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1995-10-24 第134回国会 衆議院 災害対策特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成七年十月二十四日(火曜日)     午前十時一分開議 出席委員   委員長 左近 正男君    理事 稲葉 大和君 理事 七条  明君    理事 住  博司君 理事 赤羽 一嘉君    理事 小池百合子君 理事 小坂 憲次君    理事 濱田 健一君 理事 高見 裕一君       安倍 晋三君    逢沢 一郎君       衛藤 晟一君    小此木八郎君       久野統一郎君    小泉 晨一君       佐藤 剛男君    田中眞紀子君       松下 忠洋君   三ッ林弥太郎君       宮路 和明君    村上誠一郎君       横内 正明君    石田 祝稔君       長内 順一君    古賀 敬章君       白沢 三郎君    樽床 伸二君       弘友 和夫君    冬柴 鐵三君       増田 敏男君    今村  修君       前島 秀行君    三野 優美君       穀田 恵二君    土肥 隆一君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (国土庁長官) 池端 清一君  出席政府委員         阪神淡路復興         対策本部事務局         次長      角地 徳久君         国土庁長官官房         長       竹内 克伸君         国土庁防災局長 村瀬 興一君  委員外出席者         議     員 高木 義明君         議     員 小坂 憲次君         議     員 佐藤 茂樹君         議     員 赤羽 一嘉君         議     員 大口 善徳君         議     員 長内 順一君         議     員 古賀 敬章君         議     員 白沢 三郎君         議     員 須藤  浩君         議     員 西村 眞悟君         衆議院法制局第         四部長     横田 猛雄君         内閣官房内閣安         全保障室内閣審         議官      柴田  健君         内閣官房内閣情         報調査室内閣調         査官      佐野 智則君         防衛庁防衛局運         用課長     金澤 博範君         科学技術庁研究         開発局企画課防         災科学技術推進         調整官事務取扱 上原  哲君         厚生省社会・援         護局保護課長  西沢 英雄君         運輸省港湾局計         画課長     川嶋 康宏君         運輸省港湾局技         技課長     金子 俊六君         気象庁地震火山         部地震津波監視         課長      吉田  弘君         建設大臣官房技         術調査室長   鈴木藤一郎君         建設省河川局水         政課長     吉永 昌幸君         建設庁河川局防         災・海岸課長  肥田木 修君         建設省住宅局民         間住宅課長   内田 俊一君         建設省住宅局建         築指導課長   那珂  正君         建設省住宅局建         築指導課建築物         防災対策室長  佐々木 宏君         建設省住宅局市         街地建築課長  岡本 圭司君         自治大臣官房参         事官      原  正之君         消防庁防災課長 高田  恒君         特別委員会第三         調査室長    金山 博泰君     ――――――――――――― 委員の異動 十月二十四日  辞任         補欠選任   白沢 三郎君     樽床 伸二君   山名 靖英君     冬柴 鐵三君 同日  辞任         補欠選任   樽床 伸二君     白沢 三郎君   冬柴 鐵三君     山名 靖英君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  災害対策基本法及び大規模地震対策特別措置法  の一部を改正する法律案内閣提出第一五号)  災害対策基本法の一部を改正する法律案加藤  六月君外二十九名提出衆法第三号)      ――――◇―――――
  2. 左近正男

    左近委員長 これより会議を開きます。  内閣提出災害対策基本法及び大規模地震対策特別措置法の一部を改正する法律案及び加藤六月君外二十九名提出災害対策基本法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松下忠洋君。
  3. 松下忠洋

    松下委員 鹿児島から出ております松下忠洋と申します。主として災害対策基本法改正につきまして御質問を申し上げますので、よろしくお願いを申し上げます。  まず初めに、質問に入る前に、鹿児島南西諸島喜界島で大きな地震がございました。この対応については、前回の委員会でも御報告がございましたけれども、しっかりと的確に対応していただきますようによろしくお願いを申し上げておきます。  それでは、災害対策基本法につきまして、いろいろお尋ねを申し上げます。  まず、政府案基本的な考え方についてお尋ねを申し上げます。  阪神淡路大震災、大変大きな被害でございましたし、今まで経験しなかった大きな災害でございましたけれども、このことからどのような反省をして、その反省にどのようなふうに立って政府案を立案されたのか、その基本的な考え方について、大臣から御所見をお伺いいたします。よろしくお願いします。
  4. 池端清一

    池端国務大臣 松下委員お答えを申し上げます。  政府といたしましては、去る一月十七日の阪神淡路大震災においてあの甚大な被害発生したことを重く、そして厳しく、深く反省をいたしておるところでございます。  初動期におきまする被害規模把握がおくれたこと、あるいはまた官邸への情報連絡体制が十分でなかったこと、反省すべき点は多々あると思います。この反省点については政府としても迅速に改善を進めてきたところであります。閣議決定を行うなど、あるいはまた防災基本計画を全面的、抜本的に見直すなどの措置をとってきたところでございますけれども、なお災害対策法制上もいろいろ問題がある、こういう御議論がございました。  とりわけ、第一に国の緊急即応体制のあり方、第二に現場における自衛官権限について、第三に地方公共団体広域連携について、そして第四にボランティアや海外からの支援への対応の問題、あるいはまた高齢者障害者等に対する措置の問題、あるいはまた被害状況収集伝達、こういったような問題について災害対策法制上もいろいろな問題点がある、こういう御指摘を受けてきたところでございます。  こういう御指摘、こういうような教訓を踏まえまして、諸井虔座長を長といたします防災問題懇談会においても今日までいろいろ熱心に御検討をいただいてまいりました。そうした結論に従いまして、その提言内容に沿って今回の災害対策基本法改正案がまとめられたものでございますので、どうか十分御審議をお願いをしたい、このように思っておるところでございます。
  5. 松下忠洋

    松下委員 大臣の方から基本的な政府案に対する考え方を今御提示いただきましたけれども、あの阪神淡路大震災非常災害対策本部設置する、そしてまた総理大臣を頭とする緊急災害対策本部をつくっていくという、そういう過程におきましていろいろと混乱があったのではなかろうかということは、私自身も当事者としていろいろ感じるところがあるわけでございます。  今回の政府案を拝見しておりまして、非常災害対策本部、それから緊急災害対策本部、この二つ考え方が示されております。その緊急災害対策本部はどのような場合に設置しようとしておられるのか、ここが非常に大事だと思います。  二十八条で書いてございますけれども、従来の示されておる法律の中身に加えて、新しく「著しく異常かつ激甚な非常災害発生した場合」と書いてございますが、ここが非常に大事だろうと思うわけであります。どのような考え方設置する基準といいますか、そういうものを持っておられるのか。ここを一つ誤りますと、また二の舞を起こすということにもなりますし、例えば最近の災害を見てみましても、鹿児島豪雨、これは平成五年でございました。長崎の大水害昭和五十七年、これは二百九十九名の方が亡くなった大災害でございましたけれども、そういう場合。あるいは、現在でも続いておりますけれども平成二年から始まりました雲仙普賢岳噴火災害。そのような災害に対して、この緊急災害対策本部というものが設置されるような状況として考えておられるのかどうか、そこを具体的にお示しをいただきたい、そのように考えるわけです。よろしくお願いいたします。
  6. 池端清一

    池端国務大臣 緊急災害対策本部は、「著しく異常かつ激甚な非常災害」、すなわち極めて大規模かつまれに見る災害発生をし、政府が一体となって災害応急対策推進する必要がある場合に設置されるものでございます。  具体的には、災害規模、態様、応急対策推進必要性等諸般の事情をしんしゃくする必要がございます。数値等による画一的な設置基準を策定することは困難であるというふうに考えておりまして、社会通念に照らして、具体の状況を踏まえて個々の災害ごとに的確に判断すべきものである、このように考えておるところでございまして、阪神淡路大震災クラスの大規模災害についてはこの緊急災害対策本部設置することになる、このように考えておるところでございます。  松下先生お尋ねの、各種の今日までの災害につきましては、確かに非常災害ではございますけれども、「著しく異常かつ激甚な非常災害」とまで言えないというふうに考えておりますので、この種の災害につきましては、緊急災害対策本部ではなくて非常災害対策本部によって対処してまいりたい、対処すべきもの、こういうふうに考えておるところでございます。
  7. 松下忠洋

    松下委員 ここが極めて大切なところでございまして、これは後でまた、情報収集とか、そういうところでもいろいろ御質問申し上げますけれども、その災害が、本当に社会通念上照らして、緊急に対応しなきゃいけない、異常かつ非常に激甚であるかどうかということの、それが災害発生を見て四日も五日もかかってからつくるようではいけないわけでございまして、その災害直後に瞬間的にどのような判断をし、あるいはどのような情報を的確につかまえて、そしてその対応をとっていくかということが大きなポイントだろうと思います。その判断を誤ったら大きな禍根を残すということでございますから、ここのところは、やっぱり十分に裏づけとする情報最初初動を起こすその段階できちっと的確に入っているかどうか、それが異常かつ激甚であるか、社会通念上照らして極めて大きな問題であるかどうかということが的確につかめるような情報収集、そしてそれを分析していくということがどうなっているかということが大事だと思いまして、ここのところはもう少しお尋ねを申し上げたい、こう思っております。  そこで、新進党案の方にちょっと移らせてもらいますけれども新進党さんの方で、非常災害対策本部をつくられます。これは、ずっと一気通貫して、こういう言い方はあれですけれども緊急対策本部最初から総理大臣ということになっておりますけれども、これによって、「当該災害に係る災害応急対策推進が困難であると認める」、こういう言い方をしております。これは、災害規模とか異常とかいうこととは違った考え方のようなふうにお見受けされるのですけれども、この「災害応急対策推進が困難であると認めるとき」という、それはどのように具体的な状況を考えておられるのか、そこのところを教えていただきたいと思います。よろしくお願いします。
  8. 高木義明

    高木(義)議員 松下委員お答えをいたしますが、質問は、どのような場合に緊急災害対策本部設置をされるのか、その基準は具体的には何か、こういうことでございます。  私たちの案におきましては、この緊急災害対策本部設置されるのは、委員指摘のとおり、非常災害発生した場合において、当該災害規模及び他の状況から見て、非常災害対策本部によっては災害応急対策推進が極めて困難である場合であります。  松下議員が先ほど挙げられました長崎大水害あるいは鹿児島豪雨災害あるいは雲仙普賢岳災害は既に過去の事例でございまして、まだ雲仙におきましては今もなお継続されておりますが、政府の答弁と同様に、緊急災害対策本部設置する必要があるか否かは一概に今ここで言えないわけでありまして、まさにその状況に応じて判断をすべきものであると思っています。  委員指摘のとおり、緊急対応のための情報収集、このことが何よりも肝要であろうと思っております。緊急災害対策本部設置されるのは、今回の阪神淡路大震災のような大規模かつ激甚な災害が生じたとき、このように考えております。
  9. 小坂憲次

    小坂議員 松下議員の御質問お答えを申し上げます。  新進党案の「非常災害対策本部によっては当該災害に係る災害応急対策推進が困難であると認める」場合というのはどういうような場合だという御質問でございます。  一言で言えば、政府通常行政の枠を超えて対処しなければならないような、そういった対応し切れないような大災害というものについてだ、こう申し上げたいわけでございますが、もっとも、それがどういうものかというのは、災害発生直後にはなかなかその災害規模というのは把握しにくい。今回の阪神淡路震災でも、その全体像を把握するには相当時間がかかっております。  災害規模が必ずしも正確に把握できない、どうしようという場合には、どちらを設置すべきか判断に迷う場合があります。そこで私どもは、非常災害対策本部は機動的な対策本部なんだ、そして、緊急災害対策本部というのは強力な対策本部なんだ、強力な対策推進するための本部だという、二つ本部の性格づけをいたしております。  そして、それゆえに、こういった迷うような場合には、まず非常災害対策本部設置して、そしてとりあえず、もうすぐに災害応急対策を実施してみるわけです。しかし、それを実施しながら、これではまだ不十分だな、もっと強力な権限が必要ではないか、こう思われる場合に緊急災害対策本部に切りかえる、こういう柔軟な運用が可能になるわけでございます。  この点、政府の案を拝見いたしましたけれども、この設置基準は、「著しく異常かつ激甚」と、言葉の上では明確に違っているように思えますが、実際の現場に行ってみると、これは「異常」なのか「著しく」なのか、この辺で迷って、どちらにしよう、こういうふうな形になるのではないかと思って私どもはこういう性格づけにおいて分けたわけであります。政府案は、性格づけにおいては余りわからないけれども災害規模を表現として区分けしている、こういうことでは非常にわかりにくいかなと思っで私どもはこういうようにしているわけであります。  ですから、実際、閣議を開いてどちらにするかと決定するよりは、まず非常災害対策本部をつくってしまう、応急対策をすぐに実施する、実施をどんどん重ねていろんな要望にこたえていくけれども、その要望にこたえ切れないなと思ったときには緊急災害対策本部にするぞ、閣議を開いてすぐ決めて移行していく、こういう段階を私どもは想定をいたしております。
  10. 松下忠洋

    松下委員 最初基本のところでの二つの案についてのお話がございましたけれども、一番大事なのは、災害発生した、その第一報がどのような形で入ってくるのか、それからその情報収集のためのネットワークというものをどのようなふうに全国に張りめぐらして、そして被災した地域状況が的確に早く入ってくるかという、つかまえ方だろうと思います。そのことをつかまえて、ああ、これは今までの形でいいか、非常災害対策本部でやっていける、あるいはこれは緊急事態として今早々に国を挙げて取り組まなければいけない事態のものであるかどうかという判断は、これはリーダーシップともあわせて、組織全体の機能ともあわせて非常に大事なところだろうと思います。  そこで、こういった的確、迅速な本部をつくっていく、対応していくというための情報収集システム、それからそのためのネットワーク、このようなものを法律上あるいは実際の機動的な形としてどのようなふうに整備しようとしておられるのか。それから、この法律の中で、どこにどういうふうに整備しようとしておられるのか。その情報収集考え方、それをお聞かせいただきたい。国土庁長官お願いします。
  11. 村瀬興一

    村瀬政府委員 御指摘のように、的確かつ迅速な本部設置を可能にするためには、発災直後に災害規模に関する情報を迅速に収集するということが極めて重要であるというふうに考えておるところでございます。  そこで、今回の政府案におきましては、内閣総理大臣被害状況等報告する指定行政機関の長、指定公共機関代表者都道府県市町村は、「非常災害規模把握のため必要な情報収集に特に意を用いなければならない。」旨規定したところでございます。また、現地状況を最も詳しく知り得る立場にあります市町村情報が確実に内閣総理大臣伝達されますように、市町村都道府県被害状況等報告を行うことができない場合には内閣総理大臣に直接報告するということにいたしておりまして、情報伝達系統多重化を図っているところでございます。  さらに、運用面におきましても、警察、消防、自衛隊、海上保安庁等機関現地において組織的な情報収集に当たるとともに、情報収集専任職員指定等体制整備を図る、あるいは、航空機による状況調査それから画像情報収集設備整備等によって初期情報情報システム高度化を図るということにいたしております。それからまた、そういった今申し上げましたような系統とは別に、発災直後に地震震度データ等をもとに被災地域の概括的な被災状況の即時的な予測等を行います地震防災情報システム開発にも今年度の補正予算において着手したところでございます。第一段のごく概括的なシステムにつきましては今年度中に完成する予定でございます。そういたしますと、発災以後余り時間を経ずして、どの程度のオーダーの災害発生する可能性がある地震であるかということについては把握が可能になるというふうに考えておるところでございます。  今申し上げましたようなことを総合的に運用いたしまして、的確かつ迅速に本部設置判断することが可能になるというふうに考えているところでございます。
  12. 小坂憲次

    小坂議員 松下委員の御質問お答えを申し上げます。  私ども情報収集初動態勢に与える影響は非常に大きいという松下委員の御指摘はごもっともだ、私どもは全くそのとおりだと思っております。  その意味で、私どもはいろいろな角度から検討をしてまいりました。昨年の未起こりました三陸はるか沖地震のとき、現場にすぐ私どもの二階担当が飛んでまいりまして、その状況官邸一報を入れようと思って電話をしたところ、官邸担当されるべき人間がどなたもいらっしゃらない、どうしても連絡がとれなかった。こういったこととか、あるいは今回の阪神淡路震災において一体どのような情報流れ総理にその情報が伝わっただろうか、そして対策本部設置に至っただろうか。  こういうようなものを踏まえた上で、これはやはり強力なリーダーシップを求めると同時に、そのリーダーに対して的確な情報を集中させることが必要だ、これにはやはり官邸の中にそういった防災の中心になる常設機関を置くことが必要だ、そこが情報収集の中核になるんだ、こういう考え方に基づきまして、総理府及び内閣官房総合防災室設置するということを思っておるわけであります。そして、初動情報収集体制をそういった面で強化をいたしまして、情報総理大臣に集中をし、総理大臣の強力なリーダーシップのもとに迅速かつ的確な応急対策が実施できるように規定をいたしました。  また政府案では、災害時において例えば市町村長さんが都道府県報告できない場合は総理大臣に直接報告することができる、こういう規定を設けていただいております。この新しいチャネルは、それぞれ市町村の方には心強いと思いますが、しかし、いざそれじゃ総理大臣電話をかけて直接言ったらいいのか、あるいは国土庁防災局の方に電話をしたらいいのか、各市町村長も、あるいはその当時市町村長がいない、市町村担当者、委任を受けて連絡をしたいという者がすぐにわかるかというと、なかなか明確ではないという部分もあるわけでありまして、そういったことで、せっかくそういう法律規定してもそれが絵にかいたもちになってしまっては何にもならぬ。  そういう意味で私どもは、明確な組織をそこに設置をしてそれが常設で機能している、常時市町村長とも連絡をとっている、そういう中でいざ発災のときにはあそこだと言ってすぐに電話できる体制整備することが必要だろう、こう考えまして、防災室設置して法律上の整備も行っているところであります。
  13. 松下忠洋

    松下委員 国土庁の方にお尋ねいたしますが、情報収集が大切だというのはお話でわかっておりますが、これを法律上、例えば政府案の五十三条、これは市町村被害状況等報告市町村地域から報告させるということでこれを規定されておられます。一方、新進党の方にはそういう法律の手当てをしておりません。この辺の情報システムの仕方というのは非常に大事でございますが、国土庁、この五十二条、ここにきっちりと書き込むことにしたその辺の考え方、そして、最終的にこの緊急災害対策本部設置をだれがどういう瞬間で決めるのか、その辺をちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  14. 村瀬興一

    村瀬政府委員 今の市町村からの情報流れでございますが、その前に、通常ですと都道府県知事から自治省消防庁を通じて私どもなり官邸の方に情報が上がってくる、それから市町村から直接参ります場合にも自治省消防庁を通じて私どもにも入ってくるという情報流れになるわけでございます。そういった情報を受けて、緊急災害対策本部設置をすべきかどうかということにつきましては、内閣総理大臣閣議にかけて決定をするということでございます。  その場合に、私ども国土庁災害対策基本法に基づきます内閣総理大臣権限を補佐する立場にあるわけでございますが、今申し上げましたいろいろなチャンネルで収集いたしました被害状況等に関する各種情報を速やかに集約、整理いたしまして、これを内閣総理大臣報告いたしまして、的確かつ迅速な本部設置判断が可能になるように努めてまいるというふうに考えておるところでございます。
  15. 松下忠洋

    松下委員 現地とのかかわりで、今度の阪神淡路大震災でもそうでしたけれども現地にまた災害対策本部をつくりましたね。それがどのように機能したのか。やはり大きな災害のときには、中央で指揮をするところと現地に乗り込んでいろいろ対応していくというところが非常に大事だろう、こう考えますけれども政府案では現地対策本部をこの場合に法定化されました、きちっとやりましょう、こうなっておりますが、非常災害対策本部そのものはその指揮体制を変えていない。今までの形で情報収集を的確にしていけばいいんだということのようでございますけれども、それで十分機能するのかどうか。  その辺、例えば雲仙普賢岳の場合あるいは長崎大水害の場合等の反省を含めて、ぴちっとやっていけるかどうか、その辺をもう一度お聞かせいただきたいと思います。
  16. 村瀬興一

    村瀬政府委員 昭和三十七年に災害対策基本法が施行されてからこれまで非常災害対策本部は二十一回設置されたところでございます。これまでの経験に照らしてみましても、非常災害でありましても、それが阪神淡路大震災のように「著しく異常かつ激甚」とまでは至らないような場合には、国務大臣本部長とする非常災害対策本部において所要の調整を経つつ、関係省庁が一体となって災害応急対策を十分適切に推進してきたというふうに考えておるところでございます。  したがいまして、非常災害対策本部組織体制につきましては、現行の規定を見直す必要はないというふうに考えておるところでございます。
  17. 松下忠洋

    松下委員 新進党さんにちょっとお伺いしますけれども、この情報収集体制、先ほどもちょっとお話がございましたけれども法律上の手当てをしていない。この辺、市町村とのかかわりをどのようなふうにしていかれるのか。政府の案でいきますと、五十二条できちっと市町村とのかかわりをつけていますけれども、その辺はどういうふうに考えておられますか。
  18. 小坂憲次

    小坂議員 委員の御質問、先ほどお答えした部分と若干重複するかと思いますが、法律上は、私ども総合防災室というものをつくって、そこに情報を集中するようにしております。その運用規定の中で、各市町村に対してもそういう指示を出すことによって情報の集中化が図れる、このように考えております。
  19. 松下忠洋

    松下委員 両方の考え方の違いというのがわかってまいりましたが、緊急災害対策本部、この本部長の権限でございますけれども新進党さんの方でいきますと、緊急災害対策本部長に指定行政機関の長等の権限の代行を認めておられますね。それの理由は何なのか。指示で十分ではないかという自主的な判断をさせながらいろいろ全体として統括していく、何もかも全部取り上げてしていくということではなくて、その中でのいろいろな経験を生かしながら指示していく、それでやらせていくということで十分ではないかというふうに考えますが、そこはいかがですか。
  20. 小坂憲次

    小坂議員 緊急災害対策本部長に指定行政機関の長の権限の代行を認めたのはなぜか、こういう御質問でございますが、新進党案において認めましたのは、従来の縦割り行政の枠にとらわれずに災害応急対策を迅速かつ強力に推進するためにはどうしたらいいか、こう考えた結果であります。緊急災害対策本部設置されるような大災害発生した場合には、国家の最大の役割というのは、言うまでもなく国民の生命、財産を守ることであります。そのためには、必要最小限度の範囲ではございますけれども行政組織の壁を取り払って、平時とは違った強力な体制でその対応を可能にする道を開くことが必要であろう、それは極めて重要なものだ、こう考えました。  また、災害応急対策が一方で国民の権利を制約しなければならないものである場合には、なかなかその決断を下すのは難しいわけでありまして、より高度なレベルでの政治判断に基づいて行った方がかえって円滑に進むものもあると思っております。  したがって、このような場合には、本部員にその責任においてその権限を行使させるよりも、最高責任者たる内閣総理大臣本部長となって、みずからの責任において本部員にかわって権限を行使することの方が適当な場合もあり得るだろう、こういうことでございます。この点でも、本部長が指定行政機関の長の権限を代行することができる、こういう権限規定を設けることは極めて有効なものであると思っておりますし、また、こういう権限を背景として、本部長の持つ総合調整権あるいは指示権とおっしゃいましたが、そういった指示権が実効性のあるものになるだろう、こう考えているわけであります。  すなわち、もう少し砕いて御説明すると、各省にまたがるようないろいろな対応策、緊急対応をしなければいけない場合に、にらみ合いになったり、縦割り行政の弊害から決断がしにくい、協議に時間を要する、こういうような場合には、本部長たる内閣総理大臣本部長としての権限を行使しやすいようにする、これを考えたわけでございます。
  21. 松下忠洋

    松下委員 時間も迫ってきておりますので進めていきますが、自衛隊との関係についてお尋ねを申し上げます。  政府の方でございますけれども、自衛隊に対する協力、そしていわゆる市町村長がやるべきいろいろなことについて、市町村長さんがそこにおられない場合に、臨機応変にどのように対応をしていくのかということがございます。  自衛隊との関係で、現場でいろいろ権限を行使できるとげうことになっておりますけれども、二次災害を防ぐような意味におきましても、現場に行って市町村長がそこにいない、そのときに、ここに立ち入ってはいけない、ここは入るな、ここから先は出ていってはいけないというような場所をきちっとつくっていくというようなことも必要だろうというふうに考えておりますが、雲仙普賢岳の場合でもそうでしたけれども、ここで書いている警戒区域の設定、立ち入り制限というのはどのような場合を想定して、どのように考えておられるのか、そこをちょっとお尋ねいたします。
  22. 村瀬興一

    村瀬政府委員 例えば、今回の阪神淡路大震災でも見られましたように、建物が倒壊する危険があるというような場合、あるいはがけ崩れ等が切迫しているといったような場合に警戒区域を設定いたしまして、そこにいる人々を退去させる、あるいは設定いたしましたその区域の中への立ち入りを禁止あるいは制限するということが人命を守るという意味から必要な場合があろうか、さように考えているところでございます。
  23. 松下忠洋

    松下委員 ありがとうございました。  新進党さんの方ですけれども、警戒区域、現場でここは非常に危険だ、ここは立ち入ってはいけない、あるいはここから先は安全だ、そういうような警戒地域、危険地域というのを臨機応変につくっていくということがその中に入っておりませんけれども、その辺はどのような対応をしようとしておられるのか、そこのところはどういうふうに考えておられますか。
  24. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)議員 松下議員の御質問の前に、私どもも、災害派遣を命ぜられた部隊等の自衛官権限を強化するということでは、総論は非常に賛成でございます。  ただ、その中で、一つ一つを吟味していかなければいけないだろう。今御質問にありました六十三条の警戒区域の設定の件につきましては、まだ引き続き被災状況にあります例えば雲仙普賢岳現地に問い合わせをいたしましても、この件については、自衛隊にまで権限を与えることについては疑問を呈しておられるわけでございます。私どもも、そのような考え方から、次の理由から、この権限を自衛隊に与えるのは非常に慎重であるべきではないか。  それは、すなわち、この六十二条の警戒区域の設定等については、後に出てきます百十六条で罰則が設けられておりまして、この警戒区域の設定に伴う立ち入りの制限もしくは禁止もしくは退去命令に違反した者は罰金または拘留に処せられることになっております。  このように、警戒区域の設定権等の権限は住民に罰則を科する前提となるものでありますから、その任務の性質上、市町村職員、警察官等とは異なって、ふだん自衛官というのは、日常的には住民と接したり、住民に対して命令をする立場にないわけでございまして、切迫した状況にある災害現場でそういう罰則の伴うような権限を持たせることが適当であるかどうかについて非常に慎重でなければならないのではないか。また、国民感情の点から見ても慎重にあるべきではないかという考えのもとに、私どもは、警戒区域の設定権限というものを自衛官に付与するのは今回慎重になったわけでございます。しかし、そのかわりに、六十一条で、切迫した状況下にある災害現場において、一定の場合に自衛官に避難のための立ち退きの指示を行う権限を今回私どもの案としては付与しているわけでございます。  六十三条の立ち入りの禁止、退去命令等というのは警戒区域の設定というものを前提とするものでありますけれども、六十一条の避難のための立ち退きの指示は警戒区域の設定の有無にかかわらずできるものであって、これによって十分対応できるものではないか、そのように考え、また住民の生命または身体を災害から保護するというこの災害派遣自衛官の任務からすれば、この六十一条の権限を付与しないことこそ逆に私どもは理解に苦しんでいるわけでございます。  以上です。
  25. 松下忠洋

    松下委員 いろいろな災害現場を経験したことからいきますと、現場での臨機応変な的確な判断、それから危険な地域とそうでない地域を仕分けしていく、それを地域住民に的確に指示していくということが非常に大事でございまして、ここのところは、現場での判断、それが的確にできるような対応というものがどうしても必要になってまいります。十分に御検討いただきたいというふうに考えるわけでございます。  自衛隊の方が見えておられると思いますけれども、今度の災害派遣の場合の手続の問題ですけれども、知事からの要請があって、それで派遣要請があって対応していくということが原則でございました。そしてまた、今度の改正があって、要請がなくてもこちらからどうだというふうに働きかけることもできるというふうにしておりますけれども、今度、市町村長からの派遣要請が出た場合に、それについて対応していくということについてどのように考えておられるのか。阪神災害の経験から踏まえて、お考えをお聞かせいただきたいと思います。
  26. 金澤博範

    ○金澤説明員 お答え申し上げます。  自衛隊法第八十二条におきまして自衛隊の災害派遣を要請する者を都道府県知事等としておりますのは、都道府県知事等が被害状況等を全般的に掌握し得る立場にあることから、これらの者が消防ないしは警察等の災害救援能力を考慮した上で自衛隊の部隊等の派遣の要否、活動内容等を判断することが救援活動を効果的かつ効率的に実施する上で最適であるとの考えによるものでございます。  仮に、市町村長からも要請できるというようにした場合、例えば複数の市町村にまたがるような災害発生した場合を想定いたしますと、市町村長は他の市町村状況を含めた全般的な被災状況等を把握し得る立場にないわけでございまして、都道府県知事及び複数の市町村長からの派遣要請が錯綜し、部隊等を救援活動のために派遣するに際し的確な判断が困難となるといったような事態も想定されるわけでございまして、そのような点から、市町村長に要請権限を付与することは適当ではないというのが我々の考えでございます。  そうは申しましても、災害時の混乱等からやむを得ず市町村長から直接自衛隊に対し派遣を要請せざるを得ないような場合も想定されるわけでございまして、こういった場合は、都道府県知事からの要請にかわるものというふうに整理するよりは、むしろ自衛隊が自主的に派遣をする場合の一つとして整理すべきものであろうというのが私ども考え方でございます。このような考え方に立ちまして、防衛庁防災業務計画、これを十月五日に修正いたしまして、「部隊等が都道府県知事等と連絡が不能である場合に、市町村長から災害に関する通報を受け、直ちに救援の措置をとる必要があると認められる場合」を自主的な派遣を行う場合の具体的な場面として明記したところでございます。
  27. 松下忠洋

    松下委員 最後に一つだけ申し上げたいと思いますけれども、今の問題につきましては、やはり県知事が自分の管轄する範囲内の問題について、どこで、どういう市町村長が何を考えているか、そこでどういうことが起こっているかということを把握しながら、一兀的に自衛隊と関係をしていくのがいいんじゃないかなというふうに私は考えております。今のお話で十分よくわかりました。  最後に、機構改革の問題がございますが、阪神淡路大震災以降、官邸機能がどのように強化されてきたのかその前と後でどのように状況が変わってきたのか、防災行政に関する機構のいろいろな見直し、それからそれを機動的にどのようなふうに都道府県との関係でしてきたのか、そこのところをきっちりと対応お話しいただきたい、お示しいただきたいと思いますけれども、よろしくお願いします。
  28. 池端清一

    池端国務大臣 松下委員御案内のように、災害対策に係る国の組織のあり方につきましては、阪神淡路大震災以降、国会でもさまざまな議論がなされてきたところでございますし、また今度は新進党さんからも一つの対案が出ているところでもございます。  国土行政を担う総合調整官庁としての国土庁といたしましては、先ほど政府委員からもお答えいたしましたように、防災行政について総理大臣を補佐する責務を持っている国土庁防災局体制の強化を図っていく、そして災害の予防から応急対策、復旧、復興、これらの一連の施策をより的確に推進することを目標にして、情報収集なり伝達体制の充実や災害対策の調整能力の向上を図ることなどによって、その機能を十分果たしていけるもの、果たしていきたい、このように考えておるところであります。
  29. 松下忠洋

