運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1995-11-08 第134回国会 参議院 国際問題に関する調査会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成七年十一月八日(水曜日)    午後一時開会     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     会 長         林田悠紀夫君     理 事                 板垣  正君                 笠原 潤一君                 田村 秀昭君                 直嶋 正行君                 松前 達郎君                 上田耕一郎君     委 員                 尾辻 秀久君                 木宮 和彦君                 鈴木 貞敏君                 馳   浩君                 林  芳正君                 山本 一太君                 泉  信也君                 木庭健太郎君                 高橋 令則君                 永野 茂門君                 益田 洋介君                 萱野  茂君                 志苫  裕君                 清水 澄子君                 笠井  亮君                 田  英夫君    政府委員        防衛庁参事官   小池 寛治君        外務省総合外交        政策局長     川島  裕君    事務局側        第一特別調査室        長        入内島 修君    説明員         防衛庁防衛局防         衛政策課長   守屋 武昌君         外務大臣官房外         務参事官    北島 信一君         外務省国際情報         局分析第一課長 井上  進君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○国際問題に関する調査  (アジア太平洋地域の安定と日本役割につい  で)     ―――――――――――――
  2. 林田悠紀夫

    ○会長(林田悠紀夫君) ただいまから国際問題に関する調査会を開会いたします。  国際問題に関する調査を議題といたします。  本日は、本調査会のテーマである「アジア太平洋地域の安定と日本役割」についで政府から総論的に説明を聴取し、質疑を行います。  議事の進め方でございますが、まず、外務省からアジア太平洋地域中心とする最近の国際情勢について、次に、防衛庁からアジア太平洋地域中心とする最近の国際軍事情勢について、合わせて一時間程度順次説明を聴取いたします。その後、二時間程度質疑を行いたいと存じますので、御協力をよろしくお願い申し上げます。  なお、説明質疑及び答弁とも御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、初めに外務省から説明を聴取いたします。外務省川島総合外交政策局長
  3. 川島裕

    政府委員川島裕君) では、着席のまま失礼させていただきます。  アジア太平洋地域でございます。これは申すまでもないことながら、最近世界で一番経済的にダイナミックな地域であるということで関心を持たれているわけでございます。  私ども、冷戦が終わりましてからいろんな世界じゅうの国と政治討議等閣僚レベル等でいたしますんですけれども、何と申しましても各国の最大の関心事が経済問題、自国の繁栄をどう確保するかという問題意識が圧倒的に前面に出ている時代に入ったというのが実感でございますけれども、その中で一番物事がうまくいっているのがアジア太平洋だということだろうと思います。  それからもう一つ、これはある意味世界史的に決して大げさではなくて意味があると思いますのは、途上国先進国になり得る道筋が見えでいる地域というのがアジア太平洋東アジアだろうと思うわけでございます。  戦後の国際社会におきまして、南北問題と申しますか、持てる者と貧困の者というグループが二つあって、その中で開発途上国の側が先進国に追いつくというか、キャッチアップと申しますか、そういうシナリオがなかなか見えでこなかったことは御承知のとおりでございます。その間、例えば具体的な国を挙げればインドの貧困とか、あるいはアフリカはほとんどいまだに貧困からの脱却の道が見えていないわけでございますけれども、その中にあって東アジアにおきましては、開発途上国一つ固まりとしてだんだん先進国になっていくというシナリオ見えてきたということは、何と申しますか、世界史的な意味があるのではないかと思うわけでございます。  何が起こったかといいますと、日本が一番最初に経済がうまくいき出したわけですけれども、その次に、俗に四匹の竜と言われでおりますけれども、シンガポール韓国台湾香港、この四つが非常に経済が六〇年代、七〇年代から元気になってきたわけでございます。そしてそれを追う形で、ASEANの中のインドネシアマレーシアタイとか、この辺の固まりの国が八〇年代の後半から非常に経済的に急速に加速してきたということでございます。さらにその後を追う形で、ある意味では本命登場という気もするのでございますけれども、中国それからインドシナ経済成長率が非常に上がってきたのが九〇年代に入ってからで、これは現在も続いております。  四匹のものシンガポールとか香港、その辺が経済的に非常に好調になったころは、これはやっぱり儒教文化一つ経済発展の基盤になったのではないかというような分析もされたのでございますけれども、インドネシアマレーシアとか、その辺になりますと基本的にイスラムでございまして、そういうものでもなさそうだということで、もう一度分析をやり直した、いろいろな企てがございます。結論的には、世銀や何かが分析をして、実は非常に平凡な結論でございます。  幾つか申しますと、一つは、みんな市場経済マーケットエコノミーを生かす形で経済発展をやったと。それからもう一つは、その市場経済を生かすという中で国際経済にみずからを結びつけるというか、つまり閉鎖型、自力更生とか自給自足とかそういうのではなくて、貿易あるいは投資受け入れ等むしろ国を開く形で経済開発を試みだという、この二点が基本であろうというふうに分析されております。  例えば、一番最後市場経済でもって最近非常に順調な経済成長をやっております中国も、鄧小平さんが改革・開放路線をやる前の時代は、自力更生を旨としていますと、例えば輸出GNPの五%ぐらいだったんだと思います。それが今の時点ですと、貿易輸出、輸入、それぞれGNPの二〇%に近づきつつあるということで、貿易が国の経済開発を引っ張るという形が非常に特徴的なわけでございます。  それから、市場経済というもの、これはあえて申せば、計画経済に比べまして個人創意を生かすシステムとしてやはりダイナミックに動く非常に基本的なシステムではないかということが改めて定着しているんだろうと思います。これは率直に申して、計画経済の場合だと献身とか自己犠牲をベースに動かざるを得ないわけですけれども、市場経済というものはやはり個人創意、もっとむきつけに言えば、欲得ずくでみんなが動くというシステムの方がやはりみんなが働くということ、これまた平凡な話でございますけれども、そういうことのように思われます。  それから、東アジア特徴といたしまして、政権が大体においで安定していたということでございます。これは開発独裁といって若干民主主義の完全な形ではないのではないかという指摘もありますけれども、例えばインドネシアスハルト大統領とかシンガポールリー・クアンユー首相とか、非常に強力な政治体制のもとで首尾一貫した、つまり政権交代が頻繁にあってそのたびに経済政策が大きく変わるというようなことがなくて済んだというのが一つ特徴でございます。  お手元にお配りしました資料一等最後のページをひとつ見でいただければと思うんですけれども、これは実はインドネシアでよく使われる資料でございますけれども、スハルトさんはちょうど二十五年間治世をしていたわけです。その間に一人当たりのGNPが七十ドルから九百十九ドルとか、その辺は経済指標でございますけれども、もっと下を見でいただくと、例えば小学校の就学率が、治世が始まったころは四一%、それがほとんど一〇〇%になっておるとか、それから平均寿命が二十歳近く延びてとか、そういうやっぱり何と申しますか、一つ成功物語を端的に示す幾つかの指標があるわけでございます。これがまさに東アジア一つの典型的な成長と言えるかと思います。  それから、そういう中で日本として特に付言しなければならないのは、日本は一貫して東アジア経済発展ODA等で支援してきたわけですけれども、特に最近になって日本の直接投資製造業投資というものが非常に東アジアの好調な経済を支援するというか、貢献するというか、非常に大きなファクターになっているわけでございます。  先ほどタイマレーシアインドネシアが八〇年代の後半から非常に経済成長が大きく伸びだと申しましたんですけれども、これは時を同じゅういたしましてプラザ合意の八五年の後で円高が進んだわけでございます。その結果として、日本からより労働コストの安い東アジア、なかんずくマレーシアタイインドネシアの辺に大きく製造業が出ていったわけでございます。そして、同じようなプロセスが九〇年代も引き続き御承知のとおり円高が進む中で今起こっておりますのは中国に対する製造業進出、それから同じような形ですけれどもベトナムヘの製造業進出でございます。これは言ってみれば円高による産業空洞化ということについて危機感が表明されているわけですけれども、逆から見ればこれは円高の結果日本製造業東アジアに引っ越して、その結果産業構造が非常に大きく変わった。それから、その輸出産品も例えばマレーシアであればそれまでゴムとかすずとか、そういうものだったのが、俄然製造業の比率がふえてきたということでございます。  エピソードになって恐縮でございますけれども、昨年の夏に村山総理マハティール首相マレーシア首脳会談をしたんですけれども、そのときにマハティール首相の方から、ことしの夏は日本は物すごい暑いそうで、おかげさまでマレーシアの松下のエアコンが日本に売れて売れてまことに御の字でありますという話がございまして、そういう時代にいつの間にか入っているということをつくづく実感した次第でございます。  それから、例えばベトナムホーチミンシティーでございますけれども、京都の袋帯が向こうでつくられるようになった。これも圧倒的に労賃が低いということで、ですからミクロのレベルでございますけれども、そういう製造業が動いでいくというのは非常に顕著でございます。こういうのが一つ東アジアのパターンでございまして、そういう東アジア経済の急速な発展の結果としてアジア太平洋地域という固まりができたわけでございます。  資料の統計がいろいろ書いてある方の四ページを見ていただくとおわかりになりますんですが、ここに丸が三つ書いてありまして、それぞれの流れがございます。これは要するに日本米国、その他東アジアということでございまして、その三角でございますね、書いてある数字はそれぞれ十億ドル単位でございますけれども、八〇年代の半ばからおととし、九三年までの間に、日本東アジア日本米国米国東アジアと、こういう貿易流れが急速にふえたことを示す図でございます。アジア太平洋と申しますと、要するに簡単に申せば、東アジアが非常にダイナミックな経済成長を進める中で、何と申しましても北米、米国中心、それからその他豪州、ニュージーランド、カナダもそうでございますけれども、そういう国と東アジアとの経済関係貿易投資が急速にふえて、そして一つ地域的な固まりとしての実態を持つに至ったということでございます。  こういう地域繁栄している姿の背景には当然のことながら平和がある、おおむね平和な状況であったということは大変重要でございます。  御記憶のとおり、東アジアベトナム戦争、もっと古くは朝鮮戦争とか、非常に平和ではなかった時期があるわけですけれども、冷戦の終了とともにおおむね平和な状況になって、そして東南アジアにおきまして最後不安定要因だったカンボジア戦争、あるいはインドシナASEANとの対立と申しますか、分極化していたのが冷戦の結果としてこれも終わったという非常に平和な状況でございます。  冷戦のころはまさにインドシナ、なかんずくベトナムにはカムラン湾等に当時のソ連軍が大きな軍事的プレゼンスを持っていて、やはりそこには緊張感というものがあったわけでございます。そして、そのころはまだ、ASEANの方は経済的にはかなりしっかりしていたんですけれども、インドシナ諸国は、カンボジアが典型ですけれども、戦争をしていて非常に貧困というほとんど大変なコントラストがあったわけですけれども、それも終わって、先ほど申しましたとおり、ベトナム市場経済ということで急速に経済成長が始まりつつあるということでございます。  そういう意味で、ASEAN外相会議というのが毎年あるわけですが、ことしのは非常に一つの歴史的な節目になりましたのは、ベトナムASEANに入ったわけでございます。これはASEANというものはそもそもベトナム中心とするインドシナの脅威というものを念頭に置いてできた組織でございますけれども、そのASEANベトナム自身が入るということは非常に時代が移ったと申しますか、ASEANの本来のできた目的はある意味で達成されて終わったということも言えるんだろうという気がいたします。  それから、ASEAN自身は域内の結束を非常に各国が重要にしております結果、それなかりせば顕在化したかもしれないいろんな紛争を未然に封じ込めるという役割を非常に果たしているというふうに言えると思います。  ただ、これまで申したことからすると結構ずくめに聞こえるかもしれませんけれども、若干の何と申しますか要注意という要因があることも事実でございます。  一つ中国動向でございます。これは中国がどういうふうになれば大変だとかいうことを直截に申すというわけではないんですけれども、やはり圧倒的に大きな存在感を持つ中国動向というのはこの地域各国にとって大変注意を払わざるを得ない要因でございます。  中国がどうなるかということは実は大変難しい話でございまして、何と申しますか、即断はできないんですけれども、通常中国分析する際には大きく言って二つの相対するものの分析がされております。  一つは、中国が現在のような高度成長をずっと続けて、経済的に超大国に二十一世紀の前半、早い時期になって、その際に好調な経済のある部分を引き続き防衛力の増強に使っていると中国というのは相当大変な軍事大国になり、経済的にも超大国になり、それは地域にとってどういう意味合いを持つんだろうと心配するような分析でございます。  もう一つは逆のシナリオでございまして、そういう高度成長に失敗して中国が、天下麻のごとく乱れると申しますか、非常に分裂するとか、それに伴っで大変な難民が出てくるのではないかとか、中国がそういう大混乱に陥ったら、それはそれで地域の安定にとっては大変問題ではないかという心配をするシナリオでございます。  そのどっちだと言われても、それは当然のことながら確たることは申せないし、恐らくその間のどこかにおさまるということだと思いますが、やはり中国がどうなるかということは地域の安定あるいは繁栄にとって非常に重大な要因なわけでございます。  実際問題として順調に経済発展していくという可能性ももとよりありましょうが、基本的には相当問題があることは事実だし、それは中国自身も認めているわけでございます。  まずは、経済のマネジメントと申しますか、この大変高いインフレ率に象徴される過熱ぎみ状況、これは短期的あるいは構造的かもしれませんが、やはり大問題でございますが、より大きなのは、あれだけ大きな国でございますので地域的な格差、あるいは農村と都市とか、そういう格差が出てきて、それをうまくコントロールするというのはますます大変になるんではないかということでございます。  特に中国経済が、先ほど申しましたとおり貿易を軸として経済を伸ばしていきますと、どうしても羽ぶりのいい地域と海から離れた内陸の余り羽ぶりのよくない地域ができでしまうわけですから、その辺をどうするかというのがやはりあの大きな国にとっては非常に大問題なんだろうと思います。  それから、汚職とか腐敗とかそういう問題でございます。  これは、実は権力正当性そのものにかかわる話でございまして、これは中国政府にとって大変重要な課題であろうと思います。要は、あの国の大変多くの方、中国の方々にとって経済がだんだん伸びでいくということが非常に重要でありましょうけれども、その過程でやっぱり腐敗とかそういうものが進行するということであると、これはやはり政治的不満というものは高まらざるを得ないということなんだろうと思います。  それからもう一つ腐敗の問題がシステムとして問題でございます。  それはどういうことかといいますと、これは中国ではないんですが、似たようなケースベトナムケース一つ御紹介いたしますと、ホーチミンシティー進出した外国資本、たしかシンガポールだったと思うんですけれども、大変立派なホテルを建てまして、完成の寸前になって市当局が来て、都市計画があるのでそのホテルを壊してくれと言われて、その進出ホテルにしてみればそれは寝耳に水で、慌でて当局と取引をしてお金で話をつけたというようなうわさがあるわけでございます。私が直接確認した話ではありませんけれども。  要するにそういう形で、要はシステム予見可能性が害される場合には経済というのは中長期的には伸び得なくなるわけで、腐敗というより権力が恣意的に容喙、口を出すというシステムをどうやって整理していくかといったら、これは結構、一番最後市場経済経済開発を始めた中国や何かにとって非常に大問題だろうという気がいたします。これは端的に言えば、要は法の支配と申しますかそういうものをどう確立していくかというチャレンジということだろうと思います。  それから、そういう中で、実は中国につきましては今指導者交代時期に入ったというか、入りつつあるわけでございます。今既に取り仕切っでおられます江沢民主席とか、あの方たちは革命を直接やった次の世代でございまして、やっぱり革命を直接やった世代とはちょっと違うんではないかと、指導力においでおのずから、例えば鄧小平さんのようなカリスマはないんではないかという指摘がなされておりますけれども、そういう中で問題が山積する中国をどう取り仕切っで二十一世紀に持っていくかというのはやはり大問題であろうと言われております。  中国、これから実は再来年香港返還があるわけでございますけれども、今香港には、銀行における日本の資産というのは五十何%ですかしら、大変大きなものがあって、そういう観点からも関心を持って眺めているのですけれども、現地でよく聞きますのは、香港中国経済発展にとって極めて重要であろうからおおむね今のシステムが維持されるのではないかという楽観論と、しかし香港香港たるゆえんというのは、まさにそういう法の統治と申しますかそういうシステムがしっかりしているということ、それから官僚が腐敗していなくて非常に有能であって、物事を仕切る大集団がいるということで、その辺のところがそのまま維持されるかどうかと、そこが実は返還以後、香港が引き続き今までと同じような役割経済的に果たし得るかどうか大問題であるという、いろんなことが言われております。  ただ、香港返還というものは、今、中国の何と申しますかナショナリズムという観点からも本当に重要な問題となっておりますし、今後の中国一つ動向を占い得る話だろうと思っております。  それからもう一つ、これは日本にとっても非常に大問題なんでございますけれども、そういう中国の先々の行方という観点から台湾の帰趨というものが非常に問題でございます。  御承知のとおり、台湾民主主義が根づいて、その中で独立を志向する動きというものがおのずからあるわけでございます。これに対して中国は、非常に多くの問題を抱えた中国台湾の問題を、つまり独立を座視することによって、取り扱いを間違えると中国自身が非常に混乱するのではないかという非常に危機感危機意識があるように思われます。そういう中で台湾動向とそれに対する中国の対応というのは、これは一つのやっぱり注意して見ていかなきゃならない要因のように思われます。  ただ、いずれにいたしましても中国が順調に経済発展をしていけば、それはそれで結構なことなんですけれども、要は、その際に中国自身指導者が、国際社会における相互依存と申しますか、そういうものを実感として非常に受けとめるタイプの指導者であればあるほど、より何と申しますか望ましい安定的な中国というものになるのではないかという気がするわけでございます。  御承知のとおり、中国というのは、中華思想ということが言われますけれども、余り相互依存とかそういうことはなしに来た国であります。しかしながら、経済発展自身貿易とか外部世界からの投資受け入れとかそういうことによって繁栄を図るという新たな段階に入っているわけでございます。その中で、おのずから相互依存の網の目の一員としてどういうふうに振る舞っでいくかということだろうと思います。  そういう観点から実は、急に話は飛びますけれども、今度のAPECの作業とか、あるいは今中国がいろいろ作業しておりますけれども、WTOへの加盟とか、国際社会の中でほかの国と一緒になっていろんなことをやるというそういう共同作業、あるいは相互依存とかそういうものに中国がどんどん関与して一緒にやるということが進むのが非常に重要であろうかと考えているわけでございます。  それから、もう一つ注意しなきゃならないのは申すまでもなく朝鮮半島でございます。  これは、冷戦が終わりまして、単純に通常兵器の武器の蓄積というか、軍備、軍事体制というか、そういう観点からすれば一番集中度の高い地域があの三十八度線でございます。この辺は防衛庁の方からより専門的なお話があろうかと思いますけれども、そういう中で北朝鮮がどういうふうになっていくのかということがやはり地域全体にとって、それから日本の安全にとって非常に要注意なわけでございます。  朝鮮半島につきまして、これは御存じのことばっかりでございますけれども、やはり冷戦時代と大きく変わったなと思いますのは次のとおりでございます。  冷戦のときは、何と申しますか、あの半島有事になっちゃいますと、本当に第三次世界大戦米ソ直接対決になりかねないだけに、北朝鮮側には中国ソ連がついていて、韓国側には米国という二分するブロックになっていたわけですけれども、それなるがゆえに米ソ直接対決を避けるとか、そういう観点からそれなりにあそこの半島有事を抑え込む国際政治のばねがきいていたような気がするわけでございます。  それが冷戦が終わりまして何が起こったかというと、今やソ連もなく、ロシア北朝鮮に対する影響力は非常に減っていて、むしろロシア韓国との関係がどんどん進んでおる。それから中国韓国との関係が動いでということで、好ましい進展ではあるわけですけれども、より事態が流動、不安定化し得る枠組みになったと言えないこともないわけでございます。そしてその中で、恐らく北朝鮮にしてみればより孤立感というものは強いんだろうと思います。それからもう一つ冷戦が終わった結果として、北は中ソからのいろんな支援というものが期待し得ないこともこれあり、非常に経済的にしんどい状況に置かれているわけでございます。  そういう中でどうやって、これは言うはやすくして実際どうやるかというのは非常に難しいんですけれども、ソフトランディングとでも申しますか、どうやってあの半島の緊張緩和、そのためには何はともあれ南北間の緊張緩和が先決でございますけれども、どういう形で動かしていくかというのは、これは目の離せない状況でございます。  そういう不安定要因を抱えている東アジアアジア太平洋地域でございますけれども、今度政策意図という観点からしますれば、これは要は繁栄という、つまり経済的な繁栄という面においては現下の状況をさらに好ましい方向にどう持っていくか。まさにAPECの作業自体が貿易投資のより自由化を図るということですけれども、そういう作業一つと、それからその繁栄の基盤となる平和という観点からしますれば、一つは今ASEAN地域フォーラムというのがございますけれども、そういう地域的な対話でどうやって緊張が高まることを防ぎ、より安心感を高めるか。それからもう一つその大前提としてアメリカのプレゼンスというものがやはり安定という観点から非常に重要だと思うわけですけれども、それをどう引き続き確保していくか等々であろうかと思います。  要は、これからの日本にとって引き続きこの地域、ありとあらゆる意味では非常に重要ですけれども、繁栄と平和の両方という観点からいろんな外交努力を続けなきゃならないと思っているわけでございます。  一応ここでやめさせていただきまして、また詳細にお尋ねがございますれば戻らせていただきたいと思います。防衛庁の方に移りたいと思います。
  4. 林田悠紀夫

