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1996-02-22 第136回国会 衆議院 科学技術委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年二月二十二日(木曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 井上 喜一君    理事 小野 晋也君 理事 原田昇左右君    理事 村上誠一郎君 理事 上田 晃弘君    理事 笹木 竜三君 理事 鮫島 宗明君    理事 今村  修君 理事 渡海紀三朗君       小渕 恵三君    古賀  誠君       萩山 教嚴君    上田 清司君       近江巳記夫君    斉藤 鉄夫君       西  博義君    大畠 章宏君       吉井 英勝君    後藤  茂君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      中川 秀直君  出席政府委員         科学技術庁長官         官房長     工藤 尚武君         科学技術庁科学         技術政策局長  落合 俊雄君         科学技術庁科学         技術振興局長  沖村 憲樹君         科学技術庁研究         開発局長    加藤 康宏君         科学技術庁原子         力局長     岡崎 俊雄君         科学技術庁原子         力安全局長   宮林 正恭君  委員外出席者         国土庁防災局防         災企画課長   平川 勇夫君         文部省学術国際         局研究機関課長 早田 憲治君         資源エネルギー         庁長官官房原子         力産業課長   伊沢  正君         参  考  人         (宇宙開発事業 松井  隆君         団理事長)         科学技術委員会         調査室長    吉村 晴光君     ――――――――――――― 委員の異動 二月二十二日  辞任         補欠選任   藤村  修君     西  博義君 同日  辞任         補欠選任   西  博義君     藤村  修君     ――――――――――――― 二月二十二日  高速増殖原型炉もんじゅ事故原因徹底究明  と事故再発防止等に関する陳情書外七件  (第一一六号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  科学技術振興基本施策に関する件      ――――◇―――――
  2. 井上喜一

    井上委員長 これより会議を開きます。  科学技術振興基本施策に関する件について調査を進めます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本件調査のため、本日、参考人として宇宙開発事業団理事長松井隆君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 井上喜一

    井上委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――
  4. 井上喜一

    井上委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。原田昇左右君。
  5. 原田昇左右

    原田(昇)委員 昨日、中川長官から所信を聞かせていただいたわけでございますが、その中身は多岐にわたっておりますので、私は、限られた時間の中で、科学技術予算の問題と今後の宇宙開発の問題に絞りまして御質問申し上げたいと思います。  まず科学技術予算増額の問題でありますが、我が国科学技術活動を諸外国と比べてみますと、政府研究投資の比率が低いということが我が国の特徴になっています。全体としての科学技術投資というのはかなりの水準にある。しかし、それは主として民間でありまして、政府投資というのは非常に低いというところに問題があるわけであります。このことが、科学技術立国を目指す我が国として非常に問題であろうということで、我々、昨年この国会科学技術基本法を立法いたしたわけでありますが、その一番の眼目は科学技術予算を増額しようということであることは言うまでもございません。  そこで我々は、平成八年度予算におきましてこの願望を少しでも実現したいということで、いろいろ努力をいたしたわけでありますし、また政府もそれにこたえて、極めて意欲的な科学技術予算を作成していただいて国会に今提出していただいておる、こういうように了解しております。  そこで、この点をちょっと政府側から、基本的に科学技術予算をどういうように配慮しておるかということについて御説明をいただきたいと思います。
  6. 中川秀直

    中川国務大臣 平成八年度予算案における科学技術関係経費総額は二兆六千七百二十一億円で、前年度の当初と比べますと、二兆四千九百九十五億円という前年度の予算でありますが、それに対して六・九%増になったということでございます。科学技術振興費の方は七・四%ということになったわけであります。  これは、ただいま原田委員指摘科学技術基本法というものが、当委員会委員先生方の御尽力にもよりまして成立をいたしまして、科学技術振興我が国の最重要課題一つと位置づけられたこと、特に戦略的基礎研究推進制度等々、新たな基礎研究強化というものが図られたこと、また、原田先生に御尽力いただいた地震防災対策特別措置法に基づく地震調査研究体制充実強化、こういうものも図られたということで伸びた、こう考えております。  しかし、ただいま委員指摘のとおり、研究費全体の趨勢というものは、例えば民間景気後退等々によりまして、九二年ぐらいまでは何とか総額は、政府負担欧米主要国に比べて低いにかかわらず遜色ない水準をずっと保ってきたわけですが、その後、九一年ごろから民間の方がずっと数%下がってまいりまして、政府がその分頑張って横ばいということになりましたが、九三年には、全体も減少する、こういう事態になっておるわけでございます。  また、政府負担研究費の対GNP比等々で見ますと、正直、これは欧米に比べまして格段に劣っておるという実情にあるわけでございます。  そこで、決意ということでございますけれども、国際的な貢献が十分でないという御批判もあるし、また特に、今申しましたとおり、基礎研究が相対的に弱いということ、また政府の役割がもっと拡充されなければならぬということ等々を踏まえまして、今までの政策大綱やあるいは新経済計画政府研究開発投資早期倍増という方針が示されておりますが、私どもは、基本法に基づく基本計画、これを六月ごろまでに定めるべく今作業いたしております。  そういう基本計画の策定に当たりまして、基本法の精神にのっとって、この倍増を本当にできるだけ早期に、それも具体的にこの年次までにやりたいということも言えるように、その基本計画の内容の政策中身、これがやはりしっかりしていなければ積み上げられていくことができませんので、そういうことに十分議論をしながら、また委員会委員先生方の御指導やいろいろなお知恵もおかりをしながら、しっかりした基本計画をつくってその倍増を目指してまいりたい、このように考えております。  ちょっと訂正をさせていただきますが、科学技術振興費は一〇・九%増ということでございます。科学技術庁の全体が七・四%増でございました。
  7. 原田昇左右

    原田(昇)委員 今、政府開発投資倍増早期に実現するということについて大臣の御決意まで伺ったわけでございますが、それには基本計画をしっかりつくらなければならぬ、まことにそのとおりでありまして、ぜひ我々も期待をいたしておりますので、その点については、広く知恵を集めて立派な基本計画の作成に努力していただきたいと思います。  科学技術予算倍増は、行政だけではなくて政治の課題でもあります。我々も大いに応援させていただきますので、大臣の御健闘を期待しておる次第でございます。  先ほどの数字の問題で若干細かい話ですが、科学技術振興費は二けた台で伸びた。科研費とかそれから調整費ですか、科学技術調整費科研費地震調査研究費というのがあると思うのですが、そういったものはどんなふうになっておるのか、ちょっとお示しいただきたいと思います。  それから今回特筆すべきは、今自由民主党の幹事長ですが、政調会長のとき加藤紘一先生が非常に努力していただきまして、何とか建設国債研究費を賄えないか、つまり、知的資産ということに考えれば建設国債対象になるのではないかという考えで、皆さんに御検討いただいて、ようやく平成八年度予算で実を結ぶことになりました。これは建設国債対象となる出資金という形で各省についておりますが、これについても簡単にひとつ状況を御報告いだだきたいと思います。
  8. 中川秀直

    中川国務大臣 第一点のお尋ねでございますが、文部省科学研究費補助金科研費でございますが、平成八年度予算政府案によりますと一千十八億円ということで、これは初めて一千億円台の案になっておる。また、科学技術庁所管各省にまたがりまして使わせていただく科学技術振興調整費でございますが、これは二百十五億円という要求になっております。また、地震調査研究推進本部が取りまとめました地震調査研究関係政府予算案関係省庁合計で百五十九億円、対前年比四六・八%増、約五割増しという状況になっております。  出資金等のことについては政府委員から答弁させます。
  9. 落合俊雄

    落合政府委員 出資金等を活用いたしました予算でございますが、特殊法人等を活用いたしました基礎研究推進制度につきましては、科学技術庁分が百五十億円、文部省が百十億円、厚生省が十億円、農林水産省が十九億円、通商産業省が二十六億五千万円、郵政省が四億八千万円ということで、六省庁総額で約三百二十億円ということになっております。
  10. 原田昇左右

    原田(昇)委員 三百二十億も使うことになるわけでございますので、これは全くの純増だと思うのですね。また縦割りだけでなしに、みんなで知恵を出し合って、科学技術庁主導権を持ってこれらの研究の成果が上がるようなことについて推進役を果たしていただきたいと思うわけであります。いいですね。  それじゃ、次の問題に移ります。  宇宙開発の問題ですが、昨今暗い話題が多い中で、宇宙開発若田飛行士の活躍によって国民に明るい話題を提供したと思うのです。二十日に若田さんが本委員会を表敬訪問されて、有益なお話を伺ったわけであります。本当に高く評価したいと思いますが、同時に、宇宙開発についてはいろいろこれからまだお伺いしたいことがたくさんあると思うのです。  まず第一に、日本宇宙開発欧米に追いつくことを目標にして自主開発路線でやってまいったと思うのです。その結果、ほぼ技術的には欧米水準あるいは物によってはそれを超えるものもあるというように関係者は言っておるわけですが、果たしてどうか。具体的にひとつ国民にわかりやすくその辺をおっしゃっていただきたいと思います。  それからもう一つ、それはいいんですけれども有人技術を除けばだと思うのですが、今後ロケット問題等では、コスト国際水準の二倍もするということでは話にならぬということで、このコストダウンというのが非常に問題になっておると思うのですね。そのコストダウンをどういうように進めていくのか。  ことしの一月に宇宙開発大綱というものが改定されたわけでございますけれども政府としてどのような基本的な考え方で宇宙開発を進めようとしておられるか、あわせて伺わせていただきたいと思います。
  11. 中川秀直

    中川国務大臣 先生指摘のように、日本宇宙開発というものは、古くは東大の生産技術研究所ロケット研究の開始以降約四十数年、四十年以上にわたりまして営々たる努力を積み重ねてきたわけであります。その結果、欧米並みの二トン程度の静止衛星の打ち上げを可能にする能力を持ったHⅡロケット開発、あるいはまた技術試験衛星開発による大型静止衛星、例えば今度の八月に打ち上げます地球観測プラットホーム技術衛星と言っておりますが、このADEOSは欧米も共同で使用する、日本開発をした大変大きな衛星でございます。  そういうように、ロケット技術衛星技術分野では御指摘のとおり国際的な水準技術能力を得るに至った、このように認識をいたしております。  しかし、有人活動については、アメリカロシア等に比べましておくれております。これについても、今後、明年から始まります国際宇宙ステーション計画への参加などを通じまして、技術の蓄積を図っていきたい。今度の若田飛行士ミッションスペシャリストとしての衛星回収や打ち上げ、回収、こういった一連の仕事、これはまさに一種有人活動への重要なステップであった、このように考えております。  今般、宇宙開発委員会において政策大綱を改定をいたしましたが、この中でも、二十一世紀の本格的な宇宙利用時代、それに向けての高度な技術のチャレンジ、こういうものを盛り込んでおります。この政策大綱に基づきまして今後各年度の宇宙開発政策開発計画が定められ、そしてこれが推進されていくというスキームになっておりますので、非常に重要な政策大綱である、こう考えております。  簡単にポイントを申しますと、先ほど申し上げました二十一世紀宇宙本格利用時代に向けまして、地球観測宇宙環境利用活動等充実に取り組む、また新たな分野への挑戦として月の探査等に取り組む、第三に、国民から理解される宇宙開発でなきゃならぬということで、そうした社会の動向を的確につかんで、また国民ニーズもつかんで、お声も幅広く聞いて広報、広聴活動も強化をするよう取り組んでまいりたい、こういうふうに考えております。この方針に沿って着実に進めてまいりたい、こう考えております。  先ほどのコストダウンの問題については、基本的に、例えば百九十億ぐらいしたロケットは何とか八十五億円ぐらいに引き下げる、あるいはまた衛星も八十億円ぐらいするものを四十億円に引き下げる、そういう努力をしていこう、これはもう政策大綱でもそういう方針を出しているところでございます。
  12. 原田昇左右

    原田(昇)委員 これは宇宙開発事業団理事長がおいででございますから理事長から伺いたいのですが、HⅡロケット開発コストの半分でHⅡAというのをやろうというように伺っております。そうすれば、世界水準に比べて十分競争力があるんだ、こういう御説明でありますが、世界市場商業化ができるのかどうか、見通しがあるのかどうか、世界の打ち上げを受注できるようになるのかどうか。それなら民間会社技術を移転して、大いに新しい日本宇宙産業として育てることができると思うのですが、どういうふうにお考えか。その辺の見通しを聞かせてもらいたいと思います。
  13. 松井隆

    松井参考人 先ほど大臣から御説明がありましたとおり、私ども、HⅡロケットを一〇〇%自主技術と申しておりますけれども、それで開発いたしまして、それで一昨年と昨年でございますか、試験機を三機打ち上げました。そこで私どもHロケットの様子が大体わかったということで、かなり大幅のコストダウンが可能という判断をいたしました。  具体的に申し上げますと、三機を平均いたしますと、打ち上げ費を含めまして一機約百九十億でございます。これを、今私どもは、八十五億以下にするという目標を設定いたしました。それで、八十五億以下になるということは、私どもはなると思っておりますし、またそれは、私どもは国の税金でやっておる立場上、当然やはり効率性を求められておりますものですから、まずそれはしなくてはいけないというふうに考えております。  それで、八十五億以下という数字を、一応目標を設定してございますけれども、現在のロケット市場価格と申しますか、それを申しますと、幾つかいろいろなケースがございますけれども、大体このくらい、八十五億円よりももう少し下がれば何とか国際的には競争できるコストになるのではないだろうかというふうに考えております。もちろん、これについて、ロシアとか中国の値段、これは実は余りはっきりわかっておりません。だけれども欧米、つまりアメリカロケットあるいはヨーロッパロケット、そういうところから見ると大体いけるだろうと思っております。  もちろん、当然のことながら、私どもは第一義的には国の税金でやっていますものですから、また私ども宇宙開発活動をこれから進めるためには安くしなければいけないということでやるつもりでございますけれども、そうなった暁には当然民間の方に技術移転をいたしまして、そこで民間がそのロケットを使って受注できるということはできるわけでございまして、今後大いにそういう可能性があるというふうに私は思っております。
  14. 原田昇左右

    原田(昇)委員 何か少しわかりやすくおっしゃっていただくと大変ありがたいのですが、欧米アメリカならアメリカで、推力どのくらいでどうだとか、ヨーロッパなら、アリアンなら幾らとかどうだとか、そういうものはないのですか、具体的に。
  15. 松井隆

    松井参考人 では、お答えいたします。  まず、現在私どものHⅡが二トンクラスの人工衛星静止軌道に打ち上げる、その能力に換算してみました。  アメリカヨーロッパの場合は、大体八十から百二十ミリオンダラー、多少幅がありますけれども、大体そのぐらいでございます、現状は。それから、ロシアが、プロトンが大体七十ミリオンダラーぐらいでございます。中国はちょっとわかりません……(原田(昇)委員ミリオンダラーとはどういうこと」と呼ぶ)簡単に言いますと七十億円、一ドル百円と換算してみますと、プロトンが現在七十億円のようでございます。それから、ヨーロッパアメリカのものは八十億円から百二十億円。  それで、それに対して、私どものは今百九十億円という数字なわけでございますね。それを八十五億円以下にしようということでございます。当然のことながら、欧米もさらにコストダウンをするという努力目標は持っておりまして、もちろん欧米の方でもそういう努力はすると思います。しかし、今の私ども判断では、大体そのくらいまで行けば何とかなるのではないか、こういうふうに考えております。
  16. 原田昇左右

    原田(昇)委員 事業団でやっていると、どうも積み上げコストで出てくるわけですが、民間企業でやると、マスプロ効果とか、いろいろ規制を緩和してやれば自由な競争競争があると意外にコストは下がるというのが通例だと思うのですね。そういう状態を早くつくる必要があるのじゃないですか。その辺はどう考えていますか。
  17. 松井隆

    松井参考人 先生指摘のとおり、確かに、民間に移して民間がやった場合にはマスプロ効果が出てくるというのは当然だと思います。  私が先ほど申しました、HⅡを改良して八十五億以下を目標と申しますのは、現在の機数、年に一機とか二機とか、そういうのを前提にはじいた数字でございます。したがって、民間企業がそれを受けて大量生産した場合には、当然安くなると思います。  既に日本では、民間会社が中心になりまして、ロケットシステムという会社をつくってございます。そこが、そういう意味では、そろそろHⅡA時代に備えまして商業活動を開始するというような準備もしております。したがって、HⅡAができた暁には、当然そういうロケットシステムという会社が一生懸命努力するというふうに思っております。
  18. 原田昇左右

    原田(昇)委員 今よくわかりましたけれども、私は民間企業一社だけではだめだと思うのですよ。二社ぐらいで競争させなければ国際競争にたえ得る企業というのはできないと思うのだな。どうも一社独占というのは弊害がある。そういうことを指摘しておきます。いきなり二社やれといったって無理でしょうが、ともかく、一種宇宙に対するニーズさえあれば、トラック屋なんですから、宇宙トラックですよ、二社や三社ぐらいあっても、私は将来の問題として十分成り立ち得る需要ができ得るのではないかな、こう思いますが、検討しておいてください。  それから、若田さんの話を聞きますと、人工衛星回収だけではなくて、宇宙ステーション組み立てに役立つ技術ということも習得するのが目的だったということを言っておられましたが、宇宙ステーション計画自身はどんなふうになっているのですか。  今、新聞の例ですが、この新聞によりますと、ちょっと古いんだ、去年の九月十日ですが、「宇宙基地〝難敵〟次々」と書いてあって、アメリカは「減る予算」、欧州は「重い負担」、それで、国ごとにどうしようかといって押しつけ合いをやっておる。ロシアは「態度未定」、日本は「じっと待つ」。「二〇〇二年の完成目標〝黄信号〟」こういうセンセーショナルな、極めてわかりやすい記事が出ているのだけれども、いかがでしょうか。
  19. 加藤康宏

    加藤(康)政府委員 お答え申し上げます。  国際宇宙ステーション計画でございますけれども、この新聞では、米、欧、ロ、日本と書いてございますが、ヨーロッパの方からちょっと説明させていただきますと、この新聞が去年の九月に出ておりますけれども、その後の十月にヨーロッパ欧州宇宙機関閣僚会議がございました。その閣僚会議におきまして、宇宙ステーションに参加することを決定して必要な予算も確保いたしました。したがいまして、ヨーロッパは着実に参加いたしますので、問題ございません。  米国におきましても、議会と政府の間に意見の相違はなくて、予算を二十一億ドル、まだ本予算は通っておりませんが、確保するとなっておりまして、米国も理解が得られております。  ロシアにおきましては、ミールをもう少し延長して使いたいという希望が別途ありまして、宇宙ステーションと両立しづらいという話がございましたけれどもアメリカロシアに少し援助をすることでミールの方も少し長く使えるようにする、かわりにロシア宇宙ステーションをしっかりやるということで、合意がこの一月にできました。  それから日本につきましては、着実にスケジュールどおりに進めておりますので、宇宙ステーション計画につきましては、来年後半から実際の組み立てが開始されます。日本は、二〇〇〇年から日本の施設の建設を始めるわけでございまして、現時点では順調に計画どおり進んでいるところでございます。
  20. 原田昇左右

    原田(昇)委員 日本は非常にまじめにやっておることはよくわかりますが、外国とよく情報交換して、日本ばかり進んでほかができなかったというようなことのないように、バランスよくやるようにやっていただきたい。  宇宙ステーション宇宙飛行士日本が派遣することになって、非常に期待されておるわけですけれども、何人ぐらい飛行士というのは要るのですか、今後。それをお答えいただきたい。  それからもう一つ飛行士安全性の問題なんですが、原発の労働者の被曝の何か基準によりますと、これ以上被曝してはいけないというのは、四百ミリシーベルトとかいう数字があるのですよ、どのぐらいだかよくわからぬですが。ともかく、半年いるとその八倍ぐらい被曝するであろう、そういうことを聞いておりますが、それは大丈夫なのか。  それからもう一つ陽石とか何か相当ぶつかるのではないか。そういうのにぶつかって死んでしまうようなことがないだろうか、そういう事故は起こらないだろうかとか、そういうことはどう考えておられるのか、素人の単純な心配なんですが、御説明いただけますか。
  21. 松井隆

    松井参考人 三点ばかりの御質問と思います。簡単にお答えいたします。  まず、宇宙ステーションができたときに、日本人の宇宙士がどのくらい必要かという御質問でございますけれども、結論から申しますと、六人プラスアルファというふうに考えてございます。まだ、ロシアが参加して諸条件がはっきりしていないところがございますけれども、私どもは年に二人を派遣したいと思っております。  年に二人と申します。そのそれぞれについて申し上げますと、一人についていいますと、採用して訓練をして、それから宇宙に行って、それからまた戻ってきてブリーフィングをして、それからさらにもう一回リハビリをするとか、そういうことがございます。一人について約三年間のサイクルがかかるというふうに考えてございます。したがって、それを計算しますと六人になるわけでございます。ただ、それは予備がございません。したがって、六人プラスアルファ、二人にするか三人にするか、それはまだはっきりしておりませんけれども、そういう数が必要というふうに考えております。  それから、その次の被曝放射線量の話でございます。  私ども、既にも利、向井、それから若田、この三名が宇宙に行ったわけでございまして、私どもの推計したところでは、例の原子力でいいます放射線業務の従事者の被曝限度量というのがございます。これは五十ミリシーベルトパー年でございますか、になっているわけでございますけれども、それの大体二十五分の一から十分の一ぐらいだと思っております、その三人に関しましては。ところが、宇宙ステーション時代になりますと滞在期間が長くなるということで、先生の御質問でございますけれども、確かに私どもの計算では、六カ月というふうに仮定した場合には、恐らく放射線作業従事者の三ないし四倍ぐらいではないだろうかというふうに考えております。  それで、宇宙飛行士の健康に影響が出ないようにいろいろな方策を今検討してございまして、その一環として、例えばロシアから今いろいろと情報を入れようとしているところでございます。そんなようなことをいたしまして、万全を期してまいりたいというふうに考えてございます。  それから最後に、陽石の話でございます。  宇宙にはいろいろなごみと申しますか、そういうものがあるわけでございまして、一つは、十センチ以上の大きさのもの、これは大体計測、測定しておりまして、どこに何がある、どのくらいのものがあるというのはわかるようになってきております。したがって、十センチ以上のものの場合には、宇宙ステーションがわかればそれを避けるという方法をとりたいと思います。  それから一センチ以下は、これは宇宙ステーションの方に適当な防護壁というのですか、そういうものをつくることに設計上なっておりまして、その防護壁によって一センチ以下ならば大丈夫というふうにデザインされております。  問題は、その一センチから十センチの間でございますけれども、この場合は、穴がもしあけば、ほかの幾つかのモジュール、部屋がございますもので、そういうところに移動して、それから修理をするとか、そういうことを考えているようでございます。  ただ、その確率でございますけれども、私どもの計算した範囲では、一センチから十センチメートルのものが衝突して穴があく確率というのは、宇宙ステーションが五十年間に一回ぐらいの確率ではないだろうかというふうに言われております。  以上でございます。
  22. 原田昇左右

