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1996-04-04 第136回国会 衆議院 安全保障委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年四月四日(木曜日)     午前十時一分開議 出席委員   委員長 吹田  愰君    理事 瓦  力君  理事 浜田 靖一君    理事 町村 信孝君 理事 佐藤 茂樹君    理事 西村 眞悟君 理事 平田 米男君    理事 田口 健二君 理事 前原 誠司君       安倍 晋三君    麻生 太郎君       大野 功統君    熊代 昭彦君       中谷  元君    中山 利生君       中山 正暉君    野田 聖子君       平泉  渉君    宮下 創平君       渡瀬 憲明君    赤松 正雄君       石井  一君    今津  寛君       大石 正光君    河合 正智君       神田  厚君    月原 茂皓君       米沢  隆君    渡辺浩一郎君       大出  俊君    五島 正規君       東中 光雄君    山花 貞夫君  出席国務大臣         外 務 大 臣 池田 行彦君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 臼井日出男君  出席政府委員         防衛庁参事官  小池 寛治君         防衛庁長官官房         長       江間 清二君         防衛庁防衛局長 秋山 昌廣君         防衛庁人事局長 大越 康弘君         防衛施設庁長官 諸冨 増夫君         防衛施設庁施設         部長      小澤  毅君         外務省アジア局         長       加藤 良三君         外務省北米局長 折田 正樹君         外務省条約局長 林   暘君  委員外出席者         安全保障委員会         調査室長    下尾 晃正君     ――――――――――――― 委員の異動 二月二十七日  辞任         補欠選任   大野 功統君     武藤 嘉文君   熊代 昭彦君     後藤田正晴君   高橋 辰夫君     衛藤征士郎君   石井  一君     笹川  堯君 同日  辞任         補欠選任   衛藤征士郎君     高橋 辰夫君   後藤田正晴君     熊代 昭彦君   武藤 嘉文君     大野 功統君   笹川  堯君     石井  一君 同月二十九日  辞任         補欠選任   大野 功統君     武藤 嘉文君   熊代 昭彦君     相沢 英之君   高橋 辰夫君     後藤田正晴君   中谷  元君     小澤  潔君   中山 利生君     原田  憲君 同日  辞任         補欠選任   相沢 英之君     熊代 昭彦君   小澤  潔君     中谷  元君   後藤田正晴君     高橋 辰夫君   原田  憲君     中山 利生君   武藤 嘉文君     大野 功統君 三月二十七日  辞任         補欠選任   大野 功統君     高鳥  修君   熊代 昭彦君     原田  憲君   高橋 辰夫君     武藤 嘉文君   中谷  元君     加藤 紘一君   大石 正光君     笹川  堯君 同日  辞任         補欠選任   加藤 紘一君     中谷  元君   高鳥  修君     大野 功統君   原田  憲君     熊代 昭彦君   武藤 嘉文君     高橋 辰夫君   笹川  堯君     大石 正光君 四月四日  辞任         補欠選任   森  喜朗君     安倍 晋三君   不破 哲三君     東中 光雄君 同日  辞任         補欠選任   安倍 晋三君     森  喜朗君     ――――――――――――― 三月七日  AWACS導入撤回浜松基地配備反対に関す  る請願(岡崎宏美紹介(第二六七号)  同(小森龍邦紹介)(第二六八号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国の安全保障に関する件      ――――◇―――――
  2. 吹田愰

    吹田委員長 これより会議を開きます。  国の安全保障に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大野功統君。
  3. 大野功統

    大野(功)委員 おはようございます。自由民主党の大野功統でございます。  きょうは、沖縄における米軍基地の問題につきまして、防衛庁長官並びに外務大臣お尋ねを申し上げたいと思います。  まず、緊急を要している問題であります。つまり、楚辺通信所の問題です。  この楚辺通信所というのは、四月一日から一体合法的な状態になっているのか、それとも違法的な状態になっているのか、こういう問題があるわけでありますけれども政府の方からは四つ理由を挙げまして、つまり、一つは過去二十年間にわたって賃貸借契約に基づいて適法使用している、二つ目日米安保条約並びに地位協定の問題がある、三番目には土地使用権原を得るための所定手続をとる途中である、四番目は借料相当の全員の提供をしている、このような四つ理由を挙げまして、この土地土地所有者に返還されていない状態について、直ちに違法であるというには当たらないのではないか、極めて遠慮がちな解釈を述べておられるわけであります。  私は第一に想起したいのは憲法九十八条二項でございまして、言うまでもありません、条約というのは誠実に遵守する必要があるんだということが書いてあります。それから、九十八条の一項には、憲法というのは最高法規であって、この憲法に反する法律あるいは国の行為は無効である、こういうことを書いてあるわけであります。  果たしてこの賃貸借契約憲法九十八条一項に基づく国の行為であるのかないのか。判例によりますと、これは国と私人との間の契約であるから私法上の問題である、つまり、国の行為には当たらないという判例もあるようであります。皆さん御存じのとおり、これはいわゆる板付飛行場事件であります。  最高裁昭和四十年三月九日に判決が出ておりますけれども、これはアメリカ占領が終わるまで賃貸借契約をする、こういうような状態で始まって、占領が終わったからどうなるかという問題でありますけれども、その最高裁判決で次のように書いてあるわけであります。判決が出ているわけであります。  「国は、土地所有者との間で、期間駐留軍使用を継続する間とする賃貸借を締結したが、本件土地については、上告人らに拒否されたため、契約による使用権を取得できず、」つまり、占領が終わったからもうこの賃貸借契約は終わったんだといって上告されているわけですね。それで「被上告人」、つまり国は、「国の駐留軍に対する土地提供は、日米安全保障条約三条に基づく条約上の提供義務履行としてなされているのであって、右条約の誠実な履行は、国の義務であり、関係土地所有者らも、直接間接、この国の義務履行協力すべき立場に置かれているものというべきである。」このように言っているわけです。  そう言った上で、契約に基づき「国と関係土地所有者との間にすでに適法に形成された前記のごとき土地使用関係は、単に契約が満了した」、つまり占領の終了ですね、「契約が満了したという一事により、たやすく消滅させるべきではなく、その使用」、つまり米軍による使用ですね、「の必要性が大であるかぎり、むしろこれを存続させることを相当とすることは、借地権存続期間満了等事由により消滅した場合においても、建物があるときは、土地所有者において、正当の事由がないかぎり、借地権者からの更新の請求を拒絶しえないものとする借地法四条一項の精神に照らすも、肯認するに難くないところである。」と言っております。  さらに、「国の落度」、この場合延長手続とか何らかの手続をしなかったことを言っているんだと思いますけれども、「国の落度のあることは明らかであるが、右の手続をとらなかったことによる本件土地所有権の侵害については、不法行為または不当利得に関する法規により救済を求めるのであれば格別、原状回復を求める本訴のような請求は、私権の本質である社会性公共性を無視し、過当な請求をなすものとして、認容しがたい。」  つまり、言っている意味は、まず、占領が終わるまでという契約であっても、条約に基づき土地提供することは国の義務である、さらに、その土地所有者は国の義務協力をしなければいけない、しかも、借地法四条一項に照らせば妥当である、こういう場合には何よりも公共性を重んじなければいけない、こういうふうに言っているわけであります。  だから、堂々と胸を張ってこれは合法である、おっしゃっているように直ちには違法であるというには当たらないのではないかというような言い方ではなくて、むしろ合法である、このような見解ではなかろうかと私は思うのですが、まずその法的側面についてお答えをいただければと思います。
  4. 臼井日出男

    臼井国務大臣 ただいま委員お話しいただきましたように、四月一日以降の土地所有者に返還をされていない状態につきまして、四つ理由を挙げまして、直ちに違法ではない、こういうふうに考えを述べているわけでございまして、これはたびたびいろいろな場で表明させていただいているわけでございます。  委員お話し本件と類似の事例、すなわち、駐留米軍施設・区域として提供している土地について土地所有者による所有権に基づく土地明け渡し請求、今お話し板付飛行場事件が権利の乱用に当たるとして国の使用が認められた事例がある、このことも承知をいたしているわけでございますが、このことをもっていたしましても使用権原がなく占有をしている状態には変わりがない、こう考えておりまして、したがいまして、直ちに違法ではない、こう表明させていただいた次第でございます。
  5. 大野功統

    大野(功)委員 いずれにしましても、憲法を遵守する義務と、それから私法上の契約、これが国の行為に当たるのか当たらないのか、ここは論が分かれるところでありますけれども、まず何といっても条約を守る義務、これは重いものであります。したがいまして、今のいわゆる板付裁判にもありますように、どうしても国民の皆様に国の義務を守るように協力してもらわなければいけない、こういう観点が一番大事だと思うのです。  そこで、一つお尋ね申し上げますが、これまで地主の方とたびたび話し合っておられますが、その話し合いの実績、あるいは、もし今回も混乱がない、混乱が予想されないとすれば、むしろ地主の方にもその土地のところに立ち入りを認めてもいいのではないか、こういう議論もあります。一方的な行動ではなくて、やはり協力し合う姿勢というのが物すごく大事なわけですから、そういう意味で、もっともっと話し合い、あるいは現地できちっと説明できるような状態になっているのかどうか。  現地でいわゆるフェンスのところへ行きますと、入れてはいけないという指示を受けています、こういう報道でありますけれども、むしろその場でもこうこうこうなんだときちっとした話ができる、いわゆる行政としての説明の責任を果たせるような人間を置いておく必要はないのか、あるいは協力態勢についてはかに何かないのか、こういう点について御説明をいただきたいと思います。
  6. 諸冨増夫

    ○諸冨政府委員 御説明いたします。  今先生指摘の最初の話し合いの点でございますが、私ども昭和五十一年から本件土地については賃貸借契約を結んでおったわけでございまして、これが二十年後で切れるという状況に置かれまして、平成六年六月、期限が切れる二年ほど前から、トータル二十三回にわたりまして、御本人とは何度も交渉したわけでございます。最近に至りましても、平成八年、ことしの二月以降四回にわたりまして御本人の方の何とか御了解をいただけないかというようなことで交渉したわけでございますが、信念といいますか、確信的なお方でございまして、残念ながらなかなか御承諾を得られないという状況でございます。  一方では、私ども賃貸借契約が終了するのに先立ちまして、当然、駐留軍用地特措法に基づく手続も昨年の三月以降並行して進めておるというような状況でございます。それで、私ども現地那覇防衛施設局の方に局長以下ベテランの職員を配置しておりまして、この間の私ども事情につきましては、今申し上げましたように、もう御本人には再三にわたって御説明をしておるところでございます。  それで、次の質問の立ち入り等の問題でございますが、これは、私ども政府側としても、いろいろな、やはり米軍に対していわゆる安定的な使用というのを保障するといいますか、確保する必要がございます。したがいまして、一部平穏を脅かすといいますか、平穏でないような状況、あるいは不測の事態が起きるようなおそれがあるような状況ということが、私ども情報等から判断いたしまして種々予想されるということで、現段階では、私どもは御本人に対する立ち入り拒否しておるところでございます。  これは地位協定の第三条一項に基づきまして、もちろん米軍管理権というのがございまして、本人といえども立ち入り拒否するということは米軍に与えられております権限でございますが、私ども日本側のそういう事情を十分御説明した上で、日米間で協議の上、御本人立ち入りについて拒否をしたところでございますが、このような状況が、今後とも米軍に対するいわゆる安定的な使用に害を及ぼさないで、かつ平穏な状況あるいは不測状態が起きる可能性がほとんどないというふうに私ども判断できるような状況になりましたら、それはまたその時点で御本人立ち入りについては検討させていただくことになろうと思いますが、現段階ではまだそういう状況にはないというふうに認識しているところでございます。
  7. 大野功統

    大野(功)委員 今回の楚辺通信所のような出来事は絶対行政上起こしてはならない、起こってはならないことであります。そのために、手続的に要するに機関委任事務という制度をつくっているわけであります。この機関委任事務をつくっているにもかかわらずこういう事件が起こるというのは、ちょっとこれは恐らく想像もつかないことだっただろう。しかしながら、将来もし起こったらどうしたらいいのだろうかという問題は、考えておかなければいけない問題だと思います。  いずれにしても、こういう基地問題というのはレールの上を走っているようなもので、知事さんあるいは総理大臣代理署名という問題で線路継ぎ目はありますけれども、ときどき汽車が走れなくなる、こういう状態は絶対避けなければいけない問題であります。したがって、今回も機関委任事務ということで、線路継ぎ目はあっても線路が途切れてしまうということは想定していなかったわけでありますが、一たんこういう問題が起こった以上は、将来こういうようなことが起こった場合には国としてどういうことをやったらいいのか、どういう法制を整えておけばいいのか、こういう問題は私は当然考えておかなければいけない問題だと思うのです。  そこで、お尋ねを申し上げたいのでありますけれども、例えば今回総理代理署名が終わった後、三月三十日、三十一日、これはたまたま土曜日、日曜日で休日でありましたけれども、その時点収用委員会は開けないのか。あるいは、今度の収用委員会開催日は、定例日が四月十二日だということでありますけれども、それを早めて開いてもらうわけにはいかないのか。それは運用上の問題ではなくて法制上きちっとしておく問題ではなかろうか、こういうふうに思うのでありますが、その辺の法整備をどのように考えておられるのか。  まず法整備必要なのかどうか、それから法整備をどのように考えておられるのか、この点につきまして御所見があれば承りたいと思います。
  8. 臼井日出男

    臼井国務大臣 委員機関車レールに例えてお話してございましたけれども、今回の楚辺通信所、全体でもって四百四十人という大勢の土地所有者の方がおられるわけでございますが、ただ一人の拒否者があったためにこうした状況になっていることは極めて残念でございます。今お話しのとおり、私どもは引き続き米側に安定的に供給できるようなために全力を尽くしていかなければならない、こういうふうに考えております。  ただいま御指摘ございましたとおり、今後ともこうした状況が生じないような努力をしていかなければならないのはもちろんでございまして、法改正等措置についてのお話もございましたが、今後、御指摘の点も踏まえて慎重かつ適切に対応してまいりたい、このように考えている次第でございます。  なお、緊急使用申し立ての件につきましては、政府委員の方から御答弁させます。
  9. 諸冨増夫

    ○諸冨政府委員 お答えします。  判決が出ましたのが三月二十五日でございまして、私どもその判決を受けまして、早速収用委員会事務局の方にはコンタクトをとらせていただいております。手続的には三日間の猶予期間といいますか、考え期間が与えられておりまして、二十八日がその期限でございましたので、正式に書類をお持ちいたしましたのは三月二十九日でございます。  それで、私ども職員を通じまして、事務局の方には一応、土曜、日曜日、三十、三十一日でも何とか開いていただいて、期間内に正式な緊急使用の許可をいただけるように再三事務的にはお願いしておるところでございますが、この収用委員会というのは独立機関でございまして、私どもはいわゆる当事者の立場収用委員会方々といいますか委員方々に直接接触をするということは従来も控えておりますが、事務的には、今申し上げましたように、事務局を通じまして私どもの緊急に取得する必要性についてはもう十二分に御説明をして、何とか一日でも早く使用権原が取得できるようにお願いをしておる、こういう事情でございます。
  10. 大野功統

    大野(功)委員 御努力は多といたしますけれども、しかし、こういうことは事の性格上、つまり機関委任事務にしているということは、絶対にレールがなくなってはいけない問題でありますから、先ほどのいわゆる板付事件に言われておりますとおり、やはり国の義務履行していかなければいけない、その国の義務協力していかなければいけないというような義務は、やはり収用委員会独立機関といえども残るのではないか、私はこのように思いますが、その点はいかがですか。
  11. 諸冨増夫

    ○諸冨政府委員 先ほどもお答えいたしましたように、やはり収用委員会というのは私どものいわゆる土地収用に関します公正中立機関ということで、それぞれ委員長以下、今先生指摘のようなことは十分踏まえた上の御判断がされるものと期待しておるところでございます。
  12. 大野功統

    大野(功)委員 そうしますと、日米安全保障条約の円滑な運用を図るためには、米軍基地の中にある民間人土地、これをどう考えていくかという問題にも言及しなきゃいけないことになると思うのです。うまくいっているところはそれでいいのでありますが、うまくいっていないところ、特にこの場合は一人の土地所有者が七十坪の土地を所有されているそうでありますが、いわゆる一坪地主さんの問題であります。  一坪地主さんの場合は行政手続的には非常に手間もかかっておるし、それから費用も莫大なものであると聞いております。お一人お一人の一坪地主さんにその借用料をお届けする、そのためには出張旅費をかけている、こういうばかげた状況にあるわけですね。  そうすると、面積の広い土地を持っておられる方は別としまして、いわゆる一坪地主さんの場合などは収用してしまうというのも二重の意味において公共目的に合致していますね。一つ行政手続行政コストを下げる、もう一つ日米安保条約を円滑に運用する、こういう二重の意味において合致するわけであります。  この一坪地主さん、今見てみますと大変な数であります。沖縄における土地所有者数は三万二千人でありますが、その一割に当たる三千人が一坪地主さんである。しかしながら、面積でいうとわずか〇・二%にしかすぎない、こういう状況でありますが、この一坪地主さんの土地提供してもらう、強制収用してしまう、このような方向はお考えになったことはありませんか。そのようにした方が行政コストも低くなるし、あるいは日米安保も円滑に運用できる。この点について御回答をいただきたいと思います。
  13. 諸冨増夫

    ○諸冨政府委員 お答えします。  一坪地主の実態というのは今先生指摘のとおりでございまして、戦争に反対し、軍用地を生活と生産の場に変えていくことを目的というふうに掲げておられまして、契約拒否運動の拡大を図るというようなのが主要な活動でございます。したがいまして、私どもとしては、この一坪地主方々に対する説得というのはなかなか難しいというふうに認識しておるところでございますが、さはさりながら、やはり地主でございますので余り無視するわけにもいきませんで、それなりの努力はさせていただいているところでございます。  一方、駐留軍用地特措法というのは、本来在日米軍日本に駐留している間、私ども土地提供するというのが任務でございまして、これは期限が現在のところ定められていないということでございます。したがいまして、通常私ども駐留軍用地提供する場合、それが民公有地の場合には本来米軍が存続する限りお借りしたいという気持ちでございますが、民法の賃貸借契約最長期間が二十年ということでございまして、従来から賃貸借契約については二十年間の存続期間というふうに考えておりまして、これを更新するという考え方一つとっておるところでございます。  そういう考え方に立ちまして、土地収用法の一般的ないわゆる高速道路であるとかそういう場合に、土地を国の公益のために収用してしまうという考え方土地収用法はとっておりますが、駐留軍用地特措法原則として収用というよりも使用の方に力点を置いておりまして、そういう賃貸借契約に基づいて、米軍が引き揚げた後は地主の御本人にその土地をお返しする、原則はいわゆる賃貸借契約で処理するというのが従来の考え方になっておりますものですから、私ども従来そういうことで対応してきておる、こういう事情でございます。
  14. 大野功統

    大野(功)委員 いずれにしましても、楚辺通信所のような出来事は将来もう絶対起こってはならないことであります。起こらないように、法的措置を含めて万全の対策を講じていただきたいと思います。  次に、沖縄米軍基地の基本的な問題点をちょっと考えさせていただきたいのでありますが、私は、沖縄米軍基地問題というのは、基本的に言いますと、これまで沖縄方々の心を我々が本当に理解して代表していったのかな、いたのかな、これを反省するものであります。  今さら申し上げることもありませんけれども面積でいいますとわずか〇・六%の土地米軍の七五%が集中している。こういうことになりましたのも、一方的にアメリカの戦略に基づいて基地がふえてきた、こういうことであります。その沖縄気持ちをやはり我々は十分理解して、それを代弁していかなければいけない、今までちょっとそこがおざなりになっていたのかなという反省を私は政治家としてしているわけであります。  したがいまして、今後やはり沖縄気持ちを代表する、これが沖縄米軍基地問題の解決の必須条件である、私はこのように考えておるわけであります。  そこで、反省点の第一は、政府においても行政面においてもこのような沖縄気持ちを代弁していただきたいのでありますが、例えば非常に簡単なこと、米軍車両ナンバープレート、つければ簡単につくわけでありますけれども、こういうナンバープレードの問題がここに来てようやく解決するという状態であります。なぜこんな簡単なことが今までできなかったのだろうか、まずお答えいただきたいと思います。
  15. 池田行彦

    池田国務大臣 委員指摘のとおり、安保条約、これが我が国の防衛のためにいかに大切であると申しましても、そのために必要ないろいろな御負担を沖縄方々に余りにも大きくおかけしていたのじゃないか、こういうところは我々も真剣に、真摯に考えなくちゃならないと思います。  そうして、基地の整理統合・縮小の面でもそうでございますけれども、今御指摘米軍駐留に伴ういろいろな問題、地位協定上の問題につきましても、そういった観点からいろいろ真剣に考えて、できることから一つ一つ着実に進めていかなくちゃいけない、こういうことで現在も作業を進めておりまして、お話のございましたような米軍の公用車両の標識についても今回改善の措置を見たわけでございます。これも、今できることがなぜこれまで措置されなかったかという点は、私どもも率直に申しましてそんな感じでございます。反省の上に立って真剣にこれからさらに精力的に取り組んでまいりたいと思います。
  16. 大野功統

    大野(功)委員 次に、対米関係、対米交渉の問題でありますけれども、これまでの米軍基地問題というと、アメリカが言ってきたことをそのまま受けて、それを沖縄に、まあ言葉の言い方は悪いのですけれども、押しつけていたという面が否定できないと思うのですね。  ただ、私たちはここで反省しなければいけないのは、今回たびたび言われておりますように、日米安全保障条約というのはアジア太平洋における安全保障のためにも極めて重要なんだ、この文言であります。この文言を考えますと、日米安全保障条約上は極東アジアの安全のためにということを書いてありますけれども、アジア太平洋地域ということは書いていないわけでありまして、いわば日本を守ってもらうために日本基地提供している、極東アジアの範囲において基地提供している、こういう構成になっておりますが、では、極東アジアを超えた地域において日米安全保障条約が極めて重要であるという意味は、極めて意味深長と言わざるを得ないのでありまして、つまり、このアジア太平洋地域という広範な範囲においても、日本アメリカと一緒になって世界平和のために、アジアの平和のために頑張っていこう、こういう意思のあらわれとも解釈できるわけであります。  そうなりますと、これまで条約自体は極めて片務的ではありますけれども、アジア太平洋地域においても日米安全保障条約が重要だということになれば、日本というのはアメリカに対してより対等な立場に立てるのではないか。そうだとすると、完全に対等とは言えませんけれども、もう少しいろいろな意味アメリカとより対等な立場で交渉していっていいのではないか。今まさにその交渉をやっておられます。きょうもSACOがありまして、皆さんには大変お忙しい中、この委員会にお出ましいただいておりますけれども、このSACOのようなことはやはりこれからずっと続けていくべきではないか、このように思うわけであります。  したがいまして、今のようなことを申し上げますと、より対等な立場アメリカ話し合いをしなさい、こういうふうになりますと、一つの問題、例えば地位協定の問題があります。  これは、例えば被疑者の拘禁の問題、早速運用上の問題として片づけていただいたわけでありますけれども、これなんかはもう少し協定自体の改定として考えられなかったのか。やはり沖縄の心を酌んでそれを代表するとすれば、改定の努力をしましょうというところから出発できなかったのかどうか、こういう問題があると思うのです。象徴的な意味で、シンボリックな意味で、一カ所ぐらいは地位協定を改定してもらったらいいなと私は国民の一人として感じるわけでありますけれども、そういう問題点。  もちろん、アメリカは世界全体を相手にしているわけですから、地位協定の改定というのは極めて難しい、この立場もよくわかりますけれども政府の姿勢として、やはりそういう姿勢をとることが大事なのではないか、それがまさに沖縄気持ちをあらわすことではなかろうか、私はそのように思うわけであります。  また、基地についても、今申し上げましたように、話し合いは行われております。しかし、十一月で期限を切っていますから、十一月以降はどうなるのですか、こういう問題がやはり残るのですね。例えば、今大変困難と言われております普天間基地の返還問題につきましても、やはり十一月以降も話し合っていこうじゃないか、こういう姿勢があるのかないのか。  そういう意味一つ提案させていただきたいのでありますけれども、今のSACOなりなんなりが終わりますと何もなくなりますから、例えば総理府の中に常設機関、これは例えば外務省、防衛庁等を中心として人間が集まって常設機関をつくって、そこで今申し上げたようなこの沖縄問題について対処していくような仕組み、組織をつくったらどうか、私はそのように思うわけであります。  一つ地位協定に対する取り組み、二つ、基地問題に対してどのように十一月以降取り組んでいくのか、この点についてお尋ねを申し上げたいと思います。
  17. 池田行彦

    池田国務大臣 米軍の駐留に伴ういろいろな問題について、常に例えば基地の存在する地域の住民の方々のお気持ち考え、また、その他もろもろの状況考えながら、日米間で緊密な連携をとりながら最も適切な状況をつくり出していく、その努力必要なことは御指摘のとおりだと思います。  とりわけ、これも御指摘がございましたように、冷戦下のように安保体制のあり方、あるいはそれの具体的な機能の仕方というのが極めて明確な時代から、現在のように非常に流動的なまた多元的な世界の情勢、あるいは日本を取り巻く安全保障環境、そういった中での日米安保体制の機能の確保ということになりますと、そういった御指摘のような配慮が一層必要になってくる、私も同感でございます。  そして、具体的に御指摘が二つございました。一つは、地位協定の問題でございます。これは、委員の御指摘は非常によくわかるわけでございますが、これまたよく御承知のように、米国は日本だけではなくてNATO諸国を初めとして多くの国々とその駐留に伴う地位協定的なものをいろいろ持っているわけでございまして、やはりそういったことを勘案するならば、協定そのものの改定ということになりますと、これはいろいろ複雑多岐な問題が出てまいりますし、仮にそれが可能だとしても時間が随分かかるんじゃないかと思います。  我々としては、地位協定にかかわる問題をいかに具体的に、しかもスピーディーに解決し、あるいは対応していくかという観点から実質的に考えてまいりたいということでこれまで進めてまいりました。それで、御指摘のございました被疑者の引き渡しに関する手続につきましても、そういった観点から迅速な処理を心がけたわけでございます。これについても、御承知のとおり、単なる運用ではなくて文書というものも交わしたわけでございます。そういった意味で、これからも実質的な対応を迅速にやっていくという観点からいろいろ考えてまいりたい、こう思います。  それからいま一つ、SACOがなくなった後どうかというお話でございますけれども、当然、この日米安保体制、そしてそのもとでの米軍の駐留というものが続きます以上、緊密な連絡のための機関必要でございます。御承知のとおり、日米合同委員会があるわけでございますけれども、それ以外に、特に、例えば沖縄の問題について、それに専念するような機構、仕組みが必要ではないかと、確かにおっしゃる点はよくわかります。ただ、現時点におきましては、我々は、ともかく十一月まで、その前に今月のクリントン大統領御訪日までにどれだけの成果を上げることができるか、それに専念しておるところでございますので、その作業にまず今専念いたしまして、御指摘の点はまたその時点でいろいろ考えてまいりたい、こう考える次第でございます。
  18. 大野功統

    大野(功)委員 十一月以降のことにつきましては、十分ひとつ御検討いただきたいと思います。  以上が基地問題の基本的な問題でありますけれども、今度は具体的問題に入らせていただきます。  まず、基地の整理統合・縮小でありますけれども、これは日米安全保障条約の円滑な運用という土俵がありまして、その土俵の上でアメリカ軍と日本政府地主さんと沖縄県、四人でしょうかね、四人の相撲取りが相撲をとっている。決してこの土俵を割ってはいけない、だれが勝ってもいけない、だれが負けてもいけない、こういう問題だと思います。  大事なことは、土俵があって、その土俵だけはしっかりと守らなければいけないことだと思うのであります。そのためには、まず基地の整理統合・縮小問題というのま極めて現実的に処理していかなければいけない、それから、相互協力で処理していかなければいけない、この二つの原則があるような気がいたします。  そこで、まず現実問題から入らせていただきますと、米軍沖縄における施設・区域というのは三十八あると聞いておりますけれども、それが、海兵、空軍、海軍、陸軍、それぞれ全部独自に管理している。この管理運用をもうちょっと一緒に共用できないか。例えば、嘉手納ですと空軍が管理しておりますが、海軍と空軍が共用していくということであります。  それで私ども思いますのは、例えば今申し上げたような海兵、空軍、海軍、陸軍が同じ施設・区域を共用していけば、もっともっとそういう現実的な基地の整理統合・縮小につながっていくんじゃないかと思うのであります。例えば普天間飛行場と嘉手納飛行場を、私は軍事専門家ではありませんからその面からの評価はできませんが、一体、一緒に共用できないのかというような問題。  あるいは、この機能の問題をとってみましても、普天間ではヘリ、空中給油機KC130、ギャラクシー等、嘉手納では要撃戦闘機あるいはP3Cのパトロール機、そしてまた対地攻撃機F18とかハリアー、AWACSもありますね。そういういろいろな機能があるけれども、その機能を統合する、あるいは分離統合、いろいろな対策があると思います。  その施設・区域を共用するとか、あるいは機能を分化するとか統合するとか、そういうことによって現実的に基地の整理統合・縮小ができると素人考えで思うわけでありますけれども、その点は今回のSACOで提案されているのか。あるいはどのようにお考えになっているのか。具体論になりますけれども、そういう議論をやっておられるのか。そういう議論をやらなければ私は現実的に縮小できないと思いますが、いかがでございますか。
  19. 臼井日出男

