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1995-10-20 第134回国会 衆議院 外務委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日平成七年九月二十九日)(金曜日 )(午前零時現在)における本委員は、次のとお りである。   委員長 三原 朝彦君    理事 小杉  隆君 理事 田中 直紀君    理事 東  祥三君 理事 松沢 成文君    理事 松田 岩夫君 理事 秋葉 忠利君       安倍 晋三君    柿澤 弘治君       斎藤 文昭君    坂本三十次君       櫻内 義雄君    鈴木 宗男君       玉沢徳一郎君    二階堂 進君       原田昇左右君    赤羽 一嘉君       岡田 克也君    鹿野 道彦君      柴野たいぞう君    高市 早苗君       羽田  孜君    若松 謙維君       伊藤  茂君    松前  仰君       山元  勉君    前原 誠司君       古堅 実吉君    吉岡 賢治君 ————————————————————— 平成七年十月二十日(金曜日)     午前十時一分開議 出席委員   委員長 三原 朝彦君    理事 小杉  隆君 理事 田中 直紀君    理事 玉沢徳一郎君 理事 東  祥三君    理事 松沢 成文君 理事 松田 岩夫君    理事 秋葉 忠利君 理事 前原 誠司君       安倍 晋三君    柿澤 弘治君       斎藤 文昭君    坂本三十次君       櫻内 義雄君    鈴木 宗男君       二階堂 進君    原田昇左右君       赤羽 一嘉君    岡田 克也君       鹿野 道彦君   柴野たいぞう君       若松 謙維君    伊藤  茂君       松前  仰君    山元  勉君       古堅 実吉君    吉岡 賢治君  出席国務大臣         外 務 大 臣 河野 洋平君  出席政府委員         外務政務次官  福田 康夫君         外務大臣官房領         事移住部長   齋藤 正樹君         外務省総合外交         政策局長    川島  裕君         外務省総合外交         政策局軍備管理         ・科学審議官  河村 武和君         外務省総合外交         政策局国際社会         協力部長    朝海 和夫君         外務省アジア局         長       加藤 良三君         外務省北米局長 折田 正樹君         外務省経済局長 原口 幸市君         外務省経済協力         局長      畠中  篤君         外務省条約局長 林   暘君  委員外出席者         防衛施設庁総務         部総務課長   野津 研二君         防衛施設庁総務         部業務課長   冨永  洋君         外務委員会調査         室長      野村 忠清君     ————————————— 十月二十日  理事福田康夫君八月十日委員辞任につき、その  補欠として玉沢徳一郎君が理事に当選した。 同日  理事前原誠司君八月十四日委員辞任につき、そ  の補欠として前原誠司君が理事に当選した。     ————————————— 十月十三日  国際海事衛星機構インマルサット)に関する  条約改正受諾について承認を求めるの件(  条約第一号)  千九百九十五年の国際穀物協定締結について  承認を求めるの件(条約第二号)(予)  千九百九十五年の国際天然ゴム協定締結につ  いて承認を求めるの件(条約第三号)(予) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事補欠選任  国政調査承認要求に関する件  国際海事衛星機構インマルサット)に関する  条約改正受諾について承認を求めるの件(  条約第一号)  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 三原朝彦

    三原委員長 これより会議を開きます。  理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員の異動に伴い、現在理事が二名欠員となっております。その補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 三原朝彦

    三原委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  委員長は、       玉沢徳一郎君 及び 前原 誠司君 を理事に指名いたします。      ————◇—————
  4. 三原朝彦

    三原委員長 次に、国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。  国際情勢に関する事項について研究調査し、我が国外交政策の樹立に資するため、関係各方面からの説明聴取及び資料の要求等の方法により、本会期中国政調査を行うため、議長に対し、承認を求めることにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 三原朝彦

    三原委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。      ————◇—————
  6. 三原朝彦

    三原委員長 次に、国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。玉沢徳一郎君。
  7. 玉沢徳一郎

    玉沢委員 自由民主党の玉沢徳一郎であります。ただいまは理事選任をしていただきまして、まことにありがとうございました。早速ではありますが、質問をさせていただきます。  まず、北朝鮮の米の支援問題でございます。  本年の五月二十五日、北朝鮮は初めてみずからの食糧不足を認めまして、我が国に対して米の緊急援助を求めてまいりました。これに対して我が国は、さまざまな議論はありましたけれども韓国政府とも協議をしまして、あくまでも人道上の観点から支援を行う、こういうことで、供給された米は専ら民生用消費のために使用されることが保証されるということを確認した上で、有償十五万トン、無償十五万トン、計三十万トンの供与決定したところであります。  ところが、その後、北朝鮮の対日関係責任者と言われる全容淳労働党書記が在米韓国人チョン・ギヨル氏と会見をした模様が韓国雑誌に掲載をされました。その内容を見ますと、こう言っております。「(日本と同時に)南朝鮮のコメを受け取ることをめぐって「北はついに耐えられないほど飢餓にあえいでいる」といった話をしているようだが、コメの取引はわれわれがききんに陥っているからではない。わが国は衣食住問題を基本的に解決しつつある。ただ、コメは畜産にも使うことができるし軽工業にも活用できるため、たくさんあればあるほどいい。したがって「日本謝罪意味コメを送りたいというのを受け取らないわけにもいかない」ということだ。」こういうように発言をいたしております。謝罪意味で米を送りたい、こういう意味であるならば受け取らないわけにもいかない、こう言っているわけですね。  これに対して外務省の幹部は八月の十六日、「「コメ支援合意緊急人道支援前提条件で、(それを否定する)金書記発言については、何らかの釈明がなければ(第二次支援は)難しい」と述べた。」と新聞に報じられたのであります。私は、この発言は当然のことであると思うわけでありまして、日本謝罪意味で米を支援したのではないのでありまして、あくまでも人道支援のはずでございます。  ところが、去る十月三日、政府北朝鮮に対する米の追加支援二十万トンを決定しました。そこで私は、金書記釈明というものが我が国政府に対してなされているのかどうか、それを納得した上でこの追加支援というものを決定したのか、こういう点についてやはり国民に十分説明する必要があるのではないか。いかなる理由によるものか、決定までの経過について御質問をさせていただきたいと存じます。
  8. 加藤良三

    加藤(良)政府委員 事実関係につき、まず私から御説明をさせていただきたいと思います。  今委員指摘の、韓国雑誌「マル」に掲載された発言につきましては、政府与党連絡をとりつつ、与党の方で北朝鮮側に真意を照会するということになりまして、北朝鮮側反応をずっと注目してまいったところでございます。この後、全容淳書記からの反応ということで、北朝鮮側我が国米支援人道的観点からのものと認識していることを改めて確認できたという状況与党の御尽力により立ち至ったということでございまして、そういう状況一つ。それからもう一つは、今御指摘のありました、十月三日に終わった協議においても北朝鮮側から、我が国支援人道的立場からなされたものだということを明確に先方が確認いたしまして、米など食糧が不足しているという状況についても説明があったという経緯もございます。  以上のような事情を踏まえまして、大局的な見地から、従前からの方針に従って米を追加的に延べ払い輸出をすることにいたしました。こういうのが事実関係でございます。
  9. 河野洋平

    河野国務大臣 玉沢議員指摘のとおり、北朝鮮に対します我が国態度と申しますか対応ぶりについては、十分慎重に行わなければならないことは当然のことでございます。もちろん我が国国交があるわけではございません。したがいまして、北朝鮮とのやりとりについては、亡くなられた渡辺美智雄先生を団長とする与党の一行が北朝鮮に赴きましたときに、国交正常化交渉の道筋をつけるための種々の話し合いがございまして、そうした糸口に基づいて、与党からのいろいろなアドバイスなども受けながら私どもとしては対応しているわけでございます。  他方、何といってもこれだけ長い間、我が国の極めて近い場所にある北朝鮮との間が不正常な関係にあるということをそのまま放置するということについてもいろいろ問題があって、私どもといたしましては、朝鮮半島の平和と安定にそれが資するかどうか、さらには国際的な安定というものに資するかどうかといった視点に立って対応をすることが重要と考えております。  さらにもう一点、北朝鮮につきましては極めて種々の問題が、不透明な問題が多うございます。そうした状況の中で、北朝鮮が初めてみずからの食糧不足というものを公にしたという点は我々注目をしておりました。こうした点に注目をして、政府緊急援助人道的援助という点で対応するに当たっては韓国にも十分連絡をとりまして、日本からの人道援助を受けるというならば韓国からの人道援助も期待をするということが当然あるであろうと我々は考えたわけでございまして、そうした点についても十分注意深く見ながら対応したところでございます。
  10. 玉沢徳一郎

    玉沢委員 ただいまの御説明は、まず与党に対して釈明がなされ、さらにまた、それを通じまして政府間同士交渉の際に向こう側から、人道支援である、そして感謝しておる、こういう表明がなされて、そしてこの第二次支援についての方向が決められた、こういう説明でございましたが、今外務大臣の方から朝鮮半島の安定ということも視野に入れて態度決定をした、こういう御説明でもありました。  しかしながら、第一次の際におきましては、韓国との協議も行った上でやったわけでございますけれども、今回は、韓国側は第二次についてはまだ行っていない、むしろ拒否している、こういう状況の中において、韓国側の同意を求めずして我が国だけが第二次を決定した、こういうことについては何か理由があるのでございますか。
  11. 加藤良三

    加藤(良)政府委員 第一次の供与のときに第二次の追加供与というのが延べ払いの形であり得るという枠組み合意されておりまして、この枠組みの存在を含めて韓国には情報を伝達し、連絡を十分に保ってきたというふうに考えております。  そして、第二次の米の供与は、閣議の中でもあり得るということを含めて了解された枠組みに従って、先般九月三十日から十月三日にかけての交渉でとり行われ、実施に移された、その間韓国の方とも私たち事務レベルにおいてできるだけ密接な連絡をとるよう私どもとしては努めたつもりでございます。
  12. 玉沢徳一郎

    玉沢委員 韓国金大統領は、何か今回のことも念頭に入れたかと思うのでありますけれども韓国頭越し日朝交渉が先行している、こういうような印象を述べられておるわけですね。  今の説明ですと十分な連絡をとっておる、こういうことでございましたが、なぜ私がこのことを言うかと申しますと、やはり北朝鮮に対しましては核開発疑惑問題等ありまして、米朝合意というものがいかに今後履行されていくかということが大事なことである。したがって、日本韓国とも十分協議をしアメリカとも十分協議をして、そして韓半島における安定というものについて努力をしていかなきゃいかぬ、こう思うわけでございますが、しからばこの韓国大統領の、頭越し日本日朝を行っているというような認識はどこから来ているのか、こういう点について御質問したいと思います。
  13. 河野洋平

    河野国務大臣 議員指摘のとおり、ここ一年、北朝鮮核開発疑惑対応するために当初米朝会談というものが行われて、米朝合意ができ上がってKEDOという機関を設立して、そのKEDOにはアメリカ韓国日本、この三カ国が主導的役割を果たすために参加をして、この三カ国はまことに緊密な連絡をとりながらこれに対応してきたわけです。恐らく、北朝鮮核開発疑惑を何としても解明し解決をしよう、この点についてはまさに三カ国は水も漏らさぬ連携をとってまいりました。このプロジェクトを私、見ておりまして、実にこの三カ国の連絡は緊密であり、息の合った対応をしているというふうに思って見ておりました。  時には、米朝関係が進んで、米朝両国はそれぞれ代表部を置くことを目標として作業をするというような場面もございました。しかし、そういう状況であっても、アメリカはいつも南北が話し合うことが大事だよということを言いながらやっておられましたし、我が国もまた、先ほど申しましたように、北朝鮮やりとりをするときには南北の対話の重要性というものを指摘しながらやってきたわけでございます。さらに、日韓連携というものは極めて緊密な連携をとってきたわけでございまして、私どもとしては、こうした対応をこれから先も続けていきたいし、さらに緊密な連絡をとり合わなければならぬというふうに思っております。
  14. 玉沢徳一郎

    玉沢委員 第二次支援において二十万トンの有償ということでございますが、この有償条件としましては、これは第一次の際と同じように、十年以内の据置期間を含む三十年、利息の利率、十年間は各年二%、その後は各年三%、こういうことで伺っておりますが、それでよろしいでしょうか。そして、これは相手に対しましては大変有利な条件有償決定をいたしておるわけであります。  同時に、もう一つ私が指摘したいと思いますのは、この米は日本米不足となりまして外国から購入した米であると思っておるわけでありますが、購入したときの金額は、調べてみましたらトン当たり七万円。今回、国際価格にのっとって売却する金額が一万八千円なんですね。単純に計算してみますと、二十万トンでありますから五万二千円の差額がある。優に百億円を超えておるのです。その分を国民税金で賄っておるということをやはりよく相手側にも知らしめて、これは有償であるけれども、それだけの国民税金がこの中に使われておるんだ、大変な援助であるということも相手側に十分知らしめる、国民皆さんにもこれを知っていただくということが私は大事だと思うのであります。  さらに、今回、北朝鮮におきましては、七月の末から八月にかけて水害の被害が起こりました。これに対して、北朝鮮政府国連人道問題局緊急援助要請したようであります。その報告を見ますと、被災者は五百二十万人に上り、被害額は百五十億ドルに上ると報告しております。  ところが、この要請を受けまして、実際に国連人道問題局の方から被災地に入って調査をした結果によりますと、実際の被害は、十万世帯五十万人が家屋を失って、六十人から七十人が死亡、行方不明であって、損害総額は十五億円、千五百七十一万ドル、こういうように報告をされておるわけであります。千五百七十一万ドルの緊急援助が必要だ、こういう調査結果を発表しておるわけであります。北朝鮮政府は百五十億ドルと言い、国連人道問題局調査団は千五百七十一万ドルと言い、この差額というものは極めて大きいと思うわけでございます。  しかしながら、国連要請に応じまして我が国は、国際社会の一員として国連機関努力支援する、こういう理由によりまして五十万ドルの拠出決定したようであります。アメリカはこれに対して二万五千ドルのようでありますけれども我が国が五十万ドルという額を決定した根拠というものはいかなるものであるか説明していただきたいと思います。
  15. 加藤良三

    加藤(良)政府委員 五十万ドルの拠出につきましては閣議の手続を経てこれを供与することといたしましたが、そのとき根拠といたしましたのは国連の諸機関による調査結果の方でございます。すなわち、玉沢委員指摘の十万戸五十万人の被災者、千五百七十一万ドルの被害、この方を参考にして算定をいたしました。  なお、算定するに当たりましては、横並びと申しますか、我が国が行っておる緊急災害援助、これまで行ってきた災害援助というものとの対比で考えた次第でございまして、その中の若干例を申し上げれば、九四年九月のパキスタン、九四年一月のマレーシア、あるいは九三年十月のフィリピンの災害のときの手当て、支援ということなどを念頭に置いて算出したものでございます。
  16. 玉沢徳一郎

    玉沢委員 米の支援確認書の中において「供給された米は、専ら民生用消費のために適正に使用されることが保証される。」とありますね。今回の五十万ドルの拠出金も合わせまして、真の意味での民生用、そして北朝鮮国民皆さんのために使われるということが常に保証されなければいかぬと私は思うわけでございます。この確認の保証を一項目設けだということは、仮にも日本援助した米あるいは資金も同じだと思いますけれども、軍事的な目的あるいは軍事物資ということに使われないように、こういう配慮があったからだと思うのですね。  北朝鮮の現在の国策というものは、膨大な軍事力を擁して、核開発も行っているんじゃないかという疑惑を持たれ、あるいはまた弾道ミサイル等も開発しているやに聞くわけでございます。米の生産不足というものも、私はあえてここで申し上げたいと思いますけれども、二千三百万の人口を有しておる北朝鮮が百二十万とも言われるような兵力を有しておる。これは成年労働人口の半分以上を占めるわけですね。ですから、今後もこうした軍事的な目的を有し、軍事国家として進んでいくということであるならば、成年労働人口の五〇%も兵力に割かれていること自体が本来問題だと思うんです。我が国人道支援ということを言っておりますけれども、今後とも食糧不足ということあるいは民生的な経済の安定というものはなかなか図られないのではないかと思うのです。  ですから、困ったから、支援を頼まれましたから、人道支援ならいいでしょうということだけをやっておったのでは、なかなか問題の解決にはならない、朝鮮半島の安定にはならない。我々は外交目的というものがあるならば、やはり少しでも向こうの国も民生安定のために努力をするというような形をとっていただくような、そういうような形で交渉していくということが私は大事だと思うのでありますけれども、いかがですか。
  17. 加藤良三

    加藤(良)政府委員 御指摘の点は重く受けとめておるつもりでございますし、今後ともそういう考え方を十分踏まえて対応したいと思っている次第でございます。  私どもも、今の時間の都合上詳細は省略いたしますけれども、できるだけ米の使途等についての透明性の確保ができるよう、今回及び前回の交渉を通じて努力したつもりではございます。もちろん、それに御不満はございましょうけれども、当面次の回の米の供与協議ということは想定されておりません。  経済協力ということにつきましては、これはまさに正常化のときの話でございまして、それを先に切り売りするというような考え方日本政府には全くないわけでございます。  ただ、今御指摘になられました点は非常に重要なものと思いますし、今後そういう接触というものを進めていく上に当たりましても、アメリカとの関係ももちろんですけれども、特に韓国との関係連携というものを十分念頭に置きつつ対応していくべきものと考えております。
  18. 玉沢徳一郎

    玉沢委員 次の問題に移ります。海外において紛争に巻き込まれた邦人救出の件についてお尋ねをいたします。  海外において日本人紛争に巻き込まれて、人命その他危険に陥った場合におきましては、自衛隊法改正が昨年十一月になされまして、自衛隊機も派遣して邦人救出等ができるということになったわけでございますが、海外における日本人救出ということは今後大きな課題となってくると思うわけでございます。  そこで、去る八月二十五日、三年半に及ぶ紛争地域であるボスニア・ヘルツェゴビナから、岩手県出身のリビチ郁子さん、旧姓中屋敷郁子さんが三人の子供さんと一緒に日本帰国されました。この間に救出にかかわったフォトジャーナリストの方が、外務省対応が遅かったというような記事が出されておりますし、一般報道におきましても「外務省SOS対応鈍く」こういうような報道がなされておるわけでございます。しかし、本件につきましては、現地の国連難民高等弁務官事務所とか国際赤十字社等協力も十分いただいたと伺っておるわけでございまして、実際に救出に当たった在外公館本件に対しましてどのような手を尽くしたか。  この中屋敷郁子さんは昨年十月にも帰国意思を有していたけれども、それがおくれたのは三人の子供さんが日本国籍を有していなかったからということも言われておるわけでございます。私は、その事実関係はどうなっているかということと、それから郁子さん親子が帰国する際、外務省子供さんたちの入国についてはどのような措置をとったか、こういう点について、今後のこともありますので、その対応等について外務省がとった措置について詳しく御説明を賜りたいと思います。
  19. 齋藤正樹

