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1995-10-19 第134回国会 参議院 外務委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成七年十月十九日(木曜日)    午前十時開会     ―――――――――――――    委員氏名     委員長         木庭健太郎君     理 事         笠原 潤一君     理 事         野沢 太三君     理 事         寺澤 芳男君     理 事         矢田部 理君                 大木  浩君                 田沢 智治君                 武見 敬三君                 成瀬 守重君                 宮澤  弘君                 矢野 哲朗君                 田村 秀昭君                 高野 博師君                 益田 洋介君                 川橋 幸子君                 照屋 寛徳君                 立木  洋君                 武田邦太郎君                 島袋 宗康君     ―――――――――――――    委員異動  九月二十九日     辞任         補欠選任      島袋 宗康君     佐藤 道夫君  十月二日     辞任         補欠選任      益田 洋介君     畑   恵君  十月十九日     辞任         補欠選任      川橋 幸子君     大脇 雅子君      照屋 寛徳君     三重野栄子君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         木庭健太郎君     理 事                 笠原 潤一君                 野沢 太三君                 寺澤 芳男君                 矢田部 理君     委 員                 大木  浩君                 武見 敬三君                 成瀬 守重君                 矢野 哲朗君                 田村 秀昭君                 高野 博師君                 畑   恵君                 大脇 雅子君                 川橋 幸子君                 照屋 寛徳君                 三重野栄子君                 立木  洋君                 武田邦太郎君                 佐藤 道夫君    国務大臣        外 務 大 臣  河野 洋平君    政府委員        警察庁刑事局長  野田  健君        防衛庁参事官   小池 寛治君        防衛施設庁長官  宝珠山 昇君        防衛施設庁施設        部長       小澤  毅君        外務政務次官   福田 康夫君        外務大臣官房長  池田  維君        外務大臣官房審        議官       谷内正太郎君        外務大臣官房領        事移住部長    齋藤 正樹君        外務省総合外交        政策局長     川島  裕君        外務省総合外交        政策局軍備管        理・科学審議官  河村 武和君        外務省総合外交        政策局国際社会        協力部長     朝海 和夫君        外務省アジア局        長        加藤 良三君        外務省北米局長  折田 正樹君        外務省欧亜局長  浦部 和好君        外務省中近東ア        フリカ局長    法眼 健作君        外務省経済局長  原口 幸市君        外務省経済協力        局長       畠中  篤君        外務省条約局長  林   暘君        通商省業通商        政策局次長    伊佐山建志君    事務局側        常任委員会専門        員        大島 弘輔君    説明員        警察庁生活安全        局生活安全企画        課長       平石 治兌君        防衛庁防衛局防        衛政策課長    守屋 武昌君        防衛施設庁施設        部連絡調査官   坂本 憲一君        防衛施設庁施設        部施設取得第一        課長       小竹 秀雄君        文部省高等教育        局大学課長    近藤 信司君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○国政調査に関する件 ○国際情勢等に関する調査  (沖縄駐留米兵による小学生女児暴行事件に関  する件)  (日米地位協定第十七条五項同(C)に関する  件)  (冷戦後の日米安保体制核抑止力依存に関す  る件)  (アジア太平洋安全保障に関する件)  (中国軍事力拡充日中関係に関する件)  (包括的核実験禁止条約に関する件)  (日中の安保対話に関する件)  (日朝国交正常化交渉に関する件)  (北朝鮮軍事情勢に関する件)  (国連改革に関する件)  (明石・旧ユーゴ特別代表辞任国連PKO  に関する件)  (海外邦人参政権に関する件)  (防衛施設庁長官首相批判発言報道に関する  件) ○千九百九十五年の国際穀物協定締結について  承認を求めるの件(内閣提出) ○千九百九十五年の国際天然ゴム協定締結につ  いて承認を求めるの件(内閣提出)     ―――――――――――――
  2. 木庭健太郎

    委員長木庭健太郎君) ただいまから外務委員会開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る二日、益田洋介君が委員辞任され、その補欠として畑恵君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 木庭健太郎

    委員長木庭健太郎君) 次に、国政調査に関する件についてお諮りいたします。  本委員会は、今期国会におきましても、国際情勢等に関する調査を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 木庭健太郎

    委員長木庭健太郎君) 異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  5. 木庭健太郎

    委員長木庭健太郎君) この際、河野外務大臣及び福田外務政務次官から発言を求められておりますので、順次これを許します。河野外務大臣
  6. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) ごあいさつを申し上げたいと存じます。  このたび外務大臣を再度拝命いたしました河野でございます。参議院外務委員会開会に当たりまして、皆様にごあいさつを申し上げますと同時に、所信の一端を申し上げたいと存じます。  私は、昨年六月の外務大臣就任以来、我が国の安全と繁栄国際社会全体の平和と繁栄の中で実現可能であると、そういう認識のもとで、国際社会が抱えます地域紛争大量破壊兵器の拡散問題、先進国におきます失業や開発途上国における貧困、さらには地球環境問題など、解決されるべき課題全力で取り組んでまいりました。  この間、我が国は、北朝鮮の核兵器開発問題、さらに中東和平におきます前進、WTOの発足など、幅広い分野で重要な貢献をしてまいりました。  また、さきの国連総会演説におきましては、新しい開発戦略必要性地域紛争の解決、軍縮・不拡散、国連改革を柱として、我が国国連外交に臨む考え方を包括的に述べたところでございます。  私は、我が国外交世界平和と繁栄創造的役割を果たすよう、引き続き最善の努力を払う所存でございます。  特に、この十一月には、大阪APEC閣僚会議及び非公式首脳会議が開催されます。私は、アジア太平洋地域の将来にとり重要なこのAPEC大阪会合の成功に向けまして、全力を尽くしてまいりたいと存じます。  今日、外交を進めるに当たりましては、国際社会において我が国の果たすべき役割について国民皆様の御理解を得ることが不可欠でございます。このためにも、本委員会での御議論は極めて重要な役割を果たすものと確信をいたしております。  外務大臣といたしまして任務を全うすべく全力を尽くす決意でございますので、委員長初め本委員会皆様の御指導と御協力を賜りますよう心からお願いを申し上げまして、一言あいさつといたします。  どうぞよろしくお願いいたします。
  7. 木庭健太郎

  8. 福田康夫

    政府委員福田康夫君) このたび外務政務次官就任いたしました福田でございます。一言あいさつを申し上げます。  私が外務政務次官就任いたしましてから二カ月余りが経過いたしましたけれども、本年、我が国は戦後五十年という一つの節目の年に当たっております。これまでの我が国の歩みを振り返りつつ、我が国がこれからの世界において果たすべき役割を思うとき、外交責任の重さは今まで以上のものであると痛感いたします。  とりわけ、国家間の相互依存関係を背景に、我が国の安全と繁栄国際社会の全体の平和と繁栄の中でしか実現できない、そういう状況となっております。我が国は、政治経済両面での諸課題、環境問題、人口問題といった地球規模の諸課題に積極的に取り組んでまいらなければなりません。  このような認識のもと、私は河野外務大臣を補佐して職務を全うするため全力を傾注する決意であります。外交に精通しておられる木庭委員長を初めとして本委員会皆様の御指導と御協力を賜りますようお願い申し上げまして、私の就任のごあいさつとさせていただきます。     ―――――――――――――
  9. 木庭健太郎

    委員長木庭健太郎君) 国際情勢等に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  10. 大木浩

    大木浩君 当外務委員会伝統に従いまして座って質問をさせていただきます。座って質問をすると何となく気合いが入らぬこともあるわけですけれども、逆に冷静なる議論ができることを期待してお話を申し上げたいと思います。  まず最初に、従来、外務委員会に限りませんけれども与党というのは余り質問するな、政府立場は大体もうわかっているだろうというようなことがあるんですけれども、今は非常に国際情勢も大きく変動しております。それからまた、たまたま私ども連立与党ということで、三党でいろいろと調整する必要もあるんですけれども、これもなかなかその議論が外に出てこないといううらみもございます。ということですから、私どもは、一番公の場でございますこの外務委員会におきまして、やはり与党としてもしっかりと政府のお考え方を聞かせていただいて、そして立法府でありますから必要なものは法律をつくる、あるいはまた条約をつくるというようなことも考えていくということも含めて、ひとつ御質問をしたいと思います。  そこで、最近はいろいろな動きが今も申し上げましたように非常に多くて、実は自民党の中でも一つの問題についていろいろと議論が分かれておるというようなことがございます。それを考えますと、国民の方はもっと情報が足りないんじゃないかという感じを持っておるわけであります。私、実は前の国会で、例えば矢田部先生だとか立木先生もおられたと思いますが、いろいろODAの話をしておりまして、今度はまた何か野党の方でODAのいろんなお考えがあるようであります。  ODAというとすぐに円借の話に頭が及ぶんですけれども、例えば日中関係というのは非常に大事であるということです。ところが、昨年からことしにかけまして中国核実験中国の方は大体これは地下実験であるから環境問題へは心配ないとかいろんな御説明があるけれども、やはり核実験をやっておられるということは間違いない。あるいは中国が最近は非常に海軍力を整備されるとかあるいはスプラトリーアイランドでいろいろと建築物をつくるとか少なくとも行動だけ見ておりますと、かなり刺激的というか膨張主義的ということがあるわけでございます。  しかし、同時に日本としては中国との関係は非常に大事だということで、御存じのとおりに、中国との経済協力につきましても、無償援助はやめたんですか無償援助はともかくとして、従来からの円借というものはいろいろ話も続いているからやるんだと、こういうようなお話もあります。その辺、やっぱり国民からいたしますとどうももうひとつよくわからぬ。本気で核実験のことを言うならば円借もどうだというような議論もありますので、日中関係というものをどういうふうに考えておられるか。これはもちろん日本中国との関係政治経済文化、いろいろもういっぱいありますから、全体としてこれからの日中関係をどういうふうに外務大臣としては構築しておられるのか、まず一般論をお伺いしたいと思います。
  11. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) お許しをいただいて私も座ったまま答弁をさせていただきたいと思います。  外交の最前線でいろいろと経験をしてこられた大木委員からの非常に重要な指摘であろうと思います。我々にとりまして中国が今後どういう方向性をとっていくかということは、最も大きな関心事でございます。言うまでもなく、このアジアにあって広大な面積、膨大な人口を抱えて、しかもその歴史と伝統文化、どの面を見ましても我が国が大きな関心を払うのは当然であろうと思います。その中国が、最近、我々が注意深く見なければならないような幾つかの動きをしてまいりました。  私、まず最初に申し上げたいと思いますことは、我が国中国関係は、我々の先輩の大変な努力によって、日中共同声明そして日中の国交正常化というプロセスをたどって子々孫々に至るまで友好関係発展させていこうと、こういう決意で取り組んでいるわけで、皆様方の御努力もあって、日中関係は今いい関係に向かってずっと動いてきていることだけは間違いないと思います。これは、政治経済文化、さまざまな交流が進んで、しかもあらゆる世代にわたっての交流が進んできている。大変私は喜んでおりましたけれども、そして我が国中国改革開放路線を支援するということを基本的に考えてやってまいりました。この考えは今も全く変わっておりません。これから先もそういう路線でいきたいと思っております。  その中国改革開放路線を支援するということは、ただ単に中国のためばかりではなく我が国にとってもそれは極めて重要なことであり、アジアにとっても重要なこと、つまり中国が安定して発展していき、さらに国際社会の中で相互依存関係、そういう状況中国が入ってくるということは極めて重要だと思います。  ところが、昨今、中国が目覚ましい経済的な発展を遂げるに及んで、中国もまた軍事力にこれまでとは少し違った速いピッチの変化があらわれてきたように私は思います。この軍事力に対する変化は、中国はもちろん、彼らの説明を聞けば、それは増強ではない、兵器の更新そして近代化であるという説明をしておられるわけでありますが、我々はその点さらに注意深く見ていかなければならないと考えております。  核実験につきましては、中国からいろいろと説明はございますけれども、私どもとしては、再三申し上げておりますように、NPTの無期限延長という新しい状況をつくり出した直後に中国核実験を行った。さらにフランスも続いて核実験を行いましたけれども核保有国NPTの無期限延長という状況の中で、核を持っている国と核を持たない国はもう無期限立場が違う。核保有国は、NPTによって与えられた特別な地位というものを考えて、非核保有国信頼にこたえるためにも誠心誠意核軍縮に取り組んでいかなきゃならないはずであるにもかかわらず、その後核実験を行ったということについて、我々はこの中国姿勢に強い抗議をするというのは当然のことだと思います。再三にわたって抗議を繰り返しております。  と同時に、中国に対しては、今、大木議員からもお話がありましたように、国民からいただいている税金を使って政府経済援助をしている。円借款は、これは少なくとも返ってくる、貸したお金でございますけれども無償資金援助はもう明らかに国民税金を使って無償援助を行うわけでございますから、この点は我々はよほど考えなければならない。  しかし一方で、こうした経済援助で、中国核実験に対して経済援助を使ってペナルティーを科したということではないということはよく考えていただかなきゃならないと思います。このことは、我々は中国に対して核実験をやるべきでない、日本国民あるいは日本国政府は、核実験を行う中国姿勢に対して、それは全く我々の望むことと違うのだという強いメッセージを送るという意味があるということをぜひ中国に理解してほしいと思っているわけです。  相当額無償資金援助、七十億という大きな無償資金援助の計画を我々は凍結いたしました。ただし一部の例外、例えば人道的な援助でありますとか、一部の例外を除いて凍結をした。これは、核実験を続ける限りにおいてはこの凍結は続けますということを言っているわけでございます。中国はこの我々の強いメッセージをきちんと受けとめてほしいというふうに思っているわけでございます。  もう一度冒頭に戻りますが、我々としては中国の一連の動きに強い関心を持ちつつ、しかし日中は互いに信頼をし合いながら発展をしていきたい、この二国間関係もよりよく発展をさせていきたいという強い気持ちが我々にはあるということもあわせて申し上げておきたいと思います。
  12. 大木浩

    大木浩君 非常に日中関係は難しいんですが、今、大臣おっしゃったようないろんな面からの関係というのを考えながら、ひとつできるだけ前向きに発展させようということでございますから、一応その御説明は伺いました。  今度は日本防衛という立場から考えますと、日本の周辺にいろんな国がある。その国と仮に友好関係があってもやっぱり非常に強い軍事力を持っているというのは、これは日本防衛考える場合には一つのファクトとして頭に入れなきゃいけない。  私は、中国政府が今、日本に対して防衛問題でどういう考えを持っているかというようなことは、ここで日本外務大臣に聞いてもしようがありませんし、そういうことは聞きませんけれども、少なくとも防衛庁としては、今の中国軍事力増強といいますか先ほど外務大臣が言われたように、増強じゃなくて近代化ですか近代化であろうが何しようが、やっぱり外から見て常識的に言えばこれは増強ですね。しかも、たしかあれは九二年の党大会でしたか、海洋権益防衛ということについてはこれからきちっとやっていくんだということを中国は言っておられる。これは我々、外からそういうものを見ますと、やっぱり何か非常に膨張主義的な考えがあるんじゃないかなと思うんですが、防衛庁としては今の中国のいろいろな防衛力の整備といいましょうか、をどういうふうに評価しておられるのか、ちょっとコメントしてみてください。
  13. 小池寛治

    政府委員小池寛治君) 中国国防力についてはいわば量から質への転換を図っている。例えば陸軍の兵力で見ますと、過去十年間で約百万人削減しております。現在約二百二十万人程度と想定されておりますけれども、百万人くらい削減しております。しかし、量は削っても質を高めるという努力をやっております。さらに、近年、国防費を大幅に増額していることも先生承知のとおりでございます。ちなみに、ことしそれから昨年は、対前年比で二〇%以上という国防費の増加を見ております。  先ほど外務大臣からお話しございましたように、地下核実験をことしに入って二度行う、すなわち核戦力近代化を進めていく。また海空軍力近代化も進めております。例えば、海軍につきましては、ヘリコプター搭載可能な駆逐艦あるいはフリゲート艦の建造、それから新型ミサイルを装備する、それからロシアからキロ級潜水艦を導入することなどを行っております。また、空軍につきましては、F8Ⅱなどの新型戦闘機開発・配備、それからロシアからスホーイ27戦闘機の導入などを行っております。  しかしながら、中国は国策としては改革開放路線を続け、経済建設を当面の最重要課題としていること、それから財政が赤字でインフレ基調にあるということ、そういう国難に直面していることなどを総合的に判断しますと、国防力近代化というのは引き続き進む、しかしそれは漸進的に進むのではないかというふうに見ております。また、中国は近年、南沙群島などを中心に海洋における活動範囲を拡大するという動きを見せております。  このような中国動きというのが中長期的にアジア軍事バランスにどのような影響を与えるかということにつきましては、我々防衛庁といたしましても、外務省ともども十分注目していく必要があるというふうに考えております。
  14. 大木浩

    大木浩君 現代における軍事力というのは、いざ戦争したときにどっちが強いかという話じゃなくて、やっぱり政治的、外交的にそういうものがどういうふうにあえて言えば使われるかということもあるわけでありますから、防衛庁としては、あるいは政府全体としてもその辺も頭に入れて、ひとつ日本防衛政策についてはきちっとした対処をしていただきたいというふうにお願いをしておきたいと思います。  アジアを見渡しますと、何といいましても我々にとって一番関心朝鮮半島であります。もちろん、日本としては韓国との関係あるいは北朝鮮との関係、両方それぞれこれから発展させていくということが朝鮮半島の安定にもつながるというふうに思います。  先般、私も渡辺美智雄先生にお供いたしまして党の方の三党代表団で参りまして、その後、それを受けてと申しますか政府交渉を続けておられるわけでありますが、現在の北朝鮮との国交回復に関する交渉状況、それからKEDOの方はまた別なお話があると思いますが、その辺ちょっと簡単に、どういう状況になっておるか動いておるかどうか教えていただけませんか。
  15. 加藤良三

    政府委員加藤良三君) 日朝国交正常化交渉は、一九九二年十一月に御承知のとおり中断したまま今日に至るわけでございますが、その段取りについての接触ということは続いておりますけれども、再開の時期等については決定されておりません。我々としては、朝鮮半島の平和と安定に資するということ、それから第二次世界大戦後の日朝間の不正常な関係を正すということ、この二つの観点を踏まえて韓国等との関係国と緊密に連絡をとりながら対応しているところでございます。  なお、KEDOにつきましては、米朝合意実施に当たっての当面の課題軽水炉供与プロジェクトに係る供給取り決めの問題でございまして、KEDO北朝鮮との間で同取り決めに関する協議がニューヨークで今行われているところでございます。  これまでの協議では、軽水炉供与プロジェクト実施に当たってのいろいろな問題、例えば供給範囲、支払いの条件、事故が生じた場合の賠償責任なんかについて実質的な話し合いが行われているというところでございます。十六日から十八日までがハイレベルの協議で、十九日から専門家会合を行うと、こういう段取りになっております。
  16. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 事務的には、今、アジア局長が御報告を申し上げたとおりでございます。  この日朝の国交正常化のための交渉は、与党三党の訪朝団がその道筋をつけて帰ってこられまして、政府としてもそうした道筋を見ながら正常化交渉の時期その他を探っているところでございます。そのときにもお話がございましたように、正常化交渉はいかなる前提もつけずにやろうということになっておりますが、私は全くいかなる前提もつけずに交渉に臨みたいと思っておりますが、どうも昨今の北朝鮮発言を見ると若干憂慮せざるを得ない状況がございます。  ごく最近でも、非同盟諸国会議におきます北朝鮮のオブストラクションがあって、日本のオブザーバー出席が北朝鮮によって拒否されたということがございました。さらには、国連の場におきます北朝鮮の非常に激しい発言ぶりなどを見ると、これは正常化交渉にいかなる前提もつけずに我々は臨みたいと考えておりますが、こうしたことがありますと、正常化交渉というものはうまくいくだろうかという、これはやや私の心配事でございますけれども、そういう感じがしてならないのでございます。  本当に前提をつけずに、虚心坦懐に正常化交渉をやろうという立場にお互いが立つようにしていかなければならないのではないかというふうに思っておりますのと、何といっても我々は日韓関係というものは極めて重要だと考えておりますから、この日韓関係の重要性というものも頭に入れながらその時期を見たいというふうに考えております。  重ねて申し上げますが、交渉に当たってはいかなる前提をつけるつもりも私は持っておりません。
  17. 大木浩

    大木浩君 朝鮮半島の問題というのは、例えばKEDOなどはアメリカが非常に中心的な役割を果たしておりますし、やはりずっと歴史を振り返りましても、北との関係については、アメリカ側はどういうふうに考えるか、それからもちろん韓国がどう考えるかということです。  まず、アメリカにつきまして、私、二、三日前にちょうど同僚議員数名とモンデールさんとゆっくり話をする機会があったんですが、そのときもいろいろ話を聞くと、それほどどんどんは進んでいないけれども、アメリカと北朝鮮との政府交渉といいますかこれはいずれ何らかの代表部的なものをつくるということを想定しながらいろいろ交渉しておるというふうに私は説明を理解したんですけれども日本政府もやはりアメリカと同じような、少なくとも方向としてはいずれ何らかの政府代表部的なものを設置するということも含めて今いろいろと交渉しておられるということに理解してよろしいでしょうか。
  18. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 米朝のやりとりは我々から比べると相当進んでいるわけでございまして、私どもはそこまでまだ進んでおりません。  いずれにしても、私どもは、北朝鮮国際社会の中で相互依存関係、よきパートナーという立場に立って責任ある対応をするということが望ましいわけで、そうした気持ちも持ちながら正常化交渉の重要性を我々は考えているわけでございますが、今、大木議員お話しになったところまで実はまだ話が進んでおりませんで、正常化交渉の場所やら時期やらを探るという、まだその一つ手前の段階だというふうに御理解をいただきたいと思います。
  19. 大木浩

    大木浩君 北朝鮮、朝鮮民主主義人民共和国ですか、非常に接触が少ないわけですね、これは国交が回復されていないということがそもそもなんですけれども。だから、あらゆるチャネルを活用していろいろと話を進めなきゃいけない。北朝鮮との話し合いも、私も渡辺先生にお供して行ってから今までずっと流れを見ておりましても、非常にそのときそのときで向こう側の言っていることが変わったり、あるいは変わっていないけれども新聞は変なことを書いてみたりというようなこともあるわけですから、これはきちっとした積極的な外交を展開するためにはやはりいろいろなチャネルを使わないといけないのではないか。  日本にも朝鮮総連というのがありまして、あの方々は必ずしも政府を代表しているわけではないけれども、例えば向こうの労働党とのコンタクトがかなりある。それから、自民党ばかりでございませんで、社会党さんを初めほかの党の方々もいろいろとそれぞれのチャネルを活用してということですから、どうぞひとつ、もちろん外務省だけでできることはやっていただくんですが、あらゆるチャネルを活用して正確な情報というのをひとつ入れるようにということをお願いしたいと思います。  それと同時に、今アメリカの話を申し上げましたけれども、もちろん韓国と緊密なる連携を保ちながらということが必要かと思うんです。実はきょうちょうどアジア局長が自民党の方の外交調査会にも来ておられましたけれども政府として一生懸命北と話をしておって、それから韓国との連携もきちっとやっておるというお話なんですが、やっぱりいろんなところへ出ていきますと、必ずしも韓国の方では理解してないぞとか韓国の方の大統領やらあるいは日韓議連の議長さんまで必ずしもそうじゃないみたいな発言をされる。  この辺はもうちょっと、議員との問題であれば私どももできるだけ協力いたしますので、どうぞひとつその辺のところを、やっぱり北との関係を円滑にするということは韓国にとっても、もちろん日本にとってもですけれどもプラスな話でありますから、どうでしょう、外務大臣、今見ておられまして、外務大臣としてあるいは自民党の幹部としての今のそういったいろいろな韓国との関係をどういうふうにこれから進めていかれるか、お伺いしたいと思います。
  20. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) まず北との話について申し上げますと、何といっても国交はないわけですから、政府がいろいろやるというのにはもう非常に限界がございます。かつて国交の不正常であった北京との間で、我々の先輩議員が議員外交と言われて大変苦労をされて、しかし中国との間の関係をつないで、それを今日のようにしてきたという前例を考えますと、今、北との関係も、政府ということの前に、議員外交あるいは党と党との関係、そういった役割が非常に大きいというふうに思うんです。  ただ、一つ気になりますことは、ああした体制の違う国ですと政党の持つ意義が全く違うんですね。北朝鮮の労働党は、党であると同時にまさにもう政府のようなものでございますから、向こうは党が出てくる、こっちも党が行く。幾ら与党二党とおっしゃっても、それはやっぱり政府与党との間には行政と立法府との違いがございます。そこが先方との間には少し違った部分が出てくるというところは大いに気をつけなければならないところだと思いますが、いずれにしても議員外交の重要性というものは、私はまず考えなければならないと思います。  そこで、韓国の問題でございますけれども、私ども、先ほど申し上げましたように、日朝の国交正常化がなぜ大事かというのは、一つは戦後長い期間にわたって不正常な状況を直すということは、これは何といってもまず一番大きな問題でございます。それと、国際社会の平和と安定という点にも大いに資するところがあると思いますが、何といっても朝鮮半島の平和ということが非常に大きな意味だと思います。  それを考えますと、今韓国が何を考えているかということを我々がよく理解するということが必要だと思います。どうも最近南北の話し合いというものがなかなか進まない、南北の話し合いが進まない割に米朝の話し合いが進んでいくというようなことに、韓国側はやはりいろいろな意味で思うところが大きいのだと思います。  ですから、さらにまた日朝がということになりますと、韓国立場韓国考え方というものを、我々は我々が思っている以上に韓国はいろいろ思いがあると考えなければなりません。十分に韓国考え方、それから韓国がどういうことを考えているか、どういう方向に進もうとしているかということについても十分理解して、もちろん外交我が国の国益を考えた自主的な判断で進めるわけではありますが、我が国の国益を考える上でも日韓関係というものを考えていくのはこれまた当然だと思いますので、韓国との連絡はさらに緊密にしていく必要がある、誤解のないような十分な連絡を我々はとらなければならない、そんなふうに思っております。
  21. 大木浩