    原田(昇)委員 宇宙ステーションと地上との間で物資を輸送するというために、日本版のシャトル、HOPEというものを開発をしよう、無人でやろうという非常に結構な話だと思うのですが、その一環として、ついこの間ハイフレックスというのを打ち上げて実験されましたね。あれは成功と見るのかどうなのか。ともかく太平洋におっこちたのを何かひもが切れてなくしてしまったというわけでしょう。大変遺憾だと思うのですね。見ると聞くとでは大違いという言葉がありますけれども、情報は集まっておるからほぼ成功だと大臣もおっしゃったわけですが、私はちょっと甘いと思うのです、これは。最後に機体が発見されなければ何にもならないのです。何でこんなことになるのですか。大体、ロープが切れるというのはおかしいじゃないですか。今まで実験もしていないのですか。設計ミスじゃないですか。  それからもう一つついでに言いますと、「もんじゅ」だって何か温度計が折れたというわけでしょう。あれだって、事前にちゃんとテストしてあれば、あんなことになるはずがないんだ。つまり、案外メーンのところでなくてちょっとしたところで失敗をする、それがもう取り返しがつかないというようなことになっておるのではないか。私は非常に遺憾だと思うのですよ。その辺、どういうようにお考えになっているか、聞かせてもらいたいと思います。
  23. 松井隆

    松井参考人 先生指摘のとおり、ハイフレックス回収に失敗したのはまことに申しわけないと思っております。このハイフレックスにつきまして結局わかったのは、機体を浮遊させるフローテーションバッグと機体を結ぶロープが切れていたということでございます。  それで、実は何にもテストしていなかったのかという御指摘でございますけれども、幾つかのテストをしてございます。  まず、考え方としては、こういうものは私ども前からTT500Aとかいろいろな実験をやっておりまして、そこの経験で、大体その物体の重さの十倍の荷重に耐えれば大丈夫という前提で物事を運んでおります。したがって、その十倍の荷重に耐えられるかどうか、そのテストはしてございます。それから、もちろんとめ具についても、外れないかどうか、そういうテストもしてございます。  さらに、フィールドテストといたしまして、一つはこれは横浜の追浜の方でやったのでございますけれども、四回ばかり、十メーターの高さのクレーンから、同じもの、同じ形、同じ重量のものを落としまして、それでもってちゃんと機能するかどうかというテストをしてございます。  それからもう一つは、回収するための回収船全体の訓練を含んででございますけれども、門司沖でやはりその同じものを約一・五時間ばかり浮かせまして、それから回収するというようなこともやってございます。  そういう意味では、全然何にもしなかったのではなくて、そういうことはやったつもりでございますけれども、いずれにしろ、結果としてそうなったということについてはまことに申しわけないと思っております。
  24. 中川秀直

    中川国務大臣 ハイフレックスの実験装置、実機の回収に失敗したことは極めて遺憾である、また、貴重な血税を使ってのことでございますから、これは心からおわびをしなければいけない、こう申し上げているところでございます。  私が大臣談話等で発表したものは、さはさりながら実験データは十四項目中十二項目はとれた、またその解析結果も、最近聞いたわけですけれども、非常に良好である、その前段の十二項目とれたということを申し上げた次第でございます。  実は、回収予定地点とほぼ三キロぐらいしか違わないところに着水したということでございますから、回収船そのものがその予定地点にもっと近いところにおれば、切れる前に回収できたのかとか、あるいはまたロープがもう何本もあればよかったのではないかとか、そういう御意見も私のところにも来ておりますので、いずれにしても、原因の究明に宇宙開発事業団と航空宇宙技術研究所に対して全力を尽くすように今指示をしておるところでございます。  たまたま海洋科学技術センターの「かいこう」が、翼がちょっと故障してしばらく調査をストップしていましたが、直りましたので、近々小笠原の向こうのグアム島の沖合かなんかでまた実験を再開する。多少時間があるようですから、どこまでできるか、深い海ですし、潮流も激しいところですから、それは全くその結果を期待することはできないと思いますが、その海域とハイフレックスが落ちたところも潜って調べてみるということも事務方で検討して、一応、余り無理はさせられないのでありますが、やらせることにもいたしております。  いずれにしても、委員指摘のとおり、先端技術開発に当たって、その先端的な技術のみならずもっと簡単な、「もんじゅ」の温度計もそうでございますけれども、足元の技術、在来技術、これに関して十分注意を怠らないようにきちんとやらないといけない、本当にそういうことを痛感して教訓にしてまいりたい、このように考えております。
  25. 原田昇左右

    原田(昇)委員 今の大臣のお話ですが、私は、今から捜そうというのは結構な話だけれども残念ながら無理じゃないかな、こう思いますよ。余りむだはやってもしようがないと思うのであります。しかし、その心意気は大変評価させていただきます。  今おっしゃったように、先端技術開発というのは案外足元のところに落とし穴があったりなんかするので、先端でないところをきっちり目を配ってやるべきだと思うのです。「もんじゅ」の温度計だってそうでしょう。今のあれだって、あなた何回も実験したと言うけれども、切れちゃったじゃないですか。切れたという厳然たる事実があるわけです。何で切れたかもう少ししっかり原因を探求してもらわぬと、これは大変な話ですよ。つまり、技術の隅々まで、案外平凡なところまで気を配らないといけないということの証拠だと思うのですね。  それから、この前政府の発表で私はけしからぬと思っているのは、アフリカのガーナで発見されたというあの例の文部省が打ち上げた人工衛星エクスプレスだ。事故調査委員会だか何かつくって、それがインチキな報告をしておるんだよ。太平洋におっこちましたと。そうしたら、ガーナから出てきちゃったんだ。一体どういうように考えているの、これ。事故調査委員会なんというのはインチキだよ、こんな報告は。これだけでもう当てにならないということになっちゃうよ。それで、そういういいかげんなことを書いたりするのはけしからぬじゃないか。どういうように考えているの。
  26. 早田憲治

    ○早田説明員 お答え申し上げます。  エクスプレス衛星は、日本側とドイツ側が共同で開発をいたした衛星でございまして、打ち上げを文部省宇宙科学研究所が担当する、こういう役割分担の上で実施したプロジェクトでございます。  落下地点の発表につきましてでございますが、衛星の軌道上の運用につきましては、ドイツ側のドイツ宇宙運用センターが担当するという役割分担になっておりまして、そのドイツ宇宙運用センターからの報告を受けまして、文部省宇宙科学研究所において太平洋上に落下したものではないかという御報告をさせていただいたということが事実関係でございます。
  27. 原田昇左右

    原田(昇)委員 じゃ、まあ文部省には責任がない、あれはドイツがやったことだということでいいんだね。そういうことですね。ドイツのやることについては、あなたの方は何ら責任がないの。それはちょっとおかしいんじゃないか。共同でやったんだろう。
  28. 早田憲治

    ○早田説明員 もちろん、打ち上げの正確な軌道に投入することに失敗したということで大変、一番の責任は文部省側にある、日本側にあるということでございますが、繰り返しになりますが、衛星の軌道の確認、運用等につきましてはドイツ側が情報を持ち、そこが分析、解析をする、それで日本側に事実関係は教えていただけるというような役割分担になっておりましたので、その点につきましては、推定落下地点の発表の点につきましてはドイツ側の方に第一義的な責任があろうかというふうに考えております。
  29. 原田昇左右

    原田(昇)委員 以上、宇宙開発について気になる点を申し上げたわけでございますが、宇宙開発自体、私は、技術の牽引力でもあり、国際貢献もできる分野であり、青少年に何よりも夢を与えるという分野でありますから、大いに進めるべきだと思うわけであります。しかし、そのやり方については、やはり莫大な税金を使ってやるわけでございますから、まず十分なPR、国民の理解と支持ということが非常に大事だ、それをぜひこれからもやっていただきたい。そして同時に、コストダウンということに気を配っていただきたい。それから、技術開発だから失敗はつきものだということじゃなくて、先端であろうがなかろうが細かいところまで気を配っていただきたい。  以上要望いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  30. 井上喜一

  31. 小野晋也

    ○小野委員 中川大臣におかれましては、一月初旬に御就任以来これで一カ月余りになろうかと思います。その間に、「もんじゅ」の視察を初め、中間取りまとめの報告、そしてまた指導改善、またスペースシャトル・エンデバー・ミッション、そしてJI、先ほど原田委員の方から話があったハイフレックスの実験と、もうこの一カ月の間に随分いろいろな業務を精力的にこなしてこられまして、その真摯なお姿にまず敬意を表し、今後の御活躍を御期待申し上げたいと思います。  先ほど申しました、このわずか一月余りにも、これほどマスコミにたくさんの話題が提供される今の時代の科学技術の姿、これはまさに現代という時代が科学技術に対して大変大きな期待を寄せていると同時に、科学技術庁の任務の重大さを示しているものかと存じます。ぜひ長官を初め、科学技術庁の皆さん方がこの社会的ニーズにおこたえをいただきますように心より御期待を申し上げたいと思います。  さて、本論に入る前でございますけれども、一冊取り上げてみたい本がございます。それは、比較文化論の研究者でございます森本哲郎氏の著作「ある通商国家の興亡」という本なのでございます。この本は、お読みになっておられる方も随分おられるかと思いますけれども、紀元前のアフリカ北部に隆昌をきわめましたカルタゴのその発展と衰亡の歴史を追いかけてきた本でございます。なぜあれほど発展を遂げた通商国家カルタゴがあえなく滅亡の道を歩まねばならなかったのか。その問題をテーマに取り上げている本でございます。その本の中で、余談のような部分でございますけれども、おもしろい話が紹介されているのでございます。  それは、昔この著者森本哲郎氏が将棋の大山名人にインタビューに行ったことがあったのだそうでございます。そのときに、大山名人、あなたの得意な手は何ですか、こうお尋ねをしたところ、その大山名人は、「得意の手? そうねえ、アマチュアの人なら得意の手いうのあればいいですがね、プロには得意の手あっちゃならんのです。アイツ、あれ得意や、いったら、ねらい打ちされますもんね」こういうような話でございまして、森本氏はその話を聞いて、名人というのはさすがだな、こう感銘を受けたんだと言われるのであります。  この話というのがまさにこのカルタゴ滅亡の話というものと密接に関連をしているわけでございまして、当時のカルタゴは世界で一番の経済力を持った国であったということであります。しかしながら、その経済力の優秀さゆえに周辺の諸国の恨みを買い、嫉妬心を買い、そしてまた周辺諸国からは脅威を感じられてきた。その過程を通し、ローマ帝国の力によってカルタゴという国が滅亡させられるわけであります。  このカルタゴ滅亡に関して森本氏はこんなふうに述べております。「カルタゴの歴史は文明の浅薄さと脆弱さをはっきり示している。それは彼らが富の獲得だけに血道をあげて、経済的な力のほかに、政治的な、知的な、倫理的な進歩をめざそうと、何の努力もしなかった、ということである。」  実は私も、この科学技術委員会に所属してからはまだ日数はわずかでございますけれども、この永田町の方に当選してまいりまして二年半余り科学技術行政を見てまいりました。また、科学技術庁の姿を拝見させていただいてまいったわけでございますけれども、その科学技術庁が持っている問題というものが、どうもこの森本氏が指摘している問題と非常に関連しているような気持ちがしてならないところがあったわけでございます。  科学技術庁の皆さんは大変純粋な思いを持って取り組んでいただいていると思います。一つの決まったスケジュールが立てられますと、その上に懸命に努力をいただいていると思います。そして、科学と技術の進歩のみをみずからの使命として、本当に私ども敬意を表するほどに熱心に追求していただいてまいりました。これは大変とうといものだと私は敬意を表しております。  しかしながら、状況が大きく変わってくる中にあって、科学技術という問題が、一番最初御指摘申し上げましたとおり、もう既にこの日本の国の中における単なる一部分ではなくて、非常に大きな部分になってきているんだ。それは単に日本の国のみならず、世界の中においても、日本が果たすべき役割、またその責任というものについては大変大きなものが生まれてまいっておりまして、科学技術創造立国を標擁し、世界の中で科学技術大国に今なっているということを考えましたときに、単に科学、技術の進歩のみが目的であるということでいいのだろうかという気持ちがしてまいったわけでございます。  先ほど原田委員の方からも、科学技術のあり方という問題での指摘がございました。宇宙開発、「もんじゅ」の問題、さまざまな問題に対して世論が必ずしも科学技術庁の取り組みに対して拍手を送っているのみではないということ。そして、もっと広く考えてまいりました場合には、二年前には、若者の科学技術離れということを科学技術庁が旗を振ってこの国に問題提起をなさったわけでございますけれども、このような問題を考えましたときに、科学技術庁自身も、何かこの潮流の中で考えるべきものを持ってきているのではなかろうかと思うのであります。  森本氏は、この問題について、先ほどのものと重なりはいたしますが、こんな言葉を書いております。カルタゴが富の追求に熱心だったことが悪いのではない、これは大変いいことだ、しかしながら、彼らの過ちは、それ以外に何も求めなかったところにあるのだと。ライバルの、当時ギリシャと商売にかけても競合し合うわけでありますが、それを比較する中で、こんなふうに文章を書いておるのですね。   早くからカルタゴのライバルであったギリシア人も、商売にかけては、じつにしたたかだった。カルタゴ人以上に狡猾だったともいえる。そのギリシアも、ローマの支配下に置かれてしまったが、彼らの創造した「文化」は二千年後の今日まで、輝かしい光芒を投げている。ギリシア文化は、現代にも生きているのだ。  なぜだろう。ギリシア人は金銭を手段とみなし、富によって文化を創造することを、はっきりとした人生の目標に据えていたからだ。それゆえ、ローマに征服されても、ギリシアは文化によってローマを征服した。そして、人類に比類のない遺産を贈ることができたのである。  カルタゴの悲劇は、輝かしい文化を生みだしたギリシアと対比することによって、鮮やかに浮き彫りにされる。カルタゴが残したのは、ただひとつ、〝遺書〟だけであった。身をもって書き残した歴史の遺言。それには、〝人間は金銭のみに生くるにあらず〟という教訓が、鮮血をもってしたためられているはずである。 こういう文章でございまして、これは科学技術庁の問題として御指摘申し上げておりますけれども日本の国に対する警世の書として森本さんは書かれたわけであります。  中川大臣は、大変博識の方と平素より私も尊敬している方でございますし、先日大臣が出されましたこの「首相補佐」という本、拝読させていただいたわけでございますけれども、この中にも、二十一世紀のリーダー像について書かれる中で、六つその特徴を挙げる一つ、一番最初に、これからのリーダーには、科学技術を十分に理解する人でなくてはならない、こういう一項を挙げていただいております。それほどに科学技術という問題を重視され、そしてそれに理解を持たれる大臣でございますから、現在の科学技術庁の持っている体質というものにも、現代というこの時代性の中で考えましたときに、少し問題を感じ、また時流との間の違和感、ギャップを感じるものをお持ちになっておられるのではなかろうかと思います。  さまざまな課題が今科学技術庁に投げかけられているわけでございますが、これは決して科学技術庁に対して、この活動を否定するというよりも、むしろこのような問題を通して新しい時代に科学技術庁が脱皮するように、その改革を進めるように勧めるサインが世の中から送られているんだろうと私は考えている次第でございます。  私は、科学技術庁が単に先進技術開発して科学的知見を広げる省庁というだけではなくて、国民生活や、ひいては二十一世紀日本国家を左右する主要省庁としてもっと総合性を高めて、また国民の中に存在感を持って、また社会的な影響力を十分に有する省庁に育っていかなくちゃならないんだ、それほどに科学技術という問題はこれからの時代に大きな意味を持つものになってくるんだ、こう考えている次第でございまして、非常に幅広い問題提起でございますけれども大臣、就任早々でございますが、御見解をお聞かせいただきたいと思います。
  32. 中川秀直

    中川国務大臣 科学の進歩、技術の進歩と人類社会ということについて、長年にわたって研さん、努力をされてこられ、また高い見識を有する小野委員のただいまの御指摘は、私自身全く同感でございます。  科学技術の役割というものは、私は、単に国民生活の向上に資するというだけではなくて、今や、二十一世紀に向かいまして、まさに人類の生き残りをかけた活動であるし、そしてまた人類の夢を求めていく活動である、このように認識をしております。  我が国がそういう中で、我が国の持つ潜在的なすべての力をそこに最重要国策として集中していくということは、二十一世紀日本の最大の戦略、また正しい国策であろう、こういうふうに考えている次第でございます。  特に、地球環境の問題、食糧と人口の問題、エネルギーと経済の問題、万般にわたって技術の進歩、科学の進歩なしに問題を解決することはできない、このように考えておりますし、また、そうした科学の進歩、技術の進歩が人類の進歩を今日までもつくり上げてきた、政治や経済はむしろその後を追いかけてきた、こういう認識を持っている次第でございます。  そういう意味で、本当に、今小野委員がおっしゃったような流れの中で、科学技術行政というものは、さらに信念を持って、同時にまた決意を持って当たっていかなければならぬ、こう考えております。  一言お答えさせていただきます。
  33. 小野晋也

    ○小野委員 ぜひ大臣には、広い視点から、また多面的な視点から、科学技術行政の推進、また必要な改革を行っていただきますように御要望申し上げておきたいと思います。  引き続きまして、昨年の十二月に事故を起こしました「もんじゅ」の問題について触れさせていただきたいと思います。  それに先立ちまして、一月十三日、動力炉・核燃料開発事業団総務部次長、故西村成生さんのみたまに心より哀悼の意を表しておきたいと存じます。  さて、先日中間報告が出される中で、三つの視点を科学技術庁としては提出をなされました。  一つは、原子力発電所は安全と言いつつ、現実に事故を起こしたその技術的問題について真摯にそれを受けとめたい。それから二つ目には、事故が起こった直後に、その炉をどのように操作するかということについての対応について問題があったことを認識する。それから三つ目には、対外的な広報やその後の事実関係の問題について、例えばビデオテープ等の問題等について、必ずしも的確な対応ができたと思わない。このような問題を指摘されまして、それぞれに改善の指示を行い、さらにそれを進めていくという報告であったかと思います。  昨年の十二月の末に科学技術委員会で、集中審議の中ではこの二番、三番の問題を主に取り上げましたので、一番の技術問題について、今回は一点取り上げてみたいと思っております。  それはやはり、温度センサーさやが破損をしたということでこのような事故が発生したということでございますけれども、その破損原因が、破断断面を調べる中で、金属疲労を引き起こしていたということが、もうこれはほぼ間違いがないという状況だろうと思っております。  それに対して、先ほど原田委員指摘にありましたとおり、本当に本質とかかわりの非常に薄い部分である、しかも、実験さえ行っておけば簡単にその問題が発見されるという部分であります。それも、実際の流体の中にそのモデルを置いて実験するまでもなく、流体力学の研究をされてこられた方ならばおわかりのとおり、流体は非常に単純な流れでございますし、そして、その中に入れている温度計の形状も決して複雑な形状でございませんから、簡単なコンピューターシミュレーションによりまして、その共振周波数は簡単に導き出せる程度のものでございます。そのようなものについてこのような問題が起こったことについては、極めて厳しく私どもは受けとめなきゃならないと考えております。  そこで、もうずばりお尋ね申し上げたいと思うのですが、このような状況の中でこの事故が起こったことについては、温度計部の設計自身のミスであった、これを結論づけていいかどうか、お尋ね申し上げたいと思います。
  34. 宮林正恭

    ○宮林政府委員 お答えさせていただきます。  先生の御指摘のとおり、温度計の破損の原因につきましては、温度計のさや管が振動いたしまして、その疲労が蓄積をした結果生じたと考えられる観察結果を得ております。現在、それ以外のいろいろな分析を進めているところでございます。現在のところでは、引き続き温度計の材料のかたさ試験とか設計の考え方がどうであったか、それから、施工のとき、どういうふうな施工をしたか、あるいは加工の仕方も、どういうようなことをやったか、こういう事実関係をずっと調べてきているところでございます。  それで、現在、これらのデータをまだ全部入手をしたという段階にまでは残念ながら至っておりません。これらにつきましては、タスクフォースにおいて議論は既に開始をしておりますけれども、現段階におきましては、やはり十分データを入手した段階で評価をし、その温度計の破損原因あるいは設計ミスであるかどうかということを判定をさせていただきたい、こういうふうな段階でございます。
  35. 小野晋也

