百七十六億三千三百五十九万円余を支出しております。  第二は、社会福祉費であります。  老人福祉費につきましては、老人保健法に基づく老人医療の給付に必要な経費のほか、特別養護老人ホーム等の運営に要する経費として、一兆七千百二十三億五千九百十三万円余を支出しております。  また、寝たきり老人等に対する在宅福祉対策として、ホームヘルプサービス事業デイサービス事業ショートステイ事業等に要する経費を支出しております。  児童保護費につきましては、児童福祉対策障害児(者)対策、母子保健衛生対策に要する経費として、五千三百三十一億五千六百六十九万円余を支出しております。  さらに、児童扶養手当及び特別児童扶養手当につきましては、これらの支給に要する経費として、二千七百二十九億千二百八十万円余を支出しております。  また、身体障害者福祉対策として、「障害者の明るいくらし」促進事業、「住みよい福祉のまちづくり事業身体障害者デイサービス事業障害者のための小規模作業所に対する助成、在宅の重度障害者に対する特別障害者手当等の支給及び身体障害者更生援護施設の運営のための経費を支出しております。  このほか、社会福祉施設整備費につきましては、特別養護老人ホーム障害者福祉施設等各種社会福祉施設及び地方改善施設の整備に対して千二百二十二億二千二百六万円余を支出しております。  以上、社会福祉費として、総額二兆八千六百八十二億六千百八十万円余を支出しております。  第三は、社会保険費であります。  国民健康保険事業につきましては、平成四年度末における保険者数は、三千四百十九であり、その被保険者数は、四千二百三十万余人となっております。  平成四年度におきましては、国民健康保険の医療及び事務等に要する経費として、二兆六千三百九十億六千二百八十二万円余を支出しております。  また、社会保険国庫負担厚生年金保険国庫負担及び国民年金国庫負担に要する経費として、五兆千百三十五億五千五十四万円余を支出しております。  このほか、児童手当の給付及び事務に要する経費として、四百三十八億八千七百七十三万円余を支出しております。  以上、社会保険費として、総額七兆八千百億二千六百六十八万円余を支出しております。  第四は、保健衛生対策費であります。  原爆障害対策費につきましては、医療特別手当健康管理手当等の支給に要する経費として、千三百十億九千六百七万円余を支出しております。  精神保健費につきましては、精神保健法に基づく措置入院及び通院医療公費負担に要する経費として、四百七億千七百六十五万円余を支出しております。  このほか、結核医療費として、二百八十三億二千三百八十三万円余、疾病予防及び健康づくり推進、保健所、らい予防対策老人保健法による保健事業に要する経費等保健衛生諸費として、千二百七十二億千二百六十八万円余を、それぞれ支出しております。  以上、保健衛生対策費として、総額六千四百九十二億九千三十八万円余を支出しております。  第五は、遺族及び留守家族等援護費であります。  戦傷病者戦没者遺族等援護対策につきましては、遺族年金遺族給与金等の支給を行ったほか、ソ連抑留死亡者等遺骨収集及び慰霊巡拝等のための経費を支出しております。  また、中国残留孤児等援護対策につきましては、自立支援体制の強化を図るための就労安定化事業等のための経費を支出し、遺族及び留守家族等援護費として、総額千二百七十六億五千五百七十三万円余を支出しております。  第六は、環境衛生施設整備費であります。  環境衛生施設の整備を推進するため、平成四年度は、廃棄物処理施設千八百七十五か所、簡易水道等施設九百六十五か所、水道水源開発等施設五百八十か所の整備に対して、環境衛生施設整備関係費として、総額三千四十四億六千六百六十万円余を支出しております。  次に、特別会計決算概要につきまして御説明申し上げます。  第一は、厚生保険特別会計決算であります。  厚生保険特別会計につきましては、一般会計から三兆六千百三十一億四千三百六十九万円余を繰り入れました。  まず、健康勘定決算額について申し上げますと、収納済歳入額七兆五千七百九十二億百三十五万円余、支出済歳出額七兆五千五百十一億四千七百四十七万円余でありまして、差引二百八十億五千三百八十七万円余については、事業運営安定資金に組み入れることとして、決算を結了いたしました。  なお、平成四年度末の事業所数は、百三十九万余か所、年度平均保険者数は、千九百九万余人に達しております。  次に、年金勘定でありますが、その決算額は、収納済歳入額三十一兆六千六百十九億七百四十二万円余、支出済歳出額二十四兆五千四百四十六億六千四百八十五万円余でありまして、差引七兆千百七十二億四千二百五十六万円余については、この勘定の積立金として積み立てることとして、決算を結了いたしました。  なお、平成四年度末の事業所数は、百五十四万余か所、年度平均保険者数は、三千二百七十八万余人に達しております。  次に、制度間調整勘定でありますが、その決算額は、収納済歳入額八兆三千六百二十七億四千五十六万円余、支出済歳出額八兆三千六百二十七億四千五十六万円余で、決算を結了いたしました。  次に、児童手当勘定でありますが、その決算額は、収納済歳入額二千二百三十三億二千四百十三万円余、支出済歳出額千八百五十五億六千六百四十七万円余、翌年度繰越額二千七百三十五万円余でありまして、差引三百七十七億三千三十万円余については、このうち八十七億二千二百七十四万円余をこの勘定の積立金として積み立て、二百九十億七百五十六万円余については、翌年度の歳入に繰り入れることとして、決算を結了いたしました。  なお、年度平均支給対象児童数は、二百四十八万余人であります。  最後は、業務勘定でありますが、その決算額は、収納済歳入額六千三百五十五億二千九百四十七万円余、支出済歳出額六千百十三億七千七百二十八万円余でありまして、差引二百四十一億五千二百十八万円余については、このうち、三十七億五千百二十二万円余については、事業運営安定資金に、百九十七億四千六十八万円余については、年金勘定積立金に組み入れ、二億千五百十六万円余については、翌年度の歳入に繰り入れ、四億四千五百九万円余については、特別保健福祉事業資金に組み入れることとして、決算を結了いたしました。  第二は、船員保険特別会計決算であります。  船員保険特別会計につきましては、一般会計から六十四億四千九十二万円余を繰り入れました。  その決算額は、収納済歳入額千百五十六億三千三十四万円余、支出済歳出額千三十五億九千七百七十七万円余、超過受入額十億千七百三十二万円余でありまして、差引百十億千五百二十四万円余については、この会計積立金として積み立てることとして、決算を結了いたしました。  なお、年度平均保険者数は、十二万余人であります。  第三は、国立病院特別会計決算であります。  国立病院特別会計につきましては、一般会計から二千五百八十三億二千九百三十一万円余を繰り入れました。  まず、病院勘定の決算額について申し上げますと、収納済歳入額五千四百六十三億四千七百六十一万円余、支出済歳出額五千二百八十四億六千三百十七万円余、翌年度繰越額十五億九千七百六十二万円余でありまして、差引百六十二億八千六百八十一万円余については、この勘定の積立金として積み立てることとして、決算を結了いたしました。  なお、平成四年度の事業概況を申し上げますと、入院患者数は、一日平均三万余人、外来患者数は、一日平均五万千余人であります。  次に、療養所勘定でありますが、その決算額は、収納済歳入額四千三百三十七億五千五百九十八万円余、支出済歳出額四千二百四十五億四千九百二十四万円余、翌年度繰越額十二億六千二百十七万円余でありまして、差引七十九億四千四百五十六万円余については、この勘定の積立金として積み立てることとして、決算を結了いたしました。  なお、平成四年度の事業概況を申し上げますと、入院患者数は、一日平均三万八千余人、外来患者数は、一日平均一万七千余人であります。  第四は、国民年金特別会計決算であります。  国民年金特別会計につきましては、一般会計から一兆五千三百七十八億五千三百六十六万円余を繰り入れました。  まず、基礎年金勘定決算額について申し上げますと、収納済歳入額九兆四千九百七十三億三千八百九十四万円余、支出済歳出額八兆六千二百六十七億千百七十万円余でありまして、差引八千七百六億二千七百二十三万円余については、翌年度の歳入に繰り入れることとして、決算を結了いたしました。  次に、国民年金勘定でありますが、その決算額は、収納済歳入額六兆四千五百六十六億五千二百十七万円余、支出済歳出額五兆四千五百六十二億二千九百十万円余、超過受入額二千三百二十一億三百四十一万円余でありまして、差引七千六百八十三億千九百六十六万円余については、この勘定の積立金として積み立てることとして、決算を結了いたしました。  なお、平成四年度末の被保険者数は、三千六十二万余人であります。  次に、福祉年金勘定でありますが、その決算額は、収納済歳入額三千二百八十五億八千三十一万円余、支出済歳出額二千七百二十九億六千七百三十一万円余でありまして、差引五百五十六億千三百万円余については、翌年度の歳入に繰り入れることとして、決算を結了いたしました。  最後は、業務勘定でありますが、その決算額は、収納済歳入額一兆六千四百九十七億八千三百五十六万円余、支出済歳出額一兆六千四百四十一億三千二百七十四万円余でありまして、差引五十六億五千八十二万円余については、このうち、二十億二千七百五十七万円余を国民年金勘定の積立金に組み入れ、三十六億二千三百二十四万円余については、翌年度の歳入に繰り入れることとして、決算を結了いたしました。  以上をもちまして、厚生省所管に属する一般会計及び特別会計決算説明を終わります。  何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。     …………………………………    平成四年度決算厚生省についての検査の概要に関する主管局長説明                 会計検査院  平成四年度厚生省決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、法律、政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項百四十六件、意見を表示し又は処置を要求した事項一件及び本院の指摘に基づき当局において改善処置を講じた事項一件であります。  まず、法律、政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項について御説明いたします。  検査報告番号二六号は、健康保険及び厚生年金保険保険料の徴収に当たり、徴収額が不足していたもので、事業主が制度を十分理解していなかったなどして、保険料算定の基礎となる被保険者資格取得届の提出を怠っていたものなどがあったのに、これに対する調査確認及び指導が十分でなかったため、保険料徴収額が不足していたものであります。  検査報告番号二七号は、厚生年金保険老齢厚生年金等の支給が適正でなかったもので、年金の受給権者が被保険者資格を取得した際の被保険者資格取得届の提出を事業主が怠っていたものなどがあったのに、これに対する調査確認及び指導が十分でなかったため、老齢厚生年金等の支給が適正を欠いたものであります。  検査報告番号二八号から一二七号までの百件は、医療費に係る国の負担が不当と認められるものであります。  これらについては医療機関が診療報酬の請求に当たり、  (1) 入院時医学管理料等については、医師及び看護婦等の数が所定の数以下であるのに、翌月分の請求に当たり所定の減額をしないで算定していたり、特例許可外老人病院であるのに、点数の高い特例許可老人病院の入院時医学管理料を算定したりしていたものが十三件、  (2) 処置料等については、人工腎臓実施中に食事を給与した際に、要件を満たしていないのに所定の点数に医療用食品加算を行って請求していたり、実際の処置よりも高い点数の処置を行ったとして皮膚科軟膏処置料を算定していたりなどしていたものが二十八件、  (3) 注射料等については、人工透析の患者に対して人工腎臓の回路を通して行った静脈内注射、点滴注射等について、人工透析の処置料のほかに注射に係る技術料を別途に算定するなどしていたものが二十一件、  (4) 検査料等については、多くの患者について検体検査を毎月画一的に繰り返し実施しこれに係る検査料を算定するなどしていたものが十二件、  (5) 老人基本診療料等については、特別養護老人ホームの嘱託医が同ホームに赴いて入所者に行った診療について、算定できないこととされている老人初診時基本診療料、老人再診時基本診療料等を算定するなどしていたものが十一件、  (6) そのほか不適切と認められたものが室料等について四件、給食料について三件、リハビリテーション料等について四件、救命救急入院料等について四件ありました。  これらはいずれも審査等が十分でなかったことなどのため、市町村等における医療費の支払いが適切でなく、国の負担が適正を欠いたものであります。  検査報告番号一二八号から一三四号までの七件は、生活保護費負担金の経理が不当と認められるものであります。  この負担金は、都道府県又は市町村(特別区を含む。)が、資産及び能力等あらゆるものを活用してもなお生活に困窮する者に対し保護を行う場合に、その費用の一部を負担するものであります。そして、山形県山形市ほか六事業主体では、被保護者が就労していて相当額の収入を得ていたり、年金を受給していたりしているのに、被保護世帯から事実と相違した届出がなされ、これにより収入を実際の額より過小に認定して保護費の額を決定し、保護費を不適正に支給したため、国庫負担金が過大に交付されていたものであります。  検査報告番号一三五号から一四四号までの十件は、老人福祉施設保護費負担金の経理が不当と認められるものであります。  この負担金は、身体上又は精神上の理由等により養護を要する老人を特別養護老人ホーム等に入所させ養護した都道府県又は市町村(特別区を含む。)に対して、その費用の一部を負担するものであります。そして、茨城県ほか九事業主体では、国庫負担対象事業費の精算に当たり、入所者やその扶養義務者からの徴収金の額を過小に算定していたため、国庫負担金が過大に精算されていたものであります。  検査報告番号一四五号から一六二号までの十八件は、児童保護費等負担金の経理が不当と認められるものであります。  この負担金は、保育に欠ける児童を保育所に入所させ保育した市町村(特別区を含む。)に対して、その費用の一部を負担するものであります。そして、青森県下北郡川内町ほか十七事業主体では、国庫負担対象事業費の精算に当たり、児童の扶養義務者からの徴収金の額を過小に算定していたため、国庫負担金が過大に精算されていたものであります。  検査報告番号一六三号から一六八号までの六件は、国民健康保険財政調整交付金の交付が不当と認められるものであります。  これは、日立市ほか五市町において、国民健康保険保険料(税)の賦課額を一律に減額するなどして調定額を過小としたり、収納額を過大にしたりして、財政調整交付金の交付額を算定するときの基礎となっている保険料収納割合を事実と相違した高い割合で交付申請を行っていたこと、及びこれに対する茨城県ほか四府県の審査が十分でなかったことなどのため、普通調整交付金が減額を全部又は一部免れて過大に交付されたり、交付すべきでない特別調整交付金が交付されたりしていたものであります。  検査報告番号一六九号及び一七〇号の二件は、国民健康保険保険基盤安定負担金の交付が不当と認められるものであります。  これは、津市及び南島町において、国民健康保険保険料の被保険者に対する減額を行っていないのに行ったことにするなどして交付申請を行っていたこと、及びこれに対する三重県の審査が十分でなかったことなどのため、保険基盤安定負担金が過大に交付されていたものであります。  検査報告番号一七一号は、職員の不正行為による損害が生じたものであります。  これは、国立病院医療センターで、会計課の歳入係長が、歳入金の収納事務に従事中、患者から診療収入として受領した収入官吏保管の現金を領得したものであります。  なお、本件損害額については、五年九月に全額が同人の家族から返納されております。  次に、意見を表示し又は処置を要求した事項について御説明いたします。  これは、柔道整復師の施術に係る療養費の支給に関するものであります。  柔道整復師法に基づき厚生大臣の免許を受けて柔道整復を業とする者が、骨、筋、関節等に各種の外力が加わることにより生ずる骨折、脱臼、打撲、捻挫の患部を整復した場合、その施術料は、療養の給付に代えて支給されるものであります。  したがって、施術料は医療機関の治療を受けている負傷部位についてはその支給対象とはならず、また、リウマチ等の内因性疾患については柔道整復師の施術対象とはならないこととされております。  そして、施術は患者の療養上適切かつ妥当なものでなければならず、また、療養上必要な範囲及び限度で行うものとし、とりわけ、長期又は濃厚な施術にならないように努めなければならないものとされております。また、施術に係る療養費については、患者からの受領委任を受けた柔道整復師に支給することが認められております。  しかし、調査したところ、療養費が、柔道整復師の施術の対象とならない傷病について請求されていたり、患者の療養上必要な範囲及び限度を超えて行われた施術について請求されていたり、なかには架空・付増しの請求をしたりなどしている事態が見受けられました。  したがいまして、厚生省におきまして、柔道整復師保険者等に療養費制度及び受領委任制度の趣旨を周知徹底させるとともに、算定基準等について所要の改正を行い、審査体制の整備を図るよう是正改善処置を要求したものであります。  次に、本院の指摘に基づき当局において改善処置を講じた事項について御説明いたします。  これは、政府管掌健康保険成人病予防健診事業における委託費の支払方法に関するものであります。  社会保険庁では、政府管掌健康保険の被保険者等に対して成人病予防健診事業を行っており、その事務の一部を都道府県知事に行わせております。都道府県知事は、社会保険庁の定めた実施要綱に基づき、毎年四月に健康保険健康管理センターなどの健診実施機関と一般健診、日帰り人間ドックなどの健診の委託契約を締結しております。  実施機関は、健診を実施したときには、健診費用から受診者負担額を差し引いた額を国の負担額として都道府県知事に翌月請求することとされております。そして、都道府県知事は、その請求があったときにはその内容を審査確認して、国の負担額を健診事業委託費として実施機関に支払うこととされております。  上記の事業について調査しましたところ、一般健診又は日帰り人間ドックを受診した者のうち、健診の検査項目の一部である胃部レントゲン検査又は胸部レントゲン検査を受診しなかった者が相当数見受けられました。そして、これら実施されなかった検査項目に対しても委託費が支払われていたと認められましたので、当局の見解をただしましたところ、社会保険庁では、五年十月に各都道府県に対し、健診の検査項目の一部が実施されなかった場合には委託費を減額して実施機関に支払うこととする通知を発し、同年十一月以降健診を受診する者から適用することとする処置を講じたものであります。  なお、以上のほか、平成元年度決算検査報告に掲記いたしましたように、母子福祉資金及び寡婦福祉資金の貸付事業の運営について、平成三年度決算検査報告に掲記いたしましたように、保健事業費等負担金の精算、身体障害者療護施設等の入所者に係る診療報酬の請求及び国民年金の未納保険料の収納の促進について、それぞれ意見を表示し又は処置を要求いたしましたが、これらに対する厚生省処置状況についても掲記いたしました。  以上をもって概要説明を終わります。     …………………………………    平成四年度決算検査報告に対する説明                 厚 生 省  平成四年度の決算検査報告において、不当事項として指摘を受けましたものは、健康保険及び厚生年金保険保険料徴収額が不足していたもの一件、厚生年金保険老齢厚生年金等の支給が適正でなかったもの一件、医療費に係る国の負担が不当と認められるもの百件、生活保護費負担金老人福祉施設保護費負担金及び児童保護費等負担金の補助事業の経理が不当と認められるもの三十五件、国民健康保険財政調整交付金及び保険基盤安定負担金の交付が不当と認められるもの八件及び職員の不正行為による損害が生じたもの一件であります。  意見を表示され又は処置を要求された事項は、柔道整復師の施術に係る療養費の支給が適切でなかったものであります。  不当事項として指摘を受けたもののうち、保険料の徴収不足については、既に徴収決定を完了し、これに基づき目下その収納に鋭意努力しているところでありますが、今後とも、適用事業主に対し、報酬に関する適正な届出のための指導・啓発の徹底を図るとともに、実地調査等のなお一層の強化を図り、保険料の徴収不足の解消に努力いたす所存であります。  厚生年金保険老齢厚生年金等の支給が適正でなかったとして指摘を受けたものについては、既に返還の措置を講じたところでありますが、今後とも、年金受給権者及び適用事業主に対し、適正な届出のための指導・啓発の徹底を図るとともに、関係書類の審査等のなお一層の強化を図り、その支給の適正化に努力いたす所存であります。  医療費に係る国の負担が不当と認められるとして指摘を受けたものについては、既に返還の措置を講じたところでありますが、今後とも診療報酬明細書の点検、調査の充実・強化及び保険医療機関等に対する指導の積極的な実施について、都道府県に対し、指導の徹底を図り、適正な保険診療が確保されるよう努力いたす所存であります。  生活保護費負担金老人福祉施設保護費負担金及び児童保護費等負担金の過大精算のため不当であるとの指摘を受けたものについては、既に返還の措置を講じたところでありますが、今後は、このようなことのないよう事業主体に対する指導を一層徹底し、補助事業の適正な執行に万全を期する所存であります。  国民健康保険財政調整交付金及び保険基盤安定負担金の交付が不当と認められるとして指摘を受けたものについては、既に返還の措置を講じたところでありますが、今後とも、保険者に対し、適正な交付申請等のための指導・啓発の徹底を図るとともに、国及び都道府県においても交付申請書の審査等のなお一層の強化を図り、財政調整交付金及び保険基盤安定負担金の適正な交付に努力いたす所存であります。  職員の不正行為による損害が生じたものとして指摘を受けたものについては、既に全額が返納されたところでありますが、今後は、このようなことのないよう各国立病院等に対する指導を一層徹底し、会計経理の適正化に万全を期する所存であります。  意見を表示され又は処置を要求された柔道整復師の施術に係る療養費の支給が適切でなかったものについては、御指摘の趣旨を踏まえ、所要の措置を講じて参る所存であります。     …………………………………    平成四年度環境衛生金融公庫の業務の概況  環境衛生金融公庫平成四年度の業務の概況につきまして御説明申し上げます。  環境衛生金融公庫は、公衆衛生の見地から国民の日常生活に密接な関係のある環境衛生関係の営業について、衛生水準を高め、及び近代化を促進するために必要な資金であって、一般の金融機関が融通することを困難とするものを融通し、もって公衆衛生の向上及び増進に資することを目的とするものであります。  平成四年度の貸付計画額は、三千百億円を予定いたしました。  この計画に対しまして、貸付実績は、三千二十一億円余でありまして、これを前年度と比較いたしますと、三十五・八パーセントの増となっております。  次に貸付残高について、御説明申し上げます。  平成三年度末における貸付残高は、七千六百四十九億一千万円余でありましたが、平成四年度中に三千二十一億八千万円余の貸付を行い、一千六百四十四億二千万円余を回収いたしましたので、平成四年度末における貸付残高は、九千二十六億七千万円余となっております。  なお、貸付金の延滞状況につきましては、平成四年度末におきまして延滞後六カ月以上経過したものが、百三十二億三千万円余でありまして、このうち一年以上のものは、百十八億五千万円余で総貸付金残高の一・三パーセントとなっております。  次に平成四年度の収入支出決算について御説明いたします。  まず、収入におきましては、収入済額は、五百五十五億九千万円余でありまして、これを収入予算額五百五十七億九千万円余に比較しますと、二億円余の減少となっております。この減少いたしました主な理由は、貸付金利息収入が予定より少なかったためであります。  次に、支出におきましては、支出済額は、五百十二億四千万円余でありまして、これを支出予算現額五百四十一億五千万円余に比較しますと、二十九億一千万円余の減少となっておりますが、これは借入金利息等が予定より減少したためであります。  最後に平成四年度における損益について申し上げますと、貸付金利息等の総利益は、五百八十三億五千万円余、借入金利息、業務委託費、事務費、貸倒引当金繰入等の総損失は、五百八十三億五千万円余となりました。  この結果、利益金は生じなかったので国庫納付はありませんでした。  以上が、平成四年度における環境衛生金融公庫の業務の概況であります。なにとぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。     —————————————    平成五年度厚生省所管一般会計及び特別会計決算に関する説明  平成五年度厚生省所管一般会計及び特別会計決算につきまして御説明申し上げます。  まず、一般会計歳出決算額につきましては、当初予算額十三兆千七百五十二億九十七万円余でありましたが、その後、予算補正追加額三千七百四十六億三千九百二十七万円余、予算補正修正減少額三百四十三億九千二百三十万円余、予算移替増加額八百二億五千三百三十一万円余、前年度繰越額四百八十六億八千六百九十八万円余、予備費使用額六百八十七億三千百五十七万円、差引五千三百七十九億千八百八十三万円余を増加し、歳出予算現額は十三兆七千百三十一億千九百八十一万円余となりました。  この歳出予算現額に対し、支出済歳出額は十三兆五千八百五十二億七千百四十三万円余、翌年度繰越額は九百五十三億二千七百十二万円余、不用額は三百二十五億二千百二十四万円余で決算を結了いたしました。  次に、その主な事項につきまして、概要を御説明申し上げます。  第一は、生活保護費であります。  生活保護費につきましては、生活保護法による生活扶助住宅扶助教育扶助等に要する経費として、総額一兆四百三十二億二千四百四十一万円余を支出しております。  第二は、社会福祉費であります。  老人福祉費につきましては、老人保健法に基づく老人医療の給付に必要な経費のほか、特別養護老人ホーム等の運営に要する経費として、一兆八千二百八億六千四百五十五万円余を支出しております。  また、寝たきり老人等に対する在宅福祉対策として、ホームヘルプサービス事業デイサービス事業ショートステイ事業等に要する経費を支出しております。  児童保護費につきましては、児童福祉対策障害児(者)対策、母子保健衛生対策に要する経費として、五千五百六億八千二百二十四万円余を支出しております。  さらに、児童扶養手当及び特別児童扶養手当につきましては、これらの支給に要する経費として、三千十三億五千百八十万円余を支出しております。  また、身体障害者福祉対策として、「障害者の明るいくらし」促進事業、「住みよい福祉のまちづくり事業身体障害者デイサービス事業障害者のための小規模作業所に対する助成、在宅の重度障害者に対する特別障害者手当等の支給及び身体障害者更生援護施設の運営のための経費を支出しております。  このほか、社会福祉施設整備費につきましては、特別養護老人ホーム障害者福祉施設等各種社会福祉施設及び地方改善施設の整備に対して千五百三十一億三百三万円余を支出しております。  以上、社会福祉費として、総額三兆五百七十一億六百四十九万円余を支出しております。  第三は、社会保険費であります。  国民健康保険事業につきましては、平成五年度末における保険者数は、三千四百十八であり、その被保険者数は、四千二百五十二万余人となっております。  平成五年度におきましては、国民健康保険の医療及び事務等に要する経費として、二兆七千二十九億七千四百七十三万円余を支出しております。  また、社会保険国庫負担厚生年金保険国庫負担及び国民年金国庫負担に要する経費として、五兆三千百四億六千七百九十三万円余を支出しております。  このほか、児童手当の給付及び事務に要する経費として、三百二十四億千九百十六万円余を支出しております。  以上、社会保険費として、総額八兆五百九十六億九千三百四十八万円余を支出しております。  第四は、保健衛生対策費であります。  原爆障害対策費につきましては、医療特別手当健康管理手当等の支給に要する経費として、千二百四十億三千四百二十一万円余を支出しております。  精神保健費につきましては、精神保健法に基づく措置入院及び通院医療公費負担に要する経費として、四百六億四千三百九十七万円余を支出しております。  このほか、結核医療費として、二百七十三億五千四百七十九万円余、疾病予防及び健康づくり推進、保健所、らい予防対策老人保健法による保健事業に要する経費等保健衛生諸費として、千百二十七億九千三百二十三万円余を、それぞれ支出しております。  以上、保健衛生対策費として、総額七千二百九十五億六千七百十二万円余を支出しております。  第五は、遺族及び留守家族等援護費であります。  戦傷病者戦没者遺族等援護対策につきましては、遺族年金等について恩給の引上げに準じて額の引上げを行うとともに、戦没者の妻及び父母等に対し交付国債による特別給付金の継続支給を行ったほか、ソ連抑留死亡者等に関する慰霊事業、戦没者追悼平和祈念館(仮称)事業、中国残留邦人の援護事業等のための経費を支出し、遺族及び留守家族等援護費として、総額千二百四十八億八千三百九十一万円余を支出しております。  第六は、環境衛生施設整備費であります。  環境衛生施設の整備を推進するため、平成五年度は、廃棄物処理施設二千三百六十二か所、簡易水道等施設千九十二か所、水道水源開発等施設六百七十二か所の整備に対して、環境衛生施設整備関係費として、総額四千二百四十七億七千三十三万円余を支出しております。  次に、特別会計決算概要につきまして御説明申し上げます。  第一は、厚生保険特別会計決算であります。  厚生保険特別会計につきましては、一般会計から三兆七千四百二十一億二千四百三十一万円余を繰り入れました。  まず、健康勘定決算額について申し上げますと、収納済歳入額七兆七千四百七十一億七百七十六万円余、支出済歳出額七兆八千百四十七億七千六百九十三万円余でありまして、差引六百七十六億六千九百十七万円余の不足については、事業運営安定資金から補足することとして、決算を結了いたしました。  なお、平成五年度末の事業所数は、百四十二万余か所、年度平均保険者数は、千九百四十一万余人に達しております。  次に、年金勘定でありますが、その決算額は、収納済歳入額三十二兆九千八百七十五億二千八百三十四万円余、支出済歳出額二十六兆二千五百二十五億四千三百三十九万円余でありまして、差引六兆七千三百四十九億八千四百九十五万円余については、この勘定の積立金として積み立てることとして、決算を結了いたしました。  なお、平成五年度末の事業所数は、百五十七万余か所、年度平均保険者数は、三千三百十万余人に達しております。  次に、制度間調整勘定でありますが、その決算額は、収納済歳入額八兆八千五百九十三億千五百六十九万円余、支出済歳出額八兆八千五百九十三億千五百六十九万円余で、決算を結了いたしました。  次に、児童手当勘定でありますが、その決算額は、収納済歳入額二千四十三億六千百五十九万円余、支出済歳出額千七百七億六千六百六十二万円余、翌年度繰越額五千八百三万円余でありまして、差引三百二十五億三千六百九十三万円余については、このうち三十六億八千二百一万円余をこの勘定の積立金として積み立て、二百九十八億五千四百九十一万円余については、翌年度の歳入に繰り入れることとして、決算を結了いたしました。  なお、年度平均支給対象児童数は、二百三十四万余人であります。  最後は、業務勘定でありますが、その決算額は、収納済歳入額六千五百二十二億八千百六万円余、支出済歳出額六千四百七十億七千五百二十万円余でありまして、差引五十二億五百八十六万円余については、このうち、十五億九千三百五万円余については、事業運営安定資金に、十五億三千三百四十九万円余については、年金勘定積立金に、一億八百万円余については、特別保健福祉事業資金に組み入れ、十九億七千百三十一万円余については、翌年度の歳入に繰り入れることとして、決算を結了いたしました。  第二は、船員保険特別会計決算であります。  船員保険特別会計につきましては、一般会計から六十億八千五百二十六万円余を繰り入れました。  その決算額は、収納済歳入額千百六十億千三百五十七万円余、支出済歳出額千六十四億四千四百六十二万円余、超過受入額七億七千百八十九万円余でありまして、差引八十七億九千七百五万円余については、この会計積立金として積み立てることとして、決算を結了いたしました。  なお、年度平均保険者数は、十一万余人であります。  第三は、国立病院特別会計決算であります。  国立病院特別会計につきましては、一般会計から三千三百八十億八千二百七十八万円余を繰り入れました。  まず、病院勘定の決算額について申し上げますと、収納済歳入額六千四百三十七億八千百五十八万円余、支出済歳出額六千四十四億五千百二十八万円余、翌年度繰越額三百八億七千百七十六万円余でありまして、差引八十四億五千八百五十三万円余については、この勘定の積立金として積み立てることとして、決算を結了いたしました。  なお、平成五年度の事業概況を申し上げますと、入院患者数は、一日平均三万余人、外来患者数は、一日平均五万二千余人であります。  次に、療養所勘定でありますが、その決算額は、収納済歳入額四千七百七十七億六千七百三十五万円余、支出済歳出額四千四百三十九億九百八十八万円余、翌年度繰越額二百三十六億二千九百五十八万円余でありまして、差引百二億二千七百八十八万円余については、この勘定の積立金として積み立てることとして、決算を結了いたしました。  なお、平成五年度の事業概況を申し上げますと、入院患者数は、一日平均三万七千余人、外来患者数は、一日平均一万七千余人であります。  第四は、国民年金特別会計決算であります。  国民年金特別会計につきましては、一般会計から一兆五千九百四十六億七千七百五十一万円余を繰り入れました。  まず、基礎年金勘定決算額について申し上げますと、収納済歳入額十兆三千七百四十億九千三百四十二万円余、支出済歳出額九兆三千七百四十五億八千八百十万円余でありまして、差引九千九百九十五億五百三十一万円余については、翌年度の歳入に繰り入れることとして、決算を結了いたしました。  次に、国民年金勘定でありますが、その決算額は、収納済歳入額六兆五千五百九十八億六千百三十六万円余、支出済歳出額五兆六千百三億七千三万円余、超過受入額二千三百八億四千百十一万円余でありまして、差引七千百八十六億五千二十一万円余については、この勘定の積立金として積み立てることとして、決算を結了いたしました。  なお、平成五年度末の被保険者数は、三千七十七万余人であります。  次に、福祉年金勘定でありますが、その決算額は、収納済歳入額二千六百七十一億三千百四十万円余、支出済歳出額二千三百三十八億三千五百九十万円余でありまして、差引三百三十二億九千五百五十万円余については、翌年度の歳入に繰り入れることとして、決算を結了いたしました。  最後は、業務勘定でありますが、その決算額は、収納済歳入額一兆七千五百三十六億三千七百七十万円余、支出済歳出額一兆七千五百億五千二百四十四万円余でありまして、差引三十五億八千五百二十六万円余については、このうち、六億四千二百三十六万円余を国民年金勘定の積立金に組み入れ、二十九億四千二百九十万円余については、翌年度の歳入に繰り入れることとして、決算を結了いたしました。  以上をもちまして、厚生省所管に属する一般会計及び特別会計決算説明を終わります。  何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。     …………………………………    平成五年度決算厚生省についての検査の概要に関する主管局長説明                 会計検査院  平成五年度厚生省決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、法律、政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項百四十九件、意見を表示し又は処置を要求した事項二件及び本院の指摘に基づき当局において改善処置を講じた事項一件であります。  まず、法律、政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項について御説明いたします。  検査報告番号一二号は、健康保険及び厚生年金保険保険料の徴収に当たり、徴収額が不足していたもので、事業主などが制度を十分理解していなかったなどして、保険料算定の基礎となる被保険者資格取得届の提出を怠っていたものなどがあったのに、これに対する調査確認及び指導が十分でなかったため、保険料徴収額が不足していたものであります。  検査報告番号一三号は、厚生年金保険老齢厚生年金等及び国民年金老齢基礎年金の支給が適正でなかったもので、年金の受給権者が被保険者資格を取得した際の被保険者資格取得届の提出を事業主が怠っていたものなどがあったのに、これに対する調査確認及び指導が十分でなかったため、老齢厚生年金等及び老齢基礎年金の支給が適正を欠いたものであります。  検査報告番号一四号から一〇六号までの九十三件は、医療費に係る国の負担が不当と認められるものであります。  これらについては医療機関が診療報酬の請求に当たり、  (1) 処置料等については、人工腎臓実施中に食事を給与した際に、医療用食品を使用した事実がないなど医療用食品加算の要件を満たしていないのに、所定の点数に医療用食品加算を行って請求していたり、人工腎臓に使用される特定治療材料について、価格変更以前の高い価格の点数や価格の高い別の特定治療材料の点数で算定していたり、人工腎臓に使用される薬剤について、割高な算定を行ったり、実際よりも多い使用量に基づいて算定していたりしたものが三十二件、  (2) 入院時医学管理料等については、医師看護婦不足であるのに、翌月分の請求に当たり所定の減額をしないで算定していたり、老人病棟に入院している患者の入院時医学管理料について、一般病棟に入院している患者のみが対象となる入院時医学管理料の加算を算定していたりしたものが十件、  (3) 看護料については、基準看護料を算定しているのに、更にその他の看護料を算定していたり、夜間看護等加算や高い点数のその他の看護料を、都道府県知事の承認を得ていないのに算定していたり、入院期間が六月を超える老人の患者について、六月以内の高い点数でその他の看護料を算定していたり、特例許可老人病棟において、入院医療管理料を算定しているのに、別途その他の看護料を算定していたりしたものが五件、  (4) 老人基本診療料等については、特別養護老人ホームの嘱託医が同ホームに赴いて入所者に行った診療について、算定できないこととされている老人初診時基本診療料、老人再診時基本診療料等を算定するなどしたものが十一件、  (5) 給食料については、栄養士が退職していなくなり、基準給食の承認基準に適合しなくなったのに、変更の申請をしないまま従来どおり、基準給食の点数を加算していたものが六件、  (6) 注射料等については、人工腎臓の処置料のほかに人工腎臓の回路を通して行った静脈内注射及び点滴注射に係る技術料を別途算定していたり、救命救急入院料を算定しているほかに、点滴注射に係る精密持続点滴注射の加算又は中心静脈注射に係る精密持続点滴注射の加算及び開始日の加算を行っていたり、老人の入院患者に対して行った点滴注射について、一般の入院患者に対する点滴注射の点数により算定していたりしたものが九件、  (7) リハビリテーション料については、複雑な訓練でないものについて、複雑な訓練を行った場合に用いることになっている高い点数で算定していたり、疼痛を緩和する目的で行ったマッサージ等の消炎鎮痛処置等を、理学療法を行った場合に用いることになっている高い点数で算定していたり、専任の常勤医師がおらず承認施設の要件に該当していないのに、理学療法等について承認施設に適用される高い点数で算定していたりしたものが八件、  (8) 検査料等については、多くの患者について検体検査を毎月画一的に繰り返し実施しこれに係る検査料を算定していたわ、ほとんどの患者について、毎月、二十項目以上の血液検査を実施するに当たり、検査を二回に分けて実施することなどにより、上限として定められた点数によらずにその都度血液化学検査料を算定していたり、安定した状態にある人工透析患者について慢性維持透析患者外来医学管理料を算定しているほかに、同管理料に包括されていない検査を毎月画一的に繰り返し実施し、これに係る検査料を算定していたり、特定集中治療室管理料を算定しているほかに、呼吸心拍監視等の検査料を算定していたりしたものが八件、  (9) 投薬料等については、標準とされる用法によることなく画一的に患者に薬剤を投与し、投薬料を算定していたり、定数超過入院となっているのに、翌月の室料等について所定の減額を行うことなく算定していたり、老人病棟における老人の入院患者の画像診断料を三月に一回の制限を超えて毎月算定していたりしたものが四件ありました。  これらはいずれも審査等が十分でなかったことなどのため、市町村等における医療費の支払いが適切でなく、国の負担が適正を欠いたものであります。  検査報告番号一〇七号から一一〇号までの四件は、医療施設運営費等補助金の経理が不当と認められるものであります。  この補助金は、離島、山村等の医療に恵まれない地域住民の医療を確保することなどを目的として、都道府県又は市町村等が、へき地保健医療対策事業等を行う場合に、その経費の一部を国が直接又は間接に補助するものであります。そして、この補助金の交付対象事業のうち、へき地中核病院運営事業における医療活動費等の基準額の算定に当たり、医療活動延べ日数を過大に算定したり、へき地診療所運営事業における診療収入額を実際の収入額より過小に計上したりなどしていたため、国庫補助金が過大に精算されていたものであります。  検査報告番号一一一号から一一七号までの七件は、生活保護費負担金の経理が不当と認められるものであります。  この負担金は、都道府県又は市町村(特別区を含む。)が、資産及び能力等あらゆるものを活用してもなお生活に困窮する者に対し保護を行う場合に、その費用の一部を負担するものであります。そして、東京都板橋区ほか六事業主体では、被保護者が就労していて相当額の収入を得ていたり、年金を受給していたりなどしているのに、被保護世帯から事実と相違した届出がなされ、これにより収入を実際の額より過小に認定して保護費の額を決定し、保護費を不適正に支給したため、国庫負担金が過大に交付されていたものであります。  検査報告番号一一八号から一三六号までの十九件は、老人福祉施設保護費負担金の経理が不当と認められるものであります。  この負担金は、身体上又は精神上の理由等により養護を要する老人を特別養護老人ホーム等に入所させ養護した都道府県又は市町村(特別区を含む。)に対して、その費用の一部を負担するものであります。そして、北海道帯広市ほか十八事業主体では、国庫負担対象事業費の精算に当たり、入所者やその扶養義務者からの徴収金の額を過小に算定していたため、国庫負担金が過大に精算されていたものであります。  検査報告番号一三七号から一五六号までの二十件は、児童保護費等負担金の経理が不当と認められるものであります。  この負担金は、保育に欠ける児童を保育所に入所させ保育した市町村(特別区を含む。)に対して、その費用の一部を負担するものであります。そして、岩手県岩手郡西根町ほか十九事業主体では、国庫負担対象事業費の精算に当たり、児童の扶養義務者からの徴収金の額を過小に算定していたため、国庫負担金が過大に精算されていたものであります。  検査報告番号一五七号から一六〇号までの四件は、国民健康保険普通調整交付金の交付が不当と認められるものであります。  これは、別府市ほか三市町において、国民健康保険保険料(税)の額を一括して調定する際に、不当に減額するなどして調定額を過小としたり、収納額に含めないことになっている滞納保険料に係る収納額を含めるなどして収納額を過大にしたりして、普通調整交付金の交付額の算定の基礎となる保険料収納割合を事実と相違した高い割合で交付申請を行っていたこと、及びこれに対する大分県ほか二県の審査が十分でなかったことなどのため、普通調整交付金が減額を全部又は一部免れて過大に交付されていたものであります。  次に、意見を表示し又は処置を要求した事項について御説明いたします。  その一は、児童保護費等負担金保育所分)の算定における児童の属する世帯の階層区分に関するものであります。  児童保護費等負担金保育所分)は、保育に欠ける児童を保育所に入所させ保育する市町村に対し、その保育に要する費用から児童の扶養義務者からの徴収金の額を控除した額の一部を負担するものであります。この徴収金の額は、児童の扶養義務者の負担能力に応じたものとなるよう、児童の属する世帯の市町村民税所得税の課税額等を基に設定した階層区分に応じた基準額により算定することとなっております。しかし、調査したところ、同じ前年分の所得税課税世帯であって同程度の負担能力があると認められるのに、前年度分の市町村民税非課税世帯課税世帯との間で徴収金の額に開差を生ずる取扱いとなっておりました。  したがいまして、厚生省において、世帯の階層区分について前年の所得を考慮した合理的なものとなるよう交付基準を改め、国庫負担の適正を期するよう改善処置を要求したものであります。  その二は、年金の支給に係る過誤払の防止に関するものであります。  社会保険庁では、各種の年金を受給権者に対して支払っております。受給権者が死亡したにもかかわらず届出義務者からその届出がない場合には、現況の届出がなされないことにより支払を差し止めるまでの間、引き続き年金を支給しております。  この年金の過誤払に係る返納金債権について調査したところ、その債権の回収率は一〇・三%にすぎず、多額の返納金債権が回収されずに長期間累積されておりました。そして、このうち、死亡届未提出による過誤払が原因で発生したものは四十九億千六百八十六万余円、これに係る債務者の数は一万九千六十九人となっておりました。  このため、今後返納金債権を極力発生させないためには提出されない死亡届を待つことなく、厚生省大臣官房に提出されている市町村住民の死亡に関する情報を積極的に活用する方策を講じる要があると認められます。  この死亡者情報の活用ができれば、死亡後二箇月を超える期間についての過誤払の発生を未然に防止することが可能であります。  したがって、社会保険庁において、厚生省大臣官房に提出された死亡者情報を速やかに活用できる事務処理体制の整備を図り、もって年金の過誤払の発生を防止し、年金支給の適正化を図るよう改善処置を要求いたしたものであります。  次に、本院の指摘に基づき当局において改善処置を講じた事項について御説明いたします。  これは、季節的業務に従事する酒造従業員に対する健康保険及び厚生年金保険の適用に関するものであります。  雇用期間が四箇月を超える季節的業務に従事する者は、健康保険及び厚生年金保険の被保険者とされております。  季節的業務に従事する酒造従業員の雇用の実態等を調査したところ、酒造従業員の大多数は、清酒製造業者に十月頃雇用され翌年の四月頃離職するという雇用形態になっておりました。これらの者は雇用期間が四箇月を超えることから、健康保険及び厚生年金保険が適用されるべきでありますのに、被保険者資格取得届が提出されていなかったり、健康保険の適用を除外する承認が行われたりなどしたため、健康保険及び厚生年金保険が適用されておらず保険料が徴収されていないと認められましたので、当局の見解をただしたところ、社会保険庁では六年十一月に各都道府県に対して通知を発し、季節的業務に従事する酒造従業員について、健康保険及び厚生年金保険の適用を適切に行うこととする処置を講じたものであります。  なお、以上のほか、平成四年度決算検査報告に掲記いたしましたように、柔道整復師の施術に係る療養費の支給について処置を要求いたしましたが、これに対する厚生省処置状況についても掲記いたしました。  以上をもって概要説明を終わります。     …………………………………    平成五年度決算検査報告に対する説明                 厚 生 省  平成五年度の決算検査報告において、不当事項として指摘を受けましたものは、健康保険及び厚生年金保険保険料徴収額が不足していたもの一件、厚生年金保険老齢厚生年金等及び国民年金老齢基礎年金の支給が適正でなかったもの一件、医療費に係る国の負担が不当と認められるもの九十三件、医療施設運営費等補助金生活保護費負担金老人福祉施設保護費負担金及び児童保護費等負担金の補助事業の経理が不当と認められるもの五十件、国民健康保険普通調整交付金の交付が不当と認められるもの四件であります。  意見を表示され又は処置を要求された事項は、児童保護費等負担金保育所分)の算定における児童の属する世帯の階層区分を前年の所得を考慮した合理的なものとすること及び年金の支給に係る過誤払を防止することであります。  不当事項として指摘を受けたもののうち、保険料の徴収不足については、既に徴収決定を完了し、これに基づき目下その収納に鋭意努力しているところでありますが、今後とも、適用事業主に対し、被保険者資格取得届等の適正な届出のための指導・啓発の徹底を図るとともに、実地調査等のなお一層の強化を図り、保険料の徴収不足の解消に努力いたす所存であります。  厚生年金保険老齢厚生年金等及び国民年金老齢基礎年金の支給が適正でなかったとして指摘を受けたものについては、既に返還の措置を講じたところでありますが、今後とも、年金受給権者及び適用事業主に対し、被保険者資格取得届等の適正な届出のための指導・啓発の徹底を図るとともに、関係書類の審査等のなお一層の強化を図り、その支給の適正化に努力いたす所存であります。  医療費に係る国の負担が不当と認められるとして指摘を受けたものについては、既に返還の措置を講じたところでありますが、今後とも診療報酬明細書の点検、調査の充実・強化及び保険医療機関等に対する指導の積極的な実施について、都道府県に対し、指導の徹底を図り、適正な保険診療が確保されるよう努力いたす所存であります。  医療施設運営費等補助金生活保護費負担金老人福祉施設保護費負担金及び児童保護費等負担金の過大精算のため不当であるとの指摘を受けたものについては、既に返還の措置を講じたところでありますが、今後は、このようなことのないよう事業主体に対する指導を一層徹底し、補助事業の適正な執行に万全を期する所存であります。  国民健康保険普通調整交付金の交付が不当と認められるとして指摘を受けたものについては、既に返還の措置を講じたところでありますが、今後とも、保険者に対し、適正な交付申請等のための指導・啓発の徹底を図るとともに、国及び都道府県においても交付申請書の審査等のなお一層の強化を図り、普通調整交付金の適正な交付に努力いたす所存であります。  意見を表示され又は処置を要求された児童保護費等負担金保育所分)の算定における児童の属する世帯の階層区分を前年の所得を考慮した合理的なものとすること及び年金の支給に係る過誤払を防止することについては、御指摘の趣旨を踏まえ、所要の措置を講じてまいる所存であります。     …………………………………    平成五年度環境衛生金融公庫の業務の概況  環境衛生金融公庫平成五年度の業務の概況につきまして御説明申し上げます。  環境衛生金融公庫は、公衆衛生の見地から国民の日常生活に密接な関係のある環境衛生関係の営業について、衛生水準を高め、及び近代化を促進するために必要な資金であって、一般の金融機関が融通することを困難とするものを融通し、もって公衆衛生の向上及び増進に資することを目的とするものであります。  平成五年度の貸付計画額は、三千三百三十億円を予定いたしました。  この計画に対しまして、貸付実績は、三千三百二十四億円余でありまして、これを前年度と比較いたしますと、十パーセントの増となっております。  次に貸付残高について、御説明申し上げます。  平成四年度末における貸付残高は、九千二十六億七千万円余でありましたが、平成五年度中に三千三百二十四億四千万円余の貸付を行い、二千五十二億二千万円余を回収いたしましたので、平成五年度末における貸付残高は、一兆二百九十八億九千万円余となっております。  なお、貸付金の延滞状況につきましては、平成五年度末におきまして延滞後六カ月以上経過したものが、百四十四億五千万円余でありまして、このうち一年以上のものは、百二十七億七千万円余で総貸付金残高の一・二パーセントとなっております。  次に平成五年度の収入支出決算について御説明いたします。  まず、収入におきましては、収入済額は、六百五億七千万円余でありまして、これを収入予算額六百億九千万円余に比較しますと、四億七千万円余の増加となっております。この増加いたしました主な理由は、貸付金利息収入が予定より多かったためであります。  次に、支出におきましては、支出済額は、六百十億一千万円余でありまして、これを支出予算現額六百十七億二千万円余に比較しますと、七億円余の減少となっておりますが、これは借入金利息等が予定より減少したためであります。  最後に平成五年度における損益について申し上げますと、貸付金利息等の総利益は、六百三十億九千万円余、借入金利息、業務委託費、事務費、貸倒引当金繰入等の総損失は、六百三十億九千万円余となりました。  この結果、利益金は生じなかったので国庫納付はありませんでした。  以上が、平成五年度における環境衛生金融公庫の業務の概況であります。  なにとぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。     —————————————
  12. 前田武志

