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1995-11-08 第134回国会 衆議院 農林水産委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成七年十一月八日(水曜日)     午後零時三十分開議 出席委員   委員長 日野 市朗君    理事 二田 孝治君 理事 谷津 義男君    理事 石破  茂君 理事 倉田 栄喜君    理事 仲村 正治君 理事 鉢呂 吉雄君    理事 小平 忠正君       赤城 徳彦君    荒井 広幸君       金子原二郎君    岸本 光造君       栗原 博久君    七条  明君       東家 嘉幸君    葉梨 信行君       浜田 靖一君    松下 忠洋君      三ッ林弥太郎君    御法川英文君       山本 公一君    鮫島 宗明君       実川 幸夫君    千葉 国男君       初村謙一郎君    増田 敏男君       矢上 雅義君    山岡 賢次君       山田 正彦君    石橋 大吉君       遠藤  登君    中西 績介君       玄葉光一郎君    錦織  淳君       藤田 スミ君  出席国務大臣         農林水産大臣  野呂田芳成君  出席政府委員         農林水産政務次         官       松岡 利勝君         農林水産大臣官         房長      高木 勇樹君         農林水産省経済         局長      堤  英隆君         農林水産省経済         局統計情報部長 中須 勇雄君         農林水産省構造         改善局長    野中 和雄君         農林水産省農産         園芸局長    日出 英輔君         農林水産省畜産         局長      熊澤 英昭君         農林水産省食品         流通局長    鈴木 久司君         食糧庁長官   高橋 政行君         林野庁長官   入澤  肇君         水産庁長官   東  久雄君  委員外出席者         外務大臣官房審         議官      大島 賢三君         外務大臣官房外         務参事官    北島 信一君         大蔵省銀行局銀         行課長     村木 利雄君         大蔵省銀行局中         小金融課金融会         社室長     振角 秀行君         通商産業省通商         政策局総務課ア         ジア太平洋地域         協力推進室長  上田 隆之君         海上保安庁警備         救難部警備第一         課長      淡路  均君         農林水産委員会         調査室長    黒木 敏郎君     ――――――――――――― 委員の異動 十月十三日  辞任        補欠選任   初村謙一郎君     竹内  譲君 同日  辞任        補欠選任   竹内  譲君     初村謙一郎君 同月十九日  辞任        補欠選任   赤城 徳彦君     谷  洋一君   荒井 広幸君     中馬 弘毅君   金子原二郎君     村田敬次郎君   川崎 二郎君     木部 佳昭君   栗原 博久君     佐藤 孝行君   七条  明君     田澤 吉郎君   浜田 靖一君     糸山英太郎君   御法川英文君     粕谷  茂君   初村謙一郎君     熊谷  弘君 同日  辞任        補欠選任   糸山英太郎君     浜田 靖一君   粕谷  茂君     御法川英文君   木部 佳昭君     川崎 二郎君   佐藤 孝行君     栗原 博久君   田澤 吉郎君     七条  明君   谷  洋一君     赤城 徳彦君   中馬 弘毅君     荒井 広幸君   村田敬次郎君     金子原二郎君   熊谷  弘君     初村謙一郎君 同月二十日  辞任        補欠選任   木幡 弘道君     今津  寛君 同日  辞任        補欠選任   今津  寛君     木幡 弘道君 十一月八日  辞任       補欠選任   木幡 弘道君     鮫島 宗明君 同日  辞任       補欠選任   鮫島 宗明君     木幡 弘道君     ――――――――――――― 十月三十一日  新食糧法施行・運用に関する請願平沼赳夫  君紹介)(第七六号)  家畜改良増殖法規制緩和に関する請願(沢藤  礼次郎君紹介)(第一〇一号) 十一月六日  新たな食料・農業基本政策確立と新食糧法並  びに水田農業政策価格に関する請願(桜井新  君紹介)(第一八四号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 十月二十七日  食糧農業農村に関する新たな基本法制定  と米政策確立及び米の政府買い入れ価格に関  する陳情書外二十二件  (第八〇号)  新たな基本法制定都市農業確立に関する  陳情書  (第八一号)  ウルグアイ・ラウンド農業合意実施に伴う農  業農村整備事業促進に関する陳情書外十七件  (第八二号)  APEC大阪会議に関する陳情書外二件  (  第八三号)  漁船乗組員確保対策に関する陳情書  (第八  四号)  国際化に対応し得る農業及び農村対策拡充強  化に関する陳情書外四件  (第八五号  )  国土保全奨励制度施策充実に関する陳情書  (第八六号)  米の輸入自由化阻止に関する陳情書外三件  (第八七号)  水産業振興対策充実強化に関する陳情書  (第  八  八号)  水田農業確立及び新食糧法に関する陳情書外三  十四件  (第八九号)  中山間地域振興対策充実強化に関する陳情書  外四件  (第九〇号)  農業振興対策充実強化に関する陳情書外二件  (第九一号)  農畜産物及び水産物の過度な輸入規制に関す  る陳情書外一件  (第九二号)  畑作経営の安定に関する陳情書  (第九三号  )  北海道稲作振興と新食糧法等に関する陳情書  外八件  (第九四号)  林業振興対策拡充強化に関する陳情書  (第九  五号) 十一月二日  主要食糧の需給及び価格安定の法律施行と運営  に関する陳情書  (第二二九号)  新食糧法及び生産調整対策に関する陳情書外二  件  (第二三〇号)  国土保全奨励制度に関連する施策充実に関す  る陳情書  (第二三一号)  ウルグアイ・ラウンド農業合意実施に伴う農  業及び農村整備事業促進に関する陳情書外二  件  (第二三二号)  しらすうなぎ国外流出防止対策強化に関す  る陳情書  (第二三三号)  漁港と漁村整備及び漁業振興予算確保に関  する陳情書  (第二三四号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  農林水産業振興に関する件      ――――◇―――――
  2. 日野市朗

    日野委員長 これより会議を開きます。  この際、野呂田農林水産大臣及び松岡農林水産政務次官から、それぞれ発言を求められておりますので、順次これを許します。農林水産大臣野呂田芳成君
  3. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 先般、農林水産大臣を拝命いたしました野呂田芳成でございます。  農林水産業は、申すまでもなく、国民生活にとって欠くことのできない食糧安定供給、あるいは国土自然環境保全という大変重大な役割を担っております。また、農林水産業の健全な発展農山漁村の活性化なくして、我が国経済社会の安定した発展はございません。  私は、このような農林水産業の重大な使命に思いをいたし、農林水産行政責任者として、誠心誠意職務に精励する所存でございます。委員各位の絶大な御支援と御鞭撻を賜りたいと思います。  一言、ごあいさつを申し上げました。(拍手
  4. 日野市朗

  5. 松岡利勝

    松岡政府委員 このたびの村山改造内閣のもとで、野呂田大臣の下で農林水産政務次官を仰せつかりました松岡利勝でございます。  今、農林業の置かれました状況につきましては大臣の方からおっしゃられたような状況でございまして、この問題、この課題を打開するために誠心誠意一生懸命頑張ってまいりたいと思っております。  特に、地球の将来、人類の将来を考えますときに、この農林水産業発展は不可欠の大事な前提でございます。そのような認識にも立って、精いっぱい頑張ってまいりたいと思っております。  どうか、委員長初め委員各位皆様方の御鞭撻、御指導をお願いいたしまして、ごあいさつといたします。(拍手)      ————◇—————
  6. 日野市朗

    日野委員長 農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。赤城徳彦君。
  7. 赤城徳彦

    赤城委員 野呂田大臣、また松岡政務次官には、農業問題非常に多難なときですので、ぜひ御活躍をいただきますようお願い申し上げます。  今、農林水産分野ではさまざまなテーマがございますけれども、特に、目前にAPEC大阪会合を控えておりますので、その問題に焦点を当てて質問をさせていただきます。  御案内のとおり、APECでは、昨年出されましたボゴール宣言で、先進国は二〇一〇年、開発途上国は二〇二〇年までに貿易及び投資の自由化を達成する、こういう宣言がなされました。大阪会合では、その宣言を具体化するための行動指針を策定するということになっているわけですけれども我が国についてはこの農林水産分野など、また各国のそれぞれセンシティブ分野をこの行動指針においてどういうふうに取り扱うかということが大きな課題となっております。  私どもは、この農林水産分野ウルグアイ・ラウンドの七年間という大変長い経過を経てぎりぎりの合意をしたところでありますし、その合意自体自民党としてはなかなか受け入れがたいという内容であります。まして、これをさらに前に進めるということはできない。そういう状況の中で、APEC大阪会合に向けて我が国立場をどのように大臣主張されていくのか、まずその決意を伺いたいと思います。
  8. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 十一月のAPEC大阪会合に向けまして、目下その行動指針策定作業が真剣に進められているところでございます。  具体的には、私どもは、農林水産分野取り扱いにつきましては、日本農林水産業を取り巻くいろいろな困難な事情がございますから、これにつきましてそういう事情を十分しんしゃくした上でやっていただきたいということをいろいろな機会に主張してまいりました。そして、私どもとしては、ウルグアイ・ラウンド農業合意を確実に堅持することが我が国の方針であるということを再三再四申し入れてきたところでございます。  したがいまして、APECでの自由化を進めるに当たりましては、包括性原則は維持しつつも、農林水産分野のような各国の抱える困難な分野、問題につきましては、柔軟な扱いを認め、実行可能な行動指針とする必要があると考えておりまして、このような我が国立場が反映されるように明確にこれを主張し、今その取りまとめ作業に入っているという次第でございます。
  9. 赤城徳彦

    赤城委員 今申し上げましたように、一番焦点になるところは明確だと思いますし、また、これから大阪会合に向けて、その点について我が国の、また政府与党立場、スタンスを明確に一度確認しておかなければいけないと思います。  それは端的に言いますと、農林水産分野WTOでやったばかりであるからそのとおりにやりましょうということであります。きょうは外務省通産省、それぞれ来られたと思いますので、外務省通産省の方にもこの点再度確認をさせていただきたいと思いますが、農林水産分野についてこの三点でよろしいのかどうか、もし違うところがあれば、そうではないということではっきりお答えいただきたいと思います。  農林水産分野について、第一に、ウルグアイ・ラウンド合意実施期間中はウルグアイ・ラウンド合意の着実な実施をする、第二に、ウルグアイ・ラウンド合意実施期間以降はWTOでの交渉にゆだねる、第三に、農林水産分野について二○一〇年の目標年次における自由化は約束できない、こういう三点の、これは従来からの我が国主張だと思いますけれども、これを堅持するということでいいのかどうか、確認したいと思います。
  10. 北島信一

    北島説明員 お答え申し上げます。  議員御指摘の三点で、外務省としても同じ考え方でございます。私自身ウルグアイ・ラウンドを三年半、担当課長として御一緒に仕事をさせていただきました。あのときの先生方の御苦労、私自身自分のものとして、十分に私の体の一部として持っているつもりでございますけれども、あの七年半にわたったウルグアイ・ラウンド合意の成果を、この合意をきちっと守っていくということが、まさに日本が世界に期待されている最大の点だと思います。したがいまして、それを着実に実施する。それから、二〇〇一年以降の扱いにつきましては、二〇〇〇年に継続交渉が想定されておりますので、この継続交渉による。それから、ボゴール宣言にあります二〇一〇年の目標年次におきます完全自由化、これについては当然約束できない、そういうことで考えております。
  11. 上田隆之

    上田説明員 お答え申し上げます。  ただいま農林大臣、それから外務省の方から御答弁がございましたとおり、通産省といたしましても、今のような基本的な立場というのを踏まえながら、一方で包括性を受け入れながら、他方でこういったセンシティブ分野につきましては柔軟な取り扱いを行うというような方向で対応をいたしたいと思っております。
  12. 赤城徳彦

    赤城委員 ただいまの通産省上田室長お答えは、今の三点、文言どおり、そのとおりでいいということですか。
  13. 上田隆之

    上田説明員 先般、私ども橋本通産大臣国会でこの点に関する考え方を明らかにしております。APECにおける自由化の対象につきましては、一方で包括的にするという合意ができておりますので、これを尊重していきながら、農業等々のセンシティブ分野につきましては、一方でWTO法的拘束力のある自由化につきましてはWTOにゆだねながら、APEC自由化につきましては、ウルグアイ・ラウンド合意実施期間中はその合意を着実に実施する、それ以降につきましてはWTOにおける継続交渉の結果を尊重する、したがいまして、二〇一〇年、この農業分野の姿につきましては現時点で申し上げるわけにいかないということを申し上げておりまして、これは基本的に私ども同じような立場であると認識しております。
  14. 赤城徳彦

    赤城委員 ただいまお答えいただいた橋本通産大臣答弁、私ちょっと気になるのは、二〇〇一年以降はWTOでの交渉を尊重すると。私ども立場は、全くその交渉にゆだねる、その交渉にもう任せる、APECの側からは予断を与えない、そういう意味であります。また、二〇一〇年の目標年次における自由化の姿は今申し上げられないというふうに橋本大臣お答えでしたけれども、私どもは、これはもう約束できないんだ、二〇〇一年以降のことはもう再交渉にゆだねるわけですからおよそ約束できないんだ、こういうふうに言い切っています。そこのところは、大臣国会答弁したことを翻すことはできないかもしれませんけれども、今申し上げたような字句どおりの三点だというのが私ども与党としての立場自民党としての立場でありますし、政府与党として一体となってこれまで香港会合等々、東京会合主張してきたのは、その三点であるということを再度申し上げておきたいと思います。  それから、もう一点確認しなければいけないのは、とかく農業農業、こういうふうに言ってしまいますけれども、それぞれセンシティブな困難な事情林野水産分野でも抱えております。WTOでも大変な交渉をしてきた。また、公益的なさまざまな機能を持っている。それぞれの地域を支えている重要性、いずれも農業分野と全く同じだ。林、水もこれは農業一体に扱うべきだと思いますけれども、その点については外務省通産省、それぞれいかがですか。
  15. 北島信一

    北島説明員 林業水産業分野につきましては、WTO協定上は農業継続交渉のような形で交渉が定められておりません。その限りにおきまして、林業水産業取り扱い農業と異なるところがあろうかと思います。  他方農業と同様にセンシティブな面を林業水産業は持っているということを当然私どもとしても念頭に置いて、農業分野と基本的に同様に対処していくということでやっていきたいと思っております。
  16. 上田隆之

    上田説明員 お答え申し上げます。  外務省さんの言われたとおりでございまして、WTO協定上継続的な交渉が定められておらないという点で違いがあるわけでございますが、林業水産業といった分野も同様にセンシティブな面を持っておる分野でございますから、農業分野と基本的に同様な形で対処していきたいと通産省としても思っております。
  17. 赤城徳彦

    赤城委員 今のお答えで、それぞれセンシティブ分野一体的に扱うということでありましたけれども林野については継続交渉扱いが違うということですね。そのことによって何か影響があるのかどうか。これは農林省に聞いた方がいいかと思いますけれども林野扱いについてどこか違いが生じるのかどうか、お答えください。
  18. 堤英隆

    堤政府委員 今外務省の方からお答えがございましたけれどもWTO協定上は先ほどお話がありましたような差があるかと思いますが、少なくともこのAPECの問題の取り扱いにつきましては、農、林、水一体という考え方であろうというふうに思っております。
  19. 赤城徳彦

    赤城委員 まさに農、林、水一体で、しかも今申し上げたような三点、これをどうやって確保していくかということではないかと思います。  そこで、自民党では大阪会合に向けて議員団を組織しましてAPEC加盟各国へ行ってまいりました。私は韓国中国フィリピンに行ってまいりました。また、ほかの議員団マレーシアインドネシアタイへ、またアメリカオーストラリアと行ってまいりましたが、その中で、マレーシアインドネシアタイ議員団一員として、私どもの同僚であります大塚清次郎先生に行っていただきまして、我が国主張や幅広く議論をしていただきました。実は大塚清次郎先生、その現地で体調を崩されてそのまま急逝をされてしまいましたが、私たちは、その大塚先生がこれまで農業農村のことを一生懸命考え、取り組んでこられたその姿勢に心から敬意を表したいと思いますし、その御遺志を外しながらAPEC大阪会合にしっかりと我々は対応していかなければいけない、そんなふうに思っております。  それで、その訪問してきた結果をちょっとかいつまんで御報告させていただきたいと思います。  まず、韓国中国フィリピンには、二田先生、私、太田先生と行ってまいりました。韓国では日本とほとんど同じような考え方で、各国多様性に配慮して差別的な扱いも必要である、農林水産分野の例外的な扱いが必要である、ウルグアイ・ラウンド前倒しはできない、そういう立場で協調していきたいということでありました。中国も、APEC合意できるものについて合意すべきであるし、意見交換の場であって自主的な場であるから、押しつけや圧力があるべきではないという見解でありました。  ちょっと注目すべきはフィリピンです。フィリピン自由化推進を提唱している国だと思われますが、行ってみましたら、やはり日本と同じようにフィリピンにおいても農業センシティブ分野であって、そういう分野については特別な扱いが必要である、これはフィリピンナバロ貿易工業長官がそういうふうに言っております。また、ウルグアイ・ラウンド合意前倒しは機微な問題であって自発的な申し出を尊重すべきだ、APECの決定は拘束力を持たないものだと理解している、これはシアゾン外務大臣です。ちょっと我が国で考えていたのとは違うな、現地へ行ってみたら違うなと。ただ、そうは言いながら、ケアンズ・グループの一員であるからそういう立場もあります、こういうことでありました。  それから、マレーシアインドネシアタイには、塩川先生桜井先生谷津先生、そして亡くなられた大塚先生でございましたが、マレーシアでは、やはり同じように、APEC交渉の場ではない、自由化は自主的に行うべきだ、ボゴール宣言は何ら拘束力を有するものではない、アブドラ外務大臣発言しておられます。また、各国事情に応じ個別的な留保を行うことには問題はない、カーク貿易産業大臣APECではウルグアイ・ラウンド合意を先走ったり超えるものであってはならない、アブドラ外務大臣カーク貿易産業大臣。こういう発言でありました。  インドネシアでは、APECではウルグアイ・ラウンドより前進することが重要だが、どういうふうに進めるかは各メンバーが選ぶことができる、日本がどうしても農林水産分野に問題があるということであればほかの分野を選べばよい、スマディ外務省貿易総局長。それから、APEC強制の場ではない、自主的に行っていく場だ、スマディ外務省貿易総局長ユドノ商業大臣。  タイは、APECにおいて包括的に自由化を進めるべきだということでありましたけれども、その程度についてはそれぞれ知恵を出すべきだということでありました。また、APEC交渉の場ではなくて協調の場であるということはカセム外務大臣から発言がありました。  続いて、アメリカですけれども武藤嘉文先生堀之内先生山口先生岩崎先生で行ってまいりました。アメリカは、もうこれは極めて原則どおりボゴール宣言で包括的に二〇一〇年自由化ということでコミットしているではないかということで、そのボゴール宣言から離れることはできない、そういう原則論応酬になりました。  オーストラリアですが、武藤嘉文先生堀之内先生山口先生岡部先生と行ってまいりまして、ここもかなり原則論応酬でありましたけれども、その中でマクマラン貿易大臣が、日本農業について二〇〇〇年まではウルグアイ・ラウンド合意を守り、その先のことは改めて交渉する、今の段階では約束できない、そういう発言日本立場については理解する。理解するというのがどういう外交用語なのかちょっと定かではありませんけれども、理解を示したということです。また、自由化タイミングは日本に任せてよい、キーティング首相ですが、ただ二〇一〇年までにすべてが自由化されることが確保されなければいけない、これは原則論。  ちょっと走っての報告でしたけれども、こうして見てみますと、日本主張香港会合等々では韓国中国、台湾は同調した、しかし残り十四カ国は反対であるというふうなことで伝えられておりますが、私どもが行ってまいりますと、必ずしもそうではない。各国とも、APEC性格は柔軟なものであるし、各国自主性は尊重すべきであるということを言っております。  私ども主張しているのは非常に簡単なことで、交渉の場であるウルグアイ・ラウンド各国合意したぎりぎりの結果があるのだから、そのとおりやればいいではないか、APECはそれをオーバーライドしたり曲げたりするようなことがあってはならない、そういう各国自主性は尊重されるべきである、このことは非常に素直な、ごくごく無理のない主張ではないかと思います。  そこで、まず伺いますが、各国ともこういうふうに、APECというのは自主的、自発的なものである、強制を伴うものではない、そういうことではほとんどの国がそのとおりだと、こう言ってくれております。そういうAPECのそもそもの性格、アジア・太平洋方式といいますか、そういう精神をこれから行動指針の中でも、また大阪会合で出す宣言の中でも、まずAPECというのはこういうものなんだよ、自発的、自主的なものなんだよ、強制力を伴わないものなんだよと、そういうことをうたうべきではないかと思いますけれども外務省、いかがでしょうか。
  20. 北島信一

    北島説明員 APEC性格でございますけれども、先生がおっしゃいましたとおり、まさにAPECは、ガット、WTOのような交渉によって国と国の間の権利義務関係をがっちり法的に固めていくというような性格の場では全くないわけであります。各メンバーの自主性を基本として、協調的な行動それから共同の行動を通じて、貿易・投資の自由化ないしは円滑化を進めていくという考え方に立っているわけであります。  これはAPECが発足してからずっとこういう考え方でやっているわけで、今度の大阪サミットを経て出る宣言の具体的な内容、これは首脳間の議論をベースに発出されますので、現時点でコメントする立場にございません。どういう表現になるかわかりませんけれども、いずれにしましても、APECを貫く基本的考え方は先生が御説明されたとおりでございます。
  21. 赤城徳彦

    赤城委員 まさにAPECというのはこういう性格なのだという基本原則、そのことを前面に押し出していかないと、いつの間にかAPEC交渉の場になっている。アメリカあたりから、ウルグアイ・ラウンドではまだ不十分だった、さらにこのAPECの場を通じて自由化を迫りたい、そういう意図がどうも見えるような気がいたします。先ごろアメリカの農務長官が、二〇〇〇年までに農産物の輸出を五〇%ふやす、戦略的にそういうことをねらっている。その場として今APEC性格そのものがゆがめられてしまっているのではないか、そういう危惧がありますので、ぜひその点を主張していっていただきたいと思います。  問題は、農林水産分野で三点セット、いわゆる三点セットと言わせていただきますけれども、それがきちっと貫けるかどうかということで、行動指針にそのための文言がやはり必要ではないかということであります。それが伝えられていますようなパラ八の、各国の、またそれぞれの分野事情に応じて差別的な取り扱いを認めるべきであるという条項であると思います。  そこで、その三点セットを貫くためにはそういう条項が必要だと私は思いますけれども、まず、その条項が三点セットを守るために必要なのかどうか。それから、その条項がなかったら、ボゴール宣言包括性というパラ一とそのほかの行動指針の各条項だけであったら、どういうことになるのか。例えば米の関税の特例、そういうものは二○一〇年に維持できるのかできないのか。そこら辺のところを伺います。
  22. 北島信一

    北島説明員 先生が言われましたいわゆるパラ八、その種のものがなかったらどうなるか。それと、パラ一で包括性原則包括性原則といいますのは、APEC貿易・投資の自由化を議論する際に、とにかくすべてのものを取り扱う。これはボゴール宣言のパラ十に既に出てきておりますけれども、すべて取り扱うというその包括性考え方だけが残るわけですけれども、いろいろな国の人と議論をしていますと、日本の基本的な立場はこのパラ一だけでも十分守れるはずだということを言う関係者は多うございます。  他方、我々政府として仕事をする以上は誤りなきを期したいということで、パラ八のようなもの、つまり困難な分野について柔軟的な取り扱いを認めるような表現、そうしたものを明示的に入れることによって日本の基本的な立場を確たるものにしたい、そういうことでやっております。
  23. 赤城徳彦

    赤城委員 確かに、バラ八がなくてもパラ一で読めるのではないか、アメリカでもそういう発言があったようですけれども、それは全く意味が違うのですね。認識が違うのです。アメリカオーストラリアは、二〇一〇年、いずれにしても包括的に自由化だ、そのタイムリミットは決まっていて、そこへ至る過程で柔軟性を持たせてもいいというふうな言い方をしているだけであって、三点セットを維持するためには、なくてもいいけれども、ただ入れておけばより表現が強くなるとかより理解が進むというような意味ではなくて、これは明確にそのことをうたっておかなければ全くその解釈が違うわけですから、パラ八がこれはなくてはならない、三点セットのためにはなくてはならないと思いますけれども、これは農林省の方ではどういうふうに考えていますか。
  24. 堤英隆

    堤政府委員 私どもとしては、先生の御指摘のような考え方であるということでございます。
  25. 赤城徳彦

    赤城委員 そういう意味で、もうパラ八はなくてはならない。問題はその中身なのです。  今北島参事官から、何らかの柔軟性を持たせるような規定が必要だ、こういうことでありましたけれども、柔軟性を持たせるというだけでは、今申しましたように、アメリカオーストラリア等の立場では、単に自由化のスピードの柔軟性の話と向こうは受けとめていますから、いずれにしても二〇一〇年は自由化だよ、こういうことに言質を与えることになってしまうと思います。  その中身についても、当初は各分野事情に応じた異なる取り扱い、ディファレンシャルトリートメント、そういうことを主張しています、こう言っていたのですが、どうも最近は柔軟性、柔軟性、こういうふうな答えしか返ってこないので、いつに間にかトーンダウンしているな、こういうふうな気がしてならないのです。  文言の話ですし、これは交渉の中身の話に入ってきますから、その言葉自体がどうだこうだとは言いませんけれども、要するに、大阪会合が終わりました、行動指針で何か出ました、何とかパラ八は残りました、そのときにそのパラ八の文言で三点セット、これまで主張してきたことは読めるんですかと改めて聞きたいと思います。そうしたら、読めるんです、こうお答えになるでしょうし、今の段階ではそのように努力します、こういうことだと思いますね。しかし、日本側がこれはもう守った、三点セットはパラ八で守った、こう言った途端にアメリカとかオーストラリアから、いやそれは解釈が違うぞ、我々はいずれにしても二〇一〇年自由化ということを、日本もそれはコミットしたではないか、ただその二〇一〇年に至る過程の柔軟性なんだよ、こういうふうに向こうが途端に反発してきたら、これはもうぶち壊れるわけです。  そういうことがないように、このパラ八できちっと三点セットが読めるんだと、そういう表現で決着をしなければ何ら交渉にならない、から取ったことにならないと思いますけれども、いかがでしょう。
  26. 北島信一

    北島説明員 まさしくその三点セットと言われる我が国の基本的な立場がきちっと読める表現、それを確保したいということで頑張っております。
  27. 赤城徳彦

    赤城委員 ぜひそのようにお願いしたいと思いますし、これは改めてちゃんととれたのかと伺いたいと思いますので、そのときにアメリカオーストラリアが、いやそうじゃないと言い出さないようにぜひよろしくお願いをしたいと思います。  最後に、イニシアル・アクション、当初の措置について伺いますが、当初の措置は各国自主的に出せるものを出せばいいのであって、これについても、先ほどの三点セットで申し上げたように、ウルグアイ・ラウンドで決まったこと以上のものはここでは出せないというのが我々の立場です。したがって、当初言われたような熱帯産品とかそういった分野、関税の前倒しというのはまさにウルグアイ・ラウンド合意したことを踏み越えることになりますから、それは当初の措置としても出さないと思いますけれども、いかがでしょうか。
  28. 北島信一

    北島説明員 先生のお立場は一〇〇%以上私は承知しております。  当初の措置は各国が自主的に持ち寄るということでございます。その中身については、したがいまして、外務省考え方——いろいろな関係省庁があります。これは関税の前倒しの世界のみならず、規制緩和の世界とか幾つかあるわけですけれども、広い分野でできることをぜひやっていただきたいというお願いをしているということで、特定の分野、特定のものについてぜひこうしてもらわないと困るとか、そういう言い方はしておりません。
  29. 赤城徳彦

    赤城委員 できる分野でやっていただければいいんですけれどもウルグアイ・ラウンドで決まったことはそのとおり実施するということに抵触するような品目また提示は、これはやってはいけない。それはまさに先ほど参事官が三点セットはそのとおりですと言われたことに抵触することですから、これは前倒しはできないと改めて申し上げたいと思います。  時間がまいりましたので、終わります。ありがとうございました。
  30. 日野市朗

    日野委員長 次に、遠藤登君。
  31. 遠藤登

    ○遠藤(登)委員 社会党の遠藤であります。私は山形でありますが、秋田から大事な所管の大臣が就任をされたこと、造詣の深い大臣に深く敬意を表しながら、大いに頑張っていただきたい、冒頭にお願いを申し上げます。  今のAPECの問題にちょっと関連しますが、全く赤城委員発言内容と同感であります。ウルグアイ・ラウンド合意を超えるということはあってはならないというふうに思います。その点は私からも強く要請をいたしておきたい。特に、自民党の皆さんは、各国を訪問されて粘り強い要請行動がなされたことに深く敬意を表したいというふうに思います。  それで、赤城さんの意見や要請と同じでありますが、特に関連して申し上げたいのは、松岡政務次官からもお話があったのですが、二十一世紀の、世界的な規模で人口問題、食糧問題、農業問題、環境問題、これは人類存亡の課題である。特にアジアは、世界の人口の六割を超えているという状況があって、いろいろな角度から意見が展開をされている昨今でありますが、この人類的な危機を克服するためには、今から世界の国々がそれぞれの環境と食文化に応じて食糧農業、環境を大事に発展をさせるということでなければ、二十一世紀の人類の地球的な危機は救えない。アジアにおいてもそれ以上の課題があるということが言われているのでありますが、そういう意味では、日本は自由立国として今日までの経済成長をなし遂げてきたということをより大事にしなければならないのでありますけれども、そういう全アジア的なあるいは世界的な人類の危機を克服するために、今こそ日本がもっと積極的にそういう課題に挑戦をするという立場があってもいいのではないかというふうに思っております。  したがって、ガット・ウルグアイ・ラウンド、いわゆる工業分野と同じような貿易ルールではどうにもならないのではないだろうか。このガット問題は合意をされたわけでありますが、今後五年後に再交渉が始まるという展望も踏まえながら、新たな貿易ルールの確立に向かって、しかも全世界の国々がそれぞれ協調して共同の力で、お互いが切磋するところは切磋し合って協力して、世界的な備蓄も含めて、お互いの農業支援なども含めて農業食糧、環境を守っていく、そういう積極的な、いわば我が国の自給率の向上とあわせて先進的な役割を果たす必要があるのではないかというふうに痛切に感じている者の一人でありますが、できれば大臣の所見をお聞かせをいただきたい、こんなふうに思います。
  32. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 ただいまの遠藤委員の御指摘は、私も全く同感でございます。  国連の推計によりますと、これから半世紀内に地球の人口は百億に達するだろう、こう推計されております。一方、毎年地球の上では、我が国の農地面積五百八万ヘクタールをはるかに上回る六百万ヘクタールの農地が砂漠化をしていく。地方が低下して生産が顕著に落ちている面積が年間二千百万ヘクタールと言われておりますから、こういうふうに生産の方はどんどん落ちていくという中で人口がふえている。しかも、食生活を見てみますと、肉食に依存するのがだんだんふえてきておりますから、飼料穀物が著しく増大するというようなことと相まって、近い将来に世界の食糧問題はかなり不安定な要素が出てくるんじゃないか、こういう見方も非常に有力にございます。  地球の環境も含めまして、それは人類生存の非常に大きなかぎでございますから、私どもも、今委員から御指摘いただいたように、FAOとかWTOとか、あるいは今回のAPECあたりでもそのような問題がきちっと論議されて新しい貿易ルールが確立されるような努力をしていくべきである。まことに同感に考えております。
  33. 遠藤登

