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1996-05-14 第136回国会 衆議院 外務委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年五月十四日(火曜日)     午前九時五十分開議  出席委員   委員長 関谷 勝嗣君    理事 小杉  隆君 理事 田中 直紀君    理事 玉沢徳一郎君 理事 赤羽 一嘉君    理事 東  祥三君 理事 松沢 成文君    理事 井上 一成君 理事 前原 誠司君       安倍 晋三君    斎藤 文昭君       坂本三十次君    櫻内 義雄君       鈴木 宗男君    二階堂 進君       原田昇左右君    岡田 克也君       久保 哲司君    小坂 憲次君       笹木 竜三君    笹山 登生君       中野 寛成君    羽田  孜君       初村謙一郎君    若松 謙維君       秋葉 忠利君    伊藤  茂君       佐藤 泰介君    三原 朝彦君       古堅 実吉君    吉岡 賢治君  出席国務大臣         内閣総理大臣  橋本龍太郎君         外 務 大 臣 池田 行彦君         農林水産大臣  大原 一三君         運 輸 大 臣 亀井 善之君         国務大臣         (科学技術庁長         官)      中川 秀直君  出席政府委員         科学技術庁研究         開発局長    加藤 康宏君         科学技術庁原子         力局長     岡崎 俊雄君         科学技術庁原子         力安全局長   宮林 正恭君         環境庁水質保全         局長      嶌田 道夫君         外務大臣官房審         議官      谷内正太郎君         外務省総合外交         政策局軍備管         理・科学審議官 河村 武和君         外務省アジア局         長       加藤 良三君         外務省北米局長 折田 正樹君         外務省欧亜局長 浦部 和好君         外務省経済局長 野上 義二君         外務省条約局長 林   暘君         農林水産大臣官         房長      高木 勇樹君         水産庁長官   東  久雄君         運輸省運輸政策         局長      土坂 泰敏君         海上保安庁長官 秦野  裕君   委員外出席者         防衛庁長官官房         防衛審議官   石附  弘君         外務委員会調査         室長      野村 忠清君     ――――――――――――― 委員の異動 五月十四日  辞任         補欠選任   笹山 登生君     笹木 竜三君   中野 寛成君     久保 哲司君   羽田  孜君     初村謙一郎君   園田 博之君     三原 朝彦君 同日  辞任         補欠選任   久保 哲司君     中野 寛成君   笹木 竜三君     笹山 登生君   初村謙一郎君     羽田  孜君   三原 朝彦君     園田 博之君     ――――――――――――― 五月十日  海洋法に関する国際連合条約及び千九百八十二  年十二月十日の海洋法に関する国際連合条約第  十一部の実施に関する協定締結について承認  を求めるの件(条約第三号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 四月二十六日  WTO協定改定に関する陳情書  (第二  三一号)  パートタイム労働に関する条約批准に関する  陳情書  (第二三二号)  低空飛行中止日米地位協定見直し等に関する  陳情書外三件  (第二三  三号)  核実験即時中止、核兵器の全面禁止核廃絶  の早期締結に関する陳情書  (第二三四号)  普天間基地岩国移駐反対に関する陳情書  (第二三五号)  前畑弾薬庫返還促進に関する陳情書  (第二三六号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  連合審査会開会に関する件  海洋法に関する国際連合条約及び千九百八十二  年十二月十日の海洋法に関する国際連合条約第  十一部の実施に関する協定締結について承認   を求めるの件(条約第三号)      ――――◇―――――
  2. 関谷勝嗣

    関谷委員長 これより会議を開きます。  海洋法に関する国際連合条約及び千九百八十二年十二月十日の海洋法に関する国際連合条約第十一部の実施に関する協定締結について承認を求めるの件を議題といたします。  政府から提案理由説明を聴取いたします。外務大臣池田行彦君。     ―――――――――――――  海洋法に関する国際連合条約及び千九百八十二年十二月十日の海洋法に関する国際連合条約第十一部の実施に関する協定締結について承認を求めるの件     〔本号(その二)に掲載〕     ―――――――――――――
  3. 池田行彦

    池田国務大臣 ただいま議題となりました海洋法に関する国際連合条約及び千九百八十二年十二月十日の海洋法に関する国際連合条約第十一部の実施に関する協定締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  海洋法に関する国際連合条約は、昭和五十七年十二月十日、ジャマイカのモンテゴベイにおいて作成されたものであり、また、千九百八十二年十二月十日の海洋法に関する国際連合条約第十一部の実施に関する協定は、平成六年七月二十八日、ニューヨークにおいて作成されたものであります。  この条約及び実施協定は、領海、接続水域排他的経済水域、大陸棚、公海、深海底等海洋に関する諸問題について包括的に規律するものであります。  我が国がこの条約及び実施協定締結することは、我が国世界の主要な海洋国家であることかんがみ、海洋に関する安定的な法的秩序確立に寄与するとともに、我が国海洋に係る活動を一層円滑にすることとなるという見地から極めて有意義であると認められます。  よって、ここに、この条約及び実施協定締結について御承認を求める次第であります。何とぞ御審議の上、速やかに御承認いただきますようお願いいたします。
  4. 関谷勝嗣

    関谷委員長 これにて提案理由説明は終わりました。     ―――――――――――――
  5. 関谷勝嗣

    関谷委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小杉隆君。
  6. 小杉隆

    小杉委員 総理お忙しいところを御苦労さまでございます。まず、総理海洋法条約意義についてお尋ねをしたいと思います。  四海を海に囲まれた島国である我が国は、今先進国の中でも大変平和で繁栄した国家として発展してまいりました。その過程において私ども日本海洋から受けた恩恵というものははかり知れないものがあります。つまり、海に囲まれているために防衛の面でも大変有利な立場にあったわけですし、また、豊富な漁業資源の中で、例えば戦後の欠乏の時期に貴重なたんぱく資源を獲得できた、あるいはまた、海を通じて世界各国との貿易、通商を通じて経済の発展に寄与してきた、そういう海洋から受ける恩恵というものははかり知れないものがあるわけでございます。  今回のこの海洋法条約は、海洋の法的な秩序確立するということでありますが、特に、海洋国家である我が国にとってこの条約の持つ意義、あるいはそのもたらす影響について総理から総括的なお考えを聞きたいと思います。
  7. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 議員が御指摘になりましたように、周囲をすべて海に囲まれております日本、この国にとりましては、まさに長い間海というものが生命線という言葉を使われるぐらいの重みを持った存在でありました。今日、航空路が非常に発展してくる中で、いつの間にか我々は必ずしもその海の重要性というものを意識しなくなっております。しかし、資源の乏しい我が国資源を確保いたすその輸送路は、ほとんどが海洋によるものであります。そして、これからも日本海洋国家であり続けるでありましょうし、その海洋秩序が守られ、平和であることが我が国にとって最も望ましいものであることは申し上げるまでもありません。  今回の国連海洋法条約、これから御審議をいただくわけでありますけれども国際社会における安定した海洋法的秩序確立に資する、それだけではなく、海洋一般に依存するところの大きい海洋国家としての日本の長期的かつ総合的な国益というものに沿うものであると私ども考えております。  そして、この条約早期締結を目指し努力をしてまいりますので、国会における御協力をも心からお願いを申し上げる次第であります。
  8. 小杉隆

    小杉委員 次に、外務大臣に伺いますが、この海洋法条約早期批准をしなければならない、その必要性についてお伺いしたいと思います。  私は、二つ理由があると思います。一つは、本年八月一日に国際海洋法裁判所裁判官選挙があります。国際海洋法裁判所は、この条約に基づいて設立されたものでありまして、裁判官の数は二十一名、この中に、海洋国家として海洋についてのいろいろな知識あるいは技術、そういったノウハウを蓄積してきた日本として当然有識者を立候補させて当選をさせるということは、今後この条約の着実な実効を担保していくという上でも非常に重要なことだと思います。そういう立候補ということのためにも、我が国早期に本条約批准しておくことが必須であります。  もう一つ理由は、二百海里の排他的経済水域の外にあります深海底にありますマンガン、ニッケル、コバルト、銅などの天然資源開発が可能な、北海道の広さに匹敵する水域鉱区を、我が国は一九八七年十二月にフランスやロシアなどと並んで確保しております。インドも別のところに確保しておりますけれども。この条約及び実施協定に我々が参加をし、これを締結すれば、この鉱区に対する権利を自動的に私たちは手に入れることができる。もしそうでなければ、本年の十一月十六日以降、国際海底機構理事会議決いかんによっては、せっかく確保した権利を再交渉にゆだねざるを得なくなる、そういう可能性もあるわけであります。したがって、我々としても、以上申し上げた二つ理由から、早急に本条約批准すべきであると考えております。  政府としてこの国際海洋法裁判所裁判官選挙ということも視野に置いて、あるいは深海底地下資源を確保するという観点に立って、どのような姿勢で臨むつもりなのかお聞かせいただきたいと思います。
  9. 池田行彦

    池田国務大臣 今回の海洋法条約早期締結すべき、しなくてはならないその理由いかんということでございますが、基本的には先ほど総理からも御答弁申し上げましたように、海洋国家でございます我が国の長期的また総合的な国益という観点から、これは早期締結することは必要であると思います。  さらに、具体的にただいま小杉委員から二点御指摘がございました。政府といたしましても同様に考えているところでございまして、まず御指摘国際海洋法裁判所裁判官選挙は八月一日に行われることになっておりますけれども、そのためには七月一日前に、すなわち六月中に締結を行っている、こういうことが裁判官候補者指名するために必要となっております。現在、政府といたしましては、この条約国会の御承認を得て締結される、こういうことを前提といたしまして、裁判官候補として、上智大学の教授でございます山本草二氏を指名しているところでございますけれども、この指名が最終的に有効になるためには、先ほど申しましたように本年の六月末までに我が国がこの条約締結する、こういうことが要件、条件となっているところでございます。このような観点から、ぜひそれまでにその条約締結が必要である、こう考えております。  もとより、我が国海洋国家としての立場、またこの条約にかかわるもろもろの問題についてその多くの利害関係を有しているということから申しましても、我が国として指名、推薦いたします候補者がぜひ裁判官に当選してほしい、こう思っているところでございます。  それからまた、もう一点御指摘のございました深海底資源につきましても、これは御指摘のございましたように、一九八七年に鉱区の指定ということをやっておりますが、これにつきましても、条約早期締結ということをいたしませんと、またもとへ戻って、再度手順を踏まなくてはならない、こういうことでございますので、このような二つの具体的な観点から申しましても、ぜひ国会におきましてこの条約早期に御承認をいただけますよう、政府としてはそれをお願い申し上げる次第でございます。
  10. 小杉隆

    小杉委員 次に、日韓の間の諸問題についてお話をしたいと思います。  海洋法条約締結に伴う新たな日韓漁業協定締結のための実務者協議が、先週九日、十日の二日間、東京で開催されました。この協議において、日本側早期締結を目指すということを表明いたしましたし、韓国は、韓国漁船日本近海水域での過去の漁獲実績というものを新たな漁業協定においても尊重されたいということを求めたというような報道がありますけれども、今回の交渉経過について御説明いただきたいということ。  さらに、最近の韓国側対応ぶりについてのお考えを聞きたいと思うのですが、日韓漁業協定改定交渉というのは、竹島の領有権問題が絡むために、排他的経済水域設定協議漁業協定改定交渉と別途行うということになっております。そのために、漁業協定改定交渉というのは、違反操業船の取り締まりというものを旗国主義、つまりその船の属する国の旗、旗国主義から沿岸国主義ということに移行させることとか、相手国への漁獲量の割り当てを決定するということが中心となっております。  これまで、日韓あるいは日中の間海域、つまり東経百三十五度以西の日本海、東海、黄海には漁業水域暫定措置法による二百海里の漁業水域というのは設定がされておりませんでした。さらに、この設定水域においても、韓国中国漁船には漁業水域暫定措置法が適用されずに、自由な漁獲が保証されております。ところが、最近韓国漁船による乱獲は目に余るものがあり、日本沿岸漁業関係者は多大な影響を受けております。  私たち自民党は、この海洋法条約閣議了解を了承するに当たって、条件つきといいますか、二月の段階で、韓国船による乱獲により漁業資源が奪われていることや、あるいは排他的な経済水域全面設定を求める関係者の意見に配慮してということを条件として認めたという経緯があります。  そこでお伺いしたいのは、まず一つは、交渉を進めるに当たって、漁業協定改定めどをどのように考えているか。二番目に、両国間で改定方針合意が得られなかった場合、どのように対処するか。そして三番目に、韓国の過去の漁獲実績を尊重すべしという要求を受け入れてしまえば乱獲実績を容認するという懸念がありますが、どういう見解をお持ちでしょうか。  以上です。
  11. 池田行彦

    池田国務大臣 委員指摘のように、韓国、そして中国とは従来からいろいろ経緯がございまして、これから重要問題について話し合いを行っていく、こういうところでございますが、そういった関係で、与党からもいろいろなお考えがあり、それを、政府に対するお申し入れを受けているところでございます。  さて、まず具体的に漁業協定改定めどをどのように考えているか、こういう点でございますが、去る二月二十日に政府といたしましては閣議了解をいたしまして、政府としての基本的な考え方を決めさせていただきました。そこにおきましては、新たな漁業協定早期締結されるようになるよう、速やかにまず交渉開始する、そして合理的期間内に結論を得るよう鋭意努める、こういうふうな閣議了解を行ったところでございます。  また、さきの与党政策調整会議におきまして、自民党も含めた与党三党の国際海洋法条約締結に伴う日韓漁業協定の取り扱いについての申し合わせが行われた、このように承知しておりまして、外務省といたしましても、この与党三党のお示しになりました考え方というものに対しまして、早急かつ精力的に韓国との協議を進めてまいりたい、こう考えている次第でございます。  そして二つ目に、改定方針について両国間で合意が得られない場合、得られなくなった場合にどうするかという点でございましたけれども、この点につきましては、私どもは基本的に、十分にまた精力的に話し合いを続けまして、何とか円満な形での解決、それを図ってまいりたい、こういうふうに考えておりまして、現在まず、先般第一回の実務者による協議が行われたばかりの段階でございます。  したがいまして、我々といたしましては、何とかこれから次なる交渉を精力的に取り運んでまいりたい、こう考えている段階でございますので、今の段階で、交渉はまとまらないという場合を仮定いたしましてその対応について申し上げることは、政府立場としてはちょっと控えさせていただきたいな、こう考える次第でございます。  それから第三点、御質問のございました、過去の韓国側漁業実績というもの、これを尊重してほしいという立場、これは韓国側に当然あるわけでございますが、もしそうなると、これはいわば乱獲というものを認めてしまうことにつながらないかという、こういう御懸念でございます。  先ほど申しましたように、韓国側との新たな漁業秩序につきましては、目下交渉中というよりも、交渉が始まったばかりでございますので、将来新しい協定ができた場合に、我が国周辺水域における韓国漁業操業の態様がどのようになるかということは、まだ現時点ではちょっと申し上げられないといいましょうか、そこまでの話が詰まっていないわけでございますけれども、いずれにいたしましても、この交渉におきましては、沿岸国生物資源の維持に係る適切な措置をとるという、これが国際海洋法条約趣旨でございますので、その趣旨を十分に踏まえて新しい協定をつくるという、そういう努力をこれからしてまいりたい、こう考えている次第でございます。
  12. 小杉隆

    小杉委員 期間は明示されませんでしたけれども、我々としては一年以内に、そしてしかも、やはり魚の資源の持続的な保全というか、そういう観点からぜひ交渉に臨んでいただきたいと思います。  同じく、関連をして排他的経済水域協議についても伺いたいと思うのですが、報道によりますと、韓国政府は、五月一日に、国際海洋法条約に基づいて海岸から二百海里の排他的経済水域設定する法案を官報を通じて告示したと伝えられております。漁業交渉と切り離して行うことになっている排他的経済水域、この設定協議開始のスケジュールについて韓国側協議中ということでありますが、その開始の見通し及びどのような方針をもって臨むのか、お伺いしたいと思います。
  13. 池田行彦

    池田国務大臣 排他的経済水域境界画定につきましては、今お話がございましたように、漁業関係とは切り離して行う、このことは、三月の初めにバンコクで行われました橋本総理金泳三大統領との首脳会談の席で決まったところでございます。また、それを踏まえまして、四月三十日、これは南アフリカでへ孔魯明外務部長官と私とがいろいろお話をいたしましたが、その中におきまして、この境界画定交渉をなるべく早く開こうじゃないか、そしてその取り進め方につきまして、実務者の間でまず話をしよう、こういうことを合意いたしました。そして現在、これを踏まえまして極力早く話し合いに入りたい、このような段階でございます。
  14. 小杉隆

    小杉委員 政治的に微妙な問題であります竹島問題について触れたいと思います。  漁業協定改定交渉に当たって竹島領有権問題を棚上げすることは理解するとしても、漁業交渉におくれてスタートする排他的経済水域設定協議については、漁業交渉合意内容を適用する具体的な海域線引きする必要があるために、竹島領有権問題を避けて通るわけにいかない。どうしてもこの問題に直面せざるを得なくなってまいります。未解決の領土問題が絡まってくると、双方が納得するような線引きはほとんど不可能に近いと思われますが、政府見解を伺っておきたいと思います。  それから、それに関連して、ことしの初め、二月から三月にかけて、我が国政府韓国竹島港湾施設をつくることに抗議をするという発言をきっかけとして、竹島問題について韓国世論も沸騰して、日韓関係が険悪になったという経緯があります。政府はその後港湾施設建設抗議するこを差し控えているようでありますが、領有権問題と漁業協定改定交渉を切り離すことで合意しているとはいえ、引き続きこういう行為に対しては抗議をしていくべきだと考えます。  その後の韓国による竹島港湾施設建設進捗状況政府として引き続き中止要請を行っていくつもりかどうか、この点を伺いたいと思います。
  15. 池田行彦

    池田国務大臣 まず第一点、この問題が大変難しいというのは御指摘のとおりでございますが、しかしながら、日韓両国関係双方いずれにとりましても大変重要な二国間関係である、こういうことはお互いによく認識しているところでございます。そうして、その大切な二国間関係全体に対して好ましからざる影響がこの問題から起きてはいけない、こういうことで、何とかその合意点を見出すべくこれから真剣に取り組んでまいりたい、このように考えております。  さて、竹島工事にかかわる我が国政府としての対応いかんという点でございますが、御承知のとおり、竹島の領有権問題に対する我が国立場は一貫したものでございまして、我々といたしましてもその立場を踏まえて対応しておりまして、御指摘の件につきましても、そういった立場から、それぞれ適切な機会をとらえまして我が方の立場を申し入れているところでございます。  具体的に若干申しますと、この接岸施設につきまして、二月でございますけれども韓国外務部工事実施するということを表明した、こういうことがございました。そしてまた、四月になりまして着工したという報道がございましたので、これについて事実関係を照会した、こういうことがございます。そういったことを踏まえまして、先ほど申しましたような、しかるべき機会をとらえていろいろ立場を申し入れているところでございます。  一つだけ具体的に申しますと、先ほど申しました、私が孔外務部長官南アフリカで会談いたしました際にも、我が方の立場を改めて伝えまして、慎重な対応が大切である、こういうことを申し上げた、こういうことがございます。
  16. 小杉隆

    小杉委員 それで、この問題の打開策について私の考えるところを申し上げたいと思うのです。  排他的経済水域設定協議竹島領有権問題を切り離すのであれば、その打開策として、領土問題が絡んだ水域設定を参考にする必要があると思うのですね。例えば、我が国ロシア漁業協定では、互いに異なる二百海里、それぞれの国の主張する二百海里の漁業水域線引きがあるわけですけれども、その重複した水域での漁獲お互いに認め合っている、こういう例があるわけであります。さらに一歩進んだ共同管理というような方法をとっている例もあります。  政府はこのような実例を選択肢の一つとして考慮に入れることも必要なのではないか、その点についてのお考えを聞きたいと思います。
  17. 池田行彦

    池田国務大臣 ただいま委員から御指摘のございましたように、日ロ間につきましては、おっしゃったような取り決めがございます。また、そのほかにもいろいろな工夫をしたケースがあることも我々としても承知しているところでございます。  ただ、具体的に、この日韓関係につきましては、先ほども申しましたように、なるべく早く交渉開始しようということで、まず実務者間での話し合いをという段階でございますので、交渉が開催されたばかりで、どういうふうに対処していくかという方針につきましては、何分相手もあることでございますから、ちょっと今の段階では政府としては申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。
  18. 小杉隆

    小杉委員 日中関係の見通しについて一点だけ申し上げたいと思います。  中国との漁業交渉も、政府は常に領有権問題は存在しないと主張しておりますけれども中国側は自分の領土であると主張して譲っておりません。また、排他的な経済水域設定をめぐって、東シナ海の大陸棚部分について、中国側は、その大陸棚の続く先端までが自分たち水域であるという、いわゆる自然延長論というものを主張しております。我が国は、それはそうじゃない、日中間の水域のちょうど中間線を原則とすべきだ、こういう立場をとっておりまして、両国間の主張が食い違っております。  政府中国との間で今後どのように水域決定の解決策を見出そうとしているのか、伺いたいと思います。
  19. 池田行彦

    池田国務大臣 委員指摘のように、中国が主張していると二点お話がございました、自然延長論も含めて。そういうことは承知しておりますけれども、御承知のとおり、我が国といたしましての尖閣諸島に関する方針は、考え方は明白でございまして、我々としては、ここに領土問題は存在しない、こういう考えでございます。  そういうことを前提にいたしまして、いずれにいたしましても、中国との間では、今後必要があれば、海洋法条約の規定などに従いまして、その排他的経済水域境界画定について協議を行ってまいる、こういうことでございます。
  20. 小杉隆

    小杉委員 総理に伺いますが、この領土問題と中国韓国との友好関係の維持との関係について伺いたいと思うのです。  今まで外務大臣に質問をいたしましたように、中国及び韓国との今後の漁業協定改定交渉、これは非常に難航が予想されます。いずれにしても、中国韓国とは、我が国の隣国として友好的な関係を維持していかなきゃいけませんが、この両国との領土問題及び漁業交渉に対する総理の基本的な姿勢を伺いたいと思うのです。
  21. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今、中国及び韓国をあわせて議員からお尋ねがございました。私は、この両国、.いずれも歴史的に極めて深いつながりがあり、しかも、過去の歴史的な重みの中で、我々が今後も友好を保っていかなければならないという意味での共通点はありますけれども、領土という絡みからのお尋ねでありますならば、この両国に対する対応には大きな違いがあると思います。  すなわち、私ども中国との間に領土問題はないという立場をはっきりと主張をしてまいりました。そして、その主張を変えるつもりはありません。  また、韓国に対しましては、まさに竹島の問題がございます。そして、三月二日に行いました日韓首脳会談におきましても、国連海洋法条約批准に伴ってとる措置というものは、竹島の領有権問題に関する日韓それぞれの立場影響を及ぼすものではないということを前提にすることを確認をいたしました。  他方、この会談におきまして、私は、竹島問題についての日本政府立場というものは一貫しているということを明確に述べてまいっております。そして、この問題に関しては、今後ともに平和的な解決を図れるように両国で外交的な努力を重ねていく、そして感情的な問題にしないようにしていく努力が必要だと思っております。その上で私どもは、中国及び韓国との漁業関係というものにつきましては、それぞれとの協議によりまして、沿岸国生物資源の維持に係る適切な措置をとるという国連海洋法条約趣旨を十分踏まえた新たな漁業協定早期締結されるように鋭意努力をしてまいりたい、そのように考えております。
  22. 小杉隆

    小杉委員 次に、持続可能な漁業の担保ということについて伺いたいと思います。  この条約の五十六条において、排他的経済水域における沿岸国天然資源の探査とか調査、保存、保全、管理についての主権というものを認めております。それと同時に、第六十一条、六十二条で生物資源の維持のための沿岸国の義務ということも規定されておりまして、TAC、漁獲可能量制度、十ータル・アローアブル・キャッチという制度が導入をされております。そして、六十一条の二項で、あるいは三項で、生物資源の保存、管理の措置は最大持続生産量が実現できる水準に資源を維持、回復できるものとする、こういうふうに定めております。  条約の上では、漁獲可能量を決定する条件は最大持続生産量を実現できる資源を維持することが考えられます。そうだとするならば、漁獲可能量を決定するためには一体最大持続生産量というものはどの水準にあるべきかということを決定しなければなりません。そういう排他的経済水域内の資源量の推定というものを私はすべきだと思いますけれども政府見解を伺いたいと思います。
  23. 谷内正太郎

    ○谷内政府委員 先生御指摘のとおり、国連海洋法条約上、締約国が排他的経済水域設定した場合、沿岸国として生物資源漁獲可能量、これを決定する、それと同時に、生物資源資源量を最大持続生産量を実現することのできる水準に維持し、または回復することのできるような措置を通じて、生物資源の維持が過度の開発によって脅かされないことを確保するというふうになっておるわけでございます。  で、その際具体的にどのような態様で規制を行うかにつきましては、生物資源の維持を図るという目的が達成される限り沿岸国の裁量が認められるというふうに考えております。  しかし、沿岸国が自国の排他的経済水域における生物資源の量を推定し、その量の面での適切な管理を行う基礎とすることはこのような条約趣旨に沿ったものである、そういうふうに考えておるわけでございます。
  24. 小杉隆