    臼井国務大臣 委員お話しのとおり、現在、整理統合・縮小について鋭意SACOで協議をいたしているわけでございます。特に、米側のプレゼンスが変更がない以上、なかなか縮小の問題については厳しい環境にあるということも承知をいたしておりまして、現在知恵を使いながら、できるところから統合整理等によって沖縄県民との接点を極力少なくする、こういう作業をいたしているさなかでございます。  ただいまお話し基地の共用の問題につきましては、私ども米側から説明を受けているわけでございますが、嘉手納にいたしましても、普天間にいたしましても、平時はかなり余裕があるように見受けられるわけでございますが、米側考えでいる有事ということを考えますと、はっきりとどういうふうにそのあいている箇所を使うかという作戦上の予測というものは立っているわけでございまして、そういうことを考えると、今すぐにそうした面での共用というものは難しいように思う次第でございます。  しかし、いずれにいたしましても、現在SACOにおきましては、整理統合につきましては米側協力を求めて努力をいたしているということは御理解をいただきたいと思います。
  20. 大野功統

    大野(功)委員 例えば普天間と嘉手納の共用ということは、議論、議題になりましたか、どうでしょうか。
  21. 秋山昌廣

    ○秋山(昌)政府委員 現在、SACOのワーキンググループを何回か開いてやっているわけでございますけれども、今御質問の点も含めまして個々の施設あるいは基地についての整理統合・縮小について全面的に議論をしている。そういう意味では、今のようなお話も含めて議論はさせていただいております。  それから、先ほど大臣からも答弁がございましたけれども、まさに御質問にございましたような施設あるいは機能の統合、あるいはその集約化、そういったようなことで、現在の米軍の兵力あるいは米軍の機能を全体として維持したまま、そしてその結果として沖縄米軍基地の整理統合、特に縮小というものができないかということについては、まさに御指摘のような点も含めて検討をいたしているところでございます。
  22. 大野功統

    大野(功)委員 現実的な方策という流れの中で、もう一つ、二つ聞かせていただきたいのですが、例えば米軍兵舎、沖縄へ視察に行きますと大変よくわかるのでありますが、大変広々とした芝生の上に平屋建ての兵舎がある。これはもう垂涎の的でありますけれども、この兵舎を例えば高層化する。そうすると、面積は少なくて済む。あるいは弾薬庫を地中に埋める。地上に弾薬庫がありますと広い面積必要だ。こういう点は議題になりましたか、なりませんでしたか。
  23. 秋山昌廣

    ○秋山(昌)政府委員 御指摘のございました具体的な構想といいましょうかアイデアにつきまして、別のいろいろなアイデアも含めて検討しております。特に、兵舎に限らず、むしろ住宅の高層化等による集約化、高層化による基地のあきをつくるといったような点についてはいろいろと議論をしているところでございます。
  24. 大野功統

    大野(功)委員 先ほど、基地の整理統合・縮小ということを考えるに当たっては、現実的にアプ  ローチするという問題と、もう一つ協力必要だということを申し上げました。  この協力という面から考えさせていただきたいのでありますが、まず第一に、沖縄軍用地地主連合会の皆さんは、余り基地を返してくれるなという陳情にも来られるわけであります。これは極めて建前と本音の食い違いがあるわけでありまして、私は、やはりそういう意味でも地主さんにも協力してもらわなければいけない、こういう問題があると思います。それから、市町村の皆さんにも協力してもらわないといけない。  例えばの話でありますが、那覇港湾施設の問題を例にとりますと、那覇市で五十七ヘクタールある。これを浦添市へ持っていきますと三十五ヘクタールで済むわけですね。かなりの縮小が図れるわけであります。しかし、浦添市の方がこれは嫌だと言いますと問題は解決しない。ここはお返ししますよと言っても、地主さんが嫌だと言って受け取らないとこの問題の解決ができない。こういう問題があるわけであります。  そういうふうな地主さんの問題あるいは市町村の問題、こういうことを解決していただけるのはやはり地元の知事さんではないか、私はこのように思うわけであります。知事さんに対して協力を要請したいと思いますけれども、しかし、そのためには、先ほどから申し上げていますとおり、沖縄の心を本当に我々が代弁して、代表してやっていかなければいけない。  そこで質問でございますが、第一に、軍転特措法の期限を、軍転特措法というのは発効したばかりでありますが、どのように評価されているのか、これが一つ。  それからもう一つは、協力をしてくださったらというよりも、見返りというような考えではなくて、本当に大幅な財政資金を投じて沖縄土地の跡地利用を有効にやって、そして沖縄の発展のためにやっていかなければいけないと思いますが、協力を要請するばかりではなくて、やはり沖縄の心を代表して財政資金を相当投入していく、このことも考えていかなければいけない。  きょうは大蔵省来ていないと思いますが、これは大蔵省の問題ではありません、政治家の問題ですから、どうぞ両大臣、そのことと、最後にもう一つ協力の問題と、それから今後の取り組み方、これはもう本当に、さっき申し上げましたように、安保という土俵の中で絶対土俵を割ってはいけないし、それからだれが勝った負けたというような話ではなくて、みんながやっていかなければいけない問題でありますので、その辺の取り組みについて、大臣お一人お一人から、恐縮でございますが、御発言をいただきまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
  25. 臼井日出男

    臼井国務大臣 お説のとおり、大田知事さんには県民の意思というものを代弁するお立場にあるわけでございます。しかしながら、一方、沖縄県の行政の最高の責任者として調停をしていただくお働きも必要だと私は思っておりまして、この点についてはぜひとも今後さらにお願いをいたしてまいりたい、こういうふうに思っております。  なお、軍転法につきましては、その中に跡地利用の件につきましても国及び県、市町村の責任というものは明記されておるわけでございまして、お説のとおり、議会でも御論議をいただきまして、万事うまくやっていけるように今後とも努力をいたしてまいりたいと思います。
  26. 池田行彦

    池田国務大臣 ただいま防衛庁長官の方から御答弁があったとおりでございますけれども、財政面のお話がございました。これは私がその面について御答弁申し上げる資格があるか否かなのでございますけれども、しかし、外務大臣といたしまして、日米安保体制の堅持、そしてそれの有効な運用という観点から考えますと、御指摘のように、財政面におきましてもいろいろ配慮しなくてはいけないというのは事実だと思います。  それは単に米軍基地の所在する、そのことに直接かかわる問題だけではなくて、やはり沖縄の将来の発展ということについてもいろいろ考えていかなくてはいけない、これは当然だと思います。そのときに、当然その財政的な面での負担ということも必要になるわけでございまして、これは単に防衛庁の予算だとかあるいは外務省の予算だということではなくて、国の政治全体として考え、そして必要な財政措置を講じていくということもお互い政治家として将来考えてまいらなくてはいけない、このように信ずるところでございます。
  27. 大野功統

    大野(功)委員 大変心強い両大臣の御答弁、ありがとうございました。  以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  28. 吹田愰

    吹田委員長 浜田靖一君。
  29. 浜田靖一

    ○浜田(靖)委員 自由民主党の浜田靖一でございます。大野委員に引き続いて質問をさせていただきたいと思います。  この一カ月間、安全保障委員会もお休みをしておりまして、その間にいろいろ我が国の周辺で情勢が変わりつつあると思うわけでございますけれども、それに関連しての御質問と、それから、日米防衛協力の指針、いわゆるガイドラインと言われておる、この件に関しまして御質問をさせていただきたいと思うわけでございます。両大臣とも御就任以来いろいろな点で御活躍をいただいておるわけでございますけれども、稚拙な質問もあるかと思いますけれども、お答えを願いたいと思うわけでございます。  まず、防衛庁にお伺いをしたいと思うわけでございますけれども、いわゆる台湾海峡の問題、それから朝鮮半島などの我が国周辺の国際軍事情勢についてどのように把握をされていらっしゃるのか、お伺いをしたいと思います。
  30. 小池寛治

    ○小池政府委員 まず、お尋ねの台湾海峡情勢につきましては、中国は、昨年六月、台湾の李登輝総統の訪米以来、台湾近辺において種々の軍事演習を相次いで実施してきております。それから、本年三月に入ってミサイル発射訓練、海空軍の実弾演習、それから陸海空統合演習を連続して実施してきたところでございます。台湾海峡において緊張が高まるということは、東アジアの平和と安定にとって好ましいことではないということで、防衛庁としましても、台湾をめぐる問題は当事者間で平和的に解決されることを希望している。  それから、朝鮮半島につきましては、韓国と北朝鮮合わせて百五十万人を超える地上軍が非武装地帯を挟んで対峙している、こういう状況というのは、軍事的緊張は依然として継続している。また、北朝鮮の核兵器開発疑惑、あるいは弾道ミサイルの長射程化のための研究開発の動きというのは、我が国周辺のみならず、国際社会全体に不安定をもたらす要因として強く懸念されるところでございます。  総じて見ますに、我が国周辺地域においては、極東ロシアの軍事力の量的削減等の変化はございますけれども、この地域には依然として大規模な軍事力が存在している。また、多くの国が軍事力の近代化を行っている。それから、今述べましたように、朝鮮半島における緊張が継続しているということで、依然として先行きは不透明、不確実な要素が残されているというふうに認識しております。  他方、同時に、二国間対話の拡大あるいはASEANリージョナルフォーラムに見られるような地域的安全保障に関する取り組みという新しい動き、さまざまな動きも見られるということもまた事実かと思います。その中において、日米安保体制の存在というのが、我が国の安全、それから地域の平和と安定を図る上で、引き続き極めて重要な役割を果たしているというふうに認識しております。
  31. 浜田靖一

    ○浜田(靖)委員 防衛庁のお考え、認識を今お聞きしたわけでありますが、外務省にもやはり同じく中台、そしてまた北朝鮮の現状についてお聞きしたいと思うわけであります。  先ほどもお話がありましたように、ちょうど台湾において総統選があって、そのときに中国の軍事演習もありました。それを経た現在の中台関係と今後の見通し。それから、三月三十一日の新聞紙上で北朝鮮軍部の高官の発言、そしてまたその後に、外務省幹部が北京において北朝鮮幹部と接触されたというような報道もございました。朝鮮半島の状況について外務省にもお聞きをしたいと思います。
  32. 池田行彦

    池田国務大臣 まず、中台の関係でございますけれども、近年、中台関係の緊張が徐々に高まるような情勢があったわけでございますが、とりわけ先般行われました中国の大規模な軍事演習をめぐりまして非常に緊張が高まってきた、場合によっては不測の事態が起こり得るのではないか、こういうこともございまして、我が国だけではなくて、国際社会全体が大きな関心を寄せ、そしてまた注視してきたところでございます。  我が国といたしましては、基本的に、中台関係は両当事者の平和裏の話し合いによって解決を図ることを期待する、こういう立場でございます。そういった立場に立ちまして、今回の緊張が高まるに際しましても、両者が自制した、抑制した対応をするように繰り返しその期待感を表明し、それから、さらにまた直接中国に対してはそういった申し入れを何度もしたわけでございます。  今、少しその緊張も緩和の方向に向かっておると見られますし、また台湾側においては、連戦行政院長というような最高幹部といいましょうか、非常に高い指導的な地位にある人も、直接対話によるいろいろな平和的な道を模索したいという意向を明確にしておられます。それから中国側も、いろいろなあれはございますけれども、基本的には一国二制、そして平和統一、この方針でいくんだという姿勢はきちっと表明しているわけでございますので、引き続きそういった平和的解決の方向が進展することを期待しておるところでございます。それで、そういった趣旨は、三十一日に銭其シン中国副総理外務大臣と私との会談においても、私の方から明確に申し上げたわけでございます。  それから第二点、朝鮮半島の関係につきまして二つ具体的な御質問がございました。  一つは、先般の北朝鮮の軍の高官による発言、これをどう考えるかということでございますが、これは非常に言葉としては刺激的な、かなり激烈な、激烈と言ってもいい言葉であったと思います。しかし、北朝鮮の情勢、特に軍事的な情勢については先ほど防衛庁の方からお話があったとおりでございます。本来、もう非常に大きな軍事勢力が存在するわけでございますし、かねてからDMZのあたりにかなりそれが集中し、そのままとどまっているという状態にあるわけでございます。しかし、今回のあの発言に関連して、直ちにそれがさらにエスカレートするような動きがあったというふうな情報には接しておりません。  この発言の意図するところはなかなかはかりがたいところがございますけれども、最もあり得るのは、今、米国との間の接触をいろいろ図っておる、特に暫定協定の関係でいろいろ話があるわけでございますが、それに対する影響といいましょうか、それの促進といりか、そういうものを図りたのではないかという見方が多いようでございますし、また一部では、国内でのいろいろな困難な情勢にある中で、引き締めようというふうなことも考えたのかな、こういうふうな感じもございます。  しかし、いずれにいたしましても、それでなくても非常に注視をせざるを得ない半島情勢でございますから、今後、事態が悪い方向に動かないように期待をいたしますし、我々としても十分注目してまいりたい、こう思っております。  それからいま一つ、北朝鮮と我が国との交渉云々という報道が昨日あったのは私も承知しておりますけれども、その点につきましては、御承知のとおり、我が国として北朝鮮との間の国交を正常化していかなくてはいけない、これはそのとおりでございます。そしてまた、それを進めるに当たっては、やはり朝鮮半島の安定に資するようなことを大切にしていかなくてはいけない、こう思っておりますし、仮に何か物事を進めていく場合には、これは韓国との連携の上に立って進めていく、そういうことは基本でございます。  さて、今どういうことかということでございますけれども政府としては、当然のこととして、北朝鮮に限らずあらゆる問題につきまして、外交当局として必要な注意は払い、必要なことはやっていくということでございますけれども、今具体的にその面で大きな進展があるということではないというふうに御理解いただきたいと思います。  ただ、我が国としても、最近のいろいろな動きを見ますと、北朝鮮のいろいろな姿勢だとか発言ぶりも見ますと、北朝鮮においても、日本との関係もいろいろ考えてまいりたいというような兆しがうかがえるところでもございます。そういったことも踏まえながら、我々としてはいろいろ考えてまいりたいということで御理解いただきたいと思います。
  33. 浜田靖一

    ○浜田(靖)委員 確かに非常に不安定な状況という認識もございますし、二国間の話し合いというのも十分に進めていかなければいけない。そういうことは確かに重要なことでございますので、ぜひとも引き続き注意を払っていただいて、情報分析にも努めていただきたいなと思うわけでございます。  さてそこで、いわゆる極東の不安定な要素を含んだ中であらゆる事態が発生する可能性があるわけでありますけれども、今度の新防衛大綱では、「防衛力の役割」として「大規模災害等各種の事態への対応」というのを掲げておりまして、その中で、「我が国周辺地域において我が国の平和と安全に重要な影響を与えるような事態が発生した場合には、憲法及び関係法令に従い、必要に応じ国際連合の活動を適切に支持しつつ、日米安全保障体制の円滑かつ効果的な運用を図ること等により適切に対応する。」と述べておりますけれども、このような事態が生じた場合、自衛隊は米軍とどのような協力を行うのか、お聞かせを願いたいと思います。
  34. 臼井日出男

    臼井国務大臣 ただいま委員指摘の、我が国周辺において我が国の平和と安全に重要な影響を与えるような事態につきましては、特定な事態というものを念頭に置いているわけではございませんが、一般論を申し上げますと、我が国周辺において限定的な武力紛争が生起をした状態、こういうことを言っているわけでございます。  そのような事態において自衛隊が米軍といかなる協力を行うことができるのか、これは個々のケースによりまして異なるわけでございまして、一概に申し上げることは困難であるというふうに思っております。防衛庁といたしましては、先ほど委員お話しのとおり、憲法及び関係法令に従って適切に対処していく、こういうことにいたしたい、こう考えているわけでございます。  特に、委員指摘ございました、我が国周辺において我が国の平和と安全に重要な影響を与えるような事態に対し、米軍の活動への協力のあり方を含めいかにしていくべきか、こういう問題につきましては、政府としては、今後真剣に検討していくべき重要な課題である、こういうふうに考えております。防衛庁といたしましても、我が国の平和と安全を守るという任務遂行の観点から、今後とも積極的に取り組んでまいりたい、このように考えております。
  35. 浜田靖一

    ○浜田(靖)委員 そこで、仮定の話でありますが、我が国に武力攻撃があった場合、極東において我が国の安全に重要な影響を与える事態が発生した場合の日米協力については、いわゆるガイドラインでありますけれども日米防衛協力の指針に基づき検討が進められているとのことでありますけれども、今日の検討状況をお教え願いたいと思います。
  36. 折田正樹

    ○折田政府委員 今委員指摘昭和五十三年の「日米防衛協力のための指針」と申しますのは、五十一年の前の大綱を踏まえましてできているものでございまして、その三項において、日本以外の極東における事態で日本の安全に重要な影響を与える場合の日米協力について研究するということになっております。そして、これを受けまして、昭和五十七年一月に、日米安全保障協議委員会で研究を開始することで日米間で意見が一致したわけでございます。その後、日本側では外務省、防衛庁が中心となりまして研究を続けているというところでございますけれども、まだ結論を見るには至っていないというのが実情でございます。  そして、先ほど来先生も御指摘のように、新たな防衛大綱の中で、「我が国周辺地域において我が国の平和と安全に重要な影響を与えるような事態が発生した場合には、憲法及び関係法令に従い、」間を飛ばしますけれども、「日米安全保障体制の円滑かつ効果的な運用を図ること等により適切に対応する。」という一項が入ったわけでございまして、私どもといたしましては、この趣旨も踏まえまして、真剣に検討しつつ、日米間の研究も進めてまいりたいというふうに考えているところでございます。
  37. 臼井日出男

    臼井国務大臣 今お話を概要いただきました。この指針というものは前大綱に合わせてつくったものでございまして、新しい新防衛大綱が策定をされている現在でございますので、現在の指針は新防衛大綱の内容に合わせて所要の調整を行うということが必要になろうと思っておりますが、今後所要の検討をいたしてまいりたい、このように考えております。
  38. 浜田靖一

    ○浜田(靖)委員 そういうことでありまして、この指針に関しては、我が自由民主党の安全保障調査会、瓦会長のもとに見直しを、いろいろな議論を今積み重ねさせていただいておるわけでございます。その中で勉強してまいりますと、その指針の三項の問題についてはいまだ議論がされておらないということもありますし、そしてまた、この指針に基づく研究は日米両国の立法、予算ないし行政上の措置義務づけないとされておるわけでございまして、このようなことでは、まさにこれは現実に役に立つ研究にはならないのではないかというふうに思うわけであります。この点に関しては、防衛庁はどのようにお考えなのか、お教え願いたいと思います。
  39. 臼井日出男

    臼井国務大臣 ただいま委員が御指摘をいただきました「日米防衛協力のための指針」については、お話のとおり、現在研究協議が進められておりまして、結論につきましては「日米両国政府のそれぞれの判断に委ねられるものとする。」こういうことになっておりまして、「この結論は、両国政府の立法、予算ないし行政上の措置義務づけるものではない。」とこの趣旨が明らかにされております。  しかしながら、この指針の枠内で研究を続け、その成果を蓄積をすることによりまして、自衛隊と米軍が共同対処行動をさまざまな侵略事態に対応して円滑かつ効果的に実施する上での参考に当然なっているわけでございます。したがいまして、現実に役立つ研究とはならないという御指摘は当たらないと思うわけでございまして、研究されたその成果というものを、予算ないし行政上の義務づけはございませんが、年度年度のその予算あるいまその措置に対して反映をしていく努力をするということは当然のことと考えている次第でございます。  また、この指針によりまして、日米防衛協力のあり方につきまして新しい基本の原則が得られ、これに基づく共同作戦計画等の具体的研究が行われておりますことは、日米安全保障条約の有する抑止効果を高める効果もある、また、我が国の安全及び極東の平和と安全を一層効果的に確保することに資するものであると考えておりまして、大変その意義は大きいものと考えております。  いずれにいたしましても、防衛庁といたしましては、所要の研究に引き続き真剣に取り組むことによりまして、前大綱を前提とする現行の指針は、今後、先般策定をされました新防衛大綱にのっとりまして所要の調整をいたしてまいりたい、調整をするための検討をいたしてまいりたい、こう考えております。
  40. 浜田靖一

    ○浜田(靖)委員 それも十分に承知の上でこういうことを言わせていただいたわけでございまして、申しわけございませんが、まさにこの指針の見直しを含めて日米間の協力態勢の強化に取り組むべきであるのは、これは当然のことだと私は思うわけでございます。そして、これをもっと強く日米間で話し合うためにも、今月中旬にクリントン大統領が訪日をされるわけでありますけれども、その際に発表されると思われます共同文書においてもかかる考えを明らかにしていただくことが重要なのではないかなと思うわけでございます。外務省の見解をお聞きをして、もう私の時間も来てしまいましたので、これを最後の質問にさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。
  41. 池田行彦

    池田国務大臣 大統領御訪日時の共同文書をどのような内容にするかにつきましては、文字どおり今いろいろ日米間で協議中でございますが、基本的には日米安保体制を基盤とした両国間の各般の協力を推進する、こういうことを含めまして、二十一世紀を見据えた日米安保体制のあり方を幅広い観点から明らかにしていく、こういうことでやってまいりたいと思います。  したがいまして、その具体的な内容については今の段階ではコメントは控えさせていただきたいと存ずる次第でございますが、いずれにいたしましても、いわゆる指針につきましては、先ほど防衛庁長官からもお話ございましたように、今後いろいろ考えていく、こういう必要性はあるんだと思っております。
  42. 浜田靖一

    ○浜田(靖)委員 終わります。
  43. 吹田愰

    吹田委員長 次に、西村眞悟君。
  44. 西村眞悟

    ○西村委員 新進党の西村眞悟でございます。  さきに御提出いたしました質問予定事項がございますけれども、四項目ぐらいに絞らせていただいて、質問させていただいて、外務大臣においては二時から十五分間の質問に絞らせていただきます。  それで、防衛庁長官に二時までの間お聞きするわけですが、どういう趣旨で質問を申し上げるかといいますと、私は一人の議員として国の国防についていろいろなイメージを持っております。私の質問に対しては、事務方の皆さんは、過去の積み重ねがございますのでお答えにくいこともあるかもわかりません。しかし、大臣、政治家として、ある意味では国防の責任者であられて男子の本懐という役目であると私は思っておりますので、その志、イメージを自由に御発言、お答えいただけましたら、そのようにお聞きいたしますので。  まず、危機対処のバックボーンに関してお聞きいたします。  私は、日本の国には危機対処のバックボーンがいささか見えていないのではないか、このように思うわけでございます。昨年の地震、サリンとかテロとかございますけれども、危機対処の根本とは何かといえば、小さな対処の方法で大きな危機に対処することはできないということでございます。危機とは予想し得ないことが起こることですから、最大の危機を想定して初めてその中でより小さな危機に対処できるのであろう。  しからば最大の危機とは何か。日本列島が地震で沈むとかそういうふうな人為を超えたことじゃなくて、人為でコントロールでき得る最大の危機とは何か。これは歴史を見るまでもなく、軍事的な敗北、崩壊によって国家が滅亡すること、そして滅亡の寸前まで行くこと、つまり軍事的危機が最大の危機であろう、このように思うわけでございます。つまり、国防に備えること、これが、阪神大震災の例を引くまでもなく、危機対処の本当のバックボーンにあらねばならないことだ。  しからば国防とは何か。国防とは国を守る機構と能力のことでございますけれども、昨今、政治の役割は国民の生命と身体、財産を守るということがよく言われました。しかし、その次元でとどまっていれば真の国防の対処にはなり得ないのではないか、こう思うわけでございます。つまり、命は助かっても国家が滅びていいのかというふうにもう一歩踏み込んで問われると、国民の生命、身体を守るということだけでは国防は完遂できない。つまり、命にかえて守るべき共同体がこの国家であるという意識があって初めて国防は成り立つんだろう、こう思うわけでございます。  そこで、自衛隊員は宣誓をいたしますね。身の危険を顧みず云々というふうに宣誓をしてその職務につきますが、この自衛隊員の職務というのは私は崇高な職務だと思います。つまり、危機に際しては命にかえて守るという宣誓をするわけですから、崇高な職務であると思っておりますが、大臣はいかが考えておられますか。
  45. 臼井日出男

    臼井国務大臣 委員指摘の宣誓の中に「事に臨んでは危険を顧みず、」こういう言葉があるわけでございまして、自衛隊員というのは、いざというときには身を挺して危険も顧みず職務を遂行する、こういう立場にあるわけでございまして、極めて崇高な任務を有しているものと考えております。  私は、このような自衛隊員が極めて重要な役目を持っているということ、職務に精励をしてくれているということに大変強い敬意と感謝を持っている次第でございます。今後とも、私の仕事としては、こうした自衛隊員が誇りを持って任務に邁進できるような環境をしっかりつくっていくことである、このように思っております。
  46. 西村眞悟

    ○西村委員 まあ、お聞きしました。もちろん、自衛隊員の職務は、憲法十八条に言う「その意に反する苦役」ではございませんね。お答えいただきたい。
  47. 臼井日出男

    臼井国務大臣 お説のとおりでございます。
  48. 西村眞悟

    ○西村委員 私は、共同体、国も共同体ですから、共同体を維持するというのは二つの義務がありまして、一つの家庭でも、自分のことのみを考えて行動しておったら一つの家庭も守られない、維持できないわけですから、国にはやはりその国という共同体を守るための二つの義務があると思うんです。近代国家において、それが国法上において、国の制度においていかなる義務として具現化してきたかというのは、兵役の義務と納税の義務、これが国民、この共同体の構成員の義務であろう、このように思うわけですね。  納税の義務は、苛斂誅求をきわめて搾取されるというふうな近代以前にもありましたが、近代の国民国家というものは、それを公の国民の自発的にしなければならない義務としておるわけで、納税の義務についてはいいわけです。これは株式会社においても株式の投資というのはあるわけですから、いいわけです、経済的なことですから。  兵役の義務は、国防ということを考えるためには、やはり国家としてあるのが近代国家の姿である、ただし現憲法には記載されておりません。私が考えるこの兵役の義務、先ほど大臣が述べられた、自衛隊員がその職務に当たるにおいて身の危険を顧みず職務に当たるべきである、これは、自衛隊の職務は「その意に反する苦役」に当たらない、憲法十八条の「苦役」に当たらない。しからば、兵役の義務は、大臣においては「その意に反する苦役」に当たるとお考えですか、お考えでございませんか。
  49. 臼井日出男

    臼井国務大臣 一般的こ申し上げまして、国民をして兵役に服する義務を強制的に負わせるということは、我が憲法の秩序のもとでは、社会の構成員が社会生活を営むについて、公共の福祉に照らし当然負担すべきものとして社会的に認められるものではないということから、憲法第十三条、十八条の規定の趣旨から見て容認されるものではないと思っております。
  50. 西村眞悟