    ○遠藤(登)委員 いろいろな国際的な会議の場において、あるいはAPECなどにおいても積極的にそういう話題を提供していく必要があるのではないか。ぜひお願いをしたい。  それに連動しながら、我が国の自給率がどんどんと低下をしているという現状にあるわけであります。穀物自給率で二二%ということがあって、米はともかくとして、大豆にしても麦にしてもどんどんと自給率が下がっていく、こういう状況であります。現在のような日本のいわば超飽食の時代は、また三分の一を捨てているというような状況があるのではないかと思っておりますが、そういう飽食の時代は長く続くはずがないと思っております。したがって、少なくとも現在の五百二十万ヘクタールとも言われている耕地は持続的に確保していく必要があるというふうに痛切に思っております。  住宅その他公共事業などによって壊廃される農地面積が年間約一万八千ヘクタール前後、あるいはそれをはるかに超える場合もある。したがって、現在の状況では、荒廃農地ももちろん拡大をしているという状況でありますが、優良農地がどんどんと減少するということに大きな危惧を抱いております。  したがって、場合によっては、優良農地を壊廃する場合には新たなよりよい農地を開発する、少なくとも現行の農地は確保する、維持をするというぐらいの対策を積極的に講じていく必要があるのではないか、こういうふうに思っている者の一人であります。APECの問題、WTOの問題、国際的な状況、国内的な状況から勘案して将来を展望した場合に、少なくとも五百万ヘクタールは超えるぐらいの農地は自給力の回復の土台として大事に確保していく必要があるのではないかというふうに思っておりますが、この件についてももし所信があればお聞かせをいただきたいな、こんなふうに思います。
  34. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 委員御指摘のとおり、平成五年度の我が国の穀物自給率は二二%という先進国では最低のぎりぎりの自給率まで落ちております。また一方、日本が外国から輸入している食糧を全部自給すると仮定すれば千二百万ヘクタールの農地が必要だということになっております。そうしますと、現在我が国にあります農地の二・四倍の農地が必要だということでありますから、さようなことはとても実現は不可能であります。  そうしてみれば、委員御指摘のとおり、優良な農地はなるべく保全し、これを活用し、国内生産が低減していくことにぜひとも歯どめをかけなきゃいかぬ。そしてまた、生産性が上がるような生産基盤を造成していかなければいかぬ。あるいはウルグアイ・ラウンド農業大綱で決めたように、経営感覚に富んだ、効率的で安定した農家が我が国農業の大宗を占めるような構造改革も進めていかなければいかぬ、こういうことでありましょうから、ただいま御指摘いただいたようなことを十分我々も認識しながらこれからの農政に取り組んでまいりたい、こう思っております。
  35. 遠藤登

    ○遠藤(登)委員 大事な課題だと思いますから、農地法の問題なども含めて、やはり再検討の時期を迎えているのではないかというふうに思っております。  次に、そういう食糧問題に関連をして要望を申し上げたい。  これは厚生省所管になるかと思いますが、WTOの問題を含めて、穀物はもちろんでありますが、野菜の果てから年々食糧輸入自由化が拡大をしてきている。国境措置の問題、安全性の問題を含めて、食は命なりということがありますから極めて重大な問題を抱えているのではないか。安全性の検査体制の問題を含めて、例えば、今問題提起されているのは学校給食のパンですね。それは小麦の大半が輸入ものである。あるいは学校給食のパンには小麦の一等粉が使用されていない。したがって、二等粉とか三等粉が使用されている。学校給食のパンにほとんど残留農薬が入っているという問題が指摘をされている昨今であります。  これは私は重要な問題がある。輸入が年々拡大をする、ホストハーベストの問題を含めて、何が入っているか定かでないようなものが食卓に上るということについては重大な課題を背負っているのではないだろうか。食糧庁においても厚生省においても、この安全体制についてきちっとした体制をとるように関係省庁と連携をとって対応してもらえないかということを強く要請をしたいというふうに思います。時間がありませんから要請にとどめたいと思います。  次に、今問題になっている住専問題についてちょっと質問をさせていただきます。  これはまさに最近の金融関係の不祥事が相次いでいる状況がありますが、国内外ともに重大な問題が提起をされてきているというふうに思います。関係当局あるいは与党間におきましてもプロジェクトなどを設置をされまして、鋭意その実態解明とか解決のありようについて対応されている昨今でありますが、まだ明らかにされない部分もあろうかと思います。  まず、いろいろな見解が出されておりますが、責任の所在、いわば実態というものがもっともっと明らかにされるべき内容のものである。その実態によって責任の所在というものが明確になっていくということだと思いますが、今までの設立の経緯とか、あるいは住専に対する役員の派遣問題とか、事業の執行とか、住専の運営あるいは管理、万般にわたってその経営から考えれば、まずそれは住専自体の責任というのは免れないものがある。しかも、今申し上げましたような経過を踏まえれば、それは母体行が重大な責任を負う筋合いのものではないかというふうに思うのでありますが、その点は農林省のお考え方をきちっと示していただきながら、さらに大蔵省からも見解をいただきたいというふうに思います。
  36. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 今委員御指摘のとおり、住専の設立の経緯またはその性格、それから、なぜ住専が破綻をしたかという破綻の原因、あるいは二度にわたる再建計画で母体行が責任を持って対応していくと言ったその再建計画策定の経緯、こういうことをつぶさに考えますと、私どもとしては、これはもう母体行がぎりぎりの責任を負うべきである、このことを鮮明にしなきゃいかぬ、こういうことで、今当事者間でたび重なる協議を行っておりますが、問題は、そのあたりの究明に大部分を割いて、これからいよいよどうしていくかという話し合いに入っていく段階にようやくたどり着いてきつつあるということだろうと思って、私どももそういう基本線を保ちながらこの解決に当たりたい、こう思っておる次第です。
  37. 振角秀行

    ○振角説明員 大蔵省の振角でございます。私の方から答弁させていただきます。  基本的認識においては、今の大臣答弁とそう異なるところはございませんけれども、先生御指摘のように、住専各社というのは、昭和四十年代後半から五十年代前半にかけまして、当時の旺盛な住宅資金需要に応じていくべく、金融機関等の共同出資により設立されたということでございますので、住専の設立に関しまして、いわゆる母体金融機関が人的あるいは資本的にも関与していたのは事実でございます。  ただ、法的に申しますと、住専は母体金融機関とは一応別個の法人格ということになっておりますし、また、住専の経営に対する母体金融機関の関与度合いも、例えば上場会社とかそういうことになると独立性が強くなりますし、さらに母体が非常に多いものになりますと、かなり関与の度合いが母体としてそれぞれ少なくなってくるというふうに、違いはあるものの、それなりに関与しておったというふうに思っております。  それで、今現在、住専問題解決の緊要性が非常に内外ともに認識されるところでございまして、先ほど大臣からも御説明がありましたように、当事者間で真剣な話し合いが行われているところでございまして、大蔵省としてもその話し合いを慫慂していきたいというふうに思っているところでございます。
  38. 遠藤登

    ○遠藤(登)委員 まず、今もちょっと大臣からもお話があったのですが、いわば第一次、第二次の再建策の策定時点で覚書がそれぞれ取り交わされている。それは再建の場合も、現在のような整理の段階を迎えた状況によっても、その覚書というのは生きているものだというふうに理解をするのでありますが、その点の大蔵省と農林省の解釈は、見解はどうですか。
  39. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 よく先生方に法律をつくっていただきますけれども、その法律の作成過程で各省庁が覚書を交わしますが、この覚書は各省庁間で極めて厳格に遵守され、履行されているものと考えます。あるいは役所と民間とが約束をする場合、よく覚書という手法を使いますが、これも、その場合は一種の契約に準ずるものであるというふうに考えております。  それで、この住専の場合に取り交わした覚書も、これはまだ有効適切に生きており、それは極めて尊重されるべき、遵守されるべきものであるということは、今私が述べたのと同じことだと考えております。
  40. 振角秀行

    ○振角説明員 お答えします。  住専の第二次の再建計画策定時におきましては、農水省と大蔵省の間で覚書を結んだところでございまして、その際は、基本的にはやはり当時者間の協議をやっておったわけでございますけれども、なかなか難航しておりまして、行政としても当事者間の協議が円滑にいくように最大限の努力をしようという趣旨で覚書を結んだものでございます。  その当時におきまして、四・五%まで農林系統は減免していただくということでございまして、現在も、再建計画見直し論議がされている中でございますけれども、九月末におきましても四・五の利払いは着実にやっているところでございまして、今後におきましても真剣にやっていきたいというふうに考えておるところでございます。
  41. 遠藤登

    ○遠藤(登)委員 ちょっと大蔵省、その覚書というものの内容を踏まえて今後に対応する、したいということでしょうか、改めてお答えをいただきたい。
  42. 振角秀行

    ○振角説明員 お答えさせていただきます。  先ほど来申し上げておりますように、基本的には住専問題というのは関係の金融機関を中心とする当事者間の問題であるというふうに我々は認識をしておりますけれども、行政としても、当事者間の真剣な取り組みを促して合意形成を促進するなど、できる限り役割を果たしていきたいということで、前回もそういう観点から農水省との間で覚書を結びまして、真摯に対応したところでございまして、基本的には、今後とも農水省とよく連絡をとって解決に向けて努力していきたいというふうに思っております。
  43. 遠藤登

    ○遠藤(登)委員 一般の常識としても、ましてや行政の重要な分野において覚書を交わしたということは、極めてそれは重視する必要がある。しかも、内容が変わったということがあっても、いささかもその精神は変わる筋合いのものではないというふうに思いますので、そういう点を踏まえながら対応していただきたい。  それと絡んで、これは行政的な責任もある。行政上としてもそれを支援する立場で対応してきたという経過もあるのではないか。行政的にも、大蔵省、農林省当局としても、この覚書の問題を含めて指導監督上の立場を踏まえて、当事者はもちろんでありますが、国民的にきちっと理解できるような内容として解決の方策が早急に示唆できるというものにすべきではないかというふうに思いますが、改めてその点をお聞かせをいただきたい。両方からお聞かせをいただきたい。
  44. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 二回にわたる再建計画を策定した際に、農林系統としては、元本を損なわないために資金の引き揚げなども考えたことは確かにあったろうと思うのでありますが、ただいま委員が御指摘のとおり、これは母体行が責任を持って対応して問題の解決を図っていくということが確認されましたので、そういう元本の引き揚げもしないで協力をした、再建に協力をした。こういうことは、やはり一方において、債権の引き揚げをやりますと大変な金融不安を起こす可能性が高い、そういうようなことも当時の当事者が真剣に考えて、よかれとしてこれをやったものだと思っております。ですから、それは一生懸命やった結果がこういうことになってきたという点はぜひひとつ御理解いただきたいと思います。  問題は、この住専問題を早く解決するということが景気を回復し、また、国内ばかりじゃなくて国外的にも日本の信用を問われているわけでありますから、一刻も早くこれを解決することが私は最大の責任のとり方である。こういう意味で、今は当事者の話し合いが真剣に行われておりますけれども、大蔵大臣も公約しておりますとおり、年内にその見通しがつかないようなことになってくると、これは当事者の原則だけではなくて、農林省と大蔵省が前に出て早急な解決を図っていく時期に来つつあるということを申し上げておきたいと思います。
  45. 振角秀行

    ○振角説明員 お答えさせていただきます。  基本的には農林大臣と同じでございますが、大蔵大臣の諮問機関の金融制度調査会におきましても、九月末に中間報告的なものを出しておりまして、そこでも「住専問題の早急な解決は、国内外から要請されているところであり、本年末までに、処理策が策定されるよう、すべての関係者が強い決意をもって取り組むことが必要である。」と書いてありまして、ここの「すべての関係者」というのは、関係の金融機関だけじゃなくして行政当局も入っていると思いますので、繰り返しになるかもしれませんが、農水省とよく連絡をとりながら頑張っていきたいというふうに思っております。
  46. 遠藤登

    ○遠藤(登)委員 それから、大蔵省は今日まで実態解明をやってきたという経過があるようであります。それは当然でありますが、いわゆる住専の経営破綻の原因、それから不良債権の実態、これは今もその解明が続けられているのだとは思います。現時点でのおおよその不良債権の実態、あるいは紹介案件も非常に多いというようなことも聞いておりますが、そういうものの実態など、概略的にで結構でありますから、経営破綻の原因と不良債権あるいは紹介案件等の実態をお示しをいただきたい。
  47. 振角秀行

    ○振角説明員 今先生御指摘のとおり、大蔵省におきましては、八月以降立入調査をしておりまして実態解明を進めているところでございますけれども、先ほど引用しました金融制度調査会の中間的な取りまとめにおきましても、ある程度の認識はそこに表明しておるところでございまして、まず最初に破綻の原因みたいなところでございますけれども、そこに関してはこういう表現をしております。「金融を取り巻く環境の変化の中で、民間金融機関が個人向の住宅金融の分野へ前向きに取り組むようになるとともに、住宅金融公庫の役割も増大していった。こうした中において、住専は、当初の目的である個人向の住宅ローンの提供から、次第に住宅開発業者、不動産業者への融資へと傾斜していった。」その後、バブルの崩壊に伴いまして「これら事業者向け融資が不良債権化し、住専の経営を圧迫することとなった。」そういうことでございまして、基本的には住専が、当初の目的である個人向けの住宅ローンの提供から次第に、住宅ローンの分野が競争激化してきたものですから、住宅開発業者あるいは不動産業者の融資へ傾斜していったということで、その後のバブルの崩壊に伴いまして、これらの事業者向けが不良債権化して住専の経営を圧迫するようになってきたということでございます。  それで、八月から実施している住専の立入調査によりますと、「住専八社の不良債権の合計額は、八・四兆円、うちロスとなる懸念のある部分は、六・三兆円に達する」という報告をいたしておるところでございます。  あと、紹介状況でございますけれども、立入調査におきます住専側からの報告に基づく貸付金の中の紹介分の割合につきましては、去る十月十八日に公表したところでございますけれども、債権ごとの集計によりますと、事業向け貸付金の中の約一割が母体行からの紹介によるという調査結果でございます。ただ、この公表したケースは調査に関して各住専から提出されたものを集計したものでありまして、金融機関側の確認は今とれていないというものでございます。  以上でございます。
  48. 遠藤登

    ○遠藤(登)委員 この住専には大蔵省出身の方も入っている。それから、ほとんど母体行からの出向である。そういう状況で、これは個人住宅ローンを中心にして営業展開ということが、母体行がそれに侵食をしてきたということがあって不動産などに矛先が向かった、バブルの崩壊と関連をしながら大変な不良債権を生むことになったという経過であります。その流れからいえば、当然これは母体行がきちっと共同の連帯責任を負う必要があるのではないかというふうに思うのでありますが、その経営破綻の原因とか不良債権の実態などについて、もっとその内容に立ち入る必要もあるのではないか。  それは大蔵省なり農林省も関連をするということがあると思いますが、特別の機関を設置して徹底的な実態の解明に当たる必要があるのではないかというふうに考えるわけであります。これは検察問題ということにもなりにくい問題だと思います。国会も重大な責任を持ってこれを解明するという責任があると思っておりますが、政府当局においても特別な調査・審査体制をつくってこれに当たる必要があるのではないかと思うのでありますが、その対応の方向などについて何か所信があればお示しをいただきたい。
  49. 堤英隆

    堤政府委員 大臣からもお答え申し上げましたように、住専問題につきましては、委員御指摘のように、当事者間としての今までのさまざまな経緯等がございますので、そういう経緯を踏まえた対応が行われてくるということが極めて重要であるというふうに思っております。  そういう過程の中で、現在、住専、母体行側とそれから系統との話し合いが真剣に行われているわけでございますが、その中で今おっしゃいましたような不良債権の実態なり紹介案件の実態ということにつきましてさらに明らかになってくるということが、この住専問題の本質及びその本質を踏まえた解決策につながっていくものというふうに理解をしているところでございます。  私どもとしましても、そういう観点に立ちまして両当事者間の話し合いを促すということと、さらにそういった資料等につきましても、大蔵省とも連携をとりながらさらにしっかりした資料を出していただいて、責任の所在が何であるか、それから、その責任の所在を踏まえた解決策はどうあるべきか、そういうことにつきましても私どもとしても対応していきたいというふうに考えておりますが、そこを離れました特別の機関ということにつきましては、この段階ではちょっと難しいかなという感じを率直なところ感じているところでございます。
  50. 遠藤登

    ○遠藤(登)委員 これの解決をするために、対応いかんによっては大変な問題をはらんでいるというふうに思います。これは本来、九月の何日でありましたか、朝日に元最高裁の長官であります藤林先生の「論壇」が載っておりました。やはり信頼を喪失する、それは経済的なバブルの問題を初めとして大変動があったにしても、そのチェック体制あるいは指導上においても、あるいは自己責任においても、大いにそれぞれの分野で反省するものがあるのではないかというふうに思っております。  それから、公的資金の導入問題もいろいろ論じられているわけでありますが、実態解明あるいは原因の解明というものを明確にする中で責任の所在をはっきりさせるとともに、その責任の負い方ですね。それはぎりぎりの努力を積み上げるということにおいて、最終的な解決策をどうするかという話の中に公的資金の導入問題も場合によったら出てくるのではないか。それは、当事者はもちろんでありますが、国民の全体の理解が得られるようなものでなければならないと思います。  その点について、大蔵大臣も言っておったようでありますが、早く解決をして年内にめどをつけるという解決のいわば方向を、大体年末までにという話のようになっているのでありますが、決意を含めて、あるいは公的資金の導入問題などについての考え方について、できれば大臣なり大蔵省の方からもお話をお聞かせいただければと思っております。
  51. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 委員御指摘のとおり、責任の所在を明確にした上で国民が納得できるような公的資金等の導入を考えるべきだ、これはもう全く同感でございます。  問題の処理に当たって公的資金の導入が必要となる場合もあろうかと思います。しかし、先ほどから申し上げておりますように、住専設立の経緯や性格、あるいは破綻の原因、あるいは再建計画の経緯等から見れば、私どもとしては母体行がぎりぎりの責任を負うべきであるということは明確に申し上げておきたいと思いますし、また公的資金を導入するに当たりましても、農協系統金融機関の経営状態を理由に農協系統にこの公的資金を導入すべきだという一部の意見もあるようでありますけれども、これは、借りたり、経営不振の原因をなした方に公的資金を導入するならともかく、貸した方に公的資金を入れるということは少し筋違いの議論じゃないか、こういうふうに私どもは当然考えているわけであります。ですから、公的資金を農協系統に直接に、ダイレクトに入れるということについては反対であります。  いずれにしましても、いろいろな経緯を考えますと、これは母体行がぎりぎりの責任を負ってもらわなければいかぬ。私どもとしては、農協系統の信用事業にいささかも悪い影響が出ないようにこの問題の解決を図っていく決意であるということを申し上げておきたいと思います。
  52. 振角秀行

    ○振角説明員 まず、公的資金の導入に関しましては、基本的には我々も納税者の理解を得られないとそれは入れられないと思いますので、慎重に検討していかなければいかぬということでございますけれども国会等におきます各方面の御議論を踏まえつつ、今後も検討はしていきたいということでございます。  それと、あと年内解決に向けてでございますけれども、そこは先ほどの金制でも指摘されておりますし、また、日野委員長も入っておられますけれども与党の金融・証券PTでも精力的に議論をされているところでございます。与党の金融・証券プロジェクトチームにおきましても十一月中に何らかの解決のためのスキームを検討するというふうにも言われておりまして、与党政府一体となって前向きに取り組んでいきたいと思っておる所存でございます。
  53. 遠藤登

    ○遠藤(登)委員 慎重に、しかも徹底的に、しかも早く、しかも納得、理解が得られるような解決策はなかなか大変だと思いますが、これは早く解決する以外にないのではないか。大臣が先ほどおっしゃられましたように、景気の問題あるいは信用不安の問題を含めて、迅速かつ公正に責任の所在を明確にしながら、その原因なども明確にしながら対応されることを強く要請いたしたいと思います。  それに関連をして、これは農林水産だけの問題じゃないわけでありますが、せっかく大蔵省から来ていただいておりますので、最近、大和銀行の事件を初めとして金融の問題が相次いでいるという状況について、内外から非常に不信と不安が渦を巻いているような状況にありますが、これにきちっとこたえて信用を内外ともに回復する。あるいは景気回復の面と連動させながら金融行政、金融体制の安定化、これは大蔵省の指導監督ももちろんでありますが、日銀の対応を含めて、あるいはそれぞれの金融機関を含めて、しかも国際化の中で、改めて政策上の、あるいはその対応のありようについても抜本的に見直して、新たな対応を求められているのではないかというふうに思っておりますが、特に大蔵省の対応の方向などについてお聞かせをいただきたい。
  54. 村木利雄

    ○村木説明員 銀行課長の村木でございます。お答えいたします。  まず、大和銀行の件でございますけれども、この件につきましては、銀行の内部管理上の問題、こういう不祥事等につきましては、従来から、まず経営者の責任において実態を解明いたしまして、その上で行政上の措置をとる、こういう手順を踏んできたところであります。本件につきましても、まず大和銀行自身が事態をきちんと把握した上で米国の監督当局へ通報すべきである、そういうふうに私ども考えた次第であります。しかしながら、結果的に内外の誤解を招きまして、当局に対する批判につながった面があることは認識しておりまして、今回のような特に海外拠点の問題につきましては、相手国の考え方にも十分配慮しつつ、誤解を生むことのないよう対処していく必要があると考えております。  したがいまして、これは十一月三日の大蔵大臣の談話にも盛り込まれておりますけれども、今回の事件をめぐりまして、邦銀、我が国の銀行の海外拠点に対する監督のあり方等についてさまざまな議論があったことを十分に踏まえまして、大蔵省としては、外国金融当局との一層緊密な情報交換に努めるとともに、海外拠点に対します監督、検査の充実を図っていくことによりまして、我が国の金融行政に対する内外の信頼を確保してまいりたいというふうに思っています。  それから、確かに金融のことにつきましては内外からいろいろな御意見もありますし、それから、日本の金融機関に対する経営上の問題がどうなっているのだろうかということで、ジャパン・プレミアムとかいうようなことも議論されておりますけれども、先生先ほど来御議論されておりますように、一つ大きな問題はやはり住専の問題だと思いますので、我が国の金融機関の経営をめぐる不安感を払拭するためにも、ぜひ早い機会にこの住専問題にきちんとした結論を出すということが大切ではないかと思いまして、農水省ともども、私ども、先ほど来振角室長が答弁しておりますけれども、できる限りの努力をしていきたいと考えている次第でございます。
  55. 遠藤登

    ○遠藤(登)委員 極めて重大な問題でありますので、金融行政のありようなどについて、金融機関全体を含めて、住専の問題を含めて、早急にしっかりと新たな時代に対応するような抜本的なありようを検討いただきながら、新たな決意で対応していただくことを要請して、この関係については終わります。  続いて、当面の問題であります、新法に基づく生産調整の関係などについて、これは今月の中旬までに生産調整の目標面積を大体設定をしたい、あるいはそれに対する対応の具体的なありようなどについても、指針として、これは予算とも連動するということでありますが、現在鋭意検討中だと思いますが、その現在の検討状況などについて、大体概略的なものでもお聞かせをいただければというふうに思っております。今、現場は重大な関心を持ってその対応方針を見守っている、こういう状況でありますから、現在の検討状況などを含めてお示しいただければと思います。
  56. 日出英輔

    ○日出政府委員 御説明を申し上げます。  先般、十月十五日現在の作況が公表されましたので、これからの生産調整の対策につきまして、具体的な数字にわたります検討ができることになりました。検討を急いでおるところでございます。団体側の方からは、自主流通米の需給なり価格の安定を図る上で、早目にこの生産調整対策を決めて下におろすようにという要望が例年よりも強く出ておりましたので、私ども検討を急いでおるところでございます。  そこで、幾つかの問題点がございます。  一つが、生産調整規模をどういうふうに決めるかという問題がございます。これにつきましては、御案内のとおり、先般の作況が一〇二ということになりますと、来年の十月末の在庫が、国産米だけで二百十五万トンから二百二十五万トン程度というふうに見込んでおるわけでございます。そういった二百二十万トン前後ということになりますと、自主流通米の過剰在庫が当然出てまいります。これを縮減をしていかなければ、自主流通米の需給なり価格の安定を図ることはできないということでございます。  これをどのくらいのスピードで縮減を図っていくのかというのが、実は規模を決めるときの最大のポイントになるわけでございます。こういったことを、今いろいろ生産者団体の意見等を聞きながら具体的な詰めをしているわけでございますが、私どもとすれば、こういった自主流通米の需給なり価格の安定を図るという観点から考えますと、現在の六十八万ヘクタールを相当程度上回る規模にせざるを得ないのではないかというふうに思っておりますが、これにつきましては関係方面と最後の詰めを合いたしておるところでございます。  また、問題になりますのが特に助成金の問題でございます。助成金の問題という以上に、生産調整の実効確保というふうに申し上げた方がよろしかろうかと思っております。  私ども、今回の生産調整対策を取りまとめるに当たりまして、助成金の問題が特に言われているわけではございますが、実効性の確保というのは、助成金も含めて総合的な対応をしないとうまくないんじゃないかということでございます。特に、生産調整目標面積を決める際に、生産者なり地域の意向を十分聞いた形で、あるいは事前の調整を十分重ねた上で決められていく手続、これがやはり一つ大事だと思っております。  それから、団体側その他の方も言われておりますように、生産調整助成金をどういう形で仕組むのか、あるいはどういう水準とするのか、こういった問題があろうかと思っておりますし、さらに、生産者がより取り組みやすいような生産調整手法を多様化する、こういったような手法等々を含めて総合的な対応を進めていかなきゃいかぬだろうというふうに思っている次第でございます。  今、幾つか実効性確保という観点で触れたわけでございますが、これはいろいろとその他の問題を発生しておりますけれども、いずれにしても、この生産調整の問題につきましては、米の需給調整だけではなくて、転作作物それぞれについての生産指導をどうするかとか、あるいは望ましい地域営農をどういうふうにつくっていくのかとか、かなり幅広い問題を含めながら、しかも地域でいろいろな創意なり工夫が図られるようにということでございますので、なかなか奥行きの深いといいますか、問題の多い、課題の多い対策を詰めていくということでございます。私どもとすれば、十一月の中旬までにはこういった対策を取りまとめるようにということで、今検討を急いでいる状況でございます。
  57. 遠藤登

    ○遠藤(登)委員 作況が一〇二ということでありますから、来年度の作況がどうなるか定かでない状況もありますが、来年の十月末には二百十五万トンから二百二十五万トン在庫量が出てくる、したがって大幅に転作面積を拡大しなければならないということでありますけれども、それを、過剰在庫を何年で縮減するか。食糧庁が考えている適正在庫というのは、これはどんなふうに考えていらっしゃいますか、適正在庫の水準というものについて。
  58. 高橋政行

    ○高橋政府委員 お答え申し上げます。  不作などに対応いたしまして供給の安定を図るということで、どの程度の備蓄を持っておったらいいのかということにつきましては、新食糧法制定の際にもいろいろな御議論をいただいたわけでございますが、我々といたしましては、過去の不作の場合の経験などから見まして、まあ大体百五十万トンというようなところを基本に考えていくべきではないかというように考えております。
  59. 遠藤登