    小杉委員 ちょっと、話題に必ずしも適切に合致しているとは思いませんけれども、例えばあの鯨の例を私は出したいんですね。  日本としては、もう長い間科学的な調査というのを、毎年毎年相当の費用をかけて船を出し人員も出して、IWCの中の科学委員会の中で一生懸命やってきたわけです。そうすると、ミンククジラというのは今後毎年二千頭ぐらいずっとっても海の資源には悪影響を及ぼさない。ここでいうと、持続可能なといいますか、最大持続生産量に匹敵するんだろうと思うんですね、そういうものを維持できるというふうに言っているわけですけれども、しかし、国際社会の中では、IWCの中では、その日本の科学調査とかあれは偏っているというようなことで、一切ミンククジラもとつちゃいかぬと。こういうことで、日本はIWCの中で孤立しているわけですよ。  これは一つの鯨の例ですけれども、今後海洋資源が人口増加に伴ってどんどん枯渇してきますと、必ずその辺の衝突が起こるわけですよね。ですから私たちは、鯨に限らず、一般の漁業資源について周辺海域資源調査というものを行っていると思います、科学的な調査データも蓄積をされていると思います。そういうデータをもとにして、秩序ある資源保存とか管理体制のもとで漁業が行われてきていると私は理解しております。  そうした認識の上に立って、今後とも、我が国排他的経済水域内の漁業資源について、条約で言う最大持続生産量を維持していく、これはもう当然のことでありますけれども、この水域外の漁獲量あるいは最大持続生産量を維持されていくためにも、私たちは、さらにこういう調査データというものを日本だけじゃなくて世界にも公表をして、世界の、国際社会の理解も得るような努力をしていただきたいと思うんですが、そういう点についての取り組みをどう考えているか伺いたいと思います。
  25. 谷内正太郎

    ○谷内政府委員 先生のただいまの御質問、私どもよりも水産庁の方がはるかに権威を持って、また詳しく御説明し得ると思いますが、外務省といたしましても、先ほど来お答えしておりますような国連海洋法条約趣旨を踏まえまして、水産庁等の関係政府機関とも話し合いまして、我が国排他的経済水域における生物資源の維持が適切に図られるよう、また、それ以外の水域でもそういった生物資源の維持が確保されるように協力して努力してまいりたいというふうに考えております。
  26. 小杉隆

    小杉委員 この最大持続生産量というのは、沿岸国が自分の水域だけじゃなくて、その外の公海における資源の保存ということも十分考慮していくべきだと思うんですが、残念ながら、やはり自分のところの魚をたくさんとりたいという方が優先をされまして、必ずしも沿岸国が地球全体の資源保全という観点から取り組みをするとはなかなか考えられないんですね。  しかし、今度の海洋法条約の第六十一条では「環境上及び経済上の関連要因を勘案し、」というふうにうたっておりまして、ただ単に魚をとるという側面だけじゃなくて、環境と漁業が併存できる、つまり持続可能な漁業というものを規定しているわけでありまして、どちらを優先するかというのは条約上はわかりませんが、少なくとも、沿岸国に対して漁業と環境の両立に努力するよう要請しているものと私は解釈すべきだと思います。  で、この両立というのは大変言うはやすく、行うのは難しい問題でありますが、日本として、やはり自分の国に有利な漁獲可能量を設定資源の管理を行う危惧というものを私は禁じ得ないわけです。したがって、このような危惧を払拭するような条約上の防止措置はとり得るのか否か、政府のお考えを聞きたいと思います。
  27. 谷内正太郎

    ○谷内政府委員 条約上、先生御指摘のとおり、経済上の関連要因あるいは沿岸漁業社会の経済上のニーズあるいはまた開発途上国の特別の要請、そういったものをそれぞれ配慮する必要があるわけでございますけれども、先ほどお答え申し上げましたように、排他的経済水域において具体的にどのような態様で規制を行うかについては、基本的には沿岸国の裁量が認められているというふうに考えられるわけでございますけれども、これは、あくまで排他的経済水域における生物資源の維持を図るという目的が達成されるような、そういった枠内での措置でなくてはならないという大枠がかかっておるわけでございます。  ただ、さらに議論を詰めていきますれば、条約上、例えば、ほかの国が関心を有する資源につきまして、当該他の国の要請にもかかわらず漁獲可能量等の決定を恣意的に拒否したような場合、こういった場合には条約に定めております紛争解決手続に付される、こういう道も開かれておるわけでございます。
  28. 小杉隆

    小杉委員 今度はその外側の国連公海漁業協定について伺いたいと思うのですが、排他的経済水域の外のいわゆる公海を含めた漁業の規制を対象とする国際的な条約、例えば先ほど申し上げた国際捕鯨条約とかあるいはインド洋まぐろ類委員会の設置に関する協定とか、北洋サケ・マス保存条約などがあって、我が国もこれに加盟しております。このような条約は、海洋資源の保存管理に対する国際的な関心の高まり、さらに海洋資源の枯渇に対する危機意識というものが反映された結果だと思うのです。  私は、排他的経済水域の中であってもあるいは外であっても、やはり海洋資源の保存管理というものはきちっと国際的にも国内的にもやっていかなければいけないと思っております。  昨年の八月に、ストラドリングストツク及び高度回遊性魚種の保存及び管理に関する千九百八十二年十二月十日の海洋法に関する国際連合条約の規定を実施するための協定、いわゆる国連公海漁業協定が採択をされております。この条約考え方について一言だけちょっと伺っておきたいと思います。
  29. 野上義二

    ○野上政府委員 先生御指摘のいわゆる国連公海漁業協定でございますけれども、これは公海漁業の主要な対象である排他的経済水域内外、内と外にまたがって生息する、またがってという意味でのストラドリングストツク、タラとかカレイでございますけれども、それから排他的経済水域及び公海の双方を非常に広い範囲で回遊する高度回遊性魚種、マグロとかカツオでございます、この資源の保存管理のあり方を海洋法条約の関連規定を踏まえて包括的に規定したものでございます心  具体的には、公海におけるこれらの二つの種類の保存管理を地域漁業管理機関等を通じて行う、第二点として、両魚種の保存管理措置設定については、最良の科学的根拠に基づいて沿岸国設定する排他的経済水域の中での保存管理措置と地域漁業管理機関が設定する公海上の保存管理措置の間に一貫性を保つということ、それから相互に保存管理の効果を損なうことがないようにすること、第三点では、保存管理措置の効果的な実施のために、公海上における乗船検査等に関する国際協力というものを決めております。
  30. 小杉隆

    小杉委員 今言われたように、排他的経済水域内とそれから水域外の公海上の資源の管理、保存、こういうものについては一貫性を持ってやるべきだ、こういう中身でございます。しかし、やはりこの水域内の問題については、そこの沿岸国の主権が認められているわけですね。そして、外の方はいわゆる国際機関みたいなもので決めるというのですが、果たして沿岸国の主権に属する考え方と公海上のこの国際機関の考え方と、これは衝突するというのはたくさん私は予想されると思うのですね。その調整というのは一体どうやっていくんだろうか。  私は、やはり沿岸国が主権的な権利を独善的に行使される可能性は全くないとは言えないと思うのです。そういう場合に、国際機関が、その公海の上では、何か文句は言うことはできますけれども、その沿岸国に対してはなかなか言えない、こういうところの調整は一体どういうふうにするのか伺いたいと思うのですが。
  31. 野上義二

    ○野上政府委員 この協定におきましては、公海水域でとられる保存管理措置沿岸国排他的経済水域でとられる保存管理措置との一貫性を確保する、先生御指摘の問題、衝突の問題でございますけれども、当該資源全体の保存管理を確保するために一貫性を保たなければならず、そのため、沿岸国と公海で漁業を行う国が一貫性ある措置を達成するため協力する義務を負うという規定がございます。これは義務規定でございます。  それからまた、この協定はほぼすべての沿岸国及び漁業国を含む多数の国が国連でコンセンサスで採択されているということでございまして、これは、沿岸国漁業国のいずれも相互の立場を理解して漁業の持続的な確保を望んだ結果であると思われます。  したがって、そういった今先生御指摘のような沿岸国の独善的行動というものは、今のような経緯を踏まえましても、協定上抑制されていると考えます。したがいまして、公海における漁業資源の適正的な利用が本協定によって確保されるようになっているというふうに考えております。
  32. 小杉隆

    小杉委員 実例をちょっと申し上げますが、昨年の三月、ちょうどこの国連公海漁業協定交渉が続いている期間内に、カナダの巡視艇が公海上でスペインの漁船を拿捕するという事件が起こりまして、大西洋のカレイをめぐってカナダとスペインあるいはEUとの間に紛争が発生をいたしました。カナダがなぜこのような強硬な姿勢をとったかといいますと、カナダが、自分の経済水域内の漁業資源保全だけではなくて水域外の漁業資源の保護も世界漁業資源保全する上で重要だ、こういう主張に立ってこのような行動に出たわけですけれども、このような場合に私は二つ疑問があると思うのですね。  公海上で取り締まりができる権限は、例えばカナダがスペインの船を取っ捕まえるということはこれからはできなくなる。要するに旗国主義、つまりスペインの巡視艇ならばスペインの船を拿捕することはできるけれども、カナダの巡視艇がスペインの船を拿捕することはできなくなるわけですね。そういうことで果たして実効が上がるのかどうかというのが第一点。  それから第二点は、これはちょっとグローバルな視点なんですけれども、自分の水域内だけではなくて世界全体の海洋資源の保存管理をどのように担保していくのか。  この問題について、この条約の上で政府はどう考えるのか、聞かせていただきたいと思います。
  33. 野上義二

    ○野上政府委員 今御指摘のカナダとスペインの件でございますけれども、公海上の取り締まりにつきましては、国連公海漁業協定は、地域漁業機関を通じた公海上の乗船検査の強化ということを認めております。取り締まりは御指摘のように旗国主義でございますけれども、地域漁業機関を通じての臨検といいますか、検査、公海上の乗船検査の強化を定めております。  また、グローバルなレベルでの保存管理の問題でございますが、これまで我が国といたしましては、国連公海漁業協定作成交渉それからFAOにおける責任ある漁業確立を目指した議論に積極的に参加してきたところでございますし、また各種の地域漁業機関を定めるいろいろな取り決めにも参加してきているわけでございます。
  34. 小杉隆

    小杉委員 最後に総理に伺いますが、海洋は地球の表面積の七一%を占めております。地球環境における海洋の割合といいますか、役割は非常に大きいと思います。例えば、今問題になっている地球温暖化にしても、CO2を海が相当吸収するのではないかとか、海洋の変化が地球環境に大変な影響を及ぼすということは無視できません。  そういうことで、海洋の地球環境に及ぼす影響とか役割というものは、そのメカニズムがまだ完全に把握されてはおりません。少なくとも言えることは、海洋環境のバランスが崩れるということはすなわち地球環境の悪化につながるということだけは間違いのない事実だと思います。  そこで、今度の海洋法でも海洋環境の保護と保全ということを規定したというのは非常に前進だと思います。WTOの中では若干その点が欠落しておりまして、私ども議員間で、WTOの中に環境委員会というのをつくって、ただ通商、貿易だけではなくて環境保全という観点をもう少し入れるべきだということを強く主張して、そういう方向になりつつあります。  今度の海洋法におきましても、漁獲する資源をどう活用するか、どうやってとっていくかという資源の面のみに関心がいくのではなくて、やはり海洋の環境をどうやって守っていくか。海の生態系が崩れれば当然地球全体の生態系にも影響してくる、そういうグローバルな観点からの取り組みをぜひやっていただきたいと思うわけです。  そこで総理に、私は三つの具体的な提案を申し上げたいと思うのです。  まず一つは、この条約締結を契機として、今後、海洋生物を単に漁業資源としてのみ見るのではなくて、地球生態系保全観点からとらえて、海洋生態系の保護及び海洋生物の生息環境の保全のための努力を強化していく必要があると思います。したがって、今度の法案に関連する省庁というのは、農林水産省、運輸省あるいは科学技術庁そして外務省と限定されておりますけれども、やはりもう少し幅広く、環境庁とか文部省、これは研究が入りますから、関係省庁が全部、調査とか研究を効果的に進めていく必要がある。しかるべき協議の場を政府内に設置をして、そして国としての総合的な調査というものを進めていただきたい。  それから二番目は、我が国だけではなくて国際的な情報交換が必要だと思うのです。海洋を共有する近隣諸国との国際共同研究というのを一層推進するために、総理のリーダーシップを発揮していただくことを私はお願いしたいと思います。  第三番目に、海洋環境のための調査研究、情報の収集あるいは環境教育の普及等を推進するために、何かそういった総合センターを設置するようなことを考えられたらどうか。  以上、具体的に三点の提言をいたしまして、総理見解を伺いたいと思います。
  35. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 大変幅広い御提言をいただいたことにお礼を申し上げます。  確かに今、人間の力というものあるいは科学技術の力というものが非常に大きくなったといいながら、自然の力をはかり知ることはできません。殊に海については、まだまだわからないことが非常にたくさん残っております。  それだけに、この条約におきましても第十二部という部分で「海洋環境の保護及び保全」というものを規定しているわけですが、ただ単に人間の食料を供給するという視点からのみ海洋生態系の保護を考えるというのではなくて、もっと幅広いものにしていかなければならないという御指摘は、私もそのとおりだと思います。  当然のことながら今後そういう考え方でいかなければなりませんが、それでは世界的にこの分野に十分な科学的知見が蓄えられているかといえば、私は決して十分なものはないと思います。日本の周辺を見ましても、例えばサンゴ礁の保全という一つをとりましても、我々は必ずしも成功しているとは言えないわけであります。  こうしたことを考えますと、これから先も非常に幅の広い科学的な知見を集積する努力というものは必要でありますし、それは、今委員が挙げられましたような、この条約に関連する省庁にのみ限定されるものでないことは間違いがありません。大学あるいは民間、各種の研究機関の知見は、当然のことながら我々にとって極めて重要でありますし、関係省庁の幅を広げてこれに対処せよという御指摘は非常にいい御指摘、そのような気持ちで受けとめさせていただきたいと思います。  また、中国あるいは韓国ロシアといった近隣諸国との間の海洋環境の分野におきます国際情報交換あるいは国際共同研究の推進というものについて、二国間の環境保護協力協定などに基づいて今までも努力を進めてまいりました。殊に平成六年九月に、日本海、黄海を対象海域とします地域海計画が、我が国中国韓国及びロシアの四カ国によって採択される、海洋環境保全についての多国間の協力の枠組みも形成されております。こうしたものをフルに活用しながら、こうした点についても努力をしてまいりたいと考えております。  最後に、センターという具体的な御提案がございました。環境保全、これは海洋における環境保全を今は意味いたしますけれども、調査研究あるいは情報の収集、さらにこれに基づく海洋に関する環境教育といったものの重要性は非常に大きなものだと我々は認識をいたします。私ども、今後、調査研究の拡充など海洋環境の保全を総合的に進めていくためにどうすればいいのか、基盤となる措置の充実強化について考えてまいりたい、強化してまいりたい、そのように考えております。
  36. 小杉隆

    小杉委員 ありがとうございました。
  37. 関谷勝嗣

    関谷委員長 佐藤泰介君。
  38. 佐藤泰介

    ○佐藤(泰)委員 まず、橋本総理は先月の原子力サミット出席の際に、エリツィン大統領と会談をされました。我が国ロシアには長年の懸案である北方領土問題が存在しています。本日議題となっている海洋法条約締結によっても領土問題の解決については直接的には影響がないとされており、領土問題についてはあくまで二国間での協議にゆだねられることになっています。  そこで、二国間での協議が必要になってくるわけですが、首脳会談では、大統領選挙後に次官級の平和条約作業部会を再開し、これを受けて外務大臣による平和条約締結に向けた交渉を再活性化させることで合意しました。  六月に大統領選挙を控えたロシアの状況を踏まえて、総理は、今回は東京宣言の確認をし、大統領選の後に平和条約締結に向けた作業を動かすことを確認したい、これ以上のことを言うつもりはないと述べ、領土問題のいわば先送りに合意しました。この先送りについて、早急なる解決が必要であるとの見解もありますが、領土問題の譲歩に強く反発する左派、民族派が台頭してきているロシアの国内の状況を考慮すれば、時宜を得た判断だったと私は思います。  とはいいながらも、領土問題の解決について、五十年待ったのであるから今後五十年かかっても仕方がないと考えるものではありません。もちろん相手のある交渉であるわけですから、いつごろまでに解決できるとは言えないと思いますが、モスクワにおける総理の発言は、いつごろまでにこうしたいとの腹づもりを持っての発言だったと思います。領土問題解決に向けて総理の腹づもりの一端なりをまずお伺いしたいというふうに思います。
  39. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今回エリツィン大統領との会談を持ちます際、私が非常に注意しながら触れてまいりました問題がこの北方領土の問題であります。と申しますのは、マスコミの報道で我々が予測をしておりました以上に、モスクワに入ってみますと大統領選は過熱をいたしておりました。そして、北方領土問題というものが非常に強い民族的な空気、動きといった中に巻き込まれ、我が国として非常に大切に扱わなければならない、そしてロシアに対して交渉しなければならないこの問題がいわばロシア国内の政争の具にされることだけは避けたいというのが私の基本的な考え方でありました。  と同時に、この問題をきちんと位置づけていく必要は当然のことながらあるわけでありまして、私としては、東京宣言を基礎として両国関係をさらに発展させていく、その東京宣言を確認させることがまず第一点。そして同時に、その上で外務大臣レベルの平和条約交渉というものを再活性化させるという点、これが重要だという点の認識の一致をとること。そして、大統領選後にそのためにも次官級の平和条約作業部会を再開させること。これを確約させることができれば、それ以上今回強い議論をいたしました場合に、ロシア国内における反応というものを懸念しなければならない、これが私にとりましての実感だったわけであります。  殊に、ことしは両国にとりまして国交回復四十周年の年でもございます。ここで一つの弾みをつけていきたい。そのためにも次官級の作業部会の再開までは確認をさせたい。今回は私はそこまでを思い定めておりました。  大統領選の結果を見て次の取り組みについての考え方を整理していくべき時期、今はそのように考えております。
  40. 佐藤泰介

    ○佐藤(泰)委員 基本的には今の総理の姿勢について私は妥当だと思いますし、評価をしたいというふうに思っておりますので、大統領選挙後の次のステツプヘのさらなる努力を期待したいというふうに思います。  次に、日ロ首脳会談でエリツィン大統領は、放射性廃棄物の海洋投棄を禁止するロンドン・ダンピング条約改正議定書の年内受け入れと、それまでの間も海洋投棄はしないことを約束しました。  三年前のロシアによる放射性廃棄物海洋投棄による悪影響の有無について、同年科学技術庁、海上保安庁、気象庁、水産庁により、また翌年には日韓ロの三国による調査が行われました。その結果、いずれも影響は認められませんでした。日本海に面する我が国としてその調査には大きな関心を持って見守ったのでありますが、一応安心することができたと私は思っております。  しかしながら、ロシアによる海洋投棄を是認するものではなく、今回発表されたロシアの約束は評価できるものでありますが、三年前の投棄発見は環境保護団体グリーンピースによるものでありました。投棄現場は我が国漁業水域ではなく、海上保安庁の守備範囲でもなかったので、我が国の艦船等による発見でなかったことは当然であったかもしれません。しかしながら、海洋法条約加盟により、我が国排他的経済水域という広大な海域において環境保全の管轄権を持つことになり、従来以上の責任を負うことになるというふうに私は思います。  先日の本会議では、総理は、海上保安庁の整備拡充を進めると明言されましたが、いかなる計画を持って今後どのような拡充を図ろうとしているのか、具体的な説明をお願いしたいというふうに思います。
  41. 秦野裕

    ○秦野政府委員 御案内のとおり、昭和五十二年に領海の十二海里あるいは二百海里の漁業水域設定を行いまして、これを契機といたしまして海上保安庁では、いわゆる広域的な哨戒体制ということで巡視船艇なり航空機などの整備を進めてきたわけでございます。  今般、海洋法条約批准によりまして、ただいま先生御指摘のとおり、接続水域あるいは排他的な経済水域といったようなものが設定されまして、私どもの監視、取り締まりの海域が極めて拡大するわけでございます。それに加えまして最近は、御案内のとおり、けん銃とかあるいは薬物の密輸の問題あるいは大量の密入国の問題等々、質的にも非常に変化をしてまいりました。また、先生御案内のとおりの海洋環境の保護という問題もあるわけでございます。  そうした点を踏まえまして、私どもとしましては、いわゆる性能の高い巡視船艇あるいは航空機あるいはそれに附帯するいろいろな設備等の総合的かつ計画的な整備の推進ということが必要であるというふうに考えておりまして、今後とも鋭意その体制の充実を図っていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  42. 佐藤泰介

    ○佐藤(泰)委員 ありがとうございました。  今の答弁のように、一層の計画的な拡充を図っていっていただきたいということを要望しておきたいと思います。  次に、一九七七年、我が国は北方領土周辺の漁業水域設定しました。これに伴い、同年、日ソ及びソ日漁業暫定協定締結しました。それ以降、両協定は八四年まで毎年更新されてきましたが、同年、日ソ地先沖合漁業相互協定として一本化され現在に至っています。この協定では、「この協定のいかなる規定も、海洋法の諸問題についても、相互の関係における諸問題についても、いずれの締約国政府立場又は見解を害するものとみなしてはならない。」と規定しています。海洋法条約締結により、排他的経済水域を七七年の漁業水域と同じ範囲で設定することになると思われますが、この設定に伴い、日ソ地先沖合漁業相互協定の見直しの必要はあるのかどうか、あるとすればどのような協定になるか、外務大臣にお尋ねをしたいというふうに思います。
  43. 浦部和好

    ○浦部政府委員 日ロ間、あるいは当時は日ソ間でございますが、七七年以来、地先沖合における漁業関係に関する協定に基づく漁業秩序が存在しておるわけでございます。政府としては、現行の協定の現時点での改正が必要であるとは考えておりません。
  44. 佐藤泰介

    ○佐藤(泰)委員 次に、我が国の首相がロシアを訪れたのは十一年ぶりとのことであったわけですけれども、そういう意味では、日ロ双方にとって何がしかの面で大きな前進が期待されるのが通常のパターンでありますが、先ほども申し上げたように、また総理からも答弁がありましたように、大統領選挙を控えたロシアの状況を踏まえて、その辺を配慮した交渉に臨んだということでありますけれども、エリツィン大統領は、九一年に日本輸出入銀行の対ロ支援枠を使った融資五億ドルを要請する書簡を三月に橋本総理に送ったと聞いておりますし、さらに書簡では、二十億ドルの追加支援も求めていたようであります。政府としては、五億ドルの融資枠を消化するまでは新たな支援については消極的な態度をとると報道されています。  政府が従来より述べてきた拡大均衡の政策のもとで、我が国に近い極東を重視した五億ドルの融資についても、ロシアの政情が落ちつくであろう六月以降になるのかどうか、ロシア支援策の実行方法について、日ロ首脳会談での取り上げ方も含め、見解をお伺いしたいと思います。
  45. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 首脳会談の性格上、細かいことまで申し上げることはお許しいただきたいと存じますが、今御指摘の五億ドルの未消化枠につきましては、我々としては極東を中心に優良プロジェクトを発掘したい、こうした考え方を申してまいりました。  同時に、二十億ドルと限定する話ではございませんけれども、その後においても、本当に輸銀を活用して行動するにふさわしいプロジェクトがあれば、それは前向きに検討しましょうということを申してまいりましたが、現在、その未消化の五億ドルにつきましても対象プロジェクトが十分に提示をされている状況ではありません中で、新たなプロジェクトという考え方での対応はいたしておらないというのが現状でございます。
  46. 佐藤泰介

    ○佐藤(泰)委員 経済的な協力も重要な部分だと思いますので、領土問題を解決していく前提にもなろう課題かというふうに思いますので、その辺は慎重に両国の間で進めていっていただきたいというふうに思います。  次に、冷戦時代には旧ソ連は仮想敵国とされてきました。冷戦構造崩壊後は、九三年十月のエリツィン大統領訪日の際に発表された東京宣言で、アジア太平洋地域における積極的かつパートナーへ歓迎すべき変化を遂げました。このような変化もあり、漸次、極東ロシア軍の撤退、縮小が進行していると思います。  三月に訪ロされた池田外相に対し、プリマコフ外相は北方四島に駐留するロシア軍の現状について三千五百人規模であることを公式に伝えたと聞いております。以前は一万人の地上軍が配備されたと見られていましたが、九二年、当時のコズイレフ外相が七千人規模に減ったと説明して以来、その実態は不透明でありました。プリマコフ外相は、北方四島の駐留軍を撤退させる非武装化を進めていく考えも明らかにされたと聞いています。また、池田外相の防衛首脳会談の実現の提案に対しプリマコフ外相も同意し、先月末の日ロ防衛首脳会談がモスクワで行われました。領土問題で一番態度がかたいのはロシア軍と見られていましたが、以上のように、軍部にも変化が見られます。一連のロシア政府及び軍部の変化について、総理あるいは外相の方から、どのように分析してみえるのかお伺いをしたいというふうに思います。
  47. 池田行彦

    池田国務大臣 今、委員から御指摘ございましたように、北方領土におきますロシア軍の規模というものも着実に縮小しているところでございます。これは、かねてからエリツィン大統領はそれを表明しておったところでございますけれども、先般、三月に私がプリマコフ外務大臣と会談を持ちましたその席におきまして、三千五百人の規模になっているということを初めて公式に表明されたわけでございます。その後、首脳会談でも、また四月の末に行われました臼井防衛庁長官と国防大臣との間の会談でもそういうことは明確にされております。我が方といたしましては、さらに、今委員も御指摘になりました完全な撤退というものが実現することを期待しているところでございます。  それから、なお、そういったことを踏まえまして、ロシアとの間におきましては、安全保障の分野におきましても相互の理解、そうして信頼の増進を図っていくことが大変肝要だと考えております。そういったことで、外相会談におきまして、これまで両国間で行われておった防衛交流、対話というものを大臣レベルで行おうということで合意いたしまして、そして首脳会談におきまして具体的に四月の末ということが決まり、先般行われたところでございます。そして、臼井防衛庁長官の訪ロが実現いたしまして、そこでまた具体的な日ロ相互の艦隊の訪問であるとか、内容がいろいろ合意を見たということでございます。  このようなことは、安全保障の面でいい影響を及ぼす、これはもとよりでございますけれども、さらに領土問題解決等に向けても環境の整備という意味で非常に好ましい影響があるのではないか、このように考えている次第でございます。
  48. 佐藤泰介

