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1996-05-30 第136回国会 衆議院 決算委員会第三分科会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    分科会平成八年五月二十四日(金曜日)委員 会において、設置することに決した。 五月二十九日  本分科員委員長指名で、次のとおり選任さ  れた。       佐藤 静雄君    三塚  博君       横内 正明君    西  博義君       若松 謙維君    三原 朝彦君 五月二十九日  佐藤静雄君が委員長指名で、主査選任され  た。 ————————————————————— 平成八年五月三十日(木曜日)     午前十時開議  出席分科員    主 査 佐藤 静雄君       小野 晋也君    熊代 昭彦君       三塚  博君    山本 公一君       横内 正明君    笹木 竜三君       西  博義君    初村謙一郎君       若松 謙維君    三原 朝彦君    兼務 佐藤 剛男君 兼務 根本  匠君    兼務 上田  勇君 兼務 矢上 雅義君    兼務 吉田  治君 兼務 竹内  猛君  出席国務大臣         農林水産大臣  大原 一三君         通商産業大臣  塚原 俊平君         国 務 大 臣         (科学技術庁長 中川 秀直君         官)  出席政府委員         科学技術庁長官         官房長     工藤 尚武君         農林水産政務次         官       小平 忠正君         農林水産大臣官         房長      高木 勇樹君         農林水産大臣官         房総務審議官  本田 浩次君         農林水産省構造         改善局長    野中 和雄君         農林水産省農産         園芸局長    高木  賢君         農林水産省畜産         局長      熊澤 英昭君         農林水産省食品         流通局長    中須 勇雄君         食糧庁長官   高橋 政行君         林野庁長官   入澤  肇君         水産庁長官   東  久雄君         通商産業大臣官         房審議官    横川  浩君         通商産業省貿易         局長      広瀬 勝貞君         通商産業省生活         産業局長    中野 正孝君         工業技術院長  平石 次郎君         資源エネルギー         庁長官     江崎  格君         資源エネルギー         庁公益事業部長 太田信一郎君         中小企業庁長官 新  欣樹君  分科員外出席者         科学技術庁長官         官房会計課長  今村  努君         環境庁水質保全         局水質管理課長 南川 秀樹君         大蔵省主計局司         計課長     田頭 基典君         厚生省生活衛生         局食品保健課長 堺  宣道君         労働省職業安定         局地域雇用対策         課農山雇用対         策室長     及川  桂君         建設大臣官房地         方厚生課長   小澤 敬市君         建設省河川局開         発課長     竹村公太郎君         会計検査院事務         総長官房審議官 小川 光吉君         会計検査院事務         総局第四局長  五十嵐清人君         会計検査院事務         総局第五局長  平岡 哲也君         農林漁業金融公         庫総裁     鶴岡 俊彦君         中小企業金融公         庫総裁     角谷 正彦君         中小企業信用保         険公庫総裁   大永 勇作君         決算委員会調査         室長      天野  進君     ————————————— 分科員の異動 五月三十日  辞任         補欠選任   三塚  博君     熊代 昭彦君   横内 正明君     小野 晋也君   西  博義君     初村謙一郎君   若松 謙維君     永井 英慈君 同日  辞任         補欠選任   小野 晋也君     横内 正明君   熊代 昭彦君     山本 公一君   永井 英慈君     若松 謙維君   初村謙一郎君     渡辺浩一郎君 同日  辞任         補欠選任   山本 公一君     三塚  博君   渡辺浩一郎君     上田 清司君 同日  辞任         補欠選任   上田 清司君     笹木 竜三君 同日  辞任         補欠選任   笹木 竜三君     西  博義君 同日  第二分科員佐藤剛男君、根本匠君、吉田治君、  竹内猛君、第四分科員上田勇君及び矢上雅義君  が本分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  平成年度一般会計歳入歳出決算  平成年度特別会計歳入歳出決算  平成年度国税収納金整理資金受払計算書  平成年度政府関係機関決算書  平成年度国有財産増減及び現在額総計算書  平成年度国有財産無償貸付状況計算書  平成年度一般会計歳入歳出決算  平成年度特別会計歳入歳出決算  平成年度国税収納金整理資金受払計算書  平成年度政府関係機関決算書  平成年度国有財産増減及び現在額総計算書  平成年度国有財産無償貸付状況計算書  〔総理府科学技術庁)、農林水産省所管、農  林  漁業金融公庫通商産業省所管中小企業金融  公庫及び中小企業信用保険公庫〕      ————◇—————
  2. 佐藤静雄

    佐藤主査 これより決算委員会第三分科会を開会いたします。  私が本分科会主査を務めることになりました。よろしくお願いいたします。  本分科会は、総理府(警察庁、経済企画庁、科学技術庁)、農林水産省所管農林漁業金融公庫通商産業省所管中小企業金融公庫中小企業信用保険公庫自治省所管及び公営企業金融公庫についての審査を行うことになっております。  なお、各省庁の審査に当たっては、その冒頭に、決算概要説明会計検査院検査概要説明及び会計検査院指摘に基づき講じた措置についての説明を聴取することといたします。  平成年度決算外二件及び平成年度決算外二件中、本日は、総理府科学技術庁所管農林水産省所管農林漁業金融公庫通商産業省所管中小企業金融公庫及び中小企業信用保険公庫について審査を行います。  これより科学技術庁所管について審査を行います。  まず、概要説明を聴取いたします。中川科学技術庁長官
  3. 中川秀直

    中川国務大臣 科学技術庁平成年度決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  まず、一般会計歳出決算について申し上げます。  平成年度の当初歳出予算額は四千百十八億六千五百五十九万円余でありましたが、これに予算補正追加額百八十二億五千二百二十一万円余、予算補正修正減少額八十一億七千九十三万円余、予算移しかえ増加額四千九百四十八万円余、予算移しかえ減少額七十四億四千六百七十九万円余、前年度からの繰越額三億三千五百八十七万円余を増減いたしますと、平成年度歳出予算現額は四千百四十八億八千五百四十二万円余となります。この予算現額に対し、支出済み歳出額四千百二十八億五千六百六十八万円余、翌年度への繰越額七億七千四百九十四万円余、不用額十二億五千三百八十万円余となっております。  次に、電源開発促進対策特別会計のうち、科学技術庁所掌分歳出決算について申し上げます。  まず、電源立地勘定につきましては、平成年度歳出予算現額は三百五十四億三千七百二十八万円余であります。この予算現額に対し、支出済み歳出額二百四十一億六千四十三万円余、翌年度への繰越額四十二億七千六十四万円余、不用額七十億六百十九万円余となっております。  次に、電源多様化勘定につきましては、平成年度歳出予算現額は一千百億五千七百五十一万円余であります。この予算現額に対し、支出済み歳出額一千六十二億八千百五十四万円余、翌年度への繰越額三十五億七千二十二万円余、不用額二億五百七十四万円余となっております。  以上、簡単でありますが、平成年度決算概要を御説明申し上げました。  よろしく御審議のほどお願い申し上げます。  次に、科学技術庁平成年度決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  まず、一般会計歳出決算について申し上げます。  平成年度の当初歳出予算額は四千三百七十五億七千四百八十八万円余でありましたが、これに予算補正追加額九百二億五千八百五十五万円余、予算補正修正減少額百五十五億四千七百八十三万円余、予算移しかえ増加額三千九百八十四万円余、予算移しかえ減少額八十六億二千三百八十六万円余、前年度からの繰越額七億七千四百九十四万円余を増減いたしますと、平成年度歳出予算現額は五千四十四億七千六百五十三万円余となります。この予算現額に対し、支出済み歳出額四千九百五十七億四千四百十八万円余、翌年度への繰越額八十億七千五百十八万円余、不用額六億五千七百十五万円余となっております。  次に、電源開発促進対策特別会計のうち、科学技術庁所掌分歳出決算について申し上げます。  まず、電源立地勘定につきましては、平成年度歳出予算現額は三百八十億二千二百四十万円余であります。この予算現額に対し、支出済み歳出額二百五十二億七千六百五十二万円余、翌年度への繰越額六十一億九千百三十七万円余、不用額六十五億五千四百五十一万円余となっております。  次に、電源多様化勘定につきましては、平成年度歳出予算現額は一千百億二千十四万円余であります。この予算現額に対し、支出済み歳出額一千三十五億六千九十一万円余、翌年度への繰越額三十三億一千六百万円余、不用額三十一億四千三百二十一万円余となっております。  以上、簡単でありますが、平成年度決算概要を御説明申し上げました。  よろしく御審議のほどお願い申し上げます。
  4. 佐藤静雄

    佐藤主査 次に、会計検査院検査概要説明を聴取いたします。会計検査院平岡第五局長
  5. 平岡哲也

    平岡会計検査院説明員 平成年度科学技術庁決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、本院の指摘に基づき当局において改善処置を講じた事項一件であります。  これは、病院看護に係る診療報酬請求に関するものであります。  放射線医学総合研究所が設置する病院におきまして、特二類看護料請求できる看護を行っていたと認められるにもかかわらず、特二類看護承認を得ていなかったため、これより低額な特一類看護料しか請求していませんでした。これについて指摘したところ、改善処置がとられたものであります。  以上、簡単でございますが、説明を終わります。  次に、平成年度科学技術庁決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
  6. 佐藤静雄

    佐藤主査 ただいまの会計検査院指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。中川科学技術庁長官
  7. 中川秀直

    中川国務大臣 平成年度決算科学技術庁について会計検査院から御指摘いただきました件について申し上げます。  平成年度決算検査報告において掲記されております処置済み事項につきましては、会計検査院の御指摘に基づき、平成五年八月に千葉県知事に対し特二類看護に係る承認申請を行い、同年十月に承認を受け、基準看護料看護実態に適合した適正な診療報酬請求となるよう処置を講じたところであります。  今後このようなことのないよう、より一層指導監督を行い、周知徹底を図る所存でございます。
  8. 佐藤静雄

    佐藤主査 この際、お諮りいたします。  お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 佐藤静雄

    佐藤主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————    平成年度科学技術庁決算に関する概要説    明                科学技術庁科学技術庁平成年度決算につきまして、その概要をご説明申し上げます。  まず、一般会計歳出決算について申し上げます。  平成年度の当初歳出予算額は、四千百十八億六千五百五十九万円余でありましたが、これに予算補正追加額百八十二億五千二百二十一万円余、予算補正修正減少額八十一億七千九十三万円余、予算移替増加額四千九百四十八万円余、予算移替減少額七十四億四千六百七十九万円余、前年度からの繰越額三億三千五百八十七万円余を増減いたしますと、平成年度歳出予算現額は、四千百四十八億八千五百四十二万円余となります。この予算現額に対し支出済歳出額四千百二十八億五千六百六十八万円余、翌年度への繰越額七億七千四百九十四万円余、不用額十二億五千三百八十万円余となっております。  次に、支出済歳出額の主なる費途につきまして、その大略をご説明申し上げます。  第一に、原子力関係経費といたしまして一千八百四億一千七百四十五万円余を支出いたしました。これは、日本原子力研究所における原子力施設工学的安全研究核融合研究高温工学試験研究原子力船研究開発等原子力関連試験研究及び各種原子炉運転動力炉・核燃料開発事業団における高速増殖炉開発使用済核燃料の再処理技術開発ウラン資源探鉱ウラン濃縮技術開発等のほか、放射線医学総合研究所における放射線による障害防止及び放射線医学的利用に関する調査研究原子力安全行政強化等原子力平和利用促進を図るために支出したものであります。  第二に、宇宙開発関係経費といたしまして一千四百六十五億五千四百七十万円余を支出いたしました。これは、宇宙開発事業団における人工衛星及びロケット開発、打上げ及び追跡宇宙環境利用総合推進並びにこれらに必要な施設等整備航空宇宙技術研究所におけるロケットエンジン等に関する基礎的、先行的試験研究種子島周辺漁業対策事業助成等のために支出したものであります。  第三に、海洋開発関係経費といたしまして百三十億五千六百十七万円余を支出いたしました。これは、海洋科学技術センターにおける深海調査技術開発海洋観測技術研究開発等のために支出したものであります。  第四に、試験研究機関経費といたしまして、当庁の試験研究機関のうち、航空宇宙技術研究所金属材料技術研究所防災科学技術研究所及び無機材質研究所における各種試験研究及びこれに関連する研究施設整備科学技術政策研究所における各種調査研究等を行うための経費として二百三十一億六千二百八十二万円余を支出いたしました。  第五に、科学技術会議方針に沿って我が国科学技術振興に必要な重要研究業務総合推進調整を実施するための科学技術振興調整費ヒューマンフロンティアサイエンスプログラム推進のための経費理化学研究所における基礎研究推進のためのフロンティア研究等を行うための経費新技術事業団における創造科学技術推進事業国際研究交流促進事業等を行うための経費日本科学技術情報センター事業を行うための経費等として四百九十六億六千五百五十三万円余を支出いたしました。  次に、電源開発促進対策特別会計のうち、科学技術庁所掌分歳出決算について申し上げます。  まず、電源立地勘定につきましては、平成年度歳出予算現額は、三百五十四億三千七百二十八万円余であります。この予算現額に対し支出済歳出額二百四十一億六千四十三万円余、翌年度への繰越額四十二億七千六十四万円余、不用額七十億六百十九万円余となっております。  支出済歳出額の主なる費途について申し上げますと、これは、電源立地促進を図るため、地方公共団体に対する電源立地促進対策交付金及び電源立地特別交付金交付並びに原子力発電所等施設設備安全性を実証するための試験等を行うために支出したものであります。  次に、電源多様化勘定につきましては、平成年度歳出予算現額は、一千百億五千七百五十一万円余であります。この予算現額に対し支出済歳出額一千六十二億八千百五十四万円余、翌年度への繰越額三十五億七千二十二万円余、不用額二億五百七十四万円余となっております。  支出済歳出額の主なる費途について申し上げますと、これは、基軸エネルギーたる原子力に係る技術開発推進を図るため、動力炉・核燃料開発事業団における高速増殖炉原型炉建設新型転換炉開発使用済核燃料の再処理技術開発ウラン濃縮原型プラント運転等のための経費及び原子炉解体技術開発委託等を行うための経費として支出したものであります。  以上簡単でありますが、平成年度決算概要をご説明申し上げました。  よろしくご審議のほど、お願い申し上げます。     …………………………………    平成年度決算科学技術庁についての検査    の概要に関する主管局長説明                 会計検査院  平成年度科学技術庁決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、本院の指摘に基づき当局において改善処置を講じた事項一件であります。  これは、病院看護に係る診療報酬請求に関するものであります。  放射線医学総合研究所に設置されております病院では、看護に係る診療報酬を、千葉県知事から特一類看護(I)の承認を受けて社会保険診療報酬支払基金等請求していましたが、より高い基準である特二類看護料請求できる看護を行っていたと認められましたので、当局の見解をただしましたところ、放射線医学総合研究所では、特二類看護に係る承認申請を行い、承認を受けまして、看護実態に適合した適正な診療報酬請求するための処置を講じたものであります。  以上、簡単でございますが説明を終わります。     —————————————    平成年度科学技術庁決算に関する概要説    明                 科学技術庁  科学技術庁平成年度決算につきまして、その概要をご説明申し上げます。  まず、一般会計歳出決算について申し上げます。  平成年度の当初歳出予算額は、四千三百七十五億七千四百八十八万円余でありましたが、これに予算補正追加額九百二億五千八百五十五万円余、予算補正修正減少額百五十五億四千七百八十三万円余、予算移替増加額三千九百八十四万円余、予算移替減少額八十六億二千三百八十六万円余、前年度からの繰越額七億七千四百九十四万円余を増減いたしますと、平成年度歳出予算現額は、五千四十四億七千六百五十三万円余となります。この予算現額に対し支出済歳出額四千九百五十七億四千四百十八万円余、翌年度への繰越額八十億七千五百十八万円余、不用額六億五千七百十五万円余となっております。  次に、支出済歳出額の主なる費途につきまして、その大略をご説明申し上げます。  第一に、原子力関係経費といたしまして二千百二十二億二千八百五十一万円余を支出いたしました。これは、日本原子力研究所における原子力施設工学的安全研究核融合研究高温工学試験研究原子力船研究開発等原子力関連試験研究及び各種原子炉運転動力炉・核燃料開発事業団における高速増殖炉開発使用済核燃料の再処理技術開発ウラン資源探鉱ウラン濃縮技術開発等のほか、放射線医学総合研究所における放射線による障害防止及び放射線医学的利用に関する調査研究原子力安全行政強化等原子力平和利用促進を図るために支出したものであります。  第二に、宇宙開発関係経費といたしまして一千七百二十六億四千四百八十四万円余を支出いたしました。これは、宇宙開発事業団における人工衛星及びロケット開発、打上げ及び追跡宇宙環境利用総合推進並びにこれらに必要な施設等整備航空宇宙技術研究所におけるロケットエンジン等に関する基礎的、先行的試験研究種子島周辺漁業対策事業助成等のために支出したものであります。  第三に、海洋開発関係経費といたしまして百六十八億一千二百四十三万円余を支出いたしました。これは、海洋科学技術センターにおける深海調査技術開発海洋観測研究開発等のために支出したものであります。  第四に、試験研究機関経費といたしまして、当庁の試験研究機関のうち、航空宇宙技術研究所金属材料技術研究所防災科学技術研究所及び無機材質研究所における各種試験研究及びこれに関連する研究施設整備科学技術政策研究所における各種調査研究等を行うための経費として三百二十七億五千四百五十四万円余を支出いたしました。  第五に、科学技術会議方針に沿って我が国科学技術振興に必要な重要研究業務総合推進調整を実施するための科学技術振興調整費ヒューマンフロンティアサイエンスプログラム推進のための経費理化学研究所における基礎研究推進のためのフロンティア研究等を行うための経費新技術事業団における創造科学技術推進事業研究交流促進事業等を行うための経費日本科学技術情報センター事業を行うための経費等として六百十三億三百八十五万円余を支出いたしました。  次に、電源開発促進対策特別会計のうち、科学技術庁所掌分歳出決算について申し上げます。  まず、電源立地勘定につきましては、平成年度歳出予算現額は、三百八十億二千二百四十万円余であります。この予算現額に対し支出済歳出額二百五十二億七千六百五十二万円余、翌年度への繰越額六十一億九千百三十七万円余、不用額六十五億五千四百五十一万円余となっております。  支出済歳出額の主なる費途について申し上げますと、これは、電源立地促進を図るため、地方公共団体に対する電源立地促進対策交付金及び電源立地特別交付金交付並びに原子力発電所等施設設備安全性を実証するための試験等を行うために支出したものであります。  次に、電源多様化勘定につきましては、平成年度歳出予算現額は、一千百億二千十四万円余であります。この予算現額に対し支出済歳出額一千三十五億六千九十一万円余、翌年度への繰越額三十三億一千六百万円余、不用額三十一億四千三百二十一万円余となっております。  支出済歳出額の主なる費途について申し上げますと、これは、基軸エネルギーたる原子力に係る技術開発推進を図るため、動力炉・核燃料開発事業団における高速増殖炉原型炉建設新型転換炉開発使用済核燃料の再処理技術開発ウラン濃縮原型プラント運転等のための経費及び原子炉解体技術開発委託等を行うための経費として支出したものであります。  以上簡単でありますが、平成年度決算概要をご説明申し上げました。よろしくご審議のほど、お願い申し上げます。     —————————————
  10. 佐藤静雄

    佐藤主査 以上をもちまして科学技術庁所管説明は終わりました。  これより質疑に入るのでありますが、その申し出がありませんので、科学技術庁所管については終了いたしました。     —————————————
  11. 佐藤静雄

    佐藤主査 これより農林水産省所管農林漁業金融公庫について審査を行います。  まず、概要説明を聴取いたします。小平農林水産政務次官
  12. 小平忠正

    小平政府委員 おはようございます。  平成年度及び五年度農林水産省決算概要説明を申し上げます。  最初に、平成年度一般会計について申し上げます。  まず、一般会計の歳入につきましては、歳入予算額四千三百十四億一千三百万円余に対しまして、収納済み歳入額は四千九百五十二億二千五百万円余であり、差し引きいたしますと、六百三十八億一千百万円余の増加となっております。  次に、一般会計の歳出につきましては、歳出予算現額三兆六千六百八十九億二千百万円余に対しまして、支出済み歳出額は三兆五千三百四十一億九千五百万円余であり、この差額一千三百四十七億二千六百万円余につきましては、一千百四十四億百万円余が翌年度へ繰り越した額であり、二百三億二千四百万円余が不用となった額であります。  なお、その詳細及びこれらの施策の内容は、お手元の「平成年度農林水産省決算概要説明」に掲載いたしましたとおりであります。  次に、特別会計について申し上げます。  まず、食糧管理特別会計につきましては、国内米管理勘定等の七勘定を合わせて申し上げますと、収納済み歳入額は二兆三千八百八十億九千八百万円余、支出済み歳出額は二兆三千六百九十八億八千八百万円余であり、差し引き百八十二億一千万円余の剰余を生じました。この剰余金は、法律の定めるところに従い、翌年度の歳入に繰り入れることといたしました。  このほか、農業共済再保険特別会計、森林保険特別会計、漁船再保険及漁業共済保険特別会計、農業経営基盤強化措置特別会計、国有林野事業特別会計及び国営土地改良事業特別会計がございますが、これら特別会計の概要につきましても、お手元の資料に掲載いたしましたとおりであります。  以上をもちまして、平成年度における農林水産省の決算概要に関する御説明を終わります。  引き続きまして、平成年度における農林水産省の決算概要を御説明申し上げます。  最初に、一般会計について申し上げます。  まず、一般会計の歳入につきましては、歳入予算額四千四百六十一億八千六百万円余に対しまして、収納済み歳入額は五千四十九億七千二百万円余であり、差し引きいたしますと五百八十七億八千五百万円余の増加となっております。  次に、一般会計の歳出につきましては、歳出予算現額五兆一千百七十億八千五百万円余に対しまして、支出済み歳出額は四兆四千三百八十五億二千百万円余であり、この差額六千七百八十五億六千四百万円余につきましては、六千六百四億八千九百万円余が翌年度へ繰り越した額であり、百八十億七千四百万円余が不用となった額であります。  なお、その詳細及びこれらの施策の内容は、お手元の「平成年度農林水産省決算概要説明」に掲載いたしましたとおりであります。  次に、特別会計について申し上げます。  まず、食糧管理特別会計につきましては、国内米管理勘定等の七勘定を合わせて申し上げますと、収納済み歳入額は一兆六千八十四億四千九百万円余、支出済み歳出額は一兆四千九百七十九億三千八百万円余であり、差し引き一千百五億一千万円余の剰余を生じました。この剰余金は、法律の定めるところに従い、翌年度の歳入に繰り入れることといたしました。  このほか、農業共済再保険特別会計、森林保険特別会計、漁船再保険及漁業共済保険特別会計、農業経営基盤強化措置特別会計、国有林野事業特別会計及び国営土地改良事業特別会計がございますが、これら特別会計の概要につきましても、お手元の資料に掲載いたしましたとおりであります。  以上をもちまして、平成年度及び五年度における農林水産省の決算概要に関する御説明を終わります。  よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。
  13. 佐藤静雄

    佐藤主査 次に、会計検査院検査概要説明を聴取いたします。会計検査院五十嵐第四局長
  14. 五十嵐清人

    ○五十嵐会計検査院説明員 平成年度農林水産省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、意見を表示しまたは処置を要求した事項二件及び本院の指摘に基づき当局において改善処置を講じた事項二件であります。  まず、意見を表示しまたは処置を要求した事項について御説明いたします。  その一は、水田農業確立助成補助金の地域営農加算額の交付に関し、加算額が、計画の策定、基金の造成などの交付要件を充足していない区域に対して交付されていたり、交付目的に沿って適切に使用されていなかったりしている事態が多数見受けられましたので、農林水産省に対し、是正改善処置を要求したものであります。  その二は、農地保有合理化促進事業の実施に関し、売り渡し相手方において経営面積が目標面積に達していなかったり、農用地開発事業により造成され換地処分された農用地が売り渡しされないままとなっていたりなどしている事態が見受けられましたので、農林水産省に対し、改善の意見を表示したものであります。  次に、本院の指摘に基づき当局において改善処置を講じた事項について御説明いたします。  その一は、肉用牛産地拡大推進事業の助成金の交付及び対象牛の年齢の取り扱いに関し、実際の増加頭数を上回る頭数を助成の対象としたり、繁殖の用に適さない高年齢の雌牛を助成の対象としたりしていましたので、これについて指摘したところ、改善処置がとられたものであります。  その二は、輸入麦の受け渡し業務の方法に関し、輸入麦を本船からサイロへ搬入するに当たり、サイロの収容余力がある場合には割高なはしけ取りにかえて経済的な接岸取りの方法をとることとすれば、受け渡し業務費を節減できたと認められましたので、これについて指摘したところ、改善処置がとられたものであります。  以上をもって概要説明を終わります。  引き続き、平成年度農林水産省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、法律、政令もしくは予算に違反しまたは不当と認めた事項八件、意見を表示しまたは処置を要求した事項一件及び本院の指摘に基づき当局において改善処置を講じた事項二件であります。  まず、法律、政令もしくは予算に違反しまたは不当と認めた事項について御説明いたします。  検査報告番号一六一号は、北海道におきまして、地すべり対策事業の実施に当たり、施工が設計と著しく相違していたため、排水路工等が工事の目的を達していないものであります。  検査報告番号一六二号は、新潟県におきまして、かんがい排水事業の実施に当たり、設計が適切でなかったため橋台が不安定な状態になっているものであります。  検査報告番号一六三号は、山梨県東八代郡豊富村中木原壮蚕飼育組合におきまして、補助事業で設置したモデル共同利用壮蚕用蚕室を補助の目的外に使用しているものであります。  検査報告番号一六四号及び一六五号は、長野県におきまして、災害関連緊急治山事業及び復旧治山事業の実施に当たり、施工が設計と著しく相違していたため、モルタル吹きつけ工が工事の目的を達していないものであります。  検査報告番号一六六号は、鳥取県におきまして、漁港改修事業の実施に当たり、施工が設計と著しく相違していたため、護岸工等が不安定な状態になっているものであります。  検査報告番号一六七号は、佐賀県東松浦郡鎮西町上場農業協同組合におきまして、畜産活性化総合対策事業の実施に当たり、設計が適切でなかったため擁壁が不安定な状態になっているものであります。  検査報告番号一六八号は、職員の不正行為による損害が生じたもので、家畜衛生試験場鶏病支場の資金前渡官吏の補助者が、資金前渡官吏を受取人とする小切手を作成し現金化するなどして前渡資金を領得したものであります。  次に、意見を表示しまたは処置を要求した事項について御説明いたします。  これは、飼料用外国産小麦の売り渡しによるふすまの増産に関し、売り渡し条件に反して、飼料用小麦の一部を主食用に転用したり、低い歩どまりでふすまを生産したりしている事態が見受けられましたので、農林水産省に対し、是正改善処置を要求したものであります。  次に、本院の指摘に基づき当局において改善処置を講じた事項について御説明いたします。  その一は、家畜伝染病予防事業及び家畜衛生対策事業に係る経理に関し、経費事業ごとに区分経理しておらず、事業と関係のない経費等を補助の対象とするなどしていて、補助金が過大に交付されていましたので、これについて指摘したところ、改善処置がとられたものであります。  その二は、ブルドーザーによる掘削押し土費の積算に関し、掘削押し土費の積算額が過大になっていましたので、これについて指摘しましたところ、改善処置がとられたものであります。  以上をもって概要説明を終わります。  引き続きまして、平成年度農林漁業金融公庫決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、法律、政令もしくは予算に違反しまたは不当と認めた事項七件であります。  これらはいずれも、総合施設資金等の貸し付けにおいて、貸付金額を過大に算定していたものであります。  以上、簡単でございますが、説明を終わります。  引き続き、平成年度農林漁業金融公庫決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、法律、政令もしくは予算に違反しまたは不当と認めた事項四件であります。  これらはいずれも、農地等取得資金等の貸し付けにおいて、貸付金額を過大に算定するなどしていたものであります。  以上、簡単でございますが、説明を終わります。
  15. 佐藤静雄

    佐藤主査 ただいまの会計検査院指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。小平農林水産政務次官
  16. 小平忠正

    小平政府委員 会計検査院から御報告のありました平成年度決算検査報告に対しまして、農林水産省が講じた措置を御説明申し上げます。  予算の執行に当たりましては、常に効率的かつ厳正な処理に努力してまいりましたが、一部の事業について、御指摘を受けるような事態が生じましたことは、まことに遺憾であります。  指摘を受けましたもののうち、水田農業確立助成補助金の地域営農加算額の交付が適切に行われるよう是正改善処置を要求されたものにつきましては、現行の地域営農推進助成制度の趣旨等の周知徹底について指導を強化するなど助成額の適正な交付が行われるよう所要の措置を講じたところであります。  また、農地保有合理化促進事業の効果を発現させるよう改善の意見を表示されたものにつきましては、関係通達の整備を行うなど所要の措置を講じたところであります。  引き続きまして、平成年度決算検査報告に対しまして、農林水産省が講じた措置を御説明申し上げます。  不当事項として指摘を受けたもののうち、補助事業の実施及び経理が不当と認められるものにつきましては、既に補助金の返還または手直し工事を施工させる措置を講じたところであります。  また、職員の不正行為による損害が生じたものにつきましては、既に損害額を全額補てんさせるとともに、行為者等の処分を行ったところであります。  さらに、飼料用外国産小麦の売り渡しによるふすまの増産が適切かつ合理的に行われるよう是正改善処置を要求されたものにつきましては、増産ふすまの需要の動向に即応した適正な生産体制となるよう、既に各般の改善措置を講じたところであります。  以上、会計検査院指摘に対して農林水産省が講じた措置説明を終わらせていただきますが、今後、このような指摘を受けることのないよう、指導監督の強化及び内部牽制等の充実を図り、より一層、予算の適切な執行に努めてまいる所存であります。
  17. 佐藤静雄

    佐藤主査 次に、鶴岡農林漁業金融公庫総裁。
  18. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡説明員 ただいま会計検査院から御報告のありましたことにつきまして、御説明を申し上げます。  当公庫の業務の遂行に当たりましては、常に適正な運用について鋭意努力してまいりましたが、平成年度及び平成年度決算検査報告におきまして、農地等取得資金等の貸し付けにつきまして不当事項として指摘を受けたものがありますことは、まことに遺憾に存じております。  指摘を受けました事項につきましては、直ちに適切な措置を講じましたが、今後、このような事態の発生を防止するとともに、当公庫に与えられた使命を果たすべく努めてまいる所存でございます。
  19. 佐藤静雄

    佐藤主査 この際、お諮りいたします。  お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  20. 佐藤静雄

