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1995-06-29 第132回国会 衆議院 農林水産委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成七年六月二十九日(木曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 中西 績介君    理事 久間 章生君 理事 二田 孝治君    理事 松岡 利勝君 理事 倉田 栄喜君    理事 小平 忠正君 理事 仲村 正治君    理事 鉢呂 吉雄君 理事 錦織  淳君       赤城 徳彦君    岸本 光造君       栗原 博久君    粟原 裕康君       七条  明君    徳田 虎雄君       浜田 靖一君    保利 耕輔君       松下 忠洋君   三ッ林弥太郎君       御法川英文君    山本 公一君       石破  茂君    木幡 弘道君       実川 幸夫君    千葉 国男君       初村謙一郎君    増田 敏男君       矢上 雅義君    山岡 賢次君       山田 正彦君    石橋 大吉君       遠藤  登君    辻  一彦君       玄葉光一郎君    藤田 スミ君       山原健二郎君  出席国務大臣         農林水産大臣 大河原太一郎君  委員外出席者         外務省アジア局         北東アジア課長 別所 浩郎君         農林水産政務次         官       谷津 義男君         農林水産大臣官         房長      高橋 政行君         農林水産省経済         局長      東  久雄君         農林水産省経済         局統計情報部長 今藤 洋海君         農林水産省構造         改善局長    野中 和雄君         農林水産省農蚕         園芸局長    日出 英輔君         食糧庁次長   阿部  修君         農林水産委員会         調査室長    黒木 敏郎君     ————————————— 委員の異動 六月二十九日  辞任         補欠選任   藤田 スミ君     山原健二郎君 同日  辞任         補欠選任   山原健二郎君     藤田 スミ君     ————————————— 六月十六日  一、農林水産業振興に関する件  二、農林水産物に関する件  三、農林水産業団体に関する件  四、農林水産金融に関する件  五、農林漁業災害補償制度に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  農林水産業振興に関する件(平成年産米穀  の政府買価格等)      ————◇—————
  2. 中西績介

    中西委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  この際、平成年産米穀政府買い入れ価格米価審議会への諮問及び平成年産米生産費統計調査結果について政府から説明を聴取いたします。阿部食糧庁次長
  3. 阿部修

    阿部説明員 平成年産米穀政府買い入れ価格決定に関しまして、その算定方式及び留意すべき事項につきまして、去る六月二十三日の米価審議会諮問を行いました。さらに、本日開催されました米価審議会におきまして、政府買い入れ価格試算値をお示しいたしましたので、その概要を御説明申し上げます。  まず、「諮問」を朗読いたします。      諮問  平成年産米穀政府買価格決定に関し、我が国稲作の健全な発展を図るとの観点に立ち、地域における生産性の高い稲作農家生産費及び所得を考慮して算定すること及びその際留意すべき事項につき、米価審議会意見を求める。   平成七年六月二十二日         農林水産大臣 大河原太一郎  次に、「諮問説明」を朗読いたします。      諮問説明   米穀政府買価格は、食糧管理法第三条第二項の規定により、生産費及び物価その他の経済事情を参酌し、米穀の再生産の確保を図ることを旨として定めることになっており、その算定については、昭和三十五年以降生産費及び所得補償方式によりその時々の需給事情等に応じて行ってきたところであります。   このような中で、最近の米をめぐる諸情勢にかんがみ、生産性の高い稲作担い手となる農家生産組織・集団の育成を通じて稲作の一層の生産性向上を図り、国民の納得の得られる価格での米の安定供給に努めることが重要な課題となっております。   また、米の需給事情につきましては、平成年産米の大豊作により緩和基調となりました。こうした状況の下で、平成六年十二月に決定した自主流通米供給安定化特別対策に基づき、水田営農活性化対策の枠組みの下で八万ヘクタールの追加的転作等を行うなど需給事情に応じた安定供給を図るための対策を推進しているところであります。   他方、一般経済情勢の面では、労賃物価ともに安定的に推移しております。   以上の事情総合勘案の上、本年産米穀政府買価格につきましては、引き続き、全国の各農業地域平均的な水準以上の高い生産性を実現している稲作農家をその地域において稲作を実質的に担っている者であるとし、このような生産者生産費基礎とし生産費及び所得補償方式により算定することとしてはどうかと考えております。つきましては、このような考え方により政府買価格算定すること及びその際留意すべき事項につきまして米価審議会の御審議を願い御意見を賜りたいと存じます。  続きまして、お手元にお配りしてございます「平成年産米穀政府買価格試算」につきまして御説明申し上げます。  平成年産米政府買い入れ価格算定は、平成年産以降採用されてきているいわゆる地域方式に基づいて行っております。本年産米価をこの地域方式により算定することにつきましては、先般六月二十三日の前期米価審議会においてお諮りし、大方の御了解をいただいたものと考えております。  まず、資料の一ページの算式でございます。これは前三年の評価がえ生産費平均を分子といたしまして、前三年の平均収量を分母といたしまして、これに後から御説明いたします収量変動平準化係数を乗じましてバ六十キロ当たり価格を求めるものでございます。  なお、本年産につきましては、従来のルールにのっとり、直近三カ年の平成年産、五年産、六年産米生産費調査結果を算定基礎として用いております。このうち、六年産につきましては、従来の二〇%以上災害農家に加えまして、二〇%以上豊作農家も除外されております。  算定対象農家とり方につきましては、冒頭御説明申し上げました地域方式によっておるわけでございます。この地域方式基本的な考え方は、御案内のように、全国農業地域平均的な水準以上の高い生産性を実現している稲作農家を、その地域において稲作を実質的に担っている生産者であると位置づけ、算定対象とするものであります。  具体的な算定対象農家とり方につきましては、次のようにしております。  まず、全国農業地域、九ブロックでございますが、これに区分いたします。次いで、各地域ごとに六十キロ当たり平均生産費を求めます。このようにして求めた地域ごとめ平均生産費を指標としまして、それ以上の生産性を上げている農家を選定しております。ちなみに、こういうような手順によって算定対象となる農家の戸数のシェアは四三%程度となっており、また販売数量シェアは五九%程度というふうになっておるわけでございます。  一ページの算式でございますが、算定対象農家の十アール当たり平均生産費につきまして、物財雇用労働費など実際に支払う費用につきましては、生産費調査結果を物価修正するとともに、家族労働費につきましては都市均衡労賃評価がえし、実際に支払いを行っていない自己資本利子、さらに自作地地代についても一定評価方法によって算入しております。これらを合計しました評価がえ生産費算定対象農家平均単収で除したものに収量変動平準化係数を乗じまして、「求める価格」を算定しております。この「求める価格」は、いわばお米全体の農家庭先段階での価格考えていただければよいかというふうに思います。  二ページでございます。算定値をお示ししておるわけでございます。1は、先ほどの「求める価格」でございます。2の「基準価格」は、「求める価格」に最寄り検査場所までの運搬費を加算したものでございまして、一万五千六百十二円となっております。3は、基準価格基礎といたしまして銘柄間格差等級間格差等を前提に三類一等価格を算出したものであります。本年産におきましては、調整額、六十キロ当たりで五百五十一円を加算しておりますが、これは本年十一月以降、新制度への円滑な移行を図ることが重要な課題となっておるということ等を考慮いたしまして、所要の調整を行って据え置きとしたものでございます。  4は、基本米価と呼んでおりますが、ウルチの一−五類、一−二等平均包装込み生産者手取り予定価格でございます。基本米価も前年と同額となっております。なお、三ページに類別、等級別価格一覧を掲げております。三ページの表は、説明は省略させていただきます。  続きまして、四ページでございます。算定要領でありますが、算定要素とり方につきまして整理しております。  まず、家族労働費でございますが、家族労働費につきましては、生産費及び所得補償方式もとで、都市均衡労賃による評価がえを行っております。都市均衡労賃としましては、前年同様、都道府県別米販売数量により加重平均しました事業所規模五人以上一千人未満の事業所製造業賃金を採用しております。  四ページの下の方に一時間当たり労賃を掲げておりますが、このうち男女込み労賃は直接家族労働評価に用いておりまして、男子労賃自給肥料等に係ります間接労働評価に用いております。なお、労賃単価は前年産に比べまして、男女込み労賃で二・五%、男子賃金で一・九%上昇となっております。  五ページでございます。アということで、アは五人以上一千人未満規模労賃ですが、現物給与等調整前のものでございます。都道府県別労賃のデータの制約から、労賃規模期間について修正を行っておりますが、その計算の手順を整理しております。  なお、労賃期間でございますが、従来から前年六月から当該年の五月までの一年間を対象とするということを原則としてまいりましたけれども、本年につきましては、五月の全国労賃がまだ公表されていないことから、四年産米価算定と同様に、過去三カ年の五月から四月平均に対します六月から五月平均賃率平均を用いまして、六年六月から七年五月平均賃金をとっております。  六ページのイでございますが、本年につきましては、不況等の影響によりまして、都市均衡労賃ベースとなります都道府県別米販売数量で加重平均しました製造業賃金伸びが、調査産業全体の全国平均伸びに比べて低い水準にとどまっているというようなことにかんがみまして、過去にもたびたび行ったわけでございますが、いわゆる賃率調整という手法をとっております。ウは、アの労賃に加算する現物給与相当額加算方法につきまして、また工は、労賃から控除する通勤手当相当額の減額の手法につきまして整理しております。  続きまして、七ページの(2)でございます。物財雇用労働費物価修正手法でございます。物価修正につきましては、生産費調査調査期間暦年ベース、すなわち一月から十二月というふうになっていること、そしてできる限り直近までの物価動向を反映させる必要があるということから、従来、基準期間比較期間とも各年の一月から五月平均物価指数を用いることを基本としております。本年産におきましても、このような従来の考え方を踏襲いたしまして、基準期間比較期間とも一月から五月をとることといたしました。  続きまして、(3)の副産物価額でございます。副産物はわらとかくず米でございまして、生産費から控除されるわけですが、掲げております係数は、生産費調査にあらわれた各年の副産物価額物価修正する係数でございます。  なお、この物価修正に用います変化率につきましては、これまで過去数カ年の副産物価格動向もとにいたしまして変化率を求めてきたわけですが、本年の算定当たりましては、くず米価格等が最近著しく低下しているというようなこと等にかんがみまして、極力直近実態を踏まえたものとしております。  続きまして、下の方の(4)の資本利子でございます。資本利子は、借入金自己資金に区分しておりますが、この割合は米生産費補完調査調査結果を用いております。具体的な金利とり方は、借入金金利は、補完調査にあらわれた借り入れの実態にその後の実勢を織り込んで算出しております。一方、自己資本利子につきましては、実際には支払いを行っていない部分の一種の擬制計算であり、従来、その利率のとり方につきましては、米価適用金利の急激な変化を緩和するとの観点から一定調整が行われております。本年の場合も、公定歩合が七年四月から一%という過去最低の水準になるなど、金利が著しく低下した水準にあることでございまして、そうしたことから米価適用金利の急激な変動を緩和するため、前年適用金利低下幅の二分の一を反映させた金利ということで三・八二をとっておる次第でございます。  続きまして、八ページの(5)の物件税及び公課請負担でございます。物件税及び公課請負担は、収益の有無にかかわらず、稲作を行っていることによって賦課されるものを従来どおり計上しております。なお、土地に係る固定資産税は別途地代に織り込んでありますので、これは除いてございます。  次に、下の方の(6)の地代でございます。まず、自作地地代につきましては、生産者が実際に支払うものではございませんけれども、所得付与部分として従来から価格に参入してきております。本年産につきましても、従来同様土地資本利子考え方により、一般田固定資産税評価額九万六千八百七十三円、これは十アール当たりでございますが、これに十年の利付国債平均利回り五・二七一%を乗じて算出しております。また、小作地地代につきましては、生産費調査の実績を参入しております。  続きまして、九ページの(7)の企画管理労働費でございます。企画管理労働費につきましても、本年産につきましても、各地域稲作実質的担い手農家算定対象として米価算定を行うという観点から、前年産同様米価に参入しております。  (8)の算定値でございます。以上の各要素を積み上げました十アール当たり評価がえ生産費でございまして、平均で十三万二千九百十一円となります。これは、六十キロ当たりに引き直すために、次の2で十アール当たり平均収量算定しております。十アール当たり平均収量は三カ年の平均で五百二十六キロというふうになります。  次に、収量変動平準化係数についてでございますが、これについては、本年の米価算定当たりまして、算定対象の四年から六年産の中に戦後最悪の不作で作況七四でございました五年産、一転して過去最高の収量となりました六年産と二年続けまして異例の作柄が入ってくることにかんがみまして、作況変動算定値に及ぼす急激な変化を緩和しまして米価算定安定性を確保するとの観点から、六年産の単収が平準化されるよう、六十一から六十三年の米価で用いました収量変動平準化係数算定値に乗じたものでございます。  具体的に申しますと、麦価算定と同様の方式によりまして算出しました六年産米販売農家平準収量もとに同じく六年産対象農家平準単収を求めまして、六年産をこの平準単収に置きかえた三カ年平均対象農家の単収に対します通常の三カ年平均対象農家の単収の比率を収量変動平準化係数、αとしておるところでございます。  次に、十ページでございます。4の運搬費でございます。農家庭先から最寄り政府指定倉庫までの運搬及び受検に要します経費を米生産費補完調査結果に基づいて算出しておるところでございます。  十一ページでございます。以上の結果を原生産費価格決定年評価がえ生産費ということで整理したものでございます。  以上が平成年産米穀政府買い入れ価格試算説明でございます。
  4. 中西績介

