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1995-10-12 第134回国会 衆議院 予算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成七年十月十二日(木曜日)     午前九時一分開議 出席委員   委員長 上原 康助君    理事 池田 行彦君 理事 桜井  新君    理事 近岡理一郎君 理事 保利 耕輔君    理事 伊藤 英成君 理事 草川 昭三君    理事 鳩山 邦夫君 理事 三野 優美君  理事 五十嵐ふみひこ君       伊藤 公介君    越智 伊平君       越智 通雄君    奥田 幹生君       菊池福治郎君    久野統一郎君       小杉  隆君    後藤田正晴君       近藤 鉄雄君    関谷 勝嗣君       橘 康太郎君    中山 太郎君       中山 正暉君    原田  憲君       松下 忠洋君    御法川英文君       村山 達雄君    若林 正俊君       安倍 基雄君    伊藤 達也君       石井 啓一君    石田 勝之君       川島  實君    左藤  恵君       笹木 竜三君    月原 茂皓君       冬柴 鐵三君    松田 岩夫君       矢上 雅義君    柳田  稔君       山口那津男君    山田  宏君       今村  修君    佐々木秀典君       佐藤 観樹君    坂上 富男君       濱田 健一君    細川 律夫君       前原 誠司君    東中 光雄君       松本 善明君    矢島 恒夫君       海江田万里君  出席国務大臣         内閣総理大臣  村山 富市君         法 務 大 臣 宮澤  弘君         外 務 大 臣 河野 洋平君         大 蔵 大 臣 武村 正義君         文 部 大 臣 島村 宜伸君         厚 生 大 臣 森井 忠良君         農林水産大臣  野呂田芳成君         通商産業大臣  橋本龍太郎君         運 輸 大 臣 平沼 赳夫君         郵 政 大 臣 井上 一成君         労 働 大 臣 青木 薪次君         建 設 大 臣 森  喜朗君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     深谷 隆司君         国 務 大 臣         (内閣官房長官         )       野坂 浩賢君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 江藤 隆美君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (沖縄開発庁長         官)      高木 正明君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 衛藤征士郎君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      宮崎  勇君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      浦野 烋興君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 大島 理森君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 池端 清一君  出席政府委員         内閣官房内閣外         政審議室長         兼内閣総理大臣         官房外政審議室         長       平林  博君         内閣法制局長官 大出 峻郎君         内閣法制局第一         部長      津野  修君         国際平和協力本         部事務局長   高野幸二郎君         公正取引委員会         事務局取引部長 大熊まさよ君         警察庁刑事局長 野田  健君         総務庁人事局長 池ノ内祐司君         総務庁行政管理         局長      陶山  晧君         防衛庁参事官  小池 寛治君         防衛庁参事官  別府 信宏君         防衛庁防衛局長 秋山 昌廣君         防衛施設庁長官 宝珠山 昇君         防衛施設庁総務         部長      大野 琢也君         防衛施設庁施設         部長      小澤  毅君         科学技術庁原子         力局長     岡崎 俊雄君         環境庁長官官房         長       田中 健次君         沖縄開発庁総務         局長      嘉手川 勇君         法務省民事局長 濱崎 恭生君         法務省刑事局長 則定  衛君         公安調査庁長官 杉原 弘泰君         外務省総合外交         政策局長    川島  裕君         外務省総合外交         政策局軍備管          理・科学審議官 河村 武和君         外務省アジア局         長       加藤 良三君         外務省北米局長 折田 正樹君         外務省欧亜局長 浦部 和好君         外務省経済局長 原口 幸市君         外務省経済協力         局長      畠中  篤君         外務省条約局長 林   暘君         大蔵大臣官房長 涌井 洋治君         大蔵省主計局長 小村  武君         大蔵省主税局長 薄井 信明君         大蔵省理財局長 田波 耕治君         大蔵省銀行局長 西村 吉正君         大倉省国際金融         局長      榊原 英資君         文部大臣官房長 佐藤 禎一君         文部大臣官房総         務審議官    辻村 哲夫君         文部省生涯学習         局長      草原 克豪君         文部省初等中等         教育局長    井上 孝美君         文部省高等教育         局長      吉田  茂君         文化庁次長   小野 元之君         厚生大臣官房総         務審議官    亀田 克彦君         厚生省生活衛生         水道環境部長  坂本 弘道君         農林水産大臣官         房長      高木 勇樹君         農林水産省経済         局長      堤  英隆君         食糧庁長官   高橋 政行君         通商産業省通商         政策局長    細川  恒君         通商産業省環境         立地局長    鈴木 孝男君         運輸大臣官房長 戸矢 博道君         郵政大臣官房審         議官      品川 萬里君         労働大臣官房長 渡邊  信君         労働省職業安定         局長      征矢 紀臣君         建設大臣官房長 伴   襄君         建設省住宅局長 梅野捷一郎君         自治大臣官房長 二橋 正弘君         自治大臣官房総         務審議官    湊  和夫君         自治省行政局長 松本 英昭君  委員外出席者         会計検査院長  矢崎 新二君         参  考  人         (日本銀行副総         裁)      福井 俊彦君         予算委員会調査         室長      堀口 一郎君     ————————————— 委員の異動 十月十二日  辞任         補欠選任   志賀  節君     橘 康太郎君   高鳥  修君     久野統一郎君   中尾 栄一君     小杉  隆君   村岡 兼造君     御法川英文君   工藤堅太郎君     柳田  稔君   野田  毅君     矢上 雅義君   今村  修君     濱田 健一君   矢島 恒夫君     東中 光雄君 同日  辞任         補欠選任   久野統一郎君     松下 忠洋君   小杉  隆君     中尾 栄一君   橘 康太郎君     志賀  節君   御法川英文君     村岡 兼造君   矢上 雅義君     野田  毅君   柳田  稔君     工藤堅太郎君   濱田 健一君     今村  修君   東中 光雄君     矢島 恒夫君 同日  辞任         補欠選任   松下 忠洋君     高鳥  修君     ————————————— 本日の会議に付した案件  平成七年度一般会計補正予算(第2)  平成七年度特別会計補正予算(特第2号)  平成七年度政府関係機関補正予算(機第2号)      ————◇—————
  2. 上原康助

    上原委員長 これより会議を開きます。  平成七年度一般会計補正予算(第2号)、平成七年度特別会計補正予算(特第2号)、平成七年度政府関係機関補正予算(機第2号)、以上三案を一括して議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。草川昭三君。
  3. 草川昭三

    草川委員 草川であります。  昨日の本委員会における江田委員質問がございましたので、それに対する質疑を優先的に行いますので、あらかじめ各省に通告をいたしました予告とは少し違う点がございますが、あらかじめ政治的な議論をいたしますので御了解を願いたい、こういうように思います。  昨日、江田委員の方からも質問があったわけでございますが、ことしの九月の二十九日の宗教法人審議会報告についてお伺いをしたいわけでございますが、審議会委員合意が本当に形成をされて報告をされたのかどうかという問題提起がございました。  これは審議会でございますから、当然いろんな意見の違いがあってしかるべきであります。その意見の違いがあるならば、それがやはり国民の皆様に示されながら、そして問題点は何かということをそれぞれ意見が反映されていく、そして、その意見が集約をされて例えば法律改正になっていく、こういうのが一つ筋だと思うのでございますが、「大方意見」であったという形で報告をされておりますが、「大方意見」という定義は一体何か。これは審議会方々意見ですが、受けとめた文部省は、どういうような形で「大方」の定義というのを受け入れられたのか。まず文化庁の御意見を賜りたい、こう思います。
  4. 小野元之

    小野(元)政府委員 お答えを申し上げます。  審議会意見につきましては、審議会の中でその都度個別の項目についてもそれぞれ委員先生方には御意見があるわけでございますけれども、九月二十九日の審議会につきましては、数名の委員から、さらに慎重に審議をすべきだという御意見がございました。  これに対して、さらに数名の委員からは、特別委員会でしっかり議論もしてきたことでもあるし、二十二日にも審議をしたということもございますので、ほぼ意見は出尽くしているので会長の方でお取りまとめになってはいかがかという御意見も出たところでございます。そういったことを勘案いたしまして、会長の方で、議論は一応出尽くしたということで最終的に取りまとめられたわけでございます。  もちろん、この取りまとめを行われた後で大臣報告されたときにも、会長は、この審議会についてはいろんな意見がございました、さらに慎重にすべきだという意見もございましたけれども、私の考え取りまとめて御報告をいたしますということで大臣報告をされたところでございます。  「大方意見」といいますのは、何名かの方がさらに慎重にすべきだという御意見、二名から三名、四名ぐらいでございますが、個別の項目について意見がそれぞれ違いますので。  それからもう一つは、宗教団体としての意見は、例えばこういう反対なら反対という意見があるのだけれども、私は委員個人の資格としてはこう思うのだというような御意見もあったわけでございます。  そんなこともございまして、「大方意見」としては、報告について本日出すべきだということで御報告がなされたものでございます。
  5. 草川昭三

    草川委員 文化庁余り関係ないかもわかりませんが、「大方」というのは二分の一以上という意味ですか、二分の一以下という意味ですか。
  6. 小野元之

    小野(元)政府委員 私どもの判断といたしましては、「大方」といいますのは、半分を超えて、それよりもう少し多い、かなりの部分賛成だというふうに認識をいたしております。
  7. 草川昭三

    草川委員 ならば、審議会委員の中で、宗教界の方だけの賛否の比率はどんなものでしょうか。
  8. 小野元之

    小野(元)政府委員 宗教法人審議会は十五名の委員でございますが、十一名が宗教界からの方でございます。その中におきまして、宗教界としても、もちろんこの程度の中身であれば早急にやるべきだという御意見と、それからなお慎重にすべきだという御意見、両方あったことも事実でございます。そういった中で、学識経験者の方は、今までこれだけ議論したものであるから、九月二十九日、二十二日もやったことだから、ぜひ出すべきだという強い御意見もございました。
  9. 草川昭三

    草川委員 これまでも慎重審議をやったというのですが、何回やったのですか。時系列的に、何月から始まり、何月に、この九月の二十九日でございますか、これがラストだと思うのですが、どのような審議をしたかということをいま一度ここで明らかにされたいと思います。
  10. 小野元之

    小野(元)政府委員 総会を五回、それから特別委員会を八回やったわけでございます。  九月におきましても、特別委員会を何回かと、それから総会は九月五日と二十二日と二十九日であったと思います、今、ちょっと資料が手元にございませんので。
  11. 草川昭三

    草川委員 各委員方々にもうこれが最後ですよと、次はこれでまとめますよということを明確にお知らせになったのですか。
  12. 小野元之

    小野(元)政府委員 実は、二十二日の総会を開きましたときにある程度、九月五日に一回総会としての御審議をいただいておりますので、二十二日である程度まとめていただけるのではないかという私ども期待は申し上げておったわけでございますけれども、なお慎重にすべきだということで二十九日にもう一回開こうということになったわけでございます。  そして議論は、確かに慎重にしろ、あるいはこの改正については反対であるという一部の委員がかなり強くおっしゃられたことは事実でございますけれども、具体的な今回の報告の中にございます所轄庁の問題でございますとか認証後の所轄庁の把握のあり方でございますとか、具体的な部分に対する反対意見というよりも、むしろ審議会自体の、全体として、とにかくきょう二十九日、たまたま国会開会日に合わせて、そこで合意をするのはいかがなものかという意見が強かったところでございます。
  13. 草川昭三

    草川委員 今、最後答弁が私は一番重要だと思うのですよ。なぜそんなに慌ててやらなければいけないのかと宗教界代表発言されたのでしょう。これは極めて重要な話じゃないですか。しかも国会に間に合わせてやる。国会に対して改正案を提出するためのそもそも審議会じゃないのですよ、これは、宗教法人審議会は。きのうも江田さん、言ったでしょう。  今、文化庁次長答弁は語るに落ちたのですよ。非常に無理をして、この審議金ハイピッチでやられているということを答弁をしたわけでありますが、宗教団体賛否内容については私の質問に答えていませんね、あなた。宗教界代表賛否内容を言ってください、ここで、数でいいから。
  14. 小野元之

    小野(元)政府委員 お答え申し上げます。  審議会の具体的な委員の御発言中身につきましては、それぞれのお立場もございますし、実は二十九日の審議会自体はもともと非公開前提に開かれたものでございます。もちろん、その日に別の閣議決定があったわけでございますけれども委員方々は一応非公開ということで御発言なさっておられますので、私どもとしては、具体的にどなたがどうということは申し上げられないのでございます。  なお、二十九日という日が……(発言する者あり)私どもの認識しております限りでは、明確に二十九日の時点で、宗教界の方で、反対といいますか、きょうまとめることについては慎重にすべきだとおっしゃったのは三名というふうに記憶をいたしております。
  15. 草川昭三

    草川委員 それで、あとの方々は全員が賛成したんですか、それとも消極的に態度を留保されたのですか、いま一度お答え願いたい。
  16. 小野元之

    小野(元)政府委員 昨日も御答弁申し上げておりますが、この審議会について、最終的に採決という形はとっておりません。したがいまして、何名の方が賛成であったか反対であったかということは明らかではございません。
  17. 草川昭三

    草川委員 何名の方々賛成をして反対をした、採決をしていないからわかりません、これは事務方であるところの文化庁の言う答弁じゃないでしょう、我々は国会で聞いているんだから。国会ですから、その具体的な数ぐらい言ったらどうですか。  たまたま今次長は、私が質問していないんだけれども、九月の二十九日、閣議決定をしている。審議会というものは透明化をしなければならない、従来の審議会あり方について見直しをしようではないかということを閣議決定しているんですね。官房長官、これはそうしたんでしょう、閣議決定。首かしげていますが、していないの、閣議決定は。九月の二十九日、審議会透明化見直し等について。覚えていないの。
  18. 野坂浩賢

    野坂国務大臣 お答えいたしますが、この点については、審議会の公正な論議の確保についての問題でございますけれども閣議決定はいたしております。
  19. 草川昭三

    草川委員 それで、もう一回文化庁へ戻りますが、その閣議決定があるけれども、実は審議会の方は並行して行っていたから、この閣議決定に拘束されないということを言いたかったんですか。次長、もう一回答弁してください。
  20. 小野元之

    小野(元)政府委員 九月二十九日の「審議会等透明化見直し等について」の閣議決定におきましては、透明な行政運営を確保するという観点から、議事録公開などについて定められたところでございます。  ただし、これらの措置は、行政処分不服審査等に係ります審議会につきましては適用対象から除くという前提でございます。この宗教法人審議会につきましても、宗教法人に対する認証等に関する審議を行うということで特例的な扱いがなされることになってございます。その該当する審議会だということでございます。
  21. 草川昭三

    草川委員 じゃ、文化庁のこの宗教法人審議会は、今回の場合、何らかの処分を決定するために開かれているんですか、今回の場合ですよ。
  22. 小野元之

    小野(元)政府委員 今回は制度の改正につきましての御論議でございます。ただし、個別の宗教法人意見が出てくる場合等もございますので、具体的な中身につきましては、議事録といいますか、その議事内容公開するということはしていないわけでございます。  ただ、この審議会につきましては、国民関心も非常に深いということもございますので、終わりました都度、記者クラブに対するブリーフィングをいたしまして、そのブリーフィングにおいて中身をオープンにしているところでございます。
  23. 草川昭三

    草川委員 全然私の質問に答えていませんね。  文部大臣に聞きますが、文化庁の所管は文部省であることは言うまでもありません。それで、当然あなた自身も各プレスに、この問題についてはいろいろと論説委員方々にも、珍しくも直接各新聞社を訪れでいろいろなことを言っておみえになるようですね。だから、あなたも十分この間の経過は知っていると思う。閣議決定にもあなたは参加しているわけです、透明化の問題について。この際、この審議会のいろいろな議論あり方について一切国民の目の前で、我々ここで、議会でこういう質問をしているわけですから、その経過を明らかにしてもらいたいということについてどうお考えですか。
  24. 島村宜伸

    島村国務大臣 お答えいたします。  九月二十九日の閣議決定は私も承知をいたしておりますが、これは御承知のように、不服審査とかあるいは不認証等も扱う、個別団体不利益処分等の検討も含むわけでございますから、したがってこの議事録公開することはしないということで、これはまさに適用の除外になっております。  なお、今のお話でございますが、今次長からも御説明いたしましたように、国民関心も非常に深いということから、その都度記者ブリーフを行って、審議内容等について差し支えないものはずっとブリーフィングをしてきた、こういうところでございますので、もしその内容がどうこうということであれば、その間のことは記者方々皆さん御存じでございまして、我々は公開できないものはいたし方ないとしても、内容等についてあるいは経過等については説明をいたしてきた、そういうことでございます。
  25. 草川昭三

    草川委員 新聞記者皆さんに言うのは、それは結構です、ブリーフですから。私ども国会で、もう今さら言うまでもありませんけれども国民代表として皆さんバッジつけているんですよ、これ。バッジは重いんですよ。だから、私どもがどういう形でその問題が進んでいるかということを聞いているんです。ここへ出せるはずでしょう。新聞記者に出したらここへ出してくださいよ。出せるということを今大臣答弁したと同じことだと思うんですが、どうですか。
  26. 島村宜伸

    島村国務大臣 審議会の性格上、個々委員がどういう発言をしたということまで出るということは、これは先生御理解いただけると思いますが、記者ブリーフも私たちは決していいかげんなことをやっているわけじゃございませんので、その内容がどういうものであったかということであれば、私は出してもよろしいんではないかと思います。
  27. 草川昭三

    草川委員 記者ブリーフはいいかげんでないというのは後でまた聞きますね。よく覚えておいてください。  そこで、あなたがおっしゃるように、記者ブリーフは、それは報道機関に対する経過報告という意味では一つの手段だと思うんです。しかし、ここは国会ですからね。国会の場というのは、我々は、何回か申し上げますけれども国民皆さんの負託を受けていろいろと議論するんですから、記者ブリーフができるならば我々に報告してくださいよ。そして、処分をするという審議会ならば、私はこれは非公開でいいと思う。処分をするというような問題だとか個々の認可の問題について、だれがいいとか悪いとかおっしゃった、これはまずいでしょう、公開をするということは。  しかし、これから法律改正しようじゃないかという問題提起があった。本来はすべきではない審議会なんだけれども、そういうことをおっしゃるなら、国会に、例えばAさんはこういうことを言いました、Bさんはこういうことを言いました、Cさんはこれに対して反論がございました、Dさんはこれに対して中立的な御意見があった、それぐらいのことは報告できるでしょう。大臣のこれは私は権限だと思うんです。あなたの腹次第で幾らでも情報公開できる。そして、事実、あなた自身が参加をして決めたこの内閣閣議決定という中には、情報開示あり方民主的運営透明性を高めるべきであると書いてあるじゃないですか。これを否定するんですか。否定するかどうか、それをまず聞きましょう。
  28. 島村宜伸

    島村国務大臣 そのことは否定いたしません。
  29. 草川昭三

    草川委員 否定しなかったら出してください。
  30. 島村宜伸

    島村国務大臣 記者に話せて我々国会に話せないのはおかしい、御指摘のとおりだと私も思います。それにつきましては、文化庁次長から御説明いたさせます。
  31. 草川昭三

    草川委員 文化庁でなくて、今大臣、払いい答弁されたと思うのです。記者に話をして、ブリーフをして国会報告できないことはない、全くそのとおりだと思うのです、だったら大臣文化庁に言って、議事録はA、B、Cで結構です、それを出しなさい。出すことを要求します。
  32. 島村宜伸

    島村国務大臣 審議会議事録がお出しできないことについては申し上げたとおりでございますが、記者に行って国会議員にできないのはおかしい、これは御指摘のとおりと私は思います。したがって、記者ブリーフについて、記者の方にお話してきたことを先生にお話しできないことはございませんので、そのことについての御説明は次長からいたさせます。
  33. 草川昭三

    草川委員 何回かの審議会議論を今ここで全部報告をしろと私は言っておるんじゃないんです。いいですか、これは時間に制限がございますから。ですから、AなりBなりCなりの方々がこういうことをおっしゃったということぐらいは、私、議事録全文出せとは言いません。じゃ、一歩下がりましょう。大要、Aさん、Bさん、Cさん、Dさんがこういうことを言ったということを国会に資料提出の要求をいたします。委員長の采配を求めます。
  34. 上原康助

    上原委員長 ただいまの草川委員の御意見、要求につきましては、後刻理事会でよく検討させていただきたいと存じます。
  35. 草川昭三

    草川委員 じゃ理事会で、私も理事でございますから参加をして。  この問題で次に移っていきたいと思います。  じゃ今度はさらに進めまして、なぜ私はこういうことを言うのかといいますと、いわゆる審議会の中の委員でございますが、天台宗の宗務総長さん、この方から、審議金報告内容及びその取りまとめ方に対して抗議文がこの審議会に提出をされ、その写しが文部大臣のところに行っているというふうにお伺いをいたしましたが、その事実について文部大臣答弁を求めたいと思います。
  36. 島村宜伸

    島村国務大臣 お答えいたします。  いただいておるそうでございます。
  37. 草川昭三

    草川委員 いただいておみえになって、まだ文部大臣はそれを読まれていないんですか、見たんですか、どちらですか。
  38. 島村宜伸

    島村国務大臣 実は、その件につきまして、新聞の投書ですか、趣旨を承っておりましたので、大体の内容承知をいたしております。
  39. 草川昭三

    草川委員 大体の内容承知をしておみえになるなら、その感想をこの際お述べ願いたいと思います。
  40. 島村宜伸

    島村国務大臣 なぜ私がそう申し上げたかといいますと、御承知のように宗教法人法、たしか七十四条と記憶いたしますが、会長は会務を総理するということが決められております。しかも、会長はこの審議取りまとめに当たりまして一任を取りつけまして、その一任を受けた上で会長が決めたことでございますから、そのことについての確認をいたしたということでございます。
  41. 草川昭三

    草川委員 いや、それは実質的にその文面は抗議の文面ではなかったんですか。
  42. 島村宜伸

    島村国務大臣 私が知る範囲では、自分はそういうつもりで一任したのではない、こういうお話でございましたが、我々も会議をたくさんいたしますが、一任をするということは、その方の御判断に従うという意味を持つと思ったのでそれ以上の追及をしなかった、こういうことであります。
  43. 草川昭三

    草川委員 たまたまこの先生はこういうことを言っておみえになりますね。今文部大臣が言われたように、報告書案の作成については一任を求められました。  「さらに反対意見並びに審議はまだ尽くされていないから、審議を」、これは多分進めるべきだということだと思いますが、進めるべきだと述べる慎重意見が多いことにも配慮するということを会長一任という中には含まれているのだ、こういう趣旨のことを言っておみえになっております。要するに、会長を信頼していたからこそいろいろと申し上げたのでございますよ。  にもかかわらず、会長は  審議会終了わずか二時間後、審議会に提案された事務局案に全く手を加えていないといっても過言でない報告書を文部大臣に提出されました。   当然その内容について、委員に対し事前了解を求められるものと思っておりましたが、それもありませんでした。あったのは事後通告です。   貴職 会長ですね、  のとられた今回の、私ども委員考えや主張を切り捨て、無視した行動は、遺憾の極みであります。さらに多数の慎重論がある中で提出をされた報告書が、委員全員の賛同を得たかのような印象を社会に与えていることは、全く納得し難いことであります。   このような経過ですから、小職は私はという、天台宗宗務総長さんでございますが、この方は、委員として今回の報告書の内容に責任を負うことができません。そして、そのことを公表せざるを得ない。ここに貴職のとられた行動に対して強く抗議する。なお、この文書の写しは文部大臣にも提出をしたとおっしゃっておみえになる。この経過、どう思います、文部大臣
  44. 島村宜伸

    島村国務大臣 昨日の質疑の中でも申し上げたところですが、私は、いろいろな誤解を避けるために、この結論が出るまでは一切、電話一本しないという姿勢を貫いてまいりました。したがって、その審議については、先ほど申したように、会長が会務を総理し、しかもずっと、まさに四月以来熱心に御討議をいただいたことについて結果をただいただくというのが私の立場でございますし、一任をされるということはやはり一任ではないのだろうか、そう私は受けとめます。
  45. 草川昭三

    草川委員 だから、一任は一任、反対をする人間がいても、もう一任をした以上は黙っておれ、こういう御意見ですね。そして、あなたは今、電話一本もかけていない、当たり前の話ですよ、そんなことは。審議会委員に一々干渉するのですか、あなたの哲学というのは。  にもかかわらず、一方ではプレス、論説委員方々を訪問しておるじゃないですか、この審議中にもかかわらず。そして、宗教法人法の問題云々をあなたはいろいろとお願いをしたのか、話をしたのか、意見交流かどうか知りませんけれども、一方ではそういう具体的な行動をとっておるじゃないですか。全くこれは我々にとっては理解ができない。まず宗教法人改正ありきだ、何か念頭にそういう意思が凝り固まって行動されておるように思われてなりません。どうですか。
  46. 島村宜伸

    島村国務大臣 審議のいろいろ経過等を秘密裏に行ったわけでないことは、審議会の都度記者ブリーフを行っていたことでも理解がいただけるところでございますが、その経過は当然論説の方々は御存じであった、こう思います。そういう意味で、その経過に照らして、かなり煮詰まってきている状況の報告をしたのであって、決定をした云々ではありません。
  47. 草川昭三

    草川委員 大体、現職の大臣が、自分の所轄をする法案提出が目の前に追っているのに事前にマスコミの論説を訪れていろいろと意見交流をする、極端な言い方をすれば、私の考え方はしかじかかくかくだ、新聞社新聞社で再販価格維持制度という問題があるから、所轄の文部大臣が来れば粗末な扱いはできない。こういう行動をとることが許されると思いますか。これは総理、どう思いますか。  現職の所轄の大臣がそこの抱えている法律改正について事前に関係、特に影響力の強いマスコミを訪問して、そしてマスコミ側にしてみれば、今規制緩和でいろいろと再販価格維持制度で大変な問題を抱えている、そういうところへ所轄の大臣が訪れたら粗末な扱いはできぬじゃないですか。そういう行動をとることは許されるかどうか、そもそも。これがもし昔の社会党だったら大騒ぎですよ、これは。今の社会党は大変御理解がありますからそういうことはおとりにならぬと思うけれども、かつての社会党だったらもうこんなものは大騒ぎだ。委員長、まあ委員長というよりも村山さん、どうですか。総理の御見解を賜りたいと思います。
  48. 村山富市

    村山内閣総理大臣 今言われるように、宗教法人法の改正について意図的にマスコミに対して宣伝をしていただくというねらいを持って話をするとか、あるいはその前提として、マスコミの皆さんも言うことを聞いてくれるだろう、なぜならば再販問題があるからというようなことを前提にして話をする話なら、それは私はやはりマスコミの皆さんの立場もそんなものだろうかということだってありますから、一概には言えないのじゃないかと思うのですよ。そういう誤解を与えるようなことはすべきではないと思いますけれども、またしかし、決して訪れた本人もあるいは受ける側もそんなことで左右されるものではない、私はそう思っていますね。  したがって、例えば宗教法人法の改正なんかの問題については、いろいろな意見もあるし、考えもあると思いますね。したがって、できるだけ慎重に、いろいろな意見を聞いて、そして正しく結論を出していくということはあり得てもいいことではないかというように私は思います。
  49. 草川昭三

    草川委員 総理、マスコミというのはいろいろな世論を代表するところですから、そういう方々の論説の方々と重要な問題について懇談をするというのは当然あってしかるべきなんです、それは。だったら、文部省へ呼べばいいじゃないですか。文部省に来てくれと言えばいいじゃないですか。それを拒否するような今の日本の報道関係ではないと私は思うのです。わざわざ一社ずつ訪問をされたわけですから。  特に、総理が前提に言われたのは、言外に軽卒であったということをにじませていますよ、今の総理の答弁は。  島村文部大臣、どうですか、軽率と思いませんか、今回のマスコミを訪問したことについては。正しいと思いますか。
  50. 島村宜伸

    島村国務大臣 別にそう思いません。  私は、今までも、きのうも申し上げたところですが、自分自身が御依頼を受けたことでも足を運ぶことを苦にしない男でございますし、今回の場合には、本当はもっと早くから皆さんとお話をしたいけれども、話が煮詰まる前にやれば何か恣意的なことになってもいけませんからずっと遠慮をしてきた。しかも、たまたま、きのうも御説明したように、論懇を開こうとしたら皆さんの日程が合わない、こういうことでございましたので、皆さんの日程の都合のつくところに合わせて、私は冒頭だけごあいさつした、そういうことでございます。
  51. 草川昭三

    草川委員 文部大臣というのは非常に多忙なんですよ。今いろいろなことを抱えているのです。マスコミを一社一社訪問をする余裕があるなら、もっと日本の教育行政全般的なものに時間を使ってもらいたい。子供の教育の問題とかいじめの問題とか、もう山積をしているんだから。  文部大臣というのは文部省にどっと座っていろいろな方々意見を聞けばいいんだよ。それなのに一々歩けば、大臣が来たんだ、何のことだろうと思うでしょう。そういうことについて反省がない。私は反省を求めたのですが、何も悪いことはやっていない、反省がないのですね。  じゃ、こればかりで時間をとっておるわけにいきませんから、もう一度戻りますが、なぜ審議会委員方々が抗議文を提出をされたのか。抗議文を出すというのは、私は容易なことではないと思うのですよ。普通の審議会なら、失礼だけれども、大体しゃんしゃんでしょう。そして御苦労さまでございました、意見を言い合って終わりなんですよ。  そういうのに対して、審議会委員方々が何人か抗議を表明される、これは私は容易ならぬことだと思いますし、一方では同日、審議会透明化見直しということをやりたいということを閣議決定しておる。全く私は初めに結論ありきだ、こういうように思うんですが、その点についてあなたはどう思われるか、お伺いをしたいと思います。
  52. 島村宜伸

    島村国務大臣 お答えいたします。  私は、メンバーの構成をごらんいただいてもおわかりのとおり、宗教関係者十一名、学識経験者四名でございますから、皆さんが開かれた自由な論議の中で結論に導かれたもの、それを会長がいわば結果的に会務を総理した、その手続としては一任を受けて、その結果をあらわした、こういうことだと受けとめております。
  53. 草川昭三

    草川委員 それから文部省文化庁の、先ほど答弁しましたね、次長。それであなた、非常にオブラートに包んだような賛否の結果を報告をしましたが、私どもがお伺いをしますと、十一人の宗教関係者の中で反対を表明された方は七人だと聞いておみえになります。そして、私がたまたま今申し上げました抗議文を出した方以外も、さまざまなところで改正には反対をしましたと語っておみえになります宗教団体代表もお見えになります。  ある宗務総長は、反対の立場だったので、二十九日の総会には弁護士とも相談をして辞表を懐に会議に臨んだ、席をけって立とうとも考えたほどだが、あと二、三回審議会が開かれると思うので、その行方によっては態度を改めて決めたいと言っておみえになる方もお見えになるわけであります。  いかに初めに結論ありきかということで、これは急いで結論を出されているわけです。この点が私は一番疑問があるところなんです。事は、長い戦前の宗教弾圧があった、あるいはまた日本の国の憲法にも基本的な権利として侵しては相ならないという非常に重要な問題がある、そういう経過の中でこの問題が、臨時国会を目の前にして、初めに結論ありきという形で急テンポで進むことに私は大変な疑義があります。  しかも一方では、内閣は、いろんな審議会については情報開示をしよう、民主的な運営をしようと言っておるにもかかわらず、一方ではその反対意見を封殺をして議事を進めるということについては、大変私は遺憾に思うし、抗議をしたいと思うのです。これはまた後ほどほかの委員からも指摘をされると思いますし、もうこれで四十分近く時間をとっておりますので、次に移ります。  委員長に要求をしますが、先ほど私の提出をしました審議会審議内容を、どうか速やかにAなりBなりCさんの方々の御意見がこの国会に示されることを強く要望をして、次に移りたいと思います。  そこで、日銀さん、お見えになっていますね。大変お待たせをして申しわけございません。日銀さんでございますから、ちょっとそれを優先的に間に入れてお伺いをしたいと思います。  まず第一に、近時、我が国金融界の不良債権問題が非常に国際的にも関心を集めており、世界経済の不安定化要因ともみなされていますが、本件に関する日本銀行の認識と対応をお伺いしたいと思います。
  54. 福井俊彦

    ○福井参考人 お答えを申し上げます。  ただいま委員御指摘のとおり、不良債権問題というのは、これを非常に早期に処理するということが御指摘のとおり日本の金融システムの機能と金融システムに対する信認の回復に必要でありますし、それだけではございませんで、日本経済の持続的な成長パスヘの早い回復のためにも必要でございます。  さらに御指摘のとおり、世界経済全体の安定のために、それをおもんぱかればおもんぱかるほど必要不可欠な課題ということでございまして、日本銀行としても、ただいまこの課題に全力を挙げて取り組んでいる最中ということでございます。  既に御承知のとおり、日本の金融システムの潜在的なリスクの種となっておりました幾つかの中小金融機関の問題につきましては、破綻処理という形で着実に対応が進んできておりますけれども、この過程におきましても、日本銀行といたしましては、一定の厳しい条件のもとではございますけれども、みずから資金提供を行うというふうな形に踏み込みながらも必要な対応を行ってきたところでございます。  現段階におきましても、日本の金融機関あるいは金融システムが直面しております全体としての不良債権問題、これは今後対処を要する大きな課題がなお残っていることは確かでございまして、そのため、先般の金融制度調査会金融システム安定化委員会でも、これら問題全般を処理するために今後必要な解決の基本的方向性を示されたところでございまして、この国会におかれましても十分議論を尽くしていただいて、その後、こうした方向に沿って具体的な対応策が決められていくことを日本銀行の立場からも切望しているところでございます。  日本銀行としては、今後とも日本銀行としてなすべきことは責任を持って対処をする、こういう覚悟でございます。
  55. 草川昭三

    草川委員 第二番目に、我が国の最近の金融界と海外市場との関係についてお伺いをしたいわけですが、日本の銀行全般に対する信用、信認というのですか、これが非常に低下をしてきた、海外における資金調達の金利が上昇をしていると報ぜられているわけでありますが、海外での金融取引に問題が生ずるおそれがあるということに対する、いわゆるジャパン・プレミアム、この点について日本銀行はどのような対応をされるのか。  けさの一部の報道では、海外邦銀の資金繰りを懸念をし外貨準備の活用をする、これはまあ大蔵と日銀との間で検討をしているという、こういうニュースもあるわけでございますが、この点について副総裁の見解をお伺いしたいと思います。
  56. 福井俊彦

    ○福井参考人 お答えを申し上げます。  御指摘のとおり、海外からも、日本の金融システム全般の問題に関しまして、非常に強い関心が寄せられているのが現状でございます。  御指摘の、日本の金融機関に対する海外の金融機関からの資金提供の場合の金利のつけ方の問題でございますけれども、八月下旬に、御承知のとおり、ムーディーズという格付機関が日本の銀行に対する財務格付を発表いたしまして、その後、日本におきましては兵庫銀行とかあるいは木津信用組合の破綻の表面化というふうなことがございまして、こうしたことを契機に、欧米主要銀行に比べまして、日本の銀行が支払う金利について若干プレミアムが拡大する場面があったことは事実でございます。  もっとも、その後はそうしたプレミアムがどんどん拡大している状況ということではないというふうに一応報告は承っておりますけれども、引き続き、そうした状況は私どもとして十分関心を持って注視中というところでございます。  こうした問題につきましては、海外から日本の状況について実態が必ずしも十分正確に認識されていない部分については、この認識の正確な把握をしていただくために十分説明努力をする必要があると思いますけれども、それよりも何よりも重要なことは、日本の金融機関自身が、みずからの問題をみずからの問題として積極的に今後とも処理していく、処理済みの実績ということをどんどん出していくということが、こうした問題を解消に向ける一番基本的に重要なことだというふうに思っております。  日本銀行といたしましては、レンダー・オブ・ザ・ラスト・リゾート機能を持っておりますものですから、マーケットにおきまして不測の事態が起こらないようにいたしますが、いろいろとマーケットでルーマーに基づく不測の事態が生じかねないとき、断固たる対応を適切に行ってまいりたい、こういうふうに思っております。
  57. 草川昭三

    草川委員 当然な御答弁だと思うのでありますが、その次に、大和銀行のニューヨーク支店の不正事件に対する日本銀行としての見解というのをこの際お伺いをしたいと思います。  また、この事件を契機として日本の銀行全般に対する、先ほども答弁がありましたが、信認が一段と低下をする、ジャパン・プレミアムというのが拡大をするおそれはないのかどうか、見通しをお伺いしたいと思います。
  58. 福井俊彦

    ○福井参考人 お答えを申し上げます。  大和銀行に限りませずすべての日本の金融機関に対しまして、日ごろから私どもは、特に最近の新しい金融情勢の展開のもとで、リスク管理体制の強化徹底ということを指導してきたつもりでございますが、大和銀行におきまして今回御指摘のような不正事件が発生した、日本銀行としても大変残念かつ遺憾に思っているところでございます。直ちに同行に厳重注意を促したことは当然でございますが、適切な善後策を講ずるとともに、再発防止のために徹底的な措置を講ずるよう指導を行っていきたいと考えておるところでございます。  大蔵省においても行われておられますが、私どもも十月五日から大和銀行に対する特別考査を開始しておりまして、その結果を見ながら必要な改善措置についてグッドアドバイスをしていきたいというところでございます。  経営面の問題というふうにこの事件を眺めてみますと、大和銀行自身は十分な自己資本と収益力を備えた銀行でございます。かっ多額の含み益も保有している銀行でございまして、今回の損失は非常に大きゅうございましたけれども、大和銀行の体力から見ますと十分吸収可能、つまり同行の経営が基本的に揺らぐ心配はないということでございます。  そういう意味では、本件は大きな事件ではございますが、あくまで個別行の不祥事ということでございます。かつ、市場関係者にその損失負担が波及して及ぶというものでも全くございません。そういう意味で、この事件が邦銀全般の信用低下を招くとか、あるいは海外における邦銀全般の業務に何か支障が生ずる種となるというふうな性格のものではないと認識しているわけでございます。  今後、そうは申しましても、マーケット等の理解の不疎通から、これを契機に邦銀の海外における金融取引に問題が生じないかどうか、引き続き私どもとしても注意深くモニターしていきたい、必要な場合には海外当局とも十分連携をとりながら適切に対処していきたいということでございます。
  59. 草川昭三

    草川委員 まあ日銀としては冷静な対応を求めたい、こういう御意向だと思うのです。それはそれでいいのです。それで大和銀行にも厳しく調査をしている。  ここに西村銀行局長お見えになりますが、西村銀行局長は当然大和に対する監督行政があるのですが、あなたはこの大和に対しても大蔵省へ呼びつければいいじゃないですか。大蔵省へ呼びつけずに、あなたは大和銀行のどこか寮へ行って、そこで弁当を食べて、しかもビールを飲んで話し合いをしたと言っているのですが、そんな態度でこういう厳正な対応ができるのですか。ちょっと余分な質問ですが、答えてください。
  60. 西村吉正

    ○西村政府委員 この問題につきましては、八月の八日に、前日、大和銀行の方から私どもの方に出向いて意見の交換をしたいというお申し出がありましたが、当時、コスモ信用組合の破綻処理の直後のことであり、また木津信用組合、兵庫銀行の処理についても世間の御関心が大変高まっている時期でございました。私の部屋の周辺には報道機関の方が常におられるという状況でございました。  私、そのとき大和銀行のお話の趣旨はまだ存じなかったのでございますが、都市銀行の頭取が私のところへ来られるということは、恐らくジャーナリズムの方々にとっては、例えば合併の問題であるとかあるいは何らかの大きな問題というふうなことで、いろいろと憶測を呼んではいけないと思いまして、別の場所、例えば大蔵省の会議所であるとかホテルであるとかいうことも考えたのでございますが、大和銀行には港区に役員の会議等に使う施設があるということでございましたので、それではそちらの方に出向いてお話を伺いましょうということで、八日は、当日、四時過ぎまで金融制度調査会がございまして、その後そちらに伺いましたのは六時前後だったと思いますが、一時間ほどいろいろな状況について意見をお伺いいたしました。  弁当という件でございますけれども、七時ごろになりましたので、時間も時間ですから、お弁当がとってあるので食べていってくださいということだったので、遠慮なくそのお弁当をいただいて退散した、こういうことでございます。
  61. 草川昭三