    佐藤主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————    平成年度農林水産省決算概要説明                 農林水産省  平成年度における農林水産省の歳入歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  一般会計の歳入につきましては、当初予算額は四千二百九十八億三千四百五十一万円余でありますが、予算補正追加額十五億七千九百四十七万円余の増加がありましたので、歳入予算額は四千三百十四億一千三百九十九万円となっております。  これに対し、収納済歳入額は四千九百五十二億二千五百二十六万円余であり、これを歳入予算額と比較いたしますと六百三十八億一千百二十七万円余の増加となっております。これは、日本中央競馬会納付金が予定より多かったこと等の理由によるものであります。  次に、一般会計の歳出につきましては、当初予算額は二兆八千七百六十八億七千五十四万円余でありますが、総合経済対策の一環として内需拡大等を図るため地方公共団体等が施行する農村整備事業事業費の一部補助に必要な経費等として予算補正追加額四千百七億九千九百九十九万円余、既定予算の節約等による予算補正修正減少額二百五十九億八千五百五十七万円余、北海道における農業農村整備事業を実施するために必要な経費等について総理府所管から移替えを受けた額三千四百三十六億八千七百九十七万円余、前年度からの繰越額六百三十五億四千百十三万円余、風水害等対策に必要な経費等として予備費七百四十九万円余の増減がありましたので、歳出予算現額は三兆六千六百八十九億二千百五十六万円余となっております。  これに対し、支出済歳出額は三兆五千三百四十一億九千五百一万円余であり、これと歳出予算現額との差額は一千三百四十七億二千六百五十五万円余となっております。  この差額のうち、翌年度への繰越額は一千百四十四億百六十六万円余であり、不用額は二百三億二千四百八十九万円余となっております。  このほか、これら一般会計とは別に、大蔵省所管産業投資特別会計に係る支出済歳出額は百七十五億二十二万円余となっております。  次に、施策別にその主なものについて、御説明申し上げます。  第一に、二十一世紀に向けた先進的農業の育成に要した経費であります。  その支出済歳出額は、四千十五億三千八百四十一万円余であります。  まず、多様な水田農業と水田利用の展開、効率的な生産単位の形成を通じた生産性の向上、地域輪作農法の面的拡大と質的向上を推進するため、水田農業確立後期対策を実施いたしました。  また、生産性の高い農業の実現、高品質な農産物の生産、環境保全に配慮した農業の展開等を図るため、二十一世紀に向けた先進的農業というべき効率的で環境にやさしく、かつ、農業者にとって魅力ある生産活動を推進する先進的農業生産総合推進対策を新たに実施し、地域の自主性と活力を基盤に各般の生産対策を総合的かつ計画的に実施いたしました。  さらに、牛肉の輸入自由化等に対処するため、肉用子牛生産安定等特別措置法に基づき、牛肉等の関税収入を特定財源とした肉用子牛等対策を引き続き実施するとともに、新たに畜産活性化総合対策を発足させ、生産から流通・消費に至る各種事業を総合的に実施いたしました。  このほか、生産コストの節減を図るため、広域的な農作業受委託を推進する農業機械銀行の育成、肥料費節減の優良事例の普及・啓発等農業生産資材対策を実施いたしました。  第二に、構造政策の新たな展開に要した経費であります。  その支出済歳出額は、一兆二千八百九十五億二千九百二十三万円余であります。  まず、経営規模の拡大と生産性の向上を図り、経営体質を強化するため、関係機関の密接な連携の下に、農地流動化の促進活動を強力に展開するとともに、地域の立地条件に即した方向で農業・農村の活性化を支援するため、農業農村活性化農業構造改善事業を実施いたしました。  また、新規就農者を含めた担い手対策を引き続き進めることとし、都市と農村の青年の相互理解を深めるための交流等を実施いたしました。  さらに、農業農村整備事業により、良質な食料を安定的に供給できる効率的な農業の実現及び農業と農村の健全な発展を図るため、第三次土地改良長期計画に基づき、農業の基礎的条件である農業生産基盤の整備について、NTT資金の活用も併せ、着実かつ効率的に実施いたしました。  第三に、農山漁村の生活の質的向上と開かれた農山漁村の整備に要した経費であります。  その支出済歳出額は、七千六百四十九億四千七百五十一万円余であります。  まず、都市部に比べて立ち遅れている農村の生活環境の改善を図るため、農業集落排水事業、農村総合整備モデル事業等を実施するとともに、農村景観や親水等にも配慮した整備を進め、豊かな農村空間の創出による活性化を図るため、農村総合環境整備事業を実施いたしました。  また、生産基盤、生活環境等の整備と併せて景観形成、環境保全等に配慮した農山漁村の整備を行う美しいむらづくり特別対策を創設いたしました。  さらに、中山間地域が有する多面的な機能を生かした農林業の確立と農山村の活性化を図るため、中山間地域農村活性化総合整備事業の実施や農林水産業の振興と併せ、安定した就業機会の確保、総合保養地域の整備、都市と農山漁村との交流等を推進いたしました。  このほか、山村・過疎地域等における快適で活力ある地域づくりを推進するため、新山村振興農林漁業対策事業、農山漁村活性化定住圏創造事業を創設いたしました。  第四に、技術の開発・普及と情報化の推進に要した経費であります。  その支出済歳出額は、一千二百九十四億九千二百八十三万円余であります。  まず、農林水産業に関する重要政策課題に対応するために畑作農業・農山漁村地域の振興、生態系調和促進型農業の推進に資する研究及び高度化・多様化する消費ニーズ、地球環境・熱帯農業問題に対応した研究を実施するとともに、農林水産業・食品産業等の生産性の飛躍的向上、農産物・食品の高付加価値化等を図るため、イネ・ゲノム解析研究をはじめとする基礎的・先導的研究等を実施いたしました。  また、国と民間企業等との研究交流を促進するため、官民交流共同研究及び国際研究交流を推進するほか、民間の研究開発に対する支援を実施いたしました。  これらの技術開発の成果等について農家への普及等を図るため、協同農業普及事業等の効果的な推進を図りました。  さらに、農村地域等における情報交流を進めるため、各種情報システムの開発整備等を図りました。  このほか、農林水産業の構造等の実態を的確に把握し、農林水産行政の効率的かつ適正な推進に資するため、各種統計調査等を実施いたしました。  第五に、健康で豊かな食生活の保障と農産物の需給・価格の安定に要した経費であります。  その支出済歳出額は、三千二百三十四億九千三百二十八万円余であります。  まず、国民に健康で豊かな食生活を保障する観点から、消費者への情報提供業務の充実、規格・表示の適正化等消費者対策を推進するとともに、牛乳・果実等の農水産物の消費拡大対策の推進を図りました。  また、農産物の価格については、需要の動向と生産性向上の成果をより的確に、かつ可能な限り反映し、農産物が国民の納得の得られる価格で安定的に供給されるよう努めました。  このほか、世界の農業・食料情勢の調査・分析等を行うとともに、飼料穀物等の備蓄対策を推進  いたしました。  第六に、食品関連産業の振興と輸出促進対策に要した経費であります。  その支出済歳出額は、二百六十四億九千五百九十四万円余であります。  まず、農業サイドと食品産業サイドとの連携の下、原料農産物の安定供給と利用の高度化等を図るため、食品産業原料対策を講じるほか、地域食品の高付加価値化による地域食品産業の高度化を図るため、加工施設整備、市場開拓等を総合的に推進するとともに、地域食品のマーケティング力を強化するため、ふるさと食品の情報提供等を実施いたしました。  また、食品産業の体質と経営基盤の強化を図るため、食品産業における廃棄物再生利用技術等先端技術の開発を進めるとともに、食品産業の大宗を占める中小企業の技術水準の向上を図るため、汎用性の高い技術の開発等推進いたしました。  さらに、生鮮食料品等の流通の合理化を図るため、卸売市場の計画的整備を図るとともに、消費者ニーズの多様化・高度化、流通コストの上昇等に対処するため、食品流通の総合的な構造改善対一策を推進いたしました。  このほか、我が国農林水産物の販路を拡大し、農山漁村の活性化等に資するため、輸出促進対策を推進いたしました。  第七に、地球環境保全対策と国際協力の推進に要した経費であります。  その支出済歳出額は、六十億七千四百六十八万円余であります。  まず、地球環境保全対策としましては、地球的規模における環境保全の推進を図るため、西暦二千年における熱帯林の持続的木材生産量の推計及び熱帯木材の需給の予測、更に、持続的な農業・農村開発に必要な調査等を実施いたしました。  また、多様な生物を保全するため、アジア・太平洋地域の開発途上国における動物遺伝資源保全のための地域行動計画の策定等を実施いたしました。  さらに、地球温暖化対策として、その主因である炭酸ガスの固定能力に着目した森林造成技術指針及びモデル造林計画の策定についての調査、また、開発途上国における農業由来の温暖化ガス発生等環境汚染の防止に関する指針の策定等を実施いたしました。  このほか、開発途上国の現状に即した農林水産業協力の一層の促進を図るため、中長期的な農林水産業協力の推進方策等の策定のための基礎調査等を実施するとともに、国際連合食糧農業機関のフィールドプロジェクト及び国際熱帯木材機関への拠出等国際機関を通じた協力を推進いたしました。  第八に、農林漁業金融の充実に要した経費であります。  その支出済歳出額は、一千三百十七億四千五百二十万円余であり、農林漁業生産の経営構造の改善、基盤整備等の促進に資するため、農林漁業金融公庫資金、農業近代化資金等の各種制度資金について、所要の融資枠の確保、融資内容の充実を図るとともに、農業信用保証保険機能の充実を図りました。  第九に、多様な森林整備推進と国産材時代への条件整備に要した経費であります。  その支出済歳出額は、四千九百十五億九千三百五十三万円余であります。  まず、国民のニーズにこたえる多様で質の高い森林の整備を図るため、森林整備事業計画を策定し、その初年度として造林・林道事業を計画的に推進したほか、第八次治山事業五箇年計画を策定し、その初年度として治山事業の計画的推進を図りました。  また、松くい虫被害対策特別措置法を延長し、総合的な松林保全対策を実施するとともに、林野火災予防対策、健全で質の高い森林を整備するための間伐促進強化対策、緑化対策等を推進いたしました。  さらに、林業・山村の活性化と担い手の育成確保のため、生産・生活環境基盤、森林・林道施設等整備対策の推進、市町村森林整備計画の計画的推進等森林の流域管理システムの確立を図るとともに、林業機械化の推進、森林組合等林業事業体の体質強化、就労条件の改善整備、林業技術の改善等を推進したほか、林業構造改善事業、特用林産産地化形成総合対策事業等を実施いたしました。  また、国産材流通体制の整備と木材産業の体質強化を図るため、地域材を中心とした木材の需要拡大、国産材の加工・流通拠点等の整備促進するとともに、本質資源利用分野の開発等推進いたしました。  このほか、国有林野事業については、国有林野事業改善特別措置法に基づき策定された「国有林野事業改善に関する計画」に即して、経営改善推進いたしました。  第十に、二百海里体制の定着等に即応した水産業の振興に要した経費であります。  その支出済歳出額は、三千五百九億七千七百七十五万円余であります。  まず、第八次漁港整備長期計画及び第三次沿岸漁場整備開発計画に基づき、NTT資金の活用も併せ、漁港及び沿岸漁場の整備推進いたしました。  また、新たに環境に配慮したむらづくり対策を推進するとともに、沿岸漁業構造改善事業等の施策を講じました。  さらに、我が国周辺水域の漁業振興を図るため、資源管理型漁業推進総合対策を行うとともに、栽培漁業、養殖業、さけ・ますふ化放流事業、技術の開発・普及の推進等の諸施策を講じたほか、水産資源保護対策、漁場環境保全対策を実施いたしました。  また、漁協・水産業の経営対策として、金融自由化の進展等に対処して新たに漁協事業基盤強化総合対策事業を行うとともに、水産業関係資金の円滑な融通等を推進いたしました。  さらに、新漁場、新資源の開発、海外漁業協力を行うとともに、外国漁船取締強化のための違反操業対策を実施いたしました。  このほか、水産物の需給の安定を図るとともに、流通消費及び加工対策等の施策を推進いたしました。  第十一に、その他の重要施策に要した経費であります。  その支出済歳出額は、三千七百三十二億四千九百四十三万円余であります。  まず、海岸事業については、第五次海岸事業五箇年計画に基づき、NTT資金の活用も併せ、海岸保全区域における事業の実施を図りました。  また、災害対策については、農作物共済等の各共済に係る所要の共済掛金国庫負担金等を農業共済再保険特別会計に繰り入れたほか、農業共済団体の事務費等を助成し、農業災害補償制度の円滑な実施を図るとともに、災害営農資金等の利子補給に対する助成を図りました。  さらに、台風・豪雨等により被災した農地、農業用施設、山林施設、漁港施設等の災害復旧事業を実施いたしました。  このほか、農業団体の整備についても、農業委員会等に対して、引き続き助成等を行いました。  以上をもちまして、一般会計歳入歳出決算に関する御説明を終わります。  次に、各特別会計の決算について御説明申し上げます。  第一に、食糧管理特別会計であります。国内米管理勘定等の七勘定を合わせて申し上げますと、収納済歳入額は二兆三千八百八十億九千八百五十七万円余、支出済歳出額は二兆三千六百九十八億八千八百二十三万円余でありまして、歳入歳出差引き百八十二億一千三十三万円余の剰余を生じました。この剰余金は、法律の定めるところに従い、翌年度の歳入に繰り入れることといたしました。また、このうち食糧管理勘定の損益計算上の損失は二千二億一千六百三十万円余でありまして、調整資金を取りまして整理いたしました。  これにより、食糧管理法、農産物価格安定法及び飼料需給安定法に基づき、米、麦、でん粉、輸入飼料の買入れ、売渡し等を管理することにより価格の安定と国民食糧の確保を図り、国民経済の安定に資するための事業を実施いたしました。  第二に、農業共済再保険特別会計であります。農業勘定等の六勘定を合わせて申し上げますと、収納済歳入額は一千二百一億九千二百六十九万円余、支出済歳出額は七百四十九億三千九百五十三万円余であります。歳入歳出差引き四百五十二億五千三百十六万円余のうち、翌年度へ繰り越す額百七十二億二千八百十万円余を控除し、二百八十億二千五百六万円余の剰余を生じました。この剰余金は、法律の定めるところに従い、それぞれ翌年度の歳入に繰り入れ、又は積立金として積み立てること等といたしました。  これにより、農業災害補償法に基づき、国が農作物共済等の各共済についての再保険事業を行うことによって、農業経営の安定等を図るための農業共済事業の円滑な実施を図りました。  第三に、森林保険特別会計であります。収納済歳入額は百二十九億六千三百七十六万円余、支出済歳出額は三十五億三千百八十四万円余であります。歳入歳出差引き九十四億三千百九十一万円余のうち、翌年度へ繰り越す額九十三億八千八百六十一万円余を控除し、四千三百二十九万円余の剰余を生じました。この剰余金は、法律の定めるところに従い、積立金として積み立てることといたしました。  これにより、森林国営保険法に基づき、国が森林の火災、気象災及び噴火災を保険事故とする森林保険事業を行うことによって林業経営の安定を図るための事業を実施いたしました。  第四に、漁船再保険及漁業共済保険特別会計であります。漁船普通保険勘定等の五勘定を合わせて申し上げますと、収納済歳入額は四百八十七億六千三百七十八万円余、支出済歳出額は三百五億九千六百四十万円余であります。歳入歳出差引き百八十一億六千七百三十八万円余のうち、翌年度へ繰り越す額二百六億九千四百四十三万円余を控除し、二十五億二千七百五万円余の決算上の不足を生じました。この不足金は、補足すべき積立金がないので、このまま決算を結了すること等といたしました。  これにより、漁船損害等補償法、漁船乗組員給与保険法及び漁業災害補償法に基づき、国が再保険及び保険事業を行うことによって漁業経営の安定に資するための事業を実施いたしました。  第五に、農業経営基盤強化措置特別会計であります。収納済歳入額は五百三十六億七千六百六十七万円余、支出済歳出額は百八十三億一千三百五十八万円余でありまして、歳入歳出差引き三百五十三億六千三百八万円余の剰余を生じました。この剰余金は、法律の定めるところに従い、翌年度の歳入に繰り入れることといたしました。  これにより、農地法等の規定に基づき、国が自作農創設のために行う農地等の買収、売渡し等に関する事業、農地保有の合理化を促進するための事業に対する助成及び農業改良資金助成法の規定に基づく農業改良資金の貸付事業を実施いたしました。  第六に、国有林野事業特別会計であります。国有林野事業勘定につきましては、収納済歳入額は五千七百二十九億七千九百七十七万円余、支出済歳出額は五千七百九十四億二千六百二十三万円余であります。この勘定の損益計算上の損失は一千五十九億五千百二十二万円余でありまして、法律の定めるところに従い、損失の繰越しといたしました。治山勘定につきましては、収納済歳入額は二千百十六億三千四百九十二万円余、支出済歳出額は二千百十五億五千十八万円余でありまして、歳入歳出差引き八千四百七十四万円余の剰余を生じました。この剰余金は、法律の定めるところに従い、翌年度の歳入に繰り入れることといたしました。  これにより、国有林野法に規定される国有林野の管理経営の事業及びその附帯業務に係る事業並びに治山事業の計画的推進を図る事業を実施いたしました。  第七に、国営土地改良事業特別会計であります。収納済歳入額は五千百八十四億八千五百八十五万円余、支出済歳出額は五千二十六億三千六百九十五万円余でありまして、歳入歳出差引き百五十八億四千八百八十九万円余の剰余を生じました。この剰余金は、法律の定めるところに従い、翌年度の歳入に繰り入れることといたしました。  これにより、土地改良法に基づき、すべての国営土地改良事業、受託工事及び直轄調査に関する事業を実施いたしました。  以上をもちまして、平成年度の農林水産省決算説明を終わります。  なにとぞ、よろしく御審議の程お願い申し上げます。     …………………………………    平成年度決算農林水産省についての検査    の概要に関する主管局長説明                 会計検査院  平成年度農林水産省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、意見を表示し又は処置を要求した事項二件及び本院の指摘に基づき当局において改善処置を講じた事項二件であります。  まず、意見を表示し又は処置を要求した事項について御説明いたします。  その一は、水田農業確立助成補助金の地域営農加算額の交付に関するものであります。  農林水産省では、稲作と転作との合理的な組合せによる地域輪作農法を確立し、水田農業の体質強化を図ることを主眼として、水田農業確立対策を実施しており、その実施に当たっては、農業者に対し転作等の面積に応じて水田農業確立助成補助金を交付しております。この補助金には、農業者が自主的に土地・水利用及び営農方式の調整を行い、地域の水田農業の確立を計画的に推進することを助成する目的で交付される地域営農加算額があります。地域営農加算額は、市町村、農業協同組合、農業者等が中心となって作成する水田利用合理化推進計画に農業者が参画し、自らが資金を拠出すること、この拠出額と地域営農加算額とを併せるなどして基金を造成することなどの交付要件を満たした場合に交付することとされております。そして、基金は、地域営農加算額の交付の趣旨に沿って、小規模な土地基盤整備事業等を実施する場合の財源とすることになっております。そこで、事業が制度の趣旨に沿って実施されているかなどについて検査いたしました。  その結果、地域営農加算額が、計画の策定、基金の造成などの交付要件に定める実施体制が整備されていない区域に対して交付されていたり、交付目的に沿って適切に使用されていなかったりしている事態が見受けられました。  このような事態を生じているのは、農業者、農協及び市町村において、制度の趣旨、目的、交付要件等についての理解が十分でなく、それぞれの役割、責任を十分果していなかったこと、道府県において、市町村が行う審査・確認事務に対する指導・監督が十分でなかったこと、また、農林水産省においても、農業者、農協及び市町村の三者それぞれの役割や責任を十分明確にしておらず、基金に対する拠出方法及び基金の使途について、関係機関へ周知徹底が十分でなかったこと、市町村等での有効な審査・確認体制を整備していなかったことなどによると認められました。  この地域営農加算制度は、五年度からの水田営農活性化対策においても「地域営農推進助成」として実施されることになっております。  したがいまして、農林水産省におきまして、制度の趣旨に沿った効果的な事業を執行するため、要綱等で、農業者、農協及び市町村の三者それぞれの役割、責任を明確にし、基金への拠出方法及び基金の使途に関する規定を整備するとともに審査が実効性のあるものとなるよう確認資料等の書式を改め、また、農業者、農協及び市町村に対しては、制度の趣旨、交付要件等を周知徹底し、都道府県に対しては、交付要件の確認、基金の管理状況についてその実態を十分把握するよう指導するとともに、今後、不適切な事態が生じた場合には、具体的かつ厳正な措置を講ずるよう周知徹底するなどの是正改善処置を要求いたしたものであります。  その二は、農地保有合理化促進事業の実施に関するものであります。  農林水産省では、農業経営の規模の拡大等を促進するため、農地保有合理化促進事業を実施しております。これは、農地保有合理化法人が事業主体となって、農用地等を買い入れて、これらの土地を規模拡大農家に売り渡すなどする事業でありまして、一般事業、特別事業等の四つの事業があります。このうち特別事業は、農業団地の形成、農用地の開発等を行う事業と連携して実施されるもので、自立経営を志向する農家を生産組織の中核的担い手として育成することなどを目的として、利用増進特別事業及び開発関連特別事業の二つに分けて実施されております。  そして、特別事業の実施に要する資金につきましては、社団法人全国農地保有合理化協会が合理化法人に対して無利子で貸し付けておりますが、農林水産省では同協会に対し、この貸付金の原資又は利子について助成を行っております。  農林水産省では、農業経営の規模の拡大等を図るため合理化促進事業を積極的に活用することとし、なかでも、特別事業の規模を拡大させておりますことなどから、その実施状況につきまして、農業経営の規模の拡大に寄与しているかどうかに着目して事業効果の観点から調査いたしました。  その結果、利用増進特別事業において、売渡しを受けた後の当該農業者の経営面積が経営規模拡大の目標として設定された面積に達していなかったり、売り渡した農用地が転売などされたりしている事態が、また、開発関連特別事業において、開発事業により造成され、換地処分がされた農用地が売り渡されないまま、合理化法人において保有されている事態が、それぞれ見受けられました。  このような事態となっているのは、農業の担い手の減少、農業従事者の高齢化など近年の農業・農村をめぐる環境変化の影響もありますが、農林水産省において、合理化法人が定める農用地の売渡し後の目標経営面積についてその達成時期を具体的に定めていないこと、また、売り渡した農用地の利用状況を把握する体制の整備や、換地処分がされた農用地の売渡しの促進について、合理化法人等に対する指導が十分でないこと、などによると認められました。  したがいまして、農林水産省におきまして、農用地の売渡し後の目標経営面積の達成時期を具体的に定めるとともに、合理化法人にその達成状況や農用地の利用状況を把握する体制を整備させたり、農用地の売渡しを促進するよう適切な指導を行ったりなどして、事業の効果が十分発現するように努めるよう改善の意見を表示いたしたものであります。  次に、本院の指摘に基づき当局において改善処置を講じた事項について御説明いたします。  その一は、肉用牛産地拡大推進事業の助成金の交付及び対象牛の年齢の取扱いに関するものであります。  農林水産省では、肉用牛生産の拡大を推進するため、畜産物の価格安定等に関する法律に基づき、畜産振興事業団に、指定助成対象事業として、全国農業協同組合連合会ほか三団体が事業主体となって実施した肉用牛産地拡大推進事業に対して、助成を行わせております。この事業の実施に要する経費は、畜産振興事業団が農林水産省からの交付金等を財源として社団法人全国肉用子牛価格安定基金協会に造成させた基金をもって充てております。  そして、この事業には繁殖雌牛の規模拡大事業ほか五事業があり、畜産農家等から構成される生産集団の構成員が、満十二月齢以上の繁殖雌牛の飼養頭数を増加させた場合などに、助成金が交付されるものであります。  今回、これらの助成金について調査しましたところ、繁殖雌牛の増加頭数の確認が十分でなく、実際の増加頭数を上回る頭数を助成の対象としていたり、繁殖の用に適さない高年齢の繁殖雌牛を助成の対象としていたりしている適切でない事態が見受けられました。  このような事態が生じていたのは、農林水産省において、交付要件の確認をする際の確認内容等について具体的な取扱方法を示していなかったこと、繁殖雌牛の規模拡大事業における助成金の交付対象牛の年齢に上限を設定していなかったことなどによると認められました。当局の見解をただしましたところ、農林水産省では、五年十一月に畜産振興事業団に通達を発し、交付要件の確認をする際の確認内容等についての具体的な取扱方法を示すとともに、一定年齢以上の雌牛については、繁殖雌牛の規模拡大事業の助成対象から除外するなどの処置を講じたものであります。  その二は、輸入麦の受渡業務の方法に関するものであります。  食糧庁では、国民の食糧の確保及び国民経済の安定を図ることなどを目的として、食糧用及び飼料用の輸入麦を輸入業者から買い入れております。  この輸入麦の港における受渡方法には、本船を接岸させて直接サイロへ搬入する接岸取りと本船からはしけに移して運送のうえサイロへ搬入するはしけ取りがありますが、はしけ取りの経費は接岸取りの経費に比べて割高であるので、食糧庁では、接岸取りを優先的に行い、はしけ取りは可能な限り行わないこととしております。  今回、千葉港ほか六港においてはしけ取りを行った本船について、入港時における接岸取りが可能なサイロの収容余力を調査したところ、本船入港時のこれら接岸サイロの収容余力がはしけ取りした数量を上回っている事態が見受けられました。したがって、輸入港食糧事務所が受渡方法を決定するに当たっては、本船入港時における接岸サイロの正確な収容余力を把握していれば、割高なはしけ取りに代え、接岸取りを行うことが可能であったと認められたものであります。  このような事態が生じていたのは、食糧庁において、輸入港における接岸サイロの収容力が逐次増大してきているのに、これを有効に活用する配慮が十分でなかったことなどによると認められましたので、当局の見解をただしましたところ、食糧庁では、五年十一月に輸入港食糧事務所に対して通達を発し、受渡方法を決定するに当たっては、接岸サイロにおける収容余力の把握を的確に行い、原則として、接岸サイロの収容余力がある場合には、接岸取りにより行うことを周知徹底する処置を講じたものであります。  なお、以上のほか、平成年度決算検査報告に掲記いたしましたように、国営木曽岬干拓事業により造成された干拓地について、及び平成年度決算検査報告に掲記いたしましたように、新農業構造改善事業等による施設の設置及び運営並びに水田農業確立特別交付金の交付について、それぞれ意見を表示し又は処置を要求いたしましたが、これらに対する農林水産省の処置状況についても掲記いたしました。  以上をもって概要説明を終わります。     —————————————    平成年度農林漁業金融公庫業務概況              農林漁業金融公庫  平成年度における農林漁業金融公庫の業務の概況についてご説明申し上げます。  国においては、二十一世紀に向かって明るい展望が持てるよう、生産性と品質が高い農林水産業を育成するとともに、農山漁村の生活の質的向上と活性化を図ることを基本として諸施策が展開されました。  こうした国の施策に即応して、当公庫は、業務の運営にあたりまして、関係機関との密接な連携のもとに、農林水産業の生産基盤の整備及び経営構造の改善のための融資を推進するとともに、多様化する資金需要に対応して、融資条件の改善を含め、融資の円滑化に配慮してまいりました。  平成年度における貸付計画について申し上げますと、貸付計画額は六千億円を予定いたしました。  これに対する貸付決定額は四千六百五十五億六千四百四十一万円余となり、前年度実績と比較して五百四十七億一千六百三十一万円余の減少となりました。  この貸付決定額を農業・林業・水産業に大別して申し上げますと一、農業部門  三千二百五十七億七千十八万円         余二、林業部門  四百七十七億二百九十万円余三、水産業部門 五百二十六億六百八十八万円余四、その他部門 三百九十四億八千四百四十四万         円余となりまして、農業部門が全体の七十・〇%を占めております。  次に平成年度の貸付資金の交付額は四千六百五十八億七千六百六十五万円余となりまして、これに要した資金は、一般会計からの出資金八十億円、資金運用部からの借入金三千四百二十七億円、簡易生命保険からの借入金三百九十三億円並びに貸付回収金等七百五十八億七千六百六十五万円余をもって充当いたしました。  この結果、平成年度末における貸付金残高は五兆三千百七十六億三千三百九十五万円余となりまして、前年度末残高に比べて三十九億七百八万円余〇・一%の減少となりました。  貸付金の延滞状況につきましては、平成年度末におきまして、弁済期限を六か月以上経過した元金延滞額は三百八十八億八千百十二万円余となりまして、このうち一年以上延滞のものは三百七十一億九千百十一万円余となっております。  次に平成年度における収入支出決算の状況についてご説明申し上げますと、収入済額は、収入予算額三千六百八十四億二千六百五十万円に対し三千七百四十三億一千九百五十一万円余となりました。また、支出済額は、支出予算額三千八百二十二億七百四十二万円余に対し三千六百五十三億八千七百七十二万円余となり、支出に対し収入が八十九億三千百七十九万円余多くなっております。  最後に、平成年度における当公庫の損益計算の結果について申し上げますと、貸付金利息等の総利益は四千三十億七千五百二万円余、借入金利息等の総損失は四千三十億七千五百二万円余となり、利益と損失が同額となりましたため、利益金はなく国庫納付はありませんでした。  これらの業務の遂行にあたりましては、常に適正な運用について、鋭意努力してまいりましたが、平成年度決算検査報告におきまして、総合施設資金等の貸付けにつきまして不当事項として指摘を受けたものがありますことは、まことに遺憾に存じております。指摘を受けました事項につきましては、直ちに適切な措置を講じましたが、今後はこのようなことの再び起こることのないよう業務運営の適正化に一層努める所存であります。  以上が、平成年度における農林漁業金融公庫の業務の概況であります。なにとぞよろしくご審議のほどお願いいたします。     …………………………………    平成年度決算農林漁業金融公庫について    の検査概要に関する主管局長説明                 会計検査院  平成年度農林漁業金融公庫決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、法律、政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項七件であります。  検査報告番号二三五号から二四一号までの七件は、総合施設資金等の貸付けが不当と認められるものであります。  これらの資金の貸付事業は、農林漁業者等に対し、農林漁業の生産力の維持増進等に必要な長期かつ低利の資金で、一般の金融機関から融通を受けることが困難な資金を直接又は金融機関に委託して貸し付けるものでありますが、総合施設資金等の貸付けに当たり、借入者から事実と相違した内容の借入申込みや事業完成報告がされているにもかかわらず、これに対する審査及び確認が適切でなかったなどのため、貸付金額を過大に算定しているものであります。  以上、簡単でございますが説明を終わります。     —————————————    平成年度農林水産省決算概要説明                 農林水産省  平成年度における農林水産省の歳入歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  一般会計の歳入につきましては、当初予算額は四千四百三十億二千四百九十六万円余でありますが、予算補正追加額等三十一億六千百九十四万円余の増加がありましたので、歳入予算額は四千四百六十一億八千六百九十万円余となっております。  これに対し、収納済歳入額は五千四十九億七千二百四十六万円余であり、これを歳入予算額と比較いたしますと五百八十七億八千五百五十六万円余の増加となっております。これは、日本中央競馬会納付金が予定より多かったこと等の理由によるものであります。  次に、一般会計の歳出につきましては、当初予算額は二兆九千四百二億三千二十二万円余でありますが、緊急経済対策の一環として内需の拡大等を図るため地方公共団体等が施行する農村整備事業事業費の一部補助に必要な経費等として予算補正追加額一兆六千三百六十一億一千三百二十二万円余、既定予算の節約等による予算補正修正減少額三百九十五億二千百三十一万円余、北海道における農業農村整備事業を実施するために必要な経費等について総理府所管から移替えを受けた額四千六百三億四千九百九十六万円余、前年度からの繰越額一千百四十四億百六十六万円余、山林施設災害関連事業に必要な経費等として予備費五十五億一千百八十一万円の増減がありましたので、歳出予算現額は五兆一千百七十億八千五百五十八万円余となっております。  これに対し、支出済歳出額は四兆四千三百八十五億二千百万円余であり、これと歳出予算現額との差額は六千七百八十五億六千四百五十七万円余となっております。  この差額のうち、翌年度への繰越額は六千六百四億八千九百七十八万円余であり、不用額は百八十億七千四百七十八万円余となっております。  このほか、これら一般会計とは別に、大蔵省所管産業投資特別会計に係る支出済歳出額は四十八億一千五百二十七万円余となっております。  次に、農林水産省の一般会計の主要経費別支出実績について、御説明申し上げます。  第一に、社会保障関係費であります社会保険費につきましては、「農業者年金基金法」に基づく農業者年金事業の実施及び農業者離農給付金の支給等に要した費用として一千百億二百六十八万円余の経費を支出いたしました。  第二に、文教及び科学振興費であります科学技術振興費につきましては、農林水産業に関する試験研究及び試験研究機関の運営等に要した費用として九百二十九億五千六十五万円余の経費を支出いたしました。  第三に、公共事業関係費につきましては、総額で二兆七千七百六十四億三千万円余の経費を支出いたしました。  その内訳といたしまして、  治山治水対策事業費につきましては、山地災害の防止、水資源のかん養等を図る治山事業並びに海岸保全施設整備等により海岸地域の民生の安定及び国土の保全を図る海岸事業等に要した費用として三千四百五十一億一千百四万円余の経費を支出いたしました。  港湾漁港空港整備事業費につきましては、我が国水産業の発展を図るため、その基盤である漁港施設整備に要した費用として三千百四十九億四百十七万円余の経費を支出いたしました。  農業農村整備事業費につきましては、農業の生産基盤の整備、農村の生活環境の整備及び農地等の保全管理のための整備に要した費用として一兆六千四百三十三億七千二百七十一万円余の経費を支出いたしました。  林道工業用水等事業費につきましては、山村地域の基盤整備を図る林道事業並びに沿岸漁業の安定的な発展を図る沿岸漁場整備開発等事業に要した費用として二千九百五十六億九千六十七万円余の経費を支出いたしました。  調整費等につきましては、国土の総合開発等の調整に要した費用として十一億八千五十二万円余の経費を支出いたしました。  災害復旧等事業費につきましては、災害を受けた農業施設、山林施設及び漁港施設の復旧事業に要した費用として一千七百六十一億七千八十七万円余の経費を支出いたしました。  第四に、経済協力費につきましては、我が国海外漁場の確保と国際漁業協力を一体的に推進するために要した費用として五十億六千八百二十七万円余の経費を支出いたしました。  第五に、食糧管理費につきましては、生産性の高い水田営農を推進するための費用並びに食糧管理特別会計の調整資金に充てること等のために要した費用として三千八十三億五千三百四十万円余の経費を支出いたしました。  第六に、その他の事項経費につきましては、農林水産本省等の一般行政に要した費用として一兆一千四百五十七億一千五百九十八万円余の経費を支出いたしました。  次に、本年度において実施した主な事業概要を施策別に御説明いたします。  第一に、経営体の育成と農地の効率的利用の推進に関しての事業概要であります。  まず、「新しい食料・農業・農村政策の方向」に沿って、経営感覚に優れた効率的・安定的な経営体が生産の相当部分を担う農業構造を実現するため、「農業経営基盤強化促進法」を柱として、法人化の推進、経営指導の強化等により農業経営体の経営体質の強化を図ったほか、関係機関の密接な連携の下に農地の利用集積活動を推進いたしました。  また、農家子弟以外の者も含め、次代の農業を担う意欲と経営能力に優れた青年農業者等を育成確保するため、新規就農者対策の充実を図りました。  さらに、「新しい食料・農業・農村政策の方向」に即し、二十一世紀の我が国の農業農村の基盤を築くため、魅力ある農業を実現するための生産基盤の整備、快適で美しい農村空間を形成するための総合的整備及び安全な国土の維持・形成に資するための整備を課題とする第四次土地改良長期計画を策定し、この計画に基づいて農業農村整備事業について、NTT資金の活用も併せ着実かつ効率的に実施いたしました。  このほか、生産性の高い土地利用型農業の確立及び地域資源の整備・活用等による活力ある農村社会の建設のため、農業農村活性化農業構造改善事業等を実施いたしました。  第二に、中山間地域等の活性化と国土保全機能の維持に関しての事業概要であります。  まず、自然的、経済的に不利な条件下に置かれている中山間地域の活性化により、健全な地域社会の維持・発展を図り、併せて国土保全機能の維持等に資するため、「特定農山村地域における農林業等の活性化のための基盤整備促進に関する法律」(特定農山村法)を制定するとともに、山村・過疎地域等における快適で活力ある地域づくりを推進するため新山村振興農林漁業対策事業、農山漁村活性化定住圏創造事業等を実施するほか、地域の立地条件に即した農業生産基盤、農村生活環境基盤等の総合的な整備を実施いたしました。  また、農林水産業の振興と併せ安定した就業機会の確保、都市と農山漁村との交流等を推進いたしました。  さらに、都市と比較して立ち遅れている農村の生活環境基盤を整備し農村の生活の質的向上を図るため、農業集落排水事業、農道整備事業及び農村総合整備事業等を実施するとともに、農村景観や親水等にも配慮した整備を進め、豊かな農村空間の創出による活性化を図るため農村総合環境整備を実施いたしました。  このほか、生産基盤、生活環境等の整備と併せて景観形成、環境保全等に配慮した農山漁村の整備を行う美しいむらづくり特別対策を実施いたしました。  第三に、技術の開発・普及による農業生産の効率化に関しての事業概要であります。  まず、農林水産業に関する重要政策課題に対応するために、高生産性土地利用型農業の確立に向けた地域農業の現場に即した革新的技術開発の実施等農業の生産性向上を図るための研究、高度化・多様化する消費ニーズに対応した研究、環境問題・熱帯農業問題に対応した研究を実施するとともに、農林水産業の生産性の飛躍的向上、農産物・食品の高付加価値化等を図るためイネ・ゲノム解析研究をはじめとする基礎的・先導的研究を実施いたしました。  また、国際的な研究交流を推進するほか、民間及び都道府県の研究開発に対する支援を実施いたしました。  これらの技術開発の成果等について農業者への普及等を図るため、協同農業普及事業等の効果的な推進を図りました。  さらに、農村地域等における情報交流を進めるため、各種情報システムの開発整備等を図りました。  このほか、農林水産業の構造等の実態を的確に把握し、農林水産行政の効率的かつ適正な推進に資するため、第九次漁業センサスをはじめ、各種統計調査等を実施いたしました。  第四に、消費者ニーズを重視した農林水産行政の展開に関しての事業概要であります。  まず、国民に健康で豊かな食生活を保障する観点から、消費者への情報提供業務の充実、規格・表示の適正化等消費者対策を推進するとともに、牛乳.果実等の農水産物の消費拡大対策の推進を図りました。  また、農産物の価格については、需要の動向と生産性向上の成果をより的確に、かつ可能な限り反映し、農産物が国民の納得の得られる価格で安定的に供給されるよう努めました。  このほか、世界の農業・食料情勢の調査・分析等を行うとともに、飼料穀物等の備蓄対策を推進いたしました。  第五に、活力ある農業生産の展開に関しての事業概要であります。  まず、生産者・生産者団体の一層の主体的取組みを基礎に、地域の自主性の尊重を旨として、「新しい食料・農業・農村政策の方向」に示された基本方向に即し、水稲作・転作を通じた望ましい経営の育成を図りつつ、生産性の高い水田営農を推進するため、水田営農活性化対策を実施いたしました。  また、生産性の高い農業の実現、高品質な農産物の生産、環境保全に配慮した農業の展開等を図るため、二十一世紀に向けた先進的農業というべき効率的で環境にやさしく、かつ農業者にとって魅力ある生産活動を推進する先進的農業生産総合推進対策を地域の自主性と活力を基礎に総合的かつ計画的に実施いたしました。  さらに、牛肉の輸入自由化等に対処するため、肉用子牛生産安定等特別措置法に基づき、牛肉等の関税収入を財源とした肉用子牛等対策を引き続き実施するとともに、畜産活性化総合対策により、生産から流通・消費に至る各種事業を総合的に実施いたしました。  このほか、生産コストの節減等を図るため、革新的農業機械等の開発・実用化、広域的な農作業受委託を推進する農業機械銀行の育成、肥料費節減の優良事例の普及・啓発等農業生産資材対策を実施いたしました。  第六に、地球的規模の環境問題等への対応と国際協力の推進に関しての事業概要であります。  まず、地球環境保全対策としましては、熱帯林保全対策として、熱帯林の保全・造成を推進するための開発途上国の林業技能者及び普及担当者の育成、さらに、持続的な農業・農村開発に必要な調査等を実施いたしました。  また、砂漠化防止対策として、東アフリカ地域及び中央アジア地域の基礎調査等を実施するとともに、地球温暖化対策として、温暖化が農林水産生態系に及ぼす影響の予測技術及び農業系から排出されるメタン等の実態把握と制御技術の開発開発途上国における農業関連の温室効果ガス対策の策定についての助言支援等を実施いたしました。  さらに、多様な生物を保全するため、海と干潟の生物環境の保全のための調査等を実施いたしました。  このほか、開発途上国の現状に即した農林水産業協力の一層の促進を図るため、中長期的な農林水産業協力の推進方策等の策定のための基礎調査等を実施するとともに、国際連合食糧農業機関のフィールドプロジェクト及び国際熱帯木材機関への拠出等国際機関を通じた協力を推進いたしました。  第七に、食品関連産業の振興と輸出促進対策に関しての事業概要であります。  まず、農業サイドと食品産業サイドとの連携の下、原料農産物の安定供給と利用の高度化等を図るため、食品産業原料対策を講じるほか、地域食品の高付加価値化による地域食品産業の高度化を図るため、加工施設整備、市場開拓等を総合的に推進するとともに、地域食品のマーケティング力を強化するため、ふるさと食品の情報提供等を実施いたしました。  また、食品産業の体質と経営基盤の強化を図るため、食品産業における廃棄物再生利用技術等先端技術の開発を進めるとともに、食品産業の大宗を占める中小企業の技術水準の向上を図るため、汎用性の高い技術の開発等推進いたしました。  さらに、生鮮食料品等の流通の合理化を図るため、卸売市場の計画的整備を図るとともに、消費者ニーズの多様化・高度化、流通コストの上昇等に対処するため、食品流通の総合的な構造改善対策を推進いたしました。  このほか、我が国農林水産物の販路を拡大し、農山漁村の活性化等に資するため、輸出促進対策を推進いたしました。  第八に、農林漁業金融の充実に関しての事業概要であります。  農林漁業生産の経営構造の改善、基盤整備等の促進に資するため、農林漁業金融公庫資金、農業近代化資金等の各種制度資金について、所要の融資枠の確保、融資内容の充実を図るとともに、農業信用保証保険機能の充実を図りました。  第九に、多様な森林整備推進と国産材時代への条件整備に関しての事業概要であります。  まず、多様で質の高い森林の整備を図るため、森林整備事業計画に基づき、造林・林道事業を計画的に推進したほか、第八次治山事業五箇年計画に基づき、治山事業の計画的推進を図りました。  また、健全な森林の育成を図るための間伐総合対策を実施するとともに、松くい虫被害対策特別措置法に基づく総合的な松林保全対策、林野火災予防対策、緑化対策等を推進いたしました。  さらに、林業・山村の活性化を図るため、林業の担い手の育成強化、高性能林業機械の開発、林業就労条件の改善整備、林業構造改善事業、特用林産振興対策等を推進するとともに、山村の定住条件整備と都市と山村の交流促進のため、林道の整備、集落周辺の森林の多様な整備等を実施したほか、森林計画制度の適正運用の確保を図りました。  また、国産材供給体制の整備と木材需要の拡大を図るため、木材産業の体質を強化するための木材産業ビジョンを策定するとともに、木材産業の生産性の向上、木材の有効利用の促進等のための技術開発推進したほか、国産材の利用の促進、国産材の低コスト安定供給体制の整備等を推進いたしました。  さらに、林業改善資金について、林業の担い手の養成・確保を図るための新資金の創設等を行うとともに、木材の低コスト供給体制の実現等を図るため、国産材産業振興資金を木材産業等高度化推進資金に組み替え、その内容を拡充する等、林業金融制度の充実を図りました。  このほか、国有林野事業については、国有林野事業改善特別措置法に基づき策定された「国有林野事業改善に関する計画」に即して、経営改善推進いたしました。  第十に、二百海里体制の定着等に即応した水産業の振興に関しての事業概要であります。  まず、国際化時代に対応した漁業を推進するため、国際漁業資源の調査や管理・増大対策を行うとともに、新資源の調査・開発、国際漁業協力の推進、外国漁船の違反操業対策等の諸施策を講じたほか、水産動植物の保護対策、漁場環境保全対策を実施いたしました。  また、第八次漁港整備長期計画及び第三次沿岸漁場整備開発計画に基づき、NTT資金の活用も併せ、漁港及び沿岸漁場の整備推進するとともに、環境に配慮したむらづくり対策、沿岸漁業構造改善事業等の施策を講じました。  さらに、我が国周辺水域の漁業振興を図るため、資源管理型漁業推進総合対策を行うとともに、栽培漁業・養殖業の振興、さけ・ますふ化放流事業推進等の諸施策を講じたほか、水産新技術の開発、試験研究の強化等を推進いたしました。  また、漁協・水産業の経営対策として、金融自由化の進展等に対処して漁協経営基盤の強化や漁業経営の体質強化等の諸施策を講じるとともに、水産業関係資金の円滑な融通等を推進いたしました。  このほか、水産物の需給安定対策を講じるとともに、新たに水産物流通加工活性化総合整備事業を実施する等、加工流通体制の整備を中心とした流通消費及び加工対策等の施策を推進いたしました。  第十一に、その他の重要施策に関しての事業概要であります。  まず、海岸事業については、第五次海岸事業五箇年計画に基づき、NTT資金の活用も併せ、海岸保全区域における事業の実施を図りました。  また、災害対策については、農作物共済等の各共済に係る所要の共済掛金国庫負担金、農作物共済に係る再保険金支払財源不足金借入金利子等を農業共済再保険特別会計に繰り入れたほか、農業共済団体の事務費等を助成し、農業災害補償制度の円滑な実施を図るとともに、災害営農資金等の利子補給に対する助成を図りました。  さらに、台風・豪雨等により被災した農地、農業用施設、山林施設、漁港施設等の災害復旧事業を実施いたしました。  このほか、農業団体の整備についても、農業委員会等に対して、引き続き助成等を行いました。  以上をもちまして、一般会計歳入歳出決算に関する御説明を終わります。  次に、各特別会計の決算について御説明申し上げます。  第一に、食糧管理特別会計であります。国内米管理勘定等の七勘定を合わせて申し上げますと、収納済歳入額は一兆六千八十四億四千九百十四万円余、支出済歳出額は一兆四千九百七十九億三千八百七十九万円余でありまして、歳入歳出差引き一千百五億一千三十五万円余の剰余を生じました。この剰余金は、法律の定めるところに従い、翌年度の歳入に繰り入れることといたしました。また、このうち食糧管理勘定の損益計算上の損失は七百七十億八千七百三十万円余でありまして、調整資金を取りまして整理いたしました。  これにより、食糧管理法、農産物価格安定法及び飼料需給安定法に基づき、米、麦、でん粉、輸入飼料の買入れ、売渡し等を管理することにより価格の安定と国民食糧の確保を図り、国民経済の安定に資するための事業を実施いたしました。  第二に、農業共済再保険特別会計であります。農業勘定等の六勘定を合わせて申し上げますと、収納済歳入額は四千八百八十九億一千五十三万円余、支出済歳出額は四千六百五十三億六千十七万円余であります。歳入歳出差引き二百三十五億五千三十五万円余のうち、翌年度へ繰り越す額百七十七億三千三百五十六万円余を控除し、五十八億一千六百七十九万円余の剰余を生じました。この剰余金は、法律の定めるところに従い、それぞれ翌年度の歳入に繰り入れること等といたしました。  これにより、農業災害補償法に基づき、国が農作物共済等の各共済についての再保険事業を行うことによって、農業経営の安定等を図るための農業共済事業の円滑な実施を図りました。  第三に、森林保険特別会計であります。収納済歳入額は百二十七億二千二百二十四万円余、支出済歳出額は三十四億一千九百十一万円余であります。歳入歳出差引き九十三億三百十二万円余のうち、翌年度へ繰り越す額九十二億五千四百二十五万円余を控除し、四千八百八十七万円余の剰余を生じました。この剰余金は、法律の定めるところに従い、積立金として積み立てることといたしました。  これにより、森林国営保険法に基づき、国が森林の火災、気象災及び噴火災を保険事故とする森林保険事業を行うことによって林業経営の安定を図るための事業を実施いたしました。  第四に、漁船再保険及漁業共済保険特別会計であります。漁船普通保険勘定等の五勘定を合わせて申し上げますと、収納済歳入額は四百八十四億三百六十一万円余、支出済歳出額は三百四十三億三千六百六十二万円余であります。歳入歳出差引き百四十億六千六百九十八万円余のうち、翌年度へ繰り越す額二百三十四億五千八百十一万円余を控除し、九十三億九千百十二万円余の決算上の不足を生じました。この不足金は、補足すべき積立金がないので、このまま決算を結了すること等といたしました。  これにより、漁船損害等補償法、漁船乗組員給与保険法及び漁業災害補償法に基づき、国が再保険及び保険事業を行うことによって漁業経営の安定に資するための事業を実施いたしました。  第五に、農業経営基盤強化措置特別会計であります。収納済歳入額は五百八十七億二千三百五十四万円余、支出済歳出額は百九十八億二千八百六十七万円余でありまして、歳入歳出差引き三百八十八億九千四百八十六万円余の剰余を生じました。この剰余金は、法律の定めるところに従い、翌年度の歳入に繰り入れることといたしました。  これにより、農地法等の規定に基づき、国が自作農創設のために行う農地等の買収、売渡し等に関する事業、農地保有の合理化を促進するための事業に対する助成及び農業改良資金助成法の規定に基づく農業改良資金の貸付事業を実施いたしました。  第六に、国有林野事業特別会計であります。国有林野事業勘定につきましては、収納済歳入額は六千二百三十七億八千七百六十三万円余、支出済歳出額は五千八百十五億六千三百九十八万円余であります。この勘定の損益計算上の損失は一千六十五億七千二百三十九万円余でありまして、法律の定めるところに従い、損失の繰越しといたしました。治山勘定につきましては、収納済歳入額は三千七百十八億五千三百三十五万円余、支出済歳出額は三千七百十七億三千九百七万円余でありまして、歳入歳出差引き一億一千四百二十八万円余の剰余を生じました。この剰余金は、法律の定めるところに従い、翌年度の歳入に繰り入れることといたしました。  これにより、国有林野法に規定される国有林野の管理経営の事業及びその附帯業務に係る事業並びに治山事業の計画的推進を図る事業を実施いたしました。  第七に、国営土地改良事業特別会計であります。収納済歳入額は五千五百六十五億四千三百十八万円余、支出済歳出額は五千三百三十二億二千百九十七万円余でありまして、歳入歳出差引き二百三十三億二千百二十一万円余の剰余を生じました。この剰余金は、法律の定めるところに従い、翌年度の歳入に繰り入れることといたしました。  これにより、土地改良法に基づき、すべての国営土地改良事業、受託工事及び直轄調査に関する事業を実施いたしました。  以上をもちまして、平成年度の農林水産省決算説明を終わります。  なにとぞ、よろしく御審議の程お願い申し上げます。     …………………………………    平成年度決算農林水産省についての検査    の概要に関する主管局長説明                 会計検査院  平成年度農林水産省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、法律、政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項八件、意見を表示し又は処置を要求した事項一件及び本院の指摘に基づき当局において改善処置を講じた事項二件であります。  まず、法律、政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項について御説明いたします。  検査報告番号一六一号は、北海道が実施した地すべり対策事業におきまして、施工が設計と著しく相違していたため、排水路工等が工事の目的を達していないものであります。  検査報告番号一六二号は、新潟県が実施したかんがい排水事業におきまして、設計が適切でなかったため、橋台が不安定な状態になっているものであります。  検査報告番号一六三号は、山梨県東八代郡豊富村の中木原壮蚕飼育組合が地域農業生産総合振興事業により設置したモデル共同利用壮蚕用蚕室を補助の目的外に使用しているものであります。  検査報告番号一六四号及び一六五号の二件は、長野県が実施した災害関連緊急治山事業及び復旧治山事業におきまして、施工が設計と著しく相違していたため、モルタル吹付工が工事の目的を達していないものであります。  検査報告番号一六六号は、鳥取県が実施した漁港改修事業におきまして、施工が設計と著しく相違していたため、護岸工等が不安定な状態になっているものであります。  検査報告番号一六七号は、佐賀県東松浦郡鎮西町の上場農業協同組合が実施した畜産活性化総合対策事業におきまして、設計が適切でなかったため、擁壁が不安定な状態になっているものであります。  検査報告番号一六八号は職員の不正行為による損害が生じたもので、家畜衛生試験場鶏病支場におきまして、資金前渡官吏の補助者として小切手の作成等の事務に従事していた庶務課係員が、債権者への支払に当たり資金前渡官吏を受取人とする小切手を作成し現金化するなどして前渡資金を領得したものであります。  なお、本件については、五年九月までに同人が返納したり債権者に支払ったりしたことから、国の損害は全額補てんされております。  次に、意見を表示し又は処置を要求した事項について御説明いたします。  これは、飼料用外国産小麦の売渡しによるふすまの増産に関するものであります。  農林水産省では、家畜飼料の需給及び価格の安定を推進し、畜産経営の安定に資することを目的として、外国産の麦類、どうもろこし等の買入れ、売渡しを行っております。  その一環として、ふすまの需給不均衡を是正するため、昭和三十二年度から、外国産小麦を飼料用小麦として輸入し、この小麦から採取する小麦粉の割合を低くしてふすまを増産することとしております。  飼料用小麦は、主食用小麦と何ら異ならないものでありますが、ふすまの増産を図るため、玄麦重量に対して五〇%以上の歩留りでふすまを生産しなければならないなどの一定の売渡条件を付して、主食用小麦よりも低い価格で加工工場に売り渡されております。  そこで、飼料用小麦の売渡しを受けた加工工場において、売買契約で付された売渡条件を適正に履行して増産ふすまの生産を行っているかなどについて検査いたしました。  その結果、調査した五十七加工工場において、売渡条件に反して、売渡しを受けた飼料用小麦の一部を主食用に転用したり、五〇%に満たない歩留りではん砕したりなどしていて、飼料用小麦からの規定生産量の増産ふすまの生産がなされていない事態が見受けられました。  そして、そのうち二十三加工工場においては、規定生産量に不足する分の全部又は一部について、他社で生産された増産ふすまを購入して充てたり、増産ふすまの実物の伴わない取引を行ったりして、規定生産量の増産ふすまの生産、販売が行われたかのようにしていて、著しく適切を欠いていると認められました。  このような事態が生じているのは、各加工工場において売渡条件の履行について不誠実であったことにもよりますが、売渡条件の履行状況を確認するための食糧事務所の立入調査、財団法人日本穀物検定協会の検定等が実効性のあるものとなっていないこと、ふすま増産制度を取りまく状況が制度創設当時と大きく変化してきていて、現行制度が飼料用小麦の売渡数量、売渡条件、加工工場の配置等の面でその変化に十分適応できておらず不合理な状態が生じているのに、抜本的な見直しをしていないことなどによると認められました。  したがいまして、農林水産省におきまして、食糧事務所の立入調査、財団法人日本穀物検定協会の検定等を実効性のあるものとするために、要領の改正、加工工場等に対する指導体制の確立等の措置を講ずること、増産ふすまの生産の実態、当面の増産ふすまの需給見通し等を調査し、現行制度における飼料用小麦の売渡数量、売渡条件、検定規格等について、合理的なものに改めること、また、中長期的観点から、今後の飼料の需給見通し等を考慮した上で、加工工場の指定やふすまの増産の方法等、さらにはふすま増産制度全体の在り方について一定の期間内に検討を行い、抜本的な見直しを行うことなどにより、不適切な事態の再発を防止するとともに、より合理的に制度の目的を達成するよう是正改善処置を要求いたしたものであります。  次に、本院の指摘に基づき当局において改善処置を講じた事項について御説明いたします。  その一は、家畜伝染病予防事業及び家畜衛生対策事業に係る経理に関するものであります。  農林水産省では、家畜伝染病予防法等に基づき、畜産の振興を図ることを目的として、家畜伝染病予防事業及び家畜衛生対策事業を実施する都道府県に対し、その事業に要する経費の一部について、国庫負担金又は国庫補助金を交付しております。  今回、青森県ほか二十四県の百三十七家畜保健衛生所等において上記各事業がそれぞれ適正に区分して経理されているかなどについて調査しましたところ、事業ごとに区分して経理しておらず、また、各事業の実績額を把握することなく実績報告を行っていたり、事業と関係のない経費などを補助の対象としていたりしていて、国庫補助金等相当額計一億五千三百五十三万余円の交付が適切でないと認められました。  このような事態が生じていたのは、農林水産省において、県が事業ごとの実績額を的確に把握していなかったのにこれに対する指導が十分でなかったこと、補助対象経費の範囲を明確に示していなかったことなどによると認められましたので、当局の見解をただしましたところ、農林水産省では、六年十一月に都道府県に対して通達を発し、事業ごとに経理を区分し、事業実績額を的確に把握するよう指導の徹底を図るとともに、補助対象経費の範囲を明確に示すなどの処置を講じたものであります。  その二は、ブルドーザによる掘削押土費の積算に関するものであります。  林野庁では、林道開設工事を実施する都道府県、市町村等に対して毎年度国庫補助金を交付しており、その工事費は、林野庁制定の積算要領等に基づき算定しております。  この積算要領の土工に使用する作業機械を定めた表において、「掘削」と「押土」の欄にそれぞれブルドーザが記載されていたので、「掘削」と「押土」の各作業についてそれぞれ作業時間を算出するものと誤解して、これにより掘削押土費を積算しているものが見受けられました。  しかし、ブルドーザによる掘削と押土の作業は一連の作業として行われており、作業時間の算定式は、この一連の作業に要する時間を算出することとして定められております。このため、掘削作業と押土作業に区分し、それぞれにこの算定式により作業時間を算出すると、この算定式に含まれる固定の時間が重複し、これを基に掘削押土費を積算した場合には、固定の時間に係る費用が重複して計上されることとなります。その結果、積算額が過大になると認められましたので、当局の見解をただしましたところ、林野庁では、ブルドーザにより掘削押土作業を行う場合、掘削と押土を一連の作業として積算することを明確にして、掘削押土費の積算が適切に行われるよう積算要領を改正するなどの処置を講じたものであります。  なお、以上のほか、平成年度決算検査報告に掲記いたしましたように、国営木曽岬干拓事業により造成された干拓地について、並びに平成年度決算検査報告に掲記いたしましたように、水田農業確立助成補助金の地域営農加算額の交付及び農地保有合理化促進事業の実施について、それぞれ意見を表示し又は処置を要求いたしましたが、これらに対する農林水産省の処置状況についても掲記いたしました。  以上をもって概要説明を終わります。     —————————————    平成年度農林漁業金融公庫業務概況              農林漁業金融公庫  平成年度における農林漁業金融公庫の業務の概況についてご説明申し上げます。  国においては、二十一世紀という新しい時代に向けて政策の展開方向を示した「新しい食料・農業・農村政策の方向」等に沿って、生産性の高い農林水産業を育成するとともに、農山漁村の生活の質的向上と活性化を図ることを基本として諸施策が展開されました。  こうした国の施策に即応して、当公庫は、業務の運営にあたりまして、関係機関との密接な連携のもとに、農林水産業の生産基盤の整備及び経営構造の改善のための融資を推進するとともに、多様化する資金需要に対応して、融資条件の改善を含め、融資の円滑化に配慮してまいりました。  平成年度における貸付計画について申し上げますと、貸付計画額は六千億円を予定いたしました。  これに対する貸付決定額は四千六百四十二億一千四百五十七万円余となり、前年度実績と比較して十三億四千九百八十四万円余の減少となりました。  この貸付決定額を農業・林業・水産業に大別して申し上げますと 一、農業部門  三千三百億八千八百八十二万円余 二、林業部門  五百七十三億二千五百八十六万円余 三、水産業部門 五百五十二億六百九十五万円余 四、その他部門 二百十五億九千二百九十二万円余 となりまして、農業部門が全体の七十一・一%を占めております。  次に平成年度の貸付資金の交付額は四千六百二十四億一千七百六十五万円余となりまして、これに要した資金は、一般会計からの出資金三百五十億円、資金運用部からの借入金二千八百六十四億円、簡易生命保険からの借入金三百二十六億円、農業経営基盤強化措置特別会計からの借入金二十五億七千三百五十六万円余並びに貸付回収金等一千五十八億四千四百八万円余をもって充当いたしました。  この結果、平成年度末における貸付金残高は五兆二千四百四十億七千七百七十八万円余となりまして、前年度末残高に比べて七百三十五億五千六百十七万円余、一・四%の減少となりました。  貸付金の延滞状況につきましては、平成年度末におきまして、弁済期限を六か月以上経過した元金延滞額は四百四十八億五千七百五十九万円余となりまして、このうち一年以上延滞のものは四百三十億三百九十三万円余となっております。  次に平成年度における収入支出決算の状況についてご説明申し上げますと、収入済額は、収入予算額三千五百六十七億一千九十九万円余に対し三千五百十七億一千七百四十一万円余となりました。また、支出済額は、支出予算額三千七百十二億四千四百十四万円に対し三千五百五十五億八百四十七万円余となり、支出に対し収入が三十七億九千百六万円余の不足となっております。  最後に、平成年度における当公庫の損益計算の結果について申し上げますと、貸付金利息等の総利益は三千八百二十七億五千六百十七万円余、借入金利息等の総損失は三千八百二十七億五千六百十七万円余となり、利益と損失が同額となりましたため、利益金はなく国庫納付はありませんでした。  これらの業務の遂行にあたりましては、常に適正な運用について、鋭意努力してまいりましたが、平成年度決算検査報告におきまして、農地等取得資金等の貸付けにつきまして不当事項として指摘を受けたものがありますことは、まことに遺憾に存じております。指摘を受けました事項につきましては、直ちに適切な措置を講じましたが、今後、このような事態の発生を防止するため業務運営の適正化に一層努める所存であります。  以上が、平成年度における農林漁業金融公庫の業務の概況であります。なにとぞよろしくご審議のほどお願いいたします。     …………………………………    平成年度決算農林漁業金融公庫について    の検査概要に関する主管局長説明                 会計検査院  平成年度農林漁業金融公庫決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、法律、政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項四件であります。  検査報告番号二一八号から二二一号までの四件は、農地等取得資金等の貸付けが不当と認められるものであります。  これらの資金の貸付事業は、農林漁業者に対し、農林漁業の生産力の維持増進等に必要な長期かつ低利の資金で、一般の金融機関から融通を受けることが困難な資金を直接又は金融機関に委託して貸し付けるものでありますが、農地等取得資金等の貸付けに当たり、借入者から事実と相違した内容の借入申込みや事業完成報告がされるなどしていたにもかかわらず、これに対する審査及び確認が適切でなかったなどのため、貸付金額を過大に算定するなどしているものであります。  以上、簡単でございますが説明を終わります。     —————————————
  21. 佐藤静雄

    佐藤主査 以上をもちまして農林水産省所管農林漁業金融公庫説明は終わりました。     —————————————
  22. 佐藤静雄

    佐藤主査 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。初村謙一郎君。
  23. 初村謙一郎

    ○初村分科員 新進党の初村謙一郎でございます。  金融特別委員会に大臣も御出席ということで、きょうは政務次官、それから局長さん、総務審議官、お越しをいただきまして、ありがとうございます。  まずお聞きをしたいことは、実は平成二年ぐらいから工事が始まっております長崎県の諌早湾干拓事業でございます。干拓事業は、今の農業の状況でまだ干拓をやって営農をやるのかというふうな非難もありましたけれども、この諌早湾の干拓については、昭和三十二年の諌早湾の水害の防止、要するに、干満差が非常にひどくて、満ち潮のときに大雨が降ると、一級河川である本明川から水が流出しない、市内全体が水没してしまうという状況の中で、昭和三十年代から南部総合開発、それから諌早湾防災総合干拓事業というふうに、防災を主眼に置いた干拓事業であるという認識を私はいたしておりますけれども、いつしかこの防災干拓事業の名称すら諌早干拓事業というふうになっておりますけれども、農林省としてこの干拓事業の必要性といったものをどういうふうに認識をされているのか、お聞きをしたいなと実は思っております。  平成二年に外堤防のくい打ちが始まりまして、この周辺地域は実は非常に地盤が弱くて、大きい石をぽんと投げると、例えば隣の町がぽんと畑が浮き上がったとか、軟体動物的に非常に地盤が弱いわけでありまして、一部漁民の間では実は八大竜王という話がありまして、海を扱うと山が怒るんだというふうな話がありました。  時を同じくして、平成二年の干拓事業の着工と同時に、雲仙・普賢岳が近隣でありますので、噴火をし始めたという話がありました。実は私も農林水産委員会で、この干拓事業と雲仙・普賢岳の関連性といったものがあるのではないかということで委員会で質問通告をしましたら、国土庁の防災課長さんが、農林省の事業だから国土庁は関係ないよということで、質問通告をしたにもかかわらず、お見えになりませんでした。  役所というのはそういった縦割りなのかなという感じがいたしておりますけれども、いずれにいたしましても、この諌早湾の干拓事業の必要性とその認識について、農林省からお伺いをしたいというふうに思っております。
  24. 野中和雄

    ○野中政府委員 諌早湾の干拓事業でございますが、昭和六十一年度に農林水産省の直轄事業として着工したものでございまして、諌早湾の奥部の三千五百五十ヘクタールを延長約七キロの潮受け堤防で締め切りまして、千八百四十ヘクタールの干拓地と千七百十ヘクタールの調整池を造成をしようとするものでございます。  この必要性でございますけれども、先生もよく御承知のとおり、事業の行われております長崎県は、県土の四五%を離島が占める、また地形的に平たんな農地が乏しいというようなことから、優良農地の維持、確保が厳しいというような宿命的な地形条件を負っているわけでございまして、本事業によりまして、かんがい用水の確保がされました生産性の高い農地を創出をするということは極めて重要なことであるというふうに考えております。  それと同時に、まさに今先生がおっしゃいましたように、防災的な観点の必要性が非常に高いわけでございまして、諌早湾地域は昔から干拓で発達をいたしました低平地が多いわけでございます。洪水や高潮、排水不良などの災害に悩まされ続けてきたわけでございまして、今回、潮受け堤防と調整池によりまして、これら災害に対する本地域の総合的な防災機能を強化をしようということでございます。  具体的に申し上げますと、一つは、高潮対策といたしまして、潮受け堤防によりまして、大潮時にも過去の最大の規模の台風が通過をしても耐えられるようにするというようなこと。それからまた、洪水対策といたしましては、昭和三十二年に同地域の本明川の洪水で未曾有の五百三十九人という亡くなった方が出てしまった災害、諌早大水害があるわけでございますが、こういったものにも対応できるだけの調整池の容量を確保しようというようなことでございまして、まさに防災の効果を非常にねらったものということでございます。  私どもといたしましては、一日も早い防災効果の発現、事業の早期完了に向けまして、今後とも事業の円滑な推進に努めてまいりたいというふうに考えております。
  25. 初村謙一郎