  5. 今藤洋海

    今藤説明員 平成年産米生産費の結果につきまして、お手元にお配りしております資料に基づき御説明を申し上げます。  御承知のとおり、平成年産の米は未曾有の冷害に見舞われまして作況指数七四でございましたが、一方平成年産におきましては、全国的な天候に恵まれまして、作況指数が一〇九と大豊作になったわけでございます。  生産費調査につきましては、正常な生産状態もとでの生産費を求めるという基本的な考え方もとに、稲作生産実態を的確に把握した生産費調査結果の安定的かつ継続的な提供に努めてまいったわけでございます。  こうしたことから、統計情報部といたしましては、この大豊作でございました平成年産取りまとめ当たりまして、平年作に比べまして二〇%以上増収した農家についての取り扱いをどうするか慎重に検討したわけでございますが、その結果、最近の十アール当たりの平年収量動向は、趨勢的には停滞的でございまして、近年の増収、減収はおおむね気象条件によるものと分析をいたしまして、これをもと平成年産取りまとめからは、従来の二〇%以上の被害を受けた農家に加えまして、新たに平年作に比べ二〇%以上増収した農家についても集計対象農家から除外するということで集計をいたしたわけでございます。  まずお手元資料全国農家調査の方から見ていただきたいと思いますが、一ページの表で、十アール当たりについて見ていただきますと、費用合計から副産物価額を差し引きました生産費は十二万九千五百五十七円で、前年に比べまして四・一%減少しております。資本利子地代全額算入生産費は十六万六千七百九十九円と、前年に比べ三・四%の減少となっております。また、これを六十キログラム当たりで見ますと、全国的に天候に恵まれたことなどにより十アール当たり収量が五百四十三キロと、作柄の悪かった前年の収量四百七十五キロを一四・三%上回りましたことから、全算入生産費は一万八千四百十九円で、前年に比べ一五・六%の減少となっております。  次に、二ページでございますが、十アール当たりの詳細でございます。  主な費目について見ますと、肥料費価格低下により、また農業薬剤費は病害虫の発生が少なかったことにより減少をしております。賃借料及び料金は、収量の増加により委託作業は増加いたしましたが、料金単価低下しております。また、農機具費につきましては、転作緩和等によりまして一戸当たり作付面積が増大したため、減少しております。労働費につきましては、投下労働時間が減少したことによりましてこれも減少を示しております。  これらの結果、費用合計減少しておりますが、副産物でございます特にくず米価格が大幅に減少したため、費用合計から副産物価額を差し引いた生産費費用合計減少に比べてその減少の幅が縮まっております。  次に、規模別に見た生産費でございまして、六ページから七ページにかけまして見ていただきたいと思います。  十アール当たり算入生産費につきましては、生産費作付規模が大きくなるにつれて低下しております。このような階層間格差は、主として作付規模の大きな階層ほど農機具効率的利用などが行われ、稲作労働省力化も進むことにより、労働費農機具費等費用低下することなどにより生じております。また、六十キログラム当たりの全算入生産費についても、おおむね同様の傾向となっております。  参考に、もう一冊の方で農業生産組織生産費をお示ししてございます。これは平成年産より農業生産組織についての調査を行っておるわけでございます。  まず、協業経営体につきましては、一ページの表にございますように、十アール当たり算入生産費は十二万六千五百六十三円、六十キログラム当たりで全算入生産費が一万五千四百三十四円となっております。これを先ほどの農家調査の結果と比べますと、十アール当たりの全算入生産費、六十キログラム当たり算入生産費ともに八〇%強の水準となっております。  次に、全作業受託組織につきまして、十アール当たりの全算入生産費は十二万二千二百六円、六十キログラム当たり算入生産費は一万四千三百六円となっております。これを農家調査の結果と比べますと、十アール当たりで七三%、六十キログラム当たりで七八%という水準でございます。これらの組織体につきましては、基幹オペレーター等を核といたしまして、規模の大きい農業生産に取り組むことにより生産性向上が図られているものと考えております。  以上が平成年産米生産費農家調査結果及び農業生産組織調査結果の概要でございます。
  6. 中西績介

