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1995-04-28 第132回国会 参議院 地方分権及び規制緩和に関する特別委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成七年四月二十八日(金曜日)    午前十時二十一分開会     ―――――――――――――    委員異動  四月二十六日     辞任         補欠選任      野別 隆俊君     岩崎 昭弥君  四月二十七日     辞任         補欠選任      瀬谷 英行君     今井  澄君      堀  利和君     竹村 泰子君      釘宮  磐君     広中和歌子君      続  訓弘君     牛嶋  正君      吉川 春子君     有働 正治君  四月二十八日     辞任         補欠選任      峰崎 直樹君     川橋 幸子君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         小林  正君     理 事                 斎藤 文夫君                 服部三男雄君                 山口 哲夫君                 渡辺 四郎君                 勝木 健司君     委 員                 石井 道子君                 沓掛 哲男君                 高木 正明君                 野沢 太三君                 溝手 顕正君                 宮崎 秀樹君                 吉村剛太郎君                 今井  澄君                 岩崎 昭弥君                 川橋 幸子君                 佐藤 三吾君                 竹村 泰子君                 峰崎 直樹君                 牛嶋  正君                 鶴岡  洋君                 広中和歌子君                 小島 慶三君                 星川 保松君                 有働 正治君    国務大臣        国  務大 臣        (総務庁長官)  山口 鶴男君        自 治 大 臣  野中 広務君    政府委員        総務庁行政管理        局長       陶山  晧君        自治大臣官房長  秋本 敏文君        自治大臣官房総        務審議官     二橋 正弘君        自治省行政局長  吉田 弘正君        自治省行政局公        務員部長     鈴木 正明君        自治省財政局長  遠藤 安彦君        自治省税務局長  佐野 徹治君    事務局側        常任委員会専門        員        佐藤  勝君    説明員        公正取引委員会        事務局官房総務        課長       上杉 秋則君        大蔵省証券局証        券市場課長    藤原  隆君        大蔵省銀行局保        険部保険第一課        長        滝本 豊水君        厚生省健康政策        局看護課長    久常 節子君        運輸省自動車交        通局貨物課長   鈴木 久泰君        労働省職業安定        局業務調整課民        間需給調整事業        室長       森山  寛君        建設省建設経済        局宅地課民間宅        地指導室長    竹村 昌幸君        建設省住宅局住        宅生産課長    稗田 祐史君        自治大臣官房地        域政策室長    今仲 康之君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○地方分権推進及び規制緩和に関する調査  (規制緩和推進計画に関する件) ○地方分権推進法案内閣提出衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 小林正

    委員長小林正君) ただいまから地方分権及び規制緩和に関する特別委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る二十六日、野別隆俊君が委員辞任され、その補欠として岩崎昭弥君が選任されました。  また、昨二十七日、瀬谷英行君、釘宮磐君、続訓弘君及び吉川春子君が委員辞任され、その補欠として今井澄君、広中和歌子君、牛嶋正君及び有働正治君がそれぞれ選任されました。     ―――――――――――――
  3. 小林正

    委員長小林正君) 地方分権推進及び規制緩和に関する調査を議題といたします。  去る二十四日の本委員会において説明を聴取いたしました規制緩和推進計画について質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  4. 宮崎秀樹

    宮崎秀樹君 最近の新聞を見ますと、オウム真理教の問題が載らない日はないんですけれども、かつてこの規制緩和の問題が載らない日はなかったというようなことで、大変規制緩和規制緩和という言葉が毎日のように紙上をにぎわしていたのも事実でございます。  歴代内閣がこの問題に取り組んでやっとここで日の目を見るということになったのは、その内容の多寡は別といたしまして、これは一応評価をすることではないかと思っております。と同時に、これがアリの一穴でどんどん広がって、そして国民のためになるということが私は最も望ましいことだと思っております。  そこで、規制緩和推進計画というのが、これは平成七年三月三十一日閣議決定されておりますけれども、この中でいろいろうたわれておるんですが、一つは、「規制緩和基本指針等」ということで、「今後五年間の計画は、主な行政分野において、以下の観点から、各分野関係施策の総合的な推進の一環として進めることとし、別紙のとおり緩和等を行う。」と。  この「別紙」というのはこの後ろの表に書かれておりますね。これが各省庁ごとにいろいろ出ているんですが、平成年度から十一年度にかけまして列挙した事項措置をやっていく、そういうことでありますが、ここに挙げてあるもの以外でも、こういう国会の場とか、なるほどこういうこともあったのかということで問題が出れば、これ以外でもおやりになるつもりがあるのかどうか、まずその辺のところをひとつ長官からお答え願いたいと思います。
  5. 山口鶴男

    国務大臣山口鶴男君) お答えいたします。  御指摘のとおりでございます。三月三十一日、内閣官房それから総務庁協力いたしまして、各省庁とぎりぎりの折衝をいたしまして、平成年度から平成十一年度までの五カ年間の計画を策定しました。しかしその後、四月十四日に緊急円高経済対策で、これを三年間に前倒しをする、したがって平成年度から平成年度までにこれをやりますということで決定をし直したわけでございます。  この点も御理解いただいていると思いますが、中身は千九十一事項ございますが、それ以外の問題でも毎年これを見直して、そして改定をするということになっておりますので、委員指摘のとおり、あの千九十一事項以外のものであっても国民要望あるいは海外からの要望があればこれにこたえるということでございます。
  6. 宮崎秀樹

    宮崎秀樹君 大変前向きな御答弁で、大いに国民の声を吸収して、また諸外国からの声もできることはやっていくということで施策にあらわしてほしいと思います。  そこで、個別な、大変身近な質問になりますけれども、一つ厚生省関係の問題であります。  実は看護婦養成所というものがございまして、従来看護婦さんというのはこれは国公立て養成されて、そして看護婦さんの資格を取った方を各国公立民間病院診療所等に配置していただくというのが本来の姿でありますけれども、実際には民間の例えは医師会病院、それからいわゆる診療所等看護婦さんが足りないというので、みずから医療費の中から財源を絞り出してみんなでっくっておるわけであります。そこで、それだけではとてももうやり切れないというので、国の補助、県の補助市町村補助というものをいただいておりますけれども、この補助金規制が非常に厳しいんです。  そこで、一つ例を挙げて申し上げますか、事務職員に対する補助金とか、それから教務主任、いわゆる学生指導者補助金というものもなかったんですけれども、最近、ここ二、三年前からつけていただいたんです。ところが、その範囲というのが入学定員八十名以上の学校だと、こういうわけです。  ところが、入学定員八十名以上の学校となりますと、その生徒たち実習病院へ送り込まなきゃいけない。つまり、実習病院で受けるカリキュラムのいわゆる規制が厳しいんです。例えばお産の数は年間幾つなくちゃいけませんよとか。ところが、お産なんというのは、両方から見れば二人で一人ずつ見ればいいわけであります。ところが一人に幾つと、こういうことで、今少子化でお産の数も減っておりますしね。  ですから、四十名ぐらいの単位でなければ、これは一学年とてもやれない。そうすると、四十名じゃもう補助金つけませんよ、八十名いなければだめですよと、こんなことが行われているので、こういうものも規制をもう少し緩和して、そしてきちっと手当てをしていただくと。  今、御案内のように高齢化社会になってマンパワーというのは非常に足りない。そして、ゴールドプランが改められて新ゴールドプランになった。こういうときですから、ここら辺はやはりある程度緩和していただいて、ひとつ納得のいく補助をしていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。
  7. 久常節子

    説明員久常節子君) 看護職員確保につきましては、従来より看護婦等人材確保の促進に関する法律に基づきまして養成力確保の面も総合的に対応しております。  看護婦等養成所に対する運営費補助につきましては、先生先ほど御指摘のように、最近の厳しい財政状況にもかかわりませず、入学定員八十名以上の養成課程対象平成年度からは学生指導担当者経費を、また平成年度からは事務職員経費を新たに補助対象経費に加えるなど、その拡充に努力してまいっております。  しかし、学生指導旭当者維費事務職員経費のいずれの補助金につきましても、大型の養成課程対象とする特別な経費として導入された経緯もありまして、また導入後、日も浅いということから対象そのものを直ちに見直すことは難しいと思っております。  なお、現在も補助箇所数の増や補助単価の増加に努めております。  先ほど先生実習場所の問題とかいろいろあるということをおっしゃいましたけれども、養成所定員につきましては、実習場所だけの問題でございませんで、各都道府県看護職員需給見通しあるいは学生確保見通し、教員、校舎の状況、あるいは先ほど先生がおっしゃいましたように、実習施設確保状況等を考慮しまして総合的に決定しております。  実習施設要件につきましては、看護婦等学校養成所運営に関する指導要領及び手引に基づきまして、平成年度からは、今まで基準看護を承認されている病院であることを要件としておりましたけれども、そういうことを要件とせず、一定の条件を満たせば実習施設として認める。さらには、先ほどお産の問題もございましたけれども、一カ所じゃなくて数カ所でそれを満たせばいいというふうな形になっております。  なお、昨年十二月にまとめられました少子・高齢社会看護問題検討会報告におきましても、訪問看護進展や、高度医療に対応するような看護職員の資質の向上を図ることが重要と指摘されましたので、この報告を踏まえまして、本年度カリキュラムの見直し、先ほどおっしゃいましたような実習施設として病院以外の多様な施設活用についても検討を行う予定になっております。
  8. 宮崎秀樹

    宮崎秀樹君 しかし、一般論で言うと、大きな施設でいうと一人当たり経費というのは少なくなるんですよ。小さければ小さいほど一人当たり経費がかかるんです。これはもう経済原則なんですね。だから、そういうことを考えたら、小さいところはやっぱり足りないんだから、一人当たり単価は高くなるんだから、それは逆にきちっと補助すべきであると。私はそう思うんですけれども、やっぱりそういうところに配慮をしないで、ただ画一的に、実際の経済内容まで調べないでおっしゃっていたって、これは意味ないので、そういうことも考えたことありますか。
  9. 久常節子

    説明員久常節子君) この八十人定員というところに関しましても、まずは二人事務職員がいること、そして専従でいること、そういうところに対して一人をやっと今度補助できるようになったという状況でございますので、うまくいっているところにさらにというわけでは決してございません。
  10. 宮崎秀樹

    宮崎秀樹君 どうもその内容の話は納得できないので、八十人で二人で、一人で三人になるわけでしょう。
  11. 久常節子

    説明員久常節子君) いいえ、違います。八十人の定員で二人以上いらして、さらにその方たちが専任でいる場合に一人の補助をするという形になっております。
  12. 宮崎秀樹

    宮崎秀樹君 だけれども、小さいところで仮に二人いれば、これは大変なんですよ、四十人で。ところが、八十人で二人なら、それは楽なわけですよ。事務というのは見ていますと、結局そうは仕事の量というのは、四十も八十も変わらないわけですからね。だから、少なくて、そしてしかも人間をやはりそれだけの確保をしていかなきゃならないといったら、これはどうしてもお金がかかるんです。だから、そこの面をつけないで、面倒見ないで、ただ八十、八十と言ってやっても意味がないと。  時間がありませんから、看護課長、そういうことも考えて今後ひとついろいろなカリキュラムを見て、そして見直すというんですから、そういうことも勘案して、やはり経済学的な面ももうちょっと考えて、ただ規格品みたいなものじゃないんですから、人間を養成していくというというのはなかなかこれは大変なことなんですよ。だから、それはよく頭を絞って、知恵を出して補助対象として何とかしてやってもらいたいと思います。どうですか、もう一遍言ってください。
  13. 久常節子

    説明員久常節子君) 将来の課題として真剣に考えさせていただきます。
  14. 宮崎秀樹

    宮崎秀樹君 ありがとうございました。  では、次に移ります。  細かい問題で恐縮なんですが、これは運輸省の問題でありますが、市街化調整区域における配送センター設置の問題があります。  これは運輸省建設省両方にまたがる問題でありまして、ちょうどここに建設省出身運輸省出身議員さんがいらっしゃいますけれども、先輩議員を前にして私がこの問題を取り上げて僭越でありますが、一つ路線貨物運送事業者というのがあるんですね。そして、市街化調整区域路線貨物運送事業者配送センターをつくってもいいと。これはもう許可なしにできる。ところが、般区域貨物運送事業者にはこれは許可されない、こういうことですね。  これは平たく言うと、大会社はもうどんどん建てていいですよと、市街化調整区域に。しかし、小さな区域をやっている中小企業運送会社にはだめですよと。そこで、大会社はそこにつくって、そしてダミーと言うのですかね、小さな区域人たちをそこに入れて、そしてやらせているというようなことも聞いております。私はこの規制は大変おかしいと思うんですね。また、インターから五百メートル以内でなければ一般区域の人は建てられない。しかし、路線の人は何ぼ離れてもいいよと、いろんな規制をかけている。  一説によりますと、これは本当かうそか知りませんけれども、大手の路線運送業者の方から圧力がかかって、これを認めないんだという話も中小企業運送会社の方々から、もう陳情も実は受けているのは事実であります。これはうそかどうか知りませんけれども、しかし私は、もうこれはやはり公平に、国民にとっては地域のそういう運送業者が小回りしてやってくれることが非常に便利なんですね。  それを何で認めないかわからないんですが、先にどっちに聞きましょうかな。これは運輸省さんですか。運輸省さん、これはどうなっているんですか。
  15. 鈴木久泰

    説明員鈴木久泰君) ただいま御質問の、貨物自動車運送事業者施設市街化調整区域への設置の問題につきましては、運輸省といたしましても本省それから地方の出先の運輸局、それぞれの立場都市計画担当部局と従来より十分連絡調整を図りながら進めておるところでございます。  今御質問の、昔の法律時代路線事業者と言っておりましたが、今は特別積み合わせ事業者と言っておりますけれども、これの施設については開発許可制度適用除外になっておると。それ以外の、背、区域事業者と言っておりました一般トラック事業者につきましては開発許可対象になっておるというのは御指摘のとおりでありますが、昭和六十一年の建設省通達で、先生からお話もありましたように、インターの周辺でありますとか幹線道路の沿道でありますとか、一定要件のもとに一般事業者に対しても開発許可の道が開かれるということになったわけでありまして、私どもとしてはこれはかなりの進展だなと考えております。  今後とも運輸省といたしましても、都市計画担当部局十分連絡を図りながら御相談申し上げたいと思っております。
  16. 宮崎秀樹

    宮崎秀樹君 それでは、建設省の方で現在そういうことについてどういうようなお考えをお持ちか。また、今後どういうふうに対応していくかということをお聞かせ願いたいと思います。
  17. 竹村昌幸

    説明員竹村昌幸君) お答え申し上げます。  今の運輸省さん仰お答えと少しダブりますが、都市計画法による開発許可制度といいますのは、要するに良好な都市環境を維持する、確保するというような一種町づくりのルールを許認可に係らしめているものでございまして、原則として都道府県知事許可権限がございます。  今お答えになられたような、いわゆる貨物自動車運送事業法に基づきます一般貨物自動車運送事業というもののトラックターミナル開発許可上の取り扱いでございますけれども、特別積み合わせ貨物運送とそれ以外というものに分かれるわけでございますが、特別積み合わせ貨物運送につきましては、不特定多数の荷物が大量に持ち込まれるような事業所間で長距離にわたって定期的に運送されるという一種物流の根幹といいますか、幹線というような役割を担う非常に公益性の高い事業だということを理由としまして、かつての一般路線貨物自動車運送事業と同様に開発許可は不要にしております。これは調整区域に限らず、市街化区域であっても許可不要でございます。  特別積み合わせ貨物以外の一般貨物運送事業につきましてでございますが、先ほども御説明がございましたように、昭和六十一年、当時は一般区域貨物自動車運送事業ということでございましたが、そのときに将来それから現在の土地利用上支障がないというような区域につきまして、大規模なターミナルについて開発許可対象とするというような措置を県に明確にして公共団体指導したということでございます。  その後、運輸当局とも十分な連携を図りつつこの運用に努めておりまして、しかもさらにこの措置積極的活用について指導を行っているところでございます。この結果、市街化調整区域におきまして特別積み合わせ貨物以外のトラックターミナルについては相当な許可実績を上げているところでございますが、今後とも運輸当局連携を図りつつ適切な運用に努めてまいりたい、かように考えているところでございます。
  18. 宮崎秀樹

    宮崎秀樹君 もう時間ですからこれで終わりにしますけれども、とにかく両省、これは前向きにひとつ御検討していただいて、国民が一番便利な道をとっていただいて、有効にこういうものを活用して便利になるようにひとつ努力していただきたいことを申し添えて終わります。  ありがとうございました。
  19. 服部三男雄

    服部三男雄君 内需拡大のためにも住宅宅地開発、それから中高層マンション建設の増進ということが非常に重要であるということを思います。その観点で、規制緩和内容として本年の三月三十一日閣議決定推進計画の、土地供給欄の項目十六のところに、宅地開発等指導要綱行き過ぎ是正について今後も地方公共団体に対し引き続き是正指導徹底を七年度中も行うということを所管省庁建設省自治省報告しているわけでありますが、これまでのこの開発指導要綱行き過ぎ是正についてどういうように扱ってきたか、自治省から回答を求めます。
  20. 今仲康之

    説明員(今仲康之君) 宅地開発等指導要綱につきましては、各地方公共団体地域の実情を勘案しつつその自主的な判断のもとに定めているものでございまして、乱開発を防止し良好な都市環境を整備するために一定役割を果たしているものと考えているところでございますが、その一方で、一部の地方公共団体における宅地開発等指導要綱について、公共施設整備水準が高過ぎるといった御指摘や、寄附金等目的使途収支内容が不明確といった御指摘もあるところでございます。  自治省といたしましては、平成六年七月五日に閣議決定されました「今後における規制緩和推進等について」を踏まえまして、建設省共同宅地開発等指導要綱制定状況等につきまして実態調査を実施し、その結果を平成六年八月八日に公表いたしますとともに、平成六年八月三十日付、建設省自治省共同通知によりまして地方公共団体に対して行き過ぎ是正徹底を要請したところでございます。また、本年四月十八日付の地方財政運営通達におきましても、寄附金等内容及び取り扱いにつきましてなお一層その適正化に努めるよう要請したところでございます。
  21. 服部三男雄

    服部三男雄君 この問題はかなり長い間議論されておりまして、例えば建設省通達だと昭和五十八年から五、六回にわたってなされている。ところが、今回答のあった開発負担金の問題とか、収支使途明確化開発協力金金額算定根拠がはっきりしないとか、今後議論されるでありましょうが、最もひどい、これらに応じない、指導要綱に従わない場合の措置まで定めているのは、相変わらずかなり多数。回答では市町村数で約六百七十も指導要綱に従わない場合の制裁規定を掲げているのがあるというふうなところから見ますと、もう十年以上にわたって指導していながらなかなか改善が見られない部分が多数ありますので、今後自治省の、建設省はあくまでもお願いする立場でありましょうから、きょうは自治大臣は出席されておらないのでまことに残念ですけれども、パワーのある自治大臣に大いに発揮してもらわなきゃいかぬ。  規制緩和目的に全くそぐわないようなことがむしろふえる。指導要綱の数そのものはふえてきている。外国から見ますと、日本という国は何だ、役所が事実上強制するようなことを指導要綱の名のもとにやっているのか、法律上はっきりしないじゃないか、行政手続法を改正したのにまだ相変わらず同じ旧態依然としたことをやっているじゃないかという批判があるので、自治省として、特に割り当て的寄附とも見られかねないようなこと、それに対する制裁規定が定められている指導要綱の削除についてどういうふうにリーダーシップを発揮していくのか、時代の流れというものをよく考えて、今後どういうふうに対処していくのか、もうちょっと明確な回答をいただきたい。
  22. 今仲康之

    説明員(今仲康之君) 宅地開発等指導要綱に基づきます寄附金等の提供ということにつきましては、良好な都市環境整備のために事業者協力を得て行われているもので、また土地政策審議会の答申におきましても、宅地開発当たりまして開発者開発利益に応じた適切な負担を求めるべきとされていますことからも、それが合理的な範囲のものである限り妥当なものと考えておるところでございます。  自治省といたしましては、寄附金等内容及び取り扱いにつきまして、当該寄附金等目的及び使途明確化に配慮するとともに、当該市町村におきます公共公益施設の整備計画との整合性を考慮し、あわせまして関連公共公益施設整備に係ります各種の財政措置活用等をしんしゃくしてもらいまして、長期的な財政収支状況等を勘案しつつ、当該開発事業による受益と負担の程度等について総合的に検討することにより適宜寄附金等内容の見直しを行うこと、また、寄附金等につきましては基金の設置その他の適切な方法により、その収支内容明確化を図ること等を先ほど申しました地方財政運営通達により要請しているところでございまして、今後ともその適正化に努めてまいりたいと考えております。
  23. 服部三男雄

    服部三男雄君 今の答弁は確かにもっともな回答に一見聞こえるのであります。  では、自治省が全国にある数千の、特に東京圏だったら八〇%の市町村指導要綱をつくっている。大阪でもたしか六、七割がつくっている。これらの実施実態を具体的に自治省が把握できるかといったら、そんなものはできるわけがないのでありまして、そうすると、市町村とすれば開発寄附金をもらうということは非常にありがたいことなんです。当たり前でありまして、自治省は開発に関する道路とかその他の財政的措置を全部面倒を見てやっていないんだから、当然必要な金がかかるということで協力金を取ろうとするのは当たり前のことでありまして、それが業者にとってどれだけの負担になり、それが将来そこに住む住民の結局は負担になってくる。一種の強制的な公租公課に近い実態を有している。しかも、そのための事務手続が煩雑で物すごくかかる。これは明らかに規制緩和の実態から見て逆行することを今あなたは回答しているわけであります。  実態の把握をどういうふうにして自治省はこれからやるのか。個々の業者が政治家なりだれかに依頼してこんなことは困るじゃないかと言わない限り、あなたたちのところでそういう実態の情報はどのようにして入手されるのかということを考えますと、今の答弁は極めて規制緩和に関する時代の流れに逆行し、政府の前倒しをしてまでやろうとする規制緩和の実態に逆行しているような印象を強く受けるということで、自治省としてはもうちょっとこの問題について、たとえ土地政策審議会がそう言おうと、あるいは土地基本法の十四条にその旨が書いてあるからといってそれに安住することなく、強力なリーダーシップを発揮して実態把握に努めなければならない。  例えば、今あなたの回答で適正な負担であればと言うが、じゃ一体適正の判断はどのようにして決めるのかというようなことを考えますと、今の答弁は極めて不満であるということを強調しておきたいと思います。  これに関しまして、例えば任意の協力だとあなたはおっしゃるが、一昨年度、武蔵野市の開発協力金に関して違法だという最高裁判決があるが、その要旨をちょっと回答してください。
  24. 今仲康之

    説明員(今仲康之君) 宅地開発等指導要綱に関係いたしまして最高裁判所の判決、武蔵野市の事例でございますけれども、これにつきましては、まず指導要綱が、水道の給水契約締結の拒否等の制裁措置を背景として、事業主に二足の義務を課すようなものとなっていること、また、教育施設負担金の金額は選択の余地のないことを具体的に定められており、事業主の義務の一部として寄附金を割り当てその納付を命ずるような文言となっていること、さらに担当者の対応において、負担金の納付が事業主の任意の寄附であることを認識した上で行政指導をするという姿勢が到底うかがうことができなかったことなどから、本来、任意に寄附金の納付を求める行政指導の限度を超えるものであり、違法な公権力の行使であるというふうにされたものでございます。  こうしたことから、宅地開発等指導要綱に従わない場合の措置ということにつきましては、最高裁判所の判決を踏まえまして、見直しを図ることが必要なものにつきまして、自治省として要綱による行政指導のその一層の適正化を要請してまいりたいと考えております。
  25. 服部三男雄

    服部三男雄君 今の、武蔵野判決の指導要綱に従わない場合の制裁措置を定めているというのは、例えば、上下水道の給水契約を行わないとかあるいは都計法三十二条の同意協議を行わない、道路を供用開始させないとか、開発許可者への申達、実際に時間を延ばしたり、実際許可しながらなかなか相手に通知しないとか、こういう嫌がらせがいっぱいあるわけです。  こういったものは、内容は今のと重複するかもしれないけれども、今の市町村数において、全国の市町村幾らでしたかな、三千幾らのうちの幾らあるか、回答を求めます。
  26. 今仲康之

    説明員(今仲康之君) 先ほども御説明いたしましたけれども、昨年調査を行っておりますが、その際に、指導要綱に従わない場合の措置ということでの規定を定めておる市区町村数ということで調べました中では、六百七十一の市区町村がそういったものを持っておるということでございます。この中で、先ほど最高裁の判決の例ということで御説明いたしました、こういったものもございますけれども、基本的には協力を得て対応していく、そういった措置ということで対応を図っておるところがそれなりに多いというふうに理解をいたしております。
  27. 服部三男雄

    服部三男雄君 全国市町村三千二百のうちの六百七十、二割のものが、最高裁判決が出て同種の内容についてこれはだめだ、違憲ですよ、そこまで言っていてもまだ二割もが残っているというのを丸一年以上存置しているというのは、自治省、怠慢じゃありませんか。
  28. 今仲康之

    説明員(今仲康之君) この指導要綱に従わない場合の措置ということでございますけれども、先ほども最高裁判所の判決であらわれましたようなものにつきましては見直しの是正についての要請をさらに行ってまいるというふうに申し上げましたように、こういった最高裁判所の判決の中身というものを十分見きわめまして、それに対する対応というものにつきましては私どもの方で是正を図っていくというふうに考えております。
  29. 服部三男雄

    服部三男雄君 もう一つ、大いに問題になるのは、開発をする場合、都計法とかいろいろな法律で定めている技術基準を自治体の特殊事情によって強化しているということがよくある。  例えば公園なんかの場合に、三千平米未満の開発についても公園をつくりなさい、開発区域の六%以上を公園にしろとか、人口一人当たり六平米以上を公園にしろとか、幅員については先ほど回答がちょっとありましたが、六メーターを超えるものにしろとかいうような、もう法律を大幅に超えるような技術基準を設けて、それに従わない場合に制裁規定を科す、こういうふうになっておるわけであります。確かに個々の町の特殊事情はあるだろうと思います。あるだろうと思いますが、それならば指導要綱のようなあいまいなもので定めないで、条例なり何か明確に見える形で定めるのが本来の筋であろうと思うんです。それが地方自治法の趣旨に整合するものだろうと思うんです。  自治省並びに建設省が今後、特にこれは技術基準だから建設省も絡んでくるんだけれども、そういうふうにもっと外国から見て見える形にするように、行政上の指導要綱という形じゃなくて、見えるように指導していくべきと考えませんか。
  30. 今仲康之

    説明員(今仲康之君) 宅地開発等指導要綱ということにつきましては、各地方公共団体といたしましては、本来の任務の一つといたしまして良好な都市環境の整備を図っていくという使命を担っておるというふうに思っておりますけれども、そういった上から必要な行政指導を行うというのはやはり必要でございまして、宅地開発等指導要綱という形のものも一定役割を果たしていると考えておるところでございます。
  31. 竹村昌幸