    ○佐藤(泰)委員 今の問題に関連しまして、日ロ防衛首脳による初会談では、九三年の東京宣言を基礎に日ロ関係を発展させることで合意した上で、今も話がありましたように、安保対話の強化策についても検討、合意がされたと思います。  合意文書では、信頼醸成は、透明性の拡大、相互交流、自衛隊とロシア連邦軍の部隊交流などが柱になっています。透明性の拡大には、大規模な演習の実施に関する情報の事前相互通報と、自衛隊とロシア軍の規模と防衛政策の基本の相互通報が盛り込まれました。  我が国にとって対米関係以外には同様の措置はないというふうに思いますが、実施されれば日ロ間の信頼醸成の中核となるものであり、早急なる実現を期待するものでありますが、実現の時期について、その見通し等についてお伺いをしたいというふうに思います。
  49. 浦部和好

    ○浦部政府委員 先生御指摘のように、今回の日ロ防衛首脳会談におきましては、透明性の拡大であるとかあるいは相互交流等の分野で双方の信頼性をさらに醸成していくための具体的な措置をとるということで意見が一致をいたしまして、会談における議事録というのに両大臣が署名しております。  今後これらの一つ一つ措置がどのような日程で実施されていくかということにつきましては、具体的なケース・バイ・ケースで関係当局間で話をしていくということになりますが、我々としては、これが着実に実施に移されていくことによりまして、両国防衛当局間の対話と交流が深まり、信頼関係が醸成されていくことを期待する次第でございます。
  50. 佐藤泰介

    ○佐藤(泰)委員 今の答弁のように、確実に日ロ間の信頼が醸成されていくと思いますので、早急なる実現が図られるように御努力をお願いをしたいというふうに思います。  次に、グラチョフ国防相は、極東ロシア軍を十年間で十五万人削減し、北方領土の駐留軍を三千五百人まで削減したことを紹介しました。これに対し臼井長官は、プリマコフ外相の池田外相に対する三月の発言を念頭に、速やかなる全面撤退の実現を強く期待する旨強調されました。しかし、北方領土の非武装化へ向けた具体的な言及はありませんでした。グラチョフ氏自身、ロシア軍はクリル諸島に駐留し続けると発言したことがあり、特にロシア海軍には、北方領土周辺を不凍結海峡、戦略原子力潜水艦の重要ルートの維持との立場から手放せないとの意見もあります。  グラチョフ国防相とプリマコフ外相の意識には私には若干のずれがあるように感じられるわけでございますが、このずれについて総理はどのように考察をしてみえるのか、見解がありましたら、お聞かせ願える範囲でお聞かせ願えればというふうに思います。
  51. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 確かに、過去のそれぞれの発言を調べてみますと、グラチョフさん、プリマコフさんの間に見解の相違はあったように、議員が御指摘になるようなことはあったのかもしれません。しかし私は、まず第一に、今年三月に池田外務大臣が訪ロをした際、東京宣言を基礎とした両国関係のさらなる発展ということをエリツィン大統領とプリマコフ外相との間で再確認をしていただきました。そして、それを受けて四月に私が参りましたときにも同様の確認をしてきたわけであります。  そしてまた、臼井防衛庁長官が訪ロされました際、グラチョフ国防相との会談の中で、その結果として東京宣言に言及した会談における議事録が署名をされる。そうした意味では私は、その東京宣言という文書を中心にお互いの意識はそろった、一つの共通の基盤を持っている、今そのように考えております。
  52. 佐藤泰介

    ○佐藤(泰)委員 次に、ロシアの内政が安定するとともに、領土問題が解決し、平和条約締結されるまでは、ロシアは依然シーレーン防衛についてその対象国になるのであろうというふうに思います。我が国周辺海峡において、ロシア海軍に加え、量的に増強を続ける中国海軍も活動しているわけですが、近年これらの軍艦船がどのような動向を示しているのか。特に我が国の領海内での動き及び我が国が特定している国際海峡での動きについてお伺いしたいと思います。  あわせて、九一年七月のSTARTIに引き続き、九三年一月にSTARTⅡに米国、ロシアが調印をしました。STARTIは旧ソ連の構成国であり、核兵器を配備されていたウクライナ、カザフスタン、ベラルーシのうち、最後に残ったウクライナが九四年十二月にNPTに加盟したことで発効しました。STARTⅡについては、本年一月に米国が批准をしましたが、ウシア議会での批准審議は難航しているようであります。  STARTⅡの早期発効を期待するものでありますが、STARTⅡの発効によっても、海上配備の核がなくなるわけではありません。ロシア海軍を初めとした核搭載船は我が国の管理圏内においてどのような動きをしているのか、わかる範囲でお答えいただければありがたいと思います。
  53. 石附弘

    ○石附説明員 お答えいたします。  先生のお尋ねは、ロシア中国の海軍等が我が国海域周辺においてどのような動向を示しているか、それに対する防衛庁の認識ということと存じます。防衛庁といたしましては、従来から自衛隊の任務遂行に必要な調査活動の一環として、領海及びその周辺の海域において、ロシア中国の艦船のみならず、我が国周辺海域を航行する船舶等について、海上自衛隊の艦艇また航空機により常続的に警戒監視活動を実施しているところでございます。  このうち主要海峡、これは宗谷海峡、津軽海峡、及び対馬海峡でございますが、ここにおきましては陸上にある沿岸監視隊や警備所において二十四時間体制で監視活動を行っており、平成七年の一年間で通峡を確認したロシア及び中国海軍艦艇と思料される隻数は、合計で約三百隻と承知をしております。  なお、二つ目の御質問でございますけれども、核搭載艦艇の通峡状況については把握をしておりません。  以上でございます。
  54. 佐藤泰介

    ○佐藤(泰)委員 それでは、その問題に若干かかわるかもしれませんけれども、一九六八年四月十七日、当外務委員会で当時の三木外相は、国際海峡を除く領海では、その通航について事前通告制度を考慮して、「ポラリス潜水艦その他核兵器を常備しておる軍艦の航行は無害通航とは考えない。原則としてこれを許可しない権利を留保したい」と答弁してみえます。  七四年十二月二十五日には、当時の宮澤外相は、参議院内閣委員会で、日米安保条約に基づいて我が国の領海を通航する権利を持つ米国軍艦について、核の持ち込みは一時的であるか配備であるかを問わず事前協議の対象とする旨、答弁されてみえます。  すなわち、米国軍艦であれども核搭載艦の我が国領海の航行は無害通航に当たらないとする政府見解は現在も変わっていないのか、総理見解をお伺いしたいと思います。
  55. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 日本は、今議員から御指摘がありましたように、三木外務大臣がお答えになりまして以来、国籍にかかわらず核搭載艦の我が国領海通航は無害通航とは認めないという立場をとっております。この立場に変更はございませんし、国連海洋法条約のもとにおきましても、「通航は、沿岸国の平和、秩序又は安全を害しない限り、無害とされる。」との規定に従い、これからも同様の立場をとっていく所存であります。
  56. 佐藤泰介

    ○佐藤(泰)委員 ありがとうございました。  次に、海洋法条約では領海を十二海里まで設定できることになっていますが、今回の本条約関連法改正案では、特定海域について従来どおり三海里のままとしています。その理由について、先日の本会議では、第三部に規定される通過通航権については各国の実行の集積が十分でなく不確定な面があるためであると総理は答弁されました。これは言いかえれば、通過通航権とは新しい概念であり、残念ながら各国がいかなる解釈をし、いかなる実行をしているかがわからず、国際法としていかなる効力を持つのか定着していない。したがって、我が国の国際海峡において従来の三海里を広げた場合、従来我が国が定めていた領海三海里についても、より自由な通航である通過通航権を認めよとの国際的な圧力がかかることが予想され、かかるリスクを冒してまで領海を広げる必要がないと判断し、我が国の国是とも言える非核三原則を守るためであると受けとめるものでありますが、総理見解をお伺いしたいと思います。
  57. 谷内正太郎

    ○谷内政府委員 通過通航制度につきましては、ただいま先生御指摘のように、これは今回の条約によりまして新しく導入される制度でございます。当然と言えば当然でございますけれども、この条約を前提といたしまして、いわゆる通過通航制度について国家実行の集積が十分ではないということは事実として指摘せざるを得ないわけでございます。したがいまして、この制度につきましては不確定な面があるということは、総理からも御答弁いただいたところでございます。私どもといたしましては、こういった面もございますので、我が国沿岸の海峡における通過通航制度の適用につきましては、基本的に慎重に対処しなければならない、こういうふうに考えております。  他方、現在の特定海域におきましては、先生御指摘のとおり三海里でございますけれども、直線基線を採用することによって領海部分は広がる部分があるわけでございます。また、そうすることによって、基本的に真ん中の部分につきましては自由な通航が確保されるというふうに考えておるわけでございまして、私どもとしましては、こういう制度をとることが今回の国連海洋法条約の枠組みの中で十分に認められるものである、こういうふうに考えておるわけでございます。
  58. 佐藤泰介

    ○佐藤(泰)委員 それでは、核兵器搭載艦など特定の軍艦について無害性の推定を排除することは、他国からは船種別規制の立場をとるものとみなされるおそれがあり、したがって、我が国立場が国際的な対抗力を持つものとなるためには、沿岸国としての立場から、このような無害性有無の認定が関係条約の規定により許容されていること、核兵器搭載艦の領海内通航が自国にとり特別の有害・危険性を持つものであり、軍艦一般に対する事前許可制の主張とは異なることを十分に立証し、その趣旨を外交経路により国際的に周知させることが必要であると識者は指摘をしております。  このような指摘に応ずるように、政府は従来、事あるごとに国際場裏で我が国は唯一の被爆国であること、我が国には非核三原則があることを主張してきたと理解しておりますが、この理解で正しいのか、また、その他どのような外交努力をしてきたのか、総理並びに外務大臣にお伺いしたいと思います。
  59. 池田行彦

    池田国務大臣 御指摘の点につきましては、この条約の起草経過をずっと見てみますと、ある通航が無害通航に当たるか否かということは、その通航をどういう仕方でやるかというだけではなくて、通航の性質、例えば核を搭載している通航かどうかといったような、そういったことによっても判断すべきものだ、こういうふうに見られるところでございます。  したがいまして、この核搭載船にかかわる我が国立場、すなわち我が国領海通航は無害通航と認めないという立場は今後とも堅持してまいる。これは我が国の非核三原則からして当然のことである、こう考えておりますし、またこれは今回の国際海洋法条約によって変える必要はない、こう考えておる次第でございます。
  60. 佐藤泰介

    ○佐藤(泰)委員 時間が参りましたので、最後の質問です。  本条約二十一条では無害通航に係る沿岸国の法令について規定し、その第四項では、領海において無害通航権を行使する外国船舶は、沿岸国が規定するすべての法令及び国際的な規則を遵守するとしています。さらに本条約三百十条では宣言及び声明について規定し、この条約の署名もしくはこれへの加入の際に、国が、特に当該国の法令をこの条約に調和させることを目的として、用いられている文言及び名称のいかんにかかわらず、宣言または声明を行うことを排除しないとしています。  我が国国会決議は、ここで言うところの法令に当たるのか。当たらないとすれば、我が国の国是とも言える非核三原則をより国際的に認識させるため、また条約適用上も非核三原則の法制化が必要になると私は考えます。そして、本条約加入の際には核兵器搭載艦の通航は無害通航に当たらない旨の宣言または声明を行うことが必要であると考えますが、最後に、総理、この点について総理見解をお伺いしたいと思います。
  61. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 先ほど外務大臣から御答弁を申し上げましたけれども我が国としては、核搭載艦の我が国領海通航について無害通航とは認めないという立場は明瞭に国際社会の中でもいたしております。そして、今後とも非核三原則を堅持するということに変わりはございません。  しかし、私は、今議員がお述べになりましたように、改めてこれについて何らかの宣言あるいはその他の措置をとるという必要はないと思います。なぜなら、歴代の内閣総理大臣の施政方針演説等においてもこれは繰り返し表明されており、国際社会に対しましても、国連総会その他の場をかりて十分私は周知徹底された方向、そのように考えております。そして、政府としては今後ともこれを堅持する方針でありますし、改めて御指摘のような宣言をするということは、むしろかえって誤解を生じはしないだろうか。今日までの姿勢を堅持していく、私はその方がいいように思います。
  62. 佐藤泰介

    ○佐藤(泰)委員 ありがとうございました。  我が国立場が一層対抗力を持つように、今の答弁の趣旨に従ってさらなる御努力をいただくことを期待いたしまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
  63. 関谷勝嗣

  64. 三原朝彦

    三原委員 十二時から本会議ということだそうでありまして、十分前に何とかということですから、余り長い時間質問できないのは残念でありますけれども。  今度の国連の海洋法必要性というのは万人が認めるところでありまして、言わずもがなであります。最初の質問者の小杉先生もおっしゃっておられましたけれども、何といっても海に囲まれた我が国ですから、その海を大切にして、海で生きていこうというその態度は必要でもあります。まして、もう二月の終わりぐらいでこの海洋法の締約国が八十五以上になったということも聞き及んでおります。ちょっと我が国はのんびりし過ぎているのかなという気もしないわけでもありません。もちろんいろいろ理由もあったわけですけれども。  そしてまた、これに関して今隣国であります韓国中国漁業協定の見直しということも行われるわけであります。特に、数カ月前ですか、日比谷公会堂で、あれは五、六千人ぐらい地方から漁民の方が来られまして、何とかしてくれと。旗国主義でやっておると、もう生きていけないじゃないか、我が国が早くこの条約締結して、沿岸国主義でやってくれというようなことの陳情がありまして、私もふるさとに帰りますと、やはり大会なんかでかなり強く突き上げも食らったようなことでもありました。  そしてまた、ハワイの沖合での鉱区を与えられておりますマンガン団塊といいますか、マンガンノジュールあたり、深海底の、堆積しておるもの、鉱物資源に対する利用、開発の問題あたりに対しても、私どもは前向きに取り組んでいかなければならない。  そして、これまた小杉先生が質問されておられましたけれども、今度二十一人の国際海洋法裁判所裁判官我が国も立候補させたい、そのためにも六月いっぱいでこの条約締結していないとならないというようなことを考えますと、私どもはこれは絶対に今国会で通していかなければならないと思っておるわけでもあります。  しかし、その中に、やはり直面する問題がございます。先週から始まった日韓漁業協定の事務レベルの議論もそうでありましょう。しかし、橋本総理は、三月いつでしたか、バンコクで金泳三大統領とそのことに対してお話をされて、漁業問題と領土問題を切り離して考えていこうじゃないかという賢明な発言もなさったわけであります。そういう状況の中で、我が国は実は、どうこう言いながらも、中国韓国が今我が国の漁民を圧迫するような感じで漁業を行っておりますけれども、その反面、実は我が国が先にかなり東シナ海や日本海で魚をたくさんとってやってきたという事実もあるわけでありますし、そういう面はやはり先達として考慮すべきはしなければならないと思う次第でもあります。  しかし、いま一方、竹島の問題にしましても、やはり正しく言うべきところは言う、領土に関してはこれは明確にすべきところはすることもいずれのときにか必要でありましょう。だからといって、今韓国の方で警備兵の人が何十人かあそこに駐在してということらしいのでございますけれども、そういうたぐいのことで武力をもって武力に当たるようなことは、これは毛頭許されないことだ、これから先も総理がリーダーシップを発揮していただいて、話し合いであらゆることを解決していくことも、これまた大切だと思う次第であります。  最初に小杉委員からも決意のほどはということを聞かれましたけれども、難しい問題も含めながらのこの条約締結でありますけれども、一言総理から決意のほどをお聞かせいただきたいと思う次第であります。
  65. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今委員からもお触れになりましたように、四万を海に囲まれております日本海洋国家としての日本は、同時に、周辺国との間にさまざまなかかわりを海を通じて持っております。そうした中におきまして、今回海洋法条約の御審議をお願いすることになりました。  今、航空輸送が非常に発達いたしました結果として、逆に海の重要性というものが必ずしも国民の意識の中から近い位置にあるとは申せません。しかし、我が国資源を海外から運んでまいります、そのほとんどすべては、依然として海運によって行われておるわけでありますし、我が国の国民のたんぱく資源の相当部分は依然として海から供給されております。ただでさえ我々は海洋一般に依存するところの極めて大きな国家であります。そして、この国連海洋法条約は、領海及び接続水域排他的経済水域、大陸棚、公海、深海底海洋環境の保護及び保全海洋の科学的調査、紛争の解決など、海洋問題一般を包括的に規定しておる新しいルールでありまして、国際社会における安定した海洋法的秩序確立というものに資するだけではなく、海洋国家としての我が国海洋一般に依存する度合いの大きい我が国にとりましては、長期的にも総合的にも国益にかなうものだと考えております。  こうした観点から、この条約早期締結を目指し、今通常国会にこれを提案させていただきました。一日も早い御審議、そして成立を心から願っております。
  66. 三原朝彦

    三原委員 今度の海洋法で放射性廃棄物の海洋投棄に関する条項というのがありますが、それとは直接関係ないのですけれども海洋投棄、海を汚す問題で、実は私が数年前に経験したことで、そのことが今の、もちろん国際法にはないでしょう、国内法でも適用されなくて困った問題が起こった。いろいろ聞いてみますと、そういう同じようなことが今でも実は十件ぐらい日本にある。それは、外国の船が難破しておかに上がってきて、そのままもう廃船になってほうってあるという問題。故意か過失かそれはいろいろあるのだと思います。  実は、私のすぐ近所の海で、シンガポールの船籍の船が嵐のときにおかに上がってきまして、どうすることもできない。ですから、アンカーか何か打って、船がそのまま動かないようにとめておくだけ。それで、海を汚してはいけませんからというので、すぐオイルだけ抜いておいた。そのまま出先の大使館を通じて、何とか船主さん、この船どけてください、保険がおりたらのけましょうなんというようなことになっておったわけでありますけれども、全然らちが明きません。  そうこうするうちに、どうも船主が音さたなしになった。しょうがないから、私も地元の要請を受けてシンガポールまで行きまして、船会社まで行きましたら、船会社はもうつぶれていたという。そのかわり、調べてみたら、この船体保険だけはちゃんとロンドンか何かに置いておいて、それをもらっていなくなってしまった。それ以外のいろいろな保険が、PI保険というのですか、そういうのがあるそうですが、それの方は、今度は保険会社に行って、どうなっていますかと聞いたら、あんな怪しい船はうちの保険がおりるわけがないということでありました。車ですと、車検というのが、新車を買いますと三年目にありますよね。あんな感じで船の検査もあるのだそうです、私はそのとき初めて知ったのですが。その船の検査もちゃんと受けてないような船でして、そんなわけのわからない、ちゃんとうちの約款にはこういう検査も何年に一度受けて、ちゃんと機械的にも技術的にもしっかりしているものでないとこの保険は適用されないのだ。  それで、その保険は出ませんということで、最終的にはどうなったかといいますと、結論を急ぎますと、船をどけるのにお金がかかる。地元の町ではそんなお金はありませんから、県に言うと言った。県が今度は自治省と話をしまして、では地方のお金を出しておきなさい、その後交付税交付金をちゃんと乗せてやるような形で何とかしてあげましょうみたいな形になって、とうとう最後はくず鉄屋さんが来まして、それをばらして二束三文のお金で持っていったという。つまり結論としては、よその国のしたことを我が国の国民の税金できれいにしてしまったということなんですね。  途中で、これは海を汚していると思うから、どうですか、これ法律でのけるというわけにいきませんかと言ったら、いや、これは海洋汚染防止法みたいなもので、オイルは抜いたから、特別汚れないからこれは国内法にひっかからない。じゃ、もしこの船がどこか海峡か何かに沈んでいて航行の邪魔になるようだったら、これは国内法にのっとって航行の妨害をするからすぐどけますと言うことができるとこう言われたが、それもできない。農水省に行って、ではここはウニやアワビをとっているところですから、それの邪魔になったのだからのけてくださいうちは船をどけてシーベッドにちゃんとまたウニやアワビをつくれるようにするようなことはできるけれども、船をどけるような、廃棄物をのけるようなそんな法律はありませんからだめです、そういうことだったのですよね。  ですから、それから考えると、このようなケースが今、日本で十件ぐらいまだあるそうですよね。しかし対応するのは海上保安庁か運輸省かと思うのですけれども、そういう問題が十件ぐらいあると聞きましたけれども、どうでしょう。本当にそうなんでしょうか。
  67. 土坂泰敏

    ○土坂政府委員 海難に遭いまして放置された外国船舶は、現在我が国の周辺に八隻ほどあるわけでございます。これは、除去というか撤去のための手続をいろいろとっておるのでございますが、平成元年以降で見ますと十四隻が撤去されておるわけでございますが、八隻まだ残っておる、こういう状況でございます。今、不幸にして海難に遭った場合でも、やはり船を海洋に放置することは、海洋汚染防止法で法令違反になる行為でございます。罰則もございます。ただ、撤去命令までは海防法ではかけられないという状況になっております。  それで、どういうことをするかといいますと、今先生いろいろ御苦労なさったお話をされたわけですが、いわゆる港の区域の中であれば、これは港則法の撤去命令の対象になりますので撤去命令をかける。しかし、港の外になりますともう撤去命令がかけられませんので、これは、船主に対しまして勧告をする、撤去しなさいという勧告をする、あるいは外交ルートを通じて撤去を要請するというような、いわば指導ベースの話になります。  その場合に、一番問題になるのはやはりお金の問題でございまして、PI保険の話が出ましたが、PI保険に入っております場合には、これはそこから保険、お金が出ますので撤去の費用が出るわけですが、PI保険にも入っていない、しかも資金力が非常に欠けているというような船主の場合には、これは要請してもどうにもならないというようなことになりまして、現実に撤去が進まない。そうしますと、そこを管理する、地先水面の自治体がやむを得ず御自身で撤去をされる。それを特別交付税で補てんはしていただくわけですが、最終的には、そういう場合にはまた国民の負担になってしまう、こういうのが今の現状でございます。  私ども、この現状がいいと決して思っているわけではございません。本来、先ほど申し上げましたように違法な行為でございますし、船主の負担で撤去するのが筋であると私ども考えます。したがって、国民に負担のかからないシステムというのを今後検討していかなければいけないというふうに思っているところでございます。
  68. 三原朝彦

    三原委員 私が直接この問題に関与したときと答えは同じなのでありまして、ではどうするか。今の状況ですと、やはり同じように地方自治体が処理しなければならないような状況なのですね。  そしてまた、大体、日本で有名な、例えば日本郵船とか商船三井あたりが座礁しても、それは、置いてきぼりで、保険をとって、会社をつぶしてやるなんということは、絶対それはあり得ませんよね。こういう問題が起こるのはみんな、おかしな船主とか――何か根室かどこかにもあるのでしょう、それももうロシア側が、そんなことはお金がないのでやれません、知らないよということなのですよね。  だから、そういうことがあるからこそ何とかしなければいけないと思って私はここで問題提起をしているので、海洋汚染の問題、それが汚染になるのかどうかは、それはあれですけれども、しかし、廃棄物あたりを海に捨ててはいけません、こういう法律があるわけですよね。そうしたら、船も胴体から真っ二つに折れて岸の方に置いてある、そうすると、やはりそれは理屈から言うと廃棄物になるのでしょうね。それでもまだ所有権を主張するのかどうか、難しい。しかし、使い物にならなくなったものは、それで船主が全然音さたなしたと、それはもう無主物みたいにして処理するような方法になるのだろうと思うのですよね。しかし、そういう件数があって、それが百万、二百万ではなくて億というお金がかかるような状況も船の大きさによってはあるわけですから。何か、今山形にもでかい船がまた上がってきておるらしいですね。それも、船主は何ら対応をできそうもないし、しそうもないという悪質な状況です。  そういうことから考えると、この際、海洋法あたりもちゃんとやろうというのなら、船主の所属する国か何かと一緒になって議論して、船主のいる国か何かがまず代位弁済か何かして、その後に国の中で対応させるとか、そういうアイデアあたりを考えてみたらどうか。僕が考えるよりも、既に専門家の局長さんあたり、とうの昔にお考えになっていらっしゃると私は思うのですが。  我が国はそういう意味では、変な船が、変な船と言うと語弊がありますけれども、麻薬を積んでいそうだ何とかだという船だと、それはすぐ海上保安庁が捕まえるのですけれども、そうではなくて、荷物か何か積んだ船が、難破しそうな船があったようなときには、上手に誘導してみたりとか。私のこのマリシー号の事件のときには、二日間ぐらい、韓国を出て漂流していたみたいな感じなのですね。それで、エンジンをとめて、領海の近くに来たら第七管区が行って、あなた、日本の国に入ってはいけませんよと言ったら、またエンジンを起こして出ていったというのです。とうとう最後ほどんと岸に乗り上げた。どうも故意のような感じもするのですね。それで、乗っていた船員さんは日本円を、札束を百枚も二百枚も持ってみんなおりてきたというのですよね。だから、それから考えると、どうもこれは臭いと。そういう船がどんどん、来なければいいですが、来るようなことになったときには、やはり船主の所属する国か何かがまず代位弁済でもして、それから国内的に、国が船主に、かわりに払ってやったから、あなた、国にお金を払いなさいみたいなことを本当はやるべき状況もあるのではないかな、こう私は思うのですが、その点に関してはどうでしょうか。
  69. 土坂泰敏

    ○土坂政府委員 先ほど十四隻の撤去の話を申し上げましたが、十四隻のうち十隻は、これは船主の負担で、最終的には保険でございますが、費用負担が行われて撤去をされたわけです。ただ、四隻は船主が負担をしない、保険もないというような船でございまして、今お話しになりましたマリシー号は、その四隻のうちの一つでございます。大変いろいろ御迷惑をおかけしたわけでございますが、最終的にそういうものが国民の負担になっておるということについて問題があるという御指摘は、本当に受けとめなければいけないことだと思っております。  これからどうするかということで考えていかなければいかぬわけですが、先生今代位弁済のお話をなさいました。大変貴重な御提案だと思いますが、やはり国がかわって、いわば民間の船会社の責任を直接負うということについて、国際的な合意がすぐできるかどうかというようなことは、もう少し考えなければいけない点もあると思います。今の御指摘ども十分踏まえまして、本当に真剣にこれから勉強させていただきたいと思います。
  70. 三原朝彦