    ○遠藤(登)委員 時間がありませんが、大臣、これはなかなか大変なことでありますね。全国の稲作を有機農業に全部切りかえるということであれば生産調整は必要ない、私はこういうふうに思っている一人でありますが、それは前からいろいろ議論されてきた経過もあるし、今後の過剰状況がどうなるか、安全性も含めて、環境を保全するという立場からも、その点は検討に値するのではないだろうかというふうに思っております。少なくとも補助金その他、共補償を含めて、しかも新法と新法の政策が維持できるように格段の、現行以上の御配慮をしていただかないと、現場はスムーズに生産調整も進んでいかないのではないだろうかというふうに思いますから、その点は強く要請をいたしたいというふうに思います。  それから、新法による計画流通米制度の問題についても、これは、計画外流通米が過剰になって、いわゆるヤミ米が過剰になって、第二の米市場が出るようなことがあってはならない。そのためには計画流通米が大宗を占めるような、出荷奨励措置も含めて、十分な対応を強く求めておきたいというふうに思います。  最後に、大臣は大変な決意を持っているわけでありますが、いわば当初予算の編成額を具体化される、こういうことでありますね。それで、ガット・ウルグアイ・ラウンドの問題もあるわけでありますが、この五年間にどうするか。農業農村整備状況ども予算規模のシェアで見ると、これは当初予算でありますが、ここ五年間で約一・○八%マイナスになってくる、六兆円の問題もありますが。それから、公共事業予算のシェアで見ると、平成二年から平成七年まで一・二%のマイナスである、もちろんこれは当初でありますが。それから、農地の整備率は、大臣御案内のとおり、水田の場合は五〇%そこそこですね。それは各県によって相当なアンバランスがある。積極的にやっている都道府県とそこそこにやっている都道府県とでは格段の差異がある。それから、特に畑地の整備率においては三〇%ですね、約三○%。  そういう状況でありますから、ガット・ウルグアイ・ラウンドの再交渉に向かってここ五年間が勝負とも言われて、六兆を超える最大の配慮をいただいているのでありますが、これは補正もさることながら、当初においてきちっと頑張ってもらいたい。そして、その生産基盤の整備率を急ぐ必要があるというふうに思うのでありますが、大臣の決意などを承りながら、質問を終わりたいと思います。
  60. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 ウルグアイ・ラウンド関連農業農村整備緊急特別対策の予算措置の問題でございますが、委員御指摘のとおり、やはりこれは当初予算できちっとやっておくというのが私は基本だと思います。  しかし、最近の予算編成で第一次、第二次補正予算がありまして、そういうことで、私どもも対策の推進状況や地元のニーズ等も参酌しながら補正を行ってきたことは事実でありますが、御指摘のとおり、やはり当初予算できちっと平成八年度予算は編成できるように最大の努力をしたいと思っております。  なお、このウルグアイ・ラウンド六兆百億のお金の使い方につきましては、目に見えるような形で実効あらしめたいと思いますし、今度の補正予算で一兆九千億の消化が計画的に進んでいるということを申し添えておきたいと思います。
  61. 遠藤登

    ○遠藤(登)委員 どうもいろいろありがとうございました。私どもも頑張りますから、ひとつ大いに頑張っていただきたい。
  62. 日野市朗

    日野委員長 次に、錦織淳君。
  63. 錦織淳

    ○錦織委員 最初に、大臣に新食糧法施行に当たっての御決意のほどを確認させていただきたいと存じます。  今回の新食糧法は、国が主食である米について生産から消費者の手元に渡るまで全量を管理していく、こういう基本から大きく転換をした、こういう意味では、日本の稲作農業あるいはお米の流通についての非常に重大な転換である。したがって、この十一月一日からの施行によってスタートされる初年度、この初年度においていかなる意味においても、現場で大混乱が起きるとか、そういった意味での失敗は許されない、こう考えるわけでございます。そういう意味で、ともかく不退転の決意でこのスタートの年を成功させる、こういった御決意をぜひとも大臣の方から御披露をいただきたい、こういうふうに思います。  あわせて、先ほど申し上げたように、非常に重大な点、基本的な点での政策転換でございます。もちろん、旧食管法が社会の実態に合わない、こういった面もあったわけですけれども、そうはいっても、五十年にわたって一つの考え方に基づいて政策が遂行され、そして生産者はもちろんいろいろな方々がこれに関連して、これまでのそういった政府の全量管理という体制のもとで仕事をし、生きてきたわけですから、この大転換に当たっては、やはりある程度の緩衝地帯といいますか、激変を緩和する、こういった配慮も必要ではないか、こんなふうに思われるわけでございます。  以上二点について、まず冒頭に大臣の御見解、御決意を承りたいと存じます。
  64. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 委員御指摘のとおり、これまでの食管法は政府主体で米制度の管理運営をやってきたわけでございますが、御指摘のとおり、今度は生産者の自主性、自発性というものが大変尊重される、あるいは市場経済原理が導入されるといった新しい側面が導入されたわけであります。  しかし、ねらいは米の需給の安定と価格の安定を図るということでありますから、切れ目なく、安定した価格で国民に安全な食糧を提供するということがこの新しい法律の使命でございますから、それを忘れちゃいかぬと深く決意をしている次第でございます。  そしてまた同時に、自主性、自発性を尊重したことによって、この新法の施行によって農民が大変苦しむようなことがあってはいかない。だから、やはり生産意欲を減退させないような深い配慮が私は必要だ。今委員が申されましたが、種々の温かい緩衝ゾーンを設けるべきじゃないかという点も、私も同感でありますのできる限りそういう配慮のもとに、生産者団体や与党の皆さんやあるいは議会の皆さんと十分相談しながらこの適正な運営を図ってまいりたい、こう思っております。
  65. 錦織淳

    ○錦織委員 今の大臣の御決意が内閣全体、政府全体、ひいては我々議会も含めた国全体の意思として貫徹されるよう、御努力のほどをお願い申し上げたいと存じます。  そして、この新食糧法施行が成功するかどうかという一つの柱は、言うまでもなく需給調整がポイントであり、そしてその需給調整の柱は生産調整がうまくいくかどうか、こういうことであろうかと思われます。そのために、この生産調整に協力をしてくださる生産者の方々に対してさまざまな支援措置を行っていく、これは当然であろうと思います。その具体的方策については、私も関与しております連立与党の農水調整会議等でもいろいろ具体的に議論をしていくことになろうかと思われますが、もう一つ別の面から見て、次のような点を考えていただかなければならないのではないかと思います。  それは、少なくとも中期的に見ますと、現在の日本においては供給過剰になる可能性が極めて高い。つまり、実際に消費されるお米の量よりも生産能力の方が大きい、こういう問題が中期的には続くのではないかというふうに見ておるわけですが、まずそういった見通しについて御確認をさせていただきたい。  仮にそうした供給能力が消費量を上回るという状態が中期的に続くとすれば、この生産調整は単年度の問題ではない、こういうことになるわけであります。  したがって、先ほど申し上げたように、一方で生産調整に協力する農家についていろいろな支援を行っていくという必要があるわけですが、同時に、もう常時転作というものが行われる、つまり転作というものがいわば恒常化をしていくということになりますと、転作後の耕作地、農地をどうしていくかということについてのある程度の考え方というものが必要になってくると思われるわけであります。  その後の利用について、もちろん個々の農家の自助努力といったことも求められるわけですが、現在の日本の農地、特に中山間地域なんかでは、とりわけ個別の農家の規模が小さいといったこともあり、営農組合をつくったり、あるいは集落単位で営農を行っていくというようなことが進められているわけであります。  そういった背景をも考えますと、そうした転作後の耕地の利用をどうしていくかといったことについて、やはり行政としても何らかの方向づけを与えていく必要があるのではないだろうか、こんなふうに思うわけであります。そういった点についてどのようにお考えかということをお伺いしたいと存じます。  あわせて、そういった新しい転作後の耕地の利用をどうするかということになりますと、市場の動向といったものを生産者が正確に把握する仕組みがますます必要になってくる。一方で、需給調整というものが市場の動向に当然左右されるわけですから、稲作についても市場の動向を把握するということが当然必要になってくる。同時にまた、転作後の耕地利用についてもそういった問題が求められる。こういった情報の収集ということについてどのような支援策を展開すべきか、こういったことについてもあわせてお考えをお伺いしたいと存じます。
  66. 日出英輔

    ○日出政府委員 まず、最初に先生お尋ねの、中期的に見て供給が過剰ぎみで、これからも生産調整を継続する必要があるのではないかという御認識でございますが、それはまことに私どもと認識を一にしておるわけでございます。  御案内のとおり、ことしは一〇二ということで、米の生産量が千七十四万トンということでございます。一部では、米の生産力につきまして、例えば壊廃がかなり進むとか、あるいは水稲の生産力全般について悲観論もないわけではございませんが、私どもは、米のっくりやすさということを考えますと、やはりこういった旺盛な生産力はこれからも相当程度続くのではないか、言ってみますれば、米の生産調整という世界は当然これからもしばらく続くのではないかというふうに思っております。  それから、二番目のお尋ねになるわけでございますが、今の話とも絡んで申し上げますれば、計画的に生産調整を始めましたのが昭和四十六年でございます。かれこれ四半世紀続いておるわけでございます。その中で私どもは、米の生産調整だけを考えだというのが実は昭和四十六年から五十年までの稲作転換対策でございましたが、五十一年からは、生産調整は緊急避難ではないということで、米以外の作物の自給力をどう向上させるかとか、あるいは生産性をどう上げるかとかいう課題が、実は五十一年からの水田総合利用対策では大きな問題になってきているわけでございます。  先生お話しのように、個別の作物をどういうふうにつくっていくのか、例えば営農組合とか集落というお話がありましたが、どういう土地利用をどういう営農形態でやっていくのか、こういった問題については、先ほど申し上げましたように、水田地帯で生産調整が恒常的に進むとすれば、米と転作作物を組み合わせたいわば複合的な形態での営農ということは当然不可避でございますから、これについて私どもは前向きの指導をずっとやってきておるわけでございます。  余計なことでございますが、特に生産調整の世界で申し上げますれば、生産調整助成金というのは、国の意思からしますと、他の金融措置とか価格政策なんかに比べましてもかなり直截的に国の意思があらわれるものでございますから、先生お話しのように、どういう作物をどういう営農形態でつくっていくかということは大変大事なことになります。  そういう意味で、県段階あるいは市町村段階で生産調整をやりますときに、初めに指針というのをつくらせております。この中で、今先生がお話しのような、どういう作物をどういう営農形態でつくっていくのかというのを、市町村は生産者団体なんかと相談をして、まずある種の指針をつくります。そういう中で生産調整の指導をしていくというやり方をいたしておりまして、私どもは、今後ともこういった方針で生産調整を進めていく必要があるのではないかというふうに思っております。
  67. 中須勇雄

    ○中須政府委員 ただいまの後段の御質問についてお答えを申し上げます。  御指摘のとおり、安定的かつ効率的な営農を実現するためには、生産物の需給とか価格動向というものが農家なり生産組合等に十分提供されて、そういう情報をもとに、各農家や産地ごとに、競合産地とか先進産地の動向分析をするとか、新しい作型あるいは出荷時期の調整、新規作物への取り組みを行う、あるいは新規市場への参入に活用する、こういうことがふんだんに行われることが極めて重要だというふうに私どもも考えております。  このため、現在統計情報部におきましては、生鮮食料品流通情報サービスというような形で、全国約戸弱の卸売市場におきます日々の入荷動向だとか価格というものを即日把握して即日全体に返していく、こういうようなサービスを行っておりまして、これについては、農家を含めて全国の利用者にファクシミリとかパソコン等で市況情報を提供する、こういう体制をとっているところであります。  また、特に最近、農業改良普及組織において普及情報ネットワークというものができ上がっておりまして、そこにこの情報を提供いたしまして、各普及センター単位でもってさまざまな加工、分析をして農家へ積極的に情報を提供していく、こういう体制を今組んでいるところであります。  今後とも、御指摘のような考え方に沿って、こういうものの充実に努めてまいりたいというふうに思っております。
  68. 錦織淳

    ○錦織委員 本日は新食糧法についてさらにお尋ねをするつもりでございましたが、日本の将来の農政を占う上で非常に重大な問題が私の地元で起きてまいりましたので、ちょっとその関連で御質問させていただきたいと思います。  先般、中四国農政局の建設部長が島根県の県及び県議会の全員協議会に対して、中海の干陸事業について見解を述べられた、こういうことが伝えられております。  このことについては、かつて私は決算委員会でも御質問させていただいたように、巨大公共事業というものが長期にわたることによって社会情勢の変化に対応できなくなる、こういう重大な問題が例の長良川問題等にも出てまいったわけでございます。この問題も同種の問題でありまして、先ほどの答弁にもありましたように、農地の供給過剰といったことがもし今後も続いていくとすれば、農地をつくるために行うべき干拓事業といったものの妥当性が改めて問われる、こういう問題でございます。  そこで、今回の建設部長の県に対する説明は、一部の観測によると、これは全面子陸を進める第一歩の手続である、このように理解をしている向きもあるやに聞いております。そういうことなのか、いやそうではなくて、全くそういったことについては白紙の状態であって、中立的な立場から説明したものなのか、いずれかを明らかにしていただきたいと思います。
  69. 野中和雄

    ○野中政府委員 中海干拓事業の本庄工区の問題でございますが、本件につきましては、島根県知事と中四国農政局長協定に基づきまして平成四年度から干陸に係る工事を延期していることは、先生御承知のとおりでございます。  今回、県からの御要請に基づきまして、事業主体でございます中四国農政局が御説明を申し上げましたのは、干拓事業と他用途利用の制度について御説明をしたものでございまして、農林水産省といたしまして、事業の取り扱いをどうするかというような一定の方向に誘導をしようとしたものではございません。
  70. 錦織淳

    ○錦織委員 つまり白紙である、このように御理解をさせていただきます。  そこで、では今後この事業をどうするかということを決断をしなければならないわけであります。  前回の決算委員会での当時の建設大臣の説明によりますと、事業の性格を考え、こうした巨大公共事業が社会的変化に対応できなくなった場合については、建設大臣としてもいろいろ考えなければならないというようなことを長良川の問題に関しておっしゃっておったわけです。これは農水省の事業としてこれまで進められてきたものであるわけでして、地元の意向をできるだけ尊重するということであろうかとは思われますが、地元の意向を尊重するからといって、国が一切地元に判断をゆだねるといいますか、げたを預けてしまうということではなくして、国としても、事業の性格上、独自の観点からこの事業を進めるかどうか、どういう形で進めるかということについて判断をすべき筋合いだと思うわけですが、いかがでしょうか。
  71. 野中和雄

    ○野中政府委員 本件の取り扱いにつきましては、先ほど申し上げましたような干陸工事を延期するに当たりましての協定に基づきまして、現在島根県におかれまして検討をされているところでございます。  その協定によりますと、中四国農政局長は「島根県知事の検討結果を踏まえ今後の事業の進め方について結論を得べく協議すること」というふうになっているわけでございますので、この趣旨を尊重いたしまして、事業主体といたしましても、県の検討結果を踏まえまして十分検討を行った上で取り扱いについて判断をいたしたいというふうに考えております。
  72. 錦織淳

    ○錦織委員 その建設部長の地元への説明の内容をお聞きいたしますと、現時点で、これを全く農地としては利用しない、すべて他の用途に利用するというようなことでこの事業を継続することは、現行法制度上可能でしょうか、不可能でしょうか。
  73. 野中和雄

    ○野中政府委員 全く他の用途に使うというようなことでございますと現在の事業をそのまま進めることはできない」わけでございまして、また、仮にその中に非農用地が含まれるというような場合には、干拓事業とそれから他用途に使います事業との共同利用として進めることになると思われます。
  74. 錦織淳

    ○錦織委員 地元への説明をされたところによると、農地以外に部分的に利用するに当たって現行法制上可能な方法としては、干陸が事実上完了して後にこれを他用途に転用する、こういう方法が一つ、それから、農地法の農地転用の手続に従って農地以外のものに転用する、この二つの手続がまずあるということであったようであります。このような場合には、いずれも将来の出来事、つまり現時点ではどうなるかわからない、そういう意味では非常に流動的であるということになるわけですが、将来こういう今申し上げた二つの方法のいずれかをとる可能性があるから、とりあえず干陸をしておくというようなことは可能なのかどうか、それはいかがでしょうか。
  75. 野中和雄

    ○野中政府委員 将来、社会経済情勢の変化によりまして非農用地利用の要請がなされまして、その時点で検討を行った上で、やむを得ず農業目的で干陸された土地を他の用途に転用するという事例は確かにございますけれども農業の干拓事業としては、非農業用に利用することを前提として事業を行うことは困難でございます。
  76. 錦織淳

    ○錦織委員 そうしますと、現時点で他用途への一部転用を含んで干陸のための事業を再開し、工事を着工していくということが可能なのは、先ほどちらっと局長お答えになった共同事業以外にはあり得ないということになるわけでございます。  そこで、その共同事業の方式を選んだ場合に、まず主たる利用は農地であるということが前提になると思うのですが、いかがでしょう。
  77. 野中和雄

    ○野中政府委員 そのとおりでございます。
  78. 錦織淳

    ○錦織委員 そうしますと、二つの点を確認させていただきたいと思います。  まず、今回なぜこういったことが問題になったかといいますと、せっかく農地をつくっても農地の供給過剰、こういう状態ではだれも使わないのではないか、また、そこを水田としてつくって転作というのは、今こういうことを議論している最中にそういうことをやってもだれも農地として利用しないのではないか、こういうような問題があったからこれが大きな議論になったわけです。もちろん、環境問題なんかもございますが。  そこで、仮に主たる目的ではまず農地として事業を進めるという場合に、農地として大部分を使うという前提で進めるとすれば、ある程度具体的な農地としての利用計画というものが定まっている、つまり、どういう人がそこで営農するかというようなことについてのきちんとした裏づけが必要ではないか、見通しとして、これが第一点でございます。  それからもう一つは、従たる利用として干陸後の土地を他用途に使う場合に、その割合、つまり農地と他用途利用との割合がどのぐらいであって、かつ他用途利用については、だれが具体的にどういう形で利用し、そしてその工事の過去の分も含めて費用負担をどうするかというようなことが具体的に確定していなければならないのではないか、こう思われるわけですが、その点はいかがでしょう。
  79. 野中和雄

    ○野中政府委員 農業の干拓事業として実施をいたします場合には、でき上がりました農地につきましてどのような営農をやるのかというようなことが当然計画として確立されていなければいけないことは、先生のお話しのとおりでございます。  それから、最初から他の事業と共同で実施をするというような場合におきまして、特にどれくらいの割合でなければいけないということはございませんけれども、お話しのとおり、そういう場合には共同事業として実施をするわけでございますので、具体的な事業主体でございますとか、具体的な他用途の事業の計画内容あるいはその効果、それから費用負担をどうするかというようなことについて明確になっている必要があるというふうに考えております。
  80. 錦織淳

    ○錦織委員 そうしますと、これは非常に重要な点でございますが、農地として利用するにせよ、あるいは部分的に従たる利用として他用途の目的で使うために干陸をする、そういったことを併用する、いずれの場合であっても単なる青写真、単なる机上のプラン、つまり具体的なめどのないそういったものではこれはできない、こういうことになるのではないかと思うわけであります。これは私から言わせていただいても当然のことであろうかな。したがいまして、先ほど来局長の方から御答弁いただいたそのとおりであるというふうに私も同意をいたします。  問題は、結局、大変巨額な費用を使ってこれまでこの干陸事業を進めてきた、しかし社会情勢の変動その他によって現在これを中断をしている、こういう状態であります。したがって、既にかかったものがあるわけでありまして、これをどう考えるかという問題はさておくとしても、今後事業を仮に進めるとすれば、さらに巨額な金を投入をしていかなければならない。ところが、実際にその干陸の作業に着手をした後に、いやこれはだれも農地として使わない、あるいは当初の他用途利用でこういうふうに考えておったけれども、コスト計算を実際に、現実にやってみたらそこに参入をしてくれる人がいない、こういうようなことになってしまったのでは大変な税金のむだ遣いであるということになるわけでありまして、確かにこれはこれからゼロの状態で着手する事業ではない、つまり既にある程度進めたという点が非常にこの問題を難しくさせておるということは承知をしておりますが、そうであれば、さらにその次へ進むに当たってはそういった点が非常に大切ではないかな、このように思うわけであります。  そんなわけでありますので、ひとつこの点については、単にその見通しのないまま前へ突っ込むというようなことではない、こういうふうなことを改めて確認をしたいと思いますが、その点御答弁をお願いいたします。
  81. 野中和雄

    ○野中政府委員 本件につきましては、干陸の営農計画その他も含めまして、現在島根県の方で御検討いただいているところでございますので、そういう点も踏まえまして、その結果を私どもも受けまして、十分協議をしてまいりたいというふうに考えているところでございます。
  82. 錦織淳

    ○錦織委員 以上で終わります。ありがとうございました。
  83. 日野市朗

    日野委員長 次に、石破茂君。
  84. 石破茂

    ○石破委員 野呂田大臣が新しく御就任になりまして、先ほどごあいさつがございました。前任の大河原大臣には私も長い間御指導をいただいてきて、大体どういうような農政をやろうとしておられるのかわかっておるつもりでございましたが、さて野呂田農政というのは何をおやりになろうとしておられるのか、何を実現しようとしておられるのか。つまり、先ほど来いろいろな議論で出ておりますように、新食糧法というものが施行されている、片方には住専という問題がある、大変厳しい、ある意味では一番難しいときに大臣御就任でありますが、大臣はどういうような農政を基本的に展開していこうと思っておられますか。
  85. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 大変難しい御質問でございますが、私どもに課せられた最大の使命は、米の需給と価格の安定を図る、そして国民に安定した価格で安全な食糧を提供していく、それをきちっとやるべきだということだろうと思います。そしてまた、新しい食糧法施行されましたが、従来政府がすべての制度の管理運営をつかさどってきましたけれども、新しい法律は生産者の自主性、自発性というものに主体を置いておりますし、また農業にもいよいよ市場経済原理が導入されたということでありますから、これを農家が余り一遍に大きな衝撃を受けないような滑らかな形で定着させていくことが大変大事なことじゃないか、こういうふうに思っております。  当面のAPECの問題とか住専の処理というものは、これは私どもが従来から主張しておりますことを明確に主張してそれを確保していくべきである、こういうふうに思っております。
  86. 石破茂

    ○石破委員 きょうは生産者の皆さん方の大会もございまして、与野党それぞれの政党の代表が出て、決意表明というのをしたわけですね、決意表明というのか、政策の表明というのか。私も新進党を代表して出たんですが、そこでまず冒頭におわびを申し上げたのは、だれも前の選挙において新食糧法案なんて言ってないんですね。こんな法律をやりますなんて言った政党はどこにもないです。そういうことを公約した候補者も一人もいません。だけれども、これは去年暮れ通っていった。そしてまた、ミニマムアクセスというのは、私は、例外なき関税化は確かに回避できたんで公約違反だとは思っていない、開き直るつもりはありませんが。しかしながら、国会決議というのは一〇〇%守れなかったこともこれまた事実である。そのときに、やれ受け入れたのは細川内閣じゃないかとか、やってきたのは自民党じゃないかとか、新食糧法案を出してきたのは時の自民党政府ではないかとか、そんな責任のなすりつけ合いをしておっても何にもならぬのであって、これは農政に携わってきたものがみんなひとしく負わなければいけない十字架なんだということは申し上げてきたのであります。だから、アリバイづくりに狂奔しても仕方がないし、これはみんなが負っている原罪のようなものだろうなというふうに思っているのです。  農政不信の根本の原因というのは何なのかというと、前の委員会でも申し上げて、またそんな話をするのかとしかられるかもしれませんが、要は今までは農家に対しては三つのことを言っていればよかったんだろう。一つは食管堅持、もう一つは自由化反対、もう一つは米価を上げます、この三つを言っていれば何となく通ってきたところがあるんですね。ところが、今やこの三つが三つとも通用しなくなっちゃった。ミニマムアクセスの受け入れ、そしてまた新食糧法案、これによって全然通用しなくなってきたわけですね。スローガンだけ言っていても仕方がない。農政不信を招いた原因というのは、みんないろいろなことを言いますが、それを可能にするような予算なり財源なりというものを提示をしないでそういうことを言ってきたところに一番の問題があるんだろう。やがて来るべき国政選挙においては、それぞれの政党がやるべきこと、それを可能にする法律、そしてそれを可能にする予算、それを可能ならしむ財源、それを提示して国民の選択を仰がないと不信はますます高まるばかりだろう。政治改革というのはそういうことだったんだろうというふうに私は思っているんです。  よく財政当局がうんと言わないのでとか財政当局の御理解が得られないとか、そういうようなことを私も言ったことがあります。だけれども、それも主客転倒の話なんで、だれがだれに使われているのか全然わからないですね、こんなもの。そういうことがあってはならぬというふうに私は思っているんです。  さて、この新食糧法をどうやってうまく動かすか、正直言って私にもいい知恵ありません。こうすれば動くということをおまえ説明してみせる、こう言われても説明できる自信が正直言ってございません。やってみなければわからないというところをいっぱい含んでおることも事実であります。これはもう日本が豊かになった裏返しであって、何のことはない、国民が一人御飯一ぜん余計に食べればこんな話はたちどころに解決をする話であって、みんなが一生懸命頭を悩ませる必要もないわけでありますが、残念だけれどもそうはならないのが悲しいところでございます。  さて、この新食糧法案、私は去年からずっとこの問題をやっているわけですが、これはもっと議論を重ねてから通すべき法律じゃなかったのかなという気が今でもしている。しかし、昨年の今ごろ、これはWTO協定と抱き合わせで、これを通さないとWTOも動かないんだというような理屈で通してしまいました。  そのときに、じゃ生産調整の実効性はどうやって確保されるのですかということ、ここについて得心のいく説明がどうしても得られなかった。  もう一つは、政府米買い入れ価格のときに再生産可能なという言葉が入りました。最初はなかったのです。だれの再生産可能にしますかということが抜け落ちていた。委員会でも何度も聞いたけれども、それは米価審議会の御審議を経て、こういうお話であった。それじゃ国会というのは一体何なのかなというふうに私は思うのです。十月に出てきました米審の中間報告を見ましても、何が書いてあるのかよくわからない、何が言いたいのかよくわからない。これから先詰まるのでしょうが。  さて、生産調整に実効性を持たせるために本当にどのようなことをお考えですか。そしてまた、それを可能ならしむる財源というのは、本当にめどがあるお話ですか。
  87. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 御質問のとおり、米の需給と価格の安定を図るということは、これは新しい食糧法においても政府の重大な責任であると思っております。そのためには生産調整が円滑に実施される必要があります。生産者団体ともよく協議しながらこれを円滑にやっていかなければいけないわけでありますけれども、そのためには、委員が御指摘のとおり、生産調整に対する助成、あるいは共補償の問題等につきましても、私どもとしては十分配慮してまいりたい。  いつそれが実現するかということになれば、これは先ほども御指摘ありましたが、予算折衝で予算の総額が決まりますが、助成のあり方や単価やいろいろな問題については農林省が決める問題でありますから、意欲的にやってまいりたい、こう思っております。
  88. 石破茂

    ○石破委員 話が少し戻りますが、今まで我々は食管堅持と言ってきたわけですね。間違いなく、どの政党もそう言ってきた。自民党もそう言ってきたし、いろいろな新しい政党も、社会党ももちろんそういうことを言ってきたわけですよ。今回の新食糧法案が現状を追認しただけだという説と、そうじゃない、全然変わったんだという説と二通りありますね。大臣、どうお考えですか。
  89. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 変わっていないとおっしゃる方は、どちらの法律も米の需給と価格の安定をねらいにしたという点では変わっていないという見方もあろうかと思います。しかし、運用のあり方につきましては天と地の差異でありまして、旧法の方は政府が主体となって管理運営したし、新法の方は生産者が主体となって、その自主性のもとに運営されていくという点は全く違っていると私は考えております。
  90. 石破茂

    ○石破委員 大臣の御答弁のとおりで、政府の責任というのが全く変わったということで、実は本質的に全く違うものができたのだろうと思っているのですよ。だから、食管を堅持するというのはかなり変わってきた、半分、政府の役割という意味では変わってきたというふうに認識をせざるを得ないと思うのです。  今まで、とにかく全量買い入れの建前がありましたから、何があろうとも政府は最後は買ってくれるねということがあった。生産調整が失敗をしたとしても、それは政府が買ってくれるねということがあったわけですが、今度それが百五十万トンになって、そこにミニマムアクセス米まで食い込んでくるというようなお話になってきますと、これは政府の責任は那辺にありやということになってくるだろうと思う。だとすれば、それが助成金というものなんだろうというふうに思うわけであります。  ここがまた難しいのは、生産調整をうまくやるためには、じゃ、どれくらいの助成金水準がいいのだろうか、どのような配分をするのがいいのだろうか。そしてまた、今度は転作面積は少なければ少ないほどいいという話にならないのですね。少なければ少ないほどいいという話にならないし、政府米も高ければ高いほどいいかというと、それはさてどうかなという気が実は私はしているのですが、さて、適正な助成金、これを一年目からうまく動かすために、適正な助成金とは何をもって適正とするとお考えですか。
  91. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 今私ども委員御指摘の点について真剣に検討しているところでありますが、既に皆さんの方にもあるいは関係団体から御説明に回っておると思うのでありますが、生産調整の助成については現行の五万円を堅持してもらいたい、あるいは共補償については一万円を二万円にアップしていただきたいというような要望があるということでありまして、私どもは、生産者団体のそういう意向も十分しんしゃくしながら考慮してまいりたい、こう思っております。
  92. 石破茂

    ○石破委員 共補償のお話はまた後ほどいたしますが、とにかく現行は確保してくれという話ですよね。少なくとも現行は確保してちょうだいなと。これがまた財政当局に行きますと、助成金漬けはけしからぬ、こういうお話になりまして、助成金はどんどん削られているわけですね。最低でも今のでなければいかぬ、できればこれをうまく運営するために上げていかなければいけない、もしくはもらえる要件を緩和してもらわなければいけない、中山間地においては特にそうである、こういうお話がありますが、どうですか。
  93. 日出英輔

    ○日出政府委員 今先生お話しのようなことは、生産者団体の方から要望としては私どもも聞いているところでございます。  ただ、ちょっと一言つけ加えさせていただきますれば、今の生産調整が四分の一世紀行われている中で、助成金の役割がいろいろな意味で変わってまいります。特に、生産調整自体を円滑に進めるために必要かどうかという議論のほかに、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、個別の作物指導として適当かとか、あるいは構造政策を進める観点で大丈夫かどうかとか、あるいはそれらが地域の創意工夫でうまくいくのかどうかといったようなことで、実は助成金の単価その他が大変細分化されてきている中でございます。  その中で、地域がいろいろな工夫をしながらどういうような形の生産調整をしていくのか、あるいはもう少し言えば、水田営農と転作作物の栽培をどうしていくのかと言ってよろしかろうかと思いますが、そういうようなことを決めていくわけでございますが、この中で、実は県間格差といいましょうか、地域間格差といいましょうか、大変一生懸命きちんとした生産調整をやっているところと、またそうでないところも出てきております。  その中での先生のお話のような団体の要望でございますので、これはかなりきめ細かく向こうの話を聞き、それをどういう形で今の生産調整の助成の中に取り入れていくか、きめ細かい検討が必要であろうというふうに思っている次第でございます。
  94. 石破茂