    草川委員 要するに甘いんですよ、銀行局の態度は。  これは大蔵大臣に聞きますが、車ほど世界を騒がしている事件に対して、マスコミがおろうとおるまいと大蔵省へ呼びつけりゃいいんですよ。そうでしょう。  私は、この問題について、この予算委員会が始まる前に大蔵省へ行きましたよ。あなたがいなかったからあなたに会わなかっただけだよ。私はあなたの省の審議官のところへ行きましたよ、住専対策の問題もあるから意見を聞きに。だれもいなかったじゃないですか、マスコミなんというのは。だから、そういう弁解をここでしちゃだめなんだよ。私は、こういう質問をするときには必ず周辺を見に行くんだから。がらがらじゃないか。うそ言っちゃだめだよ、そんなことは。もっと厳しくやりなさい、厳しく、こういう問題について。  私は、ここでこんなことを、大きい声を出したくはないけれども、日本の国民が一番心配しているんですよ。銀行というのは一番かたいんでしょう。それで信用しているんでしょう。その銀行がこういうような事件を起こしたら、一番最初に銀行局長は、翌日でもいいから、別に頭取でなくたっていいじゃないですか、専務であろうとだれであろうと、呼びつけて厳重にやるべきですよ。朝早くたっていいじゃないですか。  終わって新聞記者に会いたくないというのは、何かやましいことがあるんですよ。新聞記者が見ておる前で堂々と会って、きょうは厳重に注意した、それでいいじゃないですか。後はコメントなしていいじゃないですか。そういうことなんですよ、我々国民が見ておる目というのは。プロとしてあなたたちは、そんな簡単なものじゃないとおっしゃるかもわからない。しかし、国民の目というのはそういうものなんです。  私はそういうアクションがあってしかるべきだと思うんですが、大蔵大臣と総理、私の言っていることが間違いかどうか、それだけ言ってください。私の言っていることはおかしいと言うなら言うで、言いなさい。
  62. 武村正義

    ○武村国務大臣 堂々とやれというお話はそれなりによくわかるわけでありますが、しかし、局長はむしろ、あの時期、申し上げたようにコスモがオープンになった直後ですが、その後、木津や兵庫銀行という、いつ厳しい状況に立ち至るか、非常に大蔵省、銀行局全体が、私もそうでしたが、日々刻々の情報に張り詰めている時期でありましただけに、大和銀行頭取の問題は、恐らく中身は聞かないで、とにかく御報告したい、相談したいという話があったように聞いていますが、余りよくない話だというふうに恐らく直観したのかもしれません。  それが、常時二十四時間、銀行局長や大蔵大臣の周辺を新聞記者皆さんが見張っているわけではありません、確かに。でも、私もちょいちょい、大臣室へ出入りする方で、あれは何ですかと後から聞かれることがございます。内部の、銀行局長が私の部屋へ来ることでも、あるいは国税庁長官なんかだと余計、異例でありますから、何だと、こういうふうに目を光らすわけでありますだけに、部屋への出入りというのはかなり受ける側も神経を使わざるを得ません。  ましてや金融問題、こういう緊張した状況の中で都市銀行の頭取が来られるということは、特に何か問題がありそうだということを直観しただけに、場所を変えた方がいいという判断をしたのだろうと思います。ですから、むしろ細心にその辺に注意を払ってこういう場所をあえて選んだんだろうと思うのであります。
  63. 草川昭三

    草川委員 私は全くわかりませんね。何でかばうのですか、銀行局長を。これだけの大きな国民関心があるならば、頭取であろうと副頭取であろうと、事情説明に役所へ行くのは当たり前なんですよ、これは。だから私は、大和が再三御説明をしたいというのはあり得る話だと思うのです。ああ、どうぞいらっしゃい、時間の調整をして役所でお会いをしましょう。原則ですよ。それをなぜ遠慮するのですか。なぜ新聞記者が怖いのですか。新聞記者がどういう話があったのかと言ったら、報告を受けたのです、それでいいじゃないですか。何かやましいことがあるのですか。
  64. 武村正義

    ○武村国務大臣 八月八日というのは、まだ初めて非公式に銀行側が大蔵省に足を運んで、告白の手紙が来たという異常な事態をとりあえずまず報告するという時期であります。九月十八日は、正式に銀行みずから全部点検、総括をして、きちっと報告に来た時期です。  おっしゃるように、全部事態を銀行側も把握をして、そしてきちっと大蔵省に伝える場合は堂々と来ればいいと思うのです。銀行みずからが、異常な告白が来て信じかねるという事態で、しかしとりあえず銀行局長報告、相談をしておこうというときでありますだけに、そのことがわっと漏れてしまうことは、やはりむしろ神経を使って当たり前だと私は思うのであります。
  65. 草川昭三

    草川委員 要するに密室の大蔵行政、金融行政をやっているということが今非常によくわかりました。日本の金融界に対してどうも何か問題があるらしいなというふうに我々はひそかにいろいろな情報を聞いておりました。当然金融界の方も、大変な話でございますから、監督官庁にいち早く報告をしたい、当たり前だと思いますね。それを、役所で聞くと変なうわさが立つから困る。全くこれは密室行政じゃないですか。  私はそういうことが今世問から問われていると思うのですよ。そういうのを解明するのが村山内閣じゃなかったのですか。透明性のある行政をやりたいというのが村山さんの基本なんですよ、これは。片一方ではそういうことをやっておることについて、総理、どう思われますか。
  66. 村山富市

    村山内閣総理大臣 その前後の事情というのがちょっとよく詳しくわかりませんから、だから即断はできないのですけれども、それは行政のやっている事務の上で、呼びつけてそしてやる場合もあろうし、それから出向いていって話をする場合もケースによってはあり得るのではないかと思いますけれども、しかしやっている行為が、少なくとも国民から疑念を持たれるような行為があってはならないというのは私は当然のことだと思います。
  67. 草川昭三

    草川委員 私は村山総理の今の答弁は極めて明快だと思いますね。私はそれでいいと思うのです。だから、そんなビールを飲むとか飲まぬとか細かいことは言いませんけれども、きちっとした態度をとって私は進めていただきたい、こう思います。  そこで日銀に、まだ残っておりますので大変申しわけございませんが、いわゆる住専問題に移りたいと思うのですが、この住専問題については、我が国金融界の不良債権問題の象徴として、これは海外からも大変注目をされているわけでございまして、速やかな解決が不可欠だと思います。  だから、年内にもいろいろと、金融制度調査会ですか、審議会の方からも中間報告が出るというようなことも聞いておるわけでございますが、この住専については、受け皿となる機関を新設して処理をするということがちらほら出ております。日本銀行として住専問題をどのように解決をしていこうと考えておみえになるのか、日銀の立場から見解をお伺いしたいと思います。
  68. 福井俊彦

    ○福井参考人 お答えを申し上げます。  住専の問題は、金融機関それ自体の問題の前に、いわゆるノンバンクの問題でございますけれども、御指摘のとおり、この住専の問題は、今内外におきまして日本の不良債権問題のいわば象徴としてとらえられている側面がございまして、私どもとしましても、この問題は慎重かつ非常に適切に対応していかなければならない重要な課題だというふうに考えております。  さはさりながら、住専の問題につきましても、解決の基本は、自己責任原則にのっとって、まずは基本的には住専それ自身、それから住専に関係する金融機関、当事者の話し合いによって解決が図られるべきである、これが基本でございます。  既に、各住専ないし母体行と最大の貸し手でございます農林系統金融機関の間で今後の対応についての議論が開始されているわけでありますが、農林系の住専を除く残りの住専につきましては、住専それ自身及び母体行から既にこれを整理するという方向の方針が打ち出されているところでございます。  しかし、不良債権処理という観点からこの問題を眺めますと、一番大事なことは、この後、住専において生じました損失の負担というものをどういうふうに決めていくかということがかなめでございます。これがしっかり決まりませんと、いわゆる金融システム全体としての問題の処理ということが進みにくいわけでございまして、日本銀行の立場からいたしますと、この損失負担の問題を当事者の話し合いにより、これまでのいきさつはいろいろあると思いますけれども、今後の日本の金融システムよかれという観点から、やはり関係者が歩み寄って、損失負担の問題に早く結論を出していただきたいというのが第一でございます。  御指摘の金融制度調査会の審議経過報告を見ましても、年内に処理策が策定されるよう「強い決意をもって取り組むことが必要」と指摘されておりますところのコアの部分はそういうところにあるんじゃないかというふうに思います。  また別途、同報告書によりますと、ただいま委員御指摘のとおり、特に不良債権等の受け皿となり処理を進める機関というふうなものを設けることについても、これを早急に検討することが望ましいというリコメンデーションが入っております。私どももこれは有益な提言だというふうに思っておりまして、さらに具体的な結論にこれが至るということを期待しているところでございます。
  69. 草川昭三

    草川委員 今、日銀の副総裁の方から、当事者間の話し合いを求める、こういうような希望が出されましたが、これは私この後に問題提起をしたいと思うのですが、そう簡単に話し合いをするというものでもないんです、これは。やはり親銀行が責任を持って処理すればそれだけの話なんです。貸した方は、また後ほどいろいろと説明をいたしますけれども、善意の立場で融資をしておって、さあ焦げつきました、話し合いに、あなたもこのテーブルにいらっしゃい、なかなかそうはまいりませんね、これは。だから、住専処理の受け皿機関に日銀としてもつなぎ融資をしたいというような意向があるようでございますけれども、私は慎重な対応を求めたいと思うのです。  そこで、もう時間がどんどん過ぎていきますので日銀にお伺いをしますが、この解決のために公的資金の時限的な導入を検討するという方向がシステム安定化委員会の中間報告にも出ておるようでございますが、日銀としてはどうお考えか。  そしてさらに、この公的資金の導入に当たっては、私ども国民の立場からいうならば、まずもって不良債権が発生した原因の究明、それから責任の追及を徹底して行うことが私は大前提だと思うのです。これは日銀行政には関係がありませんけれどもね。  不良債権を発生させたいろいろな方々がいるわけですね。そういう連中は、海外に膨大な土地を持ち、別荘を持ち、そして日本の国内では大変なぜいたくな、優雅な暮らしをしているんですよ。不良債権の回収なんというのは全然興味がない、どうせ公的資金でしりぬぐいをするんじゃないの、こういう悪を我々は許すわけにはまいりませんよ、国会というのは。まずそれを徹底的にやらなければいけないのに、日銀もまあまあというような甘い顔をされては、これは私は問題があると思うのです。こういうことを強く申し上げて、今の二問についてのお答えを願いたい、こう思います。
  70. 福井俊彦

    ○福井参考人 お答えを申し上げます。  公的資金導入の問題に関します日本銀行の基本スタンスは決して甘いものではございません。ただいま委員御指摘のとおり、不良債権処理の問題、問題の処理に当たりましては、繰り返し申し上げますけれども、まず各金融機関それ自身の自己責任の問題でありますし、さらに申し上げれば、ただいま御指摘なされましたような方々も含め、当該金融機関に関係する方々がやはり最大限の自己の責任を果たすということが大前提でございます。それを大前提といたしましても、極めて残念なことでございますが、日本の金融システムの現状というのは、問題が余りにも根深く、かつ大きいわけでございます。  したがいまして、私どもがこれを冷静に判断いたします限り、自己責任による処理というのを大前提といたしましても、最終的には、やはりこの破綻処理の最終過程で公的資金を投入する必要性が出てくる可能性というものを全くはルールアウトできない、つまり、全くはその可能性を排除できないという非常に残念な状況が現実なわけでございます。  それで、日本銀行の資金も公的資金の一つでございますが、ただいま私申し上げましたのは、最終的に本当に必要になるのは、より狭い意味の、財政資金という意味での公的資金でございます。  少しお時間をとって恐縮でございますが、日本銀行の資金も公的資金の一つでございまして、既に幾つかの金融機関の破綻処理の過程で、日本銀行の資金供与が特融という形で行われております。今後とも日本銀行としては、厳しい一定の条件のもとに、必要があれば金融システム保全のために日本銀行信用の供与を行っていくというふうに考えておりますけれども一つだけ強く御認識いただきたい点がございまして、日本銀行信用は、基本的には流動性の供給というのが基本的使命でございまして、最終的にロスのカバーに充てられるような信用供与というのは、基本的には日本銀行の使命を超えるものである可能性がございます。  なぜならば、日本銀行信用というのは銀行券の裏づけをなしているものでございますので、その銀行券の裏づけをなしている日本銀行の資産が目減りをしていくということになりますと、日本の通貨そのものに対する信認の基礎が崩れるということでございます。  そういう意味で、公的資金の一つである日本銀行資金につきましては、これは必要やむを得ない場合には一定の厳格な条件のもとに私どもとしても対応いたしますけれども、これはあくまで緊急避難的、かつつなぎ、限定的な対応措置だというふうに御理解いただきたいわけでございます。  したがいまして、金融機関破綻処理の最終過程においてロス処理の必要性というものが出てきた場合には、狭い意味の公的資金、つまり財政資金を用いるフレームワークというのが最終的に用意されなければいけない可能性はやっぱりルールアウトできないということでございます。  日本銀行としては、決して安易にその問題を考えているわけではございませんで、厳しく情勢を認識しながらその必要性を煮詰めていく必要がある、こういうふうに考えております。
  71. 草川昭三

    草川委員 大変長時間ありがとうございました。  確かに副総裁がおっしゃるように、日銀というものの基本的な使命があるわけでありますし、ロスカバーのために安易に我々を利用する、あるいは頼られても困りますよ、こういう趣旨の御発言だと思うので、私は、日本の金融をきちっと守るためにも、日銀の毅然たる態度を求めておきたいというように思います。  以上でございます。どうも御苦労さまでした。  そこで、今もお話が出ております住宅金融専門会社の問題に話を移したいと思います。  そこで、俗に住専、住専ということが言われているわけでございますが、住専という問題がこの国会で話題になりましたのは、私は、これは大変古い、かなり経過があると思うのです。ここ一年や二年の問題ではないのです。  それで、たまたま、これはお伺いをしますが、住専というのは八社ありますけれども、今話題になっておりますのは、住専は七社ですね。じゃ、どこが一つ出ていないかといいますと、いわゆる農林系の協同住宅ローンというのがあるんですね。ここは大変健全なので住専七社、八社なんだけれども七社ということになっているんですが、どういう経過になっておるのか、これは大蔵省銀行局からお答え願いたいと思います。
  72. 西村吉正

    ○西村政府委員 御指摘のように、いわゆる住専は八社ございますので、私ども特に七社を区別して取り扱っておるわけではございませんで、例えば私どもの立入調査等も八社を対象として行っておるわけでございますが、一般的に七社と言われておりますのは、御指摘のように協同住宅ローンを除く会社でございまして、それらについては再建計画が立てられているということから区別をして論じられる場合がある、このように理解をしております。
  73. 草川昭三

    草川委員 もう少しこれは詳しく聞きたいんで、農林省から答弁をしていただきたいと思うんですが、他の七社のように内部はたくさんの不良債権を抱えているわけではないから、協住ローンを外して七社、七社、再建計画という話になっておるんです。その経過について農林省からお伺いしたいと思います。
  74. 堤英隆

    ○堤政府委員 今お答えがございましたように、農協系の協同住宅ローンにつきましては、昭和五十四年八月に設立されたわけでございますけれども、当時としましては、系統農協の住宅資金の貸付業務の補完ということと、それから系統資金の効率的な運用を図っていく、そういう業務運営ということで始まったわけでございます。  で、今御指摘のように、住専の八社のうち協同住宅ローンにつきましてはいわゆる再建計画をつくっていないわけでございますが、これにつきましては、六十三年以降、設立目的に沿いました事業運営を確保するということから、不動産関係業務を縮小していくということと、それから投機的な土地取引等に係ります融資の排除ということで、融資審査基準それから審査体制の改善ということを行ったところでございます。そういうことで業務運営の改善に努めてきたということであります。  ただ、協同住宅ローンにつきましても、今のような状況でございますので、全体的に経営の環境が厳しいという状況はあるというふうに思っております。
  75. 草川昭三

    草川委員 なぜ私がこういうことを聞いたかというのは、私は農林省は偉いと思うんです。農林省所管ではないんですが、まあ農林系なんですが、この協同住宅ローンは、住宅金融専門会社八つあるんですが、ここ一つだけは不動産関係について縮小してきているんですよ、融資を。そして、投機の資本、すなわち地上げ資金なんかは提供していないんです。融資体制が非常に厳格。だから今日は救われているんですよ。いいですか、私は余り役所を褒めるのは嫌いですから非難をしてまいりますが、農林省関係の協住は立派なんですよ。だから農林省は母体行責任を強く追求するんです。  大変口幅ったいんですが、実は協住ローンもそんなに胸を張れたわけじゃないんです。昔は悪かったんです。昭和六十二年の十二月、物価問題に関する特別委員会というのがあります。そこで私は、大変恐縮ですが、この協住ローン、農林中金系の協同住宅ローンのグループ三社、協同住宅ローン、協住不動産サービス、協同ホームについて、最上恒産という会社があり、いわゆる地上げたとかいろいろな話が出ておった当時、これは不適切ではないか、こういう問題提起をしたんです。昭和六十二年、物持で。  そうしたら、農林省はそれを素直に受けていただいて、協住ローンの融資体制を非常に厳しくしていったんです。そのかわりに、地上げブームのときにもうかっていませんよ、ここは。ほかと違いましてもうかっていませんけれども、歯を食いしばって国金の指摘にこたえたんです。だから、住宅金融専門会社八社のうち一社だけは別なんですよ。  だから私が言いたいのは、要するに、国会での議論というのは非常に大切なのですよ。国会で指摘をしたことを素直に行政が反映するならば——この住宅金融専門会社の中に協住ローンも入っちゃっているのですよ、農林省も。だったら、母体行責任なんというのは農林省としてもなかなか発言しづらいのです。農林省が今盛んに母体行責任だということを胸を張って語るのは、口幅ったいのですけれども国会議論を反映をし、不動産融資をきちっとしたから、今日農林省は胸を張れるのです。  だから、私は国会での議論というのを行政は正しく反映すべきだ。我々でもいいころかげんの質問をしているんじゃないのですから、足で歩いでいろいろなことを調べながら言っているのだから、そういうことを正しく受けとめるべきだと思うのですが、その間の経緯、私が言っていることがもし間違いだと、疑い深い人がたくさんいますから、思うといけませんから、農林省か局長、答えてください。
  76. 西村吉正

    ○西村政府委員 個別の金融会社の件でございますので中身にわたって詳しくは申し上げることは差し控えさせていただきますが、当時いろいろな国会での御議論もあり、また、新聞紙上等でもいろいろなことが論じられたという経緯は承知をしております。
  77. 草川昭三

    草川委員 じゃ、本題に戻りまして、この住専問題の解決ということが焦眉の急ということになっていますが、いわゆる再建のためには住専問題の本質と責任の所在というのを明確化するということが私は一番大切だと思うのです。  そこで原点に戻って、住宅金融専門会社設立の経緯と、住宅金融政策上の位置づけということに話を戻すことが私は解決の一つの大きなあり方だと思うのですね。  この設立の経緯の中では、当然のことながら母体行あるいは大蔵省銀行局のいろいろな指導があった、こういう経過があると思うのでございますが、この住専の設立の経緯、これをなるべく詳しく説明をしていただきたいわけでございますが、まず、住宅金融専門会社の監督権限について、絞って私はお伺いをしたいと思うのですが、大蔵省に、どうでしょう、貸金業者と区別をするための回答をする例が間々ありますが、大蔵大臣の直轄指定の金融機関であることは間違いないのでしょう。この点をお伺いします。
  78. 西村吉正

    ○西村政府委員 いわゆる住専と申しますのもノンバンクの一種でございますが、貸金業者と区別をすることがございます。もとは、旧、もともとの出資法に基づいて設立されたものでございましたが、昭和五十八年に貸金業の規制等に関する法律という議員立法がございまして、貸金業者、特に消費者金融に関する規制が厳しくなりました折に、住専につきましては、そのようないわゆる過酷な取り立て等の問題がないということで、もとの古い出資法の対象のまま残った、こういうことでございます。
  79. 草川昭三

    草川委員 貸金業法の制定は昭和五十八年なんですよ。だから、その後の経過については理屈も成り立つと思うのですが、問題は昭和四十八年のところからスタートをしているわけでございますから、そこは多少無理がある答弁ではないかと思いますね。その点は重要な点だと思いますが、昭和四十八年の金融制度調査会、それから住宅金融部会での審議を踏まえまして、それで住宅金融専門会社の育成が望ましい、いわば金融制度上認知をされた会社なんだと思うのですが、その点についての答弁を求めたいと思います。
  80. 西村吉正

    ○西村政府委員 いわゆる住専が発足いたしましたのは、昭和四十六年の六月に日本住宅金融株式会社が設立されました。その後、今御指摘の昭和四十八年、金融制度調査会の答申がございまして、その答申では個人住宅ローンの問題等が論じられたわけですが、当時は必ずしも一般の銀行が個人の住宅に対する融資に積極的ではなかった。他方、個人住宅の建設というものが求められているという時期でございましたので、物的担保に主眼を置いた金融を行う住宅金融専門会社が育つことが望ましいとしたところでございます。当時、既に何社か住専が設立されておったわけでございますが、育つことが望ましいということで、その後も何社か設立されたということでございます。  ただ、これはあくまで民間部門の中の話でございまして、住宅公庫のような政策金融機関として位置づけているものではございません。また、その答申におきましては、「住専については利用者保護の観点からは規制する必要性は薄く、どのような住宅金融専門機関が我が国の実情に適合しているかについては、当分の間見守ることが適当」だ、そのような御指摘もございます。
  81. 草川昭三

    草川委員 最後の一言はちょっと余分な答弁だと思うのですが、今おっしゃいましたように、四十八年の金融制度調査会住宅金融部会での答申があるわけですね。そして、そこでは育成が望ましいとされた。いわゆる金融制度上認知をされた会社だと私は思うのです。  住専というのは、いろいろな民間機関だとか言いますけれども、金融機関類似の、特別扱いをされてきたわけでありますからこそ、いわゆる抵当証券ですか、そういうものの発行も認められているわけでありますですから、四十八年五月の大蔵大臣の告示というのがあるのですけれども、この告示というのはどういうところから出てきたのか。いわゆる大蔵省直轄会社でしょう。大蔵省直轄会社に指定されたわけですよ。さらに昭和四十九年九月に、私が今申し上げた住宅抵当証券の発行も認められ、特別な扱いでございますから単なる民間会社とは違うのですよ。この特別な扱いをしておるという事実を銀行局はお認めになるでしょうか。
  82. 西村吉正

    ○西村政府委員 先ほど申し上げましたように、いわゆる住専は、改正前の出資法の規定に基づきまして、特段の業務規制を伴わない届け出制の会社として設立されているところでございますけれども、そのような旧出資法上の取り扱いで、都道府県知事に立入調査等について委任をできるという規定がございます。この住専につきましては、あえて都道府県知事に委任をするということなく大蔵省が直接所管をしておる、こういうことでございます。
  83. 草川昭三

    草川委員 今の答弁は貸金業法制定のことについても触れられましたが、これは昭和五十八年以降ですよね。問題は、四十八年の指定を受けている住専にそれを適用しようというのは、私は、若干無理がある。だから、明らかに一般ノンバンクとは異なる扱いを受けて育ってきたということを私は主張をしたいわけです。それはどう思われますか。ノンバンクと今でも一緒だと思っておみえになりますか。
  84. 西村吉正

    ○西村政府委員 先ほどから御説明いたしておりますとおり、いわゆる貸金業規制法の対象あるいはそれの前の段階での取り扱いにおきまして、住専が多少異なる取り扱いを受けておりますのは、その性格が個人住宅ローンというような、当時の公共性のある性格を有していたというようなことも反映されているかと存じております。
  85. 草川昭三

    草川委員 じゃ、次に移りましょう。  住専の金融制度上の取り扱い、いろいろと意見の違いがあるわけでございますが、少なくとも大蔵省は、大蔵省の直轄にしたわけですね、この住専の取り扱い。さまざまな行政上の取り扱いをしてきたことは事実なんです。なぜ例の総量規制の際に住専というものを規制対象から外したんでしょうか。  また、この業法に基づくような監督権がないので規制までできなかった、あるいはまた考えなかったとしても、住専会社に対する四半期報告を求めておるわけでありますから、使途別の融資状況を知り得た大蔵省はもっと有効な指導ができたのではないか、今日のような大量の不良債権を抱え込むようなことはなかったのではないか、これが私の言いたいところですが、その点どうですか。
  86. 西村吉正

    ○西村政府委員 平成二年の三月二十七日に発せられましたいわゆる総量規制通達でございますが、これは極めて厳しい内容のものでございますので、当時もそういうものを出すことについていろいろな議論がございました。  で、私どもといたしましては、こういう厳しい内容のものでございますので、免許業種である金融機関、すなわち預金を取り扱っておるような免許業種である金融機関に限っでこのような取り扱いをすることが適当である、したがって、免許業種でない、先ほど届け出と申しましたが、事後の届け出で済む、住専を含む、あるいは登録制の貸金業者につきましては、総量規制の対象とはされていない、こういうことでございます。  なお、住宅金融の四半期報告を受けているという点は御指摘のとおりでございまして、私どももそれなりの事情の把握をしておったところでございますが、ただ、いわゆる住専につきましては、改正前の出資法に基づく届け出制の会社でございまして、当局として業務の改善命令や停止等にわたる権限を有するものではございません。この点では銀行や信用金庫と違うわけでございます。  行政としては、このように、住専に対し、一般の金融機関とは違う行政の対象になっているということでございましたので、そこまでは行わなかったということでございますけれども、今回の金制の審議経過報告にもございますように、住専の個人住宅ローンから事業者向け融資への急激な傾斜があったという事実につきましては、謙虚に受けとめるべきものと考えておるところでございます。
  87. 草川昭三

    草川委員 じゃ、もう一回局長にお尋ねをしますが、総量規制の際に住専を規制対象から外したということについて、過ちであったという反省を今持ってみえるのかどうか、お伺いしたいと思うのです。
  88. 西村吉正

    ○西村政府委員 当時もそうでございましたが、今現在、いわゆる総量規制というものをそもそもすべきであったかどうかというような御議論をされる方もございます。私どもとして、当時、金融機関の行動、ビヘービアからして、あるいは地価の高騰という状況からして総量規制というものを課することはやむを得なかった措置だと考えておりますが、そのことは逆に申し上げますと、総量規制をするといたしましても、その対象については十分慎重に対処すべきものであったということを意味するものと思います。  そういう意味におきまして、先ほど申し上げましたように、いわゆるノンバンク、住専も含めましていわゆるノンバンク、免許業種でないノンバンクにつきまして総量規制の対象にしなかったということは、私どもの判断として適切であったと思っております。
  89. 草川昭三

    草川委員 いつの間にか住専とノンバンクを一緒にして答弁していますね。私どもは、ノンバンクと住専とは違いますよ、住専は大蔵省直轄ですよという前提質問しているんですよ。ところが、西村さんはいつの間にかノンバンク扱いに住専をしていますが、私はそうではない。今も答弁がありましたように、四半期ごとの報告を受けておるんですから知っているはずですよ、大蔵省は。知らないとは言わせぬですよ。  ですから、片一方だけ蛇口をあけておいたわけでしょう。だから、蛇口をあけておいたわけですから、当時は、昭和六十二年の十月は政府も緊急土地対策要綱を閣議決定していますし、国会でも土地特があったわけですよ。それで、そういうところにお金を出すべきではない、締めなきゃいけないよという議論があった。そのときに、住専だけは蛇口が開いていたわけですよ。だから、そこへ殺到したわけでしょう。(発言する者あり)こういう言い方は、この方は、今賢明だという不規則発言がありますが、それは賢明なんですか。賢明だと思ってみえるんですか。お伺いしたいと思うんです。
  90. 西村吉正

    ○西村政府委員 いわゆる住専も、預金を受け入れていない金融貸出機関という意味ではノンバンクと同じ性格のものと存じますが、しかし、先ほど申しましたような法律的な背景からいいますと、ノンバンクよりもさらに規制の緩やかな対象でございます。大蔵省が監督しておるということとは別の意味におきまして、規制の対象としては緩やかであるということも言えると申し上げられると思います。  いずれにしましても、当時から、この預金を受け入れていない広義のノンバンクというものの融資を規制するかしないか、特に土地融資を規制するかしないかということは、国会においてもたびたび御議論の対象になり、私どももいろいろとそのような御議論に参画させていただいた経験がございます。しかし、当時の御議論としては、やはりその点については余り規制を強化すべきでないというような御議論もございまして、そこは、免許業種である銀行と差をつけた取り扱いをすべきであるというような御意見が強かったように記憶をしております。
  91. 草川昭三

    草川委員 それはおかしい議論じゃないですか。もとは締める、貸し出しを。ところが、住専というところの蛇口はあけますよ、そういう意見国会でありましたか、そのときに。私はないと思うんです。そのときは、土地が高騰したんだから不動産の融資は規制をしなさい、私はそうだと思い込んでおりましたね。まさかそんなところに蛇口があいているとは思わなかった。そんな意見、だれがどういうようなことを言いました。今、西村局長が言ったように、厳しく規制をすべきだという反面、それとはまた別の意見がある。だれがどういうことを言いましたか、ちょっと教えていただきたいと思うんです。
  92. 西村吉正

    ○西村政府委員 当時出資法の改正論議というのがございました。これは国会でもあったと思いますし、新聞あるいはいろんなところで金融機関の不動産融資ということに関連してございました。そういう中におきまして、ノンバンクの不動産融資というものを何らかの規制の対象にすべきであるか、端的に申しますと貸金業法の改正論議ということでございましたが、当時いろいろな場においてその点については賛否両論があったように記憶をしております。
  93. 草川昭三

    草川委員 なかなか鍾布局長苦しい答弁をしていますが、いずれにしても住専の貸し出しがその規制を境に急増するわけですよ。住専の貸し出しがふえるわけですよ。ここが問題なんですね。それは大蔵省は知っているはずですよ、四半期ごとの報告を求めているわけですから。だから、一般の都市銀行は土地高騰のためにブレーキをかけましょう、これも当然ですよ。国会でもそういう議論があったのですから。  ところが、肝心の住宅金融専門会社の方だけは、いわゆる蛇口を広げたまま見て見ぬふりをした。総量規制の際の住専に対する指導は極めておかしいのですよ。一方では大変だよ、締めなさいよ。一方では知らぬ顔。ここを今解明してもらいたいのですよ。ここを解明しない限りは、公的資金の融資なんというのは我々はオーケーと言いませんよ。そこはどうですか。
  94. 西村吉正

    ○西村政府委員 住専八社合計の融資残高の推移を見てみますと、総量規制が発せられる前から相当な急増をいたしておりまして、六十年代に入りましてからかなり急テンポの増加を示しているところでございます。もちろん総量規制後もその状況は続いておりますけれども、必ずしも住専の融資の拡大というものが総量規制を境にして大きな変化をしたというふうには理解をしておりません。
  95. 草川昭三

    草川委員 それはおかしいのですよ。こちらの都市銀行の方の融資の蛇口を締めたから住専の方に移ったんではないかという私の質問に対して、そうではない、笑は都市銀行の方の蛇口を締める以前から住専の方の貸し出しはふえていますよ、こういうことを言っているのでしょう、今の答弁の要旨は。  それだったら、各都銀がつくりましたところの住宅金融七社に対する融資表というのを国会に全部一遍出してください。第一住宅金融から日本住宅金融から地銀生保住宅ローン、住宅ローンサービス、日本ハウジングローン、総合住金、住総、七社合計についてどういう融資状況になっているか、これを年次ごとに一回国会に提出してください。直ちにとは言いません、これは。そういう数字ですから。直ちにとは言いませんが、それをきちっと一回出してください。  そして、ここからが問題なんですけれども、それを境に、いわゆる信用農業協同組合から住専に対する融資というのはがあっとふえるのですよ、いずれにしても。土地国会というのがありました、あの土地規制をしなきゃいけないという国会のときに、本来ならば住専というのはもう歴史的な意義は終わったんだ。なぜならば、その以前に住宅金融専門会社が庶民に対する一般の住宅ローンをやったわけですが、親銀行がやってきてそれを奪ったわけでしょう。親銀行が、自分が子供の仕事を奪ったのですよ。ここは明確にしてもらわなければ困るのですよ。  今、西村銀行局長答弁は、実は土地規制のとき以前から住専の融資というのはあったんですよということを言っているのですが、わかりやすく言うならば、あの土地ブームがあった、住宅ブームがあったときに、既に親銀行は子供の住専の仕事を奪ったのですよ。だから、そのときに本来の住専の役割というのは終わったのですよ。住専の役割は終わったから、もう都市銀行が住宅ローンをおやりなさい、住専はこの際やめましょうと本来は言うべきなんです。  ところが、なぜ言えなかったのか。大蔵省の天下りがみんな入っていたのでしょう、そのときには。大変高い七千万、八千万という退職金をもらう、大変いい天下り先だったんですよ。だからやらしたんじゃないですか。本来ならば、個人でいうならば、大蔵省の銀行局はこれはまずいぞと、これは将来展望があるんですから。日本経済がどんどん右肩上がりにいくというわけじゃないんだ、だったらもうこの際、親銀行に住宅ローンをさせ、住専は閉鎖しようじゃないか、やめさせようじゃないかということをなぜこのときに大蔵省は決めなかったのということを言いたいわけです。  大蔵大臣どうですか。こういう意見は間違っていますか。私の問題提起は政治家としてどう思われますか。別にこれは大蔵大臣の責任とは言いませんから。そうでしょう。
  96. 武村正義

    ○武村国務大臣 いろいろな経緯がありますから私自身もレクチャーを受けながら頭を整理しているところでありますが、結果から見て、草川委員が今おっしゃっているような、何といいますか、筋道といいますか考え方をとられるのは一面わからないではないわけでありますが、当時の、そのときそのときの状況を振り返ってみますと、国会論議だけではありません、マスコミの論調もございます。  そういう中で大蔵省も何回も通達は出してきているわけですが、特に今御指摘の総量規制通達が最も目立った、しかも有効な措置であったわけでありますが、銀行局長が説明申し上げたように、広い意味のノンバンクといいますか、届け出制で、確かに四半期ごとの報告は徴しておりますものの、業務改善命令とか停止命令とか役員の罷免権とか、そういう一般的な金融機関に対する指導監督の権限は持たない会社であります。  それは、もちろん本質的には預金というものはないというところに性格の違いがあるわけでございますが、そういう中で、銀行行政としては、いわゆる直接指導監督している金融機関に限って通達を発出したというのは、当時の大蔵省が法律に基づく行政の立場としてはそういう範囲になったということは、私はそれなりに理解しなければならない。しかし、住専という分野があって、何もそこを穴をあけようと意図したわけでないにしても、結果的にそこへ融資がやや偏って、そして結果としてこういう大きな不良債権を生み出したというふうに私は認識をいたします。
  97. 草川昭三

    草川委員 その結果が問題になっておるからこそ今国会議論しているのですよ。その結果が今問題になっているのですから、そこへ公的資金を入れようという是非が今問われているのですから。  だから私は、これは大蔵の歴代の銀行行政の大変な失敗であった、もう失敗は失敗で早く認める、そして不良債権をどうしたらいいのか、そして大変な融資を求めた信用農業協同組合の方々に元本は返す、そして、では全体の日本の金融政策はどうあるべきだという、こういうことを考えるべきだと思うのですが、その点はどうですか。
  98. 武村正義

    ○武村国務大臣 局長答弁にもございましたように、また金融制度調査会の報告の文言にもあるわけでございますが、この総量規制の通達の後、報告を受けながらいわゆる住専の不動産融資がまだ続いているという状況に対して問題意識を十分持っていなかったと言われるならば、その点は率直に認めてもいいし、大蔵省としても反省点であるというふうに思っております。  ただ、事は、何か大蔵省がすべて物事をやっていて、住専を経営しているかのごとくにも聞こえるわけでありますが、基本は、きのうも申し上げたように住専という民間会社の問題なんです。そこには、母体行という日本の数多くの銀行が堂々と融資をしている、系統系も融資をされているという、いわば民間の問題が基本なんです。それに対して行政がどういうかかわりを持ち、責任を感ずるかという点ですから、何か大蔵省直轄の住専というわけではないわけで……(発言する者あり)いやいや、そこは誤解のないように願いたいと思うのです。やはりあくまでもそういう意味の責任は住専自身にあるし、住専を設立した母体行にあるし、そこへこの不良債権については、それぞれ組織的に銀行なり系統系もきちっと役員会で議論をし、承認をし、大きな融資をされたそれぞれの機関にあるわけでありまして、そのことに行政がどこまでかかわっていたのか、そのかかわりにおいてどういう責任があるかというふうに整理しながら議論を詰めていく必要があると思います。  しかし、結果としては大変大きな不良債権の額でありますし、またロスが大変大きなウエートを占めておりますだけに、このことが日本の金融システムにとっても大変重大な問題でありますし、また、この時期の日本の経済の動きにとって解決しなければならない喫緊の課題であるという認識を持ちながら、私どもはこの問題に真正面から取り組まさせていただきたいと思っている次第であります。
  99. 草川昭三

    草川委員 真正面から取り組むなら今の言葉は撤回してくださいよ。大蔵省の責任、責任と言われるけれども、事は民間会社だと言って今逃げているのですよ。(発言する者あり)いやいや、それは、経営しているのは民間だけれども、指導しているのは大蔵省ですよ。四半期ごとの報告を求めているのですよ。現に大蔵省の幹部が会長だとか社長に天下りしているのですよ。こういう事実は認めるでしょう。そして、住専の景気が悪くなったらどんどん引き揚げていくじゃないですか、大蔵省の天下りは。今、会長一人、それからどこか社長一人かな。それまでは全部いたんだよ。どういうことなんですか、これは。今この段階になって責任を転嫁する。船が沈没するときにネズミが逃げる、そういうことなんですよ。反省を持っていませんか。  私は早くそのときに、これはもう総量規制のときに、住専の役割は終わった、もう都市銀行で住宅ローンをやりなさいと言っておけば今日のようなことにならないのですよ。その後一体何をやりましたか、この住宅金融専門会社に対する親銀行の扱いというのは。親銀行の出資をどんどん引き揚げていき、そして全国の信用農協に金を融通させたじゃないですか。そういう実態をどのように評価するのか。  全国の信用農業協同組合が全国の七つの住専にどのようなお金を融資をしたか、一覧表を一回出してください、ここへ。大蔵省に求めます。
  100. 西村吉正

    ○西村政府委員 住専八社に対します貸し付けをいたしております金融機関の中で、今御指摘の農林系の金融機関の融資額は、むしろ総量規制を境にというよりももう少し前から増加をしておりまして、六十年代に入りましてしばらくしてからかなりの増加を示し始めておるわけでございますが、御指摘のように、総量規制以後さらにその傾向が顕著になった点もございます。  個々の会社の貸し付け状況ということにつきましては、それぞれの民間会社のデータでございますので、どこまで資料を提出できるか検討をさせていただきたいと存じます。
  101. 草川昭三

    草川委員 きょうは、資料請求は全国の信用農業協同組合の住宅金融専門会社七社に対する融資残高表だけではありません。いわゆる住専の不良債権がなぜ発生をしたかという経過と、そして具体的な金額と、そして現状はどうなっているかということを、大蔵省銀行局は立入調査をしておるわけですかもその数字を持っているのですよ。その数字をこの際この国会に提出をしていただきたい、これをまず決めていただきたいと思います。
  102. 西村吉正

    ○西村政府委員 ただいま調査の結果を取りまとめておるところでございますが、もともと調査そのものは公表を前提としたものではございませんけれども、どこまでそのような結果をお示しすることができるか検討をさせていただきたいと存じます。
  103. 草川昭三

    草川委員 提出をするということに理解をしていいですか、今の答弁は。我々は、どこまでとか、そんなのんびりとした状況じゃないんですよ。年末までに、年内に金融システム小委員会ですか、そこで公的資金の導入を議論すると言っているんでしょう。国会でこの問題を議論しているのはきのうが初めてじゃないですか。本来ならば、この国会にこういう状況でございますという現状報告すべきですよ。不良債権がどうなっているか、発生をしたのはどうなのか、どの住宅金融専門会社はこれだけ持っておる、その原因は何かということぐらいは私は出せると思うのですが、それは約束できるのかできぬのか、もう少し踏み込んだ答弁を求めたいと思います。
  104. 西村吉正

    ○西村政府委員 調査そのものは公表を前提にしてなされているものではございませんが、いろいろな問題の検討をしていただく上で、どのようなものを提出できるかということは検討をさせていただきたいと存じます。
  105. 草川昭三

