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1996-05-30 第136回国会 衆議院 外務委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年五月三十日(木曜日)     午前八時五十六分開議  出席委員   委員長 関谷 勝嗣君    理事 小杉  隆君 理事 田中 直紀君    理事 玉沢徳一郎君 理事 赤羽 一嘉君    理事 東  祥三君 理事 松沢 成文君    理事 井上 一成君 理事 前原 誠司君       安倍 晋三君    斎藤 文昭君       坂本三十次君    櫻内 義雄君       鈴木 宗男君    二階堂 進君       原田昇左右君    伊藤 英成君       岡田 克也君    小坂 憲次君       笹山 登生君    中野 寛成君       若松 謙維君    秋葉 忠利君       佐藤 泰介君    園田 博之君       穀田 恵二君    東中 光雄君       楢崎弥之助君    吉岡 賢治君  出席国務大臣         外 務 大 臣 池田 行彦君  出席政府委員         内閣法制局第一         部長      秋山  收君         内閣法制局第三         部長      阪田 雅裕君         防衛庁参事官  小池 寛治君         防衛庁参事官  澤  宏紀君         防衛庁防衛局長 秋山 昌廣君         防衛庁教育訓練         局長      粟  威之君         防衛庁装備局長 荒井 寿光君         防衛施設庁総務         部長      大野 琢也君         防衛施設庁施設         部長      小澤  毅君         外務大臣官房審         議官      谷内正太郎君         外務省総合外交         政策局長    川島  裕君         外務省総合外交         政策局軍備管         理・科学審議官 河村 武和君         外務省アジア局         長       加藤 良三君         外務省北米局長 折田 正樹君         外務省欧亜局長 浦部 和好君         外務省経済局長 野上 義二君         外務省経済協力         局長      畠中  篤君         外務省条約局長 林   暘君 委員外出席者         警察庁生活安全         局生活環境課生 園田 一裕君         活経済対策室長         防衛施設庁施設         部連絡調整官  多田 孝基君         大蔵省関税局業         務課長     塚原  治君         特許庁総務部国         際課長     市川 幹雄君         運輸省海上交通         局海事産業課長 寺前 秀一君         外務委員会調査         室長      野村 忠清君     ――――――――――――― 委員の異動 五月三十日  辞任         補欠選任   古堅 実吉君     穀田 恵二君   吉岡 賢治君     楢崎弥之助君 同日  辞任        補欠選任   穀田 恵二君     東中 光雄君   楢崎弥之助君     吉岡 賢治君 同日  辞任        補欠選任   東中 光雄君     古堅 実吉君     ――――――――――――― 五月二十六日  日本国自衛隊アメリカ合衆国軍隊との間に  おける後方支援物品又は役務相互提供に  関する日本国政府アメリカ合衆国政府との間  の協定締結について承認を求めるの件(条約  第六号)  商業的造船業における正常な競争条件に関する  協定締結について承認を求めるの件(条約第  七号)  商標法条約締結について承認を求めるの件  (条約第八号) 同日  インドネシアヘの原発輸出に対するODA使用  反対に関する請願(今村修紹介)(第二五九  三号)  同(濱田健一紹介)(第二五九四号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  商業的造船業における正常な競争条件に関する  協定締結について承認を求めるの件(条約第  七号)  商標法条約締結について承認を求めるの件  (条約第八号)  日本国自衛隊アメリカ合衆国軍隊との間に  おける後方支援物品又は役務相互提供に  関する日本国政府アメリカ合衆国政府との間  の協定締結について承認を求めるの件(条約  第六号)  国際情勢に関する件      ――――◇―――――
  2. 関谷勝嗣

    関谷委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件につきまして調査を進めます。  この際、委員長より質問をいたします。  報道等によりますれば、五月七日、北京において、北朝鮮科学者日本大使館亡命を求めたとの報告がありますが、その事実関係についてお伺いをいたします。
  3. 池田行彦

    池田国務大臣 ただいま委員長から御指摘のございました報道については承知しておりますけれども北朝鮮科学者日本への亡命を求めてきたという事実はございません。  事実関係のその他の点につきましては、恐縮でございますが、コメントを差し控えさせていただきたいと存ずる次第でございます。  なお、あえて、いわゆる亡命につきましての、一般論と申しましょうか、一般的な取り扱い方針について申し上げますと、我が国への亡命につきましては、法務省が所管しております出入国管理及び難民認定法によって対応してきておりまして、同法の運用に当たりましては、次のような方針でまいっております。  すなわち、我が国政治亡命を希望する外国人に対しては、政治的迫害の申し立てが十分に根拠のあるものであるかどうかを検討いたしまして、根拠があると認められる場合には、人権の尊重と我が国利益との調和を考慮した上で、在留を認めることを適当とする事情のある者については、所定の手続によりまして在留を許可することとし、在留を認めない場合でございましても、迫害を受けるおそれの明らかな地域には送還しない、こういう方針で取り扱ってきておるところでございます。  なお、この法律対象となりますのは本邦にある外国人でございまして、本邦外にある外国人からのいわゆる亡命の要請、つまり難民認定申請というものがございました、そういったケースにつきましてはこの法律対象とはされていない、こういうところでございます。  こういった方針でこれまで対応してまいっております。      ――――◇―――――
  4. 関谷勝嗣

    関谷委員長 商業的造船業における正常な競争条件に関する協定締結について承認を求めるの件及び商標法条約締結について承認を求めるの件の両件を議題といたします。  政府から順次提案理由説明を聴取いたします。外務大臣池田行彦君。     ―――――――――――――  商業的造船業における正常な競争条件に関する   協定締結について承認を求めるの件  商標法条約締結について承認を求めるの件     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  5. 池田行彦

    池田国務大臣 ただいま議題となりました商業的造船業における正常な競争条件に関する協定締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  この協定は、商業的造船業に対する助成措置で撤廃すべきものを定めるとともに、船舶加害的廉売効果的に防止する手段を定めるものであり、平成六年十二月二十一日に経済協力開発機構理事会のもとに設置されている造船に関する作業部会で採択されたものであります。  我が国がこの協定締結することは、世界商業的造船業における正常な競争条件達成及び我が国商業的造船業の健全な発展を図る見地から有意義であると認められます。よって、ここにこの協定締結について御承認を求める次第であります。  次に、商標法条約締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  この条約は、商標及びサービスマークに係る登録出願及び記録などの申請手続に関する各国の制度を調和させ、これらの手続簡素化を図ることを主たる目的とするものであり、平成六年十月二十七日にジュネーブにおいて作成されたものであります。  我が国がこの条約締結することは、工業所有権分野における国際協力を推進するとともに、商標及びサービスマーク登録出願人などの便宜に資するとの見地から有意義であると認められます。よって、ここに、この条約締結について御承認を求める次第であります。  以上二件につき、何とぞ御審議の上、速やかに御承認いただきますようお願いいたします。
  6. 関谷勝嗣

    関谷委員長 これにて提案理由説明は終わりました。     ―――――――――――――
  7. 関谷勝嗣

    関谷委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。安倍晋三君。
  8. 安倍晋三

    安倍(晋)委員 時間もございませんので、早速中身に入らせていただきたいと思います。  まず、商標法条約に関連して、知的所有権保護についての質問をさせていただきたい、このように思います。  現在、国際的に知的所有権保護に関しての関心が大変高まってきているわけであります。我が国におきましても、今後は科学技術立国あるいは知的資源立国の道を歩んでいく、あるいは歩んでいくべきである、私はこのように考えているわけでございますが、そういう見地から、この知的所有権保護には我が国も積極的に関与をしていくべきである、こんなように考えているわけでございます。この観点からいえば、この商標法条約、ただいま趣旨の御説明がございましたように、工業所有権分野においての国際協力を推進し、また、商標等出願人などの便宜に資するという意味でも大変私は評価すべきものである、このように考えているわけであります。  しかし一方、知的所有権保護ということにつきましては、かつてWTOにおきましても知的所有権に関して新しい規則あるいは規律を作成をするという方向が打ち出されているわけであります。そして、WTO協定に附属する知的所有権貿易関連の側面に関する協定TRIPS協定締結をされているわけでございます。しかしながら、まだ残された問題もたくさんあるわけでございます。  本来、こうした知的所有権保護につきましては、多国間でこの問題を扱い、そして、その多用間の中において、マルチの場において一定のルールを決め、そして解決を図っていくべきである、こんなように思っておるわけでございますし、そういう意味では、この商標法条約も当然大変大キな意義があるわけでございますし、TRIPS協定もそういう方向で進んでいるわけでございます。しかしながら、先ほど申し上げましたように、まだ解決すべき問題もたくさんあるわけでございます。その中で、ただいま申し上げましたこのTRIPS協定につきましてちょっと質問させていただきたいと思うわけでありますが、これは商標法条約とは直接関係が、直接そのものではございませんが、その前提として知的所有権全般保護していくという観点から質問させていただきたいと思います。  このTRIPS協定の第四条に、他国民相互間の取り扱いに差別を設けないとする最恵国待遇規定がされているわけであります。他方、一九八六年七月に成立をいたしました医薬化学物質特許による保護についての米韓通商協定というものがございました。この通商協定の中におきましては、米国にのみ特別優遇措置を認めるという特別条項が附帯をされているわけであります。韓国におきまして、この知的所有権分野において載が国と米国との間に差があるというのは大きな問題である、このように私は考えているわけでございますが、外務省はこの点どのように考えておられるか、質問させていただきたいと思います。
  9. 野上義二

    野上政府委員 お答え申し上げます。  今先生指摘のように、一九八六年の米国韓国との間の医薬品特許に関する合意におきまして、米国業者が有利に扱われたという事実なざいまして、そういった点につきましては日韓杯話し合いを行いまして、米国業者、第三国の導者日本業者がほぼ同様に取り扱われるような二国間の了解をつくったわけでございます。  他方、その時点において交渉されておりましたTRIPS協定につきましても、そういった観点からやはり最恵国待遇規定を設ける必要があるということで、今委員指摘TRIPS協定第四条、最恵国待遇規定が盛り込まれたわけ界す。したがいまして、TRIPS協定発効後は、こういった米韓取り決め等につきましても、我が国関係者に対して最恵国待遇が供与されることになっております。
  10. 安倍晋三

    安倍(晋)委員 続きまして、造船協定について御質問させていただきたいと思います。  本協定につきましては、我が国はかつてから造船業につきましては大変強い競争力を誇ってきたわけでございますが、昨今は人件費等の高騰によりまして、コスト・パフォーマンスの面におきましては競争力を失いつつあるわけでございます。しかしながら、他方技術の進歩あるいは企業の努力によりまして、またさらにその競争力も高まりつつあるわけであります。そういう中にありまして、本協定助成措置を廃止し、事実上ダンピングを防いでいくという意味においては、我が国にとっては大変大きな利益になる、私はこのように評価をしているわけでございます。  昨今、大変長い間造船不況も続いてきたわけでございまして、私の地元山口県なわけでございますが、山口県におきまして、大きな新造船をつくっている会社はかつて十一社あったわけでございますが、現在は事実上は一社のみ、大きな造船ということに関しましては一社のみになってしまっております。しかしながら、必死の努力によりましてそれなりの効果も上げておりまして、昨今は競争力も回復をしてきているわけでございまして、我が国造船業界も大変この協定は歓迎をしているのではないか、このように思うわけでございます。  しかしながら、このできた船を買うという立場もあるわけでございまして、もしこの協定締結によって、もちろんフェアな競争が担保されるわけでございますが、他方、そのことによって船価が上昇をするのではないかという懸念をする向きも確かにあるわけでございます。船価が上昇することによって当然フレートの運賃が値上がりをしていく、それに反映をされていく可能性もあるわけでございますし、そうなると当然物価にも転嫁をされていくということになりますので、その見地から、この協定締結船価にどのような影響を与えるかということについてお伺いをさせていただきたいと思います。
  11. 野上義二

    野上政府委員 お答え申し上げます。  この協定発効によって、今先生指摘のように世界造船業において助成措置が廃止され、かつまた加害的な廉売、不当な廉売が行われないということを担保しようとしているわけでございます。そういった意味で、各国の各事業者競争力に立脚した、言うなれば自由な市場に基づく競争が促進されるということだと思います。  したがいまして、この協定船舶価格そのものについて直接影響を与えるようなものにはなっておりませんけれども、今申し上げましたような理由で、市場といいますか、自由な競争に基づいた価格が形成されていくというふうに理解しております。
  12. 安倍晋三

    安倍(晋)委員 また、こうした協定については、影響力のある国各国がこれを批准して初めてその効果達成をされる、このように考えているわけでございますが、まず、米国も主たる造船国であるわけでございますが、米国批准状況について御説明をいただきたいと思います。
  13. 野上義二

    野上政府委員 お答え申し上げます。  米国につきましては、上院において既に財政委員会を通過しております。また下院におきましては歳入委員会、ウエーズ・アンド・ミーンズは通っておりますが、国家安全保障委員会にもこの案件がかかっておりまして、昨日国家安全保障委員会でこれのマークアップが終わりました。可決されました。ただ、今後若干の詰める点がございますので、議事運営委員会にかかると思います。その結果、米国上下両院を両方通過するには若干の時間がかかると思いますけれども、私どもとしては、この協定締結の期限である六月十五日までにまだ日にちもございますし、そういった意味で、できるだけ十五日までに手続を了してもらいたいという形で働きかけております。
  14. 安倍晋三

    安倍(晋)委員 造船につきましては、当然安全保障上の観点からも見ていく必要があると思うわけでございますが、米国批准というのは欠くことのできない条件である、私はこのように思いますので、外務省の御努力もお願いをしたい、このように考える次第でございます。  これは造船協定そのものとは関係がないわけでございますが、昨今日本船籍船舶が大変減少してきているわけでございまして、それに伴いまして、最近我が国の沿岸において座礁する船舶外国船籍船舶であるということが今大変大きな問題になりつつあるわけでございます。  その一例といたしまして、山形県の温海町において、漁船のノボアルハンゲルスク号が昨年の十一月九日に座礁をいたしたわけであります。これはロシアから中国に売却をされまして、上海に向けて曳航中にロープが切れて座礁したということでございますが、この船に対してロシア中国も自分のものではないと言い張っておりまして、この座礁した船の処置に一億八千万円お金がかかったわけでございますが、この負担をどこがやるかということについてお互いがなすり合っている状況でございます。この問題、今どのようになっているかということをまず御説明をいただきたいと思います。  そしてもう一点、この放置船の処理に関しましては現在国際条約存在をしていないわけでありまして、今後こうした問題がまた再発をしていくという可能性も十分にあるわけでございまして、国際間の取り決めが必要ではないかと私は思うわけでございますが、政府の御見解を承りたいと思います。
  15. 浦部和好

    浦部政府委員 最初のポイントについてお答えをさせていただきます。  先生指摘のように、昨年の十一月九日でございますが、山形温海町沖で座礁いたしましたノボアルハンゲリスク号につきましてはいまだ撤去されていないということでございまして、現在同船撤去につきましてはロシア中国及び地元関係者というところでお話し合いがされているというように承知をしております。もちろん政府としましても、同船の早急の撤去ということで、ロシア側については既に数回申し入れを行っているところでございます。さらに今後とも必要に応じ、関係国に対して早急なこの問題解決について、撤去その他を申し入れていく所存でございます。
  16. 安倍晋三

    安倍(晋)委員 この船はロシアから中国に売抑をされたということでございますが、中国造船につきましてはまだ途上段階にあるのではないがと思うわけでございますが、最近は毎年着実にそのシェアを伸ばしつつあるわけでございますし、技術の向上もあります。そういう観点から、中国がこの協定にぜひとも参加をしていただきたい、私はこのように思うわけでございますが、中国のこの協定に対する態度について教えていただきたいと思います。
  17. 野上義二

    野上政府委員 まず、先ほど先生指摘放置船海難残骸物国際条約の件についてちょっとお答えさせていただきます。  御承知のように、こういった面に関しての国際条約がいまだ存在しておりません。しかし、この問題についての必要性というのは非常に認識されてきておりまして、一九九五年、IMO、国際海事機構におきまして、こういった海難残骸物措置に関する条約というものについて交渉を始めようということで提案がなされております。したがいまして、私どもも今御指摘のあったようなケースも踏まえまして、積極的にこの交渉に参加していきたいと思っております。  また、中国でございますが、協定作成交渉に参加しなかった国、欧州共同体、日本、ノルウェー、韓国米国といった国以外の国につきましても、相当の造船能力を有する国についてはこの協定に参加することが望ましいというのが協定交渉に参加した国の意向でございます。こういった中で、中国につきましても将来的に造船協定への加入を奨励するように検討すべき旨がOECDの造船部会においても指摘されております。したがいまして、我々も中国がこうした協定に参加するように今後とも奨励をしていきたいと思っております。
  18. 安倍晋三

    安倍(晋)委員 中国につきましては、最近数年間本当に高い経済成長率を示しておりまして、こうした協定にはやはり欠くことのできない国ではないか、私はこのようにも思っております。また、アジア経済全般につきましても、中国存在というのは極めて大きな存在であるのも事実でございまして、我が国経済にとりましても大変大きな影響があるわけでございます。そうした意味から、中国経済情勢または政治情勢について全般的に注意深く見守っていきながらまた冷静な分析を行っていく必要がある、私はこのように思うわけでございます。  その観点から、先般の中台間の紛争というのは大変大きなエポックではなかったか、私はこのように思うわけでございますが、その後李登輝総統総統就任をいたしまして、就任演説を行ったわけでございます。この演説中身を見てまいりますと、従来の大陸側主張と対比をいたしてみますと、大陸側主張というのは台湾独立を宣言してはいけないと言っているわけでございますが、李登輝演説におきましては、台湾独立の採択は必要も可能性もないというように明らかに否定をしているわけであります。その心の中までは私はわからないと思うわけでございますが、演説におきましては明らかな否定を行っているわけであります。また、両岸最高指導者会談につきましては、国際の場での会見不可である、また中華民国総統の身分は不可である、このように言っているわけでありますが、李登輝演説の中におきましては、将来国家の必要と人民の支持があれば中国大陸を訪問し、中共指導当局会見意見を交換したいということでございます。これは中国に行ってもいい、国際の場ではなくて中国に行ってもいいと言っているわけでありますし、深読みをいたしますと、中共指導当局という話をしているわけでございまして、中華民国総統という立場ではなくて国民党の総統として中国共産党の指導者会見をするというサインかとも思われるわけでございますので、大変接近をしているのではないか、私はこのように思っているわけであります。  また、これは香港の英字新聞サウスチャイナ・モーニング・ポストが五月二十二日に、中国関係当局当局が、台湾李登輝総統就任演説を受けて李総統訪中実現に向けての協議を始めたと一面トップで報じたわけであります。そしてさらに、中国台湾政策を担当する部門に近い専門家グループが、祖国統一のためには西側世界に見られる連邦制の導入が必要だと提言し、同部門がその実現性を探っている、このようにも伝えているわけであります。  外務大臣にお伺いをしたいわけでございますが、先般の李登輝総統就任演説につきましての御評価、特に李登輝総統訪中可能性等も含めての御意見伺いたいと思います。
  19. 池田行彦

    池田国務大臣 今回、台湾において初の民選による指導者就任されたということはまことに意義深いものと考えております。そして、今回の演説におきまして、ただいま安倍委員指摘になりましたように、台湾独立は必要でもなければその可能性もないということを言われたということ、もう一点、中国大陸を訪問して中国最高指導部と直接意見を交換する用意があるということを述べた、この二点につきましては、私どもも非常に注目しているところでございます。  御承知のとおり、我が国といたしましては、我が国を含む東アジアの平和と安定を維持するといった観点から、台湾をめぐる問題が平和的に解決されるということを非常に強く希望しております。そういった観点からは、両岸の直接の当事者の話し合いが何よりも大切であろう、こう考えているところでございまして、今回の演説台湾をめぐる問題の平和的解決の方途を見出す契機にならないか、こういうふうに希望しているところでございます。そういった意味におきまして、今回の演説、そしてそれに対する中国の方の対応というものを注視しているところでございます。したがいまして、今の段階で直接対話ということが実現するかどうかについては、一つの可能性についてまだ我々の見方を申し上げるのはいかがかと存じますけれども、関心を持って注視しているというふうに御理解をいただきたいと存じます。  なお、我が国といたしましては、当然のことながら、日中共同声明に基づきまして日中間で安定的な協力関係を発展させる一方、日台関係につきましては非政府間の実務関係を維持していく、こういう方針には変わりがないところでございます。
  20. 安倍晋三

    安倍(晋)委員 今回の中台紛争におきまして、アメリカの態度が大変明確になったのではないかと私は思います。それまではアメリカはいわゆるアンビギュィティー、あいまいな政策をずっととってきたわけでございますが、今回は、中国の軍事演習に対しては、空母二隻を派遣をするという断固とした態度をとったわけでありますし、また、先般クリントンが包括的なアジア政策について演説をした際に、台湾にTMD能力を提供することで合意した。これは、直接的には九三年に合意済みのミサイル迎撃用の改良型パトリオットミサイルの供与を指したものではありますが、さらに本格的なTMDシステムの台湾配備を示唆したものではないか、このように思うわけでございまして、ある意味では、断固として武力的な進攻は許さないという態度に転化したのではないか、このように私は思います。  なぜこのような大きな転化があったかと言えば、それは、総統選挙の前に行われた立法院の選挙以来、まさに民主的な国家台湾が生まれ変わった、それまでの台湾とは全く違った新しい台湾が誕生したということによって、政策の転換を余儀なくされたのではないか、私はこのように思います。  他方中国側でございますが、やはりこの米国の二隻の派遣というのは大変驚きであったようでもあります。その中にあって、全く軍事演習が効果を上げずに、また逆効果にもなったわけでございますし、またアメリカの態度も非常にはっきりをしてきたという中にあって、中国がこのことからどのような教訓を受け取ったかということが、今後中国がどのような国になっていくかということについて大変大きな意味があるのではないかと私は思います。  一つの可能性としては、空母二隻を派遣されたことによって、これは全く中国はなすすべがなかった。特に空軍戦力においては圧倒的な彼我の差があるという現実に直面をせざるを得なかったということから、これはやはり軍備を強化しよう、確実にGNPも伸びていることでありますから、さらに輪をかけて、特に空軍力、スホーイ27等の充実に向かっていくという考え方もございます。他方、そうした形での武力的な進攻あるいは威圧についてはある種の限界を感じたという説もあるわけでございます。その中には、当然米国の断固たる決意あるいは日米の安保条約存在もある中から、これに対抗して軍備を強化をしていくというのはロシアがたどった道をたどる危険性があるということから、これは大きく政策を転換をしていく可能性もあるという見方があるわけでございます。その観点から、果たしてどのような方向に進んでいくかということについて、外務省が御見解を持っておられるか、お伺いをしたいと思います。  また、このことは、江沢民がどれぐらい軍部を掌握しているかということにもかかわってくるかと思うわけでございます。最近、江沢民が直接上将を指名をしているわけでございます。そういうところから、軍部に対して大きな力を最近持ち始めたという人もいるわけでございますが、その観点も含めてお答えをいただきたいと思います。これが私の最後の質問とさせていただきます。
  21. 池田行彦

    池田国務大臣 先ごろの中台関係などの緊張をめぐって米国の政策が変わったのではないかという前提の上に立ってのお話でございましたけれども、私は、米国の政策の中でも、台湾問題は両岸の当事者の話し合いを通ずる平和的な解決を望むというこの方針は、米国においてもやはり一貫しておったのだと思います。そういった観点から、軍事演習などについてもあのようないろいろな姿勢をとられたのではないかと思います。この点については、日本も、御承知のとおり中国に対しましても強い自制を求めたところでございます。  そして、今後の中国方向はどういうふうな方向に向かうかという点でございますけれども、私は、台湾問題につきましては、やはり何とか両岸の当事者による平和的解決という道に進むことを強く期待いたしますし、また、今回のいろいろな出来事、それに対する米国あるいは日本国際社会全般のいろいろな反応も勘案しながら、アジア太平洋地域を中心とする国際社会の建設的なパートナーとしての道を中国が歩むということを強く期待するわけでございます。  そういった観点から、我々といたしましては、中国米国、そして日本、この三国の間の意思の疎通を十分いたしまして、良好な関係を維持発展させるという方向に三国の共通の利益があると思いますし、また、そのような方向でお互いに努力すべきものと考えておる次第でございます。また、中国指導部のいろいろな国内における安定度というものも増してくれば、中国も長期的また大局的なインタレストに発するそういった平和的また建設的な姿勢というものに向かう可能性というものが強まってくるのではないか、このように期待しておるところでございます。
  22. 安倍晋三

    安倍(晋)委員 以上で私の質問を終わります。ありがとうございました。
  23. 関谷勝嗣

    関谷委員長 秋葉忠利君。
  24. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 まず最初に、冒頭説明のありました北朝鮮科学者亡命事件について、簡単に事実関係について再度確認をしたいのです。  冒頭の説明では何が何だかよくわからない状況でありまして、具体的に、在京の日本大使館北朝鮮科学者が接触をしたのかどうか、あるいはその他の地で、日本の当局なりあるいは外国の当局に対して、日本という具体的な固有名詞を掲げて亡命をしたいというような意思の表示があったのか、あるいはないとすれば、こういったニュースが流れてきたその根拠はどういったところにあると考えるのか。事実関係について、時間がありませんので簡単に御説明いただきたいと思います。
  25. 池田行彦

    池田国務大臣 事実関係でございますので、北朝鮮科学者が「日本亡命」を求めてきたことはない、こういうことでございます。
  26. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 それでは何もない、何も起こっていませんというのと同じことで、ですから、もしそういうことがないのであれば、一体どういうことがあってそのようなニュースが流れる根拠になったのか。それなりの御理解は外務省としてお持ちだと思いますので、事によったら差しさわりがあるのかもしれないのですが、差しさわりのない範囲で、それ以上の説明は必要ではないと思って私は伺っているわけですけれども、いかがでしょうか。
  27. 池田行彦

    池田国務大臣 事実関係は、先ほどかぎ括弧と言いながら申し上げたということで御理解いただきたいと思います。そして、それ以上のことについては、恐縮ですが、先ほど委員長の御質問に対しても申し上げましたように、御答弁を差し控えさせていただきたいと存じます。
  28. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 造船それから商標の方も大事な問題ですので、この問題についてはこれ以上伺いませんけれども、お願いがございます。  それは、外務委員会は長い間非常にすばらしい伝統がございました。それは、週二回の定例日のうちの半分は一般質疑に充てる、もう半分は条約審議に充てるという伝統を長い間つくってきたわけですけれども、最近、この原則を取りましてもいいのではないか、もう少し柔軟にしてもいいのだということになって、審議の時間がそれほどかたくなくなってきたような気がいたします。しかし、ただいまのような問題、それから先ほど安倍議員が質問されました中台問題その他、一般質疑の内容として当然与野党ともきちんと議論をしなくてはいけない問題が山積していると私は考えております。  委員長初め理事の皆さんにお願いですけれども、必ずしも、水曜日には必ず一般質疑をするのだということはなくてもいいですけれども、しかし、条約審議と一般質疑、大体フィフティー・フィフティーぐらいでやるのだという大まかな原則はやはり守って、この外務委員会日本の外交についての基本的な問題をきちんと議論するというこれまでの国会の培ってきたよき伝統を守るべきだと私は思いますので、その点をぜひお願いしたいと思います。  そういった会が開かれるときに再度この亡命の問題について、例えば先ほどお話しになりました亡命をどのような場合に認めるかといった基準の立て方、私は、現代の社会にあっては、もはやメリットによって亡命を認めるあるいは難民を認めるといったところから一歩踏み出て、特に大きな障害がない限り自動的に認めるといったような、ある意味で政治的な亡命の内容についての基準はない、中立的な基準の方がより今後の世界にふさわしいというふうに思いますけれども、そういった議論も含めて、ぜひ一般質疑の中で取り上げていただければと思います。  これはお願いですので、造船協定について質問をしたいと思います。  先ほども質問の中にあったのですけれども、この造船協定のそもそもの発端は、アメリカが、ドイツそれから韓国、ノルウェー、それにもちろん我が国が入りますけれども造船業に対する助成措置が好ましくないということで、一九八九年に、だったらアメリカの例の悪名高き三〇一条を行使するぞというようなおどしが発端になって交渉が始まった条約です。いわばアメリカが最初に言い出しておいて、ところが、いろいろな状況を見てみますと、アメリカが一番この審議について腰が引けているあるいはおくれているといったような状況が見られますけれども、一体、自分で言い出しておいて、結果的にはおくれてしまった理由というのを外務省はどういうふうに把握しておられるのか、御説明いただければ幸いです。
  29. 野上義二

    野上政府委員 お答えいたします。  今委員指摘のように、本件協定交渉しようというきっかけとなったのは、米国各国造船に対する助成に対する三〇一条提訴でございます。その結果、OECDの造船部会の場におきましてこの協定交渉を続けたわけでございます。  その過程において、御承知米国の沿岸法、これは一連の法律でございますけれども米国の内水及び沿岸における船舶米国製であるという法的規制がかかっているわけですけれども、その規制を存続させたいということで、これは各国交渉の結果、各国の合意のもとで、この協定においてもその沿岸法にかかわる規制を存続せしめることにいたしました。  他方、この協定におきましても、そういった沿岸法に基づく規制をこのままただ放置しておくことは締約国の権利義務等の観点からも受け入れがたいということで、これに対して、特定の期間後に見直しをする、さらには、その期間中に米国が情報の提供なり、場合によっては協議に応ずるといったような、いわゆる特別の監視の手続も決めております。  そういった意味で、米国の例外は認めておりますが、他方、多国間の取り決めによって、そういった例外に対する監視、協議等のメカニズムもつくっているということでございます。
  30. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 私の伺っているのは、なぜアメリカの国内でこの条約承認について手間取っているのかということを伺ったのですけれども、今の御説明では、アメリカに対して各国が大変な譲歩をしたというふうに聞こえます。譲歩をしたにもかかわらず、なぜアメリカでそれほど手続に手間取っているのか、私の疑問は今のお答えで二倍以上に膨らんでしまったのですけれども、その二倍以上に膨らんだ疑問について、きちんとわかるような説明を、説得力ある説明をしていただきたいと思います。
  31. 野上義二

