○橋本敦君 私は
日本共産党を代表して、
オウム真理教関連事件について
質問いたします。
初めに、
サリンで不幸にして亡くなられた多数の
方々に心から哀悼を表し、さらに、今なお重大な負傷で呻吟されておられる多数の
負傷者の皆さんに対して心からお
見舞いを申し上げるものであります。
さて、
オウム真理教は、
東京都に圧力をかけてまで
宗教法人の
認証を受け、以来、拉致監禁を初め数々の反
社会的行為を重ねてきました。そして、ついに猛毒
サリンまで製造し、一般市民に対する許しがたい無差別
テロを
組織的に行い、殺人容疑で多数の
幹部とともに麻原教祖が
逮捕されるに至ったのであります。
言うまでもなく、この麻原
逮捕は
オウム関連事件の
全容解明のまさに第一歩であります。したがって、今回の
逮捕をきっかけに、
サリン大量殺人
事件を初めとして、拉致監禁、児童虐待、
信者の
財産強奪など、すべての
犯罪事件の全貌を速やかに徹底的に
解明することはもちろん、さらには銃器製造、自衛隊員の加担、ロシアの
政府高官や軍事
組織との
関係、暴力団や右翼とのかかわりに至るまで厳しく究明して、
国民の前にすべて明らかにすべきであります。
とりわけ、毒物を投与して拉致したとの
オウム幹部の供述が報道されるに至って、坂本弁護士一家及び
仮谷さんの所在確認と救出は人命にかかわる一刻の猶予も許されない
事態であります。直ちにあらゆる手だてを尽くすべきであります。
これらの今後の
捜査についての
政府の
基本認識と対応、ざらに、残された
サリンの追及や
再発防止について
国民の不安をどう解消するのか、まず
政府の明確な
答弁を求めるものであります。
国民の命と安全を守る
政治の最大の
責任を果たし、今後の厳正的確な
捜査を進め
再発防止を期するというなら、そのためには、これまでの
警察と行政の対応を
検討しておく必要があります。
八九年十一月、坂本弁護士は子供を返せと願う肉親とともに、上祐、青山、早川らの
オウム幹部と交渉して激論を交わしていました。そのわずか三日後に坂本弁護士一家を襲った法治国家にあるまじき
事件であります。今回
逮捕されている
幹部の供述で、
オウムの活動に支障になるとして家族ぐるみ拉致した冷酷な犯行であったことが浮かび上がりつつあります。
事件発生当時、現場には
オウムのバッジが残されていました。その後、
オウムの
機関紙では、
オウムに背く者に対するカルマ返し、いわゆる天罰の事例として坂本弁護士一家の神隠しを挙げるまでしていたのであります。それなのに、
警察は明確に拉致
犯罪事件としてとらえず、失踪
事件と称して、坂本弁護士の母さちよさんの一日も早い救出をという痛切な願いにも、また多数の弁護士のたび重なる要求に対しても、冷ややかな対応に終始したのであります。
なぜ
警察は直ちに
オウムの本部や施設に対し断固たる厳正な
捜査を行わなかったのですか。
警察のこの対応のおくれはまことに重大であり、母さちよさんを初め無事を願う
国民は、今、痛恨の思いであります。現在、
警察はどう考えているのか、率直に伺いたいのであります。
次に、
サリン事件であります。
九四年六月の松本
事件では、化学の基礎知識がありさえすれば、身の安全を守る装置もないところで危険きわまる
サリンの製造や実験など考えられもしないことは
たちどころに明白であったはずでありますが、被害者である第一通報者の河野さんを
警察はあえて容疑者と想定して追及し続けるというとんでもない人権侵害の見込み違い
捜査を行いました。次いで、同年七月の山梨県上九一色村での異臭
発生事件に対しては、住民の強い要求にもかかわらず、直ちに具体的調査に着手せず、ようやく九月になって残土を採取し、しかも、その結果そこから
サリン残留を示す重大な鑑定結果が出されたのは何と十一月になってであります。これほどにおくれた理由は
一体何なのか。
この
オウム施設での異臭
事件は
松本サリン事件の直後であるだけに、現場の県警任せにしていた
警察の怠慢と立ちおくれの
責任はまことに重大ではありませんか。
根本問題として、
サリンという
世界でも恐れられている殺人
