運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1995-09-28 第133回国会 参議院 決算委員会 閉会後第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成七年九月二十八日(木曜日)    午前十時開会     —————————————    委員異動  九月二十七日     辞任         補欠選任      山本  保君     福本 潤一君      水野 誠一君     堂本 暁子君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         浦田  勝君     理 事                 大木  浩君                 佐藤 奏三君                 清水 達雄君                 山崎 順子君                 山下 栄一君                 筆坂 秀世君     委 員                 岩井 國臣君                 海老原義彦君                 景山俊太郎君                 笠原 潤一君                 清水嘉与子君                 陣内 孝雄君                 中島 眞人君                 長峯  基君                 松村 龍二着                 守住 有信君                 牛嶋  正君                 武田 節子君                 続  訓弘君                 寺澤 芳男君                 畑   恵君                 福本 潤一君                 朝日 俊弘君                 伊藤 基隆君                 今井  澄君                 萱野  茂君                 国井 正幸君                 堂本 暁子君    国務大臣        厚 生 大 臣  森井 忠良君        農林水産大臣   野呂田芳成君        国 務 大 臣  大島 理森君    事務局側        常任委員会専門        員        貝田 泰雄君    説明員        環境庁自然保護        局長       澤村  宏君        環境庁水質保全        局長       嶌田 道夫君        法務省民事局参        事官       小池 信行君        大蔵省銀行局中        小金融課金融会        社室長      振角 秀行君        厚生大臣官房総        務審議官     亀田 克彦君        厚生省健康政策        局長       谷  修一君        厚生省生活衛生        局水道環境部長  坂本 弘道君        厚生省社会・援        護局長      佐々木典夫君        厚生省老人保健        福祉局長     羽毛田信吾君        厚生省児童家庭        局長       高木 俊明君        厚生省保険局長  岡光 序治君        厚生省年金局長  近藤純五郎君        農林水産大臣官        房長       高木 勇樹君        農林水産省経済        局長       堤  英隆君        農林水産省農蚕        園芸局長     日出 英輔君        食糧庁長官    高橋 政行君        林野庁長官    入澤  肇君        自治省財政局調        整室長      岡本  保君        会計検査院事務        総長官房総務審        議官       深田 烝治君        会計検査院事務        総局第二局長   森下 伸昭君        会計検査院事務        総局第四局長   五十嵐清人君        会計検査院事務        総局第五局長   平岡 哲也君    参考人        農林漁業金融公  後藤 康夫君        庫理事長金融公  坂本 龍彦君        年金福祉事業団        理事       加藤 栄一君     —————————————   本日の会議に付した案件平成四年度一般会計歳入歳出決算平成四年度  特別会計歳入歳出決算平成四年度国税収納金  整理資金受払計算書平成四年度政府関係機関  決算書(第百二十九回国会内閣提出)(継続案  件) ○平成四年度国有財産増減及び現在額総計算書  (策百二十九回国会内閣提出)(継続案件) ○平成四年度国有財産無償貸付状況計算書(第  百二十九回国会内閣提出)(継続案件) ○平成五年度一般会計歳入歳出決算平成五年度  特別会計歳入歳出決算平成五年度国税収納金  整理資金受払計算書平成五年度政府関係機  関決算書(第百三十二回国会内閣提出)(継続  案件) ○平成五年度国有財産増減及び現在額総計算書  (策百三十二回国会内閣提出)(継続案件) ○平成五年度国有財産無償貸付状況計算書(第  百三十二回国会内閣提出)(継続案件)     —————————————
  2. 浦田勝

    委員長浦田勝君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  この際、森井厚生大臣野呂農林水産大臣及び大島環境庁長官から発青を求められておりますので、順次これを許します。森井厚生大臣
  3. 森井忠良

    国務大臣森井忠良君) 先般、厚生大臣に就任いたしました森井忠良でございます。  健康や福祉という国民に最も身近で重要な厚生行政を担当することになりまして、日々その責任の重さを痛感しているところでございます。  決算委員会委員皆様方には、日ごろから厚生行政推進に格段の御理解と御努力をいただいておりまして、この場をおかりいたしまして厚く御礼申し上げます。  我が国は、二十一世紀の本格的な少子・高齢社会の到来を目前に控えております。また一方で、日本経済は厳しい状況にありまして、経済社会の活力を維持しながら、一人一人が心豊かに安心して暮らすことができる長寿社会を築いていくことが強く求められているわけでございます。  私といたしましては、こうした国民の皆さんの御期待にこたえていくため、新たな高齢者介護システム構築子育て支援対策推進等社会保障制度基盤強化に全力で取り組んでまいりたいと考えております。  今後とも委員皆様方の御理解と御協力をお願い申し上げ、私のごあいさつといたします。  ありがとうございました。(拍手
  4. 浦田勝

  5. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 先月、農林水産大臣を拝命いたしました野島田芳成でございます。  農林水産業は、申し上げるまでもなく、国民生活に欠かすことのできない食糧安定供給やあるいは国土や自然環境保全に欠かすことのできない重要な使命を担っております。また、農林水産業の健全な発展やあるいは農山漁村の活性化なくして我が国締済社会の調和ある発展を遂げることはできないと考えます。  非才不敏でございますが、誠心誠意職務に精励したいと思います。委員長初め委員各位の御指導と御鞭撻を心からお願い申し上げ、ごあいさつといたします。(拍手
  6. 浦田勝

  7. 大島理森

    国務大臣大島理森君) 去る八月八日に環境庁長官を拝命しました大島理森でございます。何とぞよろしくお願いを即し上げます。  委員先生方におかれましては、日ごろ大変お世話になっておりまして、心から厚く御礼を申し上げます。一言ごあいさつ申し上げさせていただきます。  今日の環境問題は、身近な問題から地球規模の問題まで、また世代を超えて多くの広がりを持つ人類共通課題でございます。私といたしましては、これに対処するため、昨年策定されました環境基本計画に基づき、国民事業者等参加を得て環境行政を総合的、計画的に展開し、環境への負荷の少ない持続的発展が可能な社会構築を目指していく所存であります。  委員先生方のさらなる御指導と御鞭擁を心からお願い申し上げて、ごあいさつとさせていただきます。  よろしくお願い申し上げます。(拍手)     —————————————
  8. 浦田勝

    委員長浦田勝君) 委員異動について御報告いたします。  昨日、山本保君及び水野誠一君が委員を辞任され、その補欠として福本潤一班及び堂本暁子淋が選任されました。     —————————————
  9. 浦田勝

    委員長浦田勝君) 平成四年度決算外二件及び平成五年度決算外二件を一括して議題といたします。  本日は、厚生省農林水産省環境庁農林漁業金融公庫及び環境衛生金融公庫の決算について審査を行います。     —————————————
  10. 浦田勝

    委員長浦田勝君) この際、お諮りいたします。  議事の都合により、これらの決算概要説明及び決算検査概要説明の聴取は、いずれもこれを省略して、本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  11. 浦田勝

    委員長浦田勝君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。  速記をとめてください。    〔速記中止
  12. 浦田勝

    委員長浦田勝君) 速記を起こしてください。     —————————————
  13. 浦田勝

    委員長浦田勝君) それでは、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発曽願います。
  14. 陣内孝雄

    陣内孝雄君 おはようございます。自由民主党の陣内孝雄でございます。  まずもって野呂田農林水産大臣大島環境庁長官森井厚生大臣に御就任のお祝いを申し上げます。  十一月には、APEC大阪会議が開かれ、また新食糧法が施行されます。これらは今後の農政の新しい方向づけや根幹にかかわる極めて重要な意義を持つものであります。きょうは、これらについてお伺いし、要望をいたしたいと思います。  さて、安全と安心確保国民生活にとって何よりも重要であり、政治の果たすべき最大の責務でございます。今年一月十七日未明の阪神・淡路大震災や三月二十日の東京の地下鉄サリン事件の際に、安全と安心の重要さを国民だれもが痛感したところでございます。  食糧安全保障もまた国家国民安心、安全にかかわる問題で、国政として取り組むべき最重要課題でございます。しかしながら、私たちは今日、飽食の時代を存分に享受しているために、食糧確保という重大な安全保障の問題を安易に考えているのではないかという気がいたします。日本人の主食である米が不足した場合に、外国から食糧を輸入すれば事が済むんだと簡単に片づけることは、食糧生産自然条件に支配されることなどから、大変に危険だと私は考えます。必要な食糧を必要なときに外国に頼れるという保証は、国際社会では残念ながら今のところ全くないと思います。  そこで、もしも農家が農業経営に自信と希望が持てずに、農村高齢化後継者不足を座して待たなければならないようになってしまっては、やがて国の存立さえも脅かされかねないのではないだろうか、私はそのようなことを心配しておる一人でございます。  私は、四年前に新しい食料・農業農村政策、つまり新農政と言われるもの、これこそが農政の目指すべきこれからの基本的方向ではなかろうか、こう考えまして、そのとき以来その実現を私なりに図ろうということで、湛水直播による稲作あるいは水田の不耕起による麦作農法に取り組んでまいりました。このようなささやかでございますが私にすれば先取りとも言えるチャレンジを地元の意欲ある農業後継者たち参加協力を得ながら進めてまいる中で、「元気を出せ、日本農業」と唱えながら、どうしたらみんなに元気を出してもらえるだろうかと真剣に考えてまいったわけでございます。  きょうは両大臣にそれぞれのお立場でぜひとも元気の出る農政についての御所見をお聞かせいただきたいと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。  まず、世界食糧需給の見通しを我が国はどのように予測しているのかを農林水産省にお伺いいたします。
  15. 高木勇樹

    説明員高木勇樹君) お答え申し上げます。  世界食糧需給でございますけれども、短期的といいますか当面とそれから中長期的と分けて考える必要があろうかと思います。  まず、短期的に見てみますと、ことしに入りまして米穀の主要な生産国であります。アメリカの減産ということがございまして、世界穀物需給は引き締まりの傾向にございます。今年度の期末在庫率は一三%、一九七〇年代前半食糧危機当時の水準、これが一五%であったわけですが、これを下回る見込みでございます。  私どもとしては、当面の穀物需給動向という点で、この水準でございますので注意を払っているわけでございます。ただ、世界的に同時不作になりました一九七〇年代前半とは現在の状況は異なっておりまして、直ちに穀物の円滑な供給が滞って価格が暴騰するというような可能性は小さいと考えております。  また、中長期的な食糧需給についてでございますが、まず需要面でございます。  開発途上国を中心といたします人口増加とか、それから経済発展に伴います所得の増加を背景として畜産物の消費が増大をしていくことが見込まれます。これは、とりもなおさず飼料穀物需要を大幅にふやしていくわけでございます。  一方、生産画を見ますと、砂漠化といったような問題、そのほかの地球環境問題から生ずる制約とか異常気象による生産の変動といったような事柄が見込まれておりまして、極めて先行き不透明ということであります。今後、不安定な局面があらわれてくることも懸念されるわけでございます。そういった点を私ども十分考えながら今後の国内生産農政に当たってまいりたい、こういうふうに考えているところでございます。
  16. 陣内孝雄

    陣内孝雄君 この食糧予測についてはいろいろな要因を考えながら立てるわけでございます。したがいまして、今おっしゃったような見方もあるでありましょうし、また農業輸出国においてはこの予測もやや楽観的になるかもしれない。我々のような食糧の大部分を輸入している国では警戒的にこれを受けとめなきゃいかぬということだろうと思います。要は、予測も大事ですけれども、それをどう評価して認識していくかということがさらに大事なことではなかろうかと思うわけでございます。  来年の十一月には国連食糧農業機関の主催する世界サミットが聞かれるというふうに聞いておりますが、こういうところで各国首脳が今後の世界食糧需給動向について一堂に会して国際的な認識を築くということは大変必要なことだろうと思います。また、地球環境については三年前にブラジルでサミットが開催されておりますが、この食糧生産というのは、今のお話にもございますように、地球環境資源に依存している面が大部分でございますので、この食糧供給課題についても、そういう点でサミットを開いて国際的合意を得る必要性が来ているんじゃないかというふうにも思うわけでございます。  そこで、まず農林水産大臣に御所見を承りたいのでございますが、来年十一月開催のFAO世界食糧サミットでの世界食糧需給動向についての国際的な認識を確立することについて、大臣はどういうふうな御所見をお持ちでございましょうか。
  17. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) お話しのように、来年の十一月、ローマで世界食糧サミットが開かれるわけでございますが、その際の議題は、飢餓と栄養不足の撲滅、あるいは世界食糧安全保障の達成ということが大きな眼目になっております。この場におきまして、世界食糧需給動向について各国認識が示されるものと考えております。こういう場を通じまして、各国食糧安全保障についてそれぞれ認識を深めることが私は極めて大事なことであると思います。  世界食糧需給というのは、御指摘のように、中長期的に見ればかなり不安定要素がありますし、あるいは逼迫する可能性もあると言われておるわけであります。御指摘の点は大変大事なことでありますので、このような認識がこのFAOの場を初め各種の国際会議の場で共通のものとして認識されるように私どもも努めてまいりたい、こう思っておる次第でございます。
  18. 陣内孝雄

    陣内孝雄君 ぜひよろしくお願いしたいと思います。  食糧自給率が極度に我が国は低くなっております。一昨年あたりは本当に恐ろしいぐらいにまで低くなってしまったということでございますが、我が国としては、食糧安全保障上、新しい貿易ルールが確立できるように、六年後のWTO世界貿易機関の協定の再交渉に向けてこのサミットで足がかりを築いていくべきだと私は考えておりますので、ぜひともそれに先立つカナダ・ケベックで行われる今年の会議は、大臣出席だろうと思いますが、そういう場でもますますの御活躍をお願い申し上げたいと思います。  次に、環境庁にお尋ねするわけでございますが、地球環境変化食糧供給にどのような影響を与えるんだろうか、世界全体の食糧需給の安定のために環境資源をどう適正に管理したらよいのだろうかまた我が国としてこの分野でどう貢献していくのかといったような問題がいろいろとあろうかと思います。  環境庁長官は、かねてより農政について、あるいは農業について大変御造詣の深いお方でもいらっしゃいますので、ぜひこの機会に御所見を賜れればと思います。
  19. 大島理森

    国務大臣大島理森君) 陣内先生の御質問に答えますが、地球環境変化食糧農業に与えるポイントというのは三点あるのではないか、こう思っておるんです。一つ地球温暖化ということでございましょうか、もう一つオゾン層の破壊、それから三点目は砂漠化。その他いろんな地球環境変化農業あるいは食糧生産というものに影響を与えると思いますけれども、大きなものとしてその三点が考えられるんではないかと思います。  御承知のように、地球温暖化という観点からしますと、この温暖化が進みますと、当然に植物の成長にも影響いたしますし、あるいはまた害虫や雑草の増加、そういうものにも影響するでありましょう。また、十ばつ、暴風雨、その他いろいろ影響あるだろうと思います。オゾン属もいろんな生育阻害という観点から大変な影響を及ぼす。あるいは砂漠化ということについては、もう御承知のように、いろんな意味での影響がありますが、特に生産能力の低下。  そういうことが考えられるわけでございますので、地球環境問題は、農業という視点だけではなくて、まさに人類の生存にかかわる大きな問題だという認識を私ども持っておりますし、内政、外交上の最大重要課題であると認識をしながら、内外とも調整官庁として最大限の努力をしていかなきゃならぬという認識をいたしております。  それじゃ、どのように具体的におまえたちはやっておるのかということに相なろうと思いますが、昨年の十二月に環境基本計画をつくりまして、先ほど百頭にごあいさつ申し上げましたが、哲学として四つ視点を持って、環境政策を考えるに当たって循環ということが大事ですねということが一つ。それから第二点は共生、これは自然との共生という意味でございましょうか、そういう視点。さらに、そういうことを実現するためにはあらゆる事業者、あらゆる人間が参加をしてもらわなきゃ困りますと。参加の手法というのはいろんな形でございましょう。参加ということが次。そして四つ目は、先生の御指摘のように、国際貢献という視点。この四つ視点から私ども環境政策地球環境もそういう視点に立ってやっていかなければならない、このように思っております。  先ほど申し上げました三点について、それぞれにいろんなことをさせていただいておりますが、特に私自身御理解をいただきまた御支援をいただきたい点は、地球温暖化ということで枠組み条約が生まれてから、私どもCO2の抑制というものに大変な努力をしなければならない危機的な状況にあるという認識のもとで、ぜひ日本がイニシアチブをとって、そして出界の皆様方と議論しながら二十一世紀温暖化対策貢献をしてまいりたい。  二年後に、場所はちょっとまだ決定しておりませんが、その枠組み条約参加国のCOP3という会議をぜひ日本でやりたい、二十一世紀CO2のあり方、そういうものをさらに具現化する会議日本でやりたいという思いでおります。  そういうことを通じながら温暖化対応にぜひ努力していきたいと思っておりますし、またオゾン属保護のためにはウィーン条約に基づきまして努力をする、あるいは砂漠化防止条約のもとに対策を進めていくと。そういうことで、まさに此代を超えた大きな問題でございますし、食糧という観点から見ましてもこの地球環境変化というものは非常に大事な問題である。逆に言いますと、そういうふうな状況であればあるほど食糧政策にはしっかりとした方針が必要なのではないかという思いがいたします。  以上でございます。
  20. 陣内孝雄

    陣内孝雄君 ありがとうございました。  次に、APEC関係で少しお尋ねいたしたいと思います。  APEC大阪閣僚会合非公式首脳会議が現在本格的な調整段階にあろうかと思います。野呂田大臣におかれては、かねてから食糧輸入国立場から農産物貿易ルールを見直すという姿勢を賄く持っていただいておるように私は見受けております。  もしAPEC自由化原則だけを認めるとすると、こういったルールを見直そうというような粛要な方針とか、あるいはウルグアイ・ラウンド布渉以来、日本政府が主張してきました米を関税仲例外とすべしという、こういう努力が全く覆されるといいますか無に帰してしまうようなことにもなりかねないということだろうと思います。したがって、このたびのAPECでの我が国対応としては、あくまでも自由化原則例外措置を求めねばならない、こういうふうに思うわけでございます。  農林水産大臣はこれまでいろいろな局面農業等各国の機微にわたる分野については特別な配慮が行われるべきだと力強く主張してきていただいておりますが、現在の段階での御所見を改めてお伺いしたいと思います。
  21. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 昨年の十一月、ボゴール宣言が採択された際に、村山総理は、この宣言の採択に当たりまして、各国が抱える農業分野のようなセンシティブな問題については特別な取り扱いをすべきである、こういう留保的な発青を行っております。帰国されて、国会でも再三再四そういう発言をされております。  先月、日豪閣僚会議がありまして、豪州、ニュージーランド、それぞれカウンターパート個別会合が六時間ほどありましたが、私は両国総理閣僚を相手に厳しく言ってまいりました。  第一、APECというのはそれぞれの国の自主的判断に基づく協議会である、いわばフォーラムである、それがWTOという法的に拘束力のある会議よりももっと激しく自由化の範囲を広げ、あるいは当初措置の前倒しを迫るということはどうしても納得できない、こういうことを私は厳しく両国に訴えてまいりました。  そしてまた、先般、香港で高級事務レベル会議が行われましたが、その際も総理や私どもが常日ごろ主張しているようなことを事務当局からも厳しく主張していただいたところでございます。  私は、十一月に行われるAPEC会議では各国が実行可能な案をつくることが議長国としてのリーダーシップである、こういうふうに確信をしております。ケアンズ・グループに属する人たち貿易の促進を主張し、今APECが言っておるようなことを主張しますが、日本と同じような主張をしている中国、韓国、台湾、あるいはグレーゾーンのインドネシア、マレーシアがあるわけですから、こういう国々もやはりついてきてくれる案をつくることが議長国としての日本使命である。こういう両方の立場に立って私は議長国として実行可能な案をまとめることが最大使命であると思いますから、農林水産業を預かる責任者として今後ともそのことを強く主張してまいりたい、こう思っておる次第です。
  22. 陣内孝雄

    陣内孝雄君 さらにお伺いしたいと思いますが、ウルグアイ・ラウンド合意の前倒しを検討する動きがあるようにも聞いております。農産物についてはこの前倒しから除外すべきではないかと考えるわけでございます。  と申しますのも、このウルグアイ・ラウンド対策は今始まったばかりでございますし、また財政事情の厳しい中ではございますが、国内対策として六兆百億円という金をどう有効に使って農業の近代化を図っていこうかということで、今現場も当局も大変悩んでおられる最中だと思うわけでございます。活路を求め始めた農業に展望を見失わせるようなことがあってはならないと思いますので、ぜひこの点についての大臣の御所見もお聞かせいただければと思います。
  23. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) もう御趣旨と全く同じでございまして、七年間みんなが粒々辛苦汗を流して、今ウルグアイ・ラウンド対策の実施が始まったばかりでございますから、それをまた前倒しするなんというのは、私はこれは全く納得することはできません。陣内委員と全く同感であることを申し上げて、今後もさらに頑張りたいと思っております。
  24. 陣内孝雄

    陣内孝雄君 きょうはAPECを担当されておる外務省からも担当の課長さんに出席いただいておるわけでございますが、どうか政府一体となって、農林水産大臣のこのきょうの御発言を体して間違いのないように対応していただきますよう心からお願い申し上げる次第でございます。  これから新食糧法についてお尋ねしてまいりたいと思います。  新食糧法は、国による管理から民間流通である自主流通米を中心にした制度への変更によりまして大幅な規制緩和が図られるということでございます。しかし、それだけに米の需給と価格の安定を図るには国の役割と責任が新たに大きくなっている面もあるのじゃなかろうかと思うわけでございます。その点、いかがでございましょうか。
  25. 高橋政行

    説明員(高橋政行君) 新食糧法、我々十一月一日から施行ということでいろんな準備をしておりますが、目的とするところは、ただいま先生からお話がございましたように、米の需給と価格の安定を図るということにおいては現行の食管法と変わらないわけでございます。  まず、この目的を果たすということのために生産者の皆さん方が生産調整に主体的に取り組んでいただくということが求められるわけでございますが、国といたしましても、やはり米の全体需給のバランスを確保するということが大切でございますので、まず的確な需給見通しに基づきました基本計画を策定いたしまして、これに基づいて計画的かつ整合性を持った形で生産調整の円滑な推進指導していくとか、あるいは備蓄の機動的な運営あるいは適正円滑な流通の確保ということが必要であると思っております。  さらに、価格につきましては、需給動向に応じた自主流通米の価格形成が適正、透明性を持って行われるようにしていくこと、さらにはこうした自主流通米価格の動向が反映された政府米の価格決定が行われていくというようなことが必要であると思っております。こういうようなことを通じまして、政府といたしましてはその役割と責任を果たしていきたいと思っております。
  26. 陣内孝雄

    陣内孝雄君 今のお話のように、新法で米の全体需給の調整を図っていく、需給と価格の安定を保っていくというような上で、まず生産調整が確実に実行されるということが極めて大事だろうと思うわけでございます。  ところで、この新法には計画外の流通米というものが存在するようになったわけでございまして、私はこの中には、早場米とか良質米とか、あるいはまた生産規模が大きくてコストの安い米、こういうものが入ってくる。そうすると、競って計画外の米を生産し販売するようになるんじゃなかろうか。  一面では非常に結構なことで、この法律の目指すところでもあると思うわけでございますが、他面ではそういうふうに自由に米をつくって自由に売るようにできるということで、計画流通米を生産する農家の側からすると、特に豊作なんかの場合には余剰米が出て、そのあおりを食って生産調整を自分たちだけで強化していかなければならないような羽目に追い込まれていくということにもなりかねないということだろうと思うわけでございます。  現行の食管法のもとですら公平確保措置のあめやむちがいろいろあったんですが、なかなかやみ米の存在ということでうまくいかなかったというようなこともございます。これからこの新法の運用を円滑にしていく意味でいろいろ過去の教訓にも学ぶところがあろうかと思いますが、ひとつその辺についてどういうふうにお考えになるのか、総括的にお話しいただければと思います。
  27. 高橋政行

    説明員(高橋政行君) 今度新法のもとにおきましては、ただいま先生からお話がございましたように、計画流通米それから計画外流通米と、そういう意味では二本立てになっておるわけでございますが、我々といたしましては、今後米の供給を広域的に、計画的に消費者にお届けするように安定的に供給するようにしていく。さらには価格の調整といいますか安定を図っていくということからいたしますと、やはりこの計画流通米が相当量集荷されるということが非常に大切なことであるというふうに思っております。  そういった意味からも、我々、この新食糧法下におきましては、計画流通米を生産者団体あるいは集荷業者の皆さん方を通じましてしっかりと隻荷するにはどういう仕組みがいいか政府としてはどのような支援をすることができるかというようなことにつきまして現在検討をしているところでございまして、できるだけ早くいい案を得たいというふうに思っているところでございます。
  28. 陣内孝雄

    陣内孝雄君 生産調整の成否がこの新法を円滑に運用できる一つの大きな要素でもあると思います。  そこで、生産調整の実効を上げるにはどうしたらいいか。今生産者団体は地域を挙げて全員参加で取り組もうというふうなことで頑張っておるように聞いております。その意味で、私はことしから取り入れた調整水田方式といいますか、水を張れば転作田の一形態だとみなすというこの方式は大変いいことだ、特に山間、棚田なんかの場合はこれは欠かせない方法だなというふうに思ってきておるわけでございますが、この方式をさらに拡充することがより生産調整を機動的に、また将来の生産能力を維持しながら食糧の需給調整に役立てられる方策じゃないかなというふうに期待をしているわけでございます。  聞くところによると、一枚の田んぼの中でも部分的に米をつくれば、そしてまたつくらないところを調整水田として残せば、これはまた減反の一部とみなすというふうな法の運用、畦畔をわざわざつくらなくても大変調整しやすいような方式を導入するんだとか、あるいは導入しているんだとかいうふうに聞くわけでございます。今後この生産調整を機動的に運用していく上では、さらに加えてその調整水出の助成のあり方をもう少し工夫できないだろうかというふうにも思うわけでございます。  考えてみますと、一枚の田んぼの中にあぜをつくらずに一部分米をつくる、八割とか七割方米をつくるという場合には、手間暇というのは大体一枚を全部耕作すると同じぐらいかかってくるだろうと思います。稲が生えていないところにヒエが出てくればそれは取らなきゃなりませんし、肥料だってやはり水で薄められますので全体的にまかなきゃいかぬとかいろんな管理のあり方一つとりましても経費は相当かさんでいくんじゃないかなということを考えますと、これは言ってみれば単収が減ったというふうなことにも働きかえてよろしいんじゃないか。生産調整をした調整水出の面積分だけその田んぼの単収が減っている形ではなかろうかと思うわけでございまして、そういう点を考えると、合理的な範囲内でもっと調整水田の助成のあり方に幅を持たせられるんじゃないかなという期待を持っておるわけでございます。その辺についてはいかがでございましょうか。
  29. 日出英輔

    説明員(日出英輔君) 今、先生お話しのように、昨年八万ヘクタールの追加的な転作を緊急に実施しなければならないという状況の中で、お話しのような調整水田、いわば水田において水を張り水稲の生産力が維持される状態に管理するようなそういうものを導入したわけでございます。これはおかげさまで実施状況はおおむね三万ヘクタール程度全国で行われておるわけでございます。こういった生産調整の実施が弾力的に行われるような手法、これにつきましては今度の八年度以降の新しい生産調整システムの中でも取り入れていかなきゃいけないというそういう考え方でございます。  私どもといたしますれば、この中で、今助成のお話も言われたわけでございますが、いずれにしましてもきちんとした全体の需給調整を図るという必要がございますので、助成につきましては、生産調整の実効確保という視点、あるいは自主流通米の需給なり価格の安定という視点、あるいは先生先ほどお述べになりましたような望ましい経営体をつくっていくというような視点、いろんな視点から助成の勉強をしているところでございます。  具体的に今お触れになりましたいわゆる一枚の田んぼの中で一部を残して生産調整する、これは例えば機械の稼働その他から、むしろ積極的に一部だけ転作をする、一部は米をつくる、こういうことでも機械の稼働その他が都合がいいんじゃないかというところから実は出てきた一つの手法でございます。そういう意味で、先生今お述べになりましたようなことも一面あるわけでございますが、一面生産調整がそれだけやりやすいということもあるわけでございます。よく実態も勉強をさせていただきまして、今お述べになりましたようなことだけではなくて、幅広く生産調整の多様な手法について検討を急ぎたいというふうに思っておる次第でございます。
  30. 陣内孝雄

    陣内孝雄君 ブロックローテーションというのも生産調整を地域を挙げて全員参加のもとで行うという意味では大変大事だと思います。  私たちのところ、西南暖地では、裏作としての麦をつくり、それに大豆を転作していくというような形がかなり定着しております。有効な方法だと思います。ただ、麦につきましては、西南暖地の場合は梅雨がありますのでなかなかうまくいかない。非常にてきふてきが多いということでございます。わせをつくるような品種の改良とか排水をよくするような土地改良の促進、あるいはまた共同乾燥施設、これはもうこういう労力のない時代ですからもっともっと近代化していくとか能力を上げていくとかいうようなことが必要だと思いますが、そういうことも集団転作での共補償を容易にするというような調整システムの改善とあわせてやはり大事な関連対策だと思うわけでございます。  そういった関連対策面について、ウルグアイ・ラウンド対策等で強化が図られておりますけれども、やっぱりもっとテンポを早めてもらいたいということでございますが、いかがでしょうか。
  31. 日出英輔