    野上政府委員 先ほどの御説明でも申し上げましたけれども米国におきましては本件協定を、上院では財政委員会を既に通過しております。また下院におきましても、下院の歳入、歳出委員会を通過しておりまして、昨日、下院の安全保障委員会においても通過しております。したがいまして、先ほど申しましたように、今後議事運営委員会に諮られた上で、この取り決めが、協定締結されるものと考えております。また、六月十五日までに締結するように我々としても米側に働きかけていくことにしております。
  32. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 ということは、アメリカの国内におけるこの承認手続において遅滞はないというのが外務省のお考えだというふうに理解いたしますが、ほかの国が、例えばノルウェーそれからドイツ、EC諸国その他、今までの署各国状況を見ますと、かなり早く署名をしている。それに比較をしてアメリカがおくれているということは、これは数字の上ではっきりと出ていることですから、今のお答えでは事実の、何月何日にどういうことをやるという説明ではあっても、おくれている理由説明としては不十分だと思います。差し支えがあるのでしたら、また後刻、別の形でこの説明をしていただきたいと思います。  次の問題ですけれども、半分はもうお答えをいただいているわけですけれども、今回のこの造船協定、先ほども申し上げましたけれども、アメリカのいわばイニシアチブによってこの交渉が始まったわけですけれども、結果として見ると、アメリカに対して大幅に譲歩をする結果になっています。沿岸法を実質的に認めているわけですし、例えば例外措置を認めている附属書のⅡですか、この中でも、例えばリストラのための特別措置というのはたった一ページですけれども、しかしアメリカの沿岸法については、これは日本語訳の方ですけれども十一ページも割いている。その中で事細かにアメリカの権益を守っているということになったわけですが、なぜこんな大幅な譲歩を、自由化に反するような譲歩をアメリカにしなくてはならなかったのか、その経緯を簡単に御説明いただきたいと思います。
  33. 野上義二

    野上政府委員 今委員指摘のように、韓国及びEU諸国の一部のリストラについての既にその時点で行われていた助成措置等についての例外が設けられております。  他方米国の沿岸法に基づく例外規定について非常に大部を、多くのページを割いているという御指摘がございましたけれども、御承知のように、沿岸法というのは一つの法律ではなくて、一九二〇年代からのいろいろな法律の各条文の修正等によって米国の沿海、沿岸部及び内水にかかわる客船、貨物船、それからしゅんせつ船、そういったような細かい分類に分けて例外を設けておりますので、そういう意味で、ページ数とか規定がたくさんあるということは、必ずしも例外の大きさを反映しているということではないと思います。  ちなみに、世界のマーケットにおきまして一九九五年で約二千万トン近い新造船がつくられておりますけれども、その中で米国の新造船というのは、これは百トン以上の船を対象にしておりますけれども、わずか二千トン、〇・〇一%というシェアでございまして、言うなれば極めて米国造船業というのは零細である。もちろん百トン以下のプレジャーボート等はございますけれども、そういう意味では、米国の例外というのは世界造船のマーケットという中においては全く実態面ではネグリジブルなものであるというふうに理解をしております。
  34. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 都合の悪いところは全部ネグリジブルだというふうに言ってしまうと答弁としては大変簡単に済むのですけれども、現実の世界はそうではありませんで、そういう態度で例えば自然科学を今まで進めてきたとしたらこんなに進歩はなかったというのが世界の歴史ではっきりとわかります。  アメリカがだだをこねているのは、ただ単に沿岸法だけではなくて、例えばアラスカ原油の輸送における米国船籍優先政策というのがあります。これは少し土俵が違う話になるかもしれませんけれども、海運サービスの自由化に関しては、やはり自由化ということがあくまでも原則であるべきであって、この中に例えば自国船のそういった優遇政策というものを少なくとも自分の方から、例えば海運、造船についてはおかしいじゃないかという問題提起をしておきながら、同時に国内政策を主張するなんという、そういう勝手な態度をとっていることについて外務省がどういう発言をしてきたのかとか、あるいはこれからどういう発言をするつもりなのか。この点についての認識は、日本だけではなくて、例えばEU諸国についても共通の認識であるはずですから、そういったところの連係プレーにおいてきちんとした態度を私はとるべきだと思います。  そういったことを伺っているのですけれども、今のお答えでは、要するに問題はないというふうに、現実にある問題を矮小化して、それでないことにして、外務省はいいことをやっているというような説明にしかならない。残念ながら、そんなことでは現在は世論も納得しません。新聞の報道を見ても、あるいは具体的に条約交渉の進捗状況を見ても、そんな説明では納得のできないような現実があるのですから、一体アメリカの造船あるいは海運の自由化について日本政府がどういうふうに考えていらっしゃるのか、外務大臣一言お願いします。
  35. 池田行彦

    池田国務大臣 造船協定につきましては、政府委員から御説明申しましたように、実質的にはネグリジブルであるという事実が一方である。それから、協定では確かにあのような米国についての例外措置を認めましたけれども、一方において、協定の中にその例外措置についてのこれからの特別の見直しとか監視の手続もございます。そういったことで、我が国としても、そういったことに強い関心を持ち、これからも努力してまいりたいと思います。  それから、今、秋葉委員指摘でございました海運の問題につきましても、確かに自由化の問題あるいはアラスカ原油の輸送についてのシップ・アメリカンの問題なんかございます。私どもも決してアメリカの主張というものは、唯々諾々とこれを容認するというような態度で臨んでいるわけではございませんで、今具体的に御指摘のありました件につきましては、先般神戸で行われました四極の閣僚会議におきまして、私からこの問題を取り上げまして、海運問題についての米国の自由化のオファーが出ていないということはこれは非常に問題であるということ、それからアラスカ原油の輸送問題につきましても取り上げまして、新任のUSTRの代表代行でございますバシェフスキー氏に強くその米国の積極的な態度を求めたところでございます。  なお、その際、EU側からも同様の主張があったということを申し上げておきます。
  36. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 努力をされていることは今の御答弁でわかりましたけれども、やはりこの問題については、アメリカ側も、ネグリジブルだったら原則を曲げて本当にいいんでしょうか。そこのところが私は大いに引っかかるところでありまして、例えば日本の自動車市場におけるアメリカ車のマーケットシェアというのはネグリジブルだと考えろことは可能です。そこを原則にして同じように日本がだだをこねれば、だから日本の道路におけるアメリカ車の走行を禁止するというような措置ふとったとしても、これはネグリジブルだからいいというような議論が成り立ってしまいます。原則は、ネグリジブルだからどうかではなくて、本当に自由化をするかどうかという問題なのであって、そこのところを間違えていただいては困ります。そこを曲げたのはなぜかということを聞いているのですけれども、なかなか具体的な説得力のある説明が出てまいりません。  そこで、一つお願いなんですが、この問題については、アメリカがだだをこねていることについて、やはり自由化というWTOの大原則、この観点からのアメリカに対するきちんとした声明をこの委員会の例えば条約を通過させる上での、附帯決議というのが条約にはできないそうですから、別の決議としてきちんとアメリカに対して、やはり自由化の原則を守れという決議をぜひお願いしたいと思います。委員長並びに理事の皆さんにこの点をお願いしたいと思います。  時間がございませんので、商標法について一つ伺いたいと思います。  商標に関連して国際的な幾つかの問題があるのですけれども、大きく分けて二つに分けられるのではないかというふうに思います。一つは、商標をつけたものを輸入するに当たって、並行輸入ということがありますけれども商標権との関連において並行輸入を認めるかどうかというのが国際的に少々足並みが乱れております。私は、並行輸入というのは認めるべきだというふうに考えておりますけれども、ともかく国際的にこの問題について協調したルールが必要なのではないか。  それからもう一つは、それと関連しているわけですけれども商標そのもの、外国で登録された商標を例えば自国内で認めるかどうか。これも似た問題ですけれどもちょっと次元の違う問題ですけれども、これもやはりある程度各国において外国の商標をどういうふうに扱うのかということについても同様な協調政策が必要だというふうに思うのですけれども、こういった方向について、例えば日本がイニシアチブをとって並行輸入それから外国発の商標取り扱いについての協調的な国際ルールをつくるといったような方向での提言を日本がしていくべきだというふうに考えておるのですけれども外務省はいかがお考えでしょうか。
  37. 野上義二

    野上政府委員 お答えいたします。  今御指摘のように、商標権の保護に関して国際的なルールをつくっていく、国際的なルールで保護していくという点は極めて重要な点であると思っております。  商標権の保護につきましては、二つケース先生指摘がありましたけれども、外国の商標権の保護につきましては、WTO協定に附属しております知的所有権貿易関連の側面に関する協定TRIPS協定において知的所有権の一つとして保護されております。並行輸入、商標を付した産品の並行輸入をどう扱っていくかということにつきましては、いまだ国際的なコンセンサスができておりません。したがいまして、今後とも国際的なコンセンサスを得て、そういった問題に積極的に対応していくというふうに考えております。
  38. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 これで質問を終わりますけれども、私の質問の趣旨は商標権の保護ではなくて、その商標を付したものを買って使う消費者の立場からの、その公平さを期するという意味での国際ルールをつくるべきではないかという趣旨の発言ですので、お答えは商標権を守るという正反対の立場からのお答えでしたので、時間がありませんが、そのことだけ指摘して質問を終わりたいと思います。後日、またこの点について質問させていただきたいと思います。  ありがとうございました。
  39. 関谷勝嗣

  40. 若松謙維

    ○若松委員 新進党の若松謙維でございます。  新進党を代表して、今回の造船協定並びに商標法条約について何点か質問をさせていただきます。  その条約関係質問に入る前に、最近アジア、特にミャンマーに起きておりますさまざまな状況について、ぜひ外務大臣を中心に質問をさせていただきたいと思います。  ミャンマーの内政ですけれども、アウン・サン・スー・チーさんが率いております全国民主連盟、NLDが、御存じのように一九九〇年に大変な勝利をしまして、いわゆる民政移管が行われる、そういう予想があったわけですけれども、結果的に軍事政権の国家法秩序回復評議会、SLORC、こう言っておりますけれども、それが新憲法制定の作業を理由としまして、現在でも政権に居座り続けている。こういう状況で、ミャンマーの経済は九三年以降大変順調な伸びを示している、この経済成長に非常にあぐらをかいているような軍事政権の態度かなと理解いたします。  もう一方、NLDですけれども、先ごろ、選挙勝利六周年を記念いたしまして、二十六日から三日間、議員総会の開催を予定しましたけれども、大臣も御存じのように、ミャンマー政府によりましてNLDの議員二百三十八人の拘束という大変失望すべき事態になりまして、結果的に議員総会から党員総会に変更した、こういう状況で、やはり今回のミャンマー政府の、先ほどの軍事政権ですけれども、これは選挙で選ばれた議員の総会の妨害としか考えられないと思うのです。  最近池田外務大臣は、先週の二十四日ですか、ミャンマーのオン・ジョー外務大臣と会談された。それで、いろいろ漏れ聞くところによりますと、NLDの拘束者の即時釈放またはNLDとの対話再開を促した、こういう報道もありましたけれども、この会談の内容及びミャンマーの現状について御説明いただきたいと思います。
  41. 池田行彦

    池田国務大臣 来日中でございましたミャンマーのオン・ジョー外務大臣と二十四日に私は会談いたしまして、今御指摘のミャンマーの政治状況についても、日本政府としての考え方を申し上げたところでございます。  その際、私の方から申しましたのは、NLDの関係者のもうこれ以上の拘束はしないということ、それから、現在拘束している者を即時に釈放すること、これが第一でございまして、第二点といたしまして、そのNLD関係者に対するいわゆる嫌がらせ行為の停止を求めるということ、それから三番目に、当時予定されておりまして、その後行われましたけれども、NLDの大会、会合が開かれます場合に不測の事態、衝突等の起こらないように節度のある対応を求める、こういった三点を求めると同時に、NLDとの間の対話の糸口をつかむように何とか努力をするように、このことをも求めたところでございます。  ミャンマー側から、ミャンマーの国のいわば発展段階と申しましょうか、まだそういった状態もあるのだから、政府としても懸命に努力をしているのだから、そこのところは理解してほしい、それからまた、被拘束者は決して逮捕ではなくて、いわば予防措置である、混乱を避けるための措置であるというような応答があったところでございます。  私の方からは、法に基づかない予防措置と称する拘束というのは、考えようによっては逮捕よりさらに問題が多いではないかということも指摘し、また、先方の主張する発展段階ということタ十分考慮に入れたとしても、今回の措置はいわば民主化の方向、流れを逆行させるものでございますから、これは到底容認できないものであるということを重ねて先方に申し入れたところでございます。  その後、二十六日から二十八日までのNLDの大会が、拘束者がそこまであったということはございますけれども、大会そのものはまずは平穏のうちに行われたということは、それなりに我が方のその申し入れも効果があったのかなと思いますし、また、その政党活動のそれ以上の制約といろものがなかったということでは、評価とまではいきませんが、よかったかなというふうに考えている次第でございます。  政府といたしましては、いずれにいたしましても、今後、ミャンマーの政府とNLDの関係者との間で、今回高まりました緊張を乗り越えてお行いに自制をしながら話し合って、何とかその民主化の流れを少しでも、一歩ずつでも前進させていく、そして真の意味の民主化の実現の方への努力を傾注してほしいもの、このように期待しているところでございます。
  42. 若松謙維

    ○若松委員 先ほどのいわゆる民主的な土壌を偏すような外務大臣の発言、私も大賛成であります。しかし、結果として議員総会は開けなかった。ましてや議会も開かれていないという現状に対して、結局九〇年の選挙の意味はまだ実質的になしていない。  そういう現状に対して、では、果たして日本の国はミャンマーに対してどういう対応をしているか。  円借款、こういった観点から見ますと、これげ凍結しているのですけれども日本はアジアの一員という配慮からか、八八年の軍事クーデター傍も、欧米は完全にもう経済制裁的な強硬手段をとっているわけですけれども日本は、北風ではなくて太陽でマントを脱がす、こういう方針で、独自の路線をとって、小規模の人道援助、これは継続しております。  そして、外務大臣がお会いになったその前日、梶山官房長官ですけれども、二十三日の記者会見で、今の援助は直接、民生に響く基礎的なものというふうに言われまして、停止はミャンマーの民衆にダメージを与える、このような趣旨の発言を行いまして、結果的に今日本が行っているそういった援助の見直しをする考えはないということを明言されました。  当然、経済制裁をいたずらにやるというのは余り賢明な策だとは思えないのですけれども、結果として議員総会を開けなかった。そしてまた議会も開いていない。こういう状況に対して、果たして今の日本の人道援助、小規模といいながらもこれの継続というのはいかがなものか。  特に、アウン・サン・スー・チーさんが、私もテレビで見ましたが、日本のODA、こういった援助はやめてくれ、かえってそれが軍政権を勢いづけて、結果としてミャンマーの民主化の流れに逆行する日本の援助なのだ、こう訴えられたのを私非常に印象に受けておりまして、私もこの際、従来の日本政府のミャンマーに対する経済援助、人道援助ですね、見直しをすべきではないかと思うのですけれども、大臣、いかがでしょうか。
  43. 池田行彦

    池田国務大臣 もとより民主的な政治あるいは社会、そして人権の尊重される社会というものが、世の中というのが、世界至るところで広がっていくということは我々の願いでございますし、今日ではそういった民主あるいはそういう人権という問題は、必ずしも国内問題であるからといって済ませる問題ではない、グローバルな関心事である、このように考えております。  しかし、一方において、一つ一つの国の制度なりあるいは政治というものは、やはり基本的にはその国民の決めるものでございまして、他国から何らかのそれに対しての行動をする、あるいは発言するということにもおのずから限界があるということは御理解いただけることと存ずる次第でございます。  そういった中で、ミャンマーに対する取り組み方にはいろいろな道があるのはそのとおりだと思いますけれども我が国といたしましては、今後ともミャンマー政府そしてNLD双方にチャンネルを維持しながら、何とか対話によって民主化と人権状況の改善が図られる、そういった方向へ働きかけてまいりたい、こういった方針で対応したいと思っておる次第でございます。  そして、経済協力の点でございますが、これまでやってまいりましたのは、非常に人道的観点と申しますか、最近のもので申しますと、あの国では、やはり国民の健康を守っていくという点が非常に大切になっていますが、医療関係者、とりわけ看護婦さんの数が非常に不足しておるとかでございまして、そういった看護婦さんの養成をするための努力に対して支援をしてきたところでございますので、こういったことが必ずしもミャンマーにおける政治勢力のどちらかを特に勢いづけるとかそういうことにはならない。むしろそうではなくて、ミャンマーの国民そのもののベーシック・ヒューマン・ニーズに対応していくものだ、こういうふうに考えている次第でございます。
  44. 若松謙維

    ○若松委員 今の大臣の答弁は、従来の方策を変更する意思は確認できませんでした。特に、中国でもそうだったのですけれども、核実験を行いまして、日本は、いわゆる有償円借款、これは手は加えませんでしたけれども、無償は一部を除いて全部停止いたしました。そういう形で、やはり中国政府に対する強力な日本政府としての意思表示はでき、また、それの実効性もかなりあったと思います。  今回、このミャンマーのいわゆる軍事政権の行動に対して、やはり日本政府として、先ほどの援助の観点から明確に物を言うべきではなかったかと思うのですけれども、どういう形で日本主張をしてきたのか、この議員総会前後において。また、これから何か明確な意思を発しようとしているのか。この点についてお伺いいたします。
  45. 池田行彦

    池田国務大臣 今回の緊張の高まった状態の中で、我が国がミャンマー政府に対して申し入れましたところは、国際社会の中でも極めてはっきりした明確な申し出であった、こう思っております。  そして、確かに議員総会というものは行われなかったわけでございますが、少なくともNLDの会合は、大会が平穏裏に開催されたということ、それからまた、被拘束者の即時の解放、釈放ということにはなりませんでしたけれども、それは長期に及ぶものではないという言葉を引き出したこと、といったことで、一定の効果はあったものと考えますし、今後とも、日本政府のこういった姿勢というものは、ミャンマー政府におきましても十分に考慮しながらいろいろ対応していかれる去のと期待している次第でございます。
  46. 若松謙維

    ○若松委員 大臣の答弁は、大会は確かに行われた。ところが、アウン・サン・スー・チーさんの意図するところの、選挙によって選ばれた議員の総会というのは、いわゆる三百人単位の大きな議員の集会だったのでしょうけれども、結果的に二百三十八人ですか、議員が拘束された。これは、確かに大会は開いたけれども、当然アウン・サン・スー・チー女史の立場からすれば全く、ただ開いたということで、結果的にその内容自体は骨抜きにされている。  こういうことでありますので、開かれたといろことに対しての認識だけで物をおっしゃっているのですけれども、私は、もっとこのミャンマーの民主化という流れに対して、日本は先ほどの、せっかく長年のマントを脱がす努力もしたわけ下すけれども、この際しっかりと、中国に対してとったような形の、従来とは今回は違うのだというものを示すべきではないかと思いますけれども、改めてお伺いいたします。
  47. 池田行彦

    池田国務大臣 先ほども御答弁申し上げましたけれども、我々が、ある国の政治状況についてどういうものを希望するか、あるいは期待するかということと、それから、具体的にどこまでそういったことに対して行動できるかということは、その両者を勘案しながら考えなければいけないと思います。  そういった中で、我々としては何とか、ミャンマー国内における両当事者の話し合いを通ずる民主化の進展という方向をはっきりさせていきたい、進めていく状況をつくりたい、そのために我々として可能な範囲内で努力をしていく、こういう立場からやっておるわけでございまして、先ほども申しましたように、双方に対するチャンネルを持っている、こういった立場を今後とも維持しながら働きかけていくということが、我々としては最も有効な方途ではないかと考えている次第でございます。なお、経済協力の問題については先ほど申したとおりでございまして、私は、これまでなされてきた経済協力がどういうものであったかということを御説明したわけでございまして、それ以上でもそれ以下でもないということを申し上げたいし存じます。
  48. 若松謙維

    ○若松委員 この議論だけに集中するわけにはいきませんので、造船協定の方に入らせていただきたいと思いますけれども、その前に、先ほど、二十四日に大臣がミャンマーの大臣とお話しされて、そのミャンマーの外務大臣から、特にこの経済援助なりそういったものについて、従来どおり維持してほしいとか、または従来以上のものをしてほしいとか、日本政府には何も今回のこの政府の対応についてコメントしてほしくないとか、そんな依頼というのはあったのですか。
  49. 池田行彦

    池田国務大臣 二十四日の会談におきましては、その問題については話題になりませんでした。
  50. 若松謙維

    ○若松委員 では、続きまして造船協定に移りますけれども、特に今大変安全保障論議がこの国内で盛んに行われておりますが、私はそういった観点から、今回の造船協定締結に際しまして質問をしていきたいと思います。  まず、平成八年一月三十日、これは海事産業研究所というところが発表しましたことしの我が国の新造船受注量、これが七百万から八百万総トンに落ち込んでいるという見通しが出ました。この海運市況、非常に上がり下がりが激しいところでして、現状として回復基調に入っていないということですけれども、この造船協定が成立する際の、いわゆる今後我が国造船業に与える影響についてどのようにお考えなのか、お聞きします。
  51. 野上義二

    野上政府委員 この協定は、造船業に対する輸出補助でございますとか、そういった助成措置を有する公的措置を原則禁止しております。また、加害的廉売と言っておりますけれども、他国の造船業に対し、自国の他の造船業者にも関係すると思いますが、加害的廉売の防止を目的とするいろいろな手続を定めております。したがいまして、この協定締結した結果、造船にかかわる船価等について、個々の事業者競争力を基本とする、言うなれば市場に基づく公平な価格状況、公正なる競争条件達成されると思っておりますので、累次にわたる合理化、近代化等を続けてこられた日本造船業に対しても、公正な競争条件のもとで国際競争を行えるという意味で、極めて有意義なものだと思っております。
  52. 若松謙維

    ○若松委員 そうしますと、今造船業が非常に慢性的な不況に陥っている、さらに、先ほどの受注量の減少、こういった状況で、我が国の船籍を有します日の丸商船と言われるものですけれども、プラザ合意前の八五年には千二十八隻あったと記録されておりまして、それが円高を背景に十年間で五分の一に減った。ある報道では、百九十六隻、こういう大変な激減を示している報道がありました。  当然、国際船舶というのでしょうか、非常に国際競争が厳しくて、私も海外に三度ほど駐在いたしまして、例えば太平洋を渡ってアメリカの西海岸に行くわけですけれども、この輸送料、輸送費というのは本当にわずかで、例えば、日本で陸揚げしてわずか二、三十キロの距離を移動するのに、何千キロという運び賃よりも国内流通費の方が高い。それほど国際流通競争というのは大変激化している。  こんな状況にあるわけですけれども、一方、日本国籍として船を持つことによって、例えば日本人船員の人件費とか船を維持するための税の負担、これが非常に重い現状もありまして、結局日本の船会社は、日本籍の船というものを避けて、例えばパナマとかリベリアに船籍を登録する。便宜置籍船というのですか、そういう形でいわば海外にどんどん登録してしまう。実は私もロンドンにいたときに、いろいろなファイナンス、リース会社さん等がこういうスキームを持ってきて、日本ではもう持ちません、ですからリベリアとかパナマに船を移管したい。タックスヘーブンですから当然税金はかからない。こういう形で、それはそれとして、民間企業として船を持って国際競争を乗り切るにはやはりやむを得ない手段だと思います。  しかし、その結果、先ほどの、日本国籍船が五分の一になってしまったということで、これは万が一日本が有事のことを考えると、いろいろな、例えば緊急物資の輸入とか、または人道面での輸送とか、そういった観点から、我が国船舶数が少なくなるというのは、いわゆる安全保障上大変問題ではないかと思うのです。そういう意味で、まず、正確に我が国の船籍の船舶、今どのくらい保有しているのか、ちょっと統計資料を御提示願います。
  53. 寺前秀一

    ○寺前説明員 お答え申し上げます。  先生指摘のとおり、この十年間でいわゆる日の丸を掲げた日本籍船、これは外航船に限りますが、十年前の昭和六十年六月には千二十八隻ございました。昨年の平成七年六月確定した数字で、外航船、これは貨物船に限りますが、二百十八隻、五分の一近くになってしまった。ただいま現在、幾らか海外に売船された、売船といいますのはパナマですとかリベリアに籍を移す場合も含まれますけれども、その数字で推計をいたしますと、百九十六隻になっておりますが、新たに新造されております船もございますので、まだ確定いたしておりませんが、二百一隻だというふうにただいまのところ承知をいたしておる、いずれにいたしましても、二百隻内外ということでございます。
  54. 若松謙維

    ○若松委員 やはり我が国の船籍船舶の数は減少を続けている、そういう現状だと思うのですけれども、この状況が一向に改善されないということで、運輸省ですか、ことしに入りまして国際航海専門の商船を国際船舶、このように定義づけまして、日本籍船の減少防止策の導入の柱としている。  ところが、この防止策なのですけれども、完全導入が残念ながら見送られまして、結局一部の、若干の税の軽減にとどまってしまった。こういうことで、抜本的な日本籍船減少への歯どめは措置できていないのではないか、このように私自身、理解するわけですけれども政府としてこの籍船数の減少に対してどのように検討されているのか、そういった観点から伺います。
  55. 寺前秀一

    ○寺前説明員 お答え申し上げます。  先生指摘のとおり、昨年の五月に外航海運・船員問題懇談会で、我が国日本籍船及びそれに乗船されます日本人船員の減少という問題に対して、何らかの対応策を講ずるべきであるということの御報告をいただきました。  その内容につきまして申し上げますと、一つには、日本籍船を維持するために、御指摘のとおり、円高もございまして、諸外国と比べますと税金が結果的に高いということから、船舶税制に何らかの対応をすべきである。それから、日本人船員、これも結果的に円で給料をもらっておられますので、外国人船員と比較をいたしますと非常にコスト競争力を喪失しているということから、日本人船員の税制についてもヨーロッパ先進海運国で行われているような船員税制について参考にして、日本でも船員税制の軽減措置を図ったらどうか。あるいは、外国人船員の配乗要件の緩和ということで、英語による日本の海上技術の資格試験の制度を開始したらどうか等、法制度等も含めましていろいろ総合的な対策を考えたらいかがか。ヨーロッパの国際船舶登録制度というのがございますが、これを参考にして提言あるいは報告をいただいているわけでございます。  それで、八年度要求はほぼ懇談会報告に基づいた形で私どもの方から要求をさせていただきました。また、その懇談会報告にかかわらず、従来からも海運行政といたしましては、例えば日本籍船におきます外国人船員の配乗要件の緩和というようなことも行ってまいりましたし、またコストのドル化と私ども申しておりますが、収入の六割から七割近くが、日本の企業同士でありましても世界の海運マーケットの中ではドルで表示されておりますので、収入がドルである。しかしながら、日本の海運企業は日本に本社がございまして、多くの日本人が働いておられるということから、コストの部分がどうしても円で支払わざるを得ないということから、円高に大きく振れますとどうしても国際競争力を喪失してしまうという問題がございます。したがいまして、船の発注におきましてもドルで発注をするようにということから、政策金融におきましてもドル建て融資を開始いたしております。  そういうことを講ずる中で、八年度の税制改正で船舶税制に関しまして固定資産税、登録免許税の軽減をお認めいただいております。これを我が国国際船舶制度の第一歩として、できる限り日本籍船及びそこで働かれます日本人船員の減少に歯どめをかけたいというふうに考えておるわけでございます。
  56. 若松謙維

    ○若松委員 これは商工委員会等で議論されるのでしょうけれども、非常に関心があります。少なくとも運輸省として今改善の努力をしているということで、では三年から五年後の今後の動向、推移として、この日本籍船の数はどのくらい見込まれていますか。
  57. 寺前秀一

    ○寺前説明員 お答え申し上げます。  推計ですから非常に難しいわけでございますが、先ほど申しました懇談会報告書におきましては、現状のまま推移をいたしますと、平成十二年、西暦二〇〇〇年でございますが、日本籍船が外航船に関しましては百隻を下回るというふうに予測をいたしております。
  58. 若松謙維

    ○若松委員 十年前から一挙に五分の一、二百隻に。今のお話を聞いたら、五年後にさらに半分になる。そうすると、日本籍は本当になくなってしまうということで、こういう現状では、外務大臣にお伺いしていいのか、安全保障というところに、先ほどの話に戻るわけですけれども、海外籍ですから、外国籍ですから、当然あっちこっちに行っているわけです。では、いざというときに集まってくるかというと、そこら辺の手当ての問題も必要になってくる。  その議論はちょっと後においでおいで、では、これだけ減る要因というのは、これは運輸省にまた戻りますけれども、先ほどの円高の要因、もう一つは税制の要因、この二つが一番大きいのではないかと思うのですけれども、この減少の要因をあえて比率であらわしますとどんな感じになりますか。
  59. 寺前秀一

    ○寺前説明員 一つ一つの要因は、税制ですとかあるいは日本人の人件費の国際的な中での高さということがあろうかと思いますが、やはり比率で、数字は申し上げられませんが、かつて二百円を超える段階でありましたレベルが現在百円を若干上回る程度ということで、これだけで半分になっておりますので、やはり円高による競争力の喪失が一番大きいのではないかというふうに考えられます。
  60. 若松謙維

    ○若松委員 円高というのはかなり大きなシェアだとおっしゃいました。では、これは政府努力するかというと、これも限界があると思います。  そうすると、先ほどの税制というところですけれども、パナマ、リベリアは外国船舶が非常に置きやすい、登録しやすいような非常に有利な税制並びに簡易な制度も持っている。日本は海運立国というのはこれはだれもが認める事実であると思うので、この際、我が国のできる税制面、こういう国際船舶については税制的なものを、いっそのことタックスヘーブンを導入するのも一つの手かと思うのですけれども、どのようにお考えでしょうか。
  61. 寺前秀一

    ○寺前説明員 懇談会報告書では、国際船舶に関しまして我が国登録免許税、固定資産税は、課税をしないといいますか、非課税にするということで提言されておりまして、八年度要求で、運輸行政の立場からは課税しない、非課税の要求を行いました。  結果といたしまして、大変御努力いただきまして、国際船舶に関しましては、通常の場合ですと船価の千分の四でございますが、国際船舶に関しましては千分の一ということで、大幅な軽減措置をいただきましたし、固定資産税につきましても、これまでは外航船につきまして十二分の一という、通常の固定資産に対する軽減措置の十二分の一に軽減するという措置をこれまで講じていただいておるわけですけれども、それをさらに掘り下げまして十五分の一に一定の国際船舶に関しましてはしていただくということの改正をお認めいただいております。
  62. 若松謙維

    ○若松委員 今の国際船舶の税負担ですけれども、これは諸外国と比べて、日本の現状というのはどの程度でしょうか。国際的な比較をちょっと、十五分の一とかいいながら、じゃ先ほどのパナマとかリベリアに比べてどういう現状なのか、そういった点から説明をお願いします。
  63. 寺前秀一

    ○寺前説明員 私どもで調べておりますパナマ、リベリアの税のレベルでございますが、船によりましてもちろん違うわけでございますので、一つの例といたしまして、二十フィートのコンテナを三千個積めるコンテナ船を新造いたします場合に、パナマでこれを登録いたしますと、登録免許税に相当するものといたしまして五十七万円、リベリア国におきましては二十五万円という数字でございます。それから固定資産税につきましても、固定資産税に相当するものは、同じ三千個積みのコンテナ船の新造船の、初年度の場合でございますが、パナマでは十五万円、リベリアでは六十万円ということでございます。
  64. 若松謙維