    ○会長(林田悠紀夫君) どうもありがとうございました。  それでは次に、防衛庁から説明を聴取いたします。防衛庁小池参事官。
  5. 小池寛治

    政府委員(小池寛治君) 防衛庁参事官の小池でございます。  防衛庁に本日求められておりますテーマは、アジア太平洋地域中心とする最近の国際軍事情勢ということですけれども、この地域の情勢は世界の全般情勢と密接に関連しておりますので、全般的な情勢について簡単に概観させていただきたいと思います。  今日の世界においては、冷戦の終結、特にソ連の解体によって世界的規模の戦争が発生する可能性は遠のいたと言えます。こうした変化を受けて、米国、旧ソ連や欧州においては、各国において冷戦時NATO対ワルシャワ条約機構という厳しい対峙を前提として蓄積された戦力の見直し、再編が行われ、域内での軍備管理・軍縮の動きが進展しております。  他方、これまで東西対立のもとで抑え込まれてきた世界各地の宗教上、民族上の問題などに根づく種々の対立が表面化あるいは先鋭化して紛争に発展する危険性が高まっております。また、兵器、特に核物質の流出事案あるいは弾道ミサイルの拡散問題などに見られますように、核・生物・化学兵器といったいわゆる大量破壊兵器やその運搬手段の移転あるいは拡散は、地域紛争を一層深刻化させる要因として国際的にも強く懸念されているということは先生方よく御承知のとおりだと思います。  総じまして、今日の国際軍事情勢は安定的な秩序を求めてさまざまな努力が続けられておりますけれども、その先行きはいまだ不透明であり、明確な方向性があらわれるには至っていないと考えております。  こうした情勢の中で、まず国連ですけれども、国連は国際の平和と安全を維持する役割を従来以上に発揮することが期待されております。  国連の平和維持活動は、冷戦の終結前後から活発に行われるようになり、一九四八年以来今日までに設立された国連のPKO活動のうちの半数以上は九〇年以降に設立されております。しかしながら最近では、強制措置を伴った第二次国連ソマリア活動の例にも見られますように、必ずしもすべての国連のPKO活動が成功しているとは言えないという状況になっております。  ブトロス・ガリ国連事務総長は、本年一月の安全保障理事会に報告書、「平和のための課題 追補」を提出いたしましたが、その中でブトロス・ガリ事務総長は、武力行使を伴う活動というのは現在の国連の能力を超えるということを認めでおります。  また、先ほど申し上げましたように、冷戦の終結を受けで、現在、米国、旧ソ連や欧州においで軍備管理・軍縮の動きが進展しつつあります。核戦力については、戦略兵器削減条約、STARTIが昨年十二月発効いたしました。これは史上初めて戦略核兵器を単に上限を設けるということではなくで削減するという画期的な条約であります。さらに、二〇〇三年初頭までに戦略核弾頭数をおおむね三分の一まで大幅に削減することなどを内容とするSTARTⅡが米・ロシア間で署名されております。通常戦力については、欧州においては九二年に発効した欧州通常戦力、CFE条約に基づいて戦車、戦闘機等々の削減が行われております。  さらに欧州におきましては、冷戦時のNATO対ワルシャワ条約機構の対峙という図式にかわる新たな安全保障の枠組みづくりが探求されております。例えば昨年十二月には、欧州安全保障協力会議、CSCEと称するものですが、その首脳会議においでCSCEの機能強化及びその名称をCSCEからOSCE、すなわち欧州安全保障協力機構へと名称の変更が決定されました。また、NATOとの間で平和のためのパートナーシップに参加した国は、ロシアを含め二十六カ国に上っております。  このように、冷戦終結を契機として国際社会の安定化に向けたさまざまな取り組みが進められておりますが、他方、東西対立の構造が消滅したために宗教、民族問題などに起因する地域固有の種々の対立が顕在化、先鋭化する危険性が世界各地で増大していることは先ほど申し上げたとおりです。チェチェンなどの旧ソ連地域やボスニアヘルツェゴビナなどで見られる紛争はその端的な例ということが言えると思います。  それでは、アジア太平洋地域の軍事情勢に入りたいと思います。  まず、この地域の情勢を概観いたしますと、アジア太平洋地域というのは地理的、歴史的に多様性に富んでおり、各国の有している安全保障観、歴史はさまざまであって、極めて複雑な軍事情勢となっております。  この地域においては、もともと冷戦時においても欧州におけるNATO対ワルシャワ条約機構の対峙といった明確な東西二極の対立構造は存在しておりませんでした。冷戦終結後も朝鮮半島、南沙群島、我が国の北方領土などの諸問題が依然として未解決のまま存在しております。また、この地域世界で最も経済成長の著しい地域一つでありますが、経済力の拡大などに伴っで、域内の多くの国が国防力の充実、近代化に努め始めでおります。また、この地域の政治、安全保障に関する協議を行うASEAN地域フォーラムが創設されるなど、多国間の安全保障に関する対話の努力が開始されておりますが、いまだ欧州に見られるような多国間の軍備管理や紛争の防止、紛争の解決といったものに関する枠組みが構築されるといったような状況にはありません。  このように、アジア太平洋においては、先ほど説明した欧州において起こっているような大きな変化が見られる状況にはまだ至っていないと考えております。  次に、個別の国、地域ごとの情勢について説明いたします。  まず朝鮮半島情勢ですけれども、朝鮮半島においては、先生方よく御承知のとおり、韓国北朝鮮合わせで百五十万人を超える地上軍が非武装地帯を挟んで対峙しております。このような軍事的緊張は、一九五三年の朝鮮戦争停戦協定以降、四十年以上にわたり続いております。冷戦終結後も基本的にその状況は変化しておりません。  北朝鮮は、金日成主席が昨年七月に死去しで一年以上が経過しておりますけれども、いまだ国家主席及び労働党総書記という国家及び党の最高ポストは空席のままとなっております。しかし、国防関係ポストについては、故全日成主席の存命中から金正日書記が人民軍最高司令官、元帥あるいは国防委員会委員長といったポストに就任しており、軍を掌握していると見られております。  北朝鮮は、一九六二年以来、全人民の武装化、全国土の要塞化、全軍の幹部化、全軍の近代化という四大軍事路線に基づいて軍事力を増強してきました。北朝鮮は近年マイナス成長が続き、食糧不足、エネルギー不足などの深刻な経済困難に直面していると見られますが、それにもかかわらず軍事費にGNPの二〇ないし二五%に相当する額を支出していると見られるなど、依然として軍事面にその国力を重点的に配分して軍事力の近代化を図り、即応態勢の維持強化に努めていると見られます。  また、地上戦力の約三分の二を非武装地帯付近に前方展開し、二百四十ミリ多連装ロケットや百七十ミリ砲などの長射程化砲をDMZ付近に増強配備していると見られます。北朝鮮軍は、総兵力が約百十三万人で、その約九割が陸軍という陸軍中心の構成となっております。装備の多くは旧式ですが、近年装備の近代化を企図しており、例えばミグ29やスホーイ25などの新型装備も保有しております。また、ゲリラ戦などを行う特殊部隊及び特殊部隊用の装備を多数保有していると見られております。  北朝鮮の核兵器開発疑惑につきましては、我が国の安全に影響を及ぼす問題であるのみならず、大量破壊兵器の国際的な拡散を防止するという見地から、国際社会全体にとっても重要な問題であると考えております。  本問題については、昨年十月の米朝枠組み合意により、問題解決の道筋が示されたところでありますが、本問題の解決にとっては北朝鮮が合意の内容を誠実に履行することが重要であり、今後の北朝鮮の対応を注意深く見守っでいくとともに、合意内容が着実に実施されるように、日、米、韓及び関係国が引き続き緊密に協議していくことが必要であると考えております。  また、北朝鮮のミサイル開発については、八〇年代半ば以降、射程距離約三百キロメートルのスカッドBや、その射程を五百ないし六百キロメートルに延長したスカッドCを生産、配備するとともに、中東諸国にも輸出してきたと見られております。  さらに、現在射程約一千キロメートルともいわれる弾道ミサイルノドン一号を開発中であると見られ、またノドン一号よりもさらに射程の長いミサイルの開発も目指していると見られております。北朝鮮がノドン一号の開発に成功した場合には、北朝鮮と我が国本州との距離が近いところで五百数十キロでありますので、配備位置いかんによっては我が国の過半がその射程内に入る可能性がございます。  このような北朝鮮の弾道ミサイル長射程化のための研究開発というのは大量破壊兵器の運搬手段の拡散につながりかねず、核兵器開発疑惑と相まって我が国周辺のみならず国際社会全体にとっても重要な問題であり、その開発動向が強く懸念されるところでございます。  次に、極東ロシア軍について述べたいと思います。  極東地域の旧ソ連ロシア軍は九〇年以降は量的には縮小傾向を示しております。またロシアの厳しい財政状況、徴兵忌避者の増加などによる充足率の低下などによって極東ロシア軍の活動は全般的に低調になっております。さらに軍人の待遇の低下や給料の不払いなどによって不満が満ちており、軍の士気も低下していると見られ、即応態勢は低下しているものと見られます。  しかしながら、現在においても極東ロシア軍は地上兵力が二十六個師団約二十二万人、海上兵力が主要水上艦艇約六十隻、潜水艦約六十五隻を含む艦艇約六百七十五隻、約百六十八万トン、航空戦力は作戦機約千機という大規模な戦力が蓄積された状態にあります。さらに、T80戦車の配備、増強、オスカーⅡ級巡航ミサイル搭載原子力潜水艦の回航やアクラ級原子力潜水艦の建造、配備、ミグ29などの第四世代戦闘機の比率の増加など、欧州方面からの装備の移転などにより、緩やかなペースではありますが、近代化は引き続き続いております。  また、ロシアは現在、ロシア連邦軍事ドクトリンの主要規定などに基づいて軍の再編を実施しでいるところでありますが、ロシア軍の今後の動向ロシア国内の不安定かつ流動的な政治経済情勢とも相まって不明確であり、このため極東ロシア軍の今後の動向も不確実なものとなっております。このように膨大な戦力を有し、その動向が不確実な極東ロシア軍の存在は、この地域の安全に対する不安定要因となっていると認識しております。  なお、北方領土に駐留するロシア軍地上軍につきましては、現在も師団規模を維持していると推定されますが、人員充足率は相当低下している可能性が大きいと見られます。なお、北方領土に駐留するロシア軍につきましては、九三年十月にエリツィン大統領が訪日された際に、既に四島駐留軍の半数を撤退させた旨表明しましたが、他方昨年十月にはグラチョフ国防相が、部隊規模や装備の削減を示唆しつつも部隊の引き揚げは行わない旨の発言をしております。  いずれにしましても、我が国固有の領土である北方領土からロシア軍が早期に完全撤退することが望まれます。  次に、中国について説明いたします。  中国は、現在、かつてのゲリラ戦主体の人民戦争の態勢から近代戦に対応し得る正規戦主体の態勢への移行を進めており、また湾岸戦争においで、高性能兵器の威力にかんがみ、軍事技術や装備の近代化の重要性を強調しております。  要するに一言で言えば、中国は現在、国防力の量から質への転換を図っていると言えましょう。中国軍は、陸上兵力九十一個師団、約二百二十万人、艦艇千八十隻、約百二万トン、作戦機約六千百六十機という膨大な兵力を有しておりますが、現状においては旧式装備が大部分を占めております。しかし近年、特に核戦力や海空軍力を中心に近代化を進めております。  核戦力につきましては、現在ICBMを若干基、中距離弾道ミサイル、IRBMを約百基、中距離爆撃機TU16を約百二十機保有しております。中国は核戦力の近代化、多様化を推進しており、新型IRBMの配備やSLBMの開発などを進めております。  また、昨年核実験を二回実施したのに続き、本年五月及び八月にも核実験を実施したことはよく知られております。これは、核搭載ミサイルの長射程化や多弾頭化といった核戦力の近代化に必要となる核弾頭の小型化、軽量化を目的としている可能性が大きいと考えられます。  陸軍につきましては、総兵力約二百二十万人と規模的には世界最大であるものの、総じて火力、機動力が劣っていると見られております。中国は、陸軍近代化の観点から、従来、歩兵師団を中心に編成されていた軍ないし軍団を歩兵、砲兵、戦車部隊、対空部隊などの各兵種を統合した集団軍へと改編いたしました。  海軍につきましては、ルフ級駆逐艦やジャンウェイ級フリゲートなどのヘリコプター搭載可能な駆逐艦、フリゲートの建造及び配備、さらには新型ミサイルの搭載を行っております。また、ロシアからキロ級潜水艦を導入しております。  空軍につきましては、F8Ⅱなどの新型戦闘機の開発、配備を進めているほか、ロシアからスホーイ27戦闘機や新型地対空ミサイルを導入しております。また、このような装備の近代化だけでなく部隊運用の近代化も進めていると見られ、昨年下半期以降、陸空やあるいは海空など異なった軍種間の共同演習を含む大規模な演習を連続して実施している模様であります。本年七月及び八月には、台湾の北の近海におきましてミサイル発射訓練あるいはミサイルを含む実射射撃訓練の演習をそれぞれ実施いたしております。  中国の公表されている国防費は、七年連続で対前年度比一〇%以上の伸びとなっており、特に昨年度及び九五年度は二〇%以上の伸びを示しております。なお中国は、実際に軍事目的に支出している額は中国政府が公表している国防費にとどまらないと見られており、例えば研究開発費などは公表されている国防費には含まれていない模様であります。中国はこのように、近年国防費を大幅に増額するとともに、核戦力や海空軍力を中心に国防力の近代化を進めております。  しかしながら、中国は現在、二十一世紀半ばまでに社会主義強国いわば先進国になることを目指しており、改革・開放路線政策を踏襲し経済開発を続けるということを当面の国の最重要課題としております。また、経済のインフレ基調、財政赤字という困難に直面していること及び先ほど御説明しましたとおり旧式の装備を多く保持しているという事情にかんがみて、国防力の近代化は漸進的に進むのではないかと見られております。  また中国は、九二年二月に、他国と領有権についで争いのある南沙群島や西沙群島などを自国領と明記した領海法を施行いたしました。さらに、九二年十月に行われた中国共産党第十四回全国代表大会の報告にさらに今後の使命として領海及び海洋権益の防衛を明記しで、近年、南沙群島における活動拠点を強化するなど、海洋における活動範囲を拡大する動きを見せております。このような中国の動きについては、中長期的にアジアの軍事バランスにどのような影響を与えるか我々としては十分注目していく必要があると考えます。  また、中国はその軍事力や国防政策を対外的に明らかにしておらず、これらが近隣諸国に不安感を与える要因一つになっております。今後、中国が軍事力あるいは国防政策の分野でその透明性をより高めていくことが望まれる次第です。  長くなりましたが、東南アジア地域の情勢につきましては、ASEAN諸国においては最近経済力の拡大などに伴って国防費を増額し、例えば、マレーシアがFA18、ミグ29を購入し、タイがスペイン製軽空母を購入するなど、新装備の導入による軍事力の近代化を図る動きが見られます。  また、この地域では域内の安全保障についての関心が高まっており、昨年七月にはASEAN中心となってアジア太平洋地域の政治、安全保障について話し合うASEAN地域フォーラムがバンコクで開催され、本年七月その第二回会議がブルネイで開催されております。  南沙群島の領有権をめぐる問題については、現在、中国台湾ベトナム、フィリピン、マレーシア及びブルネイが全部または一部の領有権を主張しております。同群島をめぐっては、八八年に中越海軍が武力衝突し一時緊張が高まりましたが、その後は大きな武力衝突は発生しておりません。しかし、九二年には先ほどの中国領海法が施行されたことに関係国が強く反発したり、あるいは最近では中国がミスチーフ礁に建造物を構築したことによって緊張が高まりました。他方、九二年七月にASEAN外相会議においで南沙群島問題の平和的手段による解決などを盛り込んだ南シナ海に関するASEAN宣言が採択され、九二年十一月には中越間で領土問題を平和的に解決することで合意するなど、この問題の平和的解決を目指す動きも見られます。しかしながら、関係各国の協議にはまだ大きな進展は見られず、解決のめどは立っていないというのが現状でございます。  最後に、アジア太平洋地域におけるアメリカ軍の状況についてちょっと触れたいと思います。  米国は、従来から、我が国を初めとするアジア太平洋地域の平和と安定の維持のために重要な役割を果たしできでおります。米国は、これまで、この地域に陸海空軍及び海兵隊の統合軍である太平洋軍を配置するとともに、我が国を初め幾つかの国々と二国間の安全保障取り決めを締結することによってこの地域の紛争を抑止し、米国と同盟国の安全を守る政策をとってきております。  米国は、九〇年四月、東アジア太平洋地域の米軍戦力を段階的に再編、合理化する戦略構想、EASIを策定して、九〇年から九二年までの第一段階は計画に沿って約一・五万人の兵員を削減いたしました。それから九二年十一月には、米・フィリピン軍事基地協定の終結に伴ってフィリピンから完全に撤退いたしました。しかし、第二段階では、主として韓国からの地上部隊の撤退が計画されていましたが、他方同時に、北朝鮮の核兵器開発問題に関する危険や不確実性が完全に解消されるまで撤退は延期されるということになっておりました。  その後、九三年九月に発表されたボトムアップ・レビューでは、北東アジアにおける前方展開戦力について、現状とほぼ同じ規模の十万人程度を維持することを表明しました。また、本年二月に発表された米国東アジア太平洋地域における安全保障戦略、いわゆるEASRにおきましても、米国はこの地域における重要な国益を守るため引き続き前方展開戦力を維持する必要性を強調しで、今後もこの地域において現状の十万人程度の戦力を維持することを再確認しております。  アジア太平洋地域においては、いまだ欧州におけるような多国間の安全保障の枠組みが構築されるような環境にない状況におきましては、日米安全保障条約を初めとする二国間関係と、これに基づく米国のプレゼンス及びコミットメントは、この地域の平和と安全にとって依然として極めで重要であると認識しております。  以上でございます。
  6. 林田悠紀夫

