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1996-05-14 第136回国会 衆議院 運輸委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年五月十四日(火曜日)     午前九時十四分開議 出席委員   委員長 辻  一彦君    理事 武部  勤君 理事 細田 博之君    理事 村田 吉隆君 理事 久保 哲司君    理事 古賀 敬章君 理事 高木 義明君    理事 赤松 広隆君 理事 高見 裕一君       衛藤 晟一君    岸本 光造君       久野統一郎君    高村 正彦君       佐藤 静雄君    橘 康太郎君       林  幹雄君    堀内 光雄君       茂木 敏充君    横内 正明君       江崎 鐵磨君    工藤堅太郎君       実川 幸夫君   柴野たいぞう君       二階 俊博君    東  順治君       米田 建三君    緒方 克陽君       濱田 健一君    寺前  巌君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 亀井 善之君  出席政府委員         運輸省運輸政策         局長      土坂 泰敏君         運輸省海上技術         安全局長    小川 健兒君         海上保安庁長官 秦野  裕君  委員外出席者         公正取引委員会         事務局取引部下         請課長     酒井 享平君         外務省経済局国         際機関第二課長 齋木 昭隆君         通商産業省貿易         局貿易調査課長 加藤 敏春君         運輸委員会調査         室長      小立  諦君     ――――――――――――― 委員異動 五月十四日  辞任         補欠選任   村岡 兼造君     久野統一郎君   横内 正明君     岸本 光造君   左近 正男君     濱田 健一君   志位 和夫君     寺前  巖君 同日  辞任         補欠選任   岸本 光造君     横内 正明君   久野統一郎君     村岡 兼造君   濱田 健一君     左近 正男君   寺前  巖君     志位 和夫君 同日  理事高見裕一君同月八日委員辞任につき、その  補欠として高見裕一君が理事に当選した。     ――――――――――――― 五月十日  領海法の一部を改正する法律案内閣提出第八  五号)  海上保安庁法の一部を改正する法律案内閣提  出第八七号)  海洋汚染及び海上災害防止に関する法律の一  部を改正する法律案内閣提出第九一号) 同日  ハイヤー・タクシー事業の健全な発展のための  適切な事業規制に関する請願(佐藤泰介紹介  (第二二五〇号)  同(細川律夫紹介)(第二二九九号)  同(池田隆一紹介)(第二三三〇号)  同(田邊誠紹介)(第二三一号)  同(細川律夫紹介)(第二三三二号)  同(池田隆一紹介)(第二三五六号)  同(田邊誠紹介)(第二三五七号)  同(関山信之紹介)(第二三七七号)  同(関山信之紹介)(第二四〇〇号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  理事補欠選任  領海法の一部を改正する法律案内閣提出第八  五号)  海上保安庁法の一部を改正する法律案内閣提  出第八七号)  海洋汚染及び海上災害防止に関する法律の一  部を改正する法律案内閣提出第九一号)  外国船舶製造事業者による船舶不当廉価建治  契約防止に関する法律案内閣提出第七七号  )      ――――◇―――――
  2. 辻一彦

    辻委員長 これより会議を開きます。  まず、理事補欠選任についてお諮りをいたします。  委員異動に伴い、現在理事が一名欠員となっております。この際、その補欠選任を行いたいと存じますが、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 辻一彦

    辻委員長 御異議なしと認めます。  それでは、理事高見裕一君を指名いたします。      ――――◇―――――
  4. 辻一彦

    辻委員長 次に、内閣提出領海法の一部を改正する法律案海上保安庁法の一部を改正する法律案及び海洋汚染及び海上災害防止に関する法律の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。  順次趣旨説明を聴取いたします。亀井運輸大臣。     ―――――――――――――  領海法の一部を改正する法律案  海上保安庁法の一部を改正する法律案  海洋汚染及び海上災害防止に関する法律の一   部を改正する法律案      〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  5. 亀井善之

    亀井国務大臣 ただいま議題となりました領海法の一部を改正する法律案海上保安庁法の一部を改正する法律案海洋汚染及び海上災害防止に関する法律の一部を改正する法律案、以上三件の提案理由につきまして御説明申し上げます。  初めに、領海法の一部を改正する法律案提案理由につきまして御説明申し上げます。  本法律案は、海洋法に関する国際連合条約定めるところにより、領海の幅を測定するための基線として直線基線を用いることができることとするとともに、領域における通関等に関する法令に違反する行為防止及び処罰のために必要な措置をとる水域として接続水域を設けること等とするものであります。  次に、改正案概要につきまして御説明申し上げます。  第一に、法律の題名を領海及び接続水域に関する法律とすることとしております。  第二に、領海の幅を測定するための基線として直線基線を加えることとしております。  第三に、内水または領海からの追跡に係る公務員職務執行及びこれを妨げる行為については、我が国法令を適用することとしております。  第四に、領域における通関、財政、出入国管理及び衛生に関する法令に違反する行為防止及び処罰のために必要な措置をとる水域として接続水域を設けることとするとともに、その範囲を定めております。  第五に、接続水域における公務員職務執行及びこれを妨げる行為については、我が国法令を適用することとしております。  続きまして、海上保安庁法の一部を改正する法律案提案理由につきまして御説明申し上げます。  昭和五十七年十二月に第三次国際連合海洋法会議において採択され、平成六年十一月に発効した海洋法に関する国際連合条約につきましては、今般我が国はこれを締結する運びとなり、また、これに伴い接続水域及び排他的経済水域を設定し、国内法適用関係を明らかにする等のための海洋法制整備が行われることとなります。このような新たな法制度の導入にかんがみ、また、最近における密航、密輸等海上における犯罪等発生状況を踏まえ、海上における取り締まりに係る法整備を行う必要があります。  この法律案は、このような状況を踏まえ、船舶立入検査を行うための停船措置明確化海上保安官が講ずる措置についての発動要件明確化等所要改正を行い、海上保安官犯罪予防等措置を機動的かつ適切に講ずることができるようにするものであります。  次に、改正案概要につきまして御説明申し上げます。  第一に、海上保安官が、職務上の必要により船舶立入検査を行うため、その進行停止させることができることを明確化することとしております。  第二に、海上保安官は、海上における犯罪がまさに行われようとしている場合または天災事変等の危険な事態が存在する場合であって、人の生命、財産等に危害が及ぶおそれがあり、かつ、急を要するときには、船舶進行開始停止航路変更等措置のほか、乗組員の下船の制限、積み荷の陸揚げ、人の行為制止等措置を講ずることができることとしております。  第三に、海上保安官は、海上における犯罪発生が明らかである場合、その他海上における公共の秩序が著しく乱されるおそれがある場合であって他に適当な手段がないと認められるときには、船舶進行開始停止航路変更等措置を講ずることができることとしております。  最後に、海洋汚染及び海上災害防止に関する法律の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。  昭和五十七年十二月に第三次国際連合海洋法会議において採択され、平成六年十一月に発効した海洋法に関する国際連合条約については、今般我が国はこれを締結する運びとなりましたが、同条約は、主要事項一つとして海洋環境の保護及び保全を掲げ、海洋汚染事犯を引き起こした外国船舶について担保金等を提供することを条件に速やかに釈放する制度を設けること等を求めております。  このため、我が国といたしましては、同条約実施に伴い、海洋汚染及び海上災害防止に関する法律規定整備を行う必要があります。  また、あわせて、最近における特殊法人等財務内容等公開要請にかんがみ、海上災害防止センター財務諸表等公開に関する規定整備を行う必要があります。  次に、改正案概要につきまして御説明申し上げます。  第一に、海洋汚染及び海上災害防止に関する法律規定に違反した外国船舶について、担保金等の提供を条件に速やかに釈放する制度を創設することとしております。  第二に、所要罰則規定整備及び罰金額引き上げ等を行うこととしております。  第三に、海上災害防止センター財務諸表等公開に関する規定整備することとしております。  以上が、領海法の一部を改正する法律案海上保安庁法の一部を改正する法律案海洋汚染及び海上災害防止に関する法律の一部を改正する法律案を提案する理由であります。  何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛成くださいますようお願い申し上げます。
  6. 辻一彦

    辻委員長 以上で趣旨説明は終わりました。      ――――◇―――――
  7. 辻一彦

    辻委員長 次に、内閣提出外国船舶製造事業者による船舶不当廉価建造契約防止に関する法律案議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。横内正明君。
  8. 横内正明

    横内委員 自由民主党の横内正明であります。きょうの議題となっておりますいわゆるダンピング防止法案につきまして、幾つか御質問をさせていただきます。  まず一点は、この法律が想定しているようなダンピング実態についてでございます。  この法律は、外国造船業者日本船会社に船を売る際のダンピング防止するという法律でございますが、この法律対象とするような、想定しているようなダンピングというのが過去どのくらいの頻度であったのか、過去十年間をとって何件ぐらいあったと考えておるのか、その点をまず伺いたいと思います。
  9. 小川健兒

    小川(健)政府委員 ダンピング不当廉価建造契約と言っておりますが、ダンピング調査は、造船協定締約国にあります外国造船所我が国の船主あるいはその子会社などとの間で結ばれる建造契約につきまして、一つは、契約価格が正常な価格を下回るものであるかどうか、それから、その建造契約我が国造船所損害を及ぼし、または損害を及ぼすおそれがあるかどうかにつきまして、詳細な調査を行って決定されるものでございます。  これまでの建造契約のうちダンピングに該当するものがあったかどうかにつきましては、過去にさかのぼって調べるのは非常に困難でございまして、どれぐらいダンピングと認定されるような船があったかというのは数量的には把握してございません。しかしながら、造船市場は非常に価格変動が大きくて、過去において国際競争が激化して船価水準が大幅に低下したことがあったことは事実でございます。
  10. 横内正明

    横内委員 運輸省余りダンピング実態を掌握していないということでございますが、ダンピング実態というのはなかなか掌握が難しいのだろうというふうに思います。したがって、この法律運用がかなり難しいのではないかというふうに素人考えでは思うわけでございます。  特に、これは外国造船業者が、例えばフランスならフランス造船業者日本に船を売る、こういう場合ですから、仮にダンピングがあったということになりますと、フランス船会社を調べなければいかぬ、フランスの船の取引実態に照らしてダンピングかどうかということの証拠集めをしなければいかぬわけですね。日本運輸省がやらなければいかぬわけで、フランス運輸省に聞いても、自分の国の会社ですから恐らく教えてけくれないのだろうと思うのですね。そういう意味で、外国へ行って調査をしなければいかぬわけですから非常に難しいのではないか、果たしてまともな調査ができるのだろうかという危惧を持つわけでございます。  その点についていかがでしょうか、調査体制というようなことについて。
  11. 小川健兒