    前田主査 以上をもちまして厚生省所管環境衛生金融公庫説明は終わりました。     —————————————
  13. 前田武志

    前田主査 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。根本匠君。
  14. 根本匠

    根本分科員 自由民主党の根本匠でございます。  私は、まず子育て対策の現状、そしてこれからのあり方についてお伺いしたいと思います。  これまで厚生省を中心に保健福祉分野で、障害者プラン、ゴールドプラン、エンゼルプラン、いわゆる三プランを策定して、この分野の施策はこの二年ぐらいで非常に大きく前進いたしました。  子育て対策につきましては、一昨年にエンゼルプランをつくりまして、厚生省においても緊急保育対策五カ年計画を策定して今鋭意やっているところでありますけれども、現時点でのエンゼルプランの進捗状況、そしてこれを現段階でどう評価しているか、もう一点、厚生省の緊急保育対策五カ年計画の進捗状況及び評価について、まずお伺いしたいと思います。
  15. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 エンゼルプランにつきましては平成年度から実施をされておるわけでございます。この策定に当たりましては先生に大変お骨折りをいただいたわけでございますけれども、おかげさまで、総じて申し上げるならば、各省庁ともこの推進に向けて順調に努力をしておるというふうに考えております。  とりわけ数値目標を掲げました緊急保育対策等五カ年事業につきましては、平成年度が初年度ということもございますけれども、例えば地域子育て支援センターのようなものにつきましては、私どもが予定しておりましたものよりも進捗状況がちょっと悪いかなというものも若干ございますけれども、全体的には順調に進んでおるというふうに考えておりまして、さらに拍車をかけるべく、平成年度におきましても周知徹底、また御理解を深めるべく努力をしてまいりたい、このように考えております。
  16. 根本匠

    根本分科員 ぜひこれからも鋭意努力していただきたいと思います。  エンゼルプランは子育て対策として非常に大きく前進した施策になっておりますが、特に一番の特徴点は、厚生省で緊急保育対策五カ年計画、今もお話ありましたけれども、いわゆる数量目標を具体的に明示した、これを私も高く評価しておりまして、この意味では画期的な施策だと思っています。この点では非常に施策が前進いたしまして、さらに、児童手当の拠出金を財源にして、事業所内保育施設あるいは延長保育、あるいは駅型保育モデル事業といったような保育の形態に対して財源的な手当てもなされて、今強力に進んでいる、これは私も大変高く評価しております。  今のエンゼルプランあるいは緊急保育対策五カ年計画、これはある意味では現行の認可保育所の制度を前提にして、そこでの量的な拡大を図るということで、これはこれで大きな意味を持つわけですが、もう一つここで残された課題として取り組まなければいけないのは、今保育のニーズが非常に多様化しておりまして、保育サービスを供給する体制、これも認可保育所が当然中心になるわけでありますが、子育てサークルですとかあるいは無認可と言われる保育所、こういったものが多様な形で多様な保育ニーズにこたえている、こういう現状があるわけです。それから、子育てという観点からいえば、小学校の低学年の放課後児童対策も充実してもらいたい、こういう要望があるわけです。  これからの多様な保育ニーズにこたえる対応として、私は、やはり保育ニーズの多様化に対応した柔軟なシステム、つまり供給のあり方、供給というのは変ですけれども、保育のサービスを供給する体制のあり方、これをさらに検討する必要があるだろうと思います。  具体的に言えば、例えば私の地元の郡山市、これは三十三万都市ですけれども、今、認可保育所、無認可保育所という目でざっと見ますと、二千百名のお子さんが認可保育所に行っている。それから無認可保育所、これはすべてではなくて一定のレベルを備えた無認可保育所、これが二十六園で千四百人受け持っているわけですね。そうなりますと、認可されていない保育所で千四百人受けとめているわけですから、民設、公営も含めて、公設の保育所の約七割ぐらいを受けとめているという社会的な実態があるわけですね。  やはりこういう社会的な実態を踏まえた柔軟な保育システムのあり方、これをぜひ検討してもらいたいと思いますけれども、その点についてお伺いします。     〔主査退席、福田主査代理着席〕
  17. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 我が国の場合、非常に少子化が進んでおるわけでございまして、そういった中で、子育てしやすい環境の整備が非常に急がれるというふうに考えておるわけでございます。  一方、現在の保育のシステムを見てみますと、まさに先生御指摘のとおりでございますけれども、この母法になっております児童福祉法、これが戦後制定されまして約五十年にならんとしておるわけでございます。そういった意味では、骨格はほとんど戦後の児童福祉法ができたときと変わっていない状況であります。  そういった中で、先生御指摘のとおり、昨今非常に保育に対する多様なニーズが高まっておるわけでございます。その背景には、やはり女性の方の社会進出が非常に進んできた、あるいは就労形態が非常に多様化してきておる、あるいはまた国民生活の水準の向上に伴っていろいろなニーズが出てきておる、いろいろな要因があろうと思います。そういった中で、現在の保育システム自体について、やはりもう一度、いわゆる利用者のサイドから使いやすい保育システムと申しますか、利用者のニーズに合ったシステムという観点での見直しが不可欠であるというふうに考えております。  そういった認識のもとに、ことしの三月に中央児童福祉審議会に基本問題部会というのを新たに設置をいたしまして、戦後五十年になりますこの保育システムのあり方につきまして、現在における状況、あるいは二十一世紀を踏まえたこれからのあり方というものを見据えて検討をお願いしているところでございます。私どもとしましては、できましたら、この秋にもその検討を取りまとめをいただきたいというふうに考えておるわけでございます。  その中で、今お話にございましたようないわゆる無認可保育所、言葉が余りよくないのでありますが、いわゆる認可外保育所というふうに私ども呼ぶようにしておりますけれども、この認可外保育所つきましてもいろいろな形態がございます。そういった中で、質的な確保というものが重要なことはもちろんでありますが、一方、多様なニーズにこたえられないために認可外保育所というものが整備されてきている面もございます。それに対して行政的にどういうような対応をしていくべきなのか、それも含めてこの基本問題部会の中で御検討いただいておるわけでございまして、この検討の結果を踏まえまして今後適切な対応をしていきたい、このように考えております。
  18. 根本匠

    根本分科員 ぜひ現状の実際のニーズを踏まえながら、少し柔軟に実態的に取り組んでいただきたい、こう思います。  私も保育の問題にかかわっている皆さんといろいろな議論をこれまでしてきましたけれども、これからの我が国を展望いたしますと、高齢化対策と同時に子育て対策、少子化社会を迎えてこれが喫緊の課題だ、こう思うのですね。公設の保育所あるいは公営の保育所で働いている保母の皆さんも、これは行政の責任としてやっているということで大変誇りを持って一生懸命やっておられますし、それから、いわゆる認可外の保育所の園長先生初め子育てということに情熱を持って取り組んでおられますので、システムとしてどういうあり方が望ましいのか、ここのところの検討をぜひやってもらいたい、こう思うのですね。  特に、認可外の保育所、これは一定の社会的役割を果たしておりますから、良質なものについてはやはり一定のあるいは何らかの位置づけが必要だと思いますので、この辺の政策理念を整理した上での位置づけと、それからさらに、具体的な位置づけをした上でという前提ですけれども、今無認可保育所で課題になっている点が幾つかあるわけです。  例えば、今いろいろイメージ的に言われているのが、一生懸命やっているのだけれども、無認可保育所ということで、その無認可というイメージがどうも問題がある。これは私もそうだと思うのですね。実際に今、五十六年から一定の基準に基づいて指導監督を行っているわけで、それを充足している保育所もたくさんありますので、例えば消防ですとマル適マークとか環境分野だとエコマークとか、いろいろあるわけですけれども、こういう分野は私はエンゼルマーク的な分野だろうと思っておりますが、この辺の呼び方の問題。  それから、支援方策では、今認可保育所は措置制度で補助も出ているわけですが、無認可保育所には何ら政策的対応がなされていない。これは、認可保育所は最低の基準を満たすという前提ですから、それの認可を受けていないものは最低の基準を満たしていないということで、助成の対象に乗っけていないという理解だと思うのですね。ただ、強いて言えば、指導監督は五十六年から入ってやっているわけですね。例えば、設備あるいは施設をもうちょっと大きくしなさいよとかいろいろな指導をするわけですが、それは監督にとどまっていて、そのための支援方策が講じられていない、こんな具体的な問題もありますし、やはり私は支援方策を考えてもらいたい。  この分野については、補助金というのは難しいだろう。ただ、現実に地方自治体では、一定の基準を満たしているもの、例えば指導監督基準の基準を満たしているもの等、要は一定の客観的な条件を満たすものについて、自治体の判断で補助金を出しているという事例も出てきているのです。ただ、全国レベルで言うと、理念上の整理が必要だから補助は難しいと思うのですが、私は前回も質問しましたけれども、政策融資は検討できるだろうと思うのです。  要は、補助ですと義務的な補助、奨励的な補助ということに政策目的でなっているわけですけれども、融資というのは自主、自助努力を前提にして資金を貸し付けて返してもらうというシステムですから、私は、少なくとも、実態を見ますと一定の社会的役割を果たしている、しかも一定の基準を満たすものについては政策融資を検討してしかるべきだ、こう思っております。  それから、今の保育所の補助の体系を見ましても、現在、措置費に加えて、児童手当の拠出金を財源にして延長保育部分は補助という形で出しているし、それから駅型保育モデル事業事業所内保育施設については補助しているわけですけれども、これは広義の負担者に対して還元してあげるという整理だと思うのですね。ただ、現行やっている駅型保育モデル事業は形としては地域の保育所と全く同じ形態ですが、そこに今補助を出しているので、ここは従来の考え方からすれば一歩踏み込んだ措置もやっている。こんな状況を踏まえますと、私は政策融資をぜひ検討してもらいたい、こう思いますけれども、御意見をお伺いしたいと思います。
  19. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 まさに先生おっしゃるとおり、この認可外保育所につきましては、現在の保育体系の中における位置づけとか、あるいは理念なりというものをきちっとすることがまず必要だろうというふうに思っております。  そういった意味では、今回の審議会における検討の中で、一つの課題としてこの辺の御議論をいただくことにしておりますので、今先生のおっしゃるような手法等々もあろうかと思いますけれども、これらの議論を踏まえまして、それからまた認可外保育所の位置づけというものも踏まえまして、適切な対応というものをしていくことが必要だろうというふうに考えておるわけでございます。
  20. 根本匠

    根本分科員 ぜひ強力な検討、取り組みをお願いしたいと思います。  次に、臨床心理士、厚生省で言えば臨床心理技術士という呼び方になりますけれども、これの資格化問題についてお伺いしたいと思います。  今の世の中、学校でもいじめ、登校拒否がありますし、あるいは職場ではストレスの問題がありますし、職場不適応の問題、いろいろな問題が出てきておりまして、いわゆるメンタルヘルス、心の問題が非常に大きな問題としてクローズアップされてまいりました。  こういう状況の中で、特に学校のいじめや不登校対策として、あるいは医療の現場で、医療の一環として心の問題というのは非常に重要になってきているわけですが、心の専門家の育成あるいは必要性が非常に高まってきていると思います。これについては文部省厚生省が主たる分野を担うことになるわけでありますけれども、文部省においては心の専門家としての臨床心理士、これを制度化いたしました。  この臨床心理士は、アメリカでは非常に早くて、一九五一年に各州で臨床心理士という制度が資格化されておりまして、非常に質の高い制度として臨床心理士が確立されております。文部省で数年前に臨床心理士を制度化した背景、それから現在の制度の仕組み、特にそのときに法律の資格化にすべきではないか、こんな議論もされたかと思いますが、今の制度の形になっている理由、それから今の制度の内容、この点をお伺いしたいと思います。
  21. 北見耕一

    ○北見説明員 臨床心理士につきましては、現在、臨床、心理士資格認定協会というところで資格認定を行っているわけでございます。この協会につきましては、昭和六十三年に任意団体として設立されまして、以来臨床心理士の資格認定を実施してきたところでございます。その後、平成二年に財団法人としての設立許可申請がございまして、平成二年八月一日付で財団法人としての設立許可を行ったものでございます。  現在、資格認定協会では、例えば大学院で心理学を専攻し一定の心理臨床経験を有する者等につきまして、書類審査、筆記試験、口述審査等によりまして資格審査を行っているところでございます。これにつきましては純粋の民間の資格でございますが、精神保健分野におきます専門家の国家資格の新設につきましては、従来から厚生省の方で、臨床心理士も含めました関係の専門家の方々を集めた検討が行われているというふうに承知しているところでございます。  文部省といたしましては、今後とも、厚生省と十分に連絡をとってまいりたいというふうに考えております。
  22. 根本匠

    根本分科員 要は、文部省で検討されたときには、法律上の国家資格という検討はその当時はなされなかったのですか。
  23. 北見耕一

    ○北見説明員 先ほど答弁申し上げましたように、任意団体として従来実施されておりましたものを財団法人として設立許可したものでございます。
  24. 根本匠

    根本分科員 臨床心理士は、昨年の阪神大震災、こういう分野でも、震災で心のバランスを崩しているような子供たちに対して心のケアをやってということで、大変貢献しているのですね。それから、いじめ対策としてスクールカウンセラーとしても効果を上げておりますし、現段階で文部省として、この資格化された臨床心理士、これをどのように評価されて、そして文部省の分野でどのように活用されているのか、この点についてお伺いします。
  25. 北見耕一

    ○北見説明員 先生御指摘のとおり、臨床心理士につきましては、心の専門家として、既にスクールカウンセラーでございますとか、あるいは市町村の教育委員会の事務局等におきます教育相談員などといたしまして、学校教育の分野で活発に活動していただいているところでございます。  文部省といたしましても、いじめ問題あるいは児童生徒の心の健康問題の解決のために有意義な取り組みをしていただいているものと評価しているわけでございます。今後とも、これらの分野、特にスクールカウンセラーとしてさらに積極的な活用を図っていくことを考えてまいりたいというふうに思っております。
  26. 根本匠

    根本分科員 わかりました。  それでは、厚生省ですとこれは臨床心理技術士ということになるわけですが、これの国家資格化の検討状況、これをお伺いしたいと思います。  精神保健法の一部改正で「精神保健におけるチーム医療を確立するため、精神科ソーシャルワーカー及び臨床心理技術者の国家資格制度の創設について検討を進め、速やかに結論を得ること。」こういう附帯決議がありまして、厚生省でも鋭意検討を進められている、こう聞いておりますが、現在のこの資格化の問題の検討状況、今後の見通し、それから、現在の検討状況の中で臨床心理士あるいは臨床心理技術士をめぐってどのようなことが論点になっているのか。これは幾つかの主な論点があるはずなんですよ。ですから、どんな問題が今主要な論点になっているのか、この点についてお答えいただきたいと思います。
  27. 松村明仁

    ○松村政府委員 厚生省の分野におきます臨床心理技術者、こういった方々の仕事の重要性というか比重というか、これが年々高まっておる、こういうことについては御指摘のとおりでございます。  今、私どもの分野でどういうところに働いておられるかと申しますと、精神科の医療機関でございますとか児童相談所、その他さまざまな場所でこれらの新しい技術を持った方々が働いていらっしゃる、こういう状況でございます。  それで、この資格化につきまして、厚生省といたしましても、今委員指摘のような経過もございまして、検討を開始をしておるところでございます。  具体的に申し上げると、平成八年の一月に、厚生省でも、関係者の方々になるべく広くお集まりいただくということで研究会を設置いたしまして検討に着手した、こういうところでございます。  そこで、どういうことが主な論点かということになりますが、資格の対象分野、すなわち医療の分野、特に精神医療分野におけるこの分野といいますのは、非常に多くの専門家がいらっしゃってこの仕事をしておる、こういうことがございます。  そこで、一つ目は、資格の対象分野を精神医療の分野にするのか、または福祉、教育あるいは広く労働なども含めた幅広い資格とするのかどうか、こういうところがまず第一の問題。それから二つ目といたしましては、既に専門職としてその専門性の確立されたといいましょうか、例えば医師あるいは看護婦、こういった方々との資格の関係をどういうふうに整理するか、こういうふうなところも一つの大きな論点でございます。三つ目といたしましては、養成機関それから受験資格をどうするか、こういうような問題ももう一つの大きな問題、論点、こういうことでございます。  現在、それぞれの団体、心理技術者の団体の方々等にも御意見を伺っておるところでございますが、端的に申し上げてこの意見の一致というのはなかなか現状ではまだ難しい、こういう状況でございます。
  28. 根本匠

    根本分科員 確かに、今局長おっしゃられたように、この問題の難しいのは、臨床心理士の資格はアメリカで非常に高い資格として成立してやられているわけですけれども、臨床心理士の対象分野は医療、教育、福祉、労働あるいは法務と非常に広範にわたっている。こういう広範にわたっている業務分野を一つの省で国家資格化をしようというところもなかなか難しいところがあると思うのですね、やるとなると各省庁とも横断的になりますから。要は、業務分野が非常に広範にわたっているということと、確かにお医者さん、看護婦さん、あるいは医療行為に入るのか入らないのか、いろいろな問題があるわけで、その辺の整理が非常に難しいのだろう、私もそう思っております。  ただ、やはりこれはきちんと理念を整理していただいて、私は、先んじて恐縮でありますけれども、資格化するのであればこれは一本の資格の方が望ましいだろう。先ほど文部省さんにも法制化の検討をしなかったのかと聞いたのは、そういうこともあるわけです。文部省の分野の方の法制化という点でいうと、恐らく法律的な事項がないということ、あるいは熟度の問題、いろいろあって法制化が成らなかったし、検討もされなかったのかなと思いますが、厚生省分野だと医療分野も抱えていますから、これは実は法律事項が出てくるのだろうと思うのですね。ですから、もし法律という形でやるのだったら一本化してもらって、主務大臣を複数置けばいいわけですから、そういう方法もある。  ただ、このままいくと、一番現実的なおさまりとしては、多分、文部省所管の臨床心理士と厚生省所管の臨床心理技術士がそれぞれの資格としてつくられて、一人の方が二つの資格を持つとか、そういう形になる可能性もある。現実的な一番やりやすい対応ということになると、そんな形になってしまう可能性もあるわけですね。  ただ、あともう一つの考え方としては、基本的な心理の資格を国家資格化にしておいて、それぞれの教育とか医療福祉分野に、これはPSWとMSWのような、似た議論になってくるわけですよ。一本の共通した資格の上に、例えばそれぞれの専門分野で財団法人が認定して専門性を付与するというような方式もあるわけです。  三通りぐらいの方式が考えられるのだろう、私はこう思っておりますけれども、専門家の皆さんに集まってもらって議論しておられるわけですから、この中できちんと議論を整理していただいて、できるだけ早期に、今、心の専門家の必要性が非常に叫ばれておりますし、現に社会的にも重要な位置を占めるわけでありますから、この問題についてはぜひ精力的に取り組んでもらいたいという要望を申し上げまして、私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  29. 福田康夫

    福田主査代理 これにて根本匠君の質疑は終了いたしました。  次に、千葉国男君。
  30. 千葉国男

    千葉分科員 新進党の千葉国男でございます。  本日は、十八歳の女子高校生の悲痛な叫びと、子供の将来を真剣に考える家族の切実な願いを聞き届けていただきたい、そうした思いで質問をさせていただきたいと思います。  いわゆる糖尿病に二種類あると聞きましたが、まずその概要説明していただきたいと思います。
  31. 松村明仁

    ○松村政府委員 現在糖尿病は、インスリン依存糖尿病とインスリン非依存糖尿病の二つに分類をされておると言われております。  まず、インスリン依存糖尿病と申しますのは、免疫の異常等によりまして膵臓のインスリンをつくる細胞が破壊されまして、インスリンの分泌量がほとんど枯渇する、こういうことで糖尿病を発症するものでございまして、どちらかというと子供さんというか若い方に多く見られまして、日本では糖尿病と言われる方々の五%弱を占める、こういうふうに言われておるところでございます。  一方、インスリン非依存糖尿病と申しますのは、遺伝的要素に加えまして、昨今問題となっております過食、端的に言えば食べ過ぎというか栄養のとり過ぎというような問題、あるいは運動不足、その結果肥満というような状況になりましてインスリンの働きが悪くなる、こういうことによって徐々に発病する、いわゆる成人病型の中年以降に多く出る糖尿病と言われるものでございまして、先ほど申しましたように日本人の糖尿病のほとんど多くはこれに属するタイプ、こういうことになっておるということでございます。
  32. 千葉国男

    千葉分科員 ただいまお話のありましたインスリン依存型糖尿病について、日本大学医学部の北川照男教授の話によりますと、今も五%の話がありましたが、日本では一万人の子供に約一人、こういう糖尿病患者がいると言われています。したがって、糖尿病の子供を受け持ったことのない小中学校の先生が多い、こういうふうに述べております。  今回の場合、私立高校の保健授業の現場であった話でありますが、その日彼女が泣きながら家に帰ってきた。母親が心配して事情を聞いたところ何も言わなかった。そして翌日彼女が学校の出がけに、お母さん、きのうはごめんなさいね、こう言って一枚の手紙を渡した。そのお母さんが私のところにその手紙を持って窮状を訴えに参りました。ちょっと長くなりますが、事情を知っていただくためにその手紙を読んでみたいと思います。   保健の授業のとき成人病の話がでてきた。  「三大成人病に加え、糖尿病もあなどれない。これは先生のお話です。最近では若年性の糖尿病というのもあって若いうちから糖尿病になる人もいるが、それもストレス・過食・運動不足が原因だ。年々国の医療費が増えているのも、こうした慢性的な病気が増えているからだ。みんなはこんな人にはならないようにしなさい。きちんとした生活をしていれば糖尿病になんかならないんだから。」と先生は自信満々にみんなに言った。  みんなも「そうか、サエちゃん彼女の名はサエといいますが、サエちゃんが病気になったのは自業自得か。」と思ったと思う。  先生はサエのことをしっていて、あえてそう言ったんだと思った。そういう口調にきこえた。まさか、糖尿病には二種類あるなんて、ウイルス感染が原因のこともあるなんて思ってもみなかったんだろう。「あんたはバカね。」と言いたかったんだと感じた。  悔しくて悲しくてずっと泣くのをこらえていたけど、お弁当の時間、友達に「先生がさっき、若年性のなんとかってサエちゃんのこと話してたね。後の席から見ててサエちゃん固まってるのが分かったよ。」と言われ、やっぱりみんなに誤解されたかと思っているうちにこらえきれずに友達の前で泣いてしまった。  友達はみんないい人たちだけど、自分の無知のために人を傷つける先生は大嫌いだ。  今まで本当に苦しみながら続けてきた治療の全てを馬鹿にされ、否定された気がした。  ずっと必死にやってきただけよけいに辛い。 こういう内容のものでございました。彼女は中学二年の三月、十四歳のときに発病して以来この四年間、二週間に一度病院に通い診察を受け、毎日四回、食事前に自己注射を打ち、健康維持のために必死に自分と闘ってきたわけであります。  学校の現場では、いじめの問題が明らかになるたびに保健室が駆け込み寺と言われ、保健医の充実が叫ばれています。ところが、いじめ問題でアンテナ、駆け込み寺であるべき保健室の先生自身が、今回の場合は糖尿病についてでありますが、事実認識が浅かったり、あるいは全くの偏見によってこのような心ないいじめ発言をしていたことになるわけであります。これは、いじめ問題に取り組んでいる文部省のみならず、厚生省もまた真剣に学校医療に関して取り組むべきだと思います。  そこで、住政務次官にお伺いしたいのですが、きょう突然聞いて大変恐縮なのですが、今回のこうした問題についての感想と、今後どのように対応に力を入れていくのか、その決意をお聞かせいただきたいと思います。
  33. 住博司

    住政府委員 千葉先生のお手紙朗読をお聞きいたしまして、本当につらい思いをされたその生徒さんに対して心から残念に思うし、そして、そういう偏見がないようにというふうに率直に感じました。  同時に、病気というのは、言ってみればその内容について、日々の医療技術の進歩によってそれぞれが変化をしていきますし、対応も変わってくる。そのときにきちんと病気に対する、今回の場合は糖尿病でございますけれども、それに対する偏見のない正しい知識というものをどのように広めていくのか、そして理解をしていただくのか、そのことは学校現場のみならず職場においても、いろいろな分野において本当に広めていかなければならない、こういうふうに考えておりますし、先生のおっしゃっている御趣旨はよく理解するところでございます。  この糖尿病につきましては、厚生省としましても、長期慢性疾患総合研究事業というところの中で、糖尿病の発症のメカニズムでありますとか予防であるとか治療方法に対する研究を積極的に今進めているところでございます。そしてまた、糖尿病の克服に取り組んでいる方々に対する希望の灯というものを何とか私どもは見出していかなければならない、こう考えております。  同時に、正しい知識の普及を図るために、最新の研究結果の内容についての情報を迅速に提供しなければいけないというふうに考えておりまして、例えば全国糖尿病週間における各都道府県における講演会の開催、あるいは糖尿病協会や日本糖尿病財団等の関係団体と協力してのキャンペーン実施、パンフレットの発行などを行っているところでございます。  こういった一つ一つのことを通じまして、国民の皆様方に対しまして糖尿病に対する理解を深めていただくように、そしてそれは文部省の方々とも御相談をしまして、特に学校現場でそのような偏見に基づいた、言ってみれば一方的な御意見の表明がないような形での指導というものもお願いをしていかなければならないというふうに思っている次第であります。本当に先生の御指摘については深く受けとめさせていただきたいと思います。
  34. 千葉国男

    千葉分科員 ありがとうございます。ぜひお力を入れていただきたい、このように思います。  今お聞きいただきましたように、一般的に成人病型の糖尿病とインスリン依存型糖尿病と、糖尿病として現在一緒にくくって対策が扱われている、そこに誤解が生ずる原因があるのではないか、こう思っております。まして最近では、子供の中にもいわゆる成人病型の糖尿病がふえている。こういうことを考えますと、提案でございますけれども、名は体をあらわす、こういう原理に基づきまして、例えば今回のような件についてはインスリン欠損症あるいはインスリン欠乏症というように名称を変更してはどうか、本人も家族もそう強く願っておりますが、どうでしょうか。
  35. 松村明仁

    ○松村政府委員 病名の問題でございますが、私どももちょっと調べたわけなのですが、インスリン依存型の糖尿病とインスリン非依存糖尿病という名称は、我が国だけでなくて、これは世界的にもこういう名前で定着しておるというような感じがいたします。  しかし、今委員指摘のようないろいろな問題もあるということでございますので、私ども、学会というか学問の世界について直接行政が立ち入るというのはなかなか難しい面もあると思うのでありますが、とにかく病名によってそういうふうないろいろな問題が起きる可能性もあるということを承知した上で、学会の方にもそういう御提言があったということをぜひお伝えをさせていただこうと思っております。
  36. 千葉国男

    千葉分科員 ぜひ御努力をお願い申し上げます。  彼女は現在、小児慢性特定疾患治療研究事業医療受診券という券を持ち、十八歳まで医療費を公費で負担していただいているわけであります。彼女は昭和五十三年生まれ、現在高校三年生ですが、この平成八年七月三十日で有効期間が切れることになります。そうしますと、十八歳までという意味が私はよくわかっていなかったのですが、満十八歳になると終わる。家族の理解は、少なくとも高校に行っている間、十九歳になれば別ですけれども、高校を卒業する十八歳まではと思っていたわけです。だから十八歳にぴたっとなったときに切れるのじゃなく、十八歳でも高校を卒業して切れる、こう思っていたのが、今回、あなたの有効期間は七月三十日ですと来たというのでびっくりしております。その辺の徹底もよくできていなかった。  一部の府県では、二十歳まで公費負担を実施しているところも出てきております。今、私は宮城県に対して、そうしたほかの県の例を引きまして年齢延長をお願いしているところでありますが、各都道府県で単独で年齢延長している現状では、就学、まあ大学の件があります、それから就職の件、あるいは転勤等によりまして他県に転居した場合、転居前は対象になったものが転居後には対象にならない、こういうことで新しいトラブルの原因にもなりかねません。  そこでお願いでありますが、全国一律二十歳までの年齢延長、こういうものをぜひ実現していただきたい、こう思うのですが、いかがでしょうか。
  37. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 子供の糖尿病でございますけれども、現在、小児慢性特定疾患治療研究事業ということで、いわゆる医療保険の自己負担分を公費で負担するという形で、国が都道府県等に補助金を流しまして国の補助事業という格好でやっておるわけであります。これは子供の糖尿病ということでありまして、そういった意味では、現在は十八歳未満の児童を対象にして国としてはやっておる、こういうことでございます。  それに対しまして、現在、十の県市がこれを県の単独事業として、二十歳未満まで公費助成をしております。この辺の問題につきましては、これは国としてどこまで考えていくべきなのか、そういったような問題等々もございますし、小児慢性特定疾患治療研究事業というそういった事業の性格もございます。  そういったものについてきちんとした検討なり考え方の整理なりというものをする必要があるというふうに考えておりまして、現時点においては、そういった意味ではこれを国として二十まで延長していくのはなかなか難しいというふうに考えておるわけでございますが、私どもとしても、これらの問題について幅広く検討をしていきたいというふうには考えております。
  38. 千葉国男

    千葉分科員 確認ですが、今局長のお話では十八歳未満ということで、じゃ十八歳になって終わり、こういうことで、十八歳ずっとということではなかったわけですね。二十までという場合も二十で終わりということですね。
  39. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 二十未満ということになっております。
  40. 千葉国男

    千葉分科員 未満ということですね。はい、わかりました。  今いろいろお話をいただきましたが、あともう一つ、別な角度から申しますと、彼女の場合、毎日四回注射をしてずっと来ているわけですね。ですから、インスリン依存糖尿病のためインスリンの自己注射を打つ患者、そういう意味では生涯注射とつき合っていかなければならない宿命にある。  聞きましたならば、身体障害者福祉法に内臓疾患ということがあるそうでありますが、肝臓とか腎臓とかといろいろやってさましたら、たまたま膵臓が入っていない。五臓六脇という意味では、たまたまこういう問題が起きるのが遅かったために膵臓が入っていなかったのではないかと私は勝手に考えております。  先日ちょっと聞いた話ですが、元大リーガーで、かつて巨人で活躍したプロ野球のガリクソン投手もインスリン依存型糖尿病で頑張ってきた。ですから、その注射のことがきちっとできさえすればいろいろな立場で将来ともに活躍できる。先ほど住政務次官からも希望の光というお話をいただきましたが、そうした子供たちに夢と希望を与えていただくためにも、今度別な角度で、そうした更生医療の範囲に入れていただいて救済をしていただくようなことも考えていただくことはできないか、こう思いますが、いかがでしょうか。
  41. 佐々木典夫

    ○佐々木(典)政府委員 身体障害者福祉法の措置というふうなことで、今委員お話のありました問題の対応ができないかというお尋ねでございます。  御質問の中にもございましたが、身体障害者福祉法におきましては、いろいろな補装具であるとか、あるいはホームヘルプサービスだとか、あるいは場合によっては各種の施設入所のサービス、そういったような福祉施策を行うに当たりまして、その対象者を一定の障害を持った方ということで、法律で別表を定めまして対象者を限定しているわけでございますけれども、ここでは、御案内のとおりで、それぞれの障害となりました原因の疾病あるいは事故の種類を特定することなく、身体上の機能の障害により日常生活が著しい制限を受けるものというふうな押さえ方をいたしているところでございます。  そういうふうな考え方で福祉施策を行っているわけでございますが、こうした観点から見た場合に、糖尿病のケースにつきましては、今のお話のインスリン依存症のものであるかどうかを問わず、適切な医療の継続によって通常の日常生活を営むことは可能というふうなことから、先ほど申しました日常生活に著しい制限を受けるものというところには該当しないというふうに考えられますため、身体障害者の範囲には含まれないというふうに考えている次第でございます。そういう意味では、確かに現実に医療の継続に伴う負担というのがあるわけでございますが、そこに着目した形でストレートに身体障害者というふうな位置づけは、現行法のもとでは難しいというふうに考えているところでございます。
  42. 千葉国男

    千葉分科員 先ほどちょっと申しましたが、十四歳。今御答弁いただきましたのはどなたでしたか。お名前は……。
  43. 佐々木典夫

    ○佐々木(典)政府委員 私は社会・援護局長でございます。
  44. 千葉国男

    千葉分科員 佐々木さんですね。佐々木さんのところは、子供さんは何歳と何歳がいらっしゃいますか。
  45. 佐々木典夫

    ○佐々木(典)政府委員 私のところは息子が二人おりますが、それぞれ社会人と学生ということで、今二十三歳と十九歳でございます。
  46. 千葉国男

    千葉分科員 ですから、もう既に、恵まれて、健康でそういうふうに立派に成長されている。もし御自身の家庭で、十四歳の子供、一番非行に走る年代、大変な生活環境の中で毎日四回ずつ注射を打って、そのときに、食事の違いがあったり家族でトラブルがあってできなかったならば、本当に大変だと思いますよ。もう家族総ぐるみで苦労して、意気消沈になってもう学校へ行きたくないとかいう中で、家族がみんな協力して、やっとそうやってやっているということ自体が大変な私は身体障害者だと思いますよ。厳しい段階で受けとめていただかなければならないのじゃないでしょうか。それを現在では身体障害者扱いできない。  ですから、むしろそれは理解が正しく進んでないから扱いができないとこれまでされてきたのであって、今これだけ全国で一万人に一人と言われるような大変な時代を迎えたならば、新たな次元でそうしたことを本当に考えてあげるのが私は行政の責任ではないか、こう思いますが、いかがでしょうか。
  47. 佐々木典夫

    ○佐々木(典)政府委員 重ねてお尋ねがございましたけれども、確かに今お話を伺っておりまして、ただいまのケースは、それぞれ大変な御努力をされておるということは私もよく理解できるわけでございますが、現在の身体障害者福祉法の仕組みのもとで身体障害者の定義をいたしてございます。  そこでは、繰り返しになって恐縮でございますが、内部障害の場合につきましても、その機能の障害が永続し、かつ、日常生活が著しい制限を受ける程度であると認められる方に身体障害者手帳を交付して施策の対象にしているという仕組みをとってございますので、確かに医療の継続という面での御負担は大変なものがあることは理解できるわけでございますが、現在の身体障害者福祉法の上でストレートにこれを対象にするということは難しい点を御理解を賜りたいと存じます。
  48. 千葉国男

    千葉分科員 これまでの取り扱いについてはそうしたことで行われてきたと思いますけれども、ぜひこの際見直しをしていただきたい、こういうことをお願いしているわけであります。今までの分は今までの分といたしまして、住政務次官、どうですか、こういう問題について見直しをする、こういうふうなお気持ちはありませんか。
  49. 住博司

    住政府委員 いろいろな状況を勘案させていただきまして、法律そのものは常に不断の見直しをするという姿勢を我々は持ち続けております。ですから、いろいろな状況の変化等々は考えなければならないというふうに考えておりますので、それは検討の材料に入るとは思いますが、今の時点では、今ほど佐々木局長がお答えをしたとおり、そういう範囲の中で考えているという今の現状を御説明させていただいたというふうに御理解をいただきたいというふうに思います。
  50. 千葉国男

    千葉分科員 ぜひ御検討をお願い申し上げたいと思います。  時間もなくなりましたが、関連で、最後に高額療養費の償還払いについてお伺いをしたいと思います。  高額療養費支給制度について、現場から、ぜひ現物給付化にしていただきたい、あるいはまた事務の手続をもっと簡素化していただきたい、こうした要望がたくさん出ております。制度が整って十年以上にもなるわけでありますので改善のときが来ているのではないか、このように思いますが、いかがでしょうか。
  51. 岡光序治

    岡光政府委員 そういう御要望があるというのは十分承知しておりますが、要するに、一人の人が複数の医療機関にかかって、ずっとその自己負担額を積み重ねて、それが現在の時点では、普通の方は六万三千円を超えた場合に、その六万三千円を超えた部分を現金でお返しをするという仕組みにしているわけでございます。あるいは家族が何人か病気にかかりまして、その家族が払った一部負担金を合算してみて、それが月で六万三千円を超えておればやはりその超えた部分を現金償還の対象にしておる、こういう仕組みでございます。  やはり医療機関でどれだけの病気にかかったのかというのは全部フォローしなければいけないわけでございまして、現在はどうしても、医療機関が請求明細書、レセプトと言っておりますが、これで請求をしたものとチェックをして、それで合算したり、あるいは一人の人が幾つかかかって足し算したら、確かに六万三千円を超えているなというのを確認しなければいけないわけです。レセプトで一々チェックをしなければいけないものですから、事務が非常に煩雑になったりあるいは現物給付できないわけでございます。  この点につきましては、私ども、そういった一人の人あるいは世帯でどれだけの自己負担がかかったのかというのを把握するための作業をもっと簡便にやりたい。それの一つの方法としましては、そういった請求事務につきまして電算処理ができないだろうか、電算処理ができればもっとスムーズに事務処理に対応できるだろうというので、今電算処理を実験的にやっておるわけでございますが、それの成果によって、御要望にできるだけ沿うような格好で事務処理体制が進められるように検討させていただいているところでございます。これは全国的に電算処理が定着しなければいけないものですから、もう少し時間をお与えいただきたいと思っております。
  52. 千葉国男