    中西委員長 以上で説明は終了いたしました。
  7. 中西績介

    中西委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松下忠洋君。
  8. 松下忠洋

    松下委員 鹿児島から出てまいりました松下忠洋と申します。時間も限られておりますので、簡明にお願いしたいと思います。  平成年産生産者米価はきょう諮問されます。ただいま食糧庁より御説明があったとおりでございます。平成五年の異常な凶作、そしてその翌年の大豊作といった乱高下の環境の中、そしてまた、秋には新食糧法移行していく、そういう状況の中で、現行食糧管理法もとでの最後の米価でございました。  農林水産大臣は、今回のこの米価諮問当たりまして、どのような基本的な考え方で取り組んでこられたのか、そして、据え置き諮問ということでございますけれども、その諮問内容についてどのように受けとめておられるのかその基本的なお考え大臣の口からお願いしたいと思います。
  9. 大河原太一郎

    大河原国務大臣 お答え申し上げます。  生産者米価決定については、最近における米の各般の情勢にかんがみまして、稲作の体質を強化するということを主眼として、生産性の高い担い手農家育成なり、あるいは組織化集団化というものの育成等を通じまして、生産性向上を図る視点をどうしても取り入れなければ相ならぬ、そして、国民的な合意が得られる価格決定いたさなければならぬというのが基本的な姿勢でございます。  それに基づきまして、委員案内のとおりでございますが、生所方式に基づきまして、いわゆる地域方式算定をする建前を基本としたところでございますが、特に本年は、ただいまも御指摘がございましたように、一昨年の凶作、それから昨年の大豊作というようなことで収量変動が大変大きいわけでございまして、安定的な米価算定については深甚なる配慮が必要であるというようなことで、ただいまも事務当局から御説明申し上げましたように、要素とり方について、単収についても平準化的な配慮を加えるとか、あるいは急激な金利低下ということもございまして、その辺の配慮も必要であろう、さらには、不況の波の中で、生所方式に基づく評価がえの賃金等につきましても、御案内のように伸びが大変鈍化しておるというようなことも配慮して、それぞれ諸要素について調整を加えまして、慎重な上にも慎重な検討を加えて配慮したところでございます。  なお、さらに私どもの考えの背景を申し上げますと、御案内のとおりでございますウルグアイ・ラウンド農業協定に基づく実施、ミニマムアクセス受け入れとかというような問題、さらには新食糧法への移行というような問題、これら稲作農家皆さんに対する、その思いに対する深甚な配慮も必要であろうということを考えてしたところでございます。  さらにもう一言加えさせていただきますと、御案内のように、ウルグアイ・ラウンド農業協定受け入れという厳しい国際的環境もとにおきまして、やはり稲作農家皆さん生産性向上に本格的に取り組んでいただくというようなことで、御案内のあの国内対策を実施しでおりますところでございまして、そういう稲作農家の意欲というものに対しても十分な配慮が必要であろう。  以上のような各般の面を勘案いたしまして、算定をいたしたところでございます。
  10. 松下忠洋

    松下委員 貿易立国として苦渋の選択をした、ウルグアイ・ラウンドの農業合意を受け入れたわけでございますから、これからの農業がしっかり立ち行くように、米価を中心にした農業政策をこれからもしっかりと進めていただきたいというふうにお願いをしておきます。  ところで、いよいよ秋には新食糧法もとでのいわゆる米価政府買い入れというのが来るわけでございますけれども、これからどのような考え方で取り組んでいかれるのか、政府の備蓄米ということになってくるわけでございますけれども、そういう中でこれがどのような意味を持ってくるのかということについて、大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  11. 大河原太一郎

    大河原国務大臣 この問題につきましては、御案内のとおり、新食糧法におきましても基本的な算定考え方が示されておるところでございます。  今度、米の流通は、民間流通であみ自主流通米が主体になるわけでございます。したがって、各体系の整合性というようなことから見ましても、自主流通米の価格なりあるいは需給等々を基本的に反映させるほか、生産条件、これは生産費等も当然入りますが、生産条件その他物価事情等も参酌して決めるということになっておるわけでございます。  このような法に示します基本的な考え方に基づきまして早急な検討を急がなければならないところでございますが、当然でございますけれども、昨年の新食糧法審議の際においても各般の御意見等も賜っておりますし、さらに関係方面とも十分な意見を聴取いたしまして決定をいたしたい、さような所存でございます。
  12. 松下忠洋

    松下委員 いよいよ秋には新食糧法が施行されるということになるわけでございますけれども、その運用についてもこれからきめ細かな対応を議論し、そしてまた実行していかなければならないわけでございます。  その新食糧法もとでのいわゆる計画流通米、この価格の安定が極めて大切でございます。そのためには、生産調整の実効確保が何よりも重要でございます。このことにどのように取り組んでいかれるのか、そしてまた計画流通米、これをしっかり確保するために、計画流通米のその制度をしっかりと確立しなきゃいかぬということにもなりますし、そのためにいろいろな支援策が必要でございます。あるいはまた、将来に向けての政府の備蓄、調整保管といったものについて、今までと違った形で、政府も、そしてまた民間も含めて対応をしていかなきゃならないわけでございますけれども、その計画流通米の価格の安定を図るための基本となる生産調整の実効確保、これを中心にしてどのようなふうに取り組んでいかれるのか、その考えをお聞かせいただきたいと思います。
  13. 大河原太一郎

    大河原国務大臣 お話のとおりでございまして、民間流通を主体とした自主流通米、これを計画流通制度に乗せまして、そして需給と価格の安定を図る、これが主眼でございます。したがいまして、全体需給を確保することが一番大事な問題でございます。特に、ちょうちょう申し上げるまでもなく、潜在的な生産力が需要を上回るというような基本的な動向の中においては、一段とこの全体需給の確保が必要であろうというふうに思っておるところでございます。  そういうことでございますので、しばしば申し上げておりますが、しかし一方では、生産者なり地域の自主性というものをできるだけ尊重しながら、生産者団体なりあるいは集荷業者、地方公共団体等が一体的に地域において取り組んでいけるような体制をつくり上げてまず進まなければならないということでございますし、また、御案内のとおり、生産調整実施者から備蓄用の政府買い入れを行うということと、生産調整奨励金の交付をいたす、これを適切な水準を定めまして確保いたすということでございます。  それから、具体的に一番末端の農家の方々に取り組んでいただくのは、取り組みやすいような生産調整の態様、本年から始めました生産調整水田と申しますか、水張り水田等のような方式等々を、農家皆さんが取り組みやすいような実施方式をして、他方では、かつてのような強制感を伴う実効確保措置、これはできるだけやめまして、自主的に取り組んでいただくというような体制で遺憾のないようにいたしたい、さように思っております。
  14. 松下忠洋