    説明員竹村昌幸君) 指導要綱につきましては、建設省としましても自治省と一緒になっていろいろ指導しておるところでございます。  先生指摘のように、一部の行き過ぎた内容のものが円滑な住宅宅地供給の支障になっているという認識のもとで建設省は今まで数次の通達を出してきておるところでございますが、自治省共同で、先ほどから自治省が御説明になっておられるような調査もいたしまして、昨年の八月には通達も出しました。それから、今年一月から三月にかけましては大都市圏を中心に幾つかの市区町村からヒアリングを実施するというようなことを行って、行き過ぎた行政指導の是正に今努めているということでございます。  今後とも、自治省と緊密な連携を図りつつ、行き過ぎた指導要綱に基づく行政指導の是正の徹底に努めてまいりたい、かように考えでございます。
  32. 服部三男雄

    服部三男雄君 時間がないのでこの辺でやめますが、例えば先ほどの寄附金の使途について無限定、開発区域以外のところに幾らでも使える、その使い道も限定していない、そういう指導要綱を定めている市町村の数が平成年度調査でも何と五十二もあるんです。先ほど自治省回答によれば、武蔵野判決が出たからそういうことのないように指導していると言うが、相変わらず五十二もまだ残っている。  こういう実態を考えますと、規制緩和開発指導要綱のフォローアップを、七年度も引き続き是正指導徹底するというふうに自治省及び建設省回答していますが、総務庁として今の実態を大体おわかりいただいたと思いますので、総務庁が所管官庁でありますから、建設省はあくまでも御要望という立場になるでしょうから、特に各自治体を所管する自治省に対して総務庁長官として強烈な申し入れをして、せっかくこれだけ立派なものを出されたんだから、項目まで挙げているんだから、総務庁の強力な指導要望いたしまして、質疑を終わります。  大臣、それだけ確約してください。
  33. 陶山晧

    政府委員(陶山晧君) 規制緩和推進計画の全体の取りまとめ及び今後のフォローアップの立場として申し上げたいと存じますが、今後この計画のフォローアップあるいは具体化について政府全体としての対応を図ってまいります際、ただいまの先生の御意見については十分含ませていただきたいと存じます。
  34. 今井澄

    今井澄君 ただいまの服部委員質疑をお聞きしていまして、大変興味深く、実は私もむしろ分権の立場から、寄附金みたいなものはこれはよくないと思う、別の意見を持っているんですが、どうしてもこの委員会の形式がお互いのディベートでないのが残念で、私は私でやっぱり準備したものをやらせていただかざるを得ないと思いますので、私の質疑を行わせていただきます。  三月三十一日、閣議決定の「規制緩和推進計画について」、いわゆる規制緩和五カ年計画、私も読ませていただきました。大変項目数が多いので全部丁寧に読むというわけにもいかないので、流し読みみたいに二回ほど読ませていただきました。  この中で、その最初に「一 目的」と書いてあるんですが、ここに三つ①、②、③とあります。まず、一番目は内外価格差の縮小など国民生活の質の向上を目指すという目的、二番目が対外経済摩擦の解消、三番目が行政事務の簡素化などで国民負担を軽くすると三つ書いてあります。  これについてまず一つの問題は、第一の国民生活の質の向上を目指すというのは非常に積極的な目的ですが、他の二つはいかにも受け身的なんですね、やむを得ずやると。状況に要請されているというような書き方で非常に不満であります。  それともう一つ申し上げたいのは、これだけではないと思うんです、目的。もっと大きな積極的な目的があると。もちろん、この項目の中には書いてありますけれども、ここでやっぱり目的として挙げなければならないことは、経済構造の改革あるいは新産業の創出と、こういう積極的な目的をここに掲げておかなければいけないことではないかと思います。そのことについてどうお思いかということ。それからもう一つ、この規制緩和の問題は、現在特に急速な円高が進行したり産業の空洞化が加速されている、この時点において特に今対外経済摩擦の解消という二番目の目的、それから私が今つけ加えました新産業創出という目的、これに一層強力に取り組む必要が現時点であると思うんですがいかがでしょうか、長官のお答えをお願いいたします。
  35. 山口鶴男

    国務大臣山口鶴男君) お答えいたします。  御指摘のように、目的委員が御指摘になりましたような経済構造の改革とか新産業の創出といった積極的な目標がありませんことについてはそのとおりだと存じます。ただ、二の「規制緩和基本指針等」のところにおきまして、分野別におきましては、例えば情報・通信関係では新規事業の創出、流通等関係では真に豊かな国民生活と内外の変化に対応した経済構造の実現、事業機会の拡大、新規事業の創出といったような積極的な観点を掲げていることは御承知のとおりだろうと思います。  いずれにいたしましても、目的にそういった積極的なことをうたうべきだと、こういう御趣旨につきましては私も十分わかるわけでございまして、今後この計画につきましては内外の意見を承りまして、もちろん国会の御論議を十分踏まえました上で、年末に見直し、そして年度末に改定というローリング作業を進めるわけでございますので、その際に十分配慮させていただきたいと存じます。
  36. 今井澄

    今井澄君 そこで現時点での問題として、円高対策と規制緩和の関係について何点かお伺いしたいと思います。  三月三十一日に五カ年計画を発表したわけでありまして、かなり政府としても力を入れて発表したわけですが、諸外国からは残念なことに失望感と申しますか、余り積極的な評価というのは返ってこなかった。また、国内的にもマスコミ等の論評は余り芳しくなかったという点があって非常に残念だと思いますが、長官としては何が問題だったというふうにお考えになっておられますでしょうか。
  37. 山口鶴男

    国務大臣山口鶴男君) 御案内のように、我が国の制度は議院内閣制でございまして、行政組織法におきましても各省庁の権限は各省大臣が握っておるわけでございまして、総理大臣は閣議の場で議論をいたしまして一定の方向を出して、その上で各省大臣に指示をするという建前になっております。したがいまして、行政改革を担当しております私としましても、総理大臣と十分話をし、あるいは官房長官と調整をいたしまして閣議において発言する、また総理大臣が閣議において指示もされると、さらには閣議後の懇談で議論する中で政府としての方針を各省で実現するように努力を要請するというような形でやっぱりやらざるを得ないわけであります。  しかし、そういう形でありましても、今回の場合、この規制緩和は村山内閣の重要な課題だということを各省の大臣も十分認識をいただいて、それなりの努力をしていただいたというふうに私ども思っております。  ただ、これに対しましては、内外からさまざまな意見のあることは私も承知をいたしております。しかし、今回のこの計画で内外とも高く評価をいただいているのは、透明性を確保してこの計画を策定する仕事を進めたという点です。三月十日に中間報告を提出いただいて、三月の十三日でございますが、在外公館の方々にお集まりをいただいて外務省と総務庁とで中間報告内容を詳細説明する、また意見も承る等々のことを積み重ねて進めた、透明性を確保するという点でこの作業を進めたという点は高く評価いただいていると思います。  それからまた、今後ともこれで終わりということではなくて、先ほど宮崎委員にもお答えいたしましたように、内外からの要望をさらに承り、毎年見直し、改定というローリング作業を進めていく。そのための機関としては行政改革委員会が監視、勧告というような権限もあって、その仕事にさらに力を注いでいただくという点につきましては、これは随分評価をいただいていると思う次第でございます。したがいまして、これに終わることなく、今後さらに毎年見直し、要望にこたえるという形で対応いたしてまいりたいと存じます。
  38. 今井澄

    今井澄君 いささか残念なことでありますが、さて円高ですけれども、一ドル八十円台、一時はこの発表の後も七十九円何がしというふうなことでとまらなかったわけです。まず第一は、四月十四日の緊急対策でこの五カ年計画を三カ年計画に前倒しをするということをされたわけですけれども、この前倒しの具体的な内容についてちょっとお尋ねをしたいと思います。  と申しますのは、私もこれずっと見てみたんですが、項目の勘定の仕方がどうも悪くて、一枠一項目と勘定すると千九十一じゃなくて、私の勘定間違いか千二十八なんですが、その細かいことはどちらでもいいとして、これを検討しますと六割、六百二十八件が平成年度に実行することになっているんです。そうすると、これは今さら前倒しも何もないわけで、予定どおりやるということになるわけで、どこを拾ったらいいのかと思って見ていきまして、平成年度、十一年度ということを見ていきますと、項目数としてわずか三十八項目、全体の四%弱なんです。  しかし、ちょっと中を見ますと結構大物がありまして、大店法の見直しの問題だとか、それから電気用品や建築資材、そういったものの国際標準化、自動車の型式指定の国際単位化、JIS、JASの問題とか、いろいろ入っているんです。そうしますと、そもそもこの五カ年計画がそういう重要な問題を先送りしていたということが、先ほどの問題にもありますが、ちょっと五カ年計画評判が悪かったことなのかというふうにも思えるわけであります。  ところが、この五カ年計画をしゃ三カ年前倒しすると、先ほど申し上げましたように結構大きな項目がなと思うものを三年以内にやりますよと言っても円高はとまらなかったということもある。やっぱり何か根本的にこの計画自身の中にも漏れている大きな問題があるんじゃないか、あるいはアナウンス効果としても非常に欠けている問題があるんじゃないかと思うんですが、その辺いかがなんでしょうか。
  39. 陶山晧

    政府委員(陶山晧君) 大臣からもお答えがございましたように、現段階で対応可能なぎりぎりの規制緩和の具体的な措置内容について取りまとめたものが今回の規制緩和計画でございます。ただいま今井先生からお示しのございましたように一千九十事項、十一行政分野にわたっているわけでございます。  ただし、この内外からの御意見、御要望の中に、今回の規制緩和計画では措置困難ということで盛り込めなかったもの、対応が困難であるという結論になったものもあるわけでございます。これらにつきましては、例えば関係団体の間でそれぞれのお立場立場で意見が相対立するというような問題とか、あるいは諸般の条件整備を図るために当面この計画に盛り込むことが困難である等々いろいろな理由があったわけでございますが、これらにつきましては、今後なお議論を尽くした上で、可能なものについて取り込んでいくということになろうと考えております。  いずれにしろ、規制緩和の問題は、単発で一回限りですべて終わるというような性格のものではさらさらございません。常に社会経済状況の変化に対応しながら、その時点時点で見直しを行いつつ、いわば常時積み上げをしながらトータルとして規制緩和の成果を生かしていく、そういう性格のものであろうと考えておりますので、今後とも内外の意見、要望、あるいは行政改革委員会の監視結果に基づく御意見等踏まえまして、毎年度改定をし、さらに充実した内容にしていきたいと考えておるところでございます。
  40. 今井澄

    今井澄君 やっぱりもう少し大胆な規制緩和があれば、海外の反応あるいは国内的にも評価を受けられた面もあるんではないかと思うんです。  今お答えのありました中で、海外から要望がありながら関係団体等の意見が整わないで措置困難となったもので、やはり重要なものとして総務庁としてお考えのもの、あるいは個人的にでも結構ですが、二、三、今回これらの中に取り上げられなかった重要事項というものを、長官でも結構ですし、陶山局長の方でも結構ですけれども、ちょっと挙げていただけますか。
  41. 山口鶴男

    国務大臣山口鶴男君) この千九十一事項の中で御指摘の点をお答えするとすれば、例えば大店法の問題などは関係経済団体の意見が相違をしている、そういう中で平成十一年度までに見直すということだったわけでございますが、これは前倒しをいたしましたので平成年度までに見直すということにはなりました。いずれにせよ、そのような形になったのは、関係経済団体の意見がやっぱり随分相違をしているという中で、当該関係省であります通産省としても一定の結論をなかなか出しにくかったという点があったと承知をいたしております。
  42. 今井澄

    今井澄君 千九十一以外でちょっと。
  43. 陶山晧

    政府委員(陶山晧君) 大変難しいお尋ねでございますけれども、例えばこれは計画の中にも掲げておりますように、外国との交渉中の案件というような問題については本計画の中には具体的に入っておりません。  米国等から、特に自動車関係部品等々についての要望が強かったことは承知をいたしておりますが、これについては現在外交交渉中の案件でございまして、これが決着を見次第速やかに措置をするということを前提にして今回はこの計画に入っておりません。例えば、そうした問題について外国側から具体的な措置内容として盛り込まれていないということについてのコメントが出ているという一つの例でございます。
  44. 今井澄

    今井澄君 これを拝見しますと、住宅関係については三十項目ぐらい、土地とかその他を除いて結構な項目が入っているんです。しかし、これも七年度以降と抽象的であったり十一年度までかかりそうなことがあったり、いろいろあるんです。私は、この住宅関係の規制緩和というのは非常に大事だと思うんです。この十四日の政府の緊急対策の中にも、輸入住宅の輸入促進ということがあえて改めて取り上げられているぐらいこれはやっぱり大事な問題だろうというふうに思っております。  そこで建設省にちょっとお尋ねしたいんですが、これはNHKの調査でも、昨年テレビ放映されたものですが、アメリカ、カナダに比べて日本では約二倍ぐらい高いというふうなこともあります。また、神戸には何とか村という向こうの住宅でっくったのがあるんですが、別に大震災で大被害を受けたわけじゃありませんね。  そんなようなことからも、もう日本の建築基準法から何からいろいろ厳し過ぎるんではないかということで、この中にもいろいろありますが、この五カ年計画に盛り込まれた以外、住宅に関してもっともっと取り上げるべきものがあるんではないか、あるいはこの中に含まれているものでも積極的に緊急にやるべきことがあるんではないかと思うんですが、いかがでしょうか。
  45. 稗田祐史

    説明員(稗田祐史君) 住宅、土地に係る規制につきましては、安全の確保、災害の防止、環境の保全や良好な町並みの形成等を目的とするいわゆる社会的規制が中心でございますが、これらの規制についても、規制の本来の目的確保に十分配慮しつつ、絶えず的確な見直しを行うことが必要であると認識をいたしております。  今回の規制緩和推進計画の取りまとめに当たりましても、規制緩和に関する内外からの意見、要望の把握に努めた上で、こうした考え方に照らし、現行の規制を緩和することが合理的と判断された項目についてはすべて計画に盛り込んだところでございます。  例えば、今の輸入の関係で申し上げますれば、海外の建設資材の導入の円滑化の観点から、性能評価に係る相互認証制度の導入、それから建築資材について諸外国の規格、基準に適合し、ツーバイフォー工法の要求性能を満たす建築資材の通則的受け入れ等を行うこととしております。  今後も、規制緩和推進計画に沿って住宅分野規制緩和推進に積極的に取り組んでいくこととしております。
  46. 今井澄

    今井澄君 今の御答弁の中に社会的規制の安全性とか何かが多いと言うんだけれども、必ずしもそうでもないということがこれは指摘されていると思います。  例えば町づくりという意味で、生活環境とかあるいは環境に配慮した、そういう意味規制というのは、私はさっきの質疑をお聞きしても大事だと思うんですけれども、しかし、安全性という名のもとに余りにも過剰な規制が実は行われているんだということです。このことはやっぱり大きく見直していかなければならないんじゃないかというふうに思いますので、御意見を申し上げます。  と同時に、たまたま、「規制緩和で伸びる住宅・医療・情報通信 ニュービジネス白書」という本がありまして、これが通産省産業政策局サービス産業課監修になっておりますね。この中で、住宅と医療と情報通信、この三つが特に取り上げられておりまして、特に住宅の問題は、そういう住宅プロパーの問題のほかに、まず輸入にかかわる関税の問題であるとか、それからその他周辺的にもいろいろな問題がある。あるいは建設省所管の問題でも規格認定がいろいろあるわけです。こういうものを民活で民間団体にやってもらっている。こういうものに物すごい手間とコストがかかっているということがありまして、単に建築基準法の問題だけではない、総合的に取り組まなければならないということも指摘されておりますので、ぜひこれはまた総務庁の方としても、建築の問題は建設省だということではなく、総合的にお取り組みいただければ、日本国民が豊かでゆとりある生活ができる。住というのは非常に大事ですし、ウサギ小屋などと批判されている、このことについてお取り組みを願いたいと思います。  二番目に、新産業創出と規制緩和の問題についてちょっとまた個別にお尋ねしたいと思います。  新産業を創出するためにはいろんな整備がこれもまた必要だと思います、法的な整備。今度もベンチャービジネスの育成法ができたりいろいろありますが、あと融資制度とか税制上の問題もあると思いますが、基本的にはやっぱりこれは産業が自分の力で、自助努力で頑張っていくということを支援するような金融証券制度の改善とか拡充が必要だと私は思っておりますし、これもこの五カ年計画の中にちゃんと入ってはいるんです。  昨今も新聞に出ておりますけれども、店頭登録株式の登録基準を見直して緩和していくという方向が出ているわけでありますが、確かにいろいろ見てみますと、日本では創業してから店頭登録されるまでに平均して約二十七年。アメリカではそれが約五年ぐらいですね。創業して株式を公開して、そこから資金を集めるということがなかなかできないということが日本の問題だと思います。それから、それも形式基準だけじゃなく、実質基準というのが非常に高めに設定されているということですね。こういう問題について今取り組みが行われつつあると思いますけれども、その取り組みについてちょっと具体的にお話し願いたい。  もう一つ、これは研究開発型、知識集約型に絞るようになっているんですね。とりあえず特例としてやっていくという方向で今検討が進んでいると聞いておりますが、むしろ規制緩和の方向は、経済規制原則自由、例外規制という原則が確認されているはずなんです。それなのに、なぜちょこっと窓口をあげようという考え方でやるのか。新産業創出だったら、何も知識育成型とかそんなのに限らず、お役所で考える以上に自分たちで考えて新産業やっていくんですからね、もっと自由にしたらいいんじゃないかと思うんですが、どうでしょうか。
  47. 藤原隆

    説明員(藤原隆君) お答え申し上げます。  今、先生指摘のベンチャー企業の育成のための店頭市場の整備ということにつきましては、私どもといたしましても、店頭市場の整備拡大ということが、ベンチャー企業を含めました企業の資金調達にとって極めて重要であるということは十分認識いたしております。したがいまして、今先生も御指摘の店頭登録制度についての見直しというのを現在進めておるところでございます。  具体的には、一つは本年四月から、これまで週三社から五社といたしておりました過当なりの公開会社数の制限、これを撤廃いたしました。もう一つは、今御議論になっております、現行の基準ではなかなか公開が難しいというふうに考えられております研究開発型でありますとかあるいは知識集約型、こういう事業につきましては、今の基準ではなかなか難しい、なかなか公開できないということでございますので、そういうような新規事業を実施する企業につきまして、投資家保護にも配慮しつつ、その店頭登録基準の特則を設けるという方向で今検討を進めておるところでございます。具体的には、この特則の企業の範囲でありますとかあるいは内容等につきましては、日本証券業協会の方で現在検討が進められておりまして、本年の六月を目途に結論を得たいというような検討を進めております。  それから、こういう方向ではなくて一般的な方向としてやるべきではなかろうかということでございますが、現在の店頭登録基準と申しますのは、アメリカのNASDAQと比べましてもほとんど同じ、ほぼ同水準の数字でございまして、こういうところでなかなかそれを全般的に下げるというのは難しい。今申し上げましたような研究開発型企業でありますとか、こういうものにつきましては、なかなかその基準ですら達成するのが難しい。したがって、こういうものについては何らかの手当てをする方向で考える必要があるという方向で現在検討が進められております。  以上でございます。
  48. 今井澄

    今井澄君 今、NASDAQとほとんど同じと言いましたけれども、これは違うんですよね。そもそも、資産要件ということについては、これは似たり寄ったりというふうに考えていいと思うんですけれども、日本では利益ということを、既に利益を上げているということを前提としているわけでしょう。そこのところが大きな違いなんですよ。今赤字であっても何であっても、それは創業期の企業やベンチャーというのは、まさにこれからの問題なんですよね。それだからこそ、そこのところにベンチャーキャピタルがいろいろ流れるようにしてあげることが大事なんだと思うんです。  それが一つと、さっき何かどうもお答えが余りはっきりしなかったんですが、特則という方法について、私は、そうじゃなくて原則自由にしたらいいんじゃないかと。通産省も、新産業というのは幾つあるんだろうということで、例えば八つなんというのを出していますよね。だけれども、これはやっぱり霞が関で考えた問題であって、現場の商売で考えれば八つなんてというものじゃなくて、いろいろあると思うんですね。  そういう意味からいって、やっぱり原則ゼロベースからスタートするという方向でいくべきなんじゃないか、特則ということではいけないんじゃないかとさっき申し上げたんですが、その辺についてももう一度。
  49. 藤原隆

    説明員(藤原隆君) NASDAQと日本の店頭登録の基準の相違でございますが、これは詳細に説明いたしますとちょっと長くなるのでございますが、いわゆるNASDAQと申しますものの中には三つの選択の基準がございます。これは、先生御案内のように、スモールキャップという一番緩いものから、いわば日本の上場企業で言えば一部に相当するような、ナショナルマーケットシステム、選択肢一とか選択肢二とかというのがございます。大宗はこのナショナルマーケットシステムの方でございますが、これと私どもの方の店頭登録基準を全体として見てみますと、例えば純資産でありますとか総資産、区々でございますけれども、総じて見ますとほぼ同様である、この基準につきましてはほぼ同じであるということは、産業界初め通産省の方もこれはお認めいただいているところでございます。  ただ、先生も今御指摘のように、実質基準と形式基準というお話がございました。確かに形式基準、これはNASDAQと今回じでございます。実質基準という言葉がいいのかどうかわかりませんが、実質基準というのについて申し上げますと、私ども、例えば国とかあるいは証券業協会がこれ以上の基準を設けて業界に対して強いているということは全くございません。ただ、個々の証券会社はこの最低の基準を上回るところで基準を引いている、これも事実でございます。  ただ、これはその証券会社が自分の経営能力といいますかあるいはその経営判断と申しますか、あるいはリスクテーク能力と申しますか、そういうのを個々に勘案いたしまして、自分の会社であればこのぐらいのところを引き受けられると、それは個々の会社の判断に基づいて決めている。したがいまして、ここのところは、国があるいは協会がこれを強制的に引き下げよと言うようなことはなかなか難しい分野というふうに、規制とはむしろ逆行する分野になってしまうという、トートロジーの世界に陥ってしまう話でございます。  したがいまして、その辺につきましては、将来的に、証券会社のリスクテーク能力とかそういうものがもっと強くなり、そういうふうになってくればどんどん下がってくる。あるいは、先ほど申し上げましたように、どうも従来は一週間当たり三社から五社という制限がございました関係で若干たまっておる、ストックがある。したがって優良な企業がたまっておった。そういうことからどうしても上の方からとっていかざるを得なくなったというようなこともございまして、そういう関係があるということで御理解いただきたいと存じます。
  50. 今井澄

    今井澄君 これはもう時間がないんで議論はできませんが、たまたま私の手元にある三和総研の「ベンチャー企業の現状と育成策の課題」というレポートを見ますと、株式の未公開企業四百五十五社をサンプル調査して、NASDAQの基準でやると七一%の企業が公開可能だと。ところが日本の基準、実質基準でやると二三%の企業しか公開が可能でない、三倍も違うという報告も出ているわけですので、一層の努力をお願いしたいと思います。  さて、時間がなくなってきたので最後まとめてお尋ねしたいと思います。  規制緩和というのは、特に今、世界全体の経済も変わり日本経済も構造改革をやって変わっていかなきゃならないというときには、やっぱり徹底的にやっていかなければいけないと私は思っているわけです。しかし、その条件として、公正な市場経済を展開したり、あるいは消費者や投資家などを保護する意味でも重要なことが二つある。一つは情報公開ですね。もう一つは独禁法の運用強化。この二つだと思うんです。  情報公開については、公のものではなくて、企業の情報公開、これが必要だと思うんですけれども、これについての進め方や何か具体策があればお尋ねしたいというのが一点。  それからもう一点は、独禁法の運用強化、公取の強化ということが盛んに言われ、隣に座っている同僚の峰崎議員も予算委員会でもそれを主張したところでありますけれども、私の印象ではどうもなかなか公取というのは動かない、こちら側から何か言わないとなかなか動いてくれないというところがあったんですが、最近追い風なんでしょうかね、ここ一週間の新聞を見ても、医療食の業界に入ったとか、それからプライベートブランドの下請業者に何か未払いがあったりなんかするので入ったと。大分活躍をしていただいているようですが、それでもアメリカ、イギリスに比べるとまだまだ予算でも人員でも少ない、体制が弱いということがあると思います。その点について、どのようにして独禁法の運用強化をするのか、公取の強化をするのか、そういうことについて何かお考えがあったらお願いをしたいと思います。
  51. 山口鶴男

    国務大臣山口鶴男君) 御指摘のとおり、現代の企業におきましては、多くの関係者、株主、債権者、投資家、従業員、消費者、国家、地域社会など、こういったものを有しておるわけでございまして、有用な企業情報を公にすることは企業の経営責任を果たすために必要であると認識をいたしております。  このために、証券取引法、商法等に基づきまして、有価証券報告書や財務諸表などの作成が義務づけられているところでございますが、社会経済の変化を踏まえまして、引き続き関係省庁においてさらに公開のために適切な措置を講ずることが望ましいと思っております。  また、独禁法の問題に関しましては、今回決めました五カ年計画の中におきまして、独禁法の厳格な運用確保するために公正取引委員会の組織、人員についても十分強化することをやろうではないかという趣旨もうたったわけでございまして、この点は御指摘のとおり、独禁法の厳格な運用、公正な競争が確保されますように政府としても対処いたしたい、かように考えておるところでございます。
  52. 今井澄

    今井澄君 終わります。
  53. 広中和歌子

    広中和歌子君 同僚議員のすばらしい質問を伺っておりましたんですが、私も、少し重なるところがありますが、それを避けながら御質問させていただきたいと思います。  二十一世紀に向けた我が国の経済の活性化、国民生活の質の向上、対外摩擦の原因になっている内外不均衡の是正、特に、急速な円高の中で、我が国の巨額な貿易黒字を削減するためにも大胆かつ実効性、即効性のある規制緩和が今求められているわけで、三月三十一日に規制緩和推進計画が発表されたわけです。それについては一応評価申し上げますけれども、たった十四日で当初五年であった計画を三年に前倒しされたわけですね。こうした十四日間での変更というのはどういう理由でなされたのか。政府の計画そのものの重みというのは一体何なのだろうか。こういうようなことで実効性のある総務庁のリーダーシップが発揮できるのだろうか、そんなような気がいたします。  絶えず内外の意見を伺いつつ変更していくという、非常に柔軟な態度をお持ちでいらっしゃるということは、今、同僚議員に対するお答えの中から伺ったわけですけれども、それにいたしましても、総務庁長官の決意をまずお伺いいたしたいと思います。
  54. 山口鶴男