    草川委員 検討のための検討というような答弁はもうだめですよ、事ここに至っては。  それで、私は非常にけしからぬといって腹を立てておりますのは、私は今この手元に、北海道から沖縄までの各都道府県のいわゆる信用農業協同組合の、日本住宅金融、第一住宅金融、地銀生保住宅ローン、住宅ローンサービス、日本ハウジンクローン、総合住金、住総、七社に各都道府県の信用農業協同組合が融資をした一覧表を持っているのですよ。これは、三年前のこの国会のときにも一部私はこれを使いました。その後、担当の農水省の方からは特に私の資料について否定的な意見が出ておりませんので、これはまず、私の提出をした資料は九二年の六月のいわゆる融資残高表でございますが、ほぼこれは間違いがないものだと私は思っております。  この各都道府県別の融資の金額の実態を見ますと、ある県はほとんどこの七社に対して同額の融資をしている場合もある。ある都道府県の信連については、若干の差があるけれども、いわゆるこのシンジケートというのですか、話し合いで振り分けをしているんだ、融資を。ところが、住宅金融専門会社の各支店を私調べてきたんですよ。そしたら、全国でありますから、全国に住専の支店なんというのはないんですよ。住専の支店なんというのは、東京とか大阪とか限られているんです。支店のないところにもほぼ同一金額が融資をされている、信用農業協同組合は。  そんなばかなことないでしょう、普通の融資は。少なくとも都銀が直接来て、都銀の支店長が来て、住専に融資をしていただきたい、話し合いをしている。都銀が保証するから、後ろには大蔵省がいるから、こういうことで全国の信用農業協同組合というのは融資をしているんですよ。それでなければ、今皆さんにはお示しをしませんけれども、こんなきれいに分けた融資があるわけがないんです。結局、私が一言で言いたいのは、だまされたんですよ、全国の信用農業協同組合は。  私は、ずうっとこの委員会で農協批判をやってきました。農協は肥大化した、けしからぬということをずうっとやってきましたから、農協の方々は私を支持いたしません。しかし、多くの農民の方々は、私が主張するような点については非常に喜んでくれて、これからの新しい農業経営は、草川君、君の言うようなことを我々は期待したいと言ってくれるから、私は、あえてきょうは住専の問題については農協が犠牲者だと言いたいんですよ。信用農業協同組合が犠牲者だと言うんですよ。こんなばかなことを認めて、公的資金、ふざけるんじゃないよと私は言いたいんです。それで、公的資金とは何ぞやとこう聞いたら、公的関与だとこう言うんでしょう、文言は。公的関与だという言い方もこれはおかしいんですよ。  しかも私が今申し上げようとしておるのは、不良債権がいわゆる肩がわりをされつつあるわけですよ。本来の責任を持たなければいけない母体行が責任を持つべき融資案件を、全国の信用農業協同組合は、調査能力もない、各都道府県だから、住専の支店もない、しかし親銀行が来るからそれを信用して融資をした。肩がわりをされたんです。トランプでいえば、ばば抜きが信連なんです。そして、大騒ぎになったら公的資金の関与だ、公的資金の問題だ、これはどう考えたって理屈に合わぬじゃないですか。  私はあえて、善良な、信用農業協同組合というものを信用し、農協というものを信用してお金を預金をした農民の方々の立場に立ってこの問題を提起しているんですよ。その点はどう思われますか。この点について、農林大臣の見解を承りたいと思います。
  106. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 お答えいたします。  この住専問題につきましては、金融システムの安定、景気の回復のためにこれは一刻も早く解決しなければいけないものである、こういうことで、今当事者に一生懸命話し合いを進めてもらっているところでございます。  先ほど来草川委員から御指摘ありましたように、住専は金融機関各業態が共同で出資、設立した金融子会社であり、また、母体行は経営者、経営幹部を派遣し、業務面でも深く関与していたという住専の設立の経緯及び性格、また、母体行が住専との業務分野を調整しないまま、母体行そのものが住宅ローンに入り込んできて、住専はリスクの多い不動産業の方に推移をしていったという住専経営破綻の原因、それから、再建に当たっては母体行が責任を持って対応するとした再建計画策定時の経緯、こういういろいろな問題を考えますと、先ほど委員も御指摘ありましたとおり、本問題の解決には母体行がぎりぎりの責任を負うべきものである、こう考えております。  また、一部に、農協系統の経営問題を理由に系統に公的資金、公的関与を導入して本問題の解決を図るべきなどの意見がありますけれども、今申し上げたように、住専の性格とか経緯から考えますと、これは安易な議論で、筋違いのものである、私どもはそう考えております。現在当事者間の話し合いが行われているわけですけれども、住専問題の解決には関係者が、母体行がぎりぎりの責任を負うべきだというこれまでの経緯等を十分踏まえまして、経営のための努力を行うべきであると思っております。  いずれにしましても、農協系統信用事業の健全な運営にいささかも支障が生ずることのないように、これを基本として対応してまいりたい、こう考えております。
  107. 草川昭三

    草川委員 今農林大臣答弁になりましたが、一部で、大変乱けしからぬ話があると思うんですが、ことしの二月だったか三月に農業協同組合合併促進か何かの法律改正案が出たんですよ。これは御存じのとおりだと思うんです。  それで、それはどういう法律がといいますと、農業協同組合の合併を今促進していますね。促進に当たって、個々の農業協同組合が抱えているところの不良債権を、どのようにこれを吸収するか、受け皿機関をつくろうではないか、こういう内容なんですね、この法律の。その受け皿機関、例えばAとBという農業協同組合を合併する、ところがBというところは不良債権を抱えている、その不良債権をどのように受け入れをしたらいいかという受け皿機関が、ことしの二月か三月にできましたこの農業協同組合合併促進に関する改正案なんですよ。  そこへ公的資金を入れようという今動きがあるんですが、これは筋違いな話なんです、今の農林大臣じゃないけれども。そうではなくて、そのときの法律は、その受け皿機関の運営についていろいろと配慮をする、公的資金の導入なんて全然書いてないんですよ。そこは農林大臣、ひとつきちっと、今答弁にもありますが、これは農業協同組合の局長からも答弁を求めたいと思うんですが、そこはひとつきちっと線を引いて、そういう法律は、今日の住専の受け入れのためにことしの農業協同組合合併促進に関する改正案を我々は認めたんではないんですから、いま一度ここで明確に答弁をしていただきたい、こう思います。
  108. 堤英隆

    ○堤政府委員 住専の問題に関しましての系統への公的資金の導入の問題につきましての当方の考え方は、今大臣から申し上げたところでございまして、合併に伴います今おっしゃいましたようなことについては、私どもとしては考えておりません。
  109. 草川昭三

    草川委員 そこだけは明確にしていきませんと、私はすりかえの議論になると思いますので、厳重な対応をしていただきたいと思います。  そもそも、この住専に対する公的資金の導入というのは、かなり古くから実は議会で問題になっているんですよ。  これは、私個人のことを言いますと、平成五年の二月の五日の本予算委員会で、公的資金の導入がいろいろとあるけれども大臣の見解いかん、そのときは総理大臣は宮澤さんなんです。当時の林大蔵大臣は、「公的資金の導入が求められるべきものではないんだろう、」やはり民間の基本原則でという答弁があります。当時の宮澤内閣総理大臣は、これは「かなり厳しい自己責任になることは避けられないと思いますが、」国民の皆様に迷惑をかけるようなことはないと実は言っているんですね。こういう歴史があるんですよ。  それで、私はそういうことを頭の中に置きながら、ことし実は村山総理大臣に、春の予算委員会で、住専問題は重要だが、どうですかと質問したんです。そしたら村山総理大臣は、そのときには、いや、実は住専についてはまだ承知をしていないというお話がありました。だから私は、あえてそれは深追いをしない。だけれども、事態はこんなことにとうとう来ちゃったんですよ。これは私は、政府としても重要な過去の歴史ということを見ながら対応を立てていただきたいと思うわけです。  それで、武村大蔵大臣は六月二日の記者会見で、不良債権処理について公的資金導入の意向、公的というのは認めたという意味で、肯定発言をされているわけです。私はそういう意味で、この二月の予算委員会でもこの問題を取り上げたときに、大蔵大臣は、東京協和、安全信用の議論があったんですが、その後にその救済スキームを住専に広げる考え方はないという答弁をされてみえるんです、私に対して武村さんは。  それで、春には公的資金の導入だとか救済スキームを拡大する気はないといって答弁をされていたにもかかわらず、ここになって急にわあっと出だしたんでしょう。ですから、六月には少なくとも公的資金の導入について認めておいて何もしないから、あなたは海外からも批判を受けたんですよ、ワースト何とかという形で。  だから、歴史からいいますと、この国会では、少なくとも公には政府側は公的資金の導入をしないというのは一貫して流れているのです。ところが、国会が終わると、武村さんは六月には、公的資金の導入あり得るというようなことを言い、それから金融制度調査会の方では一方的にわあっと話が進んでいくのです。だから、国民の立場に立ってみれば、不良債権を発生させるだけさせておいて、ツケだけは国民に回ってくるのがおかしいじゃないか、こういう話になるわけです。  日銀の副総裁は、そうは言うけれども、日本全体の金融システムを守るためには限定的な、というような発言がありましたが、それには前提があるんですよ。これはきちっとしていただかないと、責任だけはきちっとしていかないと、公的資金の導入については我々は認めるわけにはまいりません。  しかも、先ほど言ったように、問題は個々の農業協同組合なんだろう、農協が悪ければそこに資金を出せばいいじゃないか、こんなのは暴論ですよ、それは。だまされたんですから、農協の方は。それで、だましておいて貸し手責任と、こう言うんでしょう。これまた筋が通らぬ話なんです。全国の農民はどう思いますか、それは。銀行というのは一番かたいところだと思っているんでしょう。ところが、さまざまな不祥事が出てくる。そして、信用農業協同組合にお金を預けた、どうもそれも何かぎすぎすしているらしい、住専というのは何か知らないけれども、という心配を持っているんですよ。だから私は、そういう意味で、不良債権の問題がどのように発生したのか、だれの責任かというのを徹底的に究明をしていただきたいと思うのです。  同時に、なぜ住宅金融専門会社がかつて親銀行であるところの都市銀行が融資をしていたような物件を肩がわりをさせられたのかということについて、物すごく今でも疑問に思っているのですよ。ある物件については、例えば十億なら十億という不動産について、五億親銀行が融資をしている、だからあとの五億円は住宅金融専門会社に振り分けるわけですよ。住専の役員というのは現実には全部都市銀行の天下りですから、親会社の意見を聞いて融資をする。融資をしたら、半年たち十カ月たっと、親銀行の融資が引き揚げられていくのですよ。親銀行の融資が引き揚げられて、いわゆる不良債権だけが残るのですよ。こういう現状を一体見過ごしていいのですか。金融機関における優越的な地位の乱用だと私は思うのですが、金融機関における優越地位の問題はどういうのが具体的か、この際、公取の意見を聞きたいと思うのです。
  110. 大熊まさよ

    ○大熊政府委員 お答えいたします。  独占禁止法で禁止しております「不公正な取引方法」の行為類型に優越的地位の乱用行為というのがございますが、これは、「自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に、」相手方に不利益を与えることを言うものであります。金融機関がその取引上の優越した地位を利用して、例えば融資先に対して貸付金の一部を預金することを条件に融資するというようなことが不公正な取引方法として独禁法上問題となるおそれがございます。
  111. 草川昭三

    草川委員 だから、不公正な取引方法としてもおそれありと、こういう答弁でございますが、もう一問公取にお伺いをしますが、これは一般論ということを前提にします。  一般論として、金融機関が融資先の金融機関に対し、自己が指定する物件や、既にみずからが融資している物件、私が先ほど言ったようなことですが、これに融資をするように働きかけを行うことは独禁法上問題になるのかどうか、お伺いをしたいと思います。
  112. 大熊まさよ

    ○大熊政府委員 一般論として言えば、金融機関が融資先の金融機関に対して融資物件を紹介するということは独禁法上問題にならないというふうに考えますが、融資先の金融機関に対して優越的な地位にある金融機関が、そのような地位を利用しまして融資先金融機関に対し自己の指定する顧客への融資を強制し、それによって不当な不利益を与えるというような場合には独占禁止法上問題となるおそれがあるというふうに考えます。  なお、個別の点につきましては、当事者間の取引関係ですとか、強制があったかどうかというような具体的な事情を考慮する必要がございますので、個別の問題についてはお答えできかねます。
  113. 草川昭三

    草川委員 それは結構なんです。一般論で私もお伺いをしておりますが、しかし、現実には親銀行から住専に対する、重役というのですか、社長が全部入っておるわけですよ。時には大蔵省銀行局も入っている。  それで、いろいろな融資案件があります。小さな商売と違うわけですから、不動産ですからかなり大きい物件。しかし、ほとんど親銀行の紹介の場合はフリーパスでいくものです。逆に、総量規制を大蔵省はやったのですけれども、住専というところだけ意図的にいわゆるバルブをあけておいたのではないか、そこへ融資案件を紹介したんじゃないか。それで融資をした。だれが損をしたかといえば信用農業協同組合です。全国のお百姓さんが損をするように向けたのではないか。もしそうだとすれば、これは極めて犯罪行為だと思うのです、私は。もう許せぬと思うのですよ、これは。  問題は、そういう視点で私は大蔵行政をやってもらいたいし、後で質問しますが、総理大臣、このことについてはきちっとした答弁を求めたいと思います。  もう一つ。これは法務省の刑事局にお伺いをいたしますが、いわゆる住宅金融専門会社の不良債権問題、これが一番問題になっているのですが、銀行等の金融機関が事前に重要な融資関係資料を焼却するなど、これを滅失、燃してしまうというような行為はどのような犯罪に当たるのか、法務当局に聞きたいのです。今、大蔵省の銀行局が調査に入った、やばいからといって書類を焼却しているところがあるんですよ。こういう具体的なことを言えば切りがないんです、これは。その点について法務省の見解を求めたいと思います。
  114. 則定衛

    ○則定政府委員 あくまでも一般論ということでお答えさせていただきますが、その文書の性格、性質等によりまして幾つかの罪名が考えられるかと思いますが、例えば、その文書が権利または義務に関する他人の文書ということでありますと、私用文書等の毀棄罪、これは刑法の二百五十九条でございます。今のような性格の文書でなければ、その他の文書ということでございますけれども、これを隠匿、毅棄したということになりますと、刑法二百六十一条の器物損壊罪に当たる場合もありましょう。また、その文書が他人の刑事事件に関する証拠であるという場合ですと、刑法百四条の証拠隠滅罪等が考えられるわけでございます。  いずれにいたしましても、具体的なケースにつきましては、証拠に照らして判断するということになろうかと思います。
  115. 草川昭三

    草川委員 一般論での質問でありますからそれで結構でございますが、もう一問、銀行等の金融機関が、担保不足などの理由で回収の見込みがほとんどないのに融資を行うことは特別背任罪に当たるのではないかと私は思うんです。随所に、ほとんど回収不可能だということを承知をしながら融資を行う。現に我々の、この東京の中でも幽霊ビルがいっぱいあります、新築のビルが。私は赤坂宿舎に住んでおりますけれども、その周辺にももう七、八年という新築ビルが幽霊になっている例もあります。  私は細かいことをフォローはいたしておりませんけれども、どうしてこんなようなことになったのか。まあいろいろな経緯を聞いているわけでございますけれども、担保不足が理由で回収の見込みがないにもかかわらず融資をするということが現に行われているとするならば、これはゆゆしきことだと思うんですが、これも一般論で法務当局の答弁を求めたいと思います。
  116. 則定衛

    ○則定政府委員 一般論でお答えいたしますけれども、特別背任罪の構成要件といいましょうか、成立要件といたしましては、一つは、主体が株式会社等の取締役であるということ、それから、今の回収の見込み等にかかわりますけれども、自己もしくは第三者の利益を図り、または会社に損害を与える目的を持って、いわゆる図利加害の目的を持って、しかもその任務に背いて現実に会社に損害を与えたという場合に成立するものでございまして、御指摘のような事案につきましても、担保の状況やあるいは回収可能性の有無などにつきまして慎重に検討しまして、それらの要件が認められる場合かどうか、これらによりまして、御指摘の犯罪の成否が決まるということになろうと思います。
  117. 草川昭三

    草川委員 私は、二つのことを法務当局にお伺いしたわけでございますが、要するに、今の住専の不良債権の発生あるいはまたその融資の経緯等々を見ますと、そのおそれあることが十分あるんです。だからこそ、私どもは、公的資金の導入については極めて母体行が責任を持って処理をするということを優先に、責任の所在を明確にして対応しなければいけないと思うんですが、この件について総理の見解を承りたいと思います。
  118. 村山富市

    村山内閣総理大臣 一連の経過をずっと今お聞きをいたしましたけれども、時代時代のやはり要請があってやられたことだと私は思うんですけれども、個人住宅についての要請が大変高い、そういう国民の要請に対してどうこたえていくかというようなことからいろいろな方策がとられてきて、住専問題といったようなものも生まれてきたのではないかと思うんですね。  それで、今日ここに至っておる経過から見れば、私は、やはり指摘されるようないろいろな問題点があったのではないかというふうに言わざるを得ないと思いまするし、これは民間の仕事ですから、したがって、民間の自己責任というものも問われてしかるべきだし、同時に、それは監督の行政に携わっておった立場からするその責任も全然ないとは言えないのではないかというふうに思いますけれども、しかし、それは結果から言えることであって、その時点時点ではそれなりの取り組みはやはりしてきておったのではないかというふうに思うんです。  ただ、この結果になっておる、この結果をどう始末をつけるかという問題で今は議論をされているわけですね。言われるように、それはもう当然、この不良債権が発生してきたその原因というものも究明されることも大事なことだろうし、その責任の所在も明らかにされるということも大事なことだと思いますね。そういうことをやはり徹底的にやって、その上でどうするかという問題になっていくんであって、その前段の責任のあり方という問題に対する究明がおろそかにされたまま、あるいは公的資金の導入をするとか、そんなことはあり得ない、私はそういうふうに考えております。  それで、今この住専問題を中心にして、母体行やらあるいは貸し付けた方やら等々の方々がテーブルに着いて真剣な議論をしておる最中でありますから、今御指摘のあったような問題点についてもいずれ明らかにされてくるというように思いますから、その責任の度合いに応じて、それぞれが責任を持った負担をしていくというのも当然なことだし、償いをするのも当然だというように思いますから、そういう点も十分に踏まえた上で最終的に国としてどう対応すべきかということは出される問題であるというふうに私は考えています。
  119. 草川昭三

    草川委員 もう時間がどんどん過ぎますからくどく言いませんが、住宅金融専門会社は全くの民間じゃないということをもう一度理解してください。大蔵大臣の直轄する、監督をする金融会社の位置づけがあるということだけは念頭に置いていただいて、私が主張しましたことを今後の行政に反映していただきたいということを強く要望しておきます。  そこで、島村文部大臣にお伺いをいたしますが、八月の九日、文部省における記者会見でございますが、これは随分、新内閣ができてから、成立をしてから問題になっておるわけですが、まず、さきの大戦で日本が中国などで行った戦争ということを、侵略であったかどうか、簡単にお答えを願いたいと思います。だったと思うかどうか。
  120. 島村宜伸

    島村国務大臣 侵略と言われても仕方のない事実があったと思います。
  121. 草川昭三

    草川委員 仕方がないと思う、こういう答弁ですね。  じゃ、侵略戦争じゃないかどうかというのは考え方の問題だ、侵略のやり合いが戦争じゃないかと発言をしたということは、今の答弁とは矛盾するのですが、あの当時の発言は撤回されるのですか。
  122. 島村宜伸

    島村国務大臣 撤回したところでございます。
  123. 草川昭三

    草川委員 撤回をしたということは、これは素直に撤回をされたわけでございますが、今後のあなたの哲学というのをこの際変えられたのか、そういう意味で撤回をしたのか、お伺いをしたいと思います。
  124. 島村宜伸

    島村国務大臣 就任時の発言は、誤解も受けましたし、言葉も足りなかった。真意を誤解された以上は撤回するべきである、こういうことでございます。
  125. 草川昭三

    草川委員 じゃ、撤回をしたというのは、今はもうそういう考えは持たないというわけでございますから、今の考えをこの際改めてお伺いをします。  今、あなたは、過去の日本の歴史というものをどのようにつかんでおみえになりますか、改めて見解を問います。
  126. 島村宜伸

    島村国務大臣 お答えをいたします。  私は、真意を伝えるために会見をし直しまして、私が申し上げたかったことは、第一点、自分自身も疎開児童のいわばそういう経験を通じて、戦争がいかに悲惨なものであるか、そして人間をいかに愚かなものに追い込んでいくか、その結果は極めて悲惨であるということを私は申し上げ、かつ、二度と戦争を繰り返してはならない、これが第一点。  第二点は、将来の国際貢献に向かって努力をしていくことは最も大切なことと思う。  第三点につきましては、さきの大戦に関して、我が国の侵略行為や植民地支配などは、多くの人々に耐えがたい苦しみと悲しみをもたらしたことに対して、深い反省の気持ちに立つことは当然であって、今後とも世界平和の創造に向かって力を尽くしていく。  この三点を申し上げたところであります。
  127. 草川昭三

    草川委員 えらい簡単に、淡々と何か原稿を読んでおみえになりますが、反省の色があるならば、ゆっくりと、せっかくこういう予算委員会の場ですから、多くの方々にもう少し真情を吐露されることをお勧めしたいと思うのでありますけれども。  実は、私がこの問題を取り上げておりますのは、ここにお見えになりますが、桜井元環境庁長官は、ちょうど一年前になりますけれども、いろいろな御発言がございまして、発言を撤回されたのですよ、すぐに。すぐに撤回をされても、いわゆる更迭というのですか、大臣辞任をされました。  今回は、ここに文部大臣お見えになりますが、桜井さんの場合とこの島村さんの場合はどう違うのでしょうね。これは、総理大臣に聞く以外にはないと思うのですが、総理大臣答弁を求めます。
  128. 村山富市

    村山内閣総理大臣 今、桜井さんが発言されたときの発言内容島村さんの発言内容とを比較して、定かではありませんけれども島村さんが発言されたことについては、私は、その趣旨にそれほど大きな違いはなかったのではないか、その本心については。  ただ、その言い方について、いろいろやはり誤解を受けるようなものがあった。したがって、その部分についてはもう潔く撤回したと言われたというふうに私は受け取っていますから。しかも、内閣で決めた方針については全然私は異議はありませんし、そのとおりに考えています、こういうお話でしたから、それなりに私は了解したのです。
  129. 草川昭三

    草川委員 私どもは、新聞で見る限りでございますが、かなり官房長官が何回か文部大臣に対して強い指導というのですか、要請をして、最終的には記者会見で原稿を読まれた、こういうような経過のようでございます。  私は、桜井元長官は、昨年いろいろなことを言われましたが、自分の信念に殉じて出処進退ということを明確にしたと思うのです。だから私どもは、桜井さんは個人的に尊敬をしておるわけです。  しかし、島村文部大臣は、どちらかというと自己の気持ちというものを捨てて、建前だけで、口先だけの発言で撤回をされた、こういうように思うのですが、こういうのを子供が見て、文部行政の最高の長として教育を語ることができるのかどうか。  ちょうどここで桜井さんお見えになりますから、私は桜井さんに聞きたいぐらいなんでございますが、それはさておきまして、文部大臣は今後どのような歴史教育をしていくのか、明快にひとつ答弁を求めたいと思います。
  130. 島村宜伸

    島村国務大臣 私の真意は今申し上げたとおりでございまして、したがって、文部行政、従前のとおり正しく指導していく、こういうことでございます。
  131. 草川昭三

    草川委員 いろいろと戦争責任の問題、また次に、私、実は移りますけれども、総理にお伺いをいたしますが、いわゆる子供の教育をつかさどる文部行政というのは、別に閣僚に比重はございませんけれども、質的には非常に私は重要なポジションだと思うのです、将来の教育ですから。そして、日本は、これから国際的にいろいろとおつき合いをし、国際的にも評価をされなければこれから生きていけない国なんですよ。それにはそれなりの歴史観、そしてその歴史に対する反省、そしてそういう反省の態度というものが国際的に評価をされ信頼をされてこそ、日本のあるべき姿というものが浮かび出てくると思うのです。  そういう意味では、自分が語ったこと、それを、いろいろとマスコミでも話題になり、そして国会でも批判をされるということになれば自分の意見を撤回される、これは本来の文部行政の長にはふさわしくない、私はこのように思うのですが、改めて任命権者である総理大臣の見解を求めます。
  132. 村山富市

    村山内閣総理大臣 先ほども答弁申し上げましたように、記者会見で述べたことについて誤解を与えた点がありますから、その誤解を与えた点については撤回をいたします、私の真意はこうです、こういうお話でしたから、ですから、その真意は内閣が決めた方針と変わりはない、余り変わりはないというので、私は理解をしたわけです。  私は、今お話ございましたように、あれだけの大きな戦争をやってきた経緯があるわけですから、したがって、日本の国が平和憲法をつくって、軍事大国にならないという方針も決めて、そしてその方針を貫いていくためには、やはり過去の歴史に対する反省というものを正しくとらえるということが極めて国際的な信頼をから取るためにも大事なことだというふうに考えております。  したがって、その点は私なりに厳しく受けとめながら今まで踏まえてきたつもりなんですけれども、そういう意味では、今御指摘のように、これは大事なことだと思いまするし、そういう内閣全体の姿勢というものを評価していただくということもやはり大事なことだと思いますし、同時にまた、これからやっていく実績についていろいろ御批判もいただかなきゃならぬというふうに思っておりますから、その点につきましては御理解を賜りたいというふうに思います。
  133. 草川昭三

    草川委員 これは、我々与野党ですが、理解を賜る賜らないという問題じゃないんですよ。  それから、今総理は、閣僚の発言に誤解があったようだ。誤解というのは、いろいろな数字の間違いもありますし見当違いの場合もあります。それはそれで私は釈明あってしかるべきだと思うし、誤解を、あるならば解明するということはやぶさかではありません。  しかし、個人の歴史観あるいは哲学、これが反映をしている発言は明らかに私は単なる誤解で済まぬと思うんです。しかも、子供の教育に影響をする文部行政の最高の責任者でありますから、私は今の総理の発言を軽々しく認めるわけにはまいりません。もう一度総理の答弁を求めます。
  134. 村山富市

    村山内閣総理大臣 官房長官が今おりませんけれども官房長官のところで、この記者会見があった後、再三真意をただしたという経緯は私は聞いております。  で、その発言の仕方に誤解を与えるようなものがあった、したがってこの点については撤回をいたします、私の真意はこうです、その真意については内閣の方針と変わりはありません、こういう結果的な結論の報告を聞きましたから、それならよかろうといって私も理解をしたというところであります。
  135. 草川昭三

    草川委員 今官房長官の名前が出ましたけれども官房長官に再三再四という、今の村山さんの答弁がありましたね。再三再四。これは誤解じゃないですね。再三再四話をして、ようやく閣内の方針に従った、そういうふうにとれますね。誤解だったら、ああ悪かった、最初口が滑りましたというのが誤解なんですよ。桜井さんは、そういうことを言ったにもかかわらずこの人はやめたんですよ。大分違うじゃないですか。
  136. 村山富市

    村山内閣総理大臣 再三再四という表現は適切でなかったと思いますね。恐らく一度か二度かという程度だと思いますから、再三再四という表現は適切でなかったと思いますから、これは言い直したいと思いますけれども。  しかし、先ほど来申し上げておりますように、真意は内閣の方針の考え方と変わりはありませんということを確認をしたわけですから、その点については私もそれなりに理解をしたというところであります。
  137. 草川昭三

    草川委員 桜井さんは当時、日本は侵略戦争をしようと思って戦ったのではないという発言で、はっきり言えば、閣僚の席から去ったんですよ。私は、島村文相の方がこの戦争観の問題については桜井さんより文部行政にはふさわしくない。桜井さんは環境庁長官だったんですかね、あのときには。そういうポジションの違いから考えましても、私は非常に問題だと思うんです。  ただ、まあこの問題は余りやっておりましても時間があれでございますから一応避けますが、どうか閣僚の発言というのは、この村山内閣が今後どういう運命をたどるか私は承知をしておりませんけれども、今は私は国際的に非常に重要な時期だと思っております。これはもう総理も十分認識をしておみえになるわけです。国際世論に支持をされない日本のあり方というのはあり得ないんですよ。これはもう東南アジアでもしかり。総理もいろんな国際会議に出ておみえになるからこれはもう肌身に感じておみえになると思うんです。基本なんですよ、この問題は。  だから、私も日韓議員連盟の副会長をやっておりますが、今、日韓議員連盟の韓国側の国会議員は非常に困っているんですよ。いろんな人から、日本の閣僚たる者が、日韓議員連盟のメンバーともあろう者がかかる戦争観を持っておるのか、韓国の中で日韓議員連盟、向こうで言えば韓日議員連盟、やめろという声が出ているんですよ、今。韓国の国会議員に迷惑をかけておるじゃないですか。そういう発言を許すということは私は絶対だめだと思うんです。厳重注意なんてものじゃないんですよ。  去年の場合は、桜井さんはやめているんだ。今度の場合は、官房長官が二回も呼びつけてようやく納得させている。そんな、思い違いじゃないじゃないですか。  官房長官、あなたどういう言い方をし、そのときにどういう反応をされたのか、お答え願いたいと思うんです。
  138. 野坂浩賢

    野坂国務大臣 草川さんにお答えをいたします。  文部大臣の件であろうと思っておりますが、お話がありましたときに、戦争観についてのお話がございました。お話をお聞きいたしますと、総理大臣考えておることと一緒で、それを深く説明をしたということでございました。  しかし、記者会見の後、また新聞等を見ますというと、非常に取り消さないとか取り消すとかいうのが新聞に出ておりましたもので、誤解のある点については、あなたは真意を説明すれば十分にそれが理解できるということでお話しになったものであるけれども、さらに誤解があるというふうに皆さんがおっしゃっておる、あなたは誤解だと言っておると。しかし、誤解のある部分は取り消してもらって撤回をすると。そして、総理大臣の言うとおりだという御認識であるならばそれで意思は統一ができる。そうでない限りは、いつまでもそのような状況については、内閣がこれから進めていく場合に不統一とか云々とか言われる可能性も強いと。したがって、あなたはどうするのですか、撤回するのですか、こう言ってただしました。  その結果としては、私は総理大臣の言うとおりを言っておるつもりだけれども、誤解される部分があるとすればそれは撤回いたしますということを、明確に撤回を表明をされました。したがいまして、総理大臣考え方と、内閣考え方と全く一致しておるという関係で、総理大臣にも御報告をし、御了解をいただいたところでございます。  以上です。
  139. 草川昭三

    草川委員 今の官房長官答弁を聞いておりますと、かなりきつく文部大臣に物を言っておる節がありますね。(発言する者あり)いや、はっきり言おうと言うまいと、かなりきつい言葉ですよ、今の話は。やはり文部大臣より官房長官というのは上席なんですか。上席というよりは、官房長官村山さんを守るために文部大臣に、二回にわたって官邸に呼びつけて撤回を迫ったんでしょう。非常に強く指導をしたんでしょう。そういうことを今答弁されたんですよね。  だから、私は、そういうのはゴカイもロッカイもヘチマもないと言うのですよ。本人は違う哲学を持ってみえるのです、考え方を。それを、総理の方針に従わなければ内閣の不統一という問題があるから、この隊とにかくやめるか撤回するか、どっちかにしろと言ってあなたが締め上げたんでしょう。それで文部大臣はやむなく従った、これが本当の経緯じゃないですか。  私は、事は歴史観ですから、文部行政というものの歴史観ですから事を重大に考えるんですよ。公共投資でここへ橋をつけました、つけないという問題と違うんですよ、これは。だから、私はあえてこの問題をくどく申し上げたわけであります。  時間がいつの間にかもう四十分にもなりましたので、ODA問題に移りたいと思います。  それで、中国、フランスの核実験の強行は、国際世論を無視した暴挙であることは間違いありませんし、これに抗議をし反対するのは当然だと思います。政府は、中国に対し経済協力の無償援助の凍結提案を決めました。  日本のODA、経済協力というのは、外交手段として大きな役割を持つことを象徴的に示す事例である。こういうのは、非常に私は今国際的な任務だと思います。しかし、このODAも国民の税金でありますし、明確な方針、透明性の確保が必要であることは言うまでもありません。国際貢献が指摘をされているわけでございますから、最大のこの柱の一つと言っても過言ではありません。  まず、この問題について外務大臣の基本的な見解を求めたいと思います。
  140. 河野洋平

    ○河野国務大臣 御指摘のとおり政府開発援助は、開発途上国に対して、その国の福祉の向上でございますとか社会経済の発展を支援するということから、極めて我が国外交の有効な手段の一つ、大きな柱の一つというふうに考えております。まあしかし、これは開発途上国に対する経済的な支援でございますが、しかしそうした方面に対する外交政策の大きな柱の一つであることは御指摘のとおりでございます。
  141. 草川昭三

    草川委員 この際のことでございますから、ODAに対する基本的な見解で、自由民主党の総裁の橋本通産大臣あるいはさきがけの武村大蔵大臣にもあわせて、このODAの意義について、あるいはまた、日本の今まで行ってきた評価というものをお伺いしたいと思います。
  142. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 私は、日本のODAは、日本が国際社会における大きな貢献を果たしていくその柱の一つとして非常に大きな役割を果たしてきたと考えております。  ただ、強いて今後検討していくべき問題点として問題を考えました場合に、申請国の申請というものに対し、私どもが遭遇いたしましたケースの中にも、例えば環境面における配慮が必ずしも十分でなかったために、結果としてそれが地域における有効な働きをなし得なかったといったケースをなしとはいたしません。さらに今後、いわゆる草の根的なものに対して、必ずしも申請国とはかかわりなく、どこまでこうしたものを伸ばしていくかといった検討が必要であろうとは存じます。  しかし、将来にわたりまして、我々は、大きな国際的な日本の役割を果たしていく上での大切な手段の一つ、そのように考えております。
  143. 武村正義

    ○武村国務大臣 世界が大変身近になって相互依存関係が深まっている状況の中で、経済的に成功を遂げている国と発展途上の国とがあるわけで、そういう中でやはりODAという考え方が生まれてきて、先進国の日本が積極的にこのODAに対して今日まで努力を進めてきているところであると認識をいたしております。  ただ、ODAのあり方そのものはこれまでの経験に照らしながら改善を加えていかなければならない、目下のところは政府開発援助大綱の政府の方針に沿って進めていくべきものだと思っております。
  144. 草川昭三

    草川委員 当然のことながら村山総理も同様なことだと思いますが、改めて総理の見解を求めたいと思います。
  145. 村山富市

    村山内閣総理大臣 ODA大綱に基づいて、その国の住民の要請に十分マッチしてこたえ得るような援助というものに、これまでの経過から考えてみてやはり反省する点があったのではないか、見直す点があったのではないかというふうに思われます。基本的には思われますから、したがって、環境の問題とか、あるいはその地域の福祉にどう反映されていっておるのかといったような問題とかというようなことも十分点検をしながら、大綱に沿って、そのODAが十分効果の上がるようなものにしていくという視点に立ってこれからも取り組んでいく必要がある。  このODAというものは、大きな、やはり国際的な友好と信頼関係を結ぶ役割を果たしておるということについては、これはもう大変貴重なものだというふうに認識をいたしております。
  146. 草川昭三

    草川委員 それぞれ三党首の方々から日本のODAに対する評価、極めて大切だ、こういう御趣旨の答弁がございました。私も同じような立場で、そのODAが真に供給先の国民方々に喜ばれ、そしてまた、その国の経済発展に寄与することが最大の問題ではなかろうか、こんなように思いますが、たまたま私の手元に社会党のパンフレットがあるわけであります。  これは「国会決議実現にむけて」「植民地支配の謝罪・侵略への反省 未来の平和への決意」これはことしの四月一日の発行でございます。大変興味がございますので、私もこれを拝読をさせていただいたわけでございますが、この中にはこういうことの記述がございます。いろいろな評価があるけれども、ODAは「ひも付き援助であって日本の企業のみが受注し、もうかる構造になっています。」とか「相手国の政府を利権構造の中に組み入れ、腐敗させています。」と書いてあるんです。これはここに書いてあるんですよ。  これは四月一日の分です。つい最近の分でございますが、これは社会党の委員長として、今の答弁とはかなり食い違うんですが、どのようにお考えでございましょうか。
  147. 村山富市

    村山内閣総理大臣 いや、その記述は私は承知しておりませんからよくわかりませんけれども、過去にそういうふうな指摘をされる点があったんではないかというふうに私は思いますね。  しかし、そういう過去を反省をしてODA大綱も決めて、そしてそういうものではない、本当に、先ほどお話もございましたように、住民の要請にこたえてその国の正しい民主化が進められて、経済発展が遂げられるような役割を果たし得るようなODAにしなきゃならぬということにしておる、私はそういうふうに認識をし、理解をいたしております。
  148. 草川昭三

    草川委員 自民党総裁あるいはさきがけの代表である武村さんは、過去、ODAについて、今総理が言われたような批判があったということは認識しておみえになるのですか。
  149. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 すべてのODAの実績を私は存じておるわけではありませんけれども、かつて私ども国会に初めて議席を得ました当時、日本社会党からそうした批判があったことは承知をいたしております。
  150. 武村正義

    ○武村国務大臣 社会党だけでなしに、さまざまな世界でそういう見方があったということは私も承知をいたしております。真偽のほどは確認ができておりません。
  151. 草川昭三

    草川委員 そうすると、今の内閣は、ODAの過去の実績というものはすべてよかったと言っているわけじゃない。かなり社会党さんのおっしゃっているように、もう一回言いますと、  常にひも付き援助であって日本の企業のみが受注し、もうかる構造になっています。結局日本の援助資金は賠償同様日本企業に還流する構造になっています。相手国の政府を利権構造の中に組み入れ、腐敗させています。受入国には効果のある自力更生を助ける道にはなりません。こういうこと宣言っておるのですが、それもお認めになるんでしょうか。これは外務大臣に聞いた方がいいですね。外務大臣、どうでしょう。
  152. 河野洋平

    ○河野国務大臣 過去の一時期にひもつきという援助があったことは事実であろうと思います。しかし、今やもうそうしたパーセンテージは極めて少ない、むしろないに等しいぐらいになってきてしまっているというふうに承知をしております。  今、先ほど来から御答弁ございますが、我が国のODAが各国で残しております実績はそれぞれ調査をしていただいておりますし、その評価は高い評価をいただいているというふうに考えております。  さらにまた、議員も御承知のとおり、最近ではODA白書というものを毎年編さんをして各議員のお手元にはお届けをいたしておりまして、恐らくこれほど透明度の高いものはないというふうに私どもは胸を張って申し上げられるという状況でございます。
  153. 草川昭三

    草川委員 今、外務大臣は胸を張って実績を誇ることができるとおっしゃっていますが、それと全く逆のことがこの四月一日のパンフレットには書かれているわけであります。しかも、  アジア諸国への賠償、準賠償も、額は累計でも約一兆円にすぎず、国内の犠牲者、遺族への補債が約三三兆円にものぼっていることを考えると、あまりにも不充分です。   こうしたアジア諸国との関係の回復は過去の歴史への謝罪と反省があってはじめてなしうるものでした。資金の提供や借款、賠償、準賠償などは、侵略と植民地支配への償いとはいえず、逆に新たなアジアヘの経済進出の引き金となっていったのです。こういうような言い方になっているのですね。これは、今のODA白書のどこを探しでもこのような感覚は出てきませんね、私も毎年あのグリーンのブック二冊、上下拝見をしておりますが。こういう見解について外務大臣はどう思われますか。
  154. 河野洋平

    ○河野国務大臣 各政党がお出しになる文書でございますし、恐らく、ことしの四月と今議員おっしゃったと思いますが、もしことしの春ということであれば、それは選挙前ということもあって、かなりそれぞれ政党がお出しになる文書は時に過激になることもあるだろうとは思いますが、しかし、私ども外務省といたしましては、そういう認識であることは極めて残念としか申し上げようがございません。
  155. 草川昭三

    草川委員 少なくとも外務省なり外務大臣は、この社会党さんの四月一日に出されたものとは見解が違うと思うのです。これは当然だと思います。  しかし、今の河野さんの答弁は、選挙の前だから各党それぞれのことをおっしゃったんじゃないか。すると、選挙の前にこういうパンフレットを出してODA批判をし、今度は内閣をつくられた。内閣というのは責任がありますね、国際的にも。そういう国際的に責任があるべき政党が、こういう発想は選挙の前だから関係ないんだ、こちらはこちらでやりましょうという、そんな三党合意ですか。これは橋本大臣にお伺いしたいと思います。
  156. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今私も気になりましたので、実態をちょっと調べさせてみました。そうしますと、少なくとも現在アンタイド率が九八%内外、この状況でひもつきと言われる批判を受ける覚えはない、これは私はそう思います。
  157. 草川昭三

    草川委員 だから、極めて明快ですね。ひもつきというのは九八%ありませんよと言っているのです。だから、これは、四月一日のこのパンフレットは明らかに事実誤認があると思うのです。これは総理、撤回されますか。社会党の委員長としてお伺いします。
  158. 村山富市

    村山内閣総理大臣 ODAに対する現状の理解と認識というのは、先ほど私が答弁したとおりですね。その文書を今私は、これは委員長としてそんな文書があったことを、まあ全部が全部点検するわけじゃありませんから、あると思いますから、直ちに調べて、そしてお答えをしたいと思います。
  159. 草川昭三

    草川委員 本来ならばこれは、調べていただく間、私はここで待機してもいいと思うのです。非常にこれは重大な話なんですよ。これは後で調べてという問題じゃないのです。これは、今見せていいですが、お見せしますが、書いてあるのだから。これはおたくのパンフレットであることは間違いない。  これは橋本自由民主党総裁なりさきがけの代表にお伺いをしますが、私は今正確にこれを読んだのですから、これは何なら拡大したものを見てください。  これは、おたくたち今政権を握っておみえになりますが、三党合意の、いろいろなことを言っておみえになりますが、基本的な見解の相違だと思うんです。橋本さん、どう考えられます、私の提言について。
  160. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 我々は、少なくとも、社会、さきがけ両党が昨年の六月、各党に提示をされましたその合意案というものを拝見し、結構です、テーブルに着けますというお返事をし、その信頼関係の上に立って今日まで参りました。  今の文書というものにつきまして、これは三党合意に書かれているものではございませんけれども、私としては極めて心外な文書である、そのように思います。
  161. 草川昭三

    草川委員 今、橋本自由民主党総裁の方から、心外だ、こういうお言葉がございましたが、私も実は、野党ではございますがそういうつもりでODAを見てきたわけではございません。ですから、それは同感なんです。  武村さん、どうですか。
  162. 武村正義