    ○若松委員 もう一つ、消費税はどうでしょうか。
  65. 寺前秀一

    ○寺前説明員 大変申しわけございませんが、不勉強でございまして、消費税はつかんでおりません。
  66. 若松謙維

    ○若松委員 ちょっと外務大臣にお伺いしますけれども、こういう国際船舶、飛行機もそうなんですが、いわゆる拠点を持たないで世界じゅうをいろいろと移動をしているビジネス、これに対して租税条約等でいろいろ取り決めがあるわけですけれども日本はタックスヘーブン税制は基本的にありません。いろいろ諸外国を回られて、こういう国際船舶の激減等に対して、もっとドラスチックに、消費税の免税とかも含めた、かつ海外の船舶をも日本に引っ張ってくるような、大胆なタックスヘーブン税制等も含めた導入というものが考えられるのではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。
  67. 池田行彦

    池田国務大臣 先ほどから御議論を聞いておりまして、確かに為替の変動というよりも長期的な趨勢としての円高傾向へずっと変わってきたという情勢、それからまた人件費等の要素、それからさらには税制その他もろもろの制度なりあるいは行政の運用、あるいは民間における慣行等々、いろいろな経済条件が重なって海運業が非常に難しい状況にあるということを痛感した次第でございます。  ただし、さらに一般的に申しますと、そのような経済条件の変動というものはあらゆる産業に影響を与えているわけでございまして、そういったことで、例えば空洞化その他の現象も出てくる、それもまた心配もされているということがいろいろな産業部門であるわけでございます。しかし、日本経済全体といたしましては、そのような条件の変化を十分勘案しながら、そういった中でどういうふうにそれぞれの企業があるいは産業が対応していくかということで努力は重ねられてきたと存じます。  ただ海運業の場合は、委員も御指摘になりましたように、船籍をパナマその他のところへ移すだけで簡単にいろいろ大きなメリットが得られる、あるいはデメリットが解消されるという状況でありますので、他の産業に比較しましても一層、先ほどから御指摘のようないろいろな条件の変化というものが難しくしているな、こういう感じがいたします。  そうして一方で安全保障観点からもというお話もございましたけれども、やはりそこのところは、海運業そのものの将来をどうするかという観点を中心としていろいろ我が国としても考えていかなくてはいけないことだと思います。  ただ、その場合に我々として考えなくてはいけないのは、一つは、制度面その他でいろいろな対応をしていくという場合に、やはり国際的なルールとの整合性というものは、これは考えていかなくてはいけないだろうということがございます。それから、国内におきましても、やはり海運業の立場から、例えば税制でどうかということがございますけれども、一方、租税制度全般として、それがまた日本経済社会全体との関係でいろいろ考慮した上でつくられているわけでございますがら、その辺の観点も十分念頭に置かなくてはいけないと思います。  しかしながら、全般として過去十年間で五分の一に激減した、さらにこれから先半減するだろうという情勢は、やはりこのまま放置していいとも思いませんので、委員指摘のようないろいろな面において、制度面あるいは慣行面あるいはマンニングその他の面も含めて、いろいろな工夫はしていかなくてはならないと考える次第でございます。
  68. 若松謙維

    ○若松委員 今外務大臣も、激減に対して非常にそれを深刻に考えていらっしゃる、そのための最善の措置をとる、そうお話をされました。具体的に、今ちょうど安全保障ガイドラインですか、これの見直し作業をしていると私は認識しているのですけれども、例えばそういった観点から、国際船舶登録制度の導入とかそういったものを、この安全保障ガイドラインの見直し等を含めて議論されようとしているのか、そういった観点についていかがでしょうか。
  69. 池田行彦

    池田国務大臣 我が国が非常な緊迫した状態に置かれた場合にどういうふうに対応していくかという点については、いろいろ考えてまいらなくてはいけないと思います。そういった中で、今御指摘のガイドラインの話なんかもあるわけでございますが、そういったところで一体どういうふうな対応をしていくかという点につきましては、これまでも政府として一応のそういった対応策は、方針はなかったわけではございませんけれども、必ずしも十分ではなかったということで、これからさらに綿密な作業を進めていこう、こういうことにしておりますけれども、これからそういった作業が始まるところでございますので、今具体的に、例えば船舶関係についてどうこうということはまだ申し上げられる段階ではないということでございます。
  70. 若松謙維

    ○若松委員 今いきなりの質問で、よく精査されていないと思うのですけれども、やはり方向性として、この安全保障ガイドラインの見直し、外務大臣も何らかの形でかかわってくると思うのですけれども、こういった船舶の激減、これは問題点としてやはり取り上げて議論していく方向でいらっしゃいますか。
  71. 池田行彦

    池田国務大臣 船舶、その中での日本船籍の船がどうこうということについて議論の対象にするかどうかは、ちょっと今の段階では申し上げられないわけでございますけれども、例えば在外邦人の避難なりなんなりをどうするかといったケース、あるいは非常事態になりました場合に、我が国の必要とする輸入物資その他の確保のためにどういうふうな対応をしなくてはいけないかということは、当然考えなくてはいかぬ話だと思っております。
  72. 若松謙維

    ○若松委員 この造船協定最後の質問をさせていただきますけれども、再度確認の意味にもなると思いますが、この国際船舶制度の確立、先ほど議論してきたように、政府におきましてもいろいろと議論されております。私としては、国際船舶登録制度なり国際船舶制度の確立というのは早急にすべきだと思いますけれども、再度、特に安全保障面から見て、この国際船舶制度の確立に対して、どのような姿勢、決意で臨んでいるのか、それをお伺いいたします。
  73. 寺前秀一

    ○寺前説明員 お答え申し上げます。  全世界の海上輸送量の約二割、八億トンの物資が日本発着物資でございます。また、日本は島国でございますし、貿易立国でございますので、外航海運の競争力の確保あるいは外航海運に従事されておられます日本人船員の海技の伝承を図るということは、貿易物資の安定輸送の確保を図るという意味でも、私ども海運行政にとって重要な課題だというふうに考えております。  八年度税制改正等におきまして、国際船舶に関します税制が第一歩としてスタートいたしております。また、この段階にとどまらず、さらに検討を加えるという意味で、運輸大臣の諮問機関でございます海運造船合理化審議会という場で、今国際船舶制度の充実強化を初めとする国際競争力の強化に向けた議論が始められておりますので、関係者の方々の意見を十分に伺いながら、早急に検討を進めていきたいというふうに思っております。
  74. 若松謙維

    ○若松委員 ぜひこの制度の導入、積極的に早期に一生懸命進めていただきたいと思います。  時間が残り少なくなってまいりましたので、商標法条約、この条約に関する質問に移らせていただきます。先ほどTRIPS協定との関係等、他の委員も既にこの条約に関する質問をされましたので、私は具体的な例を取り上げながら質問を進めていきたいと思います。  いわゆる知的所有権保護というところなんです。商標法条約のそもそもの目的というのは、手続的な簡素化とか標準化とか、こういったところが主となるわけですけれども、当然その裏には、知的所有権保護というところがやはり関係してくるわけです。この知的所有権保護自体が特にアジアにおきましては大変問題になっている。特にアジアの発展途上国ですね。他人のデザイン、または商標、こういったものを全く罪の意識もなく盗用している、それで実際にそれを売っている。こういったものが横行しておりまして、それを取り締まっても、法の不備とか、またはそれぞれのアジアの諸国の政府手続の不備とか、そんなところで結局はなかなか改善されていない、こういう状況なんです。  質問を限定いたしますと、まず、海外から日本に対して、いわゆる模造品というのでしょうか、盗用品、そういったものがどの程度出回っていろのか。こういったことについて、特に税関の摘発というものがやはり重要になっていると思いますので、現在の国内における特に海外からの模造品の状況、そういったものについて、大蔵省、警察庁からぜひ聞きたいと思います。
  75. 塚原治

    ○塚原説明員 税関におきましては、従来から関税定率法の規定に基づきまして、商標権等の知的財産権を侵害する物品の水際取り締まりを実施しているところでございます。特に昨年一月からは、TRIPS協定に基づきまして、より一層効果的な水際取り締まり体制を整備したところでございます。  平成七年におきまして、輸入申告などがありました貨物のうち、商標権等の知的財産権を侵害する物品として税関において輸入を差しとめましたのは、件数で申し上げますと一千三百九十五件、点数といいますか貨物の個数で申し上げますと約百十五万点となっております。これらのりち商標権を侵害する物品といたしましては、件数で千百十四件、点数では約三十二万点となっております。
  76. 若松謙維

    ○若松委員 これもちょっと具体例で、国の名前を挙げるのも恐縮ですけれども、非常に関心のある、特にアメリカが大変気にしている中国なんです。中国で、模倣行為というのですか、商標等を簡単にまねしている。それもかなり大規模に行っている。例えば一九八七年ですか、これは日本のある家電メーカーなんですけれども、この商標をつけたラジカセが中国市場に大量に出回っていた、こういった事件がありました。この事件も非常に国際化しておりまして、これには、商社なりがへ香港企業がやっている、また実際に物は韓国がつくっている、こういう、国際的に非常に広がって、このような模造品の把握というのがなかなか難しくなっているわけです。特に中国というのが、そういったことを国内法として取り締まる法律はあるのですけれども条約面ですとほとんどの条約に加盟していない。特にWTOにも中国は加盟していないということで、国際的な批判を受けにくい中国の体質になっているわけです。  そういったことで、日本政府としまして、中国がまさに商標模造の製造国だ、そういった場合にどのように対処してきたのか、また今後どのように対策を講じようとしているのか、そういった点から御説明願います。
  77. 市川幹雄

    ○市川説明員 中国を含みますアジアを中心とした途上国におきまして我が国企業の製品の模倣が行われておる、そういう問題が昨今非常に大きくなってきておることは、我々としても承知しておるわけでございます。  もとより、模倣被害の全貌といいますか、そういうものの把握は困難でございますが、私ども、個別企業あるいは工業会等からヒアリングをしております。その結果によりますと、商標や意匠、デザインでございますが、こういうものを中心として多数の模倣事例が報告されているところでございます。このため、特許庁といたしましても、関係省庁等と協力しつつ、アジア諸国の二国間協議あるいはAPECの場等におきまして速やかな改善を働きかけていく所存でございます。また、あわせまして、これらの国々の知的所有権あるいは工業所有権の水準を引き上げていくということが非常に重要であるという観点から、こういう途上国に対しまして、人材育成だとか情報化あるいは特許の審査、調査の協力等を支援してまいる、そういう所存でございます。  具体的に申し上げますと、WTOTRIPS協定が履行されます二〇〇〇年までに、アジア太平洋諸国の途上国から官民合わせまして千人程度の研修生を我が国に招く予定でございます。また、各国工業所有権庁、特許庁の機械化あるいは情報化に積極的に協力してまいる所存でございます。さらに、日本特許審査の結果を各国提供することによりまして各国特許の迅速的確な権利付与に協力してまいる、こういうような支援策を講じてまいる所存でございます。
  78. 若松謙維

    ○若松委員 最後の質問とさせていただきますけれども、ちょうどゴールデンウィークに私もアメリカのワシントンDCに行きまして、日米国会議会議というのがありまして、やはりアメリカの国会議員のトレード上の最大の関心は中国知的所有権ということで、かなり不満を言っておりました。  ついては、特に中国に対して-台湾はアメリカと例えば台米著作権保護協定とかそういうものを結んでそれなりの努力、また法的措置をとっているわけですけれども、これは外務大臣にお伺いしたいのですけれども、こういう知的所有権保護というところを目的としてやはり日本はアメリカと共同歩調をとるべきではないか、そういうことも検討していいのではないかと思うのですけれども外務大臣、どのようにお考えでしょうか。
  79. 池田行彦

    池田国務大臣 この知的所有権も含めまして、いろいろな経済行為につきまして国際的に秩序ある仕組みがつくられるということ、これは望ましいことでございますので、そういった努力を進めていく上におきまして、米国は基本的に申しますとやはり中心的な勢力でございましょうから、私どもも他のそういったことに積極的な国々と協力しながら進めてまいりたい、こう思っております。  ただ、具体的に、それでは中国との関係あるいは台湾との関係でどうかという点でございますけれども台湾関係につきましては、御承知のとおり、我が国は非政府間の実務的な関係として進めていく、維持していく、そういう基本的な立場にございますので、そういった立場を踏まえながら一体どういう対応が適切かということで考えてまいりたいと思います。  それから、中国との関係につきましては、確かに今知的所有権の問題をめぐって米国がいろいろ中国に対しまして働きかけ、場合によってはいろいろな措置をとろうとしていることは承知しておりますが、我が国としても基本的に、中国がそういったグローバルな秩序の中に入ってくるということ、これは歓迎するところでございます。けれども、具体的な中国に対する対応においては、また我が国我が国としての考え方もあり、米国と必ずしも一致しない面もあるわけでございます。  しかしながら、知的所有権についてはそうでございますが、WTOにつきましては、我々は基本的に、中国が加盟の申請をしておりますから、それを支持する立場でございます。しかし、加盟を実現するためには、やはりWTOとしての基準と申しますか、成就しなくてはいけない条件がございますので、そういった条件を、クライテリアをクリアしていく上において中国が払っていく努力に、我々としてお手伝いといいましょうか、アドバイスその他できることはやっていく、こういう姿勢で臨んでいるところでございます。
  80. 若松謙維

    ○若松委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。
  81. 関谷勝嗣

  82. 穀田恵二

    穀田委員 日本共産党の穀田恵二です。  私は、造船業の発展のためという協定の趣旨には当然賛成です。同時に、造船業の発展を阻害する日米合意もこの際大胆に見直しを図ること、このことを提起したいと思っています。  それは、佐世保重工業のドル箱である第三ドックをわずか一週間前の通告によって米軍が無料で優先使用する問題です。  防衛施設庁、佐世保重工の第三ドックに関する日米合同委員会の合意及び佐世保ドライドック地区施設番号五〇三〇における在日米軍提供施設の日本政府との返還使用協定の概要を説明してください。
  83. 多田孝基

    ○多田説明員 御説明申し上げます。  第三ドック返還使用協定につきましては、当住SSKから造船能力の拡充のため第三ドックの泥還要望があり、昭和四十三年四月、日米合同委員会において、地位協定第二条第四項(b)の適用ある一時使用施設として提供する、第三ドックが使用できない場合、同等の他のドックを代替として使用できるとの条件で返還が了承されたものであります。  返還に当たりましては、米海軍佐世保基地司令官、佐世保防衛施設事務所長およびSSK三者による返還使用協定締結したものでございまして、その概要は、在日米軍は実際の使用開始前少なくとも七日の事前通知を条件として第三ドックまたは代替ドックを無料で優先使用できる、使用する場合には電力料、水道料、クレーン料等、またドック排水に係る諸費用及び入出渠諸費用を支払う、道路の自由、無障害無制限通行できるというものでございます。
  84. 穀田恵二

    穀田委員 要するに、今お話があったように、少なくとも七日の事前通知を条件として、さらに、その内容によれば、第三ドック返還後下記の費用、つまり減価償却費、諸税、保険料云々かんぬんとやって、それらを含んで無料で優先使用を許可されるということになっているわけですね。  この第三ドックは、御承知のとおり五万トンの大型船を建造し、さらに修理できるものですよね。現に大型船の改修などであいた期間がないほどの利用状況にある。それぐらい利用されている。ところが、ことし二月に入り、米軍から、ベローウッドの改修をするために、この協定に基づき優先使用の通告があった。期間は五カ月だというのですね。佐世保重工業にとってはこの五カ月は当然大きな損害となります。ここに佐世保重工業が作成した福岡防衛施設局長あての「第三ドック明け渡しの影響」という報告書があります。それによりますと、二つありまして、影響は次のとおりだ。一つは、修繕部門に与える影響は合計で二百六十八億円、さらに、新造船事業部門に与える影響を含めると合計で三百六十三億円とはじき出しているのですよね。  こうした日米合意というのは、まさに日本造船の健全な発展を阻害するものでしかないと私は言って過言ではないと思うのですね。だから、こういうやり方ないしはこういう協定というのは、まさしく普通に見直すべきではないかというふうに思うのですが、外務大臣の認識をお伺いしたいと思います。
  85. 池田行彦

    池田国務大臣 返還使用協定は、佐世保防衛施設事務所長、そして佐世保基地の米軍司令官、それから佐世保重工と、この三者の間で、現地レベルにおいて作成されたものでございまして、外務省といたしましては、これは御答弁申し上げる立場にないわけでございますけれども、しかし、基本的に、外務省としては在日米軍と地元関係者との間の良好な関係が維持されることを好ましいと考えておりまして、そのための関係者話し合いが大切だと考えております。  なお、本件につきましては、その後いろいろございましたが、関係者間の話し合いで、佐世保重工をプライムコントラクター、主契約者として佐世保重工に修繕が発注されるということで円満裏に解決した、このように承知しております。
  86. 穀田恵二

    穀田委員 先ほど説明がありましたように、これはもともと昭和四十三年四月十一日の日米合同委員会で合意された、返還に係る合意に基づいて決まっているのですね。その概要の四、つまり「使用等の詳細については、現地段階において調整する。」これはこう書いていますよ。問題はそこなのですね。日米合同委員会において合意された内容に基づいてやられているということが大事なのですね。だから私は外務大臣にそういうことについて、逆に言えば、当然現地の問題だというふうなことじゃなくて、もともと出発点がそこにあるのだからきちんとしなさいということを言っているのですよ。  ではもう一度、今円満になっていると言っていますが、防衛施設庁に聞きますけれども、返還後このドックは佐世保重工に払い下げられて、所有権は佐世保重工業にある。米軍がドックを使用する間の借り上げ料及び損害に対して防衛施設庁はどのような措置をとっていますか。
  87. 多田孝基

    ○多田説明員 御説明申し上げます。  ドックの使用に係る返還使用協定におきましては、在日米軍は、第三ドックまたは代替ドックを減価償却費、諸税、保険料を含み無料で使用できるとなっております。これ以外の諸費、例えば電力料、水道料、クレーン料、またドック排水にかかる諸費用及び入出渠に要する諸費用などについては米側負担となっているところでございます。  SSKに対する借り上げ料及び営業上の損失補償につきましては、返還使用協定により在日米軍はドックを無料で使用できることになっておりまして、そのような措置をすることはできないこととなっております。
  88. 穀田恵二

    穀田委員 今お話があったように、そういうことでできないようになっています。そこが問題なのですね。そう思いませんか。だから、余りにもひどい話であって、ともかく無料の取り決めをしているというところをさっきから私は問題にしているのですよ。昭和四十三年に、どさくさにと言ったら言い方は悪いけれども、そういうことを決められて、さらに払い下げのときの内容として無料だと。今考えて見ると、こんな負担が出てきて、実際には無料でやられて借り上げ料も払われない、こういうことがいいのか、こんなひどい話はないのじゃないか。  だから、造船業の健全な発展という場合、こういった形で日米の合同委員会における合意に基づいてやられていることなのだから、造船協定の趣旨である造船業の健全な発展というものを提起した責任者として、この返還使用協定の見直し自身を検討すべきじゃないかというふうに私は思うのですが、大臣いかがでしょうか。
  89. 池田行彦

    池田国務大臣 返還の際にはもろもろの状況条件を考慮の上でそのような条件を付されたわけでございますし、また、SSKにおかれましても、そういったことを十分勘案の上、合意をされ、またその返還を受け、現地における三者間の協定締結されたものと承知しております。  しかしながら、現在の状況において一体どう考えるべきかという点につきましては、これは、佐世保重工側においてもいろいろなお考えがあり、御要望があり、そしてまた米側においてもその辺も十分勘案しながら、先ほども申し上げましたような円満な解決に至ったわけでございます。  しかしながら、将来に向かって佐世保重工の側において協定そのものの改定ができないかという御要望があるということは承知しておりますので、そのことはそのこととして米側にも伝え、さあこれからどういたしますか、これはまず直接の当事者でございます米側と佐世保重工との間でのいろいろな話し合いというものが先行すべきものではないかと考えております。そういったものも考えながら、将来どう対応するか、それはもとより佐世保重工の御事情あるいは造船業の発展のためにといった観点からの考慮が大切でございますけれども、同時に、我が国安全保障上どういうふうに考えるか、この観点も忘れるわけにはいかぬわけでございますので、いろいろなことを考えながら将来適切に対応してまいる所存でございます。
  90. 穀田恵二

    穀田委員 今ありましたように、最初は円満な解決が図られたものとしてやられている。しかし、そういう出発点でありながら実際はどうなっているかというと、例えば今お話ししましたように、福岡の防衛施設局長にお話が出されたように、これほどの被害があるということで、円満じゃない事態が事実生じているということでしょう。これは明らかですよ。  その上で、最後に今大臣からお話があったように、そうは言ったとしても、現地の問題だということとあわせて、もう一つの角度は日米の安全保障上の問題があるからだ、こうきましたね。ですから、肝心なところはそこなのですよ。なぜそういったものについてまで我々が、民間の会社が負担しなければいかぬかという話をしているのですよ。  しかも、さっきあったように、もう一度聞きますけれども、現地の問題だとはいうものの、もともと昭和四十三年四月十一日に日米合同委員会において合意された内容に基づいてやられているのでしょう。そこは確かでしょう。
  91. 折田正樹

    ○折田政府委員 四十三年四月十一日、日米合同委員会の合意の中で、「使用等の詳細については、現地段階において調整する。」という概要が入っているというのはそのとおりでございます。
  92. 穀田恵二

    穀田委員 ですから、私は、そういった内容について、少なくともほかのところだって借り上げ料を全部いろいろなことで払っている例がたくさんあるわけだから、せめてそういうことはしなさいと。そして、造船業界がそういった問題について、具体的に言えば二百億だとか三百億だとかという形で被害を受けているという問題についても出されているときに、そういう一方的なやり方はけしからぬのじゃないかということについては、当然それは是正すべきだと思うのですね。私はそのことを改めて強く要求しておきたいと思います。  最後に、造船協定について一つだけ質問したいと思っています。  協定政府助成措置の原則禁止とダンピング建造契約の防止のための措置規定しているわけですが、世界造船の取引の中で、この二つの措置をとらなければならない問題があったからこうした措置をとるようになったわけですね。特に日本造船業においてこうしたことがあったのかどうかについて伺いたいと思います。
  93. 野上義二

    野上政府委員 御承知のように、船舶の取引というのは、実際の買い手が存在しない国、例えば便宜置籍船等のような国がございまして、そういった形で取引されることを踏まえまして、個々に継続的に輸出入が行われるものでもございませんし、そういった意味で、通常の補助金に対する相殺関税措置でありますとか、通常の不当廉売に関するダンピング措置というのが適用しにくい分野であるということで、こういった取り決めをつくったわけでございます。  御指摘のように日本造船業に関してこういった問題があったかどうかという点でございますが、実はこれは一九八六年に米側の造船業界から、日本、西独、ノルウェー、韓国その他の国が公的な助成を行っているのではないかという話で、米国の三〇一条の提訴がございました。日本につきましては、その中にいろいろな、もう終わってしまった措置であるとか、米国が加入してはいないけれどもOECD各国間で合意されているような輸出信用とか、そういうような問題がございまして、いろいろ関係国で協議した結果としてこういった多角的な取り決めをつくって、そういった米国の一方的な提訴とかいった形ではなくて、多角的な枠組みのもとでそういったような事態に対応していこうということになったわけでございます。具体的に日本措置でどうこうということではございません。
  94. 穀田恵二

    穀田委員 時間が来ましたので、終わります。
  95. 関谷勝嗣

    関谷委員長 これにて質疑は終局いたしました。     ―――――――――――――
  96. 関谷勝嗣

    関谷委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決いたします。  まず、商業的造船業における正常な競争条件に関する協定締結について承認を求めるの件について採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  97. 関谷勝嗣

    関谷委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。  次に、商標法条約締結について承認を求めるの件について採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  98. 関谷勝嗣

    関谷委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました両件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  99. 関谷勝嗣

    関谷委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕      ――――◇―――――
  100. 関谷勝嗣

    関谷委員長 次に、日本国自衛隊アメリカ合衆国軍隊との間における後方支援物品又は役務相互提供に関する日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定締結について承認を求めるの件を議題といたします。  政府から提案理由説明を聴取いたします。外務大臣池田行彦君。     ―――――――――――――  日本国自衛隊アメリカ合衆国軍隊との間に   おける後方支援物品又は役務相互提供   に関する日本国政府アメリカ合衆国政府と   の間の協定締結について承認を求めるの件     〔本号末尾に掲載〕
  101. 池田行彦

    池田国務大臣 ただいま議題となりました日本国自衛隊アメリカ合衆国軍隊との間における後方支援物品又は役務相互提供に関する日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定につきまして、提案理由を御説明いたします。  政府は、日本国自衛隊アメリカ合衆国軍隊との間における後方支援物品または役務相互提供に関する枠組みを設けることにより、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約の円滑なかつ効果的な運用並びに国際連合を中心とした国際平和のための努力に寄与するため、日本国自衛隊アメリカ合衆国軍隊との間における後方支援物品又は役務相互提供に関する日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定締結することにつきアメリカ合衆国政府交渉を行った結果合意に達しましたので、平成八年四月十五日に東京で、先方モンデール駐日米国大使との間でこの協定に署名を行うに至った次第であります。  この協定は、日米共同訓練、国際連合平和維持活動または人道的な国際救援活動に必要な後方支援において提供される物品または役務自衛隊と米軍が相互主義の原則に基づいて提供する枠組みを設けるため、その提供、決済、移転の制限等の基本的な条件を定めるものであります。この協定は、十年間効力を有し、その後は、いずれか一方の当事国政府協定終了の意思を通告しない限り、順次十年間自動的に効力を延長されるものとされております。  この協定締結は、自衛隊と米軍との間の緊密な協力関係を促進し、もって日米安全保障条約の円滑なかつ効果的な運用及び国際連合を中心とする国際平和のための努力に積極的に寄与するものと考えられます。  よって、ここに、この協定締結につき御承認を求める次第であります。何とぞ御審議の上、本件につき速やかに御承認いただきますようお願いいたします。
  102. 関谷勝嗣

    関谷委員長 これにて提案理由説明は終わりました。     ―――――――――――――
  103. 関谷勝嗣

    関谷委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。玉沢徳一郎君。
  104. 玉沢徳一郎

    ○玉沢委員 日米物品役務相互提供協定について質問させていただきます。  昨年の五月、私は、防衛庁長官としましてアメリカに参りまして、日米防衛首脳会談に出席をいたしまして、この物品役務相互提供協定、ACSAを、我が国としましても締結に応ずるということを表明いたしまして、この通常国会にできるだけ間に合わせる、こういうことを約束して帰ってまいったわけでありますが、その後、池田外務大臣の指導によりましてこの協定が成立をいたしたわけでございます。この場をおかりいたしまして、大臣に対し、心から敬意を表する次第であります。  そこで、この協定米国から提起されましたのは昭和六十三年でございまして、今日まで八年かかっておるわけでございます。今日まで東西冷戦時代からポスト冷戦時代へと大きな情勢の変化があったわけでありますけれども、このACSAの締結によりまして今後日米安保体制の運用上の前進が図られる、こういうように評価をするわけであります。  今まで考えておりましたのは、日米安保体制が何を最大の課題としてやってきたかと申しますと、やはり東西冷戦時代のソ連の脅威に対していかに対抗するか、こういうことであったと思うわけでありまして、幸いにしまして日本も国土の防衛に全力を挙げ、全体として自由主義陣営の安保体制に大きな貢献をした、こういうように評価するわけであります。ポスト冷戦時代を迎えまして、日米安保体制の役割といいますのは極東有事、安保の第六条になるわけでございますが、そちらの方に重点が参りまして、アジア太平洋地域の平和と安全のために大きく貢献をする、こういう形でこの前もこの両国の安全保障共同宣言において公約をされたわけでありますから、そういろ線に沿いましてACSAの役割が大きくなっていくと。  そうした観点から申し上げてまいりますならば、東西冷戦時代におきましても、あくまでも抑止としての日米安保体制の役割があったわけでありますが、極東有事におきましても、あくまでも優先的には極東の有事の抑止を最大の目的としてやっていかなければならぬのではないか、こういうふうに考えるわけでありますが、外務大臣の見解をお聞きいたしたいと存じます。
  105. 池田行彦

    池田国務大臣 玉沢委員、昨年防衛庁長官としてワシントンに赴かれ、日米防衛首脳会談におきまして、両国の安全保障関係はもとよりでございますが、国際平和のためにいろいろ意見の交換をされ、またいろいろな措置をされました。その中で、今回御審議をお願いしておりますACSAの協定につきましても、日本としてこれを締結したい、そしてこの通常国会に提出する方針であるということを明確に先方に申し入れました。その際私も、その当時自民党の国防関係の部会の一員といたしまして同じ時期に米国へ参りまして、米国のいろいろな関係方面とも話をしたことを今思い浮かべ、そしてまた、当時の玉沢防衛庁長官のいろいろな御労苦に対して、私から改めて敬意を表させていただく次第でございます。  さて、ただいま玉沢委員から御指摘ございましたように、冷戦期、我が国があのような東西対立の厳しい状況の中にありましても平和と安全を維持することができた、そしてまた、アジア太平洋地域の安定のためにも貢献することができた、これはお説のとおり、日米安保条約、それの果たした大きな役割であろうと存ずる次第でございいます。  そして、冷戦の終えんいたしました今日、日米安保体制というものの必要性、そうして有効性というものは依然として高いものがある、このことは、先般の日米首脳会談においても改めて確認され、内外に向かって宣言されたところでございますが、その際、この安保体制の持つ意味というのは、もとより我が国の安全のための役割はございますが、それと同時に、極東地域さらにはアジア太平洋地域全般の平和と安定に資するという、そういった側面が非常に大切になった、そのような委員の御指摘は私も同じように認識しているところでございます。  さて、冷戦時におきましても、一番の目的というのは、事が起こってどう対応するかもございますが、まずは事が起こらないように抑止をしていく、これが大切であった。しかし、そのことはこれからも同じであって、極東地域におけるいろいろな望ましからざる事態が起きないように、そういった意味でこの安保体制が抑止の役割を果たしていくことが重要であるという御指摘は、私もまさにそのように考える次第でございます。
  106. 玉沢徳一郎