    大木浩君 ちょうどきょうは防衛庁も来ておられるので、北朝鮮におきまして最近国防相といいますか、あそこでは人民武力相ですか要するに国務大臣ですが、国務大臣が亡くなって人事異動があったというようなことがあって、いろいろコメントされているんですが、防衛庁として、これは人事異動があったというだけに受けとめておられるのか。それから、特にこの時点で何かコメントがありましたら、ひとつ教えていただきたい。
  22. 小池寛治

    政府委員小池寛治君) 先生質問の人事異動につきましては、二月ですか呉振宇人民武力相が亡くなって、その後、人民武力相のポストそれから総政治局長のポストが空席になったわけです。それを今までの総参謀長であった崔光次帥が後を襲った、それから総政治局長にもポストが埋められた、いわゆる北朝鮮の軍の中における第一世代の人たちがトップのポストを埋めたということで、ある意味では従来の車の中の人事配置というのを基本的に変えずにそのまま昇進させだというのが一つの特徴がと思います。
  23. 大木浩

    大木浩君 よその国のことですから、余り細かくはそれ以上お聞きしません。  あと余り時間もございませんが、いよいよAPECの会議が近づいてまいりましたので、外務大臣、いろいろと御準備で大変でございましょうし、日本は議長国としての立場、それからまた例えば日本の農業の問題についてもいろいろと難しい問題があると思います。  このAPECで、前から言われておることですけれどもアジアにおけるアメリカのプレゼンスという問題について、アジアの国はそれぞれどういうふうに評価するかという問題があると思います。アメリカのプレゼンスといいましても、これは軍事的なということだけじゃなくて、やっぱり政治的、外交的、いろんな意味でのアメリカのプレゼンスだとは思いますけれども、その辺のところはどうなんでしょうか。これは非常に抽象的な質問で恐縮でありますが、今の時点におきましてアメリカのプレゼンスというものについて、そしてAPECを控えて外務大臣としてはどういうふうにこれからそれを受けとめていかれるのか。特にアジアの国でも若干の国は必ずしもアメリカの今のあり方について全く賛成ということでもないようだということもございますので、その点も含めてひとつ外務大臣のお考えを伺いたいと思います。
  24. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) APECは、クリントン政権になってシアトルで行われたAPECの会合で非公式首脳会議を行いまして、アメリカがアジアに対する非常に強い関心をそこで見せた。そして、このAPECの会合を通じてアメリカというものがアジア太平洋地域に、今まさに大木議員がおっしゃるように軍事的なプレゼンスではなくて、経済的にも、またある意味では政治的にも一つのプレゼンスをそこに展開していくということであろうと思います。  アジアの国々は、アメリカの軍事的なプレゼンスがアジアの安定に大いに資するところがあるという評価を、これはもちろん濃淡はありますけれども、基本的にアジア太平洋地域経済発展の基盤としては政治的なあるいは安全保障上の安定というものがその基盤になっている、その上に立って経済発展というものがあるということを、それぞれの国は濃淡の差はあってもそれぞれ考えているわけで、その点は私は比較的好ましいと考えておられるというふうに思います。  一方、アジアの国々の物の考え方のテンポとアメリカのテンポの間には少し差がある。アジアの外相などと話をしてみると、どうしても少しせっからだな、急ぎ過ぎるなという気分がございますし、それから会議というと何か交渉事のように、これをやるかあれをやるか、これをやらないときはこうするかという交渉のような会議になることは、どうも今までの我々の会議とは少し違うなという、若干そういう気分があることは間違いありません。  しかし、アメリカがAPECというものに非常に大きな力を与えた。やはりあのシアトルAPEC以後、APECというものに対する見方、それからAPEC自身の持つ力といいますか勢いといいますか、そういうものはやっぱり目覚ましいものがある。現に、ヨーロッパの国々を初めとして多くの国々がこのAPECには注目をしてきているということもあって、そういう点ではAPECのメンバーはアメリカがAPECの中で大きな役割を果たしていることについて一般的に好意的に受けとめていると見ていいと思います。  それは議員がおっしゃるように、中にはいろいろな意見があって、どうもアメリカの発言が仮に強過ぎるということになれば、アメリカのその意見を何とか少し抑え込む方法はないかと考えてみたりすることはあるかもしれません。しかし、そこはアメリカも割合とよくわかっていて、少なくとも僕らが見る限りにおいては、アメリカはアジアの歩みに合わせようという努力はしておられるというふうに思います。  例えば昨年のボゴールで行われたAPECは、ちょうどアメリカの中間選挙の直後であったということもあって、アメリカはどっちかというとむしろ非常に控え目な発言態度に終始されたように私は見ましたが、徐々にAPECの中でアメリカは物の考え方をお互いに理解し合って、それから違いを認め合っていかれることになるんじゃないのかというふうに私は見ております。
  25. 大木浩

    大木浩君 アメリカのアジアにおけるプレゼンスにつきましては、アメリカ自体、あれは国防総省でしたか二月にイースト・アジア・ストラテジー・レポートを発表しておられて、あれが一つの基本的な立場で、我々、アメリカのモンデールさんとかほかの国防総省の人と話をするといつもやっぱりあれだということで、非常に自信を持っておられるんです。  防衛庁がせっかくおいでなので、防衛庁立場からあのリポートについて今の時点でそれは日本側としても結構だと思っておられるのかどうか後で外務大臣にひとつまとめてお伺いしたいと思いますが、防衛庁としてはどういうふうに受けとめられますか。
  26. 小池寛治

    政府委員小池寛治君) 先生の御指摘のEASR、東アジア太平洋地域における安全保障戦略において、アメリカとしてはこの地域の安全保障に引き続き関与していく、それから米軍の前方展開戦力を維持していくという必要性を強調している。  特に、この地域において、米軍は現在約十万弱ですけれどもそれ以上削減する計画はない、見通し得る将来においてこの地域における前方展開戦力を現行の水準に維持するということを再確認しているということにつきまして、防衛庁としてもこの点を高く評価している次第です。
  27. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 現在アジアの国々の中にはASEAN地域フォーラム、ARFという場を設けて、そこで安全保障考えようということで外相が集まって議論をいたしております。現在のところは信頼醸成をするということで話し合いを進めているわけでありますが、そうしたARFのやりとりも基本的にはアメリカのプレゼンスというものがあって、それを背景として信頼醸成について語り、徐々に形をつくっていくというふうに我々としては考えているわけです。  そういうものがヨーロッパにおきますOSCEと同じような方向に行くのかと、よくこう言われますが、OSCEもNATOというものが背景にあったりしておりまして、必ずしもARFだけでアジア安全保障というものが全部語られるわけではもちろんございません。OSCEとARFと比べるとまだ大変差がありますし、ARFがOSCEのようになるのには相当時間もかかると思いますが、しかし政治的に安全保障をやっていくという意欲はそこに出てきていると思います。  今それぞれ防衛政策の透明性というものを提案して、日本からは防衛白書のようなものですが、各国からそういうものをお互いに出し合って、どこの国がどのくらいの軍事力を持っている、防衛政策はどういうものがあるかということをお互いが知り合うことにしようというような提案をして、それが少しずつではありますけれども進みつつございます。なかなかもうひとつ透明性のはっきりしない国もございますから、私はそういうところにはさらに協力をしていってもらいたいというふうに思ったりしているところでございます。
  28. 大木浩

    大木浩君 実は、日本におきましてアメリカのプレゼンスが多過ぎて困っている地域も今あるわけですけれども、しかし全体としてはアメリカのプレゼンスが日本にとってもアジアにとっても大事であるということは、先ほども申し上げましたように、できるだけ国民にもっと強力にPRしていただかないといけないと思います。  沖縄の問題については同僚議員から御質問がございますので、私はこれで終わらせていただきます。ありがとうございました。
  29. 野沢太三

    野沢太三君 ことしは戦後五十年の節目の年に当たるわけでございます。五十年前ということになりますと、私はまだ小学生でございましたが、終戦の詔勅を聞きまして、これで戦争が終わったなというほっとした安心感と同時に、これからの日本がどうなるかなという不安に駆られたこともよく覚えているわけでございます。  しかしながら、その後の日本が、政治では民主主義、経済は市場経済、そして外交は平和主義を持ちまして世界じゅうの皆様とつき合ってきた。こういう中で、日本外交のあり方という面で振り返ってみた場合には、吉田総理の時代に、もう西側との単独講和でいいと、いろいろあのときも世論がございました。全面講和やるべしという議論もございましたが、とりあえず西側とだけということで踏み切って、国連における地位も回復できたということ。さらには、鳩山さんが今度は日ソの国交回復をやり、そして岸さんのときに安保条約の改定。この国会周辺も埋め尽くされるような騒ぎをしたわけではございますが、あの選択は極めて私は正しかったと思うわけでございます。また、佐藤さんのときには沖縄の返還。大変おくれましたけれども、とにもかくにも戦争で失った領土が話し合いで返ってきたという、大変これは歴史的にもまれなケースと言われたことでございますけれども、沖縄が日本の国に戻ったという事実、これは大変大きなことであったと思います。また、田中さんの日中国交回復ということも節目としては大変大きな仕事と思うわけでございます。  日本の安全というものが平和憲法という中で、理想にわたるわけでございますけれども、現実の国際政治の中ではやはり力による安定というものがどうしても必要だと。そういう中で、日米の安全保障条約というものはどうしても必要な抑止力ということで今日に至っているわけでございます。やはり必要最小限の防衛力で済んだということが日本経済発展一つの礎にもなっているわけでございますし、この地域の安定のためにもこれが役に立ってきた。こういった中で、やはりこれからも、いろんな変わり目のときになってはおりますが日米関係というものは最も重要と、先ほども大木先生からもお話があったとおりだと思います。  この夏、私はワシントンに行ってくる機会があったんですが、そのときにちょうどスミソニアンの博物館でB29エノラ・ゲイの復元モデルが展示されておりまして、これを見てまいりました。被害を受けたということは、戦後長いこと私どもはこれを痛いほど感じてきたわけです。あのときの攻撃側の論理というものは一体どういうものであったかということを私も現物を見て感じたわけでございますが、彼らは任務を淡々と遂行した、こういう印象でございます。そして私の感じましたのは、片道二千キロを超える攻撃力を持つあの航空機を当時開発し、実用化していったというアメリカの持つ工業力、技術力、そして民族のエネルギー、こういったものを嫌というほど感じさせられたということでございます。  なぜこのような国と日本が事を構えなければならなかったか、こういった外交外務のこれは大きなあり方の問題として、戦前の外交のあり方について反省がやっぱり必要だというふうに思うわけでございます。その意味で、時代の変わり目におきまする外交上の選択というものはまさに国の運命を左右する、こういうことであろうかと思います。そして、その節目がいつ来るのか、今がその時期なのか、これはもう大きな判断であろうと思うわけでございます。  こういう中で、私は今の日本とアメリカのあり方を考えるに当たりまして、今回の沖縄の少女暴行事件というものは、大変これは痛ましいことでもあり残念なことである。せっかくこれまで良好に進んでまいりました日米関係を損なうまことに遺憾な事件と思うわけでございます。何としてもこういったことの再発を防止しなければならない。  沖縄県の皆様は、やはり大戦で戦場としてじゅうりんされたということ、さらには占領が長く続いたこと、そして今日でもまだその痛みを引きずっているということからいたしましても、本当に心中察するに余りあるという気持ちでございます。返還後も四千六百件を超えるような事件が起こっているということで、最近は大分減り始めているということでいい傾向かなと思っていましたところ今回のような事件が起こってしまった。やはりこれは相当これから努力を積み重ねていかなければならない課題と思うわけでございます。  大臣におかれましてもこれまで随分御努力をいただいてきておるようでございますが、これまでの大臣としてのお働きについて簡潔にお述べいただければと思います。よろしくお願いします。
  30. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 野沢先生お話しのように、かつて戦った日米両国がその後さまざまな双方の先輩の努力、理解、協力、そういったものがあって、今や国際社会の中で最も重要な二国間関係を持つという状況になりました。  そういう中で、我々は今、冷戦も終わって、戦争が終わって五十年というこの年に考えるところいろいろあって当然というふうには思うわけでございます。我々が今国際社会の中で、冷戦時代に国土の安全ということを主眼として日米安保条約、もちろんそれは安保条約の中には経済的な協力というものもございましたけれども、いわば主として国の安全というものを主力に日米安保条約というものをつくってまいりましたが、今やその日米安保条約もポスト冷戦という状況を迎えてこれからこれをどうするんだということを大いに論じなければならない場面にいると思います。もちろん私ども政府といたしましても、アメリカとの間で新しい国際的な環境の中で日米安保条約というものがどういうものであるべきなのかということについて繰り返し繰り返し議論を続けてきているわけでございます。  そのことはいずれ後ほどお尋ねがあれば申し上げることといたしまして、そういう状況下にあって、つまり日米安保条約を我々は基本的に引き続き極めて重要だと考え、村山総理も安保体制は堅持する、こういうことをはっきり述べられている状況のもとでの今回の沖縄での大変痛ましい事件、許しがたい事件が起こったわけでございます。  そこで、この問題について私どもは、直ちに事件の適切な解明と同時に再発の防止ということを米軍に対して、米国に対して申し入れをいたしました。事件の概要判明後、直ちに事務当局をしてアメリカ大使館あるいは在日米軍、さらには国防省及び国務省の責任者に対しまして遺憾の意を表明し、捜査への協力、再発の防止、さらには米軍の綱紀粛正の徹底を申し入れたわけでございます。私は、二十一日にモンデール駐日アメリカ大使を外務省に呼びまして、今申し上げた事柄について正式に私からさらに申し入れを行いました。  私の申し入れに対して、モンデール大使はその場で即答を幾つかされました。例えば、捜査への協力について、マスメディアを通じて、どうも米軍の協力が十分ではないのではないか、例えば取り調べについても土曜、日曜は取り調べに応じない、あるいは普通の日も四時になるともう連れて帰ってしまう、これでは取り調べがうまくいかないなどという報道が一部にございました。  この点について国家公安委員長にただしましたところ、国家公安委員長からは、そうした事実はない、取り調べは協力を得て今のところ何の支障もなく進んでおるということを言ってはおられましたけれども、私からさらにモンデール大使に、こうしたことのないように十分大使からも御指示願いたいということを申しましたところ、大使からは、確認をされた上で、いついかなるときでもそちらの要求があれば取り調べに応じる用意がある、また指定の場所へそれを連れていく用意があるということを言われたわけでございます。さらに、再発防止、綱紀の粛正についても十分アメリカとしては当然考えなければならないと思うので、再発防止のためのできる限りの措置を必ずとりますという御返事がございました。  このことは、その後のニューヨークにおきます2プラス2、いわゆる日米安全保障協議委員会におきましても、ペリー国防長官から詳細にわたりまして、軍人教育、綱紀粛正、再発の防止に留意をするということを言われると同時に、その中身についても話がありまして、ペリー国防長官は、その後、共同記者会見におきましてそれら具体的な措置を述べられたところでございます。  お許しがいただければ少し具体的な内容についても申し上げたいと思います。  ペリー国防長官は、九月二十七日、本日、クルーラック海兵隊司令官は、第三海兵機動車による一日の訓練停止、これはその後もう一日ふえましたけれども、訓練停止を発表した。反省の日と言われるこの日は、隊員は自分たちが沖縄住民に対して負っている責任につきよく考えることとなる、そしてそのために、今週末、教会でもその手の講話が行われる。それから、マッキ太平洋軍司令官は、将校、下士官、兵卒の代表を集めて司令官会議を行って、その結論を下部に周知徹底するように指示をする。その一環として沖縄の文民当局と再発防止のための措置につき調整をするとともに、軍人によるアルコール飲料消費のあり方の見直し、警備の強化を検討する。それからさらにペリー国防長官は、自分からマッキ司令官に対し、新たに日本勤務を命ぜられた軍人に対する教育プロセスのあり方を見直すように指示をした、また米軍が日本の地域住民にいかに貢献することができるかを検討するようにも指示をした、こういったような具体的な措置についてペリー国防長官は述べられたわけでございます。  引き続き、私どもとしてもでき得る限り米国及び米軍と連絡をとって、再発の防止、綱紀粛正の徹底方を依頼いたしておるわけでございます。
  31. 野沢太三

    野沢太三君 このような事件の防止には、やはり責任者、指導者、指揮者、こういった皆さんが繰り返し繰り返し趣旨を部下に徹底する、これを重ねることがまずやはり一番初動としては大事ではないかと思います。  あわせまして、また現場におきまして、出来心なりなんなりが起こらないようにということで、例えば警察官の巡回であるとか取り締まりとかさまざまな現場における努力、これもまた大事ではないかと思うんですが、これにつきまして警察庁の方から状況を御説明いただきたいと思います。
  32. 平石治兌

    説明員(平石治兌君) 御説明申し上げます。  沖縄県警察においては、従来から米軍基地を管轄する警察署と基地管理者との間で定期的な会合等を持ちまして、犯罪の防止について理解と協力を得るよう努めております。そのほか、犯罪発生の状況に応じまして、繁華街、基地周辺等に対しまして警察官によるパトロールの強化に努めているところでございます。  また、米国軍人による犯罪が発生した際には、犯罪の予防措置の徹底等につきまして米軍に対する申し入れを行うなどして、犯罪の続発を防止するための措置を講じているところでございます。  引き続き、このような努力をしてまいりたいと考えております。
  33. 野沢太三

    野沢太三君 これを今後抜本的に解決していくためには、現在日米地位協定があって、これをどう運用するかというところに大きな問題があろうかと思うわけでございます。一罰百戒と言われますが、法を犯した人がきちんと処分をされるということが目の当たりにあればやはりほかの皆さんも身を正すと、こういうことかと思いますので、焦眉の魚として、早急にこの地位協定の運用改善を行いまして、こういったことはやってはいかぬことだということがはっきり前面に出てくるということが今一番大事ではないかと思います。  協定の見直し等の話もありますが、時間もかかるとかあるいは世界的な影響があるとか安保の根幹にかかわると、こんな話もございますが、当面すぐできること、そしてまた運用の改善として相当なことができるんじゃないかという期待もあるわけでございます。  これまで随分御議論をいただいているようでございますが、これまでの会議状況等について御説明いただきたいと思います。
  34. 折田正樹

    政府委員(折田正樹君) 外務大臣からモンデール大使に申し入れを行いました結果、刑事裁判手続の改善の可能性を検討するために専門家委員会が設立されました。これまで三回開催されております。九月二十五日、十月五日、十月十三日でございます。  日本側からは、今の日米地位協定のもとでの刑事裁判手続につきまして、特に被疑者の拘禁の移転の問題、それから拘禁の態様の問題、それから捜査協力の問題につきまして改善の可能性がないか検討したいということでアメリカ側と話しているわけでございます。我が方といたしましては、できるだけ早く成案を得るように努めているわけでございます。  アメリカ側も積極的に対応してくれておりまして、アメリカ側からも、特に捜査協力の面その他での詳しい説明もあったりしてございます。それから、アメリカがほかの国とも地位協定を結んでおりますけれども、その運用、規定ぶりについてもアメリカ側の説明があったということでございます。  まだ具体的に成案を見るに至っておりませんけれども、私どもとしては、なるべく早く改善策を具体的に皆様にお示しできるよう精力的に協議を行っているというのが今の状況でございます。
  35. 野沢太三

    野沢太三君 いろんな期待はございますが、何とかNATOのケース、ボン協定のような弾力的な扱いができればいいんじゃないか、これを一点期待するわけでございます。  そのほか、地位協定に関しては低空飛行の問題とか免許証の問題とかいろいろございますが、現段階ではやはりこの点が一番の課題だろうと思いますので、引き続きひとつ努力をいただきまして、形になることで成果を上げていただきたい、米軍の理解、協力をぜひ取りつけていただきたいと思うわけでございます。  そういう中で、この種事件が起こってくるというのはやはり基地の存在とその広がりというものが大きいと思いますので、これまでも随分整理統合についての御努力をいただいてきております。特に、那覇の軍港あるいは読谷の飛行場、それから県道一〇四号線を越える実弾射撃、こういった三事案については合意しているわけですから、これをもう少し早く進めて事態を改善する、これが大事かと思いますが、これについてどうなっておりますでしょうか、御説明お願いします。
  36. 坂本憲一

    説明員(坂本憲一君) 御説明申し上げます。  いわゆる沖縄三事案のうち那覇港湾施設の移設問題及び読谷補助飛行場の返還問題につきましては、去る五月十一日の日米合同委員会承認された内容を沖縄県を初め関係市村にお伝えしているところであります。  これに対しまして、移設されることとなる浦添市及び宜野座村は反対の意思を表明しておりますが、防衛施設庁といたしましては、長年の懸案であるこれら二事案の解決のため、沖縄県当局の協力も得て関係市村の理解を得るよう今後とも粘り強く努力していきたいと考えております。  また、県道一〇四号線越え実弾射撃訓練の問題につきましては、九月の日米安全保障協議委員会、いわゆる2プラス2におきまして意見交換が行われ、複数の演習場において分散実施する方向で技術的、専門的に検討することで日米双方の認識が一致し、十月五日の日米合同委員会におきまして本問題の解決に向けて検討を行うための特別作業班が設置され、検討を開始したところであります。十月十二日には第一回の会議を開催したところであります。今後特別作業班におきまして鋭意検討を促進していきたいと考えております。  なお、平成八年度予算概算要求におきましては、これら三事案の移設等の検討に必要な調査に要する経費を要求しており、三事案の解決促進のために引き続き努力をしてまいる所存であります。
  37. 野沢太三

    野沢太三君 特に実弾射撃場の移転については沖縄の中では難しいということで、本土にその候補地を求めるということで既にお調べをいただいているようですが、これについてはやはり周辺住民の皆様の御理解と同時に、もう一つ私、自衛隊がもう少し協力をして、場合によっては同じ演習場で一緒にやるというくらいのことがあってもおかしくないんじゃないかと思うんですけれども、この点いかがでしょうか。
  38. 坂本憲一

    説明員(坂本憲一君) 御説明申し上げます。  これにつきましては、十月五日に設置されました特別委員会、ここに専門家の方を集めましてそこで検討するということになっておりますので、今後鋭意努力してまいりたいというふうに考えております。
  39. 野沢太三

    野沢太三君 いずれにしても、こういった課題をただ放置せずに決まったものはどんどん進める、こういうことで具体化をいただきたいと思うわけでございます。  それからもう一点、基地用地に関する代理署名の拒否問題が出ておりますが、これにつきましてはいろんな手続が定められておりまして、機関委任事務ということもございますけれども、事の次第はやはり沖縄の住民の皆様の基地に対する反発、こういったものが基本にあるわけでありますし、それから既に御同意いただいている方々も多数いらっしゃるという中で、やはり粘り強いお話し合いを重ねていただく。私も用地にかかわる仕事は過去長いことやってまいりましたが、何としても協議を重ねて御理解をいただくということが基本でないと、いたずらに事務手続がこうだからということで、そこで力ずくでやるということは結果的に決していいことではないと思うわけでございます。  そんなことからいたしまして、この問題に対する対応をどのように今取り組もうとしておられるのか。十月二十一日は県民大会もあろうかという中でございますので、お考えを聞かせていただきたいと思います。
  40. 小竹秀雄

    説明員(小竹秀雄君) 御説明申し上げます。  大田沖縄県知事は、署名押印について国の機関委任事務として定型的に処理するには多くの問題を内包しており、この際、沖縄県には余りにも過重な負担を強いている米軍基地のあり方を厳しく問わざるを得ないとして拒否しておりますが、その理由については知事の国政に対する要望につきまして理解しているものでございます。  防衛施設庁としましては、沖縄の基地問題について今まで種々の努力をしてきているところでございますが、今般、署名押印手続に当たりまして、知事の国政に対する要望を踏まえまして、沖縄の基地問題につきましては引き続き努力してまいりたいと考えております。  このような状況を踏まえまして、防衛庁長官が十月二十四日から二十五日にかけまして沖縄県を訪問いたしまして、沖縄県が抱える基地問題などについて大田知事と誠心誠意話し合いを行うなどを通じ問題の妥結の糸口を見出したいと考えております。
  41. 野沢太三

    野沢太三君 ぜひとも心の通うお話し合いをしていただきたいと思うわけです。  何やら原則論といいましょうか、そういったものをぶつけるというようなことではなくて、本当にみんなしてこの沖縄の皆様の心の痛みを分かち合うんだということで誠意を尽くして御努力をいただきたい、かように思います。  それでは、この沖縄問題は一応これで締めくくりまして、国連の問題について二、三お伺いをいたしたいと思います。  ことしは国連五十周年ということで、大臣におかれましても、先般、総会で演説をしていただきました。そして総理が間もなく御出発と、こういう状況にあるわけでございます。  ただ、総理の演説につきましては、伺いますと五分間という限られた時間という中で大変制約があるわけでございますが、先般、外務大臣が行かれましたときの内容に対して総理の演説が後退しているんじゃないかという心配を私ども持っておるわけでございますが、この点いかがでございましょうか。
  42. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 議員御指摘のとおり、今回の村山総理の国連演説は、国連五十周年記念の各国の元首及び首相による演説ということもございまして、時間的制約がございます。  村山総理の演説は、国連が五十周年を迎えたということに祝意を表すことから始まりまして、国際社会が国連にどういう期待をかけているか、また国連がどういう役割を担っていくかというような我々の認識を申し述べると同時に、軍縮、とりわけ核実験に対します我が国姿勢、さらに国連改革についての考え方、それから村山総理が先般コペンハーゲンの社会開発会議で述べられましたように、人間重視の立場に立ってお考えを述べられるということになっております。  したがいまして、私の先般国連で行いました演説とダブる部分とダブらない部分ともちろんございますが、ダブる部分については、今、議員御心配のように、後退をするというようなことは全くございません。我が方、日本考え方というものはきちんと総理演説の中にも表現されているということでございます。
  43. 野沢太三