    ○初村分科員 私は、実は、昭和五十九年から長崎の県議会におりまして、この干拓事業の特別委員長もさせていただきました。この干拓、要するに、今の農業を取り巻く環境の中で、あれだけ大きな土地をつくって、しかも後でお聞きをしたいと思いますけれども、総事業額を単純に入植者の数で割って、本当に幾らぐらいで入植できるのか。実際農業を営んでそれがペイするのかどうかということを考えたときに、果たして農業が成り立つのかなという感じがするわけであります。  しかし、ここに住んでおります地元の、私もそうでありますけれども、地元の住民は、防災だ、防災を実は主眼に置いた事業であるということで、南部総合開発という当初の規模からしてかなり圧縮した小規模になった形で実は妥協をいたしました。  昭和五十八年だったと記憶しておりますけれども、当時の金子農林大臣が、この干拓事業を実は打ち切りました。そして地元が、防災ですよ、防災を主眼に置いた事業ですよということで涙を流しながら、当時の金子大臣が防災事業としての干拓事業推進していただいたという経緯があります。その経緯を考えて、今名称すら防災という言葉が除かれました。これは農林省の中にも防災という観点はないのかもしれませんけれども、実は農林省が進めておりますこの干拓事業で防災という必要性を前面に出さないものですから、という私は解釈をいたしておりますけれども、いろいろな問題が実は地元で起こっております。  実は、有明海は長崎、佐賀、熊本、そして福岡県、四県にまたがった海であります。その形からしても、また魚介類のふ化の状況から見ても、海の子宮であると言われるぐらいに稚魚あるいは稚貝が育っております。そこで干拓をやる、環境破壊じゃないかという問題が一つ出てきております。  陸上を見ましても、ハママツナ、もう一面赤くじゅうたんを敷いたような植物が咲きますし、日本の野鳥も珍しいものがあります。干潟の上を見ましても、珍しいムツゴロウという魚もおります。海中を見ましても、タイラギというおいしい二枚貝がありました。これが、干拓事業が始まりましてから実は不漁になっております。その不漁すら、この干拓事業が実は原因だというふうなことが漁民の中から出ておりまして、実際私も海中の写真を見ました。非常に濁っております。  当然ながら影響があるのかなという感じがしておりますけれども、しかしながら、これは諌早全体の防災であるという認識を持っておればこそ我慢できるものなんですね。人命の方が重要であるという認識に立ては、私は、これは我慢できると思うのでありますけれども、しかしながら、農林省はどうも、まあ人事がかわってその経緯がわからない方もおられると思いますけれども、主眼として防災に力点を置かないと地元の皆さんに説得ができないのではないかなという感じがいたしております。  そこで、先ほどもちょっとお聞きしておりますけれども、営農計画はどういうふうになっておるのか、それから、もし資料がありましたならばお教えいただきたいと思いますが、一農家当たり入植者がどれくらい入植料を支払って、実際ペイできるのかどうか、その辺をお教えいただきたいと思います。
  26. 野中和雄

    ○野中政府委員 本事業の営農計画でございますけれども、この地域は長崎県下でも非常に優良な農業地帯でもございます。この事業は、先ほども申し上げましたように、私どもは、防災効果も非常に大きな目的をなしているというふうに考えておりますけれども、同時に、この事業によりまして大規模な生産性の高い農業経営の実現も目指しているわけでございます。  そこで、この事業に当たりましては、当然土地改良事業計画というのをつくっているわけでございますけれども、そういう中の営農計画におきましては、干拓地の立地条件あるいは周辺の農業生産の状況あるいは地元の方の御意向等を踏まえまして、野菜とかあるいは酪農、肉用牛肥育といったような営農計画を立てまして計画をしているところでございます。  農家一戸当たりどのぐらいの価格になるのかというお話でございますけれども、ただいま申し上げました土地改良事業計画、これは六十一年に決定をいたしたものでございますけれども、これによりますと、配分価格としては十アール当たり八十四万五千円、これは事業費、それから入られる戸数、面積等で計算するとこういうふうになるわけでございますが、これが現時点でいいますと若干高くなっているだろうというふうに試算としてはされるわけでございますが、百十三万四千円ぐらいではないかというふうに試算をいたしております。  いずれにいたしましても、この地域におきますいろいろな価格等から見まして、この事業によります、先ほど申し上げましたような野菜等の規模の大きな経営を実現をしていくということで十分経営が成り立っていくものというふうに考えているわけでございます。
  27. 初村謙一郎

    ○初村分科員 今言葉では大規模な野菜とか肉用牛とかという話で、北海道じゃないわけですから、大規模に肉用牛をやって果たしてどうなのかな、じゃ、野菜を大規模にやって本当に、今十アール当たり百十三万、百万超えていると私は思いませんでしたけれども、これで本当に入植者の方がおられるのかなという感じがしております。  これは地元ともよく協議をされて、本当にしっかりとした農業の指針を示しながら、日本の農業をこうやっていくのだ、その中で干拓ではどういうことをやっていくのだという指針を示しながら、ぜひ協議を進めていただきたいなというふうに思っております。  それから、もう一つ、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、実は採砂ですね、サンドコンパクション工法という工法で実は外防がつくられておると思います。私も、ダイビング協会の会長をしている関係で、水中に潜っていただいて写真撮影をいたしました。特殊な機械でありまして、その砂によって起きる粉じんみたいな、海中で起こりますけれども、非常に濁っております。当然、船底にスカートみたいなものをはかせて、砂をこうやって打ち込まれるわけですけれども、それでもやはり濁ってしまうのですね。当然ながら、その微粒子が稚貝に影響をして、一晩で数十万とか月に何百万と揚げていたタイラギ漁がとれなくなっている。  これはかなり影響があるのではないかという心配をしまして、地元の干拓事務所、それから九州農政局にも、数年前にも実態を調べてくれというふうなことを言いまして、いや、影響ありませんよというふうなお答えでありました。実際、干拓事業が始まってからやっている。しかも、その稚貝が育つところにちょうど砂がとれるスポットがあるわけですけれども、湾内の近いところでそういった砂をとる。  外から砂をとることはできないのですか、陸上から砂を運ぶことはできないのですか、あるいはもう少し沖の方の影響のないところで、漁業に影響のないところで砂をとったらどうですかという話もしましたけれども、予算が高いですと。しかし、むしろそういった予算よりも、環境の問題であるとか、あるいは漁業者に迷惑をかけているという現状の認識からすれば、私は、当然そうしてしかるべきではなかったのかなというふうな感じがいたしております。  昨年の暮れに、これは新聞の書き方もちょっとおかしいと私は思うのでありますけれども、干拓の関係者が、タイラギの不漁は工事の影響であるという趣旨の発言をしたとかしないとかということがあります。しかし、前提として防災である、しかもこのタイラギの分も含めて、農林省は漁業補償もしているという観点に立ては、むしろそれはそれとして認めながら、環境を汚染しない、あるいはできるだけ漁民にも迷惑をかけない方法で砂をとる方法があるのではないか、海中からあるいは海上から運ぶことができるのではないかというふうに私は思っておりますけれども、その辺はどうでございましょうか。
  28. 野中和雄

    ○野中政府委員 お話しのとおり、現在、堤防への盛り土用の土といたしまして、しゅんせつ船によりまして砂をとっているわけでございますけれども、これのいろいろな影響ということが心配をされる点は、お話しのとおりでございます。  私どもといたしましては、まさに先生よく御存じでございますが、お話の中にもございましたが、潮流によりまして濁りが拡散をするのを極力抑えます意味から、砂をとります場合に、その周りに汚濁防止膜をめぐらせまして、砂がそれより外にできるだけ流れていかないようにして作業を行っているというような状況でございます。  また同時に、この作業をしておりますときに、当然濁りが出ないかどうかをきちっと監視をする必要があるわけでございまして、私どもといたしましては、特定の地点も定めまして、定期的に濁りがないかどうかの測定を行いながら作業を行っているというようなこともさせているわけでございます。  また同時に、先ほど申し上げました、砂をとる場合の周りの防止膜でございますが、この使用に当たりましても、潜水士の方にお願いをしまして、汚濁の防止膜が海底にきちっと着底をしているかどうかというようなことで確認を行いながら、流出の防止について慎重を期して作業を行っているというところでございます。  先生のお話にもございましたように、私どもといたしましては、この事業、まさに防災的な観点からも地域のために非常に重要な事業であるというふうに考えているわけでございます。同時に、そういった面での漁業等への影響、先生もお話しのとおり、漁業補償もいたしておりますけれども、同時に、いろいろな影響がないようにするということが極めて大事でございますので、今申し上げましたような方法等によりまして、今後とも、砂をとるときには十分注意をしながら工事を実施をしてまいりたいというふうに考えております。
  29. 初村謙一郎

    ○初村分科員 当然水質の調査もしていただいております。濁りも見ていただいております。それから、さっきの防止膜ですか、スカートみたいなものをこうやっていますけれども、それでも出ているのですよ。ですから、海上からあるいはほかの水域から砂をとったらどうですか、砂を運んだらどうですか、どうしてできないのですかということを言っているのです。  これはなぜかといいますと、こういった小さい問題が、まあ小さいと言ったら失礼になりますけれども、いろいろな問題が実は今地元で——防災という名前も変わりました、そういったところをもっと農林省が力説していただきたいのですけれども、もう完全に、市民運動として実は反対運動が起こっております。  中には、今からの時代にこれだけ大きな農地をつくるのであれば、要らないのじゃないか。あるいは、そんな大きい調整池があるのであれば、ボート場でもやったらどうだろうか、いや農林省は競馬場が主管みたいだから干拓地で競馬でもやったらどうだろうかという冗談みたいな話まで実は起こっております。あるいは、その締め切り堤防も、環境の影響を考えれば、橋にしてやろうじゃないか。また、それを学者の方が設計図まで引いて、こういうふうにやれば環境は保全されますよというふうな話になっているのです。  だから、そういったものも数年前から私は地元で言っているわけですから、なぜそういった検討をされないのか。濁りの調査をやられるのは当然なんです。調査をやっても濁っているのです。防止膜をやってもやはり濁っているのです。それが影響しているのではないかな。そういった問題が、種々の、環境問題だけじゃなくて、漁業対策の問題あるいは地元のいろいろな関連企業の問題を含めて、そういったものが集合体になって、だんだん反対運動が起こっているということなんです。  私が一番心配しておるのは、住民の防災なんです。防災事業としての観点に力点を置いてぜひやっていただきたいというふうに思っておりますけれども、この辺の砂の問題はどうでしょうか。
  30. 野中和雄

    ○野中政府委員 砂の問題でございますが、現在砂をとっておりますところをやめるということになりますと、実はコスト的に非常に負担が大きくなってしまうということでございまして、この事業全体の推進にも大きな支障を及ぼしかねないというようなことがあるわけでございます。  私どもといたしましては、先ほども申し上げましたように、砂をとるに当たりまして、できるだけ濁りを発生させないような方法をとる、それから、当然でございますが、漁業者の方の意向も踏まえて砂をとる位置を確認をするというようなことを引き続き一層やりまして、これらの点に十分配慮をした推進を図っていきたいというふうに考えております。
  31. 初村謙一郎

    ○初村分科員 今コストでというふうなことをおっしゃいましたけれども、恐らく成田空港と一緒になりますよ。今市内で起こっている、あるいは周辺で起こっている反対の市民運動の状況をよくつかまれてください。事業ができなくなるというふうな認識を、ほんのわずかのコストのためにこの事業がつぶれてしまう可能性があるということを私は申し上げておきたいというふうに思います。  それから、今言われた答弁は、私が数年前から聞いている答弁と全然変わらない、残念ながら変わらないということであります。  それから、ちょっとお聞きしますが、きょうは建設省の方にもお見えをいただいております。農林省の事業とは関係ありませんけれども、実は、こういった大型の、雲仙の復興事業あるいはこの諌早干拓事業といったもので、もう雲仙も、きのうですか、完全に活動停止というふうな発表をされましたけれども、こういった大型事業における地元の期待というのは、公共事業によって地元が景気づくのではないか、潤うのではないかというふうなことでありますけれども、実はこの諌早湾の干拓の問題でも、なかなか地元発注、受注ができない。干拓事業が始まっても、町が活気づくということも全然ない。あるいは、雲仙についても、非常に悲惨な目に遭った中でこれから復興だということで、また同じことを繰り返すのではないかというふうな感じがいたしております。  こういった公共事業について、地元の業者を優先的に発注するということができるのかどうか。あるいは、事業の技術によってできないこともあるというふうに思いますけれども、例えば諌早湾と雲仙、地元企業への優先発注についてこれまでどういうふうな要望があり、どういうことをされているのか。それから、特に雲仙復興についてはどれくらいの比率で地元に発注されているのか、この辺、ちょっとお聞かせいただけませんか。
  32. 小澤敬市

    ○小澤説明員 今、地元を中心といたします中小あるいは中堅の建設業者への発注の問題についてお尋ねがございました。  建設省におきましては、従来、建設業者の大宗が中小業者でございますから、そういう中小業者の受注機会を確保していくということは、やはり地域経済を活性化させていくためにも非常に重要な課題であるというふうに認識いたしております。  このような観点から、これまでも、中小、中堅業者が受注対象となるような工事に他の建設業者 が参入しないような発注標準というランクがございますけれども、そういうランク区分を遵守するようなこととか、あるいは中小の建設業者の方の受注が可能となりますように分離分割の発注を推進するといったようなことで中小建設業者の受注機会の確保に努めてきたところでございます。  先ほど、具体的に雲仙の復興事業についてのお尋ねがございましたが、建設省の直轄事業におきましては、現地には雲仙復興工事事務所を設けてございます。そこで雲仙岳の噴火災害により被災されました地域の復興を目指して、砂防事業、道路事業を行っておるわけでございます。その工事事務所が実施する工事につきまして、平成年度の発注件数は約九十件、発注金額で百二十億になってございます。そのうち、件数ベースで約六割、金額ベースで約三割が長崎県内に本社を有する中小建設業者に発注されているところでございます。  こういった災害の復興事業につきましては、地元の地形とか地質とかそういった地理的条件にいろいろ精通なさった業者が施工することが適している工事も多いかと存じますので、そういった施工能力を勘案しながら、今後とも地元を初めといたします中小建設業者の活用に努めさせていただきたい、こう考えている次第でございます。
  33. 野中和雄

    ○野中政府委員 諌早湾の推進につきましての地元企業への優先発注でございますが、その点につきましては本当にできるだけ配慮したいというふうに私どもも考えているわけでございます。  現在潮受け堤防の工事をしておりますが、これに必要な石材等の資材につきましては可能な限り地元の資材を使用させていただいているということでございまして、石材、購入砂とも八割以上地元の県内の方からお願いをしているというような実績を有しているところでございます。  ただ、現在工事の大きな部分を占めております潮受け堤防工事でございますが、これは先生もよく御承知のとおり、大変高度な技術を要するものでございまして、かつ、大規模な工事であるというようなことでございますので、施工業者の選定に当たりまして、相応の条件が整っているというようなことが必要であるわけでございます。  そういう意味で地元にお願いをする率が少なくなっているわけでございますが、関連する道路工事等の一般的な土木工事につきましては、地元の実情にも精通をしておられます地元の企業に優先して現在も発注をしているという状況でございます。  私どもといたしましても、今後とも、地元企業の活用につきまして可能な限り対応をいたしたいというふうに考えております。
  34. 初村謙一郎

    ○初村分科員 建設省も農林省もできるだけ地元に発注してやってください。非常に衰退しております。県民所得でいうと、東京のちょうど半分しかないというのが長崎県の実情であります。  それから、特に、この前、九州地方建設局、九州地建というのですか、電話しましたら、金額によってランクが違うのだ。そうすると、例えば地元に出さない、出さないというとおかしいのでしょうが、今農林省が言われたように、技術が伴っていなければだめですけれども、できるだけ地元に発注できるように、細かく金額も割れるのであればやっていただきたい。工事の関連性もあるというふうに思いますけれども、ぜひ地元を優先していただきたいなというふうな要望をしておきたいというふうに思っております。  それから、もう一つ通告してあります進入路の建設の件ですが、これは、さっきも言いましたように、どうも私の感じでは、この干拓事業、成田のような大きなコストを国は払わされる可能性があるような感じがしましたので、質問も要望もいたしません、大変なことにならないように、ぜひ十分に注意されていただきたいと思います。  以上です。
  35. 佐藤静雄

    佐藤主査 これにて初村謙一郎君の質疑は終了いたしました。  次に、矢上雅義君。
  36. 矢上雅義

    矢上分科員 新進党の矢上雅義でございます。  本日、特産品対策、産地形成ということで農水省も取り組んでおられますので、イグサの問題、そして生鮮野菜の原産地表示義務づけについて質問をいたしたいと思います。  まず、イグサの振興策についてでございます。  特に、日本の生活様式の多様化ということで洋風化も進んでおるということで、畳の需要が減っておるとかいろいろございます。中国からも輸入が急増しておる。そういう中で、地元に帰りますと、九州の基幹産業、熊本の基幹産業でありながら、四十代の働き盛りの生産者が、もうからぬからもうやめたいとか、また、お父さんの手伝いをして兼業農家として頑張っておられる若手の後継者の方も、おやじが後を継げと言うけれども今勤めておる会社をやめてまでイグサ農家の後を継ぐ気にはならないとか、そういうことで、五年後、十年後には熊本人代地方のイグサ農家は衰退していくのではないかという危険が出ております。  その中で、今回、イグサや畳表の輸入がふえてきて国内の生産農家も苦境に立たされておりますので、近年の国内の生産及び輸入の推移をどのように把握しておられるのか、まずお聞きしたいと思います。
  37. 高木賢

    高木(賢)政府委員 まず、国内生産量あるいは輸入量の推移でございます。  近年のイグサの国内生産は、昭和六十一年から元年まで増加をいたしまして、平成二年以降は減少傾向で推移しております。平成七年の数値を申し上げますと、栽培面積で約六千ヘクタール、生産量で七万トンということでございます。  イグサの輸入でございます。  まず、原草としてのイグサの輸入量は約千七百トンということで、近年横ばいで推移をしております。それから、もう一つの輸入の形態でありますイ製品の輸入量でございます。これは、平成三年以降、三、四、五と増加をしてまいりましたけれども、六年、七年につきましては三万八千トン程度でございまして、横ばいで推移をいたしております。
  38. 矢上雅義

    矢上分科員 局長のお答えのように、六十一年から七年までは、作付面積、生産量は横ばいで推移しておるようでございますが、私の手元にある資料では、昭和五十年の国内生産量が九万三千五百十八トン、そして平成元年が九万六千二百七十八トン、平成七年が約七万トンということで、約三割近く国内の生産量が減少しております。  また、輸入量としましては、昭和五十年の千八百八十二トンから、先ほどイ製品で約三万八千トンと申されましたが、これが大半中国から来ております。九九%中国から。輸入量は約二十一倍と、物すごい勢いがついております。  需要の方は約十万トンということで大差はないのですけれども、もう押されて、結局輸入がふえた分だけ国内生産量が減って、減った現状で横ばいの状態である、それがここ数年間の統計から出る答えではないかと思っております。  続きまして、こういう現状を踏まえて、イ製品等の関税は他品目に比べてどうなのか。次の質問でも出ますが、主に、輸入攻勢にさらされておる生鮮五品目とかその他の類似の加工品目についての比較をお聞きしたいと思います。
  39. 高木賢

    高木(賢)政府委員 イ製品の関税は、現在六%でございます。  今お話のありましたほかのものとどうかということでございますが、例の五品目につきまして申し上げますと、ショウガが四・二%、ニンニクとブロッコリーがそれぞれ四・三%、生シイタケが四・八%、それから里芋はちょっと多くなっておりまして一三%でございます。それから、麦わら帽子の原料であります麦 真田が三・〇%、すだれが三・九%、むしろが無税ということでございますから、里芋はかなり高いのですけれども、その他と比べると若干イ製品の方が高いということでございまして、特にほかの品目と比べてイ製品の関税が低いということはないと思っております。
  40. 矢上雅義

    矢上分科員 私は疑問に思うわけですが、先ほど申しました生鮮五品目も輸入が急増しておる。またイ製品も急増しておって、関税率六%。私もちょうど半年ぐらい前に調べて、六%ということで意外でびっくりしたのですけれども、これから消費税が五%、一〇%と上がろうという時代に関税率が六である。  それに対しまして、今回ガット関係で自由化されたものの中には、畜産品関係でも五〇とか四〇とかそれぞれ高率のものがございます。もともと畜産品関係で輸入攻勢が予想されるものは最初から高目に関税が想定されておりますが、こういう身近なもの、特に生鮮野菜物なんかは、まさかという形で低く最初から設定されておる。全く無防備の形で生鮮野菜類またイ製品等、輸入攻勢にさらされているわけでございます。  例えば生鮮野菜におきましても、塩蔵野菜類が平成元年二十二万七千トンから二十五万四千八百八十トン、一・一二倍の増、これは比較的横ばいになっております。続きまして、冷凍物が平成元年十九万六千トン、それが平成七年には三十七万八千トンと二倍になっております。また、運送技術の発達により生鮮野菜の輸入も急激にふえておりまして、平成元年の二十二万九千トンから平成七年の七十万八千トンと三倍にふえております。予想もしなかった状況が急激に、特に平成元年から平成七年の間に起きておる。  そういう中で、関税がこれだけ低い。当然予想してなかったわけですから対応してなかった。そうなると、産地形成するまでの、また国際競争力をつけるまでの時間が関税そのものではなかなか稼げないということになるのではないかと思っております。予想外の出来事として関税以外の部分での手厚い支援対策が必要ではないかと考えておりますが、これについて感想をお聞きしたいと思います。
  41. 高木賢

    高木(賢)政府委員 いろいろな問題があることは御指摘のとおりだと思います。ただ、やはりイグサにつきましては、日本人の生活に欠くことのできない産品であるということで根強い需要があると思っておりますので、このイグサ生産の振興を図るということは大事な課題であるというふうに思っております。  そのために、私どもといたしましても、いろいろな手段を使いまして、例えば特に労働時間で多くのウエートを占めております移植過程、これについての機械化の促進でありますとか、あるいは共同乾燥施設を導入して生産性の向上を図るとか、あるいは優良品種を育成したり栽培加工技術を改善して国産品のいわば差別化を図るということでお得意さんを確保する、こういうことにも取り組んでいるわけでございます。  特に、先ほど冒頭にも申し上げましたが、機械化の促進ということが労働時間の短縮あるいは労働強度の軽減という観点からも非常に大事な問題であると思っておりますので、この辺を重点に今後とも取り組んでまいりたいというふうに思っております。
  42. 矢上雅義

    矢上分科員 今のお話を整理しますと、農産物の政策に共通しておる機械化による労働時間短縮、また品質向上により付加価値をつけて差別化を図る、それと、でき過ぎによる需給とか価格の安定を図るための計画生産等も入ると思います。  ただ、イグサ生産自体、またイ製品自体は、一般的には他作物に比べ収益性はあると言われております。資料等を見ておりますと、収益は米の二倍であるが労働時間が四倍でございます。米よりか二倍もうかるわけですから非常にいいのですけれども、労働時間が一反当たり四十時間のものがイグサでは約百六十時間と約四倍近い差が出ております。  そのように、大変もうかるけれどもきつい仕事である。そういうことで、稲作の場合には兼業農家ができますので、お父さんが専業、息子さんがサラリーマンであっても、後、農地を引き継いで稲作経営を引き継ぐということが可能ですが、なかなか今の状況で十二月に——ついこの間までは、今もそうですけれども、手で苗を植える、そして七月の暑い時期に刈り取る。刈り取り作業は機械化が進んでおります。そしてまた、原草をもとにして泥染めして、また加工して畳表にして出す。労働時間が米の四倍もかかるとなると、兼業農家の息子さんが後を継いでイグサをやるという動機づけにはなかなかなりにくいと思います。特に九州では働く場所が、今どんどん産業の空洞化で外国に出ております。せっかく勤めておる職場をやめてまで先行きの見えないイグサ生産を親の後を継いでやるかというと、非常に厳しい状況があります。  そういうことで、専業農家規模拡大のため、先ほどの点を政策としてやっていかれるおつもりなのか、また兼業農家でも十分イグサ生産を担い得るような機械化なりこういうシステムづくりをされていかれるのか、またそういう複合的なことも含めてお答えいただければと思っております。
  43. 高木賢

    高木(賢)政府委員 経営形態をどうするかというのは、今お話のありましたように、それぞれの産地なり農家の選択であろうと思います。  いずれにしても、御指摘の一番労働時間が長いという点を何とかせねばいかぬということで、大産地の熊本県の各町村におかれましても、移植機の導入ということに非常に熱心に取り組んでおられると思います。そうしたものの有効利用をしていただいて、労働時間を短縮し、労働強度を軽減するという方向でそれぞれの農業者が取り組んでいただければと思っております。
  44. 矢上雅義

    矢上分科員 先ほどまでは生産振興対策の質問をいたしました。続きまして、畳表の需要拡大策についてお聞きいたします。  このイグサの世界というのは、早い時期から自由化の波にさらされておりますし、しかも関税率も低い。勉強すればするほど、産業として、ビジネスとしての振興策が急がれるというのは、私も認識しております。そして、先ほど質問しました経営形態におきましても、主産地なりその主体である農家がどう判断するかということも大きなことでございますが、ただ、畳表自体の需要が拡大されていきませんと、つくってもなかなか売れない、そういう問題もございます。一般的には新規住宅への畳の普及とか既存住宅の畳がえ需要の拡大とかったわれておりますが、この二点の取り組みについて、また現状認識等、お聞かせ願えればと思っております。
  45. 高木賢

    高木(賢)政府委員 畳表の需要拡大ということは、やはりマーケットの確保ということが非常に大事なことだと思います。そういう観点から、イグサの生産者団体に今助成を行っておりまして、例えば展示会の開催でありますとかPR用の印刷物の作成配布、それから、特に先ほど差別化ということも申し上げましたが、国産品である旨の表示を推進をいたしまして、需要拡大対策を推進しているというところでございます。  需要拡大で、今なかなか新規の住宅の着工というのは、景気のこともありまして横ばい傾向で、新しくうちを建てるというのが百数十万戸台で、大体横ばいであると思います。また、最近の洋風化の傾向がありまして、例えばマンションなんかでも、大体広告を見ておりますと、一戸に一室ぐらいしかないというようなこともございます。むしろ戦略的には、既存住宅の畳がえの需要、こういうところに重点を置いて、そのPRも進めていく必要があるのではないかというふうに考えている次第でございます。
  46. 矢上雅義

    矢上分科員 新規住宅の着工数も確かに百五十万台から百二十万台、相当揺れがあってなかなか伸びがない。  今おっしゃったように、既存住宅の畳がえ需要の拡大ということでございますが、これは本当に必要なことで、これは実は私のアイデアではないのですけれども、地元の熊本県選出の参議院議員の守住有信先生がおられます。その方といつもお話しするのですけれども、行政のできる部分、また生産者、生産者団体がしなければならない部分、仕分けをはっきりやりませんと、すべて行政が何かしてくれるのではないだろうか、そういう発想に陥りがちでございます。  そういうことで、きちんと仕分けをするという意味で、例えば各種イベント、PR事業の中で、国、県、そしてまた生産者団体が、保健衛生の向上運動として、敬老の日に独居老人の家や老人施設を訪ね、畳を上げて大掃除をして、そこで畳がえの受注を受けるなど、それをメディアを通して行っていくような、本当にメディアを利用した畳がえの需要を掘り起こすキャンペーン事業というものを積極的に取り上げていかなければ、これもある意味では生産者とか生産者団体が積極的に動かなければならないところでございますが、なかなか今の時点では動きが鈍いということもございます。  そういう角度からも、農水省としてぜひキャンペーン事業促進をしていただければと思っております。感想をお聞かせ願えればと思っております。
  47. 高木賢

    高木(賢)政府委員 まさに需要拡大というのは実業の世界でありますので、官主導というのはなかなか難しいと思います。ですから、いろいろなお知恵があれば、その中でまた行政として支援できるものがあれば、これはお手伝いをしていくという考えでおるわけでございます。
  48. 矢上雅義

    矢上分科員 これは、イグサに関しましては最後の質問でございますが、小平政務次官に御要望でございます。  実は先ほどから申しますように、関税率自体が六%で低過ぎる、また、輸入量が急増して国内生産者を圧迫しておるというような現状が数年続いております。ただ、その状況もよくなったり悪くなったりと変動も激しいです。変動も激しゅうございますが、長期傾向を見ればだんだん落ち込んでいくということも事実でございますので、地元としましては、関税のセーフガード適用もいざというときには思い切ってやってほしい、そういうセーフガード適用も念頭に置いた行政をやっていただきたいということでございますので、どうか政務次官の決意なり感想なりをお聞かせ願えればと思っております。
  49. 小平忠正

    小平政府委員 今のイグサの件でありますが、これは矢上先生の地元にとっては基幹産業、大事な点であり、また一点では、我が国においては住宅の洋風化等によって畳の需要はいまいちという問題があります。そこで、今御指摘の輸入における関税の問題は、こういう中ではありますが、今局長から答弁があったように、ほかのものとの比較をしましても、私は今のところが妥当な線であると思っています。  しかし、とはいいながら、こういう自由化の波あるいはまた消費税の見直しの問題、こういう中で検討すべき課題であることは承知をしています。そういうことを踏まえながらも、これは各般にわたりますので検討していきたい、こう思っております。
  50. 矢上雅義

    矢上分科員 続きまして、生鮮野菜の原産地表示義務の問題に移りたいと思います。  特に、先ほども申しましたように、生鮮野菜の輸入が、平成元年の二十二万九千トンから平成七年の七十万八千トンと、約三倍の急増をしておる状況が一つございます。また、私たち地元である熊本に行きますと、タケノコとかショウガが中山間地の特産品ということで、収入の大きな糧となっております。それで、ここ最近生活も非常に圧迫されておったわけでございますが、つい先日、タケノコの時期で地元を回りまして、ことしはどうですかとお聞きしますと、去年ぐらい中国とかから入ってきたタケノコとかショウガがどうも筋が多くて評判がよくなかった、余り評判がよくないのでことしの輸入量は大分減ってきておるようだということを地元でお聞きしました。  そういうこともございまして、消費者にとってどういう品質が確保されるのか、その安心感、そしてまた安全性の問題、いろいろございます。消費者にとって食料品の安全性や品質に関する情報というのは重大な関心事でもございます。その点から、身元のはっきりした国内農産物を購買したいという人も多い現状があります。ただ、店頭で一日で国内農産物と外国産とを区別できるような表示が必要であることは言うまでもありませんが、今回農林水産省としても積極的に取り組まれて、ことしの夏ごろまでにはきちんとした結果が出るであろうと言われております。  そして、今回、大体アウトラインが出ておりますが、青果物原産地表示の充実に関して、その原産地表示義務の対象になぜ五品目が限定して選ばれておるのか、その理由なり制度の趣旨についてお聞きしたいと思います。
  51. 中須勇雄

    ○中須政府委員 ただいま先生から御指摘のございましたとおり、野菜の輸入がここのところかなりの勢いで増加をしております。特に平成五年ごろを境にいたしまして生鮮野菜の輸入量が急増している、こういうような事態がございます。  これに伴いまして、当然、消費者から見ますと、通常のマーケットにおいて非常に多くの輸入青果物というものを日常的に目にするわけでありますが、実はその輸入青果物と国産のものとの間に、御指摘がございましたように、外見は非常に同じように見えても実際には品質にかなりの差がある、そういうような事例も出てまいりまして、こういったことを契機にして、消費者から青果物についての原産地表示をぜひ強化するようにという強い要請が私どもの方にも寄せられてきているわけであります。  こうした事態にこたえまして、現在も実は、一つの行政指導という形でございますが、青果物の原産地表示に関するガイドラインというものを設けて、原産地表示の普及に努めてまいったわけでございますが、それでは事柄の大きな前進にいま一つ足りないのではないかということで、先生から御指摘がございましたように、今回、一部の品目についてではございますが、原産国表示を販売業者に義務づける、法的に義務づける、こういう措置に乗り出そう、こういうふうに私ども思っているわけでございます。  ただ、御承知のとおり、青果物は大変多くの方々が販売に携わっているわけでございまして、そういう方々に対する負担というふうな問題もございます。やはりまず最初は一部の品目から始めて、その普及状況を見ながら次第に拡大をしていく、こういう考え方でやってはどうかということで、とりあえず五品目を今準備をしているわけでございますが、これは大きく言って三つの指標から考えております。  第一点は、その野菜、青果物が消費生活上重要な地位を占めているということが第一点。それから、国産品とあわせて相当量の輸入があって、通常出回っている状態にあるというメルクマールが二点。それから三点目には、原産地による品質格差がかなり見られる。この三つの要素を勘案いたしまして、とりあえず五品目を今候補に挙げて義務づける作業を進めている、こういう状況でございます。
  52. 矢上雅義

    矢上分科員 今非常にわかりやすく説明していただきましたが、負担を減らすために一部の品目から始めるということでございます。  実は、ことしの初めですか、テレビを見ておりましたら、今回の原産地表示義務が導入されると、八百屋さんあたりが品目がたくさんあって毎日表示するのに大変だ、そういうことで、この原産地表示義務が導入されると八百屋は悲鳴を上げるのではないかということで、八百屋さんの団体あたりが相当クレームをつけているということをお聞きしておりましたが、今回、現場への配慮、小売店への何らかの配慮というものはどのようにされていくのか、その点について確認しておきたいと思います。
  53. 中須勇雄

    ○中須政府委員 原産地、原産国表示を義務づける場合に当たりまして、小売店の負担というものをできる限り配慮しなければならないだろうということは、御指摘のとおりでございます。  先ほどの若干繰り返しになりますが、制度導入に当たっては、とりあえずは対象品目を絞って順次拡大をしていくということで、できるだけスムーズな、負担の少ない形での定着ということを考えているということがまず第一点でございます。  それからもう一つは、表示の方法につきまして、基本的に今考えておりますのは、販売する容器とか小分け包装というか、それごとに当然のことながら原産地表示をしていただくということを考えているわけではございますが、我が国のいわゆる青果物の小売店では、必ずしも一つ一つが十分包装されていないというか、台の上に一まとまりになって販売するという形がかなり一般的でございます。そういうことも考慮いたしまして、表示の方法としては、立て札みたいなものを立てて、一まとまりの商品については原産地がどこである、こういうことを品名と同時に表示していただく、そういうような配慮も行おうとしているということでございます。  それからもう一つは、そうは申しましてもなかなか大変でございますので、青果物原産地表示適正化推進事業というふうな名前をつけておりますが、今年度予算で約三億円弱の予算を計上していただいておりまして、何よりもまず関係者の方々への制度の趣旨を含めた啓蒙普及、こういうこととか、あるいは一番踏み込んだ形としては、小売店で店頭に表示する場合の店頭表示版、こういうものについて、それを作成するために業界団体に作成器具の設置を助成するとか、そういうことを含めまして一定の対策を講ずることにしているところでございます。  ただ、こういう話は権力的に進めるようなお話ではございませんで、何よりもやはり理解を得て浸透を図っていく問題でございますので、これまでも各小売店の全国団体あるいはブロック別にもお集まりいただきまして制度の趣旨等を説明してまいりましたが、さらに、これからの施行に向けて、そういう努力を積み重ねて理解と協力を得ながら進めてまいりたい、こういうふうに思っております。
  54. 矢上雅義

    矢上分科員 現場の理解が第一でございますので、ぜひスムーズな定着を図られるよう期待いたします。  次に、もう時間がございませんが、最後の質問に移らせていただきます。  農業政策の中での流通・販売政策の位置づけでございます。これは小平政務次官にお聞きしたいことでございます。ちょっと読ませていただきます。  今までの農政は、豊作貧乏だから計画生産を指導することが一つ、もう一つは、低コスト、規模拡大のために構造改善事業をする、三番目に、設備投資、運転資金等のために融資事業をするという大きな三本柱でやってきました。  しかし、問題点も多々あります。私たち政治家は、生産者の手取り確保のために、計画生産のための奨励金を要求したり、土地改良の負担金の軽減を要求したり、また、返済の平準化事業を要求したりと、ある意味では三本柱の中で堂々めぐりをしておるのが現状でございます。  他方、生産者の方は、私たちの問いかけに対して、もうからない、先が見えないということで転業される方がふえておりますし、息子も後を継がないような状況です。  また、大手スーパー等の経営者に聞きますと、日本の農産物は悪くはないが、値段の問題だけでなく、品ぞろえ、数量の確保に問題があると言われました。あるスーパーでは、ことしから韓国でイチゴの作付を依頼するという話が出ております。  こういうことを考えますと、せっかく人材もそろって、農地もあるのに、戦略的に大手スーパーさんに対して、外国に逃げていくのではなくて、日本のものをどうやって売り込むか、そういう流通・販売段階での戦略的な仕組みが必要だと考えております。  先ほど申しました三本柱は大事でございますが、それを農政の中の大きな柱として位置づけなければ農家の手取り確保もできない。生産者や団体に対して、販売・流通面における情報提供、また人材育成を図ることの必要性、そういう農政全体におきましての流通・販売政策の位置づけをもっと大きくしてもいいのではないかと私は考えておりますが、小平政務次官はいかがお考えでしょうか。
  55. 小平忠正

    小平政府委員 確かに今御指摘があったとおりでありまして、今までの農業のことを反省しながら、これからの国際化に対応する農業の体制づくりは必要だと思います。  特に、我が国はウルグアイ・ラウンド農業合意を受諾いたしまして、それによって、こういう国際環境の中で今後どう農業の体質強化を図るか、こういうことが今進められております。同時に、今御指摘があったことを踏まえながら、消費者に対しては、生産性や収益性の高い農業を展開していきながら、良質で新鮮、安全、こういう消費者ニーズに対応した農産物を提供することがまた同時に求められている、こう私どもはとらえております。  そういう中で、多様化する消費者ニーズに向けては、農業生産や農産物の付加価値、これらの向上が図られるように、当省としても、まず経営感覚にすぐれた経営体の育成、次に農業経営に必要な情報提供体制の整備、もう一点は「農産物の需要と生産の長期見通し」、これらを踏まえた主要作物の生産・流通対策の強化等、担い手による意欲的な生産活動、また有利販売、これらを支援してまいりたい、このように考えております。
  56. 矢上雅義

    矢上分科員 これで私の質問を終わります。本当にありがとうございました。
  57. 佐藤静雄

    佐藤主査 これにて矢上雅義君の質疑は終了いたしました。  次に、熊代昭彦君。
  58. 熊代昭彦

    熊代分科員 自由民主党の熊代昭彦でございます。岡山新二区でございます。  きょうは、ウルグアイ・ラウンド対策と今後の農業につきまして聞かせていただきたいと思います。既にいろいろ出ておりますが、若干のオーバーラップをお許し願いたいと思います。  私自身は、農家の次男でございまして、農業を手伝いながら育ってまいりました。ただいまお話のございましたイグサも、岡山でもやっておりました。ただし、岡山のイグサは、私が子供のころは非常に盛んでありましたけれども、非常に早い機会に消えてしまいまして、今は全くやっておりません。今は米づくりを主にしてやっているところでございます。農家の次男としまして、農業対策について人一倍思い入れがあるところでございます。  ウルグアイ・ラウンド対策のねらいといたしまして、いただきました資料、既に一、二指摘がございましたけれども、四つの目標を挙げておられる。一つは、農業を誇りを持って携わることのできる魅力ある産業として確立すること。国土資源の有効利用によって可能な限り国内生産を維持し、拡大し、国内供給力を確保すること。消費者に対する良質、安全、新鮮な食料の適正な価格水準での安定供給。住みやすく活力に満ちた農村地域の建設。いずれもすばらしい目標でございますけれども、特に、農業を誇りを持って携わることのできる魅力ある産業として確立するということが、私どもにとりましては一番必要なことではないかというふうに思っております。  それで、お伺いするわけでございますが、ウルグアイ・ラウンド対策費、総事業費ベースで六年間で六兆百億円です。国費ですと三兆円弱ということでございます。かつ、地方公共団体単独でも一兆二千億円支出するということになっておりまして、九五年、九六年と既に二年度が組まれたわけでございます。個々の予算は、具体的には知らせていただいているわけでございますけれども、これらの金が、見ようによっては非常に大きな金でありますので、使い方によって、うまく使えば非常にいい対策になるのではないかと大変に期待しているところでありますが、これまでどう使われて、今後どうするのだということが最大の関心事であるわけです。  それで、支出項目を一つ一つ御説明願っても、これもまたわかりにくい話でございますので、例えばの話でございますが、三大支出項目に絞って、これまでどう支出してきて、何を実現してきたのだろう、今後どういうふうに実現させていくのか、三大支出項目に絞る必要もなくて、三大支出項目のほかにこういうすばらしいものもあるのだという話があれば、それもぜひ聞かせていただきたいと思います。農民の方々が聞いて、なるほど、これは将来について希望が持てる、納得できるようなお話を聞かせていただければ大変ありがたいと思います。よろしくお願い申し上げます。
  59. 野中和雄

    ○野中政府委員 ウルグアイ・ラウンド対策の中では、各般の施策を用意しているわけでございますけれども、そういう中で、金額的に大きいのは農業農村整備対策であろうというふうに思うわけでございます。何といいましても、国内で生産性の高い、体質の強い農業を展開していきますためには、農業農村整備、基盤となります生産基盤等々の整備が極めて重要であるというふうに考えているわけでございます。  特に、ウルグアイ・ラウンド対策の中では、私どもは従来から事業を行ってきてはおりますけれども、できるだけ事業の効果を早期に発現させるというようなことで工期の短縮を図るというようなこと、それから二番目に、圃場整備等の核となる事業と、それに関連をいたしますかんがい排水事業等を有機的に連携をさせまして集中的に実施を図るというような新しい方式を導入することによりまして、従来からも実施をいろいろしておりますけれども、その効果のできるだけ早い発現を図りたいというふうにしているわけでございます。  事業の目的等といたしましては、第四次土地改良長期計画というのが定められておりまして、これによりまして、例えば水田でございますと三十アール区画程度の標準区画の整備されたものを七五%までにしていくとか、あるいは畑でございますと、同様に農道の整備されたものを七五%にしていくとか、あるいは集落排水設備を約三万集落整備していくというようなことがこの計画で決まっているわけでございますが、このウルグアイ・ラウンド対策費を用いまして、平成十二年度までの間にこの長期計画を重点的かつ加速的に実施して、早急に効果を上げていきたいというふうに考えているわけでございます。  そういう中では、特に大規模水田地域におきます大区画化、連担化の推進、あるいは畑作農業地帯におきまして効率的な営農展開をいたしますための農道やかんがい排水施設整備、あるいは複合経営地区におきます排水不良の解消、あるいは、中山間地域が非常に大事でございますので、こういう地域におきます生産基盤、生活基盤等の整備というようなことを実施して、効果を上げていきたいということを考えております。  現在、八年度の当初予算までにおおむね三六%に当たる事業量の確保を図っているところでございまして、今後もこの効果が上がりますように実施をしてまいりたいと考えております。  それから、二番目に、こういう生産基盤等の上に立ちまして農業を行っていきます場合には、当然、例えば育苗とか収穫調製でございますとか出荷の作業の効率化、共同化というようなことによりまして能率を上げていくということが極めて大事でございます。  そういう意味で、農業構造改善事業等、これは山村振興等農林漁業特別対策事業、その他の事業もございますが、こういうような事業によりまして、今申し上げましたような共同育苗施設でございますとか、農畜産物の集出荷貯蔵施設でございますとか、あるいは生産されました農産物につきましてさらに付加価値をつけて所得向上を図っていくための処理加工施設でございますとか、あるいは品質を上げますための堆肥製造施設等々につきまして整備をしていくことにしているわけでございまして、これらにつきましても大幅な予算の確保をこれまで図ってきているわけでございますので、この分野につきましても一層事業推進を図りまして、安定的、効率的な農業経営体が農業生産の相当部分を担うような農業構造を早急に実現していきたいというふうに考えているわけでございます。  生産基盤と、それからこうした農業生産の高度化に関する施設というようなことで、ややハード的なものを申し上げましたが、同時に、ウルグアイ・ラウンド対策の中では、対策の期間中に大変効率的で安定的な経営体を育成していく、そしてそういう経営が相当のウエートを占めるようになっていくということが極めて重要であるわけでございます。  そういう意味では、経営体の育成、農地の流動化ということが極めて大事でございまして、私どももそういう中で、例えば、集落段階におきまして農用地の利用調整活動を推進して担い手の方に農用地の利用集積を行っていく場合に、その利用実績に応じて促進費を助成するとか、あるいは、都道府県の農業公社が機動的に経営転換農地を買い入れまして担い手の方に売っていくというようなこともございますが、そういう場合の機動的な買い入れができるような利子助成あるいはそういう公社の財務基盤の強化のための措置というようなのも、このウルグアイ・ラウンド対策の中で講じているわけでございます。  これらによりまして農地の流動化、特に担い手の方への農地の流動化というのが進みまして経営体の育成が図られますように、今後とも努めてまいりたいというふうに考えております。
  60. 熊代昭彦

    熊代分科員 概括的なお話を、非常に簡にして要を得た御説明をいただいたわけでございますが、少し散文的なことをお伺い申し上げますが、例えばこういう点で非常によくなったなという声とか、どうも何となくこういう点はよくないな、そういう声は野中構造改善局長のところまで何か届いているか、そういう声をもしお耳にいたしていたら、教えていただければ大変ありがたいのです。
  61. 野中和雄

    ○野中政府委員 ウルグアイ・ラウンド対策の予算につきましては、当初いろいろな御議論もございまして、一部御批判もございましたが、私どもといたしましては、これが私どもにとりましては画期的な予算であるというようなことで各地域にPRに努め、それから、その実施につきまして、いろいろ要件につきましても余り難しいことはないように、使いやすいようにというようないろいろな御指摘もございまして、その点につきましてもPRに努めているところでございます。  その結果、私どもといたしましては、やはり従来なかなか、基盤整備にいたしましても、先ほど申し上げました施設整備等につきましても、従来のベースでなかなか予算が大幅に伸びるということがなかったものが、かなりこういう重点的に予算が確保されましたことによりまして、それぞれ各地区によりましては工期の短縮でございますとか集中的な実施が図られる、あるいは事業の総合的な実施が図られるというようなことでございます。  これは今、事業進捗途中でございますから、まだ総合的な効果というところまでは図れるものではございませんけれども、そうした事業が効果的に、そしてより集中的に実施を図れるんだというような声もいただいております。また、施設整備等につきましても、要望が各地からも非常に多いわけでございまして、大変評判がいいといいますか、各地で積極的に受けとめていただいているというふうに思っているところでございます。  ただ、私どもとしてなかなか難しいところは、こうした施設整備、基盤整備と並びまして、具体的に、本当にやる気のある方に農業に取り組んでいただくというような経営改善なり規模の拡大につなげていくというところが非常に重要になるわけでございます。  これらの点は、なかなか、予算をつければ一気にという面でもない点も、農地流動化にしてもございますので、私どもも苦労はしておりますけれども、私どもは、この六年間の対策というのは、限られた期間で、そして国民の方に御理解をいただいてこのような相当な予算をいただいているということでございますので、農林省、それから関係の農業界の者、力を合わせて、何としてもこの国民からいただいた多額のお金を有効に使って成果を上げていくということが使命であるというふうに考えておりますので、全力で取り組んでまいりたいというふうに思っております。
  62. 熊代昭彦

    熊代分科員 前向きな評価を聞かせていただきました。  ちょっと触れられましたけれども、土地の集約化といいますか、大規模農家になろうという意欲のある人は、非常に少数ではあるけれども、あるのだろうと思うのですね。私の地元におきましても、利子も非常に安くなった、ちょっと農地を買ってみようか、どこへ行けば貸してくれるのだとかいうような話で、出した人がおりまして、今、農家が個人として、あるいは農業生産法人として、土地を集約化して自分の経営を大きくするために金を借りるときの利率は幾らで、個人及び農業生産法人でどれぐらいの限度額まで借りられるのか、ちょっとその辺、細かい話ですが、お聞かせ願えればと思います。
  63. 野中和雄