    ○玉沢委員 そこで、冷戦構造時代における事態は、想定されるものは極めて明確なものがあったと思うわけでございます。つまり、日本が侵略される可能性といいますものは、これは世界大戦に匹敵するような大きな戦争が想定される。極東ソ連軍が作戦行動をするためには、日本の三海峡を通航するということを、それを自由にたらしめるという観点から日本に対して何らかの軍事行動をとる、こういうことが懸念された。それにどう対処するかということで今日まで来た。  しかし、そうしたソ連の脅威というものが東西冷戦の終結によって減少したということになってまいりまして、しからば、日米安保条約のあり方、必要性というものはどういう観点から評価されるかといいますならば、依然として極東においては不確実、不安定な状況が現出しておって、それに平和と安全というものをこの地域において確保するために日米安保条約というものが必要であるという認識に立って共同宣言が生まれた、こういうふうに考えてよろしいと思うのであります。  ただ、ポスト冷戦下の今日におきましては、特定の脅威とかあるいは紛争というものがどういうような形で起こるかということがなかなかはかり知れない。したがいまして、どのようなケースが行われるかということをまず検証していかなければいかぬ、それにどう対処するか、こういうことでガイドラインの見直しと検討ということに入っておるわけでありますが、ただそこで、とかく今回の日米安保再確認としての日米安全保障共同宣言、それと同時に、今回締結をされましたACSAによって、内外に一つの懸念を与えているということも私どもは十分考えなければいかぬじゃないか。特に中国でありますけれども、これは日米軍事同盟の強化であるということで、非常に反発をいたしているように伺っております。  先般アメリカに参りました際におきましても、ゴールデンウイークの際に安全保障調査会でアメリカ側に参りまして話し合いをしたわけでございますが、米国防大学のモンタペリエ教授が、中国の懸念といいますのは、日本は、日米安保体制のもとに軍事力を強化していって、そしていずれ軍事力が十分強化した時点において米国と離反をしまして、そして日本の軍事力をもってアジアに対して軍事行動をとるんではないか、こういうような懸念を持っておるというんですね。  これは、我々の立場からいいますならば、そういう懸念はない、こう申し上げてよろしいと思うわけでございますけれども、ただ、歴史的な経験とか、それから相手に対する不安とか疑念とか、こういうものがとかく紛争の大きな要因になるということを考えた場合におきまして、日本安全保障体制の再確認において十分なる説明をしておく必要があるんじゃないか。中国が核実験をし軍事力の拡大を進めているような印象を受けるわけでございますけれども、いかなる意味におきましても、この日米安全保障体制の強化ということの口実をもって、彼らがみずからの軍事力を強化するという理由づけにさせてはならぬ、こういうふうに思うわけでございまして、そういう観点から、我が国の外交的な努力、明確なる説明を東南アジアの国々も含めて行う必要があるんじゃないか、こういうふうに思うわけでありますが、大臣の御見解を承りたいと思います。
  107. 池田行彦

    池田国務大臣 委員指摘のとおり、冷戦後の今日においては、アジア太平洋地域において一体いかなる紛争があり得るか、あるいはどういった平和を脅かしかねない要因があり得るかということにつきまして、なかなかこれと特定しがたい状況になった、そういうことがございます。そういったことがございますだけに、我が国を含め、それぞれの国が安全保障体制をつくります上で十分な配慮を各方面しなければいけないことがございますし、また、それを逆に申しますと、それぞれの国の自国の安全を守るという努力が違った感じでとらえられるということ、そういったおそれがあるんだと思います。  もとより、我が国安全保障方針そして日米安保体制というものは、専ら我が国の安全を守り、そうして極東地域の平和と安定を確保していく、そういう観点からのものでございまして、決して周辺の諸国に不安を呼ぶようなものではない、これはもう当然のことであるわけでございますけれども、先ほど御指摘のございました、また私も申しましたような状況があるだけに、そういった我が方の意図を十二分に説明し、各国の間違いのない御理解をちょうだいするということは肝要だと考えております。  そういった観点から、日米安保共同宣言自体におきましても、御指摘のありました中国との関係については、これは日米ともに平和な友好関係を守っていくということは、維持していくことは大切だということを明記しているわけでございますし、それからまた、我が国といたしましても、いろいろなチャンネルを通じまして、その趣旨を明らかにしていっております。私自身も、銭其シン外相との会談の席上、その趣旨を明確にお伝えした次第でございますし、この共同宣言が発出された後には、直ちに外交ルートを通じましてそのことも説明した次第でございます。  今後とも、周辺諸国においてそういうような我々の全く考えていない点を御懸念されないようにあらゆる努力を傾注してまいる所存でございます。
  108. 玉沢徳一郎

    ○玉沢委員 さらに、我が国の国内におきましても、今回のこの共同宣言を受けて、同盟の義務を果たすためには、憲法を改正したりあるいは集団的自衛権の再解釈をして、そしてさらに軍事行動がともに可能になるようなことを考える向きがあるのですね。しかしながら私は、同盟の相手のアメリカ側といろいろと接触をしてみてまいりますと、アメリカ側は決して憲法改正であるとか集団的自衛権の再解釈、こういうものを求めておるとは考えられません。ペリー国防長官も明確に言っておりますように、憲法の範囲内で日米安保体制の協力ということをすべきである、こういうように言っておるわけですね。  私は、冷静にアジアの情勢というものを考えた場合におきましては、確かに個々の紛争の余地はありますけれども、ソ連の、強大なる超大国の軍事力というものと匹敵をする軍事力を持っておる国が極東には存在しない。いずれの国も、かつてのソ連のように、日本に強大な軍隊を上陸をせしめて日本の国土の一部を占領する、そうした能力はないわけですね。  ただ、今後の懸念はあると思うのですよ。それは、中国の動向は、アメリカ側の方でも言っておったわけでありますけれども、ソ連からの軍事力の導入といいますか軍事技術の導入を相当図っている向きがある。だから、ソ連のかつての軍事技術中国がそのまま受け入れて軍事大国になった場合においては、これは日本にとってもアメリカにとっても大きな悪夢になる、こう言っておったわけでありますが、しかしながら、現在の状況の中におきましては超大国の軍事力ではない。むしろ日本としましては、今後中国に対しましても、今外務大臣がおっしゃったように、日本の意図を明確に、平和と安全のために努力をするんだということを明確にした上で、アジアにおいては軍拡の道ではなくしてむしろ集団的な安全保障体制の枠づくりという方向努力をしていくということが一番大事ではないか。  そういう観点からいいますならば、憲法改正をしたり集団的な自衛権の再解釈をするということよりは、憲法の範囲内で日本の日米安保条約の体制というものを、相協力する体制というものをつくっていきながら、アジアにおける集団安保体制の確立の方向に向かって努力をするということが大事ではないか、こういうふうに考えますが、大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
  109. 池田行彦

    池田国務大臣 政府といたしましては、当然憲法の枠内で、そしてまた集団的自衛権というものは、国際法上我が国は当然のこととして有してはいるけれども、それの行使は憲法の容認せざるところである、そういった従来の政府の憲法解釈のもとで今後のいろいろな努力をしていく所存でございますし、また、これまた委員からも御指摘もございましたように、米側にも、憲法を改正しろとか集団的自衛権についての我が国方針を変えろといったような声は全くないということを明確にしておきたいと存じます。  さて、そして、かつての超大国が持っておったような強大な軍事力が現時点において我が国の周辺地域に存在しないというのはお説のとおりだと思います。そしてまた、将来に向かってもこの地域の平和と安全を維持するためにはどうやっていくかということを考えます場合には、お互いに、先ほども指摘のありましたような不安といいましょうか疑心暗鬼のもとに軍拡競争というような状況を現出するというのは、これは最も望ましくないことでございます。おっしゃるとおり、むしろお互いの信頼関係を醸成して、そして平和と安定を確保していくということが肝心だと思います。  そういった意味で、我が国といたしましては、中国はもとよりその他の国々、アジアの諸国に対しましても、あくまで平和に徹していくという我が国方針を明確に示していきながら、そしてまたその地域の国々との間の安全保障対話を進め、その信頼関係を進めてまいりたいと思います。  そういった観点から、ASEAN地域フォーラム等におきましてそういった努力が積み重ねられておりまして、昨年からことしにかけまして、我が国はインドネシアと共同主催をいたしまして、そういった安全保障関係の信頼醸成の関係の会合を持ったところでございますし、今後もそういった努力は進めてまいりたい。それからさらに、北東アジアの地域におきましても、今民間レベルでそういった信頼関係を高めていくためのフォーラムが動いておりますけれども、こういったものもさらに広め、さらには将来的には政府レベルでもそういったものをつくってまいりたい、こう考えております。  もとより、二国間の関係においてもそういった安保対話、信頼醸成への努力は傾注してまいります。
  110. 玉沢徳一郎

    ○玉沢委員 日米安全保障共同宣言は、日米が日米安保を基礎としましてアジア太平洋地域の平和と繁栄を約束する、そういうことを宣言をいたしておるわけでございます。そこで、具体的に、日米安保条約を基礎として、じゃ個々のケースにどう対処していくかということが、今あえて言いますならば、朝鮮半島の情勢にどう対処していくか、こういうことだと思うのですね。このガイドラインの見直し等におきまして、紛争のさまざまなケースを想定してどう対処するかということは防衛庁の方で今検討する、しかし同時に、そうした紛争、有事をいかに事前に抑止していくかということも日米の課せられた大きな役割だ。予防外交にいかに万全を期すか、こういうことだと思うのですね。  そこで、個々に質問するわけでございますけれども、今、北朝鮮のあえて言いますならば暴発を防ぐという観点からそれぞれの外交努力がなされておるというふうに理解をするわけでございますが、今、四カ国協議が提案をされておるわけでございます。ペリー長官は我々に対しまして、この四カ国協議の趣旨というものは何か、これはやはり同一の民族でありますところの南北の両政府の会談を実現をすることである、そのためにアメリカと中国は保証人の役割を果たすのだ、こういうように説明をいたしておりました。これに対して、北朝鮮側の方としましては、これに一応は応ずるということは意思表示をしたようでありますけれども、若干待ってもらいたいというような状態で、決して拒否はしておらない。  そこで、こうした四カ国協議を進めるという観点からだと思うわけでございますけれども、先般、今月の中旬に次官級協議の会合が、日米韓で、韓国の済州島で行われたわけですね。そこで、食糧援助は当面見合わせるという申し合わせをいたしておるようでございます。これは、察するところ、やはり南北の会談、四カ国協議というものに導くための一つの外交的手段かと受けとめておるわけでございますが、そうした内容の見通しですね。  また一方においては、六月、来月からアメリカと北朝鮮は二カ国間の協議にも入るというようなことも言っておる。こうした中におきまして、我が国がどのような外交努力を展開をしていけばいいか。食糧の問題についても、これは極めて重要な問題だと思うのですよ。単にこれは、北朝鮮が困っているからやればいいというだけのことではなくして、外交的に北朝鮮のソフトランディングをさせるために食糧問題もどう活用していくか、こういうことにもなるかと思うわけでございまして、その辺の内容等について、外務大臣からの御見解をお伺いをいたしたいと思います。
  111. 池田行彦

    池田国務大臣 御指摘のとおり、アジア太平洋地域の平和、安定を守っていくためにはいろいろな努力が必要であろうが、何しろ事前抑止、予防外交が大切だというのは、私どももそのとおりに考えております。そういった観点から申しまして、やはり朝鮮半島がどうやって将来に向かって安定の方向へ進んでいくかということは非常に大きな関心事でございます。現在我が国は、米国並びに韓国の大統領、両大統領によって提起されました四者協議というものが早期に開催され、そして、そういった中から南北間の対話の道が開けていくことを強く期待しておるわけでございます。  委員指摘のとおり、四者協議というのは、かつての朝鮮戦争のいわば当事者であった四者が話し合いまして、ともかく軍事面といいましょうか、そういったすぐれて安全保障にかかわる面における協議をしようというものでございますが、その後には当然のこととして、経済社会その他の面も含めた半島の安定をどうするかといった努力あるいは作業が必要でございます。その際一番肝心なのは、何といいましても当事者でございます南北の対応でございます。しかしながら、我が国といたしましても、この地域に非常に大きな関心を有する立場から、可能な、また必要な努力なり寄与はしていかなくちゃならない、こう考えておる次第でございます。  先般、済州島で行われました日米韓三国の次官級の協議でございますが、ここにおきましても、ただいま申しましたような視点から、まずは四者会談が実現し、これを通じて半島における緊張緩和の道が開かれることを期待する、そういったことで、この三国が今後とも協調していこうということで認識の一致あるいは合意が見られたわけでございます。  今、この四者協議につきまして北朝鮮は、おっしゃいましたとおり、明確な拒否ということは言っていないわけでございますが、ただ、これに入ってくるのかどうか、そこのところはまだ不明確な状態にございます。我々としては、何とかそこへまず入れていきたい、そういった観点から、今おっしゃいました、我が国としてもとり得る可能性のあるいろいろな事柄、あるいは北朝鮮我が国に期待しているかもしれないことにつきましても、当面はまず四者協議に北朝鮮が入っていく、そういったことを求めている観点から、今北朝鮮が仮に我が国との間で直接的な対話をしていくということで大きなステップを我が国に求めたとしても、これは、それに応ずることは今の段階では差し控えた方がいいだろう、こういうことで対応しております。  なお、御指摘のございましたように、米国北朝鮮との間で二国間の話し合いをということでございますが、これは、御承知のとおり、遺骨の問題その他でこれまでもいろいろあったわけでございます。そういった問題については、米国は二国間の話を今もある程度やっておりますし、この六月にという話もあるわけでございます。しかし、基本的に、やはり四者協議、そして南北対話を中心にしてということは、米国も、我が国あるいは韓国と同じように考えている、このように認識しているところでございます。  そして、御指摘のございました食糧援助の問題につきましては、いろいろな話がございますけれども、現在我が国に対して要請があるわけではございません。そしてまた、昨年行われました米の援助というのは、御承知のような非常に特殊な状況条件のもとで特例的に行ったわけでございますので、現在我が国はそういったことを考えているわけではございません。
  112. 玉沢徳一郎

    ○玉沢委員 北朝鮮情勢については、本日の委員会の冒頭におきましても亡命事件等についての見解が示されたわけでありますけれども、先般はミグ19のパイロットも亡命してくる、また、いろいろな情勢の変化等もこういう事態が続けば今後起こり得ると思うわけでございまして、これにしっかりとした対応をするということを大臣に要望いたしまして、質問を終わります。ありがとうございました。
  113. 関谷勝嗣

    関谷委員長 田中直紀君。     〔委員長退席、玉沢委員長代理着席〕
  114. 田中直紀

    ○田中(直)委員 この協定締結につきましては、外務大臣の御説明のとおり、自衛隊と米軍との間の緊密な協力関係を推進する、あるいは日米安保条約の円滑な運用を果たす、そして国際貢献に積極的に参加し、寄与できるのではなかろうか、こういうことで高く評価しておるところでございます。  この協定の内容と運用につきまして御質問をいたしたいと思いますが、さきの日本の防衛白書におきまして、自衛隊が米軍と共同訓練を行ったものは、平成六年度の実績でありますが、全部で二十一回になっております。これまでの共同訓練時におきましては、物品あるいは役務の米軍への提供というのは、防衛事務次官通達による措置によって行ってきたということでありますが、本協定締結されて対象となる物品あるいは役務のこの三年間の種類あるいは規模、金額等、具体的な内容についてまずお伺いをいたしたいと思います。
  115. 荒井寿光

    ○荒井政府委員 最近三年間の実績を申し上げますと、日米共同訓練時の燃料の買い付けにつきましては、平成五年度に約二百キロリットル、平成六年度に約七千五百キロリットル、平成七年度に約七千二百キロリットルでございます。このほかに、硫黄島で実施されております米海軍艦載機夜間離着陸訓練に必要な関連物資及び人員の輸送も自衛隊法百条に基づいて行っておりまして、そちらは、平成五年度二十七回、六年度四十回、七年度三十四回でございます。
  116. 田中直紀

    ○田中(直)委員 今回の協定におきましては、付表で物品役務対象といたしておりますが、こういう分類で考えますと、どの程度の形で分類できるわけですか。
  117. 荒井寿光

    ○荒井政府委員 今回のACSAの関係で、分類は、協定の付表にございますが、食料、水、宿泊、輸送、燃料・油脂・潤滑油、被服、通信、衛生業務、基地支援、保管、施設の利用、訓練業務、部品・構成品、修理・整備、空港・港湾業務、このように分類されております。
  118. 田中直紀

    ○田中(直)委員 その分類において、どういう実績があったかということをちょっとお教えください。
  119. 荒井寿光

    ○荒井政府委員 この分類ごとの具体的な実績、あるものとないものとございますが、燃料などにつきましては先ほどお話しした数字でございますし、輸送もお話しした数字でございます。  それよりほかのものにつきましては、必ずしも従来行われておりませんでしたので、データとして今持っておりません。
  120. 田中直紀

    ○田中(直)委員 そうしますと、大体この分類でいきますと、実績が余りなかったといいますか、そういう状況になる、こういうことで理解してよろしいわけですね。  次に参りますが、本協定締結で、自衛隊と米軍との間でこれから相互に共同訓練ができるわけでありますけれども、法的な問題の追認というのみならず、日米共同訓練におきましては、防衛白書で述べられておりますけれども、「自衛隊が米軍と共同訓練を行うことは、それぞれの戦術技量の向上を図る上で有益である。さらに、日米共同訓練を通じて、平素から自衛隊と米軍の戦術面などにおける相互理解と意思疎通を促進し、インターオペラビリティ(相互運用性)を向上させておくことは、わが国有事における日米共同対処行動を円滑に行うために不可欠である。」こういうことで述べられておるわけであります。  そういう意味で、今後、日米共同訓練の質的な、そしてまた量的な問題におきまして拡大をされるのかどうか、あるいはどのような訓練が対象となっていくのか、その辺も、今後の展望でありますけれども外務大臣にお伺いできればと思います。
  121. 秋山昌廣

    秋山(昌)政府委員 昨年秋に決定いたしました新しい防衛大綱におきましても、日米の安全保障体制の信頼性の向上のためにいろいろな施策を展開していくことがうたわれております。その中の一つに共同訓練、共同研究、共同して対処するような、そういう面での日米間の協力というのがらたわれておりまして、この共同訓練につきましても、まさに今御指摘がございましたように、質的なあるいは量的なレベルアップをしていかなければならないというふうに考えております。
  122. 田中直紀

    ○田中(直)委員 方向につきましてはそういう状況かと思いますが、平成六年度の共同訓練の内容を見ますと、陸上自衛隊が六件、そしてまた海上自衛隊が七件、航空自衛隊が六件、こういうことになっておりますが、これから大変重要な共同訓練の内容につきましては、統合幕僚会議が主催しております訓練ということで日米共同統合演習、こういう内容がございます。  そういう意味で、先ほどの日米の共同訓練というものは、戦略的な問題あるいは今後の有事の、これは提供におきましては、当然訓練でありますから平時を対象にいたしておりますが、戦略上、有事の問題を念頭に置いて、そしてまた訓練の質的といいますか量的な拡大を図っていく、こういうことになろうかと思いますが、そういうものに踏み込んでいく姿勢でこの協定を運用されるかどうか、外務大臣にお伺いをいたします。
  123. 池田行彦

    池田国務大臣 日米の共同訓練そのものは、先ほど委員指摘になられました防衛白書の中にも明確に書いてございますように、我が国有事の際の共同対処行動、これをきちんとやっていくために必要だということでやっているわけでございます。しかし、この協定との関係で申しますと、この協定対象といたしますのは共同訓練あるいはPKO活動そして人道上の国際救援活動、こういうことになっておるわけでございまして、そういった切り口から見ておるわけでございまして、いわゆる有事あるいは平時といった角度から規定しているものではございません。
  124. 田中直紀

    ○田中(直)委員 あと運用面につきまして若干ね聞きしますが、現行法におきましては、今度自衛隊法が改正されまして法的な根拠が担保されるわけでありますが、今までの内容の一つとしましては、米軍に提供してきた物品については、貸付料ということなのでしょうが、こういうものが課せられておった、こういうことであります。今回はその提供につきましては、我が国が適用しております消費税等は課さない、こういうことでありますけれども役務については特に触れられておらない、こういう状況でありますので、それがどろいうふうになっておるのか御説明をいただきたいと思います。  それから、数年かかりまして、今回の本協定の運用におけるいわゆる国内法との整合性ということで大変御検討をされた、こういうことでありますが、付表に載っております内容においても、通信関係もありますし衛生業務も入っております。そういう意味で、国内法におきまして通信法の問題もありますし、あるいは衛生については医師法等の関係もあろうかと思いますが、その辺の国内法との運用上の関係につきましては、どういうふうに今整理をされておるかということについて御説明をお願いします。
  125. 折田正樹

    ○折田政府委員 今委員役務のことについて御質問になりまして、その関係で内国消費税云々のことを申されましたけれども、四条第三項に「いずれの当事国政府も、この協定に基づいて提供される役務に対して内国消費税を課してはならない。」という合意がございます。  それから、この協定締結するに伴い、国内法はどうなっているのかということですが、委員指摘のとおり、自衛隊に対して権限を付与するために、自衛隊法の一部を改正する法案を別途国会に提出して御審議いただくことになっているわけでございますけれども、その他の国内法につきましては、政府部内で非常に慎重に検討を行いました結果、現行法のもとでこの協定の実施に支障がないということは確認したところでございます。通信の分野のお話もございましたけれども自衛隊物品役務提供を行うために、通信の分野それから衛生の分野のお話もございましたけれども、そのために法改正をする必要はないというふうに考えております。
  126. 田中直紀

    ○田中(直)委員 本協定につきましては、国際平和協力法に基づきます国際貢献においても適用していく、こういうことで規定をされておるわけでございます。  御存じのとおり、国際平和協力及び人道的な国際救助活動につきましては我が国も着々と実施をしてきておるわけでありますが、本協定対象になるような、日米協力をいたして平和協力をしていく、こういう今回の対象になるような実績が具体的にあったのかどうか、そしてまた、これからPKO等の協力をしていく中にあって、本協定対象にしていくということにおいてこれからの期待できる内容等がありましたらお伺いをいたしたいと思います。
  127. 秋山昌廣

    秋山(昌)政府委員 これまでの我が国の国連平和維持活動等の活動の場面で、米国あるいは米軍の参加しているものは部隊としてはなかったと思います。  この国連平和維持活動あるいは人道的な国際救援活動に参加する部隊につきましては、これは、自衛隊にいたしましても米軍にいたしましても基本的には自己完結性というものが問われるわけでございます。しかし他方で、国連平和維持活動において他から支援を受ける場合、これは一応原則としまして国連を通して行うということになって  いるわけでございます。しかしながら、今後のことを考えてみますと、現場におきまして業務のより効率的な実施に資する場合が幾つか考えられるわけでございます。  例えば、一方の部隊が所要の機材、施設の破損等によりまして特定の物品または役務をみずから賄う能力を喪失するという場合におきまして、他方の部隊が当該物品または役務提供するということができる場合が考えられるわけでございます。あるいは、要員の一部が部隊から離れまして、自隊から、自分の部隊から特定の物品または役務の受領ができないということがあろうかと思いますが、このときに、他方が当該物品または役務提供をすることができる場合、さらには、特に米軍について申しますと、自衛隊が現在保持していない長距離輸送機を提供することが可能、こういう場合に日米物品役務相互提供協定による統一的な決済手続を適用して処理するということが大変有効であるといったようなケースがあるわけでございます。  こういったような今後のケースを考えまして、PKO活動、人道的救援支援におきまして、日米の相互提供協定が有効に働くということが十分考えられるわけでございます。
  128. 田中直紀

    ○田中(直)委員 先般のルワンダに対する人道的な国際援助活動におきましては、自衛隊がザイールに派遣をいたすときに米軍のC5輸送機の提供を検討した経過がございます。この協定で義務規定というものは特にあるわけではありませんから、両国間のいわゆる要請において対応していくか、こういうことにもなろうかと思いますが、日米間での国際協力ということになりますと、我が国は、御存じのとおり、PKO法の中でPKFは凍結をされておるわけでございます。  そういう意味で、実際に本協定を適用をして現地で国際協力をやっていくということになりますと、当然、我が国の今の運用における国際協力の考え方とアメリカがやっております国際協力という概念といいますか、現場における考え方というものが、そういう意味では今のところ土俵が違ってきておるわけでありますし、そういう意味では、実際にこの協定を円滑に日米間で運用していく、特にPKO等の中にあって運用していくということになりますと、PKFの問題についてむしっかりした考え方を合わせておく必要があるのではなかろうか、こういうふうに思うわけでありますが、そういう意味で、外務大臣に現内閣のPKFに対する考え方というものをお伺いをいたしたいと思います。
  129. 池田行彦

    池田国務大臣 これからPKOあるいは国際救援活動におきまして、今回御審議をお願いしておりますいわゆるACSA協定に基づく相互の協力関係がどういうふうに展開するかという点につきましては、これは、当然のこととして我が国のPKO活動等はPKO法に基づいて行われるわけでございますから、そういった枠内で行われるもの、こう考える次第でございます。  さて、PKFについてどういうふうに考えていくかという点でございますが、これは御承知のとおり、この法律を制定いたしましたときの経過から申しまして、凍結ということをし、それで今後将来に向かってどういうふうにしていくかということはまた見直していくということになっておるわけでございます。その点につきましては、政府といたしまして今まだ明確な方針を打ち出したわけではございませんが、今後、与党におけるいろいろな審議の進捗状況等々も見ながら研究してまいりたいと思いますし、また将来これを見直すことがあれば当然のことながら国会においてもいろいろ御審議を願うことになろうかと存じます。
  130. 田中直紀

    ○田中(直)委員 最後になりますが、PKO及び人道的な国際救援活動につきましては、モザンビークあるいはルワンダに引き続きましてゴラン高原に今派遣されておるわけであります。我が国は引き続き国際貢献に努力をしていくわけでありますが、今、国連等からの具体的な要請が来ておるものがあるのかどうか、あるいは今後検討していかなければいけない国際貢献等の具体的な内応があるのかどうか、その辺をお伺いをいたしま一て、質問を終わらせていただきます。
  131. 池田行彦

    池田国務大臣 現時点におきまして、我が国に新たなPKO活動あるいは国際救援活動を行ってほしいという具体的な要請が来ておるわけではございません。しかし、御承知のように、近年、PKO活動につきましてはいろいろなニーズが各地域で起きておるわけでございますので、今後とも、国際社会から具体的な要請がございましたときには、その具体的な状況、そして必要性を勘案いたしまして、我が国として現行PKO法の枠内でどういうふうに対応できるか適切に判断し、適切に対処してまいる所存でございます。
  132. 田中直紀

    ○田中(直)委員 終わります。
  133. 玉沢徳一郎

    ○玉沢委員長代理 佐藤泰介君。
  134. 佐藤泰介

    ○佐藤(泰)委員 本日は、昨日本会議質問をさせていただきましたが時間の制約がありましたので、そこで質問できなかったことを中心に質問をさせていただきたいと思います。  私の本会議質問で、本協定の適用については平時に限るとの答弁をいただきました。朝鮮半畠有事の際には在日米軍が出動することは当然であろうというふうに私は思いますが、このとき、我が国が本協定に基づき物品役務提供するように米国から協力要請なり圧力がかかることが考えられると思いますが、我が国と一衣帯水の朝鮮半島有事の際にも本協定は適用できないとして、政府米国の要求をはねのけることができるのか気になる点があります。報道では、外務、防衛両省は今回ACSAに盛り込まれたものとほぼ同様の項目を有事の後方支援の検討対象に挙げている、つまり、ACSAでは落ちている有事に関する協議がガイドラインの見直しという形で補完的に進むことになると報じています。この報道どおりであるとすれば、今回の本協定は、ガイドラインの見直しが終わるまでの一時的なしのぎの措置ということになるのか。本協定の位置づけとガイドラ インの見直しとの関連性について、まず外務大臣にお伺いしたいと思います。
  135. 池田行彦

    池田国務大臣 一昨日でございましたか、本会議で御答弁いたしましたのはこういうことであったかと思います。戦闘行為が行われているという意味の有事における米軍の戦闘作戦行動への協力としての物品役務提供にこの協定は適用されるものではない、そのように御答弁した次第でございまして、そのとおりまた繰り返させていただく次第でございます。  そして、この協定は、共同訓練またはPKO等を対象としているわけでございます。そして今、ガイドラインとの関係でどうなんだというお話がございましたけれども、いわゆるガイドライン、日米防衛協力のための指針の見直しにつきましては、先般の日米安保共同宣言におきましてはこの見直しを開始する、こういったことを明らかにしたわけでございまして、個別具体的に協力の内容をどうするかはまさに今後の検討結果を待つものでございまして、現段階では、今御指摘の点も含めまして何ら具体的なものは固まっておりません。
  136. 佐藤泰介

    ○佐藤(泰)委員 そうすると、現時点ではあくまで有事には適用されない、平時に限定したものであるというふうに認識していいですか。
  137. 池田行彦

    池田国務大臣 ただいま御審議願っておりますこの協定自体は協定として一応完結しているわけでございまして、それは、共同訓練、PKO、国際救援活動における物品役務提供対象とする、こういうことでございます。そしてガイドラインの話は、これはまた別の問題としてこれから作業を進めていこう、こういうことでございます。
  138. 佐藤泰介

    ○佐藤(泰)委員 では、本協定では平時に限定ですね。本協定では限定なんですか、ガイドライン等の見直しの中で今後検討していくということですか、ちょっとそこを。
  139. 池田行彦

    池田国務大臣 本協定は、共同訓練、PKO等における物品役務相互の融通をする対象にしている……(佐藤(泰)委員「平時ですね」と呼ぶ)いや、これはいわゆる有事、平時についての定義もこれはきちっとしたものがあるわけじゃございませんけれども、そういった有事、平時といった角度からこれは規定しておるわけではございませんで、共同訓練、PKO、国際救援活動、そういうことで対象を確定しておるわけでございます。  そして、ガイドラインで一体何を取り上げ、それが具体的にどういう内容になっていくかはまさにこれからの問題でございまして、現在御審議いただいております協定と直接のかかわりがあるものではない、こういう趣旨の御答弁を申し上げた次第でございます。
  140. 佐藤泰介

    ○佐藤(泰)委員 ちょっと私が理解できぬのかもしれませんが、そうすると、本会議での答弁は平時に限るという答弁ではなかったわけですか。
  141. 池田行彦

    池田国務大臣 本会議における私が御答弁申し上げましたことを繰り返させていただきましたけれども、先ほど言いましたように、有事、平時という定義が必ずしも確定したものがあるわけじゃございません。そういったことで、戦闘行動が行われているという意味での有事、そういうことを申し上げまして、そういったときにおける米軍の戦闘活動、それに対する支援といいましょうか、それに関係する物品役務提供をするということはこれは対象にしていない、そういうことを御答弁申し上げた次第でございます。
  142. 佐藤泰介

    ○佐藤(泰)委員 そうすると、そのあたりは今度のガイドラインの見直しの中で、先ほどもありましたが、質とか量的な方向で検討していくということなんですか、今の問題についても。
  143. 池田行彦