    小川(健)政府委員 先ほど申し上げましたよろに、ダンピング調査は、外国造船事業者日本船会社、あるいはその外国子会社も含めますが、それの建造契約につきまして詳細な調査庁行って決定することになっているわけです。その調査はどうしてやるかといいますと、一つには質問票などにより関係者から情報収集をするとか、あるいは外国造船所への現地調査などによめましてダンピングであるか否かについて判定を行うこととしているわけでございます。  この調査運輸省及び通産省が共同で実施することとしておりますが、当省といたしましては、本年度から専任の対策官を設置するなど、調査体制整備に努めているところでございます。また、調査の効率的な実施を図るという観点から、正常価格に関する基礎的な情報収集の業務を造船業基盤整備事業協会に行わせることとしております。
  12. 横内正明

    横内委員 次に、ダンピングというのをどうやって認定するかということについて二、三伺いたいのですが、ダンピングというのは、この法律では不当廉価建造契約ということになっているわけでございます。不当に、廉価というのは安い値段で船を建造する契約をしたということですから、したがって、法律上は要件が二つあって、一つ廉価である、正常な価格より安い値段で船を売ったということが第一点、第二点として、それによって日本造船業損害が与えられたというのが第二点の要件になっております。  そこで、幾つか伺いたいのですけれども、三つ伺いますが、その正常価格というのを何でとらえるのか。いわゆる型式が決まっている定型的な貨物船のようなものについては、建造実例売買実例がたくさんあるでしょうから、正常価格は把握しやすいと思いますが、観光船とか旅客船のようなかなり非定型的なといいましょうか、そういう船については、なかなかそういった建造実例も少ないでしょうし、その船、船によってみんな違うでしょうから、なかなか正常価格の把握が難しいと思いますが、どういう方法で把握するのかということが一点目であります。  二点目として、正常価格からどのくらいの乖離があるとダンピングということになるのか、これは一概には言えないのでしょうけれども、例えばおおむね一割とか二割ぐらい安くなればダンピングの疑いがあるとか、その辺の目安があるかどうかというのが二点目でございます。  それから三点目は、これは大事なところですから少し詳しく伺いたいのですけれども、正常な価格競争というのが当然あるわけですね。ある船会社が一生懸命合理化努力をして、リストラ努力をして、かつ技術を磨いてコストが安くなった、したがって、安い値段で売ることができるようになったという場合は当然あるわけですね。そういう、言ってみれば合理化努力によって安く売るということまで、この法律条文づらを読めばダンピングと認定される可能性があるわけですね。したがって、そういった正常な合理化努力によって価格が下がる場合はダンピングではないのだよという条文を入れる方が本当は正しいのじゃないかという気もするのです。それはともかくとして、そういう正常な合理化努力によって安い価格で売られるものについてもダンピングの扱いになる可能性があるのかどうか、その三点をちょっと伺いたいと思います。
  13. 小川健兒

    小川(健)政府委員 ダンピングと認定する要件につきまして、まず最初の、正常価格をどのようにしてとらえるか、旅客船などについてはどうかという御質問です。  まず、正常価格につきましては、一つは、同種船舶国内販売があればその価格、それから二番目として、その国内販売がない場合、同種船舶第三国への輸出価格、これが正常価格一つ認定要件です。それから三番目として、国内販売第三国輸出のいずれもない場合、この場合は、当該船舶建造する際の生産費管理費販売費、それから一般経費、それに適切な利潤積み上げによって算定される価格構成価格と言っていますが、この三つを用いることにしております。旅客船のように一隻ごとに仕様が異なる船舶につきましては、同種船舶国内販売あるいは第三国輸出がないことから、積み上げにより算定されます第三番目の構成価格によって正常価格決定することになるかと思います。  それから、第二番目の正常価格からどれぐらい安い場合を認定するのかということでございますが、造船協定上は、正常価格契約価格価格差契約価格の二%未満である場合は、価格差が僅少なものとして不当廉価建造契約であるとの決定は行わないというふうに規定されております。一応はそれが一つの数量的な目安となっているわけでございます。  それから第三番目に、リストラ努力によって安いコストを実現した場合、ダンピングと認定するのはおかしいのではないかという点でございますが、本法は、船舶輸出国における国内販売価格第三国輸出価格我が国への輸出価格に差を設けた、いわゆるダンピング建造契約防止する目的でありまして、我が国としては、リストラ等による企業のコスト削減努力の結果として適正な利潤を得ている場合には、低い価格で受注することのみをもってダンピングと認定することはしないという考えでございます。また、この考えは他の締約国も同じ精神に基づき協定運用するものと思いますので、リストラ努力ダンピングと認定されることはないものというふうに理解しております。
  14. 横内正明

    横内委員 もう一点、この法律は、外国造船業者日本船会社に売った場合、こういうことですけれども、日本国内の話ですね、国内造船業者日本国内船会社に船を売った場合のダンピングというのがあり得るわけですけれども、そのことについてどう考えるのかということでございます。造船というのは世界単一市場と言われておりますから、日本国内造船業者国内船会社に売ったから国内の問題だ、こういうことにはなかなかならないので、そういう場合にも当然、外国船会社にとっては受注機会を奪う可能性があるわけですから、やはり国内ダンピング問題も何らかの対応が必要だということになるのだろうと思うのですけれども、それは運輸省としてはどういうふうに考えておりますか。
  15. 小川健兒

    小川(健)政府委員 この法律は、先生指摘のように外国造船事業者による船舶ダンピング防止措置を講ずる、それによって我が国造船業における正常な競争条件を確保するというもので制定されているものでございますが、国内取引に関しましては、従来より、造船法に基づく造船設備許可等によりまして我が国における造船市場の正常な競争の確保を図ってきているということでございまして、本法による外国造船事業者ダンピング防止と相まって、国内的には造船法により正常な競争を確保していくということでございます。
  16. 横内正明

    横内委員 次に、この法律の前提となりましたいわゆる造船協定運用について伺いたいと思います。これは外務省になるのでしょうか。  OECDを中心にいわゆる造船協定が長い議論の結果まとまったわけでございまして、我が国も近々批准をするということになろうと思います。その協定に基づいてこの法律ができているわけですけれども、同じような法律各国とも国内法整備をしていくということになろうと思います。  その際に、この造船協定によるダンピング防止措置というのは、悪用される心配というのは当然あるわけですね。自国造船業を有利にするために他の国の造船業をたたく、いわゆるバッシングをするということ、それをこの措置を使ってやる可能性というものも、もちろんないとは言えないのだろうというふうに思うのです。とりわけ日本造船業の場合には、世界シェアの四五%という圧倒的なシェアを占めておりますし、かつ、非常に合理化努力をし、技術水準も高く、その結果として、ほかの国に比べれば比較的安いコストで、安い価格契約を締結できる可能性があるわけですね。そういう我が国合理化努力をしている造船業者がこの協定を使って他国からバッシングをされるというような可能性がないとは言えないわけですけれども、この点については、この協定の作成をする議論の際、当然いろいろな議論があったのだろうと思いますね。先ほどの局長お話ですと、その辺は運用でそういう合理化努力による適正な価格の引き下げというのは対象にしないのだというようなお話をしておりましたし、各国もそうするであろうという期待を述べておられましたが、その辺は、協定議論の際に、そういう協定の悪用についてどういう議論があり、どういう歯どめをすることになっているのか、そこをちょっと伺いたいと思います。
  17. 齋木昭隆

    齋木説明員 お答えいたします。  まさに今先生指摘になりましたように、造船協定交渉過程でこういった加害的廉売、アンチダンピングでございますけれども、アンチダンピングに対する措置国際貿易に対して不当な障害となるべきでないということがこの協定の重要な原則の一つであるということは、各国とも認識したわけでございまして、そういったアンチダンピングに関する手続の恣意的な運用防止するために、協定上さまざまなきつい縛りというか、規定を設けることで合意したわけでございます。  例えば、幾つかその規定を引用させていただきたいと思いますけれども、一つは、調査当局申請の際に提供された証拠の正確さあるいは妥当性について検討し、その調査開始を正当とする十分な証拠があると決定した場合にのみ調査開始することができるという定めがございます。  それから、調査当局は、そういったアンチダンピングまたはその損害のいずれかの一方についての証拠が事案に関する手続進行を正当とするために十分ではないと認める場合には、速やかに調査開始を求める申請を却下するものとする、あるいは速やかに調査を取りやめることとするという規定もございます。  それから、締約国は、自国領域の中に存在する造船事業者に対して他の締約国によってこの協定規定に適合しない方法でアンチダンピングにかかわる納付金の支払いの要求の手続がとられていると認められる場合には、当該他締約国に対して協議要請することができるという定めがございます。  また、当該締約国は、協議によって仮に解決がどうしても得られないということになりました場合には、小委員会、パネルでございますけれども、小委員会の設置を要請することができるという定めもございます。  それからまた、そういった小委員会審議の結果、仮に調査当局が行っている要請がこの協定に適合しないと判断される場合には、その不適合性の性質に照らして、調査当局に対して、調査を終了すること、あるいは小委員会の判断を考慮して自己の決定を再検討するよう勧告することができるということで、ただいま申し上げましたさまざまな運用防止のための措置、縛りの規定造船協定交渉の中でも議論され、またそういった措置が現実に協定の中あるいは附属の規定の中で設けられることによりまして、私どもといたしましては、御心配手続の恣意的な運用といったものは十分に防止されるものではないかというふうに考えております。
  18. 横内正明

    横内委員 最後大臣にお伺いをしたいと思いますけれども、今度この質問に関連して、運輸省とか造船工業会から我が国造船業実態をいろいろ聞いてみました。非常に我が国造船業というのは大したものだな、そういう認識を新たにしたわけでございます。というのは、今、日本の産業、製造業が非常に大きなリストラをやっているわけですけれども、造船業の場合には、もう既にその十数年前に大変激しいリストラをやってきたということでございます。  オイルショック後の大不況とか、それから昭和六十二年、三年の円高不況、これは特に造船業にとっては大変に厳しい不況でありまして、そういう中で非常なリストラ努力合理化努力をしてきた。そして、その設備能力はピークの二分の一にし、それから雇用人員は四分の一から五分の一に減らすというような大変なリストラ努力をして、そしてその結果として今日の状態というのは、世界の四五%のシェアを占め、かつ非常に高い技術力で競争力を持っているということで、本当に日本の産業の一つのかがみみたいな存在ではないか。今、非常に製造業がリストラのあらしの中にあるのですけれども、そのあらしを抜ければ造船業がたどったような明るい未来が開けるのではないか、そういうような期待を持たせるような造船業の過去、そして現在の状況だというふうに思うわけでございます。  しかし、いろいろな課題があるわけでございまして、造船業の抱える課題とか今後の行政の方向というようなことについて、現在、海運造船合理化審議会でいろいろな議論があるようですけれども、簡単で結構ですけれども、大臣のお考えを伺いたいと思います。
  19. 亀井善之