    ○野中政府委員 農業に意欲のある方にできるだけ規模の拡大をしていただくということは、極めて私ども重要であるというふうに思っているわけでございまして、それらの施策は私どもも重点として進めているところでございます。  規模を拡大するという方の資金ということでございますけれども、従来いろいろな形の資金というのもございますが、私ども特に、意欲のある方につきましては、先生御承知かと思いますけれども、農業経営基盤強化促進法という法律がございまして、これによりまして、今後どういうような経営を育てていくかというようなことにつきまして、国も方針を定めたり県も方針をつくったりしておりますが、さらに具体的には、市町村で、自分の市町村では他産業並みの労働時間で所得を上げていくというようなことにつきましての、経営類型というようなものを示しているわけでございます。これに合ったような計画をつくって、そういう経営の改善をしていこうというような方につきまして、その計画を認定するというような制度ができ上がっているわけでございまして、この認定農家というのを、いわば次代の担い手、意欲を持った人として私どもは育成をしていきたいというふうに考えているわけでございます。  その育成策といたしまして、この認定農家になった方々につきましては低利の資金を用意いたしているわけでございまして、これらの方々に通称スーパーL資金というような資金を融資いたしております。この金利は二%であるというふうに承知をしております。ただ、地方公共団体等によりましては、さらに独自の助成によりまして援助をされているというところもあるわけでございますけれども、そういうふうに非常に低金利で融資ができる体制が整っているというようなことでございます。  限度につきましては、ちょっと私、今手元にその数字がございませんけれども、基本的には御要望に十分おこたえできる制度になっているというふうに承知をいたしております。
  64. 熊代昭彦

    熊代分科員 限度については、ちょっと古いかもしれませんが、個人で一億とか農業生産法人で一億五千万とか、そんなことだったかなと思います。いずれにしましても、需要に応じられるということでございますので、積極的に進めていただきたいと思います。  次に、中山間地域とか小規模農業についてデカップリング論議があるわけでございますが、欧米各国でデカップリングをやっている国はどこであって、その具体的内容は何か、あらゆる国を言っていただく必要はない、代表的なことを二、三教えていただければ大変ありがたいのです。
  65. 高木勇樹

    高木(勇)政府委員 いわゆるデカップリング政策については、EUが私どもも承知しているところの有名な地域でございます。  EUの共通農業政策の中でデカップリングという政策もとられているわけでございますが、これは、直接所得補償という政策をとるに当たりましては、一方では穀物の価格支持をかなり下げる。例えば、九三年から九五年度で二九%引き下げる。その価格引き下げと引きかえに、生産者に対して直接所得補償を実施する。その直接所得補償の受給条件としては、農地面積の原則一五%の休耕を義務づける。この休耕については補償支払いを実施する、こういうようなことに基本的にはなっているわけでございます。  それから、いわゆる条件不利地域に対する助成ということも行われております。例えば、山岳地といったようなところの条件不利地域については、指定された条件不利地域の農業者のうち、三ヘクタール以上の農用地を保有し、かつ最低五年間農業に従事することが確実な者につきましては、例えばそこで牛を飼う、馬を飼う、そういった場合に一定の助成をする、それから果樹等についても生産補償金を出すといったような内容でございます。  なお、さらに細かくいろいろございますが、その程度に一応御説明はとどめておきたいと思います。
  66. 熊代昭彦

    熊代分科員 補償の額というのは、典型的にはどれぐらいの額なんですか。非常に少ないのか、多いのか。
  67. 高木勇樹

    高木(勇)政府委員 これはいろいろ見方があろうかと思いますが、一農家当たり十数万円、そういうことが平均的ではないかというふうに承知しております。
  68. 熊代昭彦

    熊代分科員 そうすると、転作補償の場合は、我が国と比べてどうなんでしょうかね、我が国の額と。
  69. 高木勇樹

    高木(勇)政府委員 転作補償も、これは私どもの国ではいわゆる転作ということを基本にしておりますが、EUの場合には休耕というものに対して補償するということでございまして、その考え方が、さっき申し上げたように、いわゆる価格引き下げと引きかえに行うということでございますので、考え方が基本的に違っておりますけれども、額としてそう大きなものというふうには承知しておりません。
  70. 熊代昭彦

    熊代分科員 我が国でもデカップリングを実施するべきではないか、特に山間僻地とか、あるいは小規模農業の保護のためにやるべきではないかという議論がありますが、こういう議論に対してはどういう見解をお持ちでしょうか。
  71. 小平忠正

    小平政府委員 今官房長からEUについての具体的なデカップリングの説明がありましたが、今の委員の御質問に対しては、我が国としては、いろいろなことを勘案する中に、農業、農村が有する国土・環境保全、こういう公益的機能については、今後とも適切な生産活動を通じて維持増進されるようにしていくことが重要だ、まず基本的にこう考えております。  その上で、このような観点から、今言われた中山間、そういうものを含めて、地域の特性を生かした高付加価値型あるいは高収益型の農業の展開、さらにはグリーンツーリズム等の農地や森林等の地域資源の総合的な活用による所得の確保、これも図らなければならない、こう思っております。  そこで、農村地域が住みやすく活性化することなどを目指して、平成六年十月にウルグアイ・ラウンド農業合意関連対策大綱、これが決定されたわけでありますね。そこに示された具体的施策を中山間地域にも配慮して総合的に講じてきた、こういう経緯があります。  そこで、直接所得補償については、確かに御意見がございましたが、国民的なコンセンサスの形成、さらには地域全体の活性化や定住化促進に対する効果、もう一つは構造政策との関係、これらのことをバランスよく考える必要があると思います。言うなれば、価格政策、所得政策、これらの兼ね合わせもあります。  平成六年八月の農政審議会報告においては、こういう制度を我が国に直ちに導入することはまだ適当でない、そういう意見が大勢を占めた、そのような指摘がされております。そこで、この直接所得補償制度については、こうした農政審議会の報告の内容等も踏まえて、引き続き、今後幅広い観点から、視野から、我が国のそういう制度を、所得補償、それから今申し上げた価格保証、そういう中でどうしていくか、そういう大きな問題もありますので、引き続き幅広い観点から検討してまいりたい、このように考えております。
  72. 熊代昭彦

    熊代分科員 ありがとうございます。  デカップリングについては引き続き検討していくということでございますが、今後とも検討していただくことにいたします。  次に、農林畜産業を大規模化して専業で成り立たせるというのがその構想の中核ではないかと思うのですね。ただ、私個人としましては、将来のいろいろな価格変動を考えた場合、それから農業の季節性、畜産業はそうではないでしょうけれども、季節性のあるものが大いにあるということでありますので、専業大規模化というのは、ある意味では危険なかけではないかという気もいたします。  大規模化しつつも、かつ兼業というような柔軟なアプローチはできないのか。例えばの話でございますが、ちょっと極端な話で、農業と現在話題になっております在宅介護事業を組み合わせる。在宅介護の方が季節的であるかどうか若干の問題がありますので、農業は季節的であって、かつほかの季節的事業、ほかのかなり間断的にできるものと組み合わせる、こういう大規模な兼業というのも考えつつ柔軟にやるべきではないか。  それからさらに、これは少しずれますが、同じ発想でありますけれども、農協のリストラがきょうの新聞にも出ておりました。ホワイトカラーだけをやるというのじゃなくて、ホワイトカラーとブルーカラーの兼業といいますか、趣味で農業をやっている人もいっぱいいるわけですから、ホワイトカラーをやって、余暇の時間はブルーカラー的な趣味をやるという人はいっぱいいるわけですから、農協も、耕作の請負とか、農業をある時間やる、あるいは一年、二年やりつつ、人事配置でやっていく。そういう農協の現業との兼業化を進める、そういった柔軟な発想についてどのように考えられるか、お伺いしたいと思います。
  73. 高木勇樹

    高木(勇)政府委員 ただいま先生おっしゃられたことにつきまして、お答え申し上げたいと思います。  私どもが平成四年に取りまとめたいわゆる新政策におきましては、基本的に、経営感覚にすぐれた意欲的な経営体の育成、それからこれらの経営体が生産の大宗を担う力強い農業構造を実現する、こういったことを目標に我々政策展開をしているわけでございます。  ただ、今先生のおっしゃられたこととも関連をいたしますが、この新政策においても、いわゆる専業単作経営といいますか、そういったものだけを農業の担い手として据えているわけではございません。  例えば、稲作の場合でいきますと、稲作中心の単一経営、これを五万経営体。それから、稲作といわゆるほかの作物、この中には、先生のおっしゃられた、これからの社会経済情勢、それから農村地域の変化に応じていろいろなものが、またはいろいろな仕事が出てくるのかもしれませんが、一応私どもとしては、稲作とほかの作物との組み合わせ、いわゆる複合経営で十万経営体。いわゆる個別経営体というのを十五万経営体程度。  それから、いわゆる組織経営体、この中には、当然のことながら、先生御指摘のようないわゆる趣味で農業をやっておられる農家、または兼業が中心の農家、こういう方々も参加をしていただいて、私どもいわゆる組織経営体と言っておりますが、これを二万経営体程度、こういった経営体が生産の八割ぐらいを担うという姿をこれから実現していこうということでございます。  稲作の場合でも、決して単一の、また専業だけの経営体をこれからの担い手というふうに展望しているわけでもございませんし、政策の展開の中でも、今申し上げたような、地域に応じた経営体を育成していくということを目指しているということであります。  そういう中で、今先生のおっしゃられたような、農村地域社会が変化していく中で、そういう介護作業とか、さらには農協の職員の趣味の農業との組み合わせとか、そういうことは当然地域の中でうまく組み合わせられれば、そういった経営というものも十分考えられるというふうに思っております。
  74. 熊代昭彦

    熊代分科員 質問時間も終わったようでございます。  一つだけ、水産業でございますけれども、水産業、私の地元ではノリの養殖とかカキの養殖とかいろいろやっているので、あるいはレジャーボート基地とかやっておりますが、水産業について将来どういう構想を持っておられますか、一言だけ、簡単にお願いいたします。
  75. 東久雄

    ○東政府委員 これからの水産業というのは、一つは、生産という意味では、資源管理型漁業、もう一つは、つくり育てる漁業、こうして生産をふやしていくというか、生産を確保していく、その上に立った合理的な経営体の育成、さらに流通、加工、水産の場合には流通、加工も含めてやっていかなければいけない点がございます。  その場合に、特に、今御指摘の兼業との関係でいいますと、漁業の場合には、多くの場合、加工、販売のところと一体になった経営が多うございますので、それらも含めて、沿岸漁業の方でございますが、協業化というような方向をとっていく。  それからもう一つは、中小漁業という船の割合大きな漁業でございますけれども、これは非常に多種多様でございますけれども、できるだけ複合経営、要するにまき網だけじゃなしに底びきも一緒に、一そう船主というのが多くてなかなか難しいのでございますが、できるだけ合体化していった経営というような方向をとっていくべきだというふうに考えております。そういうふうに政策を進めていきたいと思っております。
  76. 熊代昭彦

    熊代分科員 ありがとうございました。  以上で終わります。
  77. 佐藤静雄

    佐藤主査 これにて熊代昭彦君の質疑は終了いたしました。  次に、根本匠君。
  78. 根本匠

    根本分科員 自由民主党の根本匠です。  私は、畜産の問題、それから輸入野菜対策の問題、土地改良負担金の軽減・緩和の問題、大きくこの三つのジャンルから質問をさせていただきたい、こう思います。  まず畜産の問題でありますが、我が国の酪農、肉用牛生産、これは農業の基幹部門をなしておりますし、国土の有効利用に大きな役割を持っております。ただ、ガット・ウルグアイ・ラウンドで乳製品の関税化あるいは牛肉の関税引き下げが実施されまして、中長期的にはこの影響が出てくるだろう。このために、これから畜産の将来ビジョンを明らかにしながら、早目早目に日本の酪農、肉用牛生産の体質強化、振興を図っていく必要があると思っております。  この点については、農林省がことし一月に酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針、これを定めました。これはいわば畜産の十年後の将来ビジョンを明らかにしたものということだろうと思いますが、この将来ビジョン、基本方針の基本的考え方、主なポイントをお伺いしたいわけであります。  酪農経営は、ここ数年、小規模経営が減少して中、大規模へと構造転換で大きく動いておりまして、今回の基本方針も、この現実的な動向、最近の動きを踏まえながら経営規模ごとに将来のあるべき姿を示しているところにも特徴があるわけでありますが、この基本的な考え方の主なポイント、要は畜産の将来ビジョンをお伺いしたいと思います。
  79. 熊澤英昭

    ○熊澤政府委員 お答え申し上げます。  今先生が御指摘になりました酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針でございますけれども、ウルグアイ・ラウンドの農業合意の実施あるいは消費者ニーズの変化、そういった畜産をめぐります情勢変化を踏まえまして、今後の我が国の酪農・肉用牛生産の安定的な発展を図っていくという視点から基本方針を策定したものでございまして、昨年の十二月に策定いたしまして、ことしの一月に公表したところでございます。  基本的な考え方でございますけれども、まず国内生産につきましては、生産性の向上を図りながら、それぞれの力を最大限に発揮して、可能な限り国内生産の維持拡大に努める。それから経営面では、経営感覚にすぐれた効率的、安定的な経営体により畜産生産の大宗が担われる生産構造を実現する。それから大きな三点目といたしましては、国産品の持つ有利性、すなわち良質・安全・新鮮、そういった畜産物を適正な価格で供給するということをまず基本的な方向の視点として置いているわけでございます。  なお、具体的に少し敷衍して申し上げますと、効率的、安定的な経営体の育成とあわせて、環境問題への対応も最近は重要になっております。それから、基本方針の中では生産性向上の目標設定をしたところでございます。さらに、そういった目標を達成するための具体的な、モデル的な経営指標も設定をいたしております。またさらに、生産面に加えまして、流通・加工分野の合理化という点につきましてもできるだけ具体的な方向を示すということに重点を置いて基本方針を策定したところでございます。
  80. 根本匠

    根本分科員 今回のビジョンで類型別にいろいろな経営指標を盛り込んでおりますが、これが特徴の一つだと思うのですね。  これは、類型別にしたということは、現実にここ数年で大きく構造転換が進んでおりますから、その辺の流れを踏まえてやったのでしょうけれども、例えば、類型別に具体的な指標を示して、何か類型別の誘導方策みたいなものはあるのですか。
  81. 熊澤英昭

    ○熊澤政府委員 先生御指摘のとおり、今回基本方針の中でお示しをいたしておりますモデル的な経営指標でございますけれども、昨今の、特に酪農について御指摘でございますので申し上げますと、例えば北海道で四分の三がほぼ専業・単一経営でございます。都府県でも過半数が単一経営ということになっておりますので、そういう意味では、規模拡大が相当進展しているという実態にございます。そういう意味では、経営の健全性あるいは生産管理技術の平準化、そういった点に特に配慮する必要があるということを視点に置いております。  そこで、経営類型を作成するに当たりまして、例えば、既存の施設、機械の活用あるいは草地の飼料生産基盤の充実、さらには現在既に実現している生産技術あるいは経営技術を一定の視野に置く、そういったことを視点に置いて類型を設けたわけでございまして、例えば現状でいいますと、つなぎ飼いあるいはパイプライン方式というのがございますが、そういった既にかなり高度な経営もございますので、そういった経営を一つのタイプとして置く。それから、それよりも規模が大きい層、例えばフリーストールとかミルキングパーラーを導入している経営でございますが、そういった経営体のモデル的な経営像、それから逆にコスト志向と申しますか、できるだけコストの低減を図る経営として、放牧を主体にした経営像も示しております。  さらに、混住化が進行している都市近郊では、経営体の生産の合理化とともに家畜ふん尿処理の問題が大変大きくなっておりますので、そこに重点を置いた経営体。さらに、先ほど官房長からもお話がございました新政策の方向の中にも示されておりますけれども、他作目との複合経営、稲作あるいは野菜と酪農との複合経営、そういった面にも視点を当てて経営類型を設定しているところでございます。     〔主査退席、若松主査代理着席〕
  82. 根本匠

    根本分科員 酪農経営もいろいろなパターンがありますから、国の方が柔軟な方策を示して、そして酪農経営者の皆さんにはそれに合った形での自助努力で頑張ってもらって、双方で頑張っていく、これが大事な点だと思います。類型別に具体的なビジョンを示されたということは私も大変高く評価しておりますが、この分野についての施策の充実をこれからさらにお願いしたいと思います。  それから、このビジョンの中で、酪農経営の生産コストの低減が大事だということで、将来の目標として、例えば酪農経営の生産コストを現状の七、八割に設定する、こういうことがうたわれております。それから、生産コストの低減というのは非常に大事なのでビジョンを示して着実に進めていく、私もこれが大事だろうと思いますが、具体的にどのようなことをお考えかということ。  それから、生産コストの中に占める飼料穀物のコストの割合が非常に高い。ことしも穀物相場が上がっておるわけでありますが、ことしのこの点での価格安定化対策と、中長期的な飼料作物の価格安定化対策、これを含めて、将来の生産コストを七、八割にするというための具体的な方策についてお伺いしたいと思います。
  83. 熊澤英昭

    ○熊澤政府委員 まず、お尋ねの経営コストの低減目標の達成の方策でございますが、確かに先生おっしゃるとおり、現在の酪農経営は同一規模の階層の中でも相当ばらつきがあるというような実態でございます。  私ども、今回の基本方針の中でモデル的な経営像をお示ししておりますが、このモデル的な経営像の実現しているコストは大体現在の平均的なコストの七割ないし八割、つまり二割から三割コストの低減が既に図られるというモデル経営像でございます。私どもの実態調査の分析では、このお示ししたモデル経営像、大体現在の酪農家の方の上位の二、三割の方がほぼ実現しているというふうに私ども承知をいたしております。したがいまして、そういう意味では決して手の届かないモデル像ではありませんで、どちらかといえば目標として実現可能な、努力しがいのあるモデル像をお示ししたつもりでございます。  そういう方々の経営体を分析してみますと、一つには、やはり牛群の品質がよいということがございます。あるいは飼料、えさの給与のシステムがしっかりしている。それから草地の生産技術がしっかりしている。さらには経営管理、経営とか財務管理でございますが、そういった面がしっかりしているということがうかがわれるところでございますので、私ども、そういったところに重点を置きながら、全体として、牛群の検定・改良、牛群全体としての改良事業促進、あるいはそういった優良な牛群の個別の経営に対する導入、あるいは自給飼料、つまり草地の整備、経営面での指導事業、そういった具体的な補助事業あるいは指導事業を用意してございますが、そういった事業を活用しながらコスト低減の目標に向かって施策の推進に努めてまいりたいというふうに考えております。  それから、さらに、配合飼料価格のお尋ねがございました。本穀物年度は、特に米国の不作によりましてトウモロコシの供給がかなりタイトになっております。そのため、シカゴの穀物相場、トウモロコシの相場はかなり高騰いたしておる状況でございます。  それを反映いたしまして、昨年の十月以降三度にわたりまして国内の配合飼料価格の引き上げが行われておりますが、都合三回、合計で配合飼料価格トン当たり八千二百五十円の引き上げが行われたところでございます。私ども、これに対しまして、現在、配合飼料価格安定基金、これは民間の価格安定基金とそれから国が助成をしております価格安定基金がございますが、この二つの安定基金から補てんをいたして畜産農家の負担が急増することを抑制してまいっておりまして、十月以降の値上げ総額八千二百五十円に対しまして農家段階での負担の増がトン当たり二千百円ということで、農家の負担の軽減に努めてまいったわけでございます。  さらに、端境期に向かいまして米国のトウモロコシの供給余力がかなりタイトになっているという実態にございます。私ども民間から聴取しているところでは、本穀物年度、つまり九月末ごろを目途といたしますと、ほぼ必要な数量の手当ては終わったというふうに承知はいたしておりますけれども、なお政府といたしましても、トウモロコシ、大麦の政府保有備蓄がございますので、流通に支障が生ずる等の事態が生じました場合には、そういった政府備蓄の活用ということも視野に入れて検討してまいりたいというふうに考えております。
  84. 根本匠

    根本分科員 飼料穀物の価格安定対策は大変大事な問題なので、ぜひ強力にやってもらいたいと思います。  それから、今回類型別で、具体的ないわば手の届く実感の持てるような目標を明示したということが非常に重要なポイントだと思うのですね。そういう手の届く具体的な目標を明示することによって、酪農をやっている皆さんにもしっかりと希望を持って取り組んでもらう、これが大事だと思いますので、施策のこれからのさらなる強力な推進をお願いしたいと思います。  それから次に、畜舎等の建築コストの低減問題、規制緩和の問題、これについてお伺いしたいと思います。  生産コストの低減という観点から、畜舎等の建築コストの低減を図る必要があるわけであります。この問題は従来から指摘されておりまして、現在取り組んでいると聞いておりますが、私はこの畜舎等の建築コストの低減の方策、これは三つぐらいあるだろうと思う。  一つは、今の建築基準の考え方、何か非常に立派な畜舎をつくらなければいけないという声も聞きます。ここのところの建築基準、簡素で効率的な畜舎づくりと建築基準の緩和の問題、見直しの問題、これが一点。  それから二つ目は、これは運用上の問題になるわけでありますが、補助金を運用する上で性能に着目するといいますか、つまり、こういう性能のものが担保されればできるだけ安い資材を使いなさいよ、こう運用の中で指導する、こういうこともあると思うのですね。  それからもう一つは、一般の住宅の問題でも低価格コスト住宅というのがどんどん技術開発されておりますが、畜舎についても低価格モデル畜舎の技術開発、こういうことも必要になるのだろうと思うのです。  この三点につきまして、畜舎の建築コストの低減の観点からの取り組みをお伺いしたいと思います。
  85. 熊澤英昭

    ○熊澤政府委員 お答え申し上げます。  三点お尋ねがございました。  まず最初の建築基準の緩和についてでございますけれども、先生御承知のとおり、現在の建築基準法の運用におきましても、幾つかの畜舎に対します緩和の特例がございます。例えば、雪おろしの慣行による積雪荷重規制の緩和とか、あるいは防風林等の設置による風圧力規制の緩和とか、それから畜舎につきましては特に防火隔壁の設置義務の免除、それから開放的な簡易畜舎に該当するような畜舎については使用材料の規制緩和、そういった特例が現在ございます。私ども、こういった特例を十分に活用するようにということでこれまで指導いたしておりますけれども、さらにそういった指導を強めてまいりたいというふうに考えております。  また、補助金を使用して建築する畜舎の場合でございますけれども、補助金を活用して建設する場合におきましても、私どももちろん畜舎が建てられます立地条件、経営条件等を十分に勘案するということは基本的に必要でございますけれども、そういった中でも、古材あるいは間伐材、そういった低廉な材料を選択してもよい。あるいは関連施設、窓とか扉、そういった整備についても必要最小限の整備水準であればいい。あるいは建築費用でございますけれども、自家労働力の活用でもよい。自家労働力を活用した場合には、いわばコストだけ補助金で見るということでございますが、これは補助金の運用に当たって私ども指導通達を出しておりますので、そういった通達に基づく指導もさらに充実してまいりたいというふうに考えております。  それから、モデル的な低コストの畜舎の開発でございますけれども、私ども平成年度予算におきまして低コスト畜舎の開発のためのシステムを構築しようということで、今申し上げましたような建築基準法の特例あるいは低コスト資材の活用、そういったことも踏まえながら、個々の農家の方が具体的な要望を出した場合に、それに見合うような低コストの畜舎の設計図を提供したいということで、基本的なそういう設計をパソコンのソフトに入れまして、そこから農家の方が具体的な基準なり装備をインプットしてモデル的な設計図を引き出す、そういったシステムを開発したいということで、今年度と来年度平成年度にかけてそういったシステムの構築を図ってまいりたいというふうに考えております。  また、全般的な問題でございますけれども、基本的に建築規制の緩和につきましては、まず建築基準法を所管している建設省との関係もございます。現在私ども、建設省と当省農林水産省、さらに学識経験者から構成されております畜舎建築に係る関連基準等に関する検討会というのを昨年九月から開催をいたしております。既に検討会、専門部会の開催を何度か重ねておりますが、その検討会におきましては畜舎の特性に応じた特別の設計基準を作成する方向で検討をしていただいておりまして、平成年度中、今年度中に検討結果を取りまとめたいというふうに考えております。
  86. 根本匠

    根本分科員 ぜひ強力にこの点取り組んでいただきたいと思います。  それから次に、酪農ヘルパーの問題についてお伺いいたします。  労働時間の短縮あるいはゆとりある酪農経営あるいは後継者対策ということで、酪農ヘルパーの役割が非常に重要になっておりまして、特に今回の基本方針、ビジョンの中でも、政策目標として他産業並みの所得と他産業並みの労働時間を打ち出しているわけです。労働時間について見れば、酪農の場合現在二千三百時間で、他産業より約三百時間多い。じゃ、ここをどうやって短縮していくかということになりますと、一方では生産性の向上、もう一つは酪農ヘルパーの活用による外部委託、こういうことになるわけですね。  この酪農ヘルパー、大変いい制度で、今非常に利用されているわけですけれども、現在の利用状況、それから今なお抱えている問題点、課題、これについてお伺いしたいと思います。
  87. 熊澤英昭

    ○熊澤政府委員 先生御指摘のとおり、今後の労働時間の短縮に当たりましては、生産性の向上とあわせて酪農ヘルパーの活用というのは大変重要だというふうに私ども考えております。  酪農ヘルパーの制度につきましては、これまでかなり政府としても助成をしてまいっております。平成年度に酪農ヘルパーの利用組合の支援のための基金、これは七十億円でございますけれども、七十億円の基金を造成しておりますが、その後、平成年度に研修に対する助成、さらに平成年度には酪農ヘルパー組織の活動費に対する無利子資金の貸し付けを実施する等、施策の充実に努めてまいったところでございます。  現在までに、四十六都道府県におきまして三百八十八の酪農ヘルパー利用組合が設立されておりますけれども、その利用組合に約二万戸の酪農家が加入しておりまして、そのうち約四分の三の酪農家が年平均約十一日の定期利用をするという実態にございまして、着実に酪農ヘルパー制度の利用が普及進展しているというふうに理解をしております。  また、平成年度、今年度の加工原料乳の保証価格の算定に当たりましても、酪農ヘルパーの利用促進の観点から、ヘルパー利用促進ということで、六日分加算をしたところでございます。  こうした施策の充実によりまして、今後とも酪農ヘルパーの利用の促進に努めてまいりたいというふうに考えております。
  88. 根本匠

    根本分科員 酪農ヘルパーの問題、これはできるだけ利用しやすい制度が望ましいわけですね。これはいわゆる酪農ヘルパーの経営組織体制の充実強化の問題、要は、定期利用に加えて、病気になったときにすぐに利用できるとか、あるいは冠婚葬祭のときにすぐ利用できるような支援組織体制にするという点と、それからもう一つ、利用料金の問題で、高いから利用しないということもあるわけですが、例えばその利用料金に個別の補助というのは大変難しいわけですけれども、そういう方法を考える、あるいは今おっしゃられたように、保証価格の中に政策を明示するという形で酪農ヘルパー利用の日数を政策的に組み込む、それで利用しやすいようにしてやる、こういう大きく二つの方法があるわけですが、ぜひここのところの促進、施策の充実拡充、これを図っていただきたいと思います。  ちょっと時間がなくなってきましたので、簡潔にこれからお答えいただきたいのですが、次に、野菜の問題についてお伺いしたいと思います。  今、野菜の輸入、輸入野菜が急増しているという問題があります。輸入野菜のタイプ、これは四つぐらいのタイプに分かれていまして、一つは、ジャンボピーマン等の国内生産のほとんどない野菜の需要を満たすための輸入、二つ目は、要は端境期に行われるカボチャ等の輸入、三つ目は、国内産の不作時に行われるタマネギ等の輸入、もう一つは、これが非常に大きいわけですが、国産品と競合する形で行われるブロッコリー等の輸入、その要因を分析すると、この四つに分けられております。  特に、国内生産のない品目や端境期の品目の輸入、これは国産品と競合しませんし、需要を喚起して消費生活を豊かにする、国民生活上、豊かにするという性格を持ちますから、問題はないと思っております。  ただ、ここで問題なのは、不作時に繰り返して輸入されて国内に定着していくタイプと、それから国産品と競合する形で輸入されるタイプ。これは国内産地との競合もありますから、ここは重点的な産地対策が必要だろうと思いますが、こういうタイプ別に分けた形での生産振興対策、これについてどのような対策をお考えか、お伺いします。
  89. 高木賢

    高木(賢)政府委員 お尋ねのまず第一点目の不作時に輸入されるタイプヘの対応策でございます。  これは、何よりも不作が生じないように、野菜産地におきます安定的な生産の確保を図るということが大事でありますので、幾つかポイントを申し上げますと、生産量安定化のための育苗施設、まず健全な苗を育てなくちゃいけないというのが一つ。それから二番目は土づくりでございます。そのために、堆肥製造施設等整備を進めるというのが二点目でございます。それから三番目には、連作障害を防止するために合理的な輪作体系を導入するということでございます。それから四番目には、気象に機敏に対応する、気象変化に機敏に対応するということで、地域微気象データを活用いたしましての的確な対応をするということが四点目でございます。それから五点目は、近年、労働力が不足傾向にございますので、地域内の労働力調整を的確に行いまして、手抜きのないようにしていくということが大事だと思っております。  それから、二番目の国産品と競合する形で輸入されるタイプでございます。  これは、何といっても値段と品質、定時定量、安定供給というところがポイントになりますので、第一番目には、コスト低減のための機械化の推進等が重要であると思います。それから二番目には、品質面での優位性を維持するということから、鮮度などの維持のために集出荷・予冷施設整備等を推進しております。  それから定時定量、安定供給という点では、量販店との契約取引を推進するということで、これは八年度予算で新たに取り組むことにいたしております。また、消費者との固定的な関係を構築するということが大事でございますので、特に都市近郊産地におきましては、消費者と密接に連携した特色のある野菜生産を推進するということで固定客をつかまえる、こういうことで八年度からまた新たに取り組むことにいたしているところでございます。
  90. 根本匠

    根本分科員 生産振興対策、これはぜひやってもらいたいと思います。  それから、輸入品の原産地表示の問題。これは五品目について原産地表示を義務づけるということでありますから、これは消費者に正確な情報を伝えるという消費者対策の観点からも重要なので、五品目の義務づけと、さらに対象品目の拡大についてこれからぜひ取り組んでいただきたいと思います。  最後に、私は、今後の野菜生産に当たって輸入野菜対策をどう考えていくのかという観点から、やはり品目別の各国の輸出の動向、海外の状況を踏まえた対応、これが必要だろうと思いますので、我が国の生産者が、将来どういう野菜がどんな形で輸入されてくるのか、この辺の情報を早期に確実に把握する、これが非常に重要だと思います。この辺の輸出国側の情報を迅速かつ正確に把握するような取り組み、どのような方策を考えているのか、これを最後にお伺いをしたいと思います。
  91. 中須勇雄

    ○中須政府委員 ただいま御指摘のとおり、最近、生鮮野菜の輸入が急増するという状況を踏まえまして、特に生産者からは海外の野菜の生育状況とか価格動向、そういった海外情報を的確に欲しい、こういうお話が多数寄せられております。  こうした状況に対処いたしまして、とりあえず本年度からは、野菜を含めて各種農産物ということでございますが、主要農産物の海外における生産とか価格の状況、作柄、同時に各国の農業政策等の情報の収集、提供を行う事業ということを再編いたしまして新たに実施をする、こういうことを考えているところでございます。  特に野菜の分野につきましては、認可法人で野菜供給安定基金というところがございますが、この基金が主体となって、野菜の主要な輸出国において、現地のコンサルタントと契約いたしまして情報を収集し、分析を行って国内に提供していく、こういう事業も今年度から手がけたいというふうに思っているところでございます。今後とも、輸入生鮮野菜の国内の流通実態調査を含めまして、そういった面での情報収集の提供体制の強化ということに努力をしていきたいと思っております。
  92. 根本匠

    根本分科員 私は、輸入野菜が非常に急増していますから、これからの見通しというのが非常に大事だと思うし、この分野はまさに国がやるべき分野だと思います。的確に情報を把握して野菜について攻めの農業を展開していく、これが必要だと思いますから、ぜひこれも強力にこれからなお取り組んでいただきたいと思います。
  93. 若松謙維

    若松主査代理 これにて根本匠君の質疑は終了いたしました。  次に、竹内猛君。
  94. 竹内猛

    竹内(猛)分科員 私は、先ほど第一分科会で、戦後の農政とその中における国営の干拓事業の問題について質問をしてきました。きょうは大原農林水産大臣がいらっしゃいますから、ここではしっかりひとつ問題を整理をしてほしいと思います。  第一分科会では、大蔵省、行政監察局、会計検査院、それから農水省は開発課長、こういうところと話をしてきたわけですが、それを整理しますと、戦後の農政の中で土地改良事業というのは、食糧増産と引揚者あるいは入植者の対策としては大変意義のあったことだと思いますが、それにしても、戦後五十年過ぎて、でき上がった面積というのは大体四万ヘクタールを超すぐらいの面積がある、農地造成ですね。  ところが、現在は、水田面積の三五%、八十万ヘクタールの減反、それから二十二万ヘクタールは耕作放棄、作付不能という状態にある。しかも食糧自給率からいえば、カロリーでは四〇%を割り、穀物で三〇%を割るという、こういう先進国としては最大の食糧輸入国になっていて、農業に対する魅力というものが非常に欠けている。しかも中山間地帯はどんどん集落がなくなってしまうし、小学校に入る者がいない。  こういうような状態ができているときに、戦後五十年も過ぎているところに、例えば羊角湾にしてもあるいは長崎県の諌早湾にしても、さらにでき上がったところの河北潟の状態、あるいは三重県と愛知県の木曽岬の問題にしても、ほとんどこれが目的どおりに運用をされていない。八郎潟あるいは福島潟、工事が終わったところもありますけれども、そういうものを参考にしながら、島根県と鳥取県の間にある中海・宍道湖の国営干拓問題は、八年前にこれを中止をして検討を加えるということになっている。  しかも、島根県自体が五千ヘクタールの耕作放棄、九千ヘクタールの減反という状態の中で、あそこは五つの地域の中で四つの工事が終わって、本庄地区という千七百ヘクタールぐらいのところ、千七百が実際使えるものは千四百ということになっておるのですが、そういうところは水質保全の問題もあるし、いろいろな問題がある。これを知事は、自治法による六万四千の署名についても振り向きもしない。それでどんどん既定どおりに農用地として全面干拓をする、こういうことを昨年の暮れに公表をして、そして農林水産省に要請をする。  私は八年前に、党の農林水産局長のときに現地へ行ってこの問題についてよく見てきたし、この間も、二月二十八、二十九日、党を代表して議員の各位とともに鳥取県の知事、島根県の知事、関係の市長、町長、それから各種の団体、いろいろな団体とお会いをしてきましたが、知事がそういう方向を向けば、市長はやむを得ず心なくもついていく者もありますけれども、本心はなかなか今後の経営が難しいということを考えていて、とりあえずこれについて賛意を表するというところが少しありますけれども、多くの人々はこれに疑義を持っている。  この問題について、これは既に各委員会で農林水産大臣に質問があったと思いますけれども、大原農林水産大臣はこのことについてどのように今受けとめておられるか、ちょっとお伺いしたい。
  95. 大原一三

    ○大原国務大臣 お答えをしたいと思います。  私も農林省へ参りまして、この問題につきましていろいろの方面から御要請もあり、御陳情もあり、また島根県知事からもお話を承っております。非常に長い歴史を持つ問題であり、また環境問題等も非常に大事な問題だと思っております。環境庁長官からも事あるごとにこの水質の調査を、特に環境庁と島根県の間で十分これから調査をしていくという申し合わせもできておるようでございます。  島根県知事は、議会、市町村の同意を得て、全面農地利用として中国四国農政局長に九年度からの工事の再開を要請されておりますことは、委員もう既に御存じのとおりであります。しかしながら、こういう問題は、やはり地域住民との十分な理解が必要であると私は思っております。そのために、まだ今結論を出しておりませんけれども、やはり十分な調査をする必要があるのではないのかな、今後農林省の部局とも相談しながらこの問題は結論を出していきたい、かように考えております。     〔若松主査代理退席、主査着席〕
  96. 竹内猛

    竹内(猛)分科員 大変慎重な態度でして、まことに結構だと思いますね。  というのは、河北潟の問題につきまして、私は昭和十八年に学徒出陣で金沢に入隊をしました。そのときの河北潟というのは、新鮮な魚の産地でありました。ところがそれを、国営干拓事業として、ちょうど島根県の本庄地区と同じくらいの千四百ヘクタールを干拓した。そして水門を閉じた。こういうことになって、この間朝日新聞でも既に社説で出しているように、周辺はごみを捨てる人がふえる、そしてでき上がったその土地は県の公社が買い取って売るけれども、しかし出る人の方が多いということで非常に空き地がふえている。しかもそれが、水田から今度は畑作へ、酪農へというふうに変化をしてきているけれども、それに安心ができない、こういう状態が河北潟に既にある。これは島根県と同じ日本海に面する河北潟の一つの例でありますね。  それから、木曽岬のように、県と県との間で境界が争われて、そして今度は県の所属が決まったら町と町との間で争われている。九四・七%ぐらいにもう達しているけれども、でき上がったものに対して何の利用もできない。こういうようなことは、これは国費のむだであり、しかもこれは現段階では大変問題だ。  そこで、その島根県の知事が、私も会いましたが、今までかけた金が何億かある、もしこれを途中でやめたらその金は県が払わなければならない、だからこれを干陸して、そしてあと九十億あれば千四百ヘクタールの農地が県のものになる、こういうようなことを言う。  しかし、これを完成するためにはさらに十年の日にちがかかってくるわけで、これを農地として完全に使うのかどうかということになると、これもまた建前と本音が違って、建前は農地という形で国営干拓をやる、農林水産省の土地改良の建前からそうなんだ。ところが、自治体の腹はそうじゃなくて、あの辺を中国地方の中核都市としてやっていこうというのが商工会の考え方なんだ、やがてそういうふうに考えていこうと。田園都市のようなことも言っていますが、実際は農業をするための経営計画というものがほとんど立てられていない。  既に干陸をした四つの地区がありますけれども、その安来地区等においては、まだ半分以上の土地が売れないでいる、工場も入ってこない。全国でもそういうところがある。そういうような状態の中でこれを知事が強行するということは、それだけでも問題なんだ。この点について、ぜひ農林水産大臣に御理解を願いたいと思いますが、いかがですか。
  97. 大原一三

    ○大原国務大臣 今もお答えしたとおりでございまして、私も、テレビで、実はNHKで、夜中でございましたが拝見いたしました。商工会議所の会頭の将来ここはリゾートという話もちょろっと出ておりまして、リゾートをつくるのは農林省の仕事かなと思ってみたり、いろいろ悩みがあるわけでございまして、その辺のことは、これは農地でつくるわけでありますから農家がそれを買っていただかないと。いや、島根県が全部買います、おれが責任持って農家に売るからとおっしゃっていただければ一番いいのでありますが、その辺のこともよく定かでないわけでございますけれども、実は知事は物すごく熱心で積極的でございまして、議会でも決めたことでございますし、大臣としてもぜひこれを実行してほしいという要請を直接私いただいた次第でございます。  市町村当局も大分理解をしていただいておるというような話もございまして、いや、そうじゃないんだ、これはかなり問題があるという御意見等々たくさんいただいていますので、先ほどお答えいたしましたとおり、そう長い時間は置けないと思いますが、では調査をするとすればどういった調査をするのか、その辺の内容につきましても、今後、十分環境庁とも相談をしながら精査して、結論を出さなければいかぬな、こう思っております。
  98. 竹内猛

    竹内(猛)分科員 本問題については、朝日新聞、毎日新聞、読売新聞、日本経済新聞、NHKは先般放映しましたし、それから地元の新聞も全部、こういうことはむだであるし、今のままで新たな扱い方をした方がいいではないかというような論調と意見がありますね。あれを推進しろということを言っているのは、残念だけれども島根県の知事及び知事の周辺の人たちだけなのです。  そこで、建設省。去年、建設省は野坂建設大臣のときに、長良川の本格運用をやりました。あのときに、私も野坂建設大臣に対して随分いろいろ抗議もするし提案もした。その後、ちょうど一年たちましたが、河川局が三つの方針を出した。その方針というのは、従来の計画に対してフォローアップをする、そしてそれに対して地元からいろいろな方々に参加をしてもらって、情報を公開しながらいろいろと検討を加えて、そして第一は継続する、従来の仕事をそのまま継続する、それから第二番目は、検討した結果、修正をして実行する、三つ目は中止をする。まことに結構な提案だと私は思います。  戦後五十年たっておるときに、三十三年前に決めた土地改良の問題をそのままやるということは、これは実に古いものをそのまま持ち込んでくるという形で、島根県の知事の態度、これはまことによろしくない、こういうふうに思います。だから、農林水産省としては、ここに構造改善局長もおられるけれども、ぜひそのことについては肝に銘じてもらいたい。  知事は選挙で落選すればいなくなってしまうし、役所の方々は十年も二十年もいつまでも同じいすに座っているわけではない。二、三年たったらかわってしまう。しかし、一遍壊した生態系、破壊した自然、こういうものは返ってこないのですよ。だから、環境庁が水の問題について、あそこで委員に委嘱したけれども、東北大学の教授は言っている。計算の方法はまことにいい方式だが、内容のデータは県から出たものであって、結果に責任は持てないと言っているじゃないですか、須藤隆一先生は。私はそれを聞いてきた。しかも、島根大学の先生は、既に県は調査をする前に結論を出してそれに合わせてくるだけの話なんだと。  こういうような形で、自治法によるところの六万四千の署名についても耳を傾けない。今、島根県では二十万の署名運動が起こっている。こういうことを考えると、これは大きな政治問題になる、社会問題になる。今、国費の使い方について問題が起こっているときに、これは大きな問題ですね。  建設省から、長良川の問題を中心としてフォローアップをしたことについてひとつちょっと報告してもらいたい。
  99. 竹村公太郎

    ○竹村説明員 建設省の実施しておりますダム、堰事業は大変大規模でございまして、長期間を要し、地域に与える影響も大変大きゅうございます。そのため、法的には、議会制民主主義に基づきまして、地方自治体の長及び地方議会の意見を十分聞くという制度は十分整っていたわけでございますが、建設省で行われています他の事業、下水道、街路、住宅等の事業におきましては、都市計画審議会という場におきまして、直接地域の住民の方々の御意見を聞くという制度がございます。  ダム事業につきましては、先ほど申しました法的な整備は整っていたわけでございますが、直接地域の方々の御意見を聞くという制度が必ずしも十分ではなかったわけでございましたので、今回、ダム事業におきまして、個別のダムごとに事業審議委員会というのを直接地域の方々の御意見をお聞きしたいということで設置いたしました。  平成年度に設置された十事業に加えまして、ことしの平成八年五月に二事業が加わりまして、現在十二事業で設置されておりますが、今後、建設省といたしましては、新たに事業に着手する段階やこれに基づく事業の計画案を作成する段階におきまして必ずこの審議委員会を開き、このまま私どもの事業の計画案で実施していく、計画の内容を変更する、または中止するという選択肢も含めて、地域の方々の御意見を聞きながら私ども判断していきたいと考えております。
  100. 竹内猛

    竹内(猛)分科員 建設省は非常に前向きで結構だと思います。それでもまだ不十分だという自然保護団体があるけれども、それはどこまでも追及するわけにはいかぬ。その辺でひとつ整理をして前向きにしていく、これは非常に結構。  今度は環境庁。岩垂環境庁長官は、三月十八日に、水質の問題について、まだ非常に不十分であるから水質検査を湖沼管理者としての立場から要請した。島根の知事はそんなことは考えないと横を向いているけれども、これはとんでもない話なんだ。ああいうことをすると、せっかくうまくいっている大根島の水だっておかしくなってしまう。しかも、淡水化をした場合にはどうするかといって聞いたら、ため池をつくると言う。冗談じゃないよ、それは。  二百七十億で、あと九十億負担をすれば千四百ヘクタールの土地が入るなんという夢みたいなことを知事は言っているけれども、実際はそんなことで入るわけはないじゃないか。宅地にしたら一千億もかかると言っている。そういうような腹と口と違う、建前と本音の使い分けをするような、そういう知事は許してはならない。そういう点について、環境庁、どういうふうに今考えているか。
  101. 南川秀樹

    ○南川説明員 環境庁におきましては、三月十八日、中海干拓事業の水質影響につきまして、データの整備、そして適切な予測評価を行うということで、島根県に対して申し入れをしたわけでございます。その後、調整を行ってまいりましたが、島根県からは十分に対応したいという連絡がございました。  私どもといたしましては、今後とも引き続き島根県と連絡を図りながら、助言指導を適正に行ってまいりたいと考えておりますし、事業による中海水質の悪影響ということが生ずることのないよう対応を講じてまいりたいと考えております。
  102. 竹内猛

    竹内(猛)分科員 時間が来たから、最後に。  私は、何でもかんでも反対をするということではありません。これは個人の意見です。  もし仮に知事が強行するならば、九年度予算をつけるかっけないかということは、これはまず三党が一致をしなければできないことなのです。さきがけだってこれに問題を出しているわけです。我々も問題を出している。二十万の署名ももう間もなく完了することになる。そうなると、これはなかなか難しい。これが第一です。  第二は、知事は、農地として干陸をさせようとしている、多目的ということは考えていないと表向きは言っているけれども、それならば、もし国営でやるならば、国が全部土地を管理しろ。国営にしたらいいのだ。知事にその自由を渡さない。国が管理をして、国営の土地にして、そしてあくまでも農地をやるならば、そこにモデル的な農地をつくっていくということは、これは一つの方法なのです。  三つ目、あくまでも農地としていくならばそういう方向をとるし、それから建設省河川局についても、長良川のような方法で、もう一遍委員会をつくって審議のし直しをするということも一つの方法であろう。情報公開をする。それから、計画の実施、修正の実施、中止というような建設省が先鞭をつけたことについて、その委員会で議論をして、修正をしてやるならば修正をするようにしていかなければ、これは民主主義に反するのではないか。  いずれにしても、あそこは、皆生温泉や玉造温泉、そして宍道湖、中海という与えられた景観があるし、古い歴史もある。こういうものを一つの観光地帯として、環日本海の一つの重要な観光資源として活用し、魚もとれるし、これを使っていくことの方が、はるかに自然を大事にし、地域を大事にし、そして住民の意思を尊重することになる。  今から金の問題だけに、金の負担がどうだのこうだのとそんなことばかり言って、それだけに問題を局限しないで、もっと広い視野から、歴史と自然環境、それから水質保全、こういうものを中心として考えていかなければ、十年先は食糧がなくなるから農地をつくるんだといっても、現在、五千ヘクタールの耕作放棄、九千ヘクタールの減反というものがあり、日本の国内全体としても七十九万ヘクタールの減反と二十二万ヘクタールの耕作放棄があるときに、十年先のことをやるために、今世論を押し切って進めるということについては、これは時代錯誤であって、新聞の論調やすべてのマスコミが言うとおりであって、本当に残念で情けないことだと思いますから、最後にまたもう一つ大原大臣のお言葉をいただいて、私の質問を終わります。
  103. 大原一三

    ○大原国務大臣 先ほども申し上げましたとおり、各方面の意見を十分聴取し、また先生の御意見も参考にしながら、十分熟慮してまいりたい、かように考えます。
  104. 竹内猛