    齋藤政府委員 お答えいたします。  私も文芸春秋の記事を拝見しました。関係者にも読ませました。それで、いろいろ我々の今までやってきたことを御説明いたしたいと思います。  まず、ボスニア・ヘルツェゴビナ地域が非常に治安が乱れまして、戦闘が激化したために、九一年十月十五日でございますけれども外務省が、全面的な渡航を自粛することを求める渡航自粛勧告を発出しまして、邦人皆さんがこういう危ないところに行かないように、極力渡航を取りやめるように呼びかけてきました。  こういう中にありまして、在留邦人リビチ郁子さん、この一家はちゃんと在留届を出していただいておりますので、常に連絡をとっておりました。しかしながら、彼女の一家の住んでおられる地域というのは非常に戦闘が激化しまして、赤十字社あるいは国連難民高等弁務官、こういう出先の事務所の要員でさえなかなか接近といいますか、その地域に行けないというようなところまで来ておりました。しかしながら、我々は、オーストリア大使館それからユーゴ大使館、それから赤十字社難民高等弁務官事務所を通じまして、リピチ一家の安否の確認帰国意思確認ということを一生懸命やってまいりました。しかしながら、極端な戦闘激化のためになかなか連絡がとれない状態にありましたけれども、最終的には、八月二十一日に連絡がとれまして、帰国意思確認し、ロンドン経由で東京に八月二十五日にお帰りになったわけでございます。  その間にありましていろいろな国際機関にお世話になりましたけれども一つ言えることは、このジャーナリストボスニア・ヘルツェゴビナに行こうとしたときに、我々は、さっき申し上げました渡航自粛勧告が出ておるから危ないということで、危ないですよ、我々は一般邦人皆さんにはそこには行かないようにということでお勧めしていますということは確かに申し上げました。それから、外務省にいろいろな相談があったときに、問題が複雑といいますか、各方面にわたるものですから、例えば所管が分かれておるということで、この問題はこちらです、この問題はあちらですということを申し上げました。そういうことをとらえまして、このジャーナリストの方は、たらい回しにしたとか、外務省帰国の邪魔をしたとか、こういうことを書かれたわけで、我々も非常に心外でございます。  それで、関係した者にもそういうことがあったかということを聞きまして、一様に根拠がないという返事をもらいましたので、我々もその反論の文書を用意して、これから掲載してもらう予定でございます。  それから、さらにつけ加えさせていただきますと、ことしの七月の下旬の段階でございますけれども、本人のところに安否の確認、それから帰国意思を確かめましたら、しばらく現地にとどまりたい、こういうことをおっしゃっておるのです。その前の七月の上旬の段階では、岩手のお父さんから帰国のための費用をオーストリア大使館に送金してもらいまして、いつでも帰国できるように準備を整えておりましたけれどもリビチ郁子さんがしばらくは現地にとどまりたい、こういうことをおっしゃったものですから、我々が用意した帰国のための手続、そういう一連の作業が七月の段階で中断した。さらに、また戦闘が悪化したために、八月の二十一日にやっとまた確認がとれて、最後は八月二十五日に帰国なさった、こういうことでございます。
  20. 玉沢徳一郎

    玉沢委員 今言われましたように、記事の中には外務省ジャーナリストの方の活動を阻んだかのような記事も見られるわけでございます。しかしながら、邦人救出ということになりましては、何としても窓口は外務省なんだ、やはり誠心誠意を尽くして海外における日本人が危機に陥ったとき救う、こういう使命感を持って臨んでもらいたい、こういうふうに思うわけでございまして、外務省が非難をされておるということは決して望ましいことではない、私はそう思うわけでございます。  そこで、やはり何としましても国民の信頼を今後高めるという意味におきましても、外務省在外公館における邦人保護体制を強化していく必要がある、私はそのように思うわけでございます。どうか外務大臣におかれましては、このリビチ郁子さんの件を、一つのケースでありますが、糧としまして、在外邦人のため、その安全のために今後努力していただきたいと思うわけでございますし、大臣の決意のほどをお伺いいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  21. 河野洋平

    河野国務大臣 御指摘を踏まえて、なお一層努力をいたしたいと思います。  外務省としては、邦人保護は我々の極めて重要な役割の一つでございます。法令に基づいて努力をするわけでございますが、しばしば事実は小説より奇なりということもございまして、法律を制定するときに想定もしなかった、想像もしなかったような事態というのはあり得るわけでございまして、そうしたときには人命尊重、そして邦人保護の精神というものを外しまして、できる限りの努力をいたしたい、こう考えております。
  22. 玉沢徳一郎

    玉沢委員 ありがとうございました。
  23. 三原朝彦

    三原委員長 秋葉忠利君。     〔委員長退席、小杉委員長代理着席〕
  24. 秋葉忠利

    秋葉委員 社会党の秋葉でございます。  今、日本の社会の中で関心を持たれている重要問題、幾つかありますけれども、その一つが沖縄の問題、九月四日に発生いたしました女子小学生暴行事件、これに端を発したと言っていいと思いますけれども、浮き彫りになったさまざまな問題、これが重要問題の一つであるという認識においては、ここにいらっしゃる皆さん、異論のないところだと思います。それに関連して何点か、政府対応並びに今後の方針について、さらにはそれらの諸問題が指し示している論理的な帰結、幾つかについて質問をしたいと思います。  まず、緊急の問題から質問したいのですけれども、昨日、宝珠山防衛施設庁長官が辞任をいたしました。発端になったのは、代理署名拒否問題に関連して、村山総理大臣は頭が悪い、こういう発言をしたためであります。  私は、まず最初に、村山総理大臣は頭が悪いとも思っておりませんし、どちらかというと頭のいい方だと思います。それ以前の問題として、やはり頭のいい、悪いという判断が人間をはかる唯一の尺度であるかのような考え方の方がより大きな問題ではないか、そんな気がいたしますし、この外務委員会でも以前問題にいたしましたけれども、核兵器の使用が国際法違反かどうかという問題に対して、国際法違反だというようなことを言うやつは頭が悪い、これは外務省の高官の方がおっしゃったということで、そういった形での判断が事によったら霞が関には非常に強いのかなという危惧を覚えております。  この点に関して、防衛施設庁として、この一連の発言、それが防衛施設庁あるいは防衛庁としての基本的な考え方なのかどうか、あるいは宝珠山長官個人の考え方なのかどうか、そのあたりのところからまずきちんと整理をしていただきたいと思います。
  25. 野津研二

    ○野津説明員 御説明させていただきます。  現在防衛施設庁は、来年三月三十一日及び平成九年五月十四日に使用権原の切れます沖縄県の駐留軍用地の使用権原の取得事務を進めているわけでございますけれども、先般、この手続の一環でございます沖縄県知事の代理署名が拒否されまして、現在、知事の御理解を得るべく懸命の努力をしていることは御承知のとおりでございます。  そういう中で、御指摘の宝珠山長官の発言は、一昨日のいわゆる記者懇の中で出てまいったものでございますけれども、昨日宝珠山長官は、沖縄問題について内閣が一体となって取り組んでいる重大な時期に、不用意な発言により関係者に大変御迷惑をかけたので辞任したいという旨を防衛庁長官に申し出まして、それが受理されたということでございまして、私どもといたしまして、この発言がいろいろ御迷惑をおかけしたということについてはおわびしている次第でございます。
  26. 秋葉忠利

    秋葉委員 私の質問には全然答えていただいていないのですが、宝珠山前長官の発言は要するに防衛施設庁の考え方ではないということでよろしいのでしょうか、確認をしたいと思います。
  27. 野津研二

    ○野津説明員 長官の発言というのは、いろいろな面にわたっているところだろうと思いますけれども、長官自身が、御本人が不用意な発言関係方面に御迷惑をかけたということで辞任の申し出をされているということでございますので、そういうところで御理解を賜れればと思うわけでございます。
  28. 秋葉忠利

    秋葉委員 防衛施設庁長官の発言が、要するにお役所としての考え方に基づいているのか、個人の不規則発言ということで、防衛施設庁はそうではないということをはっきり言っていただきたいと思っているわけですけれども、この一連の発言について外務大臣はどういうふうにお考えになっているのか。しかも、村山内閣の中で、今回の問題について外務大臣は非常に大切な役割を果たされるわけですけれども、どう考えていらっしゃるのか、一言御所見を伺いたいと思います。
  29. 河野洋平

    河野国務大臣 今回の米兵による事件というものは、信じがたい事件、許されない事件というふうに私は受けとめております。  このあってはならない事件というものに対する沖縄県民の皆さん方のお気持ちというものは、その怒り、悲しみあるいは基地周辺に住まわれる沖縄県民の皆さんの不安感、これは基地周辺といっても、沖縄県には日本の米軍基地の七五%がある、沖縄県全体の一〇%と言われている、そういうことを考えれば、県民のお気持ちというものは十分理解することができるわけでございます。したがいまして、私どもとしては、こうした事件が再び起こらない、こうした事件を再び起こしてはならないということのために、アメリカ側に対して再発防止のための措置を至急とるようにという申し入れをすると同時に、この事件解明のための万全の対策をとるべく努力をしている、こういう状況でございます。
  30. 秋葉忠利

    秋葉委員 ありがとうございました。  今、河野大臣のお言葉の中には、沖縄県民の気持ちという言葉が出てきましたが、防衛施設庁に伺いますけれども、宝珠山長官の辞任に当たって、あるいは発言の背後にある考え方として、防衛施設庁はその仕事を果たす上で沖縄県民の気持ちをどうとらえているのか、その点を確認しておきたいと思います。
  31. 野津研二

    ○野津説明員 御案内のとおり、沖縄県には現在日本にございます米軍基地の七五%が集中しているという状況でございます。また、戦中戦後を通じまして沖縄県民におかれては多大な御苦労をされたということは、私ども十分頭に置いて仕事をしているところでございまして、本件の駐留軍用地の関係の事務につきましても、現在内閣を挙げて取り組んでいるところでございまして、国と県とが対立することは望ましくない、誠心誠意知事と話し合いを進めて、早期に署名に御協力いただけるよう努力していくという方針でございます。
  32. 秋葉忠利

    秋葉委員 知事と話し合いをして事を進めるということであれば、宝珠山さんがああいう発言をする必要もなかったし、やめる必要も全くなかったと思いますけれども、その辺の防衛施設庁全体の反省を促したいと思います。不必要なことをあえてして人を侮辱した上に、沖縄県民の気持ちを踏みにじるような行為をしておいて、そのあげくの果てに県民との話し合いを進めるなどというふうに言われたのでは、これは気持ちのおさまらない人がたくさん出てきても仕方がない話だと思います。  実は、そういった態度とは非常に対照的な発言がこのところマスコミに報道されております。その非常に対照的な考え方を示しているのはマンスフィールド元駐日アメリカ大使ですけれども、このマンスフィールドさんが言っているのは、毎日新聞の報道によれば、例えば沖縄の人々の声に我々はもっと耳を傾けなければいけない、それから、大田沖縄県知事の要求は穏当なもので、最大限の考慮を払ってやるべきだ、あるいは、知事との話し合いをもつと進めるべきだ、こういうことをマンスフィールドさんはおっしゃっています。私は、これが理性的な考え方だと思います。  この考え方をもとに伺いたいのですけれども、まず日米間のこれまでのやりとりの実態、クリントン大統領あるいはモンデール大使、クリストファー国務長官その他から日本に対して遺憾の意が表明されたという報道がありますが、マンスフィールド元大使の発言ほど沖縄県民の気持ちを代弁している言葉はないような気がいたします。そこで、これまでの日本政府とそれからアメリカ政府との間のやりとり、それほど長くなくても結構ですから主要な点、主に沖縄県民の気持ちをどう反映させようとしているのかという視点から簡単にお聞かせいただきたいと思います。
  33. 折田正樹

    ○折田政府委員 九月四日にこの極めて遺憾な事件が発生したわけでございますが、事件の概要が判明した後直ちに外務事務当局より、アメリカ大使館、それから在日米軍、国防省、国務省の責任者に対して遺憾の意を表明するとともに、捜査協力、再発防止、綱紀の粛正の徹底を申し入れました。  それから、九月二十一日に河野外務大臣がモンデール大使を呼ばれまして、そのときにモンデール大使から、陳謝という言葉をお使いになりましたが、陳謝の表明があったわけでございます。その際に外務大臣の方から、捜査協力、再発防止、綱紀の粛正の徹底を申し入れられました。  それから、九月二十七日に日米安全保障協議委員会がニューヨークで開かれたわけでございますが、この際にも日本側から、軍人教育、綱紀粛正による再発防止について話を行い、また事故防止についても要請したところでございます。  それから、大臣がモンデール大使に申し入れられました結果、専門家レベルでの委員会を設置することにいたしまして、刑事裁判手続で改善の余地があるかどうか調べて、その改善の方途を探ろうという趣旨で専門家レベルの委員会を設置したわけでございます。この委員会も精力的に今作業を進めているわけでございます。  それから、河野外務大臣の方からモンデール大使に対しまして、沖縄の基地の整理統合についてアメリカ側におかれても全面的な協力をいただきたいという申し入れもしているわけでございます。  これを受けましてアメリカ側の対応でございますけれども、沖縄に駐留する海兵隊の反省の日というのを設けました。これは、最初は一日の予定だったのですが、二日にわたって行われまして、通常の訓練を休止し、地元に対する責任について討論、討議を一日じゅう実施するというようなことをやりますとともに、海兵隊の幹部が四軍の上級下士官それから上級指揮官に対しまして、改めて厳格な規律及び強固な監督を徹底するという指示を出しました。それから、海兵隊を含みます沖縄の米軍の全レベルの指揮官に対しまして、兵隊各個人が品行方正に努めることが絶対的に必要である、そして自分の行為に対して責任を果たすことができなかった軍人は懲戒処分に処すという指示を出したりもいたしました。それから、海兵隊関係者は、沖縄当局との緊密な協力を促進して双方の関係を改善し、不正行為を防止するために努力するという表明もしてございます。  そして、再発防止の点につきましては、ペリー国防長官みずからが、先ほど申し上げました安全保障協議委員会の直後の記者会見の場で、公の場で深甚なる遺憾の意を表明するとともに、今私が申し上げたようなことを公の場で申されるとともに、さらに新たに日本に勤務を命ぜられた軍人に対する教育プロセスのあり方を見直すように指示したということについても述べられたということでございます。
  34. 秋葉忠利

    秋葉委員 わかりました。いろいろとやっていらっしゃるということはよくわかりましたけれども、基本的な点幾つかについて疑問が残ります。  村山内閣のスローガンといいますか、これは「人にやさしい政治」だったと思います。人に優しいということは、特に一番弱い立場にある人間、さまざまな意味で弱い立場の人間に最大限の配慮を払うというところから出発するのだと思いますけれども、今回の問題で一番弱い立場にあるのはだれなのか、どういう人たちなのか、外務省はどういうふうに認識されているのでしょうか。
  35. 河野洋平

    河野国務大臣 今回の問題というのは、いろいろな見方、考え方があると思います。秋葉議員の視点は、基地周辺住民そして基地周辺に住んでいるからこそこうむるさまざまな不安感あるいは直接的な被害、そういったものにさらされている人たちということを念頭に置いてお尋ねになっているのではないかと思います。しかし一方、この問題が起こるもっと基本的な、根本的な問題というものには、日米関係、つまり日米安保体制というものについてどう考えるかということまでさかのぼるという視点もまたあるのだろうと思います。  したがって、確かに被害を受けた、あるいはその被害の程度はいろいろあったとしても、基地周辺に住んでいる、住まわざるを得ないということからこうむるさまざまな問題を受けている方々の気持ちというものは、やはり私どもとしては尊重をするといいますか、大切にするということが重要で、そのことがやはり、基地を使って安保条約に規定される、安保条約目的を達成するために行動する米軍というものの行動がよりよくできることに結果としてはなるのではないかというふうに思います。     〔小杉委員長代理退席、委員長着席〕
  36. 秋葉忠利

    秋葉委員 今おっしゃっていることは、それなりに理解できるのですが、基地周辺の人々、沖縄県民、沖縄の人たちということになりますけれども、そういうふうに全体として一つのまとまった単位として沖縄の人々を考えることも大事ですけれども、今回の場合発端になったのは、九月四日の米兵三人による女子小学生の暴行事件です。その被害者の少女あるいはその家族といったことをやはり視野に置いた上できちんとした対応をとるべきではないのでしょうか。個人のプライバシーの問題、もちろん最大限尊重しなくてはなりませんし、本人の気持ちということが大事なのは言をまちませんけれども、先ほどもお話がありましたように、アメリカ当局としてはさまざまなレベルで陳謝をし、遺憾の意を表明している。それを外務大臣あるいは外務省皆さん日本国民の代表としてお聞きになった。その日本国民の中には、今回の事件で最大の被害を受けた少女も当然入っているわけですけれども、その少女に、例えばアメリカ大統領が陳謝をしているんだ、本当に済まないと思っている、あるいはアメリカの大使やその他の人たちが公の場で言うのも結構ですが、本当にその少女に外務省は、あるいは日本政府は仲介役としてそういったアメリカ側の真摯な謝罪の気持ちを直接伝える必要があるのではないでしょうか。その点についてお考えを伺いたいと思います。
  37. 折田正樹

    ○折田政府委員 今のお考えは私も非常によくわかりますし、そうしたことを実は我々、アメリカ側と接触しておりまして、これは公には否定しておりませんけれども、そういう方法もあるのではないかという話も出ておるのですが、他方、被害者の方それから家族の方がプライバシーの観点から直接接触はしていただきたくないということを言われているやに伺っておりまして、そういうこともありまして、今のところアメリカ側にはそういう気持ちがあるのでございますけれども、そういうことには至っていないということでございます。
  38. 秋葉忠利

    秋葉委員 今のお話では、あるやに聞いているということで、その確認もやっていない。それでは話にならないと思います。本当に誠意のある対応をするのであれば、やはり被害者の気持ち、被害者の将来、それを最大限に尊重しなくてはならないと思いますけれども、日米間の問題に目を奪われて、その一番の被害者である御本人の気持ちとかそういったものに対する配慮が欠けていると言われても仕方がないのではないでしょうか。まだ今からでも遅くはないと思いますから、建設的な方向で、そしてこれまたしばしば沖縄の問題では指摘されていることですけれども、個人のプライバシーという隠れみのに隠れてしまって本当に弱い人たちの立場を守ろうとしていない事件、一々具体例を申し上げませんけれども、そういった事例に事欠かない沖縄の問題ですから、プライバシーの尊重、それは当たり前のことなので、それを隠れみのに使って、そして個人の人権を無視してきたことが実は非常に重大なので、その点お間違えのないように対応をしていただきたいと思います。  マンスフィールド元大使の言葉は、アメリカ側から、あるいは日本側でも結構ですけれども、いろいろな人たちの気持ちを率直に沖縄に伝えるということがありますけれども、もう一つは、沖縄の人たちの声を私たちが謙虚に聞くというところも同時にございます。双方向のコミュニケーションが必要だというところです。そして、ではその沖縄の声の中で何が一番大きいか、幾つかありますけれども、その一つが地位協定の抜本的な見直しであるということ、これも当然認識をされていると思います。  それで、この地位協定の見直しについて、まず地位協定の不平等性については、粟山駐米大使も、不平等にも理由があるんだという形で、不平等であるということを認めていらっしゃいます。この不平等な地位協定を見直す気持ちがおありになるのかどうか、外務省に伺いたいと思います。
  39. 河野洋平

    河野国務大臣 地位協定の見直しについていろいろ予算委員会でも御議論がございました。予算委員会におきまして、村山総理は一貫して、今日専門家委員会で議論が行われているので、その専門家委員会の議論をまず見守りたいということを繰り返し答弁をしてこられたわけでございます。私どもも総理のそうしたお考えというものに沿って今日おるわけでございます。
  40. 秋葉忠利

    秋葉委員 総理は全体的な統轄者ですから、その立場はそれでいいとしても、当然日米間の地位協定の詳細について、特に例えばドイツの場合との比較、あるいはその他の国々との比較においてこの地位協定は当然見直すべきであるという見解を、管轄している省として外務省が、村山総理に進言をする、見直すべきであるという立場を明確にした上で、具体的にその理由はどうなのかということまで説明する責任があると思いますけれども外務省はそういった詳細について御存じないのか、あるいは詳細については知っていても、不平等であるということは認めるけれども、不平等であっても、総理がそういう態度だから外務省としては不平等協定を見直す気はないという政治的な判断を下されているのか、その点を伺いたいと思います。
  41. 河野洋平

    河野国務大臣 私の答弁が不十分であれば事務当局から補足をさせたいと思いますが、まず、秋葉議員がこの条約は不平等だ、こういうふうにおっしゃっておられます。また、粟山駐米大使の発言を引いてそうしたことをおっしゃっておられますが、私はこの地位協定というものだけを取り出して議論をするということでいいのかなというふうに実は思っているわけでございます。  地位協定は、御承知のとおり、日米安保条約というものがあって、その安保条約の六条を根拠として地位協定がつくられているわけで、安保条約目的を達成するために日本側が果たすべき義務というものがあるわけで、その点について地位協定はいろいろと書いているわけでございます。したがって、まず安保条約について我々がどう考えるかということを含めた議論をせずに、地位協定だけあるいは地位協定の項目だけを取り出して議論をするということで果たして十分であるかどうかということについては、お考えをいただかなければならないのではないかというふうに思うわけでございます。  地位協定そのものについて、秋葉議員からかねてからいろいろ御意見があることは私も承知をいたしておりますし、それらについて外務省がこれまでやってきた作業というものについては、外務省として、事務当局から若干の補足をさせたいと思います。
  42. 折田正樹