    ○武村国務大臣 何せ他党の文書でありますし、これはどういう性格の文書なのか、党の名前で発表されている文書でございましょうか。ざっと拝見して、過去そういう見方、あるいはうわさも含めてそれがあった、私自身もそういうことは時々聞いたことがあります。  しかし、橋本大臣がお答えしたように、このアンタイド率なんかはぐんぐん努力をして、過去は低かったわけですからね、今はもう一〇〇%近いところまで努力をしてきているわけでありまして、ODAの現状から見ると必ずしも事態を正確に認識された文書とは言えないなど、私もそういう感想を持ちます。
  163. 草川昭三

    草川委員 実は、このパンフレットというのは日本の国内ばかりじゃないんですよ。中国であろうと東南アジアの方々にもこのパンフレットは紹介をしているわけです。だから中国は、日本の経済援助は賠償放棄とも関係する、こういうコメントが出ているんですよ。私どもの党の代表が中国へ行ったときに、核実験の問題と絡みまして、そして経済援助のペナルティーの問題を提言したときに、相手側は、援助は一方的なものではないんだ、日本が中国を侵略した歴史的事実や、中国の対日賠償放棄とも関係があると強く反論をしておみえになるわけです。  こういう考え方が政権与党の基本的な考え方としてパンフレットが出ているわけですから、それは総理、知らないというわけにいきませんよ、現実に海外に大きな影響力を与えているんだから。  総理、もう一度、そのパンフレットを撤回するか、間違いなのか、あるいは三党合意を中心にするのが我々の基本なのか、明確に答弁を求めます。
  164. 村山富市

    村山内閣総理大臣 このパンフレット全体を精査してみないとわかりませんけれども、私は、少なくともこれは過去のことについて指摘をしているんではないかというふうに思うので、現在このODAというものがどういう役割を果たし、どういうものであるかということについての認識というのは、これは先ほど来申し上げているとおりでありますから、もしこのパンフレットが、現在もODAはそういう役割しか果たしていない、そういうものなんだというふうな指摘であるとするならば、これはやはり誤りですから、私は訂正をさせます。  しかし、この文書全体から見て、これは過去の問題に対する指摘であるとすれば、過去私どももこの国会でそういう指摘をしたことがありますから、したがって、そのことについては確かめてみる必要があるというふうに思います。
  165. 草川昭三

    草川委員 それは改めて本委員会に、社会党委員長でありまた内閣総理大臣としての見解を、今直ちにとは申し上げませんから、その返事を求めておきたいと思います。  時間があとわずかでございますから最後質問になりますが、官官接待の問題がございます。  官官接待の中で、いわゆる食糧費問題というのが出ております。いわゆる公共投資という形でいろんな予算が計上されているんですが、その公共投資予算の何%分が事務費になっていますよ、そしてその事務費の中からどれほどが食糧費になっていますよ、それが流用をされていますよ。本来のいわゆる公共投資ではなくて、そこから流用されているという問題が、今我々が指摘をしたいというところなんです。  そこで、あらかじめ建設省とそれから運輸省でございますか、私はこの資料請求をしておりますので、その数字を発表していただきたいと思います。  それからなお、会計検査院に対して、今どのような食糧費の調査を行い、どのようにそれが他に流用をされているのか、本来の目的外に流用され官官接待に使われているのか、その現状を求めたいと思いますし、また総務庁に、行政管理の立場上、官官接待の再発防止についての見解を求めておきたいと思います。  建設省には、今アバウトで建設省と言いましたが道路予算、あるいはまた農林省の場合も農業基盤整備費などの一部が流用されているということでございますので、その資料をこの委員会に提出をしていただきたい。ただいま報告できるだけでも結構ですから、今報告を求めたいというように思います。この報告を聞いて、私の質問を終わりたいと思います。
  166. 森喜朗

    ○森国務大臣 草川委員には既に書類として建設省からお届けをいたしておると思いますが、全体といたしましては、事務費の上限額は補助金の交付決定ごとにあらかじめ定められて、一定率を乗じた範囲の中でそれを認めております。  具体的には、平成七年度の当初予算では、建設省所管補助事業費に係る事務費の額は、一部推計で行っておりますが、約千五百十五億円でございまして、また補助事業費に占める割合は約三・三%でございます。なお、事務費のうち今御指摘ございました食糧費について見ますと、約十三億円でございます。補助事業費に占める割合は約〇・〇三%、このようになっております。  第二次補正予算におきましては、ただいま予算御審議中でございますので、成立後、その執行過程において決定することといたしております。
  167. 平沼赳夫

    ○平沼国務大臣 お答えいたしますけれども、当省にはちょっと資料請求という形で御連絡がなかったものですから、後刻お届けをさせていただきたいと思いますが、公共事業費の執行に関しましては、厳正を旨としてやらしていただいております。  さらに、その公共事業費が一部官官接待に流用されているのでないか、そのような事実はまだ承知をしておりませんけれども、さらに厳重に私どもは予算の執行に努力をしていきたい。  また、資料は後刻提供させていただきます。
  168. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 官官接待につきましては、地方自治団体関係者や民間との交際においては、職員一人一人が公務員としての自覚を持って行動すべきであると思いまして、いささかも国民の疑惑や不信を招いちゃいかぬ、こういうことで私たちも再三再四通達を出し、あるいは九月の十一日、十二日に営林局長会議あるいは地方農政局長会議を開きまして、私から直接厳重に申し渡しをし、その後、官房長からさらに関係部局にあるいは出先機関、地方等に厳重な通達を発行している、こういうことでございます。  公共事業につきましては、社会通念に反しない程度の事務費というのは認められておりますし、公共事業の促進に必要な茶菓子等の会議に伴う経費は当然認められているわけでありますけれども、これが社会通念を超えて、限度を超えているところに現在の問題があると思っております。  したがいまして、余り激しいところについて会計検査院が検査に入っておりまして、間もなくその報告も出てまいりますので、そういうことも十分に検討させていただきながら、再びこういうことの起こることのないように厳正に対処してまいりたいと思っております。  金額その他につきましては、後刻ひとつ個別に提出させていただきたいと思います。
  169. 矢崎新二

    ○矢崎会計検査院長 会計検査院といたしましては、国の補助を受けて実施される公共事業につきましては、これまでは本体工事の検査を重点的に行ってきたところでございまして、事務費の中の食糧費については、これまで十分に検査を行っていなかったというのが実情でございます。しかしながら、昨今この事務費の中の食糧費をめぐる問題が報道されまして、社会的関心も非常に高いことから、急速食糧費の使用実態について検査をすることにいたしました。  具体的に申し上げますと、八月下旬から定例的な検査を予定しておりました三府県について食糧費の検査を追加するとともに、新たに二県について食糧費のみの検査を行うことといたしまして、現在までに五府県について実地検査を実施いたしました。調査は、食糧費が補助の目的に沿って適正に使用されているか、また補助事業の経理は適正に行われているかなどの観点から実施しているところでございます。
  170. 上原康助

    上原委員長 村山内閣総理大臣。お約束の時間が来ていますので、ひとつ……。
  171. 村山富市

    村山内閣総理大臣 これは補助事業であれ何であれ、いやしくも公務員は全体の奉仕者として国民から疑念を持たれるようなことがあってはならないという立場から、綱紀の粛正についてはこれからも厳正に対処していきたいというふうに考えています。
  172. 草川昭三

    草川委員 以上で終わります。
  173. 上原康助

    上原委員長 これにて草川君の質疑は終了いたしました。  午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時七分休憩      ————◇—————     午後一時二分開議
  174. 上原康助

    上原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。松田岩夫君。
  175. 松田岩夫

    ○松田委員 私は、松田岩夫でございます。最初に、日米地位協定につきまして御質問したいと思います。  先般は少女暴行事件という忌まわしい事件が起きまして、まことに残念でございました。米側の真摯な御協力もあって、九月二十九日には被疑者は既に起訴され、今回の事件は既に司法手続に入っておるわけでありますが、私は、この機会に日米地位協定の問題になっております第十七条第五項(c)の条文の見直しをすべきではないか、そう思っておる一人であります。  御案内のように、同条項では、起訴するまでは日本側が被疑者を勾留することができない、こうなっております。外国と比べますと、日本の場合、起訴前の捜査というものを非常に熱心にやる。大体起訴されたときには、もちろん裁判があるわけですけれども、それなりのしっかりとしたものを持ってやろう、これが日本の警察当局あるいは捜査当局のこれまでの行き方であったのかなと。外国と比べますと、非常にこの起訴前の捜査が長いという特徴がございます。  そういうことから考えますと、日本ではこの協定、多少実態と合わないのかなという感じもいたすわけでありまして、これまでも凶悪犯罪の被疑者の取り調べで十分なことが行えなかったということはあったのか、なかったのか、ちょっとこの点、最初に聞いておきます。
  176. 深谷隆司

    ○深谷国務大臣 今回の少女暴行事件に関しては、比較的協力が十分に得られた形で、取り調べについては格別の支障はなかったと思っておりますが、ただ、今までのさまざまな経験的な中には、例えば米兵が脱走してしまって、そのまま、取り調べができないまま本国に帰ったという事例がございました。  今回の場合には、裁判権というのはもちろん二つあるわけでありますが、基地内で捕まったものでありますから、営倉にぶち込まれて、そして最寄りの署の方に連日連行してから取り調べるというようなことがありましたが、モンデール大使との話し合いも含めて、例えば休みであろうと夜であろうと捜査には応ずるということで、極めて順調に捜査はできたというふうに思っております。
  177. 松田岩夫

    ○松田委員 今回の件は、先ほど私も申しました、順調にいって、まあ順調というとおかしいですけれども、評価させていただいたわけであります。  今度の事件を契機に、今後どうしていったらいいかという観点から御質問申し上げたわけでございまして、今おっしゃったように、これまでにも本国へ逃走したといいますか、本国へ帰ってしまって捜査ができなかったというようなケースもあったわけでございます。  そういう意味で、現在専門家委員会が設けられて検討されておられるということでありますが、この条文の改正そのものについて問題を提起されておられるのですか。条文の改正について提起しておられるんでございますか。
  178. 河野洋平

    ○河野国務大臣 私とモンデール大使との間で話し合いまして、現行地位協定のもとで、刑事裁判上の手続その他について改善すべきものについて双方で議論をして結論を出そう、こういうことをスタートといたしておりますので、今お尋ねでございますが、地位協定それ自体の文言について云々するという議論をいたしておりません。
  179. 松田岩夫

    ○松田委員 私は、この機会に申し上げておきますが、後ほどまた議論が出てくるわけでありますけれども、地位協定そのものについてもこの機会にしっかりと、この第十七条第五項(c)のみならずほかの条項も含めてしっかりと検討するいい機会ではないか、そう思っておりますので、その点を申し上げておきます。  外務大臣答弁のように、今回は条文の改正そのものは議論していない、運用の改善でいく、こういうことだそうでありますが、一体それはどんなような内容で、いつ結論が出るのでございますか。  地元では、あるいはまあ国民挙げてある意味で大変な関心であります。事件そのものによって起こったこの関心、こういったものにこたえる意味でも私は一刻も早く本件についてしっかりとした対応をすることが大事だ、こういう意味で申し上げているわけでありますが、お聞きするところによれば、今月二十九日には沖縄で県民抗議集会といったものも予定されておられると聞いております。  そんなことも思いますと、もうきょうあすにでも一刻も早く、こんなふうになりました、今度はこんなことでやりますといったところを一刻も早く見せていただきたい。どんな状況になっておりましょう。
  180. 河野洋平

    ○河野国務大臣 私どもといたしましても、沖縄県民のみならず日本全国関係者、多くの関心を持ってこの事件を見守っているわけでございまして、できるだけ早く運用についての手続の改善ということの結論を導き出したい、こう思っております。それにつきましても、アメリカ側にその旨十分伝えまして、アメリカ側も極めて誠意を持って対応をしておられるように私には思えます。  先ほど議員お話しになりましたように、今回の事件につきましては、大統領を初めとしてアメリカ側も国務長官、国防長官その他関係者が、この事件に対して極めて真摯な態度で日本側に対してわびておられるという状況がございます。そうしたことを背景として、専門家委員会と申しますけれども、この専門家委員会にもアメリカ側は誠意を持って臨んでおられます。  したがいまして、私どもといたしましては、アメリカ側に対して結論をできるだけ早く出してほしいということを冒頭申し入れておりまして、アメリカ側も承知したということでございますが、これは議員よく御承知のとおり、この地位協定それ自体でも、アメリカは、日米間にもございますし、米韓間にもございますし、ヨーロッパ各国あるいはオーストラリアともございますので、日米間だけでこの問題が変えられる、運用であっても変えられるということにはなかなかならない。すべてワシントンに問い合わせ、それぞれの出先との調整もあるようでございまして、先方も努力はされておられますけれども、まだいつまでに答えが出るというめどは実は立っておりません。  しかし、私どもも先方も、双方ともにできるだけ結論を急ごうということで努力をいたしておるところでございます。
  181. 松田岩夫

    ○松田委員 中身についてはこの段階ではお話しできないということでございますか。しかし、少なくとも、先ほど申しましたように、問題になっております起訴前の、捜査を念入りに行わせていただく、この日本の制度からいいまして、少なくとも今回の話し合いで起訴前でも勾留できるというふうなことになることは明らかでございますね、運用で。
  182. 河野洋平

    ○河野国務大臣 議員御指摘でございますが、実はそこまでまだ先方との話は進んでおりません。私どもからは問題提起はいたしておりますけれども、先方から今お話しのようなことは返ってきておりません。  専門家委員会について私どもが提起をいたしております問題意識といたしましては、拘禁の移転、今議員お尋ねの部分でございますが、それから捜査に対します協力、それから米側による拘禁の態様などについて我々は関心を持っておるということを説明をいたしまして、米側もこれらについてよく検討をいたしますということに今なっておりまして、先方からその検討の結果を我々は聞くという状況に今なっております。
  183. 松田岩夫

    ○松田委員 友好的な雰囲気で好意的に対応していただいておると判断してよろしいですか。ぜひ頑張っていただきたい。頑張るというか、ぜひしっかりとやっていただきたいと思います。  さてもう一点、沖縄県の大田知事が米軍用地の強制使用に関する国の機関委任事務を拒否しておられる問題でございます。  防衛庁長官、これ、なぜ知事は拒否をしておられるんですか、その理由は何だとお考えですか。
  184. 衛藤征士郎

    ○衛藤国務大臣 松田委員にお答えを申し上げます。  先般、この署名拒否の理由につきまして知事から文書を受け取っております。正確を期するために、この点について私の方から申し上げたいと思います。  まず第一点は、沖縄県の米軍基地が米軍統治下の布令布告により地主の同意も得ずに強権的に接収、構築されてきた経緯がある、これが第一点であります。  それから、本土並みと言われながらも、沖縄返還協定により、そのままの状況で日米安保条約及び地位協定に基づく米軍基地として提供されてきたこの歴史的な経緯を踏まえてほしい。  それから、米軍基地が沖縄県の振興開発の大きな阻害要因になっている、こういうことであります。  それから、知事自身の基地問題に対する基本政策に触れておるのでありますが、来るべき二十一世紀に向けて若い世代が希望の持てる、知事は、基地のない平和な沖縄を目指し、米軍基地の整理縮小を促進することだ、このように率直に述べております。  また、沖縄県の米軍基地について、国が第四次全国総合開発計画、四全総や、あるいは三次にわたる沖縄振興開発計画、この中で、できるだけ早期に基地を整理縮小する、このようにうたっておるが、余り進んではいないじゃないか。復帰から二十年たつが、今日までに返還された米軍基地は復帰時の面積の約一五%にしかすぎないという指摘であります。ちなみに、復帰時の昭和四十七年五月十五日に八十三の施設があったわけでありますが、現在は三十九施設で、四十四の施設が返還された。返還された面積は四千百ヘクタールでありますが、しかし厳然として二万三千七百ヘクタールの基地が現存しておる、こういう点も指摘しております。  それからもう一点は、この沖縄の基地が人口や産業の集積している中部地域に集中している、そのために沖縄県が計画的な都市づくりや道路網の整備、産業用地の確保など、本県の振興開発を進める上で大きな制約となっているという点を指摘しております。  それから、他の基地と、本土の基地と同じでありますが、水域、空域におきまして米軍の管理権が設定されている箇所が多くて、これまた産業振興を図るための埋立計画や民間航空路の円滑な運用に支障を来している。  それから、騒音問題でありますが、嘉手納飛行場や普天間飛行場から生ずる騒音が隣接する地域住民の日常生活やあるいは教育環境に悪影響を与えておるということでございます。  それからもう一点は、九月四日に発生したような少女暴行事件に見られるような事犯が基地で起こっておるじゃないか、こういうような再発防止等についてさらに真剣な努力をしてほしいということであります。  それからもう一点は、沖縄の基地が、二十一世紀も引き続き基地が存在し、基地が強化されていくのじゃないか、そして基地機能の強化のみならず固定化につながることを知事は大変懸念しておる、こういうことでございます。  それから、大田知事自身平成二年の十一月に御就任されました以後、特別に、二十三事案以外に三事案を追加したわけですね。那覇港の移設、あるいは読谷補助飛行場の返還、あるいは百四号県道越えの射撃訓練の移設、そういったことを希望したことについてめどが立っていないじゃないかという指摘がありますが、これについてはめどが立っておるということをはっきり申し上げたいと思います。  まあこういうような理由によりまして知事は拒否をされたという、理由のみを申し上げました。  以上であります。
  185. 松田岩夫

    ○松田委員 ただいまの知事からの、大臣あてでございますか、防衛庁長官あてでございますか、知事から防衛庁長官あての文書でございますか、極めて重要な文書であると存じます。私は、日本の安全保障の基盤は、沖縄県民がしっかりと理解してくれていることがどんなに大事かと思っておりますので、今の文書を、恐縮でございますが当委員会に資料として御提出をいただきたく存じます。  それで、その中で幾つか取り上げてみたいわけでありますが、最初に私、やはりその中にも触れておられますね、今度の日米首脳会談、十一月に総理はクリントン大統領と会われて、新たな世界情勢の中での、新たなアジア情勢の中でのこの日本安全保障体制のあり方、日米安保条約のあり方といったことについてお話し合いをなさるわけでございますが、その日米安保体制というものは、これは総理自身も大変はっきりおっしゃっておられるように大変大事なものでございます。その基盤強化のためにも、この沖縄の基地が、今知事がおっしゃいましたが、こういったことを契機にしてこの基地が強化、固定されることへの不安だ、こうおっしゃっておられます。恐らく、私はそのことが一番根っこにあるのではないかな、ほかにもいろいろおっしゃいましたが、そう思います。  そうだとすれば、総理、これは今度の日米首脳会談においても、総理自身もう相当思い込んでおられると思いますけれども、この沖縄の基地の整理統合の問題というのはしっかりやって必ず沖縄県民のこうした期待、知事の期待にこたえられる、そしてなおかつ、我が日本の安全保障体制がしっかり確立てきる、そういったことをしっかりと日米首脳会談で話し合っていただきたい、そしてお互いに確認し合っていただきたい、こう思いますが、どうですか。
  186. 村山富市

    村山内閣総理大臣 今、防衛庁長官から知事が寄せた文書についての紹介がありましたけれども、全く私もそのとおりに受けとめなきゃならぬというふうに思います。  お話もございましたように、これは、戦中戦後を通じて沖縄には大変な御苦労もおかけし、御迷惑もおかけしておるわけです。現にこれだけの基地がやはり存在しておって、そして開発にも阻害になっておるでしょうし、しかも少女暴行事件といったようないろいろな事件も起きておるという現状を考えた場合に、沖縄県民の心情と知事の立場というものはよく理解ができます。  そういう沖縄県民の心情というのは、ただひとり沖縄だけではなくて、恐らく日本国民共通してやはり持っておる気持ちではないかというふうにも思われますので、そういう心情というものをしっかり踏まえた上、沖縄知事の立場というものも十分踏まえた上で、私は、これだけ国際情勢の変わった状況の中で日米の安保条約、安保体制というものがどういう機能を持ち、どういう役割を持つことが両国のために、あるいはアジア・太平洋全体のためにもいいのかというようなことについて率直な話し合いもする必要があると思いまするし、今度起こったような事案についても率直に意見交換をして、改善できるところは積極的に改善をしていただくというようなことを話し合うことによって、私は一層日米関係の信頼と協力関係というものが築かれていくのではないか、こういうふうに思っておりますから、そういう視点に立って日米交渉に臨んでいきたいというふうに思っております。
  187. 松田岩夫

    ○松田委員 ぜひそうしていただきたく思います。  結局、日本の安全保障を考えますときに、この沖縄の基地というのは大変重要でございます。何度も言われておりますが、米軍基地面積の実に七五%が沖縄に集中している。沖縄本島の一八%、県全体の一〇%を占めておる、基地が。沖縄の経済振興は、先ほどの知事の言によれば、そのためにままならない、県民所得は全国最下位だ、日本全体の安全保障のツケを一身で払わされている、こう思っておられると思います。  基地公害とよく言われますけれども、本土と沖縄では量的にも質的にも大きな開きがございます。格段の差です。本土の自治体や住民が米軍の活動を認めないために、やむなく米軍が沖縄にその機能を集中させている面も否定できないのではないか。安全保障の犠牲の対価として沖縄に支払われている基地交付金などの補償、微々たるものです。  来年度の防衛庁の周辺対策費、防衛庁の予算、まことに厳しいシーリングの枠の中に置かれております。そういった面からやむを得ない点もあるのでしょう。しかし、例えば来年度の概算要求で、この防衛施設庁の周辺対策費はマイナス要求でございます。こんな時期にですよ。  沖縄基地というのは、米軍対沖縄というばかりじゃありません、本土対沖縄の案件でもあります。この沖縄の基地の整理統合を目指すべきは当然でございますが、同時に政府は、思い切って沖縄支援の手を今こそしっかりと打たねばなりません。それは沖縄の地域開発の問題でもあると同時に、まさにアジアと太平洋の安全のためにしっかりとその性根を我々持たねばならぬ。この点の認識、十分ありますか。  先ほど知事からの要請の中にもありました沖縄の開発の問題、とても厳しい問題です。私は、琉球が沖縄となって日本に復帰する直前に、下河辺先輩などと一緒に琉球開発基本計画というものをつくろうということで、当時は公務員でございましたが、政府の一員として沖縄に参りました。知れば知るほど、この沖縄を豊かな地域にすることがどんなに厳しいことか。当時描いた計画はほとんど現在なお実現されていない。我々公務員の仕事がいかにずさんであったかということもみずから恥じると同時に、その後の状況はむしろもっと厳しいものになっています。  そういう状況の中で、私は、この沖縄の総合開発というのがある意味で日本の安全保障の基盤である、こう言って言い過ぎではないでしょう。もはや防衛施設庁とか防衛庁とか沖縄開発庁とか、こんなそれぞれの役所が考えているだけでは不十分だ。  総理、どう思われますか。総理のリーダーシップのもとにこの際日米安全保障をしっかり見直す年です。しっかりとした沖縄開発のための総合的な手段をとられることを御提案いたします。
  188. 衛藤征士郎

    ○衛藤国務大臣 松田委員にお答えいたします。  大変大所高所からの沖縄支援についての御提言をいただきまして、まことにありがとうございました。  私から申し上げるまでもありませんが、委員御案内のとおり、沖縄県の基地関係周辺対策事業につきましては、障害防止事業あるいは民生安定事業等を行っておるわけでありますが、この補助率につきましても、本土よりも沖縄の方を高率にしておるということはもう御案内のとおりかと思います。また、具体的には平成八年度の予算要求におきましても、本土の場合は〇・九%の減になりましたが、沖縄県関係は〇・六%の減にとどめたというようなことでございます。なお、御案内のとおりかと思いますが、一般防音あるいは民生安定、防音関連維持費、それぞれ沖縄県については高率の補助率を適用しているということを申し上げたいと思います。  なお、さっき、資料の提出でございますが、あれは大臣あての知事からの文書ではございませんでして、知事はこの署名拒否につきましては、那覇防衛施設局長あてに署名拒否の文書を送りつけてきたわけであります。その文書の中身は三行でございます。(発言する者あり)今読んだのは、知事がその後の記者会見におきまして、私はかくかくしかじかの理由でこれを拒否したという記者会見用の文書であり、なおかつそれは、先般防衛施設庁の方に副知事が参りまして、我が方の防衛施設庁に対しまして副知事からの説明文書であるということも申し上げておきたいと思います。  以上であります。
  189. 松田岩夫

    ○松田委員 それでは総理、今の答弁でよろしゅうございますか、総理として。
  190. 村山富市

    村山内閣総理大臣 先ほど来お話もございましたように、沖縄県の皆さんには、全基地の七五・五%近くも沖縄に負担をかけておる、こういうことから考えてまいりましても、本当に御苦労いただいておるし、御負担、御迷惑をかけているというふうに私思います。  そういう沖縄県の実態というものをよく踏まえた上で、これまでも沖縄開発の振興計画というものは推し進めてきていると思いまするけれども、今度第三次の沖縄振興開発計画の中にも盛り込んであるわけでありますが、今お話のございましたような意見あるいは沖縄県民の心情、沖縄県知事の立場等々を考え、日本の安全保障に果たしておる役割というものも十分踏まえた上で、一層沖縄の振興開発のためには力を注いでいかなければならぬというふうに思っております。
  191. 松田岩夫

    ○松田委員 ぜひ新しい観点から沖縄というものを見直していただきたい、安全保障という観点から見直していただきたいということを力強く申し上げて、次の質問に移ります。  さて、総理は、八月十五日午前、戦後五十年に当たっての首相談話を発表されました。その一部でございますが、読ませていただきます。「わが国は、遠くない過去の一時期、国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。」「疑うべくもないこの歴史の事実を謙虚に受け止め、ここにあらためて痛切な反省の意を表し、心からのお詫びの気持ちを表明いたします。」と謝罪されました。  さて、野坂官房長官、「首相談話が十五日の閣議で」、これは新聞報道ですから後で事実かどうかをお聞きするわけです。「十五日の閣議で波乱なく決定されるよう、有力閣僚や与党幹部に内容は詳しく説明せずに「ただただ、頭を下げて」根回しにまわった。」これは報道されていることをそのまま読み上げただけです。また、「閣議では、談話が読みあげられた直後はだれ一人として発言する閣僚はなく、」「水を打ったように静かだった」、これも報道されたことを読み上げただけでございます。  官房長官、これは事実でございますか。
  192. 野坂浩賢

    野坂国務大臣 先生にお答えいたします。  八月十五日の総理大臣談話につきましては、事前に閣議決定で総理大臣の談話を出すということは決まっておりました。古川副長官が、事は重大であるから丁寧に読み上げます、こう申し上げました。私は、立派な文章である、こういうふうに思っておりました。御質問はございませんか、御意見はございませんかということを二回申し上げました。したがって、皆さんは了解をされました。したがいまして、満場一致で閣議決定をした、こういう事実がございます。  私は、内容を説明しないでただただ頭を下げて回ったということは事実に反しますので、訂正をしておきます。
  193. 松田岩夫

    ○松田委員 それでは、「水を打ったように静かだった」というのは事実でございますね。  さて、先ほど午前中に御質問がちょっと出ていましたが、島村文部大臣、また済みません。侵略かどうかは考え方の問題と発言してどうのこうのと、改められたと、こういうことを先ほどこの質疑で聞きました。  この談話は文部大臣考え方と完全に一致をいたしておりますか。そして、この疑うべくもない歴史の事実である国策を誤った過去の一時期とはいつのことでございますか。島村文部大臣にお聞きします。
  194. 島村宜伸

    島村国務大臣 総理談話と同じとお考えいただいて結構です。
  195. 松田岩夫

    ○松田委員 いや、後段の質問は……。二つ御質問いたしました。この疑うべくもない……。
  196. 島村宜伸

    島村国務大臣 失礼いたしました。  世界観や歴史認識の問題につきましては、いろいろな議論があるので、時期や地域等について断定ないし線引きをすることは適当でない、そう考えます。
  197. 松田岩夫

    ○松田委員 それでは次に、日ごろ皆さんおっしゃっているのですが、私はよく存じませんというか、まだ江藤総務庁長官とは個人的に痛飲するほどおつき合いがありませんけれども、人はよくタカ派、タカ派と江藤長官のことをおっしゃっておられますが、これも報道でありますけれども、「閣内にある限りは批判は避ける。それぞれの歴史観、国家観があり、それをとやかく言うことはない」と言われたとのことであります。まあしかし、この談話は、先ほど、御異議ございませんか、御異議ございませんか、異議なしということで全員一致で決まったということでありますが、江藤総務庁長官も全くこの考え方と同じでありますか。同じであるとすれば、先ほどと同じく、誤った過去の一時期とはいつのことでございましょう。
  198. 江藤隆美

    ○江藤国務大臣 私は総理から、この内閣は景気回復と行政改革推進政権である、したがって、行政改革、規制緩和とを進めるという命のもとに総務庁長官を引き受けたわけであります。したがいまして、私見は避けると申し上げておるわけです。
  199. 松田岩夫

    ○松田委員 私は、この予算委員会において今質疑をしておるのでございます。個人的なお話をしておるわけじゃございませんので、閣僚としてお答えをいただきたく存じます。
  200. 江藤隆美

    ○江藤国務大臣 村山内閣の閣僚である限りにおいては私見を避けると申し上げて、答弁といたします。
  201. 松田岩夫

    ○松田委員 全く考え方は一致しておると言われたんですね。
  202. 江藤隆美

    ○江藤国務大臣 私見を避けると申し上げております。
  203. 松田岩夫

    ○松田委員 一体閣議決定とはいかなるものでございますか。御意見が違えば反対をすべきものと存じますが、御意見が一致したから賛成をされて全会一致で決まったと、こういうことでございますね。
  204. 江藤隆美

    ○江藤国務大臣 閣議で決まったことは守るというのが閣僚の務めだと心得ております。
  205. 松田岩夫

    ○松田委員 決まる前の話をいたしておりますが、お決めになるときに考え方が一致したので賛成されたわけでありますね。
  206. 江藤隆美

    ○江藤国務大臣 先ほど申し上げたとおりです。
  207. 松田岩夫

    ○松田委員 日本語がお互い通じ合わないのでまことに困りましたが、お気持ちはわからぬわけじゃありません。答弁しにくいだろうなと思って聞いております。  さて、森建設大臣、これも報道ですので恐縮ですが、「「どこにどう(侵略したか)書いてあるわけじゃないから、いいじゃないですか。そういう行為はあったのだから」と述べた。」と報じられています。そういう行為があったのはいつのことでございますか。この「過去の一時期」というのはいつのことでございますか。
  208. 森喜朗

    ○森国務大臣 先ほどからそれぞれの御答弁の中にもありますように、過去の歴史というのは、それぞれの見方によって評価が違うと思います。また、侵略でありますとかあるいは植民地支配的な行為とかというようなことも、それを受けた方とそれを侵した方との見方もあると思うんです。  それぞれの思いでこの過去を、それぞれの反省の中に立って、改めて日本の国が世界のためにどうこれから協力をしていくか、国際社会のために貢献をしていくか、そのことをお互いに政治家として思い深く考えるということが大事だというふうに私は考えております。
  209. 松田岩夫

    ○松田委員 そのことには全く賛成であります。したがいまして、私は真剣に聞いておるわけでございます。事実を事実として、この疑うべくもない事実というのは一体どういうことなのかということをしっかり聞いておるわけでございます。それをしっかり踏まえた上で対応していこうと思えば思うほど、この誤った過去の一時期、この疑うべくもない歴史の事実というのは一体いつのことだとみんなでしっかり理解をしておく必要があるわけであります。だから一生懸命聞いておるわけでございます。ところが、今までの御答弁は全部はっきりしない。  さて、八月二十三日の衆議院内閣委員会でこのことが取り上げられた。いろいろ長くなりますから簡単に結論だけ言いますと、野坂官房長官は、昭和十六年十二月八日の真珠湾攻撃以降、これが「過去の一時期」だという認識を示されたと理解してよろしいですか、官房長官
  210. 野坂浩賢

    野坂国務大臣 お答えいたします。  八月二十六日ですか……(松田委員「八月二十三日」と呼ぶ)内閣委員会の際には質問者が、ある一定の時期とは太平洋戦争の以降はどうなのかと言われたので、その時期については、相手が、質問者が太平洋戦争以降というお言葉を使われましたので、そのように答えました。  言うなれば、いろいろ閣議等で議論をした際には、どこからどこまでが侵略戦争なのか。例えば、終わったのは昭和二十年の八月十五日という、終結の時期は明確であるけれども、始まった時期というものについては明確ではないという話をしておりますので、相手の質問者が十二月八日以降についてはどう思うか、そういうふうに聞かれましたので答弁を行ったわけです。
  211. 松田岩夫

    ○松田委員 あの答弁を読みますと、しかし、官房長官の御認識としては、十六年十二月八日以降だなというふうに読み取れます。(野坂国務大臣質問者を見てください」と呼ぶ)質問者もですが、答弁者を見ておるわけでございます。ですから、答弁を見ますとそう理解できますが、おおむねそういうことですか、官房長官の御認識では。
  212. 野坂浩賢

    野坂国務大臣 質問者は、十二月十六日以降は侵略というふうに考えるかということでございまして、そこからという期限を相手方がつけられましたので、それ以降についての見解を示した、こういうことでございます。(発言する者あり)十二月八日。
  213. 松田岩夫

    ○松田委員 十二月八日以降は侵略戦争だったと。
  214. 野坂浩賢

    野坂国務大臣 質問者が十二月八日以降は侵略と考えるかというふうに質問されました。たしか、あの先生でしたね。そういうふうに御質問がございましたので、そのことを肯定して、それからだなという認識を示して私は申し上げたわけです。言うなれば、昔の豊臣時代からなんと言ってもなかなかわかりませんから、どこからという発想の、時期というのはなかなか難しかろうと。相手が、十二月の八日からはどうか、こういうふうにおっしゃったので、そのように思いますということをお答えしたわけです。
  215. 松田岩夫

    ○松田委員 はい、よくわかりました。十二月八日以降だと御認識をされたと。  さて、先ほど草川委員から出ていた文書と同じなのかもしれませんが、この社会党のパンフレット。なかなかこれはおもしろいパンフレットだなと、いろいろな考え方が出ているのですが。このパンフレットでは、明治以降の日本は経済力と軍事力を侵略と植民地支配に注ぎ込んだ。すごいんです、これ。特に昭和六年の満州事変以降を一連の侵略戦争と呼んでおり、今の官房長官の、質問者に合わせてそう言ったんだとおっしゃるのですけれども、大分認識が違うな。昭和十六年以降を大体そんなものか、こう理解したというようなお話でございました。  一体、この文書というのは、私は読めば読むほど非常に、「わが国は、遠くない過去の一時期、国策を誤りこういうわけです。「疑うべくもないこの歴史の事実を謙虚に受け止めこと。今お聞きしたら、一体いつからいつの話なんだ、さっぱりあいまいだ。そして、この「疑うべくもないこの歴史の事実を謙虚に」。事実は一体何なんですか、事実は。この謙虚に受けとめるという、受けとめるその事実は何なんですか。いつからなんですか。はっきりと「過去の一時期、国策を誤りこと書いてあるんですよ。国策を誤った一時期とはいつですか。私は知りたい。総理、しっかりお答えをいただきたい。
  216. 村山富市

    村山内閣総理大臣 私は、戦後五十年の節目に当たりまして、我が国が植民地支配を行ったり、あるいは侵略を行ったりした事実、とりわけ多くの国々、アジアの国々の皆さんに大変な困難と被害を与えた、こういう事実については、率直にやはり認めざるを得ないと思うのですよ。  ただ、侵略という言葉の定義については、これは例えば国際法なんか検討してみましても、武力をもって他の国を侵したというような言葉の意味は解説してありますけれども、侵略というものがどういうものであるかという定義というものはなかなかないのですね。したがって、どの時期が侵略であったかという時期を設定することについては、国際法上の解釈から見ても余り意味がないのではないかというふうに私は思うのです。  ただ、そういう事実があったという認識は、やはり共通してお互いにし合えるのではないかというふうに私は思っております。
  217. 松田岩夫

    ○松田委員 一個人として御意見を述べられるのであれば結構でございますが、内閣総理大臣として閣議決定をした総理談話でございます。私はその持つ意味は極めて大きいと思いますし、私自身も謙虚に受けとめ、未来に向かって頑張っていかなきゃならぬ、そういう思いにおいては、皆さんと御一緒だと思っておる一人であります。  であればこそ、余計しっかりと知っておきたい。どういう御反省をなさっておられるのかという点でございまして、時期も限定せずに今のようにあいまいなまま、いとも簡単に、過去の一時期、国策を誤ったと言われるのは、余りにも私は無責任に思います。そういう意味でぜひはっきりしていただきたい。きょうはっきりできませんか。
  218. 村山富市

    村山内閣総理大臣 さっきから申し上げておりますように、侵略という言葉の定義について、一般に国際法上解釈されておりますのは、他国に対する違法な武力の行使を中心とする行為であると考えられておる、こういう解釈があるわけですよ。しかしまあ、この侵略という言葉の解釈にもいろんなやはり意見がありますから、それほど固定してこれが侵略だといった定義はないんではないかというふうに私は思っておるわけです。  ただ、歴史的な事実として植民地支配があり、あるいは侵略が行われたという事実は、これはもう否定し得ない現実があるわけですから、そういう事実についての認識に立って私どもはやはり謙虚に反省をする必要があるし、その反省を踏まえた上で新たな未来に向かって志向していくということが大事ではないか。私は、五十年の節目に当たってそういう国民の気持ちというものを率直に表明することは、ある意味では大事なことだというふうに思って申し上げた次第であります。
  219. 松田岩夫

    ○松田委員 その趣旨において私、反対しているわけじゃありません。表現が非常に、今までの国会決議あるいはその前の総理大臣談話と比べますと、格段の差であります。  私、一つ一つ申し上げません。ただいまは「過去の一時期」ということについて、これだけ厳しい御反省をなさっておられるので、明確な御意思があるのかなと当然思いました。そこでお聞きしたわけでございますが、その点について明確な御答弁はいただけませんでした。その程度の御認識でこれだけ厳しい言葉遣いをよくなさるなと。私なら表現を工夫したでしょう。歴代の総理大臣、それぞれ苦労されておられるわけですよ。国会決議もみんな苦労されたんですよ。そういう中で、総理としてここまではっきり言われた以上、「過去の一時期」について総理としての明確な御認識があってしかるべきであります。この「疑うべくもない」「歴史の事実」、こうおっしゃるわけですから、その事実とは一体何かということをお聞きしたわけです。そういう厳しさでぜひ政治を担当していただきたい。  私は、この決議、首相談話の中にも総理の厳しさというものを見ることができませんので、そういう意味でもあえて御質問を取り上げたわけであります。国策を誤ったと簡単に言われてたまりますか。それぞれの時代、みんな一生懸命生きてきた。だから、誤ったのはこの点だとはっきり言っていただきたかった。残念です。  それでは、次に参りますが、PKOです。  御案内のように、PKO法では附則第三条で「法律の施行後三年を経過した場合において、この法律の実施状況に照らして、この法律の実施の在り方について見直しを行う」となっております。平成七年八月十日がこの三年を経過した日になるわけでありますが、この見直し作業は始まっておりますか、どうですか。
  220. 村山富市

    村山内閣総理大臣 今御指摘もございましたように、三年後に見直しをすることになっておりますから、見直しを開始いたしております。  この見直しに当たりましては、既に終了いたしましたカンボジア、モザンビーク、ザイール等に派遣された経験を十分に参照しながら見直しを検討しておるという状況にございます。
  221. 松田岩夫

    ○松田委員 始めておられる、結構なことでございますが、それでは具体的にどんなような事項、内容について作業が始まっておるのでございますか。どんな事項について始まっておるのでございますか。
  222. 河野洋平

    ○河野国務大臣 ただいま総理がお答えになりましたように、これまでの経験に即しまして、これまでのPKO活動で不十分であった点、あるいはそのことがこういうことであったためにうまくいった、あるいはこういうことであったために不便であったというようなことをよく聞いて、そしてそれが、見直しの結果何か直さなければならないということであれば直さなければなりませんし、そうでなければこのままでもいいということであろうと思います。
  223. 松田岩夫

    ○松田委員 いや、全然答弁になっていませんね。ですから、何を御検討なさっておられるのですか、どんな事項を。
  224. 高野幸二郎

    ○高野政府委員 お答え申し上げます。  本件見直し作業につきましては、去る八月に国際平和協力本部の副本部長……(発言する者あり)見直し作業の指示がございまして、それ以降、現在やっておりますことは、問題点、検討課題の洗い出し作業を現在関係省庁間で作業をしているところでございます。したがいまして、具体的な課題というのはまだ現在作業中というところでございます。
  225. 松田岩夫