    松下委員 どのように立派な法律や制度をつくっても、それを動かす人の質の問題ですから、それは機能的にしっかりと動くように、ぜひこの法律の中身が実るようにしていただきたい。  いろいろ意見もございますし、まだ時間が足りませんけれども、また別の機会にいろいろ申し上げたいと思います。これで終わります。ありがとうございました。
  30. 左近正男

    左近委員長 松下忠洋君の質疑は終了しました。  濱田健一君。
  31. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 日本社会党・護憲民主連合の濱田健一でございます。  死者五万五千余名、負傷者四万一千五百余名、そして全壊家屋が十万棟以上という激甚な……(「五千五百」と呼ぶ者あり)死者が五千五百でした。ありがとうございます。阪神淡路大震災から約九カ月が過ぎてしまいました。私たちはこの間、この災害対策特別委員会を含めいろいろな場で、この激甚な災害のひどさを絶えず考えながら、これから先これらの災害というものをしっかりと防いでいくために国の方でもさまざまな取り組みをしてこなくてはならないということを論議してまいりました。政府の方も、さまざまな国民の意見そして提言、それらを丹念に拾い上げながら、震災そのものへの対応、そして今後の防災への対応に昼夜分かたず御努力くださいましたことにまずは敬意を表したいというふうに思います。  そして、地元神戸、淡路の皆さん方も、苦しみと悲しみ、それらを乗り越えて今一生懸命御自分の生活の回復や町の機能の回復に向けて御努力をくださっておりますことに、この件につきましても改めて敬意を表したいというふうに思います。  今回提出されました法案、政府案につきましても新進党案につきましても、両方の法案を読ませてもらいながらこれらの思いというものがお互いにしっかりと込められているというふうに感じているところでございますが、やはり具体的に、かつ迅速にこれらを仕上げていくということが本委員会の大事な使命ではないかというふうに思っております。  まず、大臣からお伺いしたいと思いますが、池端大臣、八月に御就任以来約二カ月半、この間、災害発生に際しての現実的な対応のためにさまざまな御努力をしてくださり、防災問題懇談会提言等をもとに今回の法案が提出されたものというふうに存じます。池端大臣は、就任直後、地元の神戸にも当然ながら早速入っていただきました。そのときの状況等現状に対して決意も込めて、その認識を含めてお話をお聞かせくだされば幸いでございます。
  32. 池端清一

    池端国務大臣 濱田委員お答えを申し上げます。  私、八月八日の内閣改造によりまして、阪神淡路復興対策担当大臣を拝命をしたわけであります。当然のことながら、早速八月十一日には現地に赴きました。また、九月の十二、十三の両日、再度現地を訪れまして、復旧、復興の状況把握に努めてまいってきたところでございます。  現地を訪れまして、電気、水道等のライフラインや道路、鉄道等の交通基盤施設等の復旧あるいは瓦れきの処理、こういったものが政府や地方自治体の皆さん、そして地元住民の皆さんの一体となった御努力によって急ピッチで進んでいる、そういう印象を持ってまいりました。しかし、復興の事業はまさに長期にわたる事業であり、その緒についたばかりでございます。そしてまた被災地では、本当に被災住民の皆さん方、歯を食いしばって、いろいろな問題がございます。懸命に復旧、復興のために努力をしておるわけでございます。その姿に何としても政治はこたえていかなければならない、そういう実感を強く持ってきたところでありまして、その後、私は再三の閣議においても、この状況閣議報告をして、各閣僚、政府一体となってこの問題に取り組むよう強く要請もしてきたところでございます。  復興におきましては、先生御案内のように、地元兵庫県が復興十カ年計画を策定をいたしました。この十カ年計画に基づきまして復興の取り組みをしておるわけでありますが、政府としても、七月二十八日の阪神淡路復興対策本部におきまして、地元の復興計画を最大限支援する、特に復興計画の前期五カ年において、緊急かつ必要不可欠な施策を復興特別事業として位置づけて、それらの事業の実施に全力を傾注する、こういう姿勢、取り組み状況を確認をいたしたところでございます。  これまで、御案内のように二度の補正予算を組みまして、約二兆四千五百億円の復旧対策費を計上してきたところでございますが、先般この臨時国会を通過をいたしました平成七年度第二次補正予算におきましても、事業費一兆四千百億円、国費で七千八百億円の復興関連事業等を盛り込んだところでございます。また、補助率のアップ等いろいろ地元から要請がございましたけれども、これらについては、地元地方公共団体の負担の軽減を図るために、補助対象の拡大等支援措置の充実を実施してきたところでございます。  何といっても、阪神淡路大震災への対応は、現下の景気回復と並んで最も重要な課題でございます。阪神・淡路地域の一日も早い復興、阪神・淡路地域を不死鳥のようによみがえらせることは我々の極めて重要な課題だ、こういう認識のもとに、これからも皆さん方の御支持、御協力を得ながら、私、全身全霊を傾けてこの問題に取り組んでまいりたい、このように考えておるところであります。
  33. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 大臣の決意、本当にありがとうございます。具体的な取り組みもまだまだ続くと思いますので、よろしくお願いをいたします。  二点目ですが、被災地は二度目の冬を迎えようとしております。気象庁の発表によりますと、ことしの冬は、今までの暖冬から、普通の名といいますか、厳しい寒さの冬になろうという発表もございました。被災地神戸には、八月十日までに設置計画目標の四万八千三百戸の応急仮設住宅も完成し、八月二十日には災害救助法による避難所設置も解除されてまいりました。  ここで、応急仮設住宅入居可能戸数のうち、数字によりますと、九月二十七日現在、千二百二十六戸が入居されずに残り、現在、公園のテントとか地元の地域公民館など、いわゆる待機所と地元は呼んでいるのでしょうか、そこで避難生活をされている方々も多数おられるという現地からの報告を受けております。  これらの皆さんの現実的な入居されてない数字、そして入居されないまたは入居できない事情等が国の方でわかっておりましたらお聞かせいただきたいというふうに思いますし、被災以来九カ月が過ぎまして、これらの皆さんがこのままこの冬を越していくということには、肉体的にも精神的にも非常に困難な状況があるというふうに思うわけでございます。災害救助法が解除されましたので、あとのケアについては当該の自治体が行うという基本的なことは理解しているわけでございますけれども、国としても、この辺のところをどのようによりよい方向での助言や御指導をされようとしていらっしゃるのか、お聞かせ願いたいと思います。
  34. 西沢英雄

    ○西沢説明員 災害救助法によります避難所の設置等の応急救助につきましては、ただいまお話ございましたように、八月二十日をもちまして、地元との相談をした上で終了をしたところでございます。  その時点で、仮設住宅につきましても、量的には全員入れるだけのものを確保したわけでございますけれども、自宅を補修中であるとかあるいは希望する仮設住宅に入れないといったもろもろの理由から、応急仮設住宅に入居しないでいわゆる待機所などに残っておられる方々が、昨日、十月二十三日現在で千七百四十九人いらっしゃるというふうに聞いております。  これらの人々に対しましては、いろいろな事情がございますので、個別的な相談を通じながら、引き続き、今後生じるであろう空き家も含めまして、応急仮設住宅への入居あっせんを進めていく。それから、高齢者や障害者の方々に対しましては、ケアつきの地域型仮設住宅がございますので、こちらへの入居あっせんを行うとともに、必要な福祉サービスを提供するといったきめ細かな生活相談を進めていく。これらを通じまして被災者の方々の一日も早い自立を支援していきたいというふうに取り組んでいるところと伺っております。  また、待機所の設備につきましては、これから寒さに向かうわけでございますが、日常生活に支障のないよう、暖房設備等の整備に努めているところでございます。  災害救助法は一応終了したわけでございますけれども、厚生省といたしましても、被災者の個別の事情に応じた自立のための援助が円滑に進められますよう神戸市において努力しているところでございますので、できる限りの支援をしてまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  35. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 地元が積極的に取り組んでいらっしゃるということは理解できますが、財政的な面を含めて、国が手当てできるところはこれから先も援助をお願いしたいというふうに思います。  直近の問題について、少し御質問申し上げたいと思います。  マグニチュード五から六という伊豆東方沖地震、奄美近海地震が連続して発生いたしました。これらの初期対応についてどのようにされたのか。大臣を中心に必死で頑張っていただいたと思うのですが、少し報告をいただきたいと思います。
  36. 池端清一

    池端国務大臣 今先生、伊豆、奄美地震発生直後の初動態勢お尋ねでございますが、私は、最近の伊豆地方及び奄美地方の活発な地震活動に対しましては、関係部局に、速やかに情報収集を行うことや警戒体制を強化することなどを指示いたしてまいりました。同時に、官邸とも緊密な連携をとりつつ、政府として適切な対応の実施に努めてまいってきたところでございます。  具体的には、伊豆半島東部における地震活動が活発になりました九月二十九日以降、事務当局に対し指示をいたしまして、国土庁としては当直体制を実は強化をしてまいりました。十月二日、さらに十月四日には、災害対策関係省庁担当者連絡会議等も開催をいたしまして、地震活動や対応状況についての情報交換を行うとともに、万全の警戒体制をとってきたところでございます。  また、十月六日、神津島において震度五を記録した伊豆半島南方沖を震源とする地震につきましては、緊急参集をいただきました事務当局に対して指示をいたしまして、自衛隊や海上保安庁、消防庁、警察庁等の航空機等による被害情報等の迅速な収集を実施するとともに、発災当日の十月六日には、同様、災害対策関係省庁担当者連絡会議も開催し、情報の交換あるいは関係省庁の緊密な連携の確保に努めてまいってきたところでございます。  また、十月十八日及び十九日には、奄美大島近海を震源とする地震につきましても同様な体制をとってまいりまして、国土庁としては万全の体制をとって今まで対応してきたということでございまして、国土庁等関係部局も本当に連日連夜、当直体制を強化しながらこの対策に努めてきた、こういう状況でございます。
  37. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 先ほどの松下議員質問の中でも、政府の方からも新進党の方からも、大規模災害地震に対して、初期の情報収集、そして情報を地元にどう提供していくかということが阪神・淡路の大震災の中でも一番の問題点だったということがございます。今お話しくださいましたように、いろいろな形でのそれらの機敏な活動というものが今後ともできますようにお願いしたいと思いますが、先ほど冒頭の松下議員質問でも、奄美近海地震について積極的な対応を今後ともよろしくお願いしたいということでございました。特に一番近かった喜界島、皆さんも御存じのとおりサトウキビが主な産業でございまして、穏やかな海と畑の生活をしていらっしゃる皆さんでございます。  今度の地震のメカニズムというものが、ゆうべのNHKの放送を見ていますと、フィリピンプレートがずれ落ちたというようなたしか京都大学地震研究所等のニュースが流れておりましたが、ここは霧島火山帯の一つの流れの中にも入っておりまして、火山性なのかプレート型なのかというようなさまざまな意見が出されているようでございます。  活動の現状について、どのような状況になっているのかということを気象庁にお伺いしたいと思いますし、なかなか難しいのでございましょうが、今後の終息の見通し等、科学技術庁にお尋ねを申し上げたいと思います。
  38. 吉田弘

    ○吉田説明員 御説明いたします。  平成七年十月十八日十九時三十七分及び翌十九日十一時四十一分、奄美諸島喜界島の南東約七十キロメートルの海域で、地震の深さが約二十キロメートルのところで地震発生し、それぞれ喜界島で震度五を観測しております。これらの地震はフィリピン海プレートの沈み込みに関連して発生したものと考えられておりまして、火山の活動とは直接の関係はないと考えております。この地震の後、喜界島で体に感ずる地震は、十九日の百二十五回を最高に、消長はあるものの次第に減少しておりまして、昨日二十三日には体に感ずる地震は十一回でございました。  なお気象庁では、この地域地震活動につきまして現在も注意深く監視しているところでございます。
  39. 上原哲

    ○上原説明員 お答え申し上げます。  今後の見通してございますが、今後の見通しにつきましては、去る十月十九日に地震調査研究推進本部に設けられました地震調査委員会におきまして御検討いただいておりまして、この地域における過去の例を考えますと、今後活発な地震活動が続く可能性もあるが、あるいはこのまま活動が次第に低下するかもしれないということで、今の状況判断を下すのは極めて難しいという御見解をいただいております。現在のところ地震活動は落ちついておりますが、今後とも気象庁等関係省庁と連絡をとりつつ、万全な体制で臨んでいきたいと考えております。  以上でございます。
  40. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 今の部分に少し関連するのですが、六月十六日、地震防災対策特別措置法が公布をされました。この中には、総理府に地震調査研究推進本部設置し、その総括は科学技術庁が行うこととなっております。この特別措置法第七条二項四号には、「地震に関する観測、測量、調査又は研究を行う関係行政機関、大学等の調査結果等を収集し、整理し、及び分析し、並びにこれに基づき総合的な評価を行うこと。」「総合的な評価」というところがポイントだと私は思っております。  こうなっておりますが、今回の伊豆東方沖地震、奄美近海地震にしても、行政情報に責任を持つという部分、難しいのでありましょうが、いわゆる予知機能を含めて、もう少し機能が発揮されていないのではないか。法律ができましてわずか三カ月ぐらいしかたっておりませんので、今徐々に整備されつつあるというふうにも考えられますが、今後この部分をどのように機能充実していこうとされておるのか、この辺の取り組みの状況を科学技術庁にお伺いしたいと思います。
  41. 上原哲

    ○上原説明員 地震調査研究推進本部自体は、御指摘のとおりこの七月十八日発足したばかりでございまして、現在鋭意準備を進めているところでございます。しかしながら、今回の地震それから先回の伊豆東方沖地震も含めまして、私どもといたしましても活動しておりまして、先ほどもちょっと御紹介申し上げましたが、地震調査研究推進本部に設けられました地震調査委員会等の活動をちょっと御紹介申し上げますと、二十九日に起きました伊豆東方沖地震につきましては、データの集積期間、評価するためにはデータの結果が必要でございます、ある一定程度のデータの解析時間等を考慮いたしまして、十月三日には臨時の調査委員会を開く、それから十一日にも開催し、また十九日も開催するという形で、私どもとして最大限対処できる範囲において実施しているところでございます。  そしてなおかつ、データの公表の形式とかデータそれ自体の評価もまだ、今後勉強して充実する必要が非常にあると思っておりますので、そういう観点から、将来に向けて、総合的評価それから公表の問題につきましても現在検討を進めておる段階でございます。  以上でございます。
  42. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 今の部分でいわゆる政策委員会ですかというのが設置されていると思うのですが、広報というか、国民全体に素早くそしてはっきりしたものを知らせていくという取り組みがもう少し足らないというふうに思っているものですから、こういう質問をしているのですけれども、その政策委員会の取り組み、ありましたら少し。
  43. 上原哲

    ○上原説明員 お答え申し上げます。  先ほど御紹介申し上げました点につきましては地震の評価の部分でございまして、地震を評価する機能が地震調査研究推進本部に設けられました地震調査委員会でございまして、先ほど、活動については御披露申し上げました。  それで、広報それ自体につきましては、公表の形式も含めましていろいろ、どのような効果的な広報ができるか、またこれまでの研究成果等をどのように利活用できるかという観点から、地震調査研究推進本部に設けられました政策委員会のもとで広報小委員会という小委員会を現在つくっております。そこの中で現在、先ほど申し上げましたとおり、効果的な広報とかわかりやすい広報、地震問題は非常に難しゅうございますので、言葉の問題も含めまして現在検討を進めている段階でございまして、早い時期に結論を出したいというふうに考えております。
  44. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 阪神・淡路の震災を受けまして七月に防災基本計画が全面改定をされました。今回出されております災害基本法の改正によりましてこの防災基本計画も再改定することが必要になるのかどうか、必要であればどのような部分を手直しされようとするのか、非常に大もとになる部分ですので、そこのところをお聞かせ願いたいと思います。
  45. 村瀬興一

    村瀬政府委員 今回の法律改正に伴いまして防災基本計画の改定が必要になるというふうに考えているところでございます。  例えば、緊急災害対策本部設置要件が緩和される、それから市町村から内閣総理大臣に直接、被害状況等報告ができる場合が出てくるというようなことでございますので、そういった点につきましての記述の修正あるいは追加が必要になってくるというふうに考えているところでございます。  いずれにいたしましても、今後、関係省庁とともに、今回の法律改正に伴います防災基本計画の見直しにつきまして十分な検討を行って、適切な対処をしてまいりたいというふうに考えているところでございます。
  46. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 少し予定した時間よりも早く終わりそうでございますが、きのうの朝日新聞に「阪神大震災死者の遺族弔慰金 兄弟姉妹は対象外「受給資格者なし」五百四十五件」という見出しの割と大きな記事が載っておりました。議員立法でつくった法律ですので、本当に混乱しているときに、そのときの状況では救済に向けての大変大きな意味のある法律だったというふうに思うわけですが、大阪弁護士会の皆さん方が、やはりこの法律についてもっともっと幅広く運用できるように対応していく必要があるというようなことも述べておられます。  また、角度は違いますが、子供たちの心のケアの問題、マスコミでも取り上げられているようでございますけれども、絵をかかすと画用紙一面が真っ黒に塗りつぶされた絵が提出されるとか、その中に黒と赤の絵の具でしか描かれないような部分が出てくるとか、やはりこの大規模な悲惨な災害に子供たちがどれだけ心を悩ませてきているかということを象徴しているものだというふうに私は思うのでございます。  先ほど大臣が、これから先もさまざまな課題について全力で努力をするという決意をいただきましたけれども、やはり人間生きていく中で、物質的なものは何らかの措置対応できる、素早く対応できる部分はあるのですが、心の問題というのは長く尾を引くと私は思います。ぜひこれらの面も今まで取り組んでいただきました以上に力を入れて対応していただきたいということを申し述べまして、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  47. 左近正男

    左近委員長 濱田健一君の質疑は終了しました。  高見裕一君。
  48. 高見裕一

    ○高見委員 まず、今回の政府の法案に対して質問をさせていただきます。  阪神淡路大震災における教訓としては、災害時における危機管理体制に集約することができると思います。新党さきがけでは七月十七日に、危機管理体制強化のための提言として、緊急時における内閣総理大臣指揮命令権の明確化を含めた提言をしております。  その内容は、緊急時の内閣総理大臣指揮命令権を確立するなどの官邸機能の強化のために、内閣法を改正すること。具体的には、一定期内閣議を経ずに内閣総理大臣がみずから各省大臣にかわって直接行政各部に対して、指揮命令できることを規定するべきであり、今後、速やかに政府・与党内で調整し、早期提出を図るべきであるというのが一点。  二点目は、阪神淡路大震災の際にも、国土庁災害対策の手足となる機関を持たないことがネックになっていたことを踏まえて、国土庁を改編し、防災局を独立させて緊急災害対策庁を創設するなどし、警察・消防当局と防災当局の指揮命令系統を統一するべきであるということであります。  さらに、正確な情報をいかに多く集めて的確な判断を行うかも重要になってくるのではないでしょうか。  このような内容について、今回の災害対策基本法がつくられる過程においてどのような議論がなされたのか、お聞かせをいただきたいと存じます。
  49. 村瀬興一

    村瀬政府委員 災害対策におきます危機管理のあり方につきましては、防災問題懇談会で議論されました結果、緊急災害対策本部設置要件の緩和及び組織の強化とともに、指定行政機関の長への指示権の付与による緊急災害対策本部長の権限の強化を内容とする災害対策基本法改正を行おうというものでございます。  今先生おっしゃいました、新党さきがけより七月に「危機管理体制の強化のための提言」が出されまして、内閣法の改正による官邸の機能強化につきまして与党内で議論されているということは承知いたしておりますけれども、先ほど申し上げました防災問題懇談会におきましては、この部分の、内閣法についての議論はなされておりませんで、災対法を中心とした緊急災害対策本部あるいは本部長の権限強化というようなことについて議論がなされておるわけでございます。  それから、緊急災害対策庁を設置いたしまして、警察、消防、防災当局の指揮命令系統の統一化を図るという構想でございますが、災害予防から応急対策まで広範囲に及びます関係省庁の防災行政の調整機能を果たすためには、国土庁が適当ではないかというふうに考えております。  それから、実動関係省庁を初め災害応急対策にかかわります多くの省庁の調整を行うためには、各省庁から幅広く情報を集めまして、全体を把握しながら調整することが必要であると考えておりまして、実動部隊をその中に持っているかどうかということは、それほど重要な要件ではないのではないかというふうに考えておるところでございます。  先ほども出ました防災問題懇談会の提言におきましては、「本部長を補佐する本部事務局である国土庁防災局については、本部長の権限を円滑に発揮できるよう、組織体制整備、専門家の養成等その調整・即応能力の強化を図る必要がある。」という提言をいただいておりまして、これを受けまして、防災局の現体制基本として、防災施策の一層の推進を図るため、体制の強化を図ることが必要であるというふうに考えておりまして、来年度の定数要求におきましても、定員増につきまして関係省庁と現在協議を進めているところでございます。
  50. 高見裕一

    ○高見委員 災害だけに限らず、政府の危機管理体制は現状ではかなり不十分であるというように思われます。  例えば、阪神淡路大震災では、初期の救助活動のおくれや避難民への統制の問題、情報の集中、発信、官邸リーダーシップの問題などさまざまな教訓があったと思います。また、最近では地下鉄サリン事件などもあり、危機管理の重要性が国民の間でも認識を強めてきつつあると思いますが、災害対策基本法に限らず、国の危機管理体制のあり方については今後抜本的な見直しが必要になると考えますが、現在、政府としてこの点についてどのようにお考えなのか、お答えをいただきたく存じます。
  51. 柴田健

    ○柴田説明員 我が国の危機管理体制全般についての考え方ということでございますが、基本的には関係行政機関がその所掌事務について対処することとし、必要に応じ内閣官房、総合調整官庁や省庁横断的な対策本部のような組織連絡調整を行うということになっております。最近の例で申し上げますと、ハイジャック事件発生の際に内閣に対策本部設置いたしましたことなどがその一例でございます。  このような仕組みのもと、政府といたしましては、平素から関係省庁において情報収集機能等の強化を図りますとともに、内閣官房を中心に関係省庁間で緊密な連絡体制をとり、情報収集、分析を行っているところでございます。  また、緊急事態発生した場合の政府部内の情報連絡、意思決定の仕組み等についてのマニュアルを整備するなど、緊急事態発生に際し迅速的確に対応できるよう体制整備に努めているところでございます。
  52. 高見裕一

    ○高見委員 どうも今の延長線上の小手先の対応で十分だというふうな御答弁に聞こえるのですが、そうでしょうか、否でしょうか。
  53. 柴田健

    ○柴田説明員 危機管理体制につきましては、常に点検、改善をすべきものと私ども考えておりまして、今後ともさまざまな情勢を見ながらさらなる危機管理体制の充実を図ってまいりたいと考えているところでございます。
  54. 高見裕一

    ○高見委員 ぜひそのようにお願いをしたいと思います。また、抜本的な見直しが必要になると私どもは考えておりますので、今後また意見を述べさせていただきたいと思います、場所を変えて。  さて、ちょっと建設省にお尋ねをしたいのです。  今回の阪神淡路大震災現地におって痛感したことは、ブロック塀の恐ろしさでございます。今回の地震が起こった時間は早朝であったために直接の被害者は余りいらっしゃらないと思いますが、ブロック塀が倒壊したために緊急車両、例えば救急車や消防車が路地に入ることができずに、救助活動や消火活動を行うことができずに交通渋滞を招き、そのために被害を拡大したというふうなことが、これはかなりあったはずでございます。その意味でも、ブロック塀というものが本当に必要なのか、プライバシーを確保するという目的であるならば生け垣や木の塀であってもよいのではないかという思いが強くあります。  日本は国土全体が地震の多発地帯に位置していることから、全国的に見てもブロック塀に対する規制はぜひとも必要であると考えます。確かに、景観の面など都市計画の面から自治体でも対応がなされているのですが、それで十分であるとは到底考えられず、国民の緊急時の命の安全を確保するという観点から、国としても一層のブロック塀に対する規制を強化するべきであると考えますが、この点についての建設省としての考えをお聞かせいただきたいと思います。  一言加えますと、要は実際にブロック塀が倒壊をしている惨状を見ると、もしあれが子供の通学時間帯だったら、そう思うといても立ってもいられなくなるのですね。ところが、現実には地方自治体にいわば任されている状況がずっと長く続いている。しかし、もう地震が来るのはわかっている、我が国が地震の活動期に入ったことはわかっている。その現状を把握しつつ今のままで本当にいいのか。これは実は二回目の質問なんですが、ぜひお答えをいただきたい、前向きに。
  55. 佐々木宏

    ○佐々木説明員 ブロック塀の安全性の問題についての御質問お答え申し上げます。  ただいま先生御質問いただきましたように、阪神淡路大震災におきましては、地震発生が早朝ということもございまして、ブロック塀によります人的被害については報告をされておりません。しかしながら、倒壊等が数多く発生をして御指摘のようないろいろな支障が生じたというような事実は、状況把握をしておるところでございます。  建設省といたしましても、ブロック塀の地震時における安全性の向上につきましては従来から取り組んでまいっておりまして、補強コンクリートブロック造の塀につきましては、建築基準法によって、高さ、厚さ、鉄筋の間隔あるいは基礎の深さなどの必要な構造基準を定めてその遵守を求めているところでございます。この基準につきましては、宮城県沖地震におけるブロック塀の被害、これを考慮いたしまして、昭和五十六年に無筋の場合の高さの制限強化といったような点についての改正を行ったというものでございます。  また、ブロック塀の施工者あるいは住民の方々向けにパンフレット等を作成して、ただいま申し上げましたような構造基準の徹底を図るということも進めておりますし、また古いものについても、それに準じて塀に直角に控え壁を設けるといったような補強の方法について普及に努めてまいっておるところでございます。  また、建設省では、毎年三月と九月に建築物防災週間というものを設けまして、地方公共団体と協力して建築物の防災対策についての啓発活動というものを行っておるところでございますが、本年の九月におきましては、特に地震対策に重点を置いている中で、ブロック塀の安全対策についても特に力を注ぐように地方公共団体を指導しながら強力に手をとり合って進めておるという状況でございます。  また、御指摘のような生け垣の設置につきましても、公共団体の条例あるいは要綱等によって全国で二百二十二の市町村で生け垣の設置、保全に対する助成が講じられているという状況でございます。  今後とも、こういった施策によりまして全国的にブロック塀の安全対策が促進されますように、基準や補強の方法の徹底あるいは普及といったようなこと、さらには緑化対策推進といったようなことにより一層強力に努めてまいりたいと考えておるところでございます。
  56. 高見裕一

    ○高見委員 全国三千数百ある自治体の中で二百二十余りの自治体が生け垣等の指導をしていらっしゃる。三千対二百というのは余りにもギャップのある数字かなと思います。  また、ブロック塀で今回はたまたま亡くなった方がいなかったということでありましたが、先ほども申し上げましたように、ブロック塀が崩れていることによって結局現場にたどり着けなかった。これはもう本当に自分も含めて多分神戸の他の議員の方々は実感をしておられると思いますけれども、あまたありました。ぜひ今の延長線上にある考え方ではない、より強力な指導というものを切にお願いしたい。このことを言っておかないと、次の地震が来たときに、あのとき現場を知っていた人間は何をしていたんだということに必ずやなるだろうと確信を持っております。ぜひそのそしりを受けないためにも、政府の方々にも全力を振り絞ってこの対応に当たっていただきたいと存じます。  さて、それでは、新進党の提案者の皆様にお尋ねを申し上げます。たくさんお尋ねしますので、ひとつよろしくお願いいたします、簡潔に。  それでは、新進党お尋ねいたします。  新進党災害対策基本法改正案においては、非常災害対策本部設置閣議を不要としており、緊急時における速やかな対応を目指しているものと考えられますが、本部長の権限として指定行政機関の長に対する指示権限が認められているのは行き過ぎであるように思われてなりません。新進党案では、非常災害対策本部対応が難しい場合には緊急災害対策本部設置すれば総理の強力なリーダーシップを発揮させることが可能なのであり、そちらで対応すれば足りると考えられます。緩やかな要件で強力な権限を与えてしまうことはかえって行政の統一的な執行を妨げることにもなりかねないと考えられますが、その点についてのお考えをお聞かせいただきたく存じます。
  57. 小坂憲次

    小坂議員 高見委員の御指摘でございますが、私どもが、閣議を不要として非常災害対策本部設置し、かつまた、指定行政機関の長に対する指示権を与え、また、総理大臣本部長として強力なリーダーシップを持たせようとしたことは、かかって、高見議員がいろいろな書物にもお書きになっていらっしゃいますように、発災直後からその本部設置され、そしてさらに強力な指示のもとに災害応急対策が実施されるまでの間がすべて勝負なんだ、災害においては初動態勢というものが非常に重要だというその御指摘を私ども研究した成果でもございます。そういう点で、非常災害対策本部というのは災害発生後一刻を争って設置できるような体制にしておかなきゃいかぬ。したがって、閣議を招集するためにいろいろ時間を空費するようなことのないように、今回の大震災に際しまして設置に何時間もの時間を空費したというこの反省からでございます。  そして、発災直後から緊急災害対策本部設置される、閣議が開かれる、そこまでの時間が勝負だと私ども考えておりますので、今御指摘のような点を考えますと、まず設置要件は非常に緩くしておいた方がいい。そして、かつ緊急災害対策本部設置するまでの間にいろいろなものを、対策をとるとすれば、やはりその段階でも非常災害対策本部本部長にはリーダーシップを持ってもらわなきゃいかぬということで設置した内容でございます。  本部長はその権限の一部または全部を副本部長に委任することもできるように規定しておりまして、行き過ぎではないかという御指摘ではございますが、そういった点、過重な装備にならないように、例えば、交通災害であれば運輸大臣あるいは国土庁長官、いろいろな国務大臣の方に担当していただけるようなそういう道も、副本部長になっていただいて、権限の全部または一部を委任を受けて強力に推進していただける体制整備しておりますので、より機動的なものになるというふうに確信をいたしております。
  58. 高見裕一

    ○高見委員 続けてお尋ねをいたします。  緊急災害対策本部の構成員について、新進党案では、本部員は国務大臣及び国務大臣以外の指定行政機関の長によって構成されるとされておりますが、これは多分、消防庁長官や警察庁長官などを想定しておられると思いますが、国務大臣と並ぶ対等の構成員とは権限的になり得ないとも考えられ、緊急対策本部の円滑な運営にかえって支障を生ずるということも考えられると思うのですが、その点についてお聞かせをいただきたく存じます。
  59. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)議員 今、高見議員が御指摘になりました点でございますが、質問の中にもありましたけれども、警察庁長官、消防庁長官以外にも、災害に関しては気象庁長官や海上保安庁長官も関連してくると思うのですが、そういう指定行政機関の長官が国務大臣と対等の本部員でなくてもよい、そのほかの職員で十分だ、そういう御意見だというふうに思ったわけですが、このような指定行政機関の長官というのは、災害時において極めて重要な役割を果たす手足を持った長官である、そのように私どもは認識しているわけでございます。  緊急対策本部において最も重視すべき事柄は、いかに災害応急対策を迅速かつ強力に推進するかということであるはずでございまして、指定行政機関の長には災害応急対策を的確かつ効率的に推進できるというさまざまな権限が与えられているのに、それを政府案のように上下の関係に執着して、その重要な役割を果たす権限を持っている長官にそういう本部員の地位を与えないというのは、何をまず第一にするのかという物事の本質を見誤っているのではないか、そのように思うわけでございます。その指定行政機関の長を入れたからといって、この災害対策本部の運営に支障を生ずるとは私どもは考えておりません。  以上でございます。
  60. 高見裕一