    ○西村委員 済みません、憲法何条でと申されましたか。
  51. 臼井日出男

    臼井国務大臣 十三条と十八条です。
  52. 西村眞悟

    ○西村委員 十三条、ああ、そうですが。この辺は余り議論はいたしません、憲法解釈に入っていきますので。  兵役の義務は、徴兵には限らず、アングロサクソン系は志願兵制度が伝統的である、大陸法系は徴兵制がナポレオン以来伝統的であるということで、私はナポレオン的な徴兵だけをイメージして言っているわけではないわけですね。その意味で、自衛隊も志願兵制のもとであって、それが「その意に反する苦役」には当たらないということはお聞きしておきます。  ただし、憲法十三条を根拠に置いて、徴兵制を日本がとった場合に「その意に反する苦役」に当たりそうだとお答えになった点は、私は同意いたしかねます。というのは、憲法十三条は、言うまでもなくアメリカ憲法の規定を継承しておるわけで、生命、自由、フランクリン以来のアメリカ立国の原則でありますが、そのアメリカ憲法において徴兵を規定しているわけです。したがって、今申された十三条において徴兵制がだめだというならば、アメリカが徴兵制をとっておる国であるということは説明できない、このように思います。  次に移りますが、私は、今自衛隊の職務が崇高なものであると申し上げて、大臣もおおむねその旨同意されたと思うのです。したがって、ここからまた進むのですが、私はこのことを思うときに、いつも日本ではこれ以降があいまいにされたまま経過しているな。つまり、いつも思い出す言葉があるのですけれども、「論語」の「子路篇」の中にこういう問答がある。「子路日わく、衛の君、子を待ちて政を為さば、子、将に奚れをか先にせん。子日わく、必ずや名を正さん乎。」「名正しからざれば、則ち言順わず。言順わざれば、則ち事成らず。」つまり、これは、政治というものはその「名を正す」ことから始まる、名を正せば、名を正して正確であれば、正確でなければ言語が妥当でなくなる、言語が妥当でなくなれば事務は整備されない、こういうことを思い出すわけですね。  それで、お聞きしますが、自衛隊は軍隊なんですか。この問題に対して、自衛隊は軍隊ではありません、しからば何ですか、自衛隊です、という答えの堂々めぐりが返ってきて、何もお答えになったことにはならないのですが、大臣は志として、自衛隊は軍隊であるべきなのか。軍隊というのは、定義せずにお聞きしておりますけれども、自由主義と民主主義を国家の根本的な精神とする私たちの、アメリカであれフランスであれイギリスであれドイツであれ、こういう国々が持っている軍隊なのか、こういうふうにお聞きしたいと思います。
  53. 臼井日出男

    臼井国務大臣 我が国におきましては、自衛隊というのは、外国による侵略に対し我が国を防衛する任務を有しているというものでございますけれども憲法必要最小限度を超える実力を保持し得ないという制約を課せられているわけでございまして、いわゆる通常で言う軍隊とは異なるものと考えております。しかしながら、国際法上におきましては、自衛隊もジュネーブ四条約に言う軍隊に該当する、こう考えているわけでございまして、国際法上は軍隊として取り扱われるものと理解をいたしております。
  54. 西村眞悟

    ○西村委員 戦後、我が国は妙な風潮がありまして、つまり、ドゴール大統領の言、「戦争が嫌だから軍人が嫌いだというのは、歯が痛い子供が歯医者が嫌いだというのと同じように幼稚なことだ」こういう風潮がありました。だから、対外的には軍隊と言うのはわかりますけれども、対内的には軍隊でないと言うのはどうもわからぬ。  つまり、自衛のための必要最小限とかそんなことはどうでもいいのです。相手があって自衛戦争が始まった場合、それを完全に排除しなければならない。  これは戦争なんです。自衛戦争なんです。自衛戦争を戦う部隊が自衛隊であるわけです。これは対外的にも国内的にも軍隊なんだ。  しからば、問題点一つ申し上げますと、例えば今我が国が想定している自衛行為、つまり自衛戦争はどこで行われるかといえば、我が国内で行われるわけです。沖縄戦のように我が国内で行われることを想定しておりますね。海外に出兵してドンパチやるわけではない。その自衛隊が国内では身動きがとれない、軍隊が身動きがとれない状態にあります、先ほども質問が出ましたけれども。  それから、その自衛隊が国内において軍隊ではないというふうに自衛隊の最高責任者が述べておることは、相手にどういう口実を与えるか。一九四九年のジュネーブ四条約における捕虜の待遇を拒否する口実を与えるのではないか。捕虜は軍事裁判を受ける権利を持っておりますけれども、しかし、軍人でない、軍隊でないという前提であれば、相手方は利敵行為者として裁判を経ずして処断することができる。崇高な任務を持っている自衛隊で、そしてその活躍の場、本来の職務を発揮する場所が我が国内であって、そして我が国内においてはそれは軍隊ではないというふうに自衛隊の最高責任者が言っておるということは、そういう口実を与える。  これは崇高な職務を持っているという言に反すると思われませんか。戦時国際法上において、軍人としての捕虜の待遇等々のいろいろな待遇を与える、国際的に認められた名誉ある存在であるということに反することにはなりませんでしょうか。
  55. 臼井日出男

    臼井国務大臣 私ども日本におきましては、自衛隊は我が国を守る専守防衛のための防衛上の責務を担っている、このように理解をいたしております。仮定の上でも、そうした厳しい環境の中でもって海外に出るということはあり得ないというふうに考えておりますが、先ほど来申し上げましたとおり、海外においては、ジュネーブ四条約において述べている軍隊として待遇をしていただけるものと私どもは理解をいたしている次第でございます。
  56. 西村眞悟

    ○西村委員 いやいや、これは自由な討論として私はお聞きしていますが、余り突き詰めていきませんけれども、口実を与えるということは確かですね、国内では軍隊でないと言っているわけですから。それは、私が言っているわけじゃなくて、最高責任者が言うわけですから。  それから、きょうは全般的なことをお聞きしょうと思っていますので、私が思うのは、防衛には専守防衛というふうな区別はないということは申し上げたのです。防衛に専守をつけることによって何か特殊な限定した防衛であるというふうに観念されるのは間違いであろう。専守と専守でないかの区別は、今日において数秒の差、もしくは一秒の差もないかもわかりません、そういう事態ですから。そしてまた、沖縄戦の経験を思い起こすならば、また神戸の大震災のじゅうたん爆撃を受けたようなあの状態を思い起こすならば、専守防衛の発想は不道徳な発想であると私は思います。つまり、一部の国民の生命が犠牲になって初めて動き始めますよという発想ですから。  しかし、真の防衛とは、一人の国民の生命身体をも防衛するということでなければなりません。したがって、専守防衛という言葉を突き詰めていけば非常な不道徳があらわれる。一億二千万の国民のたとえ十名でも、傍観していて被害が出てから動くのだという体制は、これはだめです。それを事前に阻止する、これこそ防衛である、私はこういうふうに思っております。これについては突き詰めてお聞きいたしません。  次に、自衛隊は対外的には軍隊なのですね。名を正すといり観点からお聞きしておるのですけれども、軍隊であれば、例えば、日本の書店に行ったらプーシキンの「大尉の娘」という本があるのですね。タイトルには「大尉の娘」と書いてある、一尉の娘とは書いてありません。というのは、日本でいまだ軍隊の階級呼称として使われるのは大尉なのです。一等陸佐とか二等海佐とか、私どもの年代は妙にわからぬのです。プーシキンの「大尉の娘」という呼び方が非常にぴったりいたします。  したがって、軍隊の階級呼称の呼び方として、日本に普遍的な大尉、少尉、中佐、そういう呼び方に階級呼称を変える、軍隊にふさわしいものに変えるというふうな私の意見について、大臣はいかが感想をお持ちですか。
  57. 臼井日出男

    臼井国務大臣 今お説でございまして、私も戦前生まれでございますからそうした呼称をよく存じておりますけれども、現在の呼称は、制定以来既に四十年を超える時間を経過しているわけでございまして、自衛隊内部及び国民に既に定着をしている、こういうふうに思われるわけでございまして、現時点においてはこれを改めるという考えはございません。
  58. 西村眞悟

    ○西村委員 世論調査をしたわけじゃないのですから、定着したかどうかはわかりません。質問をしている小生自体が戦後生まれで、妙だ、おかしいな、何だこれはと思っておるわけです。その私が国会議員として、国民の代表としてこの場にいるということです。  次に進みますが、自衛戦争を行うための部隊が自衛隊である、対外的には軍隊である、その長官のおられるところが内閣の外局である、これはおかしい。大臣は国防を預かる最高責任者として、国防省を設置して、名を正し、制度を整備すべきだというふうにはお考えになりませんか。
  59. 臼井日出男

    臼井国務大臣 委員お話しのとおり、防衛庁というものは、国家行政組織法上、総理府の外局として位置づけられておるわけでございますが、防衛庁の組織につきましては、防衛庁設置法、自衛隊法等において所要の規定が置かれておりまして、自衛隊が我が国の平和と独立を守り、国の安全を守るという任務を果たすための所要の体制というものはつくられているものと考えております。したがいまして、現在のところ、防衛力の整備、自衛隊の維持運用を適切に実施していく上で、この点、格段の支障があるとは考えられません。  いずれにいたしましても、自衛隊を、省に昇格させるという問題は、世論の動向、防衛についての国民の意識等を踏まえて総合的に判断すべきものと考えておりまして、現在、防衛庁においてこの問題を具体的に検討しているわけではございません。
  60. 西村眞悟

    ○西村委員 世論の動向等々を先ほども言っておられますが、国防に関しては、世論の動向も大事ですけれども、国民の意思を受けて選出された国会議員がこの場で決めるということの決断がなければ、先ほど言いましたように、ドゴールの言じゃないですけれども、歯が痛いから歯医者まで嫌いになるという世論に流されてしまいます。私は、国防省を設置すべきだということも、名を正す、バックボーンを正すという観点からお聞きしておるのであります。  次に、パウエル統幕議長という方がおられまして、この方は日本の勲章の勲一等なのです。先ほど自衛隊の職務、軍隊の職務は名誉ある職務であると私が申して、それにおおよそ同意されておるのですけれども、勲章制度、栄典制度、これは伝統的に軍人に対して与えるものとして発達してきているわけですね。日本の勲章制度が勲一等とか勲二等とか等級をつけておりますので、制度があること自体が、ある意味では等級によってこの人は国家にどのような貢献をしたのかとかいうふうになってくるわけですよ、等級がなければいいのですけれども。  それで、パウエルが勲一等でこちらの日本国の統幕議長がなぜ勲二等なのかということは、私は疑問に思っているわけです。位階勲章制度について、ある以上は、身の危険を顧みず職務における覚悟をして国家のために尽くした最高責任者がアメリカの統幕議長よりも伝統的に下位であるというのは私は納得できませんが、大臣はいかがお考えですか。
  61. 大越康弘

    ○大越政府委員 お答え申し上げます。  現在の叙勲制度と申しますのは、戦前の軍人や官吏中心のものから、全国民あらゆる職域を対象としたものに変化してきております。  自衛官の叙勲も一般職の公務員の叙勲と同一基準で行われておりまして、例えば統幕議長は各省庁事務次官と同一の在官年数であれば、各省庁事務次官と同様の瑞二を叙勲されているという状況にございます。
  62. 西村眞悟

    ○西村委員 制度の説明はいいのです。その制度はおかしいなと私は言っていて、大臣はどう思っているかとお聞きしたわけですけれども、余りお答えにくいことですから、おかしいと思われませんか。
  63. 臼井日出男

    臼井国務大臣 国家的な表彰について申し述べる立場にはございませんが、この表彰は、国民全体に幅広い立場でもって、国のあらゆるところでもってそれぞれの職種等に努力をしておられる方々に広く焦点を当てて差し上げるものだ、こう私は思っております。  したがいまして、全体との兼ね合いで、あくまでも等級等は公平に決められていると思っておりまして、そういう状況も私はやむを得ないものと思っております。
  64. 西村眞悟

    ○西村委員 大臣は、今国家のそういう制度について申し上げる立場ではないとおっしゃいましたけれども、まさに国家の制度について申し上げる立場にあられるわけです。趣旨がわかりましたから、次の質問に移りましょう。  これは、自衛隊のことについてお聞きしておりますので、シビリアンコントロールについてちょっとお聞きします。  あの阪神大震災のときにもシビリアンコントロールがあって云々ということがありました。シビリアンコントロールというのはどういう概念なのか。これは部隊として武器を使用する前提で、敵と交戦する組織においてそれを発動さすか発動させないか、これを決めるのが政治であるという意味でシビリアンコントロール。武器を持たずして国内の人命救助に向かうときに、この原則のもとで、あたかも外国と戦う、武器をとって戦うかのような原則を当てはめていいものかどうか。シビリアンコントロールというのは、果たしてそれをコントロールするためにあるのかどうか、私は疑問に思ったという一点を申し上げておきます。  それから、シビリアンコントロールというのは、前提は、警察も同じ実力を、武器を持っておりますけれども、警察をシビリアンコントロールということは言いませんよね。軍だけをシビリアンコントロールと言うわけです。なぜならば、警察は行政組織の一部ですから、コントロールという概念は本来ないわけです。コントロールという概念が本来あるという前提には、軍の自律があるわけです。自己完結的、自律的な組織であるということが前提にあります。なぜなら、軍隊は時の政府を守るための組織ではなくて、国家を守るための組織であるからです。  したがって、天安門事件で国民に銃口を向ける軍組織というのは恥なのです。あれはあくまで警察が動員されてやるべきだった。反対に、阪神大震災のときに国民を救助し得ない政府も恥だった。  それで、軍の自律というのは何かと言えば、シミュレーションとか軍令は自律的領域にあるということです。政治の限界に拘束されないということです。つまり、政治には限界がありますけれども、危機には限界がない。その政治の限界を超える危機が発生したときに、政治が使えるカードがないということになれば大変ですから、政治の使えるカードを用意しておくということが軍の自律の領域にあると思うのです。  象徴的なことを一部お聞きしますけれども、それでシビリアンコントロールというのは、目的を設定して軍を動かすか、そして撤退さすか、平和と戦争の両てんびんの中でどちらにコントロールするかを決定するのが政治であるということですから、小さな例ですけれども、部隊が武器を使用するか使用しないか、戦闘するか戦闘しないかは、たとえ部隊の半数は殺されても、戦争しないと決断すれば戦争してはならぬのです。したがって、自衛隊がPKOで海外に出るときに、武器使用において個々人の正当防衛にゆだねるというがごときことはシビリアンコントロールを崩すわけです。それは、そう思われませんか。
  65. 臼井日出男

    臼井国務大臣 シビリアンコントロールの意義についていろいろお話してございました。シビリアンコントロールというのは、民主主義国家における政治の軍に対する優先を確保することである、こういうふうに私は考えております。  先ほども申し上げましたけれども、我が国の自衛隊は専守防衛のための力であります。したがいまして、海外に武器等を使用するような環境の中で出ていくということは現在いたしておらないのでございます。したがいまして、そうした外部における状況というのは常に慎重の上にも慎重な審議を重ねた上で結論を出しているわけでございまして、そうした外部における状況というのは起こり得ない、このように私といたしましては判断をいたしておるわけであります。
  66. 西村眞悟

    ○西村委員 起こり得ないことが起こるのが危機なのです。  それからもう一つ、自律の領域にありますから、歴史は軍が政治に介入することの弊害を教えております。同様に、政治が軍に介入することの弊害も教えておる。その意味で、機関銃が一丁か二丁かを政治が決めるというのは、これは非常な弊害を後世に与えると思います。  午前中の質問はこれで終わりだということで、時間が来まして、午後からは先ほどの一点に絞りまして、実質二十五分間にしますから、いただいているのはもう少しですが、またフリートーキングみたいな形で、憲法体系についてのことと有事法制のあり方についてちょっとお聞きして、それで大臣に対する質問はやめたいと思います。  しり切れトンボみたいになりましたけれども、これで午前中の質問は終わります。
  67. 吹田愰

    吹田委員長 午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時四十八分休憩      ――――◇―――――     午後一時開議
  68. 吹田愰

    吹田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。西村眞悟君。
  69. 西村眞悟

    ○西村委員 自衛隊は自衛権を発動する自衛のための軍事組織、軍隊であると国際法上認められております。それで、今から自衛権について聞いていくのですが、この自衛権の範囲自体が日本ではわかっていないわけです。自衛隊は自衛権を発動するための軍隊であるといいながら、自衛権の内容がわからぬということ。それどころか、今アメリカと共同して云々ということがありますが、国内において、自衛隊が本来果たすべき有事における自衛隊の移動、そして機能が確保されるような法制もまだないわけですね。これこそある意味では怠慢だ。戦後五十年の去年、謝罪するとか、あれで五十年が済んだような思いをしている人々がおりますけれども、政治がやるべきことは、自衛権とは何か、そして自衛権を発動するときの万全の体制を整えるということであろうと思います。  したがって、自衛権についてこれから聞いていきますけれども、自衛権は憲法に根拠条文はありません。解釈によって生まれてまいります。そこで、解釈ですが、三権分立のもとで立法、司法、行政という国家機構がありまして、憲法の有権的解釈は司法がする、その司法がする有権的解釈に行政は従わねばならない、立法はその司法のする解釈が不都合であれば憲法改正の発議をする、こういうふうな役割になっております。  したがって、長官としては自衛権についての有権的解釈は内閣法制局ではなくて最高裁判所であるということを御確認いただいた上で、今、しからば最高裁判所は何を言っておるのかということをちょっと御説明したい。  昭和三十四年十二月十六日、砂川事件最高裁大法廷判決は、憲法九条の解釈は、「前文および九八条二項の国際協調の精神と相まって、わが憲法の特色である平和主義を具体化した規定である。」しかし「これによりわが国が主権国として持つ固有の自衛権は何ら否定されたものではなく、わが憲法の平和主義は決して無防備、無抵抗を定めたものではないのである。」「わが国が、自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛の措置をとりうることは、国家固有の機能の行使として当然のことといはなければならない。」九条二項が戦力不保持を規定した法意は、これによって「同条一項において永久に放棄することを定めたいはゆる侵略戦争を引き起すがごときことのないやうにするためであると解するを相当とする。」最高裁田中耕太郎長官の補足意見は、集団的自衛権に関して書かれております。  今や諸国民の間の相互連帯の関係は、一国民の危急存亡が必然的に他の諸国民のそれに直接影響を及ぼす程度に拡大されてるる。従って一国の自衛も個別的にすなはちその国のみの立場から考察すべきでない。一国が侵略に対して自国を守ることは、同時に他国を守ることになり、他国の防衛協力することは自国を守る所以でもある。換言すれば、今日もはや厳格な意味での自衛の観念は存在せず、自衛はすなはち「他衛」、他衛はすなはち自衛といふ関係があるのみである。従って自国の防衛にしろ、他国の防衛への協力にしろ、各国はこれについて義務を負担してみるものと認められるのである。自国の防衛を全然考慮しない態度はもちろん、これだけを考へて他の国々の防衛に熱意と関心をもたない態度も憲法前文にいはゆる「自国のことのみに専念」する国家的利己主義であって、眞の平和主義に忠実なものとはいへない。 これが最高裁判所の有権的な憲法解釈であります。  そこで、長官にお聞きしたいのは、耳にたこができてうんざりしておるのですけれども、歴代内閣法制局長官が発言する集団的自衛権に対する考え方と、国家有権的解釈が最高裁で出された、今私が朗読した砂川事件大法廷判決と、いずれが国家の将来のためによるべき解釈であるか、この一点をお伺いしたい。
  70. 臼井日出男

    臼井国務大臣 今委員お述べになりました昭和三十四年十二月の最高裁判所の判決、申しわけありませんが、私は初めて聞かせていただいたわけでございますけれども、いわゆる集団的自衛権というのは、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず実力をもって阻止をする権利である、国際法上、国家というものはそういう権利を有している、こういうふうにされているところでございます。  我が国が国際法上この集団的自衛権というものを有しているということは、主権国家である以上当然でございますが、憲法第九条において許容されております自衛権の行使というのは、我が国を防衛するため必要最小限度にとどまるべきものである、こういうふうに解されておりまして、集団的自衛権を行使することは、その範囲を超えるものであって憲法上許されない、こういうふうに解されておるわけでありまして、私もそのように理解をいたしております。
  71. 西村眞悟

    ○西村委員 今の御答弁は内閣法制局の御答弁ですね。
  72. 臼井日出男

    臼井国務大臣 私もそのように理解をいたしております。
  73. 西村眞悟

    ○西村委員 私は、現状の解釈ではなくて、いずれの解釈が国家に有用であるか、憲法存続して国家滅びるという事態を政治が許せないとすれば、政治家としての大臣の所見をお聞きしたつもりでございますが、そりいり解釈は絶望的な誤った解釈でございます。自衛権というものは、あるかないか二つに一つ。そして、今内閣法制局も常に必要最小限と申して、それが集団的自衛権を排除する要因になるのですけれども、これは間違いです。自衛権というものは、あるかないかです。  その一つの自衛権の中に、個別的に行使するときもあろうし、集団的に行使することもあろうし、現在の国際情勢では一国のみにおいて存在できないから集団的に行使する、これは固有の権利です。必要最小限というふうな憲法九条から導かれる解釈は、自衛権の範囲にとどまるということを言うのみにすぎなくて、つまり侵略戦争をやってはならないということだけなんです。自衛の権利を持っているのに、萎縮さすのが自衛を全うすることではないわけです。  それで、この自衛権は国際法上の概念でございまして、憲法条文には根拠がありません。先ほどお読みした砂川事件大法廷判決でも、憲法の精神からよって来るところ、国家存立の普遍的原理からよって来るところと位置づけておるわけです。  そこで、お聞きしますが、自衛権の範囲はだれが決めるのか。日本国において、ここまでは自衛権だというのはだれが決めるのかというと、日本国でございまして、国際法的に裁判所があって決めてくれるわけではない。  しからば、国際法的にその自衛権の範囲は慣習的にいかなることで決まってきたかといえば、一八〇七年のデンマーク艦隊引き渡し請求事件、これは、トラファルガーでナポレオンの艦隊を打ち破ったイギリスが、ナポレオンが陸路デンマークを攻略してデンマークの艦隊をナポレオンの艦隊としてイギリスを攻略するのを阻止するために、デンマークに対して艦隊の引き渡しを要求する。デンマークはもちろん中立を保とうとしてそれを拒否する。イギリスはコペンハーゲンに軍艦を差し向けて、コペンハーゲン市内を砲撃してデンマークの艦隊七十四隻を持って帰る。これが、イギリスは、アングロサクソンは自衛権の範囲と厳として言っておる。大陸法系は当然、ナポレオンに支配されておるからといってむちゃだと。論争でなっておりますけれども、問題は、イギリスは一貫してこの自衛権の範囲というものの考え方を変更していないということです。  それと同じことが、カーター・ドクトリンが湾岸地域を制圧するいかなる外国勢力も自国の、アメリカの致命的な利害を侵すものとする、これは強烈な自衛権の主張なのです。したがって、世界各国は自衛権の主張をそうしておる。日本は、自衛権の中身も不確定なら、その範囲を宣言したこともない、こういう状態です。  それで、集団的自衛権について、先ほどお考えをお聞かせいただきましたが、自衛権自体の根拠条文は憲法にございません。アメリカとかイギリスとか普通の国の憲法じゃないわけです。ございません。そこで、自衛権自体の根拠条文がないのに、その自衛権の中の一部である集団的自衛権を排除する根拠条文はどこにあるのかと私は常々疑問に思っておるわけです。  早く終わりますから、私が申し上げますと、内閣法制局の歴代長官はそのことを明示していなかった。ただし、国会の場ではなくて、高辻正己長官は内閣法制局編の「証言 近代法制の軌跡」の中で、集団的自衛権を日本は行使できない根拠は憲法九条第一項にある、こういうふうに指摘している。  しかし、憲法九条第一項は、国際紛争を解決する手段としての戦争を放棄した、つまり昭和三年の不戦条約と同じ条文なのですね。不戦条約はまだ効力を有しておりまして、我が国と集団的自衛権行使の条約を結んでおるアメリカ、そしてアメリカと集団的自衛権の行使の条約を結んでおるヨーロッパ、NATOの各国を拘束しているわけです。もし高辻長官の憲法九条一項に集団的自衛権排除、不行使の根拠があるとするならば、不戦条約締結下にあるアメリカ及びNATO諸国は条約違反を犯しておることになる。したがって、完全に間違いなのです。我々は間違ったいわゆる歴代長官の積み重ねに呪縛されて、防衛庁長官のお考えもそうだ、公式に発言するときは。酒飲みながら発言するときは違うと思う。こんなことで日本は守れない。  質問にならぬようなことになってしまいましたけれども、私は、五分前に終わりますから、これだけ最後に確認しておきましょう。我々を拘束している昭和二十一年製の憲法は、ポツダム宣言受諾の際に、そのポツダム宣言は、日本政府の最終的形態は日本国民の自由に表明された意思によるというふうに連合国と日本国、大日本帝国は合意した。ポツダム宣言において合意したわけです。二十一年というのは軍事占領下です。軍事占領というのは戦争状態です、国際法上は。  憲法制定過程に連合国の検閲が日本の言論機関にしかれておりました。江藤淳氏らの研究でその検閲の内容が徐々に明らかになってきた。検閲が三十項目あります。それを申し上げます。日本国の検閲、それは連合国GHQの検閲は、戦前の○○○、ペケペケペケというふうに消した検閲じゃないのです。どこを消してどこを入れたかわからぬようにする検閲なんです。検閲として最も巧妙で、最もマインドコントロールをきかす効力のある検閲だ。  この三十項目の検閲の初めの十項目ぐらい読みますと、一、GHQの批判、二、東京裁判の批判、三、これが重要なんです、GHQが日本憲法を起草したことへの批判、四、検閲への言及、五、アメリカの批判、六、ソ連の批判、七、英国の批判、八、朝鮮人の批判、九、シナの批判、十、その他の連合国の批判。  この軍事占領下で検閲をしかれたときにできた憲法が我が日本憲法なんです。したがって、自衛のことも、国家存亡の危機に対して権力の集中の規定もないわけです。  一々お答えは要りませんが、長官は、今我々がくびきに感じているこの憲法、そしてそれに忠実な内閣法制局の答弁の積み重ね、これがいつ予想しないことが起こる国家の危機に対して対処する我が国の能力を阻害して、ひいては我が国を国際的に半人前の国家だ、誇りのない国家だと言わしめている原因でありますから、これだけ確認したいのですが、事実であるか事実でないか。  ポツダム宣言には、政府の最終形態は日本国民の自由に発する意思によるという規定があったこと、現憲法昭和二十一年に軍事占領下において制定されたこと。現憲法の起草者はGHQの若手将校であったこと。そして、GHQの今申しました検閲には憲法制定過程への言論を禁ずる検閲があったこと。これは事実ですけれども、それは違う、そんなことはない、今ミャンマーでSLORCをやっていますけれども日本国民は十二年間かけて国会で十分審議したのだとかそういう事実があればおっしゃっていただいて、私が今申し上げた憲法制定過程というのは、憲法解釈は制定者の意思を反映して解釈しなければなりませんから、非常に重要な部分ですから、我々の桎梏であるこの日本憲法はその事実に反するかそのとおりなのか、ちょっとお答えいただければ予算委員会に行っていただいて結構です。
  74. 臼井日出男

    臼井国務大臣 連合国が我が国の管理を行っていた時代……(西村委員占領です」と呼ぶ)占領、管理を行っていた時代には、例えば日本政府が行う法律の議会提出等についても事前に占領当局が承認を求めておった、会議の経過についても報告が行われていたというのは事実でございます。現行憲法におきましても、占領軍当局の強い影響のもとに制定されたというのも先ほど委員お話しのとおり事実でございますが、最終的には帝国議会において議決されたものでございます。  私ども日本憲法を遵守をし、そのもとでもって自衛隊というものは活動しておる、こういう事実を御理解をいただきたい、こう思います。
  75. 西村眞悟

    ○西村委員 最後の一つを。  現憲法は改正規定を持っておりまして、国務大臣、国会議員の憲法擁護義務というものは改正規定を含めた憲法の擁護でございまして、改正すべきに改正せざることは、憲法の発議を任務とする国会議員の責務に反することでございます。例えば建物を建てて、その支柱が腐っていたら、建築のメンテナンスをする方はこの支柱を取りかえようと判断をする。腐っておるのに取りかえなければ建築家の義務に反する、こういう関係ですから。  憲法擁護ということを今言われましたけれども、これは改正規定を含む憲法の擁護でございまして、改正の発議はこの場でするわけですから、第一義的に改正すべきか改正すべきでないかの判断の責務を我々政治家は迫られているということを長官に確認した上で、予算委員会に行っていただきますように。これで私は長官に対する質問を終わります、答弁をいただいて。
  76. 臼井日出男

    臼井国務大臣 委員お説のとおりでございまして、憲法改正につきましても、国会の場におきまして積極的な御論議をいただき、それぞれの会派の考え方によりまして御提案をいただくということはまことに結構ではないだろうか、こういうふうに思っております。
  77. 西村眞悟

    ○西村委員 ちょっと時間は早いのですが、予算委員会に行っていただかなければいけませんから。また別の問題に入りましたらぎりぎりになりますので、またの機会に質問させていただいて、一たんやめます。
  78. 吹田愰