    ○松田委員 検討すべき課題を今洗っておるところだからまだ答えられない、こういうことのようでございますが、私は、一、二、ぜひ見直しの検討課題にしていただきたいと思う事項をここで取り上げさせていただきたく思います。  一つは、言うまでもありませんが、この法案を通しましたときに凍結をいたしましたPKF、本体業務の扱いでございます。  ところが、私非常に不審に思うのは、ゴラン高原、PKO派遣、ついせんだってお決めになりました。これは、御案内のように、もうつとに、昨年五月、国連からの要請を受けて、延々とかかって御検討をなさってこられたわけであります、一年半近くなりますか。このゴラン高原へのPKO派遣の御検討の過程で、私どもは入っておりませんのであれですが、いろいろ承っておりますと、PKFとの関係というものは相当議論されたようでございます。  私から見ますと、このゴラン高原へのPKO派遣はまさに我が平和協力法が、PKO法が想定した典型的なPKOそのものだというふうに私自身は思っておりますので、即刻派遣をしたらどうかと外務委員会でもたびたび申し上げました。  一体どうしてこんなにおくれたのか。どうもその背景にPKFとの関係があるようだということでございますので、まず最初に、なぜゴラン高原へのPKOの派遣が、国連から昨年五月に要請があって、そして、私どもから見ますれば何の問題もない、まさに我が国が決めた制度にぴったりの制度だと思いますのに、こんなに長くかかってようやく派遣することになった。しかも、いろいろ聞けば、総理の中東訪問であるとか、訪問に先立って何とかしなきゃいけないとか、カナダの総理大臣からいろいろ言われてサミットでも前向きに検討すると御回答なさっておられたとか、いろいろな状況からだんだんだんだんしりに火がついてお決めになったような形跡、まあこれは報道ですからわかりませんが、一体、何でこんなにゴラン高原への派遣がおくれたのでございますか、決定がおくれたのでございますか。
  226. 村山富市

    村山内閣総理大臣 ゴラン高原に自衛隊を派遣するわけでありますから、したがって、何よりも安全の確認というものが第一に大事である。これはまあ政府・与党それぞれ調査団を派遣して現地をつぶさに検討してまいる。  この中東地域というのは、まだ平和の話し合いがなされている地域でありまして、必ずしも完全に平和が達成されておる地域ではないといったような状況もございますから、やっぱり慎重な上にも慎重な検討を重ねて、そして、全体としてこれで心配がないということの確認の上に立って派遣をすることにしたんであって、それ以外の別に理由はありません。
  227. 松田岩夫

    ○松田委員 いやいや、それじゃ幾ら何でも説明になりません。  外務大臣、どうしてこんなにおくれたんですか。
  228. 河野洋平

    ○河野国務大臣 当初、ゴラン高原への派遣の要請が国連からございました。これは、議員ももう既に十分御承知のとおり、カナダが現在行っております業務をサポートするということであったわけでございますが、何分にも、その当時、つまり昨年のことでございますが、我が国はまだアフリカに人道援助の部隊が出ておりました。各地に相当数の自衛隊員が出ておりまして、さらに重ねてゴラン高原に行くということはいかがなものかという意見もあって、その部隊が戻ってまいりました後、本格的な、今総理からお話がございましたように、調査等に取りかかったといういきさつもあるわけでございます。  御案内のとおり、カナダのサポートのためには、六カ月の準備期間、さらには三カ月、六カ月というカナダの交代時期と合わせるという必要もございまして、時期がこういう時期になったということでございます。
  229. 松田岩夫

    ○松田委員 いや、私は、社会党がよくおっしゃっている、社会党の全部がどうかわかりませんけれども、ゴラン高原派遣は、後方支援といえどもPKO本体業務と一体化するおそれがあるというようなことを理由にされておられたのではないか。これは社会党、与党、与党調整会議の話ですので、閣僚にお聞きするのもなんですが、それは外務省の諸君もそうだとはっきり認めております。  今度、じゃ、決まったのは何だと、どういうことでだと、ようやくもうしりが切れてきたと。先ほど申すように、もう九月には総理はまさにこの関係国へ御訪問なさる。スケジュールが入っている。まあ中東諸国を歴訪されて新しい時代を切り開こう、その御努力を私は歩といたしますし、それはそれで結構だと思うんであります。また、お決めになるときに、私は見直しするとすれば、まさに三年前、いろいろな状況の中で凍結をいたしましたPKF本体業務、これこそを一つの大きな検討課題として三年経過して見直していただきたい。私はそう思う一人でありますが、そう思っておりましたら、いやいや、ゴラン高原派遣の条件としてこのPKFの凍結解除は当面行わない、そのことを与党三党で合意した、こういう御報道であります。もちろん、これは与党の合意でございまして、政府の話ではありませんけれども、一体これはどういうことだ。  一方また、総理大臣も所信表明で、我が国はこのPKOへは積極的に協力を行っていく、もちろん、河野外務大臣も先般の国連総会の演説でそのことを全世界に向かって力強く同じ趣旨のことを述べておられます。  そういうやさき、PKO協力を積極的に行っていくと思えば思うほど、あのPKFの凍結問題といったものは今こそ真剣に考えるべき課題だ。その問題があるがゆえに、ゴラン高原、昨年の五月来てくれと言われたけれども、何だかんだといって一年半近く待たせてしまった、その間どれだけ多くの迷惑をカナダにもかけたか。日本は本当に真剣にPKOに協力していくつもりかと疑う国もあった。  そういう状況を思いますと、今度ゴラン高原派遣に当たって、ゴラン高原派遣の決定がこんなにおくれると同時に、それを決めたときに、逆に今最も検討していただきたいPKF凍結解除は、当面行わないと与党三党で合意して、それを条件に辛うじてゴラン高原への派遣を決めた。一体何をなさっておられるのかな。  与党の合意ではありますが、社会党がそういう御主張をなさって決められたようでございます。社会党委員長としての総理、この与党の合意をそのまま受けとめて、PKF凍結解除は当面行わないということで、三年たってこのPKO法の検討をしていく時期に当たって、そのやさき、頭からこのPKF本体業務の凍結解除問題については検討しない、こういうことにしたのですか、どうなんですか。総理が所信表明でおっしゃったり、外務大臣が国連演説でおっしゃっていることとはまるで違うじゃありませんか。
  230. 河野洋平

    ○河野国務大臣 PKF、これもPKFという言葉が適当かどうかという問題はありますが、いわゆるPKF凍結解除という御指摘でございますが、これはPKFの凍結を解除するのは法律を修正しなければなりません。現行法で、法律で現在のPKO活動というものは決められているわけでございまして、PKFの凍結を解除するためには法律改正が必要でございます。  そうしたことであれば、政府としては、与党三党の合意といいますか、与党三党の御判断というものは当然のことながら極めて重要と考えなければならないと思います。  先般の与党三党の合意が、今日PKFの凍結解除はしないという合意であれば、政府としてはその意見を尊重するということになろうかと思います。
  231. 松田岩夫

    ○松田委員 当面、見直しの検討の課題には入らない、こういうことになりますか。——わかりました。残念なことでございます。ぜひ我が新進党、しっかりと検討させていただきたく思い、また、検討の結果を御提言申し上げたいと存じます。  三年がたちましたので、ぜひあらゆる課題について検討をしていただきたい。ゴラン高原派遣のためにそういうお約束を与党がなさったということ自身、まことに私は残念でなりません。ぜひそれを乗り越えて、政府におかれては検討は続けていただきたい、そのことを申し上げておきます。  ところで、今のPKF、総理、このPKO法を三年前議論したときは社会党は審議拒否をされたと記憶しておりますが、このPKFを凍結した理由を総理はどう理解しておられますか。どうしてこれを凍結したのですか。総理はどう理解しておられますか。
  232. 村山富市

    村山内閣総理大臣 PKFの本体業務につきましては、当時議論をされた背景には、湾岸戦争というようなものもございまして、そういう背景の中でいろいろな意見があって、そしてそのPKFの本体業務については凍結するということに決まったんだというように思いますから、そういう背景の中で議論をされた結論だというふうに私は理解をいたしております。
  233. 松田岩夫

    ○松田委員 PKF本体業務というのはまさに日本の、PKFそのものが日本語でございますが、典型的なPKO活動そのものでございますから、いわゆる、例えば明石先輩がこの国連のPKO活動について三つの類型が出てきた、最初に生まれたのがこのPKOだ、典型的なPKOだ。我がPKO法はこの典型的なPKO、国連の明石さんが言う典型的なPKOを実現すべくできておるわけでございますから、そのまさに本体がこの我々が言うPKF本体業務でございますから、典型的な、まさに教科書的なPKO活動そのものをやろうというのがあのPKO法でございます。  その後、カンボジアに出ましたね。カンボジアはまさに戦争が終わった後、民主的な社会をつくり上げるまでの包括的な平和のプロセスを国連が取り上げた、PKOで取り上げた。新しいタイプだと言えば新しいタイプでしょう。これを二つのタイプとおっしゃっておられました。  三つ目のタイプが、まだ停戦ができないけれども、事前に人道的な見地からある程度の強制力を持って参加していく。これがソマリアだ、ボスニアの経験だ。ガリさんはこれを平和執行部隊などとして提案をされておられましたが、こういうやり方は少し行き過ぎだったかなと国連も反省をしておられる方が多いです、ガリさん自身もそうですが。  私も、そこまでは国連の現在の実力からすると無理かなと思っておりますが、しかし、我が国が三年前に決めましたPKO法というのは、まさに明石さんの言う典型的なPKO活動そのものができるような法律でございまして、その中の業務がPKF本体業務ということで凍結になっておる。PKO活動を本当に積極的にやっていこうといたしますと、まことに残念な凍結でございますということを重ねて申し上げて、ぜひ政府におかれて、与党三党は凍結の解除を当分行わないと申し合わされたそうでありますが、その当分は一日か二日ということはない。それはともかく、ぜひ御検討を続けていただきたいと思います。  同時にもう一点。武器使用の問題でございます。  現在は、皆さん御存じのように、みずからの安全保持のため、自衛隊員個々人が必要と判断した場合のみ可能、こうなっておるわけでございます。ちょうど、ここに持ってきませんでしたけれども、本年版の防衛白書にもこの点が取り上げてあります。「個々の隊員の判断によるものとされている武器使用について、隊員の心理的負担が大きかった」、大きかったとわざわざ指摘されておるわけであります。このことは御存じでございますね、総理。PKO活動に参加してくださる自衛隊員の皆さんのことを思えば思うほど、この点は真剣に検討してあげねばならぬと私は思います。  この白書に載せるに当たってもいろいろ議論があったそうでございますが、自衛隊部隊指揮官の強い要望があってここに載せた、こういうことでございます。指揮官の立場に立ては当然だと思うし、我々にかわって行っていただく自衛隊の皆さんのことを思うと、この武器の使用の現在の規定は少なくとも見直しの対象にして、しっかりと検討していただきたく思いますが、この点はどうですか、総理。
  234. 衛藤征士郎

    ○衛藤国務大臣 松田委員にお答えを申し上げます。  委員御指摘のように、私もPKO法見直し一つ問題点といたしまして、武器使用のあり方が問題になってくると思います。  いずれにいたしましても、私どもといたしましては、国会等における議論を十分に踏まえながら、現行法のもとでの運用の問題として措置できるか、あるいは委員御指摘のように現行法を見直す必要があるか、そういうところも視野に入れまして、いずれにいたしましても国会議論を慎重に見守り、また対応してまいりたい、かように考えております。
  235. 松田岩夫

    ○松田委員 三年がたちました。我が国として国際貢献をしていかなきゃならぬ、総理がいつもおっしゃいます。その一つの重要な分野でございます。これまでの三年間の経験、今度のゴラン高原、そしてPKO法上の活動として過去の三つ、これまでの経験を生かしてぜひ立派に、さらに我々の国連平和維持活動が行えますように慎重な御検討、積極的な御検討、果敢な御検討を心からお祈りしておきます。  次いで北朝鮮問題、特に米支援問題についてお聞きをいたします。  これも新聞報道しか私もありませんけれども、北朝鮮の全容淳労働党書記、これは「マル」という雑誌でも読んだのですが、日本訳を読まさせてもらったのですが、日本の米は謝罪の献上米だという発言がこの雑誌に載っているわけであります。一体これは御本人の、全容淳さんは北朝鮮の労働党書記という方だと存じますが、この真相は何なんですか。外務大臣、どんなふうに御理解なさっておられますか。
  236. 河野洋平

    ○河野国務大臣 北朝鮮から、食糧難という状況にかんがみて、人道的見地から米の支援を言ってまいりました。これは与党に対してそういう話が参りまして、与党から政府にそうした話が取り次がれまして、政府といたしましても人道上の見地から、この北からの米支援の求めに応じたわけでございます。  ところが、その後、今お話しの雑誌にこの記事が出まして、その記事を読みますと、あの米は人道的支援でもらったものではないと言われるような記事でございました。  そこで、こうした記事が事実であるとすれば、人道的支援と考えて行ったことは意味のないことでございますから、追加支援の求めがあってもこれは応じられないということを申しましたところ、与党を通じて連絡がございまして、先方より、あの記事は真意を伝えていない、日本からの支援は日本の好意によるものであったという意味の、ちょっとこれは正確ではありませんが、そういう意味の手紙が与党に対して送られてきたということがございまして、その事実を私どもといたしましても与党から確認をされましたので、引き続きの追加支援を行ったところでございます。  すなわち、今お話しの雑誌の記事につきましては、先方からそうした気持ちではないという趣旨の連絡が入っているということでございます。
  237. 松田岩夫

    ○松田委員 与党のどなたかに来られたことなんで、それを見たいといってもこれは政府の方にはないわけですね。与党で聞かれて与党がそう判断されて、外務省としてはそれを信ずる以外にない、こういう立場なんですね。わかります。  例えば韓国の金太智駐日大使、これは去る九月二十日ですが、東京のホテルで講演されて、既に、九月二十日といいますと与党は米第二次支援、追加支援を決めていたときで、決めた後でございますが、日本は北朝鮮の全容淳書記の発言について「解明されたとしているが、全容淳書記の返事の内容をみれば、まだまだ問題がある」、こう言っておられるのです。これは公開の講演でございます。もちろん、韓国大使の話ですので、日本の政府の要人の話ではありませんけれども。  同時に、もう一点気になるのは、その上で、「やってはならないとは言っていないが、日本と韓国の協調関係があるわけだから、韓国からみても納得のいく形でやってほしい」、この後段の部分、これも非常に大事なポイントなんです、これ、ちょっと後でまた取り上げますけれども。この金太智駐日大使という方が、「全容淳書記の返事の内容をみれば、まだまだ問題がある」、こうおっしゃっておられるわけであります。  外務大臣、政党間でいろいろお話し合い、交流があって、いろんな議論をされる、結構でございます。しかし、米支援というのは政府がなさるわけでありましょう。  で、一方、この全容淳労働党書記、この方は北朝鮮においてはしかるべき方だと私は理解しております。その方が、私からすれば幾ら何でもと思う発言をこの「マル」という雑誌の中でインタビューで述べておられる。そして、このインタビュアーの在米韓国人牧師チョン・ギョルさん、その後、いや実際に全容淳さんからしっかり聞いた話をそのまま載せてあるんだ、また別にそういうことをおっしゃっておられる。  だれの話を信じたらいいのかわかりませんが、政府としてこの全容淳さんの発言はどう受けとめ、どう正確に、ただ与党の方のお話だけで済ませた、こういうことでございますか。それとも直接全容淳さんと——北朝鮮とはもちろん国交がありませんけれども、事務レベルの折衝は続けておられればこそ、こうして今、米支援も決まっていくわけであります。外務省は、ちゃんとパイプを持っておる、こうおっしゃっておられる。外務省のパイプでは、どういう確信が得られたんですか。あるいは全然外務省のルートを通じていないんですか。与党の方のおっしゃったことをそのままうのみにしているんですか、政府は。  信じていいということならば信じていいんですが、信じてはいけないという話があちこちから出ておるものですから、あえて申し上げておるわけでございます。
  238. 河野洋平

    ○河野国務大臣 議員もお話しになりましたように、我が国と北朝鮮との間には国交がございません。ということになれば、党が北朝鮮のしかるべき人との間に連絡をとるということは当然あってもいい、おかしくないことであろうと思います。  御案内のとおり、かつて日中関係をつないだ方々、先輩の努力を考えますと、今日、与党の方々が北朝鮮労働党のしかるべきレベルの方とお話し合いをされるということは、あってもいいと私は思っております。しかも、それが高いレベル、それなりに与党三党の方々も先方を確認しつつ話し合いをして糸口をつけられたわけでございまして、その糸口からこの米支援の問題についても話が行き来、やりとりがあっているわけで、今お話しの発言、雑誌の問題についても、そうした窓口を通して真意が確認をされたということであれば、我々もその窓口でのやりとりに信頼を置いてもよろしいかと思っているわけでございます。
  239. 松田岩夫

    ○松田委員 私は、外務省としてそれだけではなくて、外務省は外務省としてそれなりの折衝を続けておられるわけであります、国交はありませんけれども、まさに。  そこでお聞きするんですけれども、一体外務省は今どなたと折衝しておられるのか。報道によれば、朝鮮アジア太平洋平和委員会、朝鮮国際貿易促進委員会といった機関が出てくるわけでありますが、この北朝鮮の政府の組織図の中にはこれは入っていない。ないわけであります。ここが窓口だと。外務省の別所課長もこの方々と折衝しておられるとお聞きしております。  一体、これはいかなる団体なのか、いかなる機関なのか。政府機関なのか何なのか。その点はどうですか。
  240. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 委員長の御指名を得て、私から事実関係につき御説明申し上げます。  朝鮮アジア太平洋平和委員会、これは国交のない国々との関係促進を目的とする機関、それから国際貿易促進委員会、いわゆる国貿促、これも国交のない西側諸国との貿易を目的とする機関でございまして、いずれも政府機関ではございません。
  241. 松田岩夫

    ○松田委員 政府機関ではないが、政府のどの部局の監督下にあるのですか。あるいは、どういう組織ですか。
  242. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 その点についての情報でございますけれども、朝鮮アジア太平洋平和委員会の方は、委員長が、先ほど委員御指摘になられました全容淳党書記でございます。それから、国際貿易促進委員会、国貿促の方は、李成禄会長、超元明委員長、この両名がいわば座長役をしておりまして、これは、政府に当たる政務院の対外経済委員会の副委員長である人たちであるというふうに承知しております。
  243. 松田岩夫

    ○松田委員 そうすると、政府の対外経済委員会の指揮下にある機関、こういうことですか。  要するに私の聞きたいのは、政府が今こうして米支援、直接折衝に当たっているわけであります。そういう意味で、きちっとした政府の機関とやっておられるのかどうか、その点を確かめておるわけでございます。  党と党の外交ではもはやありません、今は。米支援の問題は、まさに、もう今度は二回目になるわけでありますが、政府がやるわけでございます。そういう意味でしっかりしておきたいわけでございますが、どういう機関で、政府の中ではどういう位置づけになっているのですか、今の答弁ではさっぱりわかりませんが。何の関係もない機関だということですか。
  244. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 引き続き事実関係に関する御質問でございますので私から御説明申し上げますが、むしろ国交がない状態でございますのでこういう両機関との接触が必要になっている、またそれが自然であるという流れにあるわけでございます。  人脈的には、先ほど申し上げましたように、全容淳党書記が朝鮮アジア太平洋平和委員会委員長であり、李成禄、この人は対外経済委員会の副委員長でございますが、この人たちが国貿促の方の座長役を務めている、こういう関係にございます。
  245. 松田岩夫

    ○松田委員 国交がありませんけれども、実際上北朝鮮を世界の中に入れて、できるだけ世界の国々と融和する中で北朝鮮との友好関係、それを図っていこう、この努力そのものは私は多としているわけでございます。しかし、そのやり方をしっかりしておきませんと、お互い外交であります、先方は先方で全く閉ざされた国でありますから、国民の目から見ますといろいろ疑義があってはいけません。そういう意味で、明確にしておいていただきたいということを申しておるわけであります。  そこで、今度の追加支援、非常に韓国からも、先ほど、金太智駐日大使が、南北間の対話——今、そういえば韓国の二次支援は決まったのですか、まだですね。日本だけが追加支援を決めた。先ほど、金太智駐日大使もその点について明確に不満を述べておられました。  先般、これもある新聞でございましたが、金泳三韓国大統領は「頭越し日朝接近に不満」を表明、まあ新聞社のその社長との対談ですから、これまたこれに完全に依拠してはいけませんけれども、しかし、金泳三大統領がこうおっしゃる気持ちは私はよくわかる気がするのです。  今度の米追加支援につきましても、韓国がまだ南北対話を十分できないままで、韓国さえまだ決めていない、いろいろ問題があって決めていない中で日本が先にそれを決める。むしろ私は、韓国が決められ、韓国からの、まあ御依頼と言うと言い過ぎかもしれませんが、韓国から日本もひとつ頼むよねという感じで北朝鮮に支援をさせていただくような関係、ちょっと行き過ぎているかもしれませんが、そんな気分の関係をつくり上げていくことが朝鮮半島と日本との間でいい行き方ではないか。  私はそういうふうに思っておるものですから、余計今度の米追加支援、金泳三大統領がそこまではっきり不満を述べられてしまったか、ああまずかったな、そういう思いをして、実は今度の第二次米支援については私は受けとめておるわけであります。韓国を孤立化させようという北朝鮮の手に乗ってしまったな、外務大臣何していたの、総理何していたんだ、ちょっときつかったかもしれませんが、私はそう思わさせていただいたわけであります。いかがでしょう。
  246. 河野洋平

    ○河野国務大臣 朝鮮半島のいろいろな事柄については、我々も極めて慎重に、それから十分に、できる限りの気配りをする必要があるというふうに基本的に考えております。それは、今議員がお話しになりましたように、韓国と我が国との関係というものを考えますれば、さまざまな事柄についてできるだけ入念に韓国に対しては連絡をとる、また韓国からも連絡をいただくということを大事なことと考えております。  今後の我が国の作業に当たりましては、十分韓国とさらに入念に連絡をとりたい、こう考えております。
  247. 松田岩夫

    ○松田委員 ぜひそうしていただきたく思いますと同時に、さらに、言うまでもありませんけれども、今北朝鮮に対しましては、いわゆるKEDOということで、アメリカ、日本、韓国、三国一緒になってやっておるわけです。原子炉の撤去問題というのもあります。こういったことも横ににらみながら北朝鮮との折衝は続けていくべき事柄であります。  そういうことから思いますと、この前の総理の所信表明、前二回、ことし一月、昨年七月の演説内容とを見ると、北朝鮮の核開発問題について少し認識が甘くなっていないかなと心配をいたすほど差があったわけでありまして、私の読み過ぎかもしれませんが、北朝鮮の核開発に対します我々の意識というものはいつもしっかりしたものを持っていないといけない。そういったこともぜひ、きょうは与党の方もおられます。与党の方もしっかりそういった点も対応してやっていただきたいと思います。  最後に、もう時間が切れてしまいましたけれども、フランス、中国の核実験についてでありますが、一つは、武村蔵相、個人の資格ということだそうでありますけれども、先ほど閣僚の言動についていろいろありました。桜井大臣発言をした、あれは桜井個人の発言だということでは許されません。先ほど、あれは島村文部大臣の個人の発言だ、そんなことで許されるものじゃありません。  閣僚たる者の言動は、公と私というものがそんなに簡単に分けられるのかなということについては、今こういった政治改革とかそういったことが問われておるときでありまして、そういう意味でも私は厳密に考えておく必要があるなと思う一人でございますので、現職閣僚が時によって私人に変更可能だというような考え方は今後おとりにならない方がいいのではないか。それでは責任のけじめがなくなってしまいますし、また、例えば外国に行かれたときに、外国の方は武村蔵相がお見えになればまさに蔵相がお見えになったとみんな報道しているわけですし、そう見ているわけでございます。  そういう意味で、今回の武村蔵相のタヒチでの抗議集会参加というのは、私は、核実験反対に対する思いはまさに同じ思いでございますけれども、行動の仕方として問題であったなというふうに思う一人でございます。  河野外務大臣記者会見で、最近、フランス政府は批判を強めているが、武村蔵相のタヒチ旅行及びその後の発言は、あくまでも一政治家としての行動、発言であり、政府の見解や立場を反映するものではない、わざわざこういうことを発言しなければならぬ、こういうことになるわけであります。蔵相としてはまことに外務大臣に申しわけないことをしたな、こういうことだと思いますが、さらに河野外務大臣は「私は外相として、ああした行動はとらない。わが国の核実験反対に対する考え方は国連の場、国際会議の場、あるいは二国間で正式の場で伝えることが、外交権を持つ外相として当然のことだ」と武村蔵相の行動を述べておられます。  さて、最後になってしまいましたが、武村蔵相並びに外務大臣、武村蔵相には御自分の行動について、外務大臣には武村蔵相のとられた行動について御質問を申し上げて、私の質問を終わります。
  248. 武村正義

    ○武村国務大臣 閣僚にもいろいろな顔があるといいますか、まず一人間でありますから、眠る時間、食事の時間、あるいは私人としてのさまざまなつき合いの時間があります。次いで政治家としての時間がございます。私は党の代表も兼ねておりますから、毎日のように新聞記者、さきがけの議員にもいろいろな質問を受けて、さきがけの代表としてインタビューに答えざるを得ない状況が続いておりますし、したがって、ここでも党首としての意見はどうだとたびたび新進党からも御質問を受けるのも、これは閣僚ではありません。そして閣僚としての立場。時間帯を厳密に区切るわけではありませんが、そういう意味で公私の区別といいますか、閣僚の立場で行動するときと閣僚でない行動、言動と分けなければならない現実であります。  今回は、いろいろ御批判、御意見もございましたが、最終的には閣議の御了解をいただき、臨時大臣を置いていただいて、私的な行動として、みずからの経費で週末を主としてタヒチに行き、この核実験反対の行動に参加してきたものであります。  過去も調べてみますと、かなりの回数、こういう公務によらない私的な旅行として十数人の閣僚が、公私峻別した形の海外への旅行をされていることもあるわけでございまして、私は、みずから公私を峻別しながら今回は行動したものであるというものであります。
  249. 河野洋平

    ○河野国務大臣 武村大蔵大臣の行動につきましては、九月十二日、私は記者会見で考えを申し上げておるとおりでございます。  すなわち、それは私的な問題であって、ただ、私的な行動、発言であっても誤解を生むおそれがございますから、この発言、行動は政府の考えを反映したものではありませんということを申し上げた次第でございます。
  250. 松田岩夫

    ○松田委員 終わります。
  251. 上原康助

    上原委員長 これにて松田君の質疑は終了いたしました。  次に、冬柴鐵三君。
  252. 冬柴鐵三

    冬柴委員 新進党の冬柴鐵三でございます。  昨年の十月十二日、全くきょうと同じ日ですが、やはりこの予算委員会で信教の自由と政教分離について主に大出内閣法制局長官との間で質疑をさせていただいた。きょうまた同じような問題をここで同じ日に聞かせていただく、何か不思議な感じもいたしますが、いずれにいたしましても、ことしは終戦五十年という節目の年に当たります。  あの敗戦によりまして完全に葬り去られたはずの宗教団体法、悪名高い法律でございますが、宗教団体法を中心とする宗教法制と、文部省宗務官僚の管理監督による宗教支配が再びよみがえろうとしているのではないか、そんな感じを私は受けるわけでございます。敗戦前七十年余にわたって我が国を支配した宗教行政は、今日の新憲法下における宗教行政のまさに対極にあることを忘れてはならないと思うわけでございます。  戦前の国家による宗教への統制支配は、国民から思想、信条という内心の自由を完全に奪い去ってしまいました。そして、国民が一人の人間として尊重されることのない、ゆがんだ社会をつくってしまったわけでございます。  教育によって国家神道の教義を教え込まれた青年たちは、国家の命ずるがままに、心ならずもアジア諸国民の前に侵略の加害者の手足とされて立ちあらわれなければならなかった。あるいは特攻隊員として海の藻くすと散った人、また昨日もここで沖縄の豊見城の海軍ごうのお話が出ましたけれども、神州不滅を叫びながら玉砕し、若い血が多数流されてしまったのであります。  私たちはこの民族悲劇の歴史を永久に忘れてはならない、このように思うわけであります。私は、この悲劇に戦前の宗教行政、宗教法制が大きな役割を果たしたということ、その認識も忘れてはならないと思っているわけでございます。  まず、村山総理、この戦前の宗教法制あるいは行政とこのような民族の悲劇との関係についてどのように認識をしていらっしゃいますか、冒頭でありますが、一言御所見をいただきたい。また、所管の島村文部大臣からも、同様の点について一言お答えをいただきたいと思います。
  253. 村山富市

    村山内閣総理大臣 今委員から御発言もございましたように、戦争を遂行するというこの大義の前に、宗教についても、神道だけが国家神道として保障されて、そして、それ以外の宗教については、公衆の安寧秩序に反するものについてはすべて認めないという強権的な束縛の中にあったというふうに言わなければならぬと思います。
  254. 島村宜伸

    島村国務大臣 戦前の宗教弾圧につきましては、極めて異常な社会環境の中で大変好ましくないいわば弾圧があり、いわば信仰の自由というものがいろんな角度から制約を受けたということについては大いに反省あるべきだ。また、そのことから戦後、いわば性善説に立った現行の宗教法人法ができた、こう承知いたしております。
  255. 冬柴鐵三

    冬柴委員 そこで、今般のオウム真理教をめぐる事件が広く報道をされました。これに符節して宗教法人審議会宗教法人制度をめぐる検討を行ったために、かつてない規模でこの問題について世論の高まりが見られています。  しかし、これらの問題は、憲法に定める、言うまでもなく信教の自由あるいは政教分離の原則にかかわる極めて重要な事柄でございます。したがいまして、冷静かっ慎重に論議されるべきでありますし、その論議をする際に、基礎となる事項についてお互いに、正確な意義といいますか、そういうものを理解した上、それに立って論議をしなきゃならないというふうに思うわけであります。  そういう観点から、法制局長官に対して、信教の自由ということにつきまして、きょうもちょっと伺いたいと思います。  信教の自由まではみんな言うわけでございますけれども、講学上、その内容につきましては大体三つぐらい挙げられるのではないかと思います。一つは、信仰の自由であります。二つ目は、宗教行為の自由であります。そして三つ目が、宗教結社の自由であります。  このような三つの自由を含むとするのがあらゆる教科書を読んでみても通説のように感じられるわけでありますが、そのそれぞれについて少し詳しい御説明を長官からいただきたいということと、特に、自由、自由という言葉が出るわけでございますけれども、憲法上、この自由という言葉を使う場合に、その意味ですね、これについてもあわせてお教えをいただきたいと思います。よろしくお願いします。
  256. 大出峻郎

    ○大出政府委員 最初に、憲法の定める信教の自由の内容についてということに関連した御質問であったわけでありますが、憲法二十条で保障する信教の自由の内容としては、一般に、信仰の自由、宗教上の行為の自由、そして宗教上の結社の自由というようなものが含まれているというふうに理解をいたしておるところであります。  まず、そのうちの信仰の自由ということでありますが、一般的に申し上げますというと、信仰の自由とは、何らかの宗教を信仰しまたは信仰しない自由を意味しておるということだろうと思います。したがいまして、信仰を有する者に対して、その信仰の告白を強制すること、その信仰に反する行為を強制すること、信仰を有しない者に対して何らかの宗教を信仰するように強制することなどは許されないというふうに解されるところであります。  次に、宗教上の行為の自由ということに関連しての問題でありますが、これもまた一般的に申し上げますと、宗教上の行為の自由といいますのは、人がその信仰に基づいて、礼拝、祈祷など何らかの宗教的な行為を行い、または祝典、儀式、行事など何らかの行為に参加することの自由であるというふうに解されていると思います。また、これらの行為を行い、またはそれらに参加することを強制することは許されないとされているところであります。このことにつきましては、憲法第二十条の二項のところでは、「何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。」と規定をいたしているところでもあるわけであります。  それからもう一つは、宗教上の結社の自由ということでありますが、これもまた一般的に申し上げさせていただきますと、宗教上の結社の自由といいますのは、信仰を同じくする者が宗教団体を結成し活動することの自由、宗教団体に加入する自由などをいい、この中には宗教団体としての意思形成の自由というようなものも含まれているというふうに解されておるところだと思います。  以上が信教の自由の概略的な問題かと思いますけれども、もう一つお話のありました、いわゆる自由というのはどういう意味内容のものであるかということでありますが、これは一般的に申し上げますと、憲法では自由権というものが保障されているわけでありますが、この自由権といいますのは、国家権力の介入とか干渉を排除して自由を確保する、個人の自由を確保するという権利のことをいうと解されておるわけであります。  憲法における自由権的基本権の保障の規定といいますのは、基本的には国家権力あるいは公権力に対して国民の自由や平等を保障する、こういう趣旨のものと解されているところであります。国家ないし国家権力と個人という関係を規律するものであるというふうに考えておるところです。
  257. 冬柴鐵三

    冬柴委員 大変詳しく説明いただきましたが、先ほど信教を強制されない自由という説明のくだりで、そうだという御発言が後ろの方であったようでございますけれども、ここで言う自由という行為は、国家と国民の関係であるということを長官御説明いただきましたけれども、国家が個人に対して意思に反する信仰を強制してはならない、こういう趣旨でございまして、民民で、民間の人が民間の人に、強制はいけませんけれども、信仰を勧めることは何らこの憲法が排除するところではない、これはもう当然の話でございます。  そこで、信教の自由と一言に言っても、今るる説明をいただいたような大変たくさん、深い内容があることがよくわかりました。特に、宗教上結社の自由のところで、団体を設立し活動することの自由、すなわち、団体を設立することも国家から干渉されたり関与されたりはしないし、また、宗教活動する上においても国家が干渉したり介入したりはできないんだということの御説明でありましたし、また、団体がどのような意思を形成して活動していくかということも自由なんだということは、団体の中の意思形成手段としては、例えば多数決原理もありましょう、あるいは特定の人にその意思決定をゆだねるという場合もありましょう。  そういういろいろな方法は、その団体が自主的、自律的に定立すべきであって、これを国が、こうあらねばならない、民主的に定めなければならない、こういうようなことを強制することも、この信教の自由には若干違う、そういうように私は受け取ったわけでございますが、もう一度、例えば、団体でありますから、団体を集める中心的な目的といいますか、宗教団体であれば教義というものがあると思います。教義をどのように決定するかということも国から介入されないという意味で、教義決定の自由というのもこの宗教結社の自由の中には含まれていると思うわけでございますが、若干法律的なややこしい議論になってきましたけれども、法制局長官から、その点につきまして、今の宗教結社の自由について、特に意思形成の自由、それから教義決定の自由、そういうものについてのもうちょっと説明をいただきたいと思います。     〔委員長退席、三野委員長代理着席〕
  258. 大出峻郎

    ○大出政府委員 宗教あるいは宗教団体というものが教義というものを持って宗教活動をやる、これは宗教活動の一番中心的なものであろうかというふうに私は理解をいたしているところでございます。そういう意味の教義をどのように決定をするかということは、まさしく信教の自由の対象とされているところであるということであろうかと思います。  先ほど申し上げましたように、宗教団体はいろいろな活動をする、その場合の意思決定をみずから行うということも、これは自由の範囲内であるということであろうかと思います。
  259. 冬柴鐵三

    冬柴委員 これで明瞭になりましたけれども、意思決定は自由だということは、国家がそれに介入、関与してはならない、そういう趣旨であるということでございます。  さて、このような信教の自由を前提といたしまして、明治憲法ですね、大日本帝国憲法にも信教の自由は規定をされていたわけでございます。大日本帝国憲法第二十八条は、「日本臣民ハ安寧秩序ヲ妨ケス及臣民タルノ義務ニ背カサル限」「信教ノ自由ヲ有ス」、こういうような定め方をしておりました。ここに言っている「信教ノ自由ヲ有ス」という信教の自由は、今長官からるる御説明をいただいた内容と全く同じだというふうに思うわけでございます。  このような憲法があったにかかわらず、後で検討してまいりますけれども、戦前は、この旧憲法下におきましてはすさまじい宗教弾圧が行われたことは客観的事実でございます。なぜにこのような信教の自由が憲法に定められながらこういうことが行われたのか、その理論的な立て方といいますか、簡単にこの点は説明をいただきたいと思います。長官からよろしくお願いします。
  260. 大出峻郎

    ○大出政府委員 大日本帝国憲法、つまり旧憲法のことでありますが、旧憲法の第二十八条というところでは、「日本臣民ハ安寧秩序ヲ妨ケス及臣民タルノ義務ニ背カサル限ニ於テ信教ノ自由ヲ有ス」というふうに規定をいたし、「安寧秩序ヲ妨ケス及臣民タルノ義務ニ背カサル限ニ於テ」信教の自由を保障していたというのが旧憲法の規定であったと思います。それがどういうふうに運用されてきたかということにつきましては、私は詳細は承知しておりませんけれども、そういう、いわば制限のある形での信教の自由の保障であったということは言えると思います。
  261. 冬柴鐵三

    冬柴委員 さて、ではこの新しい、昭和二十二年制定の新憲法では二十条に、これはもう「信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。」もう直接的なんですね。先ほど読まれたように、条件がついていないわけでございます。  そうなると、この保障にはどう違いがあるのか。旧憲法であれば、こういうことをやれば安寧秩序を妨げるんだとか、こういう行為は臣民の義務に背いているという認定のもとに取り締まりができたわけですけれども、今回それ、条件全くないですね。そういたしますと、これはどう違うのか。  例えば、この信教の自由は、新日本国憲法下では条件がついていないために、法律に基づくといえども事前にこういうものを制限するようなことは許されないんだという説が多数であると私は思っております。私もその説をとりますが、長官はどうお考えですか。
  262. 大出峻郎

    ○大出政府委員 現行の憲法と、それから旧憲法の信教の自由に関する規定の、いわば違いということでありますが、先ほども申し上げましたように、旧憲法におきましては、信教の自由を保障する規定、先ほどの二十八条でありますけれども、を設けていたものの、その保障は「安寧秩序ヲ妨ケス及臣民タルノ義務ニ背カサル限ニ於テ」という限定がついておるというところが非常に特徴的なところであろうかと思います。二十八条の中にそれ自体制限を伴っていたという、そういう規定理念であったと思います。  これに対しまして現行の憲法は、旧憲法のようなそういう条件というものを付することなく信教の自由を保障することとし、さらにその保障を一層確実なものとするために政教分離規定というようなものも設けており、そうすることによって狭い意味での信教の自由というものを一層保障を充実させることにしておるというところに旧憲法との大きな違いがあるかと思います。  そこで、それでは信教の自由というものは制約があり得るのかどうかということに触れられた御質問であったかと思いますけれども、これは信教の自由のうち、信仰の自由の保障といいますのは、先ほど三つ挙げましたうちの一番最初の方ですが、信仰の自由の保障といいますのは、その内心の自由の性質上、思想、良心の自由と同様に、いわば絶対的な保障であるというふうに考えていいものではないかと思います。いわゆる内心の問題に立ち入り得ないということであろうかと思います。したがいまして、信仰のゆえのみを理由としていかなる制約も受けない、こういうふうに解されているところであろうかと思います。  しかし、信仰に基づきまして、あるいは信仰に伴って、何らかの外部的な宗教上の行為がなされるような場合、いろいろな行為が外部にあらわれてくるような形の場合におきましては、その行為もそれ自体、原則としてはもちろん自由であるわけでありますが、その行為があるいは他人の権利、自由などに対して何らかの害悪を及ぼすというようなことなどがあった場合には、公共の福祉によるところの制限をおのずから受けることはあり得るということであろうかと思います。
  263. 冬柴鐵三

    冬柴委員 最後部分につきましては、加持祈祷とかあるいはそういうことで病気を治す機会を逸してしまうというような場合に、これはまた別の法律で取り締まりの対象になるという、判決例等でその考え方はよく示されているところでございますけれども、原則として、今言いましたように、明治憲法のような制限のつかない今日の新日本国憲法下においては、この信教の自由というものはあらかじめ制限することはできないと言われているのが大多数の考え方である、私はそのように解しているわけでございますし、今の法制局長官の御答弁も、外部にあらわれた行為が他の法律その他に抵触する場合には、それはもう当然の話であるということだと思います。  そこで、旧憲法下の宗教法制についてちょっと見てまいりたいわけですが、旧憲法下では、この憲法第一条に「大日本帝国八万世一系ノ天皇之ヲ統治ス」というふうに定め、三条では「天皇ハ神聖ニシテ侵スヘカラス」というふうに定めておりまして、いわゆる神ながらの道、天皇主権を高揚したわけでございます。国家神道は、皇祖皇宗歴代天皇の神霊と地蔵を祭る道として、日本臣民ひとしく崇敬すべきものだとされてきたわけでございます。  したがって、日本臣民である以上は、どのような他宗教を信仰していようとも、神社の参詣あるいは神宮大麻、これは神札でございます、これを受けることを強要される歴史がありました。国家から強要される。国家から、どんな宗教を信仰していても、臣民の義務として神社とかに参詣したりする必要があるんだというふうにしたわけでありまして、まさにこれが臣民の義務だと、こういうふうに言われたわけでございます。  これが新憲法では当然許されないことは明らかでございましょう。  また、教義への介入の問題として、いろいろな宗教、国家神道以外の宗教につきましては、ここのところがいかぬ、あそこのところがいかぬということで、それを直せというような、今から七百年も前の鎌倉時代の宗祖が述べた述作についても、その削除とか変更を国家権力が求めた、強要したという歴史も残されております。  それから、日本の国は、まさに非常に宗教、宗派というものが多岐にわたっておりまして、仏教だけでも十三宗五十六派というふうに分かれていたわけでございますが、これでは宗教行政を行う上において、統制が非常にできにくいということで、一宗祖について一つの派にまとまれ、宗教合同というような強要がされた歴史もあります。  また、キリスト教も、随分いろいろな、新教、旧教だけではなしに、その中にも、いろいろな考え方によって、教義によって分かれていたわけですが、新教は新教、旧教は旧教でまとまれ、一つにしないともう宗教行政がややこしくて仕方がないということでまとまらせる、統合を強要したという歴史も残されております。これも、現在の憲法から見れば大変荒っぽい話でございますけれども、現に行われました。  それから、宗教界への戦争遂行くの協力要請を国家がしたことは、歴史的に残されております。  また、小学校や中学校で神道教育が行われたことも、私も、小学校三年生までは戦前でございましたから、奉安殿に向かって敬礼を毎朝した記憶がございます。  また、国家神道に対する公費の支出も行われました。  こういういろいろなことが行われたわけでございますけれども、大変たくさん言いましたが、これは文部省からで結構ですが、歴史的事実として典型的な一、二を挙げて説明をいただきたいと思います。
  264. 小野元之