    亀井国務大臣 今、委員指摘のように、大変いろいろ造船業、苦難の道を経てきておるわけであります。我が国造船業の現状につきましても、操業量はある程度確保しているものの、為替相場の変動の影響や受注競争の激化、船価水準が依然として低迷をしておる、こういうような実態でありまして、造船業の経営は全く不透明な状況にもあるわけであります。  今後の需要見通し等につきましては、代替需要を中心に増加していくもの、このように見込まれておりますけれども、韓国造船業が最近大幅な設備投資等々をいたしておるわけでありまして、世界的に新造船建造能力は拡大傾向にある、このように考えなければなりませんし、また国際競争、この面も大変激化する、このように認識をいたしております。  また、御指摘の海運造船合理化審議会におきましても、我が国造船業の今後のあり方について御審議をいただいております。この審議の結果を踏まえて必要な施策を講じてまいりたい。特に大切なことは、国際競争力の維持向上、技術開発の推進、そしてさらに新規需要の創出、これらの面に全力を挙げていくことが必要ではなかろうか、このように考えております。
  20. 横内正明

    横内委員 ありがとうございました。質問を終わります。
  21. 辻一彦

    辻委員長 以上で横内君の質疑は終わりました。  高木義明君。
  22. 高木義明

    ○高木(義)委員 新進党の高木義明でございます。  ただいま上程をされております外国船舶製造事業者による船舶不当廉価建造契約防止に関する法律案について、お尋ねをしてまいりたいと思っております。  この法律案につきましては、各業界やあるいは労働諸団体等におきましても、長い間議論を重ねてこられたところでございます。  平成六年、一九九四年の十二月二十一日に、パリのOECDにおきまして、日本、米国、欧州共同体、韓国、ノルウェーにより、商業的造船事業における正常な競争条件に関する協定、いわゆるOECD造船協定が、五年間に及ぶ長い協議の中で採択をされたわけでございます。そして、翌年の平成七年、一九九五年十二月十一日、欧州共同体、韓国、ノルウェーが承認書を寄託しておりますし、本年の六月十五日をめどに、残る我が日本、米国において批准書を寄託する作業が進められております。三十日後の七月十五日までには協定が発効する見通しであろう、こういう状況でございます。  協定の内容につきましては、御案内のとおり、国による造船業への助成措置の原則禁止、それと加害的廉売防止の二本柱で成り立っておりまして、本法案は後者の加害的廉売防止に係る国内法整備でございます。  私どもは、この造船協定並びに法案については、基本的に賛成の立場を表明するものであります。すなわち、世界における単一の市場であります主要造船国間の正常な競争条件規定をされるというこの造船協定は、まさに評価されるものでございます。  ただ、懸念がなしとも言われないわけでありまして、例えば提訴権の乱用の問題がございます。通常の造船経営をいたずらに阻害するような事態が生じるという危惧もされておりまして、この件につきましては事前に十分な政府間協議を行うなど、適切な対応策を政府当局にまず要望しなければならぬと思っております。  また、いわゆる新興国といえども、東欧諸国あるいは中国、台湾等、実際にかなりの建造能力を有する国に造船協定への参加を呼びかけていくことが、私はこの協定ないしは法律を実り豊かにするものではないかな、このように考えておるわけでございます。  そこで、まず第一に、この造船協定の経緯と国内法整備について基本的な認識をお伺いするわけでありますが、外務省もきょうは来ておられますので、まず冒頭にお尋ねをしておきたいと思っております。  いわゆる冷戦構造が終結をしました。そして、アメリカにおきましては軍事予算の削減が国の内政の最重要課題として出ておりまして、この軍事予算の削減に伴って民需への転換、商船部門への再参入を目指す米国の造船業界が、一九八九年、平成元年でありますが、六月に、日本と韓国、ノルウェー、西ドイツが行う政府助成は米国の通商法三〇一条、不公正な貿易慣行に当たるとして、米国通商代表部に提訴するという事件が起こったわけであります。これに端を発しまして、同年十月よりOECD造船部会に米国を迎えての協議へと発展したわけであります。  この中で、政府による補助金を廃止するための協議開始されました。今回の協定の締結に至るまでになったわけでありますが、いわゆる加害的廉売防止の内容がこの政府助成に付加された、この経緯について一体どうなのか、そしてまたその理由は何なのか、この点についてお伺いをしておきます。
  23. 齋木昭隆

    齋木説明員 お答えいたします。  確かに、ただいま先生指摘のような経緯がございまして、造船業界におけるアメリカの動きというのがあったわけでございますけれども、この造船協定をそもそもつくろうではないかという交渉開始されたその背景には、一つは、先生指摘のように、アメリカが、当時の西ドイツでございますけれども、ドイツ連邦共和国あるいは我が国、韓国、それからノルウェー、こういった国々における造船業に対する助成措置、これを問題視したという事情があるわけでございます。  他方、もう一つは、EC、今は欧州連合でございますが、当時のEC等の主張によりまして、交渉開始の当初から、船舶の廉売の防止についても、これは欠くべからざる重要な交渉のテーマではないかという指摘がございまして、協定交渉のテーマとして取り上げられたという経緯がございます。したがって、不公正な助成措置という問題とそれから不当廉売の問題、これは商業的な造船業における正常な競争条件をまさに達成するための、いわば車の両輪として問題を解決しようではないかということで議論されて協定措置されることになった経緯がございます。
  24. 高木義明

    ○高木(義)委員 ところで、この協定の発効によりまして、米国におけるジョーンズ法、スペイン、ポルトガルにおけるリストラ助成等、例外はありますけれども、各国の政府助成が原則撤廃されることが望ましいわけであります。協定の当初の協議目的であり、もう一つの柱である政府による助成措置の禁止について、この国内法の制定を必要としない理由、これについて、例えば修繕船等についても関連するわけでありますけれども、国内法制定を必要としない理由についてどうなのか。
  25. 小川健兒

    小川(健)政府委員 この造船協定は、一つ造船業に対する公的助成措置の廃止ということでありますし、二つ目がダンピング建造契約防止のための措置というものを規定したものでございますが、このうち造船業に対する公的助成措置につきましては、政府が造船協定に適合するよう措置するものでございまして、この法律規定する必要はないという考えで入れておりません。
  26. 高木義明

    ○高木(義)委員 では、造船協定のアンチダンピングコードに基づいて、本法律案は、外国船舶製造事業者我が国の船社等と契約した建造契約について、不当廉価建造契約であるか否か、これによって我が国造船業損害が生じているか否かを調査することになります。不当廉価建造契約であると認められる場合は、その外国船舶製造事業者、いわゆる造船業者でありますが、これを指定して対抗措置を講ずることができるよという内容を規定するものであります。  したがって、以下、具体的な内容についてお尋ねをしてまいりますが、従来からダンピングに対してはガット、関税貿易一般協定、現在はWTO、世界貿易機関に引き継がれている協定によってダンピング防止するという措置が取り決められておるわけです。関税による措置では造船においては正常に機能しないと言われておるが、WTO協定とは別に造船協定を必要とした理由はどこにあるのか、またこの内容は、造船協定並びに法律案のどういうところにそれが生かされておるのか、この点についてお答えをいただきたい。
  27. 齋木昭隆

    齋木説明員 お答え申し上げます。  WTO協定は、先生指摘のとおり、もともとガットと呼ばれまして、物とサービスの貿易のルールを定めた約束事でございますけれども、この物とサービスの貿易の場合には、WTO協定のもとにダンピング防止協定あるいは補助金協定というのがございまして、これによって違反を取り締まるということになっているわけでございます。  他方、船舶に関しましては、物と異なりまして、例えば通関されない場合があるということ、あるいは船舶というのは通常一隻ごとに受注し生産され、かつ不定期かつ個別に取引が行われているという実態があるがために、物の貿易のように継続的な輸出を念頭に置いて定められたWTOの補助金協定あるいはアンチダンピング協定といったものの直接的な適用というものが、必ずしも船舶取引については目的を達するには有効でないという認識がございまして、したがってWTO協定とは別個に、造船協定によって助成あるいは不当廉売の防止についての措置を別途手当てするということになったわけでございます。  また、今申し上げました点は実はこの協定の前文に書いてございまして、この前文には「船舶の購入に関する取引の特殊性により、千九百九十四年のガット第六条、補助金及び相殺関税に関する協定及び千九百九十四年の関税及び貿易に関する一般協定第六条の実施に関する協定に基づいて相殺関税又はダンピング防止税を適用することが実際的でないことを認め、」ということが書かれておりますので、そういった認識に基づきまして造船協定によって手当てすることになったというふうに認識しております。
  28. 高木義明

    ○高木(義)委員 法律案では、外国船舶製造事業者と建造契約を結ぶ我が国の船社には、第二条四項に規定されております「この法律において「外国子会社」とは、」というくだりでありますが、我が国法人が株式または持ち分の過半数を所有しておる外国子会社が含まれる、さらに我が国法人と特別の関係にあるものも含まれる、こういうことになっておりますが、この理由についてこの際明らかにしていただきたいと思います。  それと、省令で定めるということになっておりますが、我が国法人と特別の関係にあるものというのは具体的にはどういうものを指しておるのか、この点についても説明をいただきたい。
  29. 小川健兒

    小川(健)政府委員 船舶の所有形態は現在便宜置籍が一般化しておりまして、外国子会社が保有する船舶についても日本法人が支配しているというものがございますことから、協定の実効性を担保するためにこれらの船舶協定対象としたわけでございます。外国造船所日本の法人等との間で直接締結する建造契約、これと同じものとみなせる外国子会社、つまり本邦法人が五〇%を超える所有をしている外国の法人、その他日本の法人と特別の関係にあるものとの建造契約も適用範囲に含めるということにしております。  そこで、省令で定める特別の関係ということでございますが、本邦法人等と特別の関係にあるものというのは、一または二以上の本邦法人が、外国法人の株式または持ち分の二五%以上を所有し、かつ筆頭株主であることなどによりまして、その外国法人の経営を実質的に支配していると認める場合を特別の関係というふうに規定する予定でございます。
  30. 高木義明