    説明員(日出英輔君) 先生お話しのように、我が国の麦作でございますが、特に水稲との結びつけによりまして土地なり労働力なり機械施設の有効利用を図り得る作物でございます。  これにつきましては、ただいまかなり転作が一時期よりも緩和してきた状況の中で、特に水田転作麦が全体的にかなり落ちたということもございますので、私ども昨年から麦作の主産地化という観点に立ちまして事業を進めてきておるわけでございます。  特に、先生お述べになりましたようなわせ多収品種の開発でありますとか排水対策といったような基盤の強化でございますとか共同乾燥施設等の整備、こういったような条件を一方で整えながら、一方で、今申し上げましたような主産地化のために期間借地を推進するとかあるいは品質向上対策を実施するとか、こういった形で、かなり落ちてまいりました日本の麦生産につきまして、もう二度いわば活を入れて地域の実態に合ったような麦の主産地化を進められないかということで、今そういった対策をやっているところでございます。  今まで以上に、今お話しのような品種の問題あるいは基盤の問題、あるいは調整施設といったような機械なり施設の整備の問題、これは一方で急ぎたいというふうに思っておる次第でございます。
  32. 陣内孝雄

    陣内孝雄君 全体需給調整のもう一つの柱としては備蓄とかそれから調整保管の問題があろうかと思います。いろいろお伺いしたいんですが、時間の都合もございますので、その中で調整保管のことでちょっとお尋ねしておきたいと思います。  この調整保管が起こるというのは豊作のときでございますので、全般的に米価が下がっていくだろうと思うわけでございます。そのような中でも計画外流通については、先ほどもちょっと述べたかと思いますが、新米は今がチャンスだということでむしろ攻勢に出てくる可能性があろうかと黒います。結果として、相対的には計画米の生産者にしわ寄せがいくんじゃないかということを懸念するわけでございます。  また一方、そういうことの結果としてさらに続くのは、米余りのために生産調整を計画米を生産する人たちにさらに強化されるようなことにもなりかねないだろうというふうに心配するわけでございます。  したがいまして、この調整保管にはただでさえ金利や保管料がかかりますし、翌年、古米として売るときには値引きをしなきゃならないというようないろんな問題を持っておるわけでございますので、そういうことを考えますと、この調整保管を行う者に対しては適切に運営できるような助成がなければならないと思うわけでございますが、その点はいかがでございましょうか。
  33. 高橋政行

    説明員(高橋政行君) 特に今のお話は調整保管についてのお話だと思いますが、調整保管につきましては、先生から今お話がございましたように、豊作のときにはどうしても供給過剰というような状態になるわけでございますので、価格の安定を図っていくというために自主流通法人が必要な数量の米穀を保有いたしまして、市場に流通しないように市場から隔離するというようなことをいたしまして、自主流通米の販売環境というものを整備していこうという考えでございます。  こういった調整保管の役割からいたしますと、当然その利益は第一義的には生産者サイドにおいて享受するということになるわけでございますから、調整保管費用は生産者サイドにおいて負担すべきではないかというそういう御議論なりもあるところでございますが、また一方、そういう価格安定を通じて、広く米の価格安定ということで消費者にも裨益するところがあるんじゃないかという議論もいろいろございます。  いずれにいたしましても、こういった調整保管に要する費用につきましては、今後調整保管をどういうような仕組みにしていくか、特に政府の備蓄との関係でどういうような役割分担にしていくかという全体の仕組みの詰めを合しているところでございますので、その中でその支援のあり方についても検討をしていきたいというふうに思っているところでございます。
  34. 陣内孝雄

    陣内孝雄君 調整保管に対する支援が適切でないと、これはやっぱり生産過剰から農村の崩壊へもつながっていきかねないという大事な面を持っておると思いますので、そこは十分検討をした上で適切に取り計らっていただきたいと思うわけでございます。  それから、備蓄米を政府が買い入れする際の買い入れ価格の問題でございます。  価格は新食糧法の五十九条二項で「米穀の再生産確保することを旨」とするというふうにうたってありますので、この価格の性格とか役割については私は米の価格の下支えであるべきだとも思うわけでございます。  そして、さらに申し上げたいことは、これらの価格というのが米作の生産規模によって生産性が違うということから生産コストには当然幅があるわけでございますが、これについては従来からの地域方式をとること、あるいはまた都市均衡労賃に置きかえるとかいろいろなことは必要なことだと思います。  同時に、これから先、経営規模が急速に拡大していく、生産性が目に見えて上がっていくというような事態が来ると思います。そうすると、従来のように生産性を向上させた努力といいますかそのことによって下がったコストが生産者の努力として残らない、すべて生産者米価の引き下げに吸収されてしまうような印象を皆持つわけでございます。  その点について、これから先、経営規模の拡大を目指して新農政が進もうとしておる、生涯所得は勤労者並みになるんだとかこういうようなことで夢を描いておるわけでございますが、規模拡大していっても、それに伴ってどんどんコストが下がり思うようには所得もふえてこない、利益はむしろどうかなというようなことになっては希望も夢もなくなってしまうわけでございますので、その点でこれから先の米価の算定方式は、先ほど申し上げましたように、再生産確保するということはもちろんでございますけれども、経営感覚にすぐれた人がやっぱり規模拡大をしていってもうかった、利益が残った、できれば生産性の向上分を消費者と分け合うんだというようなことが実感できるような、その辺がはっきりとわかる米価の決め方、あり方、こういうことに努力してもらいたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  35. 高橋政行

    説明員(高橋政行君) 新食糧法におきましては、前と異なりまして、自主流通米が制度的にもそれから実態的にも米流通の主体となる、それから政府米の方は備蓄運営といった特定の政策目的のもとでの機能を有するというようなことで役割が変わってきたわけでございますが、こうした点を頭に置いて政府米の買い入れ価格も決定していくということになるのではないかと考えております。  したがいまして、今回の新法でも政府米の買い入れ価格につきましては、従来と違いまして、自主流通米の価格動向が反映されたものとするということが明記されておるわけでございまして、全体の価格体系との整合性の観点や需給事情、あるいは市場評価というものに応じた稲作生産を誘導するという観点から、適切な価格というものをどうするかという観点一つあろうかと思います。  それからさらには、これも新法で書かれておることでございますが、生産コストを含む生産条件や物価その他の縦済事情も参酌せよというふうに二つの要素、先ほど言った自主流通米の価格動向のほかに生産コストの方も参酌せよということになっております。特に、この点が先生から今いろいろと御指摘にありました事柄ではなかろうかというふうに思っております。  それで、こういう中でどういうような算定にしていくかということにつきまして、現在、米価族議会に小委員会を設けまして、そこで議論をしていただいておるところでございますが、我々といたしましても、そうした議論を踏まえまして、関係方面とも調整の上、施行時をめどに結論が得られるように検討を今急いでいるところでございます。
  36. 陣内孝雄

    陣内孝雄君 時間が迫ってまいりましたので私の要望を申し上げますが、農村あるいは農業食糧、こういったものが今大変先行きが見えないということで後継者も希望を持てなくて少なくなってきている。それを踏まえて新しい農政、ウルグアイ・ラウンド合意後の農政として十分取り組んでいただいております。  しかし、そこで大事なことは、私は、短期的には今お話しになりましたような備蓄とかそういうもので耐えられると思いますが、長期的に見た場合にはやはり生産手段をしっかりと残しておくということが日本食糧安全保障上大事だと思います。そういう意味で、これからの米の自給目標をしっかりと定めて、それに向けて国民的な合意を得て、必要な食糧農業農村対策はみんなで負担を分け合っていくという形がとられなければならないと思います。そういう意味での基本的な法律が今までの農業基本法にかわって私は必要になってきただろうと思いますので、そのことについても検討をさらに急いでいただきたいと思うわけでございます。  最後に、環境庁のことでいろいろ資料の準備をしていただきながら時間の配分が悪くて申しわけない結果になっておりますけれども、一言だけお伺いさせていただきます。  先ほど長官もおっしゃいましたけれども、昨年の末に策定されました環境基本計画では自然と人間との共生ということがうたわれておりまして、国立公園を訪れる人々にもっと自然に触れ合ったり親しんでもらえるようにするということもその施策の一つじゃなかろうか、哲学の中に含まれているんじゃないかと思うわけでございます。  幸い六年度からは公共事業で自然公園の整備もできるようになったようでございますが、まだまだ外国の自然公園に比べると見劣りがするというかせっかくすばらしい自然を我々は共有しながらこれを利用できないでおるということはまことに残念なことでございます。  公共事業によってこういうものをより国民に自然の保全と利用のバランスをとりながら道を開いていただきたいと思いますし、またソフト面でもいろいろ知恵を出して御努力いただきたいと思いますが、そのことについて一言お伺いして、質問を終わりたいと思います。
  37. 澤村宏

    説明員(澤村宏君) お答えを申し上げます。  国民の自然との触れ合いを増進することは、先生ただいま御指摘されたように、昨年十二月に策定されました環境基本計画の柱である自然との共生確保するために極めて重要であると認識しておるところでございます。  環境庁におきましては、昨年十月に自然環境保全審議会に対しまして自然公園等における自然との触れ合いの確保の方策について諮問をし、ことしの七月に答申をいただいたところでございます。  この答申におきましては、すぐれた自然の地域から日常生活圏に至るまで地域の特性に応じて豊かな自然との触れ合いの場のネットワークの形成を目指した施策の展開が必要であり、この実現のためにはハード面の整備の推進とともに、ソフト面での施策の一層の充実が必要であるというふうに指摘しているところでございます。  環境庁といたしましては、答申の趣旨を踏まえまして、ハード面につきましては、まず第一に国立公園、国定公園等のすぐれた自然との触れ合いの場の整備、第二にはトンボや蛍が生息する身近な自然との触れ合いの場の整備、第三には長距離自然歩道等自然との触れ合い歩道ネットワークの形成、これらの施策を積極的に推進しまして環境庁らしい公共事業の展開を図っていきたい、そのように考えております。  また、御指摘のございましたソフト面につきましては、国民参加を得つつ自然解説、利用指導の充実、あるいは多彩なプログラムの提供、ボランティア活動の推進といったような各般の施策の一層の充実を図ることとしております。このようにハードとソフトの両面にわたります自然との触れ合い施策を総合的、計画的に今後展開してまいりたい、このように考えております。
  38. 陣内孝雄

    陣内孝雄君 終わります。
  39. 中島眞人

    ○中島眞人君 厚生省関係について御質問を申し上げます。  森井大臣、「人にやさしい政治」を行う村山内閣の厚生大臣として御経歴を私も見させていただきましたら、社会福祉関係する大変な御経験のある大臣だと。そんな中で、私は本当に当選間もないものでございますから、小さなことについて御質問を申し上げていきたいと思います。  さて、大臣にお聞きをしたいのでありますけれども、「人にやさしい政治」、一番大切なことだろうと思うんです。しかし、昨今の六年越しの経済不況、そしてそれに取り組む諸施策、これは端的に替えば、史上空前の公定歩合の引き下げ、そして金利の引き下げ、まさに年金生活者やお年寄りにとってみれば、とらの子を郵便局に預けて金利を楽しみにといった夢は今やはかなく消えている。百万円の定期預金をやっても、七、八千円くらいにしか利子はならない。こんな中で大変な不安を感じているお年寄りもいることは事実だろうと思うのであります。  同時にまた、高齢化社会を維持するためにと、今から六年前に消費税の大論争が起きました。世の中を変えるくらいの大論争でございましたけれども、今やその論争はうたかたのごとく消えて、二年後には五%の消費税というのはまさに定着をした論理になっている。何か私ども政治に携わっている者もキツネにつままれているような隔世の感を持つわけでございます。  さてそこで、私は大臣にお聞きをしたいと思うんですが、全体に目が向く、少なくとも高齢社会を維持するためには消費税をいただかなければならない、よくわかるんです。我が党はそれを書い続けてきた。そういう中で、また我が国の経済はこういう嫌気を抜け出さなければいけない、低金利にしなければいけないという全体に目が向く中で、個が失われていくんではないかという不安感がお年寄り一人一人の中に漂っている。こんな思いを私は肌で感じるんですけれども、そんな動きを大臣は御就任になった中でどのようにお考えになっているかまずその点についてお聞きをいたしたいと思います。    〔委員長退席、理事佐藤泰三君着席〕
  40. 森井忠良

    国務大臣森井忠良君) おっしゃったように、史上最低の公定歩合になりまして、お年寄りのとらの子の預貯金がそのために思うほど利子が入らない、結果として年一回か二回の楽しみにしておった旅行すらカットしなきゃならぬということにつきましては私どもとしても痛いほどわかるわけでありますが、同時に経済の回復なしには福祉の財源も浮いてまいりません。したがいまして、私どもとしても低金利の時代にお年寄りに迷惑をかけますが、福祉定期貯金制度というのがございまして、これは三百万円まで年四・一五%、現在の金利からいたしますとかなり高いものになっておりますが、せめてそういった制度をこれからも活用していかなければならないのかなというふうに思っております。  それから、消費税率の引き上げ、御存じのとおり議論がありましたけれども平成九年の四月から消費税率の引き上げをさせていただくことになっておるわけでございます。これは、御指摘のように、年金生活者や高齢者の皆さんをある意味で直撃をするかというふうに思うわけでございまして、物価にも影響してくるというふうに判断をいたしております。  この点につきましては、消費税の引き上げが結果として福祉財源にも当然回ってくるという認識をいたしておりますから、その点の関係者の皆さんの御理解をいただきたいと思いますのと、御存じのとおり年金は前の年の消費者物価にスライドいたしますから、したがって一年おくれにはなりますけれども、消費税が上がった、その結果消費者物価が上がったということになれば、明くる年に年金でお返しをせざるを得ないというふうに判断をいたしておるわけでございます。  また、私どもといたしましては、与党の方で議論をしていただきまして、低所得の福祉年金受給者に対しましては臨時給付金を支給するということが確認をされておるわけでございまして、そういった配慮もしていきたいというふうに考えているわけでございます。  御指摘のように、いずれにいたしましても厚生省といたしましては、「人にやさしい政治」というのが村山内閣のモットーでございますから、さらにきめ細かな福祉政策を遂行してまいりたい、こういうふうに考えております。
  41. 中島眞人

    ○中島眞人君 大臣から突っ込んだ御答弁をいただいたわけでありますけれども、確かに消費税論争というのは六年前にございました。そして、その論争によって日本の政治が大混乱を起こしていったということを考えてみると、うたかたの間それぞれ政治に携わった者、今心の中にそんな思いを込めながらじくじたるものがあるのではないかというふうに思うのであります。しかし、必要なものは必要、そして高齢化社会対応していくためにやっぱり音一任を持ってお願いをしていく。  しかし、先ほど私が申し上げましたように、だからといって個が埋没、失われるようであってはいけない。これに対して大臣は、年金等についても翌年にはいわゆるその二%アップ分は上げてまいりたい、こういうふうにおっしゃられました。あわせて私は、二%上がることは必須なんですから、二%上がるんですから、翌年ということになると、その当年度は大変な目減りになるわけであります。あるいは生活保護関係とか、あるいはまた障害者年金の関係とか等々すべてかかわってくるわけでございますので、その辺は翌年という形になりますとこの一年間は丸々二%の目減りという格好になるので、「人にやさしい政治」を行う大臣、二%上がるということはもう必須なんですから、この辺の配慮はやっぱり前向きにしていかなければいけないのではないか、こんなふうに思うんですが、重ねて御答弁をいただきたいと思います。
  42. 近藤純五郎

    説明員近藤純五郎君) 年金額でございますけれども、年金額につきましては、先生承知のように、五年に一回財政再計算ということをやっておりまして、そのときに給付と負担を将来にわたってどういうふうにバランスさせるかというふうなことで、その際に国民生活の向上に伴う賃金の上昇でございますとか消費水準のアップ、こういったものを標準にいたしまして年金額の改定をいたしているわけでございまして、その五年の間につきましては実質価値を維持する、こういうことで物価スライドというのがルール化されまして法定されているわけでございます。したがいまして、消費税だけの要素ではなくて、ほかの要素で物価の変動がございますので、こういったものも全部踏まえまして、その上昇分を含みまして、解年の上昇率を翌年の四月からアップをする、こういうシステムでございますので、これによりまして物価の影響によります年金額を吸収できると考えております。  先ほど先生保御指摘のように、年金による生活者、これは現在の金利の低下で大変なことになってございまして、したがいまして、机対的でございますけれども、年金の重要性というのは高まってきているわけでございます。こういう厳しい締済情勢、さらにはこれからの高齢化社会、こういうものを踏まえますと、年金制度というのは非常に大事になってきているわけでございまして、私どもそういう厳しい中でありましても年金制度をますます守り育てていく必要がある、こういうふうに痛感しているわけでございまして、物価スライドの関係はこれまでそういうルールでまいっておりますので御了承願いたいというふうに存ずる次第でございます。
  43. 中島眞人

    ○中島眞人君 確かに、厚生省の考え方というのはわかるんです。  私は、さっき言ったように、全体に目が向けられていって、そして個が失われることがあったとしたら、この高齢化社会に対するいろいろな手だても、やっぱり個が失われ、個が不安を持つようなことがあったとしたら本当に「人にやさしい政治」じゃなくなるんじゃないのか。  国家財政論からいけばおっしゃるとおりですよ。しかし、一人一人のお年寄りにとってみれば国家財政論は関係ないんです。関係ないんです。少なくとも全体論の中で消費税が二%アップされていく、しかし年金が目減りしていく、しっかりこれは物価の上昇の中で見ますよと、しかしそれは翌年の中でと。しかし、二%上がるということは確実に厳然たる事実なんです。生活保護費の問題等についても、私はやっぱりそういう声を大事にしていくのが「人にやさしい政治」ではないのか。ですから、御答弁要りません。  大臣、「人にやさしい政治」を貫き通すという厚生大臣におなりになったわけですから、こんな一人一人の声を大事にする配慮を取り組みの中で、国家財政論の中で勘案しながらひとつ御検討を賜りたい、私は強く要望を申し上げておきます。
  44. 佐々木典夫

    説明員佐々木典夫君) 今の先生の御質問の中で、一言だけ生活保護の基準について補足的に御説明をさせていただきます。  生活保護の基準につきましては、基本的にそれぞれ当該年度に予想されます国民の消費動向対応していく、そういったような観点から、当該年度の政府経済見通しにおきます民間最終消費支出の伸び率を基礎といたしまして改定するというふうな考え方でこれまでやってまいっているところでございます。  したがいまして、これから参ります平成九年四月の消費税率の引き上げによる影響につきましても、平成九年度の民間消費支出の伸びに織り込まれるというふうに考えておりまして、その経済見通しの中に織り込まれてまいると思いますので、当該年度、平成九年度の生活保護基準には反映されることになるというふうに考えてございます。そういう意味で、消費税のアップに伴う影響につきましては生活保護の基準の中には吸収されていくというふうに考えているところでございます。
  45. 中島眞人

    ○中島眞人君 重ねて御要望申し上げます。  生活保護についてはそういう配慮をしてまいりたい、まいりますと。年金の方でも、大臣、ひとつそういうささやかな小さな願いを反映していくように強く御要望申し上げます。  さて、決算委員会ですから決算についての概況を、参議院の決算委員会調査室が出している資料をもとに実は御質問申し上げたいと思うんです。  同時にまた、平成五年度決算厚生省所管一般会計の説明、四年度の説明を見ますと、平成四年度の繰越額は四百八十六億八千六百九十八万円、平成五年度は九百五十三億二千七百十二万円、いずれも予算成立時期はさして変わっていない。そういう状況でありながら、このような倍以上の繰越額が起こっているのは何か。  それと厚生省の、これは後でまた御説明申し上げますけれども国民生活予算でありながら不用額が、平成四年が三百八十三億余円、平成五年が三百二十五億余円というような不用額があるんです。そして、この不用額をさらに検討していきますと、決算調査室の内容でいきますと、ともかく厚生省の不当事項、いわゆる会計検査院の不当事項というものが一覧表になっておりますけれども、二百三十五件中百四十九件、この率、全体の不当事項の六五・五%を厚生省が占めている。金額においては全体金額の七一%を占めている。余りにも突出している不当事項であり、そしてもう一回さかのぼって説明をいたしますと、不用額については平成五年度決算関係資料、参議院決算委員会調査室で出しているのに、不用額は九十二億三千四百万円、特に厚生省の保健衛生施設整備費であります。不用率二一・三%、これは連続性で四年継続をしている。  こういう資料が出されているわけでありますが、これらを一つ一つ御説明をいただくのは時間の関係がございますので、今申し上げました三点、繰越額、不用額、不当事項についてひとつ御答弁をいただきたい。
  46. 亀田克彦

    説明員(亀田克彦君) 第一点目の繰越額でございますが、平成五年度の予算につきましては、御案内のとおり、当初予算に加えまして、総合経済対策といたしまして平成五年の六月に第一次、平成五年の十二月に第二次、平成六年の二月に第三次ということで、三回にわたりまして大型補正予算が組まれたところでございます。これに沿いまして、厚生省といたしましても年度内の事業執行ということで最大限の努力をいたしたところでございます。  しかしながら、特に施設整備費の関係におきまして、用地の補償交渉が難航したというような事例、あるいは途中で事業の計画が変更になった、こういうことがございまして、事業の実施に不測の日数を要した、こういうことが幾つかございまして、平成五年度の繰越額が大幅に増加をいたしておるわけでございます。今後とも、年度内の事業の執行につきまして最大限の努力をしてまいりたい、こういうふうに考えております。  それから、第二点の不用額でございますが、平成五年の不用額は御指摘のとおり三百二十五億円、こういうことになってございます。この不用額につきましては、地方公共団体からの事業の交付申請など、当初見込んでおった予定よりも少なかったこと等の、当初においては見込みませんでした事情の変更によるものでございます。  予算の編成に際しましては、厚生省としても、財政状況が大変厳しい中でございますので、所要の経費を精査いたしまして要求をいたしておるところでございますが、今後とも実態に合った予算になりますよう、さらに一層の努力をしてまいりたいというふうに考えております。  それから、三点目の不当事項でございますが、平成五年度の決算検査報告におきまして厚生省が不当事項の指摘を受けた主なものは、医療保険や年金の保険料の徴収の関係、それから年金の給付や医療費の支払いの関係等が主なものでございます。  これらの徴収あるいは給付につきましては、その対象件数等が大変膨大でございまして、またそれに伴いまして事務量も膨大なものになっている、そういうこともあったのかと思いますが、そういうことから件数、金額ともに御指摘のように多くなっておる、こういう状況というふうに認識をいたしてございます。いずれにいたしましても、まことに遺憾なことである、こういう認識を強めておるところでございます。  指摘を受けました事項につきましては既に是正措置を講じておりますが、今後とも事業主や都道府県に対する指導の徹底を図るなど、一増の厳正な事務の執行をしてまいりたい、かように考えております。
  47. 中島眞人

    ○中島眞人君 私は厚生省を責めているわけじゃないんですけれども、この実態というのは、厚生省のは国民生活予算ですから、不当事項を一人が行っても一件なんです。ハードのようないわゆる不当事項というのは、例えば建設省の関係とかそういうふうなものになりますとやっぱり大きな金額になります、不当事項というものは。厚生省関係というのは一人一件という格好になりますから、上っていく。変な誤解を受けて大変嫌だなという厚生省の気持ちもよくわかりますけれども、しかし少なくともこれが連続してあるということだけはやっぱり慎まなきゃいかぬ、厳重に注意をしていかなければいけない、こういうふうに私は思うので、ぜひひとつそういう点についてはこれからも厳しい指導をしながらこの問題を減らしていただきたい、ぜひひとつお取り組みをいただきたいと思います。  そこで私は、不用額の問題でこの決算委員会調査室の中にこう書いてあるんです、不用理由が。「地方公共固体等からの交付申請が少なかったこと等により、保健衛生施設等施設整備費補助金を要することが少なかったこと等のため」とある。  実は、厚生省福祉施設補助金の補助率というのは、今年度大変御努力をいただきまして、実勢単価に見合うようになってきています。特別養護老人ホームとかあるいはそういう施設はかなりの努力が見られるわけです。ただし、例えば厚生省が児童対策、これは後ほど御説明しますけれども、児童対策とする児童館など、これは各町村へ行ってみますと補助率は大体三割です、補助率三割。そうすると、町村では児童館をつくりたいけれども、あと七割を地方で見るというのはなかなか持てないよと。予算は計上しであるけれども、もっと端的に言えばもらい手がない、地方からの申請がない、こういうことが私は言えるんじゃないのか、一面。  それともう一つ厚生省として見ると、地方の実態を見ますと、生活保護とかいろいろ扶助料というのはある面では目いっぱい計上している。ところが、実際は扶助料の総額金額に対してはかなり到達度は行っていないわけです。前年度の実勢でもって予算を編成すると、何か生活予算というものを大変低くした、厚生省はとんでもないじゃないかと言われてはいけないから、毎年同じような率でそういう扶助料をやっているけれども、実際問題はかなり不用額が出ている。  そういうところにも不用額の原因というのは、さっき言った児童館、一例を言うと児童館のような補助率が低いという問題、あるいは扶助料等によって目いっぱい——目いっぱいと言ってはなんですけれども、かなり不用額が出ている。しかし、これを実勢で不用額を減らすとそういう問題に、生活予算に対して減らした、厚生省とんでもないじゃないかという御指摘をいただくから、まあまあその点でいくんだ、こういうことが喬うなれば不用額をかなりの高額で残している要因になっているんじゃないのか。こういう見方もうがった見方で見れるんですけれども、その点いかがですか。
  48. 亀田克彦

    説明員(亀田克彦君) 不用額の関係でございますけれども、御指摘ございました補助単価につきましては、逐次物価の動向等を勘案いたしまして逐年引き上げを図ってきておるところでございます。今後とも一層の努力をしてまいりたいというふうに考えてございます。  それから、扶助料等の件でございますけれども、我々はできるだけ正確にニーズを把握いたしまして予算化をする、もちろんそういう方針で臨んでおるわけでございますが、御指摘のように、実態としてかなりの程度の不用額が出ておる、こういうことでございますので、先ほども申し上げましたように、さらに一層厳正にニーズを把握して予算化をする、こういう不断の努力を続けてまいりたいというふうに考えてございます。
  49. 中島眞人

    ○中島眞人君 これは大臣、生活予算ですよ。もっと端的に言えば一人一人のところに行く予算が各省の中で、率直に言えば厚生省の予算というのは一人一人のところに行く予算なんです。  繰越額というのはわかります。経済対策で十二月に予算が組まれた、二月に組まれた。そうなってくれば、冬期豪雪地帯等の中では当然年度内にできませんから、繰り越しがあるというのは理解できます。    〔理事佐藤泰三珊退席、委員長着席〕  しかし、三百億を超える生活予算、厚生省の予算というのは一人一人のところへ行くお金なんです。これが三百何十億円残って、これがいわゆる継続性で何年間も不用額が継続しているというのはやっぱり抜本的に見直していかなきゃいかぬと私は思うんです。本当にのどから手が出るほど必要な方々がいるんです。そういうところへ、目下検討中です、もうちょっとあれしましょうと言っているやさきに三百数十億円の不用額ができるというのは、これはやっぱり「人にやさしい政治」を行うならもう少し知恵を出していかなきゃいかぬと私は思うんですが、大臣いかがですか。
  50. 森井忠良

    国務大臣森井忠良君) 中島先生の御指摘も私十分理解ができます。確かに三百億を超す不用額というのはもう少し細かく分析をして、御指摘のように、一人一人に行くものについてはこれからも是正をしていかなければならないというふうに考えております。
  51. 中島眞人

    ○中島眞人君 大臣からの力強い答弁をお聞きして、次に進ませていただきます。  我が国福祉の大きな問題というのはやっぱり高齢化対策だろうと思います。  そこで、七月四日、社会保障制度審議会が介護費用は公的介護保険で賄うべしと村山首相に勧告をいたしました。次いで同二十六日、厚生省の老人保健福祉審議会の中間答申では、社会保険方式という形でいわゆる介護保険の構想が出されたわけです。そして、それをだんだん興味を持って見ていきますと、厚生省は一九九七年度の導入を目指していると。一九九七年度の導入ということになりますと、あと二年後ですか平成九年からということですね。この介護保険の問題について具体的な御質問をする前に、大臣からこの高齢者介護システムの介護保険の構想についてまずお聞かせいただきたいと思います。
  52. 森井忠良