    ○会長(林田悠紀夫君) どうもありがとうございました。  以上で説明の聴取は終わりました。  これより質疑を行います。  本日は、あらかじめ質疑者などを定めず、委員の皆様に自由に質疑を行っていただきます。質疑を希望される方は挙手を願い、私の指名を待つで質疑を行っていただきたいと存じます。  質疑のある方はどうぞ挙手をお願いいたします。
  7. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 平成会の直嶋です。最初に、幾つかまとめでお尋ねを申し上げたいと思います。  一つは、これは外務省及び防衛庁にお尋ねしたいんでありますが、きょうはアジア太平洋のお話ということで、当然先ほども言及はなかったんでありますが、インド、これはアジア太平洋地域に隣接する人口十億を超える大国であります。このインドの現状、経済発展等それから軍事力の面での最近の特徴及びインドの動向が、先ほどお話ありました例えば東アジアにどのような影響を及ぼす可能性があるか、こういった点、まず第一点であります。  それからあわせまして、今との関連で申し上げますと、外務省にお尋ねしたいのは、さっき防衛庁の御報告の中ではロシアについで、特に極東ロシア軍について不透明かつ不安定要因であるというようなお話がございましたが、このロシアの全体的な状況、先ほど余り詳しくお触れにならなかったようでございますのでお答えを賜りたいと思います。これが第一点であります。  それから二つ目でありますが、第二点目、ちょっとまとめでで恐縮ですが、ほかに質疑されたい方もいらっしゃると思いますので、まとめて申し上げます。  先ほど外務省の方のお話にございましたが、特に東南アジア地域中心にして、さっきインドネシアスハルト体制を例に挙げられて開発独裁政治体制といいますか、こういうものの効果といいますか、こういうお話がございました。これは、例えばシンガポールの一人当たりGDPは、もう既に大体EUの平均並みに達しているかと思いますし、幾つかもうヨーロッパに近い経済水準に達している国はアジアであるわけであります。例えばそういう中で台湾とか韓国の例に見られるように、ある程度経済発展とあわせてやはり政治体制としては西欧型民主主義に志向していく、こういう国民的な盛り上がりといいますか、そういう方向が私は出てくるんではないかと、経済発展がある程度進んでいけばそういう可能性があるんじゃないか。  特にこれは最近、開発独裁型と西欧民主主義型ということを言えば、例えばアメリカとの関係においで、一時東南アジア地域の国から、アメリカが余り人権問題等を押しつけることについて反発が出るとか、そういう事象が出ておりました。  日本の外交を見ていますと、さっきODAのお話もありましたが、これまではいわゆる経済的な支援を中心にして、発展に対して貢献をしていく、こういうことでまいったと思いますが、私は遠からずやはり経済発展がある程度進んでいけば、今申し上げたような政治体制をめぐるさまざまな動きというのが出てくるんではないか。  そのときに、じゃ日本の外交の考え方として、従来のような方針でアジア太平洋、特にアジアの国々に対して対処をすることができるんであろうか、あるいはアメリカとの関係でこれまでの方向の修正が迫られる、こういうこともあり得るんじゃないかと、このように思うわけでありますが、何年先かわかりませんが、こういった点についで御見解があれば外務省の御見解をお尋ねしたいと思います。  それから、もう一点だけちょっとお聞きしたいと思います。  私、実は昨年末に韓国に参りまして、韓国の国会議員と、特に南北朝鮮朝鮮半島の情勢なんかも含めていろいろと議論をさせていただいたわけでありますが、そのときに実はショックを受けたことがございます。  というのは、韓国の方々の対日観の中で、日本は今非常に軍備を増強している。そして近い将来核武装をする可能性がある。要するに、日本の今の状況が軍事的に見て韓国に対して脅威を与えている、こういう見解を述べる方が結構おられました。また、韓国政府の中にもそういう見解をお述べになる方があります。  そういう視点で見ました場合に、例えばさっき防衛庁の方から、中国の軍事力増強についてお触れになったわけでございますが、中国日本の今の軍事力の増強をどのように見ているのか、こういった点について御見解があればお伺いをしたい。  それからもう一つ、それとあわせて今後特に中国台湾関係を考えました場合に、日本の安全保障上、中国台湾関係動向日本の安全保障にどのような影響を及ぼしてくるのか、あるいは例えば日中関係は非常に重要であると、こういう前提に立って台湾との関係を考えたときに、台湾との関係悪化がもし中台紛争の中で、日本台湾関係が仮に悪化するようなことがあった場合に、日本の安全保障に対してどういうことが想定をされるのか。  以上、長くなりましたが、三点についで御見解を承りたいと思います。
  8. 川島裕

    政府委員川島裕君) どうもありがとうございます。一時間ぐらい話せそうな話でございますけれども、簡単に、それからロシアは私どもの専門の課長に振りたいと思いますが、その前に一通りさせていただきたいと思います。  まずインドでございます。非常におもしろい状況でございましで、三年ばかり前にインドは経済政策の基本を全面的に変えたわけでございます。それはまさに先ほども申しましたんですけれども、市場経済でもって経済開発をするというのが東アジアだけではなくて、というか、東アジアの成功を見でいたインドがついに変わったということでございます。  その結果として、それまでは国を閉じていたのが投資を大いに受け入れるということに踏み切りましで、それから計画経済から、要するに市場経済、その結果としての規制撤廃に移っておりまして、それに伴いまして、日印経済関係が急速に動いております。主として投資がこれから出そうな感じになっております。  これまでは日印関係は、心理的距離と言っておりますけれども、みんなASEANまでは出かけていったんですけれども、そこから先のインドに対して出ていこうという雰囲気が非常になかったんですけれども、ここ一年ぐらいの状況として大きく変わったと。ですから、市場経済と開放体制を通じる経済開発、何度も申すようでくどいんですけれども、それが中国とインドという巨人にまで及んだというのが非常におもしろいところだろうと思っております。そして、それをにらんでASEAN諸国も、東アジア日本とかそっちも向いでいますけれども、インドとの経済関係というものを非常に、一つにはASEANには結構インド系の方もおられますし、つながりを強めているということでございます。  それから、軍備といたしましては、これはやはり大国でございますし、大国に伴う自意識と言ってはなにかもしれませんけれども、やはり軍事的にも強いものを持っております。インド洋のあの地域ではやはり圧倒的な強力な国でございますけれども、ただ国内的にカシミール問題というパキスタンとの問題とか、取り扱いを間違えるといろいろ多宗教で一気に国内混乱を招きかねないという危機感はどうしでもあるように思います。  それから、東アジア開発独裁についてお話がございまして、これは非常に難しいというか、確かに日本東アジアとのつき合いとしてこれからいろいろ考えていかなきゃならないポイントであろうと思います。まさに御指摘になりましたけれども、韓国とか台湾とか、それからタイがそうなんですけれども、民主化が動いたわけでございます。まさにこれも経済開発一つの産物でございましで、どういうことかというと、都市部を中心経済開発の結果、割に確固たる中産階級が出てきて、その中産階級を基盤として民主化が進んでくるというのが大体シナリオでございます。そういう形で進むのが恐らく非常に望ましいんだろうと思います。  それから、開発独裁というものはそれなりの役割を果たしたことはさきに申したとおりでございまして、マクロ経済の運営とか安定しておりましたけれども、それは姿としてはやはり民主主義というものがより定着する方が基本的価値という観点から望ましいことは間違いないと思います。それからもう一つ、より民主的な体制の国が並ぶ方が恐らく武力紛争というのは多分起きないんだろうという、これは蓋然性の問題があるわけでございます。  それとの関連で、外交としてどうするかなんですけれども、人権というものと民主主義というものが非常に不即不離なんですけれども、若干違いますのは、やはりそれぞれの国について体制を変えろとかいうことはやってはいないわけでございます。他方、より民主的な方向に動くということではそれは大いに歓迎すると。その意味でそれを、エンカレッジと申しますか、大いにその方向で励ましていくということはあるんだろうと思います。ただ、なかなかそれぞれの国との関係で、おまえの国は民主主義でないから罰するとかいうようなことはやってなかったということでございます。  他方、人権は民主主義一つの基本なわけですけれども、具体的にどこかの地域の弾圧があるとかいうときに、やっぱり弾圧みたいな行為は望ましくないんではないかということは従来からも言っておりましたし、これは基本的な価値たる人権として今後とも大事にしていかなきゃならないところだろうと思っております。  それから、軍備と脅威論でございますけれども、韓国中国と、これはもう感覚論になるものですから明快に申せないんですけれども、恐らく韓国の方が日本に対する警戒感の方はより強いんではないかという気はいたしますし、実は北朝鮮の核開発の問題のときにも、私はそのころ韓国におりましたんですけれども、心配なのは北朝鮮の核ではない、北朝鮮の核を口実に日本が核武装するのが一番問題なんだというのが圧倒的な意見でございまして、韓国のマスコミとか、これは私は日本の核に対する受けとめ方とかいうのがまだまだ定着しでないというか、あるいは警戒心が強いなということで、非常に対応に苦慮したことがございます。  やはり韓国から見ると、そういう日本の一挙手一投足、防衛面での動きというのは非常に過敏に見えるということだろうと思います。中国も、そういう面があるかないかと言われればそれはあるんだろうと思いますけれども、韓国みたいに先鋭な形での警戒心の表明というのはないような気がいたしております。  いずれにいたしましても、こういう心配する向きをどうやって心配しないでいいよと、理解をしてもらうかというのは、これは積み重ねた対話というものが非常に重要でございますし、結局二国間でいろんな防衛面、安全保障面についての対話を、あるいは民間レベルのセミナーみたいなものも非常に重要でしょうし、あるいは政府間で当局者同士とか、そういう相互理解の積み重ねというものが、やっぱり迂遠なようですけれども非常に重要なんではないかという気がつくづくする次第でございます。  それから、中国台湾、これは本当に日中関係を進めていく上で台湾の問題というのは常に大変難しい問題となっております。  それで、御承知のとおり中国側は、台湾の動きに、独立というものに本当に走った場合には武力行使を辞さずという姿勢を折に触れでいろんな方が打ち出しております。私どもとしては、そういう事態にならないことを当然のことながら期待する次第ですし、今すぐ武力行使どうこうという話ではないと思います。それから台湾サイドも、独立ということに伴うリスクというものは当然のことながら知っている方が多い。  ただ、日本の安全保障という観点から申しますれば、あそこで武力行使というかそういう事態になりますと、先ほど私が申しました東アジアアジア太平洋繁栄とか平和というものが本当に吹き飛ぶわけでございますし、それから中国自身そこまで踏み切った場合には、やっぱり改革・開放路線を通じて経済成長をやっていく、それが中国の国のなりわいと申しますか、最大の優先順位であるというところが消し飛んじゃうわけですから、そう簡単な話ではないと思いますけれども、依然として非常に注意して眺めていかなきゃならない状況であることは間違いないと思います。  ロシアにつきまして、分析課長に譲りたいと思います。
  9. 井上進