    国務大臣山口鶴男君) 規制緩和推進五カ年計画につきましては、これは前内閣の際にもそのような決定がございまして、村山内閣が成立をいたしました昨年の七月、前内閣の決定をも尊重いたしまして、年度末までに五カ年間の規制緩和推進計画決定するということを閣議で決定いたしまして、その上に立ちまして、内外からの意見を聴取する、中間報告報告し、さらにまた意見を承るという透明性を確保する手続をとりました上で、三月三十一日、閣議決定どおりに策定をいたした次第でございます。  しかし、その後一ドルが八十円を切るような異常な円高が進行いたしましたので、これに対して緊急経済対策を確立せねばならぬということになりまして、関係閣僚で議論をいたしました。また、政府・与党におきましても幹部の皆さん方が御議論いただきまして、そういう中で、この際やはり異常な事態に対処するためには異常な決定をしなきゃいかぬということで、三月三十一日に五カ年の計画閣議決定を尊重して決めたわけでございますが、これを三年に前倒しするということを決めた次第でございまして、そういう意味では、ぎりぎりの努力をして、三月三十一日に五カ年計画決定をし、異常な事態に対処するためにこれを前倒しをしたということでございます。
  55. 広中和歌子

    広中和歌子君 ともかくこの規制緩和、出発点として一応評価いたしますけれども、それを実効あらしめるためには、規制緩和だけではなくて、旧来のいわゆる日本的な商慣行、そういうものにメスを入れなければならない、そういうふうに思うわけでございます。  独禁法の運用強化というようなことで公取の活躍が期待されるわけですが、公取の方にいらしていただいていますので、お答えをいただきたいと思います。  ただいま総務庁長官のお答えの中で、公取の役割を強化するというようなことがございましたけれども、現状におきまして、そして新しい規制緩和を受けまして、現在の体制でできるのだろうかということ、そして具体的にどのような体質強化がなされるのか、それをお伺いしたいと思います。
  56. 上杉秋則

    説明員(上杉秋則君) 御説明申し上げます。  規制緩和が進みますと、自己責任及び市場原理に基づく自由な事業活動が行われることとなりまして、市場経済の基本ルールである独禁法の適用分野が拡大されることとなります。したがいまして、私どもが独占禁止法に違反する行為に対しまして厳正かつ積極的に対処する必要性が高まるというふうに認識いたしております。  例えて言えば、長年規制下にありました産業では規制緩和後におきましても協調的な行動がとられやすいと考えられますし、それから規制緩和進展する中で、例えば事業者団体の活動が従来の公的規制にかわって事業者の競争を制限したり新規参入を阻害したりというおそれもございます。それから、規制緩和後におきまして、規制にかわって競争制限的な行政指導が行われることのないよう、私どもガイドラインを発表いたしておりますけれども、これに基づきまして関係省庁と事前に調整を図っていくという活動も重要になっていくかと考えております。このような取り組みを進めることによりまして、規制緩和の市場において規制にかわって競争制限が行われることのないよう、つまり規制緩和の実が失われることのないように努めるというのが私どもの重要な施策ではないかと考えております。  このような規制緩和進展に伴って競争政策の徹底を図るというためには、やはり公正取引委員会の組織、人員等の面で体制強化を図る必要があると考えておりまして、公正取引委員会といたしましては、機構、定員等の拡充強化を図るために関係方面の一層の理解を得られるように努めてまいりたいと考えている次第でございます。
  57. 広中和歌子

    広中和歌子君 理解を得たいというところでお答えは終わっているわけですけれども、ぜひこの点に関しまして頑張っていただきたいと思います。そして、総務庁の御協力もぜひ得たい、そのように要望しておきます。  次に、労働省関係の方に来ていただいておりますけれども、現在、経済の低迷が続く中で、希望退職者の募集などの雇用調整が行われているなど、非常に厳しい状況が続いております。  社内の失業者、いわゆる社内失業というんですか、現在失業してなくても、もしかしたら失業をするんではないかといったような不安を抱えている人たち、あるいはもし可能であれば首を切りたいと思われている人たち、そういう方たちが現実に二百万ぐらいいる、そんなように言われております。一方で、新産業というんでしょうか、そういうものへの期待が持たれているわけでございますけれども、そういう人たちが新産業へ移行していかなければならない。そういう新たな職種の多様化、それから働き方の多様化、そういうものも生まれているんではないかと思います。  現在まで公共職業安定所、いわゆる職安における職業紹介は求職者の早期再就職の促進として非常に役に立ってきたことは認めますけれども、新たな状況の中でやはり民営職業紹介企業というものも必要なのではないか、そのような気持ちを持っておりますけれども、現在の民営職業紹介事業について、現状をまずお伺いいたします。
  58. 森山寛

    説明員(森山寛君) お答え申し上げます。  先生の御質問の中にありましたように、大変に厳しい状況であるということにつきましては、労働省真剣に受けとめておりまして、その対策を今講じているところでございます。今国会におきましても、不況業種に対しますいろいろの助成金を創設する等も含めました不況業種対策等の法案をお願いをし、今国会での成立を見たところでございます。そういうものを含めまして、そういう大変厳しい雇用情勢に対する対策というものを進めていこうということにしておるところでございます。  なお、民営の関係でございますが、現在は二十九の職業につきまして、特別の技術を必要とする分野につきまして認めているところでございまして、これも現在三千を超える事業所がこの許可対象になっているところでございます。件数におきましても五十万件を超える紹介件数を上げているところでございます。
  59. 広中和歌子

    広中和歌子君 要するに、私どものイメージしております職業安定所というのは、失業したときに行って職業を世話していただく、それもただで、無料でやっていただくということで、それはよろしいんですけれども、これからの潜在失業、そういう人たちが非常に不安を抱えているときに、何というんでしょうか、新しい職種のオプションがある、そういったことで、情報がより多くあるといったような状況というのは、非常に働いている人たちにとって安心感を与えるものではないか。  今までの職業安定所だけで、そしてこの例外的に二十九の特殊な職業に許されているそういう民間の職業紹介所、あるいは人材派遣の職業紹介情報誌、それだけではちょっと不十分ではないか。この分野で、もっと自由化というんでしょうか、今度の規制緩和の中で自由化の方向に踏み出していただくことが要望されているんじゃないか。少なくとも先取りをして、現状がどうあろうと先取りをしてそういう方向に踏み出すべきじゃないかと思いますけれども、重ねてお伺いいたします。
  60. 森山寛

    説明員(森山寛君) この紹介につきましては先ほど申し上げましたように二十九職業でございまして、また派遣につきましては十六業務が今認められておるところでございます。  この理由でございますが、派遣につきましては、専門的な知識あるいは技術を必要とする業種に限定をしておるところでございますけれども、これらにつきまして、その職業あるいは適用対象業務につきまして、規制緩和観点から拡大すべきではなかろうかという御意見があるということにつきましては十分承知をしているところでございます。ただ、この職業とか対象業務のあり方につきましては、やはり我が国全体の労働力需給をどう考えていくか、あるいは労働者の保護、例えば派遣につきましては雇用する者と指揮命令する者が違うという特殊な形態にあるという中での労働者保護をどう考えていくかというふうなこと等々の問題がございます。そういう労働者の保護をどうとるかというようなことも十分留意をしていく必要があるというふうに考えておりまして、この制度の運用の実情等を見極めながら、そういう多角的な方面から検討を行っていく必要があるというふうに考えておるところでございます。  このために、労働省としましては、昨年の十一月より、中央職業安定審議会の中に民間労働力需給制度小委員会というのがございますけれども、そこで検討をお願いしているところでございまして、この審議結果を踏まえながら、今後必要な見直しというものを行っていきたいというふうに考えているところでございます。
  61. 広中和歌子

    広中和歌子君 私はぜひ自由化の方向で御検討いただきたいと思います。というのは、確かに人の職業を守るという点では、終戦直後、非常に大切な部分もあったと思いますけれども、そして今までもずっと公的な職業安定所のお役目、それは十分評価いたしますけれども、今、二十一世紀に向けまして、非常に職業も多様化し、新しい職種も出てきておりますし、また働き方も変わっている。繰り返しになりますけれども、そういう中で大胆な見直しをぜひお願いしたいと思います。  それから、生命保険料についてお伺いいたします。  規制緩和推進計画によりますと、保険の商品、料率の認可制の見直しが入っております。「保険制度改革の一環として、保険の商品約款・料率の算出方法の認可制について契約者保護の面に留意しつつ、届出制の導入、拡大を図る。」と記されておりますけれども、具体的にどう緩和されるのかお伺いいたします。
  62. 滝本豊水

    説明員(滝本豊水君) 現行の保険業法におきまして、生命保険料率につきましては、各社個別に認可を受けましたいわゆる基礎書類、これは「保険料及責任準備金算出方法書」と申しますが、これに基づき決定してきておりますけれども、時代に即応した規制緩和推進という観点から、現在国会において審議をお願いしております改正保険業法案の中では、認可制から届け出制への移行を提案申し上げているところでございます。具体的に申し上げますと、保険契約者等の保護に欠けるおそれが少ないと判断される保険分野につきましては認可制を緩和し、届け出制に移行することとしております。その具体的内容につきましては、現在検討しているところでありまして、法律施行までには固めたいと思っております。
  63. 広中和歌子

    広中和歌子君 認可制がこれから届け出制にかわりましても、現状では非常に横並びというところがあるわけですね。それについてはどう思われますか。行政指導があるんでございましょうか。
  64. 滝本豊水

    説明員(滝本豊水君) 生命保険料率につきましては、やや専門的になりますけれども、将来の死亡事故の発生の見込みであります予定死亡率というもの、それから保険会社事業運営経費に当たる部分の予定事業費率というもの、それから将来にわたります運用収益の見込みであります予定利率という三つの基礎率に基づいて算出されておりまして、このうち予定死亡率といいますのは、生命保険協会が各社から収集しました客観的な統計データに基づいた死亡率という会社生命表というものがございまして、大数の法則が働くようになるべく多数のデータを集める必要があるという保険数理の観点から、各社はこの生命表を使用するのが合理的であるという判断からこれを使用している。この死亡率につきましては、客観的なデータに基づいて作成されているものでありまして、大きく異なるものではないと考えております。  また、予定事業費率につきましては、各社の事業費の実績に基づきまして、各社の経営判断により設定されておりますし、予定利率につきましても、各社が将来の運用収益の見通し等に基づいて当局に届け出て設定しているところでありますし、生命保険各社の商品につきましては、保障する内容がそれぞれ区々に異なっているということでございまして、保険料もそれぞれそれに応じて異なっているということでございまして、各社が横並びということはないのではないかと考えておます。
  65. 広中和歌子

    広中和歌子君 私、専門家じゃないからわかりませんけれども、事実上横並びなんだそうです。確かにおっしゃるように、予定死亡率というのはどこの会社でも同じ数字を使うんだろうと思いますけれども、事業内容とかそれから利益をどのように出していくかというのは各社競争があってもいいんじゃないかと思いますけれども、横並びというのはどうもおかしいなと思います。  それから、基礎資料としての予定死亡率その他ですけれども、これはいつごろの資料を使っていらっしゃるんですか。
  66. 滝本豊水

    説明員(滝本豊水君) ただいま御指摘の死亡率でございますけれども、先ほど説明いたしました生命保険協会が各社から収集しました客観的な統計データに基づいて作成しました死亡率につきましての会社生命表というものがありまして、現在は、直近のものは、平成元年に第五回全会社生命表というものが公表されておりまして、各社はこの生命表を使うのが合理的であるという判断に基づいて、各社はこれを使用しているということでございます。
  67. 広中和歌子

    広中和歌子君 平成元年のをお使いになっているんですか。ともかく死亡率というのがどんどん減っておりまして、ともかく日本は世界最高の長寿国でございます。  それで、この保険料なんですけれども、世界のほかの国と比べて保険料というのは高いのか、安いのかということが一点。そして、今度その保険料率を上げようということになっていますね。これも横並びで上がっていくのじゃないかと思いますけれども、この保険料率を上げる理由というのはどうなんでしょうか、伺います。
  68. 滝本豊水

    説明員(滝本豊水君) 諸外国との比較でございますけれども、たしか私は、今現在手元に細かい資料がございませんけれども、記憶している限りでは、損害保険料率につきましては諸外国と比べて相当低い料率になっていることは確かでございますけれども、生命保険料率につきましては、私の記憶している限りでは、いろんな商品がございましてそれほど大差がなかったのではないかと記憶しております。細かいデータはちょっとございません。  それから保険料の値上げでございますけれども、保険料を値上げするにはいろんな要素があると思いますけれども、今一番大きいのは、先ほど申し上げました将来にわたっての運用収入を見込んで設定しております予定利率というものがございますけれども、最近のような低金利局面におきましては、予定利率というのが相対的に低く設定されざるを得ないということになっておりまして、予定利率が低いということになりますと保険料は高くなるということになっておりまして、逆に予定利率が高くなりますと保険料は安くなるという仕組みになっております。最近の生命保険の保険料の値上げというのは、概して金融情勢に基づく運用環境の変化に基づく予定利率の引き下げによる保険料の引き上げというものがあると思います。
  69. 広中和歌子

    広中和歌子君 これも専門じゃないんですけれども、一九八五年以降、生命保険を初め我が国の機関投資家がアメリカを初め世界各国に多大な投資をいたしました。米国債あるいは不動産投資をし、そしてその結果として為替差損あるいは評価損を出しているわけですね。それがもろに、これはみんながバブルに踊ったわけですから保険会社だけが悪いとは言えないかもしれませんけれども、そういうつまり事業の失敗を保険加入者におっつける形で保険料率を上げるということはやはり何か納得できないという気がするんでございますけれども、いかがでございましょうか。  そして、ぜひこの分野にも競争原理を導入して、そしてまた外国にも門戸を開くことによって金融市場の国際化に役立てていただきたい、そのように要望しつつ、お答えを期待いたします。
  70. 滝本豊水

    説明員(滝本豊水君) 若干繰り返しになりますけれども、生命保険料の計算基礎の一つとしての将来の運用収益の見込みであります予定利率というものは、最近のような金利低下局面、低金利局面におきましては低くならざるを得ないということから、結果的に保険料が従来よりも相対的に高くなってしまうということは確かでございますけれども、それは直ちに今御指摘運用の損失がストレートに保険料に転嫁されているということではございませんし、現在、既に生命保険会社が販売している個人保険等につきましては将来にわたって変わらない保険料で保障を約束しておりますので、一たん締結された契約につきまして事後に運用環境の変化等によって損失が発生したとしても、その予定利率を変更する等によって運用の損失を保険料に転嫁するという仕組みにはなっておりません。
  71. 広中和歌子

    広中和歌子君 終わります。
  72. 小島慶三

    ○小島慶三君 規制緩和の問題が大合唱になりまして、政府の重要施策の最右翼といいますか、そこに置かれていると。総務庁としては大変な努力で規制緩和の全体のプログラムをおまとめになったということについて、私、高くその御努力を評価するものでございます。本日も長官、続いて御苦労さまでございます。  私、伺いたいことは実は山ほどありまして、もう何日かけても終わらないと思うんですけれども、与えられた時間が十分でございますので、ごく簡単に一、二問お伺いをして責めを果たしたいと思います。  それで初めに、今までの行政の結果として例えばその役割を終えたような規制、それから硬直化したような規制、それから社会の価値観の変化によって意味のなくなった規制、たくさんそういうものはあると思います。そういうものを大幅に整理されるという必要はあると思うんですが、反面こういうことも考えてみたいと思うのでございます。  それは、一九七〇年代から先進各国に噴出したいろんな問題、例えば環境問題、あるいは生態系の問題、あるいは資源の問題、エネルギーの問題、それから廃棄物の問題、いわゆる汚染の問題、それから大都市を中心とした過密の問題、人間生活へのいろいろなそういった変化の与える影響、これが一斉に噴出をしたのが一九七〇年代だったと思うんですけれども、これに対する規制というものも随分多岐多様にわたって今まで国会でも取り上げ、立法化し、そして今の全体の社会の仕組みの大部分を担っている、そういう規制がかなりあるんだと私は思っております。  そういう問題が一斉に出てきましたのは、これはいわば市場の欠陥というところから起こってきたわけであります。したがって、市場の欠陥に対する規制というものはその責めをカバーしているということだと思うのでございます。  そういう点を考えますと、これは近代文明のツケといいますか、そういう性質のものであろうと思うのでありまして、これは規制といえば一言に何でも全部が悪いと、だから経済規制原則自由であるというふうなことがこのプログラムにも書かれておるんですけれども、これは少し違うんじゃないかと私は思っております。諸先生と御意見が違うかもしれませんが、こういったやはり先進国病といいますか、そういうものに対する規制あるいは地球環境重視の点から新しく生まれてきた規制というのは、これは今後も大変重要な意味を持つというふうに思っております。  それで、それにもかかわらず規制緩和であれば何でも片づくようなそういう議論が横行しているというのは、これは私に言わせてみますと、規制緩和をすればもう全部の問題が片づくと考えるのはこれはいわば幻想である。厳しい言葉ですけれども、そういうふうに言わざるを得ない。幻想をもたらしたのは、これはいわゆる市場神話であると思うのであります。この市場神話に対する反省がなくて規制緩和だけを言うというのは方違いである、私はそういうふうに思っております。  そういった意味で、規制緩和のプログラムを五カ年と決められ、またそれを前倒しに三カ年と縮められたわけでありますが、そこにはいろいろな理由があると思うんですけれども、必要な規制をどんどんやるという反面に、やはりその効果を厳密にしかも主体的に、国際的なルールがこうだからこうだというんじゃなくて、主体的に判定をされて、そして見直しをされるということは大変重要なのではないかと思っております。その辺については総務庁の方でも万遺漏なくおやりになると思うんですけれども、その辺についてまず長官の御見解を伺っておきたいと思います。
  73. 山口鶴男

    国務大臣山口鶴男君) 委員が長い御経験の上からただいまのような御指摘を賜りましたことは、私どもも十分拝聴していかなければならぬと思っております。  一九七〇年代、ちょうど経済の高度成長のもとで全国で公害が多発いたしまして、国会におきましても公害国会を開きまして公害対策に議論が集中した時期を私も経験いたしております。したがいまして、御指摘のような環境の問題、生態系の問題、廃棄物の問題あるいは都市過密の問題等、これらに対する規制というのは社会的規制であって国民の生命を大事にするために必要な規制、こういったものは私どもはやはり尊重していかなきゃならぬ。  問題は、我が国経済社会を国際的に開かれたものにしていかなきゃならぬ。そして自己責任原則と市場原理に立った自由な経済社会としてこれを確立していかなきゃならぬ。国民生活の質の向上、内需の拡大、国民負担の軽減、こういった面から経済規制については原則自由という形でこれを緩和していかなきゃならぬという立場で対処しているわけでございまして、御指摘の社会的規制につきましては、これは経済規制とはやや異なる問題として私どもとしては対処いたしている次第であります。
  74. 小島慶三

    ○小島慶三君 ありがとうございました。この問題はちょっとまだ私、今の経済規制と社会的規制の分け方その他についてお伺いしたい点があるんですけれども、時間がもう数分しかございませんので次に移りたいと思います。  これは質問といいますかお願いといいますか、そういう性質のものだと思うんですが、長官も大変苦労しておられると思うんですが、御承知のようにことしの初めから日本は阪神の大災害、円高、そしてサリンという三大災害というか、こういうものに見舞われておる最中でございまして、これに対する危機管理意識の高揚と危機管理体制の整備ということはもう喫緊の問題であると私は理解をしております。場合によっては日本の社会が危うくなるような、これをうまくクリアしないとそういう事態さえ考えられるというふうにも思っております。  それをクリアした後でもまだ日本の将来には中長期的には大変問題があると思うんです。例えば人口の減衰とか、あるいは技術進歩率の低下とか、あるいは空洞化の問題とか、あるいはアジア諸国の中で日本が取り残されるといったような問題、社会のモラルの低下といったような問題、本当に日本の社会にとっては容易ならざる問題が山積していると思うのでございます。言葉は古いかもしれませんが、いわば非常時であるというふうに思うのでございます。  そういう場合に、いろいろな危機管理体制の構築のための規制、システムの構築のための規制、そういったものは出てくると思うんですけれども、そういったことを片一方でやりながら、片一方で規制緩和地方分権、これも重要な政策でございますから手がけていかなければならない。その辺のバランスのとり方、組み合わせ方と申しますか、危機管理体制とそういった規制緩和といったような課題との調整と申しますか、この辺が恐らくこれからの最大の課題になると思うのでございますが、もし差し支えなければこの辺のお考えをお伺いいたします。いかがでございましょうか。
  75. 山口鶴男

    国務大臣山口鶴男君) 現在、委員が御指摘されましたような大変重大な課題を抱えている、大変難しい課題が山積をしている、御指摘のとおりだろうと思います。  我が国は大統領制ではございませんで議院内閣制なものですから、どうしても大統領制をとっております国と異なりまして、官邸の機能と申しますかそういったものがやや弱いという点は制度の違いとして私ども認識をいたしている次第であります。  したがいまして、阪神大震災に際しましても、結局、従来そういった危機管理体制というものを整備してまいりませんで、そういう中で村山内閣として阪神・淡路大震災に遭遇をしたと。したがいまして、この初動におきましてやや私ども反省すべき点があったということは率直に考えておるところでございまして、そういった反省の上に立ちまして、今、官邸の機能強化、危機管理体制の整備、これに取り組んでいるところでございます。  そういう中で、御指摘の点については十分対応をいたしてまいりたいと考えておるわけでございますが、いずれにいたしましても、阪神・淡路大震災の経験もございまして、オウム真理教の問題あるいは地下鉄サリンの問題等につきましては警察庁、防衛庁、比較的初動体制もきちっとして対応できた、その点は教訓をある程度生かすことができたのではないかと思っている次第であります。  今後、さまざまな重大な問題があるかもしれませんけれども、十分阪神・淡路大震災の経験を踏まえまして官邸の機能を強化し、内閣一体となってこれらの問題に対応いたしてまいりたい、かように考える次第でございます。
  76. 小島慶三

    ○小島慶三君 私の時間はもうございませんのでこれで終わりますが、実はもう一点お伺いしたかったのは、国際化といえば何でも通るといったような風潮がありまして、この規制緩和につきましても何かアメリカから、規制緩和推進についてのルールを決めるとか、いろんなことを日本に約束せいと言ってきているそうであります。これはやっぱりアメリカのグローバリズムに、あるいはその背景にある普遍性の神話といいますか、そういうものに左右されるというのは大変危険であると思いますので、これは十分に御警戒をいただきたい、そういう議論に乗せられないようにひとつお願いしまして、私の質問を終わらせていただきます。
  77. 山口鶴男

    国務大臣山口鶴男君) 承りました。
  78. 有働正治

    有働正治君 本日は限られた時間でありますので、規制緩和とのかかわりで、特に地方自治体に対しまして私どもから言えば官僚統制とも言えるそういう問題の緩和、撤廃、この問題について国務大臣として山口長官の基本認識をお尋ねしたいと思います。  規制緩和問題あるいは法律内容あるいは各種制度等々慣習を考えた場合に、当然、社会進歩、時代進展に応じて国民生活に役立つものはどんどん改善、改革すべきだというふうに考えるわけであります。  例えば、昨年九月に、生活保護家庭にクーラーは認められないという市の指導でクーラーを外したお年寄りが脱水症状を起こす事件が明らかになりまして、国民の批判の中でこの点政府も指導され是正されたわけであります。  ことし三月、福団地裁で、高校進学に備えて生活保護費の一部を積み立てておられた方の問題について、蓄えを認めなければ自立助長の目的にも反するということで、従来の生活保護行政のあり方を問いただす判断が示された経緯があります。高校進学率は現在九割を超えていわば一種の、義務教育ではございませんけれどもそれに準ずるような形になっているわけで、こういう点、時代進展、社会の進歩に応じて生活保護世帯の場合にもクーラー同様きっちり見直していく必要があると私としても考えるわけであります。  この点を含めまして、時代とともに改善すべき内容、行政のあり方としてやっぱりどんどん改革していくということが必要と思うのでありますが、長官の御見解を。
  79. 山口鶴男

    国務大臣山口鶴男君) お答えいたします。  今、委員が挙げられました具体的な事例につきましては、厚生省所管にかかわる問題でございまして、委員の御意見のみで所管外の私が当否を判断することはこれは差し控えたい、かように考えます。  ただ、一般論として言えますことは、社会経済の変化に対応いたしまして行政の制度、運営というものは不断に見直されていくべきものであるということについては、そのようであるべきであるというふうに認識をいたしております。
  80. 有働正治

    有働正治君 関係省庁とも相談して、そういう姿勢で積極的に対応していただきたいということを要望しておきます。  いま一つ具体的な問題ですけれども、例えば昨年六月、健康保険法が私どもから言えば改悪されて、入院給食費が有料化されました。これに対して、全国各地で自治体による入院給食費への助成を求める運動が高揚し、多くの自治体が乳幼児や障害者への助成を決めたわけであります。  ところが、厚生省は事務次官通知を出してこれに圧力をかける、干渉するという事態が生じたわけであります。これに対して我が党は、住民の皆さんと一体となってこの問題に対応し、同時に、厚生省の担当保険局長と詰めた結果、助成は自治体の権限だということを明言されたわけであります。つまり、有料化に対して自治体が住民の要求に基づき自主的助成措置をとることに、国は規制、干渉を強制すべきでないという原則が確認されたわけでありますが、これこそ私は本来のあり方だと思うわけですが、大臣はいかがでありますか。
  81. 山口鶴男

    国務大臣山口鶴男君) これも先ほどお答えいたしましたように、厚生省所管にかかわる問題でございまして、所管外の私が具体的に判断を申し上げることは差し控えたいと思います。要は、やはり今後の社会的経済状況の中でどう判断されていくかという課題ではないかと思います。
  82. 有働正治

    有働正治君 私は、国務大臣としてこういう問題についての見解を問うているわけでありまして、担当の局長も、いろいろ政府としての考えはあるけれども自治体としてどう対応するかは自治体の問題だというふうに述べられた点は、そのとおりだと思うんです。  そこで聞きますけれども、日本国憲法は地方政治のあり方について地方自治の本旨に基づくことをうたって、住民が主人公であることをあらゆる分野に貫くことを求めているわけであります。この憲法の立場に立って、地方自治法が自治体の仕事として真っ先に住民の安全、健康、福祉を保持する、地方自治法第二条で明記して、ここに地方自治の原点があるわけであります。この地方自治の原点をどう考えられるのか。この原点に照らすんであれば、地方自治体が住民の安全、福祉、暮らしを守るために地域住民の要望に基づいて自治体が独自の取り組みを行うということはいわば否定できない当然の立場と考えるわけでありますが、憲法を遵守する立場にある国務大臣としての見解を求めます。
  83. 山口鶴男

    国務大臣山口鶴男君) 地方自治体が地方住民の立場に立ちまして、議会におきましても議論をし、そういう中で一定施策を講ずる、これは当然であると思います。現在の地方財政の仕組みにおきましても、これは自治体の一般財源でどのようにこれを活用していくかということは、まさに団体自治、その自治体の独自の判断によるべき問題でございますので、当該地方公共団体一般財源、独自財源においてどのような仕事をやっていくかということは、まさにこれは地方自治の本旨に基づいてなされるべき問題であるというふうに認識をいたしております。
  84. 有働正治