    千葉分科員 今お話をいただいたように、現場的には、御年配の人であるとかあるいは目の不自由な人が書類の書きかえとかなんとかで大変苦労して、いろいろな地元の議員に対して、もう少し簡素化していただきたいという声がたくさん寄せられておりますので、ぜひ電算化を初めとして御努力をお願いしたい。よろしくお願いします。  以上で終わります。ありがとうございました。
  53. 福田康夫

    福田主査代理 これにて千葉国男君の質疑は終了いたしました。  次に、荒井広幸君。
  54. 荒井広幸

    荒井(広)分科員 私は、国立病院等の再編成合理化と精神障害者の方々に関してお尋ねをし、また、御意見を申し上げさせていただきたいと思っております。  まず、国立病院等の再編成に当たりまして国立病院・療養所の再編成・合理化の基本指針というものがあるわけですが、この見直しの検討はいつごろになる予定でございましょうか。
  55. 松村明仁

    ○松村政府委員 国立病院・療養所の再編成につきましては、昨年の十一月に国立病院・療養所の政策医療、再編成等に関する懇談会というものから最終報告をいただきまして、政策医療の内容を含めた国の果たすべき役割等について御提言をいただいたところでございます。  今委員指摘の基本指針の見直しでございますが、これにつきましては、懇談会報告におきます御提言を踏まえまして、速やかに検討を行いたいというふうに考えております。
  56. 荒井広幸

    荒井(広)分科員 ただいま、政策医療の内容を含めた国の果たすべき役割等について速やかに検討をということでお話があったわけでございますが、国が行うべきそのまさに政策医療という役割は何でございましょうか、改めてお尋ねをさせていただきたいと思います。
  57. 松村明仁

    ○松村政府委員 国が行う政策医療というものは何かという御質問でございますが、私ども厚生省といたしまして、全国に展開をしております国立病院・療養所が今後担っていくべき医療というものを一応政策医療あるいは政策的医療というふうに考えておるわけなんですが、地域における医療供給体制というものがございます。この中でもちろん国立病院・療養所も働かせていただいているわけでありますけれども、地域におきます医療供給体制の中で、いわゆる基本的、一般的な医療の提供というものは、多くの私的医療機関もございますし、それからまた地方公共団体立等の公的医療機関というものもございますので、これらにお任せをする。  では、何をするのかというわけでございますが、私ども国立病院・療養所といたしましては、国民の健康に重大な影響のございます成人病の最たるもの、がん、それから循環器病等の非常に国民の中に多く見られます疾患の、こういった中でも高度あるいは先駆的な医療を行っていくべきではないか。  それから、結核でございますとか重症心身障害あるいは進行性筋ジストロフィーあるいはまたハンセン病等、歴史的あるいは社会的な経緯から国がこれまで引き受けて担当をしてまいりましたものを引き続き担っていく。  さらに、原因がよくわからない、あるいは治療法の確立の急がれている難病でございますとか、あるいはまたエイズ等を克服するための専門的な医療、こういったものを進めますとともに、臨床的な研究あるいは医療関係者の教育研修、さらには先駆的な、実験的な医療政策、こういったものを実践する、こんなふうなものが私ども国立病院・療養所に期待される機能ではないか、このように考えているところでございます。
  58. 荒井広幸

    荒井(広)分科員 非常に重要な役割を担っていることは間違いないわけでございますし、また、そうした政策医療を中心に行う中で、一方で大変な多額の赤字を計上してきたこともあるわけなんです。私は後で意見を申し上げさせていただきたいと思いますけれども、その意見は後にしまして、最初に質問をさせていただきたいと思います。  こうした政策医療を中心に行う中で、国立病院特別会計、これは今多額の赤字を計上しているわけですが、一つは、一般会計から補てんしている分、これは実態はどうなっておりましょうか。二つは、厚生省としてのその対応、改善策をお示しいただきたいと思います。
  59. 松村明仁

    ○松村政府委員 国立病院特別会計の問題でございますが、平成年度予算で、ちょっと数字を申し上げて恐縮でございますが、歳入が八千四百五十五億円、それから歳出が一兆六百五十一億円、こうなっております。したがいまして、この歳入の不足分二千百九十六億円につきまして一般会計から繰り入れをいただいておる、こういうことになっております。  そこで、この繰り入れの問題でございますが、私どもといたしましては、この繰り入れの多くの部分は、実際に、先ほども申しましたけれども、がんとか循環器病等の高度先駆的医療あるいは難病等の専門医療、こういった医療は、まことに残念ながら、必ずしも採算性というところではどうも採算性がよくないと言わざるを得ないと思うわけでございます。こういった医療を担当しておるため、さらには、先ほど申しましたように、政策的な医療に直結いたします臨床研究を展開しておる、さらに看護婦の養成等の事業も行っております。これらの事業は通常の診療収入では必要な歳入が確保できない事業でございますので、ここのところにこの歳入不足分の大部分を充てておる、こういうふうに理解をいただきたいと思います。  また、どういうふうにこういったことを改善しているかという御質問でございます。  こういった問題につきましては私どもも非常に重要に受けとめまして、平成四年の六月に、実は国立病院・療養所経営改善懇談会というものをお願いいたしまして、経営改善についての御提言をいただきました。この御提言に基づきまして、平成年度以降はどういつだものに繰り入れをしていただくかという繰入基準というものを明確化したところでございます。  先ほど申し上げました国が率先して展開すべき政策的な医療につきましても、まず第一に経営努力を前提とする、経営努力を一生懸命やる。それでも足りないところに一般会計から基準に基づいて繰り入れをしていただく、こういう形をとらせていただいておるところでございます。
  60. 荒井広幸

    荒井(広)分科員 ここで考えるべきことが私は二つあると思うのです。  一つは、今のように、いわゆる地域の病院等にゆだねられない部分を国が行っている。そこに、政策医療です、赤字があってもいいのじゃないかというふうに私は思っているのです。その上で、今経営の努力ということで基準を設けたり改善をされているわけですね。平成年度が二千四百八十六億円で、今年度だけでも約三百億程度減っている。年々改善されてきていることは間違いないわけであります。  しかし、そうはいっても、国民が必要とする生命、健康、そのための政策医療、そうした臨床研究等も含めてやっておられるということになれば、これは我々の方も考えるべきものがあると思うのです。国民が金銭的に負担するその負担以上に、国民の生命、健康面からいえば価値の方が比重が高いのではないか、私はこういうふうに思うわけでございます。  もう一つ私が考えますのは、そういう中において、地域の一般的、基本的医療を提供する民間、公立等もあります。そういう地域の医療機関にゆだねられるものはゆだねる、こういうふうに先ほどもおっしゃいましたけれども、そういうことをしながら国民のための政策医療を充実して行う、そういう見地から、国立病院等の再編合理化というのは速やかに行われていかなければならない、このように私自身考えております。  大変難しい政策医療であります。また一方で経営ということも考えなければならない。赤字も出る。そして、地域の医療関係の皆様方との兼ね合いを政策医療という中でとりながら、バランスよく、国民がひとしく健康で長生きできる、家庭に笑顔が戻る、こういうような状況を国立病院は担うべきでありますから、そのような趣旨に沿って早期に再編合理化ということに一層取り組んでいただきたいというふうに思うわけでございます。  さて、私自身の話で恐縮ですが、一人娘を嫁にとっておりまして、今母親は六十三でございますが、クモ膜下で倒れまして寝たきり生活を十年続けております。また、私の実の母の方は胃がんを告知されまして、胃をとりまして、今家におりますが、みんなで励ましながら頑張って生きていこうというようなことで、ひいらぎの会というようなものをつくりまして、同じがんに悩む皆さんと頑張って日常生活をやっているというようなことでございまして、我々は国そして厚生省に頼る、期待するところ非常に大きいわけです。今までのことを反省するところは反省をし、さらにこれからも頼られる存在として、厚生省には一層親身になってお働きをいただきたいというふうに考えております。  その中で、先週の日曜日でしたか、私は精神障害者の皆様方の家族会の結成式に呼ばれまして、本当に家族の皆様方の御労苦、そしてみんなで手をつなぎ合っていこう、そういうお姿に私たちもまた頑張っていこうと新たな決意をしたわけでございますけれども、その皆様方に関係する精神保健福祉法が昨年成立したわけでございまして、大変な福音でございます。精神障害者の皆様方に対する施策が今日までどのように変わってきているか、これを一度おさらいをする意味でお話をいただきたいと思います。
  61. 松村明仁

    ○松村政府委員 精神障害者の保健福祉施策につきましては、これまで昭和六十二年、それから平成五年に法律の改正をさせていただき、精神障害者の人権に配慮いたしました医療の確保あるいは社会復帰の促進を図るための措置を講じてまいったところでございます。  その後、障害者基本法あるいは地域保健法というような法律が制定を見まして、今委員指摘の精神保健福祉法も平成七年の五月に法律改正をさせていただきました。  この内容につきまして簡単に説明申し上げますが、障害者の方々に保健福祉手帳というものを出すという制度をつくりました。また、福祉ホームや福祉工場を社会復帰施設として明確化、あるいは相談指導の充実等を行い、精神障害者福祉施策を法律に位置づけるなど、精神障害者の社会復帰のための保健福祉施策の充実を図ってまいっておるところでございます。  また同時に、このときに精神保健指定医の研修の受講の促進ということで、さらによりよい精神医療の確保を図る、こういったことも行ったわけでございます。また、精神医療を取り巻く諸状況の変化を踏まえまして、公費負担医療の公費優先の仕組みを保険優先の仕組みに改める、こういうようなことをいろいろやりまして、精神保健福祉施策の推進を図ることとしておりました。  さらに、昨年の十二月には障害者プランというものもつくることといたしまして、これまでの施策に加えまして、社会復帰施設やグループホーム等の整備の促進あるいは地域におきます生活支援の充実等を図ることとした。  こういうものがごく最近の精神保健福祉施策の流れでございます。
  62. 荒井広幸

    荒井(広)分科員 そこで問題になりますことは、精神障害者の皆さんへの必要な施策のうち、小規模作業所ではないかと私は考えております。今までもふやしていただいておりますが、今後さらにふやしていく必要性を感じておりますが、いかがでしょうか。
  63. 松村明仁

    ○松村政府委員 精神障害者の方々が通所いたしまして作業訓練を行っていただくいわゆる小規模作業所につきましては、家族の方々の御協力によりまして地域に根差した自主的な取り組みを行っておるものでございます。そういうことで、精神障害者の社会復帰を促進するために、この小規模作業所というものが大きな役割を担っていると私どもも認識をしております。  そこで、先ほども触れましたが、平成七年十二月に策定をされました障害者プランにおきましては、働く場あるいは活動の場、こういったものを確保いたします観点から、小規模作業所につきましても、助成措置の充実を図ることにより運営の安定化を推進することとしたところでございます。  そこで、具体的に数字を申し上げますが、平成年度予算におきましては、一カ所当たりの助成単価を平成年度の一カ所百万円から百十万円に引き上げさせていただきました。また助成を行う対象の箇所数につきましても四百カ所から五百六十三カ所、すなわち百六十三カ所の増を図ったところでございます。  こういったことで、私どもも、今御指摘のように、精神障害者の社会復帰対策におきます小規模作業所の機能というものは重要視をしておりまして、今後ともこれの経営あるいは運営の安定化ということに努力してまいりたいと思っております。
  64. 荒井広幸

    荒井(広)分科員 そのように改善をしていただいていることに敬意を表しますとともに、また我々も所要の措置がとれるよう努力をしていくつもりでございますが、御家族によっては、さらに小規模作業所をつくりたいねとお話しされている方が非常に多くて、お聞きしますと全国で千カ所近く御要望があるのではないかというようなお話もありますので、できるだけ早くそうした御要望にこたえられるようにしたいものだなと思い、またお願いを申し上げる次第でございます。  さて、今の局長さんのお話にもありましたけれども、こうした小規模作業所というのは、家族の皆様方が非常に心を込めて自主的に地域の方々と助け合ってやっておられるものでございます。それによって社会復帰がまた可能になるというようなことで、大変大きな意味があるわけでございますが、その御家族の方々に対する援助というものもまた大きな柱だろうと思います。今までも御協力、援助ということをやってきておられますが、なお一層の施策、援助を講じるべきであると思います。御見解をいただきたいと思います。
  65. 松村明仁

    ○松村政府委員 精神障害者の社会復帰においてその家族の果たす役割は非常に大きい、これはもう私どもも全く同感でございます。また、精神障害者を持っておられる家族の方々も非常に御熱心に取り組んでいただいておりまして、この精神障害者を持たれる家族の集まりということで、財団法人全国精神障害者家族会連合会というものが組織をされておりまして、この家族会連合会におきましては、普及広報活動でございますとか相談指導、あるいは精神障害者の社会復帰の促進を図るための事業を積極的に実施していただいておるところでございます。  平成五年の法律改正におきましては、精神障害者の社会復帰の促進を図るために精神障害者社会復帰促進センターというものを創設いたしまして、このセンターの運営等には精神障害者の実情等を十分に理解された家族の方々が関与することが適当というふうに考えられますことから、平成六年七月にただいま申し上げました財団法人全国精神障害者家族会連合会を、これも先ほど申しましたが、精神障害者社会復帰促進センターということで指定をさせていただいたところでございます。  また、平成年度予算におきましては、精神障害者の家族等に対して社会復帰のために必要な知識を習得させるための研修でございますとか、それから精神障害者御本人あるいはその家族に対する講演会あるいは学習会といったこと、さらには精神障害者及びその家族等の団体が行う活動に対する支援、こういったような事業を実施していただくための必要な措置を講ずることとしておるところでございます。
  66. 荒井広幸

    荒井(広)分科員 そのような施策を講じてまいっても、社会の目というものを気にしてなかなか家族会にお入りにならなかったり、そういう活動を知らないという方も中にいらっしゃいます。これは私たちも大変責任を感じますし、それぞれの御家族のお考えもあり、またそれも尊重していくことだと思っておるわけなのです。  しかし、この間お伺いをいたしましたが、やはり皆さんで励まし合って、そして勉強して、それで一日も早く障害を克服できるように、あるいは社会復帰ができるようにというようなことをみんなでやっていこうという横のつながり、この輪が広がっていくことが御家族の精神的な御負担も、またいろいろな負担もとれるものではないかなというふうに私は思っております。大変に貴重な、そして有意義な援助も今の中にあるわけでありますから、その中身もまた広く啓蒙していただくようにお願いしたいと思っております。  障害保健福祉部ができるのは、あれは局長さん、七月でございますかな。ということで、身障の皆さん、精神障害者の皆さんが一緒になって、長年言われてきましたけれども、今度は一つの部になって進むというこの機会をとらえまして、それぞれの障害をお持ちの皆様方がさらにノーマライゼーションの旗のもとにみんなで支え合って、助け合って、そしてこれからの少子・高齢社会の中でともに乗り切っていきたいということを感じております。  以上をもちまして質問にさせていただきます。  なお、自分の名前を言いませんでしたが、自由民主党の荒井広幸でございます。
  67. 福田康夫

    福田主査代理 これにて荒井広幸君の質疑は終了いたしました。  次に、佐藤剛男君。
  68. 佐藤剛男

    佐藤(剛)分科員 自由民主党の佐藤剛男でございます。  本日は、法律で言いますと健康保険法、なかんずく同法の四十三条ノ十二、それから医療法の第二十九条、この関係並びに矛盾等について、私の地元の、病院名は言いませんが、ケースを例にいたしまして指摘いたしまして、厚生省当局において御検討をお願いするという趣旨でございます。  まず、どうしてこういう質問をするのかといいますと、福島県のある病院、ここに脳の手術が非常に得意な院長先生がおりまして、脳血栓とか脳梗塞とか、あるいは交通事故で脳に障害があるとかいろいろあるわけですが、手術する、そして人を助けていた病院でございます。  この病院が、法律で言いますと先ほどの健康保険法の第四十三条ノ十二の第一項第一号の規定によりまして保険医療機関としての取り消しをされた。取り消されまして今どうなっているか。八カ月たったわけでありますが、今やそこにたくさんおったその病院に入院していた人たち、ゼロになっております。昼間もゼロであります。そして夜になりますと電気も一つもついてない。つまり、閉鎖されている状況が続いているわけであります。病院が墓場みたいな状況にある。  これはどういうふうになったかというと、この四十三条ノ十二の保険医療機関としての取り消しを都道府県知事から受けたわけであります。御承知のように、この都道府県知事の権限は機関委任事務であります。厚生省と十分連絡をとった上でなされているわけでありますから、私は本委員会においてこの問題を取り上げるわけであります。  四十三条ノ十二を読みますと、こうなっているわけですね。「保険医療機関又ハ保険薬局が左ノ各号ノ一二該当スル場合二於テハ都道府県知事其ノ指定ヲ取消スコトヲ得」これは片仮名の法律です。それで、一号、「当該保険医療機関二於テ診療二従事スル保険医又ハ当該保険薬局二於テ調剤二従事スル保険薬剤師が第四十三条ノ六第一項ノ規定二違反シタルトキ但シ当該違反ヲ防止スル為当該保険医療機関又ハ保険薬局二於テ相当ノ注意及監督が尽サレタルトキヲ除ク」こうなっている。  それで、この指定を取り消されてしまいますと、今みんな国民皆保険ですよね、保険証を持っていく。現金で行っている人いますか、厚生省。まずそこから聞きます。日本は今国民皆保険制度でございましょう。ですから、特別変わったところでもなければ、まず通常の病院は健康保険証を持っていくことになっておりますが、保険医療機関でない病院はありますか。まずここから伺います。
  69. 岡光序治

    岡光政府委員 例外的にはそれは存在しております。例えば事業所内の病院であるとか、自分は保険診療を扱わないという信念に基づいて、いわば会員、メンバーのような格好でやられておる、そういう病院は存在はいたします。
  70. 佐藤剛男

    佐藤(剛)分科員 それはどんな、もう例外でしょう。
  71. 岡光序治

    岡光政府委員 例外と言ってよろしいと思います。
  72. 佐藤剛男

    佐藤(剛)分科員 では、そういう例外を前提にしないで、もう大半は、九九・九%は保険医療機関であるという前提で進めさせていただきます。  局長健康保険法が制定されたのはいつですか。
  73. 岡光序治

    岡光政府委員 大正十一年でございます。
  74. 佐藤剛男

    佐藤(剛)分科員 では局長、その当時保険医療機関の数は幾つぐらいありましたか。
  75. 岡光序治

    岡光政府委員 申しわけありませんが、この制度ができ始めたころの数字は今持ち合わせておりません。
  76. 佐藤剛男

    佐藤(剛)分科員 無理して数字を言わなくてもいいが、感想として、当時大正何年に健康保険法ができたとき、まだ国民皆保険でもないとき、どのぐらいの感じになっていたと思いますか、病院。あなた局長をやっているんだから、そのぐらいのことは覚えておきなさい。
  77. 岡光序治

    岡光政府委員 おっしゃるとおり皆保険体制ではございませんで、いわば事業所で働いている人たちの健康管理を念頭に置きまして、社会保険のシステムが導入され始めたころでございます。そういう意味では、例えば百医療機関があった場合に恐らく五割、五〇%を超えたかどうかという感じではないかと思います。
  78. 佐藤剛男

    佐藤(剛)分科員 それは後で資料を持ってきてください。五〇%はないはずです。その大正十一年に一体どうなっておるか。  それから、いわゆる国民皆保険になったのはいつですか。
  79. 岡光序治

    岡光政府委員 昭和三十六年からでございます。
  80. 佐藤剛男

    佐藤(剛)分科員 ですから、大正十一年、それから昭和三十六年までの期間あるわけですよ。  それからまた、法律自身がこれは片仮名なんだ。なぜ僕がこの問題を取り上げるかというのは、医療法との関係で取り上げるのですが、医療法は病院について開設の許可、ちゃんとなっているわけですね。開設する場合に、例えば資格を持っていない人がいた場合には開設不許可。あるいは開設した者が不法な、例えば歯科医師の資格を持っていなければ病院を取り消せる。あるいは途中でわかったら、一定の期間命令をかけて、そして閉鎖を命ずることができる。これは医療法になるのです。医療法の第二十九条というのは「閉鎖を命ずることができる。」となっている。  それで厚生省、二十九条の「閉鎖を命ずることができる。」という閉鎖、これは取り消しより重いのですか軽いのですか、法律的に言って。
  81. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 医療法におきます二十九条、今先生がおっしゃいました「閉鎖を命ずることができる。」ということで、幾つかの場合がございますが、「開設の許可を受けた後正当の理由がないのに、六月以上その業務を開始しないとき。」あるいは第二十四条の第一項、これは使用制限命令等のあれでございますが、その「命令又は処分に違反したとき。」あるいは病院の「開設者に犯罪又は医事に関する不正の行為があったとき。」ということでございますので、これはまず病院全体について、医療法の考え方に基づいて閉鎖なり開院の取り消しを命ずるという趣旨でございます。
  82. 佐藤剛男

    佐藤(剛)分科員 そんなことわかっているんだ。法律の解釈の仕方として、命令というのは取り消しより軽いのでしょう、一定の期間を定めてやめるのだから。それが一号から三号に書いてあって、一号は、六カ月以上やってなければ、そんなの当然だよ。普通のそういう取り消し規定の常識です。僕も法律なんて三十近く立案したりしてきているから、これは当然のこと。  それから二号の問題については、「命令又は処分に違反したとき。」といって、病院を閉鎖する前には一定の命令をかけているんだよ。いいですか、局長、命令が前提になっているんだよ、二十九条の一項二号は。すぐに閉鎖の命令は出てこないのですよ。何かの命令、改善命令が出るわけです。  三号は、これは医療に不正に従事している、さっき言った資格がないような話。  僕は、今二号の話をしているのです、二十九条の二号。それと先ほどの健康保険法の取り消しですね、保険医療機関の取り消し。  どういうことかというと、保険医療機関の取り消しをされてしまうと、とまってしまうわけですよ、もう暗やみになってしまって。ところが、こっちの医療法の方にいって病院開設の方にいくと、その手続がかかっているわけですね。一定期間命令に背いたら閉鎖する。さらには、だめな場合には取り消す、病院としても取り消す。クッションがある。親心があるのです。これが普通の法律の体系ですよ。  ところが、大正十一年ですか、この片仮名の法律は、保険医療機関としての取り消しをぽんとしますと、お墓になってしまうんだ。これは閉鎖命令と同じことになってしまうのです。普通ならば、この医療法で言うと閉鎖命令という話なのです。  それで、健康保険法を今流につくれば、こんなのは内閣法制局通らないですよ。ここでは内閣法制局も呼んでいないけれども、この問題について、二十九条の特に一項二号、それから健康保険法の第四十三条ノ十二、ノ十二だからつけ加えたのだろうと思うけれども、こことの間の整合性というのは私はないと見ているから、これについての検討をお願いしたい。  どういうことかというと、四十三条ノ十二で保険医療機関ではないよと。これはどういう事例だったかといいますと、三百万不正請求した。三百万ですよ、だれか手伝っていた人たちが不正請求した。三百万の不正請求をしたら八カ月とまってしまった。八カ月ですよ。  それで、なぜ今まだこの取り消しが復活しないかというと、ここにまだあるのですよ、健康保険法。健康保険法の条文で言いますと、四十三条ノ三第二項、これは、一たん取り消されますともう一回出すのです。保険診療を、健康保険でかかれますよというのを取り消すのです。そうすると、「二年ヲ経過セザルモノナルトキ」は一応却下できるという形なのですよ。しかし、「得」ですから、二年たたなくても、情状酌量があれば、いいですよ、もう一回認めますよということなのでしょうね。  ですから、もう八カ月ぐらいたって、この二年というのが邪魔になっているのかどうなのか知らないけれども、前例がないのかどうか知らないけれども、来ない。また、それもおかしいんだ、この二年というのも。法律同士がおかしいところにさらに二年がおかしかったら、二年も直さなければならない。そういう法制上の問題を持っているわけであります。  そして、今や私のところに署名が来ているんだ。こんなですよ、何万人。手術を受けた人たちは、あの先生でないともう一度再発したときには大変だといって、家族まであんなにやっているわけです。厚生省は、志を向くと書いて患者志向というが、患者志向の行政をやらない。そういうことをやるのが厚生省ではないですか。どっちを向いているんだ。患者の署名を持ってなにしているというのに、大正十何年の法律で二年というのがどうだからといって、自分のうちにこういうふうな問題を審議しようともしない、ほっておく、一たん切ったら。  今や皆保険制度になっているのだから、先ほど局長が言われたように、特定の事業所みたいなよほど変わったところでない限りは、九九%はみんな、病院は当然保険証を持っている人を相手に事業をやっているのですよ。それが当たり前の話だ。ところが、それがとめられてしまったら生殺与奪の権ですよ。閉鎖命令どころでないわ。  医療法でいけば、閉鎖命令の方は厳格なのですよ。なかなかすぐにできない。ところが、健康保険法で言うと、この大正十一年の法律で言うと、あなたのところは保険医療機関でないですよと。今や皆保険でしょう。保険診療でないよなんという人のところは、病院になんか行かないですよ。あの先生は優秀だけれども現金で金取られて、農家の人たちは行かないですよ。そこの矛盾が見事にここに出ておる。  ですから、局長、さっきあなたは大正十一年のときに五〇%ぐらいじゃないかということも認めた。まあ数字は大きく間違っているはずだが、この部門について、皆保険制度になっている現状を踏まえてきちんと見直しなさい、この二つの法律。そして、基本的にこんなふうな自己矛盾にならないような形をきちんとやってもらいたい。それについての答弁を聞きます。
  83. 岡光序治

    岡光政府委員 この健康保険法第四十三条ノ十二の規定は、昭和三十六年の皆保険体制を目指しまして三十三年に入れたものでございます。確かに、法制局では片仮名で書くのはどうだろうかという議論もあるわけでございますが、昭和三十年代、四十年代、五十年代、改正がいろいろございましたが、片仮名法でずっと今まで来ているわけでございます。それですから、この四十三条ノ十二の規定は、大五年間にあったものではなくて、皆保険を念頭に置いて保険医療機関と保険医というシステムをつくったときに規定が入ったものでございます。それで……
  84. 佐藤剛男

    佐藤(剛)分科員 ちょっと待って。さっき、国民皆保険制度ができ上がったのはいつですかと私聞いたでしょう。局長、もう一回確認してください。
  85. 岡光序治

    岡光政府委員 三十六年でございますが、三十三年から準備を進めまして、順次体制を整えて、三十六年から全国的にやっているわけでございます。
  86. 佐藤剛男

    佐藤(剛)分科員 だから三十六年からでしょう。この法律が入ったのは三十二年でしょう、局長
  87. 岡光序治

    岡光政府委員 三十三年でございます。
  88. 佐藤剛男

    佐藤(剛)分科員 いずれにしても先なんだ、皆保険になる前なんです。  そして、我々も法案をつくったりしますから、それは刑法だってつい最近まで片仮名なので、修正するときは片仮名なのですよ。通常、全面的なものをやらない限り片仮名で入れる。だから、そのときの入れ方というのは昔流の書き方しますから、すごく難しいんです。何とかすることを得というのを書くわけです、昔時代の訓 学にいくわけですから。日本語というのは昔流に持っていくとすごく難しい。このところが私は欠陥のところだと思います。そして、昭和三十三年という皆保険ではない時期にやったのだから、いいですか、局長、皆保険になった時点において見直してください。  それならば別のアプローチの仕方をしますよ。医療法の二十九条、ここにはこう書いてありますね。「都道府県知事は、次の各号のいずれかに該当する場合においては、病院、診療所若しくは助産所の開設の許可を取り消し、又は開設者に対し、期間を定めて、その閉鎖を命ずることができる。」閉鎖を命じたケースというのは過去においてありますか、二十九条で。何件あるか教えてください。
  89. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 ちょっと今までの数字は持っておりませんが、昨年、平成年度では二件でございます。
  90. 佐藤剛男

    佐藤(剛)分科員 二件。閉鎖命令ですか。
  91. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 これは、今おっしゃいました二十九条の取り消しを命じたものでございます。
  92. 佐藤剛男

    佐藤(剛)分科員 閉鎖命令が発動されたことはありますか、法律ができてから今日に至るまで。
  93. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 ちょっとはっきり記憶はしておりませんが、過去に昭和五十年代にあったというふうに記憶をしております。ちょっと以前のデータを持っておりませんので、申しわけございません。
  94. 佐藤剛男

    佐藤(剛)分科員 恐らく一件か二件だと思います。そのように非常に慎重なのですよ。閉鎖命令を出す場合でも、審議会の議決を経なければいかぬし、その前に改善命令みたいなものがあるのです。簡単に出ない。  それから、こっちの方の健康保険法も審議会があるのですよ。審議会に聞くのですが、そのときに、不正診療だから、金目の話だから、もし病院がちゃんと開設してどんどんやっていれば、どんどん税金を払うのですよ。三百万くらい一日で、お医者さんだからもうかってしまう。そういうこと全体の、国民の全体がどうなのかということの観点なしに、一つの大正何年の法律を前提に保険医療機関であるものの指定取り消しだ。  簡単に言えば、スピード違反をして、酔っぱらい運転でスピード違反をするのもあるだろうし、あるいはちょっとした雰囲気であるかもしれないけれども、免許証取り消しをやってしまう。免許証取り消しということが今の保険医療機関の取り消しですよ。取り消されると、持っていないとこれは運転できなくなってしまう。スピード違反のところはスピード違反で罰金を払う、それで済んでしまう。  ですから、そういう行政処分の方が過重にいくような形のメカニズムに今や両建てでなっていて、厚生省の中では局も別々でやっているけれども、一つの病院にとっては、患者にとっては、こんなのは保険法で対象になろうと医療法でなろうと、そんなのは知った話ではない。患者が再発で行ったら、ちゃんと手術をしてくれた先生にもう一回大丈夫なのか、特に血管の病気の場合などというのはそういうケースが多いのです。みんな不安感を持っている。そういうものに対して、患者に対して思いやりを持った行政をやることが厚生省の仕事ではないのかと僕は言っている。どっちを向いているのだ。
  95. 岡光序治

    岡光政府委員 私どもも、患者、国民を向いた仕事をしているつもりでございます。  個別ケースを念頭に置いて少し答弁をさせていただきますと、もう一度繰り返しになりますが、昭和三十六年からの皆保険体制を法制的に整えるために、三十三年時点で健康保険法とか国民健康保険法の関連の法律を改正したわけでございまして、こういった保険医療機関あるいは保険医というシステムを皆保険を念頭に置いた三十三年の改正のときに入れたわけでございます。  この考え方は、要するに、医療機関があった場合に、保険診療をしてくれますかということでその保険診療の契約を結ぶという、いわばこれは契約行為だというふうに私どもは理解をしております。ただし、個別の医療機関が個別の保険者と契約をするのは大変だということでございますので、都道府県知事がいわば第三者のためにする契約という格好でこの指定という行為を行っているわけでございます。  この指定については、御指摘がありましたように、健康保険法第四十三条ノ十二で取り消しの規定が規定してございます。そのときは、要するに、保険の診療を行う場合に守るべきルール、療養担当規則と言っておりますが、これに違反をした場合、それから診療報酬の不正請求を行った場合、それから監査を拒否したり虚偽の報告をしたりする、こういうことでございます。  それで私どもは、この保険の約束事に従って患者のためにきちっとした医療行為をしていただきたい。それが疑わしいときはどうするかといいますと、まず指導をするわけでございます。その指導を再三やって、それにも従ってもらえないというときには、そのときに初めて監査に移るわけでございます。  この個別ケースにつきましても再三再四指導を行っているわけでございまして、そのときの違反金が既にもう二千万円を超えているわけでございます。なおこういうことをやりながらルールに従った診療をされないものですから、したがいまして監査に移ったわけでございます。御指摘がありましたように、監査時点では四百万だったでしょうか、正確に覚えておりませんが、そういった金額の違反が出たわけでございまして、再三再四行いましたいわば指導と加えますと、実は三千万近い違反金になっているわけでございます。  それで、私どもは金高で申しているわけではございませんで、内容的に、先ほど言いましたようなルールに従ってやってもらう、それから診療報酬については不正請求してもらっては困るということで、そのようなことが行われないということが確認された段階で、もちろん二年というルールがございますが、個別の事例におきましてそういう確認がなされれば再指定をしているわけでございます。この個別のケースで申し上げますと、再申請……
  96. 佐藤剛男

    佐藤(剛)分科員 ちょっと長い。そんなことわかっているんです。そんな個別の話を私はわざわざしていないんです。個別の話、何々病院なんて僕は言わないということを前提に話をしている。いいですか、局長。僕はフェアな立場で言っているんだけれども、あなたは問題をすりかえている。僕は初めから問題提起の仕方をしている。両方の法律の違い、それから皆保険であるときと皆保険じゃないときの違い。  そして救済の部分について、あなたは今契約だの何だのと言っている。しかし、皆保険という制度ができ上がっていて、今病院で特殊の、〇・一だか〇・〇一あるか知らないけれども、そういうものを除いては皆、病院経営などというのは保険関係を前提にしてやっているんですよ。やらない方がおかしい。そういうことをやっている中のものについて、僕が言っているのは、病院の閉鎖命令だって一件ぐらいしかないというんでしょう。閉鎖命令以上の効果が出ちゃっているわけでしょう。八カ月間閉鎖しているよ。あなた行ってごらんなさい。  あえて具体的に僕は名前を言わなかったんだ。それをあなたは、個別の話ですが二千万だ三千万だの話をするから言うが、きちんとそのぐらいのことを行政官だからやりなさい。私も行政官をやってきた男だけれども、ちゃんと天下国家、国民のためにきちっとやる。厚生省の場合は患者志向にやるということが根本でしょう。法律論議の三百代言みたいな話を聞いているんじゃない。いいですか、局長、その心構えできちっとやっていただきたいと思います。  政務次官、お聞きになっていて御感想を最後にお聞かせください。
  97. 住博司

    住政府委員 個別具体的な話については触れないということでございましたけれども、国民皆保険制度をとっている以上、保険医の指定を受けたその対象のお医者さんなり診療機関というものは、そういう体制の中できちんと業務を行っていただくことが大切であるというふうに思います。  したがって、先生の御指摘いろいろとお聞かせをいただきましたけれども、私どもは、やはり基本的には、保険診療の中でやっているその体制を守り続けていただくことは、その指定を受けている機関の皆様方にとっても必要なことであろう、こう思っておりますので、このことについてはちょっと先生とは意見を異にするところがあるのかな、こういうふうに感じておりました。
  98. 佐藤剛男

    佐藤(剛)分科員 敬愛している住政務次官のおっしゃるとおりで、別に僕と見解が違うわけじゃないです。  ただ、この問題は法律それぞれの根拠に基づく運用の問題ですから、そして全体として医療法と健康保険法と両建てで一つの病院についてやっているわけですから、そこのところのバランスを、先ほど言いました閉鎖命令と同じような効果を持って、墓場みたいになっているという実情というのはこれでいいのかどうなのか。  それから、患者がこんなに陳情して、家族まで心配してやってきている状況もあるということ。これはやぶ医者だったら来ないんですよ、簡単に言いますと。名医で、この先生が手術するから助かる、もう神様みたいな先生なんですね。だれでも同じ薬を飲ませている病院と違うんです。ですから、そういうところをよくあれしてやっていくことが心の通った、私は患者志向と言うんですが、患者志向、こういうふうなことを行うことが厚生省の一番根底になければならない問題ではないかと思うわけでございます。  そういうことを申し上げまして、いろいろきついことを申し上げたが、私はそういう癖があってあえて言ったわけだから、あしからずひとつきちんと善処してやっていただきたい。両局長、頼みますよ。  以上をもちまして終わらせていただきます。ありがとうございました。
  99. 福田康夫

    福田主査代理 これにて佐藤剛男君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして厚生省所管環境衛生金融公庫の質疑は終了いたしました。  午後三時から本分科会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時九分休憩      ————◇—————     午後三時開議
  100. 前田武志

    前田主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  これより労働省所管について審査を行います。  まず、概要説明を聴取いたします。永井労働大臣。
  101. 永井孝信

    ○永井国務大臣 労働省所管平成年度決算について、その概要を御説明申し上げます。  まず、一般会計の歳出決算について申し上げます。  歳出予算現額四千五百八十九億一千八百四十三万円余に対しまして、支出済み歳出額四千五百二十三億百四十四万円余、不用額六十六億一千六百九十九万円余で決算を結了いたしました。  次に、特別会計決算について申し上げます。  まず、労働保険特別会計について申し上げます。  初めに、労災勘定について申し上げます。  歳入につきましては、歳入予算額二兆四千二十八億七千八百七十四万円余に対しまして、収納済み歳入額二兆二千四百五十億二千六百三十六万円余であり、差し引き一千五百七十八億五千二百三十八万円余の減となっております。  歳出につきましては、歳出予算現額一兆三千百七十六億六千五百九十七万円余に対しまして、支出済み歳出額一兆一千七百五億五千四百三十七万円余、翌年度繰越額五億九千九百三十一万円余、不用額一千四百六十五億一千二百二十八万円余で決算を結了いたしました。  次に、雇用勘定について申し上げます。  まず、歳入につきましては、歳入予算額二兆四千三百九十四億七千六百二十七万円余に対しまして、収納済み歳入額二兆四千五百九十四億四千九百八十七万円余であり、差し引き百九十九億七千三百六十万円余の増となっております。  歳出につきましては、歳出予算現額二兆四千二億九千三百二十一万円余に対しまして、支出済み歳出額一兆七千九百五十四億八千三百四十一万円余、翌年度繰越額二億四千九百七十万円余、不用額六千四十五億六千九万円余で決算を結了いたしました。  次に、徴収勘定について申し上げます。  まず、歳入につきましては、歳入予算額三兆八千七百七億一千二百二十七万円余に対しまして、収納済み歳入額三兆六千八百億四千三百六十万円余でありまして、差し引き一千九百六億六千八百六十七万円余の減となっております。  歳出につきましては、歳出予算現額三兆八千七百七億一千二百二十七万円余に対しまして、支出済み歳出額三兆六千七百九十五億四千百九十四万円余、不用額一千九百十一億七千三十三万円余で決算を結了いたしました。  最後に、石炭並びに石油及び石油代替エネルギー対策特別会計の石炭勘定のうち、労働省所管分の歳出決算について申し上げます。  歳出予算現額百六十一億四千九百五十五万円余に対しまして、支出済み歳出額百四十二億七千百二十七万円余、不用額十八億七千八百二十七万円余で決算を結了いたしました。  続きまして、労働省所管平成年度決算について、その概要を御説明申し上げます。  まず、一般会計の歳出決算について申し上げます。  歳出予算現額四千七百九十七億九千二百九十五万円余に対しまして、支出済み歳出額四千七百四十四億五千百二十五万円余、不用額五十三億四千百六十九万円余で決算を結了いたしました。  次に、特別会計決算について申し上げます。  まず、労働保険特別会計について申し上げます。  初めに、労災勘定について申し上げます。  歳入につきましては、歳入予算額二兆三千五百五十八億八千八百十万円余に対しまして、収納済み歳入額二兆二千九十六億四千九百六十六万円余であり、差し引き一千四百六十二億三千八百四十三万円余の減となっております。  歳出につきましては、歳出予算現額一兆三千八百十九億九千百三十万円余に対しまして、支出済み歳出額一兆二千三百四億七千三百七十二万円余、翌年度繰越額二十九億四千七百三十七万円余、不用額一千四百八十五億七千二十万円余で決算を結了いたしました。  次に、雇用勘定について申し上げます。  まず、歳入につきましては、歳入予算額二兆八千三十七億四千五百四十三万円余に対しまして、収納済み歳入額二兆三千五百五十四億四千百九十二万円余であり、差し引き四千四百八十三億三百五十万円余の減となっております。  歳出につきましては、歳出予算現額二兆八千三十九億九千五百十四万円余に対しまして、支出済み歳出額二兆一千五百五十九億二千九百九十一万円余、翌年度繰越額二十五億八千六百四万円余、不用額六千四百五十四億七千九百十八万円余で決算を結了いたしました。  次に、徴収勘定について申し上げます。  まず、歳入につきましては、歳入予算額三兆七千二百六十九億六百一万円余に対しまして、収納済み歳入題二兆五千二百三十一億二千三百三十一万円余でありまして、差し引き二十三十七億八千二百六十九万円余の減となっております。  歳出につきましては、歳出予算現額三兆七千二百六十九億六百一万円余に対しまして、支出済み歳出額三兆五千二百二十七億四千七十万円余、不用額二千四十一億六千五百三十万円余で決算を結了いたしました。  最後に、石炭並びに石油及びエネルギー需給構造高度化対策特別会計の石炭勘定のうち、労働省所管分の歳出決算について申し上げます。  歳出予算現額百五十七億九千三百二十六万円余に対しまして、支出済み歳出額百三十四億二千三百六十七万円余、不用額二十三億六千九百五十九万円余で決算を結了いたしました。  なお、一般会計及び特別会計における主な事項につきましては、お手元に配付してある資料のとおりでありますが、時間の関係もございますので、御説明を省略させていただきたいと存じます。  以上をもちまして、労働省所管に関する平成年度及び平成年度一般会計及び特別会計決算説明を終わります。  よろしく御審議くださいますようお願い申し上げます。
  102. 前田武志