    野沢太三君 私もこの夏国連を訪問いたしまして、今の国連は既に信託統治のように使命がほぼ終わったような分野もあり、それから大臣御提案の経済社会関係の理事会の任務の拡充拡大といった仕事も当面の急務であると。しかし、何といっても安保理事会をどうするかというのが一番大きな課題だと思います。  九月二十六日でございますが、安保理の外相会議におきまして安保理拡大の必要性については各国の同意をいただけた、こう理解しているわけですが、その中で日本並びにドイツについてどのくらい世界じゅうの関係国に御理解をいただけたのかどうか、作業部会のこれまでの実績とあわせてお話を聞かせてください。
  44. 川島裕

    政府委員(川島裕君) お答え申し上げます。  雰囲気といたしまして、日本とドイツが安全保障理事会の常任理事国ということについては理解を持つ国がふえていることは事実でございます。ただ問題は、それに加えて、多くの開発途上国としては開発途上国の安保理における代表をはるかにもっと増大すべきであろうという大変強い思いを持つ向きが多くて、それを幾つぐらいふやすかということ、この辺になると大変紛糾してくる話でございます。  一つ考え方としては、今十五カ国なわけでございますけれども、それに日独で足して二、そのほかにアジア、アフリカ、それからラ米で三つとかあるのでございますけれども、その辺になると収れんするよりもむしろ議論は拡散ぎみでございます。  なぜ拡散するかといえば、それぞれの地域で、それじゃどの国に絞り込むかということは、当然御理解いただけると思いますが大変難しいプロセスで、むしろあの国がなるのだけは絶対に邪魔しようという国の数の方が多くなるわけでございます。  ですから、このままいきますとむしろ拡散してしまう危険があるものでございますから、私ども立場としては今度の会期、来年の九月に終わるわけですけれども、その中で議論を煮詰めて、なるべく早く具体的交渉のテーブルができることを期待しておりますし、そういう流れができるのが望ましいと考えておる次第でございます。
  45. 野沢太三

    野沢太三君 国連のような機関では、やはり明確なアピールをしている、絶えずそういった意思を発信していないと日本は一体何を考えているんだということがわかりにくい。そういう意味でも、あらゆる機会をとらえて日本として国際貢献の用意があるんだということは訴えておかないといけないんじゃないかかように思うわけでございます。  今後ともその意味で、国連の舞台のみならず、通常の外交あるいはODAの活用、その他あらゆる外交努力の中でやはり日本の存在とまた貢献の姿勢というものをはっきりわかる形で出していくことが大変大事ではないかと思うわけでございます。引き続きの御努力お願いいたしたいわけでございます。  今回、国連を訪問しました中で関係日本人職員と懇談をする機会があったわけでございます。今、日本の国連に関する分担金というのは一二・九五、一四%に近いということで、アメリカに次いで第二位ということでありますが、職員の数は九十一名、二・五%しかいない、こういう実態だと伺いました。そして、もっともっと日本人の数がいてもいい、大体二百人くらいは比率としていて当たり前だと、こういうわけですが、なかなか数がそろわない。明石さんや緒方さんや立派な方はいらっしゃいますが、その後、中堅部分の層が欠落をしているということも伺ったわけでございます。  では、どうしたらふやせるかということでございますが、語学の能力もございますけれども、何といってもやっぱり処遇と将来に対する保障、こういったものが大事ではないかということを痛感したわけでございます。  国際公務員という一般的な見方があるわけでございますが、特に国連本部に対する職員の派遣拡大ということができないか。外務省初め各省庁、あるいは民間も含めてそういった人材は相当いるだろうと思うわけでございます。このためにもし制度が必要ならば法律の改正なり準備なり、あるいは予算の措置なり、こういうことでもう少し事務局で働く皆様増強、補強し勇気づけてあげることが大事ではないかと思うわけですが、いかがでございましょうか。
  46. 朝海和夫

    政府委員(朝海和夫君) 国連関係の機関で働いております邦人職員は御指摘のとおり九十一名でございまして、日本の分担率あるいは日本の置かれております国際的立場にかんがみますればもっとふえてよろしいのであろうと考えております。  そのため、私どもといたしましてもそれなりの手を打ってまいりまして、アソシエートエキスパートという制度をつくりまして若手の人を派遣する、あるいは国連での空席がありそうな場合はそれを関係方面にお伝えする、募集をするといったような努力もしております。  公務員の場合は、御承知の国家公務員についての派遣についての法律、地方公務員についても似たような法律がございまして、身分上の手当てなどがなされております。  民間からのいわゆる企業派遣とでも申すべきことにつきましては、各企業でそれほど不利益が生じないようにそれなりの身分的あるいは経済的措置もとっておられるようでございますけれども、民間企業から派遣された職員というものは数の上では大変少のうございます。私どもとしましては、国連の活動についての理解、認識、支援が国内的に広まって、民間部門からもますますすぐれた人材が国連で働いてみようということになることを期待しておりまして、それなりの努力も重ねてまいりたいと思います。  外務省としましては、公務員についての派遣制度を一層活用すること、あるいは民間企業からの人材派遣の促進のための方策としてどういうことがあるのか、邦人職員の増加のために何をなし得るのか、御指摘のとおり国際公務員としての中立性も十分念頭に置かなければなりませんけれども、こういった問題について今後引き続き一層研究してまいりたいと考えております。
  47. 野沢太三

    野沢太三君 これは現場任せでなくて、やはりもう外務省の中枢において考えて対応しなければならぬ課題だろうと思います。私は、大きな組織を動かして成果を上げるには、たまに行って演説するのも大事ですけれども、常時駐在していろんな書類を、原案をつくっていく。この仕事がやはり大変大事なことで、事の成否は半分以上そこで決まっていくという実態があるわけですから、有能な人材を、しかもそういった状況に適応できる人を育成し派遣し、そして最後には処遇して引き取るということが一連ございませんとうまくいかない。  日本のお役所は何だかんだ言っても力があるというのは、まことに入省から死ぬまで面倒を見るという、揺りかごから墓場までと言ったらなんですけれども、これが各省庁の縦割り弊害も生んではいるんですが、そのかわり仕事もよくやってくれるというふうに理解しておりますが、国連にはそういうものがない。行ったらもう本人だけ、こういうのではやっぱり元気が出ないと思いますので、よろしくお願いをいたします。  それから、時間がありませんけれども、もう一問だけ。  明石さんが今度ユーゴの特別代表をおやめになって、ガリさんの顧問ということでお残りになるようですけれども、これはある意味で国連そのものの限界を示す一つの事柄というふうに言われているわけでございます。どうしてもあの種のこじれ切った内戦に関して言えば、明石さんの言葉で言えば、馬を水際まで連れていっても水を飲ませることはできなかったんだ、こういう言い有で、やはりその意味ではまだまだ世界状況は甘くないというふうに見られるわけでございます。  さはさりながら、しかし日本の憲法あるいはPKOもございますし、世界に対する外交姿勢からいたしましても、何としてもやはり今後とも話し合いにより、そして平和活動で事柄を改善するという姿勢はとり続けなければならないだろうと思うわけでございます。そして、旧ユーゴがどのような形で平和を達成するかまだ予断を許しませんけれども、これに対して我が国のとるべき対応について、大臣も現場に行かれました御感想も含めてお考えを聞かせていただければありがたいと思います。
  48. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 旧ユーゴの問題は本当に複雑で難しいと思いました。現地でそれぞれの勢力の指導者と会いましたけれども、これはそれぞれの主張を聞けば聞くほど解決策をつくり出すことは難しいなというふうに思ったわけでございます。  私からは、解決策をつくり出すためには相当なバイタリティーが必要ではありますけれども、しかしいずれにせよこれは平和的に話し合いによってやってほしい。極端なことを言うと、多少時間がかかっても話し合う、話し合いによって解決をする、そしてその話し合っている間はどんなことがあっても武力を行使することはすべきでないということを感じ、そういうことを申し上げてきたわけですが、残念ながらその後も武力による殺傷事件というものがあり、さらには力を背景にした話し合いを有利に導こうとすることでしょうか、話し合いも本当の意味の平和的話し合いということにはなかなかならない。そこにはもう全く国際政治の中で交渉事を進めることの不可解な部分と申しますか、難しい部分と申しますか、そういうものがあったわけでございます。  私どもとしては、今、議員からもお話がありましたように、我が国の基本的な外交上の立場考え方というものがございますから、こうした場面に、武力を行使して云々という場面に我々が出ていくということは、その中で我々が働く場所を見つけるということは非常に難しい。しかし、その中でも難民のために我々が貢献することがあるのではないかというようなことでいろいろ我が国が行うべき方策について探ってきたわけでございますが、今回、CG、コンタクトグループの努力もあってやや話し合いの糸口が見えてきているということは、我々にとってもほっとする部分がございます。  問題は、これからこの和平が本格的に成立をしていよいよ復旧・復興に取り組むという状況になりますれば、我が国としても貢献すべき場面ということもあるいはあろうかと思います。ただ、そういう状況になるにしても、我々としては旧ユーゴの各勢力の考え方あるいはコンタクトグループの考え方、そういうものをやっぱり事前に常に我々にニュースを与えてほしい。そういうことがなければ、こう決まったからこうやれと言われてもそれはそう簡単にできることではありませんよということはこれまでも言っておりまして、どうやら和平の可能性が色濃くなるに及んで復興のための話し合いをいよいよしようかという状況になって、日本にもそうした会合への参加の要請、招請があったりしております。  私どもとしては、グローバルな問題に対する我が国関心ということから見ましても、我々に十分納得のいくような状況が生まれ、我々が貢献するにふさわしい事柄というものがあれば真剣に考えてみたい、こんなふうに考えております。
  49. 野沢太三

    野沢太三君 ぜひひとつ人道援助あるいは復興という日本にとってできること、得意な分野が来たときにはよろしくお願いをいたしたいと思います。  時間が参りましたので、残余の通告しました質問は次回に回して、私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  50. 武見敬三

    武見敬三君 では、時間がありませんので一問だけさせていただきます。  昨今、日米双方におきまして日米安保条約の国内基盤といったようなものがともに弱体化しているような傾向が見え始めております。これにいかに対処するかということは極めて重要な課題であるように思われます。特に、最近起きた沖縄における米兵による少女暴行事件というものは、事件そのものが非常に衝撃的でもあっただけに、世論が単なるこの事件に対する憤りから反基地、さらには反日米安保につながる世論となって拡大しつつあるような気がして心配でなりません。  私は、このような日米安保に対し否定的な世論を形成する要因を三点考えてみました。  第一点は、やはり日常生活での米軍基地の存在によってもたらされる不安感及び屈辱感でございまして、これは当然に沖縄県民であるとか基地周辺の住民の方々がお持ちになり、まさにこの五十年問うっせきされたものを持っておられるものと思います。  第二点が安全保障政策上の相違であります。これはまさに共産党であるとか、以前の社会党がこうしたケースに当たると考えられます。  第三点が日米安保体制の将来的役割とその重要性に関する国民一般の認識の低下であります。これは冷戦下のソ連といった明確な脅威が消失したことによってそのことは御理解いただけるものと思います。冷戦期の旧来型の反基地・反安保闘争といったようなものは、私の御指摘申し上げた第一点と第二点の組み合わせの中から反米ナショナリズムを伴って生まれたものと。  そうしますと、今回の世論の反発というのは、まさに私の申し上げた第一点の基地から由来する不安感、屈辱感といったようなものと、それから日米安保体制の将来的役割とその重要性に関する認識の一般的な低下といったようなものから、一定のナショナリズムを媒介として今全国的に広がりを見せているような気がいたします。  このことは十月十七日の日経新聞の世論調査でもはっきりと数字になって出てまいりました。  日米安保体制を維持すべきだというのが事件発生前の八月に五九・八%だったのが四三・五%と減ってしまいます。二八・三ポイントも下落します。そして、安保体制を解消すべきだというのは二八・七%から四〇・二%に一一・五ポイントも急上昇する。  この中にはやはり米兵の少女暴行事件に敏感に反応する専業主婦層及び日米安保に理解の薄い層になればなるほど解消すべきだと答える傾向にあるわけでありますが、こうした世論の動向を見て、外務大臣はこうした日米安保体制の将来的役割とその重要性に関する国民一般の認識の低下というものは現実に起きているとお考えになるか否かということをまずお聞きしたいと思います。
  51. 木庭健太郎

    委員長木庭健太郎君) 武見君への答弁は午後から行うものといたします。  午前の質疑はこの程度にとどめ、午後二時に再開することとし、休憩いたします。    午前十一時三十三分休憩      ――――◇―――――    午後二時開会
  52. 木庭健太郎

    委員長木庭健太郎君) ただいまから外務委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、国際情勢等に関する調査を議題とし、質疑を行います。
  53. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 午前中、武見議員から質問をいただいて、時間の関係で答弁が切れてしまいまして大変御無礼をいたしました。  午前中の武見議員の御指摘、安保条約に対する国民の理解、そういったものについての御質問でございましたが、私も武見議員に共感をするところ多うございまして、昨今の安保条約に対する国民の見方、考え方について、我々がもっと理解を求める努力をしなければならないという気持ちを持っております。  冷戦時代におきます安保条約は、国の安全ということがかなり具体的なテーマとしてございました。それが今日、ポスト冷戦という状況下にこれまでと同じような安保条約に対する国民の見方が続いているかというと、それは決してそうではないわけでございまして、ポスト冷戦下における日米関係あるいは日米安保体制というものはいかなる意味を持つかということについて、国民皆様にも十分理解をしていただく努力が必要であろうというふうに考えております。  そういう状況下で沖縄の事件が起きたということもございまして、私どもとして今日、国民皆様方が安保体制というものに対する意義あるいは理解というものにどういう感じを持っておられるかということを、より真剣に考えなければならぬというふうに思っております。
  54. 武見敬三

    武見敬三君 今の御指摘にありましたとおり、国民の中で日米安保に対する理解の度合いが低下してきている、それを深刻に受けとめられているということ、よくわかりました。  そこで、新しい冷戦後の非常に変化する時代状況の中で、この日米安保の将来的な役割というものを基本的にどういうふうに考えておられるのか、それをお尋ねしたいと思います。
  55. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 日米安保体制というものについて、私は実は少し考えなければならないと思っておりますことは、日米間に経済問題がいろいろ昨年、一昨年とございましたけれども経済問題で日米間がいろいろ、ややとげとげしくなってみたり、摩擦熱が高くなってきたとしても、日米関係には経済以外にも文化とか安全保障とかあるいは政治対話とかさまざまな部分があって、とりわけ日米間の安全保障というものは日米間のきずなの中でも最も安定した太いきずなというふうに考えておったわけでございます。その太いきずな、安定した基盤と我々が考えておりました安保条約というものについて、さっき武見議員が御指摘になりました世論調査の数字などを見ますと、その数字がかなり揺れるということについて、私はよほどこれは考えなければならぬというふうに感じた次第でございます。  そこで、ポスト冷戦の日米安保体制というものは一体どういう意味を持つかというお尋ねでございますが、非常に短い時間に申し上げれば、私は冷戦時代の安保条約というものは、やはり国の安全というものが何よりも重要であった。しかし、冷戦後の安保条約というものは、国の安全と同時に日本周辺の安定というものに一つ役割を持って、その安定が日本を初めとするアジア周辺の諸国の繁栄というものをもたらすということになるのではないかつまり経済的な側面というものも十分考えていく必要があるのではないか、こんなふうに思っております。
  56. 武見敬三

    武見敬三君 外務大臣御指摘になられた九月二十七日の2プラス2、日米安全保障協議委員会で共同発表がなされておりますが、その共同発表の中で、これからの日米、この場合には「同盟」という言葉を使っておりますが、「アジア太平洋地域の平和と安定の維持のための不可欠な要素である」という点で意見の一致を見たということが書かれております。  こうした日米安保というものが、従来、冷戦下においての定義であれば、例えば日米安全保障条約の第六条の極東条項に基づいて極めて厳格に作戦区域等々についての理解というものが区切られていた。そうした理解の中から、やはり新しい解釈の中でこうしたアジア太平洋という、より広い地域の枠組みの中で日米安全保障条約の果たす役割というものを再定義しているというように私は理解しているんですが、それでよろしゅうございますか。
  57. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 武見議員御指摘のとおり、日米安保体制というものは、先ほど私申し上げましたように、日本の安全ということが最も重要なものでございますが、それと同時に日本周辺の安定秩序、そういったものにアメリカのプレゼンスが大きな役割を果たすということになりますと、安保体制というものがアジア太平洋地域のプレゼンスのためにまた重要な役割を果たしているというふうにお考えをいただきたいと思います。
  58. 武見敬三

    武見敬三君 わかりました。  そのアメリカのアジア太平洋における軍事的プレゼンスの持つ重要性というものは、次にどういうふうに理解をすればよろしいんでしょうか。
  59. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 冷戦時代と違いまして、地球規模の大きな戦争が発生する可能性というものは非常に少なくなっていると思います。しかし一方、我が国周辺におきましても、我々にとってまだまだ心配な地域というものはあるわけでございます。午前中の御質疑でもいろいろございましたけれども、我々はARFなどを通じて軍事力あるいは防衛政策の透明性というものを重要視しておりますけれども、まだアジアの国の中にはその透明度が十分でなくて、我々にとって不安を感ずる地域、例えば我々の近くにもそうした地域がございますけれども、というものがあるわけでありまして、そうしたことを踏まえて秩序を維持すると申しますか、安全のためのプレゼンスということが一つございます。  それからもう一つ、これも午前中ちょっと申し上げたかと思いますが、アジア太平洋地域の目覚ましいダイナミックな経済発展というものを支えますのは、一つ政治的安定があると思います。それぞれの国がそれぞれ政治的な安定のために努力はされておりますけれども、地域全体の安定ということを考えますと、アメリカのプレゼンスはその重要な基盤をつくるということになっていくと思います。
  60. 武見敬三

    武見敬三君 継続するアメリカの軍事的プレゼンスの持つ最大の重要性というのは、私は今後十年ないし二十年のうちにおいて、この地域における力の均衡というものを維持する上において決定的な役割を果たすであろう。特に、今後明らかに継続して総合的に中国の力というものが拡大していく過程で、これに対処してその力学的な均衡を維持しようとするということになりますと、これはアジアの周辺諸国ではできないわけでありますので、その意味でのアメリカの果たす役割というのは非常に重要だと私は解釈をしている次第であります。  なお同時に、このアメリカのプレゼンスというものを実質保障するような意味で日米安保条約というものが継続的に重要な役割を担うということはこれは明らかでありますし、また日本外交がこうしたアメリカとの緊密な同盟関係を結んでいることが、今後、近隣諸国の日本に対する警戒心を解除するという外交的効果も持ち、アジア近隣諸国との相互信頼というものを深めるという点でも好ましい安全保障関係をこのアメリカの軍事的プレゼンスはつくるであろうということになるのではないかという気がしているわけであります。  そこで、このいわばアメリカのプレゼンスというものを維持していく上での日米間での合意、特にそのキーワードとしてはホスト・ネーション・サポートという言葉があるように思います。このホスト・ネーション・サポートという言葉、よく使われるわけでありますが、外務省としてはどのような定義でこの言葉を使っておられるんでしょうか。
  61. 折田正樹

    政府委員(折田正樹君) ホスト・ネーション・サポート、接受国支援というふうに訳しておりますけれども、特に明確に確立した定義があるわけではございませんけれども、我々の理解するところでは、駐留する外国軍隊に対する受け入れ国、ホストネーションによる支援全般を指すものであるというふうに解しております。  日本といたしましては、在日米軍の効果的な活動を確保するために施設・区域の提供を行っておりますし、こういうこととか、駐留経費負担の面でいろいろやってきましたけれども、こういうことを含む観念であるというふうに思っております。
  62. 武見敬三

    武見敬三君 基本的にこのホスト・ネーション・サポートの目的というのは大きく二つあって、一つはやはり日本防衛。そして二つ目は、この共同発表にもありますように、今後のアメリカ軍の前方展開能力を支援する、そういう目的がこの中には組み込まれているように思います。  そこで、国民に対してこうした特に後者、アメリカの前方展開の能力というものを支援するという意味をいかなる形で説明するのか。これはまさにこれからの新しい時代状況の中で日米の協調と協力ということを考えたときに非常に重要な分野になるかと思いますので、この点どのように国民説明するおつもりであるのか可能な限り御説明いただければ幸いです。
  63. 折田正樹

    政府委員(折田正樹君) 米軍の前方展開、すなわち米軍がアジア太平洋地域に存在し続けるということは、先ほど外務大臣が申されましたようにアジア太平洋の平和と安定の基本的な重要な要素であると我々は思っております。やはり、国民に対していろんな形で我々は説明していかなければならないんだろうと思います。  今度、クリントン大統領が十一月に国賓としてお見えでございます。そのときに首脳会談がございます。そのときに、恐らく今まで日米間で続けてきた安保対話というものを総括するということを両首脳がなさるんだろうと思いますけれども、そういう機会を通じまして、またいろんな機会を通じまして、やはり国民に我々は積極的に説明していく努力というものをしていかなければならないというふうに思っております。
  64. 武見敬三

    武見敬三君 この共同発表、2プラス2の共同発表でありますが、これは明らかに二つの大きな特徴を兼ね備えているように思われます。  それは、第一には、先ほど申し上げましたとおり、日米安保の将来的役割についてそれを地域的に従来より広い範囲の中で位置づけているということが第一点であります。  第二点は、そうした日米間のより広範囲にわたる協力に不可欠である日米両国の安全保障分野におけるより緊密な協議というものをその中で重視しているということではないかと思われますが、この緊密な協議という内容について、どのように今後それを制度化し、日米間でそれをスムーズに行うように考えておられるのでしょうか。
  65. 折田正樹

    政府委員(折田正樹君) 日米間の安保に関します協議にはいろんな種類のものが既にございます。例えば日米安全保障協議委員会、いわゆる2プラス2と称するものでございますが、これは閣僚レベルのものでございます。それから、事務レベルでは日米安保事務レベル協議、SSCと称するものもございますし、日米地位協定に基づきます日米合同委員会、それからそのもとでの分科委員会、各種のものがございます。事柄の性格、内容に応じまして各レベルで関係者による協議の場が設定されておるわけでございますけれども、この協議をますます緊密にやっていく必要があるのではないかというふうに思います。  それから、こういう安保条約に基づきます日米間の言ってみれば信頼関係に基づきます政策協調というのが日米間でされているんだろうと思いますけれども、例えばカンボジアの和平の問題ですとか、それから先ほども質問でありましたけれども朝鮮半島KEDOの問題ですとか、そういうところでも日米間の緊密な政策協調というのがなされているというふうに思います。これは日本役割が大きくなるにつれ、ますます緊密にやっていく必要があるというふうに私は思っております。
  66. 武見敬三

    武見敬三君 この点については、従来から日米間においてバードンシェアリング、負担の共有ということが言われ、そして次にこのような形で緊密な協議ということが言われるようになり、やがてこの後の段階で来る日米の相互理解の基本的な形態というものは、例えば決定の共有、ディシジョンシェアリングといったようなものにまで到達すべきものであるのか否か、この点についていかがでしょうか。
  67. 折田正樹

    政府委員(折田正樹君) バードンシェアリングからディシジョンシェアリング、非常にいい言葉のように私は思います。日本役割には恐らく限りはあるのかもしれませんけれども、私どもといたしましては、いろんな世界の問題について、特にまた日本とかアジアの平和と安定につながるような問題についてディシジョン・メーキング・プロセスに積極的に入っていくような努力というのが私は必要であろうと思います。  そして、あるいはまだ限られていると言われるかもしれませんけれども、先ほど申し上げましたカンボジアの和平の問題につきましては、私は日本はそれなりにディシジョン・メーキング・プロセスに参画したと思いますし、北朝鮮のいわゆる核疑惑問題に対しますKEDOの対応につきましても日米韓でかなり緊密な協議が行われ、それからその他の国もあわせて協議が行われたわけですけれども、その中で日本はディシジョンメーキングにかなり積極的に入っていたし、今もそうなんだろうと思います。そういう努力というのは我々、今後とも続けていかなければならないというふうに思っております、
  68. 武見敬三

    武見敬三君 この点に関しては、例えば米国の場合、安全保障の分野、特に作戦行動にかかわればかかわるほどより単独主義、ユニラテラリズムというような言い方で言われますけれども、そうしたことにやはりこだわるという傾向がどうしても出てくるように思われます。アメリカとの交渉の中で、こうしたアメリカの単独主義から相互主義あるいは決定の共有に向けての新しい姿勢というものは現実に出てきているんでしょうかいかがでしょうか。
  69. 折田正樹