    国務大臣森井忠良君) 御指摘のように、介護問題はこれから非常に重要な課題になってくるであろう。私は、就任をいたしましたときに、ほかの問題もありますが、二十一世紀はもう介護の時代というふうに考えていると申し上げておりまして、これからできるだけ国民の皆さんの合意を得て介護システムを確立してまいりたいというふうに考えております。  時期につきましても、可能なら、来年の通常国会で御審議がいただけ、そして平成九年から実現できるように厚生省としては努力をしたいと思っております。現在は老人保健福祉審議会におきまして中間報告をいただいた段階でございます。  これは一言で申し上げますとまだ総論的なものでございまして、各論はまさにこれからというふうに考えております。会長さんも交代をされまして、宮崎先生が経済企画庁長官におなりになったものですから交代をいたしまして、加藤先生に新たに御就任をいただきまして、今月からいよいよ精力的な御審議をいただくことになっております。  審議の仕方につきましては、私はなるべく国民の皆さんの合意と納得をいただけるような御審議をお願いしたいということでございまして、今申し上げました老人保健福祉審議会での御審議をいただく場合に、提出をする資料はすべて公開をする、議事録についても公開をする、それからアンケート調査も行いまして国民の皆さんの声も十分に聞かせていただく。その上に、やや異例かもしれませんけれども、老人保健福祉審議会が地方でも脇かれて、公聴会的なものを、直接国民の声を吸収していただくようなことも考えていただきたい、そういうふうにお願いをしておりまして、要は二十一世紀に向けて必要な介護が完全に確立できるような、これからそういう御審議をお願いしたいと思っておるわけでございます。  介護の必要性につきましては、総理府等の世論調査を見ましても九割の人がやはり老後に不安がある、その中で特に健康に不安があるという答えが半分以上返ってきておるわけでございます。さらに、介護に関して言いますと、これは非常に心配である、自分はともかくとして、連れ合いが病気になった場合に一体介護はだれがやるんだろうか。  私の基本的な認識としては、これからは今までのような家族介護だけではもう律し切れない、社会的な介護を確立する必要があるということで取り組んでいるわけでございまして、例えば介護する場合に個人個人に見合った、これはもう年齢も、それから住んでいる環境もそれぞれ個人個人違うわけでありますが、その個人のニーズに見合ったような介護を確立したいというふうに思っております。  そのための財源をどうするか。おっしゃったように、老人保健福祉審議会におきましては一応社会保険方式でやっていきたいというふうな中間的な御意見もいただいております。国も応分な支出をしながら、同時に現役世代の皆さんと、それから受益者である高齢者の皆さんと三者の御負担をいただくことになるのではないかと思いますが、申し上げましたように、今月に入りまして本格的な御審議をいただいておりますけれども、各論になりますと相当私は意見の対立もあるのではないかというふうに考えておりますが、何とかまとめていただきまして、申し上げましたような揺るぎない介護制度の確立のために厚生省といたしましても努力をしていきたいというふうに思っております。
  53. 中島眞人

    ○中島眞人君 大臣、それにしても、平成九年から実施、来年度通常国会には出したいというのには余りにも厚生省試案が、厚生省では試算、いろいろな試行錯誤をしている内容を私も漏れ聞いています。例えば保険者をだれにするのか。考えられるのは、今大臣の口からも出たように、国になるのか都道府県になるのか、あるいは市町村になるのか。じゃ被保険者はだれになるのか。じゃ何歳からやるのか。今くしくも大臣は該当するお年寄りにも出してもらいたい、こう言われた。これ大臣、中身は出ていないものですから、各マスコミの社説ではみんな総論賛成なんですよ。しかし各論になってきたら、これは六年前の消費税の、いいことなんだけれどもと言ってまた同じ消費税論争だ。また政権を本当に揺さぶるぐらいの大きなうねりが出てくる要素というのは持っていますよ。  例えば、国が保険者になってくれるならいいんです。もっと端的な、国保のような市町村で保険者になってくださいなんという案で来たとしたら、現在でも国民健康保険は、過疎地域と過疎の地域でない地域、これは六倍差ですよね、国保の金額は、いわゆる負担率は六倍差。これへもってきて、同じような保険者を町村だなんという格好になってきたら、これはもう第二国保ですよ、第二国保。そして、特に山梨県あたりにおいては高齢者人口が三五%ぐらいになっている農山村がある。じゃ広域でやってくれと言ったって、そういう高齢者を抱える高齢化のある町村なんかは入れない、こういうことになる。だが、総論ではみんな賛成なんです。  同時に厚生省が、GNPを四%で新ゴールドプランで移行したとすると、平成十二年には四兆三千億介護費がかかります、試算、私のところも資料とったのがあります。そうすると、それを二十歳以上の単純計算でやれば月々二千円の御負担です。四十歳以上になると大体四千円ですという試算が、実は厚生省がいろいろな形で試行錯誤しながら、いろいろな検討をしている資料というのは地方なんかへも流れているんですね。  私は、広く国民の皆さん方にやっぱりそういう問題提起をどんどんしていっていいんじゃないですか。必要ですよ、介護システムは。反対じゃありませんよ。やっぱりやるんなら理解を求めるために、こういう案なら、こういう案なら、こういう案ならという案をいっぱいになるくらい資料をどんどん出していくべきだと思うんです。その辺はいかがですか担当局長
  54. 羽毛田信吾

    説明員羽毛田信吾君) 先生今お話のございましたように、介護の問題というのはこれからの極めて大事な問題でございます。一面これは、今後非常に急速に高齢化が進んでおることを考えるならば、非常に急いでやはり対応していかなければならない問題であることも一面ございます。しかしながら、一面において、先生これも御指摘のとおり、全国民的な関心事項でもございますし、また全国民にそれぞれに大きな影響というものを与えてくる制度でもございます。  そういう意味では、先生お話しのとおり、できるだけ幅広い国民の静様方にお知らせをし、国民皆様方の御意見をちょうだいするという形の中で進めていかなければならないということも二面そのとおりでございます。  そういう意味からいえば、どんどんそういうものを出していくべきであるという御指摘はそのとおりでございまして、私どももまさに、先生今ちょっと数字の御披露がございましたけれども、ああいった資料も、実は老人保健福祉審議会が中間報告を取りまとめるに当たりましていろいろお出しをした数字を広くこれは公表をいたしまして、そういう形での努力も今までいたしてきたつもりでございますが、今、先生指摘ございました、もっとそういうことを心がけてやるべきであるという御指摘でございますので、そういう方向で私ども今後とも心がけながらやってまいりたい。急ぎながら、しかし、みんなの御意見をできるだけ幅広くあれするようにしながら、こういう姿勢でやっていきたいというふうに思います。
  55. 中島眞人

    ○中島眞人君 もう時間がありませんからあれですけれども、この問題は日本高齢化社会福祉体系を、進路を決める大変重大な問題だと思うんです。しかし、国民の皆さん方の理解がなくしてこの問題は絶対実現できない。  と同時に、国が都道府県や町村へ肩がわりをする姿勢を示したら、これは崩壊しますよ。やっぱりこれを導入するなら、国が責任を持っていくという格好をとらなかったら第二国保になりますよ。この気持ちを十分心して私は取り組んでいただきたい。私は参議院の厚生委員会にも所属しておりますから、この問題については今後十分論議をしていきたいと思います。  ただそこで、ドイツは今年度から実施した。二十年間論議してきたんですよ、ドイツでは。その中で、老人保健福祉審議会のメンバーの樋口恵子氏がこの実態を見にドイツに行ってまいりました。その報告が出ているんですけれども、「日本型公的介護保険」という言葉をしばしばお使いになっております、厚生省の中で。しばしばそういう用語がマスコミに出てきております。  さてそこで、ドイツでは現金給付、月額千三百マルク、約七万九千円。そして、先ほど大臣はやっぱり現物給付だと言うんですけれども、ホームヘルパーとかあるいは訪問看護、各地方へ行くとこの人数、数の確保に大変苦しんでおるんです。「日本型公的介護保険」という行き方は何に重点を置いていきたいのかということを大臣からお答えをいただきたいと思います。
  56. 森井忠良

    国務大臣森井忠良君) まず、御理解をいただきたいと思いますが、私から今こうするというのは、先ほど老人保健福祉審議会の審議の模様についてコメントさせていただきましたが、先ほども申し上げましたとおり、これから具体的に各論について同審議会で御審議をいただくわけでございますから、その結論を待ちたいというのが基本的なスタンスであることをまず申し上げておきたいと思います。  ただ、厚生省としても、同審議会を運営するに当たりまして、可能な限り御協力を申し上げ、また必要な資料も出していきたいというふうに考えておることをまず御理解をいただきたいと思います。  それから、御指摘のように、ドイツがことしの一月から老人介護システムを導入いたしました。報道によりますと、今のところいわゆる在宅介護が始まりまして、来年から施設介護を行うようでございます。先進国ではドイツが初めてだというふうに私ども理解をしておりまして、ドイツの事情についてもこれから調査をしたいと思っておりますけれども、いろいろまだやってみて問題があるようでございますが、日本型とおっしゃいますと、確かにそのことも考慮に入れなければならないのかという点が幾つかあるように私は認識をしております。  例えば、家族介護について、ドイツでは賃金に相当するものを払っていらっしゃるわけでございますが、我が国の場合それが適用できるかどうか、これ一つとってみましても、やはり我が国に見合ったものにしていきたいという気持ちを持っておりますけれども、いずれにいたしましても、冒頭申し上げましたように、今審議会で御審議をいただいている最中でございますから、しばらくの間ひとつお許しをいただきたいと思います。
  57. 中島眞人

    ○中島眞人君 大臣、よくわかります、慎重な姿勢は。しかし、来年通常国会へ出して平成九年からやろうというんですから、どんどん蛮勇を振るって、こういう方法はいかがかぐらいのことを、大臣、啓蒙の意味でやってくださいよ。  私は、こんなものは従来役所が固めて、そして私がさっき言った四兆何千億という数字が出回っているといいますけれども、出回っていないんです。出回っていませんよ。だから、各報道機関はいいことだから褒めているんです。中身が出てきたら本当に矢面に立たなければなりませんよ。しかし、それをも乗り越えていくだけの勇気と自信を持たなければだめですよ。  それは大臣、私がもっとお願いしたいのは、やっぱり安直な現金給付に走ったら日本的な公的介護保険は崩壊すると思う。はっきり言って少子化時代、特に女性に対する負担は現金給付によって倍増していくということを樋口さん自身も言っているんです。私は、この問題をやっていこうとするなら現物給付、現在でも足りないホームヘルパー、訪問看護、この人数の確保を命をかけてやるぐらいの姿勢で臨まないと仏つくって魂入れずになるんです。  ですから大臣厚生省の役人の皆さん、それは懐の中に入れなくて、蛮勇を振るってこういう案でいかがですか、こういう案じゃいかがですか審議会も結構だけれども、こういう政治の場やあるいはいろんな場の中へどんどん問題提起をして、すばらしいやっぱり日本的な介護システムというものをつくるために、開かれた制度を国民の皆さん方と全員でつくるようにひとつ私は強く要望しておきます。  時間もございませんから、私は幾つかの通告をいたしておきましたけれども、この問題は大変重要な問題でございましたので、これに絞らさせていただきました。また厚生委員会の席上でいろいろな御論議をさせていただきたいと思います。  最後に、外国人医療体制の確立の問題で、不法滞在の外国人が健康保険に加入していないため、治療を受けても医療費を支払わないケースが増加をし、これら未収金による病院経営の圧迫や外国人への診療拒否が懸念される社会問題化は年々大きくなってきていることは事実であります。  そういう中で、厚生省は、平成八年度から全国百二十六カ所の救命救急センター、重篤救急患者の診療機関を言うなればこの種の外国人の診療をする機関として指定をする、そういう方針が明らかにされたんですが、これは一歩前進ですからいいことなんです。やっぱり人道的な立場に立って、全部診療拒否、そして、それが個人の病院のいわゆる負担増になっていくという問題に国が一歩踏み出したことはいいんですけれども、全国百二十六カ所の救命救急センターという形になると大体各県一カ所ですよね。一カ所です。一カ所はこういう外国人を診られるんだという格好で指定をすることになりますと、予想される問題としては、例えば山梨県なら山梨県でいいですよ。山梨県は、指定される重篤救急患者の診療機関ということになりますと多分県立中央病院一カ所だろうと思います。この一カ所へ山梨県じゅうの外国人の患者が殺到してきたら、本来的な山梨県の県立中央病院の重篤救急患者の診療機関は麻癖してしまうという心配が実は関係者の中から出てきているんです。  乗り出したことについては評価します。評価するんだけれども、各県に大体一カ所でしょう。そこへ今度は各診療機関から、来た外国人患者さんを全部そっちへ回しちゃったとしたら本来的な救命救急センターの役割というものができなくなってしまうんじゃないかという懸念が現場である。この辺についてまず御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  58. 谷修一

    説明員(谷修一君) 現在、平成八年度の概算要求の中で、外国人の医療に係るいわゆる医療機関側の未収金の対策ということで概算要求の中に入れさせていただいております。  これはことしの五月に、厚生省の中で懇談会がございまして、外国人に係る医療に関する懇談会の報告書がまとめられておりますが、その中で外国人医療、特に生命に直結するような緊急な疾病に対して医療した場合の未収金の問題ということで、これは全国の医療機関あるいは特に自治体病院関係者からもそういうものに対する対策必要性が、言われてきたわけでございます。  今回私どもが概算要求の中で考えておりますのは、重篤な救急患者である外国人が救命救急センターにかかって生命に直結するような緊急かつ重篤な疾病についての医療を受けたと。一方、その救命救急センターがそれに係る医療費についての回収の努力を当然されるわけでありますが、にもかかわらず未収金となったものについて、一件当たり五十万円を超える部分について国として補助をしてこうという考え方でございます。  したがって、私どもの考え方としては、いわゆる外国人に対する医療機関としてこの救命救急センターを指定するという考え方ではなく、考え方としては、生命に直結するような緊急な医療を救命救急センターで行った際に、それの未収金の対策として補助をしていこうという考え方でございますので、私どもとしては、またこれは概算要求の段階でございますから今後の課題でございますけれども、いわゆる救命救急センターでの外国人の救急患者というものが拡大をしていく、そういうことではないというふうに認識をしております。
  59. 中島眞人

    ○中島眞人君 厚生省の方は、そういう病院が負担増になっているお金の問題を国がある程度肩がわりしてやろう、そういうことなんです。それはそれでいいんですよ。しかし、それじゃ各県の診療機関に全部それをやってやる、そうじゃないでしょう、全国百二十六カ所の指定をしたんだから。あなた方がそういうふうにおっしゃっても、現場の方では、じゃ例えばA病院へ外国人がけがをしてやってきた、ここではもらえそうもないと思うから、いや、うちじゃなくて救命救急センターの方へ車を回してしまう、こういう可能性というのは、そうでなくても病院経営が大変難しい時期ですから、必ず起きますよ。ですから、一歩前へ前進をした施策ですから評価をします。そういう混乱が起きないような取り扱いを各地方と十分していただきたいということを、時間もありませんから強く要望しておきます。
  60. 谷修一

    説明員(谷修一君) 先ほども申しましたように、いずれにしてもこれまだ概算要求の段階でございますので、八年度予算においてこのような考え方が実現した場合には、今先生おっしゃいますようなことも含めまして、この制度の趣旨というものを都道府県を通じて十分理解をしていただくように努めたいと思っております。
  61. 中島眞人

    ○中島眞人君 最後に、細かいことになりまして申しわけございません。新ゴールドプランに基づいて、厚生省がデイサービスセンターを猛烈な勢いでつくり、そして地域のお年寄りの福祉対応をしていることについては大変高く評価をいたしております。  しかし、あわせて、本当はこういう言葉は使いたくないんですけれども厚生省の予算には精薄とあるから精薄と言うんですけれども、今精薄なんという言葉を使っている人はいませんけれども、予算用語にあるから精薄通所授産という格好で言わざるを得ません。  デイサービスセンター、精薄通所授産、いずれも厚生省の基準では冷房が認められていないんですね。冷房が認められていない。山梨県の甲府、ことしを例にとってみますと真夏日五十四日、八月の最高気温は平均三十五・七度。人に優しく、そしてデイサービスを行い、来ていただき、ゆっくり休んでください、お食事もそして機能訓練も。しかし、奥夏日に知的障害者の適所授産について冷房がいわゆる補助基準に入っていないというのはおかしいんじゃないか、優しくないんじゃないかこういう声があるんですけれども、これについていかがですか。同時に、今後この問題に対してはどう取り組むのか。
  62. 佐々木典夫

    説明員佐々木典夫君) ただいま老人のデイサービスセンターであるとかあるいは精神薄弱者の適所の施設等については冷房の設備が国庫補助の対象になっていないのはいかがなものかということでございます。結論的に申しますると、私もこの点につきましてはできるだけ早く改善をしたいというふうに思います。  若干経過を申し上げますと、社会福祉施設の冷房設備につきましては、施設の利用者の身体的状況だとかあるいは介護職員の勤務条件を改善する観点から、実は身体障害者の療護施設でありますとか特別養護老人ホーム等、重度の障害等を持った方々を対象とするところをまず優先いたしまして、順次国庫補助の対象としてまいりました。若干取り組みが遅かったわけでございますが、平成四年度から順次重度の施設から始めまして、これまでのところでその他の入所利用をする施設につきましては国庫補助の対象とできたところでございます。  しかし、今先生から御指摘もございましたが、現実のこれからの利用者のサービスのより一層の向上の観点、あるいは職員の就労環境といったような要素を勘案いたしまして、この冷房設備につきましてはデイサービスセンターあるいは精神薄弱者の適所施設等、ぜひ国庫補助の面においてきちっと対応していく必要があるというふうに考えておるところでございます。来年度の概算要求の中に盛り込んでおるところでございますので、私どもはぜひこの実現に向けて努力をしてまいりたいと思います。
  63. 中島眞人

    ○中島眞人君 ありがとうございました。  一つ一つ前向きに取り組んでいる大臣を中心とした厚生省の真摯な態度に心から敬意を表すると同時に、しかし幾つが御指摘をいたした問題については、従来の秘密主義ではなくて、国民参加の中で論議を起こし、介護保険等々の問題にどうかひとつ積極的にお取り組みいただきますことを心からお願いをいたしまして、私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  64. 浦田勝

    委員長浦田勝君) 午前の審査はこの程度とし、午後一時まで休憩いたします。    正午休憩      ————◇—————    午後一時開会
  65. 浦田勝

    委員長浦田勝君) ただいまから決算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、平成四年度決算外二件及び平成五年度決算外二件を一括して議題とし、厚生省農林水産省環境庁農林漁業金融公庫及び環境衛生金融公庫の決算について審査を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  66. 武田節子

    ○武田節子君 平成会の武田でございます。  農林大臣厚生大臣、そして環境庁長官、御就任まことにおめでとうございます。よろしくお願いいたします。  私は、高齢者保健福祉十カ年戦略の新ゴールドプランの進捗状況及び利用状況についてお尋ねをいたします。  総務庁が九月十四日に発表しました我が国の六十五歳以上の高齢人口は一千八百二十一万人と推計されて、総人口の一四・五%を占め、本格的な高齢社会に突入したことが裏づけられました。しかし、政府の高齢社会への対策である新ゴールドプランに対し、多くの問題が指摘されております。  ことし五月、国民健康保険中央会の新ゴールドプランの基礎となった市町村の老人保健福祉計画についてのアンケート調査では、市町村長の過半数あるいは現場の保健婦の約八割が達成困難と考えていることがわかりました。そして、計画達成が困難と回答した二十九市町村に対し達成に必要な対策を聞いたところ、複数回答で、財政的補助七九・三%、自主財源、広域的取り組み、いずれも五一・七%を挙げました。保健婦は計画達成が困難な理由としては、マンパワー、保健婦、理学療法士、作業療法士の不足が八八・五%、予算がないが七六・九%など、そして五五・一%が市町村長に意欲がないと答えております用地方自治体の老人保健福祉計画の達成は困難と危惧されております。  そこで、新ゴールドプランの中の在宅福祉対策として、平成十一年までにホームヘルパー十七万人の確保目標が示されておりますが、この目的達成の見通しについてのお考えをお伺いします。  利用状況は、平成三年度において利用者数二十一万八千人、要望している人が二百四十二万人となっており、要望している人は利用者の十倍以上もございます。新ゴールドプランの目標数ではとても対応できる状態にはございません。  二十一世紀の少子・高齢社会対応した新ゴールドプランの課題について、大臣の御所見をお伺いいたします。
  67. 羽毛田信吾

    説明員羽毛田信吾君) 大臣からお答えをいたします前に、ホームヘルパーのことにつきまして、現状、どういう状況になっているかという御発言がございましたので、最初にその部分をお答えさせていただきたいと思います。  先生今お話のございましたように、新ゴールドプランでは全国の地方老人保健福祉計画、つまり市町村がそれぞれどのぐらい整備をしていけばいいかということを考えておりまして、そのことを積み上げた形の中で従来十万人と申しておりました計画を十七万人に上方修正をして今、今年度を初年度として鋭意増員に努力をいたしておるところでございます。  そうした中で、平成七年度、例えば予算をとりましても、前年度比五六・七%増というような形で九万二千四百八十二人分の措置をしておるというようなところまで来ておりまして、今日までの整備状況としていえば、おおむね順調に目的に向かって進んでいる、しかし格段の努力をさらにしなければならないという状況にございます。  利用状況につきましても、先ほど先生平成三年度の数字をおっしゃっていただきましたが、平成五年度の最新実績で申し上げますと、六十五歳人口百人に対しまして年間の利用真数が現在七十四・二日、これ自体は十分なものとは申せませんけれども、ただ前年度との比較で申させていただきますれば十二・四日、つまり二〇%その間で伸びているというような状況にございますので、総じて申し上げますならば、まだまだ十分ではございませんけれども、着実にその努力をして伸はしてきているということは言えると思います。  しかしながら、今お話のございましたように、今後の高齢化社会を考えればもっともっと努力をしなければならないということもおっしゃるとおりでございますので、私どもの方もそういう計画の達成に向けまして努力をいたしてまいりたいと思います。  ゴールドプラン全体につきましては、大臣からお答えがございます。
  68. 森井忠良

    国務大臣森井忠良君) 新ゴールドプランについての御質問でございますが、その前に御理解をいただいておきたいのは、新ゴールドプランというのは、今年度を初年度にいたしまして平成十一年までの五年間を見越してつくったものでございます。今年度があくまでも初年度でございます。  なぜ新ゴールドプランにしたかということにつきましては、今までありましたゴールドプランの中間年ということで私ども与党といたしまして詳細に検討いたしました。その結果、従来のゴールドプランではやはり相当設計が少なくて足りないということが明らかになりました。その根拠は、市町村に義務づけられております保健福祉計画を総集計をいたしました結果、今局長が申しましたように、十万人ではなくて、市町村からの上がってきたニーズを計算をいたしますと約十七万人になるということが明らかになってまいりました。また、足りないものもあるわけでございまして、例えば老人訪問看護ステーションというのがございますが、これは今までのゴールドプランでは入っておりませんでした。新たに五千カ所追加をすることにしたわけでございますが、いずれにいたしましても、与党といたしまして今までのゴールドプランをかなり上方修正をして今年度、初年度を迎えたということでございます。  なお、市町村からそれぞれ地域保健福祉計画が出されたもの、これは厚生省としてはやはり市町村を信頼いたしまして、市町村のニーズに的確に応じるということで数字をはじき出しております。  ただ、私としては率直に申し上げまして、御指摘もあったかと思いますが、市町村が保健福祉計画を立てる場合に、何といいましても初めての経験でございまして、これからは保健福祉などは市町村が第一線に立っていただくという法改正をしたわけでございまして、まだ市町村にある意味で十分御理解がいただいていない、また作業もふなれだったというようなこともあったかと思うわけでございまして、現在のところ新ゴールドプランが最良のものだと思っておりますけれども、何しろ今年度、初年度ですから、進行する中でなお是正の必要があれば、私としてはやはり大胆に修正をしていくことはやぶさかではないというふうに考えております。
  69. 武田節子

    ○武田節子君 大変ありがとうございます。市町村では計画書を提出してから何か甘かったなどというような声もあったようでございますので、ぜひともよろしくお願いいたしたいと思います。  次に、マンパワー、ホームヘルパーの人材確保と資格についてお尋ねいたします。  現在、要介護老人は全国で約二百万人と言われて、要介護者を抱えた家族の精神的、肉体的負担、生活の見通しが立たないなど、また介護者の虐待も社会問題となっております。高齢者が高齢者を介護する、あるいは高齢者のひとり暮らしの多い時代になっており、ヘルパーの量と質が非常に求められております。  ここで、先日、品川区の特養ホームの巡回型二十四時間対応ヘルパーの実情がテレビで紹介されておりましたので、ちょっと紹介したものを二、三お話ししたいと思います。  九十四歳の夫が九十四歳の寝たきりの妻と二人暮らしで、自分も満足に歩けない状態でありながら、食事の支度、妻の口に食事を運ぶ、おむつの取りかえなどをしておりましたけれども、もうぎりぎりの限界と申しますか悲惨としか言いようのない状況でございました。  もう一人は、四年前から寝たきりになった九十一歳の母を七十一歳の養女が介護しております。寝させたり起こしたりトイレの世話など、養女は時々自分が先に逝ってしまうのではないかと思うことがあるけれども、逆さになったら母がかわいそうだから、母を送ってから自分は逝きたいと思っている、そのために昼だけでも見てくれる人がいたら随分助かるというようなことを申しておりました。  また、親子別居の例ですが、新聞販売店の息子夫婦は五十歳代で、別居の寝たきりの母親八十一歳の介護をしている。その介護者は五十歳のお嫁さんです。彼女は疲労のため倒れ、入退院を繰り返しながら介護を続けております。彼女はこのままだったら家族もろとももう共倒れになってしまう、こう言っております。  こんな状況で、家族は品川特養ホームを訪ねますが、品川区の特養ホームは区内に三カ所、二百四十床の施設でございますけれども、七月現在で四百五十五人が待機しており、年々ふえる一方である。今世紀の入所はとても見込みないのではないか年間何しろ四、五人亡くなった人を埋めるぐらいしか入れないわけでございますから。そこで、巡回型二十四時間対応のヘルパーの介護を受けたわけです。  午前零時、三時、六時、あるいは夜型、昼型、介護者の要望に合わせて訪問して、夜中のトイレ、おむつの取りかえ、水の補給等々を行っております。この間ヘルパーの仮眠は介護支援センターで一時間ずつ二回というような状況で介護を続けておるわけでございます。しかし、家族の方々は九十四歳のおじいさんも七十一歳の養女の方も新聞販売店のお嫁さんも異口同音にとても助かっている、それはそれはもう感謝、感謝でございました。また、無表情であった寝たきりの患者たちも表情が豊かになった、明るくなった、気持ちに張りができたようだと家族の方が大変喜んでおられます。  今後はこの需要は高まる一方になり、もう普通の状態になるのではないかと思われます。しかし、まだまだ時間と時間の空白をどう埋めるか、自立支援等を含めて供給量は絶対最まだ足りません。  そこで、厚生省は今年度より家族の負担を軽くするため、巡回型二十四時間対応ヘルパー制度の導入を実施しております。このため、介護を支えるマンパワーやホームヘルパーの量とともに質的向上がますます求められておりますが、その養成研修制度に対し申込者が募集定員を大きく上回っており、競争率は募集人員の三倍から四倍、場所によっては五倍から六倍にも達していると言われております。  公費による研修システムの充実が望まれます。これは本当に緊急を要すると思います。早急な養成研修制度の改善を図るべきと思いますが、いかがでございましょうか御意見を伺わせていただきます。
  70. 羽毛田信吾

    説明員羽毛田信吾君) 先生、今お挙げになりましたテレビ、私も見させていただきまして、大変深刻な思いで受けとめさせていただきました。そういう意味ではけさほど来お話もございました新しい介護システムをつくっていく、その必要性というゆえんもここらあたりにあると思いまして、改めて新しい介護システムをつくっていくことの重要性ということに思いを新たにした次第でございます。  それから、今お話のございました平成七年度から二十四時間巡回型のホームヘルパーというものを国としても思い切って導入いたしました。品川もその一環でございますけれども、こういったものはやはり地域の必要性に応じて普及をしていくことについて、これからも努力をしていかなければならないだろうと思います。  それにつけましても、今先生お話ございましたように、もとになりますホームヘルパーの養成ということが大変大事だと、おっしゃるとおりであろうと思います。量の面、質の面、両方お話ございました。どちらも御指摘のとおりでございまして、私どもも今の計画におきましても今年度は養成研修をやっておりますが、その研修対象人員を予算でいえば前年度比三倍増にするというような形の中で大幅な対象人員の増加を図りますとともに、それから質の面ではやはり研修のカリキュラム等も見直しをいたしまして、ついせんだってのことになりますが、新しいホームヘルパーの養成研修の内容で今回スタートするようなことにいたしました。  そうした中で、一つには何と申しましても介護能力、こういったものをさらに高めるという形での実技講習でありますとか実習というようなものを重視したカリキュラムにしていく。それからもう一つは、やはり心の通うヘルプと申しますか、やはり福祉サービスの提供に当たっての基本姿勢であるとか、あるいは職業倫理だとか、そういったものの非常に高いホームヘルパーの方を目指していかなければならない。そういう質、量両面の拡大、拡充を図っていくということは大変大事なことだというふうに思っておりますので、目下の取り組みも今申し上げましたように一生懸命やっておりますけれども、今後もそういう方針でさらに努力を続けていきたいというふうに思っております。
  71. 武田節子