    ○折田政府委員 今の大臣がおっしゃられたことを踏まえての話でございますけれども、地位協定をめぐりまして、例えば沖縄におきます施設、区域をめぐる問題、そのほか今回鋭意取り組んでおります刑事裁判手続の改善に関する問題、その他地位協定をめぐりましていろいろな問題が提起されているということは十分我々も重く受けとめております。  私どもとしましても、こうした問題に取り組むため、やはり改善すべき点は積極的に改善するという姿勢で臨んでいるわけでございます。ただ、そうした改善努力の結果をどういう手続、形式によって実現していくかということは、その内容いかんに応じてアメリカ側とも話し合って検討するべきものであるというふうに考えております。
  43. 秋葉忠利

    秋葉委員 確認いたしますけれども、つまり地位協定の見直し——見直しというのはいろいろな問題、細部もあれば全体像もあるでしょうけれども、それを検討する、そして改善すべきところがあればそれを直すということは、これは見直しにほかなりません。具体的な手続は別としても、地位協定の見直しをするという言葉で私はそれを表現したいと思いますけれども、大筋それで間違いではありませんね。
  44. 河野洋平

    河野国務大臣 今回の問題に端を発して今いろいろな報道機関がこの地位協定をめぐって議論をされておりますが、その延長線上で見直すというふうにもしお考えであり、あるいはそういうことでおっしゃられると、私はこの時点では、少なくともこの時点では正確ではないと思います。先ほど申しましたように、現在時点におきましては、村山総理の御発言ぶりが正しい我々の認識、考え方だというふうにぜひ受けとめていただきたいと思います。
  45. 秋葉忠利

    秋葉委員 そこのところが非常にあいまいで、大江健三郎さんではありませんけれども、これはあいまいな日本語の特性かもしれないのですが、条件はつくにしろ、ともかく見直しをするという姿勢に変わりはないということを言っていただくことで、私はこの問題は非常に大きく前に進むと思いますので、改めてその点を確認しておきたいと思います。  ちょっと時間がありませんので、少し内容にまで踏み込んで申し上げたいのですけれども、その一つの比較の対象になるのは、ドイツにおける地位協定、これはNATOの協定とそれからその後のボン協定がありますけれども、実体として現在効力を持っているその総体をアメリカとドイツの間の地位協定というふうに仮に呼ぶといたしまして、せめてドイツ並みのレベルにまで地位協定を改定する、見直すといったことは何の問題もありませんし、先ほど河野外務大臣がおっしゃったような安保云々のところまで立ち入らずに、そのくらいのことは最低限やるべきだというのが、私は、現在国民の大多数の考え方ではないかと思います。その点について、簡単で結構ですから一言お願いいたします。
  46. 河野洋平

    河野国務大臣 詳細は政府委員から答弁させたいと思いますが、お許しをいただきたいと思いますが、いずれにしても、今議員指摘のボン協定でございますとか、ドイツを含むNATOの諸国とアメリカとの間に結ばれている協定の規定ぶりにつきましては、日米地位協定と相当程度共通したものになっているというふうに私は認識しておりまして、日米地位協定そのものが特別日本にとってだけ不利な協定になっているということについて、私はにわかに賛同しかねるのでございます。  詳細は政府委員から御答弁申し上げたいと思います。
  47. 折田正樹

    ○折田政府委員 我々がいろいろな作業をするに当たって、ボン協定の規定とかボン協定の運用ぶりというのは一つの参考になるんだろうと思います。  一つ例で申し上げますと、今裁判手続の改善策について専門家レベルで話し合いを行っているわけですが、これは皆様よく御存じのように、地位協定十七条5(c)にかかわるものですが、これとボン協定との比較というのが非常によく議論されます。これは、協定上の規定ぶりと、それからボン協定を実際どう運用しているかということをよく考えてみる必要があるのではないだろうかと私は思います。  両方の規定を比較してみますと、被疑者の身柄の拘禁につきましては、日米地位協定の場合、「日本国により公訴が提起されるまでの間ことなっておるところでございますが、ボン協定の場合は、「判決の執行の時まで」ということになっておりまして、米国が義務として受け入れ国側に被疑者の身柄を引き渡すことになる時期について比較しますと、ボン協定の方が米国の拘禁が長く続く規定となっているわけでございます。  他方、ボン協定におきましては、「米国は被疑者の拘禁をいつでもドイツの当局に移転することができる。」また「特定の場合にドイツの当局が行うことがある拘禁の移転の要請に対し好意的配慮を払う。」という規定がございます。この規定は日米地位協定にはないことは御案内のとおりでございます。  そこで、このボン協定の運用ぶりがどうなっているかということを調査しているわけでございますけれども、今まで我々が聞いたところによりますと、ドイツの場合では、ボン協定に十九条というのがございまして、ドイツが米軍人等に対し第一次裁判権を有する場合であっても、米側の要請により原則として裁判権を放棄して、米兵の裁判はアメリカ側の裁判にゆだねることというふうになっております。そして、我が方が入手している統計資料によりますと、最近五年間では、九九%以上ドイツは一次裁判権を放棄している由でございます。したがいまして、ドイツ自身が第一次裁判権を行使している例は極めて少ない。その上で、さらにアメリカ側が拘禁している被疑者の身柄を引き渡しの要請をして引き渡しを受けたというケースというのは、この十年では皆無であるということのようでございます。  こういう実態、規定ぶり、運用も我々は参考にしながら我々の作業を進めていきたいということでございます。
  48. 秋葉忠利

    秋葉委員 それは巷間でよく理解されている点だと思いますけれども、法律あるいは規則というのは現実の社会と無関係に存在しているわけではありません。  そこで伺いますが、今のような問題は、要するに、犯罪がどのくらいあるのか、しかも凶悪犯罪がどのくらいあるのかということと密接な関連があって初めて意味を持ってくる問題です。仮に殺人が全くない社会があったとして、そういう社会における殺人罪と、日常茶飯的に殺人が起こる社会における殺人罪、その適用というのは全く性質を異にいたします。  そこで伺いますけれども、基礎的なデータとして、ドイツにおける米軍兵士による犯罪、少なくともその犯罪数、それと日本における米軍の兵士の犯罪、こういったものについての比較分析、そして、当然差があると思いますけれども、その差がどういったところに生じているのか。時間がなくなってまいりましたので簡単に御説明いただきたい。特に、最近ドイツにおいてこのような凶悪犯罪、沖縄において頻発している凶悪犯罪がどの程度起こっているのかということをお教えいただきたいと思います。
  49. 折田正樹

    ○折田政府委員 私どもが入手いたしました資料によりますと、一九八六年から九四年の統計でございますが、米兵の犯罪の数は全世界で七万四千二百四十三件でございます。そして、その内訳でございますが、一九八六年から九四年の間でございますけれども、ドイツが五万六千四百十七件、全体の統計の中の七五・九九%でございます。それから、韓国が六千八百八十九件でございまして、全体の中の九・二八%でございます。日本の場合は三千四百十二件で、全体の四・六%でございます。  この数字だけを見ますと、全体の中でドイツが約四分の三を占めている。それから、日本は四・六%、五%弱ということでございますから、この数字だけ見ますと日本におきます米兵の犯罪は少ないということになりますが、もちろん統計を見るに当たってはいろいろなことを考慮しなければならないと思います。米兵が一体その国にその時点で何人いたのかとか、どこにいたのかとか。それから、私ども、凶悪事件とそうでないものという仕分けが残念ながら手元になくてわからないわけでございますけれども、数字としてはそういう数字が出ております。  そして、日本の中でのことになりますと、これは警察の資料でございますけれども平成六年におきます米兵の刑法犯の検挙件数の総数は全国で百六十三件だそうです。そして、そのうち沖縄県内の検挙件数は七十七件ということでございますので、全体の四七%ということですから、日本の中で米兵が犯罪を犯した件数というのは、やはり沖縄が非常に高くなっているということは言えると思います。  なぜそうなのかというのはなかなか難しい話で、私ども、もう少し分析する必要があるというふうに思いますけれども、沖縄が日本に駐留します米兵の約六割から七割を置いているということ、それから米兵と地元住民が近接して生活している局面が多いということが基本的にはあるのではないかというふうに私は考えております。
  50. 秋葉忠利

    秋葉委員 この数字は、前に伺ったときには外務省では調べられないというお答えをいただきましたけれども、今こういう形で出されたのですが、少なくとも私の調査では、ドイツ側はこういう数字を把握しておりません。したがって、これはアメリカ軍の統計だというふうに思います。それから、沖縄の場合には沖縄警察の統計が大体そろっておりますので、こういうことだと思います。  同時に、最近の十月九日ですけれどもアメリカ軍の機関紙と言っていいと思いますけれども、スターズ・アンド保ストライプスという機関紙がありますけれども、その報道によりますと、全世界のアメリカ軍の基地で在日米軍基地における性犯罪関係の軍法会議が百六十九件でトップ。全世界のアメリカ基地において調査をした結果、在日の性犯罪関係、これはトップである。それから、二番目がカリフォルニアのサンディエゴ、これが百二件、三番目がパージニアのノーフォークで九十件ということになります。  それから、少なくとも私の調査した限り、それからドイツのマスコミに問い合わせた結果では、ドイツではアメリカ軍の兵士による犯罪は社会問題化しておりません。その結果として当然考えられること、このくらいの基礎的なデータは外務省はきちんと事実に従って把握してしかるべきだと思いますが、ドイツにおける犯罪は、件数は多いかもしれないけれども、捕捉率がいいだけなのかもしれない。あるいは微罪、それほど重要でない犯罪が多いのかもしれない。そういう結論になります。  こういった状況の違いということを考えに入れない限り、ただ全くの真空の中で条文だけを比較しても意味がないと私は考えておりますし、アメリカとの例えは地位協定あるいは安保その他の交渉をするにしても、具体的なデータをそろえて、なぜ例えば日独間に差があるのかといったことについての説得力ある事実に基づいた解釈がされない限り、例えばアメリカ側が地位協定の改定に対して難色を示しているのであればそれを説得することは非常に難しいと思います。  その点に関して、状況の違いてもう一点伺っておきますけれどもアメリカ軍の基地に関する財政的な援助というところでも日独間に非常に大きな差がありますけれども、概数で結構ですから、日本は一体どのくらいの財政援助をしているのか、ドイツはどのくらいなのか、簡単で結構ですから、それも報告してください。
  51. 折田正樹

    ○折田政府委員 申しわけございません。今手元に資料を持ち合わせませんが、いわゆるホスト・ネーション・サポート、接受国支援で幾ら出しているかということですが、いろいろな状況は違うとは思いますけれども、概数でつかんでみると、日本がドイツのたしか数倍出しているというふうにちょっと記憶しております。後で正確な数字は御報告いたします。
  52. 秋葉忠利

    秋葉委員 そういういいかげんな現状把握では困ります。これは、正確に算出することは困難ですけれども、低目の推測とそれから高目の推測ということで、例えばドイツの場合には、これはビリオンですから、十四億から十九億という財政支出をしております。しかしながら、この中で直接出しているのは非常にドイツでは少ない、大体二億五千万ドルぐらい。それに対して、日本が支出しているのは大体三十六億ドルから三十九億ドル、そのうちの直接支出が二十九億ドルから三十二億ドルということになっていますから、数倍ではございません、少なくともけた違いの財政援助日本はしているというのが現実です。  その財政援助をしているということが直接犯罪とかかわりがあるとは言いませんけれども、地位協定をめぐる経済的な環境、それから社会的な環境がこれほど違っているにもかかわらず、ただ単に条文が、その論理的な帰結が同じだからといって全く同じですということは、現実の議論としては全く通用しない、私はそう思います。  この点について、河野外務大臣、厳しい交渉になるのかもしれませんけれども、少なくともアメリカに対して、事実に基づいた、しかも私たちが正当だと考える、しかも沖縄県民の悲願、そういったものをすべて盛り込んだ、きちんとした対米交渉をする必要があると思いますけれども、いかがお考えでしょうか。
  53. 河野洋平

    河野国務大臣 日米間にはさまざまなレベルで話し合いの場がございます。そのさまざまなレベルの話し合いの場におきまして、我々は双方が、あるいは一方が考えますことを率直に述べるということは十分可能でございます。  ただ、繰り返し申し上げますが、私の答弁あるいは秋葉議員の受けとめ方がそのままマスコミに受けとめられて、けさの新聞のごとく、いきなり日米地位協定見直しという見出しで出るということは、私が今ここでそういうふうにとられるような答弁の仕方をすることは私自身適当でないと思っておりますので、先ほどから繰り返し申し上げておりますように、そうではないのだということだけはぜひお認めをいただきたいと思います。  しかし、さまざまなレベルで、さまざまな話し合いが、これはもう常時行われていることは、日米関係のこの関係を見ればちっとも不思議なことではございません。
  54. 秋葉忠利

    秋葉委員 最後に先ほどの防衛施設庁の考え方に関連のある問題を一つ二つ伺っておきたいと思います。  この地位協定に関しては、協定そのものももちろん大切なんですけれども、これには合意議事録なるものが附属されております。この合意議事録の法的拘束力、これをどういうふうに考えているのか、外務省、それから防衛施設庁から伺いたいと思います。
  55. 折田正樹

    ○折田政府委員 地位協定には地位協定についての合意された議事録というのが附属しておりますが、これは日本国全権委員アメリカ合衆国全権委員が地位協定の交渉において地位協定の運用解釈に関し到達した了解を記録したものでありまして、国際約束であるというふうに認識しております。
  56. 秋葉忠利

    秋葉委員 その合意議事録において、地位協定とは異なった解釈、つまり、地位協定ではAと言っているけれどもAではない、Aではないと言わないまでも、拡張解釈あるいはそれから踏み出た解釈というのは当然許されないと思いますが、その点も確認をしておきたいと思います。
  57. 折田正樹

    ○折田政府委員 地位協定本文の運用解釈に関して到達した了解ということでございます。
  58. 秋葉忠利

    秋葉委員 まだ何点かございますけれども、先ほどから数点要望を申し上げました。その意のあるところをお酌み取りいただいて、一番最初に申し上げました「人にやさしい政治」ということであればやはり一番弱い立場の人間の立場を最大限に尊重するというところで、ぜひ今後とも、日米交渉のみならず沖縄の問題、その他の問題について取り組んでいただきたい、そのことを最後に申し上げて、質問を終わります。
  59. 三原朝彦

  60. 若松謙維

    若松委員 新進党の若松謙維でございます。約一時間にわたり質問をさせていただきます。  まず初めに外務大臣にお伺いしたいのですけれども、宝珠山発言がございました。その中で彼が、首相の頭が悪いからこうなる。外務大臣、ぞうお思いでしょうか。
  61. 河野洋平

    河野国務大臣 私は全くそう思いません。
  62. 若松謙維

    若松委員 そうしますと、この宝珠山長官の発言並びにいわゆる辞職、こういったものが、外務大臣、いわゆる地位協定の交渉当事者となるわけですけれども、そういった交渉等に影響があるのかどうか、その点について伺います。
  63. 河野洋平

    河野国務大臣 私どもが現在行っております交渉には支障はないと思います。
  64. 若松謙維

    若松委員 それでは、引き続きこの日米地位協定について、特に九月四日のあの忌まわしい事件に関連して質問をさせていただきます。  まず、河野外務大臣ですけれども、先月の二十一日のモンデール駐日米国大使との話し合いにおきまして、現行地位協定のもとで刑事裁判上の手続その他について改善すべきものについて双方で議論をして結論を出そう、そういう趣旨でこの専門家会合の設置を合意した、このように伺っております。そうしますと、地位協定の改正は行わないで運用の見直しにとどめる、こういった考え方ですけれども、これも同月の十九日に開かれました閣僚懇談会、ここでこの運用の見直しというものを決定した、こういうふうに報じられております。ということは、この地位協定の見直しは行わないというこの方針に沿って、二十一日のモンデール駐日米国大使との懇談になったのではないかと。  そこでお伺いしたいのですけれども、では、先月十九日の閣僚懇談会、そして二十一日の駐日米国大使との話の一連の中で、直ちに地位協定の改正を米側に求めない、このように決定したというのは村山政権の方針であるかどうか、まずこれについて確認したいと思います。もしそうであれば、もう一つ、なぜ改正を求めないことにしたのか。いわゆる地位協定の運用改善を即決めて、なぜ改正を求めないことにしたのか、その理由もお伺いしたいと思います。
  65. 河野洋平

    河野国務大臣 ちょっと申しわけありません。質問の前段が聞き取れなかったのですが、私がモンデール大使と話をいたします前の十九日の閣僚懇というお話がありましたが、ちょっと閣僚懇の資料を今は全く持っておりませんので、少しそこは御答弁、正確にできかねますが、いずれにせよ、私どもは、村山政権は、日米安保体制を堅持するということが基本的な姿勢でございます。これがまずございます。日米安保体制を堅持するという状況のもとで何をしていくかということを私としては考えたわけでございます。  それから、地位協定にせよ、つまり二国間のこの種の協定というものは、やはりその協定の改定をするということになれば、これは両国で、この協定について両国がどういうふうに考えているかということを、相当慎重に検討をしなければならないと私は思います。  そこで、私がモンデール大使に申し上げましたのは、この事件に関連して、事件解明のためもしくはこの事件に関連して多くの方々が考えるであろう問題について解決をしようとすれば、運用の改善について両国の専門家が集まって、どこに問題があって、その問題をどうすることが改善につながるかという話を専門家にできるだけ迅速に討議をして結論を出してもらうということが最も合理的な問題解決への方法ではないか、こう考えて、私はモンデール大使に提案をしたわけでございます。
  66. 若松謙維

    若松委員 それでは、今この地位協定見直し等の関心が高まっている部分、いわゆる地位協定十七条五項(c)、これについて、今おっしゃった地位協定の改正を慎重に行う、また大変重要な問題である、それは私も了解いたします。しかし、この協定改定を直接日米間で検討することについて、日米それぞれ、どのように不都合を生じるとお考えでしょうか。日米地位協定そのものの改正という議論が日米それぞれにどういう不都合を生じるのか、いわゆる地位協定改正をしてはいけない理由とでもいいましょうか、そういった点をお聞きしたいと思います。
  67. 河野洋平

    河野国務大臣 一般論でまず申し上げたいと思いますが、いかなる法律であろうが協定であろうが、それは一度決めたらもう絶対変えないというものではないと思います。問題があればそこを直すということは、一般論で申し上げて十分あることだと思います。  ただ、議員もよく御承知のとおり、地位協定というものは、日米安保条約を裏打ちするといいますか、表裏一体の形で、安保条約があり、その安保条約目的を達成するために米軍が日本の国でどういう行動ができるか、どういう権利を有するか、義務を有するか、こういうことがそこに書かれているわけですから、この安保体制を堅持するというときには、これを一体として考えるということも必要なんだと私は思っているわけです。  もちろん、別の考え方からいって、どうもこれは窮屈だ、窮屈だけれどもとにかく着ていなければいけないんだと言っていたのでは安保条約目的がうまく果たせないということになるならば、そこは考えなければならないということは一方の議論としてはあると思いますが、私は、今、そこに直ちに議論が行くということではなくて、まずこの問題、当面の問題を解決するためには、運用の改善ができるかどうか専門家委員会をつくってやってみようということにして、これは現にもう委員会ができて、数回の委員会を開いているわけでございます。  そして、先ほども御答弁申し上げましたように、村山総理も、この専門家委員会の議論を見守ろう、まず見守ろう、こういうことを予算委員会でしばしば各党の皆さんからの御質問について答えているわけで、その総理のそうした姿勢というものを我々は受けて、現在、まず専門家委員会の議論というものを、できるだけ早くその結論を導き出すように努力を私の立場からいえばさせているというのが今の時点であって、それを超えてあれこれというのは、今私の立場からいえば言えない立場でございます。
  68. 若松謙維