    政府委員(折田正樹君) 非常に基本的な問題であろうというふうに思います。アメリカというのは国の成り立ちからいいまして、ほっておきますとどうしても内向きになる性格を有している国ではないのかと思います。アメリカの国自身非常に大きい国ですし、自分の国ですべてのものができてしまうものですから、ほっておきますと関心はなかなか外国に向きにくいということがあろうかと思います。  しかし、やはりアメリカの存在、特にアジアから見ますと、アメリカがこの地域で安定的な役割を果たしてくれるということは、日本の平和と安全、それからこの地域の平和と安全にとっては非常に大事だろうと思いますので、私どもはそういうアメリカを時には激励するようなことがあってもいいんだろうと思います。いろんな国際的な場のプロセスに今非常に積極的に出てきてくれていますけれども、そういうアメリカと引き続き協力しながら、彼らが国際的な場で安定的な役割を果たすように仕向けていくということが私は必要であろうと思います。
  70. 武見敬三

    武見敬三君 そのアメリカの中で、今積極的な姿勢というのを御指摘になりましたけれども、同時に内向きの消極的な姿勢も実は顕著にあらわれてきております。御存じのように、チャルマーズ・ジョンソンのあのフォーリン・アフェアーズでの論文などを改めて読んでみますと、経済安全保障という視点を絡めながら、安全保障上のアメリカのコミットメントというのを一つの手段として対日交渉の中で使おうというような考え方を持ち、その中で従来の日米安全保障条約についてもむしろ否定的な見方をするようになってきています。  従来、日米安保については安定した支持勢力であった共和党の中においてさえもこうした考え方に同調する議員が一部出てきているというようなことも言われているわけでありますが、実際にこうしたアメリカの中での日米安全保障条約についての否定的な見方、考え方、それが一体どの程度広がりを持ち始めているのか。それは日本の国内と同じようにアメリカのそういう日米安保についての理解というのを総体的に今低下させているのかどうか、その点についての御説明をいただきたいと思います。
  71. 折田正樹

    政府委員(折田正樹君) 今、武見委員御指摘のように、チャルマーズ・ジョンソンさんは委員が言われたような主張をされております。そのほか、ワシントンにケイトー研究所というのがございますけれども、アメリカの議会に対して政策提言をしております。そして、在日米軍の完全撤退、それから日米安保条約の解消ということを提言しております。  彼らが言っておりますのは、現在このアジア太平洋においては深刻な脅威は存在しないから多少の脅威があっても日本は自衛隊によって対処できる、そしてすべての米軍は三年から四年以内に日本及び韓国から撤退すべきであるというような趣旨を述べております。  他方、これが私はアメリカの一般的な議論になっているというふうには思いません。アメリカの議会で議員が具体的に例えば日米安保条約に対してどういう意見を持っているかというのはなかなか個々にはわかりにくいわけですが、有力議員から安保条約に対して否定的な議論が現時点で出ているかといえば、まだそういうことはないのではないのかなというふうに思います。  そして、米国議会調査局、CRSというのがあるんですが、そこが九五年一月に報告書を出しておりますけれども、その中では、日本における米軍のプレゼンスが米国の日米関係による利益、米国の地域的及びグローバルな利益を支えるものとなっているという見方を示しております。
  72. 武見敬三

    武見敬三君 ありがとうございました。  それでは、ちょっと質問を変えます。日中関係についての質問をさせていただきます。  アメリカの上院で外交委員会が、ちょうど先週でありますけれどもアジア太平洋委員会というのを開きまして、そこで中国軍事力の拡大とその役割という大規模な公聴会を開いているわけであります。そこでも明らかになっておりますように、昨今の中国軍事力増強というものについては正確な情報がないだけに相当に警戒心が不必要に高まっていたり、あるいはそれによって不必要な誤解というものが生じる状況が出てきているということは、私は大変日中関係にとって不幸なことではないかと思うわけであります。  そこで、こうした状況を解消して正確に中国軍事力等について理解をするということはいかなる方法によって可能になるのかということになりますと、やはり日本中国との間の安保対話というものが非常に重要になってくるだろうと思うわけであります。  そこで、防衛庁の方にお聞きしたいわけでありますけれども、この日中間の政府レベルの安全保障対話の現状及びその将来計画について御説明いただけますか。
  73. 守屋武昌

    説明員(守屋武昌君) 日本中国との防衛交流につきましては、昭和五十年代の当初から行っております。近年の日中の防衛当局者間の主な交流といたしましては、昭和五十九年に中国の国防部長が、国防大臣でございますが、訪日をいたしております。それから、昭和六十二年に防衛庁長官が訪中いたしまして、それから昨年、ことしと日中間の実務者レベルの安全保障対話が行われております。さらに、本年二月には統幕議長が訪中をいたしているところでございます。  現在、防衛庁といたしましては、中国の国防部長の訪日について招請中でございます。そのために事務レベルの調整が行われているところでございます。
  74. 武見敬三

    武見敬三君 日中の安保対話の中で特に注目されておりますのは、たしか九四年三月に北京で第一回の防衛当局同士の会合が開かれた。これは防衛庁の審議官が出席されたということでありますが、九五年一月には第二回目が今度は東京で開催されている。ある意味で定期的な日中安保の形態というものはまさにここに集約されてきたのではないかというような気がするわけでありますが、この対話の実際、内容についての御説明をいただきたいわけであります。  例えば、実際にこうした対話をするときに日本側からいかなる要望事項を出しているのか、それに対する中国側の回答というものは期待に沿う内容であるのか否か、また中国側からの要望はどうであり、日本側はそれにどう回答しているのか、御説明いただけたらと思います。
  75. 守屋武昌

    説明員(守屋武昌君) お答えいたします。  日中防衛交流防衛庁は何を目指しているかということであるかと思いますけれども、私ども一番大きいのは、近隣の大国である中国防衛当局者との相互理解を深めるというのが大変人きゅうございます。特に冷戦後の情勢変化を受けまして、中国側は日本が現在検討を進めております大綱の見直しの進展、方向性等について大変興味を持っておりまして、私どもとしましては中国防衛当局に現在の日本防衛力の実情、現状を正確に理解してもらうということ、あるいは日本防衛政策考え方を理解してもらうということが大変重要ではないかと思っております。  また、私どもとしましても、中国防衛当局の側で新たな軍事力改革などの動きがあるのであれば、こういう継続的な交流を通じていち早く詳細な説明を受けるという機会を確保しておくことも重要であると考えております。  それからもう一つは、何と申しましてもこういう交流を通じまして安定的なアジア太平洋地域安全保障環境を整えるための契機となるということでございます。例えば、アジア地域では多様な安全保障観を有している域内諸国があるわけでございますが、この相互の信頼感を醸成するためには中国の軍事的な透明性を高めることが私どもとしては大きな進展となり得ると考えております。それに向けて中国に働きかけていくということが大変重要であると認識いたしております。
  76. 武見敬三

    武見敬三君 実際のこの代表のレベルを見ておりますと、例えば中国側の場合にはこれは佐官クラスが国防部の外事局を通じて代表者として出席しているということのようでありますが、実際こうした佐官クラスでどこまで我々が期待するような情報の開示をしてその透明性というものを高めてくれるのか、その点について若干疑問な気もするわけでありますが、その点、防衛庁としてはこうした佐官クラスのレベルの協議でよいのか、あるいは将来的にはより高度のレベルの定期的な安保対話というものを考えているのか、いかがですか。
  77. 守屋武昌

    説明員(守屋武昌君) 私どもとしましては、昨年の三月に第一回目を行いまして、ことしの一月に第二回日を行ったわけでございますが、話し合ってみてお互いのことを知らないことが大変多いという状況でございまして、やはり私どもはそういう透明性を高める話し合いを通じて、どのような枠組み、どのような人が会議に出てきた方がいいのかということがこういったび重なる話し合いで確立していくものと理解しております。
  78. 武見敬三

    武見敬三君 現状ではまだそのレベルアップについての中国側との具体的交渉は進めていないということですか。
  79. 守屋武昌

    説明員(守屋武昌君) そうでございます。
  80. 武見敬三

    武見敬三君 実際、伝え聞くところによると、やはりなかなか中国側の情報の開示というものは期待するような形では出てこないというようなことも聞いております。こうした状況をいかなる形で打開して、そしてさらに日中相互の信頼関係の増進に努めるのかということを考えたときに、例えば日ロの間では官民合同のような形で、民間が主体的に事務当局を掌握しているようでありますけれども、官の協力を得た民間レベルの安全保障対話というようなものが行われていると聞いております。  このような民間レベルの安全保障対話というようなものについて日中間においても必要であると考えるかどうかまた必要であると考えるとすればそれに政府として協力する用意があるかどうかという点についてはいかがですか。
  81. 加藤良三

    政府委員加藤良三君) 政府としては、今おっしゃられたように、民間レベルで自由な立場からできるだけ率直な意見交換が行われるということは相互理解の促進の上で有意義という認識を持っているわけでございます。既に、中国も参加する民間レベルの対話としては、米国の民間研究機関が主催する北東アジア協力対話というものが存在しております。  外務省も、中国からの参加も得る形でアジア太平洋安全保障専門家セミナーというのを開催するようにしております。これはちなみに、各国の専門家、具体的には民間研究者が中心で、これに政府関係者は個人の資格で参加するという形のものでございますが、こうした専門家を集めて安全保障問題について自由に討議をするセミナーを年一回ぐらい、昭和六十二年つまり一九八七年以来開催して、現在まで八回ぐらい開催してまいったと思います。そのうちのここ最近三回の会合には中国の研究機関からの参加もございまして、アジア太平洋地域安全保障問題について意見交換、議論を行ったという経緯がございます。  これはたまさか一つの例でございますが、そういう民間のレベルでの率直な意見交換というものは有意義なものではないかと私ども考えております。
  82. 武見敬三

    武見敬三君 そうすると、日中間、二国間の形で民間レベルでそういう安保対話が発足するとしたならば、それは政府としては協力すべき対象となり得るんでしょうか、多国間ではなくて。
  83. 加藤良三

    政府委員加藤良三君) 原則ないし基本的な問題といたしまして、中国軍事力、軍事政策、国防政策の趨勢、その透明性を高めるということに資するものであるならば、それは結構なことだと思うのでございます。しかし、相手もあることでもございますし、具体的にどういう形でどういう構成でそういうような対話というものが組織されるかというのを見ながら検討していくことになるという話ではないかと思います。
  84. 武見敬三

    武見敬三君 この日中の安保対話に関しては、特に日本の中で中国に対するさきの戦争における侵略行為といったものを非常に謙虚に反省して平和を強く望んでいるような日本の多くの人たちが、最近の中国核実験軍事力増強というものを通じて中国に対してむしろ懸念や警戒心を持ち始めているという傾向が私は出ているように思うわけであります。日中両国の相互理解と友好促進を図るためには非常に残念な傾向であるだけに、こうした状況を打開してそして相互信頼を深めていくために、政府のみならず民間レベルでの安全保障対話というものを進めることが大変重要な時期になってきているように思うわけであります。  ありがとうございました。
  85. 寺澤芳男

    寺澤芳男君 ボスニア紛争についてまずお伺いしたいと思います。  野沢委員もお触れになりましたが、十月十日、明石さんが突如辞任をいたしました。旧ユーゴの紛争がようやく和平交渉へと向かい始めたときに、これまで懸命の努力をしてこられた明石さんが旧ユーゴスラビア問題担当国連事務総長特別代表を辞任するという発表がありました。まことに残念であります。  明石さんは、日本の国連加盟の翌年、一九五七年に国連入りした日本人国連マン第一号であります。一九九二年の三月からは一年九カ月の間、カンボジアのPKOを指揮しまして、総選挙実施、憲法公布という難事業をやり遂げてまいりました。休む間もなく一九九四年の一月一日に明石さんは今度はユーゴに赴任し、その時点で既にユーゴの内戦はもう混乱の極に達しておりました。一九九二年春に少数民族であるセルビア人の反対を押し切りましてボスニアはユーゴからの独立を果たしました。この政府はイスラム教徒が主体であります。この両者と既に独立を果たしていたクロアチアを交えての三つどもえの戦い、非常に複雑な、先ほど外務大臣もおっしゃいましたが、日本人の我々にとっては非常にわかりにくい紛争が始まっていたのであります。  明石代表は決して三者を善悪で分けませんでした。国連の代表者として常に紛争当事国に対し中立の立場で臨んでいたようであります。国連は公正な調停者に徹するべきであって、国連自身が武力紛争の当事者になれば平和維持活動の本来の機能を失うというのが明石さんの本来の主張でありました。  夕べ、ザグレブの明石さんと電話でいろいろ話をいたしました。明石さんは理念と哲学の違いだったというようなことを吐露しておられました。ただ、今度ニューヨークへ帰って、今度は国連の特別政治顧問として世界の三分の一の地域を任されたと。アジア、アフリカ、旧ソ連を担当されるわけですが、どうせ私は青山派ですよとおっしゃっていました。明石さんも私も同年ですから青山派と言われた途端にすぐわかるわけで、人間至るところに青山あり、この蘇軾の漢詩を我々の時代は勉強させられたわけですが、こういう明石代表に対して、武力でセルビア人を攻撃さえすれば紛争は解決すると主張するアメリカは露骨な中傷すら行いました。この時期になぜ辞任しなければならないのか。もちろんこれは国連の人事ですから我々には全くわかりません。しかし、何らかの圧力がかかっての人事だったのではないかと思いたくなります。  辞任に関連して河野外務大臣は、旧ユーゴの状況について明石さん自身にいろいろと考えがあったのだろうと思うと述べられたと報道されております。河野大臣、我が国が誇る国際公務員である明石さんの辞任に対して、実際のところどのような見解あるいは感慨をお持ちであるのか、率直にお聞かせ願いたいと思います。
  86. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 明石さんは私も長くつき合っている友人として非常に誇りに思っている人です。しかし、考えなければならないことは、明石さんはまさに国連の人であって、日本の代表ということではないと思わなければならないと思います。もちろん我々のよき友人であることは間違いありません。しかし、彼が国連で、自分は日本の代表だ、したがって何かやるときには少しでも日本にとって有利な判断をしたいと思ってやっているということはないとむしろ考えるべきだと思います。しかし、それはそれとして、私は、明石さんが二年近くザグレブにおられて、この旧ユーゴの問題に誠心誠意取り組まれた御努力には心から敬意を表したいと思います。  今、寺澤議員からお話がありましたように、カンボジアの成功例は国連のPKO活動の中で最も成功した例、それも本当に数少ないと言っていいと思いますが、極めて少ない成功例の非常に立派なケースであろうと思います。ただ、そこで明石さんが成功をされたのにはそれなりの理由があって、もちろんパリ会議などできちっと和平についての合意ができていたこと、それらを初めとして、カンボジアを取り巻く、あるいは明石さんが指揮する国連の考え方をサポートする大きな力が周辺にたくさんあったということなども重要なことだと思います。  それに引きかえ今回の旧ユーゴスラビアにおける明石さんの立場は、私もザグレブで明石さんと何日間かを過ごしましたけれども、なかなか気苦労の多い、そして明石さんの基本的なお考えとはいささか整合しにくい環境というものがあったように思います。やはりヨーロッパの人たちは、自分たちの身近な人たちあるいは宗教上の同じ宗派に属する人たちが大変困難な状況の中で時に命を捨てなければならないという状況を目の当たりに見て、明石さんがこれまでカンボジアなどで見せていた非常に粘り強い、時間をかけても説得をして話し合いで問題を解決しようとするやり方に、ややもすればいら立ちがあったということは否めないと思います。  確かにコンタクトグループの人たちは非常に精力的に献身的に努力をされたと思います。そのことについて私は何回もG7その他の場で敬意を表しました。しかし、敬意を表しながらも、コンタクトグループの皆さんにも、ザグレブにずっといて国連の代表として努力をしている明石さんの意見はできるだけ聞いてほしいということを常に一言ずつ私は言ってまいりました。残念ながら、十分に明石さんの意見というものが聞かれたかどうかということについて、私はまだ確認ができません。  そういう中で、およそ二年間のザグレブでの努力を終えて国連に帰られる。今度は、今、議員お話しのように、これまた極めて重要なポジションにつかれるわけで、ぜひ国連マンとしてこれから先も大いに御活躍を願いたいと、そんな気持ちでおります。
  87. 寺澤芳男

    寺澤芳男君 ありがとうございました。  この明石さんの辞任というのは、国連PKOのあり方にも大きな問題を投げかけたのではないかと思います。旧ユーゴ問題についても、あくまでも話し合いによる平和的解決路線をとって国連PKOの中立性を堅持されたのでありますが、このことがNATOの武力、特に空爆による解決路線と激しく対立したのは、これは当然だろうと思います。  そもそも伝統的なPKOは、停戦が成立した後、PKOの派遣について紛争当事者の同意がある場合に、中立の原則に基づき派遣されるわけであります。旧ユーゴの場合、このような条件を欠き、それにもかかわらず中立を維持しなければならないという宿命を負って、明石代表は懸命の努力をしたのだろうと思っております。今から考えますと、そもそも停戦も成立しておらず、紛争当事者が戦う意志を強固に持っているときに、国連が旧ユーゴにPKOを派遣したこと自体に無理があったのではないかと思いますが、大臣はどうお考えになりますか。
  88. 川島裕

    政府委員(川島裕君) 先生おっしゃられるとおりでございまして、伝統的なPKOとは全く違う経緯で動いたケースでございます。戦闘激化に伴って人道援助活動が困難になったので、それを動かすために投入されたのがまさにUNPROFORでございますし、それ以降もいわゆる安全地帯というものをつくってそこを保護しようということでさらに保護監視活動というのを任務としておりまして、これもまさに、停戦どころか戦いの真っ最中の中での安全地帯をどうするかということですから、伝統的なものとは全く違う形態をたどったわけでございます。  ですから、そのPKO、伝統的なものではないのは明らかでございますけれども、こういうふうな紛争、停戦をしては崩れ停戦をしては崩れというような中で、それでは国連として何が平和をもたらすために最も有効かということについては、結果として試行錯誤が続いたと言わざるを得ないと思いますし、今後の国連の平和維持の活動に当たって、このユーゴの収拾の形というのは、これはいろんな形でレッスンと申しますか例になるんだろうという気がしております。  それでは何ができたかといいますと、それはまさに先生が今言われたように、当事者が戦い続けるという状況において非常に難しかったんだろうと思います。ガリ事務総長自身、一時期、平和をむしろ執行するとか、ややおさめてしまうような構想を出されたことがございましたけれども、実際問題としてそういうことはなし得なかったと思いますし、なし得ないことがますますはっきりしたのがこの旧ユーゴ紛争の一つのレッスンだろうと思うわけでございます。
  89. 寺澤芳男

    寺澤芳男君 明石さんの努力で一時は内戦が鎮静化いたしまして、ことしの一月には四カ月停戦、これも実現いたしました。しかし、各勢力とも停戦中に武器を調えまして、米欧ロによる和平調停も不調のまま、五月にまた戦闘が始まりました。六月に入って安保理は国連防護軍に対して武力行使を容認する前例のない決議を行ったわけであります。  この決議をきっかけに、米軍を中心に、NATOは国連を擁護するという名目でセルビア人に対する空爆を本格化させました。話し合いによる解決を目指した明石代表の努力は大変貴重なものだったわけですが、米国を中心とするNATOの強硬路線によって挫折されました。このことは、率直に言って国連の紛争解決機能、平和維持機能の限界、それから軍事力依存の国際政治の現実を見せつけられたわけであります。  しかし、力による解決が最終的な解決をもたらすのかどうかはわかりません。ただ我々は、この現実を前に、ポスト冷戦の国際紛争に対して、国連そして我が国がどのようにかかわり、何ができ何ができないかを考える必要はあります。力による解決について外務大臣はどう思われますか。
  90. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 力による停戦といいますか、事態を収拾しようということで完全な収拾ができるかどうかということについて、私もまだよくその先行きがわかりません。と同時に、多くの人たちの中で疑問を呈している方がおられることも事実でございます。この旧ユーゴの問題は大変多数の難民を出しましたし、それ以外にも宗教上の問題、それから貧富の格差、地域による格差というものが大変あるわけでございます。これらがどうやって平準化されていくか。平準化という言葉は適当でないかもしれませんが、貧富の格差が少しでも縮まっていく、あるいはそういう希望をそれぞれが持つ状況というものをつくっていかないことには、恒久的な安定というものがすぐに手に入るということを私はまだ言う自信がございません。  この旧ユーゴの復興について、和平へのプロセスを進めると同時に、一方で早くも復興についての会議ども計画されておりまして、その復興の会議については日本にも大いに期待が寄せられているわけでございますが、こうしたことの中で、今、議員御指摘のように、我々がなすべきことは何か、あるいはできないことは何か、あるいはできることは何かということを考えていかなければならないと思います。そのためには、我々にとってもっともっと地域の情報、それからかかわり合っている人たちの考え方というものを十分に情報を集めて分析をしなければならないだろうと思います。
  91. 寺澤芳男

    寺澤芳男君 今度は国連の常任理事国の問題についてお伺いをいたしたいと思います。  河野外務大臣は、去年の秋の国連総会一般討論で、我が国は憲法が禁ずる武力の行使を行わないという基本的な考え方のもとで安保理常任理事国として責任を果たす用意があるという演説をなさいました。この演説が安保理常任理事国の立候補宣言であるのではないかということで、国会でも大変問題になった演説でありました。しかし、河野外務大臣は、安保理常任理事国は立候補して選ばれる制度ではないから立候補宣言ではないという答弁を繰り返してこられたと私は記憶しております。  しかし、国際社会でそのような控え目な表現が通用するのかどうか、非常に不安に思います。特に、地域の代表を自任する途上国が常任理事国入りの意欲を強く示すなど、安保理改組の論議の中で座して常任理事国の地位を得られるとは考えられません。日本が常任理事国になることは国際的な責務であるという立場を私はとっております。常任理事国になった上で国連を改革する、さらに平和主義の観点から行動するという立場を私はとります。日本はこのような平和憲法を持ち、核も持たないユニークな常任理事国になりますという点を強調し、はっきりとした立候補宣言をすべきではないかと思います。  ところが、九月二十六日の河野外務大臣の国連での一般演説は、去年と同様の表現にとどまっておりました。また、九月二十九日の所信演説で村山首相は、常任理事国入りについては触れませんでした。国外での発言にとどまらず、国内の発言においても村山政権がこの問題についてトーンダウンしていることを私は大変心配しております。  村山総理大臣は十月二十二日の国連演説で常任理事国入りの明確な意思表示をするおつもりかどうか、お伺いしたいと思います。
  92. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 現在、国連は幾つかの改革すべき問題を抱えております。常任理事国の問題についても、安保理を組織的に改革しなければならないのではないかという多くの意見が出されておりまして、安保理そのものが構造的、組織的な改革をしなければならないのではないかという意見ではほぼコンセンサスができるのだろうと思います。  例えば常任理事国の数はこれまでどおりでいいのか。P5と言われる常任理事国五カ国がございますけれども、これが決められてから半世紀近くがたって、常任理事国五カ国と言われていたとき五十数カ国であった国連メンバーは今や百八十カ国を超えているわけでございまして、今このまま常に常任理事国は五カ国のままでいいかどうかということになれば大変議論があって、恐らく多くの国連加盟国の中には常任理事国をさらに充実するべきだという意見があると思います。  そうしたまず組織を改革しなければならないという議論、これが今作業部会で進んでおりまして、組織的に安保理を改革しようという議論と、そしてそれに並行して、その場合には、ではだれがそのいすに座るのかという議論が並行して論ぜられているわけでございます。  私どもはまず何よりも常任理事国の充実、これは常任理事国、さらには非常任理事国、いずれもその数においてあるいはその選ばれ方において改革されるべきだという議論を国連で展開しておりまして、これは作業部会の中でもそうした議論を展開しているわけでありますが、その上に立って、しからばだれがその新たに設けられるであろうポストに座るかということに次の段階ではなってくるのであろうと思います。  だれがそのいすに座るかということになったときに、我が国国民の理解、そして国際社会の期待といいますか理解といいますか、そういうものを踏まえて考えますということを言っているわけで、こうした考え方は、昨年私が国連で演説をして以来、村山政権は一貫してそうした考え方を持っております。  この作業部会の作業が進んでまいりまして、新聞などで報道されておりますようにドイツ、日本、こういった国は一つの有力な候補であろう。それ以外にどこが入るかということになると、それぞれの地域で、どこの国がいい、あるいはどこの国が入るくらいならこっちの国の方がいい、あるいはどこが入るなら自分の方がいいというさまざまな意見があって、その議論がややこれから収れんしなければならないという状況になっているわけでございます。そういう状況下をにらみながら我々の演説の言葉も選んでいかなければならぬというふうに思います。  それから、今お尋ねの二十二日に行われる予定になっております村山総理の国連におきます演説は、御承知のとおり、今回は五十周年の記念のために各国の元首及び総理が集まって演説をする、いわばお祝いに集まる各国の代表が演説をするということもございまして、それぞれ割り当てられている時間も五分間程度ということになっておりまして、私が先般一般演説でいたしましたときはたしか二十五分ぐらいやったと思うんですが、村山総理の演説も極めて短い演説にならざるを得ません。そして、その短い演説の中で国連の五十周年に祝意を表し、さらに国連に多くの期待が集まっているということの我々の認識を述べ、国連改革についても述べる、もちろんさらには軍縮の問題その他もその中で述べていくわけで、どうしても短いセンテンスでこの問題について触れるということになると思います。  したがって、国連改革の中で財政改革あるいは社会経済問題について重要視すべきであるという援言と同時に安保理常任理事国の問題に触れるということになりますので、その中ではそれなりの表現にならざるを得ないと考えております。
  93. 寺澤芳男