    松下委員 新食糧法の施行と運用に当たりまして、生産調整、それから計画流通、備蓄、調整保管というのは極めて大切でございます。今後は国会におきましても我々もまた早急にこのことを検討し、審議してまいりますけれども、それに必要な予算措置というものもございますので、そのことも今回の米価決定当たりましては十分に配慮しながら取り組んでいただくということをしっかりとお願いを申し上げまして、時間が参りましたので質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  15. 中西績介

    中西委員長 栗原博久君。
  16. 栗原博久

    ○栗原(博)委員 この米審への諮問につきまして、徹夜を通しての大河原大臣さんを初めとする皆様のその御努力に深く敬意を表する次第でございます。  また、あわせまして据え置きということでの御諮問でありますので、新食糧法移行する中において、下支えを、米価を守っていただいたことについても心から感謝を申し上げる次第でございます。  その中で、私は、この米価の積算を今担当の次長さんあるいはまた統計情報部の方からお聞きしたんですが、大変精査した数字、ごもっともでございますが、しかし、国際競争力をつけんがために農家が疲弊してはならない、そしてまた、米価を下げんがために一生懸命に規模を拡大して努力しているというふうな、努力することによって米価が下がるというこの現実を私は大変疑問に思うわけでございます。やはり汗を流しましたら汗を流したにふさわしい報酬というものが当然これは農家にあるべきだと思うのでありまして、私は、どうも例年の米価を見ますると、その決定について夜中まで、わかるのですが、財政当局の、こういう時間をかける気持ちもわからないではないのでありますが、新食糧法の中におきまして、もっと国民にも農家にもわかりやすい決定の筋道を立てていただきたいということをまず冒頭に申し上げたいと思うのであります。  その中で、今回、これからまた我々も審議し、そして関連対策をひとつ求めるわけでありますが、今東京協和信用とか安全信用の中で約一千百億に近い不良債権がある、全国で銀行百五十、信用金庫が三百八十三で信用組合は四百二十八と伺っておりますが、ああいうところに対する財政的な投資に比べて、今私どもの農家に対するわずか二百八十何億の関連対策についても、いろいろ農家の方も、ああいうところに多大な金を使っているのになぜわずか二百何十億に、これからいろいろ議論すると思うのですが、こんなに国会で時間を費やすのだろうかという率直な気持ちだけはひとつ大臣初め財政当局にもお伝えさせていただきたいと思っております。  その中で、新しい法律になる前の最後の米価決定でありますが、昭和三十五年から生産費所得補償ということでこの米価決定され、それでまた、この平成二年からは地域方式というものが採用されてまいっておるわけであります。私は、この米価決定の中におきまして、果たしてこういう方法が農家の方で納得できるかということを実は思っておりますが、これについてちょっと御所見をお伺いしたいと思うのです。
  17. 大河原太一郎

    大河原国務大臣 お答え申し上げます。  生産費所得補償方式を昭和三十五年以来採用しておるところでございますが、これはもう委員に対して釈迦に説法でございますけれども、稲作農家生産費もとにして、その労賃について、都市均衡の労賃評価がえをして所得付与をするというのが基本でございます。  この生産費及び所得補償方式に基づきまして、現在では、稲作担い手になっていただく農家、さらにそのように育成していかなければならない農家ということを対象にして考えまして、生産性水準がその地域地域において平均以上の農家対象農家として、いわゆる地域方式でやっておるところでございまして、それによってまた稲作の体質強化という方向にもマッチしておるわけでございますし、さらには国民的な合意も得られる方式であるというふうに思っておるところでございます。
  18. 栗原博久

    ○栗原(博)委員 大臣、わかりました。  私は、この米価、きょう朝までずっと起きておりまして、過去の米価と、そしてまた他の公共料金との比較をちょっと夜にしてみたのですよ。昭和五十一年からことしまで、何ら基本米価は変わってないのですね。それで、政府の販売価格は約一・五倍になっておるわけですね。それから政府の管理経費ですか、これはいわゆる助成金を除いた倉敷料とかそういう国庫の、人件費を含めていると思うのですが、これが約一・五倍になっております。それから販売業者の手数料、販売経費ですね、これは約一・八倍になっておるわけでございまして、政府の関係の経費あるいはまた業者のは軒並み上がっておりますが、農家基本米価は全然変わってない。この現実を見ましても、私は、農家がみずから汗を流すと同時にやはり政府機関もこの管理経費を下げるように、今後とも当然新食糧法においてそれは大きな課題となると思うのですが、これをひとつ御検討願いたいと思うのであります。  私、毎日、朝来る前にいろいろ回って歩くのでつぶさに感じるのですが、例えば公務員においては当時の五十一年に比べて約二・一二倍給料が高くなっている。あるいはまた民間の産業の従事者も約二倍でございます。また公共料金においては、お医者さんにかかります診察料、これは五十一年から今日までで約一・四倍。国立大学の授業料は、これはちょっと比較対象になるのかわかりませんが八倍になっておりますし、JRの鉄道運賃は二・五六倍ですね。あるいは民間とかのバスの料金については二・〇五倍になっておる。あるいは電気代等については二・〇五倍。あるいは都市ガスで一・四八倍と、軒並み農家基本米価に比べて上がっているわけですね。  ですから、今統計の方々等、あるいはまた皆さんがいろいろデータを出しましても、生活している農家の実感といたしましては、これはまあサンプリングの計算いかんにかかわっていると思うのですが、私が冒頭申しましたように、精査していることについては敬意を表しますが、現実の現場の生活は、全然それに対して理解を示していないと思うのでありまして、新食糧法移行しましたならば、十二分に生活の実態に合った形での決定を、特に約百八万トンの政府の集荷が見込まれるわけでありますので、そのためにも、今回据え置きいただいたので新食糧法における米価は何とか守っていただけると私は思って期待をしております。その実感的なことを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきたいと思うのです。ありがとうございました。
  19. 中西績介

