○永井孝信君 私は、自由民主党・自由連合、新党さきがけの御了解をいただきまして、日本社会党・護憲民主連合を代表して、ただいま
議題となりました
育児休業等に関する
法律の一部を
改正する
法律案につきまして、
内閣総理大臣並びに関係大臣に質問いたします。
介護休業の
法制化は四年前に
育児休業法が成立して以来の
課題ですが、普及率がなお一六・三%にとどまっている中で
法制化にこぎつけるについては、労働団体、使用者
団体等関係各位の努力はもちろんですが、同時に、
浜本労働大臣の強いリーダーシップがありましたし、また、私ども社会党としては、あらゆる機会をとらえてその
実現に努力してきた成果とひそかに自負しているところであります。「人にやさしい
政治」をうたう村山
内閣にふさわしい法案と思うわけであります。
本法案の
内容に入る前に、まず、
介護問題に対処する基本的な考え方について伺っておきたいと思います。
高齢者介護の問題は、実に切実であり深刻です。民間グループの調査によれば、いわゆる寝たきりや痴呆症老人を
介護している
家族が、その疲労や終わるめどのないつらさに耐えかねてお年寄りを虐待するケースが急増していると指摘されています。中には殺人事件に発展した事例もあり、何とも痛ましい限りであります。これは、公的な
介護サービスが整っていない
我が国の貧しさを象徴するものと言わねばなりません。
しかも、
我が国は今後とも急速に超
高齢化社会に移行しようとしており、西暦二〇二五年には世界一の
高齢社会が到来すると見込まれています。
昨年九月、社会保障
制度審議会が社会保障将来像
委員会第二次
報告を発表しました。その
報告は、
家族形態の多様化、小規模化、共働き世帯の
増加などにより、家庭内の役割分担や老親扶養に対する考え方も変化してきており、家庭での
介護や
育児の力が弱まり、社会保障
制度に対する期待が高まっていることを指摘しているのであります。
今日、
高齢者介護政策の基本方向としては、
高齢者が
家族介護に依存せずに自立した
生活を送ることができるような社会
介護の
確立、言いかえれば
家族介護から社会
介護への転換が求められているのであります。また、そうであればこそ、私どもも、先般、
高齢化社会に向けた税制の抜本改革との関連で、
高齢者保健福祉推進十カ年計画を大幅に見直し、上積みして、新ゴールドプランの策定を求め、
実現を見たのであります。
そこで、福祉問題に造詣の深い総理並びに厚生大臣にお尋ねします。
社会保障将来像
委員会第二次
報告をどのように受けとめておられるのか。
介護問題についての基本的見解はどうか。また、新ゴールドプランをどのように位置づけているのか。私どもは、これをナショナルミニマムとして位置づけ、推進しようとしているのでありますが、いかがでしょうか。御見解をお聞かせください。
次に、本法案の
内容につき、焦点となっている事項について幾つか質問いたします。
その一つは、
介護休業の
期間についてであります。
老親
介護つまり
高齢者介護は、基本的には社会サービスによるべきであって、その子供に
就労を断念させてまで責任を負わせるべきではありません。しかし、現実的には、日本では社会サービスが立ちおくれているため私的に解決せざるを得ない場合が多く、働き続ける意思を持ちながらも、
介護のために退職を余儀なくされる
労働者が少なくないのが実情であります。しかも、その大半は女性です。
このため、社会党は、これまで新ゴールドプランの推進など社会サービスの
整備を急ぎつつも、当面の
対応策として、最低三カ月の
介護休業を保障し、それ以上は個々の
労働者の実情に応じて休業を認めることを
事業主の努力義務とすることを主張してきました。
政府案では、連続する三カ月となっていますが、三カ月とすると、それより長い休業
期間を定めた既存の労働協約にも悪影響を与えるのではないかと心配する声もあります。そこで、どのような考え方に
基づいて三カ月という
期間を設定したのか、改めてお伺いいたします。また、これらの心配の声にはどうおこたえになるか、労働大臣の御見解を伺います。
さて、この問題については、対案を出された新進党