    ○石破委員 今、助成金は総額幾らですか。
  95. 日出英輔

    ○日出政府委員 約八百億でございます。
  96. 石破茂

    ○石破委員 要はこれを、本当にみんないろいろなことを言います、適正な助成水準を確保するといって。これを仮にふやさなければいけない、私はふやさなければいけないのだろうなと思っておるのですよ、ある程度は。そして、特に中山間地の要件は緩和をしないとなかなかこれは難しいです。事務も非常に煩雑であるということもありますし、実行するのも特に難しいということもありますから、これは緩和をし、水準を少し上げていかなければいかぬのかなというふうに思いますが、今の財政事情を考えてみると、振ってもたたいてもそんなもの出てきそうにないなという気が実はしているのですね。いや、それは予算折衝のときだというお話が返ってくるのでしょうけれども、どう考えてもその金が出るような気が私はしないのですよ。結果としてだましたなということになるのが一番怖い。そんなことを思っていらっしゃるとは毫も思いませんが。  六兆百億の議論のときにこの話をしておくべきだったというふうに実は思うのです、三兆五千五百億が構造改善の方に回ってしまいましたのであのときには、もうとにかく別枠だとか六兆確保だとか、バナナのたたき売りみたいな話をいろいろしておったわけですが、考えてもみれば、確かに新食糧法案とラウンドを一体にして論ずるべきかについては議論の分かれるところです。しかしながら、これが並行して進んでいくことは間違いのないことであって、本当は六兆百億の中にこういうものも入れておかなければいけなかったんじゃないのかなという気はしているのですが、何にしても、その助成金確保のためにどのようなお考えをお持ちか、今財政当局とどのようなお話をしておられるか。
  97. 日出英輔

    ○日出政府委員 生産調整助成金の確保でございますが、私どもは、今度の新食糧法のもとで、自主流通米の需給なり価格の安定を図る上で必要な助成金の額は確保したいというふうに考えておるわけでございます。  この問題につきましては、先ほど申し上げましたように、総額が決まりまして、それをどういうふうに使うかという形の予算ではなくて、実は単価が決まっておる。どういう形の生産調整をやるかによって単価が決まり、それが各地域でどういう選択をされて、総額がどうなっていくかというふうに申し上げた方がいい予算だろうと思っております。  そういう意味で、今、総額が推進交付金等入れて八百九十億、助成金だけでいいますと約八百億でございますが、この総額をどうするかという前に、先生お話しのように、個別の地域で生産調整をいろいろな目的でやりますときに、単価がそれで十分かどうかという検証の方がある意味では大事だということになるわけでございます。  ただ、私は先ほど申し上げましたけれども、生産調整、特に中山間で生産調整を行いますときの議論は、まず第一番目には、転作助成金の水準もありますけれども、そもそもどういう面積をこなしてもらうのか、平場と中山間でどういう話し合いをしていただくのか。もう少し言いますれば、日本全国で、米の生産県とそうでない県でどういうふうに考えるのかということでもよかろうかと思いますが、今の問題は、政府米の在庫が余っているということではなくて、むしろ自主流通米の在庫が余る状況で、この過剰在庫をどう減らすかという問題でございますから、ある意味では米の生産地の生産調整におきます責任というのは大きいんだと思っております。  先ほど申し上げましたように転作目標面積を地域別にどういうふうに決めていくのかという問 題、それから、今お話しのように転作助成金をどういうふうに仕組んでいくのかという問題、あるいはそれをどういう手法でこなしていくのかという生産調整の手法の問題、そういった三つのものがかみ合って初めて中山間の転作をうまくいかせることができるかどうかということになるのだろうと思っておりまして、今、そういったような総合的な観点から、それぞれの地域にどういうふうな形で転作指導をしたらいいかという検討をやっているところでございます。
  98. 石破茂

    ○石破委員 農産園芸局長、すごく細かい話になって恐縮なんですけれども、例えば高度水田営農推進助成というのがありますね。これは現場ではどんな話になっているかというと、とにかくややこしいの何のということなんですな。これは何とかならないのかな。確認するのは市町村の役割ですから、これも確認する市町村においては、職員も足りませんし、大変な話であるぞということなんですね。この点はどうなんだろうか。  ほかに言いますと、例えば水田営農確立助成というのがありますでしょう。これは中山間地の多いところにおいては面積の緩和はならないか、助成金の単価アップにならないかとか、それは細々した話を積み重ねると、山とあるわけですね。  こういういろいろな要望が現地からも出ている。助成金水準をどうするかというマクロの話もそうだけれども、本当に政策をうまくやっていくために、その辺をどれだけ御検討になっていらっしゃるだろうかということが、私は一つ疑問としてあるのですよ。  それから、これは農産園芸局長にお尋ねすることではないのかもしれないけれども、中山間地でも水田をやることが本当に正しいかねという議論もそろそろしなければいけないのだろうと私は思っているのですね。  これは、いきなり直接所得補償などという乱暴なことを申し上げるつもりはないし、私も前から、いきなりそんな夢みたいな話をしてもだめよということは申し上げてきた。だから、中山間地における営農をどのようにやっていくか。これはよくまた皆さん、皆さんとは言わないが、選挙のときになりますと直接所得補償だみたいな話をするわけですよ。そうすると、やたら受けたりするわけです。ヨーロッパではやっているぞ、これはガットの中でも青信号だぞ、日本でもやるんだ、こういうお話だけれども、こんなお話をされてしまいますと、中山間地といったって、規模が拡大しそうなところとしそうにないところ、通勤便利がいいところと悪いところ、四つぐらいの類型があって、それぞれに分けて話をしなければいけないし、ヨーロッパでは最低三ヘクタールになっているはずですから、日本においてそれを導入するということはかなり乱暴な議論だし、この話はまた後でしますけれども、さてさて、そういうような細かな実情、ニーズに合っていない、もう少し緩和してもらえないかということについて、どういうような御検討をなさっておられますか。
  99. 日出英輔

    ○日出政府委員 今、具体的に個別の助成金の体系につきまして一つ一つどういう検討をしているかということについて申し上げるのは差し控えさせていただきますが、私どもといたしますれば、今回の新しい生産調整の中で言いますれば、共補償制度につながります地域営農推進助成でございますが、これについては、額の充実も含めましてもう少し使いやすい手法、こういうものができないかどうかということを今議論しているわけでございます。  これは、先生、先ほど中山間の話を言われましたけれども、実は共補償制度の普及ぶりを見ますと、一番多いところで九五%、少ないところでゼロあるいは一%ということでございます。それから、中山間でもかなりの程度使っているところもあれば、そうでないところもございます。そういう意味で、共補償制度の使い方をもう少し上手にやっていかなければいかぬのかなというのが私どもの反省の弁でもございますが、そういうことを踏まえて助成金の中の体系の議論をしておるわけでございます。  それから、先ほど先生お話しの高度水田営農推進助成、いわゆる五万円までもらえる最高額のところでございますが、これは全国で面積率で大体八%程度、面積でそのぐらいしか実はもらっていないという意味では、要件が厳しいといえば厳しいわけでございますが、実はこれは県別に見ますと、必ずしも北海道だけではなくて、かなりの地域でいろいろやっているところもございます。これは取り組みの強さ、弱さというのが出てくるかと思いますが、正直に申し上げまして、中山間ではなかなか使いにくいかとは思っております。  ただ、もう一つお触れになりました水田営農確立助成、これは幾つかいろいろなタイプがございまして、即中山間地域で使いにくいというのは、あるいはもう少し現場の工夫の余地なり取り組みの推進の仕方があるのではないかという感じがいたしまして、そこら辺も含めまして、今個別に細かく検討しているところでございます。
  100. 石破茂

    ○石破委員 この話、地域営農推進助成ですか、これは共補償にかかる分ですが、ここは使途制限を撤廃しないとどうにもならないのじゃないかということだと思うのです、共補償と絡めようと思いますと。そういう細かなものもあわせて提示をするということが必要なことじゃないのかなと思いますが、その用意はおありですか。
  101. 日出英輔

    ○日出政府委員 今のお話、特に地域営農推進助成、共補償の助成で、六十二年度からやっておりますこの助成では、水・土地利用の合理的な体系づくりをするといったようなやや抽象的な要件がかなり具体的な要件になって、現場で非常に使いにくくなっているという声もございます。今お話しのようなこともございますので、そういったものが現場で使いやすい手法になるようなという点も含めて検討いたしておりまして、全体の体系その他、今月の中旬ごろまでに、世の中に出しますときには、できればそこら辺まで詰めてお示しをしたいと考えております。
  102. 石破茂

    ○石破委員 それをあわせて御提示をいただきたい。  助成額というのはまだわからないですが、私は本当に、いざというときに財政当局がうんと言いませんでしたなどということは言ってほしくないのですよ。特に政府与党与党皆様方、これは皆様方が大蔵省を使っているのですからね、皆様方政府ですからね。その点はぜひお願いをいたしたい。そういうような逃げ口上を言うのはやめにしたいと私は思っておるわけでございます。  さて、その次ですが、計画流通助成というのにどういうような手法をお考えか、この点を教えていただきたい。
  103. 高橋政行

    ○高橋政府委員 御存じのように、今回の新制度のもとにおきましては、適切な需給調整を図る、それから消費者が必要とする米を安定的に供給するために相当量の計画流通米を確保しなければいけない、こういうふうにまず思っております。  したがいまして、その計画流通米、自主流通米が主流になるわけでございますが、これを確保するということで、まず第一点は、量的にこれを相当量確保するにはどうしたらいいかという観点。それからもう一点は、お米はこの十月、十一月にどっととれるわけでございますが、販売はどうしても年間を通して売っていくということになります。そうすると、これを年間を通じて計画的に安定して売っていくにはどうしたらいいか。その二つの観点から、助成をどうしていくかということを今検討しているところでございまして、我々といたしましては、この助成の具体的なあり方、金額を幾らにするかということになるわけでございますが、これにつきましては十二月の予算編成に向けて十分に検討してまいりたい、こう思っているところでございます。
  104. 石破茂

    ○石破委員 そうしますと、住専のお話もしたいのでちょっと急ぎますが、政府米買い入れ価格政府米の意味、もう一度確認をしたい。  つまり、今までは下支えという意味を持っていたわけですよね。最低保証でもあったわけです。そしてまた政府の責任のあかしみたいなものでもあった。今度の政府米の持つ意味というのは、そしてまた買い入れ価格の持つ意味というのは、大臣、どのようなものだとお考えですか。
  105. 高橋政行

    ○高橋政府委員 今までの政府買い入れ米価というのは、御存じのように、全量買い入れを政府がするという意味では、米価の下支え機能というのが従来はあったということは言えると思います。しかしながら新制度では、政府米は備蓄米程度、基本的には百五十万トン程度を買うということになりましたので、そういう意味では量的に限定されてくるわけでございます。  したがって、我々は、米価の安定ということから考えますと、政府米と自主流通米を通じた価格の安定というものを図らなければいけない、そのためにはいかに数量調整をしっかりやっていくかということで、先ほどからお話のありました生産調整とかあるいは備蓄・調整保管とか、そういうものをいかにしっかりやっていくかということで対応していくべきだというふうに考えます。  そういう中で、政府米の価格体系というのはどういうふうに位置づけられるかということになりますと、政府米が備蓄として買われていく場合に、現在でも政府米の対象となるものはどちらかといいますと三類から五類、そういったものが中心になっております。したがいまして、恐らく価格体系としては自主流通米が上の方に存在をし、政府米が下の方の価格に存在する、そういうことになっているのではないかというふうに思っております。
  106. 石破茂

    ○石破委員 これはもう何度も聞いたのですが、もう一回聞きます。  だれの再生産を可能にするのですか。つまり、この文言は最初はなかった、最後になって入った、間違いないですね。そのときに、だれの再生産を可能にするのかわからなければこんなもの意味ないじゃないかというお話をしたんだが、米審の御審議を経て、こういうお話だった。米審の御審議もそれはそれでよろしいが、農政当局としてだれの再生産を可能にするべきであるか。そもそも新食糧法を動かす場合にどのようにお考えですか。
  107. 高橋政行

    ○高橋政府委員 今度の新しい法律の中で、五十九条に「米穀の政府買入れ」というのがございまして、その二項に政府買い入れ価格についての規定がございます。そこの中で、政府買い入れ価格は、自主流通米の価格の動向を反映させるほか、生産条件、いわゆる生産コストといいますか、そういうものを参酌し、米穀の再生産を確保することを旨として定めるということで、「米穀の再生産を確保することを旨」というふうに規定されております。  それで、この米穀の再生産を確保するという言葉は、いわゆる食管法の中にも同様な規定はあったわけでございます。これはどういう意味かというと、文字どおりで、いわゆる米全体の、米の生産を確保してもらわなければいけないということになるわけでございますから、結局、その再生産が確保されないということはどういうことかといえば、それをつくる人が引き合わないということで米の生産が確保されないということになってはいけない、そういう意味と理解しております。
  108. 石破茂

    ○石破委員 禅問答みたいな話でありますが、要するに、今まで地域方式とか一・五ヘクタールとか、いろいろな話をしてきたわけですよね。どうもこれ、すらっと読みますと、日本全体の米穀の再生産を確保するというふうにしか読めないのですよ。国全体で再生産が確保されればそれでいい、こういうふうにしか読めないのですね。そうすると、今までの地域方式よりもさらに踏み込んだ形になりはしないか。そして、市場価格の動向等を参酌すると結果としてそういうことになりはしないか。日本全体の再生産が確保されればそれでいいというようなお考えもおありですか。
  109. 高橋政行

    ○高橋政府委員 今お話しのように、基本的には日本全体といいますか全体としての米穀の生産を確保するということであると思います。そのためには、個々の農家が引き合わないということではだめなわけですから、そういうことも結局は考慮せざるを得ない、こういうことだと思います。
  110. 石破茂

    ○石破委員 そういうことなんでしょうね。  そうしますと、その出来秋との間にかなりの差がありまして、基準点のとり方いかんによっては物すごく下がるということも理論的にはあり得ることなんだろうというふうに私は思っているのですよ。  それとの関連でお聞きをしたいのですが、私、これはもう何度も聞いたことですが、これと新政策とどういうふうに関係するのだということなんですよ。構造政策と価格政策の接点みたいな話になってきて、これはもう何十時間あったって足りない話なんですが、新政策の中には「農業生産構造の変革を促進するため需給事情を反映させた価格水準としていく必要」と、「農業生産構造の変革を促進するため」こういう文言がきちんと入っているわけですね。これはそういうようなお話ですか。
  111. 高木勇樹

    ○高木(勇)政府委員 お答え申し上げます。  新政策では、今先生御指摘のようなことでこれから価格政策を運営していくべきだ、こういうことでございます。  そこで、この新政策では、当然のことながら、これからの効率的、安定的な経営体、その姿も一方では出しておりまして、そういうことを実現されれば、またそういう効率的、安定的な経営体が農業の生産の大宗を占めるような農業構造になっていけば、その間に一定のコスト低減が行われていく、そのための対策、ウルグアイ・ラウンド対策もその一環でございますけれども、私ども全力を挙げてやっておるわけでございます。そういうコスト低減が行われていくという中で効率的、安定的な経営体が、一定の所得それから労働時間、こういう姿が実現されていく、こういうことでございます。  そこで、コスト削減というのは、やはり当然のことながら価格との関係でタイムラグというものも生ずるわけでございまして、そこについて価格政策の方でも一定の配慮をしていかなければいかぬ、こういうことで我々考えておるところでございます。
  112. 石破茂

    ○石破委員 コストを半分にするというふうに新政策では言っておるわけですから。しかし、それが農家所得の減少にならないためにどういうような仕組みが組めるのかなということを考えていかなければしょうがないのだろうなというふうに思います。米価を決めるときに、従来もいろいろな議論がなされてきて、土地改良とかいろいろなことをやってコストが下がった分は結局価格が下がって所得が減ったというようなことになると、もうばからしくてやっていられぬというようなことになってしまうわけですね。  ところが、これはまた財政当局のお話なんですが、いやいや、そんなことを言ったって、土地改良というのは私有財産の価値を増すものなんだから、そんな負担ゼロみたいな話にならないぜ、こういうようなこと。最低は五%になっていますからそれはそれでいいのかもしれないけれども日本農業予算というのは特に変わっていて、変わっていてというのかな、欧米にないような、そういうような土地改良にかなりの部分が割かれている。この部分をどうやってこれから先考えていくか、農家所得の減少をどうやって食いとめていくかということを考えなければいかぬのだろうというふうに思っています。  それからもう一つは、集落をどうやって維持するのかという観点が特になければいかぬのだろうというふうに思っておるのですね。これは、米の値段がどんなに上がったって中山間地の集落を維持するというのは極めて難しい。私は、農林省の政策として、特に中山間地における就業の場の確保、これに全力とは言わないけれどもかなりの力を注いでいただく必要があるのではないだろうか。  私の選挙区におきましても、今小さな山合いの工場がばたばたつぶれているということがありますね。ある日行ってみたら工場が閉鎖になっていて、きょうからみんな来なくていいよというようなことがある。円高になるとそういうようなことが起こるわけですね。そうすると、パートの御婦人にしても何にしても、例えば月に十五万円の収入がある、すると一体これは水田何町歩分になるのかね、こういうようなことになります。  それで、農村における就業の場の確保ということもあわせて考えていただきたい。それから、中山間地における政策をどうするかということもあわせて提示をしていかないと新食糧法というのはなかなか動かないのではないだろうか、私はそう思うのですが、大臣、いかがですか。
  113. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 農林業振興と、それ以上に大事なものの一つは、やはり農山漁村の活性化だと思います。中山間地の振興につきましては、これは大変難しい課題であると思います。率直に言って、そういう思いがいたします。  いろいろな政策や計画を見ておりますと、新しい就職の場をつくるために企業誘致等を進める、こういうようなことが書かれてありますが、私のこれまでの生涯、大体そういうことを専門にやってきましたけれども、なかなかこれは言うはやすく実行は難しいような気もいたします。  この間、ある高名な評論家と話をしておりましたら、彼はかなり多額の調査費を使って日本じゅうの中山間地の振興について調査をしたという話でありまして、その中の一つに、どこの市町村でもちょっと工夫すれば観光客を二、三十万人動員するような措置はできるんじゃないか。これは、この間も全国農政局長会議を開きましたら、例えば近畿農政局では幾つかの事例を挙げてそういうことに成功したという報告がありました。二、三十万人の観光客が来ると三十億から五十億の観光収入が上がるそうで、そうなりますと、なかなか後継者も外には出ていかない。人口はふえるというところまでは胸を張れませんけれども、後継者が県外に流出しないというようなことが大変はっきりしているということを言っておりました。私は、中山間地の振興についてはそういうことも大変大事だな。  それから、こうなってくると、イギリスのハワードの話ではありませんが、都市と農村を結婚させるような政策がもう少し弾力的に必要ではないかなという考えを持っております。  中山間地の振興が大事だという点では委員と全く同感でございます。
  114. 石破茂

    ○石破委員 ですから、何だかんだ言ったって、日本というのは要するに、一番賃金が高くて、土地も一番高くて、税金も一番高いという話ですから、そんなところでやるよりはと、こういう話になるわけですよね。企業が来たくなるような税制にしなければしょうがないでしょうがということなんだと思うのですよ。  そして、大臣御指摘のように、都市から農村にどうやればお金が入ってくるかということ。これ以上都市にお金を突っ込んでも、これは国全体の富にとってはむだな話でして、そういうような政策というものをきちんと出していかないと、みんなに受けるような話をしていてもしょうがないのではないか。みんなに受けるような話をしていると、最後に本当にみんなだめになりますよ。  大臣、その辺は本当に専門家でいらっしゃいますから、建設省の御出身でもいらっしゃいますし、その建設省御出身の大臣が農水大臣をやっていらっしゃるわけですから、そういうようなグローバルな政策を、私どもも出します、どうかお考えをいただきたい、このように思っております。  なお、米価につきましては、私はやはりこれはもうとにかく維持しなければしょうがないのだろうな。一番最初の年ですので、みんなまだ見たこともない世界に入るわけですから、これは少なくとも現行水準は維持をしなければいかぬ。理屈はどう立てるのか、これは難しいところです、正直言って。だけれども、現行水準は維持しなければいかぬ。  それから、米価の算定方式においては、これはジェットコースターみたいに下がるようなものはやはりまずいだろうと思っているのですね。どんどん米価が下がっていくと、規模拡大ではなくて耕作放棄が起こるだろうと思っているのですよ。  そしてまた、よく言われる議論で、米価が余り下がると専業がつぶれて二種兼業は残るぜ、こういう話がありますが、今の体系からいきますと、作業のかなりの部分は二種兼業ではなくて専業がやっているのですね。二種兼業の作業もかなりの部分が専業の若い人がやっているわけで、そっちがつぶれると二種兼業ももたないという、全部おかしくなってしまうということがあるだろうというふうに思っております。急落しないような措置というもの、決め方というものをお考えいただきたいと思うし、私どもも一生懸命考えてまいりたい、かように思っておるところでございます。  次に、住専のお話に参りますが、これは、バブルというのは要するにばば抜きゲームだったのだろうと思っているのですね。だれがばばを引くかという話であって、あのころは、株をやらないやつはばかだとか、土地を買わないやつは何とかとか、そんな話でみんな一生懸命あおっていました。リゾート法なんていうのもそういうような話ではなかったかというふうに思うのだけれども、ばば抜きの当然の結果としてはばが残った、そのばばを住専が引いたというようなことではなかったのでしょうか。  これは先ほども遠藤委員からお話があったけれども、七〇年代初頭に住宅需要というものが起こって、しかしながら銀行というのはそのノウハウがなくて、そこで大蔵省が音頭をとられて住専というのがつくられた。それで、調子よくいっていたかどうか知りませんが、まずまず何とか滑り出しておったところ、コンピューター化が進んで、そしてまたトヨタがお金を借りてくれないみたいな話で企業の資金需要が起こらなくなって、よって銀行がそういうような分野に参入をしてきた。私も都市銀行で住宅ローンをやっていたことがありますけれども、そういうようなことになってきたのだろう。そしてまた住宅金融公庫が非常に伸びてきた。これは原資は、何のことはない、理財局所管の財投ですがね。そういうようなお話になって、銀行は入ってくる、そしてまた政府系の金融は侵食するみたいな話になってくる。そこで、どうにもこうにもならなくて、住専は土地、不動産、そういう関連にのめり込んでいったのだろう。  それで、貸し手責任というような話がよくされる。わからないで貸したんですか、そんなことでよく金融機関と言えますね、こういうことを言う人もいます。しかし、住専のたどってきた経緯、そしてまた銀行が参入し、住宅金融公庫が入ってくる中において、住専にほかにとるべき道はあったのですかね。このことについて大臣、どのような御認識をお持ちですか。
  115. 堤英隆

    堤政府委員 住専にほかにとるべき道があったのかどうかという御指摘、御質問だと思いますが、今おっしゃいましたように、昭和五十年代後半以降、もともと個人住宅ローンということでスタートした住専の世界に、未調整のまま親会社、母体行が参入をしてくるという状況の中で、住専とすれば、その後どういった業務に展開していったらいいかということになりますれば、そういう個人住宅ローンというところが非常に厳しいということであれば、今おっしゃいましたように、土地でありますとか不動産でありますとか、そちらの方に業務展開せざるを得なかったという面は、これはそのとおりだろうと思います。  そういう状況の中で、じゃ、ほかに住専としてどういう方法があったのか。私もそこはわかりませんが、今おっしゃいましたように、客観的情勢としては、つくった親会社がそういう世界に未調整のまま入ってきたということの経緯の中では、今おっしゃいましたような状況しかなかったのじゃないかなというふうに思います。
  116. 石破茂

    ○石破委員 大蔵省にお尋ねをしたい。  大和銀行の話で、日本の常識は世界の非常識みたいな話で、日本じゃえらい厳しい処分だなと思っていますが、向こうにしてみれば、よくもよくもこんなことをやってくれたな、主権国家のアメリカにおいてよくもこんなことをしてくれましたねというようなことなのでしょう。そして、報告が物すごくおくれたということについても、これは非常識きわまりないというようなことだそうです。  私どもは、これ基本的には母体行が責任を持つべきものだと思っているのです。  その前に一つお尋ねをしたいのだが、きょう一部報道に、住専処理で連立与党が方針を出した。それは何かというと、農林系にも元金一部負担させる、こういうような報道がございました。皆様方御存じだと思います。  これをそのとおり読みますと、「連立与党と大蔵省は七日、与党金融証券プロジェクトチームが今月末にまとめる処理案に、農林系金融機関にも融資した元本の一部負担を求めるほか、受け皿機関の設立など具体的な処理スキームを盛り込む方針を固めた。住専問題をめぐっては、農林系金融機関の貸出金の元本保証を求める声が高まっているが、同省は」大蔵省のことですね、「貸し手責任を無視することはできないと判断。」「農林系にも元本分を含む損失負担をしてもらうのが重要とした。」こういうふうな報道がなされておりますが、これは事実ですか。
  117. 振角秀行

    ○振角説明員 大蔵省の振角でございます。答えさせていただきます。  結論から言いますと、そういう事実はございません。  九月下旬以降、母体行ないし住専と農協系統金融機関との間で、現在当事者間の協議が持たれ、意見交換が行われているという状況でございまして、我々としては、問題解決のためには、こうした当事者間の議論を尽くしていただくことがまず重要だというふうに考えておりまして、大蔵省としては、こういう議論の行方を、今促しつつ見守っているというところでございます。
  118. 石破茂

    ○石破委員 これは、日野委員長もメンバーでいらっしゃると思います。そういうような事実はないということでありますから、ないのでしょう。与党でそういうようなお話をされたこともないのでしょうし、政府がお入りになってやられたことも全くないのでしょう。そのように理解をいたしておきます。よろしいですね。  さてそこで、先ほど来話を聞いていますと、当事者間同士の話、当事者間同士の話ということですが、それでは一体役所、大蔵省というのはどういうふうに関与しているのだ、こういう話なんですよ。  私どもは、基本的に母体行責任だと思っておりますし、そのように主張しております。だけれども、その監督官庁たる大蔵省は、例えば住専は、昭和五十年七月に関連会社通達、これで銀行の関連会社とされておるはずですよね。関連会社というのはどのようなものであって、そして一体どのような指導をなさってきたのかということであります。そこのところをお教えいただきたいのですが、そこについていかがですか。  つまり、関連会社とは「その設立経緯、資金的、人的関係等からみて、金融機関と密接な関係を有する会社」、そういうような話になっているわけですよ。そういう場合に、関連会社にその「業務を行わせる場合にも、これに出資する金融機関の経営の健全性が損われることなく、かつ、関係業界に著しい影響を与えることのないよう留意するとともに、当該関連会社の態様、業務の内容については、具体的なケースごとに、当局の指導に従うものとする。」こういうふうな通達が出ている。どのような指導をしてこられました。
  119. 振角秀行

    ○振角説明員 お答えさせていただきます。  今先生が御説明になりましたように、住専会社については、他の業務を行う関連会社と同様に、その設立経緯とか資金的、人的関係等から出資銀行の関連会社という形で位置づけておるところでございます。  しかしながら、住専会社については、独禁法に基づく株式保有制限等から、法律的に言いますと銀行の子会社というわけではなくて、各行五%以下ということです。また銀行法上も、当局は直接には指導監督権限を有するものではないという位置づけになっておりますけれども、広い観点から適切な指導を母体行としても行うべきものだというふうには思っております。
  120. 石破茂

    ○石破委員 であれば、子会社の話をしているのじゃなくて、どんな指導をしてきましたかと聞いているのです。
  121. 振角秀行

    ○振角説明員 これにつきましては、金融制度調査会でも住専問題を議論したときにいろいろ議論がございまして、大蔵省につきましても反省すべき点はあるという指摘を受けておるところでございます。  先ほど来御指摘のありましたように、不動産業務系へ住専会社は大きくシフトしていったわけでございますけれども、行政当局も、住専というのは預金取扱機関とは異なるものであるけれども、住専の急激な事業者向け融資への傾斜には十分な指導を行えなかったという指摘をいただいているところでございまして、我々としては謙虚に受けとめていかなければいかぬというふうに思っておるところでございます。
  122. 石破茂

    ○石破委員 どうもこの通達は、きちんと守られていなかったし、出した大蔵省自体がそれを実行してこなかったのじゃないのかねという気がするのですよ。子会社とかそんな話をしているのじゃなくて、関連会社というのはそういうものだという話になっているわけですから、どういうような指導を今までやってこられたのか。不十分で反省すべき点はあるというのはわかりますが、一体何を、いつ、どのように指導してきたのか、そのことをお伺いしたかったわけであります。  もう一つお尋ねをいたしますが、住専につきましては、これは大蔵大臣直轄のはずでありますから、当然、旧出資法等に基づき立入調査権があったはずですよね。立入調査権があったはずだ。何度立入調査をやりましたか。
  123. 振角秀行

    ○振角説明員 今先生御指摘のように、住事会社は旧出資法に基づく届け出制の会社でございますけれども、基本的には立入調査をすることができるという規定になっておりまして、現在まで二回にわたりまして立入調査をしておるところであります。
  124. 石破茂

    ○石破委員 そうしますと、立入調査の結果として再建計画が出たわけですね。そうですね。
  125. 振角秀行

    ○振角説明員 前回の立入調査と再建計画の関係はつまびらかではありませんけれども、再建計画の前後に立入調査が行われたという事実はそのとおりでございますけれども、再建計画ができた後で立入調査というところもあると思います。
  126. 石破茂