    竹内(猛)分科員 終わります。
  105. 佐藤静雄

    佐藤主査 これにて竹内猛君の質疑は終了いたしました。  次に、佐藤剛男君。
  106. 佐藤剛男

    佐藤(剛)分科員 私、福島の自由民主党の佐藤剛男でございます。大原農林水産大臣におかれましては、本当に毎日御苦労さまでございます。心より敬意を表します。  きょうは、国営農地開発事業、また、それに絡んで県営開発事業につきまして、私の見聞している地元の部門の問題を例に、農林省それから会計検査院に少しく申し上げて、農業政策もその方向転換をする必要があるのではないか、それから会計検査院も、この機会に農林省と一緒になって、そして、簡単に言えば失敗でありますが、失敗のケースを修復することが必要であるということを申し上げようと思っているわけであります。  農林大臣、福島というのは温泉に囲まれておりまして、飯坂温泉、土湯温泉、高湯温泉、岳温泉。吾妻、安達太良の峰々がありまして、ちょうどスイスのアルプス、私はスイスに三年間おったのですが、アルプスに非常に似ておる地域で、景観が非常にいいところでございます。福島を東洋のスイスにと言って、私は、グリーンサバイバル、緑の運動とか環境関係について、私なりにそういう面でいろいろ力を入れているわけであります。  私の住んでいる福島市というところは、別名吾妻スカイラインと称する道に面しているわけでありますが、そこから毎朝のようにきれいに見える吾妻連峰、吾妻の峰々でありますが、その中に、一つ本当に残念なのが吾妻パイロットという、いわゆるパイロット事業と称するのですが、農林省流に言いますと国営農地開発事業と言うわけでしょう。そういうものの結果、きれいな森が裸になっております。  当時つくろうとしたときには、サラリーマンが野菜をつくったり農業をやろうというようなことから発想した、高原です、高原野菜みたいな感じ。そして果樹をつくりましょうなんて始まったのです。ところが、木を切りましてやったところでありますが、木を切ったところが大間違いでありまして、風の吹き抜けというのがありまして、ここのところに風がびゅんびゅん吹いてきまして、リンゴの木などを植えますとリンゴの実がすっ飛んでしまう。それで、すっ飛んでしまっているところですから、風をとめる網をやったりしております。  そこのパイロット事業は、当時、金もかけたわけですが、立派なもので、道路はきちんと整備されている、電話線は入っている、一番上の頂上にはちゃんと自然の水ためはある、そして一番頂上のところには、そのころの代議士の名前が出ていまして、「吾妻が燃ゆ」なんといって記念碑が出ていますが、今やちっとも燃えていない。風は吹き抜け。そして今、時代は変わっておるわけでありますが、簡単に言えば、先ほど竹内先生の話をちょっと聞いておったのですけれども、まさしく耕作放棄地に数えられてしまうというような状況になっているわけであります。  これには、県がかみ、それから市がかみ、そして受益者としての投資をしている百何戸の人たちがやった事業でございますが、後始末に非常に苦労しておる。地域の方から、どうしようか、こういう事業をやろうかというようなことが上がってくるのを待って、そして、いいのが来ましたら、では、農地法の三条を受け入れますよという受け身の形になる。農林省も、会計検査院の方を向いて、会計検査院が何か文句を言うんじゃないかなというので、方向転換できないでいる。それに役人は一年ごとにかわる。県もかわるし、農林省もかわるし、市もかわる。ですから、成功しなかった例をもとに戻すというときには、すごく役人機構というのは下手なんです、やり方が。もう撤退ができない、撤退が。  当時つくった時代に比較して、農業の環境は全く変わってしまった。後継者だって千八百人ぐらいの話になってしまっておる。それから、農家の家族農業者ももう激減。変わっておるわけでありますが、そういうふうなところが変わっておりながら、事情変更に対応ができていない。  そこで、私が提言するのは、むしろ会計検査院も一緒になって、国費を使ったんだから、これについてはみんないろいろアイデアを出しなさいと。もう土も飛んでいってしまったわけだから肥沃土もないわ、牧草地にしようにもないわ。風車発電でもやったらどうかなんて私もアイデアを出しても、なかなかアイデアが出てこない。景観のよいところを見ると出てこない。むしろ、何か寒いところの木というのは成長が速いから、そこら辺の木でも何年かかけて植えた方がいいかもしれない。そういうふうなものがあるわけであります。  それからまた、さらにずっと福島の方の私のところに行くと、水原という地域があるのですが、これはパイロットという名前に入らぬですね。国が補助しまして県営農業開発事業、こういうことをやっておる。これも桑とリンゴを植えた。桑を植えたけれども、御承知のように、今や桑は毎年毎年養蚕業をやる人が減って、これは農政が失敗なのか、世の中が変わり過ぎたのかどうかあれですけれども、二万戸を割ってしまっておる。それで、今や出荷額が四千トンを割るというような状況になっておる。  あの日露戦争のときに、ロシアのパルテック艦隊がやってくるというので、日本は必死になってその防衛態勢を整えたときの軍艦は生糸で買った。私のおじいさんというのは養蚕の種屋をやっていて、農家でありまして、蚕を私自身も飼った経験があるわけでありますから、あの蚕様のおかげで日本はパルテック艦隊をやった。  ところが、今やもう恐らくことしは出荷額五十億を割るのじゃないかなんて言われておる。俵にしても一万俵足らずになる。そういうふうなところに桑を植えて事業をやったが、今そのところは訴訟みたいなのがバブルの時期に起きて、十分なる所期の目的を達していない。これを方向を考えて、ほかの事業にしようかというところの、方向の中央における政策変更がなされれば、私は、土地であるからきちんと生きた政策もできるであろうし、もとに戻す気になれば木を植えることもできるだろうと思っております。  また、さらに私のところの近くの、私の選挙区でもあるのですが、川俣、岩代というところの畜産の関係。これは農用地整備公団がやったものでありますが、豚だの牛だのをやっている事業であります。ここは借金を抱えてふうふう言っている。それで、ウルグアイ・ラウンドのとき私は、酪農関係、何の関係というのもしっかり負債対策をしなきゃいかぬということでやってきた一人でありますが、そういう幾つかの問題を抱えているのが、成功したのは一つもない。  ですから、まず一つお聞きしたいのは、今までのこういう国営農業開発事業と言うのですか、農林省、局長さん。だれが担当局長かな。国営農業事業に、日本列島全体で何カ所やって何千億の事業費を使ったか、データを参考までに教えていただきたい。
  107. 野中和雄

    ○野中政府委員 農地開発事業でございますが、国営農地開発事業は、昭和三十六年度に国営開拓パイロット事業が創設をされまして以来、平成年度までに全国で百三十二地区で完了をしております。完了地区の造成面積は十万ヘクタールでございます。それから、八年度現在、全国で四十五地区が実施をしているということでございます。  それから、同じ農地開発事業でも補助によりますものがございますが、これは昭和三十六年度以降平成年度までに二千百四十七地区で完了をいたしまして、八年度現在、全国で百三地区が実施をされているわけでございます。  この投資額でございますが、昭和三十六年度以降、国営、補助を合わせまして、国費で約一兆八千三百億円の投資額でございます。
  108. 佐藤剛男

    佐藤(剛)分科員 ありがとうございました。  今の住専の三倍近くあるわけですが、その一兆八千三百億の事業の中で、どうですか、局長さん、ずっと眺めていて、成功率というか、目的達成率というのはどんな感じなんですか。
  109. 野中和雄

    ○野中政府委員 これらの地区、いろいろでございますけれども、完成されました地区の中でも、例えば国営事業の方でございますけれども、青森県の屏風山地区等では、メロンや大根を植栽いたしまして、戸当たりの経営規模もかなり拡大をしてうまくいっているというようなこと。あるいは群馬県の、これは有名なところでございますが、嬬恋西部地区でございますが、キャベツを植えて、輪作体系が確立をいたしましたことから、作付面積も大幅にふえて所得も大幅に上がっているというふうなこと。それから補助の分野では、北海道の夕張地区で、メロンでございますけれども、これも輪作体系が確立をされまして、一戸当たりの粗収益も一・三倍に増加をしたというようなこと。あるいは和歌山県の上南部地区などにおきましては、梅でございまして、ここも戸当たりの農業所得が二・四倍に増加をしたというようなことで、成功している事例というのも幾つか、多々ございます。
  110. 佐藤剛男

    佐藤(剛)分科員 局長、多々なの、幾つかなの。福島は成功していないのね、僕が言っている三つとも。どうですか、局長、あれを成功と言わないでしょう。
  111. 野中和雄

    ○野中政府委員 一方、うまくいっていないというものもあるわけでございまして、先ほど申し上げました、全国で百三十二地区が完了をして十万ヘクタールを造成いたしましたうち、未利用地の割合というのも約二・五%でございます。そして、その地区の未利用地の割合が三〇%以上となっている地区が全国で六地区ございまして、その中に、先生がお話しになりましたような福島県の地区も二地区ほど含まれているというような状況でございます。
  112. 佐藤剛男

    佐藤(剛)分科員 そうすると、福島というのは、未利用の中の三分の一は福島で稼いでおるという、失敗例なんだな、今のお話によると。  それで、こういうことなんですよ。私がさっき桑の話をした、バルチック艦隊の話をした。もう事情は変わってしまっているわけだ。そうでしょう。桑の問題で、今、養蚕のメカニズム、繭糸業をどうするか、それから機屋をどうするかというのをきのうもやっていたわけですね。そういう問題で、もう全く環境が変わってしまっているわけだ、当時、初めスタートしたときの基本が。そうでしょう。酪農のときだって、川俣のところの麓山と言うのだけれども、そのときに牛乳がキロ百円ぐらいになるだろう、あるところでは百五十円ぐらいになるだろうと。そうしたら、御承知のように、今七十六円何十銭、ずっとだからね。据え置きをいかにするかということでやっているわけだから、全部狂ってしまうわけだ、乳価決定のときにあるように。  ですから、状況が変わったならば、農林省、担当局長として、変わったならそのときに、これはだれかが常にやはり一つ一つでも直していかなければならぬ。十あるならば一人が一つずつ局長が十回にわたってやるとかということの気持ちで、これは情勢が違ったんだということで会計検査院に頭を下げて、会計検査院も怒らないで、怒らないでだよ、会計検査院は怒っていればいいというものじゃないんだから。これは、国の予算をきちんとあれすればいいというのは、会計検査院局長、一緒になって、それでやれば県も市も何か一つのアイデアを出してくる、方向を変えれば。だから、一つのいいあれを考えなさいと。情勢が変わった、間違いだった、何かいいあれを考えようということであれば、今まで投資した額の、百億であるとか、単位がそういう大きな話だから、そういうことをやっていないと、それが成功すると思って投資した民間の人たちが、十何年もかけて償還のあれをしたりして一喜一憂している。  そういうふうなのがあって、景観は悪い、風は、何も直ってないわけだ、木の一本も植えてない、そうでしょう。よくなっているのなら別にほっておけばいい。直さなければならないでしょうと言っているんだ。そういうことをやりますよということを、今の事業費の中にあるわけだから、ウルグアイ・ラウンドのところの費用なりで使っていて、六兆百億円の部分の中から、そういうものについて本格的に国は乗り出しますよ、もし何にもいいアイデアがなかったら木を植えるよとか。一年の計は稲をつくるにあり、十年の計は木を植えるにあり、百年の計は人をつくるにありと言うんだ、局長。そういうふうなことなんだから、それも何にもしないでほっぽり投げておいたら、風が吹くたびに土はなくなって景観はちっともよくならない、そういうことです。  ですから、会計検査院局長、わざわざいらっしゃっておりますから、私が申し上げる方向で、農林省と連携して、いろいろ状況は、農業事情は激変して、米にしたって、米は自由化しないと言っていたのが米の自由化されているような、こういう御時世になっちゃっているわけだから、そういうことをやることについて、連係プレーの上で私はやっていただきたいということを申し上げておるが、まず会計検査院局長さん、ひとつそれについて御見解を問います。
  113. 五十嵐清人

    ○五十嵐会計検査院説明員 一般的に申し上げますと、農地開発事業により造成された土地というものは、これは造成の目的に沿って農地として利用されるべきものであろう、こう考えております。  しかし、今先生から御指摘がありましたような事例に見られますように、立地条件が適当ではないとか営農ができないとか、あるいは農業情勢の変化から農地として利用するのは難しいというようなことがあるとしますと、これは単に農政上問題だということだけではなくて、大きく言えば国民経済的な観点からもむだな投資になる可能性がありますし、また、国土の有効な利用という観点からもこれは望ましくない姿だろうと思います。  そういう意味で、確かにいろいろな負担の問題をどうするかというようなこともございますけれども、その辺はよく研究すれば解決できないものでもないのではないかという気がいたしますので、そういった場合には、農地の立地条件あるいは農業情勢等を総合的に勘案するなどしまして、当該土地の利用について多角的に検討するということが必要なのではないかと思っています。  現に、木曽岬干拓事業について私ども意見表示をしております。木曽岬の干拓事業ですね、あれは農地開発事業ではございませんけれども、そのときも、やはりもう農業として立ち行かないような情勢にある場合には、もっと多角的な利用についても検討すべきではないかということを指摘の中でも書いております。そういうことがございます。
  114. 佐藤剛男

    佐藤(剛)分科員 会計検査院から心強いお話が出たので、そういうお話を聞くと皆喜んで本格的になるのです。会計検査院が怖いんだから、各省庁。僕も通産省の役人をやっていたからよくわかるのだけれども、別に悪いことをしたわけではないのだけれども、会計検査院というのはやはりぴっとしていて、不当支出だなんて言われるとみんなぴりっとくるのですよ。  だから、そういうふうなことを言わないで、こういうふうなことの事情が変わったのだから、こういうことでみんなでやって、投資した額をもっと、倍に返ってくるような、返ってこなくても何か効果があるようなことを考える。方針が変わればぴりっと変わってくるわけです、それは言っているわけです、中央は。だから今、会計検査院局長さんにお聞きしたわけです。  局長さんも一緒になってやってくださるということだから、だから農林省局長、力強い会計検査院からのお話が出たわけだから、農林省もあなたのときに一緒になって、それで県と市と本格的にそういう検討会を開始して、向こうが下から上がってきたら農地法三条をやりますよとかいうのではなくて、もう当然のこととして、もうこれは農業じゃないんだから、農業できないんだから、そういうようなことをやりながらやってみてください。局長、見解。
  115. 野中和雄

    ○野中政府委員 私どもも基本的には、せっかく国費を投じてっくった農用地等でございますから、その目的に沿って農業的な利用が図られるということが一番いいわけでございます。  ただ、先生お話しのとおり、お話のあった地区等につきましては、事業が終わってから相当の年数が経過をしておるというような状況であり、かつ、現実になかなか利用が進まないというような状況もあるわけでございますので、そういうところにつきまして、例えば、具体的に地域の事情をよく御存じの地元の市がこの吾妻小富士等の地区につきましても協議会をつくられたり、あるいはまた、さらに近日中にも新たな協議会をつくられてやるというようなことも伺っておりますので、そういう地元公共団体と密接に連携をとりながら、有効利用が図られるよう私どもとしても努力をしてまいりたいと思っております。
  116. 佐藤剛男

    佐藤(剛)分科員 その答弁ではだめなんですよ。僕が言っているのをあなたは理解していないんだ。  下から上がってきてやっている協議は、やっていたのですよ、ずっと。ちょこちょことやっていて、これは農林省の方が待って、それならば、いいのが出ているから、じゃ三条許可のあれしますよという話になっている。そうすると、農林省の方は、いや、これは目的変更すると今度は会計検査院がうるさい。そういうふうなことだから回り回ってしまって進まないので、僕が申し上げた、中央においての方針を、本件というのは、これだけ未利用されているというのは失敗だったんだから、簡単に言えば。失敗の部分というのは回復しよう、回復するためには、国の資金が必要なら必要資金を出そう、考えましょう、ウルグアイ・ラウンドの金の一部でもって考えようじゃないかと。考えないで、既存の、国はやらないで、金は出さないで、県とか市に任せてしまって、あるいは受益者の負担でやれという発想をするからだめになってしまうんだ。  回復するには、十何年もかかって何も進まないといったら、これはイニシアチブをとりなさい。そういうことをやるかどうかの話を言っているのです。もう一回見解。
  117. 野中和雄

    ○野中政府委員 私が地元と申し上げましたのは、地元の県なり市町村が一番その地域の御事情に詳しいというわけでございますが、まさに先生お話しのように、この有効利用を図っていくことが大事でございますので、私どもも必要な事業の実施等につきまして一緒になってやるつもりで、密接にやっていきたいというふうに思っております。
  118. 佐藤剛男

    佐藤(剛)分科員 それでは確認します。  速やかに、何も別に一日を争うわけではないけれども、方向として、方向を転換する、農林省は会計検査院の後押しのもとで、本件の問題について、最もその地域住民、環境がよくなる形でやりましょうというふうにとっていいですね。  それから会計検査院局長、同じように再確認を求めます。
  119. 野中和雄

    ○野中政府委員 地元市町村と密接に連絡をとって、そのようなことで私どもは臨んでいきたいと思っております。
  120. 五十嵐清人

    ○五十嵐会計検査院説明員 私どもも、行政そのものに責任を負う立場ではございませんので、私どもが積極的にこの問題を進めるということにはならないだろうと思います。しかしながら、先ほど申し上げたような状況を何とかしなくてはならないということでは同じような考えを持っておりますので、御相談なり受ければ、前向きの姿勢で対応したいというふうに考えております。
  121. 佐藤剛男

    佐藤(剛)分科員 今、会計検査院の五十嵐局長から力強い支持のあれがあったのですから、野中局長、あなたは名局長なんだからひとつばしっとやって、本件、そういうふうな問題が私のところに、国営と県営といったって、国が出している補助金のところのあれなんだから。水原、桑の話、これも忘れないで、そういうようなことをやっていただきたい。  やはり今、そういうこともやることが必要な時期に来ている、情勢が変わったのだから。それを残してしまうと時期を失しますから、ひとつよろしくお願い申し上げます。
  122. 佐藤静雄

    佐藤主査 これにて佐藤剛男君の質疑は終了いたしました。  次に、吉田治君。
  123. 吉田治

    吉田(治)分科員 吉田治でございます。  農水の問題について質問をさせていただきたいと思いますが、一昨年の世界貿易機関設立協定等に関する特別委員会で質問をさせていただいて以来で、あのときも申し上げましたが、やはり農業の問題というものは、単に、俗に言う川上、農協がどうした、お百姓さんがどうしたという話だけではなく、広く川中、流通でございますね、卸の問題、そして川下、これは小売であり、また消費者という立場、この三つがあって初めて農政というものが十二分に生きてくるのではないかな、私はこういうふうにいつも考えておる次第でございます。  そこにおきまして、先日来の新聞報道等で、食品の日付表示が改正され、経過措置として製造年月日等も入れていいよという中で、消費期限または品質保持期限というもの、私自身消費者として考えた場合には、製造年月日が書いてある、しかも時間まで書いてあるというのは、見たときに、これが新しい、これが古いと。消費者としての立場からしますと、一分一秒でも自分が買う時間に近いもの、日にちの近いものが新鮮なのだという思いにとらわれ、できた時間はほんの数時間しか違わないのですけれども、よくスーパーなどでも同じ商品を見比べている。そして、古くなったものはどんどん残され、最終的に処分されている。むだなこと、資源の有効利用に反するようなことが随分行われてきたという趣旨のもとで、この日付表示が改正されていく。  しかしながら、つくる方で善意を持ってやっていただかなければならないのに、どうも先日来のパンの問題にいたしましても、製造の日を変えたというふうな問題が起こっておるわけですけれども、これについて、まず、食品全般を扱う農水の立場としてどういうふうにお考えなのか、また、どういうふうに対応をなさるのかということをお聞かせいただきたいと思います。
  124. 中須勇雄

    ○中須政府委員 ただいま先生から御指摘がございましたとおり、いわゆる日付表示について、従来は製造年月日表示ということが基本的な考え方だったわけでございますが、それを期限表示に切りかえるということが昨年四月から実施をされまして、現在二年間の移行期間中ということでございます。  この背景についてはただいま先生が御指摘になったとおりでございまして、一つは、製造年月日表示というのが、厳しい日付管理を通じて、深夜・早朝作業であるとか、多頻度小口配送とか、返品の誘因になっているのじゃないか、そういうようなむだを排すること。あるいは、国際的にもコーデックス等では期限表示が採用されている、貿易障害になってはならないということで、そういう面での国際化を進めなければならない。あるいは、本来のお話でございますが、食品の製造・流通技術の進歩によりまして、製造年月日表示では一体いつまで品質がいいのかということが必ずしも十分消費者にわからない。そういったことを背景に期限表示に移行する、こういうことを進めている最中であるわけであります。  これはこれとして、皆様方からさまざまな声は寄せられているわけでありますが、消費者を含めた皆様方の御理解を得ながら、こうした期限表示への切りかえということができるだけスムーズにいくよう私ども努力をしていきたいというふうに思うわけであります。  今回のパンの問題をきっかけにして、日付表示について、先付表示と申しましょうか、そういう事例が幾つか摘発をされた、こういうことがございます。このことについては、そもそも、そういった日付表示の変更の問題とは別に、食品を製造する企業の行動原理と申しましょうか、本来そういう問題としてやはり許されてはならないことだ、こういうふうに私どもも思うわけでございます。  今回のパンについての幾つかの事例につきましては、私ども、二十八日付で業界に対して警告を含めた通達を発しまして、業界団体としてもこうした問題について適切な対応を傘下の業者に対してとるようにということを指示を申し上げている、こういうような段階にあるわけでございます。
  125. 吉田治

    吉田(治)分科員 これは厚生省さんに聞くのがいいのですかね。どういうふうにして発覚したのですか。
  126. 堺宣道

    ○堺説明員 従業員の内部告発というふうに聞いております。
  127. 吉田治

    吉田(治)分科員 それでしたら、内部告発しなければそれはまかり通っていた、そういうふうになるわけですね。
  128. 堺宣道

    ○堺説明員 日付の切りかえというのが深夜午前零時ということもございまして、なかなかそこまで監視するのが難しいというのが実態でございます。
  129. 吉田治

    吉田(治)分科員 今言われたように、非常に難しいということですけれども、それでしたら、こういう事態を受けてこれを取り締まるというか、取り締まり権がございませんので、監視するというか、運用していく立場として、厚生省、再発防止という部分で何か具体的な施策を考えているのでしょうか。
  130. 堺宣道

    ○堺説明員 この問題に関しましては、再発防止を図るために、当該自治体を通じまして製造業者に対して所要の措置を講じることを指導するということ、それから、関係業界団体に対しまして再発防止策を講じるように指導したところでございます。
  131. 吉田治

    吉田(治)分科員 この問題というのは、随分マスコミもある意味で協力されて、消費者の要求というのですか、自分たちも消費者なのでその気持ちはよくわかるのですけれども、先ほど申しましたように、余りにも要求が厳し過ぎる、とにかく新しいものだったらいいんだと。  しかも、店によっては、何時間たちましたからといってわざわざ店の前にそれを捨ててしまう。余りにも問題になりまして、英語で言うホームレス、日本語で言うたら浮浪者というのですか、その人たちがその時間を目指してやってきて、それを奪い合うようにして持って帰る。これはいかがかということで、それはしなくなった。それほど鮮度というものにこだわる。  それを何とかこの法律改正によって表示方法を変えるということをやったのですけれども、新聞等の報道を見ておりますと、どうも今度は、地方自治体が条例等で日付表示について製造日の表示にするんだとかしようという動き、これは特に大都市部の行政において行われつつある。これは、PL法の問題ですとか、全国展開をしているところ、またこれからしようとするところの食品関係の会社等に大きな影響を及ぼしていくと考えられるのですけれども、この辺について、農水としてはどういうふうに対応をされるのでしょうか。     〔主査退席、若松主査代理着席〕
  132. 中須勇雄

    ○中須政府委員 御指摘のとおり、食品に関しまして、国が表示の基準を設けていない品目について、都道府県等の地方自治体が条例により独自に表示の基準を定めている、こういう場合がございます。  実は、私ども農林水産省といたしましては、先ほど申しましたように、食品の日付表示について昨年四月から期限表示に移行するに当たりまして、各都道府県等に対しまして、具体的には、各地方自治体独自に食品の日付表示をやっている場合には、今回国において行った改正の趣旨及び内容にのっとったものになるように各都道府県においても見直しをしていただきたい、こういう旨の御要請を申し上げたところでございます。  これに対しまして、実際には多くの自治体ではこの要請を踏まえていただきまして、既に期限表示に移行するための関係規則の改正等をかなりの自治体で行っております。  ただ、ただいま御指摘がございましたように、一部の自治体、特に、具体的に名前を挙げれば、東京都あるいは神戸市、京都市、こういうところでは、日もちの短い一部の商品について期限表示のほかに製造年月日も併記するように、こういう義務を課そうという動きがあるのは事実でございます。例えば東京都につきましては、五月十七日にそういうことを盛り込んだ審議会の答申が都に対して出されている、こういうような状況にございます。  したがいまして、私どもといたしましては、こういった自治体については、国における日付表示の改正の趣旨ということを十分御説明申し上げまして、理解を求め、基本的には足並みをそろえていただくようにこれからお願いをしてまいりたい、こういうふうに考えている次第でございます。
  133. 吉田治

    吉田(治)分科員 これは単に地方自治体に理解を求めるというだけではなくて、私は何度も申し上げておりますように、広く消費者、国民一般が、そうだ、それはおかしいことなんだ、そういうふうに流される自分たちがやはりちょっと行き過ぎかなと自覚するというのですか、思うという部分も、今の世の中の流れ、好き嫌いは別にしまして、自己責任等々の話からしましても必要なことではないか。その辺の部分にもPRというのですか、広報活動にも力を入れていただきたいということを私は申し上げておきたいと思います。  さて、冒頭にも申し上げましたように、一昨年、私はWTOに関する特別委員会等々で質問した、ガット・ウルグアイ・ラウンド農業対策費として、これから先五年間にわたって六兆百億、地方を合わせますと七兆二千億のお金が使われていくと、それでどれだけ農産物が安くなるのですかと。先ほどの佐藤委員の質問の中でも、昭和三十六年以降、パイロット事業というので一兆八千億にわたる費用が使われた、これは国民の税金でございますよね。それだけ使われて、では成功した事例はそこそこか多々かとかいう話では、普通、例えば一般企業に勤めている人間からすると、それほどのお金を使ってそんな結果しかできなかったのかと言われるのが当然であるかと思います。  これから先の、昨年度の実績も踏まえて、また昨年度のウルグアイ・ラウンド予算の使われ方、そして、これの使っていき方、そしてその評価というのですか、内部で評価するだけではなくて、それをどう外部にアピールし、また国民に知ってもらうのかという面も含めてお答えをいただきたいと思います。
  134. 高木勇樹

    高木(勇)政府委員 お答え申し上げます。  今先生御指摘のように、ウルグアイ・ラウンド対策、これは二年度目に入っておるわけでございます。総事業費で六兆百億、平成年度の当初予算までの累計では、総事業費ベースで約二兆三千億円ということでございます。  この内容といたしましては、いわゆる基盤整備といいますか、農業の場合には、御承知のようにやはり農地というもの、そこで農業機械が効率的に運用されるというための農業基盤整備というものが非常に重要でございますし、また、農業・農村の活性化という点でも必要な事業でございまして、公共事業といわゆる非公共事業、この中には、近代的な施設、さらには付加価値をつけるための施設、こういったものの整備、農業構造改善事業というものが中心でございます。その他の非公共事業としては、いわゆる新規就農対策、新しい技術開発とか農地の流動化対策というものがございます。これらの事業のねらっているところは、いわゆる効率的、安定的な経営体が我が国の農業生産の大宗を占めるような農業構造、これを早く実現させようということでございます。  ちなみに、これまでいわゆる行政価格と言われるもの、米の価格とか麦の価格とか、いろいろございますが、そういったものの価格水準は、昭和五十年代当初の水準でございます。そういった面では、これまでのいろいろの農業に対する政策が、それなりに効率性、生産性の向上に役立っていると私ども考えております。  今先生御指摘のように、このウルグアイ・ラウンド対策につきましても、六年間ですから、残された期間はあと四年間あるわけでございますが、一定の時期にはこの事業の効果というものについても分析をいたしまして、やはり国民に理解を求めていく、またその事業の執行の仕方についても反省すべき点があれば反省をしながら改善を加えながらやっていく、そういう姿勢で臨んでまいりたいというふうに考えております。
  135. 吉田治

    吉田(治)分科員 今官房長は、価格は昭和五十年代から変わっていないというお話を述べられておりますが、反対に言えば、それだけ農家の方々にとっては、この二十年間、実入りは変わらなかった。  先ほど申し上げました川上、川中、川下という言い方でいきましたら、川下、俗に言うスーパーというのですか、そういう大量に商品をはけるところの力が強くなり、なおかつ、そういうところが、今非常に話題になっております海外からの野菜の輸入、日本から種を持っていって、日本と同じような土壌で野菜を大量につくって、そしてそれを持って帰ってくる。価格は、日本の五分の一もしくは六分の一とも言われております。これが、後ほど申し上げます中央市場の問題、また、今御質問させていただいております農業自身に大きな打撃を与えているのではないかな。  ですから、私は、ただ価格がどれだけ安くなった、安くなればいいという問題だけではなく、やはりそこに従事される方々も十二分な所得を得る方法でないとだめではないか、そうでないと、このお金が死んでしまうのではないかなという感じがいたしております。そういうふうに考えております。  私は、極端なことを言ったら、そんなものに使うぐらいだったら——これは極論ですよ。こういうことは不可能ですけれども、もう日本は農業はやめ、退職金だといってその分を農家四百万戸に配る方が、後世を考えたときによっぽどよかったのではないかなという意見が出てくるかもしれないなという思いにこのごろとらわれております。  さて、今官房長が言われましたように、農地の流動化という問題の中で、今、農地自身というのは、法人化ですとか請負ですとか、先ほどからずっと質問の中で出ておりましたが、新規就農の方が年間一千八百人ぐらいしかおられない、後を継がれる方もおられない、また、先ほどの竹内委員の質問の中では、耕作地を放棄される方も出てきている、減反だ、極端なことを言うと農地が余ってくる。しかしながら、農地の所有というものは、あくまでも個人、有限会社、合名会社しかだめだ、株式会社は持つことはならぬと。つまり、株式会社が持つと、何かそれが悪であり、株式会社は金もうけというふうなものの一つで、大事な私たちの土地、農地というものが投機だとか、そういうものの対象になってしまうという感覚にとらわれているのではないかなと私はいつも考えるわけでございます。  私はそうではないと思うのですね。例えば、先ほど申し上げましたように、川下であるスーパーであるとか大手のそういう流通業が、自分たちの流通のノウハウを生かせるように、製造するところ、つまり川上である農地というものを所有し、それをいかに消費者にマッチしたような形、例えば値段であるとか品質であるとか時間であるとか季節というものを調整することが可能になっていく。そういうことが、今度は新たに別の流通経路である農協との競争というふうなものの中で、農業というものがより一層活性化がなされるのではないかな。やはり外部のプロというものと一度競争する、もしくは一度任せてみる、そのノウハウを自分たちのものにする、そういう方法というものが必要ではないかな。  今農業といいますと、イコール農協、プロだと。それ以外の血は入れない、ほかの人たちはできない。一つの運命共同体というか、一つのギルドと申しましょうか、同盟といいましょうか、私はどうもそういう形で農業というものがわかりづらい。  また、一般消費者からすると、何かあの中でいいことが行われているのじゃないかな、補助金をたくさんもらって何かいい生活しているよ。なるほど、農家へ行けば、大きな家に住み、電化製品もたくさんあり、必要ということもあるでしょうけれども、自動車が二台も三台もある。  そして、中学校、高校の教科書で私たちはこう習っております、日本の税制というのはトーゴーサンだと。その後トーゴーサンピンだと言われておりまして、何か御承知だと思います。日本のサラリーマンは十割所得が捕捉されている、自営業者は五割だ、そして農家は三割だ。  つまり、農家は何かいいことをしているんだ、そういう思いが、今、特に都市を中心に生活する人たち、これは、私は二十年前と状況が変わったと思うのですね。二十年前であれば、その当時、都市で働く人たちというのは、自分の兄弟なり、もしくは自分の親御さんなりが農業をしているから農業の大変さ、つらさというのはよくわかっている。だから、自分が都会へ出てこざるを得なかったこともよくわかっている。  しかしながら、時代は変わって、その子供たちの世代が今都会に住んでいる。そうしますと、農家をやっている人は自分のおじさんかおじいさんかおばあさんしか知らない。しかも、随分遠いところになって、年に一度行くかどうかしかない。行くと、何かいい生活しているなと。  そうしますと、農業に対する国民全体の総意とか思いというものは、ある意味で、甘い目じゃなくて、ますます厳しい目、農業に従事されている方からすると、とんでもない、私は何でそういう見方をされるのかというつらい思いもされるのではないかなと思います。  随分長くなりましたが、一番最初に申し上げました株式会社化というのですか、株式会社の農地所有というものについて、今農政としてどう考えているのか、そしてこれからどうしようと考えているのか、お聞かせいただきたい。
  136. 野中和雄

    ○野中政府委員 農業なり農地の所有等につきましては、私ども必ずしもクローズドに考えているわけではございません。個人の方であれば、農業をやりたいというような方、このごろございますが、そういう方に農地をあっせんをしたり、また、都会から農村に入って農業をやってみようという方もふえているわけでございまして、そういう方には私どももオープンに道を開いておりますし、また、今後もそういうことをしていかなければいけないのじゃないかというふうに思っているわけでございます。  ただ、お話しの株式会社等の問題でございますが、この点につきましては、実は、ことしの閣議決定でございます規制緩和推進計画の改定におきましても、「農業生産法人制度に関し、株式会社の農業経営へのかかわり方、事業要件の在り方等について、関係者からのヒアリングを行うなど幅広い検討を行う。」というふうにされているところでございます。  私どもといたしましては、この問題につきましてそういうふうに検討を行っていくわけでございますが、株式会社のメリットというのもあるかもしれませんけれども、全体としてそういうことを認めていく場合に、転用含みで農地を取得するおそれというのもやはりどうしても防ぎ切れないということ。  それからもう一つは、農政を進めていきます場合に、私どもは、農業の側で意欲を持って一生懸命取り組んでいただく方というのを認定農家というふうに認定をいたしました。これは個人の方だけではなくて農業生産法人でもいいわけでございますけれども、こういう方に、できるだけ農地の利用の集積あるいは団地的な利用を図っていくようにしていこうというふうに、個人の方あるいは農業生産法人を育成をしていこうというような施策を進めていることとの整合性という点からいって、直ちにというようなことについては問題があるのではないかというふうなこともございまして、先ほど申し上げました閣議決定の線に沿いまして、有識者あるいは農業団体など関係の方の御意見を幅広く伺っているところでございます。今後、御意見を伺いながら検討を続けてまいりたいというふうに考えております。
  137. 吉田治

    吉田(治)分科員 私が議員になる前によく聞いたのは、国会答弁で検討するということは何もしないということだと聞いたことがございます。しかしながら、私はもう一度お聞かせいただきたい、本当に検討するのですね。いつまでに。
  138. 野中和雄

    ○野中政府委員 先ほど申し上げました、本年三月に閣議決定されました規制緩和推進計画に基づきまして、これは平成年度においてこういう検討を行うということが明記をされているわけでございまして、実際私どもは、去る五月にも、当面、農業生産法人の方々、何社かの方に来ていただいてお話を伺うというようなことで既に検討を開始したところでございます。
  139. 吉田治

    吉田(治)分科員 後日にまたこの議論は譲りたいと思いますが、やはりそういうふうな競争というものも相当これからは取り入れて考えていただきたい。それだけじゃなくて、国内の競争というものも必要ではないかと思います。  時間がなくなってきましたので、一点、林業労働力確保の法律というのが今国会で成立いたしておりますが、これについて一言で結構でございます、林野庁と労働省の共管でございますので、まずこの具体的な施策について教えていただきたい。
  140. 入澤肇

    ○入澤政府委員 林業にかかわる事業の合理化と雇用管理の改善を図るという目的で、各都道府県ごとに一を限って林業労働力確保支援センターというのを設けたいと思っております。  これは、既存のいろいろな林業公社とか、あるいは担い生育成基金、こういうところに看板を掲げて、従来の施策に加えて新しい施策を集中してやるセンターとしていきたいと思っておるわけでございます。  具体的な事業の内容といたしましては、ここで高性能林業機械を買いまして、それを林業者に貸し付ける事業を行います。それから、新しい事業情報を収集してあるいは提供して、そして新規参入者を募るということもやっていきたいと思っております。さらに、新たに林業に従事しようとする者に対しまして無利子資金を貸し付ける、あるいは研修を実施する、こういうふうなことをやっていきたいと思っております。  いずれにいたしましても、この法律に基づきまして、林業労働力確保支援センターの活動を通じて、林業労働力の確保、林業労働の改善雇用管理の改善等を図っていく考えであります。
  141. 及川桂

    ○及川説明員 労働省でございますが、林業労働力確保法につきましての労働省としての取り組みでございますが、まず、何よりも雇用管理の改善ということが大きな課題であるというふうに考えております。  このため、法律におきましては、雇用管理者の選任、あるいは雇い入れに際しての雇用の内容等に関する文書での明確化といったことが規定されておりまして、こういった雇用管理体制の整備を含めて、あるいはまた通年雇用推進といった点も含めた雇用管理の推進ということをどうやって図っていくかということでございます。  具体的には、事業主の方々が雇用管理の改善等につきましての計画をつくって、都道府県知事の認定を受けて実施していくという中で各般の支援措置を講じていくという仕組みを通じて、具体的なこういった雇用管理の改善ということを指導していきたいというふうに考えております。  また、あわせて、林業労働力確保支援センターを通じまして、雇用管理の改善についての相談あるいは指導、または雇用管理者の資質の向上を図るための研修といったことを実施して、こういった雇用管理に向けての取り組みの指導を広めていきたいというふうに考えております。  さらにもう一点つけ加えさせていただきますと、雇用管理の改善とあわせて募集あるいは採用といったことも重要な課題でございまして、法律の中におきましては、委託募集の特例ということで、雇用管理の改善に取り組んでいく事業主の方々が林業労働力確保支援センターを通じて募集活動を行います場合には、従来の許可制にかえて届け出制でできるという形で、そういった募集活動がしやすくなるという形の措置を図っているところでございます。これにあわせて、公共職業安定所を通じた指導も図っていきたいと思っております。  いずれにいたしましても、労働省としましては、林野庁と密接な連携をとらせていただいて、この法律の円滑な施行に努めてまいりたいというふうに考えております。
  142. 吉田治

    吉田(治)分科員 よくわかりました。  林業も担い手が少なくなって、治山治水の立場からも頑張っていただきたいと思います。  最後ですけれども、私どもの地元に大阪市の中央市場がございます。さまざまな機会に質問をさせていただいておりますが、やはりこの中央市場にも、後継者の問題ももちろんですけれども、一つ大きな問題は、先ほど言いました川下、川上という形で言いますと、川下でありますスーパーから場外流通という形で、俗に言う中抜きというのが非常に大きな問題になっております。この状況で、果たして売る力を持っている方が卸、仲卸よりも強いのか、彼らの言うことを聞かなければならないのか、そのとおりしなければ自分たちは危ないのじゃないかというふうな意見が随分強く出てきております。  後継者の問題。そういうふうになってきますと、先がないということになりますと、後を継ぐ者としてはやはりほかへ行ってしまうということも出てまいります。  そしてまたもう一点は、週四十時間というものが来年からなされてまいります。これは質問項目にはしておりませんけれども、やはり中小零細が集まっている中央市場としては、何かいろいろ経過措置等、もうちょっと延長等も考えてほしいとも言われております。  この場外流通の問題、それから四十時間の問題、そして中央市場また仲卸の存在意義を含めて、今後の、将来の考えというものを大臣並びに関係担当者からお聞かせいただきたい。
  143. 中須勇雄

    ○中須政府委員 御指摘のとおり、卸売市場をめぐりましてもいろいろ大きな変化というか難しい問題も出てきてまいっております。ただ、私ども生鮮食料品の我が国における流通ということを考えた場合に、大量の品物を集め分荷し、そして公正な価格形成を図っていく、そういう意味におきまして、生産と消費を結びつけるという意味で、中央卸売市場の果たす役割はやはり生鮮食料品の流通においては今後ともかなめの地位を持つのではないかというふうに思っているわけでございます。  したがいまして、ことしの三月でございますが、法律に基づきまして卸売市場整備の基本となります第六次の整備基本方針というものを定めました。これに基づきまして、確かに時代の変化はあるわけでございますので、そういう流通の変化に対応しつつ、市場施設の計画的な整備であるとか取引方法の多様化あるいは情報化の推進、さらにお話にも出ましたが、卸売業者及び仲卸業者の経営体質の強化、こういうところを重点に卸売市場の重要性を認識しつつその計画的な整備を進めてまいりたい、こんなふうに考えているわけでございます。
  144. 大原一三

    ○大原国務大臣 先ほどからるる吉田委員からユニークな御提案をいただきまして、やはり時代は時々刻々変わっていく、その変わっていく変化に対応して農政もこだわりを捨てて前向きの対応をしていかなければならぬな、しみじみ私も先ほどそう感じておりました。  卸売市場の問題につきましても、先ほど公正取引委員会でございましたが、地方市場と中央卸売市場の地区分割について、それが今お話のありましたように、市場外流通や大手スーパー等の対応は十分時代即応ではないではないかという御指摘も受けていますね。そういうことを考えますと、今の固定的なやりようをさらに我々としては時代に合ったように市場の枠組みを変えていく改革も必要ではなかろうか、このように私も考えております。大変貴重な御意見をありがとうございました。
  145. 吉田治

    吉田(治)分科員 卸の問題は本当に重要でございます。よろしくお願いしたいと思います。  以上で終わります。
  146. 若松謙維

    若松主査代理 これにて吉田治君の質疑は終了いたしました。  午後三時から本分科会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後一時五十三分休憩      ————◇—————     午後三時開議
  147. 佐藤静雄

    佐藤主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  農林水産省所管農林漁業金融公庫について質疑を続行いたします。上田勇君。
  148. 上田勇

    上田(勇)分科員 新進党の上田勇でございます。  きょうは、農水大臣、大変お忙しい中、御苦労さまでございます。  きょうは、質問の機会をいただきましたので、消費者の方々、また流通あるいは商店の方々、結構今関心の高い青果物の原産地表示の問題、あるいは急増しています青果物の輸入の問題などについて質問をさせていただきたいと思います。  まず初めに、青果物の原産地表示につきましては、農水省でも平成三年には一般品質表示ガイドラインを制定されまして、また、昨年の十一月には食品表示問題懇談会の報告に基づきまして、現在、品質表示基準を制定するための作業を行っているというふうに伺っております。  消費者の立場からするならば、購入する品物に関する情報、知識、これは多ければ多い方が適切な選択の材料になるということでありますし、特に食べ物、食品を買う際には、その品物がどこの国、あるいはどこの地域でつくられたものか、非常に重要な判断の基準になるのではないかと考えております。  その意味で、農水省の方でこうした原産地の表示について推進されていることについては大変評価するものでありますし、今、我々の食生活が非常に国際化している中で、むしろ早急に手を打たなければいけない課題だというふうに思います。  そこで、今農水省の方で原産地表示を推進しているわけでありますけれども、そうした施策を進める背景というのはどういうところにあるのか、その辺の御認識をまず伺いたいと思います。
  149. 中須勇雄

    ○中須政府委員 ただいま先生からお話ございましたとおり、今お話に出ております青果物というものについては、やはりどこでとれたかということが非常に品質、中身の差異が出てくる、そういう性格がございます。そういったことから、平成三年二月に青果物の一般品質表示ガイドラインというものを制定いたしまして、小売業者を初め関係の皆様方に、青果物について販売をする場合に原産地等の表示を行う、こういうことで指導をしてきたところでございます。  その後、こういったことの普及に努めてきたわけでございますが、もう一つの事情といたしまして、特に平成五年以降顕著になったわけでございますが、野菜の輸入が大変増加をしてまいりました。特に生鮮野菜の輸入増ということがかなり見られまして、消費者の方々からの非常に強い御要請として、野菜についての原産地の表示をより強化すべきではないかと、大変強い希望というか要請が寄せられてきたわけでございます。あるアンケートによりますと、消費者が青果物で表示を一番希望するものは何かというのに対して、九五%が原産地の表示をまず第一に求める、こういうような結果も出ております。  そういうふうな事情を踏まえまして、ただいま先生お話しのとおり、昨年の七月でございますか、食品表示問題懇談会というものを、皆様にお集まりいただきまして、今後の青果物の原産地表示をどうするかということを御議論願ったわけでございますが、その結論として、十一月に、特に原産地表示の必要性の高い品目については、従来のガイドラインによる指導ということから一歩進んで、いわゆるJAS法に基づく品質表示基準制度を活用して原産地表示を義務づける、こういう制度を導入すべきだというような懇談会報告が取りまとめられたわけでございます。  したがいまして、この報告の趣旨に沿いまして、一般的に、全品目にわたるお話としては青果物の一般品質表示ガイドラインということの指導、普及に努めていくと同時に、特定の品目については、現在考えておりますのはブロッコリー、里芋、ニンニク、ショウガ、生シイタケの五品目を考えているわけでございますが、原産地の表示を義務づけるという方向での具体的な作業に入っている、こんな状況にあるわけでございます。
  150. 上田勇

    上田(勇)分科員 今御答弁にもありましたように、近年、青果物、とりわけ生鮮野菜の輸入が急増しております。農水省からいただいたデータでも九三年以降急激に増加していて、年平均二〇%近い増加が示されていますし、データによれば、一九八〇年当時に比べると数量的にも六倍を超えるような増加になっているということであります。  このように私たちの食生活が大変国際化が進んでいる中で、今答弁にもありましたように、特に食品は口に入れるものでありますし、健康、安全、そういったものを考えるときに、やはり野菜や果物がどこの国でつくられたかというのは重大な関心事であるというふうに私も思います。もちろん、それがどこの国でつくられたかということが、当然その品質や価格にも影響のあることでありますし、やはり品物を選択するときには表示されているということが大変プラスになることではないかというふうに思います。  現状におきましては、今ありましたようにガイドラインが定められていて、そのガイドラインでも一般的に、これは義務規定ではないわけですけれども、青果物の原産地が、お願いというのでしょうか、要請されているわけでありますけれども、そこで、その現状、現時点におきますがイドラインに沿った表示というのがどのぐらい行われているのか、その履行状況についてお伺いしたいと思います。
  151. 中須勇雄

    ○中須政府委員 私ども、実は、懇談会にお集まりいただきましていろいろ議論をする前提といたしまして、現行の青果物の一般表示ガイドラインがどの程度守られているというか普及しているのかということについて、平成七年に調査を実施しております。これは、消費者の方々からお店を単位に見て、そのお店でどの程度表示をしているか、こういうことでございます。  ごくかいつまんで申し上げますと、小売店における原産地の表示の状況は、品目全体で見ますと、全体としては大体半分ぐらい原産地表示がされている、こういうような形をとっております。ただ、小売店の形態別では大変大きな差がございまして、百貨店及び総合スーパーでは、「ほとんど表示されている」あるいは「半分程度表示されている」、その二つを合計いたしますと八割、八〇%程度がその程度の水準になっている。こういうのに対しまして、青果の専門店、いわゆる普通の八百屋さんと申しましょうか、そういうところでは、「ほとんど表示されていない」あるいは「全く表示されていない」という、表示されていない部分で逆に八割を占めている、こんなふうな状況になっている。  平成年度の限定された調査でございますが、そのような結果が出ておるということでございます。
  152. 上田勇

    上田(勇)分科員 今の御報告、私も詳しく調べているわけではありませんが、身近なところで見る印象と大体同じような感じかなと。スーパーなどでは結構表示がされているのに対して、個人の商店、八百屋さんに行くとほとんどそういうのを見たことがありません。そういうことからすると、実施状況というのは現状では余り高くないなという感じがしますし、とりわけやはり個人商店においてはそういう実施状況というのがまだまだかなという感じがします。  そこで、今回はJAS法の政令改正ということが予定されて品質表示基準が導入を予定されているわけでありますが、従来のガイドラインと大きく違う点というのは、これはやはり、従来はあくまでお願い、要請のベースであったわけでありますが、今回は、これからは強制力を持った義務規定になっているという点ではないかというふうに思います。  そういう意味では強化されているというふうに考えるのですが、一方、この品質表示基準の対象品目、先ほど答弁の中にもありましたように、五品目に限られているわけでありますけれども、これはやはり全品目を対象としている現在のガイドラインから見れば対象がかなり狭いというふうに思います。そこで、この五品目を数ある青果物の中から特に選んだ理由、その点をお伺いしたいと思います。
  153. 中須勇雄

    ○中須政府委員 この五品目の選定というか、対象にした理由でございますが、まず、その前提として、具体的に個々の品目を選ぶという作業の前に、懇談会でもかなりの方々から出た意見でございますが、やはり義務化するということになると、流通、販売に携わる多くの方々、大変数が多いわけでございますが、一定の負担を課するということになるわけでございまして、そういう負担ということを考慮して、やはり漸進的に進めていくべきではないかということで、とりあえずやはり特に必要性の強いものから始めて、漸次普及を図っていく、こういうことではないかというのが、まず基本的な考え方としてございます。  次に、そういう考え方のもとに具体的な五品目がなぜ選ばれたかということでございますが、懇談会での結論というか、報告書にも出ているわけでございますが、今回JAS法を活用するということとの関係で、JAS法にも触れられているわけでございますが、一応三つの要件というかクリアすべき基準をつくりまして、それに合うかどうかということから五品目を選んだということが実際、実情でございます。  具体的な三つの要素というのは、第一点目は、その品目が消費生活上ある程度重要な地位を占めている、ある程度の量を持っている、こういうことがまず第一点でございます。それから二点目は、今回の表示の義務化ということの背景に、輸入増がある、生鮮野菜の輸入ということがふえてきたということが背景にあるということから、国産品とあわせて相当量の輸入品が現実に出回っている、そういう品目であることというのが二番目の基準。そして三番目に、原産地によって品質の格差がかなり一定程度やはりある。これは見た目ではなかなかわからないけれども、実際に食べてみるとわかるというか、そういう意味での品質格差が大きい。  こういう三つの要件を用いまして、先ほど申しました、ショウガ、ニンニク、里芋、ブロッコリー、シイタケの五品目を当面、まず第一号として開始しようではないか、こんなふうに考えているということでございます。
  154. 上田勇