    有働正治君 そういう御答弁であります。そういう御答弁とのかかわりで改めてお尋ねいたしますけれども、それは政府は政府としての指導方針、お考えが当然あるというのはもう当然のことなんです。だけれども、例えばさきに挙げた問題についても、最終的にどうするかということを自治体としていろいろ決めることというのは、例えば入院給食費の問題についてもやっぱり自治体の権限に属する問題だということが言えるんではないかと思うのでありますが、憲法なり地方自治法の立場からいって、基本原則について改めてお尋ねいたします。  例えば、国保料なり国保税の問題にしましても、厚生省が年間保険給付の五%を上回る基金の積み立て、こういうことで指導しておられることは私も承知しているわけであります。しかし、国保料税をどうするかと、高いので引き下げていただきたいとか要望があることも事実なわけで、そういう場合に最終的に国保料税をどうするかというのは自治体の権限に属する問題だと、これは明白だと思うんで、その点について憲法なり関係法の立場からいって国務大臣としての認識、原則だけお尋ねします。
  85. 山口鶴男

    国務大臣山口鶴男君) ですから、地方公共団体地方税など独自の財源に従って、これは議会においても十分な議論をして、そして独自の立場で自主的な対応をされることはまさに地方自治の本旨だと思うんです。ただ、厚生省の方が補助金その他について対応する仕方につきましては、これは医療費の国庫負担の保険者間の公平の問題等におきまして、これは厚生省が対処することはあってしかるべきだと思います。  ですから私は、そういう意味で厚生省のそういった財源の対処の仕方とは別に自治体が独自の立場で住民のために対処をすることはこれは地方自治の本旨であろう、こう申している次第であります。
  86. 有働正治

    有働正治君 次に、ペナルティーの問題があるわけであります。例えば、東京都か自治体では革新都政時代の成果が今なお存続している問題がありまして、高齢者や障害者、乳幼児、一人親家庭への医療費助成を行っている自治体もあるわけであります。  ところが、これに対して、九三年度予算で国庫補助金が約六十二億円それを行ったということでペナルティーが課せられカットされると。大阪府下の自治体でも同様に来年度四十二億円カットが予定されているわけであります。名古屋市でも革新市政時代に実現した福祉医療への自治体独自の、今長官も言われました、権限に基づく、地方自治の本旨に基づいて当然の措置としてやった、こういう上乗せの成果が守られて国保の八割給付、通常は七割給付でありますが、これを続けている等々があるわけであります。  これに対して国は、いわば一種のペナルティーを課して、九三年度国庫補助金を三十三億円もカットすると。理由は、無料化して通院がふえ、医療費がふえ、その波及分まで国庫負担で見る必要はないという乱暴きわまるものであります。  こういう点、憲法、地方自治法の精神、今長官もいろいろ国は国としての指導は当然あると、それは当たり前のことなんです。しかし、私は過度の介入はすべきでないと思うわけでありますが、あまつさえこういうペナルティーを課すというのは、私は地方自治の原則なり住民自治の原則、そういう態度からいっておかしい、統制などは緩和、撤廃すべきである、それが地方自治の原点だと思うわけでありまして、こういう点についても前向きに積極的に長官として対応していただくよう求めるわけでありますが、いかがでありますか。
  87. 山口鶴男

    国務大臣山口鶴男君) 私どもは地方公共団体の自主性、主体性というものをとやかくしようと考えておるわけではございません。あくまでも憲法に従う地方自治の本旨、これは尊重してまいりたい。ただ、国が財政的な助成、補助を行います場合は、各省庁におきましてそれぞれ負担の公平その他の面から一定の考え方があり、それに沿ってやっておられるだろうと思います。それは当該官庁の問題ですから私がここでとやかくコメントすることは差し控えさせていただきたい、こう申しているわけであります。  また、国の関与のあり方をどうするかという問題は、まさにこれは午後から御議論のございます地方分権推進法の中で、国の関与はどうあるべきかと、我々としては国の関与はできるだけ整理合理化をするという方向で法案を御提示しているわけでございまして、そういう中でひとつ御議論を賜りたいと存じます。
  88. 小林正

    委員長小林正君) 本日の調査はこの程度といたします。  午後一時三十分に再開することとし、休憩いたします。    午後零時二十分休憩      ―――――・―――――    午後一時三十一分開会
  89. 小林正

    委員長小林正君) ただいまから地方分権及び規制緩和に関する特別委員会を再開いたします。  地方分権推進法案を議題とし、前回に引き続き、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  90. 斎藤文夫

    ○斎藤文夫君 自民党の斎藤文夫でございます。時間の範囲内で、以下数点にわたり御質問を申し上げたいと思います。  おもんみるに、我が国は明治以来、中央集権体制の行政が行われてまいりました。確かに国家の発展については能率がよく、有効的に機能してきたことは御承知のところでございます。しかし、一応の目的を達成いたしました現代、特に多元的、成熟的社会を迎えるに当たりまして、中央集権から地方へ、すなわち地方時代という認識が非常に高まってまいりました。  地方分権推進法がそういう時代背景の中で提出をされたということは、まことに意義あることだと認識をいたしております用地方分権を実現して、地方の自主性、自立性を一層高揚し、より豊かな行き届いた行政サービスを確立するために、政治、行政、経済、社会全般の再構築をして、二十一世紀にふさわしい、また時代の変革に耐え得る社会システムというものをつくり上げていく必要があるのではないかと思っております。  改めて、地方分権の意義、そして地方分権によってこれからの社会システムがどう変わっていくのか、山口長官の御所見を承りたいと思います。
  91. 山口鶴男

    国務大臣山口鶴男君) お答えいたします。  ただいまお述べいただきました認識につきましては、私もまさにそのとおりであると認識をいたしております。  世界が今や歴史的な変革期を迎えております今日、国としては、内政に関する役割は思い切って地方公共団体にゆだねまして、国が本来果たすべき役割を重点的、効果的に担う体制を確立することがまさに急務であると存じます。成熱期を迎えつつある今日、各地域がそれぞれの個性を生かした多様で活力あふれる地域づくりを進めることができますよう、地域の主体性を重視した行政システムヘの変革がまさに求められていると存じます。  国民がゆとりと豊かさを実感できる社会の実現が求められておるわけでございまして、以上の観点から地方分権に対する要請がかつてないほど高まり、それが衆参両院における国会決議となってあらわれているというふうに認識をいたしております。  御指摘の点を踏まえまして積極的に地方分権を進めて、御期待に沿いたいと考えておる次第であります。
  92. 斎藤文夫

    ○斎藤文夫君 過去に何回となく地方分権推進の提言や意見がなされてきたところであります。しかし、残念ながら今までその道筋が見えできませんでした。今回提案された地方分権推進委員会は、まさに地方分権のリード役を果たし、必ず地方分権へ向けて前進すると期待をいたしておるところであります。それだけに、委員会の構成メンバーをどう選ぶか、その選考が極めて重要な意味を持っておることは申すまでもございません。  既にこの委員会でもしばしば論議をされたところでございますが、七人の委員で各界のすぐれた有識者を選定することが果たしてできるのかな、もう少し多い方がよかったのではないか、こういう感じを率直に言って持っております。特に、受け皿となる地方公共団体、その実情をよく認識した立場の人を委員に選任することが不可欠だと思っておりますが、いかがでございましょうか。  さらに、五年の時限立法でありますが、果たしてこれだけの大改革が五年間でなし得るでしょうか。率直に言って一抹の不安を持っております。時代の要請にこたえて、何としても五年間でなし遂げるという不退転の決意が必要でございます。これには特に内閣のみならず我々国会も、そしてまた官僚も地方自治体も決意を新たにして、今までの発想とは違った大きな価値観の展開の中で努力をしていかなければなりません。  長官の御決意、特にこの五年間、時間があるようでない、こういう思いがいたすわけでありますが、五年間のタイムスケジュールをどのようにお考えになっておるのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  93. 山口鶴男

    国務大臣山口鶴男君) お答えいたします。  地方分権推進当たりましては、御指摘のとおり、広く各界から国、地方の行政につきまして豊富な学識経験を有する方々をバランスよく配置する必要があるというふうに考えております。  また、他方におきまして、迅速かつ機動的に委員会としての意思集約をするという観点もある程度必要ではないかというふうにも考えておりまして、過去の例を見ますと、例えば臨調は九人、あるいは第一次行革審は七人、第二次行革審も七人というような数字もございます。また、現在、発足いたしまして精力的に仕事をしていただいております行政改革委員会は五人というような人数でもございます。したがいまして、これらの過去の委員会委員の人数等も勘案をいたしまして、総合的に判断をいたしまして七人といたしたという点を御理解いただきたいと存じます。  次に、この五年の時限立法で果たしてこれだけの大改革が達成できるかという御指摘の問題であります。  確かに、歴史的な大改革でございますので、大変な作業であるというふうに認識をいたしておりますが、地方制度調査会の答申等もございますし、この際、五年間というこの時間を設定いたしましてその間に積極的に仕事を進めていただく、このことがやはり改革を達成するために必要ではないだろうかということも考えた次第であります。  したがいまして、スケジュールとしては、五年間の前半にこの地方分権推進計画を政府として策定いたしたいと思います。そのためには、地方分権推進委員会におきまして精力的な御審議をいただき、指針について勧告をそれに間に合うようにいただきたいものというふうに考えております。そして、勧告をいただき政府として計画を策定いたしましたならば、今度はそれに沿いまして必要な法律改正を国会に提案申し上げて、五年間のうちに何としてもこれをなし遂げる、こういう決意で対処をさせていただきたい、かように考えておる次第でございます。
  94. 斎藤文夫

    ○斎藤文夫君 ただいま長官から御説明を承りましたが、とりわけ委員の人選につきましては万遺漏のないように十分な御検討と配慮をちょうだいしたい、強くお願いをいたしておきます。  なお、タイムスケジュールにつきましては、実は言うはやすく行うほかたし、まことに難問題山積でございますから、その中で、文字どおりきちっとした計画の中で実行をしていかれるように、これまた要望いたしておきたいと思います。  そこで、この推進委員会事務局の体制についてお尋ねをいたしたいと思います。  この委員会が本当に機能を十分果たすためには相当強力なスタッフが必要でございます。特に地方公共団体立場というものを十分理解していただかなければ地方分権地方時代の実現は難しいと思っております。したがいまして、地方からも広く人材を求めるべきであると思いますけれども、いかがでございましょうか。事務局の規模、そしてまたその体制をどうおつくりになっていくのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  95. 陶山晧

    政府委員(陶山晧君) 事務局の体制等についてのお尋ねがございました。  今国会で法案を成立させていただきますならば、できるだけ速やかに準備の体制を組み、諸般の委員会設置のための準備作業を進めてまいりたいと考えております。  事務局の構成につきましてただいま御意見をちょうだいいたしましたが、いずれにしろ、委員会の任務を補佐する上で支障のない体制で事務局を構成いたしたいと存じます。斎藤先生の御意見につきましては十分に参考にさせていただきたいと存じます。
  96. 斎藤文夫

    ○斎藤文夫君 次に、野中自治大臣にお尋ねを申し上げてまいります。  具体的に、地方分権当たりましては、まず第一、中央の権限の地方への移譲、二番目は、それを裏打ちできる地方への自主財源、そしてさらに三番目は、それに伴い人員の配置がえ、異動というのでございましょうか、この三つ、三元が必要でございます。  そこで、まず第一の権限移譲でございますが、答申に盛られておりますように、スリムな政府の実現目指し思い切った地方への権限移譲を期待いたしておりますけれども、中央の行政みずからが一体どこまで自分の手を思い切って切り落とすことができるか。規制緩和でも大変難航いたしました。その例を考えてみましても、本当にどこまで期待にこたえてくれるのか。官主導の推進委員会になったら、これはもう我々の予測するような地方分権はできない。特に自治省地方と一体の関係を長年にわたって築いてきた省でございます。それだけに、特に思い切った地方分権、権限移譲ということをお願いいたしたいと思います。  また、垂直二層の分権、こう御説明がございましたが、その場合、県人口よりも多い指定都市、大都会がたくさんございます。一体この大都市をどうお位置づけになられるのか。政令指定都市問題というものを私は都道府県とむしろ同格に考えるようなシステムの構築が必要ではないかと個人的には思っておるところであります。  都道府県、そしてさらにその下の県下市町村、こういう垂直二層の分権を御提唱されておられるわけでありますが、常に大都市は、中二階と言っては御無礼でありますが、その都道府県の中でも、例えばこの間私どもの吉村委員が、福岡県、御自身の例でもお示しになられましたし、私は神奈川県、これまた実は横浜、川崎と指定都市を二つ抱えております。さらには、昨今、相模原市がぐんぐんと人口増加をしてきて、今六十万になんなんとしている。少し合併すれば七十万を超えて、あるいは来世紀には三つ目の指定都市ができるかもしれない。こんなになったときに今までの都道府県単位で果たして地方分権というものを考えていっていいのかなといつも疑問を持っておりますので、この点についてもお示しをいただきたいと思います。  時間の関係で続けてお尋ねを申し上げます。  特に今回の地方分権を実現させるのは第二の自主財源の充実確保でございます。今まで中央集権的に国が税を集めまして、そしていろいろな形で補助、助成、あるいは交付金、起債枠の確定等々の財源配分システムで地方自治とのつながりを中央は持ってこられました。しかし、行政配分に見合った税の配分を打ち出さなければ真に地方のニーズにこたえた地方分権にはつながらないと考えております用地方の自主財源の充実強化、これをしなかったら口先だけの、形だけの地方分権、こういうことになりはしないでしょうか。  地方税財源の充実確保をうたった第六条の規定はその意味で極めて私は重要だと考えておりますが、大臣、どのようにお考えになっておるのか、お示しをいただきたい。  そして三つ目の、スリムな政府をつくれば中央から地方への人員の再配置が行われるのは当然だと思っております。特に地方事務官制度、今日になるといろいろ矛盾を含んでおるところでございまして、この問題を含めて、仮にスリムな政府ができれば地方へそういう余剰の人員を配置する、こういうような具体的なお考えが将来出てくるのではないかと思っておりますので、御意見を賜れればありがたいと思います。
  97. 野中広務

    国務大臣(野中広務君) 今回の地方分権推進いたしますにつきましては、ただいま斎藤委員から御指摘のように、戦後五十年を歩んだこの半世紀に近い地方自治の歩みを振り返りながら、分権がなされることが今後の二十一世紀に我が国が目指すべき大きな課題であり責任であると認識をいたしますとともに、地方行政にかかわる自治省といたしましては、総務庁を中心にいたしまして、十分この分権がその目的を達しますように一層努力をしてまいりたいと考えておるところでございます。  また、御指摘のございました政令指定都市制度等に絡む都道府県との問題につきましては、先般、それぞれ吉村委員を初め御質問があったところでございます。また、斎藤委員はみずから都道府県と政令指定都市との関係を十分経験され御認識の深い方でもあるわけでございまして、改めて私から申し上げることはないわけでございますけれども、大都市特有の課題を一元的に処理することによって大都市の行政運営の合理化を図っていこうということで、その規模、能力に応じまして住民に身近なところで事務権限を行使できますように、社会福祉とか保健衛生とか、あるいは都市計画、土木行政等、市民生活に直結した事務につきまして事務配分の特例を今日まで設けてきたところでございます。  今後も国、地方公共団体役割の分担に応じて権限移譲が推進を図られます中におきまして、第二十三次地方制度調査会の答申にもございますように、現在都道府県事務とされておりますもの及び国から都道府県に移譲されることとなる事務につきましても、その規模、能力に応じた事務移譲という観点に留意をしながら、可能な限り指定都市に移譲する方向で検討することが必要であると考えておるところでございます。  なお、大都市制度そのもののあり方につきましては、都道府県との関係やら周辺市町村との関係等さまざまな問題を有しておるところでございますので、今後、地方自治制度のあり方として重要なかつ中長期的な課題として取り組んでまいらなくてはならないと存じておるところでございます。  なお、御指摘のございましたいわゆる地方分権推進に当たっても地方公共団体の財政基盤を確立していかなくてはならないというのは、この分権推進の上で、お説のように、最も重要な課題でございます。こうしたことから、せんだって閣議決定をされました十二月の「地方分権推進に関する大綱方針」におきまして、地方税あるいは地方交付税などの地方一般財源の充実確保につきましての基本方針を具体的に示しますとともに、国庫補助金等の整理合理化等についても奨励的補助金を含めて基本的に縮減を図っていくことにするなど、従来に比べてより具体的な方針を明示したところでありまして、御指摘ございました今回の法案の六条等におきましてもそれが織り込まれておるところでございます。  なお、地方債につきましてもまた先般来御指摘があるわけでございますけれども、臨時行政改革審議会の答申をも踏まえまして、許可手続の簡素化、また個別事業に起債を行うのでなくすべての事業債の枠配分化等を行い、弾力的に、あるいは簡素化を図ってきておるところでございまして、今後とも大綱方針や法律の趣旨を踏まえまして簡素化の対象範囲の拡大等について十分検討をしてまいりたいと考えておるところでございます。  なお、今回の問題につきまして、総務庁からも御答弁があろうと思いますが、それぞれ機関委任事務等に関係をいたします問題につきましては、私ども地方にかかわる者といたしましては、国の事務地方に移管され、そして当然のことながら地方事務に伴う定員のあり方等が問われる時期が来ようと思うわけでございますけれども、より質の高い国家公務員が地方においてその能力を発揮していただくことは非常に今後の分権推進の上に大きな意味を持つと認識をしておるところでございます。
  98. 斎藤文夫

    ○斎藤文夫君 最後に、今回の分権は、実はいろいろ地方にこれからも公聴会等で出ますけれども、もう一つ地方の自治体が燃え上がらない。まことに残念な状況だと思っております。結局、中央が本当に思い切った分権をしてくれるのかどうか地方の自治体としては疑心暗鬼だからかな、このように思う反面、国がこれだけスリム化をして規制緩和とあわせて地方分権を積極的に進めていく、それに対応する受け皿になる地方公共団体も、同じようにきちんと行政を見直して新たな観点からスリム化を図る、そして二層の県下市町村にそういうものをまた手渡しながら行政改革を進めていく、こういう立場になければならないと思っております。  今後、そういう流れの中でどのような地方の姿をお考えになっておるのか、一言お聞かせをいただきたい、このように思います。
  99. 野中広務

    国務大臣(野中広務君) 地方分権推進につきましては、地方がその実情に沿った個性あふれる行政を積極的に展開できますよう、国と地方役割分担を本格的に見直しまして、権限移譲や国の関与等の廃止あるいは緩和、地方税財源の充実強化等が進められ、地方公共団体の自主性あるいは自立性を強化していくことが最も肝要であると考えておるところでございます。  このような分権推進の成果を十分上げますためには、お説のように、もとより地方公共団体への権限移譲等は国の側における努力が必要でありますけれども、同時に、委員がおっしゃいましたように、地方公共団体におきましても自主的、積極的に行政改革を進めていくことが肝要でございまして、行政の公平性の確保と透明性の向上、あるいは行政能力の向上、また自己チェックシステムの整備等、住民参加の充実等を含めまして、新たな地方公共団体役割を担うにふさわしい地方行政体制の整備が必要であると認識をしておるところでございます。  自治省といたしましても、昨年十月、地方公共団体の行政改革推進のための指針を事務次官通達をいたしまして、それぞれ関係都道府県あるいは市町村等におかれまして、この本部を設置し、民間等の委員を入れまして積極的に地方の行政改革を推進していただくようにお願いをしておるところでございます。かかる努力によりまして、地方においてみずから受け皿をつくり、そしてその熱意が国にもまた伝わってくるように私どもも一層これから努力をしてまいりたいと考えておるところでございます。
  100. 斎藤文夫

    ○斎藤文夫君 ありがとうございました。終わります。
  101. 服部三男雄

    服部三男雄君 これまでの衆参の質疑を通じまして大体の問題点がいろいろ出尽くしてきたと思うんですが、今、斎藤委員からもお話ありましたように、地方分権、中央の方は燃えていると。しかもそのスローガンが、二十一世紀の活力ある地方とか、生き生きとした日本の再生とか、非常にスローガンは立派でありますが、その受け皿となる自治体が必ずしもそんなに燃えない。国民も何となくムード的には分権の時代だと思っているが、じゃ分権というのは具体的にどういうふうになるんだということになると必ずしも意見が一致しているわけでもないし、これまた燃えていない。  その最大の理由を私なりに考えますと、結局、明治以来百二十年間、中央集権体制が、まあ中央集権という言葉は適切かどうか知りませんが、中央の権限が大きい、国家公務員の権限が大きい時代が続いて、財政的にもすべてそういうシステムが百三十年続いたことを今後どのように変えていくのか、イメージがなかなかわいてこないのが一つだと。  もう一つは、地方のことは地方で全部決めると言われて、本当に決められるんだろうか。それだけの人と金、要するに自主財源とそれから地方公務員のレベルアップ、そういった受け皿が本当にできるんだろうか。ちょうどそれを監督しているいわゆる地方の首長が、とてもではないがうちの今の役場だとか市町村の公務員で大きいニーズが出てきたときに対応できないだろうという気持ちがあるからにほかならないと思うわけであります。  そういう意味で、今、自治大臣も受け皿づくりというものは大事だ、あるいは自主財源というのは大事だということをおっしゃっているんですが、実際にどうやってそれをつくっていくのかという問題についてはそれほど具体的な御説明はないように思うんです。  例えば、もう随分古い二十数年前の、三十年近い前ですが、美濃部都政のときに、地方公務員の数が物すごくふえた。給料が物すごく高くなって赤字財政になった。これは必然性があるわけでありまして、別に美濃部さんが都知事として能力があろうがなかろうが、ある程度そういう分権になると、ああいうスタイル、都政のスタイルをとると、必然性があるわけでありまして、これらを一体どういうふうにして今後やっていくのか。  地方が自分で決めるんだから公務員の数をふやすのも地方の勝手、その結果ある地域の、都がだめならだめになるのも勝手と言っていいのかどうか。こういったことをどういうふうに歯どめを加えていくのかというようなことをもうちょっと具体的な考え方を出してもらった方がいいんではなかろうか。ただ標語が先行するムード的な地方分権であるならば、ここで委員会質疑している意味はなくなるわけでありまして、もう少し詰めていただきたいなというのが私の要望でございます。  もう一つは、それと裏腹になるんですが、例えば日本の国家公務員は非常に優秀だろうと思います。日本の躍進の原因の一つとして世界のシンクタンクだというふうな諸外国の高い評価を得ているわけでありまして、その中でも特に今回の問題を所管している自治省というのは、内務省以来のいい人材をそろえているし、オン・ザ・ジョブ・トレーニングもいいということで、自治省の評価は非常に高い。その原因は、結局権限を持っていたからで、人間だれしも仕事をする上で権限を持たせてもらえるなら、いい人材が集まるわけであります、少々給料が安かろうが、思い切り自分の政策、考えていることをやってみたいと。  今度、権限をなくす。なくすというわけじゃないが、地方に移譲していく。そうしますと、極端に言いますと、アメリカのように、公州制というんですか、州制をとっているところだと、国家公務員になるのは二流の人材だというのはこれはもう評価は決まっているので、権限のないところにはいい人材が行かなくなるということになるといいのかどうかという問題。それから国家公務員のたくさんの人材を今抱えている、定員も多いわけですが、これは定員削減を今後どうしていくんだというような問題も生ずるわけであります。  そういったことについて、自治大臣並びに長官からもうちょっと具体的な話を聞きたいなというのが私の要望でございます。
  102. 野中広務

    国務大臣(野中広務君) 先日来からも、地方分権推進する上で中央ではいろいろな議論がされておるけれども、地方ではもう一つ盛り上がりに欠けるのではないかという御指摘をいただきました。  私どもとしては、地方の熱意が十分委員各位に伝わらないということを残念に思っておるわけでございますけれども、しかし御承知のように、昨年の九月に全国知事会を初めとする地方六団体から地方自治法に定められた「地方分権推進に関する意見書」が提出されたということ、あるいは十二月におきます地方分権推進法の早期制定等をスローガンにいたしました六団体主催の総決起大会が開催をされます等、あるいはそれぞれ各都道府県市町村議会から数多い分権推進のための意見書が提出されておりますこと、それなりに地方は具体的にそれぞれ議会等の御意思として示しておられると思うわけでございます。  また、先般も申し上げましたように、これからの分権の推進につきまして、それぞれ研究会等を独自に設けてみずから検討を行っておる地方公共団体も数多く出てきておることを私も承知をしておるわけでございます。  このような地方分権が長年の地方公共団体要望でありますことを考えますと、委員のお説のように、今まだ基本理念の段階でございまして、これから分権推進委員会におきましてそれぞれ個別具体的な方針が勧告として出ていく中で、それぞれ地方には委員がおっしゃるようなイメージが伝わり、そして全体像、具体像が伝わる中で地方はまた新たな観点で分権への取り組みをするものと期待をしておるわけでございます。  また、それにつきまして地方公共団体ではこれまでも、事務事業の見直しあるいは組織、機構の簡素合理化、民間委託、機械化等によりまして定数の削減に努力をしてきたところでございますけれども、今回、委員が御指摘のように、国の分権が推進をされますと、委任事務を含めて国の大幅な権限が移譲された場合には地方の業務量が増加することは事実でございます。けれども、現下の地方財政を取り巻く厳しいそれぞれの状況を考えますときに、安易な定数増に目を向けることなく、厳に抑制をして取り組んでいかなくてはならないと思うわけでございます。  また、そういう意味から徹底したスクラップ・アンド・ビルドの努力を行いますとともに、権限移譲に伴いまして新たな行政需要が行われます場合にも弾力的かつ的確な対応が必要でございますし、また定員管理に努めることが重要であると考えておるわけでございます。  しかし、委員のお説のように、今日まで我が国の発展の足取りを見ますときに、いわゆる欧米等に見られますように、政権がかわれば公務員が三、四千人の規模でアメリカのようにかわるということでなしに、官僚が粛々と日本の国家経営に行政として参画をしてきたために今日の発展があることも事実でございますので、そういった点を考えますときに、分権が行われましたときには、先ほど申し上げましたように、質の高い国家公務員が地方の経営に参画してくれるということは、私どもまた大きく期待をしていいのではなかろうかと思うわけでございます。
  103. 山口鶴男

    国務大臣山口鶴男君) 地方分権推進されました場合のあるべき地方公共団体の姿につきましては、今、自治大臣からお答えがあったとおりだと存じます。  私の方からは、国と地方役割分担に関しまして、第四条に書いてあるわけでございますが、「国においては国際社会における国家としての存立にかかわる事務」、すなわち外交、防衛、これらの事務ばかりではなくて、全国的に統一して定めることが望ましい活動、あるいは地方自治に関する基本的な準則、または国家的な規模でもしくは全国的な視点に立って行わなければならない施策事業等々を述べているわけでございまして、現在の中央官庁における全国的な視野における行政というものは国の事務としてある程度は残っていくということは当然であろうかと存じます。そういう意味で、世界に冠たるシンクタンクと言われる我が国の官僚の皆さん方の活躍する場というものは当然私はあるというふうに考えておる次第であります。  そしてまた、もちろん中央官庁はスリム化するわけでありますし、権限は地方公共団体に大きく移譲されるわけでございますが、その場合、現在の中央官庁の方々が地方へ行ってまた中央へ帰ってきて出世するというパターンではなくて、文字どおり地域において全力を挙げてその地域発展のために活動していただくという体制ができることは、私は、国全体として、やはり多様なしかも地域に即した自治体が生き生きと活動していくという意味での国づくりに大きく寄与するんではないだろうかというふうにも考えておる次第でございます。
  104. 服部三男雄