    吹田委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後一時二十一分休憩      ――――◇―――――     午後二時五分開議
  79. 吹田愰

    吹田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。西村眞悟君。
  80. 西村眞悟

    ○西村委員 引き続き細切れで、御足労いただきまして、時間が限られていますので、外務大臣に一点だけお聞きしたいと思います。お聞きするというよりも、志を述べていただきたいという思いがいたします。  私は、外交というものは、親日国を、また親日家を大切にして、そしてふやしていくことだと思うのです。我が国の外交はシナ大陸の方を向き過ぎているのではないかな。歴史を見ますと、あそこに注意がいっている。力点を置き過ぎるときに、やはり日本はちょっとバランスを失していくというような思いがするのです。つまり、日本にとってブラックホールのような地帯だという感じがするわけです。  それで、昨年、村山前総理が東南アジアを歴訪され、土井たか子さんも行かれましたけれども、マハティールさんから謝罪ばかりするなというふうにたしなめられる。そのときに、外務省が、シナ大陸ではなくて、その沿岸につながる地帯の親日性とか民情とかいうものをどれだけ把握しておられたのかな。ただ謝罪するのはいいのですよ、頭を下げられて損する人はおらぬのですから。しかし、一国の元首から謝罪ばかりしていて何だということを言わしめたという情報はなかったのかな、このように思うのです。  それで、東南アジア諸国にとって、昭和十七年二月十五日のシンガポールが日本軍によって陥落したという事実は、これは百年後の歴史の教科書に、あの時点でコロンブス以来の武力による西欧諸国の膨張が同じアジアの国によって遮断されたという歴史的な事件として歴史年表に記載されるほどの事件だと私は思いますけれども、そのときに感激したチャンドラ・ボースであれ、スカルノであれ、ハッタであれ、アウン・サンであれ、彼らが建国の基礎を築いている地域なのです。  私、ちょっと話が長くなるのですけれども、果たして村山前総理初め外務省は、イギリス、オランダの植民地支配の構造を理解しておられたのかな。つまり、西欧人の植民地支配の構造というものは、少数民族を支配者にし、また、華僑を呼んで経済を握らせて大多数の民衆を支配するということでございます。したがって、日本軍が、日本人が戦った西欧諸国の中には、華僑であれ、特権少数者が現地に含まれておった。日本はそれを駆逐しました。しかし、民衆はやはり日本軍に喝采した。それは事実でございます。今でも建国記念日に行きましたら、歌われる曲は「愛国行進曲」であり、「海行かば」の曲なわけですね。しかし、再び華僑が例えばシンガポールの経済を支配していて、マスコミもやはり華僑の支配下にある。非常に反目的な発信があるのはわかるのですけれども。  ただ、マハティールさんにしてみれば、ルックイースト政策を掲げて、日本が手本だ、日本を見習え、民衆もそれに同意して国づくりに励んで、ある程度成功している方なのです。そこに、日本の内閣総理大臣が行って頭を下げれば、自分は自国の国民に日本に学べと言っているのに、その日本が謝りにばかり来るということは、マハティールさんにすれば、自分をこけにしに来たのかな、こういうふうに思って、あの発言が出てきたと思うのです。  例えば、アメリカのクリントン大統領が、反米で一貫している共産党の宮本顕治さんに原爆投下とか無差別爆撃を謝りに来たら、我々日本国民は、これは何をしに来たのだと思うでしょう。それと同様のことを前内閣総理大臣はしたのではないかな、このように思います。そして、親日国、そしてその地にいる親日家をやはり失望させたのではないかな。  それは、先ほど冒頭に言いましたように、余りにも中国大陸の方に神経も関心も行き過ぎておったので、アジアは多様であるということを日本の外交は忘れておるのじゃないかな。アジアが一つであるというのは事実でございますが、それは西欧諸国の喝采がアジアの屈辱であるという五十年前の時代には、アジアは一つ、その意味での一つとして正しかったのでございますけれども、現在はアジアは決して一つじゃありません。  したがって、外務大臣に我が国の外交の志として期待したいのは、台湾、インドネシア、マレーシア、ミャンマー、インド、そういうふうな中国大陸の南に沿って連なる我が国の親日的なところにもう少し関心と、そして民衆の、先ほど植民地分割統治によってできました中で、今は一貫して隠れておりますけれども、大多数の国民の心情にかなった外交を展開していただきたい、こう思うわけでございます。  私、質問にはならぬような話をしましたけれども、私がアジア外交と言う場合に、シナ大陸に余りにも神経をすり減らして重点を置き過ぎている、そして、真の親日国、親日家は、今現在東南アジア諸国の中にいるということ、そして、そこを大事にしていくことが国際協調国家としての我が国の外交の基本になるのではないかなという私の指摘に対して、大臣のお考えをいただきまして……。
  81. 池田行彦

    池田国務大臣 世界の国々、とりわけアジアの国々といかにおつき合いしていくか、いかなる外交政策を展開していくか、それを考えます場合に、アジアは一つとは言われるけれども、個々の国をとれば非常に多様性を持っている、それは御指摘のとおりだと思います。また、そういった多様性を持ったアジアのそれぞれの国に対して、よく実態を承知しながら、理解しながら適切な政策展開をしてまいらなくちゃいけないとも存じます。  そして、その際に、我が国に対して親愛の情を持っていただく、そういった方々のお気持ちを大切にし、またそういった親日の気持ちをずっと広げていく、そのためにも配意をしなくちゃいけない、それも御指摘のとおりだ、このように考えております。そういうことでやってまいりたいと思います。  ただ、過去との関連で申しますと、過去の日本行為がいろいろな面で影響を与えたということはあろうかと思います。しかし、我々といたしましては、過去において我が国のいわゆる侵略行為や植民地支配というものを通じて多大の損害を与えたというこの事実も忘れてはいけない。そのことは真摯に直視しながら、そして基本的に将来に向かって、未来志向の気持ちで進めていく、これが外交のあるべき姿かと思う次第でございます。  御指摘のございましたよりこ、殊さら過去にのみとらわれ、そのことにいわば謝罪的な行為のみを繰り返すということが適切かどうかということはございますけれども、それも真摯な反省の気持ちというものは忘れちゃいけない。そうして、我々として、未来に向かって友好関係を築き上げ、アジアのそれぞれの国の自主的な御努力に対してどういう面でお手伝いができるか、国づくりの面でも、それからまた御一緒にアジアと世界の安定と繁栄のために手を携えていけるか、そういう気持ちでやってまいりたい、こう思います。
  82. 西村眞悟

    ○西村委員 よくお伺いいたしました。  それで、ちょっとお答えに関連して申し上げますと、江沢民さんは、昨年の連合国勝利五十周年のときの演説で、我らは日本を大陸に引き入れて体力を消耗させて連合国の勝利をもたらしたのであると自己の戦略を自画自賛しております。これは、人民の海の中に敵を引きずり込んで包囲、せん滅するという毛沢東の戦略どおりに戦って、そのとおりに勝ったという自画自賛をしているわけです。ここには被害者意識のかけらもない。しかし、日本にだけは被害者カードを切ってくる。日本としては、もうぼつぽつその被害者カードの有効性を立証してやるのはやめた方がよろしい時期ではないかな、このように私は思うのです。  そこで、今重要なことが日本の南の台湾で、二千二百万の国民の直接選挙によって李登輝総統が選ばれるという歴史的なことが起こったわけでございます。これは民主主義、自由主義を国家存立の価値とする国が東アジアの歴史的にも私どもの一番親しい地域に出現したということでございますから、それに対するミサイルでの威嚇は、単なる公海上であってその国の裁量に属するという次元を超えて、我が国としては民主主義に対する公然たる挑戦であるというふうに把握し、そして、例えば新進党の有志が、李登輝総統、この二千二百万の台湾、大台湾の建設とそして新しい中原を立てるというふうな志を語っておられる当の本人をお呼びしてお話をお伺いしたいというときには、やはり入国についてためらうべきではない、このように私は思うわけです。  それは、日中条約はございますよ。ございますけれども、目をつぶれば事実がなくなるわけではないわけです。目をあけている限り、二千二百万の国民が直接大統領、プレジデントを選んだことは紛れもない事実でございます。そして、中共は一度たりとも台湾を実効支配したことはございません。また、ついでに申し上げますと、ダライ・ラマは中国からの独立を叫んでいるチベットの盟主でございますから、ダラィ・ラマはアメリカにも入国を許され、日本にも入国を許されているわけでございます。日本は既に中国から独立を叫んでいる国家チベットの盟主を入国せしめているわけでございますから。ましてや中国は、中国というか北京の政府が一度たりとも実効支配したことのない台湾で直接選挙で選ばれたプレジデントを、入国の申請があれば許すべきだと私は思っておるのですが、この点について、最後にお伺いしてやめたいと思います。
  83. 池田行彦

    池田国務大臣 台湾におきまして民主的な手続により直接有権者により総統が選ばれた、このことはまことに意義深いものがある、そのように考えております。  一方におきまして、委員御承知のとおり、我が国は、二十四年前の日中共同声明におきまして、中国を代表する唯一の政府は中華人民共和国の政府であるということを認めておりますし、また、その中国が、台湾は中国の領土の不可分の一部である、こういうことを主張しておられるということについて、そのことを理解し尊重する、こういう立場であるわけでございます。  もとより台湾との間におきましてございました実務的な関係を維持するということは、これはそのとおり維持されておるわけでございますが、政府間の関係というものは、今申しましたような立場からして台湾との間にはないわけでございます。  そのような基本的な立場というものを踏まえまして、御指摘の問題についても対応していくこととなろうかと思いますけれども、今、李登輝氏が日本においでになりたいというお話があるとは承知しておりません。
  84. 西村眞悟

    ○西村委員 これで私の質問を終わらせていただきます。
  85. 吹田愰

    吹田委員長 次に、平田米男君。
  86. 平田米男

    ○平田委員 私からまず最初にちょっと確認をさせていただきたいのです。  きょうの朝刊に、三月中旬ごろ北京で日朝の課長級が接触した、こういう報道がなされまして、先ほど同僚委員の方からも御質問がございましたが、報道では、総理等もこれについてはお認めになった上で、予備的な話し合いを進める段階という方が正しい、こういうようなコメントを出しておいでになるようでございます。  私どもが伺ったところによりますと、与党が、朝鮮労働党ですか、北朝鮮の労働党の日朝の国交回復セクションと接触をされておられて、与党三党というよりも与党の中の一党、私どもは社民党というふうに伺っておりますが、社民党が労働党の日朝国交回復セクションを近々招待をされて、訪日をされる予定になっている、こういうような話を聞いておるのです。この報道、日朝課長級が接触をしたというのは、その下話も当然入っているのではないかというふうに理解をしたわけでありますが、今私が申し上げたような事実につきましてお答えをいただけますか。
  87. 池田行彦

    池田国務大臣 日朝間のいわゆる予備的な交渉というのでしょうか、そういったものについての報道が昨日なされたことは私どもも承知しております。そして、それに関しまして、ただいまも委員から総理の御発言というものが御指摘があったわけでございますが、その総理の御発言というものは、日朝間の特定の接触についてコメントをされたものじゃない、一般論として国交正常化の交渉の再開に向けた何らかの接触、予備的なものというものがあり得る、今そういう段階じゃないか、そういうふうなコメントであった、私はこういうように考えております。  そして、けさほどの委員会でも私御答弁申し上げましたように、外務省といたしましては、これは当然のことでございますが、日朝間の正常化は図らなくてはならない、こう考えております。しかしながら、それは朝鮮半島全体の平和に資するようなものでなければいけないし、そして、朝鮮半島全体の平和、安定というものを実現する一番大きなルートというのは、これは当然のことながら南北対話であろう、こう思います。  そういったいろいろな観点を考えますと、我々が北朝鮮との関係について何らかの行動をとっていく場合には、韓国との間の連携もとりながら進めていかなければいけない、そういうふうな立場で我々もいろいろ北朝鮮の問題を考えておるわけでございます。  そういったことでございまして、当然のこととして、我々外務当局としてはいろいろな態勢、姿勢あるいは関心は持ち続けてはおりますけれども、今具体的にこういった交渉をしておりますなんということが申し上げられるような状況ではございません。何らかの接触というものは、外交当局の当然の務めとしてあり得るということでございます。  それから、今委員指摘のございました与党の方の動きという話でございますが、北朝鮮の方をお呼びになるのじゃないかというお話でございますが、これは私も新聞報道で拝見いたしました、直接にはお伺いしておりません。そして、いずれにいたしましても、それが国交正常化の交渉と結びつくものであるかと申しますと、私はそういうものとは考えておりません。  御承知のとおり、日朝間の正常化交渉というのは、過去にたしか七回にわたって行われまして、八回目で中断したままでずっと推移しているわけでございますが、かつてそういった政府間の交渉があったわけでございますから、今後仮に正常化交渉が再開するとしても、それは政府間の関係としての交渉になるわけでございましょうし、そういった意味では、そういったものを再開するためのいろいろな努力というのも、基本的には外交ルートで、日本においては我々外務当局の責任において対処しなくちゃいけない、こういう問題だと考えておりますので、そういった趣旨は、きのうの総理のコメントの中にも若干あったのじゃないかと思います。
  88. 平田米男

    ○平田委員 大臣はそのようなことは聞いておられないということでございますね、ちょっと聞きづらかったのですが。(池田国務大臣「与党の話です」と呼ぶ)ええ、与党の話ですよ。  それから、あわせてお答えいただければと思いますが、それに対応して、五月ないし六月に社民党の村山党首、前総理大臣を団長とする訪朝団が計画されているという話も伺っておるのですが、それについての御認識もお答えいただけますか。
  89. 池田行彦

    池田国務大臣 大分前の段階でそういったふうな報道がかなり大きくなされた。大分前の段階ですよ、もう一月以上、二月ぐらい前になりましょうか。そういったことは承知しておりますが、現在の段階でそういうふうなお話があるというふうには承知しておりません。
  90. 平田米男

    ○平田委員 それでは、いずれにしましても、政府考え方といたしましては、日朝国交回復は政府レベルでやることだ、政党の動きはそれとは一切別のところで行うものだ、こういう御認識と理解をしてよろしいわけでしょうか。それとも、こういう動きは承知しておられないということですが、まさに外務省としては、それはまた連動してやっていくというお考えなんでしょうか。
  91. 池田行彦

    池田国務大臣 いわゆる正常化というのは外交関係そのものをどうするかという話でございますから、この問題はすぐれて政府間の交渉になじむといいましょうか、それでやらなくちゃいけない性格のものであると考えています。  もとより、政党間のいろいろな御活動というものが間接的に政府の外交ルートにのせる交渉に役立つということはあり得ると思いますけれども、それはそのときそのときの、また具体的な案件をめぐる条件とか環境のあり方によって政府以外のいろいろな動きの効果というものが異なってくるのだと私は思います。現段階において北朝鮮との正常化交渉をどうするかという点について考えますと、ここのところはやはり外交ルートに絞って事を進めていくのが妥当ではないか、こういうふうに私は考えている次第でございます。
  92. 平田米男

    ○平田委員 はっきり連動がないというお答えはないようでございますが、政府主導でというふうに理解をさせていただきまして、北朝鮮の問題はまた後で時間があれば触れさせていただきたいと思います。  きょうは新防衛大綱とか中期防についてもお伺いをさせていただきたいと思います。  まず、新防衛大綱の関係でございます。新防衛大綱では国際情勢の認識について述べておるわけでございますが、これにつきましては、二月二十二日に臼井防衛庁長官が御発言になりました中に簡略にまとめておいでになります。ちょっと読ませていただきますと、  これまで国際軍事情勢の基調をなしてきた圧倒的な軍事力を背景とする東西間の軍事的対峙の構造が消滅し、世界的な規模の武力紛争が生起する可能性は遠のきました。また、我が国周辺諸国の一部において軍事力の削減や軍事態勢の変化が見られる一方、地域紛争の発生や大量破壊兵器の拡散等、安全保障上考慮すべき事態が多様化しております。こうした状況の中で、二国間対話の拡大、地域的な安全保障への取り組み等、国家間の協調関係を深め、地域の安定を図ろうとする種々の動きが見られるところです。 このような御認識を簡便に述べられておりますが、この認識につきましては、私自身といたしましては、まさにそのとおりであろうと思うわけであります。  さて、そういう前提で日本及び在日米軍のあり方が改めて問われなければならないのではないかと思うわけであります。  自衛隊のあり方につきましては、相当な編成がえをして、定員等もかえていくあるいは編成もかえていく、こういうことが防衛大綱で出てきているわけでありますし、それに見合う中期防もでき上がっているわけであります。これは中身を突き詰めていくといろいろな議論があるかとは思いますが、日本としては、あるべき体制について相当努力をされたと一応評価していいのではないかと私は思います。  そうしたときに、米軍についてはどうするのかということが実ははっきりしていないのではないかと思うわけであります。  今、沖縄基地の整理縮小等が大きなテーマになっているわけであります。それで、米国の考え方は、東アジアに十万人の兵力を持つ、そして、現状では在日米軍は四万七千前後ということになるかと思いますが、そういう体制を維持するということに基本的方針としてはなっているようでございます。ただ、この新防衛大綱の国際情勢の認識を踏まえてそのあり方でいいのかというのは、米国は米国でお考えになったのでしょうが、日本日本でやはり新たに考えてみる必要があるのではないかと私は思います。  確かに最近の在日米軍の数は相当減っております。減っておりますが、果たしてその新防衛大綱の国際情勢の認識に従って削減をしたと言えるのかどうか。例えば沖縄の海兵隊の問題でございますが、これは平成六年十二月三十一日現在でございますが、海兵隊は日本には二万一千三百名おるそうでございまして、その七割ぐらいの数が沖縄に駐留をしている。それで、普天間の基地をできれば廃止してもらいたいというのが沖縄の強い要望でございますが、もしそのような要望を実現しようといたしますと、この海兵隊のあり方なども大きなテーマになってくると私は思うわけであります。  私は、日米安保条約は今後も重視し、またそれの信頼性を向上させ、有効に機能するように我が国といたしましても努力をしていかなければならないと思っております。その前提の中で考えたときに、今の沖縄状況から考えますと、現状の基地を幾らか減らすことは可能かもしれませんが、現有兵力をそのままにした上で沖縄の皆様の期待に沿っていくというのはなかなか難しいのではないか。クリントン大統領が来られまして日米共同声明を発表されるかと思いますが、もしそこで現在の現有米軍勢力、在日米軍勢力の数を明確に決めてしまうというようなことがありますと、もっとフレキシブルな対応というのが今後できなくなってしまうのではないか。  私は、今具体的に海兵隊の名前を挙げましたが、何も海兵隊そのものをどうしろということを今具体的に提案するわけではありません。しかし、その現有の数というものあるいは編成というものをもう一遍見直すというところから考え直さないと、この新防衛大綱の国際情勢の認識を前提とした新たな米軍の対応、体制というのは国民の理解を得ることができないのではないか、そんなふうに私は思うのですが、防衛庁長官、いかがでございましょうか。
  93. 臼井日出男

    臼井国務大臣 極東における国際情勢の認識、これは、今委員がかつて私がお話を申し上げましたことをお述べになったわけでございますが、現在も変わっておらないわけでございます。また、新防衛大綱のもとで我が国の自衛隊の体制もコンパクト化、効率化、合理化していくということも御理解をいただいておるわけでございます。  他方、米国が我が国を初めとするアジア太平洋地域の平和と安定のためにいかなる軍事態勢をとるかは、第一義的に米国自身が判断すべきものと考えているわけでございます。米国は東アジア・太平洋戦略報告等におきまして、新防衛大綱と基本的に同様の国際認識を示すとともに、国際情勢の大きな変化がない限り我が国の現在の兵力水準を維持する、こういう立場をとっているものと承知をいたしております。私どもも現下の国際情勢のもとでは適切なものと考えている次第でございます。
  94. 平田米男

    ○平田委員 防衛庁の今までの公式なお考えはそういうことだろうと思います。しかし、そういう公式的なこれまでの考え方の延長線上で今後も緊密な日米関係を保っていくということを我々政治家が決断し、実現していくためには、やはり根本的なものから考えなければいけないのではないかと思います。  とりわけ、今その国際情勢の認識が大きく変わってきたわけでありまして、五千人ほど米軍は減ってはおりますが、巨大な旧ソ連の圧倒的な軍事力と対峙していたときと比べて、今の国際情勢は大きく緩和していることは間違いありません。確かに不透明な部分はたくさんありますが、しかし、冷戦時代の構造とは質的に違っていると私は思うわけでありまして、そのときからわずか五千名程度しか数が減っていない、あるいは体制がほとんど変わっていない。こういう在日米軍のあり方というのは、やはり日本から、アメリカとまずテーブルにのせて考えるということが国民の理解を得た上での日米安保条約の有効な実施ということになっていく、いや、その基礎をつくるものではないか。そういう思いであるからゆえに御提案申し上げ、また御質問申し上げているわけでございます。  大臣、私は、やはりこの辺は政治の決断ではないかと思います。この話は外務省ともいたしました。しかし、担当の実務レベルのお役人の方々は、今必死で沖縄基地をどうするか一つ一つやっております。しかし、今の前提でやる限りは、彼らも恐らくしょっちゅう徹夜もするぐらいの苦しい思いをしてやっておいでになるのではないかと思いますが、その成果というのは、おのずから私たちが見てもそう目覚ましい結論を得るようなことができないのではないか。  お役人の皆さんと話した私の感想といたしましては、まさに政治家である我々、そしてその責任者であります大臣の御決断が必要なのではないか。これは防衛庁長官のみならず、外務大臣、また総理の最終的決断だろうと思いますが、その政治的決断がないと、この楚辺の通信所もいつまでも判断をおくらせて、今まさに不法占拠状態になってしまった。決断をおくらせることによって逆に国民に不信感を与えてしまい、また、アメリカからは日本に対する信頼感を失わしめる、傷つける、こういう逆の結果になってしまうんじゃないかなと思います。ですから、この状況の中でまさに政治決断が必要なときなのではないか、このように思いますが、できましたら外務大臣もあわせて御答弁をいただけませんでしょうか。
  95. 池田行彦

    池田国務大臣 防衛体制がその時々の安全保障環境に応じていろいろ変わってくるというのは当然でございます。そして、それは我が国の安全を守るために自衛隊とともに役割を果たしております米軍についても同じだと思うのでございます。  そういうことでございますが、先ほど防衛庁長官からも御答弁がございましたが、現在の我が国の周辺地域の安全保障環境を勘案いたしまして、どの程度のプレゼンスが必要か、これを決めるのは、安全保障条約上の義務を果たす、そういったコミットメントをしている米側の判断を第一義的に尊重しなくてはいけないと思っております。ただ、我々もうのみにしているわけではございません。安保環境については、いろいろ話をしながら、なるほどそうだなということでやっているわけでございます。  なお、先ほど委員から五千人ぐらいしか冷戦の時代と比べて減っていないという御指摘がございましたが、五千人ぐらいというのは、五万一、二千という水準は確かに前にございましたが、それは、冷戦構造がずうっと緩んでまいりまして、いわば崩壊寸前の段階でのレベルではなかったかと思います。  文字どおり冷戦構造が非常に強固なものであったときには、我が国はもとよりでございますが、アジアの他の国々にも多くの米軍が存在したわけでございますし、また、もし何かがございまして、緊急事態がありましたときには、この地域に存在している米軍だけで対応するんじゃない、これは前方展開でございますから、そのときにはさらに増援を求めながら対応するという構成になっているのは御承知のとおりでございます。  そういったことでございますので、減少が非常にわずかではないかというのは、ドラマチックに情勢が、基本が変わったのにわずかではないかというのは、そういうことでちょっと御理解いただけないかな、こう思います。  また、将来に向かいましても、安全保障環境がずっと大きく変わってまいりますならば、決して今の水準を絶対に固執するんだというわけでもないということも、これまで我が国並びにアメリカの当局者もいろいろな機会に明らかにしておるところでございます。
  96. 秋山昌廣

    ○秋山(昌)政府委員 新防衛大綱における国際情勢の見通し、それから日本の自衛隊の防衛力の水準、あるいは在日米軍の規模等について御質問がありましたので、若干これまでの経緯について御説明させていただきたいと思います。  新防衛大綱における国際情勢の見通しにつきましては、これは、この新防衛大綱を作成する段階でも日米間で頻繁な安全保障に関する対話をやってまいりましたので、この見方について米側と認識はほとんど同じだろうと思っております。したがいまして、米側在日米軍に対する兵力を考える場合に当たっての基本的な情勢の見方は、やはり米軍も同じような見方をして考えていると思うわけでございます。  それから、在日米軍の現在の兵力についての御質問がございましたが、御案内のとおり、一九八九年、平成元年以降の東西冷戦終えんに伴う大きな変化のもとで、米側でも東アジア戦略政策、EASIと言っておりましたが、それのフェーズワン、フェーズツーといったようなことで、一期、二期、三期といったような形でアジアにおける米軍の兵力の削減が検討をされ、その時点で、たしか私の記憶では十三万五千人ぐらいアジアに前方展開兵力がおったと思いますけれども、それを段階的に減らしてきた。韓国、日本、それからフィリピンといったようなところから兵力が減ったということがあったわけでございます。  その後、ボトムアップレビュー、あるいは昨年の東アジア戦略報告というところに見られますように、欧米における冷戦後の状況とアジアにおける冷戦後の状況の違い、また北朝鮮における核開発疑惑といったような問題が起こったといったようなこともいろいろ踏まえた結果、その間、我々日米間でも安全保障に関する対話を相当やってまいりました。そういう意見交換の中で、米側が最終的にアジアにおける兵力を十万という方向で出してきたわけでございます。その兵力構成のもとで我が国に現在四万数千名の在日米軍がいる、それに関して、日本としてもそれは適切な判断ということで了解をしているというのがこれまでの状況でございます。
  97. 平田米男

    ○平田委員 外務省からいただいた資料によりますと、八九年九月三十日現在と九四年十二月三十一日現在のアジア太平洋地域、これはハワイ等は入っておりませんが、その地域の米軍の数は、合計では八九年に十三万五千が九四年には九万六千に減っています。それで、日本は五万から四万五千になった。マイナス五千です。韓国は四万四千から三万六千になっておる。マイナス八千です。母数は日本の方が大きい。フィリピンは一万五千が百になっています。一万四千九百減っている。洋上配置は二万五千から一万四千、すなわち一万一千減っている。数からいっても日本が一番少ないんです、減り方が。率からいったらもっと少ない。こういう状況なんですよ。だから、東アジア、太平洋の米軍はいろいろなところから多くを減らしています。しかし、一番減っていないのは日本なんです。  このことはもうよく両大臣御認識かと思いますが、なぜ日本がこう言えないのかといったら、有事の対応が日本は全然できていないわけですよ。二年前の細川内閣のときもそういう問題がありました。でも、そのときも結局、問題が消失したので議論も消失したという経過があります、内閣もかわったということもありますが。  今まで神学論争が安全保障にはあったわけでありますが、それが現実論争に今ようやくなりつつあるときでありまして、私は、まさに具体的な現実的な有事の対応というのが必要だと思うし、それをやらなければいけないと思うのです。それをやれば、アメリカだって日本の言うことを聞いてくれると思うのですよ。日本は、有事になってもほとんど何の協力もできません、民間の飛行場に着陸させることもできません、民間の施設を使うこともできません、自衛隊が協力することも憲法上いろいろ問題があってほとんどできません、こういうことを言っておったら、それじゃほとんど米軍でしっかり頑張るしかないから数はたくさん要りますよという話になるのは当然だろうと思います。  今、与党がこの有事に対する対応をお考えにならないというんだったら、アメリカ軍のおっしゃるとおりにやられるというのも、今までの考え方と一緒ですから、それはそれなりの一つの筋が通ったことだろうと私は思います。しかし、今有事に対する対応を具体的に我々がきちっとできるチャンスなわけですから、そのチャンスに我々がやらなかったら政治の怠慢だろうと思います。  同僚の西村委員も、先ほどずっと彼の意見を展開しておられましたが、私は本当にそのとおりだろうと思うわけでありまして、国民にきちっと理解をしていただいて、日本防衛力、自衛力、そしてアメリカの軍事力というものがきちっと相まって、この日本の安全、安定というもの、そしてまたアジアの平和、安定というものをやっていくのだという我々の政治の強い意思決定を今しなければいけないときなんだろうと思うのですよ。  どうなんでしょう、有事の対応については、午前中御質問されました自民党の大野先生は、兵力の数や構成についても言うべきことは言っていくのだと私と同じようなことをおっしゃっているわけですよ。その上で有事の対応を考えていこうではないか、それはワンセットなんだと。私もまさに同感でございます。  今まで我々は怠慢だった、いや、できなかった。しかし、今できるチャンスになってきたのだから勇気を持って踏み込んでいかなければいけない。そのときに、それでは沖縄基地をどうしていくのか、四万五千なり四万七千の在日米軍のあり方をどうするのかというところまであわせて考えなければすべての問題は解決しない。すなわち、全部リンクしている話だ、私はこう思うわけでありますが、防衛庁長官、いかがでございますか。
  98. 臼井日出男