    若松委員 確かに今、委員会での議論が手続的には先行すべきである、私もそれは理解できると思います。  それでは、今のこの委員会の議論として報道されているのが、かつ沖縄県民の、また日本国民の大多数の関心でありますのが、いわゆる加害者の身柄の拘束、これが議論されております。今おっしゃったこの結論を今急いでいるというところですけれども、いわゆる運用見直しの委員会協議にしろ、これから検討するであろうさまざまな議論、こういったものについて、外務大臣としてどの程度、見直し論議、さらに運用改善というところで、実質的な改善、先ほど秋葉委員が具体的な数字をおっしゃっておられましたが、沖縄でのいわゆる事件が比率的に大変高い、そういった事件の割合等、比率等も含めて、この改善というところでどの程度の改善を期待されているのか、ぜひお伺いしたいと思います。
  69. 折田正樹

    ○折田政府委員 今回の大変遺憾な事件を契機といたしまして、国内の各方面から、日本側が第一次の裁判権を持つ場合において米側により犯人が逮捕されたときの犯人の身柄の引き渡しの時期ということについて、関心がおありになり、また、強い御意見があると承知しております。  このような経緯も踏まえまして、専門家委員会では三回にわたって会合をしておりますが、特に拘禁の移転の問題、それから捜査協力の問題、それから米側によります拘禁の態様の問題について、我が方としては改善の余地がないか検討したいというふうにアメリカ側には言っているわけでございます。  アメリカ側からは、アメリカ側の考え方について、特に捜査協力の面で説明がございましたほか、米韓地位協定ですとかボン協定のもとでの規定それから運用ぶりについて、説明を受けているわけでございます。  日米双方の理解は進みつつあるというふうに思いますけれども、何せ本件は刑事裁判手続という人権とか適正手続の確保とも絡む微妙な問題も含んでおりますし、米側から見ますと、ほかの国と締結している地位協定とのバランスという問題もあるわけでございますが、我が方としては、国民の皆様方の問題意識にこたえた改善が少しでも図れるよう、全力を挙げてアメリカ側と現在協議をしているところでございます。  それ以上の具体的な内容につきましては、現時点で予断をお与えするのは適当ではないと思いますので、この辺で差し控えさせていただきたいと思います。
  70. 若松謙維

    若松委員 今の局長答弁では、少しでも改善を図るように全力で頑張りたい。外務大臣も同じような認識でしょうか。
  71. 河野洋平

    河野国務大臣 ただいま局長が答弁を申し上げたとおりでございまして、拘禁の移転、捜査の協力、あるいは拘禁の態様、こういった点に我々は関心がある、こういった点の改善を我々としては求めたいということを先方に言っておりまして、先方もこれに対して、誠意を持って検討します、こういう態度でございますので、この議論、できるだけ早く結論を導き出してほしい、こう思っておりますが、それぞれにやはりいろいろな議論があるようでございまして、そのそれぞれの議論がまだ収れんしていないというふうに聞いております。
  72. 若松謙維

    若松委員 それでは、今月十七日ですか産経新聞の朝刊に、村山首相が、地位協定運用改善にとどまらず改正を含めて検討する方針を固め、今月二十日、きょうですね、きょうにも外務省及び防衛庁などに指示する、こういった報道がありました。実際にこのような動きがあるのでしょうか。
  73. 河野洋平

    河野国務大臣 総理のお考えは、先ほどから繰り返し申し上げておりますように、委員会その他で述べておられることが総理の基本的なお考えというふうに聞いております。
  74. 若松謙維

    若松委員 では、基本的には、ないという返事でございますか。
  75. 河野洋平

    河野国務大臣 総理は予算委員会その他で、繰り返し、現在専門家委員会が開かれて専門家による議論が行われているのでそれを見守りたい、これが総理のお考えでございます。
  76. 若松謙維

    若松委員 先ほど、この十七条五項(c)での改正論議または運用改善論議、こういった議論の中で、いわゆる米韓地位協定、ボン協定、ここに条項として入っているのがいわゆる好意的考慮、これがいわゆる日米地位協定にはない、ここら辺が一番他の条約と比較して、これは確かに条文上ですけれども、日米地位協定には非常に不利というか、そういった印象が強く出ているのではないかと思います。  そういう意味で、この好意的考慮、英語ですと何と言うのでしょうか、ア・フェイボラブル・コンシダレーションと言うのですか、そういう意味合いの文章というか、それを自主的に実現化していくということがやはり大事ではないかと思いますけれども、そういった点、外務大臣、どのようにお考えでしょうか。
  77. 折田正樹

    ○折田政府委員 好意的配慮というのは英語でシンパセティック・コンシダレーションだそうです。確かに日米地位協定にはこれと同じような規定がございません。  規定ぶりでは確かにシンパセティック・コンシダレーションという部分はないわけでございますが、それでは運用はどうなっているかということで、先ほどの秋葉委員の御質問にもお答えしたのですが、ドイツの場合、このシンパセティック・コンシダレーションをやった結果、米側がドイツに身柄を引き渡したケースというのは過去十年ゼロであるということでございます。それから、韓国にもこのシンパセティック・コンシダレーションという条文はあるわけでございますけれども韓国の場合も、このシンパセティック・コンシダレーションの結果拘禁の移転が行われたことはないという説明を受けております。  そのほかに、もちろんドイツの事情、韓国の事情それから日本の事情、いろいろ違うところもあるのだろうと思いますので、やはりいろいろなことを考えながらやらなければいけないと思いますけれども、そういったことも念頭に入れながら、私どもが専門委員会の会合の場で米側と折衝を行っているということでございます。
  78. 若松謙維

    若松委員 今、そのシンパセティック・コンシダレーションですか、という言葉ですけれども、先ほどの秋葉委員の御指摘ではありませんが、とにかく沖縄のいわゆる事件率というのは大変高い。事件数というのは多い。これを少しでも減らすという観点から、この好意的考慮、やはりこういった条項を具体的に検討すべきではないかと思います。また、そういった検討が進むことによって沖縄での事件の件数を本当に減少させることができると考えるわけですけれども外務大臣、どのようにお考えでしょうか。
  79. 折田正樹

    ○折田政府委員 私ども先ほどから申し上げておることでございますけれども、ボン協定、米韓協定、地位協定にそういう文言が入っているということは十分承知をしております。そういうことも踏まえまして、今専門家委員会でいろいろ検討を行っているわけでございますけれども、まだどういう成案を得るかということについて見通しを申し上げる段階に至ってないということで御勘弁いただきたいと思います。
  80. 若松謙維

    若松委員 御勘弁ということですけれども、それで大臣にお伺いするわけですけれども、今回の事件の本当に国民の関心の高さ、そしてこの沖縄県民の皆様の怒り、やはりこれは真摯に受けとめられて、そしてその怒りというのは、もうこういった事件を起こしたくないんだ、そういう期待のあらわれ、そういった期待に対して、やはり具体的に政治家として成果を出さなければいけないと思います。そういった観点から、この運用見直し、また先ほどの好意的考慮、こういった議論、さらには十一月の日米首脳会談、こういったところを通して、ぜひとも具体的な成果というものを上げるために外務大臣にお働きいただきたい、こう強く希望するわけですけれども、大臣の御決意はいかがでしょうか。
  81. 河野洋平

    河野国務大臣 本当に沖縄県民、これは総理のお話でいえば、これはただ単に沖縄県民にとどまらぬというふうに総理はおっしゃいます。私もそう思いますが、悲しみ、怒りあるいは不安、こういった心情をしっかり受けとめて、外務省としてやるべきことはしっかりやる、懸命にやるというふうに考えております。  我々は、我々がやらねばならぬことは懸命にやりますが、と同時に、やはり何といっても再発を防ぐ、こうした事件が繰り返されないようにするということのためには、米軍の教育とか訓練とかルールとか綱紀の粛正とか、こういったことがやはり一方で大事ではないかというふうにも思うわけです。この点について、米軍が今とっております措置は、我々ペリー国防長官の説明を聞きましても、米軍としては実に真剣に誠意を持って取り組んでおられるというふうに私は感じた次第でございます。
  82. 若松謙維

    若松委員 ぜひ、著しい改善というものをまず期待して、次に補償の問題についてお話を進めさせていただきます。  御存じの今回の被害者の年齢、大変将来のある、少女ということで、当然一過性の傷では済まされない、痛ましい事件でございます。生涯にわたり精神的なダメージも負い続けなければいけない。そういった意味で、この補償問題、いわゆる被害者の方のプライバシーはもちろん維持しながらも、補償請求、まずこれをしっかり審査して、そして補償金を査定してさらに報告書を作成する、そして米側に交付する、こういったお立ち場にある防衛施設庁にお伺いしたいのですけれども、この補償の問題についてどのように防衛施設庁としてお考えなのか、伺いたいと思います。
  83. 冨永洋

    ○冨永説明員 お答えを申し上げます。  本件のような米軍人等によります公務外の事件あるいは公務外の事故の補償に関しましては、原則といたしまして加害者が賠償責任を負いまして当事者間の示談により解決するということになっておりますけれども、示談が困難な場合には、地位協定十八条六項、この規定によりまして、米国政府が補償金額決定被害者の受諾を得た上で支払いを行うということになっております。防衛施設庁といたしましては、その際に、被害者から補償請求に関するお話を受けまして、その内容を審査しまして、その結果を米側に送付するということになっております。  それで、本件事件に関しましては、防衛施設庁といたしましては、事件の性質にかんがみまして被害者の御家族との直接の接触は避けまして、御家族のしかるべき関係者と調整している、連絡をとっているという状況でございますが、これまでのところ、その関係者の方からは、本件事件の性質上、御家族の意向もあるということで、現段階においては直接の接触は望ましくないというお話を受けておりまして、御家族への訪問は差し控えているというところでございます。  今後、被害者側の方から防衛施設庁に対しまして補償請求に関しましてお話がありました場合には、適正な補償が得られるように米側と調整してまいりたいと考えております。  以上でございます。
  84. 若松謙維

    若松委員 実際に、いわゆる補償並びに慰謝料、こういった決定は、最終的には米側の専権事項になるわけなんですね。そうしますと、当然この慰謝料の額の決定過程というところで、大変政府として強いサジェスチョンというものが要求されるのではないか、またしっかりやるべきではないかと思いますけれども、改めて防衛施設庁、そして外務大臣の見解を伺いたいと思います。
  85. 冨永洋

    ○冨永説明員 先ほど公務外の場合の防衛施設庁の果たします役割について御説明申し上げましたけれども、その際に、査定に当たりまして、防衛施設庁といたしましては、公務上の事故による損害賠償の場合と同様の考え方によりまして、事故あるいは事件と相当因果関係のある範囲で通常生ずべき損害について適正な補償が得られるように努めているところでありまして、そういった査定結果を補償金額に反映させた形で査定いたしまして、被害者に対しまして米側から適正な補償が得られるように努めている、これまでも努めているところでございます。  先生がおっしゃいましたとおり、米側が最終的には補償金額決定するということでございますが、米側がその補償金額決定するに当たりましては、従来から防衛施設庁の査定に当たっての考え方を尊重してきてくれておる、理由なく補償金額を減額するというようなことは行われておりませんし、今回、本件事件につきましても、もしそういうことで施設庁が具体的に金額を査定するという段階になりましたら、その金額、それから査定に当たっての考え方を米側に十分説明いたしまして、それを尊重してもらえるように十分努力していきたいと思っております。  以上でございます。
  86. 河野洋平

    河野国務大臣 この問題は防衛施設庁が当局でございます。地位協定十八条に記されておりますように、防衛施設庁が今施設庁からお話がございましたような考え方でこの問題に対処するということになっているわけでございます。  一方、米側は今、全く米側の自主的な、自発的な作業として、グッド・ネイバー・ファンドというファンドをつくって、被害者のために自発的な基金、資金を集めるということをやっておられるというふうに聞いております。こうしたことなどもどういうことになっていくか、私はお話をよく承りたいというふうに思っております。  外務省がどういう場面でこの問題にどういうサポートができるかということについては、よく考えたいと思います。もちろん、精神的には私どもとしてできる限りのサポートをしたいと思っておりますが、ルール上は、先ほど申しましたように、防衛施設庁が当面の担当のポジションにあるわけでございますので、施設庁がこの問題を担当することになると思います。私どもとして何ができるかはよく考えたいと思います。
  87. 若松謙維

    若松委員 今の件に関連いたしまして、十六日の参議院予算委員会で村山総理は、国民被害を受けた場合の補償についてもお互いがもう少し責任を持つ必要がある、いわゆる両国政府が責任を持つ必要があるのではないか、そういう認識を示されました。これは、いわゆる補償体制、今の米側の専権事項というものではなくて、補償体制そのものの見直し、見直す考えと受け取られるのではないかと思いますけれども、そのようにお考えなんでしょうか。いかがでしょうか、総理がそうおっしゃったわけです。
  88. 河野洋平

    河野国務大臣 私もその場におりましたが、総理の御答弁は、県民の心情あるいは国民の心情とおっしゃったか、ちょっと正確ではありませんが、とにかく国民の心情を反映するようにやらなければいけないということをたしかおっしゃったと思います。そういう国民感情といいますか、そういうものを反映させるような対応をすることが重要だという意味のことをおっしゃったんだというふうに受け取っておりまして、あの場面での総理の御発言が、仕組みを変えろ、仕組みそれ自体にかかわって御指示があったというふうには実は聞かなかったのでございますが——私の理解の方が正しいと思います。
  89. 若松謙維

    若松委員 じゃ、これは敬意を表しまして、朝日新聞の九月二十一日の情報から、私はこの質問にさらに関連情報として提供いたします。  まず、沖縄で九二年に強盗拉致事件がありまして、その容疑者二人が起訴される前に基地から脱出して米本国に逃げてしまいました。そして、当然沖縄県警としては捜査段階で身柄引き渡しを求めたのですけれども、当然断られました。そのときに、米軍は、ではどういう措置をしていたのかというと、この容疑者に対して外出禁止命令、こういう軽い措置があった、結果的に本国に帰っていた。これが一つです。  もう一つは、これは大分古くなりますけれども、八二年三月、無職の男性、二十歳ですけれども、その方が海兵隊員にブロックでなぐられて殺害されました。そのときに、当然遺族は加害者に損害賠償を請求、四千万円、結果として支払いの判決が確定いたしました。ところが、実際にこの地位協定に従いまして米軍が支払った金額は、いわゆる慰謝料は、判決額四千万に対する六割、二千四百万円であった。それ以降の米側からの詳しい説明はない。  では、日本の判決、そして米側の対応、この差額をどういうふうに考えるのか、これがやはり今問われているものではないか。そういったところで村山総理は、両国がいわゆる政府として責任を持つことが大事ではないか、そのように私は言ったのではないかと思いますけれども、大臣、どのように解釈されますか。
  90. 河野洋平

    河野国務大臣 防衛施設庁からでも御答弁をいただくのが適当であるかと思いますが、法令を見る限り、今の例を引かれました幾つかの事案は、いずれも公務外の事案だと思います。  それで、公務外の事案については、これは本来加害者が個人的に支払うということになっているわけですが、それはその法令にありますように、加害者に支払いの能力がない場合には、ということで今のようなことになるのだろうと思います。もちろん、加害者に支払いの能力がないからといってゼロで済むというものではないわけでございまして、公務外とはいえ、やはりそういう人たちの起こした問題ということになれば、この法令に従って、防衛施設庁等が仲立ちになって先方に請求をするということになるわけでございます。その場合に、判決どおり満額先方が支払うということであれば、これは議員指摘のように一番いいわけでございましょうが、そこは結局交渉、折衝ということにならざるを得ないのだろうと思います。  ちょっと私、これ以上の、具体的な事例についての詳細な、当時のこともよく存じませんので、詳細は施設庁から、これ以上のことは答弁させていただきます。
  91. 冨永洋

    ○冨永説明員 先生お尋ねの件は一九八二年に金武町で起きた海兵隊員による殺人事件のことかと思いますけれども、本事件につきましては、昭和五十七年に被害者側の方から加害者等に対しまして損害賠償請求の訴訟を起こしたということで、昭和五十八年三月に那覇地裁で加害者に対する損害賠償支払いの判決が出されまして、加害者側と被害者側との間では確定されたというところであります。しかし、加害者の資力の問題がありまして、結果的には、地位協定十八条六項の規定によりまして、昭和六十年二月までに米国から被害者側に対して補償がなされている。  具体的な金額については、ちょっと私どもの立場からお答えは差し控えさせていただきますけれども、補償金額につきまして当時防衛施設庁として米側から聴取しているところでは、裁判所における判決と、それから違いですけれども被害者が事件当時無職であったということで、主として被害者の逸失利益に対する評価が米側の評価と異なっていたというふうに承知いたしております。
  92. 若松謙維

    若松委員 私がこの質問をなぜするかといいますと、こういういわゆる外交関係、外交交渉の中で、国と国のいろいろな話し合いであるけれども、やはり最終的には一個人、特に被害者の方の補償ではないかと思います。  そういった観点から、外務省もそういった交渉の当事者、特に沖縄県という、九州から北海道ですと約千数百キロの小さな日本、ところが沖縄も入れると三千キロという大日本になるわけです。その南をしっかり確保されている沖縄県民の方々が、そういう地理的な理由によりまして多くの米軍を引き受けなければならない。その一環として大変忌まわしい事件が起きる。その被害者に対して、では補償をどういうふうにしていくのか、だれが最終的にやるのか、やはりこれは真剣に語らなければいけない問題だと思います。  そういった観点から、では、当然外務大臣も閣僚のお一人ですので、防衛施設庁の方にもお伺いしたいと思います、最終的にこういった被害者に対して日本政府としてどのようなお考えなのか、どこまでしっかり補償される意思があるのか、それについてお伺いします。
  93. 冨永洋

    ○冨永説明員 先生おっしゃいますとおり、公務外の事案につきましての補償金額の確定、これは、最終的には米国政府決定する、そして被害者の受諾を受けてその支払いを行うというのが地位協定十八条六項に規定されております。  先ほどもお答え申し上げましたけれども、防衛施設庁としましてはその中で、被害者側から米側に対する請求書を受理いたしまして、その補償金額を査定いたしまして、その結果を米側に送付するということをやっているのですけれども、従来から、査定金額あるいは査定に当たっての防衛施設庁としての考え方につきまして米側に十分説明しますとともに、可能な限り防衛施設庁の報告に従った形での処理を米側にお願いしております。また、米側としても、従来から防衛施設庁の査定に当たっての考え方を基本的に尊重してきているということでありまして、理由なく補償金額を減額するということは行われていないということで御理解いただきたいと思います。
  94. 若松謙維

    若松委員 大臣も同じお考えですか。
  95. 河野洋平

    河野国務大臣 施設庁の御答弁でいいと思います。
  96. 若松謙維

    若松委員 この補償問題なんですけれども、当然、今施設庁の方がさまざまな手続面で、しっかりと被害者の方の心情、さらに今後のさまざまな生活等を配慮して交渉されていると思います。施設庁として、その御決意として、しっかりそういった被害に遭われた方々の意を一〇〇%以上、頑張る、そういう決意は不変でございますか。
  97. 冨永洋

    ○冨永説明員 先生のおっしゃいました方向で適正な補償が得られるように最善の努力をしてまいりたいと思います。
  98. 若松謙維

    若松委員 万が一、その裁判の結果、いわゆる日本側の主張が取り入れられなかった、減額があった、そうした場合には、いわゆる日本政府としてどのようにお考えですか。
  99. 冨永洋

    ○冨永説明員 繰り返しになって恐縮ですけれども、そういうことにならないように防衛施設庁としましては査定額、それから査定に当たっての考え方をるる米側に御説明いたしまして、可能な限り当庁の報告書に従った形で決着がなされるように努力したいと思います。  また、米側の方も、我々事務当局で接触している限り、本件の補償に関しましては最大限努力する、誠意を持って対応する、誠実に対応するということをお答えいただいております。
  100. 若松謙維