    三原委員 次に、今度はちょっとTACのことについて質問させていただきたいと思います。  かつては世界で一番の漁獲量を誇った我が国でもありましたけれども、今はペルーと中国日本を抜いたそうでありまして、それでも漁獲量世界で第三位ですか、そんな我が国でもありますが、一千万トンをもう切るような感じなのだそうです。  一方では、養殖漁業といいますか、そういうのも行われてきておるわけであります。ハマチあたりの養殖がありますけれども、養殖したハマチと、日本海をどんどん泳いできてブリになっていくようなハマチとは全然味が違いまして、それはグルメの橋本総理あたりはすぐおわかりだと思います。田舎者の僕でも、大体ハマチを食べてみますと、養殖のハマチというのは脂が多くて、玄界灘の近所に育った私なんか、はしをつける気もしません。  そういうことを考えますと、やはり何といっても我々は汚染のないような大海をつくり、そしてなおかつ持続的に漁獲高を上げられるような、そういう努力を大いにしていかなければならないと思う次第であります。  しかし、かつてはかなり我が国も勝手気ままに魚をとりまくって、世界じゅうでひんしゅくも買った場面もありましたけれども、今は、船のサイズを自粛してみたり網の目を自粛してみたりして、大いに努力もしております。韓国の船、中国の船が玄界灘へ来ますと、今そちらの国の方の船が勝手気ままにやる。我が国は、夏の間はカニをとる期間を制限してみたりなんかやっておっても、よその国の方は、勝手に来て、とって、それでそれを今度は日本の港に陸揚げするみたいな、そんな状況になってきた。  昔のことを言われると、それは我が国も反省すべき点もあって、それにのっとって今やっておるわけでありまして、もうベルが鳴りましたからあれしますが、そういう中で、私は、これは与党の三党の政策調整会議の場面のところで言わせてもらったことでもありましたけれども、それならば、この日本海の周りにある、東シナ海の周りにある中国我が国韓国ロシアや、そして、でき得べくんば北朝鮮あたりとも話をして、漁業に対するいろいろな、TACを、本当にこれができるような、育てる漁業みたいなことのセンターみたいなものをつくる、日本がリードしてつくるぐらいのことをしたらどうか。そして、それによってお互いに訓練もしようし、ディシプリンを与えることによって、この近所の海の魚というものの、資源の保護、保持に十二分にお互いの国が理解し合って寄与できることになるのじゃないか、そういう意味で、我が国はまさに最適の国ではないか、こう思っておる次第でもあります。  いずれ、一年のうちに何とか漁業協定改定するようにお願いしますよということを与党から総理大臣にもお願いに行きましたし、それが成った暁には、我が国のリーダーシップでそういうたぐいのことを、技術的に前へ進んでいる我が国がリーダーシップをとるようなことも必要ではないかと私は思うわけでありますけれども、これを最後の質問にさせていただきますが、そういう考えに関しては、政府はいかがでしょう。
  71. 東祥三

    ○東政府委員 簡単にお答えいたします。  韓国との間に先生お話しの水産資源造成センターという話が持ち上がっておった経緯がございます。これらにつきましては、新しい海洋法秩序のもとでの資源管理体制が確立したという段階で将来的な課題として検討していこうということに一応両国でなっておるという実情でございます。  大変示唆に富んだ点だと思います。これからの課題だというふうに考えております。
  72. 三原朝彦

    三原委員 終わります。
  73. 関谷勝嗣

    関谷委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時五十三分休憩      ――――◇―――――     午後一時開議
  74. 関谷勝嗣

    関谷委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。赤羽一嘉君。
  75. 赤羽一嘉

    ○赤羽委員 新進党の赤羽一嘉でございます。  まず、今回、海の憲法と言われる国連海洋法条約締結されるような状況になったことは極めて喜ばしいことだと私は思います。  しかし、この条約は極めて多岐の分野にかかわるものでございまして、詳細な検討をするには相当な時間がかかると思われます。そういう意味で、関連委員会が一堂に会しまして特別委員会という形で包括的な審議をすることが望ましいと私たち新進党は考えまして特別委員会の設置を要求させていただきましたが、まことに残念ながら私たちの要請は受け入れられなかった、その経緯をまず総理に御報告しておきたいと存じます。  さて、この条約の中身を、まず国益という観点、視点から大まかに整理させていただきますと、一つ目には領土問題、二つ目には漁業権の問題、三つ目には海底資源開発の問題、四つ目には海洋秩序管理、取り締まりの問題、そして五つ目には水質、資源を含む環境問題等々が挙げられると思います。  ここで、例えば領土問題、漁業権の問題はどちらかといえば内向きのベクトルといいますか内向きの問題でございまして、また三つ目の海底資源開発の問題に関して言えば、他国との協力を志向しながらという意味では外向きのベクトルを有している問題だと思っております。  ですから、同じ条約でも、内向きの問題もありながら外向きの問題もあるんだという、極めて複雑な条約であるということを踏まえながら、以下、質問をさせていただきたいと存じます。  まず、海洋は、海というのは最も国家間の利害が衝突する分野であると思います。広い公海からはかり知れない恩恵を受けてきました漁業大国の我が国は、国益を守るために国連海洋法条約の採択、そして加入に終わるのではなくて、二百海里排他的経済水域設定に伴う公海の縮小とか、この条約を背景としたさまざまな公海漁業規制措置などによって我が国漁業が大きな打撃を受けることは極力回避することが必要であるというふうに考えております。  この条約を背景といたしまして公海漁業の規制が強まり、漁業は自国の排他的経済水域内に限定される方向へと進んでしまう危惧も考えられるわけでございますが、国連海洋法条約の精神、この点はどのようなものであるか、公海の自由という原則は維持されるのかという点でどう考えていらっしゃるのか、まず総理の御見解を伺いたいと思います。
  76. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 議員の御指摘でありますけれども、私は、この国連海洋法条約は、公海の自由というものについて従来の公海条約の規定を基本的に踏襲していると考えております。そして、力のある大きな国が、小さな国の海域において、その権利を無視し、力ずくの行動をとることを阻止するという意味でも、私は、この条約というものは将来にわたってむしろよりよい方向に活用されるべきものだ、そう思います。  この国連海洋法条約の規定は、確かに従来公海であります部分について排他的経済水域設定し得るといったことはございます。これは委員の御指摘のとおりです。しかし、航行の自由を初めとして、この条約において公海について規定されるその主要な部分というものは、排他的経済水域についても適用されることになっております。  いずれにしても一公海の自由というものは、海というものに周囲を囲まれ、極めて大きな部分を海洋に依存している我が国にとって極めて重要なルールでありますし、私どもは、公海の自由という、その基本の考え方というものは今後ともに維持していくことが必要だと考えており、この条約は、小さな国に対し大きな国が圧迫的に行動をしない、その保証を与えるといった意義をむしろ見出していきたい、そのように思います。
  77. 赤羽一嘉

    ○赤羽委員 それでは、まずちょっと具体的な問題に入っていきたいと思います。  我が国排他的経済水域内での漁業管理を行うに当たりましてまず必要なことは、隣国である韓国中国との間でいかに排他的経済水域線引きをするかということであると思います。特に韓国との間で、我が国固有の領土である竹島韓国によって不法占拠されている状態で、その状況下の中でどのように線引きをするのかは大変困難な問題であるというふうに私は思っております。  この三月のバンコク・ASEMでの日韓首脳会談で、領土問題と切り離して漁業問題を話し合うとのことになったと聞いておりますが、具体的に排他的経済水域線引きはどのようなアイデアを持って今後の日韓交渉に臨んでいくのかどうか。  これは、午前中の質問では、相手があることなので何とも言えないという御答弁もありましたが、相手があっても、我が国の基本的な方針というのはあるはずでございまして、相手がどう出てきたからといってこちらの方針が右往左往するようなことでは、いつまでたっても日本の外交は顔の見える外交にはならないというふうに私は思うわけでございます。  当然交渉事ですから、我が国の基本方針が貫かれるかどうかは別にいたしまして、基本的な考え方は、どう臨んでいくのかということをお聞かせいただきたいと思います。
  78. 池田行彦

    池田国務大臣 ただいま委員からも御指摘もございましたように、この問題につきましては、三月の初めにバンコクで行われました日韓首脳会談におきまして、竹島をめぐる問題とは切り離してと申しましょうか、相互の立場、それぞれの立場影響を及ぼさない形で話し合いを進める、こういうことで合意を見たところでございます。  それを踏まえまして、去る九日と十日にまず事前の実務者間の話し合いが持たれました。そこではまだ具体的な内容にまで立ち至るには至りませんでしたけれども、今回の国連海洋法条約、これを踏まえて新しい秩序を構築していく必要がある、そういったことで、これから交渉を進めようということで認識の一致を見たところでございます。  さて、それならば我が国として一体どういうふうな基本的な立場で臨むのか、その方針はないことはないだろう、こういうお話でございます。  もとより、我が国としてどのように考えなくちゃいけないかということはきちんと維持して、持っていかなくちゃいけないのは当然でございますけれども交渉事でございますので、相手があるというだけではなくて、やはりいろいろ相談をし、合意を形成してまいります上におきましては、まだ今交渉がようやく緒につきかかった段階でございますから、現段階において具体的な我が方としての対応ぶり政府として申し上げることは差し控えさせていただきたい、こう考える次第でございます。
  79. 赤羽一嘉

    ○赤羽委員 ちょっとよくわからないので、具体的に個別に聞きます。  中間線の引き方ですね。よく言われているように、竹島が存在しないこととして、要するに韓国側のウルルン島と日本の隠岐の中間に境界線を引くやり方、これは竹島韓国排他的経済水域に入ってしまう、飛び地のような形になるわけでございますが、この考え方というのは基本的にスタンスの中に入っているのですか、入っていないのですか。
  80. 池田行彦

    池田国務大臣 今御指摘の話は、いわゆる岩理論という考え方かと思います。要するに、排他的経済水域を持ち得るような島であるかどうか、そういうものではない、岩だ、そういった理論があることは事実でございますけれども、それならば果たしてどの程度の規模のものが島と言え、そうでないのかということについて、これまで国際的に定まったものがあるわけではございません。  そんなこともございまして、どういうふうにそういった考え方をとらえるべきか、まだ慎重に考えなくてはいけない、こういうふうに考えている次第でございます。
  81. 赤羽一嘉

    ○赤羽委員 この岩論というのは、島の存在を無視するというのは今までないと御答弁ありました。私の認識では、地中海なんかでも現実的にそういうふうな取り扱いをされている例もあるというふうに思っております。  ただ、ここで私が聞きたいのは、例えばそういう線を引いたときに、韓国側経済水域の中に我が国の領土が入るような、入ってしまうような、このような決着の仕方というのは日本側として到底考慮の余地に入らないものなのか、それも一つの選択肢として交渉に臨むのか、これを明らかにしていただきたいと思います。
  82. 池田行彦

    池田国務大臣 この岩理論あるいは島というのにつきましていろいろな考え方があり一そういったものを現実に適用しておる例が、まれではございますけれども、ないことはないというのは委員おっしゃるとおりでございます。しかしながら、そういったものが、国際法上といいましょうか、国際法的だけではなくて国際的にも一般的に認められているというまでには至っていないということを先ほど申し上げたつもりでございます。  さて、それからそういったことをどうするかと。さらに委員の御質問は、具体的にそういったものを適用した場合に、我が国の領土がこの線のどちら側に入るじゃないか、こういうことを前提としての御質問でございます。  そういった御質問でございますが、先ほど申しましたように、これからまだ具体的な交渉に入っていく、そういう段階でございますので、それを排除するのか、あるいはそれも排除せずに一つの選択肢と考えるかという点につきましては、恐縮ではございますけれども、何分交渉事でございます。ちょっと政府として、今の段階で態度を明らかにすることは差し控えさせていただきたい、こう考える次第でございます。
  83. 赤羽一嘉

    ○赤羽委員 これはちょっと総理に伺わなければいけないかもしれませんが、三月の日韓首脳会談でどのような合意を見たのかということにもかかわってくるのではないかと思うのですが、領土問題と漁業問題の交渉は切り離せない、線の引き方と領有権は関係ないという話なのかどうなのか。私はちょっとよくわからないのですが、原則論として、飛び地みたいになるような今の私の言うた線引きは、日本として、それは基本的には受け付けないとするのかどうか。そこまで決めていないで、相手交渉次第でぶれるということが僕はちょっと理解できないのですが、どうでしょうか。
  84. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 正確を期しますため、バンコクで行いました日韓首脳会談の関連する部分、その議事録をそのままに読み上げさせていただき御判断をいただきたいと存じます。   御承知のように、竹島問題についての日本政府立場は一貫している。日韓両国が新たな海洋秩序を構築する国連海洋法条約の締約国となることによって、両国関係が悪化するようなことがあってはならない。したがって、日韓両国国連海洋法条約批准に伴ってとる措置が、竹島に関するそれぞれの立場影響を及ぼすものではないことを前提条件としたい。これにより、国連海洋法条約批准の問題が日韓関係に否定的影響を及ぼすことを回避したい。その上で、両国間で排他的経済水域境界画定につき協議を行うこととしたい。 これがその部分についての私の発言であります。  そして、大統領の方からございましたのは、日本側が、日本の独島領有権を主張しているのは我が国としては容認できないし、非常に遺憾に思う。韓日両国関係の発展のためには、領土の尊重が原則的かつ重要な問題であるから、これに対して明確な認識が必要であると思う。   総理が言われたEEZの設定問題はこれが領土問題とは関係ないという前提の下で、両国外交当局間で協議していくのがよいと思う。 これが大統領の私の発言に対する回答であります。  これを受けて、   大統領の言われた通り、排他的経済水域の境界策定作業については、早急に協議を始めたい。   日韓漁業協定交渉については、まずは水産当局者間において協議を行うべく調整中であるが、本件は早急に結論を得ることにつき国内より強い圧力がある。可能な限り双方が満足できる結論を早急に得るためには、精力的に交渉を進めていく必要があるので、韓国側の協力をお願いしたい。大統領から、   そういう方向で対処していきましょう。 これが、その関係のやりとりそのままであります。
  85. 赤羽一嘉

    ○赤羽委員 ということは、条約締結する際に、排他的経済水域を引かない部分が出てくるというような余地が残るのですか。どうなんでしょう。
  86. 林暘

    ○林(暘)政府委員 これまでも何回も御答弁申し上げておりますように、国連の海洋法条約我が国として締結をいたし、排他的経済水域設定する場合に、一部の区域を除外するということは考えておりません。
  87. 赤羽一嘉

    ○赤羽委員 ということは、全面的に設定するということですね。ということでいいですね。
  88. 林暘

    ○林(暘)政府委員 既に国会の方にも御提出しております排他的経済水域、大陸棚に関する基本法案にも書かれておりますように、基本的には二百海里、相対国がある場合には中間線ないしは国際的な合意に基づく線によって区域を設定するということでございまして、一部の区域を除外することなく、全面的に設定するという考えでございます。
  89. 赤羽一嘉

    ○赤羽委員 そういうことでいえば、ここの部分の中間線というのは竹島とウルルン島との間に引かれるという解釈でよろしいのでしょうね。
  90. 林暘

    ○林(暘)政府委員 今御答弁申し上げたとおりで、もちろん他国と国際的な約束事をすることによって中間線と違う線を引くということはございますけれども、我々の考え方としては、二百海里まで引けるところは二百海里、相対国があって、二百海里を引くと中間線を超える部分については中間線、それにかわる線を国際的に合意する場合にはその線という形で設定する考えでございます。
  91. 赤羽一嘉

    ○赤羽委員 ですから、具体的にこの場合でいえば、我々は、我々固有の国土の竹島韓国の固有のウルルン島の間の中間をとって中間線を引くという原則でこれからの交渉に臨まれるという理解でよろしいでしょうか、外務大臣
  92. 池田行彦

    池田国務大臣 先ほど条約局長が御答弁いたしましたように、基本的には中間線でございますけれども、いろいろ相談の結果、関係国間で相談、話し合いの結果別途の取り決めができれば、それはそういった線を引くことも可能である、こういうことでございます。  いずれにいたしましても、我が国韓国との間では、先ほど総理から御答弁されましたように、竹島にかかわるそれぞれの立場影響を及ぼさない形で妥当な解決を見出そう、これからその相談を進めていくところでございます。
  93. 赤羽一嘉

    ○赤羽委員 だから、ちょっとよくわからないのですが、結局は交渉の結果、原則論でおさまるのか、もしくはこの条約に書かれてあるのとは別に、日韓話し合いの中で違う引き方もされる可能性もあるという意味の御答弁でしょうか。
  94. 池田行彦

    池田国務大臣 これからの交渉次第だ、こういうふうに御理解賜りたいと思います。
  95. 赤羽一嘉

    ○赤羽委員 それでは、ちょっと話を変えますが、かつて我が国が現行の二百海里漁業水域設定時に、日本海側の一部と東シナ海に面した部分は線引きをしていないわけでございます。日本海には当然我が国固有の領土である竹島が今韓国によって実質上不法占拠されているという状況で、線引きをしなかったことは理解できますけれども、東シナ海に面する部分はなぜ線引きをされなかったのでしょうか。
  96. 東祥三

    ○東政府委員 漁業水域に関することでございますので、私の方から答弁させていただきますが、一九七七年に今の漁業水域設定したときに中国韓国が二百海里を引かなかったということが一つと、もう一つは、日中漁業協定日韓漁業協定が存在したということで、それで東経百三十五度以西の日本海並びに東海、黄海について線を引かなかったということでございます。
  97. 赤羽一嘉

    ○赤羽委員 ここは対中国との尖閣諸島の話をさせてもらいたいのですが、午前中総理の御答弁でも外務大臣の御答弁でもありました、政府は一貫して中国との間に領土問題はないという御主張でございます。尖閣諸島は我が国固有の領土であることは当然明らかでありますが、領土問題はないという発言をされ、それで問題を区切るということは極めて国民には理解しにくいのではないかというような思いがいたします。ですから、例えば我が国固有の領土である尖閣諸島に対して中国がその領有権を主張しているという問題があるというような態度というか見解に改められ、そういう問題の解決に積極的に努力を払うべきであると私は思うのですが、外務大臣、御見解はいかがでしょうか。
  98. 池田行彦

    池田国務大臣 政府といたしましては、従来から中国との間に領土問題はない、こういう姿勢をとっておりますけれども、しかしながら中国が尖閣列島について独自の主張を行っていることは承知しております。したがいまして、今委員政府見解を改めるべしとおっしゃいましたけれども、これは改めるという問題ではございませんで、我が国としては尖閣列島は固有の領土であるということで、したがって領土問題はないという主張でございますが、一方において中国が独自の主張を行っていることは承知しているところでございます。
  99. 赤羽一嘉

    ○赤羽委員 ということは、漁業水域暫定措置法に基づいて外国船への漁業規制がされているわけですが、中国に対して免除されているのは、そういった問題があるということから免除をされていると理解してよろしいのですか。
  100. 東祥三

    ○東政府委員 一九七七年に漁業水域設定したときに、日中漁業協定がございまして、中国に対しましては日中漁業協定沿岸十二海里までをその国、その十二海里の沿岸国の方が取り締まりをやるということになっていました。そういうことで、中国については日中漁業協定があるから、そういうことで適用を外したというふうになっております。
  101. 赤羽一嘉

    ○赤羽委員 三月のバンコクでですか、総理が李鵬首相との日中首脳会談をやられたと思いますが、この会談につきまして、先はどのように正確ではなくて結構ですが、この件についてどんな合意をされたのか、何かあれば。
  102. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 日中首脳会談の際に、この尖閣諸島の領有といった問題は全く議論になっておりません。
  103. 赤羽一嘉

    ○赤羽委員 そうすると、漁業協定を新しく話し合っていこうとかというような話というのは出なかったのでしょうか。
  104. 加藤良三

    加藤(良)政府委員 その場で出ましたのは非常な一般論でございまして、橋本総理から、海洋法条約に日中双方が参加することとなった状況にかんがみ、新たな漁業秩序の問題も含めて両国間で冷静かつ友好的に意見交換を行ってまいりたい、こういうふうに述べられました。それから李鵬総理の方から、日中双方とも海洋法条約批准及び必要な法令、制度の整備という問題がある、日中間には東海に未解決の問題があるが、海洋法条約の原則を踏まえ、友好的話し合いによる解決を求めていきたい、こういうことがあっただけでございまして、尖閣云々という言葉は全く出ておりません。
  105. 赤羽一嘉

    ○赤羽委員 済みません、ちょっと今一部聞き取れなかったのですが、日中間に未解決な問題があるがということですか。
  106. 加藤良三

    加藤(良)政府委員 もう一度申し上げさせていただきます。  日中間には東海に未解決の問題があるが、海洋法条約の原則を踏まえ、友好的話し合いによる解決を求めていきたい、こういうことを李鵬総理が申し述べたわけでございます。
  107. 赤羽一嘉

    ○赤羽委員 その東海に未解決な問題があるがという部分に対する総理の御答弁はあったのでしょうか。
  108. 加藤良三

    加藤(良)政府委員 非常に一般的なやりとりでございまして、それについて総理からさらにお答えをされて議論が続いたというようなことはございません。
  109. 赤羽一嘉

    ○赤羽委員 それでは、中国との間に大陸棚の画定問題というのがあるというふうに認識しておりますが、日本は中間論の線引きを主張している。中国は大陸棚の自然延長論ですか、三百五十海里を主張している。これについて、いかに決着をつけるつもりなのか、お聞かせいただきたいと思います。
  110. 加藤良三

    加藤(良)政府委員 日中間の海洋法条約に伴う諸問題をめぐる協議というのは、四月九日以来緒についたばかりでございます。今後、御指摘の点も含めて両国間で協議が続けられることになると考えます。
  111. 赤羽一嘉

    ○赤羽委員 いや、木で鼻をくくったような答弁じゃなくて、これも先ほどの韓国との話と似ているかもしれませんが、双方それなりの根拠で主張しているだろうと思うのですが、これについての日本の臨む方針、あくまで中間線でやるんだということで臨まれるのかどうか、外務大臣の御答弁をお伺いしたいと思います。
  112. 加藤良三

    加藤(良)政府委員 一般論になるわけでございますけれども、東海の大陸棚、日中間の大陸棚でございますね、その境界画定につきましては、中間線原則を基本としながら両国間が話し合ってこれを決めていくことになる、こういう経過をたどることになると思います。
  113. 赤羽一嘉

    ○赤羽委員 対中国では、中間線論ですかで決着をつけるべく最大限努力していただけるという御答弁をいただけたというふうに理解いたします。  それでは、日本海における漁業につきまして、例えば北朝鮮や台湾の操業というのを無視しては、せっかくの漁業管理措置の実効性が期待できないというふうに私は思っております。  まず、台湾の漁船我が国漁業水域内への侵入状況についてというのは把握されているのかどうか、実態をお知らせいただきたいと思います。
  114. 東祥三

    ○東政府委員 先ほど御質問がございました漁業水域に関する暫定措置法におきましては、先ほどの韓国中国は例外扱いがございますけれども、その他の国は例外がないわけでございます。したがいまして、台湾船が日本の二百海里内で操業するということであれば許可が必要でございまして、しかもそれは、いわゆる協定に基づいた許可が必要でございます。現在でもそういう状況でございまして、台湾船は日本の近海で操業しているものはほとんどございません。たまに発見したときには、退去を求めております。
  115. 赤羽一嘉

    ○赤羽委員 今の御答弁なのですが、台湾は独自の国家ではないはずですよね。これはどういうことなのでしょうか。韓国中国は例外措置を受けている、台湾は例外措置を受けていない。これは中国と台湾というのは別の国であるという認識でやられているのか。また、日中漁業協定の管理のもとには置かれないのか、その台湾籍の漁船というのは。これはちょっと大きな問題だと思うのですが。
  116. 東祥三

    ○東政府委員 日中漁業協定による入域につきましては、主権的な問題はそういうことでございまして、台湾の船が果たして中国の管轄の中でやっているものかどうかというのが最大のポイントでございまして、私ども拿捕ということはいたしません。したがいまして、退去を求めるという形で、要するに二百海里内でございますということで、大体今までそんなに大きなというか、たくさん入っているというような状態はございませんで、御承知のとおり、一部、サンゴをとりに来た船が小笠原諸島に入っているというようなことはございましたけれども、そういう形で、退去という形で今処理をしておるということでございます。
  117. 赤羽一嘉

    ○赤羽委員 実態はそう多くはないということですが、基本的な認識として、台湾の漁船というのは日中漁業協定の管理の下に入らないという御認識でよろしいのでしょうか。
  118. 加藤良三

    加藤(良)政府委員 その前に前提を申し上げたいと思いますけれども、一般国際法上、未承認国家との間で二国間の国際約束を締結するということは、これは一般に国家承認に当たりますので、そういう国際約束を締結することはできないわけでございます。我が国は台湾を国家として承認しておりません。したがって、今申し上げました議論は、台湾についても妥当するわけでございます。したがって、二国間の国際約束というものを締結することは、台湾との間ではできないわけでございます。  しかしながら、現実の具体的なアレンジメントが全くできないかというと、そういうことではございませんで、国内の漁業関係者の要望とか台湾側の主張、こういったことによっては、台湾との間で何らかの調整を行う必要が生じ、またそういうような調整を行うことも可能だと思われます。その場合でありましても、日台関係は非政府関係であることを十分踏まえながらの調整を行う、こういうことになるわけでございます。
  119. 赤羽一嘉

    ○赤羽委員 最初の話に戻りますが、日本海における漁業、新たな管理措置を決めるに当たって、日本中国日本韓国ということで決めるだけでは、繰り返しになりますが、実効性に乏しいと思います。ですから、私は、二国間交渉だけではなくて、すべてかかわりのある当事者がテーブルに着いて、協議の場が、そういったテーブルの場が実現すれば、いろいろな問題解決に向かうと思いますが、政府としてこのような協議体を設置する方向で努力される、取り組んでいかれる意向はあるのかないのか、見解を伺いたいと思います。
  120. 加藤良三