    ○高木(義)委員 要するに、我が国法人が二五%以上の株式または持ち分を有し実質的に支配をしておる外国法人を含むことになるわけですが、五〇%以上を法律に明記して、二五%以上については法律ではなくて省令に規定するという区別をしておるわけですが、この理由についてはいかがですか。
  31. 小川健兒

    小川(健)政府委員 五〇%を超える株式等の所有が行われている場合は完全に経営を支配しているということで、これらを外国子会社要件として法律に例示しているわけでございます。  二五%の所有であっても外国法人の経営を実質的に支配している場合については、五〇%を超える所有に準ずる形態ということで省令にしているわけでございます。逆に申しますと、二五%以上持っていても実質的に支配していない場合もございますので、二五%以上の所有であって実質的に支配している場合ということで省令に落としているわけでございます。
  32. 高木義明

    ○高木(義)委員 いわゆる正常価格というのが大きな問題になりますが、廉価建造契約であるか否かを判断する基準として、正常価格運輸省令あるいは通商産業省令で定める算定法となっております。具体的にはどういうことなのか。造船協定の関係とあわせてお答えをいただきたいと思います。
  33. 小川健兒

    小川(健)政府委員 建造契約ダンピングであるかどうかの判定の基準となる正常価格、これの算定方法造船協定規定されておりまして、それに基づき本法案に取り込んでいるわけです。  まず第一に、その建造契約に係る船舶と用途が同一であり、長さ及び総トン数が同程度の同種船舶国内販売価格、これがまず第一の正常価格でございます。次に、国内販売がない場合には、同種船舶第三国輸出価格、これを正常価格とみなすということでございます。それから三番目でございますが、国内販売価格あるいは第三国輸出価格ともに存在しない場合は、その船舶と同一の船舶建造する場合の生産費管理費、販売経費、一般経費及び通常の利潤を合計した価格構成価格と言っておりますが、これを正常価格とするということで、三つの算定の方法が決められております。
  34. 高木義明

    ○高木(義)委員 この法律案ダンピング防止をねらっておるわけでありますが、いわゆる造船協定に基づくダンピングの定義、一体ダンピングとはどういうものなのか、やはりこれを明確にしておく必要があると思うのですね。したがって、我が国としてダンピングの定義についてどういう認識を持っておられるのか。
  35. 小川健兒

    小川(健)政府委員 ダンピング考え方でございますが、これは正常価格についての考え方と同じかと思います。協定の解釈が各国によって異なる場合もあるのではないかということかと思いますけれども、この造船協定につきましては、五年を超える長い交渉の経過を経て関係各国の間に共通の考え方ができております。  特に、御指摘正常価格ダンピングの判定の基準になるものでございますが、正常価格に関する規定につきましては、ダンピングに当たって最も重要な規定でございますので、交渉の中でも長い時間をかけて論議されたものでございまして、基本的には関係各国で共通の解釈がなされている、先ほど申し上げました正常価格の解釈でございますが、共通の解釈がなされているものと考えております。仮に各国が異なる解釈のもとで協定実施する場合があったとしても、その場合は協定締約国間における協議などを通じて各国間の解釈の調整が図られると考えております。     〔委員長退席、武部委員長代理着席〕
  36. 高木義明

    ○高木(義)委員 結局、ダンピングということ、いわゆる正常価格ということについて締約国のすべての共通基準でなければならぬわけでして、これがそれぞれの国の事情によって判断の違いが生じれば、大変混乱をするおそれが出てまいります。したがって、この点がないように、これは当局の適切ないわゆる対外活動、コミュニケーション、これの努力が必要になってまいりますので、この点は強く要請をしておきたいと思います。  次に、この不当廉価建造契約に係る調査ダンピングしておるのではないかという事例が出た場合の調査について、法案では運輸大臣のほかに通産大臣もこれを行うということになっておりますが、運輸大臣は所管の行政の長として理解をするわけでありますけれども、特に通産大臣が並行して入っていることの理由について、この際お尋ねをしておきたい。特にこの点については通産省の方からお願いをしたいと思います。
  37. 加藤敏春

    ○加藤説明員 お答え申し上げます。  本法案に基づきます不当廉価建造契約であるかどうかの調査でございますけれども、外国船舶製造事業者に対する直接的な調査でございまして、調査の結果公正な防止措置が図られるかどうかということにつきましては、対象となる外国我が国との通商関係に大きな影響を及ぼすわけでございます。  通商産業大臣は、通商大臣といたしまして一元的に我が国通商の健全な発展に責任を有しております。かかる観点から、本法案に基づく調査につきましても、物資所管大臣でございます運輸大臣とともに通商産業大臣が関与するということでございます。  なお、船舶以外の産品、物品のダンピング調査でございますけれども、WTO協定あるいはWTO協定実施する国内法令がございますが、これらの調査においては、物資所管大臣とともに通産大臣が通商大臣として参画をしているところでございます。  過去、私ども、長年にわたりましてガットあるいはWTOのダンピング防止協定実施あるいは運用に携わってまいっております。既に過去二件ほど適用事例もございます。いろいろな知見あるいはノウハウも有しているつもりでございまして、今後、この法案を円滑に運用するという観点から、運輸大臣と通産大臣とが円滑に協力いたしまして、この法案の円滑な実施に努めてまいりたいというふうに考えてございます。     〔武部委員長代理退席、委員長着席〕
  38. 高木義明

    ○高木(義)委員 通産省が持っておられる豊かなノウハウ、これについて十二分にこれに生かしていくということでございまして、これは妥当なことだろうと思っております。  そこで運輸省にお尋ねしますが、運輸大臣と通産大臣の役割分担をこの際明確にしておかないと、お互いにそれぞれの持ち分を果たすということが十分にできるような、そういうことになって初めてこの法律の実が達成されるわけでございますので、この役割分担について本当にきちっと下きるのかどうか。
  39. 小川健兒

    小川(健)政府委員 本法に基づく調査は運輸大臣と通産大臣とが共同して実施するということ下ございますが、運輸大臣船舶製造業を所管していることから、船舶製造業に関する専門的知見を必要とする事項を担当いたしますし、一方、通商産業大臣は、調査実施に当たってのノウハウの提供、通商政策上の観点からの公正性の確保、これらに関する事項について担当することになるかと思います。  調査の具体的な運用につきましては、それぞれの省の関係職員から成る調査担当者団というのを設置いたしまして、本法及び本法に基づく省令の規定に沿った具体的な実施計画というものを立案して、それに基づき調査実施することになると思います。
  40. 高木義明

    ○高木(義)委員 次に、造船協定においては、調査対象となっている外国船舶製造事業者が調査に応じない場合、調査当局が知り得た事実だけで加害的廉売であるか否かを決定できるとしております。また、WTOの加盟国であってOECD造船協定締約国でない国がWTOの協定に従いダンピング防止手続を既に開始しておる場合は、協定締約国手続開始を保留することになっております。  またそのほかに、加害的廉売に係る価格差が二%未満である場合は、これは僅少であるものとみなして対抗措置対象にはならない、こういうことになっておるわけです。したがって、これらは法律案に特に規定していないが、法律や省令においてそのことも明確に規定しておく必要があるのではないか、この点についていかが御認識をされておるのか。
  41. 小川健兒

    小川(健)政府委員 先生今三点ほど例示を挙げて御指摘いただきましたが、御指摘のとおり、その三点とも本法には規定しておりません。しかしながら、我が国政府としては協定を遵守する義務がございますので、協定規定どおり運用することになります。  なお、手続規定として、一部については省令に規定する予定にもしております。今先生指摘になった三点のうち、例えば外国造船所調査に応じない場合、調査当局の知り得た事実で決定を行うことができるというようなことにつきまして省令で規定することも今考えております。
  42. 高木義明

    ○高木(義)委員 考えておるということでございますから、そういう中でもきちっとしておかれた方がいいのではないかと私は思っております。  次に、我が国造船業者から調査の求めがあった場合は、廉価建造契約の事実関係や我が国造船業への損害の有無を調査することになっております。逆に、求めがない場合であっても国として外国船舶製造業者への調査を行うことがあり得るのか。造船業者から求めがない場合、国がみずからそういう調査をすることがあり得るのか。あり得るとするならばどういう場合なのか。この点について御所見を賜りたいと思います。
  43. 小川健兒

    小川(健)政府委員 結論から先に申しますと、運輸大臣及び通産大臣の発意により調査を行うことができることになっております。これは、造船業は完全な受注産業でありまして、買い手、船主でございますが、船主の立場が非常に強くて、売り手である造船所といたしましては、外国造船所への調査を求めたくても、発注した日本船主への配慮から調査を求めないケースが考えられます。このような場合のうち、建造契約ダンピングであることについての十分な証拠があり、かつ我が国造船業に重大な影響を与えるなど、必要があると判断される場合には、運輸大臣及び通産大臣の発意により調査を行うことができることになっております。
  44. 高木義明

    ○高木(義)委員 廉価建造契約であるかどうかを判断するときには、市況の動向もそうでありますが、その国々あるいは造船業者の生産性の実態等、正常価格の判断には相当の資料が必要であろうと思うのですね。だから、国内はもとより、外国情報収集もきちっとしておかなければ、そういう調査も判断も非常に困難になることが予想されるわけでありますけれども、そういう情報収集については十分なのですか。この点について、この際、きちっとしておきたいと思います。
  45. 小川健兒

    小川(健)政府委員 ダンピング調査に際しまして必要となる情報につきましては、外国造船所から質問票とかあるいは現地調査により収集いたしますし、またそのほか地方運輸局を通じて国内造船業や船主等の関係者から情報収集いたします。また、世界の船価動向の情報等を保有している造船業基盤整備事業協会から情報収集するということにしております。情報量は膨大なものでございますが、こういった方法によりまして十分に情報収集できるものと考えております。
  46. 高木義明

    ○高木(義)委員 次に、法の第四条では、運輸大臣造船業基盤整備事業協会に省令で定め調査業務を行わせることができるとなっておりますが、この理由についてどうなのか。
  47. 小川健兒

