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庄司中君
委員派遣について御
報告申し上げます。
本
委員会の
委員派遣は、去る一月十七日から十九日までの三日間、最近における
雇用失業情勢と
雇用対策等につきまして
長崎県及び佐賀県の実情を
調査してまいりました。
派遣委員は、
笹野委員長、
野村理事、
吉川理事、
武田委員、三石
委員及び私、
庄司の六名でございます。
長崎県におきましては、県から
労働行政の
概況説明を聴取するとともに、
三菱重工業長崎造船所及び
長崎労災病院を視察いたしました。
まず、
長崎県の
雇用失業情勢についてであります。
県内の
経済は緩やかに
回復傾向をたどっているものの、
雇用情勢は依然として厳しい
状況にございます。すなわち、昨年十一月の
有効求人倍率は〇・六三倍で、前月より〇・〇一ポイント
低下しております。また、
卒業予定者の同月末における
就職内定率も
大学等で四二%、高校で七九%と、前年同期に比べそれぞれ九・六ポイント、三・五ポイントの
低下を示しております。さらに、昨年末において
県内主要企業の四五・二%が
残業規制や
中途採用の削減といった
雇用調整を
実施しております。こうした厳しい
状況の中で、県としては知事みずから
企業に赴き、
雇用の
維持を要請するなど、
雇用の場の
確保に
最大限の
努力をしているとのことでございます。
その他の課題として、
労働時間の
短縮と
女性労働の問題が挙げられました。
長崎県は、商業や
接客業などが多いこともあって
中小企業の占める
割合が高いため、
所定内労働時間、総実
労働時間のいずれも
全国平均に比べ
年間で七十時間ほど多くなっております。そのため、
中小企業を
中心に時短の
指導、
援助の
強化を図っているとのことでございます。
女性労働の問題では、
介護休業制度の
普及促進に特に力を入れており、百人以上の
企業に
指導的役割を果たしてもらうべく
制度の
導入に
理解を求めているとのことであります。なお、現在、
婦人少年室の職員は五名でありますが、
女性労働に対する
施策の
重要性から、増員の
必要性が指摘されました。
次に、
三菱重工業長崎造船所では、
火力発電用タービンなどを製作している
タービン工場、長さ千メートルのドックを有する
香焼工場を視察するとともに、
円高など厳しい
経営環境のもとにおける今後の
企業の
あり方などについて
説明を受けました。
本
造船所の
生産高の四割
程度が輸出のため、
円高は非常に厳しい
条件となっており、今後は
高度技術を駆使し、技術的に他国の追随を許さないような高
付加価値船、
省エネルギー船、
高速物流船の建造などに力を入れたいとのことであります。また、
大型タンカーの
分野では、
韓国の賃金が日本の三分の一以下ということもあり、
韓国に抜かれておりますが、一層の
経営努力で対抗していきたいとのことでございました。なお、昨年、本
造船所内で、
労災により一人の
死亡者を発生させてしまったため、
労災防止には
最大限の
努力をしているとのことであります。
次に、
長崎労災病院では、
労災病院の
あり方そのものが問われた
平成五年の
総務庁勧告の受けとめ方を
中心に意見の交換が行われ、
病院側から次のような
説明を受けました。
第一に、
労災病院においては、
一般患者が多くなり、
労災患者の
割合が七%
程度に
低下しておりますが、これは、
労災病院が
地域に密着し、しかも高度の
医療を行ってきたため、
地域住民の信頼を得た結果であろう。第二に、
労災患者は長期慢性化する例が多いが、他の
病院では採算上から十分な
医療を受けることが困難な場合が多いので、
労災病院が重要な役割を果たしている。第三には、
労災患者に対する
医療という側面だけでなく、今後は、
勤労者全体の健康管理にかかわる面を重視した
病院運営が必要であろう。第四は、各
労災病院が、
地域、行政、近隣の
病院などと
地域の各
病院の役割や特色について十分に話し合い、合理的な機能分担を図る必要があろう。さらに、本院は
労災病院の中でも、脊椎損傷、脳出血、循環器疾患に対する
医療水準ではトップレベルにあるが、全国の各
労災病院もそれぞれ特色を発揮していくことが重要であろう。
佐賀県におきましては、県から
労働行政の
概況説明を聴取するとともに、深川製磁株式会社、三玄窯、唐津水協商事株式会社を視察いたしました。