    服部三男雄君 今までの質疑の中で余り触れられなかった問題でありますけれども、分権が国家構造として分権というのはこれはまあいいと思うんですが、そうすることによりまして産業問題、産業政策がふぞろいになるようなことのないようにしていただかなきゃならぬなという気がしております、これは余り触れられていないんですが。  例えば環境問題。ある県がきつく環境を守るために排ガス規制をするんだとか工場立地の問題を規制するんだとかとやられますと、これが全国的にばらばらになりますと非常に困るんじゃないかなということがまず一点です。  それから、午前中、パワフルな自治大臣がお越しにならなかったので私の質疑は不十分で不燃焼に終わったんですが、いわゆる宅地開発指導要綱というのが今でもある。中高層建築指導要綱もあるわけです。これらが、いいか悪いかはともかくとしまして、ばらばらにやられている。法制以上に厳しいことを自由に何でもできるようになりますと、これもちょっと困るんではないかという問題が一つあります。  それから、私どもは奈良県なんですが、大臣のところの京都もそうですけれども、古都保存を徹底してやろうとなりますと産業が窒息するわけです。今もかなり厳しい古都保存法とかいろんな法律の網をかぶせていまして、建物の規制だとか、家をかえるときに外観規制するとか、もういろいろ規制があるんですが、これを自治体に全部フリーハンドに任せてしまったら、それは一つの考え方ですよ、ヨーロッパに行けばそれはウィーンもそうだしフィレンツェもそうなんだ、パリだって外観規制を図っているわけですけれども、それを本当に分権で全部任せてしまったら、それはもう文人派の市長とかが出てきまして徹底的にやると、これも産業が窒息しかねない。  こういった問題があるわけでありまして、日本の産業立地構造というものを極端に変えられるようなことになるとこれも問題だろう。  そういったことについて余り今まで触れられていないんですが、これを今後どのように考えていかれるのか、ちょっと御意向をお伺いしたい。両大臣にお願いいたします。
  105. 山口鶴男

    国務大臣山口鶴男君) 御指摘の点につきましてお答えいたします。  土地利用規制がふぞろいになると産業政策に支障があるのではないかという御指摘の問題でございますが、地方分権推進につきましても、平成五年、二年前の衆参両院における国会決議にもございますように、国土の均衡ある発展を図るとともに、国民がゆとりと豊かさを実感できる社会の実現を目指して地方分権推進すべきだということをうたっているわけでございますので、地方分権推進するに当たりましても、国土の均衡ある発展を図るという視点、観点は、これはやっぱり十分配慮していかなきゃならない問題ではないかというふうにも思っている次第でございます。  また、委員が午前中御質疑になりました、各自治体でそれぞれ何といいますか、開発に際しまして負担等を課している問題、指導要綱の問題でございますけれども、これにつきましては規制緩和推進に関して五カ年計画決定いたしました。これを三年に前倒しをいたしたんですが、その中にも、規制緩和推進する、その観点に立って、地方自治の本旨ということはあるけれども、できる限りこの規制緩和の政府の方針に沿って、これを尊重して地方も進めてほしいということはきちっとうたっているわけでございます。  そういう意味では、規制緩和の方針につきまして、地方自治ですから強制をするというわけにはまいりませんけれども、やはり政府としてはこの規制緩和の方向は地方自治体においても十分尊重していただきたい、そういう意味での指導は政府としてきちっとやってまいりたいということをうたっている次第でございます。
  106. 野中広務

    国務大臣(野中広務君) 今、服部委員から御指摘ございましたし、総務庁長官からもお答えをいただきましたので、私から追加することはないわけでございますけれども、お説のように、環境問題あるいは産業のこれからのあり方の問題、また委員が御指摘ございましたように、歴史、風致の保存の問題、さらには文化財保護の問題等、こういう問題につきましてはこれから分権を進めていきます上に非常に重要な課題であると考えるわけでございます。  こういう問題の実態を考えますときには、やはり今回のこの法にありますように、また分権大綱にもございますように、主たる権限の移譲をそれぞれ機能を持った都道府県にまず重点的に配置し、個別、身近に住民に関係する問題を市町村に分権をしていくという基本的な中で収れんをされていかなくてはならないと考えるわけでございますし、また今、総務庁長官からもお話がございましたように、宅地開発指導要綱等、非常にバブルの全盛期にありました問題が今なお地方財政の視点から若干の市町村でそのまま残っておるようなところも散見をされるわけでございまして、今後の指導を通じてこういう問題の適正化により努力をしていかなくてはならないと考えておるところでございます。
  107. 服部三男雄

    服部三男雄君 終わります。
  108. 宮崎秀樹

    宮崎秀樹君 地方分権推進のこの法案の第二条でございますけれども、「地方分権推進に関する基本理念」ということで、「国と地方公共団体とが共通の目的である国民福祉の増進に向かって相互に協力する関係にあることを踏まえつつ、各般の行政を展開する上で国及び地方公共団体が分担すべき役割を明確にし、地方公共団体の自主性及び自立性を高め、個性豊かで活力に満ちた地域社会の実現を図ることを基本として行われるものとする。」、こういうふうに書いてあるんですが、特に自主性及び自立性ということが地方自治体に私は大きくかかわる問題ではないかと思うわけでございます。  そこで、一つの例を挙げてお尋ねしたいんですが、福祉とか医療それから保健などは、やはり人口三十万ぐらいから五十万ぐらいの規模でなければなかなか独自で自立して行えないわけであります。一つの例が、町田市というのが東京にありますけれども、ここは非常にその福祉政策、医療政策は自立してうまくいっている。それは人口規模がバックグラウンドにあるわけでありまして、財政的にもまた人材的にも非常に優位な条件が整えられるわけであります。また、人口数百人の村も日本にあるわけでありまして、地方分権地方分権と言ってもこれなかなか、そこへ独立性、自立性でやれと言ってもこれはなかなかできない話であります。  そこで、これは将来の話なんですけれども、こういう地域の行政区域ですね、自治体でありますけれども、再編成なども考慮に入れてその実効を上げる、効果を上げていくというような発想の転換と申しましょうか、市町村の人口格差ということを考えると物事が一律に運ばないのは事実でありますし、また健康保険、特に国保組合ですね、これは市町村国保組合なんかもう大変な差があります。地域格差というのが非常にあって、それで合いわゆる弱小な国保組合を助けるという、そういうことも行われております。  そこで、一つの例ですけれども、アメリカなんかの道州制を見ますと、アメリカは今五十州で、一番最大の人口があるのはカリフォルニア州でありまして三千百二十万あります。一番小さいのはワイオミング州で、これたったの四十七万。こんなことでございまして、平均が五百十万ぐらいであります。ちなみに日本では、今度新しく小選挙区制というので十一ブロックというのができました。それを参考に見ますと、一番多いのが近畿でありまして、これは二千四百十万、一番小さなところが四国でありまして四百十九万、平均が一千百二十万ということであります。  こういうことで、これは仮の話でございますから、自治大臣、将来を含めて、こういう地方分権をやるときにいろんな観点を視野に入れて政策を進めるということで、御所感がございましたらお伺いしたいと思います。
  109. 野中広務

    国務大臣(野中広務君) 宮崎委員から御指摘ございましたように、分権を進める上で現在の市町村の人口規模のあり方から一律に対応をすることは困難ではないかという中から、これからの地方団体の組織のあり方等にもお触れになったわけでございますけれども、地方制度調査会の答申でも提言をされておるわけでございますけれども、地方分権推進を行っていく上におきましては、住民に最も身近な地方公共団体である市町村が自主的な合併によりまして地域づくりの主体としてその行財政の能力をさらに強化していくことが重要であると言われておるわけでございまして、私どももそのとおりに考えておるところでございます。  しかしながら、言うまでもなく、市町村の合併を推進するに当たりましては、地域の実情に基づきまして、関係市町村や住民の自主的な判断が当然のことながら尊重されなければならないものでございまして、現在の市町村をめぐるさまざまな状況にかんがみてみますと、かつての昭和二十八年の町村合併促進法のときのような、国が市町村の人口規模等につきまして全国を通じて一律に標準を示すことは困難であろうと考えまして、先般改正をお願いいたしました合併特例法におきましては、合併協議会を設置するに当たりまして、住民の発議制度やあるいは合併市町村町づくりを支援するための財政措置等の行財政上の特例措置の拡大を図ったところでございます。  このような法律を適切に運営いたしますとともに、今回の分権におきましてもそれぞれ大綱や法が示しておりますように、権限移譲は二層性を考えられておるわけでございまして、昨年の十一月の地方制度調査会の「地方分権推進に関する答申」におきましても、「国からの権限移譲等を進めるに当たっては、当面、都道府県により重点を置いて進めることが現実的かつ効果的である。」と言われておるところでございます。服部委員にもお答えをいたしましたように、まず都道府県に重点を置いた分権が行われ、そしてその中におきましても、住民により身近な問題は地域づくりの主体である市町村へもその規模、能力に応じて権限移譲を進めていくことが適当であると考えておるわけでございます。  この際、もちろんのことながら、広域行政の需要に適切かつ効率的に対応ができますように権限移譲の受け入れ体制というものの整備を図るという観点からも、市町村の合併はもちろんでございますけれども、広域連合制度等の活用も図っていかなくてはならないと考えておるところでございます。  委員が御指摘のような道州制等のあり方につきましては、今後、長期的な課題として当然のことながらまた議論があるところでございまして、私どももそういう議論を謙虚に見詰めながら地方自治のあり方を考えてまいりたいと思う次第でございます。
  110. 宮崎秀樹

    宮崎秀樹君 昨今、交通アクセスも、非常に何といいましょうか、トンネルが一本抜ければ今まで二時間かかったところが十分で行けるというようなこともございますし、いろんなことを勘案した中でまた将来展望というものをお考えいただきたいと思うわけでございます。  次に、先ほど来から財政の問題が各同僚委員からお話がございましたけれども、第三次の行革審の最終答申の中で、税源の地域間格差は国からの財政移転により是正する必要がある、その場合にも地方交付税など一般財源によることを基本とすべきであると。その上で、地方税財源の充実強化、地方交付税の合理化、小規模自治体への財源保障の充実、補助金の法の見直し、事業の逐次削減ないし一般財源化、それから補助基準の緩和及び弾力化、統合化、メニュー化の推進、それから地方債の許可制度の弾力化、簡素化、起債に係る国の関与の最小限度化、地方債市場の整備育成、広域的事務処理とその負担について行財政運営面での一体性の確保推進等の具体的項目を挙げております。  また、全国市長会で行いましたアンケート調査の全体的意見というものを見ますと、設問としましては、地方分権推進に特に必要な財源保障策は何か二項目まで挙げてくれと、こういう質問に対しまして、一番は地方税源の充実強化、これは八一・四%であります。それから二番目が地方交付税の充実、三番目が補助金一般財源化、三番目が起債許可制限の緩和、こんなふうになっているんです、  そこで、第六条で「国は、地方公共団体事務及び事業を自主的かつ自立的に執行できるよう、国と地方公共団体との役割分組に応じた地方税財源の充実確保を図るものとする。」というふうにだけ書いてありまして、何ら具体的なことが示されていないし、またどこから手をつけていくのかなと。これはみんなそれぞれ大事なことでありますから一概には言えないのですけれども、自治大臣としてこの内容についてどこまでタッチをされてこれから重点的にやろうということになっているのか、そこら辺の自治大臣の御所感がございましたらお尋ねしたいと思います。
  111. 野中広務

    国務大臣(野中広務君) 今、委員から御指摘のございましたように、地方分権を進めていきます上におきまして、地方公共団体役割にふさわしい地方税財源の充実確保が重要であるということはお説のとおりでございます。特に、深刻な高齢化や少子社会を迎えるに当たりまして、住民に身近なところの地域福祉の充実やら、かつ生活関連社会資本の計画的な整備を考えますときに、地方税財源の充実強化を図っていくということは最重要な課題であると考えておるところでございます。  先般、本院におきましても御審議を賜りました税制改革の際におきまして、地方分権推進地方税財源の充実を図るという意味におきまして大きな位置づけとなる地方消費税を導入いただき、かつまたこれにかかわる交付税の税率改正をも行われたところでございます。  地方の税財源の充実確保当たりましては、まず地方税の充実強化を基本としながら、先般来お答え申し上げておりますように、財源の調整を行うために地方交付税の措置を継続することによって地方団体の財政基盤の整備を図ることが必要であると考えておるところでございまして、今後とも、分権の時勢に沿った税財政制度というものが構築をされなければ真に分権が確立をしたと言えないという観点に立ちまして、一層努力をしてまいらなければならないと存じておるところでございます。
  112. 宮崎秀樹

    宮崎秀樹君 そこで、一つ具体例でお尋ねしたいんですけれども、先般、予防接種法というのが改正されまして、これは今までは義務になっていたものが努力規定に変わったわけですね。これによって国の責任といいますか、義務でしたときには万が一医療過誤など起こったときは国が相手になっていた。ただ、努力規定になりますと、これは市町村長がこれを主管してやるわけでありますから、市町村長の方へ矛先が向いてくるわけであります。  また、この財源問題でございますけれども、先般、厚生委員会で私が厚生省の保健医療局長にお尋ねしたときに、人口十万人を対象としまして、平成年度、これは人口十万のところは約三千六百万の予防注射の費用を見ているんだと、そのうち九百万を交付税で見るというふうに自治省と話がついている、こういう話でございます。  この交付税の問題でありますけれども、一般国民から見ると、九百万入っているよと言われても、実際に末端に来ますとこれはどこへ薄まっちゃったのかなと。例えば学校医の手当も入っているわけですけれども、これも各市町村で額がばらばらであります。こういう積算根拠というものがどこから出てきてどういうふうになっているのかなということがわからない。  それで、今度、何で予防接種法が変わって問題が起きたかと申しますと、今まで一時間に大体七十名から八十名を集団接種ではやっていたわけです。ところが今回、厚生省からガイドラインが出まして、一時間に医師一人で二十名という数字が出たわけであります。  それはどういうことかと申しますと、集団接種をするときにはプライバシーがあるからつい立てを立てて一人ずつやりなさいよと、それから問診をしっかりやれ、健診をしっかりやりなさいと。そういうことになりますと、手間も服もかかってくる。そうしますと、今まで七、八十人で一時間の手当が出ていたものが今度は四倍費用がかかるわけですね。それから個別接種の方は今度は各自の診療所なり病院へ来てやれと、しかもできれば一般の患者さんの診察時間外にやってくれと。これはまた従業員を使えば時間外手当を出さなきゃいけないし、これはどういうことかというと、感染をするからそういうふうにしてくれと、こんな話なんです。  こういうことを一つやるにしても、やはり財源というものが市町村にはそれだけ余計かかってくる、その辺のところは一体どうなっているのか。これは自治省の方でお答えいただくのか、どんなふうになっているか教えていただきたいんです。
  113. 遠藤安彦

    政府委員(遠藤安彦君) 交付税の積算根拠の御質問でございますので、私から御答弁をさせていただきます。  予防接種の実施に要します経費につきましては、これまでも所要額を地方交付税に算入をしておったわけでありますが、このたび、御指摘のように対象疾病が変更になったというようなことや、個別の接種化を原則とすることとされたというようなことによって、積算の内容が変わってまいっております。私ども、この改正を踏まえまして、厚生省の方から接種費それからワクチン代等の所要経費の積算基礎を御連絡いただきまして、そして予防接種料収入も勘案して地方交付税に算入をいたしてございます。  具体的には、市町村分の保健衛生費というものがございますが、その中に伝染病等予防費という項目がございまして、その中に接種費等を含めました積算の基礎を明示いたしております。予防接種料収入も勘案して、十万人当たりの予防接種の単価というものを積算いたしまして、それぞれの市町村の人口を補正した数字でございますが、それに乗じて計算をすれば各市町村ごとに予防接種にかかる経費というのがどのぐらい交付税に算入されているかということは市町村にわかるような仕組みになってございます。
  114. 宮崎秀樹

    宮崎秀樹君 説明を受ければそのとおりだと思うんですけれども、私どもが外から見ていますと、九百万なら九百万が赤いお札である、それからほかの方へ行くのは青いお札であると色分けしてあると来たものがそこに使われているというのがわかるんですけれども、全部まとめてどんと総体で地方交付税と来ますから、市町村でそれをどう使おうがこれはわからなくなるシステムなんですね。そこら辺のチェックというのはだれもしていないと思うんですよ。  こういう財源的な問題というのは、一つ施策の中でそういうものが行われているんですから、これがわかるような方法なりそういうものをやった方がいいのか、いや、もう市町村の独自でやるからおまえら勝手にやれよと、こういう話に今なっているわけですけれども、しかしそれが有効に使われているかどうかというチェック機関が全然ないんです、これ。  だから、はっきり言いまして、一つの例が学校への手当てなんかはばらばらなんです。もう非常に格差があるんですね。それは幾ら言っても、なかなかそれだけ来ていないよとか、どうなのかということは我々はそこへ行って現場へ入り込んでそのお札を見ているわけじゃないからわからないわけです。  そういうことも今後やっぱりわかりやすいような方法というものを何とかできないか、その辺のお考えがあったらひとつお聞かせ願いたいと思います。
  115. 遠藤安彦

    政府委員(遠藤安彦君) 申すまでもなく、地方交付税というのは地方団体の税源に偏在があるためにこれを財政調整しようというものでございまして、性格的には地方税収入と同様、何にでも自由に使える一般財源であるという性格でございます。  したがいまして、私どもそういった性格の地方交付税を配分いたします根拠といたしまして、できるだけ客観的な数値に基づいて地方団体が標準的な経費として必要とされる額というものを明示的に計算をして、それを、こんなに厚い交付税の「単位費用編」という本がございますが、それに示しまして、個々の市町村が標準的に交付税で計算されている経費内容というのは単価的にどういう水準になっているかということがわかるような資料も提示をしまして計算をしておるところでございます。  御質問にありましたように、確かに個々の市町村によって単価その他に差があるということもあろうかと思いますが、私どもはできるだけ全国平均的な数値、標準的な行政が各地方団体において保障されるように経費の積算基礎を定めて、これを明示して計算をしておるというようにいたしております。  こういったことについては、私どもこれからも努力をしていきたいというように思っておりますので、御了解を賜りたいというように思います。
  116. 宮崎秀樹

    宮崎秀樹君 ぜひお願いいたします。  そうでなければ、各省庁ごとからもらえばはっきりわかりやすくなるわけですから、そうすると自治省要らなくなっちゃうので、自治省、しっかりひとつよろしくお願いいたします。  終わります。
  117. 岩崎昭弥

    岩崎昭弥君 質問いたします前に、国民から見た地方分権の議論というものがどう映っているかということをマスコミの解説からちょっと見たいと思うんです。  これは三月六日のものですからちょっと古いんですが、  掛け声ばかりで具体的な姿がなかなか見えてこない地方分権。村山内閣が国会に提出した地方分権推進法案にも、「何をどこまで進めるか」という分権の具体像は示されていない。社会や経済の有り様が大きく変わり、国民意識にも従来の中央と地方の関係に対する疑問が芽生えつつある。その中で、地方分権は単に中央省庁の権限を地方自治体に移すという問題ではなくなってきている。自治体を活性化し個性豊かな地域をつくることや、身近な行政に対する住民の関心を高めるために何が必要か。なによりも地域からの盛り上げや、中央への突き上げが欠かせない要件だ。こう言っています。分権論も多様な分権論があると言いまして、  なぜ、地方分権が必要なのか。政界や官界、経済界などの間にはいくつかの代表的な考えがある。  最も伝統的なのが「地方の自主性を確保し、住民による地域自治を進めるため、中央省庁の権限を地方自治体に移行する」という考え方。  最近では、低成長時代高齢化社会の到来という環境の変化を踏まえ、全国が政府による統一的な政策ではなく、それぞれの地域が独自に経済政策や福祉政策などを打ち出し、そのため独自に税源などまでも移譲すべきだという分権論もでている。  政治改革の一環としての分権論もある。中央政府に権限が集中しすぎたため、中央の仕事を外交や防衛に限定するという主張だ。  新進党の小沢一郎幹事長の「日本改造計画」で述べているのは、「国民生活に関係する分野を思い切って地方に一任する」とし、その結果、身軽になった中央政府が国家の危機管理などに全力を傾注するという考え。似たような文脈から、分権によって中央政府、地方自治体ともに簡素・効率化しようという「小さな政府」論もある、こういうふうにいろいろ言っているわけであります。  ついでに推進委員会の中身のことについても触れますと、同法案は第三者機関の地方分権推進委員会を設け、内閣に対する勧告や監視という強い権限を持たせた。分権論議のレールを敷いたという意味では評価できるだろう。  しかし、どういう地方分権を進めるかという基本方針は抽象的だ。国の役割については「全国的に統一して定めることが望ましい事務」「全国的な規模、視点で行わなければならない施策事業。などと、極めてあいまいだ。と指摘しています。  全国知事会など地方六団体は、国の役割を外交・防衛などに制限すべきだという意見書を内閣と国会に提出していた。首相の諮問機関、地方制度調査会もほぼ同様の答申をした。  だが、こうした要求は反映されなかった。まとめ役の総務庁幹部は「国の役割は、各省庁の反対が強くて、どうしても具体的には言及できない」と、与党側に伝えた。云々とあるわけであります。  そこで、質問の一点ですが、まず総務庁長官にお尋ねしたいんですが、地方分権の今日的意義は、地方自治の確立のための権限等の移譲、国をスリムにし、内政を地方に移管することにあると私は基本的にそう考えているんですが、この点について所見を伺いたいと思います。
  118. 山口鶴男

    国務大臣山口鶴男君) お答えいたします。  委員が、地方分権に関する新聞の記事を紹介されました。確かに、私ども考えるべき点も指摘をされていると思いますが、地方制度調査会や、それから地方六団体の要求が反映されなかったという記述は私はいかがなものかと、かように考えております。私どもは、地方六団体の意見、地方制度調査会の答申、それを十分踏まえました上で、昨年暮れ地方分権大綱を決定し、その上に立ちまして、記事で評価もいただいているようでございますが、勧告、監視という強い権限を持った地方分権推進委員会というものを組み込んだ地方分権推進法案を国会に御提案申し上げたという点はひとつ御理解をいただきたいと思う次第であります。  お尋ねの点についてお答えいたしますけれども、世界は今や歴史的な変革期を迎えております。国としては、内政に関する役割は思い切って地方公共団体にゆだねまして、国が本来果たすべき役割を重点的、効果的に担う体制を確立することが急務であるというふうに認識をいたしております。  成熟期を迎えつつある今日、各地域がそれぞれの個性を生かした多様で活力あふれる地域づくりを進めることができますよう、どこに行っても金太郎あめのようだというようなことではないように、地域の主体性を重視した行政システムの変革が求められていると思います。そうして、国民がゆとりと豊かさを実感できる社会の実現が求められている。以上の点を十分踏まえました上で、地方分権に対する要請がかつてない高まりを見せ、しばしば引用いたしますが、衆参両院の国会決議にもなっておると思います。  ただ、規制緩和が官から民へという形の変革であり、地方分権が国から地方へということでございますので、規制緩和の場合は、直接それにかかわる国民の皆さん方が多数おられるわけでございますし、多数の経済団体がございます。したがいまして、そういった団体から規制緩和を行うべきだという世論が大いに盛り上がるわけでございますけれども、地方分権の場合は、国から地方へと、国から地方公共団体へということだものですから、残念ながら直接国民、直接消費者という形ではないということは事実だろうと思います。  しかし、私は地方公共団体は住民自治であるべきだ。住民の中から地方自治を求める、そういう機運が高まることによって地方自治というものは運営されていくべきであるし、また、そういう中で私は地方分権というものも立派に結実していくんではないだろうかというふうに考えておる次第であります。
  119. 岩崎昭弥

    岩崎昭弥君 「国の関与省庁事項数」というのがありまして、平成六年三月三十一日現在を見ますと、件数が三千二百九十三件になっているんですね。多いところをちょっと指摘しますと、厚生省が二百九十九件、農林水産省が五百十二件、建設省が五百九十三件、自治省が三百九十九件。これを昭和六十三年十二月三十一日現在から見ますと大分ふえておる、こういう状況にあります。  これも総務庁長官にお尋ねするんですが、機関委任事務の整理合理化を進めるに当たっては、個別具体的な事務についてケーススタディーを行う必要があると思うんです。そして、相当切り込んでやっていただかないと地方分権といっても成果が上がらないというふうに思いますので、この点について長官の所信を聞きたいと思います。
  120. 山口鶴男

    国務大臣山口鶴男君) 国の関与が多数あるということは御指摘のとおりでございます。若干ふえたという点の御指摘もまさにそのとおりでございますが、国の関与につきましては、法案でうたっておりますように、また分権大綱でうたっておりますように、これにつきましても思い切った整理合理化を進めてまいるという決意でございます。  また、お尋ねの機関委任事務の整理合理化につきましては、現在、機関委任事務が五百六十二ほどあるわけでございますけれども、御指摘のとおり、多数の実体法によりましてそれぞれ根拠を置いて機関委任事務というものは設定されているわけでございまして、一つ一つ個々の事務について具体的に吟味をしていくことが必要であると存じます。  私どもといたしましては、こういった観点地方分権推進委員会で個々具体的に吟味をいたしまして、機関委任事務についてはどのように整理合理化をすべきかということはきちっと御議論をいただけるものと思いますし、また、私どもとしてはいただいた勧告、御意見というものを踏まえました上できちっとした地方分権推進計画を策定いたしまして、具体的な整理合理化をきちっとやってまいりたいと考えておる次第でございます。
  121. 岩崎昭弥

    岩崎昭弥君 国の関与に関していいますと、さっき言いましたように自治省もトップクラスにあるわけです。建設省、農林水産省に次いで三番目が自治省ですね。自治省先ほど申しましたように三百九十九件あります。  そこで、自治大臣にお尋ねするんでありますが、地方分権推進するに当たっては、まずは地方分権を進めるという自治省が率先して権限移譲等に取り組まないといけない、こういうふうに思うんですね。各省庁に範を垂れてこそ初めて推進が可能になると私は踏んでおるんですが、この点についての自治大臣の所見をお聞きしたいと思います。
  122. 野中広務

    国務大臣(野中広務君) 委員指摘のように、地方分権推進を行っていきますためには、自治省にとりましてもこれは最重点的な課題と受けとめておるわけでございます。  自治省自身の事務につきましても今お触れになったわけでございますけれども、自治省につきましては、御承知のように選挙の問題あるいは自治法上の報告等の問題、また消防の問題等がございまして、それぞれ御指摘のような項目があるわけでございます。  しかし、今日まで自治省自身の事務を含めまして国と地方役割分担を本格的に見直しまして、権限の移譲や国の関与等の廃止あるいは緩和、地方税財源の充実強化を進めまして、地方公共団体の自主性かつ自立性を強化していくようあらゆる機会をつかまえまして努力をしてきたところでもございますし、また今後とも当然のことながら、二十一世紀に向けた時代にふさわしい国と地方との関係を確立するためには、自治省が先んじて具体的な成果を上げるべく強い決意で取り組んでまいる所存でございます。
  123. 岩崎昭弥