    臼井国務大臣 いわゆるアジア太平洋地域の安全と平和ということを考える際に、アメリカのプレゼンスというものはどうあるべきか、このことについては、日本といたしましても率直にアメリカ側と意見を交換する、こういうことは当然のことながら大切なことだと考えておるわけでございます。  先ほど防衛局長からもお話しいたしましたとおり、現在の冷戦終結後、残念ながらアジア太平洋地域においては不安定要素が存在をしている、こういう状況の中で、アジア十万、そして我が国における四万七千、こういう体制というものは現時点ではそれが適切である、私どもはこう思っておるわけでございまして、委員お話しのとおり、今後とも、アメリカ側に対して率直にアジア太平洋地域の安全と平和のあり方について私どもも意見を交換してまいりたいと考えております。
  99. 平田米男

    ○平田委員 外務大臣も恐らく同じふうにお答えになるのだろうと思うのですが、報道等に伺いましたところ、与党の中でも、社民党は日米安保共同宣言の中で在日米軍の兵力の数を書くのについては反対だ、こういうふうな報道に接しております。同時に、有事対応についても、有事即応ができるような態勢については消極的だ。  私は、これはどちらをとるかという話なんだろうと思うのですね、先ほど申し上げましたように。与党三党の中でいろいろ御意見があるのだろうとは思うのですが、まさに政治がきちっと決断をしていただいて、大きく大前進をしていただかないと、日本安全保障というのはいつまでたっても現実的なものにならない、信頼されるものにならない、国民からも安心されるものにならない、私はこういうふうに申し上げて、この質問はこの程度にさせていただきたいというふうに思います。  この問題でこんなに時間をとってしまったものですから、ちょっと中期防は飛ばさせていただいて、あと中台問題について伺いたいと思います。  中台の対立の中で、総理は、ミサイルの演習等あるいは実弾演習等について自粛を求められたわけでありますが、中国のあの演習によって日本の国益、すなわち、日本の平和と安全というものについてマイナスの影響があった、私はこのように認識をしているのですが、外務大臣、いかがでございましょうか。
  100. 池田行彦

    池田国務大臣 中国と台湾との関係、あるいはその中で台湾問題をどう考えるかにつきましては先ほど来繰り返し御答弁申し上げておりますので簡単に申しますけれども、我が国は、中国との関係は、日中共同声明によりまして、中華人民共和国を唯一の政府として承認しておる、そして、台湾はその中国の不可分の一部であるという中国の立場を理解し尊重する、こういう立場に立ちまして、台湾との関係は、非政府間の実務的な関係として維持しているところでございます。そして、台湾の問題を将来どうするかということにつきましては、両当事者間の平和的な話し合いでの解決を期待する、こういう立場でございます。  今回の緊張の高まりに際しましても、そういった立場から、あの地域の緊張が高まることのないように、両当事者の自重、自制を繰り返し求めてまいりました。そして、ああいった大規模な軍事演習が行われる、とりわけミサイルの演習が日本の領土の近くで、与那国島から六十キロでございます、そこで行われるということもございましたので、不測の事態も起こり得るということで、中国大使館に対しましても、その点も踏まえながら注意を喚起したところでございます。  現実的にどのような影響が及んだかという点につきましては、航空機あるいは船舶の航行にある程度の影響がございましたり、漁業方面でも、直接じゃございませんけれども、間接的な影響があった、こういうふうに承知しております。それだけではなくて、やはり我が国の安全にとっていろいろ国民の皆様方も心配された、そんなことがあった、それはそのとおりでございます。  そういったことを踏まえまして、去る三十一日、私が銭其シン中国外務大臣とお会いいたしましたときにも、そういった中国側の立場、それから日中間の基本的な立場を踏まえながらも、今回の中国のあの軍事演習というのはやはり大きな疑問を呈せざるを得ないよということは率直に申し上げました。  そして、仮に中国が、多くの人が見ておりますように、あの軍事演習におきまして台湾問題への影響を与えようと考えておったとするならば、台湾の方々への影響にしてもあるいは国際社会に対する影響にしても、それはむしろ意図したところとは反対になったのではないか、そういうことも申し上げ、当面、両当事者の直接の対話によって、話し合いによって緊張の緩和を、緊張を和らげるように最大限の努力をすると同時に、中長期的に平和裏での話し合いを通ずる台湾問題解決を期待するということを申し上げた次第でございます。
  101. 平田米男

    ○平田委員 大臣もお認めになりましたが、国民が大変不安感を持った。具体的な被害は特になかったかもしれません。与那国の漁民の方々はその間出漁ができなかったということ、あるいは飛行機や船舶がその航路を変えなければならなかったことは具体的な被害としてありますが、経済的に莫大な被害を受けたということではないかもしれません。しかし、日本国民が平穏な、平和な生活を脅かされたということは間違いないわけでございます。  常々中国は内政不干渉ということをおっしゃいます。公海上でどんな演習をやろうと自由だろうというふうに言われるかもしれませんが、しかし、台湾海峡の中で、あるいは与那国島の近くでミサイル実験をするなどというようなことは、我々から考えたら、通常考えられないような暴挙だろうと思うわけであります。その暴挙によって日本国民の不安が増大をした、あるいは生まれたということは、これは日本の国益――国益にはいろいろな概念があるのかもしれませんが、国益が侵害されたという言い方でいいのではないかと私は思うのであります。直接的な損害を受けなくても、そのような損害で十分国益を侵害されたというべきだろうと思うし、それに対して、我々は主権国家の権利として、中国に対して強い抗議をしなければならないのではないかと思います。  外務大臣が銭其シン外相とお会いになったときに厳しくおっしゃっていただいたということは結構なことだと思いますが、私は、その根底にそのような基本的な考え方がなければならないのではないかと思いますし、この実験が行われる前にそのような考え方に基づいて強い抗議なり対応をすべきだったのではないかというふうに思うわけであります。  十九世紀の主権国家による国際社会という考え方から、第二次世界大戦を経過してもう二十一世紀に入ろうとしているときに、各主権国家が相互依存関係に立っている、またそれぞれ持っている武器が極めて容易に他国に脅威を与えるものになってきているという時代に、内政不干渉だとか公海上の活動の自由だとか、十九世紀の物差しをもって云々する時代はもう既に終わったと私は思っておるわけであります。  日本は外交に顔が見えない、こう言われるわけでありますけれども、私は、日本が平和国家として再出発をしたという国である以上、新しい平和概念といいますか、新しい主権概念といいますか、新しい主権国家同士の物差しというものをきちっと打ち出して、もうそういう十九世紀の古い物差しては国際社会を、国際関係を規律することはできませんよ、新しい時代には新しい物差しが要るんですという考え方に立った外交をやるべきだと思うわけであります。  それに立った上で、今回、具体的には中台問題についての日本の中国あるいは台湾に対する毅然たる行動が必要だったのではないかと思うわけでありますが、大臣、いかがでございますか。
  102. 池田行彦

    池田国務大臣 十九世紀の国際法秩序でございませんで、現に世界にプリベールしております国際法秩序というものは我々は大切にしていかなくてはいけない、こう思っております。しかしながら、形式的に国際法に抵触しないからそれでいいんだというのでは、これはまたまかり通らないというのも事実でございます。その点はよく考えなくてはいけないと思います。  そういった観点から、銭其シン外相に対しましても私はこういうことを申しました。台湾の問題も、かなり長い間にわたって両当事者の比較的自重した対応のために安定した動きがあった、安定的に推移してきた、そのことは我が国も含めてアジア太平洋全体の状況にいい影響、効果をもたらしてきたと思う、それを裏返して言うならば、幾ら内政問題と言われても、あの地域における緊張のかかわりというものに対しては、我が国も、そして他の諸国、周辺諸国も深い関心を持たざるを得ないんだ、そういうことを申し上げて冷静な対応を求めた次第でございます。  そしてまた、どうしても中国と我が国は、アジア太平洋地域はもとよりのこと、世界において大きな役割をこれからも果たしていかなくてはいけない国でございます。また、両国間の友好関係も非常に我が国の国益の観点からも大切でございます。そういった良好な関係を将来にわたって維持するためにも、率直に議論をしながらも、そういった適切な対応を我が国もするし、中国にもしてもらいたい、こういうふうに考えている次第でございます。  なお、もう今や国民国家の時代ではないというお話もございましたけれども、確かに、今経済なんかにつきましても、トランスナショナルだとかボーダーレス、グローバルとか、いろいろなとらえ方がされております。まして環境その他の問題については、文字どおり国境なんというものは意味をなさないわけでございます。そういったいろいろな人類の諸活動が国境を越える、そしてグローバルな姿になっているということも踏まえながら、しかし、政治、外交の世界では厳然として主権国家があるという構図の中で適切な外交政策を展開してまいりたい、このように考えております。
  103. 平田米男

    ○平田委員 最後に、もう時間が余りありませんが、北朝鮮問題。  日中外相会談が五時間に及んだということでございますが、そのうち二時間は食事だったということで、実質な話し合いは三時間だったというように伺っておりますが、どうも北朝鮮問題の議論が余りなかったように伺っております。  北朝鮮の情勢につきましては、どうもアメリカの認識と我が国の認識が違うのではないかというふうに思います。アメリカのいろいろな方々が北朝鮮の体制の見通しにつきまして、崩壊するかどうかということよりも、いつ崩壊するか、こういう問題意識なんだ、このようにあちこちで述べておいでになります。外務省にお伺いすると、どうもそこが違っているようでございまして、まだ金書記の体制は当分このまま推移する、このような前提で物事を考えておいでになる。伺えば、日韓米の間には情報交換はきちっとやっております、こういうことなのですけれども、情報交換をやりながら表に出てくる認識というのはなぜこんなふうに違うのだろうか。  しかも、韓国も、在韓米軍もありますので、アメリカも韓国も相当な情報量はあるかと思いますが、中国も国境を接した国でありますのでもっと別の意味での情報があるかと思いますが、中国外務大臣との情報交換といいますか、北朝鮮の問題が余り触れられなかったというのは、私は、外務省の北朝鮮問題に対する認識が相当程度緩いのではないか、こんな危惧を抱いておるわけでございます。  それでお伺いをいたしますが、三月二十九日の北朝鮮の談話をどのように理解をしておいでになるのか。談話を見る限り、すぐにでも戦争が始まるような厳しいものでございましたが、それはどうなのでしょうか。  また、今食糧不足と言われておりまして、国連にも再度支援を求めているやに聞いておりますが、その影響、また日本の対応についてどう考えるか。  とりわけ、体制が崩壊いたしますと難民の問題が起きてくる。難民も二種類あって、武器を持った難民が出てくるのではないか。というのは、あそこは軍事国家でございますので、多くの人々が武器に接する機会が多いのではないかと考えますと、武器を持ったままの難民が日本海を渡って直接日本の国内に入ってくるということも考えておかなければならないのではないかと思いますが、その辺の対応につきまして、合わせて三点でございますが、お答えをいただけますでしょうか。
  104. 池田行彦

    池田国務大臣 まず、先般の日中外相会談におきまして、北朝鮮も含めました朝鮮半島の情勢についての意見の交換もいたしました。それで、中国は外交関係を持ち、いわば一番北朝鮮と関係が深い国ではないかというふうに我々を含めて見ておるわけでございますけれども、中国側に言わせますと、そうはいっても我々もなかなかわからないところが多いんだよ、こんなことでございまして、特にこれまでいろいろちょうだいしている情報と格別変わった、あっというような新しい情報がちょうだいできたわけではございません。  さて、それでアメリカと我が国あるいは韓国と基本的な情報はそんなに変わらないはずなのに随分外へ出てくる発言が違うではないかという御指摘がございましたけれども、これは米国もいろいろな立場の人があると思います。政府立場の人、あるいは政府の中でも国防にかかわっておられる方、しかも韓国に駐留される軍の責任者の方とか、あるいま朝鮮半島情勢こ詳しい方といっても、現在は政府立場でなくて比較的自由な御発言のできる方、いろいろな方がおいでになりますから、バラエティーに富んでおりますけれども、基本的な認識は我々とそんなに変わっていると思いません。  確かに、食糧問題エネルギー問題、非常に問題でもあるし、社会も非常に苦しい状態にあるけれども、それではすぐにでも本当に体制が崩壊して大変なことになるかといいますと、そこまで差し迫った感じを持っているのではない、こう思っております。  いずれにいたしましても、あそこは本当にこんな状態にないですね。いわばクラッシュ状態になりますと、これはいろいろな影響が我が国も含めて国際社会に出てまいりますから、ソフトランディングというのはなかなか難しいかもしれませんけれども、ともかく何とかうまく国際社会の中ヘランディングさせていくというのが、これは各国共通の関心事だ、こう思うのでございます。我々としましては、そういうことでいろいろ対応してまいりたいと思います。  具体的に米と難民のお話がございました。  米の問題でございますけれども、御承知のとおり、我が国は昨年、バイでも五十万トン米の援助をいたしました。また、国連機関を通じましても五十万ドルの支援をいたしました。しかし、これは昨年の異常気象に基づく飢餓という非常に特殊な事情にかんがみまして、人道的見地から特殊、例外的なものとして実行したものでございます。また、その後何らの要請も受けておりませんので、全く考えておりません、現在の段階で。また、国際機関に対して、一たん北朝鮮は断ったのを、また支援を要請してきたという話がございます。我々も承知しておりますけれども、それを踏まえて、国際機関から今具体的な話が我が方には参っておるわけではございませんので、そういった観点でも、現在のところ考えていないということでございます。  それから最後に、難民が出たらどういうふうに対応するかというお話でございますが、これは、いろいろな情勢はございますけれども、そういった仮定を置いて、そうしていわば予断を持って、今私日本の外交を預かる立場でいろいろお答え申し上げるのはやはり適切ではないのではないかと存じますので、お許しいただきたいと思います。
  105. 平田米男

    ○平田委員 どうもありがとうございました。
  106. 吹田愰

    吹田委員長 次に、大出俊君。
  107. 大出俊

    ○大出委員 沖縄の問題が非常に難しいところに来ているわけでございますが、その前に外務大臣に、これは昨年末、池田さんと私でさんざん新防衛大綱をめぐった議論、田口さんもいますけれども、議論したところにかかわるのでありますけれども、きょうの新聞に出ております日米安保文書。クリントンさんお見えになる、何かまとめなければならない。今まで幾つか、いや、実はそれはクリントンさんが来たときに出すべき共同発表の文書があって、そこに書いてあるのですという話まであのときに出てきたわけです。  私どもは、中国脅威論というのは、池田さんは御記憶があると思うのですけれども、これだけは削除してくれと。いろいろあろう、あろうけれども、隣の国でこういう文書にこういうものをまとめたのではまずいということを、田口君も大分強い声を出しましたが、覚えておられると思うのでありますが、削除してもらおう。  これは実はそういう経緯もありまして、銭其シンさんが来られて、いろいろやりとりをされて、新聞を見ると、今まで七割ぐらい中国に好意を持った国民がいたのだけれども五割ぐらいに減っているなんて、そういうやりとりだったかどうか知りませんが、私はそれは賛成なのですよ。そのぐらいはっきり言っていただいていい。  だがしかし、この安保文書という中で、ここに書いてあるのを読むと、どうも中国の存在とか台湾海峡の緊張にどういうふうに触れるかというところが一つの焦点になっている。これは新聞ですけれども、そうでなければそれなりにお答えいただければいいのだけれども、共同発表のほかに安保文書というものと総括文書というものに分けて、そういう構成で、特に今の問題を一つ大きく新聞が取り上げています。そこのところは一体どういうふうに我々は理解すればいいのか。  結局、クリントンさんが来られて、まとめるについては、我が方は連立てございますから、私どもでないところで最後は詰めなければいかぬだろうと私は思っておりますけれども、あれだけ大きく載っている新聞でございますから、とりあえず聞いておきたい、こう思います。
  108. 池田行彦

    池田国務大臣 クリントン大統領がおいでになりましたときにどういうふうな文書の内容になるか、これについては文字どおり今作業している最中でございまして、具体的な点はお許しいただきたいと思うのでございますが、日米関係全般、安全保障も含めまして、そういった広い関係につきまして、二十一世紀も踏まえながらどういうふうに協力していくか、そういう観点からの表現になろうかとは思っております。  したがいまして、具体的な内容について、今ちょっとまだ固まっていないし、申し上げる段階ではないわけでございますけれども、少なくとも今先生指摘のございました中国脅威論、あるいは特定の国を脅威であるというような位置づけというのは、これまでも我が国としてしてこなかったところでございますし、そういうことは考えておりません。  それで、現に先般、銭其シン副首相兼外務大臣が見えましたときに、日米安全保障条約が日中の友好関係に好ましからざる影響を与えるようなことでは困るのだがという話がございましたので、私は、いや、そんなことはございません、決してこれは矛盾するものではございませんというふうに申し上げましたし、総理と銭其シンさんとのお話の中でもそういうことがあったかと存ずる次第でございます。
  109. 大出俊

    ○大出委員 もう一つ、今進行の過程であることは事実だが、それなりに形があるから書くので、いろいろ裏の方も調べてみましたが、そう進んでいる。最終的にそうなるかどうかというのはまだ手前だからわからぬけれども。そこで、私はそうあっては困る、そういう形で出てきては困りますからね。出てくる前に言っておかぬとまずいので。  そこで、ガイドラインの問題。ACSAという表現は私は嫌いでね、相互兵たん支援法なり支援協定というのが本来の姿ですからね。これは、一番最後に山花さんもACSA問題をと考えておられるようだから深くは触れません、後で一言申し上げたいのですが、これは議論することはいいのですがね。それからガイドライン、有事立法を議論するのはいいのだけれども、今度どうも安保文書等々の中に出てくるように書いてあるけれども、本来憲法があるわけですから、憲法の枠内でごもっともということであれば我々は何も反対するわけじゃない。そこのところはきちっと踏まえておいてくれぬと。いろいろな議論が出るけれども、はみ出すことは何とか避けなければと思っておりますので、そこのところはぜひひとつ御注意、御配慮をいただきたい。一言。
  110. 池田行彦

    池田国務大臣 我々が憲法の範囲内ですべての行動をしていくのは当然の話でございまして、日米安保条約運用もそうでございます。今回の大統領訪日時のいろいろなお話がございましても、それはすべて憲法の範囲内での話であろう、こう存じます。
  111. 大出俊

    ○大出委員 沖縄の問題ですが、これは長い経緯がございまして、おいおい途中で物を申し上げようとは思っておりますけれども、今度の楚辺の通信施設、通信基地、知花昌一さんの所有にかかわる土地をめぐる問題。四百四十名地主さんがおいでになりますけれども、知花さんの一件、これについて、無理な理由づけを幾らされても、それは最終的には通用しないと私は実は思っているのですよ、私は与党でございますけれども。  しかし、池田さんのお父様の時代に私は出てきまして、佐藤さんにおかわりになる、もうこのところで沖縄返還が議題こ上っていたわけですよ。臼井さんのお父さんと一緒に内閣委員会で私は沖縄を、心配して議論したこともある。考えてみると、どうも私が長くい過ぎた感じがするけれども。  核抜き本土並みと言われたのは、参議院で最初にしゃべりましたけれども総理の部屋に押しかけて、佐藤さんの部屋に押しかけて、我々はひざ詰めで詰めたのですからね。当時のお父様たちみんなの責任なのですよ、本土並みにしなければならないというのは。どこかに肖像画があるだろうと思うのですが、これはみんな責任者ですよ。残っておる私が言わなければ余り言い手がないから言うのだけれども。そういう意味で言うと、無理なことをやってみても、法治国家なのですから、通らぬものは通らぬということになると私は思っております。  そこで、まず、安全保障条約が出てきます。日本という国は、安保条約があるのだからアメリカに対して大きな義務を負っている。安保条約というのは、日本アメリカの国家間を規定しています。地位協定三条が出てきますが、地位協定とは、日本という国と米軍、この関係を規定しているのです。基地提供する、提供する中に三条の管理権があるということなのです。これは、日本という国と安保条約六条に基づいて入ってこられるであろう米軍との間を規定している。  それでは、地主さんとの関係というのは、地主米軍の接点はない。地主日本国という国、国と地主の関係は、ここに特措法と言われるものがある。長い表現になりますけれども日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う土地等の使用等に関する特別措置法。長いのだけれども、ここに書いてあるとおりなのですよ。この法律の名前のとおりなのです。この十四条で、みなし規定がずっとございまして、ここで「起業者」は防衛施設庁と読みかえるところから始まりまして、そして十四条で土地収用法の適用という形にしているわけですね。  そこで問題は、それでは土地収用法の方でどうなっているかといえば、これは随分はっきりしている。この土地収用法で皆さんは沖縄収用委員会に六カ月の緊急使用手続をおとりになる。これは収用法上明確になっている六カ月ですから。そういうのをおとりになった。しかし、手続的に決まらない。したがって、一日をもって、二十年前に知花さんのお父さんが結んだ賃貸契約が切れた。そうすると、国と地主、この関係が切れてしまった。賃貸契約期限満了に基づいて切れた。ない。手続はしているけれども進んでいない、こういう状況です。  そうすると、国と米軍の関係で地位協定三条を持ち出すけれども、国と土地を持っている方との間の権原は切れてしまって、ない。ないにもかかわらず、管理権は、一体何をもって管理権というのか。成り立たない。安保条約地位協定、そして国と地主の関係の特措法、あるいは賃貸契約に基づく権利義務の関係、これが切れてしまっている。これは明確なのです。この点は、言いわけめいたことをおっしゃる官房長官の話もあり、いろいろあるので、一遍答えておいてください。
  112. 臼井日出男

    臼井国務大臣 お説のとおり、権原は四月一日で切れているわけでございますが、一方、私どもアメリカに対して、日米安保条約及び地位協定の、先ほどお話しいただきました国と国との約束の中でもって基地を安定的に供給、お貸しをする義務があるわけでございまして、この国と国との約束は、一方で国と土地所有者の間で紛争状態になったとはいえ、これは決して提供しなくなるということではないわけでございまして、私どもは引き続きこれは継続して提供する義務がある、またそのように努めたい、このように考えておる次第であります。
  113. 大出俊

    ○大出委員 それではだめなのですね、法治国家ですから法律的にきちんとしてくれぬと。  そこで、憲法二十九条を政府は持ち出しておられる。憲法二十九条というのはどういうことかというと、財産権。「財産権は、これを侵してはならない。」これは二十九条の一項。第三項「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。」「正当な補償の下に、」となっている。「正当な補償」は、今日はない。  なぜないかといいますと、一日という時点で、二十年前の知花さんのお父さんが国と結んだ賃貸契約が切れた。これは厳然たる法律行為の事実です。切れてしまった。そうすると、これは賃貸しですから、もらっている借料、これは以前の契約に基づく賃料です。これはいみじくも土地収用委員会の法律的な権限に基づく。土地収用委員会の権限、これは私が今までさんざん議論したところですけれども、この土地収用法に基づいて収用委員会地主を呼んで意見を述べてもらって裁決。「裁決」の項目の中に補償という項目がちゃんと入っている。  つまり、土地提供するのだけれども、一体どれどれの借料にするかということについて意見を述べ合って、最終的に「土地又は土地に関する所有権以外の権利に対する損失の補償」、つまり、幾ら補償するか、幾ら賃料を払うかということを収用委員会は権利取得裁決という形で裁決をしなければ決まらない。前の借料ではだめなのですよ、契約がなくなってしまったのだから。収用委員会に申請したのだから、収用委員会が裁決をして、地主の意見も聞いて、これこれですという金額が決まる、そこで初めて正当な補償ができるわけです。今は正当な補償はないのです。  正当な補償がないということになると、憲法二十九条三項を持ち出すけれども、「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。」正当な補償が前提なのですよ。正当な補償とは何か。申請をしたのだから、収用委員会の裁決、これしかない。その正当な補償が決まって幾ら幾らとなったら、それで受け取らなければ一日幾らと持っていくのはいいけれども、前の借料のままで日割りにして持っていって、こんにちは、六百何十円持ってきました、そんなことで正当な補償にはならない。それでは意味がないのです。  そこでもう一つ。そういうことになると、この収用法に明確になっている。いいですか。第百五条で、「起業者」は読みかえ規定で施設庁になっている、「起業者は、土地使用する場合において、その期間が満了したとき、」期間が満了したのです。満了して一日から法律的に空白になったのです。無権利状況になってしまった。「その期間が満了したとき、」「遅滞なく、その土地土地所有者又はその承継人に返還しなければならない。」遅滞なく土地を返さなければいけない、満了してしまったのだから。  そこで、皆さんがやっているのは何かというと、この法律条文は「遅滞なく」と書いてあるから、「直ちに」ではないということで、直ちに返さなくても違法とは言えないのではないかという言い方で逃げるわけですよ。  それでは、一体「遅滞なく」というのは「直ちに」とどう違うのですか。
  114. 小澤毅

    小澤政府委員 お答え申し上げます。  二点ほど御質問があったかと思います。  まず一点目は、知花さんに現在日割りの計算額で払っておりますいわゆる借料相当額についての御質問かと思います。  この点につきましては、何回か国会等でも御答弁申し上げておりますように、直ちに違法であるということには当たらないのではないかと考えておるという事情考えるに当たりまして、土地所有者に対して借料相当の全員を提供して土地所有者に損害を生じさせない措置を講ずることとしている。このような意味から、この借料相当額としての全員の支払いをしているというところでございます。  もう一点の、土地収用法の百五条をお引きになりまして、「起業者は、土地使用する場合において、その期間が満了したとき、」は遅滞なくその土地所有者に返還しなければならないというふうなことでございますけれども、この知花さんの土地の場合には、先生ただいまいろいろお述べになりましたように、既に二十年間の賃貸借契約は知花さんのお父さんでございます方と結んでおります。それが平成六年にいわゆる生前贈与という格好で変わったわけでございますので、現在では賃貸借契約で知花さんとの間は結ばれておるというところでございます。
  115. 大出俊