    寺澤芳男君 日本世界の各国から見てフェースレスというか、なかなかわかりにくいあいまいな国である、そういう見方をされている場合が残念ながら多いようですが、これからの外交について鮮明な日本独自の外交を続けていかなければならないと思います。  話題を変えます。  午前中に野沢委員より国連の分担金に比べて日本人の国連職員の数が少ないという御指摘がありました。国連以外にも、ワシントンに世界銀行、IMF、いろんな国際機関がございますが、そのワシントンのブレトンウッズ関係の国際機関、多分日本の出資金が一七%、職員の数がこれは一・四%か五%で非常に少ない。これはいろんな理由があって、日本が余りにも住みやすい国であるがゆえになかなか若者が日本から海外に出ていかない。いわゆる明石さんのような青山派というのはまさしく少数派である。  国がこれに対して何ができるのか。もちろんこれはあくまでも国際公務員の問題であって、例えば日本の役所から二年か三年の出向で国連あるいは世界銀行に人を送るということでは抜本的な解決にはならない。やはり向こうに行くとなったらリタイアするまで向こうにいるという覚悟で行かないと、ほかの国際公務員の同僚とはうまくいかない。何か世界銀行あるいはIMFあるいは国連の中にジャパン・ポジションみたいなのがあって、そのポジションに日本の役所から二年ごとに必ず日本人が来るという、そういうところでは国際機関はない。これは国際機関と日本政府の代表とは全く違ったところでありますから。  そうなりますと、日本政府日本の中で国際公務員を養成する機関、例えば国立大学に、文部省なんかがやろうと思えばやれるんじゃないかと僕はいつも思っているんですが、日本の国立大学は東大を初めとして明治以来日本の官吏を養成する大学であったわけですが、日本の官まではなく国際公務員を養成するような学科を例えば法学部の中に、名前はどうでもいいんだけれども、そういう学科を設けて、そこで英語、国際法、経済学、環境学、政治学その他を学ばせる。どうしても国際公務員になりたいという人たちは高等学校を出たらその大学のその学部へ行くと。確かに円は高くドルは安いからなかなか向こうに行く人はいないよという意見もあるんですが、向こうへ行ったら円を使うわけじゃなくてドルを使うわけです。アメリカに住む、ヨーロッパに住むよさもあるわけで、そういう国際機関に働くための学科を大学の中に設けるという、もしそういう構想でもあるのだったらお聞かせください。
  94. 近藤信司

    説明員(近藤信司君) お答えをいたします。  委員御指摘のように、近年、我が国の国際的な役割の増大に伴いまして、国連職員を初め国際機関において国際開発援助等いろいろな仕事に携わる高度な人材養成の必要性がいろんなところで指摘をされているところでございます。  このために、こういった分野に係ります基礎的研究の推進でありますとか十分な専門的知識とコミュニケーション能力を有する優秀な人材養成を特に大学院レベルにおきまして図っていくということが大変重要な課題であろう、こういうふうに私ども認識をしておるところでございます。  それで、平成七年度現在でございますが、国立大学の大学院におきましては、国際機関における上級職員の養成でありますとか国際開発援助に係る人材養成に資するものとして、一例を申し上げますと筑波大学の国際政治経済学研究科でありますとか名古屋大学では国際開発研究科など国立大学では十大学十一研究科を設置いたしまして、こういった分野におきます教育研究の推進あるいは高度の専門能力を有する人材の養成、再教育を行っているところでございます。  こういった人材養成の重要性にかんがみまして、今後とも大学院を中心といたしまして教育研究体制の整備充実に向けまして私どもといたしましても一層努力してまいりたいと、かように考えているところでございます。
  95. 寺澤芳男

    寺澤芳男君 ありがとうございました。  ちなみに、世界銀行では日本からそのために出してもらったお金で今コロンビア大学の大学院に地域学という新しい講座を世界銀行がスポンサーをしまして設けて、いろんな国の人々がそこで勉強をしている、いわゆる国際公務員の養成を日本の出資金でコロンビア大学が請け負っているというような現実があることをお知らせしておきます。  時間が迫ってまいりまして、私の年来の主張であります海外邦人、海外に住んでいる約七十万人の日本人に今憲法で保障されている参政権がない、このことについて触れようと思います。  私自身、二十二年の海外生活で何と国政選挙を十二回ミスしております。これは日本人で、しかもなおかつたまたまニューヨークに住んでいたから、ロンドンに住んでいたから、パリに住んでいたからということで投票はできないという、そういうことは断じて許されない。私は、三年前に国会議員になってから機会あるたびにこの主張を繰り返しているわけであります。これを続けていきますと、いつしか必ず憲法違反ということで訴訟が起こる可能性もあります。今、私としては超党派の議員立法でこの海外邦人の選挙権、参政権の問題について何とか解決しようと思っておりますが、一つここに大きな問題があります。  約十年前に参議院で議員立法でこの法律が出されまして、大変残念なんですが、途中で衆議院の解散で廃案になりました。そのときもそうだったんですが、永住権を持っている日本人はこの限りにあらず、アメリカでいえばグリーンカード、ワーキングビザを持っている人は参政権を与えないという。これもまた確認したわけではありませんが、今与党で盛んにこの件について御討議願っていると聞いておりますが、その内容も永住権を持っている人は参政権を与えないということらしい。  これはどうしてそういうことになるのか。これは私の勘ぐりですが、間違っているかもしれませんが、例えば七十万人のうち、今、世界でワーキングビザ、グリーンカードを持っている人は約二十万人おります。そういう二十万人の人に投票権を与えないということになるとそれだけ手間が省ける、そういうことではないとは思いますが、そういうことであるとしたらこれは大変残念なことです。  要するに、私が主張したいのは、日本国憲法で保障されている日本人の権利、国籍を放棄しないで日本人である限りにおいてはどこにいようが投票できるというこの法律を早く、具体的には通常国会で何とか審議したい、議員立法の形で審議したいと思っております。  信じられないような話ですが、二年前に日本のPKO、自衛隊の人たちがカンボジアの総選挙のために行った。彼らは、たまたまそのときに行われた日本の衆議院の総選挙には参政権がないから投票できなった。彼らによって選挙が行われたカンボジア人は、東京にいるカンボジア人もニューヨークにいるカンボジア人もそれぞれ投票できた。先進国、G7の中で今やこの参政権がないのは日本だけであります。  この問題についてかなり造詣の深い河野外務大臣から一言考えをお聞かせ願いたいと思います。
  96. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) もし事務的に説明が必要であれば、事務当局から説明をさせます。
  97. 寺澤芳男

    寺澤芳男君 いや、大臣のお考えで。
  98. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 私、やや個人的なことで恐縮でありますが、私自身も寺澤議員の意見をかなりの部分共有しております。いかなる場所にあっても日本人として国政に参加する権利というものはあるべきだということでございます。  ただ問題は、選挙に際して海外におられる方がどれだけの情報をあらかじめ得ることができるのか。例えば、二人の候補者のうちどちらの候補者がすぐれているかということを知り得る立場に立てるかということも問題なのではないかというふうに思ったりいたします。  もちろん、事務的に言えば、どこに投票所を置くかとか郵送でいいかどうかとかそれはいろいろな問題があって、この事務的な問題は事務的な問題としてクリアしなければならないと思いますが、基本的に、御自身がどこの選挙区にみずからの投票権を持つかそしてその選挙区ではどんな人が立候補しているのかあるいはその立候補している人の経歴、実績というものがどんなものであるかということを十分に知り得る立場に立つためにはどういう方法でそうした候補者の実態を知らせることができるかなど多少の問題はあると思います。  特定の組織だけが特定の候補者についてのみ情報を提供するということであっても十分ではないと思いますし、こうした点についてまだまだ技術的に改良、改善を加えなければならないというような状況もあるかと思います。しかし、それは今、寺澤議員がお話しになったように、世界じゅうの多くの国でそうした問題を超えてこの問題が処理されているということを考えれば、我が国としても十分積極的にこの問題に取り組まなければならないことだというふうに私は思っております。
  99. 寺澤芳男

    寺澤芳男君 終わります。
  100. 田村秀昭

    田村秀昭君 来年度予算で外務省は何名の増員を要求されておられますか。簡単で結構です。
  101. 池田維

    政府委員(池田維君) 平成七年度末の外務省の定員は合計四千八百八十九名でございますが、これに百八十六名の定員増の要求をいたしております。
  102. 田村秀昭

    田村秀昭君 私は非常に少ないと思うんですね、ほかの先進国に比べても。ドイツが七千六百。九十八名ですから三千名ぐらい違うんじゃないか。  外務省は、日本の安全のために、日本の国益のために一生懸命頑張っておられるわけで、今、国際社会の中で外務省の役割はますます重大でありますので、外務省の職員の方が少ないということは非常に残念なことだと思います。この程度の増員でなくて、もう冷戦が終わったわけですから、毎年毎年千名でも二千名でもばんと出してやってもっと頑張ってくださいというまずエールを送ってから、これからは厳しい質問をさせていただきます。  河野外務大臣が国連で五十周年の演説を九月二十七日にされました。その文章を読ませていただきますと、「積極的」という言葉が六回出てくるんですね。これと同じような意味で、拡充に努めるとか、弾力的に努めるとか、そういう言葉が全部で十三個出てくるわけですよ、わずか二十五分の演説で。しかもこの演説で、ゴラン高原の国連兵力引き離し監視隊への参加を含めPKOへの積極的な協力を行ってまいりますと、こう言っておられますね。積極的というのはどういう意味を持つのか。  今度、ゴラン高原に来年の二月に自衛隊を出すということですが、もう三年たってPKO法の見直しもすべき時期に来ております。見直しの内容については、行った人たちの立場に立ったのが防衛白書でちゃんと書いてある。それを改正も見直しもしないでまた自衛隊員にそういう無理な任務を与える。これは政治の怠慢だと私は思うんですが、それでどうして「積極的」なんという言葉をお使いになるのか私はよくわからないので、これは河野外務大臣から直接、なぜPKOの見直しもしないでゴラン高原に出すのか。  しかも、ゴラン高原に出すことについてはもう随分前からカナダからの要請もあり、あれは多分去年の二月ごろじゃないですか。積極的じゃないと僕は思うんですね、これの出し方が。積極的だったら、きちっと見直しをして本当に活躍できるような状況で出すというのが積極的という意味だと思うんですが、いかがですか。
  103. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 行政当局の立場でまず申し上げれば、行政当局というものは、国会でおつくりをいただいた法律に基づいて、その法律の中で作業をする。法律からはみ出した作業をするなどということはするべきではないし、それはしてはならないことでございます。したがって、国会でお決めになったPKO法の中で我々の貢献ができるかどうかということを調査し、この範囲の中でやるということにするのは当然のことだと思います。この法律ではできないからこの法律を直させて、あるいはこの法律を少しはみ出してでもいいから積極的に貢献するなどということを行政が考えるということは決してあってはならぬことだというふうに私はまず思います。  ただし、今、議員も御指摘のように、この法律をつくりますときには三年後見直しという規定が入っておりまして、今三年目でございますから、これは三年たったら見直すんだということであって、これもまた行政当局としては、そこで言われるように三年たった今見直しの作業を始めるということも、これもまた行政当局に課せられた使命であるというふうに思っておることもつけ加えます。  そこで、ゴラン高原への派遣については、議員御指摘のとおり、国連から日本のゴラン高原のPKOへの支援、参加について打診があって、かなりの時間がだったことは事実でございます。しかし、その間に我が国は、モザンビークでございますとかルワンダの難民支援などで相当数の自衛隊は外国にPKOあるいは人道的支援という意味で出かけていっておるわけでございます。  我々としては、この支援に行っている青年たちが戻ってくるのをやはり待つべきだと。日本の国の国際貢献へ向けてのやっぱりキャパシティーというものがあるわけで、経験を積みながら、しかも一定の決められた人数の中で国際貢献をしていくということが重要だと考えて、若干時間が経過をいたしましたが、そうした場面を待っておりました。ルワンダからもモザンビークからもみんな戻ってまいりました。そういう意味の準備はいよいよ整ったということで、先般、総理の御決断がございまして、ゴラン高原への派遣を正式に国連に通報したところでございます。
  104. 田村秀昭

    田村秀昭君 私の申し上げているのは、行政当局が法律を犯して、行く人間に対してより優しくしろなんて言っているんじゃないんです。外務大臣は自民党総裁もおやりになったもう大政治家でありますから、政治がそういうふうになぜ行く人間に自分の怠慢を押しつけるのか、そういうことについてどういうふうなお考え方を持っているのかと僕は聞いているんです。
  105. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 御発言でございますけれども、今の私の立場から申し上げれば、これはぜひ国会で議員の皆さんに御議論をいただくということがやはり重要かと思います。  我々の立場とすれば、現在与えられている法律の中でゴラン高原に派遣をして、所要の我々が考える効果、目的が上げられるかどうかということを判断するということであって、それ以上の判断は少なくとも行政当局としてやるべきでないというのは当然のことだろうと思います。  かつて自民党の総裁であったからという御指摘は、もちろんそういう立場にも私はございましたが、これについては、私は今、衆参両院の立法府の場において御議論をいただく以外にはないように思います。
  106. 田村秀昭

    田村秀昭君 ぜひ政治が怠慢でないように、私たちも頑張ってまいりたいと思いますので、どうせ法案を出すときには事務の方、官僚の皆さんがおやりになっているわけですから、その辺も含めましてぜひお願いしたいと思います。  私、きょう申し上げるいろいろな問題は、冷戦中に我が国政治が軍事面を、軍事力役割というものを避けて通ってきたために、今後、冷戦が終わってから非常に大きな問題にぶち当たるということについて一貫してこれから御質問をさせていただきます。それを避けて通ると、日本の、今四百七十兆円の経済活動をしている大きな国としては非常にアンバランスな国としてちぐはぐな対応しかできなくなるということの事例がたくさん出てきております。そういう点を頭を切りかえないと、それでその上に立った、政治が軍事をコントロールするという成熟した民主主義の国家にならない、今後二十一世紀の日本のきちっとした国際社会に対する対応ができなくなる時期を迎えているという認識をぜひ持たないと、日本は行き詰まるということについて申し上げたいと思います。  アメリカのデュランという夫妻が、アメリカでは有名な方だそうですが、戦争ということについてどういうふうな見方をしているか。先ほどの明石代表の、我々から見ると非常に残念であるというふうに思いますが、現実の国際社会のパワーポリティックスというのはそういうことを受け入れるようになっていないという現実をまざまざと我々は今、明石さんの今度の解任について思っているわけですね。  このデュランという人は「歴史の教訓」という本を書いております。その中で五章か六章に「戦争」という題があります。  過去三千四百二十一年の歴史において戦争のなかった年はわずかに二百六十八年しかない。平和とは極めて不安定な状況である。なぜなら、絶対的に優越する力かバランスされた力の上にしか平和が維持できないからだ。戦争の原因は、つまるところ、個人がお互いに競争する理由と同じだ。人間というものが、欲望、けんか好き、自己顕示欲、他への優越感、食糧、土地、物資、燃料の欠乏などがすべて個人の争いの原因であるからだと。  それからしばらく中略をしますが、歴史を知っていれば憶病な哲学者でさえ長過ぎる平和は国家の筋肉を致命的なレベルにまで弱体化させることを認めるだろう。今日のような不備な国際法や国際感情のもとでは、国家はいつ攻撃されてもいいように自国を防衛する体制を整えておかなければならない。根底の国益が危機にさらされた場合には、生き残るために必要なあらゆる手段を使用する権利を有する。自国の生存権が危機に瀕したときは、道徳や戒律は沈黙してしまうということが書いてあります。  私は、今の日本の人たちはこういう考え方は余り持っていないと思うんですね。だけれども、アメリカとかヨーロッパの人たち、今の人類の八〇%ぐらいまでがこういう考え方を持っているんじゃないかと私は思うんですね。ですから、そういうものを考えている人たちが、自分はそうじゃなくても相手は考えていると。例えば、自分は盗聴なんかしないから相手もすべきじゃないと考えるというのは、向こうは盗聴すべきだと思っているかもしれないんですね。だから、自分はまじめで一生懸命仕事をしている、そうしたらだれも僕を殴らないだろうと思っても、向こうは殴るかもしれないわけですね。例えば畑さんに、僕はまじめな本当にいい男です、結婚してくださいと言ったら、あなたみたいな人は生理的に妹よと言われて、それで終わりになる。そういうことであります。  沖縄の問題をちょっと御質問させていただきます。  二十年六月に大田少将が、沖縄県民かく戦えり、後世沖縄県民に特段の御高配あらんことをという電報を最後に大本営に打って海軍こうで自決した。それ以来、沖縄はこの五十年間苦渋の連続でありました。今もずっと苦渋です。  それで、少女が暴行を受けた、痛ましい事件だ。この問題と、我が国の安全という問題とは次元の全く違う問題であるということも認識しなきゃいけない、それからスタートしないといけないと思います。だけど、今言っていることは、大変痛ましい事件が起きた、米軍がいるからだ、地位協定を変えろ、日米安保破棄、これは一直線上です、このあれは。それはそういう感情なんですね。だけど、そしたら日本の国の安全はどうなるのかということについての答えは、この路線には何にもないです。  日本は今七億トンの資源を、マラッカ海峡を二十万トン級のタンカーが毎日約二百隻日本に向けて物資を送ってきているんです。これを守っているのは日本の海上自衛隊じゃないんです。米国の第七艦隊です。この人たちが引いたら、我が国は一九七三年ごろに経験したオイルショックとかああいうショックを受けるわけですね。これは明らかです、これをだれかどこかの国が臨検したり税金取ったりかっぱらいに来たりしたら。だから、そういうことも考えた上での我が国安全保障をどうするかという問題とは、これは別問題であるということを考えなきゃいけないんじゃないか。  それで、我が国は沖縄県に対して戦後特段の配慮をしていないんです。配慮はしているけれども特段じゃないんです。それで、今度、基地を整理統合、縮小する、こう言っても私はできないと思います。整理統合、縮小はできないと。整理ぐらいはできるかもしれないけれども、統合なんかできない。  どうしてこの問題を解決していくのか。クリントンさんが十一月に新しいアジア太平洋日米安保体制をどうするかと話し合いに来る。この基地問題でこれが折り合うということは、私は事実上無理だと思う。なぜか。これは軍事的な話し合いをする場所がなかったんです。全然していないんです。軍事的にあなたのところは、ここのところは要らないじゃないですかといって日本と米軍が話し合ったことなんて一度もないんです。そういう部署もない。  例えば、P3Cという飛行機があります。これは対潜の捜索機ですね。海上自衛隊も百機持っているんです。米軍も四十機か五十機持っているんです。送信のタワーと受信のタワーの大きいのを持っているんです。自衛隊の方は送信タワーがないから、これを予算要求しても本部町が反対して、できていないんです。それで去年の八億円、予算流れていますね。これは、もしP3Cの潜水艦を探す機能は日本側がしますと言えば、ここはやめるかもしれないですね。そういう話し合いが全くなくて、政治だけが減らせ減らせと言っても絶対減らないんです。だって、事務当局が減らしていないのに、基地縮小、統合整理なんて言ったって絶対にできない。もうできたら大変に僕はびっくりする。  私は、たった一つ解決の方法があると思うんです。どういう解決が。軍事の面は今まで政治の怠慢でやってきていなかったんだから軍事の面にはさわらない、そのかわり沖縄は全部税金をただにしてフリーな国にする。所得税も取らない、固定資産税も取らない、法人税なんか全然取らない、何をしてもいいと。それで、自由な国をあそこに一つつくる。シンガポールに行った企業はみんな沖縄へ行きますよ、これからは。規制は全部外す。そういう特段の配慮を政治がするかどうか、決断するかどうかだと私は思っているんです。  私の言っていることが間違っているかどうかちょっとお答え願いたいと思います。
  107. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 田村議員は、御自身の御体験、御経験が専門的な分野でおありでありますから、恐らく米軍と自衛隊との間のオペレーションの問題については議員は熟知しておられて、いろいろ御経験からお話をされておられると思います。今伺うことの中には、私の知らない部分が少なくとも幾つかございます。したがって、その部分については私は大変申しわけありませんが、お答えができません。  しかし、我々がどういう気持ちでこの沖縄県の実態について考えなければいけないかという点については、田村議員のお考えは、ショックを与えようというお気持ちか少し極端なお話のようにも思いますが、それは我々は相当に考えなければならないことがあるだろうというふうに思っております。  具体的に今御指摘のようなことをこれまで考えたわけではございませんが、政府としても沖縄開発庁という役所をつくって、沖縄の開発にどう取り組むかということを長年にわたって復帰後やってきているわけです。そのことがどういう結果をもたらしているか、そのことが沖縄県民にとって満足すべきことであるかどうかはまた別として、そういうこともやってきております。これは主として、基地があるからということよりも、復帰がおくれているということもあって開発庁がそれぞれの作業をしているわけでございます。  日本にある米軍基地のうちの七五%が沖縄に集中しているという状況にかんがみて、基地周辺の方々、沖縄県民の方々が、さっき武見議員からもお話がありましたように、基地周辺住民がプレッシャーを感ずる、あるいは屈辱感を感ずるという表現でたしかおっしゃったと思いますが、そういったお気持ちを感じておられるということがあるとすれば、我々はこの問題の解決のために相当思い切ったことを考えていかなければならないという意味の御指摘であるとすれば、私はその御意見は十分理解できます。
  108. 田村秀昭

    田村秀昭君 今、大臣がおっしゃったことは、それは事務は一生懸命やっている。これは事務の問題じゃないんです。政治の問題だと私は申し上げている。  沖縄開発庁は、在沖米軍基地の存在が沖縄の発展の障害になっていると認識している。これは私は沖縄開発庁にいたわけですからちゃんと知っているんです。基地の返還は我が所管にあらず、こう言っているんです。ですから、日本政治政府に一元的に沖縄の二十一世紀の青写真をつくるところがないということを申し上げているんですよ。だれもつくれない。沖縄開発庁はつくれないんです。  防衛庁は、防衛上の観点から基地の存続は不可欠と、こう言っているんです。外務省は、安全保障上の観点から基地の存続は不可欠と、こう言っているんです。沖縄県は、基地反対、基地撤去の立場からの要求はするが、基地との共存、整理縮小の現実的な絵は描けないと、こう言っているんです。  それで、沖縄県そのものは年間大体六千億ぐらいの予算なんです。そのうちの約三分の一の二千億は米軍と防衛関係の経費なんですよ。沖縄県の財政の三分の一を支えているわけですから、全部帰ってしまったら困っちゃうわけですよ、これ。そういう本音はあるわけです。だけど、その米軍の基地があるためにいろんな苦渋を受けてきている。これは間違いない。だから、日本政治が、政府が特段の配慮をしないといけないんです。今言ってきたのは特段じゃないですよ、これ。みんなそれぞれの所管を言っているだけであって、これをまとめるところがない。あるとすると内閣総理大臣しかいないということですよ。そこに沖縄の問題点がある。ですから、私は先ほど申し上げたように、沖縄をフリーな県にする、日本唯一のフリーな県にするのが特段じゃないんですか。そういうのを私は特段と言うんじゃないかなと思っています。  次に、時間が余りありませんので、北朝鮮軍事情勢について防衛庁、外務省からお聞きしたいと思います。  特に、テポドン2という四千五百キロぐらいの、今後五年以内に開発されるミサイルがございます。これはアメリカの西海岸に到達すると言われている。このミサイルの開発状態と、この前、北朝鮮から人民軍の、大佐と中佐の真ん中の階級があるらしいんですが、上佐と言うらしいんですが、その人は今まで人民軍から亡命した中で一番最高位の人ですね。この人が向こうの、北朝鮮軍事情勢について、金正日の体制は非常に安定していないというようなことを言っているらしいんですが、この辺についてちょっと、北朝鮮軍事情勢、特にミサイルの開発についてお述べください。
  109. 小池寛治

    政府委員小池寛治君) 先生御案内のとおり、北朝鮮は深刻な経済困難に直面しておりますけれども、軍事面にその国力を重点的に配分している、一説によるとGNPの五分の一ないし四分の一くらいを軍事力に向けていると。それで、軍事力近代化を図って訓練、演習を繰り返すなど即応体制の維持に努めているということは、先生承知のとおりでございます。  お尋ねの弾道ミサイルの問題につきましては、スカッドB、スカッドCといった弾道ミサイルを配備済みでございますが、射程約一千キロと言われる弾道ミサイル、ノドン一号を開発中であると見られます。また、ノドン一号よりも射程の長いミサイルの開発も目指していると見られております。しかし、その開発状況の詳細というのは不明でございまして、現在明確なことを申し上げることができる段階にはありません。  それから、先生のもう一つの御質問北朝鮮人民軍のチエ・ジュファル大佐の亡命事件のことだと思われますけれども、このチエ大佐が亡命したという事実については承知しております。また報道で、記者団に対して報道したという内容については承知しております。しかし、どういう背景でどのように亡命したか等については、防衛庁として確認しているわけではございません。
  110. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 北朝鮮政治情勢といいますか我々が関心を持って見ておりますのは金正日氏の党総書記あるいは主席就任についてでございます。金正日書記が国政全般を指導している、したがって基本的にいつ就任してもおかしくはない状況にある、こう見られておりながら、いろいろと情報がございました。十月十日の労働党創建五十周年記念日に際しても就任の披露がなかったということから、どうもこれは当分の間こうした状況が続くのではないかという可能性が出てきております。  一方、洪水による大きな被害が出ているということもあって経済的に大きなダメージを受けている。食糧の問題を中心として北朝鮮の受けたダメージはかなり大きいという一般的な情報もございます。
  111. 田村秀昭