    若松委員 万が一被害者の要望が、いわゆる米側から十分な補償がされない、そういう形であると、やはり一つの制度として、枠組みとして、やはり日本政府として何らかの対応が必要ではないかと思いますけれども、閣僚のお一人であります外務大臣、どのようにお考えでしょうか。
  101. 河野洋平

    河野国務大臣 御指摘の点は、お気持ちはよくわかります。  この問題、施設庁が今御答弁申し上げましたように、適正に処理されるように施設庁としては最大の努力をなさっておられるし、これからもするとおっしゃっておられるわけで、防衛施設庁自身が何がしかの仕組みが必要だということであれば、それは考えなければならないと思います。
  102. 若松謙維

    若松委員 私はぜひそれは必要だと思っております。そういった観点で、今の委員会並びに防衛施設庁、さらには政府等でしっかりと議論をして、そしてそういった枠組みをつくっていただきたい。そうでなければ、本当にこの沖縄の県民の皆様の怒りというものは静まらないのではないか、そのように思いますけれども外務大臣、御努力いただけますでしょうか。
  103. 河野洋平

    河野国務大臣 今申し上げましたように、施設庁が、まずこのルールに従って我が方としては努力をする、米側にも誠意ある対応を期待をするということがまず基本であろうと思います。しかし、それが何か仕組みの上で問題があってうまくいかないということであれば、それはもう考えなければならないと思います。その仕組みというのは、日本側の仕組みであるか、日米間の仕組みであるか、それはまだ全く私の頭の中にはイメージがございませんが、いずれにせよ、施設庁が努力をなさって、施設庁から何らかの発議があれば、そのときは我々としても考えなければならないと思います。
  104. 若松謙維

    若松委員 ぜひどこまでも被害者救済というのを政府として最大限の配慮をしていただきたい、それを強く要望して、若干視点は変わりますが、質問を続けさせていただきます。  いわゆる五五年体制の自民党政権時代、このときに、いわゆる日米安保条約、私どもはこれは重要と認識しております、そしてそのときは、どちらかというと極東の平和と安全のために重要である、こういった認識でいたと思います。そして、その当時の最大野党の社会党は、安保条約の廃棄を訴えて、この極東という範囲に大変こだわってきました。しかし、予算委員会等の審議によりましても、村山総理、安保条約は堅持すべきだ、そして、これからは極東よりもいわゆるはるかに広いアジア・太平洋地域の平和と安全のために日米安保条約は重要であると大変前向きの認識になられたようです。  では、こういった今臨時国会での予算委員会の総理の御認識ですけれども、もう一方で、十一月末は日米首脳会談があるわけですけれども、やはり総理もこういうふうに言っております。「私は、これだけ国際情勢の変わった状況の中で日米の安保条約、安保体制というものがどういう機能を持ち、どういう役割を持つことが両国のために、あるいはアジア・太平洋全体のためにもいいのかというようなことについて率直な話し合いもする必要があると思う」、こういった認識というのは村山総理一人だけの認識なのか、それとも村山内閣全体のものなのか、外務大臣、伺いたいのですけれども
  105. 河野洋平

    河野国務大臣 それは村山内閣でございますから、村山内閣で村山総理一人の認識なんということはないわけでございまして、総理のお考え、総理の御認識というものを我々はサポートをしながら、またその指揮下でこの内閣が仕事をしていくということでございます。  日米首脳会談に臨まれる総理のお考えについては我々も十分伺いながら、首脳会談が実りの多いものでありますように努力をしたいと考えております。
  106. 若松謙維

    若松委員 なぜこういう質問をさせていただくかといいますと、私どもは何も、日米安保条約改正しなさい、そう言っておりません。まさに冷戦が終結いたしまして本当に新しい国際情勢の中で、日米安保体制というものが、いわゆる日本一国の安全を図るためのものから、いよいよアジア・太平洋全体、または、そこまで広げなくても東アジア地域の平和と安全のために寄与する、そういう認識が日米で共有できるようになった、私はこう認識しております。  そうしますと、今度我が国の役割なんですけれども、まさに我が国の防衛のためだけに米軍の基地を提供してきてあったということではなくて、これからはこの東アジア地域の平和と安全のために軍事面では米国がリーダーシップをとり続けながら、しかし、やはりこの東アジアさらには太平洋、そういった地域の信頼醸成措置、これについては米国だけではなくて我が国もリーダーシップをとっていく時期に来ているのではないか、そのように考えますけれども外務大臣の御所見を伺います。
  107. 河野洋平

    河野国務大臣 ASEANの地域フォーラム、いわゆるARFという会合がございまして、このARFで今考えておりますのは、まずは信頼醸成のために何をすることがいいか、あるいはこうやって集まって話し合うことも信頼醸成の一つであろう、さらに信頼を高めるためには、各国の防衛政策、国防政策、あるいはそういったものの透明度を高めることが重要ではないかとか、そういった議論をARFはしているわけでございます。  このARFは、だれが音頭をとるかとかだれがイニシアチブをとるかということがあからさまに出てきたらうまくいかないのですね。とりわけ、軍事的にもあるいは経済的にも力がある、例えばアメリカが音頭をとるということでうまくいくか、必ずしもうまくいかない。中国が音頭をとればうまくいくか、必ずしもそうではないだろう。同じように、我が国が非常に強い経済力を持っているということを背景にして音頭をとってやれるかというと、これも決してうまくいく話ではないだろうと思うのです。  ASEANの地域フォーラムがここまで非常にうまくいっているのは、むしろそうした国々が少し引いた形で、いわゆるASEANの国々がイニシアチブをとってといいますか、全面に出てこうした話を進めてきているというところに、まだ二年しかたっておりませんけれども、この二回のARFは非常にうまくいっているというふうに私は見ているわけでございます。  もちろん、そうはいっても、だれかがアイデアを出すとか、だれかが何かをするということが大事だということは私もよくわかりますが、これはあからさまにだれかのイニシアチブでこういうことをやろうといってうまくいくものではないように私には見えております。
  108. 若松謙維

    若松委員 それで、最後の質問をさせていただきますが、確かに、みんなで信頼醸成をやろう、それがARFであることは間違いない。それでは今の、いわゆる条約としての例えは日米安保条約または韓米安保条約、こういった二国間の安保条約とはいいながら、やはりこの東アジア・太平洋地域においては、日米安保条約というのは大変重要な意義があると思います。  ですから、ARFはARFでみんなでやっていくとして、この日米安保条約の中に、例えば東アジアの諸国をオブザーバーとして、日米だけではなくて、日米安保条約ですから日米が協議するのは当たり前ですが、それ以外に東アジアの方をオブザーバー参加させて、例えば仮称ですけれども、日米アジア諸国安保協議みたいな、そのようなものを開催をしながら、この日米安保条約一つの核として、さらに具体的な安全保障体制をつくるべきではないか、そのように政策として提言いたしますけれども、大臣、どのようにお考えでしょうか。
  109. 河野洋平

    河野国務大臣 ヨーロッパのOSCA、ああいったものにARFが育っていくだろうかということをおっしゃる方がよくおられるのですが、私はそう簡単だとは、実はそれほど単純ではないと思いますが、あのOSCAでも、OSCAだけでヨーロッパの安全保障ができているわけではなくて、やはり、その背景といいますか基盤といいますか、そういうものの中にNATOというようなものがあるとか、そういったことがあるわけですね。  しかし、そのNATOとOSCAがお互いに双方を見ながら話が進んでいくという状況なのだろうと私どもは見ているわけで、今議員がおっしゃるような、私ちょっと正確に議員の真意をつかめているかどうかわかりませんけれども、日米安保と東アジア諸国とを一つにして何かをやるということは、私は余り現実的ではないと思います。  むしろ、ARFの議論も、あるいはASEANの拡大外相会議の議論も、余り明示的におっしゃらない場合が多いのですけれども、やはり米軍のプレゼンスというものがあってアジアの安定といいますか、そういうものが背景にあって、その上でARFの議論もあるし、ASEANの拡大外相会議の議論もできるということはあるのですね。しかし、それを一つにして議論ができるかというと、それはなかなかそう簡単ではないというふうに私は感じます。
  110. 若松謙維

    若松委員 私はやはり、この日米安保条約というのは、東アジア・太平洋において非常に重要だ。それだけに、その重要度から考えれば、日本の、平和、安全のためのリーダーシップとまでは言わないまでも、いわゆる貢献度というか、それはおのずと求められているものではないか。そういった観点から、この日米安保条約を基軸として、さらにもうちょっと幅広く参加を求めながら、具体的な平和、安全というものをつくった方がよろしいのではないかという意味から、先ほど、東アジアの人をオブザーバーに入れて、日米を基軸としてそういった安保合同会議なるものをやった方がいいのではないか、そのように提言した次第ですけれども、御賛同いただけますでしょうか。
  111. 河野洋平

    河野国務大臣 安全保障について、これまでバイの会議というものはあちこちにあるわけですね。そのバイの安全保障についての会合、会議議員はもう少しマルチにしてはどうかという御提言でございました。  これまでも、例えばいろいろな協議をする場として日米ロというのもございますし、中国を入れて何かそういう会議がマルチでできるかどうかということも、一つの興味深いもののように思います。ただ、マルチの会合をつくりますのは、それなりにいろいろまた考えなければならないところもございます。  ただ、議員がおっしゃるように、安全保障について数多くの国々と話し合う必要があるという点については、私も大変意味のあることだというふうに思います。  委員長、先ほどOSCAなどと申しましたのは間違いで、OSCEの間違いでございますので、御訂正願います。
  112. 若松謙維

    若松委員 時間が来ましたので、以上で質問を終了いたします。ありがとうございました。
  113. 三原朝彦

    三原委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時二十八分休憩      ————◇—————     午後二時五十三分開議
  114. 三原朝彦

    三原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、福田外務政務次官から発言を求められておりますので、これを許します。外務政務次官福田康夫君。
  115. 福田康夫

    福田(康)政府委員 このたび外務政務次官に就任いたしました福田でございます。(拍手)  私が政務次官に就任いたしましてから二カ月余り経過いたしましたけれども、本年我が国は戦後五十年という一つの節目の年に当たっております。これまでの我が国の歩みを振り返りつつ、我が国がこれからの世界において果たすべき役割を思うとき、外交の責任の重さは今まで以上であると考えております。  とりわけ、国家間の相互依存関係を背景に、我が国の安全と繁栄は国際社会全体の平和と繁栄の中でしか実現できない状況となっており、我が国は、政治経済両面での諸課題、環境問題、人口問題といった地球規模の諸課題に積極的に取り組んでまいらなければなりません。  このような認識のもと、私は、河野外務大臣を補佐して、職務を全うするため全力を傾注する覚悟であります。  外交に精通しておられる三原委員長を初め、本委員会の皆様の御指導と御協力を賜りますようお願い申し上げまして、私の就任のごあいさつとさせていただきます。(拍手)
  116. 三原朝彦

    三原委員長 引き続いて、国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑を続行いたします。東洋三君。
  117. 東祥三

    ○東(祥)委員 東洋三でございます。  本日は、沖縄問題、日米安保、地位協定、APEC問題、李総統及び台湾問題、そして銃規制の問題、全部消化できるかわかりませんけれども、時間のある限りさせていただきます。  まず初めに、私の記憶に間違いなければ、本日は、二十八年前の本日、敗戦後の日本の復興に多大なる貢献をされました吉田茂元総理の命日に当たると思います。まさに敗戦処理、そしてまた単独講和というあの大変な時代に日本のかじ取りをされ、日本の外交政策がもしあるとすれば、それをおつくりになられました吉田茂元総理の偉功を思うときに、きょうこの外務委員会におきまして、ほんの一端でございますけれども、日米安保について議論させていただくことに関し、身の引き締まる思いがいたします。日本の戦後史上、やはり外交の大先達の御冥福をまず心からお祈りしたいと思います。  もう既に同僚議員また他党の議員からも、九月四日に起こりました、全く許すことのできない、また非人道的、野獣、畜生のなせるわざだろうと思いますが、米軍兵士三人による少女暴行事件、本当にどのように言いあらわしていいかわからないこの問題についてお伺いいたします。  どうも私は、この事件が起きて以来、新聞を見ていて、何かおかしいのじゃないのかな、どのように頭を整理したらいいのかな、そのように思っております。それは、あの許しがたい女子暴行事件、この問題と、地位協定の問題あるいはまた日米安保の問題というのは基本的には問題の所在が違うのではないのか。ということは結局、地位協定を幾ら見直すことができたとしても、日本に在日米軍がいる限り、この問題というのは、起こってはなりませんけれども、再発防止を常に推進していかなければなりませんけれども、再発防止にはつながっていかない問題なんだろう、このように冷静な目で見たときに僕は考えます。  他方、沖縄が本土に復帰して以来、果たして沖縄の県民が直面している問題を、沖縄以外の、東京に住む自分自身も含めた上で、どれだけこの問題の本質を理解していたのか、ここにまた大きなギャップを感ぜざるを得ません。率直に申し上げさせていただきます。  先日沖縄に行かさせていただいたときに、初めて行かさせていただき、在日米軍基地が沖縄に七五%集中している、どこへ行ったとしても米軍の基地ばかりである、その結果として種々起こっている問題に対してどれだけ自分が理解しているのかという、この自分自身の理解の浅薄さを思うと同時に、この問題の深さというものを改めて認識しなければならないのだろうというふうに思いました。  ということは、戦後二十数年間にわたってまだ本土に復帰することができない、本土復帰したとしても、基本的には在沖縄の米軍基地というものが一向に変わっていない。他方、日本国民の生命、そして財産と領土を守るために、日本一つの対外戦略の手段として日米安保体制というものを日本の国家意思としてその道を選んだ。その問題と沖縄に存在する在日米軍基地の問題、これを一長一短に絡めることができないんだろう。今回女子の暴行事件が起こったときに、やはり東京に住んでいる自分自身としては日米安保体制の重要性というのが頭をもたげてくる。ところが、沖縄に住んでいる人々にとってみれば、これも話したことでございますが、東さん本当に沖縄にこれだけの基地が必要なんですか、その必要性というものを今までどれだけ政府は沖縄の県民の方々に明確な形で示してくださったんですか、それを明確に示さないで、幾ら日米安保体制の枠組みだと言い、日本全土を守ってくれているその米軍がいるからといったって、にわかにはそれを信じることができない。もっと突っ込んで言えば、もし本当にあの基地が重要であるとするならば、やはり沖縄県民のその気持ち、沖縄県民のこの問題に対しての熱い思いというものをどうして本土の方にもっと展開することができないのか、このように考えざるを得ませんでした。  そういう意味におきまして、今回、宝珠山施設庁長官が沖縄の基地の問題における政府の方針をある意味で批判したということで辞任されました。何で辞任されなくちゃいけないのかな。勇気を持ってまさに政府の、内閣の、政治家の失政を叱責したんじゃないのか。官僚として当然法を遵守していかなければならない。来年の三月には期限が来てしまう。その仕事を一生懸命やられようとして大田知事にも面会を求め、代理署名を要求されておきながら、大田知事はお会いにならなかった。この時点でもってある意味で政治家が表に出ていかなければならなかったのじゃないのか。政治家のやらなければならないことを結局官僚の皆さん方に押しつけて、宝珠山施設庁長官に辞任をさせるという、僕は全くこれは何とも言えない怒りを感ぜざるを得ません。結局、この問題は宝珠山長官に問題があるんではなくて、村山内閣それ自体に最大の問題があるんじゃないのか、このように怒りを私は感じております。  直接この基地問題とはかかわり合いかないわけでございますが、ぜひ内閣の一員である河野外務大臣に、この問題をどのように頭の中で整理しておいたらいいのか、そしてまた、内閣としてこの沖縄の基地問題、沖縄の問題を、国内問題だと思うんです。この問題をどのように解決しようとしていこうとしているのか、その辺のことを明確に御答弁いただきたいと思います。
  118. 河野洋平

    河野国務大臣 大変難しい問題を一まとめにしてお尋ねでございまして、これを一刀両断で結論が出せるならば問題はこういうふうになっていないわけでございますが、まず第一に、議員もお話しになりましたように、今回のこの痛ましい事件が基地を抱える地域皆さん、これは沖縄県民の皆さんもそうですし、青森県にだって基地はありますし、私ども神奈川県にだって基地はあるわけですが、基地を抱える人たち、さらには米軍の訓練その他がかわり合いのある地域の人たち、それぞれが多かれ少なかれいろいろな意味で考え込んでしまうことが最近多いと思うんです。今回の沖縄の事件に絡んで、そうした人たちが悲しみ、怒り、不安におののき、悲鳴を上げ、そういう方々のお気持ちをやはり政府はしっかりと受けとめて、そうした方々の心情を理解し、そうしたことを一緒になって解決をするための方途を考えるということがまず重要であろうと思います。  そういう前提に立って、私は宝珠山さんの御発言が実際どこで、どういう形で行われたかということは、私には完全にはわかっておりません。オフレコの記者との懇談であったと言う人もおりますし、いろいろなことをおっしゃるわけで、そのすべてを私が一々把握をして申し上げるほどのデータは私は持っておりませんし、また、そういう立場でもございませんが、いずれにせよ、乱やや推測を交えて考えまするに、それは何といっても防衛施設庁というポジションは、最も基地周辺住民の方々とはかかわりの多いポジションであるわけです。地位協定によって区域、施設を提供する義務を負うている日本の国、その日本の国の側の立場に立ってそうした仕事をするということですから、恐らく施設庁の皆さんは、さまざまなケースを考え、さまざまな解決方法を考えたに違いがないんです。長官は長官として、一つしかやり方がないと思っておられたとは私は思わないんです。こういう方法はないだろうか、こういうふうにしたらどうだろうか、こうやったらどうだろうか、いろいろなケースについてお考えになったに違いないと私は思うんです。その幾つかのケースの中で、これもだめこれもだめこれもだめとなればこうするしかないよということであったのではないかと思うんですが、たまたまその部分について関心が集まって、そこだけが外に大きく取り上げられたとするならば、宝珠山さんの立場に立ては、極めて残念な思いをしておられるのではないかと思います。本来、今議員からもお話しになったように、沖縄に行って県知事に会おうと努力をなさった。しかし、それが会えなくて戻ってこられた。あのころから、あるいはそれ以前からかもしれませんが、相当深刻に事態を受けとめて解決策を模索しておられたに違いないと思うだけに、もしそうであるならば、私は宝珠山さんは大変残念な思いをしておられるだろうと思うんです。  しかし、その一方で、新聞に大見出しで書かれた部分だけをとらえて、あの部分だけだということであれば、それは沖縄の皆さんからすれば、これしか方法がない、ほかの解決策について思いをめぐらす誠意がないのかといってお怒りになることはよくわかるわけで、政府の方針がほかに方法がないからこれしかやらないんだというのでは、私はやはりその責任は負えないということでありますから、でき得る限り日米安保条約、これはもう村山内閣が、長年日本の先輩たちがとってきた、そのことによって日本経済がここまで復興した一つの大きな要素にもなっているであろう日米安保体制というもの、それを引き続き堅持するという基本的な立場に立つとするならば、日米安保体制というものを一方に置き、そして一方で基地周辺に住む人たちの不安や不満というものを解消させる、その二つの問題をどこでマッチさせるかという努力をさらに続けなければなりませんし、村山総理がおっしゃるように、徹底的に話し合うことが大事だ、話し合いによって解決をしなければだめだという、いわば総理の基本的なお考えというものを体して、担当者はそして我々は努力をしていくことが重要だというふうに思います。私もまた、微力でありますけれども解決のために全力を挙げて努力を続けたいと思っております。
  119. 東祥三