    中西委員長 小平忠正君。
  20. 小平忠正

    ○小平委員 大臣、多分けさまで一睡もお休みでないと思いますが、まず、今回のことについて大変お疲れさまでございました。  今自民党のお二方から短時間でございますが質問がございまして、米価に対する基本的なことを大臣に御質問がございましたが、この貴重なお時間を与えられましたので、この後同僚議員であります石破さんが政府質問もしますので、私は大臣に、精神論的なことで、今の米価のあり方、また今の農業の実態等々について大臣のお考え、御意見をお伺いしたいと思います。  それでまず一点、最初に、諮問案が出まして、もう十時からですか、米審会場でこの審議が行われているわけでありますが、言うならば、まずこの米審がまさしく今回も形骸化している。既にげさ五時半ぐらいですか、未明にその方向が、据え置きという方向で決められている。当然、農業団体あるいは生産者を含めて今回は据え置きということで、そういう要望がありました。そして、参議院選挙もこれありで、結論がもう先に見えている、そんなようなことが流布されておりました。それについてはお認めにならぬでしょうけれども、実際にはそういうようなことが巷間流布されておりました。  そういうところで、据え置き自体はよろしいのですけれども、問題は、今食糧庁次長、さらには統計情報部部長からるる説明がございました、これももう何年、要するに何回もこのことは繰り返されたことでありまして、これについても私は疑義がございます。恣意的にこれはつくられたことで、今さらそれを言ってもしょうがない。もう最後の米価です。関係者を含めて、関係団体、生産者を含めてこれについて全幅の信頼をしているかというと、それは私はどうかなと疑問を持たざるを得ない。しかし、一定のルールがございますから、そういう中でこのことが進められてきた。それはそれで一つの行政におけるこれはルールでざいます。  さて、今回そういういろいろなことを、合いただきました資料においてもそういう方程式のもとに進めてこられた。そして同時に、今諮問説明の中におきましても、八万ヘクタールの言うならば減反強化ですね、これもここにうたわれている。こういう方程式はそれはそれとして、心情的に、感情的に、一昨年あのような大凶作がありました、それでお米が大変な不作をした、国民に安定的に食糧を供給することに非常に欠陥が生じた、したがって、緊急輸入をああいうふうにしましたよね。これについて非常に問題もありました。でも、これはパニックを起こしてはいかぬ、また一億二千万国民の皆さんに安定的に基礎的な食糧であるお米を供給するという観点から、ああいう緊急輸入もされてきた。それはそれでやむを得ない処置であると私は思います。  しかし、この大凶作によって、翌年は生産者に向かって、一転、減反緩和をしてくれ、お米が足りないから翌年はたくさんつくってくれ、これをお願いしたわけでしょう。そうすると、農家皆さんは今まで転作、転作とやってきまして、もうあぜなんか取っ払っている。もう転作が定着している。ここで減反緩和して、また田んぼを復元したら、またそこに大変な費用がかかる。とてもやっていられない。そのときに政府説明というものは、営農活性化対策、この残余期間については減反強化はしません、言うならばこういう約束をされたわけでありますね。それで、それならばというので、要は生産者というものは消費者に安定的にお米を供給するためにこれをのんだわけですね、要するに国内の食糧事情を勘案して。ところが、昨年は幸いに大豊作だった。そこで一転、減反強化、八万ヘクタール。  言うならば、農政というものは、もちろん天候にもよりますけれども、農家皆さんの意思とか努力に関係なく、そのときの政治情勢、社会情勢でもって翻弄されているわけですよね。そういうことというのは方程式には何ら入っていない。やれ生産費がどうかかる、労賃がどうだ、あるいは資材がどうだ、そういうことでもっての計算である。私はそんなことで許されていいのかなと。  話をもっと前をたどりますと、食管法、昭和十七年ですか、制定されてから今日まで来ました。これは、一つは日本の基礎的な食糧であるお米をきちんとつくることもありますけれども、第一義的な要請というのは国民に食糧を安定的に供給していくことだったわけですよね。それに、政府の施策にのっとって協力をした。その後、この戦後五十年の歴史の中で、我が国の国民の勤勉な努力もありまして、経済的行為の進捗、発展もあってこういう状況に来た。そういう中で、今の農業はこういうふうになってきた。私はこういうことを思うとき、非常に割り切れない、どうしてもすっきりと納得できないものがあるのですよ。  大臣にお聞きする前に、私は、今回の通常国会の予算委員会で質問したことを今振り返っているのですけれども、昨年、WTOの特別委員会でWTOの条約、これは国会としても承認しましたよね。これは我が国が部分自由化を、ウルグアイ・ラウンドを容認した以上はこれを通さなければまさしくこれが実際に運用されませんし、国際化においても孤立をしてしまう、したがって、WTOについてはこれはいいでしょうと。しかし同時に、同時進行で新食糧法、このことについての審議がされました。これについてはこの後、また与えられた時間で質問いたしますが、私は、これについては十一月からの施行ですからまだ時間がある、年をまたいでことしの通常国会でも審議に十分時間がある、もっといろいろな問題があるから慎重に審議しよう、そういうことを主張したのでありますけれども、数の論理でああいう結果になりました。  それが前段で、私が申し上げたいことは、同時に、そのときに政府は六兆百億円のラウンド対策を打ち出したわけですね。六年間のスパンでやりましょうと。それで、そのことについてまず初年度立ち上がり、補正予算でそれを処置しましたね。私は、このことについて過般の通常国会、予算委員会で、総理や大蔵大臣、もちろん大河原農水大臣にもお聞きしましたけれども、これは財源的な問題ですから、どちらかというと総理や大蔵大臣を中心にしていたのでありましたけれども、補正予算というのは継続性がない、したがって、六年間で六兆百億円というのは決まっているのですから、きちんと農水省さん、本予算に組み入れろと。しかも総理は、昨年のWTO特別委員会で、この六兆円は別枠でやります、こう言明したわけですよね。じゃ、これがきちんともう組み込まれているのですから、本予算でちゃんとやりなさい、そうしなければ継続性もないし、また日本人の国民性というか、時がたつと忘れていきます。当初は国民の多くの皆さんが農業は大変だから六兆円組んでやろう、そう思っていても、だんだん月日がたっていくとそのことが過去のものになってしまう。そんなことの心配もありまして、本予算でやるべきだと。あの時点で、総理、また大蔵大臣、特に総理からは、基本的には次年度からは本予算でやります、しかし、経済動向変化もあるのでそれをここで決められない、状況に応じて補正予算にも組み入れるということで答弁がありました。それは大臣もこの予算委員会におられて御記憶があると思いますけれども、私がそういうことをるる申し上げましたことは、そういうようなことを一つ一つやってくる中において、私は今回のこの米価というものの決め方が、そういういろいろなことを包含して配慮するならばこういう結果にはならないと思うのですよね。そんなことに対して私自身大変な不満を持っているものですから、まず冒頭に申し上げた次第です。  重複になりましょうが、大臣、今回のこの米価決定に対しては、簡単で結構です、まずどのようなお考えをお持ちでしょうか。
  21. 大河原太一郎

    大河原国務大臣 先ほどもお答え申し上げましたように、稲作の体質強化、そのために担い手農家育成なりあるいは組織化するなり、これを進めるということで国民的な合意が得られるような米価決定をいたしたい。それは生所方式に基づいて、地域方式に基づいてやる。  しかし本年においては、豊凶の二年間の大きな段差があるというような点、算定要素について十二分に配慮しなければ相ならぬ、あるいは金利の急激な低下、これに対しても生産費低下の要因としてある程度調整をしなければならない等々慎重な配慮をしたわけでございますが、その背景には、委員もおっしゃいましたようにウルグアイ・ラウンドの合意、これに伴うミニマムアクセス受け入れと、さらには新食糧法への移行というようなことで、稲作農家皆さんのこれに対する不安、懸念等々も十分に配慮しなければ相ならぬ。さらには、とにかく厳しい国際環境もとで我が国の稲作を進めていくというためにはぜひ必要であるとして国内対策を打ち立てて、生産者あるいは地方公共団体、国一体となって現在その緒についておるところでございますが、そういう際の稲作農家皆さんの取り組み意欲、これに対してもいささかでもマイナスの影響を与えては相ならぬということから、今回の米価決定をいたしたわけでございます。
  22. 小平忠正

    ○小平委員 大臣のおっしゃること、お聞きしていると本当にすばらしいことをおっしゃって、それが本当に名実ともにそうであるか、またそのように理解されているかというと、私はどうかなと。やはり言行一致というか、そういうことが今政治に望まれているのではないかと私は思います。  今回の価格決定、この交渉に際して、我々新進党、野党としてもそれなりの行動、活動をいたしました。関係団体からもいろいろな要望も聞き、さらには党内でもいろいろな議論を重ね、そして大蔵省、農水省等々ともそういう作業をいたしましたが、一つその中で、大蔵省とのことなんですが、大蔵省はやはり財源のことを非常に言われますよね、何かというと。言うならば、国家予算というのは今非常に厳しい、財政的に逼迫している、そういうところでこれは大変だ、そういうこと。と同時に、これは直接的なことでなくても、言うならば、財界やあるいはマスコミまたは外圧等々で、農業に対する我が国の農政はどうかという、そのこともあると指摘されるので、そのことも非常に気に、気にというか無視してはできない、そういうおもしか非常にあるわけですね。  そういうところで議論をやりとりしているのですけれども、今申し上げました、補正予算で組むのではなくて本予算でしっかりラウンド対策をやって、そして目的は、農水省予算のシェアをこの際多くしろ。言うならば、何をやるにしてもやはりお金が伴うわけですよね。これから新食糧法施行になって、これから行うことについて全部これはお金、財源が必要です。となると、簡単な話、農業予算を増額するしかないわけですね。それにはあの手この手を使ってそういうことをしなければいかぬ。その一つが、このラウンド対策で六兆円というものを本予算に組み込んでいくように、我々も頑張りますけれども、農水省としても大蔵当局にしっかり働きかける、また関係方面にもその努力をすべきであると私は信じます。また、それについては御異論ないと思います。  しかし、そういう中で大蔵省は、非常にかたいガードでもってなかなかそれは認めてこない。私は、そういう中で残念に思うことは、今我が国のいわゆる農業保護予算と言われるもの、保護措置というものは年々減少している。しかるに一方、アメリカやヨーロッパ諸国は、農業予算というのはきちんと保護がされているわけですね。このWTOが発効して経済の関税化、そういうルールに大きく変わっていった今日もしっかりそういう保護はしている。しかるに、日本はどうなんだと。我が国は今、余りにいわゆる繁栄を謳歌している。しかし、最近では陰りが見えてきた。言うならば、自動車・部品交渉も決着したようであります。しかし、よく見ると、それもまた非常に問題点をはらんでいる。このまま放置すれば、日本の産業というのはますますドーナツ化現象、空洞化現象が進んで、我が国というのは本当にこれからもこの経済の繁栄を維持していけるのか、そんなことを私は非常に危惧しております。  例えば北朝鮮、今まではソ連邦や中国の支援がありました。でも、ソ連邦の崩壊、そして中国のああいう状況によって、そういう今まで頼りにしていた国からの保護がない、援助がない。あの国の農業の実態は、仄聞するところ、今非常に厳しいように聞いております。そういう中で、我が国も果たして今のこの繁栄をいつまでも謳歌できるかといったら、それは保証の限りではないですよね。そのときに基本になるのは、やはり何といっても食糧です。  さあそのときに我々は、この際、これは選択の問題です。確かに皆さんも、米価決定する問題あるいは農業のいろいろな施策を講じるときに、常に経済界やマスコミや消費者やあるいは外圧というか諸外国、そういうものを非常に気にしながらやっていかれる。そのことはわかりますけれども、もっと毅然として、ここで、選択の問題だと私は思うのです。今新しく新食糧法そしてWTOの時代へと大きく時代が変わるときに、今こそ、別に言うと、農業元年と今は皆さん言いますよね。このときこそそういうことを強くやっていかないと、またずるずるずるずる、これからも今までの農政の延長になってしまう。それでは、今、後継者難、経営難、配偶者難、このままいったら農業者はいなくなってしまいますよ。それで果たして、これからの国家百年の大計にどうなのか、そんなことを非常に私は危惧するのですが、大臣、これは大臣のお考えというものを含めて、ひとつ率直な御意見をお伺いしたいと思います。
  23. 大河原太一郎

