○勝木健司君 私は、
平成会を代表して、ただいま
趣旨説明がありました
宗教法人法改正案に対し、
質問をいたします。
我が国は、現在、内外ともに緊急かつ重要な
課題が山積みをいたしております。
課題解決のためには今こそ政治の
リーダーシップが問われでいるにもかかわらず、前例踏襲、大勢順応、
課題先送りの無責任な官僚主導の政治が続いております。
国内における緊急
課題は、何よりも
景気対策であります。さらには、金融問題、
沖縄問題、そして阪神大震災やオウム
事件で問われました危機管理体制であります。にもかかわらず
政府・与党は、今臨時国会の最優先
課題として、オウム
事件に便乗し、明らかに政治的意図を持って
宗教法人法改正を強引にしかも性急に行おうとしており、極めで不当であり、まことに遺憾であると断ぜざるを得ません。
衆議院特別委員会においては、審議がまだ不十分にもかかわらず、法案審議を強行に打ち切ってしまいました。この法案が、憲法に言う基本的人権の根幹であります信教の自由にかかわる法改正であること、宗教団体の大半も改正に反対をしており、慎重な
対応を求めていること、この法案改正が即オウムの対策に役立つものではないこと等を
考えるなら、
政府・与党の性急にしかも強引に事を運ぼうとする態度は、議会制民主主義を破壊する以外の何物でもないと強く抗議するものであります。
ところで、先般の閣僚懇談会において、武村大蔵大臣、江藤前総務庁長官、島村文部大臣、深谷自治大臣等閣僚の
皆さんが、
政府の憲法第二十条解釈に
ついで、時代おくれの解釈ではないのか、政治への宗教の関与は政教分離を定める憲法二十条に抵触しているのではないかなどと、大出
内閣法制局長官に対して次々に批判し、異論を唱えたとの報道がなされております。
憲法解釈がその時々の与党勢力の都合で変えられ、ゆがめられるなど、もっでのほかであります。中でも憲法を守るべき大臣が解釈改憲を迫るなどは到底許されざる暴挙であります。そこで、再度、憲法第二十条の解釈に
ついでここで
確認をしておきたいと思います。
昨年十月十二日に行われました衆議院の予算委員会に
おいで、大出法制局長官は、一、憲法の定める政教分離の
原則とは、信教の自由をより実質的に保障するため、国及びその機関が宗教に介入し、または関与することを禁ずるものである。二、憲法二十条一項後段は、「いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。」と定めておりますが、ここに言われる「政治上の権力」とは、国または地方公共団体が独占している統治的な権力である。三、政教分離の
原則は、宗教団体が政治
活動をすることを排除するものではない。宗教団体の政治
活動は、憲法二十一条のいわゆる
表現の自由の一環として尊重されるべきである。憲法上、宗教団体は選挙運動などの政治的な
活動が保障されていると、大要以上のように明確に答弁をされております。
これらの憲法二十条に関する
政府解釈を村山
内閣は変えるおつもりなのか、
総理並びに武村、深谷、島村各大臣、明確にお答えをいただきたいと思います。
さらに、
宗教法人法制定の
趣旨に
ついで、昨年十月二十七日の当参議院文教委員会に
おいで、文部省は、第十回国会に
おいで当時の文部大臣が
宗教法人法の
目的は宗教
活動がしやすいようにすることであると答弁したことについては、現在も特段変更するような
状況ではないと明快に答弁をしております。
しかるに、
総理は、法改正の
目的について、認証した行
政府が最低の責任を果たすためには宗教法人の実態把握の手段が必要である旨答弁をしておられるわけでありますが、このことは
宗教法人法の制定の
趣旨に反するのではないか。今回の法改正は、実態把握の名の
もとに国家による宗教法人の管理監督の方向に向かっていることを強く危惧するものでありますが、
総理に明快にお答えをいただきたいと思います。
次に、今回の法改正の
手続に
ついでであります。私は、今回の法改正に至る一連の
過程に
おいで議会制民主主義を踏みにじる進め方がとられており、断じてこれを許すわけにはまいりません。