    上田(勇)分科員 今、この五品目がリードオフ的な役割を果たすというような趣旨の御答弁であったと思いますけれども、この五品目よりも輸入量の多い野菜もございます。例えばタマネギであるとかカボチャ、ニンジン、そういったものというのはかなり輸入量が多いわけでありますし、また、輸入量が必ずしもいわゆる上位十位とかに入っていなくても、国内の消費量が多い、そういうことはやはり国民の食生活の中で重要な位置を占めているということとつながると思うのですが、そういう品目もあると思います。  また、こうした品目も、現在はそれほど輸入が多くないというかもしれませんが、今後輸入が拡大していくということも予想していかなくてはいけないのではないかというふうに思います。  例えば、先ほど申し上げた品目のほかにもいろいろな品目があると思いますけれども、こうしたものについて、やはりこれは消費者の立場からすれば、いろいろな品目について情報が詳しいことにこしたことがないということではないかというふうに思いますし、そういう意味では、対象品目がより多ければ、よりベターであるというふうに考えるわけであります。  したがいまして、今後はやはり少なくとも先ほど申し上げた輸入量が多い品目、タマネギであるとかカボチャ、ニンジン、アスパラガスなんかも結構輸入量が多いわけでありますけれども、個別の品目は別にいたしまして、そうした輸入量の多い品目あるいは国民の食生活の中で重要な位置を占めているというような品目については、これはやはり早急にその対象を拡大するような方針で臨んでいただきたいというふうに私は思いますし、またさらに、将来はできるだけ多くの品目についてもその原産地の表示が行われるように制度を拡充するべきであるというふうに考えますけれども、その点についての所見を伺いたいと思います。
  155. 中須勇雄

    ○中須政府委員 私どもも、ただいま先生の御指摘のとおり、基本的な認識としてはそのように考えております。  ただ、若干繰り返しになりますが、先ほど申しましたように、当面、まず制度の定着というか、発足に当たって余り過大な負担を流通、販売関係の皆様方に一挙にかけるということは、いささかためらわれる、そういうこともございまして、五つに絞ってとりあえず開始をする、こういう考え方でございます。  まず、この五品目について、この夏ごろをめどに具体的な実施に移りたいと思っているわけでございますが、その実施状況、普及状況というか、そういうことを見つつ、業界の皆様方とも十分御相談をしながら、各品目の輸入動向等もございましょう、そういうものを十分踏まえて今後逐次拡大をしていく、こういう基本的な考え方で進めてまいりたいというふうに思っております。
  156. 上田勇

    上田(勇)分科員 今回というか、今、夏ごろをめどというお話でありましたけれども、表示が義務づけられるのは五品目でありまして、それ以外のものについては、これは現在ありますいわゆるガイドラインに基づいて取り扱われるということではないかというふうに思います。すなわち、これは、表示をお願いはしていくけれども、特にいわゆる強制力のあるものではない、任意であるというような形で進むと思うのです。  先ほどの御答弁の中でも、やはりまだまだとりわけ個人商店のベースでは普及率が低いということでありますので、今お話にあったように、いきなりそれを、特にこれは法制上、罰則規定も含んでいるような法律でございますので、すぐに全部普及ということは、確かに今御答弁にあったとおり無理な面もあるかもしれませんが、であれば、現状において、このガイドラインによってお願い、指導をしているわけでございますので、やはりもっとガイドラインに沿った表示が少しでも広がるような努力というのが一方で必要なのではないかというふうに思います。  ところが、実はいろいろ関係者のお話、流通や小売に携わっている関係者のお話を聞きますと、小売では既に仕入れる段階で原産地がどこなのかというのが、特に注意もしていない面もあるのかもしれませんが、わからなくなってしまっているというような御意見もありましたし、中にはそういうようなガイドラインの内容自体が余り認識されていないというような、特に小売の段階では、そういう話も私は伺いました。  そういう意味で、今後、まず一つとしては、ガイドラインに沿った表示が普及するような努力というのが必要だと思いますが、どのような対策を立てられていくのか、その辺をお伺いしたいと思います。
  157. 中須勇雄

    ○中須政府委員 御指摘のとおり、五品目について品質表示基準制度に移行するということは、そのほかの品目については、今までのガイドライン、これの普及によって、もちろんその他の品目についても強制ではございませんが、原産地表示をできるだけ進めていきたい、こういう考え方でございます。  先ほど十分御説明できずにちょっと落としてしまったわけでございますが、実は、従来のと申しますか、この懇談会をやっておる当時の品質表示のガイドラインでは、対面販売を行う小さな商店においては必ずしも表示をしなくてもいい、つまり、言葉でもってその中身を伝えるということがかなり行われるわけでございますので、そこまで義務化して、義務と言うとおかしゅうございますが、ガイドライン上でも求めていなかったということがございます。  この点につきましては、懇談会でのお話を受けまして、もちろん、強制ということではない、ガイドラインという基本的な行政指導だったというところは変わらないわけでありますが、その中においても、そういう専門小売店で対面販売の場合でも原産地の表示を行うようにということを改正と申しましょうか、そういうことを行ったというのが一点ございます。  それと同時に、お話にございましたように、これは小売店だけにお願いをしても必ずしも済む話ではございません。流通の全段階を通じてそれぞれ原産地の情報が末端まで伝わらない限り、その末端での表示は不可能である、こういうことでございます。したがいまして、品質表示の方、強制的にやる方は、全販売段階における販売業者の皆さんに義務を課する、こういうことにしておりますし、これは、実はガイドラインの部分につきましても、従来そこまで余り強く言っていなかったわけでございますが、各流通業者においては、流通の、小売ではない方もガイドラインがうまく動くように十分協力をしてほしいというふうな項目を加えた、こういうような経過がございます。  いずれにいたしましても、実は、原産地表示については、今年度予算面でも約三億円ばかりの原産地表示の強化対策事業ということを予定をしております。その中で、業界関係者にお集まりをいただきまして、どういう形でやれば原産地表示が最もスムーズに進むのか、そういうような御議論をいただくと同時に、マニュアルづくりをしたり、普及、浸透を業界を通じて図っていく、こういうようなことを進めようと思っておりますので、強制的に行う、義務化される品質表示基準の制度とガイドラインと両建てで、そういう事業も活用しながら普及、浸透を図ってまいりたい、こんなふうに思っております。
  158. 上田勇

    上田(勇)分科員 今まで私も、いわゆる消費者の立場から原産地表示、さらに対象を拡大すべきであるという観点で御質問させていただきましたし、また、そう思っているわけでありますけれども、このことについてもう一方の見方がありまして、特に個人商店の方々の話を聞くと、品質表示基準制度の導入によって表示が義務づけられるということに対して非常に心配されている方々が多いというお話を聞きます。  これまでも、ガイドラインに沿ってそういう指導がされている中でも、なかなか個人商店ではそれに沿った対応ができないということを考えれば、今度、そういう意味で強制力を持った制度が導入されるわけでありますので、そうした心配というのはある意味では当然なものかもしれません。  ただ、関係者の方々の御懸念というのは、これはやはり小売の商店だけではなくて消費者や流通関係者もその制度の趣旨あるいはその制度の内容などについて、例えば、具体的な対象品目が、この間も流通関係の方とお話をしたときに対象品目などについても十分な理解がなかったようですし、また、その表示方法なども、かなり簡易な方法でも認められるわけでありますが、その辺も包装容器に表示しなければいけないのではないかというような心配をされておる方もおられました。  そういうことからすれば、やはりこの制度の趣旨や内容といったようなものを正確に理解してもらうといったことがまず重要なのではないかというふうに思いますし、さらに、個人の商店であればちょっとしたことでも、今大変な、どこの八百屋さんも大型店との競合の中で経営は非常に厳しい中にありますので、ちょっとしたことが非常に過大な負担になってしまうというような心配もあるわけでありますので、そういうことが起こらないような対策も同時に行っていっていただかなければいけないというふうに考えるわけであります。  また、特に、導入時にはそういった意味ではいろいろな助言や手助けといったようなものが行政側からも必要だというふうに思うのですが、そのあたり、どのような対策を考えられているのか、お考えを伺いたいと思います。
  159. 中須勇雄

    ○中須政府委員 御指摘のとおり、こういう問題の制度化というか実施に当たりましては、業界の皆様方に十分な理解と協力をしていただいて進めていくということが重要だと思っております。ただいま御指摘を受けましたように、まだなかなか十分な浸透が図られていないというふうな部分があるわけでございますが、今後努力をしていきたいと思います。  ところで、具体的なことにつきましては、先ほど来るる申し上げておりますように、最初は品目をある程度絞るということで過大な負担にならないようにということを考慮しておりますが、特にそのほか、若干お話が出ましたが、表示の方法に関しましては、容器包装に一つずつ確実に産地名、原産地を表示せよということだけではなくて、御承知のとおり、野菜等の販売は店先に一定の品物を積み上げて販売をする、こういう形がかなり普遍的に行われておりますので、立て札等の簡易な方法による表示ということを認めようというふうに思っております。  それから、具体的にこの普及を図っていく裏づけといたしまして、先ほどちょっとお話し申し上げましたように、青果物原産地表示適正化推進事業ということで今年度約三億弱の予算を計上しておりまして、各流通業者あるいは小売業者の代表者の皆様にお集まりいただきまして普及、浸透を図る方策をいろいろ検討し、現実にマニュアルをつくって普及を図るとか、それから、一番端的な話としては店頭に立て札を立てる、その札を作成するために必要な器具、機械をその業界団体に整備をする、そういうところまで踏み込んで、制度の趣旨とか内容の普及、検討を含めてこの制度が円滑に実施されるように今後できる限りの努力を私どもも払ってまいりたいというふうに思っております。
  160. 上田勇

    上田(勇)分科員 この原産国表示というのは、冒頭も申し上げましたとおり、大変重要な課題でありますし、ぜひ進めていただきたいことでありますので、これが円滑に導入され、また、着実に普及、定着するように一層の御努力をお願いしたいと思います。  最後に、今度は厚生省さんの方にちょっとお伺いしたいのですが、今ずっと質疑の中でも、やはり近年青果物などの生鮮食料品の輸入が急増しているという実態が述べられてきたわけでありますが、やはり国民の中に輸入の生鮮食料品に対する衛生面や特にまた残留農薬などの安全性に関して懸念を抱いている方々が大変たくさんいらっしゃいます。こうした事態に対しまして、今まで厚生省としてどういう取り組みをされていたのか、また、今後ともかなりの量の生鮮食料品の輸入というのが続くと思うのですが、どのような対処の方法が考えられているのか、お伺いしたいと思います。
  161. 堺宣道

    ○堺説明員 輸入食品、特に青果物についての御議論でございます。  輸入食品等の安全対策を推進するということは非常に重要なことと考えておりまして、輸入食品の監視業務につきましては、現在全国三十二の検疫所や支所などにおきまして二百九人の食品衛生監視員が輸入届け出の審査あるいは現場検査、検体の採取などを行うとともに、青果物につきましては残留農薬を中心に検査を行っておりまして、これについては非常に高度な検査が必要なことであるということから、横浜、それから神戸の輸入食品・検疫検査センターに検体を送付して分析を行っております。その結果、食品衛生法に違反するものについては、廃棄あるいは積み戻し等の措置を行っているところでございます。  平成年度におきまして、輸入食品監視体制の一層の充実ということを図るために、食品衛生監視員の大幅な増員、それから検疫所のコンピューターシステムと税関システムのインターフェース化による審査事務の効率化等の大幅な強化を図ることといたしております。  青果物の残留農薬等を含めまして、検査実施経費といたしまして三億三千万、これは前年度対比で二二・一%の増ということを確保しているところでございます。  今後とも、輸入食品の増大等に対応して、その安全確保に努めていきたいというふうに考えております。  以上でございます。
  162. 上田勇

    上田(勇)分科員 安全で安心できる食糧の供給というのは、これはもう国の重要な役割であると思いますので、また農水、厚生両省のさらなる御努力を要望いたしまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  163. 佐藤静雄

    佐藤主査 これにて上田勇君の質疑は終了いたしました。  次に、小野晋也君
  164. 小野晋也

    小野分科員 よく、農は国の基という言葉が言われますけれども、まさに我が国におきましても、農業は単に経済的行為というのみならず、この農業をもとにして社会のさまざまな仕組みがつくられたり、また人々の考え方、心というようなものが培われてきたり、大きな役割を果たしてきたものがこの農業であると私どもは考えております。  農水省、大原大臣を初めといたしまして、皆さん方が短期的な視点に立って農業政策を展開するということではなくて、より大きな広い視点の中に農業のあり方を位置づけていただきまして、これからも農業が国の基としてしっかりと運営されていきますことをまず御期待を申し上げておきたいと思います。  本日は、米の備蓄問題を私は取り上げさせていただこうと思っております。  新食糧法が制定をされまして、米の備蓄の問題もその中に位置づけられているわけでございますけれども、その文章を読んでみますと、「過去の不作の経験等を踏まえ、平均的な不作が連続して生じても円滑な需給操作が行えるよう、民間備蓄を含め百五十万トンの確保を基本として豊作等による需給変動にも機動的に対応しうるよう、一定の幅(五十万トン程度)を持って運用すること。」こういう規定になっているわけでございます。この規定に照らし合わせた場合に、ことしの秋の備蓄というものについてどういう見込みを持っておられるのか、平成八年の十月三十一日段階において、政府備蓄米の総量見込みをどの程度に見込んでおられるのか、まずお尋ねを申し上げたいと思います。
  165. 高橋政行

    ○高橋政府委員 備蓄の考え方なり水準につきましては、今委員がおっしゃるとおりでございまして、そういう考え方に基づきまして、平成八年十月末の備蓄数量、これにつきましては、ことしの三月末に米穀の需給及び価格の安定に関する基本計画を策定しておりまして、そこで公表いたしておるところでございます。  それによりますと、平成六年産米が豊作であったということでございますので、基本となります数量は百五十万トンでございますが、それに、積み増しといいますか、上乗せをいたしまして、百七十五から百八十五万トンの間、これには外国産米十万トンを含んでおりますが、そういう数字としておるところでございます。
  166. 小野晋也

    小野分科員 それならば、一方、現在の備蓄という問題を取り上げさせていただきたいと思うのですけれども、現在、備蓄米ということになりますと、平成六年産米の備蓄ということだろうと思います。その政府備蓄米の中で、どのくらい販売ができているのか、また今後、十月三十一日までの間にどの程度販売の見込みが立っているのか、この点についてお尋ねを申し上げたいと思います。
  167. 高橋政行

    ○高橋政府委員 備蓄米は、考え方といたしましては、原則として一年持ちまして、それでそれを売っていく。次の年に売っていくという意味では古米で売ることになるわけでございます。そのほか、新米でも若干の供給は行っております。  それで、まず平成八米穀年度の昨年十一月からことしの三月までに売却を予定していたいわゆる政府米としての予定数量は四十万トン程度でございまして、現在、その約半分、十九万トンが売却されております。そのうち、今先生お尋ねの六年産米、いわゆるこの間まで備蓄しておりましたものにつきましては十三万トンでございます。したがいまして、三月末時点の六年産の在庫量は百五万トンという数字になっております。  それで、今後どういうことになるかということでございますが、現在、こういうような売れ行きになっております理由でございますけれども、我々の見ますところによりますと、まず計画外流通米、この流通米が、結局、保管料とかあるいは金利、そういった負担を避けるために早売りをしてきております。米穀年度の前半で早売りをしておるという状況。それから、さらに新米志向が非常に強うございますので、自主流通米の需要がやはり政府米よりも優先しておりまして、それで自主流通米が早く売られていったというような状況からこうなったのではないかと思っております。  それで、今後につきまして考えてみますと、米の消費そのものは現在落ちておりませんので、まず米は欲しいということの需要はございます。そういたしますと、計画外の流通米はもう先売りされましたので、余り流通量としては見込まれないであろう。それから、自主流通米の方も備蓄、調整保管の計画が着々進められまして、その辺の価格も下げどまりの傾向になってきましたので、政府米が、相対的に次第にメリットが出てくるのじゃないかというようなこと。さらには自主流通米の流通量も減少していくというふうに予想しておりますので、我々としては、何とかこの計画どおりに売却をしていきたいというふうに思っているところでございます。
  168. 小野晋也

    小野分科員 先ほど高橋長官が御答弁をいただきました中に、消費者の新米志向が強いという関係で計画外の流通米の方が先に売れていっているという御指摘をいただいたのですけれども、これは、私も米の販売店の方とお話をしておりますと、今おっしゃられたとおりのことを言っておりました。  その販売店の方が言われるには、政府米として出てくるお米は古米になってしまうから、どうしても消費者の皆さん方がそれを敬遠してしまう、そういう古米を売ろうとしても、消費者は新米の方がないのかというようなことを言われるものだから、どうしても政府米を扱う以前に計画外流通米の方を無理して手に入れてでも売らなきゃいけない状況になっているんだというようなことを言っておられたわけでございます。  ですから、備蓄という問題については、これは食糧需給調整の上に非常に大事な機能ではありますけれども、現在のように、備蓄しておいたものを翌年古米として出していく、販売していくというやり方が妥当なのかどうかということについては、私どもが非常に疑問に思っている点でございます。  今幾つかちょっと御質問させてもらいましたけれども、政府米の備蓄している部分がだんだん売れ残っていって積み増される形になってきたときに、以前のように、古米、古々米、古々々米とかと言われた時代がありましたけれども、そういうものの処理のためにまた政府支出をやらなきゃいけない、食管の赤字を新たにこの部分から生み出してくる可能性が出るのではなかろうかということを危惧しているわけでございますけれども、この点についてどういう御見解をお持ちでございましょうか。
  169. 高橋政行

    ○高橋政府委員 確かに、日本の消費者の皆さん方は、新米、新米というような意向が非常に強いわけでございます。また一方、流通業者の皆さん方は、古米でも、少しでも安く買いたいというような御要望も強いというような状況があることは、確かでございます。  それで、我々、備蓄しているお米も品質の保持をしっかりして、これが新米と同様な味のものであるというようなことにしていくことがやはり必要ではないかというふうに考えておりまして、現在、主食用に政府米は百十万から百二十万トン売却する予定にしておりますが、これらのお米につきましても、全量低温保管をいたしまして、品質的には新米と比べて遜色がない、そういうようなものにしていきたいということで低温保管を実施しているところでございます。  したがいまして、我々も、消費者の皆さん方に、昔と違って今のお米は古米といいながらも新米同様おいしいものだよというような理解を十分いただきまして、何とか基本計画に即した売却をしていきたいというふうに思っているところでございまして、確かに、これが変に財政負担あるいは食管赤字というようなことがないようにしていかなければいけないというふうに思っているところでございます。
  170. 小野晋也

    小野分科員 このあたりは、現段階で評価を下して、これはどうだこうだということを言える状況にないと思いますから、しばらく様子を見させていただきたいと思っております。  一方、私ども、食糧備蓄という問題を考えていきましたときに問題視をしなくてはならないのは、世界的な食糧危機の到来という問題に対する食糧安全保障の観点からこの備蓄問題をどうとらえるかという問題になってこようかと思います。  近年、気候の異常ということが大変よく言われております。日本におきましても、先日北海道の方でも三十度を超えるような温度になったということもございましたし、異常渇水だ、異常高熱だ、異常な寒さだというようなことで、報道を見ておりますと、異常な気象状況というようなことがこの数年間、よく言われるわけでございます。近隣地域を見ておりましても、中国でも数年前は大変な大洪水が起こってもみたり、北朝鮮も洪水に伴って食糧不足に陥っているというのも周知のとおりでございます。  そのような状況を見ましたときに、局地的な気候異常であって、ある特定地域だけで食物生産が停滞するというような状況でありますならば、世界全体での食糧需給の調整を行うならばそれで食糧危機という問題は避けられるかと思いますけれども、全世界的に気象異常が発生して食糧がとれなくなってしまった、世界各国で食糧不足が起こるというような状況になりましたときには、果たして日本は、経済力があるからといって食糧を確保することが可能なのかどうか。  日米の間での米問題等の議論を聞いておりますと、食糧というものも、もう既に世界的に余剰があって、それは自由貿易品なのだから、それに対して特定の政策をとるというのはおかしいじゃないか、こう議論されるわけですけれども、食糧というのは、その国の中で充足されていて、あくまでも余剰の部分だけが恐らく自由貿易品になるのであって、国民自身が食糧を食べられないで腹をすかしているのに、他国から、流通価格の二倍のお金を出しましょうということで、札束を持ってきてひっぱたいたらその国に食糧を本当に売るのかといえば、これは大変疑問だと私は思うのですね。そんなことを考えてまいりましたときに、日本の食糧の安全保障体制ということについて、今の状況というのは十分なのかどうかという点に大きな疑問を持っているわけでございます。  そこで、これはぜひ大臣にお聞かせいただきたいと思っておるのですけれども、先ほど申しましたとおり、世界の気候異常に伴います世界的な食糧不足というような事態を想定して、我が国の食糧安全保障対策というものを検討しておられるのかどうか、この点の御答弁をお願い申し上げたいと思います。
  171. 大原一三

    ○大原国務大臣 私も、将来の食糧不足ということは非常に大きな課題を、特に日本の場合等は政治的な、そしてまた第一義的に重要な課題を投げかける可能性のある一番大きな問題だと思っております。  今お話がありましたように、当面的な議論あるいは中長期的な議論、いろいろあると思うのであります。食糧庁長官が言いましたように、当面百五十万トン程度持っておけば間に合うということでありますが、おっしゃるように、来年は、たしか地球温暖化枠組み国際会議というのが、六千人ぐらい集まりまして日本で開催をされるということに相なりまして、農林水産省もその担当の関連省として参画をすることにいたしました。  そういった問題を考えますときに、古米、古々米ということが場合によっては起きるかもしれない、世界的な不作でなくても、おととしのような不作の場合に、またどっかりと外国から買わなければならぬというような事態も考えますと、多少古米についても、長官が言いましたように、いい保存の方法があれば、それは十分我々としては、今小野委員がおっしゃったような角度から保障をしていかなければならぬという義務を持っているわけでございます。食管会計の一番大事な責任がそこにあると思います。  後から何か御質問があるようでございますので、中長期的な課題については、さらにまた御質問を受けてお話ができたらと思っております。
  172. 小野晋也

    小野分科員 百五十万トンの米の備蓄という問題でございます。  これは正式に計算したわけではございませんけれども、日本人の消費カロリーをもとにして、どのくらいの備蓄量かということを考えますならば、恐らく半月以下になると思うのですね。もちろん、麦の備蓄もそれぞれの場所にあるでしょうし、その他の食物もそれぞれ備蓄されているものがあるでしょうから、すべてが一度になくなるわけではございませんので、半月しか食い延びることができないという意味ではもちろんございません。しかし、一億二千万余りの日本国民全体から見れば、私たちは穀物の備蓄をしていますということを言ったときに、わずか半月分に満たない程度の備蓄をしてこれで食糧の問題は心配ありませんということを言うとするならば、これは少し問題だろうと私は思えてなりません。  先ほどは、一時的な世界の気象異常によって急に食糧の不足が現出した場合のことを御検討いただいているかという御質問を申し上げたわけでございます。それに加えて、農林水産の関係では何度も議論されているだろうと思いますけれども、長期的な意味での地球上の人口の増加ないし耕地等の劣化の進行等に伴って、だんだんと食糧不足が慢性的に起こってくるのではなかろうかという議論も行われているところでございます。  ちょっと手にしております本は、レスター・ブラウンさんの本でございますが、「飢餓の世紀」という、二十一世紀は非常に食糧不足の状態に世界が陥るのではないかという問題意識で提起されている本でございます。この本の訳者の小島慶三さんという方が、この後書きのところにこんなことを書いているわけです。  そもそも、世界が飢えているときに一国が金にあかして食糧を買いあさることなど許されるはずもない。要するに、欲しければ外国から買えるという時代はやがて終わるのである。世界の食糧負荷を軽減するためにも食糧自給率を高め、増産に結びつく農業技術やノウハウを提供することこそ、日本に課せられた重大な責務である。   戦後の焦土から立ち上がった日本は、経済大国となるにつれ、一方で危機管理意識を希薄にし、システム形成を怠ってきた。今回の災害でもその反省がなされている。これは神戸の地震でございます。自然災害や大規模な破壊行為に対する危機管理はもとより大切だが、食糧の危機に備える危機管理はもっと大切である。この危機は必ず起こることが、本書で反論の余地がないほど見事に冷静に分析されている。ただちに食の危機管理システムの構築に着手しなければならない。 ということでございまして、このレポートがどこまでの信懸性があるのか、これは、いろいろな考え方を持たれる方がおられますから、一概にこのレスター・ブラウンさんの主張が正しいと断言するつもりはありませんが、全世界的な動きを私どもが見ております中で、食糧不足がやがてやってくるだろうということは、我々の実感としてまさにこの指摘は当たっている気持ちがしてならないわけでございます。  このようなレポートが出されていることに対して、農林水産省はどういう問題意識を持ちながらこの問題をとらえておられるのでございましょうか。これも大臣にぜひ答弁をお願い申し上げたいと思います。
  173. 大原一三

    ○大原国務大臣 私、十分時間がなくて、レスター・ブラウン・リポートを全部読んでおるわけではありません。農林水産省で抄訳をされたものを拝見をしたわけでありますが、基本的には全く私は同感であります。  地球人口が五十億で、八億の民がいわゆる栄養失調状態にあるという現状を考えますときに、我々は五十年単位で思考していかなければならぬだろう。そうなりますと、二〇五〇年には百億に確実にふえるという非常に確実な予測があるわけでございます。  そうなりますと、現在の食糧自給率四六%、今おっしゃったように、外国が自由に売ってくれない、売ってくれるとしても札束たたいて非常に高価な食糧を確保しなければならぬというときに、今の、耕地条件の非常に悪い生産条件で一〇〇%の日本の食糧自給率を確保しなければならぬとなったときに、一体我々はそのときになって、先ほどもどなたかがおっしゃいましたけれども、一部の、その日暮らしの財界人の発想で、今農業なんか要らないから安いものを買えばいいじゃないか、百姓なんかやめてしまえというような、端的に言えば、そういう議論も一部には横行をしておるのではないのかな。そういう短絡的な発想に対しては、農林水産省が第一義的に責任のある役所でございますから、旗幟鮮明に、そういう問題は今後検討していかなければならぬと思っております。  幸いにして、四、五年かけまして、三十六年にできた古い農業基本法を書き改めようという時期でございますので、我々はそういう中長期の問題意識をこれからの農業基本法に盛り込んで、やはりはっきりした中長期政策を打ち出さなければならぬ、かように今は考える次第でございます。  私は戦時中の男でございますから、ゴルフ場を掘りくり返して芋畑をつくったことがあるのですよ。日本はゴルフ場が山ほどあるのですね、今。恐らく二〇五〇年には、今のゴルフ場を掘りくり返して芋畑をつくらなければならぬという時代が来ないとも限らない。我々は、そういう意味でも食糧に関しては、その他の安全保障と同列に、やはり危機的管理、安全保障政策の基本柱の一つに据えていく必要があるのではないか、かように考えております。
  174. 小野晋也

    小野分科員 非常に力強い御答弁を大臣からいただいたわけでございますけれども、おっしゃられるとおり、この国の安全保障の中で、軍事的な安全保障というのは国民の命を守るという意味で第一義的なものでありましょうけれども、その次に来るものは、恐らく食の安全保障であろうと思います。  財界人の話を大臣今されましたけれども、どうせ日本の国は危機的な状況になれば油も入らないのだから、油も入らなければ食糧だけがあったってしょうがないじゃないかという、こんな乱暴な議論をする人がおりましたけれども、それは私は絶対に違うと思うのです。油がなくてもそれは国民が汗を流して働けば補えるかもしれませんけれども、食糧がなくて胃袋に何もなくなるような状態が訪れたら、これはもうこの国は全く機能しなくなるということでございますから、食糧の安全保障というものを、今安全保障論議が盛んになってきておりますけれども、ぜひ農林水産大臣の立場から強く主張をしていただいて、農業というものの果たすべき役割というのも基本的には国民を飢えさせないことであるというものを打ち立てた議論をぜひやっていただきたいなと要望しておきたいと思います。  その立場に立ちましたときに、先ほど、百五十万トンの米備蓄というのはわずか半月足らずじゃないかというお話を申し上げましたが、食糧不足が明らかになって、大臣御指摘のとおりゴルフ場で何か芋をつくったりいろいろ取り組むとしたって、やはり半年はかかるわけでありますから、国民のカロリーベースで半年分ぐらいの備蓄は国策としてやるべきである。そうなると、米に置きかえていきますならば、恐らくこれは一千万トンを超える量が必要だろうと私は思うわけでございますけれども、ぜひその視点を持っていただいてこの食糧安全保障の論議をやっていただきたいものだと思います。  そこで、大臣のお手元にも、また皆さんのお手元にも配付させていただきました、「新たなコメ備蓄方法の提案」ということを私の方からさせていただきたいと思うのです。  それは、要点を申し上げるとどういうことかというと、今の米備蓄の問題というのが左の欄にありますけれども、新たな食管赤字を生むおそれがある。食糧庁長官はないようにしたいというお話でございますが、現実問題として見て、売れ残りがどんどん出てくればこれは赤字になっていくわけでありますから、それが一つにはあるでしょう。  二つ目には、食糧安全保障上の問題で、今私が指摘させてもらいましたとおり、百五十万トン程度の備蓄というのは世界的な食糧不足に対応できる備蓄量ではない。  それから三つ目には、今回転備蓄という対応をしておりますけれども、回転備蓄ということになりますと、一年ごとに米を入れて米を出してと、それを繰り返していくわけでございまして、倉庫料というのはその出し入れに随分お金がかかってしまうということを考えましたときに、十年後に来るかもしれない食糧不足に対応するという意味でいいますならば、回転備蓄をすると、十回米を出し入れして、そしてそのときに備えるということで、非常に経費がかかってしまうわけですね。ですから、基本的には棚上げ保存という考え方を取り入れるべきでしょう。  それから、もう一つの要素を入れますならば、私、東京ガスの工場の方へ見学に行ったことがあるのですけれども、東京ガスで大きなタンクにLNG、天然ガスを備蓄しております。その天然ガスの、備蓄した液化されたガスを燃やす前にどうするかというと、海水でそのガスを温めまして、それで気化させて燃やしているのですね。ではその海水はどうなるかというと、冷たい海水になって東京湾に流されているということで、非常に、わざわざ液化するためにエネルギーを使って輸送してきている、そのエネルギーをむだに東京湾に捨てているというのが実態なのでございます。  ですから、これらの要素をすべて考え合わせてみましたときに、LNGのその冷熱を活用した巨大な冷蔵米タンクをつくりまして、それを約零度の温度で長期間保存する。それで、一回そのタンクに入れたもみの形の米というのは、いざ食糧不足になって国民がそれを必要とするというところまではもうそのまま、入れたままで保存をする。それで、そういう考え方で毎年都市近隣にタンクをつくっていって、結果的に一千万トン以上の備蓄をしたらどうだろうということを考えているわけです。  それで、「メリット」ということで真ん中の欄のところに書いていますけれども、むだに捨てているLNGの冷熱を使うから、冷やすことにお金がかからないでしょう。それから、零度C付近の冷蔵であれば、これは伝間でありますけれども、十年でも二十年でもその品質を劣化させずに保存できるのです。それから三つ目には、一年ごとの出し入れをしないから、そのまま棚上げをやるわけですから、倉庫料も安く上がるでしょう。LNGタンクの近くに米タンクをつくることになるから、消費地近くで大量備蓄ができる。一千万トンという量で食糧安全保障も達成できるということで、これを皆さんに提案しますと、多くの方がいい提案だと言ってくださいます。  ただし、問題があるとすればお金だと言われるものですから、それなら米債券を出して、大臣はもともと大蔵省の御出身でございますけれども、遺産相続のときに、上限を決めて、その金額までは、国家の将来の安全保障のための債券ですから、遺産相続税を免除するというような特典のついた米債券を出して、米備蓄をやるときにその財源を確保すれば、利子負担もないしちょうどいいのじゃないだろうか。  こういうふうなことで、ちょっと今までの備蓄の考え方からすると乱暴な提案かもしれませんが、一つの今後の方向を示すものだろうと私は考えております。  この点について、まことにこれは突然の提案ではございますけれども、直観的なもので結構ですから、どんな点の問題をお感じになられるのか、御教示をいただきたいと思います。
  175. 高橋政行

    ○高橋政府委員 ただいまのお話、非常な大構想でございますし、今お話を聞いたばかりでございますので、何かコメントと言われましても、なかなか難しいということを理解していただきたいと思いますが、あえて申し上げますれば、この備蓄の規模をどんなふうにしていったらいいかとか、あるいは施設の立地というようなものをどんなふうにしていくかとか、あるいは保管技術の問題とか経費負担、当然のことながら国内生産との関連とか、思いつきでございますが、そんなような問題があるのかなという感じでございます。
  176. 小野晋也

    小野分科員 この点は、大臣の答弁の中でも、食糧危機に備えてきちんとした食糧安保体制を組まなければならぬだろうというような御指摘もいただいたわけでございまして、今までの備蓄法ではこの安全保障に対応し切れていないという現実があります以上、ぜひ今後、農水省、食糧庁の中での検討課題にしていただきたい。この方式がベストだとは申しませんけれども、改良していただきまして、本当にこれからの時代に対応する米備蓄のあり方は一体どんな形であるのか、この研究、検討の決意だけお伺いさせていただいて、質問を閉じさせていただきたいと思います。
  177. 高橋政行

    ○高橋政府委員 先ほど申し上げましたような問題もいろいろあることでございますので、我々としても、今後この件につきましては勉強させていただきたいと思います。
  178. 小野晋也

    小野分科員 ぜひよろしくお願いいたします。  ますますの御活躍をお祈りしまして、質問を閉じさせていただきます。
  179. 佐藤静雄

    佐藤主査 これにて小野晋也君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして農林水産省所管農林漁業金融公庫の質疑は終了いたしました。     —————————————
  180. 佐藤静雄

    佐藤主査 これより通商産業省所管中小企業金融公庫及び中小企業信用保険公庫について審査を行います。  まず、概要説明を聴取いたします。塚原通商産業大臣
  181. 塚原俊平

    ○塚原国務大臣 平成年度及び平成年度通商産業省所管の歳入歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  初めに、平成年度決算概要でありますが、まず、一般会計について申し上げます。  通商産業省主管の歳入でありますが、歳入予算額百十八億二千三百万円余に対し、収納済み歳入額は百六十六億七千万円余であり、差し引き四十八億四千七百万円余の増加となっております。  次に、通商産業省所管の歳出でありますが、歳出予算現額八千九百八十九億四千六百万円余に対し、支出済み歳出額は八千七百八十一億四千百万円余でありまして、その差額二百八億五百万円余のうち、翌年度へ繰り越しました額は百二十三億一千二百万円余であり、不用となりました額は八十四億九千二百万円余であります。  次に、特別会計について申し上げます。  第一に、電源開発促進対策特別会計でありますが、収納済み歳入額は五千九百二十七億四百万円余であり、支出済み歳出額は三千二百八十四億五千三百万円余でありまして、その差額二千六百四十二億五千百万円余のうち、翌年度へ繰り越しました額は七百五十二億一千五百万円余であり、剰余金は一千八百九十億三千六百万円余であります。  第二に、石炭並びに石油及び石油代替エネルギー対策特別会計でありますが、収納済み歳入額は八千十四億五千五百万円余であり、支出済み歳出額は五千三百四十九億六千三百万円余でありまして、その差額二千六百六十四億九千百万円余のうち、翌年度へ繰り越しました額は一千百十四億二千五百万円余であり、剰余金は一千五百五十億六千六百万円余であります。  第三に、アルコール専売事業特別会計でありますが、収納済み歳入額は四百二十四億一千九百万円余であり、支出済み歳出額は二百九十億四千七百万円余であります。  第四に、貿易保険特別会計でありますが、収納済み歳入額は八千六百五十五億六千四百万円余であり、支出済み歳出額は八千二百六十二億一千六百万円余であります。.  第五に、特許特別会計でありますが、収納済み歳入額は七百億三千六百万円余であり、支出済み歳出額は六百六十三億八千万円余でありまして、その差額三十六億五千六百万円余は、全額剰余金であります。  次に、平成年度決算概要でありますが、まず、一般会計について申し上げます。  通商産業省主管の歳入でありますが、歳入予算額百二十八億二千三百万円余に対し、収納済み歳入額は百七十三億一千九百万円余であり、差し引き四十四億九千五百万円余の増加となっております。  次に、通商産業省所管の歳出でありますが、歳出予算現額一兆七百二十四億六千九百万円余に対し、支出済み歳出額は一兆三百八十七億六千二百万円余でありまして、その差額三百三十七億七百万円余のうち、翌年度へ繰り越しました額は二百三十四億四千七百万円余であり、不用となりました額は百二億六千万円余であります。  次に、特別会計について申し上げます。  第一に、電源開発促進対策特別会計でありますが、収納済み歳入額は五千八百三十三億一千九百万円余であり、支出済み歳出額は三千三百七十一億三千万円余でありまして、その差額二千四百六十一億八千九百万円余のうち、翌年度へ繰り越しました額は四百十億四千八百万円余であり、剰余金は二千五十一億四千万円余であります。  第二に、石炭並びに石油及びエネルギー需給構造高度化対策特別会計でありますが、収納済み歳入額は八千四百七十五億八千三百万円余であり、支出済み歳出額は五千七百八十億五千五百万円余でありまして、その差額二千六百九十五億二千八百万円余のうち、翌年度へ繰り越しました額は一千百五十八億四百万円余であり、剰余金は一千五百三十七億二千三百万円余であります。  第三に、アルコール専売事業特別会計でありますが、収納済み歳入額は四百二十一億三千八百万円余であり、支出済み歳出額は二百八十四億八千二百万円余であります。  第四に、貿易保険特別会計でありますが、収納済み歳入額は八千六百二億八千九百万円余であり、支出済み歳出額は八千四百七十三億六千百万円余であります。  第五に、特許特別会計でありますが、収納済み歳入額は八百九十六億五千七百万円余であり、支出済み歳出額は六百七十一億二千万円余でありまして、その差額二百二十五億三千六百万円余は、全額剰余金であります。  以上をもちまして、平成年度及び平成年度における通商産業省所管一般会計及び特別会計の決算概要に関する御説明を終わります。
  182. 佐藤静雄

    佐藤主査 次に、会計検査院検査概要説明を聴取いたします。会計検査院平岡第五局長
  183. 平岡哲也

    平岡会計検査院説明員 平成年度通商産業省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、法律、政令もしくは予算に違反しまたは不当と認めた事項三件であります。  これらはいずれも、補助金を原資とする中小企業設備近代化資金の貸し付けにおいて、設備を貸付対象事業費より低額で設置したり、設備の設置に必要な長期資金を金融機関から借り入れた後に重複して貸し付けを受けたりしていて、補助の目的に沿わない結果になっていたものであります。  以上、簡単でございますが説明を終わります。  次に、平成年度通商産業省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、法律、政令もしくは予算に違反しまたは不当と認めた事項四件であります。  これらはいずれも、補助金を原資とする中小企業設備近代化資金の貸し付けにおいて、設備の設置に必要な長期資金を金融機関から借り入れた後に重複して貸し付けを受けたり、設備を貸付対象事業費より低額で設置したりなどしていて、補助の目的に沿わない結果になっていたものであります。  以上、簡単でございますが説明を終わります。  次に、平成年度中小企業金融公庫決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。  また、平成年度中小企業金融公庫決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。  次に、平成年度中小企業信用保険公庫決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。  また、平成年度中小企業信用保険公庫決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
  184. 佐藤静雄

    佐藤主査 ただいまの会計検査院指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。塚原通商産業大臣
  185. 塚原俊平

    ○塚原国務大臣 平成年度及び平成年度決算検査報告において掲記されております事項につきましては、会計検査院の御指摘のとおりでありまして、まことに遺憾に存じております。  これらの指摘事項につきましては、直ちにその是正の措置を講じたところであり、今後このような御指摘を受けることのないよう一層努力をいたしたいと存じます。  何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。
  186. 佐藤静雄

    佐藤主査 この際、お諮りいたします。  お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  187. 佐藤静雄