    ○大出委員 だから、それは答えにならないと今申し上げているんです。あなたのは答弁になっていない。  なぜかというと、前の借料相当額を持っていっていると言うが、借料がなくなっちゃったんだ、契約が切れちゃったんだからないんだ、そんな借料は。前の借料を日割りにしただけじゃないですか。そうでしょう、だれが考えたって。今法律上はないんだ、切れちゃったんだから。しかも、これは国との間で賃貸契約していたんだから。期限が切れちゃった。一日は日切れ。契約はない。  そうすると、前の借料相当額を持っていっているが、そうじゃないんだ。土地収用委員会に申請したんでしょう。土地収用法で明確になっている。土地収用委員会は裁決をしなければならぬ。裁決の中心ですよ、幾らにするかという金額は。これから決めるんですよ。だから、今相当額なんかないんですよ。これから収用委員会が決めて、そうすると幾ら幾らというのが出てくるわけです。ちゃんとここに書いてある。「権利取得裁決においては、次に掲げる事項について裁決しなければならない。」労働組合が団体交渉をやるときに賃金というのが最たる団交事項で、これと同じですよ。裁決するときには、お金というものを決めなきゃ裁決できないでしょう、収用委員会は。それが決まっていないのに、前の家賃、日割りで一日分持っていって、六百何十円持ってきました、そういうふざけた話はないじゃないですか。それはもう話にも何もならない。  それから、直ちに違法には当たらない。さっきから言っているように、法律は「遅滞なく」と書いてある。だから、私が聞いたのは、「遅滞なく」と「直ちに」はどう違うんだと聞いたんだ。「遅滞なく」と書いてあるが、「直ちに」と言ったら「遅滞なく」より「直ちに」の方がすぐだろう、だから「直ちに」と言っておけば、「遅滞なく」と法律は書いてあるから、直ちに違法ということには当たらないだろうと。法制局長官だって確答できないんです。当たり前ですよ、法治国家なんだから。  だから、最近の新聞の社説、だんだんみんなはっきりしてきている。次々に出てくるのを見ますと「阻止すれば法治国家でなくなる」、法治国家でなくなりますね、これは。禍根を残す基地不法占拠、国が不法占拠した。日々不法占拠、沖縄軍用地は強制使用に至る手続がおくれれば日々不法占拠が積み重なっていくと書いてある、社説ですよ。これはあるべき姿じゃないと。  それで、この際申し上げておきますが、前の内閣、つまり、総理は村山でございましたが、見通しが甘かった、誤ったという官房長官や皆さんのお話があるんだけれども、これは皆さんよく考えていただきたい。  あの経過は、昨年の八月二十一日に国は沖縄県知事に代理署名を依頼しているんですよ。八月ですよ。そうしたら、九月四日に少女レイプ事件が起こっちゃったんですよ。八月二十一日に依頼したら、九月四日に起こっちゃった。沖縄県じゅうが沸いちゃった。八万人も集まったんだから。みんな政党政派も何もないんだ。そうでしょう。つまり、代理署名を県知事にというのは、去年の八月二十一日なんですよ。レイプ事件が起こったのは、その翌月の九月四日なんですよ。わあっとなった中で知事は署名できないじゃないですか、あんな雰囲気の中で。  村山の方だって、村山を中心にして我々が立てた知事なんだ、大田さんという人は。大田さんの方もそういう意識ですよ。私が昔沖縄特別委員会の筆頭理事をやっているころは、琉大の先生だったんだから、大田さんという人は。先生の給料をどうしてくれるとさんざん言われたんだから、僕は。琉球大学の医者の給料というのは日本の医者の二十倍近いんだからね、琉球政府だから。往年したんだ。だから、村山の方だって知事の方だって、それだけにお互いに遠慮はあるんですよ。我々の方は秩序維持をしてくれよと言っているわけだ、妙なことにせぬでくれよと。  怒るのはわかるけれども、八月二十一日に代理署名をやってくれといって手続をとったら、九月四日に事件が起こっちゃったんだから。署名しようがないんだから。そういう状況が起こっていろのがわかっているから、あくまでも話し合いでということで、あの八万人集会が横にぶれないようにお願いをした。その結果、秩序維持をされて、あの集会は整然と終わったということを皆さんは評価しておられるでしょう。あのときに、どこかの長官みたいに問答無用で、話し合い、そんなものはできない、知事を訴えるとやってごらんなさいよ。沸き上がっちゃいますよ、これは。そんなことはできないでしょう。  だから、見通しを誤った云々じゃないんですよ。あのときはああいう雰囲気だった。何とかそれをお互いにおさめたかった。だから、知事は安保廃棄だとか安保反対とか全然言ってないじゃないですか。安保条約を認めているじゃないですか、知事は明確に。その上で、基地の整理統合・縮小をしてくれと言っているんじゃないですか。そうでしょう。だから、そこのところはぜひ考えた上でこの問題の対処をお互いに考えなければいけない、こういうふうに私は思っているのです。  そこで、収用委員会はどうなるか。ここにありますが、収用委員の皆さん七人、大学教授が三人に、弁護士の方が四人。山花さんがおられるけれども、山花さんは弁護士だからみんな知った人ですよ。これは皆さんが考えているように、そんなに簡単にいきませんよ、ああいう雰囲気なんだから。しかも、大田知事が任命したんだから、この七人の方々は。そうでしょう。千葉県の収用委員会みたいに、収用委員長以下みんなやめちゃって、八年間そのままですよ。ああ、浜田さんここにいたな、ごめんなさいよ。そういうところもあるんだから、気をつけないと。そうでしょう。だから、やはり強権発動じゃなくて、知花という人が前があるとか――諸冨さんがいるところで、目の前だからちょっと言いにくいけれども。  しかし、私は、佐藤総理の時代の沖縄特別委員会の筆頭理事ですよ。当時は五五年体制で自社なんだから。私は野党の筆頭理事ですよ。自民党さんは筆頭理事が小沢辰男さんですよ。そういう状況ですよ。  それで問題は、沖縄に、私は三十回まで覚えているんだけれども、そこから先は忘れたけれども、土曜日は毎週みんな沖縄ですよ。ずっとピケをやっていたわけだから。核抜き本土並みで一緒にやっていたんだから。ところが、あっちからもこっちからも遺骨が出てくるわけですよ。知花さんのおじいちゃんは、米軍が上陸してきてこの土地で弾に撃たれて死んだんだから。鎮魂の場所ですよ。象のおりの真ん中の鉄塔三本立っている下の知花さんの土地七十二坪というのは、そこでおじいちゃんが死んでいるんだから。  私にとっても、私は出征兵士ですけれども、十八年に召集令状で高崎連隊へ入りまして、豊橋第一陸軍予備士官学校を卒業しましたが、卒業と同時にほとんど全部沖縄本島です。私は一中隊の一番で、教官で残った。三中隊の一番は伊藤淳二君ですよ。鐘紡の会長を長くやられて日航の社長になったでしょう。彼と僕は同期ですよ。沖縄の大拓といいまして、本部ですが、あそこにリゾート地域をつくろうというので地元資本も三十何社が行ってやったらバブルでつぶれちゃって、今一生懸命再建していますよ。その御大将が工藤勉君といって、私の士官学校の同期ですよ。これは沖縄にいて何で助かったかというと、二人だけ沖縄から宮古島に分遣されて、分遣されたら帰れないで、米軍沖縄本島だけしか攻めなかったから生きている。だから、私にしたって、行った連中はみんな死んでしまったのだから特殊な感情がありますよ。日の丸ということに対する憎しみというのは、返還の最初から山ほどあるわけです。  米軍は認めるが日本の自衛隊は認めぬ、南西混成師団を沖縄につくったら総反対ですよ。しょうがないから内閣委員会から、私、自民党さんは伊能繁次郎さん、臼井さん、民社党さんは受田新吉さん以下何人かの方、公明党さんも鈴切さん以下の方々、みんなで行って、教職員会が中心で、教職員会を代表して屋良朝苗さんが琉球政府主席で、返ってきた県の県知事になった。喜屋武真栄さんがこれも教職員会で参議院に当選したわけだから。そうでしょう。そういう状況ですからね、沖縄というのは。  教職員会が自衛隊の皆さんの子供が学校へ行くのを認めないと言うのだから、肯認できないのですから。だから、みんなで沖縄に行って、核抜き本土並みで懸命にやるのだ、沖縄振興法もつくるのだ、金も出すのだと。だから、我々は、本土へ来て空になって帰る船は泥を積んで行けと言っているぐらいだ。たばこをつくったって、サンゴ礁で二十五センチしか根が伸びないのだから。土が足らないのだから。そこまで我々は考えているのだからということで事なきを得ているわけですよね、騒ぎになってしまいますから。  そういう苦労をしているので、米軍は認めるが、手りゅう弾を抱かせられて、健児之塔だとかひめゆりの塔、南部戦跡でわかるでしょう、自殺させられたのだから。だから、沖縄は日の丸というものに対する大変な憎しみがある。知花君の日の丸事件というのは、皆さんと感覚が違うのです。そこがおわかりにならぬと、反戦地主だからというわけにいかないのですよ。  だから、無理をしたって、法治国家なのだからしょせん無理は通らぬので、六百何十円持っていくだけの努力をなさるのだったら、しかるべき人が行って、知花さんに、この日本という国は安保条約があって逃げられない、だからひとつそこのところはわかってもらいたいという話をした方が早いのです。  そうしないと、やはり鎮魂の地だったらば、おじいさんが死んでいるので、今のお父さん、七十二だというのだけれども、七十二、三になると、みんなだめかなという気があるのだ。私は三月十日で満七十四を超えたんだから。そうなるんですよ、みんな。そういうものなのですよ。だから、おやじが生きているうちに何とかこの土地に行って三線を弾いて家族が集まってという希望を述べているでしょう。  聞いてみると、百人ばかりついていくことについて、この反戦地主会の皆さんというのは、ほかの人は入ってないか、間違いないかというところまで調べて出かけているぐらいですよ。それは、とんでもないことにしてはまずいと思っているからなのです。  だから、そこのところは無理を通すという形でなくて、諸冨さんにじゃなくて、ウチナーンチュ、ヤマトンチュというのはあるのだから、ぜひウチナーンチュをわかってあげて、そしてこの問題の解決のために大きな筋で進めていってもらわぬと困るという気がするのです。  入れてなぜ悪いかと私は思っているのであんなべらぼうなフェンスを張って、あれは幾らかかっているのですか。どこが金を出すのですか。千五百人もお巡りさんを呼んできて、これは国民の税金じゃないのですか。そうでしょう。  そこで、承っておきたいのは、私権をそこまで制限しようというなら、あの象のおりと言われるものは、何をやっているのですか。どういう基地なのですか。しかも、どういう基地なのか、芝生は年じゅう刈り込んであって、べらぼうな電力を使っていて、なかなかあれは普通では払えないですよ、あの施設というものは。そういう状況なんでしょう、あの建物はよく知っているけれども。  ところが、象のおりで傍受していることだけはわかっても、中で何をやって、どうやっているかということはわかってないんだ。防衛庁なり防衛施設庁なりは、あの象のおりというものはこういうものなんだということを詳細に調べて、聞いて、今まで聞いているのか聞いていないのかわからぬけれども、それだけの私権制限をするのだったら、これは納得いただけるように説明する責任がありますよ。これを一つ答えていただきたい。  そしてもう一つ、これは皆さんが出している表によると、日米間の合意ができていて、条件を満たす、つまり場所ができれば移転すると合意している。皆さんの表がありますが、そういうふうに書いてありますよ。だとすると、一体あれを移転させるのにどのぐらいの期間がかかって、どのぐらいの費用がかかるのか。こっち側が持つのだから。そこを三つ答えてください。
  116. 諸冨増夫

    ○諸冨政府委員 お答えいたします。  象のおりの機能の問題でございますが、これは先生今ちょっとお触れになりましたように、私ども受信設備であるということは承知しておるところでございますが、内容につきましては、米軍運用にかかわることでございますので、こういう席で答弁させていただくのは控えさせていただきたい、このように考えております。  なお、移設につきましては、これは読谷飛行場との三事案の一つになってございまして、読谷飛行場がこの楚辺通信所の電波緩衝地帯の役割を果たしておる関係がございまして、現在、読谷飛行場のパラシュート降下訓練場をほかへ移して、そちらの問題が片づいたら、ほかの用地を探しまして、この楚辺通信所の移設という点につきましては、米軍も私どもと合意をしておるところでございます。  金額等につきましては、まだ現段階では詳しく計算したという状況ではございません。  以上でございます。
  117. 大出俊

    ○大出委員 そういう答弁では困るのですね。どうも施設庁の皆さんというのは、もっとも、考えてみると無理もないのだけれども米軍がいなくなると施設庁は要らないんだ。だから、僕は長いからあえて言うんだけれども、どうしても施設庁というのは引っ張られるんだ。だから、あえてここで聞こうという気にならないんだ、長い年月。そのうちに中堅の方々というのは、悪口を言う人は、おる的になってしまうと言うんだよ、でんとしていて。どうにも手がつかぬと言うわけだよ。これはちょっと言い過ぎだけれども、そう言う人がいる。私が言うのじゃないんだよ。だから、今のような答弁になってしまう。それでは困る。状況は変わっているのですよ。  少し説明をさせていただきますが、象のおりがなくても傍受することはできる、アメリカは、米軍は。実は、RC135Wという飛行機がある。これは通信傍受専門の飛行機です。固定基地よりも近くへ行って傍受できるのだから、この方が確かなんだ。夜中に出ていって昼に帰ってくる、この飛行機は。十時間飛ぶのだから。アメリカに六機あるのですよ。  それからもう一つ、RC135Sというのがある。Sというのは、これは別名コブラボールというのですが、ちょうど北朝鮮がノドンミサイル等を撃ったときに、コブラボールが三沢に二機来ていた。今回の台湾海峡問題というのは、一機しか来ていない、RC135Sというのが。基隆の上を飛んだ四発目のミサイルは、あれはスカッド式だから大気圏に入って再突入しているのですけれどもね。防衛庁の皆さんに我々のグループの会合で公式に聞いたら、防衛庁には弾道を調査する方法は何もございません、全く無力です、アメリカに聞いたら。四発目は、M9ですから、五百キロですから、大気圏を抜けて大気に突入して飛んでいきますが、アメリカも把握し切れなかったということです。つまり、RC135Sでほとんどわかるのですよ。  それから、愛知の方がおいでになるかどうか知りませんが、原潜に対して通信をする施設が愛知にございます。ここもE6TACAMOというのですが、747の改造機なのですけれども、これは超長波のアンテナをばあっと引っ張っていくと、海の中へ二十メーター以上入っていってしまう、通信が。今、そうなっているのですよ。ただし、近くへ行った方が傍受しやすいし、気が楽なんですね。しかも、このRC135Wというのは横向きのレーダーがついていまして、敵の部隊の位置までわかるのですよ。これははっきりしているのですよ。そういう状況なんだが、でんとそこにあってくれれば二十四時間そのままだから、近くへ行かないけれども、そういう意味で、あった方がいいということなのです。  上瀬谷の通信基地だって、私の足元だけれども、私の選挙区ですけれども、このTACAMOという飛行機ができてから、ほとんど機能がどんどんどんどん減っていってしまうのですね。P3Cへの連絡が横須賀からは入ってきますけれども、みんなそうなっていってしまうのですね。そこまで来ている。だから、今のようなことじゃなくて、沖縄の皆さんに、私権の制限までするのならば、こういうことなのだということが説明でき、納得を求められるように皆さんが努力すべきである。  もう一遍答えてください。大臣がお答えいただければありがたいのだが。
  118. 秋山昌廣

    ○秋山(昌)政府委員 ただいま大出先生の方からRC135等の機能についての御説明がありました。率直に言って、私、専門的知識を持ち合わせているわけではございませんが、今の御質問の中にあったような機能があるとしても、場所を特定してそこに出ていって情報収集しなければならないという機能であろうかと思います。象のおりと言われる地上に固定された受信施設につきましては、またそれと違った機能、場所を特定しないで情報を受信するということでございますので、このRCによってそれが代替されるというものではないと私は思います。  それから、楚辺通信所につきましてのある意味での情報公開ということになろうかと思いますが、二重の意味でなかなか難しい問題があるという点について御説明させていただきたいと思います。  その一つは、今施設庁長官から説明がありましたように、米軍施設であり、米軍のオペレーションに関連するということにつきまして、これはなかなか制約があるという点でございます。もう一点は、これは自衛隊の場合も同じでございますけれども、自衛組織、自衛力といいましょうか、自衛隊の一つの大きな機能として情報収集というのがございます。情報収集につきましては、情報収集能力とかあるいは何を情報収集しているかということについて、これを公開いたしますと、それ自体が何ら意味のない活動になるという点でございます。そういう意味におきまして、極力我々も説明をする努力をいたすわけでございますけれども、この点について二重の意味での難しい要素があるという点については御理解いただきたいと思います。
  119. 大出俊

    ○大出委員 どうですかね。ここで、きのうからころころ変わっては困るのだが、きのうのテレビ、夕刊、それとけさの朝刊。私、急にきのう連絡をいただいたものだから全部出てはおられませんでしたけれども、きょうの質疑に対する皆さんのお答えを間接的に聞いてみると、どうも昨晩は、お金を持っていった人が、何人ぐらいどうすればいいのだとかと聞いたというのですな。ぱっとそれが表に出た。それで、梶山官房長官なんかも非常に好意的に物を言っているように見える。ある社の方が政府サイドの方にぽんと念を押して聞いたら、含みを持っているという意味のことを言ったと。ところが、ぽんと変わると、これは防衛庁の責任だ、防衛庁がかたいのだという話がやたら出てくるわけですよ。かたいならかたいで、諸冨さん、何でかたいのか、そこのところを。  私がさっき言っているように、七十二を超した、私よりまだ若いけれども、人間だからいつどうなるかわからないから、おじいちゃんがそこで死んだのだから、何とか一遍そこに行って、二十年賃貸契約をおとなしく結んできたのだから、せめてこの際家族だけで行って、おじいちゃんを連れていって、気が休まるからという話までしているわけでしょう。だから、人間的にやはりそこが、不祥事が起こる云々といったって、方法は幾らでもある。大変な大集会の中でいろいろなことをやってきた私にすれば、そんなことぐらい防衛庁でできなければ、施設庁でできなければ、施設庁は要らないのです。どうですか、そこのところは。
  120. 諸冨増夫

    ○諸冨政府委員 お答えいたします。  所有者立ち入りの問題でございますが、私どもそうかたくなに考えておるわけではございませんで、米軍と私どもが現在相談してあそこの立ち入り拒否というのを決めておる理由といいますのは、やはり非常に不穏な状況があって、どうしても不測の事態を発生するおそれが非常に強いというふうに私ども判断いたしまして、お断りしておる状況でございます。したがいまして、そういう状況が払拭されて、米軍運用上全く支障がないというような事態が確認された段階では、それはまた別途考えることになろうかと思います。  それで、あそこは、先生十分御承知だと思うのですが、象のおりと言われております芝生の部分には、あの芝生の下のところにメッシュ状にいろいろなアンテナ等の器材が埋められておりまして、そこに多数の人が入ってこられますと、まさに運用上極めて大きな支障を来す。また、七十坪の土地に多数の方が入られますと、そこで三線を弾きたいというようなお話もいろいろございますようですが、そういう声とか音というのがどういう影響があるか、これまた米軍の方からの意向というものを十分確認した上で入れることになると思いますので、十分そういう条件が満たされた暁には、私ども米軍とまた再度協議いたしまして、警備上の問題もないということであれば、これはその時点考えさせていただくということになろうかと思います。
  121. 大出俊

    ○大出委員 「遅滞なく」と書いてある、さっきから申し上げたように。「遅滞なく」というのは、おくれてはいけないというのですよ。契約が切れたのだから、これは遅滞なく返さなければいけないのです、法律だから。直ちに法律違反にはならないだろう、「直ちに」というのは「遅滞なく」よりもっと直ちにだから。こういう意味なんだよ。だけれども、そんなこといったって、一日、二日、三日となってくると、嫌でも「遅滞なく」になってしまうのだよ。そうでしょう。切れた、直ちにということでなくても違法じゃないだろうと言う。なぜなら、「遅滞なく」と書いてあるから。それでは、「遅滞なく」というのは三日たっても四日たってもいいということになるのか。そうならないのだ、これは。  私は施設庁に電話をかけて皆さんに聞いてみたのです。緊急使用というのは半年だから、これしかないのだから、半年間決まらなかったらどうすると言ったら、お手上げたと言う。そうでしょう。ほかに何にも理由がないのだから。  さっき僕は、浜田さんがいて非常に恐縮だったけれども、例えばの話として千葉の収用委員会の話をしたけれども、そういう例もあるのだから。しかも、この軍事基地という問題は一件しか扱っていないのだから、あの収用委員会は。さっき言ったように、弁護士四人に学者三人でしょう。みんなそれなりに一家言を持っているのだから。だから、一つ間違うと五月ぐらいまでいってしまうのじゃないかとか、いろいろな意見が出てくるのですよ。それだから、そのときになってあわ食ったってしょうがないのだから。やはり今から話がまとまるように考えて進めていってくれなければ困ると私は言っているのですよ。  それは、何も下のアンテナが踏みつぶされるほどたくさん人を入れろと言っているのじゃないのだから。本人だって親族に限って物を言っているわけだから。だから、そこのところは、一遍何人ぐらいお入りになるのですかとかなんとかと皆さんのところの那覇の施設局の人間が行って聞いておいて、翌日そんなこと言った覚えがない、言ったのに言った覚えがないとかなんとかと言えば怒るのは当たり前じゃないですか。そんな、感情を逆なで、累積するようなことを次々にやったのじゃ、せっかくまとめる気のある人間だってまとまらぬじゃないですか。  だから、そこのところは一遍両大臣に、閣内においでになるのだから、私もささやかな経験があるので、閣議の後の閣僚懇談会だってあるのだから。梶山さんの言い方は非常に地元には一つのニュアンスとして受けているのですよ。官房長官がやってくれるかなという気があるのですよ、地元の諸君に聞いてみると。だから、そこらもあるので、ひとつ皆さんの方で、何も事を起こそうと言っているのじゃないのですよ。しかも、諸君の方だって事が起こったらマイナスになるのは百も承知なんだから。そこも考えて、そんなあなた、幾ら軍隊だからといって、軍隊の端くれの長官だって、気をつけしたきり動かないなんということでなくたっていいじゃないですか、そこのところは。  だから、いやあ、そうかというので、やれるところはやって、しかし安保条約があるからと言うのならまだ、筋が通らないなとかなんとか思ったって、それなりにまた話ができるわけだけれども。何もかも門前払い、鼻をくくったような話じゃ前に進みやせぬじゃないですか。そこのところはお二人で考えてみていただけませんか。ちょっとお答えください。
  122. 臼井日出男

    臼井国務大臣 先ほど諸冨施設庁長官がお答えをいたしましたとおり、今回の立ち入りお断りは米側の御意向もございました。これは第一義でございますが、御承知のとおり、千人を超すような方々がお見えをいただいて、しかも、過激派も一部本土から乗り込んだということもございました。そういうことで非常に混乱をしそうな状況だったということもございます。  したがいまして、委員お話しのとおり、いかにしたら平穏な立ち入りができるかということにつきましては今後考えさせていただきたい、こういうふうに思っております。  それから、先ほど「遅滞なく」と「直ちに」という御比較の言葉がございましたが、私が理解するところは、「直ちに」という直ちには、時間が経過したら違法でなくなるという意味の直ちにではございませんで、即違法ではないんだ、こういう意味に私は理解をいたしますので……。
  123. 大出俊

    ○大出委員 池田さん、新聞報道によると、この点はアメリカも心配しておる面がたくさんあると思うのですよ。  それで、管理権を云々するのだったら、地位協定三条というのは、管理権アメリカなんです、米軍なんですよ。だから、米軍が出てこなければいかぬところです、本当に管理権というなら。かえってこれはマイナスだから、こっちの方が千五百人もおられるのだと思うのですよ、そこは。だから、これはアメリカ側と事を分けて話したら話のつかぬ筋合いじゃないので、そこはできるだけ事をスムーズに進めるために、先のこともあるので、一遍じっくりアメリカ側に話をする、外務省の皆さんもそういう立場に立っていただいて、防衛庁、施設庁を助けていただけるかと思うのですが、いかがですか、池田さん。
  124. 池田行彦

    池田国務大臣 先ほどから先生の御意見、また長い間の御経験を踏まえたお話をお伺いしておりまして、我々も本当にこの問題を考える場合に、法律論、条約論もございますけれども、そこのところはやはりお互い人間でございます。そこのところを、気持ちを一番大切にしながら所期の目的を達成するように考えてまいりたい、このように考える次第でございます。
  125. 大出俊

    ○大出委員 私どもも、これは何とか妙なことにしないようにという強い気持ちがございますので。実は、田口君と私で一日に沖縄に行くことにほぼしていた。しかし、状況によってどうも逆に象のおりのところに行ってしゃべらなければいかぬようなことになりかねない面もありまして、もう少し様子を見ようということにしているいきさつも実はございまして、だからぜひそこは皆さんの御努力をお願いしておきたい、こういうふうに思います。  時間もなくなりましたが、基地問題について実は少し突っ込んでとは思ったのですが、時間の関係がございましてそうもいきません。  そこで、ポイントを幾つかお願いしたいのだが、橋本龍太郎総理は、私同期でございますから、私が三十九歳で彼は二十六歳で、一緒に本会議の前列に座っていた仲ですからね。私の隣が渡辺美智雄さんで、その隣が中川一郎さんだったのですから。だから、若いときでございまして、私も三十九だから若かったわけですけれども、二十六歳でいらっしゃったから。それからのおつき合いなのでお目にかかってお話しすることもできるけれども、御両所、所管の大臣でいらっしゃいますからぜひお願いしておきたいのは、普天間基地の問題なんです。  読み上げるのは避けますが、ここに沖縄から文書をもらっております。この文書には、普天間基地の全面返還は絶対に譲ることのできない全県民的なお願いなんだと書いてある。  そこで、二十三日の例の総理とクリントンさんの会談で、これだと、沖縄は前に進むかなとみんな思うのは無理もないのです。これは新聞記事ですが、どこの新聞とは言いませんが、首相、日米安保体制に対する国民の理解を得るためにも沖縄米軍基地の整理統合・縮小について米側のできる限りの協力をお願いしたい、橋本総理がクリントンさんにそう言った。それから、沖縄からは基地返還の要望がいろいろあって、例えば普天間飛行場が大変強い要請となっています、四月の大統領来日までにできるだけ成果が上がるようにしたい、こういうふうに総理がおっしゃった。そうしたら、大統領が、沖縄の問題が大変大きな問題であることはよく知っている、昨年非常に遺憾な事件が生じ、すべての米国人が深く遺憾に思っている、沖縄の人々の感情を考えながら我々として最善を尽くしたい、安全保障上のニーズも考えなければならないが、柔軟性を持って考えたいとお答えになったと新聞に記事が出ている。  ところが、その後いろいろなことがありましたけれども、これはだれだか外務大臣御存じだろうと思うのですが、会談に同席した政府筋によると、首相は会談では当初米軍基地縮小の必要性を強調しただけだった、しかし、大統領の方から具体的にどこを縮小返還してほしいのか言ってほしいと促したため、首相がそれならばと普天間に言及したのが真相だ、こういうわけですね。これに対して、大統領からいいシグナルを受けたという首相発言が加わったというわけですね。  そうなりますと、新聞に書いてあるから、これは事実を申し上げているわけですが、沖縄の皆さんの受け取り方からすると涙が出るほどなんですよ。橋本総理がそこまで御苦労いただいたか、そこまでの御心情で大統領とお会いになってくれたかと。私は沖縄に知った人が多いから、そういう受け取り方なんですよ。  それだけに、簡単に普天間と言ってみたって、アメリカ側がよくやる手法なんですが、ペンタゴンに行って私がチャールズ・フリーマン国防次官なんかと話していると、こうこうこういうわけでだめですというようなことを印刷したものをぱあっと出してくるわけですよ。そうすると、普天間の駐機場に七十機ばかりのヘリコプターが並ぶと書いたものを向こうは出してきて、こういうふうに並べていくと、CH46というヘリは七メーターちょっとですよ、CH53という大型のヘリは、片っ方は二十五人乗り、こっちは五十五人乗りだから九メートル以上ありますよ、幅員はこうですよ。そうすると、これを並べていくと広く見えるけれどもという話になるのですよ。そうすると、こっちもそれなりの対応をして準備をして話し合わないと、これは向こうが出したままになってしまう。  一つだけ例を挙げて申し上げますと、新聞記事がここにありますけれども、岩国へと出たでしょう。なぜこれが出たかということを調べてみた。固定翼を岩国にというのですよ。そんなこと簡単にはできないですよ。岩国が千メートル沖に、騒音問題なんかを出して、百四十四億要求した予算、ことしから十年間始める、それがというのじゃないのですよ。軍事的に、物理的に。  なぜかというと、普天間にある固定翼というのは、KC130、給油機ですよ。これは十三機ぐらいいるのですよ。その十三機の中には、C、輸送にだけ使う分も中にまざっていますけれども、つまり両方使えるKC130が十三機いる。  ところが、米軍というのは不思議なことに、海軍、海兵隊というところの給油装置、給油機、これと空軍の空中給油機とは全然違う。空軍の空中給油機はKC135なんだ。KC130じゃない。KC130の方は四発発動機のあるプロペラなんだ。空軍のKC135は四発発動機のあるジェットなんだ。これは速力が全然違う。ヘリコプターに給油なんといったって追い越していってしまうのですよ。  だから、普天間になぜKC130を置いているかというと、普天間にあるヘリコプター、回転翼、回転翼というのは非常に飛距離が短いですから、その輸送機をそのために置いているんですよ。つまり、空中給油機の方は岩国に持ってきてしまって、ヘリコプターは沖縄に置いておく、そんなことをやった日には給油のしようがないじゃないですか。そんなことは初めから成り立たない。  なぜそんなことになったのかというと、私が調べたら、アメリカの次官補のキャンベルさんが言ったという。そうしたら、これに外務省は乗ったというんだ。それで、話がこうなったという新聞記事だ。私はそういう不用意なことは困る。  今度はもう大丈夫で、池田さんが外務大臣におなりになって、防衛に非常にお詳しい、長官もおやりになって、昨年末あれだけ詰めた議論もした間柄ですからね。だから、今度はいいけれども防衛庁も今度は統幕議長まで入れておられるのですから、だからやっとかみ合う話になっているのを知っていますので、ぜひそこのところは気を使っていただいて、さっきの総理のこの点、こちら側もやはりじっくり取り組めるように御相談をいただいて詰めていただかぬと。ペリーさんも来るのだし、非常にまずいと思って心配になりますので。どうですか、そこのところを目に見える形で。普天間ということなんですが、前に目に見える形でとおっしゃったのだから、両大臣、一言ずつお答えいただけませんか。
  126. 池田行彦