    田村秀昭君 防衛庁は、やっぱり北朝鮮軍事情勢についてはわからない、何をしているかよくわからないというのが本音ですね。申し上げられないのか知っていて言わないのかわかりませんが、把握の仕方が米国の上院なんかで議論している内容よりはるかに低い。我が防衛庁も、情報を日本の周辺については自分できちっと情報がとれるような体制をぜひつくっていただきたいと私は思います。防衛力を減らしているわけですから、なぜ減らすか私は全くわかりませんけれども、ここ四年間、伸び率を一・六%ずつ下げてきていて、日本が軍縮をすれば周りの国も軍縮をするのならいいですよ。全然逆ですからね。今のようなそういう認識の御答弁では北朝鮮の情勢を握っているとは言えないと私は思います。もっとしっかりしてもらわぬと困る。そのための体制は、何かあったときには責任をとる官庁なんだから、そのときに国民からわんわん言われても困っちゃうんだから、少なくとも情報収集能力、分析能力だけはきちっとつけないといけないというふうに思います。  それで、私の時間が余りありませんので、最後に外務大臣にお尋ねするんですが、APECで李登輝総統をお呼びにならないとこの前の予算委員会でお答えになりました。今回は議長国なんだから、中華民国二千百万人の意思を国際社会が聞く、そういうチャンスを与えるということは、世界が民主化に向かう流れの中で私は当然だと思うんですよ。それをなぜされないのか。そういう価値というものを、しかも経済的に非常に大きな活動をしている国の、そこの二千百万人のトップの人の意見を国際社会が呼んで聞けないというのは、どうも僕はわからないというのが一点。  武村大臣のように個人でこの前タヒチに行かれた。だから、李登輝総統が京都大学の同窓会に個人の資格で来るのなら外務省は受け入れるんですか受け入れないんですか、それをお聞きして、質問を終わります。
  112. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 十一月に大阪でAPECの会議を開きます。御指摘のように、日本はことしは議長国としてそのAPECの会議を実りあるものにしなければならないと思います。十八の国と地域から成るAPECメンバーが円滑な議論ができる、円滑にその会議を進めることができるようにすることは議長国にとって大事なことでございます。  こういうことを考えますと、田村議員御承知のとおり、これは何もことしに限ったことではない、昨年も一昨年も台湾の参加問題については議論があるわけです。これは、中国が参加をするという状況の中で、台湾の参加をいかにするかということは問題があるわけです。したがって、シアトルにおいても昨年のインドネシアにおいても、それぞれの議長国はその会議を円満に進めるためにそれなりのルールといいますか前例をつくってやってきているわけでありまして、私どもも今、APEC大阪会議は前例を踏襲するということを申し上げる以外にないわけでございます。  他方、李登輝総統の訪日問題につきましては、これまた私どもが私的な問題で入国を認めるかと、こういうお尋ねであろうかと思いますが、少なくとも今現在そうした問題は議題になっていないわけでございまして、この点、この私が申し上げる状況にございません。
  113. 田村秀昭

    田村秀昭君 これは質問ではありませんが、これも一番初めに申し上げた軍事力について、日本政治がきちっとその位置づけをしていないからなんですよ。北朝鮮軍事情勢というもののきちっとした把握をアメリカはしている、日本はしていない、そこに問題があると私は思っています。  それで、さっきの沖縄問題でちょっとつけ加えさせていただきますが、宝珠山長官の発言は私は当たり前のことを言っている、先ほど言いました日本安全保障考えた上で当然の発言であるということをつけ加えて、私の質疑を終わらせていただきます。     ―――――――――――――
  114. 木庭健太郎

    委員長木庭健太郎君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、川橋幸子君、照屋寛徳君が委員辞任され、その補欠として大脇雅子君、三重野栄子君が選任されました。     ―――――――――――――
  115. 矢田部理

    矢田部理君 沖縄における米軍の少女暴行事件、レイプ事件と言っていいと思いますが、大変な憤激を買っております。また、これを契機に地位協定や基地の課題、さらには安保条約の根幹にかかわるような問題が政治の場でも当然議論しなければならないその矢先に、宝珠山防衛施設庁長官が私どもには到底理解できない言動を総理官邸で行った。その責任問題を追及しなければならないというのは大変残念でありますが、これは私どもとして座視するわけにはいかないと考えております。  昨十八日でありますが、施設庁長官は古川官房副長官を官邸に訪ねて、沖縄における米軍用地強制使用に関して大田知事が代理署名を拒否している、この問題の対策について協議をされたということでありますが、それは事実でしょうか。まず外形的事実だけを伺います。
  116. 宝珠山昇

    政府委員(宝珠山昇君) 防衛施設庁の首脳が内閣総理大臣を批判する発言を行ったという報道がございました。私は、そのような批判を行ったということはございません。  その誤解を解いていただくために若干の御説明を関連してお許しいただきたいと思います。
  117. 矢田部理

    矢田部理君 まず、私が聞いた外形的な事実、きのう会談を持ったかどうかだけをお答えください。
  118. 宝珠山昇

    政府委員(宝珠山昇君) 古川官房副長官、折田北米局長、私の三人で会いました。
  119. 矢田部理

    矢田部理君 その際、「首相を激しく批判」、「長官が放言」、大きな見出しで各紙が報じております。その中身はもう改めて言うまでもありませんが、「首相の頭が悪いからこうなるんだ。総理府の主務大臣としての総理大臣として行動して欲しい。そう首相に言ってもらいたい」ということを古川官房副長官に頼んできたというお話を、ほかの人ではなくて、ほかならぬあなた自身が記者懇の席で述べた。しかも、その記者一人二人が聞いているのではありません。大勢おられる記者の前で述べられたのでありまして、ある紙が、あの新聞がスクープしたとか漏れ承ったという話では全くないんです。それでもあなたは否定なさるんですか。
  120. 宝珠山昇

    政府委員(宝珠山昇君) 昨日、官房副長官に呼ばれまして、沖縄の基地の実情それから県知事から拒否に際しまして要望がありましたことについて満足するような基地の整理統合というものの事案を見出すことは大変困難な状況にあります、今のところ私どもどんなに努力をいたしましても大幅な基地の整理縮小というのは困難であるというような状況説明いたしました。  また、知事の決意を、議会の答弁でありますとかいただきました文書などあるいは訪米時における知事の報道などから拝察いたしますと、極めてかたいものと私は認識しております。これまでいろいろとこの整理統合について検討をしてまいりました限りでこのかたい決意というものを変えるに十分な材料というのは見出せない状況にございます。すなわち、防衛施設庁は、来年三月三十一日に契約期限が切れる事案を一つ、九年五月十四日に使用期限が切れるものなどを抱えておりますが、これらの日程を考えますと極めて厳しい状況にあります。  政府は話し合い解決ということを大方針として示されておりまして、その方針のもとでとにかく誠意を尽くして話し合い、解決の糸口を見出そうとして努力しております。防衛庁長官も来週訪問いたしまして、知事との会談を持つなどして何とかその糸口を見出したいという決意を持たれているわけであります。  このような話し合いを行うという努力を行いましても知事がどうしても協力できないという最悪の事態というものも事務当局の私どもには予想して準備するというのが補佐をする私どもの任務であると心得ております。そういう最悪の場合に至りましたときには、地方自治法の規定に従いまして、主務大臣である内閣総理大臣が淡々と手続を進めていただく以外にありませんという趣旨のことは申し上げました。また県知事も、これを拒否するに当たりまして、そのようなことになるということは十分御認識の上でなされたということも差し上げました。引き続きよろしくということで帰ったところでございます。  帰ったところで、昨日は定例懇談会でございましたので、若干おくれて始まるということで、すぐに懇談に入って、その際に、さっき官房副長官と会ったようだがその状況はいかんということで、今申し上げたようなことを申し上げさせていただきました。  もう一点、今御指摘のございました頭云々ということでいきますと、これは懇談に入ってからだと記憶しておりますが、頭というような言葉で私の記憶に残っておりますのは、今申し上げたことと重複するわけでありますが、大変いろいろと防衛庁長官等々が知事との会談などなどによって努力をしても知事がどうしても協力されないという最悪の場合には、総理の頭というものを整理いただいた上で地方自治法の規定に従って主務大臣である総理に淡々と手続を進めていただくというふうに考えざるを得ないという話をしたこととかかわるかと思います。
  121. 矢田部理

    矢田部理君 詳細な中身を私は聞いているんじゃないんですよ。今、話し合いをしたり出向いていったりして努力することはだめです、難しいと。法律の規定があるんだから手続に従ってやるべしと。勧告とか命令とかいろいろありますね。そこの話をしたことは事実でしょうが、そういうことをやらずに別な努力をしていることでは解決しない、頭が悪いんだ、総理はと、こう言ったんじゃありませんか。私もただ新聞だけ見て言っているんじゃないんですよ。証拠もありますよ。あなたの言動を起こした記録も私は持っていますよ。本当にそういうことは言っていないと断言できるんですか。
  122. 宝珠山昇

    政府委員(宝珠山昇君) どの点をとらえて仰せか。
  123. 矢田部理

    矢田部理君 どの点じゃなくて、首相は頭が悪いからこうなると。首相は頭が悪い、だからこうなるという趣旨の発言はしているんじゃありませんか。
  124. 宝珠山昇

    政府委員(宝珠山昇君) 冒頭申し上げましたように、官邸における会議におきましてそのようなことを申し上げたことはございません。  関連いたしまして、先ほど申し上げた記者懇の席で、頭ということでありますとそういうことを、先ほど申し上げたようなことを申し上げたように記憶しておりますということであります。
  125. 矢田部理

    矢田部理君 頭が悪いんじゃなくて、整理しろと言っていますか。
  126. 宝珠山昇

    政府委員(宝珠山昇君) 最悪の事態に至りましたような場合においては、総理の頭を整理いただいた上で、地方自治法の規定に従いまして主務大臣である総理に淡々と手続を進めていただく必要があるという趣旨を述べたと記憶しておるということであります。
  127. 矢田部理

    矢田部理君 主要な新聞は全部「頭が悪い」と書いてあるのを、整理と頭が悪いというのは言葉の音感からいったってそんな間違う言葉じゃありませんよ。余りぬけぬけとしらを切りなさるな。そう言ったなら言ったといって、きちっと謝罪するとか責任をとるとかというのが役人のトップとしての態度じゃありませんか。私もしばしば政治家の暴言や放言などを今日まで聞いてきましたけれども、天下の総理大臣を頭が悪いと、だからこうなるんだという暴言は私はきわめつきじゃないかと思います。これだけ沖縄の人たちが忌まわしい蛮行に対して怒り悲しんでおる、基地の存在そのものも問われるようになってきている今日に、行政のトップがそんな軽々な発言をして許されるのですか。  あなたにはしかも前科がある。かつて沖縄の基地の視察をしたときに、沖縄県民は基地と共存、共生じなければならないと発言して大変な怒りを買って、そのときもあなたの処分が問題になりました。もうここまで来たら即刻責任をとって辞職すべきではありませんか。  沖縄の問題は、単に法で定めた手続を先行すればいいという手続論ではないんですよ。戦争における犠牲はもとよりでありますが、戦後五十年間、多くの犠牲と負担に耐えてきた。歴代政権はその沖縄の苦悩にこたえ切れなかった。その苦悩が、この際、一気に噴き出したと言ってもいいと思います。そのちょうどこの時期に、あなたの言動はまことにもって私から言えば許すべからざる中身だと思っております。私は即刻辞任を求めたい。
  128. 宝珠山昇

    政府委員(宝珠山昇君) 前科と言われました点につきましては、基地の整理統合を推進いたしますためには地元の協力が必要でありますということで陳情を申し上げたということで御理解いただきたいと思います。  それから、沖縄が先般の少女暴行事件に伴いまして、沖縄県民が怒り、反発し、また今お触れになりましたように戦中戦後を含めまして県民が言い知れない苦労、負担をされているということについては、私どもかねてから理解し、そのために整理統合を懸命に努力しているということを御理解いただきたいと思います。  私どもの機関委任事務といいますのは、日米安全保障条約に伴います基地を安定的に提供するために必要不可欠なものでございまして、三月三十一日ということを考えますと、何とか早く署名をいただかなければならないという努力をしているということを御理解賜りたいと思います。
  129. 矢田部理

    矢田部理君 沖縄問題の解決や対処がいろんな面で難しいということは私も百も承知ですよ。そのことをあなたに聞いているのではなくて、あなたのとられた言動そのものに、役人を長いことやってこられて、やっぱり人間にはけじめをつけなきゃならぬことがあります。ここまで言い切ったんだから潔く辞職すべきではないかというのが私の希望です。先ほど照屋議員、沖縄出身の議員もおられましたが、自分の気持ちも含めて厳重に申し入れてほしいというお話でした。  それからもう一つ外務大臣に伺いますが、これは任命権者は防衛庁長官です。ですから、どうしてもやめないということであればそこで罷免をすることが筋でありますが、防衛施設庁長官は閣議の了解に基づいて防衛庁長官が任命をするということになっております。閣僚の一人として、とりわけ主要な閣僚の一人としてはもとよりでありますが、外交安全保障問題等がこれほど重要な時期に来ておりますのに、こういう発言政府としてもやっぱり許すべきでないというふうに私は思います。その点で外務大臣に所見を求め、外務大臣としてもここの現場の状況を閣内に持ち帰っていただきまして、防衛庁長官なり内閣として早速しかるべき措置をとられるよう期待したいと思いますが、いかがでしょうか。
  130. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) けさの新聞の見出し及びその記事を見て、私も実は大変ショックを受けました。しかし、私は宝珠山長官がこうした発言をされるはずがないというふうに長官を信頼しております。今の矢田部議員と宝珠山長官との問答を聞いておりましても、事実関係が決定的に矢田部議員のおっしゃることであろうという心証は私にはまだうかがえません。しかし、今、議員がお話しのように、この場のやりとりについては防衛庁長官に私からも申し上げます。防衛庁長官が施設庁長官と恐らく話を十分なさることであろうと思います。これは一義的にそういうものだと思います。報告をするということはお約束をいたします。
  131. 矢田部理

    矢田部理君 外務大臣、私も丹念にやりたい。時間をかけて詰めたいです。ここでもう辞意をとりたいぐらいの気持ちですよ。  しかし、一つだけ申し上げますと、全部の新聞が間違って発言を書くなんということが考えられますか。全紙が見出しも含めて間違って書くなんということがありますか、日本の新聞で。外務大臣、いかがでしょうか。新聞が間違いだということでしょうか。
  132. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) これは新聞には新聞の作業がございますから、私がこの話は余り一般論として話をすべきでないというふうに思いますので、コメントはお許しをいただきたいと思います。
  133. 矢田部理

    矢田部理君 くどくなるのでもうやめますが、同じ見出しで、同じ表現で書くなどということは、その発言がなければ書ける中身の表現じゃありませんよ。大臣としてかばう気持ちはわかりますが、かばってはかりいると大臣自身も変なことになりかねませんので、厳重に御注意を申し上げておきたいと思います。  この質問は終わります。  それから、そういう中で沖縄の少女のレイプ事件について何点か伺っておきたいのですが、地位協定の運用の改善、協定の条項そのものには手をつけずに運用の改善だけで切り抜けようという政府の態度。それから基地問題、そもそも基地があるからだ、その根幹に安保条約が存在するからだと。  この安保条約の問題は、先ほどからいろんな議員から議論がありますから、私もこの時期、きょうは手始めですが、本格的な議論をしなきゃならぬと思いますが、基地につきましても沖縄に過重な負担をかけていることはお認めになっている。その負担を解消するために基地を廃止、撤去するのではなくて、沖縄からは下げるけれども日本の本土のどこかに持っていって押しつけるということは沖縄の人たちも望んでいないし、逆に矛盾を全国に拡散することになりかねないと私は思っているんです。  いずれにしても、そういう中途半端な対応ではこの問題は解決できない。基地問題を含む、あるいは地位協定の条項を含む本格的な見直しをしていかなければならないと私は思っているんです。その見通しに立たないから、施設庁長官みたいに手続先行論、勧告し命令し裁判でも何でも受けて立ってやったらいいじゃないか、あるいは手続を進めたらいいじゃないかという議論になってしまう。その点で宝珠山長官を免責することは全くありませんけれども、しかし政治の方も中途半端な対症療法では片がつかないほど事態は深刻だという認識に立たなければならぬと思うのですが、いかがでしょうか。
  134. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 日本社会党が安保体制の堅持ということをお認めになっておられるということを私は大変感謝しております。恐らく、安保体制を堅持するとおっしゃる根拠には、国際情勢その他を含めて、今、日本の国に安保条約が必要だ、そしてその安保条約六条に基づいて地位協定の必要性も基本的にはお認めになっておられるというふうに私は解釈をしております。  そこで、安保条約の必然性、必要性、今日的な必然性、そして安保体制というからには、安保条約とその安保条約に基づいて米軍が日本に駐留をして、その米軍が日本国内で行動するためのルールといいますかそういうものを地位協定で定めて、安保条約の裏づけとして決めるということまで含めて安保体制の堅持と考えるべきであろうと思います。そういう前提に立ては、安保条約に基づいて米軍は日本にやってくる、日本側はそのやってくる米軍に対して施設・区域を提供する、こういう義務が当然日本側に生じてまいります。  そこで、その施設・区域を提供するに際して、今、矢田部議員がおっしゃるように、それはわかるけれども幾ら何でも沖縄に集中し過ぎているではないかこういう御指摘は、全体の七五%が沖縄県にあるという数字を見ても、これはいささか沖縄に多くあり過ぎるというのは、これは一般的に言えばそれはそういうことだろうと思います。もちろんオペレーションする米軍側にはそれなりの理由、それからこれは過去のいきさつその他があって、必ずしもそれだからどうとすぐに二つ返事でできない問題もあるわけですけれども。  そこで、そういう前提に立ては問題を解決するために現実的なことを考えなければならないのではないか現実的に考えなければならないのではないか。それで、何が現実的な処理の方法がということについて、施設庁は施設庁なりに現実的にこの問題を処理する、解決するための答えを懸命に探っておられるという状況であろうと思います。  私どもも、また今日の安保体制というものを堅持するという前提に立って、その一方で国民にやはり支持される、理解される、国民に支えられる、そういう安保体制でなければならぬというふうに思い、そのための努力をしなければならぬというふうに思っております。
  135. 矢田部理

    矢田部理君 安保条約、安保体制の本格的な論議、特に冷戦後の日米軍事同盟をいかがするかということは、これは時間をかけて論議しなきゃならぬというふうに私も思っております。  私なりの見解もありますが、今、外務大臣に伺っておりますのは、沖縄の今日の深刻な事態について、レイプ事件の扱い、それから頻発する凶悪事件がずっと今日なお絶えないわけですね。それから、大田知事自身が地主にかわって署名することを拒否しておられるという一連の事態について、単なる地位協定の運用改善とか沖縄の基地を一部本土に移転するなどということで解決するお見通しになっているのかと聞いているんです。そこの見通しだけ言ってください。
  136. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 基地周辺の住民の皆さんが感じている不安、それから議員が御指摘になるように基地周辺で起こる事件の再発を防止するためには何が必要かと言えば、それは地位協定の改定ではなくて、一番大事なことは米軍の教育訓練、そして米軍が再発防止のために何ができるかを考えてできる限りのことをやってもらうということがまず一番最初ではないかというふうに私は考えたわけです。  私は、モンデール大使に対してぜひ米軍で再発防止のために直ちに再発防止のための作業に取りかかってもらいたいということを申し上げ、私に言わせれば、米軍は誠実に再発防止のために努力をしておられるというふうに思います。その教育、その訓練、そしてまた現在沖縄に駐留する兵士に対してできる限りの再発防止のための努力がなされているというふうに私は考えております。
  137. 矢田部理

    矢田部理君 個人の兵士の倫理観とかそれに対する教育というレベルの問題も全く否定するわけではありませんが、そこがポイントではないと私は思っているんですね。やっぱり外国軍隊の駐留そのもの、基地の存在そのものに大きな原因がある。とりわけ、このレイプ事件の処理とあわせて地位協定そのものがまず第一義的には大変不平等なんです。  ついせんだっても群馬県の渋川で問題になりましたが、航空法では百五十メートル以下の低空飛行をやってはならぬことになっている。この適用除外規定を特例法で置いて自由自在に超低空飛行ができる。民家の天井や窓ガラスが大変破壊されたというのがこの間群馬でも起こりました。漁業区域についてもそうです。向こうは海を自由に使用できて、日本は使用できない制限区域をつくらなきゃならぬと。逆になっているんですよ。そのほか車両の移動について全く自由ということなど、挙げれば切りがないほど地位協定は、沖縄の人たちはもとよりでありますが、たくさんの問題を抱えている。こういう問題をやっぱり本格的に議論の俎上にのせるという課題一つありましょう。  しかし、地位協定の改善だけでは済まない。沖縄の基地そのものの本格的な縮小、廃止、本土に移転することで解決する問題ではありません。これにやっぱり手をつけるべきだ、その具体的な方策を示すべきだと思う。施設庁長官は官房副長官のところへ行って、とても難しい、今残っているかねてから予定の十プラスアルファだってそう簡単にいかないというお話をされたことも伺っておりますけれども。  そこで、予算委員会などでも問題になりましたが、第三海兵師団というのがいるんです。これは二万三千人ぐらいおりますでしょうか。これは日本防衛のためにいるということは非常に根拠として乏しくなってきている。先ほども議論がありましたが、安保条約でいいますと五条事態、つまり日本の安全のためにアメリカ軍が駐留するという考え方から、そこはもう超えて六条事態を想定した米軍の配置ということに重心が移ってきている。  その六条事態というのも、これまた極東条項というのがあって、極東の平和と安全のため日本の施設等を利用できるという建前になっておりますのに、この第三海兵師団の総指揮はたしかアメリカ本土でとっている。ここに一覧表がありますから後で詳しく必要に応じて出しますけれども、そこの指揮や命令に基づいて、極東じゃないんですよ、湾岸に出兵する。あるいはPKOであそこにも行きましたね。そして、この守備範囲というのはアメリカの東海岸から太平洋、それからペルシャ湾から東アフリカに至るまでがその守備範囲になっている。そういう守備範囲を持つアメリカの海兵隊が二万数千人沖縄に存在をする。これは日本防衛のためじゃありませんよ。  今後も安保条約の再定義という議論の中でも議論になる課題でありますが、地球的規模で展開するための軍事力の配置、その中における沖縄基地の位置づけということになっているのでありまして、ペルシャ湾に展開する米軍隊が沖縄から出動するというようなことになりますと、安保条約の決めた範囲そのものを超えている、安保条約そのものに違反しているというふうに指摘せざるを得ないんですが、どう考えますか。
  138. 折田正樹

    政府委員(折田正樹君) 今、委員おっしゃられたことは安保条約六条との関係だろうと思いますが、安保条約第六条の趣旨は、施設・区域を使用する米軍の能力や任務を極東地域内に限定することにあるのではございませんで、第六条が定める目的に合致した施設・区域の使用が行われているか否かは、施設・区域を使用する米軍が我が国を含む極東の平和と安全に寄与する役割を現実に果たしているという実態があるか否かによって判断されるべきものであると従来より申し上げているところでございます。  我が国に駐留する海兵隊が極東の平和と安全に寄与する役割を果たしているということは明らかでありまして、この海兵隊が軍の運用上、他の地域に移動していくことは安保条約上問題がないというふうに従来より政府は申し上げているところでございます。
  139. 矢田部理

    矢田部理君 湾岸戦争に出動するのは極東の安全の寄与にどう関係するんですか。  極東条項をめぐっては随分いろんな議論があるところです。これが湾岸戦争やソマリアにまで沖縄から出動していくことが問題なのであって、これは日本防衛のためじゃないんだ。それから極東の安全と平和のためでもない。国際的な規模の軍事行動展開が沖縄を中心に行われている。なぜそんなことまで沖縄は負担しなければならぬのかというのが沖縄の人たちの気持ちですよ。事実アメリカ自身でも前の何人かの国防長官が、沖縄から海兵隊を引き揚げよう、アメリカの軍事力の展開を海兵隊の引き揚げでやめにしようというようなことが国防総省内でも議論をされ、具体的に提案になったこともあるわけであります。  そういう点からいうと、もともと安保条約というのは対ソ脅威論に基づいてできた冷戦の産物ですよ。これが冷戦が終わった後も、今度は対ソ脅威はなくなった、新しい脅威をつくり出したり心配事をいっぱい並べ立てたりして日本防衛とか極東の安全を超えて世界的規模で展開する、そんな任務づけや役割を安保再定義という議論の中には盛り込もうとしている。こういう方向づけを行っていることに私は問題があるというふうに考えているわけです。  その点で言えば、私は安保条約は解消の方向、基地は縮小の方向に本格的に向けていくべきだと思う。そして、アジアの平和保障機構というのを、単に二国間の関係としてではなくて、中国議論がいろいろあります、この軍拡についても私も議論に参加したいと思っておりますが、アジア全体における軍縮と平和保障、さまざまな紛争の平和解決機構なども含めてそういう議論をやっぱり本格的に推進すべきではないか。ASEANの集まりで、十分ではありませんが、既にその芽生えというかスタートが切られ始めているということは私は歓迎をしておるわけでありますけれども、そんな方向に切りかえるべきであって、冷戦の落とし子である安保条約をあくまでも守り抜いて別の役割を付与して存続する、維持させるというやり方には私は賛成しかねるというふうに実は考えているわけであります。  もう一つ、これも冷戦の関係でやっぱり見直さなきゃならぬのですが、核実験の問題です。  核抑止力という議論があります。日本はアメリカの核の傘のもと、核抑止力論に依拠して日本防衛、安全が守られてきた、こういうふうに言われておるわけでありますが、この抑止力の議論は冷戦中と冷戦後では同じなのでしょうか違うのでしょうか。大臣、いかがでしょうか。
  140. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 今、矢田部議員は二つのことをおっしゃったわけでございます。  ポスト冷戦における安保というものをどう考えるかという点については、矢田部議員は矢田部議員としての御自身のお考え、哲学をお述べになりました。しかし、注意深く伺ったつもりでおりますが、このお考えは先ほど御議論を展開された田村議員とは全く正反対の議論であります。つまりさまざまな議論があって、我々は冷静に、どの議論をとっていくか、それは我が国の安全にとって、我が国繁栄にとって何が今一番大事かということをしっかり考えなければならない大事な場面にいるというふうに私は思います。安保の話はいずれやろうというお話ですからこれ以上申し上げません。  核抑止力の問題についてもお尋ねがございましたが、現実に現在核保有国がこの世界にはございます。その核保有国が核を保有し、なかんずく幾つかの国は核実験まで行うという現実を考えますと、核抑止力というものを今直ちにこれを否定して議論するというのは現実的でないと思います。  私どもは究極的核廃絶ということを言って、核軍縮、そして究極的にはこれをすべて廃絶するという方向に国際社会が動いていかなければいかぬ、動いていってほしい、あるいは動かすために我々は努力をして今日でも国連の場で核実験の停止の決議を出す、あるいは昨年は究極的核廃絶の決議案を出すというような作業をしてまいりましたが、究極的な核廃絶を目指すと我々は主張しながらも、現実に今ある核保有国の核というものについては、これはやはり現実として見なければならないというふうには思います。
  141. 矢田部理

