○安恒良一君 二日間にわたって下稲葉
委員を初め八名の人が質問されましたので、質問したいと思っておることはほとんど終わりましたから、私はいわば落ち穂拾い的に、もしくはある
程度今までのやりとりの中でさらに納得いかない点を少し聞きたいと思います。
まず、今回の
改正には私は賛成なんですが、実は驚きました。
刑法制定から八十八年、
改正刑法草案公表から二十一年、このままになっておったんです。だから、戦前の帝国憲法のときのことを今言ってみても
意味はありませんが、少なくとも戦後の平和憲法になって約五十年間、こんな難解な言葉をそのままによく放置しておったなと。これは率直に言って、私は歴代
法務大臣、
法務省に大きな責任があると。もちろん、国政の場にある我々
国会議員も責任の一端は免れないと思います。しかし、やっと今度、
現代用語化ということで
改正になったのでその中身は賛成なのでありますが、少し今後のことを含めて聞いておかなきゃならぬと思います。
御承知のように、既に御
報告があったとおりに、昭和四十九年に
改正刑法草案ができて、これが当時の
刑法学者や学界や日弁連その他に反対されてそのままになってしまったと。そういう中でやっと今回、
現代用語化ということで
刑法の
改正案が出てきたんですが、しかしながら、もう多くの同僚
委員から問題が提起されたように、依然としてまだ難しい、常用漢字が使われていないというような、それから中身にもいろいろ問題がありはしないかと。
参考人からもありましたし、同僚議員からもありましたように、例えば罪
刑法定主義の明示、保安処分の導入、企業秘密の漏示問題、それから自動設備の不正利用の問題、それから無賃乗車罪等の新設等は、今日の社会においては極めて必要なことなんです、これは私の
意見でもありますが。
ところが、いろいろ
審議会で
議論もあったようですが、今回はとにかく横のものを縦にということで言葉のあれだけに終わっていますから、私はどうしても
改正刑法草案にやっぱり早急に取り組まなきゃならぬと思います。
そこで、ちょっと聞きたいんですが、歴代
法務大臣の所信表明をずっと調べてみましたら、昭和五十六年、五十七年、五十九年、六十年、六十一年、六十二年までの
法務大臣、例えばここに鈴木
先生がおいでになりますが、鈴木
先生が
法務大臣の六十一年の所信表明の中に、
刑法の全面
改正につきましては、これが国の重要な基本法に関するものでありますため、
国民各層の
意見を十分考慮しつつ、真に現代社会の
要請にかなう新しい
刑法典の制定を目指し各般の努力を重ねてきているところであり、引き続き所要の作業を進める所存でありますと、当時、鈴木
大臣はこの
委員会でお述べになっています。
ところが、六十三年以降、
法務大臣の所信にこれが入っていないんですよ。なぜ入っていないのか。あなたのものも見ましたけれ
ども、この
現代用語化のことは書いてありますが、根本的なことについてはあなたのことしの所信表明にも入っていないんです。ですから、もう
改正刑法草案はあきらめられたのかどうかなと。今までずっと歴代
法務大臣が書いておったようなことが突如として六十三年以降消えていますから、だからそこの熱意ありや否やということと、いま一つ私が心配するのは、ここに弁護士
先生もおられますが、日弁連の態度が今回これに賛成だと。この賛成をすることは、わかりやすい言葉で言うと、これによって
改正刑法草案の全面
改正は免れるんじゃないかとか、つぶれたんじゃないかというような
意見があるやに聞いています。
私は、この
現代用語化というのは一歩前進であって、これからやはり早めに、少なくとももう新平和憲法になって五十年ですから、ですからやらなきゃならぬと思いますが、そこのところの決意について、
大臣、あなたの所信にも入っていないものですから心配ですが、どうされようとするのかお考えをお聞かせください。