    ○高見委員 さらにお尋ねいたします。  緊急災害対策本部本部長の権限として、指定行政機関の長への指示権の付与に加えて、新進党案では、指定行政機関の長の権限の代行を挙げておられますが、次のような問題が生じる可能性があるのではないかと思います。  すなわち、そのような規定を置くことによって、各国務大臣の存在意義を失わせることが起こり得、内閣が一体として緊急事態に当たるべきところを頭ごなしに権限の代行を行うことになれば、事務の円滑な遂行にも影響を及ぼしかねないのではないかということです。各大臣のもとに各省庁の持てる能力を最大限発揮することによって災害対策推進を図ることを原則とするべきであると考えますが、本部権限として与えられている権限のうち、指定行政機関の長などへの指示権と指定行政機関の長などが実施する災害応急対策の総合調整、指定行政機関の長などの権限の代行の順序関係はどのようになっているのか、内閣として一体的に事務遂行が行われるような配慮はなされているのかについて、お答えをいただきたく存じます。
  61. 小坂憲次

    小坂議員 御質問お答えを申し上げます。  緊急災害対策本部本部長に指定行政機関の長の権限の代行までも認めている、こういった規定はどのような背景からという御質問でございますが、この点につきましては、従来の縦割り行政の枠にとらわれずに災害応急対策を迅速かつ強力に推進するための方策として私どもは提言をいたしまして、そして法案にまとめたものでございます。  緊急災害対策本部設置されるような大災害の場合には、国家の最大の役割というのは国民の生命と財産を守ることであります。そのためには、必要最小限ではございますけれども行政組織の壁を取り払って、平時とは違った体制において強力な対策推進することが必要だ、その点から考えたわけでございます。また、災害応急対策が一方で国民の私権の制限を伴う場合もあるわけでありまして、最高責任者たる内閣総理大臣本部長になって、みずからの責任において本部長の権限をかわって行使することの方が適当な場合もあるのではないか、そのような場合に備えて整備をいたしました。  例えば、道路の交通規制等をしなければいけないような場合、こういった場合に、警察あるいは道路管理者としての建設大臣、そういった関係、また車両管理者としての運輸大臣等の権限がいろいろふくそうする場合に、やはりその調整に時間をかけないで直ちにいろいろな対策がとれるような、本部長としての内閣総理大臣の活動がしやすいようにしたものでございまして、これによって内閣の一体性が阻害されるとは思っておりません。
  62. 高見裕一

    ○高見委員 続けてお尋ねいたします。  新進党案では、第百九条の二において、災害緊急事態に際して内閣が緊急の政令制定権を有するという規定が置かれていますが、実際にこの規定が機能する場合はほとんどあり得ないのではないかとも考えられます。政令についてまとめている間に、国会あるいは参議院の緊急集会を召集することが実際には可能であり、法律によらない政令を制定する必要性はほとんどないのではないでしょうか。  実際に問題が生ずる場合をお答えいただきたいのと、そのような余り想定し得ないような場合について法律に基づかない政令制定権を与えることは、国の基本的な構造、すなわち、国会が法律をつくり、それに基づいて政令をつくるという構造の例外として認めるに足り得るだけの緊急性が本当にあるのか、慎重な吟味が必要であると思うのです。実際に、このような海外支援の受け入れ体制はふだんから整備を行うべきものであって、緊急時に慌てて制定を行うべきものではないと考えます。したがって、ふだんの努力をせずして緊急時の政令制定権を与えるべきではないと考えますが、そのあたりの考え方についてお答えを賜りたく存じます。
  63. 小坂憲次

    小坂議員 お答えいたします。  百九条の二において想定しておりますのは、災害緊急事態に際しまして、「法律規定によっては被災者の救助に係る海外からの支援を緊急かつ円滑に受け入れることができない場合において、国会が閉会中又は衆議院が解散中であり、かつ、臨時会の召集を決定し、又は参議院の緊急集会を求めてその措置を待ついとまがないとき」であります。現実には、臨時会を即座に召集すれば本来の法律改正対応することが可能であり、またそうすべきでありましょう。  その意味におきましては、この規定は限られた場面でしか使えないかもしれません。しかし、このことは現行の百九条の緊急政令についても同様でありまして、例外的な場合だから認めなくてもよかろうというのであれば、百九条自体の規定も同じことになると考えております。むしろ、このようなまれなケースであっても、それを想定して緊急時に備えるのは重要なことではないでしょうか。  先生がおっしゃいましたように、海外支援の受け入れ体制はふだんから整備を行うものだ、これはこのとおりでございまして、緊急時に慌てて整備が行われるようなものではないと考えますが、新進党案におきましても、海外支援の受け入れ体制整備については二十八条の四に規定しております。すなわち、緊急災害対策本部長は別に法律で定めるところにより必要な措置を講ずることができるものとしておりますが、これは、この改正案が成立した後にそれぞれ所要の関係法律改正を行いまして、緊急時に平時から備えておくということであります。  百九条の二の緊急政令制定権は、その法律改正がいまだなされていない場合あるいは想定し得なかったような事態が生じた場合に備えるための規定でありまして、極めて入念に手当てしたものと考えております。
  64. 高見裕一

    ○高見委員 今回はこうして政府からも新進党からも災害対策基本法に対する改正案が提出されておりますが、災害に対する迅速な対応や平常時に何を行うべきかを両者ともに真剣に検討して御提出されたものであると存じます。  ところで、その二つの法案を比べた場合に違いを強く感じるのは、情報の集中の部分であります。新進党案では、内閣あるいは総理の強力なリーダーシップによって災害初期の救助活動や復旧作業、被災者の安全の確保を行おうとするものでありますが、できるだけ正確で多くの情報を集中しなければ、的確な判断を行うことができず、強力なリーダーシップも発揮しょうがないという事態が生じかねないように思います。特に、大規模災害が起こった場合には、国として客観的で的確な判断を行うことによって効率的で的確な災害救助活動などを行うことが可能であると考えます。その点、新進党案では、現場状況を一番よく知っている市町村からの自衛隊の派遣要請権を与えることによって迅速な国の対応を図ろうとしているのだと思います。そう見えますが、緊急時には、むしろ国への情報の一元的な集中による的確な初期の災害への対応の方がかえって重要である場合もあるのではないか。その点について新進党案では情報に関する規定が何ら追加されておりません。  そのような規定を盛り込まれなかった理由などお答えをいただければと存じます。
  65. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)議員 今の高見議員の、情報を一元的に管理する、その規定を追加していないのはなぜかというお話でございますが、現行の五十三条でも、これがきちっと運用されれば被害状況報告というのは明確に、例えば都道府県から、また指定公共機関代表者あるいは指定行政機関の長からきちっと内閣総理大臣報告されることになっているのですね。要は、運用の問題が第一のポイントにある。  その上で、今回の政府案で我々も一点評価するところは、ルートとして市町村から都道府県に、そして都道府県から内閣総理大臣にという、この段階を踏んだ連絡ができなかったときに、市町村長から内閣総理大臣にというそのルートを確保されたことは評価するわけでございますけれども、問題は、これを受ける官邸体制が整っているのかどうかということが情報の一元管理ということでは非常に問題になってくるのではないかな。  その点で新進党案では、総理府及び内閣官房総合防災室設置することによって情報総理大臣に集中し、総理大臣の強いリーダーシップのもとに迅速かつ的確な対応を行うことができるように規定しておりまして、両方相まっていい情報の一元管理化というのができるのではないか、そのように思っている次第でございます。
  66. 高見裕一

    ○高見委員 自治体間の相互協力については、阪神大震災の教訓を踏まえてぜひとも推進しなければならないと考えています。日本は世界有数の地震発生国であり、地震は広域的に被害が及ぶことを考えれば、全国的に広域防災体制を展開する必要があるのではないかと考えます。特に、今回の地震は都市を直撃し、多くの被害を生じ、自治体の機能が麻痺したことから、周辺自治体の応援体制が必要であると痛感した次第であります。  東海地震などが予想される東海地方や関東地方では、以前からそのような場合に備えて自治体間の協力体制が整っていると聞いておりますが、全国的に見て、相互協力体制をさらに推進するべきであると考えます。  そのような観点から今回提出された二つの法案を見た場合には、政府案では相互に協力しなければならないとして協定締結の努力義務を規定し、改正案の第五条の二と第八条とをあわせ読むことによって協定締結の努力義務を強く押し出しているように思えるのですが、新進党案では「協定することができる。」ということであり、「できる」規定であれば法律規定しなくてもできることであり、法律上の規定としては若干弱いとも思えるのですが、地方公共団体間の相互協力について新進党としてどのように考えておられるのか、お答えを賜りたく存じます。
  67. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)議員 高見議員指摘のように、自治体間の相互協力につきましては、政府案では、今回の改正案で第五条の二及び第八条の配慮事項のところにきちっと追加をされております。それに対して、新進党案は、第四節の第二十八条の五というのを追加しまして「広域的な応援協定」というものを入れてございます。  それぞれそこの自治体間の相互協力を重視するという点では共通した視点に立っているのではないかなと私どもは思っているのですが、政府案の方をあえて言わせてもらうと、自治体間の相互協力について規定しておりますけれども、その内容については非常に抽象的な努力義務である。これに対して、新進党案では、水防、消防、救助そのほか災害応急措置の相互応援に関する広域的な応援協定という具体的な事項について定めております。  さらには、広域応援協定については、新進党案では、三十五条において防災業務計画及び地域防災計画に重点を置くべき事項として規定し、さらには四十条、四十二条にも、都道府県及び市町村地域防災計画に定める事項として規定することによって阪神大震災の教訓を反映した実効性の確保が図られているものでありまして、このように具体性と実効性の双方において新進党案に盛り込まれているというところを認識いただきたいと思います。  以上です。
  68. 高見裕一

    ○高見委員 災害対策基本法第三十五条二項の防災業務計画及び地域防災計画の重点項目について、新進党お尋ねをいたします。  新進党案においては当該部分について十三項目の追加をしているところでありますが、この追加事項に関しては、近年の雲仙普賢岳災害阪神淡路大震災等を踏まえた上での追加であり、阪神淡路大震災発生時に被災した一人としては十分に内容についても理解できるものであると思います。  しかし、これだけの項目を追加した場合には、重点項目が余りにも多くなり過ぎて、何が実際に重要であるのかがわからなくなる危険性があると思います。また、時代の変化によってさほど重要とは考えなくてもよい項目についても整理しなければ、重点項目とは言えないのではないでしょうか。さらに、災害について何を重点とするかは時代とともに変わるものであり、地方によっても異なってくるものではないかと思います。  したがって、重点項目を整理せずにふやすことは、国が本当に重点を置くべき事項が何かということを見失わせるおそれがあり、もっと時代や地域に応じて柔軟に対応することも必要であると考えるのですが、どうして項目の追加だけを行うこととしたのかについての御意見を拝聴したく存じます。
  69. 長内順一

    長内議員 三十五条の二項の、防災業務計画等において重点を置くべき事項が多くなりはしないかという質問でございます。  高見議員指摘のとおりでございまして、私どもがこういう災害に遭ったときに、そこから学ばなければならないことは二つあると思います。一つは、速やかな救済と復旧対策をどうするかということと、もう一つは、その中から、これから二度とこういうことを起こさないというためにはどうするかということだと思います。  今回の私ども新進党案は、阪神淡路大震災、この中でさまざまな教訓を今後の防災対策の中にどう生かしていったらいいかということで検討したものでありまして、御指摘のとおり、十三項目新たに追加をしたものであります。  確かに、重点というのは時代とともに変わるものでもありますし、それからいろいろ検討をされなければならないことでありますけれども、こういう中で、具体的事項の列挙を削除して防災基本計画にゆだねるというこの政府案、これはこれで一考すべきものがあると思います。ただ、先ほど申し上げましたように、私たちは今回の震災から何を学んだかということについては、逆に法案の中にきちっと明記すべきであるというのが私たちの考えでありまして、そういう意味では、新進党案は、政府案から見ますとはるかに多くの内容を盛り込んだ、この点でぜひ御理解をいただきたいというふうに思うわけであります。  また、新進党案の四十条、四十二条にも概括的な事項を追加しておりますけれども、これについては、もう高見議員指摘のとおり、地域防災計画に盛り込む事項というふうになっておりますので、ぜひともこの点も趣旨を御理解いただきたいというふうに思います。  以上でございます。
  70. 高見裕一

    ○高見委員 新進党の皆さんにあとどうしても二つお尋ねしたいのですが、時間がないようなのでまとめて尋ねさせていただきますので、御容赦ください。二つ一度に尋ねます。  今度は、警戒区域の設定についてお尋ねいたします。  新進党案では、第七十二条の二において、都道府県知事の警戒区域設定権についての規定がなされているところであります。広域的な災害が起こった場合の警戒区域の設定権について、都道府県知事権限を与えております。  確かに、関係市町村の業務が混乱しているような場合に、客観的な立場から警戒区域を設定するということにより混乱を避けることができる場合もあるのでしょうが、逆に、都道府県市町村とで責任の押しつけ合いをするような場面が出てくるのではないか。過去にあったような気もします。それによって、実際に警戒区域の指定をするべきなのにどちらも指定をしなかったという事態が起こり得ることも想定しなければならないと考えられ、そのようなリスクを上回るだけの理由があるのか、一般的な指示権では対応できないものがあるのかについての見解についてお聞かせをいただきたいと存じます。  続けて、これが最後になりますが、政府の機構改善について新進党お尋ねをいたします。  新進党案では、総理府に総合防災室設置国土庁防災局を移すとともに、内閣官房に内閣総合防災室設置することとしておりますが、総理府本府に実務部門を新たに設置することに関しては、行政組織機構の整理がなされてきたこれまでの経緯にそぐわないものであり、むしろ新党さきがけが主張しているように、独立の省庁として緊急災害対策庁を設置するという方向で考えるべきであろうと思うのですが、どうして総理府本府にこのような行政組織をつくろうとしておられるのか、お答えをいただきたいのが一点。  また、総理府にこのような防災室設置した場合には、災害発生直後の緊急対応のみならず、災害予防、国土保全、災害復旧、さらに復興までをも含んだ総合調整を担当する国土庁との関係がどのようになるのか。ふだんの防災に関しても総合防災室で行おうとしているのか。国土保全と災害対策は密接な関係があり、両者の関係をどのようにしようとしているのかについても、あわせて整理をしてお答え賜りたく存じます。
  71. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)議員 ただいまの高見議員の一番目の御質問でございますが、警戒区域の設定に伴う心配な、責任の押しつけを行うような事態が起こり得るのではないか、そういう点でございますが、御質問の前段についてまずお答えさせていただきたいのです。  六十三条に規定されております警戒区域の設定というのは、もちろん災害現地状況を熟知し、また災害応急措置の第一次的な責任者である市町村長が行うべきことは当然であると私ども考えております。その意味で、私どもの案としては、市町村長がちゅうちょすることなく警戒区域の設定等を行うことができるように、新たに第八十六条の二に、国や都道府県市町村に対して助言また経費の補助等の支援に努めるよう規定を設けたわけでございます。ただし、雲仙普賢岳のように、一つの市町村をさらに越えて、設定すべき警戒区域が二以上の市町村にわたるような、それぐらいに広がるという広域的な警戒区域が必要になる場合というのが今の災害対策基本法規定されておりませんので、そういう広域的な観点からの都道府県知事の設定権を認めたというのが私どもの案でございます。  この警戒区域の設定というのは、一刻の猶予も許さない地域住民等の生命をきちっと守っていくということが最大の目的でございますので、そのときに市町村長都道府県知事が責任を押しつけ合っているようなことというのは住民から見ても認められるわけがないわけでございまして、御懸念のような責任の押しつけ合いといった事態はあり得ないもの、そのように私どもは考えております。  残余の質問につきましては、提出小坂議員からお答えいたします。
  72. 小坂憲次

    小坂議員 総理府に総合防災室設置するのはこれまでの行政組織の編成の経緯にそぐわないのではないか、こういう御指摘でございます。以前は、御指摘のように、総理府審議室に防災担当というのがございまして、それから国土庁防災局ができ、そして私どもの今回提案のように総合防災室設置するというのは、一見逆行しているように見えるかもしれませんけれども、また国土庁との関係はどうなのか、こう二つの御質問をいただきました。  まず、後段の質問の方からお答えを申し上げますが、新進党案では、国土庁防災局の所掌事務をそっくり総理府に移管することとしておりまして、国土庁には防災対策担当する部局はなくなるわけでございまして、その意味から国土庁の所掌事務との関係は問題にならないと考えております。  また、国民の生命、財産を守る重要な役割を担う防災行政は、各省庁に関連する総合行政でありまして、また同時に、強い政治的リーダーシップのもとに行われるべきものである。こういうことを考えますと、内閣総理大臣の直属の組織としてその充実強化を図ることをすべき、そういう観点から今回の改正を意図しております。  もとより、この組織改編に当たっては、単に所掌事務を移すばかりではなく、人事面あるいは予算面、こういった面においても格段の充実強化を図りたいというふうに考えておりますから、非常災害時に真に実行力を発揮できる組織になる、こう確信をいたしております。その意味で、高見議員が今御指摘になりました緊急災害対策庁でございますか、この設置の意図と、防災対策のエキスパートを配置して平時から備えよう、こういう趣旨においては相通ずるものがあると考えております。
  73. 高見裕一

    ○高見委員 ありがとうございました。  とにかく大きな災害時に少しでも被害を少なく、国民の犠牲を少なくということで議論されているものでございます。真摯に積み上げてまいりたいと思います。どうもありがとうございました。
  74. 左近正男

    左近委員長 これにて高見裕一君の質疑は終了しました。  この際、暫時休憩いたします。     午前十一時五十九分休憩      ――――◇―――――     午後一時一分開議
  75. 左近正男

    左近委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。小池百合子君。
  76. 小池百合子

    ○小池委員 災害対策基本法改正に関しまして幾つか御質問をさせていただきます前に、発生から九カ月がたちまして、神戸の町そして被災地もようやく動き始めた部分、まだ全く動いていない部分というようなまだら状況に陥っているかというふうに思います。  国土庁長官に御就任後、神戸の方を二度御視察に回られたということを伺っておりますので、後ほどその辺の御視察についても伺いたいと思いますが、これまで平成七年本予算の組み替えを新進党は要求させていただきました。また、平成六年の補正がこれまでも行われ、そして七年度の補正ということで、震災に対しての復旧・復興予算というのがこれまで何度がにわたって出されてきたわけでございますが、ここで一度整理をする意味で、これまでどれぐらいの予算がつぎ込まれてきたのか、その総額について伺いたいと思います。政府の方、よろしくお願いします。
  77. 角地徳久

    ○角地政府委員 お答えいたします。  国といたしましては、これまでに、阪神淡路大震災等関係経費といたしまして、平成六年度第二次補正予算で一兆二百二十三億円、平成七年度第一次補正予算で一兆四千二百九十三億円の予算を計上いたしましたほか、平成六年度予備費の使用、それから平成七年度公共事業予算の配分重点化による措置等もあわせて講じてまいりました。これらの予算措置と、今次平成七年度第二次補正予算では、総事業費一兆四千百億円、国費で総額七千七百八十二億円の経費を計上したところでございます。これらをすべて合わせますと、国費で約三兆三千八百億円の予算措置を講じたところでございます。
  78. 小池百合子

    ○小池委員 阪神大震災が起こりましたときに、その被害総額はということで、状況といいますか、時がたつに従いましてその被害総額というのがだんだん明らかになっていったわけでございますが、当時もいろいろな数字が言われておりましたが、しかし被害は軽く十兆円に上っているということを考えますと、まだまだ、国費三兆円ということでございますけれども、十分ではないということは、現地を見れば明らかなとおりでございます。  これからがまさに復興の本番ではございますけれども、やはりここは、関係の県そして市、町それぞれの地元の要求もございますけれども、また復興委員会の方で多々御提言もいただいております、もう少し全体像を踏まえた上でこの復興というものに当たっていかなければならないのではないか。それこそ今まだらな状況現地の方で続いているわけでございますけれども、復興についても何からぐはぐなところが出てくるのではないか。つまり、こういった全体像をつかんでおくということは何の点におきましても重要なことかと思います。  この全体像についてどういうふうにお考えになっているのか、御担当の方の御意見を伺います。
  79. 角地徳久

    ○角地政府委員 お答えいたします。  阪神・淡路地域の復興に向けましては、地元の兵庫県が復興十カ年計画を策定いたしまして、この計画を基本として復興に取り組んでいるところでございます。  兵庫県では、この復興十カ年計画に盛り込まれた事業の総事業費といたしまして約十七兆円との試算をしているところでございますが、この総事業費は十カ年にわたる事業費の合計でございます。かつ、民間の事業費も含んだ試算値であるというふうに聞いております。  国は、七月二十八日の阪神淡路復興対策本部におきまして「阪神・淡路地域の復興に向けての取組方針」を策定いたしております。その中で、地元の復興計画を最大限支援すること。特に、復興計画の前期五カ年におきまして、緊急かつ必要不可欠な施策を復興特別事業として位置づけまして、それら事業の実施に全力を注ぐことを基本といたしまして、取り組むべき施策等を明らかにしているところでございます。  今回の平成七年度第二次補正予算では、この取組方針に基づきまして、公的な住宅の供給など緊急を要する復興関連事業等を中心にいたしまして、取組方針で明らかにいたしました生活の再建、経済の復興及び安全な地域づくりの各課題に対応した事業費等を最大限盛り込んだところでございます。  国といたしましては、今次の補正予算を含めまして、先ほど申しましたように、国費で約三兆三千億円を超える復興関連事業費を計上しているわけでございますが、地元の復興計画に盛り込まれました事業の円滑かつ着実な実施に向けまして最大限の支援をしているところでございます。  今後とも、地元地方公共団体との緊密な連携のもとに、これら事業の円滑かつ着実な実施を図っていくことを初めといたしまして、復興のための諸施策の実施に政府一体となって取り組んでまいりたいと考えております。
  80. 小池百合子

    ○小池委員 今挙げられました三つのポイント、生活の再建、そして経済、産業の活性化、そして安全の確保という三点でございますが、もちろん、第一番目の最も生活に密着している生活再建関連でございますが、これはそこで生活する方々にとりましては本当に一刻も早く充実していかなければならないということを私も地元の人間といたしまして切に感じているところでございます。  一方で、二番目に挙げられました経済の活性化でございますが、円高の加速する状況ということ、それから産業構造の変革ということ、そういった背景もございまして、神戸の町というのは、経済の活性化ということがすなわち先ほどありました生活の再建にも結局はまたつながってくるということでございます。  神戸の中でも、やはり大きなポイントとして神戸港の再建ということがあるわけでございますが、この神戸港の復興に関して現在の進捗状況はどうなっておりますでしょうか。
  81. 川嶋康宏

    ○川嶋説明員 神戸港の復興につきましては、私どもも一日も早く全施設の復旧を図るべく努力をいたしておるところでございます。  現在は、およそ半数の施設が応急措置によりまして利用可能ということになってございます。このうち、コンテナ埠頭につきましては、二十一バース中の八バースが暫定的に利用可能という状況になってございます。また、新交通システムにつきましては、既に全線が運行開始をいたしております。さらに、第一線の防波堤につきましては、かさ上げ工事は既に終了をいたしております。これらの施設を利用いたしまして、現在では定期航路の約二百航路のうちで約百四十航路が再開をいたしております。  それから、外航船の入港隻数につきましても、九月時点では対前年同月比で約八〇%ぐらいまで回復をいたしております。また、外貿のコンテナ貨物の取扱量でございますけれども、速報値ではございますけれども、九月の対前年同月比に対しまして約七〇%まで機能を回復いたしております。また、阪神淡路復興委員会から御提言がございましたコンテナ貨物取り扱い機能の早期回復のために仮設桟橋埠頭の整備も現在鋭意整備中でございまして、間もなく一バースぐらいは供用できるのではないかというようなことを考えております。
  82. 小池百合子

    ○小池委員 神戸港の復興について伺ったわけでございますが、まだまだ復興と言えるものではなくて復旧にすぎないということがよくわかりました。また、荷揚げ量の前年度比につきましても、国内というかそこの定点観測としての七〇%までの機能回復ということであり、それは神戸港に限っての比較ということで、回復は徐々に行われているという数字として受けとめさせていただきます。  これは、神戸港に限らない方けでございますけれども、今の我が国の港湾施設がアジアの各国の施設の発展と比べましてただでさえおくれがちであるところに加えて、今回神戸港が大きな被害を受けたわけでございます。また、外航海運ですと大体二十フィートのコンテナが主流というふうに伺っておりますけれども、大型のガントリークレーンが不可欠となっているわけですが、こうした大型シーバースの復興計画、復旧ではなくて復興計画についてもう少し詳しくお伝えください。
  83. 川嶋康宏

    ○川嶋説明員 神戸港の復興に関連いたしましては、神戸港が神戸市だけではなしに、我が国全体の経済活動に与えます影響は非常に大きなものでございますので、その復興については第一次の補正予算あるいは第二次補正予算で予算を確保したところでございます。  お尋ねの大水深のコンテナ埠頭でございますが、現在港湾計画の中でポートアイランドの二期に五バース計画をされておりまして、この復興計画の中で既に事業を実施中でございます。そのうち二バースにつきましては、少なくとも平成八年度の中で供用開始できるように努力してまいりたいというふうに考えております。
  84. 小池百合子

    ○小池委員 先ほど前年度と比べて荷揚げ量で七○%の機能回復ということも伺いました。しかし、震災以前でも神戸は荷揚げ量で香港とか釜山とかそれからロッテルダムに比べますともうおくれをとってきているということでございます。  今お話ございましたこれからの計画ということでございますが、もちろん地元の要請はしっかりさせていただきますが、例えば成田空港というものが、地元の要請云々というよりも、国家としてのこれからのロジスティックスをどうするのかという大きな観点から進められたことを考えますと、やはり神戸港のこれからの復興というのはもっともっと大きな観点から進めていかなければならないのではないかというふうに思うわけでございます。  その中で、私、復興委員会の下河辺委員長がおっしゃっておられますいろいろな御提言でございますが、神戸とか日本とかそういったことだけに限らないで、グランドデザインと申しましょうか、極めて大きなビジョンを持った提言をなさっておられることに大変注目させていただいているわけでございます。復興委員会の御提言の中で、上海長江交易促進プロジェクトというものが含まれておりますけれども、これについて詳しく御説明いただくと同時に、これが今後どのようにして実現が可能なのか、またもしそれが実現が難しいというならば、何がその問題点となってくるのか、その点を明らかにしていただきたいと思います。
  85. 川嶋康宏

    ○川嶋説明員 阪神淡路復興委員会で御提言がございました上海長江交易促進プロジェクトにつきましては、長江流域の経済開発の将来性を勘案いたしまして、神戸港と上海あるいは長江流域の各地域との各港が直接交流できるようにその促進を図ろうというプロジェクトであるというふうに理解をしております。現在、神戸市におきまして、地元関係者を入れました委員会におきまして、神戸港と上海長江交易促進のための交流ゾーンでありますとか、あるいは交流の促進につきまして検討がなされております。  私どもといたしましては、その提言の趣旨を踏まえまして、計画面でありますとかあるいは事業面で適切な支援措置を考えてまいりたいというふうに考えております。現状ではそんなような状況でございます。
  86. 小池百合子

    ○小池委員 私、せんだって北京で行われました女性会議に出席すると同時に、経済特区天津の方も回ってきたわけでございますけれども、本当に大規模な、経済のかなめとなる港づくりなどが進められているわけでございますし、また、天津に限らず、中国の華南の方におきましては、これからの経済の入り口、出口としてのさまざまな港づくりというのが進められているのは周知のとおりでございます。  私は再三、ここで申し上げたいのは、国家プロジェクトとしての神戸港の復興、そして復興というよりも全く新しく、新たな経済情勢であるとか世界貿易をにらんだものにぜひともしていかなければならないというふうに思っているわけでございまして、それはまた港とそれに対しての地上のアクセスの問題、例えば現在ですと国道四十二号線の騒音の問題、公害の問題なども、これも裁判と絡みまして非常に複雑になっているわけでございます。  そういった意味で、神戸港のこれからの機能回復のみならず、アジアの、そして世界における神戸港としてのとらえ方ということをぜひとも進めていかなければいけないというふうに感じているわけでございますが、その点についての御所見を伺います。
  87. 川嶋康宏

    ○川嶋説明員 神戸港の位置づけについては先ほども御答弁申し上げたとおりでございまして、これから神戸港の新しい動き、あるいはアジアの各国との競争の中で神戸港が国際競争力をつけていくというようなことを非常に重要なことというふうに認識をしておりますので、先生御指摘のような形で神戸港の振興策を図っていく必要があるというふうに考えておるわけでございます。
  88. 小池百合子

    ○小池委員 ありがとうございました。  それでは、今回は新進党案そして政府案、両案が提出されております災害対策基本法改正ということについて質問させていただきたいと思います。  全体的に考えまして、私ども新進党の方も議員立法という形で提案をさせていただいた。国会の仕組み等々今問題がいろいろと出ている中で、議員立法をこれからもっともっとふやしていくことが政治の活性化ということに直接つながるということを、今回の私ども改正提出について私は強く認識したところでございます。これから政府案と新進案、両方で伺っていきたいと思っておりますが、基本は、今回の、九カ月前の阪神大震災の中で、何が機能して何が機能しなかったのか、どこに一体問題の根源があったのかということを明らかにするとともに、本当に機能する法律というものをともに仕上げていくということが必要なのではないかというふうに思うわけでございます。  まず、災害対策本部設置について伺わせていただきます。  政府案でございますけれども非常災害対策本部本部長が国務大臣というふうに指名されておりますけれども、ということはすなわち、非常災害対策本部長というのは原則国土庁長官であるというふうに受けとめてよろしいのでございましょうか。
  89. 村瀬興一

    村瀬政府委員 今までの例から見ますと、国土庁長官がなる場合が多いわけでございますけれども、必ず国土庁長官であるというわけではございません。
  90. 小池百合子

    ○小池委員 例えばどういうことを想定して、どういう人がなるということが想定できるのでしょうか。
  91. 村瀬興一

    村瀬政府委員 この点は、実はまだ防災基本計画の事故の部分、例えば航空機事故等が起きた場合にどう対処するかという問題については、この前防災基本計画を七月に改定いたしましたけれども、そこまではちょっとまだいっておりません。現在作業中でございますが、例えば航空機が市街地に墜落をして、航空機の乗員以外に一般の住民にも被害が出たというような場合にどうするかということがあろうかと思います。それから、これも政府部内での調整がまだ済んでおりませんけれども、鉄道事故があって、それが沿線の住民にも被害があったというふうな場合に、国土庁長官がなって対処した方がいいのか、あるいは、鉄道部門の責任者あるいは航空部門の責任者であります運輸大臣本部長になるべきかというような問題があろうかと思います。
  92. 小池百合子

    ○小池委員 この非常災害対策本部新進党案なんでございますが、本部長は内閣総理大臣、そして副本部長は国務大臣というふうに示されているわけでございます。新進党案の方ではこの副本部長、国務大臣とは具体的にだれを想定したものなのか、お伝えください。
  93. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)議員 今、小池議員指摘のように、新進党案では、非常災害対策本部内閣総理大臣本部長としてとにかく緊急にまず設けることが大事である。しかしながら、その場合に、災害状況によっては内閣総理大臣がずっと本部長であり続けて、全部の機能、権限を持ち続ける必要もない災害もあるわけでございまして、そういう意味から、本部長はその権限の一部または全部を国務大臣たる副本部長に委任することができる、そういう内容にしております。  今御質問の、副本部長というのは具体的にだれを予定したものかという内容の質問を続けられていると思うのですが、私ども、従来は国土庁防災局の所掌事務となっておりましたので国土庁長官としておりましたけれども、今回はそういう所掌事務が総理府に移管されまして総合防災室で行うという案にしておりますので、従来、非常災害対策本部長とされてきた国土庁長官は、当然には副本部長となるものではないというように規定をしております。  例えば、まず大規模災害に際して、今回阪神大震災の際に置かれた地震対策担当大臣を置くことであるとか、また組閣時に災害対策担当として国務大臣のうちどなたかをあらかじめ指名しておくということも考えられますし、また特殊な災害において、先ほど村瀬防災局長も御指摘になりましたけれども、それに対して適任の大臣がいる場合があり得るので、その場合にはその大臣担当するのがいいのではないかと考えております。例えば、先ほどの例でない部分で、例えば原発事故に対しては科学技術庁長官であるとか、また堤防の決壊ならば建設大臣、また先ほどの運輸関係の事故の場合には運輸大臣、そういう場合もあり得まずし、またさらには内閣のまとめ役を務める内閣官房長官をこの場合に副本部長として起用する、そういうことも十分考えられると思います。  以上です。
  94. 小池百合子