    ○小野委員 技術的な問題調査というのは、一〇〇%確実になるまで正式な発表というのはできないというのは、私も理解できる点でございます。ただ、現在までの状況を私どもから判断をいたしましても、これは、ほぼ間違いなく金属疲労の問題であるし、このような部署で金属疲労を起こすということは、私自身の見解でございますけれども、やはり設計ミスであったと言わざるを得ない点だろうと思います。  そこで、引き続いてお尋ね申し上げたい点というのが、このようなトラブルによって、実際「もんじゅ」が運転の停止を長期間にわたって余儀なくされてくる。その運転停止期間においても維持関係の経費というのは膨大なお金が実はかかるわけでございますけれども、そのような問題についてどういう責任をと?ていただけることになるのか、また、金銭的な負担というのが当然生まれてくるわけでございますが、この金銭負担というものをどこが負担することになるのか。  この前提といたしまして、「もんじゅ」は、確かにこれは実験炉でございますから、実験ということは、トラブルが起こることを想定してつくっている炉でございます。ただ、私自身が疑問に思いますのは、本来、困難な技術的部分においてトラブルが発生をするということは、これは当然のことでありまして、このリスクを我々は当然のこととして含みながら、このプロジェクトを承認し、予算化をするわけでございます。先ほど原田委員指摘ございましたとおり、本当に、本来こんなところで事故が起こってはならない、もう当然、既成技術で十分な解析さえ行っておれば起こるはずのない事故が起こって、そのために随分大きな負担が求められてくるということについては、やはりこれは、監督官庁の科学技術庁としても真摯に受けとめなくてはならないところだろうと思います。  そんな前提に立ったときに、今回のような事故に対して、その損害負担をどこにどう求めようとされるのか、この点についてのお考えをお聞かせをいただきたいと思います。
  36. 岡崎俊雄

    ○岡崎政府委員 先生御承知のとおり、「もんじゅ」の設計、製作及び施工に当たりましては、建設主体であります動燃事業団と各製造企業がそれぞれの役割分担のもとに進めてきたところでございます。  今回の、漏えい事故を起こしました、この点につきましては、先ほどの安全局長の答弁にもございましたとおり、現在、徹底した原因究明が行われている段階でございます。したがいまして、その原因究明の進展に応じまして、それぞれの責任の所在というものが明らかにされていくものと認識をしておるところでございます。  御指摘の、今後の損害等の負担につきましては、その責任の所在が明らかにされた上で、動燃事業団と各製造企業との間で、今先生指摘の点も十分踏まえながら検討されていくべきものと認識をいたしているところでございます。
  37. 小野晋也

    ○小野委員 それでは、続きまして、核燃料サイクル見直しの議論のことに関して、一言所見を申し述べ、そしてまた御質問をしたいと思うわけでございます。  現在、この「もんじゅ」の問題以降、将来のエネルギー政策をめぐる問題、また日本の核燃料政策をめぐる問題等に非常に大きな影が投げかけられているということは皆さん御承知のとおりでございます。  その問題の提起を見ておりますと、一つには、やはり原子力発電という問題が、放射性物質を扱うということに伴う危険性をはらんでいるということが改めて認識されたことによって提起される問題であろうと思います。  それからもう一点は、電力会社等を中心にして起こっております見直し論というのは、コスト的にむしろ核燃料サイクルというのは成り立ちにくいのではないかという疑問でございます。それが、今回の事故を契機といたしまして公然と語られるような雰囲気が生まれてきているということについては、やはりきちんとした認識を持つべきだろうと思う次第でございます。  せんだっては、ATRも、コスト問題で最終的に中止に追い込まれております。その背景を資料を請求して見てみますと、ATR実証炉については、昭和五十九年、建設予定したときには、その建設費見込みが三千九百六十億円であったのが、平成五年段階で見直しをやってみると、五千八百億円になっているということで、この建設費高騰には電力会社としてとてもその負担にたえないということであったようでございます。また、六ケ所村の方に建設予定されております再処理工場の問題につきましても、計画変更前といいますか、最初の見通しですと五千七百億円の建設費だったものが、その後調査してみますと、一兆三百億円という建設費に変わるということで、これは見直しをせざるを得ないだろうというような話にもなっているようでございます。  科学技術庁がお取り組みになっておられますさまざまなプロジェクトにおいて、このように、計画当初予定された価格と、それから実際それが進行している過程で見直してみると、相当コストが変わってきているという問題が出てきているわけでございまして、綿密にコスト積み上げをしながらコスト算出をしているはずなのに、なぜこれほど大きな価格差が生まれてくるのかという点は私どもも大変疑問に思っているところでございます。  これはもう既に幾多の皆さんが御指摘されている問題でございまして、そのたびの答弁は、円高が起こったから結果的にコストが高くなったとか、当初予想できなかったトラブルがあってそれを解決するためにお金がかかったですとか、余計に新たな施設を建設しなくてはならなくなった関係コストが高くなったとか、こういうようなことが言われるわけであります。  ビッグプロジェクトというのは、金額が大きくて長期間にわたるからビッグプロジェクトだというふうに言われるわけでございましょうけれども、その当初の見積もりを立てて計画を推進しようという段階において、もう少しきちんとした評価作業を行うべき問題ではなかったのか。また、将来起こるいろいろな要因というものは、当然これは突発事故もあるわけでございますけれども、ある程度織り込みながら当初計画というのはつくられるべきであって、これをやれば必ずうまくいくのだということだけで走っていく、そんな形のプロジェクトの進行、運営というものはそれでいいのかどうか。この点についてどのようにお考えなのか、また、改善策があれば御指摘いただきたいと思います。
  38. 中川秀直

    中川国務大臣 まず第一点の核燃料リサイクル政策についての御指摘でございますけれども、御案内のように、核燃料、ウラン燃料自身も四十三年ぐらいの確認埋蔵量、また、それによる原子力発電に伴いまして放射性廃棄物というものが必ず出てまいります。プルトニウムも出てまいります。そういう使用済み燃料等々の適正な処理処分というのは、これはもう本当に重大問題でございます。現に三割を超える、我が国においての発電総量に占める割合がそのような比率になってきている原子力でございまして、そういう諸点から考えまして、やはりこのリサイクル政策というのは重要である、今の政策の基本というものは、いろいろな、広範な御議論がこれから当然あり得べきでございますけれども、今政府としては、これは重要であるという認識に立っているわけでございます。  また、経済性の議論という御指摘がございました。これについてももう委員御高承のことでございますけれども、OECD等の評価でも、ワンススルーでアメリカのようにすべてプルトニウムを含めて使用済み燃料を処理処分してしまう、このコストを一といたしますと、リサイクルでやる場合は、サイクルコストが一・一、発電コストで一・〇一五から一・〇二五。基本的には本質的な差は余りないという評価が行われております。  また、OECDの手法を使いましたもので計算をいたしましても、発電の経済性ということから考えましても、例えば原子炉の耐用年数も考え、あるいは他の発電電源の耐用年数も比較をし、そしてまた、原子燃料については、濃縮だとか再処理だとか、あるいはまた国内の加工とか海外のMOX加工とか、そういうリサイクルも入れ、そしてまた、廃炉関係あるいは廃棄物処理処分関係の関連費用も全部含めまして比較をいたしましても、キロワットアワー当たりの発電単価というものは、例えば、水力十三円、石油火力十円、LNG火力九円、石炭火力十円、原子力はやはり九円ということで、これは経済性ということからいいますと、やはり妥当性を有している、こう考えておるわけでございます。  最後の点のビッグプロジェクトに関する評価の問題でございますけれども委員指摘のとおり、ともかくこういうものは多くの人材と資金を要することでございますから、設定とされた目標の妥当性と現実に行われているコスト、そういうものを事前にも、またそれぞれ次のステップに上がる、例えば、原子力でいいますならば実験炉、原型炉、実証炉、実用炉、こういうステップごとにやはりそういう中間段階での評価というものも、常に適宜必要な評価をしていくということが極めて重要であろう、こう考えておりますし、国会の御決議も、今度のATRではそのような御決議がございました。そういうことで、いろいろな方々の英知を結集してそういう努力をさらにしていかなければいけない、これはもう原子力においても宇宙開発においても同様であろう、このように考えております。
  39. 小野晋也

    ○小野委員 それでは、ちょっと時間的なものもございますので、質問を準備していたものの一つは要望に切りかえたいと思うのですけれども技術開発とそれを一般に普及する問題でございまして、今大臣の方からも科学技術振興することが日本の国の将来の大切な要素であり国民の夢であるということを言われたわけですけれども、その研究が必ずしも民間企業、とりわけ中小企業への広がりを得ていないという問題について、私もいろいろとどこに要因があるのだろうということを検討してまいったわけでございますけれども研究機関と民間企業をつなぐパイプの部分が日本の国においてはまだ十分形成されていない、大変細いという問題があるように思っております。  例えば、不動産業等の場合ですと、土地を売りたいという人と土地を買いたいという人の間でたくさんの不動産業者が存在をしながらその仲介を行い、契約成立すればそこに経済的利益が生まれてくるというような仕組みを社会的に持つことを通して、日本の国における土地取引が非常に活発に行われるという状態が生まれておるわけでございまして、技術の問題においても、国等の研究機関の研究成果を民間企業に敷征するための仲介業というようなものをきちんとした生業として認めるような社会的仕組みをこれから研究すべきだと考えておりますので、この点、よろしくお願い申し上げたいと思います。  それから、最後の質問になりますとやはりこれはいつも取り上げておりますロボリンピックの問題でございます。  この内容についてはたびたび触れておりますのでもう触れないことにさせていただきたいと思いますが、私が当選してきて以来、近江大臣のときはよく勉強させていただきたい、そして田中大臣のときはできるだけ早く実現をさせていただきたい、そして浦野大臣のときは具体的に若手職員の間で検討を進めているというように、だんだんとこの問題を前向きに取り上げていただいているわけでございます。  平成八年度の予算の中にこのロボリンピックを扱う部分をお持ちになっておられるというふうに私ども話を聞いているわけですが、これがどのような予算であるのか、そして、今後このロボリンピツクの問題についてどのようにお取り組みを進めていかれるお考えなのか、この点をお聞かせいただきたいと思います。
  40. 中川秀直

    中川国務大臣 小野委員より、かねてそうしたいろいろな意義を有するロボリンピックのプランについて私もお伺いしていて高い関心を寄せてきたところでございますが、今般、長官になりまして、改めてその点も確認をさせていただきました。  平成八年度予算では、九百万円の予算で、今年度中に開催を検討している科学技術に関する人材育成の国際シンポジウムというものを予定をいたしております。  ロボリンピックでございますから、高専ロボットコンテストという、国内でテレビでも中継されているそういう国内の行事ではなくて、当然国際的なものになろうと存じますので、そういうシンポジウムを通じて本件について各国と意見交換を行うということで、平成八年度、取り組んでまいりたい、こう思っております。  意見交換の中には、ロボリンピックのイメージやその開催目的、基本的な事項について、こちらも検討いたしますが各国の御意見も伺うということをしなければならぬ、こんなふうに考えておりますし、また、引き続き委員の御意見も、いろいろ御指導もいただきながら、この実現に向けて努力、検討、取り組みをしてまいりたい、こう考えております。
  41. 小野晋也

    ○小野委員 今科学技術庁には、一番最初に申し上げましたとおり、国民的にも国際的にも大変大きな期待が寄せられていると思います。それぞれ大きな課題を抱えて各部署御苦労だと思いますけれども、この期待にこたえて立派な今後の科学技術推進に御尽力いただきますことを御期待いたしまして、質問を終えたいと思います。
  42. 井上喜一

    井上委員長 上田晃弘君。
  43. 上田晃弘

    上田(晃)委員 新進党の上田晃弘でございます。  時間にも限りがございますので、本日は「もんじゅ」の問題に集中いたしまして何点か質問させていただきたいと思います。  私自身、衆議院議員に初当選させていただいて二年半、まことに浅学非才な人間ではございますが、科学技術委員会理事という役職を賜ったことに対し大変誇りとまた感謝を持っております。正直、現場に行ってさまざまな国民、有権者の皆様にお話しするときも、やはり二十一世紀日本の大きな進路を決するかなめはこの科学技術であり、またそれを所管している科学技術庁の仕事というものはこういうことだということを本当に一生懸命話してきた一人でございます。  それを前提といたしまして、今回の「もんじゅ」の事故から事件へ発展してきたこの経緯、大変にこれは私個人としても残念であり無念であります。「もんじゅ」のプロジェクトについては極めて推進に対し理解し後押しをしてきたつもりの一人といたしまして、この問題はやはり真剣に原因究明をし、そして大臣も所信表明の中でおっしゃったように、国民の理解、地元の理解、そして多くの幅広い方々の御意見を聞いて立ち直らせたい、そのように私も思っております。  ところが、残念なことに、週刊誌等を見ますと、もはやいろいろやゆされておりまして、何ですか、昭和の三大ばか査定というのがあったそうで、戦艦大和と今回の「もんじゅ」がほぼ同じ扱いにされて表記されておる。大変無念なことである、こう思うわけでございます。  私思いますのは、一たび大地に倒れたものはやはり大地に手をついて立ち上がる以外にない。したがって、今回のこの「もんじゅ」の事故及び事件については、中途半端な姿勢で一、二年何か時を待てば立ち直ることができるというような次元の問題ではないと思っております。これは、大臣といたしましてどのぐらいの強い意識でこの問題に取り組んでいかれるか、この基本的な御決意のほどをまずお聞かせいただきたい。これが最初の質問でございます。よろしくお願いします。
  44. 中川秀直

    中川国務大臣 上田委員指摘のとおりでございまして、目下長官として当然科学技術政策推進の全般的な仕事もございますが、我が国の将来を踏まえまして、エネルギーの重要性等々から、この「もんじゅ」の事故というものによって生じた国民のクレジビリティーといいましょうか信頼を損なったということは、これはもう重大なことである、本当にそう思っております。  事故そのものもこれまた重大でございますが、その後のさまざまな不安、不信、疑問、怒り、地元の方々を中心にそういうものが起こってきておることがまた同様に重要で重大である、こう考えておりまして、まさに大地に手をついて再出発しなければいかぬ、こういう決意でありまして、そのために本当に全身全霊をこの問題にかけていきたい、こういうふうに今考えておるところでございます。  地元のこのプロジェクトに批判的なお立場の方とも先般お目にかかりまして、いろいろな御意見を伺いました。これからも真摯誠実に、そういう御意見の方にどういうふうに御理解していただけるのか、真剣に何回もお会いしてでも努力をしてまいりたい、こう考えております。
  45. 上田晃弘

    上田(晃)委員 大臣の御決意はよくわかりました。  ならば、それを前提といたしましてさらにお聞かせいただきたいのですが、実はこの質問は前浦野長官にも質問させていただきました。我が国の原子力行政、これは言うまでもなく原子力基本法の第二条にございます平和、安全、民主、自主、公開という原則のもとに推進をする、これがすべての大前提であろうかと思います。今回、反対側の方はさておいて、今まで推進されてきた方も含めまして、この大原則の中の平和、安全は、安全がちょっと今揺らいでおりますが、平和ということや自主ということについてはお認めになるにしても、やはり共通にして言われるのは民主そして公開なんですね。  大臣の御所見としては、現在、原子力行政はこの民主そして公開というものについては満足な状態にあるとお思いかどうか、この点をお聞かせいただきたいと思います。
  46. 中川秀直

    中川国務大臣 就任一カ月でわかったようなことを言うことは慎みたいという気持ちもいたしますが、少なくともこの一カ月間、いろいろな方々の幅広い御意見も伺いながら私なりに考えてまいりました。  これは原子力行政のみならず全般に言えることだと思いますけれども、これから二十一世紀を迎えます日本の行政のあり方あるいはまた政治経済のあり方というものは、やはり主権者、主人公は国民だ。その国民に対して説明する責任というものは、行政の側あるいは政治の側あるいは経済の側、企業の側というものに求められる。それをアカウンタビリティーと英語では言うのだそうでありますが、それが、戦後五十年、日本はややもすれば軽んじられてきたという認識を持っております。特にこの原子力の安全の問題等々、これはゆるがせにできない。既にもう三原則の中に民主、公開ということがうたわれているわけで、発想はきちんとあったのだと思うのですが、現実のレベルはもっと努力しなければいけない、こういうふうに考えております。  ただ、何事にも例外といいましょうか、核防護措置とかあるいは不拡散の問題とか技術の情報の問題とか、こういう公開することによって国際的な問題が起きるとか、そういう問題は緻密に検討しなければならぬと思いますが、しかし基本的には、公開ということをもう一度原点に返って努力をしていかなければいけない。そうしないとまた原子力政策そのものの土台が揺らいでくる、こういうふうに考えております。
  47. 上田晃弘

    上田(晃)委員 民主、公開の推進についてさらに努力をいたしたいという力強い御決意をいただきました。  さらに、そうしますと、具体例なんですが、まず民主という点におきましては、過日の本会議におきましても同僚の笹木委員質問をされております。調査及び原因究明の第三者機関、独立機関を設けるべきではないのか、こういうふうに質問をさせていただきましたところ、文言は正確には覚えておりませんが、橋本内閣総理大臣のお答えといたしましては、原子力安全委員会があるから大丈夫ですというような趣旨のお答えであったと思います。まさに木で鼻をくくるような回答だなと大変残念な思いでその御答弁を聞いていたわけでございます。  諸外国に目を向けますと、例えばアメリカのスリーマイル島の事故が起きたときには、この調査団に地元の住民もメンバーとして含んだというケーススタディーがあります。また、フランスの事故の場合も、あの官僚国家と言われるフランスでさえ原子力安全・情報会議という会議を設置して、専門家だけではなく労組、住民、学者、マスコミ、一般市民等々広く含んだ形でのこういう情報公開や議論をしました。  つまり、今回の問題は、さっき申し上げたように、どうやって大地に手をつけば立ち直れるかのこの手をつくという部分は、私なりの解釈では、技術の改変とか溶接の仕方をこう変えますとか、そんなレベルではないと思うわけです。  したがって、諸外国の例を見ましても、本当に真率な姿勢でこの問題をよい方向へ対処するためには、原子力安全委員会でやっていますから大丈夫です、または、科技庁の中にあるタスクフォースが専門家で、みんな偉い方々でやっているから大丈夫です、あとは皆さん安心してください、よらしむべし知らしむべからずです、これでは納得しないと思うのです。  したがって、民主という観点においてさらに努力をされたい、こう大臣今おっしゃったわけですから、具体的に今のタスクフォース及び原子力安全委員会の現状をより一歩さらに枠を広げた何か施策を大臣就任の期間に講じていただきたい、こういうふうにお願い申し上げたいのですが、どうでしょう。
  48. 中川秀直

    中川国務大臣 原因究明という問題と、ただいま先生のおっしゃる中には、事故時における情報公開とか、あるいはまた原子力政策全般にわたる国民合意の形成の仕方とか、いろんなレベルのものを含んだお尋ねであった、こう思うのでございます。  原因究明に関しては、確かにスリーマイルのときにはケメニー委員会ですか、カーター大統領が設けました。あの場合は、炉心溶融まで起こすという大変な事故、住民が避難するという事故であったわけですね。もちろん、そんな大事故に際会するようなことになれば、私は、これは政治家としての私見でございますけれども、そういった本格的な、当庁の体制のみならず、もっと広範なそういう取り組み方というものも当然検討されなきゃいかぬというような感じがいたします。  しかし、今、いろんな経緯を踏まえて、原子力委員会から原子力安全委員会というものが分離をされまして、法律で総理府に設置されまして、国会委員を任命していただきまして、そして二つの審査会や十五の分科会を持って、それぞれの専門の先生方が四百人近く集まっておられる、そういう体制が今あるわけでございます。国会がお決めをいただいて、そういう体制をおつくりいただいたわけであります。  先生方先生方で、科学技術庁の言うとおりにおれたちはなっているわけではないというプライドを持っていらっしゃいます。そこはそことしてやはり機能させていかなければいけないし、またそれをも疑問符をつけていくのであるならば、これはもう本当に安全行政というのはすべておかしいよということになっていってしまうのだろうと思います。そういう意味で、私は、この今の仕組みは機能しているし、またさせていかなければいけない、こう考えておるわけでございます。  ただし、先生指摘の点は、もっと広範な部分を含んでいると思います。その点に関しては、私も思うところがございまして、原子力安全委員会あるいは政策を進めていく原子力委員会あるいは当庁においても、もっと広範の、多くの方々の御意見を幅広く伺いながら、民主的に、事故時の情報公開のあり方、あるいは国民合意を全般的に求めていくそうした方法として、実は福井県知事初め三県知事からも強い御要請の中にそういうことが出ておりますので、その実現方に向けて、私なりのアイデアも口幅ったいようですが示しながら、早急に検討して答えを出して、具体的に取り組んでいけるように、今事務方に検討を命じているところでございます。
  49. 上田晃弘

    上田(晃)委員 誤解のないように、私は決して原子力安全委員会ではだめだということではなく、今大臣も最後の方に御発言がございましたが、原発誘致の三県の知事の皆さんからの要望としても、現在の原子力安全委員会の拡充というのでしょうか、それに、専門家の先生方のみではなく、地元の人たちの声も広く公平に反映されるようにシステム改善強化をお願いしたいという要望だと思います。私もその趣旨ですから、どうかそういった意味で御検討をお願い申し上げたいと思います。  それでは次に、ちょっと細かい話に入らせていただきたいと思います。  運転管理専門官制度の問題についてお聞かせいただきたいと思います。  私の認識では、運転管理専門官制度というのは、八一年ですか、日本原電の敦賀の原発、この放射能漏れが何と一カ月も隠ぺいされていたということの反省に立って、現場に緊張感を持たせることが大事であるということの背景から、科学技術庁がその運転管理専門官というのを任じて、現場に常駐をさせて、指導監督、連絡、それから巡回等をするようになった、こういうふうに認識をしておりますが、その認識でよいのかどうかがまず一つ。  それから、その運転管理専門官というのは、そうやって国から派遣されているわけですから、しかも私の認識では、例の原子炉等規制法の法にのっとったある一定の権限がある人が派遣されている、こういうふうに思うのですが、その点はどうですか。
  50. 宮林正恭