    ○武田節子君 ありがとうございます。  次に、非常勤ホームヘルパーの就労環境の整備についてお尋ねいたします。  今、ホームヘルパーは家事援助から痴呆症を含む身体介護へ専門化が迫られております。大変ハードな労働条件で働いております。今年度、常勤ヘルパーの公的補助は、九二年度大幅アップをして年収三百三十万円余、主任ヘルパーには六十五万六千円が加算されております。  しかし、ホームヘルパーの推定七割以上は非常勤ヘルパーでありまして、常勤と比べて賃金が低く、労働時間も常勤とほとんど変わらない労働条件で働いているにもかかわらず、賃金、身分保障とも非常に不安定です。ヘルパーのパートの場合は、介護中心二級で時給が千三百六十円、家事中心三級が九百円、これはモデル賃金なのです。日本ヘルパー協会のサンプル調査ではモデル賃金水準の例は少なく、退職金、昇給昇格、給与表などの三無状態が目立ち、そのほか介護事故、休暇がとれない、病気の感染等、身分保障が不安定で過酷な条件で働いております。  それに比較しまして、区市町村の公務員ヘルパーは、家政婦紹介所や社会福祉法人のヘルパーに比べて人件費が二倍から三倍と高く、派遣時間も九時−五時となっているのに対し、家政婦紹介所や社会福祉法人のヘルパーは午前七時から午後七時まで派遣可能となっております。この官民格差の実態を大臣はどうごらんになられますか。  また、ホームヘルパー事業については、直営、社会福祉協議会、登録、施設、事業団、福祉公社、シルバー事業等、多種多様のヘルパー形態の中で特に注意しなければならないのは、このままの民間委託の拡大でございます。民間委託による質の低下、トラブル等、委託後のフォローが弱い現行の仕組みでは、決して効率的、費用効果的なよい結果がもたらされないことが心配でございます。  利用者の生命を支え、自立を促す在宅福祉の重要なスタッフについては、賃金の面、労働条件の改善、そして社会的地位の向上が図られることがぜひとも必要と思われますけれども、いかがお考えでしょうかお伺いいたします。
  72. 羽毛田信吾

    説明員羽毛田信吾君) 先ほど来お話ございますように、ホームヘルパーの方々の質、量ともに確保が大事だということ、そのとおりでございますし、そのことのためにはやはり今お話のございましたような勤務条件でございますとか、あるいは勤務に当たってのいろんな処遇、こういったものの向上をぜひ図っていくということが大事であることはそのとおりであろうと思います。  そのことは、これはいろいろホームヘルプの実態がございますから、形態等もいろいろあることも今お話しのとおりでございますけれども、どういう形態であろうとも、そういったホームヘルパーの処遇の向上を図ることが非常に重要であるということは私どももそのように認識をしておりますし、私どもとしては勤務形態でありますとか、それによって不合理な格差をつけているというような形での対応はしないということでやってきたつもりでございます。今の単価の点等につきましても、これは常勤の場合の単価を勤務時間当たりに割り振って単価を出すというようなやり方をしています、もちろん勤務形態によってのあれはございますけれども。  したがいまして、そういう意味でできるだけ不合理な格差がつくようなことにはならないようにやってきているつもりでございますが、しかし今お話のございましたような今後の全体を考えるならば、まずもって常勤と言わず非常勤と言わずやはり全体的な処遇向上、これは図っていかなければなりませんので、手当の問題、あるいは活動費に係る補助基準単価の問題、こういった問題については年々努力をしていかなければならないと思います。  それから、勤務に当たりますいわゆる就労環境の問題でありますとか就労条件の問題で、これは先般総務庁の行政監察でもそれについて問題のあるケースがあった等の御指摘もいただいておりますので、そういったホームヘルパーの就労環境の整備等についてやはりきちっとしていく。特に非常勤ヘルパーの場合には、そういったことについて御指摘も具体的にいただいておりますので、そこらのところは労働省等関係省庁ともよく連携をとりながら、就労環境の改善ということについては意を用いてまいりたいと思います。  それから、先生ございましたように、直営でやるもの以外に委託をしてやっているものもございますから、委託先に対するそういったフォローにつきましては、これからも十分意を用いてやってまいりたいというふうに考えております。
  73. 武田節子

    ○武田節子君 ありがとうございます。大事な生命を支えている重要な仕事の方ですので、ぜひともよろしくお願いいたします。  次に、区市町村のショートステイ事業のキャンセル待ち制度の導入についてお伺いいたします。  関東管区行政監察局の調査によりますと、高齢者の在宅福祉の柱の一つとして区市町村が実施しているショートステイで多くの施設がキャンセル待ち制度の導入をしておりません。導入しているのは一自治体だけで、保谷市でございますけれども、この自治体では利用率が九四%に達しております。しかし、他の自治体はキャンセルがあってもベッドはあいたままに放置し、利用率が最も低い自治体は六一%に落ち込んでおり、東京都の在宅福祉は非効率と指摘され、都に改善意見を通知しております。  ちなみに、ショートステイ用のベッドの整備には、区部平均でございますけれども一味当たり約一億一千万円もの税金が使われておると聞いております。こんなむだなことを放置しては、大切な国民の税金のむだ遣いになると私は思うのでございます。至急この改善策を講じ、キャンセル待ち制度の導入についての促進を図るべきと思いますけれどもいかがでございましょうか、お伺いいたします。
  74. 羽毛田信吾

    説明員羽毛田信吾君) 今お話のございましたショートステイ、せっかく整備をしたものを利用がされておらない、あるいは利用が非常に悪いというような実態があるとすればそれはよろしくない、おっしゃるとおりだろうと思います。したがって、ショートステイの利用率の向上につきましては私どもとしても今までも力を入れてきたつもりでございます。  例で申し上げれば、例えばニーズを掘り起こすためといいますか入りますときの手続がたんびたんびで非常に大変だというようなことが利用を損なっているというような面があるといけませんので、利用手続を簡素化しますために利用券方式というようなものを導入するというようなことについて随分進めてきておりますし、また今のお話の面でございますと、やっぱり知られていないために入らないというところもあると思いますから、そういう意味での広報といったようなことについては、非常にまた力を入れていかなきゃならないだろうというふうに思います。  それから、利用のしづらさと申しますか余り固定的な利用だけしか認めないというような形になりますとなかなか利用が進まないということになりますので、例えばニーズで、ショートステイですから比較的短期間入られるわけですけれども、それでも短期間とはいいながら、例えば老人病院から家庭に帰られるのにいきなりはちょっと帰りにくいので、家庭の方のいわば準備態勢を整えるまでの間ショートステイを利用したいというような形態の場合等がございました場合には、そういった利用期間について弾力的に扱うというような工夫とか、そういったものを入れながら、やはりできるだけ利用率が向上していくという方向でやってまいりましたし、これからもやってまいらなければならないというふうに思っております。  ただ、今先生がおっしゃいましたキャンセル待ち制度ということにつきましては、これはそれぞれの自治体ごとの事情というものはやはりそこはあると思いますし、それからまたある程度ショートステイ自体の整備が進んでいないようなところの場合でございますと、これはまたそこに単純にキャンセル待ちというだけではなく、その時点時点での一番ニーズの高い方をやはり優先して入れたいというような、それぞれの市町村ごとの事情、あるいは市町村ごとの一つ方針というものもございますので、一つのメニューとしてこれをということではございませんけれども、やはりそういった考え方もそれぞれの自治体の工夫の中でやりながらやっていくということで受けとめることが大事なことであるというふうに思いまう。  それらも含めまして、今後ショートステイの利用率のさらなる向上に向けて、私どもも、指導もですし、どういう方法が一番いいかということについても、もっともっと考えていきたいというふうに考えております。
  75. 武田節子

    ○武田節子君 せっかく国のお金を使ってつくるわけですから、利用率、効率を高めていただくように御努力をお願いしたいと思います。  次に、病院の付添看護婦廃止の問題点についてお尋ねいたします。  健康保険法の改正で、病院の付添婦が患者の負担軽減や専門家による適切な介護を理由として来年三月までに廃止されることになっております。昨年十二月、厚生科学研究による付添看護の実態調査では、病院における付添看護の解消は予定も含めて七五・五%とおおむね順調に進んでいるとしております。しかし、今医療現場では、準備が整わないまま進められてかなりの混乱が起きているようでございます。患者さんからは不安や不満の声が聞かれ、また病院側では重症患者の受け入れを断るようになっております。  八年間寝たきりのお年寄りのBさんは、半年前まで三人に一人の付き添いがつき、付添費用を合わせて月約八万円の入院費が付き添い廃止で十三万円に上がってしまいました。病院側では付き添いを廃止し看護婦をふやしたためと説明しているようでありますけれども、病室も日当たりの悪い部屋にかえられ、家族は、介護の手がかかるだけで利益にならない患者は出ていけということかというふうなことも育っているようでございます。Bさんは現在、二百人以上が待っている特養ホームヘの入居を待っているようですけれども、これも見込みなしという状況だろうと思います。  また、病院側から家族の方の付き添いをと言われ、偽って高い自費で家政婦さんを頼んだり、また、入院中の夫に付き添いをつけ順調に回復していたところ、付き添いをやめるので病院を移ってほしいとかこのほか医療団体連絡会議にさまざまな相談が寄せられております。  東京のある医療団体の調査では、付き添い解消のための方法として、手のかかる患者を減らすが三六・五%、家族、患者の負担がふえるおそれありが四八・一%と答えております。また、看護婦やヘルパーを雇うための出費が病院経営上の重荷となり、民間の中小病院のベッド数や人手が少なくて済む診療所への転換がふえております。  厚生省は、廃止に伴って看護婦三千人、看護補助者六万人が必要としていますけれども、全国一万の病院の約六割が看護婦数の基準を満たしておらず、このままでは看護婦の手が足りないのは目に見えておると思います。厚生省は、健康保険法改正の当初、その趣旨は患者の負担軽減や専門家による適切な介護とうたっておりますけれども、現実は逆に患者の負担増、医療の低下となっておるようでございます。この実態と厚生省認識の間にかなりのギャップがあるのではないかと思われますが、いかがお考えでございましょうか。  また、介護のマンパワーを考えるとき、約十三万人の家政婦の将来はどうなるのでしょうか。その大半は病院の付き添いで、厚生省はその付き添い全廃を進めておりますけれども、家政婦は病院職員になるのか、在宅介護の道を進むのかこれは労働省管轄ではございますけれども、行政の枠を超えて人材活用を考えるべきと思いますけれども、この現状をどう認識されるのでしょうか大臣の御意見をお伺いしたいと思います。
  76. 岡光序治

    説明員岡光序治君) おっしゃいましたように、付添看護の解消につきまして法律の改正をいたしまして体制を整えるようにしております。私どもも、御指摘があったような混乱があっては困りますので、実情の把握をし、そして計画どおりの付添看護の解消に向けて状況を整えていきたいというふうに考えている次第でございます。適時状況を把握しながら、どういうところに手を入れなければならないのか、そういったウォッチをしているところでございます。  具体的に申し上げますと、昨年十月の診療報酬の改定におきまして看護婦さんのほかに介護補助者というそういう人を位置づけまして、その介護補助者を病院内でふやしていけばその数に応じて診療報酬上手当をふやしていく、そういうふうな新しい看護の診療報酬体系をこしらえたわけでございます。  そして、急にはそういった体制に持っていけない病院も現実にはあるわけでございますので、そういった病院につきましては付添看護の解消計画というのをつくってください、その解消計画をつくっていただいた場合にはその計画を促進すべく加算をいたしましょうと。あるいは、経過的には体制は整わないかもしれませんので、そういった計画をつくった病院、診療所におきましては、例えば従来から特定の寝たきりなどの患者さんについて看護補助を行っている、そういうケースにつきましては引き続いでそのような体制を認めようではないか、それを特別介護料という格好で認めていこうと。あるいは重篤、術後の患者さんについて看護婦さんとか准看護婦さんが看護を行った場合には特別看護料というものも特別につけようではないか。  そういった格好でいろいろ御支援を申し上げながら、付添看護のない、まさに先生おっしゃいましたように患者さんにとっては負担が軽減し、そして専門家によるチームワークでの看護、介助体制が整えられるように、そういう院内体制を整えていきたいという趣旨で仕事を進めている次第でございます。  それから、具体的にまだそういう解消計画をおつくりになっていない病院もございますので、私どもただいまのところ都道府県を通じまして、どうしてできないのか、それで計画をつくるためにはどういうところに意を用いでどのような格好で進めればそれが実現するかという相談、助言を大いに進める体制を整えて、今個別にお話を進めているところでございます。  それから、重症患者が追い出されるんじゃないかというふうな御心配、あるいはそういったことを御指摘なさる方もいらっしゃるわけでございまして、私どもは医療上の判断とは別の観点から患者さんに退院を強いるようなケースは絶対許せないということで、その辺は十分そういった不適正な事例のチェックをして、そして病院側によく理解をしていただきまして対応をきちっとしていただくべく適切な指導を続けているところでございます。  それから、従来、家政婦紹介所から付添婦として派遣をされていた方がいらっしゃるわけでございますが、その人たちをうまく職場転換するようにという御指摘がございましたが、それはその趣旨で私ども対応を考えている次第でございます。繰り返しになりますが、診療報酬上も院内で看護補助者というものを位置づけまして、従来の付き添いさんがその看護補助者になっていただくようにと。それからまた、具体的に特定の患者さんについていらっしゃる場合には、先ほど申し上げましたが特別介護料というふうなものをっけまして、その人の職場を継続できるように持っていきたいというふうに考えているわけでございます。  あわせまして、労働省とも連絡調整会議を設置いたしまして、家政婦の雇用に関する対策を進めておるわけでございます。このお互いの連絡でもっていろいろな問題点が出ておりますので、そういったことを一つ一つ解消していきたいと思っております。現在私ども進めておりますのは、家政婦紹介所の所長さんを対象に、病院雇用促進マニュアル、病院でこういった方々に働いていただけるような雇用を促進するための研修会を開くとかあるいは在宅介護で大いに仕事をしていただきたいと思っておりますので、その在宅介護マニュアルを作成いたしまして、それを勉強してもらって指導してもらうとか、あるいは付添看護の解消推進者の教育を行うということによりまして具体的な解消が行われるように、あるいは看護補助者に対しましても、東京、大阪においては研修会を開くとかそういう研修の場を通じていろいろ転換を図っていきたいということもあわせ考えているわけでございます。  なお、御存じだと思いますが、労働省におかれては、付添婦の院内化を行った場合に家政婦紹介所へ病院などが払った紹介手数料相当額を助成する特別の助成制度を創設されておりますので、そういったことも施策の一つとして活用しながら、混乱がないように、そしてこういった有為な労働力をうまく生かしていきたい、そういうふうに考えている次第でございます。
  77. 武田節子

    ○武田節子君 どうもありがとうございます。ぜひ現場からの声などもよく聞いていただきたいと思います。  次に、水の安全確保対策について関係する各省庁にお尋ねをいたします。  まず、行政監察局が去る平成五年四月から七月に、水質保全を図る観点から国、地方公共団体等の水質汚濁防止対策の実施状況を調査いたしました。この監察結果に基づき、平成六年五月三十日に環境庁に勧告されております。その勧告の要点は次の三点でございます。一、公共用水域における水質汚濁防止対策推進。二、地下水汚染防止対策推進。三、特定事業場に係る排出水対策推進及び規制の緩和。以上三点についての処置状況を簡略に要点のみお答えください。お願いいたします。
  78. 嶌田道夫

    説明員(嶌田道夫君) 昨年五月、総務庁から今先と言われました勧告がございました。この勧告を受けまして、環境庁といたしましては、都道府県等に対しまして環境基準の類型指定の見直しや特定事業に対します指導監督の適正化が図られるよう指導するとともに、昨年の十一月でございますが、地下水浄化のための技術指針の策定など所要の措置を講じたところでございます。
  79. 武田節子

    ○武田節子君 それでは次に、水道水の有害物質である発がん性物質のトリハロメタンの濃度が基準数値を超えるおそれがある浄水場の問題が指摘されておりますけれども、これは厚生省が九一年から九三年までと、九四年の一月から八月までに行ったトリハロメタン検出状況調査によるものであります。基準値は〇・一ppmで、その七〇%の〇・〇七ppmを危険ラインとしております。  この基準値を超えるおそれのある水道事業体のある県として、千葉県と沖縄県がこの二度の検出結果の両方に名前を連ねております。また、九四年時の調査による危険ラインを超えた事業体は四十四カ所にもなっております。これは九一年の時点から九四年まで状況は改善されていないのではないかとの危惧の念を抱くわけでございますが、これはやはり罰則規定が厳格さに欠けるなど、対策に甘さがあるからではないかとも考えられますけれども、このトリハロメタン検出状況調査結果を受けて、厚生保省、環境庁、それぞれのお立場からの認識対応をお聞かせください。  また、トリハロメタンの基準値〇・一ppmや危険ライン〇・〇七ppmで本当に身の安全は保たれるのでしょうか。他国の基準はどうなっているのでしょうか。伺いたいと思います。  人間の生存にとって生理的に絶対必要な水の最一日約二リットルを、このトリハロメタン濃度を含む水道水を一生飲み続けたときの発がん率は十万人に四人と計算されています。発がん物質に許容量はなく、発がんに対する濃度はやはりゼロにすべきであると思うのでございます。  トリハロメタン以外の有機塩素化合物の中には、解明されていない危険物質が規制の対象外とされて手つかず状態のままにされているものも数多くあると指摘する専門家もおります。この方面で早急な対策が必要ですが、この方はどう対処していますか。厚生省環境庁にお尋ねいたします。
  80. 坂本弘道

    説明員坂本弘道君) お答えいたします。  平成六年の水道水中のトリハロメタンの検出状況でございますが、全国千四百六十九の水道事業につきまして調査いたしました結果、四つの水道事業におきましてただいま御指摘ございました水質基準を超過しておりまして、また七十五の水道事業者で水質基準の七割を超過しておる、こういう状況でございまして、いわゆる基準値超過の要注意レベルに達しておるということでございます。  それから、厚生省としてでございますが、この基準値の七割を超過した段階で改善対策を早急に講じる必要があると従来から考えております。このため、塩素の注入量の削減とかトリハロメタン低減化対策を講じまして、すべての水道事業者におきまして基準値の七割以下の水準になっておりますが、さらに高度な浄水処理の導入だとか、また適正な浄水処理というようなことを推進いたしまして、それからまた水道原水法というのがございますが、これの活用を図りまして、水道の原水、いわゆる川の水とか湖の水でございますが、この水質保全推進を図ることによりまして、恒久的に安全で良質な水道水を供給できるように努力してまいりたい、かように考えております。  それから、第二点目でございます。トリハロメタンの基準値〇・一ミリグラム・パー・リッターでございますが、現行のトリハロメタンの水質基準は、連続的に摂取しても人の健康に影響が生じない水準として安全性を十分考慮して設定されております。国際的に見ましても、我が国の基準はWHOの飲料水ガイドラインの値と比較いたしましても同等以上に厳しく、またトリハロメタンについての研究が進んでおりますアメリカ合衆国におきましてはいまだ基準化がされておりませんが、総トリハロメタンで日本と同じ〇・一ミリグラム・パー・リッターの基準案が示されておりまして、さらに検討が進められておる、こういう状況でございます。  それから三点目の、トリハロメタン以外にも有機物質が水道水中に多数存在するというようなことで基準がどうかという御指摘でございますが、厚生省では平成四年十二月に、従来の二十六項目の水質基準を四十六項目に増加いたしまして基準値を強化したところでございます。この中におきまして、トリハロメタンを含め当時検出されていました布機塩素化合物十五項員を水質基準として追加したところでございます。  また、このほか現時点では検出レベルが極めて低いため基準としておりませんが、その使用状況等にかんがみまして、将来的には検出レベルが上昇するおそれのある有機塩素化合物十一項目につきましても監視項目として定めまして、検出状況の監視を継続的に行う、こういうことにしております。  厚生省といたしましては、水道事業者における水質監視結果がまとめられ次第、それを収集整理いたしまして、あわせて健康影響等の科学的知見の集積に努め、必要があれば水質基準の強化を図ってまいる所存でございます。
  81. 嶌田道夫

    説明員(嶌田道夫君) 先と言われましたトリハロメタン対策につきましては、これは浄水場におきます対策だけではなくて、公共用水域でのトリハロメタン生成の原因物質でございますフミン質等の有機物の削減対策必要性がございます。こういうこともございまして、昨年の三月でございますが、いわゆる水道水源法を公布いたしましてトリハロメタン対策を行っているところでございます。  それから、あと有機物質等有害物質でございますが、これにつきましては環境基準に先般追加いたしまして、この環境基準を守るための排水規制、これは水質汚濁法等でやってございますが、これにつきまして鋭意その対策を行っているところでございます。
  82. 武田節子

    ○武田節子君 ありがとうございます。  次に、住宅金融専門会社の不良債権処理の問題についてお伺いいたします。  大蔵省の調査によりますと、住専八社の貸付金額十一兆四千億円のうち、不良債権総額は七四%に当たる約八兆四千億円に上っており、うち回収不能分は六兆三千億円となっております。借入先のうち、農協系続からの借り入れが全体の四五%に当たる総額六兆一千億円になっており、改めて住専問題処理の難しさ、農協系金融機関の経営に与える影響が懸念されます。  そこで、まず農水大臣にお伺いいたしますけれども大臣は就任のあいさつの中で、住専の不良債権問題については、住専の経営不振の責任は母体行が負うべきだ、また安易な公的資金の導入は好ましくないと発言されておりますが、その御真意を伺わせていただきます。
  83. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 住専の問題につきましては、住専は金融機関が自分の子会社としてつくったという設立の経緯があります。したがって、設立後も幹部職員はほとんど母体行から派遣されている、こういう性格を持ったものであります。  また、この住専がなぜ経営不振に陥ったかということをつぶさに調査してみますと、これはバブルの時期に住専が専ら仕事としておりましたことを母体行も同じ仕事をやり出して、その結果、住専の方は住宅から不動産業の方に転向していったという、まさにこの経営不振の原因も母体行がつくっているという経緯があります。さらにまた、再建計画をつくるということになりましたが、その際にはすべて母体行が責任を持って対応する、こういうことになっております。  母体行が責任を持って対応していく、農協系統には元本ロスの負担を求めないとか、あるいは金利減免は農協系統の体力を十分考慮したものにする、またこれ以上の負担をかけない、金利上昇等の情勢変化に伴い経常上の重大な問題を生じさせないように必要な措置を講ずる、系続からの借入金を最優先に返済する、こういうようなことを私どもも要求し、そういう趣旨の話し合いができて、この母体行との、あるいは大蔵省との話し合いで今日までやってきた、こういう経緯があります。  したがって、私どもは、この住専の設立の経緯、性格、不振の原因、あるいは再建計画に当たる母体行や大蔵省との話し合いの経緯を見ましても、当然のこととして柱体行がぎりぎりまで責任を負うのが当然のことである、そういうふうに強く主張してきているわけであります。  公的資金の問題につきましても、どの機関がこれを受け入れて対応していくかという問題をめぐってもいろいろな問題が発生してくるわけでありまして、今私どもは系統にハッパをかけまして、住専側と厳しく対決をしながら、この問題、一方においては景気の回復に大変影響するところがありますから、意欲的にこれをお話し合いするように、そして年内にはこれを何とか決着したい、こういう思いで今一生懸命頑張っている次第でございます。
  84. 武田節子

    ○武田節子君 ありがとうございます。住専についてはもうちょっと質問がございますけれども、時間でございますから、以上で終わります。  ありがとうございました。
  85. 山崎順子

    ○山崎順子君 平成会の山崎順子です。  ちょっと質疑の順番を変えまして、まず離別母子世帯の生活と民法改正試案について先にお伺いいたしたいと思います。  御存じのように、年々離婚件数は増加しておりまして、今後も離別による母子家庭等が増大すると考えられるんですけれども、つい最近、厚生省の方から平成五年度全国母子世帯等調査結果が出されました。そこでは、多くの離別母子家庭は就労形態が不安定で低収入である。この平均収入は、一般世帯で六百四十八万円ですが、生別の母子世帯、これはちょっと非婚の母子も入っているので正確ではないんですが、二百二万円と三分の一以下なんですね。それから、持ち家率も死別母子家庭の場合は六八%と高いんですが、離別、非婚の場合は二二・六%と大変ひどい状況になっております。  こうした中で、離婚しますと父親に引き取られる子も母親に引き取られる子もどちらもいるんですが、多くは父親の方が収入が高いというのが今の日本の現状でございますが、その母子家庭で父親から養育費を一度も受けたことがないのが七割にも達する。そして今、現在受けているのは一四・九%という低率でございます。  こうした中で、母子家庭の経済状況が大変ひどいということはもう想像にかたくないわけでございますけれども、そうした現場を一番よく知っていらっしゃる厚生省としまして、今度民法改正試案で離婚制度が大分変わりますけれども厚生省の側から法務省なりにこの民法改正試案について御意見を出されたのかどうか、ちょっとそのことについてお伺いいたします。
  86. 高木俊明

    説明員高木俊明君) 先生指摘のとおり、現在、民法改正要綱が出されて公に意見を聞いておる段階であります。法務省の法制審議会の民法部会の方でそういうことで行われておりますが、厚生省としてはこの委員会の幹事ということで参画をさせていただいております。  この問題は、現存この民法部会の中で検討が進められておりますところでありますし、またこの民法部会における、先般発表されました改革試案要綱の中では今後の検討課題というような位置づけにもなっておるところであります。そういった意味で、これからの審議会の審議状況というものを十分厚生省としても見守ってまいりたい、このように考えておるところでございます。
  87. 山崎順子

    ○山崎順子君 ちょっと法務省にお伺いしたいんですが、今回の民法改正要綱試案の中に、養育費の規定とか別居中の生活費についての規定とか今よりも母子家庭の状況がよくなるような、そういった部分がありますでしょうか。
  88. 小池信行

    説明員(小池信行君) まず、現行の民法の規定がどうなっているかということでございますが、まず婚姻費用の分担義務につきましては七百六十条に明文の規定がございます。それから、離婚後の養育費の負担義務につきましては親族間の扶養義務に関します八百七十七条で定められている、こういうことになります。離婚によって夫婦の関係は解消するわけでありますが、親子の関係はもちろん変わらないわけでありますので、父母は離婚後もそれぞれ子供に対して扶養義務を負担するということになるわけであります。  このように、民法の規定上は義務の存在が規定されているということになるわけでありますが、先ほど来議員御指摘のような問題がこの義務をめぐってはあるところでございます。このようなことを考えまして、現在法制審議会で行っております民法改正の審議の中では、この二つの義務に関しまして次のような措置をとるということが検討されております。  第一に、離婚後の養育費の負担でありますが、これにつきましては離婚の際に父母の協議によりまして子の監護に必要な事項の一つとして子の養育費の分担について定めをするものということにしております。これによりまして、離婚後も父母それぞれが子供に対して養育費負担義務を負っているということが明らかになるわけであります。  第二に、配偶者に対する協力扶助の関係でございますが、これにつきましては配偶者に対する協力扶助を著しく怠っている者からの信義に反するような離婚請求は許さないということを考えております。婚姻費用の分担義務といいますものは協力扶助義務のいわば根幹をなすものでございますから、この義務を著しく怠っている者から離婚請求が起こされたというような場合には、その請求は排斥されるということになろうかと思います。こういう措置をとることによって、間接的にではありますけれども、婚姻費用分担の義務を誠実に履行することを促す、そういうことが期待されるということになるわけでございます。  民法部会、まだ審議の過程でございますけれども、答申が得られましたら法務省といたしましては民法改正の面で適切に対処してまいりたいと思っております。
  89. 山崎順子

    ○山崎順子君 養育費用の分担義務等を明示したのは一歩前進だと思うんですけれども、二十年近く離婚母子家庭等の問題をやってまいりまして、これだけ養育費を払う父親がいないというのはいろんな問題がございまして、この明示をしただけでは、罰則規定もございませんし、それから国の立てかえ払いもありませんし、また父親がせっかく払っていても税金上の優遇措置もありませんし、さまざまな要望も出ているんですが、これができたからといって養育費を即座に一〇〇%払うようになるとはちょっと考えられないんですね。  そうしますと、来年の通常国会でこの民法改正試案の審議が行われ、早ければ来年の十月とか年末ぐらいまでにはこれが施行される状況になると思うんですが、現実には、私は破綻主義には原則としては賛成なんですが、働く場が少ない女性たちの問題、一生懸命自立したくてもできない状況ですとかこういった法律ができても社会的な整備がされていない中で母子家庭がさらに困窮することは予想できるわけで、そういうときに厚生省の方は別居中でも児童扶養手当をお出しになる準備があるのかどうか、ちょっとその辺についてお聞きしたいと思います。
  90. 高木俊明

    説明員高木俊明君) 別居中の生活をどうするのかということでありますが、これを児童扶養手当で賄うということはなかなか難しいと思います。  御承知のとおり、児童扶養手当でございますけれども、これは離婚世帯尊父のいない母子世帯に手当を支給するものでございますので、扶養義務を有する父が存在をしているわけでございますから、そういった意味で別居中であるということだけで児童扶養手当を支給するということは難しいと考えております。
  91. 山崎順子

    ○山崎順子君 そうしますと、法律でも養育費の罰則規定もないし、必ずしも払われるような形になっていなくて、そして別居五年で離婚できるようになる場合のその五年間、例えば児童扶養手当も払われず社会的な福祉の方では救われないとなりますと、ちょっとこれは困るんじゃないかなという気がするんですが、厚生省としては例えば養育費のこと、それから別居中の生活費等のことについてはどういうふうにお考えでしょうか。
  92. 高木俊明

    説明員高木俊明君) 養育費の支払いの問題、履行確保の問題、これは母子家庭の生活を支える意味において非常に重要な問題でございますし、母子福祉行政を担当している私どもとしましても非常にこれは重要な課題であるというふうに認識をいたしております。  ただ、これをどういう格好で履行を確保していくか等々の問題があろうと思いますけれども、私どもとしてはこれは非常に重要な問題として認識しておりますし、ただ、それじゃそれを児童扶養手当でその間補てんするといいますか賄っていくというようなことは適当ではないというふうに思っております。
  93. 山崎順子

