○大渕絹子君 報告を行うに当たり、まず、
派遣出発日の一月十七日早朝に発生いたしました
兵庫県
南部地震により被災された
方々に心からお悔やみとお見舞いを申し上げます。また、この大震災の
関係で
派遣に
参加できなくなりました
委員がおられることも申し述べておきます。
それでは、御報告いたします。
去る一月十七日及び十八日の二日間、
公害及び
環境保全対策に関する実情
調査のため、
篠崎委員長、小野理事、笠原
委員、萱野
委員、それに私、大渕の五名が静岡県を訪れ、富士山の
保全対策を中心に
調査を行ってまいりました。
初めに、
調査日程の概略を御
説明いたします。
第一日目の一月十七日は、
兵庫県
南部地震の
影響による交通機関の乱れから、静岡駅への到着が予定より大幅におくれました。このため、最初に予定していた大井川河川
環境状況調査のための中川根町訪問はかなわず、当初の予定よりは下流域にかけての河川
状況を車中から視察することにいたしました。次いで、金谷町の静岡
リサイクルセンターを訪れ、建設廃材の再
利用プラントを視察いたしました。その後、静岡県庁において、同県の
環境行政の
概要について
説明を聴取いたしました。
第二日目の一月十八日は、まず、富士宮市の田貫湖畔に赴き、
環境庁、静岡県及び富士宮市の
関係当局から富士山の
保全対策等についてそれぞれ
説明を聴取するとともに、田貫湖畔及び東海自然歩道等を視察いたしました。その後、清水町に移動し、名水百選「柿田川湧水群」を視察いたしまして、
調査の全日程を終えました。
以下、順次
調査の
概要を御報告いたします。
まず、静岡県における
環境行政の
概要について申し述べます。
同県の
環境行政は、
平成四年一月に改定された静岡県新総合
計画の基本的方向を踏まえ、「地球にやさしい
環境づくり」を目指して、①良好な
地域環境の形成、②快適空間の形成、③省資源・省エネルギー
社会の形成を三本柱として総合的、
体系的な
施策の
展開を図ることとしております。特に、
地球環境問題への対応としては、
平成四年六月に「しずおか
環境アクションプラン21」を
策定し、県民・
事業者・行政が一体となった
地球環境保全のためのさまざまな
取り組みが
推進されております。また、
環境基本法の理念を生かした新しい静岡県の
環境行政の枠組みを構築するため、
環境基本条例を制定する予定とのことであります。
次に、大井川の河川
環境状況についてであります。
古くは「越すに越されぬ」と言われた大井川でありますが、近代、特に昭和に入ってから多数の発電用のダムが建設されてきたことにより、本流を流れる表流水は著しく少なくなり、河川
環境の面からも大きな問題となっておりました。
こうしたことから、大井川中流域の川根三町の要請を受けて、建設省、静岡県、電力会社など
関係者間の話し合いが持たれ、昭和六十三年以降、水利権の期間更新時期を迎える発電所についてダムの放流増が行われるようになりました。
ただ今回、実際に河川
状況を見たわけですが、その流量については、冬場の渇水期であったとはいえ、
委員の間でも「もう少し水が流れないものか」との感想が持たれたように、今なお十分とは言えないような
状況でありました。この点について静岡県当局からは、「発電所の理解も得られてきた。話し合いでやるしかないが、できるだけ水を戻したい」との考えが示されております。
次に、静岡
リサイクルセンターについてであります。
同
センターは、近年
社会問題化している建設廃材の処理問題に取り組むべく、金谷町の道路建設会社など民間六社の共同出資により設立されたもので、アスファルト等の建設廃材の受け入れ、中間処理、再生製品の販売等を業務としております。同
センターでは再
利用プラントを視察いたしましたが、
委員からは、廃材処理における
環境対策のほか、再生製品のコスト、品質等の問題について熱心に質問が行われました。
次に、富士山の
保全対策についてであります。
今回の
調査は、さきの第百二十一回
国会において富士山の
世界遺産リストへの登録に関する請願を採択した後のものであっただけに、富士山の
保全状況については
委員の間でも特に大きな関心が持たれておりました。
調査は、田貫湖畔など周辺
地域からのものでありましたが、天候にも恵まれ、富士山のすばらしい景観美に大いに感動してきたところであります。しかし同時に、富士山にはさまざまな
環境保全上の
課題が生じていることも改めて知らされてまいりました。
静岡県当局の
説明においても、①自然景観や
環境保全に配慮しない土地
利用、②管理不十分な人工林の増加による土壌流出等の自然荒廃、③オフロード車の走行による自然破壊、夏季における過密
利用、④
廃棄物の投棄、地下水汚染の危惧等及び湧水量の減少、⑤
事業者、
利用者等の富士山に対する理解と認識の不足といった
課題が示されております。
こうしたことから、
環境庁においては、
国立公園富士山
地域の公園
計画の再
検討作業が進められるとともに、
国会での請願採択を受けて、本年一月には、静岡、山梨両県、
関係市町村の行政機関から成る富士山
地域の
保全対策協議会を発足させております。
また、静岡県側では、富士山一斉清掃
活動や富士山スカイラインのマイカー規制等が行われるとともに、富士山総合
環境保全指針
策定のための
取り組み等が行われております。
なお、今回訪れた田貫湖は、
国立公園の特別
地域になっており、富士山
地域の
国立公園指定六十周年に当たる来年夏には、湖畔で第三十八回自然公園大会が開催されることが内定しております。
これら富士山の
保全対策への
取り組みに関して、
委員からは、過剰
利用によるし尿処理
対策や田貫湖畔における
施設整備等の問題について熱心に質問や注文が行われました。
次に、柿田川湧水群の
保全状況についてであります。
この湧水群は、富士山の東斜面に降った雨や雪解け水が約四十キロ離れた清水町の市街地に忽然とわき出しているもので、富士山周辺では最大
規模の湧水群であり、昭和六十年には
環境庁の名水百選に選定されております。
湧水群の水量は、近年減少傾向が見られるものの、現在でも日量約百万トンと極めて多く、静岡県東部
地域の飲料水や工業用水等に
利用されております。また、湧水及びその周辺には、清流にしか生息しない水生植物ミシマバイカモなど貴重な動植物が数多く見られます。
こうしたすばらしい自然を
保全するため、地元清水町では、昭和五十七年から周辺民有地の買収を開始し、自然の
保護、
保全等を目的とする柿田川公園の
整備を進めております。また、ナショナルトラスト
団体による
保全活動も行われているとのことであります。
なお、柿田川湧水群の
水質については、かつてトリクロロエチレン等が検出され
国会でも問題となりましたが、これについて静岡県当局は、「県の指導などにより、現在では問題はない」と述べておりました。
最後になりましたが、今回の
調査に多大の御
協力をいただきました静岡県並びに
関係各位に対し厚く御礼を申し上げ、報告を終わります。