    ○宮林政府委員 お答えさせていただきます。  運転管理専門官の設置の経緯につきましては、私どもの承知をしておりますのは、五十四年三月に米国でスリーマイル島の原子力発電所の事故が起こりまして、これが当時のいろいろなアメリカの情報からしますと、運転員の誤操作、誤判断だった、また事故の際の迅速かつ適切なる通報連絡を欠いていたというふうなことから、まさに先生のおっしゃるとおり、緊張感を事業者に与えるというねらいを持って設置された、こういうふうに理解をしております。  それから、運転管理専門官の役割でございますけれども先生の方から、運転管理専門官が具体的な権限という形で持っていたのではないか、こういうふうな御指摘かと思うわけでございますが、現在の運転管理専門官は、私どものケースでいいますと、原子炉規制課というところの職員になっておりまして、全般的な意味では、まさに事業者のやっている状況を把握をする、こういうふうな役割を担い、かつまた、そのやっている行動が適切でないと認めるときは本庁と連絡をとりながら適切な指導をしたり勧告をしたり、こういうふうにすることになっております。  しかしながら、今回は残念ながら状況を十分把握できなかったという問題があったということにつきましては、私どもは大変申しわけないと思っております。しかしながら、運転管理専門官としては、人数も限られている中で、かつ、事故時のそういう対応の中では、本人としては最善を尽くしていると私ども判断をいたしているところでございます。
  51. 上田晃弘

    上田(晃)委員 今の局長の答弁の中で二点、疑問がございます。  一つは、まず権限がなかったのか、権限があったんだけれども行使しなかったのかということに対して明確に答弁されていません。  私が思うには、権限があったと思います。権限があるからこそ、科学技術庁から動燃の「もんじゅ」に派遣されて、事務所を構えて、巡察をしているわけですから。権限がない人が何で他の建物の中でくるくる歩き回っているのか。そんなばかなことは世の中ないわけで、科技庁から派遣され、法律にのっとって、一朝事あったときには指導する、または見せたくないと言ったものに対しても見せろと言う権限があるはずだと思います。だから、それは権限があったのにそれを行使しなかったのではないのかというのが私の一つ質問。  それから、人数に限りがあると言いつつも、事故の翌日、猫の手もかりたい状況の中で、いわゆる専門官二人、それから東京から来た検査官二人、計四人で、もう何からかにまで見ながら本庁と連絡をとらなければいけないにもかかわらず、一人が朝帰っている。これは常識的にどうも理解できないのです。  この二つ、お願いします。
  52. 宮林正恭

    ○宮林政府委員 先生の御指摘、ごもっとものところもございます。  まず、運転管理専門官の権限のことでございますが、現在の原子力安全運転管理専門官に与えてあります業務といいますか、そういうものにつきましては、ある意味では抽象的といいますか、非常に幅広く書かれております。したがいまして、運転管理専門官が、自分が強い意思を持ってそういう行動をとろうとすればできなかったわけではない、こういうふうなことは言えるだろうという感じはいたします。しかしながら、現在の私どもの運転管理専門官への指導が、必ずしもそこのあたりにつきまして明確になっていなかった。  したがいまして、今回、私どもが二月の九日にお出しをしました今後の改善点という中で、こういうふうな事態についての運転管理専門官の活動指針といいますか、そういうものを明確にしようというふうに考えているところでございます。  また、運転管理専門官につきましては、変な形で暴走をした形の行動が行われますと、特にこういう事故時というのは逆に問題を生ずるということもあり得るわけですから、特に現場で、まさに混乱の中で、本人も中におりますので、そういう意味では、やや、少し離れた立場から全体を把握するということも必要ではないかと思いますが、そのあたりも考えた上で、今後、こういう行動指針を明確化していくというふうにさせていただきたい、こういうふうに思っております。
  53. 上田晃弘

    上田(晃)委員 きょうは、この辺をちょっと中心的に、時間のある限りやりたいのです。  前回の閉会中審査では、もう何か、よくも悪くも動燃がお白州の場に座らされた形になりまして、動燃けしからぬ、けしからぬと。  だから、その後、いろいろ経緯を私なりにも勉強してみますと、動燃もさることながら、今のこの専門官や派遣された検査官、しかも、その四人は勝手に動いたわけでもなく、ちゃんと電話連絡等で規制課長とも連携を取り合いながら動いている。それがどうも、やはり権限はあるんだけれども、行使しなかった。専門官としても、規制課長と電話して、いや、私が中に入りたいと言ったら動燃が入るなと言っているんですがどうしましょう、しょうがないんじゃないかというようなやりとりがなされたやにも仄聞しております。何か、これでは動燃のことを言えるような状態ではないんじゃないのか。  しかも、確かに、高いところから全体を見渡さなきゃいけないと、どこの部屋にお入りになっていたか知りませんが、電話連絡ばかりやっていた。当時は、緊急対策室というところに所長も副所長もいて、それで専門官は別室で電話していた。じゃ、隠れたところで何の情報を入手して電話していたのかというと、派遣されていた検査官がくるくる回って、それで検査官から持ち寄られた情報を専門官が本庁へ電話していた。そんな子供だましみたいな話なんだ。  しかも、そのくるくる回っていた検査官は、緊急対策室に余り立ち寄っていない。どうもこれはおかしい。要するに、事故が一朝起きて、一番中軸でその本陣になっている緊急対策室に検査官が立ち寄らないで、ほかのところを見て回っていたと。だから、ビデオを撮ったことも知らないし、ビデオをその緊急対策室で再生したことすら知らない。これは常識的に理解しがたいわけですよ。  それに対して、今ここで、見ていない、知らないと言われても、こちらも証拠がありませんから、ひとつこれは、この事故時及びその後日も含めまして、専門官二人それから検査官二人の行動、言動について、動燃は、この前ビデオの時系列を明確に並べて発表されましたけれども、それと同じように、この四人の言動、それから規制課長とのやりとり、これをきちっと書面にして出していただきたいと思うのです。  これは委員長、この取り扱い、理事会で御協議いただきたいと思います。これは答弁は要りません。どうせ見ていない、わからない、知らないというお話でしょうから。
  54. 井上喜一

    井上委員長 理事会で後日協議いたします。
  55. 宮林正恭

    ○宮林政府委員 ただいまの上田先生のお話の中で、ちょっと一つだけ誤解を解いていただきたいと思いまして、あえて御答弁をさせていただくようにいたしました。  それは、当時現地には、運転管理専門官、これは「もんじゅ」の担当が一人、それから「ふげん」の担当が一人。それから、あと検査官が一人、これはちょうど検査をするという予定だったものですから、そういうふうなことをやるために。かつまた、土日につきましては、その検査官が運転管理専門官の役割をかわりに果たす、こういう任務を担って行っておりました。それから、その検査官の補助員というものを一人つけておりました。それで、確かに次の日に、検査官の補助員を、おっしゃるとおり東京に戻しております。  これにつきましては、結果といたしましては先生のおっしゃるとおりだと私は思いますけれども、私どもは、いわゆる事故が起こりましたときの行動の仕方といたしましては、基本的には、事故に対する対応は事業者がみずからやるという前提になっております。したがいまして、その結果は逐次、運転管理専門官それから本社、両方のルートを通じて東京に入ってくる、こういうふうな形になっているわけでございます。したがいまして、むしろ運転管理専門官は、当時の意識としては受け身の立場にあったというところがございました。  したがいまして、先生のおっしゃるように、むしろ能動的にとりに行くべきであった、こういう御指摘については、今後、そういうふうに改善をしたい、こういうふうに考えているということでございますので、ちょっと御理解いただきたいと思います。
  56. 上田晃弘

    上田(晃)委員 それでは、今の取り扱いをお願いいたします。  とともに、これはそんなことも含めて、いろいろな報告書を見ますと、十二時半ごろとか、三時ごろとか、言ったやに聞いたとか、もう本当に稚拙、雑駁なんですよ。したがって、前も委員会で要請をしたところですが、今回の問題を奇貨といたしまして、航空機だってつけているわけですから、大変重要かつ失敗したら危険なプロジェクトなんですから、その中央制御室等の中心に置いて、また本庁も含めて、そこで取り交わされている会話を鮮明に残すボイスレコーダーの設置問題、これを私は前向きに検討していただきたいと前回お願いしましたが、それについてはどうですか。どういう状況になっていますか。手短にお願いします。
  57. 宮林正恭

    ○宮林政府委員 先生の御指摘の点を含めまして、タスクフォースの中で、今後、全体として報告をいたしますときに、当然御返事ができるような形にしたいというふうに思っております。
  58. 中川秀直

    中川国務大臣 局長からるる御答弁申し上げましたが、私自身も、就任後、事故が起きた後の我が庁から派遣している運転管理専門官あるいは検査官、そういうことはそのときにどういうふうにしていたのかということを、きちっと全部聴取をいたしました。  先般、二月九日に発表したこの事故調査の取りまとめの附属資料に、事故時にとった原子力安全局の対応という三枚紙のペーパーがございます。そこで四人の動静というものは、文章ではございますけれども、詳しく書いてございます。また、委員会においてもう少し時系列にということであれば、それは前向きにまた考えてまいります。  ただ、一つ感じましたことを申し上げますと、局長も答弁しておりますけれども、認可に係る保安規定というのがございます。その保安規定にのっとって、それが遵守されているかどうか、そういう立場で指導監督をするというのが運転管理専門官の重要な職務でございます。  しかし、今回の場合は、異常時運転手順書というものが保安規定とちょっと違っておりました。しかし、その段階には、夜間の時間外の事故でございまして、運転管理専門官がもう所内を出ておりまして、駆けつけたときには、もう緊急トリップも全部されていたわけですね。したがって、これは保安規定と違うではないか、保安規定しかこちらは見ていないわけですから。手順書はそこが違っているよ、保安規定どおりにやりなさいと指導助言をする、その時間帯に実は間に合わなかった。一たん出てすぐ戻ってきたのですが、年末の忘年会シーズンでもあり車がなかなか来ない、敦賀市内からかなり離れておるというようなことでおくれてしまったということがあったようでございます。今後はそういうことがないようにするためには、やはりそれなりの体制も、二十四時間体制ということで強化していかなければなりません。  それからもう一点は、当然事故後、原子炉等規制法によりまして、運転管理専門官にはやはり立入検査も科学技術庁本庁と相談をして入る権限が法律上は持てるわけでございますから、今後、そういう意味での役割の明確化あるいはまた権限の明確化、そういうことをきちっとして、体制とあわせてその辺も充実をし強化をしたいということで、申し上げておるわけでございます。
  59. 上田晃弘

    上田(晃)委員 今も大臣お答えいただきましたとおりで、権限はあるけれどもやらなかったと明確にお話しございました。  ですから、私報告書も見ましたが、書き方がいかにも、権限もなかった、役割も不明確だった、人数も足らなかったから、今回の問題を奇貨として強化したい。これじゃ要するに、全く責任がなかったけれども今回の問題を奇貨として責任を持つようにするという文章になっているんですよ。そういう書き方は私は欺瞞的だと思うのです。本当は、権限があった、人数は足らなかったにしても権限があったのに行使しなかったんだから、それはちゃんと文章にすべきです。それは何回も言うように、おのれの過ちはごまかしちゃだめです。やはりあるのにやらなかったというのはどういうことかというとなれ合いだったということなんですから、これも含めてちゃんと文章化して、そういう報告書にまとめていただきたいと思います。  時間ですから、最後に一点。  読売新聞の一月十日付夕刊です。大阪版で、東京にはなぜか出ておりません。一面トップ。「ナトリウム抜き取りタンク 高温に耐えられぬ構造緊急操作、一度限り」、こう一面トップででかでか載っています。つまり、高温のナトリウムを緊急ドレーンすると、一回は使えるけれども二度使えないという構造になっているという。つまりこれは、数十年間の発電所としてこんなような事態になるのは一回ぐらいしかないだろうと想定してつくった、こう読売新聞は書いているんですよ。だから、これはまさに伝家の宝刀で、今回のナトリウム漏れで緊急ドレーンを高温のままやったらもうタンクが二度ともたない、深いところに埋めてあるタンクからつくり直しなんということになったらえらいことになるということで、実は、手引書のマニュアルの不備とか運転員の不備とかではなく、よく考えていた上でナトリウムの温度が下がるまで緊急ドレーンもしなかった、または空調もわかった上で回していたという話があるんですよ。  ですから、今回の中間報告では、緊急停止すべきだった、緊急ドレーンすべきだったと、これもまた動燃のマニュアルが悪い、動燃の運転が悪い、こうおっしゃっていますが、この辺どうなんですか。要するに、母屋が火事になるのを放置しておいた方が安上がりにつくか、どんと緊急ドレーンしちゃって後で貯蔵タンクをつくり直しなんという方が安くつくかという、何か計算、そろばん勘定して、空調を回しつ放し、緊急ドレーンも遅くした、こういうことじゃないんですか。この新聞はうそですか。これを最後に聞かせていただいて終わります。
  60. 宮林正恭

    ○宮林政府委員 お答えさせていただきます。  手順書の中に、四百度Cまでナトリウムの温度が下がるのを待ってドレーンをする、こういうふうに書かれていたということを遵守してそういうふうにしたというふうに操作員は言っております。私ども先生から御指摘があった、一回限りだったかどうかということについては調べておりますけれども、これにつきましてはそういう事実はございません。当然それは複数回、何度もできるということでなければこれは意味のない設備になりますので、そういう事実はないと私は思っております。
  61. 上田晃弘

    上田(晃)委員 では、以上で終わります。
  62. 井上喜一

    井上委員長 斉藤鉄夫君。
  63. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 本日は、原子力施設また原子炉の廃止措置を中心に質問をしたいと思いますけれども、その前に、新任の中川大臣、初めての委員会でございますので、中川大臣のエネルギーまた原子力についての御所見をまず最初にお伺いをしたい、確認をしておきたいと思います。  私自身は、非常に遠い将来、百年先か二百年先かわかりませんけれども、非常に遠い将来のエネルギー源は核融合と太陽光だろうと思っております。資源の心配もない、またクリーンエネルギーである、こういう点から太陽光それから核融合。しかしそこに至るまで、私は、原子力はできればない方がいいけれども、必要なものとして原子力を位置づけております。核融合や太陽光、それを生み出すためにはそれなりの富が必要でございまして、その富を生み出すためにも、また人類が生き延びていくためにも、原子力は、放射性廃棄物という悪を生み出しますけれども、必要悪として必要だ、こういうふうに私自身は認識しておりますけれども、長官の、その将来のあるべきエネルギーの姿、そしてそこに至るまでのエネルギー需要をどう考えるか、そういう点で原子力をどういうふうに考えていらっしゃるか、お聞かせ願えればと思います。
  64. 中川秀直

    中川国務大臣 結論から申し上げますと、基本的認識は斉藤委員と変わりはありません。  一、二点敷衍をして申し上げさせていただきますと、いずれにしても、需要と供給の関係というのが極めて大きなファクターとして、二十一世紀のエネルギー問題にあると思います。途上国が経済発展をし、そして当然のことながらエネルギーの需要というものも、消費というものもふえてくるわけであります。その場合に資源的にどうかと考えますと、本当に二十一世紀は大変な時代だろう、こういうふうにも考えます。同時にまた、それからもたらされるところの地球環境という問題も、廃棄物の問題も含めまして極めて重要な問題でございます。  したがって、その間、例えば太陽光の発電にいたしましても、宇宙開発の目的も、この前実はSFUにおいては残念ながら太陽パネルを全部持ち帰ることはできませんでしたが、ああいう研究開発を通じて、この地上においても一層の効率的なまた経済性の高いパネルというものの開発につなげていくということが極めて期待されるところだろうと思います。あるいはまた、核融合、ITER等の国際協力の計画もこれから進んでいくわけでありますが、ただ、需要と供給の関係で時系列的にそれがどう間に合っていくのかということを本当に真剣に考えていかなければいけない。その中で現状の核燃料リサイクル政策、あるいはまた原子力政策というものをやはり国民的な合意のもとに位置づけていかないと、机上の空理空論というわけにはまいらないのでございまして、そういう意味でしっかり取り組んでいかなければいけない、こういうふうに考えておるわけでございます。  専門家の斉藤委員のことでございますから、それ以上、何年ごろにどうだ、その場合にどうだということはあえて申し上げませんが、本当に真剣に考えて、それをまた国民の皆さんにも率直に真摯に御説明をして、その中から御理解をいただく、また御協力もいただく、こういうことにさらなる努力をしなければいけない、こう思っております。
  65. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 長官の基本的な認識、よくわかりました。  そうしますと、もう一点だけ聞かせてください、将来の理想的なエネルギー源になるまで原子力は必要である、その時間との闘いだと思うわけですが、そこで、プルトニウムをリサイクルするか、それともウラン、プルトニウムも含みますけれども、ワンススルーでいくかという問題が出てまいります。当然、科学技術庁長官としてのお立場はプルトニウムリサイクル路線なんだということだと思うのですけれども、一政治家として、この原子力、永遠に続くわけじゃないと思うわけですけれども、理想的なエネルギー源に到達するまでワンススルーで間に合うのではないか、その方がいいのではないか、一政治家としてどうお考えになってきたか。それとも、やはりプルトニウムしかないんだ、こういうふうにお考えになってきたのか、その点だけお聞かせください。
  66. 中川秀直

    中川国務大臣 御専門の斉藤委員に私の方から御説明をするなどという能力は持ち合わせておらぬのでございますけれども、ワンススルーの場合でも、そのバックエンドといいましょうか、処理処分方法というものは、私の聞くところ、アメリカでもまだ完全に確立されていない。ましてや日本の場合、どういうふうな処理処分をするか、またどこにするか、ロンドン条約によって海洋投棄などということはできないわけでございまして、またしてはいけないことでございます。そういう放射性廃棄物の処理処分の問題が現実に重大問題としてあるわけでございます。我が国においても、それについての確立された合意というものは、幌延にしろまたいろいろな地域にしろ、まだできていないわけであります。そういう、やはり環境への負荷を低減させていかなきゃならぬという問題も当然あるだろう、その問題点が議論されなければならないだろう、こう思っております。  プルトニウムの場合は、御案内のとおり、一般の原子力発電でもプルトニウムは発生する、それをまたどうするかという問題も出てくるわけであります。それと、使用済みの、いわゆる九九・三%の方の、燃えない方の使用済み燃料、これをどうするか。単なる資源の有効利用だけではない議論があるだろう、こう考えておるわけで、その中でプルトニウムをどう使うかという議論をしていかなければならない。先ほどの議論と同じように、これはもうそういう議論を全部ネグってワンススルーでいいんだと。じゃ、そのワンススルーをどうするかという議論、それによってまた新たな問題が起きないのかという議論も同時並行に真剣にやらないと、これは早急にワンススルーでいいんだという議論にはならない。経済性、効率性については今のところそう差はない、本質的な差はない。ワンススルーであろうと、リサイクルであろうと。こういう調査研究が今一番権威のあるデータで出ている、それ以外のデータは今のところない、こう承知をいたしております。
  67. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 いずれにしましても、「もんじゅ」の問題も起きましたし、このプルトニウムリサイクルもしくはワンススルー、この議論につきましては今後とも一緒に議論を深めさせていただきたい、このように思います。  さて、長官の所信表明の中に、こういう文章がございます。「また、原子力による便益を享受していくに当たり、避けて通ることのできない高レベル放射性廃棄物処分対策を初めとするバックエンド対策等に積極的に取り組んでまいります。」こういうふうに所信を述べられております。  この原子力が社会で受け入れられるためには、このバックエンド対策をきちんとしなきゃいけない、これはもう言い古されたことでございます。このバックエンドの中心課題は、先ほどの所信表明の中にありますように、何といっても高レベル放射性廃棄物の問題が最も大きな課題であるわけです。しかし、原子炉の廃止措置、すなわち寿命の来た原子力発電所をどう措置するのかということも余りこれまで注目されておりませんけれども、非常に大きな問題に今後なってくると思います。  昭和三十年代に建設された試験炉、研究炉、実験炉、原型炉、実証炉、こういうものが既に多くが寿命を迎えて運転を停止しておりますし、それから初めての商業炉、これは昭和四十一年の東海一号、それから二番目が、軽水炉で初めての美浜の一号は昭和四十五年。これがそれぞれもう既に三十年、二十六年を経過してそろそろ寿命だ、こう言われております。その後寿命が来る原子炉がメジロ押しに控えている。この原子炉の廃止措置をどうするかというのは、やはり今から真剣に考えていかなきゃいけない問題だと思います。  原子力委員会平成六年六月に出した長期計画の中では、この原子炉の廃止については次のような文章になっております。「原子炉の運転終了後できるだけ早い時期に解体撤去することを原則とし、解体撤去後の敷地利用については、地域社会との協調を図りつつ、原子力発電所用地として、引き続き有効に利用することとします。」つまり、解体撤去、ばらばらにして全部なくして更地にする。更地にしてそこに新たな原子力発電所をつくる、こういうのが基本的な国の方針であるというふうに理解をしております。  立地難の日本では当然のことと思いますけれども、いろいろこの廃止措置の方法としては、密閉管理、かぎをかけてそのままにしておくという密閉管理、それから遮へい隔離、ある程度放射性の強いものを生体遮へいの中に閉じ込めて、コンクリートで閉じ込めて、それでかぎをかけるという遮へい隔離方式、それから先ほどの解体撤去、いろんな方式があるわけでございますが、長官御自身としては、この原子炉の廃止措置についてどういうふうにお考えでございましょうか。その点をお聞かせ願えればと思います。
  68. 中川秀直