    大河原国務大臣 御案内のとおりでございます。食糧の安定供給なり、また、農業なり農村が持っておる国土保全なり環境あるいはその地域社会の維持というような大きな役割、これについての国民的な合意というものがなかなかできておらぬ、それが農業施策に対してすぐ経済界等からはね返ってきておるというふうに考えておるところでございます。  私どもは財政当局とはやり合います。やり合いますが、農政上必要な経費は必ず措置しろという姿勢で今までも臨んできたつもりでございまして、今後もその点についての支援というものは何とかきっちり守っていきたいというふうに思っておるところでございます。  そういう意味で、御懸念の御指摘、従来系統の惰性でいくな、ここでしっかり農業、農政の重要な役割を認識して、各般の国民的な合意を求めながら政策の強烈な展開をいたせ、その具体的なあらわれとしての予算等についての確保をいたせという御指摘だと思うわけでございまして、その点については十分意を体してやっていきたい、さように思っております。
  24. 小平忠正

    ○小平委員 新食糧法に今これから入っていくのですが、私は三十分しか時間が与えられておりません、私がなぜこのことをこれだけ繰り返し申し上げるかということは、今新食糧法移行するには、この後政府質問等でもっと具体的な質問が出てくると思いますけれども、生産調整の問題あるいは計画流通米の問題、また備蓄の問題、これはどれをとっても、言うならば一千億台の大変な財源措置が必要なわけですよ。それが今のこの農業予算の中でどうやって組み込まれていけるのだ。それからラウンド予算は、あのようにハードなものでしょう、要するに基盤整備、そういうものを主体にした、言うならば農業という世界的な社会資本を充実する問題でしょう。そうしたら、今新食糧法に行くには、ただ十一月から新しい法律へ行った、それだけではこれは形骸化してしまって、実際には運用されませんよね。これを進めるためには、今私が申し上げたこういう生産調整に対する助成の問題、計画流通米をどうやっていく、すべてここにお金が必要なんですよ。その財源をどう捻出するかということについては、私は、今の農水省の姿勢では絶対大蔵省に勝てませんよ、財源の捻出はできないと思うのです。だから、私はそのことを非常に危惧して申し上げているのです。  そこで、この新食糧法は、附則は別にして全部で九十二条です。この新食糧法、昨年のWTO特別委員会審議もしたのですが、これをずっと第一条から見てみますと、政省令というのが九十以上あるのですよ。すべてこれから決めます、これから決めますなんですよ。だから、何もはっきり見えていないのですよ。  今回も米価諮問で、米価のことは据え置きということを言っていました。これからの問題については、これからでしょう、何ら決まっていないのですよ。しかも、今私が申し上げました財源の問題が、どこから捻出するかということが全然見えていない。また、いろいろな運用のことについても、政省令でもってはっきりこれからだと。そういうことで果たして生産者に、これから農業はこうあるんだ、だから信じてこうやれ、そういうことを堂々と説得、納得できるものがあるのかな、私はそんなことを心配しておるのです。これについて、大臣、いかがですか。
  25. 大河原太一郎

    大河原国務大臣 新食糧法、新法施行に伴う関連の政省令あるいは運用方針等につきましては、早急な決定をいたして、前広に農家皆さんに御理解を求めなければならないということは当然でございまして、我々もそのつもりで現在その準備を急いでおるところでございます。  制度の趣旨に即し、細部に至るまで十分な検討を行った上で、政省令並びにその運用等を決めたいというふうに考えておりまして、これは既に国会論議等においてもいろいろな御意見をちょうだいしております。また、その後も各方面から各般の意見をちょうだいしております。なお、現に我々も生産者なりあるいは流通業者あるいは消費者の皆さんからも意見を聴取しておるところでございまして、とにかく御指摘のような新制度移行して生産者は一体どうなるんだというような御懸念があることも重々承知しておりますので、早急に決定して明らかにしていきたい、さように考えております。
  26. 小平忠正

    ○小平委員 実は新食糧法移行に向かって幾つか質問をしたいと思って用意しておったのですが、時間があと五分ということなんです。  生産調整の参加者の経済的負担を軽減するために助成措置をきちんとするということ、それから計画流通米に対する十分な助成措置を講じるということ、またそのときの出来高によっては備蓄に関して調整保管ということが出てきますね、これについて生産者の負担を軽減するための措置をきちんとするということ、こういうことが財源を伴う問題としては大きなことだと思うのですが、私は、これは三点セットというかそれぞれ連動する面もありますから、それをきちんと一括してやっていただきたいと思います。細部については、ちょっと御質問する時間がなくなりましたので、それはできませんが。  そこで、今北朝鮮の状況は、食糧問題が非常に逼迫どころかいわゆる飢餓の状況のようなことも仄聞しておりますが、いろいろとマスコミの報道等で三十万トン、これも当初は百万トンというような話が出たり、そういうニュースだけが非常に先行している嫌いがあります。十五万トンは国交がないから有償にして、十五万トンは国交がない国に対しては日赤なりを通じて無償で提供する、それでは時間がかかるから有償でしてくれという北朝鮮の要望があるとか、そんなことがいろいろと流れております。  大臣、これについては外務省がその任に当たっていますので、農水大臣にお聞きするのもちょっとあれと思いますけれども、このことについて、人道的な観点からいって、食糧不足で飢えに苦しんでいる隣国の北朝鮮の皆さんにはお気の毒ですから、援助を行うことは我々としても賛成なんですよ。しかし、問題は進め方であって、いろいろと、これは韓国のこともこれありで、そう簡単なものじゃないと思います。善意が、善意の行動が、やり方によっては後に大きく禍根を残すことになるかもしれない。したがって、ここは慎重にやらなければならぬ。しかも行政レベルで、単に外交レベルで秘密裏に行うのではなくて、もっと国民やあるいは国会にもこのことをそれなりの相談というかそこの論議をして、そして進めていただきたいと思います。どうも私どもはそれについて全然知らされておりません。  これらについて、今の進め方、それから三十万トンという量の問題、これについては大臣は率直に言ってどのようにお考えになられておるのか、お聞きしたいと思います。
  27. 大河原太一郎

