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山本拓君 私は、ただいま
議題となりました
政府提出の
地方分権推進法案並びに
新進党提出の
地方分権の
推進に関する
法律案につきまして、
新進党を代表し、
政府並びに
新進党の
提出者双方に質問をいたします。
さて、私は、
平成五年六月の
衆参両院における
憲政史上初の
地方分権の
推進に関する
決議に参加した者の一人として、
地方分権を進めるための
法案が本日この本
会議に上程される運びになりましたことに対し深い感銘を覚えますとともに、いよいよ
地方分権が
実現のときを迎えたことを強く実感するものであります。
しかしながら、
本法は、
地方分権の目的ではなく手段であり、重要ではあるがその
第一歩にすぎないものであります。山深ければ道険しと存じますが、
地方分権の
実現という時代の大転換期における
一大事業に向けて、
政治の強力なリーダーシップがいよいよ不可欠となってまいります。
我々は、
衆参両院における
決議の意義を踏まえ、与野党相
協力して、実効ある
本法の
成立を目指し、
地方分権の
実現に向けた確実な
第一歩を踏み出すべきであります。ここで、改めて
本法の
成立への
総理の決意をお伺いするとともに、
新進党の対案をどう評価されておられるか、まずもってお尋ねをいたします。
以下、順次、両案に沿ってお尋ねをいたします。
まず第一に、
本法に求められているものは何かということであります。
地方分権は、ややもすると、中央と
地方の役所間の
権限争いの問題としてとらえられたり、中央レベルでの議論が先行し、住民や市町村レベルでの関心が薄いのではないかという危倶が取りざたされております。私は、住民や自治体の間で
地方分権の具体的な姿がいま一つイメージできないでいることに大きな原因があるのではないかと考えるものであります。
その点から
政府案を見ますと、
権限や財源について、何を分権するのかという具体的な中身が全く示されていないのであります。
地方分権を
推進するための土俵づくりはそれなりに重要でありますが、
本法は単なる宣言法や設置法にとどまるべきでなく、
国民の前に可能な限り
実現への手順と具体的な姿を示し得るものかどうかが大切であり、
国民各界各層の幅広い関心と参加を喚起することが求められております。この点について、
総理及び
新進党提出者にその所見をお尋ねいたします。
第二に、国と
地方公共団体の
役割分担でありますが、
地方自治の確立のためには
行政権限の国への過度な
集中による
弊害除去が必要であります。
憲法九十二条は
地方自治の保
基本原則をうたっておりますが、ここでうたわれている
地方自治の本旨が余りにも軽視され、ゆがめられてきたのではないかという感を強く抱くものであります。
今や
我が国は、戦後復興期から高度成長期を通じたキャッチアップ型の
社会構造から、成熟型
社会へ向けた多様な
国民ニーズに対応できる新たな
政治・
行政・経済システムへの構造転換を迫られているのであります。国と
地方の
役割分担に当たっては、国の
役割は限りなく限定的にとらえる一方、
地方にあっては、企画、立案、
調整そして
実施と一貫した
役割を広く担うべきであり、これまでの国と
地方の
役割に対する抜本的な発想の転換が求められていると考えますが、
総理及び
新進党提出者の御所見をお尋ねいたします。
第三に、
地方分権の
推進に関する国の
施策についてであります。
政府案によりますと、
権限の
移譲に当たっての国の
関与、
必置規制、
機関委任事務制度等について
整理合理化その他
所要の
措置を講ずるとあるのみで、具体的な
内容は一切示されておりません。先ほども申し上げましたように、これでは
地方自治体も住民も
地方分権の具体的な姿を思い浮かべることはできないのであります。この点については骨抜きとの批判もある
大綱方針以上に後退したものと断ぜざるを得ません。
機関委任事務制度の廃止は
地方制度調査会においてもたびたび答申されておりますが、今や
国民的コンセンサスを得たものというべきであります。
総理はみずからの諮問機関である
地方制度調査会の答申をどのように考えておられるのか、答申を尊重する義務はないのか、お尋ねをいたします。
さらに、
平成四年十二月に
社会党がまとめた「
地方分権推進法とプログラムの試み」におきましても、
機関委任事務の原則的廃止がうたわれているのでおります。
社会党