    池田国務大臣 大出先生でございますから、くどくど定型的な答弁は申し上げません。  おっしゃるとおり、何とか少しでも多く沖縄の県民の方々の御負担を軽減しなくてはいけないということで、これまでも御指摘のございましたように、本当に専門的な知識のある者も入れて日米共同作業で今真剣に作業を進めております。そうして、さらに、今SACOその他で十分にいきませんでしたら、ぺリー国防長官も大統領に先立ちお見えになるように伺っておりますので、その際に臼井防衛庁長官と私と会いまして、さらに詰めることがあれば全力を尽くしてまいりたいと存じます。  ただ、今の段階で具体的なお答えは、残念ながらお控えさせていただきたいと思う次第でございます。
  127. 臼井日出男

    臼井国務大臣 先生は大変お詳しくていらっしゃいまして、感心して聞かせていただきました。  そこで申し上げるわけでございますが、現状は、その体制からして、海兵隊がアメリカ軍の前方展開の中核であるということでございます。そういう意味で、私も知れば知るほどなかなか難しいという感じを受けておりまして、その気持ちと、それから先ほど総理とクリントン会談のお話がございました。善意で話した内容が流れかけたことによって沖縄の皆さん方が非常な期待感を持たれた、これも無理からぬことだと思っております。  したがいまして、私どもも、先ほど外務大臣お話しいただきましたとおり、本当にアメリカ側に対して一生懸命物を申してお願いをいたし、相談をいたしております。しかしながら、現状ではこの行方というのは極めて厳しいという環境は違いありません。先生のお話もいただきましたので、期間が短こうございますが、さらに一生懸命努力いたしたいと思います。
  128. 大出俊

    ○大出委員 残る時間、ちょっとほかの基地も触れたいのですけれども、我慢をいたしまして、心配がございますので、時間が残れば、少しいろいろなものがここにございますので、臼井長官の写真まで載っかっているものもございますが、千葉の一月十四日の、正月の演習のなどもございますけれども。それに絡むヘリなどの問題もあるのですが、ここで一つ聞かせていただきたいのは、TMD。私は一貫してシアターミサイルディフェンスと言ってまいりまして、Bを使わないできておりまして、防衛庁の皆さんもおわかりいただいていると思うので、口癖でございますから、防衛庁はBということのようでございますが、TMDでお許しいただきたいと思うのです。  実は、その前に一つ聞いておきたいことがあるのですが、衛星情報その他を四月一日からお受けになる。情報本部もおつくりになったし、解析もできるように大型になったし、第二の何とか本部、アメリカに類するようなことも言われるシステムができている。こういうことなのですが、これはいろいろな情報が入ってくるのだが、このことについて非常に危険だという見方もあるのですよ。  これは無料で一昨年の五月のペリー長官から始まっているわけですからね。皆わかっていますから細かいことは言いませんけれども。これは中立だといったって、四億何千万円も今度は調査費を組んでいるのですからね。そうすると、向こうは今度は何を情報でくれるかというと、TMDのパトリオットのシリーズ、パトリオットのPAC2、その後のエリントといっていたPAC3になるのでしょうけれども、プロトタイプができていますけれども、これはみんな資料をよこす。THAADの資料もよこす。  ついこの間、皆さんはアメリカのその担当の方とTHAADの問題について長い時間お話になっていたようでありますけれども、THAADを失敗して、その後でございますから余り気勢の上がらない話し合いだったのじゃないかと心配しているのですけれども。  今度は核ミサイルの諸元、ソビエトのも中国のも北朝鮮のも、ミサイルの諸元、全部やるというわけですよ。そんなにいっぱいもらって一体防衛庁はどうするつもりなんですか。これはどういうふうに使うのですか。
  129. 秋山昌廣

    ○秋山(昌)政府委員 現在、米側協力も得ましてBMDの研究をしているところでございます。研究するに当たりまして、実はこの研究もあと一年とか二年とかそういうような段階に入ってまいりまして、例えばいわゆるBMDのディフェンスシステム、それをどういうものを想定してみるのか、それで想定してみた後、実はそれが費用対効果という面で本当にフィージビリティーがあるのかどうか。その前提といたしまして、各センサーですとかあるいはそのウェポンですとか、そういった面でのいろいろな技術的な分析がいよいよ必要になってくる。  そういう面で、米国はその研究が非常に進んでいる、あるいはいろいろな情報を持っているということで、これは実は大変機密性の高い情報ということで、なかなか難航はいたしましたけれども米側から情報提供の便宜を受ける。そういう情報を踏まえた上で、最初に申し上げました、我が国にとってのBMDのシステム、そしてそのシステムが一体費用対効果という面でどうなんだろうかということを、特にこの七年度から八年度、八年度から九年度にかけて研究をしていきたい、そういう状況でございます。
  130. 大出俊

    ○大出委員 時間がなくなりましたから、一括してずっと申し上げますので、二つばかり答えていただきたいのです。  ここに写真が載っているのですが、これは「航空ファン」の一月号なんですが、ここにE4Bという飛行機、ドゥームズデーといいます。最後の審判、最終日という意味です。ドゥームズデー、これは日本のマスコミが撮ったのじゃない。去年の十一月にペリーさんがおいでになった。羽田に来たときこ、これにはペリーさんもいますが、民間の方が撮ったんだ、ファンが。恐ろしいもので、これは「航空ファン」のファンからの投稿の欄なんです。この飛行機は、見たことのある人はほとんどないと思うのですが、大統領が核戦争をやるときに乗るんだ。E4というだけあってあらゆる機器が入っている。原潜にも全部指令が出せるのです。一番後ろにくっついて膨らんでいるものは原潜に行く、こっちは衛星に行く、こう分かれていますよね。ドゥームズデーというE4B、これにペリーさんが乗ってきた。  これは、何でこの必要があったのかという憶測が後でいろいろございました。アメリカに確かめる必要もいろいろありました。結局二つあるのですよ。一つだけ申し上げておきます。  今の秋山さんの答弁と絡むのですけれども、TMD、皆さんが言っているBMDですね、これはこの間私のところへお見えになって秋山さんが御説明されたのを黙って聞いていましたけれども、もう大分進んでおりまして、赤道のこっち側はDSPという衛星があるのですが、ディフェンスサーポートプログラムというのですが、このDSP衛星というのは今十何個になっているのです。ふえている、死んだのもありますが。静止軌道に乗っているわけですね。つまり、アメリカの監視衛星ですね。ディフェンスサポートプログラム、DSP、二つの衛星が同じものをとらえて撮った。これは立体的になるのです。そういうシステムなんです。赤道のこっち側ですとオーストラリアのアリススプリングズまで行って解析をする、こっち側だとアメリカのコロラドにあるコロラドスプリングズへ行って解析をする。二つしかない。ところが、さらにこれはふえた。どういうふうにふえたかというと、一種のトレーラーです。ステレオ方式なのです。今韓国の烏山に、車に乗っかっているものがこの解析システム、アメリカに二つしかないのですよ。これをこの間アメリカ側があることを認めた。一つは韓国の烏山にあります。ただ、認めたと私が言ってしまうと、どうしてわかったのだということになってしまいますから、あるようだにしておきますが、間違いない。ここでいろいろなデータをとったものをどこに入れるかというと、このドゥームズデー、E4B、たくさんの機器が満載です、これは。核戦争になった最後の日に大統領がつぶれては困るからというので、これに乗って空に浮いているわけですからね。それで指揮するのですから。そういうシステムなのです。  ところが、そこまで来た、だからどんどん前以上のものがこれから入ってくる。そこで、アメリカの言い分というのは、日本はどうするのかというわけですよ。どういう責任を負うのかというわけですよ。四億何がしかの調査費をどう使うか聞きたいのですが、これは答えていただきたいのですが、韓国でやっている、つまりステレオ型、トレーラー型のものはJTAGSと言います、これをどういうふうにおとらえになっているかというのが一つ。  それからもう一つ、この大変なお金を調査費でつけたのですけれども、川崎重工が、ピースエードといいますが、平和を助けるという意味でしょうかね、ピースエード、これはコンピューターシステムです。コンピューターシステムをつくって、コンピューターの中に仮想の世界をつくって、迎撃ミサイルと弾道ミサイルを入れる。アメリカは弾道ミサイルの資料も全部無料でくれるのですよ。四月一日からくれているわけです。核もみんなそうですから。この中に弾道ミサイルと迎撃ミサイルを入れてコンピューターの中につくったところで、効果はどのくらいかというのを詳細に分析しているのです。  なぜ資料を日本によこすようになったかというと、兵器産業のサイドが非常な力を発揮してアメリカ側に物を言っているわけですね。これが進むとすれば全部に響くわけですから。これは一例を挙げるわけですが、川崎重工が既にこれを始めている。有効かどうかを判断する。アメリカ側は、有効であると思ったら入ってきてくれ、有効でないと思ったらやめるならやめてもいい、そのかわり責任は負わないと。ここまで来ているのですよ、事態は。それが皆さんの情報の入手なのですよ。  念のために二つ申し上げておきますが、その情報の中のDSP情報というのは、PACシステムと連動しなければPACシステムは撃てないわけだ。連動して撃つように使うとすれば、これは集団自衛権問題も出てくる、国会の宇宙平和利用の決議にぶつかる、いろいろな問題があります。だから、もしそこらが具体的になるのなら慎重な議論が要るのだけれども、今日はその手前にある。つまり、産業界は、川崎重工の今ピースエードと申しました、平和を助ける、コンピューターの世界をつくって弾道ミサイル、迎撃ミサイルの効果を詳細に検証していこうというわけですね。それがどう進むかというのは大きな問題なんですが、防衛庁の調査費というのは、どこまでどういうふうに、この種の企業サイドの動きと合わせてみてどう考えておられるのか。  以上二つでございますが、そこのところを答えていただきたい。
  131. 秋山昌廣

    ○秋山(昌)政府委員 まず、八年度の予算から説明させていただきますけれども、八年度予算で今お願いしておりますのは、総事業費で四億四千三百万でございますが、この多くはシミュレーションプログラムの改修経費でございます。  シミュレーションプログラムとは何のためにつくるのかと申しますと、先ほど答弁申し上げました、主として最終的な我が国のBMD防空システムの防御効果及びその費用対効果の分析、これをこのシミュレーションを使ってやってみたいということであります。このシミュレーションプログラムを改修するという経費がかなりのものになっている。これは諸外国でも、こういったシミュレーションプログラムをつくろうとするときには同様の経費がかかっているということでございます。  それから、E4Bの件について、正直申し上げまして私は大出先生の知識に及びません。ただ、仮にTMDなりBMDなり、そういった弾道ミサイルの情報を入れる装置ということだといたしますと、弾道ミサイルについての情報というのは実は大変高度な情報分析と解析が必要でございまして、どっちの方に飛んだ、どのくらいの勢いで飛んだ、どのぐらいの距離に飛びそうかといったようなものを瞬時に計算をしていかなければいけないという意味では、相当大がかりな装置が必要だと私は認識しておりますので、直接例えば静止偵察衛星の方からE4Bに情報が入ったとしても、どんな情報が入るのかちょっと私には正直言ってよくわかりません、有用な情報なのかどうかよくわかりません。  また、豪州における一種の中継装置といいますか解析システム、この辺につきましても私は正確には情報を持っておりませんし、韓国の件についても同様でございますが、我々としては、いずれにいたしましても、我が国のBMD、つまり弾道ミサイル防衛の研究を最終的にどういうふうに政治判断をするのか、あるいは決断をするのかという的確な材料をそろえるために、米国から、これは主として米国でございますけれども、極力いろいろな情報を得てこの研究を終えたい、最終段階でなるべく有用な情報を得てこの研究の成果を上げたい。その上で、政府としてどうするのかという判断の材料にいたしたい、かように考えているところでございます。
  132. 大出俊

    ○大出委員 時間が参りましたから終わりますが、相互兵たん支援法、そして補給品役務融通協定というふうに言うのが正当だろうと思います。専門家の方がいろいろ書いておりますが、アメリカの公式文書、公的文書をいろいろ調べたが、ACSAという表現はついに見当たらないという前書きで書いておられますが、つまり一方的な提供だけになるということは正当ではない、そういうふうに思っているわけでございまして、やはり相互の、最近アメリカが結んだ二つは、十七が十九になりましたが、それはそうでない。クロス・サービシング・アグリーメントという形で結んでいる国もあるわけでありまして、つまり、ACSAではない。ここのところは、我が国の主権、自主性もあるわけでございますから、慎重にお考えをいただきたい。別な機会にまた触れたいと思います。  それから最後に、嘉手納の基地というのはちょうど日本の品川区の広さとほぼ同じです。膨大な広さです。品川区の広さとほぼ同じ。嘉手納の弾薬庫地域というのはその倍あるわけですから、ヘリでお飛びいただくと一遍でわかりますけれども、そういうところです。  そこで、そこはSR71、黒いジェット機ですね、べらぼうに大きなものでしたが、私は四機飛ぶのを見ていましたが、これが九〇年に全部退役をした。なぜか。衛星が発達したからということです。まだサンプルはアメリカにありますけれども、全部退役した。そこから始まって、七十三機いたF15というのは、今五十四機で大きく減っている。そして、AWACSというものも全部改装して、低空進入を見られるように直しております、三十四機ぐらいアメリカにありますが。これは麻薬探知に一機いるぐらいで、ほとんど沖縄にいない、こういう状況になっている。海兵隊はというと、ここのところ六年間ぐらいで、二万三千ぐらいおりました海兵隊、ここに数字が全部ございます。これは情報公開法でとったのですから間違いないのですが、在日米軍、これが六千人ぐらい減っています。沖縄基地対策室の資料によりますと、一万七千七百三十三名いる、海兵隊というのは。六千人ぐらい減っているのです。つまり、全部減ってきているわけです。  そういう状況で、私はお願いがあるのは、池田さん、日米間の、今度クリントンさんが来られたときに四万七千という数字を書き込むということは避けるべきだというふうに考えているのですよ。沖縄は、固定化ということもあって強烈に反対しています。いろいろな資料を集めて、ここに現在の米軍の数、余りはっきりし過ぎているから遠慮しますけれども、実際には四万五千足らずしかいないのだから。だから、そこもお考えいただいて……。減る傾向にあるのだから。だから、四万七千を入れるというのは、いかにも入れておく必要があるといえば、なるだけのことだから。そういう意味で、あえて沖縄を刺激する必要はないのではないかと思っておりますので、ぜひそこのところはお気をつけいただきたいと申し上げて、終わります。  ありがとうございました。
  133. 吹田愰

    吹田委員長 次に、前原誠司君。
  134. 前原誠司

    ○前原委員 新党さきがけを代表して、通告をしております内容について御質問をさせていただきたいと思います。  まず、きょうはもう何度も御答弁されているので飽きたかもしれませんけれども楚辺通信所使用期限切れ問題について、幾つかの観点から御質問をさせていただきたいと思います。  四月一日から使用権原が切れているわけでございますけれども、それ以前に、この状況がわかった段階で、防衛施設庁の方から直ちには違法と言えないという論拠というものを出していただいております。  まず、「過去二十年間にわたり土地所有者との間で賃貸借契約に基づき適法使用してきたもの」であるということ。そしてまた、二番目に「当該土地を引き続き米軍使用提供することは、日米安保条約及び地位協定上の義務であるのみならず、我が国及び極東の平和と安全のため必要である」と考えられるということ。三番目、「目下、駐留軍用地特措法に基づき、土地使用権原を得るための所定手続をとり、引き続き適法使用し続けるための努力を行っている」ということ。第四番目に「土地所有者に対して、借料相当の全員の提供をして、土地所有者に損害を生じさせない措置を講ずる」、この四点から直ちに違法とは言えないということになっております。  どれだけ読んでも、これだけで法的な裏づけがあるとも思えないし、また、私はこういう文言を、直ちに違法とは言えないというような言葉を見たのも初めてであります。こういった直ちに違法と言えないというのは、まず、これはどういう意味なのか、そしてまた、これ自体で法的な根拠があるというふうに思っておられるのか、その点をお伺いしたいと思います。
  135. 諸冨増夫

    ○諸冨政府委員 お答えします。  今、私ども政府見解を先生御引用になりましてその解釈を求められたと思っておりますが、政府見解については再三御答弁申し上げておるのでその繰り返しは避けますが,私どもがこういう注的見解といいますか、に到達した背景をちょっと御説明させていただきたいと思いますが……(前原委員「それはわかっているから。直ちにというのはどういう意味ですか」と呼ぶ)直ちに違法と言えないというその法的な背景として、私どもが検討した過程において、実は昭和四十年に最高裁判所の判例がございまして、その判例の中で引用しているところをちょっと紹介させていただきたいと思うのでございます。  一つは、この判例というのは、板付基地においてやはり同じような事案が発生いたしまして、私ども正式の使用権原がない状態に追い込まれたときに最高裁から判決が出たということでございますが、そこで一点、判例の中で言及しておりますのは、この安保条約の  誠実な履行は、国の義務であり、関係土地所有者らも、直接間接、この国の義務履行協力すべき立場に置かれているものというべきである。 ということを一点言っております。  それから第二点といたしましては、  契約に基づき被上告人国と関係土地所有者との間にすでに適法に形成された前記のごとき土地使用関係は、単に契約が満了した(占領の終了)という一事により、たやすく消滅させるべきではなく、その使用駐留軍による使用)の必要性が大であるかぎり、むしろこれを存続させることを相当とすることは、借地権存続期間満了等事由により消滅した場合においても、建物があるときは、土地所有者において、正当の事由がないかぎり、借地権者からの更新の請求を拒絶しえないものとする借地法四条一項の精神に照らすも、肯認するに難くないところである。 というような考え方を述べられているところでございまして、このような考え方を背景にしますと、社会的にこういう考え方は、直ちに違法とは言えないという解釈といいますか、そういう考え方に立っても一般の御理解が得られるのではないか、私どももこのように考えたところでございます。
  136. 前原誠司

    ○前原委員 私は何も、これを占拠し続けることがいけない、あるいは直ちに明け渡せということを申し上げているわけではなくて、今の板付の判例をひもとくまでもなく、道路なんかで使用権原が切れる、あるいはゴルフ場で一部使用権原が切れても、それについて直ちに明け渡せという判例は出ていないわけでありまして、ましてや、日米安全保障条約に基づいて米国の管理権というものが認められている以上、これは公的に考えて、ある意味で正当なものであると私は思っています。  ただ、マスコミ報道もございますけれども、一貫して私が申し上げたいのは、政府の広報というものが余りにも下手ではないかということを私は申し上げたいわけであります。  例えば、今のことを申されるのでしたら、借地権という言葉を引用されましたけれども、結果、憲法二十九条には財産権の保障というのがございます。財産権の保障というこの二十九条には、「財産権は、これを侵してはならない。」二項で「財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。」三項で「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。」ということが書いてあって、そういう政策的な制約というものがこの財産権の保障に、いわゆる制約条件として担保されているわけですね。  その中で、言ってみれば、使用権原は切れたけれども、こういう財産権の政策的な制約というものを出して、権原は切れていますけれども、その判断については裁判所に任せますというようなことを言っておけば、直ちに違法とは言えないという、あたかも司法判断を行政が前もって下すような感じにとられない。また、そういうイメージを国民に与えてしまいかねない、そして、あのさくと相まって、国は何をしてもいいのかというような面にとられかねない、そういった点を私は申し上げているわけであります。  ですから、根本は、今施設庁長官が御答弁された判例等々もありますけれども、それは借地権借地権というのは、もともと財産権、憲法二十九条の政策的な制約から来ている法律でありますから、そういったものに基づいているということを出して、そして、切れて、その分については例えば裁判所の判断に任せますというようなことでいったらよかったのではないかと私は思うわけでありますが、その点について何か見解があれば、施設庁長官、お答えいただきます。
  137. 諸冨増夫

    ○諸冨政府委員 今のお話でございますが、私どもとしては、現在、これは土地収用法等に基づきまして土地所有権を取得するということではございませんで、二十数年来といいますか、沖縄返還当時からずっと賃貸借をしております。それで、私どものそもそもの駐留軍用地特措法考え方も、駐留軍が存続している間、土地使用というのが必要でございますが、駐留軍が引き揚げますと、これは当然返還されるわけでございますので、そういう点が、土地収用法で言っております、例えば高速道路の敷地とかそういう場合には当然所有権そのものを買い上げて、国の公益のために使うという考え方に立っておるわけでございますが、駐留軍特措法の方は、あくまでも使用の方に重点がございます。したがいまして、あくまでも使用及び収用という考え方をうたっておりまして、原則使用の方に力点がかかっておるというような点がございます。  したがいまして、憲法上の二十九条の考え方も、私は別に法律学者じゃございませんが、どちらかというと先ほどの土地収用法考え方に立った考え方にむしろ近いような考え方をとっているのじゃないか。(前原委員憲法二十九条に基づいているのか」と呼ぶ)はい、二十九条ももちろん私ども基づいておりますが、その考え方の力点のところをちょっと今御説明しておるところでございまして、したがいまして、私ども、正当な補償ということは、先ほど大出先生の御質問等もございましたが、私どもとしてはあくまでも、現在の段階ではまだ裁決の許可がおりていない、裁決の判断が出てない段階でございますので、そういう将来の裁決額に見合うものを借料相当額として持参しておるというのが現在の状況でございます。
  138. 前原誠司

    ○前原委員 ますますわからなくなってくるのですけれども、私、そんな質問しているのじゃなくて、要は、根は一緒なわけですよ。国は使う権利はあるんだ。そのプレゼンテーションの仕方がまずいんだという話をしているのに、我々は権利があるんだ、いや、それは使用とか所有の話だと言われても、質問と全然食い違う答弁をされても困るわけです。  では、さらにちょっと苦言を呈したいと思いますけれども施設庁長官があの地主の方、知花昌一さんの立ち入りというものを認めないという記者会見の中で、その方の過去、過去と言ったら変でありますけれども、反戦地主である、だから入れないというふうなことを果たして施設庁長官の立場で本当に言えるのかどうか。そういうところまで来るわけであります。  ですから、まずそのことについても見解を聞きたいのですけれども、要は、すべて何か土地使用というものは当たり前なんだ、あるいは使用を続けるんだというふうなものが前に出過ぎていて、国民に対するプレゼンテーションが下手であって、その点で逆に摩擦を大きくしている部分があるんじゃないかというふうなことを私は反省を求めて質問をしているわけです。何も明け渡せとかというふうなことを言っているわけじゃない。  その反戦地主だからどうのこうのというものについて見解がありますか。
  139. 諸冨増夫

    ○諸冨政府委員 お答えいたします。  私の発言について若干誤解を招いた点につきまして、私も総理から不用意な発言であったということでおしかりを受けたところでございますが、私は地主の方の経歴とかそういうものをもって即拒否するということを申し上げたわけではなくて、米軍に対して安定的に土地提供する、基地提供する責任者の一人といたしまして、あらゆる情報を収集して不測の事態が起きないようなことを常に考えておくべき立場におる者でございますので、そういう中において、そういう情報がひとつ参考になるというような趣旨を申し上げたわけでございます。あくまでも個人攻撃をしたということではなくて、私がいろいろ収集した情報を判断するに当たって、その判断の一つとしてそういうものがあって、ただ、そういうものだけをもって立ち入り拒否する、そういうことはないということで記者会見では明確に申し述べているところでございます。  それから、先ほどの、私どもの方の国民の一般の方々に対する説明といいますか、そういう点についての先生の御意見は私もよく理解できるところでございまして、今もいろいろな形で国民の皆様に御理解できるようなメッセージといいますか、説明の仕方等については、いろいろな形で検討した上で、全力を挙げて何とか説得できないか、御本人はもちろん、沖縄県当局の皆さん、そういう方々に御説明をさせていただいているところでございます。
  140. 前原誠司

    ○前原委員 いろいろな条件の中の一つとしてとおっしゃいましたけれども、それは腹には思っていても表に出して言うことでは決してない、反戦地主だからということは。その点は、もちろん私も施設庁長官がテレビで発言されているのをじかに聞いていまして、これはまずいことを言っているなということも思いましたし、またその記録も残っています。ですから、そういうことを今からあげつらって、謝れとかどうのこうのしろということは申しませんけれども、根本に戻りますけれども、今回のやり方については、またもろもろの発言については、私どもも納得できないことが多いというふうなことをまず指摘をさせていただきたいと思います。  次に、地主の方の仮処分申請というものが出ておりますけれども、このタイムスケジュールをどういうふうにとらえておられるか、御説明をいただきたいと思います。
  141. 諸冨増夫

    ○諸冨政府委員 現在、地主の方から、立ち入りの仮処分と、明け渡しの二つを目的とする仮処分の申請が出ております。裁判所の方では四月五日に第一回の審尋を行うという旨の通知を私どもいただいております。それから後どういうふうな形になるかというのは、裁判所の訴訟指揮にかかわる問題でございますので、私ども段階では予測できませんが、事柄の性格といいますか、仮処分の性格上、比較的早く判決が出るのではないかなというふうに考えておるところでございます。
  142. 前原誠司

    ○前原委員 五日に裁判所での第一回の話し合いが持たれて、そして、仮処分申請ということでありますと、今までの判例上、比較的短期間でその結論が出る可能性が高い。また、片や収用委員会が四月十二日に第一回が開かれて、そしていつ結論が出るかわかりません。また、仮定の話でありますけれども、要は正式に緊急使用というものが認められて、六カ月間緊急使用というものが認められるというふうな決定が下されるまでに仮処分申請の結論が出る可能性の方が高い。そうしたときに、どういう理由立ち入り地主の方が求めているかということを裁判所も判断をするわけでありますけれども、そういう判断に基づいて、明け渡しは今までの判例上まず一〇〇%認められないというふうに思いますけれども立ち入りは許可をするということになった場合にどうするのか。要は、六カ月間の緊急使用というものを収用委員会が認める決定を下す以前こ、そういう立ち入りを認める決定を下したときにはどのような対処をするのか。その点について御答弁をお願いします。
  143. 諸冨増夫

    ○諸冨政府委員 お答えします。  現在、四月五日に予想されます審尋に対しまして、私ども楚辺通信所のいわゆる現況といいますか、そういうものは十分裁判所の方に御説明する予定にしております。  それは先ほどもちょっと申し上げましたように、楚辺通信所のあの地主の方が持っておられるところに立ち入るまでの間は、やはり下にいろいろアンテナ等の埋め込み等がございますので、仮に、万が一裁判所における立ち入りの許可が出る場合にでもある程度の条件をつけていただかないと、判決が出ても米軍拒否する場合も出てまいります。したがいまして、そういう技術的な点といいますか、そういう点を十分裁判所の方に御理解いただくように説明をするということで今準備をしておるところでございます。
  144. 前原誠司

    ○前原委員 あとは政策的な問題にもなりますけれども、そういうものが出る前にこれは認めるということもあり得る話でありますし、そういう決定が下された後に、今答弁があったように技術的なものを詰めて認めるということもあると思いますけれども、私は対外的なことを考えれば、そういう決定が下される前に立ち入りを認めるということもあっていいのではないかと思うわけであります。ただ、それはもちろん条件がいろいろそろわなければいけないのは事実であります。  また先ほどの広報の話に戻るわけでありますけれども、知花さんという地主が持っておられる土地というものは、楚辺通信所に占める割合というのは本当に微々たるものでありますし、また、現在、駐留軍用地特措法手続対象者に当たっている方の基地に占める割合というものも、〇・二%ということで非常に少ないというふうなことも片や公表していく、もつどうまく何か言える機会がないのかということも私は要望させていただきたいと思います。  先ほど申し上げましたように、そういう決定が下される以前に立ち入りを認めるか否か、それは大分きょうも質問がありましたけれども、再度質問させていただきますが、その点について御答弁をいただきたいと思います。
  145. 諸冨増夫

    ○諸冨政府委員 先ほども同じような形で答弁させていただいて、繰り返しになって恐縮でございますが、私ども立ち入りを御本人に対して拒否した理由は、あくまでも一部不穏な動きがあって不測の事態が発生するおそれがある。したがいまして、不測の事態が発生すれば、米軍に対する安定的な基地使用という条約上の義務に対する日本政府の責任といいますか、そういうものが全うできないというようなことを考えまして、いろいろな情報を分析した結果、諸般の情勢から、米軍と十分協議をした上で立ち入り拒否したわけでございます。  したがいまして、私が今申し上げましたような前提条件がとれて、御本人の方も米軍運用に支障を与えないような条件を受け入れていただけるならば、かたくなに立ち入り拒否するという考えは持っておらないので、その時点でまた改めて検討させていただきたいということを御説明しているところでございます。
  146. 前原誠司