    前田主査 次に、会計検査院検査概要説明を聴取いたします。会計検査院森下第二局長
  103. 森下伸昭

    森下会計検査院説明員 平成年度労働省決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、法律政令もしくは予算に違反しまたは不当と認めた事項五件及び意見を表示しまたは処置を要求した事項一件であります。  まず、法律政令もしくは予算に違反しまたは不当と認めた事項について御説明いたします。  検査報告番号二二二号は、労働保険保険料徴収額に過不足があったものであります。  検査報告番号二二三号は、雇用保険の失業給付金の支給が適正に行われていなかったものであります。  検査報告番号二二四号は、雇用保険の特定求職者雇用開発助成金の支給が適正に行われていなかったものであります。  検査報告番号二二五号は、雇用保険の地域雇用開発助成金の支給が適正に行われていなかったものであります。  検査報告番号二二六号は、労働者災害補償保険の療養の給付に要する診療費の支払いが適正に行われていなかったものであります。  次に、意見を表示しまたは処置を要求した事項について御説明いたします。  これは、労働者災害補償保険の療養の給付に要する診療費における入院室料加算の算定及び審査に関するものであります。  労働省では、労働者災害補償保険の指定医療機関が、個室または二人部屋で、容体を常時監視できる設備または構造の要件を満たすとして都道府県知事の承認を受けた特定病床、またはそれに準じた設備または構造を備えた病床に傷病労働者を収容した場合に、入院室料加算を算定・請求できることとしています。しかし、指定医療機関において、特定病床でない病床、あるいは特定病床に準じた設備または構造を備えていない個室または二人部屋に傷病労働者を収容しているのに、入院室料加算を算定・請求している事態が見受けられました。  したがって、同省は、設備または構造の要件やその確認の方法等を具体的に示すとともに、的確な審査を行い、入院室料加算の算定及び支払いの適正化を図るよう、是正改善処置を要求したものであります。  続きまして、平成年度労働省決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、法律政令もしくは予算に違反しまたは不当と認めた事項五件であります。  検査報告番号二〇四号は、労働保険保険料徴収額に過不足があったものであります。  検査報告番号二〇五号は、雇用保険の失業給付金の支給が適正に行われていなかったものであります。  検査報告番号二〇六号は、雇用保険の雇用調整助成金の支給が適正に行われていなかったものであります。  検査報告番号二〇七号は、雇用保険の特定求職者雇用開発助成金の支給が適正に行われていなかったものであります。  検査報告番号二〇八号は、労働者災害補償保険の療養の給付に要する診療費の支払いが適正に行われていなかったものであります。  以上をもって概要説明を終わります。
  104. 前田武志

    前田主査 ただいまの会計検査院指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。永井労働大臣。
  105. 永井孝信

    ○永井国務大臣 平成年度決算検査報告に掲記されております事項につきましては、会計検査院の御指摘のとおりでありまして、まことに遺憾に存じております。  これらの指摘事項につきましては、鋭意改善に努め、今後このような御指摘を受けることのないよう一層努力をいたしたいと存じます。  続きまして、平成年度決算検査報告に掲記されております事項につきましては、会計検査院の御指摘のとおりでありまして、まことに遺憾に存じております。  これらの指摘事項につきましては、鋭意改善に努め、今後このような御指摘を受けることのないよう一層努力をいたしたいと存じます。
  106. 前田武志

    前田主査 この際、お諮りいたします。  お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  107. 前田武志

    前田主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————    平成年度労働省所管一般会計及び特別会計決算概要                 労 働 省  労働省所管平成年度決算について、その概要を御説明申し上げます。  まず、一般会計の歳出決算について申し上げます。  歳出予算現額及び歳出予算額とも四千五百八十九億一千八百四十三万円余であります。  この歳出予算現額に対しまして、支出済歳出額四千五百二十三億百四十四万円余、不用額六十六億一千六百九十九万円余で決算を結了いたしました。  支出済歳出額の主なものについて申し上げますと、雇用保険国庫負担金、職業転換対策事業費、失業対策事業費等であります。  これらの経費は、雇用保険法に基づく求職者給付等に要する費用の一部負担、高年齢者労働能力活用事業の実施に要した費用等、緊急失業対策法に基づき実施した失業対策事業に要したもの等でありますが、このうち失業対策事業の実績は、事業主体数百九十九箇所、事業数四百四十二、失業者の吸収人員一日平均四千六百人となっております。  なお、不用額の主なものは、職業転換対策事業費等であります。  次に、特別会計決算について申し上げます。  まず、労働保険特別会計について申し上げます。  この会計は、労災勘定、雇用勘定及び徴収勘定に区分されております。  初めに、労災勘定について申し上げます。  歳入につきましては、歳入予算額二兆四千二十八億七千八百七十四万円余に対しまして、収納済歳入額二兆二千四百五十億二千六百三十六万円余でありまして、差引き一千五百七十八億五千二百三十八万円余の減となっております。  これは、保険料収入等が予定より少なかったため、徴収勘定からの受入れが少なかったこと等によるものであります。  歳出につきましては、歳出予算現額一兆三千百七十六億六千五百九十七万円余でありまして、その内訳は、歳出予算額一兆三千百四十三億五千五百六十二万円、前年度繰越額三十三億一千三十五万円余であります。  この歳出予算現額に対しまして、支出済歳出額一兆一千七百五億五千四百三十七万円余、翌年度繰越額五億九千九百三十一万円余、不用額一千四百六十五億一千二百二十八万円余で決算を結了いたしました。  支出済歳出額の主なものは、労働者災害補償保険法に基づく保険給付支給に必要な経費及び労働福祉事業の実施に必要な経費等であります。  次に、労災勘定による事業の実績の概要について申し上げます。  保険給付の新規受給者数は、七十二万五千人余、年金受給者数は、二十万二千人余、支給額は、七千九百十六億二千六百三十万円余となっております。  また、労働福祉事業に必要な経費に係る支出済歳出額は、二千百四十六億二千五百八十八万円余となっております。  なお、不用額の主なものは、保険給付費等であります。  次に、雇用勘定について申し上げます。  まず、歳入につきましては、歳入予算額二兆四千三百九十四億七千六百二十七万円余に対しまして、収納済歳入額二兆四千五百九十四億四千九百八十七万円余でありまして、差引き百九十九億七千三百六十万円余の増となっております。  これは、預託金が予定より多かったこと等により、預託金利子収入が多かったこと等によるものであります。  歳出につきましては、歳出予算現額二兆四千二億九千三百二十一万円余でありまして、その内訳は、歳出予算額二兆四千一億二千八百六十万円余、前年度繰越額一億六千四百六十一万円余であります。  この歳出予算現額に対しまして、支出済歳出額一兆七千九百五十四億八千三百四十一万円余、翌年度繰越額二億四千九百七十万円余、不用額六千四十五億六千九万円余で決算を結了いたしました。  支出済歳出額の主なものは、雇用保険法に基づく失業給付支給に必要な経費並びに雇用安定事業、能力開発事業及び雇用福祉事業の実施に必要な経費等であります。  次に、雇用勘定による事業の実績の概要について申し上げます。  失業給付には、求職者給付と就職促進給付がありますが、求職者給付の中心を占める一般求職者給付の月平均受給者実人員は、五十七万人余、支給額は、九千四百四十八億一千六十六万円余、また、就職促進給付の受給者数は、二十九万七千人余、支給額は、九百二十七億二千六百三十七万円余となっております。  また、雇用安定事業等三事業に必要な経費に係る支出済歳出額は、三千五百十六億六千五百二十三万円余となっております。  なお、不用額の主なものは、予備費等であります。  次に、徴収勘定について申し上げます。  まず、歳入につきましては、歳入予算額三兆八千七百七億一千二百二十七万円余に対しまして、収納済歳入額三兆六千八百億四千三百六十万円余でありまして、差引き一千九百六億六千八百六十七万円余の減となっております。  これは、労災保険に係る保険料収入が予定より少なかったこと等によるものであります。  歳出につきましては、歳出予算現額及び歳出予算額とも、三兆八千七百七億一千二百二十七万円余であります。  この歳出予算現額に対しまして、支出済歳出額三兆六千七百九十五億四千百九十四万円余、不用額一千九百十一億七千三十三万円余で決算を結了いたしました。  支出済歳出額の主なものは、労災勘定及び雇用勘定への繰入れに必要な経費であります。  次に、徴収勘定に係る業務の実績の概要について申し上げます。  労災保険適用事業場数二百五十四万余、労災保険適用労働者数四千五百八十三万人余、雇用保険適用事業場数百八十四万余、一般雇用保険適用労働者数三千二百八十三万人余となっております。  なお、不用額の主なものは、労災勘定及び雇用勘定への繰入れに必要な経費であります。  最後に、石炭並びに石油及び石油代替エネルギー対策特別会計の石炭勘定のうち、労働省所管分の歳出決算について申し上げます。  歳出予算現額及び歳出予算額とも百六十一億四千九百五十五万円余であります。  この歳出予算現額に対しまして、支出済歳出額百四十二億七千百二十七万円余、不用額十八億七千八百二十七万円余で決算を結了いたしました。  支出済歳出額の主なものは、炭鉱離職者緊急就労対策事業の実施等に必要な経費に充てるための炭鉱離職者等援護費等であります。  このうち炭鉱離職者緊急就労対策事業の実績は、事業数六十五、年間就労人員延べ十二万三千人余となっております。  なお、不用額の主なものは、炭鉱離職者等援護対策費であります。  以上が労働省所管に属する平成年度一般会計及び特別会計決算概要であります。  以上をもちまして、労働省所管に属する一般会計及び特別会計決算説明を終わります。  よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。     …………………………………    平成年度決算労働省についての検査の概要に関する主管局長説明                 会計検査院  平成年度労働省決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、法律政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項五件及び意見を表示し又は処置を要求した事項一件であります。  まず、法律政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項について御説明いたします。  検査報告番号二二二号は、労働保険保険料の徴収に当たり、徴収額に過不足があったものであります。これは、事業主が提出した保険料算定の基礎となる賃金の支払総額が事実と相違していたことなどにより、徴収額に過不足があったものであります。  検査報告番号二二三号は、雇用保険の失業給付金の支給が適正でなかったものであります。これは、失業給付金の受給者が再就職しておりますのに、失業給付金のうちの基本手当を支給していたり、事実と相違した再就職年月日を基に再就職手当を支給していたりして、給付の適正を欠いていたものであります。  検査報告番号二二四号は、雇用保険の特定求職者雇用開発助成金の支給が適正でなかったものであります。この助成金は、高年齢者等特定求職者の雇用機会の増大を図るため、特定求職者を公共職業安定所の紹介により雇用した事業主に対して、その者に支払った賃金の一部を助成するものでありますが、事業主が既に雇用している者を新たに雇用したこととしているなど、支給要件を欠いているのに助成金を支給しており、給付の適正を欠いていたものであります。  検査報告番号二二五号は、雇用保険の地域雇用開発助成金の支給が適正でなかったものであります。この助成金は、雇用機会が不足している地域の雇用開発を促進するため、施設等の設置・整備を行って当該地域に居住する求職者等を雇用した事業主に対して支給するもので、雇い入れた労働者に支払った賃金の一部を助成する地域雇用奨励金、施設等の設置・整備に要した費用と雇い入れた労働者数に応じて助成する地域雇用特別奨励金などから成っておりますが、事業主が既に雇用している者を新たに雇用したこととしているなど、支給要件を欠いているのに助成金を支給しており、給付の適正を欠いていたものであります。  検査報告番号二二六号は、労働者災害補償保険の療養の給付に要する診療費の支払が適正でなかったものであります。療養の給付は、業務上の事由又は通勤により負傷又は発病した労働者に対して、医療機関において診察、薬剤の支給等を行うもので、都道府県労働基準局において医療機関からの診療費の請求内容審査することになっておりますが、医療機関が診療費を誤って過大に算定して請求しているのに請求どおり支払っており、支払の適正を欠いていたものであります。  次に、意見を表示し又は処置を要求した事項について御説明いたします。  これは、労働者災害補償保険の療養の給付に要する診療費における入院室料加算の算定及び審査に関するものであります。  労働省では、労働者災害補償保険法に基づき、傷病労働者に対する療養の給付を行っておりますが、病室の設備又は構造上の配慮を備えている個室又は二人部屋の病床に傷病労働者を収容した場合には、各指定医療機関は労災診療費として入院室料加算を算定し、その支払を請求できることになっております。  しかし、本院がこの入院室料加算の算定及びこれに対する各労働基準局の審査の適否について調査しましたところ、この算定要件である病室の設備又は構造上の要件を満たしていない個室又は二人部屋に傷病労働者を収容しているのに、入院室料加算を算定している不適切な事態が見受けられました。  したがいまして、労働省において、入院室料加算の審査について、確認すべき事項の内容、審査の方法、算定要件にいう病室の設備又は構造上の配慮の内容等を具体的に示し、各労働基準局においてその審査体制を整備し的確な審査を行うこととして、入院室料加算の算定及び支払の適正を期するよう改善処置を要求いたしたものであります。  なお、以上のほか、平成年度決算検査報告に掲記いたしましたように、労働者災害補償保険の診療費の算定について、及び平成年度決算検査報告に掲記いたしましたように労働者災害補償保険の費用徴収制度の適切な実施について、それぞれ処置を要求いたしましたが、これらに対する労働省処置状況についても掲記いたしました。以上をもって概要説明を終わります。     —————————————    平成年度労働省所管一般会計及び特別会計決算概要                 労 働 省  労働省所管平成年度決算について、その概要を御説明申し上げます。  まず、一般会計の歳出決算について申し上げます。  歳出予算現額及び歳出予算額とも四千七百九十七億九千二百九十五万円余であります。  この歳出予算現額に対しまして、支出済歳出額四千七百四十四億五千百二十五万円余、不用額五十三億四千百六十九万円余で決算を結了いたしました。  支出済歳出額の主なものについて申し上げますと、雇用保険国庫負担金、職業転換対策事業費、失業対策事業費等であります。  これらの経費は、雇用保険法に基づく求職者給付等に要する費用の一部負担、高年齢者労働能力活用事業の実施に要した費用等、緊急失業対策法に基づき実施した失業対策事業に要したもの等でありますが、このうち失業対策事業の実績は、事業主体数百四十五箇所、事業数三百四、失業者の吸収人員一日平均三千百人となっております。  なお、不用額の主なものは、職業転換対策事業費等であります。  次に、特別会計決算について申し上げます。  まず、労働保険特別会計について申し上げます。  この会計は、労災勘定、雇用勘定及び徴収勘定に区分されております。  初めに、労災勘定について申し上げます。  歳入につきましては、歳入予算額二兆三千五百五十八億八千八百十万円余に対しまして、収納済歳入額二兆二千九十六億四千九百六十六万円余でありまして、差引き一千四百六十二億三千八百四十三万円余の減となっております。  これは、保険料収入等が予定より少なかったため、徴収勘定からの受入れが少なかったこと等によるものであります。  歳出につきましては、歳出予算現額一兆三千八百十九億九千百三十万円余でありまして、その内訳は、歳出予算額一兆三千八百十三億九千百九十八万円余、前年度繰越額五億九千九百三十一万円余であります。  この歳出予算現額に対しまして、支出済歳出額一兆二千三百四億七千三百七十二万円余、翌年度繰越額二十九億四千七百三十七万円余、不用額一千四百八十五億七千二十万円余で決算を結了いたしました。  支出済歳出額の主なものは、労働者災害補償保険法に基づく保険給付支給に必要な経費及び労働福祉事業の実施に必要な経費等であります。  次に、労災勘定による事業の実績の概要について申し上げます。  保険給付の新規受給者数は、六十九万五千人余、年金受給者数は、二十万四千人余、支給額は、七千九百九十九億七千五百三十一万円余となっております。  また、労働福祉事業に必要な経費に係る支出済歳出額は、二千二百九十一億八千百十三万円余となっております。  なお、不用額の主なものは、保険給付費等であります。  次に、雇用勘定について申し上げます。  まず、歳入につきましては、歳入予算額二兆八千三十七億四千五百四十三万円余に対しまして、収納済歳入額二兆三千五百五十四億四千百九十二万円余でありまして、差引き四千四百八十三億三百五十万円余の減となっております。  これは、失業給付金が予定より少なかったこと等により、積立金からの受入れを必要としなかったこと等によるものであります。  歳出につきましては、歳出予算現額二兆八千三十九億九千五百十四万円余でありまして、その内訳は、歳出予算額二兆八千三十七億四千五百四十三万円余、前年度繰越額二億四千九百七十万円余であります。  この歳出予算現額に対しまして、支出済歳出額二兆一千五百五十九億二千九百九十一万円余、翌年度繰越額二十五億八千六百四万円余、不用額六千四百五十四億七千九百十八万円余で決算を結了いたしました。  支出済歳出額の主なものは、雇用保険法に基づく失業給付支給に必要な経費並びに雇用安定事業、能力開発事業及び雇用福祉事業の実施に必要な経費等であります。  次に、雇用勘定による事業の実績の概要について申し上げます。  失業給付には、求職者給付と就職促進給付がありますが、求職者給付の中心を占める一般求職者給付の月平均受給者実人員は、六十九万九千人余、支給額は、一兆一千八百六億一千八百五十八万円余、また、就職促進給付の受給者数は、三十万七千人余、支給額は、九百八十三億三千六百六万円余となっております。  また、雇用安定事業等三事業に必要な経費に係る支出済歳出額は、三千九百九十六億二千三百二十二万円余となっております。  なお、不用額の主なものは、予備費等であります。  次に、徴収勘定について申し上げます。  まず、歳入につきましては、歳入予算額三兆七千二百六十九億六百一万円余に対しまして、収納済歳入額三兆五千二百三十一億二千三百三十一万円余でありまして、差引き二千三十七億八千二百六十九万円余の減となっております。  これは、労災保険に係る保険料収入が予定より少なかったこと等によるものであります。  歳出につきましては、歳出予算現額及び歳出予算額とも、三兆七千二百六十九億六百一万円余であります。  この歳出予算現額に対しまして、支出済歳出額三兆五千二百二十七億四千七十万円余、不用額二千四十一億六千五百三十万円余で決算を結了いたしました。  支出済歳出額の主なものは、労災勘定及び雇用勘定への繰入れに必要な経費であります。  次に、徴収勘定に係る業務の実績の概要について申し上げます。  労災保険適用事業場数二百五十七万余、労災保険適用労働者数四千六百六十三万人余、雇用保険適用事業場数百八十七万余、一般雇用保険適用労働者数三千三百七万人余となっております。  なお、不用額の主なものは、労災勘定及び雇用勘定への繰入れに必要な経費であります。  最後に、石炭並びに石油及びエネルギー需給構造高度化対策特別会計の石炭勘定のうち、労働省所管分の歳出決算について申し上げます。  歳出予算現額及び歳出予算額とも百五十七億九千三百二十六万円余であります。  この歳出予算現額に対しまして、支出済歳出額百三十四億二千三百六十七万円余、不用額二十三億六千九百五十九万円余で決算を結了いたしました。  支出済歳出額の主なものは、炭鉱離職者緊急就労対策事業の実施等に必要な経費にあてるための炭鉱離職者等援護費等であります。  このうち炭鉱離職者緊急就労対策事業の実績は、事業数六十一、年間就労人員延べ十一万五千人余となっております。  なお、不用額の主なものは、炭鉱離職者等援護対策費であります。  以上が労働省所管に属する平成年度一般会計及び特別会計決算概要であります。  以上をもちまして、労働省所管に属する一般会計及び特別会計決算説明を終わります。  よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。     …………………………………    平成年度決算労働省についての検査の概要に関する主管局長説明                 会計検査院  平成年度労働省決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、法律政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項五件であります。  検査報告番号二〇四号は、労働保険保険料の徴収に当たり、徴収額に過不足があったものであります。これは、事業主が提出した保険料算定の基礎となる賃金の支払総額が事実と相違していたことなどにより、徴収額に過不足があったものであります。  検査報告番号二〇五号は、雇用保険の失業給付金の支給が適正でなかったものであります。これは、失業給付金の受給者が再就職しておりますのに、失業給付金のうちの基本手当を支給していたり、事実と相違した再就職年月日を基に再就職手当を支給していたりして、給付の適正を欠いていたものであります。  検査報告番号二〇六号は、雇用保険の雇用調整助成金の支給が適正でなかったものであります。この助成金は、失業の予防その他雇用の安定を図るため、景気の変動、産業構造の変化その他の経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされ、雇用する労働者について休業、教育訓練又は出向を実施した事業主に対して、事業主が支払った休業手当、教育訓練受講日について支払った賃金又は出向労働者の賃金について負担した額の一部を助成するものでありますが、事業主が実際には休業を全く実施していないのに出勤簿、賃金台帳を改ざんして、計画どおりに休業を実施したこととしているなど、支給要件を欠いているのに助成金を支給しており、給付の適正を欠いていたものであります。  検査報告番号二〇七号は、雇用保険の特定求職者雇用開発助成金の支給が適正でなかったものであります。この助成金は、高年齢者等特定求職者の雇用機会の増大を図るため、特定求職者を公共職業安定所の紹介により雇用した事業主に対して、その者に支払った賃金の一部を助成するものでありますが、事業主が既に雇用している者を新たに雇用したこととしているなど、支給要件を欠いているのに助成金を支給しており、給付の適正を欠いていたものであります。  検査報告番号二〇八号は、労働者災害補償保険の療養の給付に要する診療費の支払が適正でなかったものであります。療養の給付は、業務上の事由又は通勤により負傷又は発病した労働者に対して、医療機関において診察、薬剤の支給等を行うもので、都道府県労働基準局において医療機関からの診療費の請求内容審査することになっておりますが、医療機関が診療費を誤って過大に算定して請求しているのに請求どおり支払っており、支払の適正を欠いていたものであります。  なお、以上のほか、平成年度決算検査報告に掲記いたしましたように、労働者災害補償保険の診療費の算定について、及び平成年度決算検査報告に掲記いたしましたように、労働者災害補償保険の療養の給付に要する診療費における入院室料加算の算定及び審査について、それぞれ処置を要求いたしましたが、これらに対する労働省処置状況についても掲記いたしました。  以上をもって概要説明を終わります。     —————————————
  108. 前田武志

    前田主査 以上をもちまして労働省所管説明は終わりました。     —————————————
  109. 前田武志

    前田主査 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。栗原博久君。
  110. 栗原博久

    栗原(博)分科員 男女均等法が施行されましてから十年を迎えるわけであります。一九八六年にこの法律が施行されまして、法律が施行されたことに一つの雰囲気もあったと思いますが、新規の大学生などの女性の採用が大変際立って多かった。その後、バブルの時期を迎えましたので、さらに相乗効果を合わせまして、女性の採用件数がふえたということは大変すばらしいことだと思っております。  しかしながら、今回のこの不況が参りまして、その反動で女性の雇用機会が減っておる。特に大学の女子学生、短大の卒業生が、大変採用が控え目のために何のために大学を出たかわからぬ。要するに、大学の専門課程を出たら、その職種につきたいというのは本人として当然のことだと思うのです。  日大教が今回の卒業生に対して昨年十二月からことし二月にかけて実はいろいろ調査した結果を見ますと、女性は、八五%の学生は長く働きたい、あるいはまた男性と同等に働きたい、あるいはまた責任のある仕事を任せてくれるなど、七割から八割がこれを目的として職を求めている。そしてまた、結婚まで腰かけというように考える方はわずかな調査結果だ。  しかしながら、私も昨年子供が大学を出て、就職活動を見ておったのでありますが、実際に会社訪問をいたしますとなかなか条件が厳しいわけでありまして、去年などは女性の採用を控えているところもたくさんありましたようですし、あるいはまた営業とか技術職は男子のみだというような条件もあるようでありますし、あるいはまた自宅通勤ができるのか、あるいはまた結婚、妊娠したらどうするかとか、お茶くみができるかというようなことなど、やはり企業側の問いかけが多かったということであります。  そういう中で、ことしの就職率をちょっと見てみますと、この三月期の大学新卒者の就職内定状況ですが、大学で男子が九七・〇%、女子が九二・四%です。特に、理科系につきましては男子が九八・三%、女子が八九・三%である。短期大学では、男子が九一%に対して女性が八四・七%であるというようなことであるわけです。大変女性の皆さんはやはり就職の幅が狭まっておるわけであります。  こういう中でお聞きしたいのでございますが、こういう厳しい雇用・就職条件の中において、労働省はこれに対してどのような取り組みをされたかということです。今後、景気は徐々に回復はしておりますが、まだまだ厳しさを増していくと思うのでありまして、どのような対応をこれから政策的にとっていかれるかということをお聞きしたいと思うのです。
  111. 永井孝信

    ○永井国務大臣 先生御指摘のように、最近のバブル崩壊後、就職状況は極めて厳しい状況にあるという認識をいたしているところであります。とりわけ、御指摘がありましたように、女子の学卒者などの就職率は男子に比べてこれまた非常に低い数字となっております。したがって、全国の婦人少年室に設けました特別相談窓口というのがございますが、そこでは、女子であることを理由として応募の機会が与えられていない事案や、女子に不利な募集や採用条件が付されているという事案が随分と多く相談として寄せられているわけであります。  このため、引き続き男女雇用機会均等法及び指針の周知徹底に努めますとともに、本年度の就職活動に当たりましても、女性が男性に比べて不利に取り扱われることのないように事業主団体に強く要請を行っているところであります。また、婦人少年室におきまして、女子学生からのいろいろな相談がありますが、その相談に応じまして、問題のある事案については企業に対して直接個別の指導等にも努めているところであります。さらに、就職面接会の積極的開催にも取り組んでまいりたいと思っております。  なお、女子学生の就職問題の解決のためには、事務職以外の職種にも広く女性が応募することも重要な条件だ、私はこう思うわけであります。このため、女子高校生等の進路決定に当たりまして、将来の職業生活をも念頭に置きまして、能力と適性に応じて適切な選択が行われますように、全国の婦人少年室においても意識啓発セミナーなどを実施しているところであります。  何と申し上げましてもミスマッチということが随分ことしも見られました。これだけ女子学生の就職が厳しい折に、大学では依然として求人票が残っているという現実がございますので、今全国で、改めてそういう求人の希望のあった企業などにも御協力をいただきまして、就職できなかった学生のための集団面接会も、異例でありますが、ことしは実施をいたしているところであります。     〔主査退席、福田主査代理着席〕
  112. 栗原博久

    栗原(博)分科員 確かに、学生たちの能力と適性に合った就職指導というものもぜひひとつ遺憾なく実施していただきたいと思います。  また、女性が事務職等いろいろ望んでいるわけですが、たとえ専門職でなくても技術的なことも可能なわけですから、やはり広い範囲での就職というものを見据えて、学生たちみずからも自覚してもらいたい。それを労働行政の中にも生かしていただきたいと思うのであります。  次に、大変今新聞をにぎわせておりますセクシュアルハラスメントの問題でございます。  これは対岸の火事ではない。今アメリカで我が国の米国三菱自動車がセクハラ問題で大変な問題を醸しているようでありますが、私は、大体セクハラといいますと、女性に対して性的な嫌がらせをするというのは理解しておったわけでありますが、新聞紙上等いろいろ見ますと、そうではなくて、アメリカの雇用機会均等委員会ですか、EEOCでは、性に関するすべての歓迎されない行為が全部セクハラであるということであって、私ども日本の文化とは違うと思うのですね。違うといっても、事実として、それによって損害賠償等あるいはいろいろの法的な措置は講じられておるわけでありまして、日本の文化とは違う。やはり私どもも他の国に行った以上は、その国の社会、歴史、文化というものを尊重して雇用に当たらねばならぬと思うのであります。  こういう中で、今回アメリカ三菱自動車の提訴の中で、当初訴えは性的なものであるというようなことを実は否定していたようでありますが、徐々に調査が及びますと、過去にやはりそのような具体的な案件もあったというようなことも伝えられておるわけであります。  それはそれといたしまして、我が国の企業がこうして外国に出てまいります。日本においてのセクハラは、法律的にはちゃんとした法律の中で、民法とか刑法あるいは男女雇用均等法などの現行法規に抵触するものであると思うのですが、アメリカでは何か公民権法ですか、大変広義な法律の中でそれが処罰の対象になっているようでありまして、我が国の日経連の根本二郎会長は、日本のシェイムである、恥であるというようなこと、まさしく中身は別として、こうやって外国にどんどん伝わりますと、日本人とは何ぞやというようなことを問われると思うのです。  ただ、これがアメリカの三菱自動車だけでなくて、一九八八年には本田技研のオハイオの現地法人においてもあって、EEOCから三百七十七人に対して六百万ドルの和解金を支払っていたとか、あるいはまた九二年には住友商事のシカゴ支店でもこのようなことがあったとか、九三年にはオーストラリアのトヨタが妊婦の写真を持ち込んだとか、あるいはまた女性の下着を持ち込んだということで、これもセクハラの対象になっていた。あるいは、九六年に富士銀行のロンドン現地法人でもこのようなことがあったというようなことを伺っているわけですが、それはさておいて外国での事例としても、今後やはりこういう問題が国内にもいろいろ出てくると私は思うのでございます。  この間、読売新聞に実は載っておったのでありますが、東京都の労働経済局ですか、労政事務所に寄せられたセクハラ相談件数は、九四年度には二百七十七件あった。全体の相談件数は四万件ですから、わずかとしても、こういうものが今後グレーゾーンとして広い面で出てくるということである。これを今後の我が国の労働施策の中で真剣に考えていかねばならないと私は思うのでございます。  その中で、今後、日本の国内で秩序ある労働施策を進める上において、セクシュアルハラスメントについてどのような対応をしていくかということ、あるいはまた労働行政の中にどのようにしてこれを生かしていくかということについて御所見をひとつ賜りたいと思います。
  113. 太田芳枝

    ○太田(芳)政府委員 先生御指摘のように、職場におけるセクシュアルハラスメントの問題は、やはり女性の能力の有効発揮という点では非常なマイナスだというふうに思っております。そしてまた、企業の社会的評価をも著しく低下させる問題でありますし、また、さらには人権の観点からも看過できない問題ではないかなというふうに私どもは考えておるところでございます。  労働省といたしましては、セクシュアルハラスメントの解消のためには、まず、企業自身がセクシュアルハラスメントに対する認識を深めていただいて事前の対策を講ずる、予防策を講ずるということが問題解決の第一歩であり、最大のポイントではないかというふうに思っておるわけでございます。  このため、セクシュアルハラスメントにつきましての概念とか、それから企業が予防対策を講ずることの重要性につきまして、既に平成六年くらいから、全国の婦人少年室を通じまして、啓発用のビデオを置いたり、それから、ここにもございますけれども、パンフレットをつくったりして啓発活動は積極的に行っております。  そしてまた、今東京都の例を引かれましたが、婦人少年室の方にもセクハラの御相談が毎年九百件を超えるくらい出てきておりまして、そのうち企業名がわかったり、それからいろいろなことがわかれば、内容に応じて積極的に企業を指導しているところでございます。この点につきましてはこれからも前向きに取り組んでいきたいというふうに思っております。
  114. 栗原博久

    栗原(博)分科員 確かに、労働基準法等のいろいろな法律はありますけれども、これは今後国内でも大変な問題が起きていくと実は私は思うのであります。  ちなみに、我が国においても、もはやこのような事例で裁判が行われているやに伺っておりまして、先般もある出版社の女性が、上司に性的なうわさを会社の外に流されたということで福岡地裁での判決が出ているようでありますし、今後、女性の人権を低下させることで職を追うような、そういう民法の七百九条に抵触するような不法行為というものも恐らく大分あると思うのですね。  こういう中で男女均等法という法律があるわけですが、こういう法律の中できちっとひとつ法体系として取り組むことも今後必要ではなかろうかと私なりに思っておるわけでございます。こういう問題が誤解されて伝えられると、企業そのものも大変負担も大きいわけです。ひいてはそれが我が国の経済活動の低下にもつながるわけでありますから、この問題はただ女性のみならず、企業の健全な経営のためにも、私は、真剣にひとつ労働行政の中に取り入れていただきたいということを重ねてお願い申し上げたいと思います。  さて、そういう中で、実は十年前の朝日新聞の社説をちょっとお読みしたいのでありますが、「「女の夜明け」へ道は険しい」という中で、我が国は今大きな三つのうねりの中にある。戦前の婦人参政権運動の目標は男女平等の実現であった。こういう不平等な中から女性を解放しようということが戦後の新憲法のもとで行われた。  しかしながら、この社説の中では、女性の差別撤廃条約を我が国は一九八五年ですか、署名したわけですね。それを批准することで、女性に対して、男女のまさしく均等の法律をつくろう。まさしくこの法律は女性の夜明けであるけれども、しかし、まだまだ男女の社会の中において険しい道を歩むのだというようなことが、朝日新聞の一九八五年六月二十八日の社説に載っておったわけであります。そういうことの中で、実際、一九八六年に我が国ではこの条約の批准を受けながら法律を制定して、今日まで約十年間の歳月を経ておるわけであります。  私、その中で、女性の社会への進出はいい方向に進んでまいったと思いますが、しかしながら、まだまだ各方面で女性の権利が侵されているというような面もあるのではなかろうかと思っております。それが先ほど申し上げましたセクハラを初めとする差別の問題等も如実に証明しているのではなかろうか。  また、事実、私も先般の衆議院選挙で当選させていただいたわけでありますが、五百十一名ですか、衆議院の中で二・七%、約十三名が女性の進出だったということであります。あの戦後の女性参政権のころには多くの方々が国会へ出てまいったわけですが、それに比べたら大変大きな差があると思うのです。しかし、これは選挙民が選ぶわけですから、どうこうそれ以上は言えないと思うのです。  私はこういう国会活動をして思うのでありますが、政府の審議会とか、ある程度政策決定に携わる場においてもう少し女性の進出がなされることも、これは大変重要ではなかろうかと思うのです。現在、審議会等においては約一三%である。しかし、それは世界各国のランキングだとずっと低い、百四十七番目ぐらいとか言っておりますが、やはり女性が我が国の中枢を動かす場において大変少ないという面もあると思うのであります。  それはそれといたしまして、雇用均等法ができまして、ではどの程度女性の雇用がふえたかということをお伺いすると、この十年間で三四%ほどふえて、当時千五百万人そこそこだったけれども、今は二千万人の女性の職場がある。特にまた女性の全雇用に占める割合が、当時三五・六%が現在は三八%、約四〇%近くなった。また勤務年数も、発足ごろは六年半ぐらいなのが今は約七年六カ月ぐらいになったというように伺っておるのですが、そういう効果は出ております。  しかしながら、この均等法について、成立当初から、やはり欠陥があるというような指摘も実はあったと思うのですね。それは、条約を早く批准しなければならないという中で、この法律を急いでいた感もあるかと思うのですが、それは要するに、この法律の中において、ただ女性であるという中での権利を主張することにポイントが多く移って、雇用の平等とか、あるいは男女ではなくて人種やマイノリティーあるいは高齢者、こういうものを包括した、そういうまさしく均等な法律までいかなかったのではないかと私なりに思っているのです。しかし、この法律の効果は確実に出ていることは間違いありません。  それでお聞きしたいのでございますが、こうして十年たった今日、この法律の効果、あるいはまた、この法律によってどのような女性の権利が向上したかということについてお聞きしたいと思うのであります。
  115. 太田芳枝

    ○太田(芳)政府委員 先生おっしゃいましたように、均等法が女子差別撤廃条約を批准するという目的からつくられまして十年を経過したわけでございます。  この間、均等法の効果は、先生おっしゃってくださいましたように、女性を女だからというだけで差別してはいけないのだという意識が企業の中にかなり広がってまいりまして、従来男性が配置されていた職場へ女性が配置されたり、それから女性を管理職に登用する企業が増加するなど、女性の能力を積極的に活用しようとする企業は確実にふえてきたというふうに言っていいのではないかと思うわけでございますが、すべての企業がそうであるかというと、そうでないというのもこれまた事実でございまして、先ほど来おっしゃっていらっしゃいますように、やはり女性に対して、女であるがゆえにチャンスが与えられなかったりする企業もあることも事実でございます。  また、定年とか退職とか解雇の点にあえて触れさせていただきますと、これまで男女別定年制というのが十年ぐらい前ですと結構あったのでございますが、これはさすがに均等法ができましてから、制度面での改善は進んできております。ただ、ここにつきましても、妊娠、出産等を理由といたしまして退職勧奨が行われていることもないわけではないというような問題点もあるということも、私どもは認識をしておるわけでございます。  そういう点で、全国の婦人少年室におきまして、均等法の遵守を図るためにいろいろな活動を行ってきております。主として女子労働者でございますが、相談件数もこれまで延べ十一万件を超えているわけでございまして、相談内容も、前は定年制等に関するものが多かったのですが、最近では募集、採用に関するものが増加しているというような形で、やはり社会の動きを反映した相談状況になっておるわけでございます。  そして、この婦人少年室では、これらの相談を契機といたしまして、個別紛争の解決の援助とか、それから企業の制度改善を目的といたしました助言指導を行ってきておりまして、これは企業を説得するという地味な仕事でございますけれども、かなり指導は進んでいるのではないかというふうに思っているところでございます。  また、均等法の趣旨に沿った雇用管理を各企業にやっていただくために、企業における自主的な取り組みが重要であるという観点から、機会均等推進責任者というのを企業に選任していただいておりまして、ここで各企業の雇用管理をいろいろ点検していただくというような事業も進めておるところでございます。  ともかくも、女であるというだけで差別をしてはいけないのだという均等法の趣旨が、これからも企業に周知徹底されるように努力を続けてまいりたいというふうに思っております。
  116. 栗原博久

    栗原(博)分科員 先ほど私は、この法律のもう少しこの点はというようなことで申し上げたわけでありますが、要するに、性を基準にして考えないで、あくまでも個人の意欲や能力、そうしたものを評価して、それを雇用の判断にするという環境づくりがまだ必要と思うのでございます。  それで、この法律の中に母性保護を除く女子保護の規定というものがあるわけでありますが、本当に女性の就業の均等化を図るということになりますと、女性の時間外あるいはまた深夜・休日労働を制限している労働基準法の女子保護規定の見直しも、この均等法の中に踏み込んで議論をする必要がなかろうか。これがあるから女性の就労の機会が男性に比べて低下しているのではなかろうかと思うのでございます。  あるいはまた、この法律では調停に伴う調停委員会の制度がございますが、調停開始も企業側の協力がなければ開始ができない、現下の法律の中でそういうようになっているようでございます。こういうことで、私はこの法律もそろそろ時代の趨勢の中で、一部見直し、改正を迫られていると思うのでございますが、この辺についてどのようにお考えになるかということをちょっとお聞きしたいと思うのでございます。
  117. 太田芳枝

    ○太田(芳)政府委員 先生御指摘のように、均等法、十年がたちまして、実は昨年の秋から婦人少年問題審議会というところで、均等法及びその女子保護規定の見直しとあわせまして議論を進めていただいているところでございます。目下精力的に議論を進めていただいておりますので、できるだけ早くその結果をいただきまして、労働省としては対応していきたいというふうに考えておるわけでございます。
  118. 栗原博久

    栗原(博)分科員 あわせまして、これから高齢化社会を迎えるわけでありまして、今、私ども日本の国は少子社会が到来して、女性が一・四人しか産まない。これはひいては我が国の高齢化社会に一層拍車をかけ、かつまた高齢者の方々の介護、あるいはいろいろの年金等についての負担の問題について、やはり働く者がいなければ、その働く者によってお年寄りを支えるわけですから、そのためには、たとえ女性の雇用均等で云々、女性の就業機会がふえたといたしましても、やはり女性が子供を産めるという環境もつくらなければならない。こういう施策もぜひひとつ踏み込んでお願いしたい。  昨年の四月から、我々は育児・介護休業法というものを制定をして、そして、女性については子供を産んでから一年ぐらいは休んでもいいということになっておるわけでありますが、それは休む間においての給与の保障というものがないわけでありますから、保険で二五%の支給となっておりますが、やはり満額、子供を育てながら収入が裏打ちされるような施策も必要と私は思うのです。この十一年からは、介護についても三カ月だけ休んでもいいというような方法もいろいろこれから出てまいりますが、私は、この男女均等法の法の充実と同時に、女性が安心して結婚して子供を産んで、健やかな教育ができるという環境づくりもどうしても必要と思うのであります。  その中で、労働省におかれましては、この女性の雇用状況、私が先ほど申しましたとおり、機会が変化をしてまいります。高齢化社会における介護に対して、やはり身内に対しては介護しなければならぬと思う。あるいはまた、女性がお子さんを産んでも安心して子育てができるという、そういうものを踏まえて、今後女性の就業に対してどうお考えになるか、あるいはまた、女性が本当に真の能力を発揮できる雇用の環境をどのようにしておつくりになるかということについて御所見を賜りたいと思います。
  119. 永井孝信

    ○永井国務大臣 先生の御指摘のように、女性の皆さんが差別のない状況の中でできるだけその人たちのニーズに沿った形で就職の機会が得られるように、労働省といたしましては全力を尽くしていく決意であります。  そのためには、そういう環境整備が先生御指摘のように私は必要だと思うのですね。常に言うことでありますが、仕事と育児や家族の介護とを両立させる、このことが一番基本になっていくと思うのであります。現在、育児休業法という法がございますが、その法律に基づきまして育児のための一年間の休業、あるいは平成十一年から施行されることになっております介護休業法、これについては三カ月ということを限度にいたしておりますが、かなり幅広く対象者を広げて、これも法律によってそれを保障するということになっているわけであります。  しかし、その場合に、賃金の保障という話がございましたけれども、賃金を全部国が面倒を見るというのはなかなか難しい問題でございまして、本来労使間で決めるべきものであります。しかし、この育児休業制度、介護も含めてこれを実行に移しやすいようにということで、現在、育児休業については二五%、雇用保険から一応給付をいたしておるわけであります。介護休業につきましては、まだ保障の関係、賃金の給付の関係につきましては結論は出しておりませんけれども、育児休業と同じような形で考えていきたいということで今検討を進めているわけであります。  なお、労使に対しましては、平成十一年を待たずに、できるだけ早期にそういう介護休業制度に踏み込むことができますように、いわゆる前倒しの実施を実は私ども求めて指導を強めているところであります。  いずれにいたしましても、そういう環境づくりのために、最前局長からも答弁いたしましたけれども、この男女雇用機会均等法、法施行以来十年が経過したわけでありますから、幾つかの問題がございます。先生の御指摘のように、保護規定をどうするかという問題も含めまして今積極的に御審議をいただいておりますので、その結論を待って労働省としては速やかにその法改正についても着手していきたい、このように考えております。
  120. 栗原博久

    栗原(博)分科員 適切な御答弁、ありがとうございました。
  121. 福田康夫

    福田主査代理 これにて栗原博久君の質疑は終了いたしました。  次に、吉田治君。
  122. 吉田治

    吉田(治)分科員 吉田治でございます。  労働省に対しての質問という形で、まず最初に労働省に対して、景気の方は、上向いてきたとかよくなってきたとか底を打ったとか、いろいろ話が出ていますが、やはり雇用というのは相当厳しいものがあるのではないかな。相当肌でも感じておりますし、景気がよくなったから、では雇用がふえたとか勤め口が多くなったとかいう話も余り聞いておりません。また一方、新卒、特に女子大生は、私も短大で少し教鞭をとったりしておりますので、非常に厳しいと。授業ででも、どうだ就職決まったのはと言いますと、決まった方がばつが悪いような顔をして手を挙げる、反対を言いましたら、決まっていない方がかえって胸を張って、まだだというような笑えない状況もあるのですけれども、この辺の現状認識と対応というものをまず最初にお聞かせいただきたいと思います。
  123. 征矢紀臣

    ○征矢政府委員 ただいま御指摘の女子学生の方々の就職状況でございますけれども、平成八年三月卒業の新規女子学生の内定状況につきましては、三月末現在において私どもの把握いたしました数字で見ますと、四年制大学につきましては九二・四%、これは平成七年三月卒の場合は九三・二%でございました。短期大学につきましては八四・七%、前年同月につきましては八八・六%でございます。専修学校につきましては九四%、前年同月が九三・八%というような結果になっておりまして、前年並みというところまでいっているところ、それから昨年同期を下回ったより厳しいところ、特に短期大学の女子学生の就職環境、これはより厳しくなっておるというような認識でございます。
  124. 吉田治