    岩崎昭弥君 次に、今度は総務庁長官にまたお尋ねします。  地方分権の問題は長年の懸案であったために、ここまで事態が進んだことについては国民の関心も非常に高いのであります。また、全国の都道府県市町村推進法の成立及びこれからの経過を特に注目するだろうと思うのであります。したがいまして、これは法案が成立しましてからの地方分権推進委員会の審議の状況をできるだけ公開しでいくことが重要だというふうに思いますが、その点についてはどのように考えていらっしゃるか、お聞きをしたいのであります。
  124. 山口鶴男

    国務大臣山口鶴男君) 昨年成立をさせていただきました行政改革委員会、この法案の審議に当たりましても、またかつて私が提案者で衆参で御論議をいただき成立させていただきました国会等の移転に関する法律に関しましても、行政委員会あるいは調査会、これらの審議を公開すべきであるという御意見が随分ございました。私はまさにごもっともであろうと思うんです。国会等の移転あるいは行政改革の推進という重要な課題について国民の皆さん方に十分お知らせをしていくということは、これは当然なさなければならない問題であると思います。  ただ、その際にもお答えしたのでありますが、やっぱり委員会運営自体はまさに構成されました委員会において御判断いただくべき課題でございまして、私の方からこうすべきであるという強制すべき課題ではない、またそうすることはいかがであるかというふうに認識をいたしております。  ただ、私はその際にもお答えしたのでありますが、やはり国民の皆さん方に広く御理解をいただかなきゃならぬ極めて重大な歴史的な課題でございますから、そのことはできました委員会が十分この御判断をいただけるでありましょうし、また国会の御議論というものも十分踏まえていただけるだろう。  そうして、公開ということになるか、それはわかりませんけれども、いずれにいたしましても委員会ではこのような議論が行われたということは、その都度会長さんがマスコミに対して、具体的にこのような審議が行われましたということはそれぞれ御報告あるだろうと思いまして、実質的には国民の皆さん方に審議の内容が公開に近い形でお知らせできるというような形に私は必ずしていただけるんではないだろうかというふうにも期待する次第であります。  いずれにいたしましても、委員会自体が国会の御議論等を踏まえた上で自主的にお決めになる課題であるというふうに考えております。
  125. 岩崎昭弥

    岩崎昭弥君 あと二、三の点についてまだ関係がありますので。  地方分権に関するアンケート調査というのを全国市長会が都市政策研究特別委員会と一緒になって昨年行いました。その結果がこの一月に発表されているわけであります。ちょっと中身を紹介しますと、目的は「全国市長会では、都市政策研究特別委員会において権限移譲等を中心とした地方分権推進について審議を行っている。そこで、審議の参考に資するため全市長に調査表を郵送し、地方分権に関しアンケート調査を行った。」。対象は、平成六年四月一日現在の全国六百六十三市長を対象に悉皆調査とした。調査期間は平成六年六月六日から七月十一日となっております。  そこで、主なものをちょっと拾ってみますと、設問の一は、「地方分権推進しようとする主要目的は何か二項目まであげてください。」という設問に対して、個性的なまちづくりを推進するためが七八・一%、五百十八市であります。住民サービスを向上させるためが六三%で四百十八市。  次に設問の二は、「地方分権について当面重点的に取り組むべき分野は何か二項目まであげてください。」という設問に、都市計画土地利用が九〇・八%、それから福祉・保健が六七・九%であります。  設問の三は、「地方分権が進まない要因として特に障害となっているものは何か三項目まであげてください。」という設問に対して、中央省庁の既得権限の保護が七七・二%、自治体の財政的自立性の不足が六〇・九%、国の補助金行政による統制が五六二%となっております。  設問の四は、「地方分権推進基本法制定にあたって特に盛り込む必要がある事項は何か二項目まであげてください。」という設問に対して、地方税財政制度の自立性の強化が九一%です。国と地方役割、これが八一・七%となっております。  設問の五、これは先ほどちょっと宮崎先生も触れられたと思いますが、地方税源の充実強化が八一・四%、地方交付税の充実が四六・三%となっております。  それから設問の六、「権限移譲を進めるために当面利用したら効果的な制度は何か二項目まであげてください。」という設問に対して、広域行政圏が五一・三%、地方拠点都市が三二・六%、広域連合が二九・九%等となっております。  それから設問の八に行きますと、「地方分権が進まないことにより一番困っていることは何か自由に記載してください。」、こういう設問がありますが、それは事業野別と制度的問題別というのがありまして、事業野別を言いますと、都市計画法に関する問題が二七・九%、土地政策一般に関する問題が一二・九%、農地又は農振法に関する問題が一〇・九%。それから、制度的問題別で言いますと、許認可の問題を指摘しているものが三五・二%、補助金の問題を指摘しているものが三四・九%という数字になっているのであります。  そこで、これは自治省にお尋ねするんですが、全国市長会アンケートの結果のごとく、いろいろ問題があるわけですが、地方分権推進する上で地方税の充実強化が特に必要と思われますが、この場合、税収の地域偏在の問題に対してはどのように取り組まれるつもりか、お聞かせを願いたいのであります。
  126. 野中広務

    国務大臣(野中広務君) 現在の地方税を全体として見てみますと、委員御承知のとおりに、国税に比べますと地域的な偏在度が比較的少ないと思われるわけでございます。しかし、地域間に経済力の格差があります現状におきましては、どうしてもある程度の税源の偏在は避けることができないと思うのでありまして、今後、地方分権の流れに応じまして地方の税源の充実を図っていくに当たりましても、こうした現状を前提にせざるを得ない点があると考えておるところでございます。  また、現行の地方税制の中におきましても、委員御承知のとおりに、道府県の税収は法人所得課税に偏っておりまして、税収において伸長性に富む反面、地域的な税収の偏在を大きくいたしまして、そのために景気の動向に左右される面があると考えておるところでございます。  したがいまして、先般の税制改革におきましても地方消費税の創設が図られまして、比較的地域的な普遍性に富む消費課税のウエートが高められることになったところでございます。今後とも地方税におきましては、所得、消費、資産の間でよりバランスのとれた安定した税体系の確立を目指していかなければならないと考えますとともに、適切な税目の組み合わせによりまして税収の偏在が大きくならない税体系をつくっていくことが肝要であると存じておるところでございます。  なお、税収の偏在によります地方団体間におきます収入のアンバランスにつきましては、別途、地方交付税等によりまして財政調整制度の適切な活用を図る必要があると存じておるところでございます。
  127. 岩崎昭弥

    岩崎昭弥君 財政調整制度についてもお触れになりましたので次に飛びまして、地方分権推進とあわせて地方自治の基本法である地方自治法の見直し、改正も必要不可欠であると私は思うんですが、この点について自治大臣の考えをお聞かせください。
  128. 野中広務

    国務大臣(野中広務君) 御指摘のように、地方分権推進の成果を十分なものにしていきますためには、国と地方公共団体役割分担を踏まえまして、分権の時代にふさわしい地方行政体制の整備、確立を図っていくことが必要であると存じておるところでございます。  昨年の地方自治法の改正によりまして創設をされました中核市制度あるいは広域連合制度は、いずれも地方分権を進める具体的な方策の一つとして位置づけられておるものでございますけれども、先般も申し上げましたように、外部の監査制度の導入等の地方制度調査会の答申で提言されました検討課題もございまして、今後とも地方分権推進状況に応じまして所要の見直し、検討を行ってまいらなければならないと存じておるところでございます。
  129. 岩崎昭弥

    岩崎昭弥君 地方分権地方自治は一体不離の関係にありますが、中身は違うんですね。したがいまして、地方分権推進にあわせて背景となる地方自治の問題も私は重要であるというふうに思うんです。  地方自治体の制定する条例について、例えば住民参加といえば今、監査制度ぐらいしかありませんが、住民参加規定というものをこれからつくっていく場合に自治法とどうなるか。例えば、選挙制度についても全部自治法で縛っていますが、これを県や市町村が独自につくったら自治法との関係はどうなるか。それから、地方自治体の条例の制定権を認めたとすると自治法との関係はどうなるかというような問題が私は出てくるというふうに思うんです。加えて、国と地方との間で見解が異なった場合にはこれを裁判で決着をつけるのか。いやいやそうじゃない、国と地方の争いを調整する仕組みを地方自治法の中に設けるのかどうか。そういうことも含めて、これも自治大臣に所見を伺いたいと思います。
  130. 吉田弘正

    政府委員(吉田弘正君) 国と地方の調整の仕組みの問題でございますが、今回の地方分権推進を進めておりますのは、現在、地方がその実情に沿って個性豊かな行政を積極的に展開できるように、国と地方役割分担を本格的に見直しまして、そして権限移譲や国の関与等の廃止、緩和、さらには地方税財源の充実強化を進めまして、地方団体の自主性、自立性を強化していくということにあるわけでございます。また同時に、国と地方が相協力しまして忌憚のない意見の交換を行い、意思の疎通を図って国民福祉の増進を図っていくということも大切なことだと考えています。  そこで、そういう際に、国と地方で例えば条例の制定等をめぐっていろいろ意見の相違がある、その調整をどうするかというような問題でございますが、この問題につきましては昨年の十一月に出されました地方制度調査会の答申におきましても、「地方分権推進計画の実施状況を踏まえて、国と地方公共団体の関係を調整する新たな制度のあり方について、今後、検討する必要がある」というふうにされているところでございます。  私ども、今後、地方分権推進委員会の作成する具体的な指針に基づいて作成されることになります地方分権推進計画の実施状況等を十分踏まえまして検討すべき課題であるというふうに考えているところでございます。
  131. 岩崎昭弥

    岩崎昭弥君 次は、主として総務庁にお尋ねをしたいんですが、その質問の前に、「十六年ひと昔」という前の呉市長さんが書いた本があるんです。その中に退任してから地方行政の中でいろいろな矛盾点に遭遇したときのことがいろいろ書いてあるんですが、例えばその中の起債のことをちょっと紹介しますと、  地方債は、説明するまでもなく、自治体の借金である。自治体の金繰りのため発行し、自治体が返済するものだから、自治体がシチュエーションを自分で判断し、自分で発行する権限を持つのがあたり前だと思うが、その許可権をがっちりと国が握っている。これを個人に置き換えてみるがよい。すねかじりの子供が親の了解を得ねば借金できないというのに似ている。  こんな不思議な現象が今、横行している。こういうふうに言っているんです、これは率直過ぎますが。しかし、  もっとも、あらゆる場合に自治体が勝手に地方債を発行してよいと言っているのではない。地方債の発行について国が管理しなければならないのは、次のようなケースが考えられる。  第一に、起債市場は言うまでもなく、地域の単位を越えるものだから、市場が極端にタイトな時に、市場金利や株価など経済情勢をにらみながら、全国規模でコントロールすることが必要な場合もある。  第二に、政府資金によって地方債を引き受ける際には、国がコントロールするのは当然である。  第三に、自治体の財政が破綻状態にある時には、借金を抑制することが必要である。したがって、公債費比率が極端に高い自治体に対して、国が起債を認めないとする措置をとることは是認されよう。  第四に、起債の償還に対して交付税措置をとることは、前述のごとく現在やや濫用されていると言えるので、これを抑える必要があるが、他面、財源対策債のように交付税措置を必要とする場合のあることは否定できない。このような場合には、国庫資金の支出を伴う関係上、起債の規模について国がコントロールするのは当然である。こういうふうに言っていますが、いずれにしても起債の管理がきつ過ぎるということを指摘しているというふうに思うんです。  次に、住居表示のことが書いてあるんです。住居表示は住所のことですが、これも事細かにああせいこうせいと全部書いてあるんです。そこまで言ってくれぬでも地域地域の特殊性がある、特殊性ぐらいは認めたらどうや、私の町はそこで個性をつくりたいという、そういう町もあるんじゃないかということを指摘しているんです、これは読みませんけれども。  それからもう一つは公園です。公園は半分以上は緑がないとあかん、植栽がないといかぬと言っている。今、スポーツする時代に、そんな木の本数や緑で言ってもらったのでは困ると、そう言っているんです。昔はスポーツがそう盛んでなかったから、公園は植栽があって花があって小鳥が鳴いてというのが当たり前だったかもしらぬけれども、時代が変わってきたから、そこでスポーツするのに公園のスポーツ施設と緑の割合あるいは建物の割合なんかをそれぞれ規制するのはやり過ぎだというふうに言っているんですね。それはやっぱり山に家が建たないように、そういうところは公園にするとかいうことがあるように地方に応じた公園をつくらせてほしい、そういうふうに言っているわけですね。  これは実際に建設省から縛られることを事細かに反論していますが、つまり地方債にしても住居表示にしても公園にしても、国は公共団体をがんじがらめに縛っているというのが私は極論するなら現状だと、こういうふうに思うんです。このように国が地方を縛るのは私はよくないと思う。地方自治体と言っているんですからある程度は任せた方がいいと、こういうふうに思うんですが、これについて総務庁長官の御意見を聞きたいんです。
  132. 山口鶴男

    国務大臣山口鶴男君) 地方債の問題は、自治大臣また財政局長もおられるわけでございますから、私の方から余りとやかく言うことはいかがかと思っております。いずれにいたしましても、単に自治大臣だけの許可権限ではありませんで、大蔵省も財政投融資を握っている関係から権限を持っているという形になっております。  私は、大蔵省の方の問題についてはどうするかということは、これはまた大いに議論をしなきゃならぬ問題だと思いますし、それからまた自治大臣の許認可権限につきましても、いつも大臣の御答弁を聞いているわけでございますが、やはり元利償還について交付税の基準財政需要額で算入しているという関係もありますので、一概に全く許可なしにしてしまうのはいかがか。しかし、やり方についてはいろいろ配慮する必要があるんではないかというふうにお答えになっておるわけでございまして、そういう意味では地方分権推進という観点に立って、地方債の問題についても私は地方分権推進委員会で十分な御議論もあって、またそういう中で推進計画が策定される、政府の方針が決まっていくということになろうかと思っております。  御指摘の住居表示でありますとか公園などの問題につきましては、これは国の関与の問題だと思いますが、国の関与につきましても必要最小限のものに整理合理化を図る。存置する場合におきましても事前関与から事後関与、権力的関与から非権力的関与へ移行することを基本とするということを地方分権大綱でうたっております。  そういった観点を十分踏まえまして、御指摘の国の関与につきましてもできれば許認可から届け出にするというような緩やかな形にしていく、あるいは事前を事後にしていく等々の形で整理合理化をし、自治体の自主性を十分尊重すべきものだというふうに考えておる次第であります。
  133. 岩崎昭弥

    岩崎昭弥君 今度は自治省にお尋ねいたします。  物事は隗より始めよと言いますが、自治体の自立性について、やっぱり自治省は寛容な態度でやってほしいということがあるんです。  例えば政令市、中核市について言うならば、この制度は国の側の評価によって規定されていると言っても私は過言ではないというふうに思うんですが、一定の基準に達したら各団体の判断で当該市になれるような地方団体の自主性を尊重した柔軟な制度にしたらどうか、まずこう思うんです。このことを早急に検討されたいと思うんですが、このことについて自治省の考え方をお聞きしたいんです。
  134. 吉田弘正

    政府委員(吉田弘正君) まず政令市の制度の問題でございますが、これは御案内のように、大都市固有の行政需要に適切に対処するために昭和三十一年に創設をされたものでございまして、現在、十二の都市が指定されているところでございます。  政令都市の指定の要件につきましては、法律上、単に人口五十万以上の市というふうに規定しているのでございまして、それ以外には別段明文上の定めている要件はないわけでございますが、そもそもの立法の経緯でございますとか特例を設けた趣旨からいたしまして、人口その他の都市としての規模、行財政能力等について、従来の政令指定都市と同等の実態を有するというものについて都市を指定してきたところでございまして、今後もそういった視点、つまり都市の規模とか行財政能力等を総合的に勘案して指定すべきものと考えているところでございます。  また、中核市の問題につきましては、第二十三次の地方制度調査会の答申を踏まえまして、指定市以外の都市であっても、指定市に比較的近い規模、能力が比較的大きい市について、その事務権限を強化するために設けられた制度でございます。昨年の六月に法律改正をさせていただきまして、本年の四月から施行をされているところでございます。  この要件としましては、法律上人口三十万以上を有すること、面積は百平方キロメートル以上を有すること、そして当該市の人口が五十万未満の場合にあっては、当該市を含む周辺の地域における経済社会生活圏の中核としての機能、つまり中核性の機能、そういうものを有することを要件としておるわけでございまして、そういう市について、市の申し出に基づいて政令で指定されるという仕組みになっているわけでございます。  中核市の指定に関しましては、重要な事務権限が都道府県から中核市に移るということになるわけでございますので、事務の引き継ぎや事務処理体制が十分できているかどうかということが大事でございまして、そういう整備をしっかりしていただきたいと考えておりますが、せっかく地方自治法の改正をいたしまして地方分権を進める具体策の一つとしてつくった制度でございますので、この制度を広く活用していただきたいというふうに私どもは考えているところでございます。
  135. 岩崎昭弥

    岩崎昭弥君 政治改革のことを顧みますと、ある意味で順調になかなかいかなかったわけです。それぞれの政党、それぞれの議員に利害関係があったからです。政治改革と同様に今回の地方分権も中央省庁が自分の体に自分でメスを入れるということになりますので、なかなか難しいんですね。  そうした壁を破るのが実は政党の役目であると私は思うんですが、地方分権は村山内閣ばかりでなく、細川、羽田両内閣も重要課題に掲げてまいりました。その流れからいいますと、これは難しくても超党派で、政治の責任でこれを解決しようという不退転の決意が我々にもないといかぬというふうに思うんですが、そのことをみずから申し上げまして、質問を終わります。
  136. 牛嶋正

    牛嶋正君 平成会の牛嶋でございます。  私は、地方分権推進に関する議論をずっとしてまいりまして、そこでの重要な概念といいますかキーワードというのは国と地方公共団体との役割分担、そこにあるんじゃないかというふうに思います。これは、地方分権推進に関する基本理念をうたっております第二条からも明らかでございます。  すなわち、社会や経済の実態がどんどん変化しているわけです。ですから、それを踏まえて国と地方公共団体役割分担を見直し、経済の実態に即した役割分担を明確にしていく。その場合に、現行の国と地方公共団体との役割分担の間にずれといいますか乖離が必ず生じます。この乖離を埋めていく、これが地方分権であるというふうに考えるわけであります。これは第二条の基本理念でもそのようにうたわれているというふうに思っております。  こういう立場に立って、このキーワードとも言うべき国と地方公共団体役割分担に焦点を合わせまして、後の三条、四条と条文を読んでいきますと、これは私だけかも知れませんけれども幾つか疑問点が出てくるわけです。疑問点というよりも、もう少し明らかにしておいた方がいいということかと思います。そういうことで、私が疑問点に思っているところを明らかにするという形で質問させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。  初めは、自治大臣に主としてお尋ねをしてまいりたいと思います。  今申しました国と地方公共団体との役割分担のあり方を考えていく場合、これは基本理念にもありますように、やはり目的国民福祉の増進にあるというふうに思うわけであります。基本理念のところではうたっておりませんけれども、これには制約があるわけです。すなわち、限られた資源なんです。ですから、限られた資源という制約のもとで国民福祉を最大限に高めていく場合に、国と地方公共団体がどういう役割分担をすればその目的を達成することができるのか、こういう観点地方分権を考えなければ、いたずらに議論が混乱するのではないかというふうに私は思っております。  その場合に、経済学では、限られた資源でもって国民福祉を最大限に増大させるためには三つの条件が満たされなければならないと言っております。  その一つは、限られた資源ですからこれを最も有効に活用しなければなりません。最適配分の実現であります。二番目は、資源を有効に利用しても、それでつくられたものがどう分配されるか、これが問題であります。ですから、適正な所得分配の実現、これが第二番目の条件であります。第三番目の条件は、限られた資源ですから遊休の資源があってはなりません。失業があってはなりません。ですから、雇用の安定と物価の安定、これの実現が条件になってまいります。この三つの条件を整えていかなければなりませんが、国と地方公共団体が行う行政は、実はこの三つの条件に非常にかかわっているわけであります。  そこで、この三つの条件とのかかわり合いを財政が三つの機能を持っているというふうに表現している。すなわち、資源配分の機能、それから所得分配の機能、そして経済安定の機能であります。だとしますと、国と地方公共団体との役割分担を考える場合、私はこの三つの機能について、すべてやっぱり検討していかなければこれからの日本の経済、財政の運営を円滑に、かつ非常に有効に運営していくことはできないと思うのでありますが、これについて自治大臣、どういうお考えでしょうか。
  137. 野中広務

    国務大臣(野中広務君) 今、委員から御指摘がございましたように、限られた資源の中で三つの財政機能をどのように生かして国と地方役割分担を行っていくかというのが分権の基本理念と基本方針でなければならないという御指摘委員指摘のとおりだと思うわけでございます。国と地方とが意思の疎通を密にいたしまして、相協力して共通の行政目的であります住民福祉の増進を図っていかなければならないと思うわけでございます。  この法案におきまして、国と地方公共団体役割分担につきまして、国は国際社会における国家としての存立にかかわる事務等、国が本来果たすべき役割を重点的に担い、地方公共団体地域におきます行政の自主的かつ総合的な実施の役割を広く担うこととされておるわけでございますけれども、このような役割分担のあり方に即しまして権限移譲等を推進していくこととしておりまして、具体的な権限移譲等を通じまして国と地方公共団体が分担すべき役割がより明確になっていくものと考えておるわけでございます。  また、これらに並行いたしまして、国と地方公共団体役割分担に応じた地方の税財源の充実確保を図っていかなければならないということも御指摘のとおりでございます。その際は、当然、国家財政及び地方財政のそれぞれの特色に配意していかなくてはならないと考えるところでございます。こうした中で国と地方公共団体とが相互に協力をいたしまして、御指摘のような財政機能も適切に果たされていくものと考えるところでございます。
  138. 牛嶋正

    牛嶋正君 ありがとうございました。  私は、もうちょっとこの三つの機能について見ていきたいと思うのでございますけれども、最初の資源配分機能でございますが、これは我が国は市場経済でございますので、大部分の財サービスというのは市場を通じて供給されているわけであります。  問題は、市場を通じては供給されないいわゆる公共財、これを国と地方公共団体が受け持っていくわけでありますが、この役割分担は普通国と地方事務配分というふうに呼ばれております。この事務配分の問題は今回の地方分権の非常に中心的なテーマでございますが、これはちょっと後に回したいと思いまして、次に所得の分配機能についての国と地方役割分担を少し考えてみたいと思います。  財政が所得分配機能をどういうふうな形で発揮していくかといいますと、一つは生活保護費とか年金給付等の移転支出、それからもう一つは累進構造による課税によって進められていくというふうに考えられるわけであります。そうしますと、現行の税制を見ますと、累進課税の構造をとっておりますのは、まずは国税の所得税でございます。しかし、地方税の個人住民税も、これはちょっと緩やかでありますけれども累進課税の構造をとっているわけで、そういう意味では所得の分配機能の中に地方公共団体も加わっている、こういうふうに考えられるわけです。  しかし私は、この所得の分配機能というのは国が主として受け持つべきである、全国一律に適正な分配基準を設定し、そしてそれを実現していく、これはやっぱり国の重要な役割ではないかというふうに思うわけでありますけれども、この考え方について自治大臣はどういうふうにお考えでしょうか。
  139. 野中広務

    国務大臣(野中広務君) 委員のような学識の立場に立たれました高度の国の所得分配機能のあり方という問題につきまして的確にお答えできる識見を持ち合わせてはおらないわけでございますけれども、今御指摘になりました個人住民税は、地域社会の費用につきまして住民がその能力に応じて広く負担を分任するという独自の性格を有しておるわけでございまして、所得税と比べまして個人所得課税に求められる所得の再配分の役割が相対的に小さいために、その税率構造は所得税と比較いたしましてかなり緩やかな税率構造となっておると承知をしておるところでございます。  しかしながら、個人住民税は一方でお説のように所得を課税標準としておるわけでございますので、負担能力に応じた負担を求めるという性格もあわせ有しておると考えるわけでございまして、ある程度の累進構造は必要ではなかろうかと存じておるところでございます。  いずれにいたしましても、個人住民税の性格にふさわしいあり方につきまして必要な検討を行いまして、中長期的にその充実を図ってまいらなくてはならないと考えておるところでございます。
  140. 牛嶋正

    牛嶋正君 今、中長期的に充実を図らなければならないとおっしゃったわけですけれども、これまでの税制改革を振り返ってみますと、常に国税中心の税制改革、地方税の改革はいわばつけ足しですよ、私から申しますと。そうだとしますと、このような状態が続くならば、幾ら地方税による税源の確保と言ったって、私は言われるだけじゃないかなというような気がするんです。そのためには地方税を中心にした税制改革をやっぱりやらなきゃいけないんじゃないかと思うんです。なぜ今まで所得税を中心にした国税中心の税制改革で終始してきたのか。いつでも地方税の改革はつけ足しだったんです。なぜでしょうか。  私はその理由は幾つかあると思うんですけれども、その一つの理由として、先ほど私が申しました所得の分配機能における国と地方公共団体役割分担が明確でなかったからです。その点についてもう一度自治大臣のお考えを。
  141. 野中広務

    国務大臣(野中広務君) 委員が御指摘になりましたように、所得の分配機能におきまして国税、地方税の役割分担を踏まえますときに、地方税のあり方について、委員が御提言のような問題点なしとしないところは私もよく認識をするところでございます。  したがいまして、今回この法案の六条によりまして、「地方税財源の充実確保」というところで、安定的な地方税体系の確立を図るとするところが私どものこれからの大きな課題であると存じておるところでございまして、この充実確保が十分地方分権を果たしていく上により必要であると考えますだけに、安定的な地方税体系の構築を図っていかなくてはならないと思うのでございます。御指摘の所得分配機能の観点からも、地方税体系のあるべき姿として安定的な税体系の構築が望まれるところでございます。  先般の税制改正につきましても、先ほど来申し上げましたように、安定的な地方税源として地方消費税が創設をされ、加えましてこれにかかわる地方交付税率の変更も行われたところでございますけれども、提案をいたしております法律案の文言は、地方分権推進大綱の方針を踏まえまして、地方税財源の充実確保につきまして基本的事項を規定したものでございますことをぜひ御理解いただきたいと存ずるところでございます。  なお、「地方税財源の充実確保」という文言には、広い意味で安定的な地方税制の確立という趣旨も含まれておると考えておるわけでございまして、今後、委員が御指摘観点をも踏まえまして、安定的な地方税体系の確立に向けてさらなる努力を傾けてまいりたいと存じておるところでございます。
  142. 牛嶋正