    ○小池委員 その非常災害対策本部でございますけれども政府案の方は本部長は国務大臣新進党案本部長は内閣総理大臣というふうに記されているわけでございます。  そこで、新進党の案について伺いますけれども非常災害対策本部長を内閣総理大臣にして、指定行政機関の長に対して指示権を持っている意味、これについて御説明ください。
  95. 高木義明

    高木(義)議員 小池議員お答えをいたします。  私どもはこれまで多くの災害を体験をしてまいりました。そして、その多くの災害の所管官庁は国土庁でございました。当然ながら、災害の総合調整機能を果たしてきたわけでございまして、私は敬意を表する次第でございます。しかし、一方におきまして、激甚災害のときには、いわゆる縦割り行政の弊害も指摘をされておるのは周知のことでございます。したがって、我々新進党案では、非常災害対策本部災害発生後一刻を争って設置をされる機動的、応急的な組織としての性格を強く持ったものとされておりまして、これが活動する場面というのは災害発生直後の初動の場面であるということになります。そして、この初期の災害応急対策の場面こそ本部長のリーダーシップが強く求められるわけでございます。今回の阪神淡路大震災の例をとりましても、国の初期救援活動がいかに大切であるかということを我々は強く肝に銘じたわけであります。  そこで、新進党案では、非常災害対策本部長を、国務大臣ではなく内閣総理大臣として、加えて指定行政機関の長に対する指示権を与えることによって、総理がまさにリーダーシップを発揮して、的確かつ強力な災害対策推進できる体制を築こうというものでございます。
  96. 小池百合子

    ○小池委員 今指摘ありましたように、縦割り行政であるとか、縦割り行政の弊害が一刻を争うときに出てくるというのは本当に嘆かわしいと申しましょうか、もう何をか言わんやというようなところでございまして、今回の大きな教訓としては、だれが何を担当し、だれが何に対して責任を負うのかということがはっきりしなかった。また、その責任を負っているべき人にその辺の自覚がなかったというような点が指摘されるのではないかというふうに思いますが、一方の政府案について伺います。  非常災害対策本部長を国務大臣とする。そのケース・バイ・ケースによって国土庁長官がそれに当たることもあるしというような御答弁を先ほど伺ったわけでございますけれども、やはりこれは、例えば国土庁長官が任務に当たるということ、そういう事象を想定いたしますと、ほかの省庁の大臣と横並びになる。そして、これでは省庁間の調整に本部長がリーダーシップをとることができないということは今回の阪神大震災がよく証明してくれているわけでございます。つまり、政府案には、今回の阪神大震災のときに非常災害対策本部では、また本部長が国土庁長官、また後には地震担当大臣となさったわけでございますけれども、機能しなかったのではないか、その反省が生かされてないように思うのですが、いかがでしょうか。
  97. 村瀬興一

    村瀬政府委員 まず、阪神淡路大震災のような災害がもし今後起きました場合には、現在の私どもが御提案させていただいている政府案の中でいいますと、緊急災害対策本部設置して対処することになろうかと思います。ですから、そういう意味では、この前の阪神淡路大震災の教訓も踏まえた上での提案になっているということでございます。  それから、非常災害対策本部長が国務大臣でいいのかということでございますが、御承知のように、災害には非常に小さな災害から、この前の阪神淡路大震災のような非常に大規模被害があるものまで千差万別でございます。災害が非常に激甚なものである場合には、災害対策も複雑多岐にわたりますので、調整ということにつきましてもしかるべき権限が必要だろうということで、緊急災害対策本部長の権限につきましては指定行政機関の長に対しましても新たに指示権を認めておるわけでございます。  一方で、先ほども申し上げましたように、非常災害対策本部、これまでに二十一回設置をいたしてきておりますけれども阪神淡路大震災のような著しく異常かつ激甚な災害でない場合につきましては、国務大臣本部長とする非常災害対策本部において所要の調整を行いながら、関係省庁が一体となって災害応急対策を十分適切に推進してきたというふうに考えております。そういうことから、非常災害対策本部本部長につきましては国務大臣を充てるという現行の規定を見直す必要はないというふうに考えておるところでございます。
  98. 小池百合子

    ○小池委員 阪神淡路大震災のときの大騒動を考えますと、本当にリーダーシップについて思いをいたさなければならないと思うわけでございますけれども、省庁間のリーダーシップ、これについて新進党案では、非常災害対策本部長に指示権、そして緊急災害対策本部長には代行権を与えているわけでございます。新進党案について、その理由、ポイントを御説明いただきたいと思います。
  99. 高木義明

    高木(義)議員 大災害に際しましては、国家が強力なリーダーシップを持って、迅速かつ的確に災害応急対策推進するべきものでございまして、そのためには、私どもは現行制度が不十分であるということを再三再四申し上げてまいりました。今回の新進党案におきましては、本部長の権限を大幅に拡大したということでございます。  まず、非常災害対策本部については、指定行政機関の長に対する指示権を与えたことでございます。先ほども申し上げましたとおり、非常災害対策本部に初期救援活動を期待しているものですから、非常対策本部長のリーダーシップが発揮できますように指示権を与えたわけでございます。  また、緊急災害対策本部についてでありますが、新進党案では、強力な災害応急対策を実施すべき組織としての位置づけをしておりまして、その本部長には極めて強力なリーダーシップ権限が求められるわけであります。そこで、これまでの総合調整権、指示権に加え、代行権という強力な権限を与えたのでございます。この代行権の行使によりまして、応急活動が円滑に推進されるだけではなくて、代行権の存在それ自体によりまして、総合調整権、指示権が実効性あるものとなるように私たちは期待をいたしております。
  100. 小池百合子

    ○小池委員 つまりは災害被害から一日も早く立ち直るための強いリーダーシップを求めるということに尽きるわけでしょうか。
  101. 高木義明

    高木(義)議員 全くそのとおりでございます。
  102. 小池百合子

    ○小池委員 続きまして、災害発生時に最も重要な官邸機能、今回のこの災害対策基本法改正に関しまして、この部分が最も重要な部分である。つまり、情報にいたしましても、受信の情報それから発信の情報、やはり官邸の機能を強化するということに集中してくるのではないかと思いますので、詳しく伺っていきたいというふうに思っております。  まず、災害発生しました、そしてその情報が何らかの形で伝わる、そのハード面での見直しなども行われているところでございますが、やはり情報把握ということが一刻を争うものでございますし、またその後の判断、決断の材料ともなるということで、情報とそしてそれの分析、決断、これはワンセットで考えるべきではないかというふうに思います。災害発生時につきまして、この初動対応の是非、その後の被害程度を決定するわけでございますが、政府担当者については、この情報の重要性ということについてどれくらい考えておられるのか、改めて伺いたいと思います。
  103. 村瀬興一

    村瀬政府委員 先生おっしゃいますように、災害対策を的確に実施する上で、まずはその災害によります被害規模がどの程度のものであるかということの把握が重要であろうかと思います。  そういうことから、私ども政府案におきましては、もし都道府県が一時的に機能しなくなって、市町村からの被害報告都道府県を経由しては総理大臣に届かないというふうなケースの場合には、総理大臣に直接報告をするという道を開くということにしております。それから、指定行政機関の長等が被害把握について特に意を用いなければならないという旨の規定も置いておるところでございます。  それから、実行の話。それは今回の法律案の中に入っている事項でございますが、実行ベースにおきましても、まず発災いたしました場合に、防衛庁あるいは警察、消防等の実動部隊におきまして、航空機等による偵察を直ちに実施するとか、あるいはテレビの画像情報を送ってくることによって把握をするとか、あるいは警察関係におきましては、現地のパトカーの交信情報を警察庁でモニターをいたしまして、それを官邸あるいは私ども報告をするとか、あるいは消防関係につきましては、現地で救急車の出動要請あるいは消防車の出動要請等が殺到いたしますと電話がパンク状態になるということがあるようでございます。そういった状態が、かなり重大な災害が起きているという一つの判断材料になるということでもございますので、もしそういう状況が生じた場合には、そういう事態が生じたという情報報告をするというような工夫もいたしております。  それから、今回の反省に照らしてみますと、その情報現地で、それぞれの部隊、機関におきましても、情報収集だけを専門にやるという作業が若干欠けておった面があったのではないかということで、あらかじめ各機関におきまして、情報収集を専門に担当する者を指名しておいて、情報収集に専念させる者を置いたらどうかというふうなことも防災基本計画の中で触れておるところでございます。  それからもう一つは、そういった人間の目で見るといいますか、要するに確認した上での情報ということ以外に、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、私ども、DISと言っておりますが、地盤情報それからどこにどういう建物があるかというふうな情報をあらかじめデータベースをつくっておきまして、それと実際の地震が起きました場合の揺れぐあい等シミュレーションいたしまして、大まかにどの程度の被害規模が生じている可能性があるかということを発災直後に判断するような仕組みをつくろうということで、今年度の補正予算で既に着手をいたしておるところでございます。  以上です。
  104. 小池百合子

    ○小池委員 今回の阪神大震災、五千五百人を超す方が亡くなったわけでございますから、そのみたまにちゃんとこたえる意味でも、本当にきっちりと細かく点検をして、そして二度と人災の部分を出さないようにするという点が非常に重要かと思います。  その意味で、情報収集ということについてようやく着手されたということは少しの進歩ではないか、少しでも進歩したということは認めることはできると思います。  ただやはり、その受信側の問題。総理官邸においてそういった情報を集めてきたときに、その受け手の方、官邸の機能強化が今実際きちんと行われているかどうかというと、私は若干危惧をするところでございます。午前中の御答弁の中で、ハイジャックが北海道で起こったときに、非常に適切に迅速に対処したというようなお話もございましたけれども、今回の政府案を見る限り、官邸での情報収集はもちろん必要でございますが、その後の、受ける部分のところはまだまだ心もとないというふうに思うわけでございます。  具体的に伺います。災害発生と同時に官邸情報が集まる。市町村レベルであったり、県のレベルであったり、ケース・バイ・ケースであるけれども総理の方に知らせられる。ただ、災害情報の受け手は官邸では一体だれになるのか。これも以前聞いたことがあると思うのですが、現時点でどうなっているのか、伺わせてください。
  105. 佐野智則

    ○佐野説明員 お答えいたします。  さきの大震災の反省も踏まえまして、御承知のとおり二月二十一日の閣議決定で、「大規模災害発生時の第一次情報収集体制の強化と内閣総理大臣等への情報連絡体制整備に関する当面の措置について」ということで閣議決定をしております。その中で、内閣情報調査室を官邸への連絡窓口として、二十四時間体制で迅速な情報連絡を受けることを定めているところであります。以上です。
  106. 小池百合子

    ○小池委員 内調が二十四時間待機というお話でございますけれども災害担当省庁は国土庁そして消防、治安情報自治省そして防衛的、有事情報となりますと自衛隊ということになるのでしょうけれども、これらの情報官邸に一度に集まる。それらを統合し、そして一元化するのはどういう形で、またどのようにそれがなされるのか、具体的にお教えください。
  107. 佐野智則

    ○佐野説明員 お答えいたします。  官邸の場合には、一つは、先ほどの閣議決定もございますように、関係省庁が、早期に航空機等を活用した現地情報収集連絡ということ。それから、電力、ガス、NTT等の民間公共機関等の有する情報収集ということ。それから、あわせて関係省庁の幹部が官邸に参集いたしまして情報の集約を行うということで、総合的な情報の集約ということをやってまいるということで現在対応しております。
  108. 小池百合子

    ○小池委員 災害、そして大きな事件、事故が起こった、そしてそれが官邸情報として入る。  今、総合的にというふうに最後におっしゃいましたけれども、私が知りたいのは、そういう情報が一たん官邸に入ったときに、だれが受けて、そしてそれをだれがどのように整理をして、そして例えば、前回のハイジャックはたしか発生は昼間だったと思いますけれども、例えば夜間、事態が起こった、今回の阪神大震災は五時四十六分という早朝でございました。いつどんなときに起こるかがわからないという、その備えをするための今準備をしているわけでございますから、夜間のときのことも十分考えていないといけない。そのときはどのようなルートで総理、そして官房長官へ伝達されるのか、そしてそれはどのようにして関係各省庁に連絡されるのか、詳しく教えてください。
  109. 佐野智則

    ○佐野説明員 お答えいたします。  夜間の場合には、内閣情報調査室におきまして、内閣全体のいわば当直体制をしいております。現在二名でやっておりますが、それにさらに当番幹部制ということをつけ加えまして、充実を図っているところであります。  仮に夜間、阪神大震災のような大規模災害発生した場合には、総理秘書官、官房長官秘書官、それから官邸、副長官以下の幹部も含めて、直ちに電話なりファクスなりということでもって連絡がとれる体制になっております。  また、先ほど申しました参集幹部につきましては、現在一応のめどとしては、震度五ないし六の震度の際には自動的に参集するということで、官邸における情報集約というのが直ちに開始できるようなシステムをとっております。
  110. 小池百合子

    ○小池委員 当直が二十四時間待機しておられるということでございますが、それは官邸におられるわけですね。今、建てかえ中なんですけれども、一体官邸のどの辺にいらっしゃるのでしょうか。
  111. 佐野智則

    ○佐野説明員 現在、当直がおりますのは内閣情報調査室、官邸の向かいの総理府の六階に設備と人員を置いております。
  112. 小池百合子

    ○小池委員 私ども新進党は、総理府に総合防災室設置してということで、言うならば位置的には私どもの方が近いのではないかというふうに思うわけでございます。  例えば、それではことしの夏に発生した長野・新潟大洪水がございましたけれども、このときは官邸に、もしくは総理府の方にどなたが待機しておられたんでしょうか。
  113. 佐野智則

    ○佐野説明員 先ほども申しましたように、当直で受けた場合には、例えば官房長官が官邸に在室であれば秘書官を通じて当然直ちに連絡いたします。それから、自宅にいらっしゃる場合であれば自宅の方のファクスに連絡するということで、いずれかの形でもって連絡をとるシステムにしております。
  114. 小池百合子

    ○小池委員 非常に言葉としてはよくわかるわけでございますが、しかしながら、現実に私どもの国土・交通担当、つまり災害対策担当しております二階俊博氏が、ちょうど長野・新潟大洪水のときに官邸電話をさせていただきました。ところが、それに対する対応というのがほとんどなされていなかったという事実があるわけでございます。総理府に置こうが、官邸が今建て直し中であろうが、それはそれぞれの物理的な事情もございましょう。総合的に情報の一元化を図って、そして総理大臣にと。なるほど絵にかいてはきれいですけれども、しかし現実を見ますと、それに私ども担当の二階氏に対しましての対応ということが、だれも事情のわかる人がいなかったという事実、これが私は今回の政府案の最も大きな問題点ではないかというふうに思っております。  そこで、新進党案の方なんでございますけれども新進党案では、国土庁防災局を廃止といいますか、総理府に移行して防災室を設ける、そしてその一部を官邸に常駐させるという案になっております。そのポイント、理由について御説明ください。
  115. 古賀敬章

    古賀(敬)議員 お答えいたします。  我が新進党案では、国土庁防災局を廃止いたしまして、総理府及び内閣官房総合防災室設置することといたしております。これは、国民の生命、財産を守る重要な役割を担う防災行政は、各省庁に関連する総合的行政であり、また、強い政治的リーダーシップのもとに行われるべきものでありますので、その事務に携わる部局を内閣総理大臣直属の組織とし、その充実強化を図るものであります。  総理総合防災室は、平素は防災行政全般、また防災計画の立案等の事務を行い、非常災害時におきましては、直ちに非常災害対策本部緊急災害対策本部の職員となり中核的な役割を担うとともに、緊急措置に関する計画を作成し、その実施を推進することとなります。  官邸に常駐する内閣官房総合防災室は、現在内閣内政審議室が所掌しております総合調整の事務のうち、防災にかかわる部分を独立させ、担わせるものであります。
  116. 小池百合子

    ○小池委員 政府案に戻りますけれども、今新進党案をお聞かせいただいたわけでございますが、現時点では官邸というよりも総理府の方に物理的にいらっしゃるということでございますね。  ということは、今官邸が手狭であるといったような現実的な問題もございましょう。そうすると、五年ぐらい、いつできるのか忘れてしまいましたけれども官邸ができるまでは結局総理府の中に現実にはおられるということになるのでしょうか。
  117. 佐野智則

    ○佐野説明員 御指摘のように、確かに官邸が手狭な面もございまして、新官邸設置までの間というのは当面の対応でいかざるを得ないというふうに思っております。ただ、現在計画中で、構想の段階ではありますが、新官邸設置の際にはしかるべく対応措置を考えたいということで、現在事務的に詰めているところであります。
  118. 小池百合子

    ○小池委員 我が国の災害に対する対応、そして総合的な危機管理が新官邸ができるまで待たなければならないということでは困るわけでございまして、実際に、私どもの二階氏が連絡をした際にだれもそれに対して対応できなかったという歴然たる事実がございます。災害そして事件、事故というのは時を選ばないわけでございますので、できるだけ現実に即した、そして機能的な形での情報の一元化、そしてそれの伝え方、伝達方法、これを目指していくべきではないか、それは当然なことではないかというふうに考えております。  さて、政府案の方でございますけれども政府案では、被害状況報告というところで次のような改正案が提出されております。先ほども村瀬局長の方からも御指摘があったとおりなのですが、「市町村は、当該市町村の区域内に災害発生したときは、政令で定めるところにより、速やかに、当該災害状況及びこれに対して執られた措置の概要を都道府県都道府県報告ができない場合にあっては、内閣総理大臣)に報告しなければならない。」ということで、先ほどお話も伺いました。しかしながら、都道府県報告できない場合には内閣総理大臣と言うけれども、じゃ結局、それは官邸電話するのか、国土庁連絡するのか、どっち側に連絡することになるのでしょうか。
  119. 村瀬興一

    村瀬政府委員 通常のルートでございますと、市町村から都道府県都道府県から国ということで、内閣総理大臣ということでございますが、具体的なルートといたしましては、都道府県から自治省消防庁というルートになっております。自治省消防庁から私どもなりあるいは官邸にというルートになっております。したがいまして、市町村から内閣総理大臣という場合には、市町村から自治省消防庁のルートを通じまして私どもなり官邸へのルートということになります。
  120. 小池百合子

    ○小池委員 都道府県報告できない場合、内閣総理大臣に対して報告、一体どのようにするのかというのがまだまだ私は疑問が解けないわけでございますが、それならばいっそ総理府に防災室設置して、そこで一元的に処理した方がよほど効率的だというふうに思われます。効率的かつ能率的、機能的ということになるわけでございますけれども新進党担当者の見方をお伝えください。
  121. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)議員 情報の一元化の件でございますけれども政府案の、本当に例外的に市町村から都道府県連絡ができない場合に市町村から内閣総理大臣報告するということについては、私どもも評価をしているわけでございますけれども、問題は、その場合の市町村からの情報の受け手の国の側のきちっとした情報を受ける体制が整っていることが条件でありまして、その体制整備されないままでは実効性のない制度となってしまうのではないかと私どもは危惧するところでございます。  その点、新進党案では、総理府及び内閣官房総合防災室設置することによりまして、市町村であるとかまた都道府県であるとか、そういう下から上がってきた情報内閣総理大臣のもとで一元的に処理して、内閣総理大臣の強いリーダーシップによって迅速かつ的確に対応するように考えたのが新進党案規定でございます。  以上です。
  122. 小池百合子

    ○小池委員 この官邸の機能強化ということ、そして今新進党案にありましたように情報の一元化、そしてその後の指令の発生の仕方等々、これがやはり災害対策基本中の基本になってくると思うわけでございます。被害状況報告ということは、すなわち災害の次の時点における対応決定する上で極めて重要ということでございますが、この意味から総理報告ということになっているわけですね。要は官邸の機能強化ということに尽きると思います。そのために官邸に常駐の防災担当者を置くことこそが災害対策として最重要ということですが、もう一度この点を改めさせていただきたいと思います。
  123. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)議員 もう小池先生の全くおっしゃるとおりでございまして、阪神大震災のときの初動対応のおくれ、我々が最も力を入れなければいけないのが官邸の受けの体制であろう。そういう意味から、常駐の防災担当者災害のエキスパートを内閣総理大臣のもとに置いて情報収集能力を強化することが官邸の機能の強化につながるのではないか、そのような観点から私どもの案を提出させていただきました。
  124. 小池百合子

    ○小池委員 ありがとうございました。  今回の阪神大震災発生から、全国各地でもまだまだ地震発生し、そしてそれぞれの住民、非常に不安におののいているところがあるわけでございます。また、阪神地区におきましても、ついせんだっても中震といった地震が起こり、またかということで、あのときの本当に恐ろしい思いが戻ってきたというのはついこの間のことでございます。九カ月たったからということではございませんで、いつまた何が起こるかわからないという状況に常に置かれている。それは日本全体すべてがそうであるということを改めて認識すると同時に、今回の反省に立った上で、この災害対策基本法、本当に機能、効率を考えた、そして現実も考えたいいものにしていきたいというふうに思うわけでございます。  しかしながら、最後にぜひとも申し上げておきたいことは、どんなにいい法律をつくっても、またどんなにすばらしいシステムをハード面、ソフト面でつくったとしても、それを指揮する人間にリーダーシップ、決断力、勇気といったものがなければ結局は絵にかいたもちになってしまうということは、このたびつくづくと感じているわけでございます。その意味で、災害対策のみならず、その役割を担った者のリーダーシップ、これについて、資質の問題につきましても私どもは十分にチェックしていく必要があるのではないかという気持ちを強くしたわけでございます。  復興はまだまだ地域によってまだら模様と冒頭に申し上げました。待機所におられる方々というのは、本当に行き場のない方々、大変社会的な弱者の方が集中してきている。時を経るに従ってますますその様相を深くしているわけでございます。冒頭に申し上げました神戸港の復興そして再生ということも一つでございますが、失業に対する不安というものもますますここへ来まして強くなっているわけでございます。そんな意味で、復興については、総合的かつ二十一世紀へのグランドビジョンということを踏まえた上での復興をなし遂げていきたいものというふうに感じております。  きょうは、新進党そして政府案、それぞれのポイント等を伺いましたけれども、私は、先ほど申し上げましたように、官邸の機能強化、そして情報の一元化と、それによる縦割り行政の弊害をいかに除去するのか、そういった点を中心に伺わせていただきました。  ありがとうございました。
  125. 左近正男

    左近委員長 小池百合子君の質疑はこれにて終了しました。  赤羽一嘉君。
  126. 赤羽一嘉

    赤羽委員 新進党赤羽一嘉でございます。  私は、地元選出の議員の一人でございます。きょう初めて池端国土庁長官に御質問させていただくわけでございますが、何しろ今回の震災、六千名ものとうとい命を失った未曾有の大災害でございます。初めての質問の割に失礼な表現が出るかもしれませんけれども、それもひとえに被災地の皆様の思いの発露であるということで、御容赦願いたいと思います。よろしくお願いいたします。  一月十七日以来はや九カ月という月日が過ぎたわけでございまして、今回の未曾有のこの大震災に、本来であれば十分に対応すべきはずでありました災害対策基本法並びに災害救助法、きょうは災害救助法の法案は出ておりませんが、二つ法律ともに三十年以上も前につくられた法律であり、大都市直下型の大震災ということを全く想定していない、結果として全く役立たない法律であったということに非常に歯がゆい思いをしているところでございます。  今回、与野党ともにそれぞれ閣法と衆法という形で出ておりますけれども、私は、どちらの法律を通すということが大事というわけではなくて、今地震活動期に入ったこの日本列島、いつどこで起きても不思議ではない同様の大震災に対して、次の大災害に対しては十分対応し得るような災害対策基本法というものをつくるのが国民の代表である私たち国会議員のやらなければいけない使命であるという認識に立っております。  私たち新進党も、実は、もう既に御承知かと思いますが、この三月に全国の知事並びに三千三百四の市町村長にアンケート調査を実施いたしました。回答率は約四割でございました。このアンケートについては後の樽床委員から詳しく説明があると思いますが、例えば「「災害対策基本法」の改正」につきましては、現行法の大幅改正を希望するものが四五・四%という高い率でございました。また、「災害対策強化のため、役割・機能を強化すべき関係機関」はという問いに対しましては、別に私は何の恨みがあるわけではないのですが、第一位が国土庁防災局などの行政機関ということで、これが実に八二・二%あった。この事実を踏まえて、私たち新進党はプロジェクトチームをつくって、この夏、一夏かけて数百時間を超える作業をし、今回の新進党案提出したわけでございます。  ですから、どうか本委員会委員の皆様も、あれは衆法だからとか、閣法だから通さなければいけないというような立場ではなくて、お互いにいいところを出し合って、役に立つ、次回の自然災害に対して十分対応し得る災害対策基本法改正というのをぜひしなければいけないと思いますので、どうかよろしくお願いしたいと思います。  反省なくして新しいものはつくれないというふうに私は思っております。ですから、地元の選出であり、私も被災した一人でございますので、まず今回の震災について振り返ってみたいと思うのでございます。  まず、今回の阪神淡路大震災において、被害がこれほど大きくなったその最大の原因は、国の最高責任者たる総理大臣の危機管理に対する自覚の欠如、そしてリーダーシップを発揮し得なかったこと、またそれに基づく政府対応のおくれであったことは明らかであり、本日の委員会でも、初動措置における反省については午前中長官からもその反省の弁を述べられているところでございます。  実際、避難所であの寒さの中に不安な夜を迎えようとしていた三十万人余りの人々に対し、縦割り行政の弊害に足を引っ張られることなく、素早く、効果的かつ有機的な災害対策総理自身の指揮命令でやれるように、私たち新進党緊急災害対策本部の速やかな設置地震発生直後から訴えてまいりました。  災害発生後三日目にしてようやく行われた総理現地視察で現状の惨状を目の当たりにした村山総理は、帰京した十九日の夕刻の記者会見で、十七日設置した非常災害対策本部を格上げし、総理が直接指揮する緊急災害対策本部とすると発表したわけでございますが、その日の夜、これを撤回し、また非常災害対策本部に戻したわけでございます。十九日、さらに批判を受けると、という表現をしますが、この災害の二字を抜いた緊急対策本部閣議決定により設置し、これは災対法に言う緊急災害対策本部と同じ機能を果たすという説明をされたわけでございますが、私の実感では緊急災害対策本部とは似て非なるものであったという感想でございます。  このように極めて紛らわしい名称の本部を幾つも設けまして、効力と効率が上がるであろう緊急災害対策本部設置をあくまで拒み続けられた最大の理由をまずお聞かせ願いたいと思います。
  127. 村瀬興一

    村瀬政府委員 現行の災害対策基本法では、「非常災害発生し、かつ、当該災害が国の経済及び公共の福祉に重大な影響を及ぼすべき異常かつ激甚なものである場合において、し対策推進するため特別な必要があると認めるときに、内閣総理大臣閣議にかけて災害緊急事態の布告を行うことができるということになっております。その布告をした場合に内閣総理大臣本部長とする緊急災害対策本部設置するということになっているわけでございます。  今申し上げました災害緊急事態の布告を行うかどうかを決めるに当たっての最大のポイントは、災害対策基本法の百九条に基づく緊急措置を必要とする状況になっているかどうかということでございます。  今回の災害の場合には、被害そのものは非常に大きな被害でございましたけれども、経済統制等を必要とするような、緊急措置を必要とする状況には至っていないという判断のもとに緊急災害対策本部設置いたしませんでしたが、非常災害対策本部設置し、それから今先生おっしゃいましたような全閣僚をメンバーとする緊急対策本部というものを設置いたしまして、政治的に決断しなければならない事項につきましては全閣僚をメンバーとするその対策本部によって実施するというふうな体制で進んだわけでございます。
  128. 赤羽一嘉

    赤羽委員 緊急対策本部の内容については後ほどお尋ねしますが、災害緊急事態の布告を行うポイントの、今御説明がありました災対法百九条に基づく緊急措置を必要とする状況に至っているかいないか。今経済統制というような御説明がありましたが、経済統制以外、例えば治安上の判断とかということは決断する判断材料にはならないのでしょうか。
  129. 村瀬興一

    村瀬政府委員 百五条の布告をするかどうかの判断基準といたしましては、先生御承知のように、国会が閉会中等の場合に政令で経済統制ができるということになっておりますが、そういった事態になっているかどうかということでございまして、治安の問題というのは直接その判断基準の中に入ってこないと思います。  ただ、実態的にも、先生御承知のように一部には治安の問題もあったのかもしれませんが、全般的な人心の不安という、治安の面ではなかったのではないかというふうに認識いたしております。
  130. 赤羽一嘉

    赤羽委員 まず、経済統制というのに当たるかどうかわかりませんが、二、三というかかなりのニュースで、一杯ラーメンが五千円とか、かなりつけ込んだ、神戸の人ではないと思いますが、近県から来たそういった商売もありましたし、九二日間食べるものがなくて、緊急物資に群がるように行列ができたというような状況もございました。また、治安上、余りこれもニュースにはならなかったわけでございますが、芦屋地域ではかなり、大きな家がまた他府県からのいわゆる集団強盗に遭ったというようなことも実際上見聞きしております。また、放火としか思われないような火災が地震発生後三日目、四日目くらいには神戸市内で頻発しておりまして、この先どうなるのかと。ガスタンクが漏れて避難所から追い出されたみたいな状況もございまして、私の家族もその中の一人でございましたけれども。  そのような状況に置かれていても、今回のような阪神大震災のあの大パニックをもってしても災害緊急事態の布告を行わない、行うに至らないということは、どんな大災害があれば災害緊急事態の布告に至るような、もう私はちょっと理解できないですね。あの修羅場のような、地獄図絵のような最初の一週間をもってしてもそれに当たらないとして非常災害対策本部しか設置できないとするのであれば、現行法の緊急災害対策本部というのは具体的にはどういったときを想定した対策本部設置なんでしょうか。わかりやすいようにちょっと説明願いたいのです。
  131. 村瀬興一

    村瀬政府委員 百九条をもう少し詳しく申し上げますと、一号から三号までございますが、「その供給が特に不足している生活必需物資の配給又は譲渡若しくは引渡しの制限若しくは禁止」が一つでございます。それから「災害応急対策若しくは災害復旧又は国民生活の安定のため必要な物の価格又は役務その他の給付の対価の最高額の決定」、それから「金銭債務の支払の延期及び権利の保存期間の延長」といったようなことでございますが、そういった事態について、国会が閉会中の場合には政令をつくってでも対処しなければいけない事態ということでございます。  典型的にそういう事態として想定しておりますのは、例えば関東大震災のような災害、あるいは東海地震もそういったことに近いかと思いますが、要するに、被害が広範にわたりますと経済についても混乱が生ずるという蓋然性があるわけでございまして、今回の阪神・淡路の災害、先生おっしゃいますように、人的な被害は非常に大きかったわけでございますけれども、被災の範囲ということを考えてみますと、必ずしもそう広い範囲にわたって被害があったということでなくて、今申し上げました百九条で予定しておりますような事態に至ってはいないという判断であったということでございます。
  132. 赤羽一嘉