    ○山崎順子君 大臣にちょっとお伺いしたいんですが、先ほど言いましたように、次回の通常国会でこの問題が討論されることになるんですけれども厚生省としては大臣が例えば音頭を取って、これは住宅問題もありますから建設省、それから年齢制限などがあって、せっかく大学を出たり高校を出てある程度の技術があっても、結婚して子供を産んで専業主婦なりパートなりをしている間に離婚になってもなかなか教職や保母さんにもなれないし、まともなフルタイムの仕事につけないというような実情もありますと労働問題も入ってきますから労働省も入れ、そして男女共同参画型社会のそういったことを推進していらっしゃる総理府なども入れて、この民法改正試案については早急に委員会なりをつくられて検討していただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。
  94. 森井忠良

    国務大臣森井忠良君) 厚生省は母子福祉行政を預かる立場でございます。  したがいまして、養育費の支払いについては非常に関心を持っているわけでございまして、現在法制審議会民法部会で検討していらっしゃるようでございますし、先ほど政府委員が答弁をいたしましたように、この審議につきましても厚生省からも入っておりまして、意見は申し述べているわけでございます。御指摘のことがございますので、私といたしましても必要ならば関係省庁とも話し合う用意はございます。  ただ、委員指摘の別居中の夫婦につきまして、五年間で処理をするという形にこれからどうもなるようでございますけれども、その間、児童扶養手当の対象ということにつきましてはやはりにわかに同意しかねるわけでございます。社会保障の制度としては、例えばどうしても生活が困難というふうな場合には、ほかの制度も厚生省としては持っているわけでございまして、該当するところで適当な対処をしてまいりたいというふうに考えております。
  95. 山崎順子

    ○山崎順子君 私、法務委員会にも属しておりますので、この問題は法務委員会の方でもっと深めたいと存じますけれども、今、大臣は必要ならばとおっしゃいましたが、これはもう本当に必要なんですね。ですからぜひとも、児童扶養手当が出せないということであればなおさらのこと、今度の民法改正試案の方に積極的な御発言をいただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。  それでは、次の質問に移らせていただきます。  年金積立金自主運用事業についてなんですけれども、きょう私は三つのことについて質問したいと思っております。  一つは、年金積立金の自主運用の決算に関する質問です。もちろん、この決算が黒字でしたら何もわざわざここで質問することもないんですけれども、ずっと赤字が出ておりますね。先ほど大臣は就任のごあいさつの中で、安心できる長寿社会を目指すために努力したいというようなことをおっしゃいましたけれども国民が老後のために一生懸命預けている年金の積立金が自主運用の方で大変な赤字が出ているという、これはもう大問題だと思うんですね。これはやはりしっかりと私はきょうは答弁をお聞きして国民の皆さんに伝えなきゃいけないと思うんです。そういう義務があります。ですから、ぜひともわかりやすく御説明いただきたいと思っております。  それから二つ目は、ずっと赤字が出ている、それも莫大な赤字が出ていることは大問題だということで、一応その検討会ができましたね。そして、提言も出されております。これに関しての質問です。  三つ目は、運用機関なんですけれども、年金福祉事業団というところに運用させているようですが、ここへの決算に関する御質問ということで、きょうはわざわざ参考人として年金福祉事業団理事の加藤栄一さんに来ていただきましたけれども、お礼申し上げます。  それでは質問させていただきます。  きのう、きょうの新聞を随分、テレビのニュースをもにぎわしておりますけれども、大和銀行のニューヨーク支店の嘱託行員が逮捕された事件、皆さん御存じですね。この行員は帳簿外で米国の投資を長年続けておりまして、それに失敗して、そしてそれをごまかすために同行の持っている有価証券を無断で売買して、合計何と一千百億円もの損失を出したということなんですね。  この前、ベアリングズ社のデリバティブのあれがありましたけれども、あれも大体一千億円ぐらいの損失を出しているんですが、あれはデリバティブですから瞬間的なかなり短い期間のものなんですが、何とこの人の場合は十一年にわたって三万回もの不正取引をやっているわけです。  なぜこういうことが起きるのか。これは、もしディスクロージャーをきちんとやっていれば、こんな十一年間もわからなかったと、一千百億も損失を出さないで済んだんじゃないかと私は思います。もし一、二年でディスクロージャーされていて、その一、二年で判明していれば、十億とか百億ぐらいで決着がついたのじゃないんでしょうか。  というところで、この年金積立金に関しても、自主運用事業のディスクロージャーということはとても必要だと思うんですけれども、今現在このディスクロージャーはされているんでしょうか。もしされているとしたら、国民に対してなのか国会に対してなされているのかちょっとお聞きしたいと思います。
  96. 近藤純五郎

    説明員近藤純五郎君) 自主運用事業につきましてのディスクロージャーの問題でございますけれども、自主運用事業の実績につきましてはこれまで特殊法人の会計基準に基づきまして決算状況を官報で公示いたしているわけでございますし、また事業の運営状況につきましては年金福祉事業団の事業年報というふうな形で公表いたしているわけでございます。  十分でないという指摘を受けていることはそのとおりでございますけれども、この事業といいますのは非常に巨大な資金規模を持つ事業でございまして、したがいましてこの公表自体が市場に対して非常に大きな影響を与える場合もあるわけでございます。しかし、この事業はまさに国民の資産ともいうべき年金の積立金を運用している事業でございますので、当然のことながら国民の御理解を得るためにもディスクロージャーの必要性というのは我々痛感しているわけでございまして、その視点から、年金福祉事業団とも協議いたしまして、さらに本事業に関しますディスクロージャーを推進するためにその方法とか内容を検討しているところでございまして、今年度におきましてはぜひとも充実した内容のディスクローズをしたいと、こういうふうに考えている次第でございます。
  97. 山崎順子

    ○山崎順子君 十分じゃないということをしっかり認識なさって、今後ますますちゃんとディスクロージャーしていただくということであればいいんですが。  では、運用の管理というのは、これは時価ベースでなさっているんでしょうか。
  98. 近藤純五郎

    説明員近藤純五郎君) この年金福祉事業団におきましては、特殊法人でございますので、特殊法人の会計基準ということはすべて簿価方式ということになっているわけでございます。  したがいまして、そういう形で管理をいたしているわけでございますが、やっぱりこういう運用の問題は時価方式の方がベターであると、こういう認識が進みつつあるわけでございます。これは厚生年金基金の関係でございますが、日米の金融交渉におきまして平成九年度から年金積立金の時価評価というものをその決算ベースから採用することに決めておりまして、こういうこともにらみながら、年金福祉事業団の運用管理につきましても時価方式を併用する、こういうことも考える必要があるのかなということで、現在その体制整備を進めているという段階でございます。
  99. 山崎順子

    ○山崎順子君 体制整備を進めていらして、では大体いつから時価ベースで管理なさるんでしょうか。
  100. 近藤純五郎

    説明員近藤純五郎君) 先ほども申し上げましたように、厚生年金基金におきまして平成九年度の決算からというふうなことでございますので、その辺に軌を一にして考えたらどうかなと、こういう考え方でございます。
  101. 山崎順子

    ○山崎順子君 それでは、今資金運用部から借りていらっしゃるわけですけれども、当然利子を払っているわけですから、それを上回る収益を上げることが必要ですよね。この預託金利の水準というのはこの数年どうなっておりますか。
  102. 近藤純五郎

    説明員近藤純五郎君) ただいま現在は三・二五%でございます。
  103. 山崎順子

    ○山崎順子君 本年度が三・二五%ですね。
  104. 近藤純五郎

    説明員近藤純五郎君) これは七年物の資金運用部に対します預託金利を申し上げている数字でございますが、この金利は基本的には十年物の国債の新規発行分、これを基準にいたして決まっておりますので、何カ月か置きには変わっております。
  105. 山崎順子

    ○山崎順子君 来年度は大幅な変更があると見込んでいらっしゃるのかどうかそのあたりはどうでしょうか。
  106. 近藤純五郎

    説明員近藤純五郎君) 来年度と申しましても、何カ月かごとに変わっていますので年に三回か四回変わっているし、金利変動がひどいときには毎月のように変わっております。
  107. 山崎順子

    ○山崎順子君 この預託金利ですけれども、今の実勢の市場金利と比べて、どれくらい非現実的なまでに乖離していると考えていらっしゃいますか。
  108. 近藤純五郎

    説明員近藤純五郎君) 現実的に申しましても、資金運用部の預託金利でございまして、これは先ほども申し上げましたように、十年物の新規発行の長期金利というのを基準といたしましたので、短期の金利より比べますとちょっと高いかなという感じはいたしますけれども、十年物ということで考えれば妥当な線なのかなと、こういうふうに思っております。
  109. 山崎順子

    ○山崎順子君 今現在、積立金の約二〇%、二十三兆円程度が自主運用だと思いますけれども、この最近二年間の純利益の金額と年率、パーセンテージで教えていただけますか。
  110. 近藤純五郎

    説明員近藤純五郎君) 五年度と六年度でよろしゅうございましょうか。
  111. 山崎順子

    ○山崎順子君 はい。五年度は大体わかっておりますが、五年度、六年度で結構です。
  112. 近藤純五郎

    説明員近藤純五郎君) 五年度でございますが、総資金量が十九兆四千六百億円でございまして、運用の利回りが四・六%で、平均の借り入れコストが五・五四%ということでございまして、マイナスの利差でございますけれども、〇・九四、こういうことになっております。  六年度でございますが、非常に運用環境が悪化いたしまして、運用全資産が二十一兆八千五百億円でございますが、運用利回りが二・六七、それからコストが高とまりをいたしておりまして五・四四ということでございまして、利差がマイナスの二・七七、こういうことでございまして、単年度で約五千八百億の赤字になっておりまして、累積で約七千億円に達している、こういう状況でございます。
  113. 山崎順子

    ○山崎順子君 今年度については、もう半年たっておりますけれども、ある程度出ておりますでしょうか。
  114. 近藤純五郎

    説明員近藤純五郎君) 今年度はまだ運用している最中でございまして、株価が若干戻したとかあるいは円高が修正をされたということで若干の光明を見ておりますけれども、今後の経済状況いかんによりましてこの結果は変わってくるというふうに思いますので、現在の段階で確かなことは言えない、こういう状況でございます。
  115. 山崎順子

    ○山崎順子君 この年金福祉事業団による年金積立金の自主運用事業の状況という表がありますね。今お答えいただいた五年度等も書いてあるんですけれども、これを見ていますと一応当期の利益金、平成二年までは利益が上がっていた、三年から赤字になっておりますね。今御答弁いただいたとおりの金額が五年とか六年、出ているんです。  私などが例えば、本当にこんな莫大な金額ではありませんけれども、ごく普通に家計をやったりまた会社を経営したりなんという、小さな会社ですけれども、そういうことをやっておりますときに、まず赤字が出る以前に、このまま同じようなことをやっていると赤字が出るなということはわかるはずなんですよ。この年金福祉事業団の年金積み立ての自主運用というのは、三年にぼんと五百八十三億の赤字が出て、そしてまた次の年というふうにどんどん膨れ上がっていくんですけれども、今おっしゃったような五年度で相当大きな、単年度で大きな赤字が出るようなことをもう少し早くなぜ防げなかったんでしょうか。
  116. 近藤純五郎

    説明員近藤純五郎君) この制度の構造的な仕組みとそれから私どもが予想した以上に社会経済変動があった、このことに尽きるわけでございます。制度の仕組みは、先生承知でございますけれども、若干述べさせていただきますと、これは資金運用部からお借りする形で運用いたしておりまして、この金利は七年から十年の固定金利でございます。  実際に運用いたしている場所はまさに市場の運用でございまして、御承知のとおり、昭和六十一年度にこの制度ができましてからことしで十年になるわけでございますけれども、その間の運用環境というのは非常に大きなものがあったわけでございまして、株価につきましては、平成元年の十二月には三万九千円近くあったわけでございますけれども平成四年の八月には一万四千円台になったわけでもございまして、現在も低迷が続いている、こういう状況でございます。  それから、金利水準につきましても、かつては九%近くあったわけでございますけれども、現在では三%から二%台になっているわけでございますし、為替相場につきましても、平成二年には百六十円ぐらいであったわけでございますけれども、現在では百円前後、こういう状況にあるわけでございまして、はっきり申し上げれば、右肩上がりの経済が期待できないような情勢になったわけでございます。  こういう二つの要素が重なってこういう形になっているわけですが、もちろん経済の変動があるわけでございまして、こういう景気が低迷した時期におきましては短期的にはマイナスが出るわけでございますけれども、これが景気回復というふうな形になりますれば今まで投資してきたものが戻ってくると。長期的な運用という形で見れば、長期的には回復可能でコストを上回る収益が上がる、こういうふうに私ども考えて長期運用に徹する、こういうふうな形で今現在取り組んでいると、こういうことでございます。  先生が、なぜ予測できなかったかということでございますけれども、ある程度は当然のことが予測できたわけでございまして、経済変動に伴っては短期間には赤字は出る。しかし、それはまさに景気のまた反動があるわけでございますので、景気回復の場合には今まで投資したものが戻ってくる、こういうふうな循環を繰り返す中で収益をコストより高くする、こういうふうな構造だということを御理解願いたいと存ずるものでございます。
  117. 山崎順子

    ○山崎順子君 今の件について、その前にちょっとお伺いしたいんですが、まず赤字は時価ベースで評価すると幾らぐらいになると想定されますか。
  118. 近藤純五郎

    説明員近藤純五郎君) 先ほど申し上げましたように、簿価ベースで管理いたしておりますので、時価ベースにつきましては今後の課題だというふうに考えておりますので、現段階では申し上げる数字を持っておりません。
  119. 山崎順子

    ○山崎順子君 それから、先ほどの話の中で株価のこととかいろいろお話しになりましたけれども、株で指定単などをやっていらっしゃるとしたら、それもディスクロージャーはしていらっしゃいますか、株式運用の。それは株式運用もしていらっしゃるんでしょうか。
  120. 近藤純五郎

    説明員近藤純五郎君) 株も運用いたしております。それの比率もディスクロージャーいたしております。
  121. 山崎順子

    ○山崎順子君 もう一つ、ドル建ての外貨などですけれども、そういった運用はあるんでしょうか。郵貯の方はやっておりますね。そのときに為替評価損の時価ベースでの評価額は幾らと想定なさっていますか。
  122. 近藤純五郎

    説明員近藤純五郎君) 為替相場も毎日変動いたしておりますので、私ども段階で今その数字を申し上げるわけにはいかないわけでございますけれども、かなり為替相場も戻ってきておりますので、現状ではゼロに近いような状態になっているのかな、こういうふうに思っております。
  123. 山崎順子

    ○山崎順子君 新聞とかいろいろな記事等によりますと、日本全体の公的なもので、もちろんここの自主運用のだけではありませんけれども、ドル建てで四十兆円の評価損が出ているとアメリカなどでは言われております。  そういったことも含めまして先ほど局長は御答弁の中で、総済の変動でいたし方なかったというかそういったようなことをおっしゃいましたけれども、今資金運用部から借りているお金というのは五・四四%ですね。固定金利で行われているために当然利差損が出ているわけですけれども、そうしましたら、例えば私などが考える、私だけではありませんけれども、自主運用をしばらくやめて、この大変な時期には、大蔵省の資金運用部に任せておいた方がよっぽどいいんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。
  124. 近藤純五郎

    説明員近藤純五郎君) この自主運用の事業は、市場運用をすることによりまして財投金利よりは高い収益を上げて年金の財政に寄与する、こういう目的でできたわけでございまして、確かに、財投に預けていれば非常に安定はしているわけでございますけれども、やはりリスクに投資することによって長期的には高い収益が上がる、これは経済原則であるわけでございます。  確かに、現段階におきましては株の低落その他非常に経済が低迷して、結果として非常に厳しい状況になってきているわけでございますけれども、こういう時期にこそ投資すれば、時期が来ればまた回復も早くなる、こういうことでございますので、やっぱり安定的、継続的に資金はふやしていく、こういうのが必要ではないかというふうに考えている次第でございます。
  125. 山崎順子

    ○山崎順子君 現在は日銀が始まって以来の超低金利政策の時代と言われておりますけれども、この時期に高とまりにされている利払いの五・四四%を超えて運用益を、しかも市場での運用で今年度の後半あるいは来年度、本当に上げられると思っていらっしゃるのか。どうも私はそんなことできないんじゃないかというようなことがあるんですが、運用益が上げられるという見通しを確信できるだけの能力もきちんとおありになるのかどうか、それから今までの赤字について責任をおとりになったのか、どういうふうにおとりになろうとしていらっしゃるのか、ちょっとそのことについてお伺いしたいと思います。
  126. 近藤純五郎

    説明員近藤純五郎君) 先ほど来申し上げておりますように、この自主運用事業というのは資金運用部から長期の固定金利で借り入れを行っておりまして、それを変動する市場で運用いたしておりますので、株価が下がるとか悪い条件が重なったわけでございまして、その結果利益がコストを下回る、こういうことで赤字になったわけでございまして、いわば構造的な要因というふうに考えているわけでございます。  私ども、この自主運用事業は年金財政が非常に大変になります二〇一〇年なり二〇一五年を目標にして長期運用したい、こういうふうなことで取り組んできているわけでございまして、こういうふうに年金の資金は長期的な運用というのが可能であるわけでございますので、そうした長期的な観点からの投資政策に基づきまして運用する、これによりまして収益を積み上げていく、こういうことでその責任を果たしたい、こういうふうに考えている次第でございます。
  127. 山崎順子

    ○山崎順子君 長期的にというふうにおっしゃいますけれども、そこで先ほどの報告書なども出ているんですけれども、どうもあの報告書には納得がいかないところが多々ございまして、この五・四四%の上に普通一%なりのあれがあって、手数料をその上に加えた自主運用ができない悪化した環境にあるというような報告書も出ていますし、御答弁にもありましたけれども、そういう状況の中で自主運用の枠を拡大するようにとの勧告になっているんですね。  そういう勧告になっているんですけれども、どう考えてもこれは不思議で、どうも運用の実務経験のない委員の方たちが多いのではないか。ですから、現在の厳しい非常時の認識を欠いた答申になっているのではないかなと思われるんですけれども、株などをやったことのないという方が、株価をこれほどひどく下げられた日銀の元総裁もおられますけれども、現在の委員を別に悪いと言っているんじゃないんですが、この報告書を書かれた委員というのはどういう基準で選ばれたんでしょうか。また、そういう運用の厳しさ等を知っていらして自分で資産運用などをおやりになったことのある方たちなのか、お聞きしたいと思います。
  128. 近藤純五郎

    説明員近藤純五郎君) この検討会の先生方でございますけれども、私どもとしては今得られるこういう検討会の委員としてふさわしい方を選んだつもりでございまして、座長は東京大学の堀内先生、それからあと法政大学の大村先生、それから……
  129. 山崎順子

    ○山崎順子君 お名前は知っておりますので、基準だけで結構です。
  130. 近藤純五郎

    説明員近藤純五郎君) 特別の基準といいましても、こういうふうにふさわしい方を選んだとしか言えないわけでございまして、当然この問題についての学識経験は深いというふうに私ども認識いたしております。
  131. 山崎順子

    ○山崎順子君 その報告書の中で、自主運用を任せる機関、年金福祉事業団ですか、ここの基本ポートフォリオを一般に公表することは差し控えるべきであると書いてあるんですね。  この裏には、こういうふうに受託機関にポートフォリオを責任を持って任せるという前提があるように読めるんですけれども、今現在この受託機関が赤字の運用の実績しか上げてないわけですから、そうしましたら当面は先ほど言いましたように五・四四%の運用でとりあえず国に運用していただいて、将来利息プラス一%プラス手数料のポートフォリオを受託機関として提示できる時期が来てから、つまりそういう金融情勢が変化してから改めて運用を委託した方がよろしいんじゃないんでしょうか。そのくらいの決断が必要だと思うんですが、いかがですか。
  132. 近藤純五郎

    説明員近藤純五郎君) この事業は、相当の規模でしかもある程度経済変動というものも見込んだ上で、はっきり言えば淡々と毎年毎年ニューマネーという形でやる方が長い目で見れば効果が上がる、こういうふうに私ども考えているわけでございます。  したがいまして、ポートフォリオというものもこれは長期的視点の方から見て、当然経済変動によりまして見直しをするわけでございますけれども、余り大きな経済変動にはとらわれないで長い目で見た運用をからっとやっていく、こういうふうなことでポートフォリオをつくっているわけでございまして、このポートフォリオを公表いたしますと、大きな資金でございますから市場経済にも影響を来す、こういうことで金融機関にはもちろんお示ししているわけでございますけれども一般的にはお示しをしていない、こういうことでございまして、御理解をいただきたいと存じます。
  133. 山崎順子

    ○山崎順子君 本来は幾つものそういう受託機関がこういうポートフォリオでこういう形で運用しますという、そういうものを提示して、その中でじゃここに任せようというようなことを競争させてやるべきではないかと思うんですけれども、実際そういうことはやっていらっしゃるのかどうか、ちょっとお聞きしたいのですが。
  134. 近藤純五郎

    説明員近藤純五郎君) 六年度までは非常に厳しい運用規制がございまして、いわゆる五・三・三・二という規制がございまして、しかもそれは各金融機関ごとにかぶさっていた、こういうことでございまして、本年度からはそれが撤廃されまして、年金福祉事業団全体で五・三・三・二だということになりましたので、全体としての年金福祉事業団の管理というのは楽になってきたわけでございます。その中で、ここは債券が得意だから債券に比重を置くとか、こういういわゆる特化運用というのができるようになってきましたので、その手法はこれからどんどん取り入れたいと。今までは一般的に五・三・三・二の中でいわゆるバランス型の運用をされていたわけでございますけれども、そういう得意な分野というのは当然金融機関にあるわけでございまして、そういう機関についてはその部分をふやすようなやり方をすると、こういう方針に今切りかえつつあるわけでございます。
  135. 山崎順子

    ○山崎順子君 時間がなくなってしまってちょっと申しわけないんですが、事業団の方にお伺いいたします。  財投金利を支払った後の運用益が評価損も入れて赤字となった場合の責任、そういうものはどういうふうに考えていらっしゃるか。それから、ディスクロージャーを推進することについてと、両方お答えいただきたいと思います。
  136. 加藤栄一

    参考人(加藤栄一君) 赤字決算になりますというのは、現在、平成六年度まで赤字決算が出ております。私どもといたしましては、これは厳粛に受けとめておりまして、私どもの事業といたしましては、将来の年金財政をにらんで長期の投資期間をとることによって市場運用を行う、それによって財投の金利を上回る成果を上げよう、こういうものでございます。  したがいまして、いわば短期ですべて常に上回っておればよろしいのでございますけれども、やはりある程度の幅を持った運用資産を加えまして、例えば株式でありますとかそういうものを加えますので、やはり市場の状況によりましては一時的に成果が下回るということもあり得るわけでございますが、長期的に見ますれば一定の成果を上げられるものというふうに考えております。  そういう意味からは、私どもといたしましては、平成六年度におきましても二・六七%という実現収益率と申しますのは、ほかの運用に比べまして決して劣る成果というわけではございません。ある程度の成績を上げているのでございますが、いかんせんそのコストの方が高とまりいたしております。したがいまして、そういう長期固定の相対的に高いコストの問題をやはり解決していく、いわゆるコスト面での解決策。それから収益面では、厚生省の大変な御努力もありまして次第に運用の多様化も認められておりますし、それから五・三・三・二の規制も、今、局長から御説明いたしましたように運用期間ベースでは撤廃されておりますので、そういう面での運用収益の向上にも努力していきたいということでございまして、こういう合理的な運用方法を次第に確立していくということによって、私どもの責任を果たしてまいりたいというふうに考えております。  それから、ディスクロージャーでございます。  私どもの方の事業の実績につきましては、これまでは特殊法人の会計基準に従いまして決算状況、財務諸表を公示しておりますし、私どもの方の受付等にも備えております。また、運営状況につきまして事業年報におきまして公表しております。ただし、本事業に対します国民の皆様の十分な御理解を求めていくということが特に重要であると思っております。特に、長期運用をいたすという点で御理解をいただかなければならないと思います。そういう意味では、私どもとしては、一方では巨大な資金規模を持つ投資活動でありますので、そうした事業の性格上、市場に対する影響も考慮しまして、ある面では公表を慎重にしなければならない部分もあることは確かでございますが、そういう点も考慮しながら、また現在、特殊法人の事業内容のディスクロージャーにつきまして……
  137. 山崎順子

    ○山崎順子君 短くて結構です。
  138. 加藤栄一

    参考人(加藤栄一君) 現在、関係当局でもいろいろ御検討が行われておりますので、そういうものにも配慮しながら、今後厚生省とも御相談しながらディスクロージャーの内容、方法等につきまして検討させていただきたいと存じます。
  139. 山崎順子

    ○山崎順子君 自主運用事業がとにかくひどい状況になっているということは皆さんもおわかりだと思うんですが、できるだけ傷の小さい今の段階で赤字を確定して責任者に責任をとっていただき、全く新しくリストラの投資政策を作成し、そして国会国民の合意を得るべきではないかと思うのですが、大臣、一言お願いいたします。いかがでしょう。    〔委員長退席、理事大木浩君着席〕
  140. 森井忠良

    国務大臣森井忠良君) 私も平成六年度で七千億近い赤字が出たことについては真剣に受けとめているわけでございます。ただ、これは先ほど来政府委員が答弁をしておりますように、株そして金利、為替、いずれも現在最悪の状態でございまして、その結果でありまして、構造的な要因ということで逃げる気持ちはありませんが、全力を尽くしてもこういう結果になったということで、これはぜひひとつ御理解をいただきたいと思いますし、自主運用事業検討会の先生方に私ども全幅の信頼を置いておりまして、それに基づきまして報告書もいただいたわけでございますから、そこらも勘案しながらかつ長期的な観点に立って私どもとしても努力をしていきたいと思います。  景気もこのままでは私はないと思うのでありまして、今度も与党といたしまして十四兆二千二百億に上る第二次補正予算をあしたから始まる国会に提出をするわけでありますが、必ず景気が回復し株も上がる、そして為替も適当な水準まで戻っていくというふうなことなどを勘案して、短期的に物事を判断してはやはり誤りを起こすと思いますので、なお厚生省としても一層努力はいたしますが、直ちに今関係者に対して責任をとってもらうという気持ちは毛頭ございません。
  141. 山崎順子

    ○山崎順子君 話を聞いていて、余りにも楽観的過ぎるんじゃないかと思いました。国民の多くはこれからますます景気は悪くなって日本の少子・高齢社会はどうなるんだろうと、大変国に不信感を持っております。  現場で危機感がなさ過ぎるというのは、厚生省それから大蔵省もそうですし、ひいては村山さんだってあんなに危機感がないからしょうがないのかもしれませんが、とにかくもう少し危機感をしっかり持って、経済動向を見てこれからの高齢社会をしっかり支えるための経済基盤を本当に大事にしていただきたいと思っております。私も他の議員の方たちにも呼びかけて、このことはしっかりこれから勉強させていただきたいと思っております。  どうもありがとうございました。
  142. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 社会党の朝日でございます。  まず、森井厚生大臣、御就任おめでとうございます。  冒頭、決意を含めたごあいさつをいただいたわけですが、ことしは戦後五十年でもありますし、さらにこの七月、社会保障制度の再構築に向けてという制度審からの勧告も出されております。ぜひ社会保障制度全体の再構築に向けて積極的に取り組んでいただきたい、こんなふうに思います。  さて、本委員会におきまして一連の質問をさせていただきました。きょうはその締めくくりといたしまして、再度、保健医療・福祉にかかわる人材確保対策推進について、特にこの課題に最も中心的な役割を期待されています厚生省、さらには自治体レベルの取り組みにおいて積極的な役割を期待されています自治省にお尋ねをしたいと思います。  まず、厚生省から幾つかの点についてお答えをいただきたいと思います。  本委員会でも再々繰り返して引用させていただいていますが、ことし八月に出されました「保健医療・福祉に係る人材確保対策に関する行政監察結果に基づく勧告」、この勧告では厚生省に対して数点にわたって指摘事項がございます。ここでは時間の関係もありますから、特に三点ほどに絞ってお尋ねをしたいと思います。  まず、人材の就業促進にかかわって勧告では、平成四年度に制定されたいわゆる人材確保法に基づくナースセンター及び福祉人材センターについて、せっかくこれらのセンターが設置されたわけですが、必ずしもこの間十分にはその機能を発揮されてこなかったのではないかというような、実態を踏まえて幾つかの点が指摘されております。  そこで、まずこれらのセンターの全国的な状況について、具体的には都道府県の実施状況やこれらの事業がどのような団体が行っているのか各センターの平均的な人員や体制はどうなっているのかそのために予算的にはどこにどれだけの措置をしてきたのか、さらに最近の事業実績などはどうなっているのかなと、大まかな概況について簡単にお話をお聞かせいただきたいと思います。
  143. 谷修一

    説明員(谷修一君) まず、ナースセンターのことについてお答えをさせていただきます。  現在のナースセンターには、御承知のように都道府県のナースセンターとそれから中央ナースセンターがございますが、この委託先につきましては、各都道府県のナースセンターにつきましては各都逆府県の看護協会にお願いをいたしております。また、中央のナースセンターにつきましては社団法人日本看護協会にお願いをいたしております。  現在、この都道府県ナースセンター、全国四十七カ所で非常勤職員を含みます実人員が二百九十七人ということで、これらの職員がナースバンク事業、あるいは看護の業務の普及事業、あるいは訪問看護支援事業に従事をしていただいております。予算額といたしましては、平成七年度、都道府県ナースセンター事業として九億九千七百万円を計上いたしております。  この事業の、人材確保法が施行された平成四年以降、どの程度の実績を上げてきたかというお尋ねでございますが、いわゆる職業紹介件数、就業者数につきましては、平成三年度の実績といたしまして一万四千六百九十九人でございましたけれども平成六年度には約五千人増加をいたしまして一万九千人ということになっておりまして、そういう意味ではナースセンターとしての事業の実績と効果が上がってきたというふうに考えております。  今後とも、このナースセンターの事業の運営ということにつきまして、引き続き都道府県を通じまして指導してまいりたいと思っております。
  144. 佐々木典夫