    ○東(祥)委員 ぜひ頭を整理させていただきたいのですが、今外務大臣も御指摘になりました、地位協定というのは日本全体に散らばっております在日米軍基地、そしてそこに住まわれている米軍兵士、これに適用されるものですね。したがって、これは、日本国内で見ておりますと、日本全体で見ますとそういうことですが、前回のあのUNTAC、国連から派遣された自衛隊員、これもやはりカンボジアとの間で協定を結び、そして、そこで従事される軍人また自衛隊員、この人たちに対してのそれなりの法的な担保をちゃんとつくっているということですね。そういう意味においては、軍人とシビリアン、ミリタリーとシビリアンの区別を明確にしているものなんだろう。これを一緒くたにせよというのは、基本的にこの世の中から軍人というものを全部なくしてしまえ、その延長線上に出てくる問題であって、これは余りにもひどい議論になってしまうんだろうな。  今回、女子暴行事件が起こったときに、再発防止を行うためには綱紀粛正しか基本的にないわけですね。このようなことを二度と起こさないというふうにするためにどうすればいいのか。また、米軍の最高司令官、またモンデール大使も、またクリントン大統領も、モンデール大使の言葉をかりるならば、本当に野獣がやる行いじゃないのか。また、アメリカにおいても、ひどいという、この問題に対しての反響があった、このように私は伺っております。  そういう中で、外務省が、また政府が真剣になってこの問題を、再発を防止するためにとの辺まで議論が深まっているのか、この再発防止に関して両国に認識のずれがあるのかどうなのか、まずこの点についてお伺いします。
  120. 河野洋平

    河野国務大臣 確かに、議員がおっしゃるように、我々はもっと冷静に事柄を整理をする必要があると思います。  今回の問題についてだけ、この問題を取り出して考えれば、そういうことができるとするならば、それはもうまさにやるべきことは、一つは再発防止であり、もう一つは事件の解明だと思います。  再発防止については、私は、モンデール大使にも直接私から申し上げ、これだけはきちっとやってもらいたい、早急にやってもらいたいということを提案をし、そう時間を置かずにニューヨークでクリストファー国務長官、ペリー国防長官とそれぞれお目にかかって、そのときにも私は申し上げました。  余計なことだとおっしゃる方もあるかもしれませんが、私は、モンデール大使にもペリー国防長官にも、四万人というアメリカの青年が日本に来て、日米安保条約目的を達成するために日本に来て、つまりそれは、故郷から遠く離れた異国に来て、そして日本の安全のために努力をしておられるということに私はまず敬意を表したいと、そして、その多くの人たちは極めて誠実にそのために努力をし訓練を繰り返しておられるというふうに私は思います、それだけに三人の人がやった事件というものは我々にとってショックも大きいし、極めて残念なんです、この人たち以外の多くの人たちは誠実に仕事をしておられるということを考えるだけに、米軍にとっても一日も早くその名誉を取り戻すためにも再発防止の努力をしてもらいたいということを申し上げた。  ペリー国防長官からも、自分たちも再発防止のために全力を挙げますと言って、これは先ほども詳細を北米局長からこの席てたしか申し上げたと思いますが、軍人の教育訓練をもう一度徹底し直さなきゃだめだということを言われて、そして、一人一人の隊員に対して、つまり自己を律する、厳しく律するべきだということをきちんと徹底しましょう、そして、反省の日というのをつくって、その反省の日には徹底して自分たちがこの地域に期待されているものは何なのか、地域と友好的に行動するということはどういうことなのかということをみんなで話し合います、それから、幹部が集まって議論をして、その議論の結果を下まできちっと伝達しますというようなことも言われた。あるいは、基地内の教会における従軍牧師はそのことをきちっと教会に来る人たちには言いましょう、さらには、アルコールの摂取について制限を加えます、つまり一定時間以後はアルコールは売りませんとか、夜間の外出についても制限を加えるというようなことを、私がニューヨークでペリー国防長官にお目にかかったときにはもう既に決めて、そういう作業に取りかかるということでございました。少なくともこの部分については、米側は極めて誠実に迅速に対応をしているという感じを私は持ちました。  さらに、そのことでまず再発防止のための作業をきちっとやると同時に、問題は、この事件を解明するということが大事でありますから、事件解明のための捜査の協力についても万全の協力が欲しいということを申しまして、先方も規則にのっとって自分たちがやれることは何でもやりますと。ひところ、マスコミを通じて、取り調べをしても四時にはもう帰ってしまうとか、あるいは休みの日には取り調べもできないとかという報道がありましたけれども、モンデール大使は、日本側にその必要がありと認めれば、いついかなるときでも取り調べをしていただいて結構、いついかなる場所にでも、ここへ連れてこいと言えばそこへ連れていきます、それだけの協力はいたしますということをきっぱり言われて、もちろん今はもう身柄が引き渡されておりますからもう問題はないわけですけれども、そういうやりとりもしたわけでございます。少なくとも、規則に、ルールにのっとってやりとりをする限りにおいては、米側はできる限り誠実に対応をした。  問題は、ルール以上のことを我々はやはり望むわけで、このルールではここまでしかできないのなら、ルール以上のことを何ができるかということについて我々の希望も述べたわけで、つまり地位協定十七条五項(c)についての運用の改善を求めているわけで、その運用の改善について専門家が集まって協議をしておりますけれども、まだその協議の結果は出ておりません。しかし、三回の協議では、米側は極めて誠実に対応をしておられると聞いております。ただし、米側にもやはり地位協定を結んでいる国は日本だけではないという状況もございますし、それから、どこでもそうだと思いますけれども、複数の役所にまたがった問題でございますだけに、その複数の役所がどういうそれぞれの主張を述べ、考え方を持っているかということになると、少し調整が必要だというふうにも言っておられるというふうに聞いております。  したがって、残念ながら、今週はとうとうその専門家委員会が開けませんでした。私は、この次開くときにはもうやや具体的に考え方がまとまってきてもらわなければ困る、我が方もいろいろ議論があるわけでありますけれども、先方には今度開くときには少しは何かまとまってきてもらわなきゃ困るという希望を持っておりますが、まだそれがいつになるかということについては、今のところ具体的な日にちについて私は聞いておりません。
  121. 東祥三

    ○東(祥)委員 るる丁寧な説明をしていただいたんですが、今の御答弁を聞きますと、この女子暴行事件が起こった後、事件の解明に支障を来すようなことを地位協定に基づいてアメリカ側はしなかった、ある意味で徹底的に、その捜査、事件の解明のためにできる限りの協力をしてくれた、そして、もう身柄は現在日本側に拘束されている、さらにまた、九月の下旬から行われております刑事裁判手続に関する専門家会合においても、米国側から積極的な形でこの問題の重要性にかんがみて何とかしなければならない、そういう姿勢も示してくれている、そして、最終的にどのようになっていくのかという状況を今待っている。  にもかかわらず、それならばなぜ沖縄の県民たちがあれほど怒りをぶつけざるを得ないのか、それが多分問題なんだろうというふうに思うのですね。それがまさに地位協定から由来する大きな問題があって、この犯人が見つからない、また事件の解明ができない、そういうことであるならばそれはよくわかるわけですね。しかし、現実にはそうではなくて、ある意味でその事件そのものに関してはうまく解明の方向に進んでいる。にもかかわらず、なぜこれほどの怒りが出てくるのか、それに対して政府として何をしようとしているのか、御答弁をお願いしたいのですが。
  122. 河野洋平

    河野国務大臣 それは、今回の事件が初めての事件であれば、今私が申し上げたようなことで沖縄の皆さんにもある程度の御納得がいただけるのではないかというふうに思いますが、これまでの間何度となくこうした事件があったということがやはりその原因、理由だと思います。  それは、かつて沖縄では容疑者の身柄が日本側に引き渡されないうちに米国本土にどういうわけか帰ってしまったというようなことがあって、もちろんそれは米国本土で逮捕されて、もう一度戻されてはいるわけですけれども、しかしそれは自転車に乗って逃げるとか川を泳いで渡って逃げるというのと違って、飛行機に乗ってアメリカまで帰るというのは、それは一人じゃ帰れないだろう、だれか手助けをする人もいるんだろうし、あったんじゃないかという不信感が出てくることはやむを得ないことだと思うのです。アメリカ当局は大変誠実に、その逃げてしまった犯人をさらにアメリカ国内で捕まえて、日本にまた連れ戻すということはあったのですけれども、それにしても逃げてしまうということに対する不信感というものがあって、やはり身柄は早く渡してもらいたいというような議論が今噴き出ていることの一つにはあるんだろうと思いますね。  それから、何といっても、沖縄の皆さんは戦中戦後にかけて大変な苦渋に満ちた経験を年一年積み重ねて歩いてこられて、しかもさっき議員がおっしゃったように、沖縄県全体の一〇%が基地だ、沖縄本島だけでいえばたしか一八%と伺いましたけれども、それが米軍基地だという状況を考えれば、やはりそれから来るいろいろな感情というものがあるんだろうというふうに思うのです。  したがって、この今回の事件一つだけを取り出して考えるということも大事だと思いますが、それと同時に、もっと沖縄県全体の人の心の中の問題をどうやっていやすか、どうやって問題を解決するかということもあわせてといいますかやはり今考えていかなければ、沖縄県民の今回の事件に対する思いというものはなかなか解消されないのじゃないかというふうに私は思っております。
  123. 東祥三

    ○東(祥)委員 沖縄に基地が日本全国の七五%が集中しちゃっている。今外務大臣指摘のとおり、今まで数々の事件が起きた。行き着くところ基地が余りにも多過ぎるんじゃないのか、やはり縮小整理、それを何とかしてくれないことにはどうしようもないのじゃないのか。当然本土の方に移転される可能性のある土地があれば移転すればいいのだろうと思うのですね。  でも、さきの予算委員会におきまして、村山総理は沖縄にある米軍基地の一部を県外に移転することを検討すると答弁しています。モンデール駐日大使の立場に立たれれば、後で言及しますけれども、ナイ・レポートに書かれているとおり、全体の規模として変わらなければ別に沖縄になくてもいいわけですね。村山総理はこのように、本当に総理の発言なのか個人的な発言なのか、そういうことを本当に言ったのかわかりませんけれども、すごい重要なことを言われているわけですね。  確かに懸案事項である二十三プラス三つ、百四号線の県道沿いの実弾演習地、これはできるならば本土の方に移転しよう、これはすべての人が知っているわけですね。まさかこのことを言及されているのではなくて、まさに沖縄にある基地、これを縮小していこう、そういう決意のもとに村山総理は言われているのかもわかりません。  ただ、外務大臣の今の御答弁を聞いていますと、究極のところ、結局なぜ沖縄のみが日本全体の安全を保障してくれる日米安保体制の在日米軍の七五%を全部こっちへ持ってこなければいけないのか。よくわかります、その気持ち。そうであるとするならば、それをちゃんと説明してあげる根拠がない限り沖縄の県民は決してこの問題について納得してくれないのだろう、そういう結論が導き出されるのだろう、このように推察します。そうであるとするならば、内閣としては瞬間、対症療法ではなくて、この問題についてどの方向性で考えていくのかということを当然お考えになっているのだろうというふうに推察するのですが、いかがでしょうか。
  124. 河野洋平

    河野国務大臣 予算委員会におきます総理の御答弁は二つの意味があったと思います。  一つは、沖縄県民の心情というものはただ単に沖縄県民の心情ではなくて、日本全国の人たちがその心情を分かち合っているものだという意味で沖縄だけの問題ではないよ、全国それぞれの人がみんなそういう気持ちでなければいけないし、そういう心情であるに違いない、そういう意味のことを一つ言われたと思います。  それからもう一つは、沖縄の基地を、沖縄だけに基地をお願いするのではなくて、本土といいますか、本州でも引き受けるということも考えなければいけない、そういう意味もあったと思うのです。そのことはまさに今議員がおっしゃたように、三事案の中の百四号線越え実弾射撃訓練場をとこか移す先を考えなければいかぬということであったことは、その後防衛庁長官をして整理して改めて答弁をしております。総理もその答弁のとおりというふうに後で言っておられますので、三事案の解決について考えられているものが総理の頭の中にあったというふうに私は理解しております。
  125. 東祥三

    ○東(祥)委員 政府としては、沖縄にある在日米軍基地、これを整理縮小ということをお考えになっているのですか。
  126. 河野洋平

    河野国務大臣 政府としては、米軍基地の整理統合ということを言ってきたわけでございます。しかし、整理統合した結果、ずっとこの何年間かを通して基地は縮小されているというふうに私は理解しております。
  127. 東祥三

    ○東(祥)委員 ちょっと最後のところ理解できなかったのですが、結果として縮小していく方向ということですか。済みません、最後の部分よく理解できなかったのですが。
  128. 河野洋平

    河野国務大臣 政府としては、整理統合をしていく、そして結果としてそれは縮小されてきたというふうに私は理解しております。
  129. 東祥三

    ○東(祥)委員 それは、期間を何年間、何十年間ということで、ある程度の方向性を提示できるものですか。
  130. 河野洋平

    河野国務大臣 何年間かの間でどのくらいどうなっているかという数字が——ちょっと北米局長から御説明させます。
  131. 折田正樹

    ○折田政府委員 沖縄が本土に復帰しましたのは昭和四十七年のことでございますが、四十七年におきましては、沖縄におきまして施設件数は八十三件、そして土地面積が二百七十八・五平方キロだったわけでございます。その後逐次減らしてまいりまして、平成七年十月一日現在では、施設の数が三十九、そして土地面積が二百三十七・二平方キロメートルでございます。
  132. 東祥三

    ○東(祥)委員 それは現在というのはわかるのですけれども、これからどうなるのかという、今整理統合を考えていると、整理統合ということでずっと進んできたと、その結果として整理縮小になるだろう、こういうふうに外務大臣おっしゃられたのです。それに対して、私の質問は、では今後何年間あるいは何十年間で現在沖縄にある米軍基地というのはこれだけ縮小しますよ、そういうデータがあるんですか、これが私の質問です。
  133. 河野洋平

    河野国務大臣 ちょっと私が御質問を取り違えていたかもしれません。  今私御答弁申し上げましたのは、政府としては整理統合に努力をしてきた、そしてその結果として縮小もあった、そういうことを申し上げて、したがって過去何年間の間に施設件数が何件減り、結果として面積もどれだけ減ったかということを北米局長から御答弁をさせたわけでございまして、今後の問題ということでございますと、今私どもが抱えておりますものは二十三事案プラス三事案、先ほど議員指摘になりました。この二十三プラス三の事案について努力をしてまいりまして、二十三事案のうち十三事案は処理が終わっております。残る十事案について今双方が抱えております問題解決のために努力中でございます。さらに、別途この一月に村山総理からクリントン大統領に提起をされました三事案につきましても、目下その具体策のための努力がなされているところでございます。
  134. 東祥三

    ○東(祥)委員 米国は、在沖縄の米軍基地の縮小には基本的に賛意を示すんじゃないのか、また賛意を示しているんじゃないのか、ただ、在日米軍の規模を減らすということに対しては、それは賛成することができない、大枠で考えればそういうことじゃないのか。まずこの理解についてはいかがですか、この私の認識については。北米局長お願いします。
  135. 折田正樹

    ○折田政府委員 九月に外務大臣がモンデール大使に対して、沖縄の基地の整理統合について、今まで三事案、それから二十三事案で、また残りの十事案があるけれども協力していただきたいという話をいたしまして、モンデール大使は、もう全面的に協力するということでございますから、アメリカ側もそういう認識を持っているというのが私どもの認識でございます。
  136. 東祥三

    ○東(祥)委員 そういう認識というのは、要するに、在沖縄の基地は縮小して構わない、しかし在日米軍の規模、全体の規模それ自体は変えてほしくない、こういう認識でよろしいんですか。
  137. 折田正樹

    ○折田政府委員 ナイ・レポートその他にもございますように、アメリカはアジアで十万大規模の兵力を残しておきたいということを言っているわけでございますが、そのうち約四万五千から六千が日本ということになっております。アメリカはその兵力は維持したいという方針ております。  他方、その維持する中でもいろいろ合理化が図れるだろう、そういう中で基地の整理統合を進めていくことについては異存がないということでございますし、我々の作業に全面的に協力してくれているということでございます。
  138. 東祥三

    ○東(祥)委員 そうしますと、外務大臣、基本的には、沖縄県民の気持ちを考えれば、やはり基地が膨大に存在している、この基地をどんどん縮小させていくことがある意味一つの沖縄県民の心にかなった方向性なのだろう。そして日本の安全という問題を考えたときに、別に沖縄全体に集結している必要はない。ほかに代替地があるならばそこに基地を移転させていけばいい。今現実的な問題というよりも理論的な話をしているわけですが、そういう視点で考えていった場合、当然アメリカ側もその考えそれ自体には何ら異論を唱えていない。  そうしますと、先ほども外務大臣が御答弁してくださった、やはり今まで積もり積もってきた沖縄県民の心にこたえていくためには、この点において日本政府として、今後例えば十年間あるいは二十年後あるいは三十年後、こういう形でやっていきたいということを出す必要性に今迫られているのではないのか。ただ、本来ならばこういう問題は、冷戦構造が崩壊した後に明確に提示しなければならなかったものを、今回の事件を契機として結局底流に眠っている問題が表に出てきている、こういうことではないのか、このように思うのですが、いかがでしょうか。
  139. 河野洋平

    河野国務大臣 私の記憶に間違いかなければ、二十三事案プラス三事案、これがもし現在考えているように解決をすれば、日本にある米軍基地のうち今七五%沖縄県に集まっているというものが、七五が七二か三になる。つまりそれだけ、ほんの少しですけれども少なくなっていくということがあると思うのですね。ですから、こういう努力は、やはり一つ一つ努力をしていくことが重要だというふうにまず思います。  それから、今議員のお尋ねの部分については、これはもう本当に一般論あるいは理論的にといいますか、どうも具体的にどれがどうかということを今申し上げるだけ私には基地の問題について知識がありませんので、そこは御容赦をいただきたいと思いますが、日米安保条約で双方が了解をする規模であるとかあるいは機能であるとかそういうもの、これは日米安保条約で我が方が期待していることに対して、アメリカがその期待にこたえるためにやるであろうオペレーションできる規模とか機能とかというものが日本国内にできる、つまり、それに対し我が方の義務を履行することができるということがまず基本的に重要なのだろうと思います。  本当に。これは専門家でないので答弁が少しとんちんかんであるかもしれませんが、オペレーションの専門家からすれば、基地はばらばらに離れていた方がいいと言うのか、くっついていた方がいいと言うのか、あるいは少なくともこれとこれは一緒でなければならないとか、そういうことはいろいろあるのだろうと思います。ただ全体の面積合わせて何平方キロあればいいというだけではもちろんないのだと思いますが、それらはやはり米軍がその能力を十分発揮できるような施設、区域というものはやはり我々が提供する義務があるのであって、そこはよく相談をしなければならないことではないかと思います。
  140. 東祥三