    ○前原委員 不穏な動きがあるということは私も話として聞いておりますけれども丁過激派のメンバーも大分沖縄から帰っていったというふうな話も聞いておりますし、またそれを受けて警備の人数も相当程度減っているということでありますけれども、そういう客観的な情勢は整いつつあるとお考えですか。
  147. 諸冨増夫

    ○諸冨政府委員 確かに先生指摘のように、本土から数百人の過激派の人が来ておったのが徐々に引き揚げて、きょう現在では数名程度ではないかというふうな情報を私ども持っておるところでございますが、一見平穏に見えても、まだ何が出てくるかわからないというような状況も私ども想定しておかなければいかぬものですから、そういう地元の状況等も十分判断した上で、いずれ決定せざるを得ないかなと思っております。  所有者の方からは、一日といいますか、それ以前にも通知文をいただいておりまして、立ち入りたいということでございますが、その際に、何か私どもの局の職員の方には、条件をつけないでというようなことをおっしゃっているような向きもあるようでございますので、この件はまたよく相談をするといいますか、御希望もやはり聞いた上、そういう点も含めて最終的な判断をしていくことになるのではないか、このように考えております。
  148. 前原誠司

    ○前原委員 この件については最後の質問にさせていただきますけれども楚辺通信所の審理に入っているのは一名の所有者の方の件でありますけれども、あと三千一名の地主の方の件も、これは平成九年の五月十四日に使用権原が切れるわけでありますけれども、その見通しを立ててうまくやっていただけるのかどうか、その点について私は心配をしているわけであります。  これまた裁決申請書の公告縦覧ということで、市町村長がこれについて行うのか。そしてまた、これを同じように拒否をしたら知事が行うとか、そういうふうな手続があるわけですよね。  実際問題、土地の物件調書作成について署名、押印を拒否している自治体というのが三つございますね、沖縄市、那覇市、読谷村。そしてまた、新聞報道によりますと、これがさらにふえてくるのではないかというようなことが言われています。そうしたときに、今度は十二施設ですから、楚辺通信所の一部ではない、とてつもなく多くの場所にまたがってくる話になりますけれども、そこら辺のタイムスケジュール管理なり、あるいは方針というものをしっかり固められているのかどうか、その点について御答弁をいただきたいと思います。
  149. 小澤毅

    小澤政府委員 お答えいたします。  ただいま前原先生から御指摘ございましたように、三月二十九日に裁決申請を行ったものが、楚辺通信所に係るものが一件、そのほかに嘉手納飛行場等十二施設に係るものが三千一名分ございます。そのほかに、現在、先ほど来問題となっております緊急使用の申し立てをしているというところでございます。私どもとしては、緊急使用の申し立てについての許可をいただくということをまず第一優先にしていただきたいと思います。  それとまた、以降、嘉手納飛行場等につきましては、先生から今お話がございましたように、裁決申請書の公告縦覧ということで、これは今の情報等によれば大変厳しい状況にならざるを得ないのではないかということも我々よく理解しておるところでございます。この辺につきましては、できるだけ早目に各市町村長さんの御理解を得べく、私どもとしても全力を挙げてこの手続の理解に努めていきたいというふうに思っております。  いずれにしましても、九年の五月十四日という日にちは切られておるわけでございますので、それまでにはぜひとも使用権原の取得ということで、基地の安定的使用ができるようにいたしたいと思っております。
  150. 前原誠司

    ○前原委員 この楚辺通信所がある意味で不法占拠状態になったということは、行政の方だけではなくて、あの当時といいますか、与党の立場でも責任はあった話だと私は思っております。ですから、今まで申し上げたことについては、ただ単に防衛施設庁に対する非難というよりは、我々もやはりこの点については一緒の責めを負わなければいけないという気持ちでおります。  ただ、だからこそもうちょっとうまく説明してほしい。そして、今後のことについてはきっちりタイムスケジュールを、これはもちろん我々も努力をさせていただきますけれども、何とか安定使用というものができるような議論というものを煮詰めていきたい。これは与党の一員として、私も努力をさせていただきたいというふうなことを申し上げておきたいと思います。  次の質問に移らせていただきます。  ちょっと順序を入れかえますけれども、敵基地攻撃に関する政府見解と必要最小限度の実力との関係について御質問をさせていただきたいと思います。  敵基地攻撃と自衛権の範囲ということで、これは昭和三十一年ということでありますので非常に古い統一見解でございますけれども、少々読ませていただきます。   わが国に対して、急迫不正の侵害が行われ、その侵害の手段としてわが国土に対し、誘導弾等による攻撃が行われた場合、座して自滅を待つべしというのが憲法の趣旨とするところだというふうには、どうしても考えられないと思うのです。そういう場合には、そのような攻撃を防ぐのに万やむを得ない必要最小限度の措置をとること、たとえば、誘導弾等による攻撃を防御するのに、他に手段がないと認められる限り、誘導弾等の基地をたたくことは、法理的には自衛の範囲に含まれ、可能であるというべきものと思います。 こういう統一見解が出されているわけであります。  しかるに、私は以前委員会で質問したことがございましたけれども、実際こういうことが起きた場合に、日本の自衛隊はそれが可能なのか、実際問題として可能なのかというような質問をいたしました。そのときのお答えは、アメリカ軍に頼るというようなお答えでありました。つまり、日本自体はそのような、ある意味憲法で許されている、「法理的には自衛の範囲に含まれ、可能である」というようなものまでできない、その点については日米安全保障条約に従ってアメリカ軍にお願いをする、こういう答弁でありました。ということは、日本必要最小限度の実力に至っていないというように解釈をしていいのかどうか、まずこの点について御答弁をいただきたいと思います。
  151. 秋山昌廣

    ○秋山(昌)政府委員 必要最小限という言葉の問題でございますので、なかなか説明が難しい点もございますけれども、今御質問にございました敵基地攻撃と自衛権の範囲という点については、俗っぽく言えば座して死を待つということまで憲法九条は要請しているということではなくて、それも当然自衛権の中に入るという理解でございます。  ただ他方で、これまで我が国は方針として専守防衛という考え方でやってきたわけでございますから、例えば足の長い爆撃機を持たないとか、あるいは弾道ミサイル、攻撃型のものを持たないとか、あるいは攻撃型の空母というものを持たないとか、そういったような、要するに専守防衛ということからくる、かつ我が国を守る必要最小限度の防衛力として、具体的にはいろいろなことが説明できるわけでございます。しかしながら、仮にそういった敵基地からのミサイル攻撃があってほかに何らとる手段がないときに、果たしてそこを攻撃するのが自衛権の範囲を超えるかといえば、それは超えないというふうに考えているわけでございます。  なお、そういう他にとる手段もない、どうしようもないときの問題ではなくて、例えば安全保障上、日米安保条約のもとで、我が国に対する武力の侵攻が実際にあった場合、日米協力のもとでそういったいわゆるパワープロジェクション的な能力をアメリカの軍に期待するということは、現在の日米防衛協力の中身の一つの重要な要素になっているということでございます。
  152. 前原誠司

    ○前原委員 質問は、日本必要最小限度の実力に至っていないのかどうかということについてもう一度御答弁をいただきたいのと、もしそういう事態が起きた場合、敵基地攻撃ということが法理的にも可能だ、そして日米共同で日米安全保障条約に基づいてそういった攻撃を行う場合に、果たして具体的な共同作戦というものが詰まっているのかどうかということについて、二点お伺いをしたいと思います。
  153. 秋山昌廣

    ○秋山(昌)政府委員 今度政府で決定いたしました新防衛大綱も、これまでの防衛大綱と同様、基本的に基盤的防衛力整備、そういう防衛力構想を維持しているところでございます。  この構想は、まさに空白をつくらないという必要最小限度の独立国としての防衛力ということでございますが、それをもう少しかみ砕いて言えば、我が国の地理的特性を踏まえた、すなわち我が日本を取り巻く周辺の地域のいわゆる軍事力の配備といったようなものを考えまして、そして専守防衛という観点から現在防衛力の整備をしている。それを必要最小限度と考え、我々は必要最小限度の防衛力を今整備している。しているといいますとあれですが、ほぼ防衛大綱の別表ベースの、現時点でいいますと前防衛大綱になりますけれども、別表ベースの水準に達しているということでございますので、御質問に対しては、我々の申している必要最小限度の防衛力は達成しているというふうに考えているところでございます。  それから、米軍との共同防衛協力に関しましては、御案内のとおり、昭和五十三年に日米防衛協力に対する指針というものが決定されまして、それに基づいて研究が進んでおります。しかし、この研究は共同作戦ということではございません。しかし、五十三年から長い間日米間で、我が国が侵略される場合の共同研究あるいは抑止のための共同研究等々、いろいろ共同研究をやってまいりました。その共同研究をやった成果が、我が国の防衛力の運用面あるいは米軍の極東での運用面、あるいは我が国を防衛するための運用面で、当然のことながら、日米防衛協力に実の上がるような方向でよい結果を与えているということは申し上げられると思います。
  154. 前原誠司

    ○前原委員 実際問題、敵基地攻撃が法理的に自衛の範囲に入る。しかしながら、そういった手段は持っていない。しかし、それは日米安全保障条約に基づいてアメリカにやってもらう。そしてまた、それはそうでありながらも、日本は現段階において必要最小限度の実力というものには達しているというふうなことでありますと、もっと、政治家も含めてでありますけれども日米安保の重要性というものは、この点からいっても――この点だけではありませんけれども、この点からいっても重要であるということについてはきっちり言っていかなくてはいけないと思います。  そして後段の、共同作戦ではないということでありましたけれども、それでは実際にアメリカにやってもらう段において、ガイドライン、特に極東におけるガイドラインというものの研究が遅々として進んでいない、また逆に、日本がそれを受けて整備をしていかなくてはいけない法的な問題等々があると私は思います。したがって、そういう不測の事態に備えて日本があらゆる角度から日本の国民の生命財産をきっちり守る、もしそういう趣旨で考えるならば、まだまだガイドラインあるいは法的な整備というものが欠けているように私は思います。  この点については、大臣がせっかくおいででございますので、今のガイドラインというものが今の状況のもとで十分だと思っておられるのか、また、法的な整備というものは必要でないかというのが私の考えでありますけれども、その点について長官の御答弁をお願いしたいと思います。
  155. 秋山昌廣

    ○秋山(昌)政府委員 大臣の答弁の前に若干御説明させていただきたいと思います。  今回決定されました新防衛大綱で、先生も御案内のとおり、「大規模災害等各種の事態への対応」というところで、「我が国周辺地域において我が国の平和と安全に重要な影響を与えるような事態が発生した場合」「適切に対応する。」というのがございます。その適切に対応する中身が二つありまして、一つは、必要に応じ国際連合の活動を適切に支持する。もう一つが、日米安保体制の円滑かつ効果的な運用を図る。  後者がまさに今御指摘のガイドラインに関係するところでございますが、いわゆる我が国の周辺、あるいは場合によったら極東という地域における重要な事態あるいは有事といったようなとき、もちろんこの日米関係というのは大変重要でございますが、日米関係だけではないという点についても今の防衛大綱からおわかりいただけるかと思います。  それから、防衛大綱のその部分にも書いてありますように、「憲法及び関係法令に従い、」ということでございますので、当然憲法の枠内、そういうことでございますが、法令に従いというのも当然のことではございますけれども、法令に不備ということがございますれば、それは、その法令を改正するなり、あるいは新しい法律をつくる必要性なりが出てくるものと私も考えております。
  156. 臼井日出男

    臼井国務大臣 今防衛局長お話しのとおりでございまして、この大綱の指針というものは、五十三年に五十一年の前防衛大綱に基づいてつくったものでございまして、新防衛大綱がスタートしている現在、今後こうしたものは当然のことながら見直しの対象になってくると考えておりますが、今後とも慎重に検討してまいりたいと考えております。
  157. 前原誠司

    ○前原委員 次の質問に移らせていただきます。  現在、きょうもSACOのワーキングチームが開かれて鋭意御努力をいただいていることについて敬意を表する次第でありますけれども、クリントン大統領が来られるに当たって、やはり日米安保の重要性はもちろん認めながらも、そして、今御答弁がありましたように、日本が果たさなくてはいけない新たな役割について、不備があれば詰めていくという姿勢は必要でございますけれども、しかし、余りにも沖縄基地が、施設・区域が集中をし過ぎているというところは自制をしていかなくてはいけません。  また、沖縄県から一番要望が出されている点は、皆さん御承知のように、普天間飛行場であります。我が党といたしましても、何とかこの普天間飛行場の返還ということを努力できないか。もちろん、きょう、あしたということではなくて、沖縄県にいたしましても、二〇〇一年までに何とか返還をしてほしいということでございまして、この点については相当詰めていかなくてはいけない話であると思いますし、またSACOの場ではそれなりに努力をいただいていると私は思います。  そこで、議論をさらに高めていくために御質問をさせていただきたいわけでありますけれども、重要な基地である、そして返還の難易度が高いということがよく言われていますけれども、具体的にどういう部分を指して、訓練あるいは有事、そしてまたもろもろの要件があれば具体的に挙げていただいて、返還の難易度が高い理由はこれこれこういう理由があるからですよということをぜひ御説明をいただきたい。また、それを踏まえていかないと、それじゃ、それを解決するためにどうしたらいいかという話になりませんので、その点について御答弁をいただきたいと思います。
  158. 池田行彦

    池田国務大臣 委員指摘のとおり、日米安保体制を堅持していく、そしてその有効性を確保していく、そのためにも沖縄の県民の方々のでき得る限りの御理解をちょうだいしていく、こういうことは本当に大切なことだ、このように考えております。  そしてまた、御指摘のように、沖縄に余りにも基地が集中し過ぎている、そういう実態でございますので、何としてもでき得る限り基地の整理統合・縮小を進めなくちゃいけないということで、今、文字どおり日米協力によりまして真摯な、真剣な、精力的な作業を進めておるところでございます。  そして、その中でどういうことができるか、ありとあらゆる側面あるいは条件というものを考慮しながら作業を進めているところでございますので、今、申しわけないのでございますが、どうか私どもの進めておる真剣な作業を御信頼いただきまして、個別の案件についてどうなるかという点につきましては、答弁を控えさせていただきたいと存じます。  当然のことでございますが、今、クリントン大統領の御訪日に向かってでき得る限りの成果を見出していきたい、こう思っておりますが、もちろんそれで作業が終わるわけではございません。SACOそのものもこの秋まで続くわけでございますし、なおその後も作業を進めていくわけでございます。そしてまた、今回、作業を進めていった上で、ペリー国防長官が大統領の御訪日に先立ってお見えになるようでございますから、その段階で、もしさらに防衛庁長官あるいは私どもでそれまでのSACOの作業を踏まえて努力を尽くすべき点があるとすれば、誠心誠意やってまいりたいと思います。  そして、その結果を踏まえて、その段階では個別のケースについてもきちんとした方向性をお示しすることになるのじゃないかと思いますし、また、難しい場合にはどういう点が難しいかということもお示しすることができようかと存じますけれども、今、何しろ本当に胸突き八丁の作業の最終の詰めの段階でございますから、どうか個別のケースについての答弁を控えることを了としていただきたいと存ずる次第でございます。
  159. 前原誠司

    ○前原委員 個別の議論、もちろん普天間という個別の施設でありますけれども、別に普天間の飛行場の返還の可能性を聞いているのではなくて、その前提条件として、どういう機能があって、そして一般の人たちは、難しい難しいと言われて、どことどう違うのかということは、やはり私は、これは別に隠す話――もちろん軍事機密ということになると、それはなかなか表に出せない話でありますけれども、ある程度わかる範囲の中でそういうものはやはり示していただかないと議論にならないと私は思うのですね。  ですから、そういう意味で、話を進めていく上で、個別のことについては現在差し控えさせていただきたいということでありますが、別に私は普天間は返る返らないということを、今、状況はどうなんだと聞いているのではなくて、難易度が高い理由というもの、そして普天間の基地の機能というものについて教えていただきたいと言っているのですから、その点については御答弁をいただきたい。
  160. 臼井日出男

    臼井国務大臣 去る三月末に、ペリー国防長官がアメリカ議会それからクリントン大統領に国防調書というものを出したわけですが、それでも、アジア太平洋に十万、こういうプレゼンスというものを示しております。  その十万のプレゼンスの中で、日本基地に四万七千、沖縄に二万七千、その中で、普天間飛行場をいわゆる核として、基地として使っております海兵隊が一万七千おるわけで、まさにアメリカの前方展開の核であるのは非常に機動性に富んだ即応力のある海兵隊である、こういうことでございます。  私も米側から示されたところで、確かに普天間自体は余裕はあるけれども、いざ有事というときになった場合どういうような基地の使い方をするのかという逐一の計画の表等も見せられるとするならば、この基地というものはいかに日本の平和とアジア太平洋地域にとって大切なものであるかということは私ども実感として感じられる、こういうことでございます。
  161. 前原誠司

    ○前原委員 いや、要領を得ないわけでありますし、ちょっと私は防衛庁に対しても申し上げておきたいわけでありますけれども、これは委員会の質問で要旨を出しているわけですね。どういう質問をするかということも言っているわけですから、もし答えられないのだったら、事前に言ってもらわないと時間がもったいないですよ。  こちら側は質問要旨を出してその準備をしろということでやってもらっていて、実際答弁があるときにそういうものはお答えできませんということになったら、私はこれから質問要旨は出しませんよ。その場でお答えしていただくようにしますから、全員出てもらわないといけませんよ。  そういう態度は、与党であっても、それは私はちょっと納得できないですね。ですから、それはちょっと反省してもらって変えてもらわないと、私はこれから質問要旨は安保委員会においては出しません。  終わります。
  162. 吹田愰

    吹田委員長 今、前原君の最後のくだりは大事なことですから、これは委員会としまして、十分今後理事の皆さんで御協議をしていただいて、政府側の御協力をお願いしておきます。  それでは、山花貞夫君。
  163. 山花貞夫

    ○山花委員 本日の当委員会における議論は、沖縄をめぐる諸問題が中心でありました。この点につきましては、とりわけ最近の土地の不法占拠問題を中心として先ほど社民党の大出委員の方から主張と質疑がなされましたけれども、基本的には私も同じ認識であるということを明らかにした上で、以下、最近の大変大事なテーマである日米間の新しい軍事協力のシンボルとされているACSAの問題について伺いたいと思います。  初めに意見を含めて質問をしたいと思うのですが、ACSAの問題はこれまで長い経過がございます。竹下内閣当時の八八年の第十八回日米安保事務レベル協議において、アメリカ側から要求されて以来今日に至るまで、とりわけ私どもが承知しておりますのは、昨年十一月のクリントン大統領来日の際には大体合意がなされて締結される、こういう段取りであったと思っています。  しかし、今日までの来日延期、今月の十六日に大統領が来日されるまでの間の国内国外の情勢は非常に急展開があったわけでして、国内的には沖縄の軍事基地をめぐる諸問題、国際的には朝鮮半島問題、台湾海峡での中台の緊張関係など、こうした新しい情勢の展開の中におきまして、改めて最近それぞれの立場から集団自衛権の問題が提起されることを含め、今回の大統領来日の際の安保再定義と、これを具体的に担保する形でのACSAの締結については昨年に増してその位置づけが大きくなっている、こういうように思います。  ただ、残念ながらACSAの内容についてはほとんど私たちが正確に知ることができないで今日に至っています。新聞報道はありますけれども、実は一体どんな内容なのか等々を含めて、昨日まで私が外務省、防衛庁から何かと説明を伺っておりますけれども、大体お答えは一言で言って政府部内で鋭意検討中である、こういう説明しかいただけません。  しかし、きょう新聞を見ると、昨日三日の段階で基本的な合意ができたともされています。こうした大事な問題については、冷戦後の日本安全保障の大きな方向性を定めるものでありますから、もっともっと内容についても我々に明らかにしていただいて国会で十分議論すべきだ、こういうように思いますけれども、この点についてまず御見解を伺いたいと思います。
  164. 折田正樹

    ○折田政府委員 アメリカは、従来からアメリカとNATO諸国との間の物品または役務の融通の枠組みを念頭に置きまして、同じようなものが日米間にあれば有用であるとしてきたところでございます。  私どもといたしましては、自衛隊と米軍の共同訓練等の際に物品または役務を相互に融通する枠組みを設けることは、日米安保体制の円滑な運用を図るとの観点から重要な意義を有するものと考えております。このような考え方に基づきまして、政府といたしましては、今米側と鋭意折衝しているわけでございます。  新聞に昨日合意ができたという話が書いてあったということでございますが、昨日合意ができたという事実はございません。私どもは、今度大統領が来られるというのも一つの大きな政治的な場でございますので、そういうことも念頭に置きながらアメリカ側と今鋭意交渉をやっているわけでございます。
  165. 山花貞夫

    ○山花委員 中身についてなかなか我々が知ることができないといったことに関連しましては、七年度版防衛白書がございます。これをずっと拝見したのですけれども、ACSAについてはほとんど触れていないのですね、内容について。例の防衛懇の方ではかなり詳しく触れたりして問題提起されていますけれども、公式の見解というのは全く出ていないのだということを指摘しておきながら、きのうの段階で合意したという新聞報道は事実でないという御返事をいただきました。  同時に、この新聞報道は、これは一紙だけだったのですけれども、今月十六日までには協定を閣議決定する、大統領来日に合わせて池田外務大臣とモンデール駐日大使の間で署名する、こうなっております。合意する時期はいつになるのか、署名する当事者は一体だれになるのか、この点についてもお伺いしたいと思います。  もう一つは、これはまた別の報道ですけれども、十六日の前の段階でいわゆる2プラス2が行われる、こう聞いております。外務大臣が出席された場合には、そこでACSAについて合意ができるのではなかろうかというのが一般的な推測ともなるわけですが、これからの手続は大体日程的にどうお考えになっているのか。一体だれが署名するのか。従来私どもが伺っておったところでは、恐らく国防長官と外務大臣だろうと思っておったわけですが、そうでない報道が具体的に出ております。この点について伺いたいと思います。
  166. 折田正樹

    ○折田政府委員 まず合意ができませんと、署名という話にはもちろんならないわけでございますが、もし合意ができますれば、これは国と国との間の約束事でございますので、署名をするのは、通常の場合、外務大臣ないしは外国でやる場合にはその国におる大使ということになろうかと思います。アメリカ側はだれが署名をするかということは、アメリカが決める問題でございますけれども、通常の場合であれば国務長官ということがあり得るのだろうと思います。  それから、安全保障協議委員会があって、そこの場で署名をするのではなかろうかというお話がございましたけれども、まだ合意に達していないものでございますから、そういう話をアメリカ側としているという事実は全くございません。
  167. 山花貞夫

    ○山花委員 とはいっても、大体いつまでに合意をつくって、いつごろまでには署名をするのか。これは、当然、今後国会承認という手続もとられると思います。国会の会期もございます。この点について重ねて伺いたいと思います。
  168. 折田正樹

    ○折田政府委員 私どもとしては、なるべく早く合意に達して、これは国会で御承認をいただく条約でございますので、できれば今度の国会に間に合わせたいと思って実は頑張ってきているわけでございます。  ただ、まだ合意に達するに至っておりませんし、これは日本だけでできるわけではございません。相手のある話でございますので、今この段階でいつということはまだわからないとしか申し上げられませんけれども、私どもはできるだけ早くやりたいということで今交渉をやっている真っ最中ということでございます。
  169. 山花貞夫

    ○山花委員 国会の日程などを考えれば、ACSAだけではなく、自衛隊法改正等関連法案も国会に提出して審議をする段取りになると思います。そうなってくると、今時期については明らかにできないということですけれども、およそ大統領来日時に合意、調印ということになるのか、大統領がいらっしゃる間は間に合わないということなのか、こういう形で伺っておきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  170. 折田正樹

    ○折田政府委員 私どもとしては、できることなら間に合わせたいという気持ちで交渉をやっているわけでございますが、相手があることでございますので、そうなるというふうには申し上げられないということでございます。
  171. 山花貞夫

    ○山花委員 先ほどの御説明で、普通ならば国務長官と外務大臣である、こう伺いました。実は、これまでのACSAが締結された各国の例を見ると、そうした高レベルでの締結というのは非常に数が少ないと思います。  私が一応調べたところでは、アメリカがこれまで各国と締結したACSAの調印者が、アメリカの国防長官と外務大臣という前例はありません。両国とも国防長官という例は旧西ドイツと韓国に例が見られるようですけれども、韓国の場合にも、九一年の改正時には、アメリカ側が統合幕僚第四部兵たん担当主任幕僚で米陸軍准将であります。韓国側が国防省兵たん局長・陸軍少将でありまして、その他のほとんどすべての例は、文民という例も一、二ありますけれども現地の司令官など現場の実務担当者が軍事協力協定というところから締結をしているわけであります。  日本の場合、お話しの国務長官と外務大臣ということになると、最も高いレベルで調印が行われる、私はそのことの意味はあるのだと思っております。日本憲法のもと、そこでの集団自衛権をめぐる制約等々を考えれば、極めて政治的な意義の高い文書、こういうように私は考えます。それだからこそ、これから国会承認のための条約の典型的な形として議論が始まる、こう思うのです。  ということであるとするならば、冒頭のテーマに戻りますけれども委員長、今もお聞きになったとおり、内容についてはほとんど知らされていないのです。有事の場合の適用なのか、そうではない平時だけなのか、アメリカの訓練にどうかかわるのか、あるいは、大事な問題として一体見直し条項が入ってくるのかどうか等々、他国の例を調べた上でも従来余り議論されていないような問題点がたくさん出てくるわけです。  そういうことが明らかにならないと実は本格的な議論は行われにくいわけでありまして、これは国の政策決定についての議論のあり方ともかかわってくると私は思います。さまざまな形でそれぞれの政党が意見を調整したり、またこうした問題についてそれぞれの機関もあることも承知していますけれども、外交問題についてはそれだけ困難性があるのかもしれませんけれども、一たん締結されますと、とにかくアメリカと締結したのだからということがまずありきということになって、その後の議論については、一定の期間内にどうしたってオーケーを出すことが前提で国会にかかってくるということになってしまう。  ということであるとするならば、これは外務省のお役人の皆さんに、そこを中心として議論するだけではなく、それぞれの政党でのかなりの議論が必要ではなかろうか、そうした政党間の調整も必要だと思いますし、閣議でも随分繰り返しやっていただくぐらいの意味のある重要な文書ということではなかろうかと思っているところです。  もう時間の関係もありますので、論点をそこだけに絞りましたけれども、この点、今後の取り扱い方についてぜひ御見解を外務大臣から伺いたいと思います。
  172. 池田行彦

    池田国務大臣 先ほど来政府委員から御答弁申し上げておりますように、今鋭意その作業を進めておるところでございますが、私どもといたしましては、それが合意に達しました場合には国会の御審議に諮る、こういうことを考えておるわけでございます。  先ほど山花委員指摘の中で、他国の例では外交担当の閣僚レベルでのサインではない例の方が多いではないかと御指摘がございましたが、そして、軍の当事者、責任者のケースがあるというお話がございましたが、私も明確には存じませんけれども、あるいはそういったケースでは必ずしも議会に諮るということをしていないのではないかということも考えられます。  そういった意味では、我が国ではそういったところは立法府の御意思というものを十分に尊重しながら、そんたくしながらやってまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。また、これまでも、この物品あるいはサービスの融通の問題につきましては、この国会においても、あるいは各党においてもいろいろな御論議がございました。そういった御論議を私ども外務省としても聞かせていただいておりますし、そういったことも十分念頭に置きながらいろいろその相談をしているわけでございますので、そういったところをひとつ御理解をちょうだいしたいと存じます。
  173. 山花貞夫

    ○山花委員 最後に一言。  大臣御指摘のとおり、それぞれ国内法の違いというところから締結権者等についても違ってきていると思いますけれども日本の場合には、憲法、そして集団自衛権の議論等々と深くかかわるテーマであり、ハイレベルは私は当然だと思っております。最近でも、三月十五日、瓦委員委員長をされている自民党の部会でも、あるいは大出委員委員長をされている社民党の部会でも、それぞれこの問題を含めて非常に関心の高まっている各政党の状況ということもうかがわれているわけでありまして、これから国内法も含めて十分議論する機会をいただきたいということをお願いして、私の質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  174. 吹田愰

    吹田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時三十五分散会