    説明員佐々木典夫君) お尋ねのうちの福祉人材センターの関係について御説明、御答弁させていただきます。  平成四年のいわゆる福祉人材確保法によりまして法定化されました福祉人材センターは、平成五年までに全都道府県に設置をされております。それで、中央の福祉人材センターにつきましては全国社会福祉協議会を、それから各都道府県の人材福祉センターにつきましては各都道府県社会福祉協議会を指定いたしましてセンターの設置を行っているという状況でございます。  平成七年度におきます都道府県の福祉人材センターでは、全国で四十七カ所でございますが、非常勤職員を含みますが、実人員三百十七人の職員が無料職業紹介であるとかあるいは福祉人材の研修などの事業に従事いたしているところでございます。  予算措置につきましては、平成七年度で、都道府県福祉人材センター一カ所当たり約六千万円の事業費を補助いたしてございます。国庫補助二分の一、都道府県二分の一というふうなことでございますが、この国庫補助の総額は全体で約十四億円というのが実情でございます。  業務の状況でございますが、この福祉人材センターの事業のうち、無料職業紹介の事業で見てみますと、この制度が法定化される前の平成四年度と直近の平成六年度との実績を比較してみますと、例えば新規求人数で見ますと、六千四百八十人が一万四千四十三人、約二・二倍。それから、新規求職者数の方が一万二百九件から四万三十一件、約三・九倍といったような状況でございまして、このほか全体の紹介件数あるいは相談件数ともそれぞれ四倍近くに伸びてきておるというふうな状況でございます。  そういう意味合いにおきまして、このセンターの設置に伴います。その事業につきましては実績を上げてきているというふうに考えております。福祉人材確保に重要な役割を果たしているというふうに考えておりますが、引き続き関係都道府県等とも十分連携をとりながら施策の充実に努めてまいりたいと考えます。
  145. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 念のため今の点確認しておきますが、ナースセンターが国の予算約十億円、そして福祉人材センター約十四億円、こういうお話ですが、主としてそれは事業を委託する中でも人件費相当分というふうに理解してよろしいですか。
  146. 谷修一

    説明員(谷修一君) 例えば、都道府県ナースセンター事業については、コンピューター運用経費、印刷製本費、通信運搬費等を除いた人件費相当額は約三億二千万円であり、おおむね三分の一となっております。
  147. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 それでは、次の課題に移ります。  看落婦等の就労環境の整備に関連しまして、先ほど申し上げた勧告の中では幾つかの項目について指摘をされておりますが、ただ細部にわたる指摘以前の問題として、平成四年に制定されました人材確保法に基づいて国が定めた看護婦等確保の基本指針、その内容そのものが現場段階では今日なお十分には周知徹底されていないんではないか。したがって、期待されたほどには積極的に受けとめられていない現状にあるのではないかというふうに私は思わざるを得ません。  そこで、今日の時点で改めて、労働省など関連する省庁、機関、あるいは関係団体との協力のもとにこの確保指針等について再度周知徹底を図る、さらには理解を求めるための一層の努力が必要だというふうに思います。  そこで、そのためには、それぞれ各都道府県にセンターが設置されているわけですから、その都道府県の体制をぜひ強化していく必要があるのではないか。例えば、私が思いますには国にも看護職員確保対策常という方を配置しておりますし、さらには積極的な役割を担うために人材確保対策推進する対策室あるいは推進室、こういうようなものを都道府県段階で設けて、より積極的な取り組みをしていく必要があるのではないかというふうに思いますが、この点についてはいかがお考えでしょうか。
  148. 谷修一

    説明員(谷修一君) 前段で述べられましたように、この人材確保法に基づいて定めました看護婦等の確保指針の内容について、引き続き周知徹底を図っていくということは必要だというふうに考えております。  具体的なお尋ねでございますが、御承知のように現在のこの法律におきましては、地方公共団体の責務としては、「地方公共団体は、看護に対する住民の関心と理解を深めるとともに、看護婦等の確保を促進するために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。」とされておりまして、県レベルの組織としては看護課といったような課の設置をしているところもございますが、あとは看護対策室といったような組織をつくって確保対策に取り組んでいる自治体もございます。一方、都道府県はこの法律に基づきまして「看護婦等就業協力員を委嘱することができる。」というふうになっておりまして、現時点、平成七年では十八の地方自治体でこういったような委嘱が行われております。  冒頭に申しましたように、今後の確保対策ということにつきましては、引き続きこの法律の趣旨を踏まえて各県におきます取り組みの強化ということをお願いしてまいりたいと思っております。
  149. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 次に、看護婦等の人材養成対策にかかわる部分でお尋ねします。  改めてあれこれ申し上げませんが、最近マスコミなどでもしばしば取り上げられておりますが、いわゆる准看護婦の養成施設に関するさまざまな問題事例が最近になっても報告をされています。また、勧告の中でも指摘をされています。しかし、具体的にどうするのかということについては勧告はいささか歯切れがよくないわけですが、これらの問題、特に准看護婦制度そのもののあり方を含めて、これは随分以前から問題になっている課題でもありますし、もう少し詰めた検討を急ぐべきときに来ているのではないかというふうに私は考えますが、この点について現時点でのお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  150. 谷修一

    説明員(谷修一君) この准看護婦養成の問題につきましては、昨年の暮れに今後の看護問題をどういうふうにしていくか、特に少子・高齢社会を踏まえて看護問題についてどういうことを考えるべきかということについて報告書をいただいております。  その検討会の過程におきましても、この准看護婦問題につきましては養成をやめるべきであるという意見と、やはり医療の現場としてはこれが必要であるといったような両論が出されまして、結論といたしましては「准看護婦免許を有する者の将来や今後の看護職員全体の需給状況等を勘案しながら、准看護婦学校養成所等の実態の全体的把握を行い、関係者や有識者、国民参加を得て速やかに検討し結論を得るべきである。」といったような指摘がなされております。  この報告を踏まえまして、厚生省といたしましては近くこの准看護婦養成のあり方等につきまして実態を調査、検討し、その結果についてさらに議論を深めていく、そういったような委員会の設置をしたいというふうに考えております。具体的にその準備を進めているところでございます。
  151. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 改めて調査という段階でもないんだろうという気もしますが、最初に即し上げたように少し詰めた検討をぜひお願いしたいというふうに思います。  もう一点別の視点から、これまでの看護職員確保対策は看護補助者、つまり病院や医療機関で働く看護助手さんと呼ばれたりあるいはナースエードと呼ばれたり、正看、准看の資格を持たない看護補助の方をどのように確保していくのかという、そういう観点がほとんどなかったのではないかというふうに考えざるを得ません。  しかし、御承知のように昨年付添看護療養費制度が廃止されましたし、またそれとセットという形で新しい看護体系の制度が診療報酬上創設をされました。その中で、看護補助の業務を評価するということで今新しい制度のもとで動き始めているわけで、看護補助者の確保対策というのは今後ますます重要になってくるのではないかというふうに私は考えております。この点では、勧告でも看護補助者の業務内容に関する医療法上の位置づけが不明確なものとなっている、こういう指摘もございます。  改めて厚生省として、看護補助業務の位置づけ直しを含めて、看護補助者の確保対策、研修、トレーニング等々のあり方について責任を持って検討を進めていくべきだというふうに私は思いますが、ぜひこの点についてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  152. 谷修一

    説明員(谷修一君) 看護補助者につきましては、私どもの持っております統計でも平成五年で約十四万五千人の方が全国の医療機関で業務に従事しているといったようなことで、医療機関の中での非常に重要なスタッフとして働いておられるというふうに認識しております。  また、平成四年の医療法の改正の際にも療養型病床群の一環として看護補助者が医療制度の中で位置づけられましたし、今、先生がお触れになりましたように、新看護体系の中でも看護補助職員を評価する体系が設けられたといったようなことから、この看護補助者の資質の向上を図っていく必要があるというふうに考えております。  現在お願いをしております平成八年度の概算要求の中におきましても、看護補助者に対する研修についてマニュアルを作成していこうといったようなことで予算要求をさせていただいておりますので、こういったようなことも含めて今後この問題に取り組んでいきたいと思っております。
  153. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 特に病院職場で看護チームを構成する看護要員の一つとして看護補助者というのを明確に位置づけながら、今後の取り組みをぜひ期待したいと思います。先を急ぎます。  非常勤ホームヘルパーの就労環境の問題について、お尋ねいたします。  この点については、先日の本委員会におきまして労働省にお尋ねをいたしましたことと重複いたしますが、そのときの労働省の答弁等を踏まえた上で、特にこの問題に関して責任のある立場にあると思われます厚生省の方にお考えを改めて問いたいと思います。  報告あるいは勧告に指摘されている実態については、時間がございませんのでここでは改めて紹介いたしませんが、特に非常勤ホームヘルパーと言われる方々の就労環境、労働条件、雇用条件等は極めてよくない、あるいは極めてあいまいだという実態がさまざまな形で報告をされています。  厚生省として、今回の報告及び勧告をまずどんなふうに受けとめられているのか、その基本的な認識と今後の対応のあり方について、お聞かせをいただきたいと思います。
  154. 大木浩

    理事(大木浩君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止
  155. 大木浩

    理事(大木浩君) 速記を起こして。
  156. 羽毛田信吾

    説明員羽毛田信吾君) 介護を必要といたしまする高齢者の方々にとりまして良質な行き届いたホームヘルプサービスを十分に受けることができるかどうかという観点からいたしますと、ホームヘルパーの方々の数の確保と同時に、やはり質の高いヘルパーの方々の確保ということが大変重要であるというふうに考えております。そして、そのことのためには非常勤の方々も含めましてホームヘルパーの就労環境を整備することが重要な課題であるというふうに認識をいたしております。  したがいまして、今回先生がお触れになりました行政監察の結果にありますような非常勤ホームヘルパーの就労の実態につきまして、その就労の実態に応じた就労条件というものが十分に確保されていないという御指摘を受けましたような事例につきましては、私どもとしてもやはり速やかに是正をしていかなければならないものというふうに認識をいたしております。  このようなことから、厚生省といたしましては、先ほどお話もございました労働省の方とも十分連携をとりながら、その中の一つにやはりどうも労働法制への認識と申しますか、こういったものが十分でないというような事例がございまして、まず市町村だとかあるいは市町村が委託という形でやっております場合の委託先の団体に対しまして、ホームヘルパーの就労条件の確保に当たりまして留意をいたさなければならない労働法規というものについて十分情報の提供も行い、また、そういうものについて十分認識をしていただくような啓発活動をきっちりしていかなければならないということで、そういう点をこれから留意したいというのが一つでございます。  それからまた、いわゆる委託の形でやっております場合につきましては、委託元の市町村におきまして委託をしっ放しというようなことではやはりぐあいが悪いわけでありまして、委託する際あるいは委託後も私どもは委託団体に対しまして、その事業内容を定期的に調査するようにということを指導いたしております。その調査の際にはホームヘルパーの方々の就労条件ということに対して十分確認をし、あるいは必要な指導もするということを市町村に対しても十分指導してまいりたいというようなことで、こういったようなことを通じまして、これからさらに就労の実態に応じた必要な労働環境が整備をされますように効果的な指導ということを進めてまいりたいというふうに思っております。  このようないわゆる就労条件への目配りと申しますかそういったこと、さらには手当額の改善でございますとかあるいは行政研修事業等を通じまして、ホームヘルパーの処遇の向上、そして良質なホームヘルプサービスの確保ということにつきまして、今後とも力入れをいたしてまいりたいというふうに考えております。
  157. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 基本的なお考えとしては理解できるんですが、事態は相当深刻だと私は受けとめています。  おっしゃったように、このような就労環境がホームヘルパーなどの確保をますます困難にしている、こういうマイナス要因として働いていることはもう明らかですので、そういう意味ではさまざまな法制度上の検討も、あるいは労働省との協力のもとに何をどう改善していくかということも課題になると思いますが、ぜひ積極的に取り組んでいただきたいと思いますが、どうでしょうか、当面の対応策として何らかの手を打つお考えはございましょうか。
  158. 羽毛田信吾

    説明員羽毛田信吾君) 今お話のございますように、確かにこの八月の行政監察で御指摘のありましたことにつきましては、かなり具体的に問題事例として出てきている、私どももそれがごく少数という形でなくて出てきたことにつきましては非常に重く受けとめております。  したがいまして、これについては、単に一般的な今後対応をいたしますというだけではなくて、労働省と詰めまして、先ほど申し上げました労働法制のいわばもっと周知徹底、きちっと皆さんがそれを踏まえる、それを認識するというような体制づくり、それからさらには、今申し上げました業務委託という形で委託をしてやられている場合に、その委託の際の条件でございますとか、あるいは委託をした後の定期調査の中におけるその中身というようなことについては、通り一遍ではない形でやはりきちっと押さえるようにということを、労働待とも打ち合わせをしながら、きちっとした方針という形で通知をする形で指導もし、また個別にもそういう事例についてはよく指導してまいりたいということで、個別具体に取り組んでまいりたいというふうに思っております。
  159. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 ぜひよろしくお願い申し上げます。  次に、自治省の方にお尋ねします。  今まではずっと厚生省、最も中心的な役割を担っていただいていますので厚生省の皆さんにお尋ねしてきたわけですが、この保健医療・福祉にかかわる人材確保対策については都道府県あるいは一定の規模を持つ市レベルでもかなり積極的な取り組みが期待される、こういうふうに思います。  とりわけ保健医療・福祉にかかわる人材の養成について、それぞれの自治体での積極的な取り組みを期待したいと思いますが、その中でも看護職員の養成に関して、都道府県やあるいは政令市を含む市レベルでの取り組みに関して自治省としてどのような役割を積極的に果たそうとしているのか、あるいはどのような形で支援しようとしているのかぜひこの点を確認のためにお尋ねしたいと思います。
  160. 岡本保

    説明員(岡本保君) 委員指摘のように、保健医療・福祉施策を推進してまいりますためには、いわゆる人材の確保が非常に重要であるというふうに自治省としても考えております。  このため、今御指摘の地方同体、特に都道府県あるいは一定規模の政令市が現在公立の看護系大学等を盛んに新設いたしております。例えばそういうような施設整備をする場合に、地域福祉推進特別対策事業という形でその施設整備等に地方債の発行を認めまして、その元利償還について交付税措置をするというような支援措置を講じております。また、各都道府県あるいは市町村で、民間におきますマンパワーの確保のためのいろんな講習会でございますとか研修でございますとか、そういうものを積極的に行うために地域福祉基金というのを設置されておりますが、その設置のための経費についても所要の財政措置を講じているところでございます。  今後とも、地方団体が積極的に福祉の人材養成確保に取り組めますよう、十分な支援措置を講じてまいりたいというふうに考えております。
  161. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 大学をつくったり養成校をつくったりする場合は一気にいきませんので、少し中期的な視点でぜひ財政的な措置も含めて積極的な検討をお願いしたいと思います。  最後に、総括的に厚生大臣にお伺いいたします。  改めて申し上げるまでもないと思いますが、きょう午前中にも若干議論、御意見がございました。今日、私自身は厚生行政の中でも最重要の検討課題として新たな高齢者介護システム構築の問題があると思いますし、それと表裏一体のものとして新ゴールドプランの着実な前進、これが課題になっているというふうに思います。そのことは、それを担う保健医療・福祉にかかわる人材の養成確保対策の積極的な推進、これがどこまで到達できるか、その成果が全体の成否をも左右する重要なポイントだというふうに考えております。  平成四年、人材確保法の審議に際しまして、本院の厚生委員会でも附帯決議をつけられております。その中では、保健医療・福祉にかかわる人材確保対策推進に当たっては関係省庁が連携を図りながら政府全体で取り組んでいくこと、こういう点を特に強調していると思います。  そういう意味で、例えば具体的に関係する厚生省、労働省、文部省、さらには今お尋ねした自治省、省庁間にこの共通課題について連絡、調整、協議するための場あるいは機関の設置など、いわゆるこの施策が縦割り行政の中でばらばらに行われているという批判がないように、ぜひそこの点を克服していくための具体的な手だても含めまして、今後の考え方について大臣の決意もあわせてお伺いしたいと思います。  以上で質問を終わります。
  162. 森井忠良

    国務大臣森井忠良君) 福祉関係の人材確保について多角的に御質問をいただきまして、まことに示唆に富んだ、私としても勉強になる御質問でございまして、ありがとうございました。  高齢者等に対します介護サービスを充実させていくためにはその担い手となる人材確保は極めて重要な課題であると、委員と同じように私も考えております。  このため、厚生省といたしましても、平成四年に制定されたいわゆる福祉人材確保法や看護婦等人材確保法等に基づきまして、養成力の強化、就労の促進、処遇の充実等の総合的なマンパワー確保策を推進してきたところであります。昨年末に策定されました新ゴールドプランにおいても、マンパワーの整備目標を設定するとともに、人材確保対策を介護基盤の支援施策の重要な柱として位置づけたところでございます。  また、マンパワー確保施策の推進のためには、委員指摘のとおり関係省庁との連携が重要でございます。従来より、例えば労働省との間に家政婦問題について連絡調整会議を設けるなど、必要に応じて連携をとってまいったところでございます。    〔理事大木浩君退席、委員長着席〕  今後も、必要に応じましてこのような場を設けるなど関係省庁との連携に努め、今回の行政監察の勧告も踏まえつつ、人材確保施策の一層の推進に努めてまいりたいと考えておるわけでございます。
  163. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 どうもありがとうございました。
  164. 今井澄

    ○今井澄君 それでは引き続きまして、今度は農林水産省及び林野庁に対して、国有林野事業それから林政に関して御質問を申し上げたいと思います。  日本は大変森林の占める面積の多い国だと言われております。国土の約七割が森林で、そのうちの約三割が国有林で、その国有林は大部分が脊梁山脈と申しますか、最も水源というか高いところにあるわけでありますから、また非常に国有林の役割というのは高いというふうに思っております。その国有林ですけれども、戦後一時期は大変に木材ブームといいますか、とにかく戦前からそうだったと思いますが、切っても切っても足りない、そういうふうな時代があったわけですが、まずは木材価格が下落するところから始まりまして大変財政的に厳しいという状況になってきた。  そこで、一九七八年に国有林野事業の改善に関する計画というのが出されたのが最初だと思いますが、いわゆる五十三年改善計画、その後累次にわたりまして出されまして、直近では平成三年に改善計画が出された。また、その前後には林政審の答申が行われたり、国有林野事業経営改善大綱という閣議了解が行われたり、また特別措置法の一部が改正されたりと。それから、その後も森林整備計画の閣議決定で五年間に三兆九千億の事業を行うというふうな、もう本当に次から次へといろいろな手を打っているわけでありますが、しかし大変この国有林野事業の財政状況は厳しいというふうにお聞きしております。  それで、現在は平成四年度、五年度の決算をやっているわけですが、六年度まで合わせて特別会計の決算における累積債務の債務残高はどうなっているのか。これが平成三年七月に策定した改善計画のとおりいっているのか。その進捗状況はどうなのか。大変厳しいのではないかと思うんですけれども、どうも計画達成はおぼっかないのではないかと私は思うんですが、今後どうするおつもりなのか、まずその点を林野庁長官にお尋ねしたいと思います。
  165. 入澤肇

    説明員(入澤肇君) まず、お尋ねの累積債務の残高でございますが、平成四年度末で二兆六千七百三十億円、平成五年度末には二兆九千二百九十一億円、そして平成六年度末には三兆一千四百二十九億円となっているわけでございます。  これは平成三年の七月に、今先生がお触れになりました国有林野事業の改善に関する計画、いわゆる経営改善計画が策定されましたけれども、これに基づきまして事業の民間実行を徹底させるとか、あるいは要員規模を適正化するとかあるいは組織機構の簡素化・合理化を図るとか、自己収入の確保を図るとかいうことに基づきましてかなりの改善の努力はやってきているわけでございます。  例えば民間実行につきましては、素材の請負生産では平成三年度四六%だったものが平成六年度五八%になっておりますし、要員規模につきましても平成三年度当初三万一千人から平成六年度末二万人に縮減しております。それから、組織機構につきましても、平成三年度当初に三百十六の営林署がありましたのが、平成六年度末二百六十四営林署に簡素化・合理化する、こういうふうな努力はやっているわけでございます。  一番の問題は、前回の経営改善計画のときに、累積債務の利子、償還金が経常事業部門へ悪影響を与えないようにということで、経常事業部門と累積債務部門の経理を区分したわけでございます。経常事業部門につきましてはそこそこの経営がなされている。問題は累積債務部門でございまして、これにつきましては、御承知のように木材代金が急速な円高だとか外材のどしゃ降り的な輸入によりましてかなり下がってしまった。平成三年を一〇〇としますと、一五%から二〇%下がっております。それから、土地の売り払い代金を累積債務の償還に充てようと思ったんですが、これが予定した価格の五分の一でも売れないというふうな状況になっております。  そこで、今後の対策といたしましては、特に平成八年度当初予算に向けまして、累積債務の縮減対策、増嵩を食いとめて、そして計画的に縮減していくにはどうしたらいいかということで考え方を詰めまして、一般会計から造林借入金利子補給等を図るべく今要求しているところでございます。この累積債務対策が円滑にいきますれば、今かなり平成十二年に向けて切る材がたくさん出てきますので、私は財務状況は好転していくんじゃないかというふうに思っております。
  166. 今井澄

    ○今井澄君 今の御説明で、改善計画では累積債務と経常事業部門を区分するということ、今の御答弁にもありましたが、そういうことが新たな方針として確定したと思います。  それで、一九九一年度以降二十年間で一兆三千億円の収入額を確保するなどして累積債務の方を何とかしていきたい、だけれども、それでも財源が不足する場合には別途財源措置を講ずる、こういうふうになっていると思います。今の長官のお答えでは、ここのところが非常にうまくいってないんだということなんですね。  別途財源措置というのは、今の御答弁にもある程度ありましたが、やっぱり常識的に考えればまず一般会計からの繰り入れを何とか増額するということだろうと思いますが、この平成四年度、五年度、六年度を見てみますと、確かに一般会計からの受け入れも若干ずつはふえているんですね。今の厳しい予算の中ではパーセントとして見ればかなりふえていると言っていいかもしれません。しかし、それも百数十億の単位でありまして、一方で借入金が一千五、六百億になっているわけですね。一けた違うわけですね。  そうしますと、これの数字だけ見ていますと、非常に皮肉な言い方をすれば、別途財源措置を講ずるというのは一般会計からの繰入金をふやすことよりも借入金をふやすこと、あたかも借入金でしのいでいくことが別途財源措置として結果的にあらわれているように思えてならないわけなんですけれども、この辺は一体林野庁としてはどういうふうにお考えでしょうか。
  167. 入澤肇

    説明員(入澤肇君) 今御指摘になられました別途財源措置につきましては、従来からは退職手当の借入金それから借りかえ借入金の利子に対する一般会計からの繰り入れをやっております。それから、累積債務の利子、償還金の支払いに充てるために財政投融資資金の借り入れをやっていたんですけれども、この平成三年度の経営改善計画に基づきまして、新たに退職手当の借入金とか借りかえの借入金の償還金ですね、元本に対しても一般会計の繰り入れをやる、その結果、今御指摘がありましたけれども平成三年度に百億円であったものが平成七年度に百八十億で、平成三年度から七年度までの累計では七百十三億円の一般会計からの充当を図ったわけでございます。一方で、しかしこれでは十分ではありませんので、財政投融資資金を平成三年度以降七年度まで八千百十九億円充当したと。  問題は、財政投融資資金を入れた場合の金利でございまして、実は三兆一千億円の累積債務のうち、現在の平均金利が五・五七%でございまして、平均金利以上の借金が一兆四千億円ございます。したがいまして、どうしてもこの金利の軽減対策をやらなきゃいけないと。  十分にできなかった一つの理由としては、やっぱり予算編成の一つの基本方針といたしまして、当初予算ではシーリングという枠がございます。このシーリングの制約を受けながら一生懸命収支を、つじつまを合わせるような予算編成を四苦八苦してやっているものですから、十分にいっていないんですけれども、しかしこれは逐次改善されてきていますので、この方針を堅持しつつ、当初予算あるいは補正予算等の機会を経て、一般会計から可能な限り金額を入れることによって累積債務の解消に当たってまいりたい、こういうふうに考えているわけでございます。
  168. 今井澄

    ○今井澄君 今、御努力の内容はわかったわけでありますけれども、どうも数字だけ見ているとなかなかうまくいきそうには思えないというところです。特に、借入金の元利償還がもう雪だるま式にふえているという、このことがせっかくの努力、これは林野庁も努力しておられるでしょうし、働いている方もあるいは周囲の皆さん頑張って努力しているにもかかわらず、何かこの努力が無になっているような、そしてまた、このことがぱっと数字だけ見ると何か展望がないように暗い感じがして大変士気も阻喪されるものでよくないと思うんです。  私もかつて二十何年前に長野県の方で非常な累積債務を抱えた病院に行きまして、そこで最初にやっていただいたことは債務の棚上げをまずしていただいた。特例債を発行して棚上げしてもらいましてそのことはおいておいて、私どもは病院事業に邁進して結果的に非常にうまくいって、今でも珍しい自治体病院としては黒字の病院をつくってきたんですけれども、何らかの形で本当にこれを切り離してしまうということをやらないといけないんじゃないかというふうな気がします。  それはそれで、改善計画では一方で森林の機能類型化を今度しておられるわけですね。四つに分けて、一つは国土保全林、二つ目には自然維持林、三つ目には森林空間利用林、四つ目に木材生産林。要するに、事業的に運営していくのはこの四番目の木材生産林ということになるだろうと思います。森林空間利用林は利用料なんかは取れるにしても、もともと採算がとれるものでは本来ないだろうと思います。  そうしますと、こういうふうに区分して考えることは非常にいいことだろうと思うんですが、その間で明確な区分は難しいにしても、特にこういう採算がとれっこない区分のものについては一般会計から本当にきちっと支援ができているのかどうか、その点をお尋ねしたいと思います。  それから、この分類表を見ますと、木材生産林が五五%と過半数なんですね。私も自分で調べたわけじゃありませんからあれですけれども、何か信じられない感じがしまして、保安林だけでも国有林の半分だと言われているわけですし、どうも国有林の五五%はここで採算をとらなきゃならないんだみたいな分類になっているような気がしてどうも非常に心配ですが、その点も含めてお答えいただければと思います。
  169. 入澤肇

    説明員(入澤肇君) 今御指摘がありましたとおり、国有林野につきまして四つの機能分類をやったわけでございます。  どの分類にどのような助成をするかということについては識別はなかなか難しいんですが、国土保全林を中心としました山には全額一般会計負担で治山事業経費を投下すると。それから、木材生産林を含めまして保安林とか保護林とか要するに一般的に環境保全、国土保全に資するような役割を持っている森林に対しては、これは基盤整備費のほかにそれに必要な維持管理費を一般会計からいただくという方針でやってきているわけでございますが、これは十分でありません。八年度予算以降さらにこの点を拡充して世論の要請にもこたえていきたいというふうに思っているわけであります。  それから、御指摘の木材生産林が多いんじゃないかということですが、実は木材生産林の区分の考え方でございますけれども、伐期における総平均成長量がヘクタール当たり王立方メートル以上の森林で林道までの距離が五百メートル未満のところを具体的には木材生産林というふうに区分しているわけでございます。もちろん、これに天然林施業によりまして木材の生産が可能と認められる森林も含めておりますけれども、具体的に材積があって、そして切り出し可能な立地条件にあるというところを木材生産林に区分しております。  これによって将来の材積の量を見ますと私はかなりの形で国有林の経営は改善していくのではないかと。例えば一例を申し上げますと、今九齢級の外分が平成二年の調査では五百万立方メートルあるんですけれども、これがあと五年もしますと五倍になります。十年しますと今七齢級のものが四千五百万立方メートル、かなりな量で切り出せる、要するに標準伐期に到達する外分がふえできますので、そうなりますと国有林の経営もかなりの割合で好転するんじゃないかと思っているわけでございます。
  170. 今井澄