    小川(健)政府委員 本法では、正常価格に関する基礎的な情報収集の業務を造船業基盤整備事業協会に行わせることとしております。これは、一つには、協会が世界船舶製造業に関する豊富なデータを持っておりまして、外国造船所につきまして調査するための十分な能力もあるということでございます。それから二番目に、協会に調査を行わせることにより国の業務の効率化が図られるということを勘案して、その造船業基盤整備事業協会調査の一部を行わせることとしたわけでございます。
  48. 高木義明

    ○高木(義)委員 この協会は、ただいまお話がございましたように、造船に関する経営の安定あるいは技術の高度化のための基盤整備を目的で設置されておるものでございまして、今構造調整事業とかあるいは研究開発業務を行っておるわけでありますが、こういう業務に加えて、今回不当廉価建造契約に係る正常価格の算定に必要な調査業務がふえることになるわけですよ。  現在この協会の人員は、役員七名、ただし、常勤は四名で非常勤もおるわけでありますが、職員二十三名、合計三十名でございます。資本金は、政府十億円、日本開発銀行十億円、民間が五十三億五千万円、合計七十三億五千万円という組織でございますね。実質二十七名の人員で、役員と三つの部、八つの課に分かれて業務をしておるわけであります。  例えば調査の場合は、事によればトラック一杯分の調査書類を持ち帰ったりすることもあり得ると言われておるわけですが、現状のこの能力でこれに対応できるのか。新しいセクションを設けたり人員をふやすことになるのか。また、この調査業務を行う際の委託手続とかその財源はどのようになっているのか、お尋ねをしておきます。
  49. 小川健兒

    小川(健)政府委員 造船業基盤整備事業協会の現在の主な業務というのは、一つは特定船舶製造業の構造調整のための土地設備の買収、管理、譲渡、今はもう買収はありませんが、管理、譲渡をやっているということでございます。二番目として世界造船需要動向調査、それから三番目として、高度船舶技術の開発促進のための研究開発助成、例えばメガフロートとかテクノスーパーライナーに対する助成でございます。それから四番目として、協会自体が行っております環境保全技術の研究開発、こういった業務をやっているわけでございます。  今回の本法の制定によりまして、協会は外国造船所によるダンピングに関する調査等の業務が新たに加わるわけですが、これらは、従来から協会が行ってきました造船需要動向調査により入手した船価等の各種情報が活用できるということなどから、現在の業務と合わせて効率的に行うことによりまして、新たに増員することではなくて組織の一部を改組することによって対応できる、現在の人員で組織を一部改組して対応していくというふうに考えております。  新たに追加される業務に関する経費でございますが、国からの委託費で賄う予定にしておりまして、本年度の一般会計で約三千万円が計上されております。
  50. 高木義明

    ○高木(義)委員 この調査に関する造船業基盤整備事業協会と行政側、いわゆる運輸省、通産省、この役割分担はどうなっていくのですか。
  51. 小川健兒

    小川(健)政府委員 通産省と運輸省の役割分担はさきに御説明いたしましたが、運輸省造船業基盤整備事業協会の役割分担でございますが、基本的には調査業務は国が実施するものでございますけれども、国の業務の効率化を図るという観点から、この業務のうち、船舶正常価格に関する基礎的な情報収集の業務を協会に分担させたいと思っております。
  52. 高木義明

    ○高木(義)委員 また、運輸省海上技術安全局の造船課に、造船協定の発効を控えて対策官一名が新設されると聞いております。一名で十分な対応が可能なのかどうか、甚だ疑問なしとはしないわけでありますね。したがって、当然造船業基盤整備事業協会との連携協力がさらに必要になってくるわけでありますが、その体制のあり方について十分なのか、この点についてお伺いしておきます。
  53. 小川健兒

    小川(健)政府委員 今回新設されました造船協定対策官は、造船協定実施に伴い必要となる調査、それから二国間協議、それから紛争の際の小委員会への対応、これらの対外的な連絡調整を担当することになるわけでございます。一方で、協定国内実施に関しまして、ダンピング契約による国内造船所損害状況の把握だとか国内造船所に対する報告徴収につきましては、地方運輸局が対応することとなっています。  それから、もちろん先ほど御説明いたしました情報収集や何かは認可法人の造船業基盤整備事業協会を活用するということでございまして、運輸本省のみならず地方組織、認可法人を有効に活用して造船協定の円滑な実施を図りたいと思っております。
  54. 高木義明

    ○高木(義)委員 調査をして、その結果不当廉価建造契約であると認定された場合、外国船舶製造事業者への対抗措置について、具体的に要点を挙げて説明をしていただきたいと思います。
  55. 小川健兒

    小川(健)政府委員 ダンピングと認定した場合の対抗措置でございますが、外国造船所ダンピングと認定された場合、是正措置を行わない場合、是正措置というのは、例えば造船契約を解除するとか、あるいは価格差に相当する金額を国庫に納付するというような是正措置でございますが、これを行わない場合には対抗措置として、その造船所が一定期間に建造契約をする船舶について、その船舶日本に来た場合に貨物の積み込み、取りおろしの禁止を運輸大臣が命ずることができるということでございます。この措置外国造船所に対する直接的な措置ではございませんが、間接的にはその外国造船所の営業活動に大きな影響を与えるということで、ダンピング防止する有効な手段となるというふうに考えております。
  56. 高木義明

    ○高木(義)委員 その中で国庫へペナルティーを納める、いわゆるダンピングマージンといいますか、こういうことがあるわけでして、まあしかしそのことは、例えば、もうそれを払ってでも、ダンピングをしてでも仕事を取る、これはよくない事例になると思うのですけれども、そういうことがやられる場合だってないとも限らぬわけですが、こういうことが正常価格をつくることになっていくのかどうか、この点についての御見解をちょっとこの際聞いておきたいと思います。
  57. 小川健兒

    小川(健)政府委員 ダンピングだと認定されて、その是正措置としてその価格を国庫に納めればダンピング受注しても対抗措置はとられないということになるわけですが、ダンピングと認定されること自体、そしてまたその金額もかなりの額になるものというふうに思いますので、やはりこのダンピング契約防止するための措置としては有効に働くものというふうに考えております。
  58. 高木義明

    ○高木(義)委員 そういうことがないように私は望むわけでありますがね。  そこで、この対抗措置が適用される船は、ダンピング契約によって建造された船ではなくて、その後建造された船舶ということになっておりますが、その理由について。
  59. 小川健兒

    小川(健)政府委員 ダンピングであると認定された船舶を所有する船主は、それがダンピング契約であったか否かを知り得る立場にはなかったわけでございます。したがって、その船舶の対抗措置を適用した場合、その船主に過大な不利益を与えることになるわけでございまして、ダンピングをした船舶を対抗措置対象とするのは適当でないということで協定はできているわけでございます。  一方で、指定期間中に建造契約が締結された船舶の運航者は、その造船所ダンピングを行って指定を受けた事業者であるということを事前に知った上であえてそのような船舶の運航を行うものでありまして、禁止命令を受ける合理性がそこにあるというふうに考えております。
  60. 高木義明

    ○高木(義)委員 対抗措置の適用期間をダンピング契約によって建造された船舶の引き渡し後四年間とした理由は、いかがなんでしょうか。
  61. 小川健兒

    小川(健)政府委員 対抗措置として貨物の積みおろしの禁止の期間を四年としているのは、これは協定上でそういうふうに定められているわけですが、この対抗措置の期間は、ダンピング防止措置として有効であって過度でないものということで四年が決められたわけでございます。これは、運航者が建造契約の際に得る荷主からの積み荷保証期間、これが通常五年から八年ということでございますが、それと船舶の寿今、通常二十年程度があるかと思いますが、それらを勘案して四年以内というふうに協定定められたということでございます。
  62. 高木義明

    ○高木(義)委員 この対抗措置は、貨物の積み込み、取りおろしを禁じることにある。一方、船種を、これは船の種類でございます、貨物船に限定するとか、あるいはまた我が国への入港、また人や旅客の乗りおりを禁じるということではないと私は理解しておりますが、なぜ貨物の積み込み、取りおろしの禁止に限定したのか、この点についてお伺いしておきます。
  63. 小川健兒

    小川(健)政府委員 対抗措置は、ダンピングを行った造船所に対して間接的に不利益を与えることによってダンピング防止することを目的としたものでございます。それで、貨物の積みおろしの禁止措置は十分にこの目的を達成するための経済的効果があるということでございまして、船舶の入港や人の乗降の禁止まで行う必要はないと判断したことから、対抗措置を貨物の積みおろしの禁止に限ったわけでございます。
  64. 高木義明

    ○高木(義)委員 この不当廉価建造契約調査して指定するのは外国船舶製造事業者、いわゆる造船業者でありますが、貨物の積み込み、取りおろしの禁止命令の対象船舶の運航者、いわゆる船社でございます。これを分けておるわけですが、この理由について、なぜ分けられたのか、その点について。
  65. 小川健兒

    小川(健)政府委員 船舶の運航者を貨物の積みおろしの禁止命令の対象とした理由でございますが、貨物の積みおろしの禁止命令はその船舶の運航先を決定する立場にある者に対して行うべきものと考えておりまして、禁止命令の対象対象船舶の運航者としたわけでございます。  この運航者を禁止命令の対象者とすることにつきましては、二つの理由がございます。  一つは、貨物の積みおろし禁止命令の対象になり得る船舶、これは外国造船所を指定した後に契約する船舶であります。そのことは事前に運航者に周知されているわけでございますので、運航者は他の事業者から船舶を購入または対象外の船舶を用船するということにより、貨物の積みおろし禁止命令による不利益を回避できることになるわけでございます。したがって、故意にそういう船を事前に知っているのに買ったということで、運航者を対象にしたということでございます。  また、運航者は、貨物の積みおろし禁止命令の対象船舶であることを知りながらあえて発注、用船を行って当該措置の実効性を失わせるものであるということから、運航者を禁止命令の対象者ということにしたわけでございます。
  66. 高木義明

    ○高木(義)委員 説明はわかりましたが、この対抗措置によって我が国での貨物の積み込み、取りおろしを禁止された運航者あるいは荷主等から損害賠償を求められるというケース、可能性、これはないのですか。そしてまた、そういう場合においてどう対応していくのか、この点について十分な準備も必要じゃないかと思いますが、お尋ねをしておきます。
  67. 小川健兒

    小川(健)政府委員 対抗措置対象となる船舶建造造船所、これは事前に十分に周知されているわけでございます。したがって、それを知った上でやっているわけでございますので、禁止命令により運航者及び荷主から損害賠償を求められるおそれはないものと考えております。
  68. 高木義明