    矢田部理君 冷戦時代は、私の理解ではソビエトの核攻撃を未然に防止し、反撃力を持っていることを通して抑止していくんだという考え方が基調になっていたと思うんです。そのソ連がつぶれて、核問題も含めて対ソ脅威論というのは姿を消した。むしろ、アメリカと非常に兄弟分のような仲よしの部分も出始めているわけであります。  そうすると、どこの核、何に対して抑止力をという議論がどうしても出てこざるを得ない。だから、この抑止力論もこれは冷戦と冷戦後どの間で違いを明確に議論をしなきゃならぬ、整理をしなきゃならぬというふうに私は思っておりますが、日本はその抑止力論に依然として頼っているわけでしょう。アメリカの核抑止力を肯定しているわけでしょう。それはいかがですか。
  142. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 日米関係の中でアメリカの日本防衛の、日本を守るアメリカの作業の中には核抑止力もまた入っているという認識でございます。
  143. 矢田部理

    矢田部理君 なぜこういう質問をするかというと、核実験に反対をする、それは私も賛成だし大いにやっていただきたいと思うのですが、やっぱり聞こえてくる声は、核抑止力論に依拠しておる日本核実験に反対する資格があるのか、抑止力に依拠するということになれば核の信頼性を高める、高めるための実験を論理的には肯定せざるを得ないという流れになりはしないのかというのが向こう側の議論だと思うんですが、それに河野外務大臣はどう反論されますか。
  144. 河村武和

    政府委員(河村武和君) 我が国は従来から核兵器の究極的廃絶ということを目標といたしまして、これに向けて現実的な核軍縮措置を一歩一歩積み重ねていくということが重要であるという立場をとってきております。これは、先ほど大臣からも申されましたとおり、国際社会の平和の維持において核兵器を含めた軍事力が依然として重要な役割を果たしており、特に我が国の安全が核を含む米国の軍事力による核抑止力に依存しているということを十分認識しました上で、核兵器のない世界を実現するためには核兵器の数量の削減でありますとか核兵器の新規開発とか質的改良の防止、そういうために具体的な措置が着実に実施されていくということが最も効果的であるという考え方に基づいております。  このような考え方に立ちまして我が国包括的核実験禁止条約を推進するために努力してきておりますし、同時にあらゆる核実験に対しても反対の立場を表明しているということでございます。したがって、我が国がその安全を核抑止力に依存しているということと、究極的には核兵器に依存する必要のない世界を目指して核軍縮を推進し、その過程で核実験の中止を求めていくということは特に矛盾があるということではないと考えております。
  145. 矢田部理

    矢田部理君 その究極的にという言葉が気に入らないんですが、それはそれとして、本格的に核実験に反対をするためにはやっぱり核の傘からの離脱と、核の傘そのものも冷戦時代と違ってもう意味をなさなくなってきつつあるということを、河野さんも私どもと軍縮で一緒にやってきた経過もあるので、やっぱり少し河野色を出してほしいんですよ、官僚が書いた作文だけで答えずに。  そして、どうしても行き着くところは、これから例えば包括的核実験禁止条約の作業が来年まとめることを目途に今続けられておりますが、表の核実験はやらないけれども流体実験というんですか爆発寸前まで全部準備してデータをとる、爆発だけさせないという計画だとか、あるいはまたコンピューターシミュレーションでやれるように今実験をやっているんだという説明なんですね。包括的核実験禁止条約はそういう流体実験等も禁止するという立場をとるんでしょうか。その見通し、日本政府立場はどうでしょうか。
  146. 河村武和

    政府委員(河村武和君) 今、矢田部委員が申されましたとおり、包括的核実験禁止条約で一番主要な論点と申しますのは、禁止される核実験範囲というところでございます。  この核実験の禁止の範囲につきましては、この八月に、アメリカ、イギリス及びフランスがあらゆる核実験及び核爆発を禁止するべきである。そのあらゆる核実験、核爆発の中にはハイドロニュークリアテストのようなものであって、いわゆるエネルギーを出すものを禁止するべきだ。ゼロイールドと言っておりますけれども、ゼロイールド以上のものは禁止されるべきだということを発表いたしました。他方、中国及びロシアにつきましては、いまだハイドロニュークリアエクスペリメントと申します実験についての立場を明らかにしておりません。  我が国としましては、中国及びロシアが米英仏と同様の立場をとるように今働きかけてきております。先ほどの国連総会におきましても河野大臣がそういう呼びかけを公にしておりますし、さらに中国外務大臣であります銭其シンさんに対しても日中外相会談におきましてそういう立場中国がとるように申し入れていただいた、こういう状況でございます。
  147. 矢田部理

    矢田部理君 状況は私も知っているんですが、やっぱり核抑止力に依拠しない、核の傘から離脱をする方向の政治を追求しながら核実験に反対をしていくということにならないと説得力が弱いと思う。だから、相手国と何も仲を悪くすることはありません。基本的な外交関係を壊さないためにという配慮も私はあってしかるべきだと思いますが、しかし同時に、何となく名指しを避けるとか、少し腰を引いた形で問題に当たっていることが日本外交姿勢にとって私は非常に頼りない印象を受ける。そういう点で、抑止力からの離脱と、それから本当に実験を禁止するのであれば、シミュレーションであれ流体実験であれ全面的にやっぱり禁止するという立場を貫徹することが大事だというふうなことを特に申し上げておきたい。  もう一点、通産省に来ていただいておりますから通産省に伺いますが、この間、何か日米通商協議が盗聴されたという話がありますね。外務省は盗聴防止装置というのを持っているんだそうですが、通産省はそれを持たずにやっている。むしろ外務省に情報が漏れるのをおそれて、仲は余りよくないんですがね。そんな装置もなしにやったために全部アメリカに傍受されてしまったという指摘があります。  それからもう一点は、日本に駐留するアメリカ軍の中にソ連の電子情報を収集する部隊があるんですね。これは三沢に本拠地があります。電子保全群といって、全国に今三千人いると言われています。これが、ソビエト情報の収集だけではなくて、軍事情報はもちろんでありますが、日本の企業情報やらさまざまな情報収集に当たっていると。これとCIAとの二つで通産省を盗聴したという指摘などもなされているのですが、これに対して日本はどういうガードというか考え方を持っているのか。  事実関係調査して問題を明らかにするというふうになっておりますが、核と情報については、やったともやらないとも、あるともないとも言わないのが国際常識でありまして、容易ならざる状況だと思うのです。こんなことで簡単に日本の情報がオープンになるというか漏れるということでは、日本外交ももう少ししかとしてもらわなきゃ困るなと。外務省じゃなくて今度は通産省でありますが、この辺はいかがでしょうか。
  148. 伊佐山建志

    政府委員伊佐山建志君) 委員から二つの点の御質問がございましたが、自動車交渉にかかわる部分についての報道にありますような諜報活動が実際に行われたのかどうか、これについては私ども承知いたしておりません。御案内のとおり、現在、外務省を通じましてアメリカ政府の見解を照会しているところでございます。  外務省と通産省が必ずしもうまく連絡をとり合わないでやっているんじゃないかという御指摘でございますが、私ども少なくともそういう認識ではございませんで、外務省と極めて密接に、自動車問題を初めとしましてこれまで貿易の問題について処理してきたと思っております。  それから二つ目の日本国内を含めてのアメリカ軍あるいはCIA等の一般的な情報収集活動、これにつきましては、私ども詳細については承知しておりません。
  149. 矢田部理

    矢田部理君 アメリカに聞いても言わないんですよ。だから、防止装置もつけずにやったんですかと、そんなに通産省というのはガードが甘いんですかと聞きたいわけですが、きょうは終わります。
  150. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) ちょっと一言だけ、ごく簡単に申します。  矢田部議員からいろいろ御鞭撻をいただきまして感謝をしております。私は、核実験反対の我が国の主張、あるいは中国、フランスに対します抗議、これは極めて正当性があると思います。  それは、一つNPTの無期限延長ということをやって、この結果、核保有国非核保有国に対して特別の地位が与えられたわけです。これは無期限に与えられているわけです。無期限に与えられているけれども、その反面、核保有国はできるだけ誠実に核軍縮の努力をしなければならないということになっているわけですから、そのことから考えても核保有国核実験非核保有国たる我が国、とりわけ唯一の被爆国たる我が国抗議をすることは正当性が当然あるというふうに考えていいと思います。それから、すべての核実験を禁止するということは我々の主張でもございます。  ただ問題は、この場合に技術的な問題が残されております。つまり、今、議員がおっしゃったようないろいろな部分については、核実験が行われたか行われなかったかということの検証をどうやってすることができるかというような点の技術的な問題が残っておりまして、それらについて今懸命に詰めているところだということだけ申し上げたいと思います。  最後に一言だけ。決して腰が引けているということはございません。我が国ほど両国に対してきちんと核実験に対する抗議姿勢、反対の姿勢を明確にしている国はないというふうに私は自負いたしております。念のため。
  151. 立木洋

    立木洋君 しばらくぶりの外務委員会で、大臣に聞きたいことがたくさんあるんですけれども、きょうは先般の沖縄での少女暴行事件、これは凶悪な犯罪ですし、この問題に関連してだけお尋ねすることにしたいと思います。  普通の場合、その国で犯罪が起こったら、それについて犯人を逮捕し、調査し、そして裁くということは当然のことなんです。ところが、日本の場合には米兵であるがために警察権が及ばない、逮捕ができない、そして司法権が制限される。こういうことになると、これは主権が侵されているということになるわけです。  この問題に関しては、政府はこれまで主権が侵害されているとは考えないということを一貫して主張されてきた。だけれども、問題は、主権というのは言うまでもなく国家を統治する最高権力です。司法権がいささかでも侵されるということは、まさに主権国家としての根本問題にかかわるということになるわけです。  こういう点を考えるならば、栗山駐米大使が、一見不平等に感じられる手続にもそれなりの理由があると、こういう言い方をしております。ところが、続けて、軍人が派遣されている国の司法制度に一〇〇%服するわけにいかないことは日本側も了解している。一〇〇%服するわけにはいかないんだと、アメリカ軍は日本の法律に。そうすると、主権はやっぱり侵されているというふうに判断されるのが当然ではないでしょうか。その点についてのまず基本的な点だけ、簡単で結構ですから。
  152. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 立木議員にはいつもいろいろと御注意をいただくことが多いわけですが、まず最初に、細かい条約上の問題その他については条約局長から答弁をさせていただくことをお許しを……
  153. 立木洋

    立木洋君 いや結構です。林さんの方はいいです。
  154. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) まあそうおっしゃらずにお願いをしたいと思います。  まず基本的に申し上げることは、我が国は議会制民主主義の国としてきちんと立法府で議論をしてこの条約というものを認めているという事実、前提があるということはお認めをいただきたいと思います。
  155. 立木洋

    立木洋君 我々は反対していたんですよ。賛成していませんよ。
  156. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) いや、反対が少数だったものですからこれは通ったわけです。  そういう前提があって、この地位協定というものが今日あるということだけはお認めをいただかなければなりません。そういうことも何にもなくて、やりたい放題やっておるということではないということだけはまずお認めをいただきたいと思います。  そこで、御質問の詳細については条約局長から説明を……
  157. 立木洋

    立木洋君 いや、それは結構です。
  158. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 少し条約局長から説明をさせてください。
  159. 立木洋

    立木洋君 もうわかっていますから、話は聞いていますから。  結局、外国の軍隊が駐留している国においては、その国の法的な制度に一〇〇%服するわけにはいかないんだという、これはもう栗山さんも述べているように事実そうなっているんです、日本の地位協定自身も。  この点について私は、例えばどういうことかというと、韓国の場合、ことしの五月、いわゆる米兵による暴力事件が起こりました。これは大変な事件でした。この問題が契機となって、七月から韓国の外相とレイニー駐韓米大使との間で地位協定の見直しの作業に入っているんです。今、見直しの作業に入っているんです。運用の改善じゃないんです。  それからドイツの場合はどうかと。御承知のように、NATO軍の地位協定の補足協定、ボン協定がありましたね。これは九三年三月十八日にドイツ側の司法権等に関する権限を拡大するために大幅に改定されたんです、地位協定が。どれだけ改定されたかというのは、御承知のように八十二条中三十五条改定されたんです。そして、この問題についてはNATOの駐留している用地に行ってもドイツ側の警察権が及ぶということにまで変わったんですよ。  問題は何かというと、つまり外国軍隊が駐留している国の司法権に十分に服さなくても結構だという状態になっているからこそ自分たちの主権を主張して改善しなければならないんだということが、外国軍隊が駐留している国ではどこでも起こっているんです。  それが、日本の場合には運用のことだけを問題にして、主権が侵害されているこの地位協定の問題について、私は全体のことを言いたいんだけれども、少なくとも司法権に関してでも改定するという態度をなぜ日本政府はとれないのか、外国がとれてなぜ日本がとれないのか、それを聞きたいんです。
  160. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 議員の御質問は地位協定の十七条に絞っての御質問だというふうに伺いました。  ボン協定とかいろいろな点についてお調べをいただいているのだと思いますが、我々もこの十七条に絞ってどういうことになっているかということについては研究をしたいと思っています。  ただし、これはやや私見になろうかと思いますが、今の十七条の規定が必ずしも韓国における地位協定に比べて、米韓協定の韓国に比べて日米地位協定の日本が不利な状況になっているというふうには私は理解していないのです。
  161. 立木洋

    立木洋君 その問題をやり出すと今度また韓国の、前の一九六六年のいわゆる七月九日の書簡を廃棄した、失効になったなんというような問題も取り出さぬといけなくなるから、それを言い出すともう時間がなくなるので私は言いたくないんだけれども、私はこの地位協定の問題についてはずっと一貫して外務委員会の中でやってきたんですよ。そして、一九七八年のときにこの問題、比較的時間をとって取り上げました。そのときには、一九五二年から一九七七年の二十五年間に日本で米兵が犯した事故、事件、これは公務中が三万六千七十五件、そしてその死亡者が四百八十六人。公務外が十一万三百十八件、死亡が四百七十人。これは政府側の答弁。議事録もあるわけですが、これは返還前の沖縄の事故や犯罪は入っていないんです。  それでは、米側で軍事裁判に付したものは何件あるのかと。そしたらゼロだと言うんですよ。そうしたら、アメリカの側が裁判権を放棄することになるわけですから、裁判権を放棄するならば日本側が要求することができるわけですね、十七条の三項で。それを要求したことは一件でもあるのかと聞いたら、一件もないと言うんですよ。四百七十人も公務中で死亡しているという重大な事件があるのにもかかわらず、なぜ一件もアメリカ側に裁判権を日本側へよこせと請求できないんだと。  そのときの外務大臣は園田直さんでした。園田さんはこう言いました。地位協定については時代の変遷、世の中の移り変わりにつれてよく話し合わなければならないと思う、その中できちっと主張すべきものは主張し、やるべきものはやると。だけれども、国によって日本は弱くなったり強くなったりすることがある、そういうことがないように十分注意せぬといかぬと私は思います、そして運用上も厳正厳格にこれから取り組みますと、そうおっしゃったんです。  園田さんがそれから後で努力してくれたかどうか聞く機会がなかったわけですけれども、その後また私は聞いたんですよ。その次には一九八七年にこの問題を聞いている。そのときも、公務中の問題については四万九百五十一件あるけれども、軍事裁判はゼロ。日本側が要求したのもゼロ。  そして、去る十六日、予算委員会でうちの聽濤議員がこの問題を質問しました、十年間どうだったかと。この問題についてもアメリカ側が行った軍事裁判は十年間ゼロだと言うんですよ。そうしたら、アメリカ側はこの間自分たちが日本の国で起こした犯罪、公務中か公務外であるかというのはアメリカ側が一方的に決められることになっているわけですから、これは公務中だと言ってアメリカに連れて帰って、裁判はただの一回もないんです。行政的な処分はあるでしょう。だけれども軍事裁判はただの一回もないんです。さらに一回も日本側は要求していないと言うんですよ。  日本側の人々が、一九五二年から今日に至るまでのあれを見てみますと、公務中の犯罪というのが四万四千百六十六件です。死者が五百八名です。そして公務外が十三万九千六百二十二件です。死者が五百二十三名です。死者を合わせますとこの期間に日本人は米兵のために命を奪われるかいわゆる死亡するという事態になったのが千四十一名あるんです。  これは変な例え方を私はしたくないんだけれども、この戦後五十年の間にほかの外国の兵隊から日本人が千人以上の命を奪われたことが果たしてあっただろうか。アメリカの基地があることによって、米兵のためにこれだけの命が奪われているんです。しかし、その裁判権をただの一件も要求していない。園田さんは、厳正にやります、話し合いもやって直すべきことは直しましょうと、こう言ってくれたにもかかわらず、現実に今日までただの一回もやっていない。これは日本の司法権の問題、日本の主権を本当に大切にする外務省の姿勢として私は極めて怠慢だったと言わざるを得ないと思うんです。  この点について、それならば公務中だけの問題がそうなのかというと、公務中だけではないんですね。公務外の問題についても大変な問題があるんです。  公務外の問題で言いますと、これは一九五七年五月二十四日、マッカーサー大使がアメリカの国務長官にあてた電報、ここに原文をコピーしたものがあるんですけれども、それによりますと一九五三年十月以来、一九五三年の十月以来というのはいわゆる旧行政協定の三条に基づく十七条が変えられた後ですよ。それから日本の裁判権を行使する権利を持っていた犯罪は一九五七年まで一万四千件あった。その犯罪のうち日本側が実際に裁判をしたのは四百三十件。つまり、その他はすべて我々アメリカ側に譲り渡したと言うんです。これはたった三%である。そしてこのこととは対照的に、類似の状況下での全世界的な平均は二八%やっております。日本に裁判権があるにもかかわらず、日本で裁判をしたのかたった三%だと言うんですよ。世界じゅうでは二八%が普通やられていることだと。そうすると、日本で行うべき裁判ですら実際にやっていないということになる。  これは外務省からもらった資料なんですけれども、「在日米軍関係者による刑事事件の起訴人員及び起訴率」。この十年間を見てみました。昭和六十年、起訴率が八六・六%です。年々下がっているんです、起訴率が。平成六年が五四・五%ですよ。半分ちょっとですよ、起訴率が。こんな状態になっていて、司法権の重大性ということを認識して対応されているのかどうなのかということを本当にもうつくづく感じざるを得ないという実情にあるんです。  この問題に関しては、ただ単なる運用の改善のみならず、本当に地位協定の問題について日本の主権を大切にするという立場に立つならば、堂々と主張すべきことは主張して、改めるべきことは改めるということが私はあってしかるべきだと思いますけれども、その点についての大臣の御所見をちょっとお伺いします。
  162. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 今の調査の結果、これは外務省が何回も御報告を申し上げているわけですが、私もその数字はもう大変大きな数字だというふうに感じております。そして、今、議員がおっしゃるように、司法権というものの重要性というものも私もまた極めて重要なものだというふうに認識をいたしております。  そういう前提に立ちまして、今後我々としては考えていかなければならない点は考えたいと思いますが、そのことと、おまえは運用の改善だけでやるのか、こういうのをそのままくっつけて議論をされると、どうも私としてはそれは納得がいかないのでございます。  私は、今度の沖縄の少女暴行事件という大変痛ましい事件が起こって、その事件の全容がほぼわかったときにモンデール大使にお目にかかって、そしてその当時は、できる限り早く身柄の引き渡しを求めるべきだということが問題でありましたから、できるだけ早く身柄の引き渡しを受けるということであるならば運用の改善が必要ではないかということを私は考えたわけでございます。  当時、日本側の捜査には、いろいろ聞いてみましたけれども、特段の支障はない、今、米側の協力も得て捜査は順調に進んでおりますというふうに聞いておりましたけれども、しかし起訴までの間に時間もある、できるだけ早く身柄の引き渡しが行えないものかということで、実はモンデール大使とお話をしたときにいろいろ議論をして、その中で運用の改善というのが一つの方法だ、しかしそれとてもそう簡単なことではないということから、専門家委員会をつくって議論をしようということにしているわけで、私はこれでも事件解明のための前進ではある。それはお認めをいただかないと、おまえのやっている仕事は全く意味がないのだということでは甚だ残念なので……
  163. 立木洋

    立木洋君 もう時間がなくなるんです。もう何回か聞いているから、予算委員会でも。
  164. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) では、御納得をいただけたと思って、私は話をやめます。
  165. 立木洋

    立木洋君 つまり、韓国では地位協定の見直しができるんです。ドイツでもやったんです。ではなぜ日本ができないのか。私は、これは重大な問題があると思うんです。なぜか。    〔委員長退席、理事寺澤芳男君着席〕  これは、大臣御承知のように、旧行政協定の問題について司法界の中でも日本の政界の中でもこの問題についてはいろいろ不満があったんです。だから旧安保条約の三条に基づくいわゆる十七条、これについてはどうしても変えなければならないといって、新安保ができる前に、一九五三年に変えたんです、十七条を。そして、新安保になってもその十七条はそのままそっくり引き継がれているんです。これは四週間にわたって交渉をやったんですよ。大変な交渉だった。最大の問題は何かといったら司法権の問題です。  それで、そのときの秘密取り決めがあるんです、アメリカとの間に。私はここに原文を二つ持ってきているんです。  一つは、一九五七年一月二十二日に出されている国務省の情報報告です。「米国との安全保障取り決め改定についての日本の要望」というものがあります。これが原文をコピーしたものです。そこに何と書いてあるのかを見ますと、この最大の困難を持ち出したのが刑事裁判権の定式化だった。これはNATOの定式がアメリカとNATOとの関係において発効した後はNATOの定式化を日本に適用する、それまでの間は米軍は在日米軍要員に対しほとんど完全な裁判権を保持するという趣旨の妥協によって解決された。その後が重要なんです。しかし秘密了解、シークレット・アンダースタンディンク、これによって日本側は一般に裁判権を放棄することに同意している。これが一つの文書です。  もう一つの秘密文書があるんです。これは一九五七年十一月にホワイトハウスのフランク・ナッシュからアメリカ大統領に対して提出された報告書、「米国の海外軍事基地・付録」というものです。ここについては、裁判権の問題に関してさっき言ったような状況と同じようなことが書かれている。これを補足するものに秘密覚書があり、その中で日本側は日本に対する物質的重大性がある場合を除き日本の第一次裁判権を放棄することに同意しているというのがあるんです。    〔理事寺澤芳男君退席、委員長着席〕  この文書については、外務省はそんな文書は知らないと言ったんです。知らないんじゃないんです。とんでもない話なんです。この最初に私が申し上げた「米国との安全保障取り決め改定についての日本の要望」という国務省の報告は、一九七八年二月二十二日に解禁されているんです。だれでも手に入るんです。だから私は手に入れてきたんですよ。そしてもう一つの、二つ目のいわゆる大統領に対する「米国の海外軍事基地・付録」、これが解禁されたのが一九八四年二月九日なんです。これも解禁されているんです。だから手に入るんです。外務省に聞いたらそんなもの知りませんと。知りませんというのは逃げ口上なんですよ。現にある。  これについて私は聞きたいんです。これの効力が失効したことを根拠づける文書があるのかないのか。失効していなかったら現時点でもこれが有効なんですよ。有効だということは、あらゆる状態を考え日本の裁判権をあらゆる形で抑制するのにこの同意が役立っている、こういう文書なんです。秘密覚書なんです。  こういうことになれば、これはさっき私が言いました裁判管轄権の問題について韓国に対してアメリカ側から来た文書で、裁判管轄権については特に重要な事件以外については合衆国軍事当局が裁判管轄権を有する、この文書が一九六六年七月九日に交わされた文書なんです。これが九一年に失効になったんです、これを取りやめますという。  だから、こういう覚書があるならば、これが失効されているならば、失効されている根拠がなければならないんです。その根拠を提出していただきたい、裁判権の合意がないと言われるならば。合意があるということについては、あなた方自身いわゆる議事録を、もう公開されていますから、解禁されていますからこれを取り寄せてください。取り寄せて中身を調べて、私は何ページかといって教えても結構です。新聞記者の方に発表しても結構です。何ページと全部書いてありますから、今私が述べたことは。それが失効しているなら失効しているという根拠を私は外務委員会に提示していただきたい。いかがでしょうか。
  166. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 米側の書類を根拠に御質問をいただいているわけですが、米側のある人が米側のある人に送った文書ということですね。米側のある人から米側のある人に送った文書の内容について、今私にこれをどうだと言われても、それは私は御返事をするポジションにはございません。日本側のだれかが米側のだれかに出した公文書というなら私は返事をしなければならないと思いますが、米側が米側に送った文書についてそれを根拠にどうだと言われても、それは私にはコメントのしようがございません。そして、そういうものが失効した何かがあるかと言われても、そういうものができたことがあるかというところから考えなければならないわけで、今直ちに御返事は控えたいと思います。
  167. 立木洋

