○竹村泰子君
戦傷病者戦没者遺族等援護法の審議でありますので、私は厚生
大臣ともう何度も予算委員会でもおつき合いいただきましたが、しかしこの問題でしつこく取り上げざるを得ないということで、きょうは時間が短うございますので十分な審議にならないかもしれないと思いますけれ
ども、よろしく
お願いをいたしたいと思います。
昨年七月十五日、東京地裁で
一つの判決が出ました。在日韓国人の二人が
戦傷病者戦没者遺族等援護法の
適用を求めたが厚生
大臣に却下され、九二年八月、その取り消しを求めて提訴した、この判決が出たんですね。もう新聞でも報道されましたので御存じのとおりでございますけれ
ども、在日韓国人の戦後
補償は立法不作為の状態である、元
軍人軍属の年金訴訟は国会で論議をしてほしいという判決が出たわけです。
ここに判決文がございますけれ
ども、
しかしながら、これまでに繰り返し判示したとおり、
戦争犠牲又は
戦争損害についての
補償措置、なかんずく、
日本国籍を有しない者に対する
補償措置の範囲、程度は、
政治的
判断に基づく立法政策にかかわる問題であることからすれば、原告らのような在日韓国人が日韓両国のいずれからも何らの
補償も受けられない状態となっていることは、その意味では、立法不作為の
状況にあるというべきである。もとより、原告らが戦傷を負った時点から、既に五〇年近くの歳月が経過していることをかんがみれば、原告らが極めて同情すべき
状況にあることは明らかではあるが、云々と、判決文の最後の方にございます。
今、私
たちがお名前もはっきりわかっている方
たち、ちょっときょう私は、厚生
大臣それから社会・援
護局長、十分御存じのことと思いますけれ
ども、委員の
皆様方にもぜひこの問題をはっきりわかっていただきたいと思いまして、この方
たちを少し御紹介してみようと思います。今、私が申し上げようとしている方は五人です。
石成基さん。七十三歳、神奈川在住。一九四四年五月、ウォッゼ島で米軍戦闘機の機銃掃射を受け、右腕を十五センチ残して切断。一九八四年、脳血栓で倒れ、今も入院中。九二年八月、東京地裁提訴。九四年七月十五日、敗訴。
鄭商根さん。二一年十一月生まれ、七十三歳、大阪在住。一九四三年十二月、ウォッゼ島で米軍の
爆撃を受け、右腕切断、左親指の機能障害、両耳の鼓膜が破れ混合性難聴。九一年一月、大阪地裁提訴。九五年三月二十二日、判決。間もなく大阪地裁で判決が出ようとしております。どういう判決が出るか、これはわかりませんけれ
ども。
陳石一さん。一九一九年一月生まれ。一九四五年四月、バリックパパン沖を航行中、米軍機の攻撃を受け、左足を三分の一残して切断。石さんとともに提訴するが、判決を目前に九四年五月十四日死去、七十五歳だった。
遺族が控訴。
姜富中さん。二〇年五月生まれ、七十四歳、滋賀県在住。四五年二月、ブカ島より伝馬船で弾薬輸送中、戦闘機の機銃掃射を受け、右手親指を残して全部切断、右目はほぼ失明。九三年八月、大津地裁提訴。
趙鏞寿さん。一九一八年九月生まれ、六十六歳、東京在住。徴用され、
日本に連れてこられた。東京製鉄海軍管理工場で訓練期間中、四四年九月、ギアに挟まれ、右腕の機能が完全に廃された状態に。
こういう方
たちが今いらっしゃるわけで、それぞれ提訴したり、それから
厚生省に
お願いをして何とか行政処分の取り消し請求をしてほしい、つまり国籍条項を廃止してほしいと言っておられるわけでございます。
日本は
軍人軍属だけで約四十五万人の朝鮮人、台湾人を駆り出した。数字はちょっとはっきりしないかもしれない、数字の議論はまたしないといけないんですけれ
ども、戦後になりますと外国人ということで戦後
補償から切り捨ててきた。
戦傷病者戦没者遺族等援護法、きょう審議しておりますこの
援護法は、一九五二年四月二十五日に成立しました。同三十日に施行され、同月一日にさかのぼって
適用されたわけです。
援護法は、「この
法律の目的」として「
軍人軍属等の公務上の負傷若しくは疾病又は死亡に関し、国家
補償の精神に基き、
軍人軍属等であった者又はこれらの者の
遺族を援護することを目的とする。」としながら、
日本国籍を失った場合と、失格事由や失権事由とするいわゆる国籍条項、十一条、十四条、三十一条、さらに附則二項においては、「戸籍法の
適用を受けない者については、当分の間、この
法律を
適用しない。」と。この「当分の間」というのがどのぐらいの期間を見ているのか、それが私のお聞きしたいところです。
この
援護法の公布日と
適用日の間である一九五二年四月二十八日にサンフランシスコ平和条約が発効して、原告らを含めた朝鮮人、台湾人等は
日本国籍を喪失したという扱いを受けた。
先ほどから同僚の委員の皆さんから、戦後は終わってないというお言葉がたびたび出ました。私もここに戦後は終わってないというもう
一つの例を申し上げているわけでありますけれ
ども、きょうは外務省にもおいでいただいておりますから、それでは外国ではどうなっているんだろうか。外国でこの国籍条項を理由として、
自分たちの国が
軍人軍属として徴用して負傷をさせながら、本人はもちろん
遺族等にも何の
補償もしていない国、つまり国籍条項ではねのけている国は
日本だけてあります。
私の調査によりますと、フランスは、
軍人であったセネガル人への年金
支給に関して、自国の軍隊において勤務中に負傷しまたは疾病にかかった外国人または戦死した外国人の
遺族に対して、内国人と同様に障害年金、
遺族年金を
支給している。非常に平等であったんですけれ
ども、スライド制が
適用されずに凍結されたため、フランス国籍を有するフランス人退役
軍人よりも低額となった。このことが国連の人権委員会で
指摘をされまして、人種、皮膚の色、性、言語、宗教、
政治的意見その他の意見、国民的もしくは社会的出身、財産、出生または他の地位のいかなる理由による差別も禁じ、法の平等、保護を規定するというB規約第二十六条に違反するとして、八五年、B規約二十八条によって設置されている人権委員会に救済を求めて通報を提出しました。
日本はまだ選択議定書の批准をしておりませんから、もししておれば当然こういう通達を受けるはずになると思います。私は、B規約の批准をしないのはもしかしたらこういう不平等を
指摘されるおそれもあると思っていらっしゃるのではないかと勘ぐりたくなるくらい、これはやっぱり非常に冷たい処置と言わなければならないというふうに思います。
厚生
大臣とはもう何回もやりましたから、答えを聞いても同じお答えかとも思いますけれ
ども、どうでしょうか、改めて短くお答えをいただけますでしょうか。