    池田国務大臣 ガイドラインにおける作業におきましては、いろんな事態における日米協力のあり方をいろいろ検討していくわけでございますが、それが一体具体的にどういう中身、内容になるかは今の段階ではまだ何も固まっていないわけでございまして、この御審議を願っております協定を前提として、これが何かの第一段階であるということではなくて、この協定協定として一応完結したものとしてお考えいただきたいと存じます。  私どもとしては、日米間のいろんな活動の中で、物品役務相互に融通いたします枠組みというものが必要なのはどこかと考えてまいりまして、そして今回具体的に三つの活動についてそれを対象とする協定を御審議いただいておる、こういうことでございます。
  144. 佐藤泰介

    ○佐藤(泰)委員 そうすると、この協定は一つの完結したものとして、物品役務提供はあくまで平時であり、PKO、人道的なものであり、それに限られるというふうに理解していいですか、これで完結する、今言われたこの協定は完結するという部分で。
  145. 池田行彦

    池田国務大臣 この協定は、先ほど申しました共同訓練等三つの活動における物品役務提供にかかわるものでございます。
  146. 佐藤泰介

    ○佐藤(泰)委員 それは平時ですね、その三つにかかわる部分は。
  147. 池田行彦

    池田国務大臣 先ほども御答弁申しましたように、これはいわゆる有事、平時という切り口から対象を定めているものではございません。
  148. 佐藤泰介

    ○佐藤(泰)委員 そうすると、今の段階では有事とも平時とも言えないんですね。
  149. 池田行彦

    池田国務大臣 今の段階というよりも、将来とも、今御審議願っております協定がずっと生きます以上、この協定上は有事、平時というとらえ方をしていないわけでございまして、共同訓練、PKO、国際救援活動というとらえ方をしている、こういうことでございます。
  150. 佐藤泰介

    ○佐藤(泰)委員 そうすると、物品役務の提出の方法は決まっておっても、場合によっては有事の場合もあるし平時の場合もあるし、それは現時点では決められてはいないんですね。
  151. 池田行彦

    池田国務大臣 先ほど申し上げたところでございますけれども、いずれにいたしましても、米軍の行う戦闘活動に対する物品役務提供というものはこの協定ではできないということは、将来とも変わりないところでございます。
  152. 佐藤泰介

    ○佐藤(泰)委員 そうすると、半島で有事が起とたときはできないということですね。
  153. 池田行彦

    池田国務大臣 いわゆる戦闘行為が行われているという意味での有事、そういうふうに有事を定義させていただきますと、そういった状況の中での米軍の戦闘活動にかかわる物品役務提供はできない、こういうことでございます。     〔玉沢委員長代理退席、委員長着席〕
  154. 佐藤泰介

    ○佐藤(泰)委員 ちょっとよくわからぬようになってきたけれども、できないんですね、半島有事のときには、戦闘行為が入っているときは、この協定では。半島で有事になったときに、物品役務提供できるのかできないのか。何か遠回しに言われるものでちょっとわからないのですけれども、半島で有事になったときにアメリカから要請があった、それで戦闘行為に入っている、そのときに物品役務提供ができるのかできないのか。
  155. 池田行彦

    池田国務大臣 いわゆる有事において戦闘活動を行っている米軍に対する物品役務提供はできません。(佐藤(泰)委員「できないのですね」と呼ぶ)いや、私ができないと申しますのは、私の答弁全部をとらえてできないのでございます。いわゆる有事における戦闘活動を行っている米軍に対する役務提供でございます。そういった状況においても米軍の活動にはいろいろな態様はあるのだと思います。
  156. 佐藤泰介

    ○佐藤(泰)委員 いろいろな態様をちょっと具体的に言っていただけますか。有事が起きておるときにいろいろな態様というのは例えばどういう態様があるか、教えてください。
  157. 池田行彦

    池田国務大臣 仮に有事がございましても、すべての米軍が戦闘活動に携わっているとは限らないわけでございまして、米軍の一部が戦闘活動に参加しているけれども、その他の部分は他の活動をしているということは、それはあり得るのだと思います。
  158. 佐藤泰介

    ○佐藤(泰)委員 そうすると、半島がある、ここでもうドンパチになっている、こっちにも米軍がいる、ここへは役務物品提供できぬけれども、こっちのところへはできるということですね、今の説明は。いろいろなケースというのは、アメリカ軍が半島でいろいろなケースがある、そうすると、ここへはできないけれども、こっちへはできるという、そういう答弁ですか。
  159. 池田行彦

    池田国務大臣 それは、所で、場所で申し上げているのではなくて、米軍の活動形態といいますか、それがどういった活動をしている部隊であるか、そういうこととの関係で申し上げたわけでございます。
  160. 佐藤泰介

    ○佐藤(泰)委員 もう一遍確認しますよ。そうすると、半島でいろいろなケースがある、それは場所ではなくて活動形態だ、活動形態が全く戦闘状況に入っているところへは物品役務提供はできないけれども、同じ場所におっても、そうでない、直接でない活動をしているところへはできる場合もある、そういうふうに理解すればいいわけですね。
  161. 池田行彦

    池田国務大臣 その前に、まず、この協定での対象は共同訓練そしてPKO、国際救援活動としているわけでございますけれども、まず、そういった活動がどういった場所で行われるかを考えていただきますと、大体場所的にはそういうところでは行われたことはないと思います。(佐藤(泰)委員「場所ではなくて活動の内容でしょう」と呼ぶ)ええ。だから、活動といたしましては、仮にどこかの地域で米軍が有事に対処するために戦闘活動を行ったといたしましても、米軍の他の部分は例えば日本にとどまりましてはかの活動をしているということは、これはあり得るわけだと思います。
  162. 佐藤泰介

    ○佐藤(泰)委員 それでは私の言っていることとほとんど変わりないじゃないですか。有事のところではできないけれども、例えば日本に米軍がいて、そこへ物品役務はできるということでしょう。活動内容によってできる場合とできない場合、それは場所ではないと言われたから、それは、米軍がどこにいても米軍がそこで活動している内容によって、その内容が有事だと判断すればできないけれども、有事でないと判断すればできるということですね、その米軍の活動が。
  163. 池田行彦

    池田国務大臣 それは、例えば全く戦闘活動も何もないところで、全くかけ離れた場所でPKO活動が行われておる、そしてそこに自衛隊とあるいは米軍がそのPKO活動に参加しているという場合、それは、そういった状況でもこの協定は適用できると思います。
  164. 佐藤泰介

    ○佐藤(泰)委員 それでは僕が言っておることと、今……(池田国務大臣「いやいや、全然違う」と呼ぶ)違うかな。  米軍がやっておるわけでしょう、それで、こっちではPKOをやっておる、こっちではいろいろ活動をしておる、その活動の中身によって物品役務提供できる場合とできない場合があるのでしょう。すべてにできるわけじゃないわけでしょう、今の答弁では。  それは場所ではないということはわかりました。この場所ならできる、この場所ならできないのではなくて、そこでやっている活動内容によって、ここでPKOをやっておる、人道的な活動をしておる、そこへはできる。これは平時だから当然でしょう。平時というか、当然だと思いますよ。具体的に衝突しておる場所へはできないというふうに理解していいですかということです。
  165. 池田行彦

    池田国務大臣 それは、余り地域を例示するのは私は適当ではないと思いますけれども、例えばこれまでも我が国がPKO活動を展開いたしましたアフリカであるとか中東地域でPKO活動が行われておる、そしてそこで米軍もそれから自衛隊も参加しておって、そしてこの協定に基づいて物品役務提供が行われている、こういう状態がある。そういった時点において極東地域のどこかで戦闘が始まり、それに米軍が参加して戦闘行為、戦闘活動をやっておるというときに、もとよりこっちの戦闘活動を行っている米軍に対するこの協定に基づく協力というのは、これはあり得ない、もうできないわけでございますけれども、かといって、それまで続けておったアフリカや中東におけるPKOにおける協力活動をやめるということは、これはないのだと思います。
  166. 佐藤泰介

    ○佐藤(泰)委員 もうやめますけれども、最後、有事というのはいろいろな意味があると今言われましたから言葉をかえますけれども、武力行使が行われているところにはできないというふうに確認させていただいていいですね。
  167. 池田行彦

    池田国務大臣 私は先ほど戦闘活動とか戦闘行動とか言いましたが、そういったことをやっている米軍はもとより対象にならないわけでございますし、それから、例えば共同訓練といった場合は、これはもともと教育目的でございますので、訓練で武力を行使するということは、これはそうなりますともう訓練ではないのだと思いますですね。だから、事柄の性質上、カテゴリーからいって、それは武力行使云々ということはないのだと思います。
  168. 佐藤泰介

    ○佐藤(泰)委員 それは僕はわかりますよ、共同訓練のための物品役務提供ですから。そうすると、当然武力行使が行われているところはできないというふうに私は確認、認識をしますが、そして次の質問に移りますけれども
  169. 池田行彦

    池田国務大臣 この協定は、まず対象を共同訓練、PKO、緊急援助、救助活動、こうしておるわけでございます。そして、訓練などで武力行使というのはない、こういうことでございます。
  170. 佐藤泰介

    ○佐藤(泰)委員 済みません。これだけで時間なくなったので、沖縄の問題でこの前聞けなかった問題をちょっと聞かせていただきます。  沖縄の基地にかかわる特別立法の問題についてちょっとお尋ねしたいと思いますけれども、国土の一%足らずの沖縄に在日米軍基地の七五%が集中している。そして、楚辺通信所以外にも次期契約の拒否が表明されている用地が数多くある。このような事態に至った背景には、私は、政府が抜本的な問題解決努力してこなかったことへの沖縄県民の怒りがあり、政府のみならず、私ども国会としても反省すべき点が多くあると思います。  政府部内には、楚辺通信所の一部用地の緊急使用の申請が不許可となったことを受け、強制使用手続を国が直接行うことに変更するための特別立法の必要性指摘する向きもあります。しかし、米軍基地の整理統合・縮小に向けた沖縄県民の期待に十分にこたえる努力をしないで、そのような手法に訴えることは、私は県民の感情を逆なですることになりはしないかという懸念を覚えます。民主的な現制度をつぶして、新規の立法措置で対応するという手法は、私は決してとるべきではないと考えております。  日米安全保障体制が重要であるとするならば、また多くの国民がそう考えているとするならば、それを具体的に語り、地主の納得を得る努力を最優先させるべきではないかと私は考えますけれども、特別立法について外務大臣の明確なる姿勢をお伺いしたいと思います。
  171. 池田行彦

    池田国務大臣 本問題についての法律の整備をどうするかということに関しましては、これは駐留軍用地特措法の所管官庁でない外務省としてお答えするのはいかがかと存じますが、外務省立場から申しますと、安保条約並びに地位協定上の義務履行に遺漏なきを期すような努力はしなくてはいかぬ、こうは考えております。  しかしながら、その努力は、まず現在の枠組みの中で、御指摘のございましたように、土地を堤供してくださる方、そしてまたその関係の方々の御理解を得る、そして広くは沖縄県民の方々の理解を得た上で進めていく、そのためにまず最善の努力を傾注すべきことと考えておるところでございます。
  172. 佐藤泰介

    ○佐藤(泰)委員 ぜひ今の答弁のように、円満に解決できるように最大限の努力を、今所轄ではないと言われましたけれども、橋本内閣の重要な閣僚のお一人でみえますので、そのあたりは閣議をリードして、円満に解決できるような御努力をぜひお願いをしたいというふうに思います。  次に、本協定では米軍に供与することができる物品または役務には十五種類あることが明記されていますが、武器の完成品は入っていません。ところが、本協定締結に関する官房長官談話で、次のように武器輸出三原則について触れられています。  本協定に基づく物品役務相互提供の一部には、武器輸出三原則等における武器等に当たるものが含まれることになる可能性がある。本協定のもとで行われる武器等の提供は、三原則等によらないこととする。  この官房長官の談話にはいかなる真意が込められているのでありましょうか。ガイドラインの見直しを見据えた上で、その見直し後に、対米国については武器輸出三原則を適用しないようにすることへの、そうは思いませんけれども、適用しないようにすることへの布石になりやしないかという懸念を持ちますけれども外務大臣の見解をお伺いしたいと思います。
  173. 池田行彦

    池田国務大臣 今回出されました御指摘の官房長官談話の真意は、何も将来に向かって特定のあるいは一定の意図を持ってということではなくて、文字どおり、今回の御審議を願っていますこの協定締結する、そのことの関連において、この協定において従来のいわゆる武器輸出三原則等におきまして武器等に当たるものが含まれる可能性がある、これは詳しくは申し上げませんけれども、部品等でございますね。そういうことがあると。  そういう事情にかんがみまして、本協定のもとで行われる武器等の提供はいわゆる従来の武器輸出三原則等によらない、こういうことにしたわけでございまして、もとよりそういうことがございましても、武器輸出三原則等の基本理念はきちんと維持されるわけでございます。そして、将来のことについて特定の意図を持ったものではない、このように考えております。
  174. 佐藤泰介

    ○佐藤(泰)委員 二千一世紀に向けて、これからますます外交問題が重要になってくると思います。時間が来ましたので終わりますけれども外務大臣に一層の日本のかじ取りを、将来のためにしっかりととっていただくことを心から要望して、質問を終わります。  ありがとうございました。
  175. 関谷勝嗣

    関谷委員長 秋葉忠利君。
  176. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 ただいまの佐藤議員の質問に継続をして、何点か伺いたいと思います。  まず最初に、これは手続的な問題なんですが、物品あるいは役務提供する際の具体的な手続。  これは双務的な約束ですから、日本あるいはアメリカ、どちらの場合もあるのでしょうけれども、どちらでもいいのですが、仮に日本からアメリカに対して物品役務提供をしてほしいという希望がある場合に、電話をかけるのか、あるいは何か様式の決まった書類を出すのかわかりませんが、何らかの手続を経て要望を行うということは必要だと思います。それに対して、その要望を受け取った側の国でこれはほぼ自動的に、例えが悪いかもしれませんが、そば屋の出前のように、はい承りました、すぐ持っていきますということになるのか。それとも、それぞれ審査委員会のようなものがあって、適合しているかどうかについて一応それなりの審査のような手続があるのかどうか。その点が一番重要だと思うのですが、その点について、具体的にどういう手続で行われるのか。一番大事な、審査があるかないかというところに焦点を合わせて御説明いただきたいと思います。
  177. 荒井寿光

    ○荒井政府委員 アメリカから要請があります場合、今の協定に基づきまして、文書、発注証に基つきまして、例えばアメリカからですと日本の方へ要請があるわけでございます。日本側といたしましては、その要請が、協定や今回締結いたしました手続取極、さらにまたこれの詳細のものとしての実施取決めを締結いたしますが、そういうものに適合しているか見まして、妥当であればアメリカサイドに物品または役務提供するということでございます。現在のところ、そういうものにどのように適合しているか、具体的なチェックの内容の手続等については今後さらに内部で検討する予定になっております。
  178. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 そういたしますと、ほぼ形式的な審査といいますか、形式的な部分だけで、例えば武器技術共同委員会のような日米両方の機関の協議会があるとか、あるいはそれの一部としての日本側の委員部があるといったような形はとらないというふうに理解をしてよろしいでしょうか。
  179. 荒井寿光

    ○荒井政府委員 現在のところ、予定しておりません。
  180. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 そういたしますと、これは一九九〇年だと思いますけれども自衛隊の補給艦が米国の要請を受け入れて、アメリカの、米国の武器弾薬その他を輸送するような事態になった場合に、積み荷については我が方として、日本としても自主的にチェックをしたいということを中山外務大臣が当時おっしゃっていますけれども、その自主的にチェックをするという我が国方針は廃棄されたと解釈してよろしいわけですね。
  181. 折田正樹

    ○折田政府委員 日米間で新しいこの協定締結するわけでございますので、例えば今の委員の御質問ですと輸送にかかわる部分ということになろうかと思いますが、この協定それから実施手続に合致する限りはこれに従って実施をするということでございます。
  182. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 要するに、今私が伺ったことの答弁にはなっていないように思うのですが、中山外務大臣は、米国との間の輸送に関して、我が国が積み荷については自主的にチェックをするという言明をしていますけれども、今のお話では、形式的に、自動的に、相手から要請があった場合にはそれに応ずるということですから、自主的にチェックするというこの条件は外れたというふうに解釈せざるを得ないと思いますが、イエスかノーか答えがはっきり出る部分だと思いますので、その旨お答えいただきたいと思います。
  183. 池田行彦

    池田国務大臣 ただいま委員指摘の、当時の中山外務大臣の御答弁というのがどういう事態を想定してのものかちょっとつまびらかにいたしませんけれども、しかし、現在御審議をいただいております協定において行われるいろいろな役務の、この場合は役務でございましょう、提供にがかわるその取り運び方については、先ほど来政府委員から御答弁申し上げたとおりでございます。
  184. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 この点について、済みません、もうちょっと考えていただいても結構ですが、関連がありますので、先の質問をしながら、あわせてお答えいただければと思います。  それではもう一件、先ほどの佐藤議員の質問に関連して、例えば朝鮮半島の情勢が緊迫をした場合に、アメリカ軍が、ここで共同訓練の間という条件をつけても結構ですし、その他の条件をつけても結構なのですけれども、この今回の協定条件を満たすような形で、さらにこれは暗黙の目的といいますか、そういう目的で北朝鮮を威圧するようなふうに例えば第三者から見えるような形で半島付近を遊よくするような場合、この米艦艇に対して共同訓練中の我が国の艦船から燃料の補給をするというようなこと、あるいはこれに対して何らかの物品あるいは役務提供を行うということは憲法解釈上問題があるのでしょうか、ないのでしょうか。
  185. 阪田雅裕

    ○阪田政府委員 今外務大臣の方からも御答弁がございましたように、この協定はまず大枠といたしまして、自衛隊と米軍との共同訓練、あるいはPKO等というのもございますが、その枠内で行うということであります。自衛隊と米軍との共同訓練というのは自衛隊の所掌事務、すなわち我が国の平和と独立を維持し国の安全を保つため直接間接の侵略に対し我が国を防衛するというその任務の範囲内において、我が国が単独でまたは米軍と共同対処によって我が国を防衛するという目的の達成に必要な戦術技量を向上させる、そういうことを目的として行われるものに限られているものでありますから、およそこの協定の適用について憲法上の問題が生ずるということはないというように考えております。
  186. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 午前中の安倍委員質問にもありましたように、中国が今回中台間の緊迫した情勢をつくったその原因は中国側の演習という口実によってでありました。戦闘行為を想定した上でのいろいろな条件をつくるということが念頭にあるわけですから、一方においてそういうことが行われているという現実は、他方においてもそのような現実が存在するということを常に念頭に置かなければ、この種の問題については正確な分析は行われません。それを前提にして伺っているのですけれども、今のお答えでは、そういった双方に対して同様の条件を付して現状を分析するという基本的な視点が欠けておりますので、答えとしては非常に不満足であります。その条件を付加した上で、アメリカ軍が今まで演習という目的で一度も例えば実質的な威嚇を行わなかったという歴史上の証明があるのであれば、それは納得できる答えでありますけれども、現実はそうではありません。ですから、そういった条件を付加した上でお答えいただかないと困るところですが、実はこの問題はまだ先がありますので、先に移って、その上でまたお願いをしたいと思います。  この協定に関して、これまでのアメリカに対する武器輸出三原則、これはアメリカに対しては、武器技術供与に関してはこれを適用しないということが内閣の統一見解として出ておりますけれども、残念ながらこれも無条件ではありません。一九八三年の当時の後藤田国務大臣の言明では、これは政府統一見解として出てきたものでありますけれども、武器そのものの輸出についての従来からの方針に何ら修正を加える考えはないということが答えですけれども、この協定によってこれまでの米国に対する武器禁輸三原則を、大幅にとあえて言わせていただきますけれども、その範囲を広げたというふうにこれは読めるわけですけれども、その範囲を広げた部分についての、それでは歯どめはどこにかけるのか、どこに歯どめがかかっているのかというところで、今回のその政府見解の変更についての内容を明確にしていただきたいと思います。
  187. 池田行彦

    池田国務大臣 まず第一点でございますが、共同訓練が云々という話でございますけれども、米軍はともかくとしまして、まず我が自衛隊は、我が国の憲法により、当然のことながら他国に対する軍事行動、侵略なんということはあり得ないわけでございまして、これは専ら我が国の防衛のために行動するわけでございます。そうして、日米安保条約におきましても、これは、自衛隊と米軍との共同対処行動というのは我が国有事の際の行動になっているわけでございます。  そうなりますと、そういった対処を的確に行えるように訓練をするとなりますと、その訓練も日米の共同訓練というのは当然のこととして、我が国有事の際に対応するためにどうやっておけばいいかという訓練になるわけでございますので、もう憲法あるいは安保条約の仕組みからして、日米間の共同訓練が他国にそういった懸念をあるいは不安を呼ぶことになるということはあり得ないわけでございますので、そこのところは憲法の問題には全くならないというふうに御理解いただきたいと思います。  それから、二つ目の武器輸出三原則等にかかわる御質問でございますけれども、これは先ほども御答弁申し上げましたように、先ごろの官房長官談話で、本協定にかかわる武器等の提供につきましては、従来の武器輸出三原則等では読み切れない部分が若干出てくる、そういうことがありますので、それは枠外だということを明確にしたわけでございます。しかしながら、これは国際紛争等を助長してはいけないといった、そういった武器輸出三原則等の基本理念はきちんと守っていく、そういう中であるものでございますので、このことをもってどんどん武器輸出三原則等がおかしくなるということはないのだと存じております。  それで、かつて武器技術に関して同じようなことがございました。しかし、それもございましたけれども、それではそのことが国際紛争等を助長するようなことになったかと申しますと、そういうこともなかったと考えます。だから、具体的な三原則等の規定の仕方あるいは規定対象については、時の変遷に応じ、いろいろな状況の変化に応じて若干の変化がございますが、あくまでその基本理念は守っていくということは一貫しているわけでございます。
  188. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 今、外務大臣のおっしゃったこと、私は外務大臣を個人的によく存じ上げておりますので、個人としての発言であれば何の異存もございませんけれども、残念ながらこれはシステムとして動いている部門でございます。システムとして考える際には、残念ながら個人のコントロールがきかない場合が非常に多いということが歴史の真実であって、そういう場合にでもシステムとしてきちんと作動するような安全装置を埋め込んでおくことが大事であるというふうに考えています。その立場から、万一、例えば起こりそうもない、あるいは我々の意図としてはそういうことではないというような場合においても、それはそれなりにきちんとした安全装置をかけておくということがどうしても必要になってくると思います。そういう立場から質問をしております。  例えば、武器禁輸三原則にしても、一九八三年の時点では、アメリカに対して武器を輸出する気持ちはまるきりないのだということがあったにもかかわらず、時代の変化その他で政府の見解も変わってくるわけですから、時間的な変化だけが唯一の変数ではありませんので、さまざまな点について伺っているつもりです。  それで、武器の定義について伺いたいのですけれども、本協定によりますと、付表に武器の部品・構成品、そういったものが書いてありますけれども、部品という場合に論理的にはこういうことになるのです。部品が全部集まったものというのが、例えば爆弾なりあるいは小銃なりといったことになるわけで、部品というふうに言うと、それを全部集めたものだから武器そのものも当然許されるという解釈は成り立ちます。成り立つばかりではなく、そういうふうに悪用される懸念もあると考えた方が安全弁というところを考える上では大事になってくると思いますので、そのような武器、部品ではなくて本当の武器、これは常識的に言葉を使った意味での武器、小銃なりあるいけ機関銃なり、そういったものはこの協定の中でカバーされているのか、つまり、そういったものを譲ったり売ったりしてもいいのか、その点について確認をしたいと思います。
  189. 折田正樹

    ○折田政府委員 この協定の二条の二項で、十五項目について提供対象となる区分がなされているわけでございます。その中で、部品及び構成品というふうになっておりまして、それは、付表のところをごらんいただきますと、軍用航空機、軍用車両及び軍用船舶の部品または構成品、これらに類するものということでございます。  今委員、部品をいろいろ集めれば総体として例えば機関銃だとか、そういうことになってしまうではないかということでございますが、私どもの認識といたしましては、そういう機関銃だとか銃だとか火器等のようなものは、この協定のもとで提供対象にはならないというふうに考えております。
  190. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 いや、そこの線引きを明確に伺いたい。例えば、ここにわざわざ軍用と書いてあるから疑念が生じてしまうのですが、要するに飛行機というのは飛べばいいわけですから、それが軍用機と呼ばれる場合には、これは機関銃を持っているとか爆弾を落とせるとか、そういう機能があるから軍用になるのであって、軍用ではなくてただ単に飛行機としての機能を充足させるためのいろいろな部品というのだったら、これは非軍事の航空機用の部品ということに明確に書いていただければ、例えばそれでは機関銃は入らないということは明確になるわけですが、軍用飛行機というふうに特定をする、つまり、機関銃なりなんなり攻撃装置がついているものを対象にしておいて、それでその中で、実は軍用機を軍用機たらしめている部分についてはそれはだめなんだよというような議論をされると、これは真意は一体どこにあるのかということを疑わざるを得ないような状況になってきます。ですから、そこの部分はもう少し 明確に書いていただく必要があるのではないでしょうか。その点について簡単にお答えをお願いします。
  191. 折田正樹

    ○折田政府委員 この協定上、部品とはこれ以上分解することのできない構成要素の単体で、例えば通信機器や一般車両などに含まれる汎用部品も入りますし、航空機や船舶等に含まれるボルト、ナット、ワイヤー、こういうものを考えているわけでございます。  先ほど申し上げましたように、機関銃のような武器をこの協定対象にしているわけではございません。
  192. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 そうすると、今おっしゃったような定義をあえて掲げた上で、官房長官発言の実はこれは武器禁輸三原則にいうところの武器が含まれる可能性があるというようなことを言われること自体、全くおかしな話になってくるわけです。  つまり、武器禁輸三原則を適用するに当たっての武器というのは、端的に言ってしまえば、相手を殺傷する能力のある装置ということになるわけですから、今おっしゃったボルト、ナッツで、それは人を殺そうと思えば確かに殺せますよ。しかしながら、通常はボルト、ナッツは人を殺傷する装置とは言わない。一方においてボルト、ナッツのような人を殺傷する能力が全くないと考えられているものを挙げておきながら、もう一方において官房長官が、いや人を殺傷するようなものもこの中に含まれるのだというようなことを言っていること自体おかしいのじゃないですか。
  193. 池田行彦

    池田国務大臣 まず明確に申し上げたいのでございますけれども、武器そのものは入っていない、これははっきりしているわけでございます。したがいまして、御心配のように、部品を合わせていって武器そのものになるような、そういったものは当然だめだということはこの協定の解釈からして当然だと思います。  そしてまた、部品・構成品につきましても、付表においてわざわざ「軍用航空機、軍用車両及び軍用船舶」と明確に対象を書きましてそれの部品だ、あるいは「構成品並びにこれらに類するもの」と書いておりますことは、そういう殺傷を目的にする小銃であるとか機関銃であるとか、そういったものの部品ということは、それは想定していない、こういうことだと思います。(秋葉委員「それは解釈が違います」と呼ぶ)  いや、それは協定上いかに「並びにこれらに類するもの」と書いてあると申しましても、それは協定の解釈をする場合に、上に明示してあるものを頭に置いて、それから常識的に解釈していくわけでございまして、これはそういうことじゃないかと存じます。  それから、官房長官談話との関係でございます。官房長官がおっしゃった意図を私は正確には存じませんけれども、部品が軍用の航空機あるいは軍用の車両等に使われるということだから、それはそういったものが、場合によっては全体としての軍用航空機が人を殺傷するというケースもあり得るということをおっしゃったのじゃないのかな、こう思いますので、決して武器そのものあるいは丸ごとそれに近くなるようなものを、この部品という条項を使いながら提供していくということはあり得ないし、協定の解釈上もそれはできないのだと思います。
  194. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 時間が参りましたので私の質問は終わらざるを得ないのですけれども、今の問題について、これは非常に重要な問題ですし、私が提起した問題については何一つ明確な、論理的矛盾のないお答えをいただいておりません。大変残念ですけれども、そう言わざるを得ない状況です。したがって、これは、我が党の中でも一度承認するというような手続を踏んではおりますけれども、残念ながら、部会を再開していただいてこの問題について再検討するということを党内で私は提起せざるを得ないということを申し上げます。これまでの外務省並びに防衛庁の我々に対する説明も、例えばこういった点についての細部の説明も含めて、非常に不十分であったということもあえて申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。
  195. 関谷勝嗣

    関谷委員長 前原誠司君。
  196. 前原誠司

    ○前原委員 新党さきがけを代表して、質問をさせていただきたいと思います。きょうは、主に集団的自衛権の解釈について、いろいろな角度から質問をさせていただきたいと思います。  今回のACSAでございますけれども、共同訓練、PKO、そして人道的な国際救援活動に限られているわけであります。よく言われておりますように、有事の際には、いろいろな議論がございましたけれども、原則としては適用しない、とにかく、有事、平時で分けているのではないが、基本的にはPKO、共同訓練、人道的な国際救援活動に限定するものである、こういう御答弁だったと思います。  そこで、ちょっと違う観点から御質問したいわけでありますけれども、訓練のときには使えて、いざというときにそういう協定がないのは、おかしいのではないかというような話がありますし、それは筋として言い得るのだろうと思いますが、しかしながら、いろいろな法律の問題とか、今政府でも始めておりますがイドラインの見直し等々に絡んでくる問題だと思って、その点は、今回はこういうものに限定をして、とにかく今の喫緊の課題についてクリアをしていこう、こういう方針だと思います。それはそれでまた私も理解をするわけであります。  そこで、質問でありますけれども、では、仮に、日米安全保障条約の第五条、日本有事というものを想定した場合、今回対象となる物品役務ということがいろいろ箇条書きをされておりますけれども、今回はもちろん日本有事ということを想定されていないし、それは条約対象外でありますが、法的に見た場合、この日米安保第五条の日本有事を想定した場合、憲法上これは行い得るのかどうか、その点について御答弁をいただきたいと思います。  あわせて、私は、これはアウトのところが多いと思うのでありますが、いわゆる極東有事について、これは集団酢自律権と絡む部分が出てきますので、私が見ましても、対象となる物品役務も場合場合を想定したときに憲法上疑義が出てくる場合はあると思うのでありますが、しかし、日本有事、第五条の場合は私はクリアできるのではないかと思うわけでありますが、その法的な説明をいただければと思います。
  197. 折田正樹

    ○折田政府委員 今回の協定は、今委員指摘のように、日米共同訓練、国連平和維持活動、人道的な国際救援活動に必要なものに限定されているわけでございますが、全く仮定の問題として、我が国に対する急迫不正の侵害があって、我が国が個別的自衛権を行使している際に、日米安保条約に基づき我が国に対する攻撃に共同対処している米軍に対して我が国物品役務提供するということは、憲法上の問題を生ずるものではないというふうに我々考えております。ただ、前段申し上げましたように、今回の協定は、先ほど申し上げました三つに限定されているわけでございます。  それから、そのほか、我が国の周辺地域において我が国の平和と安全に重要な影響を与えるような事態が発生した場合についてはどうかということでございますけれども、これにつきましては、先般の総理の御指示を踏まえまして、我々、種々詰めていきたいというふうに思っております。明確に今、どこからどこまでができて、どこからどこまでができないかということを申し上げる段階にはないということで御了承いただきたいと思います。
  198. 前原誠司