    加藤(良)政府委員 ただいま御示唆をいただいたわけでございますけれども、一般に漁業問題につきましては、おのおのの相手側との間でいろいろな経緯、いろいろな事情というものが具体的に異なっていて、多数の当事者が同時に多数者間の場で一括して問題を協議し、解決するということになじまない状況があるということがかなり多いというふうに私ども考えております。
  121. 赤羽一嘉

    ○赤羽委員 しかし、日本海で操業しているのは、日本韓国中国という三国ではないのは事実であるわけですし、新しい措置を実効あらしめるために、そのような協議の場を新たにつくるようにした方がよいのではないかということを私は提案させていただきたいと思います。  近い将来、今そういう方向で目指しているわけですが、日韓、日中間で新しい漁業協定締結される、その段になりますと、我が国が管理すべき排他的経済水域において、いかに秩序ある漁業活動を維持し、我が国漁業の発展に結びつけていくかが問題であるというふうに思っております。  現在、漁業水域暫定措置法に基づいて、先ほど言いました外国船、二百海里漁業水域内においては、農水大臣の許可なく漁獲を行うことができないとされておりますが、韓国中国はその適用を除外されておるわけでございます。そこで質問ですが、新漁業協定締結された折には、我が国排他的経済水域内において、韓国中国は、その他の外国と同じ扱いにするのかどうか、新漁業協定締結交渉に臨む政府方針を伺いたいと思います。
  122. 大原一三

    ○大原国務大臣 委員御存じのとおりに、排他的経済水域線引きができますと、当然その内側において我が国漁業主権が確立されるわけでございます。したがって、我々としては、そこにおける資源の動向、さらに我が国漁業者の漁獲の現在までの実態等を基礎としながら、外国人による現在までの漁業の状況やその周辺水域における漁業の実態等を総合的に考慮して、漁業主権の確立を図っていかなければならぬと思っております。  その際、委員指摘のいわゆるTAC制度、漁業可能量、いわば総量規制を行うことに相なるわけでございます。委員が今おっしゃいましたように、ここへいくまでには、日韓、日中の現在の漁業協定改定作業が大前提に相なるわけでございます。したがって、我々としては、そういった漁業主権の確立を当然前提にして交渉を行っていくつもりでございます。  なお、漁業協議の結果、我が国権利の行使が可能になりましたら、韓国中国漁船は、我が国の許可を受けなければ、排他的経済水域において操業することが当然できないことに相なるわけでございます。したがって、漁業実績の実態を正確につかむ作業、これをぜひとも適切に行ってまいりたい、かように考えております。
  123. 赤羽一嘉

    ○赤羽委員 そこで重ねてお聞きしたいのですが、我が国の水産業の実態というのは、遠洋漁業や沖合漁業からだんだん沿岸漁業に重点を移してきているというのが実情だと思いますが、我が国排他的経済水域内において、今後韓国中国漁船実績をそのまま認められていくということは、我が国漁業者の理解を到底得られないというふうに思うわけです。  現状は、例えば韓国の無秩序操業資源悪化の一因になっているとも言われておりますし、この韓国中国への漁獲配分の決定に当たってのお考えを聞きたいと思うのですが、まず現状の、韓国中国乱獲状態というのがあれば、それはまず違法として認識しているのかどうか、また今後の実績としてカウントする際に、その部分はどうなるのかということをお聞かせいただけますか。
  124. 東祥三

    ○東政府委員 韓国船、または中国船の操業の状況でございますけれども、やはり一定の資源お互いにとり合っている。日本側も相当漁獲能力量を高めております。それは、網も立派になりましたし、船も大型でございます。そういう中で、やはり資源全体を一元的に管理していくという方向の中で考えていかなければならない。  もう一つ考えなければいけないことは、韓国側日本近海でとっていると言われている数量、これは、言われていると申し上げましたのは、二百海里をきちっと引いておりませんから正確にはつかまえにくいのでございますが、向こうが言っておる数量とこちらが言っている数量、そう差がないのでございます。私の方が韓国側水域でとっている数量とそう大きな差がありません。それからまた、中国との間でも、非常に豊富な漁業資源を別にいたしまして、そういう関係でございます。したがいまして、この資源をどういうふうにお互い沿岸国として管理していくかということが重要だと思います。  それから、違法操業云々ということでございますけれども、違法操業がなかなかこちらで取り締まれないといういら立たしさが我が方にあるわけでございます。違法操業でとったものが幾らかというのは、これはもっと難しい問題でございまして、できるだけ違法操業、これは最近は大変減っておりますけれども、そういう問題をこちら側の権限の中で取り締まれるような方向へ持っていくということが、今回の海洋法条約に基づく資源管理の方向でございます。
  125. 赤羽一嘉

    ○赤羽委員 ですから、排他的経済水域内における中国韓国実績を算定する際に、今おっしゃられた漁獲量の中に違法操業の部分がどのくらいあるかわからないという状況の中で、新しく割り当てを決める際に、韓国中国のその割り当てを決める際の算出根拠というのはどうしようとされるのでしょうか。
  126. 東祥三

    ○東政府委員 お互い操業状況を意見交換をし、その上で将来の漁業協定の中でどの程度のものをとっていくかということをお互いに話し合わなければならぬということでございます。  基本的な考え方は、外国人の漁業をやっている現況というようなものを踏まえ、さらに我が国相手方に入って漁業をやっている現況を踏まえて、そういうものを総合的に考慮してやるということを今のところは申し上げる以外にちょっと手がないわけでございますが、そういう形の中で、話し合いという中で決まっていくものだと考えております。
  127. 赤羽一嘉

    ○赤羽委員 ですから、これからの交渉の中で、我が国の水産業者というか漁業に携わっている方たちが、不当に厳しい状況、苦しめられるような状況にいかないようなことに配慮をして交渉に臨んでいただきたいということを要望しておきます。  ちょっと時間があれですので、最後に、今回の条約というのは、沿岸国の裁量が非常に大きくなるような可能性を残しているのじゃないかと私は思うわけです。本来、水産学上客観的であるべき最大維持生産量が、沿岸国の、例えば経済政策によって左右されることを許すことになっておって、悪く言うと、故意に漁獲可能量を算出しても他国がこれに対抗するようなすべがないのが実態でございます。  漁獲可能量の余剰分の外国への割り当ての決定権限も、今御説明があったように、沿岸国にゆだねられておるわけでございまして、他の漁業国の従前の操業実績が優先的に考慮される保証はとりたててされていない。その権限の行使のあり方次第では外国漁業をその排他的経済水域から締め出すこともできるし、相手国との一般的な外交関係に絡めて処理される場合も考えられると思うわけでございます。  午前中別の方も同様の質問をされておりましたし、カレイ戦争のお話もありましたが、例えばアメリカは、国内法によって余剰分の割り当てについて、相手国による米国水産物に対する輸入制限とか関税障壁、その買い付けへの協力、国内消費と再輸出量の比率などの基準を重視することとして、この問題を絡めて考えているというふうに聞いております。  このような状況下で、他国の排他的経済水域我が国が締め出されるなどの危惧に対して政府はどう考えていらっしゃるのか、見解を聞かせていただきたいと思います。
  128. 東祥三

    ○東政府委員 先ほどちょっと申し上げましたが、我が国漁船相手沿岸へ行って操業していることが相当ございます。我々としては、それもきちっとした形で、相手方へ入りこちらへも入った船はこちらの管理のもとに置くという方向で解決を図っていかなければならないと思っております。ある意味では、相互主義とこのことは言われておるわけでございます。  さらにもう一つ、先ほど委員、非常に恣意的に行われることになるのではないかということでございますが、これは海洋法条約の中でも、科学的根拠に基づいて管理ということはうたわれております。またこれは、そういうところでなかなか難しいのかもしれませんが、国連海洋法条約の裁判所という手続もございます。余りにも恣意的な状況になるということは、そのチェックはできると思いますが、先ほど申し上げましたとおり、我が国沿岸へ入ってきている外国の漁船我が国が向こうへ行っている漁船漁獲量とにそう大きな差異がないというもとで、解決の方策はあり得ると考えております。
  129. 赤羽一嘉

    ○赤羽委員 相互間でというお話もありましたが、あえて言うなら、科学的な根拠云々で漁獲可能量を算定するというのはかなり高度なことだと私ほ思うのですね。日本でもかなり大変な作業じゃないか。これが世界じゅう、今度の加盟国すべてができる能力があるのかどうかということは非常に疑わしいと僕は思っておりますので、そういったことも踏まえ、このような、先ほどお話ししましたような問題も未然に防ぎ、排他的経済水域での沿岸国による漁業規制をそれこそ科学的見地から監視するような別の機関の創設というのが必要じゃないかと私は思うのですが、その提案について政府見解をぜひ聞かせていただきたいと思います。
  130. 東祥三

    ○東政府委員 先ほど申し上げましたとおり、海洋法条約上は国連海洋法条約裁判所というところに最後のところで判断を仰ぐことができます。しかし、この科学的根拠については、いろいろ議論があることはございますけれども、その点につきましては、やはり相手国との間で真剣な議論をすれば、我々、例えば公海でのマグロの資源量の検討等の経験もあるように、科学者間の会合というようなこともやりながらやっていく部分はあると思います。世界的にそういう形でやっていくということにつきましては、一部、例えばヨーロッパのECの中では一部やられている点もございますけれども資源管理を国連海洋法条約そのものが沿岸国の主権という形でやっている中で、それをお互いにそういう機関を設けてということはなかなか難しい現状にあると思います。
  131. 赤羽一嘉

    ○赤羽委員 時間が参りましたが、その沿岸国の主権という状況の中で、漁業大国日本の自国の利益、国益が損なわれないような大方針で今後の交渉にぜひ望んでいただきたいと思いますので、その点だけ、最後に、できれば総理に御決意を伺いたいと思います。
  132. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 御意思を体して、全力を尽くしてまいりたいと思います。
  133. 赤羽一嘉

    ○赤羽委員 ありがとうございます。
  134. 関谷勝嗣

  135. 初村謙一郎

    ○初村委員 新進党の初村謙一郎でございます。  私は、きょうは外務委員会の拡大委員会ということで出席をさせていただきました。当初、連合審査会というふうなお話もあったようでありますけれども総理外務大臣、運輸大臣おられますので、関係大臣に質問させていただきたいというふうに思います。  この海洋法条約批准に当たりましては、恐らくその背景というのは、国際社会における安定した海洋法的秩序確立、それからそのことが大きく貢献する期待があるわけでありますけれども、現場に行きますと、要は、先ほども答弁があったようでありますけれども、その取り締まりの方法を旗国主義から沿岸国主義にやっていく、水域をちゃんと決めて日本が、今よく侵犯が挙がっておりますけれども中国漁船あるいは韓国漁船の取り締まりをちゃんとやっていただくということが現場の漁民の皆さんの期待であろうというふうに思っております。そのためにも、先般全漁連の主催によりまして全国の漁民大会がありました。全面設定、全面適用を何としても実現しようというふうな大会であったわけであります。  私の地元の長崎県を見ましても、私自身も県議会におりましたときに長崎県の巡視船に乗ったことがございました。もう本当に長崎の五島列島と平戸沖、まさに長崎県の海域韓国漁船操業をやっている。韓国語で出ていきなさいと言っても平気な顔をしているという実態を見てまいりました。そういう中において、特に近年になりますと、中国漁船が沖合に出てまいりまして、漁業を邪魔するといいますか、とにかく資源が枯渇するぐらいに乱獲をやる、自主規制を無視をする、漁具を破壊するというふうな実態であります。  漁業問題につきましては、私も、また農水委員会もあした午後から開かれるようでありますのでそこで質問させていただきますが、三月の二日、アジア欧州首脳会議で、韓国の大統領との会談で漁業協議について総理お話しになったというふうな報道がございました。その内容につきましてちょっとお聞かせをいただきたいなというふうに思っております。
  136. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 三月二日、ASEMの会合に参りました機会に、バンコクで金泳三大統領との間に会談を持ちましたことはそのとおりであります。先刻の赤羽委員の御質問に対しそのときの速記をそのとおり読み上げましたので、重複を避けまして簡潔に申し上げますなら、私からは、竹島問題について日本政府立場というものは一貫したものであるということを明確に述べた上で、国連海洋法条約批准に伴ってとる措置というものは、竹島問題に関する日韓それぞれの立場影響を及ぼすものではないということを前提にしよう、金大統領にこうしたことを申し上げ、二人の間でこれを確認をいたしました。そして、これを受け、日韓漁業協定交渉が早急に結論を得ることができるよう精力的に交渉を進めていきたいということを述べ、金泳三大統領から、その方向で進んでいきたい、進めていきたいということを応じて終わっております。
  137. 初村謙一郎

    ○初村委員 新聞でありますけれども総理が今おっしゃったように、竹島に関するそれぞれの立場影響を及ぼすものではないということを前提に協議を進めていきたい、大統領も排他的経済水域設定は領土問題と関係ないとの前提のもとに両国当局者間で協議をしていくのがいいというふうなことであります。  しかし、これから漁業交渉をやっていく中で、もし日本が避けても韓国側竹島周辺の管理を強く求めた場合には、当然日本としても竹島我が国の領土であるというふうな主張を強くしていかなければいけないというふうに思っておりますけれども、そういう面では、総理が金大統領にお会いになったときの領土観といいますか、竹島に対する韓国大統領の領土観、あるいは、総理よくおっしゃいますけれども総理自身はこれまでの政府の統一見解と変わらないということを言われておりますけれども、実態、韓国はどういうふうに考えているのか、日本総理として橋本総理竹島の問題をどういうふうにとらえておられるのか、その辺をお聞かせをいただきたいと思います。
  138. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 それは誤解を生ずるといけませんので、再び、この首脳会談における私の発言をメモしたもの、また大統領の御発言をメモしたもののうち、関連する部分を読み上げさせていただきたいと存じます。  御承知のように、竹島問題についての日本政府立場は一貫している。日韓両国が新たな海洋秩序を構築する国連海洋法条約の締約国となることによって、両国関係が悪化するようなことがあってはならない。したがって、日韓両国国連海洋法条約批准に伴ってとる措置が、竹島に関するそれぞれの立場影響を及ぼすものではないことを前提条件としたい。これにより、国連海洋法条約批准の問題が日韓関係に否定的影響を及ぼすことを回避したい。その上で両国間で排他的経済水域境界画定につき協議を行うこととしたい。 これが私の関連部分についての発言で、そのものであります。これに対して大統領からは、   独島は歴史的にも国際法上も韓国の領土であることが明らかであり、現在韓国が実効的に領有していることを明らかにしたい。日本側が、日本の独島領有権を主張しているのは我が国としては容認できないし、非常に遺憾に思う。韓日両国関係の発展のためには、領土の尊重が原則的かつ重要な問題であるから、これに対して明確な認識が必要であると思う。   総理が言われたEEZの設定問題はこれが領土問題とは関係ないという前提の下で、両国外交当局間で協議していくのがよいと思う。 これに対して私から、   大統領の言われた通り、排他的経済水域の境界策定作業については、早急に協議を始めたい。   日韓漁業協定交渉については、まずは水産当局者間において協議を行うべく調整中であるが、本件は早急に結論を得ることにつき国内より強い圧力がある。可能な限り双方が満足できる結論を早急に得るためには、精力的に交渉を進めていく必要があるので、韓国側の協力をお願いしたい。 大統領からは、   そういう方向で対処していきましょう。 これが関係のやりとりそのものでございます。
  139. 初村謙一郎

    ○初村委員 そうしますと、概略、要は領土問題と漁業問題を切り離して漁業交渉を進めていくということでありますね。  それを考えますと、どうも私は、領土問題を棚上げをして、幾ら漁業とはいえ経済面での実利を優先してやっていくやり方でいいのかというふうな疑問を持つわけであります。領土問題を棚上げしてこの漁業交渉は本当にできるのでありましょうか。その辺を心配しております。  ある社説に、橋本総理の金大統領との会談後の社説でありますけれども、将来の安保面での影響まで十分に考慮したものであるとは言いがたいというふうな社説が載っておりました。私もそういうふうに考えております。  ところで、池田外務大臣、ちょっと質問をさせていただきたいと思いますが、二月九日の池田外務大臣竹島日本国有の領土であるという発言を受けて、二月中旬に韓国の海空軍が竹島周辺で軍事演習を行いました。また、三月の初旬、中国は、台湾総統選挙の際に、台湾東北地域に向けてミサイル発射訓練を行いました。この発言につきましては、池田外務大臣竹島日本の固有の領土であるという認識は今も変わっておりませんか。
  140. 池田行彦

    池田国務大臣 竹島に関する我が国立場は一貫したものでございまして、私は、そのような一貫した我が国立場を踏まえてこれまでも対応をしてまいりましたし、現在もそれに変わりはございません。
  141. 初村謙一郎

    ○初村委員 特にこの台湾沖で実はミサイルの実射訓練があったわけでありますけれども、そのときに実は与那国島の漁民は出漁を見合わせております。それから、東京から台北への民間航空機も一時路線を変更せざるを得なくなりました。これは事実であるというふうに思っておりますけれども日本経済生命線といいますか、そういった意識で尖閣諸島を考えてみましたときに、私は非常に大変な問題だったのだなというふうに思っておりますが、このときに橋本総理は、日本領海に近いところでの軍事演習に憂慮の念を示しながらも、公海上のことであり、他国の権益を侵す問題がない限り国際法上違法と言う根拠はないと言われたと言われておりますけれども、これは事実でございましょうか。
  142. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 それは多分、三月十三日、外務大臣臨時代理として本委員会において答弁のときの一部であろうと思います。  これは議員から御質問がありましたのに対して、一般論としてのお答えをまず申し上げておる部分に、「公海上において他国の権益を侵す、あるいはそうした問題のない限り、公海上の演習というものを国際法上違法と言う根拠はないと私は承知をしております。」という申し方を確かにいたしております。それは一般論として、前置きの部分で確かにその言葉をつけております。
  143. 初村謙一郎

    ○初村委員 そうしますと、総理、現実に我が国の漁民がこの演習によって出漁を見合わせているという事実をどういうふうに考えておられますか。
  144. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今わざわざそこの部分をお尋ねでありましたからそこだけ申し上げましたが、その後「それだけに、非常に言い回しについて気をつけて私自身も発言をしておるつもりでありますが、そうした事態の中で、外務省はこの状況に対し強い関心を抱いている、またその事態が悪托することに丸して強い懸念の意思を表明してまいりました。」とそのときの答弁は続いております。現実の問題として、外務省がこの問題に対し日本立場を表明するに至っている状況をそのまま説明をいたしております。
  145. 初村謙一郎

    ○初村委員 外務大臣、今総理の答弁の中に、外務省はこのとき強い関心を持っておられたということでありますけれども、例えば、中国政府に対して何らか抗議の行動を起こされましたか、あるいは発言をされましたか。
  146. 池田行彦

    池田国務大臣 外交ルートを通じまして、再度にわたり申し入れをしたところでございます。  それは、一つは、ただいまお話のございましたような航空機あるいは船舶の運航に対する影響、あるいは漁業活動に対する影響があり得るという点、そういうところを踏まえて。それからいま一点は、不測の事態が起こる可能性がある。我が国の与那国島から六十キロという非常に近い地域でございましたから、そういうこともあり得るということを踏まえまして、注意を喚起して申し入れを行ったところでございますし、また、私自身も外相会談におきまして、あのような手法によって内外に国際的に影響を与えようとするのであるならば、それは妥当ではないということを申し入れたところでございます。
  147. 初村謙一郎

    ○初村委員 それでは、外務省のアジア局長さんにお尋ねをいたしますが、日韓の歴史認識の溝を埋めるためにつくられるという歴史共同研究委員会というのがあるというふうに思いますが、この作業日程、どういう構成で、いつごろ、どういうやり方で、あるいはどういう内容でこういった歴史の溝を埋めていくのか、その方向、それから、もし領土問題と絡んでおれば、そういった認識も含めてお話をいただきたいというふうに思います。
  148. 加藤良三

    加藤(良)政府委員 日韓の歴史共同研究そのものについて、現在事務レベルにおいていろいろな角度から検討中の段階にございます。  この日韓の歴史共同研究と申しますのは、民間レベルで自発的に行われている質の高い歴史研究というものを共同して見出していって、これを育成し、必要に応じて政府として財政的な支援みたいなものも与える、そういう考え方でいこうという基本については日韓間で意思の合致が見られているわけでございます。しかし、その後、実際にそれをどのように実効的に確保していくか、その具体的な手だて、枠組みということについては、これは韓国との間に調整を要する点が多々残っているというのが実情でございます。  こういう状況を踏まえまして、四月三十日に行われました日韓の外相会談においても、さらに事務レベルでの協議を促進するということについて意見の一致を見たところでございまして、今後とも韓国側との協議を進めていく必要があると感じております。
  149. 初村謙一郎

    ○初村委員 それから、三月九日に局長さんが韓国外務省のアジア太平洋局長との会談でこういう提案をされたというふうに思っておりますが、今度の海洋法の問題で、水域設定は時間がかかるのでまず新しい漁業協定協議から始めようじゃないかという提案をされたというふうに聞いております。間違いございませんか。
  150. 加藤良三

    加藤(良)政府委員 三月九日に韓国外務部のアジア太平洋局長と私との間で、日韓首脳会談の事務的なフォローアップについて意見交換を行った経緯がございます。その際に、漁業に関してはできるだけ速やかに協議を開催するということで意見が一致しましたし、また、排他的経済水域についての協議の方では、双方の国内の準備状況を踏まえて時期を決定するということになった経緯がございます。
  151. 初村謙一郎

    ○初村委員 三月十日の朝日新聞によりますと、海洋法条約による二百海里の排他的水域設定問題については、先ほど私が言いましたように、日本側水域設定は時間がかかるので、まず新しい漁業協定協議から始めようと提案をしたけれども韓国側は難色を示したというふうに書いてありますけれども、それはどうですか。
  152. 加藤良三

    加藤(良)政府委員 この意見交換で、排他的経済水域境界画定の問題を後回しにするべきだということを私の方から発言したことはございませんし、それから漁業協定協議を始めることについて韓国側が難色を示したということもなかったわけでございます。現に、五月九日に日韓間の第一回の実務者協議というものが開催されている次第でございます。
  153. 初村謙一郎

    ○初村委員 そうしたら、五月十日、日韓漁業協定協議が始まっておりますが、この会談の内容につきましてちょっと教えていただけませんでしょうか。
  154. 加藤良三

    加藤(良)政府委員 この協議は、九日の午前午後及び十日の午前、外務省において行われておりますけれども、総括いたしますと、昨年の二月から一年を目途にして実施されることとなっておりました共同漁業資源調査についての報告がなされまして、その調査が終わったということが確認されました。そういう意味で、これは新たな漁業秩序話し合いのスタートラインに立ったということになるのだろうと思います。今回の協議は、三月二日に行われた日韓首脳会談や四月三十日の外相会談で漁業問題が取り上げられたことを受けて開催されたものであることは先ほど私が申し述べたとおりでございます。  今後の漁業秩序については、日本側から、我が国国連海洋法条約締結及びその関連国内法の整備に向けた状況を説明いたしました。与党三党の申し合わせについても言及しながら、協定交渉早期にまとめる必要性というものをじっくりと説明した次第でございます。また、日本側としては、国連海洋法条約締結する見込みなので、この条約趣旨を踏まえた新たな秩序を形成する必要についてこれをるる説明いたしました。  これに対して韓国側からは、六月五日から開催される新しい国会でございますけれども、ここの国会において排他的経済水域法案を審議する予定であるというような説明もございまして、日本との従来の漁業関係を踏まえながら、排他的経済水域体制にふさわしい新たな漁業秩序をつくりたいというふうに述べていた経緯がございます。
  155. 初村謙一郎

    ○初村委員 今お話ありました排他的経済水域の体制を踏まえてということは、排他的水域を決定、線引きをしようという話とはまた違うと思うのですね。例えばここに、日本海域、特に私の地元の東シナ海の領域を書いておりますけれども、これだけ入り組んでいるのです。台湾もあれば中国韓国もある。この線引き、これから大変だな。  しかし、冒頭に言いましたように、今度の批准あるいは国内法の整備について漁師が一番期待しているのは全面設定と全面適用なのです。局長さん、交渉の中で、今の段階でちょっと難しいかもしれませんけれども、この水域の決定について全面適用と全面設定ができますか、お話の中で。ただ単純に今までの経緯を踏まえて日韓あるいは日中の漁業交渉をやっていこうということなのですか。
  156. 加藤良三

    加藤(良)政府委員 交渉が必ずしも容易なものになるということを考えているわけではございません。  いずれにいたしましても、ちょっと繰り返しになりますが、今後の漁業秩序に関連し又日本側からは、我が国国連海洋法条約締結及び関連国内法の整備に向けた状況というものを、その内容を含めて、また与党三党の申し合わせというものに言及しつつ十分先方に伝達いたしまして、協定交渉早期にまとめる必要性を力説した、こういう経緯がございます。
  157. 初村謙一郎

    ○初村委員 私がもし韓国の漁師であれば、今恐らく、日本海で日本がとっている以上に、韓国側は三倍近くの水揚げを上げているのではないかというふうに思っているのですが、次回の日韓漁業交渉をいつやられるというふうに決めておりますか。
  158. 加藤良三

    加藤(良)政府委員 具体的な日取りは現在確定を見ておりませんけれども、外交ルートを通じて鋭意折衝中でございます。
  159. 初村謙一郎

    ○初村委員 いつやるかわからない。要するに韓国側の術中にはまっているのではないかと思うのですよ。恐らくこの決定が延びれば延びるほど韓国側には有利なのです、現場では有利なのです。そういった実態を踏まえてぜひ実務者交渉していただきたいというふうに要望しておきたいと思います。  それから、四月九日、十日に行われました日中の非公式の漁業交渉、これにも参加されているというふうに思いますが、審議官が出られたのですか、説明をいただきたいと思います。
  160. 加藤良三