    中川国務大臣 委員指摘のとおり、商業原子力発電が開始されてから既に約三十年が経過をして、御指摘にもございました東海一号を初めとする原子炉の廃止が、現実の問題としてとらえられる時期になってきていると認識をいたしております。  また、ただいまお触れになりました我が国の長期計画における廃止措置、「運転終了後できるだけ早い時期に解体撤去する」ということを原則として、またその後の敷地利用についても、「地域社会との協調を図りつつ、原子力発電所用地として、引き続き有効に」活用していくという方針が明記をされている。  私自身の考え方、こういうことのお尋ねでございますが、いろいろな御議論はございましょうけれども、既にこの方針に基づいて昭和五十六年から、御案内のとおり、科学技術庁においてもこの解体についての技術開発というものをいろいろさまざまに実施して、昭和六十一年から原研において動力試験炉を活用した解体実地試験というものも実施をいたしておるわけで、今年度で大体終わる。今、現状はほぼ更地に近い状態になってきておるそうで、私まだ現地を拝見しておりませんが、そういうものも一度じっくりとこの目で拝見しながら勉強しなきゃいかぬことだ、こう思っております。そういう積み重ねの中で今進めてきておるところでございますので、引き続きこの方針で臨んでまいりたい、こういうふうに考えております。  一括して廃止するという一括撤去方式というのもあるそうでございますけれども、これからますます大型化といいましょうか、原子炉自身の出力も大きなものになっていく。現実的、技術的にそういう中でそういう方法がとれるかどうか、これは大型化するということを念頭に置いて考えていかなければいけないことでありましょうし、幅広い検討はしていかなければならぬと思いますが、現状は長期計画の方針で進めてまいりたい、こう考えております。
  69. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 先ほどの長官の御答弁の中に出てきましたJPDR、日本原子力研究所のJPDRで解体撤去の研究が十年間進んできて、来年度で一応一段落するという御答弁がございました。このJPDRで十年間研究をしてきて大体どういうことがわかったのか、わかりやすく簡潔に教えていただけますでしょうか。
  70. 岡崎俊雄

    ○岡崎政府委員 おかげさまで、十年間の日時を要しまして、このJPDRの解体を最終的に行う段階に至りました。この試験によりまして、我が国で初めて発電用の軽水炉の実際の解体撤去という経験を得たわけでございます。これが大変大きな要素だろうと思います。  具体的には、例えば非破壊測定、すなわち中を破壊しなくて、外から非破壊によりまして配管内部の放射能量をきちっと測定する技術でありますとか、あるいは、これから作業するときの放射線被曝の低減化というのが大変重要な要素でありますけれども、その放射線被曝の低減化の技術でありますとか、あるいは、具体的にこの廃止をどのような手順で行っていくのかというのが大変大きな要素だろうと思います。こういったことについて、具体的に実証を行えたということについて大きな成果が得られたものと思っております。  現在、これらの成果を体系的に取りまとめておる段階でございまして、今後、本格化する解体に備え、これが十分役立つように取りまとめていきたいと思っております。
  71. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 解体をするわけですから、普通のビルの解体を考えてみますと、解体がらがたくさん出てくる、それから、作業員の人が粉じんを吸ったり大変な思いをする、こういう姿が想像されるわけですが、私は、原子炉の解体ということのポイントは二つある、こう思うわけでございます。  一つは、解体作業をする人が放射線を浴びるわけですけれども、その量をいかに低減できるか。できれば普通のビルの解体のような、全く放射線を浴びないという状態になるのがベストなわけでございまして、その被曝線量の低減化、これが一つ。  それからもう一つは、解体がら、つまり廃棄物でございますけれども、この廃棄物の中に放射性廃棄物が当然入ってくるわけで、その放射性廃棄物の量をいかに減らすか、また、出てきたものをいかに合理的に処理するか。  この二点が原子炉の廃炉が成功するかどうかのポイントだと思うわけでございます。  作業員の被曝量を少なくする、これにつきましては、先ほど御報告ありましたけれども、JPDRで、例えばロボットを使って解体するとかいろいろな技術開発されたということで、この作業員の被曝については今回のJPDRの試験でめどがついた、こういうふうに聞いております。そしてまた、鉄筋コンクリートをロボットで切断したりする、そういうハードの技術についても大体めどがついた、こういうふうに聞いております。  そうしますと、問題は、放射性廃棄物をいかに処理するかというところが残ってくるわけでございます。  このJPDRの研究開発にかかわったメーカーの方や、またゼネコンの方にお話を伺いますと、将来この原子炉の廃止措置が本当に現実のものになるのかという最大のポイントは、放射性廃棄物をどう考えるかにかかっている、下手な方針を立てると永久に日本では原子炉の廃止措置はもう不可能になる、こういうお話を聞きました。これはどういうことですかと聞きましたところ、どこまでを放射性廃棄物にするかというポイント、それから、放射性廃棄物として出てきたものの処置の仕方、この二点あるのだそうです。  まず、どこまでを放射性廃棄物とするかという点ですが、これにつきましては、原子力安全委員会平成四年に、放射性廃棄物と考えなくていいですよ、ここまでは大丈夫です、一般廃棄物として扱ってくださいという考え方の基準というのを出しております。  これを読みますと、ごくごく当たり前のことでございまして、例えばPWRですと、二次系にかかわるタービン建屋等は絶対放射性物質は行かないわけですから、このタービン建屋については放射性廃棄物として扱わなくていい、そういうことが書かれておりまして、当たり前のことが書かれております。大体廃棄物の八〇%がこれで非放射性になる。残りが大体十数%から二十数%。しかし、その中でも実質は、ほとんどは非放射性廃棄物であろう、こう言われております。  ですから、新たな基準を出さなくてはいけないのじゃないか。この原子力安全委員会がつくった基準で出てきたものを放射性廃棄物として扱うと、莫大な量になって、また莫大なコストになる。しかし現実には、その放射性廃棄物と規定されたものの中のほとんどは非放射性だ。  では、それをクリアするためには、やはり私はそこで、この基準で放射性廃棄物とされたものの中でも、現実に非放射性のものについては非放射性の枠組みの方に入れるべきである。そうしないと、現実問題として廃炉措置がとれない。その問題として、いわゆるすそ切り値というものがあるわけで、実際に計測をして、これはガンマ計測ですから簡単にできるわけです、計測をして、普通の自然の物質と同じ程度の、自然放射能しか含んでいないものについては非放射性物質として扱う、そういうふうにしなければ、現実にこの廃炉措置問題は進まない。  よく、原子力発電のコストに廃炉措置やバックエンドのコストが入っていない、まやかしだ、こういう議論がありますが、そのコストを入れようにもそのコストが計算できない、こういう本当に大事なところが決まっていないからでございます。  このいわゆるすそ切り値と言われているものにつきまして、科学技術庁としては今後それを決める意思はあるのか、もしその意思があるのであれば、今どういう検討状況であるか、これについてお伺いします。
  72. 宮林正恭

    ○宮林政府委員 お答えさせていただきます。  御指摘の放射性廃棄物のすそ切りの件でございますけれども、これにつきましては、国際原子力機関、IAEA等において検討が進められているところでございます。  それで、IAEAが現在中心になっておりまして、昨年五月に最終ドラフト案が各国に送付されております。当然、私どももこれに参画をして議論をしているわけでございまして、私どもとしては既に御返事も出してございます。基本的にはドラフト案については私どもも結構であろう、こういうことでございますけれども、やはり国際機関のことでございますので、各国、多数の国からのいろいろな議論を今取りまとめをしている、こういうふうな段階でございます。  それで、私どもといたしましては、当然こういうふうな国際的なコンセンサスとしてすそ切りができるようになれば、私どもとしてしかるべく法制化を図るというふうな考え方でいるわけでございます。そのために、国内の利用計画も踏まえたような、規制免除に係る基準策定というふうなことが必要になります。それで、現在、そのための安全評価のプログラムとかデータベース、こういうふうな整備をいろいろと進めている、あるいは進めようとしているという段階にございます。  今後、これらの国際コンセンサスができ、かつこういうプログラムあるいはデータベースといったようなものの整備を進めまして、国内法令化が可能になるというふうなことになるならば、当然これは御議論をいただきまして、そういう方向で努めてまいりたい、こういうふうに思っておるところでございます。
  73. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 このすそ切り値の問題、原子力施設から出てくる廃棄物、これはこのすそ切り値以下だから一般の産業廃棄物と同等に扱う、これは専門家には非常に理解しやすいことですが、地域住民の方にはなかなか、そうはいってもという気持ちの問題として理解できない部分もございます。このすそ切り値につきましては、私は、原子力政策を進めて行く上で非常に重要なことだと思うのですけれども、ぜひ慎重に地域住民の方の理解を得られるような方向で、このすそ切り値という概念が広まっていくようにお願いをいたします。  いろいろ解体撤去のことについて御質問をする予定だったのですが、時間が来ましたのでこれで終わりますけれども中川大臣、この解体原子炉の廃止措置につきましても、日本社会の発展という意味でも今後急速に大きな問題になってまいりますので、この前進につきまして御努力をいただきたいと思います。  以上で終わります。
  74. 中川秀直

    中川国務大臣 極めて重要な問題でございます。さらなる高度化を進めていくためにも、そういう解体廃止措置の高度化を研究していくためにも、いろいろなそういう御議論を踏まえて、安全かつ合理的にやっていく。安全も極めて重要でございます。そういう見地で真剣に取り組んでまいります。
  75. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 ありがとうございました。
  76. 井上喜一

    井上委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時二十一分休憩      ――――◇―――――     午後一時五十六分開議
  77. 井上喜一

    井上委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。西博義君。
  78. 西博義

    ○西委員 新進党の西博義でございます。  私は、昨年十二月八日にナトリウム漏えい事故を起こしました「もんじゅ」のことについて、大臣並びに関係の皆さんに若干の質問をさせていただきたいと存じます。  今回の「もんじゅ」の事故についての評価はさまざまでございます。結果的には、午前中の当委員会でも答弁がありましたように、「もんじゅ」の中の温度計のさや管の金属疲労による破断、こういうことにだんだんと落ちついているのではないかというふうに認識をいたしております。  ちなみに、破断した部分は大体このボールペンの先、これが大体八ミリぐらいですから、一センチ、少し太いんですが、大体これくらい、長さは大体同じです。こういうものがついていまして、中に温度計、熱電対がこう入っていた、これが高速のナトリウム流れの中で振動を起こして、ついに折れて先が飛んでしまった。それで、保護管と熱電対との間の約五ミリ程度のすき間からナトリウムが次々と漏えいした、こういうことだと認識しております。ある意味では、技術的には改良の余地は十分あるし、原因が確定すればそれなりの対策もとれるんではないか、こういうレベルの話だと思います。  一方、〇・七トン結局漏えいした、こういうことでございますが、このナトリウムの漏えいたるや、これは世界で最高レベルの漏えい量である、こういう報道もされておるわけでございます。その危険性がさまざま論評されておりますが、大臣は、今回のこの「もんじゅ」によるナトリウム漏えい事故をどの程度の危険性を持った事故だというふうに認識をされているか、初めにお伺いしたいと思います。
  79. 中川秀直

    中川国務大臣 お答え申し上げます。  既にこの点も委員御高承の上でお尋ねでございますが、立場上、当初から少しお話をさせていただきますけれども、今回の事故そのものは二次系のナトリウムの漏えいでございまして、放射性物質による周辺公衆及び従事者には影響はなかったわけでございます。原子炉もまた安全に停止をして、炉心の影響もございません。その意味では、原子力施設の一番重要な放射能漏れ等々の防止という観点での安全は確保された、このように理解をしております。  しかしながら、ただいま御指摘がございましたとおり、ナトリウム漏えいの初期の段階で火災の拡大がございました。この火災の影響については、タスクフォースで解析、評価を今進めているところでございまして、この結論をまって評価を下すということにいたしております。高い信頼性を有するとしていた「もんじゅ」の施設において、現実にナトリウム漏えいが発生して火災が生じた、また、その火災の影響を拡大させたということは極めて重大、遺憾な事故であった、このように考えております。  漏えい量等については、さまざまなまた見解が他にもあるようでございますが、基本的には以上申し上げたように考えております。
  80. 西博義

    ○西委員 今回、先ほど申し上げましたように、この温度計のさや管が破断したというこの事実をとってみますと、初歩的な、いわゆる技術としては最高レベルの部分での事故ではなかった、いわば初歩的な部分での事故であったというふうには思うわけでございますが、今回のこの「もんじゅ」の設計における行政の役割について少しお伺いをしてみたいと思います。  この原子力安全白書、原子力安全委員会から出ているこの本の四ページのところに、原子力施設の審査体制が載っているわけでございますが、設置者、今回の場合は動燃だと思いますが、主務大臣に申請をして、そしてその内容を原子力委員会に諮問をする、こういう形になってございます。この主務大臣の内訳が、試験研究炉、それから研究開発段階炉の場合、多分今回の「もんじゅ」の場合はそれに当たるのではないかというふうに思いますが、内閣総理大臣、こういうことに決まっているようでございます。そういう意味で、今回の安全性の確保という観点から、どこがどういうふうに行政側で責任を持っているのかということについて、御答弁をお願いしたいと思います。
  81. 宮林正恭

    ○宮林政府委員 お答えさせていただきます。  現在のお尋ねの、特に今回の事故が起こりました「もんじゅ」の二次系ナトリウムの温度計の部分につきましては、まず全体の基本設計あるいは基本的な考え方といったようなことも含めまして、これを科学技術庁、この場合は所管庁が科学技術庁でございますので科学技術庁に申請がなされます。そして、それに基づきまして科学技術庁の方が一次審査を行います。それを今度は原子力安全委員会の方に内容を御説明をし、ダブルチェックということをしていただくというふうになっております。  それから、それでいわゆる安全審査が終わりまして、原子炉設置の許可という処分が行われるわけでございます。それで、その許可が行われますと今度は事業者である動燃、この場合は動燃でございますが、設計・工事方法の認可というものを出します。それを今度は行政庁の科学技術庁がそれぞれ認可していくわけでございます。しかしながら、設計・工事方法の認可の範囲につきましては、残念なことに、今回の「もんじゅ」の温度計の部分につきましては対象となっておりませんでした。状況はそういうふうな手続関係になっております。  責任関係につきましては、これはやはりそれぞれ、立場立場で責任を負うべきものであろう、こういうふうに感じているところでございます。
  82. 西博義

    ○西委員 この本と申しますのは安全白書でございますが、三ページに安全体制のことについて三点書いておるのですが、「行政庁による規制を外部から審議することによるダブルチェック、」こういうふうな表現で書いてございます。この「外部から審議する」という部分は原子力安全委員会というふうに読ませていただいたらよろしいかと思うのですが、いわゆる科学技術庁の役割といいますのは、どういう部署でどういう内容の審査になるのか。  これを見ますと、行政庁による規制を外部から審査する、こういう内容になっておりますので、ある一定の規制があってその内容を科技庁で審査をしているのかどうか、その辺のもう少し詳しい、科学技術庁の部分の担当のところと内容をお教え願いたいと思います。
  83. 宮林正恭

    ○宮林政府委員 私どもの局の場合は原子炉規制課、こういう課のところに具体的にはその安全審査の書類が提示されます。したがいまして、そこの安全審査官グループが中心になりまして、あと、私どもには技術顧問という外部の専門家の方にもお願いしてございますので、そういう方々の御意見も伺いながら一次審査を行います。  それで、その結果をもとにいたしまして、今度は原子力安全委員会にダブルチェックという形で行われますが、この原子力安全委員会のダブルチェックにつきましては、基本的には原子力安全委員会に置かれました部外の専門家から成る専門員の方々によるダブルチェックが行われる。それを原子力安全委員会に提出されて最終的な原子力安全委員会としての判断がされる、こういうことになります。  それから、設計・工事方法の認可の部分につきましては、これは先ほども申しました原子炉規制課のグループがその審査をして、必要に応じて当然外部の意見を聞いたりはいたしますけれども、基本的には行政庁の判断でもって承認を下す、こういうような形になっております。
  84. 西博義

    ○西委員 今のお話でございますが、既に実用炉、いわゆる軽水炉なんかの場合には数々の実績等もございますし、比較的マニュアルといいますか、規制の部分も確かにあるのだろうと思うのですが、今回の「もんじゅ」のように高速増殖炉の、これは常陽に続いて二つ目でございますし、スケールも全然違いますので、規制という概念からは少し外れる部分も多いのではないかというふうに思うわけでございます。そういう意味で、今顧問団というお話がございましたけれども、その位置づけと規模等、もし御存じでしたら……。
  85. 宮林正恭

    ○宮林政府委員 技術顧問の方々は、特別顧問団とかそういうふうな名称は使っておりませんが、それぞれが顧問として御活躍いただく、こういうような形になっているわけでございますが、原子炉に関する方が約五十名でございます。
  86. 西博義

    ○西委員 時間の関係で次の項目に移らせていただきたいと思いますが、ダブルチェックという形をきちっとやっていただきたいということをお願いを申し上げたいと思います。原子力安全委員会の組織も存じているつもりですが、行政としてまずきちっとした安全審査を切にお願いしたい、こういうことでございます。  次に、技術に関する安全審査のところをずっと読んでまいりますと、この原子力安全委員会が安全審査を行う際、三つの重要事項を列記してあります。ここでいいますと五ページですね。一つは、「既に設置許可等の行われた施設と異なる基本設計の採用」、それから二つ目に、「新しい技術上の基準又は実験研究データの適用」をしたい場合、三つ目に、「施設の設置される場所に係る固有の立地条件と施設との関連」、こういう内容を中心にして安全審査をしていくというふうに言われております。  今回のナトリウム漏えい事故の場合のこの温度計のさやというのは、先ほども御答弁がありましたように安全審査の項目には入っていなかったということでございます。これは動燃の方から資料もいただいたのですが、実際の常陽で使われたものと全く同じではなくて違うタイプのものが使われているということですが、温度計のさやの部分についての実績は常陽で十分調査をしている、こういう事情ではないかというふうに思います。  そのときに、これをどう解釈するかということだと思いますが、これに、今三つ申し上げましたが、四番目の事項として、既に設置許可等の行われた施設、もしくは使用条件とか形状を変更した、こういう場合に、そういう装置、器具を採用した場合に再度検討する余地があるのではないか、こういう項目を一つぜひ入れていただいて、新しい器具を使う、全く形状の違うものを使用する、もちろん科学技術の進歩とともにそういうことは常々起こるわけですが、その辺のお考えについて御答弁をお願いしたいと思います。
  87. 宮林正恭

    ○宮林政府委員 ただいま先生から御指摘がありました点につきましては、私が原子力安全委員会にも持ち帰りまして十分御議論いただいて、しかるべく進めさせていただきたいというふうに思います。
  88. 西博義

    ○西委員 次に、事故発生当時のいわゆる時系列というものを私もずっと興味を持って追いかけさせていただきました。この時系列をずっと見てまいりますと、事故発生と同時に警報が鳴る、温度計の指示が異常を示す、そういうことが次々と起こってきて、多分現場は大変な混乱状態に陥っていたのではないかというふうに想像されるわけです。  そのときに、最終的にこのナトリウムの漏えいの規模を判断する一つの指標としてオーバーフロータンクの液位計もしくは蒸発器の液位計もあるんだと思いますが、主にオーバーフロータンクの液位計を常に現場の作業をされる皆さんがチェックをしながらずっと操作を行っていた、そういう記述がございます。このナトリウム漏えいの規模についても、初期の段階で小漏えいであるという判断を示す根拠としても液位計の変動というものが用いられているように思えます。  一方、お伺いしますと、この液位計の変動が、一日盛りが〇・七から〇・八トン程度の変動に相当する、このオーバーフロータンクの図も動燃さんからいただきましたが、長さ十一メーターという巨大なタンクの液面の変動をナトリウム量に換算しているわけでございますが、この液面計をナトリウム漏えいの量の判断基準としているということについての評価、このことについてどう考えているか、御答弁をお願いしたいと思います。
  89. 宮林正恭

    ○宮林政府委員 本件につきましては、先日二月の九日にタスクフォースの調査結果としてお示しをしている中にも書いてあるわけでございますが、異常時運転手順書の「概要」において、ナトリウム液面計の液位の変化が原子炉緊急停止の条件として記載されているというふうになっております。しかしながら、おっしゃるとおりそのナトリウム液面計の一日盛りが〇・七トンから〇・八トンの移動がなければ目盛りの移動がない、こういうふうな状況でございますので、これだけを頼りにするということはやはり妥当ではなかった、こういうふうに判断をされております。  当然この場合は、一方で火災検知器それからナトリウム検出器といったようなものを総合的に判断をして下すようなことにされているわけでございますし、そういう意味ではやはり総合的に判断をして緊急停止をすべきことであった、こういうふうに考えているところでございます。
  90. 西博義

    ○西委員 先日いただいた「もんじゅナトリウム漏えい事故調査状況について」、二月九日付の「調査結果詳述資料集」という本の十六ページ、十七ページにわたって書いてある中で、マニュアルの指示の再検討が必要である、こういうふうにオーバーフロータンクの液位計の部分についての記述がございます。一方では、手順書の中では、二次主冷却系のナトリウム漏えいの大中小の立て分けを、オーバーフロータンクの液位計の変化があるかないかでもって規模を今まではかつていたという状況があるわけですが、これを再検討する。今の御答弁でもそうだと思うのですが、今回のように小規模の漏えい、すなわち警報機が、ナトリウムの漏えいの警報が鳴る、こういう段階で、また白煙が上がる、こういう段階ですぐに緊急停止を行うように変更をするというふうに解釈をしてもよろしいでしょうか。
  91. 宮林正恭

    ○宮林政府委員 今回の調査の取りまとめにおきましては、火災報知機の警報が発生して現場において白煙の発生が推定されたことなどの、ある程度の量のナトリウムが漏えいしているとわかる状況が認められた場合は原子炉を緊急停止すべきである、それで、ここで指摘しているような内容が今回の場合であったというふうに判断をいたしております。
  92. 西博義

    ○西委員 量が少なくなるにつれて非常に微妙な判断が求められるのではないかというふうに、そのことも含んでのある程度幅を持った御答弁だと推測をするわけでございますが、基本的にはナトリウムは漏れない、漏らさない、こういう基本精神であり、常陽でもその実績を積み重ねてこられたわけですから、警報が鳴る、白煙を認める、こういう段階でまずはとめる、こういう手順をぜひつくっていただきたい。再度一言御答弁をお願いします。
  93. 宮林正恭