    佐藤主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————    平成年度歳入歳出決算概要説明書                 通商産業省  平成年度通商産業省所管の歳入歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  まず、一般会計歳入歳出決算につきまして、御説明いたします。  通商産業省主管の歳入につきましては、歳入予算額は百十八億二千三百万円余であります。  これに対しまして、収納済歳入額は百六十六億七千十八万円余でありまして、これを歳入予算額と比較いたしますと四十八億四千七百十七万円余の増加となっております。  これは、アルコール専売事業特別会計の決算上の利益が予定より多かったこと等の理由によるものであります。  次に、通商産業省所管の歳出につきましては、当初予算額は八千五百八億一千七百四十九万円余でありますが、予算補正追加額四百九十億八千八百七十七万円余、予算補正修正減少額百三十五億五百二十万円、総理府及び文部省所管から移し替えを受けた額九十一億七千三百三十四万円余、前年度からの繰越額三十三億七千二百十二万円余の増減がありましたので、歳出予算現額は八千九百八十九億四千六百五十三万円余となっております。  これに対しまして、支出済歳出額は八千七百八十一億四千百四十五万円余でありまして、これと歳出予算現額との差額は二百八億五百七万円余となっております。  この差額のうち、翌年度へ繰り越しました額は、百二十三億一千二百六十万円余でありまして、不用となりました額は八十四億九千二百四十六万円余となっております。  四年度における経費の執行につきまして、その主な事項の大要を御説明いたします。  第一に、エネルギー対策費であります。その支出済歳出額は四千七百三十九億五百三万円余でありまして、その主なものにつきまして御説明いたします。  まず、石炭並びに石油及び石油代替エネルギー対策特別会計への繰入れに必要な経費であります。  この経費は、エネルギー対策の緊要性にかんがみ、石油の安定供給確保の観点から、石油資源の開発及び石油備蓄増強等の事業並びに石油代替エネルギーの開発及び利用を促進するための施策の財源に充てるため、一般会計から同特別会計の石油及び石油代替エネルギー勘定へ繰入れるためのものでありまして、四千七百二十億円を支出いたしました。  次に、新エネルギー技術関係経費及び省エネルギー技術関係経費であります。この経費は、石炭液化技術の開発を始めとする石炭エネルギー等の新エネルギー技術及び廃熱有効利用の技術開発を始めとする先導的基盤的省エネルギー等の省エネルギー技術の研究開発を行うためのものでありまして、合わせて九億二千二十四万円余を支出いたしました。  第二に、中小企業対策費であります。その支出済歳出額は一千四百七十九億九千三十五万円余でありまして、その主なものにつきまして御説明いたします。  まず、小規模事業対策費であります。その支出済額は五百四億七千七百二十四万円余でありまして、この経費により商工会、商工会議所等が小規模事業者に対して、五百八十五万件余の経営指導、相談を行いました。  次に、中小企業金融公庫等出資であります。この経費は、中小企業金融公庫及び商工組合中央金庫が行う中小企業金融の拡充を図るための出資に要した経費であり、二百二億円を支出いたしました。  次に、中小企業事業事業運営経費であります。この経費は、中小企業構造の高度化を促進するために必要な指導、資金の貸付け及び共済等の事業を行うための出資金及び補助金でありまして、百八十七億二千五百一万円余を支出いたしました。  なお、同事業団が行った貸付事業の実績は、一般高度化事業資金二百九十三件、特定高度化事業資金二百十九件、繊維工業構造改善事業資金五十一件等であります。  次に、中小企業近代化促進費であります。その支出済額は百五十八億六千五百四十三万円余でありまして、設備近代化補助金二十一億二千六百九十一万円余、中小企業機械類貸与補助金十二億九千三百六万円余等を支出いたしました。  次に、中小企業金融公庫補給金であります。この経費は、中小企業金融公庫の業務の円滑な運営に資するために要した経費であり、百二十四億円を支出いたしました。  次に、中小企業指導事業費であります。その支出済額は百八億三千九百九十五万円余でありまして、診断指導、技術指導及び研究促進等の事業の一層の強化を図っております。  このほか、組織化対策費六十億五千百二十万円余、小企業等経営改善資金貸付金五十億円、信用保証協会基金補助金二十七億円等を支出いたしました。  第三に、科学技術振興費であります。その支出済歳出額は六百三十八億六千九百十二万円余でありまして、その主なものにつきまして御説明いたします。  まず、各省試験研究機関経費であります。この経費は、通商産業省の試験研究機関の試験研究、管理、運営、研究施設及び設備整備等に要した経費でありまして、特別研究費、試験研究施設及び設備整備費等合わせて四百五十七億二千百四十三万円余を支出いたしました。  次に、科学技術研究費補助金・委託費等であります。この経費は、科学技術の振興を図るため、多数部門の協力を要する総合的試験研究及び各種試験研究に共通する基礎的試験研究の助成並びに各種技術開発に対する民間研究助成等に要した経費でありまして、二十一億六千五百十七万円余を支出いたしました。  次に、科学技術振興調整費であります。この経費は、科学技術会議方針に沿って、科学技術の振興に必要な重要研究業務総合推進調整を図るために要した経費でありまして、十六億七千七百五十三万円余を支出いたしました。  次に、電子計算機産業振興対策費であります。この経費は、我が国電子計算機産業の技術力の向上並びに振興を図るため、新しい理論・技術に基づいた第五世代コンピュータの研究開発及びリアル・ワールド・コンピューティングの研究開発を行うためのものでありまして、十一億三千七百九十一万円余を支出いたしました。  このほか、大型工業技術関係経費五億三千七百九万円余、海洋開発関係経費二億八千七百万円余、宇宙開発関係経費七千三百六十六万円余等を支出いたしました。  第四に、経済協力費であります。その支出済歳出額は二百四十九億八千七百六十二万円余でありまして、その主なものにつきまして御説明いたします。  まず、海外開発計画調査事業費であります。この経費は、発展途上国における鉱工業、資源等の分野における開発計画を策定するための調査等を技術協力関係団体に委託して行うためのものでありまして、八十五億七千百十二万円余を支出いたしました。  次に、海外技術者受入等研修事業費であります。この経費は、発展途上国に対する経済協力を推進するため、経済協力関係団体が行う海外技術者受入等研修事業等に対する補助でありまして、五十九億一千四百二十四万円余を支出いたしました。  第五に、公共事業関係費であります。その支出済歳出額は二百二十二億六千三百四十七万円余でありまして、その主なものは、工業用水道事業費補助であります。その支出済額は、二百二十億八千八百四十二万円余でありまして、この経費により、地方公共団体において継続事業七十一箇所、新規事業五箇所の工事を、水資源開発公団において継続事業八箇所の工事を実施いたしました。  次に、繰り越し及び不用について御説明いたします。  翌年度へ繰り越しました経費のうち主なものは、科学技術振興費のうち工業技術院試験研究所の施設整備七十五億五千七百七十二万円余でありまして、計画及び設計に関する諸条件により、年度内に支出を完了することができなかったため、これを翌年度に繰り越したものであります。  また、不用額を生じました経費のうち主なものは、中小企業対策費六十六億八千三十二万円余でありまして、用地取得の難航等により、商業基盤施設整備費補助金を要することが少なかったこと等により不用となったものであります。  以上をもちまして、通商産業省所管一般会計歳入歳出決算に関する御説明を終わります。  次に、通商産業省所管の各特別会計の平成年度決算につきまして御説明いたします。  第一に、電源開発促進対策特別会計であります。  電源立地勘定につきましては、収納済歳入額は三千三百二十三億二千百五万円余、支出済歳出額は一千二百三十二億八千三百六十六万円余であります。収納済歳入額と支出済歳出額との差額は二千九十億三千七百三十八万円余でありまして、翌年度へ繰り越しました額は五百三十六億六千四百三十八万円余、剰余金は一千五百五十三億七千三百万円余となっております。  四年度における経費の執行につきまして、その主な事項の大要を御説明いたします。  電源立地対策費でありますが、この経費は、電源立地地域における公共用施設整備電源立地促進のための特別対策事業、電源立地地域における安全対策等の推進等に必要な事業費に充てるため、地方公共団体等に対して交付するためのものでありまして、一千二百二十二億五千三百十六万円余を支出いたしました。  電源多様化勘定につきましては、収納済歳入額は二千六百三億八千三百八十一万円余、支出済歳出額は二千五十一億六千九百四十三万円余であります。収納済歳入額と支出済歳出額との差額は五百五十二億一千四百三十七万円余でありまして、翌年度へ繰り越しました額は二百十五億五千百三十一万円余、剰余金は三百三十六億六千三百六万円余となっております。  四年度における経費の執行につきまして、その主な事項の大要を御説明いたします。  電源多様化対策費でありますが、この経費は、水力・地熱資源の開発、石炭火力発電所の公害防止技術の実証、太陽光発電などの新エネルギー技術開発原子力発電推進のための技術開発等の施策を行うためのものでありまして、二千十七億一千二十五万円余を支出いたしました。  第二に、石炭並びに石油及び石油代替エネルギー対策特別会計であります。  石炭勘定につきましては、収納済歳入額は一千百四十六億三千二百四十九万円余、支出済歳出額は七百八十三億六千二百三十万円余であります。収納済歳入額と支出済歳出額との差額は三百六十二億七千十九万円余でありまして、翌年度へ繰り越しました額は百二十三億二千三百六万円余、剰余金は二百三十九億四千七百十二万円余となっております。  四年度における経費の執行につきまして、その主な事項の大要を御説明いたします。  まず、石炭鉱業合理化安定対策費であります。この経費は、新エネルギー・産業技術総合開発機構が行う炭鉱の整理事業に対する補助及び同機構が行う経営改善資金の貸付け、貯炭管理制度のための補給並びに石炭鉱業の生産体制の改善、経理の改善、保安の確保等の施策を実施するためのものでありまして、百七十八億五千八百三十一万円余を支出いたしました。  次に、鉱害対策費であります。この経費は、石炭鉱害事業団に対する鉱害復旧事業資金の補助及び同事業団が行う鉱害復旧事業のための事務費等交付金の交付等を行うためのものでありまして、三百三十億一千七百六万円余を支出いたしました。  次に、産炭地域振興対策費であります。この経費は、産炭地域において鉱工業等の振興に必要な業務を行う地域振興整備公団に対する出資、石炭鉱業の終閉山により財政状況が悪化している産炭地域市町村に対する交付金の交付及び産炭地域小水系用水の開発事業等の施策を行うためのものでありまして、百二億六千四百十五万円余を支出いたしました。  石油及び石油代替エネルギー勘定につきましては、収納済歳入額は六千八百六十八億二千三百三万円余、支出済歳出額は四千五百六十六億百五十八万円余であります。収納済歳入額と支出済歳出額との差額は二千三百二億二千百四十五万円余でありまして、翌年度へ繰り越しました額は九百九十一億二百二十五万円余、剰余金は一千三百十一億一千九百二十万円余となっております。  四年度における経費の執行につきまして、その主な事項の大要を御説明いたします。  まず、石油安定供給対策費であります。この経費は、石油公団が行う石油及び可燃性天然ガスの探鉱等に対する投融資及び公団備蓄事業等に充てるための同公団への出資、同公団に対する交付金の交付、石油備蓄の増強等の施策を行うためのものでありまして、三千八百七十一億一千七百二十六万円余を支出いたしました。  次に、石油生産流適合理化対策費であります。この経費は、石油の生産の合理化を図るための石油精製合理化対策事業及び石油の流適合理化を図るための石油製品需給適正化調査等の施策を行うためのものでありまして、三百三十三億五千四百六十八万円余を支出いたしました。  次に、石油代替エネルギー対策費であります。この経費は、新エネルギー・産業技術総合開発機構が行う海外炭の開発可能性調査、ソーラーシステム普及促進、天然ガス導入促進、石炭液化等の石油代替エネルギー技術開発等の施策を行うためのものでありまして、三百五十二億八千七百七十一万円余を支出いたしました。  第三に、アルコール専売事業特別会計であります。収納済歳入額は四百二十四億一千九百三十四万円余、支出済歳出額は二百九十億四千七百八十五万円余であります。  この会計の損益計算上の利益は百三十五億二千百四十九万円余でありまして、期末資産の増加相当額二億七千八百三十三万円余を控除した残額百三十二億四千三百十五万円余を一般会計に納付いたしました。  第四に、貿易保険特別会計であります。収納済歳入額は八千六百五十五億六千四百四十一万円余、支出済歳出額は八千二百六十二億一千六百三十万円余であります。  四年度における保険引受件数は六十四万件余、その保険金額は二十一兆八千三百四十七億円余でありまして、前年度に対し一千百七十四億円余の減少となっております。  第五に、特許特別会計であります。収納済歳入額は七百億三千六百九十七万円余、支出済歳出額は六百六十三億八千十五万円余であります。収納済歳入額と支出済歳出額との差額は三十六億五千六百八十一万円余でありまして、全額剰余金となっております。  以上をもちまして、平成年度における通商産業省所管一般会計及び特別会計の決算に関する御説明を終わります。     …………………………………    平成年度決算通商産業省についての検査概要に関する主管局長説明                 会計検査院  平成年度通商産業省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、法律、政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項三件であります。  検査報告番号一七二号から一七四号までの三件は、中小企業設備近代化資金の貸付けが不当と認められるものであります。  この資金の貸付事業は、都道府県が、国の補助金と自己資金等によって資金を造成し、設備の近代化に必要な資金の調達が困難な中小企業者に対して、設備の設置に必要な資金の額の二分の一以内の額を、原則として五年以内の償還期間で、無利子で貸し付けるものであります。  本院がその貸付けの適否について調査いたしましたところ、中小企業者が貸付けの対象となった事業費より低額で設備を設置しているのに、貸付対象事業費どおりの価格で設置したとして貸し付けていたものが二件、環境衛生金融公庫から貸付けを受けていた中小企業者に同一設備を対象に重複して貸し付けていたものが一件ありました。  これらはいずれも本資金の貸付けとして適切を欠いており、ひいては補助の目的に沿わない結果になっていると認められたものであります。  以上、簡単でございますが説明を終わります。     …………………………………    平成年度歳入歳出決算    会計検査院指摘に対して講じた措置説明                 通商産業省  平成年度決算検査報告において掲記されております事項につきましては、当省において、中小企業設備近代化補助金を財源の一部とする都道府県の貸付金の貸付けに当たっては、その適正化を図るため、都道府県に対し、借受申請者に対する説明会の充実、事前調査及び完了検査を適正に行うよう会議等の場を通じ十分指導してきたところでありますが、なお御指摘のような不当事項が生じたことは、誠に遺憾に存じております。  御指摘を受けた事項につきましては、指摘金額全額を県の特別会計に収納済みであり、また、今回御指摘を受けた県に対しては、今後かかる事例が再び生じることのないよう厳に注意をいたしました。  今後、中小企業設備近代化資金の貸付けに当たっては、借受申請者に対する本制度の趣旨の周知徹底、事前審査の充実、完了検査マニュアルの周知及び活用による完了検査の徹底等不当貸付防止体制のより一層の適正化を図るよう指導・監督を強化するとともに、貸付担当者に対する研修の充実を図り、このような御指摘を受けることのないよう、さらに努力をいたしたいと存じます。     —————————————    平成年度の業務の概況について              中小企業金融公庫  平成年度における中小企業金融公庫の業務について御説明申し上げます。  一、当公庫平成年度当初貸付計画は、二兆四千五百八十三億円と定められましたが、その後、四年十二月に三千三百七十億円の追加が認められましたので、これにより貸付計画総額は、二兆七千九百五十三億円となりました。  これに対し、中小企業者に対しては、二兆六千七百二十一億八千七百八十七万円余の貸付を行ったほか、設備貸与機関に対しては、二百九十九億九千三百三万円余、また、中小企業投資育成株式会社に対しては、二十七億円の貸付を行い、総額では、二兆七千四十八億八千九十一万円余の貸付実績となりました。  中小企業者に対する貸付契約額のうち、設備資金は四十三・九パーセントに相当する一兆一千八百二十一億四百七十五万円余、運転資金は五十六・一パーセントに相当する一兆五千七十七億七千九百十一万円余となっており、また、直接貸付は六十一・二パーセントに相当する一兆六千四百五十七億二千七百四十万円(二万五千四十五件)、代理貸付は三十八・八パーセントに相当する一兆四百四十一億五千六百四十七万円余(三万五千七百十六件)となっております。  なお、平成年度末における総貸付残高は、八兆四千四百三億六千六百二十万円余となっております。  貸付金の延滞状況につきましては、平成年度末におきまして弁済期限を六カ月以上経過した元金延滞額は、八百八十九億六千百六十三万円余でありまして、このうち一年以上のものは、七百九十二億六千八百一万円余、総貸付残高の一パーセントとなっております。  二、平成年度の融資に当たりましては、政府の総合経済対策を受け、経営環境の変化に対応しようとする中小企業はもとより、積極果敢に新たな事業展開を図ろうとしている中小企業の支援・育成に必要な資金に積極的に対応してまいりました。  特に、中小企業の資金調達の円滑化を図るために必要な資金の貸付に関し、貸付限度に係る特例を設けた貸付制度、大規模小売店舗の事業活動に係る規制緩和等に積極的に対応し自らの体質強化を図る中小小売商業者等を支援するための貸付制度、労働時間の短縮のための省力化投資の促進による、中小企業におけるゆとりの創造と事業基盤の高度化を図るための貸付制度等を新設するなど、中小企業の新たな資金ニーズに対してきめ細かい配慮を払ってまいりました。  また、中小企業近代化促進法に基づく構造改善事業に必要な資金、流通機構の近代化、合理化のために必要な資金及び産業公害の防止、産業安全の確保等のために必要な資金についても引き続き配慮してまいりました。  三、次に、当公庫平成年度の収入、支出の決算及び損益計算について申し上げます。  収入、支出の決算について申し上げますと、貸付金利息等収入済額は、五千百四十億三千百八十一万円余、支払利息等支出済額は、五千六十八億二千二百八万円余となりました。  損益計算について申し上げますと、貸付金利息等の総益金は、五千四百八億二十六万円余、借入金利息、事務費、業務委託費等の総損金は、五千四百八億二十六万円余となりました。この結果、利益金は生じなかったので、国庫納付はいたしませんでした。  以上をもちまして、平成年度における中小企業金融公庫の業務の概況について、御説明を終わります。                   以 上     —————————————      平成年度業務概況            中小企業信用保険公庫  中小企業信用保険公庫平成年度の業務の概況につきまして、御説明申し上げます。  平成年度におきましては、国の一般会計から中小企業信用保事業の円滑な運営を図るための原資として、中小企業信用保険準備基金百億円、信用保証協会の保証活動の円滑化を図るための原資として、融資基金四百十八億円、合計五百十八億円の出資が行われました。  まず、中小企業信用保事業についてみますと、公庫が全国五十二の信用保証協会との間に締結いたしました保険契約に基づく保険引受は、件数で百十七万件余、金額で十兆四千六十六億三千百六十七万円余になっており、これを前年度に比較いたしますと、金額で十二パーセントの増加となっております。  この結果、平成年度末の保険引受残高は、件数で二百八十四万六千件余、金額で二十六兆八千四百四十二億三千六十四万円余となっております。  なお、中小企業信用保険保険金の支払いは一千八百三十七億一千二百四十七万円余になりまして、これを前年度に比較いたしますと、九十一パーセントの増加となっております。  信用保証協会に対する融資事業につきましては、平成年度に国の一般会計から新たに出資されました四百十八億円及び既往の貸付に係る回収金等三千七百三十五億八千四百万円、合計四千百五十三億八千四百万円をもちまして、三千四百九億一千二百万円の貸付けを行いました。  この結果、平成年度末における貸付残高は四千四百六十億二千八百万円となっております。  機械類信用保険事業につきましては、公庫が機械類のリース業者等との間に締結いたしました保険契約に基づく保険引受は、件数で二十四万一千件余、金額で一兆三千七百六億九千百四十二万円余となっており、これを前年度に比較いたしますと、金額で十四パーセントの減少となっております。  この結果、平成年度末の保険引受残高は、件数で百二十六万四千件余、金額で七兆七千三百五十四億九千九百六十六万円余となっております。  なお、機械類信用保険保険金の支払いは七十億九千三百八十五万円余になりまして、これを前年度に比較いたしますと、百七十二パーセントの増加となっております。  次に収入支出及び損益の概況について申し上げます。  まず、収入、支出について申し上げますと、収入済額は二千百七十九億六千八百二十六万円余、支出済額は一千九百五十九億四千百万円余でありまして、差し引き二百二十億二千七百二十六万円余の収入超過となっております。  損益計算につきましては、さらに支払備金等の整理を行いました結果、総利益は六千百六十四億六千五百十三万円余、総損失は六千百六十三億六千四百四十八万円余となり、差し引き一億六十五万円余の利益金を生じましたが、これは機械類信用保険特別勘定の利益金によるものであります。  この利益金は、機械類信用保険法の規定に基づき同勘定の積立金として積み立てることとしました。  以上、簡単ではございますが、平成年度の業務の概況につきまして、御説明申し上げた次第でございます。     —————————————    平成年度歳入歳出決算概要説明書                 通商産業省  平成年度通商産業省所管の歳入歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  まず、一般会計歳入歳出決算につきまして、御説明いたします。  通商産業省主管の歳入につきましては、歳入予算額は百二十八億二千三百三十九万円余であります。  これに対しまして、収納済歳入額は百七十三億一千九百二十九万円余でありまして、これを歳入予算額と比較いたしますと四十四億九千五百八十九万円余の増加となっております。  これは、アルコール専売事業特別会計の決算上の利益が予定より多かったこと等の理由によるものであります。  次に、通商産業省所管の歳出につきましては、当初予算額は八千八百九億七千六百六十三万円余でありますが、予算補正追加額一千八百五十億九百三十四万円余、予算補正修正減少額二百十五億三千百三十万円余、総理府及び文部省所管から移し替えを受けた額百十七億二百三十八万円余、前年度からの繰越額百二十三億一千二百六十万円余、予備費使用額四十億円の増減がありましたので、歳出予算現額は一兆七百二十四億六千九百六十六万円余となっております。  これに対しまして、支出済歳出額は一兆三百八十七億六千二百五十三万円余でありまして、これと歳出予算現額との差額は三百三十七億七百十三万円余となっております。  この差額のうち、翌年度へ繰り越しました額は、二百三十四億四千七百六万円余でありまして、不用となりました額は百二億六千六万円余となっております。  五年度における経費の執行につきまして、その主な事項の大要を御説明いたします。  第一に、エネルギー対策費であります。その支出済歳出額は四千九百五十六億三千六百十七万円余でありまして、その主なものにつきまして御説明いたします。  まず、石炭並びに石油及びエネルギー需給構造高度化対策特別会計への繰入れに必要な経費であります。  この経費は、エネルギー対策の緊要性にかんがみ、石油の安定供給確保の観点から、石油資源の開発及び石油備蓄増強等の事業並びに石油代替エネルギー対策、省エネルギー対策等地球環境問題に対応したエネルギー政策の展開を図るための施策の財源に充てるため、一般会計から同特別会計の石油及びエネルギー需給構造高度化勘定へ繰入れるためのものでありまして、四千九百四十億円を支出いたしました。  次に、新エネルギー技術関係経費及び省エネルギー技術関係経費であります。この経費は、石炭液化技術の開発を始めとする石炭エネルギー等の新エネルギー技術及び廃熱有効利用の技術開発を始めとする先導的基盤的省エネルギー等の省エネルギー技術の研究開発を行うためのものでありまして、合わせて七億三千六百二十万円余を支出いたしました。  第二に、中小企業対策費であります。その支出済歳出額は二千六十八億四千八百九十三万円余でありまして、その主なものにつきまして御説明いたします。  まず、中小企業事業事業運営経費であります。この経費は、中小企業構造の高度化を促進するために必要な指導、資金の貸付け及び共済等の事業を行うための出資金及び補助金でありまして、四百九十五億七百十八万円余を支出いたしました。  なお、同事業団が行った貸付事業の実績は、一般高度化事業資金二百五十一件、特定高度化事業資金二百五十四件、繊維工業構造改善事業資金四十一件等であります。  次に、中小企業金融公庫等出資であります。この経費は、中小企業金融公庫及び商工組合中央金庫が行う中小企業金融の拡充を図るための出資に要した経費であり、四百九十二億円を支出いたしました。  次に、小規模事業対策費であります。その支出済額は四百六十七億四千二百二十八万円余でありまして、この経費により商工会、商工会議所等が小規模事業者に対して、五百八十六万件余の経営指導、相談を行いました。  次に、中小企業近代化促進費であります。その支出済額は百五十七億九千八百三十万円余でありまして、設備近代化補助金十一億二千六百九十万円余、中小企業機械類貸与補助金十三億九十万円余等を支出いたしました。  次に、中小企業金融公庫補給金であります。この経費は、中小企業金融公庫の業務の円滑な運営に資するために要した経費であり、百二十六億円を支出いたしました。  次に、中小企業指導事業費であります。その支出済額は百八億三千六百三十三万円余でありまして、診断指導、技術指導及び研究促進等の事業の一層の強化を図っております。  このほか、小企業等経営改善資金貸付金九十六億円、組織化対策費六十一億七千三百五万円余、信用保証協会基金補助金二十七億円等を支出いたしました。  第三に、科学技術振興費であります。その支出済歳出額は一千九十六億一千百七十万円余でありまして、その主なものにつきまして御説明いたします。  まず、各省試験研究機関経費であります。この経費は、通商産業省の試験研究機関の試験研究、管理、運営、研究施設及び設備整備等に要した経費でありまして、特別研究費、試験研究施設及び設備整備費等合わせて六百九十四億一千七百五十三万円余を支出いたしました。  次に、科学技術振興調整費であります。この経費は、科学技術会議方針に沿って、科学技術の振興に必要な重要研究業務総合推進調整を図るために要した経費でありまして、二十二億三千四百八十六万円余を支出いたしました。  次に、科学技術研究費補助金・委託費等であります。この経費は、科学技術の振興を図るため、多数部門の協力を要する総合的試験研究及び各種試験研究に共通する基礎的試験研究の助成並びに各種技術開発に対する民間研究助成等に要した経費でありまして、二十二億一千八百十九万円余を支出いたしました。  次に、電子計算機産業振興対策費であります。この経費は、我が国電子計算機産業の技術力の向上並びに振興を図るため、新しい理論・技術に基づいたりアル・ワールド・コンピューティングの研究開発を行うためのものでありまして、十億六千三百五十八万円余を支出いたしました。  このほか、大型工業技術関係経費六億三千五百四十四万円余、海洋開発関係経費二億九千九十五万円余、宇宙開発関係経費七千五十三万円余等を支出いたしました。  第四に、公共事業関係費であります。その支出済歳出額は三百四億九千七百八十四万円余でありまして、その主なものは、工業用水道事業費補助であります。その支出済額は、三百三億七百五十八万円余でありまして、この経費により、地方公共団体において継続事業七十七箇所、新規事業七箇所の工事を、水資源開発公団において継続事業七箇所の工事を実施いたしました。  第五に、経済協力費であります。その支出済歳出額は二百七十五億二千五百八十五万円余でありまして、その主なものにつきまして御説明いたします。  まず、海外開発計画調査事業費であります。この経費は、発展途上国における鉱工業、資源等の分野における開発計画を策定するための調査等を技術協力関係団体に委託して行うためのものでありまして、九十三億九千二百十八万円余を支出いたしました。  次に、海外技術者受入等研修事業費であります。この経費は、発展途上国に対する経済協力を推進するため、経済協力関係団体が行う海外技術者受入等研修事業等に対する補助でありまして、七十一億九千四百三十二万円余を支出いたしました。  次に、繰り越し及び不用について御説明いたします。  翌年度へ繰り越しました経費のうち主なものは、科学技術振興費のうち工業技術院試験研究所の施設整備百三十三億八千四百九万円余でありまして、計画及び設計に関する諸条件等により、年度内に支出を完了することができなかったため、これを翌年度に繰り越したものであります。  また、不用額を生じました経費のうち主なものは、中小企業対策費八十億二千四百四十一万円余でありまして、用地取得の難航等により、商業基盤施設整備費補助金を要することが少なかったこと等により不用となったものであります。  以上をもちまして、通商産業省所管一般会計歳入歳出決算に関する御説明を終わります。  次に、通商産業省所管の各特別会計の平成年度決算につきまして御説明いたします。  第一に、電源開発促進対策特別会計であります。  電源立地勘定につきましては、収納済歳入額は三千二百八十六億二千九百三十六万円余、支出済歳出額は一千三百五十二億二千五百四十二万円余であります。収納済歳入額と支出済歳出額との差額は一千九百三十四億三百九十三万円余でありまして、翌年度へ繰り越しました額は百五十七億七千九百三十八万円余、剰余金は一千七百七十六億二千四百五十五万円余となっております。  五年度における経費の執行につきまして、その主な事項の大要を御説明いたします。  電源立地対策費でありますが、この経費は、電源立地地域における公共用施設整備電源立地促進のための特別対策事業、電源立地地域における安全対策等の推進等に必要な事業費に充てるため、地方公共団体等に対して交付するためのものでありまして、一千三百四十一億一千百八十三万円余を支出いたしました。  電源多様化勘定につきましては、収納済歳入額は二千五百四十六億九千三十九万円余、支出済歳出額は二千十九億四百九十八万円余であります。収納済歳入額と支出済歳出額との差額は五百二十七億八千五百四十万円余でありまして、翌年度へ繰り越しました額は二百五十二億六千九百五十六万円余、剰余金は二百七十五億一千五百八十四万円余となっております。  五年度における経費の執行につきまして、その主な事項の大要を御説明いたします。  電源多様化対策費でありますが、この経費は、水力・地熱資源の開発、石炭火力発電所の公害防止技術の実証、太陽光発電などの新エネルギー技術開発原子力発電推進のための技術開発等の施策を行うためのものでありまして、一千九百八十七億七千七百二十万円余を支出いたしました。  第二に、石炭並びに石油及びエネルギー需給構造高度化対策特別会計であります。  石炭勘定につきましては、収納済歳入額は一千百九十一億四千四百十四万円余、支出済歳出額は七百六十七億九千二百九十九万円余であります。収納済歳入額と支出済歳出額との差額は四百二十三億五千百十四万円余でありまして、翌年度へ繰り越しました額は百九十三億二千三百六十一万円余、剰余金は二百三十億二千七百五十三万円余となっております。  五年度における経費の執行につきまして、その主な事項の大要を御説明いたします。  まず、石炭鉱業合理化安定対策費であります。この経費は、新エネルギー・産業技術総合開発機構が行う炭鉱の整理事業に対する補助及び同機構が行う経営改善資金の貸付け、貯炭管理制度のための補給並びに石炭鉱業の住産体制の改善、経理の改善、保安の確保等の施策を実施するためのものでありまして、百三十四億六千八十六万円余を支出いたしました。  次に、鉱害対策費であります。この経費は、石炭鉱害事業団に対する鉱害復旧事業資金の補助及び同事業団が行う鉱害復旧事業のための事務費等交付金の交付等を行うためのものでありまして、三百五十四億六千七十四万円余を支出いたしました。  次に、産炭地域振興対策費であります。この経費は、産炭地域において鉱工業等の振興に必要な業務を行う地域振興整備公団に対する出資、石炭鉱業の終閉山により財政状況が悪化している産炭地域市町村に対する交付金の交付及び産炭地域小水系用水の開発事業等の施策を行うためのものでありまして、百十四億六千百十五万円余を支出いたしました。  石油及びエネルギー需給構造高度化勘定につきましては、収納済歳入額は七千二百八十四億三千九百六十四万円余、支出済歳出額は五千十二億六千二百三十八万円余であります。収納済歳入額と支出済歳出額との差額は二千二百七十一億七千七百二十五万円余でありまして、翌年度へ繰り越しました額は九百六十四億八千百十二万円余、剰余金は一千三百六億九千六百十三万円余となっております。  五年度における経費の執行につきまして、その主な事項の大要を御説明いたします。  まず、石油安定供給対策費であります。この経費は、石油公団が行う石油及び可燃性天然ガスの探鉱等に対する投融資及び公団備蓄事業等に充てるための同公団への出資、同公団に対する交付金の交付、石油備蓄の増強等の施策を行うためのものでありまして、四千百六億六千七百十三万円余を支出いたしました。  次に、石油生産流適合理化対策費であります。この経費は、石油の生産の合理化を図るための石油精製合理化対策事業及び石油の流適合理化を図るための石油製品需給適正化調査等の施策を行うためのものでありまして、二百四十三億七千百四十二万円余を支出いたしました。  次に、エネルギー需給構造高度化対策費であります。この経費は、新エネルギー・産業技術総合開発機構が行う海外炭の開発可能性調査、ソーラーシステム等普及促進、天然ガス導入促進、石炭液化等の石油代替エネルギー技術開発、地域省エネルギーシステム形成促進、エネルギーの使用の合理化を図るための関係技術実用化開発等の施策を行うためのものでありまして、六百五十二億五千百六万円余を支出いたしました。  第三に、アルコール専売事業特別会計であります。収納済歳入額は四百二十一億三千八百十八万円余、支出済歳出額は二百八十四億八千二百二万円余であります。  この会計の損益計算上の利益は百四十億三千七百九十万円余でありまして、期末資産の減少相当額三億七十六万円余がありましたので、合計百四十三億三千八百六十六万円余を一般会計に納付いたしました。  第四に、貿易保険特別会計であります。収納済歳入額は八千六百二億八千九百二十七万円余、支出済歳出額は八千四百七十三億六千百九万円余であります。  五年度における保険引受件数は五十六万件余、その保険金額は十九兆七千六百五十二億円余でありまして、前年度に対し二兆六百九十五億円余の減少となっております。  第五に、特許特別会計であります。収納済歳入額は八百九十六億五千七百八万円余、支出済歳出額は六百七十一億二千二十六万円余であります。収納済歳入額と支出済歳出額との差額は二百二十五億三千六百八十二万円余でありまして、全額剰余金となっております。  以上をもちまして、平成年度における通商産業省所管一般会計及び特別会計の決算に関する御説明を終わります。     …………………………………    平成年度決算通商産業省についての検査    の概要に関する主管局長説明                 会計検査院  平成年度通商産業省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、法律、政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項四件であります。  検査報告番号一六九号から一七二号までの四件は、中小企業設備近代化資金の貸付けが不当と認められるものであります。  この資金の貸付事業は、都道府県が、国の補助金と自己資金等によって資金を造成し、設備の近代化に必要な資金の調達が困難な中小企業者に対して、設備の設置に必要な資金の額の二分の一以内の額を、原則として五年以内の償還期間で、無利子で貸し付けるものであります。  本院がその貸付けの適否について調査いたしましたところ、中小企業金融公庫から貸付けを受けていた中小企業者に同一設備を対象に重複して貸し付けていたものが一件、貸付けの対象となる設備は、その代金支払いを貸付年度の翌年度の九月三十日までに完了することが条件となっているのに、支払期限までに支払いが完了していないものに貸し付けていたものが一件、中小企業者が貸付けの対象となった事業費より低額で設備を設置しているのに、貸付対象事業費どおりの価格で設置したとして貸し付けていたものが一件、中小企業者が貸付対象外の設備を含めて貸付対象事業費を過大に計上し、設備を設置しているのに、貸付対象事業費どおりの価格で設置したとして貸し付けていたものが一件ありました。  これらはいずれも本資金の貸付けとして適切を欠いており、ひいては補助の目的に沿わない結果になっていると認められたものであります。  以上をもって概要説明を終わります。     …………………………………    平成年度歳入歳出決算    会計検査院指摘に対して講じた措置説明                 通商産業省  平成年度決算検査報告において掲記されております事項につきましては、当省において、中小企業設備近代化補助金を財源の一部とする都道府県の貸付金の貸付けに当たっては、その適正化を図るため、都道府県に対し、借受申請者に対する説明会の充実、事前調査及び完了検査を適正に行うよう会議等の場を通じ十分指導してきたところでありますが、なお御指摘のような事態を生じたことは、誠に遺憾に存じております。  御指摘を受けた事項につきましては、指摘金額全額を都県の特別会計に収納済みであり、また、今回御指摘を受けた都県に対しては、今後かかる事例が再び生じることのないよう厳に注意をいたしました。  今後、中小企業設備近代化資金の貸付けに当たっては、借受申請者に対する本制度の趣旨の周知徹底、事前審査の充実、完了検査マニュアルの周知及び活用による完了検査の徹底等不当貸付防止体制のより一層の適正化を図るよう指導・監督を強化するとともに、貸付担当者に対する研修の拡充を図り、このような御指摘を受けることのないよう、さらに努力をいたしたいと存じます。     —————————————    平成年度の業務の概況について              中小企業金融公庫  平成年度における中小企業金融公庫の業務について御説明申し上げます。   一、当公庫平成年度当初貸付計画は、二兆六千六十四億円と定められましたが、その後、五年六月に六千五百億円及び五年十二月に一千三百五十億円並びに六年二月に四百四十六億円の追加が認められましたので、これにより貸付計画総額は、三兆四千三百六十億円となりました。  これに対し、中小企業者に対しては、三兆一千百十億五千百二十九万円の貸付を行ったほか、設備貸与機関に対しては、二百六十二億八千百八十六万円余、また、中小企業投資育成株式会社に対しては、十八億円の貸付を行い、総額では、三兆一千三百九十一億三千三百十五万円余の貸付実績となりました。  中小企業者に対する貸付契約額のうち、設備資金は四十二・五パーセントに相当する一兆三千四百五十四億四千六百四十九万円余、運転資金は五十七・五パーセントに相当する一兆八千百九十五億六千七百八十九万円余となっており、また、直接貸付は六十・八パーセントに相当する一兆九千二百三十一億四千三百七十万円(二万七千五十二件)、代理貸付は三十九・二パーセントに相当する一兆二千四百十八億七千六十九万円(三万六千十二件)となっております。  なお、平成年度末における総貸付残高は、九兆二千三百五十五億五千六十七万円余となっております。  貸付金の延滞状況につきましては、平成年度末におきまして弁済期限を六カ月以上経過した元金延滞額は、一千百一億九千七百四十三万円余でありまして、このうち一年以上のものは、九百八十三億二千九百二十万円余、総貸付残高の一パーセントとなっております。  二、平成年度の融資に当たりましては、政府の総合的な経済対策及び緊急経済対策並びに総合経済対策を受け、経営環境の変化に対応しようとする中小企業者はもとより、積極果敢に新たな事業展開を図ろうとしている中小企業者の支援・育成に必要な資金に積極的に対応してまいりました。  特に、最近の経済事情の変化が中小企業の経営に与える影響に鑑み、一時的な業況悪化により資金繰りに支障をきたしている中小企業者の経営の安定を図るための貸付制度、近年における国際分業の進展、需要構成の変化その他の経済の多様かつ構造的な変化に適応するために、中小企業者が行う新たな事業の分野への進出及び海外の地域における事業の開始等を支援するための貸付制度、わが国産業活動の活力を維持し持続的な経済成長を図るため、新しい技術の活用、特色ある財・サービスの提供等により市場を創設・開拓し、わが国の産業の活性化に資する企業に育っていく素質を有する中小企業者であって、事業実績が乏しい等のために民間金融機関がそのリスクテイク能力を発揮しても取組に限界がある企業を支援するための貸付制度を新設するなど中小企業者のニーズに対しきめ細かい配慮を払ってまいりました。  また、中小企業近代化促進法に基づく構造改善事業に必要な資金、流通機構の近代化・合理化のために必要な資金及び産業公害の防止、産業安全の確保等のために必要な資金についても引き続き配慮してまいりました。  三、次に、当公庫平成年度の収入、支出の決算及び損益計算について申し上げます。  収入、支出の決算について申し上げますと、貸付金利息等収入済額は、五千二百三十一億八千六百八十九万円余、支払利息等支出済額は、五千四百六十二億一千五百六十二万円余となりました。  損益計算について申し上げますと、貸付金利息等の総益金は、五千四百六十七億九千八百十七万円余、借入金利息、事務費、業務委託費等の総損金は、五千四百六十七億九千八百十七万円余となりました。この結果、利益金は生じなかったので、国庫納付はいたしませんでした。  以上をもちまして、平成年度における中小企業金融公庫の業務の概況について、御説明を終わります。                  以 上     —————————————    平成年度業務概況            中小企業信用保険公庫  中小企業信用保険公庫平成年度の業務の概況につきまして、御説明申し上げます。  平成年度におきましては、国の一般会計から中小企業信用保事業の円滑な運営を図るための原資として、中小企業信用保険準備基金百億円、信用保証協会の保証活動の円滑化を図るための原資として、融資基金一千七十七億円、合計一千百七十七億円の出資が行われました。  まず、中小企業信用保事業についてみますと、公庫が全国五十二の信用保証協会との間に締結いたしました保険契約に基づく保険引受は、件数で百三十万六千件余、金額で十二兆二千五百五億八千七十三万円余になっており、これを前年度に比較いたしますと、金額で十七パーセントの増加となっております。  この結果、平成年度末の保険引受残高は、件数で三百十二万三千件余、金額で三十兆一千三百三十八億四千二百七十六万円余となっております。  なお、中小企業信用保険保険金の支払いは二千二百二十一億四千四十万円余になりまして、これを前年度に比較いたしますと、二十パーセントの増加となっております。  信用保証協会に対する融資事業につきましては、平成年度に国の一般会計から新たに出資されました一千七十七億円及び既往の貸付に係る回収金等四千四百五十七億四千五百万円、合計五千五百三十四億四千五百万円をもちまして、四千二百三十六億二百万円の貸付けを行いました。  この結果、平成年度末における貸付残高は四千九百八十三億五千七百万円となっております。  機械類信用保険事業につきましては、公庫が機械類のリース業者等との間に締結いたしました保険契約に基づく保険引受は、件数で二十三万五千件余、金額で一兆一千九百七十五億六百九十一万円余となっており、これを前年度に比較いたしますと、金額で十二パーセントの減少となっております。  この結果、平成年度末の保険引受残高は、件数で百二十一万三千件余、金額で七兆五千二百二十六億九百七万円余となっております。  なお、機械類信用保険保険金の支払いは百十億九千八十七万円余になりまして、これを前年度に比較いたしますと、五十六パーセントの増加となっております。  次に収入支出及び損益の概況について申し上げます。  まず、収入、支出について申し上げますと、収入済額は二千三百五十五億三千八百十七万円余、支出済額は二千三百八十六億九千百五十一万円余でありまして、差し引き三十一億五千三百三十四万円余の支出超過となっております。  損益計算につきましては、さらに支払備金等の整理を行いました結果、総利益は六千五百五十八億九千七百六十万円余、総損失は六千六百十九億六千三十七万円余となり、差し引き六十億六千二百七十六万円余の損失金を生じましたが、これは機械類信用保険特別勘定の損失金によるものであります。  この損失金は、機械類信用保険法の規定に基づき同勘定の積立金を取りまして整理いたしました。  以上、簡単ではございますが、平成年度の業務の概況につきまして、御説明申し上げた次第でございます。     —————————————
  188. 佐藤静雄

  189. 佐藤静雄

    佐藤主査 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐藤剛男君。
  190. 佐藤剛男

    佐藤(剛)分科員 塚原通産大臣におかれましては実力大臣で、私、通産省の出身でございますが、先輩、後輩皆喜んでおりまして、さらなる御活躍を祈願する次第でございます。  さて、私がきょう取り上げますのは、国際繊維取り決め、いわゆる多国間取り決め、MFAということで、今WTOの中に吸収されまして、経過的なと訳しますが、トランジショナルセーフガード条項ということでございます。  私のかねてからの持論でございますが、これは一つの国際的ルールになっているわけだが、中国からの輸入という問題がある。  繊維製品、なかんずく私が取り上げようと思っておりますのはニットでございますけれども、私の選挙区にもニットの有名な産地、伊達郡の梁川町、保原町というところがございます。そういう地区が今、輸入の増大によりまして、在庫圧力によって疲弊してしまっている。これは非常に見るに見かねるということで、過日、中野局長にお願いいたしました。中野局長がアレンジされて現地調査を派遣して、そして現地の状況を把握されて、そしてこれからの対策等々を講じてくださるという力強い記者会見にも接しておりまして、さすがMITIを背負っておる中野生活産業局長であるということで、敬意を表する次第でございます。  そのような現地調査、それからこれからの対策等について骨折っていただいていることに敬意を表しますが、私は、この問題に絡んで、少しく問題を掘り下げていただきたい。きょうは、広瀬貿易局長、私の大切なる後輩でもあるし、お二人に対しまして久しぶりにお話をさせていただきたいと思っているわけでございます。  さて、まず中野局長、ニット業界の現況、特に輸入の推移を五年間ぐらいのタームで、今平成八年ですから平成三年から。日本が輸入国になったのは一九八七年、そのときに日本が輸出国から輸入国に、入超に転じた。言うなれば、もうずっと前の話になってしまうわけであります。九年前ぐらいなわけでありますけれども、九年前とは言わないけれども、ここ数年の輸入動向を見て、特にニット関係の動向を見て、どのように状況を把握しておるか、そこら辺からまず入らせていただきたい。
  191. 中野正孝

    ○中野政府委員 お答え申し上げます。  繊維製品全般もそうでありますし、なかんずく需要の中でも比較的伸びておるニット、動向は相通ずるところがございますけれども、ここ五年で申し上げますと、今先生がおっしゃいましたように、日本の繊維貿易の輸出入が逆転しましたのは一九八七年からでございます。今からちょうど十年近く前でございます。自来、大変急激な伸び率、年率五割、六割で前年に比べて伸びるという状況が続きました。その後、伸び率が二、三割ダウンし、かつ、ここ一、二年といいますか、一割から若干増というふうな傾向をたどっております。  しかし、いずれにしましても、繊維につきましては、昨年は全部の繊維で五七%の輸入浸透率になりました。ニットにつきましては、八割前後がもう輸入品である、こういう状況に至っております。  繊維は大事な産業でございまして、雇用の面でも産地の面でも大変重要な産業だと私ども確信しておりますけれども、いかんせんこのような状況に至っているというのが現状でございます。
  192. 佐藤剛男

    佐藤(剛)分科員 通産省、これは外務省と一緒にやらないといかぬのですが、何かMFAというと輸入制限をすると考えているんだ。誤解だ。通産省というと、何か自由貿易という旗だけ掲げてやっていればいいと思っている。  世界のルールというのは、ガット、今度はWTOだけれども、輸入の秩序というものをしないことにはどうしようもない。特に共産圏諸国、コストプライスの働かない、市場原理が働かない地域、簡単に言いますと中国ですよ。ヨーロッパにとっては東欧だったのです、今までは。チェコスロバキアだとかブルガリアだとかルーマニアだとか、ああいうところ、あれはみんな多国間繊維取り決めの中に入れ込んじゃって、きちんとした協定を結んでやっていたんだ、ベルリンの壁が崩壊するまでは。  それで、ガットの十九条というのは、貿易局長一般的にやらなければいかぬのですね、輸入している国というのは。例えば、中国から入ってくる、韓国から入ってくる、インドから入る、パキスタンから入るとなると、中国だけをねらい撃ちにはできない。交渉するならみんなにやらなければいけない。そして、代償を払わなければいけない。こういう厄介なものがガットの十九条のセーフガード。  ですから、こういうふうな交渉なんというのは、ややこしい話だから面倒だということで、特に繊維というのは歴史があって、日米繊維取り決めというのは、沖縄のことですよ、糸を売って縄を買ったと言われたときのころからスタートして、日米繊維取り決めが今の多国間繊維取り決めに発展した。私は、第三次の多国間繊維取り決めのときの日本政府の代表でやったわけだ、スイスで。それで、そのときには日本はまだ輸出国だった。ですから、まだそういうことで輸入国のアメリカであるとかヨーロッパだとかというのが当然のように各協定を発展途上諸国とやっていた。  なぜそうだったかというのは、発展途上諸国の工業製品で輸出が一番過剰なのは繊維ですよ。外貨獲得産業だからこれに対してはすごく厳しいが、中国もアメリカとのバイラテラル、二国間では繊維でがんがんやられたので、それよりも多国間のマルチラテラル、そういうMFAの場の方がいいというのでMFAに入ったわけだ。ガットには入っていないけれどもMFAという場の中に入った。  そういう歴史があるのだから、日本の輸入で、先ほど中野局長から話があったが、一番大きな影響を受けるのは中国なんだ。中国というのは、価格を決めればその価格になってしまうわけなんだ。要するに、市場原理が働かないローコストのところにいっている国に対してはきちんと、そこだけをねらい撃ちにする。何もとめるわけじゃないのだから。  繊維のマルチ・ファイバー・アレンジメントというのは、対前年に比べて六%の伸びを確保するように努めた形でやれということだから、去年一〇〇だったら一〇六まで認めることだ。アメリカ、ヨーロッパあたりというのは、もう一〇〇が一〇〇ぐらいにまでなってしまっている。あるいはマイナスにまでなっているぐらいの形でどんどん全部網をかけておる。そこをやらなかったから、八〇%の浸透率になったなんて偉そうなことを言っているけれども、こんなことになってしまった。だから策がないというわけだ。何をやっていたかということですよ。  ちゃんとルールが決まっているのだから。ルールが決まっていたら世界のルールなんだからきちんとルールを使えばいいものを、通産省の中というのは、貿易局だ通商政策局だなんというのがまたいて、それで旗印貿易立国、日本は自動車の方を輸出していますからどうだこうだというけれども、世界のルールというのは遠慮なくやっていいのですよ。私は国際派であるけれども、きちんとルールは守ってやっている。僕はガットの議長なんかもやっていたんだ、ちゃんと。  そういうところについて、外務省も含めて、通産省の中の通商局と原局との間できちんとしたものがないから、今や産地はもうふうふうですよ、産地の中の中小企業は。無策ですよ無策、策なし。私は、策がないなんて言われると、私もMITI出身だけれども、がっかりするんだ。我々のときにはもう少ししっかりやっていたと思う。  だから、後輩をああのこうの言うのじゃないが、外務省来ているかな、呼んでいたのだけれども。きちんとやるものはやる、そしてMFAを使ってWTOの中で堂々とできるのだから、堂々と。私は、国際繊維監視委員で世界の中の八人のうち日本代表で三年間ガットの中でそういうことをやっていて自分の経験を言うのだから。だれもいないでしょう、政治家の中で経験している人は。そうでしょう。ですから、堂々と遠慮なくルールをきちんと守ってやりなさい。そうしなければ、幾ら合理化だの設備投資しよう何しようといったってできません。大臣、これは無理です。  輸入がどんどこ入ってきまして、そして条約の中にはぴしっとこれを発動できる条件が十分、市場撹乱、マーケットディスラプションとなっているのですが、入っているのだけれども、やる気のある行政官、ぴしっとしているのはいても、今まできちんとしたのをやってこないから、通産省がやってこないから、こういうふうな今日までの状況に来ているわけであって、私はその意味において、中野局長が非常に勇断に、新聞記者に、事情があって業界から出てくればちゃんとそれなりの検討をいたしますというふうな答弁をしたのは、非常にアプリシエートします。高く評価します。  ですから、そういうふうな観点をどのように今把握されて、言うならば多国間繊維取り決め、これの四条、僕らは四条と言っていたのですが、協議をして、中国なら中国との間で話し合って、これだけ来年はしてくれ、ことし一〇〇入ったのだから一〇六で我慢してくれ、市場撹乱をなくするのに。とめるんじゃないんだ。そういう交渉をやるのが四条協定の中に厳然としてあるのだから、そういうふうなことをきちんと貿易局の広瀬局長のところも応援して、外務省もきちんと応援して、そしてやっていただきたいというのが私の見解なんです。  それについて、通産大臣には後からお伺いしますが、貿易局長それから生活産業局長、それぞれの立場があるだろうから、それぞれ遠慮することないからちゃんとそれらを答弁してください。     〔主査退席、若松主査代理着席〕
  193. 広瀬勝貞

    ○広瀬政府委員 ただいまセーフガードの考え方につきまして大変御指導をいただいておりますけれども、おっしゃるように、私ども、繊維のセーフガード措置につきましてはWTOで認められている措置と考えておりまして、既に、平成六年の五月でございますけれども、繊維産業審議会の通商問題小委員会の提言をいただきまして、繊維セーフガード措置に係る手続等を定めているところでございます。  昨年でございますけれども、生活産業局とも協力をいたしまして、綿糸四十番手、ポプリン・ブロード、両繊維製品につきましてセーフガードの調査をやり、結論を出したというようなことでございまして、ルールにのっとって厳正に対応していきたいというふうに考えているところでございます。
  194. 中野正孝

    ○中野政府委員 中国との関係につきましては、まだWTOに中国が入っていないがゆえに、私ども、毎月のように二国間で繊維の貿易安定化について話し合いをしておるのでございます。  率直な感じを申し上げますと、新協定に基づく経過的なセーフガード、これもMFAと同じように、まず輸出国側が自主規制をする権利といいますか、それを持っております。私どもも条約遵守という立場から、新協定で輸出国の自主的な措置ということが大事であるということから、二次製品、ニットにつきましても、セーターとかアウターウエアについて、政治的にも大変重要だということで、昨年から中国と話し合いをしております。  ところが、ポプリン・ブロード、綿糸四十番手のように、業界から本格的に申請が出ますと、先生がおっしゃるように、向こうはコントロールの国でございまして、輸出にかなりブレーキを踏みまして、前年同月比マイナスという事態が昨年続きました。こうなりますと、今の協定では発動できないということになりますが、実際はこれで事実上発動した効果も出てくるわけでございまして、業界の申請というのはそれなりに効果があったということでございます。  私どもも、この二次製品については業界のコンセンサスを得るのは非常に難しいという問題がございます。現地に資本進出しているものも一部ございますし、さはさりながら、構造改善を支援しているという立場もございます。したがいまして、産地を含めて二次製品輸入に伴うもろもろの影響、実態について今真摯な気持ちで調査中でございますが、中国とは引き続き毎月のように協議して、貿易の安定という見地から臨んでいきたいというふうに思っております。
  195. 佐藤剛男

    佐藤(剛)分科員 そうすると、中野局長、言うなら昔のMFAの四条協議を前提にやっているということか、一般の貿易関係の話の一環として言っておるのか、どっちなんですか。
  196. 中野正孝

    ○中野政府委員 昨年申請がございました綿糸四十番手、ポプリン・ブロード織物については、貿易局と一緒に正式な調査手続に入ったわけでございますが、それと並行して中国政府の求めもあり、我々の希望もあり、両国政府間で話し合いを深めております。  したがいまして、未加盟国でございますので、加盟国ですと御案内のとおり輸出規制をしていますと情報の開示義務がございます、ジュネーブと相手国に。中国は都合のいいことだけは主張いたしまして、開示義務は履行しません、それは入ってないと言って。しかし、大体わかるような状況になっておりますが、事実上の事前協議に近いそういう交渉を行ったというふうに私どもは理解しております。
  197. 佐藤剛男

    佐藤(剛)分科員 中国はMFAに入っていたでしょう。MFAに入ってWTOに入らないケースというのはある。これは中国とかそういうのはあるのだけれども、中国とアメリカ、中国とヨーロッパ、協定を結んでいるでしょう。やったでしょう。それと今のはどういう関係があるの。あなたの話を聞いていると、WTOの中にまだ入ってないから正式なWTOの部分はできないのですよと言いましたけれども。
  198. 中野正孝

    ○中野政府委員 新協定に基づく輸入制限措置には二つございます。先生おっしゃられたようなMFA時代、第四次まで行いましたが、これを引き継いだ協定、新協定第三条にございます。  しかし、中国に対しては、アメリカ、EC初め四カ国が取り決めで制限しておりますが、いずれもことし末の期限でございまして、これは新協定上の位置づけはございません。事実上の協定という位置づけでございまして、アメリカもそろそろ改定交渉をやらなければならぬというようなことを検討していると承っております。
  199. 佐藤剛男