    赤羽委員 関東大震災のときは生まれておりませんのでよくわかりませんが、まだ起こってもいない、東海地震というのはこれからのことですよね。(村瀬政府委員「前に起こった」と呼ぶ)前に起こったことですか。それも生まれていないのかもしれませんが、極めてわかりにくい。それは言いわけとしか聞こえない、僕はそう思います。  この布告の要件がなければ、今回緊急災害対策本部設置したのですか、しないのですか。なければ、それだけの強いリーダーシップを発揮するような対策本部をつくろうとしたのでしょうか。さっき言いました緊急対策本部はできた、つくった、これでカバーできたのだというふうな御判断ですか。
  133. 村瀬興一

    村瀬政府委員 その強いリーダーシップという点でございますけれども、現行法におきましては、非常災害対策本部長の権限もそれから緊急災害対策本部長の権限も全く一緒でございます。ただ、総理大臣、これは総理府の長たる総理大臣ということで、内閣の長たる総理大臣ではございませんけれども、人格としては同じ総理大臣が長になるということで、そういう面でのリーダーシップの国務大臣との違いということはあるかもしれませんが、法律上の権限としては全く同じでございます。  それで、今回の私どもが提案しております改正案におきましては、先ほどから申し上げております布告の要件を外しております。したがいまして、先ほどから申し上げておりますように、阪神・淡路のような大災害が起きました場合には、改正法で予定しております緊急災害対策本部設置して対処することになるのではないかというふうに考えておるところでございます。
  134. 赤羽一嘉

    赤羽委員 非常災害対策本部長と緊急災害対策本部長の法律上での権限は一緒だと言われるのはわかるのですが、実態としてはどうなんですか。この九カ月間反省して、縦割り行政の弊害というのはなかったということですか、発生直後から。どうなんですか、それは。
  135. 村瀬興一

    村瀬政府委員 そこは、実際問題といたしましても、非常災害対策本部設置とあわせまして全閣僚をメンバーとする会議設置いたしまして、それを最初のうちは連日のように開きまして、先ほども申し上げましたように、政治的な、閣僚ベースで早急に決定しなきゃいかぬ問題についてはその場で速やかに決定をする、それを直ちに実施に移すという態勢で挑んだわけでございますので、あのような大災害事態に現行の非常災害対策本部設置しただけで対処するということについては無理があったという判断でございます。
  136. 赤羽一嘉

    赤羽委員 緊急対策本部の法的根拠というのはどこなんですか。
  137. 村瀬興一

    村瀬政府委員 今回の災害に際して設置いたしましたものは閣議決定でやったものでございまして、法律上の根拠を持つものではございません。
  138. 赤羽一嘉

    赤羽委員 法律上の根拠を持つものじゃない対策本部が、緊急災害対策本部と同様の機能、権限を持ち得たんですか。
  139. 村瀬興一

    村瀬政府委員 それは先ほどから申し上げておりますように、総理以下全閣僚がメンバーとなって、最初のうちは連日のように災害対策について議論をし決定をしておるわけでございますので、災害に対処するという意味では実質的な機能を十分果たしているということであろうと思います。
  140. 赤羽一嘉

    赤羽委員 自衛隊、警察、消防、地方自治体などに対して防災行動をとらせる、この法的権限を伴う緊急災害対策本部緊急対策本部、実質的に全く一緒だったと言えるんですね。僕は余りよく理解できないんですが。
  141. 村瀬興一

    村瀬政府委員 ちょっと先生のおっしゃっていることが、仮に、現行法の緊急災害対策本部設置すれば何でもできたんではないかというふうにお考えなのかどうかでございますが、それは先ほどから申し上げておりますように、法律上の権限といたしましては、現行法では非常災害対策本部緊急災害対策本部も同じでございます。  今回の改正案では、そこら辺につきましても、緊急災害対策本部長につきましては指定行政機関に対します指示権を新たに付与するということにいたしまして権限を強化している。それから、先ほどから申し上げております全閣僚でやったということにつきまして、そういう経験を踏まえて、メンバーも、従来は関係省庁の局長クラスが本部員でございましたけれども、これを全閣僚にするというふうな改正案を現在提案さしていただいているところでございます。
  142. 赤羽一嘉

    赤羽委員 この緊急対策本部については、そういう御説明ありましたが、例えば佐々淳行さんなんかは、緊急災害対策本部とは似て非なる、レトリックによるごまかしにすぎないと批判しているということだけとどめておきます。  それで、ちょっとまた重ねて言いたくはないんですが、やはり強いリーダーシップを発揮して陣頭指揮で事に当たるということが危機管理の一番大事なことじゃないかというふうに私は認識しておるんです。その立場にあったはずの総理は、現行の制度で最善の措置を講じたと確信を持って答えますと国会で答弁されておりますが、現実には今のように緊急災害対策本部設置をせず、いろいろ理由があったと今説明がありましたが、十七、十八日の両日は、大震災発生前から決まっていた財界人たちとの会食、文化人たちとの懇談、その他不要不急の日程を予定どおり消化しました。また、初日の夜は、大臣も御承知のように、神戸市内、特に長田区を中心とした大火災が発生し、消火活動が全くままならないときに、総理は七時半過ぎには宿舎に引き揚げられていたとのことでございます。また、文化人たちとの懇談に至っては、予定時間を超過して歓談され、出席者から、こんなときに私たちとこうしていいのですかと問われたのに対して、いいんですと答えているというマスコミの報道がございました。  あのとき神戸の被災地では、倒壊した家屋の下敷きとなって生き埋めになった何百、何千人という人たちがいました。その犠牲者や家族たちは、一日どころか一刻千秋の思いで、日本の政治と行政を信頼し、自衛隊や警察、消防隊が必ず助けてくれると信じて耐えに耐えていた、私の友人も数多くおります。手の打ち方によっては、火の手が回るまでに家屋の下敷きになっていた恐らく三けた、いや四けたの犠牲者を救出できたであろうと思うとき、今回の、司令官と呼んでいいのかわかりませんが、指揮官不在の大震災の初動措置のおくれが悔やまれてならないと思うわけでございます。  人命救助、火災防止というのは一分一秒を争うものでありまして、初動措置というのは会議を開いてコンセンサスを得るとか、決裁を仰ぐとか、予算措置検討してから動くものではないはずであると私は思うわけでございますが、この点について新大臣池端長官の御所見を伺いたいと思います。
  143. 池端清一

    池端国務大臣 私、冒頭申し上げましたように、やはり官邸伝達体制が非常に不十分であった、そのために情報収集がおくれてあのような状況になりましたことを、これは率直に反省せざるを得ないと思うのであります。さきの国会で、委員も予算委員会で、現地の被災者の身になっていろいろ実情を話されておりましたけれども、私も同感するところが多かったわけであります。そういう反省に立って今度の災害対策基本法改正案が出されたんだ、そういう反省に基づいて出されたということもぜひ御理解をいただきたい、このように思うわけであります。
  144. 赤羽一嘉

    赤羽委員 情報云々という話が出ましたので一言つけ加えておきますが、後日、NHKからの当日のビデオを見させてもらいましたが、八時十四分に、東灘の深江のところの高速道路が五百メーターぐらいにわたって横転している、橋げたが倒れているという画面がはっきりと映し出されております。あの場面を見れば、これは大変な大災害であるということで速やかに行動をとるのが日本の最高責任者のあるべき姿であると思いますが、報道によれば、十二時の、お昼のニュースで死亡者が二百人を超えたということを聞かされてあっと驚いていたというような、非常に残念だな、こういうリーダーシップはというふうに思います。それだけつけ加えさせていただきます。  それで、リーダーシップ、責任者ということで、政府は一月十七日に設置した非常災害対策本部本部長に小澤国土庁長官を任命されたと思いますが、二十日の午後、小里、当時は北海道・沖縄開発庁長官ですかを地震担当大臣に任命し、これは本部長はかわったんですかね、ちょっとその辺正確ではないんですが、この辺のいきさつはどういうことなのでしょうか。
  145. 村瀬興一

    村瀬政府委員 まず事実関係から申し上げますと、本部長は交代しております。小里国務大臣本部長に就任されております。  経緯につきましては、それは政治的な判断の問題であろうと思いますので、ちょっと私どもは……。
  146. 赤羽一嘉

    赤羽委員 それは、任命者が総理ですから局長が答えるわけにいかないと思いますが、きょうは総理もいらっしゃいませんので、長官にその辺、引き継ぎもされていると思いますし、現本部長でいらっしゃいますよね、たしか。非常災害対策本部というのはまだ存在しているはずですので、その辺を……。
  147. 池端清一

    池端国務大臣 先生よく御案内のように、阪神・淡路の大震災の際には小澤国土庁長官にかわりまして小里貞利前国務大臣が専任の地震対策担当大臣に任命をされたわけでございます。これは、極めて被害が激甚である、そして当初の政策決定あるいはいろいろ実施しなければならないことが膨大である、そういうような重要性にかんがみて村山総理が政治的に御決断されたもの、このように考えておるわけであります。
  148. 赤羽一嘉

    赤羽委員 それでは、震災当日、小澤国土庁長官本部長に任命したときには、それほど甚大なる大規模被害であるということは認識できずに、大災害であるという認識が二十日午後になって初めてできたということでよろしいんですね。
  149. 池端清一

    池端国務大臣 再三申し上げておりますように、率直に申し上げて、当初はこれほどの大災害、これほどの激甚な災害になるということは実は考えておらなかったということからこういうことになったと思うのであります。しかし、その後の被害状況が極めて激甚だ、五千五百名を上回る死者の方、あるいは二十万戸の家屋の倒壊、焼失、こういうようなことになりまして、政府としてはこういう担当大臣を任命することがこの際適当ではないかというふうに御判断をされたものと思います。
  150. 赤羽一嘉

    赤羽委員 本当はもうちょっと後で御質問しようかと思ったのですが、午前中も与党議員質問にもありましたが、今回の政府案での緊急災害対策本部設置基準について、本会議での総理答弁、またきよう午前中の大臣答弁、偶然だったと思いますが同じ、偶然じゃないですね、そういう見解だから同じ答弁だったと思いますが、緊急災害対策本部は、極めて大規模かつまれに見る災害発生し、政府が一体となって災害応急対策推進する必要がある場合に設置するものでございます。このような要件に該当するか否かにつきましては、災害規模、態様、応急対策必要性等諸般の事情をしんしゃくする必要があるため、数値等による画一的な設置基準を策定することは困難であり、個々の災害ごと判断すべきものであります。阪神淡路大震災級の甚大なる大規模災害につきましては緊急災害対策本部設置することと考えております。という、これは総理の答弁でございました。きょうの午前中の大臣答弁も同様の趣旨だと思いますが、よろしいですか、ちょっと確認だけ。
  151. 池端清一

    池端国務大臣 結構でございます。
  152. 赤羽一嘉

    赤羽委員 要するに、先ほど、十七日、当日は小澤国土庁長官を任命した、本部長に。大規模災害と認定したのが二十日の午後、三日後だったと。そこで、こんなことじゃ大変だということで専任大臣のポストをつくり本部長に任命したと。三日間かかっているわけですよ。要するに、字面で読んでいくと何か納得しますけれども阪神淡路大震災緊急災害対策本部設置するに妥当な大規模災害であるということは三日かかったということじゃないですか。三日後に対策本部をつくるような、そんな危機管理で乗り切れるのですか。僕は、この点は、新進党が出しています、閣議決定なしに非常災害対策本部を速やかに設置して、その後閣議決定をもって緊急災害対策本部に昇格させるということの方が危機管理では数段すぐれているというふうに認識していますが、どうでしょうか。
  153. 村瀬興一

    村瀬政府委員 私どもの今回改正しております政府改正案におきましては、緊急災害対策本部の方につきましては、先ほどから申し上げておりますように、本部長の権限あるいは構成、設置要件等を改正したいという御提案をしているところでございますけれども非常災害対策本部につきましては、現地本部規定を置いたほかは現行のままでございます。  一方で、先ほどから申し上げておりますように、阪神淡路大震災のような災害が今後起きました場合には、現在提案させていただいております緊急災害対策本部設置して対応するということになるだろうと思いますが、その場合に問題は、いっそういう判断ができる状態になるだろうか、情報が集まるだろうかということでございます。これは、先ほど小池先生の御質問の際にも、今回の改正案の中でも工夫しておる事項、それから実態的にも実施しておる事項について御説明させていただきましたので、あえて繰り返しません。  ただ、先ほどの議論の中で、内閣情報調査室との関係、ちょっと混乱があるかと思いますので少しつけ加えさせていただきますと、二月二十一日に閣議決定いたしまして、総理官邸に直接情報が届く仕掛けがなかったということから、内閣情報調査室を窓口に、災害が起きた場合に直接官邸情報が入る仕掛けをつくろう、それから、あわせて情報収集の仕組みについても工夫をしよう、それから、電力会社等からも情報をとろうというふうなこと、それから、私どもなり防衛庁、警察、消防等の関係局長が官邸に原則三十分ぐらいの間に集まって今後の対策を協議しようというふうな趣旨の閣議決定をいたしまして実施しておるわけでございます。これにつきましては、先般九月一日に総合防災訓練をやらせていただきましたけれども、その辺のことも組み込んで実際の訓練もやらせていただいております。  今、関係省庁の局長が集まってということを申し上げましたが、防災訓練の際には、そこの大臣、閣僚も一緒にお集まりになって協議するというふうな訓練にいたしております。今後も実際に恐らくそういう運用になろうかと思います。そこは、現在議論していただいております災害対策基本法非常災害対策本部なり緊急災害対策本部設置の前の段階と申しますか、どういう方向で今後進んでいくかということを協議するために関係閣僚なり関係局長が集まって情報の集約をするということを閣議決定しておるわけでございますが、そういったことで進んでおります。  したがいまして、非常災害対策本部あるいは緊急災害対策本部阪神・淡路のような災害がどの程度でわかるかということでございますが、先ほどいろいろ申し上げましたようなことをいたしまして、今回のような、かなりたたないとなかなかはっきりしたことがわからないということを回避するということで早急にいろいろ努力をするのと、それから、先ほど申し上げておりますような、DISと言っておりますけれども、一種のシミュレーションによって災害規模を推定する手法を現在開発準備中でございます。それが概成いたしますと、かなり短い間にどの程度の規模であろうかという、大まかでございますけれども推定ができるようになる。したがって、非常災害対策本部設置すべきかあるいは緊対本部でなければいかぬのかというふうな大まかな判断は、その段階である程度し得る材料が出てくるのではないかというふうに考えておるところでございます。
  154. 赤羽一嘉

    赤羽委員 ですから、今回は大災害という認識に至るまで三日かかったけれども情報収集の一元化並びにそのシミュレーション機能等々の活用により短時間で情報が入るようになるであろうということでよろしいのですか。
  155. 村瀬興一

    村瀬政府委員 大災害であるという認識に三日かかったということでは必ずしもないと思いますが、非常災害対策本部閣議設置した時点では、警察の情報では死者はほとんど百人足らずということでございます。そういったことで、当初はなかなかわかりにくかったわけでございますけれども、だんだんわかってきているというのは先生御承知のとおりでございますが、三日かからないとその認識ができなかったということではないと思います。
  156. 赤羽一嘉

    赤羽委員 私が言っているわけじゃなくて、三日後の一月二十日に地震担当大臣という新しいポストをつくり本部長に据えたと、そちらが答弁したことじゃないですか。私が言っているわけじゃないのです。私なんか、あの八時十四分の段階で何で大規模災害と認定できなかったのかが信じられない思いの一人ですから、自己矛盾があるのはそちらなのじゃないですか。ただ、そんなことで局長とけんかするわけじゃないのであれですが。  非常災害対策本部についても、政府案では閣議が必要とされるということですね。間違いございませんね。今回は朝五時四十六分の震災で、閣議非常災害対策本部設置が決まったのが午前十時だったのですね。これは間違いございませんね。
  157. 村瀬興一

    村瀬政府委員 さようでございます。
  158. 赤羽一嘉

    赤羽委員 この震災発生後四時間、五時間というこの時間のときに、もっと早く初動態勢を、手を打つことができなかったのかという反省から今回始まっているのじゃないのですか。新しい政府案非常災害対策本部についても従来と同様に閣議決定が必要であれば、また同じような、五時四十六分かどうかわかりません、もっと真夜中、深夜に起こるようなケースも出てくるときに十分対応できるのですか。そこについての反省を踏まえた新しい政府案だとは思えないし、きょうの午前中の与党の皆さんの疑問もかなりここに集中していたのではないのですか。どうですか。大臣、ここをお聞かせください。
  159. 村瀬興一

    村瀬政府委員 今回の災害についての反省ということにつきましては、先ほどから申し上げておりますように、県庁所在地である神戸市が被災したということもありましょうし、現地災害情報収集をやっております消防あるいは警察の情報もそういったことでなかなか把握できなかったという面があるわけでございまして、そういった点を反省いたしまして、それらの機関等の把握の仕方についても工夫をする、それから防衛庁につきましても、航空機等の派遣、それから画像情報を使うといったようないろいろな工夫をして、被害状況把握そのものを速やかにできるように工夫するということをしておるわけでございます。  一方で、今回は閣議決定いたしましたのが十時過ぎということでございますが、今後もそこら辺につきましては、閣議につきましても場合によっては持ち回り閣議決定するというふうなことも可能でございますので、そういった点につきましても官邸とも十分相談いたしまして、情報収集をまずしっかりする、その判断をするに足る情報を早急に集めまして、その集まった上でしかるべき分析をして、非常災害対策本部なり緊急災害対策本部設置が必要であるという判断になりましたら、先ほど申し上げましたような、必要であれば持ち回りの閣議等の開催もお願いをいたしまして、早急に体制を整えるということにいたしたいと考えておるところでございます。
  160. 赤羽一嘉

    赤羽委員 私は、今回の基本改正案でここが一つの大事なところなんじゃないかというふうに思うのです。  新進党側、午前中も御説明いただいていますが、閣議を要しないという点で答弁お願いできますか。
  161. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)議員 先ほど来、赤羽議員の御質問並びに国土庁長官、そして防災局長のやりとりを聞いておりまして、やはり我々、今回の法改正に当たりまして、一月十七日当日、それから二、三日の間のことを原点として忘れてはいけないであろう、そのように思った次第でございます。  その上で新進党案としては、今回、現行の非常災害対策本部設置要件を緩めまして閣議が不要ということにいたしました。それに対して、緊急災害対策本部設置の方については閣議を要するもの、そういうようにいたしたわけでございますが、それにはそれぞれの本部の機能の違いというのが私どもの案の根本的なところにございます。  新進党案では、とにかくまず非常災害対策本部災害発生後に迅速に設置される。また、機動的な災害対策本部としての性格の強いものとして位置づけたというのがポイントでございます。そのために、非常災害対策本部設置については閣議を不要とし、内閣総理大臣本部長となって、その強力なリーダーシップのもとで迅速に災害応急対策推進することを可能にしております。  今回、例えば村山総理の御答弁では、六時過ぎにお知りになったということでございますが、あのときに震度六だ、これは大変だというその感覚があれば、今回の私ども新進党案によれば非常災害対策本部を即座に設置できるように書いてございます。  それに対しまして緊急災害対策本部は、重大な災害に際しましてより強い総理リーダーシップとより強力な権限をもって事に当たるという、まさに緊急事態における組織としての性格が強いものであるという位置づけを私どもはしておりまして、緊急災害対策本部は全閣僚及びそのほかの指定行政機関の長をもって組織され、緊急災害対策本部長の権限としては、指定行政機関の長への指示権及び指定行政機関の長の権限の代行権を追加することによって非常に強力な災害応急対策を実施することを可能にいたしました。  しかしながら、このような強力な権限を行使するに際しましては、閣議を開き、事前に内閣の構成員である各国務大臣との間の意思の確認を行っておくことが極めて有効であるがゆえに閣議を要するものとした次第でございます。  以上でございます。
  162. 赤羽一嘉

    赤羽委員 私は新進党議員の一人ということではなくて、被災者の一人として今の新進党側の答弁の方が筋道が立っているし、次回以降の自然災害に対するリスクヘッジメントもできているというふうに思いますが、大臣お願いします。
  163. 池端清一

    池端国務大臣 一月十七日のあの事態を我々は深刻に反省した上で、官邸に対する情報伝達方式等についても閣議決定をし、そしてその後七月には防災基本計画を全面、抜本的に見直しをして改定をしたところでございます。  その上に立って、今回法制度上の問題点を法案として提案をしておるわけでありますし、閣議決定の問題がいろいろ議論になっておるようでありますが、先ほど防災局長が答弁をいたしましたように、閣議運用の実際においては、例えば会議によらず各国務大臣を持ち回る、持ち回り閣議による緊急を要する場合の対応も十分可能でございます。閣議にかけるからといって緊急災害対策本部の迅速な設置が妨げられるものではないということだけはぜひ御理解をいただきたい、こう思います。
  164. 赤羽一嘉

    赤羽委員 残念ながら私は理解できません、その点は。済みません。  次は、中央防災会議のことについて聞かせていただきます。  去る二十日の本会議で、我が新進党の石井一議員が代表質問の中で、阪神淡路大震災の際、この会議はいつ開催し、どのような緊急措置に関する計画が作成されたのでありましょうか、具体的にどう機能したのですかとの質問に対し、総理の答弁は、「私から非常災害対策本部設置について諮問を行い、中央防災会議から直ちに妥当と認める旨の答申を得たところでございます。なお、この答申は会長専決で行っており、また緊急措置に関する計画を作成する必要もなかったため、中央防災会議会議自体は開催してはおりません。」という御答弁になっておりますが、これは要するに会議は開かずに、災害発生認識後、総理が自問自答したと言ったら変かもしれませんが、という意味なのですか。
  165. 村瀬興一

    村瀬政府委員 今先生読み上げられましたとおり総理は答弁をされていると思いますが、総理大臣から中央防災会議の長たる総理大臣に対して諮問をして、その答申を受けて、会長専決で適当であるという旨の答申をしたということでございます。それは、同じ人が複数の立場に立つということは当然ございますので、今のような例は幾つもあると思います。
  166. 赤羽一嘉

    赤羽委員 そんな有名無実な形式的な会議体になるのであれば、緊急時には必要あるのでしょうか、どうですか。
  167. 村瀬興一

    村瀬政府委員 私どもの案におきましても、非常災害対策本部設置につきましては、中央防災会議への諮問を不要とするという案になっております。  ただ、緊急災害対策本部の方につきましては、中央防災会議への諮問を引き続いて必要ということにいたしております。これは今申し上げましたように、非常災害対策本部の場合は運用上専決でやっているというのがほとんどでございます。それの実態に合わせて改正をしたということでございます。
  168. 赤羽一嘉

    赤羽委員 新進党案は、この中央防災会議の関連で午前中も何回も御説明がありましたが、総理府及び内閣官房総合防災室を設けたと聞いておりますが、その趣旨でよろしいのでしょうか。
  169. 村瀬興一

    村瀬政府委員 失礼いたしました。今、緊急災害対策本部については諮問を残していると申しましたが、緊急災害対策本部設置につきましても諮問を不要ということにいたしております。  失礼いたしました。
  170. 大口善徳

    ○大口議員 総理府及び内閣官房総合防災室を設ける趣旨、またその理由ということを問われたわけでございますけれども、今回の防災の問題というのは最も政治的なリーダーシップが求められるわけでございまして、内閣総理大臣がしっかりとこのリーダーシップを発揮しなければいけないと思うわけでございます。  そういうことを考えますと、本来内閣総理大臣の直属の組織、そこに防災に関する組織をきちっと置く、これが大事でございます。国民の生命とそれから財産を守る、そういう重要な役割につきましては、やはりこれは総理の直属に置くべきである、そう思うわけでございます。とにかく、縦割りということもございます、防災行政というのは各省庁にわたっております、そういうことからいきましても、やはり総理府あるいは内閣官房に置くということは大事だと思います。  そういうことで、総理府の総合防災室につきましては、平素におきましては防災行政全般あるいは防災計画の立案とこの事務を行う、そしてまた、非常時におきましては直ちに非常災害対策本部あるいは緊急災害対策本部の職員となって中核的な役割を担う、こういうこと。そして緊急措置におきましても、計画を作成してこれの実施を推進をしていく、こういうことであると思います。また、内閣官房に置かれます総合防災室、これは、今現在内閣の内政審議室の所掌しているところの総合調整の事務、このうち防災にかかわる分、これを独立させて担わせる、こういうことでございます。  もとより、こういう所掌事務を移すだけで防災対策緊急対応ができるわけではございませんで、やはり人事の面そしてまた予算の面におきましてもこの総合防災室は充実させていかなければいけない、そのことが今回五千五百名を超える犠牲者に対して報いることである、そう考えております。
  171. 赤羽一嘉

    赤羽委員 私も官邸にそのような総合防災室を置くという趣旨には賛成しますが、置かれる立場防災局の局長としては、そんなことは必要ないとお考えでしょうか。そのような総理官邸のもとで防災業務に専念された方がより大きな役割を果たし得るとお考えでしょうか、その見解を。
  172. 村瀬興一

    村瀬政府委員 先ほども申し上げましたように、災害は非常に軽度のものから重大なものまで千差万別でございます。ことしの一月に起きましたような、阪神淡路大震災のような大災害が起きました場合には、内閣総理大臣が陣頭指揮をとって、政府一体となって対処する必要があろうというふうに考えておるところでございます。そういったことを着実に行い得るようにするために、緊急災害対策本部本部長の権限の強化等の提案をしているところでございます。そういった事態の場合には、私どものところに入ってきますあらゆる情報を集約いたしまして、整理をして、総理が的確な判断がなされるような資料の提供をする、判断の材料を提供をするということが私どもの重要な役目であろうというふうに思っております。  そういったことから、私ども、御承知のように、現在のところ人数が非常に少ないわけでございますので、その定数につきましても国土庁を挙げて取り組んでいただいているところでございまして、来年度の定数増の要求の中では取り組んでいるところでございます。  今申し上げましたように、そういった重大災害の際には、私ども総理を補佐する事務局としての、緊急災害対策本部の事務局としての立場で全力を挙げて取り組んでいきたいというふうに考えておるところでございます。それから、それほどには至らないような、非常災害対策本部設置して対処するような災害、私どもでは国務大臣本部長になるということでございますけれども、その場合には国務大臣を補佐をいたしまして、先ほど申し上げました総理に対するのと同様の対処をする。そこまでにも至らないような災害もたくさんあるわけでございまして、例えば最近の伊豆の群発地震あるいは鹿児島地震といったようなものもあるわけでございますけれども、回数としてはそういった災害は非常に多いわけでございますが、そういった災害につきましても、先ほどから御説明をいたしておりますように、関係省庁といろいろ相談をし、あらゆる連携をとりながら対処をするというふうなこともやっておるわけでございます。  したがいまして、現在の私ども組織体制あるいは機能等が当然万全であるとは申し上げませんが、そのさらに一層の拡充強化につきまして、大臣の御指導のもとで全力を挙げて取り組んでいきたいというふうに考えております。したがいまして、その組織自体を総理府あるいは内閣に持っていったからといって、その実質的な内容が必ずしも変わるというふうには私は考えておりません。それから、あらゆることを官邸で処理するということにつきましても、実際上無理があるのではないかというふうにも思っておるところでございます。
  173. 赤羽一嘉

    赤羽委員 ちょっと時間も短いのでまた後にしますが、七月三日付の我が党の災害対策基本法抜本改正の政策大綱の中で提案しておるところでございますが、住民の努力義務として自衛手段の行使、自発的防災組織への参加等防災に関する積極的な役割を果たすよう努めることは重要であり、一月十七日を新防災の日として休日制定化し、本格的な防災訓練の日として位置づけるべきだという主張をしておりますが、この御提案について大臣はどうお考えでしょうか。
  174. 池端清一

    池端国務大臣 先生御案内のように、従来から九月一日を防災の日として、これを含む八月三十日から九月五日までの期間を防災週間として、さまざまな防災訓練や広報活動を通じまして国民の防災意識の高揚に努めてきたところでございます。特に本年は、九月一日に、阪神淡路大震災の教訓を踏まえて総合的かつ実践的、大規模防災訓練を実施してまいりました。  新進党さんからも御提案ございましたが、防災問題懇談会では、「一月十七日を「防災とボランティアの日」として位置づけ、防災訓練が主体となる九月一日の「防災の日」とは異なる形で、関係団体・機関において国民に身近な活動を中心に啓発行事等を実施していくことが望ましい。」こういう御提言がございました。  したがいまして、政府といたしましては、この提言を踏まえまして、災害時、今般の災害にボランティアの皆さん方が大変献身的な御協力をいただいたわけでございますので、こういったボランティアの皆さん方の活動をさらに発展させる、こういうことも考え、関係団体と調整の上、ノーモア阪神淡路大震災、こういうことを合い言葉にして一月十七日啓発行事等を推進してまいりたい、このように考えておるところであります。
  175. 赤羽一嘉

    赤羽委員 今回の阪神大震災で、本当に自治会組織、自治会等々による防災組織の重要性というのを改めて実感したところでございます。隣の家の人の顔も知らないような今の世の中で、町を挙げての防災活動、大規模な演習は九月一日前後にやっていただければいいと思いますが、一月十七日は、平日では余りインパクトがない。会社に勤めている人がほとんどで、日ごろ顔を合わせない人と顔を合わせてそういう防災訓練に駆り出すということで、ぜひ前向きに考慮していただきたいと思います。  実は、きょうはもう時間がありませんので終わりますが、災害救助法というのがこれから始まる復旧・復興活動に対して重要な法律でありますが、これも三十年以上前のかなり欠陥がある法律と言わざるを得ないわけでございます。本当は応急仮設住宅の問題等々、きょう御質問させていただきたかったのですが、また次回に譲るといたします。神戸復興はまだまだでございます。きょう、次の次に質問させていただく冬柴議員もその辺の神戸の復興の実情に対して質問させていただきますので、また次回の機会に譲ります。  終わります。
  176. 左近正男

    左近委員長 これにて赤羽一嘉君の質疑は終了しました。  樽床伸二君。
  177. 樽床伸二

    樽床委員 新進党樽床伸二でございます。災害対策基本法の一部改正につきまして、政府案及び議員提案による両法案につきまして御質問をさせていただきたいと思います。  まず最初に、本日、衆法、閣法ともに提出をされておりますが、災害から国民の生命、財産を守るという、災害にいかに対処をしていくかという政治の基本的なテーマに対しまして、政治的な思惑を入れて政争の具にすることはあってはならない、こういった前提の中で両法案が出ております。できるだけそのいい点をお互いに認め合ってよりよいものをつくり上げていく、このような前提で質問をさせていただきたいと思います。どうかよろしくお願いを申し上げたいと思います。  まず最初に、今回の法案の作成過程について御質問を申し上げますが、私は、災害対策につきましての基本は、やはり現地現場であるそれぞれの自治体、自治体がその災害に対する最も基本的な単位であろう、このように考えております。そして、政治とはやはり現実的なものでありますので、現実をしっかり踏まえて行う、このような前提が必要であります。現実を離れて空理空論に終わるならば、政治が持つ結果責任というこの一番大切なものを見失ってしまう、そのように思えてならないわけであります。  そういった前提の中で、今回の法案の作成に当たりまして、どのような形で地方の御意見を集められたのか、国土庁を中心とする政府の提案者の方にまず最初にお聞きをいたしたいと思います。
  178. 高田恒

