○武田節子君
平成会の武田でございます。
私は、
政府提出の
育児休業法の一部を改正する
法律案について
質問させていただきます。
今さら申すまでもなく、
我が国の高齢社会は
世界にその例を見ないスピードで進んでおります。あわせて、子供の出生率がまたこれも著しく低下しておりまして、ついに一・四〇を割ってしまったわけでございますけれ
ども、こうした
状況の中で、
我が国の高齢者人口、六十五歳以上の人口は約一千六百九十万人で、七・七人に一人の割合になっておりますが、三十年後の二〇二五年になりますと約三千二百五十万人となりまして、三・九人に一人という割合になると予想されております。
こういう
状況になりますと、日大の人口研究所の
調査によりますと、現在、四十歳の主婦十五人に一人の寝たきり・痴呆老人を背負うのが、二〇二五年になりますと二人に一人の割合で背負うような
状況になると言われております。また、団塊世代の
昭和二十二年生まれの人が六十歳になる二〇〇七年の二〇%になる年というのが一番の赤信号でございまして、この人が七十歳になる二〇一七年には
介護される老人の数が
介護する人の数を上回るという逆転現象になると予想されております。まさに超高齢社会の到来と言えると思うのでございます。
現在、
我が国の労働力人口は総人口一億二千五百万人の約半数、六千六百四十五万人と言われまして、雇用
労働者数は五千二百万人と言われておりますけれ
ども、二〇二五年には六十五歳以上の高齢人口が大変増大しますので、生産人口は激減して、逆に非生産人口が増大しまして、この推移でいきますと現役二人で一人を支えるということも予測されております。
そうしますと、高齢社会の問題は単に六十五歳以上の高齢者の問題としてとらえがちですけれ
ども、むしろ若い人の問題であり、男性の問題であり、
女性の問題であり、
労働者の問題であり、さらには日本の経済問題であり、そして
我が国の社会問題としてとらえるべきであろう、こう思っております。そして、この対策は急がなければならないというふうに痛感しておる次第でございます。
また、このようにいまだ経験したことのない難しい新しい問題に当たっては、
企業に偏り過ぎた
考え方とかあるいは
企業の
労使間だけのこととしてとらえるのではなくて、
企業も、男女
労働者も、ともに喜びも苦しみも相分かち合いながら、人間らしい生き方を、人間らしい働き方を
考え、新しい時代をつくり出すためにこのたびの
介護休業法も
考えていかなければならない。そうでなければ本当の解決の道は見出せないのではないか、こんなふうに思っている次第でございます。
ですから、
企業の側も今大変厳しい
状況にありますことは存じておりますけれ
ども、二十一世紀という未来展望に立って、今日までの
企業の競争あるいは日本型効率追求の姿勢をまず改めなければ高齢社会は乗り切れないのではないだろうかというふうにも思っているところでございます。
さて、私は、ちょうど
平成三年まで二十数年間、働く婦人の会におきまして未組織で働く中高年
女性の
方々と
女性の労働問題に取り組んでまいりました。特に一九七六年から一九八五年の十年間は、国連婦人の十年の運動の中で多くの働く
女性と連携をして、一日も早い
介護休業法の
法制化を願い、
実態調査をもとに運動を続けてまいりました。
坂本
労働大臣、山口
労働大臣、丹羽
労働大臣等々、目まぐるしく変わる多くの
労働大臣やあるいは厚生
大臣に、親や夫を
介護しながら、さらに家事一切をこなしながら、骨身を削る思いで働き続けなければならない中高年
女性労働者や男性
労働者と一緒に請願に参りました。
実態調査を通して生の声を届けるために、何度も何度も足を運んだわけでございます。
その中に、葛飾区に住む四十四歳の男性のBさんは、独身で、七十七歳の母親と同居して二人暮らしてございますけれ
ども、母親が心筋梗塞で倒れて、おむつ使用の
状態になったために、Bさんは会社をやめて自宅に機械を持ち込んで
仕事を続けた。しかし、収入は半減して、結婚したくともお嫁に来てくれる人はおりません。そういう方と御一緒に参りました。あるいは千代田区に住むMさん、この方も独身で、
女性でありますけれ
ども、山陰に住む父親が痴呆性老人になりまして、母親が二十四時間、眠る暇もなく
介護している。この母を助けるために有給休暇を使って、土日を利用して、東京と山陰を往復。会社をやめようと思ったけれ
ども、自分もシングルでございますから自分の老後を
考えると、やめた後の自分の老後が心配でやめるにやめられず、そして新幹線で通い続けて
介護したという
状況がございます。そういう方たちと一緒に何度も
大臣に訴えてまいりました。
このときこういう人たちは、短縮時間の勤務制あるいは
介護休業制度があったらどんなにいいかということを絶えず訴えておられましたけれ
ども、職場をやめたくともやめられない人、やめたくなくともやめざるを得ない人、そういう人を入れますと七万人とか八万人ではとてもございません。今、長い長い間願い続けてまいりました
介護休業法が国会の場で審議される
段階を迎えることができましたことに深い感銘を覚えるものでございます。
しかし、今日までどんなにすばらしい
法律ができましても、その
法律はいつもいつも未組織で働く
女性たちの頭の上もかすめませんでした。そこで、今度こそはこの
介護休業法の光がさんさんと彼女たち役たちの全身に当たって、そしてだれもが安心して働き続けられる職場環境の実現をと祈り、願っているわけでございます。
私と同じ思いの多くの
方々から一千通を超えるような、労働組合の方たちあるいは組合に入っていない方、男性、
女性から、多くの方からはがきが届いておりますし、また五月十六日の朝日新聞にも掲載されました。その思いは同じ
内容でございますので、ここで掲載された新聞を、御存じたとは思いますけれ
ども、ちょっと読み上げてみたいと思います。「
介護休業案は
国民側に立て」、相模原市の平川さんという五十四歳の主婦でございます。
急速に進む
高齢化社会に、
国民は今すぐ
介護を必要とする老人を抱えながら、休暇もままならず、さりとて施設も足りず、設備も整っていない家庭での
介護には限界もあり、費用はかさむが、やむをえず老人病院入院という例も多いのが今の老人
介護の
実態だ。
わが家でも痴ほう症の姑を十年余り
介護した経験から早期実現を切に望む者である。
政府案、新進党案とちらを優先させるかは、今すでに
国民が
高齢化社会という暗いトンネルの中で右往左往している姿を見れば、九六年
施行で一年に複数回とれる新進党案が
国民の期待にこたえうるものだ。
今、
政府がこの
現実が見えないとしたら、あまりにも
国民を侮ることになる。とかく、権力というイスに座ると謙虚に
現実を見る姿勢に欠けるものだ。その醜い姿から今すぐ目をさましてほしい。「人にやさしい政治」を掲げて発足した村山内閣は今、その腕を見せる時が来ている。
というような
内容の文章です。同じく、やはり名古屋での公聴会を聞かれた専門学校の教員の方も同じような
内容で載せておりますけれ
ども、これが今、働く
女性、働かなくとも
介護をしている人の同じような声ではないかというふうに思うわけでございます。
そこで、まず
大臣に
お尋ねいたします。もう耳にたこができるほど聞かされておりますが、
介護のための離職者が八万一千人で、そのうちの九割、七
万三千人が
女性労働者という数字に対して、
大臣はどのような感想をお持ちでしょうか、お
伺いいたします。