    ○石破委員 日住金の場合、どうです。
  127. 振角秀行

    ○振角説明員 日住金の場合は、ちょっと手元に持っておりませんが、恐らく調査の後再建計画という段取りになっていると思います。
  128. 石破茂

    ○石破委員 立入調査をされて実態を把握されて、それで再建計画をおつくりになったわけですね。それで、問題になっております銀行局長と経済局長の間の文書が取り交わされたわけですね。それでよろしいですね。
  129. 振角秀行

    ○振角説明員 基本的にはそのとおりだと思います。
  130. 石破茂

    ○石破委員 その再建計画がうまくいかないわけですよね。  さてそこで、お話に出ております二月三日付寺村銀行局長と眞鍋経済局長の間の覚書、「大蔵省及び農林水産省は、」何々の、何々というのはまあいいですが、「再建支援について、下記により、それぞれ誠意をもって、当事者間の協議が円滑に行われるよう対処して行くものとする。」「母体金融機関に次の点を文書により確約させる」「再建については、再建計画に沿って母体金融機関が責任を持って対応していく。」こういうふうに書いてあるわけですね。「大蔵省は、農協系統に今回の措置を超える負担をかけないよう責任を持って指導していくものとする」、「責任を持って」という言葉が二つ出てくるわけですよね。そういうように、大蔵省が立入検査をされて、住専の実態というのはかくかくしかじかこのようなものであるということを了知をされて、その上でこういうような覚書がなされておるということだと私は思っているのですよ。  今言われている話は、先ほど、そんな事実は全くない、貸し手責任とかそんな話を話したことは全然覚えがないぞ、こういうことでありますが、問題は、ここの覚書とかなんとか、そのようなものをどのように理解をするかということだと思うのです。これは再建のときのお話であって、清算になったらこんな話は関係ないというふうに言われてしまったら、これはもう身もふたもないお話なんですよ。それまでに大蔵省がいろいろな指導をする立場にもあった、そして立入検査をする機会もあった。立入検査をして、これならよかろうということで再建計画をおつくりになった。しかし、それが再建できなかったらば、そのお話はなしというようなことが本当にあるのですか。これは農水省の御見解を承りたい。
  131. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 今委員御指摘のとおり、覚書の大変大事な点は、再建計画については母体行が責任を持って対応していくということと、それから、大蔵省は農林系統に対し金利減免措置を超える負担をかけないように責任を持って対応していく、ここが大変大事なところでございまして、これがあったから農協系統は債権回収を思いとどまってこの再建計画に合意したという経緯がありますから、そういうぎりぎりの判断によってこういう覚書ができた。私たちは、この経緯を十分踏まえ、これを尊重していかなければいかぬ。だから、結論から言うと、この覚書というのはこれから厳正に遵守されるべきものであるし、これに沿って私どもとしては処理をしてまいりたい、こう思っております。
  132. 石破茂

    ○石破委員 「責任を持って」というのは、何にだれが責任を持つのかということなんですが、再建計画に沿って母体金融機関が責任を持って対応していく、こういう話になっておって、もう一度繰り返しになりますが、「大蔵省は、農協系統に今回の措置を超える負担をかけないよう責任を持って指導」する、これは再建について責任を持ったのだ、こういうことだと言う人もいますよね。だけれども、再建をすることに責任を持ったのだろうけれども、同時に、系統機関に対して迷惑をかけないことに対しても責任を持ったというふうに考えるのが普通の感覚ではないでしょうか。どうですか。
  133. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 私もそのように考えます。
  134. 石破茂

    ○石破委員 大蔵省、どのようにお考えですか。
  135. 振角秀行

    ○振角説明員 お答えいたします。  この文書は、まさしく先生が言われましたように二月三日という日付でやられておりまして、日住金でまず母体行が協議をしまして、それが合意したのが二月二十六日でございまして、まだこの二月三日の時点では当事者間の協議が非常に難航しておりまして、金融システムの安定性の観点から、大蔵、農水両省も当事者間の協議が非常に難航しているのを見て、両省も極力協力して当事者間の協議が円滑に行われるように支援しなければいかぬという問題意識に立って結ばれたものでございます。それがまさしく最初に、大蔵省及び農水省は当事者間の協議が円滑に行われるよう誠意を持って指導していくというところに書いてあることでございます。  それで、再建計画はまだその時点では見えてなかったわけでございますけれども、再建計画ができた場合には母体金融機関が責任を持って真剣に対応するように指導していくという趣旨を述べたものでございまして、母体金融機関におきましては、金利減免とかニューマネーの供与とか、再建計画で示されたことについては一〇〇%現在もやっておりますし、その再建計画で示された母体行の協力については一〇〇%やるように大蔵省としても真剣に指導しているということでございます。
  136. 石破茂

    ○石破委員 今のお話、農林省と大蔵省で違いませんか。再建計画ができた場合には責任を持ってと今おっしゃいましたよね。私が聞いたのは、系統機関に迷惑が及ばないように、今回の措置を超える負担をかけないよう責任を持って指導するということはそういうような意味ではないですか。今の室長のお話だと、計画ができた場合には責任を持ちますというふうにしか聞こえないのだけれども、どうですか。
  137. 振角秀行

    ○振角説明員 今申し上げましたように、再建計画ができる前のときの覚書でございますので、再建計画ができましたときには、もちろん農協系統、そのときは四・五%という金利減免ということでございますので、再建計画が着実に実行されればそれ以上の負担をかけないということで、この両省間の認識がメモにされたものというふうに思っております。
  138. 石破茂

    ○石破委員 経済局長、どうですか。
  139. 堤英隆

    堤政府委員 この覚書が交わされました時点が、先ほども大蔵省からお話ございましたように、系統と母体行の間の話が難航するという状況の中で、こういう形で一定の整理をされたわけでございます。  その中で、こういう形で、まず一つは再建計画の支援についての話し合いの整理がここで行われていると思うのですけれども、当然ながら、再建計画についてこういう形で責任を持って対応するということについての話し合いができた以上は、再建計画のときのみならず、その後の、例えば整理という段階におきましてもその精神はきっちりと守られていく必要があるのではないかというふうに私どもは思っております。  もう一点は、この覚書に沿いまして大蔵省、農水省から指導があったわけでございますが、その段階で系統の方としては、大臣からも御説明申し上げましたように債権回収等の動きを示していたわけでございますが、そういった指導をもとにしてそういう債権回収の動きをやめまして、全体的な金融システムの安定という観点から協力をしたというこの事実は大変重たいものだというふうに思っておりまして、その点は関係者が重く受けとめて、今後の処理策ということについて頭の中に置いてきちんと対応すべきものだというふうに思っております。
  140. 石破茂

    ○石破委員 どうも両省のおっしゃることは必ずしも一致していないような気がして仕方がないのですが、私は、今堤さんがおっしゃるようなことだろうと思っているのですよ。また農協系がわあわあ言っているとかなんとか、そういうような論調もないではないけれども、だけれども、これはこういうような覚書によって、迷惑はかけません、再建します、実情もわかっています、再建可能ですよということでそういうような話になったわけで、それはお話し合いを促すためにというようなことを大蔵省はおっしゃいますが、お話し合いを促すためにというのはよく納得ができない話なんですね。これは大蔵がそれに責任を持ちますよというお話でしょうし、大蔵が責任を持って母体行を指導しますよ、こういうお話なのでしょう。まだ再建計画がだめになったとは聞いてないのですね。再建計画やめたなんぞという話は、私ども一回も聞いておりません。  しかし、それでは仮に清算という方向に向かうにしても、この精神は堅持せられるべきものであるというふうに私は考えておりますが、今の議論はややすれ違いが両省間にあるようでございますが、保再度大臣に承ります。
  141. 堤英隆

    堤政府委員 先ほど申し上げたとおり、先生が今御指摘のとおりと私どもも考えております。
  142. 石破茂

    ○石破委員 これもだれが悪いの何のかんのと言っても仕方がない話でして、要は、バブルに踊ったツケというものをだれが払うのだろう、こういうことだろうと思っているわけであります。  これは一つだけ大蔵省にお伺いしたいのですが、不動産に対する融資が規制されましたときに、系統はその外だ、例外だというふうにされましたね。その理由は何ですか。
  143. 振角秀行

    ○振角説明員 お答えします。  直接の担当ではございませんが、私が知っている限りで申しますと、不動産の総量規制のお話を先生はされているのだと思います。平成二年三月に行ったことでございますけれども、そのときには農林系統にも同様な通達を出しておるということでございまして、農林系統を例外扱いにしているということはないというふうに承知しております。
  144. 石破茂

    ○石破委員 そうしますと、それから急に系統の住専に対する貸し出しがふえたのはなぜですか。
  145. 堤英隆

    堤政府委員 正確にちょっとお答えさせていただきますと、総量規制の通達におきましては住専が含まれていないということでございますけれども、系統に対してはその旨の通達がされているということでございます。  それからもう一点、そのときにあわせて出されました不動産、建設業、ノンバンクのいわゆる三業種に対する実行の報告について、系続からとっていない、そういうことをおっしゃったのではないかと思いますが、とっていないわけでございますが、これは不動産業あるいは建設業向けにつきましては、既に従来から報告をとっていたということがございます。それから住専貸し出しにつきましても、半期ごとの貸し出しの実績を届け出るという形で行わせていたということで既に報告をとっておりましたので、そういう意味で改めてとらなかったということでございます。  それから、この時期に、前後に系統の融資がふえたということの御指摘でございますけれども、実質的にそういう形で数量がふえておりますが、これはいろいろ考えてみますと、系続から見ますと、先ほどから御指摘のように、住専というのが母体行という社会的に非常に信用力のあるものでつくられているということ。それからまた、住宅金融政策上も位置づけられておりまして、これを育成すべきという金制調の報告もある。それから、先ほども御指摘がありましたように、大蔵省の方の直轄の指定機関という極めて公共性の高い存在であった。こういうことの中で、系統とすれば、全体的な預金量がふえる中で、安全な信頼の置ける貸出先ということで貸し出しをしていったのではないか、こういうふうに見ております。
  146. 石破茂

    ○石破委員 そういうようなお話だったのですが、なかなかそういうことにならなかったのでこういうような事態になってしまったわけですよ。  公的資金をどうするかという御議論も遠藤委員の御質問の中にございました。私どもは、少なくとも公的資金を導入することについては極めて慎重でなければならぬであろうというふうに思っています。  農協系は体力が弱いからそこに公的資金なんというような話は、これはもう何の解決にもならない、そういうことがあってはならぬと思いますし、公的資金が仮にも導入せられることがあれば、それは日本の金融システム自体の再構築に本当に資するものであるということでなければならぬだろうというふうに私は思っております。その場の、目先の問題だけ解決すればいいんじゃなくて、本当に日本の金融システム全体が、みんなで渡れば怖くないというのか、護送船団というのか、そういう形ではもうもたないねというところまで来てしまった。そういう中にあって、公的資金というものを仮に入れるにしても、それはぎりぎり、本当にこれが金融システムの再構築なんだよという青写真を示した上で議論せられるべきものであって、どこがしんどいからお金を入れますとか、そういうようなものでは決してないというふうに思っているところでございます。  これは大蔵委員会になりますのか、それともまた別の特別委員会を設置いたしますのか、それは私ども存じませんけれども、そういう場におきましてまた議論をしてまいりたいというふうに思っております。  冒頭から申し上げておりますように、片一方ではAPECという問題があって、新食糧法案というものがあって、住専という問題があって、本当に日本農村というのはかなり危機的な状況を迎えているのだろうなという気がします。農村がおかしくなるということは、本当に日本全体がおかしくなるということ、それにほかならないというふうに私は思っておりますので、私どもも建設的な意見を出しながらまた議論をしてまいりたい、かように思っております。  以上で終わります。ありがとうございました。
  147. 日野市朗

    日野委員長 次に、矢上雅義君。
  148. 矢上雅義

    ○矢上委員 新進党の矢上雅義でございますが、まず初めに林業振興について質問いたします。  地元に戻りますと、最近不景気のせいか、林業者の皆さん、特に素材生産業や製材業の皆さん方から大変苦しい現状をよくお聞きすることがございますので、まず初めに素材生産業者の皆さんの声を紹介いたします。  特に労働力についてでございますが、最近新規の労働力の確保が困難になっていること、その上に既存の労働者の高齢化がさらに進んでいる、生産性向上そして省力化のためには林業の機械化をさらに早急に支援してほしいという強い要望がございます。  そういう中で、林野庁におきまして、林業機械の研究開発について、どのように現場の声を取り入れて、それを開発の実践に生かしているか、またそれが今までどのような成果を生み出しているか、そういう具体的な成果等についてお聞かせ願えればと思っております。
  149. 入澤肇

    ○入澤政府委員 林業の現場が三Kの典型的な状況にあるということで、三Kからの脱却ということが林業に若い人を呼び込む極めて重要なテーマじゃないかと考えております。  その一つの大きな対策といたしまして機械化を進めているわけでございますけれども、これは平成三年に森林法を改正いたしまして、そのときに、全国森林計画や地域森林計画の中に森林施業の合理化に関する事項ということを加えました。その項目に基づきまして、平成三年九月に高性能林業機械化促進基本方針というのを大臣告示で策定いたしました。  現在、これに基づきまして産学官の連携、これは社団法人の林業機械化協会、各大学、それから森林総合研究所、その連携のもとに、我が国の急峻な地形、自然条件等に適応した高性能な林業機械の開発を計画的に推進しているところでございます。  その結果、これまでに、伐出用の機械につきましては、フェラーバンチャとかスキッダあるいはプロセッサ、ハーベスタ、フォワーダ、タワーヤーダの六機種の開発を完了いたしまして、今現在、普及の段階に入っているわけでございます。  それから育林用の機械につきましては、これまで自走式の下刈り機械一機種を開発したところでございますけれども、まだこれについては不十分でございますので、今後重点的に開発、改良を重ねていきたいと考えております。  現在、我が国の地形とか経営規模に一層適応させるためには、高性能センサーとか自動制御システム等の先端技術を採用した機械の開発が必要であるという現場の声がありますので、その現場の声を十分生かしながら開発を進めていきたいと考えております。     〔委員長退席、鉢呂委員長代理着席〕
  150. 矢上雅義

    ○矢上委員 特に現場の労働者におきましては、先ほど申しましたように五十歳以上の就業者の割合が六八%、こういうこともございますし、林業機械を導入するにしましても、高齢者の方も操作する機会が非常に多い。そうなりますと、今、既存の機械ではなかなか操作も困難であるという声もお聞きします。また、値段も結構高いですよね。お聞きすると、一つの機械でいろいろな、二つも三つもの機能が発揮できる。しかし、値段が簡単に二千万前後する。  それに対して、素材生産業者というものは零細業者が多くございます。特に山間地の基盤産業であるので零細業者が多いのですけれども、そういう高い機械を、コストパフォーマンスを考えてどのようにこなすか。しかも今、材価低迷の中で林家の方もなかなか木材を提供してくださらない、そういう非常に厳しい中でございますが、そういう零細な企業がこういう高価な開発された機械をどのように有効に活用していくか、それが必要となってくると思いますが、その面に関しまして今後必要な施策等をお聞かせ願えればと思っております。
  151. 入澤肇

    ○入澤政府委員 御指摘のように、林業機械につきましても、かなり技術水準が上がりますと操作が困難であるとかあるいはお金がかかるとかいうふうな問題も指摘されておりまして、私どもは高性能で、しかもハンディーで、しかも操作が非常に単純に、簡単に行えるというふうな機械の開発を目指しております。  一たん開発しますと、個々の林家あるいは森林組合等がこれを別々に導入するのではコストバリューでございますので、現在労働条件の改善に関する法律を労働省と一緒に検討をしておりますけれども、その中では機械のリース方式を広範に取り入れようというふうに考えております。
  152. 矢上雅義

    ○矢上委員 操作困難性に対する対応と、また高価であるから共同でリースをする、これはぜひ進めていただきたいことでございますが、どういうふうに事業量を確保していくか、そういう事業量の安定的、計画的な確保ということも機械の導入には不可欠だと思いますので、後ほどまた質問させていただきます。  続きまして、質問の二に移りますが、民間の製材業者についてでございます。  議員皆様方も地元に帰りますと、御存じのように製材業というものが非常に転廃業されておられます。一つは科学の進歩で、こん色の道具にしましても木からプラスチック、いろいろほかの用途に変わっておりますから、製材関係を使う機会も非常に少ないですし、また住宅関連資材にしましても化学製品的なものがどんどん出ております。また外材もふえておりますので、なかなか製材業者の出番がない。そういうことで倒産が相次いでおるわけでございますが、中山間地域、特に山間地域の基幹産業であると私は認識しておりますので、これからもきついきついとは言いながらも何らかの手厚い救済策が必要ではないかと考えておりますし、そういう要望が強くございます。  そういう中で、今後の国の施策として製材業という分野を、その役割及び規模をどのように位置づけていくのか、またその位置づけの中でどのように育成していくのか、考えをお聞かせ願えればと思っております。
  153. 入澤肇

    ○入澤政府委員 私ども我が国の製材業の現状を見ますと、まさに小規模な零細な工場がたくさんあるわけでございます。外材をひいている工場に比べまして、国産材専用の製材工場の年間の平均素材入荷量というのは大体二千立方弱、三分の一弱でございます。それから、製材品の輸入の増加が非常に多くなっている。それから、引き続き自然淘汰で工場数が減少している。製材業の経営が非常に不安定化しております。  そこで、その原因を調べてみますと、まず安定的に山元から製材業に原木が入ってこない。そこで、今安定的に原木が供給されるような仕組み、それによって製材業界が操業度を高めることができるような仕組みを考えていくことがまず基本的に重要じゃないかと思っております。  特に、外材との競争あるいは新建材との、今御指摘になりましたいろいろな他の非木質系の原料を構成内容とする建材との競争を考えますと、できるだけ安く安定的に部材が供給されるような仕組みを考えなくてはいけません。  その基本的な施設としましては、乾燥施設あるいは集成材の施設、あるいはプレカットの施設が必要不可欠でございますので、これらの施設を拠点的な製材工場には設けていただきまして、そこを中心として安定的に消費者に木材が供給されるような仕組みを考えることが製材業の活性化のために必要不可欠じゃないかと思いまして、現在そういうことを振興することを内容とする法律制度を考えているところでございます。
  154. 矢上雅義

    ○矢上委員 ここで製材業の苦境について補足させていただきますと、昭和四十八年に木材の需要のピークを迎えた後、休業、廃業が相次ぐ、昭和六十三年に一万七千六百三の工場があったのが、平成五年には一万五千三百八十六工場、約二千二百工場減少しておる、こういう数字が出ております。  また、倒産の件数におきましても、木材・木製品製造業、平成六年度においてですが、百七十九件の倒産、負債金額の合計が四百二十八億円と相当大きな負債を抱えて倒産されておられるわけでございます。  また、先ほど申しましたが、零細業者がこの製材業者の中にも多く、三十七・五キロワット未満の零細業者が全体の三三%。しかし、現在の傾向としては三百キロワット以上が増加しておるということで、製材業の中でも規模拡大が進んでおるわけでございますので、規模が拡大すればするほど安定した木材の供給というものが必要になってくるということで、先ほどのお答えになったのではないかと思っております。  ただ、一概に規模拡大をするといいましても現実には零細のところが多いわけでございますので、これをどのように話を進めていくか。特に、今現場では大工さん、人手も足りませんし、また施主の要望として工期短縮の要望もございますので、先ほど御答弁の中にありましたように、良質の乾燥を、きちんとした乾燥を進めていく。また、プレカット化を進めていって、手間のかからない付加価値の高いものをつくる。そして、これから集成材、パネル等の分野にも進出するようでございますが、そういう大きな方に、規模拡大する方向に持っていこうとしましても、現実は小さい。  それを集約して、組合とか共同化してやっていくということでございましょうが、私の地元の球磨・人吉には木材流通団地等がございます。具体的な話を直接お聞きしたわけではございませんが、よく地元に行きますと、共同で団地に入居するとか共同で何らかの負担をして一緒に事業をやる場合に、国の助成等もございますが、それぞれの負担金を背負うわけでございます。しかし、十人のメンバーで始めましたとして、そのうち一人、二人、三人と倒産が続きますと、残りのメンバーにその負担金がしわ寄せされると申しますか、とにかく倒産が相次いでいる現状でございますので、ほかのメンバーが倒産する、その負担金が残っている元気のいいメンバーに加わってくる。そういう中で健全な経営体まで非常に経営が侵されていく、ドミノ倒し的なことが起きているのではないか。  そういうことで、そういうドミノ倒しのような現象に対して、金融政策面も含めましてどのような支援策が考えられるでしょうか、また行っておられるでしょうか、お答えいただければと思います。
  155. 入澤肇

    ○入澤政府委員 先生の地元の木材工業団地につきまして経営不振の状況があるということは聞いております。ただし、まだ現在のところ、連鎖倒産ということは聞いておりません。仮に団地の中で構成員の一人が倒産するような場合には、当然のことながら共益費につきましては残った工場へ負担が増加するということは、これはやむを得ないことじゃないかと思います。  もしそういう場合におきましても、製材業の救済対策をいろいろな角度から講じていかなければいけないことは当然でございまして、私どもといたしましては、中小企業近代化促進法に基づく構造改善対策に加えまして、ことしの十月には中小企業の信用保険法に基づきます不況業種に指定いたしました。さらに、特定不況業種等関係労働者の雇用の安定に関する特別措置法に基づく特定雇用調整業種の指定を行いまして、信用補完の特例措置であるとかあるいは雇用調整助成金の支給等の措置を講じておりますので、万全の体制をとりつつ、とにかく木材産業の経営の安定を図るように指導してまいりたいと思っております。
  156. 矢上雅義

    ○矢上委員 もう一度補足してお聞きしますが、雇用の安定のための調整助成金の支給のほかに、今借りている負債についてですけれども、そういうものを例えば低利長期で借りかえるとかいうのですか、そういう制度は積極的に活用されておられるのでしょうか、製材業の世界におきまして。まあ農業者で言う負債の借りかえみたいなものですけれども
  157. 入澤肇

    ○入澤政府委員 私どもが今講じております政策としましては、ただいま申しましたように、中小企業信用保険法に基づく不況業種の指定とか、あるいは構造改善の事業の面でございまして、借りかえ等の措置は個々の企業の自主的な努力に任せているというところでございます。
  158. 矢上雅義

    ○矢上委員 それで、次の質問に移らせていただきますが、今後とも国内林業が栄えていくためには、先ほどから出ておりますように、木材の安定供給、また労働力の確保、機械化、そしてさらには木材の需要の拡大が不可欠であるということは、もう当然前々よりうたわれていることでございます。  特に、我が国の森林面積が約二千五百万ヘクタールで国土の約七割を占める、そして、その森林面積の約四割に当たる約一千万ヘクタールが人工林であると言われておりますし、この人工林の中にも、官が保育しているもの、また民が保育しているもの、いろいろあります。ただ、人工林の八割が三十五年生以下の若い木であるということ、三十五年生以下の若い木であるけれども、あと十年もたつとそれらがどんどん市場に出てくる、そういうことになるわけでございます。そういう森林資源、特に国有林の場合は計画的に伐採されております。しかし、先ほど申しましたように、民有林におきましては、値段の高いときは出るけれども安いときは出さないとかいろいろございますし、また、小さな零細な林家が多いですから、あちこちにばらばら散らばっていて、外国に比べて一遍に刈り取って出すという低コストの部分では及びませんが、そういう森林資源の官と民を超えた有効な管理、そして伐出を含めた利用、そういうところをぜひ望みたいわけでございます。  まとめますと、近い将来の国産材時代を迎えるに当たり、官民を超えた森林資源の管理、そして地域の人材、産業の有機的連結及び活用が大切であると考えますが、川上から川下までの産業に着目した森林の流域管理システムの今後の具体的取り組みについて考えをお聞かせください。
  159. 入澤肇

    ○入澤政府委員 前回の森林法の改正のときに、林野庁といたしましては、流域管理システムという考え方を提案したわけでございます。  これは、国有林、民有林を通ずる林業労働力の調整、夏場と冬場の労働調整ということを基本といたしまして、川上から川下まで、要するに森林組合から製材工場に至るまで、それぞれが活性化して、林業を産業として復興することをねらったものでございます。  現在、このような考え方のもとに、例えば川上、川下一体となった住宅の産直体制の整備、これは和歌山県の紀中流域で実行されておりますし、木材団地を中心とした国産材供給基地づくり、これは宮崎県の耳川流域地域で行われておりますし、第三セクターを中心とした素材生産体制の整備、これは高知県の嶺北流域で行われております。これは具体的な例でございますけれども、それぞれ流域林業の活性化に向けて一定の成果を上げつつあるところでございます。  ただ、全国的に見ますと必ずしもこれが十分でございません。そこで、何としてもまず林業を産業として活性化させるためには、今先生御指摘になりました、零細な林家が山をきちんと整備する仕組みをっくらなければいけない。そこで、現在考えておりますのは、意欲のある林家あるいは素材生産業者、あるいは森林組合、造林公社等々が零細な林家の施業を受託して、そして効率的に森林整備をやるというふうなことを制度的にきちんと確立したいというふうに思いまして、その具体的な方法につきまして検討しているところでございます。  さらに、安定的に原木が製材工場に供給されないと製材工場の操業が安定しませんし、経営が不安定になります。そこで、山元の森林組合連合と川下の指定工場群との間で原木の安定供給契約を結んで、安定的に材が出るような仕組みを考えていきたいと思っております。当然、そのときには素材の取引についての資金的な援助ということも裏づけとして考えておかなければいけないというふうに思っています。  いずれにいたしましても、流域管理システムを具体的に実効あらしめるために、今申し上げましたような法案を次の通常国会に向けて提案することによりまして中身を充実させていきたいというふうに考えているわけでございます。     〔鉢呂委員長代理退席、委員長着席〕
  160. 矢上雅義

    ○矢上委員 流域管理システムについての要望でございますが、まず、地元に帰ってよくお聞きしますと、流域と申しましても非常に面積も広い、また業種が違いますと価値観も違うものですから、それをどうやって取りまとめるか。それを役所の方々だけにすべてやってくれといってもなかなかできないわけで、それはやはりそこの地元の自主的なリーダーの活躍によるところが多いわけでございますが、なかなかこのリーダーといいましても、孤立することも多く、情報にも飢えている。ですから、そのリーダーの育成といいますか、リーダーと呼ばれる方は地元ではもう相当ベテランの方ですので、育成という言葉も失礼かもしれませんが、情報面とか活動面でのバックアップをぜひ林野庁とか県なりがしていただければ、そういう要望が結構ございます。  それともう一つ、これは繰り返しになりますが、零細な林家が多いことから、意欲のある林家に委託をして団地みたいに大きくまとめていく。外国に行きますと、広い平野地みたいなところでがんがん切り取っていくわけですから当然能率もいいわけです。日本ではそこまで望めませんが、零細林家の方々の御指導に当たられて、その団地化なり、そしてまた将来の国産材時代を迎えて、特に林道、作業道が整備されていきませんとせっかくのいい材が出てきませんので、その積極的な促進もぜひ図っていただければと要望いたします。  続きまして、特に当面の課題としてでございますが、一番の即効薬は国産材の需要を拡大することでございますので、特に国がかかわっておる教育・福祉施設や公営住宅等への国産材の活用、特に内装材でございます。  例えば廊下なんかにしましても、最近老人施設とかに行きますと、以前はタイルでしたが、今は木を使っております。ふだんなら倒れたときに頭を打って大けがをされるところが、木の廊下にしたことによって倒れてもけがをしないとか骨折をしない。それは学校においても同じようなことを言われました。特に梅雨どきになりますと、タイル張りとか塗装張りのところは結露しまして、水でぬれておると子供が走ってけがをする。そして倒れ込みますと、コンクリートのとがったところで頭を打ってしまいますと、ひどいときには死んだりすることもございますので、どうかそういう公共的な施設から、特に内装材におきまして国産材をぜひ活用していただきたい、そういうことを望みたいところでございますが、政府としての取り組みでございますので、できれば大臣としてどのようにお考えなのか、お聞きしたいと思います。
  161. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 ただいまの御指摘は大変大事な御指摘であると考えております。  十数年前までは、実は過疎地域に公共施設をつくるときも木材では補助対象にならなくて、木材のあふれるような場所で鉄筋コンクリートの公共施設をつくっておったという間違った時代がございました。私の県なんかも大変な木材県ですけれども、公営住宅は木材住宅は認められていなかった時代がありまして、私どもも、今委員が御指摘のようなことで、随分とこういう補助制度の改革について骨を折った記憶がございます。  そこで、委員御指摘のように、ぜひ教育、福祉やあるいは公営住宅の方に木材の需要を高めていく必要がある、こういう観点から、農林省としましても、モデル的な木造公共施設の建設促進とか、あるいは木のよさの普及啓発とか、あるいは新規用途の開発など、各種対策を実施してきました。その結果、大変改まってきております。  例えば、小中学校教育施設の木造化でございますが、この六年間で三百六十二の学校で木造化が進んでまいっております。同時にまた、木造の児童福祉施設や公営住宅でございますが、児童福祉施設ではこの六年間に四百四十二施設、公営住宅では一万三千戸の木造住宅が建っております。  ただ、住宅がこれだけ進んでいるのに、需要が多いのに、六年間で一万三千戸というのはいかにも少ないわけであります。これはやはり公共団体が、土地が高かったものですから、木造では高層住宅ができないということで鉄筋に走ったということもありますが、数年前に建築基準法を改正しまして、木造の三階建てもできるようになりましたから、徐々にそういう方向に建設省が指導していくと思いますし、そういうことを私どもも建設省に申し入れをしておきたいと思います。  同時にまた、内装材への木材利用をもっと高からしめなければいかぬ、こういうことで、今建設省その他と、公共施設をつかさどっているところと十分相談をしているところであります。  いずれにしましても、国連のアジア・太平洋経済社会委員会の指摘によりますと、これから、フィリピンはこのままいけばあと十四年で、マレーシアは十七年で、タイ国は二十一年で森林が枯渇してしまう。大変ショッキングなレポートが出されております。日本はこういう国を相手に、八割以上の用材を外国材に依存しているというのは間違いであります。私どもは、やはり秩序ある木材の輸入というものを考えて、そして、戦後の木材も適齢伐期にそろそろ差しかかっておりますから、もっと国産材の計画的な利用というものを真剣に考えて、需要の拡大を図り、林業発展を図っていかなければいかぬ、こういうふうに考えております。
  162. 矢上雅義