    ○前原委員 私も同じ認識でおりまして、もちろん仮定の話でありますけれども日本有事、第五条の場合を想定したときには憲法上は問題ないのだろうと思いますが、第六条、いわゆる極東有事とか周辺諸国で有事が発生した場合については、今おっしゃったようにいろいろ検討しなくてはいけない問題があると思いますし、その点については、ガイドラインの見直し等々を含めて、また政府与党で議論させていただきたいと思っております。  次でございますが、この集団的自衛権の政府見解、私は何かしっくりこないものを感じておりました。政府見解では、集団的自衛権は主権国家としては当然有しているけれども、憲法の制約で行使は認められない、つまり、主権国家としての集団的自衛権の保有というものは「当然」という形容詞までつけて認めているわけでありますけれども、憲法の制約で今度は「行使」という言葉に変わっているということでありまして、私が伺いたいのは、では、憲法上この集団的自衛権というのは保有を認められているのかどうかということについてお尋ねをしたいと思います。
  199. 秋山收

    秋山(收)政府委員 前原委員にお答えいたします。  去る二月二十九日の予算委員会分科会でお答えいたしましたように、政府は従来から、集団的自衛権の行使は憲法上許されないものと解しているところでございます。  お尋ねは、我が国の憲法が集団的自衛権の保有を認めているかどうかということでございますけれども、もともと集団的自衛権というのは国際法上の観念でございまして、我が国が主権国家として国際法上これを有していることは当然でございますが、我が国憲法上これを行使することは許されないものとされておりますので、憲法上は集団的自衛権を保有していないということと結論的には同じことであろうと考えます。
  200. 前原誠司

    ○前原委員 憲法上は保有していない――ごめんなさい、ちょっと聞き漏らしてしまったので、もう一度、済みません。
  201. 秋山收

    秋山(收)政府委員 はい。我が国は憲法上これを行使することが許されないものと解しておりますので、憲法上は集団的自衛権を保有していないということと結論的には同じであるというふうに考えております。
  202. 前原誠司

    ○前原委員 わかりました。ちょっとわからぬようなあれですが、要は、憲法上は集団的自衛権の保有を認めていないということを結論づけることができる、こういう御答弁でございますね。
  203. 秋山收

    秋山(收)政府委員 理論的には集団的自衛権を国内法上も持っているが、これを行使できないというふうに考えることも可能ではございますけれども、憲法解釈上集団的自衛権は全く行使できないというふうに解しておりますので、これを持っているかどうかということはいわば観念的な議論でございまして、むしろ、集団的自衛権につきましては、行使できず、あるいはあたかも持っていないのと同じであるというふうに考えるのが適切ではないかと考えます。
  204. 前原誠司

    ○前原委員 わかりました。  これはきょうメーンの質問ではありませんので、従来から保有と行使でうまく使い分けられている部分があったので、私がちょっと確認をしておきたかったことでありますので、これはまた改めてほかの質問で詰めていきたいと思います。  次でございますけれども、少々昔の話になりますけれども日本が国連に入る前に、国連加盟の申請と同時に、その決意表明みたいな形で、当時の岡崎勝男外務大臣が当時の国連事務総長、リーさんという方に対して、書簡において、その有するすべての手段をもって日本は責務を果たしたい、こういうことを言われているわけでありますが、この文言について国会の中でもいろいろ議論があったというのは私も承知をしております。  まず、確認でありますけれども、これは外務省と法制局、両方にお伺いしたいのでありますけれども外務省は、従来から何らの留保もしていないという見解でいいわけでありますね。そしてまた法制局に対しては、その有するすべての手段というものが留保条件になっていないととっていいのかどうか。外務省とそれから法制局にお伺いします。
  205. 池田行彦

    池田国務大臣 御質問は、日本の国連加盟に際しまして、当時の岡崎勝男外務大臣からリー国連事務総長あての書簡において、いわゆる、アト・イッツ・ディスポーザル、こういう言葉がある、それをめぐってのことかと存じますが、外務省としては、ただいまの書簡、昭和二十七年六月十六日付で岡崎外務大臣からリー国連事務総長あてに発せられた書簡でございますが、この書簡による国連に対する加盟申請に当たって、我が国が何らかの留保を付したとは考えておりません。  そして、このことは、その申請書を発出したときの条約局長でございました下田条約局長が、政府の憲法調査会の場において、現実問題として憲法九条のために国連加盟が妨げられ国連憲章上の義務を遂行し得なくなるというような危惧を政府は抱いたことはない、こういうふうにも述べているところでございます。このことからも明らかなように、何らかの留保を付したという解釈は当たらない、こう考えております。
  206. 秋山收

    秋山(收)政府委員 内閣法制局の見解もただいま外務大臣が答弁されたことと全く同じでございます。
  207. 前原誠司

    ○前原委員 では、その前提に立って御質問をさせていただきたいわけでありますけれども、国連憲章の第四十三条、あるいは第四十五条もそうでありますし、つまり、国際紛争の解決手段として話し合いあるいは外交的な努力、そういったものが通用しなかった場合においては、国連として、あるいは安全保障理事会として、制裁とか、あるいはそういう軍事的な手段をとり得るというふうな見解になっているわけであります。四十三条の三項を見ますならば、「この協定は、安全保障理事会と加盟国との間又は安全保障理事会と加盟国群との間に締結され、且つ、署各国によって各自の憲法上の手続に従って批准されなければならない。」と書いてありますので、一方的な国連憲章の義務規定ではなくて、これは憲法との整合性の中で日本がとり得るものだというふうには私自身も理解をしております。  そのまた前提でお話しするわけでありますけれども、皆さんが御承知のように、朝鮮戦争が行われたときに国連軍という形で行われておりますね。そして今、朝鮮戦争というのは、これは休戦状態にあるということで、まだこれは停戦していない。休戦状況にあるということで日本にも七カ所の国連軍の基地がある。ヘッドクオーターは座間にあるという話を伺いましたし、また国連との間に地位協定まで存在をしているということであります。  そこで、今ガイドラインの見直し、そして日本周辺地域に起きた有事を想定していろいろな方策を詰めていくということでありますけれども、基本的な方策というのは、これは日米の防衛協力というところに限られているような気がするのです。  仮に朝鮮半島で再び有事が発生した場合、先ほど申し上げましたように休戦状態である、そしてまた戦われる主体が国連軍になった場合、ではどうするのだ。果たして日米の防衛協力だけでいいのか。あるいはそういう国連軍との地位協定まで結んでいるわけであって、基地の提供までしているわけでありますけれども日本が、例えば国連軍との間でもしやられる場合に何らかの、例えば国連憲章の第四十三条に基づいて何か協定をつくる、しかも憲法に基づいてやる、それは今のガイドラインの見直しとも全く一緒でありますけれども、そういう要請が、憲法の範囲内でやれと言われたときに、そういう議論をしていかなくてはいけないかとは思うのですね。その場合に、では日本はどういう対応をするのか。果たして日米安全保障条約に基づく日米間のみの防衛協力でいいのか。国連軍との間の防衛協力というものも議論をしなくてはいけないのではないかと思うのでありますが、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  208. 池田行彦

    池田国務大臣 委員も御指摘になりましたように、国連憲章の四十三条に基づく特別協定が結ばれます場合にその内容はどうなるかという点につきましては、それは協定で決められるわけでございまして、具体的に兵力の提供を含めどのような内容が必要だ、それが義務づけられているわけではない、それは私ども同じように解釈しております。そしてまた現在、かつての朝鮮戦争のときに活動しました国連軍、まだ休戦状態であって完全な最終的な姿になっていないというのもそのとおりでございますし、また、我が国にいわゆる朝鮮戦争の国連軍の存在があるというのもそのとおりでございます。  それで、私どもといたしましては、今文字どおりいわゆる四者協議でございますね、米韓の大統領の提唱に基づく、それが何とか動き出して、そして朝鮮半島における永続的な平和の状態が確定される、こういうことを期待しているわけでございますので、そういう方向で我々も対応していくのが基本でございます。そういうことでございますので、仮定の問題にしろ、将来朝鮮半島で、あるいはそのほかの極東地域のどこかで何か事が起きたときにどういうふうに対応するかということについては、お答えすることは非常に慎重でなくてはならないと思うのでございます。  いずれにいたしましても一我が国としては、憲法の範囲内で、そして国連の加盟国としての立場ということを踏まえまして国連の活動にどういうふうに参画していくか、あるいは対応していくか判断してまいりたいと存じます。
  209. 前原誠司

    ○前原委員 いや、別に何も朝鮮半島の情勢だけを想定して議論をするということではないわけです。私が危惧をしておりますのは、日米の間でのガイドラインの見直しということで、日米安全保障条約に基づいてどういう役割分担ができるのか、また日本法律の範囲内で何ができるのかという検討を始めたということは非常に私はいいことだと思っております。ただ、日米安全保障条約に基づいた仮定だけでいいのだろうか。あるいは国連軍として何か行われたときに、日本もそういった具体的な想定もして、そういう議論も始めなくてはいけないのではないだろうかということを問題提起をさせていただいているわけです。  特に卑近の事例としては、今申し上げたように朝鮮半島がまだ休戦状態である。そしてまた日本にも国連軍が駐留をしている。そして、万が一それが行われた場合に、国連軍として行われる可能性もある。そうしたときに、地位協定まである、しかし、日米の安全保障条約に基づいて日米間ではそういう共同作戦行動なんかの役割分担を憲法の範囲の中で考えていこうということはやりますけれども、国連軍との間ではまだそういった議論ができない、あるいは何もしないというふうなことで本当にいいのかなという疑問があるわけです。  日米安全保障条約の第五条に、いわゆる「いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処するように行動することを宣言する。」しかし、後の方に、「その措置は、安全保障理事会国際の平和及び安全を回復し及び維持するために必要な措置を執ったときは、終止しなければならない。」ということで、あのころは理想的な国連軍の創設というものをある程度前提にしていましたので、こういう文言が書かれているわけですね。  ですから、これもあわせて考えると、第一歩としては日米の防衛協力、ガイドラインの見直しはいい。しかし、実際問題、国連軍とのそういうものを仮定して、日本ができるかできないかというふうなこともきっちり考えるべきではないかということで私はお伺いしたわけであります。  ですから、別に朝鮮半島の外交的な努力はやっていただくというのはいいわけでありますけれども安全保障というのは、大臣の方がもう専門家で、防衛庁長官までやられた方にこんなこと失礼でありますけれども、万が一のことを想定してやるわけでありますから、その万が一の議論の一つとして、国連軍としてやられた場合に、日本がどれだけの後方支援体制を法律の範囲内でとれるのかという議論はすべきではないかと思うのでありますが、その点についてもう一度お答えをいただきたいと思います。
  210. 池田行彦

    池田国務大臣 前原委員の、今るる御説明になりました、問題意識と申しましょうか、そういった点は、本当に私どもとしてもよくわかるところでございます。  ただ、国連との関係につきましては、現在我々いろいろな面でそれに協力しておりますが、例えば、いわゆる国連のPKO活動に関する協力につきましても、御承知のとおりいろいろな議論があり、まだこれからも詰めていかなくてはいかぬところはあるわけでございます。  そういった観点から申しますと、いわゆる国連軍の活動との関係で、我が国がどういうふうに対応すべきかという問題、それは問題としては確かに存在しますけれども、早急に政府としてそれに対応する方針を固めることが、そういうふうな、いわば安全保障環境並びに政治環境にあるかどうかということもよく考えなくてはいけないと思いますけれども委員おっしゃる問題意識は、我々もよく理解するところでございます。
  211. 前原誠司

    ○前原委員 今御質問してすぐどうだということはなかなか難しいと思いますし、ぜひ要望させていただきまして、また御質問なりお答えを聞かせていただきたいと思いますけれども、私はやはり、もともと日米安全保障条約自体が、集団安全保障という国連軍の想定をする過渡期のものとして位置づけているという部分も実際あったわけですから、そしてそれが実際問題、ある程度、朝鮮半島だけが一つの事例であったわけでありますけれども、実態はどうであれ国連軍として戦われて、それがまだ休戦状態になって、そしてまだ日本の中にも国連軍が駐留をしている、そういう部署があるというふうなことを踏まえたら、やはり日本が、その国連軍でやられたときに、全く何も検討してませんでした、できませんでしたというのではいけないと思いますので、ぜひ検討をしていただくように御要望させていただいて、今の質問はこれだけにさせていただきます。  次でございますけれども、集団的自衛権の議論の中で、私は、今の集団的自衛権の政府見解というか、解釈というものについて何か割り切れないものを感じているのです。さっきの意味とは違います。  どういうことかといいますと、共同対処をした場合、その対処をされる側の国に立った場合には、基地を提供するのも立派な集団的自衛権の行使ではないか、こういう思いを相手側はすると思うのですね。あるいは、湾岸戦争のときに、資金を拠出をいたしました。資金の拠出というのは武力行使に当たらないからいいのだ。しかし、武力行使は実際してないけれども、資金を渡すことによって兵器の購入は可能になった。日本が出したのは兵器とかそういう代金ではないというふうに言われるかもしれませんが、ほかのものに使えることによって兵器などを買う代金が余分が出て、そちらに回すことができるという玉突きの理論をしていけば、これもまた集団的自衛権に私は入るのではないかと思いますし。情報提供、これも集団的自衛権に当たらないと。なぜなら、これも情報提供のみでは武力行使の一体化にならないというふうなことで、この集団的自衛権には当たらないということで、何か私の感覚では、集団的自衛権を既にもう幾つかの場面で認めているのですけれども、しかし解釈として集団的自衛権は認めてないということになっているような気がするのですね。ですから、集団的自衛権の議論というのは、私は何かむなしいものを感じる。  そこで、その政府の見解の基準となっております武力行使との一体化、これ一体何だろう。いろいろ今の政府見解を見てみましたけれども、きっちりした定義がないのですね。武力行使との一体化というのはどういうものなのかということは、私はこの際、集団的自衛権の議論、あるいは憲法の範囲内ということであれ、ガイドラインの見直しという作業をやっていく以上ははっきりさせておかないと、個別的な議論になったらこれは本当に泥沼に入っていくと思うのですね。ですから、武力行使の一体化というものは、一体どういう定義なのかということを示していただければと思います。
  212. 池田行彦

    池田国務大臣 ただいま前原委員の方から、集団的自衛権についていろいろな解釈の仕方があるというお話がございました。それは、あるいはそういった見方もできるかと存じます。  しかし、現在我が国政府がとっているその解釈、あるいは国際的にも、一般的な解釈というのは、集団的自衛権を含めまして、およそ自衛権というものは国家による実力の行使にかかわる概念である、こう考えております。したがいまして、我が国による実力の行使に該当しないような行動、今委員が例に挙げられましたように、いわば玉突きによって結果的に米国の実力の充実に資するなんといったような、これはそういった概念に含まれないのであろうし、また、米国に対する基地とか資金の提供というのは、これは集団的自衛権の行使に当たらない、こういうふうに考えております。  それからまた、いわゆる武力行使の一体化云々の話は、これは法制局の方から御答弁いただけるかと存じますけれども、私どもといたしましては、その一体化するかどうかという判断の基準は、あらかじめ一般的に設定されておれば便利だということはあるかもしれませんけれども、やはりこれは事柄の性格上一般的、抽象的に基準を設定するというのは極めて難しいことでございまして、やはりこれは具体的な実態に即して、諸般の事情に即しながら判断していくしかないのかな、このように考えている次第でございます。
  213. 秋山收

    秋山(收)政府委員 いわゆる一体化の理論につきまして定義をということでございますのでお答えいたしますが、この一体化の理論と申しますのは、仮に、みずからは直接武力の行使などをしていないとしましても、ほかの者が行います武力の行使などへの関与の密接性などから我が国も武力の行使などをしたとの評価を受ける場合を対象とするものでありまして、ある行動につきましていわば法的な評価を行うことに伴う当然の事理を述べたもの、法的な評価を行うにつきまして当然の事柄、要するに武力行使そのものをしていなくても、それと非常に密接な関係のあるような、いわば一体化しているような行動をします場合にはその行動自体が武力行使という法的な評価を受けるという、いわば当然の事柄を申し述べたものでございます。  したがいまして、今外務大臣も御答弁されましたように、そう明確に抽象的な基準で割り切ることができない問題だろうと思いますけれども、常々申し上げておりますことは、他国による武力の行使等と一体をなす行動に該当するかどうかは、まず、戦闘活動が行われているあるいは行われようとしている地点とその活動がされる場所との地理的な関係、あるいは当該我が国の行動の具体的な内容、それから他国の武力の行使等の任に当たる者との関係の密接性、それから協力しようとする相手方の活動の現況、現在どういう活動を相手方がしているかということ、諸般のこれらの情勢を総合的に勘案いたしまして、事例に即して判断していくほかないのではないかというふうに考えております。
  214. 前原誠司

    ○前原委員 定義を述べてほしいということでも、まだ、個別事例を当たらないと結果的にはわからないということであります。ということは、個別事例をお聞きするしかないのかなと思います。  もちろん、いろいろな状況があると思いますし、個別具体の事例をすべて聞くわけにいきませんので、私が思いつく代表的な事例で御答弁いただきたいと思うわけでありますが、日本自体は攻撃をされていない、しかし、日米安保第六条に基づいて米軍が周辺地域の紛争に日本の基地から出動している場合、日本の領土内における、つまり自衛隊は出ていってないわけです、日本の領土内における米軍に対する水、食糧、燃料、医療支援、こういった後方支援は、今おっしゃった武力行使の一体化になるのかならないのか、法律上可能なのかどうか、ちょっと御答弁いただけますか。
  215. 秋山收

    秋山(收)政府委員 今の御質問で前提とされております条件のもとにおきましても、基本的には、例えば、いわゆる後方支援の相手方たる米軍が、具体的にどこでどのような活動をし、またしようとしているのか、あるいは、我が国による補給などの活動が具体的にどのような場所でどのような規模ないし形態で行われているのかなと、詳細な検討がさらに必要だと思われますので、確たるお答えを申し上げるのは困難な面はございますけれども、あえて一般論として申し上げますれば、お尋ねのようなケースの中で、まず我が国の領土内で水や食糧の補給を行う、あるいは医療支援を行うことにつきましては、概して武力の行使等との一体性が問題となるようなことは考えにくいのではないかと思われます。  さらに、公海上でそのような活動を行うことができるかどうかという問題でございますが、公海上の支援につきましては、支援の具体的な形態などによると思われますけれども、例えば、武力紛争が行われる地域に該当するような公海で行うのか、それとも、それと関係のない公海上で行うのかというような地理的な問題、それから相手方との密接性などの点を勘案して、十分にこれは慎重な検討を要するものと考えております。
  216. 前原誠司

    ○前原委員 ということは、これは、作業を進めていかれる政府にも頭の痛い問題だと思いますけれども、いろいろな状況で場面は変わってくる、しかし、日本の領域内においては可能であろうということなんですね。ただ、公海上においては、地理的な関係で、その紛争に近いかどうかというふうなことで、またそれは判断が変わってくる。では、一体何キロまではよくて、あるいは、例えば一メートルでもそれが遠ざかったらいけないのかどうかなんということは、これは判断として難しいですね。これは法制局に文句を申し上げるのではなくて、こういう議論の難しさというものをやはり整理をする必要は出てくるのではないかと私は思うのですね。  もう一遍ちょっと法制局にお尋ねします。さっき、医療支援なんかは、日本国内で行われた場合においては武力行使の一体化と概して認められないので、大丈夫のケース一般論としては言えるのではないかとおっしゃいましたけれども、では、その兵士が前線で戦っていてけがをした、そして日本に送られてきて、日本の医療支援によって元気になって、そしてまた戦闘に行く、前線に行く、これは武力行使の一体化になりませんか。
  217. 秋山收

    秋山(收)政府委員 この一体化論の基本的なところは、先ほども申しましたように、その行為が我が国としての武力行使などと法的に評価をされるかどうかという、いわば常識的な話でございますので、ある意味では常識的な判断をしていかざるを得ないと思いますけれども、ただいま、その行為の態様とか、例えば非常に武力行使に密接な行為でもって支援を行うのか、あるいはそうでない、いわば人道的といいますか、通常市民が受けるようなサービスとして行われるのかとか、そういうことも考慮の要素として考えていくべきものであろうと考えまして、したがいまして、我が国の領域内で行う医療活動などは一体化という評価を受けることが概してないのではないかというふうに申し上げた次第でございます。  なお、いずれにいたしましても、米軍に対する後方支援のあり方につきましては、今後具体的な事例に即しました検討が関係省庁において行われることになろうと思いますので、もし当局に意見が求められるというようなことがございましたら、当局としましても、十分に具体的なお話を伺った上で適切な意見を申し述べていきたいと考えているところでございます。
  218. 前原誠司

    ○前原委員 今の御答弁でわかりませんし、また、そういう状況で御質問するのも酷かなという気もします。ただ、実際問題、クリントン大統領が来られて、そして日米ガイドラインの見直しということが決定をされました。そして、今までガイドラインにおいて明確にされてこなかったいわゆる極東有事というものについても、そのガイドラインの見直しをしていこうという作業を、これは国際公約としてやっていかなければいけないわけですね。  しかしながら、実際我々も今作業をともにさせていただいていて思うわけでありますけれども、神学論争はやめましょう、つまり、集団的自衛権というものの神学論争はやめましょう、具体的な事例の中で判断しましようということなんですが、結果、大臣も今聞いておられてわかりますように、個別具体的な事例に深まればまた神学論争になってくるのですね、距離的な問題とか、あるいはその一体性の問題とかいうことで。これはどこかで明確な境目をつくらないと、いわゆるグーレーゾーンというのはグレーゾーンのままであって、明確な答えが得られない。その点については今明確な御答弁を求めるものではありませんけれども、何らかの政治的な判断において明確な基準となるものをつくっていかないと、これはとてもじゃないけれども、モグラたたきで、すべての事例というものをいろいろな場面で想定してやっていくしかないということになると、私は、この作業は気が遠くなると思うのですね。その点について、もし大臣から何らかのお考えなり、また今後の御意見があればお伺いをして、私の質問を終わりたいと思います。
  219. 池田行彦

    池田国務大臣 委員指摘のとおり、先般の日米首脳会談におきまして、いわゆる極東有事の際も含めまして日米協力のあり方について作業を進めていこうという合意がなされ、今まさにそれを開始しようとしているわけでございます。そういった際には、これまで可能かどうかあるいは行うことが妥当かどうかという問題が詰められないまま参りました活動、行動あるいは分野というものが少なくございません。そういった面について、いろいろ個別的な具体的な状態、事態というものあるいは行為というものも想定しながら、できる限り明確にしてまいりたいと思います。その際には、憲法上できるかできないかという観点ももちろんこれは大切でございますけれども、それと同時に、日米協力を進める上において、あるいは我が国立場として、そのような行動をとることが妥当かどうか、適切か否か、そういった観点からも考えてまいりたい、こう考えているところでございます。
  220. 前原誠司

    ○前原委員 ありがとうございました。終わります。
  221. 関谷勝嗣

    関谷委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後一時三十八分休憩      ――――◇―――――     午後三時九分開議
  222. 関谷勝嗣

    関谷委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、外務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。外務大臣池田行彦君。
  223. 池田行彦

    池田国務大臣 午前中の委員会開会冒頭、関谷外務委員長からの御質問がございました北朝鮮の人物の亡命の件につきまして、補足して答弁させていただきます。  去る五月七日、北京にございます在中国我が国の大使館に訪ねてまいりました人物が、自分は北朝鮮科学者であるということを明らかにし、韓国亡命の意図を有していることを館員に対して語りました。その後その人物は、韓国と接触しました後、第三国へ出国と申しますか、日本中国韓国北朝鮮以外の地域へ参りまして、現在その地に滞在しているということを御答弁申し上げたいと存じます。  この問題につきましては、私どもといたしましては、その人物の安全という点への配慮、あるいは関係国との関係に配慮いたしまして、午前中の会議におきましては、今述べましたような事実を明らかにすることを差し控えさせていただいたわけでございますが、その後、韓国におきまして、先ほど申しましたようにいわゆる第三国へ出国し当面安全の面での懸念はなくなった、ない状態にあるということを明らかにした、こういうことでございますので、今のように補足させていただきます。      ――――◇―――――
  224. 関谷勝嗣

    関谷委員長 日本国自衛隊アメリカ合衆国軍隊との間における後方支援物品又は役務相互提供に関する日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定締結について承認を求めるの件を議題といたします。  質疑を続行いたします。伊藤英成君。
  225. 伊藤英成

    ○伊藤(英)委員 いわゆる物品役務相互融通協定についてお伺いをいたします。  本協定の国会提出の際に防衛庁の村田事務次官は、その適用の範囲は、共同訓練、国連平和維持活動、人道的国際救援活動に限定をされているけれども、有事と平時の区別がないことを指摘した上で、この条文上は、米軍の武力行使などと時間的、場所的に近接した場合でも日本から米軍への共同訓練が可能となるという認識を示したと思っております。これに対して臼井防衛庁長官が、共同訓練は有事では通常行われないというふうに述べまして、平時に限定されるという発言をしております。しかし、この防衛協力の一層の緊密化を図る、こういう意味のためには、私は、この条約を有事に適用することが必要ではないか、こういうふうに思っております。事実、もう御承知のとおりに、米国がNATO諸国と結んでいるいわゆるACSAの中には、はっきりと有事に適用されるというふうにしているところもありますし、また、有事への適用を排除したものではないというものもあるわけであります。  それで、先ほど申し上げましたけれども、この日米防衛協力の一層の緊密化を図るためには、条文を改正して、このACSAを有事にも適用できるようにすることこそ重要ではないか、こういうふうに思いますが、政府はどのように考えられますか。  〔委員長退席、小杉委員長代理着席〕
  226. 池田行彦

    池田国務大臣 ただいま御審議をちょうだいいたしております協定は、日米共同訓練そしてPKO活動、また人道上の見地からの国際的な救援活動に際しまして、物品役務の日米間での融通を図ろう、こういう協定でございます。したがいまして、有事、平時という切り口から見てのものではございません。しかし、午前中の御答弁でお答え申し上げたところでございますけれども、有事という概念も必ずしも確定したものではございませんけれども、いわゆる戦闘行動が行われている状況のもとで、戦闘活動、戦闘行動を行っている米軍に対して役務あるいはサービスを提供するということはこの協定では考えていない、こういう規定になっているわけでございます。  さて、ただいま伊藤委員の御指摘は、むしろ有事のときにといいましょうか、そのようなケースについても適用するように改定すべきではないかという御指摘かと存じますけれども、私どもといたしましては、昭和六十三年の時点で米側からこういった物品役務相互の融通についての枠組みを考えたいという提起がありましてから、いろいろ両者で相談をしてきたわけでございます。そして、両者にとってそのニーズの高いケース対象にしようということでいろいろ話してまいりまして、今般先ほど申しましたように、この協定に書いてございますように、共同訓練、PKO活動、国際救援活動を対象にする、こういうことで協定を結びまして、御審議を願っておるわけでございます。  なお、いろいろな事態における日米間の協力をいかに進めていくかという観点につきましては、これは別途これからもいろいろ研究、検討していこうということは先般の日米安保共同宣言においても合意されまして、現在、まさにそういった作業を進めようとしているところでございます。
  227. 伊藤英成

    ○伊藤(英)委員 今のお言葉、ちょっとわかりにくかったのですが、平時と有事の差は考えておりませんという意味ですか、有事のときにもこれは適用しますという意味なのですか。有事と平時との間に何か限界はあるという意味でしょうか、ないという意味なんでしょうか。
  228. 池田行彦

    池田国務大臣 まず、その有事か平時かということで適用対象を区別するというとらえ方はしていないということが第一点でございます。それから第二点といたしまして、有事という言葉につきましてもあるいは事態につきましても確たる定義があるわけじゃないということを申し上げました。そういった上で、いわゆる有事というものを戦闘行動の、戦闘活動の行われている状況ということとしてとらえ、そうしてそのような戦闘行動を行っている米軍に対して役務やサービスを提供するということはこの協定では認めていない、こういうことを御答弁申し上げているところでございます。
  229. 伊藤英成

    ○伊藤(英)委員 それでは伺いますが、例えば戦闘行動が起こるかもしれないというふうに思って共同訓練をするときに、このACSAによって後方支援等をすることは可能ですか。
  230. 池田行彦

    池田国務大臣 先ほど申しましたように、有事、平時という切り口からこれは規定していないわけでございますが、それはまた、当然のことでございますが、共同訓練というのは基本的には、日本が侵略を受けるような場合に日米で共同で対処していく、そのときの日米の協力が有効に行えるように平素から共同で教育をし訓練をしていく、こういう性格のものでございますから、そういった意味ではいずれにしても共同訓練というものは戦闘活動とは全く関係ないものである、そのこと自体は関係ないことである、このように考える次第でございます。
  231. 伊藤英成

    ○伊藤(英)委員 例がよくないかもしれませんが、例えばこの間台湾中国との間で、あの台湾の選挙のときにいろいろ訓練を行ったりいたしました。中国も訓練をしたり、あるいは台湾も訓練をしたり。そこに今度は米軍も来たりいたしました。ああいうときに例えば米軍が共同訓練をしようという、その共同訓練のときに、日本はこのACSAに基づいた後方支援等の活動はできますか。いかがですか。
  232. 池田行彦

    池田国務大臣 今例を挙げましたその例は必ずしもよくないかもしれないと委員もおっしゃいました。私も、仮定としても、今のケースを想定してというよりも、こういう例はいかがでございましょうか。  PKO活動、この協定対象になっておりますね。このPKOで、日本自衛隊と米軍とが同一のPKO活動をやっておって、そして、そこでこのACSAの協定に基づいて彼此融通することはこれは可能でございまして、そういうことが行われておりますときに、全く離れた地域でございますけれども、極東のどこかであるいは非常に危ない状況になったとしても、例えば遠隔の地で行われているPKO活動に際してのこの協定に基づく日米の物品あるいは役務の彼此融通というものは、これは継続し得るものだと考えております。
  233. 伊藤英成

    ○伊藤(英)委員 よくわからないのですが、PKO云々じゃなくて、要するに、訓練というのは、ある意味では武力による威嚇のために訓練という場合もありますね。それはいろんなフェーズがあると私は思っているのですが、そういう意味で共同訓練というのがどこまでできるのであろうか。  少なくとも私の理解では、例えば、平時、有事という考え方が必ずしも妥当でないということかもしれませんが、もしもそういうふうに考えたときに、そういう発言をいろいろ長官等もされているものですかり言いますと、平時のみの共同訓練で、有事のときに使わないなんという訓練はほとんど意味をなさないと私は思うのですね。だから、こういうお話をするわけですけれども。  そういう意味で、いわば戦闘行動が起こるかもしれないようなときでも、あるいはそれは戦闘行動を行っているときも含めてと考えた方がいいでしょうが、この協定、いわゆるACSAがそういうときにも適用できるようにすることが必要ではないかという意味で申し上げました。
  234. 池田行彦