    吉田(治)分科員 そういう厳しい中で会社へ入りましても、このごろ問題になっておりますものに、入ったはいいけれどもやめる人が多い。どうも私の、僕の考えた世界じゃなかったと。  せっかく入ったのになぜかというのは、例えばリクルートという、いっとき労働省を巻き込んだ大きな事件を起こしたような会社が今でもやっていることでありますけれども、例えば就職情報。私ども学生時代に就職活動をしましたので記憶ありますけれども、来る情報というのはいわば会社案内なのですね。こんな会社ですよ、あんな会社ですよ、給料はこれだけですよ、先輩はこんなことで活躍していますよと一つのイメージでしかその会社を紹介しない。  会社側にしたら、リクルートという会社によく書いてもらうために宣伝広告をいっぱい出す。学生はそれを見て、これがいい、あれがいいと。毎年毎年の人気調査というのは、何も職種の人気調査ではなくて会社の人気調査だ。会社の人気調査というのは何かというと、新聞に出ていたとか、極端にはリクルートだとかそういうものの雑誌を見て、ああこれだ、あれだ、知っているよ、知らないよ、どうもよさそうだねということでしか発想ができていない。  ですから、就職情報というものは何か一方的で具体性を持たない。大学を三月で卒業し、四月に現実社会に入っていきますと、自分の思っていたものと違うのじゃないかというふうなものが随分多くて、せっかく入ったのに離職していく。そうしますと、今、完全失業率は戦後最悪だと言われている。しかも若年労働者においては平均パーセンテージの倍だ。その若年労働者とお年を召された高齢者というこの両極端の部分が非常に失業率が高い。私は、その何割かはそういう部分での思いと違ったと。  それで言えるのは、こんな言い方はよくないのですが、大臣と私たちというのは世代が正直言って違うと思います。大臣の生まれた世代というのは、多分食うに困った世代だと思うのです、あした何を食おうと。また、労働省局長さん以上の皆さんも多分そうかもしれません。学生時代というのは食べることとの闘いであったかもしれません。  私どもはそうじゃございません。生まれたときから食べるものはございました、ずっとございました。しかし、今の学生さんというのはもう一つ進んでおりまして、食べるものがあってごちそうがない世代でございます。私ども、ごちそうというのは、盆と正月とに親が、盆と正月だから何でも好きなものを食べさせてあげるよと言ったら、あれ食べたい、これ食べたい、それ食べたいと言えた世代です。  今の子たちは何でもいいという世代です。しかし、その中において、そういう人たちの考えで情報だけはいっぱいあるけれども、その中で必要な情報が入っていないじゃないかということを強く感じるのです。  まず一点目は、そういうことに対して、例えば大学なり高校なり、また文部省の管轄になるかもしれませんが、進路選択という中で、単に会社がどうというのじゃなくて、どういう仕事という部分の教育というのですか、情報を出すとか情報発信というのですか、そういうふうなものを何か労働省として考えているのかどうか。  それから二点目は、これは事前に質問通告しておらなかったのですけれども、例えば諸外国の例を見ますと、大学の夏休みですとか春休みの間に会社ヘインターンという形で入る。インターンという形で一カ月か二週間かそこへ勤めまして、できる仕事というのはコピーとりですとかお茶くみ、お茶くみというのはあるかどうかわかりませんが、コピーとりですとかタイプアップ、つまり、書いてあるものをタイプにしていくとかそういう仕事しかないといいますけれども、二週間でも一カ月でもその会社へ入ると、どういうところかはよくわかる。そして、一日勤めるわけですから中の人たちとも話ができる。しかも、それが大学の単位として認められるのです。反対に言うと、それがなければ大学は単位を認めないという制度が例えばアメリカとかにあるやに聞いております。  こういう制度をやはり日本にも導入していく、これが就職というものを考えた場合にこれからの大きな一つの方向になるのではないかなということを考えるのですけれども、この二点、いかがお考えでしょうか。
  125. 征矢紀臣

    ○征矢政府委員 ただいま先生御指摘の点につきましては、世代的に言うと、御指摘のとおり、私どもと現代の学生の皆様方はかなり違った状況にあると思います。そういう意味で、いわゆるミスマッチというようなことも言われておりますけれども、一たん就職しても離職する、したがって事前によく進路指導をすべきではないか、御指摘のとおりかと思います。  したがいまして、学校におきまして進路指導について十分適切に指導をする。私どもの立場でいきますと、例えば公共職業安定所におきまして、相談に来られた場合に職業相談を十分し、職業紹介をする、これが非常に重要であろうかと思います。かつ、あわせまして、現実に離職をする方も多いということを踏まえてのそういう方々への就職についての職業紹介、相談も重要な課題であるというふうに考えます。  また、大学自体がインターンというような形で実際に職場を体験するような枠組みはどうか、これも恐らく今後の一つの課題であろうかと思います。ただ、この点につきましては、大学制度のあり方等の問題にもかかわる問題でございますから、文部省と連携をとりまして対処していく必要があろうかというふうに思います。  問題点、なかなか難しい面もありますけれども、御指摘のような問題がございまして、この辺について今後私どもとしても適切に対処していく必要があるというふうに考えております。
  126. 吉田治

    吉田(治)分科員 本当に情報化時代というのは、すべてのものが自分たちの手にとるようにわかるというのですか、ですから、多分私が十数年前に就職活動をしていたときよりも今の学生さんたちの方が数倍、いや、もっと数十倍の情報を手に入れ、また先を読んでいる。ですから、話は違いますけれども、年金の問題にしても保険の問題にしても、いや、こんな日本にいて大丈夫なのかなという思いを持ったりする。そういう自分の先を考えた場合に、先を考えるということになるのじゃないかなと思います。  若年労働者の失業率と同時に、就職活動というのは極めて大切なものでございますので、いま一度よろしく御配慮のほどをお願い申し上げたいと思います。  次に、同じ雇用という部分でいきましたら、高齢者雇用安定法というものが九四年に成立し、九八年に施行される。六十歳定年制がそこで法律上も規定されていくという中で、では六十歳まで働いたら、今後六十歳以上の雇用をどうしていくのかというのがやはり大きな問題になってくると思います。  今、高齢者の失業率というのは大体何%ぐらいでしょうか。
  127. 征矢紀臣

    ○征矢政府委員 高齢者の失業率につきましては、六十歳を超えますとかなり高くなっておりまして、年齢別に見ますと、例えば五十五歳で見ますと平均とそんなに違いませんが、高齢者、六十歳から六十四歳の方になりますと五・四%とかなり高くなっております。
  128. 吉田治

    吉田(治)分科員 六十歳から六十四歳で五・四%という数字でしょうけれども、実質的にはこの倍だとかとよく言われております。  そうなってまいりますと、これから先、年金の問題、また医療の問題、さまざまなお金にまつわる問題を考えていく場合には、例えば年金でしたら、二〇〇一年に給付は六十一歳とかいうふうな形になっておりますし、さきに橋本総理の方からは、六十五歳定年というのはこれから考えていかなければならない。また、きょうおいでの役所の皆さんにおかれても、どうもこれは年金が先危ないぞ、満額払えるかどうかわからないから、事務次官以下の方々、一人を除いて今五十数歳で皆さんおやめになるのを六十歳まで、いや、もうちょっと先まで働いてもらって年金支給を変えようという。  これから高齢化というのは、年金の問題ですとか、そういうさまざまな問題と大きくリンクしてくる、関係を持ってくるという時代が来ると思うのです。その中において、高齢者雇用というものをもっとさまざまな、柔軟な発想を持っていかなければならないと考えるわけなんです。  また後ほど少子の話は申し上げたいと思いますけれども、これから少子・高齢化社会を迎えるに当たって、労働力人口が減ってくる。やはり年金が先になるから年がいっても働いてくださいというのじゃなくて、いや、働けるうちはずっと働いてもらうんだ。その結果として、将来労働力人口が減るというのを少しは下支えするかもしれない、年金が非常に厳しい状況になるというのを少しは緩和するかもしれない、そういう一つ一つのミクロの案件じゃなくて、全体を見ました中での高齢者雇用というものを考えていかなければならないと強く感じるのです。  労働省として、特にこれから高齢者雇用について、法律ができて、その施行、運用を見てからということになるのでしょうけれども、特に六十歳以上の雇用について、例えば六十五歳定年制というのをもう現実に総理が言われたので、検討に入っているかどうかということを含めてお答えをちょうだいしたいと思います。
  129. 永井孝信

    ○永井国務大臣 先生御指摘のように、高齢化問題は日本の雇用政策にとっては極めて重要な問題だと認識をいたしております。  今御指摘がありましたように、明後年から六十歳定年制がいよいよ施行されるわけでありますが、かなりの企業において前倒しで六十歳の定年制を採用してもらっているところでありますけれども、これにさらに労働省としても指導を強めていきたいと思っておることが一つであります。  もう一つは、人生八十歳を超えた今の現状でありますから、六十歳といいますとまだまだ若い。先生、私は六十六歳なんです。気持ちの上では四十歳ぐらいのつもりでおりますが、非常に皆さん若うございます。したがって、少子社会の中でありますだけにより言えることでありますが、六十歳を超えてなおかくしゃくとされている方々に、自分の積み重ねてきた経験あるいは技能、こういうものを社会のために役立ててほしい、これがまず一つの大きな条件かと思います。  もう一つは、定年制が六十歳になったとして、会社を退職された方がこれからもなお若いんだから働きたい、そういうそれぞれの各個人の持っていらっしゃるニーズにこたえていくような環境をつくっていかなければいけないということが、今労働省にとっては喫緊の課題になっているわけであります。何もフルタイマーでなければいかぬという人たちばかりではない。中には、午前中の仕事だけでパートのように働きたいとか、あるいは在宅で自分の能力を生かせるような仕事だったら働きたいとか、いろいろなニーズがございますから、そのニーズに基づいて就業機会が与えられるような仕組みをどうやって労働省がつくっていくかということだと一つは思うのであります。  もう一つは、先日、先生方の御協力をいただきましてシルバーセンターの改革について法案を成立させていただきました。こういう新しい法律改正されたものも最大限に活用していきたいと思っております。  そういう環境をずっとつくっていくことが、結果的に六十歳定年制の実施を明後年に控えまして次へのステップになっていくと考えておりまして、直ちに六十五歳定年制を法制化するということは今の段階では言えないかもしれませんけれども、着実に高齢者の皆さんの能力、あるいは皆さんの持ってこられた経験、技能、技術というものを生かしていくための政策を労働省は重視をしてこれから進めていきたい、こう考えているわけであります。
  130. 吉田治

    吉田(治)分科員 大臣おっしゃるとおりで、私の父ももう七十六でございますが、地域のお役ですとかさまざま町のためにいろいろ出払っておりまして、そういう方が元気というのですか、父の同級生だという人を見ていましても、ある意味でハッピーリタイア、そういう言い方がいいかどうかわかりません、ある意味でのんきにと言ったら語弊があるのかな、悠々と老後を過ごされる方というのもすばらしいのですけれども、見た雰囲気、ああ随分おじいちゃんになったなという感じにもとらえられる。年をいっても自分の命まで持ってきた知識であるとか、今大臣言われた技能というふうなものを後へつなげていくという、そういう仕事というのは大事だと思います。  そこで、私も父が小さな町工場をしておりました。七十六ですから戦前の話になります。大阪城のところに陸軍の砲兵工廠というのがございまして、そこへ勤めておりました。そこで技術を覚えて、よくございます職人から町工場を開いたという典型的な職人でありますけれども、そういう人が私の町にはたくさんおられます。その中からは、中堅中小企業のリーディングカンパニーと言われるところもできましたし、大企業の中へ入っていかれた方もいられます。また、今でも町工場ながら細々とやっていられる方もいらっしゃいます。  今大臣言われましたように、物づくりに必須の技能というふうなもの、それに熟達している労働者というのは、現時点でかなりの年齢に達している。よく言われておりますように、日本の物づくりというのは、そういう人たちの技能ですとか知識というものを集約して、例えばロボットができたとか新しい生産システムができた。何ミクロンとか何分の一ミクロンという世界の話でも、職人わざというふうなものがあってできることだ。これがだんだん年を迎えて、そう遠くないうちに定年退職ないしは引退の時期を迎える。現実に迎えておるのでしょう。  そうした場合に、私が考えるには、例えば政令で特定の職種の指定等を行って、その分野に関して若年労働者を採用して技能伝承のための教育訓練を行うような事業者に対して、三年とか五年とかいう訓練期間、それに追加して必要になる人件費、教育訓練費等の一部を雇用安定基金から助成するような物づくり技能伝承支援制度というふうなものを労働省はこれから考えてつくらなければ、今の空洞化と言われている中で、空洞化するのは何も工業だけが空洞化するのではなくて、これは農業にも当てはまるかもしれません。  工場をやっていますと、工場をやっている家のお母さん方というのは、子供に継げとは言わないと思うのですね。もうこんなこと大変だ、金ももうからぬからできるだけ勤め人になれよ、勤めて、今でしたら銀行へ入れ、銀行へ入ったら給料いいぞ、新聞に出るぐらいだぞ。銀行は新聞に出せないぐらいのいい給料出すんだぞというふうな時代になってきますと、ますます日本の技術の中心である物づくりの人たちが失われていき、最終的には、将来日本というのはマネーゲームで生き残るしかできないような国になってしまうのではないかなという大変な危惧を持っております。  この辺の物づくりの技能伝承というふうなものへの支援制度というものが今現在あるのかどうか。また、これから先どういうふうにそれを労働省として、労働省だけでなくて政府部内、ほかに通産省であるとか科学技術庁が入るのかどうかわかりません、文部省が入るのかどうかもわかりません、ドイツのマイスター制度みたいな形になるのかどうかもわかりません、そういうことも含めて物づくりの技能の伝承というものを何らか今考えているのか、しているのか、お答えをちょうだいしたいところです。     〔福田主査代理退席、主査着席〕
  131. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 今先生御指摘の、高度な熟練の技能を持っている方々をどう後世代に維持継承していくかという問題でございますが、私ども産業界からも、先生御指摘になったような、将来そういった方たちが消えていくのではないかというような不安の声をいろいろ聞いておるところでございます。  そういったものを受けまして、私ども現在作業を始めておりますが、新たに産業界の各界の方々に入っていただきました研究会をつくっておりまして、その研究会を通じまして、機械では対応できないような非常に精度の高い製品をつくったり、あるいはエンジニアの方が逆にそれをロボットや機械に置きかえていこうとする目標になるような技能を持った方々がどういった分野にどういった形でおられるか、またそれが若い人たちに継承されるための手がどう尽くされているか、全国的な調査もこれから実施いたしまして、そういった方たちの技能や製品というものを例えばデータベース化していくかとか、そういった研究を始めたところでございます。それを早急に私ども調査を進めまして、そういった方たちの後世代への技能継承のための具体策を講じていきたいというふうに考えております。  またもう一つは、そういった方たちへの維持継承を図る上でも、若い世代の方々がそういった仕事に対して関心を持っていただくということが、先生御指摘のようにまず基盤として大事でございます。そういった方々がどういつだ分野におられるかが私ども把握でさましたら、ぜひ若い人たちにそういった技能を身につけるまでのいろいろな苦労話とかを聞かせていただいたり、あるいは学校教育と連携をとってそういった仕事のすばらしさを紹介していくとか、そういったことも今後準備していきたいというふうに思っているところでございます。
  132. 吉田治

    吉田(治)分科員 それが一番最初申し上げた、お答えもちょうだいした若年労働者の職業観というのですか、業種観という形のものにも反映してくるのではないかな。  それと同時に、私はあえて申し上げたいのは、ああいう住専の六千八百五十億というのはやめてもらいたいな。それは、こういうまじめに働こうという人たちに対して、何だ、悪いことをしても最後は国がお金を出してくれるんだなとか、何かやはりいいことがあるんだぜ、こつこつ額に汗して働くというのはばかなことなんだというふうに結論づけるようなのが今度の通った予算であり、何か政府が進めようとしていることはそちら側ばかりで、外車に乗っていい生活をして、別荘をこしらえるのは、そんな物づくりなんかしているよりも、ちょっと悪いことしてでも、ちょっとの悪いことじゃない、大きな悪いことをすればいいんだという感覚を子供たちに結びつけているような現行の情勢については、ちょっといかがかなという気を非常に強く感じるわけであります。  そういうふうな雇用状況の中で、今言われましたように雇用情勢は本当によくなっていない。特に会社なんかは倒産、破産をされていく。そして、行政の制度としては賃金の支払の確保等に関する法律、賃確法とよく言われているのですけれども、その中において破産された場合に未払いの退職金、賃金、これは破産関係でいきますと、債権の問題で申し上げましたら労働債権という形になってまいるわけでありますが、これが労働福祉事業団からありがたいことにほぼ無条件で支払われる。  これは非常にありがたいことなのですけれども、それ以前に、現実に俗に言う立てかえ払いというものがここ数年どれぐらいなされ、また、これは一応立てかえですから、最終的には税金が回り回って使われるのでしょうから戻さなければいけない。返還率というのですか返ってくる率というのですか、その辺を含めて現状どういうふうな形になっているのか、まずお聞かせいただきたいと思います。
  133. 松原亘子

    ○松原政府委員 先生お尋ねの賃金の支払の確保等に関する法律に基づく未払い賃金の立てかえ払い事業でございますけれども、直近の数字は平成年度の実績でございますが、平成年度は千二百七十四の企業につきまして八十三億五千万余りが立てかえ払いをされたという実績でございます。対象労働者が約二万一千六百人という状況でございます。なお、このうち回収されましたのが十三億八千万余りでございます。  この立てかえ払い件数はここ数年はずっとふえてきておりまして、例えば平成年度ですと約二十億、その次の年が二十三億、次が四十八億、そして約七十億、そして先ほど申し上げました七年度が八十四億という状況でございまして、やはり経済情勢といいますか、そういったものを反映いたしまして、立てかえ払い金額はふえてきております。  一方、回収金額でございますが、平成年度は先ほど申し上げました十三億八千万ということでございますが、それ以前、平成年度からずっと約四億ぐらいの状況でございまして、この間やはり倒産によって資産を失っているとか、また場合によりましては事業主の所在そのものがわからないというようなこともありまして、回収金額が非常に少なくなっているというような状況がございます。  以上が実績でございます。
  134. 吉田治

    吉田(治)分科員 本当に、一つ立てかえ払いされている金額からしても、やはり日本の経済状況というのはますます悪くなっている、現実の部分では大変だということがわかるのです。  大変ありがたい制度なんですけれども、いかんせん一九九三年に上限額が変わった。四十五歳以上で上限額百五十万、それの八〇%が支払われるということですから百二十万円ですか。三十歳以上四十五歳未満で百二十万が上限額ですね。三十歳未満は七十万円が上限額。四十五歳以上になってさましたら、賃金というよりも、御本人自身が例えば勤めてもう五十くらいになりまして、三十年近く勤めた。退職金であれば一千万円を超えるものが、会社が倒産してしまったために立てかえ払いでは百二十万しかもらえない。  私は、ここで二点お願いをしたいと思うのです。  一点は、この上限額の枠が二年前に改正をされましたけれども、せめて倍ぐらいにまで伸ばすことができないのかな。今局長言われましたように回収が非常に難しいものではありますが、この金額を何とかふやすことができないのかな。いろいろ議論しておりますと必ず言われるのは、住専に六千八百五十億も使うのに何でこの立てかえ払いはいつまでも百五十万なんだというのが、国民というか、そういう倒産という場に至った人の切実なる声ではないかと思います。  私は、それができないのであれば、破産法の手続において債権の優先順位というもの、今でしたら第一順位が公租公課、第二が担保、そして労働債権。申し上げました退職金であるとか賃金というのは何とか三番に出てくる。そして一般取引債権が四番になってくる。悪質と言ったら言い方がいいかどうかわかりませんが、非常に厳しい例では、会社が倒産をし破産をしたら、社内預金ですらこれは返ってこない。社内預金は、今申し上げた中では一般債権になってまいります。第四順位。これは、倒産してその社員の目からすると、何度も言って恐縮ですけれども、住専に六千八百五十億も使う、なぜ第一順位が国の税金であったり公租公課なんだ。  同じように、日本の行政ですとか日本のさまざまな比較のときに、よく先進各国を出して、ヨーロッパではこうですよ、アメリカではこうですよと。私、商工委員会に所属しておりますと、例えば持ち株会社の解禁はヨーロッパではこうです、アメリカはこうですといつもきつく言われるのですけれども、反対に言いましたら、この債権の優先順位というのは、ドイツでは例えば労働債権というのは一番なんだ。会社を守り立てている社員が倒産して一番泣きを見る目に遭うことはいかがかということで、優先順位は一番になっております。  ですから、上限額は変えられないのであれば、この破産法の優先順位の変更というもの、公租公課よりもせめて上位に行く、そういうふうなことになり得るのかどうか、これから今後検討していくのかどうか。この問題は商法でありますとか労働基準法の問題でありますので、他省庁との調整も必要でしょうけれども、具体的にそういう作業に入っているのかどうか、この二点をお聞かせいただきたいと思います。
  135. 松原亘子

    ○松原政府委員 まず一点、未払い賃金立てかえ払いの上限の問題でございますけれども、先生が御指摘されましたように、平成五年にそれまでの上限額を改定をいたしまして、先ほど御紹介いただきました額に改定をいたしているわけでございます。この立てかえ払いの限度額につきましては、労働省が実施しております毎月勤労統計調査ですとか賃金構造基本統計調査など各種の調査結果を十分把握した上で、賃金水準の変動状況等を踏まえながら、適宜これまでも見直しを行ってきたわけでございます。今後とも必要に応じまして検討するということにいたしているところでございます。  二番目におっしゃいました賃金債権の優先順位の問題でございます。  私ども、諸外国においてこれがどうなっているかということについて、はっきりしたものを十分把握しているという状況ではないのでございますけれども、国によってさまざまでございまして、国税といいますか、公租公課よりも優先するけれども抵当権が設定されているような、他の債権よりは劣後しているというような国もあれば、そういったものよりもさらに一定範囲の、例えば過去六十日分というふうに非常に限られたものではありますけれども、六十日間の賃金については賃金債権がその他のすべてのものに先立って優先権を持っているというふうになっている国ですとか、さまざまの状態であるというふうに把握をいたしております。  先生もおっしゃいましたように、この賃金債権の問題をどうするかということにつきましては、破産法、それから会社更生法、さまざま関係する法律があるわけでございますけれども、今現在規定されておる状況というのは、やはり取引の安全ですとか債権者間のバランス等をどう考えるかという、いわば現行法制の根幹に触れる問題であろうかというふうに思います。  一方、もちろん賃金は労働者にとって唯一の生活の原資でもあるわけでございます。そういうことから、私どもは賃金債権を確保するということは極めて重要なことだというふうに考えております。この問題につきましては、各方面さまざま御議論があると聞いておりますので、そういう御議論も見守りつつ、必要に応じまして破産法等を所管する法務省とも連絡をとりながら対応したいというふうに考えているところでございます。
  136. 吉田治

    吉田(治)分科員 後の質問にもかかわってくるのですけれども、日本の雇用形態というのは、有名なように、一生涯同じ会社に勤める、年功序列である、企業内組合であるという、ある意味で特殊なという言い方がどうかわかりませんけれども、日本的な経営システムの中において一生をささげた企業が倒産したから、もうそれで終わりよということが決してないように。労働省の方でも、今局長が言われましたように、上限額に関してはそのときの情勢に合わせて変えられるということでございますので、ぜひとも変えていただきたいと同時に、優先順位に関しましても、日本のこの状況というものを諸外国と照らしてよりよいものにしていただきたい、かように思う次第でございます。  この雇用というふうな問題から申しますと、先ほどの質問者の中にも出ておりましたけれども、男女雇用均等法というのができて十年がたってまいりました。日本の国を考えた場合、先ほど申し上げました少子・高齢化という場合には、先ほどの高齢者の雇用というものと同時に、女性の方々の雇用をどう確保し、また発展し、またその中で、ただ単に働くというだけじゃなくて、その人の能力がいかに十分発揮できるかということが必要だと思います。  この男女雇用均等法というのは、私たちの世代にとっては非常に大きなインパクトを与える法律でございました。私、昭和六十年に大学を卒業いたしました。六十年に卒業いたしまして、私の学年の次の学年までは、たしかこの均等法が適用されずにおったと思います。そして、私どもが勤め始めて一年目か二年目に均等法。女性は、総合職を選ぶのか一般事務職を選ぶのかという大きな人生の選択をある意味でさせられました。そのときに、総合職であるならば転勤もあるよ、一種抱いておりましたOLというふうなもののイメージから違って、今度は会社員だという発想が非常に出てまいりました。  十年がたってまいりました。一番最初に申し上げましたように、女子大学生の就職状況というのは、雇用機会均等法があるから厳しいのだとかいうことは言いたくはありませんけれども、会社側としては人を選ぶ部分に見えざる差別というのですか、そういうものがあるのかもしれません。  また、ILO百五十六号条約というのが本年六月から発効されてまいります。これに向かってさまざまな諸施策もやってまいります。これは私が申すまでもなく、男性も女性と一緒になって家事をしましょう、働きましょう、その結果として男女一緒に頑張りましょうということだと思うのですけれども、十年たって、この男女雇用機会均等法というものを今後どういう方向に持っていくのか、どう考えておられるのか。多分婦人少年問題審議会の答申を待ってでしょうけれども、落としどころというもの、今からこういうふうな方向に持っていきたいというものがもしおありでしたら、大臣、おっしゃっていただきたいと思います。
  137. 永井孝信

    ○永井国務大臣 先生の御指摘がありましたように、男女雇用機会均等法が施行されまして十年が経過をいたしました。それだけにさまざまな問題点も十年間に、その積み重ねとして今提起がされているわけであります。  全般的に見ますと、この均等法の趣旨は着実に浸透してきたと私は認識をいたしております。しかし、例えば事業主にいたしますと、男女雇用機会均等法の趣旨は十分認識はしているのだけれども、今先生言われましたように、会社の都合、採用したいというその職種の内容等によって一定の制約を事業主自身が持っている。いわゆるこの見えざる差別というものは私はないとは言えない、かなり存在するのではないかなという気もいたしているわけであります。したがって、現実に採用するときに、まだまだ女性を採用の対象にしないとかいう問題も含めて、かなり問題のある企業が存在することも事実でありますから、そういう企業に対して積極的に婦人少年室あるいは基準局を通して指導に努めているところであります。  しかし、女性の進出をより容易にしていく、また女性の就職の機会の幅を広げていく、対象も広げていく、こういう関係から見ますと、十年間たちましたこの均等法の問題点を洗いざらい出し合って、もう一回見直していこうということで、今婦少審の方で検討してもらっているわけであります。その場合に、先生が御指摘になりましたように女子保護規定というものがございますが、この女子の保護規定の中で、果たして保護をしなくてはいけないのか、撤廃するのがいいのかという問題点もかなり議論の対象になっていくものと私は考えております。  したがって、母性保護については当然きちっと保護していかなくてはいけませんけれども、それ以外の分野については、ある意味においてかなり視野を広げて検討の対象にしていくべきだということで、今検討してもらっておりますので、その検討の経過を見守った上で政府としても対応してまいりたい、こう思っておるわけでございます。  なお、百五十六号条約が批准されました。今先生が御指摘のように、家庭責任と職業とを両立させる、このこともこれに無関係ではない、非常に重要なかかわり合いを持っておりますので、その視点からもこの均等法の見直しについては十分に検討してまいりたい、このように考えているわけであります。  なお、余談のことでありますが、先住最前から質問の中で、例えば賃金の立てかえ払いの上限を引き上げることなどについても六千八百五十億円の話が出ました。これは比較対照すべきものにはなじまないと私は思っております。金融業界の安定を図ることが景気を回復させる大きなファクターになっておりますし、そのことが全体的に企業の活力を生み出すことになってまいりますから、この問題は先生の御指摘のように単純に比較対照して、どれがどうということにはなっていかない問題であるということを、私は閣僚の一人としてあえて申し上げておきたいと思います。
  138. 吉田治

    吉田(治)分科員 大臣、言われるのはよくわかるのですけれども、そこの議論はしたくないのですけれども、六千八百五十億というものが回り回って、極端なことを言ったら、末野興産の社長は一千二百億ぐらいの隠し預金があるのじゃないか、何でそんなもののために使うんだという考えになるのは当然ですね。では一方、翻ってみて自分たちはどうなんだと。だから、そこの議論はこの場では私はこれで置いておきたいと思います。これはこの場で質問すべきことではありませんけれども、そういうふうな意識を持つということでございます。  この均等法の問題、今大臣が言われました母性保護、これは先ほどから少子・高齢化という中で、私は少子の方に大きな影響を及ぼすと思うのですね。なぜ子供を産むのが少ないのか。晩婚、それから晩産、年いってから産む、そしてシングル化。働くことによって結婚が遠のく、子供を産む時期も遅くなる、邪魔くさいからもう一人になってしまうというふうになってくると、ますます少子化する。母性保護というのは、単にその言葉だけではなくて、やはり子供が産める状況、労働環境状況をつくるということが私は大変重要だと思うのです。ですから、婦人少年問題審議会の議論の中でもその辺もっと深めていただきたいと思います。  もう一歩、今大臣言われました女性保護の問題、時間外・休日労働、それから深夜業の規制ですけれども、これは私は、その前提として、例えば賃金の問題にしても雇用条件の問題にしても、やはり男女が一緒になって初めて例えば保護だとか規制と言われているものが解除されるのでないと、いまだに何かしら男女の賃金に少しは格差があるのではないか、それだったら女性を使った方が夜は安くつくなというふうな、使用者側のそういう発想に陥りはしないかという部分も非常に感じるわけです。  母性保護に関しては、あと、間接差別という言い方はどうかわかりません、世帯主条項であるとかコース別人事とかいうことがあると思うのですけれども、女性が子供を産めるための母性保護であり男女雇用機会均等法だと。私は、これは何も差別じゃないと思うのです。男と女というものの区別だと思う。区別をすると、女性にはやはり子供をたくさん産んでいただきたい。そのための整備をどうするかということがこれから必要だと思うのですけれども、その点についてはどういうふうにお考えなのでしょうか。
  139. 太田芳枝

    ○太田(芳)政府委員 先生おっしゃるとおり少子化が進行しておりますけれども、そういう中で、妊娠、出産後も職業を継続する女性が増加はしておるわけでございます。そういう働く女性が妊娠期間中及び出産後も健康を維持しつつ働くことができるようにすることが重要であると私どもも考えております。  そのため、私どもといたしましては、均等法の規定を受けまして、女性労働者の妊娠中及び出産後の健康管理に関しまして事業主の配慮すべき必要な措置というので、母性健康管理指導基準というものを設けておりますが、これを最近の医学的な知見の進展を踏まえまして見直したところでございます。今後、この新しい基準に基づきまして母性保護がなお進みますように、セミナー等の開催によりましてその周知普及に努めてまいりたいと考えておるところでございます。
  140. 吉田治

    吉田(治)分科員 努めていただきたいと思います。  きょうは木曜日でございます。木曜日の夜十時から「三十五歳」という番組をやっております。その中で、古い言葉で言うと未婚の母というのですか、勤めておるけれども、今のはやりで言う不倫というもので子供ができてしまった。それがその会社の実質的オーナーによって見つかって、おまえのような女は首だと。しかし、首にはできない。ではどうするか。大変厳しい営業地域に飛ばされる、そういう設定がここ何週間か続いておるのですけれども、ひょっとしたら企業というのは、企業というか、そのオーナーなる人物がはっきりこう言っています。会社は金もうけのためにあるんだと。雇用というもの、労働条件、労働環境というものを考えていくと、これがひょっとしたら使用者側の現実の言葉じゃないかなと私は思う。  ですから、少子化の中において、また高齢化の中において、片一方ではやはり働いていただくということ、そして、働くと同時に子供を産める、そして育てられる環境というもの、そして、その子供が今度は幸せでなかったらいかぬと思うのです。親が働いていたから子供がぐれた、あそこはやはり共稼ぎだからねと、こういうふうにならない施策を、私は、労働省としてもこれから二十一世紀の時代を考えたときに、もっとしていただきたいなと強く思うわけでございます。  続きまして、そういう中において、今のオーナーの話じゃございませんけれども、持ち株会社の解禁というふうなものがここ何カ月間か随分話題になってきております。日本でも、戦前のようにと言っていいのかどうかわかりません、特に、大臣先ほど触れられました金融システムが不安定になってまいりましたときに、それを救う一つの方法として、日本で持ち株会社というのがあれば随分やりやすかったのにねという議論が発端ではなかったかと私は聞いております。  持ち株会社の解禁という形になってきますと、では、持ち株会社が解禁された場合に使用者はだれなのか。組合ができた、交渉相手はどうなのか。そして一部には、持ち株会社を設立するのは、何も金融秩序の安定だけではない、これから先のリストラというのですか、経済改革の中で合理化等を進めていくときに、分社化をしていって、その中でどんどんリストラというのか社員にやめていただくというのか、その方向に持っていくための一つの非常に有効な手法、やり方なのだというふうな意見も聞かれております。  また、四月の中旬には労働省の方でそういう専門家会議が招集され、議論を始められた。これも、持ち株会社議論の中で、やはり労使関係が問題だよと言われて初めてこういうことがなされたと聞いておりますけれども、その辺の労働省としての経緯と、今後のこの問題についての取り組みについてお答えをいただきたいと思います。
  141. 七瀬時雄

    ○七瀬政府委員 持ち株会社の解禁の議論がことしに入ってから各方面でいろいろあったわけでございますが、そういった中で、御指摘のとおり、労使関係の問題をどういうふうに処理をするのだという問題指摘が出てまいりました。  この問題は、持ち株会社をどういう趣旨で、どの限度で解禁するかという議論と確かに裏腹の問題ではございますが、同時に、労使関係法上の処理の問題がまたその持ち株会社の解禁の議論に影響するということでございましたものですから、私どもとしては、持ち株会社解禁の議論と並行して、労使関係上の問題、かつ現実に労使の中にかなりいろいろな面で隔たりがある中でどういうふうに考えていったらいいか。  そのためには、まず問題点の整理、あるいは持ち株会社ができたときに団体交渉の当事者を含めて労使関係をどう処理するのだ、その処理の仕方、そして処理の仕方を議論したときに、それをどういう形で法律で表現していくのか、その他の方法があるのか、そういったことをともかく専門家の先生方に御議論をいただく必要があるのじゃないかということで、おっしゃいましたように四月十九日に第一回の会合を開きまして、きょうまでに四回会合をやってきております。  その四回の中身は、総括的な問題背景を先生方と論議をする、それから公正取引委員会の事務局から独禁法解禁に関する最近の経緯をお聞きする、それから連合、労働団体、日経連からそれぞれ考え方をお聞きするということで現在まで来ております。  これから先、既存の判例とか法理論の研究も先生方にやっていただかなければならぬし、それから外国のこともやはりきちんとということで、私どものもくろみとしては、六月にもアメリカ方面、それからヨーロッパ、ドイツ、ECという形になると思いますが、そちらの方でやっていただき、その後に論点整理にできるだけ早く入っていきたい。日程が大変なのですけれども、ふだんのこういう研究会より会合の持ち方なりテンポを何とか少し速めてお願いできないかということで要請をしております。  そういう先生方の議論、それから持ち株会社解禁のそちらの議論の動向、それから、もしでき得るならば労使の見解をどういうふうに狭めていけるのだろうかという視点、そういったもので、秋に向けて論点整理に持っていきたいというふうに考えているところでございます。
  142. 吉田治

    吉田(治)分科員 では、例えばこの持ち株会社解禁の方向が決まる、法案が決まっていく。それまでには労働関係としての問題点の整理、それから解決策というのですか、その後の施策というものまで準備してしまうというふうに考えてよろしいのでしょうか。
  143. 七瀬時雄

    ○七瀬政府委員 これは労使関係法上の問題の処理でございますので、労使を含めた、どういう形かは別として、労使あるいは政治の問題もありますが、そういうところでコンセンサスを得ながら進めていただくということでございますので、すぱっとした学問的なことだけで結論が出る問題ではないのかもしれません。  ただ、論点整理をし、そういう解決策の選択肢としてどういうものがあるのかというような、本当にそのコンセンサスを得るために、判断材料になり、何とかそれに資するような、問題提起ができるような検討結果というか報告というか、そういうものに持っていきたいという思いで先生方にお願いしているというのが私どもの立場でございます。
  144. 吉田治

    吉田(治)分科員 ではその場合に、例えば独禁法の改正で公正取引委員会とは何らかの接触を持ちながら、こちら側ができるまでそちらは待つとか、もしくは例えばこちら側の公正取引委員会の作業、もう連立与党の中でやっているのでしょうか、ちょっと私は知りませんが、それを合わせながら、時間的にそごがないとか、納得ができた上でという形はとっていくということになるわけですか。
  145. 七瀬時雄

    ○七瀬政府委員 労使関係法上の問題と、それ以外にもいろいろ税制上の問題その他あると思いますが、独禁法解禁の議論と相互に関係する問題でありますので、かなりお互いに状況を見ながらということにならざるを得ないのだろうと思いますけれども、私どもの気持ちとしては、解禁の議論が進んでいく中で、私どもの方が極端に議論がおくれてくるというようなことにならないように、一つのテンポを考えながら事務局として先生方にお願いしていく、現段階ではこういうことを申し上げるほかないのだろうと思います。
  146. 吉田治

    吉田(治)分科員 ぜひともそうしていただきたいと思います。  やはりこの独禁法改正の問題が、持ち株会社解禁の話が、まあ政府・与党側というのは昔は自民党のことを指したのでしょうけれども、思いどおりにならなかったというのは、その中でどうも大きな労働問題が起こるかもしれない。それがやられるについては、日本の労働条件、労働環境というのはそれほど諸外国に比べて整備されていない。これは単に労働組合の人たちが言っているだけじゃなくして、例えば京都の商工会議所の会頭をやられている京セラの稲盛さんでもそういうようなことをはっきり言っておられますので、その辺はよく検討し、歩調を合わせていただきたい、そういうふうに思うわけでございます。  そういう中で、特に大臣は兵庫の選出でいらっしゃいます。阪神・淡路大震災後の雇用の問題というのですか、いっときは随分厳しいというのと、今度は反対に、いや、あそこへ行ったらどうも外ではもらえないような手間賃で働けるのだというふうな話があったり、さまざまございましたけれども、今の現状とこれからの見込みというふうなものはいかがになっておるのでしょうか。
  147. 征矢紀臣

    ○征矢政府委員 御指摘の阪神・淡路大震災以後の雇用問題でございますけれども、被災地であります兵庫県におきます四月の雇用情勢について見ますと、平成七年四月を一〇〇とした場合に、平成八年四月の新規求人数を見ますと一一四、それから新規求職者数は九六ということになっています。求人数はややふえており、求職者数はやや減っている、こういうことでございます。したがいまして、新規の求人倍率につきましては、平成七年四月の〇・六一倍に対しまして平成八年四月時点では〇・七三倍と、数字の上ではやや落ちついているというふうに考えております。  ただし、求人と求職者との間でのいわゆる職種間、年齢間等のミスマッチ、これがございます。求職者につきましては、年齢や職種の条件が合っていても、賃金や労働条件あるいは通勤時間等の希望が合わなければ応募しないという状況もございます。  いずれにいたしましても、そういう状況を踏まえながら、引き続ききめ細かな職業相談・職業紹介を一生懸命やりまして、ミスマッチの解消に努力をしてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  148. 吉田治

    吉田(治)分科員 そういうふうな雇用の問題、今るる申し上げてまいりましたけれども、そういうのを含めて、昨年の十二月に第八次の雇用対策基本計画というのをまとめられて、今度の予算、きょうは決算委員会ですから、過去の予算の使い方からの経緯をもって未来に伸びていくのですが、この八次の計画に基づいてのほかの省庁との対応ですとか、今後どういうふうに運営されていくのかということを簡単に御説明していただきたいと思います。
  149. 征矢紀臣

    ○征矢政府委員 御指摘の第八次雇用対策基本計画、昨年十二月に閣議決定いたしたところでございますが、経済社会の変革期におきまして我が国が高失業社会に陥ることを避けるため、雇用創出に必要な雇用環境の整備に努めることといたしております。  このため、私どもといたしましては、昨年十一月に改正されました通商産業省との共管の中小企業労働力確保法という法律がございますが、これに基づきまして、中小企業における人材の育成確保あるいは魅力ある職場づくりの活動を支援し、中小企業の活力を生かした雇用の創出に努めているところでございます。  また、本年二月二十一日には、内閣におきまして、総理大臣を本部長とします産業構造転換・雇用対策本部というものが設置されておりますが、これの第二回の会合を開催いたしまして、日経連あるいは連合等の御意見もお伺いしたところでございまして、そういうものを踏まえて、今後とも雇用の安定に向けて政府が全体としての努力をしていくこととしております。  また、この計画を踏まえまして、他省庁との連携、こういうことも非常に重要でございまして、通産省との間で定期的な協議をするとか、あるいは、最近ですと文部省との間でも協議をいたしました。あるいは法律ベースでいきますと、建設関係につきましては建設の雇用改善法という建設省との共管の法律を運用しておりますし、今国会におきまして、農林水産省との共管の法律で林業の労働力確保法案、こんなものも成立をさせていただいたわけでございますが、そんな形で産業諸官庁とも連携をとりながら必要な対策をとっていく。そんなことで、我が国が高失業社会に陥らないように総力を挙げて取り組んでまいりたいというふうに考えております。
  150. 吉田治

    吉田(治)分科員 最後になりましたけれども、そういう計画の中で、とりわけ来年の三月に週四十時間体制、年間千八百時間に労働時間を移行するという、労働時間の短縮等を含めた大きな、十年間にわたる経過措置を過ぎた後の労働時間問題が起こってくるわけでございます。  例えば、私の地元に大阪市の中央卸売市場がございます。中央卸売市場の理事長さん、さまざまな理事長さんからも、何とかあれをもう少し延長してくれよ。また、それだけではございません、さまざまな中小企業の皆さんからも、もうちょっと何とか二、三年延ばしてくれないか。片や私ども支援していただいております労働組合の皆さん方は、十年間も経過措置があったのに何らすることなしに、とにかく延ばせ延ばせというのはいかがなものか。正直言いまして、私はその両者の間に入って挟み打ちになって、ストレスになってやせればいいのですけれども、そこまでいかないのですけれども。しかしながら、やはりつらい、私自身議員としてどっちもわかるという状況に入ってきております。  極端なことを言ったら、あんじょうしてなんて大阪弁で言うのですけれども、そうして、さいならとしたいところなのですけれども、こういうふうに至った一つの原因には、単に例えば中小企業は悪いとか、いやこの法律が悪いというよりも、その間に、十年間という期間、では労働省は何をしたのか、どうしてきたのか、また中小企業を所轄する中小企業庁というものは何をし、どうしてきたのかということは、やはり振り返って考え反省し、それだから来年の三月にどうするのかということも考えなければいけないと思います。  本日は中小企業庁からもおいでいただいていると思います。労働省と中小企業庁にそれぞれお答えを賜りたいと思います。
  151. 松原亘子