    ○矢上委員 大臣の熱心な取り組みをお聞かせいただきまして、本当にありがとうございます。私どもも、林業の多いところに住む議員として、やはりその地域のものが日本国内でより多く使われるということが地域振興のかなめでございますので、ぜひ今の姿勢で御努力いただければとお願いいたします。  続きまして、林業関係から移りまして、今度は構造改善の方でございます。国営かんがい排水事業、これは熊本県球磨郡の相良村川辺川地区というところで今行われている事業でございますが、それについてお聞きしたいと思います。まず簡単に私の方から国営かんがい排水について述べた後、質問に移らせていただきます。  この国営かんがい排水事業、川辺川地区の問題でございますが、皆様方御存じかどうか知りませんが、今、川辺川ダムという問題が地元で発生をしておりまして、特に環境問題から、つくるつくらないといろいろ地元でもめている問題でございます。その川辺川ダムから水を台地に引く、山間地に引くというのがこの事業でございます。  そこで、どういう経過から起きてきましたか、簡単に私なりの概要説明をしますと、昭和二十八年、電源開発KKが藤田ダムというものを発電用の目的で計画調査に入りましたが、コスト問題で一回中断しております。  次に、昭和三十二年に球磨北部土地改良事業促進期成会というものができまして、このときには水田化をするという計画をしております。これは、特にこの事業の中心地である相良村、私の父がここで村会議員等しておりまして、同じ集落に橋口村長という方がございました、橋口村長と私の父たちが考えたのが、昭和二十年代に引き揚げて開拓に入っておられる方々に水田を切り開いてあげて、よりよい所得を与えることができればということで、昭和三十二年に水田化計画が持ち上がってきたわけでございますが、御存じのように、現在では開田抑制ということで、水田はなかなか困難な状況になっております。  その後に、昭和三十八年、三十九年、四十年と、これは私が小学校に入る前でございましたが、大きな水害が続けてございました。球磨郡だけでなく、下流の人吉、八代市まで含めた大きな水害がございました。そこで、治水目的ということで、川辺川ダムに建設省の調査が入ったわけでございます。そういう流れで、今川辺川ダムは、治水、かんがい、発電等多目的ダムとして計画されておるわけでございます。  そういう中で、農林水産省の国営事業として認可申請が出たのが昭和五十八年八月。国営事業施工の認可申請が出まして、その後に、三千五百ヘクタールほどあったものを三千ヘクタールに変更するということで、平成六年二月八日から十四日まで事業計画の変更概要が公告されまして、その後、いろいろ地元でもめまして、異議申し立て等が出ております。  こういうぐあいに私なりの所見を述べさせていただきましたが、農水省としまして、農水省なりの計画の概要とその必要性について述べていただければと思います。
  163. 野中和雄

    ○野中政府委員 国営川辺川総合土地改良事業でございますが、先生御地元で、大変お詳しいわけでございます。  この事業につきましては、お話しのように、熊本県の人吉市ほか二町四村にまたがります農業地帯におきまして、水源を特定多目的ダムでございます川辺川ダムに依存をいたしまして、畑地かんがい、それから水田の用水改良を行いますために、幹線用水路四十八キロ、支線用水路十六キロなどを建設をいたしますとともに、約百九十ヘクタールの農地造成を行いまして、規模拡大を図るというものでございます。  また、区画整理をあわせて行いまして、機械化体系の充実と土地利用率の向上によりまして、地域農業経営の安定と近代化を図るというふうな事業でございます。  この地区につきましては、お話しのように球磨川北岸に開けた洪積台地地帯でございまして、台地上の畑地におきましては抜本的な用水手当てが行われておりません。火山灰に覆われた特殊土壌地帯でございますので、干天が続くと干害が発生しやすいというような状態にございますし、また水田につきましては、多くが流域の狭い小河川に水源を依存しておるわけでございまして、用水施設の老朽化によりまして機能障害あるいは漏水といったようなことから、安定水源に恵まれないで恒常的な水不足というふうになっている、そういうような状況でございます。  このようなことでございますので、私どもといたしましては、農業用水の安定供給、規模拡大による効率的な営農の展開というようなことで、この事業をぜひとも実施する必要があるのではないかというふうに考えているところでございます。
  164. 矢上雅義

    ○矢上委員 この問題、地元では非常に大きな問題となっております。私も地元で国政報告会をするたびに、地元の若い農家の方から首をつかまえられて、おまえ、国会議員になってから人間が変わったのかと言われます。それはなぜかと申しますと、国営事業ということで地元の声、それは多数決をとれば同意は相当とれておるわけですから結構なのでしょうけれども、少なくとも少数の、千名ですか、四千名のうち千名近い異議申し立てがあるわけでございます。その中で、私も地元の政治家ですので、なかなか突っ込んだことを言うと怖い部分もございます。  それで、地元の市町村長さんたちも、国営に対して余り異議を申し立てると国の予算がおりなくなるのではないだろうかとか、いろいろな心配もなされます。私もそういう意見は直接お聞きしますし、私が当選してから二年間一言もこの問題に触れなかったのは、やはり私も政治家として余り国営事業の是非については触れたくないなと。しかし、そういうことはかり言っておられませんので、この異議申し立てが出されておるわけでございますが、異議申し立てのこれまでの経過と今後の見通しについてお聞かせ願えればと思います。
  165. 野中和雄

    ○野中政府委員 この事業につきましては、お話しのように事業に着手いたしました後で計画変更の必要が生じたわけでございますので、平成六年の十一月四日付をもちまして変更計画の決定を行ったところでございます。もちろん、この計画変更に当たりましては、地元の方々に十分御説明をいたしまして、全体的には九割の同意をいただいた上で決定を行ったものでございますけれども、その後、その取り消しを求めまして、平成六年の十二月十九日から二十一日までに千百七十六名の方々から行政不服審査法に基づきます異議の申し立てがなされたわけでございます。  その理由といたしましては、要約いたしますと三点ほどございまして、一つは、農家に対して十分な説明を行わないまま同意を取得しているのではないか、二番目に、変更計画の内容は地域農業情勢を反映をしていないのではないか、三番目に、環境破壊を導く川辺川ダムを水源とするこの計画は不当ではないかというようなことでございました。  こういうような異議申し立てがなされましたのと同時に、口頭によりまして意見陳述の申し立てがなされたわけでございます。したがいまして、これを受けまして、現在までに三回にわたりまして口頭による意見陳述を実施をいたしたわけでございまして、意見を述べていただいたというような状況でございます。  現在は、この異議申し立ての内容、それからただいま申し上げました口頭による意見陳述の内容につきまして、事実関係を調査をいたし、また慎重に審査をしているところでございまして、これら調査、審査の結果を踏まえまして異議申し立てについての決定を行う、こういうような段階になっている今の状況でございます。
  166. 矢上雅義

    ○矢上委員 地元におきまして、異議申し立てに対する対応は、最初の対応は少しおくれたことがございますが、その後におきましては三回もやっていただくなど、結構評価が上がっております。  ただ、私なりに地元側の異議申し立て者の要望を集約しますと、まずは土地改良事業についてでございますが、土地改良事業の有効性は認めておられるようです。やはり農業農村の近代化、機構・規模拡大に貢献しているということで、この土地改良事業に対する有効性について疑う人はまずいなかったということを、農水省の名誉にあれしまして御報告いたします。  ただ、その後二点ございます。やはり将来の展望が見えない。よくこの国会でも言われることでございますが、後継者がいない。あとは、合意形成等手続面に納得がいかない。今まで農政というものは農業者団体とか地元の顔役さんを通して円滑に行われておったわけでございますが、これだけ情報化が進んできますと、一人の人間が一まとめに全部おさめてしまうということは非常に難しい状況になっておりまして、やはり説明不足があったり、また農家の側の説明を真剣に聞き入れなかったという反省もあるようでございます。農家自身の反省としては、あのとき説明会に出てきちんと討論しておけばよかったという反省と、あともう一つは、やはり市町村の役場の皆さん方とかいろいろな多くの人手がかかりますから、中には説明が上手な人もおれば下手な人もございます。そういう中で、水かけ論になるかもしれませんが、よほど何とかこれからやっていかないと、しこりが相当残っております。そういうところでございます。  実はここに口頭審理の調書がございますので、プライバシーの問題もありますので名前を言いませんが、的確に農民の気持ちを述べておる部分がございます。ちょっと時間をいただければと思います。  御存じのとおり、ガットの農業交渉合意をしましたので、日本に農産物が自由に入ってくるようになりまして、本当にこう丸裸でございまして、関税も下がってくるだろうし、農産物の価格も絶対上がっていかないというようなことになるようでございます、米を初めとして。そういったことで、果たして何をつくってよいのか今はわからない状況でございます。  昭和六十年に、私はさっきメロンの話をしましたけれども、以前は養蚕をやっておりました。父の時代からやっておったが、養蚕がだめになった。何をしようか。ちょうどそのとき、球磨にはメロンが取り入れられておったわけですけれども、メロンに切りかえて。まず、その当時反当たり百二十万円ぐらい上がっておりまして、これはよかったなというふうに本当に喜んでおったわけでございます。現在、メロンをつくっておりますが、十年前の価格と変わらないんですよ。全く変わらない。そして、十年もつくっておりますと連作障害というものが出てまいります。そうしますと、ガス薫蒸なり、農業なりを散布しなければできなくなってきます。生産コストが反当たり五十万円ぐらいであったのが、今は六十万円ぐらいかけなければ物ができない、そういうぐあいになっております。  また、台風災害が三年連続して来たおかげで、果樹園は台風に物すごく弱く、収入がないという状況にもなっております。そういう中で、メロンの転作としてレタスをやったわけでございますが、東京や大阪で小売で二百五十円ぐらいするものが、一玉競り値が五十円でございます。しかし、その後、端境期をねらってハウスをかけてやった。  頑張っておるのですが、露地物でやっている方々にお聞きしますと、一玉五円になった、こういう畑作物の厳しい状況を申されております。  そして、去年は里芋もやりました。これも水をかけてやったんです。物はそんなに悪くはなかったんですが、中国から物すごい安いのが、三分の一ぐらいの値段で入ってくるということで、商売をする人はそれをレッテルを張りかえてそのまま市場に出す。見ましたら、現実に私のつくったものよりよいものができておるわけでございます。  野菜もそういうわけで、確かに畑地に水を引いて多様な作物に対応できるという理屈はわかりますが、現実にその畑地に水を引いて、現在国内で生産できるもので採算ベースに合うものが果たしてあるのだろうかという疑問が一つ出ております。  それともう一つ。  現状はもう後継者がいないんですよ。どこでもそうですけれども、市町村長さん、議会の皆様方、いろいろ農業の後継者育成や農業振興という大会に出てもおられますし、あるいは人の前であいさつもされますが、ところがJAの組合長さん方も、その方々、果たして自分の息子さんを後継者として農業をさせておる方々がどれだけおられるでしょうか。いないんですよ。農協の組合長さん方全部、自分の息子さん、子弟の方は、学校を出して公務員なり団体の職員なりにしているわけですよ。農業がいかにだめだということはトップの方がよく知っておられるわけです。  そういうような現状になっておるわけで、今、私のところの農業者の平均年齢が六十歳を超えております。この事業が完成しますと七十歳を超えるわけです。息子さんは働きに行っており、その負担金をだれが払うのかなあと。神経痛で入院したつ糖尿病になったり、入院した人が払うということに相なるわけでございます。そういうことになりはしませんかというふうに心配をするわけでございます。  これは、その日その日生活する農業者の意見でございますので、国家百年の大計を担う農水省のプランというものもございます。ですから、どちらがいいというわけでもございませんが、やはり両方あるわけでございます。  ですから、土地改良事業というものの有効性は当然私も認めておりますが、こういう日々生活する人々の、農業者のあすの生活ということもかかっておりますので、やはりそこで一番大事なのは合意形成をどうしていくか。これは済んでしまったことですので、しょうがないと思います。今さらだれがこうしたああしたなんて言ってもしょうがないことですし、それが事実かどうかもわかりませんので。  ですから、これからの農政のあり方として、規模拡大というか、規模拡大までいかなくても、だれかに土地を貸したいとか、また借りる側にしても使いやすい農地というものは非常に有用なものですので、土地改良事業というものはぜひ国策として進めていってもらいたいのですが、人々の心というものはこれほど食い違いが出てきておりますので。  特に土地改良事業組合の事務局長さんも、私のおじになります、その方が一生懸命推進されております。それで、私の地元の相良村の高岡村長という方は、やはり私の応援をしてくださっている方の一人でございます。そして、反対派に回っておるリーダーの方々にも私の本当に昔からの知り合いもいっぱいおって、狭い地元でもやり合っているような状況でございます。水が欲しい人、欲しくない人、また、その合意形成をあれしまして。  ですから、これは一概に私がきょう要望して解決する問題ではございませんが、これはできれば今後の農政のあり方として御配慮をいただければ、そういうことでございます。だらだらと述べてしまいました。  これは、大臣も政治家を長くしておられるので、私と同じような経験をずっとされてきたかと思います。それでぜひ、今後農政、特に構造改善におきまして地域住民の感情に配慮した運営等を行っていただければと大臣に要望いたしたいと思います。
  167. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 この計画の変更につきましては、県、市町村、推進母体であります川辺川の土地改良事業組合、こういう協力を得ながら、書面やパンフレットをたくさんつくりまして、集落ごとに集会を開いて、少なくとも法的には瑕疵のない形で同意を得て進めたものであります。しかしながら、今委員が述べられたとおり、農業をめぐる環境の変化は大変急速でありますから、後継者不足とか、農業の将来にあるいは希望を持てないとか、いろいろな方も出てまいりますから、そういうことで現在千百七十六人から異議の申し立てが出ている、こういうことであります。  したがいまして、そういう事実に私どもとしてはやはりきちっと対応しなければいかぬ、だからさらに一層調査をしてみたい、そして十分に意見の交換をしたい、そういうことで理解と協力のもとにこれは進めていかなければいけない問題だと思います。  計画変更によりまして、一つの大きな問題である負担の軽減はかなり図られましたけれども、もう一度県や市町村を巻き込んで、それにもう少しメスが入れられるかどうかということも検討の材料でありますし、また、今委員が御指摘されましたように、後継者がいない、高齢者で苦しんでいる、農業が継続しがたいというところについては、やはり一方においては大規模経営をやりたいという効率的、安定的な農家もおりますから、農地の集約、利用の集約や所有の集約などを意欲的に行ってそれをカバーしていくような配慮もしていかなければいかぬ、こういうことを考えながらひとつ善処してまいりたい、こう思っております。
  168. 矢上雅義

    ○矢上委員 大臣の本当に前向きな御意見、ありがとうございます。  私のうちも以前は田畑等ございましたが、最終的には三反、四反の田畑しか残りませんで、それで本当に小さい田んぼがあっちこっちに、三反、四反の田んぼでも小さい田んぼがあっちこっちにございまして、子供のころからよく水当てに家族の者が交代で行く、学校に行く途中に水当てをしたり、とめたりとかやっているような状況でございましたので、うちの集落も十年ほど前に土地改良をやっていただきまして、農道も広くなったし、そして用水、排水もきちんとなったことから、汚い生活排水が田んぼに流れ込むようなこともなくなって、大変感謝いたしております。  そういう前向きな事業でございますので、どうか大臣もお力をかしてくださって、また、構造改善局の皆さんも大変でしょうが、地元も大変苦しんでおりますので、ぜひ前向きな解決が得られるよう御協力をお願いいたしまして、次の質問に移らせていただきたいと思います。  続きまして、先ほどから何回も新食糧法について質問がされておりますが、新食糧法は大きく分けますと、生産者と生産者団体を対象とする生産調整の部門をどうするかという問題、そして流通業者を対象とする流通部門に分かれております。流通部門は現在ニュース等でも見られますし、私たち身近に拝見できますが、お米屋さんの積極的な活動にしましても、新規参入業者、そして消費者側のおいしい米を食べたいという意識改革もございますので、この流通部門に関しましては競争的に改革が行われていくのではないかと思っております。  そういう意味で、流通の自由化という意味で加速され、自主的に、また自由に行っていこうという法律の趣旨にかなってくるのであろうとは思いますが、生産調整の部門におきましては、その生産調整の当事者というものは旧食管法時代のままの当事者でございます。農民の方がおられますし、農協の方がおられますし、また集荷業者の方がおられます。そういう旧食管法時代と余り変わらないというか、そのままの人たちが生産調整の部門について携わってくるわけですから、新法が、この新食糧法が定着して実効性をおさめるようになるには、やはり慎重な配慮と同時に、前向きな形で、時間を区切った、計画的な、法の趣旨にのっとった誘導政策が必要であると考えております。  なぜならば、その新法の、新食糧法の趣旨どおりいきなりやりますと、生産調整の現場は混乱を来すでしょうし、また、その混乱を恐れて惰性のまま何も手をつけないでいると、いずれ流通部門の側からの反動といいますか、流通部門側から引っ張られて後でツケが多くなってくる、そういうことはお互い認識しておるわけでございますので、そういう大きな立場に立って、生産調整についての質問から入りたいと思います。  まず、質問一でございますが、生産調整、どういう趣旨としてとらえるか、そして責任の主体はだれであるか。農業自身か、最終的には政府も責任があるのか。生産調整につきましては、価格が暴落しない、豊作貧乏といいますが、つくり過ぎて価格が暴落しないために生産調整をするわけでございますので、第一番目の意味としては自分のためにやるんだという意味もございましょうが、これは大臣、どういうぐあいにお考えなのか、よろしくお願いいたします。
  169. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 米は生産量が需要量を上回っておる、潜在的にやはり過剰ぎみであります。ですから、生産調整はどうしても必要であります。  新しい食糧法も、米の需給と価格の安定を最大の主眼としておりますから、そのために政府としても重要な責任を持っていると私は考えております。だから、これからも生産者と一体となって円滑な生産調整が行われるようにしていかなければいけない。協力者には政府米として米を買い入れるとか、適切な助成措置を講ずるとか、そういう実効ある措置を実施してまいりたい、こう考えております。
  170. 矢上雅義

    ○矢上委員 生産調整、米を安定して供給するために必要なことでございますので、農業者だけの力でも限界がございますし、これは大変難しい問題に直面しておりますので、ぜひ大臣もお力をかしていただきまして、農業者だけでなく、政府一体となった生産調整の取り組みをしていただければとお願いいたします。  続きまして、質問二でございます。  以前は生産調整の未達成に対し行政上のペナルティーがあったが、これからはそれがなくなるとすれば、生産者自身に生産調整の意味を理解してもらうこと並びに自主的に生産調整に参加してももう仕組みを考えていく必要があると考えます。  こういう流れの中で、以前は、生産調整が未達成の場合には農政関係の事業の採択が厳しい状況に置かれるとかあったようでございますが、今回、そういうペナルティーもないわけでございます。そして、自主的な仕組みとなりますと、やはり経済的な行為でございますので経済的な誘導策ということになると思うのですけれども、今後生産調整を行うに当たりまして、その助成金等についてどのように臨んでいかれるのか、農水省のお考えをお聞かせください。
  171. 日出英輔

    ○日出政府委員 先生今お述べになりましたように、新食糧法下での初めての生産調整ということでございます。  新食糧法につきましては、先生もお述べになりましたように、全体需給の調整としての手段、政策手段としての生産調整と、それから、新食糧法の理念といたしまして極力生産者なり地域自主性を尊重する、こういったものをどういうふうにその時々の需給事情の中で組み合わせを考えながらやっていくのかという課題でございます。そういう意味で、先生が今お述べになりましたように、生産調整の意味を生産者自身によく理解してもらう、あるいは自主的に生産調整に参加してもらう、これが一番大事なわけでございます。  ちょっと若干つけ加えさせていただきますれば、平成七年の八万ヘクタールの追加的転作を昨年の十二月に決めまして、その後それを各地域実施していただいたわけでございますが、この効果は、先生も御案内のとおり、それまで自主流通米の価格低落がございましたが、とまったということでございます。  こういうこともあり、今私どもがやろうとしておりますのは、形の上では新食糧法下での生産調整、もう少し実質的に申し上げますれば、自主流通米時代の生産調整、こう言ってもいいかと思っております。  そういう意味では、やはり生産調整あるいは備蓄あるいは調整保管といったものが両々相まちまして自主流通米の需給なり価格の安定を実現していくのだ、こういうことでございますから、生産者の方々の意識も当然そういう形で持っていただかなければいかぬわけでございます。  そういう意味で、先生お述べになりましたように、これを実現しますのに一番大事なのが生産調整助成金ということでございますが、先ほどもちょっと私申し上げましたように、この問題はいわゆる生産調整の実効性を確保できるかという問題でございますが、一つ、この生産調整助成金の問題だけではなくて、転作目標面積をどういうふうに、個々の地域でだれが担って、だれがあれしていくのかといったような面での事前の調整の問題、あるいは生産調整手法の問題でございますね、極力多様な手法を使っていくというような問題、こういったものの中で、今先生のお尋ねのような助成金をどういう形で生かしていくのかということであろうかと思っております。  生産調整助成金のありようにつきましては、これまでも、まあよくなったと言うとなんでございますけれども、生産調整そのものをうまくやっていくという話のほかに、個別の作物指導の問題とか構造政策の推進でありますとか、いろいろな課題を込めて助成金の体系がつくられておりますので、今の体系を基本的に変えるというのは生産の現場を混乱させることがございますが、この中で、私どもとすれば、先ほど先生お述べになりましたような、生産者が極力自主的に参加できるようにするための、例えば共補償制度の充実でありますとか、幾つかの点について当然のことながら団体側等の要望を踏まえた生産調整助成金の体系をつくっていかなければいかぬというふうに思っておる次第でございます。
  172. 矢上雅義

    ○矢上委員 今、日出農産園芸局長お答えになった中で、転作面積をだれが担うか、また転作の多様な手法を考えていく、これは大変大事なことだと思っております。  実は、共補償につきまして地元の農業委員会の方とか役場の人、また現場の方にお聞きしたのですけれども、以前は一律減反という発想でございましたが、これからは本当に転作が進んできて、うちはたばことかそういう関係でやるから米はつくらなくていいよという方もございますし、ほかの畑作物に専念してやりたいという方々もいれば、うちは本当においしい米どころを目指すから、ブランド化を図ってできるだけたくさん安定して供給したい、そういうことが個人の間でも起きますし、市町村の間でも県の間でも起きる。そういう大きな見方での共補償を活用しますと、ブロックローテーションではございませんが、畑地を有効に活用することにもつながりますし、おいしい米をつくる米どころの形成にもこの大きな意味での共補償が活用されればと思っております。この共補償については今後ともぜひ国の助成を維持、拡充していただきますようお願いいたします。  そこで、また次の質問でございますが、今回、約百五十万トンの備蓄体制が法的に整備されるということは、結局百五十万トンの米が安定して背後に存在するわけですから、価格の乱高下として考えた場合に、価格が暴騰することではなく、逆につくり過ぎの価格の下落ということが特に考えられるかと思います。私も最初は価格の乱高下を考えたのですけれども、農家の現場の方から、百五十万トンも米の在庫があれば価格が上がるということはないよ、平均するか下がるだろうとおっしゃって、ああ、なるほどと思ったのです。そうなると、その備蓄に当たります政府米の地位というのが相対的に向上するわけでございます。  例えば、私の地元の八代におきましては、八代平野はイグサをつくって遅い時期に米を作付して遅い時期に収穫するものですから、なかなかこれをさばくことが難しゅうございます。しかし、農業を一生懸命やっておる地域は意外と生産調整にも協力的な地域がございますので、政府米におきまして、生産調整に協力的な地域に買い上げに対する優先権を傾斜的に与える考えはないのか、これについてお聞かせ願えれば、お願いいたします。
  173. 高橋政行

    ○高橋政府委員 これからの政府の買い入れというのは、備蓄の運営に必要な数量ということで、百五十万トンを基本にして考えたいというふうに思っております。そういう意味では、政府買い入れ数量は一定の限度がございます。  では、個々の農家は政府にどれだけ売り渡すかという数量をどういうふうに決めるかということでございますが、これは今度の新食糧法では食糧庁が一方的に決めるというようなことはしないようにしまして、生産者に申し出をしていただく、希望ですね、その数量によって決めていこう、それを勘案して決めていこうということを基本にしております。  したがいまして、今先生がおっしゃいました生産調整達成率の高い地域の人との直接なリンクはございませんが、そういった地域の生産者の皆さん方が、ぜひ政府にこれだけ売りたいというような申し出があれば、それを十分尊重して政府買い入れ数量を決めていきたい、このように思っております。
  174. 矢上雅義

    ○矢上委員 確かに個人の申し出になるわけですから、国が割り当てるわけではないので、よく御趣旨はわかりました。ただ、農業に一生懸命なところは意外と結果的に米の作付がおくれてなかなかさばけないというところもございますので、意欲のある農家とか意欲のある地域がそういうところで結果的に市場において排他される現象があるということも十分御配慮をいただきまして、今後の施策に生かしていただければと希望いたします。  続きまして、これは確認事項でございますが、平成五年十二月十七日に、「ミニマム・アクセス導入に伴う転作の強化は行わない」ということが閣議了解されておりますが、これは具体的にどういうふうに対処されていかれるのか、大臣にお聞かせ願えればと思います。
  175. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 御指摘のとおり、一昨年の十二月、ウルグアイ・ラウンド農業合意実施に伴いまして、閣議了解として、「米のミニマム・アクセス導入に伴う転作の強化は行わない」、こういうことが決められております。したがって、私どもとしては、新たな加工用途の開発とかあるいは備蓄の運用をもって、そういう適切な運用を通じて、ミニマムアクセス導入によって転作が上乗せになるようなことは絶対にやらない、こういうふうな基本方針で臨んでおります。  なお、ここで「米のミニマム・アクセス導入に伴う転作の強化は行わない」という意味は、ミニマムアクセス受け入れ分を上乗せして転作を強化することは行わない、こういう意味でございまして、したがって、従来から行っている年々の稲作の豊凶変動や消費動向の変化等による生産調整の通常の見直しは適切に行ってまいりたい、こういうふうに考えております。
  176. 矢上雅義

    ○矢上委員 大臣の御決意どおり、また頑張って、この閣議了解をぜひ守っていただきたいと思います。  続きまして、またちょっと備蓄及び政府米についての問題でございますが、政府米は備蓄専用として百五十万トンを想定しておると言われますが、その内訳と申しますか、これは私も詳しくわからないものですから、ミニマムアクセス米を含んで百五十万トンですか、それとも除いて百五十万トンでしょうか、お答えください。
  177. 高橋政行

    ○高橋政府委員 備蓄の中身といいますか、内訳といいますか、その辺でございますけれども、備蓄は、基本的には政府が責任を持って対応するということでございます。しかしながら、これから自主流通米が流通の基本にもなりますので、自主流通米の流通を担っていただきます自主流通法人も安定供給ということが必要でございますので、そういった自主流通米の一部を民間備蓄に充てていただくというのがまず一つあります。  それから、今お話がございました輸入米がございますが、その一部も備蓄に充てたいというふうに思っております。  それで、水準につきましては、いろいろな過去の経験も踏まえまして、民間備蓄も含めまして百五十万トンというところを基本に置いて考えていきたい。当然、我々、百五十万トンというところをかたくなに考えるわけではなくて、五十万トンというような範囲で、その辺は弾力的な対応も必要であろうというふうに思っているところでございまして、具体的にそこをどんな数字にしていくかということにつきましては、これから関係者とも相談をしながら決定をしていきたい、こう思っております。
  178. 矢上雅義

    ○矢上委員 百五十万トンが固定した数字ではなくて、五十万ドン程度弾力的に運用されるということでございますので納得いたしましたが、備蓄制度は非常に重要な制度でございますので、いろいろ豊作、不作等ございますが、その時々に合わせて備蓄をうまく活用していただくようにお願いいたします。  次は、一つは単なる要望でございますが、この間新聞等で見ましたら、政府買い入れ価格算定方式について、農家の再生産を確保できるような条件を考慮していく、そういう記事を見ました。まだこの方式は具体的ではないと思いますが、算定方式を明確にする場合には、農家にとりまして米の再生産を確保できるものとすべきであるということを、ぜひその中の条件として生かしていただければと要望いたします。  次に、民間が行う備蓄とか調整保管とか、先ほど出てまいりましたが、この場合、民間が行う備蓄、調整保管について相当な管理経費がかかると言われております。特に今、農業倉庫も常温倉庫から準低温、低温とだんだん移行していって、備蓄した後、または調整保管した後、より品質のいいものを出す必要があるわけでございますが、そういう農業倉庫の低温化への配慮というものは今後どのように考えておられるのでしょうか、お尋ねいたします。
  179. 高橋政行

    ○高橋政府委員 まず、現在の農業倉庫の低温化の状況でございますが、現時点では、低温倉庫の標準的な収容力が約四百九十万トン確保されております。  それで、低温倉庫が必要な時期というのは七月から十月の暑い時期になりますが、そのころの需要分といたしますと約百六十万トンでございますので、これは全国的な数字で申し上げておりますが、そうしますと、差し引きの約三百三十万トンは低温倉庫に余裕があるといいますか、利用できる、そういう状況にございます。したがいまして、我々、備蓄とかあるいは調整保管をやっていく上において全国的な意味では支障はないのではないかというふうに思います。  しかしながら、地域的に倉庫が偏在していることによる過不足というようなものはあろうと思いますが、その辺はうまく、どういうふうに保管をしていくかというようなことは適切にやっていかないといけないというふうには思っております。  それからなお、そういうような倉庫を整備する場合にどうしたらいいかということでございますが、現在、こういった倉庫の助成といたしましては融資制度で、近代化資金とか公庫資金とかそういうようなものがあるわけでございますので、そういった制度を利用していただいて、それで倉庫の整備を進めていただけたらというふうに思っております。
  180. 矢上雅義