    ○高田説明員 今回の改正案につきましては、防災問題懇談会の提言を踏まえまして作成がされておりますが、この懇談会には地方公共団体からも参画をいただき、地方の視点から見た国の防災体制や地方の防災体制等につきまして貴重な御意見をいただいたところでございます。こうした中で、提言がございました現地対策本部の法定化、地方公共団体相互の広域応援協定の整備、ボランティアの活動環境の整備等新たな防災上の課題への対応、こういった地方にかかわる事項につきまして本改正案に盛り込んだところでございます。  また、防災対策に関し、地方公共団体との窓口となります消防庁といたしましては、三月に地震防災対策検討会を設置し、地方公共団体の消防防災の実務上の責任者からも活発な御意見をいただくとともに、この八月には地域防災計画担当部長会議を開催するなど、各種会議やシンポジウム等を通じ、防災対策の充実について地方公共団体との意見交換等に努めてきたところでございます。  今回の改正に当たりましては、国土庁との密接な連携のもと、こうして収集いたしました地方公共団体の意見を改正案に適切に反映させるとともに、一部具体の内容につきましては、地方公共団体に照会することにより地方公共団体の意見を適切に取り入れたところでございます。
  179. 樽床伸二

    樽床委員 ただいま御説明があったわけでありますが、正直申し上げまして、言葉で聞いておりますと、最大限の努力をされておる、このようにお聞きはしたわけでありますが、さはさりながら現実問題といたしまして、中央省庁から意見を公式ルートで、当然公式ルートで聞くしかないわけでありますが、なかなか言いたいことも言えないというような状態も多々見受けられるように思います。  そういった点におきまして、私は努力が足りないと言っておるわけではございません。実は、私ども新進党の方におきましては、三千三百以上にわたります自治体に対してアンケートをいたしまして、千以上の自治体からの返事をいただいた、それに基づいて今回の法案を作成した、こういった過程もございます。そういった中で、私どものアンケートの結果ということもぜひとも重視をしていただきたい、こんな思いでございます。  そういった点におきまして、新進党提案者に対してお聞きいたしますが、再度、そのアンケートを行った趣旨について、もう一度確認をさせていただきたいと思います。
  180. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)議員 今も御質問の中で、樽床議員お答えになられているような感じもいたしますけれども新進党といたしまして、今回の阪神大震災におきましては、いち早くまず現地対策本部を設けまして、そして、一月の災害と並行いたしまして新災害対策プロジェクトをつくりまして、二度とこのような混乱、また過ちを起こしてはならない、そのためにも災害対策基本法を抜本的に改正しようということで進めてまいった次第でございます。  その過程の中で、今回のこの災害対策基本法改正案を立案するに当たりまして最も留意した点は、ただ単に国会議員の中での、永田町から見ただけでの視野で改正してはいけない、先般の阪神大震災の教訓を踏まえまして、真に実効性のある新しい災害対策のあり方を示すということが大事である。そういう観点から、これからの防災対策を、まずは地域の実情、住民の期待、行政の実態を十分に反映したものとして再構築するために、防災行政の第一線を担う、災害対策基本法考え方にもありますけれども、まずやはり災害が起きたときに第一次的に対応しなければいけないのは市町村の皆さんでございますし、その市町村の皆さんを初め都道府県を含めた三千三百余りの全自治体の首長の方々にアンケートをお送りし、その生の御意見を伺って私どもの法案に反映させていただいた次第でございます。  以上です。
  181. 樽床伸二

    樽床委員 ありがとうございました。  そういった前提に基づきますと、なおさら両案のよりよい調和の中でさらによいものをつくり上げていく、そういった使命をこの委員会で強く感じるわけであります。  続きまして、自衛隊についてお聞きをしたいと思います。  当然自衛隊は、軍事的な側面と、そして今回の災害時における人命救助のように非軍事的な側面、その側面における活動も最近大きくクローズアップをされてきたところでございます。  そういった中で、ややもすれば、この災害対策基本法の制定された当時のさまざまな政治環境の中で、自衛隊の軍事的な側面、非軍事的な側面が混同されているような面も多少見受けられるわけでありまして、改めまして、その非軍事的な側面における自衛隊の役割、こういったものについて、基本をまずお聞きをしたいと思います。
  182. 金澤博範

    ○金澤説明員 お答えいたします。  自衛隊は、適時適切な判断を持って、迅速な行動によりまして国民の生命、財産を守ることを使命としておるわけでございます。このため、自衛隊は平素から所要の防衛の体制をとるとともに、その組織、装備あるいは能力といったものを生かしまして、これまで長年にわたり、広範多岐にわたる災害救助活動を適切に行ってきたところでございますが、かかる認識のもとに今後とも各任務の遂行に全力を注いでまいる所存でございます。
  183. 樽床伸二

    樽床委員 ありがとうございました。  まず基本を前提にいたしまして、次の質問に移らせていただきますが、今回の法案におきまして自衛隊への権限付与につきまして、政府案そして衆法、その条件につきまして若干の違いがございます。  政府案は、自衛官は、市町村長それから警察官、海上保安官などがその場にいないときに限り権限を付与する、こういう文面になっておりますが、新進党案は、いないとき、または市町村長などから要求があったとき、このような形で若干違いがあるわけでありますが、この点につきまして、国土庁及び提案者それぞれにどのような趣旨であるのか、お聞きをしたいと思います。
  184. 村瀬興一

    村瀬政府委員 災害から個人の生命、身体、財産等を保護する第一次的な責任を有し、災害応急対策の実施主体となりますのは、基礎的な地方公共団体である市町村の長である市町村長でございます。また、日常的に個人の生命、身体等の保護に当たる公務員といたしましては、警察官及び海上保安官があるわけでございます。したがって、そういった市町村長あるいは警察官、海上保安官がいない場合に限りまして、災害派遣を命ぜられた自衛隊の部隊等の自衛官権限を行使するということにしております。  今申し上げましたように、警察官あるいは海上保安官と自衛官とでは、おのずからその役割に基本的に違いがあるだろうという認識でございます。  それから、各機関の本来の、今申し上げましたような責務及び日常の活動内容にかんがみますと、地域の実情に精通し、より本来的に災害から個人の生命、身体等の保護に任ずる立場にある市町村長及び警察官及び海上保安官が現場にいるときには、自衛官権限を行使するということにする必要はないのではないかというふうに考えておるところでございます。
  185. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)議員 今の、自衛隊への権限付与の条件についてでございますが、樽床議員質問の中でも言われておりましたけれども政府案については、警察官または海上保安官がその場にいないときに限定されております。それに対しまして新進党案では、その場にいないときに加えまして、市町村長等から要求があったときには、自衛隊がみずからの判断権限を行使できるものと規定しております。  ここにつきましては、具体的に、既にもう派遣要請が行われて動いている自衛隊でございますから、当然さらにそれぞれの自治体から要求があることも現実としてあり得る、そういう判断から新進党案は、そのような自衛隊が有する防災に関するすぐれた能力を災害時においてフルに活用できるように規定している。そういう観点からこの規定を入れさせていただきました。  以上でございます。
  186. 樽床伸二

    樽床委員 再度、もう少しこの点について政府にお聞きいたしますが、いないときに限りというこの文面は、例えば、どなたか一人おられて、しかもその方がいろいろな理由でそのような指示をすることができないという場合が考えられるかと思いますが、そのような場合はこの「限り」というふうなことに当たるのでしょうか。
  187. 村瀬興一

    村瀬政府委員 そこのところは、市町村長あるいはその吏員、警察官、海上保安官が現におって、しかもその権限を行使し得る状態でいるということでございますので、今先生のおっしゃった例がその権限を行使し得ないような場合でございますれば、ここで言う自衛官権限の行使が可能な場合に当たろうかと思います。
  188. 樽床伸二

    樽床委員 今の答弁を繰り返しますと、つまり、もしそこにおられる警察官、海上保安官などがそういった判断を下せる状態にないというふうなときには、これはいないというふうにみなす、このように解釈をしてよろしいのでございましょうか、再度確認をいたします。
  189. 村瀬興一

    村瀬政府委員 そのとおりでございます。  ただ、いるけれども行使し得ないような場合というのはどういう場合であるかというようなことは問題があろうかと思いますけれども、文字どおりいるけれども権限を行使し得ないという状態でおるという場合には、先生がおっしゃったとおりでございます。
  190. 樽床伸二

    樽床委員 その点につきまして防衛庁の方にお聞きしたいわけでありますが、現場においてそういった場合に混乱が生じないかどうか、御見解をぜひお聞きしたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  191. 金澤博範

    ○金澤説明員 ただいま防災局長から御答弁がありましたとおり、物理的にその場に存在しておっても、市町村の吏員さん、その他警察官、消防吏員たちが実質的に機能しておらない場合は、実質的にはいないと同視されるということでございますので、混乱は生じないと考えております。
  192. 樽床伸二

    樽床委員 現場におきまして、現地は非常時でございますので、そういう状況の中で果たして自衛官の方が、実際には、物理的にはおられるわけでありますが、そのような状況にあるのかないのか、そういったことを判断するのは大変難しいのじゃなかろうかというふうに私は考えるわけであります。  そういったときに、「限り」ということにしてしまうと、そこにもう物理的におられるわけでありますから、なかなかできないということで、ちゅうちょされるということが多々起きるのではなかろうかという危惧を持っておるわけでありますが、その点につきましてはいかがか、再度お聞きしたいと思います。
  193. 金澤博範

    ○金澤説明員 自衛隊法八十六条にこのような規定がございます。自衛隊法第八十三条第二項の規定によって部隊等が行動する場合には、当該部隊等及び当該部隊等に関係のある市町村長、警察消防機関は、相互に密接に連絡し、及び協力するものとする、こういう規定がございまして、災害派遣を命ぜられた部隊等がこれらの規定を根拠として市町村長等の職務に協力するというのは当然あり得るわけでございまして、この規定によって、実質的な不都合は生じないだろう、かように考えております。
  194. 樽床伸二

    樽床委員 細かい議論をしてまいりましたが、今の答弁を聞いておりますと、新進党案がそのものずばりであるような気がいたしております。私はそのように今の答弁を聞いて感じた次第でございます。  続きまして、権限付与の項目に当たりまして、警戒区域の設定という項目がございます。この警戒区域の設定の権限を付与したことに対しまして、国土庁そして提案者にそれぞれお聞きをしたいと思います。
  195. 村瀬興一

    村瀬政府委員 警戒区域は、災害発生し、またはまさに発生しようとしている場合という急迫した場面、例えば、河川がはんらんし、ある区域が浸水しようとしているような場合、あるいはまた土砂崩れが発生しようとしているような場合におきまして、住民の生命、身体の保護を図るために現場で緊急に設定するということが想定されるわけでございます。  このため、市町村長等、警察官、海上保安官がいずれもその場にいない場合におきまして、自衛官のみが現場におるというような場合に、住民の生命、身体の保護に万全を期する観点から、その権限自衛官に行使させる必要があるというふうに考えているわけでございます。
  196. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)議員 警戒区域の設定の権限付与については、午前中から再三にわたり与党の議員の方々からも御質問がございましたけれども、私どもは、自衛隊にこの六十三条の警戒区域の設定の権限を付与することについては、次の大きく二点の理由から慎重であるべきである、そのように考えております。  第一に、自衛隊は、そもそもその任務の性質上、市町村の職員また警察官等とは異なって、日常的に住民と接するとか、また住民に対して指示、命令する、そういう業務を行っていない、そういう部隊でございます。現に、広域にわたって今も警戒区域を設定している雲仙普賢岳でも、このような要望は一切ないところか、行政の長である市長が設定したものに対して、住民から逆に、長期にわたっているがゆえに生活や仕事を本当に阻害されているということで、いろいろなトラブルが起きているというレポートも日弁連なんかは出しているような事態でございまして、そういう任務を自衛隊にさせることが果たしてふさわしいのかどうかというのが第一点の疑問でございます。  第二といたしまして、第六十三条には、後に出てきます百十六条で罰則が設けられておりまして、この警戒区域の設定に伴う立ち入りの制限もしくは禁止もしくは退去命令に違反した者は、罰金または拘留に処せられることになっているわけでございます。国民の権利保護の観点から、罰則を伴う規定を設けるに当たっては、罰則の前提となる命令の妥当性が強く要求されるところでありますけれども、第六十三条に規定する市町村長の警戒区域の設定等の権限を自衛隊に付与することとなると、自衛隊は日常的に住民に接する立場ではないため、第六十三条に基づく命令の妥当性の担保について多少の問題があると私どもは言わざるを得ません。  以上でございます。
  197. 樽床伸二

    樽床委員 再度提案者にお聞きいたしますが、ということであるならば、新進党案にある避難のための立ち退きの指示で十分である、このような認識でございましょうか。
  198. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)議員 全くそのとおりでございます。  一々警戒区域の設定権というものを与えなくても、避難のための指示の権限を、六十一条に規定されておりますけれども、それを新進党案としては自衛隊に災害時に持たせるべきである。政府案としてその権限を持たせないのはどこか落ち度があったのではないか、そのように認識している次第でございます。
  199. 樽床伸二

    樽床委員 先ほど政府側の答弁者からくしくも答弁がありましたが、地域の実情に通じている市町村長並びに警察官、そういった御発言があったようでございますが、私も、地域の実情を知らない状態の中で、なかなかその警戒区域まで設定するのは自衛隊に対して苦しいものがあるのではないか、こういった感じを持っておるわけでありますが、防衛庁といたしましては、現場で活動される段に当たりまして、今議論されました点につきましてどのような見解をお持ちか、お聞きしたいと思います。
  200. 金澤博範

    ○金澤説明員 六十三条は、御指摘のように、設定に伴う立ち入りの禁止等について罰則をもって担保する構成となっております。我々といたしましては、その罰則をもって担保するほど住民の生命、身体に対する危険が切迫しておる、こういう状況だというふうに認識しておるわけでございまして、こういった状況のもと、そこに市町村長と警察官、海上保安官がいない、自衛官がその場に存在するという場合には、住民の生命、身体の保護の観点から自衛官にかかる権限を付与していただきたい、このように考えておるわけでございます。
  201. 樽床伸二

    樽床委員 私は、一時的にそういうような切迫した状態におきましては、立ち退きを指示してその危険な地域から一刻も早く脱出をさせるということで十分事足りるのではなかろうか、このように感じるものであります。警戒区域の設定につきましては、きちっと市町村長等々と協議をした上で、電話連絡をする、また市町村でありましてもそんな一時間も二時間も時間がかかるということではありませんので、もう少し慎重にこの権限付与につきまして御考慮をいただきたい、このように感じるものであります。  続きまして、市町村長への自衛隊の派遣要請の権限付与につきまして、午前中から、また先ほどからの議論の中で何度も出ておりますが、改めて確認をさせていただきたいと思います。提案者及び国土庁に対しまして御質問申し上げます。
  202. 村瀬興一

    村瀬政府委員 自衛隊法八十三条におきまして、自衛隊の災害派遣要請する者を都道府県知事等としておりますのは、都道府県知事等が被害状況等を全般的に掌握し得る立場にあることから、これらの者が消防、警察等の災害救援能力を考慮した上で自衛隊の部隊等の派遣の要否、活動内容等を判断することが、救援活動を効率的かつ効果的に実施する上で最適であるというふうに考えておるからでございます。  仮に市町村長からも要請できるということにした場合には、例えば複数の市町村にまたがって災害発生したような場合に、市町村長は他の市町村状況を含めた全般的な被災状況を掌握する立場にはないわけでございますので、都道府県知事及び複数の市町村長からの派遣要請が錯綜し、部隊等を救援活動のために派遣する際に的確な判断が困難となるといった事態が想定されるわけでございます。こういったことから、市町村長が自衛隊の災害派遣要請することができるような制度を設けるというのは適当でないというふうに考えておるところでございます。  それから、他方、災害時の混乱からやむを得ず市町村から直接自衛隊に対し派遣を要請せざるを得ないような事態もないわけではないと思いますが、この場合には、都道府県知事からの要請にかわるという制度よりも、むしろ自衛隊が自主派遣を行う場合の判断材料の一つというふうにすべきであるというふうに考えております。  ちなみに、去る十月の五日に修正されました防衛庁の防災業務計画におきましては、「部隊等が都道府県知事等と連絡が不能である場合に、市町村長から災害に関する通報を受け、直ちに救援の措置をとる必要があると認められる場合」が、自主派遣を行う具体的な例として明記されているところでございます。
  203. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)議員 ただいまの、市町村への派遣要請権限付与については、私どもは、大きく五つの理由からこの要請を規定したものであります。  第一に、今回、兵庫の阪神淡路大震災がまさにそうだったのですが、災害発生した場合において、その事態に照らし特に緊急を要し、かつ、応急措置を実施するためにやむを得ない必要があると認めるときは、一刻も早く自衛隊が派遣できるようにするため、市町村長災害派遣の要請ができるようにするべきであるというのが根本的な考え方でございまして、今回、県庁自体が被災を負ったがゆえに、八時十分過ぎに姫路の第三特科連隊と県庁が連絡をとった後、通信の途絶によって十時まで連携がとれなかった、なおかつ県庁と各市町村を結ぶ情報通信システムも停電によりまして一時間四十分もこの通信が途絶した、こういう場合には、まさに今申し上げましたように、応急措置を実施するためにやむを得ない必要がある、そういう場合に当たったと思うのですが、こういう場合に、市町村長からもきちっと自衛隊に災害派遣が要請できるようにしていれば少しでも早くなったのではないかというのが一点でございます。  第二点目は、それと関連して、私ども調査団が現地に行きまして各市町村長からお聞きしましたその御意見は、できるならば市町村長災害派遣の要請ができるようにしてほしい、そういう要望が強くあったというのが第二点目でございます。  第三点目に、先ほど防災局長も申されておりましたけれども、防衛庁がこの十月の初句に防災業務計画を改正されて、自主派遣の判断基準の一つとして、通信の途絶等により知事との連絡が不能である場合に、市町村長から通報を受け、直ちに救援の措置をとる必要があると認められる場合をこの自主派遣の判断基準の一つとしております。そのようなときに、市町村長からの通報を受けた場合に自主派遣が可能ならば、この被害状況をだれよりも的確に把握している市町村長災害派遣要請権を規定することには何ら問題はないと私どもは考えておりますし、逆に、総理も、先日の本会議で、「自主派遣は、要請を受けて行う災害派遣を補完する例外的な措置であります。」そういうように言われておったわけでございますけれども、その例外的な措置を膨らますよりも、むしろ派遣要請の部分をきちっと規定することの方が意味があるのではないかというのが三点目でございます。  第四に、今の日本の自衛隊というのは、複数の市町村長から派遣要請を受けても調整できるだけの能力を十分有していると私どもは考えております。  第五に、市町村長災害応急対策の実施に第一次的な責任を負う立場にあることを考えれば、市町村長災害派遣を要請する道を全く閉ざすべきではない、そのような観点から市町村長にこの権限を付与した次第でございます。  以上です。
  204. 樽床伸二

    樽床委員 ただいま提案者の答弁の中で、四点目でありましたか、自衛隊は複数の市町村から派遣要請を受けても調整するだけの能力があると確信をする、このような答弁があったと思います。  防衛庁にお伺いをいたしますが、私も、当然防衛庁においてはそのような能力は持っておるに違いない、このように確信をいたしておりますが、御見解はいかがでございましょうか。
  205. 金澤博範

    ○金澤説明員 実態といたしましては、災害が何か発生したという場合に、地元の市町村から部隊に対して直接連絡があるということは当然多々ある場合でございます。ただ、そのことと市町村長さんにその要請権限を付与するということは別だろうと我々は思っておる次第でございます。  全国に約三千三百人の市町村長さんがおられるというふうに承知しておりますけれども、これらの市町村長さんに個々に要請権限を付与することになれば、先ほど防災局長から申し上げたとおり、非常な混乱が生じる、ひいては効率的な災害救援活動に支障が生じるのじゃないか。むしろ、都道府県知事さんは県下全般を見ておられるわけで、都道府県知事さんのフィルターを通して要請をいただいて対処するのが結局は効率的であろう。ただ、そうは申しましても、都道府県知事との連絡が途絶するような場合も当然想定され得るわけでございますから、そのような場合には自主派遣の一つの形態として出動する、その旨を防災業務計画に規定したところでございます。
  206. 樽床伸二

    樽床委員 ちょっと私の質問に答えていただいていないような気がしてならないわけであります。  新進党案の方も、いきなり市町村長に全面的な権限を与えるということではないように思っております。原則的には都道府県知事ということでありまして、やむを得ずさまざまな理由によって不可能な場合には市町村長が要求してもよろしい、こういうことであろうと思っております。  そのような観点から考えますと、確かに全国に三千三百の市町村はありますが、日本全国一律に災害発生するということはほぼ考えられないわけでありまして、かなり局部的なものに日本の中ではなるであろう、このようなことを私は思っております。  であるならば、当然、現自衛隊の情報収集能力の中でカバーできるはずである、私はこのように考えておりますが、その情報収集力の問題につきまして御見解をお聞きしたいと思います。防衛庁、よろしくお願いします。
  207. 金澤博範

    ○金澤説明員 御質問の趣旨を十分に理解しているかどうか必ずしも自信がございませんが、防衛庁は、人員のみならず航空機、車両、艦艇等を保有しているわけでございまして、それらを用いた情報収集活動というのは当然能力がございます。先ほど申し上げました防災業務計画の中で、情報収集活動のための出動、それ自身も自主派遣の一つの場合として規定したところでございます。
  208. 樽床伸二

    樽床委員 実は、この問題につきましては、先日の本会議におきまして、我が党の石井議員から質問をさせていただきまして、村山総理より、自主派遣の基準について三点ばかり見解をお聞きしているつもりでございます。  その点につきまして、もう一度、防災業務計画における自主派遣の基準につきまして、もう少し詳細をお聞かせいただきたいと思います。
  209. 金澤博範

    ○金澤説明員 お答え申し上げます。  自衛隊法第八十三条は、都道府県知事等からの要請による災害派遣を原則として、自主派遣は要請を受けて行う災害派遣を補完する例外的な措置であるという規定になっておるわけでございますけれども、これにつきましては、先般の大震災における教訓を踏まえ、災害派遣の命令権者が自主派遣を行う場合の判断基準とすべき事項について明確にすべきであろうと我々も考えまして、先ほど来申し上げております防災業務計画を十月五日に改正いたしました。  具体的な中身でございますけれども、大きく分けて三つでございます。  一つは、先ほど申し上げました、「災害に際し、関係機関に対して当該災害に係る情報を提供するため、自衛隊が情報収集を行う必要があると認められること」。  二つ目は、これも先ほど来御答弁申し上げておるところでございますけれども、「災害に際し、都道府県知事等が自衛隊の災害派遣に係る要請を行うことができないと認められる場合に、直ちに救援の措置をとる必要があると認められること」。例えば、通信の途絶等により、部隊等が都道府県知事等と連絡が不能である場合に、市町村長等から災害に関する通報を受け、直ちに救援の措置をとる必要があると認められるような場合というのが考えられるところでございます。  三つ目は、災害に際しまして、自衛隊が実施すべき救援活動が明確である場合であって、当該救援活動が人命救助に関するものであるということでございまして、例えば、航空の救難でございますとか海難救助の場合が考えられるところでございます。  以上が具体的な三つの例でございますけれども、業務計画に幾ら細かく書いてもカバーし切れない場合がございますものですから、四番目に、今申し上げた三つに準じて、「特に緊急を要し、都道府県知事等からの要請を待ついとまがないと認められること」。この四本柱でございます。
  210. 樽床伸二

    樽床委員 ただいまいろいろ質問させていただきましたが、要は、新進党案政府案で大きな違いは、都道府県知事からの要請ができないとかいろいろな例外的な場合において、新進党案では、そういった場合に限って市町村長に自衛隊の要請をしてもよろしい、こういうのか、政府案は、そういう場合には自主派遣でやります、こういうのか、この二者択一であろうというふうに議論を整理してもよろしいかと私は思っております。  そういう前提の中で、私は自衛隊を高く評価するものでありますし、そういった前提で申し上げますが、しかしながら、自主派遣ということの拡大解釈を果たしてどこまでしていけばいいのだろうかという疑念がわいてくるわけであります。私は、シビリアンコントロールの前提のもとでは、自衛隊につきましてはしっかりと法的な前提の中できちっと定義をされて、大手を振って活動するべきであろう、このような認識を持っております。そして、この自主派遣の拡大が一体どこまで広がっていくのかということをこれまで最も懸念されておられましたのは、実は社会党ではなかったかというふうに私は認識をいたしております。  その点につきまして、長官にぜひそのあたりの見解をお聞きいたしたいと思います。
  211. 池端清一

    池端国務大臣 防衛庁の方から御説明ありましたように、十月五日に修正された防衛庁の防災業務計画におきまして、その基準が明確に示されているわけであります。  「部隊等が都道府県知事等と連絡が不能である場合に、市町村長」云々「から災害に関する通報を受け、直ちに救援の措置をとる必要があると認められる場合」、こういうことでありますので、これは明確にその基準が明らかにされている、私はこう思いまして、拡大をされる、決してそういう危険はない、おそれはない、こう思っております。
  212. 樽床伸二

    樽床委員 確かに基準は明確でありますが、しかし、これは私の認識で間違いがあれば申しわけないわけでありますが、法律で決めたものではなく、防衛庁による決定であるわけでありまして、その点につきましてはいかがお考えでございましょうか。重ねて長官にお聞きしたいと思います。
  213. 金澤博範

    ○金澤説明員 自衛隊法八十三条、これは災害派遣を規定する条文でございますけれども、その条文自身が、都道府県知事等からの要請に基づいて行う災害派遣が原則であって、自主的に行うものは例外的であるという趣旨を規定しているわけでございます。その法律の書き方自身が、いわば自主派遣というものは補完的なものである、要請が原則であるということで、何でもかんでも自衛隊がまず一遍、最初に出ていくべきだということを規定しているものではないということが、まず第一点でございます。  他方、法律の書き方は、補完的なものであるということで、具体的にどういう場合ということは不分明でございますから、身体、人命の救助にいささかのちゅうちょも許されないわけでございますから、部隊長が判断に迷わないように、事前に、具体的にこれこれこういう場合と、先ほど申し上げましたような内容を明確に規定した、こういうことでございます。
  214. 池端清一

    池端国務大臣 防衛庁の防災業務計画というのは災害対策基本法第三十六条に基づくものでございまして、その立場から、先生御懸念のようなあれはないと私は申し上げたいと思います。
  215. 樽床伸二

    樽床委員 しかしながら、今いろいろ御意見を聞いておりますが、要請をしたからといって必ずしも受けなければならないということにはならないであろう。市町村から要請が上がるということは、当然、都道府県ではもう通信ができないという状況で上がってくる。新進党案でも、市町村長からの要請を受けた場合には、速やかに都道府県報告をしなさい、このようなことも確かに明記をしてあると記憶をいたしております。  そういったことから考えますと、万やむを得ず市町村が要請を出す、その要請に対して、ヘリコプターでも飛行機でも結構でございますが、瞬時に飛ばして、情勢を自衛隊の高い情報収集力できちっとサーベイをして、行くべきであるか行くべきでないのかということは、私はきっちりと判断できるであろう、このように考えております。  でありますから、これはやはり、そのような権限、要請する権限というものは、万やむを得ない場合には市町村長にも与えるべきであろう、それを自主派遣でお茶を濁すということはどうも納得しがたい、このように思うわけであります。  まことにしつこい質問で恐縮でありますが、再度長官に、そのあたりの基本的なお考えにつきまして、もう一度お聞かせをいただきたいと思います。
  216. 池端清一

    池端国務大臣 市町村長からというような御意見も各自治体の皆さんにあるということは十分承知しております。しかし、全国三千三百余の市町村、これを自衛隊が一元的に対応するということは、これは大変な事態でございます。やはり都道府県というものを経由することが私は大事でないか、各町村長からまちまちに来られても、自衛隊としてもこれは対応に苦慮することになる、こう思うわけでございます。  そういうような事態対応するためにも、先ほどから申し上げましたような防衛庁の防災業務計画というものもございます、自主派遣という道もあるわけであります。そこには歯どめもかかっておるわけでありますから、こういう方法を講じることがよりベターではないか、こういうふうに考えておるところであります。
  217. 樽床伸二

    樽床委員 どうも話を聞いておりますと、いきなり市町村長まで全部権限を一気に与えてしまって、それが第一義であるということに誤解をされているように聞こえてならないわけでありますが、新進党案でも、一義的には都道府県知事がするべきである、万やむを得ない場合には市町村長がしてもよろしい、こういうことでありまして、基本都道府県知事を通すというのが前提であり、例外という言葉を使っていいのかどうかわかりませんが、やむを得ない場合ということで限定をしているはずであります。  さらには、三千三百から要請が来たら混乱する、こういうことでありますが、そういうことでありますと、別にいじめるわけで聞いておるわけではございませんが、全国三千三百、一律に災害が起きるというのはどういう状況なのかをお聞かせいただきたいと思います。  私は、基本的には、災害というのは局部的なものでありまして、全国三千三百から一気に要請が来るということは、これはどうも私のイメージでは思いつかない、こういうことでございますので、今回の阪神大震災におきましても、あの神戸、西宮、芦屋、淡路島、宝塚、伊丹、そういった兵庫県の全体ではなく一部の地域である、こういうことであります。そのような観点からすると、三千三百からいきなり要請が来るというこの前提がどうも私は納得できないわけでありまして、そのあたりについてもう一度御見解をお聞かせいただきたいと思います。
  218. 村瀬興一

    村瀬政府委員 三千三百の市町村全部が一度に災害を受けるというようなことは、それはまずないと思いますが、例えば関東大震災のようなことを考えますと、非常に広範囲に被災するという状況が予想されるわけでございます。そういった場合に、先ほどから申し上げておりますように、やむを得ない場合であるにしても、市町村長から直接次々と要請が来るというふうな場合にはなかなか対応しにくい。むしろ、都道府県知事判断をしていただいて、自分のところの複数の市町村が派遣要請している場合に、仮に優先順位のようなものがあるとすればどうだと。それから、ここの地域には特にたくさんの部隊が要る、あるいはこっちの地域にはこういった能力のある部隊を出してほしいというようなことを、知事さんが総合的に都道府県の中のことはある程度判断をしていただいて自衛隊に話をしていただくということが、全体としては効率的な自衛隊の運用になるのではないかと思います。  それから、さっき先生が、自衛隊は市町村から要請があっても能力があるのではないかというふうなお話があったように思いますが、そこは防衛庁の問題ではございますけれども、非常に大きな災害が起きました場合に、同時多発的な対処をしなければいかぬという場合に、やはり自衛官あるいはその装備にも数に限りがあるということも考慮しなければいけないのではないかと思っております。
  219. 樽床伸二

    樽床委員 この辺につきまして、大変しつこいようでございますが、どうもよく話を聞いてもわからない、こういうことでございます。  なぜかといいますと、関東大震災級の広範囲、こういうふうに御発言がございましたが、今回の阪神・淡路でもかなり広範囲でございます。そして都道府県庁のあります神戸市、その県庁そのものがやられてしまったわけでありまして、そういう場合には一体どこからどのような形で国に上げていくのかというのもこれは大変、実際起こったことであります。  そしてまた防衛庁の、数に限りがある、これは当たり前の話でありまして、無尽蔵に自衛隊の方がおられるわけではございません。しかし、要請を受けたことに対して、優先順位をつける能力、情報収集の能力は、私は自衛隊は持っておられるというふうに確信をいたしておりますので、その要請を受けて、情報収集をして優先順位をつけて、まずここからここから、こういう形で行くことは十分可能であろう、このように私は考えております。改めてお聞きいたしたいと思います。
  220. 金澤博範