    ○高木(義)委員 この対抗措置の適用に当たっては、通産大臣あるいはその他の関係の行政機関の長と協議することになっておりますが、なぜそういうことをしなければならないのかということについて見解を求めておきます。
  69. 小川健兒

    小川(健)政府委員 第五条の指定、それから第六条の禁止命令に際して通産大臣その他関係行政機関の長との協議規定を設けているわけでございますが、外国造船所ダンピング防止のための措置を行うことによりまして、外国造船所のある国から、ダンピング調査実施やこれに基づく措置の発動など、船舶に限らず何ら二国間で問題の生じない他の産品の分野を含めて報復を受ける可能性があり、結果として通商に大きな影響を及ぼす可能性があるわけでございます。したがって、指定及び貨物の積みおろしの禁止命令を行うに当たっては、それが我が国通商関係に悪影響を及ぼすものでないかにつきまして通産大臣協議を行うものでございます。  なお、関係行政機関の長との協議ということでございますが、指定によりまして、外交関係への影響等の観点から、これは外務大臣協議を行うことを想定しております。
  70. 高木義明

    ○高木(義)委員 この造船協定で、加害的廉売と認定された造船業者がそれを不服として当事国間の協議においても解決されない場合は、最終的な決定を行う機能を有する機関として、OECD造船部会ですが、小委員会、いわゆるパネルが設置されることになっております。この法律案における小委員会が設置された場合の特例について、要点をこの際説明をお願いしたいと思います。
  71. 小川健兒

    小川(健)政府委員 造船協定上、紛争が生じた場合に小委員会が設置されることになっておりますが、この小委員会は三つのことを行うことができることになっております。  まず一つは、ダンピングであるとの我が国の判断につきまして、この判断が協定に適合するものでないという決定をすることができるということでございます。それから第二点といたしまして、指定期間及び貨物の積みおろし禁止期間の短縮の決定を行うことができるということでございます。また、その指定及び貨物の積みおろし禁止命令を暫定的に停止することができるという、この三つの権限を持っているわけでございます。  このため、小委員会が設置された場合には、その決定が出るまでの間は指定は行わないこととするということ、それから、上記の決定が行われた場合には、我が国協定締約国として小委員会決定を尊重する必要があるということでございまして、それぞれの決定に従った対抗措置をとることとしております。
  72. 高木義明

    ○高木(義)委員 この小委員会、パネルですね、この必要性について今お話もございましたが、やはりこのパネルに十分な機能を果たしていただくことが何よりも大切であろうと私は思っております。  これに関連しまして、例えば小委員会が、当該建造契約不当廉価建造契約ではないとして、さらに、我が国調査や指定は余りにも一方的過ぎる、相手国並びに相手国造船事業者がこうむった損害を補償すべき、こういう決定をする。こういうことも今私は考えておるわけでありますが、こういう決定をすることがこの小委員会でできるのかできないのか、この点について御見解を賜っておきたい。
  73. 小川健兒

    小川(健)政府委員 この小委員会ダンピング防止措置協定に適合しているかどうかということの判断をするだけでございまして、それ以外の判定、判断はしないことになっております。
  74. 高木義明

    ○高木(義)委員 そこで、私は冒頭にも申し上げましたように、いわゆるダンピングの提訴権が出てくるわけでありまして、このダンピングの提訴権の乱用によっていわゆる正常な造船経営を阻害するような事態のおそれがなきにしもあらずなんです。したがって、我が国が特にそういうものを受けた場合に、経営としても非常にダメージを受ける。だから、いたずらに提訴権を乱発されて混乱をされることを防ぐために、例えば何らかの歯どめ措置がないとそういう事態はお互いに繰り返されるのではないかと思っておりますが、乱訴、いわゆる提訴権の乱用ですね、これの歯どめ措置について何か考えておられるのかどうか。
  75. 小川健兒

    小川(健)政府委員 造船協定では、ダンピング防止のための措置に関し、協定に適合しない恣意的な運用防止するために規定を設けております。  まず第一は、調査開始申請には、ダンピングがあったことにつきまして各種の証拠を添えて行うこととされております。また、調査当局証拠の裏づけのない単なるうわさとか思い込みのみでは調査を行わない、行ってはいけないこととされており、またさらに、調査により十分な証拠がないことが明らかとなった場合は調査を取りやめることとされております。各締約国はこうした規定に従って調査を進めることとされておりまして、恣意的な運用を排除するものとなっているわけです。  また、相手国の調査等の措置協定に適合しないと考える場合には、相手国との二国間協議が可能となっておりまして、二国間協議で解決を目指すこともできます。  また、二国間協議でも解決できない場合は、先ほど申し上げました第三者機関であります小委員会を設置して、小委員会により客観的かつ公平に決定が行われるとされておりまして、協定に適合しない恣意的な運用が排除されることとなっております。  このように、造船協定規定に基づき、協定に適合しない恣意的なダンピング防止措置運用は行われないものと考えております。また、仮に行われる場合であっても、これを防止することが可能であると考えております。
  76. 高木義明

    ○高木(義)委員 造船業にとって、四年間にわたって建造する船舶が制裁の対象になることは、事実上国際商談への参加を閉ざされることになる大変厳しい措置でございます。本年七月十五日までには発効する見込みでありますが、これに関連をして、昨年の十二月十三日、米国の下院では貿易小委員会において全会一致で承認をされておりますが、我が国造船業との協力体制をてこに商船分野への再参入を目指す米国の造船業界では、ある程度の政府助成が必要であるのではないかという考えのもとに、六月の十五日までの批准書の寄託は難しいのではないかという見方が一部にあるわけです。  この点、我が国ももちろんそうですが、米国も早くこの批准書の寄託を図られるべきだと私は思っておりますが、一体その見通しについてどうなのか。そして、我が国として、米国に早くこういうものを寄託するようにという働きかけについて適切な処置をとるべきだと思っておりますが、この点についてお尋ねします。
  77. 齋木昭隆

    齋木説明員 お答えいたします。  アメリカの議会におきましては、上院と下院がございますけれども、上院の方では既に財政委員会を通過いたしまして、この協定でございますけれども、あとは本会議決定を待つだけとなっているというふうに承知しております。また、議会の下院の方でございますけれども、下院におきましては、歳入委員会を既に通過しておりまして、あとは国家安全保障委員会での審議を五月末、今月末までに終えることになっているというふうに承知しております。したがって、こういった状況のもとで、アメリカの行政府の方からも議会の方に対しまして、ぜひ六月の十五日までにこの協定を締結することができるよう働きかけを行っているというふうに承知しております。  また、仮に日本の方が先に協定を締結した場合、日本はどういうことをするかというお尋ねでございますけれども、そのような場合につきましては、日本政府といたしましては、OECDの場におきまして、また日本とアメリカとの二国間の関係におきましても、ぜひアメリカがこの協定を早期に締結するよう積極的に働きかけるよう努めてまいりたいと思っております。
  78. 高木義明

    ○高木(義)委員 ぜひそのことを期待するものでございます。  また、造船協定では、いわゆる自航、自分の力で動かない海洋構造物等は対象としていないということでございますが、今後どのようにこれをつけ加えていくのか、その辺のお考え。  同時に、研究開発の発展段階においては、基礎研究が一〇〇%、基礎工業化研究が五〇%、応用研究が三五%、開発研究が二五%、この助成措置協定では認められておりますが、これについて厳格に守られる保証はあるのかどうか。また、守らなかったらどうなるのかということについて、あわせてお伺いしておきます。
  79. 小川健兒

    小川(健)政府委員 まず第一点の自航しない海洋構造物、これは対象となっていないわけですが、現時点においてこれを造船協定対象とすべきというような議論締約国の間では行われておりません。  それから、第二点の研究開発助成についてでございますが、助成措置については各締約国の政府の責任のもとに講じられるものでございまして、協定を締結する締約国は、協定を遵守すべく努力するものと考えております。したがって、協定に抵触する助成が行われる可能性はまずないものというふうに考えております。研究開発助成につきましては、研究開発の段階に応じて一定の助成率のもとで供与することが許されているわけでございまして、各締約国が供与する助成の状況について締約国情報を提供するよう義務づけられておりますので、その透明性は十分に確保されていると考えております。  したがいまして、万が一いずれかの締約国協定に抵触する研究開発助成を供与していると信ずる場合にあっては、協定に従って迅速に協議を行って、また協議での解決が困難な場合は、小委員会手続を通じて問題の解決を図ることになるものと考えております。
  80. 高木義明

    ○高木(義)委員 協定の発効、期待どおりいけば本年の七月十五日になるわけですが、この前に、政府の助成が決定された一九九八年十二月三十一日以前に引き渡される船舶に対する助成であって一九九四年十二月二十一日以前の助成レベルを上回らないものについては、協定発効後も政府助成可能となっております。ECの造船指令では、九%までの船価助成が認められております。こうした助成が一九九八年十二月三十一日までどの程度各国に存在しているのか、この点について把握されておればお答えいただきたいと思いますし、いわゆる協定の提唱国であるアメリカ、米国の国内措置のジョーンズ法、あるいはスペイン、ポルトガル等のリストラ助成、こういった措置については、この際廃止をされるものかどうなのか、この点について御所見を賜りたいと思います。
  81. 小川健兒

    小川(健)政府委員 まず第一点でございますが、船舶は受注から引き渡しまで通常二、三年程度を要するわけでございますが、協定の発効前に助成措置の供与が決定された船舶であっても、その引き渡し及び実際の助成の供与が協定の発効後となるものもあると考えられますので、既存の助成措置に関する経過措置として御指摘のような規定が設けられているわけでございます。  造船協定に適合しない既存の助成措置といたしましては、一つはECの船価補助制度、それから米国の船舶建造資金融資に対する債務保証などが存在しております。協定の発効前にこれらの制度により助成が供与されることが決定された船舶には一定の経過措置が認められているわけですが、協定の発効後にこれらの制度に基づき新たに助成が供与されることはないというふうに考えております。  それから、第二点目のジョーンズ法に関連する米国の内航船に対する措置でございますが、米国の内航船の国内建造義務づけでございますが、協定発効後三年間は年間建造量が二十万総トンを超える場合、また、その後は、国内義務づけが存続する場合には他の締約国は一定の対抗措置を講ずることができるというふうに協定では規定しております。また、協定発効後三年後に行われます協定の見直しの一環として、規定の見直しについて締約国間で検討を行うことにしております。  それから、ベルギーやスペイン、ポルトガル等のリストラ助成に関する規定でございますが、これらの助成については、OECDの造船部会に通報済みの計画の範囲内で協定発効後も実施されることというふうにされております。
  82. 高木義明