    ○矢上委員 時間も参りましたのでこれで終わりますが、地域による過不足等いろいろな問題も含んでおると思いますので、どうか十分な調査の上、農業倉庫の低温化への助成等配慮をよろしくお願いいたします。  これで質問を終わります。
  181. 日野市朗

    日野委員長 次に、山田正彦君。
  182. 山田正彦

    ○山田(正)委員 新進党の山田正彦でございます。きょうは、外国漁船の違法操業、いわば侵犯操業等について聞いてみたいと思っております。  水産庁に、まず、現在の外国漁船の違法操業、いわゆる侵犯操業の実情といいますか、それを概略お聞かせいただければと思っております。
  183. 東久雄

    ○東政府委員 今、外国漁船との関係で非常に問題を起こしておりますのは、韓国中国を主体にしたものでございます。  韓国中国とのトラブルといたしましては、操業禁止水域という条約上設けられているのがございまして、日韓の漁業協定違反、また向こう側の自主規制違反というようなものがございます。  それから、このほかに、日本韓国中国の三国の漁船が同一の漁場で操業するということがありますので、漁場競合、それから漁場を占有して、たくさんの船がここへ集まっていてなかなか入り切れないという漁場占拠、それから操業妨害が起こったり、それから一番問題がありますのは漁具被害というのが起こっています。さらに、向こうが日本側の港に緊急避難をしてくることがあり、日本側の船が向こう側の港へ入ることがあるということで、そのときに地元の漁民等に対する迷惑行為というようなことが見られます。こういうのが一般的な状況でございます。
  184. 山田正彦

    ○山田(正)委員 水産庁長官に、大体の外国漁船の侵犯の実情というのは、そういう内容はわかりましたが、いわゆる傾向ですね、どれくらい最近発生して、どうなっているか、それを概略で結構ですから。
  185. 東久雄

    ○東政府委員 私の方で、いわゆる自主規制違反とそれから協定違反の両方を合わせまして十月一日までとった統計によりますと、韓国船については、本年の九五年でございます、これまでのところ百四十五件起こっております。なお、この件数というのは、九三年は千二百五十四件と非常に多かったわけでございますが、ここのところ、首脳会談でこの問題を取り上げたりしていただいた関係もあって、向こう側の取り締まりが相当厳しくなっておりまして、大幅に減少しているというのが現状でございます。  それから、中国漁船との間は割合に紛争等は起こっておりませんで、今のところ中国漁船の入域もそれほど多くないといいますか、少し、ことしの場合には、特に日本海側に入って、それで特に日本側がいわゆる底びきをやめている時期に入って、それがシイラ漬けの漁具等に被害を与えたという報告が出ております。  それからもう一つは、北海道、三陸沖にイカ漁船が一部出ておりまして、これが非常に集団で操業しているので、先ほど言いましたいわゆる漁場占拠が起こっているというような報告を聞いておるということでございます。  以上のような状態でございます。
  186. 山田正彦

    ○山田(正)委員 韓国漁船の侵犯ですが、九三年から九五年にかけて大変減っだということは今お聞きしたのですが、九四年から九五年にかけての傾向、昨年は大変激減したことは聞いているのですが、ことしの傾向はどうでございますか。今、最近の傾向です。
  187. 東久雄

    ○東政府委員 失礼いたしました。近年のピークは九三年で千二百五十四件と申しましたが、その年に首脳会談でこの問題を取り上げまして、向こう側も非常に取り締まりを強化してきたということもありまして、九四年は二百三十件でございます。九五年のこの十月まで、九月いっぱいでございます、その間が、あと三カ月残っておりますので、まだここから先がちょっと統計はできておりませんが、百四十五件ということで、さらに傾向として下がっているということだと思います。
  188. 山田正彦

    ○山田(正)委員 そういった侵犯、並びに今、北海道、三陸沖でイカの漁場占拠のトラブル等があるようですが、それについて、侵犯操業、全体の取り締まりの実態、これはいかがでございますか。
  189. 東久雄

    ○東政府委員 外国漁船の取り締まりの関係でございますが、我が方、どうしても外国漁船の多い地域というのがあるものですから、そちらへ重点を置いて取り締まり船を配備したりしております。特にこれは、取り締まり体制というものは海上保安庁もしっかりやっていただいておりまして、海上保安庁と連携をとりながら、また都道府県も取り締まり船を持ってやっておりますので、その連絡、協力をしながら取り締まりを行っているという状態でございます。  水産庁といたしましては、官船、用船を含めまして全部で二十八隻をもって、それからさらに航空機を四百五十時間、今までのところ使用しております。こういうような形で外国漁船の取り締まりをやっている。  また、先ほど言いました都道府県の方は、合計八十隻の漁業取り締まり船を出して取り締まり、ないしは、いろいろなトラブルに対して、向こう側のといいますか、韓国なり中国なりの監視船といいますか、官船と言ったりいろいろな言い方をしておりますが、向こう側の指導船と連絡をとりながら指導をやるというような体制でやっております。
  190. 山田正彦

    ○山田(正)委員 水産庁、大変努力いただいて、また取り締まりの方も積極的にやっていただいているようで、侵犯の実態が大変少なくなっている、言ってみれば激減している、これは私どもも大変喜んでいるところでございます。  海上保安庁にお聞きしたいのですが、今、大変漁具被害が発生しております。そうしますと、その漁具被害の内容もいろいろあるのでしょうが、北海道とか西日本海域とかいろいろありますが、その実態についてお聞かせ願えればと思います。
  191. 東久雄

    ○東政府委員 漁船、漁具というものに限りましては私の方で集計しておりますので、私の方からお答えさせていただきます。  韓国中国漁船による漁具被害というのは今のところ、先生御指摘のとおり、一つは北海道沖で幾つか見られ、それからさらに、先ほど言いましたように、中国漁船によるシイラ漬けの漁具の被害が見られるということが主体でございます。ただ、漁船、漁具の被害の状況につきましては、最近非常に少なくなってきておりますが、またそういうものが起こりましたときには、すぐにこれを話し合う機関を日中、日韓間では持っておるということでございまして、順次処理されておるところでございます。最近は非常に少なくなっている、ただし、緊急入港の場合にちょっと最近トラブルがあったということは聞いております。
  192. 山田正彦

    ○山田(正)委員 漁具被害について最近少なくなったということではございますが、私が聞いているものでは、かなりまだ韓国との間には、平成六年の全体の件数、北海道から長崎県までで三百二十一件、約九千二十二万という外国漁船による漁具被害が出ているようですが、これをどういう形で解決していくか。それは結局、現在のところ民間での話し合い等々によっているようですが、いずれにしても、どちらに過失があったのか、そういったいわば事実関係の認定というのが一番大事になると思うのです。  そういう意味で、海上保安庁に、いわゆる外国侵犯漁船の違法操業の問題、並びに競合する漁場においていろいろなトラブルが発生する、衝突事故等々の捜査状況について、ひとつその実情をお聞かせいただければと思っております。
  193. 淡路均

    ○淡路説明員 先生、今の御質問の中で最初の、違法操業の実態についてまず申し述べさせていただきたいと思います。  海上保安庁が最近五年間、いわゆる平成三年以降、我が国の領海及び漁業水域内において違法操業を行った外国漁船を検挙した隻数は、百四十八隻となっております。内訳は、韓国漁船が百二十隻、中国漁船が十隻、台湾漁船が十八隻という数字になってございます。  特に、この中で件数の多い韓国漁船について見ますと、平成三年が三十五隻、平成四年が三十四隻、平成五年が二十九隻、平成六年が十四隻、平成七年が本日現在八隻という数になってございます。  平成六年以降、先ほどのお話にもございましたが、韓国漁船の検挙件数が減少してきておりますけれども、この理由としましては、当庁の徹底した取り締まりに加えまして、平成五年十一月、日韓首脳会談において韓国漁船の違法操業の是正等について申し入れを行ったこと、これによって韓国側の指導、取り締まりが強化されたこと、及び検挙した外国漁船に係る判決の罰金額が最近高額になっていること、こういったことがあるのではないかという認識でございます。  衝突等につきましては、その具体的な事案を見ながら判断をしていくということになろうかと思います。
  194. 山田正彦

    ○山田(正)委員 海上保安庁の方も大変懸命に違法操業の取り締まりに当たっておられる、嵐の日も、大変な日に当たっておられるということも私どもよく承知しておりまして、こうして大分少なくなってきたというのは喜ばしいことなんです。  しかし、先ほど話しましたように、外国漁船とのトラブル等、これの民事的な解決等になりますときに、例えば陸の交通事故、自動車の交通事故でしたら実況見分調書、そういった形でかなり正確に捜査するわけですが、海の中、殊に領海で違法操業をしたものが公海上に行った場合でも日本の領海での犯罪で捜査できると思います。そういった場合に非常に難しい面があるんじゃないか、そう思われますが、その辺はかなり、例えば相手方の調書等、韓国の船長さんとか台湾の船長さん、そういったものをきちんととった上での捜査をいたしているものでしょうか、その辺の実情をお聞かせいただければと思います。  また、ついでに、その検挙率といいますか、例えばどれくらい違法操業について通告があって、それについて検挙率がどれくらい上がっているか、それもあわせて知らせていただければと思います。
  195. 淡路均

    ○淡路説明員 衝突の件について申し上げたいと思います。  領海内で発生した衝突事件の捜査状況ということでございますけれども、昨年の数字で見ますと、我が国の周辺海域においては、船舶同士の衝突、これには漁船その他の船舶も含まれますが、四百七十七件発生しております。この中で、先生御指摘の、例えば衝突加害事故を起こした後、逃走事件が起こるというような場合、この四百七十七件のうち逃走事件に発展したのが六十六件ございます。そのうち、五十件を検挙しております。検挙率は七六%ということでございます。  また、ことしの数字でございますが、上半期、すなわち本年六月三十日現在における衝突加害逃走事件は十八件ございまして、そのうちの十五件を検挙しております。検挙率は八三%となってございます。  これら衝突加害逃走事件の捜査につきましては、巡視船艇等が直ちに現場に着くとともに、聞き込み捜査等により加害船の割り出しを行います。加害船が判明した後は、塗膜等を鑑定いたしまして、所要の捜査を実施し、業務上過失往来妨害等ということで検挙しているところでございます。  領海の外につきましては、いわゆる旗国主義ということでございますので、我が国の船舶につきましては我が国が捜査ができるということになりますが、外国の船につきましては旗国が行うということを原則にしてございます。
  196. 山田正彦

    ○山田(正)委員 海上保安庁の方で大変立派に取り締まりをやっていただいているようで、検挙率も高いようですが、現実に私ども漁民に接していますと、事故があったり、違法操業とか、外国船との間の大きな漁具被害が発生したときに、海上保安庁の船がすぐ来てくれるとか、なかなか来てくれないとか、いろいろな不満はあるようでございますが、今のお話を聞いた限りでは大変よく頑張っていただいておる、そう思われます。  実は、長崎県の上対馬、ここは韓国から密漁と申しますか、上対馬の沿岸というところは根つき資源、アワビ、サザエ、これを大変大事にして漁業を営んでいるところですが、そこに随分前から韓国からの潜水器具を使った密漁船が多発している。そこで、やむなく上対馬漁協が、昭和六十年ごろから漁獲量が激減したということもありまして、その後、漁場監視レーダーシステム、こういったものを二基用意いたしまして、さらにまた、みずから密漁取り締まりのための自警船をつくり、そして夜、まあほとんど夜間に韓国の船が密漁に入るわけですが、そういった取り締まりをしてきておる。そして、その取り締まりは六十三年から始めたと聞いておりますが、実は平成三年の七月二十四日、これは新聞等でも随分騒がれましたのでよく知っているかと思いますが、扇勇美さんという自警船の船長さんが行方不明になって、そのまま死亡認定になるという大変不幸な事件が起きたわけであります。  この件に関してお聞きしたいのですが、当時の状況を話しますと、平成三年の七月二十四日午後十一時半ごろ、レーダーの映像に、三マイル付近にて数隻確認した、これはまき網漁船ではないかと判断されたので、宿直の犬束さんに地元のまき網漁船の出漁の有無を確かめた。ところが、地元のまき網漁船が出漁していないことが判明したので、これは領海侵犯船の韓国の密漁船だと断定した。そして、再び船長は一人で乗り込んで、十一時半ごろ西泊港を出た。そして、七月二十五日午前零時ごろ、韓国底びき船の領海侵犯船ということを確認、そして船長より保安部に通報せよとの指示があって、レーダーの宿直者山原というのが保安部に電話連絡するも、比田勝は出動できないとのこと。比田勝というのは上対馬のすぐそばなんですね。結局、豆酘沖にあった巡視艇を急行させる。豆酘沖から比田勝、いわゆる上対馬と豆酘沖といいますと、日本で三番目に大きい対馬列島の一番北と南で、南の方から北の方に派遣してくるということなんです。  ひとつ海上保安庁に聞きたいのですが、なぜそのとき比田勝の巡視船が出動できなかったのか、まずそれをお聞きしたいと思います。
  197. 淡路均

    ○淡路説明員 先生御指摘の件でございますが、対馬周辺海域における海上保安庁の外国漁船の違法操業の取り締まりをどうやっているかということをまず御説明申し上げたいと思います。  厳原海上保安部というのがございます。その厳原海上保安部の部長の指揮のもと、他部署から派遣を受けた巡視船一隻、それから対馬の厳原の海上保安部所属の巡視艇五隻、それと比田勝海上保安署の巡視艇二隻でいわゆる取り締まりを行っているということでございます。厳原の五隻と比田勝の二隻につきましては、この中から二隻の巡視艇を常時配備するという方法をとっております。これは夜間も含めまして二十四時間体制で監視取り締まりを行うということでございます。  事件の当日は、たまたまこの二隻が、具体的には「たつぐも」「むらくも」という二隻の巡視艇でございますけれども、いずれも厳原海上保安部所属艇であったということでございます。  この事件のときに、一番近くにいたのが巡視艇「たつぐも」でございまして、対馬の鴨居瀬漁港で前進配備をしてございました。平成三年七月二十五日の午前一時十分ごろ厳原海上保安部から出動の指示を受けて直ちに同漁港を出港し、通報があった現場海域に急行したというところでございます。
  198. 山田正彦

    ○山田(正)委員 そうすると、比田勝にいる二隻は、随分厳原と比田勝は遠いですよね、我々の一般の島の感覚でいくと随分遠いのですが、その辺は、たまたま二隻ともその夜は出動していなかった、休んでおったということですか。
  199. 淡路均

    ○淡路説明員 二十四時間体制で監視、取り締まりを行うということでございますので、七隻すべて二十四時間配備するというのは非常に困難でございます。そういう意味で、七隻の中から二隻をローテーションとして組んでいきまして、当日はたまたま厳原保安部所属の船であったということでございまして、その厳原保安部の船がまさに比田勝の方も監視、取り締まりを行うということでございます。
  200. 山田正彦

    ○山田(正)委員 当時の行方不明となって亡くなった自警船の船長の奥さんの調書がありましたので、これの最後の部分読ませていただきますと、「そして、現場に着き監視所のレーダーに映っていた不審船影が数隻の韓国大型トロール密漁船であることを確認した夫は、北方に逃走するトロール漁船群の一番後方の船を追跡し日本の領海外に出てからも巡視船が到着するまではと考えてか追跡を続行していたそうです。」そういう調書になっております。  ところで、当時の状況を申し上げますと、出動中の巡視艇豆酘沖の「たつぐも」は現場の方に急行したわけですが、七月二十五日の午前二時、保安部現場に到着するも「はやて」は既に十五マイル付近を追跡中、「はやて」というのは自警船、いわゆる亡くなった扇船長が乗っている船ですが、「はやて」は十五マイル付近を追跡中、したがって保安部は公海上を理由に「はやて」がいる現場には行かないとのことで、第一発見地に行くとの連絡ありと。  これは、言ってみれば、自警船がまだ追っかけているわけなんですが、その五隻いる大型の底びき密漁船、それをたった小さな船一杯で一人の船長が追っかけていっている。それに対して、現場まで行って、ではもう追跡をやめた、行くのをやめた。領海内の侵犯であったら、相手方の旗国籍の領海に逃げられればやむを得ませんが、公海上ではまだ捜査の義務があると思うのですが、その点、海上保安庁はどういう判断だったのでしょうか。
  201. 淡路均

    ○淡路説明員 先ほども申し上げましたように、当日、巡視艇「たつぐも」が通報があった現場海域に向けて急行したわけでございますけれども、現場に着いた段階で当該追尾中の韓国漁船が既に領海外にあるということが判明いたしましたので、その時点で海上保安部としては漁業協同組合が運用しております西泊レーダー所に対しまして、既に領海外なので「はやて」に対して追跡を中止するように通報しております。  ただ、その後、レーダーから「はやて」の映像が消えたため巡視艇「たつぐも」は付近海域を捜索しておりますけれども、「はやて」を発見することができなかったという事実関係でございます。
  202. 山田正彦

    ○山田(正)委員 日本の領海内での密漁だということがはっきりしていて、まだ公海に逃げたところというのは、法律的に日本の海上保安庁の捜査権は及ばないのでしょうか。もし及んだとしたら、なぜ追っかけなかったのでしょうか。
  203. 淡路均

    ○淡路説明員 今先生御指摘の点につきましては、例えば海上保安庁の船が領海内において違法操業等を現認して、それをそのまま領海外で追尾をするということは可能かと思いますが、今回のこのケースにつきましては、海上保安庁の船が領海内で違法操業を現認していないということでございますので、そのように判断をしたということでございます。
  204. 山田正彦

    ○山田(正)委員 これは大変大事なことなんですが、第一発見地というのは、通報を受けた時点で場所は北緯何度とか東経何度とかいうのではっきりわかったと思うのです。そこに急行した。それで実際にその場所から密漁船が逃げていくので、それを追跡していっている。それがわかっていたら、日本の領海内での密漁の場所である。これを実際に海上保安庁の船が確認できなかったから追跡しなかった、これは一体理屈になるのかどうか。確認しなかったとしても、その場所で犯罪がなされたとしたら、当然捜査権が及ぶのだったら公海上まで追跡するのが捜査の義務なんじゃないか、そう考えますが、もう一度、しつこいようですがそれについて。それによって人が一人亡くなったという大変な事件であります。
  205. 淡路均

    ○淡路説明員 とうとい生命を失ったということについては厳しく受けとめておりますが、先ほども申し上げた件は、海上保安庁の捜査といたしまして、領海内で現認をしない、つまり領海内で違法行為が行われたということを現認しないで領海外で追跡をするというのは困難かと理解しております。
  206. 山田正彦

    ○山田(正)委員 今、課長さんをこれ以上いじめるわけにはまいりませんが、結果としてそうなったということであれば、大変悲しいことでありますが、仕方がないことと本人たち、地元の人たちもあきらめているようですが、ちなみに、遺族にはわずかに漁協から見舞金が百万円支払われただけで、大変かわいそうな事例であります。  そうすると、このように、言ってみれば密漁取り締まりをなぜあの辺境の地対馬、これは本来ならば、この命をかけての密漁取り締まり、お金も要る、そうであったら当然国がやるべきなんじゃないのか。  その密漁取り締まりの実態をもう少し詳しくお話いたしますと、大型のレーダー、三千万ちょっとするのですが、それを二基置いてあって、そして五千万以上するいわゆる密漁取り締まり船、自警船、これを現在もう三隻目を建造しているわけです。そして、レーダーには夜の二十時から四時まで常時二名配備している。自警船にも事故以来、一人ではなくて必ず二名配備する。ということになると、この二つの施設と自警船だけで実際にかかる経費、給料とか燃料代とかそれだけで一千五百万を上対馬の小さな漁協が毎年負担しなければいけない、こういう実態があるということなんです。  これについて水産庁及び海上保安庁も、水産庁の方が的確だと思いますが、密漁取り締まりはしている、違法操業は取り締まっていると言いながらも、上対馬のように密漁取り締まりしているのは、私が知っているだけでも小値賀島、そして幾つかあるようです。なぜそれをしなければならないのか、なぜ国がそれをできないのか、水産庁長官から納得のいくお話をひとついただければありがたいのですが。
  207. 東久雄

    ○東政府委員 密漁というのは犯罪行為でありまして、ある意味では、例えば陸上の警察も含めて、法律違反ということについての取り締まりは海上保安庁なり警察なりがやっていただくということになるわけですが、それよりもやはり漁業者間の密漁というものがあり得るわけでございまして、そういうことに関しては、自分たちの中での話し合いというようなことを通じて、そういうことが起こらないような努力をしていかなければならない。各県の漁連ないしは漁業協同組合の中でそういう教育ということはやっていくわけでございます。  しかし、何分非常に長い海岸線を持っている我が国では、隅から隅まで完全にその密漁監視を常にやるということは難しゅうございます。しかし、今の場所もそうなのかもしれませんが、大変価値の高い漁業権を持っている地先漁業地域がございます。そういうところは、やはりみずから守るという方向で対応しておられる例があるということは承知しておるわけでございます。これはちょっと例がよくないかもしれませんが、自分の畑なり自分の庭を守るというような形で、やはりみずからの漁業権ということを守っていっていらっしゃるというふうに考えております。  それは公権力で全体ができればそれにこしたことはないわけでございますが、大変な長い海岸線の中で、それはやはり限界があるということは御了解をいただきたいというふうに思います。
  208. 山田正彦

    ○山田(正)委員 上対馬であろうと東京のど真ん中であろうと、日本国民の一人の生命、身体、財産、こういったものは当然国が守らなければいけない問題で、上対馬漁協は非常に赤字を抱えている漁協で、輸入水産物の急増によって非常に魚価も下がり、今いろいろな意味で苦しんでいるわけです。  そういう中で、ひとつ大臣にお聞きしたいのですが、こういった問題、密漁取り締まりはみずからやらなければ根つき資源を保護できない、そういった中で、大臣としてそれをどう考えるのか。例えば、そういった一千五百万の負担というのは大変な負担でございます。国の予算からしたら、農水予算からしたらそんな額ではございません。幾らかでも補助を出すとか、百万でも、二百万でも、三百万でも結構です、そういう形で御検討してくれる意図がないかどうか、考えがないかどうか、ひとつ大臣にお話を伺いたいと思います。
  209. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 今委員の御質問を伺っておりまして、これは大変お気の毒だなという感を深くしております。  取り締まりは海上保安庁の所管事項でありますから、私の方から立ち入っての答弁は差し控えたいと思いますが、水産庁、海上保安庁、関係省庁が集まって、どうやれば一番適切なこの取り締まりができるか。また、委員が御指摘のとおり、そういうものに対して何らか報いる道がないのかどうか。そういう問題につきまして早速検討をさせたい、こう思っております。
  210. 東久雄

    ○東政府委員 ちょっと細かい点でございますが、先ほどのレーダーの施設、そういうものに対して、いわゆる施設に対する補助というのは我が方としても多少の予算措置をとっております。また、融資という手があると思います。いわゆる低利融資という手があると思います。そういう施設についてはある程度の御支援を申し上げているということをちょっとつけ加えさせていただきます。
  211. 山田正彦

    ○山田(正)委員 レーダー施設について、また船についても助成があるのは聞いております。私が言うのは、こうして毎日出ていって密漁取り締まりをしなければ、根つき資源が韓国の潜水器具による密漁にやられて困るというような実情、これは十分考えていただいて、今大臣も前向きに検討させようと言っていただきましたが、そんな大きい金額じゃなくても結構だと思うのです。漁民は大変困っております。ほかにも、みずから密漁取り締まりをせざるを得ないというところは全国、幾らでもございます。  そういったことを考えて、これから漁業が生きていくためには栽培漁業が一番大事になる。この栽培漁業を本当にやってもらうには、根つき資源とかそういったものの密漁取り締まり、安心して稚魚の放流、例えばこの上対馬も今アワビの稚貝をずっと放流しております。それで余計に密漁取り締まりに敏感でありますが、そういった大きな目でひとつ将来の漁業のあり方、栽培漁業のあり方、大臣も今聞いておられますが、これでぜひ御検討いただきたいと思います。  次に、実はもう一件。  ことしの七月二十三日、台風三号がやはり長崎県の五島を直撃したのです。そのとき玉之浦港に、国際避難港になっておりますが、そこに避難してきた約八十隻の船のうち台湾の船三隻が、たまたま風速四十三メートルを超える突風であったために流されて、湾内にあった定置網二カ統を巻き上げて破損させたという事件がございました。そしてまた、玉之浦はその湾を通って玉之浦の町内、そこに水道管が敷設されておりますが、その敷設管も避難してきた船によって破壊された。それで町民は断水を一週間も続けざるを得なかった、そう聞いております。そういった非常に厳しい状況の中で、そのときの台風被害の取り締まりの模様について、まず海上保安庁からお聞きしたいと思います。
  212. 淡路均

    ○淡路説明員 先生御指摘の件でございますが、まず定置網の落網の件から申し上げたいと思います。  本件につきましては、自船または他船の往来を妨害したという業務上過失往来妨害罪とそれから定置網を損壊したという器物損壊罪に当たるかどうかということで海上保安庁は捜査を行っております。業務上過失往来妨害罪につきましては、今先生御指摘のように、台風三号通過時には瞬間最大風速四十三メートルという強風が記録されておりまして、当該避泊地が国際避難港とされていることから、操船者におきまして走錨し落網するという結果に対する予見可能性がないということから過失が認められず、また器物損壊罪につきましても、強風に圧流され落網したということで故意が認められませんので、ともに該当しないとの判断に達しているところでございます。  水道管の損壊につきましては、同じように器物損壊罪に当たるかどうかについて捜査を行っておりますが、これにつきましても、今申し上げました落網と同様に、強風に圧流されたために水道管にアンカーがかかり損壊したものと推定されておりまして、故意が認められませんので事件性はないとの判断に達しているところでございます。
  213. 山田正彦

    ○山田(正)委員 そうすると、業務上過失往来妨害罪というのは、停泊した位置、それからしてなるんじゃないかなと私は考えたのですが、海上保安庁は、それには当たらない、器物損壊罪については故意がないからもう捜査できないと判断したと思うのですけれども、普通捜査の場合に、これは立件できないとか立件できるとかというのは後の判断でして、調べ上げた後の判断で、実際検事さんが立件できるかできないかは検察庁がやることだと私は考えております。  その時点で調査をどこまで、例えば最初申し上げましたように、かなりの被害を小さな定置網業者が受けたわけですが、いまだにその損害について全くどこからも賠償されずに困っているわけです。そういった場合に、どこに本当に過失があったのかといった海上保安庁の調書、この一本で国際法上の民事損害賠償請求ができるかどうか決まるわけですが、言ってみればそのときの捜査の実態、内容がどこまで踏み込んでなされたのか。  例えば、相手方、害を加えた台湾船の船長から調書をとれたのかとれないのか。多分次の日には、一隻残っていた船と海上保安庁の船が乗り込んでいたはずなのですが、当然そこで本来ならば、それだけの漁具被害があったわけですから調書をとる。そして、それが業務上過失往来妨害罪に当たるかどうか、あるいは器物損壊罪に、これは故意がないから無理だとは思いますが、そういった判断は後でする。そういう捜査はどこまで海上保安庁はなしたのかその辺をひとつお聞きしたいと思います。
  214. 淡路均

    ○淡路説明員 当該捜査は、私どもの福江海上保安署が被害通報を受けまして捜査に着手しております。七月二十四日、巡視船「みねかぜ」を現場に派遣しておりまして、落網につきましては、台湾漁船から聴取を行ったところ、やはり三隻が落網の原因になったということは認めております。  それから水道管の損壊につきましても、当日「みねかぜ」が現場に着いた際に、水面下の被害状況ということですけれども調査をいたしましたが、確認できておりません。その後、町の方におきまして、水道管につきましてはダイバーを入れて復旧工事を行った際、水道管にアンカーが絡んでいるのではないかという指摘を受けております。  ただ、先ほど申し上げましたように、当時の状況は、台風三号という非常に強風が吹き荒れたときでございまして、当該台湾船その他の操船者におきまして、予見可能性とか過失とかそういったことにつきまして、あるいは故意につきましては認められないということで、先ほど申し上げたような業務上過失往来妨害罪なり器物損壊罪につきましては立件が非常に難しいという判断に達したものでございます。
  215. 山田正彦

    ○山田(正)委員 それでは、立件が難しいというのはわかるのですが、それにしても大変漁具被害も大きいし、当時の状況からして、多分その三隻の船のいずれかが水道管の損壊、これは水道管の被害だけで二千万を超えて三千万近くになっております。それが推測できたと言われておりますが、そういう状況下であったら、当然調書をとったかとらないのか、その辺はどうでございますか。それだけで結構です。船長さんの調書をとったかとらないか、どれくらいの捜査をしたのか、それだけ教えていただきたいと思います。
  216. 淡路均

    ○淡路説明員 定置網につきまして、落網の原因になったかもしれないと申し出のあった台湾漁船三隻の船長からは事情を聞いてございます。
  217. 山田正彦

    ○山田(正)委員 では、調書もとれていますか。事情を聞いていれば、調書はとれていますね。
  218. 淡路均

    ○淡路説明員 調書につきましては、現場からの報告によりますと、とってないということでございます。  その判断した理由の一つは、先ほど申し上げたように、当該港が国際避難港であったということ、それから、当時は台風三号、最大瞬間風速四十二メートルという強風の中での避難ということでございまして、客観的な情勢からそう判断したものと考えております。
  219. 山田正彦