総理は、さきの所信表明で、「
政府としては、宗教法人審議会における制度のあり方についての慎重な
検討結果を踏まえて、信教の自由と政教分離の
原則を遵守しつつ、必要な法改正に取り組む
所存であります。」と述べられておるわけでありますが、しかし、ごらんのように、宗教法人審議会の
報告は、慎重審議との言葉とは裏腹の
状況の
もとで作成されたものであります。
私どもの調査によりますと、その
報告のまとめ方も、九月二十九日でしたか、会長一任をとることもなく閉会が
宣言をされたわけであります。会長を除き委員の半数七名が異議を述べておるわけであります。具体的には本当のところはどうだったのですかということで、私どもは議事録の提出というのを再三求めておるわけでありますが、いまだに提出をされません。何か知られたら都合が悪いことがあるのでしょうか。提出できない理由というものを明確にお答えいただきたいと思います。
政府は、制度を審議する審議会は
原則公開するとみずからが決めでおられるにもかかわらず、宗教法人審議会の議事録を公開しないというのは、
政府みずからがルールを踏みにじるものであり、これは
国民への重大な公約違反と言わざるを得ません。その後の
手続においても、各省庁間の法令審議がわずか一日しかとられでおらず、また、
事務次官
会議においても正式議題とされていないなど、前代来聞の異例ずくめの連続であります。正規の
手続を無視してまでも拙速に事を進めた理由をお答えいただきたい。
さらに、多くの宗教団体、学者、文化人等、反対もしくは慎重審議を求めており、しかも宗教団体としても自主的に改革を進めようとする動きが出てきておるところであります。また、閣僚の相次ぐ戦争発言と相まって、香港、
中国、フィリピンなど
アジア諸国においても、この拙速な法改正に対して、戦前の軍国主義の復活につながるのではないかとの危惧を表明しております。
一例を挙げますと、香港の九月十四日付の新報紙では、戦後五十年、
最後の謝罪、反省の
機会さえもあやふやにごまかした
日本政府と与党、その
政府が宗教統制しようというのである、
アジア諸国にとってこれほど危険なことはない、決して座視できないことだと述べでおります。
総理は、これらの内外の声にどう答えられますか。答弁を求めます。
今回の改正案は、一言で言いますと、宗教法人を国家の日常的な監視の
もとに置くことを目指すものと言っても私は過言ではないと思います。宗教の自由、思想、信条の自由とは、不当に干渉をされないことだと思いますしかるに、国家の監視下に置くことによって、信仰を持つ人たち、今や、信仰離れから、信仰を持つ貴重な人たちの信教の自由を侵害するおそれは極めて高いと言わなければなりません。護憲を看板としてきた社会党の委員長でもあります
村山総理にとって、到底是認できない
内容ではないのですか。お伺いをいたします。
第一の改正点であります所轄庁のあり方が、法案の目指すところをよく物語っでおるわけであります。
総理自身も、文部省の所轄にしてやはり目が届くようにした方がいいと認めているとおり、所轄庁の権限強化とも相まって宗教法人への管理監督への道を開く第一歩となるものであります。
総理は、現行法が所轄を
原則として都道府
県知事としたこれまでのいきさつを御存じでありますか。戦前の文部省の宗教界に対する統制を壊すことに最大の理由があったのではありませんか。現行法の基本的な思想をなぜ捨て去ってしまうのか、
総理大臣、お答えを願います。
書類の提出義務については、信仰の
対象や宗教
活動の
内容といった情報を所轄庁が結果的に把握することになるとの問題点が明確になってくるわけでありますが、国家がこうした情報を管理しても憲法には違反しないのかどうか、答弁を求めたいと思います。
また、
報告の聴取及び
質問権についてでありますが、戦前のあの忌まわしい宗教団体法十八条をまさに想起させるものであります。現行法でどのような不都合があるというのですか。文部省に思想警察の役割を担わせようとするのですか。明確にお答えをいただきたいと思います。
利害