    ○今井澄君 そういうふうにうまくいけばいいわけですが、先ほど長官のお答えのように、いわゆる赤字体質の是正と言われてきた例えば請負化などで民間実行を進めるとかいうことはうまくいっている、それから組織の整理合理化、人員削減、これはうまくいっているんだけれどもどうも全体としては債務残高がふえているというお話だったんですが、最近大分マスコミなども心配をして書いております。  ある新聞の社説にこういうことが書いてあるんです。この改善計画のうち、「組織の簡素化と人員削減はおおむね計画に近い進行ぶりだ。」と。「しかし経営は全く改善していない。」、いろいろ金を繰り入れているけれども間に合わなくて借金を重ねていると。「親方日の丸で経営改善の開始が遅れたことは確かだ。しかし林業を取り巻く環境が予想を上回って悪化したことも認めざるをえない。」ということでいろいろなことが書いてあります。そして、「当然ながら苦しいのは国有林だけではない。」と。民有林も苦しいし、いずれ「国産材時代がくると言われているが、林業経営者からは「それまで林業の体力がもたない」という悲鳴が聞こえてくる。」と。やっぱり抜本的に考え直すべきではないかと。また、別の新聞の論説では「森づくりに採算は似合わない」という形で公費の大幅な投入ということが盛んに述べられているというふうに思います。  そこで、今後も経営改善はいろいろ進むでしょうが、人を減らすとすれば人を減らすことにもまた問題がありまして、林野庁さんで毎年出している改善の推進状況、いわゆるミニ白書と言われるものですか、これによると、例えば、だんだん国有林の方は人員を減らして仕事はできるだけ民間に請負をさせてということでやって帳じり上は経常収支を合わせようとしているわけですが、しかしそうやってどんどん入減らしをするだけがいいわけではないと思うんです。  このミニ白書の中にも「民有林に対し、長年にわたって蓄積してきた国有林の森林施業技術や展示林等を活用しつつ、森林の管理手法や林業の機械化に関する成果の普及等を行っている。」として、国有林の民有林への技術指導とかそういう点も重要だということを述べているわけです。  ということは、どんどん民間委託すればいいというものでもないということ、しかも民有林の方も悲鳴を上げている状況ということになりますと、やっぱりもっともっと国の責任でやっていかなければいけないと思うんです。  そこで、農林水産大臣にちょっとお尋ねをしたいんですが、この国有林野事業というのは非常に公益的な機能が高いというふうに考えるわけですけれども、そういう点でもっともっと一般会計からの繰り入れをふやすべきではないだろうかそういうことについて大臣としていかがお考えか、また経営改善の御決意などもありましたらお伺いしたいと思います。
  171. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 私の県は日本でも有数な木材県、こう言われております。  私たちの先達に秋田藩の渋江政光という家老がおりましたが、その方は、国の宝は山なり、されどもこれを切り尽くすときは用をなさず、切り尽くす前に備えおくべし、山の衰えは国の衰えなりと、こう教えております。前と後ろをつなぎますと、国の宝は山なり、山の衰えは国の衰えなりと。私は森林経営に対してこれほど見識のある言葉はまだ聞いたことがありませんけれども、こういう先達がいてこの日本の山は残ってきたんだなということを感じます。  今、地球的な規模で見ますと、国連のアジア・太平洋委員会の報告によりますと、ラオス、マレーシア、タイ、フィリピン等はこれから十五、六年の間に森林が絶滅するだろうという警告を発しております用地球の肺と言われたブラジル等中南米地域の熱帯林も年に旧西ドイツ一国分の森林面積ほど後退していると言われておりますから、私は今ほど山を大事にしなきゃいかぬなということを痛感しておる次第でございます。  ただいま委員が御指摘のとおり、この日本の山は水源の涵養とか国土の保全とか非常に公益機能を多く持っているわけですが、しかし、こういう機能を十分に発揮させるためにはやはり中枢をなす国有林が健全性を持っていなきゃいかぬ、こういうふうに私は全く同感でございます。したがって、今までの企業会計にどうしてもこれは無理がある。真剣に考えれば考えるほど現在の企業会計に無理があるわけでありますから、これは打開策として思い切って一般会計からことしは金を繰り入れるべきだ、こういうふうな信念でこの問題には取り組んでまいりたいと思います。  実は今、長官から御説明したとおり、これまでも造林、林道等の基盤整備とかあるいは保安林の保全管理等に係る経費は一般会計から入れておりまして、また治山事業につきましても全額一般会計で負担してきたという経緯もありまして、少しずつ改善はされておりますけれども、これじゃとても山の危機を救うほどの対応策にはなっていない。私もそのことを就任以来、毛穴からしみて本当に感じているところでありまして、委員の皆さん方の御協力を得ながらぜひこの問題を一歩でも前進させたい、こう思っておる次第でございます。
  172. 今井澄

    ○今井澄君 ありがとうございました。  それで次に、今国有林野のことを中心に御質問をしてきたわけですけれども、国有林、民有林を問わず今お金の問題を主としてやってきました。お金の問題だけではなくて、お金や技術だけ投入して何とかなるならばそれで済むわけですけれども、一方でマンパワーの確保がどうしても必要なわけですね。  ここ数年、新規の高卒者の林業就業者数というのはほぼ二百人ぐらいだというふうに聞いておりますが、そのうち約百三十人ぐらいが国有林に就職するんでしょうか残りの七十人ぐらいが民有林と。本当に驚くべきほどの数字で、このままでは本当にどうなっちゃうんだろうというふうな心配があるわけですが、この林業の担い手対策、後継者対策、これについてはどんなことをやっておられるのでしょうか。
  173. 入澤肇

    説明員(入澤肇君) 今御指摘のとおり、新規の高卒の就業者は毎年二百人、農業が千八百人でございまして、その九分の一でございます。それから、全体の林業労働者、これは五十五年に十七万人ありましたのが平成二年十一万人、五十歳以上の割合が七割、こういうことでございますので、逐次政策を展開していることは事実なんです。  例えば、林業事業体の規模拡大には体質独化対策だとかあるいは高性能林業機械の導入促進だとか、雇用の長期化、安定化だとか、災害の防止とか福利施設の導入とかはやっています。しかし、これでは十分でないことは事実でございまして、現在、私ども林野庁の中にプロジェクトチームをつくりまして、林業労働者の雇用の改善対策、それから労働環境の改善対策、さらに素材生産業者の事業の近代化、合理化のための対策、これを練っておりまして、次の通常国会には林業労働力対策として一本の法律を提案し、御審議いただきたいというふうに思っているわけでございます。
  174. 今井澄

    ○今井澄君 これは農業も後継者対策農業だけではなくて自営業者なんかもいろいろあるわけですが、これは所得保障と労働環境の改善あるいは居住環境の改善ということが共通に音われているわけですが、それも当然必要なことですけれども、私はもっともっと広く網を打っていかないとだめなような気がするんですね。  先ほどの大臣の御所見もお伺いして、もっともっとこれは国費を投入しなきゃならないというふうなお話もありましたが、そのお金の問題にしろ人の問題にしろ、例えばお金の問題だと、先ほどの林野庁長官の御答弁にもあったようにシーリング方式の問題とかいろいろあるわけですが、突き詰めるところ、これはもちろん財政問題もありますけれども、今の後継者対策も含めて国民理解ということだと思うんです。この森林に対する国民理解をどう深めるのか。森林が非常に大事な役割を果たしている、単に木を幾らで売った買ったという問題ではなくて、水や空気のもとは森林がつくっている、こういうことの理解を深めることが大事なんだろうというふうに思います。  私も実は医者をやってくる過程で先輩から教わってきたことは、医療というのは決して薬とか手術とかそういうことだけでなく、それはほんの一部にすぎないんだ、医は食に学べ、食は農に学べということで先輩からも教わってまいりました。ちょうど選挙で長野県内全部を回りまして、森林をずっと眺めて回っているうちに、やはり森というのはすごいんだなという感じがいたしまして、やっぱりその辺教えなければ、見せなければわからないということがあると思いますね。  そうすると、今皆さん方が一生懸命経営改善等の努力をやっておられるんですが、率直に申し上げて、農林水産省や林野庁の中だけでやっているんではこれはどうにもならないんじゃないか。あるいは、大蔵省相手にシーリングの枠の中でやっているだけじゃどうにもならないんじゃないか。  国民理解を得るという意味では、例えば文部省ですね。きょうは農林水産省厚生省ですから、本当はもっと総括的質疑あるいは全般的な質疑のところで総理を含めてやらなければいけないのかもしれませんけれども、例えば教育の中でどうなっているのかということです。本当に森の教育、そういうことが行われているのかどうかとかそういうことを含めてこれは国策全体としてやっていかない限り、そして国民が本当に森林に森に目を向け、そういうところで働いてみたい、あるいはこのために自分は労力を提供したい、あるいはお金を、税金を払うのでそこへ出してもいいという、そういうことがない限りどうもなかなか出口が難しいんじゃないかという感じがいたします。その点につきまして、最後に大臣の御所見、御決意を伺って質問を終わりたいと思います。
  175. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) まことにごもっともな御指摘でございまして、実は林業白書にもきちっと書いてありますけれども平成三年時点では公益的機能に着目した森林の効能というのはお金に換算すると三十九兆二千億になるという大変膨大なものであります。日本のダムは二十一億トンぐらいの貯水容量がありますがその約三倍、大規模ダムの都市向けの利水容量に比べますと約二十倍、森林が水源涵養の能力を持っている、こういうことでありまして、もっともっと私どもは森林に対する公益的な機能、多面的な機能というものを理解していただいて評価してもらわなきゃいかぬし、国民全体が山の大切さを知って、山への理解を深めてもらいたいというのが私どもの偽らざる気持ちであります。  実は今までも、常日ごろから広報活動が大事だということで普及啓蒙を図ることをやってまいりました。例えば、緑と水の森林基金を活用した広報の充実の問題とかあるいは水源の森再選とかあるいは緑の募金活動の展開など、そういうものを通じて森に対する国民意識の向上に努めてまいったところでありますが、まだ不足であると言わざるを得ません。それからいろいろな問題を生んでいるわけで、やはり国民が本当に森林の大切さに目覚めて森林を国民一人一人が我々の手で守ろう、国の宝なんですから、そういう意識が高揚されるようなことを私どもも精いっぱい努めてまいりたい、こう思っております。
  176. 今井澄

    ○今井澄君 どうもありがとうございました。
  177. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 私は、まず最初に、超未熟児などハイリスク新生児、この治療にとって不可欠な総合周産期医療またNICUの問題についてお伺いをしたいと思うんです。  生まれた新生児の体重がわずか六百グラムとかあるいは九百グラムと手のひらに乗るような超未熟児、出生数が全体として減っている中でこの超未熟児というのはふえるかあるいは横ばい、つまり比率としてはふえているというのが現状です。しかも、これは一刻一秒を争って治療をしないと命の保証もできないという問題です。  この問題については、本委員会でも私どもの高崎裕子議員が何度か取り上げてきまして、総合周産期医療体制あるいはNICU、この拡充を求めてまいりました。厚生省もこれについては大いに拡充する必要があるということで改善を約束されてきたわけですけれども、今後どういうふうに拡充されようとしているのか、まず最初に大臣にお伺いしたいと思います。
  178. 森井忠良

    国務大臣森井忠良君) 新生児のための医療の充実は、次代を担う子供たちが健やかに生まれ育つ環境づくりの中でも極めて重要な課題であると認識をいたしております。  NICUを含む周産期医療につきましては、従前から必要な施設の整備に努めてきたところでありますけれども、研究の成果や地域的に不足しているという現状を踏まえまして、今後必要な病床が確保されるように都道府県とも協議しながらその整備に努めてまいりたい、このように考えております。
  179. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 来年度、具体的にどういう計画をお考えですか。
  180. 高木俊明

    説明員高木俊明君) NICUにつきましては、必ずしも全国的に十分整っているという状況ではないわけでありますが、そういった中で、これまで厚生省としましては施設関係あるいは設備関係の整備費、あるいは公的病院に対する運営費の補助等々をやってきておるわけでございまして、今後ともそういった面で必要な予算というものを確保してまいりたい、このように考えております。
  181. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 来年度概算要求で施設整備が二十一億一千万円、総合周産期医療施設運営費が三カ所で八千五百三十九万円、周産期医療システム体制整備五カ所で五千五百八十二万円、こういう計画に一応なっています、そうですね。しかし、これだけ進めてもまだ現状は非常におくれているということです。  厚生省も、例えば人口百万人当たりに一カ所ぐらいは総合周産期医療圏をつくっていく、そのためには全国で百から百二十の総合周産期医療システムを整備する必要があると。しかし、かといってこれは直ちにはなかなか難しいというので、当面各都道府県に一カ所はつくっていくという計画だと伺っておりますけれども、来年度各都道府県にどれぐらいやるのか、四十七都道府県全体に大体どれぐらいのめどで設置を完成させていくのか、この点について見通しも含めてお伺いしたいと思います。
  182. 高木俊明

    説明員高木俊明君) 今、委員が御指摘になりました総合周産期医療センターでございますが、これにつきましては来年度の概算要求において周産期医療システム体制を整備していくという中で中心的なものとして位置づけをしていきたいということでありまして、まだ名称につきましても仮称でございます。そういった意味で、来年度を初年度といたしまして今後総合的な周産期の医療システムというものを確立していきたい、こういうことで考えているわけでございます。  全体の仕組みとしましては、総合周産期医療センター、これをおおむね人口百万人に一カ所程度の配置をしていきたいということでございまして、そういった意味では当面全国各県一カ所程度整備をしていきたい、こんなふうに考えておるわけであります。この総合周産期医療センターの中核のもとに数カ所の地域周産期医療センターというものを設置いたしまして、地域のシステムというものを整備しようということでございます。その際に、総合周産期医療センターにつきましては運営費につきましても応分の補助をしていきたいということでございます。  ただ、来年度初めての概算要求でございます。今後、実現に向けて努力をしていかなきゃいけないわけでありますが、まずそういった意味で滑り出しとしましては全国的には五カ所程度を考えていきたいということで努力をしてまいりたい、このように考えております。
  183. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 見通しは、その各都道府県の。
  184. 高木俊明

    説明員高木俊明君) 私どもとしましては、やはり新しいシステムとして総合的に考えていくということでありますから、そういった意味で各県の事情等々につきましても十分これから相談しながらきちっとできるものについてまず整えていくというようなことで考えておりますので、概算要求の実現に向けて当面は努力をする、こういうふうに考えております。
  185. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 緊急な課題ですので、来年度概算要求がまず通ると、できるだけ早くまず当面全都道府県ということで頑張っていただきたいと思います。  次に、先ほど山崎委員も取り上げられました年金福祉事業団の問題についてお伺いしたいと思うんです。  先ほど聞いておりましたら、昨年度の自主運用事業で累積赤字が約七千億円ですね。今年度大体半分過ぎた、大体どうなるかというふうに聞かれて、局長はまだ見通しわからない、これからのことよくわからないというふうにおっしゃったけれども、しかし、昨年度末で七千億円ですよ、赤字が出ているのが。今年度どうなるのか、減るのかふえるのかふえるとしたら大体どれぐらいになるのかと。これあなたのお金じゃないんだから、年金加入者が積み立てた金ですよ、もとをただせば。七百円、七千円というならともかく。さっき大和銀行、一千百億円で逮捕ですよ。七千億円既に赤字が出ていると。今の時点で、今のまま推移するなら、大体どれぐらい今年度末に累積赤字が出るのか、見通しを立てるのが当たり前じゃないですか。全く答えられないの。
  186. 近藤純五郎

    説明員近藤純五郎君) 七年度の見通しにつきましては、今後の経済状況に欠きに依存いたしますし、したがいまして現時点で申し上げられないわけでございますが、全体としては厳しい環境というのは続いているわけでございまして……
  187. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 もういい。わかった、答え要らない。
  188. 近藤純五郎

    説明員近藤純五郎君) 株価の持ち直しとか、それから円高是正の明るい面も若干見られるわけでございますけれども、その中で精いっぱい収益の拡大に努力をしている、こういう現状でございますので、現段階では申し上げられないことを御理解願いたいと存じます。
  189. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 二十二兆円の公的資金を運用して見通しも考えていない、言うこともできない。普通の企業でそんなことあり得ますか。そんな企業なんかすぐ倒産ですよ。既に七千億円の赤字出して。二十三兆ですよ、大変な額ですよ。それで見通しもわからないと。  しかし、見通しなんかわからないわけがないですよ。ことし平均利回りが五%、六%になりますか運用利回りが。そんな経済変動が起こると思っているの、あなた。起こるわけないじゃない、今まで見てきたって。簡単な計算ですぐできるじゃない、こんなの。昨年度二十一兆八千五百億円でしょう、運用資金が、昨年度末で。これの平均借入率は五・五四%ですよ。これは昨年度と何も変わっていないんだ。そして今年度新たに一兆二千五十五億円ふえて、二十三兆円台になったわけですよ。この一兆二千五十五億円は三・二五とか三・八五とかこういう金利ですわね、利率です。しかし、二十一兆の五・五四はこれは全く変わらないわけだから、昨年はこれで五千七百七十七億円赤字出たんでしょう。このままの事態で推移すれば、多少運用利回りが上がったとしたって五千億から六千億の赤字が出る。こんなものはだれだって、すぐにわかることじゃないですか。  そうすれば今の七千億プラス五千億か六千億、七足す五は十二、七足す六は十三だから一兆二千億から一兆三千億、この程度の累積赤字が出ると。一兆円超えるなんて確実でしょうが、今のままじゃ。それも認めないの。その見通しもわからないの、あなたは。
  190. 近藤純五郎

    説明員近藤純五郎君) 確かに、金利は非常に低下をいたしておりまして非常に厳しい状況にあるわけでございますけれども、私どもはリスク資産というふうな形で株とかそういう方面にも投資しているわけでございまして、この辺はまさに日々変動する、こういうふうな状況でございますので、今のところ確たることは申し上げられないということでございまして、この辺は決算というふうな形で明快な形でお示しをする必要がある、こういうふうに考えている次第でございます。
  191. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 だからそれはこれから先のことはわからないですよ、しかし今の時点で仮に、大ざっぱでいいですよ、何せ二十三兆だから細かいことはいいですよ、やれば一兆円超えることになるでしょうが。
  192. 近藤純五郎

    説明員近藤純五郎君) 何度も同じ答えになるわけでございますけれども、非常に厳しい中で株価も多少持ち直してきた、こういうふうなことでございまして、今のまま経済が回復すればかなりな成果が上がると思いますけれども、まさに経済変動で、ことしの例でもわかりますように、ことしは円高が急速に進みまして年度末で劇的な転換をいたしたわけでございまして、その辺を考えますと軽々に申し上げるわけにはいきませんし、私自身その辺は把握いたしておりません。
  193. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 全然答えになっていない。大体、今の時点で平均運用利回りはどうなっているのか、借入利率はどうなっているのかと、やればすぐ計算できるじゃないか。参議院決算委員会をなめているんじゃないよ。そんな答弁を何度も繰り返せば時間が来るから終わると思っているんだろう。冗談じゃないよ、委員長、こんな答弁。さっき山崎先生からだって聞かれているんだから。だめだよ、今の時点ですぐ計算しなさい、こんなものは。概算だって出てくるじゃないか。
  194. 近藤純五郎

    説明員近藤純五郎君) 私どもは、こういうものは決算の形で正確な形でお示しする必要があると思っていまして、軽々に今の段階に基づく数字、七年度のものをお示しするというのはできかねる、こういうふうに考えております。
  195. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 よし、わかった。じゃ、あなた方、二十年後には黒字に転換すると言っているんだよ。その根拠をきちっと示してもらおう、ここで。今年度とうなるかもわからずに、二十年後のことがどうしてあなたたち責任を持って言えるんだよ。大臣だってさっき株は必ず上がると言ったよ。あしたの株がどうなるか聞いてみたいよ。来年度の株がどうなるんだ。無責任きわまりないじゃないかこれは。それで損したらどうするんだ。今年度の見通しも決算が出るまで言えないのに、なぜ二十年後は黒字になると言えるの。そんな無責任な話があるか。ちゃんと根拠を示してごらんなさい。ふざけちゃだめだよ、そんなのは。
  196. 近藤純五郎

    説明員近藤純五郎君) この自主運用事業は、年金というまさに先生が御指摘の非常に重要な資産でございますので、私どもそんなに軽々しく考えているわけではございませんが、単年度の決算でございますので、正確を期す意味決算で示した方がベターだ、こういうふうに申しているわけでございます。私どもが二〇一〇年なり二〇一五年を目指して運用する、そういうときにはやはり今までの経済変動、こういったものを踏まえまして、それをもとに計算をシミュレーションして出しているわけでございまして、はっきり申し上げて確率の問題として考えているわけでございまして、先生がおっしゃるように科学的にどうかということになれば、これはいろいろ御異論があると思います。
  197. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 じゃ、委員長ね、今の時点でわかるわけだから、今の時点の数字は出ているわけだから、大体どうなるのかということを決算委員会に提出させてくださいよ。そうでなきゃ、これ以上質問を続けられないよ。
  198. 浦田勝

    委員長浦田勝君) ちょっと速記をとめてください。    〔速記中止
  199. 浦田勝

    委員長浦田勝君) 速記を起こしてください。
  200. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 この問題は後でもう一度やりますからね。  時間がなくなっちゃいましたので農水省にお伺いしたいと思うんですけれども、官官接待について、本委員会で江藤総務庁長官は他人の金で酒は私は飲まないと、それが私の主義なんだということをおっしゃいました。自治大臣も、いやしくも税金の使い方で批判を受けるようなことがあってはならないというふうに答弁をされました。ところが、農水省を調べてみると実に接待を受けている。和歌山県東京事務所の分だけでも一年間に四十五回、五百六十八万五千九百八十九円、全省庁の中で第一位が農水省です。そのほかにも、わかっているだけでも愛知、島根、徳島、秋田、北海道。恐らくこれは全都道府県に私またがっていると思うんです。ところが、反省がないという点でも農水省というのは私は異色だと思うんです。  これは北海道で問題になったんですけれども、昨年の十二月、北海道側、農水省側、合わせて参加者十二人、一人一万三千円の料理をとって、ビール、酒、合わせて四十六本飲んでいる。しかも、日付を見るとクリスマスイブです、十二月二十四日。道議会でも大問題になった。北海道から農水省構造改善局に問い合わせをした、食糧費をこういうものに使っていいのかと。構造改善局が回答した、結構ですと。私、その北海道庁が出した文書持っていますよ、ここに。一万三千円の料理食って、農水省の人というのは毎日そんなもの食べているのか知りませんけれども、四十六本、ビール、酒飲んで、これが会食だと言う、会食だから構わないと。世間ではこういうのは会食とは書わない、宴会と言うんですよ、こういうのは。  農水大臣、これだけ官官接待が問題になって、八月十五日の閣僚懇談会でも問題になり、自治省も通達出し、各省庁が節度守りますと言っているときに、こういう回答ですよ、農水省は。大臣、これお認めになっているんでしょうか。
  201. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 地方団体、地方公共団体の関係者や民間人との交際においては、私は、職員一人一人が自覚を持って行動してもらわなきゃいかぬ、いささかも国民の疑惑や不信を招かないような節度が大変大事なことだ、こう思っております。したがって、着任して間もなく、今月の上旬、急速余国の営林局長会議を開き、また全国の農政局長会議を開きまして厳重に注意をしたところでございます。  特に、職務上利審関係がある業者等はもちろん、地方公共団体関係者や私的な関係と言えるようなものにつきましても国民の疑惑や不信を招くことのないように、趣旨の徹底を図り職員の指導監督を十分にするように、こういうことで全国局長会議を開きまして厳重に注意し、直ちに秘書課長通達で関係部局に趣旨を徹底したところであります。  御指摘のような問題につきまして、私は大変遺憾なことと思います。今後、そういうことが起こらないように厳重に注意して指導監督に努めたいと思っております。
  202. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 今、大臣から遺憾なことでということで、今後こういうことがないようにという御回答がありましたので、構造改善局としても北海道に対して、北海道側がこういう誤解を招かないように、こういうのはだめなんだということをきちっと通知してください。  最後に会計検査院にお伺いしたいと思うんですが、会計検査院はこの将官接待問題で五県の調査を今月中に完了する、そして十二月には国会に報告するという計画のようですけれども、この官官接待というのは五県だけじゃないですね、やっているのは。この五県の中に北海道だって入ってないといったら入ってないんだから。大体全都道府県がやっているんです。だから、五県だけがやり玉に上がる、あとの四十二県は会計検査院の検査を受けないというのではこの将官接待問題を本当に一掃することはできません、解釈がばらばらなんですから。ですから、当然これを全都道府県に広げる、そして国会に報告する、会計検査院はこれやるべきじゃありませんか。
  203. 深田烝治

    説明員(深田烝治君) 食糧費の検査につきましては、今先生指摘のございましたように検査を実施しているところでございます。今回の検査は、非常に時期的にも限られた間で行いましたためにわずかな県しか検査できなかったわけでございます。  私どもの検査の結果につきましては例年十二月に、検査報告といたしまして、検査が済みました決算とともに会計検査院から内閣の方に送付しているところでございまして、そしてこの検査報告に間に合わせるということで一月から九月までの間に実地検査を行いまして、そして十月から十二月までの間に本院内部で慎重に検討いたしまして検査の結果を取りまとめる、そういうようなサイクルで業務を実施しているところでございます。このようなサイクルから見ますと、検査に当てられる時間も非常に限られているということも御理解いただきたいと思います。  今後の検査につきましては、ただいま行っております検査の結果を十分検討いたしまして今後検討したい、そのように考えております。
  204. 国井正幸

    ○国井正幸君 新緑風会の国井正幸でございます。  大臣就任、まことにおめでとうございます。  住専問題についてお尋ねをしていきたいというふうに思います。  最近、新聞を開くとまず目に飛び込んでくるのが銀行を初めとする金融機関に関する記事でございます。昨日は大和銀行の不正資金運用事件、そしてきょうは大部分の新聞が二面トップで住専問題を取り上げておるところでございます。いずれも不祥事件あるいは問題でございまして、不良債権の処理など、俗な言い方でございますけれども極めて遺憾な話題でございます。  言うまでもなく、金融機関は国民経済や国民生活に深くかかわる公共的な機関でございます。その機能が十分働かないと国民経済あるいは国民心活に大きな影響を与えることでございますので、金融機関のあり方とか行動が注目されるのは至極当然のことだというふうに思うところでございます。特に、不良債権の処理に公的資金が使われる、こういうことになればなおさらのことであるというふうに考えるところでございます。  住専に対して大量の農協資金が投入をされているということ、さらにはこの処理いかんによっては国民の金融機関に対する信頼を大きく失墜させることになるんではないか、また、農業協同組合の経営基盤を極めて危うくするような感じもいたしておりまして、我が国農林水産業の振興を図る上で極めて憂慮すべき事態が予想される。そういうことでございますので、農林水産省以上に大蔵省の方が所轄の部分も多いと思いますけれども、あえて質問をさせていただきたいと思うところでございます。  まず住専問題でございますが、御案内のとおり住宅金融専門会社は、個人向け住宅ローンを図るために昭和四十六年の六月に日本住宅金融株式会社が設立されて以来、順次金融機関の業態ごとに設立をされてきた。そして、昭和四十八年の十二月に金融制度調査会の答申が出て、この答申の中で、「住宅金融を専門に行う機関は、物件の担保価値に着目した貸付を行うので、これにより住宅貸付を受けることのできる属が拡大し、国民の住宅需要の充足に寄与すると思われる。」「今後の問題としては物的担保に主眼をおいた金融を行う住宅金融専門機関が育つことが望ましい。」、こういうふうな答申があったわけでございます。そういう中で、いわゆるこの答申等に基づいて昭和四十八年に大蔵大臣の直轄会社に指定をされた、こういう経過があるわけでございます。  そこで、ひとつお伺いをしたいというふうに風いますが、大蔵大臣直轄会社に指定されるといろことはどういうふうな意味を持っているのかこの点について大蔵省、そして農林水廉省にお伺いをしたいというふうに思います。まず大蔵省。
  205. 振角秀行

    説明員(振角秀行君) 大蔵省の方からまずお答えさせていただきます。  先生指摘のように、住専は昭和四十六年以降逐次設立されてきておりますけれども、その過程におきまして、金融制度調査会で四十八年に議論されております。  先生指摘のように、基本的には、今後、住宅金融を専門に扱ういわゆる住専について育成の意義を認めつつも、一方ではこの住専というのは利用者保護観点からは必ずしもそれほど規制する必要がないという議論もされておりまして、その観点から住専各社というのは現在も特段の業務規制を伴わない届け出制の旧出資法に基づく会社という形になっているわけでございまして、その旧出資法上の規定によりますと、届け出とかあるいは報告、立入調査については場合によっては都道府県知事に委任することもできることになっておりますけれども、住専につきましては大蔵省が直接所管するという形に制度上なっております。これは住専が全国的な展開を行っている、規模も比較的大きい会社であるということにかんがみて、都道府県知事に委任せずに大蔵省が直接所管しておる、そういう位置づけになっているというふうに理解しておるものでございます。
  206. 堤英隆

    説明員(堤英隆君) 住専は御案内のように大蔵省の直轄の監督権限に属しておりますので、今大蔵省からお答えのあったとおりだというふうに私も思っております。
  207. 国井正幸

    ○国井正幸君 私は、農業協同組合でいわゆる員外利用の規定がありますね、そういう意味で、この直轄会社に指定されたことによっていわゆる員外利用の枠外になったのではないかというふうに思うんですが、この点についてはいかがですか。
  208. 堤英隆

    説明員(堤英隆君) 今御指摘のように、住専につきましては、昭和五十五年にいわゆる農協法に基づく員外貸出規制の対象外という形で位置づけております。  そういう形で位置づけました理由は幾つかございますが、まず一つは、一般個人に対します住宅金融を補完するという形で、信用力のある金融機関である母体行が設立をして深くその経営あるいは業務展開に関与してきたということが一つあろうかと思います。  それからもう一つは、今御指摘のように、大蔵大臣によって指定されまして大蔵省の直接の監督下に置かれるということで信用性あるいは公共性が高いということだろうと思います。  それから三つ目には、住宅ローン債権信託といった形で独自の資金調達手段も認められるということで、我が国の住宅政策上の重要な役割を担う公共性の高いものだと、そういうことを勘案いたしまして今おっしゃいましたような形での指定をしたということでございます。
  209. 国井正幸