    説明員(井上進君) 外務省分析第一課長の井上でございます。ロシア情勢全般ということで御質問がありましたので、ロシアの情勢一般について御説明します。  御高承のとおり、ロシアは来月の十二月十七日、国家会議選挙、日本で言う衆議院の選挙でございますが、議会選挙がございますので、今その運動が本格化しております。また、来年六月には大統領選挙がございますので、その動きも含めていろいろ内政が動いております。また最近は、十月二十六日にエリツィン大統領が七月に次いで再び心臓の病気で入院するという事態が生じまして、今ロシア情勢、非常に不透明かつ流動的になっているというのが私どもの見方でございます。  内政面では一番注目されますのは、何といってもエリツィン大統領の健康問題でございます。エリツィン大統領は前から心臓には病気があるということが言われでおりましたが、ことしの七月に入院し、さらにまた十月二十六日に入院したわけですが、虚血性心疾患というふうに言われております。大統領補佐官によりますと、現在、容体は向上しているということで、つい先日もテレビに出て、記者会見といいますか、チェルノムイルジン首相と一緒にテレビに出たわけですが、補佐官も懸念しでおりますように、状況によっては入院が長期化するという事態も考えられますので、エリツィン大統領の容体については我々も非常に注目しで見守っでいるところでございます。  このエリツィン大統領の入院がロシアの内政に与える影響ですけれども、確たることは言えないという状況ではございますが、もし仮に入院がかなり長期化しますと、やはり今、選挙を前にしていろいろ流動化しているロシアの政治状況がさらにまた不透明性を増すということは可能性はあるのではないかと考えております。それから、十二月十七日に予定されている選挙でございますけれども、こちらの方はいろんな党派が乱れて立候補しておりますので、今の時点で結果を予測することはできませんが、現段階である程度一言えることは、ロシアの共産党を率いるジュガーノフ議長の共産党、あるいはその旧共産党と言われております農業党等のいわゆる保守系の党派が票を伸ばすのではないか。あるいはレベジ将軍の率いますいわゆるロシア共同体といった愛国的、民族的な党派が票を伸ばすのではないかという見方もございます。  いずれにせよ、チェルノムイルジン首相の率います我が家ロシアを初めとするいわゆる中道派、改革派がどの程度票を伸ばしますのか我々としても非常に注目しでおるところですが、現段階ではこういった状況でございますので、確たる結果を判断することはできない状況でございます。  それから、外交面につきましても、エリツィン大統領入院によりまして、既に十月三十一日の旧ユーゴ首脳会議、それから十一月上旬に予定されておりました訪中、ノルウェーの訪問等がキャンセルされておりまして、今後のロシア外交、エリツィン大統領の健康問題も含めてロシア外交がどうなっていくかということを我々は注目している次第でございます。  以上でございます。
  10. 小池寛治

    政府委員(小池寛治君) 直嶋先生の御質問、防衛庁に与えられました三点について簡単に御説明いたします。  まず、インドについてですけれども、インドとパキスタンとの間の抗争というのは、建国以来カシミール問題をめぐって続いておりますが、対話は余り進展しでいないというふうに承知しております。解決のめどが立っていないということで、インド・パキスタンの対峙している関係というのは、基本的にそういう構図は変わっていない、おまけにインドもパキスタンもNPT条約に加入していないという状況でございます。  ちなみに、インドは軍事力で見ますと、世界第二の陸軍国で百十万人の陸軍を擁しており、海軍は二十六万トン、うち空母二隻を保有しており、それから空軍については八百九十機というかなり大きな兵力を有しております。先ほど申し上げたように、インド・パキスタンの基本的な対立の構図というのは変わっていないということだと思います。  それから、韓国の、日本の軍備増強について懸念あるいは脅威感を持っているのではないかということにつきましては、確かにそういう面があろうかと思います。近い国でありますけれども、両国の自衛隊をどうするか、それから韓国との間の防衛当局間の交流というのも従来余り頻繁に行われていなかったというのが現状でございます。  昨年十二月に韓国の練習艦隊が日本に寄港いたしましたが、これは日本に対する初めての訪問がようやく昨年実現したというような状況でございます。しかし、我々としても、韓国との間の交流というのを深めていくことがお互いの信頼関係を深め、間違った認識を持つということのない最善の道だと考えております。  ちなみに、九月に衛藤防衛庁長官が韓国を訪れましで、国防長官とも会談し、あるいは総理とも会談したんですけれども、衛藤長官の方から、日本の防衛のあり方、憲法のもとで専守防衛に徹しで軍事大国にならない、非核三原則を維持して、日米安保条約を堅持するということ等を説明して、総理も日本の立場を理解するということをおっしゃったという経緯があります。我々としては、引き続き韓国との間の相互交流等に努めでいきたいというふうに考えております。  それから、中国台湾との関係についでですけれども、中国の首脳は、台湾の統一に当たっては平和的な統一を目指す、しかし武力行使の可能性というオプションも放棄していないということはたびたび発言しているところであります。それから、本年七月及び八月に台湾近海においてミサイル発射訓練などを実施する等、いろんな演習などでいわば牽制ともとれる動きを示しております。  他方、中国台湾との間では、経済交流あるいは人的な交流も盛んであって、我々当事者でない者にとってははかり知れないような関係中国台湾の間にあるかと思います。  先ほど外務省川島局長からお話がありましたように、中国台湾が今後その両者の関係をどのように持っていくかということについでは、軍事面のみならず、その国の置かれている立場、国際環境等を考慮しで恐らく慎重に判断しでいくものではないかというふうに考えております。  以上でございます。
  11. 永野茂門

    ○永野茂門君 中国関係と南北鮮関係についてお伺いをいたします。  まず、中国問題ですけれども、一つは、台湾独立志向的な行動は、最近非常にテンションが上がっているというか、非常に盛んにそういう動きをしているようでありますが、独立志向でそのように全くその方向で動いてもらうと大変なことになりますので、これは抑制しなければいけない、こう思うわけでありますけれども、日本としては、特に台湾あるいは中国を通じで、あるいはその他の手段を通じて台湾独立志向をソフトにしていくというような手段は何かとっておりますか、ということが一つです。  もう一つは、中国は、先ほど御説明がありましたように大変に軍事力を増強しておりますし、核兵器の改善開発といいますか、これも続けておりますし、領域法というのか、領海法とかいうようなものを宣言しで、尖閣列島も中国の領域内というようなことを言っているわけでありますが、こういうことはアジア全体とか日本にとって、そしてまた世界全体のことを考えると決しで好ましい動きではないんで、私は、中国に対しては、こういう軍事的な動きに対しては、あるいは軍事増加しているという、軍事力増強等についても、もう少し日本は積極的に援助を縮小するとか、もっとはっきりした行動をとった方がいいと思うんですが、これについて外務省はどういうようなお考え方を持っているのかというのが、第一に中国関係はそれだけ。  それから、朝鮮半島の問題でありますけれども、南北両韓といいますか、両朝鮮といいますか、半島全体として恐らく非常に敏感に警戒をし、状況によっては対立的な、あるいは敵対的な行動に移るという可能性が残っているのは、周辺諸国では日本に対してだけだと思うんですね。これが南北鮮の共通の関心事かもしれません。  したがって、そういうようなことにならないようにやっていくためには、それ相応の対応の仕方がなきゃいけないと思うんですが、その点についてどういうようにお考えになっているかという点、この二つをお伺いします。  ついでに、手続上といいますか、事務的な問題ですけれども、先ほどアジア太平洋地域の御説明の中にロシアが入っていないのでロシア説明を同僚がお願いしたわけでありますけれども、ロシアをここから除いておったというのは何か特別な理由があったのでしょうか。  同じようなことですけれども、極東とかあるいはアジア太平洋地域と言う場合に、どこまで西の方は含むんでしょうか。インドの話は先ほどありましたけれども、ミャンマーも中国との関係において、インド洋への進出だとか、あるいはかつてのビルマ・ルートのような使い方もあるわけでありまして、そういう意味においても、ミャンマーも極東あるいはアジア太平洋地域と考えておいた方がいいんじゃないかと思うんですけれども、どういうように考えてこの御説明はやっていただいたんでしょうかということと、同じく事務的なことですけれども、統計の中で中国という中には台湾は入っているんでしょうか、入っていないんでしょうか、例えば、貿易の量とか、そういう場合に。  以上お願いします。
  12. 川島裕

    政府委員川島裕君) 先に手続的な話の方からさせていただきます。  東アジアアジア太平洋と言うときにロシアの話をしませんでしたが、一つはAPEC、経済面で申しますとどうしでもAPECが中心になるものですから、お配りしたものの八ページをちょっと見ていただくと、いろんな楕円が書いてございましで、どういう切り方になっているかということがおわかりいただけるかと思います。  それで、ASEAN地域フォーラムという一等上に出ている割に大きな円がございまして、これは中心にあります日本韓国ASEAN米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドというのに加えて、ロシア中国、パプアニューギニアと、これだけ入っているわけでございます。ですから、そういう意味では、安全保障をめぐるやりとりの地域的な動きについてはロシアも既に入っているわけでございます。  他方、APEC句アジア太平洋経済協力というのは、この右側に飛び出している楕円でございますけれども、これはロシアは入っていなくて、かわりにメキシコ、チリ、香港台湾というのが入っているということでございます。  ですから、どこまでかと言われますと、若干その辺は確たる定義はないわけでございます。
  13. 永野茂門

    ○永野茂門君 しかし、アジア太平洋を考える場合に、ロシアを扱いで考えるというのは、一般的には含めて考えるのが当たり前じゃないでしょうか。
  14. 川島裕

    政府委員川島裕君) いや、除外してとか、特に安全保障という観点から、極東のロシアの軍事力というのは、さっきお話もありましたとおり、それはもうそれを入れなければ考えられないことはおっしゃるとおりでございます。  それから、ミャンマーは実は多分入ってくるだろうと思います。これは、やっぱり南アジアというのは、バングラデシュから向こう側とミャンマーからこちら側、つまりインドシナの三カ国と前からのASEANの六カ国、インドシナの三カ国の中のベトナムASEANに入って七カ国になったわけですけれども、それにミャンマーが入って十カ国が一固まりで東南アジアの共同体みたいな感じになるんではないかなというのがだんだん出てきているのがことしぐらいでございます。ですから、そこのところが一つの境界、アジア太平洋の境界線になるんじゃなかろうかと。  しかし、これも必然的なものではございませんで、インドがみずからも市場経済をやっていて、行く行くはAPECとのつながりを強めたいという姿勢がございますし、そうすると、そこは少し南にあり過ぎるからだめだというロジックも余りないという気はいたします。  それから、中国の話でございますけれども、台湾独立の余りそっちの方に走らない方がいいんではないかという、言ってみれば友情ある助言みたいな話ができるかどうかということだろうと思いますけれども、御承知のとおり、台湾との関係は、政府関係は持たないという中での関係なものでございますから、そこは直接の対話というようなものはないわけでございます。ただ、いろんな台湾の民間の方と、あるいは日本の民間の方とのやりとり等を見ていても、やはりそこは軽々にその独立というものに踏み切るというのは、それはそれで問題であるなどいう、危険が多過ぎるんではないかという認識は台湾の方も随分多くの方が持っておられるという印象は持っております。  こういう表現を聞いたことがございますが、台湾共和国という表札の上に薄紙一枚が張ってあって、その薄紙一枚の上には中華民国と書いてあると。で、その最後の薄紙というのははがさないんだという表現を聞いたことがございます。ただ、民主主義の中でナショナリズムが高ぶるということはあり得るわけですから、そこのぎりぎり確たることは申せませんけれども、まあ日本側としてのそれなりの問題意識というものは台湾の方たちもわかっているんではないかという気はいたします。  中国との関係で公式に台湾についで、端的に言えば、手荒なことはするなというようなやりとりをしているかと言われれば、それはやっておりません。  ただ、いろんな中国との安全保障等の対話におきまして、やはりこの地域の平和的な環境の維持というものが日中両国にとって非常に重大であるということの認識は分かり合うべくやっておりますし、中国にしても、そこは武力行使のオプションというものは残すという姿勢は維持しつつも、基本的には、現状の改革・開放路線というものを進める大前提としては、中国をめぐる平和な環境が重要であるということは重々わかっているのではないかという気がいたします。  それから、朝鮮半島の問題でございますけれども、ちょっと御質問が、若干理解しているかどうかわからないんですけれども、要は、緊張緩和の方向に日本としてどういう手だてがあり得るかということでございましょうか。
  15. 永野茂門

    ○永野茂門君 私が申し上げているのは、韓国の方も、国会議員にしろ大臣にしろ、どんどん若手にかわってきましたね。若手にかわってきたということは、こちらから見れば、反日、抗目的な教育を受けた人がもうほとんどになってきたわけですね。したがって、総理の発言にしろ、あるいはきょうの総務庁長官の発言にしろ、非常に敏感に反応していますね。我々が日韓議員連盟等でいろいろやりとりしても、最近のやりとりというのは非常に難しいことを感ずるわけですよ。  そういう意味からいきますと、もともと北と一緒になった場合に、どういうような動きをするんだろうかと。そして、朝鮮半島全体として、ロシア中国それから日本と、こう考えた場合に、何といいますか、歴史的に見ても利害が衝突するとか、あるいは歴史的な両方の反感があるわけですから、したがって、両方が一体になって、軍事的に直接動くということは別にして、それに近いようなことが将来あり得るということは考えておかなきゃいけないんじゃないか、そういうものに対して今からそういうようなことがないような手套打つべきだろう、それはどういうようにお考えになっていますかと、こういう意味です。  そういうことを想定する必要はないと言うんたら、まあそれで結構なんです。
  16. 川島裕