    ○宮林政府委員 この問題につきましては、タスクフォースでもいろいろ御議論をいただいているところでございます。したがいまして、そういう御指摘があったという事実はタスクフォースにお伝えをしたい、こういうふうに思います。
  94. 西博義

    ○西委員 先ほどのこの「調査状況について」も、八時の時点でもうとめるという判断をしてもよかったのではないかということを結論として書かれております。ということは、警報、目視、若干のレベルも、漏えいのレベルもあるかと思うのですが、ぜひそういう、初期にとめるという決断をするような手順に変えていただきたいことをお願いを申し上げたいと思います。  それから、今回の事故をずっと見させていただいて、動燃と科学技術庁の安全認識というものと、それから国民の間にある安全認識の間にかなりずれがあるのではないかという感じがいたします。  この原子力発電所における事故、故障等をはかる物差しとして、INESという、国際原子力事象、事象というのは事故だと思うのですが、評価尺度というものがございます。これを使って事故のレベルを見ていくというのが通常だというふうに思います。ただ、このINESというのがなかなか国民の間で理解をされていないというか、余り認識をされていない、こういうことがあると思います。  そういう意味で、もっとオープンに原子力の安全性というもの、また事故による危険のレベルというものを、ぜひ国民の皆さんにもつと積極的に示していただきたいという思いがいたします。この安全白書によれば、この尺度は、もしこれが広まれば一般公衆も発生した事故に対する理解がもっとつくのではないかというふうに思います。  そこで、これはナトリウムじゃなくて、あくまでも原子炉そのものの安全性に対する尺度が列記されているわけでございますが、ナトリウムはもちろん放射性物質、今回の場合は二次系ですから放射性物質とは必ずしも言えませんが、一次系の放射性物質と二次系、二つのナトリウムを称して、やはりナトリウムの取り扱いのレベルを、危険性のレベルをINESと同じようにこれからつくっていくべきではないか。  もちろんこんなことが適用されないことが大事なことなんですが、今本格的に高速増殖炉路線を推進している日本こそが、やはり積極的にこのナトリウム漏れ事故のレベル、日本版ナトリウムINESとでもいうようなものをつくっていくべきではないかというふうに思います。大臣、そのお考えおありかどうか、ちょっと最後にお聞かせをいただきます。
  95. 中川秀直

    中川国務大臣 今回の事故が、地元の多くの住民の方々、あるいはまた国民の多くの皆様方に、我が国の原子力政策全体に対する疑問や不信やあるいはまた不安というものを与えている、クレジビリティーを損ねる、信頼を損ねる結果になった、そう御指摘が各方面からなされていますが、私もそのように重く受けとめておる次第でございます。  したがって、委員ただいまお尋ねのINESにおきます事故の評価、これは動燃自身はゼロのその次の段階のゼロプラスと事故評価したようでございますけれども、これは科学的な、今おっしゃったような原子炉の全体の安全の評価でありまして、またこの評価自身についても、現在それが適切かどうかは原因究明の過程の中で科技庁として今検討しておるわけで、動燃の事故評価そのものが評価であるということにはまだなっていないのでございます。  しかし、冒頭申しましたような意味で、本当に国民あるいはまた地元の皆さんの御理解と御協力なしには、あるいはまた不信や不安、怒り、そういうものの解消なしにはこういう研究開発というのはやはり成り立ち得ないものでございまして、そういう観点から、よく申しております安全と安心と両方必要だ、あるいは社会的安全も必要だ、そういう確保も図っていかなければいけないのだ、そういう観点の取り組み方が大切だというふうに我々は考えておりまして、そういう意味で、このINESの評価とは別に、今回の事故をすべての教訓にして今後の施策に的確に反映していきたい、こう考えております。
  96. 西博義

    ○西委員 以上で終わります。ありがとうございました。
  97. 井上喜一

  98. 渡海紀三朗

    ○渡海委員 大臣の所信表明について御質問をさせていただきたいと思います。  昨日の所信表明でも、大臣、やはり未来に対する責任といいますか、そういう点を随分感じておられるのだな、そんな印象で聞かせていただきました。どうか大いに御活躍をいただきたいと、まず御就任を心よりお喜びを申し上げる次第でございます。  それでは、まず最初に中身に入りたいと思いますが、科学技術基本法についてお伺いをさせていただきたいと思います。  これは御案内のとおり、議員立法で長年の懸案であったこの基本法を超党派でつくらせていただいたわけでございます。立法府も大変大きな責任を背負っているというふうに思っておるところでございますが、この中に、この科学技術基本法に基づき早期政府科学技術基本計画を定めなければならない、こういうことが書いてあるわけでございます。  そこで、現在この基本計画について政府内部でどのような検討が進んでいるのか、また、めどといいますか、今後いつごろをめどにこの計画をおまとめになろうとされているのか、その点についてまず御質問をさせていただきたいと思います。
  99. 中川秀直

    中川国務大臣 渡海委員から身に余るお言葉をちょうだいしましたが、命ぜられまして、ともかくこの科学技術の発展ということが人類全体の生き残りをかけた重要な仕事である、こういう認識で取り組んでまいりたい、こう考えておりますし、また、委員は昨年成立した科学技術基本法の与党プロジェクトチームの座長でもあられ、また基本法制定については中心人物でございました。そうした御努力によりまして基本法が成立したことに、心から敬意を表したいと存じます。  十一月十五日にこの基本法が成立しました。その日付で科学技術庁では科学技術政策局内に科学技術基本計画策定推進室というのを設けまして、科学技術会議での御審議もいただきながら、関係省庁と今密接な連携をとって基本計画の策定作業を急いでおるところでございます。おおむね、来年度の予算編成も、直ちにこれを基本計画に沿ってまた進めていかなければなりませんので、六月をめどにこの基本計画を策定してまいりたい、こう考えております。  基本計画の性格、内容については、ちょっとお時間をおかりして、ぜひ科学政策局長からお聞き取りを賜りたいと存じます。
  100. 落合俊雄

    落合政府委員 ただいま大臣からお話し申し上げましたとおり、昨年の十一月十五日に科学技術庁内に科学技術基本計画策定推進室を設置いたしまして、関係省庁と密接な作業を行い、かつ、国立大学協会、日本私立大学連合会、日本学術会議、国立研究機関長協議会、経済団体連合会、東京商工会議所等々の御意見も承りながら、現在作業を進めているところでございます。  これまでの議論につきまして触れさせていただきますと、基本計画の性格といたしましては、当委員会が昨年十月三十一日附帯決議をしていただいておりますが、この附帯決議にありますとおり、今後十年程度を見通した五カ年間の計画として、講ずべき施策、規模等を含め、できるだけ具体的なものにすることということでございますので、それをベースとして考えております。  その際に、科学技術系人材、研究開発システムに関する制度の改善、研究開発基盤、民間支援方策、研究開発資金の確保等の重要なポイントを絞り込んだ計画にするということにしたいと思っているところでございます。  さらに検討内容について具体的に申し上げさせていただきますと、まず第一に、研究者等の養成確保方策でございますが、大学院の量的、質的な充実、ポストドクターの活用、支援制度の拡充、研究支援人材の養成確保というようなものを今具体的に検討を行っているところでございます。  第二番目には、柔軟かつ競争的な研究システム実現のための制度の改革ということでございまして、これにつきましては、産学官の研究交流の一層の促進でございますとか、資金の流動性をいかに高めることができるかという検討を行っているところでございます。  第三点目は、研究開発基盤の整備でございまして、研究施設設備の整備、研究開発の情報化の促進、研究材料の円滑な供給方策等々を検討のテーマといたしております。  第四番目は、民間研究開発の支援、促進でございまして、民間研究開発を支援、促進するために、税制優遇措置、研究成果の普及、実用化の促進というような方策について検討を行っております。  第五番目は、重要分野におきます研究開発の推進ということでございまして、基礎研究などの多様な研究開発の均衡のとれた推進を図りますと同時に、新産業の創出、地球規模問題への対応というようなテーマを取り上げているところでございます。  六番目には、科学技術におきます学習の振興ですとか、国際的な交流の促進というようなものを考えております。  さらに、これらの施策を円滑に実施いたしますために、政府研究開発投資の抜本的な拡充というものを具体的にどう実現していくかという点についても、重要な項目として検討を行っているところでございます。
  101. 渡海紀三朗

    ○渡海委員 御丁寧に説明をいただきました。また中身の議論はさせていただきたいと思いますが、議員立法であるという趣旨も今後よく踏まえていただきまして、計画の策定段階で立法府の意思がある程度反映をされるように御配慮をお願いさせていただきたいというふうに思います。  次に移らせていただきますが、宇宙開発、これは簡単にちょっとお伺いしたいのですけれども、きょう午前中、原田先生の御質問にもあったようでございますが、このJIの問題、打ち上げに成功したけれども機体の回収がうまくいかなかった、そして、一昨年の夏のきく六号の問題も、いささか問題がございました。宇宙という未知の世界でございますから、さまざまなことが起こるということについて、これをあえて失敗と呼ぶのかどうかということは、私もそういう言葉は使いたくないわけでございますけれども、やはり若干の改良の余地があるのではないかな、そんな疑問を率直に持たせていただきます。  この原因と対策をできるだけ短くお答えをいただきたいというふうに思っております。
  102. 加藤康宏

    加藤(康)政府委員 簡単にということでございますから、簡単にさせていただきますが、きく六号につきましては、既に宇宙開発委員会での原因の調査ができております。それからハイフレックスにつきましては、宇宙開発委員会において原因の調査を開始したところでございますが、いずれにせよ、それぞれの原因の究明の結果を踏まえまして対策を講じていくところでございます。  宇宙開発のそれぞれの失敗につきましては、原因がそれぞれちょっと違うわけでございます。したがいまして、一概に対策を述べるというのは難しいわけでございますけれども、総じて言えば、宇宙に関する基盤的な技術能力を向上させる。これはもう当然のことでございますが、足元の技術と申しますか、在来の技術、そういうものを応用する場合に、十分慎重に配慮しながら開発を進める、そういう仕組みあるいはそういうマインド、そういうものをつくっていくことが重要ではないかと考えておりますので、そのようなことでこれから努力してまいりたいと考えております。
  103. 渡海紀三朗

    ○渡海委員 できるだけ大臣がお答えになりやすいような、細かいことは余り聞きませんので、ぜひ長官の決意をお聞かせいただきたいと思います。  次に、科学技術における国際貢献という問題についてちょっとお伺いをさせていただきたいというふうに思います。  所信表明にもございました、国際貢献を果たしていかなければいけないということでございますが、我が国科学技術における世界のフロントランナーにふさわしい役割を果たす、こういう言葉もあるわけでございます。もちろん国内のさまざまな研究開発、また基礎的な分野におけるさまざまな研究等が基本的な技術を向上させていく、また非常に体力を強くしていく、そういう点は大いに考えなければいけないと思いますし、そういうことを考えますと、やはりバランスというものも大事かなとは正直思います。  これはこれで大事なんですけれども、例えば国際貢献ということになりますと、従来から私は、やはり日本の得意分野というものがあってもいいのじゃないか。世界一つになるというグローバルな時代でありますから、このボーダーレスな時代で、やはりそれぞれの国がそれぞれの力を蓄えながら、同時にやはり得意な分野で有効な協力をしていく、こういったことも一つ考えていかなければいけないのじゃないかな、そんなふうに思っておるところでございます。  そこでお伺いをいたしますけれども日本は果たしてどういう点で一番役割が果たせるというふうなお考えをされているのか、また、今後は特にこういうところに力を入れたいんだ、これは得意、得意じゃないということだけじゃなくて、広い意味でそういったお考えをお聞かせいただければと思います。
  104. 中川秀直

    中川国務大臣 まさに渡海委員おっしゃるとおりだと考えております。  我が国の独自の科学技術活動というものを主体的に進めていく、その上でその力をまた国際的な協力のもとで国際貢献に生かしていくというのがやはり基本姿勢でなければならぬ、こう思うのでございます。  その際に、先ほど冒頭に申しましたが、二十一世紀考えてみまして、まず人類にとって何が必要か、何のためにこの科学技術研究開発を進めるかあるいは振興を図るかという目的、そういうものを、我が国なりの考え方をやはりまとめて、そしてそれを世界に明らかにして、それについて他国の理解と御協力もいただいていくという取り組み方が具体的なやり方としては適切なのではないか、こう考えておるわけであります。  例えば、具体的に申しますと、現実には宇宙ステーションは国際協力でやっておりますが、その中においても、それじゃ何をステーションで研究していくかということは、我が国なりのまた考え方をしっかり持ってやっていかなければいかぬと思いますし、それからまたITERの開発についても、核融合炉の実験炉計画についても、これはそういう考え方で各般の御意見をいただきながら、その分野での努力、貢献ということを図っていくべきだと思います。かつては、御案内のとおり、我が国の主導したこういうものにヒューマン・フロンティア・サイエンス・プログラムというものがございまして、現在もずっとやってきておるわけでございますが、こういうような人類共通のそういう目的を持った基礎研究推進ということも非常に重要な基礎研究分野で、貢献の分野なのではないか。  人口、食糧、エイズあるいはまたエネルギー、地球環境、いろいろな分野で、全部とは言えませんけれども、環境対策では一応先進国ということも言われておるわけでありますし、今度のADEOSの地球観測プラットホーム衛星においても、アメリカやフランスのセンサーも載せていくわけですが、全体の、星の開発については我が国が相当の貢献をしてきておりますし、またそれぞれの地球観測についてのアイデアやあるいはまた機器等についても我が国はやはり相当の分野を担ったようでもございますし、そういった環境面あるいはまたエネルギー面、一々申しませんが食糧や人口、そういった問題についてもそういう考え方でやってまいりたい、こういうふうに考えております。
  105. 渡海紀三朗

    ○渡海委員 国際貢献ということになると、すぐ経済援助ということがまず頭にあるわけです。経済援助でいつも言われているのは、どうも日本は顔が見えないということをよく言われておるわけでございまして、科学技術分野におきましても、ぜひ特徴のある、そしてやはり我が国の顔がよく見えるような、そんな配慮をぜひお願いをしたいというふうに思います。  時間が余りありませんので進みたいと思いますが、これは事務局でも結構でございます。簡単にお答えをいただきたいと思いますけれども、法律がなかなか本会議へおりないようでございますが、この科学技術振興事業団、新たに統合してつくるということであります。  新技術事業団科学技術情報センターの統合ということでありますが、単純に見ますと、去年の予算が、事業団が百七十三億、これは国費ベースでございます。技術センターが八十億。二つ足したって二百五十三億。できるものの、振興事業団が四百二十八億。二つ足したものよりもことしは百七十五億ふえて、我々もふやすお手伝いはさせていただいたわけでありますけれども、単純に見ると行革に逆行しているのではないかな。これは、しているとは言いません、そんな印象も持たせていただくわけでございますけれども、着実に行革がこれで実践されているのだということを、どういう点で行革が進んでいるのだということなのか、簡単に御説明をいただければと思います。
  106. 沖村憲樹

    ○沖村政府委員 先生の御指摘のとおり、新しい法人におきまして予算がふえているわけでございます。  その主な内容でございますが、まず第一に、いろいろ御指導いただきました戦略的基礎研究推進事業、この関係が百五十億円ふえております。また、これも同じように与党全体で御指導いただきましたポストドクターの一万人計画、これにつきましても十二億三千万円。またそのほか、若者の科学技術離れ対策でございますとか、国立試験研究機関への支援者の派遣など、そういう関係の新しい事業に、御指摘いただきましたような約百七十五億円予算をふやさせていただいております。  新法人におきましては、私どもといたしましては、極力でき得る限りの合理化を図らせていただいたというふうに思っておりまして、具体的に御説明申し上げますと、役員につきましては、両法人合わせて十五人おりました役員を、四人削減いたしまして十一人にいたしております。そのうち常勤役員につきましては十人から七人と、三人の削減をいたしております。  また、職員につきましては、管理部門で九人削減をいたしておりますが、そのほかにも既存の事業部門から約十六名程度を振りかえまして、全体二十五名程度の削減をいたしまして、全体で職員の数は四百十人とプラス・マイナス・ゼロでございますけれども、内容的には、この人数をもちまして、先ほど予算がふえました新しい事業に対応させていただくということで、私どもといたしましては極力合理化を図ったというふうに思っておるわけでございます。  また、組織につきましては、両法人合わせまして三部室二課というものを削減をいたしておるところでございます。また事業ベースで、既存の事業も見直しまして、いろいろ合理化を図ったり削減をしたりいたしておりまして、全体といたしましてでき得る限りの合理化をさせていただいたというふうに思っておるところでございます。
  107. 渡海紀三朗

    ○渡海委員 なお一層努力を、リストラの努力を重ねていただきたいと御要望を申し上げておきます。  もうほとんど時間がありませんので、最後にさせていただきます。  「もんじゅ」については、いずれ原因がはっきりと解明をされた時点でまた御報告もいただくということを聞いておりますので、大臣のきのうの所信にございましたように、とにかく地元の住民の皆さんに安心をしていただくような情報公開と、そして本当に誠意のある対応を続けていただきたいと思っております。  最後に、大臣は昨日の所信表明の最後の部分で、橋本内閣、この新内閣は変革と創造というのが一つの姿勢なのだ、内閣の顔なのだというふうにおっしゃいました。その一員として、科学技術政策の最高責任者となられたわけでございますけれども、この変革と創造ということをどういうふうに受けとめられ、そして、中川大臣としてこの変革と創造というものをどういうふうに反映をさせていきたいか。既に予算は昨年末にみんなで一緒につくったものがあるわけでございますけれども、しかし、これをこれから執行もし、またいろいろな方針も決めていくわけでありますから、大臣の御決意を最後にお伺いをさせていただいて、質問を終わりたいと思います。
  108. 中川秀直

    中川国務大臣 総理の変革と創造という中身として、総理御自身は、第一に強靱な日本経済の再建、こういうことを挙げております。直ちに着手すべきものとして、自由で創造的な発展基盤の確立ということを挙げておられるわけですが、科学技術振興というのはまさしく発展基盤そのものだと考えております。構造改革もございますけれども、それのみで発展基盤というわけにはまいりません。  もう一方の重要な役割は、この科学技術振興である。ましてや二十一世紀ということを考えますと、先ほど来申し上げましたような、人口、食糧、資源、経済、環境、いろいろな側面で人類共通の課題を解決する、あるいは人類共通の夢を実現する、そういうための未来への先行投資という側面が科学技術に求められておるわけであろう、こう考えておりまして、そういう意味の創造ということをイメージいたして頑張りたいと思っております。  他方、変革ということは、そういう創造を実現していくためには、従来の研究開発のさまざまな進め方、あるいは体制、こういうものも変革しないとそういう創造に結びつかない。したがって、新たなる基本法の精神にのっとった科学技術創造立国の体制をつくるべく変革してまいりたい、このように認識をしております。
  109. 渡海紀三朗

    ○渡海委員 まさに変革という面で一点だけ、今回例えば事故が起こったときに体質の問題が出てまいりましたですね。そんなことも含めて、例えばよりこのディスクロージャーの形をどんどんと変えていくなり、こういったテーマもあろうかと思いますので、どうか頑張っていただきたいということを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。
  110. 井上喜一

    井上委員長 大畠章宏君。
  111. 大畠章宏

    ○大畠委員 社会民主党の大畠章宏でございます。  今回の内閣改造に伴い、一番大変なポストはどこかなということを考えますと、大蔵大臣科学技術庁長官ではないかと思いますが、ぜひ中川大臣におかれましては、これまでの政治家としての御経験を踏まえながら、国民から信頼される科学技術政策、さらには国民に夢と希望を与える科学技術政策を着実に遂行していただきますよう、冒頭にお願いを申し上げたいと思います。  さて、きょうは約十分間でありますが、三点についてお伺いを申し上げたいと思います。一つは、科学技術基本法制定がされましたが、この問題についてということと、二つ目には、宇宙ロケット開発等々について、さらには三点目には、「もんじゅ」の事故がございましたが、この問題についてでございます。  最初に、科学技術基本法制定の問題でありますが、この科学技術基本法は、まさにこれまでの日本科学技術政策上画期的な法律ができたと思います。科学技術立国ということを言われておりましたが、いつの間にか基礎研究等で諸外国に大変おくれをとりまして、貿易摩擦等々の観点からも、もっと日本科学技術の基本技術について力を入れてやるべきじゃないかということを諸外国から、特に先進諸国から指摘をされてきたところであります。  そういうものを踏まえながら今回科学技術基本法が制定されたわけでありますが、これを踏まえて、先ほども渡海委員からお話がございましたが、ポストドクターの問題、いわゆる大学院は出たけれども就職先がない、したがって学習塾の先生をしているというような話も随分伺いました。これはまさに日本にとって宝の持ちぐされてありまして、このポストドクターをどういう形で日本として有効に活躍する場をつくっていくか、大変重要な問題だと思います。先ほど予算的なお話がございましたが、具体的にどういう形でこれを進めようとされておられるのか。  それから、大学の研究施設、非常に諸外国に比べて問題があるということが随分指摘をされてこられました。この理工系の大学の教育の場が、研究の場がどういうふうに改善されるのか。特にこの問題については、文部省と所轄がどうのこうのという話がよくあるのですが、逆に言えば、私は、科学技術の問題については科学技術庁が全部仕切ります、理工系の問題については文部省さん、ちょっと下がっていてください、科学技術庁できちっとやります、そのくらいの意気込みをそろそろ持たないと、文部省さんもこれは間口が広いですから、そういうことではなかなか科学技術分野の卵と言われる方々の教育が十分じゃないのじゃないかと思いますが、この件についても科学技術庁のお話を伺いたいと思います。  さらに、基礎的研究分野投資、支援策等々についても、この法律が制定されたということを受けてどのような形で具体的に行動されるのか、これは大臣あるいはまた関係当局からお話をいただきたいと思います。
  112. 中川秀直