    小野(元)政府委員 お答えを申し上げます。  戦前でございますが、私どもの戦前の制度でございますので、資料等きっちり残っておりません。したがって、いろいろな資料で調査した結果を御答弁するということでお許しいただきたいと思います。  まず、当時、神社神道は、諸神を祭祀するため国家みずからが設営した国家の宗祀ということになっておりました。そんなことで、宗教ではないということで考えられていたわけでございます。したがって、お話ございましたように、神社への参詣、神宮大麻を受けるといったことは愛国心のあらわれであるというふうに考えられておりまして、義務教育課程では神道教育が行われたものというふうに理解をいたしております。  それから、先ほどから御論議ございましたように、当時の大日本帝国憲法第二十八条で規定されておりました信教の自由は、臣民たるの義務に反しない限りという制限下で認められておったものでございます。そんなこともございまして、挙国一致の戦時体制を思想的に翼賛するというような目的でもって、お尋ねございました、教義の変更でございますとか削除の強要あるいは宗派、教団統合の強要、戦争遂行くの協力を求めるといったようなことも行われてきたものというふうに考えておるところでございます。
  265. 冬柴鐵三

    冬柴委員 簡単にと言ったから簡単なんですが、一つ、戦争協力の問題でございますけれども、昭和十八年九月ですから戦争も相当な時期に差しかかっていたときですが、当時の文部省は、神仏基三教連合して財団法人大日本戦時宗教報国会、こういうものを設立をいたしまして、時の文部大臣部長景氏がその会長に就任をいたしております。そして、これが文部省と表裏一体となって聖戦完遂という思想統一に、物資窮乏にあえぐ国民に対してそういう精神統一というものを非常に強制をされた、こういう事実が残っております。  また、被徴用者、赤紙が来た人に対する宗教的な教化、あるいは植民地や占領地の住民の宣撫、そういうようなこと、あるいは海外で、神社を植民地にもつくってあるわけですが、そういうところに対する神社参詣を、朝鮮半島の方々あるいは台湾の方々、遠く今のシンガポールですね、昭南島あたりについても神社がつくられて、そこの住民についてそういう行為、神社参詣が強制されたという事実が残されているわけでございます。間違いないですね、その点。ちょっと確認だけ。勝手に言っているわけでありますから。
  266. 小野元之

    小野(元)政府委員 先ほども答弁申し上げましたように、当時の考え方として、学校でもいろいろ義務教育課程で神道教育を行ったということもございますし、神社への参詣等もある程度強くそういうことを実施をしていたということはあると思っております。
  267. 冬柴鐵三

    冬柴委員 そういうような雰囲気の中でございますけれども、昭和十五年四月に宗教団体法が施行されております。このときの審議録をちょっと読んでみたのですが、貴族院で、当時の内閣総理大臣は平沼騏一郎首相ですね、その御発言が残されております。  どういうふうに言われたかといいますと、「宗教ヲシテ真ニ其ノ」「機能ヲ発揮セシメマスルニハ、固ヨリ之ガ保護監督ヲ必要ト致スノデゴザイマス、」「何レノ宗教ニ致シマシテモ、」「我ガ国体観念ニ融合シナケレバナラヌト云フコトハ、是ハ申ス迄モナイコトデゴザイマス、我ガ皇道精神ニ反スルコトハ出来ナイノミナラズ、宗教ニ依ッテ我ガ国体観念、我ガ皇道精神ヲ涵養スルト云フコトガ、日本ニ行ハル、宗教トシテハ最モ」「大事ナコトデアルト考ヘルノデアリマス、」「宗教ノ横道ニ走ルト云フコトハ是ハ防止シナケレバナラヌガ、之ガ為ニハ、之ニ対シテ監督ヲ加ヘルコトガ必要デアラウト思ヒマス、」こういうふうに当時貴族院で述べられた議事録が残っております。若干途中抜かしたところがあります。  また、荒木貞夫文部大臣は、神ながらの道にたがう宗教は日本では存在を許されない、このようなこともおっしゃっています。  そしてまた、松尾長造という文部省宗教局長、この発言は随分傲岸だなというふうに思います。こういうことを言っています。「若シモ宗教団体或ハ教師等ガ、教義ノ上カラ我ガ国ニ於テ神社参拝ヲ拒ムヤウナ、或ハ人ヲ参拝サセナイヤウナ若シモサウ云フ不料簡ナ真似ヲスルヤウデゴザイマスレバ、ソレハ明カニ安寧秩序ヲ紊ス者デアル、少ク共公益ヲ害スルト云ッタヤウナコトニ相成ラウカト存ジマスルノデ、其ノ点ハ一ツ厳ニ本法ニ体ッテ」すなわち宗教団体法ですが、「律シテ行キタイ、斯ウ考ヘテ居リマス、」このようなことを述べていられるのですが、これもちょっと確認をしていただきたいと思います。
  268. 小野元之

    小野(元)政府委員 お答えを申し上げます。  昭和十四年に宗教団体法案が提案されたわけでございますけれども、その後、宗教団体法案理由書におきましては、法案の提出理由を、宗教団体の地位及びこれに対する保護監督の関係を明確ならしめ、その健全なる発達並びに教化機能の増進を図る等のためだというようなことで提案がなされております。おおむね先生のおっしゃられたとおりだと思います。
  269. 冬柴鐵三

    冬柴委員 文部大臣、今私読み上げましたこれは戦前のあれですから。しかしそこに、この宗教団体法に盛られている精神というのがもう端的に述べられていたと思うのですね。まあ今回どうなるかわかりませんけれども、戦後の宗教法人法に何かされるとかなんとか言っていられるから聞くんですけれども、この戦前の団体法の、今、内閣総理大臣、それから文部官僚が述べた言葉を、ほぼ間違いないということをおっしゃいました。そういうものを通じて団体法がどんな性格の法律だったか、それをどういうふうに受け取られましたか。ちょっと一言御答弁をいただきたいと思います。
  270. 島村宜伸

    島村国務大臣 私は宗教家でございませんから、宗教がどういう成り立ちで教義が設けられたり、どういう形でまた御本尊が選ばれたりするかよくわかりませんが、ただ私は、昔から神信心というのは必要だ、仏様をいわば信仰するというのは非常にいいことだと思っておる人間の一人でございまして、私は、それをどういう形でなければいけないとか、こういう形は許せないとか、通常のいわば宗教活動に対して制約を受けるというのは、そもそも我々がいつも享受しておりますこの自由主義、民主主義に反する、そう考えております。
  271. 冬柴鐵三

    冬柴委員 ちょっとぴったり答弁がこなかった。私が聞いたのは、宗教団体法の性格、立法理由の説明がありましたので、その性格はこの答弁なり発言からどういうふうに見られたか、その点について、よろしいでしょうか、文部大臣のお考え、所見をお尋ねしたかったんです、所見を。
  272. 島村宜伸

    島村国務大臣 どうも少しく的が、御期待にこたえてなかったかもしれませんが、私が申し上げたのは、戦時中のこの宗教に対する法律をどういうふうに感ずるか、こういうことでございますから、感じたままを申し上げて、要するに、本来的な信教の自由というものを否定して、むしろ国家の目的とか国家の方針そのものが先にありき、こういうふうに感じたことを申し上げたわけであります。
  273. 冬柴鐵三

    冬柴委員 じゃ、文化庁から、宗教団体法の目的ですね、端的にどういうことで、どういうことを眼目にしてつくられた法律なのか、その点をちょっとお述べいただきたいと思います。
  274. 小野元之

    小野(元)政府委員 お答え申し上げます。  戦前の宗教団体法でございますが、先ほど申し上げましたように、提出理由についても申し上げましたけれども宗教団体の地位とこれに対する保護監督の関係を明確ならしめる、そしてその健全なる発達及び教化機能の増進を図るというふうに提案理由では言っておられるわけでございます。  なお、この規定、宗教団体法におきましては、設立につきましても、宗教団体となるための認可、それから寺院以外は法人となるための認可も必要であったわけでございます。それから監督につきましても、一つの例示でございますが、宗教団体または教師の行う宗教教義の宣布、儀式の執行、宗教上の行事等が安寧秩序を妨げ、または臣民の義務に背くとき主務大臣はこれを制限、禁止等し、または設立認可を取り消すことができるというような規定もございました。監督規定といいますか、かなり監督の性質の強い法律であったというふうに考えております。
  275. 冬柴鐵三

    冬柴委員 私も、今文化庁次長が立法理由、説明されたような理解をいたしております。  なお、いろんな活動の制限、禁止、認可取り消しとかいうことが先ほど述べられましたけれども、これに従わない人に対しては六月以下の懲役もしくは禁錮とか、そういう相当、我々考えられない重い罰則がそれにもつけられておりまして、コントロールとサポート、保護と監督、こうおっしゃいました。まさに戦前の団体法は、国家が宗教をコントロールする、そしてまたサポートする、こういう、助長したりあるいは監督をしたりという法体系だったと理解できるわけでございます。  さて、こういう管理監督権というものを持った宗教行政、どんなものだったかということを若干聞いておきたいんですが、そういうふうに文部省がコントロールしようと思っても、なかなか宗教的信念というものを曲げない人がいられまして、みずからの教義に殉じた、殉教した人もたくさん出たわけですね。それで、そういう、殉教までいかなくても、七年も八年も未決勾留、ほうり込まれて、そして終戦を迎えた人もたくさんいますし、もちろん中で獄死した人もたくさんいるわけですが、私はこの宗教法人ということを考える上において、我々、この民族、この事実から目をそらすことはできないんじゃないか。これはわずか五十年前ですよ、今から。五十年前にこの国で行われたことなんです。  そのことについて、文化庁からで結構ですが、典型的事例で結構です、時間もありませんので。皇道大本教、昭和十年。それからひとのみち、昭和十一年。天理ほんみち、十三年。創価教育学会、十八年。そのうち、ひとのみちは結構ですから、大本教とほんみちと創価学会、この三つについて具体的にどんなことが行われたのか、ちょっと皆さんにわかっていただける程度に説明していただきたい。そして、できれば法務省もよく聞いていただいて、補足するところがあれば補足していただきたいと思います。     〔三野委員長代理退席、委員長着席〕
  276. 小野元之

    小野(元)政府委員 戦前の事件でございまして、これらの件につきまして私ども文部省に資料が残っているわけではございません。したがいまして、各種の著作物とか資料といったものを参考にして調べたものでありますことをお許しいただきたいと存じます。  まず第一点の、戦前の昭和十年の皇道大本の事件でございます。  これは、昭和十年十二月八日に、内務省が皇道大本の綾部と亀岡の本部などの家宅捜査を行った、そして出口王仁三郎氏らが当日……(「ワニサブロウ」と呼ぶ者あり)一応私の資料ではオニサブロウとなってございますが、当日検挙された事件を指すものと思われます。ただこれは、治安維持法違反、それから旧刑法におきます不敬罪によって起訴され、有罪とされたというふうに伺っているところでございます。  それから次に、昭和十三年の天理ほんみちの事件でございます。  これは、昭和十三年十一月に、天理研究会の大西愛治郎氏の運動が国体観念の変革を意図しているということで、大西愛治郎氏らが検挙された事件というふうに理解をしております。この事件も、治安維持法違反及び旧刑法の不敬罪によって起訴され、有罪とされたというふうに理解しているところでございます。  それから次に、昭和十八年の創価教育学会の事件でございます。  これは、昭和十八年六月から七月にかけまして、牧口常三郎氏、戸田城聖氏らが、旧刑法の不敬罪、治安維持法違反の容疑で逮捕された事件でございます。この事件では、予審の結果、牧口氏ら三名が起訴されたというふうに聞いているわけでございますが、牧口氏は拘置所の中で死去された、戸田氏には有罪の判決が下ったというふうに聞いているところでございます。
  277. 則定衛

    ○則定政府委員 事件の概要ということにおきましては、今文化庁の方から説明がございましたので、あえて補足することはございませんが、多分お尋ねの趣旨は、総体的にどの程度検挙されたのかということかと思います。  私どもも、この関係につきましては大変古いことでございますので、手元にある持ち合わせております資料によりますと、お尋ねの皇道大本教につきましては、治安維持法違反及び不敬罪で、昭和十八年までの累計でございますけれども、九百八十名が検挙された。それから、天理ほんみちの関係におきましては、やはり同じ罪名で三百八十名が検挙された。それから、創価教育学会につきましては十一名が検挙されたということを明らかにする資料は持っております。  以上でございます。
  278. 冬柴鐵三

    冬柴委員 大体概計ちょっとあったと思うんですが、今オウムが随分逮捕者が多いようですけれども、この大本教九百八十名の検挙というのは大変な人数でして、罪名が国体変革のおそれある、いわゆる天皇制を否定するおそれがあるというようなことで検挙されているわけです。十三年八月から、二十年十月に大赦で出ていますけれども、七年間以上拘束されているわけですね、たくさんの人が。  そして、ちょっと見過ごすことができないことは、大本教本部の全施設を司法の命令も何もなしに破壊してしまったというんですよ、破壊した。そういう文献残っています。どういう破壊の仕方をしたかというと、神殿の用材は、これをもう一遍使われてはいけないから短く切った、壊した上ですね。もう一度再建したらいかぬ。それから亀岡の、これは月宮殿というんですかね、これは石づくりだったらしいんですが、ダイナマイトで爆破してしまった、写真が残っていますよ、ダイナマイトで。それから、五万坪のあれですけれども、神苑の神木は伐採。それから、信者の墓石の中に、大本教からもらった何か資格みたいなものがあって戒名がついているのです。それを全部削り取ったというんですから、徹底しています。それから、石像の首は切り落とされた。そういうことまでしてこの宗教団体を圧殺しようとはかった。九百八十名。それから、八年間に及ぶ拘束ですね。  それから天理ほんみち、天理教も戦前から何回も何回も、教祖は十八回勾留されているんですね。最後は八十九歳になっても、非常に寒い冬だったようですけれども、薄べり一枚で拘束されて、ついに病死されるわけです。このほんみちというのも三百八十名やっていますけれども、二十年の十月にはGHQの命令で釈放されていますけれども、十三年十一月の検挙ですから、やっぱり七年間ぐらいですね。相当な拷問があったように書かれています。しかし、これに対しても、それをがえんずることなく最後まで頑張っだということが残されています。  また、創価教育学会は今の創価学会の前身でございますけれども、初代牧口、二代目戸田会長以下二十一名が逮捕されて、きょう十一名とおっしゃいましたが、これが十八年七月でしたけれども、翌年の十一月十八日には初代牧口会長は獄死をしておられるわけでございます。戸田会長は二十年七月三日に仮釈放をされておりますけれども、すぐ終戦でございますが、この罪名が何だといったら、本尊以外の神仏に対する信仰、礼拝を拒否した、それから神宮の神札を受けることを潔しとしなかったということがこのような弾圧の犯罪事実でございます。  したがって、こういうすさまじい宗教弾圧がこの国でつい半世紀前に行われてきたという事実を抜きにして、こういう問題を軽々には考えられないと私は思うわけであります。  文部大臣から、ただいま文化庁次長が説明され、また法務省が補足された国家による宗教弾圧、この歴史についてどんなような気持ちでお聞きになったのか、また、このような恥ずべき歴史に、戦前ですからもう違うかもわからぬけれども文部省が深く関与したということについてどのような反省の念等を持たれるか、反省と言ったらちょっと違うかもわからぬけれども文部大臣としての御所見を伺っておきたいと思います。
  279. 島村宜伸

    島村国務大臣 今まで述べられたこと、それから戦前のいわば宗教弾圧のむごさ、厳しさ、あってはならないという考え方については、あなたと全く同じ考えであります。
  280. 冬柴鐵三

    冬柴委員 そこで、このような宗教法制は、昭和二十年八月のポツダム宣言受諾によって全面的に否定されたわけでございます。昭和二十年十二月二十五日には、いわゆる神道指令というもので具体的かつ徹底的にこの戦前の宗教法制及び宗教行政というものはたたき壊されたわけでございます。日本の神道というものが日本の戦争遂行の強固なイデオロギー的主柱であったから、連合国が日本の非軍事化、それから民主化の重要な要素として国家神道の禁止と国家と宗教の厳格な分離を命じたわけでございます。当然の措置だったと思います。  よって、政府はこれを受けまして、二十年十二月二十八日、神道指令の三日後には宗教団体法を全部廃止をいたしまして、そして緊急勅令で宗教法人令を施行したわけでございます。  すなわち、宗教団体法にあった主務大臣、いわゆる文部大臣の認可権、監督権、調査権、立入調査権も含んですべて廃止をいたしました。それで、宗教団体は法人設立届けを、すなわち登記をすれば宗教法人となる。今までは主務大臣の認可がなければ法人となれなかったわけでございますけれども、今回はそれだけで宗教法人となることができることになりました。また、法人でない宗教団体の宗教行為も、それまではいわゆる特別警察、特高あたりに取り締まられていたわけですけれども、そういうこともなく全く自由とされたわけでございます。また、強制解散権とか解散時の財産処分等についても定めがありますけれども、それは行政庁がするのではなく裁判所に権限が全部移された、そういうような法制がとられたということでございまして、このような流れ、間違いないかどうか文部省から確認をしていただきたいと思います。
  281. 小野元之

    小野(元)政府委員 お答えを申し上げます。  宗教法人命でございますが、お話がございましたように、いわゆるポツダム勅令で、昭和二十年の十二月二十八日に宗教団体法を廃止して、ポツダム勅令として宗教法人令ができたわけでございます。  この宗教法人令におきましては、宗教法人の設立につきまして、主務官庁の認可を要さず、規則を作成し設立の登記をするということで成立し、主務官庁に届け出をすればよいということになったわけでございます。  それから、宗教法人の重要財産の処分、借財などや解散等につきましても主務官庁の認可を要しないということで、戦前の宗教団体法がかなり監督的な部分がございましたことの反動と申しますか、戦後の新しいことだということで大幅に簡素化、自由化をされて、行政官庁に許認可権がほとんどなかった、宗教法人設立後の届け出を受理する程度の権限のみを与えたものであったというふうに理解をいたしております。
  282. 冬柴鐵三

    冬柴委員 すなわち、今までのコントロールとサポートというような原則が、ノーコントロール、ノーサポート、そういうような原則にがらっと変わったわけですね。それは、やはり戦前の深い反省から、また連合国の命令ですね、この大東亜戦争の主因は何だったのかというところから、そういうことが明確に打ち出された。もちろん憲法九条等もそうですけれども、この宗教法制というものはそういう沿革があると思います。  そこで、法人令施行後、昭和二十二年五月三日には日本国憲法、すなわち新憲法が施行されたわけでございますが、その憲法は、国家神道が国民に強制され過酷な弾圧が繰り返された歴史の反省に立って、信教の自由を国民の基本的人権として無条件に、前のように臣民の義務に背かざる限りとかそういう条件なしに、何人——ですから日本国民だけじゃないんですね、に対しても信教の自由は保障すると明快に規定したわけでございます。そして、我が国には神道、仏教、キリスト教、その他新宗教と、多元的に併存しているわけでございまして、このような国情に即して厳格な政教分離の規定をして、その信教の自由を実質的に保障しようというふうにしたわけでございまして、しつこいほどに決められているわけでございます。  その政教分離の原則はどこに書いてあるかというと、先ほど法制局長官もお読みいただきましたけれども、二十条一項の後段に、「いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。」これが一つです。それから同じ条の三項には、「国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。」それから八十九条には、財政的な面から、「公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、」中略をいたしまして、「これを支出し、又はその利用に供してはならない。」こういう三つの規定が、これでもか、これでもかということで規定されているわけでございまして、これがいわゆる政教分離の原則だと言われているわけでございます。  そこで、文部大臣にお尋ねしたいわけでございますが、宗教行政のすなわち根幹をなす憲法原則ですね、この政教分離の原則というのは。したがいまして、文部大臣は、私が今読み上げた三つの憲法の定めというものを取りまとめればどういうことを言っているのか、これについてどう理解されているのか、その点について明快にお示しをいただきたいと思います。
  283. 島村宜伸

    島村国務大臣 お答えいたします。  宗教法人法は、宗教団体に法人格を与えることを目的としておりますが、憲法に定められた信教の自由と政教分離の原則にのっとり、宗教団体の自由と自主性、責任と公共性という二つの要請を基本としてその体系が組み立てられておるわけであります。  このような宗教法人制度の基本は維持しなければならないと考えますし、これは多分に戦前の反省、そしてそういうような弾圧が起きないように、これらの配慮も含まれてこういうことが決められておる、こう受けとめております。
  284. 冬柴鐵三

    冬柴委員 国家と宗教との関係ですから、国家の関係からいえばそうですけれども、宗教から見た政教分離というのはどういうふうに理解されていますか。
  285. 島村宜伸

    島村国務大臣 原則として、いわばまさに政治上のあらゆる影響を受けないというふうに受けとめます。
  286. 冬柴鐵三

    冬柴委員 では、ちょっと総理に、この政教分離の原則を、どうでございましょうか、どういうふうに理解していただけますか。
  287. 村山富市

    村山内閣総理大臣 今までの議論をずっと聞いておりましたけれども、やはり戦争中は、戦争遂行という上から思想統制をする。同時に、宗教団体についても、治安維持法や旧刑法のもとにおける不敬罪等々で処分をされた事件がずっと続いておる。そういう反省の上に立って新しい憲法がつくられ、新しい憲法のもとに二十六年には宗教法人法もつくられて、信教の自由が完全に保障された、私はそう思うわけです。  その信教の自由というのは、先ほど来御意見がありますように、一つは信仰の自由と、宗教上の行為の自由と、それから宗教上の結社の自由、この三つの自由が保障されておる。国はこうした宗教上の三つの自由に対して関与したり、あるいは統制をしたり、あるいはそうした特定の宗教団体に対して国が補助金を出したりしてはならないという、国の関与は一切いけない、こういうことになっておるわけですね。  それから今度は、宗教団体、宗教者から政治に対してどうなのかということについては、これは政治活動の自由というものがありますから、したがって、それはあくまでも自由であるというふうに私は理解をいたしております。
  288. 冬柴鐵三

    冬柴委員 まことに簡単にして明瞭な答弁をいただいたと思います。私は、今総理が述べられたとおりの行政がなされれば、何の心配もないと思うのですね。政教分離の原則というのは、そういう血塗られた歴史の中から生まれてきたものでございますし、大事にしていかないといけないし、その戦前を忘れてはいけないと思うわけですね。  先ほど、もう総理は次の宗教法人法のことにまで論及をいただきました。緊急勅令でされた宗教法人令というのは、本当に終戦直後に早々の間につくられたものですから、もとより完全なものではありませんでした。そういう意味から、新しい憲法秩序のもとに、我が国の宗教事情に合致し犬宗教法制をといういろいろな要望があって、この宗教法人法という現行法がつくられました。  このつくられるときに、そのとき天野文部大臣でございますが、国会で、「宗教団体に法人格を與え、宗教法人が自由で、かつ自主的な活動をするための物的基礎を獲得させることであります。」この法律の目的はこういうふうに言われまして、「これがためには、あくまでも信教の自由と政教分離の原則を、基本としなければならない」ということも述べていられるわけでございます。  そこで、文化庁からで結構ですが、この宗教法人法制定までにどんな立法準備がどの程度の期間されたのか、それをちょっと簡単で結構ですが、お示しいただきたいと思います。
  289. 小野元之

    小野(元)政府委員 現行宗教法人法の検討開始時期でございますけれども、実はこれは余り私どもの方に明確な記録が残っていないのでございます。  ただ、当時の文部省の実務担当者の記述いたしました解説書等によりますと、昭和二十四年の秋ごろから宗教法人令の改正についての具体案の作成に取りかかった。部内での検討、宗教界意見の聴取、恐らくはGHQとのやりとり等々、法制意見局の審査等を経まして、昭和二十六年二月に確定案が定まって、二月二十五日に閣議決定、そして第十回国会に二十七日に提出をされております。国会審議をいただきまして、四月三日に政府原案どおり可決されて公布されたというふうに伺っております。
  290. 冬柴鐵三

    冬柴委員 全国の宗教事情等の調査をされたというふうに残っているのですが、その点はどうなんでしょうか。まあ時間もありませんので、そういう相当な歳月と相当な調査をされた上での立法であったように文献では残されております。  そこで、そのような宗教法人法の構成についてですが、所轄庁という言葉がここで初めて出てまいりました。それで、この所轄庁という概念、これは現行法では所轄庁は知事と文部大臣の二つでございますが、宗教団体法も主務官庁は地方長官と主務大臣文部大臣、この二つなんですね、戦前のも。それから大急ぎでつくられた宗教法人令においても、法人が成立してから届けたらいいわけですが、その届ける相手方がやはり地方長官、知事と文部大臣というふうに、この二つがどうも管轄しているという沿革があります。そして、しかも私、微細にこれをずっと見てみますと、文部大臣が所管をしている、管轄をする、この三つの法律、二つの法律一つの命令ですけれども、これはすべて包括法人、今で言う包括法人を文部大臣はやられて、それ以外の単立とか被包括の単位法人は地方長官あるいは今回で言えば知事が扱うという、そういう体系がずっと三つの法体系の中で一貫して流れているのですよ。  それについての、文部大臣から答弁いただきたいのですけれども、何かこの所轄庁についてそういう定めがされたことについて、どうしてそういうことになったのか、その理由がわかればお示しいただきたい。
  291. 島村宜伸

    島村国務大臣 御高承のとおり、昭和二十六年当時といいますと、私は東京に住んで一番便利なところにいるはずなんでございますが、当時はまだ道路も十分でない、ましてや交通機関も十分ではありません。その後四十数年の間には、御承知のように、陸路あるいは空路、海上航路、非常に便利になりまして、まあ世界中もボーダーレスの時代に入ったと言われますが、国内は非常にいろいろな地域が大変近くなりました。  当然、宗教法人あるいは宗教団体の活動も、当初この法が制定された当時は単立のいわば宗教団体というのが予定された、この法律の基本になったということでございまして、当然に当時の社会状況その他からすれば一つの県の中での活動がほとんどであった、こんなふうに思います。  その意味では、この四十数年間に社会も大きく変化いたしまして、情報化、都市化も進みました。そして同時に、宗教団体自身のいわば内容も大きく複雑化しましたし、非常に巨大化しましたから、それらを含めて私は、所轄の問題についてはおのずから当時とはそぐわなくなったな、こんなふうに受けとめております。
  292. 冬柴鐵三

    冬柴委員 ちょっとずつずれますね、文部大臣と僕とのやりとりが。ちょっとずつずれるのですが、これはまたあれですけれども、私が聞いているのは、一つの団体法それから法人命、法人法、こういう三つの法体系があるわけですが、その中に全部包括だけを文部大臣に扱わせているという、法体系が三つとも共通している。これは何か理由はあるんだろうか、何かそれについて所見があればということをお聞きしたわけでございまして、次に移ります。  また、宗教法人法には過去になかった制度として、認証という制度が入りました。その認証について、ちょっとこれは法制局長官に聞いた方がいいと思うのですけれども認証という行為ですね。認可と認証と違う。認証というのは、ほかで見てみますと、商法では株式会社の定款の認証、これは公証人がやるわけですけれども、有限会社法にもそういう認証という規定があったと思います。この宗教法人法にも認証という言葉が使われておりますが、認証というのと認可というのは、これは両方とも行政処分だと思うのですが、ちょっと、どう違うのでしょうか、その点についてお知らせいただきたいと思います。
  293. 大出峻郎

    ○大出政府委員 認証という言葉はいろいろな法律で使われているかと思いますけれども、一般的に言いますというと、それぞれの法律によってその趣旨、内容、性格というものを理解すべきものかと思います。宗教法人法の中に出てまいりますところのいわゆる「規則の認証」という場合の認証でございますが、これは法律で定める要件を備えているかどうかというものを審査をいたしまして所定の要件を備えていると認めたときに行う、その旨の判断の表示ということであって、いわゆる確認行為という性格のものであろうと理解をいたしておるところであります。  それで、認可という言葉とどう違うのかということでありますが、認可という言葉もそれぞれの法律で違った意味合いで使われている場合もございますけれども、一般的に講学上言う認可といいますのは、これは第三者の法律行為を補充をする、そしてその効力を完成させる、こういう性格の行為ということと考えております。
  294. 冬柴鐵三

    冬柴委員 そのとおりだと私も理解をいたしております。  したがいまして、この所轄庁、知事とかあるいは文部大臣が、法人成りをする、宗教団体宗教法人にするときに認証するという行為は、その法に定められたような規則がつくられているかどうかということを確認をして、その所轄庁の権威をもってそれを外に表示するというだけのことであって、そこにはほとんど裁量権もない。三カ月以内にしなさいというね。ただ、それはもちろん、その要件を備えていなければ拒否したらいいわけで、そういう趣旨であって、認可と、いわゆる各種の民法上の公益法人の主務官庁というものが持っている監督権限というのは全くないんですよね、全く無関係。  そういう意味で、この宗教法人法、今現在施行されている宗教法人法というのは、要するにノーサポートでありノーコントロールの原則は、宗教法人命以来厳然と承継されて今日に至っている。したがって、私が冒頭申し上げたように、戦前の宗教法制と戦後の新憲法下における宗教法制というのは、同じような役所がやっているけれども、全く対極にある、全く違う精神がそこに流れているということを我々は確認しなきゃならないと思うわけです。ここには共通点はないわけであり、こちらはもうおせっかいをやく、要するに、いいものは育ててあげよう、悪いのは、悪いというのは、国家の意思に反するものはどんどん弾圧を加えていこうというような精神が、そういうことができる契機があったけれども、戦後のこの新憲法下での宗教法制というのはそういうものは一切ないという、そういうことを今の法制局長官の御答弁の中から読み取れるように思われます。  だんだん時間が押してまいりましたので、ひとつ大蔵省、来ていただいていますか、一つお尋ねをしたいと思います。  公益法人等に対する課税の適正化というものは、これまでも税制調査会を初め長年論議をされてきている課題でありまして、現に私どもが、短い期間でありましたけれども与党であった細川政権の際に、平成六年度の税制改正で、公益法人等、この中にはもちろん宗教法人を含むわけですが、その寄附金、これは法人内部の収益事業部門から公益事業部門への支出を寄附金とされるわけでありますが、この損金算入限度額を三〇%から二七%に引き下げる、減縮する、ということは実質上増税になるわけでございますが、そういう改善をいたしました。  これからも、公益法人等に対する課税については、税制全体のあり方をどうするかという観点から、その適正化に我々はみんなで論議をして努めていかなきゃならないのは当然だというふうに思っておりますし、私どももそういうものの論議をしてまいりたいというふうに思っているところでございます。  ただし、この宗教法人に対する税の問題については、国民の間に大変誤解があるような議論があるわけです。どうも全部非課税、何か免税になるようなことが言われてみたりするのですけれども、そうではなくて、宗教法人に対する課税については、確認をしておきたいのですけれども宗教法人だけを取り上げて優遇をしているとか、そういうことは一切ないということの確認でございます。  どういうことになるかというと、法人税法上、宗教法人は「公益法人等」というカテゴリーの一つに入っていると思うのですね。じゃ、「等」とは何かというと、民法三十四条によって設立された社団法人とか財団法人、あるいは学校法人あるいは社会福祉法人あるいは農業協同組合とか農協中央会、公務員共済組合等々、これは同じ一つのカテゴリーに入って、そういうものが「公益法人等」ということにして同じ課税の扱いを受けている。  宗教法人も、収益事業をやればこれに課税されるのは当たり前のことでありまして、その際の課税の税率は、今言ったような「公益法人等」という扱いの中で同じ扱いを受けている、そういうことをちょっと確認をしておきたいのですが、いかがでございましょうか。
  295. 薄井信明

    ○薄井政府委員 宗教法人は、財団法人あるいは社団法人それから学校法人などと同様に、民法等の我が国の法制上、公益に関する法人として位置づけられておりますので、法人税法の世界におきましても、これらの法人につきましては同様に扱っているわけでございます。  すなわち、宗教法人を営む公益法人等につきましては、その公益性にかんがみまして、営利法人と競合関係にある収益事業から生ずる所得に限定して法人税課税、ただしこれは二七%の軽減税率でございますが、これを適用しているものでございまして、そういう意味で、宗教法人だけということではなしに、公益法人等に共通する制度として整理されているということでございます。  なお、先ほど御指摘ありましたけれども、農業協同組合はこの範疇には入っていないということです。
  296. 冬柴鐵三

    冬柴委員 ありがとうございました。  文部大臣、もう最後質問一つ。  文芸春秋の七月号ですか、論文を書いていられます。まだ大臣になられる前の論文だろうと思うのですが、この中に、現行法の宗教法人法は、宗教法人に対する指導監督に当たるべきことを前提に、今の人員体制ではそんなことはもうとてもできないとか、要するに指導監督をするのだということが五カ所出ているのですよ、これ。現行宗教法人法の中に、所轄庁宗教法人を管理監督するのだ、監督指導するのだというようなことが書かれているのですが、これは先ほどのノーコントロールという確認をしたところからも、この立論の基礎を誤っているのじゃないかというふうに思うわけですが、御撤回はいただけますか。これは法律上の問題ですが。
  297. 島村宜伸

    島村国務大臣 私自身、現在、文部大臣として、文教行政の責任者、同時に宗教行政のいわば責任官庁といいましょうか、所管官庁といいましょうか、そういう立場ですから、一政治家の立場とはそれは違いますけれども、私が申し上げた意味は、仮に所轄庁という表現があるけれども宗教法人の活動の実態が全くわからない。  もう少し踏み込んで申し上げれば、例えば、収益事業の中止命令とか、あるいは認証の取り消しとか、あるいは解散命令請求とか、厳しい事態を予測したいわば決まりはありますけれども、しかしそれを、じゃ、何をもってするかといえば、実態が全くわからない。やはり、そういう放任状態について、当時指摘したものでございます。
  298. 冬柴鐵三

    冬柴委員 今、総理また読んでいただいたらわかるけれども、私の指摘はそういうことではなく、私は、ここに書かれていることは、立論の基礎が現行宗教法人法の理解としては十分ではなかったのではないか、このように思っておりますので、またいずれいろいろ議論はしますけれども、きょう、私の時間はあれしますので、補充質問に移ります。  ありがとうございました。
  299. 上原康助

    上原委員長 この際、石田勝之君から関連質疑の申し出があります。冬柴君の持ち時間の範囲内でこれを許します。石田勝之君。
  300. 石田勝之

    ○石田(勝)委員 冬柴委員質疑に続いて関連質問をいたします。  時間がありませんので早速質問に入らせていただきますが、昨日、江田委員、そしてきょうの午前中、草川委員から、宗教法人審議会報告についてのいろいろ質疑がされたところであります。私は、この審議会委員のうち、二名の方に直接お話を聞くことができました。先ほど来いろいろ議論をされておるわけでありますが、時間がありませんので早速その委員の方のお話を御披露させていただきたいと思います。  一人は、杉谷さんという、きょう草川委員からも、文部大臣及び審議会の三角会長に対しての抗議文の御披露がありましたけれども、その杉谷さん、天台宗の宗務総長でありまして、寺坊が鳩山筆頭理事あるいは深谷自治大臣の選挙区でありますが、台東区桜木の方であります。  その杉谷さんからお話を承りますと、三角会長を信頼していたが、審議会報告内容に文書を入れてほしいという依頼をしたが、ほごにされた。大方意見がまとまったかのように言われているが、決してそうではない。たまさか全会一致のようにまとめられてしまった。所管庁の内容について、認証後のあり方質問権のあり方についても安易過ぎないかなど、さまざまな意見を申し述べた。木を見て森を見ないように、宗教法人全体を見ていない。本質論の議論ではなく、駆け引きの議論になってしまっている。この報告では私はとても責任が持てない。これが宗教界全体及び学識経験者意見ととられたのでは後々禍根を残す。納得ができない。そして、慎重審議を要求したけれども審議の時間が足りなさ過ぎる。  こういう意見でありまして、とても審議会委員として職員を全うすることができないということから、先ほど申し上げたように、宗教法人審議会の三角会長島村文部大臣にあてて強く抗議するということで文書を送付させていただいた、こういうお話も承りました。  そして、もう一人の委員であります上村真言宗智山派の宗務総長であります。この方は埼玉県の岩槻の弥勒寺というところの御住職もされておるわけでありますが、この上村さんのお話では、宗教法人審議会では、与謝野前大臣の四月の二十五日の当初のあいさつで、慎重な審議を必要とするということは重々承知しているところであり、これらについて審議検討をお願いするということは宗教法人法の改正を必ずしも前提としていないと述べているように、宗教法人法について改正を必ずしも前提としているものではないとの検討依頼であったにもかかわらず、改正をするのであればなおさらもっと時間をかけるべきだ、最初から改正ありきで物事が進んでしまった。  政治的に先へ先へ進んで審議会議論の前にマスコミにリークされたこともあった。宗教法人審議会の自主性のあり方、三角会長文化庁次長と課長との間で意思の裏疎通が図られ、密室的に協議されてきたことがかいま見られた。  審議未了のまま反対を退け、報告という形に持っていった。私の、これは上村さんですが、私の慎重審議意見は全く取り入れられず、公正さを欠いたものであり、納得のいく形ではない。審議会のやり方に疑問を持ち、席を立ちますよと言ったこともあった。辞表を胸にしていたが、あと二、三回審議があると思っていたので辞表はおさめた。  しかし、その間役所あるいは他の委員から、ただただ時間がない、こういうふうに言われ、慎重審議をやるべきだ、こういうことを言ったけれども、そこを役所側からよろしく頼むと言われて、あくまでこれは最初から改正ありきであった。こういうお話でありました。  これがお二人の委員から私が率直に直接、審議会内容、そして経過についてお話を聞いたところであります。  そこで、これは文化庁にお尋ねをいたしますが、時間がないから、時間がないからと、こういうことで審議会を急がせた、せっついた、こういうお話でありますが、その点の事実関係を確認したいと思います。
  301. 小野元之

    小野(元)政府委員 お答えを申し上げます。  審議会委員の中にいろんな立場の方がいらっしゃいまして、さまざまな意見があったことも事実でございます。取りまとめのときに「大方意見」ということで会長に取り扱いが一任されました。会長の判断で文部大臣報告されたということでございます。  ただ、会長大臣報告する際も、一部慎重論が根強くあったということにつきましても大臣に申し上げておりますし、それから会長が当日の記者会見におきましても、委員の中に一部慎重論があったということをきっちりと紹介されておるところでございます。決して一方的に、少数意見を無視して取り進めたというふうには私ども考えていないところでございます。
  302. 石田勝之

    ○石田(勝)委員 私の質問次長答えていないんですよ。急いでほしい、急いでほしいと言ったかどうかということなんですよ。ちゃんと答えてください。
  303. 小野元之

    小野(元)政府委員 審議の過程におきまして、二十九日に報告取りまとめるべきだという御意見と、なお慎重に進めるべきだという両方の御意見がございました。その段階で、事務局の考えはどうですかということも聞かれたことは事実でございます。それに対して、私どもといたしましては、二十二日にも総会を開いて審議いただいておりますし、そもそも九月の五日の総会特別委員会としての案をお諮りを申し上げて、そこでも十分譲諭があったところでございますので、私どもといたしましては、二十九日におまとめいただければありがたいという気持ちを申し述べたことはございます。
  304. 石田勝之

    ○石田(勝)委員 何で二十九日にまとめなければいけないんですか。それは、今次長の話だと、本来二十二日にやる予定だったとか。それで、前の文部大臣は、これは慎重審議をしてほしい、そして改正前提ではないということでお願いしているにもかかわらず、何で二十九日にやらなければいけないの。ちゃんと答えてくださいよ。
  305. 小野元之

    小野(元)政府委員 審議会におきましては、特別委員会を八回、総会を五回ということで、本当に夏休みを返上して慎重な審議が行われてきたところでございます。  そして、二十九日におきましては、確かに反対意見もございましたけれども、具体的な、この条項をこういうふうにすべきだという反対の御意見よりも、むしろそもそもこの改正自体を慎重にすべきだという御意見がかなり強かったものですから、会長の方で、この時点で会長に一任してほしいということを申されたところでございます。
  306. 石田勝之