    政府委員川島裕君) なかなか微妙な問題でございましで、もう一つ韓国の圧倒的に多くの有が考えておるのは、日本は統一に反対だと、何となれば、統一すると日本にとってより強い隣国が出て、そしてそれは日本にとって非常に望ましくないであろうから、したがって日本は反対しているに違いないと、こういう論理で決めつける方が割に多いわけでございます。私どもは、平和的な統一であればまさに分断国家の悲劇が解消されるわけでございますから、それを統一に反対しているというふうに受けとめるのは間違いであるというふうに常時言っておりますけれども、これはなかなか消えないわけでございます。
  17. 永野茂門

    ○永野茂門君 その点も、私なんかが話をしてみて、どっちから先にそういうような話が出てきたかといいますと、私どもが平和的な統一が当然のことだと思ってそっちの方向でお話をずっとやっていたわけですけれども、それが、あなた方、それでは南北一体になった強い朝鮮半島の状態、一緒になって敵対するということについては何も警戒しないんですかと、そっちの方が怖いんじゃないんですかというのは向こうの学者の話からだんだんと出てきた話であって、私は逆な提起の仕方だと、こういう感じを持っていたんです。
  18. 川島裕

    政府委員川島裕君) 歴史の教訓みたいな話でございまして、特に冷戦のときはある意味で敵味方というのは割にはっきりしていたわけですけれども、それが終わって、まして半島も統一されてというようなときにどうなるだろうかということを考えると、どうしてもみんな結局歴史のテキストに戻って物を予測しようとする面があるんだろうと思うんです。そうするとやはり日本じゃないかと、こうなるわけで、地政学的必然性みたいに考える方が出てくるんだろうと思うんです。  ただ、そういう話ではないと。また、帝国主義時代のとったりとられたりの世の中に戻って、得るものは何もない時代に入っているんですと私片もは思うわけですし、そこのところを辛抱強く話すということでないと歴史に戻っちゃうと。いや、そうはいってもまた中国日本が脅威になるに違いない、したがって朝鮮半島としては力をためてと、こういうような発想になりがちなわけでございます。  もう一つ言えば、安全保障面ではASEAN地域フォーラムというのがあって、それから経済面ではAPECというのがあるわけですけれども、実はこれはまだ本当にひ弱と申しますか、ようやくスタートした枠組みでございますけれども、この地域にとっての意味合いは実は大きいんだろうと思っております。  それは、この地域とヨーロッパの一番の差は、ヨーロッパの方は非常に域内協力というものがそれなりにもう長い歴史があって、そういうものを通じてのみ平和と繁栄が確保されるというのが定着しているわけでございます。したがいまして、共同作業をするというか一緒にやるんだというのが皮膚感覚と申しますか、かなり定着しているわけでございます。  ところが、ASEANという割に似た国の固まりはございましたけれども、日本韓国中国も入ってという、あるいはさらに安全保障であればロシアも入ってというような大きな固まりというか地域機構というのは非常に最近でございます。一緒にそうやって平和を確保し繁栄を求めるというか、共同作業の感覚がようやくできてきた話でございます。そういうものができると、今お話ししているような歴史のみを教科書として将来を見る心理状態が若干だんだん変わってくるんではないかと期待できるわけでございます。  つまり、いろんなセミナーや何かに行ってどうしても感じますのは、韓国の方にしても中国の方にしても東南アジアの方にしても、力関係とか国際情勢、国際関係を見る分析が、非常に帝国主義モデルで見るというところがありまして、一緒になって問題を解決するというポスト帝国主義モデルに実はなっているしヨーロッパなんかはそうなっているんだと思うんですけれども、そこのところがいまだしの感があるというのが私の実感でございます。
  19. 山本一太

    ○山本一太君 自民党の山本です。いろいろお聞きしたいことがあるんですけれども、ちょっと絞って伺いたいと思うんです。  アジア太平洋地域の安全保障ということを考えた場合、やはり先ほどもお話がございましたけれども、アメリカの軍事的プレゼンスというのが非常に重要だということでございまして、その中でもやはり日本にとっての基調は何といっても今の日米安保条約の堅持ということだと思っております。  それが例の沖縄問題をきっかけに、冷戦後の日米安保条約の再定義ということが今言われるようになって、今度村山総理とクリントン大統領が会見する二十何日ですか、あの後もたしか日米安保共同宣言というのを出すという予定になっているというふうに伺っておりまして、今、日米両国で大体どういう草案にするかという詰めを行っているというようなことも聞くんです。  その中で、先ほどから出ている中国の脅威について、アメリカ側がある意味ではこれをはっきりその共同宣言の中に盛り込みたいという意向があると。これに対して日本側は、日中関係、いろいろな配慮からそこのところをちょっと濁すといいますか明確にしたくない、そういう争点が今あるやにも聞いているんですけれども、中国の脅威ということに対して、本当に日米の間で認識の違いがあるのかということをちょっとお聞きしたいと思うんです。  先ほど局長がおっしゃいましたけれども、このまま中国GNP伸びていくと二十一世紀初頭には日本を抜いて超大国になると。そのときに、よくアメリカのジョセフ・ナイが言っているような、中国が本当に周りの地域と協調して進む責任大国になるのか、あるいは経済大国は軍事力券持ってもいいといういわゆる中国的な思想に従って脅威となるのかという問題、ここら辺についで日米で認識の差があるのかということをまず一点お伺いしたいんです。  もう一つの点なんですけれども、私自身はやはりアジアの安全保障を考える上で日米安保条約というのは不可欠であるというふうに思っているんですが、やはり沖縄の問題を境に再定義、外務省の方は再定義というか再確認という言葉をたしか使っているかと思うんですが、日本側でも、先般の日経新聞の調査のように四〇%が日米安保条約は要らないんじゃないかというような状況が世論調査で出てきていると。  今回の沖縄問題について、ちょっとアメリカ側の友人なんかに聞きますと、彼らは日本の対応に不満を持っていると。なぜかというと、今まで日米安保条約をかなりストレートに応援してきたいわゆる自民党の政治家がはっきりと物を言ってくれなかったということで実は国務省の中にはかなり不満があるという話も私はちょっと聞いております。  一番心配しているのは、アメリカの中で日米安保は必要ないんじゃないかという世論が起こってくることだというふうに今まで思っていたんですが、十一月の初めぐらいに、御存じだと思うんですけれども、例のCAT〇戦略研究所の方から論文が出まして、日米安保は必要ないと。日本のアメリカに対する依存度を深めるだけだし、この日米安保というのは本当に片務的なものだから日米両国の関係からいってこれは必要ないという戦略研究所の調査がどうも出てきたやにも伺っているんです。  この点については、アメリカ側のその動きを外務省としてどのようにとらえられているのか、それについてどういう方向で対策を講じていかれるのか、この二点を伺いたいんです。
  20. 守屋武昌

    説明員(守屋武昌君) APECが終わってからの日米首脳会談における共同宣言の件でございますが、昨年九月から日米の両国政府で検討を行っております。  その作業の目的は、冷戦構造が終了いたしまして、日米安全保障上、安全保障体制の今日的な意義というものを両国民にわかりやすく説明する、こういう観点から作業を続けているところでございます。私どもといたしましては、米国との安全保障体制というのは我が国の安全の確保という面からその機能は依然として重要である、それから我が国周辺地域における平和と安定の確保のためにも必要不可欠と、こういう認識でございます。それで、この日米安保体制を基調とする両国の緊密な協力関係というものは、この地域の平和と安定にとって必要な米国の関与と米軍のプレゼンスを展開する基盤となる、こういうふうな認識のもとに作業を進めているところでございます。
  21. 川島裕

    政府委員川島裕君) 最初に、中国脅威論でございますけれども、私は結論的に申せば、日米間に認識に差はないと思っております。米国の対中観でございますけれども、若干経緯を申しますと、ことしの五月でしたか、李登輝総統の訪米というのが動き出して大変に米中関係が、雰囲気が悪化したわけでございます。そのときに、いろんな分析がございますけれども、中国側は、米国が軸足を米中関係から台湾に移して、いわば対中包囲というか、対中脅威論に基づいて対中包囲網をつくり出したんではないかという非常に危機感中国の側で持ったんではないかという分析がございました。そういう危機感から見れば、七月には米越正常化があり、何と申しますか、対中包囲網が続々できているというふうにとらまえたくなるような事象もたまたまあったわけでございます。  そういう状況を踏まえまして、米政府が何存やったかというと、脅威論はとらないということを非常に明確に言うとともに、中国を仮想に脅威扱いすると、これは予言の自己充足性という言葉をよく使っておりましたけれども、結果として脅威になっちゃう。そうではなくて、中国とのつき合いの続け方にもよるわけですけれども、それからもとより中国の出方にもよるわけですけれども、積極的にまさにいろんな地域協力とか、いろんな国際問題の対応に当たって中国一緒にやる、中国の関与を深めていく形で対中関係を動かしていくということが非常に重要である。したがって、脅威論を軽々にとることはしないというのを非常にいろんな演説、クリストファー長官の演説等で繰り返し繰り返しやって、これはそれ自体一つ中国に対するメッセージそのものだったわけでございます。  そして、日本はそれではどうかと言われれば、これは先ほど中国の軍事情勢について防衛庁の方からお話がございましたけれども、それは確かにいろんな動向というものは注意深く見ていく必要があろうかと思います。中国とそういう意味でいろんな安全保障のやりとりを行いますといろんな返答が返っできます。予算がふえているといってもインフレ率を考えるとそんなにふえていないとか、最後に到達するのが、装備の近代化はするけれども、中国というのはもともと過去百五十年侵略ばかりされてきた、そういう中でそれなりの防衛力を持つということはそうあれこれ言われる話ではないと思うというような姿勢をとるわけでございます。  そして、日本といたしましては、やはりこれは注視をするということが一つ。それからやっぱりもう一つ中国に対しては非常に大きな額のODAを供与しているという観点で、ODA大綱という観点からも軍事費の動向とかそういうものについては非常に関心を持つわけでございます。他方、脅威かと言われれば、そこまで行ってはいなくて、注意して見ますと。  問題は、重要なのは、先ほども申しましたけれども、それよりも中国自身相互依存関係というもの、それを通じて平和を確保し繁栄を図るということが何よりも今後の中国繁栄と平和にとって重要であるというふうに判断を固めると申しますか、そういう中国になっていくということがやはり一番重要だろうし、そういう中での中国の改革・開放路線の支援であり、あるいは軍事、安全保障面で言えば日中間の間断ない対話であり、あるいはより域内の多数国の枠組みであればASFAN地域フォーラムでのいろいろな対話の促進でございます。  ちなみに、ASEAN地域フォーラムというのはできて二回目でございますけれども、やっぱり東アジアのほかの国にとって中国はどうなるかというのは、それは大きいものですから圧迫感というのはあるわけです。そうすると、中国を含めてまさに国防政策の透明をお互いに確保しましょうという作業とか、それから行く行くは、すぐ南沙の問題が思い浮かぶわけですけれども、そういう地域の紛争、多くの場合中国も関連する問題ですけれども、それを多国間の場で対応していく流れをつくっていくのが非常に重要なんではないかという問題意識をいろんな国が持っているわけでございます。  そういう中で、何と申しますか、脅威論あるいは封じ込めに頼った対中政策というのではなくて、中国のいろんな共同作業への関与の度合いを増し、かつそれが中国自身自分の利益になるという納得ずくと申しますか、そういう中で対応していくというのがやはり重要なんではないかというのが私どもの考え方ですし、その意味では日米間ではそごはないという気がいたしております。  それで、具体的にどういう文言にするかということはまだ全く固まっておりません。ただ、脅威だから大変だとかそういうトーンにはしたがってなることはないと思います。
  22. 林芳正

    ○林芳正君 自民党の林芳正でございます。  今の山本先生の御質問にちょっと関連するかもしれませんけれども、先ほどの御説明で、多国間の安全保障の枠組みづくりということで信頼醸成から予防外交へ、こういうことが合意されておるという御説明外務省の方からあったと思います。防衛庁さんの方からは、なかなかアジアは多様であって、いまだそういう状況にはないんだということでございましたけれども、今後中長期的に見た場合に、先ほどの日米安保を堅持していく、これはもっともなことでございますけれども、アメリカの世論等を見ても永久に続くのかたという素朴な疑問があるわけでございまして、まず一点は、来年大統領選挙がございますので、このときに今の沖縄の問題等が大統領選のイジューに絡めて浮上してくる可能性についてどういうふうにお考えかということが第一点でございます。  それから第二点は、中長期的に見た場合に、だんだんとアメリカのモンローイズムが周期的に出てくるような可能性の中で、マルチの場としてASEANリージョナルフォーラムということ以外に、例えば国連のESCAPですとか、先ほどのいろんな地図がございましたけれども、どういうような楕円をお考えになっておられるのか。また、そういうことは必要がなくて、引き続きアメリカが軸でスポークが韓国日本やANZUSへ出ておるという体制でいくんだというお考えなのか、その辺のことが第二点でございます。  第三点は、ちょっと先ほどの永野先生の御質問に関連するんですが、韓国のお話で第二世代は大変に日本について抗日教育を受けた世代が今中心にある。第三世代というのがちょうど我々の世代でございまして、もう日本についての抗日教育の後で大変に日本の大衆文化等になじんだ世代が三十代前半を筆頭に来ておる。その世代が第二世代に入れかわるまでまだ大分かかるからその間危ないだろう、こんなような話を聞くんですが、そのことに対する御見解、もしあればお聞かせいただきたいと思います。
  23. 川島裕