    大河原国務大臣 北朝鮮に対する米の支援問題につきましては、御案内のとおり、政府として人道的な見地に基づきまして日韓関係等も配慮して進める、外交的な枠組みの中でこれを進めるということで、現在実務者協議等が行われておるところでございまして、私どもは、その協議の過程において、緊急輸入米を中心とする在庫状況等をにらみながら支援数量について決めていきたい、さように考えておるところでございます。  なお、実務交渉等が続けられておりますので、その推移を見て定めていきたい、さように考えておるところでございます。
  28. 小平忠正

    ○小平委員 外務省からも見えていますね。これは聞いておいてもらいたいのですけれども、この問題について、私は基本的には援助してあげたらいいんじゃないかと思っています。そして、今大臣もそのような御答弁がありましたが、これは外務省が中心になってやっておられる。これは外交交渉だからそうでしょうけれども、問題は、中身はお米の問題ですよね。これについては大いに、今までの経緯の中で、一昨年の大凶作から昨年の大豊作というその中で生産者も翻弄された。それから消費者も、パニックまでいかなくても、ああいうお米不足でもって非常に社会問題にもなったという、そういう過程がある直後にこの問題が出たわけですね。  したがって、これについては、私は単に外交での交渉ということではなくて、このことがきちんと国民のコンセンサス、今大臣も言われた韓国との問題、これもありますし、また国会の中でも我々は米問題についていろいろと与野党間でも議論してきたわけだ。そういう中において、一遍も国会にこういうことが協議がなく淡々とやっていってそれでいいのかというそこのところを真剣に私は考えてもらいたいと思う。しかも、相手は国交のない国です。実際に本当に人道上の見地からそれが使われるのか、ほかの目的で使われないのか。それは相手はそういうことを言っていませんが、そんなことも含めて、これは非常に大事な問題であると思いますので、ひとつ外務大臣でもおられるのなら基本的な姿勢をお伺いしたいのだけれども、ここは農水委員会の場ですから以上でやめますけれども、農水大臣、今我が国はこれから備蓄の問題等々についても余剰米の処理ということもありますし、このことは私は大事なことだと思うのです。  したがって、その国内的な問題とそれから国際間でのことが、今後、言うなら良好な関係につないでいけるようにするためにもこの処理を誤ったんでは大変なことになる。軽々に、今国内に米が余っているのだから百万トンなんてそんな話が一部の議員から出てくる、そんなことじゃいかぬと思うので、そこのところはきちんと進めていってもらいたいし、我々の意見も、私の言っていることも理解をしていただきたい、こう思います。
  29. 中西績介

    中西委員長 時間が参りました。
  30. 小平忠正

    ○小平委員 時間ですか。それじゃ時間が参りましたので、以上申し上げて質問を終わります。ありがとうございました。
  31. 中西績介

    中西委員長 辻一彦君。
  32. 辻一彦

    ○辻委員 米価はけさ諮問案が、夜明けあるいは夜が明けてから非常に関係者の皆さんの御苦労でまとまったということを喜んでおります。まず、大臣初め食糧庁長官ほか皆さん非常に御苦労されたことに敬意を表したいと思います。  ここしばらく私たちは全国各地の米地帯をかなり調査に回ってみました。全国農協中央会がやった東と西の現地検討会にも、西の方にも参加をし、また北海道の日本で一番生産量と面積の多い空知の方へも一日調査団で行き、また米どころの新潟にも一日参り、我々お互いに、自分の県内はもちろんかなり詳しく歩いて実態を実感しているわけであります。そういう中で、農家皆さんが全部思っていらっしゃることは、一つは新しい法律に、新食糧法、新法に移ることについての不安がいろいろあるという、どうなるのか、これからこの新法のもとに農業は大丈夫かという、こういう気持ちが非常に強いと思ったのですね。  したがって、一番大事なのは、そういう不安を除くということが日本のこれからの農業のために大変大事であろう。そういう点で、米価を何としても、これはもう最低皆さんの御希望は、据え置きをやってくれ、現行価格を維持してくれと、こういうところに当面まず第一にあったと思うのですよ。そういう点で、今回の米価が実質的に現行価格が維持をされ、据え置きになったということは、一つのそういう不安材料を除いたという点で評価されるべきものであるというように思っております。  もう一つは、やはりどうしても新法移行に伴う、これは幾つかの点がありますが、言うならば生産調整をどうするのか、備蓄をどのようにやるのか、それから計画流通米がきちっと一番大もとの流れになるのかそれとともに政府の買い入れ米の新しい価格をどうするのか、こういうものに対する不安がいろいろあると思うのです。これを十一月一日を待つのではなしに今の段階から論議をし、そして将来における手がかり、足がかりをきちっとベースをつくっておいてほしい、こういうことが非常に強い願いであったと思うのです。論議は後にするとして、この米価決定に、諮問案の決定に際して、十一月以降のこれからの問題についてもお互いにしっかりやらなければいかぬということを確認されたということも意義がある、こういうように思っております。  そこで、基本的な点としては、やはり農業・農村・食糧基本法を制定してくれ、これは国民経済の中における農業の位置をしっかり位置づけをして、食糧安保と同時に環境、国土保全のこういう大事な意義を法律の中に明確にうたい込んでくれ。そして、農家でも農業を体験する子供がだんだん少なくなっていく、そういう子供さんに、農業の具体的な体験をし子供の時代から農業の重要さをしっかりと身につけていく、教えていく、こういうためにも基本法の制定が非常に大事だ、こういうことがこれからの貿易ルールの確立とあわせて非常に望まれているという感じがいたしました。  そこで、そういうことを前提に置いて私は二、三お伺いしたいんですが、一つは、米価据え置きにされて、諮問案が出てほっとした感じがしますが、問題は、統計のルールとかいろいろ見て、随分あるように感じた。この問題は、去年の米価を決めるときにも、いわゆるかつてない大凶作という中でこの統計の手法というものの問題が出されたんですが、今度は今までにない豊作という中で同じ問題が問われている。一年間その問題は論議をされながら必ずしもその後の経過の中で詰められておらずに、急にこの時期になって凶作時と豊作時における問題点が一遍に出てきた感じがします。  その一つとして私はここで挙げてみたいんでありますが、それは、平成五年の大凶作のときには作況七四、だからマイナス二六ポイント。普通はこれは米は上がるわけですね。もし食管法がなくて自由にしておったとしたら、物すごい価格は上がっていく可能性があった。それは食管法で抑えられたと思いますが、ともあれ据え置きになった。ところが、去年の大豊作で指数は一〇九、ポイントプラス九にあるのですが、ここは調整額等を考えないとすると明らかに下がっていくんですね。ポイントからいえば二六のマイナスポイントとプラス九のポイントは約三分の一。大凶作のときに据え置きになって、豊作でポイントは三分の一であるのに下がってしまうという。これは一体、統計ルールからいって、やり方は正しいのかもしれないけれども、実態と余りにもかけ離れておるのではないか。この問題もやはり突き詰めて論議をし、解決していく、実態に合わないならそのルールを見直していく必要がある、こういうふうに思うのですが、これはどう考えていらっしゃるか、お伺いをしたい。
  33. 大河原太一郎

    大河原国務大臣 今回の算定当たりまして、二割以上の増収農家等を対象農家から除外する。昨年は、御案内のとおり平成年産算定基礎に入ってまいりましたので、それについては二割以上の減収農家をやはり対象外とするというようなことで、いろいろ統計上の問題があることは確かでございますが、一つには、決定米価との関係で申しますと、米価決定が実は作柄が確定しないときでございます、七月、生産者米価は。出回りが早くなった今日の米の状況から見て、大体七月初旬には決めていくということでございまして、最終の実収、作況というか、そういうものについて必ずしもそれを前提とした米価算定をしておるわけではないわけでございます。昨年もやはり同様でございまして、米価決定をした当時、七月の初旬でございますが、それはあのような、作況指数一〇九になるような作柄になるとはだれも予想していなかったところでございまして、実はそういう意味で、その年全体の作況、当年産の米についての作況米価決定についての関係がなかなかに難しい問題があることを御理解願いたいというふうに思うわけでございます。
  34. 辻一彦