    ○金澤説明員 自衛隊の方で優先順位をつけられるではないかということでございますが、たまたま災害が自衛隊の駐屯地なり基地なりの近傍で起きた場合は、それももちろん可能でございましょう。ただ、通例、この間の大震災の例でも明らかなように、自衛隊は遠隔地に派遣されていくわけでございます。むしろ、どういう被害状況かというのは、それがどこが優先順位が高いかというのは、県下全般を見ておられる都道府県知事、これが第一義的な判断を持ってしかるべきではないか、その方が効率的な災害派遣につながる道である、このように考えておる次第でございます。
  221. 樽床伸二

    樽床委員 後ろの方でいろいろ声が飛んでいるようではございますが、実際に兵庫県におきましては神戸そのものがやられたわけでありまして、要するに県がそのような能力を一時なくしてしまった、こういうのが現状でございます。  そういう中で、都道府県庁が必ずしも優先順位をつけられるとは私は思わないわけでありまして、最も地元である市町村から要請を上げて、その要請をどう吟味するのかという、実はここで話が変なところへ飛んでいくわけでありますが、総合防災室のような内閣の機能強化につながるのではなかろうかというふうに思いますが、そこまで話がいきますとちょっと議論が飛躍をいたしますので、そのことは質問ということにはいたしませんが、どうも市町村長に対する、万やむを得ない場合において要請権限を付与するということに、そこまで頑迷に拒否をされるという理由が私はどうもよくわからない。いろいろ考えてみればみるほど、万やむを得ない場合には市町村長権限を与えてもいいのではないか、自主派遣という形でお茶を濁すよりもきちっと法的に要請はしてもいいですよというふうに与えてはどうだろうか、このように感じるわけでございます。  まあ、この点につきましてこれ以上やりましても水かけ論に終わろうかと思います。ぜひその点はよくお酌み取りいただきまして、衆法、閣法、両法案提出をされておるということでございますので、どうか、お互いのいいところは採用していくという広い気持ちで、党利党略ではなくて、国家国民のためにという前提の中で、よりよい法案をつくっていただきたいということを強く希望をするものでございます。  続きまして、中央防災会議のことについてお聞きをいたします。  時間がもう余りないようでございますので、法改正後の中央防災会議の役割につきまして国土庁にお聞きをいたしたい。そして、衆法提案者に対しましては、衆法の法案が通過をした折にはどのような中央防災会議の役割になるのか、将来の方向、あわせてお聞きいたしたいと思います。
  222. 村瀬興一

    村瀬政府委員 中央防災会議でございますが、平時におきましては各省庁の防災に関する事務の総合調整を主たる任務とする、それから発災時におぎましては、緊急事態の布告についての答申でございますとか、緊急措置に関する計画の作成等につきまして、引き続き重要な役割を果たすということになると考えておるところでございます。
  223. 高木義明

    高木(義)議員 樽床委員お答えをいたします。  中央防災会議の今後の方向性についてでございますが、新進党案では、政府案と異なりまして、まず非常災害対策本部設置のみならず、災害緊急事態の布告についても諮問事項から外すことにいたしております。また、所掌事務につきましても、非常災害に対しての緊急措置に関する計画の策定を削除しております。いずれも非常災害発生時に一刻も早く対応するような事項でございまして、回りくどい手続についてはこれを廃止したものでございます。  この改正によりまして緊急時の役割は少なくなりますが、だからといって中央防災会議の意義をいささかも損なうものではございません。中央防災会議内閣総理大臣を会長といたしておりますし、閣僚その他の行政機関の長及び学識経験者が集まって防災に関する基本方針等を審議する場として依然私は高い権威を持つものであろうと思っております。むしろ、形骸化したものをそぎ落として、より実質的かつ重要な役割に専念させた方がいい、このように確信をいたしております。
  224. 樽床伸二

    樽床委員 ありがとうございました。  時間の関係もございまして、これ以上質問に入りますと時間がオーバーをしてしまう、こういうことになりますので、このあたりで質問は終わらせていただきたいと思います。あわせまして、事前に通告をさせていただきました方々に、時間の関係で大変御足労を願いましたことをまずおわびを申し上げる次第でございます。  今、中央防災会議につきましてのまずさわりの御答弁をいただいたわけでございますが、私はまた後の機会にこの点につきましても御質問をさせていただきたい、このように考えておるところでございます。中央防災会議はいろいろな企画、立案等々の平時の組織にシフトをしていくべきではなかろうか。緊急の折にほとんど、赤羽議員の方から御指摘もありましたように、ほとんど会議も開ける状態でない。こんな中央防災会議がいつまでも緊急時における計画を策定し実施をしていく、このような方向性はなかなか無理があるのではなかろうか、このような認識を持っております。とにかく時間の関係がございますので、また後の機会にこの質問は回していきたい、このように考えております。  とにもかくにも、いろいろきょうは失礼なことも申し上げました、さまざまな議論をさせていただきましたが、とにかく冒頭に申し上げましたように、私は、政治が結果責任をとっていくというこの基本原則を今忘れてしまっているということに大変強い危惧を抱いております。政治とは結果に対して常に責任を持っていくことであるというふうに私は考えております。そういう中で、無責任体制になってしまった今の政治の状況に大変強い危惧を私は感じております。そういった前提の中で、今回新進党から出された改正案そして閣法ともどもよりよい点をしっかりと踏まえていただきまして、政治がしっかりと責任をとる、そして責任を明確にするといった前提の中で、最も貴重な国民の生命、財産を守るというための法案の作成に私どもも全力で協力させていただきたい、そんな思いを申し上げまして、私の質問を終了させていただきます。ありがとうございました。
  225. 左近正男

    左近委員長 これにて樽床伸二君の質疑は終了いたしました。  冬柴鐵三君。
  226. 冬柴鐵三

    冬柴委員 新進党冬柴鐵三でございます。  法第六十三条一項の警戒区域設定と立ち入り制限、禁止処分、これと損失補償の関係についてお尋ねをいたします。  憲法二十九条三項には、「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。」このように規定をいたしております。憲法で規定する損失補償制度は、国民全体の利益に資する公共事業などの用に供するために、行政庁が公権力を行使して、適法に国民の財産権を収用ないし制限した場合には、これによって損失を受けた者に公共の負担で補償を与え、全体の手で特定人に生じた損失を補償し、利害の調整を図ろうとする制度でございます。  そこで、閣法では、六十三条に三項を追加して、自衛官にもこの立ち入り制限、禁止処分措置をとる権限を認めており、衆法では、七十二条の二を追加して、知事にこの措置をとる権限を認めております。そこで、このような措置がとられたことによって損失を受けた者に対し、その損失補償を行う必要があるのではないかと強く感じる場合があります。  一例を挙げますと、雲仙普賢岳噴火災害のときのことでございます。養鶏場を経営していたMという人の事例でございますが、M氏の家屋及び鶏舎のある安中地区仁田町全体が警戒区域とされたのでございますが、この警戒区域の指定が平成三年六月七日になされました。その後、警戒区域の解除がなされるまでの間、M氏の家屋とか農業施設は一切火砕流ないしは土石流による被害は受けなかったわけでございます。これは幸いに受けなかったわけでございます。しかし、警戒区域が設定されてその中へ入ることができなかったがために、このM氏は、飼育していた鶏四万八千羽、これはすべて餓死いたしましたし、それから、ミツバチ二百五十箱は散逸をしてしまったわけでございまして、損害額は七千万円に及んでおります。個人です。  もう一例挙げますと、島原グランドホテルというのがございました。このホテルの所在地が警戒区域とされたのが同じ平成三年六月七日でございましたが、解除されたのは十月十五日、四カ月強あったわけでございます。その間、やはりホテルは、火砕流、土石流の被害は全く受けなかったわけでございます。しかし、この警戒区域設定期間中、設備の保守、点検に入ることができなかったことによって、ホテルの空調設備とか水道設備、給湯設備はもう使用が不能になってしまうとともに、警戒区域設定期間中に台風が参りまして、その被害で客室に甚大な被害が生じましたけれども、この期間もまた立ち入りができなかったということで、その損害は見積もり五千八百万円に上ったわけでございます。  このようなことを見てまいりますと、この警戒区域の設定というものは、憲法二十九条との関係で補償しなければならない場合があるのではないか、このようなことを強く感ずるわけでございます。  そこで、国土庁長官及び衆法提案者について、それぞれ所見を伺っておきたいと思います。
  227. 池端清一

    池端国務大臣 冬柴委員お答えを申し上げます。  警戒区域の設定は、先生御案内のように、地域住民の生命、身体の安全を確保するために特に必要がある場合において行うものでございますから、これは先生いろいろお話ありましたけれども、補償になじむものではないというふうに考えております。  なお、この点につきまして、自衛官に新たな権限を付与することによってこれまた変わるものではないというふうに考えておるわけであります。  しかし、雲仙普賢岳噴火災害のように、災害が長期間に及んだ場合には、地域住民の生活や経済活動に大変な支障が生じることは今お話のあったとおりでございます。これらについては、国、都道府県市町村が連携をして各種の支援措置を講じているところでございますし、災害対策基本法の第八条の第三項において、「国及び地方公共団体は、災害発生したときは、」「被災者の援護を図りこういうふうに規定をされているところでございます。この点は今後とも支援を図っていく考えでございます。
  228. 小坂憲次

    小坂議員 冬柴委員の御質問お答え申し上げます。  警戒区域の設定等に伴う損失につきましては、ただいまの政府の答弁同様、これを補償することはできないものと考えております。  しかしながら、新進党案では、警戒区域設定等に当たって、国等の支援の規定を新設をいたしております。  雲仙普賢岳の例に見られますとおり、警戒区域内の住居や事業所あるいは農地、これらにつきましては、規制が長期的に継続するような場合、住民の生活及び就労の確保のための財政需要が発生することが見込まれます。また、これらの規制を行うための人的、物的な経費も相当な額に及ぶものと考えられます。  そこで、新進党案では、国や都道府県知事市町村長に対し必要なアドバイスをすること、また先ほど申し上げましたような経費を補助する等の援助を行うよう努めなければならないという規定を設けてこれを補完をいたしておるところでございます。  いずれにいたしましても、憲法二十九条三項の規定にあります公共のために提供したものかどうかという点については若干の議論のあるところではありますが、現状におきましては、これはみずからの命を守るために行われたものという理解のもとに、補償はできない、このように考えております。
  229. 冬柴鐵三

    冬柴委員 私は、必ずしも今の国務大臣及び提案者の答弁を子とする者ではありませんけれども、この災害対策基本法自体が、伊勢湾台風という短期終息型災害と申しますか、一過性災害というものの甚大な被害に驚き、早々につくられた法律でありますから、この雲仙普賢岳型の長期災害というものを予想していない面があると思います。  日本弁護士連合会では、平成六年二月に、「災害対策基本法等の改正に関する意見書」という大変な労作を物しているわけでございまして、今回の改正の中にこれが盛り込まれなかったことは非常に残念だと思います。  そういう意味で、長期災害というものが起こったときには、今回の基本法だけではどうしても無理があるように思われてなりません。そういう意味で、ぜひそのような観点から、衆法における一つの萌芽といいますか、これに対する手がかりと申しますか、そういうものを設けていただいたことはすぐれていると思うわけでありますが、なお政府におかれましてもこういう点について特段の、今後、研究、配慮がなされるようにお願いしたいと思いますが、国務大臣の所見を伺っておきたいと思います。
  230. 池端清一

    池端国務大臣 雲仙普賢岳の問題は、私も当委員会において先生といろいろ議論した経緯等もございまして、実情等については十分承知をしておるところであります。今先生の御提言、十分受けとめまして、今この委員会でも、小委員会設置をされましてこうした問題についても議論をされておりますので、それらの議論の経緯も踏まえてひとつ検討をしてまいりたい、こう思っております。
  231. 冬柴鐵三

    冬柴委員 私は、阪神淡路大震災の地元であります阪神・淡路地域から選出をいただいた衆議院議員でございますので、今九カ月余を経過したところを眺めまして、この震災において発生した非常に困難な問題を二つ取り上げていろいろ伺っていきたいと思います。一つは、液状化現象でございます。そしてもう一つは、既存不適格建築物の再建という問題でございます。この二つにつきまして若干時間をとって尋ねてまいりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。  液状化現象というのは、発災時直後に諸所において大量の土砂がまるで噴水のように噴き上げる。私の地元では、寝ていた八畳の間がザクロが割れるようにして下から土と水が噴き上げてきた、そういう体験を伺いましたけれども、壮絶なものでございます。また、それに伴いまして地盤が沈下をいたします。また、地盤の側方流動が始まります。道路は至るところで隆起し、陥没し、無数の亀裂が走り、したがいまして、地中埋設のガス・上下水道管は破断損傷いたしまして、機能を失ってしまいます。  住宅地におきましては、家屋のほとんどが思い思いの方向に基礎ごと傾斜をいたします。傾斜修復をしないと生活は困難となります用地元の人は百分の五とか百分の三傾斜しているということを言われますけれども、それは一メートルで五センチとか一メートルに三センチ傾斜しているということを意味するわけでございまして、こういうところにしばらく住むと精神的におかしくなってくる、気分が悪くなってくる、そういうようなことも訴えていられるわけでございます。  芦屋市には芦屋浜シーサイドタウンというのがあります。約三十八万坪でございまして、主として住宅用地として兵庫県が公有水面埋立法の免許を取得いたしまして、昭和四十四年に着工し、昭和五十年に埋め立てを完了した美しい町でございます。これは、二十一世紀の未来都市ということを標榜いたしまして、兵庫県の住宅供給公社が昭和五十五年までに大変な競争率のもとに優良宅地として分譲した宅地でございます。その中には、広い遊歩道や、諸所には小公園が設けられ、ゆとりのある街路には亭々たる街路樹が浜風にそよいでいまして、しょうしゃな戸建ち住宅街は風格のある熟成した芦屋らしい町を形成していたわけでございます。しかし、今回二十秒ほどの激震でございました。全戸数九百九十七戸中、実に半壊六百五十六戸、全壊一戸の被害を受けるとともに、町じゅうには、無数のダンプカーがぶちまけたような噴砂、地底から噴き出した砂の山ができたわけでございます。  また、私が住んでいます尼崎市というところでは、このような現象が五カ所にわたって起こりましたが、築地地区というところは十三・七ヘクタールありますが、千百戸のうち十戸が全壊し、二百九十二戸が半壊をいたしております。また、同じ尼崎市の戸ノ内地区では、千五百戸中三十一戸が全壊し、二百十八戸が半壊をいたしました。東園田地区では、七百六十戸中、実に四百三十戸が半壊で、四戸が全壊であります。すさまじい被災状況でありました。今挙げました二つの、前者は臨海地域にありまして、後二者は臨河川地帯という共通点があります。すなわち水辺であります。  建設省に伺いたいと思いますが、このような震災による液状化現象というのは、新潟大震災のときに経験したわけでございますけれども、どのような地質学的な発生機序のもとにこういうことが起こるのか、わかりやすく知見を説明していただきたいと思います。
  232. 鈴木藤一郎

    ○鈴木説明員 お答えいたします。  阪神間の湾岸部の地質は、おおむね小河川により上流から運搬されてきました土砂と粘土が交互に堆積した、そういう地層の上に、地質学の専門用語でございますが海成沖積粘土層、こういった層が堆積しているものでございます。今回の震災で液状化被害を生じましたのは、大部分がこのような地層の上につくられました埋立地の上でございます。  地盤の液状化現象は、地下水で飽和して緩く堆積した砂地盤におきましてある大きさ以上の地震動が作用したときに、砂の粒子のかみ合わせがずれる、外れると申しますか、そういうことによって砂と水があたかも一体となりまして液体のように振る舞う現象、こういうことでございます。このような現象が今回埋立地を中心に起こったということでございます。こういったことが起こりますと、先ほど御指摘のように地盤沈下が起こったりあるいは側方流動が起こる、こんなようなことでございます。  こうした液状化が起こりますと、しっかりとした基礎で支えられていない構造物、そういう構造物は沈下をするですとか、あるいは液状化した地盤よりも比重の軽いマンホールですとか下水管、こういったものの地中の構造物が浮き上がるですとか、そういった地盤全体の不均等な沈下などさまざまな被害が生じるということでございます。
  233. 冬柴鐵三

    冬柴委員 これは、今平面的な被害を申し上げたわけですが、同じ芦屋浜シーサイドタウンには、昭和五十四年に完成をした二十九階建であるいは二十四階建てで、十九階建て、十四階建てというような住棟、五十二棟、五千四百戸を有する大高層住宅群があるわけでございます。建設当時は、工業化工法による良質な住宅提供ということを目的とした国家プロジェクトとして建設大臣の特別認定を受けて建築をしたという建物群でございまして、大変美しい海辺の大住宅群であったわけでございます。そのときの売り出しあるいはそのパンフレットには、「関東大震災以上の地震にも大丈夫」というふうにされておりますし、機能性、安全性、利便性に富む二十一世紀の未来都市、このようにうたわれていたわけでございまして、非常な進取的な高層住宅群というふうに言えると思います。  ところが、今回の震災で、断面が五十センチ角、一辺五十センチの四角の、鋼鉄製の肉厚が五センチの鉄骨柱、これがずっと通し柱になっているわけですが、この母材部分で水平方向に真っ二つに切れる、割れるといいますか、真っ二つに、そういうような重大な損傷が五十三カ所で発生をいたしております。  子細に見てみますと、非常に不思議なのは、最も高い二十九階建ての棟ではこのような損傷は全く起こらなかった、一番高いところでは起こらなかった。最も低い十四階建てでは六カ所しか起こっていない。多くは二十四階建であるいは十九階建てというところに集中して起こっているわけでございます。そのほか、はりて十九カ所、ブレースで六カ所損傷が生じております。  建設省に私が今述べたような事実の確認をしていただきますとともに、現在までに知り得た、なぜこういうことが起こったのか、その理由等について概略を御説明いただきたいと思います。
  234. 那珂正

    ○那珂説明員 お答え申し上げます。  芦屋浜シーサイドタウンは五十年から五十四年に建設され、兵庫県営住宅、そして公社賃貸住宅、住都公団の賃貸住宅、同じく公団の分譲住宅及び民間の分譲住宅、合わせて五十二棟、三千三百八十一戸から成る高層住宅団地でございます。  今回の阪神淡路大震災におきまして、先生の御指摘のように、二十四階建て十一棟のうち十一棟で、十九階建て十七棟のうち十六棟で、また十四階建て二十一棟のうち六棟で鋼材や溶接部分が破断するというような被害が生じました。一方、二十九階建て三棟につきましてはこういう被害は生じておりません。  鋼材や溶接部分の破断が生じた箇所は、柱の部分で六十カ所、はりの部分で七十五カ所、筋交いで三十五カ所、共用階トラスで二十四カ所、合計百九十四カ所にわたっております。  これらの住宅の被害状況でございますが、詳細な状況、さらに被害原因の把握及び追加の補強工事の必要性とその方法等につきましては、管理主体である兵庫県、公社公団及び管理組合などが協力いたしまして、本年七月に、現在我が国の鉄骨建築に関する最高の権威の学識経験者などから成ります検討委員会を設けまして、現在、鋭意調査検討が行われている状況でございます。
  235. 冬柴鐵三

    冬柴委員 液状化現象というのは大変恐ろしいものであるということが我々確認できたと思うわけでございますが、国土の狭い我が国では、海や河川等の公有水面を埋め立てまして住宅地を造成する必要がありまして、各地でそれが行われているわけでございます。  このような広大な埋立地、特に埋立住宅地におきまして、今私が冒頭述べてきたような液状化現象ということが発生する可能性を含んでいるわけでございますから、これは今の震災、阪神・淡路地域被害を受けた人たちだけのための問題を論じているわけではありません。今後、日本国じゅうで南関東大震災あるいは東海大震災等予想されているわけでございますけれども、そういうものが起こったときに、こういう被害が起こる可能性は十分に予見できるわけでございます。  そういう意味で、これは建設省と運輸省にお尋ねしたらいいと思うのですけれども昭和四十九年から平成五年までの間に一体どれくらいの海や河川、公有水面を埋め立てて住宅地が造成されたのか、その面積をお知らせいただきたいと思います。
  236. 吉永昌幸

    ○吉永説明員 昭和四十九年度から平成五年度までの間に住宅用地として竣功した建設省所管の埋立地の面積は、約七百四十ヘクタールでございます。
  237. 金子俊六

    ○金子説明員 昭和四十九年度から平成五年まで二十年の間に竣功いたしました運輸省所管の住宅用地の面積は、埋立総面積の約四%強に当たります千三百六十ヘクタールほどでございます。
  238. 冬柴鐵三

    冬柴委員 運輸省、住宅地はどれだけなんですか。
  239. 金子俊六

    ○金子説明員 失礼いたしました。全体約三万ヘクタールで、その四%強に当たります千三百六十ヘクタールが住宅用地でございます。
  240. 冬柴鐵三

    冬柴委員 ヘクタールと言われてもなかなかぴんとこないのですが、例えば何県の何分の一とか、そういう示し方はできませんか。
  241. 金子俊六

    ○金子説明員 申しわけありませんが、ちょっと今手元にその面積の大きさを比較するものを持っておりませんので、お許しいただきたいと思います。
  242. 冬柴鐵三

    冬柴委員 いずれにしても大変な面積だということは認識できると思いますけれども、こういうところで液状化現象が生じた場合に大変なことが起こるということは先ほどおっしゃったとおりでございます。  関係省庁の認識をお伺いしたいわけですけれども、このような広大な埋立住宅地をつくって、恐らくは優良宅地として分譲していると思うのですね。これは地方公共団体があるいは第三セクターしかやれませんから、住民は安心していいところが手に入ったというふうに思って住んでいらっしゃると思うのですが、それと、震災が起こった場合にこういう壊滅的な被害を受けるということの予見、その認識、これについて関係省庁の認識をお尋ねしたいわけですが、関係省庁、次々答えてください。
  243. 吉永昌幸

    ○吉永説明員 建設省所管の埋め立ては、先生御存じのとおり港湾区域外の海域ということでございまして、近年、建設省所管の埋め立ては漁港関連施設等の用地等ということで比較的小規模の案件がほとんどでございまして、住宅地となるような広大なものは非常に少ないという状況でございます。  埋立免許審査の技術上の基準につきましては、従来想定され得る規模地震の強さを前提としたものでありましたけれども、今回の阪神淡路大震災にかんがみまして、これらの基準の再検討が行われているところでございまして、この基準改正されれば、埋め立ての護岸についてもそれに従い審査を行い、安全性の確保を図ってまいりたいと思っております。  埋立地の用途につきましては、建設省所管の埋め立てで見ますと、農用地でありますとか公園でありますとか、先生御指摘の住宅でございますとか工業用地あるいは空港等、非常にさまざまでございまして、これまでは土地取得者が利用目的に照らしまして必要な地盤改良等を行ってきているのが実態でございます。  埋立地の用途にかかわらず一律に液状化を防止するための工事を埋立事業者に課すことは適当でないと考えておりますけれども、特に液状化による被害が大きいと見られるものにつきましては、液状化防止のための手だてを講じていくことについて指導していくよう、対処してまいりたいと考えております。
  244. 金子俊六

    ○金子説明員 ちょっと先ほどのお答えの補足をさせていただきますと、具体的には例えば関西国際空港が現在約五百ヘクタールですので、その二・五倍ほどの面積を埋め立てておるということでひとつ御説明いたします。  それから、ただいまの御質問につきましては、新潟地震や日本海中部地震における液状化によりまして港湾施設に甚大な被害が生じたことによりまして、液状化に対する安全性の確保は極めて重要な問題というふうに認識をいたしております。  このため運輸省におきましては、主として岸壁ですけれども、こういった港湾構造物を建設する際には港湾の施設の技術上の基準、こういったものがございまして、これに基づきまして液状化の予測、判定あるいは対策工法等所要の安全の確保をするよう指導してございます。  それから、埋立地の液状化につきましては、社会的にも影響を及ぼしかねない問題であることから、重要な部分について港湾管理者等が液状化対策工法や技術的指針を検討する際には、運輸省では所要の指導を実施しておりまして、今後とも引き続き支援に努める所存でございます。  埋立地の用途につきましては、港湾の埠頭用地でありますとか道路等さまざまでございまして、埋立区域の地盤条件等も個々の埋立地ごとに異なるということから、液状化対策の参考として、運輸省港湾局、当局監修によります「埋立地の液状化対策ハンドブック」を発行し、埋立地の業務に供しているところでございます。  以上でございます。
  245. 冬柴鐵三

    冬柴委員 いずれにしましても、現在芦屋浜では公的資金によって復旧されていることは行われていないわけでありまして、みずからの土地はみずからがやらなければいけないようなことになっ」ているわけです。今にして思えば、この埋立地に四国産の海浜の砂が大量に埋め立てに使われている。そういうものが噴き出したという事実も明らかであるわけでございますけれども、いずれにいたしましても、復旧、復興をしなければならないわけでございます。  例えば、予想をはるかに上回った住宅被害をもたらした尼崎市内のみにおきましても、先ほどお示ししたような地区を含む五地区におきまして、町が百四十ヘクタール壊れているわけでございまして、こういうものには土地区画整理事業を実施して、そしてその街区全体をつくりかえるというような作業が必要になってくるわけであります。  そういたしますと、今この五地区についての総事業費を概算いたしますと、千五百五十七億円ということが見積もられているわけでございますけれども、こういうふうな多大な事業費になりますとこれを負担しなければならない。もちろん国費、起債その他になるわけですけれども、市費につきましても、自然収入が減免措置等で非常に落ち込んでいるわけでして、その上にこういうようなものを負担しなければならないということは大変なことだと思います。  そういう意味で起債条件とか、あるいは償還期限の延長とか、あるいはこれに対する特別な助成とか、地方財政措置を講ずる必要があるし、そうしなければこういう町はよみがえらないというふうに私は思うわけでございますけれども、所管する自治省からお伺いをしたい、このように思います。
  246. 原正之

    ○原説明員 被災地方公共団体の復興に係る財政負担の軽減につきましては、関係省庁とともに検討してまいりました。この結果、被災市街地復興特別措置法に基づく被災市街地復興推進地域におきまして、被災地方公共団体が実施します土地区画整理事業及び市街地再開発事業につきまして、これは復興特別事業の中でも事業規模が大きくて地方負担が大きいこと、また、現在仮設住宅に居住しております住民の方が恒久住宅に居住するために必要ないわば復旧の延長線上にある事業であることなどから、これらの事業の円滑な推進を図るということで、国庫補助対象の拡大等に合わせまして、国庫補助負担事業に係る地方負担額につきまして地方債の充当率を九〇%に引き上げますとともに、その元利償還金に対しまして新たに交付税措置を講ずることとしているところでございます。この対策によりまして、各被災地方公共団体におきましては財政負担の軽減が図られまして、復興事業の円滑な実施に寄与するものと考えておるところでございます。
  247. 冬柴鐵三

    冬柴委員 そのようないろいろなことを御配慮いただいているのはありがたいのですが、いずれにしましても起債充当率というものが二〇%を超えてしまうということはもう近い将来のことだろうと思うのです。こういう点についても特段の配慮をいただきたい。それについて一言御答弁をちょうだいしたいと思います。
  248. 原正之

    ○原説明員 被災地方公共団体の財政状況につきましては、県などを通じましてよく状況をお伺いし、その被災地方公共団体の財政運営に支障が生じないよう、円滑になるように適切に対処してまいりたいというふうに考えております。
  249. 冬柴鐵三

    冬柴委員 それでは、先ほど挙げました芦屋浜シーサイドタウンのような戸建て住宅の街区について、どのように復旧していくかというようなことを若干具体的に伺っていきたいわけです。  住戸が傾斜したということあるいは供用する道路とかあるいはそれを取り巻く護岸提とかが大破したということは、皆様方ももう十分御存じと思うのです。特にこのシーサイドタウンを両断する宮川という川があるのですが、これが液状化を起こしてしまって、護岸の幅が三メートルも狭くなってしまった。そして、そのために宮川大橋という橋、これは生活道になっているわけですが、これが人だけの通行しか許されないような、車もバスも通らない、そういうような状況になっております。こういうもののかけかえということは、そこに生活する者にとっては大変な喫緊の課題になっているわけですが、どういう手順で今後やられるつもりなのかお伺いしたいと思います。  時間がどんどん押してくるのでもう一つ重ねて伺いたいのは、傾斜建物をそれぞれがジャッキアップをすると、ジャッキアップしたとたんに反対側に今度は沈んでしまったという事例まであるわけです。これは液状化現象により脆弱になってしまった地耐力の補強方法というものが適切に評価されていないからそういうことが起こるわけでございまして、技術的指針の提示とか技術指導というものを県だけでなしに国のレベルでもどうかもう少しお示しをいただくような配慮がないのかどうか。この二点について御答弁をいただきたいと思います。
  250. 肥田木修

    肥田木説明員 阪神淡路大震災により、芦屋浜シーサイドタウン周辺におきましては、先生御指摘のように道路に段差、亀裂等が多数発生するとともに、宮川大橋について、橋台の水平移動とそれに伴う上部工支承の損傷などの被害発生をし、宮川大橋は現在歩行者、二輪車を除いて車両の通行を規制しております。また、河川については、宮川の矢板護岸が約七百五十メートルにわたり側方に移動し傾斜する被害を受けました。  これらの被災施設の復旧状況でありますが、段差、亀裂等の発生した道路については、当面の交通確保のために平成七年三月までに応急復旧工事を実施済みでありまして、本復旧については下水道等の復旧計画と調整を図りつつ推進してまいります。  宮川大橋については、被災の著しい下部工を撤去し、最新の耐震基準を適用して新たに建設するなどの本復旧工事にできるだけ早く着手をいたしまして、鋭意その復旧を図ってまいります。  また、宮川の護岸については、工事資材搬入路などの地元調整が整いましたので、本復旧工事に着手をしたところでありまして、早期復旧に努めてまいりたいと考えております。  以上でございます。
  251. 内田俊一

    ○内田説明員 芦屋浜のシーサイドタウンの戸建て住宅についてでございます。  現在、県と県の住宅供給公社が中心になりまして、特にその道の専門家の御参加もいただきまして、現地での地盤の液状化の実態、それと、それを踏まえました家屋基礎の復旧工法について詳細な分析、検討を行っておりまして、現在その最終的な取りまとめの段階にあるというふうに承知をいたしております。  私ども、常に連絡をとり合いながらの調査でございますけれども、これが一日も早く住民の皆様に的確な助言として説明できるように、我々としても指導してまいりたいと考えております。
  252. 冬柴鐵三

    冬柴委員 いずれにしましても、一月一千万円以上はかかるような修復工事というものは余儀なくされるわけでございまして、こういうものに対する公的融資、低利融資とか、あるいは事によれば助成策をやはり考えていってもらわなければ、とてもじゃないけれども、そういう大きな支出を各住戸の方が負担するということは非常に困難な状況にあると思われます。特段の配慮をしていただきたいと思います。  質問は次に移りますが、この芦屋浜シーサイドタウンとか尼崎の築地地域というのは、その町全体が壊れたという典型的な流動化現象の現場なのですね。したがいまして、こういうものをモデルにして、震災による液状化に対処する埋立住宅地の特別施策というものを、国でプロジェクトを組んで、よく観察をし、研究をし、そしてそれの復興、復旧に対する方法等を考えていただくということはできないものかどうか。責任ある省庁からの御答弁をいただきたいと思います。
  253. 内田俊一

    ○内田説明員 先ほども申し上げましたように、芦屋浜につきましては、調査なりそれなりを踏まえました復旧工法について検討がなされております。それから、地元の県におきましては、引き続いて他の地区についてもどういうふうな方法で復旧するのかという検討が進められると聞いておりますけれども、建設省でも独自に液状化地域におきます建築物の耐震設計のあり方等についての検討はいたしておりまして、両方で十分連携をしながら、これらの地区、それから他の地域も含めまして、どういうふうな復旧なり整備を進めていくのか、こういうことについては検討を進めてまいりたいと思います。
  254. 冬柴鐵三