    加藤(良)政府委員 四月九日及び十日、東京において行われました日中非公式漁業交渉でございますけれども、この協議においては、私どもとしては、友好的かつ率直な意見交換ができて、それなりに相互理解を増進させる効果はあったと思います。  国連海洋法条約批准及び関連国内法の準備状況につきましては、日本側から、三月二十六日に国連海洋法条約及び関連国内法を国会に提出することについて閣議決定が行われたという事実を踏まえまして、関連国内法案の中身について詳細な説明を行いました。これに対して中国側からは、中国側も現在国連海洋法条約批准手続及び関連国内法の整備作業を加速させておりまして、条約については早期に全人代常務委員会の了承を得られる見通しであるけれども、国内法の制定についてはこれよりも若干おくれる見通しであるという趣旨説明がなされております。  新しい漁業秩序に向けての話し合いに関しましては、日本側から、日中両国国連海洋法条約締結しようとしている状況を踏まえて、この条約にのっとって中国との間で新しい漁業秩序に移行する必要があると考えているという基本的な考え方説明いたしまして、与党からの申し入れ等日本国内の状況に言及しながら、我が方として正式の漁業交渉を早急に開始して交渉を速やかにまとめる必要があるということを説明した次第でございます。中国側からは、今後の漁業秩序考えるに当たって、日中間の長期にわたる友好的かつ安定的な漁業関係を踏まえながら、対話を通じて移行する必要があるが、漁業を含め海洋法の諸問題につき日本側と十分話し合っていきたいということを強調するところがございました。  次回協議の開催日時等の具体的段取りについては、これまた今後外交ルートを通じて調整していくこととなります。
  161. 初村謙一郎

    ○初村委員 局長さんは現場で交渉に当たられて本当に大変だと思います。これは領土問題がなければある程度簡単なのですね。私は、先ほども言いましたけれども、この漁業交渉に当たって、領土問題を棚上げにして本当にできるのかな、一体、漁民が苦しんでいる韓国中国船の不法操業に対して本当に有効な手段が打てるのかなというふうな心配をしております。  そこで、総理にもう一度お聞きをしますが、竹島と尖閣諸島に対する総理の歴史認識といいますか領土意識といいますか、この辺をお聞きしたいと思います。  実は、外務省からいただきました資料に、これはおもしろい資料ですけれども日本は、一九〇五年、明治三十八年二月には閣議決定及びそれに続く島根県の告示によって竹島を領有する意思を再確認したというふうなことで、実は編入をいたしております。それから、韓国側は、一九〇五年の竹島の編入の島根県の告示はそれまで竹島をその領土の一部と考えていなかった有力な証拠であるというふうな認識を持っているそうです。全く違うのですね。  漁業交渉に当たって、竹島の問題を棚上げしましょう、韓国側は恐らく、当然ながらこの竹島我が国の、独島といいますか、韓国側の領地であるので話し合う余地はないのだというふうな意識で、棚上げをしましょう、関係ないよというふうなことで言っているのではないか。日本側は、そういう懸念を持ちながら、今度の漁業交渉を先にやりましょうよというふうな意識でおられるのか。その辺のちょっとした、韓国大統領と橋本総理竹島に対する領土観、領土に対する感覚の問題、ニュアンスがどうも違うのではないかというふうに思っています。当然、各国の一番トップの方でありますからそれぞれの各国の主張を繰り返されるということでありますけれども、全く相入れないところでこの竹島問題が棚上げにされているのではないかなというふうな感じがいたしております。  尖閣諸島とあわせて、総理の領土観、歴史認識をお聞きをしたいというふうに思っております。
  162. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 先ほど来、委員から繰り返し御主張のあるところでありますが、私は、領土問題からこの海洋法関連の問題を処理しようと始めた場合、時間がどれだけかかるか本当に想定はできないと思います。これは、今たまたま竹島の問題、尖閣諸島の問題を触れられましたが、漁業そのものについては一応の決着を見、枠組み交渉等の問題が残っておりますが、我々はロシアとの間にも領土問題を有しているわけであります。そして、領土問題は、それぞれがやはりその国としての主張を持っているがゆえになかなか解決を見ない問題として今日にも継続をしておるものだと存じます。  恐らく、議員にお渡しをいたしました外務省の資料、両国の主張の一番古い部分は、一六五〇年代の伯耆藩の記録、あるいは一七七九年の「改正日本輿地路程全図」、これが日本側の代表的なものとして挙げられ、韓国側としては、十五、六世紀ごろの古文献に記述ありとしているといったところから始まっておると思います。  そうした歴史的経緯を持つ認識というものを合わせることからスタートをした場合、私は、排他的経済水域の問題にいたしましても、漁業交渉の問題にいたしましても、まず領土の問題を決着させてからということであるならば、一体いつまで時間がかかるかこれは見当がつかない、これは率直にそう思います。また、尖閣諸島の場合には、我々は、領土問題は存在しない、これは日本国有の領土として明確なるものという認識を持っておるわけであります。  おのずから、これも領土の議論ということからスタートをするなら、私は、非常に長い時間を費やしながら、その領土の問題が決着をしない限り排他的経済水域の結論も漁業の結論も得られないとするならば、到底ここしばらくの間に決着をするような問題ではないと思います。棚上げはいかぬというおしかりであるならば私は甘受をいたしますけれども国益考える場合、問題の所在を明らかにした上で、それを横に置きながら漁業交渉、そして排他的経済水域設定というものに努力をする、行政府の責任者として私はこの道を選択をいたしました。
  163. 初村謙一郎

    ○初村委員 先ほど総理から前の外務委員会の資料をいただきました。非常に危機感のあるすばらしい総理であるというふうな認識を持っておりますけれども、ただ少なくとも、この竹島問題は棚上げにしても、漁師がやはりお互いに入会の可能性もあるでしょう。その可能性がないとは言えないと思いますけれども、少なくとも日本の漁民に被害が起こり得るような、起こっているような今のような漁業のあり方ではいかぬというふうに私は思っております。そういう面では、総理は今、総理としてこの問題を棚上げにして実利をとっていくというふうなことで答弁があったというふうに思っておりますので、その辺はぴしっと漁民の意思も踏まえながらやっていただきたいというふうに思っております。  特にきょうは農林水産大臣にはわざと私質問をしておりません。また委員会の場で細かくお聞きをいたしたいというふうに思っております。  それでは、運輸大臣にお聞かせをいただきたいと思いますが、この関連法案が成立しますと、当然さっきも言いましたように、取り締まりの法が旗国主義から沿岸国主義に改められるわけでありますけれども、実際その取り締まりに当たる海上保安庁の今の体制、こんな数でいいのかなというふうな感じもしておりますけれども、今の体制と、特に今年度の予算を見まして、海洋法を通そうとする割にはこの予算措置でいいのかなという感じがいたしておりますけれども、この二つについてお聞かせをいただきたいと思います。
  164. 亀井善之

    ○亀井国務大臣 お答えをいたします。  海上保安庁は、昭和五十二年の領海十二海里及び二百海里漁業水域設定以来、巡視船艇、航空機等による広域哨戒体制の整備を進めてきたわけであります。海洋法条約批准による接続水域排他的経済水域設定に加えて、近年は集団密航事件の増加だとか薬物及びけん銃の密輸入問題、これが深刻化しておるわけであります。そのような観点から、海上警備がますます重要になってきているわけであります。これらの対策を含めて、近代的な装備を有する高性能な巡視船艇あるいは航空機等の整備を計画的に推進する、そして業務執行体制のさらなる充実を図る、このような努力をしておるところでもございます。  その具体的な問題といたしまして、予算の編成過程におきまして、大変このような広域な哨戒体制に入るわけでありまして、適切に措置をしてまいりたい、このように考えておりますが、特に来年度予算編成に向かってさらなる努力をしてまいりたい、このように考えております。
  165. 初村謙一郎

    ○初村委員 先ほど私の地元の方と連絡をとりまして、たまたま巡視船に乗ったことがある方がおられまして、例えば侵犯を犯しているところはもちろん検挙するわけですけれども漁業の取り締まりで、韓国漁船に乗り込む、実際何か刃物を持って向かってくるとか暴行を受けたとかという実態の調査もあるようであります。  昨年の水産庁の資料だと思うのですが、韓国漁船による違反の状況、平成五年が千二百五十四件、平成六年が二百三十、平成七年が百八十五と減少しているようには見えるのですが、ただ、海上保安庁の資料によりますと、去年の検挙件数だけで十四、立入調査を行ったのは七十八隻、それから我が国の領海、漁業水域に入ったのが千九百隻以上だというふうな報告なんです。これは調査の仕方にもよるのでありましょうけれども、相当な整備あるいは編成をしていかないと、本当に我が国の領海を守れるのか、我が国の水産業を守れるのかというふうな感じがいたすわけであります。  船も実は耐用年数を過ぎている船が四十隻以上あるようであります。ことしの運輸省の海上保安庁の船舶の建造費を見ましても微々たるものであります。聞きましたらば、千トン以上の巡視船が四十億円、あるいは中型、小型の巡視船でも十八億あるいは十七億円かかる。あるいは私の地元の長崎県にも配備していただいておりますけれども、二十メーターの高速艇だけでも約二億円かかる。また、新しい船をつくっていく、あるいは古い、耐用年数を過ぎたような船を切りかえていく。相当な予算をつぎ込んでいかないと海洋国家日本を守れないのではないかなというふうな認識をいたしております。  この辺の予算獲得につきましては、私ども新進党としては、来年度も予算つけてくださいよじゃなくて、私どももし政権をとったらば、たくさんつけていきたいなというふうにお願いしていきたいというふうに思いますけれども、どうぞそういう決意で総理も、これは単に運輸省の予算というだけではなくて、すべて国民の生活にかかわるものだという認識でぜひやっていただきたいというふうに思っております。  それでは最後に、総理にお尋ねをいたしたいと思いますが、実は海洋法批准に合わせて新しい海洋時代が来るというふうな認識を持っております。私は実は、総理がたしか大蔵大臣のときだったでしょうか、盧泰愚大統領の演説を聞かれて対馬に急に入られたというお話を聞いたことがございます。対馬だけではなくて、日本の漁村の現状を見ると、もう過疎化もいいところであります。ある面では漁村をこれから本当にちゃんとした、しっかりとした政策、長期ビジョンを立てて活性化していかなければいけないなというふうな意識でおりますけれども総理御自身に漁業基本法のような長期ビジョンを制定されるお気持ちはないのかどうか、その辺をお聞かせをいただきたいというふうに思います。  それから、私の長崎県も実は水産県と言われながらだんだん衰退しております。日本も水産国であるわけでありますけれども、食料問題にあわせて漁業経営の安定化策あるいは漁村の活性化策などもこの長期政策、長期ビジョン、漁業基本法なるものに入れていったらどうかなというふうに思っております。その辺はどうでしょうか、総理
  166. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 これは総理大臣の答弁としては不謹慎かもしれませんが、海上保安庁の整備について支援の声を送っていただきましたことに、かつての運輸大臣経験者として、また海上保安庁の整備のおくれにたまりかねて海上保安友の会をつくりました張本人としてお礼を申し上げます。  彼らの日ごろ働く場所がなかなか国民の目に触れないということから、今までややもすると整備がおくれがちでありました。そして、たまたま高速艇等の例示を挙げられましたけれども、むしろ今後将来を考えますと、そうした中型あるいは小型の高速艇とあわせて、大型の、ヘリコプター搭載型の巡視船の整備というものは、海難救助等を考えましても放置のできる問題ではございません。さらに、排他的経済水域設定しました場合、航空力の増強というものも当然問題になってくるでありましょう。これは運輸大臣がどういう要求をされるかわかりませんけれども、心の中で私も応援をしたいと思う分野であります。  また、新たな海洋秩序のもとにおける我が国の水産業あるいは漁村の活性化という問題についての御提起がありました。  海洋日本と一言に言いますけれども、これは、例えば、我々が資源を海外から持ってくるだけでもどれだけ多くのものを海に依存しているかわかりません。しかも、二十一世紀のアジア太平洋地域を見るとき、人口の急増とともに非常に成長の制約要因として懸念をされておりますものは、一つはエネルギーでありますが、もう一つは食糧であります。そして我が国は、その食糧のうちでも、たんぱく源の多くを水産業に頼っておることは申し上げるまでもありません。  こうしたことを考えますときに、我々としては、当然のことながら活性化を図り、引き続きの資源管理と、ただ単なる養殖ではなく、つくり育てるというところまで踏み込んだ漁業の着実な推進、こうした施策の推進に我々は力を入れていかなければならない、御指摘のとおりであります。  私は、水産施策全般についての将来というものを考えましたとき、今基本法をつくるのが適切かどうかは多少委員と意見を異にいたします。これは、国連海洋法条約に基づきまして導入される資源管理制度、漁獲可能量制度といいますか、この定着度合いなどを見きわめながら考えていくべき課題、むしろこれを、この定着度合いを踏まえて、我々として長期ビジョンを考えていくべきではなかろうか。現時点においては、そうした強い関心をこの分野に示しながら、この推移を見ていく必要のある時期、私はそのように考えております。
  167. 初村謙一郎

    ○初村委員 TACの問題もありましょうけれども、私は、この海洋法を契機に、今から基本法のベースになるようなものをつくっていっても遅くはないというふうに思います。  長崎県だけではないと思いますけれども、この数日前ですが、私地元に帰りましたときに、長崎県の以西底びきの名門の四社が廃業なんです。恐らくまき網関係も、例えば今度の海洋法でもし中間線が引かれるとすれば漁場を半分近く失います。恐らく六割近くの漁獲が減っていきます。そういったときの、例えばこういった国際条約条約批准によって再編整備をしなければいけない業界のことも含めて対応をすべきではないかな、私は今からでも漁業基本法に向けて対策を練っていっても遅くないというふうに思っております。  これはもう質問ではありませんが、水産庁長官平成元年の十二月の閣議了解で、国際漁業再編対策、これは、実はサケ・マス漁業と流し網漁業に限ってこういった減船対策がされておりますけれども、これはあしたまた質問させていただきます。今通告するのはちょっとおかしいですけれども、時間がありませんので。これはぜひ本当に、この海洋法批准によって沿岸漁業者は、助かるところもありますけれども、泣く業者もあるということを十分に認識されて、今度の法案の進め方を慎重にやっていただきたいというふうに思っております。  以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  168. 関谷勝嗣

  169. 久保哲司

    久保委員 海洋法条約関連の国内法、また条約について、私は運輸委員会に属させていただいておりますけれども、きょうはこの場に出席をさせていただいて、ただいまから何点かにわたって質問をさせていただきたいと思います。  午前からずっと審議がなされておりまして、今もまた我が党の方々が各種の観点から質問なさったわけでありますけれども、いずれにしろ、我が国は四万を海に囲まれておって、世界の中でもある意味では名立たる海洋国家と言ってもいいのじゃないか。そういう意味からいいますと、海と我々の生活というのは切っても切れない、そういう関係にある。  しかも、この海洋ということに関しては、技術の進歩等も大いに関係するわけですけれども、非常に長い歴史の中で、かつては小さい船で、それこそ近海で魚をとっておった、そういう古代の時代から、十四、五世紀ごろには、海洋を中心に走り回る、船でもって世界じゅうを飛び回る、そういうことをなりわいとする国家沿岸国とがつばぜり合いを始めた。そしてまた十九世紀になってからでも、今度は領海の問題等々で再びそういった問題が再燃してきた、そのように思います。  そういった意味では、今回、五百条にも及ぶ大部の条約が多くの国々において批准され、いよいよ日の目を見るというのは、まさに画期的な出来事ではなかろうか。そういう意味からは、今回の条約というのは海の憲法とも新聞等々では言われておるわけでありますけれども、この条約一つでも多くの国が参加をし、そしてまさに海の秩序が守られるというのが本当の意味ですばらしいことにつながるのかな、そんなふうに思えてなりません。  ある意味では、領土といいますか、土、土地のあるところというのは世界じゅうくまなく必ずどこかに、もちろん、先ほど来ある竹島、尖閣といったいろいろなさまざまな問題があるにしろ、どこかが必ず持っておるという、そういう意味では共用の入会地のようなものはないわけですけれども、海はまだまだ公海という広い部分が現時点では残っておる。それを各国の主権の及ぶ範囲を取り決めていこうという意味からも、非常に明確な海洋秩序が、これが批准されることによって確立していく、そのことを私自身も望むものであります。  そんな中で、海洋の利をめぐる各国の政治であるとかあるいは経済的な問題、また軍事上の利害関係等が反映されて今日までのさまざまな問題が起こっておったのだろうと思いますけれども、第二次世界大戦後、御承知のように、国際連合が中心になってこの問題が、それこそ古くは昭和三十三年から、何とかしなければならぬということ、それが今日、いよいよ四十年近くたって日の目を見るような状態になってきた。そういう意味では、確かに国際間に横たわる問題というのは一朝一夕に片づく問題ではないのかもわかりません。  そこで、まず第一点目、総理にお尋ねをしたいのですけれども、今回、我が国もいよいよこの条約批准しよう、こういうことになったわけでありますけれども、この条約批准することによって得ることのできる、また期待される我が国の利益というのは一体何なのか、またどのような効果がある、我が国にとってこういう点がプラスになる、この点は何としても確保したい、こういったことをどのようにお考えになっておられるのか、まずその点を総理にお尋ねをしたいと思います。
  170. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 我が国がこの条約締結すること、この意義の見出し方は、いろいろの角度があると思います。しかし、非常にオーソドックスな答え方を申し上げるなら、国際社会における安定した海洋法的秩序確立に資する、そして我が国海洋に係る活動というものを一層円滑にすることになる、こうした見地から非常に有意義ということが一つ申し上げられると思います。  そして、国連海洋法条約というものが、非常に幅の広い、海洋問題全般を包括的に規定している条約であること、その中には漁業があり、資源開発があり、あるいは貿易、海運など、大変広い分野をこの中に包含している。その周囲すべてを海に囲まれております日本といたしましては、例えばその運輸という面一つを見ましても、今大変航空の発達によって何となく海運というものに目が行かなくなっておりますけれども資源のほとんどを輸入に頼っている、その交通路というものはまさに海であります。そして、その海の利用というものに対してのルールができる。これは、先ほど他の議員から御質問のありました水産の排他的経済水域におけるプラス・マイナスといったことも含めまして、やはり、海洋国家である日本にとりまして、長期的にも総合的にも非常に大きな国益にかなうものではなかろうか、私はそのように考えております。
  171. 久保哲司

    久保委員 いずれにしろ、海洋国家日本にとって、将来の国民の生活、これが豊かで実りあるものになる方向でのさらなる検討をぜひともよろしくお願いをしたいと思います。  続いて、先ほど来出ております領土問題にかかわることでちょっとお尋ねをしたいのですけれども。領土あるいは領海、特に領土ですかね、感覚的には土といいますか。そういう部分になると、まさに国家主権と国民の感情にかかわる問題ということで、とにかくもめます。  世界的に見たって、インドとパキスタンの間の国境紛争であるとか、あるいは中国とベトナムの国境紛争であるとかへ今なおそういう境界の定まらない例は多々ございます。ユーゴスラビアなんというのは、ある意味で国が分裂しておる状態の中で今まさに戦争をやっておる、ある意味では、日本の戦国時代じゃないですが、分捕り合いをやっておる、こういった実態がある。小さく近いところを見ても、日本国内でも、これは自治省の所管かもわかりませんけれども、市町村の間の境界線が確定できずに難儀しておるような話もあります。そうかと思ったら、歴史的には、親、子、孫が比較的近くに住んでおって、お互い兄弟の間はいいけれども、子や孫になってくるとだんだん他人になってくる、そのうち、おまえのところの家は出過ぎだというような状態の話があっちこっちで起こる。  そんなことも含めて、この領土、領海というのは、国レベルの話ではありますけれども、まさに国民感情に直結する。二月の韓国のあの反応の仕方というのは、まさに今までの長年の歴史の上にあるものなんでしょうけれども、我々、こちらから見れば考えられぬようなほどの激しい反応を示される。  そういったことからいっても、この領土、それをどのようにしていくのか、どのように決めていくのか、どのように話し合っていくのかというのは、どんな国家にあったって、また歴史的にも、非常に重要な問題ではなかろうか。その点では、今回、領海の外に十二海里の接続水域、また、領海基線から二百海里までをいわゆる排他的経済水域とする。これは、ある意味では制限された権利ではあるかもしれませんけれども^領土が、領海が広がるという感覚でとらえられる部分があるのではないかな。  今まで御苦労いただいた漁業水域設定に当たっては、太平洋側並びにロシアとの間の方は、それなりに話し合いが進んで大体二百海里の線が引かれていますけれども日本海側百三十五度から西へいくと、途端に、何かそこらあたりじゆうにはれものがあるがごとく、線がぺこっとへこんでしまって日本側に寄った状態での線引きになっておる。  こんな状況等々を踏まえますと、先ほど来、我が国政府の姿勢は変わっておらぬという御答弁でございましたが、この竹島問題あるいは尖閣列島の問題、先ほどの総理の答弁も時間がかかるんだというお答えでしたけれども我が国として、今後関係国と、どのような姿勢で、どのような考え方でこれに取り組んでいこうと考えておられるのか、その点を改めてお伺いしたいと思います。
  172. 池田行彦

    池田国務大臣 委員指摘のとおり、領土の問題というのは、文字どおり主権そのものにかかわる問題でございますし、また、国民感情に非常に大きく影響する問題でございます。それだけに、これに対する対応は極めて慎重でなくちゃいけないということは、歴史の、また現に起こっている事実の我々に教えるところである、このように認識しているところでございます。  そういった観点から、竹島問題に関しましては、我が国立場は、繰り返し御答弁申し上げておりますように一貫したものでございます。しかし他方、この問題が日韓両国立場の相違があるということが、両国民のそれこそ感情的な対立につながる、そして、そのことが両国の友好協力関係全般に好ましからざる影響を及ぼす、こういったことは何としても避けなくちゃいけない、こう考えております。  そういった意味で、韓国との間では、あくまでも友情を持って話し合える状況というものをしっかりと守っていかなくてはならない、このことが基本でございまして、政府といたしましては、これからもそのような基本的な姿勢のもとに両国間で冷静に話し合いを積み重ねていくという、こういう考え方でございます。  そういった観点から、今回の漁業問題あるいは排他的経済水域の問題につきましても、この領土問題、竹島の領有権問題に関するそれぞれの立場影響しないという形で賢明なる解決の方途を見出していこうということでせっかく努力をしていこう、こういう姿勢をとっているところでございます。
  173. 久保哲司

    久保委員 今外務大臣からお答えをいただきましたけれども、先ほど来申し上げましたように、まさに、物理的な問題はありますけれども、一方で人間の感情に物すごく微妙に影響する、それが一つこじれればすべてがぐちゃぐちゃになってしまう、こんな問題でもありますので、ぜひ慎重に、なおかつ積極的に取り組んでいただきたい、そんなふうに思います。  続きまして、次に、ちょっと海上保安庁の方にお尋ねをしたいのです。  今回のこの国連海洋法条約、これに伴う国内法が整備され、実施されることに伴いまして起こってくる問題というのは、一つは、今既に漁業水域が二百海里まである、そういった意味では、次の排他的経済水域設定しても基本的には同じところまでが海上保安庁の守備範囲かなというふうにも思いますが、今回のさまざまな条約内容あるいは法律内容等を見ていますと、従来の漁業水域の中で悪さをしておったものを追っかけて捕まえるとか退去命令をするとか、この手の話以上に、もう一歩突っ込んで、我が国の主権的な立場からもって対処しなければならぬことというのは多々出てくるのだろう、また、接続水域というところにも今まで以上に力を割かなければならない。そんなことを考えますと、まさに、今回の締結によって、仕事の内容並びに量、質、量ともにふえるという状態になるのだろうと思います。  日本国家秩序を維持するために存在するのは、警察と、海の上では海上保安庁、こういうことになるわけですけれども、その海上保安庁が今持っている人員あるいは船、ヘリコプター、航空機といった機材でもってこの新しく広がる範囲並びに仕事のふえる内容、密度の濃くなる部分に対応ができるのかということを考えたときに、だれが考えたって物理的には今のままでは足らぬだろうなと。そういう意味では、ある種の不安を感じるわけですし、先ほども御質問があった、日本の漁民の利益を守る、そのためには侵害するものを排除するといった観点からも、やはり力を入れていただかなければならぬ。  そういうことを思いますと、この点について、先ほど総理の方からも、元運輸大臣として、友の会をつくった責任者としてというお話もありましたけれども、海上保安庁の方としては、まだ具体の計画づくりまでは至っていないかもしれませんが、総体としてどのようなことをしなければならぬとお考えなのか。また、その想定される規模、量の人員、機材をそろえるには、今あるボリュームを一〇〇だとすれば、あとどのぐらいのボリュームを上積みしなければいかぬとお考えなのか、そういったことについてちょっとお教えをいただきたい。
  174. 秦野裕

    ○秦野政府委員 これまでは海上保安庁は、広域的な哨戒体制の整備ということで、昔に比べますと船舶あるいは航空機、いずれの面につきましても相当の拡充整備が行われてきたというふうに考えておりますけれども、もちろん、まだ十分であるというふうには考えていないわけでございます。  特に、ただいま先生お話しございましたように、この海洋法条約日本批准いたしまして、排他的経済水域あるいは接続水域というようなものが設定される、あるいは内容的にも、密航、密輸の問題がかなり深刻化しているというような、まさに先生が今言われたような、質、量ともに一段と深刻の度合いを増すということでございますので、私どもとしても、これに全力で対応するためにはどうしても体制のさらなる充実強化が必要であるというふうに考えております。  どの程度のものを整備して、どの程度の人数をふやすかということにつきましては、これから予算編成の過程において検討いたしますものですから、現時点で、まだ具体的に幾らということをちょっと申し上げる段階ではございませんけれども、少なくとも皆様方の御期待にこたえて、責任が十分果たせるような体制に持っていくように、私どもとしては全力を尽くしていきたいというふうに考えております。
  175. 久保哲司