    ○国井正幸君 次に、住専の経営実態についてお伺いをしたいというふうに思います。  今もちょっとお話があったわけでございますが、住専を設立した業態別の金融機関、いわゆる母体行がこの住専に関しましては資本面あるいは人事面、さらには経営全般にわたって極めて強い影響力を行使して、言うなら母体行と一体不可分の関係で運営されてきたんではないかこういうふうによく言われているわけでございますが、これらについて大蔵省としてはどのように考えていますでしょうか。
  210. 振角秀行

    説明員(振角秀行君) お答えします。  住専の設立に関しまして、今先生指摘のように、母体金融機関が人的側面あるいは資本的側面におきまして深く関与していることは事実であると思います。  昨日、大蔵省の金融制度調査会の中で金融システム安定化委員会の中間的な審議取りまとめが行われましたけれども、そこにおきましても「母体行は、個別に程度の差はあると思われるが、主要役員の派遣等、住専の経営に関与した。」という認識を大蔵省としても示してあるところでございます。ただ、そこにも「個別に程度の差はある」と書いてありますように、上場会社なんかになりますと比較的独立性が強い側面もありますし、また、その母体金融機関の数が非常に多い地銀生保ローンとか総合住金についても必ずしも母体金融機関はそれほど経営には深く関与していなかったように個別差はありますけれども、設立に関して申しますと人的、資本的に関与していることは事実であるというふうに思っております。
  211. 国井正幸

    ○国井正幸君 朝日新聞の八月二十日の紙面で、いわゆる住専の融資先をその母体行が極めて多く紹介をした。しかも、この記事によりますと、ある信託銀行の幹部の話として出ているわけでございますが、担保に比べて貸出額が多過ぎるとして自行内の審査を通らなかったような案件を母体行が住専に紹介をして、そしてその住専から融資をさせたと、こういうふうなことも出ているわけなんです。こういうものを見る限り、極めて一体不可分の関係でやられたのではないかむしろ大変なリスクの部分を母体行が住専に押しつけてきたんではないかそういう印象を私持っているわけでございます。  そして、特にこの住専の問題に対しては大蔵省も極めて密接に関係をしていたんではないかと思うところでございます。私が手にしております資料によりますと、いわゆる日住金が昭和四十六年の六月に設立されて以来、順次設立されてきたわけでございますが、この住専七社のうち六社はいずれも設立時の社長というのは大蔵省のOBだ、こういうことがひとつ言われているわけでございます。さらに、バブルの時期においては七社中三社の社長を大蔵省のOBが占めている。会長職は七社中四人占めている。そして、だんだんいわゆる景気が悪くなってきた現在は、社長は一社だけ、会長も一社だけ、こういうふうなことになってきたわけでございますが、設立からこのバブル期に至るまでは大蔵省のOBが社長あるいは会長という大変重要なポストについておったということでございますが、これは事実でしょうか。
  212. 振角秀行

    説明員(振角秀行君) お答えいたします。  過去の経緯はちょっと手元にすべて持っておりませんけれども、現時点におきまして住専八社のうち社長が一名、会長が一名、今指摘されましたように大蔵省に在籍した経験のある者が今ついておることは事実でございますので、あとの点につきましても、先生念入りにお調べになっているはずですから基本的には正しいというふうに認識しているところでございます。
  213. 国井正幸

    ○国井正幸君 これは事実だというふうに思います。  ところで、次の質問に移らせていただきたいと思うんですが、住専は昭和四十八年の金融制度調査会答申に沿った個人向け住宅ローンを中心に業務展開をしてきたところでありますけれども、五十年代に入って設立目的と違った方向での業務展開、つまり個人向け住宅ローンから不動産あるいは建設業への貸し付けへと融資先が変わっていったわけです。この理由について。それから、このことを大蔵省は知っていたのかあるいはどういう指導をしたのか時間の関係もありますから簡潔にひとつ答えてください。
  214. 振角秀行

    説明員(振角秀行君) 先生指摘のように、住専は設立当初は個人住宅ローン向けに基本的には設立されたわけでございますけれども、その後の経緯につきましては、これは先ほどちょっと申し上げました、昨日発表されました金融システム安定化委員会の中に若干詳しく書いてありますので、それを引用しづつ紹介させていただきますと、住専は「その後、金融を取り巻く環境変化の中で、民間金融機関が個人向の住宅金融の分離へ前向きに取り組むようになるとともに、住宅金融公庫の役割も増大して」いく中で、住専は「次第に住宅開発業者、不動産業者への融資へと傾斜していった。」というふうに分析しておるところでございます。  これは基本的には民間の個人住宅ローンの分野が非常に競争が激化したということから、当時の住専会社の経営方針として、いわゆる川上と言っておりましたけれども、住宅開発をする業者に融資しまして、その後その住宅開発業者が住宅を建てたときの住宅ローンをとろうということで、川上から川下へという営業展開をやっておったということからこういうふうになったものだというふうに認識しておるところでございます。
  215. 国井正幸

    ○国井正幸君 だから、そういうことで変わったわけですが、この変わったということを承知して、そのことに対して直轄会社ですから、これを指導したのかしなかったのか。  それと住専、今住専七社、七社と言っているけれども、住専は八社あるわけです。うち一社は余り変わらなかったというふうに私は思うんですが、その辺はどうでしょうか。簡潔にお願いします。
  216. 振角秀行

    説明員(振角秀行君) 先ほど申しましたように、住専は大蔵省がもちろん所管しておりますけれども、預金取扱金融機関のように厳格な監督体制にはないということは法令上そういうふうになっておりまして、基本的には業務の改善命令等はできないというようなソフトな監督になっているという点はひとつ御理解いただきたいということでございます。  我々としても、住専は預金を取り扱っている金融機関ではございませんけれども、急激なそういう事業者向け融資へ傾斜していくことについて十分な指導を行えなかったという反省はしておるところでございまして、この点は先ほど、たびたび引用して恐縮でございますけれども、金融制度調査会におきまして指摘を受けておりまして、我々謙虚に今後も取り組んでいかなければいかぬと思っているところでございます。
  217. 国井正幸

    ○国井正幸君 農林水産省にお尋ねをしたいというふうに思うんですが、一つは、住専がこのように変質をしているというふうなことを農水省は知っていたかどうかまた大量の農協資金が住専に流れたという事実を知っていたのかどうか、さらになぜ農協資金がこれほど多く住専に流れたのがこの辺についてひとつ御説明をお願いしたいというふうに思います。
  218. 堤英隆

    説明員(堤英隆君) まず、住専が、母体行の住宅ローン分野の進出に伴いまして、当初の設立目的でございます個人向け住宅貸し付けから不動産分野に業務シフトを行ってきたことでございますけれども、この点につきましては、農林水産省としましては住専自体を直接監督している立場にございませんので承知をしていないところでございます。  二つ目に、農林系統の住専向け融資の実行状況につきましては、その実績を報告あるいは届け出ということがございましたので、その事実につきましては承知をいたしておりました。  それからなぜそういうことであったのかという御指摘でございますが、二つあろうかと思います。  一つは、住専につきまして先ほど申し上げました三つのような理由から金融機関貸し付けという形で行っておりまして、そういう意味では信連の貸付先としては、当時といたしましては比較的安心の置ける、信頼の置ける貸付先であったということが一つあろうかと思います。  それからもう一つは、当時の状況ということを考えてみますというと、バブルの時期でございまして、かなり預金者からの預金がふえて、それを単協として信運に預けてくる。信連としましては、その余資をどういうふうに活用していくかということが信連の経営としても重要な問題であったかと思います。  そういう意味で、先ほど来申し上げておりますように、社会的に信頼のある母体行がつくった大蔵省の直轄の指定金融機関でございます住専ということにつきましては、当時としましては比較的そういう意味安心の置ける融資先であったのかと、そういうことの中で融資額がふえたというふうに理解をいたしております。
  219. 国井正幸

    ○国井正幸君 住専は平成二年度までは黒字決算を行ってきて、それなりに配当をしてきたわけですね。母体行を含めて大変に潤ってきた時期というのがあったわけでございますけれども平成三年度下期にバブル崩壊等による経営問題が一つは表面化をしてきた。そして一次二次と再建計画が策定をされまして、住専を十年計画で再建するということが平成五年に関係者間で合意された、こういうふうに伺っておるところでございます。  この関係者とは、農林中央金庫あるいは全国信連協会、全共連、母体行、さらには大蔵省、農水省のことであるというふうに言われておるんですが、そのとおりであるのかどうか。これは大蔵、農水、両方からお聞きをしたいというふうに思います。  それとあわせて、その際母体行から農協系には、先ほど大臣からも当初にありましたけれども、元本の保証を含めて迷惑をかけないので協力を願いたいとの強い要請があった、そして母体行からは計画に沿って責任を持って対応する旨の意向が示されて、主務省からも計画に沿った対応がなされるよう所要の指導を行うとの意向が示されたというふうに伺っておるところでございます。その際に結ばれたのが、資料としてきょう出させていただいたわけでございますが、平成五年二月三日付の大蔵省銀行局長と農水省経済局長名で結ばれた覚書というふうなことで理解をしてよろしいかどうかお尋ねをいたしたいと思います。
  220. 堤英隆

    説明員(堤英隆君) 住専の第二次再建計画の策定に当たりまして、当時当事者間、当然これは母体行、それから住専、さらには系統ということになろうかと思いますが、間で厳しいやりとりがあったというふうに聞いております。  こうした中におきまして住専再建のための実効のある再建計画を策定していくということのためには、今御指摘のように農林系統の協力を得ることが必要不可欠であったということの認識がございまして、農林系統としてはその段階で、一つには、再建は母体行が責任を持って対応していく、それから農協系統には元本の負担を求めない。二つ目には、金利減免は農協系統の体力を十分考慮したものとするということ、それからまたこれ以上の負担をかけないということ、それから金利上昇等の情勢変化に伴いまして経営上の重大な問題を生じさせないよう必要な措置を講ずるといったようなことについて主張をしていたということは事実でございます。  そのために当省としましても、これは農林系統の要望も踏まえまして、当事者間の協議が非常に難航したわけでございますので、その円滑な協議が行われますよう農協系統の共管の省庁でございます大蔵省との間で議論の整理を行ってきたという経緯がございます。
  221. 浦田勝

    委員長浦田勝君) 時間が来ておるから簡潔に。大事なことだから答弁は少しぐらい長くなっても構わぬが、要領よくやってくれ。
  222. 振角秀行

    説明員(振角秀行君) 今農水省で答えられましたので、基本的には当事者というのは住専会社及び関係金融機関でありまして、この覚書にも一番冒頭に書いてありますように、そういう当事者間の協議が円滑に行われるように大蔵省、農水省は一致協力して合意促進に努めたものでございます。
  223. 国井正幸

    ○国井正幸君 最後に、ぜひ農水大臣にお聞きをしたいのでございますけれども、今いろいろお答えをいただいたわけでございますが、これまでの事実経過からして母体行の責任というのはやはり明確だろうと。きのうの金融制度調査会の中でもそういうことであります。さらに、再建計画に協力を求めたという経過もあるわけでございます。そういうことを考えれば、今後とも覚書の趣旨が尊重されるべきではないかというふうに私は考えます。  昨日の金融システム安定化委員会の審議経過でも、住専問題は住専と母体行が主体的役割を果たして合意形成を図るということが求められているところでございますけれども、各マスコミの論調を見ますと、やはり情報の公開というのが一つ必要だということ、さらには国民理解を得ること、そして安易な形での公的資金の導入ということには大変危惧の念が示されておるわけでございます。  そういう意味で、大変に厳しい国民の目というのがあるわけでございますから、政府におかれましても、これから大蔵の部分でも私はこの問題についてやらせていただきたいというふうに思っておりますけれども、安易な形で処理をするということがないようにぜひお願いをしたいというふうに思います。  大臣の御所見があればお伺いをして、私の質問を終わりたいと思います。
  224. 浦田勝

    委員長浦田勝君) 大臣に申し上げますが、時間を過ぎておるから簡潔にやってください。
  225. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) はい。  この問題は、二年半前に農協系統が、もし母体行から大蔵省、大蔵省から農水省へのこういう一連の覚書なかりせば、債権の回収がその時点に終わっておったと思われるんですね。これがあったために、二年半前に再びぎりぎりの決断をしてこういうことに至ったわけでありますから、私どもとしてはその経緯を尊重していただきたい。  覚書というのは、民間ならばこれは契約に等しいものでありますし、役所にも覚書はたくさんあるけれども、これはひとしく尊重されて守られております。これだけがそうならないということにはなりません。私どもは、尊重を超えて履行してもらいたい、こういうつもりで強い態度で臨みたいと思いますし、同時に、今委員から御指摘がありましたとおり、国民の合意が得られなければいかぬわけでありますから、大蔵省と連携をとりながら真剣な議論をして納得いく解決を図りたいと、こう思っております。
  226. 国井正幸

    ○国井正幸君 ありがとうございました。
  227. 堂本暁子

    堂本暁子君 大臣に御就任おめでとうございます。  新党さきがけの堂本暁子でございます。よろしくお願いいたします。  きょうは、先ほど環境庁を中心に十一省庁で編まれました生物多様性国家戦略について質問をさせていただきたいと思います。  まず、生物多様性国家戦略の原案でございますけれども人類も生態系の一員であるとの基本認識に立っている点、しかもこの基本認識で十一省庁が協力なさって国連に提出し、そして世界に示す生物多様性国家戦略を策定なさった労を多としたいと考えております。大変な御努力をなさったものと存じます、  生物多様性、余り聞きなれない言葉でございますけれども、生命が誕生しておよそ四十億年と言われておりますが、その進化の結果、現在の地球の上は大変豊かな多様な生物が生存しているわけでございますけれども、この生物の多様性が今地球規模で破壊されております。日本例外ではございません。六種に一種の植物が絶滅に向かっています。恐竜の時代には千年に一種が絶滅したと推定されているそうですが、現在では実に十三分に一種が絶滅していると推定されています。したがって、恐竜の大絶滅を上回るスピードと規模で進んでいるわけでございまして、もしこのまま進みますと、人類もまたいずれは絶滅の運命をたどらざるを得ないという状況にございます。今ほどあらゆる国の人類の英知が試されているときはないのではないかというふうに認識しております。  こうした状況下で、生物多様性条約が一九九二年の地球サミットで採択され、そして九三年には我が国はこの条約を批准いたしました。  生物多様性、いろいろな植物や動物は相互に作用し合ったり依存し合ったり、そして水や栄養、エネルギーの流れといった循環の機能を持っておりますけれども、さらに開発など社会的な要因をも視座に据えたこの生物多様性というのは大変包括的で動的な地球規模環境を考える時代の新しい概念でございます。  日本がもし本気で環境先進国を自認するのであれば、日本のつくる生物多様性国家戦略は、途上国のみならず先進国からも高く評価される内容と、しかも適正な手順を経てつくられたものでなければならないというふうに私は考えております。この手順と内容についてきょうは御質問申し上げたいというふうに思っております。  まず手順でございますけれども、きょうは資料を配らせていただきました。国連環境計画、それからIUCN、国際自然保護連合、それから世界資源研究所がつくりました「生保物多様性保会戦略」、それから「ナショナル・バイオダイバーシティー・プランニング」という二冊の本の中で大体国家戦略をつくるについてのガイドラインのようなことが書いてございますが、お配り即し上げました資料の一ページ目に書いてございます策定に関する経過というところがあるんですが、そこでは、準備作業の段階から各省間の連絡会を設置して高度な権限を与えることが大事である。次に、民間の市民団体のNGO、地方自治体、企業、学会、それからあらゆるレベルの、議員も必要だと思いますが、などと連携することが大事だということが書かれております。  その後に、イギリス、カナダ、ドイツの例を翻訳してつけさせていただきましたが、これらの国は最初の段階からこういったセクターに一緒に参加を求めて国家戦略を編んできました。それは国民の一人一人が本当に問題意識を持ち、そしてこのことを知って事に当たらない限りやはり生物多様性の保全というのは難しいということだと思います。  しかし、日本の場合は残念ながら、省庁間でこの戦略がつくられた後で市民団体に示され、説明会の二週間後には意見を言いなさいというようなことだったものですから、市民団体から要望書が出されております。  その要望書もお手元に置いてございますけれども、この三点について私はあえて大臣方、そしてきょうお越しくださった各省に確認させていただきたいのですけれども、今申し上げたような市民にしろビジネスサイドにしろ議員にしろ、どうしても時間が欲しいと。したがって、十一月六日からジャカルタで開催される生物多様性条約の第二回締約国会議にこの原案をそのまま提出するのではなく、ぜひ国民と議論する時間を持ってほしい。それが第一でございます。  二番目に、第三回締約国会議までの間の一年間、NGOですとか今申し上げたような各セクターと継続的に協議を行う場をどうぞ持っていただきたい。  そして第三番目には、そういう形で十分に国民のコンセンサスを得た内容により深め、そして地域の方のいろいろな具体的な御意見も取り込んだ国家戦略を、それを直接そのまま書くのではないかもしれませんが、あくまでも意見を取り込んだものとして政府からお出しいただくというようなプロセスを経ていただきたいというふうに思います。  この点について、環境庁長官にまず御答弁をお願いいたします。
  228. 大島理森

    国務大臣大島理森君) 堂本先生にお答えを申し上げます。  先生は、本当に生物多様性についてライフワークとしてお取り組みになっていることに心から敬意を表したいと思います。先生の御著書の冒頭に、「不思議の国のアリス」の世界にこの勉強をしていったら入っていったというお気持ちを述べておられました。私も長官就任以来、この生物多様性ということを勉強させていただいて、その重要性については本当に深く認識をしております。  さて、そういう中で、国家戦略のまとめ、締約国会議への提出の手続のあり方でございますが、私ども先生から御指摘をいただいておる基本的な考え方においては、ある意味ではなるほどそうあることが必要だなという思いでございます。  そういう状況の中におきまして、今日まで件数にして約二百三十件ぐらいのNGOの皆様方も含めていろいろな御意見をちょうだいしております。できるだけ私どもはぎりぎりまで多くの方々の意見をちょうだいしながらそれを反映する形で努力をしていきたい。そして、できればそういうことをしながら第二回の締約国会議を目標に取り組んでいきたいと思っておりますので、御理解をいただきたい。これでおしまいという意味ではなくて、多くの皆様方の御意見を拝聴しようという努力はぎりぎりまでさせていただきたい、このように思っております。
  229. 堂本暁子

    堂本暁子君 確認ですけれども努力をなさると。とても二週間とか一カ月とかではこれだけ膨大な森羅万象のことについて勉強もできないし、それから十分な意見交換もできないわけでございまして、その努力の後にさらに一年間、これは各省庁にも伺いたいことですけれども、きちっと専門家や議員やNGOと継続的に協議をお続けくだ保さいますでしょうか。
  230. 大島理森

    国務大臣大島理森君) 先ほども申し上げましたように、私ども第二回の会議に提出するよう、そこまでにぎりぎりまでいろいろな御意見をちょうだいして提出するよう努力をしてまいりたいと思っておりますので、どうかひとつ御理解をいただきたい、このように思っております。
  231. 堂本暁子

    堂本暁子君 長官、そのことを伺っているんではなくて、努力をなさる、しかし努力をなさろうがなさるまいが一年間にわたって継続的にそういったプロセスをお続けくださるかどうかということを伺っているわけです。
  232. 澤村宏

    説明員(澤村宏君) ただいま長官から答弁いたしましたように、我々政府といたしましては、第二回の締約国会議を目標といたしまして取りまとめに努力しているところでございます。  その中で、ただいまたくさん寄せられております意見、さらには今後も寄せられるということが想定されるわけでございますが、それらにつきましては十分に反映したものにしていきたい、そういう形でもって政府としての案をまとめたいというふうに考えております。  なお、この八月に公表いたしました国家戦略の原案におきましては、五年後程度を目途として見直しを行うということとされております。
  233. 堂本暁子

    堂本暁子君 ダブらないでいただきたいのですけれども。時間がございませんので、長官のお答えになったことをもう一度おっしゃらないでいただきたい。
  234. 澤村宏

    説明員(澤村宏君) はい、わかりました。  また、この原案におきましては、毎年、国家戦略の実施状況を点検するということになっておりますので、そういう中でいろんな具体的な進め方等につきまして御意見を承っていくというようなことはできるわけでございます。
  235. 浦田勝

    委員長浦田勝君) 答弁なさる方は、限られた時間の中にあるんだから、同じような重複する答弁はやめてください。
  236. 堂本暁子

    堂本暁子君 本当に全く同じことを、長官の恐らく原稿と同じ原稿を読むというのはナンセンスだと思います。それは全く誠意の問題で、イエスかノーかだけでお答えください。イエスかノーかだけおっしゃっていただきたい。
  237. 大島理森

    国務大臣大島理森君) 第二回の国際会議を目指してまず私ども努力していかせていただきます。その後も継続的にNGOとの話し合いを持たせていただきますし、またシンポジウムなども持たせていただきます。五年ごとにまた見直しということは、先生も御承知でございますから、当然そのことをやらさせていただきます。
  238. 堂本暁子

    堂本暁子君 五年は長過ぎると思いますので、少なくとも第三回の締約国会議までにそういうプロセスを踏んでいただきたい。そして、そのことを今、農水大臣厚生大臣もいらっしゃいますので、それからあと各省庁、もう一々挙げませんけれども、十一省庁皆様きょういらっしゃいますので、篇とそのことをお願い申し上げておきます。  そして、内容なんですけれども、あと一年間ぜひ国民と考えていただきたい。それは生態系の問題では中央の役所だけで考えられないことはいっぱいあるわけです。ですから、きちっとしたことを本当にくみ上げる必要がある。そのために、今回のこれは作文としてはできているかもしれませんけれども、やはり国としての明確なビジョンを読み取りにくい、読み取れないと言った方がいいかもしれません。それから、戦略と言いましたら、一般には現状をきちんと分析し、そしてその現状をもたらしている原因が何なのか、そのことの解明、そして求めるべき目標を設定して、そして目標達成のための具体的な行動、そういった構造がきちっと戦略の中に書き込まれるべきだというふうに考えます。  最初の各省庁が協力なさったことは、最初に申し上げたように御努力は多といたしますけれども、そういった協力の仕方を単に各省庁が書くのではなくて、もっとお互いに連絡をとり合いながら有機的な包括的な戦略をつくっていただきたいわけです。最初に申し上げましたように、こういう形で世界に戦略をさらすことが是か非なのか日本が本当に環境先進国であるのならば、みんながびっくりするような国際的に驚かれるような戦略を私は出していただきたいと思います。  全国各地で起こっている深刻な生態系の破壊の現状も具体的には明らかにされておりません。日本は本当に経済優先の形で戦後五十年をやってきて、そのためにさまざまな今は破壊がもたらされている。したがって、そのことを率直に私はこういった国家戦略の中では盛るべきだと思うんです。そういうことできちっと考えていただきたい。  例えば、これは各省庁に伺いますけれども、原案の十ページに「移入種による生態系の撹乱等によって、生物多様性の喪失や減少が進行している。」とあります。しかし、今、日本では年間およそ十万件の野生動物が輸入されていますけれども、こういった動物は日本の生態系にさまざまな影響を与えています。また、人畜に有害な病原体を運んでいる可能性もありますけれども、検疫の体制はできていません。厚生省は人間、農水省は家畜というような検疫の仕方であって、そういった言ってみれば法律と法律のすき間のようなところがあるわけですね。そういったものこそ生物多様性の国家戦略として新しい法律をつくっていく必要があると思いますので、これは農水大臣、そして厚生大臣からお答えいだきたい。  それからさらに、私は知らなかったんですけれども、北米産の魚、例えばスモールマウスバスという魚などが長野県の野尻湖とか、それからこれは福島県ですけれども檜原湖などに流されている。こういったものもいろいろ魚の生態系に影響を与えていきます。こういったものについてもきちっと禁止をしていくということを水産庁からやるべきではないかというふうに思います。  それから次に、もうまとめて伺いますが、建設省にお願いいたします。  建設省、多自然型工法ということをこの中にお書きなんですけれども、先ほど大臣からもるるお話のございました、今までの二百二十の御意見の中でどれだけそういった河川のことについての御意見の多かったことか。多自然型川づくりをするのなら、自然のままの川を残してほしい。特に、渓流部については非常に雑な仕事が目立っていますというような意見が多くあります。ぜひとも建設省にはそういった多自然型の工法、もう魚も卵が産めなくなってきているような工法、これを見直すことをお考えいただきたい。そのことについての御答弁をいただきたいと思います。  それから、今、江戸崎で、これは今まで関東にガンはいっぱい飛んできたんです。ですけれども、今やさおになり、そしてかぎになって飛ぶガンの姿を私たちは見ることはできません。五十羽ぐらいが越冬するオオヒシクイというガンの種類ですが、越冬する江戸崎の地域に今圏央道が建設されようとしている。もし建設省がこの中で多々おっしゃっているエコロードをつくるのであれば、予算は多少かさむのかもしれませんけれどもその生息地を迂回する、そして野生生物を保護するといったことがやはり生物多様性を守る原点なのではないでしょうか。  それから、さらに林野庁にお願いを申し上げたいと思いますけれども、この戦略の二十ページには特定動物生息地保護林という制度があると書いてあります。沖縄の西表、ここでは種の保存法でイリオモテヤマネコが指定されてから、土地改良法によって掘りくり返され、これからも掘りくり返されようとしています。国有林は払い下げて、そしてそこにサトウキビをつくる計画が進んでいるわけです。これは、やはり明治時代にできたような法律、それから改正は何度もございましたけれども土地改良法、そしてその国有林を払い下げる法律、その後にできた種の保存法が機能しなくなって、三つの法律が重なってしまっている。当然こういった生物多様性条約を批准する際には、そこのところの法律を整理することが日本としての責任のある態度だというふうに認識しております。  私は、たまたま外務委員会でこの条約の批准の審議にも当たりましたけれども日本は法律を改正していません。そういった必要な法律を改正しない限り種の保存法は機能しませんし、そして生物多様性国家戦略は美しいことを書いても実際にはそのことがなされないということがございます。  なおかつ、文部省にこれは御答弁いただきたいことでございますが、日本で一番最大の絶滅種は分類学者だと先日伺いました。国家戦略を実現するのであれば、人材養成が文部省の責務かと思います。  以上、もう時間がないので、もしきょうお答えいただけないようでしたら、後からこのことについて文書でお答えいただきたいと思います。それから、十一省庁について、ぜひとも今後生物多様性についての長期政策、それぞれの省庁におありになると思います。それから、平成八年度のプロジェクト並びに予算について後日お答えいただきたいと思います。  一番最初に、とりあえずは移入種についての検疫の問題と、それから今の魚の問題もございます。そういった点について、まずは御答弁をお願いいたします。
  239. 浦田勝

    委員長浦田勝君) 堂本委員に申し上げますが、幅広く御質問なさって皆さん方が答弁となれば、あなたの持ち時間は五十八分までです、もう既になっておるんだから、あなたが今各省から回答をもらいたいというお話だと答弁ができない。だから、一人だけどなたか代表して御答弁いただきたいと思います。
  240. 堂本暁子

    堂本暁子君 それでは農水大臣に、これは農水省が何といっても農業改良法もそれから国有林の問題もぜひともそこのところはもう抜本的に今後お考えいただくと、ビジョンだけで結構ですから。
  241. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) ただいま委員から大変大事な御指摘がございました。移入種の問題につきましては、確かに御指摘のような問題点があると思います。農水省は畜産という観点からの検疫をやりますが、同時に人間の方をつかさどっておる厚生省の方の人間に畜産からの影響については余り厳重なチェックはされない、こういうこともあろうかと思います。  それぞれの分野でそれぞれの分雌の検疫だけをやっておったのでは、こういう国際化時代にはやはり足らざるところがあると思いますから、きょうの貴重なせっかくの御指摘であります。私ども関係省が協議をいたしまして、お互いに重複しながら、そういう問題について万全を期さなきゃいかぬなということを今深く感じた次第でございます。  また、委員の御造詣の深い御意見を伺いながら、遺漏のないようにしたいと思いますので、ひとつ御了承をいただきたいと思います。
  242. 堂本暁子

    堂本暁子君 よろしゅうございますか、あと二分ございますが。  大臣、あとイリオモテヤマネコの仲なんですけれども、種の保存法と、それから農業改良法と、それから国有林の問題と、そういった法律が重なっちゃっているわけでございまして、その点も将来的にはぜひ工夫をしていただきたいというふうに存じますが、いかがでしょう。
  243. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) この西表島につきましては、私どもは早くから森林生熊系保護地域に指定したりして一生懸命にやっているところでありますが、委員がおっしゃるようにイリオモテヤマネコの問題とか、あるいは委員がおっしゃいますように特定動物生息地保護林でございましたかそういうものを特定の場所に追加指定をしろという御意見をちょうだいしております。  先ほど、これは大変大事な問題でありますから、関係者を集めて先生の御意見も聞きながら十分検討してみると、こういうことを指示してありますので、後ほど個別にこれはまた対応させていただくということで、委員長も大分急いでおられますから、答弁はこれで終わります。
  244. 堂本暁子

    堂本暁子君 どうもありがとうございました。
  245. 浦田勝

    委員長浦田勝君) 他に御発言もないようですから、厚生省農林水産省環境庁農林漁業金融公庫及び環境衛生金融公庫の決算の審査はこの程度といたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十八分散会      ————◇—————