    ○東(祥)委員 先ほど北米局長の方からもナイ・レポートというのが、ジョセフ・ナイ国防次官補の東アジア戦略レポートですけれども、これについての御言及があったのですけれども、基本的にはことしの二月末にいわゆるナイ・レポートが提示されて、それに対して日本がちゃんとこたえているのかどうかというのもよくわからないので、これもきょう聞きたいテーマの一つなんですけれども、私の申し上げたいのは、外務大臣、二十三プラス三というのは、それは今まで沖縄の県民の方々も全部知っていることなわけですね。今言っているのは、今盛り上がってきている機運というのは、それだけじゃ満足できませんよということなんじゃないですか。  ただ、外務大臣言われるとおり、本当に日本の安全を守るためには基地というのは分散していてはだめだ、やはり沖縄になくてはいけないんだということであるならば、(河野国務大臣「そんなふうに言っていません」と呼ぶ)いや、であるとするならば、その旨をちゃんと沖縄の県民の方々に理解していただくようにお話をしなくてはいけないのじゃないか。  何度がお話をさせていただいたことがございます。そのときに、なぜ沖縄にこれだけ基地が必要なのかよくわからない、僕は率直に言わせていただきました。質問させていただきました。ある副知事でございますが、副知事、東京から見ていると、また僕自身の浅薄な理解によるならば、これだけ基地が多いというのはいろいろ大変でしょうね、しかし、他方、自分自身外交をやっています、日米安保体制の重要性というのはよくわかります、また、それが日本の国是として今日まで来、さらにまた二十一世紀にわたっても極めて重要なものであろうと僕は思っています、こういう部分の理解というのは沖縄県民の方々わかっていただけるのでしょうかと、率直に聞かせていただきました。東さん、それは雰囲気としてはわかるけれども、何で沖縄にこれだけ基地がたくさんなくてはならないのかということは明確な形で説明してもらったことがない。  確かに安全保障という問題は、ちゃんと切れ目よくすぱっとした形でもって説明できるのかというと、なかなかそういうのは難しいものがある。しかし、そういう部分はずっと怠ってきたからじゃないのかという印象も持ちました。  そういう意味におきましては、本当にあの沖縄における基地、また集結しているああいう基地が必要なのか、分散していてもいいのか。分散していても構わないということであるならば、本当に日米安保体制の重要性ということを考えれば、この沖縄以外に住んでいる我々日本人も、その重要性にかんがみたときに、沖縄県民の苦悩というものをわかるとするならば、他の地域にぜひ在日米軍基地をつくれという形での物を言っていかなくてはいけないのじゃないか。  他方、もし私自身が、日米安保体制が重要だ、しかし沖縄でしかこの重要性を担保させることができないということであるならば、それについて沖縄県民の方々に理解していただくように努力していかなくてはいけないのじゃないのか。その辺が全然クリアじゃないのじゃないのか。  先ほど言われているとおり、本当に難しい問題だと思うのです。二十三プラス三の問題を解決するのだってどれだけの時間がかかるかわからない。また、一生懸命官僚の方々が動いてくださっている、よくわかっています。そこには想像を絶するいろいろな長い手続の問題があり、納得する、納得しないという地主の問題もあり、いろいろな問題があるというのはよくわかっていますのでも、今回教えてくれているものは、そういうものを総体として、本当にあの沖縄にあれだけの基地が必要なんですか、それを提起してくださっているんじゃないのか。  そうであるとするならば、本当に責任ある内閣であるとすれば、やはり十年後、二十年後、三十年後を踏まえた上で、すぐ出せとは申しませんけれども、本当にあれでいいのかということを沖縄県民の皆さんとひざを交えて対話をするためには、それだけの提案、真剣に考えているというものを提示しない限り納得してくれないのじゃないのか。またそれで、そういうことを出さないで納得するとすれば、今回のいろいろな動きというのは一体何なのかということはまたわからなくなってしまうわけですね。そのように僕は認識しますけれども外務大臣、いかがですか。
  141. 河野洋平

    河野国務大臣 二十三事案プラス三事案というものがあって、これはもう沖縄県民の皆さんは、この二十三プラス三というものがテーブルにのっているということは御存じなことだというのはそのとおりです。それはもうわかっているのだから、この際はほかのものをまたプラスしなければ問題解決にならないだろうという御主張も、それは私はよくわかりますが、しかし、これは防衛施設庁、防衛庁、私ども一緒になって考えなければならないことだと思いますが、この既にテーブルにのっている二十三事案もまだ十事案は解決されてない。これも二十三問題があるんだよといって、そうだと日米間で議論をして、十三はできた、まだあと残る十は処理ができない。正直その残る十事案の中には日本側にいろいろ問題が、日本側が解決しなければならない問題で処理ができないものもあるわけですね。  そういうものがまだ、もちろんすべてではありませんが、一部ですけれども、そういうものがありながら、それはまだ処理ができずに、今度はこれだよといって持ち出すということがどういうことになるのかな。いや、沖縄県民の方々が見ていても、二十三と言ったけれどもまだ十三しかできていないじゃないか、十はまだめども立たないうちに、これはこれでおいておいて、今度は別のこれだといって、それは本当にできるかい、これもできないうちにそんなことを言い出して、これまた言うだけじゃないのかいという意見も出てくるのじゃないかという気もするのですね。  ですから私はやはり、やりますよ、まずこの問題を処理しようと思っていますと言ったものを本当に処理をする努力をしなければ次の提案は信頼されないのじゃないだろうかという気も実はしているわけです。それは沖縄県民にもまともに受け取ってもらえないかもしれないし、アメリカに対してもまともに受け取ってもらえないかもしれない、そういう提案は。提案するだけじゃないかというふうに沖縄県民に見られるとすれば、それはまたそれで残念なことだと思うのです。  私は当面、この二十三事案プラス三事案というものの処理のめどを立てるということが重要なのじゃないか。しかしそれは、そういってもめどの立たないものもあるかもしれません。全部が全部完全に終わらなければ次へ行かないよなんということを私は言っているのじゃありませんが、やれるものはやるということでないと、これは、やれないというのは一体なぜやれないのかということも、みんながなぜなんだろうかと思いながらまた次のが出てくるということでいいかな。これは私のやや個人的な意見でございますけれども、そんなふうにも思っているわけです。  もちろんこの話は私一人がここで言える話じゃありません。内閣として総合的に考えなければならぬ話でありますから、今議員の御提言も私は私なりにきちんと受けとめて、考えの中に一つの方法、考え方として受けとめさせていただきたいと思いますが、現実そういう問題もあるということをぜひ御理解をいただきたい。
  142. 東祥三

    ○東(祥)委員 あと五分しかなくなってしまって、済みません。ほかの質問をするために来ていただいた方々、時間がなくなってしまって申しわけないのですけれども外務大臣、ありがとうございます。  最後にちょっと台湾、李登輝総統問題、これに入らせていただきます。  来月の十六日から四日間、第七回APECが大阪で開かれるわけでございますが、李登輝総統のAPEC大阪会議招請問題に関して、政府は常に、台湾の問題については日中共同声明の精神に基づいて対応する、さらにまたAPECの問題については、一昨年のシアトル、昨年のボゴールの前例を踏襲するとして、李登輝総統の出席は認めない考えを示していると思いますが、この私の認識について間違いはありますか。
  143. 原口幸市

    ○原口政府委員 先生御指摘のとおり、我が国、繰り返し本件についての立場は、APECの非公式首脳会議におけるチャイニーズタイペイ、台湾からの出席者についてはシアトル、ボゴールの先例を踏まえるという立場でございます。
  144. 東祥三

    ○東(祥)委員 理論的な、法律的な側面をちょっと聞きます。  政府の言う台湾問題について、日中共同声明の精神ということをよく言われるのですけれども、この精神とは一体何なのか。
  145. 加藤良三

    加藤(良)政府委員 日中共同声明の精神と申しますか、その中核をなすものは、日中共同声明の第三項ということだろうと思います。その日中共同声明の第三項に示されました日本側の立場というのは、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であるという中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重するということでございます。この点についてはもうずっと、一九七二年のころ以来国会でも御議論があったことで、新しい点を私からつけ加えることではございませんが、かつての大平答弁にありますように、十分理解し、尊重するということであるけれども、必ずしもそれは承認するというところまでは言っていないということだろうと思います。  いずれにいたしましても、この理解し、尊重するということを踏まえて、今御指摘になりましたような個々の問題について対応していくということになるのだろうと思います。
  146. 東祥三

    ○東(祥)委員 聞いている人はよくわからないのだろうと思うのですが、日中共同声明には第二項において一つの中国を認めた後、今御指摘くださいました第三項において、「中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重しことあるけれども、この文章によれば、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であるというのは中華人民共和国政府の主張であって、日本我が国としてはその立場を十分に理解し、尊重すると言っているにすぎないということですね。  ということは、日本は、大平首相が昭和四十七年だったと思うのですが、予算委員会において、我が国としては中国の立場を理解し、尊重する、しかし、これを承認するとは書いていないと答弁したことがあります。台湾が中国に帰属しておるというように私どもは理解していないという認識が今も変わらないという御答弁ですか。
  147. 加藤良三

    加藤(良)政府委員 結論から申し上げますと、そのとき以来の認識というものは、現在に至るも変化はない。したがって、私が申し上げておりますことも、一貫した政府の答弁の線に沿うものだと思います。  サンフランシスコの平和条約の二条(b)でございますか、これにおきまして、我が国は台湾に対する領土権の放棄というのをいたしたわけでございますが、放棄された台湾の帰属先にはこのサンフランシスコの条約というのは触れておらないわけでございまして、これは将来の解決にゆだねる形になっておるわけでございます。したがって、その法律的な議論として見ますと、私たち、つまり日本は、サンフランシスコ条約によって台湾を放棄したという法的立場を離れて、国際法上権限がないにもかかわらず、台湾の領土的地位に関して独自の認定を行うということはできない。したがって、そのことを述べておりますのが共同声明の御指摘の第三項でございまして、理解し、尊重する。それは理解し、尊重するにすぎないと委員がおっしゃられましたけれども、すぎないということではなくて、理解し、尊重するということは共同声明にあるとおりでございます。
  148. 東祥三

    ○東(祥)委員 そうしますと、中国政府が今一つの中国を主張している。台湾の李登輝総統のAPEC大阪会議への出席を認めないと主張しても、この日中共同声明の第三項に従うならば、それに適応するかどうかわからないのですが、法理論的というのですか、政治的にちょっとおいておいて、理論的には、日本政府としてはその中国の立場を理解し、尊重すると言えば済むことじゃないのか。台湾はAPECの一員です。その台湾の李登輝総統に大阪会議への出席を招請するのは議長国である日本政府としては当然のことなのじゃないのか、理論的にですよ。どうですか。
  149. 加藤良三

    加藤(良)政府委員 まず、繰り返しになりますが、我が方の共同声明第三項についての立場、そこに示された立場というのは、中華人民共和国の台湾に関する立場というものを十分理解し、尊重するということでございますが、同時に日中共同声明に基づきまして、日本は台湾との関係を非政府間の関係として維持してまいっておることは御承知のとおりでございます。こういう基本的な枠組みを堅持していくことが、また安定的な日本と台湾との関係を今後とも維持していく上でこれまた必要なことじゃないのかなと考えるわけでございます。  そういう理論的な立場、現実的な立場、政治的な立場というものを踏まえまして、日中共同声明の精神と委員がおっしゃられたところに照らして、御指摘のような問題には慎重に対応すべきものであるだろうと考えている次第でございます。
  150. 東祥三

    ○東(祥)委員 先例を盾に、ボゴール、シアトルの先例に基づくと言っているわけですから、基本的に李総統を呼ばないのだろう、こういうふうに理解します。そうしますと、李登輝総統のAPECの大阪会議への出席を認めないのであるならば、断り方もちゃんと先例に従って処理すべきなのだろう。米国クリントン大統領は李登輝総統に親書を送っています。これ、親書をもう送っているのか。それから、インドネシアは政府要人を台北に送り込んで、そして礼を尽くされております。日本はどうするのかということを最後に、終わらせていただきます。
  151. 原口幸市

    ○原口政府委員 本件を含めまして、APECの運営に関しましては、我が国はチャイニーズタイペイ、台湾でございますけれども、緊密に連絡をとっておりまして、この問題につきましても最近、今週でございますけれども、APEC担当の瀬木大使が台湾に参りまして、この問題だけじゃございませんけれども、話し合いをしてきたというところでございます。したがいまして、今先生おっしゃいましたように、十分台湾側とも話をしているということでございます。
  152. 東祥三

    ○東(祥)委員 どうもありがとうございました。
  153. 三原朝彦

    三原委員 長引き続いて、松沢成文君。
  154. 松沢成文

    松沢委員 新進党の松沢成文でございます。  質問も大分長くなりまして、大臣並びに委員長、お疲れだと思いますけれども、あと二人でございますから、ぜひとも御答弁、積極的によろしくお願いいたします。  私は、国連の改革、国連創設五十周年ということで、特別の総会も開かれるということで、国連改革に絡んで、日本の安保常任理事国入り問題について、ちょっと最近理解のできないことが多いので、その辺を整理しながら大臣に御質問をしたいと思います。  まず第一に、河野大臣にお伺いしたいのは、九月二十七日、第五十回国連総会の一般演説に登壇されましたけれども、この日本の安保常任理事国入りの問題について、その演説の中でどのような発言をされたか、まずお聞きしたいと思います。正確な議事録じゃなくても結構であります。大体どういう発言をされたか、お聞きしたいと思います。
  155. 河野洋平

    河野国務大臣 ちょっと文章がございませんので申しわけありませんが、私、今回の演説につきましても、安保常任理事国の問題については昨年の演説を一昨年の演説は演説の構成上、前段と結語と二つに分けて演説をして、その点について若干御意見もございました。ことしはそれを一つに合わせてさせていただいたということでございます。
  156. 川島裕

    ○川島政府委員 昨年と同じことを言ったということに尽きるわけでございますけれども、要は、昨年の演説におきましては国際貢献について日本の立場を述べまして、その中で、我が国は憲法が禁ずる武力の行使はしませんということを述べたわけでございます。それを受けて、そういう「国際貢献についての基本的な考え方の下で、多くの国々の賛同を得て、安保理常任理事国として責任を果たす用意がある」ということが昨年の演説でございまして、これは間が、国際貢献についての考え方と、それから果たす用意があるというところが離れていたのですけれども、それを一つの文章にいたしましたのが今回の九月の演説でございまして、その意味で、基本的には安保理常任理事国問題に関する発言は、昨年と同じラインを踏襲したということでございます。
  157. 松沢成文

    松沢委員 昨年、ことしと二年連続国連総会の一般演説の場で、ちょっと言葉じりを私も調べたのですが違いますけれども、非軍事の分野で「多くの国々の賛同を得て、安保理常任理事国として責任を果たす用意があることを表明いたします。」という言葉を使われているのです。これは、日本政府の代表、外務大臣として国連総会で二年連続この言葉を使われたということは、この方向性は日本政府の見解であるというふうに判断してよろしいですね。
  158. 川島裕

    ○川島政府委員 外務大臣一般演説でございますから、当然日本政府の見解でございます。
  159. 松沢成文

    松沢委員 そこで、これは政府の方針であり、私は、今度の国連総会の、五十周年の特別総会ですか、村山総理が二十二日でしょうか、演説をされるということでありますけれども、この二十二日に行われる国連創設五十周年記念総会の村山総理の演説の中で、この日本政府の見解である安保常任理事国入りの問題については言及しないという報道が新聞でなされておりますが、これは事実でしょうか。
  160. 川島裕

    ○川島政府委員 日曜日に予定されておる演説でございまして、今作成をしているところでございますけれども、言及しないというのは間違いでございまして、全く同じ表現をまた使うかと言われれば、それはそういうことにはならないと思いますけれども、それなりにきちんとした形で言及することを考えております。
  161. 松沢成文

    松沢委員 聞くところによりますと、安保理改革の問題については、安保理の拡大あるいは安保理の議論の透明性、あるいは運営の改善、こういうことに対しては言っていく。しかし、日本が安保理入りを目指すと明言をすることは、与党内の意見の不一致、あるいは総理の審議会ですか、何か、国連改革に関する総理を囲む懇談会の中でもいろいろ賛否両論があって、この件については明言はしないというふうに聞いておりますけれども、こういう解釈でよろしいのですか。
  162. 川島裕

    ○川島政府委員 具体的な表現ぶりをきちんとという点は、まだやる前でございますので、そこはちょっと御容赦いただきたいのでございますけれども、何分にも五分間という演説の中でいろいろ盛り込むに当たっては、おのずから物理的と申しますか、制約はあるわけでございます。その中でそれなりにきちんと対応はするつもりでございまして、そういう与党内というような、何というのですか、事情云々という今のお尋ねでございますけれども、それは私どもとしてはそういうことはないということでございます。
  163. 松沢成文

    松沢委員 それじゃ、ちょっと角度を変えてみますけれども日本が安保理入りを目指して積極的に活動していく、国連改革もみずから参加をして積極的に行っていく、これはもう二年連続して政府が、国連一般演説の場で外務大臣が明言されていることであって、今度の国連総会、五十周年の特別総会というのは、まず第一番目のテーマは、この五十年間続いてきた国連を今後どうやって運営していくかという、国連の改革の議論を論ずるテーマが一番だと思うのですね。  そういう中で、私としては、この安保理入りを目指すという明言は、言葉をかえてうやむやにされては非常に困る問題でありまして、日本の目指すべき明確な方向としてこれまで二年間外務大臣が言明をしているわけでありますから、総理大臣、日本の元首である総理大臣が、記念すべき国連五十周年の総会では必ず日本が安保理入りを、安保理改革の中で安保理拡大が望ましい、そして、日本はその安保理常任理事国になることを目指すのだということを言明をしていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  164. 河野洋平

    河野国務大臣 政府委員がるる御説明を申し上げましたが、私の感じは、今回の各国元首、首相が集まって五十周年を祝うというと少し言い過ぎかもわかりませんが、五十周年の記念の総会ということでございまして、村山総理の演説も、冒頭はやはり五十周年に祝意を表するというところから始める。しかも、演説全体の時間が極めて短い時間内におさめなければならないということもございますから、言葉はかなり省略すべきところは省略しなければならないと思います。  しかし、今松沢議員がおっしゃるところは大事なところであるというふうには思います。つまり、国連改革というものは重要であると思います。とりわけ国連改革の中で重要なのは我々も三つあって、一つは財政改革であり、経済社会問題であり、安保理の問題である。その三つについては、私は一カ月前に一般演説できちんと演説をしておりますから、それと同じことをまた同じ分量でおっしゃっていただくことはないのじゃないか。むしろ私は、総理は他の元首と同じように、やや国連について国連の未来を語ったり、そういうことが大事なんじゃないか。あるいは五十年前を振り返ってみて、五十年前日本は何をしておったのか、この五十年間で日本国際社会からどういう恩恵を受けたのか、そういうことに思いをいたしながら、これから先、日本はさらに国連活動に貢献していきますよということをやはり全体のトーンとして言った方がいいのじゃないか。つまり、自分はこれになってこういう貢献をするぞと具体的なことを言うということも一つの考えだとは思いますけれども、むしろ全体的な話をしていただいてはどうかというふうに私は思っているわけでございます。  いろいろな御意見があることは承知をしておりますが、先ほど政府委員が御答弁申し上げましたように、いろいろな意見をどうやって限られた時間の中に入れ込むかという最後の詰めを合しているところでございますので、御意見は御意見として承らせていただきたいと思いますが、どうしてもこれだけはやれと言われても、それは承知しましたとはっきり御返事をするということにはなかなかならないと思います。
  165. 松沢成文

    松沢委員 私は、単に国連の安保常任理事国入りにがむしゃらに立候補して、それをアピールだけすればいいと言っているわけではなくて、この安保常任理事国入りを日本が表明して活動していくということは、やはり今後日本が世界の国際政治の中で、あるいは平和と安定の維持の中でどういう役割を果たすかという基本姿勢そのものなんですね。ここをまた抜いてしまえば、逆に言えば、日本は、これまで外務大臣はこう言ってきたけれども、ここのところは今回の演説では落ちている、何か政策変更でもあったのではないかな、あらぬうわさも招く可能性もあると私は思います。逆に、そうでないと言われても、世界のマスコミが、日本はこの点に関してもう消極的になっているのではないか、こういう報道をする可能性も皆無ではないと私は思うのですね。  安保理の常任理事国入りを目指すということは、もう文字にしてみれば演説原稿の一行でしかありません。将来の日本の国際貢献国家としての基本理念を示す一行が入れられないというのは、私は極めて不満でありまして、これ以上大臣は御答弁できないということですので、再度私の方から、せひともこの一文を入れていただきたいとお願いをさせていただきます。  そこで、ちょっと角度を変えて質問をします。  これは新聞報道で恐縮なんですけれども、今回の演説の中でこの一文が入らないというのは、与党内の三党合意というのがあって、これは安保常任理事国入りについては極めて慎重にするべきだ、こういうことが社会党やさきがけの皆さんから強い要望として出されて、今回はこの演説に入れることをためらったというような報道がありましたけれども外務大臣、そういう事実はあるのでしょうか。
  166. 河野洋平

    河野国務大臣 私は、二年間にわたって国連で閣僚として演説をしてまいりました。閣僚の演説は、その骨子を事前に閣議ででも御説明を申し上げて、御了解をいただいて演説をしているわけでありまして、そのことが変わったということはございません。仮に総理の演説にたまたまそのことが入らなかったからといって、政府の方針が変わったというふうにとられるとは、私は思っておりません。
  167. 松沢成文