    久保委員 今具体的に何がどうということを言える段階ではございませんというお話でしたけれども、いずれにしろ足らぬということは事実だろうと思います。そう言ってもらわぬと次の質問にならぬのですけれども。  今度、六月の二日ですか、海保の方で羽田沖の海上で訓練をされる。実は見に行かせていただこうと思って予定をしておるのですが、まだ見ていないので実際の訓練状況というのはわかりません。承知していないのですが、実はちょっと前、一年少々前でしたか、海上自衛隊の観艦式を経験させていただきました。ある意味では、この間御案内いただいたときの写真等を見ている限りでは、同じような形での訓練が行われるのかな。海上自衛隊か海上保安庁か、それはプロが見れば一目でわかるのかもわかりませんが、素人目には同じような船が同じように走っておる、海上でいえばそんな状況があるのかなというふうにも思っています。  現に自衛隊法の八十二条には、特定の場合に、自衛隊が海上保安官として海上保安庁の足らざるを補うといいますか、協力して事に当たるというような規定があるようでございます。  一つ、ある意味で危惧するのは、日本は今憲法九条を中心にさまざまな議論があちこちで起こっておりますし、与党の方でも有事法制の検討を始めようといったこともおっしゃっておられるようでありますけれども、これはまさに日本の国の将来にかかわる大きな話でありますし、まるで舞台が違います。だけれども、一方で、海上保安庁の仕事が広がった、あっちこっちでいっぱい事件が起こった、海上保安庁の船が出払って足らぬねん、さっきではないけれども、耐用年数を過ぎたものが途中でエンストを起こしたというようなことになったときに、自衛隊がそれでは手伝ってやろうか、あるいは手伝ってくれよという、世間的な言葉で言うとなし崩し的なといいますか、そういった形での、同職種であるがゆえの応援というか、日本国全体の利益を考えればその場面はそうせぬといかぬという判断もあるのかもわかりませんが、これだけはやはりやるべきではなかろう。シビリアンコントロールのもとに徹底して置かなければならぬことでもあります。  そんな観点から、運輸大臣にお尋ねをしたいのですが、そういう事態が万一起こったときにも、少なくともこの自衛隊法の八十二条に厳格に基づいての出動はあり得るとしても、応援を願うことはあり得るとしても、自衛隊が自衛隊として行動するようなことを、海上保安庁側からといいますか運輸省側から依頼をしたりするということはないというふうに私は信じるのですが、その点についてちょっとお尋ねをしたいと思います。
  176. 亀井善之

    ○亀井国務大臣 委員いろいろ御指摘をいただきまして、海上保安庁の整備の問題、高性能なものをいろいろ予算措置をし体制を整えなければならない。また、あわせて、海上保安大学校、先般も卒業式に参りまして、大変優秀な人材を輩出をし、期待をしておるわけでありまして、そのような面から整備の問題に努力をしてまいりたい、こう思っております。  今御指摘の海上自衛隊の件でございますけれども、この行動につきましては、運輸省としてお答えをする立場にはございませんが、一般的に申しますと、海上保安庁は海上における警察活動をその任務としておりまして、一方、自衛隊は我が国防衛することを主たる任務としております。したがって、海上における治安の維持については、基本的には警察機関たる海上保安庁が責任を持って対処することになります。ただし、海上保安庁のみでは対処できない場合には、今委員指摘の自衛隊法第八十二条の規定に基づきまして、自衛隊が海上警備行動を行う、このように理解をいたしております。  「海上における警備行動」、第八十二条におきましても、「内閣総理大臣承認を得て、自衛隊の部隊に海上において必要な行動をとることを命ずることができる。」このように自衛隊法が定めておるわけでありまして、そのような中で行動が行われる、このように理解をいたしております。
  177. 久保哲司

    久保委員 運輸省、海上保安庁関係を今お尋ねしたのですけれども、全体の本題にちょっと戻りまして、世界の中で一番ややこしい地域だとかいろいろなことを言われているところは中近東ということに一般的にはなるのだと思いますが、別の意味で、少し前までは東アジアというのも結構ややこしいところだ、よく紛争が起こる、こういう認識であったのかなと思います。そういう意味では、東アジアのさらに極東と言われる部分で先進国の仲間入りをしておるのは我が国でありますし、その我が国が東アジア、なかんずく極東の中でいろいろな意味でのリーダーシップを発揮しながら、各国と海というものを共有しながら一定の秩序確立していく、このことが世界の平和につながっていくことになるのではないか、そんなふうに考えるわけであります。  海洋という、言うならば未知の、だからこそ未来性を秘めた、さらにまた、それゆえに各国の利害がお互いに錯綜する、入りまざる、そういう分野で今回この条約ができたこと、先ほども申し上げましたけれども、私自身は非常に画期的なことではないか、そんなふうに考えておりますし、この条約を読ませていただけばいただくほどに、各国が協調しながら、この共有財産というものを守り、子孫に伝えていかなければならぬ、このような精神もうたっておられます。  そういう意味では、我が国政府は、国家と国民の生命と財産、これを守るということをまず第一義にしながら、この条約が持っている、関係国が協調して仕事に当たっていこうではないかというこの精神を忘れることなく、東アジアあるいは世界の中で信頼される、また尊敬される毅然とした外交姿勢で今回の条約批准に伴うさまざまな隣国との交渉に当たっていくべきであると思っておりますけれども、この外交を進めるに当たっての姿勢を外務大臣の方からお伺いしたいと思います。
  178. 池田行彦

    池田国務大臣 委員指摘のとおり、我が国の存在しますアジア、特に東アジアという地域、現在大変なエネルギーを持って、世界の成長センターとも言われているところでございます。また、それだけに、従来にも増していろいろな利害の調整というものにも意を用いてまいらなければいけない、こう考える次第でございます。そういった観点から、我が国といたしましても、この地域で大きな役割を担わなくてはいけない、そういった立場から、この地域の安定、そして秩序、その上に立っての成長発展を遂げていく上で大きな役割を果たしてまいる、そういう姿勢で臨まなくてはいけないと思います。  とりわけ今回御審議をお願いいたしております国連海洋法条約は、いわば海の憲法とも言われるべきものである、いや、あるいは海の国連憲章とも言うべきものだ、こう言えるわけでございます。そういった観点から、各国に率先しまして、この新しい条約のもとにおける新しい秩序の構築という面で大きな役割を担ってまいりたい、そういった基本姿勢で臨んでまいる所存でございます。
  179. 久保哲司

    久保委員 いずれにしろ、内外から信頼されるリーダーという立場でのお仕事を進めていただきたい、このように思います。  今回の条約の中にいろいろな言葉、いろいろな定義が出てまいりますけれども、その中で、先ほど来出ております排他的経済水域設定ということがある意味で一番大きな点なのだろう、このように思います。  これは新聞あるいはその他専門家等の話によりますと、かつての領海あるいは公海という概念に比して第三の水域というような言い方もされております。というのは、御承知のように、いわばその資源については領海と同じように沿岸国権利を有し、そして通過、航行あるいは通信、こういったジャンルのものについては公海と同じだ、そういった点から第三の水域なんという言い方もされておるわけでありますけれども海洋というところに国家の存立基盤の多くをゆだねている我が国という立場考えたときに、この排他的経済水域設定がスムーズにいくかどうかというのはある意味で我が国生命線とも言えるのではなかろうか、そんな思いがいたします。  実際には、これを進めていく上に当たっては、先ほど来出ております領土問題あるいは漁業協定、これを、今、中国韓国との間でもありますけれども、なおいろいろな問題が起こっておる、これを明快なものに仕立て直していく、こういった付随した作業も含めて考えれば、排他的経済水域、二百海里で線引けばいいんだというだけではなくて、いろいろな難問があるし、難航することが予測されるわけでありますけれども、隣国である韓国また中国、この交渉に際してこういった難問をとにかく我が国一致結束をして乗り越えて円滑に進めていかなければならぬのだろう、こんなふうに思います。  この間、ちょっと前に読んだ新聞の中にはこんなことも書かれていました。この問題で「問われているのは、両国関係を犠牲にしてまでの国家のメンツではなく、互いの現実的な利害を調整する知恵だ」このような報道もございました。これはある意味で、領土問題の棚上げもやむを得ないよというようなことを示唆しているのかなとも思いますけれども、いずれにしろ、この問題をどう円滑に進め、そして乗り越え、着地できるか、これが我が国の政治の国際性が問われるということにもつながるのではなかろうか、そんなふうにも思います。  最後に、この問題について総理に、トータルとして、この問題に臨まれる所見なり基本的な物の考え方というものをお伺いしたいと思います。
  180. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 大変大事な点を御指摘いただいたわけでありますけれども、冒頭明らかにしておきたいことは、私ども排他的経済水域設定につきましては、今回提出をいたしました法案の中において一部水域の除外を行っていないということであります。その上で、私ども韓国及び中国との漁業関係というものにつきましては、両国との真剣な協議を通じて沿岸国生物資源の維持に係る適切な措置をとるという、この国連海洋法条約趣旨を十分に踏まえた新しい漁業協定というものが早期締結できますように全力を尽くすつもりでございます。国会の御支援を心からお願いを申し上げます。
  181. 久保哲司

    久保委員 予定をさせていただいた質問、以上でございますけれども、あす、私の所属させていただいております運輸委員会、開かれるやに聞いておりますので、また細部についてはその場でお尋ねをすることを申し上げて、私の質問を終わります。
  182. 関谷勝嗣

  183. 笹木竜三

    笹木委員 新進党の笹木竜三です。質問を始めさせていただきます。  最初に、今回の国連海洋法条約締結に伴う核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律及び放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律の一部を改正する法律案、このことについて質問をしたいと思います。  先ほどからお話があるように、今回のこの国連海洋法条約によって、漁業あるいは資源、貿易、航行、こういった海からの富をさらに享受していくんだというお話もありました。しかし若干不安があるのは、今まで、一番最近ですとロシアによる液体放射性廃棄物の海洋投棄、あるいは最近ですと原子力潜水艦そのものが例えば日本海側で野ざらしあるいは海ざらし、海に浮かべてある状態でほったらかしになっている、あるいは原子炉そのものがこれまでにもかなり投棄をされている、いろいろなことが話題になっております。こういった問題は、下手をするとさっき言った海からの富を享受ということに対して決定的なダメージを与える可能性もある。そういったことで、今回、この改正において、こういった放射性物質の海洋投棄、これを厳しく取り締まっていくことについての効果、その意義について科技庁長官にまずお伺いしたいと思います。
  184. 中川秀直

    ○中川国務大臣 お答え申し上げます。  今回の改正は、国連海洋法条約において各国の海洋汚染防止法令の適用範囲、執行手続が定められたことに伴いまして、放射性物質の海洋投棄に関しまして、排他的経済水域等における外国船舶による違反に対する罰則の整備、第二に、違反を行った外国船舶に対する執行手続の整備等を行うものでございます。  今回の改正によりまして、我が国は、外国船舶による放射性物質の海洋投棄について、国際的に認められた手続のもと、我が国の十二海里の領海を越えまして、二百海里の排他的経済水域等までに規制を及ぼし得ることになります。これは、我が国の周辺海域における放射性物質による海洋汚染の防止に大きく寄与するものと考えております。  なお、放射性物質の海洋投棄は、廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染の防止に関する条約、いわゆるロンドン条約で禁止をされておるわけでございますが、原子炉等規制法及び放射線障害防止法により既に法的措置が講じられているところでございます。今回の改正は、こうした規制の内容を変更するものではございませんが、その効果を補強するもの、こう位置づけられると考えております。  また、御指摘ロシアによる海洋投棄の防止にも、これはロシアによるものも含めまして、海洋投棄の防止に役立つものである、このように考えております。
  185. 笹木竜三

    笹木委員 ロシアによる海洋投棄といいますと、一九九三年十月十七日、これは、解体された原子力潜水艦で使われた冷却水など液体廃棄物であったわけですけれども、これよりもっと深刻な問題として、例えば一九九三年四月ロシア政府調査委員会による報告書、その中のリストを見ますと、日本海で、ウラジオストク南方で原子炉二基が今までに廃棄されている。  あるいは、これは今とは別件ですけれども、ノルウェーの環境保護団体ベローナの報告書では、ロシア海軍の元大佐の証言をもとにつくった報告書では、バレンツ海付近に原子力潜水艦の残骸そのものが投棄された、あるいは放射性の燃料三万バレル、原子力潜水艦の炉心九基も投棄された、こういった証言もあります。  さらに、一九六三年以降でいうと、これは日本海だけではもちろんありませんけれども、十六基の原子炉などが投棄されているとも言われています。使用済み核燃料をおさめた原子炉がそのまま投棄されている場合もある。  こういった報道がいろいろあるわけですけれども外務大臣に、こういったさまざまな報道に対して、最初の日本海の原子炉二基はロシア政府そのものによる報告書ですけれども、今言ったその他の事例も含めて、外務省としては、事実として、こういった現状についてはどういう御認識を持たれているのか、把握されているのか、お伺いしたいと思います。
  186. 河村武和

    ○河村(武)政府委員 今御指摘がございましたとおり、一九九三年四月にロシア政府は、一九五九年から九二年にわたって、ノルウェー近辺の北方海域及び極東海域において行われてきた液体放射性廃棄物の海洋投棄の事実を白書により公表したわけでございます。  同白書によりますと、ロシアは同期間中、極東海域において、総放射能量一万二千三百キュリーの液体放射性廃棄物及び六千二百キュリーの固体放射性廃棄物を投棄したということになっております。同時に、北方海域におきましては、液体廃棄物二万六千キュリー、さらに固体廃棄物二百三十万キュリーを投棄したということも公表しております。  さらに、これを詳細に述べたものといたしまして、合計十二基の核燃料抜きの原子炉及びその部分、及び六基の原子炉が核燃料とともに投棄されたということでございまして、そのうち極東海域においては核燃料抜きの原子炉が二基投棄された、このように公表をされております。  さらに、これも今御指摘がございましたとおり、一九九三年十月にロシア太平洋艦隊が日本海において放射性廃棄物の海洋投棄を実施したわけでございますけれども、これを最後にロシアは放射性廃棄物の海洋投棄を行っていない、このように承知している次第でございます。
  187. 笹木竜三

    笹木委員 今報告があったような現状に対して、これまでも海洋調査がされているわけです。日本韓国ロシア、IAEAも参加して、そういった海洋投棄にかかわる被害の調査がされているわけですけれども、一回目の調査については報告書も出ている、二回目も行われている。  それで、今お話があったような原子炉そのもの、その影響については、例えば日本海で調査がされているのかどうか。地点としてはウラジオストク南方と、地図上も一応明示はされているわけですけれども、そういった調査がされているのかどうか、科技庁長官にお聞きをしたいと思います。  今までの二回の海洋調査が、今報告のあったような現状に対して十分であるのかどうか、そのことも含めて御意見を伺いたいと思います。
  188. 中川秀直

    ○中川国務大臣 旧ソ連、ロシアが行いました日本海における放射性廃棄物の海洋投棄の影響については、今御指摘ございましたとおり、平成五年の春、過去に旧ソ連、ロシアにより海洋投棄が行われたことが判明した後、直ちに日本海の二百海里内において、海上保安庁、気象庁、水産庁等の御協力をいただいて日本独自の環境放射能調査を実施いたしました。そしてその結果、その影響が認められていないということを確認した次第でございます。その後、平成五年十月にロシアが行った海洋投棄に関しましても、投棄後、直ちに同様の調査を実施し、その影響が認められていないことを確認いたしております。  さらに、日本海の投棄海域において、平成六年三月から四月にかけて、日韓ロ三国に国際原子力機関、IAEAの専門家も加え、御指摘のように第一回共同海洋調査を実施いたしました。そして精密な分析評価を行いました結果、放射性廃棄物の海洋投棄の影響は認められなかったという結論が得られ、その内容を平成七年七月に報告書に取りまとめ、公表した次第でございます。  また、オホーツク海、カムチャツカ沖等の日本海以外の投棄海域についても、平成七年八月から九月にかけて第二回共同海洋調査を実施いたしました。船上における簡易測定では特に異常は認められませんでしたが、現在、採取した海水、海底土等の詳細な分析を行っているところでございます。  ただいま御指摘の点も、以上の調査の中にすべて含まれております。そして、これまでの調査で十分対応していると考えておりますけれども、今後も日本周辺海域海洋環境放射能調査を実施して、継続的に我が国国民の健康への影響を監視していく方針でございます。
  189. 笹木竜三

    笹木委員 さらに事務局の方にもお伺いしたいわけです。  この一回目、二回目、その他の調査の海域図なんかを見ますと、先ほどお話がありました燃料抜きの原子炉、日本海では二基というお話ですけれども、まあ完全にそれが投棄の後で均等に薄まっていけば問題がないのでしょうが、必ずしもそうとは限らない。海流等の関係で、ある箇所にかなり高密度でそのまま滞っている場合もないとは言えない。いろいろなケースがあると思うのです。原子炉が投棄されているといった地点を意識した調査はされているのかどうかについてお伺いをしたいと思います。
  190. 宮林正恭

    ○宮林政府委員 お答えさせていただきます。  先生の御指摘のポイントにつきましては、当然私どもも十分考慮して、実際に測定する地点等を決めております。したがいまして、現在のところは、その測定をした地点におきます調査は問題があるという結果は出ていない、こういうところでございます。
  191. 笹木竜三

    笹木委員 今の点についてはさらに次の機会にお聞きしたいと思いますけれども、別の質問に移らせていただきます。  今後の海洋投棄を防止するためということですけれども、以前からそういった意識もあって、日ロ核兵器廃棄支援の活動があります。最近の二ユースなんかでも、液体放射性廃棄物の処理貯蔵の施設をつくっていくということについてはかなり日本の資金によって進んでいるというふうにも聞きます。ただこれは、一九九三年に最初に立ち上げをされたときには、今言ったロシアによる投棄等を防ぐためにも、そういった意識も持って四つの目標があった。一つ目は解体後のプルトニウムあるいは高濃縮ウランの処理貯蔵をする施設、二つ目はミサイルの液体燃料の廃棄についての協力、三つ目は放射線測定機器の機材供与、それと四つ目、今話しました液体放射性廃棄物の処理貯蔵の施設、こういったことがあったわけです。  現状、液体放射性廃棄物の処理貯蔵施設以外の三点についてはどの程度進展を見ているのか、あるいは今後の計画についてはどうなのか、事務局の方にまずお伺いをしたいと思います。
  192. 河村武和

    ○河村(武)政府委員 我が国は、御指摘のとおり、一九九三年の四月に、旧ソ連諸国の核兵器廃棄を支援するために総額約一億ドルの協力を行うということを発表いたしました。その一億ドルのうちの七〇%をロシアとの核兵器廃棄協力のためのプロジェクトに配分いたしまして、液体放射性廃棄物の処理施設の建設を初めとする協力プロジェクトの推進を図ってきている次第でございます。  御指摘のとおり、液体放射性廃棄物の処理施設の建設につきましては、本年一月に建設契約の署名を行いまして、現在、本年中の施設の完成に向けて、詳細設計及び必要な資機材を調達中でございます。  さらに、この液体放射性廃棄物の処理施設の建設以外のプロジェクトの現状について、次のとおり御説明をさせていただきます。  まず第一番は核物質貯蔵施設の建設でございます。これは、ロシアの核兵器解体から生ずる核物質を長期間貯蔵するというための施設をロシア、米国及び日本の三カ国の協力で建設する予定になっております。現在、ロシア自身が設計を行っている段階でございますので、設計の大枠が固まった時点で三カ国間の役割分担を協議する予定にいたしております。  第二点に、ミサイル液体燃料の処理ということでございますけれども、極東地域にございます潜水艦から発射されます弾道ミサイルの解体から生ずる液体燃料の処理を支援するために、液体燃料の一時保管のためのコンテナ等の機材を供与する予定でございます。現在、機材の詳細についてかなり話し合いが進んだ段階でございますので、実施のための具体的な取り決めを締結することについて、日本ロシアとの間で協議をしている最中でございます。  第三点といたしまして、緊急事態対処機材の供与がございます。解体されました核弾頭を解体場から貯蔵施設に移送する際に事故が発生する可能性がございますので、これに備えて放射線測定器でありますとか無線機等の機材を供与する予定で、これは供与する機器を定めるべく日ロ間で協議中でございます。  以上でございます。
  193. 笹木竜三

    笹木委員 外務大臣にまずお伺いをしたいわけですけれども、今現状については事務局の方からお伺いをしました。ただ、現状としては、四つ目の液体放射性廃棄物の処理・貯蔵施設に比べては、一、二、特にプルトニウム、高濃縮ウランの貯蔵、処理あるいはミサイルの液体燃料の処理、こういったものについては非常におくれている。  一方で、例えば今後ロシアにおいて廃棄される核弾頭はどのぐらいなのか。これは非常に多い数だと思います。今はっきりは把握していませんけれども、二十一世紀の初頭ぐらいには六千とか六千五百とかそのぐらいになるのかもしれません。ロシアにおける解体能力がどのぐらいか、これも私は正確に把握していませんけれども、これまでの実績はどうなのか。いずれにしても、今後廃棄される核弾頭あるいは既に解体された核に対して、今言った処理、貯蔵、これが非常におくれている。これは現実的にも間違いのないことだと思います。  こういった点について、ロシア自身が軍事にかかわるようなことに対してなかなか慎重な態度だという、いろいろ難しい問題があるのは十分意識をしておりますけれども、しかし、きのうもテレビでそれだけを特集でやっておりましたけれども、原子力潜水艦そのものが海の上に浮かんだ形でさらした状態になっている。海水でかなりぼろぼろになっている。いろいろな不安も出ています。そういった問題も含めて、今後どういうように対応されていこうとしているのか、まず外務大臣に御意見を伺いたいと思います。
  194. 池田行彦

    池田国務大臣 委員指摘のとおり、この問題は一義的には当該国、この場合はロシアの責任であるにいたしましても、その影響するところは我が国も含め地球大に及ぶところでございまして、国際的に大きな関心を持ち、対応していかなければならぬと考えております。  そして、先ほど政府委員から御答弁申し上げましたように、液体放射性廃棄物以外の問題につきましても、それぞれ作業は進めておりますけれども、御指摘のように、必ずしも速いスピードで作業が進んでいるとは言い切れない部分もございます。そういった点から、我が国といたしましても、今後関係諸国とも協議しながら必要な支援を行ってまいりたいと存じます。  とりわけ核弾頭の解体から生ずる核物質につきましては、現在まで米ロ日三国の協力で作業を進めておりまして、設計の大枠も固まったようでございますので、これから三国間の役割分担を協議しながらきちんと対応していきたい、このように考えておるところでございます。
  195. 笹木竜三

    笹木委員 さらに総理にも御意見をお伺いしたいわけですけれども、今質問させていただいたように、廃棄されるあるいは廃棄された核弾頭の数に比べて、その処理、貯蔵が全く追いついていない現状。あるいは、日本としても当初の四つの目的のうちまだ一つ目しか進んでいないという現状。それと、この液体の放射性廃棄物の処理・貯蔵施設、日本の協力で今つくられるわけですけれども、この場所、ボリショイカーメニですか、この場所そのもので、先ほどからお話をしています原子力潜水艦が海ざらしというか、海で浮かべられたまま全く手を加えられていない状態になっている。  ですから、液体放射性廃棄物だけの貯蔵・処理施設をつくっても、肝心の核燃料の保管あるいはその移動、そういった処理そのものも非常におくれている。もっと言えば、解体工場で働く方々の給料さえも払えていないという現状もよく報道されております。非常に難しい問題ですけれども、非常に危険な現状です。  こういった問題に対して今後どのように取り組まれていかれるのか、決意をお聞かせ願いたいと思います。
  196. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 先刻来御答弁を申し上げておりますように、液体放射性廃棄物の処理施設は、我々としては本年中の完成に向けて詳細設計及び必要な資機材の調達を行っている段階でありますし、少なくとも、極東における液体放射性廃棄物の海洋投棄を防止するには十分の能力を持っているわけでありますから、これが一日も早く完成するよう努力をしていきたいとまず申し上げておきたいと思います。  また、廃棄された核弾頭あるいはその他の問題、原潜の解体処理といったものについての御指摘がございました。  本当は、第一義的には、核兵器をつくった国がみずからの核兵器の解体は責任を持つべきものだと私は思います。しかしその上で、御指摘のような重要性を持つ問題でありますから、我が国としてもその認識のもとに、対ロ核兵器廃棄支援のそれぞれのプロジェクトの推進に努めてまいりたいと考えております。  また、先般のモスクワ原子力安全サミットにおきまして、解体核兵器から生ずるプルトニウムの処理の方策を検討いたしますために、国際的な専門家会合の本年中の開催が決定されたところであります。我が国としてもこれに積極的に参加をし、プルトニウムの取り扱いについて我が国の有している技術あるいは経験をもとに貢献していきたいと考えております。
  197. 笹木竜三

    笹木委員 それともう一つ海洋投棄そのものとはちょっと離れますけれども、核不拡散ということに関連して、この日ロ核兵器廃棄支援と同じような時期に始まった国際科学技術センター、ISTC、この現状についてお伺いをしたいと思います。  大量破壊兵器関連技術及び専門的知識の拡散を防止しようということで、現状では、軍縮以来旧ソ連の大量破壊兵器関連の科学者、技術者の給料が非常に安くなったとか職がないとかいろいろな問題を踏まえて、平和目的の研究プロジェクトを提供していこうということで始まった非常にいいプロジェクトだと思います。  この現状について、二年目を終えていろいろ評価の報告もできているというふうに聞いております。細かいことは結構ですけれども、評価としてどのような御認識でおられるのか、外務大臣にお伺いをしたいと思います。  私の私見をまずお話しさせていただきます。  結論から言うと、金額面でも質的にもかなり充実しないとなかなか所期の目的が達成できないのじゃないかと思うわけです。  四極で二百三十六件、大体九千九百万ドル、二年間で。その対象の技術者、研究者が約一万一千五百人ということですけれども、これを単純に計算してみますと、一年当たり一人の研究者、技術者でいいますと、四極全体でも日本円に直して五十万円弱の協力でしかありません。最先端で軍事の研究に携わっていた研究者、技術者にその職あるいはプロジェクトを与えるという趣旨から見て、これで果たしてどの程度の効果があるのかという気がします。そういったことに対して御意貝をいただきたい。  さらに、原子力安全サミットの後、五月七日には、ロシアで、しかも科学者が軍事目的に利用可能な核物質を製造して外国に密輸をはかったという報道も出ております。相変わらずこういった報道も絶えないし、今回、科学者そのものがこういったことを行ったという点、さらに、科学者のロシアからの国外流出等も相変わらず報道が続いております。  このISTCについての今後の充実策について、外務大臣にお伺いをしたいと思います。
  198. 池田行彦