    ○高木(義)委員 我が国には協定に反する政府助成がありませんので、各国の政府助成が撤廃されることが望ましいことだと私は思っております。  次に、この造船協定の発効によりまして、船の値段、いわゆる船価への影響についてどのように認識されておりますか。
  83. 小川健兒

    小川(健)政府委員 造船協定の発効が船価に与える影響でございますが、造船協定は公的助成の廃止とダンピング防止定めたものでございますので、この協定の発効により、ダンピングによる過度の船価の下落が抑止されることから、我が国造船業にとっては好ましい影響を与えるものと考えております。要するに、低船価受注の歯どめになるというふうに考えております。
  84. 高木義明

    ○高木(義)委員 この造船業においては、これからの商談というのは、そういう守りを固めながら攻めていく、こういう技量が求められていくことになります。  世界の新造船のマーケットでは、我が国が四五・三%、韓国が二一・六%、両国で六六・九%のシェアを占めておるわけです。この両国に対するダンピングの提訴というのが避けられない実情ではないか、こういう見方もあるわけであります。  日本と韓国の受注量の争奪戦や、韓国の建造設備の増強のあおりを受けた欧州共同体が、一つの国家として域内の商権を確保するために、造船協定のアンチダンピングコードを利用し、提訴する可能性が大変高い、こういう懸念がございます。こういったことについて、どのように国としては認識をされておりますか。
  85. 小川健兒

    小川(健)政府委員 日本と韓国で大体三分の二、世界造船の三分の二を占めているわけですが、これは基本的には日韓の国際競争力を反映しているものというふうに認識しております。要するに、国際競争力が強いからシェアも大きいということでございますので、通常の商取引を行う限りにおいては、シェアの高さがダンピング防止措置を受ける可能性の高さに直接結びつくものではないというふうに考えております。
  86. 高木義明

    ○高木(義)委員 この法案には直接関係はありませんが、ここで我が国造船業の抱える状況について、ひとつ政府の認識をお聞きしておきたいのですが、平成五年には韓国の新造船の受注量というのは八百三十二万グロストンで、世界の三七%を占めておる。我が国の受注量の七百五十万グロストン、三三%を抜いて世界一になったわけであります。今はまた違うのですがね。  同年、韓国では造船合理化法の期限が切れ、建造設備拡張の凍結が解除されました。以降今日まで、VLCC、いわゆる大型タンカー建造用の大規模な設備を中心とする増強が続いておるわけです。むしろ、ことし中には日本建造設備をしのぐのではないかというふうに言われておりますが、この韓国造船業我が国造船業に与える影響について私は十分な分析が必要だと思っておりますが、この点についてどのように考えておられるのか。
  87. 小川健兒

    小川(健)政府委員 韓国造船業、最近、大規模な設備投資を行い、建造能力を大幅にふやしております。これまで大体四百五十万程度と見られていた建造能力が、二倍近い七、八百万総トンにまで拡大されつつあるというふうに聞いております。今後、これらの新規設備が本格的に稼働を始めた場合には、世界建造能力が拡大し、また、我が国との受注競争が現在以上に激化する可能性は避けられないのではないかというふうに思っております。日本造船業、それに対抗して一層の国際競争力の向上に努めていく必要があるというふうに考えております。
  88. 高木義明

    ○高木(義)委員 これからの世界造船業の将来というのは、まさに建造能力というのは過剰の状態ぎみでありまして、これが解消されないと、いわゆるダンピングとか、あるいは赤字受注等というのが発生しまして、雇用の問題あるいは産業の構造改革の問題等々、国民生活にかかわる不安要素も起きてくるわけでございまして、まさに国際的な協力、協調体制というのが今この造船業界には問われておるわけであります。そういう意味で、政府が挙げて、OECDを中心にした世界各国、あるいはそれに参入をしていないところも含めて、私は公平公正な競争原理に基づく市場の確保というのを図っていかなければならぬと思っております。  いわゆるOECDの造船協定の発効によって、自分たちの国、自国の域内の利益や権利を守るためのみにこのダンピング提訴が乱発されていくということは、本来の目的からは逸脱するわけでございます。そういうことがないように、私は十分な事前の政府間協議というのが必要であろうと思っております。  特に造船業というのは、御案内のとおり、たび重なる不況の波をかぶりまして、人員の削減、あるいは会社をそれぞれ分けたいわゆる分社化等の推進、そういうことをやってコストダウン、体質の改善を図ってまいっております。また一方では、海外資材を購入してコストを下げる、そして受注を伸ばしていく、こういう努力をしておるわけです。  平成六年には新造船受注量が世界の四六・二%に回復し、再び我が国はそのシェアにおいて首位に立ったわけでございますが、石油ショックあるいはプラザ合意による円高、こういう試練を乗り越えて、今日まで血のにじむようなコストダウンの努力をやってきて、そして、あしたに向かって競争力をつけていく、我が国の産業として、あるいは国民生活の中で、いわゆる海洋国家としての位置づけを高めていこう、こういうことで奮起をしておるわけでございます。  したがって、この協定、あるいは国内法であります今回のこのダンピング防止法案、適切に措置されることが大切になろうかと思っておりますが、どうかこの点についてさらに関係当局としては努力をされてほしいと思っております。  そこで、時間も来ましたので、いわゆる多国間の協議、そして多くの方々にこういうものに参加をしていただく、そういうためには外交努力というのも必要でございます。まずは外務省にその辺の決意と考え方を聞いて、最後に運輸大臣に、私は今までるるお尋ねをしてまいりました、あるいは意見を申し上げましたが、このことを含めて、ひとつ大臣としての御所見を賜っておきたいと思います。
  89. 齋木昭隆

    齋木説明員 お答えいたします。  この造船協定が採択された際にも、実は交渉参加国の間では、この交渉には参加しなかったけれども、相当の造船能力を有する国というのが幾つかある、したがって、こういった国々が将来協定への加入を図るようにぜひみんなで奨励していこうではないかということが確認されておるわけでございます。したがって、そういった確認に基づきまして、その後OECDの造船部会におきまして、またOECDの事務局を通じまして、こういった国々との意見交換というものを進めておるわけでございます。  具体的には、例えばオーストラリアあるいはポーランドといった国々、こういった国々は、今造船協定への加入交渉に向けた作業を進めておるわけでございます。また、造船部会としては、ロシアあるいはルーマニアといった国々との意見交換も行ってきておるわけでございます。
  90. 亀井善之

    亀井国務大臣 委員いろいろ御指摘をいただきました。長い間造船業に従事をされまして、その深い見識には敬意を表する次第でございます。  先ほど来御指摘のとおり、世界造船市場は、韓国の設備の拡張あるいは米国の商船分野への再参入あるいは中国の台頭と、大変競争が激化をすることが予測されるわけであります。このため、我が国造船業国際競争力の維持向上、これを図っていくことが重要なことである、このように認識をいたしております。  他方、我が国世界造船業をリードする、その立場にあるわけでありまして、そのリーダーシップを発揮しつつ国際協調を図っていくことが必要ではなかろうか、このように考えておる次第であります。この努力を重ねてまいりたい、このように考えております。  このため、造船協定を適正に実施することにより、正常な競争条件を確立するとともに、需給の安定あるいは世界の需給動向、このようなことに関する世界的な共通認識、また各国の政策協調、こういうものを展開をし、国際的な対話、このことをも推進していかなければならない、このように考えております。
  91. 高木義明

    ○高木(義)委員 終わります。
  92. 辻一彦

    辻委員長 以上で高木義明君の質疑は終了しました。  寺前巖君。
  93. 寺前巖

    寺前委員 行き過ぎた船価引き下げの歯どめとして条約が結ばれる、それに関連して国内法整備していく、私は賛成です。  せっかくの機会でございますので、それを実効あるものにさせていくために一体何が必要なんだろうかということを考えまして、この間うちから造船所に何人かの人に行ってもらって調査をしたところです。その調査をやってみると、意外なことがわかってくるものです。  長崎にある造船所に行った人が、組合がまいていたビラを持って帰ってきた。「今なお続く違法カット」というビラがあるのです。ちょっと大臣紹介をしておきたいと思うのです。   いま設計部門は、「設計費の二割削減」という「相川コストダウン」の矢面に立たされ、そのあおりをくった設計外注時間の三〇%カットは、協力会社の経営と、社員の生活を直撃しています。  「時間カットを止めてほしい。少ない給料がこれ以上減ると困ります」  「利益は黒字なのに、なぜカットするのか」  「売上げ、経常利益をあげながら、まだ下請けを締め上げている。早くカットを止めてほしい」  「良いときだけの共存共栄とは」と多くの声がよせられています。  またこのカットによって協力会社の残業や休日出勤も大幅に減り、仕事の遅れも目立ち始めました。カットが続けば続くほど、仕事遅れは大きくなるばかりです。  しかも火力プラント設計部のカットは、仕事をさせた後、かかった時間をカットするという違法なカットで、昨年八月以来、今なおこの違法な行為が続けられています。  この違法行為を、分会がビラで何度か取り上げる中で、「仕事をした分は支払うように」と副所長から各部長に指示がでていました。  「仕事をしたくても各協力会社に割り当て金額が決められてくる。私たちがいくら頑張っても、仕事をしても割り当てだと言って、課長・係長は認めてくれません。副所長さんが「仕事をした分は支払え」と言ったことは、いつになったら実行されるのでしょうか」。  言葉だけでなく、実行されるまで見届けてほしいものです。 云々と、ずっとこのビラには書いてあるわけです。  こういう状態というのは今も続いているのかなと現場の人たちの話を聞きましたら、ちょっとも変わりませんがということになっているのだから、私は、労働者が違法だと感ずるような事態、下請の業者が違法だと感ずるような事態を野放しにしておいていいのだろうか。これほど国際的にも条約を結んでみんなが不幸な道に陥らないようにということを言っておるときに、その内容においてはそういうことが行われているとするならば、国際条約に堂々と論を張る日本政府の代表が、日本国内で違うことがなされておっても許していくという態度では、お粗末過ぎるのじゃないだろうか、そんな感じを私は持ちました。  そこで、公正取引委員会、お見えでございますか。――公正取引委員会としては、こういうような実情を知っておられるのだろうか。あるいはこういう実情を調査されたことがあるのだるりか。あるいはこういう問題について、公取として何か考えなければならぬことがあるのだろうか。どんなことをお感じになっているのか、おやりになっているのか。これから何をしょうとしておられるのか。まずは公取から聞きたいと思います。
  94. 酒井享平