    政府委員川島裕君) 先ほど一つ答弁漏れと申しますか、CATO研究所のお話がありましたものですから、それとアメリカ国内の受けとめ方でございますけれども、確かにCATO研究所というのが安保解消しろと。具体的には、深刻な脅威は存在せず他の脅威も自衛隊によって対処できるとか、日本及び韓国が自国の防衛のために必要ないかなる戦力も構築し維持する経済資源を有していることにかんがみ、すべての米軍は三、四年以内に日本韓国から撤退すべきである等々を言っているわけでございます。それで、ちなみに、この研究所は冷戦が終わったからということではどうもなさそうで、冷戦時代も、アジア地域の米軍は撤退させろ、同地域の安全保障は同盟国に任せるべきであるということを既に提言を繰り返している研究所のようでございます。  ただ、これが主流がといえばそうではなくて、例えばランド研究所のように、これは「束アジアに潜在する不安定性及び危機」という報告を出しておりますけれども、日米同盟は安全保障のための保険、地域の安定化要因及び日米協力のための基本的な政治枠組みとして引き続き有益であるという提言を出しているのもあるわけでございます。  それで、アメリカの国内のムードがどうなるかという、これは難しいお尋ねでございます。  確かに心配する向きはおられまして、つまり、非常に内向きムードをむしろ旗印として政治で動かしていこうという流れがあるのも事実でございます。そういう観点からすると、そもそもまさに孤立主義というのはそういうことですけれども、別に東アジアだけじゃなくて、もうアメリカが国際的にそういう役割を担うというのはやめろ、手を引いてしまえという、それなりに一部の世論にアピールを持つ声というのは、これは今に始まったことではなくて折に触れて出得る話でございますし、さればこそ、日米安保関係というのは日本においてもアメリカにおいても当然視しても大丈夫ということじゃなくて、常に注意は払って、維持と申しますか、意味合いについて認識を常に新たにし意を用いていかなきゃならない関係だろうと思います。  それで、大統領選挙でございますけれども、これはちょうど一年後にどういう政治風土になるかということはとてもわからないものですから申せませんけれども、ただ、やはりそういうふうに冷戦の後で前と違うではないかという議論がより出やすい環境であるだけに、お話も出ましたけれども、もう一度再確認と申しますか、そういう作業というものは今の時点でまさに重要になっているんだろうと思います。  それから、ASEAN地域フォーラムのお話でございますけれども、これはお話に出ましたけれども、やはりお互いに対話を通じて、例えば国防白書をお互いに公表しましょうということでなるべく透明性をふやすとか、そういう形で安心感を深め、次第に紛争の予防とかそういう分野にまで踏み込もうという、ようやく始まった組織でございますけれども、これは基本的に信頼感のネットワークというか、安心感というか、そういうものをどうやって醸成させていくかの場だろうと思うわけです。  他方、日米安保というのは、やはりそれは抑止力と申しますか、そういう二国間の結びつきでございまして、そこは両々相まってということはあり得ましょうけれども、こういう言い方ができると思います。ASEAN地域フォーラムが抑止力のかわりになるというような話ではどうもないんではないかと。ただ、そういう両方の作業が進み、安心感とか信頼醸成が進み、かつ紛争というものが事前に摘み取られ解決をされていけばそもそも抑止力に依存する重要性というのは相対的に減るかもしれない、そういうことはあるかと思いますけれども、これは長い長いプロセスではないかという気がする次第でございます。  それから、韓国の第三世代なんですが、まさに御承知のとおり、今の第二世代は、韓国でいう指導的な立場の方はちょうど学生時代には日韓正常化の反対デモをやった世代でいらっしゃいます。それで、その次の世代、確かにポップカルチャーが、それはテレビとか音楽はもう日本と同じような話で、恐らく一番似たポップカルチャーでございます。恐らくその中で違和感というものがお互いにない世代というものは出ていると思いますし、その観点から、施策としては青少年交流というのは非常に重要だろうと思います、ホームステイとか。既に随分日本から修学旅行なんかで行く学校もふえておりますけれども、そういう形で期待したいのが一つ。  それから、私は韓国にたまたま最近まで在勤した個人的な経験ですけれども、反日というものは強いけれども個々人の日本人としては韓国の個々人の方と仲良くするのは全く問題ないんですね。そこで、個々人ベースで物すごい反感をぶつけられることは余りないというのは救いのような気はいたします。やはり基本的にはそういう人間関係の幅というか、そういうものが一つと、それから、その背景として日本側での朝鮮半島についての歴史認識というものはやっぱり持って、その上で長い時間かけていくということしかないんではないかという気がいたします。
  24. 林芳正

    ○林芳正君 ありがとうございました。
  25. 田村秀昭

    ○田村秀昭君 平成会の田村でございます。  外務省川島局長に御質問させていただきます。質問は二点であります。  まず、日米安保は日本にとって死活的であるけれどもアメリカにとっては死活的でないわけですね。という認識に立って、外務大臣とか総理大臣が国民に向かって、なぜ日米安保は冷戦後必要なのかということをもっとPRしてもらわないと私は困るというふうに思っでいるんです。  それで、これは今、山本先生も、この前外務委員会で笠原先生も非常に危機を感じておられる発言をされましたけれども、私も全く同感でありまして、日米安保は不可欠、米軍のアジア太平洋における存在は不可欠でありますなんということをちょろっと言ってもらったんじゃ困るわけですよ。これはもう本当に不可欠なんです。  なぜ不可欠かということをちょっと私申し上げますと、まず日本は資源がないから毎日マラッカ海峡を約二十万トンクラスの船が二百隻日本に資源を送っできているんですね。日本の防衛だけの観点から立って見でも、これのシーレーンを確保しているのはアメリカなんですね。これをアメリカが引いたらどういうふうになるのかと。もう一九七三年にオイルショックのときにトイレットペーパーで行列して並んだような姿にすぐなるわけですね。これは我が国の海上自衛隊が守っているんじゃないんだから、日本の防衛についても米軍がいでもらわなきゃ困る。  アジア太平洋においても我が国の防衛だけ考えでみてもそうなんです。ましてや今は、先ほどから韓国日本に対する不信とかいろいろ言っていますね。これは、日米安保を結んでいる限り、アメリカ軍がいる限り日本軍事大国になることはないわけです。ということをアメリカから言ってもらえるわけですね。  それと、新しい意味で、今度クリントン大統領が来られて再確認というのか何かされますね。そのときに、今までのような日米安保の結び方では僕はだめだと思う。まず集団的自衛権を認めないとだめだ、そのくらいの覚悟がないとだめだ。なぜかというと、日本とアメリカの大きな違いは、自由とか平和とか人権とかということを我々は大切なことだと言う、アメリカもそう言っている。だけれども、アメリカはそれを守るためには武力行使も辞さないという決意があるわけですね。日本には全くない。そこが大きな違いなんです。だから、そういう国を本当に信頼するかといったら信頼しないですね。  それから、西ドイツが日本と同じような過去の歴史を持ってきた。だけれども、なぜEUが成功したか。これはNATOにおいて献身的な貢献を西ドイツはあの時期やった。日本はしていない。献身的な貢献を我が地域においてしていないわけですよ。それで、昔は軍隊が出ていったかもしれないけれども、今はそういうことはしない。だけれども、いろんな商社やいろんな人が東南アジアに出ていった。出ていって、日本人の行うことは非常に身勝手なんです。向こうが一生懸命お祈りをしているときにゴルフをしてみたり、これは日本人が非常に身勝手だからだと私は思うんです。  だから、そういう身勝手な国は、今後ともいろいろ対話とかなんとか言われているけれども、信頼されないですよ、これは。総理大臣だっでそうでしょう、四十年間日米安保反対と言ってきて、総理になったら急に賛成するんだから。それは国内的にはそれでもいいですよ、まあいいやと言って。だけれども、外国から見たらそんな国は信用しないと私は思うんです。  それで、今後ともアジアの中でいろんなフォーラムをおつくりになって信頼醸成、それは結構です。だけれども、北朝鮮韓国中国台湾が入ったそういう枠組みをつくらない限り、この地域でヨーロッパのような安全保障の枠組みをつくりましょうなんというのは空論なんだから。だから、米軍の存在が必要であるということをもっと強く国民のすべての人にわかるようにしないとだめなんだと私は思っているんですが、川島局長のお考えを聞かせていただきます。
  26. 川島裕

    政府委員川島裕君) 重く受け取らせていただきたいと思います。集団的自衛権の話になりますと、これは政府の立場があるものですから、ここで私……
  27. 田村秀昭

    ○田村秀昭君 あれは法制局もそういうことを言っているんですよ。役人がそう思わないとだめですよ。
  28. 川島裕

    政府委員川島裕君) ちょっとここでは、そこまではようできない感じがするんでございますけれども、ただ、PRの点につきまして私どもも、PRという言葉の響きが若干抵抗感なしとしないんですけれども、やはりもっと日米安保の重要性というものについて努力をすべきではないかということは感じでおります。  特に、日米安保条約について必要であると答えた方が、これは一つの世論調査ですけれども、八月が六割だったのが四割に落ち込んだというような指摘の中で、やはり日米安保の重要性についで幅広い国民の皆さんの理解を得ていくことは非常に重要だろうと思っております。  そういうこともあって、例えばクリントン大統領が訪日される際には、日米間でいろいろこれまで積み重ねてきた安全保障問題、安全保障関係に関する日米間の対話の成果を総括して何らかの文書で発出したいというふうに考えておりますし、その文書の作成に当たりましては日米安保体制の今日的な意義、重要性というものをできる限りよく理解いただけるようなものにしたいと考えておるわけでございます。そのほかに、広報面でどういうのができるかというのは、さらに知恵を絞りたいと思っております。  アメリカにとって死活的、日本にとってほど死活的ではないんではないかという御指摘もございましたし、確かにそういう……
  29. 田村秀昭

    ○田村秀昭君 いや、日本にとって死活的なんですよ。
  30. 川島裕

    政府委員川島裕君) 日本にとって死活的なのに比して、アメリカにとってはそれほど死活的ではないんではないかという御指摘でございましたけれども、どれくらいその重要度に差があるかどうかについてはいろんな考え方があろうかと思いますし、事実、先ほどもお話ししましたとおり、米国の中には不要論というのはあるわけでございます。  いろんな考え方があると思いますけれども、今の米国政府は、やはり米国アジア太平洋地域の一部分をなしておって、したがって、このアジア太平洋地域の安定と繁栄米国の基本的な国益を反映しているという認識をとって、その上での日米同盟関係アジアにおける米国の安全保障のかなめであると位置づけておりますし、そういう見方に立って米行政府が事を取り進めているということはそれなりの意味はあろうかと思います。ただ、御指摘のいろいろな点は、私としても重く受けとめさせていただきたいと思います。
  31. 笠原潤一

    ○笠原潤一君 自民党の笠原です。  実は、川島さんも覚えておられるかもわかりませんが、私は、ことし必ず李登輝さんは行きますよと言ったんですよ。外務省のどなたも皆さんは絶対一〇〇%あり得ないと言っていましたね。しかし、現実に李登輝総統はアメリカヘ行ったんですよ。  それは幾つかの理由があるんです。だってあの人はコーネル大学ですから、まずコーネル大学の話からしなきゃいけませんが、そんなことを私が言っても時間が長くなりますが、要はアメリカは基本的に農業国家であると。そして、コーネルというのはやっぱりフロンティアですから西へ西へ進んでいった。アメリカというのは基本的に農業国家ですから、当時コーネル大学というのは世界にエキスパンデッドしたわけですよ、農業を通じで。  だから、ここのリュニオンで呼ぶといったら反対できませんよ。これをやめたらアメリカのいわゆる伝統主義が崩れることになるから、必ず彼は呼ばれると僕は思っていたんです。そのとおり行ったんですよ。外務省にも幾つかの立派なアメリカの大学を出る人はいるかもわかりませんが、そこら辺から考えて、歴史観からまず入っていかなきゃいかぬと私は思うんですよ。  それはさておいて、これは行ったんですから、間違いなく私が言ったことが当たって皆さん方の予言は全然だめだったんです。私はそういうことで自負するわけじゃありませんが、国際情勢も同じですよ。今、田村先生も皆さんもおっしゃるように、アメリカの国務省の中でプロシャパニーズはどんどん減っていったわけです。昨年から日本に対してアメリカの中の有識者も非常に冷ややかになってきたんです。これは外務省の皆さんもよく御存じだと思うんです。  これは何かといえば、はっきり言って多神教と一神教の違いなんですよ。わかるでしょう。いや自民党も長い間だったが、あんなに簡単に知らぬ間に今度は一緒になったと、こういうことです。細川さんのときは多少ちょっと違ったわけですよ。しかし細川さんも何かああいうことで失墜してしまいましたが、いろんなことは言いません。  こういうものが根底にあるんですから、アメリカの有識者を初め大部分の人たちも日本に対する大変冷ややかな態度をとったことは事実です。その延長線上に今回の安保の問題もまた生まれてきているわけですよ。アメリカの若者が無理をして遠い異国まで行って、そして自分の命を投げ出さなきゃならぬわけです。しかし、そのようなふうにだれも見てくれないところへどうして行かなきゃならぬかというのはアメリカの中の大きな世論になってきているわけです。  アメリカというのは広い国ですから、アメリカの上を飛行機で飛んでごらんなさい、四時間も五時間も時差があるんです。そして、ディープサウスやネブラスカ、ウィスコンシンあるいはダコタの田舎へ行って日本のことを言ってもだれも知らないですよ。多少知っているかもわかりません、それは日本の車が入っていますから。そこの中で、アメリカというのはいろいろな意見がありますが、ナショナルユニットが働くときは大変なことになるんです。  ですから、そういう点でいうと来年の大統領選挙はどういうふうに転ぶかわかりませんよ。しかし現実に今、ペリー国防長官が言ったその内容は、河野さんとどういう話をしたか言われませんから私はわかりませんが、恐らくかなり突っ込んだ話があったと思うんです。本質的にアメリカ側も日本側もTMD構想に非常に大きなウエートを置きかけています、これは膨大な金がかかるんですけれども。  はっきり言って、沖縄からも後ろへ下がりたい気持ちもあるんですね、実際言ってアメリカの中には。それは、この前言ったようにグアムからハワイの線まで引いていこう、しかしそのために、じゃ米軍のプレゼンスをどうするか、それと同時に兵力をどう維持するかということになっていって、それはやっぱりそういう人たちを置くよりももっとそういうTMDとかFSXにかわった方がいいじゃないかという気持ちもあるわけです。そうなったときに、日本がそれだけ対応してくれるかということも一つ大きな問題だと私は思っています。向こうもそれを言ってきたと思うんです。TMD、FSXへ、もっと防衛をしっかりしたい。  そして、もし仮に米軍が引き揚げでいろんな問題が起きたときには一体どうなるのかというと、日本は御承知のように憲法九条がありますからこれ以上自衛力ではそういうことはできませんから、大変困るのは日本側であって、実際、今米軍がそのような形で徐々に撤退、あるいはこの間も言ったようにフィリピンのクラークやあそこのような形になっていってしまったら大変だということもこれは想定できるわけです。  そこら辺の問題をもう少ししっかりと、政府の方も何か六〇%が四〇%に減ったとかなんとかということじゃなくて、そういう醸成したものを本当の意味でわかるように現実のリアルな話をもう少ししていかないと、国民世論のということで片づけてしまっては私はいけないと思うし、そこら辺の取り組みが一体どうなっているかということをまず一点お伺いしたいと思います。
  32. 守屋武昌

    説明員(守屋武昌君) アメリカとの日米安全保障体制の重要さというものは、政府としてもその必要性の認識を大変強く持っておるところでございます。  現実問題としまして、日米安全保障体制が有効に機能するためにはその信頼性を確保するということが大変重要でございまして、特に冷戦構造崩壊後の日米安全保障体制の意義、役割、そういうものについで、先ほどから御議論がありますように日米両国の国民の中にいろいろな意見があるわけでございますけれども、私どもはその中にありまして日米安全保障体制の必要性というものを国民に理解していただくことの必要性を十分感じでおるところでございます。APEC終了後共同宣言を発出しようというのもその意図に基づくものでございます。  2プラス2という会議は、日米間で合意しましてからしばらく開かれていなかったわけでございますけれども、今般ペリー長官が来られましたときに、少なくとも年に一回以上は今後は定期的に開こうということでございます。それから、防衛首脳会談、それから防衛庁外務省の次官、局長級とアメリカの国防、国務次官補級との会議も定期的に開こうという合意を持っておるところでございます。  それから、私ども、信頼性の向上ということで、ホスト・ネーション・サポートの充実というものに、厳しい財政事情ではございますけれども、アメリカの極東における駐留を容易にしようという観点から、これは防衛予算の厳しい枠の中ではございますが維持している、特に努力しているところでございます。
  33. 笠原潤一