    冬柴委員 これは、芦屋とか尼崎だけのことを言っているのでなしに、日本全国ありますよ。それから東京湾でも随分埋め立てしているし、千葉・幕張地区なんかでもすごい広大なところに、今見れば立派な住宅が建っていますけれども、あれが地震で芦屋浜と同じようなことが起こったときにどうされるのか。本当に国がもっと乗り出して、ただ県だけの問題としてとらえていては、これは余りにも認識が甘い、私はそう思います。  それから、高層住宅群も、このごろどんどん高い公営住宅ができています。一辺五十センチ、肉厚五センチの鋼鉄製の柱が一挙に両断するというようなことは、我々の知見をはるかに超えるものだと思うのですね。しかし、そういうことが現に起こったわけです。これに対して、みんなもこわごわ住んでいられますよ。もう一度来たときに、これは倒壊するのじゃないか。二十九階建てが倒壊したら大変なことになりますよ。それで、強度とか対抗する張力とか、そういうものから安全性はどの程度公的に保証できるのか。  それから、ここは埋立地ですから、この高層建物については安定層まで相当長い基礎ぐいがたくさん打たれているわけですね。そういうものに対して、破断、変形等がなかったのかどうか。非破壊検査などはやられたのか。やる可能性があるのか。やるべきであれば、だれがやるべきなのか。そこら辺の考えも伺っておきたいと思います。
  255. 那珂正

    ○那珂説明員 高層住宅の破断等損傷を生じた鋼材につきましては、先生御案内のように損傷部分に補強鋼材を両側から溶接する、こういう方法によりまして、とりあえず補修されているところでございます。  現在、先ほど御説明申し上げました検討委員会におきまして、そもそも設計の段階でどうであったか、材料の品質上問題はなかったか、あるいは施工の面で品質の確保ができていたかというような被害原因の究明に努めますとともに、現在施されております補修工事の有効性及び追加すべき補強工事の必要性とその方法について、綿密な調査検討が行われているところでございます。  また、二番目に御指摘の基礎の点でございますが、基礎ぐいの状況につきましても、現在同委員会において、基礎ばりにクラックがなかったかどうか、あるいは住棟周辺の液状化、不等沈下の確認等を進めることによりまして、被害の調査を進めている状況でございます。  両テーマとも、この検討の場におきまして、安全性について十分検討が行われますよう指導をしてまいりたいと存じます。
  256. 冬柴鐵三

    冬柴委員 十分配慮され、公的な機関から保証していただきたいと思います。そうじゃないと、やはり安心して住んでいられないと思います。  それでは、次の課題でございます。  大震災と既存不適格建造物、特に既存不適格マンションの建てかえについて伺ってまいりたいと思います。  既存不適格マンション、建造物というのは、昭和四十六年に建築基準法が大改正されました。それまでには容積率とか日影障害に対する規制とかがなかったわけですけれども、そういうものが四十六年に行われました。したがいまして、四十六年以前に住宅地の中に容積率が四〇〇%とか六〇〇%というような建物が建てられているわけでございます。しかしその建物は、建てたときは適合でございますが、その四十六年、法改正された以降は不適格の建物になるわけでございます。  そういうような建物が、この阪神地域にはたくさんあります。特に、区分所有法に基づく分譲マンションというものが既存不適格になりますと、これが建て直しを必要とするような損壊を受けた場合に、大変複雑な法律関係が生じます。  私は、ことし一月二十六日、二月二日あるいは二月十六日、三回にわたって衆議院予算委員会で質疑の機会を与えていただきましたので、このときにこのようなマンションの建てかえをめぐるいろいろな問題点指摘をいたしまして、区分所有法の一部を改正するような法律にまで発展したわけでございます。いずれにいたしましても、時間が押してきたので若干こちらから申し上げますと、そのときに、時の野坂建設大臣は、容積率の割り増しの方法として総合設計制度の話を出されて、そしてこういうものが一日も早く建てかえができるように指導していきたいという趣旨の御答弁をいただきました。  それで建設省は、早くも三月十七日に「阪神淡路大震災による被害を受けた分譲マンション等の建替えに当たっての建築基準法の各種許可制度の適用等について」という通達も出していただいたわけでございます。これで建てかえが円滑に、かつスムーズに進むかというふうに思ったわけでございますけれども、現時点でも建てかえはできていないわけでございます。その実態を知るために、このような既存不適格マンションが何市に何戸あるのか、その点についてお示しをいただきたいというふうに思います。
  257. 岡本圭司

    ○岡本説明員 分譲マンションの復興につきましては、例えば建てかえる場合、それから補修する場合両方ございまして、その戸数につきましては一概に申し上げられませんけれども、具体的に兵庫県内の各地方公共団体で御相談のあった件数につきましては、全体で百二十五棟で九千百五十五戸となってございます。  このうち、容積率につきまして既存不適格になってございます棟数、それから戸数でございますけれども、全体で五十二棟、四千七百三十四戸でございまして、その都市別の内訳につきましては、神戸市が二十三棟で二千四百七十六戸、それから芦屋市が十六棟で一千九十一戸、それから西宮市が十二棟で千百二十五戸、その他一棟で四十二戸となってございます。
  258. 冬柴鐵三

    冬柴委員 このような膨大な既存不適格建築物、とりわけ分譲マンションがあるわけで、その中に住んでいた人たちは、今仮設等でこの建てかえのために毎晩のように集まって協議をし、どうしたらいいか鳩首協議中なのです。  重ねて伺いますが、そのような百二十五棟について、現在までに建てかえに着工した戸数あるいは着工まで至らなくても建築確認を受けることができた戸数は何戸あるか、お示しいただきたいと思います。
  259. 岡本圭司

    ○岡本説明員 分譲マンションの建てかえにつきましては、例えば建てかえによるのか補修によるのか、こういった問題でございますとか、あるいは例えば建てかえに参加しない区分所有者の権利の取り扱いの問題でございますとか、関係権利者間の調整を要する問題が種々ございます。そういうことで、現在御相談のある件数は全体で百二十五棟でございまして、このうち、先生先ほど御紹介されました総合設計制度の活用を考えているものが七十棟ございますけれども、そういう中で、関係住民の合意が大変速やかに形成されてようやく着工できたというものが一棟でございまして、二十三戸となってございます。
  260. 冬柴鐵三

    冬柴委員 皆聞いておられる方は驚くと思うのですね。今一棟しかないのですよ。何が阻んでいるか。やはりこの建築基準に関する法令による規制、これをクリアできないためにみんな苦しんでいるのですよ。確かに、建設省がこの現在の法体系を維持しながらその運用によって何とかこれをやっていこうという努力をされたことは高く評価します。しかし、結果この一棟しかない。あとをどうするのですか、これは。もう冬が来ますよ。重ねて所感を伺います。
  261. 岡本圭司

    ○岡本説明員 分譲マンションの建てかえにつきましての容積率の取り扱いにつきましては、先生先ほど申されましたように、本年三月十七日に通達を出しまして、総合設計制度につきまして、従来の運用でございますと、都市計画で指定されました容積率の一・七五倍かつ三〇〇%増し以内を上限とする割り増してございましたけれども、これにつきまして、従前の延べ面積を十分考慮の上、弾力的に運用するように兵庫県等に通知をしたところでございます。  その結果、兵庫県では早速四月に入りまして震災復興型総合設計制度という制度を設けまして、それによりますと、例えば都市計画の指定容積率が二〇〇%のところで申しまして、公開空地というオープンスペースを五〇%設けますと四五〇%までの容積率、すなわち都市計画で決めております容積率の二・二五倍まで認める、こういったような極めて弾力的な取り扱いをしたところでございます。  しかしながら、まだ残念ながら着工に至りましたのは一棟ということでございますけれども、先ほど申し上げましたように、やはり分譲マンションの建てかえでは、いろいろ関係権利者の合意の形成も当然ございますし、場合によりましては例えば周辺の住民の方々の御理解も得なければならぬ、こういうようなこともございます。そういうことで、時間は要してございますけれども、現に総合設計制度を活用したいということで御相談のあった件数が既に七十棟ございますので、今後関係権利者間の調整が進みますれば逐次着工されるもの、このように実は期待をいたしているところでございます。
  262. 冬柴鐵三

    冬柴委員 今おっしゃるように簡単なものじゃなしに、努力はわかるのですよ。だけれども、住宅の中で五〇%の公開空地をあけるということは、残り五〇%でしょう。そこへ四五〇%建てると、理論上九階建てになるのですよ。そんなにいっぱい建てられませんよ。そうしたら周辺の土地に、これは住宅地ですから、日影ができますよ。ビル風が起こりますよ。電波障害が起こりますよ。とてもじゃないけれども、周りの同意は得られないと思います、大変だと思います。  それと、特定行政庁である地方公共団体がそういうものについて的確に、例えば日影であれば五十六条の二の命令を出して許可をするとか、そういう手段は残されていますけれども、これは到底とれませんよ。そういうことでみんな悩んでいるわけです。住民の中で話し合いがつかないから着工できないということもありましょうけれども、住民の中で話がついたが、とてもできないというのがたくさんあります。  例えば、私のところへ一つ手紙が来ています。     お 願 書  平成七年一月十七日、地獄の底を見た私達に、復興の明りはまだ見えません。  季節は春、桜も咲いて陽ざしも穏やかではありますが、私達には春はまだ遠く、瓦礫を積んで走り廻るトラックの響きにも、怯え続ける毎日です。  マンション建て替えに期待して、不自由な避難生活にも耐え続ける私達にとって、建築基準法が障害となって苦悩しております。建築基準法施行以前に建築されて、現行法の容積率を大幅に越えてはおりますが、当時としては、法に守られた適格マンションに違いありません。  古今未曾有の大震災で、もがき苦しむ私達のいのち生命のために必要なものは復旧です。建築基準法の特例処置です。「総合設計制度の緩和」、以上で被災マンション建て替えの救済処置は終了ということになれば、私達の生きる道はとざされてしまいます。  一日も早い「救済処置」がないと巨大な瓦礫の山が被災地にあふれることになります。「復旧は現行法」でとなれば、私達は既存の権利保護のために止むなく補修の道を選ばざるを得ません。云々ということで、何回も何回も私の事務所に手紙が来るわけで、そういうことできょう取り上げさせていただいたわけです。  既存の建築基準法、これは世界に冠たる法体系だと思いますが、こういう思わぬ災害のために、まだ四十年以上年数を残した建物が倒壊したわけですから、これを、若干無理かもわからぬけれども、原形に復興する。これは、よそへはみ出してもいかぬし、もとの形に建て直すことを認めるような特例法をつくらない限り、この阪神地域には、建てかえをすることもできないような、しかも住んだら危ないようなマンションが百二十何棟、五千何世帯じゃないですか。これは救われないと思います。  ですから、もうこういう議論をしているときではないと思いますので、どうか原形再建を可能とする特例措置をぜひ考えていただきたい。我々も議員として考えていきたいと思いますけれども、ぜひ考えていただきたいということを申し上げて、これに対する関係省庁からの御答弁を言いただきたいと思います。
  263. 岡本圭司

    ○岡本説明員 容積率制限でございますとか日影規制につきましては、地域の実情に応じまして、例えば公聴会を開催する、あるいは地方議会で論議をするということで、それぞれ住民参加による手続等踏まえまして、地方公共団体が都市計画の決定として、あるいは条例として定めているものでございます。したがいまして、こうした規制は、地方公共団体が定めました都市計画や条例を無視しまして、いわゆる特例措置法によりまして適用除外にするということにつきましては、町づくりについてはできるだけ地方公共団体判断を重視する、最近とりわけ地方分権に対する大変強い要請もございますが、そういう中ではやはり適当ではないのではないかと考えています。したがいまして、基本的には被災地における容積率制限の取り扱いにつきまして、都市計画の観点からその権限市町村長あるいは知事にございますので、安全で快適な町づくりという方向に向けましてどう扱うか、こういう面で地域の実情に応じまして判断願いたいと思っている次第でございます。
  264. 冬柴鐵三

    冬柴委員 どうもありがとうございました。
  265. 左近正男

    左近委員長 これにて冬柴鐵三君の質疑は終了しました。  穀田恵二君。
  266. 穀田恵二

    ○穀田委員 私は、今度の法改正に当たりまして、重大な被害を及ぼした一月十七日の兵庫県南部地震、そして大きな被害に及びました阪神大震災から我々として何を教訓として学ぶべきかということを明らかにしてこそこの災害対策基本法改正に生きると思っているのです。したがいまして、私はまず大臣の方からそういう基本的な認識の問題についてお聞きしたいと思ってきょうはやってまいりました。  三つありまして、まず何よりも、本来この日本が災害列島ということでずっと来ているわけですから、政治の中心が国民の生命と財産を守ることということに据えられているかどうか、こういう点で、甚大な被害をもたらした政治の責任をどう考えているかということについてまずお聞きしたいと思います。
  267. 池端清一

    池端国務大臣 穀田委員お答えをいたします。  先生ただいまお話のありましたように、災害から国民の生命、身体、財産を守り、国土を守るということは、これは政治の責任であり、政治の基本であると私は思っております。おっしゃいましたように、我が国は災害列島とも呼ばれております。この災害列島、災害は忘れたころにやってくるのではなくて、災害は忘れずに必ずやってくる、こういう考え方のもとに日ごろ防災に対する体制を強化をしていかなければならない、こう思っておるわけでございます。  先般の阪神・淡路の大震災につきましては、けさほど来から申し上げておりますように、情報収集伝達緊急即応体制広域連携等の面で反省すべき点は多い。私どもは、この阪神大震災から多くの教訓を学んだ、このように思っております。この教訓を何としても生かさなければならないということで、二月二十一日には閣議決定も行いまして、総理大臣官邸への情報連絡体制整備を行ったほか、七月には防災基本計画の抜本的、全面的な見直しを行い、また制度的な不備な点については、今回の法改正ということで、ただいま御提案申し上げておるような次第でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げたい。  ともあれ、安全で安心な国土づくり、安全な地域づくり、国づくり、これが極めて緊急の課題でございます。このためには、政府一体となって今その対策推進している、こういう状況でございますので、御理解を賜りたいと思います。
  268. 穀田恵二

    ○穀田委員 私はどうも、災害対策基本法の根本にあります、組織と機能のすべてを挙げて万全の措置をとる責務を有する、こう書かれております。そういうふうにやってきた結果、ではこうなったのかということがまず問われなければならないと思うのですね。  そこで、私は予算委員会でも前の大臣にも質問させていただきましたけれども、一九七〇年にこういう今度の兵庫県南部地震が起きる地域を特定観測地域と指定してきたのにもかかわらず余り手だてが打たれてこなかった、こういうことを私は強く主張しました。ですから、大臣おっしゃるように、情報の問題や災害対策基本法の抜本的見直しも今言われているというお話がありましたけれども、その前提となっている政治がどのような責任をこの面で果たし得たのだろうか、そこの点について明確にしなければならないと私は思うのです。  二つ目に、私は、被害の拡大の問題で、きょうありましたように、初動の問題や情報の集中の問題がございました。私は、それだけじゃなくて、もう一つは、災害の拡大を防ぐ点での対応はどこの点に弱点があったのか、ここを明確にする必要があると思うのですね。確かに情報が一元化しなかった問題もあるでしょう。しかし、肝心かなめの消防力の強化はどのようになっておったのか。これは何度も何度もお聞きしたように、消防力の基準と言われている、いわば最低の基準であるところの消防力の基準さえ満たされていないで、人員で言うならば七割の状況である。こういった問題がずっとあった上にこういう点があったわけですから、私は今言いましたように、一九七〇年に特定観測地域と指定して以来、どんな地震対策を打ってきた結果こうなったのか。こういう点での政治の責任をどう考えるか。  二つ目には、被害の拡大を防ぐ点で、確かに情報連絡体制の問題もありますが、消防力の強化や観測体制の強化という点ではどうだったのか、この二つの点について続けてお答えをいただきたいと思うのです。
  269. 村瀬興一

    村瀬政府委員 確かに今回のあれを見ますと、消防の例えは耐火性の貯水槽が不十分であって、水が出なくなったというようなことが現実の問題としてあったわけでございますが、何分そういったことについても基本的には国が補助金を出したりしなければいかぬという部分もございますけれども基本的には消防の問題につきましては公共団体が努力をするということであろうかと思います。そういったことから、政治の責任とおっしゃいましたけれども、政治も地方政治も含めて考えますと、そういったこともあろうかと思います。  それから、もう一つの観測体制の点でございますけれども、これも全般的な強化ということで努力はしてきたわけでございますが、何分全体としての努力の総量といたしましては必ずしも十分でない面かあったということで、前国会で、議員立法ではございますけれども、このための法律も成立をいたしまして、観測・監視体制の話、それから情報について政府も責任を持って出すというふうなことを科学技術庁を中心に委員会もつくってやるというようなことについて、現在取り組んでいるところでございます。
  270. 穀田恵二

    ○穀田委員 私は今の話を聞いて恐れ入りましたよ。それは大臣、そういうことですか。地方公共団体の責任だと、消防力の強化は。そんなことで済みますか。私は違うと思うのですよ。  先ほど大臣がおっしゃったように、国を守る、国民の生命と財産を守ることが最大の責任だ。こういう点で、その中心の一つであるべきところの消防力の強化に対してどれほどの力が注がれたかということに対して責任が問われているのであって、それを地方公共団体の責任にするなどとはもってのほかですよ。そういう地方公共団体の努力も含めて、もっと補助金の率を上げるとかを初めとしてどれほど力を入れたかということが問われているのであって、そんなこと、地方公共団体の責任だみたいな話をしていたんじゃ、それこそ大臣の責任が問われてしかるべきだと思いますよ。どうですか、今の話。
  271. 村瀬興一

    村瀬政府委員 私が申し上げましたのは、一次的な消防につきましては公共団体が責任を持っておるわけでございます。それに対しまして国も、しかるべき補助金を出すとかあるいは行政的な、そういう意味の促進についての指導をするということは国の役割でございますけれども、第一義的に、消防能力の整備ということにつきましては公共団体の責任であるというふうに考えておるところでございます。
  272. 穀田恵二

    ○穀田委員 この論争に時間をかけるつもりはないですけれども大臣、そんな話をしておったら、じゃこういうことになっているわけでしょう。  今お話があった消防補助金で言うならば、八一年度の二百五億円をピークに九五年度予算では百七十五億円でずっと下がっているのですよ。そして、お話があった耐震性貯水槽の問題でも、国庫補助分について言うならば、八一年度の二百六十七基から九五年度予算では百八十七基に減らされてきたんですよ。そうした結果どうなっているかというと、消防ポンプ車だとか消防職員などが不足をして、国みずからが決めた最小限の基準であるところの消防力の基準さえも満たさない現状の中に現実に日本全体があったという問題なんですよ。そのことに対する国の責任ということを私は言っているんですよ。そんなことをやっておったんじゃだめですよ。本当にそれはひどいですよ。やはりそのことをしっかり見ていただかなくてはならない。  それで、またついでに観測問題についても言っておきますと、皆様御承知のとおり、あれほど初動の問題と情報の問題を言っていましたよね、先ほどの議論の中では。だとするならば、例えば震源地の洲本の測候所からの通報が一時間十四分もおくれるという事態はなぜつくられたのか。それは少なくとも、災害対策情報伝達体制をつくるということが本来内閣の任務とすれば、そういう観測体制に不備を来している問題について、マンパワーが不足している、こういう問題についても責任を負わなくちゃならないじゃないですか。  ですから、どうもやはり今のお話で言うと、結局政治の責任とは何かという問題について、広い意味での、地方公共団体に対する援助の問題を初めとして、国全体が組織と機能、すべてを挙げていくということになる、防災局長の話だとそういう立場におよそないと言わざるを得ないと思います。そのことだけ言っておきたいと思うのです。その点で大臣、意見ございますか。
  273. 池端清一

    池端国務大臣 先生御指摘の消防力の強化という問題につきましては、今後とも消防庁とも十分連絡をとって適切に対応してまいりたい、このように考えております。
  274. 穀田恵二

    ○穀田委員 ですから、その点はそういうふうにやってもらわなくちゃなりませんけれどもね。当然なんですよ。だから、地方公共団体の責任だ、第一義的にと。それは、それをやるのは確かにそうだけれども、今お話があったように、国全体がその責任をとることが大事なんだということはあわせて述べておきたいと思うのです。  そこで私は、阪神大震災から学んだ教訓は何かという問題で、今言いましたように、被害の拡大を防ぐという問題とあわせて、災害対策基本法それ自身の枠組みからしても、避難した被災者への対応のあり方がこれほど問われたことはなかったんじゃないかと思うのですね。その点についてお聞きしたいと思っています。  つまり、端的に申し上げて、私は、避難をした被災者への救済や救援のあり方が非常に不十分だと思っているのですが、その点は、率直に申し上げて、大臣のお考えはいかがでしょうか。私は、いまだに災害は進行形であって、被災は継続しているということを率直に見る必要があると思うのです。しかも、その救済の対策が、今までの枠組みを少しは突破をしたとはいえ、引き続いて、被災者の立場からすれば極めて不十分だと思うのですが、その辺の御見解を総論的にお話しいただけませんか。
  275. 池端清一

    池端国務大臣 いろいろ具体の問題になりますと、本当に私は、今被災者の皆さんは厳しい状況に置かれている、これはもう率直に認めざるを得ないと思うのです。しかし、政府としても、先ほど補正予算のことを申し上げましたが、あらゆる手法を尽くして、でき得る限りの手法を尽くして最善の措置を講じようということで今懸命に取り組んでおるところでございます。  いよいよ復旧から復興へと、こういうことになりました。さらに本当に地元の皆さんの身になって、立場になって、政府としては誠心誠意復興に向けて全力を挙げて取り組んでまいりたい、こう考えております。
  276. 穀田恵二

    ○穀田委員 私は、今後こういう災害が起きたときに、やはり救援それ自身の、この間の、九カ月間にわたっての事態の推移の中からもしっかりと教訓を学ぶ必要があると思うのです。そして、何が十分で何が不十分だったかということも明らかにして、それはどこの点を改善しなくてはならぬか、また法的には無理なのかということを含めて、よくよく検討する必要があると思うのですね。それは、大臣も含めて今お話があったように、地元の立場に立ってと、あらゆる力を尽くして懸命にと、こうおっしゃっていますから、それはそうしてきたとは言い条、結果としてどうだったかということについてもよく見る必要があると私は思います。すべてのことを私は言うつもりはないのですが、やはり教訓を学ぶべき点は二、三は見ていただきたいと率直に思うのです。  一つは、やはり大規模災害の備えがそもそもないということについて、私は今度の大震災から学ぶべきじゃないか。  二つ目に、避難所の問題、仮設住宅、これらの建設をめぐって極めて不十分だったと私は思います。それは、これだけの大被害が出たことによって避難所がたくさん設けられました。ところが、それの環境改善とあわせて、仮設住宅の問題をめぐってでも、遠隔地への建設が余儀なくされる、こんなことまでありまして、実際には本当に大変なことになりました。  さらに、民間宅地も含めたがけ崩れや地すべり等に関する二次災害防止対策が完全にはやられない。さらに今度の、マスコミにも書かれていますが、災害弔慰金の支給対象範囲の適用の拡大の問題や、医療の確保、こういった問題が多々あったということについて、お互いにこれは真剣に今後議論していく必要があると思っています。  ですから、その上に立ちまして結論だけ言っておきたいのですが、今度、災害対策基本法の改定の中で、弱者対策の問題について触れられています。ですから、そこに絞って、私は若干だけ提起したいと思っています。  質問の要旨で私、書かせていただきましたけれども災害弱者対策については、予防、それから避難、救済などについて全面的に行う必要があるのではないかと思っています。皆さん、実態をぜひまず見ていただきたいのです。  この前開かれました第四回全国在宅ケア研究集会の報告によりますと、神戸市内の生活保護受給者は二万二千四百十一人おり、そのうち震災直後の死亡者は二百七十八人で、受給者全体の一・二四%を占めています。この死亡率は、神戸市内の平均死亡率〇・二五%の約五倍近いものです。こういう実態があります。さらに、その研究集会で報告された内容によりますと、市内の在宅寝たきりのお年寄りの推計は二千九百五十五人で、うち震災直後の死亡者は百三十六人、死亡率は四・六%と、神戸市平均の十八倍にもなります。  ですから、こういう実態の中にありますように、やはりどれだけ予防を的確に行うか、そして避難についても、どれだけ的確に行うかということが本当に大事だということがわかると思うのです。その辺でのお考えをお聞きしたいと思います。
  277. 池端清一

    池端国務大臣 今先生、いろいろデータをお挙げになられましたけれども、今回の震災におきましては、五千五百有余の死者の半数以上が六十歳以上の高齢者が占めておった、いわゆる高齢者、障害者、それに阪神・淡路地域特有の外国人の数が非常に多かったということ、いわゆる災害弱者対策、その重要性というものを改めて認識させる、そういう結果になったと私は思うわけでございます。  したがいまして、今回の災対法の改正におきましても、国及び地方公共団体が特に実施に努めなければならない事項に、高齢者障害者等特に配慮を必要とする者に対する防災上必要な措置に関する事項を新たに追加をいたしたところでございます。  今先生御指摘のように、予防あるいは避難誘導あるいは救護・救済対策、こういう各面におきまして、やっぱりきちっとしなければならないということで、防災基本計画の中にもそれをきちっときめ細かに定めたところでございます。  具体的には、防災知識の普及、防災訓練の実施に当たって災害弱者に配慮をする、あるいは地域において災害弱者を支援する体制整備されるように努めることといたしておるわけでございます。避難所においては、高齢者や障害者の皆さん方の健康の状態の把握に努めたり、応急仮設住宅の設置に当たりましては、こういう方々の優先的な入居を図る、あるいは高齢者、障害者向けの応急仮設住宅の設置などに努めてきたところでありますが、これらの対策を今後ともより強化してまいりたい、このように考えておるところであります。
  278. 穀田恵二

    ○穀田委員 今ありましたように、これは運用の問題にもかかわることなわけですが、避難の問題や救済の問題も言ってございました。これはやっぱり、本来、総合的な予防ということが災対法の基軸に据えなければならない点でありますから、その点での努力を特にお願いしたいと思うのです。  もう一つだけ言っておきたいのですけれども、先ほどの例の中で、実は、被災した障害者と家族の避難行動や生活実態の聞き取り調査を見ますと、これまたすごい数字が出ているのですね。  つまり、未成年の避難先では親類が六八%、それが避難所に避難したという三五%を上回っているのですね。だから、こういうものを含めて、どうしても震災直後に欲しかった援助について、五割前後の親たちが、気兼ねなく避難できる場所を挙げているのです。さらに、今後の町づくりというところで、わざわざ多くの親たちが、高齢や障害者などに優しい、安全、安心を優先した町づくり、これが六四%、さらに、防災機能を備えた安全な町づくり、これが六三%、そして、住まいと保健、医療、福祉機能が一体となった町づくり、こう挙げています。  つまり、後半の方にありますような、予防を中心とした町づくりをしっかりやるということが結局のところ大事な問題になってくるわけですね。そのことを特に希望しておきたいと思っています。  したがいまして、その点で質問したいのは、今の、開発開発、道路は道路といった縦割りの行政を改めて、合すべての開発計画だとか都市計画の前提として防災アセスメントを実行することこそが、またそういうものにつながるのではないかと思うのですが、その点をお答えいただきたいと思います。
  279. 池端清一

    池端国務大臣 これまた、先般改定をいたしました防災基本計画におきまして、国、地方公共団体、関係機関は、開発計画等の防災の観点からのチェックを実行するということを定めておりまして、各省庁等におきましても、防災基本計画に基づく防災面に配慮した諸対策に取り組む、こういうことになっておるところであります。  実は、先週成立いたしました建築物の耐震改修の促進に関する法律、これも一つの方法でありますが、これのみならず、震災対策を進めていく上には、公共の建築物、特に防災の拠点となります市役所等の建築物についても耐震改修を進めていくことが何よりも緊要ではないか、私はこういうふうに考えておりまして、先般の閣議においても、私からこの趣旨を発言をし、閣議の了解を得たところでございまして、今後、国土庁を中心にして、この公共の建築物の耐震の問題についても鋭意検討を進めてまいりたい、こう考えております。
  280. 穀田恵二

    ○穀田委員 それは確かにそのとおりなんですが、公共建築物だけにとどまらずにという問題もあわせて指摘しますが、時間もありませんので、簡単に二、三質問して、お答えいただきたいと思うのです。  私は、その防災基本計画を見ました。「国民の防災活動の促進」という一節がありまして、「自らの身の安全は自らが守るのが防災基本であり、国民はその自覚を持ち、平常時より、災害に対する備えを心がける」、こういうことを書いています。  しかし、私は、この委員会で何度も質問をして、例えば避難誘導の問題に関しまして、地方自治体における住民への周知の義務を明確にする必要があるということも指摘してきたように、現実はどうかといいますと、災害に関する住民の自主的な活動について促すというよりは、今度の法改正にもあるように、義務づけはするのですが、実際には、防災の義務を課していくというのではなくて、逆に、災害に関する住民の自主的活動については、防災に関する情報を公開するとともに、地域防災計画づくり自身に参加させるようなことがなければだめなんじゃないかと私は思っているわけです。ですから今、防災計画の作成を初めとした防災対策に住民の参加と合意を基本としてこそ生きた計画や対策ができるんじゃないかと思っています。そういう点での御見解をお示しください。
  281. 池端清一

    池端国務大臣 住民の責務につきましては、災害対策基本法第七条第二項において「防災に寄与するように努めなければならない。」こう規定しておりまして、別にこれが今回改正したものではございませんから、それは御理解をいただきたい、こう思います。  先生御指摘のように、やはり市民参加、住民参加ということは極めて重要な問題であろう、こういうふうに考えておりますが、一方、防災については、備えあれば憂いなしという言葉がありますように、やはり住民の皆さん方がみずから守る、そういう体制も一面極めて重要な問題であると。ですから、やはり防災についての教育あるいは啓発あるいはボランティア活動の環境の整備、こういうものが私どもは極めて重要な課題ではないか、こういうふうに考えておるところであります。
  282. 穀田恵二

    ○穀田委員 今お話があった点、訂正しておきます。おっしゃるとおりです。  で、私が言っているのは、備えあれば憂いなし、これは同様なんです。御意見は同じなんです。問題は、その備えあれば憂いなしというのが、ここにありますように、みずからの身はみずから守ることが必要なんだ、平常時より災害に対する備えを心がけることが必要だと。この前提になっているのは、自分たちがどういうふうな災害に対して守るという道筋をつくろうとしているのか。  だって皆さん、今度の地域防災計画でもそうですけれども、国が中央防災計画をつくる、それに順次従ってつくっていく、こういう段取りですよね。下からつくって、自分たちの地域の実情に見合ってつくってくるわけじゃないんですよ。だから上待ちになっている傾向もあって、今度つくられて、またこう順番におりていく。したがって、実際にそういう災害が起きたときに地域防災計画は役立たなかったという発言が相次いでいることに見られるわけですね。  ですから問題は、私が言っているのは、備えあれば憂いなしというのは、備えをするためには、公開と、自分たちがどういうふうにしてみずからを守るのか、地域を守るのかということを含めた地域防災計画自身に、作成や、その中に参加と合意がなければ実際には備えにならないんと違うかということを言っているんですね。そこはぜひ御理解をいただきたいと思うんです。  ですから私は、きょうは時間がなくなりましたから、もう少し次に時間をいただけるというものですから、また残りを追及するということで、きょうは、済みません、新進党の方々にも来ていただいたのですが、もう一回時間があるというふうに希望して、終わります。
  283. 左近正男

    左近委員長 穀田恵二君の質疑は終了いたしました。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時三十二分散会