    池田国務大臣 委員指摘のとおり、国際科学技術センターは、二年間、いわば立ち上がりの期間を終えまして、これからが事業本格化の時期に差しかかっているわけでございますが、これまでの活動、立ち上がり段階での活動、そのレビューの結果につきましては、非常に有意義なものである、こう見られておるところでございます。  したがいまして、今後平和目的でどのようなプロジェクトをこういったところに習熟されております専門家の方々に担当していただくことが適当であろうか、そういったプロジェクトの発掘等も含めまして、米国、EUあるいはロシアとも連携しながら今後必要な施策を講じていきたい、このように考えている次第でございます。
  199. 笹木竜三

    笹木委員 さらに、総理にお伺いしたいわけですけれども、今お話ししましたように、ロシアでの科学者自身が外国に対する密輸をはかったという最近の報道、科学者の国外流出も相変わらず続いているという現状、あるいは先ほど、その前にお伺いをしました核廃棄物、この貯蔵、処理が追いついていないという現状、いろいろあります。  こういった問題について、例えば今のISTCの、科学者にプロジェクトあるいは職を与えるという観点から考えますと、一つのこれは思いつきですけれども、核査察官としてそういった方々を雇っていくというようなこと。いろいろアイデアはあると思うのですけれども、さらにもう一歩踏み込んで、こういった核不拡散、さらに核廃棄物の処理、貯蔵への支援協力をしていく必要がどうしてもあると思うわけですけれども、御意見を伺いたい。  それと、本年行われるアジア原子力安全サミット等でこういった問題を取り上げていくようなことは検討されるのかどうか、最後にそのことを質問をさせていただきたいと思います。
  200. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今議員からの御提言がございましたけれども、こうした分野、正直に申しまして私は余り基礎知識がありません。それだけに、議員が御提起になりましたような、科学者の活用方法と言ってはちょっと失礼な言い方でありますけれども、それがどういう位置づけになるのか、もう一つ私自身イメージがわかないところがございます。  しかし、いずれにしても、この国際科学技術センターの活動を充実させ、より効果的なものにしていく必要は当然のことながらあるわけでありますし、他の締約国とも協調しながら、このセンターの提供する平和目的の研究プロジェクトというものに対してどのような要請があるのか、そのニーズをまず把握することが大事ではなかろうか。同時に、より効果的なプロジェクトを発掘し、その円滑な実施のためのモニターといったことが大切になるのではなかろうか。その上で、また、その査察といったような分野にまでこうした人材が活用し得るのかどうか、私は次の段階の検討ではなかろうか。率直にそんな印象を持ちました。ただ、この分野、専門的に知識を持っておりませんので、あくまでも感じでお答えすることはお許しいただきたいと思います。  また、アジア原子力安全東京会議は、モスクワの原子力サミットの場におきまして私の方から、近年、原子力発電の導入に向けて大変活発な動きの見えているアジア地域を対象として、原子力安全面での協力を促進することを目的に開催を提唱したものでございます。  二十一世紀のアジア太平洋地域は大変な発展の地域、だれもがそう言いつつも、その制約要因として、爆発的に急増する人口、食糧と並んでエネルギーというものが必ず位置づけられております。そして、これに加えて環境の問題があります。そして、そのエネルギーというものが化石燃料にそう多くを依存できない状況の中で、より安価なエネルギーということから原子力開発というものに目が向いている実態は否定のできないことだと思います。  それだけに、このアジア原子力安全東京会議というものを考えました時点におきまして、とりあえず域内における原子力発電所の安全の強化、放射性廃棄物の安全管理などにおける協力のあり方などをまずとらえ、各国の高級事務レベルで意見交換を行うことを考えておりますが、日程あるいは具体的なテーマ、参加国の範囲等につきましては、今後政府部内で検討していくことにさせていただいております。
  201. 笹木竜三

    笹木委員 もう時間ですので質問は終わらせていただきますけれども、ぜひ、きょう質問した点についても積極的に御検討いただければと思います。  どうもありがとうございます。
  202. 関谷勝嗣

    関谷委員長 古堅実吉君。
  203. 古堅実吉

    ○古堅委員 日本共産党の古堅です。  最初に、海洋の軍事利用と漁獲利用の自由の問題について伺います。  従来の伝統的海洋法のもとでは、狭い領海、広い公海という言葉に象徴されるように、軍事海洋大国の海洋支配というのが実態であったが、この海洋法に関する国連条約は、人類全体の利益のために公正かつ衡平な国際経済秩序の実現を目指している点で重要な意義を持っていると思います。  この条約批准に当たって重要なことは、前文が述べているように、海洋の平和的利用、海洋資源の衡平かつ効果的な利用、海洋生物資源の保存、海洋環境の保護、保全の促進に徹することであって、従来の海洋の軍事利用の自由という考え方を根本的に改めることだと考えます。  条約は、現行の公海条約を引き継いで、航行の自由、上空飛行の自由などとともに漁獲の自由を明記しています。しかし、日本周辺でも実際には軍事利用が優先となり、日米共同演習があれば漁民は立ち入ることができなくなります。  日米地位協定に基づいて米軍に使用を許している水域で公海上に及んでいるところは、山口県沖の九州空戦訓練区域、房総半島沖のキロ区域、沖縄のホワイトビーチ地区、インディア・インディア訓練区域等があります。これ以外に、米軍単独の訓練も日本周辺の公海で行われていますし、自衛隊も射撃訓練を行っています。その上、中国、とりわけ台湾が沖縄県の与那国島からわずかしか離れていない公海上に演習場を設定し、頻繁に射撃演習をしているため、好漁場にもかかわらず操業ができず水揚げが激減して、地元漁業に大きな打撃となっています。沖縄県や与那国町が、政府に対して演習設定をやめさせるよう繰り返し要求しているのは当然であります。このような状況が続けば、これから二百海里経済水域設定されるというのに、まさに軍事優先のために漁獲の自由が保障されないことになります。  政府は、日本漁民の漁獲の自由を保障するために、日本周辺の経済水域内での軍事演習場の撤廃、射撃訓練などをやめさせて漁獲の自由を優先させる措置をとるべきではないかと考えますが、対応の仕方を含めてお考えをお伺いさせていただきます。
  204. 池田行彦

    池田国務大臣 さきの中国の演習に際しまして、訓練期間中、与那国島の漁業者が不安から訓練区域近傍への出漁を控えた、こういうことがございました。こういうことにつきましては、外交ルートを通じまして、中国側にその自制を申し入れたところでございます。また、台湾が一昨年七月以降、与那国島との間の公海上で射撃訓練を実施しておりまして、その際にも交流協会、亜東関係協会ルートを通じまして台湾に申し入れた、こんなこともございます。  いずれにいたしましても、そういったものが漁業活動等に多大の影響を与えないように配慮を期待しているところでございます。  また、我が国の自衛隊あるいは我が国の安全を守るために役割を果たしております在日米軍の演習に伴いまして、漁業活動等にある程度の制約あるいは影響を及ぼすケースもないではございませんが、そういった際にも、そういった影響が余り大きなものにならないように配慮がされているものと承知しておる次第でございます。また、演習そのものは、我が国の安全を守るという見地から、これは必要なものと心得ております。
  205. 古堅実吉

    ○古堅委員 大事な点でありますから総理からも一言お伺いしたいのですが、この条約批准の大事な点と考えておりますものは、今申し上げたように軍事利用の優先ではなくて、漁獲の自由を本当に保障をする、そういうところに大事な点があるというふうに考えます。これからの対処の問題で、内閣の総責任者ですから総理からも一言御意見をちょうだいしたい。
  206. 谷内正太郎

    ○谷内政府委員 我が国の近海に設定されております演習場等についての御質問でございますけれども政府といたしましては、依然として不安定要因を残している国際社会の中で我が国が安全を確保していくために、例えば日米安保条約を堅持していくというような点は変わらない立場でございます。また、こういう条約の目的達成にとりまして必要な、いわゆる海上演習場の撤去などを行う考えはないわけでございます。  いずれにいたしましても、この国連海洋法条約はもちろん平和的利用ということを重要視しておりますけれども、他方、その他のいろいろな国家活動というものとの調和といいますか調整といいますか、そういう点も配慮しておるということでございます。
  207. 古堅実吉

    ○古堅委員 時間もありませんから次に進みます。  次に、領海と核積載艦船の通航禁止問題について伺います。  領海については、いわゆる無害通航制度が採用されておりますが、何を有害とするかはこの条約の第十九条に規定されています。日本は非核三原則もあり、核兵器積載艦船及び航空機の領海通航は有害としなければならないけれども、この十九条はその根拠となるのかどうか、そこの御説明を求めます。
  208. 谷内正太郎

    ○谷内政府委員 国連海洋法条約第十九条一項、これは「通航は、沿岸国の平和、秩序又は安全を害しない限り、無害とされる。」という領海条約の規定を踏襲しておるわけでございます。  それで、御承知のように、我が国はこの領海条約のこの同一の規定を根拠といたしまして、核搭載艦の我が国領海通航は無害通航とは認めないという立場を従来からとってきたわけでございます。この国連海洋法条約第十九条一項は領海条約と同じ規定でございますから、我が国としては引き続きそういう立場をとるということでございます。  いずれにいたしましても、我が国は非核三原則のもとで核兵器の我が国への持ち込みは認めておらず、核兵器を搭載した艦船の我が国領海通航についても、非核三原則を堅持するという考えでございます。
  209. 古堅実吉

    ○古堅委員 それは、条約上は日本の非核三原則の立場を貫くことができるということなんですね。
  210. 谷内正太郎

    ○谷内政府委員 恐らく先生は条約十九条一項と二項の関係についてのことを念頭に置かれての御質問かと存じます。  十九条二項は、第十九条一項に規定する無害でない通航のうち、通航中に船舶が行う活動という外形的な要因に着目して、平和、秩序または安全を害するものとされる具体的な活動を列挙しておるわけでございます。沿岸国が平和、秩序または安全を害すると判断し得る場合は、第十九条二項に列挙された事項に限定されないというふうに考えております。このような我が国立場は、諸外国もこれを十分承知しており、当然これを尊重するものであるというふうに考えておるわけでございます。
  211. 古堅実吉

    ○古堅委員 あえて念を押してお聞きしますけれども、十九条一項、二項、そのかかわり全体においても、我が国としてはこれからも非核三原則の立場をこの条約上も貫けるのだということは明確だということなんですね。
  212. 谷内正太郎

    ○谷内政府委員 第十九条一項、二項の解釈及び、また非核三原則を貫くという我が国立場、これについては変わりはございません。
  213. 古堅実吉

    ○古堅委員 この十九条の二項について、重ねて伺います。  十九条二項に、核兵器積載艦船・航空機の通航を有害とすることを明記するように我が国が主張すべきであったのではないか、こう考えますが、政府はその主張をしなかったようであります。その明確な御説明をいただきたい。
  214. 谷内正太郎

    ○谷内政府委員 政府といたしましては、我が国の基本政策としての非核三原則の維持、これを図りたいという強い決意を持っておりました。それと同時に、海運国としての可能な限り自由な通航の確保という点もまた大変重要な点であるというふうに思っておったわけでございます。  そういった二つの要請を同時に確保すべく、この国連海洋法会議におきましても、我が国としては適切に対応してまいったわけでございますけれども、その点について十分な慎重な配慮を払いつつ、全力を挙げてこの海洋法会議の成功に努力したということでございます。
  215. 古堅実吉

    ○古堅委員 この十九条二項に核兵器積載艦船や航空機、それを有害とするということについての主張をすべきでないというふうな何か見解でもあったのですか。それを主張しなかった何か理由があったのですか。なぜ主張しなかったのですか。
  216. 谷内正太郎

    ○谷内政府委員 基本的には、繰り返しになってまことに恐縮でございますけれども、国連海洋法会議におきましては、政府我が国の基本政策である非核三原則を踏まえつつ同会議に対処してきたわけでございます。我が国といたしましては、非核三原則を条約の規定との関係で維持できなくなるようなことがないように、十分な注意を払ってこの会議に臨んだ次第でございます。
  217. 古堅実吉

    ○古堅委員 それでは、くどいようですが大事な点でありますから、我が国の国是にかかわることですし、総理に改めて結論的なことを伺いたい。  この我が国の非核三原則は、この十九条一項、二項にかかわらず、我が国としてはこれからも貫ける条約だというふうに受けとめておられるかどうか。
  218. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 先ほど来事務当局から御説明を申し上げておりますように、この会議に臨むに当たって、我が国としての基本政策である非核三原則を維持する、同時に海運国として可能な限りの自由航行の確保という二つの要請を同時に解決すべくと申し上げてまいりましたとおり、非核三原則の維持というものを全く変えてはおりません。
  219. 古堅実吉

    ○古堅委員 次に進みます。  次は、排他的経済水域二百海里の問題についてです。  一九七七年に漁業専管水域二百海里法を施行した際に、中国と南朝鮮を挟んだ部分への適用を見送ったために、日本の漁民は深刻な被害を受けることになりました。それだけに、今回の経済水域二百海里の全面適用に大きな期待がかかっています。今回は空白部分はつくらない、経済水域の境界を必ず設定するという姿勢を貫くか、その点を明確にしていただきたい。
  220. 加藤良三

    加藤(良)政府委員 今回の法案におきましても、経済水域設定に際し例外は設けない、それを引かないというところはないということは明確にしてございます。
  221. 古堅実吉

    ○古堅委員 中国、朝鮮に対して提案する線引きは当然のことながら既に作成済みだと思いますが、そう理解してよろしいですか。
  222. 加藤良三

    加藤(良)政府委員 この境界画定交渉につきましては、中国との間であれ、韓国との間であれ、これから協議が始まることになるわけでございます。この交渉開始された場合における対処方針については、これは相手があることでありまして、現時点で申し上げることは差し控えさせていただきたいと存じます。
  223. 古堅実吉

    ○古堅委員 今回の海洋法条約批准を経てなされる交渉、それに当然のことながら先ほど申し上げたように全国の漁民も重大な関心を持ち、極めて大きな期待がございます。しかし一方、領土問題も絡んでくるということなどもあって、従来の経緯に照らして簡単でない、そういう問題も当然のことながら絡んでまいります。しかし、そういうことがあるからこそ、一層この問題は万全を期した体制をとる必要があると思う。  私は、既に線引きというのはできておるのじゃないかというふうに思いますし、そういうものを外交交渉だからということで隠し立てして、国民がわからないうちにそういう方向に行ってしまったというふうなことにするのではなしに、この国会と国民にもこのようにするのだということを明らかにして、国民の世論を背景に、国民の支持を背景に強力な交渉を展開する、これが大事ではないかというふうに考えますけれども、いかがですか。
  224. 池田行彦

    池田国務大臣 委員が御質問の中で、中国との関係につきましては、領土問題は存在しないと、我が国立場でございますので、それを踏まえて交渉してまいります。  それから、先ほど御質問の中で中国ともう一つ、どの国との関係をおっしゃったのでしょうか。ちょっと明確ではないので、はっきりさせていただきたいと思います。
  225. 古堅実吉

    ○古堅委員 中国、南朝鮮との……。まあ尖閣列島について全く問題がないということであれば、それはもうそのままと。  前回の場合に、二百海里法を施行した際に部分的に適用を見送った、そういうものが残された、そういう経緯があるだけに、全体として今回の条約批准に伴う交渉という面では、政府としては既に線引きというものをお持ちの上で臨もうというふうなことだと思うので、何か今ここでは言えませんなどというふうなことではなしに、そういうことを国会にも国民にも明らかにしながら国民世論を背景に頑張るということでなくてはいかぬではないかというふうに思うのですよ。
  226. 池田行彦

    池田国務大臣 委員が先ほど御質問の中で述べられたような国名のところと我が国は外交関係を持っておると承知しておりませんので、御答弁のしようが非常に難しいわけでございますが、いずれにいたしましても、私どもといたしましてはこの新しい今回の国連海洋法条約、この趣旨を踏まえながら、そうしてまた関係国との間の友好関係にも意を用いながら、そして我が国漁業者あるいはその他の関係の方々の利害にも十分配慮しながら適切な対応をしてまいりたいと存ずる次第でございます。
  227. 古堅実吉

    ○古堅委員 時間が参りました。  終わりますが、総理竹島の問題については、我が国としては自国の領土だと主張しながらも、南朝鮮、北朝鮮を含めてそういうような主張があります。今回の二百海里経済水域の問題などを含めて、対処の問題で、ただ我が国として領土権については明確な態度があるというだけでは解決しない、そういう面があろうかと思います。それで、さきに韓国の首脳とのお話し合いの中でそういうことを前提にしたいろいろとお考えの交換もあったということです。その問題についての基本的な解決の仕方、それについての総理のお考えをお聞きして、終わりたいと思います。
  228. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 双方がおのおの自国としての主張を持っておるわけでありますから、感情的にならず、冷静な話し合いの中で解決をするために努力をしたい、そのように考えます。
  229. 古堅実吉

    ○古堅委員 終わります。
  230. 関谷勝嗣

    関谷委員長 吉岡賢治君。
  231. 吉岡賢治

    ○吉岡委員 排他的経済水域設定は、領土問題を有利に展開しようとか、あるいは他国の利益を排除しようとか、そういうものではないと思っています。大原則は、関係する国々が平和的に共生することを前提に、それぞれの国益というものを守りながら海洋秩序を調和させることにあろうかと思います。  しかし、そういう中におきまして、私は、何としても一時的には交渉その他の中で隣国との利害関係、こういうものが出たり、あるいは対立することはあっていいと思っているわけであります。そういう状況の中で、もしそういう対立問題があったとしても、むしろそれをてこにして平和的な対話の交渉を進めることができるだろうというように思う。そういう立場から、あえて竹島問題についての領土権の問題について質問をさせていただきます。  竹島日本の領土であるということを先ほどからも総理はおっしゃっているわけであります。一方的な韓国竹島への建築物の構築、こういうものが新聞報道されております。そういうことについて日本として抗議されているというふうに思いますけれども、余りにも声が小さいのではないかという国民の声や、私は、特に日本海の漁業者の声を聞きますと、あの地域が大変漁業的に資源の多い地域、海域というふうに聞いておるだけに、このことについて厳重な抗議をされてもいいのではないかというように思っているところでございます。その点、総理大臣にまずお聞きしておきたいと思います。
  232. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 けさほど来何回もお答えを申し上げておりますように、私は竹島の領有権というものについて我が国立場は一貫していると思っておりますし、また、韓国側に対しあらゆる機会をとらえて日本としての立場を申し入れるような外交努力は今日までも続けてこられたと思います。そして、三月の日韓首脳会談におきましても、私は同じような趣旨のことを明確に述べてまいりました。ただ同時に、今議員は対立も恐れるべきではないということを言われましたが、私も意見が食い違う場合にその主張というものがぶつかり合うというのはこれは仕方がないことだと思います。  ただ、その問題が両国民の間の感情的な対立になることだけは私は避けなければならぬと思います。私は、感情論にこうした問題が発展し、友好関係を損なうことは決して双方にとって望ましいことだとは思いません。それだけに、私は隣国である韓国との間においては、あくまでもやはり友情を持って話し合える状況というものを保っていくべきだと思っておりますし、そうした努力を積み重ね、冷静な話し合いを積み重ねていくことによって事態の解決に努めたい、私はそう思います。
  233. 吉岡賢治

    ○吉岡委員 東経百三十五度以西が今日まで二百海里の設定がなかった、こういうことによって漁業者が大変困っていたという現実があるだけに、ある意味できちんと領土問題等を主張すべきことは主張すべきだというように思いましたので、質問させていただいた次第でございます。  二つ目の問題でございますが、漁業関係者は、いわゆる私の地域でいいますと韓国との関係になるわけでございますけれども、去る二月二十八日に武道館で決起集会を開催されて、全面適用そして全面設定、こういうことを主張されているわけでございます。農林水産大臣としてこのことをしっかり受けとめていただかなきゃならぬだろうと思いますし、具体的にどのような漁業資源の確保あるいはその管理というものをこの海洋法条約批准に伴ってお考えなのかということをお聞かせいただきたいと思います。
  234. 大原一三

    ○大原国務大臣 吉岡委員日本海側の漁業状況について十分関心をお持ちのことは、日ごろ存じ上げているわけでございますが、今委員が御指摘になりましたように、排他的経済水域についてはこの基本法で一部地域を除外するということは書いてございません。したがって、我々といたしましては、現在ありますところの日韓、日中条約改定交渉において、精力的にこの基本法の精神に即して、委員指摘のように全面適用、全面設定に向けて外務省と協力をいたしながら努力をしてまいる所存でございます。
  235. 吉岡賢治

    ○吉岡委員 排他的経済水域設定というのは、いわゆる他国の排除ということではないわけでありまして、水域内での国内法の適用と、そして外国船等についても実績を配慮するということになっておりますね。そういうことですから、資源保全という大原則に立ちながら、水域内での漁獲をどのように配分するのかという現実的な解決を図らなければならない、こういうことになってくるだろうと思っています。  そういう立場でございますから、以下質問を外務大臣の方にさせていただきたいと思いますが、日韓漁業交渉ということを開始された、このようにお聞きしております。その基本方針、とりわけ日韓漁業協定改定に臨む考え方、こういうことについて、まずお聞きしておきたいと思います。
  236. 池田行彦

    池田国務大臣 日韓漁業協定につきましては、その予備的な交渉と申しましょうか、実務者間の協議を去る九日並びに十日に行ったところでございます。そこではまだ余り踏み込んだ話し合いにはなっておりませんけれども、いずれにいたしましても、国連海洋法条約、こういった趣旨を踏まえて新しい秩序をつくっていこうということで認識は一致したところでございます。そして、我が国といたしましては、先ほど来繰り返し御答弁申し上げておりますけれども韓国との間の友好関係を大切にしながら、また我が国の水産業者、水産関係の方々を初め、そういった方々の利害というものも十分に念頭に置いて、また各方面からいろいろな御意見、御要望がなされております、そういうことも十分念頭に入れました上で、韓国との間で話し合いを尽くしまして何とか円満な解決に至りたいもの、こう思っている次第でございます。  なお、この漁業交渉あるいは排他的経済水域境界画定に関する交渉に際しましては、竹島の領有権の問題をめぐる両国それぞれの立場影響を与えない、そういう前提で話を進めていくということが両国首脳間で確認されているところでございます。
  237. 吉岡賢治

    ○吉岡委員 線引きがどうなるかということは大変な関心事であります。漁業者にとっては本当に生命線だというふうに主張されております。  そこで、そうはいっても、今外務大臣がおっしゃいましたように、いろいろな交渉の中で、多分、お互い線引きの中で重複水域というものが結局できるのではないかというようなことを想定する、予想されるということを現地の人たちは言うわけであります。そこで、そうなったときに、その重複水域の環境を、入漁協定、こういうことになるのだろうか、もしそういうことになったとした場合に、漁獲量関係を確定すると同時に、年間の隻数も含めて協定ができるということになるのだろうか、こういうことを訴えています。私は、そのことを聞きながら、漁業資源の確保、こういうことと、互いに今非常に紛争寸前のような状況での操業も続いている海域もあります。そういうこと等を考えてみますと、安全操業を確保するということも含めての交渉にしていただきたいというように思っているわけでありますが、その点について見解がありましたら、お尋ねしたいと思います。
  238. 池田行彦

    池田国務大臣 漁業協定の問題につきましては、先ほども申し上げましたように、ようやく予備的な話し合い実務者の間で一度持たれたところでございまして、なおこれから引き続きやるということでございます。  なお、境界線の画定の問題につきましては、実は、これは早急に実務者間の話し合いを持とうではないか、そういうことで、孔韓国外相と私との間で、去る四月三十日に合意ができまして、その実務者間の話し合いをいつどういう形で行うかを、今外交ルートで協議している、そういう段階でございます。  そういったことでございますので、今委員指摘のような、いろいろな方法論とか、具体的な、交渉の結果どういうふうなものができていくかということにつきましては、現在のところ、まだお答え申し上げられるような段階に至っていないというふうに御理解賜ればと思います。
  239. 吉岡賢治

    ○吉岡委員 海洋法条約、この精神を最大に生かしていただくと同時に、漁民の利益を損なわない、こういうことの中で、それがやはり国益にも通じていきますので、鋭意そういう方針でもって交渉していただきますように、よろしくお願いいたします。終わります。      ――――◇―――――
  240. 関谷勝嗣

    関谷委員長 この際、連合審査会開会に関する件についてお諮りいたします。  ただいま農林水産委員会において審査中の内閣提出、排他的経済水域及び大陸棚に関する法律案、排他的経済水域における漁業等に関する主権的権利の行使等に関する法律案、海洋生物資源の保存及び管理に関する法律案及び水産資源保護法の一部を改正する法律案、運輸委員会において審査中の内閣提出、領海法の一部を改正する法律案、海上保安庁法の一部を改正する法律案及び海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律の一部を改正する法律案、科学技術委員会において審査中の内閣提出、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律及び放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律の一部を改正する法律案について、それぞれ各委員会に対し連合審査会の開会の申し入れを行うこととし、あわせて、本委員会において審査中の海洋法に関する国際連合条約及び千九百八十二年十二月十日の海洋法に関する国際連合条約第十一部の実施に関する協定締結について承認を求めるの件について、農林水産委員会、運輸委員会及び科学技術委員会から、それぞれ連合審査会開会の申し入れがありました場合には、これを受諾することといたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  241. 関谷勝嗣

    関谷委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  なお、連合審査会の開会日時につきましては、関係委員長協議の上決定いたしますので、さよう御了承ください。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時十三分散会