    ○笠原潤一君 ホスト・ネーション・サポートですが、これは本当に我が方では特別協定です。在日駐留米軍に対する経費を負担する特別協定をえらい長い文章で日本語は書くんですが、向こうの方は簡単にホスト・ネーション・サポートです。ホストであるネーションがどうサポートするかだけの話ですから。そういうことからいえば、日本が在日米軍におってもらっで、そして経費を負担しなきゃならぬ。それはなぜかといえば、アメリカというよりも日本の方が必要だから、我が方が必要に応じてその経費を出してでもおってもらうということでしょう。もしそれがいなかったら、先ほど言った極東の脅威というのは大変なことになりますから、その点が一点ある。  それと、先ほど話がありましたが、米国人の方はどちらかというと日本人よりも中国人の方に親近感を感じているわけです、長い歴史の上からいっても。中国人社会がいかにアメリカの中に溶け込んでいるかというのは日本人社会以上ですから。そういう点からいえば、時々は米中はぎすぎすしますけれども、お互いの話というのは、コミュニケーションというのは非常にいいわけです、これはもう第二次世界大戦の例を見てもわかるように。ですから、その点では我々はそういう点をもう少し認識しないと、日米というよりも中米の方が本当を言えばタイトなんですよ、いろんなことからいって非常に関係が深いわけですから。そういう点で、その点もしっかり把握しておかないと日米という問題は将来大変なことになるだろう。  この前、ちょうどAPECを控えて、我が自民党で御承知のようにAPECの問題でアメリカとオーストラリアに行ってもらったんです。そのときに、オーストラリアのキーティング首相がこう言ったんです。中国の李鵬さんと会ったらどう言ったかといいますと、日本とのいろんな話をしたら、いや日本という国は四十年後にはなくなってしまうかもわからぬと、そう言ったというんです。これはうそじゃありません、これはほかの先生みんな行って言っているんですから。それくらい軽視されているわけです、ある意味では。そこら辺をしっかり把握しないとこれは大変なことになると思うんです。  そういう点で、アジアのいろんなAPECを含めた問題の中で日本がどういう立場でどういうことをこれからやっていくかということが非常に大きな問題であって、その点を私は非常に心配しているわけです。  それから、李登輝さんの問題もそうですが、日本はかたくなに李登輝総統のあれを拒んでいますね。私は河野外務大臣にいつも言うんです、中台の間はだれが中へ入るかといったら日本しか入る者はないんですよ、それを円満に解決しなかったらこの問題はいつまでたっても解決しないよと。台湾は二千万の人口で、五千万の華僑がおって、そして御承知のように外貨の保有は日本に次いで第二位です。そして、中台間も非常に交流があるけれども日中間もあって、それが何か仲間外れにされてしまって、今回もこういう形になってやっているというのは本当に真の意味での善隣友好にもならぬし、片方だけ外しで片方だけやったらこれは大変なことです。  例えば、ちょっとした問題があってこの前も中台は一応絶交状態になりましたね、何とかという湖の下に船が沈んだことによって。だから、ああいうことがないようにするためには、やっぱりお互いにひざを交えて話すような場に向こうの代表者も出さなかったらこれはおかしいんです。なぜ日本だけが敬遠しでいるかということ。人権とか民主主義の基本的な原則から外れたことをやっておって、これは私はおかしいなと思うんです。例えば一挙に台湾を認めよとか、そういうことを言っているわけじゃないんですけれども、そろそろそういうことも、お互いにぎすぎすしでしまってやらせなかったら、これは日本の立場はないし、そういうものを新たに言うようにしないと日本はリーダーシップを発揮できない国になってしまうんですよ、アジアの中で。そういうことをもう少し私は考えてもらいたいと思うんですが、その点いかがですか。
  34. 北島信一

    説明員(北島信一君) 笠原先生から、来週大阪で開かれますAPEC大阪会議について言及がございましたので、簡単に私どもの考え方を申し上げたいと思います。  APECは、経済の議論をする場ということでございますけれども、いろいろな意味合いを持っていると思います。日本の長期的な経済発展アジアからの信頼を高める、アジア太平洋の政治的安定にも間接的に貢献する、それから米国中国、そういった国の関与を確保する、それからさらに豪州、ニュージーランドや中南米諸国との連携も確保するということで、非常に大きな意味合いがあると思っています。具体的には、去年のボゴール宣言を受けて行動指針を取りまとめるという非常に大きな仕事がございます。具体的には、アジア太平洋方式といったことでガットやWTOとは違った形で行動指針を取りまとめたいと思っでいますし、基本的には開かれた地域協力ということで進めたいと思っていますけれども、非常に大きな意味合いを持っている会議ですので、ぜひ成功させたいと思います。  台湾からの出席問題につきまして笠原先生から言及がございました。今検討が進んでいるというふうに承知しておりますけれども、これまで総理それから外務大臣等、いろいろな場で御説明してきていますように、これはマルチの会議でございます。要するにマルチの会議ということですので、日本としての立場とは別に議長国としてマルチの会議の円滑な運営という観点から、前例を踏まえて考えていきたいということを申し上げてきている次第です。  以上です。
  35. 川島裕

    政府委員川島裕君) ちょっと補足と申しますか、笠原先生が米国の世論と対日観という、これは本当に難しい問題でございます。特に、広い米国、ディープサウス、ノースダコタと言われましたけれども、そういう人たちがそれでは本当に東アジア米国自身のプレゼンスを経済的にも安全保障上も維持することが自分自身の利益であると、腑に落ちるというか胸にしみ入る形で受けとめるかどうかというのはなかなか難しいところだろうと思います。そして、米国というのがやはり冷戦が終わって内向きになる。これは米国だけではございません。いろいろな国がそうですけれども、その中で世論が非常に振れ得るだろうと思っております。それは読みにくいけれども、常にいろんな状況に振れ得るということだけは肝に銘じて眺めでいかなきゃならないと思っております。そして、世論工作と言うとこれまたやや響きが悪いんですけれども、これはまた地道な努力を積み重ねる以外になかなかないんではないかという気がしております。  それで、顔の見え日本になれというようないろんな御指摘も従来からいただいておりますけれども、やはり、アメリカのみならずいろいろな国が冷戦が終わって内向きになり、経済の問題が第一という中で、日米安保の問題等、そういうことについての理解を得て確固たるものにしていくということの仕事というのはより難しくなったなというのは率直な実感でございます。
  36. 清水澄子

    ○清水澄子君 今、APECについても質問がありましたけれども、私、それに一つだけちょっと関連しましてお尋ねしたいんですけれども、APECの位置づけは今経済協力と言っていますけれども、最近、政治的な問題の方が非常に前面に出てきている。そういう中で、今後このAPECの位置づけはあくまで経済を主体にした地域協力で進めていくのか。そうであるとするならば、今、台湾の問題も出ましたけれども、私は、アジアにおける、特に東アジアにおける信頼の醸成をどうつくっていくかというのはやっぱり安全保障の重要な役割ですから、その中で北朝鮮ロシアをやはり加えていくというのは当然のことだと思うんですけれども、その点についではどういう考えをお持ちなのか、そのことが一つ。    〔会長退席、理事板垣正君着席〕  それからもう一つ、今度は防衛庁の方にもなるんですが、先ほどのお話の中で、アジア太平洋地域の米軍がこの地域に前方展開戦力をいわゆる今後十万人を維持するということを確認ということになっているわけですが、この根本原因というのは一体何なのか。それが先ほどから言われたいわゆるロシア中国北朝鮮が問題であると、不安要素があるんだということになれば、これは結局冷戦構造と変わらない発想であると思うんですが、一体、冷戦後の日米安保体制という考えで行くならば、今度やっぱりその辺でのどういう、十万を前方展開する根本原因というのは何をそこに、外務省防衛庁、両方ともそれをどうつかんでいらっしゃるのか。  そして、その報告をそのまま確認するとなれば、これは日米安保体制の再定義をしなきゃならない問題にかかわっていると思います。それは、日米安保体制は今まで日本の安全であったわけですが、今度は日米安保体制がアジア太平洋地域の平和と安定の維持のための不可欠の要素という形でそれを確認したということになれば、これは、日本は集団的自衛権はないわけだし、それが一緒に米軍と行動するということに今後なるとすれば、それはアジア太平洋日本がアメリカの新アジア戦略報告をそのまま確認したことになればどういう意味を持つことになるのか、それがアジア全体にとって歓迎されているのかどうか、そのことをお聞きしたい。  と同時に、それを受け入れるということになれば、今沖縄が、日米安保だけでなくて、日本にいる駐留米軍の七五%の基地を引き受けさせられているという大きな不安と不信と問題提起があるわけですが、そのことで、今後このまま東アジア戦略報告を前提にしていくならば沖縄の基地縮小というのは不可能という、そういう認識に基づいでこれを進めておられるのかということをちょっとお聞きしたいと思います。
  37. 北島信一

    説明員(北島信一君) 清水先生の第一点目の御質問ですけれども、APECの性格ですけれども、APECはやはり経済の問題を議論するという理解で、香港それから台湾、チャイニーズ・タイペイという名前でそういった地域も参加することになっているわけです。実際に各国からの首脳が集まれば二国間会談が行われて、そこで政治問題が議論されるということはあろうかと思いますけれども、APEC自体は英語ではエコノミック・リーダーズ・ミーティングと言っていまして、まさに経済主体の指導者が集まって、経済の話それから経済協力の話を議論する、そういう考え方でございます。  先ほど来言及のございますARF、ASEAN地域フォーラムという別途のフォーラムがありまして、そこで信頼醸成絡みの議論等をされていると思いますけれども、いずれにしましても、APEC自体は経済の話を今後とも議論する、そういうことだろうと思っております。
  38. 清水澄子

    ○清水澄子君 ロシア北朝鮮はどうするのか。
  39. 川島裕

    政府委員川島裕君) ロシアは例えばAPECに非常に関心があるわけでございます。ただ、これはAPECのメンバーにあとどこの国が入るかというのは、実は今のところ凍結になっておりまして、結構、思想整理は難しいんだろうと思います。太平洋のずっと南の南米もみんな入っちゃうのかとか、さっき申しましたけれども、じゃインドはどうだとか、それからもっと近いわけですけれどもロシアはどうだとかいうことで、どこまで広がりを持つかというのが一つまだ方向感覚がないものですから、当面は経済につきましてはロシアは外側と。それからもう一つは、ロシア経済的に急速な変貌を遂げでおりますけれども、もう一つ考えなきゃならないのは、そういうアジア太平洋のこのダイナミックな経済成長の枠組みにロシアが入るということであれば、どういう意味のある貢献がどれくらいあるのかというようなことも当然考えなきゃならない話だろうと思いますが、今のところ、ロシア、あるいは北朝鮮もそうかと思いますけれども、メンバーというのに動く状況にはないと。  他方、政治向きの話でございますと、先ほどからも話が出ておりますとおり、ASEAN地域フォーラムがあって、これはロシアは入っていて、ある意味でそれは冷戦の当時を思うと相対立しでいたのがほとんど全部入っている。この場合は、これにつきましては、残るのは北朝鮮が入るのかどうかという話で、これは行く行く考えなきゃならない問題として浮上する可能性はあろうかと思います。ただ、その中で遠い将来としてASEAN地域フォーラムとAPECが図らずも同じようなメンバーシップになるかどうかというのは、可能性としてはあるんだと思いますけれども、ただ、その場合でもAPECの方が、安全保障上はほとんどつながりがないんですけれども、経済面でどんどんラ米の方に伸びていく分だけやっぱりちょっと違うメンバーシップになるんじゃないかなというのが今のとりあえずの感じでございます。    〔理事板垣正君退席、会長着席
  40. 小池寛治

    政府委員(小池寛治君) 清水先生からのお尋ねの第二点、すなわち米軍のアジア太平洋地域における前方展開十万人の根拠というのはどこからきているのかという御質問だったかと思いますけれども、先生御承知のとおり、東西冷戦が終結した後、アメリカは同盟国とともに冷戦終結後のアメリカの国防政策のあり方等を真剣に検討したわけです。グローバルパワーですから、この地域のみならず欧州における兵力のあり方というのも検討した。  それで、従来は、確かに冷戦のときはソ連及び東欧諸国の脅威というものに対して戦力の構成を考えるとしていたのを、大きく四つの危険ということで言っておりますけれども、ソ連の脅威にかわった四つの危険、すなわち大量破壊兵器の拡散による危険、それから地域紛争の危険、それから民主主義と改革が失敗する危険、またもとに戻る危険、経済に対する危険、四つの危険にアメリカとしてはグローバルパワーとして対処していく責任を持つ必要があると。  それで、より具体的には、米軍の戦力を包括的に積み上げ方式で根本からレビューいたしまして、ボトムアップ・レビューというふうに呼ばれていますけれども、ボトムアップ・レビューの結果、米軍がグローバルパワーとして今後も戦力を持ち続ける必要があるのは、同時に発生する二つの大規模な地域紛争に対処し得る必要があると。こういう戦略を支えるために、一九九九年における戦力構造がどうなるかということで検討いたしました。  一言で申し上げれば、全体の総兵力数は百四十六万人にまで削減する。それから前方展開についてですけれども、欧州における前方展開戦力というのは、東西対立が欧州において大きく変わりましたので二十五万人の兵力から十万人に削減する。それから東アジア太平洋地域については十二万六千から約十万に削減するというのがその基本的な考え方であります。  我が国周辺地域における前方展開戦力、すなわちアジア太平洋地域における米軍の戦力については、韓国に対するコミットメント、我が国における海兵隊及び空軍戦力、第七艦隊の展開というのをほぼ現在と同じ規模で維持する必要があるということをボトムアップ・レビューでかなり細かく検討した結果出てきたものです。ことしの二月に出ましたEASRについても、基本的にそれを再確認する形になっております。  EASRの中におきましては、アジア太平洋地域にアメリカが今後とも十万人の兵力を維持する中においで日米安保条約というのがまさにそのかなめになっているという認識を示しております。  では、果たして日本としてはどうかといいますと、先ほどからアジア太平洋地域の軍事情勢ということで申し上げてまいりましたが、一言で言えば、アジア太平洋地域の情勢というのは、欧州の方とは違いましてまだ不安定、不確実、不透明な要素が多く残されている中におきましては、日米安保条約を堅持するということが日本の安全にとり不可欠であり、また周辺の安全と平和を維持する上で不可欠だと日本政府としては考えております。  沖縄問題との関連ですけれども、確かに難しい問題でございます。先ほど、ペリー米国防長官と衛藤防衛庁長官及び河野外務大臣との会談におきまして、この沖縄の米軍基地の問題につきましては今後真剣に検討を続けていく」ということで、新しい協議機関を設置するということで基本的な合意に達したわけです。近く行われます村山総理とクリントン大統領との会談におきましてこの新しい協議機関を正式に発足させて、いろいろ残されている大きな問題についで、関係者がこぞって真剣に取り組んでいくという決意を新たにしているところでございます。  そして、その前提としては、今申し上げましたように日本の安全をいかに図っていくか、周辺の安全と平和の維持をいかに図っていくか、その中でいかに調和ある解決策を見出すかというのが我々に課された課題かと思っております。
  41. 笠井亮