    牛嶋正君 これまで、地方税の改革が本格的に行われましたのは、昭和二十五年のシャウプ税制改革のときなんですね。そのときにつくられた税目と今の地方税を構成している主要税目は全く同じなんです。ほとんど変わってないんです。  ということは、先ほどから私が申しましたように、今まで税制改革において地方税改革というのはいつも余分なものであったということです。だとすると、もう少しはっきりと言っていただかなければ今までと変わらないんじゃないか。そうすると、シャウプ税制のときにできた地方税がそのままずっと続いていくんじゃないかというふうな危惧を持ちますので、ちょっと申し上げたわけでございます。
  143. 佐野徹治

    政府委員(佐野徹治君) 地方税全般につきましてのお尋ねでございますけれども、地方税は都道府県市町村の二段階の税制になっておるものと、こういう前提のもとで先ほどお話がございました。  シャウプ税制につきましては、その考え方というのはやはり市町村税を非常に充実させる、こういう観点、それに都道府県税につきましても同じような観点から充実させるということで従来からとらえてまいっておりまして、先般の税制改革におきましても地方消費税が新たに創設された、こういう点につきましても御理解をいただきたいと思います。  それから昨年の十二月の税制調査会の答申におきましても、今まさに地方分権推進法案の御議論をいただいておりますけれども、地方分権推進という時代の大きな要請に応え、今後ともより安定的な地方税体系の構築を図っていくことが必要であると、こういうような答申もいただいておりますので、私どもこういった答申をも踏まえまして地方税財源の充実には努力をしてまいりたいと考えております。
  144. 牛嶋正

    牛嶋正君 税制の話をしますと、もうそれだけで私の持ち時間がなくなりますので、ちょっとそれは置いておいて先に進ませていただきます。  経済安定機能でございますけれども、最近の総合経済対策をずっと見てまいりますと、その中で公共事業が中心的な対策になるわけですけれども、公共事業のかなりの部分が地方公共団体の単独事業で行われてきているわけです。それからまた、これまで行われてまいりました消費需要喚起のための所得税減税、これも重要なフィスカルポリシーですけれども、その場合でもやっぱり住民税の減税が所得税の減税にあわせて行われるということですね。このように見ますと、経済安定機能におきましてもだんだん地方公共団体役割が増大してきている、僕はこれでいいと思うんですね。むしろ非常にフィスカルポリシーの運営が難しくなってきておりますので、今後は地方公共団体協力が不可欠だと思います。それをうまく組み合わせていかなければ、実効あるフィスカルポリシーを実現することはできないと思います。  しかし、ここ二、三年の地方財政の構造を見ていますと、やはり単独事業をどんどん引き受けておりますので地方債がどんどん累積しております。それに伴いまして公債費比率がアップしてきております。いわば財政構造がかなり悪くなってきているわけです。そんなことを考えますと、やっぱりもう一度経済安定機能に関しましても国と地方公共団体役割分担を明確にしておく必要があると思うんですけれども、自治大臣、どうでございましょうか。
  145. 野中広務

    国務大臣(野中広務君) 安定した経済の実現、すなわち安定経済機能を図るための近年の総合経済対策について、委員がお触れになりましたように、景気の動向を見ました場合に、これを弾力的、機動的に対処していく景気調整を行いまして、より安定化を図っていく機能として財政が果たす役割はまことに大きいわけでございまして、その一端を地方財政が担って今日まで協力を行ってきたところでございます。  しかしながら、安定した経済の実現は地域経済にもかかわることでございますので、またあわせて公共投資の約七割を地方公共団体が実施をいたしておりまして、その六割が地方単独事業となっておるわけでございまして、委員が御指摘のとおりでございます。  こういう点から考えてみますと、経済対策におきまして地方財政の果たす役割はより大きなものがあろうと存じておるところでございます。今後とも、生活に密着した社会資本の整備の重視が言われておるところでございますし、地域福祉の重点策を考えますときに、より地域に密着した社会資本の充実のためには地方財政役割はまことに重要であると認識をしておるところでございます。  御指摘ございました地方財政の健全化につきましても、地方分権推進する上で、先ほど申し述べましたように法の六条におきましても、「国と地方公共団体との役割分担に応じた地方税財源の充実確保を図る」こととされておるところでございまして、具体的には毎年度地方財政対策におきまして地方税あるいは地方交付税等の充実確保を図ることにょりまして、今御指摘ございましたような地方団体の財政の運営に支障が生ずることのないようにさらに努力を重ねてまいりたいと存じておるところでございます。
  146. 牛嶋正

    牛嶋正君 今、三つの財政機能を取り上げまして、そこでの国と地方公共団体役割分担について見てきたわけですけれども、今回の条文を読みますとどうも資源配分機能が中心になっておりまして、私が今言ったような後の二つの所得分配機能、それから経済安定機能については余り触れられていないんじゃないかというふうな気がするわけであります。  しかし、第二条の基本理念のところをもう一度見てみますと、「国と地方公共団体とが共通の目的である国民福祉の増進に向かって相互に協力する関係にあることを踏まえつつ、各般の行政を展開する上で」と、こう書かれております。そうだとすると、四条以下の基本方針と、それからここで二条でうたわれている基本理念の間にちょっと整合性を欠くんじゃないかというふうに思うんですけれども、これについて大臣はどういうふうにお考えでしょうか。
  147. 吉田弘正

    政府委員(吉田弘正君) 経済の諸機能に関連しての御質問でございまして、特に法文の四条、五条関係等についてのお尋ねでございますので、私の方からお答えをさせていただきたいと存じます。  今回、私どもが地方分権推進法案をとりまとめまして御審議いただいております。その背景と申しますか、それは御案内のとおり、現在、国民がゆとりと豊かさを実感できる個性豊かな地域社会を実現するというために、地方公共団体がその実情に沿った個性あふれる行政を展開ができるように自主性、自立性を高めようということで、地方分権推進が必要不可欠であるという認識のもとに法律案を出させていただいて御審議いただいているところでございます。  したがいまして、この法律案におきましては、国と地方公共団体役割分担につきましてまず規定をいたしまして、国は本来果たすべき役割を重点的に担い、地方公共団体地域における行政の自主的かつ総合的な実施の役割を広く担うことというふうにしているわけでございます。  そして、このような基本的な考え方に沿いまして、国から地方への権限移譲あるいは国の関与、必置規制等の整理合理化等の施策推進していくということも規定いたしまして、それによって地方分権推進を図っていくということにしているものでございます。  また、地方公共団体事務事業を自主的、自立的に執行できるように、こうした役割分担に応じて国家財政と地方財政の特色に配意しつつ地方税財源の充実確保を図っていくことが必要であると考えておりまして、それに応じて今ありました御指摘の財政の経済安定機能等も国と地方公共団体におきましてそれぞれ適切に果たされていくというふうに考えているところでございます。
  148. 牛嶋正

    牛嶋正君 今、非常に模範的な回答をいただいたわけですが、第四条を読ませていただきますと、「全国的な規模で若しくは全国的な視点に立って行わなければならない施策」、これは本当に官僚が考えるうまい文言だなと思って、これさえ載せておけば何でも国でやれますよね。私はそう思います。  問題は、この後、五条以下で地方分権推進に関する国の施策です。僕はこのところで、今おっしゃるようなことで経済安定機能も考えているんだというふうなことであれば、そのことをやっぱり五条のところで少し顔出しさせるべきではないかと思うんです。先ほどから申しましたように、例えば経済安定機能に関して申しますと、やっぱり単独事業を行う場合に八割は起債でしょう。九割かな。起債はどれだけですか。
  149. 遠藤安彦

    政府委員(遠藤安彦君) ことしの地方財政計画の上では、単独事業事業費が十九兆五千億ということになっておりますが、これに対する起債は恐らく八兆円程度と、正確には今手元に持っておりませんが、というように理解をいたしております。
  150. 牛嶋正

    牛嶋正君 だとしますと、やっぱり五条の中で先ほど質問が出ていましたけれども、地方債許可制度のことを一言やっぱり触れるべきじゃないかと思うんです。そんなに触れなくていいですよ、地方債許可制度を弾力化、簡素化するとともにぐらいでいいと思うんです。でも全然出てないということは、結局、四条でこういうふうにおっしゃっているけれども、経済安定機能に関しては全然今まで考えてこられなかったんじゃないかなというふうに思うんですけれども、いかがでございましょうか。
  151. 遠藤安彦

    政府委員(遠藤安彦君) 法案の文言の問題でございますけれども、私ども政府として法案を提出しました段階におきまして、この法律案の文言につきましては昨年閣議決定をいたしました地方分権推進大綱方針等を踏まえた上で法文を書いているわけでございまして、地方公共団体の財政基盤の整備について基本的な事項について規定をしておくということで御理解いただきたいと思うわけであります。  御指摘地方債の許可制度の弾力化とか簡素化等の問題につきましては、先ほど申し上げました大綱方針の中で、今後一層そういった方向を図るように努力をしていくということが示されているわけでありまして、私どもとしては具体的にはそういった方向で努力をしていきたいということでございますので、文言としては地方債の文言は特に入れてない、こういうことでございます。
  152. 牛嶋正

    牛嶋正君 私は、そういった文言についていろいろと問題を指摘しているわけじゃないんです。  私の認識は、今の我が国の経済が置かれている状況に関しましては、午前中からの御議論にもありましたようにやっぱり大変な状況ですね。これはもう財政もそうだと思いますけれども、経済の置かれている状況は大変です。こんなときに権限移譲の問題で議論をしていていいのかなという気がします。むしろ、第二条にもありましたように、今こそ国と地方公共団体が本当に協力して我が国の財政の立て直しを図っていかなければ、これはとんでもないことになるというふうに思います。  そういう観点で議論させていただいておりますので、もしそれによって地方公共団体の方がより一層これからの財政運営に真剣に取り組むことができるとするならば、ちょっとした文言を入れたっていいんじゃないかというふうに思いますけれども、自治大臣、いかがでございましょうか。
  153. 野中広務

    国務大臣(野中広務君) この問題はたびたび御指摘をいただきまして私も答弁をしてきておるところでございますが、委員が御指摘のような地方債のあり方等につきましては当然御意見のあるところでございます。  個別具体的な問題につきましては、今後、分権推進委員会においてそれぞれ国の移管事務等を含めて御審議いただくことが今回の法提案の基本として考えてまいりましたところでございまして、地方債の許可につきましては、今日までもその弾力化あるいは簡素化等について努力をしてきたところでございますけれども、今後さらに一層御意見等を踏まえながら、この弾力化、簡素化につきまして法律に明文化はしておりませんけれども、今日までの足取りを踏まえながら個別の事業について、地方債の許可を今やっておるわけではございませんので、枠配分をいたしまして、そして簡素化あるいは弾力化に努めておるところでございます。  今後一層、自治省といたしまして分権の趣旨を踏まえましてそういう努力を積み重ねてまいりたいと考え、委員の意のあるところは十分生かしてまいりたいと存じておるところでございます。
  154. 牛嶋正

    牛嶋正君 それでは次に、先ほど問題を残しました資源配分機能にかかわる国と地方公共団体との役割分担について少しお尋ねしてまいりたいと思いますが、今度は総務庁長官にお願いをしたいと思います。  先ほども申しましたように、限られた資源を活用して国民福祉の増進を最大限図っていく、これは大変な問題なんですが、結局は個々の財サービスをどれだけ生産するかということでその資源を配分していくわけですけれども、その場合に効率的に資源を配分していくためには二つの条件がある。この場合も満たされなければならないと思っております。  これは国及び地方公共団体が行政を通じて、先ほど申しました公共財を供給する場合にも同じでありますが、その一つの条件は私は需要側の条件と呼んでいるんですけれども、いたずらに物をつくっても売れなければ資源が有効に利用されたとは言えません。ですから、まず財サービスに対する需要者のニーズを正確にとらえなければなりません。そして、それにできるだけ合致するような供給水準を決めていく、あるいは供給量を決めていくということになろうかと思います。これは国及び地方公共団体の行う行政の場合でも同じでありまして、国民国民生活を続けていく上で行政に対してどういうニーズを持っているのかということを正確に把握しなければ、せっかく行政を行っても住民の方が向こうを向いていれば大変な資源のロスになるわけであります。  これは言うならば、国民のそういうニーズあるいは地域住民のニーズを正確に把握して行政サービスの適正な水準を決めるということだと思うんです。私はこの事務計画事務と呼んでいるんです。これは余り皆さんは使っておられませんけれども、私は計画事務と呼ばせていただいております。ちょっと覚えておいてください。  それからもう一つは、供給側の条件ですね。それは今我々が利用し得る最高の技術水準を使ってできるだけ低コストで供給するということです。普通、行政の効率化と言われているのはこのことを言われていると思います。これは、まさに需要側の条件で決められたサービス水準に基づいて実際にサービスの供給を行うわけでございますので、これを実施事務というふうに呼ぶわけです。  そうしますと、普通、行政はある行政サービスを供給する場合は二段階に分かれているわけですね。計画事務とそれから実施事務、こういうふうに分かれて供給されていくわけであります。ところが、先ほど申しました市場メカニズムは、いわば価格がうまく資源配分の調整的役割を果たして、価格が上がりますとそこには需要が集まっている、だからその生産をふやす、価格が下がる、こういうふうなことで価格がシグナルの役割を果たしていくわけですけれども、行政の場合は価格がございませんので、結局は予算を編成してサービス水準を決め、そしてまたそのサービス水準のもとでサービスの供給を果たしていかなければならない、こういうふうに思います。  その場合、計画事務とそれから実施事務、これをどういうふうに国と地方公共団体役割分担すれば、先ほどから言っておりますように二つの条件が満たされてそして効率的な資源の利用ということになるのかということ、これは真剣に考えなければならないと思いますね。行政改革なども結局はこの問題に全部帰港するわけでございます。  ところが、今まではどちらかといいますと、供給側の条件だけでどうも決められてきたような気がいたします。例えば、地方自治法の別表四に挙がっております戸籍に係る事務、これは機関委任事務ですけれども、これを考えてみますと、戸籍は言うたら窓口行政ですから、住民の一番身近なところに窓口を置くのが一番便利がいいわけですし、そしてコストも非常に安くつきます。ですから、結局は市町村の機関委任事務というふうに決められたんだと思うんですね。しかし、全国統一的に一つの様式に従って戸籍を記載した方がこれは便利がいいですし、また全国統一にした方がいいと思いますね。ですから、戸籍法というのを設けて先ほど申しました計画事務を国が受け持つ、こういう形になっているわけです、ですから、戸籍事務というのは機関委任事務のいつも代表の事務として取り上げられますけれども、計画事務を国が、そして実施事務市町村がと、こうなっている。これが機関委任事務であります。  結局、今私が申しましたように、これまでの事務配分というのは大体供給側の条件で考えられていた。余り需要側の条件が考慮されなかったんですが、それは理由があったわけですね。その一つは、これまでの行政サービスというのは大体私たちの生活に密着しているサービスが多かったわけですね。ですから、だれもが日常生活を行っていく場合に必要欠くべからざるサービスであった。それだけにそのサービスに対する人々の、地域住民の選好というのはそんなにばらつきがなかった、大体同じ。例えば、ごみの場合ですと、一日の日常生活で排出するごみというのは大体九百グラムから一キログラムですね。これを収集し処理してくれればいいわけです。そうしますと、どれだけのごみ行政に対する需要があるかというと、人口掛ける一キロなら、一キロ掛ければその需要が出てくるわけですね。ですから、地域住民のそういった選好を余り議論しなくてもよかったという点が一つあると思います。  それからもう一つは、そういう非常に日常生活にとって重要なサービスではありますけれども、一定水準のサービスを確保することが非常に難しい財政力の乏しい団体がかなりあったということですね。  ですから、そういうところに全部任せておりますと地域住民が不自由をするというふうなことになってしまいますから、国が大体一定のサービス水準を決めて、そしてそれが実現するように国が財政的にサポートする、こういうことであったと思うんです。ですから、多くの場合、計画事務に大体国がかかわりを持ってきたわけですね。実施事務市町村が受け持っている行政サービスについて市町村あるいは都道府県地方公共団体計画事務も行っているもの、これはあるわけです、そんなに数は多くありませんけれども。これは固有事務ですね。  それからもう一つは、計画事務を行う場合に国と地方が同時にそれに参加している、これは私はタイプ二と言っているんですが。タイプ一というのは、先ほど申しました計画事務も実施事務地方公共団体が受け持っている場合、それから今申しましたタイプ二というのは、計画事務は国と地方がそこに参加する、しかし実施事務は全部地方公共団体が受け持つ、それからタイプ三というのは、計画事務は完全に国が決めてそして実施事務は全部地方公共団体に任せる、この三つのタイプに分けることができる、こういうふうに思うわけです。  地方自治法の第二条で、地方公共団体が行う事務を四分類しておりますね。固有事務、それから団体委任事務、機関委任事務、そして行政事務と分けておりますが、今申しましたタイプ一が固有事務、これはもう問題ないわけです、もう既に計画事務地方公共団体が受け持っているわけですから。だから問題はタイプ二に含まれる団体委任事務と行政事務、そしてタイプ三の機関委任事務ということになろうかと思いますけれども、こういう分類に対しまして総務庁長官はどういうふうに、これをもとにしてこれからの議論が始まりますので、ちょっとコメントをいただきたいと思います。
  155. 山口鶴男

    国務大臣山口鶴男君) 自治大臣がお答えすることがふさわしいことかとも思いますが、いずれにいたしましても委員が御指摘ございましたように行政ニーズが多様化して地方公共団体も大変力がついてきておる、そういう段階におきまして行政のニーズを国と地方公共団体のどちらがより的確に把握できるかという観点、これは極めて重要であると私も思います。  そういう観点から、国と地方公共団体のどちらが行政サービスの水準の決定を行うべきなのか、これを十分見直していくべきだという御指摘はまさにそのとおりであろうと存じます。したがいまして、今回の法案におきましては、地域住民に身近な行政を住民に身近な地方公共団体において処理することは地方分権推進する上でまさに基本であるという観点から、第四条においてその趣旨を明確にいたしているところでございます。  なお、昨年の十二月末に決定いたしました地方分権大綱におきましては、この四条で規定をいたしております国が行うべき事務、三つに分けて記載をいたしているわけでございますが、この際、全国的な規模で若しくは全国的な視点に立って行わなければならない施策事業、これを拡大解釈すれば何が何でも国の仕事になってしまうではないかという御指摘でございますけれども、この点は分権大綱におきまして、「全国的な統一性、全国的な規模・視点を重視して行う必要のある事務についても、その執行に当たり地方公共団体の裁量に委ねることが適当なものについては、国は、極力、基準の提示や制度の大枠の制定にとどめる」としているわけでございまして、まさに法律は四条でこう書いてございますけれども、この法律は昨年暮れのこの地方分権大綱をきちっと踏まえておるものだと私どもは認識いたしているわけでございまして、この点はそういう趣旨であるということを御理解いただきたいと思います。  先ほど自治大臣に対してお話のございました起債の問題、確かに第六条は極めて簡単な条文でございます。しかし分権大綱におきましては、「地方公共団体の財政基盤の整備」、それからこの中身では、「地方税財源の充実等」、「補助金等の整理合理化等」というふうにいたしまして、御指摘地方債についても、「地方債許可制度については、その制度の弾力化・簡素化を図るとともに、地方債市場の整備・育成や外債等資金調達方法の多様化など地方債発行の条件整備を図っていくものとする。」というようなことでかなり具体的に記載をいたしているわけであります。したがって、第六条もこの地方分権大綱をきちっと踏まえた上で我々としてはこれを推進するんだということで御理解いただきたいと思います。  なお、計画事務に関して三つのタイプがあるという御指摘、まさに私どもも同様に思っております。一のタイプはまさに地方公共団体の固有事務、そして二のタイプは団体委任事務、そして第三のタイプは御指摘のとおり機関委任事務であろうと思います。私たちはこの機関委任事務につきましては、廃止できるものは廃止をする、もう必要のない事務については廃止をしてもいいんじゃないか。  それから、御指摘の戸籍事務のような、どうしてもこれは国の事務として必要なものがございます。旅券の発行もそうでございましょう。こういった国がどうしても行わなければならない事務、この執行をどうするかということは、機関委任事務という方法も一つあるでありましょうが、いわば国の直接処理として国の出先機関をつくってやるという方法もあります。しかし、それではこの行政改革の推進という趣旨に反するわけでございますので、そのようなことを我々は考えておりません。  したがって、機関委任事務制度のあり方についても検討をいたしまして、機関委任事務というやり方ではなくて、もし他の方法があるとするならば、またそういった方法で合意ができるとするならば、機関委任事務制度自体の廃止も我々は考えておるということはこの委員会において私どもが答弁をいたしているところでございます。また、国として存置すべき事務につきましても、第二のタイプ、すなわち団体委任事務、団体事務という形で残す場合もあり得るかと思います。  いずれにいたしましても、高い学識経験の上から御指摘をいただきました問題等も私どもは十分踏まえました上で、地方分権推進委員会におきまして十分な御議論をいただき、その勧告を受けまして私どもとしては地方分権推進計画を策定して御指摘のとおりに地方分権を進めてまいりたい、かように考えている次第であります。
  156. 牛嶋正

    牛嶋正君 今、大臣がお話しいただきましたように、これまで需要側の条件が余り考えられなかった、そういう状況というのは変わりましたね。  我々の日常生活を考えてみましても、随分所得も上がりましたし、自由時間もふえたし、出生率も低下したし、寿命も延びましたし、地価まで下がりますから、我々の生活パターンが変化することは明らかでございます。また生活意識も大きく変わってまいりました。そんなことで、地方公共団体一つ一つを取り上げますと、財政力の強化は必要ですけれども、全般的に見て十年前あるいは二十年前に比べて財政力もついてきたことも確かであります。そうしますと、もう一度需要側の条件、言いかえますと、計画事務を国と地方公共団体でどういうふうに役割分担するかということをもう一度見直す必要があると思います。  それで、私がなぜ計画事務と実施事務にこだわるかということですが、どうしても計画事務を受け持つ機関が実施事務を受け持つ機関よりも上位に立つわけですね。言うならば、管理する立場と管理される立場にどうしてもなるわけであります。これはもうやむを得ない。しかも、そういったサービス水準の決定に当たって補助金あるいは負担金等がついておればますますそうなりますね。だとすると、見直しに当たって私が求めたいのは、全部一気にタイプ一の固有事務にせいとは言っていないんです。そんなものは絶対なり得ないと思いますよ。移せるものはできればタイプ二のものをタイプ一へ、そしてタイプ三はタイプ二の方へ移していくということです。  いずれにしましても、今の都道府県市町村が行っている行政事務全部を見直さなければならない。法律の数からいいますともう千を超えるんじゃないかと思いますけれども、私が心配するのはその見直しが全部五年間でできるのかということ、このあたりの感触をちょっとお聞かせ願いたいと思います。
  157. 山口鶴男

    国務大臣山口鶴男君) 今御指摘がございましたように、第二のタイプを第一のタイプに移していく、第三のタイプを第二のタイプに移していくということは、機関委任事務制度の整理合理化、そのあり方として十分配慮すべきお考え方であるというふうに思います。それらの問題も踏まえました上で、我々としてはこの地方分権推進委員会の御意見、勧告を十分尊重いたしました上で計画を策定したいと考えております。  そしてまた、第四条におきまして、「住民に身近な行政は住民に身近な地方公共団体において処理するとの観点から地域における行政の自主的かつ総合的な実施の役割を広く担うべきことを旨として、行われるものとする。」とありますが、この点は委員会におきましても、自主的かつ総合的な自治というのは、企画立案それから調整、実施、これを含めて行うというのが自主的かつ総合的な実施であるというふうに私はお答えをいたしている次第であります。委員指摘計画事務ということを強調しておられますのは、まさにその意味を含んでおるのではないかと思います。  ですから、今までは企画立案は中央省庁がやる、その上に立って補助金地方公共団体に渡して、そして調整実施をやらせたというのが多くのタイプだったと思いますけれども、これからは住民に身近な行政につきましては、企画立案の段階から地方公共団体が自主的、総合的に実施できるようにしていくということが地方分権推進であるというふうに私どもとしては認識をいたしている次第でございます。そういう立場に立ちまして、今、委員指摘の点は十分配慮してまいりたいと思います。  そうして、五年間のうちの前半で政府が策定する計画は策定をいたしたいと思います。その前に分権推進委員会が指針を勧告いただきたい。そうして前半で計画を策定いたしましたならば、これを実施に移すためには数々の法律を改正しなければなりません。法律改正案を国会に御提案申し上げて、五年間のうちにこれを仕上げていくということで、積極的に、精力的に私どもは取り組んでまいりたいということでございます。
  158. 牛嶋正

    牛嶋正君 精力的にとおっしゃいました。私は今まで団体委任事務、それから機関委任事務、全部ではありませんけれども、かなりのものを検討してまいりました。その結果言えることは、多分、私がこれはこれまでの経験で申し上げるんですが、かなりの数の事務がやっぱりタイプ二、タイプ三に残ると思います。これは私はこれまでの私自身の分析からちょっと申し上げるわけです。  だとすると、私はそのままタイプ二、タイプ三でもいいと思うんです。その方が需要側の条件、それから供給側の条件を満たして、そして効率的な財源配分になるのならばそれでいいと思うんです。だけれども、先ほど申しましたように計画事務、それから実施事務を受け持つ機関が分かれているときにはどうしても管理するものと管理される方になるわけですから、今申しましたタイプ三、タイプ二に残るものはそのままにしておいて、その中でそういった関係を少しずつ和らげていく方法がないものか。  団体委任事務に関しましては、先ほどちょっと長官がおっしゃいましたけれども、私は基準のサービス水準の決定一定の水準で決めるのじゃなくてちょっと幅を持たせて一定範囲で決める。その後どこで決めるか、それはそれぞれの地域の実情に応じて決めていく。こういうもう少し計画事務地方自治体が参加できる余地をやっぱりふやしていかなければ、結局は地方分権は進まないんじゃないかというふうに思うわけです。そういうことでだんだんと地方自治体に力をつけて、そして徐々に幅を広げていって最後は撤廃する、僕はこれが実際の進め方かなと思うんですね。  それからタイプ三については、先ほどおっしゃいましたように、例えば委託方式で計画事務は国が今までどおりやる。そのかわりに、国の一機関としてではなくて委託方式で実際の事務地方公共団体に委託する。その場合の関係は管理される方、管理する方ではないんじゃないかというふうに私は思います。  そういうことを考えますと、いずれにしましてもやっぱり思い切って制度を見直すということでございますので、そういうことを五条の中で少し記載していただければなというふうに思います。そうしますと、私はこの法案を高く評価させていただきたいと思うのでございますけれども、この点についてコメントをいただいて、私の質問を終わらせていただきます。
  159. 山口鶴男