    池田国務大臣 どういう状況のときに共同訓練が行われるか、あるいは控える方が適切であるかということは、また別途その判断があると思いますが、いずれにいたしましても、日米の共同訓練というものの性格を考えてまいりますと、御承知のとおり、そもそも我が国自衛隊は、憲法上あるいは安保条約上も日本有事に際して行動するものであり、また日米の共同対処をいたしますのもそういう日本の有事の際でございます。  そして、共同訓練というのも、そういった日本有事に際して日米共同対処が有効にできるように、そのために平素から訓練していくということでございますので、そもそも我が国が行います自衛隊の単独の訓練であれ、日米共同の訓練であれ、先ほど委員が御指摘になりましたような、効果なりあるいは影響というものを意図してやること、行うことはあり得ないわけでございまして、専守防衛の我が国自衛隊のあり方というものは訓練においても同様であると考える次第でございます。
  235. 伊藤英成

    ○伊藤(英)委員 このACSAの適用について行う場合に、いわゆる国連平和維持活動とかあるいは人道的な国際救援活動等、これは地理的に言いますと、いわばグローバルな規模で行動できると思うわけでありますが、その共同訓練の場合も、同じように世界的な規模で、規模というか、地域的なものですね、これは世界どこでも適用するということでしょうか。どうですか。
  236. 秋山昌廣

    秋山(昌)政府委員 日米共同訓練でございますけれども、これは当然のことながら、日本有事における日米共同調整あるいは連携要領の演練、または一般的な戦術技量の向上ということを目的といたしまして、共通の訓練を両部隊あるいは要員が参加して行うわけでございますから、その地域的な問題についてはおのずから限度があろうかと思っております。
  237. 伊藤英成

    ○伊藤(英)委員 それから、先般の日米安保共同宣言の中には、もう御承知のとおりに「アジア太平洋」ということが、これは何度も出てまいります。そして、もちろん私は、この間の「日米安保条約を基盤とする両国間の安全保障面の関係が、二十一世紀に向けてアジア太平洋地域において安定的で繁栄した情勢を維持するための基礎であり続けることを再確認した。」云々と書いてありまして、そしてさっき申し上げたように、何度も「アジア太平洋」云々という話が出ているわけでありますけれども、日米防衛協力の一層の緊密化を図って、そしてアジア太平洋地域の安定と繁栄を図るという見地からいたしますと、従来政府が固執してまいりましたいわゆる極東の範囲ということについて、これをもっと拡大をして、アジア太平洋地域における米軍の自由な活動、そしてそれに対して日本が支援をする、こういうことが必要だ、こういうふうに思うわけですね。  そういう意味で、極東の範囲を拡大をして、アジア太平洋地域における日米防衛協力の一層の緊密化を図るというふうにする考え方があるかどうか、お伺いをいたします。
  238. 池田行彦

    池田国務大臣 安保条約上の「極東」の地域と伸しますのは、日米両国がその平和、安全の維持について共通の関心を有している地域でございます、いわゆる六条の関係でございますが。それに対しまして、今回の日米安全保障共同宣言において「アジア太平洋」という言葉が使われておりますが、これは、安保条約に基づいて米軍が我が国存在しているというその事実が我が国の周辺諸国に安心感をもたらすと申しますか、そういったことの結果としてその地域、アジア太平洋地域の安定的な要因として作用している、そういった認識を述べたものでございまして、安保条約に言う「極東」の範囲を今回の日米安保共同宣言によって拡大したとか変更したとか、そういうものではございません。  いずれにいたしましても、政府といたしましては、日米安保体制の信頼性をさらに向上させるためにいろんな努力をしていくというのは当然のことでございます。
  239. 伊藤英成

    ○伊藤(英)委員 先般のこの共同宣言の中で、日米防衛協力のための指針、ガイドラインの見直しをすることになりました。そして、その作業も始まっているわけでありますけれども、こうした問題につきまして、橋本首相も、一体何ができるのかあるいは何ができないのか、そういうことも具体的に研究をしておくことが必要だという趣旨のことを述べておられます。極東有事の際に現行法制で本当に何ができて何ができないのか、それで何をこれからしなきゃならぬのかということをしっかりと議論することが必要だということですね。  そこで、仮定の話としていろいろお伺いしたいわけであります。例えば朝鮮半島で戦闘状態が発生したときに、大きく分けて二つの問題について聞きたいんですが、一つは、避難民輸送等についての対策をどうするかという問題、それからもう一つは、日本の周辺地域で戦闘行動が発生した場合に、日本が対米支援でどういうことができるんだろうか、どういうことをする必要があるんだろうかという観点伺いたい。  まず最初に、朝鮮半島で戦闘状態が発生した場合の在留邦人の救出という問題についてでありますけれども、この間の九四年の自衛隊法の改正では、政府専用機など航空機による在外邦人の輸送を自衛隊の任務とすることになったんですが、それについて航空機の使用もできるようになったんですね。しかしそのときに、この派遣は、輸送の安全が確保される場合という要件がついていると私は思うんですが、そういう意味で、今申し上げたような、朝鮮半島に戦闘状態が発生したというようなときには、これは危険が想定される事態であるわけですが、そのときに在留邦人の救出のために航空機を使用することは可能なのかどうか、あるいはこの問題について今後どうしようと考えるのか、いかがですか。
  240. 秋山昌廣

    秋山(昌)政府委員 まず一般論といたしまして、緊急事態に陥っている在外邦人等を輸送するため、自衛隊法第百条の八に基づきまして自衛隊の航空機を他国に派遣することは、これは武力行使の目的をもって武装した部隊を他国に派遣するいわゆる海外派兵ではございませんので憲法上禁じられていないわけでございまして、このことは、派遣先あるいは派遣先国において戦闘状態が存在するかどうかということには関係がないと考えるところでございます。  また、この百条の八におきまして在外邦人等の輸送を実施するに当たりましては、この条文に、輸送の安全が確保されていることが前提となっているわけでございますが、これは派遣先国の空港及び航空機の飛行経路において航空機等の安全が確保されているかどうかという問題でございまして、その確保がされていることを求めているわけであります。したがいまして、派遣先あるいは派遣先国におきまして戦闘状態が一部存在する場合でございましても、この条文に言うところのかかる意味での安全が確保されているのであれば、同条に基づく輸送は可能であると考えております。
  241. 伊藤英成

    ○伊藤(英)委員 航空機が派遣される場合、不測の事態に備えてその輸送機に護衛機をつけることは可能ですか。
  242. 秋山昌廣

    秋山(昌)政府委員 自衛隊法第百条の八に基づく在外邦人等の輸送のため使用される航空機の安全が確保されない場合は当該輸送を実施しないということになっているわけでございます。したがいまして、戦闘機等によります護衛を行うことはないといったことが、この百条の八を追加する法案提出に当たりまして、これはあわせて閣議決定されているところでございます。  また、自衛隊法第百条の八により自衛隊に付与される権限は、航空機による在外邦人等の輸送を行うことができるという規定でございます。したがいまして、この規定から明らかなように、緊急事態に際しまして生命等の保護を要する邦人等を輸送するということが規定されているのみでございまして、同条文に基づきまして航空機による護衛を実施することはできないと解しております。  なお、在外邦人等の輸送を実施するに当たりまして、航空機による護衛を実施することが憲法上可能かどうかという点があろうかと思いますが、これはまさに、いかなる具体的な状況のもとで、またいかなる態様でそういったものが求められるかどうかということにかかわっていると考えるところでございまして、一概にここで申し上げることはなかなか困難でございます。
  243. 伊藤英成

    ○伊藤(英)委員 今の話は、これからそれこそ日米協力等についてのいろいろ議論をしようとするわけでありますが、それは状況次第によれば護衛機をつけることができるようにすることも検討する意思はあるんですか、ないんですか。
  244. 秋山昌廣

    秋山(昌)政府委員 現在政府の中で、在外邦人の救出その他の問題につきまして、まさに我が国安全保障上大きな緊急な事態が生じた場合の対応策につきまして個々具体的に検討を進めるということになっております。その検討の中で、今御指摘のような問題がやはり大きな課題であるということであれば、当然検討される問題であろうと考えます。
  245. 伊藤英成

    ○伊藤(英)委員 それでは、航空機だけで輸送しようとした場合には不十分かもしれません。例えば台湾韓国なんかですと日本人が一万人ぐらいいるど思いますが、不十分でしょうね。そうすると、今度は自衛艦による輸送は可能ですか。
  246. 秋山昌廣

    秋山(昌)政府委員 自衛隊法百条の八を追加した時点で、在外邦人の救出のニーズ、態様等についていろいろ調査をいたしましたところ、輸送手段として航空機ということが上がってきたわけでございまして、その時点でのニーズ等から艦船を含めなかったものでございます。  そこで、在外邦人等の輸送手段として自衛隊の艦船を活用すべきかどうかという点につきまして、これから具体的なニーズ等を十分検討いたしまして考えていくべき問題であろうと考えております。  なお、一般論を申し述べますと、外国における緊急事態に際し、航空機によるか艦船によるかを問わず、自衛隊が、生命等の保護を要する在外邦人等の輸送を行うことはこれは武力の行使に当たるものではない、したがって、憲法上許されるものであるというふうに考えております。
  247. 伊藤英成

    ○伊藤(英)委員 今のお話は、憲法上許される範囲内であるからこれは今後検討したいという意味だと思います。もし違ったら、その次のときにまた訂正してください。黙っていたら、そうだというふうに理解をいたします。  それから今度は、米国が、韓国に駐在する米国の軍人及び米国の民間人、この人たちを輸送してほしいと頼んできた場合に、日本は輸送することは可能ですか。
  248. 秋山昌廣

    秋山(昌)政府委員 たびたび引用しております自衛隊法第百条の八におきましては、外国における緊急事態に際しまして生命等の保護を要する邦人を自衛隊が輸送することを規定しているわけでございますが、この邦人を自衛隊が輸送するに当たりまして、当該邦人を輸送する航空機に余席のある場合には、外務大臣からの依頼を前提にということでございますけれども、この余席を利用いたしまして、当該邦人と同様の状況に置かれている外国人あるいは米国人も輸送の対象としているところでございます。
  249. 伊藤英成

    ○伊藤(英)委員 それでは次に、先ほどの二つのケースで言いました二つ目の方の話ですが、日本の周辺地域で戦闘行動が発生した場合に、我が国の対米支援をどうするかという意味で具体的にお伺いしたいんですが、攻撃に向かうアメリカの空母に自衛隊が洋上給油をすることは可能かどうか。もしも難しければ、今後それはできるようにしようとこれから考えるのかどうか。
  250. 荒井寿光

    ○荒井政府委員 今お尋ねの点でございますが、我が国周辺地域における我が国の平和と安全に重要な影響を与えるような事態における自衛隊の対米支援につきましては、具体的に定まったものがあるわけではございませんので憲法上可能であるかについてお答えすることは困難でございますが、あえて一般論として申し上げますと、かかる活動と今お尋ねの活動が果たして武力の行使と一体をなすような行動に当たるどうかというようなことで判断すべきと考えられておりまして、攻撃に向かう空母というお尋ねでございますが、そういう活動が行われている場所と洋上給油がなされる場所との地理的関係とか時間的な関係とか、協力しようとする相手方の活動の現況、こういう情勢を総合的に判断して個々に判断されるべきだというふうに考えておりますので、一概に申し上げることはできないと思っております。
  251. 伊藤英成

    ○伊藤(英)委員 先ほど私は日本の周辺と申し上げました。もしもそこで戦闘行動が行われたとするならば、防衛庁の方だったらだれでもそう思うと思いますが、日本の例えば米軍基地等、そういうところはすぐに攻撃の対象になるかもしれませんよね。だから、状況次第といえば状況次第なんでしょうが、日本の周辺でそういう戦闘行動が起こって、そして米軍の空母もやはり日本を守るためにも行くということが考えられる、今私の質問する、今幾つかのことを申し上げたいと思うのですが、それはすべてそういう状況の中で判断していただきたいと思います。
  252. 秋山昌廣

    秋山(昌)政府委員 自衛隊法の第七十六条に防衛出動の規定があるわけでございますけれども、この防衛出動の規定我が国に対する侵略とか攻撃ということが前提になっているわけでございます。何が我が国に対する侵略か、攻撃か、あるいはそのおそれかということにつきましては、例えば計画的、組織的な攻撃が我が国に対して向けられている、そういう状況であろうかと思いますが、今御質問の、日本周辺において戦闘状態があって、かつ我が国が攻撃されているあるいは攻撃されるおそれがあるという状況で第七十六条の防衛出動下令ということであれば、空母に対する支援ということは可能であろうと考えております。
  253. 伊藤英成

    ○伊藤(英)委員 米軍が、日本の国内に集積されたアメリカの米軍物資、これを自衛隊の輸送機でいわゆる前線以外の地域に運んでほしいと依頼された場合はどうするのか。できますか。あるいは前線に運んでくれと言われたら可能でしょうか。
  254. 秋山昌廣

    秋山(昌)政府委員 ただいまの御質問も大前提として我が国が攻撃されている場合あるいは攻撃されるおそれがある場合ということで、防衛出動が発令されているか、下令されているかされていないかで全く状況は変わるわけでございますが、下令されているということであれば、我が国を守る個別的自衛権のもとで自衛隊が所要の措置をとるということは当然のことであろうかと考えております。
  255. 伊藤英成

    ○伊藤(英)委員 要請されるものが武器弾薬であっても、これは同じですね。
  256. 秋山昌廣

    秋山(昌)政府委員 防衛出動が発動されたもとでございますと、当然のことながら、これは自衛隊法八十八条に規定されているところでございますけれども、武力の行使ということが個別的自衛権のもとで行われるわけでございまして、この個別的自衛権のもとでの武力の行使の中での一環としてかなりのことが自衛隊としては行われるということであろうかと思います。
  257. 伊藤英成

    ○伊藤(英)委員 今の話は、日本の周辺で、先ほどお話しのように日本が攻撃されるおそれもある場合という話であります。それで米軍が行きますよ、日本もあれしますよ。今何度も個別的自衛権の云々と言われましたけれども、これは本当はいわゆる集団的自衛権の範囲の活動というふうには言えませんか。
  258. 秋山昌廣

    秋山(昌)政府委員 若干繰り返しみたいで恐縮でございますけれども、一つの大きな前提として、条件が満たされ防衛出動が下令されているという状況でございまして、かつ我が国に対して武力攻撃がなされているという状況のもとであれば、我が国のための援軍として来るあるいは活動する米軍に対する共同行為というものは、これは個別自衛権の範囲内での自衛隊の行動であろうと考えております。  ただ、仮に防衛出動が発動されていない状況のもとで非常に緊迫的ないろいろな状況がある、そういうときに、例えば米国の空母なり軍艦、艦船なりにどういう支援ができるのかというのは、まさに今これから政府部内で具体的ないろいろな案件を念頭に置きまして検討してまいりたい、こういうふうに考えている事案でございます。
  259. 伊藤英成

    ○伊藤(英)委員 例えば北朝鮮沖で何か問題が起こったとしましょう。その北朝鮮沖で米軍機が墜落をした場合に、自衛隊による米兵の捜索、救難というのはできますか。
  260. 秋山昌廣

    秋山(昌)政府委員 軍用機といえども、それが墜落をしその要員の生命を救うための活動は、これは国際条約上も認められているといいますか、義務としてもあろうかと思いますが、自衛隊としても自衛隊法第八十三条の災害派遣活動として人命救助に当然のことながら対応し得るというふうに考えております。
  261. 伊藤英成

    ○伊藤(英)委員 相手国がその戦闘行為の一環として敷設した機雷について、米軍が掃海作業してくれと日本に頼んできたら、これはできますか。
  262. 秋山昌廣

    秋山(昌)政府委員 米軍から機雷の掃海の依頼があった場合に、憲法上あるいは法律上これに応ずることができるかどうかということであろうかと思いますけれども、これはもうまさにその具体的な状況をいろいろ勘案いたしませんと、ここで判断はできませんが、機雷の除去ということに関して一般的な考え方を申し上げますと、いわゆる遺棄された、捨てられた機雷でございますが、それにつきまして、まさにそれが我が国船舶の航行の安全にとって障害になっている場合、これはこの除去する行為は憲法上も、また自衛隊法でも、これは第九十九条ですが、可能な行為でございます。
  263. 伊藤英成

    ○伊藤(英)委員 米軍が軍事物資の中継、集積場として日本自衛隊基地のほかに民間空港や港湾の使用を申し入れてきた場合に、その民間空港や港湾を提供することは可能かどうか、そしてまたそれは一その管理者というのでしょうか、地方自治体等との関係もいろいろあると思うのですが、この辺はどういうふうに考えられますか。
  264. 折田正樹

    ○折田政府委員 あくまでも一般論としてお受けとめいただきたいと思いますけれども、米側から民間の空港または港湾を施設・区域として一時的に使用の要請があった場合に、この要請に対応するために地位協定第二条四(b)に基づきまして合同委員会を通ずる手続等の手続を経ることによって可能かということでございましたらば、可能であろうかと思います。  他方、今先生も言われましたように、法的な側面ばかりでなく、港湾管理者たる関係自治体それから周辺住民の方々との関係等々がございますので、個別具体的な事例に即して総合的に検討をする必要があろうというふうに考えております。
  265. 伊藤英成

    ○伊藤(英)委員 ちょっと別の視点の話でありますけれども、先般の日米安保共同宣言において、御承知のとおりに、こういうふうに言われているところがあります。米国は、現在の安全保障情勢のもとで米国のコミットメントを守るためには、日本におけるほぼ現在の水準を含め、アジア太平洋地域において、約十万人の前方展開軍事要員から成る現在の兵力を維持することが必要であるということが、この間述べられておりますね。  要するに、少なくとも現在の安全保障情勢のもとではということなんでしょうが、東アジアにおいて約十万人、そして日本において四万七千人の兵力を維持するという意味だと私は思うんですが、このことについて、今後かなりの長期にわたってこの体制を継続するつもりで外務大臣は、あるいは防衛庁もかもしれませんが、政府は考えていると考えていいんでしょうか。どういうふうに考えられますか。
  266. 池田行彦

    池田国務大臣 委員指摘のとおり、先般の共同宣言におきまして、我が国における駐留米軍の水準を含めまして、この地域で十万人の現在の兵力構成を維持することが必要である、こういうことを再確認いたしました。これは、やはり現在のこの地域の安全保障環境等を前提として、そういう認識の一致を見たわけでございまして、将来の在日米軍のあるいはアジア太平洋地域における米軍の勢力水準については、国際……(伊藤(英)委員日本のでいいですよ」と呼ぶ)在日米軍の水準について申しましても、これからの国際情勢とりわけ我が国を取り巻く地域の安全保障環境がどういうふうに変化するかあるいは変化しないか、また、装備、技術の進歩等がどうなるか、そういったもろもろの要素を総合的に評価されて決められるべきものである、こう考えております。  したがいまして、今後この水準がどうなるかということは、今確たることは申せませんけれども一般論として申し上げますならば、今申しましたような要素、とりわけ安全保障環境に大きな変化があればこの水準も、在日米軍の水準も変わることはあり得る、このように我々は認識しておりまして、このことは、我が国政府あるいは米国の当局者もこれまでも折に触れて明らかにしてきたところでございます。
  267. 伊藤英成

    ○伊藤(英)委員 今のお話は、情勢の大きな変化がなければ現在の兵力は維持することになるでしようという意味だと思いますね。あるいはもっとふやすということもあるのかもしれませんが、そういうふうに受け取りますが、そういうことですか。  さらに、今のに関連をして申し上げますが、そもそも在日米軍の役割とか任務は一体何なんだろうか。そういう意味で、約四万七千人の兵力が本当に要るのかどうかという意味についてどう考えるかということになると思うんです。  これは御承知かと思いますが、一部の学者なんかも言っているんですが、今あそこに二万人弱の海兵隊がおりますが、その海兵隊はハワイか米国本土に配置がえした方がいいんではないかという提案も出たりしております。それはなぜかというと、今申し上げた二万人弱の海兵隊の任務からいって、沖縄に彼らがいなくてはならないというか、あそこにいることによる効果といいましょうか、それは実は余りないんだよ  ちょっと時間が余りありませんので、その理由は私から申し上げませんが、専門家の方々はそれぞれ御承知かと思いますが、そういうことなんですよね。  だから、そういうふうに今の在日米軍のそれこそ役割と任務を十分に考えると、例えば今申し上げた海兵隊をハワイかどこかに、あるいは本土にという話だって可能かもしれないと思ったりするわけでありますが、そのように在日米軍を劇的に削減をするという可能性についてどのように考えますか。
  268. 池田行彦

    池田国務大臣 まず最初に、情勢が変化すれば在日米軍の水準も変わるのかという点でございますけれども、それをひっくり返して、情勢が変わらなければ今の水準を維持するかという、こういう御質問でございますが、先ほども御答弁申し上げましたが、安全保障環境を含む国際情勢の変化、これが非常に大きな要素でございます。しかし、そのほかに装備の技術水準がどうであるか、そういった要素もございますので、そういったものを総合的に勘案いたしまして、在日米軍の水準なり兵力構成というものは決定されるべきものだ、こういうふうに考えております。  そして第二点、海兵隊を含めて在日米軍の構成の関係でございますが、そもそも在日米軍は、ここに存在するということでまず抑止力として働くんだと思います。つまり、在日米軍が存在する状況のもとでどこかの第三国が侵略を行えば、その国は到底耐えがたい損害をこうむる、こういうことを明白に認識させる、こういうことで侵略を思いとどまらせるという役割、機能が提供されているんだと思います。そういったことによりまして、我が国の安全はもとより、極東地域の平和にも寄与しておる、こう思うわけでございます。  そのような在日米軍の役割、これは海兵隊を含む米軍が全体として果たしているわけでございまして、これは日米安保体制にとりまして中核的な要素をなすものと考えておりますので、少なくとも現在の東アジアを初めとする国際情勢国際社会の状況が依然として不安定要因を内包しているということを考えるならば、私は、現在の在日米軍の水準そして構成というものは全体として引き続き不可欠である、こう考えておる次第でございます。
  269. 伊藤英成

    ○伊藤(英)委員 じゃ、伺いますが、例えば最近の議論はどうなんでしょうか、事前集積ということで、陸上にいわゆるポンカスと言われる集積をやったりしてました。ああいうのだとか洋上集積とか、そういうやり方のことについて研究あるいは提起をしておりますか。
  270. 池田行彦

    池田国務大臣 ポンカス、すなわち軍隊そのもの存在せずに、いろいろな必要な物資を集積しておいて、もし必要になった場合には、いわば軽装備といいましょうか、武器その他の資材を持たない兵員が参りまして、そこに集積された物資を使用してそれに対応する、そういったケースを指しておられるのだと思いますけれども、そういったことを考えましても、物理的に、あるいは政策決定、方針決定ということを、いろいろな要素を考えまして、緊急な事態が起きたときに、果たして時間的に、また体制といたしましても十分事態に対応できるかどうかという問題もございます。  それから、先ほども申し上げましたけれども、そもそも在日米軍の存在ということは、まず抑止力として作用する、役割を果たすということを考えますと、やはりそれは現実に兵員がいろいろな事態に対応できる体制を整えて存在するということが肝要であろうか、こう考えております。
  271. 伊藤英成

    ○伊藤(英)委員 防衛庁、どうですか。洋上集積の問題も含めて研究もしておりませんか。
  272. 秋山昌廣

    秋山(昌)政府委員 我が国の防衛にとりまして日米安保体制が極めて重要であり、かつ在日米軍の存在あるいはその構成あるいはそのオペレーションというものが大変重要であるという認識のもと、当然米軍と自衛隊の間で、いろいろな問題がありますが、我が国が侵略された場合の対策、オペレーション、共同作戦計画の研究、そういったことをやっております。  御質問の趣旨は、在日米軍の基地の問題ですとか、あるいは在日米軍のあり方の問題であろうかと思います。当然我々もこういう問題について常々関心のあるところでございまして、特に最近は日米間で冷戦後の日米安保のあり方ということでかなり議論をしてまいりましたし、かかる問題についても意見交換をしてまいりましたが、最終的に米軍が米軍として、日本の防衛あるいは極東の平和と安定、ひいてはアジア太平洋地域の安定といったような観点から日本にこういう形で米軍を置きたいということについては、我々も現在納得をしているところでございます。
  273. 伊藤英成

    ○伊藤(英)委員 先ほど外務大臣から、米国の軍隊がいることが抑止力になるんだよといういろいろなお話がございました。その論は、だから、情勢の変化次第かもしれないのですが、日本にずっと米軍がいてくれることがそういうふうに抑止力になるんだよという論ですね。  考えてみれば、戦後五十年たって、そして日本がまさに世界経済大国、こういう状況になっていて、四万七千人の米軍がずっといるということが世界的に見て本当に常識的かなということは、私は考えた方がいいと思うのです。  さっき、アメリカの学者が云々という話は、この論はもうよく御承知かと思います。本人にも私も会って直接いろいろ話もしたりいたしました。要するに、日本がいわば本当に米国の対等な、本当に対等かということはあるかもしれませんが、ほぼ対等なパートナーとなっていくことが本当は必要なんじゃないか。今の状況は、何といったっていわば米国の庇護のもとにあるという状況ですよね。そういうのをもうそろそろ脱していいではないか。だから、この辺の安全保障の問題についても、いわば集団安全保障という概念のもとにやはりいろいろなものをもっと考えていくということなんでしょうね、日本も国連を中心とした集団安全保障という部分を含めて。そういうことを考えたりするわけです。  要するに、アメリカと日本が協力をしてこの辺の安全保障を維持しようという考え方は極めて重要な話だし、そうしなければならぬ。だけれども、そのために米軍のかなり大きなものが駐留していなければと考えるのは、これはいかがかということですね。だから、日本がこれから本当にどういう国として世界に位置づけられるように考えるかという問題だと私は思っているのです。だから、ただ抑止力になるから云々というような考え方で考えるのはどうかなと思うから伺ったわけです。どうですか。
  274. 池田行彦

    池田国務大臣 これは、先ほど抑止力という面を強調してお答えしたというふうにお受け取りになったかと存じますけれども、在日米軍が存在するということ、そして我が国我が国として自衛隊というものをきちんと持っておるということ、また、我が国が侵略を受けるような場合には、この在日米軍とそれから自衛隊、さらには米国のさらなる協力もありましょう、そういったものが一体となって対処する、そういったことが全体として我が国に対する侵略を抑止する役割を果たしているということはございます。  しかし、それだけではございませんで、やはり日米安保体制がここできちんと機能しているということ、そのことが先ほども申しましたように極東地域の平和と安定に役割を果たすことはもとよりでございますが、さらに広くアジア太平洋地域全般にいわば安心感をもたらし、そしてその地域の安定に資するという作用もあるということは申せるかと思う次第でございます。  それからなお、日本として、米国に依存するばかりでなくて、いろいろなやり方があるじゃないか、それはいろいろな考え方があると思うのでございますけれども、しかしながら、我が国がこれまで歩んでまいりました道あるいは憲法その他のあり方というものを考えへそれから国際社会各国我が国に対する見方というもの、いろいろなことを総合的に見てまいりましたときに、私はやはり今、自衛隊と日米安保条約による駐留米軍、こういったものを中心にしながら我が国の安全を守り、さらに周辺地域の安定にも寄与していくという体制というものが最も適当ではないか、こう考える次第でございます。
  275. 伊藤英成

    ○伊藤(英)委員 先ほどいろいろな、朝鮮半島周辺といいましょうか、こういうことが起こった場合にどうでしょうかという具体的な話をちょっと伺いましたけれども、似たような話をまた二、三お伺いしたいと思うのです。  日本の領域外における日本の自衛権ということについて、それに関連をしてちょっと伺いたいのですが、日本が武力攻撃を受けた場合に、米軍と日本が共同して海上封鎖をすることは可能ですか。
  276. 秋山昌廣

    秋山(昌)政府委員 ただいまの御質問で、日本が武力攻撃を受けた場合というふうに、条件といいますかそういう事態を考えますと、この武力攻撃が組織的、計画的なものであり、日本をねらったものであるということであれば、当然のこととして自衛隊法の第七十六条の防衛出動の下令の問題になるわけでございまして、防衛出動が下令されているという状況であれば、海上封鎖であろうと武力行使であろうと、我が国を守るために自衛隊はあらゆる作戦を展開するということになろうかと思います。
  277. 伊藤英成

    ○伊藤(英)委員 細かいようなんですが、日本はいわゆる個別的自衛権のためということで、基づいてということで、日本は独自に海上封鎖をするよ、米軍は米軍でやるよというような考え方じゃないですね。さっき僕は共同して云々という話をしたのは、共同してやるから、じゃそれは集団的自衛権に抵触するから共同じゃないよというような話はないのでしょうね。
  278. 秋山昌廣

    秋山(昌)政府委員 防衛出動が下令されているような状況であれば、かつ安保条約の第五条に言う領域内での日本の防衛ということになりますと、これは当然のことながら米軍も日本を防衛する義務が発生いたしますので、自衛隊あるいは米軍が力を合わせて日本を守るということになりますので、共同して海上封鎖するということも当然あり得るわけでございます。
  279. 伊藤英成

    ○伊藤(英)委員 それでは、武力攻撃がまだ行われていないときに米軍と共同して海上封鎖をするということはできますか。
  280. 秋山昌廣

    秋山(昌)政府委員 一般論説明になって恐縮でございますけれども我が国に対する武力攻撃が発生していない、発生しているのでなければ、我が国としては自衛隊法八十八条に規定する武力行使を行うことはできないわけでございます。したがいまして、そういう状況でございますと、まさに、海上封鎖ということをお述べになりましたが、その行為がこの武力行使に該当するとすれば、それは憲法上できないという考えでございます。
  281. 伊藤英成