提出者にもお尋ねいたします。
新進党が
提出された法案では、休業
期間が一年となっています。休業する側からいえば選択の幅が広がるわけで、長ければ長い方がよいのは当然です。他方、特に中小
企業等にとっては、最低三カ月というのは
労働者が
申し出れば拒否できなくなるわけですから、その場合の
代替要員の確保等
雇用管理上の
負担が加わることは事実です。一年とすればなおさらであります。
そこで、一律最低保障の社会的強制としては、最低三カ月というのが少なくとも現在の時点ではぎりぎりのコンセンサスではないでしょうか。しかも、労働省の調査によっても、かなりの
労働者がこの
制度によって救われることは明らかです。この点について、新進党
提出者の御見解を伺いたいと思います。
その二つは、
介護休業制度の施行時期についてであります。
政府案では、施行時期が今から四年後の
平成十一年四月となっています。これに対し、法制定保後、
企業規模を問わず早期に施行してほしいとの要望があり、その気持ちについては私どもも十分理解しています。しかし、他方、
雇用管理上の
負担を負わせられることになる中小
企業への配慮も必要です。
この問題を考える上で、昨年の国会で成立した
高齢者雇用安定法の
改正の場合が参考になります。六十歳未満の定年を禁止するなどを
内容とした同法案では、大
企業と中小
企業を区別せず、一律に三年間の
準備期間を設けた上で施行されることとなっています。普及率が八割の
状況での
措置であったのであります。残念ながら
介護休業の普及率は一六・三%と低く、特に中小
企業にはほとんど普及していないのが現状なのであります。
今回の法案にも、同様に三年間の
準備期間が設けられているのはやむを得ないのではないでしょうか。そのような現実的な政策判断があったればこそ、私どもも新進党の
皆さんも、当時、四年後施行の
高齢者雇用安定法の
改正案に
賛成したのではなかったでしょうか。新進党の
皆さんが、今回、あえて中小
企業を含め来年直ちに施行するとしているのは一体いかなるお考えか、お聞かせをいただきたいと思います。
さて、
政府案でも、四年後にはどの中小
企業にもこの
法律を受け入れていただかなければなりませんが、それまでの間、何もしなくてよいというわけではありません。現に、自主的にこの
制度を
導入している
企業もありますし、
雇用する
労働者の実情に応じて法施行以前にも
導入を検討していだきたいし、
政府としても、三年後までほうっておくのではなくて、
企業に対して前倒し実施に努力するよう積極的に指導援助する必要があると考えますが、労働大臣の御見解を伺います。
第三に、休業中の
所得保障について伺います。
せめて、この
法律に
基づき四年後に全産業、全
労働者を
対象に
介護休業制度が実施される際には、
育児休業の場合の
育児休業給付と同様の給付が行われるようにすべきであると考えるのでありますが、総理大臣並びに労働大臣の御見解をお聞かせください。
第四に、看護休暇についてお尋ねします。
我が国では
介護と看護を区別せず使用しているため、いろいろ誤解が生まれやすくなっていますが、今回
法制化しようとしているのは
介護休業制度で、むしろILO百六十五号勧告やECの親休暇及び
家族休暇に関する指令案にある
家族看護休暇については触れられていないのであります。私どもは、
配偶者や子供の突発的事故や病気のための休暇である
家族看護休暇
制度については、本人の病気休暇とあわせてこれからの
課題として残されていると考えております。そこで、この点について
政府は今後どのように対処しようとしているのか、労働大臣にお尋ねをいたします。
最後に、迎えつつある超
高齢化社会に
対応して、新ゴールドプランの着実な実施に全力を注ぐ一方、
法制化されようとしている
介護休業制度の積極的な活用について、我が党としても与党としても全力を挙げて取り組む所存でございますが、総理並びに関係大臣のそれぞれの御決意を伺い、私の質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣村山富市君
登壇〕