    ○松原政府委員 週四十時間制が労働基準法に規定をされましたのは、昭和六十二年の基準法の改正によるものでございます。  そのときは、四十時間というのは法律で定められましたけれども、それがいつからかということは具体的に法定されておりませんで、四十時間から四十八時間の間で政令で定めるということで、順次短縮を進めてきたわけでございます。四十六時間、四十四時間という経過を経まして、いよいよ来年から四十時間になるということで、おっしゃるように十年かけてここまで来ているわけでございます。  私ども、平成五年の労働基準法の改正で、来年の四月から一部特例業種を除きまして週四十時間制になるということになりましたのを受けまして、特に中小企業に対してはいろいろバックアップをしていかなければいけないのではないかということから、労働時間の短縮を支援するための、時短促進法と言っておりますけれども、そういう法律を制定いたしまして、それに基づくさまざまな支援措置をやってきたわけでございます。  たくさんございますので、とりあえず一つだけ御紹介させていただきますと、中小企業が労働時間を短縮した場合には時短奨励金をお支払いするということにいたしております。労働時間の短縮というのは、省力化投資をやって生産性を向上させて労働時間を短縮するというケース、それからまた、なかなか難しい場合には、人を雇い入れて仕事を分け合って労働時間を短くしていく、こういう方法があろうかと思いますけれども、いずれかの方法によって労働時間を短縮した場合に時短奨励金をお支払いするという仕組みをつくりました。  それからあと、この制度を使ってどういうふうに工夫をして時短をやってきたかといったようなモデル例、そういったものもお示しし、また、具体的にアドバイスを欲しいという中小企業の方々に対しましては、そういうアドバイザーなども置いて、適宜助言ができるようにというような仕組みなどもとってきたわけでございます。  確かに、中小企業はなかなか厳しいという声はあるわけでございますけれども、今申し上げました時短奨励金の実績などを見てまいりますと、かなりふえてきておりまして、初年度、五年度支給実績十三億余りでございましたけれども、七年度はそれが五十二億というふうに飛躍的にふえてきております。  そういう意味から、いよいよ来年からということになったこの時期になってまいりますと、中小企業の方々もいろいろ工夫をされて、この奨励金も活用して時短を進めようという空気も強まってきているのではないかというふうに思っておりまして、私ども、残された一年、地方労働基準局及び監督署を挙げまして、中小企業の方々の思っている悩みなども聞き、ともに考えながら、どうすれば時短ができるかというきめの細かい指導をするように、ついせんだって臨時の労働基準局長会議も開催いたしまして、そういうことを改めて指示をしたところでございます。  今後とも努力をしていきたいというふうに思っております。
  152. 前田武志

    前田主査 中小企業庁高原振興課長。時間が過ぎておりますので、簡単にお願いします。
  153. 高原一郎

    ○高原説明員 私ども通産省といたしましても、労働時間の短縮というのは非常に重要な問題だと考えております。  先ほど職業安定局長の方から御説明のありました中小企業の労確法でございますとか、あるいは今基準局長からお話のありました時短促進法、これは労働省とまさに連携をとらせていただいて、こういった形で時短というのを通産省としても進めてまいったわけでございます。  ただ、来年四月に経過措置が切れまして、御指摘のとおり四十四時間制が四十時間制に移行するというところで、中小企業を中心に、何とかならないかという非常に切実な声が上がってきていることもまた事実でございます。  一定の前提を置いた単純計算でいきますと、賃金が一割ぐらい四十四時間制から四十時間制に移行すると上がるということでございまして、労働省さんの調査結果でも、平成年度の調査で、製造業でございますと、大体三十人以下のところで七割を超えるところがまだ四十時間制を達成をしていない。建設業でございますと、十人未満だと一〇%を切っておるような達成状況でございます。そういう意味で、このままですと混乱が生じるおそれということは否定をできないし、看過できないのではないかと私ども考えております。  本件につきましては、政府部内では労働省さんを中心にこれから検討が行われて、いろいろなことをお決めになっていかれるのだと思いますけれども、この法定労働時間の短縮につきましては、こうした中小企業の実態を十分お酌み取りいただきまして、混乱のないような形で進められるように、私どもそういうことが必要ではないかというふうに考えておる次第でございます。
  154. 吉田治

    吉田(治)分科員 これで終わりますけれども、労使それから行政、そして私たち議員、すべて納得するような形をみんなで考えて、この件については結論を出していければ、そういうふうに考えております。  それをもちまして質問を終わります。ありがとうございました。
  155. 前田武志

    前田主査 これにて吉田治君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして労働省所管の質疑は終了いたしました。     —————————————
  156. 前田武志

    前田主査 次に、文部省所管について審査を行います。  まず、概要説明を聴取いたします。日下部文部政務次官
  157. 日下部禧代子

    ○日下部政府委員 平成年度文部省所管一般会計及び国立学校特別会計決算概要を御説明申し上げます。  まず、文部省主管一般会計歳入につきましては、歳入予算額二十六億二千六百三十六万円余に対しまして、収納済み歳入額は六十四億四千六百一万円余であり、差し引き三十八億一千九百六十四万円余の増加となっております。  次に、文部省所管一般会計の歳出につきましては、歳出予算額五兆四千七百十五億九千二百十一万円余、前年度からの繰越額六十八億六千三百六十五万円余、予備費使用額二百二十五億三千九百二万円余を合わせた歳出予算現額五兆五千九億九千四百七十九万円余に対しまして、支出済み歳出額は五兆四千七百四十億五百九万円余であり、その差額は二百六十九億八千九百六十九万円余となっております。  このうち、翌年度へ繰り越した額は百八十二億八千八百三十七万円余で、不用額は八十七億百三十二万円余であります。  次に、文部省所管国立学校特別会計決算について御説明申し上げます。  国立学校特別会計収納済み歳入額は二兆三千八百九億四千八百五十二万円余、支出済み歳出額は二兆二千四百五十六億二千九百六十三万円余であり、差し引き一千三百五十三億一千八百八十九万円余の剰余を生じました。  この剰余金のうち、特別施設整備事業以外に係るものについては、国立学校特別会計法附則第十七項において読みかえられた同法第十二条第一項の規定により、二百九十九億八千四十一万円余を積立金として積み立て、残額一千五十二億一千九百六十四万円余を翌年度歳入に繰り入れることとし、特別施設整備事業に係るものについては、同法附則第十四項の規定により、二千四百五十五万円余を翌年度歳入に繰り入れ、九千四百二十八万円余を特別施設整備資金に組み入れることとして、決算を結了いたしました。  次に、歳入につきましては、歳入予算額二兆三千三十七億二千八百二十万円余に対しまして、収納済み歳入額は二兆三千八百九億四千八百五十二万円余であり、差し引き七百七十二億二千三十二万円余の増加となっております。  次に、歳出につきましては、歳出予算額二兆三千三十七億二千八百二十万円余、前年度からの繰越額百七億九百九十万円余を合わせた歳出予算現額二兆三千百四十四億三千八百十万円余に対しまして、支出済み歳出額は二兆二千四百五十六億二千九百六十三万円余であり、その差額は六百八十八億八百四十七万円余となっております。  このうち、翌年度へ繰り越した額は四百四十一億五千七百八十四万円余で、不用額は二百四十六億五千六十二万円余であります。  以上、平成年度文部省所管一般会計及び国立学校特別会計決算につきまして、その概要を御説明申し上げました。  何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。  平成年度文部省所管一般会計及び国立学校特別会計決算概要を御説明申し上げます。  まず、文部省主管一般会計歳入につきましては、歳入予算額二十五億四百四十八万円余に対しまして、収納済み歳入額は二十八億五千四百八十一万円余であり、差し引き三億五千三十二万円余の増加となっております。  次に、文部省所管一般会計の歳出につきましては、歳出予算額五兆九千五百六十二億九千五百三十六万円、前年度からの繰越額百八十二億八千八百三十七万円余を合わせた歳出予算現額五兆九千七百四十五億八千三百七十三万円余に対しまして、支出済み歳出額は五兆九千百六十億二百三万円余であり、その差額は五百八十五億八千百六十九万円余となっております。  このうち、翌年度へ繰り越した額は四百九十九億三千七百七十五万円余で、不用額は八十六億四千三百九十四万円余であります。  次に、文部省所管国立学校特別会計決算について御説明申し上げます。  国立学校特別会計収納済み歳入額は二兆八千六百五億七千三百六十三万円余、支出済み歳出額は二兆五千八百四十二億九千三百七十一万円余であり、差し引き二千七百六十二億七千九百九十一万円余の剰余を生じました。  この剰余金のうち、特別施設整備事業以外に係るものについては、国立学校特別会計法附則第十七項において読みかえられた同法第十二条第一項の規定により、二百三億六千三百九十六万円余を積立金として積み立て、残額二千五百五十八億四千九百七十一万円余を翌年度歳入に繰り入れることとし、特別施設整備事業に係るものについては、同法附則第十四項の規定により、翌年度歳入に繰り入れる四十一億一千二百六十四万円を控除した不足額四十億四千六百四十万円余を特別施設整備資金から補足することとして、決算を結了いたしました。  次に、歳入につきましては、歳入予算額二兆七千八百九十三億九千三百七十四万円余に対しまして、収納済み歳入額は二兆八千六百五億七千三百六十三万円余であり、差し引き七百十一億七千九百八十八万円余の増加となっております。  次に、歳出につきましては、歳出予算額二兆七千八百九十三億九千三百七十四万円余、前年度からの繰越額四百四十一億五千七百八十四万円余を合わせた歳出予算現額二兆八千三百三十五億五千百五十九万円余に対しまして、支出済み歳出額は二兆五千八百四十二億九千三百七十一万円余であり、その差額は二千四百九十二億五千七百八十七万円余となっております。  このうち、翌年度へ繰り越した額は一千七百四十億百七十九万円余で、不用額は七百五十二億五千六百八万円余であります。  以上、平成年度文部省所管一般会計及び国立学校特別会計決算につきまして、その概要を御説明申し上げました。  何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。
  158. 前田武志

    前田主査 次に、会計検査院検査概要説明を聴取いたします。会計検査院五十嵐第四局長
  159. 五十嵐清人

    ○五十嵐会計検査院説明員 平成年度文部省決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、法律政令もしくは予算に違反しまたは不当と認めた事項十九件及び意見を表示しまたは処置を要求した事項一件であります。  まず、法律政令もしくは予算に違反しまたは不当と認めた事項について御説明いたします。  検査報告番号七号から一八号までの十二件は、義務教育費国庫負担金等の算定において、教職員の標準定数を過大に算定したり、諸手当について国家公務員の例に準じて定められたところによることなく算定したりしていたなどのため、負担金等が過大に交付されていたものであります。  また、検査報告番号一九号から二三号までの五件は、公立小学校校舎増築事業等において、補助種目の適用を誤っていたり、補助金を過大に交付していたりなどしていたものであります。  また、検査報告番号二四号及び二五号の二件は、職員不正行為による損害が生じたもので、国立大学医学部附属病院の分任収入官吏所属出納員が、診療収入として受領した現金を領得したもの及び国立大学の歳入歳出外現金出納官吏が、奨学寄附金として受け入れ保管中の委任経理金を領得したものであります。  次に、意見を表示しまたは処置を要求した事項について御説明いたします。  これは、国立大学の附属病院における医薬品費の予算執行に関するものであります。  国立大学の附属病院では、患者の診療に使用するため、医薬品等を大量に購入していますが、その購入に当たっては、国の会計法令及び予算の定めるところに従い、予算の範囲内で適正な会計手続により行わなければならないことになっています。これについて調査しましたところ、年度内に購入した医薬品等について予算の範囲を超えることになったため、年度を超えて翌年度または翌々年度において会計事務処理がなされ、当該年度予算から支払われている事態が多数見受けられました。したがって、同省は大学病院に対し、正規の会計手続に従った適切な事務処理が行われるよう、また、診療部門と事務部門との連絡調整を密にして、予算の範囲内で計画的な予算執行がなされるよう指導するなどの処置をとるよう、是正改善処置を要求したものであります。  以上をもって概要説明を終わります。  引き続き、平成年度文部省決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、法律政令もしくは予算に違反しまたは不当と認めた事項九件及び本院の指摘に基づき当局において改善処置を講じた事項一件であります。  まず、法律政令もしくは予算に違反しまたは不当と認めた事項について御説明いたします。  検査報告番号三号から五号までの三件は、義務教育費国庫負担金の算定において、教職員の標準定数を過大に算定したり、国庫負担の対象にならない教員に係る給与費等を国庫負担対象額に含めたりなどしていたため、負担金が過大に交付されていたものであります。  また、検査報告番号六号から一一号までの六件は、公立中学校校舎増築事業等において、補助種目の適用を誤っていたり、補助の対象とは認められないものを補助対象事業費に含めていたりなどしていたものであります。  次に、本院の指摘に基づき当局において改善処置を講じた事項について御説明いたします。  これは、高等学校産業教育のための特別装置整備事業における国庫負担対象経費算定に関するものであります。  高等学校の産業教育のための実験、実習に必要な装置等を整備する補助事業において、負担対象経費算定方法を明確に指示していなかったことなどのため、契約業者からの購入価格ではなく、購入価格に一定の率を乗じるなどした額を購入価格に加えた額により負担対象経費算定していて、国庫負担金が過大に交付されていました。これについて指摘したところ、改善処置がとられたものであります。  以上をもって概要説明を終わります。
  160. 前田武志

    前田主査 ただいまの会計検査院指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。日下部文部政務次官
  161. 日下部禧代子

    ○日下部政府委員 平成年度及び五年度予算の執行に当たりましては、予算の効率的な使用と経理事務の厳正な処理に努力したところでありますが、平成年度及び五年度決算検査報告において会計検査院から御指摘を受けましたことは、まことに遺憾に存じます。  指摘を受けた事項につきましては、適切な措置を講ずるとともに、今後、この種の事例の発生を未然に防止するため、より一層指導監督の徹底を図ったところであります。
  162. 前田武志

    前田主査 この際、お諮りいたします。  お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  163. 前田武志

    前田主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。     —————————————    平成年度文部省所管決算概要説明                 文 部 省  平成年度文部省所管一般会計及び国立学校特別会計決算概要を御説明申し上げます。  まず、文部省主管一般会計歳入につきましては、歳入予算額二十六億二千六百三十六万円余に対しまして、収納済歳入額は六十四億四千六百一万円余であり、差引き三十八億一千九百六十四万円余の増加となっております。  次に、文部省所管一般会計の歳出につきましては、歳出予算額五兆四千七百十五億九千二百十一万円余、前年度からの繰越額六十八億六千三百六十五万円余、予備費使用額二百二十五億三千九百二万円余を合わせた歳出予算現額五兆五千九億九千四百七十九万円余に対しまして、支出済歳出額は五兆四千七百四十億五百九万円余であり、その差額は二百六十九億八千九百六十九万円余となっております。  このうち、翌年度へ繰り越した額は百八十二億八千八百三十七万円余で、不用額は八十七億百三十二万円余であります。  支出済歳出額のうち主な事項は、義務教育費国庫負担金、国立学校特別会計へ繰入、科学技術振興費、文教施設費、教育振興助成費及び育英事業費であります。  次に、これらの事項概要を御説明申し上げます。  第一に、義務教育費国庫負担金の支出済歳出額は二兆七千七百七十六億三千四百五十四万円余であり、これは、公立の義務教育諸学校の教職員の給与費等の二分の一を国が負担するために要した経費であります。  第二に、国立学校特別会計へ繰入の支出済歳出額は一兆四千五百三十三億一千百八十七万円余であり、これは、国立学校、大学附属病院及び研究所の管理運営等に必要な経費に充てるため、その財源の一部を一般会計から国立学校特別会計へ繰り入れるために要した経費であります。  第三に、科学技術振興費の支出済歳出額は七百九十億三千八百四十三万円余であり、これは、科学研究費補助金、日本学術振興会補助金、文部本省所轄研究所及び文化庁研究所等に要した経費であります。  第四に、文教施設費の支出済歳出額は二千九百六十五億二千二百八十四万円余であり、これは、公立の小学校、中学校、特殊教育諸学校、高等学校及び幼稚園の校舎等の整備並びに公立の学校施設等の災害復旧に必要な経費の一部を国が負担又は補助するために要した経費であります。  第五に、教育振興助成費の支出済歳出額は六千六百九十億一千百六万円余であり、これは、生涯学習振興費、義務教育教科書費、養護学校教育費国庫負担金、学校教育振興費、私立学校助成費及び体育振興費に要した経費であります。  第六に、育英事業費の支出済歳出額は八百八十五億七千四百七十二万円余であり、これは、日本育英会に対する奨学資金の原資の貸付け、財政投融資資金の利子の補給及び事務費の一部補助のために要した経費であります。  次に、翌年度繰越額百八十二億八千八百三十七万円余についてでありますが、その主なものは、文教施設費で、事業の実施に不測の日数を要したため、年度内に支出を終わらなかったものであります。  次に、不用額八十七億百三十二万円余についてでありますが、その主なものは、教育振興助成費で、学校教育振興費等を要することが少なかったこと等のため、不用となったものであります。  次に、文部省所管国立学校特別会計決算について御説明申し上げます。  国立学校特別会計収納済歳入額は二兆三千八百九億四千八百五十二万円余、支出済歳出額は二兆二千四百五十六億二千九百六十三万円余であり、差引き一千三百五十三億一千八百八十九万円余の剰余を生じました。  この剰余金のうち、特別施設整備事業以外に係るものについては、国立学校特別会計法附則第十七項において読み替えられた同法第十二条第一項の規定により二百九十九億八千四十一万円余を積立金として積み立て、残額一千五十二億一千九百六十四万円余を翌年度歳入に繰り入れることとし、特別施設整備事業に係るものについては、同法附則第十四項の規定により二千四百五十五万円余を翌年度歳入に繰り入れ、九千四百二十八万円余を特別施設整備資金に組み入れることとして、決算を結了いたしました。  次に、歳入につきましては、歳入予算額二兆三千三十七億二千八百二十万円余に対しまして、収納済歳入額は二兆三千八百九億四千八百五十二万円余であり、差引き七百七十二億二千三十二万円余の増加となっております。  次に、歳出につきましては、歳出予算額二兆三千三十七億二千八百二十万円余、前年度からの繰越額百七億九百九十万円余を合わせた歳出予算現額二兆三千百四十四億三千八百十万円余に対しまして、支出済歳出額は二兆二千四百五十六億二千九百六十三万円余であり、その差額は六百八十八億八百四十七万円余となっております。  このうち、翌年度へ繰り越した額は四百四十一億五千七百八十四万円余で、不用額は二百四十六億五千六十二万円余であります。  支出済歳出額のうち主な事項は、国立学校、大学附属病院、研究所、施設整備費、特別施設整備費及び船舶建造費であります。  次に、これらの事項概要を御説明申し上げます。  第一に、国立学校の支出済歳出額は一兆三千三十二億二千四百八十万円余であり、これは、国立学校の管理運営、研究教育等に要した経費であります。  第二に、大学附属病院の支出済歳出額は五千六十八億七千百四十万円余であり、これは、大学附属病院の管理運営、研究教育、診療等に要した経費であります。  第三に、研究所の支出済歳出額は一千五百二十億九千六百四十五万円余であり、これは、研究所の管理運営、学術研究等に要した経費であります。  第四に、施設整備費の支出済歳出額は二千九十六億八百四十七万円余であり、これは、国立学校、大学附属病院及び研究所の施設の整備に要した経費であります。  第五に、特別施設整備費の支出済歳出額は百三十億九百四十五万円余であり、これは、特別施設整備事業としての国立学校及び研究所の施設の整備に要した経費であります。  第六に、船舶建造費の支出済歳出額は十三億一千四百十五万円余であり、これは、国立学校における実習船の代替建造に要した経費であります。  次に、翌年度繰越額四百四十一億五千七百八十四万円余についてでありますが、その主なものは、施設整備費で、事業の実施に不測の日数を要したため、年度内に支出を終わらなかったものであります。  次に、不用額二百四十六億五千六十二万円余についてでありますが、その主なものは、国立学校で、退職手当を要することが少なかったこと等のため、不用となったものであります。  以上、平成年度文部省所管一般会計及び国立学校特別会計決算につきまして、その概要を御説明申し上げました。  何とぞ、よろしく御審議のほど、お願い申し上げます。     …………………………………    平成年度決算文部省についての検査の概要に関する主管局長説明                 会計検査院  平成年度文部省決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、法律政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項十九件及び意見を表示し又は処置を要求した事項一件であります。  まず、法律政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項について御説明いたします。  検査報告番号七号から一八号までの十二件は、義務教育費国庫負担金等の経理が不当と認められるもので、北海道ほか九事業主体におきまして、教職員の標準定数を過大に算定したり、退職手当について国家公務員の例に準じて定められたところによることなく算定したりなどしていたため、国庫負担金が過大に交付されていたものであります。  また、検査報告番号一九号から二三号までの五件は、公立学校施設整備負担金及び補助金の経理が不当と認められるもので、山梨県南都留郡西桂町ほか四事業主体におきまして、補助種目の適用を誤っていたり、補助の対象とは認められないものを補助対象事業費に含めていたりなどしていたため、負担金等が過大に交付されていたものであります。  また、検査報告番号二四号及び二五号の二件は、職員不正行為による損害が生じたもので、千葉大学及び高知大学におきまして、会計事務職員がその職務に従事中、取り扱った現金の一部を領得し、国に損害を与えたものであります。  なお、本件損害額については、いずれも全額が補てんされております。  次に、意見を表示し又は処置を要求した事項について御説明いたします。  これは、国立大学の附属病院における医薬品費の予算執行に関するものであります。  五年一月以降に、一部の大学病院等において、医薬品等の購入代金が長期間未払いとなっている事態が明らかとなり、大学病院の医療費等の予算の執行状況、特に医薬品費の支払実態等について調査をいたしました。  その結果、秋田大学医学部附属病院ほか十三大学病院で、平成年度から四年度において、医薬品等を当年度に購入したにもかかわらず、医療費の示達額を超えることとなるため、当年度内に支出負担行為等の会計事務処理が行われず、翌年度又は翌々年度に処理され支払われている事態が見受けられました。  このような事態は、会計法令及び予算に違背し、適切とは認められないことから、文部省におきまして、大学病院に対して年度途中の購入実績を適切に把握し計画的な予算の執行がなされるよう、また、病院運営の合理化、効率化に取り組むよう指導するとともに、適正な予算執行に万全を期すよう是正改善処置を要求いたしたものであります。  なお、以上のほか、平成年度決算検査報告に掲記いたしましたように、高等学校定時制課程に在学する生徒への教科書の給与事業及び夜食費の補助事業について、及び平成年度決算検査報告に掲記いたしましたように、公立の小学校及び中学校の校舎等の整備事業において学級数が減少する場合の補助対象面積の算定について、それぞれ意見を表示いたしましたが、これらに対する文部省処置状況についても掲記いたしました。  以上をもって概要説明を終わります。     —————————————    平成年度文部省所管決算概要説明                 文 部 省  平成年度文部省所管一般会計及び国立学校特別会計決算概要を御説明申し上げます。  まず、文部省主管一般会計歳入につきましては、歳入予算額二十五億四百四十八万円余に対しまして、収納済歳入額は二十八億五千四百八十一万円余であり、差引き三億五千三十二万円余の増加となっております。  次に、文部省所管一般会計の歳出につきましては、歳出予算額五兆九千五百六十二億九千五百三十六万円、前年度からの繰越額百八十二億八千八百三十七万円余を合わせた歳出予算現額五兆九千七百四十五億八千三百七十三万円余に対しまして、支出済歳出額は五兆九千百六十億二百三万円余であり、その差額は五百八十五億八千百六十九万円余となっております。  このうち、翌年度へ繰り越した額は四百九十九億三千七百七十五万円余で、不用額は八十六億四千三百九十四万円余であります。  支出済歳出額のうち主な事項は、義務教育費国庫負担金、国立学校特別会計へ繰入、科学技術振興費、文教施設費、教育振興助成費及び育英事業費であります。  次に、これらの事項概要を御説明申し上げます。  第一に、義務教育費国庫負担金の支出済歳出額は二兆七千二百七十五億一千五百七十一万円余であり、これは、公立の義務教育諸学校の教職員の給与費等の二分の一を国が負担するために要した経費であります。  第二に、国立学校特別会計へ繰入の支出済歳出額は一兆八千四百四十九億二千三百二十三万円余であり、これは、国立学校、大学附属病院及び研究所の管理運営等に必要な経費に充てるため、その財源の一部を一般会計から国立学校特別会計へ繰り入れるために要した経費であります。  第三に、科学技術振興費の支出済歳出額は九百五十八億四千三百八十九万円余であり、これは、科学研究費補助金、日本学術振興会補助金、文部本省所轄研究所及び文化庁研究所等に要した経費であります。  第四に、文教施設費の支出済歳出額は三千百五十四億八千五百四十四万円余であり、これは、公立の小学校、中学校、特殊教育諸学校、高等学校及び幼稚園の校舎等の整備並びに公立の学校施設等の災害復旧に必要な経費の一部を国が負担又は補助するために要した経費であります。  第五に、教育振興助成費の支出済歳出額は六千八百五十九億九千五百九十九万円余であり、これは、生涯学習振興費、義務教育教科書費、養護学校教育費国庫負担金、学校教育振興費、私立学校助成費及び体育振興費に要した経費であります。  第六に、育英事業費の支出済歳出額は九百十三億六千五百四十九万円余であり、これは、日本育英会に対する奨学資金の原資の貸付け、財政投融資資金の利子の補給及び事務費の一部補助のために要した経費であります。  次に、翌年度繰越額四百九十九億三千七百七十五万円余についてでありますが、その主なものは、文教施設費で、事業の実施に不測の日数を要したため、年度内に支出を終わらなかったものであります。  次に、不用額八十六億四千三百九十四万円余についてでありますが、その主なものは、教育振興助成費で、学校教育振興費等を要することが少なかったこと等のため、不用となったものであります。  次に、文部省所管国立学校特別会計決算について御説明申し上げます。  国立学校特別会計収納済歳入額は二兆八千六百五億七千三百六十三万円余、支出済歳出額は二兆五千八百四十二億九千三百七十一万円余であり、差引き二千七百六十二億七千九百九十一万円余の剰余を生じました。  この剰余金のうち、特別施設整備事業以外に係るものについては、国立学校特別会計法附則第十七項において読み替えられた同法第十二条第一項の規定により二百三億六千三百九十六万円余を積立金として積み立て、残額二千五百五十八億四千九百七十一万円余を翌年度歳入に繰り入れることとし、特別施設整備事業に係るものについては、同法附則第十四項の規定により翌年度歳入に繰り入れる四十一億一千二百六十四万円を控除した不足額四十億四千六百四十万円余を特別施設整備資金から補足することとして、決算を結了いたしました。  次に、歳入につきましては、歳入予算額二兆七千八百九十三億九千三百七十四万円余に対しまして、収納済歳入額は二兆八千六百五億七千三百六十三万円余であり、差引き七百十一億七千九百八十八万円余の増加となっております。  次に、歳出につきましては、歳出予算額二兆七千八百九十三億九千三百七十四万円余、前年度からの繰越額四百四十一億五千七百八十四万円余を合わせた歳出予算現額二兆八千三百三十五億五千百五十九万円余に対しまして、支出済歳出額は二兆五千八百四十二億九千三百七十一万円余であり、その差額は二千四百九十二億五千七百八十七万円余となっております。  このうち、翌年度へ繰り越した額は一千七百四十億百七十九万円余で、不用額は七百五十二億五千六百八万円余であります。  支出済歳出額のうち主な事項は、国立学校、大学附属病院、研究所、施設整備費、特別施設整備費及び船舶建造費であります。  次に、これらの事項概要を御説明申し上げます。  第一に、国立学校の支出済歳出額は一兆三千五百八十四億七千十五万円余であり、これは、国立学校の管理運営、研究教育等に要した経費であります。  第二に、大学附属病院の支出済歳出額は五千百三十一億五千百五十六万円余であり、これは、大学附属病院の管理運営、研究教育、診療等に要した経費であります。  第三に、研究所の支出済歳出額は一千五百六十四億二百四十六万円余であり、これは、研究所の管理運営、学術研究等に要した経費であります。  第四に、施設整備費の支出済歳出額は四千七百六十四億八千四百七十万円余であり、これは、国立学校、大学附属病院及び研究所の施設の整備に要した経費であります。  第五に、特別施設整備費の支出済歳出額は百十四億九千八百十二万円余であり、これは、特別施設整備事業としての国立学校及び研究所の施設の整備に要した経費であります。  第六に、船舶建造費の支出済歳出額は三十四億一千八十万円余であり、これは、国立学校における実習船の代替建造に要した経費であります。  次に、翌年度繰越額一千七百四十億百七十九万円余についてでありますが、その主なものは、施設整備費で、事業の実施に不測の日数を要したため、年度内に支出を終わらなかったものであります。  次に、不用額七百五十二億五千六百八万円余についてでありますが、その主なものは、国立学校で、退職手当を要することが少なかったこと等のため、不用となったものであります。  以上、平成年度文部省所管一般会計及び国立学校特別会計決算につきまして、その概要を御説明申し上げました。  何とぞ、よろしく御審議のほど、お願い申し上げます。     …………………………………    平成年度決算文部省についての検査の概要に関する主管局長説明                 会計検査院  平成年度文部省決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、法律政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項九件及び本院の指摘に基づき当局において改善処置を講じた事項一件であります。  まず、法律政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項について御説明いたします。  検査報告番号三号から五号までの三件は、義務教育費国庫負担金の経理が不当と認められるもので、滋賀県ほか二事業主体におきまして、教職員の標準定数を過大に算定したり、国庫負担の対象にならない教員に係る給与費等を含めて国庫負担対象額を算定したりなどしていたため、国庫負担金が過大に交付されていたものであります。  また、検査報告番号六号から一一号までの六件は、公立学校施設整備負担金及び補助金の経理が不当と認められるもので、栃木県大田原市ほか五事業主体におきまして、補助種目の適用を誤っていたり、補助の対象とは認められないものを補助対象事業費に含めていたりなどしていたため、負担金等が過大に交付されていたものであります。  次に、本院の指摘に基づき当局において改善処置を講じた事項について御説明いたします。  これは、高等学校産業教育のための特別装置整備事業における国庫負担対象経費算定に関するものであります。  文部省では、産業教育の振興の円滑な実施に資することを目的として、昭和五十八年度から高等学校産業教育のための特別装置整備事業を行う都道府県等に対し、公立学校施設整備負担金を交付しております。  この負担金は、公立の高等学校の設置者である都道府県等が、高等学校における産業教育のための実験実習施設と一体として使用される実験実習に必要な装置等で、整備事業費の合計額が高等学校ごとに一千万円以上のものを整備する場合に、これに要する経費の一部を国が負担するものであります。  今回、この負担金について調査しましたところ、十県において、契約業者からの購入価格に一定の率を乗じるなどした額を購入価格に加えた額により負担対象経費算定していたため、負担金が過大に交付されていて適切とは認められない事態が見受けられました。  このような事態が生じていたのは、各県において、負担事業に対する認識が十分でなかったことにもよりますが、文部省において、都道府県に対し、負担対象経費算定方法について明確に指示していなかったことなどによるものと認められましたので、当局の見解をただしましたところ、文部省では、六年十月に都道府県に対して通達を発し、負担対象経費は、都道府県等が購入のために契約業者に支払う経費として、加算額は除外することとする処置を講じたものであります。  なお、以上のほか、平成年度決算検査報告に掲記いたしましたように、高等学校定時制課程に在学する生徒への教科書の給与事業及び夜食費の補助事業について、及び平成年度決算検査報告に掲記いたしましたように、国立大学の附属病院における医薬品費の予算執行について、それぞれ意見を表示し又は是正改善処置を要求いたしましたが、これらに対する文部省処置状況についても掲記いたしました。以上をもって概要説明を終わります。     —————————————
  164. 前田武志

    前田主査 以上をもちまして文部省所管説明は終わりました。     —————————————
  165. 前田武志

    前田主査 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岸田文雄君。
  166. 岸田文雄

    岸田分科員 自由民主党の岸田文雄でございます。  本日は、奥田文部大臣、お忙しいところ御出席いただきまして、まことにありがとうございます。私は、本日は公立高等学校の転編入というテーマでひとつ質問させていただきたいと存じます。  日本の企業社会におきましては転勤はつきものだと言われております。その結果、単身赴任が大変多いということ、こういった指摘がされております。しかし、この単身赴任というもの、家族がばらばらに生活するということになるわけでありますから、青少年の心身の育成にとりまして決して好ましいものではないと私は考えるわけです。そして、この単身赴任の原因でありますけれども、いろいろな原因が挙げられてはおります。住宅問題などというのも随分大きな原因ではないかというようなことも言われております。しかし、そういった原因の一つとしまして、教育の問題、この教育の問題も盛んに指摘されるところであります。そして、その教育の問題としまして、公立高等学校の転編入が現状大変難しいということが単身赴任に拍車をかけているのではないかということが指摘されるところであります。  私は、そういう問題意識のもとに、もうかれこれ二年近く前になりますが、平成六年、当時私も文教委員会の一員でありましたので、文教委員会の場ですとか、あるいは本日のような決算委員会分科会におきまして、この公立高等学校の転編入につきまして質問をさせていただいたわけであります。当時は赤松文部大臣だったと思いますが、文部大臣初め政務次官、それから文部省の皆様方からも、この問題は重大な問題であるという認識を持っているという御回答をいただきましたし、また、高等学校の転編入がよりスムーズにいくために文部省自身も、昭和五十九年あるいは平成三年、さらには平成五年にもさまざまな通知を出されまして、公立高等学校の転編入につきましてより柔軟な対応をするようにという指示を出されまして、努力をされておられるというようなことも御説明をいただいたわけであります。  私は、その後もこの問題につきまして関心を持っておったわけでありますが、この問題、単に企業の転勤の事柄に限らず、例えば生徒が積極的な進路変更を行うことができるようになり、より意欲ある学習態度に結びつけさせるためにも、あるいは昨今海外から帰国子女がますますふえておるわけでありますが、この帰国子女の受け入れという意味からも、この公立高等学校の転編入がスムーズにいくということは大切な事柄ではないかというふうに考えるわけであります。そこで、まずお伺いするのですが、前回、私が文教委員会あるいは決算委員会分科会で質問させていただきましてから、もうかれこれ二年たつわけでありますが、現在におきましてもこの問題の重要性に対する認識に変化がないか、変わりがないかどうか、そのことをまずお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。
  167. 奥田幹生

    ○奥田国務大臣 今先生から、二年前にも質問をしたが、今はどういうようになっているかというお尋ねでございます。  私は二年前は文部大臣ではありませんでしたけれども、私の認識では、やはり経済活動が活発になり、さらに国際化が二年前よりも拍車をかけてきておると思いますから、二年前よりも今は、先生の御指摘の問題はさらに重要度が増してきておるのじゃなかろうか、そういう認識を持っております。  したがいまして、私が十五年半前に初めて衆議院に議席を持たせてもらいましたときに、外国に行っておられた特派員の方が任期を終えてこちらへ帰ってこられた、そのときに、高校生のお嬢さん何とかならぬかという相談を受けましたときには、なかなかすぐにはうまくいかなかったことを覚えておるわけで、あのときに文部省に、こういう問題はさらに件数がふえてくると思うので、これからやはりもっともっと前向きに対応してもらわぬといけないのじゃないですかということを、今先生のお話を聞きながら思い出しておったようなわけでございます。  詳しいことは局長からお聞きいただきたいと思いますが、先生の御発言の中に一つ、単身赴任ということもございました。これは転編入との関係も非常に大きいわけですが、今私どもが非常に頭を痛めておりますいじめ問題の解消、克服、これにつきましても、やはり家庭のお父さんはできるだけ勤めが終わったら家にいてほしい、休みの日は一緒に食事をとってゆっくり話し合いをしてもらいたいとか、これは、子供のしつけの中心はむしろ学校よりも家庭なりという私の考えがそこにありますので、そういう願いもありまして、実はけさ、日経連の根本会長さんを初め幹部の方にお集まりをいただいて、それで単身赴任もなるべくなくしていただきたいし、それから超過勤務というようなこともできるだけひとつなくして、家庭に早くお父さんを帰していただきたいということのお頼みをしておったわけですけれども、そういう面からもやはり私は大変大事な問題であろうと思います。  それからもう一つは、今高校生が、ざっと四百八十万人ぐらいいるわけでありますけれども、そこで九万六千ぐらいが中途退学のやむなきに至っているということで、この数字は決してばかにできないわけで、その原因がどこにあるのかということも、これじゃなかろうか、ああいうのも原因じゃなかろうかということを私ども心配して分析をしておりますけれども、そういう立場からも、今お話しの点はひとつ重視して取り組んでいかなければならぬと思っております。  詳しいことは局長から答弁させていただきます。
  168. 岸田文雄

    岸田分科員 大臣、ありがとうございました。御体験に基づいた、そして丁寧な御回答をいただき、そしてこの問題は重大な問題であるという認識を御確認いただきましたこと、まことにありがとうございます。  今大臣の方から、この問題に対する重要性はますます高まっているのではないかというお答えをいただいたわけでありますが、そのような御認識を大臣あるいは文部省も持っておられるとするならば、私は、平成六年六月三日でありますが、文教委員会で質問させていただきましたときに、この公立高等学校の転編入につきまして、まず実態調査をすることが大切ではないかということを言わせていただきまして、文部省も通知等で各教育委員会に御指示をされておられます公立高等学校の転編入に関する特別枠の設置状況を、現状どうなっているかぜひ調べていただきたいということを申し上げたわけであります。それに対しまして、当時の野崎初等中等教育局長が、実態調査をすることは貴重な提案だと考えて、ぜひ検討してみたいという御回答をいただいたわけであります。  しかしながら、今回、久しぶりにこの問題を取り上げさせていただこうと思いまして、その後どうなったかなと思いまして、事前に文部省の方にお伺いを立てたわけであります。どうでしょうか、調査をされましたでしょうかとお伺いしたのですが、残念ながら、この特別枠の設置状況、まだ調査が済んでいないという御回答でありました。  さらには、平成六年五月二十六日に、きょうと同じく決算委員会分科会で質問させていただきましたときに、転編入学者の中で転勤転居に伴うものがどれだけあるかという数字をお伺いさせていただきまして、当時は、平成三年の資料しかないというお答えを聞いたわけであります。そこで、今回も質問する前に、かつて平成三年の資料しかないというお話でしたが、その後、四年以降調査をされて資料がありますでしょうかというふうにお聞きさせていただいたのですが、残念ながら今回も、平成三年のときの資料しかない、それ以後は数字が把握されていないというお答えをいただいたわけであります。  もし、先ほど大臣も力強く言っていただきましたように、引き続きこの問題は重要であり、さらに重要性が増しているという御認識であるとしたならば、こういった前回いろいろお願いした資料、お伺いした数字、調査等がその後そろっていない、調査が進んでいないということはちょっと残念だなと感じるわけであります。その点につきましてはいかがでございましょうか。
  169. 遠山耕平

    ○遠山政府委員 文部省としましては、従前から、指導通知やあるいは各種の会議等を通じまして、転入学等の取り扱いにつきまして、各都道府県において前向きに対応するように促しているところでございます。転入学の受け入れを一層推進していくことは大切なことと考えておりまして、今後とも各都道府県の取り組みを促していく考えでございます。このために、先生おっしゃるように、各都道府県の取り組みを促進する観点からも、実態調査を行って現状を把握することは大事なことだと考えているわけでございます。  調査方法等については現在検討しているところでございますが、特に特別枠につきましては、はっきり人数等を決めているところもあるのですが、若干名というようなことで統計がとりにくいというようなところもあるようでございますので、そこいら辺のところをよく検討して、統計的に意味があるような形で調査をしてまいりたいというぐあいに考えております。
  170. 岸田文雄

    岸田分科員 おっしゃるように、この実態調査、統計のとり方、難しい面もあるかとは思います。若干名というような設け方をしておれば、人数をどうカウントしたらいいか、いろいろと難しいところはあるのは事実であります。  そこで、逆にこちらから提案させていただきたいと思うのですが、人数が無理であれば、全国の公立高等学校の中でどれだけの学校が特別枠自体を設けているか、そういった数字であれば調べようがあるのではないかなという気がいたします。そして加えて、どの県においてどれだけの学校のうちどれだけ特別枠を設けているか、そういった統計があれば、人数にかかわりなく、その学校で、若干名でも何の表現でもいいですけれども、特別枠があるかないか、それを調べて積み上げればいいわけですから、そういった調査だったらできるのではないかなと思うのですが、いかがでしょうか。
  171. 遠山耕平

    ○遠山政府委員 現在、私どもが把握しております特別枠の設置県が二十五県でございますが、具体的にそれぞれの県で何名の特別枠を設置しているかということは、まだ把握していないわけでございます。先生おっしゃるような形で、何校が特別枠を設置しているのかということでしたら把握できると思いますので、そういうことも含めまして検討させていただきたいと思います。
  172. 岸田文雄

    岸田分科員 全国どれだけの特別枠が設置されていて、どれだけ転編入の受け入れ先があるかということ、これは、国民に対して、要するに転編入の必要性を感じておられる方々に対して情報を提供するという意味からも意味があることだと思いますし、現状を、文部省が一生懸命前向きに対応するようにと指示をされておられますこの問題がどれだけ浸透しているかということを把握する意味からも重要なことだと思いますので、ぜひこの調査を進めていただいて、その結果を教えていただければと思います。よろしくお願いいたします。  続きまして、こういった転編入の必要性を感じておられる方に情報を提供するということを今申し上げたわけでありますが、こういった転編入を必要とされておられる方に情報を提供する手段としまして、文部省もいろいろ工夫をして努力をされておられるわけであります。その一つのあらわれとしましては、国立教育会館という組織がおありになられて、その中においてネットワークシステムというシステムをつくられて、転編入に関する情報を各教育委員会を中心とする方々、関係者の方々に流すということをされておられるわけであります。  そういった努力をされておられることを聞いておるわけですが、その国立教育会館のネットワークシステムの利用状況を、資料をいただきまして見させていただきますと、平成五年をピークとしまして利用件数は大分減っているという結果をいただいております。平成五年がピークで二千七百九十件利用があったのですが、平成六年は一千六百四十件、平成七年は一千三百三十四件、五年から七年で半減してしまっているという結果をいただきました。また、このネットワークシステム、データベースを作成するときに二千九百万の予算で作成されておるわけでありますが、その後は三十五万七千円という予算を毎年、パンフレットの作成費ということで組んでおられるようであります。  こういった利用状況あるいは予算の状況を見ましても、公立高等学校の転編入が重要だという認識をお持ちであり、国民に広く情報を提供して転編入がスムーズにいくという目的を達成するためにも、国立教育会館のネットワークシステムの利用状況、どうも寂しい気がしてならないわけです。もう少し活用することができるのじゃないかという気がしてならないのですが、その点につきましてはいかがでございましょうか。     〔主査退席、福田主査代理着席〕
  173. 遠山耕平