    松沢委員 何度も言いますけれども、もう政府の方針として、細川さんのときから合わせると三年連続この方針は出されているわけでありまして、与党内にもいろいろ御意見があるのは私も聞いておりますけれども、ぜひともこの方針は、政府の方針である以上、今後とも国連外交の中で貫いていただきたいと思います。  そこで、関連いたしまして、小和田国連大使が積極的に、この安保常任理事国入りの理解を求めて世界の国々と交渉というか話し合いをしているようでございますけれども、この小和田大使の、特に途上国に対する日本の常任理事国入りの理解を求める活動について、どんなことを展開されているのかお聞かせいただきたいと思います。
  168. 川島裕

    ○川島政府委員 お答え申し上げます。  ニューヨークは、まさに途上国も含めて加盟国の代表が集まっている場でございますから、そこでの日常の接触自体が安保理改革の流れをつくる上で非常に重要な場であることは、ある意味では当たり前のことでございますが、それに加えまして、ニューヨークにおける活動はいろいろやっています。そのほかに、いろいろな、例えば地域機関、OAUとか、それからアフリカ地域地域機構とか、いろいろな会合というか会議がございますので、そのときに、小和田大使は機会があればそういうところにも赴いて、そこでいろいろな途上国の方たちと意見交換を折に触れて行っているというのが実態でございます。  いずれにいたしましても、そこで日本を常任理事国にという言い方の前に、まずやはり安保理改革の流れというものをつくるのが一つ重要なポイントだと思っておりますし、その辺のところも含めて、いろいろな接触を精力的にやっておるというのが実態でございます。
  169. 松沢成文

    松沢委員 先般、残念なことに、ユーゴの特別代表でありました明石康さんが辞職したわけでありますけれども、その明石さんもインタビューの中で、世界の動きを理解し、日本の考えを世界に伝える能力と努力がなければ、日本は思考の上で、孤児になっていく危険があるというふうにおっしゃっておりまして、ぜひとも日本がこれから国際貢献をしていくという中にあって、国連意思決定機関である安保理の中にしっかり入って、情報も集め、意見も言い、世界の繁栄にみずから貢献していく、こういう大きな方向性を持っている、この大事なテーマでありますので、今後とも国連のそうした演説の場で積極的に訴えていく、こういう姿勢をつくっていかなければ諸外国の理解も得られないのではないかというふうに私は思います。これは意見です。  次に、先ほどの東議員からの質問に関連をいたしまして、APECに対する台湾代表の参加の問題について少し補足質問をさせていただきます。  手続的なことですけれども、もう時間が迫っていますが、APECの大阪会議への招待状というのはいつごろまでにどのような形で出すのでしょうか。また、これを出すあて名というのはその国家の元首に対して出すのか、それとも出席をいただきたい方に出すのか、その辺についてまずお伺いしたいと思います。
  170. 原口幸市

    ○原口政府委員 日にちが迫ってまいりましたので、招待状につきましては最近出したところでございまして、ただし、台湾、チャイニーズタイペイにつきましても出すべく今準備を進めているというところでございます。  そして、形式はどうかという御質問でございますが、これについては現在検討中でございます。したがいまして、今準備を進めているという中にそういうことも含めて、検討中でございます。  ただ、恐らくあて先としては村山総理から李登輝氏に対し、本人に対してお出しするということになると思います。
  171. 松沢成文

    松沢委員 台湾以外の国は大体出して、台湾が今少しおくれているという答弁でありました。  そこで、先日、瀬木APEC担当大使が訪台して、台湾当局と事務折衝を行ってきたという新聞記事が載っておりましたが、その内容あるいはその成果はいかがなものであったでしょうか。
  172. 原口幸市

    ○原口政府委員 御承知のとおり、日本はことしの議長国でございますし、瀬木APEC担当大使は同時に高級事務レベル会合の議長でございますので、当然大阪会合の成功ということに対していろいろな準備作業を進めなければいかぬ立場にあるわけでございまして、その一環として台湾にも最近赴いたということでございまして、出席問題も含めましていろいろな面で意見交換したわけでございますが、中身につきましては、現在、現段階でそれ以上のことは申し上げるのは差し控えさせていただきたいと思いますので、御了解いただければと思います。
  173. 松沢成文

    松沢委員 先ほど東委員の話もありましたように、これは中国の立場、チャイニーズタイペイ、台湾の立場一両方を尊重すると大変難しいことになってくるわけでありますけれども、シアトル、ボゴールの両会議を踏襲するということですけれども日本側が望む台湾代表、踏襲するということは経済閣僚であるというふうに言われておりますけれども、これはだれなのですか。
  174. 原口幸市

    ○原口政府委員 前二回の先例というところに着目いたしますと、シアトルのときにもボゴールのときにも蕭万長さんという方が出ておりまして、別段、これは我々そういう個人の名前に着目するというよりも、そういうステータスの方が出ていたという事実に着目しているわけでございまして、そういう点を台湾側にもお伝えして、台湾側で御検討いただいているということでございます。
  175. 松沢成文

    松沢委員 これはちょっと確認なんですけれども、内容は明らかにできないということですが、台湾側はあくまでもやはり李登輝総統の出席を望んでいると、この前の瀬木担当大使との事務折衝でも、この事実というのは報道どおりなのでしょうか。
  176. 原口幸市

    ○原口政府委員 先ほども申し上げましたとおり、出席問題につきましてもお話はしたわけでございますが、その具体的なやりとりについては御説明を差し控えさせていただきたいと思います。
  177. 松沢成文

    松沢委員 そうしますと、過去のシアトル、ボゴール会議を踏襲すると、今まで出てきた人が蕭万長さんという経済担当の方ということですけれども、台湾側は、台湾の主張によれば、これはこの前の折衝ではなくて主張によれば、あくまでも李登輝総統を招いてほしいということを言っております。  そうなってくると、中国、台湾痛み分け、妥協案として、行政院の副院長であり、やはり経済閣僚でもある徐立徳さんの妥協案としての可能性というのが果たして考えられるのかどうか、そしてまた、それを考えられるとしたら、中国、台湾に日本は説得をしなければいけませんけれども、この辺についても当局は考えているのかどうか、この点についてお聞きしたいと思います。
  178. 原口幸市

    ○原口政府委員 まことにお答えしにくいのでございますけれども、具体的なお名前をどうのこうのということではなくて、先ほども申し上げましたけれども、私どもといたしましては、日本の立場というのは、APECの大阪会合を円滑に運営していくためにこの問題についてもどうしたらいいかということを独自に十分考えまして、その結果として、前二回の先例に従うことが本件についても一番適当であるという結論に達して、そういうラインで台湾側ともお話をしているわけでございまして、その結果として、具体的にどういう人が出てくるかということは今後の話し合いということと思います。
  179. 松沢成文

    松沢委員 十一月の中旬、十何日からですか、十六日からですか、APEC会議が開かれるわけですけれども、もう一カ月前を切っているわけでありまして、私はこれ以上この問題を先送りにするのは非常に台湾、中国両方にとって失礼になるかと思うのです。今交渉中あるいは相手国に投げかけているというところと聞きましたけれども、この問題、いつまでに日本政府として相手国に失礼にならないように、あるいは相手国に決めていただくのか、この期限といいますか、この辺については当局はどう考えているのでしょうか。
  180. 原口幸市

    ○原口政府委員 率直に言って、いついつまでに決めなければいけないということはないと思いますけれども、基本的にはできるだけ早くこの問題についても片をつけたいという姿勢でお互いに話し合っている、こういうことだと御理解いただければと思います。
  181. 松沢成文

    松沢委員 以降の質問は水曜日に譲ります。どうもありがとうございました。
  182. 三原朝彦

  183. 古堅実吉

    古堅委員 沖縄における少女暴行事件について質問をいたします。  総理は十八日の参議院予算委員会で、日米地位協定の見直し問題について、運用の改善にとどまらず協定の見直しを検討する、そういう考えを示されました。しかし、一方外務省の首脳は、協定の改定は困難だというふうな見解を示しています。  そこで大臣にお尋ねします。外務省責任者であられる大臣、総理と同じく見直しを検討するという考えがあられるかないか、それが一点。総理から見直し検討についての指示があっなかなかったか。その二点についてまずお答えください。
  184. 河野洋平

    河野国務大臣 先ほどから御答弁申し上げておりますように、この問題につきましては、総理から、専門家委員会協議、議論を見守るという総理のお考えがございまして、私どももそのお考えに沿って今行動しておるところでございます。
  185. 古堅実吉

    古堅委員 大臣としてのお考えがどうなのかということについてのお答えはございませんか。
  186. 河野洋平

    河野国務大臣 村山内閣の閣僚として、村山総理のお考えに沿って行動していると申し上げました。
  187. 古堅実吉

    古堅委員 それじゃ、念を押してお聞きします。外務大臣としても、単に協定の運用の改善ということにとどまらず改定について検討するというお考えがあるということなんですね。
  188. 河野洋平

    河野国務大臣 先ほど申し上げましたように、総理のお考えは、現在は運用の改善について専門家委員会で議論中であるからこの議論を見守ろう、こういうことが総理のお考えでございますので、そのお考えに沿って私は行動をいたしております一こう申し上げているわけでございます。
  189. 古堅実吉

    古堅委員 沖縄県警は九月八日、犯人の身柄引き渡しを要求いたしました。しかし、米軍から地位協定を盾に拒否されまして、起訴するまで二十六日間犯人を日本側の方に確保することができませんでした。  大臣、はっきりさせていただきたいのですが、あなたは、アメリカ側に対して、この少女暴行事件についての犯人の身柄を引き渡せ、そういう要求をされましたか。したのであれば、いつどのようになされたか、その点を御説明ください。
  190. 河野洋平

    河野国務大臣 私は、事件の全貌がほぼわかった時点でモンデール大使を外務省に呼びまして、モンデール大使にこの事件解明についての協力をお願いをいたしました。その時点におきましては、地位協定の十七条五項の(c)というものがありますから、起訴されるまで身柄の引き渡しはルール上はできないわけでございますが、私としては、できるだけ早く身柄が引き渡されることが望ましいという立場から、できる限り身柄の引き渡しの、早期の引き渡しができる方法について一緒に考えて、問題を解決してほしいということを申しました。
  191. 古堅実吉

    古堅委員 大臣は、日米地位協定があるのでまともに身柄を引き渡せという要求をするのはどうか、このように考えられて、運用の改善について考えが及んだのだが、身柄の引き渡しを直接要求するということは結局なさらなかったのですね。
  192. 河野洋平

    河野国務大臣 現行のルールでは身柄の引き渡しの要求はできません。したがって、運用の改善をまず行うことによって身柄を早期に引き渡すことが可能になる。それを目的として運用の改善について一緒に考えてほしいということを申し上げたわけでございます。
  193. 古堅実吉

    古堅委員 結局、身柄の引き渡しを直接要求するということはできないので、やらなかったということになるわけです。
  194. 河野洋平

    河野国務大臣 それは間違っております。ルール上はできません。したがって、ルールの改善、運用の改善をすることによって身柄の引き渡しを求めるということで私はやったのであって、共産党の皆さんは、予算委員会のときから、おまえは身柄の引き渡しを要求していないだろうということを繰り返し言われますが、ルールはルールでございますから、このルールの上では身柄の引き渡しの要求をそのまますることはできません。したがって、ルールの運用を改善することによって身柄の引き渡しを求めるという作業をした。これは早期に身柄の引き渡しを求めるのと同じことであると私は思ってやったわけでございます。
  195. 古堅実吉

    古堅委員 ごまかしなんですよ。運用の改善などと、いまだに結論も出ていない、いつ出るかもわからないような運用の改善の問題を、身柄を引き渡すという要求をしたんだというふうに説明を置きかえる、こんなごまかしがありますか。  一九八二年三月に金武町で城間さんという方が殺される、こういう事件が起きました。これは、もちろん米兵によってです。現行犯でないが、基地責任者の同意を得て、基地内で被疑者を起訴前に逮捕しています。  今回の事件でも、アメリカが同意をすれば、日本の警察が逮捕、拘禁できたのです。これだけ全国的な重大問題に発展したにもかかわらず、起訴前の身柄引き渡しが実現できなかったのは、日米地位協定を云々して、政府全体として意思を統一し、アメリカにそういう取り扱いをしようじゃないかなどという形で身柄の引き渡しを要求するということをしなかったがゆえに、できなかったということではありませんか。
  196. 河野洋平

    河野国務大臣 見解を異にいたします。  私どもは、今回の場合でも、仮に日本側の警察が逮捕をすることができておれば、それは議員指摘のとおり日本側に身柄を持つことができたと思います。しかし身柄が、米側によって逮捕をされたという状況であれば、現在ある日米地位協定のルールに従えば、そのルールの上で身柄の引き渡しを要求することはできません、はっきりと起訴前の身柄の引き渡しはできないことは説明がされているわけですから。したがって、身柄の引き渡しを求めるためには、運用上の改善をする以外にはできないわけであります。身柄の引き渡しを求めるとすれば、この方法以外にないではありませんか。その方法をやったことがごまかしたと言われることは、甚だ遺憾に存じます。
  197. 古堅実吉

    古堅委員 とんでもない言い分だ。先ほど説明したように、一九八二年は、基地内におる米兵を基地責任者の同意を得て日本側が逮捕までしたじゃないですか。身柄を拘束したじゃないですか。何を言っておるのですか。
  198. 河野洋平

    河野国務大臣 私の答弁はそういうことを言っているのじゃないのです。先に米側が逮捕したから今回はできなかったということを言っているのであって、日本側が先に逮捕をすれば、それは可能であったわけであります。
  199. 古堅実吉

    古堅委員 米側の基地内に確保されている軍人を日本側に引き渡すことについても、米側の同意さえあればできる問題なんです。同意を取りつけるだけの日本側の姿勢、毅然たる態度がなかった、そのためにできなかっただけのことですよ。  アメリカ側は、地位協定を盾に、起訴されるまでは被疑者の身柄引き渡しを必死になって拒否しています。ところで一方、日本政府は、身柄引き渡しをきちっと要求するどころかそれもせず、その根拠となっている地位協定の改定の必要もない、かたくなにそういう態度をとり続けています。国民は、これでも独立国の政府が、このように憤慨していますよ。  あした二十一日は沖縄で、地位協定の見直しを正面から要求する、文字どおり全県ぐるみの総決起大会が開かれます。それには三百余の団体が参加する、そういうことも表明されておって、大きな大会になろうとしています。あなたは、そういう状況のもとでもなお県民のそういう願いに反して、大きな要求である地位協定の改定の必要はない、このように言い続けますか。
  200. 河野洋平

    河野国務大臣 そこはぜひお考えをいただきたいと思いますが、私は今、あの忌まわしい事件の解明、あの事件をどうやって解決をするかということにまず考えを絞るならば、運用の改善というものが最も早く問題を解決する方法であろうと考えてこの要求をしているわけでございます。  共産党のあなたのお立場は、かねてから基地撤去、安保廃棄というお立場でございますが、私は安保廃棄という立場ではございません。この基本的な考え方の違いがどうしても二人、議員と私とで同意ができないところでございまして、その点は甚だ残念に思います。  私は、沖縄県民の心の痛み、怒り、心情というものは理解をいたしております。それだけに、この問題、この事件、そしてこの事件をもたらしたもっと根源的な問題についてさかのぼっても、安保堅持という立場と沖縄の県民の心情というものを、どこかで接点、一致するところはないかということのために全力を挙げたい、こう考えているわけでございます。
  201. 古堅実吉

    古堅委員 確かにおっしゃるように日本共産党は安保廃棄だ。明確です。しかし、沖縄県民全体が日本共産党のように安保廃棄の立場だから地位協定の見直しを正面から要求するところの県民大会を開きましょうということではないのですよ。自民党も参加されるんだ、新進党も参加されるんだ、そんな大会になるのですよ。沖縄の県民大会を開こうという実情について、そのくらいのことさえもわきまえられないでここで答弁をなさる。本当に許せぬ。戦後五十年の間、沖縄県では限りない米兵の犯罪によって多くの県民が犠牲になってまいりました。この屈辱的な犠牲をもたらした政府態度に対して、沖縄県民は積もり積もった憤りと怒り、それがあります。今回の事件についての爆発的な要素というのはそこにあるのです。県民は、基地ある限り米軍犯罪がなくなる保証は全くない、このように切実に考えています。  せんだって沖縄のRBCの電話アンケートで、安保廃棄の要求が五千三百九十九件中三千九百七十七件で七四%、基地の全面撤去の要求が九千六百九十六件中七千七十七件で七三%になったというふうに報道されました。  大臣、あなたは参議院の予算委員会で、安保地位協定をなくすわけにはいかない、こういう趣旨の答弁をされ、きょうも朝来そういう立場からの説明をずっと続けておられます。米軍基地、米兵の存在を容認する中で、本当に米軍の犯罪を根絶することができるというふうにお考えですか。
  202. 河野洋平

    河野国務大臣 今回の事件は本当に残念なことだと思っております。しかし一方で、我が国の安全をいかに保障するか、我が国の安全をいかにして維持していくかということもまた考えなければならないことではないでしょうか。共産党のお考えのように安保条約を廃棄して、どうやって日本の国を守るのかということを国民にまた問わなければならないと思います。私は、共産党の御意見は御意見として拝聴はいたしますけれども、共産党が日本全国において過半数の支持を得ているというふうには思いません。
  203. 古堅実吉

    古堅委員 極めてふまじめな言い方なんですね。今、沖縄県では自民党や新進党の皆さんも含めてそういうことになっておるのですよと説明したばかり。それを共産党、共産党と言っている。もちろん日本共産党はそれを主張しています。  米軍が幾ら、反省します、綱紀を粛正します、二度と起こさないようにします、このようなことを何十回、何百回繰り返してみたところで、現実に米軍の犯罪、基地の被害、事故は起こり続けてまいったのです。ですから、今総理を初め政府が、アメリカがこのように誠実にいろいろと反省します、綱紀粛正にこのように取り組んでいますなどとアメリカにかわって説明をしてみたところで、沖縄県民は見抜いておるのです。一日や二日の反省の日をつくったからといって、アメリカの基地があっても犯罪はこれから起こりませんなどということはだれも考えてない。  安保堅持と基地との調和のとれた政策、それを展開していきますというふうなことを繰り返し言っておられるのですが、これはソ連もなくなったというこの期に及んで、日本の防衛を口実に、沖縄県民に対して、多少の犠牲はやむを得ない、我慢しろ、こうおっしゃっているということにほかならないのではありませんか。十八日の宝珠山施設庁長官のあのような発言というのは、政府の全体としての考えがああいう形で露呈したということにほかならないと思うのです。  私は、改めて、基地との共生、共存を押しつけるこういう政府に対して、沖縄県民の名において断固としてそれを拒否する、そういうことを表明して質問を終わります。      ————◇—————
  204. 三原朝彦

    三原委員長 次に、国際海事衛星機構インマルサット)に関する条約改正受諾について承認を求めるの件を議題といたします。  これより政府から提案理由説明を聴取いたします。外務大臣河野洋平君。  国際海事衛星機構インマルサット)に関する条   約の改正受諾について承認を求めるの件     〔本号末尾に掲載〕
  205. 河野洋平

    河野国務大臣 ただいま議題となりました国際海事衛星機構インマルサット)に関する条約改正受諾について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  この改正は、平成元年一月十九日にロンドンで開催された国際海事衛星機構の総会において採択されたものであります。  この改正は、国際海事衛星機構の衛星通信施設を陸上移動通信にも提供し得るようにすることを目的とするものであります。  我が国がこの改正受諾してその早期発効に寄与することは、陸上移動通信の改善及び発展に資するとの見地から有意義であると認められます。よって、ここに、この改正受諾について御承認を求める次第であります。  何とぞ御審議の上、速やかに御承認いただきますようお願いいたします。
  206. 三原朝彦

    三原委員長 以上で提案理由説明は終わりました。  次回は、来る十月二十五日水曜日午前十時二十分理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時四十四分散会      ————◇—————