    ○石田(勝)委員 回数とか時間の問題じゃないんですよ。内容の問題なんですよ。内容をきちっと審議をしていないからもっと時間をかけるべきだと、ちゃんと大臣から任命を受けた審議会委員が言っているんですよ。それを役所の方で、これを急いでくれ、急いでくれと。いや、それはできない、慎重審議すべきだと言ったところ、いや、そこを何とか先生頼みますといって、そういうことでこれを二十九日に持っていったというんですよ。私の質問に答えていないじゃないですか。
  307. 小野元之

    小野(元)政府委員 お答えを申し上げます。  審議会議事そのものは、会長議事を進められる立場にあるわけでございまして、私どもとしては文化庁の立場を聞かれたので申し上げたのみでございますけれども、いずれにいたしましても、信教の自由を侵害するおそれがないように、政教分離の原則に反することがないようにということで、内容につきましても十分論議を進め、さらに特別委員会が出されました案につきましても、宗教界の方からさまざまな御不安の御意見等もございましたので、信教の自由に最大限配慮する中身会長を中心におまとめになったところでございまして、私どもとしては二十九日にいただきたいということを気持ちとして持っておったところでございます。
  308. 石田勝之

    ○石田(勝)委員 なぜ二十九日に審議を上げなければいけなかったんですか。それをちゃんと答えてくださいよ。
  309. 小野元之

    小野(元)政府委員 審議中身につきましては、本当に十分にそれぞれの条項についても説明をいたしまして、十分御審議をいただいたというふうに会長が判断されたところでございます。
  310. 石田勝之

    ○石田(勝)委員 委員長、ちゃんと私の聞いていることに答えさせてくださいよ。なぜ二十九日なんだと聞いているんですよ。これじゃ続けられないですよ、質問
  311. 小野元之

    小野(元)政府委員 二十九日の審議会総会の日にちを決めましたのは、各委員の御都合をお聞きいたしまして、できるだけ多くの方が御参加いただけるようにということで二十九日にしたわけでございます。二十九日は、幸いにも十五人全員が参加いただきまして、十分御論議をいただいたと私どもは思っております。
  312. 石田勝之

    ○石田(勝)委員 いや、全員が集まったと、その中で慎重審議の要求の声があったんですよ。あったのに、なぜ二十九日にまとめなければいけなかったんですか。それで、なぜ文化庁が、審議会委員に対して、二十九日に上げたい、上げたい、お願いします、そこをよろしく頼みますといって根回しして歩いて、なぜそういうことをしなければいけなかったんですか。はっきり説明してくださいよ。ちゃんとこの真言宗の智山派の上村さんから私聞いているんですよ。ちゃんと答えてくださいよ。
  313. 小野元之

    小野(元)政府委員 御指摘のように、慎重審議をすべきだという意見があったことは事実でございます。  ただ、その意見中身につきましては、具体的に、例えば所轄庁の問題がこういうことで、例えばこういうふうに直すべきだ、あるいは報告徴収につきましてもこういうふうにすべきだということではなくて、ただ慎重に審議をすべきだという御意見がかなり強かったことも事実でございます。そういったことを全般的に会長が判断されて、二十九日に報告をまとめられたものでございます。  私が二十九日にできればおまとめをいただきたいという気持ちを申し述べたのは、委員の方からいろいろな議論がございました。会長からも、文化庁として次長はどういう考え方を持っておるのかということを聞かれましたので、私の方から申し上げたにすぎないことでございます。
  314. 石田勝之

    ○石田(勝)委員 これは、臨時国会前に要するに議事を終わらせておきたい、こういうことだったんでしょう。それであなた方が、次長と課長とその審議会委員のところへ回って、それで、二十九日に上げたい。しかし、これはだめだと、慎重審議すべきだ、そういうふうに主張したら取り入れられなかったから、文部大臣に対して、杉谷さんとかこういう方から抗議文が行ったんでしょうよ。こんな審議会ありますか。なぜ二十九日なのか、ちゃんと答えてください。
  315. 小野元之

    小野(元)政府委員 宗教法人審議会は、何度も御答弁申し上げておりますように、十五名の委員中十一名が宗教団体の御出身の方の委員でございます。そういったこともございまして、信教の自由あるいは政教分離の原則をきちっと守るということにつきまして、お気持ちとしては現行宗教法人法が非常に宗教法人の自由を認めている分野が広いということで、これを改正することについては、もともと委員方々の中にはできれば現行法の方がいいという御意見もあったのも事実でございます。  しかしながら、国民の世論でも、世論調査等見ましても、宗教法人法を改正すべきだという意見も非常に強いわけでございます。そういった点を勘案されて会長が二十九日に取りまとめられたところでございます。
  316. 石田勝之

    ○石田(勝)委員 文部大臣、三角会長は、「大方意見」として、反対あるいは慎重意見に全く言及することなく、これは報告された。著しく公正さを欠いたものである。この報告については、これは信頼性があると思えない。そして、現に文部大臣もお読みになったと思いますけれども、天台宗の宗務総長から抗議文が行き、そして今、ほかの委員からもそういう抗議ともとれる意見が出ているわけですね。これらの実態を把握していらっしゃるんですか。
  317. 島村宜伸

    島村国務大臣 毎々のいろいろ御質問にもお答えしておりますとおり、宗教法人審議会は、御承知のように宗教法人関係者十一名、学識経験者四名から成る十五名の審議会でございます。それで、三角会長はその十五名の委員の互選によって選ばれた会長であります。それで、法七十四条で、会務を会長は総理するというふうになっております。  それで、五回の総会、八回の特別委員会、四月以来ずっとやってきたところでございますが、九月五日にまず総会を持ち、そして二十二日にまた総会を持つというので、それでは期間を置いて二十二日に決まるものかなと私は受けとめておりました。そしたら、さらに慎重にやりたい、したいというので、二十九日にさらに総会が持たれて結論が出た、こういうことでございます。  それで、その際いろいろ御異論を言っている方もおられますが、会長一任が取りつけられて会長が判断をなさっていることでございますから、これが、もし無理があったり、何か結論を出すために、意見が仮に反対が多いのに無理やりまとめるようなことがあれば、まず一任を取りつけることが不可能であった、こう思いますから、私はこの審議は極めて穏当なものであると考えております。
  318. 石田勝之

    ○石田(勝)委員 これはそもそも審議会あり方、そもそも審議会とは何だ、こういうことに私はなってくると思うのですね。いろいろな意見がある、それは当然あるでしょう。そういう中で、大方意見賛成したということですが、これは私の調査によっても、あるいはほかの委員の調査によっても、これは大方委員賛成とはとても言えないのですよ。  これは、きのう西岡委員質問の中で、総理は、審議会を隠れみのにして答弁逃れをしている、これはけしからぬと、かつて野党時代に言ったことがある。これでも半数の、私の調査によると半分、七人、これは反対しているわけですね。半数の委員が慎重に審議すべきだ、そういうふうに言っているにもかかわらず、かつて総理は、審議会は、これは隠れみのだ、答弁逃れをしていて、これはけしからぬ、こういうことも質問されているわけですが、こういう経過であって、こういう内容であって、今だんだんつまびらかになるけれども、この大事な宗教法人法の改正をそれでも今度提案しようとされるんですか。
  319. 村山富市

    村山内閣総理大臣 すべての審議会に対して私はそういう発言をしたのではなくて、たまたま特殊な事情があって、その特殊な案件について審議をする際に申し上げたのであって、審議会一般について申し上げたわけじゃないんですよ。  私は、今回のこの宗教法人に絡まる審議会報告については、ずっと話を聞いておりますけれども、やはりその審議会の運営については、会長を中心にして、委員皆さん方がお決めになるんですね。それで、議論を尽くしたあげく、大方取りまとめについては会長に一任をしようということになって、一任された会長取りまとめ報告をしたというのであって、これは審議会の運営のあり方から考えて疎漏はない、間違いはないというふうに、私はそう思います。したがって、その報告文部大臣が受けて、その報告を尊重しながら自後の対応をしていくというのは当然ではないか、こういうふうに考えております。
  320. 石田勝之

    ○石田(勝)委員 さまざまな意見が出て、もうだんだんつまびらかになって反対意見が出ているというのも、これは皆さん御理解をいただいたと思うんです。  そこで、これはやはり議事録公開をしていただいて、つまびらかにしていただくように、これはもうぜひ委員長の方に申し述べておきたいと思います。  次に、平成八年度の文部省の概算要求の主要事項、このことについてお尋ねをしたいと思います。  「宗教法人関連の必要措置」、これは概算要求、私どもは九月の半ばごろ聞いたのですが、文部省では八月の三十一日にこれはつくられております。宗教法人の関連の措置、「一、宗教法人行政の整備充実」「宗教と社会との関わりに関する調査研究の実施等」、こうなっておりますが、この「宗教法人関連の必要措置」のこの二つの項目についての金額が入っていないのですね。  これは時間がないからあわせて言いますが、七月の文部省内部の事務調整のときにはこれは入っていないのですよ、この「宗教法人関連の必要措置」というのは。八月の十日の省議のときに入ってきているのですよ。それで、金額も入っていないのです。それはどういうことなんですか。
  321. 小野元之

    小野(元)政府委員 お答え申し上げます。  予算関連の作業でございますので、文部省内で議論した中で、これについて金額が固まった時点で入れていくというのが、通常、予算の概算要求の作業の中で進められることでございまして、これもその一環で入ってきたものでございます。
  322. 石田勝之

    ○石田(勝)委員 項目がなかったのが、八月の十日の省議で入ってきているわけですよ。それはどういうことなんですか。
  323. 小野元之

    小野(元)政府委員 概算要求を検討していく中で、文部省の中で全体を検討していくわけでございます。その際に、新たな項目が追加されたり、あるいは新たな項目がなくなったりすることはしょっちゅうあることでございまして、予算作業の一環の中で出てきたものでございます。当初の時点からどうこうというものではございません。
  324. 石田勝之

    ○石田(勝)委員 時間がありませんから、また後ほど私はこの件も含めてただしていきたいと思います。  以上で終わります。
  325. 上原康助

    上原委員長 これにて冬柴君、石田君の質疑は終了いたしました。  次に、左藤恵君。
  326. 左藤恵

    左藤委員 きのうから、この宗教法人法の問題について何人かの皆さんのいろいろ御質疑がありましたが、今回のオウム真理教という麻原教祖を中心とした活動は、一体宗教活動であったかどうかということが私は非常に大きな問題だろう、このように思います。  最初、いろいろ伝えられるところによりますと、仏教の一つの宗派、阿含宗ですか、そういったところから出発して、そしてヨーガというふうな手段をいろいろとって、たくさんの信者を集めることによってまた一つの展開があって、今度はヒンズー教のシバ三神を信ずるとか、あるいはまたそういう中にラマ教の思想を入れた、いろいろなことが言われております。  その実態はこれからまたいろいろと裁判の段階で明らかになっていくのではないかと思いますが、そうしたときに、終末思想というのですか、これはハルマゲドンということを彼らは言っておりますが、このハルマゲドンというのは、これは東大の中村名誉教授の御説によりますと、ヘブライの地名のことがあるのだそうです。  このハルマゲドンという思想というものは終末思想でして、この思想がその後キリスト教に入って、そしてマルクス・レーニン主義の方にまで入ってくる。最後にはナチスに入ってくるということで、そのナチの思想というものが、社会が終末になってきたときにそういうものを信じている者だけが助かるというふうな、地球を破壊していくというような一つの思想につながってきた。これが、ナチスは、そのときにはユダヤの人たちをみんな地球から全部駆逐してしまうというようなことにつながってきた。この思想から、たまたまナチスがサリンを使っていろいろの研究をしたというものを恐らく私は踏襲したのではないかな、このように思います。  これは、これからまたいろいろのことで、オウム真理教の活動あるいは教義とか、そういうものがどんな展開をしたかということについては当然明らかにしなければならないし、再発防止という点から見ても、どうしてもこの問題についてはいろいろな面で私は厳しい調査というものをやっていただかなければならない、このように思います。  ある意味でいきますと、仏教ということからスタートしたわけでありますけれども、既成の今までの仏教といいますかそういうものは、最近のいろいろな情勢から見ても何か積極的な活動をしていない。ある意味では葬式仏教だとかいろいろなことが言われておって、本当の宗教活動というものが非常に今のところ活動が十分でないわけなんです。  それにしても、最近は若い僧侶の中には、いろいろな病気で亡くなっていく、そういうような最期の段階におきますいろいろな生き方とかそういうようなものについての援助をしていくとか、あるいはボランティア活動のようなことも積極的にやっていくとかいうような、そういう意味での社会に対する一つのいい意味での活動というものを通じて宗教心を広めていくという努力が行われておりますけれども、このような今申しました終末思想と、仏教におきます末法思想というものとは全く違うわけでありまして、末法というのは、これはもうお釈迦様の教えというものがだんだんと時代が進むにつれて伝わりにくくなってくる、そういうものの信仰が薄くなってくるという時代のことを言っておるので、決して世の中が破壊されていくわけではありません。  たまたま、これはたしか平安時代の終わりごろに未決の期限が来て、そして言われていた期限が来たときには、その後に、鎌倉の初めまでに日本のたくさんの、法然上人とかあるいは親鸞上人とかまたは道元禅師とか、そういったような仏教を再興していくような方が出てこられて、まあ仏教というのはそこで一つの末法時代を切り抜けていくことができた。それと終末思想というのは全く違う、私はそのように思います。  そういう経緯が何か一緒にされておるということで、それを利用したといいますか、そういうことでオウム真理教がとんでもないようなことに、初めはもっと純粋なものがあったのかもしれませんけれども、そういうようなところまで広がっていった、このように思うわけであります。  そこで、こうしたことにつきまして、今までいろいろと御審議ありました問題として、二度とこのオウムのようなものを、再現させるといいますか、この世の中で日本の秩序を危うくするような、治安を混乱させるような、とんでもない、宗教でも何でもないものを起こさせないような対策というものはどうしたらいいのかということが、一番私は当面やらなければならない問題であろうか、このように思います。  その一つとして、宗教法人法を改正するべきだ、こういう御論議があった、こう思いますし、もう一つ、やはり破防法の適用というものが考えられないかと思います。この二点について、私ちょっと若干お伺いしたいと思いますが、問題は、オウム真理教の教義の問題、中へ入ってそれをどうするかこうするかということについて法律がそんなことを決めていくものでは決してないと思います。  そうではなくて、国民の社会福祉の点から、それから治安といいますか安全という点から、それを混乱させることがないような対策というものをとっていかなきゃならない。そのためには、宗教団体としてのオウムというものは認証してしまったわけであります。認証したものを現行の宗教法人法によって解散させる、解散を命じて、それで全部事が終わるかどうかということをまずお伺いしたいと思います。  この辺についてのお考えで、宗教法人法を改正すれば、つまり宗教法人法により解散すればそれで足りるというふうにお考えになるか、これは文部大臣にお伺いしたいと思います。
  327. 島村宜伸

    島村国務大臣 法律ができればいろいろな危険な事件がすべて排除できればこれは非常にありがたいことでございますが、今回宗教法人法を改正すれば二度とこういう事件が起きないということは、とてもとても申し上げることはできません。  ただし、少なくも今までのように、一回認証してしまうと何にも中身がわからない、どういう活動をなさっているかわからない。しかも、例えば所轄が一つの県で所轄をしていて、これが他県にまたがっているような場合にはますますわからない。したがって、結果においてそれを知らされるということになりますので、もし宗教法人法の改正が認められれば事前にある程度の動きを把握することだけはできる、こういうふうに思っております。
  328. 左藤恵

    左藤委員 きのうたしか総理がこの質疑に対してお答えになっておる中に、オウム対策のために宗教法人法を改正するつもりはない、これは断言しておきたい、こういうふうなことをおっしゃっておられました。もちろん私も、このオウム対策のために宗教法人法を改正するということで、宗教法人法を改正すればオウムに対する対策は全部終わるんだ、こういう考えではない、そういう御趣旨だろうと思いますが、この辺で総理、もう一度お願いしたいと思いますが。
  329. 村山富市

    村山内閣総理大臣 宗教法人法の改正という問題は、オウム真理教の今回の事件があったことが一つのきっかけになったということは、私はある意味では言えるんではないかと思いますね。しかし、この宗教法人法の改正は、オウム真理教の今回のこういう事件があったからそのための対策としてするんだというものではございませんということを申し上げたわけです。
  330. 左藤恵

    左藤委員 それならば、先ほど来、いろんな宗教法人審議会におきます経緯というようなこともありますけれども、私は、この宗教法人法の報告の概要というものの中に、「(報告)」のところの前文といいますかその中に、末尾のところに「報告する。」とありまして、   本審議会は、本報告により、宗教法人制度が現在の社会状況に適合し、より一層適正に運用できるものになることを期待して止まない。   また、政府において現行法の改正の検討を行う場合、それが宗教団体に及ぼす影響を考慮し、慎重な配慮が行われることを期待する。とあるわけでありますが、そして、   なお、残された課題については、今後更に検試することとしているところである。ということでもありまして、これでまだまだいろいろ問題点があるわけでありますので、このオウムの当面の問題だけを対策するために今回急いでこれを改正しなきゃならないという理由は、僕は薄いのじゃないかと思いますが、この辺はいかがですか。文部大臣にお伺いします。
  331. 島村宜伸

    島村国務大臣 今回の問題は、オウムのためにということでありませんで、ただ、こういう事件が起きて、国民の声が非常に高くなった、このことが契機であることは事実でございます。
  332. 左藤恵

    左藤委員 国民の声ということであります。これはマスコミのいろいろな論議もありましょうし、また、このオウムの事件というものと宗教法人法というものが国民皆さんに十分理解されていないということもあろうかとも思いますので、これはもうオウムの問題を論議する、その実態が本当に明らかになって、裁判の結果が出た段階で宗教法人法の改正というものに手をつけてもいいのではないかな、私はそのように思います。  まず第一に、その点から考えて、オウムがこうしたことでいろいろな事件を起こしましたので、この後始末といいますか、これはどういうふうにしていくかということについて幾つかの問題点があろうかと思います。  今まだ残存信者といいますか残っておる人たちがたくさんいるわけでありますが、この人たちに対して、単に宗教法人法による解散命令ということで解散してくれと、それだけで後、完全に組織を壊滅するということは、宗教法人法で認証されなくても活動はできるわけでありますから、そういうことについて、そういうような組織を完全に壊滅させることができるのかどうか。  また、もう一つ、オウムに対しまして、オウムが起こしました地下鉄サリン事件だの松本の事件だの、あるいは坂本弁護士さんの事件だの、いろいろなそうしたたくさんの被害者が、亡くなった方がいらっしゃるから、こういう方々に対する補償ばどうするのか。  こういうことについて国が、そういうことで突然に事件が起こって全くその責任をだれにも帰することができないようなことに対しての、そういう事件に対して国が補償するという法律はあるわけでありますけれども、それだけで終わるのか、あるいはこのオウムの持っておる財産というものの処分をしてそれでもって補償するのか、これは恐らく清算人というようなものが出てきまして、そしてそれで裁判、民事裁判によってそういうものが補償されるのか、こういった問題も私は残っておると思います、これでいくと、宗教法人法等の解散命令が出た後の問題だと思いますが。  それで、これはまた別のそういったいろいろな法律によって行われると思いますが、こういった点についてどういうふうなことを今考えておられるのか。財産を没収された人たちがまた返してくれというふうなことで言ってきたときのその対策とか、そういったものも、これから先オウムが解散した後のいろいろな対策というものを考えなきゃならないと思います。  もう一点、いろいろとそういったオウムが残しました後に、建物だとかそういうものだけじゃなくて、実際の今まで行われておった教義というものが、これは本当に宗教とも何にも関係のないものであったわけですが、こういうものがやはり流布することによって、先ほどお話ししましたサリンの方へつながっていくような、そういう一つの危険思想みたいなものが生まれてくる。そういうものに対して政府はどういう対策をしていくのか、現行の宗教法人法だけでそういったものが解決できるのかどうか、この辺の見通しについてお考えがあれば伺いたいと思います。
  333. 小野元之

    小野(元)政府委員 お答えを申し上げます。  解散命令請求を現在、オウム真理教につきましては東京都知事と検察官から行っているところでございます。この解散命令請求、裁判所が今審理をしていただいている、東京地裁でいただいているところでございますけれども、裁判所の解散命令の裁判が確定いたしますとこの宗教法人は清算法人ということで、財産関係を整理するという目的の中で、その範囲の中で存続することになります。そして、現務の結了とか、それから債権の取り立て、債務の弁済等につきまして清算人が行うこととなります。  したがいまして、もしオウムに対して損害賠償請求等を起こされている方がいらっしゃれば、清算人がこれに対して適切に対応していくということになるわけでございます。そして、財産が全くなくなればこの時点で宗教法人の法人格がなくなるわけでございます。  なお、宗教法人法では、宗教法人は解散できるわけでございますけれども、実態としての宗教団体といいますか、実態としての、残った信者の方々等が——財産関係はきちっと整理して、最後に残れば国もしくは地方公共団体あるいは規則で定めた他の宗教法人等に帰属になります。したがって、そういう形で法人としてはそこで消滅をしてしまうということになるわけでございます。  なお、信者等はその場合に残る場合があり得ると思います。
  334. 左藤恵

    左藤委員 そうした場合に、今いろいろと問題は残るという話もあったわけでありますが、裁判とかなんとかになってきますと大変な問題が起こってくる、清算人も大変だろうと思います。そういったものを促進する意味においても、この破防法を仮に運用したとすれば、そういった問題について処理がしやすいのかどうか、これは法務大臣に伺いたいと思います。
  335. 宮澤弘

    ○宮澤国務大臣 ただいま財産の処分の問題についてお話がございましたが、申し上げるまでもないと思いますけれども宗教法人法に基づきます解散命令の効果と、それから破防法に基づきます解散指定の効果というのは多少違っておりまして、宗教法人法に基づきます解散命令の効果は、ただいま文部省の当局から説明がございましたけれども、裁判が確定をいたしますと法人格が否定をされるわけてございまして、そこで財産整理が行われるわけでございますが、先ほどもお話がございましたように、法人格は喪失をいたしますけれども、任意団体としての活動ということは制約がございません。  破防法に基づく解散指定の効果でございますが、これは公安調査庁の処分の官報の公示がございますと、団体のためにする行為が一切禁止をされるわけでございます。したがって、宗教法人法におきますような任意団体としての活動はあり得ないわけでございまして、団体としての行為が禁止をされます。そして、訴訟手続がとられるかとられないかどうかということがございますので、もう行政処分の取り消しができないということが確定いたしましたときに団体は解散をいたしまして、そこで財産整理が行われる、こういうことになっているところでございます。
  336. 左藤恵

    左藤委員 これは、自然人とそれから法人というものに対してそれぞれの、言ってみれば後始末をしなければならないということで、団体に対する規制ということになってきますと、やはり現在の宗教法人法の宗教団体が解散されたということで、そういうことであってもいろいろな問題について、やはり現行の刑法なり刑事訴訟法なり民事訴訟法なり、そういったもので後の始末が行われるんじゃないかな、私はそのように思いますが、この破壊活動防止法、破防法ということになりますと、一挙にそういったことについての、団体の財産なりなんなりがいろいろな公共の福祉に反するということから、これは例えば国庫に没収するとかいうことで片づく。それからまた別に考えられる。そういうことが一体可能なのかどうか。そういう考え方がこの破防法にあったのかどうかということも伺いたいと思います。  破防法そのものがいろいろとできました経緯とかいうのは、これも昭和二十七年ごろの法律だったと思いますし、そしていろいろとそうした当時の過激な団体に対する規制というものをやろうとしたところが、いろいろなまた反対もあったので、私の聞いた範囲では、その法案が成立する段階で抽象化されてきたというかそういう意味法律の修正があって、今まで適用されたことも一回もないというような法律でもあるということで、仮に適用するにしても現行法のままで適用するということは非常に困難じゃないかと思いますが、この辺についての法務省の見通しみたいなものをお伺いしたいと思います。
  337. 杉原弘泰

    ○杉原政府委員 破防法に関する適用の見通しということでお尋ねでございますが、私どもは、この破防法は、現行憲法の民主的な法秩序を維持するために、暴力的な破壊活動によって一定の政治的目的を遂げようとするそういった破壊的団体を規制しようとする、そういう趣旨でこの破防法というものは制定されたというふうに理解いたしております。  したがいまして、この破防法の規制の団体というのは、団体の性質を問わず、そうした暴力主義的な破壊活動を行うおそれのある団体に対する防犯的な意味の措置を確保するという趣旨で定められたものであると思っております。  ただ、先ほど大臣の方からお答えがありましたように、そのための措置といたしまして、極端な場合には団体の解散の指定という処分が行われることもあるわけで、その場合には、当該団体の構成員あるいは役職員に対する団体のためにする行為の禁止という効果が課せられるわけで、それはやはり憲法で言う基本的人権と密接な関連を有する重大な問題であるということで、その適用に当たりましては、慎重の上にも慎重に検討をしなければならないというふうに考えております。  そういう観点で、この破防法には四つの要件が定められておりまして、一定の団体が、団体の活動として一定の政治的な主義もしくは施策を推進あるいは反対する目的で、破防法所定の殺人あるいは放火、それから内乱、内乱の場合は政治目的の有無を問わないわけでございますけれども、政治目的を持った殺人、放火等の暴力主義的な破壊活動を行い、そして将来も同種の破壊活動を行うおそれがあるということを条件としまして、これらの厳しい条件を満足したときに初めて、先ほど申しましたような団体規制ができるというふうに定めているわけでございます。  私どもは、この要件に合致する証拠があるかどうかという点について、ただいま慎重に証拠資料の検討を進めておる、こういうことでございます。
  338. 左藤恵

    左藤委員 これからの裁判の進行とかいろいろなことと関係もあろうと思いますが、私は、やはり破防法というものを適用するという一つの例としてやる場合には、今お話しのように、裁判の段階で負けないような資料というものをきちっとそろえて、そしてそういうことについてやっていただきたいということが一つ。  それから、今のそういう宗教法人法を改定するだけではこの問題は絶対解決しないということをよく考えていただきたいと思いますが、総理、お考えが何かありましたらおっしゃってください。
  339. 村山富市

    村山内閣総理大臣 今委員が懸念されているように、宗教法人法を適用して宗教法人を解散をさせたということによって、すべての目的が達成されるとは思いません。これはあくまでも宗教法人法の範囲内でやれることであって、犯罪行為の事件については、これは刑事訴訟法で徹底的に究明して、そしてその真相を解明して、二度とこういうことが起こらないようにやはり対応していく必要があるということで、じゃすべて片がつくのかということになりますと、財産を全部提供した者の後の生活はどうするのかとか、あるいは改宗した人に対するアフターケアをどうするのかとか、いろんなことが起こってくると思います、委員言われましたように。  したがって、今の制度、法体系というものをやはり十分に活用しながら全体として取り組んでいって、何とか再発防止のためにきちっと後始末もつけられるという方向で努力をしていく以外にはないのではないかというふうに私は思っています。
  340. 左藤恵

    左藤委員 先ほど来いろいろ論議になりましたような思想弾圧といいますか、そういうようなことが、たとえオウムの人たちであっても、何かそういうものを完全に消滅させるときの手段として、そういうものが取り上げられないような形で、私は、国民皆さんの理解ができるような範囲でこのオウムを徹底的に壊滅させていただきたい、このことを特にお願いしておきたいと思います。  例えば、オウムの書いた本があります。そういったものの取引だとかそういうようなものについて、それを何かやるというのは公序良俗に反するとかいうふうなことで、一つずつの現行の法律でもってやらなきゃならないんじゃないか。破防法でできるかどうかわかりませんが、とにかく宗教法人法というものの中で、解散されたからそういうことが当然出てくるということにはならないんじゃないか、私はその点をひとつお願いをしておきたいと思います。  宗教法人法というのは、言ってみればこれは一つの、私は、認証された法人というのは一般国民の戸籍の法律というふうに解釈していいんじゃないかなと思います。そういうことによって、一般国民が犯罪を犯せば刑法で処罰される。だから、オウムもそういった意味での法人としても刑法で処罰される、あるいはそのほかの法律で処罰されて、そしてそういうことによって完全にこれを覆滅することができるのではないかな、このように思いますので、再発を防止するという意味から見ても、今お話ししたことについて特に皆さん方の方でいろいろ御検討いただいて、裁判の進行についても十分関心を持って、オウムというものがどんな実態であったかということをやってから、言ってみれば宗教法人法のことについて触れてもいいんじゃないかなと思いましたので、このことについて申し上げたわけでございます。  もう一点、こうした今お話し申し上げたようなオウムの活動というものについて、東大の大学院を出たような非常に教養の高い、レベルの高い人たちが、若い人たちがなぜこういうものに入っていったのかということについて、これはもう非常にいろんな面での、皆様方の方でいろいろ御検討もしていただかなきゃならない。我々もよくこのことについて考えなきゃならない。教育との関係というようなものも当然含まれてくるんじゃないかなと思います。  受験体制というようなことで、それだけにもう純粋に、受験でいわゆるエリートコースといいますか、そういうようなところの試験を通ってきたということについて、毎日毎日の勉強の中に受験のことだけが頭にあって、人のいろいろ痛みを知るとか、何といいますか、そういうような心というものが養われてない人がこういったオウムのようなところに参加してしまうんじゃないかなというようなことを思うわけですが、これについても私は、裁判の段階とかいろんなことで、十分にそういったことで明らかにしていただくと同時に、これは当然そういったことで国民の教育というものについての抜本的な問題について、文部大臣としてもひとつ十分この点で御配慮をいただきたい、このように思います。  そこで、今新進党としましては、この前の参議院の選挙のときの一つの公約としても中高一貫教育というようなものを一つの問題として取り上げております。  今もう既に宮崎県かどこかで、公立の学校におきましても中高一貫教育というのを実施しておられるようでありますけれども、これからの文部省としてのこれに対する見通しといいますか、というものをお伺いしたいと思います。
  341. 島村宜伸

    島村国務大臣 ことしはちょうど戦後五十年に当たりますが、戦後教育のあり方を大胆に見直そうではないかと私は就任早々に申したところでございます。  その一つに、昭和四十六年の中教審、六十年の臨教審の御答申の中にも中高一貫教育についてのお話が出ているところでございますが、実は私は中高一貫教育のいわば最終学年、旧制の最後でございまして、なるほど、子供から大人に変わるその大事な段階で、受験の恐怖というものから解放されていろいろな運動部だとか文化部だとかいう部活動ができたり、長い期間には友人関係も深まりますし師弟の関係も深まりますし、一時期教育の道を外れかかった人でもそこで救われるというような、いろいろな意義が私はあると思っております。  ただ、御高承のとおり、五十年、六・三・三制が施行されて公立高校では定着いたしておりまして、これをにわかに変えるということが、果たして今の社会あるいは今の生徒さんの実情に照らしていかがなものであろうか。例えば、今度は受験に対する恐怖が小学校に持ち込まれてしまうんではないかとか、いろいろそういうような御批判もあるわけでございまして、人間関係の固定化を生じるおそれなども含めて、これに対して批判的な方もいないではないわけでございます。  そこで、ことしの四月から中教審にいろいろな、いわば教育の制度等についての御検討をいただいているところでございますが、私は自分の私見として就任のあいさつの際に私が今申したようなことを申しまして、中高一貫教育というものの中に、私は、公立高校に進む人たちも受験の恐怖から解放されて、もっと心身をたくましく鍛え、いわば徳育、体育の面にも力の入るような教育に置きかえてみるのも一つの方向ではないでしょうかと、自分のつたない体験を披瀝したところでございます。そういう意味では、先生のお考えになっていることとかなり共通するものがあるように感じております。
  342. 左藤恵

    左藤委員 私は、一つのこれからの、十分御検討いただいてそういった方向へ持っていくべきだ、このように思います。今また、子供さんがだんだん生まれてこなくて少子化時代ということを迎えましたときに、教育のあり方というものも、そういった意味で今までと違った新しい観念で物事を考えていくということで、受験一筋にやっていくというような今までのことから自然にかなり変わっていくんじゃないか、そういうふうにも思います。  既に今公立の高等学校なんかでも一般の普通科というものに対してもう一つ、今まで産業科、商業科とか工業科とかいうのがありました。こういう課程というものに対しては、普通課程に入れない生徒がそういうところに行くというようなことで、その産業課程なんかへ行った子供が何かこうやる気がなくなってしまって勉強しなくなってしまう、中途退学というのが非常に多いとかいうふうなこともあったわけですけれども、最近はもっとそういう意味とは別の意味で、まあ芸能コースだとか国際文化コースだとか、そういうような非常に多様化した選択というものがあって、私は、その方が本当に子供に対して自然な教育というものを進めていくことができるんじゃないかと思うので、これは非常にいいことじゃないかなと思うことが一つ。  この辺について何か積極的に、今これは府県の権限でもちろんやれるようになっておるんだと思いますが、そういうものが非常に進んできていることについての文部省のお考えはいかがでしょうか。大臣、いかがですか。
  343. 井上孝美

    井上政府委員 お答え申し上げます。  学校教育におきましても、情報化、国際化など、急激に進むこれからの社会の変化に対しましては主体的に判断し行動できる力を身につけることが大切というように認識しております。  特に、ただいま先生からお話がございましたとおり、高等学校は中学校卒業生の約九七%が進学しておりまして、生徒の多様な能力、適性、興味、関心等に対応いたしまして、生徒一人一人の学習意欲を高め、個性を発揮して生きていくことができる力を育成できるよう、生徒の学習の選択の幅の広い教育や特色ある学校づくりを目指しているところでございます。  特に、最近におきましては、そういう高等学校への進学につきましては、従来の業者テストに依存した偏差値輪切りによる進学指導ということを全廃いたしまして、本人の能力、適性あるいは興味、関心、進路希望等に応じた適正な進路指導をもあわせて実施をしているところでございます。  高等学校におきましては、そういう特色ある学校づくりといたしまして、総合学科や単位制高校を初めとする新しいタイプの高校の設置、また、先ほど先生からもお話がございましたように、芸術文化科や国際文化科等新しいタイプの学科も設置し、また多様な科目を開設するなど、生徒の選択を中心としたカリキュラムづくりやスペシャリストを育てる職業教育の活性化などを進めているところでございます。  さらに、高等学校入学者選抜におきましても、先ほど申し上げましたような多面的な評価を行うということから、推薦入学の拡大、調査書の改善なども推進しているところでございます。  平成七年四月現在、新しいタイプの学校としての総合学科は二十三校、単位制高校は八十七校設置されているなど、各都道府県におきましては高等学校教育改革を着実に進めていただいているところでございまして、今後ともより一層の推進に向けて努力してまいりたいと考えております。
  344. 左藤恵

    左藤委員 大いに私は結構だと思います。  それで、その中におきましてもう一つだけ、最近は中学校の段階でいじめとかいろんなものがありまして、この前のときにも予算委員会でも私御指摘申し上げたんですが、今度のオウムの問題にしましても、やっぱり私は、問題は心の教育といいますか、心の問題だ、このように思います。  これは、なかなか生徒たちに対して指導ということは難しいわけですけれども、いろんな悩みみたいなものを皆持っているわけでありますから、こういった悩みを聞いてあげるような、ただ、担任の先生がそれを聞くということについては、担任の先生の能力といいますか、専門性もありますので、そういうことで、やっぱり専門であるカウンセラー、この定員というものを十分考えていただきたいと思いますが、この辺はいかがでしょうか。
  345. 井上孝美

    井上政府委員 お答え申し上げます。  いじめや登校拒否等の問題の解決に当たりましては、児童生徒の心の悩みにこたえる適切な相談活動を行うことが重要であると考えております。  このため、文部省といたしましては、先生から御指摘もございましたが、今年度から、学校におけるカウンセリング機能の充実を図るため、児童生徒の心の問題に関し高度に専門的な知識経験を有する専門家をスクールカウンセラーとして学校に派遣いたしまして、その効果等に関する実践的な調査研究を行っているところでございます。  さらに、平成八年度概算要求におきましては、このスクールカウンセラーを大幅に拡充するための所要の経費を要求しているところでございます。  スクールカウンセラーに関しましては、今年度からその効果等に関する実践的な調査研究を開始したところでございまして、したがって、その恒常的な配置や充実等については、その調査研究の成果を見きわめつつ適切に対応してまいりたいと考えております。
  346. 左藤恵

    左藤委員 そういうことで、少子化時代になりますと、私学の方の経営も非常に厳しくなってくるということがございまして、生き残りをするために、今大変中学校が、中高一貫教育というふうなこともありまして、中学校が復興するといいますか復権するといいますか、今まで廃校になっておったものがまた戻すとか、私立の中学校が東京でも大阪でも非常に数がふえてまいりました。  こういうことで競争がまた激しくなってきておるわけでありますが、それはそれといたしまして、今度は大学、短大のようなケースにおきましても、これも同じようなことで非常に競争が激しくなる。特に最近は短大、女子なんかも特にそうですが、短期大学というものの存在といいますか、そういうものについて、それへ行くくらいなら専門学校の方がすぐ役に立つんじゃないかというふうなこともありまして、専門学校の方に進学する生徒が非常にふえてきている。短期大学は競争が激しくなってくる。それだからレベルが低下するというような問題があって、今そういうことで、これは大部分が私学でありますから、激しい競争があるということがあるわけであります。  特に、最近は女子の就職というのは非常に難しいので、短期大学の場合も非常に就職で、言ってみれば二年しかない非常に短い間に、一年生のときは自動車の運転の免許を取る、二年になったらもう就職運動をするということで、さっぱり勉強なんかしてくれる時間もないような実態になっているということ自体も、私はこれは非常に問題じゃないかな、このように思います。  それと同時にもう一つ、大学と短大にもいずれもあるのですが、これは平成十一年になったら全部解消するということを文部省が言っておられます臨時定員、これは一体今後どういうふうにしていかれるかということが私学の経営者にとっては一つの大きな心配事で、悩みだと思います。  そしてもう一つ。その臨時定員がいろいろ論議されているにもかかわらず、子供の数も減っていくにもかかわらず、新設の大学というようなものは割と安易に、国立まであるのじゃないかと思いますが、増設されているのです。これは、多様化していく高等教育を受ける機会というものが与えられることは結構ではあるわけですけれども、全般的に競争だけが激化するということは、また入試がいろいろ問題になってくるとかいろいろなことが出てくるのではないかな。  それから、非常に大学によってレベルの高いところと格差ができてしまう、こういう問題も起こりますが、こういうことについて文部省は何かお考えになっているか、この基本的な考え方についてお伺いしたいと思います。
  347. 吉田茂

    ○吉田政府委員 お答え申し上げます。  御指摘の大学、短大等の臨時定員、これに対する対応でございますが、この臨時的定員の取り扱いにつきましては、平成三年五月の大学審議会の答申におきまして、平成十二年度における高等教育の規模の想定が現在を下回ること、あるいは「個々の大学等についてみても欠員の生ずる可能性が高い」といったこと等を勘案いたしまして、「十八歳人口急増・急減期の調節を図るという本来の趣旨に沿って、定められた期限の到来により解消することを原則とすることが適当」ということとされておりまして、現時点ではこの取り扱いを変更しておりません。  こういった大学、短大等の臨時的定員の取り扱いにつきましては、現在、大学審議会におきまして、平成十二年度以降の高等教育の将来構想の一環といたしまして広範な視点から鋭意御検討をいただいておるところでございまして、その結果を踏まえながら、文部省としてどう対処していくか、鋭意検討をいたしたいと思っております。  全体の大学、短大の今後の運営の問題でございますが、やはり基本的にはそれぞれの学校での教育研究条件の向上、あるいは生涯学習への一層の取り組み、こういったいろいろな対応をお願いしていくとともに、文部省といたしましても、厳しい国の財政事情のもとではございますが、こうした大学、短大の努力を奨励、支援するための私学助成の充実あるいは情報提供といった支援策を進めるということで、いろいろな面からの支援策を同時に進めてまいりたい、かように考えております。
  348. 左藤恵

    左藤委員 今の点について、大体いつその答申が出ることになっておるのですか。いつまでにいただくということにしてありますか。
  349. 吉田茂

    ○吉田政府委員 お答え申し上げます。  この臨時的定員の取り扱いについては、現在大学審議会審議をお願いしておるわけでございますが、平成十二年度にかかわる問題でございます。したがいまして、私学等の設置認可申請等にかかる準備期間等を勘案いたしますと、平成八年の秋ごろには、臨時的定員の取り扱いについて、大学審議会の検討の結果を踏まえてやはり一定の結論を得たい、このように予定をいたしております。
  350. 左藤恵

    左藤委員 それで、きのうもいろいろ御質疑がもう既にありましたので詳しく申し上げませんけれども、金融関係の問題につきまして、バブルの崩壊があって四十兆円とかいろいろな大きな不良資産が生まれたということで、これから一体それをどうして解消していくかということについて、責任はどこにあるのか、いろいろな問題があるだろうと思います。  赤字金融機関の経理監査というものを定着させるべきである、そのことについて府県の所管である機関、信用組合とかそういったところの問題だろうと思いますが、こういったところについて全国的にきちっとした統一的な監査というものは一体やってもらえるのだろうかどうかというふうな問題が一つあるわけであります。  それはそれとしまして、例えば、そういった機関で、この間のときもお話がありましたけれども、だんだん資金が少なくなってショートしてくるというときに、預金のかき集めというので高金利で預金をかき集める、こういうふうなものもあって、それがまたさらに赤字を大きくしているということからの悪循環みたいなものがあるわけでありますが、どの段階でどういうふうにして監査するかということについて、何かそういう指導の基準といいますか、例えば年に何回か報告を受けるとか、そういうようなことについての御検討というのはあるのですか。これを一点お伺いしたいと思います。これは大蔵大臣
  351. 武村正義