    国務大臣山口鶴男君) お答えいたします。  先ほどお答えいたしましたように、法律は昨年末の地方分権大綱を踏まえているわけでございまして、地方分権大綱では機関委任事務につきましては、「機関委任事務の整理合理化等。として「機関委任事務の整理合理化を積極的に進めるとともに、機関委任事務制度について検討する。」ということになっているわけでございまして、委員指摘のとおり機関委任事務につきましてはこの地方分権大綱を踏まえ、そしてまた繰り返しお答え申し上げておりますように、整理合理化というのは、私たちは機関委任事務を極力残そうと思っているわけではない。具体的にはどの事務が必要であるか、これはどのような形で処理すべきかということを地方分権推進委員会で個々具体的に御議論いただきましてそれに対する対処の仕方について勧告をいただく、そうして我々はその勧告を尊重いたしまして計画を立てるということでございます。  これも繰り返してのお答えになるかと思いますが、機関委任事務制度自体につきましても、機関委任事務制度以外によい方法があるならば、この方法でいくべきだということであるならば、機関委任事務制度そのものを廃止することも含んで我々は対処するというふうに考えておるんだと。また、法律で言うところの機関委任事務制度につきましては、「所要の措置を講ずる」と書いてあるわけでございますが、「所要の措置」とはこの制度の廃止自体も含むものであるということは、先日、山口委員に対しましてお答えいたしましたとおりでございます。
  160. 星川保松

    ○星川保松君 私は地方分権ということについては、いわゆる権限を移譲する国の側とそれを受ける地方の側と両方立場を十分考えながら進めていかなければならない、こういうふうに思っております。私はずっと地方の仕事をやってまいりまして、市会議員をやりましたり、県会議員をやりましたり、市長をやりましたりして、いわゆる権限を受ける側の立場でずっと仕事をやってきたものでありますから、受ける立場から見た分権のあり方というものを常に主張しておるわけでございます。  そういうことからしますと、今回の地方分権という言葉自体がいろんな誤解を招いているんじゃないかということを私は前に総務庁長官にお話をしたことがございました。それは、明治維新の際に大政奉還ということで幕府の権限移譲を受けたということは、それはまあいいとして、それでも全国に三百諸侯、三百諸国の藩があったわけでありまして、その三百諸国の権限を版籍奉還ということで返還させたわけですね。それから百三十年ほど経過しているわけでありますので、むしろ私は今回は地方分権というよりはその百三十年後のいわゆる国から地方への権限の返還である、こういうふうに考えた方がいいのではないかと思うわけでございます。  それで、国の方は地方分権、分権と一生懸命言っておりますけれども、地方がさっぱり関心を示さないということを皆さんからよく言われるのでありますが、それにはいろんな理由があると私は思います。真二十年もの間すっかりなれ切った制度を変えるということはやはり難しいという面もありましょうし、それから地方に権限が移譲されますと地方にいろんな責任が出てまいります。  例えば、知事や市町村長さんあたりが住民と話し合いなどやるわけであります。そうすると住民からどっと要望が出てまいります。それについて、細かなことならそれに応じられるわけでありますけれども、なかなか応じられない面になりますと、それは法律で決まっているんだ、だから我々ではどうしようもないということで済むわけなんです。ところが、権限移譲ということになりまして法律の規定しているものが今度は条例事項になる。そうしますと、条例でこうなっているからと言えば、住民は、それでは条例を変えてほしい、こう言われますから、そこで責任を逃れられないわけです。だから、権限移譲によって大変な責任が出てくる、仕事もふえてくるわけで、頭も使わなければなりませんし、難儀もしなくちゃならないわけです。ですから、それを今さらという気持ちもあろうかと思うんですね。  ただ、そういうことはいろいろありますけれども、地方が一番積極的に応じてくれない理由は、それは地方が求めている、欲しがっている権限を国が本当に分けてくれるのかということではないかと私は思うんですね。  私が市長をしているときに一つ体験したことがあるんですけれども、県の方で権限移譲をやりましょうということになったんです。私たちは非常に喜びまして、どういう権限をくれるのかと思って行きましたところが、我々の望んでいる項目は一向にございませんで、別に移譲を受けなくてもよろしいような項目だけがずらっと並んでおったわけです。今その項目はもう忘れましたが、一つだけ私は記憶しております。  それは害獣駆除の許可というものでございました。害獣駆除の最たるものは私のところではクマでございました。年に何回かクマが出るわけです。そうすると、クマを射とめるために猟友会の皆さんがさっと出かけていきます。ところが、害獣駆除の許可をとってきませんとドンとやれないわけですね。そんなもたもたしているうちにクマが山の中へ逃げ込んでどこへ行くかわからないわけですよ。それで、みんな追っかけながら、見失わないようにしながら、一人が走って県庁へ行って害獣駆除の許可をとってくるわけですね。それで、とってきたよというわけでドンと。先にやるのかどうかわかりませんけれども、建前はそういうふうになっているわけです。  その許可をもらいました。それで、年に二、三回ですけれども、何回か出したんですが、さっぱりとったかとらないか連絡がないものですから、猟友会の皆さんに、私は許可したけれどもあなた方はさっぱり連絡ないなと、こう言ったんです。そうしたら、いやそれは悪かったなということでクマの肉を証拠として持ってきてくれたわけです。それでクマ汁をごちそうになったんです。それだけ一つ覚えております。  そんなことで、本当に自治体が困っている、求めている権限の移譲をしてくれないで、言っては悪いけれどもどうでもいいような権限しかよこさないのではないかというのがやっぱり自治体の方に私はあるんじゃないかと思うんです。それで、いやそんなものじゃないよ、こういう権限を今度は移譲しますからそうしたらあなた方の方ではこういうことをできるんじゃないですかというような、みんなが飛びつくような、全部飛びつけるようなものにはならないと思いますけれども、十のうちの一つぐらいはそういうものも入れてそして移譲しますよということにすれば、皆さんは大変な関心を持ってくると私は思うんです。  それから、もう一つは移譲の仕方ですね。例えば、皆さんは何が欲しいんですか、まず欲しいものを言ってください、とってみてくださいということで、こっちでずらっと展示をして自治体の皆さんに選択をさせてみるとかいうことをしたら、さあ何かもらってきましょうということで、みんなわっと駆けつけるということになるんじゃないかと思うんです。  ですから、権限の移譲の仕方、それから何を移譲するかというところを考えていきませんと、自治体の皆さんは関心を示してこないんじゃないかと思います。この法律の中にも、自主性や自立性を高めるということでは、いわゆるいろんな規制を緩めればこれはいいわけです、ところが、その後の方の個性豊かで活力に満ちた地域社会を実現するための権限移譲となったら、これは難しいことなんですね。このためにはどういう権限移譲をやろうとお考えなのか、まずそこをお尋ねしたいと思います。
  161. 山口鶴男

    国務大臣山口鶴男君) これは第二条で地方分権推進に関する基本理念をうたい、それから第四条で国と地方公共団体との役割分担をうたい、そして第五条におきまして国の関与、必置規制、それから機関委任事務及び国の補助金負担金の整理合理化、これらの所要の措置を講ずる、こうなっているわけでございます。今まで随分議論のございました地方自治法の後ろについております別表第三、第四の機関委任事務、それから第一、第二の団体委任事務、これらについて当然整理合理化をしよう、また国の関与、必置規制についても、これを整理合理化していこうというわけでございますから、地方自治法の別表第一から第二、第三、第四を見れば、大体どういう事務対象になるかというようなことはおのずから明らかではないだろうかと思う次第でございます。  ただ、そのうち一体どれをどうするかということを今私がお答えするのは控えさせていただきたいと思うわけでございます。これは地方分権推進委員会におきまして個々の具体的な事務当たりまして議論をいたしまして、そうしてこれに対する考え方、これを内閣総理大臣に勧告いただく、それを受けて政府が具体的な計画を立てるということでございます。その際、委員会がこれはお決めになることであるから私が言うのはいかがかと思うんですが、地方分権推進委員会地方公共団体の意見を伺うというような機会というのをつくることは当然ではないだろうか。国民各階層の御意見、各団体の御意見というものを十分聞いた上で、私は考え方を決めて勧告なされるものというふうに考えておる次第でございます。
  162. 星川保松

    ○星川保松君 時間がありませんので途中の質問を省きまして、自治大臣にこの前御質問をしました天下り人事のことでありますが、私の質問自治大臣の御答弁とはそう違わないんですけれども、ちょっと食い違っているんじゃないかと、こう思っております。  といいますのは、自治大臣がおっしゃるように地方と国が大いに人事交流をやる、これは私は大賛成でございます。もっともっとやはり大臣がおっしゃるような人事交流をやらなければいけないと思っているんです。私が言いますこの天下りというのは、いわゆる比較的大きな権限を持っている地方自治体のそういう役職に中央の官庁の方からぽんと行くというのがいわゆる天下りで、いろいろな弊害が伴うんじゃないかということなんです。  例えば副知事の場合。知事なんというのは、実を言いますともう外回りがほとんどなんです。そして帰っできますと決裁がこんなにたくさん積んであるわけです。そうすると、それを片っ端から見ながらぽんぽん判こをついていくわけですね。よく見ないで判こを押すなんて言いませんけれども、非常なスピードでやっていかなくちゃならないですよ。私も市長をやったときにその忙しさ、それ以上なわけです、県知事の場合なんか。そうしますと、実際の実務をやっている最高の責任者といいますか、それは副知事なわけです。ですから、そういう副知事のところに中央の官庁からぽんと行く。それは一たん行ってそこまで上がってきたのなら私はそれでもいいと思うんです。それからそこへ行ってそこに骨を埋めるという人ならそれでもいいと思うんです。そうでなくて、一定期間行ってまた帰ってくるというのはやはりこれはいろんな問題があると思うんです。  それで、副知事と今度はまた権限のある総務部長あたりですね。それがまたぽんと行ってそこの自治体の仕事をするというのも、これはやはり考えなくちゃいけないんじゃないか。ですから、天下りというのはそういうところはやめて、自治体の自主性、自立性というものを尊重していくべきではないかということを言っているわけですね。  私は県会議員のときに、例えば道路のことで部長と打ち合わせをしたいなと思って、山形では土本部長というんですけれども、土本部長いるかと行くわけです。そうしますと、その係の皆さんが、部長は本省へ行きましたと言うんですね、きょうは本省へ言っておりますと、こう言うんです。それで私はびっくりしましたね。何回もそういうことがありました、そっちは分省がなんかなんですね、こっちが本省なわけなんです。そうなりますと、これは問題だなと思いました。  実は、私の住んでいるところは徳川の直轄領なんです。それで、市長になって地場産業を何か興さなくちゃいけないと思って、以前から何かないかなと思って探したんですが、何もないんです。隣は藩の領です。そこには地域おこしの工夫をしていろんなことをやっているんですね。それが伝統産業になっているんです。私のところは何にもない。よく考えてみますと、やっぱり代官というのは、それは田畑がこのぐらいだからこのぐらいの年貢という、年貢さえ納めればいいわけですよ。そして彼らの考えていることは、地域住民よりも帰ったときの自分の居場所がやっぱり頭にあるわけですね。  ですから、今度は私が市長のときに、国と市町村の意向が違うのがよくあるんです、そういうときに相談に行くんですね。例えば身体障害者の子供さんを預かっている施設があったんです。そうしましたら、持ち出しが余り多いというのでよく調べましたら、重度、中度、軽度とあるんですね。ところが重度の子供が非常に多かったんです。それによって措置費が来ますからね。ところがそれを言いますと、それはお医者さんが決めるんですね。それを聞きましたら、厚生省では重度は二割までだと、こういうことを言っているんですね。私はお医者さんが検査をして重度が五割もいるんだから、その実態並みに措置費が欲しいと県庁に言ったわけです。そうしたら、厚生省は二割までだということで、国と私たちの考えがしょっちゅう違ってくるんですね。そのときに中央からいらっしゃった方と地元からの上がった方と対応が違うんですね。これは昔の代官さんみたいな気持ちがやっぱりあるのかな、やむを得ないのかとさえも私は思ったんです。  そんないろんなことを考えますと、自治大臣は天下りの天下る方から、上から見ているから見えないのかなとも私は思うんですが、私は下られる方からずっと見てきておりますから、いろんなやっぱりこれは問題があるなと思っているんです。ですから、ひとつ両面から考えてくださって、そういう面は直していくように御努力をお願いしたい。人事交流は大いに結構だと、こういうことですから、ひとつその点についてお考えを。
  163. 野中広務

    国務大臣(野中広務君) 星川委員から具体的な例を提示されながら国と地方との人事交流のあり方について御指摘をいただいたわけでございますけれども、先般も私申し上げましたように、自治省地方公共団体との人事交流というのは、あくまで地方公共団体の要請に基づきましてやっておるわけでございまして、自治省からどのポストをということを指定して、そしてそれに派遣をするようなことはないわけでございます。  私の経験から申しますと、自治省から人事交流で来ていただくのは、決して初めから課長とか部長とかいう職種を指定して来るわけでもございませんし、この間も申し上げましたように、入省いたしまして三、四カ月本省で研修をいたしました後、各府県に出ていきます。そして二年租度、各府県で本当の初期の見習いをやるわけでございます。それから帰ってまいりまして、また本省でいろいろと各部課の仕事を勉強いたしまして、ここにもずっと幹部がおりますけれども、私の想像では二十八、九歳ぐらいで都道府県地方課長とかあるいは企画課長とか、こういうところに行く人があるわけでございます。そういうところで、直接本会議で地方課長等が答弁をすることはありません、部長職がやりますけれども、しかし委員会等では二十八、九歳の人が答弁をするわけでございます。  それは、この間も私、ことし新規に自治省に入省いたしました職員の諸君を前にいたしまして、君たちがこれから地方に出かけていったときに、その地方でその地方の本当の悩みや苦しみや痛みというのを体で体験してきなさい、そしてその地方で生涯つき合える友人を最低二人つくってきなさい、そしてそれ以上に、あなた方がこれからそれぞれ地方へ出かけていって委員会や本会議で議会に選出をされた方々の御意見を聞くときに、自分たちが学んできたことから考えたら随分程度の低いことを言っているなという感じを受けるときも時にはあるだろう、しかしそれはその人を選んだ、選挙でその人の名前を書いた人の世論があるんだということを謙虚に受けとめて、そしてそういう世論の上に今日の地域社会があるんだということを考えて帰ってきなさい、こんな話を私はしておったわけでございます。  地方へ二十八、九歳で行きましても、例えば本会議で県の選挙管理委員会事務局長としては答弁しなきゃならないわけでございます。そういう経験というのは、一つの役所の出先へ出かけていって、そして役所の地方の税務署とかそういうところで勉強して同じ組織内で帰ってくる人とは非常に違う、こういう点を私は強調したかったために申し上げたわけでございます。  そういう点では、これからも国、地方を通じて切磋琢磨して、そしてこういう円滑な人事交流がやられて、しかも我々が押しつけるんじゃなしに、地方の自主的なお求めに応じて人事交流をやっていくというのは、国全体の官僚のあり方としても私は非常にいいことではなかろうかと思いますとともに、村山内閣におきまして、他省庁を二度ぐらい経験をしなければもう課長にはしないという、そういう取り決めが今回なされましたことも私はその意味において大きな意義を持っておるのではなかろうかと存じておるわけでございまして、ぜひこれからもこういうお互いに切磋琢磨する人事交流のあり方は進めてまいりたいと考えておるわけでございます。  ただ、委員が御指摘になりましたように、その適切なあり方につきましては十分留意してまいりたいと存じております。
  164. 有働正治

    有働正治君 時間が極めて限られていますので、私は今、全国各地で問われています大規模開発、その見直しの問題、それとの関係で法案で言うところの地方自治体の自主性の問題、あるいは豪華庁舎建設と自治体のあり方等の問題について簡潔にお尋ねします。  まず大規模開発と財政破綻とのかかわりでありますが、御承知のように東京では臨海副都心事業が進められていますけれども、極めて巨大開発であります。投じられる事業費も民間分含めて総額十兆円というけた外れで、バブル崩壊で大企業が相次いで進出計画を中止し、このまま計画が進められますと五兆円、都民一人当たり百万円を超える赤字が出るということが予測され、これだけでもう都の財政破綻、住民への犠牲、負担は大きいわけであります。  大阪湾ベイエリア開発も同様でありまして、関西国際空港の第三セクターの経営危機の問題、あるいは今後三兆円かかる事業費が地元自治体にのしかかるという問題、あるいはりんくうタウンも進出予定企業が撤退している問題、借金と今後二十年間の利子総額が五千数百億円に上り、府財政に重くのしかかる問題等々があるわけです。そのほか、一々例示する時間はございませんけれども、幕張メッセの問題、その他いろいろあります。  そこで、大臣にお尋ねするわけでありますが、一つはこうした全国の自治体で進められている大規模開発の問題、程度の差はもちろんございますが、多くの自治体でかなり大きな問題を抱え、とりわけ財政的なしわ寄せか大きくなっている、この点についてどう認識されているか。  第二に、さきの一斉地方選挙でこの問題が住民から厳しくやはり問われたわけであります。東京で言えば臨海副都心開発の見直し、その起爆剤としての世界都市博覧会の中止を訴えた候補者が当選されたわけであります。この結果は重く受けとめる必要があると思いますが、この点についてどう考えられるのか。  それから世界都市博の中止、これは当然自治体固有の問題であって、政府がいろいろ干渉すべきではない問題だと思うわけであります。と申しますのは、かつて自民党の首脳でありました金丸氏がイニシアチブを発揮してこれは進められた経緯があるから窮されている面もあるわけで、干渉、介入は当然やらないと思いますが、この点について大臣の簡潔な御答弁を求めます。
  165. 野中広務

    国務大臣(野中広務君) 御質問が多岐にわたりますので、簡潔にと言われましてもなかなか的確、簡潔に申し上げるわけにはいかないと思うわけでございますが、各地方公共団体地域の振興やら住民福祉の向上等を図りますために、住民の代表であります議会の御審議を得て各種のプロジェクトに取り組んでおるのは御承知のとおりでございます。したがいまして、その実施に当たりましては、限られた財源を重点的かつ効率的に配分するという観点に立ちまして各種事業の緊急度や効果を十分検討事業の選択に努めておるものと考えておりますし、自治省といたしましてもその旨を財政運営通達等を通じまして指導してきておるところでございます。  今、御指摘になりました東京都の知事選を一応の視野に置かれました御質問でございますけれども、今回の東京都の知事選挙の結果は厳粛に私ども政党人として受けとめるべきだと存じております。ただ、御指摘になりました臨海副都心の開発とか世界都市博の是非というものを本当にどの程度理解してこの得票結果に及んだのかというのはいろいろ私は議論のあるところだと思うわけでございます。  確かに、選挙をやりました場合に、選挙民にわかりやすい、直接訴えられる公約をすることは選挙を利する上では非常にいいかもわからないわけでございますけれども、首長というのは政治のトップでありますとともに行政のトップでもあるわけでございます。それだけに今日まで議会の審議を経て手順を踏んできた問題について、それを突然停止するあるいは中止するということが果たして行政の継続性として、あるいは議会の審議権のあり方としてどう問われていくのかというのは、今後の私は東京都議会の審議を含めて見守らなければならないと考えておるところでございます。  また、委員が今御指摘になりました世界都市博などは今後、都の議会をも含めた対応で決められるべきでございまして、私どもが個別具体的に干渉するべき問題ではないわけでございますけれども、さはさりとて、これは平成五年の十一月に必要な協力を行うという旨の閣議了解を得た問題でもございますし、全国の多くの都市やあるいは国連の参加の協力も得ておるところでございまして、今後東京都議会と知事との対応のあり方をも十分注目してまいらなくてはならないと考えておるところでございます。  一口に大型の開発のあり方と申しましても、事業の種類やその規模や広がり、あるいは対応の仕方にはさまざまなものがございまして、基本的にはそれぞれ当該する地方公共団体におかれまして、地域状況、今後の地域開発の発展の方向あるいはその公共団体財政状況等々を総合的に勘案されまして、それぞれの地方公共団体がまさしく自主的に、自立的に議会の御審議を綴られまして、広く関係者の意見を聞きながら適切に行っていかれるべき筋合いのものであろうと考えておるところでございます。
  166. 有働正治

    有働正治君 極めて財政的にも負担も大きくなっているわけであります。政府が干渉しないと、この点は明言されたわけであります。  次に、大型開発の問題を考えた場合に、自治体の自主的な対応の問題が当然あるわけであります。同時に、一連の開発の問題を考えた場合に、国の問題の見直しも求められている面があると私は考えるわけであります。首都改造計画や第四次総合計画に基づく臨海開発の問題、あるいは多極分散法による業務核都市の問題、テクノポリス開発法に基づく推進の問題や地方拠点都市開発の問題、あるいは大阪ベイエリア法に基づく問題や輸入促進地域法に基づく一連の開発等々があるわけであります。  その中で、確かに地方自治体の自主性の尊重ということはそれぞれ強調されるわけでありますが、実際の地元の声を聞きますと、ある県の幹部は、確かに地方みずからが計画をつくることになっているけれども、国道の整備等々実際に中央省庁の了解がなければできないわけだし、指定前の段階で国との事前協議が義務づけられて、指定後に地元が策定する計画も事細かく関係省庁説明し了解を得なければならないということでもっと自主性の尊重という点での改善が求められている、こういう問題があるわけであります。  同時に、大型の開発で既に破綻がはっきりしていながら見直しが今なお行われないで惰性が続いている、そのために地元自治体の財政負担も巨大になっている例も多々あるわけであります。例えば、これは北海道の苫小牧東部開発の場合ですが、残された借金というのは二兆六千億円、これが道民のツケになるというような状況、あるいは青森のむつ小川原開発計画等でも、用地は売れないで借金が二千数百億円になって金利だけでも百億で、にもかかわらず今後これが県としても千数百億を投入してまだ続いている、こういう問題があるわけであります。  そこで大臣に聞くわけでありますが、やはり惰性による形で続いているという問題がある。こういう問題については今、開発問題についても経済状況財政状況等々を含めまして状況計画当時から見れば根本的に変わっている問題もあるわけであります。そして、それが惰性のまま続けられて地元財政負担、住民負担が大きいという問題もあるわけで、地方だけでなく国としてよって立つ法律等々に基づいて推進されている場合があるわけですから、こういう問題を国としても見直すべきは見直すし凍結すべきは凍結するなどを含めまして積極的な対応が求められている、この点についてどう考えられるのか。そして、巨大大規模開発中心でなくて地方自治体の本来の仕事である住民本位の開発や防災や生活基盤重視の公共投資、こういう自治体本来の仕事をもっともっと拡充する、こういう方向も求められているのではないかと思うわけでありますが、この点についての御見解をお尋ねします。
  167. 野中広務

    国務大臣(野中広務君) 地域の開発を図りますために、各種のプロジェクトを一体何を実施するか、あるいは地域の雇用の創出確保や住民生活の向上、あるいは環境の改善等を図る上でどの地域にどんな条件のものを持っていくか。例えば、地形、地勢、資源、人口等々の中で最も適していると考えるものをそれぞれの当該地方公共団体がみずから考えみずから発想いたしまして、そして実施をしておるところであろうと私は認識しておるわけでございます。  ただ、そういうプロジェクトを推進していきます上で、委員が今御指摘になりましたように、個別の事業につきましては道路とか港湾計画とか国との許認可あるいは承認等を得なければならないことは当然のことであろうと考えるわけでございます。できるだけその地方における自主性や自立性を高める観点から、今回御審議をいただいておる地方分権推進法案は、まさしく国は地方公共団体に対する関与をできるだけ整理合理化を講じようとするものでございまして、それだけに本法案の御成立に皆さんの御理解をいただきたいと存ずるところでございます。  また、防災対策やら生活基盤の整備等住民に身近なところで実施をいたします各種の事業につきましては、国の補助制度のほかに住民の多様なニーズにこたえていきますために、それぞれの地方公共団体が創意と工夫を生かし、より個性ある地域社会を形成できますように、自治省といたしましてもかねてより地域総合整備事業債を活用いたしました各種の地方単独事業を実施いたしまして事業の支援をしてきておるところでございまして、それだけに当該地方公共団体が議会の承認を得て行っておるそれぞれの事業につきまして、国からそれを取りやめるなどといったような方針を、あるいは指導をするべきは地方自治の本旨にのっとって避けていくべきであろうと思うわけでございます。  お互いにそれぞれの地方公共団体が自主的、自立的に行いました事業について、よりそれが議会の御承認を得てやっておる事業でありますれば、その事業が円滑に行えるように財政支援等を行ってまいるべき立場自治省はあろうと存じておるところでございます。
  168. 有働正治

    有働正治君 時間の関係で最後に、一つは豪華庁舎の問題が全国的に今大きな問題になっています。一々例示をいたしませんけれども、例えば群馬県、香川県等は東京都のあの都庁舎の数倍にわたる県民一人当たり負担額になるような状況がはれ、東京都内もあるいは全国でもこれについてかなりの住民の批判があるわけであります。この点は大臣としてどう認識されておられるか。  私が特に問題にしたいのは、住民の福祉や教育、こういうところにしわ寄せがきている。例えば、トイレットペーパーや教材費も父母負担費から出されている自治体もあちらこちらで私は聞きます。校舎の雨漏りが改善されないとか、子供の給食で今まで出されていたサクランボが出されないとか、保育園の備品として洗濯機が二台あったのが一台に削られて夏や雨のときに洗濯も間に合わないとか、いろいろ出てきているわけであります。  そこで、私は提案します。こういう新庁舎建設の場合、一つは住民の意見の尊重、二つ目に、新増設の場合、地方自治法の精神に基づいて住民参加、住民サービスを向上させることを基本にする。建設費、規模は必要最小限に抑えて建設費のかさむ豪華庁舎の建設はやめて、自治体本来の姿、福祉、教育、住民の安全を守るという自治体本来の仕事の妨げにならないようにすべきだと、こういう点でありますが、いかがでありますか。
  169. 野中広務

    国務大臣(野中広務君) 各地で地方公共団体が庁舎建設を行っておるところでございますけれども、この建設につきましては、職員の執務をいたします場でありますと同時に住民に対するサービスの提供を行うところでございまして、内外からの来訪者の応接の場などにも利用をされるものであります。また、災害時におきましては、今回の神戸市あるいは兵庫県庁あるいは芦屋、西宮市に見られますように、当然対策本部としての機能あるいは避難場所としての機能もあわせ持つ必要があると存ずるところでございます。  庁舎の建設当たりましては、御指摘をまつまでもなく、こうした機能を十分勘案いたしました上で、その規模、機能、財源等について将来展望をも踏まえまして、住民の代表である議会の御審議を経つつ各地方公共団体において適切に実施、決定をされておるものと考えておるところでございます。  いずれにいたしましても、極めて厳しい財政環境のもとで地方公共団体は今新たなる行政改革の推進を求められておるときでもございますので、庁舎建設問題等につきましても、そういう観点に立って今後十分配慮を加えられるべきものであろうと存じておるところでございます。  私の近くでも、既に四十年を経過した庁舎のままで住民福祉のためになお劣悪な条件で頑張っておられるところもあるわけでございます。これは当然、当該地方公共団体の長及び議会の判断にまっところでございますけれども、そういう点を考えますときに、それぞれの地方公共団体の良識において十分合申し上げたような観点に立って、今日的課題として配慮を加えられるべきものであろうと存じておるところでございます。
  170. 小林正

    委員長小林正君) 本日はこれにて散会いたします。    午後五時四分散会