    中川国務大臣 冒頭、身に余るお励ましと非常に重要な御見解をいただきまして、感謝をいたします。  基本法に基づきます今後の政策の展開ということで、三点お尋ねがございました。  第一点のポストドクターのことでございますが、この重要性は委員指摘のとおりでございまして、組織も大事だけれども科学技術振興技術の進歩ということを図っていくためには、やはり研究者、個人を非常に大切にしていくという発想が組織以上に必要なところはある、こう考えておりますし、また、そういう意味で、いろいろな、委員も含めた多くの皆さんの御努力で、新年度さらにポストドクターの支援、活用のための施策が予算要求されるに至った。  御案内のとおり、一万人支援計画の早期実現ということで、科学技術庁としては、現在、もう細かいことは申し上げませんが、新年度予算で千百六十八人、最終的には千八百人、文部省が、最終的に八千人、新年度予算で四千五百五十六人、通産省が二百十四人、最終的な数字もそんなものでありましょうが、合計一万人、平成十年から十二年ごろを目途にそうした支援計画の実現を図ってまいりたい、こう考えておるわけでございます。  また、一つ申しますと、これはやはり任期制で、いろいろなところで研究をやっていただこう、こういうことでございますが、じゃ、三年の任期が過ぎた後どうするのだ、ポスト・ポストドクターはどうするのだ、こういう議論もやはりやっていかなければいけない、このように庁内でも議論をいたしておるところでございます。  それから、大学の研究施設あるいはまた教育についての言及もございましたが、ともかく古い、狭い、天井が低くて機械が入らないというような現状に相当部分があるということも聞いております。せっかく新しい設備を入れる予算をつけても、構造上つかえて入らないなどという指摘もあるということも聞いております。  また、先般教育白書を閣議で議論させていただいたときに、私からも、実は文部大臣にひとつ御協議をさせていただきたい、こう申し上げた点がございます。  例えばアメリカあるいは欧米のバチェラーとか、こういう工学士などの実際の授業時間というのを見てみますと、千九百時間から二千百時間ぐらい。対するに我が国の大学教育における時間はその半分ぐらいのようでございます。やはりその辺の検討もしなければいけないし、また、初等中等教育における理科系の教員の確保ということも非常に重要な課題ではないかということもある方から御指摘をいただいて、私はあえて申し上げました。  科学技術基本法、そしてそれに基づく基本計画というものは、これは科学技術庁だけの仕事ではなくて、政府全体の仕事を一つの調整官庁としてさせていただくことでございますので、この人材育成、教育の面でも文部省とよく連携をとって、少しでもいい方向へ行くように努力をするよう担当者にも指示をしておるところでございます。  最後の基礎研究分野でございますが、これについても、もう委員御案内のことでございますけれども、新技術事業団における創造科学の制度、また、振興調整費を使ったいわゆる中核的研究拠点、COE育成の各種基礎研究推進制度、これは、国公立研究機関の拠点を指定して、そこに予算もっけて、欧米に負けない水準のものをやろうということでございます。それから、理化研におけるフロンティアの研究の制度、ういうものも、抜本的な強化をそういうことを通じてやっていきたい。  また、今回、御案内のように平成七年度からスタートしたいわゆる戦略的基礎研究推進事業、これは公募方式によって先導的、独創的な基礎研究を行おうという制度でございますが、これも抜本的に拡充をして予算要求をいたしておる次第でございます。
  113. 大畠章宏

    ○大畠委員 ありがとうございました。ぜひそういうことで頑張っていただきたいと思います。  次に、時間がなくなりましたので二つを続けて端的に申し上げますが、一つは、日本ロケット技術も大変進んでまいりましたが、常日ごろ地元の方でも言われているのですが、国家予算が少ない中で、なぜ文部省科学技術庁が違うところからロケットを打ち上げているのだろうか、これは一本化できないのかという指摘があるのですが、この問題について。  さらには、ロケット技術開発について、諸外国ともうちょっと、お金もかかることだし、特にヨーロッパ等々と連携をとって技術協力するとか、そういうことができないのかという指摘もございますので、この件についてお伺いしたいということ。  もう一つは、「もんじゅ」問題についてはこれから今村委員の方から詳しく質問がありますが、事実、私は、この原子力問題というのは、安心、安全、安定というものが大変重要だろうということで、信頼というものをベースとした形でこれは行っていかなければならないのですが、残念ながらこの信頼というのが崩れてしまいました。  そういうことで、日本人の手だけによることなく、例えばフランスのスーパーフェニックス等でも事故を起こしておりますので、こういうフランスの技術者等を日本に招聘して、ともに事故解明しながらその問題について国民に対して情報提供するということで、何とか国民に対して、これまでそういう事故調査の出される情報というのは信頼できるものなのだという、信頼を回復する手段としてそういうことも検討すべきじゃないかと思います。  質問時間が来てしまいましたが、簡単で結構でございますので、その件についてお伺いしたいと思います。
  114. 加藤康宏

    加藤(康)政府委員 まず、宇宙関係についてお答え申し上げます。  宇宙開発事業団文部省宇宙科研の点でございますが、時々御指摘いただいているわけでございますけれども、それぞれの法人がそれぞれの目的で役割を分担しているわけでございます。しかしながら、最近では、例えばこの前若田さんが回収しましたSFU、これは文部省、通産省、科学技術庁、三省庁が共同してやっているものでございますし、JIロケット、これも文部省開発したものを二段目に、宇宙事業団が一段目ということで、非常に協力して仕事を進めているところでございます。新しい大綱でも、ますます緊密な連携をとってやれということでございますので、そのように努力したいと思っております。  それから、諸外国との協力でございますが、ヨーロッパでは、日本との協力をもっと積極的にしたい、そういうことも閣僚会議で決めているようでございますし、これから積極的に進めたいと思います。例えば、例の宇宙ステーションにつきましては、もう国際協力の象徴でございます。宇宙につきましても国際協力も一生懸命やっていきたいと思います。
  115. 宮林正恭

    ○宮林政府委員 お答えいたします。  フランスの技術者を呼んで「もんじゅ」の事故究明などに活用したらどうか、こういうふうなお話かと思いますけれども、現在、日フランスとの間には、規制当局間におきまして、原子炉の規制情報交換というふうな枠組みがございます。したがいまして、こういう枠組みをうまく活用いたしまして、やはり他国の知識をうまく活用するというふうなことで進めていきたいと思っております。  また、そういうふうな成果につきましては、節目節目で広く国民の皆様に公開をしていきたい、こういうふうに思っております。
  116. 大畠章宏

    ○大畠委員 ありがとうございました。
  117. 井上喜一

    井上委員長 今村修君。
  118. 今村修

    ○今村委員 社会民主党の今村であります。  長官の所信表明を聞かせていただいたわけであります。私自身も、資源のない日本の国が科学技術立国として国際的な役割を果たしていく、そんな日本であることを心から願っている一人でもあります。ただ、そのためには、乗り越えていかなきゃならぬ課題が数多くあるだろう、その一つが、原子力の行政の中で抱える数多くの課題だと思っています。  十二月八日、高速増殖炉「もんじゅ」が事故を起こした。これまでの国民の原子力行政に対する信頼をこの問題は一挙に崩してしまったわけであります。この事故の原因究明、大変な努力をされて取り組まれています。先般も、取りまとめ状況を見させていただいたわけであります。具体的なあの時点における行動を、大変な御苦労をされてあらゆる情報を収集したなと思って見させていただいたわけであります。  ただ、この事故究明のいろいろな状況を見ながら、原子力事故における事故を究明するというところは一体どこなんだ、原因を調査をして国民にちゃんと報告をする、しっかり報告をする部署というのは一体どこなんだろうな、このことを改めて感じたわけです。  事故を起こした動燃は動燃として調査をしている。科学技術庁は、科学技術庁として一つの取りまとめをするタスクフォースをつくった。原子力安全委員会は、ワーキングチームをつくって独自に進めている。それぞれが事故の究明を進めている。こういう状況になって、最終的にはそれぞれがまとめた報告書が出てくるのかなと思っているわけです。  ただ、報告をまとめてきて、その報告書に基づいて今度は具体的な対策を講じていかなきゃならぬ、こうなるわけですね。すると、この三つ出てくる報告書の中、全部同じだとあればそれはそれなりにいいのでしょうけれども、中心的に課題とするところがそれと違っていたら一体どうなるのだろうな、こういう感じがするわけです。  そういう点では、法的に、事故が起きた場合責任を持ってその原因究明を明らかにする部署、これは一体どこなんですか。ここをちょっと明らかにしていただきたいと思います。
  119. 中川秀直

    中川国務大臣 今村委員とは、予算委員会等、本会議を通じましてこの議論をして、さらに詰めたお尋ねをただいまいただいた、このように思います。  今回の事故につきましては、科学技術庁の安全規制部局である安全局に設けられました専門家、特に大学や研究機関の専門家を中心とするタスクフォースの指揮のもとで独自の調査をやり、また動燃もその指揮のもとで調査をするということで、この二者の関係はそのような関係にございます。  また、原子力安全委員会のワーキンググループの調査、独自に現地でもやっておるわけですが、原子力安全委員会は独自の調査と同時に、科学技術庁のタスクフォースのやる調査が適切かどうか、こういう評価もして、独自の調査を含めて最終的に事故の全体像について報告を行う、こういうことになっておるわけでございます。私は、国として、科学技術庁もその安全委員会の御指摘を踏まえて動燃をさらにまた厳しく指導監督すると同時に、この事故の教訓を生かして今後の行政を進めていく、こういう関係にあるのではないかと思っております。  その場合、タスクフォースとワーキンググループの違いが出た場合はどうするか、こういう問題はあるのかもしれません。あった場合はあったときで、またさらに両者でなぜそうなったかという議論もやっていく。追加調査も必要ならしていく。そういう中でこの安全委員会調査、評価、それと科学技術庁の規制部局としての調査、これをひとつきちっと的確なものにして次に生かしていく、こういうふうになる、このように考えます。
  120. 今村修

    ○今村委員 実態は、これは現実に出てくるいろいろな実態についてはわかるのです。ただ、やはり事故を起こして地元自治体から一番指摘されたのは、直ちに連絡がないということですね。  考えてみると、法律的に、事故を起こしたときには直ちに地方自治体に連絡をするという法的根拠があるのか。これはないみたいですね。あくまでも安全協定上の取り扱いだ、こういう取り扱いになっている。事故を起こしたときに完全に調査をして国民に明らかにするという責任をどこが負うのか、法律的な根拠があるのか、これもちょっと不確定のような感じがするわけです。  ですから、原子力というのは、どんどん開発だけ進めてきた。しかし国民に公開をするという法的根拠、万が一があったときにそのことを国民に明らかにするという法的根拠、こういう部分は一体どこにあるのか、ちょっともう一度お答えをお願いいたします。
  121. 中川秀直

    中川国務大臣 御指摘のとおり、法的根拠ということになりますと、現状では地元自治体、関係自治体と事業者との間の安全協定というものによっておるわけでございまして、情報公開そのものについては、政府全体が今情報公開の基本法的な法律をつくる作業を行革委員会等を中心にいたしている最中でございます。そういう中でまた、そういう法的根拠という議論も私はなされていくべきだろう、こう考えております。  他方、現実の問題として、すぐ知らせる、またすぐナトリウム漏えいなどの場合はとめる、これを今回の事故の教訓としていかなければならぬ。こういう観点から、特にすぐ知らせる部分については、原子力安全委員会事故時の情報公開のあり方についてまた御検討いただく、そういう作業をきちっとしていくように、またその際、検討していただく場合には、地元はもとより、第三者の方々の、幅広い方々の御意見を聞いて、どういうやり方が一番適切かということをお伺いできるような、そういう形を考えてくれということを私は庁内には指示をいたしております。
  122. 今村修

    ○今村委員 どんどん開発だけ進めればいいとしてきた日本の原子力行政、やはり国民に全部公開をするという形で、公開して明らかにするという法的な根拠も含めて、ぜひともこれは整備をしていただきたい。そのことを強くお願いをしたい。  ただその際に、やはり課題になるのは第三者機関の取り扱いだなと思っているわけです。これは科学技術庁にしても動燃にしてみても、実際に進めるために一生懸命努力をしてきたところなんですね。その進める立場でどんどんやってきたところが、部署は違うといいながら同じ省庁で調査をするというものは、やはり第三者を説得するにはなかなか厳しい。ですから、第三者機関をちゃんとつくって、それが法律的ないわば義務づけも負いながら調査をして国民に公表をするという内容のものをきっちりつくるということがやはり今の原子力行政に必要なのじゃないのかな、私はこんな気がするわけです。  この点についてもう一度お伺いしておきたいと思います。
  123. 中川秀直

    中川国務大臣 アドホックにその都度、重大事故の場合は第三者の原因調査機関、究明機関をつくるというやり方は、例えば当時そういう委員会がなかったアメリカにおいて、特にスリーマイル島の事故というあの重大な炉心溶融、住民の避難という重大事故において、カーター大統領が設けた例がございます。  我が国も過去の経緯の中で、原子力委員会から原子力安全委員会というものが分離をして、国会でお決めをいただいて、そしてその人事も国会の承認に係らせる。事務局は科技庁の普通の安全規制部局と違う部課、局が担当しております。原子力政策を推進する方の原子力局と安全局と、しかもまた安全規制の中にも原子力安全委員会の事務局と科技庁独自の安全規制部局と、そういうふうに明確に分離をいたしておるわけでございます。  そういう、重大事故が起きた場合、あるいはまたそうでない、しかし重要な事故として原因究明を徹底的にやらなければならない場合、いろいろなことを現実的に判断して今の体制ができてきた。私は政治家としてこのように理解をしておる次第でございます。  今後、今回の事故の究明の中でどこがまだ残された問題なのかということは私なりにも考えてまいりますけれども、しかし現在の機能が生かされないということも私は大きな問題があると思いますし、この機能をしっかり生かしていくということが重要である、このように考えております。その機能を今後とも正しく生かしていくという考え方も大切な点であろう、こう思っております。
  124. 今村修

    ○今村委員 ぜひとも御検討をお願いしたいと思います。  次に、今回の事故の原因は、温度計を包んでいたさやが折れた。ただ、このさやは原子力産業に従事するメーカーによってつくられていた。それで、メーカーにほとんどこれが、二次系に、これは一つのメーカーに請け負いされて、そのメーカーがまたさやの部分だけは別なメーカーに下請をしていた、実際はこのメーカーが全部管理していた、こういう内容になっているようです。きっちりそのことを確認すればよかったのでしょうけれども、結果とすれば全部メーカー任せであった、こういう内容のようであります。企業間では、これは同じ原子炉の中でもメーカーによって取り扱う部署がみんな違っている。ですから、企業間では技術情報の交換が難しく規格もばらばらだ、これが問題だ、こう福井県は指摘をしているわけですね。  今回の事故を振りかえってみるときに、メーカーの責任というのは随分大きいなという気がするわけです。この部分での御見解があったらお伺いしておきたいと思います。
  125. 岡崎俊雄

    ○岡崎政府委員 先生指摘のとおり、この「もんじゅ」の設計、製作あるいは施工に当たりましては、開発主体でございます動燃事業団と製造企業でありますメーカーとがそれぞれの役割分担のもとに進めてきたわけでございます。御指摘の二次系の系統につきましても、先生指摘のような仕組みで行われたわけでございます。  ただし、一定の補足を申し上げたいのは、動燃事業団もすべてをメーカー任せにしているというわけでは必ずしもないわけでございます。設計段階において、まず基本的な仕様は動燃事業団から示し、その後のメーカーからのいろいろな形の承認行為でありますとか、あるいはでき上がりましたもののいろいろな検査でありますとか、こういう形で、発注主体であります動燃事業団とメーカーとの関係がそれぞれの契約行為に基づいてきちっとなされてきておるわけでございます。  ただし、今回の事故を踏まえまして、今回の事故の原因の究明が今行われておるわけでございますけれども、その進展に応じましてそれぞれの責任の所在というものが明らかにされていくものだと認識をしております。
  126. 今村修

    ○今村委員 これは事故調査の中でまた明らかになっていくと思います。ただ、いろいろな課題があるような気がしますので、指摘だけしておきます。  それから、これは動燃の態度なのですけれども、一月十八日、ジャカルタで原子力セミナーが開催をされた。ここに出席していた動燃の方が、今回の事故についての弁明をしている。放射能を帯びていない、フランスと比較して流出量は少ないのだ、死命を制するような重大事故ではない、こういう発言をしている。これはけしからぬと思いますね。  ナトリウムの管理はイコール高速増殖炉の死命を制する重大事故だ、みんなそう思って、これは何とかしなければならぬということでいろいろな知恵を絞っているときに、国内では言えないから、行った機会だからかもしれませんけれども外国でこんな話をする。こういう点ではけしからぬと思うのですけれども、この後、ベトナムやタイなどでもこの機会があって何か発言をすると言われているわけです。  この動燃の発言を私は厳しく指摘せざるを得ないと思っているのですけれども、見解があったら、お伺いしておきます。
  127. 岡崎俊雄

    ○岡崎政府委員 御指摘の点は、社団法人でございます日本原子力産業会議が本年一月に東南アジア原子力協力代表団というものを派遣いたしたわけでございます。その中で、インドネシアの原子力関係者意見交換を行うためのセミナーを開催したわけでございますが、その代表団メンバーでございました植松さんとおっしゃる動燃事業団技術参与、これは常勤の職員ではございません、あくまでも技術的な参与という方でございますけれども、この方がインドネシア側からの要請に基づきまして、ぜひ「もんじゅ」のナトリウム漏えい事故について説明をしてほしい、この要請を受けて行ったものでございます。  その際、植松さん個人の見解である、さらに動燃事業団政府の公式見解は、調査が進めばやがてきちっと公表されるというその旨を明らかにされた上で、先生指摘の三点について説明をされたと報告を受けたわけでございます。  若干長くなりますけれども、第一点目、漏えいをしたナトリウムというのは二次系でございます。さらに、基本的には核分裂生成物等の放射性物質が含まれないように設計されており、漏れたナトリウムに核分裂生成物が含まれていたとは聞いていないというのが第一点。第二点が、漏えいしたナトリウムの量はフランスのスーパーフェニックスでの事故の経験等に照らして、必ずしも前例のないほどの漏えいではなかったと考えられるということが第二点目。第三点目は、漏えいしたナトリウムの量や核分裂生成物等の放射性物質が含まれていないことから見て、技術的な面からのみ考えると、本件事故が高速炉の将来の死命を制するものとは考えがたいという旨説明したとの報告を受けたわけでございます。  もちろん、我が国の原子力開発利用について国内外の理解を広く求めていくということは大変大事なことだと思います。科学技術庁といたしましても積極的な情報の提供に努めていきたいと思っておりますし、今回の調査の結果につきましても広く内外の理解を得るための説明を尽くしていきたいと思っております。
  128. 今村修

    ○今村委員 ただ、報道で見る限り、国内でこんな話をしたらまさに袋だたきに遭いますよ。外国だからしたという話なんというのは許されないと思います。指摘をしておきます。  次に、時間の関係もありますので、六ケ所の再処理工場の問題についてお伺いをしておきます。  大幅に建設費が増額をした、こういう状況になっているわけです。当初の八千四百億円から二兆円を超える、こういう金額に変わっている。結果的に操業もまたおくれる。ただ、このお金の中にはまだまだつくっていかなければならぬ廃棄物の管理センターのお金や金利や人件費などは入っていない、こんな内容になっているわけであります。この再処理工場に絡んで、使用済みの燃料プール、この開始は一年二カ月だけ延長して九七年六月にでき上がる。これから使う、こういう話になっているようであります。再処理工場本体は二〇〇三年ですから、それよりも六年も遅い、こういう内容になるわけです。再処理工場本体稼働前にこのプールだけは操業開始をする、こういう考え方なのか、この点だけをまず聞きます。  それから二つ目に、工事料が大変増大をして当初の三倍近くになる、こういう話が出ているわけです。これは電気料にはね返ってくるのじゃないのか、こういう、心配が今出ています。この点を明らかにしていただきたい。  三つ目に、この再処理工場内につくられるガラス固化体貯蔵管理施設、とりあえず貯蔵量二千八百八十本だ、これがどんどんふえていく、こういうお話です。これはどこまでふえるのですか。この点を明らかにしていただきたい。  それから、同じく六ケ所にあるウラン濃縮工場、ここで遠心分離機の停止が随分相次いで発生している。それで平成七年、去年の十二月までに三百三十三台とまった、こう言われています。余りにも停止が異常だ、これはどこかにまた欠陥があるのではないのか、こう指摘をされているわけですけれども、この点について明らかにしていただきたいと思います。
  129. 岡崎俊雄