    ○山田(正)委員 大変残念でありますが、やむを得ません。  しかし、これから先はひとつ海上保安庁の、独断と言ったら怒られてしまうかもしれませんが、これから国際的な漁具被害等の発生というのが十分考えられますし、それについては調書が物を言いますので、せっかく事情を聞いたのだったら調書まで、簡単な調書で結構ですから、ぜひできるだけとっていただければ、そう思います。  こんなことで、実を申し上げますと、戸町久幸さんという小さな定置網の漁業者ですが、二カ統の定置網で実際にかなりの被害を生じております。二千三十二万九千円という被害です。水道管の被害が二千六百八十二万六千円、これは町の方の被害です。町は何とかなるとしても、今定置網も大変厳しい状況の中で、二千万からの被害を受けますと、これはなかなか立ち上がるに立ち上がれないという状況で、大変困っております。  その中で、どこにその損害額を請求したらいいのか、水産庁にもお尋ねがあったと思います。水産庁の方からは、それは民間での賠償請求の問題だからということで、日中交流協会とか何か御紹介いただいたかと思いますが、そういった場合、殊にこの件だけからまずはお話しいただきたいと思うのですけれども水産庁としてはどういう対応をなさったものか、ひとつ長官からお聞きできればと思います。
  220. 東久雄

    ○東政府委員 通常はこういうトラブルなどの場合に、中国船の場合には、先ほどちょっとお触れになられたところでございますが、民間団体の間で賠償協議の場がありまして、しかも我々は共同委員会というのを持っておりますので、その場を通じて解決を図るというのが通常なんでございますが、何分この三隻というのが台湾船であるということで国交がないために、我々はそこのところの政府間の折衝のルートがないわけでございます。  先生御指摘のとおり、私の方も七月二十二日の台風による定置網の被害の報告を受けました。さらに、現地からもお見えになりました。どうしたらいいだろうかという御相談を受けまして、これはやはり政府間の接触がないだけに、台湾との窓口業務をやっております駐日の、日本にあります台北経済文化代表事務所というのがあるわけでございますが、ここと御連絡をおとりいただけないだろうかということで、県も御一緒にだったものですから、県の方へ御指導申し上げて、長崎県からもそういう指導を受けて、玉之浦町の漁協の方から同事務所に対して文書で補償金の請求をなされております。ただ、私の方が今聞いたところでは、まだ正式な回答がそこから来てないということでございまして、これは私ども、御承知のとおり台湾との国交がないという状況がございますけれども、そういう意味での政府間の折衝ということは困難でございますけれども、外交当局ともよく相談をしながら回答の促進を促すとか、その辺をしっかり心しておきたいというふうに考えております。
  221. 山田正彦

    ○山田(正)委員 その戸町さんという被害者もそうですが、町の方も漁協の方も、湾内にはハマチの養殖あるいはタイの養殖、そういった養殖業が大変盛んでありまして、もしもあれが定置網じゃなくて養殖網にかかっていたとしたら何億と一瞬にして被害が出てしまう。そういった意味で、避難港に台風時に何十杯という外国の船が入ってきますと、漁民はそのたびに恐れおののいている、そういう実情であります。そして、被害があった、水産庁に駆け込みますと、水産庁としては、先ほど申しました友好団体といいますか、民間の団体を通じて交渉しなさいという話だけだというので、漁民は本当に大変困っております。  今国際避難港は、このほかに厳原。厳原も、聞いてみますと同様の問題を抱えております。また、山川の港、博多、この四つが国際避難港になっているようですが、いわゆる漁業者のために避難港として決めているとしたら、それだけ漁民としては過大な負担に恐れおののいている、もうこれではやっていけないと思っている、その辺で水産自身がひとつ何らか避難港の漁民の皆さん方に考えられないものかどうか、農水大臣、その辺ひとつ御検討できないものかどうか、お考えを聞くわけにはまいりませんでしょうか。
  222. 東久雄

    ○東政府委員 一つ国際避難港というお話でございます。実は緊急避難というのは、国際慣習法上どこの港へでも緊急避難ができるというのが常識でございます。ところが、日中漁業協定の中で、実は日本船がたびたび中国の港に避難しようとして拿捕されるという事件が頻発いたしまして、日中漁業協定を結んだときに、どこかの港を安全な港として指定してくれ、そこへ避難するからということで、向こう側から四港、それで日本側からもそちらへ誘導する港として四港が指定されておって、これは日中の漁業協定、日中間の問題でございます。それらにつきましては、もし事故があった場合には、先ほど言いましたように日中間で話し合いの場を持っておりまして、漁具被害等が生じたときにはその場を通ずるわけでございます。  先ほどの台湾船というものは、これは国際避難港という言い方はあれなんですけれども、日中間での協定の避難港だからといって入ったわけではないわけでございまして、原則からいいますと、緊急避難という場合にはどこの港へも入れるということなんでございまして、そこはそういう意味ではちょっと御理解をいただいておきたい。日中間での問題であり、日中間のそういう問題の場合には解決をするルートを持っているということでございます。
  223. 山田正彦

    ○山田(正)委員 台湾の船であって中国の船じゃないから知らぬということだと私はおかしいと思うんですが、やはり国際避難港になっているから台湾の船も韓国の船も入ってくる。  それじゃ、なぜ国際避難港に玉之浦町の港が指定されたのか。実はそれを玉之浦町の町長さんに聞いてみましたら、自分たちが何にも知らない間に国際避難港に指定された、そういうお話でございまして、きょう外務省にも来てもらっておりますが、日中漁業協定の中で避難港として玉之浦あるいは厳原を指定するときに事前に何らかの相談を町にしたのかどうか、これをお伺いしたい。
  224. 大島賢三

    ○大島説明員 中国との間で避難港を取り決めた経緯についての点でございますが、現在、先ほど御指摘がございましたように、厳原、博多、玉之浦、山川、この四つの港を避難港として日中間で取り決めております。中国側も、上海それから青島等四つの港を日本漁船の緊急避難のために指定をしておる、これが制度でございます。  先ほど水産庁長官からも話がございましたように、これは日中漁業協定の中で決められておるものでございます。この日中漁業協定は一九七五年に締結をされましたけれども、それ以前におきましては日中間で民間協定、日中民間漁業協定がございまして、この民間協定の中で、お互いに必要な場合、緊急避難する漁船の便宜のために指定港制度というものが既にとられておりまして、その民間協定におきましては、当時、長崎港、玉之浦港、山川港の三つの港が避難港として指定されておりました。それを、政府協定を後で結びます場合に、避難港としての妥当性それから中国側の希望等、こういったいろいろなことを考慮しまして、従来民間協定のもとで指定されておりました三つの港のうちの中から玉之浦港、山川港の二港、それからあと厳原、博多港の二港、これを加えまして四つの港を指定港にしたというのが経緯でございます。
  225. 山田正彦

    ○山田(正)委員 私が聞いているのは、政府が、外務省が玉之浦あるいは厳原を決めるに当たって、その町、玉之浦町、厳原町に事前に協議したのかどうか、その一点なんで、それについて明確に答えてもらいたい。
  226. 大島賢三

    ○大島説明員 当時、こういう港を指定港と指定された場合に、具体的に地元との間でどういう話し合いを踏まえて決定されたかということについては、現在ちょっときちっとしたことがわかりません。
  227. 山田正彦

    ○山田(正)委員 この問題について私は事前通告していたはずで、わからないということは許せないことだ、そう思いますが、水産庁の方は、いわゆる日中漁業交渉をするときにそれに全く立ち会っていないんでしょうか。
  228. 東久雄

    ○東政府委員 先ほど外務省の方からお答えしたところでございますが、日中の民間漁業協定、これが昭和三十年に結ばれております。このときは、日中間の国交はございませんので、一切タッチいたしておりません。ただ、そのときに、要するに誘導するべき避難港、ほかの港に入っちゃいけないということじゃないんですけれども、そういう形で取り決められておったという経緯でございまして、昭和五十年度にこれが政府間の協定になったときには水産庁も立ち会っております。  そのときには、その民間協定をほとんどそのまま踏襲するということでございまして、そういう形で結ばれたものでございまして、最初の玉之浦、山川、特に玉之浦の関係だろうと思いますけれども、それについての経緯については私ども承知していないというのが現状でございます。
  229. 山田正彦

    ○山田(正)委員 水産庁は立ち会っていないから知らない、国際避難港になったのは。外務省も、そのとき玉之浦町、厳原町に相談したか知らない、わからないということでは、本当に今避難港であるがゆえに、どんどんあらしの日に避難してくる船に町民も漁民もどんなに恐れおののいているか。  中でも、いろいろなことがあるわけです。ビルジ、いわゆる油の垂れ流し。当然、八十隻からの船が入りますから、この玉之浦港というのはきれいな海なんですけれども、油が垂れ流される。さらに、排せつ物の投棄。だから、非常に異臭を発するわけです。百トンくらいの八十杯からの船が入ったとき、どれくらいの排せつ物が垂れ流しされるか。さらにまた、漁具の破損等々がございます。水道管の破損。今言ったように、定置網あるいは養殖業の養殖の網がいつひっかけられるか。  そういった大変厳しい負担を強いられているのに、この国際避難港に対して何らの、もちろん助成もなければ特別な扱いもない。そして、そこで漁具被害が避難港であるがゆえに発生したとして、それを請求すると、もちろん外務省も知らない、水産庁もあずかり知らない、民間で相談しなさい。小さな漁民が、いわば韓国の資力のある漁船かどうかわからないものに対して本当にどうして請求できるか。弁護士を使うとしたら大変なお金がかかる。そういったことを考えれば、まさに泣き寝入りしろと、今のあり方だとそう思われるわけです。  大臣、今お話を聞いていただいたわけですが、いわゆる漁業者、そういったものの国際避難港に対する負担についてどうしたらいいのか、ひとつ前向きな御検討をお話ししていただけないかと思うのですが、いかがでございましょうか。
  230. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 大変大事な御指摘でございますから、よくよく勉強させたいと思います。  また、避難港の指定に当たりまして当該町村と協議したかどうか定かじゃないという問題につきましては、至急に調べまして、別途山田委員に御報告させたいと思っております。
  231. 山田正彦

    ○山田(正)委員 これからの漁業の問題で一番大変なことになってくるのは漁具被害に対する損害賠償請求の実態だと思うのですが、どうやら民間団体の委員会韓国との間では解決しているようです。聞いてみますと、平均して請求額の二割くらいが賠償金として払われていると聞いております。これは決して十分な額ではありません。これを単なる民間の交渉だけに任せていいものかどうか。韓国日本、そして日本中国、この政府間でもって何とか漁具被害等、漁業被害等の補償問題についての具体的な協議機関を、例えば台湾との間でもそうですが、国交が台湾はありませんのでやむを得ませんが、ひとつ前向きにこれからの漁業の問題について検討いただきたいと思います。  最後に、この件も含めて大臣から御答弁いただきたいと思いますが、これで私の質問は終わります。
  232. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 さきの問題とあわせまして、十分勉強させたいと思っております。よろしく御理解いただきます。
  233. 日野市朗

    日野委員長 次に、藤田スミ君。
  234. 藤田スミ

    ○藤田委員 私が最後の質問者になりました。大臣、お疲れでしょうが、よろしくお願いをいたします。  まず初めに、私は大臣に世界的な食糧需給問題について御見解をお伺いしたいと思います。  このところ、もう毎年のように世界的な食糧需給に関する将来的見通しについての公的機関の見解が発表されております。ほかならぬ農林水産省も、九二年の六月、世界食料需給モデルによる予測というのを発表いたしました。ここでは、生産制約シナリオでは穀物等の国際価格は二〇〇〇年に現在の二倍程度にまで上昇すると見込まれる、こういうふうに書かれているわけですが、二〇〇○年を待つまでもなく、最近のシカゴの穀物相場を見てみますと、小麦が特に、これは小麦の一番安い価格のとき、九〇年末ですが、その当時の二倍以上も上回っている。トウモロコシも七年ぶりの高値で、対前年同期比の約五割高、大豆もそうだというふうに出ているわけです。この背景は、世界的に生産が消費を下回っているためだ、期末在庫が減少してきているためだというふうに言われておりまして、農水省の予測というのは裏づけを持って現実に出てきているわけであります。  それから、FAOは、九三年の三月、世界の米市場の現状と中長期見通しというのを発表し、翌年、九四年、ワールドウォッチ研究所の地球白書は、中国の問題に注目をしまして、中国の穀物輸入需要は急増し続け、二〇一五年には一国で現在の世界の輸出可能供給量を超えるだろう、こういうふうに言っておりましたところ、ことしの九月、今度は経済協力基金調査報告の中で、試算結果でまず明らかにしておりますのは、今後中国食糧需給の不均衡が拡大していくと見込まれることであるということを言いまして、食糧全体で見た需給の差は一九九〇年代の後半にプラスからマイナスに転じ、そしてそのマイナス幅は拡大をして、二〇一〇年ぐらいにはもう一億三千六百三十一万トンのマイナスが出てくる。この一億三千六百三十一万トンという数字は、現在の世界穀物貿易量の半分以上に当たるわけでありますから、これは大変です。ワールドウォッチがその前年に予測をしました、二〇一五年には中国一国で現在の世界の輸出可能供給量を超えるだろうというふうに指摘をしたことを、つまりことしの九月に裏づけられたわけであります。  このように将来的に中国食糧輸入を転機に世界的な食糧需給の悪化、こういうことが確実視されてきているわけでありますが、これについて農水大臣はどう受けとめていらっしゃるのか、お伺いをしたいわけです。
  235. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 御指摘のとおり、地球の人口は年間九千万ずつふえております。特に開発途上国が大変激しい増加であります。また、畜産物の消費が増大することが世界の穀物消費量を大変大量に惹起している、こういうことであります。ただいま御指摘ありました中国の問題を見ても、やはり畜産物の消費が非常にふえてきたということや異常気象や地方の減退等が大変顕著になってきたことが大きな原因だろうと思われます。  いずれにしましても、日本の農地の一・二倍の六百万ヘクタールの土地が、毎年毎年農地が砂漠化していく。御指摘のように、日本の農地の四・一倍という二千百万ヘクタール程度の農地が地方減退していくということであります。そしてまた異常気象も大変懸念される、こういうことでありますから、今委員が御指摘のように、これは近い将来に食糧不安定というのを我々は十分に考えておかなければいかぬ。世界の食糧は逼迫する可能性がかなり高いというふうに私は考えております。
  236. 藤田スミ

    ○藤田委員 食糧不安定を十分考えておかなければならない、そういう御見解に立たれるとき、日本がとるべき道というのは、何としても食糧自給率を引き上げることである。そのことは緊急に求められていると思います。ましてや、日本食糧生産体制を崩すような措置は撤回されなければなりません。  言うまでもなく、WTO協定農業協定による輸入数量制限の撤廃、米のミニマムアクセスの導入は、我が国農業生産を直撃し、それでなくても弱体化している日本農業を一層弱体化させようとしております。このような協定は直ちに改定されるべきであって、日本政府がその提起を行うべきであります。  私は、この際、大臣にこれに対するお考えをお聞かせをいただきたいとともに、具体的に、来年の十一月にはFAOの食糧サミットも予想されており、日本が率先して食糧貿易のあり方の見直しを提起すべきではありませんか。御答弁を求めます。
  237. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 御指摘のように、食糧の自給率を高めるということは私も大変大事なことだと思います。特に、平成五年は、我が国の穀物自給率はついに二二%という先進国で最低の低さでございます。ですから、これ以上穀物生産が減退していくことに歯どめをかける必要が絶対にあると私も思います。  しかしながら、日本が今世界から輸入している食糧を全部自給するとすれば、農地が千二百万ヘクタールも必要だと言われております。これは日本の現在の農地面積の二・一倍ぐらいになるはずでありますから、これだけのものを自給していくということはとても不可能な話でありますから、やはり私どもとしては生産をできるだけ拡大すると同時に、秩序ある輸入もしなければいかぬ、備蓄もやらなければいかぬ、そういう三位一体の適切な行政の運営が必要じゃないかというふうに考えております。  しかし、私は大変日ごろ不満に思っておりますことは、食糧輸入する国家というものはいつも輸入機会を提供する義務を負わされている。しかし、食糧を輸出する国家は輸出しない自由もあるわけでありまして、食糧が逼迫したときに売らない自由もあるわけでありますから、よく我が国でも言われているように、輸出国の論理だけで食糧問題を考えることは大変な間違いである、私はそういうふうに思っております。  そういう意味から、機会あるごとに食糧の自給率を高めるべきだというのは、私も信念として持っておりますし、これからも御指摘のようなFAOとかWTOとか、あるいはAPECのようなところでもそういう主張が当然あっていいのじゃないか、こういうふうに思っております。
  238. 藤田スミ

    ○藤田委員 そうすると、WTO協定に基づいて、その改正も提起しよう、そういうお気持ちは持っていらっしゃるというふうに聞かせていただいてよろしいですね。
  239. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 WTOにつきましては、いろいろな経過を経まして現在のとおりになっているわけで、これについて私もいろいろな私見はありますけれども、今さらこれはいたし方ありません。六年後に七年以降のことは見直すということになっていますから、そのときは私は恐らく農林大臣をやっていないと思いますけれども、ぜひ私も一政治家として強くそのことを主張する先頭の一人に立ちたい、こういう信念でございます。
  240. 藤田スミ

    ○藤田委員 その信念は伝承していただきたいと思います。  それから、大臣食糧の自給率を高めなければならない、そういうお気持ちがあるということを私は強く受けとめまして、新食糧法の問題に移りたいと思います。  十一月一日から実施されました。多くの農家は非常に強い不安感を示しています。きょうもJAの集会がございましたけれども、本当に大きな不安を抱いておられる。そのことはもう一人一人の表情を見ていてもよくわかります。ことしの新米の値が古米の値よりも安かった、こういうことはとりわけ農業者に衝撃を与えました。それはなぜなのか。ことしの作況指数が一〇二となり、来年十月末の持ち越し在庫量が先ほどの御説明では二百十五万トンから二百二十五万トンになると予想されている中で、需給のバランスが崩れて自主流通米価格が大幅に下落するのではないかと深刻に受けとめているからであります。  そして、新食糧法は米価の下支え機能がないために、さらなる米価の暴落が予想されるということで大きな不安を農業者は持っているわけであります。したがって、圧倒的多数の農業者は新食糧法に下支えの機能を持たせてほしい、このことを強く望んでおられるわけですが、大臣はその声をどのように受けとめていらっしゃるか、明らかにしてください。
  241. 高橋政行

    ○高橋政府委員 ただいま米価の関係でお話しになったわけでございますが、我々、新食糧法のもとにおきましても米価の安定ということは重要なことであるというふうに思っておりまして、具体的には、需給調整を通じまして価格を安定させていこうというふうに考えております。  確かに従来は、政府がお米を全量管理して買うという建前になっておりましたので、そういう意味では下支えという機能があったわけでございますが、今回は、政府が備蓄程度、百五十万トンを基本にして買うということでございますから、そこには一つの限度があるわけでございます。  したがいまして、どういうふうに価格を安定させていくかということにつきましては、先ほど申しました需給調整をしっかりしていく。そのための手段といたしましては、まず何といいましても、全体需給のバランスをしっかりとるという意味で生産調整を円滑に推進する。それからまた、豊凶によって米は変動するわけでございますが、特にでき過ぎたときには、備蓄の機動的な発動、運用、それから調整保管の適切な運用というようなことを通じて調整をしていこう。またさらに、年間の安定供給というようなことから、計画流通制度のもとでの流通の安定を図っていこうというようなことが制度上位置づけられておりますので、これを通じまして何とか価格の安定を図っていくということを考えていきたいというふうに思っております。
  242. 藤田スミ

    ○藤田委員 私どもは、その政府の方向が生産者の生産意欲を奪うという点で非常に危機感を持っています。下支えがなくなったということはよく知っているのです。だから要求しているわけです。  新食糧法政府価格の決定の仕方を定めている五十九条は、政府価格が自主流通米価格の動向を反映するとしていますが、この規定は、もう明らかに政府価格の下落を招くものであって、削除されるべきだということを強く申してきました。そして、生産者の所得が十分補償できる水準、先ほども再生産とは引き合う価格ということをおっしゃいましたけれども、まさにその所得が十分補償できる水準、当面六十キロ二万円の価格を設定するべきであります。また、自主流通米についても不足払い制度を導入して、生産者の所得を保障するべきです。大臣、いかがでしょうか。
  243. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 政府買い入れ米価につきましては、新しい食糧法五十九条の二項にきちっと精神が書かれております。すなわち、新しい制度では、米の流通の大宗は、これはもう制度的にも実態的にも自主流通米でありますから、政府の買い入れ米価につきましては、その自主流通米の価格を反映させることを基本としなければいかぬ、そしてまた、生産コスト等を参酌し、米穀の再生産を確保することを旨とする、私どもはこういう法律の精神にのっとって整然と決めてまいりたい、こう思いまして、実は十一月の一日に米価審議会の小委員会で取りまとめられた算定方式のあり方について報告をいただきました。また、今月末には米価審議会でこの米価算定の仕組みについて決めてもらう予定でありますが、米価につきましては、今委員が御指摘のとおり、私どもも生産者が生産意欲を減退しないような価格形成をしてまいりたい、こういう思いであります。  なおまた、不足払いの問題でありますが、私どもはこの法律にのっとりまして、備蓄、調整保管、あるいは生産調整、あるいは計画流通制度の適切な運営をする、そしてそれによって米の需給と価格の安定を図る、そのためには適切な保障を、きちっと助成を考えていこう、こういうふうに決意しておりますから、不足払い制度の導入については考えておりません。
  244. 藤田スミ

    ○藤田委員 大臣は、生産者の生産意欲が減退しないように、こういうことを今もおっしゃっておられるわけですが、実は、自主流通米の価格を反映させる、こういうことを言いながら、今「政府買入米価に関する米価審議会小委員会報告」を見ましても、私は、政府米の価格が自主流通米の価格を引っ張るような設定の仕方を検討しているじゃないかという点で非常にびっくりしています。  ここにはこういうふうに書かれています。「政府米は、備蓄運営等の特定の政策目的の下での役割を有していくが、この場合、買い入れた政府米は一年保管後売却することが基本となり、買入価格と売渡価格の相互関係は現行制度とは異なってくること等も踏まえ、また、依然としてコスト道ざやが存在していることを念頭に置きつつ、」「適切に検討していく必要がある。」これをもうちょっと平たく言ったら、政府米として買い入れる米は今度は古米として売ることになるので、これまでのようなやり方ではなく、結局安く買って安く売らなければならなくなるから、買うときももっと安く買わなければならなくなる、その点が現行制度とは異なってくるんだということを言っているのではありませんか。  そうなると、自主流通米の価格を反映してというふうに、動向を反映するというふうに言っておりますが、実は、自主流通米こそ政府米の低い価格を反映してますます足を引っ張られることになる。このようなやり方では、事態がますます深刻化して、そして必ず放置できなくなることは必至であります。そういうときになってから取り組んでももう手おくれになりますから、それこそ取り返しのつかない稲作の崩壊を食いとめるためにも、大臣、ここは本当に考えていただきたい。どうでしょうか。
  245. 高橋政行

    ○高橋政府委員 ただいまの米価審議会小委員会の報告のところで、ちょっと誤解があるといけませんから、私の方から御説明を申し上げたいと思います。  小委員会の報告の最後の方に、「買入価格と売渡価格との関連」ということで、ただいま先生のお話があったような表現があったわけでございますが、これはどういうことかといいますと、買い入れ価格と売り渡し価格が何か連動して決められるというようなことは難しいですよ、なぜかといいますと、買い入れ価格を決めるときの需給事情とそれから売り渡し価格をまた決めますときとは、一年あるいは二年違ってしまいますので、そういうふうに単純に連動するものではございませんよということを申し上げておるのでありまして、先生が言われるような意図はございませんということだけ申し上げておきます。
  246. 藤田スミ

    ○藤田委員 この問題にこだわるほど時間に余裕がありませんので残念ですが、しかし私は、このようなことでは本当に取り返しのつかないことになるということをもう一度重ねて申し上げておきたいと思います。  学校給食の問題ですが、学校給食用の米は圧倒的に政府米を使っています。ところが、政府米は備蓄用として用途が限定されているために、つまり一年古米が食べさせられるのではないかという心配が広がっています。あわせて、ミニマムアクセス米も政府扱いになっていくわけですから、これも入ってくるのではないか。  もともと学校給食というのは、米飯給食が始まった最大の理由をたどれば、子供たちにおいしい御飯を食べさせて日本食のよさを知ってもらい、そして米の消費拡大に結びつけようというものでありました。したがって、食糧庁は当面来年の三月までは新米供給をすると言っておりますが、問題は、それ以降についてもきちんと政府米の新米で子供たちに米を供給するべきである、このことを大臣に明確にお答えをいただきたい。  もう一つの問題は、輸入米の扱いでありますが、あれだけの凶作の年でも、子供たちには輸入米ではなく国産米を食べさせるのだという食糧庁の対応がありました。したがって、多くの学校関係者が心配をしているように、学校給食用の政府米には輸入米は取り扱わない、混米も取り扱わないということを明確にしていただきたいわけであります。簡潔にお願いいたします。
  247. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 農林水産省としては、学校給食に輸入米や混米を強制して使用してもらうということはいささかも考えておりません。学校関係、給食関係者の意向を尊重して運営してまいりたいと思います。
  248. 藤田スミ

    ○藤田委員 輸入米のことはよくわかりました。政府米の新米を学校給食に、その保証をしていただきたい、この点では大臣いかがですか。簡単にお答えください。
  249. 高橋政行

    ○高橋政府委員 学校給食用米穀の供給のあり方につきましては、先ほどお話がございましたように、本年度はもう新米でやろうということでやっておりますが、未年度以降どうするかということについては、我々これから検討しなければいけないと思っております。その際にも、学校給食関係者の意向を考慮しながら、出来秋における政府米の集荷状況、それからさらに、これからは自主流通米が主体になりますから、自主流通米と政府米の役割をどんなふうに考えるかというような視点に立ちまして検討をしていきたいというふうに思っております。
  250. 藤田スミ

    ○藤田委員 これから検討ということをおっしゃっておられるわけですけれども、私は、学校給食の趣旨からしても、これまでどおり政府米の新米を学校給食に充てていく、そういうことを強く要請をしておきたいと思います。  次に、セーフガードの問題について質問をしたいわけであります。  今回のWTO協定にはセーフガード協定が含まれておるわけでありますが、ガットのときのセーフガードよりはるかに使いやすい制度になりました。これまでも欧米諸国が自国の産業や農業を守るために、一九五〇年から九三年の四十四年間に百四十七回のセーフガードの発動を行ってきたのに対して、実は日本は一度もその発動はありませんでした。私は、その点では極めて残念です。  しかし、今日本農業がどういう状況になっているか、先ほど来の議論を聞いていても明らかです。野菜にしろ、畑作にしろ、畜産物にしろ、林業水産業にせよ、円高を背景とする輸入の急増で深刻な打撃を受けています。産地はもう本当に息も絶え絶えの状況になっているのです。多くの産地でセーフガードの発動を求めています。政府として、直ちにセーフガードの発動に踏み切るべきであります。  私は、時間がありませんから自分で言いますが、一般セーフガードに対する措置という、この農水省からいただいた簡単な概要説明を持っておりますが、ここでも大臣、「発動要件」は「輸入急増により、国内産業に重大な損害又はそのおそれ」があるときということで、「おそれ」ということを言っております。まさに説明に合理性があれば十分発動できる。これはまさに政府の旗一つという言い方は余りあれですが、しかし本当に気持ち一つで発動できるわけであります。この「措置の内容」は「関税引上げ又は輸入数量制限」、そして「補償措置」というところでは、これは「セーフガードにより影響を受ける国に対して補償措置をとるように努力」と書いていますが、努力でありまして義務ではありません。括弧をつけて農水省が余計なことを、「相手国からの対抗措置の可能性あり」と説明をつけておりますが、実はこれは三年フリーズでありまして、対抗措置は三年間ありません。したがって私は、ここまで本当に打撃を受けているこの農林水産業を守るためにもセーフガードを発動していただきたい。  日本共産党は、この七月十二日に、「農水産業・中小企業を救済するためにセーフガードの発動を求める緊急申し入れ」というのを行ってきました。また、奈良県議会を初めとして、地方議会でも決議を上げてきています。どうぞ緊急にセーフガードの発動を行うという立場日本農林水産業を守っていただきたい。大臣の御答弁を求めたいと思います。
  251. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 ただいま委員の御質問の中に、一度もセーフガードを発動したことがないというお話でありましたが、つい先般も豚肉のセーフガードを発動したばかりでございます。  御指摘のように、野菜等の一部にセーフガードを発動すべきだという声があることは私どもも十分承知しております。そこで、今、直近の輸入増加及び国内価格の動向等、個別品目ごとの状況把握に鋭意努めているところであります。把握の結果、価格の低迷とかあるいは所得の減少とかということが起こり、そしてまた国内産業への重大な損害等について十分な証拠が認められた場合には、御指摘のように関係省庁に対して政府による調査の開始を要請するなど所定の手続に入りたい、こう思っておる次第です。
  252. 藤田スミ

    ○藤田委員 政府は一度も発動していないのです。さっき大臣のおっしゃった豚肉は、関税定率法に基づく緊急措置であります。また、特別セーフガードの問題については、これは発動しなければ違反ということになりますので、これもまた別なんです。一般セーフガードの発動という立場から見たら、本当に日本の対応は極めて鈍いと言わざるを得ないわけであります。どうぞ早速に乗り出していただきたい。  「輸入が増加している野菜の国内産地の状況について」という現地情報、農林水産省統計情報部が出した報告書を私は持っておりますけれども、私はもう時間がありませんので本当に残念ですが、いかにも切実な現地の様子が書かれている。そしてこのままでいけば何もかも、農地はもうなくなり、農家は消えてしまうという報告があるわけです。だからこそ私は緊急にセーフガードの発動を求める。大臣がおっしゃったように、自給率をこれ以上衰退させないためにも、どうしても政府はやるんだ、少なくとも農水省はその覚悟を持っているということをもう一度お示しをいただきたいと思います。
  253. 日野市朗

    日野委員長 藤田君に申し上げます。  質問の時間は終了しております。
  254. 藤田スミ

    ○藤田委員 はい。大臣答弁を求めて、終わります。
  255. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 よく伺いました。
  256. 日野市朗

    日野委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時三十八分散会