    ○遠山政府委員 国立教育会館における高等学校の転入学情報等提供システムの利用状況でございますが、これは平成年度から動き始めたわけでございます。平成年度が二千七百九十件、平成年度が千六百四十件、平成年度が千三百三十四件ということで、先生おっしゃるように平成年度平成年度の半分ぐらいになっているのは事実でございます。  私ども、PRと申しますか、周知徹底が十分でなかったという面もあろうかと思いますが、あと、高等学校の生徒数そのものが平成元年をピークにかなり減少をしてきております。平成二年から平成七年までの間に大体九十万人くらい減少をしてきております。その間、学校数は余り変わっていないのですね。十三校程度減っているというような状況でございまして、定員の関係ではかなり緩やかになっている面があるのかなということが一点。それから、経済状況が不況ということもありまして、企業の転勤が一時期ほど多くないのじゃないか。そういうようなことも影響して、国立教育会館の高等学校転入学情報等提供システムの利用が少なくなっているのではないかということもまあ考えているわけでございます。  文部省としては、このシステムをいろいろな方に積極的に活用をしていただくということは大変重要なことだと考えておりますので、予算等も含めまして、各都道府県の教育委員会や生徒あるいは保護者の方に周知徹底を図るように一層努力をしていきたいと思います。
  174. 岸田文雄

    岸田分科員 ぜひ、引き続きましてこういった制度を十二分に活用していただきまして、情報の提供に努めていただきたいと存じます。  今、生徒数の減少があり、また定員が緩やかになってきたとか、転勤が少なくなってきたのではないかな、そういったことによってこのネットワークシステムの利用が少なくなったのではないかというようなお話もあったわけです。本当にそのように転編入の難しさが緩和されているのであるならばそれにこしたことはないのですが、いかんせん、先ほど申し上げましたように実態の調査、把握ができていませんので、私も、実態調査していただいた数字を見させていただかなければはっきりしたことを申し上げることはできないわけです。  しかし、私の実感としますと、例えば私の地元は広島なんですが、転勤族という言葉があるごとく、要するに大変転勤の多い土地柄でございます。支店経済というようにも言われております。そういった言葉があるように、非常に転勤の多い土地柄なんですが、そういった方々のお話あるいは同僚の国会議員のそれぞれの地元での話をいろいろ聞きますと、どうもなかなか高等学校の転編入に対する難しさが緩和されているというような、そう楽観的な見方はまだまだできないのではないかなというような気がいたします。感覚としてそのように感じておるわけです。その辺もぜひ実態調査をしていただいて、その辺をしっかり見させていただいて、その上で実感と合っているかどうかを確認させていただきたいと思うのです。  とりあえず今の段階ではその感覚に基づいて申し上げるしかないわけなんですが、私自身思っておりますのは、公立高等学校の転編入をよりスムーズにさせるためには、やはり全国一律に公立高等学校に転編入の枠を設けさせること、これが必要なのではないかという気がしておるのです。転編入をスムーズに進めるということを考えましたときに、言葉は悪いかもしれませんけれども、生徒をそれぞれの学校で、やはりキャッチボールですから、送り出し手だけじゃこれは成り立たないわけです、受け手も必要なわけです。それぞれが送り出し手にもなるでしょうし受け手にもなるわけですから、やはり一律にその転編入枠を設けているということ、これは意味あることではないかなという気がしております。  その辺の思いは前回質問させていただいたときも申し上げさせていただいたのですが、その際に、この転編入枠というものは教育委員会の判断にゆだねられている、最終的には学校長の判断にゆだねられているのだということで、なかなか文部省としては強制的に特別枠をつくらせるわけにはいかないのだというようなお返事をいただいております。そして、教育委員会それから学校長においては、例えば優秀な学校にあっては、地元の生徒をよりたくさんその学校に入れてもらいたい、特別枠なんかつくるぐらいだったら地元の生徒を一人でも多く入れてもらいたいという地元の声があって、そういった声があるがためになかなか、その特別枠を設けることに関してちゅうちょするようなこともあるという話も聞くわけであります。  しかし、よい学校に地元の子供を入れたい、地元の子供を優先すべきだという声に対しても、地元の子供も転校することがあるわけですから、要するにどこにとってもお互いさまだという考え方もできるわけでありますし、また、今の高等学校の生徒、クラスの人数の状況を考えた場合に、例えば一クラス一人ぐらいの枠をつくることがそんなに難しいのかなというような気がしてならないわけであります。これは、確かにおっしゃるとおりに、その判断は教育委員会あるいは校長先生にゆだねられておるのでありましょうが、やる気になれば全国の各公立高等学校に特別枠をつくることができるのじゃないかなという気がするのですが、その点はいかがでありましょうか。
  175. 遠山耕平

    ○遠山政府委員 転入学者等のための受け入れ枠の設定でございますが、保護者あるいは企業等からも要望が大変強いわけでございますので、各高等学校において可能な限り積極的に対応をしていくことが望まれることでございまして、文部省としてもそのとおりでございます。このことについては、既に平成三年の七月の初等中等教育局長の通知でも触れておりまして、「あらかじめ各学校において特別定員枠を設けることが適切であり、」こういう表現をして指導をしているところでございます。  ただ、国全体としては、私ども文部省も、先生のおっしゃるとおりなのですが、各学校に必ず一人、学級数に応ずる特別定員枠を設けろ、こういうことを義務づけることは、現在の制度ではちょっと難しいというぐあいに考えます。私どもとしては、あくまでも都道府県にその気になっていただいて、それで各学校を指導していただいて特別定員枠をできるだけ多く、各学級数に応ずるだけの特別定員枠を設定していただくようにお願いをする、こういうことが限度ではないかというぐあいに思います。私どもとしては、その熱意はありますけれども、それを各県に強制するところまでの権限と申しますか、そういうところまでは持っていないということでございます。
  176. 岸田文雄

    岸田分科員 熱意は持っておられるということなわけですが、この問題に対する重要性の認識、昭和五十九年から通知等を出されて努力されておるわけですから、その認識はずっと持っておられるとは思うのです。にもかかわらず現状、まだその実態調査が済んでいませんから確証はありませんが、どうも何かまだ進展がないのではないかということを感じるような状況でありますから、熱意だけでは、このまま幾ら待っても状況は変わらないのではないかという心配もないではありません。ぜひ何か工夫をしていただいて、この特別枠の設置、お願いするというだけじゃなくして、より具体的な結果が出るように工夫をしていただけないものかと思います。  文部大臣、最後にその点につきまして御感想なり御所見、承らせていただけませんでしょうか。
  177. 奥田幹生

    ○奥田国務大臣 先ほど申し上げたとおり、企業の方には私どもの方から、なるべく単身赴任ではないようにしてくださいとお願いをしておる。お願いをするだけでなしに、やはりこちらの方でも、心の準備だけでなしに、先生がおっしゃるとおりの特別枠をどの高等学校にもというわけにはいかないにしても、もう少し弾力的な運用ということについては積極的に取り組む必要があるのではなかろうかなと私は思うわけです。  それで、その点は、公立は国立学校とは違いますから強制力は文部省は持っておりませんけれども、都道府県の教育委員会に指導の形で要請をするという程度であればできますから、やはりそれは担当の局長と、おられますけれども、よく相談をして、そして、お願いするばかりでなく、こちらの方でもひとつそういうような構えを改めるという方向で前向きに検討させていただきたいと思います。
  178. 岸田文雄

    岸田分科員 ありがとうございました。この問題の重要性を認識していただけるのであるならば、まず実態調査に努めていただきますとともに、熱意だけではなくして、ぜひ具体的な目に見える成果が出るべく、何かもう一工夫いただきますことを心からお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。  きょうはありがとうございました。
  179. 福田康夫

    福田主査代理 これにて岸田文雄君の質疑は終了いたしました。  次に、吉田治君。
  180. 吉田治

    吉田(治)分科員 吉田治でございます。  大臣におかれましては予算委員会の分科会以来でございますが、まず最初に、ここしばらく新聞等をにぎわしております英語教育、小学校でも英語学習をしていこう、特に、コミュニケーションというのですかカンバセーションというのですか、会話の方を中心とした使える英語にしていこうというふうなことが言われておりますが、これについて、特にこれから免許を出されるのかどうか、また免許を出す相手は、出すのであれば例えば日本人なのかそれとも外人なのか、どういうふうな形を今方策として考えておられるのでしょうか。
  181. 小林敬治

    ○小林(敬)政府委員 お答えいたします。  ただいま先生お話がございましたように、現在中央教育審議会では社会の変化に対応する教育のあり方について検討がなされておりまして、その中で、国際化への対応の観点から、小学校における外国語教育のあり方についても審議が行われているところでございます。  小学校において外国語教育がどのような扱いになるかにつきましては、現在中教審で検討中の事柄でもございますので、その審議の結果を踏まえまして、必要に応じ、現行免許法、免許制度上の位置づけを検討してまいりたいと考えております。  それから、外国人に対してどうなのかという御指摘でございますが、現在の免許法では、外国人、内国人について特段の書き分けをしておりません。つまり一般的には、国籍にかかわりなく、免許法上の一定の要件を満たせば普通免許状の取得が可能というふうな制度になっているわけでございます。
  182. 吉田治

    吉田(治)分科員 国籍にかかわりないということであれば、これから検討なさるということですから、提案というか、一つだけ申し上げたいのは、例えば公立学校においては教育の標準化、均等ということを考えて、そういう免許を発行する、しないということを決められると思うのですけれども、できればこれから先、独自の教育理念を持つ私学に、例えば小学校の英語教育であるとかそういう部分で独自の免許を与える権利、さきの予算委員会の分科会でも申し上げましたように、単にこれは英語教育だけではありませんけれども、その学校しか通用しない、そういうふうな免許を与える権利というものを、規制緩和という言い方は好きではないのですけれども、そういうことは必要ではないか、これが一つ。  それから、例えば英語。アメリカの大学で教員免許を取ってきたとか、この英語教育という形になりますと、日本人が発言してコミュニケーションを、また会話をというのよりも、やはり外人、ネーティブスピーカーという形になりますと、その人たちが日本へ入ってきたときに、わざわざまた日本の免許を取らなければいけない。取れなければ助手的な扱いにしかならないというふうなことを含めて、免許の許可をフレックス、柔軟にするということ、また、これは単に英語教育だけではなくて、先ほども申し上げました、予算委員会の分科会でも申し上げましたように、社会人をこれから学校の先生として、やはり実践ある人たちを教員として、これはただ小学校の話だけではございません、中学校でも高校でも登用していくという中で、私学の自主性というふうな部分をする必要があるのではないかなと思うのですけれども、その辺のことについてどうお考えでしょうか。
  183. 小林敬治

    ○小林(敬)政府委員 私立学校が随時社会人等を有効に活用したいというときに、免許制度上弾力的な扱いはできないかという御指摘だろうと思います。  先生御承知のように、現在昭和六十三年の教育職員免許法の改正におきまして、そうした社会人を有効に学校教育に活用していこうという観点から、特別免許状制度と特別非常勤講師制度という二つの制度を新たに設けたわけでございます。  このうち特に、特別非常勤講師の許可件数でございますが、制度発足当初の平成年度にはわずかに百七十三件でございましたが、平成年度では二千三百二十八件に増加いたしております。そして、私立学校におきましても、小中高等学校で合計七百八十二件の活用が報告されているところでございます。  もしこうした制度を活用して、例えば先生今おっしゃられたネーティブスピーカ一等を学校教育の中で活用したいという場合には、そうした非常勤講師に採用したいと考えている者が免許状の授与権者でございます都道府県教育委員会に許可の申請を行うということになっておりまして、私立学校側の意図といいましょうか御希望もかなり満たされるような制度になっているのではないかなというふうに考えている次第でございます。
  184. 吉田治

    吉田(治)分科員 私が申し上げたいのは、そこを一歩進めて、積極的に、教員というのもさまざまな分野から雇うということも含めて、私学にそれほどの自主性、独自性というものを持たすと、もっと日本の教育というのも変わるのではないか。  今言われた制度でいきますと、あくまでも府県の教育委員会という形になりますと、統制という言い方はよくないかもしれませんけれども、一つの流れの中で特別に認めてあげましたよというふうなことにしかならないのではないかなという感じを受けますので、何度も申し上げていますけれども、これからその辺よろしく御配慮をしていただきたい、かように思う次第でございます。  今、小中高終わって大学へ入ってまいりますと、大学も、今の話で申しますと国際化。同じくマスコミ報道等によりますと、一部アンケート等が出ておりましたけれども、外国人の教員の任用、これは大学でございます、特に国立大学ですが、なかなか非常勤でしかなれない。これは、諸外国に比べましても、よくこれは外国の例で、公立かどうか、私立かどうかという違いがあるかもしれませんけれども、やはりテレビを見ておりますと、日本人の方でもたくさん、ハーバード大学の教授だ、準教授だ。ニューヨーク何とか大学の教授だ、準教授だ。さきに、悲しいことに殺された方も大学の教授だ。  しかしながら、もう日本では、なかなかそういう海外の人たち、特に外国人と言われている人たちの任用が難しいのではないか。また、管理職と言われております学部長になれないというふうなことも私は聞いております。  その辺にもう少し力を入れていただきたいと思うと同時に、大学院というシステム、これからの大学院を考えた場合に、やはり数点問題点があるのではないかと思います。  一点は、生涯学習という位置づけの中で、リカレント制を持つ社会人も入りやすい大学院。これは私、正直に申し上げます。実は私、ことしの三月三十一日まで大学院生でございました。  京都大学の社会人コースという亡くなられました高坂正堯先生のゼミへ入れていただいて、さあこれから勉強だというときに衆議院選挙がございまして議員になってしまいましたので、先生の講座を受けずにずっと休学しておりました。ことしの三月三十一日がそのリミットでございまして、また復学して高坂先生の授業をとにかく聞きたいと思ったのですけれども、もうそのときには病に伏せていられるということで、私も退学をしてしまいまして、中退者という形になってしまったのです。  やはり、社会人がもっと大学院に入れる、大学院に入って、今度は入るだけではなくて、出てきたときにまたさまざまな仕事という部分でも、保証ではありませんけれども、機会がある必要があるのではないか。  それから、今問題になっておりますのは、やはりオーバードクターの問題。これは後ほど申します日本の国際的な人材育成という部分でも、大変もったいないのではないか。一部天理大学等では定年制をしいて、何歳以上の先生、また、私の出身の、大臣の出身でもあります早稲田大学においても、何歳以上はもう給料これだけよという形をとったりという形になっていると思います。  また、大学院という形でいいましたら、高等教育機関としての大学院大学というふうな必要性も随分叫ばれて久しゅうございます。  私は、大学院の持つこの三つの問題点というのですか課題、リカレント、それからオーバードクターの問題、そして大学院大学の問題、これについて、文部行政に携わる者としてどういうふうにお考えなのか、ちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  185. 雨宮忠

    ○雨宮政府委員 まず、国立大学におきます外国人教員につきましてのお尋ねでございます。  常勤的に国立大学の教員として任ぜられております外国人教員の在職数でございますが、平成年度におきまして四百六十一名ということでございます。これは、外国人教員の任用に関する法律に基づくものでございますが、これ以外に、国立大学におきましては、勤務の契約によって雇用される外国人教師の制度もございまして、同じく平成年度におきましては三百八十六名が在職しているわけでございまして、合計いたしますと、平成年度におきまして八百四十七名が在職しておるということでございます。  ちなみに、昭和五十八年にはこれが何人かと申しますと、三百十二人ということでございましたので、十二年間で二・七倍ということでございます。  多分、これでも少ない、こう御指摘かとは思いますけれども、今申し上げたような数字からおわかりいただけますように、年々ふえてきておるわけでございまして、このうちの相当数は語学教師ということでございまして、先ほど来先生御指摘の大学生に対する外国語教育ということについても大きな貢献を果たしているというように考えているところでございます。  それから二番目に、大学院の関係につきまして三点お尋ねがございました。  一つは、社会人の入学ということでございます。  社会に開かれた大学ということの一つの大きな要素としまして、先生御指摘のように、一たん社会に出てから再び大学院で新しい能力を開発したり新しい技術を修得したりするというのは大変重要でございまして、私どもといたしまして、昼夜開議制というような仕組みをとってみたり、あるいは社会人の方が入りやすくするために社会人のための特別選抜という入試の上で特別な工夫を凝らしてみるとか、あるいは、特に大学の修士課程レベルに多いわけでございますけれども、社会人のための特別なコース、例えば東大の法学部で申しますと企業法務というような分野について修士課程に特別なコースを設けるというような例があるわけでございますが、これらの方途を講じまして、できるだけ社会人のための仕組みができ上がるようにしたいというように努力しているところでございます。  それから、二番目に若手研究者のお話がございました。  今年度からポスドク一万人計画というのがスタートしておるわけでございまして、これには既に大学院を出た者もございますし、また大学院の博士課程の者もございますが、いろいろな学術振興会の特別研究員その他さまざまな制度を通じまして若手研究者の育成のための方途を講じているところでございます。  大学院大学につきましては、例えば国立大学で、北陸先端科学技術大学院大学でありますとか奈良先端でありますとかというように大学院だけを有する大学というのも設けておるわけでございまして、これら全体を通じまして大学院教育の充実を図っているところでございます。
  186. 吉田治

    吉田(治)分科員 今のお話を聞かせていただきまして、大学院のメリットというのですか、その人が大学院に行った、出てきたということのメリットをどうつけていくかというプラスアルファの部分ですね。  私は昔しばらくワシントンDCというところに住んでおりました。そこに住んでおりましたら、世界銀行もございますし、IMFもございます。そして、衆議院議員になってからずっと商工委員会に所属させていただきまして、WTOというのができてまいりました。  そこへ行きますと、非常に残念なことなのですけれども、ほとんどがアメリカ人と言ったら語弊がございますけれども、アメリカ人の博士号を持っていらっしゃる方々です。片や日本人の方は、例えば国連にしても何にしても、もっと働いてください、来てくださいと、例えば世界銀行なんというのは、年に一回か二回、世銀の日本人の方がリクルートに来られますね。私も議員をやる前に参加したことがございます。博士号を持っていただいて、こうして国際機関に勤めてくださいと。どうも国際機関にお金は出すけれども、そこへ行く人材養成、人材育成というものがどこか弱いのじゃないか、一つは大学院というものになるのじゃないかなという非常な問題意識を私は持っているわけであります。私は、ぜひともそういうところへの人材の供給の場になるような大学院になってほしい。  と同時に、私、議員になって大変驚いたのは、議員に対しては情報というのがほとんどないのですね。これはどういうことかというと、霞が関からたくさん情報が来ます、大学の先生と知り合いですとそこからも情報が来ます、国立国会図書館調査室にお願いしたら来ます。しかしながら、ワシントンに私がおったときに感じたのは、さまざまなシンクタンクであるとか、よしあしは別にしましても、さまざまなロビイストの事務所からいっぱいの情報がやってまいります。議員はそれを、よく言えばうまく使う、よく言えば取捨選択、悪く言えばそれを利用して、議会の質問を行うということなのです。やはり日本もそういう部分でのシステム、今局長言われたような特別研究員だとか、そういうふうな部分を広げることによってそういう人たちもそういうところで活躍してもらう、活動してもらう、その結果、日本の国政ですとか立法権が強固になるのじゃないか。  そういうようなことを言いますと、霞が関の皆さんは、いや、そんなことはやめてくれ、もう議員が茶々を入れぬでほしいというのがひょっとしたら本音かもしれないなという部分を私は感じるのです。しかしながら、せっかくある大学院というものを私はもっと活用していただきたいと思います。  その辺、一言で結構でございます、コメントをいただければと思います。
  187. 雨宮忠

    ○雨宮政府委員 二つ申し上げたいと思います。  大学院に関しましては、一つは、その大学院を出て、それに見合うだけの処遇をどう受けてもらうかということでございまして、これは大学院を卒業した者を社会がどう受け入れるかという問題でございます。それが一つ。  それからもう一つは、そのように企業等におきまして受け入れてもらえるだけの能力をきちんと大学院で身につけさせるということかと思うわけでございまして、先ほども例として申し上げましたけれども、量的にもあるいは質的にも大学院の充実を図っていく、これが現在非常に重要な問題ではなかろうかというふうに考えているわけでございます。
  188. 吉田治

    吉田(治)分科員 局長、海外へ出ましたら、マスターを持っているとかPhDですとかドクターを持っているのは本当に誇らしげに書いてあります。日本にもそういうことが認められるようになってもらいたいですし、そうなるような方向に持っていっていただきたいと思います。  そういう中で、大学制度というものを考えた場合に、私は、よく言われますように日本というのは大学が多過ぎるのじゃないか。私学、それから地方の国立大学等々であるのですけれども、私はこのごろふと思うのですけれども、政治も経済も、そして教育もですけれども、大きな曲がり角に来ている、日本全体が変わっていくのだ、構造改革という中で、大学の制度それ自身が、地方を含めて国立大学をいつまでも持ち続けるということが果たしていいことなのかどうなのかという考えを今私はしております。  これは旧一期校、二期校という分け方がいいのかどうかわかりませんけれども、例えば地方にある旧二期校、師範学校であったとか単科大学であったところを思い切ってその地域の第三セクター、地域に合った大学にする。どうも地方の大学というのは、東京の大学対地方の大学、大都市の大学対地方の大学で、植民地という言い方はよくないかもしれませんけれども、例えば今議論いたしました、大学院を出て、では就職した段になって地方へ行くとなると、家族全員というよりもどうも単身赴任で、おれは大学の先生だけをしに行くのだ、地域のことは余り関係ないよという意識もどうもこのごろあるやにも聞いております。  ですから、二期校という言い方がいいかどうかわかりませんけれども、そういうところを第三セクターにして、例えば国と地方自治体とその地域の民間とが三分の一ずつ資金を出し合ってその大学を運営する、公立大学方式というのですか、青森ですとか宮崎ですとか釧路で行われているようなもの、これから新しくつくるのではなくて現在あるものをそういう形にすることによって、そこの地域との一体化、地域での大学のあり方というものの一つの方法を求めるということも重要だと思います。  また、その後の質問にもかかわってくるのですけれども、例えば、それによって予算に余裕ができてきた、ではその予算で、今現実に国立大学として分けて残す部分に関しては重点的な整備配分をしていく、どこでもだれでも均等にという時代ではなくて、一点豪華主義ということじゃないと思いますけれども企業でいうならばどこかに集中的に投資をしていく、これからはそういう時代に来ておるのではないかと思うのです。  その辺の地方の大学というものに対しての検討、考えというものを今現実にどうされているのか、お聞かせいただきたいと思います。
  189. 雨宮忠

    ○雨宮政府委員 まず、我が国の高等教育の現状でございますけれども、学校数で申しますと、大学それから短大等を含めまして千二百二十四の高等教育機関があるわけでございますが、そのうちで国立につきましては百八十八ということでございます。そのうち四年制は九十八でございますが、百八十八と千二百二十四との比率で申しますと、一五・四%ということでございます。また、在学者数で申しますと、全部合わせますと全体の一九・〇%、四年制だけで二三・五%というシェアを国立大学が持っているわけでございます。  申し上げたいのは、我が国の場合、アメリカよりもそうでございますし、また、特にヨーロッパの国々と比べてもそうでございますけれども、国立あるいは州立大学という設置形態をとるところは少ないというのがむしろ我が国の高等教育の特色であるわけでございます。それが一つ。     〔福田主査代理退席、主査着席〕  それからもう一つは、やはり我が国におきます国立大学は、例えば無医大県解消というようなことに典型的に見られますように、計画的な人材養成ということで寄与するということもございますし、また、地域的なバランスのとれた配置ということでも意義のあることなわけでございますし、また、学術研究の面でも先端的な成果を出すというようなことでもいろいろな役割を果たしているわけでございます。  むしろ、先生のおっしゃった中で、非常に私どもも課題としておりますのは、国立大学といえども、これは地域から浮いたものであってはならないということでございまして、いろいろな形で、例えば公開講座をするんだとか、あるいは先ほどの話題にもございましたけれども、地域の社会人の方々のために教育の機会を提供するのでありますとか、あるいは学術研究の分野で申しますと、地域の中小企業あるいは県の研究機関との間で共同研究を行うというような連携の仕方というのが随分とふえてきておるわけでございまして、そういう国立大学が地域と連携した形で、地域と遊離しない形で発展するということは私どもも願っていることでもございますし、そういう方向で今後とも指導してまいりたいというように考えておるところでございます。
  190. 吉田治

    吉田(治)分科員 局長が言うことはよくわかるのです。パーセンテージとかそういうのはわかるのですけれども、その中でも、占有率が少ない中でもやはり重点化というのが必要じゃないかな。そして、その足らない部分は地域だとかそういう部分がお金を出す。やはり、何をするにしてもお金を出すと本気になる。今言われた公開講座をするとか、地域と一体といっても、何かしらやっていますよという自己弁明に陥る。そうじゃなくて、自分たちが一緒にこの大学をつくっているんだというふうな部分、そういう大学というのは、もとをたどっていけば地域の有力者という方々がお金を出し合って学校をつくったという経緯が多分あると思うのです。それが時代の変遷とともに国立大学と言われてみたり、公立大学と言ってみたりしているのでしょうから、やはり原点に戻すということも私は必要ではないかなと思うわけであります。  大学という形で申し上げましたが、今度は、これからの二十一世紀を考えてみた場合に、大学とそれから産業界、よく産学協同といいますけれども、特に日本ではおくれていると言われております基礎科学、研究開発というふうな部門。大学はいろいろなものを持っているけれども、民間に広げていくということがなかなか難しい。今、共同研究センターという形で、国立大学が民間に施設を貸している。例えば、民間から大学院生だ、研究生だという形で人を派遣してもらったりしている事例があると思います。  私は、ここで一歩進めて、諸外国がいいかどうかは別にしましても、例えば、国立大学の先生がこれは商売になりそうだというのはみずから会社を設立する。公務員という立場があってなかなか難しいかもしれませんけれども、そういうふうな部分まで踏み込んで、民間からのお金も、人も、そして技術も相互に交流する。しかも、人という部分は、単に民間から院生だ研究生だと来てもらうだけでなくて、先ほど言いましたように、民間からも教員だという形で入ってもらう、そういうふうな部分での相互交流というのが非常にこれから必要ではないか。  そして、先ほど申し上げました、国立大学の先生も会社を設立するというのは、これは基礎研究というものはパテントというものでどんどん押さえられている。特にアメリカにおいては、大学の先生でありながら会社を持っている人たちが、基礎研究で持ったものを全部自分のパテントで押さえていく。そうしますと、日本だけが、いや、それはできないから、公務員だからという方法でおりますと、どんどん基礎研究はパテントでとられてしまう。パテント料で法外な値段を払わなければならないという現実もあるやに聞いております。  この辺を含めて文部省として、また、きょうは実際そういう民間からの参画という部分で、通産省からも御意見を賜れればと思います。
  191. 林田英樹

    ○林田政府委員 お答え申し上げます。  大学におきます民間等との人的、物的な交流の現状でございますけれども、私ども、大学におきまして、産業界等の要請にこたえて、ともに共同して研究をするということは、大学の学術研究そのものにとっても有益な意味があるというふうに思っておるわけでございます。  このような観点から、順次いろいろな民間産業界等との研究協力推進のための施策を進めてまいりまして、民間等との共同研究でございますとか、民間からの受託研究、それから受託研究員制度、さらには奨学寄附金制度というふうなものをやってまいりまして、産業界との研究協力を推進しておりますし、お話にもございました共同研究センターということで、大学が地域の産業界等との共同研究をするためのセンターを順次整備いたしまして、平成年度までには四十七大学に設置をするということでございます。  それからさらに、東京大学には、平成年度に国際産学共同研究センターというような形で、かなり大きな国際的な共同研究のできるようなものもつくったわけでございます。そういうような形で、私ども、こういう措置をずんずん進めてまいっております。  それから、特許に関してお話がございましたけれども、現在、国立大学におきます特許の取り扱いにつきましては、昭和五十二年に通知を発しておりまして、端的に申し上げますと、特別に応用開発を目指して国から特別の研究経費を受けて行った研究でございますとか、そういった場合には国が継承することとなっておりますけれども、その他のものにつきましては、国立大学の先生の研究成果につきましては、原則として発明者の個人に帰属するというような形になっておるわけでございます。  したがいまして、先生おっしゃいましたように、国立大学の先生方が共同研究を進める、さらには取得した特許につきまして、御指摘のような点もいろいろ指摘されております。現在、科学技術基本計画の策定作業を進めておりますけれども、その中でも御指摘のようなことがいろいろ出されておりますので、遺漏のないように今後の改善にさらに努めてまいりたいと思っております。
  192. 福田秀敬

    福田説明員 先生の御指摘のとおり、産学の連携というのは、まさしく大学の頭脳と民間の活力とが結びつきまして新たな産業を生み出すなど、我が国の経済活動の源泉の一つとなると思っています。これに対する社会の期待も非常に高いものだと認識しております。  そこで、昨年制定されました事業革新法におきましても、企業の新たな事業展開に対しまして、研究、教育両面で産学連携の必要性がうたわれておりまして、通産省としても、順次政策的に手当てをしているところでございます。  具体的には、関係省庁とも協力いたしまして、予算、税、財投による産学協同などの研究開発の推進、それから産学連携に必要な研究施設整備、これは昨年の秋に民活法改正によりまして産学連携施設の整備の手当てをしておりますので、こういうことも活用していただこうかと思っております。  それから、産業界のニーズそれから大学の研究シーズを情報交換によってうまく結びつけることが必要でございますので、そういう交流機会の提供等を実施しております。  今後は、これらの施策の充実を図るとともに、文部省とも連携いたしまして、民間企業と大学の研究者の交流をより一層促す、それから新産業の創造を促進するための制度、仕組み、これらの整備を図ってまいりたいというふうに考えております。
  193. 吉田治

    吉田(治)分科員 いろいろお聞かせをいただきまして、大臣、最後に一言、産学のこれについて、決意を一言ちょうだいできれば、それで終わらせていただきます。
  194. 奥田幹生

    ○奥田国務大臣 今通産省の企画官からお話がありましたが、この産学の共同研究開発というのは、六年前になりますか、七年前になりますか、私が衆議院の商工委員長を務めておりますときに、そのときからもう各党からそういう御要請がありまして、融合化法という法律もちゃんとつくりまして、それを各県の商工会あるいは商工会議所、県の中小企業団体中央会にも周知徹底をしまして、私は京都でありますけれども、京都でも大分育ってきております。  既に成功しておりますのが長崎県で、あれはどこの大学でしたか、海中ロボットをつくられまして、それがもう稼働しておるというような話も聞いております。これからやはりさらにそれを促進していく必要があると思っております。
  195. 吉田治

    吉田(治)分科員 垣根にとらわれずに頑張っていただきたいと思います。  以上で終わります。ありがとうございました。
  196. 前田武志

    前田主査 これにて吉田治君の質疑は終了いたしました。  次に、栗本慎一郎君。
  197. 栗本慎一郎

    ○栗本分科員 時間が短うございますので、簡明に簡潔にお答えいただければと存じます。  二点お伺いいたします。高等教育改革の問題、それから全く別個の問題点でございますが、文化財保護に関しまして御見解をお聞きいたします。  まず、高等教育改革の問題でございますが、現在、改革が進展している、進行しているということでありますが、今後大学は国公私立の枠組みの中でどのような方向で発展する必要があると思っていらっしゃるのか、文部省の見解をお聞きいたします。
  198. 雨宮忠

    ○雨宮政府委員 平成三年に大学設置基準を改正いたしまして、大学におきます教育課程につきましては各大学が自主的にかなり自由な形で編成できるような仕組みにしたわけでございまして、それに基づきまして、各大学がそれぞれの大学の特色を生かすような形で教育課程の検討を行いまして改革を進めてきているところでございます。私どもとしては、そのような動きを今後とも支援してまいりたい、そういうように考えておるところでございます。
  199. 栗本慎一郎

    ○栗本分科員 我が国の高等教育におきましては、私学が学生数で約八割を占めているわけであります。また、独自の建学の精神に基づく特色ある教育研究を行うなど大きな役割を果たしているわけでございますが、諸先進国に比べますと、私学の役割が国立のあるいは公立のやや補助的な意味合いにとられかねない部分が残念ながらある。  これには多分いろいろな理由があると思います。一つは財政的基盤の問題がある、あるいは寄附に対する税制の問題等がありまして、アメリカのハーバードを、筆頭と言っていいかどうかわかりませんが、一つとする私立大学の展開に比べて、数は多うございます、学生数も多うございますけれども、例えば研究面での環境整備、そういったものが極めておくれているというふうに考えているわけです。  少し多岐にわたりましたが、この点で私学振興のあり方について文部省の見解をお聞きしたいと思います。
  200. 雨宮忠

    ○雨宮政府委員 先生御指摘のように、我が国の高等教育のうちの八割方は私学に負っているわけでございます。それで、私立大学に対します公的な助成としましては、先生御案内のように経常費助成、それから装置、設備の補助等で対処しておるところでございます。  今年度も、新たに経常費補助で七十二億の増、それから装置で三十九億の増、設備で一億の増というような増加を示しておるわけでございます。また、ハイテク・リサーチ・センターという新しい項目を立てまして、特にこの点につきましては施設の補助という全く新しい項目が加わっておるわけでございますが、これらのことによりまして私立大学に対する補助を拡充してきているところでございます。しかし、まだ十分だというようなところとは遠いわけでございまして、今後とも努力してまいりたいというように考えておるところでございます。
  201. 栗本慎一郎

    ○栗本分科員 さまざま御努力いただいているところを個別の部分に関しまして承知しているつもりでございますが、しかし、日本国の政府の予算全体の中で考えました場合に、例えば、全く違う項目のようでありますけれども、農業に関連する、あるいは農林水産業全般に対する補助あるいは奨励に比較しますと、実に少額の補助であるというふうに思っております。  そういたしますと、これは一つは理念の問題として、日本の私学を含む大学というものに対して、もっとより根本的な何らかの理念づけというか、結果としての金額の要求をしなければならないというふうに考えているわけでございますが、何らかのそれについての御見解をお持ちでございましょうか、ちょっとお聞きしたいと思います。
  202. 雨宮忠

    ○雨宮政府委員 先生御指摘のように、我が国の場合に、学校教育とりわけ高等教育に対する公財政支出の割合というのは、他の先進国に比べましてまだ弱いところにあるわけでございまして、これにつきましては、何とか全体のパイを広げまして、その支出の増を図るべく予算獲得に努力してまいりたいというように考えておるところでございます。
  203. 栗本慎一郎

    ○栗本分科員 何とかということで努力を大変多といたしますけれども、私といたしましては、日本の経済の発展及び今後の社会的な基礎、基盤の拡充という意味においても、高等教育の果たす役割というのは農業に匹敵するとも劣らないというふうに考えておりますし、金額的に余りにもその差が大きいと思いますので、抜本的な展開をぜひとも期待したいし、また政治家として御助力もしたいというふうに思っております。  具体的に申しますと、例えば私立大学でいいますと、理学部、工学部系の国公立に対するハード面における非常な立ちおくれというのが目立っております。立ちおくれが目立つというより、立ちおくれというのはだんだんおくれていったという意味も含むのですけれども、そもそも最初から極めて甘くでき上がってきておる。  この辺に関しまして、国としては、文部省としては、これはある程度もっと強力に助成してということもあるのでしょうが、他方で、規制緩和と言われております今日でございますけれども、大学の医学とか理学、工学のような基礎的な設備を当然ながら必要とするというものについては、もう少し規制といいますか、社会的規制に属する、その辺について私は不十分であるというふうに考えておりますが、その辺についての御見解をちょっとお伺いしたいと思います。
  204. 奥田幹生

    ○奥田国務大臣 まず、文部省予算、五兆七千億余りでありまして、しかもその中で七七・四、五%が経常費でございますから、非常に窮屈な予算に相なっておるわけです。しかし、その中で、何とか資源のない我が国がこれから常に経済に活力を持たせ、国際貢献も続けていきますためには、どうしてもやはり科学技術立国も大事な柱だ。それには、国立大学だけでなくて、やはり私学の研究分野にも相当国としても応援をしていかなければならぬ。  今局長が御答弁をしておられましたのは、これは大体経常費の分野の応援でありますけれども、二千八百億余りになるのです。この八月末に来年度の概算要求をいたしますにつきまして、なるほど国の財政も非常に窮屈でありますけれども、将来のことを考えれば、やはり国立大学のみならず、私立大学の今先生おっしゃる理学部、工学部関係の研究設備の相当古いままの状態のところ、しかも非常に大事な研究を続けていらっしゃるようなところについては、何らかの新しい応援措置ができないものかな、そういうことを文部省の中でも今非常に真剣に検討をやっておるところでございます。  加えて、過般可決をしていただきました日本学術振興会の百十億円の出資金の問題でありますが、これも国立大学だけでなくて、民間の研究機関、大学の研究機関においても、非常に優秀な将来性のある共同研究をなさっているところには大いに活用していただこう、そういう趣旨であることも御理解賜りたいと思います。
  205. 栗本慎一郎

    ○栗本分科員 ぜひとも頑張っていただきたいと思います。  大学院のことについてお伺いしてこの問題について締めたいと思うのですが、他の委員の方からも、大学院の整備充実に関しての関心が非常に高く、御質問がありました。  それで、私といたしまして、高等教育に一応含められておりますけれども、これは用語の問題はそれで結構ですが、大学院は言うまでもなく研究がかなりの中心といいますか、本当は、私は現在も大学教授でございますが、その立場からいって、研究を軸にした教育がある、だから研究が軸だというふうに考えているのです。  ここにおける大きな問題点は、これまでの流れからいって、学部で展開してまいりました大学が発展すると大学院ができるというふうな考え方がとられてきているかと思います。これは文部省の方でもいきなり大学院を設置した大学をつくらせないということに結局なってくると思いますが、もう少しそこを自由にといいますか、A大学を出てB大学の大学院に行くというのも非常に少のうございます。その辺は社会的習俗もあるでしょうが、大学院大学もできております昨今、大学院というものは、独立した性格を有し、かつ、その意味で独立しながら広い意味での大学に統合されていく、こういうふうになっていくべきだろうと思うのですけれども、文部省の御見解をここでお聞きしていきたいと思います。
  206. 雨宮忠

    ○雨宮政府委員 今先生御指摘のように、我が国の大学院につきましては、従来学部の上に乗っけるという形で存在していたわけでございますけれども、それでは高度な専門職業人を養成するとか先端的な学術研究を展開するということについて必ずしもふさわしい組織形態のあり方ではないということでございます。  従来のものもあるわけでございますけれども、それに加えて、大学院だけを有する大学を設けてみるとか、従来ですと学部と研究科と同じ守備範囲の研究分野をカバーするというようなことがポピュラーだったわけでございますが、それをずらした形で幾つかの学際的な分野についての研究科を立ててみるとか、あるいは、数大学の教員組織を活用して、連合した形での、例えば農学の分野ですと連合農学研究科というような新しい大学院の形をとりつつあるわけでございまして、私どもといたしましては、こういう従来の学部の基礎の上に立つものとはまた別に、大学院独自の発展ということにも十分配慮して進めてまいりたいというように考えておるところでございます。
  207. 栗本慎一郎

    ○栗本分科員 その方向を支持いたしますので、ぜひともその中で具体的にお進め賜りたいと思います。  具体的にこちらの方から申し上げれば、修士課程を出て何年云々で博士課程とかというふうなことではなくて、そもそも大学院に行く学生あるいは研究者の卵は、ほとんどの場合、特に文系の場合には博士課程まで行くということを前提にしてやっております。ところが、修士課程だけの大学院というのは現実にあるわけで、現実にはさまざまな規制、条件があるわけです。それをもっとより抜本的に、キャンパスは大学の中にあるけれども独自の大学院というのができ上がっていくというふうに、この点に関しましては規制の緩和、特に何年間云々という部分があることについてはぜひともお考え直しいただきたい。  これを要望しておきまして、この質問を終わらせていただきます。  続きまして、全く別の点で恐縮でございますけれども、文化財保護法につきましてお聞き申し上げたいと思います。  御案内のとおりというか、もう当然でございますが、文化財保護法の一部を改正する法律案、改正が行われて新たに導入しようとされているわけでございますけれども、これは文化財登録制度と一般に呼ばれるものでございますね。この趣旨と概要について、ちょっと簡明にお答えいただきたいのです。
  208. 小野元之

    ○小野(元)政府委員 御指摘ございました文化財保護の新しい制度といたしまして、登録制度を現在国会にお願いしているものでございます。  この登録制度と申しますのは、現在重要文化財の指定制度があるわけでございますけれども、この指定制度は、文化財について重点的に厳選をいたしまして、我が国にとって極めて価値の高いものについて非常に強い規制をかぶせる、そのかわり手厚く保護していくということで、永久的に保存していこうという基本的な考え方が指定制度にはあるわけでございます。  しかしながら、現在私ども問題点として認識いたしておりますのは、近代の建造物を中心といたします文化財でございますけれども、多様かつ大量にそういったものがあるわけでございまして、地域によっては歴史的な重要性でこれを何とか保護したいという声があるわけでございますが、一方で、現在の指定制度にはなかなか乗っかりにくいという点があるわけでございます。そういう近代の多様かつ大量な建造物等について、現在開発がどんどん進んでおりまして、今のまま放置しておきますとこういった貴重な文化財が消滅してしまうという危険もあるわけでございます。  そういったことがございまして、こういった国民の貴重な文化財でございますものを後世に幅広く承継していこうという観点からは、現行の指定制度だけでは必ずしも十分ではないという点があるわけでございます。  そういった点で、今回お願いしております登録制度は、届け出制、それから、これに対して指導、助言、勧告というものを基本といたします緩やかな保護措置を講ずるものでございまして、この登録制度を指定制度を補完する制度として新しく導入しようということで法改正をお願いしているわけでございます。  こういった新しい制度をつくることによりまして、明治以降の建造物、地域の中核になるような建造物等につきまして適切な保護が図られるというふうに私どもは期待をしておるところでございます。
  209. 栗本慎一郎

    ○栗本分科員 趣旨としてはまことに結構なことであり、すばらしいことだと思いますけれども、具体的には、この助言、勧告によって文化財登録原簿に登録することができるということでございますね。その辺のところはどういうような助言、勧告のシステムをお考えなのかということについてお答え願いたいと思います。
  210. 小野元之