委員長としての
総理はこの点についてどのようにお考えになっておられるのか、お尋ねをいたします。
また、このような
基本的事項についての方向性すら明示せず、今後の議論にゆだねることは、先送り以外の何物でもなく、
政治のリーダーシップはどこにも感じられない極めて無責任な態度であると言わざるを得ません。
総理の御所見をお尋ねするものであります。
第四に、基礎的自治体である市町村への
権限移譲のあり方についてであります。
市町村レベルで見ますと、ある意味での格差があることは否定できません。したがいまして、当面、二層制を前提とした分権の
推進が現実的であることは認めざるを得ないものでありますが、住民に身近な基礎的自治体である市町村への分権が究極的な
地方分権の姿であることも否定できません。この点についてどのように考えておられるのか、
総理及び
新進党提出者にお尋ねをいた促します。
第五に、
地方公共団体の税財政基盤についてであります。
政府案を見ますと、「国と
地方公共団体との
役割分担に応じた
地方税財源の
充実確保」とありますが、これまで繰り返し言われてきた極めて当たり前の、決まり文句の域を一歩も踏み出していないのであります。
地方自治とは究極的に、みずから課税し、みずから歳出を決めることであり、
地方税財政基盤の確立は
地方分権の
実現に当たって不可欠の課題であります。
地方関係者が抱く
地方分権に対する大きな不安は、
権限移譲はいいけれども、果たしてそれに見合う財源がついてくるのかということにあり、財源の伴わない分権はかえって迷惑だということになるわけであります。
地方の
自主財源である
地方税の
充実強化なくして
地方の財政的自立はあり得ないのであり、
地方公共団体の税財政基盤の整備に当たって、何を重視し、どのように組み立てていくのか、具体的
指針を明示すべきではないかと考えますが、
総理の御所見をお尋ねするものであります。
第六に、
地方公共団体の
行政体制の整備についてであります。
地方分権の
推進に伴う国及び
地方公共団体を通じた
行政の
簡素化及び
効率化は不可欠であり、
地方分権の
実現は何よりも
地方自治体自身の変革を求めていくものであります。したがいまして、
地方分権の
推進にあわせた
地方の
行政体制の整備は極めて重要であり、今後の分権化時代へ向けた主人公ともいうべき
地方公共団体のあるべき姿と今後の課題についてどのように考えておられるのか、
総理及び
新進党提出者にお尋ねするものであります。
第七に、
本法の時限立法化と
実現のめどについてであります。
政府案によりますと、五年間の時限立法との
規定はあるものの、何をいつまでに
実現するのか明らかにされておりません。五年間で結果が出なかったものはどうなるのか。五年たったら根拠法を失い、はいそれまでよということになりはし方いか。うがった見方をすれば、この
法律案は
地方分権推進法ではなく、
地方分権中止法になりかねない危険をはらむものであります。時限立法の意
味と、五年間で何をどのように
実現しようとされておられるのか、
総理の所見をお尋ねするものであります。
また、
新進党案によりますと、「五年を目途に、
具体的成果をあげる」とする一方、時限立法化はされておりません。これはどのような理由によるものか、今後の具体的手順とあわせて
新進党提出者の御所見をお尋ねするものであります。
最後に、
地方分権推進委員会の
事務局の独立性の確保についてであります。
地方分権推進委員会は、
地方分権推進計画の
作成のための具体的
指針の
勧告や
実施状況の監視等、
地方分権推進計画に関して一貫した
役割を担うものであり、その機能にふさわしい実効ある
推進機関としなければなりません、その
委員会活動を十二分にバックアップするためには、課題の重要性、迅速性、公平性の観点からも、
事務局の独立性とともに質量両面における十二分の
措置が必要と思われますが、
総理及び
新進党提出者の御所見をお尋ねいたします。
以上、
法律案に沿ってお尋ねをしてまいりましたが、私は、豊かな
地域社会の創造なくして
活力ある日本の新たなる発展はあり得ないと信じるものであります。
地方分権の
実現を通して、自治の精神に支えられた生き生きとした
地方が形づくられ、一人一人が豊かさを実感できる
社会が築かれることを念じ、
本法の
成立が
地方分権の
実現に向け大きく貢献することを期待いたしまして、私の質問といたします。(
拍手)
〔
内閣総理大臣村山富市君
登壇〕