    ○伊藤(英)委員 最後に、外務大臣、実はきょう具体的な事項について幾つかのことを伺ったりいたしましたけれども、それについてそれぞれお答えもあったのですが、実は私自身は、これは一番最初に、例えば平時とか有事とかいうような概念でいろいろ議論する話がいかに本当は意味がないか。一たん日本に何かあったときに何をするんだろうかという観点で物を考えなきゃなりません。そのときに、変な、それこそ神学論争じゃありませんが、いいかげんな議論をしていたって何の日本のためにもならぬというふうに思うからいろいろ伺ったりもいたしました。  実は、同じように、集団的自衛権か個別的自衛権かとかいうような議論も奇妙な話だと私は思っています。そんなことをしていて本当にできるんだろうか、実際には。そして、実は、そういうような議論が、また在日米軍のあり方の問題でも、日米間やら他の国々との協力の問題にしても、もう時代おくれの話をしているんだろう、こういうふうに思っています。それこそ、だからこそこういう安全保障の問題は、まさに私たち政治家から見れば文字どおり今日本における最大の課題なんだろう、政治家にとって課題なんだろう、こういうふうに思うのですよ。  そんな意味で、これからの将来、今のような問題についてどういうふうに考えたらいいだろうか。外務大臣として、あるいは一人の政治家としてどんなふうに思っていらっしゃるかお伺いして、私の質問を終わります。     〔小杉委員長代理退席、委員長着席〕
  282. 池田行彦

    池田国務大臣 文字どおり、いろいろな緊急事態と申しましょうか、我が国の安全に大きな、重大な影響を及ぼすような事態が生じた場合にどういうふうに対処していくか、その中で日米の協力はいかにあるべきかということにつきましては、これは、委員のお言葉をかりるならば神学的な論争ではなくて、具体的なケースに即してきちんと考えておかなくてはいけないと思います。そういったことでこれからいろいろ研究、検討を進めていこうとしておるところでございます。しかし、もとより、そういった場合に我が国の憲法というもの、あるいは国連憲章を初めとする国際社会のルールというものが大前提になるということは当然のことでございます。
  283. 伊藤英成

    ○伊藤(英)委員 終わります。ありがとうございました。
  284. 関谷勝嗣

  285. 東中光雄

    東中委員 ACSAの締結は、アメリカが一九七九年のNATO相互支援法をつくったときから始まるわけであります。その当時はカナダを除くヨーロッパのNATO諸国との協定から出発して、八六年にNATO相互支援法の修正をやって適用範囲を広げたということだと思います。現在アメリカがACSAを締結している国は十九カ国と聞いておるのですが、どの範囲の何という国との間に締結をしているのか、まずお伺いしたいと思います。
  286. 折田正樹

    ○折田政府委員 アメリカと物品役務相互提供のための協定締結している国といたしましては、まずNATO諸国でございますが、NATO諸国にはベルギー、デンマーク、ノルウェー、ドイツ、カナダ、オランダ、イタリア、ルクセンブルク、イギリス、スペイン、フランスの十一カ国でございます。それから、NATOの諸国以外では、イスラエル、韓国、ジョルダン、オーストラリア、タイ、バーレーン、マレーシア、チュニジアの八カ国でございまして、合わせて十九カ国であると承知しております。
  287. 東中光雄

    東中委員 結局米国はヨーロッパから地中海、中東、アジア太平洋と、いわば全地球的な規模でACSA網をつくっているということになっておると思うのです。いわば米軍に対する集団的な軍事支援網というふうに言ってもいいのじゃないか、こう思うわけであります。だから、米軍は必要なときはどこからでも兵たん支援を受けられる、軍事物資と役務を調達できるというふうな、そういう規模の体制になっておると思うのです が、今度の、これは正式には日米後方支援物品役務相互提供協定ですか、これはこの全体の一環としての日本というふうに思うのですが、日本以外の相互支援協定というものと日本の今度の協定には違いがあるのですか、ないのですか。
  288. 池田行彦

    池田国務大臣 御審議を願っております協定は、その対象といたしまして日米の共同訓練、それからPKO活動、そして国際的な救援活動、その際の物品役務提供にかかわるものでございますので、今おっしゃるようないわゆる何か戦闘行為を前提とした、あるいはその後方支援というような要素はないわけでございます。
  289. 東中光雄

    東中委員 アメリカ側がACSAということでやっておる相互支援協定と、七九年法のNATO相互支援法、適用範囲は変わっているけれども、まだ名前はそのまま残っております。その中身というのは、各国は平時とか有事とか訓練とかというふうな区別をつけないでやっているのじゃありませんか。
  290. 池田行彦

    池田国務大臣 米国が他の国と締結している物品役務相互の融通の協定については、それはその対象はいろいろなものがあると思います。しかし、御審議をお願いしております米国我が国との間で締結しましたこの協定は、先ほども申しましたように共同訓練、PKO、国際救援活動に対象を限定しておるわけでございます。
  291. 東中光雄

    東中委員 それは承知していますよ。だから、ほかのところはそんなこと、いわゆる限定的な格好ではしてないでしようということを私は言っているわけです。  どっちにしましても、米国側からいえば、七九年のNATO相互支援法を審議したときに、なぜこういうものをつくるのかということで、当時コマー国防次官は、NATOで、あのときはまだカナダは抜けておったわけだ、そのときに説明しているのは、戦争の際の共同対処能力を促進する、それが目的なんだ、そのための相互支援だ、さらに、特に平時における訓練、演習を促進することのための相互支援なんだと、やはり訓練、演習ということを言っているわけです。そして、これらの演習の目的というのは、戦争下で任務を遂行するため、我々と同盟国の軍隊をテストすることにあるんだ。だから、相互支援というのは、要するに戦争時における共同対処能力を強めるということ、そのための戦時中の支援もあるだろうし、それから演習の支援も、演習をやってそういう戦時下での任務遂行を有効にするためだ、こういうことで十九カ国がやっているのです。二十番目が日本なんですね。だから、日本だけは別やということにはならないんだろうと思うのですね。そうじゃないんですか。
  292. 池田行彦

    池田国務大臣 それは共同訓練の目的が何かといえば、これは日本が侵略を受けるというような状況になり、防衛出動が発令された状況の中で日米が共同で対処していく、そのときにきちんとできるということを念頭に置きながら訓練をしていくわけでございますから、だからそのことをつかまえて、やはり共同で戦闘行為をするためのものじゃないかと言われれば、あえて私は否定いたしません。しかし、日米共同の対処といえども、これは我が国の憲法の枠内で、そして日米安全保障条約規定に基づいてなはれるわけでございますので、これは共同対処する自衛隊は専ら我が国の防衛のためにその活動を行っているということでございますので、それはそういったいわば自己規制のない国の間における共同訓練あるいはそのための物品役務提供とは違うところはあるんだと思います。  しかし、委員のお立場はあるいは違うかもしれませんけれども、私どもは、日本がそういった侵略を受けるというような非常の事態になったときには、これは当然我が自衛隊も米軍と共同して対処するのは、これは日本のために必要なことでございまして、そのために訓練をしておくというのは、これは憲法上何ら問題はないし、日本の国民の大多数はそれはなすべきことであると御理解をいただいていると思っております。
  293. 東中光雄

    東中委員 そんなに弁解せぬでいいですよ。私はそんなこと聞いてないですよ。私はそんなこと聞いてないのであって、アメリカ側がACSAをつくるときの目的というのはこういうところだったということ、それは今も貫いているんですよということを私は言っているわけであります。  これをNATOからNATO域外に発展させるときに、これは八六年でしたか、そのときの、これは各方面軍の司令官が出ていって発言していますが、このときの、これは八六年三月十一日の上院軍事委員会でロナルド・J・ヘイズ太平洋軍司令官は、このNATO相互支援法をこの地域、要するにアジア太平洋地域ですね、彼が太平洋軍の司令官ですから、その地域へ適用を拡大するのは、平時における米軍の作戦費用の軽減のためだ、もう一つは紛争時の効果的な受け入れ国支援を強化するんだ、それにつながっていくんだと。だから、目的はもうはっきりしているのです。アジア太平洋地域でACSAをつくっていくというふうに、NATOだけじゃなくて、拡大した。そのときに太平洋軍の司令官がわざわざ出ていって、これは平時における米軍の作戦費用の軽減だ、それから紛争時の効果的な受け入れ体制、受け入れ国支援を強化する、そのために役立てる。それが八六年ですね。それで、八八年から米国側から日本に、竹下内閣のときに事務レベル協議でACSAの制定についての申し入れがあった、こういう経過でありませんか。そういう経過について、外務大臣どうですか。
  294. 池田行彦

    池田国務大臣 この協定ができまして日米共同訓練を行います場合に物品なり役務相互の融通がスムーズにいくようになりますと、それは日米双方にとりまして訓練の効率化につながるという点はあると思います。そして、訓練の効率化ということは経費の削減という効果もあるのだと思います。  それからまた、当然のこととして、先ほど申し上げましたけれども、共同訓練を行っていくというときには、日本が侵略を受けるというような事態に立ち至った場合に日米が共同して対処していく、そのときにそういった共同対処が有効に行われるためのものであるということは、それはそのとおりでございます。何ら我々は否定する必要はございません。
  295. 東中光雄

    東中委員 これは米軍の側の発言を私は言っているわけだから、だから米軍の側からいえば、平時における作戦経費の削減と、そして有事における、要するに戦争状態のときの効果的な受け入れ国支援の体制を強化していくという、そういうねらいで来ているのだ。  ところが、八八年に出されて、それで今九六年ですからね。まあ、玉沢さんが行って大体やろうかという話をされたようですけれども、それまで随分長い間かかったわけですよ。どこが引っかかったのですか。(玉沢委員「俺に聞いているの」と呼ぶ)いやいや、前防衛庁長官に聞いたってしょうがないんです。どこに引っかかったのですかと聞いているのです。何が問題だったんですか。
  296. 池田行彦

    池田国務大臣 玉沢前防衛庁長官が大変な御努力をなさいましてこのいわゆるACSAについて米国との間の合意を形成してこられた、このことは私どもとしても非常に多としているところでございます。  しかし、今日に至るまでに随分時間がかかったではないかという御指摘かと存じますけれども、御指摘のとおり、昭和六十三年に米国の方から物品役務の面での相互の協力の枠組みを考えようではないかという提起がございました。そして、それ以来我々としてもいろいろ鋭意検討してきたわけでございますけれども、一体日米がそういった面で協力するときにどういった面を対象にするのが適当かとか、あるいはそういった相互協力をしていく上において日本の国内の方で一体どういうふうな体制が必要か、各省庁間の協力なんかもございますし、そういった面もいろいろ検討していかなくてはならない。  また、委員指摘でございました、米国が他のかなりの国と物品役務に関する協力の協定を持っております。それは、念のためにはっきり申しておきますけれども我が国と全く同じではないわけでございますけれども、共通する面もあるわけでございますので、違うところは一体何なのか、あるいはその共通する分野は何なのか、そういったこともいろいろ調査研究いたしまして、そういった作業の上に立って日本米国の間でのこういった物品役務に関する協力の枠組みはどういう形にするのが一番適当であるかということで両者協議をいたしまして、このほど、対象は共同訓練、PKO、国際救援活動とするというようなことでこの枠組みについての合意ができた、それで今回協定の形にして締結し、その御審議をお願いしている、こういうことでございます。
  297. 東中光雄

    東中委員 普通にやっていると九年のアメリカの相互支援法に基づくそういう協定日本の憲法上これはぐあいが悪い。特に戦争状態について米軍に協力をするということは憲法上許されぬという問題があるから、だから、八八年から言い出して、大概向こうから言ってきたら素直に聞くことの多いところが、なかなか聞けなかったという経過だったと思うのです。  ところが、今出されている共同訓練ということ、これ、ちょっとわかりにくいですね。ガイドラインなんかを見ると、共同演習及び共同訓練、そういう言葉で言っているのが多いですけれども、ここで言っている日米共同訓練というのはどういうことをいうのですか。
  298. 折田正樹

    ○折田政府委員 日米の共同訓練と申しますのは、日本が武力攻撃を受けた際の事態を想定した日米共同対処行動の演習、または一般的な戦術技量の向上等を共通の目的として、日米両部隊要員が行動を共にして実施される訓練でございます。このような訓練は、我が国の平和と独立を維持し、国の安全を保つため、直接間接の侵略に対し我が国を防衛するという自衛隊法三条、自衛隊の任務達成に必要な戦術技量を向上させることを目的として行われるものでございます。
  299. 東中光雄

    東中委員 それは、何を言っているのかようわからぬけれども、要するに自衛隊法、自衛隊の任務から逸脱せぬように言っているのでしょうが、日米共同訓練と言っているけれども、訓練だけでなしに、いわゆる演習と言われている部分も含む。米軍と日本自衛隊が共同してそういう訓練をやる。訓練の内容は、それは図上でやるものもあるでしょうし、共同で射撃をやる訓練もあるだろうし、上陸の訓練をやることもあるということだと私は思うのです。  日米共同訓練というのは、いつやるか、それからどういう内容のことをやるか、あるいはどこでやるかというふうなことは、米軍と自衛隊で必要なときに必要だと思ったことをやる、こういうことになるのでしょうね。何か制限がありますか。
  300. 粟威之

    ○粟政府委員 自衛隊と米軍との共同訓練につきましては、防衛庁設置法の第六条の第十二号で、「所掌事務の遂行に必要な教育訓練を行うこと。」こういうふうになっておりまして、それに基づいて実施するものでございます。したがいまして、共同訓練の目的や内容に照らしてその必要の範囲内で訓練をやるというふうに考えております。  具体的にどういう訓練をやっているかということにつきましては、アメリカに行って訓練をするとか、それからアメリカの部隊とこちらの方で、日本の周辺でやるとか、そういう訓練もあります。  以上でございます。
  301. 東中光雄

    東中委員 私の言っていることと全然違った、概念論争をやったってしょうがないのですからね。  では、こう聞きましょう。  湾岸戦争に突入する直前に、米軍がサウジアラビア軍と一緒にあそこで共同演習、共同訓練をやりました。上陸用のことをやりました。そしてその三カ月後にはもう湾岸戦争に突入していったわけですが、そういう戦争なり紛争なりが発生するというときに、それに向かって共同演習をやるということはへこれはもうしょっちゅうあるわけですよね。朝鮮で何か事が起こりそうだというときに、あるいは紛争が起こりそうだというときに、朝鮮の近くで日米共同訓練をやる。しかも実弾射撃訓練をやる。それは日本の防衛庁設置法の何条か知らぬけれども、任務の目的でも何でもいいのですよ。練度を強めるためでも何でもいいから、そういうことで訓練をやるということもあり得るわけだ。  この間、台湾であれやりましたね、選挙でもめたとき。あのときに中国があそこでミサイルの訓練をやったではないですか。あれは訓練でしょう。日本におったインディペンデンスが出ていったでしょう、あそこに。日本の護衛艦もそれについていく。これは訓練の名前で出ていくというふうな格好で、日米共同で行動を起こすということ、そういうのを共同訓練だと言いさえずればそこでもうACSAが適用されていける、こういう格好になりかねぬというふうに思うのですが、そういう共同訓練というのは絶対にやらない、あるいはアメリカ側が提起したとしてもそういう場合は日本はやらないということを言えるのですか。
  302. 池田行彦

    池田国務大臣 それは委員御高承のとおり、我が国自衛隊は、憲法上もあるいは自衛隊法上も、また日米安保条約におきましても、どういうふうな場合にどういうふうな活動をするか、行動をするかと申しますと、それは我が国の安全を守るために、我が国が他国から侵略を受けるような事態が起こった場合に、起きるような場合に対応していく、こういうことでございまして、米国と共同対処というのも、いわゆる日米有事と申しましょうか、そういった場面において共同に対処していくわけでございます。  そして、そういった事態での日米共同対処が円滑に有効に行える、そういった態勢を整えるために共同訓練も行うわけでございますから、そういった自衛隊が参加をしている日米共同訓練というものが、今委員が懸念されているのでしょうか、あるいは御指摘されたような他の国に不安を与えるようなことになるということはあり得ない、こう思うわけでございます。
  303. 東中光雄

    東中委員 あり得ないというよりも、例えば、この間中国台湾海峡でミサイル発射訓練をやりましたね。インディペンデンスが出ていったでしょうが。そのインディペンデンスに日本から給油したではありませんか。それはそういう格好で支援していますね。あれは戦闘行動でもない。しかしそれは、例えばいわゆる朝鮮半島有事のときに米軍がそれに対してどういう態勢をとるか。その態勢をとるときに、行動を起こすときに、演習という形で行動を起こす。湾岸戦争のときはサウジアラビアとそういうふうに演習をやっているのですから、上陸作戦を。上陸作戦訓練ですね、演習です。そして、それがそのままクウェートのすぐそばでやっていますね。  そういうふうに、訓練だから、その訓練は練度を上げるためだ、それは防衛のためだということで、しかし実際はそういうことをやっていくということになるのです。そうしたら、これは事実上訓練という名前で今言われましたように他国に圧力かけるような武力による威嚇に、訓練という名前で、日米一緒に訓練だと言って武力による威嚇をやるということにもなりかねない。その場合に、日米共同しての物品役務相互提供というふうなことになっていけば、これはもう明らかに訓練という名前で事実上、憲法上禁止されている武力による威嚇、あるいは演習という、実弾射撃演習という名前で武力の行使になっていくということさえあり得ます。  そういう方向に道を開くものだということで、私たちは、これは憲法上からも絶対に許されないということであります。米軍は何らの制限を受けないわけですから、その米軍との共同演習という形で一緒になることによって、それで支援するということになったら、これはもう断じて許せないというふうに思うわけであります。
  304. 池田行彦

    池田国務大臣 先ほど申しましたけれども、他国のいろんな行動、あるいはそれがそのほかの国々に与える影響等については云々いたしませんけれども、少なくとも、日本自衛隊というのは、憲法上これは我が国の防衛に当たる、専守防衛ということになっておるわけでございますね。そして、そういった自衛隊が一緒に、米軍と一緒にやります日米共同対処、あるいはそれを有効に行えるような体制をつくるための日米共同訓練というのは、これは専ら我が国を侵略からどうやって守るかという、そういう観点からのものでございますから、そういった我が国自衛隊の性格というものは国際的にも十分認識されておりますので、自衛隊は安保条約でもそういった性格を前提として役割が決められているわけでございます。米軍と共同で行います共同訓練について、今委員が御指摘になるような不安や懸念を他の国に与えるということは、これはあり得ないことだと思いますし、もし万一そういった懸念あるいは不安を抱いている国があるとするならば、そういったことはあり得ないんだということを我々としてはよく説明し、理解を得るという努力をすべきであって、あり得ないことを、こんなことが、こんなことがと言って議論されるということは、かえって一番懸念される、他国に対するあしき影響を引き起こすことになるのではないかと考える次第でございます。
  305. 東中光雄

    東中委員 我が国周辺地域における紛争があった場合に、日本におる米軍が出ていく、それで軍事行動を起こすということは、これはあり得るわけでしょう。その紛争というのをどういうふうに見るかということは、それは米軍がやるわけでしょう、それに日本が協力するという姿勢をとっているということが、ここが一番問題なんですから、そういう状態で、米軍が紛争に対する実力行使をやるときに、その事前に演習という形でいろんな行動をやったというのは、これはどこでもやっているわけですから。日本だけはそんなことはないんだ、そんなこと言えないですよ。日米、自衛隊と米軍との共同訓練という名で、米軍の実際上の紛争地域への軍事行動ということと結びついてくる。(「こじつけだ」と呼ぶ者あり)そういう危険があるんだということを私は言っておるわけです。こじつけて言っているわけでありません。時間ですから終わります。
  306. 関谷勝嗣

  307. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 市民リーグ・民改連の会派に属しております楢崎弥之助です。  前の方々の質疑を全部聞いておりませんので、時間が二十分しかございませんし、もし私の質問の中で、もうそれは前に済んだということであれば、もうそうおっしゃって省いていただきたいと思います。  私も国会に籍を置きまして三十三年間、主として外交、防衛をやってきました、予算委員会、外務委員会、内閣委員会で。我々の先輩の後を継いで、大いに議論を当時の政府とやってまいりまして、そして問題点については統一解釈を求め、そしてその解釈が定着してまいりました。  それで、おとといですか、ハワイで始まったSSC、つまり日米安保防衛協力のための新ガイドラインの見直し、事務レベルでございますけれども、始まりましたね。それで、これは私は、事前協議は包括承認するという、安保条約の事前協議条項、包括承認をするという前提に立たなければこの研究は進まないんじゃございませんか。
  308. 池田行彦

    池田国務大臣 御質問の趣旨を正確にとらえたかどうか、必ずしも自信がございませんが、先般の日米安保共同宣言で合意されたことの中に、日米間において、いろいろな緊急事態に備えてどのような協力をしていくか、いろいろ研究していこう、こういったことは合意されております。そして、私どもはこれから、文字どおりそういった作業を始めていこうとしているところでございますけれども、今委員がおっしゃるように、これが事前協議を包括的に云々ということとどういうふうに結びつくのか、ちょっと私は理解しかねるわけでございます。
  309. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 事前協議条項はイエスもありノーもある、そうなっているでしょう。それが、もうノーはないんだ、包括承認というのは全部イエスだということを前提にしなければ、この研究は具体的に進まないのではないかということを聞いたんです。おわかりにならなかったそうですが。  それは事前協議、あなたが出てくる前から国会におるんだから。これはいろいろ問題になって、岸・ハーター交換公文、おわかりのとおり、どれが事前協議の対象になるか。「合衆国軍隊の日本国への配置における重要な変更」それが一つ。二番目に「同軍隊の装備における重要な変更」、三番目は「日本国から行なわれる戦闘作戦行動のための基地としての日本国内の施設及び区域の使用は、日本国政府との事前の協議の主題とする。」これが岸・ハーター交換公文であります。  そして、昭和四十三年に外務省から具体的に明らかにされました。「配置における重要な変更」の場合とは、陸上部隊の場合は一個師団程度、空軍の場合はそれに相当するもの、海軍の場合は一機動部隊程度の配置、これが「配置における重要な変更」であります。二番目、「装備における重要な変更」、これは具体的に何か。核弾頭及び中長距離ミサイルの持ち込み並びにそれらの基地の建設。三、我が国から行われる戦闘作戦行動のための基地としての日本国内の施設・区域の使用、これは安保の第五条ですね。  こういうことについてもう包括的にイエスと言うんだ、事前協議ではノーと言われないんだということが前提にならなくては、この新ガイドラインの、あなた方がねらわれておる、あるいはアメリカがねらっておる日米安保協力は前進しないのではないかというのが私が聞いた意味であります。  それで、この新しくできる新ガイドライン、これは閣議決定になるんですか。
  310. 池田行彦

    池田国務大臣 委員の御質問意味、よくわかりました。  これまで事前協議の対象となることで、例えば我が国からの出動のケースであるとか部隊の配置における重要な変更とか、そういう場合に事前協議の対象になる、こうなっております。そして、そういったものを包括的にイエスと言うんだ、こういうことにしておかなくちゃこれからの日米協力は進まないんじゃないかというお話でございますけれども、私どもはそうは考えておりません。従来、事前協議の対象であるというものはそのとおりだと考えておりますし、それについてどういうふうに我が国として対応するかは、これまでと同様に、一般論で言えば個々のケースに即して我が国安全保障を守る見地等を考えながら判断していく、こういうことでございます。  それから、ガイドラインについては政府委員から答弁させます。
  311. 秋山昌廣

    秋山(昌)政府委員 現在の日米防衛協力のための指針、ガイドラインでございますけれども、閣議との関係で申し上げますと、昭和五十三年十一月でございますが、閣議に報告いたしまして了承されたものでございます。  今回新たに見直すことを予定しておりますこのガイドラインの取り扱いにつきまして今後どうするかは、これから政府の中で相談をしていくということになろうかと思います。
  312. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 今、何年何月とおっしゃいました、閣議決定になるようになったのは。
  313. 秋山昌廣

    秋山(昌)政府委員 現在の日米防衛協力のための指針でございますが、これは五十三年十一月二十七日、第十七回日米安全保障協議委員会に日米防衛協力小委員会から報告されまして、翌日、すなわち十一月二十八日に閣議に報告され了承されているというものでございます。
  314. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは、私が聞いておる今度新しくできるガイドラインも閣議決定になるんですか、それを聞いているんですよ。
  315. 秋山昌廣

    秋山(昌)政府委員 先ほど御答弁申し上げましたとおり、これから見直すガイドラインにつきましてどういう取り扱いにするかは、これから政府部内で検討をするということでございます。
  316. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は、解釈が変わっていくというのはそのことを言っているんですよ。  昭和六十二年五月十九日の参議院め予算委員会で、当時の後藤田正晴官房長官、これは、ガイドラインは政府の行政措置を伴うものではない、だから閣議決定の対象とせず所管大臣の報告でよい、これが政府が出された統一見解ですよ。だから、いつの間にかずっと変わっていくんですね、統一見解が。首ひねっていますが、この理由をよく読んでごらんなさい、今言った。後藤田長官はそう答弁していますよ、統一見解求められて。  それで、この主題になっているACSAの問題でも、今までは、もう時間がないので一々言わないけれども日本の歴代政府は、有事における物品役務提供、これは集団的自衛権の行使につながって憲法に抵触しかねないという見解で、この協定締結には非常に消極的だったんですよ。それで今度いよいよ日の目を見るようになった。当時は便宜供与と言っていたんですね。ところが今度は、何ですか、後方支援という新しい言葉が出てきた。  つまり、私が申し上げたいのは、どんなに議論してもいつの間にかどんどん解釈が変わっていって、そしてそれが定着していく。そのことを私は心配しているんですよ。しかも、有事法制にそれがつながっていく。そうすると、これは国民の基本的な権利、自由あるいは経済、そういうものがやはり影響を受けるんだから、国民に非常に関係があるから、十分議論を尽くさなければならないと私は思うんです、どうせ有事法制の問題に発展するんだから。だから有事法制の問題でも、今言ったように、ガイドラインは、安保条約の事前協議、もう全部イエスと言うんだ。なぜこう言うかというと、いままで事前協議を受けたことがないんでしょうが。さっき岸・ハー夕ー交換公文のことを私は言ったけれども、現実には受けたことないでしょう。どんなに言ったって有名無実ですよ。  例えば、日本の基地を使って米軍がベトナムに飛んでいく。これは極東の範囲じゃないんです。ところが、どういうふうに言い逃れてきたかというと、事前協議の対象になるのに、飛んでいっている途中で命令を受けた、こういう御答弁をなさるんですよね。実際に事前協議制度があっても使われていない。ましてや今度新ガイドラインになっていくと、もうそれはいよいよ事前協議というものは有名無実になって、私が言う包括承認という暗黙の上に進められるんだ。私が質問している意味がおわかりでしょうか。それをさっきから聞いているんですよ。
  317. 秋山昌廣

    秋山(昌)政府委員 現在の日米防衛協力のための指針ができた後、これに基づいていろいろな研究が行われたわけでございますけれども、その研究の過程で、今御質問の中で何度かお触れになりました事前協議の問題は対象外にしているという事実がございます。  それからもう一点、有事法制にかかわる問題ではないかという御指摘がございましたが、私たちの考え、認識では、有事法制そのものは、まさに我が国が侵略された場合の有事法制の研究でございまして、今回のACSAの協定我が国が侵略されるような事態を全く想定していない、共同訓練ですとか、もちろん共同訓練は有事のためにやっているわけですが、共同訓練そのものはそういう事態を想定した、そういう状況での共同訓練ではございませんし、PKO、人道援助、いずれも、御指摘の有事法制ということとの絡みにつきまして、私はよく理解をいたしておりません。
  318. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 どうも質疑がかみ合わないんですが、ACSAにしても今まで質疑が出たんじゃないですか、集団的自衛権との関連、先ほど伊藤さんも質問なさっていらっしゃいましたが。だから、今までは政府は非常に消極的だったんです、この協定問題については。ところが今度は、もう堂々と協定なさるんでしょう。それを言っているんですよ。しかも、ガイドラインは研究、協議だということで閣議事項じゃないと後藤田さんは言っているんですよ。それをいつの間にか閣議決定事項に格上げしてきた。今度はまだわからぬと言っているが、恐らくことしの終わりには閣議決定持ち込みじゃございませんか。どうですか。
  319. 池田行彦

    池田国務大臣 先ほど政府委員から御答弁申し上げましたのは、現行のガイドラインは閣議に報告して了承を得た、そう御報告したはずでございます。それは先ほど委員指摘の、当時の、かつての後藤田官房長官の御発言と矛盾するものではないと思います。  それから、これから検討をしてまいります新しいガイドラインというのは、検討の結果どういう形のものになるか、そういうことを見ましてどういうふうな扱いにするか考えていくということを申し上げたわけでございまして、それは別に政府方針が変わったとかなんとかいうことではないと思うのでございます。  それから、現在御審議をお願い申し上げておりますこの協定にいたしましても、委員は、かつては消極的だったのになぜ今回はという御趣旨の質疑があったかと存じますけれども、御承知のとおり、今御提案を申し上げております協定をごらんいただきますならば、これは委員が御心配になりますような憲法との関連で問題を生ずるとか、そういったたぐいのものではないということは自明かと存ずる次第でございます。
  320. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 一つ答弁が抜けていますね。今まで事前協議に図られた事実がありますかと、さっき言った三つの問題について。
  321. 折田正樹

    ○折田政府委員 今まで事前協議があったということはございません。
  322. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私が言うとおりでしょう。実際にこういうあれがあっても、かけられたことがないのです。さっき言ったとおり、途中で命令を受けたから事前協議の対象にならない。実際今でも死文化しているのですよ。今度新ガイドラインの研究に入れば今よりも進むんですよ。だから、事前協議条項なんというのはもう目じゃないのですよ。言ってごらんなさい。  それで、私は、今大臣の御答弁になった閣議決定の意味が今御答弁になったようなことであったら、後藤田さんのあれで一致するのですよ。閣議決定じゃなしに、所管大臣の報告を閣議で報告する。それだったら後藤田さんの方針に変わってないことになる。私は大臣の答弁を聞いて今わかりました。  そうしたら、今度はさあ最初の質疑に戻るわけです。  では、今度の新ガイドラインができたら、単なる所管大臣の報告じゃ済まされずに閣議決定と格上げする、そうでしょう。それを聞いているのです、それはことしの終わりじゃございませんかと。  それで、質問時間がなくなったと来ましたからやめますけれども、幾ら聞いてもそんな答弁じゃ納得できませんね。もう私は予言しておきますよ。もう事前協議は目じゃない。  一例だけ挙げさせてもらうが、今までTMDと言っておったのが今度BMDに変わった。それはアメリカがそう言っているからですよ。バリスティックミサイル。そうなったのでしょう。  そうすると、今年度、四億四千万、研究のための、調査のための予算がつきましたね。これも昔はAMMと言った。アンチミサイルミサイル。これは核じゃなければどうしようもないのですよね。迎撃ミサイル。バリスティックミサイルも同じじゃございませんか。そして、今度アメリカの宇宙衛星の情報をとるのでしょう。何のためにとるのです。それはBMDと関係があるからじゃございませんか。  もう新しい事態が、事実の方が論議よりも先に進んでしまっておる。しかも国民の基本的権利に関係する。それを私は心配しておるだけであります。十分その点は気をつけていただきたい。  これで終わります。
  323. 関谷勝嗣

    関谷委員長 次回は、明三十一日金曜日正午理事会、午後一時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時五分散会      ――――◇―――――