    ○武村国務大臣 赤字金融機関、特に信組なんかの監査の徹底という御趣旨でございますね。  今回の金融制度調査会の報告におきましても、やはり健全性をどう確保するかというのが一つの大きなテーマでございまして、保険業法の改正では、御説明申し上げたようにソルベンシーマージンという新しい一つの仕組みを導入をさせていただきました。金融機関についても、一つ一つの金融機関の健全性を刻々チェックするあるいは診断できるような仕組みを今検討していこうという考えてありますし、おっしゃるような赤字の状況になったときには、そのことがそのままディスクロージャーされて、預金者にもその状況がよく徹底するような仕組みにしていかなければならないと思っております。
  352. 左藤恵

    左藤委員 こうした庶民金融ということの段階におきまして、やはり一般庶民に信頼されて初めて私はそういったものが成り立っていくのじゃないかな、このようにも思います。  そういった点から見て、いろいろ大きな赤字が出ておる、そういうことについてよく一般の国民皆さんの中には、銀行のベースが非常に高い、例えばボーナスとかそういうことについても、このごろ非常に不況であって、例えば百貨店あたりのボーナスなんかは非常に切られておる、それから比べたらまだ金融機関の方がいいんじゃないかとか、そういうふうな一つの批判みたいなものがあります。  これは、それぞれの努力をしておられる、枠の中でやっておられることではあろうかとも思いますけれども、そのことに関連して、今度は金を借りる立場から見ますと、バブルのころには非常に高い金利で金を借りておった。これがバブルが崩壊したということで、当然契約のことですからなかなかその辺が難しいわけですけれども、安い金利で借りかえがなぜできないのだ、こういう論が、一般の中小企業の人たちには特にそういう声が大きいわけですが、これは一体やっておられるところがあるのでしょうか。  それでまた、これをやりますと、例えばいろいろな点で金融機関全体のいろいろな、それでもって契約し、それで計画しておった資金の現在高にも大きな影響をしてくる、そういうことからもできないのか。この辺のことについて、中小企業金融という立場からお伺いしたいと思います。通産大臣にお願いしたいと思います。
  353. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 御指摘のような問題点は確かに我々自身も痛感をいたしております。そして、今回御審議をいただいております補正予算の中に、赤字企業のみならず、非常に経営環境の厳しい中小企業に対しまして、既往の高金利時代の借り入れに対する猶予の措置あるいは一部減免の措置等を加えて御審議をいただくことにし、関連の法律案等もまた御審議をいただきたいと考えておるところでございます。
  354. 左藤恵

    左藤委員 これはぜひそういうことについて、そういうことができるということを十分法律審議の段階から一般の皆さんにPRをしていただきたい、このように思います。
  355. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 大変申しわけありません。一点申しおくれました。  ただ、これは政府系の中小企業金融機関でありまして、商工中金はこれに準じますけれども、民間を拘束することはできません。
  356. 左藤恵

    左藤委員 それはぜひお願いしたい。  もう一点だけ、もう時間も来ましたのでお伺いしたいのですが、きのうもお話があったと思いますが、APECが大阪でことし十一月に開かれる。日本が議長国として、東南アジア関係の各国、十八カ国の人が、大阪で初めて国際会議が開かれることでもありますが、この段階におきまして、新聞とかそういうところにょりますと、農業というものだけを例外の問題にしたいというようなことがあるわけであります。  これは、私はやはり、日本の農業というのは確かにいろいろな面で、これからWTOのいろいろな関係から、六年後には米の自由化というふうなこともやっていかなきゃならない。農業をどういうふうにしてやっていかなきゃならないという一つの大きな問題はあるわけでありますけれども、これは何も日本に限らず、ほかの国もいろいろな問題を、私は抱えられている問題でもありますので、今回の貿易を促進するというふうな意味から見た国際会議におきまして、こういった問題を、確かに自由貿易というふうな立場を推進するという日本の立場から、農業保護の問題に固執されないということをぜひお願いしたいと思いますが、通産大臣のお考えを伺いたい。
  357. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 APECにおける自由化の対象分野というものにつきましては包括的にするということで、我が国として異論を唱えておるわけではございませんで、各メンバー間のコンセンサスもほぼでき上がっております。  しかし一方、我が国の農業のように、各メンバーに存在する困難な分野の取り扱いにつきましてはある程度の柔軟性が必要だと考えておりまして、現在各メンバーの意見を調整しつつ取りまとめに努力しているところでございます。
  358. 左藤恵

    左藤委員 ぜひそういった方向でAPEC、せっかく開かれる会議でありますので、この成功に向かって努力をしていただくことをお願いをいたしまして、まだ先ほどの時間が食い込んでおりましたので、私の質問はこれで終わらせていただきたいと思います。
  359. 上原康助

    上原委員長 これにて左藤君の質疑は終了いたしました。  次に、東中光雄君。
  360. 東中光雄

    東中委員 大田知事の軍用地強制使用に係る代理署名の拒否をめぐりまして、昨日の審議で総理は、可能な限り話し合い、互いに納得して決着できるように努力する、こう言われました。ところが、どういうことで話し合いをするというのか。要するに、署名を早うやってくれということを催促する話し合いじゃこれはどうにもなりませんので、私、沖縄県の大田知事が九月二十八日に土地調書等の署名を拒否したときに出された声明文を、声明文といいますか、相当詳しい文書を検討させてもらいました。  それによりますと、大田知事は、沖縄の米軍基地の多くは、戦後米軍が地主の同意もないまま強権的に接収をし、構築してきた歴史的な経緯がある、また、国土面積の〇・六%にすぎない沖縄県に、全国の専用施設、基地の七五%が集中している、振興開発を図る上で著しい障害となっているということが言われています。  そして、米軍基地問題の解決を図るため、沖縄県としては、機会あるごとに日米両国政府に基地の縮小整理と基地被害の防止について要請してきた。これに対して政府は、日米安保条約の重要性を強調する反面、米軍基地の縮小整理や事件、事故の再発防止についてはさっぱり進まない、こういう状態になっておる。  本県における広大で過密な米軍基地の存在、訓練に伴う航空機騒音や環境破壊、軍人軍属による犯罪の多発、最近起こった非人道的な児童暴行事件を契機とした県民の幅広い抗議の声、こういうものを考えると、立ち会い、署名はどうしてもすることができない、その問題を解決つけなきゃできないんだということを言っているわけですね。  これは条件闘争じゃなくて、ここを解決すべきだ、こう言っているわけですが、総理はよく話し合って決着をつけると言っておられるのですが、これについてどうされるのですか。
  361. 村山富市

    村山内閣総理大臣 これはもうたびたびこの委員会で私も申し上げておりまするけれども、戦中戦後を通じ、沖縄県民に対して、日本に存在する基地の七五%以上もこの沖縄に集中して基地がつくられておるということからするいろいろな問題点について、これはもう重々私ども承知をいたしておりまするし、とりわけ今回の少女暴行事件といったようなものに関連をして、沖縄県民の心情やらあるいは知事の立場というものもよく理解できるところであります。  これはアメリカの方も、これは異例だと私は思いますけれども、大統領みずからが記者会見の中でそのことに触れておわびをするし、同時にまた、駐留軍自体の内部の粛正についてもいろいろ努力をされておるという状況も私は聞いています。  そういう努力もしてもらわなきゃならぬ。やっぱりみずからが再発防止をするための努力もしてもらうことも大事だし、同時に、今専門家委員会で、地位協定に基づく警察関係の案件の扱いについていろいろまた専門的な立場から議論もしてもらっておるわけです。そういう議論を通じて、改善ができるところは積極的に改善をしていく。  同時に、基地の問題についても、私は、一月の日米首脳会談の際にも、那覇港の問題やら三事項について、何とかひとつ話をつけてほしいということも申し上げて、アメリカもそれを受け入れて、今折衝しているわけです。  そういう努力はもちろんしなきゃならぬと思いますよ。そういう努力を一方ではしながら、一方ではまた、知事とも十分話をして、そしてある程度お互いの了解と納得ができるような仕組みというものをしっかりつくって、この問題を解決するために努力をしなきゃならぬというふうに思っておるところであります。
  362. 東中光雄

    東中委員 今総理は努力すると言われましたけれども、アメリカが最近発表した「東アジア太平洋戦略報告」、これによりますと、今後二十年間、米軍の十万人体制のプレゼンスを維持すると、東アジアで。日本の今の状態はそのまま維持するんだと、こういうことであります。  それで、総理大臣は、このアメリカの戦略を歓迎するという姿勢、日米安保体制の維持強化ということをこの間の所信演説でも言われましたね。こういう十万人体制を維持強化するんだ、こういうことを言って何が基地縮小ですか。基地縮小でも何でもないというふうに言わざるを得ない。  現に大田知事はそのことを言っていますわね。「東アジア戦略報告」あるいは「日米間の安全保障関係についての報告」、こういうのを見れば、そういう体制を強化するということになっておるじゃないか。これでいけば、二十一世紀までそういう方向に行ってしまう、こう言っているわけですよ。  それで、政府の今までとってきた態度で言いますと、沖縄の米軍基地についての縮小というのを私たまたま調べてみました。  一九七二年の第一次沖縄振興開発計画を見ますと、米軍基地については「できるだけ早期にその整理縮小をはかる必要がある。」というふうに書いています。八二年の第二次沖振計画によりますと、できるだけ早い時期にその整理縮小を図るというのです。図る必要があるから「図る」と書いてあるのです。それから十年たったら、九二年には、「米軍施設・区域をできるだけ早期に整理縮小する。」と書いてあるのです。  ところが、今なお十万人体制をこれから先二十年やっていくんだと言う。それを認めているのでしょう。それで何が基地縮小か。沖縄の県民の要求なんか全く無視しているじゃないかというふうに思うわけであります。  今総理言われました、当面の課題にしている三事案についても努力すると。この三事案だってこれはもうひどいものですよ。那覇軍港の移設返還ということについては、那覇軍港はなるほどなくするけれども、それは結局浦添埠頭地区内に新たに軍港を新設するじゃありませんか。それを提供するんじゃありませんか。こんなの基地縮小じゃありませんよ。それこそ再編強化じゃありませんか。基地縮小じゃなくて基地の統合でしょうが。整理統合だと言っている。そう言われているじゃありませんか、総理も。それは縮小じゃないと。  だから、沖縄県民の気持ちは理解できると言われるけれども、理解どころかまるっきり逆のことをやっているじゃありませんか。努力すると言って違う方向へ行っているじゃありませんか。これでは沖縄県民が怒るだけじゃない。日本国民が、みんなが、もう安保条約を廃棄せい、地位協定を根本的に見直せという声が出るのは当たり前であります。  私はそういう点で、大田知事の言っていること、それに対して努力すると言われているが、まるっきり違う方向へ行っている、この態度を改めない限りだめだということを申し上げたいんですが、どうですか、本当に基地縮小、基地撤廃、あるいは地位協定の抜本的な見直しという方向に向かってアメリカ側に提起すると、今まで一回も提起したことありませんね。提起するということを言われませんか。やはり提起しないということですか。どうでしょう。
  363. 衛藤征士郎

    ○衛藤国務大臣 東中委員にお答えを申し上げますが、今までの沖縄基地の返還の経緯について正確に申し上げたいと思うんですが、御指摘いただきましたとおり、沖縄復帰時におきましては八十三施設、約二万七千八百ヘクタールございましたが、二十年後の現在、平成七年九月三十日現在で四十四施設を返還いたしまして、現在三十九施設になっております。面積にいたしまして約二万三千七百ヘクタールになりましたが、この四十四施設、約四千百ヘクタールを返還してまいりました。  御指摘のように、懸案の十七施設、二十三事案ありまして、十三事案につきましてはほぼ了解がついておりまして、残りの十事案につきましても鋭意今努力をしておる、こういうことであります。  なお、大田知事の強い要請のありました懸案の三事案でありますが、この三事案のうち、今御指摘いただきました那覇港の移設、読谷補助飛行場の返還、これにつきましては本年五月に合意をいたしましたし、今調整中でありますし、また、県道百四号線の射撃訓練にいたしましても、これを分散移設しようということで、十月五日の日米合同委員会作業特別委員会の方におきまして検討が始まった、こういうことでありまして、従前どおり、政府といたしましては、沖縄の基地の整理統合、縮小の努力をしておるということだけははっきり申し上げたいと思います。
  364. 東中光雄

    東中委員 それはもう全く、二十年前に提起した六十三でしたか、その今の三事案といったって、これはもう二十年前から出てきておることじゃありませんか。二十年間かかって出てきたのは、那覇軍港の場合は、それは返すけれども新たにつくるんだ、こういうことになって強化しているんじゃないですか。今あなた、整理統合と言った。それで縮小ということをちょっとつけ加えた。ほんのちょっとですよ。ほんのちょっと道路を拡幅する程度に基地を返還したと。嘉手納基地の返還なんというのは、もうほんのちょっとじゃないですか。千分の一ぐらいじゃないですか。そんなものを麗々しく件数を挙げて言うもんじゃありませんよ。全くそういう姿勢ではだめだというふうに私は思います。  これ、時間がないのでこのことだけ申し上げて、これはもう総理に強く要求しておきますよ。努力すると言うんだったら、本当に統合じゃなくて基地の返還を求める、縮小する。二十年間も二十万体制結構だと、そんなことを言ったんじゃ困るということを強く申し上げておきたいと思います。(発言する者あり)ああ十万人体制。  次に……(発言する者あり)十万人体制。今のは言い間違いですから。言い間違いはありますよ、たまに。あなた方だって言い間違えることたくさんあるじゃないですか。  それでは、オウム真理教の問題についてお聞きします。  オウム真理教の、これはもう史上まれに見るような残虐な犯罪行為が続いてきました。これについての捜査で、私は、非常に異常な捜査のミス、非常に重要な問題がいっぱい起こっているということを強く感じます。  一つ申し上げれば、オウム犯罪の原点であるあの坂本弁護士事件については、現場にオウムのバッジ、プルシャが落ちていたのに、警察は検証に行ってそれの落ちていることを見なかったのですね。発見していないのです。こんなばかなことがありますか。それで、それを今度は家族が見て出したら、オウムはどう言うたかというと、家族がでっち上げしておるのだ、こういうようなことを言ったのでしょう。  そして、この事件についてそういう見落としをやって、警察は強制拉致事件と言わないのですね。ことしの四月まで、国会論議されても坂本弁護士失跡事件、公式には警察はそう言ってきたのですよ。会議録にもちゃんと載っていますよ。失跡といったら、みずから行方をくらますことと書いてますよ、広辞林見たら。ああいうふうにオウムに拉致されたという問題を、失跡なんということで警察がずっと五年余り続けてきておったということであります。  だから、日本弁護士連合会は、八九年十一月の事件発生以来、この事件は坂本弁護士の弁護士としての業務に関連して何者かにより拉致された疑いが極めて強い、それから捜査の継続強化をずっと要求してきたということを公式に声明として出していますよ。  そして、問題は、弁護士拉致というのは、きのうの江田委員質問にもありましたね。追及されているオウムが相手方の弁護士を拉致して、そして殺害までする。これはもう大変な法治国家への挑戦ですわね。  そういう問題をずっと五年間、みんなが全力を挙げて、これはもうオウムが怪しいと言ってやっているのに、いや、失跡腺事件だ、こういうことで、通報があって現地へ見に行ったのですよ、一時は。しかし、それはもう死体なんかないといってあきらめた。ところが実際には、今度行ったらそこにあったじゃないか。これは捜査の怠慢も甚だしいということになると思うのであります。  要するに、オウム真理教のバッジの存在、物証を中心に科学的な捜査をやるという点では、もう決定的なミスがあったということがあります。これが原点になって、そこから違法行為がどんどん膨らんでいくわけであります。  松本サリン事件でもそうであります。これだって第一通報者を加害者にするんですよ。サリンだということがわかっておって、そんなものを、だれかが自分の家の中でサリンなんかつくれるようなものでないということはわかり切ったはずでしょう。ところがそれをやって、オウムが犯人だと言って、上九一色村の人たちはオウムがサリン、サリンということは前から言っているから、あれはオウムと違うかということを言ったんだそうですね。私、現場へ行って聞いて、そうですかと言って、そういう状態なのに、あれ全然オウムを捕まえないでやりましたね。これはもう初動の決定的なミスですね。科学的に物を考えていない証拠ですよ。  その次の第七サティアンでの異臭問題。これも、木が枯れてなにしたから現場の土砂をとって、これは松本ではやったんですからね。だから、ここでも土砂をとって鑑定せないかぬのですよ。それが七月に起こっているのに、土砂をとったのが何と九月ですよ。だから、異臭事件でそこらが枯れているからそこで何かあったんだと言っておるのに、二カ月もおくれておる。これはもう怠慢も甚だしいですよ。  それで、やはり必要があるというのでとったのでしょう。調べてみたら、十一月になったら、これはサリン生成の残渣物だ、こういうふうになったんでしょう。そしたら、あの第七サティアンのところでサリンの問題があるんじゃないかといって行動せないかぬのに、全然動かなかったのでしょう。実際は、第七サティアンはサリンをつくっておった。  こんな警察の現場を無視した非科学的なやり方というのは、これはもう許されないのだ。それが地下鉄サリンまで起こしていく、容認してしまうようなことになってしまったのです。  こういう点で、私は、警察のあり方が、科学的に、それから国民の生命、身体、財産、安全を守るという立場に徹してやるべきである。警備、公安警察中心に動いておる、全国的な、大まかな動き方をするということではこういうことになるんだということを、今回の場合、非常に痛感をしました。  そういう点について総括をし、反省して明らかにすべきだと思うのですが、いかがでしょうか。
  365. 野田健

    野田(健)政府委員 坂本弁護士事件、松本サリン事件については、警察も全組織を挙げて懸命な捜査を実施してきたところであります。  まず、坂本弁護士事件については、届け出の直後から弁護士一家が何らかの犯罪被害に遭っている可能性が高いものとして、平成元年十一月十七日に捜査本部を設置し、強力な捜査を進めてきたところであります。坂本弁護士はオウム真理教被害者の会の救援活動に従事し、同教団との間に激しい対立関係があったことや、同氏宅にオウム教団のバッジが残されていたことなどから、オウム真理教の関与についても初期的段階から視野に入れて捜査を推進してきたところであります。  残念ながら、事件現場において極めて物証が乏しかった上に、教団の閉鎖性が強く内部情報をほとんど得られない、かつ組織的な証拠隠滅活動がなされたことなどがありまして、多岐にわたる捜査を丹念に行う必要から被疑者を検挙するまでに五年余の期間を要したものであります。  次に、松本サリン事件については、河野さんは容疑者として取り扱ったものではありませんで、あくまでも第一通報者、かつ被害者として御協力をいただいたわけでありますが、河野さん字あるいはその直近が被害発生現場である、そして犯行に密接に関係ある場所と思われたことから、被疑者不詳で捜索差押許可状及び検証許可状の発行を得た上、河野さん宅及びその周辺について捜索、差し押さえ及び検証を実施したほか、河野さんから事情をお聞きしたところであります。この過程において、河野さんに対して御迷惑をおかけすることになった点については、申しわけないことだと思っております。  さらに、山梨県上九一色村での異臭事案につきましては、証拠の収集、鑑定がおくれたとの御指摘でありますけれども、異臭事案を認知して、警察官が臨場の上、所要の調査を実施いたしましたが、史上初めてサリンが犯罪に使用された松本サリン事件の直後でありまして、サリンが自然環境に及ぼす影響等の知識が乏しかったことや、カーバイドを燃やしたようなにおいはしたものの、風向きによってにおったりにおわなかったりするという状態で、頭が痛い、のどが痛い、あるいは目にしみるといったような体に影響を及ぼすようなものでなかったことから、一過性の異臭事案として処理し、犯罪の具体的な容疑を問擬するに至らなかったものであります。  その後、松本サリン事件の捜査が進み、サリン生成に必要な薬品の販売ルートの捜査からオウム真理教のダミー会社がサリン生成薬品を購入している事実を把握し、サリン事件の現場捜査あるいは現場鑑識に一日の長を得た長野県警察が山梨県上九一色村に赴きまして、異臭事案の際、木の葉が枯れた地域の土砂を採取の上、鑑定を実施した結果、サリンの分解した後に残る残留物の一つを、まことに微量でありましたが検出いたしまして、オウム真理教施設におけるサリン生成の容疑を深めていったという状況にございます。
  366. 東中光雄

    東中委員 全く反省の意思なしですわ。そういう科学捜査を否定しておったということについて、何の反省の意思もないと思う。日本の警察は全く科学性を欠いた、そして反省もないということだということだけははっきり指摘しておきます。許されぬと思います。  時間がありませんので、もう一つ聞きます。(深谷国務大臣委員長、ちょっと発言を補足させていただけますか」と呼ぶ)質問を、質問時間の制限があるのです、私の方は。私の方は質問の時間がありますから。(深谷国務大臣委員長、今のを補足をしたいのです」と呼ぶ)質問中です。質問中でしょう。委員長質問を許したじやありませんか、私に。(発言する者あり)質問しているのに余計なこと言うな。
  367. 上原康助

    上原委員長 どうぞ続けてください。
  368. 東中光雄

    東中委員 オウム真理教に対して検察官は、宗教法人法による解散請求を六月三十日にやられました。既にもう百日たっているわけです。それから東京都知事、要するに主務官庁と検察官が公益の代表としてオウムの行動、反社会的行動、これが宗教法人法の八十一条の、法令に違反して公共の福祉に反する、著しく宗教活動から逸脱しているということで請求をしました。  法務省に聞くんですが、解散請求の理由たる事実と、解散請求をやってから既に百日たっているんですから、非訟事件ですから、もう普通なら当然結論が出ておらなければいかぬですから、その経緯、見通しを明らかにされたい。
  369. 深谷隆司

    ○深谷国務大臣 国家公安委員長として先ほどの発言について補足させていただきたいと思います。  私どもも最初はもどかしさを感じたことは事実でありますが、その後の捜査の細かい報告等を聞くにつれて、このたびの捜査は極めて困難が多く、その中を警察官が全力を挙げて今日の検挙に至ったという経緯を見て、私は総力を挙げて頑張ったというふうに理解をしているということだけはぜひ申し上げたいと思っております。  なお、サリンを使うなどということは今日までの状態の中では予想つかなかった、そういう意味では、相当事件が解明された今日の段階において、これからこのようなことも想定しながら体制を整えていくというそういう反省材料や教訓になっていることは確かだと思っておりますことをつけ加えます。
  370. 則定衛

    ○則定政府委員 お尋ねのオウム真理教に対します宗教法人の解散請求理由でございますけれども、これは、その施設内の第七サティアン内に多数の人を殺害する目的でサリンを製造した、こういうことでございます。これが宗教法人法八十一条一項一号、二号に該当するということでございます。  審理の方でございますけれども、先般東京地裁におきまして、十月二日に現場の検証、それから十月六日に関係者からの審尋が行われておりまして、検察官といたしましては、できるだけ速やかに東京地裁の決定があることを期待しているのが現状でございます。
  371. 東中光雄

    東中委員 オウム真理教はあらゆる、サリンの製造もやりましたし、それから使用もして殺人をやった。これは全部起訴されていますね。そのうちの一番初歩の、第七サティアンのあそこでサリンの製造をしたというのではなしに、製造をするそういう体制をつくってそして企てた、これが法令違反で、これだけでも解散理由があるんだとうんと絞ってあるんですよ。私、当然のことだと思うんです。それで、解散の理由はあるんだということをやったんですから、だから、現場を見て鑑定書もあるんだから、もう当然やられなければいけないのに、何しているんだろうなと実は思っています。  そして、解散が出て確定しますと、清算人を選任しなければいかぬですね。清算人は検察官ないし主務官庁からの請求、裁判所の持っている職権でもやれますけれども、それによってやるんだ。だから、解散を請求したのは検察庁ですから、今度は清算人も検察庁が選任について請求をすべきだと思います。  その清算人は何をやるのかということになりますと、これは法律の規定によりまして、清算人の職務は、現務の結了、それから債権の取り立て及び債務の弁済、残余財産の引き渡し、こういうことをやるんだ。それをやるために必要なる一切の行為を清算人はなすことができるという規定があります。  そこで、このオウムが解散に至った経過というのは、毒ガスの製造、それから毒ガスによる無差別殺人、それから拉致監禁、殺人、致死傷。もう世界じゅうが震駭するようなことをやったわけでしょう。その根拠地が第七サティアンであり、それぞれの施設なんですよ。武器製造工場もありますがな。これはオウムの財産ですよ。と同時に、オウムの反社会的行動、犯罪行動の拠点ですよ。選任された清算人はそれを全部確認しなければいかぬのでしょう。  そして、これはもう大変ですよ。どこに毒ガスの原料が置いてあるかわからぬ。この間も埼玉で出てきましたね。そういうのを全部、これは確認し管理し、そしてそこを使っている者はのけて、そしてオウムの今までの行為を、現務を結了させる、これをやるのが清算人の任務なんです。これはもう並大抵のことじゃありませんよ。  それをやる人をどうするのかということについて、政府は、検察庁が清算人の選任の請求もするわけですからね。どういうことをやらなきゃいけないんだということを含めて準備をしておらなきゃいかぬと思うのですが、当然もう速やかな結論が出るやろうというふうにまで言われているんだから。準備しているんですか。この辺についてお伺いしたい。
  372. 則定衛

    ○則定政府委員 清算手続につきましては、今委員御指摘のとおりな法律上の手続を踏むわけでございまして、また、御指摘のとおり、裁判所が当該清算人を選任するということになるわけでございます。  私ども申立人サイドといいましょうか、検察官が行っておるわけでございますけれども、裁判所がこの事案に即した適当な、まさに適任な清算人を選任されるということを期待するわけでございまして、場合によりましたら裁判所に対しましてそういったことについてのこちらの意向も伝えることになりますけれども、あくまでも決定しかっその監督下で清算人が活動を行うのは裁判所であるという点は御理解いただきたいと思っております。
  373. 東中光雄

    東中委員 解散を請求したのは検察庁でしょう。政府側がやっているんですよ、公益の代表として。そして、要求どおりに解散させなきゃいかぬわけでしょう、これは。できるからやっているだけじゃなしに、こんな世界を震駭させたような犯罪行為、これは鎮圧しなければいかぬでしょう。  そのために、今度は拠点をちゃんと押さえなければいかぬじゃないですか。当然そうすべきでしょう。これによって被害を受けた人、これに対する弁済の問題もありますね。あるいは、マインドコントロールで異常な状態になっている被害者もいますよ。そういう人たちが占拠しているわけでしょう。そういう人を出さなければいかぬでしょう。これは清算人の任務になるんですから。そういう事案だということで請求したんでしょう、これは。そういう事案についてちゃんと清算事務が速やかにやれるように、こういうオウムの蛮行を繰り返さないための措置を今やるということで政府は取り組むべきじゃありませんか。法的にはそうなっているじゃないですか。  裁判所が職権でやるべきだと。職権じゃないんです。裁判所は職権でもできるけれども、検察庁が請求してやる。裁判所に聞いた。そんなもの裁判所へ言われたって何もできませんよ、何もないんですからと。だから、検察官の方から意見を聞いて、それはやることになります。そういう部隊はオウムの鎮圧をやる。再発をやらせないというための体制を政府がとらなければいかぬじゃないですか。清算人は一人じゃないんです。どのくらいの清算人が要るのかということも含めて考えなければいかぬじゃないですか。  政府はオウム真理教問題関連対策省庁連絡会議というのをつくった。そして、あらゆる面で、厚生省も建設省も、中へ入っている人の住宅のことも考えなければいかぬというようなことをやったんでしょう。この連絡会議は、解散が確定した場合の清算事務、要するに蛮行の拠点を管理し、それからオウムの人たちを退去させる、そういうことについて具体的に何の検討もしていない。ただ裁判所が清算人出たらやってくれるでしょうということでおるというんですか。それならそれで、これはもう国民承知しないですよ。どうなんですか。
  374. 宮澤弘

    ○宮澤国務大臣 ただいまもお話がございましたように、清算事務は裁判所が選任をいたしました清算人が行うわけでございます。そこで、先ほども御指摘がございましたが、解散の請求は国を代表して検察官も請求をいたしております。したがいまして、解散命令が確定をいたしました場合は、検察官におきましても速やかに清算手続が行われるように適切に対処するものと思っております。
  375. 東中光雄

    東中委員 総理、これは法務省の検察官の問題じゃないですよ。そういう清算事務ということで、オウムの拠点をなくしていくということを、これは清算事務としてやらなければいかぬことなんですよ。置いておくこと自身がみんなもう困ると言って署名運動をやって、もうここにおらぬようにしてくれと言ってやっているわけでしょう、国民は。それで政府は、清算人がやるんでしょうと。これで済みますか。どうするんだということについて、本当にそういう体制をとるということを、どうですかやはりとらぬと言うんですか。
  376. 村山富市

    村山内閣総理大臣 今、検察の方から裁判所に対して、オウム真理教の宗教法人の解散命令を出してほしいというあれをしているわけですね。そして、審理の結果、裁判所が解散命令を出すということになりますと、裁判所が清算人を決めて、そして裁判所の監督のもとに清算業務が推進されていくということになるわけですよ。ですから、それまでこっちが勝手に清算事務をどんどんやるなんということはできないわけですね。それはもうあなたも御存じだと思いますよ。ですから、これは早く判決を出して、そして清算命令を出してほしいということは期待していると思いますし、裁判所もこの要請にこたえて努力はされていると思いますよ。  そして、今申し上げましたように、解散命令が出れば、その命令に基づいて裁判所が清算人を決めて、裁判所の監督下においてその清算事務がなされていくということになるわけですから、したがって、その清算事務を遂行する上で行政としてやる必要があるようなことについては積極的に協力をして、一日も早く解消をするように努力していかなければならぬというふうに思いますけれども、しかし、そういう手続の段取りが必要だということについては、あなたは弁護士をされているわけですから、よく御存じのことだと思います。
  377. 東中光雄

    東中委員 僕は弁護士をやっているから、あなた方の対応はなっておらぬと言っているんですよ。だって、清算人を請求するのは法務省からやるんでしょう。実態を知っているのは裁判所ではなくて検察官なんですよ。だから、請求したのでしょう。この清算事務というのは単なる会社の清算じゃないんです。こういう天下を震駭させたような犯罪行為を繰り返した。毒ガスの製造までやった。そういう武器製造工場もあれば、毒ガス製造の化学プラントもある。そういう財産をちゃんと管理し、特定し、凍結して、そしてそういう行動をやった者とは隔離をしてということをやらなきゃいかぬのが清算人の任務なんですよ。そのためにはどういう清算人が要るんだと、検察庁がちゃんと請求をしてやるべきじゃないですか。そのときになったら考えますじゃ、私は本気に取り組んでいるとは思えないです。  もう一点、もう時間がないので言います。  それに対して、破防法の適用が問題になっています。  ところが皆さん、破防法というのは、総理、これはもともと戦前、戦時中の治安維持法、それから戦後の米軍の全面占領時の団規令、団体等規正令、それを受け継いで講和のときに出てきた、そういう同じ系列の政治弾圧法規です。それは、支配体制に対する根本的な批判と変革を主張する思想と言論活動を犯罪視して取り締まる、そして結社の活動を規制して処罰するというのがこの規定であります。  破防法によって団体に対して規制できることは一体何かと言えば、破防法に書いていますよ。破防法の五条、七条、八条です。五条では、やれることは集団示威運動と集団行進と公開の集会、それから機関紙の印刷、頒布を禁止をし、やれば取り締まる。それから、それでも効果がないときには解散を指定して、解散指定されたもとの団体の構成員はその解散された団体のためにする行動をやることができない。それをやればそれは処罰される。何かと言えば、それは集会であり、機関紙の発行であり、そういうことなんだ、説教することなんだ、こういうふうになっているんですね。これは佐々さんもそういうことを言ってますよ。新聞に書いてます。そういうものを、この蛮行をやったオウムの取り締まりに何の関係もないんです。  蛮行をやったオウムの取り締まりは刑法によって警察、検察がやったんでしょう。やらなきゃいかぬのですよ。そんな言論やら集会をとめて、それで一体どうしてオウムの破壊活動を再発防止できるんですか。それは結局言論弾圧の、結社の自由に対する弾圧の、この公安調査庁の存在理由を生き返らせるだけのことなんです。何の効果もないですよ。  悪いことをやらない限りは、反社会的な行動をやらぬ限りは、信仰の自由、説教の自由あるじゃないですか。それまでも元オウムであったというだけで公安調査庁に監視されて取り締まりを受ける。そういうことをやれという申請を出す、そんなことは総理大臣、絶対にやるべきじゃない。公安調査庁にそういう破防法の適用申請をするようなことはやるべきじゃないということをはっきりと総理大臣、言明してほしい。それで質問を終わります。
  378. 村山富市

    村山内閣総理大臣 やるべきであるとかやるべきでないとかいうことをここで私に言明をしろなんて言ったって、それは無理な話で、今それは法と証拠に基づいて厳正に調査をしているという報告は聞いていますけれどもね。  ただ、今お話もございましたように、これは基本的な人権に関する問題でもありますから、したがって、そういう意味における慎重な検討は必要であるということは申し上げております。
  379. 東中光雄

    東中委員 時間ですから、終わります。
  380. 上原康助

    上原委員長 これにて東中君の質疑は終了いたしました。  次に、海江田万里君。
  381. 海江田万里

    ○海江田委員 きょうは、定期借地権について質問をさせていただきます。  本委員会でも議論されてきましたけれども、現在の日本の不況を克服するには、土地問題の解決が必要不可欠だと思います。この土地問題の解決とはつまり土地本位制からの脱却だと私は考えますが、この土地本位制からの脱却に重要な役割を果たすのが定期借地権の制度だと考えます。  定期借地権の制度は、五十年なら五十年と期間を区切って、そして所有とそれから利用を切り離す考え方であります。所有と利用が切り離されて、しかも五十年たてば必ず土地は戻っできますので、土地を貸す方としては安心ができますし、借りる方は、これは地代を払えばいいことになりますから、大変安くマイホームが手に入る。それこそ、宮澤内閣以来念願としてきました年収の五倍はたやすいこと、年収の三倍もこれは私は夢でないと思うわけでございますね。  建設大臣、建設省はこの定期借地権つきの住宅に特に力を入れているようにお聞きしますが、この問題についての基本的なお立場をお聞かせください。
  382. 森喜朗

    ○森国務大臣 海江田委員にお答えをいたします。  定期借地権は、今委員からお話しのとおり、平成四年の八月に施行されました借地借家法において創設をされたものであります。建設省からひょっとしたらこれをごらんになっているかもしれませんが、お話しのとおり、大体そうですね、土地と住宅を入れて七千百四十万円ぐらいの資産のものが、この定期借地権を利用いたしますと、家の方が三千十万円で、まあ当初の価格が五三%程度で済む。三千八百四十万円ぐらいになります。それから、あとのずっと地代を全部加算をいたしましても大体七四%ぐらいになるということでございますから、大変そういう面では宅地の初期の負担を軽減できる。  こういう意味で、中堅勤労者にとりましてもまたゆとりある居住や職場に近いところでの居住の実現が容易になるということで、多様化する国民の居住ニーズに対する観点から、住宅政策上意義あるものと私は認識をいたしております。  建設省では、本年度、定期借地権設定契約書案等を作成いたしまして公表することといたしておりますし、住宅金融公庫融資におきまして、定期借地権つき住宅の取得の際に支払われる一定の保証金に対して融資を行うことが可能になるような制度改善も行っております。さらに、住宅・都市整備公団等におきまして、定期借地権つき住宅供給のための準備をいろいろと今進めているところであります。  建設省としては、委員御指摘どおり、ぜひこれを大いに活用していただきたい、そう念願をいたしておりまして、本格的な普及を図るために積極的に取り組んでいきたい、このように考えておるところであります。
  383. 海江田万里

    ○海江田委員 建設省は大変熱心だと思うのですが、問題は、土地を提供する地主さんの側が、やはりこれを提供することによって相続税が安くなるわけですね。ところが、その相続税の評価が、今、国税庁の財産評価基本通達によると、底地の評価として、借地期間が十五年以上残っている場合は更地の八割評価ということになっております。これは正直言って高過ぎるのですね。  それからまた、借りる人から預かった保証金を、これを、何千万円と預かりますから大体預貯金にするわけですけれども、その場合は、債務控除の額が返済原資分、例えば一千万円ですとたったの五十四万円しか控除をされないというような問題がありまして、これは土地を提供する側からすれば大変大きな障害になっているのですね。大蔵省、この問題をどういうふうにお考えか。
  384. 武村正義

    ○武村国務大臣 森大臣からもお答えがありましたように、定期借地権という新しい土地に関する道が開かれたわけであります。私も、所有権と借地権の間にこういう新しい道が開かれたことは大変意味があると思っておりますし、大いにこの活用を期待するものであります。  ただ、相続税の問題にしろあるいは融資機関の問題にしろ、それぞれその立場でこの新しい制度を評価しながら実態を見詰めて取り組んでまいりたいと思っているところであります。
  385. 海江田万里

    ○海江田委員 これはまだ新しい制度ですから、底地の、更地の八割というのもかなりアバウトな計算なんですね。もう少しこれを精査する必要があるのではないだろうかということです。  あともう一つ、大蔵省にぜひお願いをしたいのは、これは九月の二十九日の読売新聞でございますけれども、投書欄がありまして、定期借地権つきの住宅、中古の住宅ですけれども、それを購入しようと思うと、先ほど建設大臣からお話ありましたけれども、金融公庫は一生懸命になって融資をしているのですが、民間の金融機関がその融資に応じない。これは、「ここでも土地神話の亡霊がまだ生きている。」「土地は公共性を高めるべき性質の物で、定期借地権はその方向に沿っており、時代に先んじた考え方だと思う」けれども、金融機関がちっともそれに融資をしてくれない、そういう状況があると。  この例だけじゃありませんで、この方は浜松市の方ですけれども、そういう例をたくさん聞くのですね。この問題、何とかなりませんかね。
  386. 西村吉正

    ○西村政府委員 民間の金融機関の融資につきましては、金融機関の自主的な判断により行っているところでございますけれども、御指摘の点につきまして、住宅公庫が力を入れてやっておりますところでございますが、民間金融機関といたしましては、今のところ定期借地権制度が必ずしも一般化しておらず、現段階ではその定着状況を見きわめているというのが実情でございます。
  387. 海江田万里

    ○海江田委員 もう少し前向きな、大蔵省もあるいは銀行も評判が悪いわけですから、ここいらで少し失地回復、名誉挽回をすべきではないだろうかと私は思うのですが。  総理にお尋ねをしますが、御案内のように私は、政治的には自民党でもない新進党でもない第三極をと言っておるのですが、じゃ、自民党でもない、新進党でもないというのなら、国民に向かって一体どういう政策、とりわけ経済政策ですね、どういうことをやはり国民に訴えかけをしていくのかということでいえば、私は例えば今お話をした、これからの日本の経済は、やはり土地本位制、土地の所有と利用がリンクをしてしまって、そこからどうすることもできなくなっている、この所有と利用を切り離しをして、そしてそこから出てくる経済の活力というものをこの日本経済の再生のために生かすべきではないだろうかというふうに考えているのです。  これは日本だけじゃありませんで、例えば日本の経済の現在の不況というのは、東西の冷戦構造が崩壊をして、そしてこれまでは市場経済から疎外をされた世界の三分の一の土地や労働力や資源がやはり市場経済の中に入ってきたということで、例えば中国なんかでもこの定期借地権というのをやっているわけですよ。土地は国有ですけれども、利用権、中国では使用権といいますけれども、使用権を外資に開放をして、そして中国の経済を活性化をさせている、こういう例があるわけですから。  もちろんこれは日本と方向は逆ですよ。方向は逆ですけれども、私は、やはり冷戦構造が崩壊をして以降、日本の資本主義も新しい、いわば第三の資本主義のようなものにやはり変更していくべきだ、変わっていくべきだ、その中心としてやはりこういう土地の利用権をどんどん推進をさせる。利用権を公共に、もっと公用に開放をするということは重要だと思うのですが、総理のお考えはいかがでしょうか。
  388. 村山富市

    村山内閣総理大臣 土地を資産として所有するという考え方から、むしろ土地はやはりもっと社会的に活用すべきだという考え方に転換をすべきだということについては、私も全く同感であります。  そういう意味で、この定期借地権つき住宅というのは……(発言する者あり)よく名前は覚えなければいけませんけれどもね、本当の意味で中堅サラリーマンの住宅を促進していくという意味では大変私は意義のあることだというように思います。  ただ、税の問題とかいろいろな問題の関連もありますから、金融機関がそういうものに対して促進がしやすいような、そういう環境整備もやはり十分検討してやる必要があるのではないかというふうに思いますから、そういう意味でこれから促進をしていきたいというふうに思います。
  389. 海江田万里

    ○海江田委員 ありがとうございました。  終わります。
  390. 上原康助

    上原委員長 これにて海江田君の質疑は終了いたしました。  次回は、明十三日午前九時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時三分散会