    ○笠井亮君 私は、外務省防衛庁に手短に一問ずつ質問したいと思うんですけれども、まず最初に外務省川島局長に伺います。  冒頭の御説明では、時間の制約があったかもしれませんが、アジア太平洋の平和と安定にとって重大問題という意味でいえば、一つは核兵器の問題があると思うんです。その問題には直接はお触れにならなかったと思うんですけれども、政府が、核抑止力に基づいてフランスが核実験をやっている、こういうことでやられている問題があり、それから中国の核実験があるわけですけれども、そういうことについでは遺憾である、反対だというふうに言われながら、もう一方でアメリカの核抑止力論に依存されるというのは、これは大きな矛盾だと思うんです。  今、核実験への国際的な批判が高まる中で、あらゆる核実験の即時停止を求めていくという国連決議案を日本政府も含めて今共同提案されているということになっていると思うんですが、やっぱりすべでの核実験を禁止して、核兵器廃絶を究極的ではなくて緊急の課題として今追求するというときになっているというふうに思うわけです。  そこで伺いたいんですけれども、アメリカのエネルギー省で十月二十七日だったと思いますが、いわゆる核爆発なき核実験というのを来年の六月から六回にわたってネバダで実施をするという発表があったと思うんです。この問題なんですが、これは去る八月のクリントン大統領の声明が述べた、アメリカの最高の国家的利益というものに基づいて、核兵器の安全性と信頼性を確認する政策の一環だというふうに今回のエネルギー省の発表でも言われているわけですが、核兵器の開発、維持、改良とか、それから使用準備のための核実験をたとえ技術的に核爆発実験が不要になっても代替の実験をやるということになれば、あくまでも核兵器にしがみついて固執するということのあらわれだというふうに見られると思うんです。  目下、CTBTの交渉では、依然ジュネーブでは実験禁止の範囲の問題をめぐって意見の対立があって多くのブラケットがあるというのは私も承知しているんですけれども、被爆国の政府とすれば、今のこういう状況の中で、いかなる抜け道も認めずにすべての形態の核実験を禁止する、そういう文字どおり全面禁止の条約を締結するために努力すべきだというふうに思うわけです。  そうしますと、さっきの質問なんですが、要するに今回の米国の新たな核実験計画についで政府がどういう態度をとるのか。当然ながら抗議するのか、あるいは日本はアメリカの抑止力に依存しているからアメリカのこういう場合については例外と見るのか、その点について伺いたいと思います。  それからもう一点、これは防衛庁の小池参事官の方に御質問ですけれども、先ほどるる説明がありました国際軍事情勢分析に基づいて、昨日提示されたということで新たな防衛計画の大綱の原案があると思うんですけれども、この問題で一言伺いたいと思います。  ソ連が崩壊したもとで、従来の限定的かつ小規模の侵略に対処するということを基本とするような防衛大綱の見直しがこの間されてきたと思うんです。その中で、ソ連の脅威から日本を守るということを最大の口実にしてきた日米安保体制をむしろ解消するという方向こそ本来の筋道だということが今明確になってきているんじゃないかと思うんです。ところが、今回の原案を見ますと、逆に日米安保体制の強化が積極的にうたわれている。沖縄の事件が大問題になっているときだけに、国民的に、先ほど世論調査のことも出されていましたけれども、疑問が起こるのも当然じゃないかということだと思うんです。  そこで、私、質問に関連して重大だと思うのは、この新しい防衛大綱の問題についで、去る十月二十五日のアメリカの下院の国際関係委員会のアジア太平洋小委員会で例のナイ国防次官補が証言している問題なんですが、これ会議の記録を取り寄せで見ますと、さきの2プラス2では米国側が、現在改定されている防衛計画の大綱が国防総省の東アジア戦略報告書とアプローチにおいて明確に重なり合うことが、つまりオーバーラップという言い方なんですけれども、両国の安全保障協力の成功を図る尺度だということまで明確に言い切っているということをナイ次官補が述べて、そういう立場で2プラス2もやったんだということが言われでいるわけです。  そして、このナイ証言で言いますと、東アジア戦略に基づいて日本での米国のプレゼンスが米国の地球的規模の前進展開体制にとって死活的に重要であり、それに日本地域的並びに地球的規模で一層大きな貢献をするべきだと繰り返し述べられていて、そして日米安保の地球的規模化の必要性を強調しているという中身になっていると思うんです、今回のナイ証言を見ますと。  そうすると、米国との協議によってアメリカのEASRに重なり合うように防衛大綱を策定するということになりますと、今先ほど議論ありましたけれども、それ自体が集団的自衛権を前提とするものになって、まさに日本をアメリカの世界戦略の道具にしていく、米軍と自衛隊のさらなる一体化を進めるということになるんじゃないかなというふうに私は思うんです。  このようにして、先ほど議論があったような日米安保条約の意義を再確認して、それに見合うような新たな防衛大綱を決定するということになれば、先ほど御答弁ありましたけれども、日本の防衛とかあるいは周辺アジア、極東の平和と安全という条約上の規定すら踏みにじって、踏み越えて、そして憲法を踏みにじる方向に進むということで許されないんじゃないかというふうに私は思うんですけれども、その点についての御見解をいただきたいと思います。
  42. 川島裕

    政府委員川島裕君) 核兵器の話でございますが、確かにこの地域におきまして核保有国が幾つかあるわけでございますし、それから北朝鮮の核兵器開発の可能性の問題が日本の安全にとって非常に重要な問題であるがゆえにいろいろ努力を続けてきたことは御承知のとおりでございます。  そして、要は究極的に核兵器の廃絶ということ、これは政府として従来から目指しでいるわけでございますけれども、その廃絶までの間、実際問題として例えば核兵器の拡散等の可能性もあるわけですし、それまでの間、依然として核抑止力に日本の安全が依存するということ自体は私どもとしては矛盾があるとは考えてない次第でございます。  今、具体的な御質問でございます核爆発のない実験についてどう考えるのかという御質問でございますけれども、まことに申しわけないのでございますけれども、ちょっとその技術的な問題については私今持ち合わせていないものでございますから、一般論としてのお答えで御容赦いただきたいんですけれども、まさに核廃絶の方向に向けて重要な一歩としては、まずは核実験の禁止というものがあるわけでございます。そういう観点で包括的核実験禁止条約、CTBTを来年何とか早くまとめたいというのは、これは全力を挙げるべき課題であろうと思っております。その中で、結局、核実験の禁止というものの定義というものがよりきちっとされるんだろうと思います。そして、今でも平和的爆発ならいいのではないかとかいろいろな立場も表明されているわけですけれども、そういうCTBTの実験禁止交渉の中で明らかにされていくべき問題ではないかと思っております。  今のアメリカの具体的な六回の話については、私今手元にございませんので、これ以上具体的な答弁は差し控えさせていただきたいと思います。
  43. 林田悠紀夫

    ○会長(林田悠紀夫君) 所定の時間が四時までになっております。あと二人質問者があるんです。それで、簡単にひとつお願いしたいんです。
  44. 守屋武昌

    説明員(守屋武昌君) 一点の、米国との協力関係でございますけれども、日米安全保障体制というのは、我が国の平和、安全を守るだけじゃなくて、地域の安定のためにも必要だと考えております。そのために我々がアメリカとの関係でなし得る自衛隊の施策というのはこれは平和憲法の範囲内で対応する、こういう日本側の政府の対応にはいささかとも変更はございませんし、この方針はアメリカもっとに理解しでいるところでございまして、両国政府間に見解の不一致ということは全くございません。  それから、今回新たな防衛力の考え方で、私どもは日本の自衛隊の役割といたしまして、我が国の防衛という現在までの自衛隊の主たる役割に加えましで、大規模災害等への対処とか、それからより安定した安全保障環境の構築への貢献、こういうことを打ち出しておるわけでございますけれども、国会等で御議論いただきました国際平和協力法、これは平和五原則に従って我が国が国連あるいは国連等から求められた場合に平和協力活動を行うわけでございますが、そういうものはあくまでも国会で認められました国際平和協力法の枠組みに従って行うということでございます。  それから、安全保障対話、防衛交流というものは、これはお互いの周辺諸国との信頼関係を醸成するために行うというものでございます。  それから、大量破壊兵器やミサイル等の拡散の防止のための国際連合、国際機関の行う軍備管理・軍縮分野にその専門的な知識をも有する自衛官を派遣して行うということを考えておりますが、これは、この国会で国際機関等に派遣する自衛官の処遇に関する法律を認めていただきましたけれども、この法律によりましてそういう機関での自衛隊の活動、自衛官の活動が大変スムーズになる、こういうふうに理解いたしておるところでございます。
  45. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 日本共産党の上田でございます。  かなり率直な議論も出ましたので、なるべく簡潔に私の方も幾つか率直に申し上げたいんですが、外務省川島局長の最初のお話は、アジア経済発展に着目しで安定の度合い増大をかなり強調された。防衛庁の小池参事官の方は、冷戦構造崩壊後のアジアにおける危険な軍事情勢をピックアップしたという、アプローチの違いはあったと思うんですけれども、それはそれなりにおもしろかったんですが、お二人ともやっぱりアメリカのアジア太平洋におけるプレゼンス、これは共通の前提とされておりますので、私はこの問題は非常に大問題だと思うので、二つ質問をさせていただきます。  第一は、覇権主義の問題。アジアの平和、安定にとっていろんな地域紛争や宗教紛争、民族紛争を広げないようにすることは大事だけれども、結局覇権主義もどう抑えでいくかということが大事だと思うんです。中国の覇権主義、これは確かにあります。今後もっと大きくなるかもしれない。朝鮮は小国なんだけれども、覇権主義なんです。朝鮮戦争も起こしましたし、それからラングーン事件なんか裁判記録見てもすごいものですよ。だから金日成の死後どうなっていくか今後の問題だけれども、明らかにあそこには覇権主義の危険がある。これはお二人とも触れられたけれども、アメリカの覇権主義については全く触れられていないで、むしろアメリカはアジアの平和を守る一番のかなめのようなお話なんですね。  けれども、戦後、アジアにおける戦争というのは朝鮮戦争ベトナム戦争です。ベトナム戦争が最も大規模なんです。あれは直接担当した当時のマクナマラ国防長官が、最近あれは間違った戦争だったと発言して大問題になったんです。だから、私はまずこの歴史の教訓をどう踏まえるかという点、それから今後どう見るかという点で、外務省防衛庁にアメリカのベトナム戦争をどう評価しているのか、それから今後アメリカにそういう覇権主義の危険が全くないと思っているのかどうか、これを第一にお二方からお聞きしたいと思います。  二番目は、アメリカ覇権主義の指示に基づいて日米軍事同盟が再定義という名で地球規模に広げられようとしている。これは日本の安全保障問題にとって最大の問題ですよ、その問題。  もう時間がないので簡単にしますけれども、三月一日のアメリカと日本の安全保障関係に関する報告書でこう書いてある。アメリカ政府日本に地球的規模でも地域的規模でもより大きな政治的責任を引き受けるよう奨励している。日本はいろいろな方法でこたえてきたと。評価するとある。それで、PKOをあちこち配ったことを評価して、最後にアメリカは日本政府との間で平和維持活動と災害救援活動での協力の可能性を話し合っていると。地球的規模での日米の共同についでもう既にPKOについても話し合っているというわけね。これはPKOだけじゃないですよ。例えば、今沖縄が大問題になっているけれども、あそこには第三海兵遠征軍がいるわけであります。沖縄にいる、外国に師団規模でいるのは日本だけですからね、あの遠征軍は新たに任務がえになって中近東から東アフリカまで行くことになっているんですね。  我々、去年国際問題調査会で佐世保へ行きました。イージス艦の「こんごう」も見た。あそこにはベローウッドというアメリカの強襲揚陸艦がいて、いざとなると岩国のハリアーと普天間のヘリを乗せで千八百名の海兵隊を積んで行くんですよ、中近東、東アフリカに。その規模も任務もかわっていで、しかも自衛隊は大型輸送艦だとか、今度は大型の輸送機までつくるというんだけれども、そういうアメリカの行動に協力しようとしている。  私が外務省に聞きたいのは、今安保条約の五条は日本の防衛でしょう。六条は極東ですよ。アメリカの海兵隊が既に中近東から東アフリカまで任務がえになって、ベローウッドが佐世保にいて、海兵隊積んで出撃するも演習も幾らでもやっているんだから、そういう状態は今日の安保条約六条の規定を既にはみ出しているのじゃないか。  だから、安保再定義、再定義といって安保の範囲を拡大して、全世界に広げようとしているんだが、日米共同声明の前に早くもそういう事実が生まれでいるんじゃないか。安保条約、我々は反対なんだけれども、安保違反だと思うんですね。そういう点について、第二の問題について外務省に安保条約の解釈、それから現状違反じゃないかという問題についてお伺いしたいと思います。  以上二点。
  46. 川島裕

    政府委員川島裕君) 私どもはアメリカが覇権主義で出てきているという認識は持っておりません。むしろアメリカと日本民主主義とか人権とか自由とか、基本的な価値を共有しておりますし、そういう基本的な価値の共有があるからこその日米関係であるし、米国アジア政策というものも常にそういう基本的価値を追求するという観点からの行動であって、ベトナム戦争も自由と民主主義を守るということで関与をどんどん深めたわけでございます。もちろんその結果として非常に地域にとってもアメリカ自身にとっても不幸な戦争であったと思いますけれども、少なくとも、何と申しますか、利益確保というか、覇権主義の観点からのベトナム戦争というふうには私どもは受けとめでいないわけでございます。  それから、安保の違反ではないかという話、これは安保条約で従来からあるお話でございますけれども、要するに沖縄の米兵が中近東に行くというような話は安保条約の枠組みをはるかに超えているのではないかという御指摘であろうかと思いますけれども、これは、従来から御答弁申し上げているとおり、軍隊というものの性質としていろいろな地域に移動していくということ自体は当然のその属性でありましで、したがって、沖縄の海兵隊が例えば中東に行くとかあるいは別の地域に動くということ自体、安保条約との関連では何ら問題はないというのが従来からの御答弁でございます。
  47. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 時間がありませんから、これで終わります。
  48. 田英夫

    ○田英夫君 ありがとうございます。  簡単にお聞きしますけれども、アジア太平洋を考えるときに、私は二つの大国動向が非常に注目されるのではないかと思っできたんですが、川島局長のさっきのお話の中で、そのうちの一つ中国の問題については触れられました。大体お考えは珍しく私とほぼ一致するんだろうと思います。つまり、中国はこのアジア太平洋の問題にかかわってくるときに、円満な形でアジア太平洋諸国に溶け込んでいけるように中国自体も政治的、経済的あるいは軍事的に配慮すべきだと思いますし、また関係諸国もそういうことが可能になるように配慮をしなければならない。台湾の問題もさっきから出ていますが、これもその重要な一つかもしれません。北朝鮮の問題もかかわりが出てくるかもしれません。そういう意味中国のことについては今触れません。  もう一つ大国は言うまでもなくアメリカでありますが、アメリカについては余りお触れにならなかった、質問にお答えになる形で触れられましたけれども。私は、中国とは逆にアメリカはこのアジア太平洋という地域に対して過度に介入をするというようなことを意識的にみずから慎むべきではないか。もちろんアメリカは太平洋に面した国家でありますからアジア太平洋にかかわるのは当たり前でありますけれども、例えばAPECのことが間近に迫っていますから当然考えられますけれども、これに対してマレーシアマハティール首相がEAEC構想を打ち出して抵抗をしているといいますか、そういう姿勢を示している。  昨年、村山総理マレーシアヘ行かれたときにマハティールさんに会われて、実はもう少し物の言い方があったんじゃないかと私は非常に残念に思っでいるんです。やっぱりASEANあるいはアジアの諸国の指導者の中には、あるいは国民の中には、マハティールさんのような気持ちがアメリカに対してあるということを配慮しながら日本の外交というのはやるべきじゃないか。アメリカももちろん配慮すべきですが、アジアの国としての日本はそういうことができるように友人としてアメリカにアドバイスをするというリードの仕方があっでいいんじゃないかな、こんなことを考えておりますが、この点だけで結構です。いかがでしょうか。
  49. 川島裕

    政府委員川島裕君) EAECとかおっしゃる御指摘の点はいろいろ注意しなきゃならないところばかりだろうと思っております。やっぱりアメリカの信奉する基本的価値というものと若干違うじゃないかという状況アジアにいろいろ見られる中で、それに対してどこまで関与をアメリカがするのが長期的に問題をよりよく解決する観点から効果的か否かという話に尽きるんだろうと思っております。  直近のAPECとEAECの話でございますけれども、基本的な私どもの申し上げてきた姿勢は、日本アジアかアメリカかという二者択一の立場に置かれるべきではないと思っておりますし、それは実態的にもそういうものだろうと思っております。そして、そのまさにアジアと北米、もっとそのほかに豪州とかあるわけですけれども、そういうものを包含したAPECというものができたのはその意味で大変な日本にとって意味のある進展でございます、経済的に具体的にどうこうというのもさることながら。  その中でEAECというものは東アジアだけの固まりをその中につくるということでございますけれども、わからないではないんですけれども、そういうものができた結果としてせっかく動き出したAPECというものがマイナスの影響を受けることがあってはやっぱり好ましくないんではないか。したがって、そこはAPECのいろんな理解を関係国、これはアメリカだけでは実はございませんで、豪州、ニュージーランドは、これはEAECから想定されておりませんで、非常にしこっでおるというか、抵抗感があるわけでございますけれども、そういうAPECの前に動かすという観点からもうちょっとEAECについてすべての関係国の理解があった上で動いた方がいいんではなかろうかというのが従来の姿勢ですし、そこのところは変わっていないわけでございます。
  50. 林田悠紀夫

    ○会長(林田悠紀夫君) まだまだ質疑もあろうかと存じますが、予定した時間が参りましたので、本日の調査はこの程度といたします。  熱心な質疑、また外務省防衛庁、ありがとうございました。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時十一分散会