    ○小野(元)政府委員 この登録制度の概要でございますけれども、所有者の方に事前に御相談をさせていただきまして同意が得られるということでございますと、関係の地方公共団体の意見を私どもとしては聞くことにいたしております。そして、登録をすべきだということになりますと、文部大臣が具体的に文化財保護審議会に諮問をいたしまして、これに対して答申をいただいて文化財の登録原簿に登録をすることになるわけでございます。それは当然官報にも告示をするわけでございます。  この登録しました後でございますけれども、これにつきましては、この法改正によりますれば、所有者の方が仮に登録された文化財について現状変更等をしたいということがございますと、これは三十日前に事前に届け出をいただくということになっております。それに対して文化庁長官が必要に応じまして指導、助言、勧告を行うという制度でございます。  例えば現状変更で窓枠をかえたいということでございますと、できれば外観をこのように保持してほしいということで、お願いの意味で指導申し上げるといったようなことがあるわけでございます。  その他、所有者がかわります場合、あるいは滅失したり毀損した場合には、事後でございますけれどもお届けをいただくということになっておるわけでございます。  さらに、こういった登録文化財を公開したり、あるいは管理する、修理するといったような場合についても、文化庁長官から指導、助言を行うということでございます。  重要文化財の指定文化財でございますと、非常に厳しい命令をするとか指示をするといったような制度になっているわけでございますけれども、この登録制度は、所有者の方の協力をいただきながら、後世に貴重な文化財を残したいという観点から、緩やかな保護措置を講ずるというのが具体的な内容となっているものでございます。
  211. 栗本慎一郎

    ○栗本分科員 短くお聞きいたしますけれども、国宝及び重要文化財に指定制度によって指定されたものと、この登録制度で登録されたものとは一番大きなところでどういうところが違うのか、税制等に関しましても簡明にお答え賜りたいと思います。
  212. 小野元之

    ○小野(元)政府委員 重要文化財でございますと、指定するに当たりまして私ども考えますのは、重要文化財でございます建造物というのは、各時代のそういった建物の類型の典型的なものであるという評価が定まっているものにつきまして指定をする、そしてそれらのうちの最も重要なものが国宝に指定をされるわけでございますけれども、こういう非常に立派なものについて、後世に完全に残していくという観点で、非常に手厚い保護を行うとともに、規制は厳しく行っていくということになるわけでございます。  一方で、登録文化財の方は、ある程度同じような類型的なものが明治以降たくさんあるわけでございます。しかしながら、その地域にとっては非常に大事だというものもあるわけでございまして、そういったものに対して、緩やかな保護措置を講じて、所有者の御理解をいただきながらお願いをしていくというものでございます。  お尋ねの税制等につきましても、指定文化財については、保護措置を手厚くということでございまして、例えば固定資産税が完全に非課税ということになっておりますけれども、この登録文化財については、固定資産税は二分の一以内、それから地価税についても二分の一ということで、登録制度の方が緩やかな保護措置しかないわけでございます。そのかわり規制も緩やかだということで、この二つの制度相まって文化財保護の適切な推進に努めてまいりたいというふうに考えているところでございます。
  213. 栗本慎一郎

    ○栗本分科員 趣旨は、本当にまことにそのとおりだというふうに思いますが、私が心配いたしますのは、重要文化財と登録有形文化財、例えば建造物の場合などを具体的に比較いたしますと、固定資産税が重要文化財の方が非課税でございますね、家屋の場合でも。非課税ですからその評価をする必要はない。美術品としてこれは何兆円であろうとも構わないわけですが、固定資産税が二分の一でも残っていると、少しきれいにするとか窓枠を何とかすると、価値が上がったといって税金が上がってしまうことになりはしないだろうか。  その辺に関して、それであれば、全体としてこの軽減が国庫の視点から見て一体何千万円か何億円か、恐らく想像つきませんが、何千万円あるいはひょっとしたら何千にいかない金額かもしれないのですが、その二分の一が残っていることによっておかしな問題が具体的に起きやしないかということを想像するわけでございます。  したがって、税制面でももう少し、私はだからやめろと言っているのではなくて、もっとはっきり言えば、これもこれ以上に上げないとか、資産価値が上がったならば高くするということはしないとかいうようなことについて、何かお考えがあるかどうか、ちょっとお聞きしたいと思います。
  214. 小野元之

    ○小野(元)政府委員 先生御指摘ございましたように、二分の一という軽減では完全なものではないではないかという点は確かにあるわけでございます。  ただ、何度も御説明申し上げておりますように、緩やかな保護措置をするかわりに規制も緩やかだという観点で、今回法律改正をお認めいただくことを前提に、平成年度の税制改正で先ほどの二分の一の軽減も認められたところでございます。私どもとしては、この登録制度をお認めいただきました場合に、今後円滑に推進するためには、御指摘のように、さまざまな観点からの支援措置ということも考えていかなければいけないと思っているわけでございます。  現時点におきます二分の一軽減という観点での減税については、私も、大ざっぱな推計でございますけれども、恐らく数億円、一、二億円程度の実質的な効果しかとりあえずはないと思うわけでございますけれども、私どもといたしましては、平成年度に向けまして、予算要求の観点からも、管理指導等についての経費、あるいは修理等につきます設計監理費といったようなものについて、新しくこの登録制度がスタートした場合に予算措置等ができないかどうか今検討しているところでございまして、せっかくのこの制度でございますので、円滑に実施できますように、さまざまな観点で保護措置としての前進を見るべく努力をしてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  215. 栗本慎一郎

    ○栗本分科員 ぜひとも、この登録制度ができ上がって、最初は二分の一の減免でうれしいけれども、その後文化財を維持管理しているうちに資産価値が上がって税金が高くなるのだったら改装や保存をやめようというふうなことにならないように、これはオウム真理教の管理よりはるかに楽だと思いますので、ぜひともその辺のところの具体的な円滑なる運用をお願い申し上げまして、私は、質問をこれで終わらせていただきます。  どうもありがとうございました。
  216. 前田武志

    前田主査 これにて栗本慎一郎君の質疑は終了いたしました。  次に、西博義君。
  217. 西博義

    ○西分科員 新進党の西博義でございます。  大臣、長時間にわたって御苦労さまでございます。私、たった今、日経新聞を見ておりました。夕刊でございますが、そこに、大臣がきょう午前中に日経連の根本会長とお会いをして、ふだんは多分就職問題でいろいろお願いに上がるのだと思うのですが、残業だとか単身赴任を減らして、できるだけ休暇を多くして家庭の対話を多くしてほしいという要望をされた、こういう記事が出ておりました。私も、全く時宜を得た大臣の要望ではないかなというふうに心から思っております。ありがとうございました。  実は、私きょうは、高等学校の中途退学の問題について御質問させていただく予定にしておりますものですから、早速そのことに関しても、少しでも家庭の中で進学の問題あるいは将来の進路の問題、親子を通して、特に社会に出て働いておられるお父さんと十分対話をする機会が得られれば、間接的には大きな前進になるのではないかなと思ったものですから、大変ありがたい要請でございました。  一般に、決算の役割の一つとして、予算に計上された事業が目的を達成をして、それが効果を上げているかどうか、こういうことを明らかにするものが決算だという感じがするわけでございます。事業が終わっている場合だけに限らず、継続中の事業でありましてもその進捗状況を検討して、そこから得られる情報を行政の側にフィードバックをして、そしてこれから先のことについて、新たな予算の執行について検討をすることによって、事業がさらに効果的に行われたり、また修正されたりということもこの決算委員会の大きな役割ではないかなというふうに考えるわけでございます。  その意味で、現在継続中であります平成年度文部省予算の中で、高等学校中途退学者問題総合的調査研究、その当時は新規予算でございましたが、このことに焦点を合わせて現状を検討し、事業が所期の目的を達するようなものになるように考えてみたい。これが本日の私の質問の趣旨でございます。  具体的にこの事業の検討を始める前に、文部大臣にお伺いをしたいと存じます。  これは今議題としております総合的調査とは別のものでございますけれども、実は、文部省の方で昭和五十七年以降毎年行っております公立・私立高等学校における中途退学者数等の状況という全数調査がございます。これを以下、年度調査と私呼ばせていただきますが、十数年間にわたってずっと調査を続けておられます。  これを見ますと、直近の平成年度の調査において、「進路変更」を中退の理由とする者が最も多くなっておりまして四三・三%、以下、「学校生活・学業不適応」が二六・九%、「学業不振」が八・八%、「家庭の事情」「問題行動」、こういうふうに続いておるわけでございます。  昭和五十七年度から平成年度まで十二年間の推移をずっと眺めてみますと、中退の理由に大きな変化が見られます。それは、「学業不振」「問題行動」という高い割合を示していた中退の理由が減少して、そのかわりに、「進路変更」が一七・八%から四三・三%まで大きく伸びてきたことでございます。  大臣には、この中退の理由の変化に関して、積極的な進路変更がふえた、こういう認識をお持ちなのかどうか、その中身について若干お伺いをしたいと思います。
  218. 奥田幹生

    ○奥田国務大臣 先ほども申し上げましたけれども、高校生が大体四百八十万人ほど、その中で九万六千人ぐらいが今先生が御指摘になりました部類に入るわけですね。その原因が今おっしゃったこと、私どももこれは非常に深刻に受けとめなければならぬ。とりわけ四三%にもなっておりまする進路変更。進路指導が十分でないためにこういうふうなことになったということが非常にウエートが大きいわけであります。  これは、進学をする生徒の方にも、あるいはその親を含めて、割合安易にああそうかそうかと早合点をしていたのもあるかもわかりませんが、指導をする教員の側にも、今高等学校というのは多様化といいましょうか、大学もそうでありますけれども、高等学校においても個性化してきて、特に非常に急激な変化をしてきておりますが、そういうことを、こうなっているのですよという指導をする側の説明も十分でなかったのかな。  もしそうであるとするならば、やはり教育委員会、学校の進路指導の先生を含めて、一遍洗い直し、検討をし直していただく必要があるのかな。これは文部省でもやはり、そういうことに問題を投げかける側でございまするから、考えてみる必要が大いにあると思っております。
  219. 西博義

    ○西分科員 生徒の側に立った、大変よくわかる御答弁をちょうだいいたしました。  ややもすると、進路変更という場合には、生徒が入学した後に心変わりがして、そして積極的に新しい進路を求めて違う方向に行くというような考え方が一方ではあるわけでございます。平成年度のこの調査をいたしますときの、この事項別表の中にも若干そういうニュアンスのことがありましたものですから、そうではなくて、やはりいろいろな問題点が多いのじゃないかと逆に思ったものですから。大臣の答弁は非常に私の考えと近いものだというふうに理解をしております。  さて、この高等学校中途退学者問題総合的調査研究という事業の目的でございますが、今ちょっと申し上げましたが、この平成年度予算額主要事項別表、この文部省の資料によりますと、「積極的な進路変更による中途退学者が増加するなど多様化した中途退学の現状を踏まえ、中途退学者の進路状況等を十分に把握・分析するなど総合的な調査を行う」、こういう目的が書かれているわけでございます。すなわち、この総合的調査によって、毎年十万人に及ばんとする高校中退の実態を的確に浮かび上がらせようとする、そういう目的でもってこの事業を行おうとしたわけでございます。  私がこの総合的調査が重要であると考えるゆえんは、文部省には積極的な進路変更により中途退学が増加しているという認識がどうもあるのではないか、また、そのような肯定的な認識を持つということは、中途退学という課題に対する教育行政を誤らせていくのではないか、またそういう可能性があるのではないか、こういう思いを持ったからでございます。  幸いにして、大臣は今その点をむしろ、進路変更をせざるを得ない生徒に対する私たちの指導にも、学校側の指導にも問題がある、こうおっしゃっていただいたわけですが、平成年度の時点では必ずしもそうではなかったように思うわけでございます。私ばかりでなく研究者の中にも、肯定的な認識、今の子は、現代の子は昔と少し違って、積極的に違う方向へ、もうだめだと思ったらすぐ行ってしまうんだ、こういうような指摘をする人もいるわけでございますが、高校中退の実態を的確に、また総合的に把握するという調査の重要性は、そういう意味では極めて高いのではないかというふうに思います。  それで、私がこの文部省の認識に対して疑問を感じたのは、平成年度の公立高等学校中退者への調査である高等学校中退者進路状況等調査結果が出ておるのでございますが、この中身を見せていただいてからでございます。この中身は、平成年度予算で執行されています調査と同様の調査をしているのですけれども、A、B、Cという三つのサンプルをとって調査をしております。  Aというのは、これは学校から中退をした人へ電話で聞き取り調査をして吸い上げたサンプルでございます。聞き取り調査といいましても、学校側がいわゆる把握をしているデータに基づいた調査というふうに考えてもいいということはこの本の中にも書かれてございます。それに対してB調査というのは、これは中退者一人一人にアンケート用紙を郵送して、中退者自身が記入をして返してもらった調査。それからCというのは、これは直接調査員が出向いて中退者に面接をして吸い上げた調査。この三種類の調査が報告書には載せられております。  この三つの調査をずっと眺めてみますと、A調査、B調査、いわゆる学校側が認識している結果と中退者が認識している結果に大きな違いが何点かのところであります。例えばA調査では「進路変更」が四四・三%、これは先ほども申し上げました。ところがB調査ではこれが一八・二%という低い数字になっているわけでございます。これは、いわば学校側が見ている中退の理由と本人たちが認識している中退の理由とに大きな食い違いが起こっているということでございます。  なぜこういうことが起こったのか。原因としては、実は「その他」という項目を見ますと、A調査では二・七%に対してB調査では一八・五%、ほかにいろいろ理由があるという中退者自身の思いがあるのではないかというふうに思います。かなり複雑な原因が中退者自身に起こっているのではないか、こういう気がいたします。  じゃ、今度は中退者自身が回答したB調査を見ますと、高校をやめた理由を尋ねているのですが、「高校の生活があわなかったから」、これが一番多くて二五・六%、それから「その他」が一八・五%、三番目に「進路変更」が一八・二%、こういうふうに続いているわけでございます。  実は、細かいことでございますが、私は、「高校の生活があわなかった」というこの質問、「が」という、生活が私に合わなかったという考え方と、高校の生活にあなたが、中退生が合わなかったという考え方とには微妙な違いが既にあるのではないかというふうに思うわけです。主体が何か、主体が学校なのか、主体が生徒なのかということ。アンケート調査は、学校が生徒に合わなかった、こういう聞き方をしているわけでございます。  それはそれとして、またC調査では、中退するまでのプロセスとして、最も多いのが学業不振、そのために単位が不足する、そして留年、それで中退に至る、こういうふうなことが最もケースとしては多いというふうに指摘されております。例えば定時制で仕事に専念するために中退するとか、希望校ではないところへ不本意に入学したために進路を変更するとかが多いような気がしますけれども、実はそうではなくて、学業不振ということも大きな要因として挙がっているということがC調査ではわかってまいります。  これらのことを考え合わせますと、学校、いわゆる教師側の認識を示しているA調査や、先ほど一番初めに申し上げました年度調査、毎年毎年やっているこの年度調査と、それから中退者自身の考え方を示しているB、C調査、この二つの性格を考えますと、学校さらには文部省と中退者との間には大きな認識のギャップがあるということを示しているのではないかと思います。  つまり、学校、文部省側は中退の最大の理由を進路変更によるものである。大臣一つの大きな視点を初めにおっしゃっていただきましたので、それは私も認める面があるのですけれども、本来は、進路変更という意味合いの中に、どちらかというと生徒の都合によってやめていくという意味が私は強かったのではないか、こう思うのです。それに対して、中退者は、高校生活上の問題、それから学力の問題を理由にやめていった、そういう大きなギャップがあるのではないかというふうに思います。  したがいまして、高校中退の実態を的確に把握し、A調査やそれから年度調査と、B、Cの二つの調査の間の違いについて合理的に解明されることがこの平成年度の調査では大事ではないか、こう思っておるわけでございます。  さて、平成年度の総合調査、これが妥当なものであるかどうか、先ほど述べました観点からして十分なものであるかどうかというふうなことになるわけでございますが、実はまだでき上がっておりませんで、調査票だけをとりあえず私見せていただきました。九月に集計ができ上がってくる、こういうことでございますが、調査の内容だけは既にこのようにでき上がっております。  私は、平成年度の調査と今回の調査の質問項目について、ほとんど同じなのですが、新旧の対照表を作成して分析をしてみました。その結果、A調査は同じ内容でございます。B調査、いわゆる中退者に対して郵送して聞く調査でございますが、これが若干改善をされていると思います。しかし実態を十分に把握するにはほど遠いかな、こう思うわけでございます。  どういう内容かといいますと、今回のB調査で改善された点は二つございます。  一つは、平成年度の調査では中学時代の部活だとか親しい友人だとかいう設問がありましたが、それを省きまして、「高校を決めるときに高校の特色を参考にしたか」、こういう設問を入れてあります。これは大臣も先ほど言われましたように、本当に高校の特色というものを理解しているかどうかの大変重要な質問だと思います。これが入っております。  二つ目は、中退するに当たって「先生がどのような指導や相談をしたか」、これが新しく挿入されております。中退のときの具体的な指導を問うわけでございますが、相談をしたか、また役に立ったかということを問うもので、現場の先生がどう取り組んだかを問うものでございます。  しかし、B調査の不十分な点はやはりあると思います。平成年度のB調査で最大の中退の理由となった「高校生活があわなかったから」、こういう理由に対して、高校生活上大きなウエートを占めている人間関係。ある人は、学校というのは先生と生徒しかいないんだ、先生という大人と生徒という子供、この二つで成り立っているのだ、こうおっしゃっている方もおられるくらいで、人間関係というのは大変重要でございます。順調に子供たちが成長していくのも人間関係、またそこからドロップアウトしていくのもいわば人間関係に負うところがかなり多いわけでございます。特に、先生とのうまくいかない関係、これを浮き彫りにする設問、それからいじめとの関連を問う設問、間接的には、学校に行くと頭が痛くなるとか、こういう設問があるのですが、どうもわかりにくい設問でございました、こういうことの設問がないわけでございます。もちろん先生は非常に大事な役割を果たしているのですけれども、平成年度の調査で出ております、「高校をやめようと考えたとき、おもに誰と相談したか」という設問があるのですけれども、「高校の先生」というふうに答えた回答、これは本当にがっかりするのですけれども、五・七%でございます。ほとんどが家族並びに友人、先輩、この人たちと相談をしてやめているという実態がございます。  ある研究者、実際に中退をした大勢の生徒と面接をしながら中退理由の解明をしている先生がいらっしゃるのですけれども、この調査をとってみますと、「学校生活学業不適応」、こういうふうに分類されていた中退の理由を具体的に聞いていきますと、先生とうまくいかなかった、こういうことがかなりのパーセントで、強い意思でもって訴えかけてくるということを指摘しておるわけでございます。  また、その研究者はさらに、中退の理由というのは一見さまざまのように見えるけれども、それぞれの理由がある。その理由の中に、勉強がわからない、こういう学力問題が共通して内在をしている。アンケートの中には出てこない側面もありますけれども、結局は勉強についていけない、こういう指摘をしている先生もおられます。  また、不十分だと思われる二点目は、中退の状況経過を示す追跡調査ができていないということをもう一つつけ加えておきたいと思います。平成元年の調査をいたしました、平成六年の調査をいたしました。いずれも中退して二年後ぐらいの生徒に対して調査をしているのですけれども、子供たちも中退したその日から、心の持ちょっというか、中退したことに対する考え、将来に対する考えが日々刻々と変わっております。そのことをやはり時系列的に、このころはどうだったか、一週間後はどうだったか、一カ月後、半年後、もう二年たった今はどうなったかという時系列的にぜひとも中退生を追いかけていただきたいというのが趣旨でございます。  これも研究でございますが、一年半ぐらいまでに中退に対する大変大きなピークがある、それを過ぎると子供たちの葛藤もおさまるというふうなことが出ておりますが、その点についてもぜひとも、まだおやりになっていないのでしたら、C調査、面接調査でカバーをしていただければというふうに思います。  以上の問題点を踏まえて、中退者の実態を的確に浮かび上がらせるために、今回の調査結果をまとめるに当たって努力していただきたいことについて、もう一つ提案をさせていただきます。  それぞれ三つの調査の概要を並列的に記述しないように努力をしていただきたいと思います。そのためには、面接を通して行われるC調査、さまざまな調査研究を十分に活用して、今回行われた一二つのA、B、C調査及び文部省の十数年にわたって行っております年度調査の間に多角的、複眼的な分析と整合性のある結果が浮かび上がるように取りまとめていただきたいということでございます。  この点につきまして、局長から御感想なりこの調査に対するお考えなりをお聞きできればと思います。
  220. 遠山耕平

    ○遠山政府委員 高校生の中退調査につきまして、いろいろ先生の方から改善された点、それから不十分な点等の御指摘がありましたが、不十分な点につきましては、今後それを参考にしまして修正させていただきたいと思います。  それで中退でございますが、これに至る理由には非常に複雑な要因が絡んでおりますために、これが中退の原因ですということを一つに特定することは非常に難しい場合が多いわけでございます。複合している場合が多いということが、先生の方から見た場合とそれから本人に聞いた場合と若干食い違っているということの一番大きな理由にあるのではないかというぐあいに思います。本人にとっても、そういう複雑な理由で中退をしているものですから、そのときの気分によって動いてくるということもあろうかと思います。  それから、A調査、B調査、C調査で中身が随分違うということ、それが学校からの見方と本人からの見方の違いじゃないかというお話ですが、それもあると思いますけれども、それだけではなくて、やはり調査した数、A調査では全部で五千九百六十三、Bでは千八百六十、Cではたったの百五十ですから、百五十人を分類してAとBと違うじゃないかというのは、ちょっとこれは難しいんじゃないかと思います。やはり傾向を見る場合にはある程度大きな数字で調査をして、これが何%、これが何%というような形でやらないと傾向を見ることはできないんじゃないかと思います。  C調査は、傾向を見るというよりは、実際にその中退した生徒の実情を具体的に知りたいということで調査をしているわけでございますので、そういう点で、傾向を見るのだったらやり方自体を変える必要があるのではないかという感じがしております。
  221. 西博義

    ○西分科員 もう時間がございませんが、A、Bまではかなりの数がございますので、そこら辺はかなり信用していいのではないかと私は思っております。  最後に、先ほど奥田文部大臣がおっしゃられましたように、生徒の方にもいろいろな思い違いがあって中退という現象が起こってくるわけでございますが、中学校時代における進路指導の問題、さらに、中退をした後に高等学校並びに社会がその子供たちをどう受け入れ、それからその将来について方向を示してやれるかという問題は、大変大きな問題だというふうに思います。  平成五年八月の「文部時報」、いただいたものの中に、これは東京都の教育委員会の報告でございますが、「結局、進路指導が進学指導に追われてしまい、生き方を考えるといった一歩踏み込んだ指導にまで至らない傾向が見られた。」大変言い得て立派な結論をお出しいただいたと思うのですが、どうか先生方、自信を持って、やはり教育というのはどこまでも人間が人間を育てていくわけでございますから、この点について十分留意をされた上で、一人一人立派な子供に育てていただけるように、文部省としても御努力をお願い申し上げまして、本日の質問にさせていただきます。  大臣、最後に、済みません、恐れ入ります。
  222. 奥田幹生

    ○奥田国務大臣 いろいろ分析をされまして、御意見を聞かせていただきました。  確かに、中学時代の進路の指導が十分でないとするならば、やはり指導に当たられる先生方、もう一度胸に手を当ててということを申し上げましたが、ただ、以前にはやっていなかったことを中学校でやってもらっている。例えば、進学したい学校に生徒をわざわざ連れていって、この学校はこういうような特色があるのですよというようなことを丁寧に現場まで連れていって説明をしていただいておる。そういう中学がこのごろは非常にふえてきた。  そこまで丹念に、念には念を入れてやっていただいておるのに、今先生がおっしゃるように四三%にまでなっておるというのは、実際入学してみたけれどもやはり私は合わないとか、学校に、学校がと、先ほど「に」か「が」かというふうにおっしゃいましたが、それは、もう少し辛抱して耐えてくれたら楽しい高校生活が送れたのになと後で親も先生も後悔するような、そういう生徒が割合短期でやめていったというのもあるのではなかろうかなと私は思うわけです。  そういう点はやはり、小学校、中学校時代から十分、さらに辛抱せいということをテーマに教育する必要はないのかもわかりませんけれども、何がしかのそういうたぐいの、マラソンをやるとか、私が中学校の教員をやっていまして、週に一回月曜日は必ず、私についてこいと言ってマラソンをやっておった。それは、体づくりだけでなくて強い精神づくりも目標に置いてやっておったわけですが、そういうようなことも必要なんではなかろうかなという感じも受けております。より十分注意をして、打ち合わせをして進めていきたいと思います。
  223. 西博義

    ○西分科員 どうもありがとうございました。
  224. 前田武志

    前田主査 これにて西博義君の質疑は終了いたしました。  次に、濱田健一君。
  225. 濱田健一

    濱田(健)分科員 社民党の濱田健一でございます。  委員長も大臣も朝から長時間、本当に御苦労さまでございます。最後の質問者になりましたので、あと三十分ぐらいおつき合いをいただきたいというふうに思います。  私の生活しております鹿児島は三年前、一九九三年の七月から八月にかけまして集中豪雨、台風被害、長雨、これらで大きな被害を受けたわけなんですが、それが原因というわけではないのですけれども、鹿児島の皆さん方は、やはり行政のやる仕事、それに不信感といいますか、ちょっと問題があるなということを思っていらっしゃる現状がございます。  例えば、五つの石橋が、二つはそのときの洪水で流れてしまったのですけれども、残された三つの石橋も最後の西田橋がついこの間全部壊されてしまいました。これは、いわゆる治水と県の重要文化財をどう両立させながらやっていくかということで、県民的な大きな話題を醸し出したわけでございます。決して県の教育委員会や文化財保護審議会が移設することに賛成していらっしゃったわけじゃないのですけれども、やはり石橋自体が悪い、石橋があるから洪水が起きるんだなんというような感じで取り払われてしまいました。  文化庁の皆さん方も、お口には出されないですけれども残念な思いをされているのではないかなというふうに思うのでございます。  今回、もう三年ぐらい前から懸案になっておりました奄美のクロウサギの件につきまして、さまざまな調査といいますか、環境庁の調査と開発をされようとしています事業者の調査が二つ行われているわけなんですが、そのことについて的確な調査がなされたのかどうか、ちょっと問題があるなということできようは質問をさせていただきたいというふうに思います。  御案内のとおりに、奄美の住用村というところにゴルフ場の建設が予定をされております。この予定地には、世界自然保護機構が出しているレッドデータブック、これに三十年ぐらい前から絶滅指標の最も高いランクに位置づけられておりますアマミノクロウサギ、特別天然記念物でございますが、それが記されているということは、ここにいらっしゃる文部省の関係者の皆さん十分御存じのことだというふうに思います。  そこでお尋ねなんですが、いわゆる文化財保護法第八十条には「史跡名勝天然記念物に関しその現状を変更し、又はその保存に影響を及ぼす行為をしようとするときは、文化庁長官の許可を受けなければならない。」という条文がございます。これは開発による現状変更ということになるのじゃないかと私は思いますので、文化庁の方に、許可申請をされる事例になるのかどうか、そのことをまずお尋ねいたします。
  226. 小野元之

    ○小野(元)政府委員 お話のございましたアマミノクロウサギの件でございますけれども、文化財保護法第八十条によりますと、天然記念物の現状を変更する、これが一点でございます。もう一つは、その保存に影響を及ぼす行為をしようとする、この二つの場合でございますけれども、このときには文化庁長官の許可を受けなければならないという規定があるわけでございます。ただし、二番目の保存に影響を及ぼす行為でございますけれども、これは、影響が軽微であるという場合には許可を要しないというふうに定められているところでございます。  したがいまして、お話ございましたアマミノクロウサギの件につきましては、これは保存に影響を及ぼす行為というふうに私どもは理解をしているところでございます。
  227. 濱田健一

    濱田(健)分科員 ということは、文化庁長官に許可を受けるという行為が既になされているというふうに理解していいわけですね。
  228. 小野元之

    ○小野(元)政府委員 今、実は鹿児島県の方から私どもの方に問い合わせが来ているわけでございます。この問い合わせば、影響が軽微である場合には許可を要しないということになっておるわけでございますけれども、今回のゴルフ場の開発計画、こういったものが影響が軽微である場合に該当するかどうかということについての照会がなされているわけでございまして、許可申請がなされているわけではございません。
  229. 濱田健一

    濱田(健)分科員 許可申請はなされてないけれども、県の教育委員会の方から文化庁に、この調査に基づく状況が影響の軽微である場合かどうかという判断はしてほしい、そういうふうに照会が来ているということなんですね。
  230. 小野元之

    ○小野(元)政府委員 今回、鹿児島県教育委員会から私ども文化庁に対して来ておりますのは、奄美大島で計画されておりますゴルフ場の開発事業、これにつきまして、事業者が特別天然記念物でございますアマミノクロウサギ等について適切な保護のための措置を講じるということをしておるわけでございますので、県としては文化庁長官の許可を要する場合に該当しないというふうに判断しておりますけれども、こういうふうに考えていいでしょうかという意味での照会がなされているところでございます。
  231. 濱田健一

    濱田(健)分科員 保存に影響を及ぼす行為については、影響の軽微である場合は許可を受けなくていい、そういう判断を県の教育委員会はやっているようですね。その根拠というのはどういうふうに聞いておられますか。
  232. 小野元之

    ○小野(元)政府委員 お話ございました県教委としては、与える影響が非常に軽微であるというふうに考えるという判断をしているわけでございます。県教委が軽微であるというふうに判断している理由でございますけれども、これにつきましては、開発事業者からゴルフ場開発について申請があるわけでございますけれども、開発事業者の依頼によります、財団法人でございます鹿児島県環境技術協会がいろいろな調査をしております、その調査結果に基づくものが一つございます。それからもう一つは、環境庁によります調査結果、こういったもの。環境庁におかれましてもさまざまな調査をなさっておられますので、事業者が行っております調査結果と環境庁による調査結果、この二つを踏まえまして、県の教育委員会としては県の文化財保護審議会に意見を聞いたわけでございます。  その意見を踏まえまして、事業者がその地域におきましてアマミノクロウサギ等の天然記念物としての保護のために必要な措置を講じるということをしているということであるので、県としては文化財保護法八十条の許可を要する場合に該当しない、すなわち影響は軽微の範囲にとどまるというふうに判断するということで、県としてはそういうふうに判断しているのだけれども、文化庁へそれでよろしいですかという趣旨の照会がなされておるわけでございます。
  233. 濱田健一

    濱田(健)分科員 それはそれでいいとしまして、二十九日の朝日はごらんになったと思うのですが、業者も環境庁も、それは決して手抜きをされたわけじゃないとは思うのですけれども、一生懸命調査をされた。ところが、アマミノクロウサギが実際に繁殖をする、生息をするということについて、例えばゴルフ場の予定敷地内ないしその周辺、全体でもいいと思うのですが、その中で巣穴の調査だけはやらなかった。ということは、実際に生息しているかどうかという事実確認の最たるものをやってないということが新聞に出ておりました。  ところが、ことしの三月、鹿児島県は県の文化財保護審議会に、巣穴の存在については調査ルート上において発見されなかった、調査ルート以外の場所でも巣穴の存在は極めて低いというような資料を審議会に配付をして、その判断を仰いだというふうに聞こえてきておりますが、この辺の事実はどうなんでしょうか。
  234. 小野元之

    ○小野(元)政府委員 このゴルフ場の開発予定地でございますけれども、奄美大島の一番端っこといいますか、真ん中ではございますが海に面した端っこの部分でございます。そういったことがございますとともに、お話ございました財団法人の環境技術協会、これは業者の委嘱を受けて財団法人が調べたものでございますけれども、この調査につきましては、当該地域についてアマミノクロウサギが比較的高い密度で生息はしておるわけでございまして、ふんが見つかるというようなことはあるし、それから幾つかの個体の生息も推定されるということであったわけでございます。この計画地の中を、私どもが知っております範囲では十数ルートの調査を行ったということでございます。ただ、この調査ルートとその隣接地におきましては巣穴及び繁殖の穴は確認されなかったというふうにこの報告では出ておるわけでございます。  そういったことを踏まえまして、環境庁の調査結果も踏まえまして、県といたしましては審議会に対して、県教委が事務局でございますから、事務局の立場で審議会に説明をされたというふうに私どもは理解をいたしております。その結果、審議会としても、影響が軽微の範囲にとどまるという判断を県としてはなさったというふうに理解をしておるところでございます。
  235. 濱田健一

    濱田(健)分科員 今の調査ルートというのは業者のやった調査の部分ですね。環境庁のやられた調査の中では全くなされてないのじゃないかな。それはどうなんでしょうか。
  236. 小野元之

    ○小野(元)政府委員 環境庁のなさった調査は、計画地の中においては調査をなされていないということでございます。これは、開発業者の理解が得られなかったということで、そこはできなかったというふうに伺っております。
  237. 濱田健一

    濱田(健)分科員 会社側の調査の中でも、例えば、建設予定地周辺はクロウサギの生息密度は相対的に高いという指摘やゴルフ場の計画地内に生息するクロウサギの個体群が移動先でうまく定着することは困難だというような結論といいますか、評価を出している部分もあると思うのですね。  それで、私は、絶滅種、非常に貴重なこの種のものを、ある業者がある特定した場所だけ開発するのだから、もしそこで生き延びられなくてもある程度奄美大島という中では生きていることができる、これは種の絶滅にはつながらないと思うのですけれども、そういう考え方もできるとは思うのだけれども、もう少し慎重な調査というものを、やっていないという部分もあるわけですから、やったらどうですかというような指導をされるおつもりはございませんか。
  238. 小野元之

    ○小野(元)政府委員 私どもといたしましては、先ほどお話し申し上げましたように、県の方からの照会が来ておるわけでございます。それを受けまして、国の文化財保護審議会に対しまして、専門的な先生方に意見をお聞きをしているところでございます。実はその段階におきまして、私どもといたしましては、県からいただいておるものあるいは環境庁の調査、この業者の方の調査、それぞれの詳しい資料を審議会の先生方に差し上げまして、今、審議会において慎重な検討をいただいておるところでございます。  お話がございましたように、県に対して指導をすべきではないかということでございますけれども、私どもといたしましても、県が具体的にこのような照会文書を出される段階でどのような状況のもとにおきましてそういう御判断をなさったのか、それから、文化庁といたしまして軽微であるかどうかという判断を最終的にしなければいけないわけでございますので、県の考え方あるいは県の結論に至るまでの過程、そういったもの等については県教委の方に文化庁に来ていただきまして、いろいろ詳しくお話を聞かせていただきたいと考えておるところでございます。
  239. 濱田健一

    濱田(健)分科員 今から、県の皆さんを含めて来ていただいて、お話をお聞きになるということなんですね。
  240. 小野元之

    ○小野(元)政府委員 もちろん今までもそういうお話を聞いてはおるわけでございますけれども、さらに詳しく私どもとしても今後聞いてみたいというふうに考えております。
  241. 濱田健一

    濱田(健)分科員 文化財保護法の九十九条の一項には「文化庁長官は、必要があると認めるときは、次に掲げる文化庁長官の権限の一部を都道府県の教育委員会に委任することができる。」第二号に「第四十三条又は第八十条の規定による現状変更又は保存に影響を及ぼす行為の許可及びその取消し並びにその停止命令」というのがありますが、これは、今の私が質問しているこの件について委任をされる状況というか、そういうおつもりがありますか。
  242. 小野元之

    ○小野(元)政府委員 この許可の権限は、御指摘ございましたように、都道府県に委任することは可能でございます。ただ、具体的には保存に影響を及ぼす行為に係ります許可の権限は委任をいたしておりません。したがいまして、これについては、保存に影響を及ぼす行為についての許可の権限は長官の権限でございます。
  243. 濱田健一

    濱田(健)分科員 ありがとうございました。  つまり、この件については、文化庁としては非常に強い関心を持っていただいているということがわかりました。そして、これからどのような指導といいますか、県の教育委員当局を含めて指導をされるのかわかりませんけれども、それについては、文化財保護審議会の意向を踏まえていくということになられるだろうというふうに思います。  ただ、先ほど申し上げましたように、調査の中身というのがもっと詳しい、業者の敷地内、私有地ですから勝手に入ることはなかなか難しいとは思うのですけれども、やはり奄美と徳之島しかいない世界的に大事な種をしっかり守っていくのだということを業者の皆さん方にも御理解いただいて、調査だけはさせてもらうというような丁寧な依頼とか、そういうものが必要じゃないのかなと思うのですよ。ですから、その辺もぜひ文化庁の皆さん方の御努力を待ちたいなと思っているところでございます。  文化財保護審議会の答申というか意向を受けて文化庁が最終的に判断をされようと思っていらっしゃる時期は、新聞によると六月ごろというふうに出ているのですが、めどがございますか。
  244. 小野元之

    ○小野(元)政府委員 この点につきましては、鹿児島県から文書をいただいておるわけでございまして、これに対して、文化庁としてもそういう照会がございますから答えなければいけない立場にあるわけでございます。そういう意味では、ある程度速やかに回答をするという必要があるわけでございますけれども、私どもといたしましても、さまざまな議論もなされておるわけでございまして、そういった資料も審議会の先生方に差し上げてございまして、審議会の中で慎重な審議を行っていただいているわけでございます。  鹿児島県教委の方が本件について軽微なものだということをおっしゃっている中には、具体的に事業者の方がこういった特別天然記念物の保護に特段の配慮をする、例えば、計画どおりの森林の伐採をするとか、あるいは在来種を中心とする植栽を行っていく、それから工事の進行についても十分生息に支障がない造成工事を行っていく、あるいは土砂の流出の防止も行っていく、あるいは可能な限り草や草本類を残して定期的な草刈り等も実施をしていく、あるいは適正なごみ処理をして野良猫や野犬等の増加を防止をしていく、それから工事関係者に対しても綿密な指導、助言等を行っていく等々、非常に多くの条件を鹿児島県としてもつけておられるわけでございます。  そういった上で、最終的にこういったものを踏まえながら文化庁としてどういう判断をするかということでございますが、私どもとしては、特別天然記念物は重要なものでございますので、慎重な判断を審議会にお願いしているわけでございまして、現時点におきましていつごろ結論が出るということは直ちに申し上げられる状態にないわけでございますけれども、審議会に十分な資料を差し上げて、専門家の方々の御意見を十分お聞きした上で、私どもとしても結論を出したいと考えているところでございます。
  245. 濱田健一

    濱田(健)分科員 今度ゴルフ場をつくられようとしている業者の方は、鹿児島でも経済界をリードされる方でございまして、本当にいろいろな面で鹿児島発展のために御努力くださる方でございます。大隅半島の一番先に佐多岬というのがあると思うのですが、あそこもこの業者さんが、何年前になるのでしょうね、もう既に二十五年か三十年ぐらい前に、お猿さんのえづけをして、自然動物公園みたいなものをつくられようということで開発をされたわけですが、えづけに失敗されて、お猿さんたちがふもとにおりてきて、今は、夏場になるとスイカとかいろいろなものを勝手に食べまして、頭がいいのですね、くりぬいて食べたものを、しっかり、くりぬいたところを土の上に乗せて、表面からは中が食べられているかどうかわからないようにしている、そういう状況もあるのですね。  放棄をされているわけではないのですが、やはり自然に対する取り扱い、丁寧さというものを、過去の事例から、今度の開発についてもしっかり持っていただいているのかどうかということについて、私はちょっと疑念があるものですから、今次長がおっしゃった部分については、私有地ですけれども、いろいろなパイプを使ってしっかりと御指導をいただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。  この件についてはこれで終わります。  あと一件、厚生省の方、来ていらっしゃいますか。文部省分科会ですけれども、一点だけお願いをしたいと思います。  昭和六十二年から始められておりますシルバーハウジング・プロジェクト、住宅に支障を来していらっしゃるお年寄りの皆さん方に、いわゆる高齢者福祉の観点から住宅と福祉のソフト等を一緒にミックスした事業だということで、特に私の田舎の鹿児島では、子供たちが都会に出てしまって夫婦二人だとかお一人で暮らしていらっしゃる方がいっぱいいらっしゃいます。評価は非常に高い、すばらしい事業だと私も考えているところでございます。  一つだけお考え願いたいという要望を含めて御質問しているわけですが、入居申し込みの資格が六十歳以上の高齢者、お一人でも結構ですし、御夫婦でもいい、他人同士の仲間でもいいということになっているのです。  こういうお年寄りが、例えば私の知っている事例では、四十八歳の知的障害を持っている子供さん、娘さんなのですが、その人が一緒に生活をしているがゆえにこの垂オ込みができない、対象にならないということでカットされてしまった。この辺は、娘一人で生活させるわけにはいかないからどうにかバイパスはないのか、代議士の力でどうにかならぬかと言ってきますので、これは制度ですから今のところどうしようもないですね、いろいろ御相談申し上げましたけれどもどうしようもないですねというのがあります。  娘さん夫婦が交通事故で亡くなってしまって、小学生と幼稚園のお孫さんを二人預かっているおじいちゃんとおばあちゃんが申し込んだら、やはり、子供が二人いるじゃないですか、ちょっとこの対象にはならない、制度上無理だというふうに言われたということなんですね。  ですから、今ある制度そのものは先ほど申し上げましたように非常にいいものです、しかし、社会的に考えて、そのお年寄りに付随する同居者で、どう見ても今のところ一緒に生活をしなければ生きていけないという今申し上げましたような事例の皆さん方がいらっしゃるときに、何とかなるような制度として改正ができないものかどうか。  建設省とお話をしたときには、濱田さんがおっしゃるその件については、いろいろな事例を私たちも知っているということで前向きに考えてもらえるようなお話があったのですけれども、一緒になって仕事をされておられます厚生省の皆さん方にも、この件について展望がありましたら教えていただきたいと思います。
  246. 吉冨宣夫

    ○吉冨説明員 ただいま先生から御指摘がございましたように、シルバーハウジングの入居対象者は、高齢者あるいは夫婦のうちの一方が高齢者という場合に現行制度上は限定されてございます。ただ、先生から御紹介がございましたように、高齢者の方が障害を持つお子さんと同居していらっしゃる、あるいはお孫さんと同居していらっしゃる、こういったケースもあるわけでございまして、こういったケースにつきましては、先生ただいま御指摘をいただきました趣旨も踏まえまして、建設省とも協議の上、今後適切に対応してまいりたいと考えております。
  247. 濱田健一

    濱田(健)分科員 前向きな御答弁、本当にありがとうございました。  教育も福祉も、今も文部省厚生省必死で頑張っていただいているわけですが、これから先も、量から質、生活の質という時代に、これは何年も前から言われているのですが、そういうふうになってくる時代の中で、本当に頑張ってもらわなければならない中心的なお役所ですので、これからもぜひ、今の文化面、文化財保護法改正案があした審議がなされます、そういうことも含めまして頑張っていただきたいと思います。  ちょうど時間が参りましたので、大臣から一言、その文化財のことについてございましたら……。
  248. 奥田幹生

    ○奥田国務大臣 先ほど小野次長が御答弁申し上げたとおり、もう一度鹿児島県教委からつぶさに事情を聴取して、それを保護審議会に上げて客観的な御判断を仰ぐ、それを踏まえて文化庁長官が判断をする、こういうことでございますから、公正な判断が期待できると私も思っております。御趣旨に沿って判断してくれるものと思っております。
  249. 前田武志

    前田主査 これにて濱田健一君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして文部省所管の質疑は終了いたしました。  次回は、明三十一日午前十時から本分科会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時三十六分散会