    立木洋君 もう時間ですから最後にいたしますけれども、もし、そういうものはない、そしてそういう覚書なんかは事実ではない、さらにそれは失効したとかいうふうなことであるならば、地位協定の完全な見直し、つまり主権が侵されている問題に関して、少なくとも最小限その問題については完全な見直しをやるべきだと思う。その見直しがどうしてもできないというならば、やっぱりこの秘密合意があったということを根拠づけることにならざるを得ないというふうに私は主張したいんです。だから、大臣がおっしゃるのが正当性があるならば、この地位協定の見直しを完全にやっていただきたい。  安保の問題、地位協定全般に関しては次の機会に改めて時間を十分にとって質問させていただきます。終わります。
  168. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 共産党の主張は、安保条約も必要ない、したがって地位協定も必要がないという御主張が年来の御主張でございますから私どもと基本的に立場が違うわけですが、しかし立木議員一つ一つ丹念に御指摘をいただくわけで、その御指摘は私も真摯に受けとめたいと思います。しかし、そこから先、議員のは非常に直線的に……
  169. 立木洋

    立木洋君 時間がないからちょっと直線的に言わせてもらいました。
  170. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) だから地位協定もやめろ、安保条約もやめろというところまでは私は決して合意を今しましたとは申し上げられません。
  171. 武田邦太郎

    武田邦太郎君 私も日米安保について、基本的な点について若干大臣のお考えをお伺いいたします。  アメリカが今日の世界で持っている重さといいますか、そういう点で日本は心から対等な親友になるべきだと思うんです。ところが、日米安保を前提として日本とアメリカが心から対等な親友になり得るかということを考えますと、どうもそれは不可能ではないかと思うんですね。  今日、日本で識者と言われている人たちも、日本はアメリカに守ってもらうしかないんだ、それがいいんだと思う人が相当おられるようでありまして、アメリカの側が高みに立つ、日本の側が守ってもらっているという、ちょっと言葉がどぎつくなるかもしれませんが、卑屈な立場に立つ限りにおいては対等な親友にはなり得ないことは明らかであります。  それで、我々はどれぐらいの防衛予算を使っているか。これは皆さんよく御承知の話でありますが、イギリスの国際戦略研究所のミリタリー・バランスというのがありますね。一九九四年から九五年まで、つまり昨年度発表された数字でありますが、中国のようにインフレの激しいところがあるので、価格は九三年の価格で計算して発表してあります。  それは、数字は厄介でありますけれども日本世界で三番目ですよ。アメリカ、ロシア、その次に防衛費のでかいのが日本であります。中国はどんどん大きくなっているんでしょうけれども、この時点の発表によれば日本の四二%くらいであります。フランスはヨーロッパで一番でかいのかもしれませんが、日本の六七%であります。それほどでかい防衛費を計上しておって、なぜこのように卑屈に、もちろん外務省は卑屈と思いませんよ、毅然としてやっておられると思いますけれども、しかしアメリカ側がそういう高みに立つ姿勢をとり得ておるのは、やはり国民の中にもそういう姿勢がかなりあるからではないかと心配するわけであります。  私は、今急に日米安保を壊せとかなんとか言うつもりはありませんが、基本的に言えば日本が持っている経済力、技術力あるいは高い平和理想モラルによって近隣諸国と共存共栄の努力をすれば、どこの国が近隣で日本に軍事侵略をする国があるか。ちょっと甘いかもしれませんが、それは私には考えられません。もちろん発展途上国に対してもできる限りの協力はしなきゃなりませんが、世界で三番目という巨大なお金をそういうことに使うことによって本質的な意味における日本の安全が守られるではないか。これについては少し極端ではないかという御批判もあるかもしれませんが、基本的な線においては私は間違っていないと、こう思います。  戦争の歴史あるいは戦争学を幾らかかじってみますと、大陸間弾道弾、核兵器があらわれるということは、つまり地球上の一地方に根拠する武力は迅速的確に全世界をぶち壊せるという段階でありまして、これは戦争進化の極限だと言うんですね。これから先はお互いの命を守ろうと思えば戦争を放棄するしかない、こういうことが戦争学の権威の警告するところであります。これは、今すぐというんじゃないんですけれども、近未来を展望して考えるという意味においては我々としては看過できない一つの羅針盤であると、こういうふうに思います。  そういう立場で、これも立木委員のようによく調べたわけではありませんけれども、どうも日本の自衛隊に対する統帥権は本当に日本の総理が握っておるのか。条約の条文は別として、実質的にはアメリカの統合参謀本部議長が握っておるのかあるいはクリントン大統領が握っておるのか。そういうことに対して我々は明確な判断を持ちたい。  しかも、先ほど矢田部委員がおっしゃったように、日本におけるアメリカの軍事基地というものは日本を守るためにのみない。むしろアジアから中東にかけて、具体的に言えば中国からイラクをにらむアメリカの軍事戦略の拠点としての意味を最も多く持っているではないかと。    〔委員長退席、理事寺澤芳男君着席〕  こういうことになりますと、我々は日米安保ということを肯定しようと思うならば、そういうアメリカの軍事戦略をも肯定するということにならざるを得ないし、アメリカが世界を最高の軍事力を持って、支配とは申しませんがリードするという姿勢を持つ限りにおいては、各国は心から理解し納得してアメリカの世界政策に協力することはあり得ないだろう、こういうふうに思うんですが、これも簡単にお考えを。
  172. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 武田議員の御主張は注意深く聞いたつもりでありますが、もし私の判断、理解に間違いかなければ、いわゆる軽武装中立論とでも言ってよろしいんでしょうか、そういう感じで私は聞きました。  その軽武装中立論というものが、今日のアジアの一角に位置する我が国にとって現実的なものであるかどうかという判断が重要なんだと思います。それからもう一つは、日米関係というものをどういうふうに見るかということもまた考えなければならないだろうと思います。  もう一点、議員の非常に重要な御指摘は、今のような日米安保体制を続ける限り日本はどうしても一方的に守ってもらっているから卑屈になるんじゃないかという御指摘でございます。これもまた、私は非常に重要な御指摘だと思います。しかし、それは私は卑屈になってはいけないというふうに思うんです。  では、どうすれば卑屈にならないかということもまた考えなければならないわけですが、私は今回の沖縄の事件は全く信じがたい許すべからざる事件、この事件を引き起こした米軍の三人の兵士に対して憤りを禁じ得ません。しかし、一方で四万人いるアメリカ軍の兵士が、四万人全部が全部そういう人ではないということもまた当然考えなければなりません。  多くの若い米軍の兵士は、ふるさとを遠く離れて、見たこともない極東の国に来て日米安保条約のもとに日本の国を守る、そういう努力をしているという米軍の兵士に対して、我々はある種の信頼を持ち、敬意も払うということがやっぱり一方でなければならないんじゃないか。ただ安保条約があって来ている、何か事件をやらかす、人まで殺す、憎いやつだ、だから帰れ、出ていけという議論だけしていたのでは、私はやっぱりだめなんだと思うんですね。もっと胸を張って、日本がアメリカのためにやっていることは何なのかということも一方で考えながら、若い諸君には日米関係というものをもうちょっと健全にとらえてもらいたいという気持ちを私は持っております。
  173. 武田邦太郎

    武田邦太郎君 ともかくも現在の日本が一億二千四百万人、三千七百万ヘクタールの国土、その周辺の海、これを我々だけでも守り得る世界で三番目の防衛予算を持っている。その厳然として持ち得る能力、意識があってアメリカと協力すべきということを望みます。  それからもう一つ、これは現代史の読み方あるいは近未来の読み方でありますけれども、私は将来の世界の重大な問題は中国発展、その先は米中の対立、これを抜きにしては世界の平和は語れませんし、もちろん日本安全保障考えられない。中国は今の江沢民体制がどの程度安定して伸びるのか知りませんが、とにかくアーノルド・トインビーが世界最高の民族的政治性を持っていると言った漢民族でありますから、おたおたしながらでも恐らく急速な経済成長、その経済の上に立った軍事力、これは急速に伸びていく可能性があるのではないか。そうなれば、これはいや応なしにアメリカと対立せざるを得ないのではないかと思うんですね。  これはこの委員会で申し上げたかもしれませんが、去年の八月、中国に参りまして向こうの要人と話したときに、ソ理解体以後における沖縄の米軍基地はどこをねらっているのかと、甚だ深刻な表情でそういう発言をした要人がおります。言わすと知れた中国をねらっているに違いない、こう思っているんだろうと思うんですね。そういうことになると恐らく、私は現実をよく調べておりませんが、素人考えでは非常にあり得るのじゃないか。もちろん中国側でも日本の米軍基地をねらっているに違いない。アメリカは、中国がそんなことをやるのなら先手を打ってぶん殴ってやろう、そういうことをあるいは考えておるかもしれません。めったに核戦争なんかをやるはずはありませんけれども、仮に何かの拍子にやったとすれば、沖縄を初めとして日本の米軍基地は核戦争の最前線に立たされる。  こういうことが単なる空想であるのか杞憂であるのか、それとも幾らかの可能性があるのか。そういうことを考えに入れますと、私はどうしても日本の国連を賭してアメリカと中国の心からな平和といいますか、それの実現に前進することこそ日本を守る一番大きな道だろうと。  先ほどアメリカと心からの対等な親友になりたい、こう言いましたけれども、もちろんそれは心から本音でありますが、その先には中国とアメリカに心からな仲よしになってほしい。でなければ、先ほどの戦争学の権威の警告したように核戦争で人類が破局に陥るのか、それとも戦争のない、極端に言えば永久平和の歴史のページを開くのか、この二者択一の段階に我々は生きている。こういう歴史認識において、日本が本当の平和理想に燃えて米中の心からな提携に努力するというようなことを、半分空想でもいいから河野大臣にひとつ御努力願いたいと思います。
  174. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) きょうの午後の御質疑最初武見議員からいろいろなお話がありました。それは大変示唆に富む御指摘だったと思いますが、やっぱり我々はアジアの平和、アジアの安定の上に立つであろう繁栄というものを考えるときに、武田議員は米中とおっしゃいましたが私はあえて日米中と、この三つの国が非常に安定した関係を持つ、できれば友好的に安定した関係を持つということがやっぱりアジアの未来、アジアの将来にとって不可欠ではないかというふうに思うんです。そのために今我々がどう身を処すかということはよく考えなければならぬことだというふうに私は思っております。    〔理事寺澤芳男君退席、委員長着席〕
  175. 武田邦太郎

    武田邦太郎君 よろしくお願いします。  それで、そういう考え方で今現状を見ますと、例えば東南アジア経済力ができて軍備充実に前進している。こういう事態は、やはりアメリカのミリタリープレゼンスを前提にして中国に対抗するという姿勢が南沙諸島の石油井やその他をめぐってあると思うんです。だから、ただいま大臣と私がお話ししましたようなこととは逆の現実があることを念頭に置いて、よろしくお願いします。  終わります。
  176. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) ごく短く発言をさせていただきたいと思います。  私はアジアの、とりわけアジア太平洋地域、大変な経済発展を遂げていると言われるこの地域がその経済的に得たフルーツを軍事力に回すということがあってはならない。ならないというか、そういうことでなくてむしろ再生産の方に回してほしいという気持ちを私は強く持っております。私はそこは武田議員と少し意見が違うので、そのためにはやはり当面はアメリカの軍事的プレゼンスがあって、それによって安定が維持されていくということが前提にあれば、彼らは経済発展で得たフルーツは軍事力に固さずにさらに経済的な発展に向けられるんではないか、民生の向上に向けられるんではないかというふうに私は考えていることだけ申し上げます。
  177. 武田邦太郎

    武田邦太郎君 賛成です。
  178. 佐藤道夫

    佐藤道夫君 最後になりましたが、私からも二、三質問させていただきます。  冒頭の大木議員から数えましてちょうど九人目、九番バッターでありますから、試合時間も余りなくなっておるということなので、軽くピッチャーゴロぐらいでおしまいにしたいと思いますので、どうかおつき合いください。  最初に、河野外務大臣政治姿勢についてお伺いしたいと思います。  これは当面の外交問題とは余り関係がないようでありますけれども国民とするならば外交の最高責任者がどういう政治信条を持っておるのかあるいはどういうスタンスで政治を行っておるのか、ぜひにも知りたいと思いますでしょうし、むしろ国民の知る権利であるというふうにも考えますので、あえて質問させていただきたいと思います。  その問題というのは、さきに行われました自民党の総裁選挙につきまして、河野さんが途中で立候補を断念されたということであります。  新聞あるいはテレビによりますと、外務大臣は選挙をしてしこりを残してもということをおっしゃっておられたようですが、そもそも選挙というのはお互いに正々堂々と戦いまして有権者の判断に毅然として従う、これが民主主義の根幹であるわけです。しこりを残すから選挙をやらないというのは、考えようによっては民主主義の否定ではないかという気もするわけです。まさか私の敬愛する河野外務大臣が民主主義の否定論者とは思えませんので、どうかその辺のところを、心境の一端をお述べいただければ、こう思うわけでございます。
  179. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 先般の自民党の総裁選挙に際しまして、私は二年数カ月の総裁の任期を党員の諸君の大変友好的な協力によって全うすることができたわけでございます。当初、私はさらにもう二年の任期を得たいと思っていたことは事実でございますが、しかしだんだん総裁選が近づくにつれて、いろいろな状況考えてみて、私は私の判断として立候補しないことにいたしました。  その理由は、例えば佐藤議員にお考えをいただきたいと思いますが、今日もし私が総裁職を仮に運よく続けておられたといたしますと、今、外務大臣としての仕事と総裁としての仕事とそして副総理としての仕事と三つ抱えて今日の状況に果たして対応できたかどうかということを考えると、実は私の一年間の経験から見て、これはなかなか簡単ではないというふうに思いました。さらに、連立政権下において村山総理を支える立場の自民党の閣僚二人が自党の総裁選で論争をするということが果たして政権にとってプラスかマイナスかということも一方考えなければなりませんでした。自民党の党内の問題もいろいろございました。それらを総合的に勘案して、私は、この際、自分が立候補を取りやめることが一番いい道だ、こう考えたからでございます。
  180. 佐藤道夫

    佐藤道夫君 なかなか納得できる理由ではないように思われますので、失礼とは思いますけれども、もう一問だけお尋ねさせてください。  河野さんが自民党を飛び出して新自由クラブをつくったのはもう二十数年前だと思います。私、たまたまあのころ銀ぶらをしておりましたら、あなたが真っ白いとっくりのセーターを着まして演説をしておりまして大変格好いいと。私もすっかりあなたのファンになりまして、今現在ファンかどうかは別といたしまして、ファンになりました。そのときにあなたの演説を聞いておりましたら、要すれば田中角栄さんの政治の手法、政治は力である、力は数である、数は金である、こういう政治手法に非常に考えるところがあって自民党を出たのであるということをおっしゃっておられました。私もまさにそのとおりだと思います。  今回、対立候補として名乗りを上げた橋本通産大臣というのは、そういってはなんですけれども、田中角栄氏の秘蔵っ子というのか、そういう立場の方で経世会の本流を歩いてこられた方であって、古い自民党のどろどろした体質を引きずってきたと言うとちょっと語弊があるかもしれませんけれども、そういう感じの方であるという批判もあるわけでありますから、河野外務大臣とすれば政治生命をかけてもそういう自民党の古い体質と対決をすべきではなかったのか。結果はどうなるかわかりませんけれども、やるべきことはやった方がよかったのではないか、それが河野さんの政治生命そのものではなかったのか、こういう気もするわけです。答えにくいかもしれませんが、ちょっとお答えください。
  181. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 現在、自民党の総裁として党を率いてくださっておられる橋本さんに対しては私も全幅の信頼を置いて、少し僭越な言い方ですが、私のよき後継者になってほしいと、そう思っております。  佐藤議員の年来の政治に対する非常に厳しい御指摘は私も週刊誌などで拝読をしておりましたから、今の御意見は御意見としてよく拝聴をいたしますが、今日の自民党がかつての自民党とは異なった体質になりつつあるということもぜひお認めをいただきたいと思います。私どもは、さらに努力をして、国民信頼を得る党としてしっかりと仕上げていかなければならないと、こう考えております。
  182. 佐藤道夫

    佐藤道夫君 本来の外交問題に戻しまして、地位協定十七条五項同についてちょっとお尋ねいたしたいと思います。  私は、この協定の五項(C)がどういう経過をたどってできたのか法律的にこれを非常に知りたいと思いました。なぜかといえば、第一次裁判権は公務外の犯罪につきましては我が国が持っておる。これは地位協定をつくる際にそういう議論がありまして、結局第一次裁判権、これは日本側がとる、日本側にやる、こういうことになったわけです。さすれば、当然のこととして身柄も一緒に持っていくということにならないとおかしいわけです、身柄のない第一次裁判権の行使と言われても非常に困るわけですから。事件の真相もなかなか明らかにならないというようなこともありましょう。ですから、普通に考えれば、公務外の犯罪についての第一次裁判権は日本側がとるということになりますれば身柄もどうぞと、こうなるわけですが、どういうわけか米軍側は身柄は渡さないと、こう言ったわけですね。  さすれば、日本側の委員、当時の委員は皆法律家あるいは外務省の係官でしたから、それはなぜなのかと、こういう鋭い質問を発したはずです。別に鋭くない、普通の人間であればだれでもそういうことは聞くわけです。それに対して米当局からやはり理路整然たる説明があったはずです。かくかくしかじかで第一次裁判権は渡すが身柄は渡せないんだ、しかし永久に身柄を渡さないというわけでもないんだ、起訴をすれば渡してやるんだと。それは起訴するとなぜ身柄を渡すことになるのか、やはり論理的に一体どうなんだろうかという議論が当時闘わされたはずです。当時の議事録によって、あるいは関係した者のメモによってその辺がどういうふうになっておるのか、ちょっと御説明をいただきたいと思います。
  183. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 恐縮ですが、北米局長から答弁させます。
  184. 折田正樹

    政府委員(折田正樹君) 旧日米安保条約のもとでの行政協定の第十七条というのがございまして、これは米軍人等が我が国国内で犯すすべての罪について専属的裁判権を有するということ、他方、NATOの地位協定が米国について発効したときはその協定と相当程度、相当規定と同様の刑事裁判権に関する協定を締結するということを定めておりました。そして、この後者の規定に従いまして、NATO地位協定がアメリカについて発効した一九五三年、昭和二十八年に行政協定第十七条を改正する議定書が締結されました。その条項というのはNATOの地位協定とほぼ同文のものでございます。現行の日米地位協定第十七条は、この改正された条文を踏襲したものでございます。  したがいまして、被疑者の身柄の拘束につきましては、旧行政協定のもとでは、当初、米軍人等は、公務中と否とを問わず、日本側に拘束された場合も含め全面的に米側に身柄をゆだねていることになっていたのですが、現行のNATO協定並みに改められたのが今日まで来ているということでございます。  そして、地位協定十七条五(a)及び(b)に相当する規定がこのような形になりましたのは、基本的には本来裁判権が競合するような場合、いずれも自国による一〇〇%の裁判管轄権を主張したり、派遣国と受け入れ国との間で妥協を図り、一定の基準で裁判権の振り分けを行ったことに伴い、被疑者の身柄の拘束についても原則として裁判権の振り分けにおいて振り分けることにしたものが五(a)でございます。  他方、自国民たる軍人等をなるべく自分の保護のもとに置いておきたいという派遣国側の希望を踏まえ、今申しました原則のいわば特則として五項(c)を設けまして、そこで派遣国が第二次の裁判権を有するときには場合により第二次の裁判権が行使される可能性があるということ、それから派遣国の軍隊が受け入れ国の安全保障の目的で本国を離れ、法制度、文化、風習の異なるほかの国に駐留していることとの事情等を配慮して、被疑者が既に派遣国の手中にある場合には、一定の時点、具体的には起訴までそのまま派遣国が身柄を拘束することとしたものでございます。
  185. 佐藤道夫

    佐藤道夫君 局長にお尋ねいたしますけれども、今の御説明はあなた自身も納得できる理屈であるというふうにお考えでしょうか。
  186. 折田正樹

    政府委員(折田正樹君) 第一次裁判権を持つ者と第二次裁判権を持つ者の間の調整が図られたという観点から、私はそれなりの合理性がある規定であろうと思います。  というのは、第一次裁判権を持つ方が起訴すれば裁判に持っていくということがわかるわけでございますけれども、それまではもしかすると不起訴処分になるかもしれないということもあるわけでございますから、片方の方がそのまま身柄を拘束しているということについては、私はそれなりの合理性があるんじゃないかというふうに思います。
  187. 佐藤道夫

    佐藤道夫君 私は、多少捜査のことも知っておりまするが、裁判権を行使するかどうかという場合に被疑者を勾留して調べるということは、実は単なる調べの目的だけじゃなしに、四六時中彼を監視状態に置きまして、例えば夜うなされておるからこれはやはり真犯人に間違いないとか、あるいはまた涙を流して朝夕反省しておるからもう心底反省しておる、もう裁判権を行使する必要もないのではないかとか、そういう被疑者の四六時中の情勢を判断する必要もあるわけです。監視する必要性もあるわけです。  ですから、裁判権を行使するかどうかという話になれば、その身柄は当然こちらに渡してもらいたい、彼の全体像をつかまえて取り調べもして、そして裁判権を行使するかどうかを決める。こういうのは当時の法律家として当然要求したはずだろうと思うんですけれども、やはりNATO協定をそのまま持ってくるということが大きなネックになって、NATO協定という言い方はちょっと語弊がありますけれども、ネックになっていたんでしょうか。その点いかがでしょうか。
  188. 折田正樹

    政府委員(折田正樹君) やはりアメリカがほかの国と多数地位協定を結んでおりまして、特にNATO協定の例があるものですから、それと違った扱いにするというのはアメリカから見てかなり難しい話であったんだろうと思います。
  189. 佐藤道夫

    佐藤道夫君 現在の十七条五項同につきまして、これが不平等であるとか、あるいは極めて不合理であるとかいう意見が流布されておりまして、あなたのおっしゃるとおりこれが合理的なものだ、それなりに納得できるものだということであるとすれば、それを理由にして改定はむしろしない方がいいということにもなるわけです。  しかし、まことにもって納得できない規定であるということになれば、この協定を持っておるのは日本だけじゃなしに、NATO諸国もそうですし韓国もそうですから、むしろそういう諸国と歩調をそろえて、もうこの協定ができてから大分年月もたっておりますから、アメリカもいつまでもそうかたくななことも言わないだろうと思いますので、関係諸国と歩調をそろえて米当局と法律問題として議論すること。アメリカ人というのはどうも法律家に非常に弱いようなところもあるんですよ。なるほど先生のおっしゃるとおりですというようなこともあるようですから、そういう観点から議論を進めていくというのも実のあることではないかなと、こう思いますけれども、この点につきまして、大臣、いかがでしょうか。
  190. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 十七条五項同について、今、米側の専門家と我が方の専門家で話し合っております。米側の専門家の後ろには当然法律の専門家が多数おって、そういう法律の専門家の意見を聞きながら米側はみずからの意見を述べているというふうに聞いております。双方の専門家の意見というものを私はしばらく注目したいと思っております。
  191. 佐藤道夫

    佐藤道夫君 最後に。  これは日本だけが突出して改定できる問題ではないと思いますので、やはりNATO諸国、韓国等を巻き込んで話を進めていくことが必要ではないかという思いがいたします。答弁は結構でございます。
  192. 木庭健太郎

    委員長木庭健太郎君) 本日の調査はこの程度にとどめます。     ―――――――――――――
  193. 木庭健太郎

    委員長木庭健太郎君) 次に、千九百九十五年の国際穀物協定締結について承認を求めるの件、千九百九十五年の国際天然ゴム協定締結について承認を求めるの件、以上二件を便宜一括して議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。河野外務大臣
  194. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) ただいま議題となりました千九百九十五年の国際穀物協定締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  この協定は、本年六月三十日に失効いたしました千九百八十六年の国際小麦協定にかわるものとして、平成六年十二月にロンドンで開催された国際小麦理事会会議及び食糧援助委員会第六九会議において作成されたものであります。  この協定は、穀物の貿易等に関して情報交換等を行うこと及び開発途上国に対する一定量以上の食糧援助を確保することを目的とするものであります。  我が国は、国際小麦協定を従来から締結してきており、我が国がこの協定を締結することは、穀物の貿易に関する国際協力及び開発途上国における食糧不足を緩和するための国際協力に貢献するとの見地から有意義であると認められます。  よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。  次に、千九百九十五年の国際天然ゴム協定締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  この協定は、千九百八十七年の国際天然ゴム協定にかわるものとして、平成七年二月十七日にジュネーブで開催された国際連合天然ゴム会議において採択されたものであります。  この協定は、緩衝在庫の運用等を通じて天然ゴムの価格の安定及び供給の確保を図ることを主たる目的としております。  我が国は、国際天然ゴム協定を従来より締結してきており、我が国がこの協定を締結することは、我が国の天然ゴムの輸入の安定化を図るとともに、天然ゴムの輸出国である開発途上国の経済発展協力する上で有意義であると認められます。  よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。  以上二件につき、何とぞ御審議の上、速やかに御承認いただきますようお願いいたします。  以上であります。
  195. 木庭健太郎

    委員長木庭健太郎君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。  二件の質疑は後日に譲ります。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時四十五分散会