    佐藤(剛)分科員 ガットからWTOにいったわけだから、そういうトランジショナルというかな、暫定的、経過措置的な場合によく使うドゥファクトという事実上の形で処理するというやり方はあるのですが、私は、堂々と国の立場で、一般論じゃなくて、WTOに中国が入ることを前提にして、仮定の事実として、そして日本は四条の協議を申し入れる、そしてきちんとやって、それで秩序のある形にしておかないと、繊維の八割も、私は今の数字を聞いて驚きましたけれども、繊維の輸入というのは大変なものですよ。しかも、広瀬局長、対前年で比べたら二倍になったような輸入をしたんだよ、ずっと過去の間。  その間、手を打たないからここに来ているわけで、僕は非常に情けない話なんだと思っているのですよ。思っているのですが、いろいろな事情は事情としてあるにしても、こういう機会ですから、特に中国については、ルールというのを向こうも守る国だから、ルールは国際的ルールなのだから。アメリカとの間でも、バイラテラルが嫌でマルチラテラルにいきますよと言っていたわけだから。  韓国にやれと言っているのじゃないですよ、私は。インドでやれなんて言っていないですよ。パキスタンと四条協定やれなんて言っていない。中国をねらい撃ちしなさいと。これは市場原理が働かない国だから、やってしかるべきなんだ。堂々とやりなさい。それをきちんとやらないと、日本の繊維産業は立てようがない、幾ら財政資金を入れようと、幾ら頑張れと言ったって。  そういうことを言っているわけですから、この問題は真剣に考えてもらわないと困るよ、貿易局長。あなたのところの方のつかさだよ。それから外務省、外務省がちょっかいを出すと本件はすっ飛んじゃうんだから、邪魔されると。いいですか。そこのところをきちんと言って、広瀬局長、ちょっとさっき歯切れが悪かったけれども、本件が出てきたら、これに一体どういう形で向かうのか。これは実情をよく調べて、あなた、局長の方で繊維の関係というのを調べてやってみてください。  産地がみんなつぶれちゃう。つぶれちゃうんだ、本当に。これは日本の繊維関係の中小企業の、中小企業庁長官も来ておられるが、本当にそういう面では大変な一つの時期に来ておると私は思っております。  通産大臣、私は今かような認識を繊維関係については持っております。そして、これは決して輸入制限ではない。輸入制限だという誤解を与えちゃいかぬし、きちんとルールに従って、協定に基づいて発動をするものなんだというふうなことでやりますれば、何も貿易立国だからどうだ、経常黒字がどうだとかという話にはならないですから、勇断を持ってやっていただきたい。塚原大臣、私はかように思うのでございます。よろしくお願い申し上げます。
  200. 塚原俊平

    ○塚原国務大臣 繊維につきましては、就任いたしましてから、中野局長から極めて重要だというような御説明の後、業界とも懇談会を行いました。ただいま先生が御指摘いたしましたような問題も含めて、数多くの大変厳しい現状を私自身認識をすることができまして、現在の生活産業局長の認識と一にいたしました。  ともかく、私ども日本の国にとりまして大変重要な産業でございますし、どうか先生のその御経験の中から、後輩に対しましても適切な御指導をいただきまして、何とかその御指導によりまして、日本の国の繊維業界がさらに世界のために大きく貢献できるような形をとれますようによろしくお願いを申し上げる次第でございます。
  201. 佐藤剛男

    佐藤(剛)分科員 ありがとうございました。  さすが敬愛いたしております塚原大臣の力強いお言葉で、繊維産業の方々の実感としても喜ばれると思います。そういうものを行政官としてやっていただくのが局長二人、それから中小企業庁長官も中小企業行政のあれがあるのですから、一回やっていただきたい。  そして、私が提案したいのは、これは中野局長の配慮で、通産局あるいは生活産業局の職員が行って、現地等の実情を聞いて、何が今必要なんだと。これは結局、在庫資金の金融ですよ、金融。  なぜなのかというと、外国から入ってきた在庫というのは、去年は随分入っているのですよ。ことしは少ないといったって入っている。入っているときに、これは在庫圧力があって、つくったはいいけれども売れないときは在庫を転がさなきゃいかぬわけです。  繊維というのは、資金が相当大変なんですよ。そういうふうな資金について、日本の金融というのはとかく、ちょっと不況で苦境になってくるよというと、金融機関がかえって出さなくなってしまう。中小公庫も国民金融公庫も商工中金もそうなんです。中小企業庁長官もおるからよく聞いてもらいたいが、何かレッテルを打たれると、景気がよくないよというと、各支店はびくっちゃって出さなくなってしまう。逆にそういうふうなことが困るということです。  今、橋本総理大臣は「元気を出せ日本」とやっているのです。「元気を出せ産業政策」ということで塚原大臣が任命されて、通産大臣でいらっしゃってばりばりやっていただいているのだから、その通産省の各部署においては、それぞれきちんと元気が出るような形をしないと、このままだったらじり貧でいってしまう。通産省は何もやってくれないのかと。  かっては織機の買い上げなどということをやったんですよ。四十八年、日米繊維取り決めが始まって、織機の買い上げがあった。あれは僕の頭から出したアイデアなんだから。中小企業の高度化資金で設備共同廃棄事業というのをやったんだ。設備買い上げに補助金を出すとなると大変だから、無利子の資金を十六年間、八割出しているわけです。十億の機械を廃棄するときには二十億貸して、十億を商工中金債券を買わせて、商工中金債券を六分か七分で転がしたら、十年たてば倍になってただでできた。それで数千億のものが動いた。日米繊維はそれでしのいだのだ。そうでしょう。  ところが、今回のやつは、輸入はふえるわ、何はしてくるわ、それに対しては何もしないような形で、幾らファッション化がどうだの、何とか審議会にかけて何やろうなんというようなことをやっていたってだめ。行政がきちんとめり張りをつけてやらなければ、おくれおくれいっているから、何ですか、八割も入っちゃった。みっともない話だ。  僕は、あのころの第三次のMFAの交渉のときには、ミスター佐藤、どうするとアメリカだのECの代表が言うから、日本は輸入がふえたら発動するよ、それはそうだろうなと、みんなそう言っていたわけだ。ところが、その後発動してないわけだけれども、日本が八七年に輸入がふえながら放置して、今や日本の国内消費の八割入っちゃった。これは幾らやったってだめです。対策本部をつくるなり、最後は救ってやるような方向を考えないと。  私は、MITIを背負っている人たちに、優秀なる後輩にあえて大臣の前で申し上げているのは、あなた方は優秀なんだから、しっかりとしたことをやらなければだめだし、それから省内もそうだし、外務省が貿易立国のどうのこうのとかいって変な邪魔をされては、またその問題を私は取り上げざるを得なくなる。  そういうことをこの機会に申し上げまして、時間でございますので、私の質問を終わらせていただきます。大臣、役所に立派な、張り切っているのがいますから、ひとつよろしく御教導を賜りたいと思います。
  202. 若松謙維

    若松主査代理 これにて佐藤剛男君の質疑は終了いたしました。  次に、笹木竜三君。
  203. 笹木竜三

    笹木分科員 新進党の笹木竜三です。質問をさせていただきます。  きょうは、新産業育成ということについて主に質問をしたいと思っております。  最初に、去年ですけれども、科学技術基本法、この法律ができまして、今科学技術庁を事務局にして、通産も農水も厚生も各省庁も力を合わせて、科学技術基本計画の策定作業を進めていると聞いております。  まずお伺いしたいのは、こういった背景の中で、科学技術と産業振興、そのために通産省としては、どのような基本姿勢、どういった重要課題があると考えているのか、その基本認識をお伺いをしたいと思います。
  204. 平石次郎

    ○平石政府委員 工業技術院の平石でございます。  研究開発は、新しい産業の創出や、より豊かな国民生活の実現などの基盤を提供するものと考えておりまして、我が国が経済構造改革を進める上で非常に重要なものと認識しているところでございます。  当省といたしましても、科学技術基本法の精神に基づきまして、政府研究開発投資の早期倍増を目指すとともに、柔軟かつ競争的な研究環境の実現のための制度改革を積極的に進めまして、科学技術創造立国の実現を目指していきたいと考えているところでございます。
  205. 笹木竜三

    笹木分科員 予算が大幅にふえていくということも知っていますし、倍増していく、それも結構だと思うわけですけれども、せっかくふえた予算、倍増した予算が細切れに使われたのでは困ってしまうと思います。重点的に、今言った新産業の振興、そういった視点で何が課題と思っておられるのか、さらにお聞きしたいと思います。
  206. 平石次郎

    ○平石政府委員 研究開発につきましてはさまざまな課題があるかと考えておりますが、先ほども申しましたように、柔軟かつ競争的な環境をつくるということが重要な観点と考えまして、研究費の中の競争的な資金の拡充が大切ではないかと考えているところでございます。  また、研究者の交流、これも非常に大切なところで、それによって産官学の連携を深めることができますので、それに関しますところについても重点的な配分ができますことを期待しているところでございます。
  207. 笹木竜三

    笹木分科員 研究者同士の交流ということで、特に、国立の研究所ですとか大学、それと民間の連携、研究成果のアウトプットをつくっていく、そういった連携について、現状はどういう問題があるのか、それをお聞きしたいと思います。
  208. 横川浩

    ○横川政府委員 研究開発を進めていく意味合いにおきまして、産と学の連携を強化していくということが大変重要であろうと思っているわけでございます。すなわち、大学の頭脳と民間の活力とが結びついて新たな産業を生み出すといったような、我が国経済活力の源泉の一つになっていく、こういったように認識をいたしておるわけでございます。  昨年制定をされました事業革新法におきましても、企業の新たな事業展開に関しまして、研究、教育両面での産学連携の必要性がうたわれておるところでございます。  具体的には、通産省といたしましては、関係省庁とも協力をいたしまして、産学共同の研究開発推進でございますとか、また産学連携に必要な研究施設整備促進でございますとか、さらには、産業界のニーズや大学の研究シーズなどが情報交流できる産学問の情報交流機会の提供等を実施いたしているところでございます。  今後、文部省等とも連携をさらに図りながら、民間企業と大学の研究者の交流をより一層促すことによりまして、新産業の創造を促進するための制度、仕組みの整備を図っていきたい、このようなことでやっておるところでございます。
  209. 笹木竜三

    笹木分科員 ぜひそれをお願いしたいのですけれども、一つは、国立の研究所とか、そういった研究者にいろいろな制限があってなかなか共同研究ができにくいという問題、これは、当然通産だけじゃなくて他の省庁と連携をして、ぜひそういった規制を取り外していってほしい、そう思います。  それと、研究施設研究環境のひどさというのは、私も、自分の同期で大学に残っている者、そういった者からよく聞きます用意欲的な研究をしたいと思う者はまず民間に行ってしまうという現状、こういった点も改めていくべきだろうと思います。  さらに、これは国立研究所でもそうであるわけですけれども、通産の担当の研究所であろうと科技庁管轄の研究所であろうと、よく見て思うのは、実際の研究以外のことに時間を奪われ過ぎている。トップレベルのいろいろな賞をとっている、そういった研究者までが、これはどう見ても秘書がやるような仕事だなと思うような事務的な仕事に、私の知り合いですと一日のうちの半分ぐらいの時間を使っているというふうに聞きます。こういった現状を早く改めてほしい、研究補助者ですとかそういったスタッフの充実、こういった点もぜひ図っていただきたい、そう思います。  次に、今、現状として日本の場合には、もう長く言われていますけれども、最近は新規の企業の開業率、これが非常にエネルギーがなくなっている、減ってきているということが言われます。特に、アメリカと比べた場合には八〇年代の半ばごろからその差がどんどん広がっている、そういうふうにもよく言われます。  いろいろな統計がありますけれども、年開業数が、日本で四万社、アメリカでは七十万社とか、あるいは、総務庁の事業所統計調査とか国民金融公庫の総合研究所の新規開業白書、こういったもので見ますと、事業所の純増数、七〇年代半ばには一年当たり十五万件、これが八六年から九一年にかけては年当たり一万件弱、十五分の一に減ってきている。開設数ももちろん、六〇年代から八〇年代前半までに比べて、八六年以降非常に減ってきている、そういったこともよく言われます。  これは、そういった開業する意欲がなくなっているのか、経済の成熟化の中でそういった新規で企業を起こしていく意欲がなくなっているのかといえば、そうでもなくて、転職希望者のうちで新規開業を希望している者、これは七〇年代の中ごろから一貫して百万人前後、数はそんなに変化がない。一体何が原因なんだ。この新規の開業、新しく産業を興していくというそのエネルギーが衰退している原因について、何が原因か、ぜひ大臣に御認識をお伺いしたいと思います。     〔若松主査代理退席、主査着席〕
  210. 塚原俊平

    ○塚原国務大臣 国内だけの原因で探るのはなかなか難しいかもしれません。たまたま先生からの御質問で、日米の比較をしてみたらどうだというような御示唆もございました。やはり、アメリカといろいろと比較をしてみますと、例えば資金の調達面の問題でありますとか人材の確保の面でありますとか、さまざまな面でまだいろいろと改めなければいけない問題があるというような認識をいたしております。  また、細かなことにつきましては政府委員の方からお答えさせていただきます。
  211. 横川浩

    ○横川政府委員 ただいま大臣から答弁がございましたように、若干具体的に補足をさせていただきますが、アメリカは、ベンチャー企業が成長している、非常に企業の新陳代謝が活発な経済社会になっておるわけでございますけれども、ここと比べた場合に、まず資金調達面におきましては、創業期でのエンゼルと呼ばれる個人投資家の存在でございますとか、またベンチャーキャピタル、さらには、成長期における資金調達にとって大変重要な役割を果たしております公開店頭市場でございますNASDAQの存在等、ベンチャー企業に対しまして創業期からの円滑な資金供給が行われるような仕組みができておるわけでございます。  それから、人材確保の面におきましても、ストックオプション制度でございますとか、また、そもそも流動性の大変高い労働市場というものの存在などによりまして、ベンチャー企業に対して円滑な人材供給ができるような社会、仕組みになっておる。  こういった点におきまして、日米の間の違いというものを私どもも認識をいたしておるわけでございます。そういった認識に基づきまして、我々、最近いろいろな制度改革に手をつけておりまして、昨年は店頭の特則市場を開設いたしましたり、またストックオプション制度の導入を図るというようなことを着実に打ってきておるところではございます。
  212. 笹木竜三

    笹木分科員 資金が集まりにくいといった問題、人材の問題もお話がありました。そのとおりだと思います。  先ほどからお話ししている、七〇年代とか六〇年代の終わりとか、それと八〇年代後半とを比べて、統計なんかを見てみますと、やはり開業の所要資金が非常に膨れ上がっている。結果的には、自己資金の比率が非常に下がっている。これは八〇年代前半と比較しても、自己資金比率が八二年の調査で四六%、九三年では二五%以下になっている。不動産の問題とか設備、こういったことが一番大きい要因になっているのかなとは思いますけれども、この資金が膨張している、自己資金の比率も減ってきている、その現状に対して、なかなかお金が集まらないという問題だと思います。  その結果、非常に深刻だと思うのは、最近の傾向では、二十歳代、三十歳代の開業率はどんどん低くなっている。一方で、五十歳以上の開業が増加している。大学とか大学院卒業者の比重、開業者の中でのこういったシェアも低下している。アメリカなんかと比べますと、学生から直接開業に至る場合なんというのはもうほとんどない。〇・二%。  もっとびっくりするのは、これは全世代でもそうですけれども、では特に二十歳代のそういった新規に開業した方がどういう開業の内容なのか。これはベンチャー的な新しい産業興しというよりも、個人向けのサービス業、理容、美容、マッサージ、あるいは小売業、飲食店業、こういうのがほとんどだ。結論的に言えば、高齢者の脱サラ主体のサービス産業に偏った新規の開業。これはアメリカの報道なんかでよく読むような、スタンフォード出の若い者がどんどんベンチャーをつくっていく、新産業を興していく、それとはもう全く対極にあるような現状だと思います。非常に危機的というか、悲惨な現状だと思っています。  これをどう変えるかということで通産省もいろいろ頑張っておられるとは思うわけです。先ほどからお話があるように、こういう新しい企業をどんどん起こしていこう、そこにお金が集まりやすい制度に変えていこう、しかも、企業を立ち上げた後、比較的早い時期にお金が集まりやすい環境をつくっていこうということで、いろいろされていると思います。  今お話がありましたけれども、例えば第二の店頭市場、まだ一社も公開はされていないわけですが、その現状について、例えば通産省で新規事業法の認定をしているような企業、二、三十社あるのですか、そういった企業とはいろいろなコミュニケーション、接触が役所としてあると思います。そういった企業は、こういった第二店頭市場に対して入っていく、公開していくような感触を得ているのかどうか。現状としては、そういった今後の見通しをどういうふうに考えているか、まずお答えいただきたいと思います。
  213. 横川浩

    ○横川政府委員 ただいま先生から御指摘がございました第二店頭市場、店頭特則市場の現状でございますけれども、昨年七月に市場ができたわけでございます。しかしながら、ここに今公開をしていこうということになりますと、例えば監査証明といったものを具備する必要があるわけでございまして、こういった登録の準備のために一定の期間が要るというようなことで、今のところ、まだ特則市場での公開の実績が出てきておらないわけではございます。多くの企業が三月期の決算を終えたわけでございまして、申し上げたような、これに基づきます準備が整いますと、この夏ぐらいから具体的な案件がいよいよ出てくるのではないかというように見ておるわけでございます。  私どもが直接関与いたしました新規事業法の認定企業を含めまして、企業サイドの意欲というのは大変高いものがございますので、この特則市場の利用も今後どんどんふえていってくれるのではないかなと期待いたしております。
  214. 笹木竜三

    笹木分科員 見通しは明るいのだという話がありましたけれども、逆に、そういった接触を持っておられる企業から、要望というか、こういう点を何とか改善してくれないかとか、そういった声というのはお聞きにならないのでしょうか。
  215. 横川浩

    ○横川政府委員 実は、店頭特則市場の問題というよりも、そのもとにあります現在の店頭公開の本則市場と申しましょうか、今議論がございましたような新しい産業、ベンチャー的な企業にとってそちらの方をもっとより利用しやすいものにしていくのにはどうしたらいいだろうかという大変大きな問題があるわけでございます。この点につきましては、具体的な要望というものもあるわけではございます。  例えば、日本の場合には、店頭市場での公開までの時間がアメリカなどに比べて非常に長くかかってしまうというようなことから、資金の調達への影響も含めまして、こういう企業の公開の意欲をそいだりするという事態があるかと思うのでありますけれども、そういったものの制度的な原因を探りながら市場のルールの見直しを図っていくというようなことで、私どもの方でも、研究会などで専門家の御意見なども聞きながらいろいろ研究をいたしておるところでございます。
  216. 笹木竜三

    笹木分科員 それと、例えば改善されても、公認会計士の監査証明に一千万円かかるとか、こういった現状もあります。ここら辺の負担がどうなのか。先ほどお話にありましたNASDAQ、赤字でも公開できる。まだ製品を一つも市場に出していない、売り上げも全くないような企業でもそこに公開をしている。しかも、このNASDAQが、ニューヨークの証券取引所よりも、今アメリカで大変重要な役割を果たしている。こういったことと比較すると、まだまだ改善の課題は多いという気がします。ぜひそういったことに取り組んでいただきたいと思います。  それと、日本では、ベンチャーに対する経営面の指導とか支援、アドバイスがなかなか得られないという意見も聞きますけれども、これについて、ベンチャープラザ構想、現状ではどういったことに取り組んでおられるのか、御説明をいただきたいと思います。
  217. 新欣樹

    ○新政府委員 ベンチャー企業の支援におきましては、技術面、資金面の支援と並んで、ただいま御指摘の経営面の支援あるいは指導といったものが非常に重要であるという認識に立ちまして、私どもは、まずことしの三月に、試行的でございますがベンチャープラザ事業というものを開かせていただきました。  ねらいといたしましては、投資家とベンチャー企業とのマッチング、これが一つ。それと同時に、専門家によるコンサルティングなどを行う場をつくろう、いわばアドバイスコーナーというものをつくりまして、ベンチャー企業が抱えます法律、税務、経営、マーケティング、そういった問題について、各種エキスパート、例えば弁護士でありますとか公認会計士でありますとかコンサルタント、あるいは実際の企業経営者、こういう方がアドバイスを行うということを行ったわけでございます。参加者は、八百人ぐらいかなと思っておったのですが、予想を大幅に上回りまして、千四百人を超える参加者が集まったわけで、そういう意味では、こういった企画というものが非常に時宜を得たものだという確信を私ども深くした次第でございます。  今後でございますが、これをさらに平成年度はきめ細かくいたしたいと思っておりまして、各通産局のブロックごとに実施をしたい。最初の試行的なところが、どちらかというと投資家とのマッチングという方に重きが置かれた嫌いがありますので、先生御指摘の、むしろ経営相談とかこういった指導という面により重点を置いた形で実施をしてまいりたい、このように考えておるところでございます。
  218. 笹木竜三

    笹木分科員 わかりました。  それで、通産省もいろいろやっておられる。各省庁も、ベンチャーについてはその育成策としていろいろなことをやっている。国土庁もやっている、労働省もやっている、郵政省もやっている、たくさんやっています。  ただ、こういうことは、非常にいろいろな施策が必要だとは思いますけれども、余りにも細切れという感じがします。先ほどからお話がありますアドバイス機能とか指導も非常に大事ですけれども、ベンチャーに対して投資をする者がどんどんしたくなる環境をつくること、やはりこれが一番大事なんだろうと思います。  それで考えますと、税の控除といいますか、税の優遇、やはりこれが決定的に大きい問題じゃないかという気がします。アメリカの場合には、ベンチャーへの投資に対して、キャピタルゲインの五〇%を課税所得から控除できる、あるいは損失についても夫婦合算で十万ドルまで他の所得と相殺できる。これ以外でもいろいろなものが税の優遇としてあります。いろいろな施策をやるのも大事なんですけれども、やはり金が集まりやすい、金を投資しやすい環境をつくる。  さっきお話がありましたエンゼルということを今後考える場合でも、それが決定的にやはり大きいだろうと思うわけですけれども、このことについての必要性の検討はされているのかどうか、お答えいただきたいと思います。
  219. 横川浩

    ○横川政府委員 御指摘のとおり、米国の場合には、個人投資家がベンチャーに対しまして投資をいたす場合に、税制上の幾つかの特典があるわけでございます。キャピタルロスの損益通算及び繰り越しの制度でございますとか、またキャピタルゲインについての課税所得からの控除の制度等、税制での優遇措置がございます。私ども、当然そういった制度に関心を持ちまして調べておるわけでございます。  アメリカにおきましては、まさにこういった税制上の措置でございますとか投資家とベンチャー企業の出会いの場の存在などを背景にいたしまして、エンゼルと言われるような個人投資家からのベンチャーへの投資が大変促進をされておりまして、それがアメリカのベンチャーを支えておる、こういうふうに言っても過言ではないわけでございます。  我が国の場合でも、まさに創業期のベンチャー企業への資金供給を円滑にしていくというのは大変大事でございます。そのために、アメリカの制度なども参考にしながら、エンゼルと言われる個人投資家からベンチャー企業に対する投資が促進されるような方策を含めまして、ベンチャー企業への資金供給の円滑化について検討を行っておりますし、引き続き検討を進めていきたいと思っております。
  220. 笹木竜三

    笹木分科員 今お話がありましたアメリカでのエンゼルみたいなもの、それを日本でもどうやってつくるかということで研究会も持たれている。ベンチャー資金調達環境整備研究会、何か近いうちにとりあえず報告書をまとめられると聞いております。  これは、大臣にもぜひお答えをいただきたいわけです。ここで当然、エンゼル的なものを日本でも何とかつくっていこう、あともう一つは、アメリカではベンチャーキャピタルの出資金の六割を年金基金が提供している。こういったことに対して、今のエンゼルの問題と年金基金の問題に対して検討もされているのかと思いますけれども、税制の面ですとか、もちろん税制になれば他の省庁も関係してくるわけですけれども、今言った税の控除、税の優遇、税制の面ですとか、あるいは現にあるいろいろな規制、例えば年金基金の運用についての規制、そういったものを含めて変えていかざるを得ないと思います。  そのことについて、今そういったことをしっかり検討しているのかどうか、これから検討していくんだという、そういうお答えをぜひいただきたいわけですけれども、大臣に所見をいただきたいと思います。
  221. 塚原俊平

    ○塚原国務大臣 先ほどもお答えいたしましたが、資金調達、人材確保ということが極めて重要なポイントでございます。  通産におきましては総合的な施策を今講じております。特に今先生から資金調達面に対しましての御指摘がございましたので、政府委員の方から細かなものにつきましてはお答えをさせていただきたいと思います。
  222. 横川浩

    ○横川政府委員 先生に触れていただきましたのですが、ベンチャー資金調達環境整備研究会という名前の研究会をことしの初め、一月から動かしておりまして、一応、今の予定では六月末を目途に報告書を取りまとめたいというように考えておるわけでございます。  内容的には、まさにエンゼル、日本版エンゼルを創出するためにどうしたことをやったらいいか、それから、年金基金、大変大きな額の資金があるわけでございますが、この年金の基金をもっとこういうベンチャー育成に活用できないかといったようなことを中心に現在検討をいたしておるわけでございます。
  223. 笹木竜三

    笹木分科員 税の優遇ということ、それと年金基金に対する規制の緩和ということをぜひその中で提案をしていただきたい、そういった検討をお願いしたいと思っています。  それと、最後にお伺いしたいのは、今の質問ともかかわりがあるわけですけれども、先ほども言ったように、ベンチャーの育成策については、通産、郵政、労働、国土、大蔵、文部、さらにいろんな省庁がそれぞれ施策を講じているわけです。先ほどお話ししたように、どんどん新規の開業率が落ちている、新規の開業に当たっての資金が膨大になっている、自己資金の比率が減っている。だから、そこに金をどうやって集めていくのかということが非常に課題だというお話をしたわけですけれども、今後、ここら辺よっぽど抜本的にやっていかないと、新産業興しというのも日本ではこれから非常に悲惨な状態になる可能性が強い。  そんな中で、この新産業興し、ベンチャー興し、これについては国の経済の死活にかかわる問題だと思います。アメリカは比較的今うまくやっている。東アジアの方でも、先般も香港から中国に対する投資をしている者にいろいろ話を聞きましたけれども、決して国民全員とは言いませんけれども、投資の意欲とかビジネスマインドというのは非常に強いものがある。東アジアとアメリカに挟まれて日本はどうなるのか、これはもう死活問題にかかわる新産業興しの課題だと思っています。  ぜひこれを、各省庁細切れじゃなくて、こういった国の産業の死活にかかわる問題については、いま一方では、公務員の一括採用とか、縦割り行政をどうやって変えるんだ、非常に議論がされているわけですけれども、そういった議論をまつまでもなく、ぜひ通産大臣からいろいろ提案をして、まずは今までの施策の評価だけでも共同でやっていくとか、そういったことをぜひやるべきだと思っています。そのことについて意見をお聞かせ願いたいと思います。
  224. 塚原俊平

    ○塚原国務大臣 まさに仰せのとおりだと思います。各省庁が協力して、政府全体としてベンチャー育成に取り組んでいくことが重要でありまして、各省の連携にこれまでも努めてまいりましたけれども、今後とも政府全体として取り組んでいきたいというふうに思います。  特に、縦割り行政につきましては、この内閣ができますときに、橋本総理から、縦割りの行政は決していかぬ、厳に慎むように、ともかく横の連絡をしっかりとり合って、省庁間のそれぞれの権益にとらわれることはまかりならぬというふうな御指摘を私どもされております。  また加えて、これはやはり、今は新進党さんとこれから対決をしていくわけですけれども、そういった状況の中で、やはりこの部分が私どもどこまでやり切れるかというのが、逆に私どもの評価が上がってくるということにもつながる極めて重要なポイントだと思いますし、また逆に、当然新進党さんからもそれ以上のいろいろな御指摘、御提案、これは出てくるのだと思います。十分にそれらを、私どもどんどん取り入れられるところは取り入れて、縦割り行政じゃなくしっかりとした、連絡のとれた行政というものを行っていきたいというふうに考えております。
  225. 笹木竜三

    笹木分科員 質問を終わります。
  226. 佐藤静雄

    佐藤主査 これにて笹木竜三君の質疑は終了いたしました。  次に、山本公一君。
  227. 山本公一

    山本(公)分科員 自由民主党の山本でございます。  きょうは、塚原大臣が御出席とは思わなかったもので、入りましていささか戸惑っておる次第でございますが、よろしくお願いを申し上げたいと存じます。  きょう私は、通産省の、特に原子力行政について御質問をさせていただきたいと存じます。そのうち、特に地域振興ということに最終的に的を絞りまして質問をさせていただきたいと存じます。  原子力利用、特に我が国におきましては、持たざる国の悩みであるエネルギー行政、それに原子力が果たす役割は、言うまでもない多大なものがあるわけでございます。しかしながら、昨今、チェルノブイリの事故に象徴されるように、その被害が広範囲に及び、かつまた人的な被害にも及ぶというようなことが続きました。そしてまた我が国におきましても、各地の原子力発電所におきましてさまざまな要因から事故が報告をされております。  特に我が国は、その経験上、国民が原子力に対しまして、他の国以上のアレルギーが存在をしているというふうに私は認識をいたしております。原発行政において必要なこと、特に大事なことは、その必要性を国民に訴えるとともに安全性への信頼を強調していく、それが大変重要なことだというふうに認識をしておるわけでございますが、昨今の申し上げましたような数々の事故は、国民の原子力行政に対する、また原子力産業に対する不安を惹起しておるように思うわけで、非常に残念に考えております。  そこへもってきて最近では、巻町のいろいろな行政上の出来事が報道されるに及んで、既に原子力を立地しているような地域におきましてもさまざまな議論が出てきておるように感じておる次第でございます。これからの我が国におきまして、原子力発電所の新規の立地は非常に困難なことに相なっていくように思っておるわけでございます。  そこで、まず最初に、現下の原発行政、特に新規の立地を中心とした現下の情勢につきまして、通産省の御認識をお伺いいたしたいと思います。
  228. 江崎格

    ○江崎政府委員 私どもエネルギー行政に携わる者にとりまして、エネルギーの安定供給の問題、それから地球環境問題への対応の問題、これがまず非常に重要な課題だというふうに思っておりまして、私どもとしましては、省エネルギーそれから新エネルギー対策の導入、こういったことに最大限の努力をまず注ぐということは当然だと思っておりますけれども、それとともに、安全の確保と平和利用の堅持を大前提にしまして原子力発電所を推進する必要がある、このように考えております。  こうした原子力発電の推進に当たりまして、国民の理解と協力というものが大前提だというふうに認識をしております。特に、今先生御指摘のように、「もんじゅ」の事故以来、原子力政策に関しまして国民の信頼が揺らいでおるということはまことに遺憾だと思っておりまして、私どもとしては、国民の理解を得るための努力をさらに強化する必要があるというふうに考えております。  具体的には、既に原子力委員会において原子力政策円卓会議というのが始められておりまして、国民各層の御意見を伺うという仕組みが動き出しておりますけれども、私ども通産省におきましても、各地におきましてシンポジウムを開きたいと思っておりますし、また、六月十一日には新潟県におきまして一日資源エネルギー庁というものを開催いたしまして、国の政策を説明し、また地元の方々から御意見を伺いたい、このように考えております。
  229. 山本公一

    山本(公)分科員 ただいまの御答弁はエネルギー庁ならばこその御答弁でございまして、安全性への信頼確保という面からいいますと、科学技術庁という省庁があるわけでございますので、そこらとうまく横の連絡をおとり願いまして、安全性信頼回復のために今言われたようなさまざまな行政的な催しをしていただきたいなというふうに私は考えます。  というのは、私どもの地元に伊方原発というのがございます。ここでも残念ながら事故が大々的に報道をされまして、その後の業者側の対応が非常に悪かったがゆえに、より不安が住民の間に持たれるような結果に相なりました。それは確かに業者の方も、こういう事故があればこういう体制でどなたに早急に連絡をいたしますよというようなマニュアルをおつくりになっておられたわけでございますが、いざ事故が起きてみるとマニュアルどおりにそれが行動されなかった、非常に報告がおくれてしまったというようなことがございました。  私が現地の関係者に伺いますと、まず住民の方がその音のすごさにびっくりして、あくまでも素人でございますから、原発が爆発するという表現で町長に報告をされました。町長はそれを聞いてびっくりして原発に走っていった。それまで町長に何ら業者側からは連絡もなかった。幸いにして爆発をするような事態ではなかったわけですけれども、音が非常に大きいし白煙を出すということで、それを見ていた付近の方は、もうまさに爆発をするというような感覚を持たれたようでございます。  私が申し上げたいことは、幾ら防災体制のマニュアルをおつくりになっても、現場におられる方々がマニュアルどおりにいざとなればなかなか行動しにくいものだ。それを私は行政のお立場で業者に厳しく徹底をしてもらいたい。そしてマニュアルがあるならば、マニュアルのとおりに行動できるような常日ごろの訓練を厳しく御指導をしていただきたい、かようにお願いをいたすわけでございますが、国としてのそういった防災体制に対する抜本的な対策を講じられるようなお考えはおありなのでしょうか。その点についてお伺いをいたしたいと思います。
  230. 江崎格

    ○江崎政府委員 御指摘の四国電力の伊方原子力発電所のトラブルでございますけれども、ことしの一月十四日に三号機におきましてトラブルが発生したわけでございまして、その際、今先生御指摘のように、電気事業者から関係機関への通報連絡に不適切な点があったというのは、まことに御指摘のとおりでございます。  この不適切な通報連絡の原因でございますけれども、トラブルの発生した後に、通報連絡の必要性、つまり通報すべきかどうかということについて判断するのに非常に時間がかかってしまったことが第一に挙げられますし、第二に、通報連絡の体制が万全でなかった。体制と申しますのは、例えばどういうルートで連絡するかとか、どういう手段で連絡するかとか、責任者はだれなのかというあたりがはっきりしていなかった点に問題があったということで、今回のように非常に連絡がおくれたというふうに私どもは理解しております。  こういう点につきまして、一月十六日、トラブルが起こってから二日目でございますが、四国電力を呼びまして、改善策について検討するようにということを直ちに指示いたしました。四国電力から、今回のトラブルの教訓を踏まえまして、通報連絡の判断が迅速にできるような体制の整備とか通報の経路を短縮する問題あるいは教育の再徹底、こういったようなことにつきまして改善策が一月三十一日に出てまいりました。  私どもとしては、これらを十分検討いたしまして、それらを着実に実行するようにという指導をいたしております。その後も引き続き、電気事業者に対しましてこうした指導を続けているところでございます。
  231. 山本公一

    山本(公)分科員 そこで、そういった指導はしていただいておるわけでございますが、国側として、伊方原発に限らず、原発そのものに対する抜本的な防災マニュアルというものをおつくりになって指導されるようなお考えはないわけですか。
  232. 江崎格

    ○江崎政府委員 国の安全運転の観点からの規制は、発電所の運転に当たりましては保安規定というのを決めております。これは、原子炉等規制法という法律がございまして、それに基づきまして、その規定を国が認可するという格好で行っております。この規定に基づきまして、例えばいろいろな計器の制限値はどこまでにしろとか、ある計器のメーターの設定位置はどういうふうにしなさいということをかなり細かく決めておりまして、この規制を守るようにという格好で、私どもとしては安全運転を確保しているということでございます。  マニュアルの問題でございますが、これは、原子力発電所のさまざまな状態における具体的な運転操作を決めているわけでございます。さらに、トラブルが発生したときにどのように通報するかというようなことにつきまして、これは電気事業者が自主的に定めております一種の社内の内規のようなものでございますので、これらについて個々に私どもが全部取り寄せてチェックするということは現在いたしておりませんで、それについては、先ほど申し上げました保安規定の認可という格好で実施をしているということでございます。  それともう一つ、今回のトラブルを契機にいたしまして、私ども、各電力会社すべてに対しまして、連絡体制がきちっと動くような格好になっておるかどうかというようなことにつきまして再度チェックするように指示をいたしまして、その結果報告なども受けておりまして、こうした面から指導をしております。
  233. 山本公一

    山本(公)分科員 一四国の事故が日本全体の原発行政に対する不信感につながることもありますので、その辺につきましては、今後厳しく業界を指導していただくことをお願い申し上げておきたいと思います。  次に、原発立地地点及び周辺の自治体の地域振興についてお伺いをいたしたいと思います。  冒頭申し上げましたように、さまざまな状態から、新規立地が非常に困難になってきております。その新規立地が困難ないろいろな原因があろうかと思うのですけれども、また、そういった困難な中からでも新たな立地地点を見出していかなければいけない必要性があろうかと思います。  そうした中で、今現在立地している原発の地域が、原発が立地しているそのおかげでこれだけ地域が発展しているのだ、原発が立地しているがゆえの効果がこれだけあるのだということを、新規に立地をお考えの自治体の方々に知らしめるというか、見てもらうということは、ある意味からいったら、新規立地を今後困難な中からでも進めていくために極めて効果的なことだと思うわけでございます。  ところが、現時点においては、私どものところにも参りますし、いろいろな先生方のところにも多分行っておると思うのですけれども、既に立地をしている自治体からはさまざまな要求が出てまいります。いろいろと見ますと、確かに、こう言っては大変失礼な言い方ですが、虫がいいかなと思うこともあるのですけれども、ただ、原発を今時点において立地をしておられる町村なればこその要求も、またその中にはあるような気がいたしております。  その中で、私一つ気になっておりますのが、原発の税制上の耐用年数というのが、これは固定資産にかかわってくるわけなのですけれども、非常に要求が強うございます。というよりも、私自身が素人ですのでよくわかりませんけれども、日本においては、原発の税制上の耐用年数は十五年ということに相なっているそうでございます。ところが、アメリカあたりではそれは四十年だというようなことでございます。  私の地元の町長さんは、十五年で固定資産がとまってしまう状況を非常に懸念をされていらっしゃいます。十五年間は非常にいい目をさせてもらうけれども、言ってみれば、私の町はずっと上を見てきたけれども、十五年たったらずどんと落ちてしまいます、一体私の町はどうなるのでしょうというようなお気持ちがございます。十五年という時間が長いか短いかわかりませんけれども、ならば、アメリカのように四十年ぐらいならば一つの世代が活躍していくには十分な時間だ、四十年ぐらいはせめて固定資産が入り続けてもらいたいなというような御希望をお持ちなのですけれども、なぜ原発の税制上の耐用年数がアメリカと日本とでこれだけ違っているのかということについての御説明をお伺い申し上げたいと思います。
  234. 太田信一郎

    ○太田(信)政府委員 先生御案内のように、固定資産の耐用年数というのは、投下した資金をその物理的な減価あるいはその経済的陳腐化の観点を踏まえて何年で回収するかということで、それが妥当かどうかという観点から定められております。  具体的には、法人税法に基づく大蔵省令でそれぞれどういう設備が何年かということで定められておりまして、原子力発電設備については、御指摘のように十五年ということに日本はなっております。  ちなみに欧米の主要国を見ますと、我が国とほぼ同様の会計処理、これは会計処理のところから来ているものでございますが、アメリカ、ドイツについては、原子力発電所に係る耐用年数を見ますと、アメリカは十五年でございます。それからドイツは、原子炉部分は十九年、タービン発電機は十二年と、大体我が国と同様の年数になっております。ただ、イギリス、フランスでは我が国より耐用年数がやや長うございまして、二十年から三十年でございます。これは、我が国と会計処理の原則が多少違っておりまして、インフレに対応する資産の再評価を行う。資産の再評価を行いますと少し長くても投下資金が回収できるということで、長いことになっておるというふうに我々理解しております。  したがって、一律に単純に比較するのは適当ではないというふうに我々考えておるところでございます。
  235. 山本公一

    山本(公)分科員 そうしたら、ちょっと逆戻りするのですけれども、もしある町が原発を新規に立地したとします、基本的にどういった立地効果というのがあるのですか、お教え願います。
  236. 太田信一郎

    ○太田(信)政府委員 原子力発電所を立地した場合、どれだけいろいろな形で政府の助成等があるかでございますが、最新型の原子力発電所、これは今東京電力が柏崎で建設中でございますが、出力百三十五万キロワットというものを仮に建設した場合でございますが、電源三法と言われますが、そういう法律に基づき次のような助成がされます。  三つの段階に分けて御説明させていただきますが、まず発電所が着工される前の初期段階でございますが、原子力発電所の場合は要対策重要電源ということで、閣議において、これは国としてもきちんと応援しなくてはいかぬという電源地域に指定されることが通常でございます。そうした場合に、予定市町村の公共用施設整備のために、総額の上限九億円の交付金が交付されることになります。  それから、発電所の着工以降でございますが、先ほど申しました百三十五万キロワット級の発電所が建設される場合は、当該市町村に約七十億円の交付金が交付されます。それから、隣接も含めた周辺市町村に合計七十億円という交付金が、これは公共用施設整備する目的のための交付金が交付されることになっております。  それから、着工以降でございますが、原子力発電施設等周辺地域交付金ということで、実質、電気料金の割り引きに当たる交付金が交付されます。これは、先生が御指摘のように、最近非常に原子力発電所の着工、建設が困難になっているということで、そういうことも踏まえて、平成年度末に着工のものについて申しますと、単年度一世帯当たり三万六千円の交付金が交付される。ただ、既に着工されて運転しているものについては、その三分の一、四分の一ぐらいの交付金が交付されている状況でございます。  それから、先ほど先生が御指摘の、運転開始の後随分たったものについてどういうことになっているかということでございますが、運転開始後十五年経過してから運転終了まで、原子力発電施設周辺地域福祉対策交付金ということで、病院だとか老人福祉センターの整備のために、一基当たり単年度四千万円の交付金を交付しております。これは私どもは、やはり十五年間で先ほど御指摘の耐用年数が切れる、固定資産税もかなり減額されるということも踏まえて、十五年後の対策という意味で、新たに平成年度からこういう交付金を設けたところでございます。
  237. 山本公一

    山本(公)分科員 今、新規に立地をすればその町は交付金によってかなり潤う状況が現出するわけですけれども、隣の町とかいうものに対してはどのようなことになるのですか。
  238. 太田信一郎

    ○太田(信)政府委員 先ほど多少触れさせていただきましたけれども、着工したときの立地交付金については、隣接、場合によっては隣々接まで含めて、例えば先ほど七十億円が当該市町村に交付されると申しましたけれども、隣接、隣々接、平均大体八市町村ぐらいになると我々計算しておりますが、同額の七十億円。ですから、一市町村当たり十億円弱の交付金が同じように交付されます。それから、先ほどの実質、電気料金割り引きということを申し上げましたけれども、隣接市町村については、当該市町村の半分、二分の一の割り引きのための交付金を県を通じて交付しております。
  239. 山本公一

    山本(公)分科員 ちょっとしつこいようなのですけれども、隣接、隣々接というのは何か基準はあるのですか。隣接は何となくわかりますよね、境を接しているとか。
  240. 太田信一郎

    ○太田(信)政府委員 隣々接は、発電用施設周辺整備法で、交付金の交付を受けるためには、都道府県知事が当該市町村と相談しながら当該地域の発展のためにどういう公共用施設整備したらいいかという計画をつくることになっております。そのときに、当然、周辺というのは物理的にわかりますが、隣々接というのは、経済的、社会的にどうしてもその地域を含めた方が、全体として地域振興計画をつくったときにより実効が上がる計画ができるというふうに知事が御判断される場合に、知事の御判断として含まれるというふうになっております。
  241. 山本公一

    山本(公)分科員 わかったようなわからないようなことでございますが、かなりの分野、そういったことの判断というのは、知事というか県が判断されるということに理解をしてよろしいわけですね。  というのは、原発に対する最近の反対運動を見ておりましたら、当該の立地地点よりも周辺の方々の方が随分と神経質になっておられまして、そういった方々に対して、今御説明のあったように、隣接はわかるけれども、隣々接地点で、また地元の例を申し上げて申しわけございませんけれども、伊方町の周辺を見ておりましたら、三崎町あたりまでは隣々接になっていて、隣の保内町は隣接で、八幡浜市が全然違うというような実情もあるわけでして、今の御説明で何かしらわかったようなわからないようなことでございましたが、また県の方でも聞いてその辺のことをお伺いを申し上げたいと思っております。  次に、さっきお話にちょっと出ましたけれども、廃炉になった後の技術的な話をお伺いを申し上げたいと思うのですけれども、今、日本で、東海村でしたか、一番最初にできて以来、稼働しておった原発のうち、廃炉になったのはどこなのですか、もう既に廃炉になっているところは。
  242. 江崎格

    ○江崎政府委員 まだ廃炉になったものはございません。
  243. 山本公一

    山本(公)分科員 それはもう何年たっていますか。
  244. 江崎格

    ○江崎政府委員 いつ廃炉にするかというのは、これは電気事業者が、運転を継続した方がいいのか、あるいはいろいろ時間の経過とともに、例えばやや修繕費がかかるとか能率が悪くなるとか、そういうようなことで、経済性が悪くなったということで廃止をした方がいいのか、どちらがいいのかということを経済性の観点から事業者が判断をいたしまして、それでもちろん、安全の確保とか地域社会の理解を前提にして、総合的な経営判断としていつやめるかということを判断するわけでございますけれども、現在、まだ具体的に廃炉にするということを判断したケースはございません。
  245. 太田信一郎

    ○太田(信)政府委員 原研で動かしております実験炉については、廃炉の経験がございます。そういうことも勉強しながらやっておりますが、今山本先生御質問の、実用炉において一番長いものは御指摘の日本原子力発電の東海発電所、これは昭和四十一年七月に運転を開始し、ということは、ことしの七月で三十年を経過することになっております。
  246. 山本公一

    山本(公)分科員 今の御説明の中で、いわゆる経営効率を考えていつ廃炉にするかは事業者の云々というふうにありましたけれども、安全面では、これは幾ら時間がたっても余り関係ないものなんですか。
  247. 太田信一郎

    ○太田(信)政府委員 高経年化ということで私どももきちんと勉強しておりまして、高経年化をした原子力発電所に対する対応をどうするか、三十年たっても十分な定検等を行えば大丈夫という結論も出ております。  ただ、いずれにしても、そういう高経年化したものを踏まえて、各発電所がそれぞれの発電所ごとに保全計画等をつくって、より綿密な十分なチェックをしながら運転することが必要だということを我々考えておりまして、そういう方向で指導をしておるところでございます。
  248. 山本公一

    山本(公)分科員 形あるものは、いずれたどる道は一緒だと思うのですけれども、廃炉になった後の研究というのは進んでいるものなんですか。それを、例えばチェルノブイリのように密閉してしまって、その地点はもう余り利用価値がないようなことになるとか、そういったような廃炉になった後の研究というのは進んでおられるのかどうか。
  249. 江崎格

    ○江崎政府委員 これも基本的には、どういう用途に使うかというのは電気事業者の判断の問題でございますけれども、平成六年に原子力委員会がこの点について長期計画の中で触れておりまして、これによりますと、「解体撤去後の敷地利用については、地域社会との協調を図りつつ、原子力発電所用地として、引き続き有効に利用することとします。」というのを基本的な指針というふうにしております。ただ、まだこれが適用されて後何に使うかということになった例は今のところはございません。
  250. 山本公一

    山本(公)分科員 時間が来ましたので、ちょっと言いたいことだけ言わせてもらいますけれども、私が申し上げたかったことは、今原発を立地しているその町が、確かにいろいろな財政上の御支援をいただいて着々と町づくりが進んでおります。はっきり申し上げて、隣接の町村よりはるかに進んだ町づくりがその町では進んでおります。ところが、周辺の町では、私は愛媛でございますから、とてもじゃないけれども、三割自治の最たるものでございますから、思うように町づくりが進んでいない。格差がどんと出てきております。  ところが、立派に今町づくりを進めている原発立地の町ですら、これが入らなくなったらどうなるのだろう。今度逆に、上に行っちゃったもので、人間、上を見てしまうとなかなか下は見れない。もうそこへ戻れない。彼らは逆に、将来を考えて、我が町からもし原発がなくなったら今のような財政状況ではなくなる、そしたら、本当に私たちの町というのはこれでいいのだろうかというような心配を今し始めているのです。  私は、冒頭申し上げましたように、新規の立地が難しいような今の原発行政の中で、今ある町を大事にしていただきたいということを申し上げたいわけです。そして、今ある町が立派にやっていって、将来にも不安なくやっていく、そして、それが隣接の町村にもいい影響を及ぼしていく、そういった原発行政をやっていただくならば、恐らくまた日本国内においても原発を誘致しようというそういった町村も出てくるのじゃないかなという希望的観測を持っておりますので、その町だけじゃなくて近隣町村も含めた、そういった恩恵をこうむるような効果が出るようなこともまたお考えをいただきたい。  せっかく大臣に来ていただいたのですけれども、大臣、余り偉い人なので自由民主党の一党員としては、いきなりアドリブでは御質問申し上げる機会がなかったので、お許しを願いたいと思います。ぜひ、原発で苦労している町村のためにもいま一段の御配慮を賜りますようにお願い申し上げまして、時間が参りましたので質問を終わります。ありがとうございました。
  251. 佐藤静雄

    佐藤主査 これにて山本公一君の質疑は終了いたしました。  次回は、明三十一日午前九時から本分科会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時四十二分散会