    ○岡崎政府委員 まず第一点目の、六ケ所村の再処理工場におきます使用済み燃料の保管プールの件でございます。御指摘のとおり、来年の六月の竣工に向けて建設が進められているところでございます。しかしながら、現在事業者でございます日本原燃株式会社はこの計画に沿って具体的な使用済み燃料の受け入れ計画を検討していると承知をいたしておりますが、いずれにしても、事業者は地元の理解を得た上で実際の使用済み燃料の受け入れを開始することになるものと認識をいたしてございます。  それから第二点目の、再処理工場の今回の工事費の見直しにつきまして電気料金への影響でございます。もちろん再処理工場に関する建設費の見直しを行ったわけでございますが、それらが電気料金単価に与える影響について現段階において正確に見積もることというのは非常に困難ではございますけれども、電気事業者の大まかな試算の結果によりますと、再処理コスト全体が一キロワットアワー当たり七十五銭程度であったものが一キロワットアワー当たり約一円程度、一円強に増加する見込みと聞いておるわけでございます。いずれにしても、再処理コスト増分について、電気事業者は今後経営全般にわたる効率化、合理化の努力の中で吸収していくとの表明をいたしておると理解をいたしております。  三点目。六ケ所再処理工場から発生いたしますがラス固化体、高レベル廃棄物のガラス固化体の貯蔵に関してでございますが、もちろん再処理工場から発生します固化体につきましては、地元の御了解のもとに、冷却のため三十年間から五十年間の間再処理施設内の貯蔵施設において貯蔵されることになっておるわけでございます。この全体の容量につきましては、既に約八千二百本ということで事業の許可申請がなされておるわけでございまして、そのうちの第一期分として二千八百八十本が貯蔵建屋A棟という形で計画をされておると理解しております。全体計画としては、約八千二百本ということと承知をいたしております。  最後の点。ウランの濃縮工場におきまして、ウラン遠心分離機の停止が続いておるということでございますが、この点につきまして、この工場は平成四年三月の操業開始以来、段階的に操業規模を拡大し、現在年間六百トンSWUの規模で操業中でございますけれども、この中の分離機の停止台数につきましては、四半期ごとに事業者が公表いたしております。  平成七年十二月末現在において合計三百三十三台の遠心分離機が停止しておると発表いたしておりますけれども、この停止につきましては、あくまでもこの工場がメンテナンスフリーという設計が採用されておりますので、ある程度の遠心機が停止することは当初から想定をしておりまして、全体の分離性能に支障があるということには至っておりません。しかしながら、この三百三十三台のうち三百三十二台、すなわち一台を除きまして、すべて最初に導入された百五十トンSWU分の遠心分離機であるという点に注目をし、現在、当事者でございます日本原燃株式会社において、動燃事業団でありますとかあるいは関連メーカーの協力のもとに鋭意その原因を調査中と承知をいたしておりますし、当庁といたしましても、この原因調査の進捗状況でありますとか、あるいは今後の停止台数がどのような推移をたどっていくかということについては、注意深く見守ってまいりたいと思っております。
  130. 今村修

    ○今村委員 これは、福井県や新潟、福島などもそうですけれども、今回の「もんじゅ」の事故を契機に、日本の原子力計画の全体像はどうなるんだ、そのことがはっきりしない限り、「もんじゅ」の運転などもするのはだめですよ、こういう話で言っているわけですね。青森県においても、一体どうなるんだ、先食いしていくものだけは先食いしていってしまって全体像が明らかにならないまま進めるものだけは進めていく、こんな形になるのか、こんな懸念が出されていますので、この部分だけはぜひともそうならないように強く要請をしておきたいと思います。  それから、「もんじゅ」が事故を起こしてから、次から次へとまたあちこちの原発で事故が発生をしている、こういう状況になっています。  東北電力の女川、四国の伊方、中部の浜岡などで、また北海道電力の泊原発で、これはまた住民に公表した内容と実際は違っていた、こういう内容でありますけれども、泊原発で地元自治体に報告している内容と通産省に実際報告した内容と違う、こういう問題が発生をして、地元では一体どうなっているんだ、こういう指摘がされているわけです。  特にここで出てくるのは、「もんじゅ」の場合も福井県から出てきているのは、やはり地方自治体にはちゃんと連絡するという法的な根拠を持った義務づけを事業者にしてほしいというのが出てくる話なんですね。そういう点では、法律的にきっちり地元に何か起きたときには連絡をする、こういう内容に法を直すという形でできないのですか。この点だけ明らかにしていただきたいと思うのです。
  131. 中川秀直

    中川国務大臣 ただいまの、全体像、将来像を、国民的なコンセンサスを得るように、いろいろと一連のことを踏まえて示す努力をしろということ、それからまた、事故時の連絡通報、情報公開等について、三県知事からの御要望等々に沿いながらさらに一層努力しろ、こういう御指摘については、両方とも私ども今回のことを教訓にして今その答えを出すべく庁内において検討を懸命にいたしているところでございます。いずれ原子力委員会、安全委員会等々の御意見も伺いながら、また幅広く各方面の方々の御意見も伺う、そういう機会もつくって鋭意検討を進めてまいりたい、このように考えております。
  132. 今村修

    ○今村委員 最後に、二つ立て続けにお聞きしたいと思います。  一つは、最近、日本の原発を東南アジアに輸出をしようという話があちこちから聞こえてくるのですね。具体的な動きとして総合エネルギー調査会でいろいろ検討している、原子力委員会でもいろいろ協議をしている、東南アジアの人たちを呼んで日本の原発でいろいろ体験をさせよう。さっきのジャカルタでも、セミナーなどこっちから行って開く、こんなことでいろいろ動いているわけですね。  ただ私は、原子力発電というのが日本でやるようにサイクルという形になると、それは再処理という問題が出てきて、プルトニウムという問題が必ず出てくる。それが地球上に拡散をしていくというのは一体どうなるんだ、こういう点では、日本の国が原子力発電を海外に持っていくということはやめるべきだ、私はこう思っているのです。日本が原発輸出に今本気に乗り出そうとしているのかどうか、その点を一つ確認をしておきたいと思います。  それから、最後になりますが、「もんじゅ」の事故も含めて原発の事故がいろいろ出て、今、防災基本計画、これを見直そうという話が出ているようであります。従来、原発事故については、国の防災基本計画には入らないで原発がある地方で防災計画をつくる、こういう取り扱いで対応してきたわけですね。そういう点からいくと、これは従来から、ぜひとも国の基本計画の中に入れてほしい、こういう原発立地県のいろいろな意見があったわけであります。これが具体的にどんな形で進んでいくのか、もし進んでいるとしたら、その状況についてぜひとも明らかにしていただきたい。  以上であります。
  133. 伊沢正

    ○伊沢説明員 アジアヘの原発の輸出の件でございますが、先生御案内のとおり、近隣アジア地域におきましてはエネルギー需要が相当伸びていること、それから、CO2問題への対応等を背景といたしまして、原子力発電の拡大とか新規導入の動きが活発に行われております。既に中国等におきましては、欧米の原子力産業の協力のもとに原子力発電の建設が進んでいるところでございます。  一方、これらの地域におきまして、今先生指摘のとおり、原子力開発が安全確保への十分な配慮なしに行われますと、我が国に対しましても物理的にも社会的にも大きな影響がある、そういうことでございまして、こういうことを背景に、総合エネルギー調査会の原子力部会におきまして、こうしたアジアの原子力発電の導入、拡大の動きに対しましてどう対応するかという議論をしたわけでございます。  その取りまとめにおきましては、原子力安全の意識の醸成や技術協力等を通じまして、我が国としましても、近隣アジア地域の原子力安全の確保に対応していくことが必要である、さらに、先方からの原子力機器の輸出の引き合いがあった場合には、単にハードウエアを輸出するだけではなくて、運転管理とか補修技術、そういったソフトウエアの移転も含めまして、いわゆる安全のワンセット供給という考え方のもとに適切に対応すべきではないかということが指摘されております。  通産省としましても、こうした報告を踏まえながら、同時に、平和利用や核兵器への転用防止、核不拡散に関する国際ルールにのっとった形で我が国からの原子力資機材の輸出が行われるように適切に対応していきたいと思っております。
  134. 平川勇夫

    ○平川説明員 防災基本計画についてでございますが、これにつきましては災害対策基本法に基づきまして昨年七月大幅に改定したところでございます。  これについて、従来の防災基本計画は、極めて基本的かつ抽象的な書き方で、先生おっしゃいました原子力災害の関係も触れてはおったのですが、極めて基本的なところだけであったということでございますので、現在この原子力災害対策も含めまして、事故災害対策関係を今月より中央防災会議の防災基本計画専門委員会、こちらの学識経験者の委員会で検討をいただき始めたところでございます。  この改定、追加を予定いたしております原子力災害対策の関係でございますが、基本法に規定されております放射性物質の大量の放出の場合ということで検討いただこうということで、自然災害の場合と同様に、災害予防それから災害応急対策さらに災害復旧という各段階ごとに措置すべき事項、施策、これを記述し、具体的かつ実践的なものにしてまいりたいと考えてございまして、おおむねの取りまとめのめどを本年五月ぐらいにしたいということで今努力しておるところでございます。
  135. 今村修

    ○今村委員 以上で終わります。ありがとうございました。
  136. 井上喜一

    井上委員長 吉井英勝君。
  137. 吉井英勝

    ○吉井委員 私は、「もんじゅ」事故でナトリウムが大体どれぐらい漏れたのかということが一番大事な問題の一つでもあると思うのです。実はこれは十二月の二十七日のこの委員会でも取り上げました。それに先立って十二月の二十六日以前に、最初にナトリウムを装荷した量と事故回収した量が明らかになれば、差し引きすれば漏れた量というのは出るという一つ考え方が生まれるわけですね、それで資料をお願いしたのです。  科学技術庁の方で随分頑張っていただいて、実は動燃と科学技術庁が随分すったもんだやり合いして、数時間か、もっとかかったかもしれません、委員会の前日の二十六日の夜十時半ごろだったと思うのですが、わざわざ原子炉規制課長さんが随分気を使って、夜だというのに私の部屋まで届けていただきました。それがこれなんです。ナトリウム当初装荷量、二次系Aループ、Bループとあるのですけれども、Cループに二百七十トン。わずかこれだけぐらいのことにすったもんだやって、それで科学技術庁の課長さんをまるで子供の走り使いみたいにやらせるというこの動燃のやり方というのは本当に無礼じゃないかと私は思いました。  ところが、今度二月の十六日、先日、やはり科学技術庁経由で動燃から届けられた資料がこれなんですが、「もんじゅ」二次系Cループの初期ナトリウム装荷量は二百九十三トンである、二カ月間で二百七十トンが二百九十三トンにふえているのですよ。初期装荷量というのは、これは本当に初歩的な話で、動燃にちゃんと記録が残っているわけですね。帳簿上残っている記録さえ科学技術庁にちゃんと答えようともしない。すったもんだして最初出してきたものは全然違う数字だ。  私は、こういう点で最初に伺っておきたいのは、監督官庁の科学技術庁にまともに回答しようともしない動燃の姿勢、それから監督官庁の科学技術庁との関係というものが一体こういうことでいいのだろうか、こんなあり方で国民の皆さんが安心できるような原子力行政が生まれるだろうかと思うわけです。まず最初にこの点について、こんな関係でいいのかどうか、一言で結構ですからお考えを伺っておきたいと思います。
  138. 宮林正恭

    ○宮林政府委員 お答えさせていただきます。  動燃のいろいろな対応につきましては、いろいろ先生指摘のような問題があったかと思いますけれども、それぞれにつきましては、細かいところでは、設計のデータとそれから実投入量、例えば先ほどナトリウムの二百七十トンと二百九十三トンというような差異があったようでございます。しかしながら、いずれにいたしましても、そのあたりを素早く先生に十分お伝えできるような形にならなかったということは、これは非常に私ども申しわけなく思っております。  それから、動燃のそういうふうないろいろな問題があることにつきましては、私ども十分留意しながら指導しかつやっているところでございます。それで、実際には例えば立入検査などというやり方もしております。
  139. 吉井英勝

    ○吉井委員 初期装荷量なんというようなものはそんな数字が変わる話じゃないのですね、帳簿に載っているのだから。私は、動燃の走り使いに甘んずるような科学技術庁であってはならぬ、監督官庁なんですから、そのことを最初に申し上げておきたいと思うのです。  その二月十六日に送っていただいた資料によりますと、今度は初期装荷量二百九十三トン、回収したのが、オーバーフロータンクの百三十四トン、ダンプタンクの百三十トン、純化系に残っているものが十七トンということですから、差し引きすると十二トン漏れたということになるのです。これは今まで聞いておったよりかなり大きい数字だなと思うのです。  なお、これにはただし書きみたいなものがついていまして、ダンプタンクを共有してAループ、Bループにもナトリウムを送ったり抜いたりするから途中でわからなくなるんだ、これも無責任な話だと思うのですよ。大体こんなものは帳簿に載っているわけですから、幾ら出して幾らまた戻したかとか、こんなことは記録をきちっとつけておけばわかる話なんです。私は、これで漏えい量が算出できるのに何か言いわけをするということにもまたあきれたのです。  そして昨日、さらに科学技術庁経由で動燃からいただいた新しい資料というのが来まして、それによりますと、A、B、C三ループの全体を合わせた初期装荷量と回収量の差は、七トンの誤差を含めて一トンである。ですから、少なく見れば一トンで多く見れば八トンだということにもなるわけですよ。  それで、この漏えい量を十二トンと見るのか、あるいは八トンと見るのか、このどっちと見るのかということが問題になってくるのですが、何か十二トンはだめとか八トンは違うんだとか、これを否定するはっきりした根拠があれば、そのことだけ計量的に示してください。計量的に示すものがなければないで結構です。
  140. 宮林正恭

    ○宮林政府委員 先生御高承のとおり、プラントといいますのは、設計をしますときの数値と実態とは非常に違ってくることがございます。それから、これを計量する誤差というものがございます。したがいまして、通常の小さなものでございますと、投入された量とそれからそこに計測された量というものはもう少し厳密に出てくるのかと思いますけれども、特にこのプラントの場合は、そこのところはなかなか私どもも定かにどうだというふうに申し上げられるようなところまで理解ができておりません。
  141. 吉井英勝

    ○吉井委員 設計と実際は違うということになりますと、近代科学の粋を集めたという高速増殖炉は一体何なのかということになってしまうと思うのです。  大体、申し上げますと、大学の実験室でやるような、数百キログラムのナトリウムを扱うだけでも、きちんとこれはいつ何キロ使って実験しますというのを消防署にちゃんと届け出をしてやっているのですよ。それが各ループに一体どれだけ今入っているのか、幾ら回収できたのか、幾ら漏れたのかということ、この基本的なことが全くわからないというのはひどい話だと思うのです。大体計量というのは、基礎的、初歩的なところなんですね。出発なんです。系に幾ら入っているのかが余りよくつかめない。私はもうこういうこと自体が問題だと思う。基礎的、初歩的なところからここには問題がありと思うのですが、あると思われるかないと思われるかだけで結構ですから。
  142. 宮林正恭

    ○宮林政府委員 先生の御指摘、そういう見方があるのかと思いますが、これは私は原子力のケースについてはなかなか今、これはよかった、悪かったと申し上げるだけのものはございませんけれども、いろいろなプラント類につきましては、もともとそういうふうなことを、計量を厳密にやるということで非常に留意してっくったようなものにつきましては、そういうことはかなり厳密にわかると思うのですけれども、今回のこういうものについては、そこまで厳密にやるという前提で必ずしも設計思想としてなかったのではないかと私は推察をしております。  したがいまして、特に計量管理といいますのは、原子力の場合の計量管理といいますのは、いわゆる核物質の計量管理については非常に厳密なことをやっております。しかしながら、こういうふうな大きなプラントにつきまして、それをかなり細かいところまでやるということはかなり困難なのではないか、私の別の分野での経験からいうと言えるのではないかと思います。
  143. 吉井英勝

    ○吉井委員 私は昔プラント設計などもやっておりましたが、そんな大ざっぱな話じゃ、大体他のお客さんに届けたって検修上がりませんよ。  昨日、予算委員会で動燃の理事長に千七百四十三億円かけたあの大洗でのナトリウム実験が生かされていないということを私は指摘しました。大臣にも聞いていただきました。大体、実験を通じて、漏れたらすぐ火災が起こることは皆わかっているわけですから、白煙を見てそれで直ちに原子炉をとめなかったのはなぜかと聞いたら、マニュアルで想定していた順番とは逆だった、火災報知機が鳴って、それからナトリウム検知器が後からおくれて作動したものだから、ナトリウムが漏れたのかどうかはわからなかったと言わんばかり、仕方がないと言わんばかりの動燃の理事長の話でした。  また別に、温度計のさやが折れたのも想定外という動燃の発言が報道されましたが、想定外どころか、ナトリウムの研究者というのは、設計思想そのものが、あのつけ方はわからぬと言っているぐらい正当な指摘もしているぐらいなんです。よく調べてみますと、設計も検査もメーカー任せにしてあった。それで想定外だといって言いわけで済まそうとするのは、本当にこれはもってのほかだと思うのです。  先ほどの科学技術庁を子供扱いにしてみたり、想定外で仕方がないという開き直りをやったり、消防が「もんじゅ」で起こったのは火災事故だと断定しておるのにそれでも火災と認めようとしないというふうな、私はこういう動燃幹部の無責任な姿勢というもの、これをこのままにしておいたのではとても国民の皆さんの理解や納得が得られない、国民は安心して任せられないということになると思うのですが、長官、こういうあり方でいいと思われますか。
  144. 中川秀直

    中川国務大臣 率直に申しまして、三点ございますが、動燃と科学技術庁、規制監督官庁との関係というものは、科技庁はあくまで規制監督官庁でございますから、今後改善すべきは改善しなきゃいかぬ。保安規定というものもございます。それに基づいて本当に事故時対応しておるか、そういうことを二十四時間チェックできるような体制を運転管理専門官制度の充実等によってきちっとしなきゃいけない。今回の場合は、事故の起きた直後の一時間、二時間、ちょうど時間外で専門官もいないときに起こっております。これは一つの機能に基づいてそういうことをきちっとやっていかなきゃいけないでしょうし、また、必要な場合は本庁と連絡をとって立入検査等もきちっとやる。今回はビデオ隠し等々が起きてから立入検査をいたしておりますが、そういう情報の把握においても規制監督官庁の法律に基づく権限においてきちっとやるということが一つは重要なことだ、その点もこれから改善してまいりたい、こう考えております。  二点目のナトリウムの問題でございますが、御指摘のとおり、高速増殖炉においてはプルトニウムとナトリウム、この両者の管理が一番重要なかぎでございます。このナトリウムの管理において、現地並びに動燃、あるいはまた科技庁、今回の事故を教訓として一層ここも、二度とこういうことが起きないような、改善をすべきところはきちんと改善をするような方向へ持っていかなきゃいかぬ。科学的な細かいことまでは先生のような専門家でなくてわかりませんが、いろいろな御指摘や現実に起こっていることを考えますと、そのように私は痛感をしております。  三点目の、昨日予算委員会でも御指摘のあった点についてはすぐ指示しまして、当方からも確認をいたしましたが、消防本部は火災ということで記載をした、あるいはまたそういう認定をしたということでございますので、これは私どももナトリウム漏えい火災事故、こう呼ぶ方が適切だろう、このように考えております。
  145. 吉井英勝

    ○吉井委員 本当に動燃幹部のこういう無責任な、私はきのう本当にあきれ果てましたよ。こういう姿勢というものを正させるように、大臣としてもきちっと対応してもらいたいと思うのです。  最後の問題といたしまして、熱衝撃のことについてですが、二次系冷却配管よりナトリウムが漏えいしたとき、原子炉トリップとともに漏えいが多いときは緊急ドレーンが必要になります。三百二十五度Cのオーバーフロータンクに五百五度Cのナトリウムが一遍に入る、あるいは二百度Cのダンプタンクに五百五度Cのナトリウムが短時間に流入する。これは百八十度とか三百度という温度差のある金属容器を瞬時に冷やすことになりますから、焼き入れと同じ現象です。一度で完全に破壊に至ると私は決めつけて物を言うわけじゃありませんが、ドレーン後普通に使えなくなるという可能性はあるわけです。  千七百四十三億円の実験の中には、実験の規模に近いタンクで熱衝撃の実験をやったのかどうかということを一点お伺いしておきたいということと、次に、このタンク類を熱衝撃から守ろうとして時間をかけて対応しようとすると、どうしても漏えい火災を大きくして、ナトリウムとコンクリートから出てくる水との爆発的反応で原子炉や建屋の破壊につながるという場合があるわけです。逆に、漏えい火災を早く鎮圧して漏えいを小さく抑え込もうとすると、それは今度急激なドレーンをやらなければいけませんから、熱衝撃でタンク類や配管、機器類に、最悪の場合には破壊にも至る、そういう損傷が及ぶという問題があるんだということを科学技術庁としては認識していらっしゃったのかどうか、そのことを伺います。  そして、時間が参りましたので最後に大臣の方には、昨日の、「もんじゅ」事故がナトリウムの漏えい火災事故であったということを取り上げた問題、今は認められましたが、「もんじゅ」にはこうした本質的に二律背反的な構造上の問題があるわけなんです。ですから、きょうはプルトニウム問題はもう置いておきますが、ナトリウムだけでも多くの技術的困難性がある、それを、動燃の秘密主義とか責任感の欠如みたいなものをあいまいにしておいたのでは、今度は逆に科学技術庁が責任を問われてくることになるわけです。  そこで、事故後の対応の中で、今回科学技術庁にも国民の厳しい批判の目も向きました。不信も生まれました。そういう点で科学技術庁自身の姿勢をどう正していくか、大臣決意というものを三点目に伺うことにして、私の質問を終わりたいと思います。
  146. 宮林正恭

    ○宮林政府委員 緊急ドレーンの関係でございますが、実験につきましては、構造物の強度試験に関する研究開発考え方としまして、ナトリウム試験などの多くの研究成果に基づきまして、各部分に発生する熱応力等の評価を行って設計をしておるわけでございます。  それで、この安全性を確認するために熱過渡試験というものを実施しております。例えば、ノズルの形状を一般化した構造について、緊急ドレーン以上の激しい温度変化を与えたような試験も多く実施しているところでございます。しかしながら、タンク全体という形では、これは特に実証試験の形では行われておらないというのは事実でございます。  それから、この緊急ドレーンの問題全般を次にお尋ねかというふうに思いますけれども、これらにつきましては、現在、より詳細な検討をタスクフォースにおいて進めている段階にございます。したがいまして、先生の御疑問の点につきましても、十分今後解析を進めまして、十分なるお答えができるような形にさせていただきたい、こういうふうに思っております。
  147. 中川秀直

    中川国務大臣 御指摘の動燃の責任の明確化は、二度とこういうことを起こさないためにもしかるべき時期にきちんとさせてまいります。また、当庁の責任という点についても、反省すべき点をしっかりと改めて、そういう中で責任を果たしていくと同時に、またこれについても明確にしてまいりたいと考えております。
  148. 吉井英勝

    ○吉井委員 終わります。
  149. 井上喜一

    井上委員長 これにて質疑は終了いたしました。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時五十四分散会