    ○酒井説明員 御説明申し上げます。  こういった事態があるということを承知しているかということなんですけれども、これまで外部からこういった点についていろいろ要望とかいうものがなされたことはないものですから、今初めてお聞きした、そういう実情でございます。  そういうことではございますが、我々、下請代金支払遅延等防止法という法律、それからその法律対象にならない場合には、独占禁止法の不公正な取引方法の優越的地位の乱用、これに当たるかどうかということでこういった問題に対処していく、与えられた権限の上での役割はそういったことだろうと思います。  そういうことでございますが、今先生のお尋ねの中にございました造船業における設計の委託取引だろうと思うのですが、下請代金支払遅延等防止法というのは製造委託または修理委託を適用対象とするということになっておりますので、この取引自体は下請代金支払遅延等防止法の対象にはなりません。そういったことで、先ほど一般的に申し上げましたとおり、独占禁止法上の優越的地位の乱用に当たるかどうか、そういった問題になるというふうに考えられます。  こういう問題が生じて、独占禁止法上の優越的地位の乱用行為として規制をするかどうかという場合には、まず取引上、優越した地位を利用したものであるのかどうかとか、あるいは不当に不利益なものに当たるかどうか等について、具体的事案に即して個別に判断する必要がございます。こういったことで、調査をしてみなければ、にわかには判断できないという面があるということを御理解いただきたいと思います。  それで、こういう製造委託とか修理委託に該当しない役務の委託取引について我々が今どういう仕事の仕方をしているかということを若干御説明申し上げますと、現在下請法の適用対象になっていない役務の委託取引についても、従来から個別業種ごとに調査をして、問題がある場合には独占禁止法に基づいて要望をするとか、あるいは場合によっては指導をするといった形で是正に努めてきたところでございますが、近年の我が国経済の景気低迷の長期化による影響が、下請法の適用対象となっていないこういう委託取引にも生じているだろうというふうに考えられますので、平成八年の二月以降、その影響がどのように生じているかを把握するため、複数の業種を選定して調査を行っているところでございます。  現在調査を行っているところでございますが、今後その取りまとめを行う、そういう予定になっております。この調査結果を踏まえて、独占禁止法上の問題点があるかどうか検討を行うことになる、そういった状況にございます。
  95. 寺前巖

    寺前委員 下請代金支払遅延等防止法の一部を改正する法律案が一九六五年の五月十八日に通ったときの附帯決議の中にこういうのがあります。「下請取引の範囲の拡張については、現在の製造委託、修理委託に限らず、運搬、土建等も、その実態に即して適用するよう速やかに検討すること。」これは六五年ですから、もうあれから随分たちました。九六年ですから。  その間に、今もお話があったように、十四業種にわたって設計部門などについても公取で調査をされているようですね。今その取りまとめだということをこの間聞きました。私は、明らかに三十一年も前の事態とは違って、下請代金の支払い遅延防止の適用という問題を製造部門からもっと広げなければならない実態が現実に存在してきている、こういう事態の中で起こっている問題が、先ほどの労働組合が現場で配っておられるビラの中からうかがうことができるわけです。  ですから、そういう意味では、私は積極的にこの問題は公取としても検討していただきたいと思うのと同時に、そういう法の直接的な対象になっていない段階において、そのことが現実に今検討されなければならない客観的な事態に置かれているときに、運輸省として積極的にこの分野についてメスを入れるということが必要ではないのだろうか。  しかも、運輸省の中には臨時船舶建造調整法という法律もあって、積極的に二千五百総トン以上の船についてはいろいろやらなければならない、報告をとるということまでなっているのだから、こういう分野について野放しにして何年もおいておくということは、私は異常じゃないだろうか。むしろ積極的に調査をして、積極的な対応をとるべきじゃないのだろうかな。  担当の局長さんに、この分野のどういうことを今まで調査されて、どうしょうとしておられるのか、ひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  96. 小川健兒

    小川(健)政府委員 先生お話しされました造船会社と下請とのいろいろな状況につきましては、残念ながら我々十分把握しておりません。  一般的に申し上げまして、日本造船業の経営状況というのは、昨年来急激な円高等によって船価水準が低迷いたしておりまして、極めて厳しい状況にありまして、造船会社のみならず舶用関連事業者、それから下請企業などに広くその影響が及んでいるものと考えております。  しかしながら、各事業者による合理化努力とか、また為替が円安に振れたことなどでこのところ採算性は向上しつつありまして、御指摘のようなことは改善の方向に向かうものというふうに期待しております。  また、運輸省といたしましても、我が国造船業国際競争力の向上あるいは技術開発の促進のための諸施策を積極的に講じまして、下請事業者を含む造船業全体が健全に発展していけるように努力してまいりたい、このように思っております。
  97. 寺前巖

    寺前委員 全体がと、こうおっしゃっても、事が起こっているのは極めて具体的で、設計外注時間のカットについては会社から一方的に時間カットが言われるのだ。したがって、カット率を契約してのものではない。だから図面が仕上がってからカットされるわけで、分会のビラのように下請業者が課長や係長に泣きついているというのが現実の実態になっているではありませんか。  私はその資料の一端をここに持っていますけれども、見積もり時間と査定時間を見ると、例えば去年の一月だったらマイナス三八%だとか、二月だったらマイナス三一%、三月だったらマイナス三八%、四月だったらマイナス四〇%、五月だったらマイナス五〇%。毎月毎月ひどいカットになっているのですよ。  こんなことを野放しにして、全体としてうまくいったら、そんなのんびりしたことを言っているわけにはいかないのじゃありませんか。今まで調査したことはないとおっしゃるのだったら、この際に一回調査をして、きちっとやはり指導をするということを明らかにしてほしいと思うのです。余りにも異常じゃないだろうか、私はそういうふうに思いましたので、これ、大臣、いかがですか。調査もする必要はないとおっしゃるのですか。どうです。
  98. 小川健兒

    小川(健)政府委員 先ほど申し上げましたように、その実態、我々まだ十分把握しておりませんので、これから調査してみたいと思っております。
  99. 寺前巖

    寺前委員 ですから私は、こういう問題はやはり長期にわたって行われているのだから、しっかりとメスを入れてほしい、あえて大臣にひとつお願いをしておきたい。  それからもう一つは、もう時間もないようですからお願いをしたいわけですが、この間新聞を読んでいたら、三月二十九日に造船業についての新長期ビジョンの骨子が報告されていました。そして、七月には補足意見を取りまとめて答申をするのだということが出ておった。  私は、ここで何でも規制緩和だ、緩和だと言って、せっかく地域産業について造船が大きな位置を占めている特殊な地域というのがあって、あの不況のときに一船台並列建造の禁止、そういう方策をとってきた。こういうものを何でも野放しにして、これは解除してしまうということになったら、私は事は地域産業にとって重大だな。こういう問題に対して、運輸省としてどんな見解をとっておられるのか、局長の答弁と、全体として私の提起した問題についての大臣の見解をお聞かせいただきたいと思います。
  100. 小川健兒

    小川(健)政府委員 我が国造船業は、これまで二回にわたって過剰設備の処理を実施して、設備の新増設を抑制する等の施策を講じて経営の安定化を図ってきたところでございます。これらの施策を通じまして、長期にわたる厳しい設備の新増設の抑制などによりまして、その結果として、建造設備の老朽化あるいは産業の活力の低下、そういったものが目立ってきたわけでございます。  一方、世界的に見ますと、韓国造船業の大幅な設備拡張とか、あるいは米国、ロシア造船業の商船市場への参入、そういったことで世界的に建造能力が拡大し、国際競争の激化が予想されております。造船業の経営環境というのは、これからますます厳しくなっていくものと考えております。  こういうような環境変化を踏まえると、造船事業者の自助努力を前提といたしまして、造船事業者の経営の自由度を高める方向で設備規制や何かを考えなければいけないということで、現在、造船政策のあり方について、設備政策も含めまして見直す時期に来ているというふうに考えております。もちろんこの場合、中小造船業に対しては十分な配慮を必要と考えてはおります。今後の我が国造船業のあり方につきまして、現在、海運造船合理化審議会で御審議をいただいている最中でございまして、この審議の結果を踏まえて、今後必要な施策をとっていきたいというふうに考えております。  なお、中小関係で申しますと、現在、平成五年度から第四次の構造改善事業を実施しておりまして、その体質の改善に努めているところでございます。
  101. 寺前巖

    寺前委員 せっかくダンピングをどうするかとか国際的にも話をしてきている中で、規制緩和という名のもとに、結局中小企業やあるいは労働者にしわ寄せが行くというようなことをしておったら、何をやっているかわからぬことになるじゃないか。やはり地域産業を守っていくというのは政府の使命なんだから、自然成長的にやらせていくわけにはいかないということははっきりしておく必要があるだろう。特に、先ほども言いましたように、現実に何年も続いているところのこのカットのやり方、こういうことを野放しにしておったら、指導がないのと一緒じゃないか。  私は、そういう意味で大臣は積極的にこういう分野に乗り出していって調査をし、そういうことのないようにさせるべきだというふうに思いますが、見解を聞かせていただきたいと思います。
  102. 亀井善之

    亀井国務大臣 我が国造船業の現実、操業量はある程度確保しておりますものの、為替相場の変動の影響等々、受注競争の激化、船価水準が依然として低迷をしておる、造船業の経営というのは大変不透明な実態であるわけであります。そのような中でいろいろ努力をしてまいらなければならないと思います。先ほど局長からも申し上げましたが、海運造船合理化審議会の中でも、今後の造船業のあり方につきまして今いろいろ議論をしておるところでもございます。  特に、先生からも御指摘がございました、中小造船企業あるいは下請企業、労働者への配慮、このことが必要なことでもあります。先ほども局序から御答弁申し上げましたが、いろいろ調査をする、そのような中で、厳しい中でありますけれども、それらの企業が進展するような努力をいたしてまいりたい、このように考えております。
  103. 辻一彦

    辻委員長 以上で寺前巖君の質疑は終了いたしました。  これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     ―――――――――――――
  104. 辻一彦

    辻委員長 本案につきましては、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  外国船舶製造事業者による船舶不当廉価建造契約防止に関する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  105. 辻一彦

    辻委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  106. 辻一彦

    辻委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  107. 辻一彦

    辻委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午前十一時三十六分散会      ――――◇―――――