関係人の閲覧請求権につきましては、宗教法人を無用なトラブルに巻き込むことが危惧をされておるわけでありまして、どのような情報をだれに対して開示するかは、本来、その宗教法人の自主、自律的な
運営にゆだねられる問題でありまして、この規定は自主権、自律権を侵害するものではないのかと思います。お答えをいただきたいと思います。
オウム
事件の裁判が十月、十一月と連日のように行われておるわけでありますが、公判を
通じて大
規模テロ組織オウム教団の凶悪な実態が浮かび上がってきでおります。
私たちは、
改めてここまでオウム教団を放置してきた行政の責任が問われるべきであると
考えます。と同時に、
政府の
対応の甘さを覆い隠すために、憲法に言う基本的人権の根幹を侵してまで
宗教法人法改正問題のみにすりかえようとする、まさに選挙対策というか、政治的意図があるのか、
政府・与党のこの姿勢の卑劣さ、アンフェアな姿勢に強い怒りと憤りを覚えるものであります。
地下鉄サリン
事件発生後、警察庁の
対応、
努力には心から敬意を表するものであります。しかし、警察法第二条にもあるとおり、警察の責務は、起こってしまった
事件の捜査だけでなく、犯罪の予防も大切な柱であります。
そこで、
お尋ねいたしますが、第一に、二回目のサリン
事件の
防止ができなかったこと、そして第二に、治安のよい
日本で毒ガス製造プラントの完成を許してしまったこと、これらの責任は厳しく問われなければならないと
考えますが、自治大臣にお伺いいたします。
オウム教団が上九一色村に進出したのは
平成元年の八月、今から六年も前のことであります。この間に、サリン、VXガス等の化学兵器、ボツリヌス菌などの生物細菌兵器、覚せい剤、LSDなどの薬物、機関銃、レーザー銃等の武器製造が企てられ、
実施されました。テロ組織をここまで見過ごしてきた責任は厳しく問われなければならないと思います。
オウムの脅威にさらされ続けた波野村や上九一色村の住民の
皆さんの苦しみ、坂本さん御一家、長野県松本市の河野さん御夫妻、サリンにより殺害されたり後遺症で苦しむ
被害者とその御家族、財産を奪われ、拉致、殺された信者とその家族、これらの方々の無念さ等筆舌に尽くせぬ苦しみに思いをはせるとき、
政府の危機管理体制の構造的欠陥が指摘、糾弾されて当然であります。
私たちは、専門家等によるオウム
事件検証のための総合的調査検証機関を設置すべきであると主張いたしておりますが、
政府は現在どのような体制で根本的検証を行っておられるのか、
総理にお伺いいたします。
アメリカ議会は、オウム
事件を国際的な重大テロ
事件として、十月末日より二日間、公聴会を開きました。それまでに議会として、五カ月にわたり調査チームを
日本、ロシア、オーストラリア等へ派遣し、独自の調査
報告書をまとめております。
日本で起きた
事件に対する他国のこの取り組みに対し、肝心の
我が国の
対応は鈍過ぎるのではないのか。オウム
事件の検証責任は、
日本国民に対するだけのものではありません。国際社会への
我が国の責任でもあります。
米国議会の取り組みを
総理はどのように
考えておられるのか、お答え願います。
オウム真理教を根絶するために、破防法の即時適用を私たちは主張いたしておるわけであります。
宗教法人法による解散命令が確定いたしましても、任意団体としての
活動が可能であります。根絶のためには破防法の適用が不可欠であり、衆議院の特別委員会でも、公安調査庁長官、法務大臣は、調査も最終の詰めの
段階に来ておると明言をされておるわけであります。
国民の不安を取り除くために、危機管理の最高責任者である
総理に破防法適用の見解をお伺いいたします。
最後に、
宗教法人法の特別委員会の設置に私たちは反対でありますが、設置されました。本来、設置すべきは、オウム根絶、
再発防止のための特別委員会であります。そして、冒頭にも申し上げましたとおり、金融問題、
沖縄に関する特別委員会の設置であります。
国民の生命、財産、生活を守るための国家的
課題を見誤らないように
政府・与党に強く要求し、
総理の見解を求め、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣村山富市君
登壇、
拍手〕