○永井孝信君 私は、
自由民主党・
自由連合、
日本社会党・
護憲民主連合及び
新党さきがけを代表して、ただいま
議題となっております
内閣提出の
育児休業等に関する
法律の一部を改正する
法律案に対して
賛成し、
新進党提出の
介護休業等に関する
法律案に対し
反対の立場で、
討論を行うものであります。(
拍手)
少子・高齢化の急速な進展、核家族化、共働き世帯の増加等の
社会的変化の中で、老親等家族の介護の問題は、育児の問題とともに
我が国社会が
対応を迫られている
国民的
重要課題となっております。老親等家族の介護は、多くの場合女性の肩に重くのしかかっており、特に女性が働き続けようとする場合の大きな制約条件となっているのが実情であります。
この介護問題に対処するためには、国全体として総合的な介護
対策を進めることが重要であり、介護サービスの一層の
充実を図ることが基本とならなければなりません。このため、先般、
政府において、従来の「高齢者保健福祉
推進十か年戦略」、いわゆるゴールドプランを
見直し、大幅に
拡充して、新ゴールドプランを策定したところでありますが、家族による介護がやむを得ない場合には、労働者にとっては、仕事と介護とを両立させるための緊急的
対応措置として介護休業制度が極めて重要な
意義を持つものであります。したがって、この制度を中小零細企業に働く
方々も含め広く円滑に普及させることが求められております。
政府案は、この要請にこたえるため、すべての働く
方々に一定の基準の制度が保障されるよう、
法律ですべての企業に一律に介護休業制度を義務づけることとしており、我々はまずこの点を高く評価するものであります。加えて、これまで介護の問題は多くの場合女性の肩に重くのしかかっておりましたが、この立法を契機に男性も介護に主体的にかかわることがより可能となり、男女共同参画型
社会の形成という観点からもそうなることが期待されるのであります。
他方、介護休業制度をすべての企業に義務づけることは、企業に雇用管理上の一定の負担を強いることになります。したがって、介護休業の法制化に当たっては、家族による介護や労働者の雇用の継続の必要性と企業の負担との調和が図られるようにする必要があります。
政府案は、このような点に配慮し、介護休業について
法律上の労働者の権利として最低基準を設定するとともに、これを上回る部分については企業の努力義務として労使の自主的な努力を促す一方、
政府においても十分これを
支援していくこととしております。このような対処の仕方こそ、最も現実的かつ制度の確実な定着を可能にしていくものと確信いたします。(
拍手)
具体的には、介護休業期間については、介護を必要とする家族を抱えた労働者にとっては、症状等がある
程度安定するまでの間の休業の緊急性、必要性が高いこと等にかんがみると、
政府案のように最低三カ月を保障することとすることが適切であると考えます。三カ月
程度の期間があれば、介護に当たる家族が介護を通して介護される者の症状等をよく把握し、その後の介護に関する長期的な方針を決めることができるようになると考えられます。また、交代で家族が介護に当たる道も開かれておりますので、家族による介護を必要とする期間が三カ月を超えるような場合にも
対応が可能となっております。
一年など、より長期間の介護休業期間とすることについては、一人の家族に介護をゆだねることの問題のほか、中小零細企業の負担等を考慮すると、企業に一律に義務づけるのは困難であると考えます。
次に、介護休業の取得回数についても、
政府案のように、最低基準としては、介護を要する家族一人につき一回とすることはやむを得ないと考えます。
一人の労働者が同一家族に対して何回も介護休業を取得できることとすることについては、期間を一年とすることと同様の
理由で、企業に一律に義務づけるのは困難であると考えるところであります。
さらに、施行時期についても、介護休業制度の普及率が育児休業を法制化した際の普及率一九・二%よりもなお低い一六・三%にとどまっていること、過去の立法例においても三年
程度の準備期間が置かれていることなどから見て、施行には十分な準備期間が必要であり、
政府案が
平成十一年四月一日としていることは妥当なものと考えざるを得ません。
なお、
政府案については、労働委員会において三点にわたり修正がなされました。
最低基準を上回る
措置を講じる
事業主の努力義務規定について、論議の焦点となった介護休業の期間、回数等に配慮すべきことを法文上明らかにするとともに、法施行前でも介護休業制度ができる限り早期に導入されるよう
事業主に努力義務を課すこととされましたが、これによって
政府案はより妥当なものとなったと考えております。さらに、法施行後適当な時期に、制度の
実施状況、公的介護サービスの状況等を勘案し、介護休業の期間、回数等も含め必要な
見直し、検討を行うことが必要だと我々は考えておりましたが、その旨法文上明らかにされたことも評価できます。
以上の点から、我々は
政府案に賛意を表するものであります。
これに対し、
新進党が
提出されました
介護休業等に関する
法律案は、介護休業制度に関し、休業の期間及び回数、対象家族の範囲、要介護状態の定義のいずれをとっても
政府案より高い
水準となっております。しかし、そうした場合には、労働者にとっては選択の幅がそれだけ広がることは確かでありますが、他方の当事者である企業にとってはそれだけ負担が増すことになるわけでありまして、中小零細企業も含めすべての企業に対してこれを最低基準とすることは、現状の実態から離れて、企業の雇用管理に余りにも過大な負担を強いるものと言わざるを得ません。加えて、これらを直ちに施行しようとするのは、特に中小零細企業にとって
実施が困難となり、かえって法の実効が確保されなくなるおそれがあるわけであります。
以上のことから、我々は
新進党案には
反対であります。(
拍手)
最後に、老親等家族の介護の問題は、今回の
介護休業等の法制化によってすべて解決されるものでは決してありません。特にいわゆる寝たきりや痴呆症のお年寄りの介護の場合など、要介護期間が三カ月や一年で終わることは少なく、これを全面的に家族が負担することが極めて困難であることは、老親介護をめぐりましい
事件が起こっていることから見ても明らかであります。したがって、国や自治体はもちろん、与野党を超え
国民全体が協力して、新ゴールドプランの着実な
実施等公的介護サービスの
整備を図ることが必要であることをここで強調しておきたいと思います。
また、労働者が老親等の家族の介護の必要に直面した場合には、退職することなくその必要を満たすことができるよう、個々の企業においては、この
法律案の
趣旨に沿い、労使間の自主的な努力によって労働者の実情と必要に十分配慮した適切な解決が図られるよう強く期待するとともに、
政府におきましても十分これを
支援していくよう強く要請して、私の
討論を終わります。(
拍手)