兵器の出現の重大性、それに
オウムの反
社会的危険性についての
認識が極めて不十分であったのではありませんか。明確な
答弁を求めます。
さらに、行政当局の対応の立ちおくれも重大なのであります。
オウム真理教の最大の拠点となっている上九一色村では、八九年以降、数々の無法
行為が横行し、山梨県がまとめただけでも、無届けで地下室をつくるなどの建築基準法違反、大量の危険物を購入した毒物及び劇物取締法違反を初めとして、国土利用計画法など実に二十数件の違反があるのであります。
全国各地でも見られるこのような
オウム真理教の無法
行為がなぜ野放しにされてきたのですか。こうした行政の立ちおくれについて、
政府はどう反省し今後どう対応する方針なのか、
総理に伺いたいのであります。
次に、
宗教法人の
解散請求についてであります。
総理は衆議院で、
幹部の
起訴を待ってなどと
答弁しましたが、
解散請求はその手続も法的要件の判断も刑事
事件の
起訴や裁判とは異なることは自明の理であります。その弁解は成り立ちません。そもそも
オウム真理教なるものは、もはやまともな
宗教団体ではなく、
幹部の個々の
犯罪の公判
請求を待つまでもなく、
国民だれの目から見ても直ちに
解散請求をすべき反
社会的実態であることは明白ではありませんか。
総理は、恐るべき
サリン生成や銃器製造をやっている、これでもこれが
公共の利益を害するという解散理由に当たらないとでも言うのですか。明確な
答弁を求めます。
また、解散によって
オウム真理教の資産は、
宗教法人法及び
認証されている
オウムの規則によって国庫もしくは地方
公共団体に帰属することになります。その際重要なことは、国の
責任で、痛ましくも
サリンで亡くなられた十九人の
方々はもちろん、数千人の
サリン負傷者に対する全面的損害賠償
責任を果たさせる必要があります。そしてさらに、出家
信者からお布施と称して強制強奪した全
財産の返還と補償、これをさせることは当然ではありませんか。
さらに、
オウム施設の周辺住民は、
関連施設の全面撤去、
捜査終了後の市民
生活の安全
確保を強く求めています。また、多くの一般
信者について、
社会復帰のケアは子供
たちも含めて必要であります。このため
政府はどう対応するのか、具体的に
総理の
責任ある
答弁を求めます。
それにしても、日々平和に暮らす市民を突然
サリンで無差別に大量殺傷するという言語道断の
凶悪犯罪を
オウム真理教が
組織的に行ったその目的、理由は
一体何なのか。およそ常識と正常な理性では考えられないところであります。
ところが、驚くべきことに、
オウム幹部の供述によれば、
オウムは、
平成二年総選挙大敗後の
組織、財政の立て直しのために、オースチンすい星による破滅が来るというその危機を唱え
信者を石垣島に結集したように、
サリン事件は、麻原教祖の毒ガス充満や
世界の終末戦争、いわゆるハルマゲドンが来るというその予言の的中を実現するための自作自演、それによる
オウムの勢力拡大を画策したアクティブメジャーズ、積極工作であったというのであります。何ということでありましょうか。自己の妄想的
世界観と利己的野望のために無差別
テロを敢行するなどは、およそ人間性と理性の一かけらもない憎むべき蛮行と言うほかはありません。
同時に、
地下鉄サリン事件は、強制
捜査を察知した
オウムが先制攻撃で
捜査撹乱をねらったものであります。
政府は、
サリン事件の
オウムのねらい、その背景的
状況についてどう
把握しているのか、明らかにされたいのであります。
世界戦争が起こるなどという破壊的な終末思想は、人間の理性、
社会の進歩と相入れないものであります。まさに今日の
社会の病理現象に深く根差す問題であります。
政治が
国民の信を失い、最低限の道理に背いて、それで
社会が健全であるわけはありません。
政治の
責任もまた重大であります。
我が党は人間尊重の
基本精神を
政治にも
社会にも貫くため全力を尽くすことを表明して、
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣村山富市君
登壇、
拍手〕