まず、佐賀県の
経済の情勢は非常に厳しいものがあり、鉱工業生産指数、大型小売店販売額、
企業倒産件数などいずれも
回復傾向を示しておりません。特に、
産業空洞化の影響で、
県内の下請
中小企業の倒産も目立っているとのことであります。また、畜産関係は、
円高の影響で打撃を受けているとのことであります。県としては、
平成十年に予定している佐賀空港の開港、来年七月から十月まで有田地区で
開催される「世界炎博」などを
経済回復の契機としても期待しております。なお、
雇用情勢は依然として厳しいものの、昨年十一月の
有効求人倍率は〇・七四倍で、前月より〇・〇二ポイント上昇しております。また、
障害者の
雇用には力を注いでおり、昨年の
雇用率は一・九六%で全国トップレベルにあるとのことでございます。
労働時間は、
中小企業の占める
割合が高いこともあって、
所定内労働時間、総実
労働時間のいずれも、
全国平均に比べ
年間で実に百十時間以上も多くなっております。その原因としては、週休二日制の普及が全国レベルに比し三年ほどおくれていることが挙げられるため、その普及を
労働行政の柱の一つとしているとのことであります。
労働災害の防止には力点を置いているとのことでありますが、
高齢者の
被災率が高いことや交通事故による
労災の多いこともあり、減少率が鈍化しているとのことであります。
女性労働の問題では、
長崎県と同様に、
介護休業制度の
普及促進に特に力を入れており、今年度から新たに、
中小企業等への啓発
事業を経営者協会に委託しているとのことであります。
深川製磁株式会社では、伝統的な技法を継承した製磁の工程を視察するとともに、
雇用状況、
職場環境等について話を伺いました。
磁器製造業も、現在の
景気の影響をもろに受け非常に厳しい
状況にあり、多くの
企業が
雇用調整助成金の支給を受けておりますが、
雇用の
維持確保には
最大限の
努力をしているとのことでございます。磁器製造の工程は、絵つけ、ろくろ回しなど、繊細で、一定の体勢を保ち、さらに根を詰める必要がある作業が多いため、眼精疲労、腱鞘炎、腰痛などを起こしやすいとのことであります。そのため会社としては、
労災や職業病に結びつかないよう、
職場の安全性と
環境には十分配慮しているとのことでございます。なお、絵つけの材料や磁器材料の関係で、鉛毒やけい肺が心配な時期もありましたが、材料の吟味等により、現在心配はないとのことであります。
次に、中里重利氏の窯である三玄窯に赴きました。中里重利氏は、重要無形文化財唐津焼保持者に認定された先代中里太郎右衛門氏の三男であり、先代のもとで厳しい修行を積み、その技芸の保持、伝承と、さらに独自の作風を開くべく御
努力されております。
唐津水協商事株式会社では、水産加工業の経営の苦悩、漁業・水産
労働の厳しさなどについて
説明を受けました。
同社は、他の十六組合員、これは
事業者の組合であります、
労働組合じゃありません、とともに水産加工団地協同組合をつくり、冷凍冷蔵施設の共有などによるコストの削減、汚水処理など公害の防止にも共同で取り組んでおります。同社の営業
内容は、主にノルウェーから輸入した冷凍サバを解凍し、揚げ物材料に加工することなどであります。
労働の
内容は非常に厳しいものでございました。すなわち、生ものを扱っているため暖房は使えず、非常に低温の作業場の中で、零下三十度以下の冷凍サバのブロックを人手で一匹ずつに解凍する作業、零下五度以下のサバの内臓や骨を除去する作業などは、想像以上に厳しいものでございました。腱鞘炎なども出やすいため、会社としては従業員の健康管理に特段の配意をしているとのことでございました。さらに、採算上の制約から、それらの仕事に対して、時給六百円から六百五十円
程度しか支給できないため、人手を
確保するのに苦労するとのことでございました。現在、苦肉の策として、従業員七十九名の約半分を別会社からの
出向に依存しているとのことでございました。
こうした経費節減の
努力にもかかわらず、売り上げも停滞するなど経営
状況は厳しく、
景気は緩やかな
回復傾向にあるとの政府の分析を素直に受けとめることができないほど深刻であるとの印象が述べられました。
以上簡単ではございますが、今般の
委員派遣の
概要について御
報告申し上げました。
最後に、今回の
委員派遣に当たり、格段の御高配を賜りました関係者各位に対し、深く感謝申し上げたいと存じます。
以上でございます。