    ○辻委員 限られた時間で詳しい論議はできぬのですが、一つ矛盾点を、問題点を挙げておきたいと思うのです。これは検討してほしいのです。  それは、今までは災害時は二〇%の足切り、今度は矛盾があるというので豊作時における二〇%上の足切りが出た。これは半歩前進と思います。しかし、大事なのは、一体凶作豊作と同じように足を切ることでいいのかどうかという問題です。仮に一反に十俵とれるとして、凶作のときには五俵になり、場合によってはゼロになることもある。豊作は、十俵とったのが十五俵になって、二十俵とれるというようなことはまずあり得ない上思うのですね。ここは豊作凶作の実際出てくる大きな違いだと思うのですが、それを同じように二〇%上下足切りをやる、ここに一つ問題点がありはしないか。だからこの例が、例えば北海道の平成五年、六年に百十九のそれぞれ調査をしている。そのときに、凶作のときには足切り百十が切られて七つしか調査農家が残らなかった、百十九の対象の中で。ところが、去年の豊作時には、同じ百十九でも九十二が残って、二十七が切られている。これを見ると、私は実態の乖離は、ここらの問題を一つ一つ突き詰めて検討しないと、せっかく統計ルールでちゃんとやっても、その結果が実態に余りにも乖離する場合には非常に問題が出てくる。この中身を一々論議する時間もありませんから、問題があるということ、そして来年の新しい政府買い入れ米の価格を決めるためには、十分ひとつ合理性を持つように、問題点があれば論議をして解決するように詰めてもらいたい、こういうことを要望しておきます。  それから、いろいろあるのでありますが、新法に移る場合に、さっき申し上げた三点があるのですが、その場合に生産調整をきちっとやれるかどうかということが一番がなめだと思うのですね。これがやれないと全部ががたがたとしていくだろう。ところが、当初に手挙げ方式ということが非常に言われた。だから、農家皆さんの中には、米はつくりたい者はつくってもいいのじゃないか、こういう気持ちもある意味においては相当浸透したと思うのです。それから、いろいろな意味のペナルティーを今度外していくとすると、一体そういう状況の中で生産調整の実効性をどういうふうにして保証するのか、担保していくのかということが大変大事なのですが、私は端的に言えば、正直に生産調整に参加した人たちがばかを見ないようなやり方をしないといけないのじゃないか。北海道や新潟あたりの専業農家と接触しても、やはり生産調整はやらなきゃいかぬという感じを持っていらっしゃる方が事実相当あると私は思うのですが、その人たちが生産調整に参加をして正直者がばかを見る、こういうことのないように、助成策といいますか、そういうことを考えなくちゃ新法の基本が崩れるおそれがあると思うのですが、これについてどう考えていらっしゃるか、お尋ねしたいと思います。
  35. 大河原太一郎

    大河原国務大臣 新食糧法もとにおきます需給と価格の安定を図ることの基本の柱の一つが、ただいま御指摘のような生産調整の問題であるというふうに思うわけでございます。  生産調整につきましては、従来の経緯から見て、生産者なり地域の自主性というものをできるだけ尊重した進め方をしなければならない、これも確かでございますけれども、やはり全体需給との調整があるわけでございまして、これについては格段の努力が必要だと思うわけでございまして、地域ぐるみにおいて、生産者なり農協あるいは関係機関一体となって進めなければならないということはもう当然のことだと思います。さらには集荷業者まで、農協の皆さん生産農家に直結していますからその点ではあれなんでございますけれども、商系の人たちもこれについて十分参加をして協力してもらわなければならないというふうに思っておるところでございます。  さてしからば、そういう体制を進めながら、助成の水準等々についても十二分に配慮をして、適切な結果が出るようにという努力をしなければならないと思っております。そういう意味で、これから決めてまいります助成水準等も本当に慎重に、その点について各方面の意見も聞きながら定めなければ相ならぬというふうに思っております。  ちょっと余計なことでございますけれども、実は先ほども御指摘がございました六十万ヘクタールを、大豊作に伴う自主流通米の需給の大幅緩和と価格の下落ということから、この七年産米については八万ヘクタールの追加調整をお願いしたわけでございますが、その過程を見させていただきますと、その点については末端の農家も協力的な、単なるお手挙げで勝手にできるというようなことではなかったと思って非常に私どもとしては心強く思っているわけでございまして、やはり今度の新食糧法もとにおきましては、民間流通の自主流通米が主体でございますから、その全体需給の調整については農家皆さんの主体的な取り組みをぜひ一段と強めていただきたい、国はその責任についても十分果たしていく、さような姿勢で臨みたいというふうに思っております。
  36. 辻一彦

    ○辻委員 時間がもう来ましたので、私は、できれば備蓄、計画流通米、それから国の買い入れ価格等々の問題について二、三伺いたいと思いましたが、これはまたの機会にいたしたいと思います。  最後に、けさ、米価諮問案が与党調整会議等でかなり論議をして確認された際に、やはりこれからの、十一月一日以降に向けて先ほどの四点について十分な取り組みをするという政府の言明も、文書も確認したわけですが、これをぜひしっかりやっていただきたいということを強く要望して、質問を終わりたいと思います。どうもありがとう。ございました。  終わります。
  37. 中西績介

  38. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 さきがけの玄葉光一郎です。  私も、去年に続いて農林水産調整会議のメンバーとして、今回夜通しで政府・与党の調整のメンバーに若輩ながら加わらせていただいていたわけでありますけれども、この間の、ここに至るまでの大臣初め食糧庁長官そして食糧庁皆さん、もちろん次官の御労苦に心から敬意を表したいというふうに思います。  この中で、先ほどもお話がありましたけれども、米価算定値のサンプルのとり方とか、私もいろいろ疑問があるところではありますけれども、もう既に質問がありましたし、せっかくの大臣への質問の機会でもありますから、より根本的な問題について、つまりは農業基本法の見直しの問題、時間があれば農産物の貿易ルールの問題について、二、三点質問をさせていただきたいと思います。  昭和三十六年に制定をされた農業基本法、私はまだ生まれてもいなかったわけでありますけれども、当時農業の憲法だと言われたというふうに報道で聞かされました。しかし、三十四年前と比べて相当大きな環境変化がございます。これだけ農産物輸入がふえるということを果たして当時予想されたかどうか。あるいは農業の担い手不足、農村の疲弊、あるいは農産物の安全性へのこれだけの関心の高まり、同土保全あるいは安らぎの場としての農村機能への評価の高まり、そういった問題だけ挙げても、さまざまな状況変化が見られるところであります。  農業の憲法は、本物の憲法とは違って平和とか自由とかそういう普遍的なものを包含しているわけではありませんから、より抜本的に、私からすれば、環境が変わった、ほとんど変わったと思われる時点でもっと早く見直し作業を進めてもよかったのではないかなと思うぐらいなのでありますけれども、国民にとって農業とは何なのか、食糧とは何なのか、農村とは何なのかそういうことを明らかにすべく、農業基本法の見直し、あるいは場合によっては全体を衣がえして新法にしてもいいと思いますけれども、そういった新法の早期制定を求めたいと思いますけれども、その件についての大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  39. 大河原太一郎

    大河原国務大臣 現行の農業基本法につきましては、ただいまも委員が御指摘がございましたように、昭和三十六年、高度成長が始まるときのものでございますし、また国際環境も今日ほど厳しくない、あるいは食生活もどんどん変わり出しておりますけれども、まだまだ食生活革命と言われるような段階まで来ておらなかった。各般の状況変化があったことはもう当然でございまして、そういう視点から、今日の新しい農政の課題なりあるいは国民的な課題というものから、当然見直さなければ相ならぬというふうに思っております。  これにつきましては、委員案内のとおり、昨年のガット・ウルグアイ・ラウンド農業合意のための国内対策におきましても、政府としても「農業基本法に代わる新たな基本法の制定に向けて検討に着手する。」ということを明らかにしておりまして、現在これについて、資料の収集なりあるいは海外の調査なり、あるいは予備的な関係者の意見聴取等で準備を進めておるところでございます。  委員御指摘のように、単なる農業政策とか農業経営なんという視点だけではなくて、食糧とか消費者の視点とかあるいは流通確保等の食糧全体の問題、さらには大事な、今御指摘がございましたような農業の基本的な役割等々を明らかにした内容で固めるべきであるというふうに現段階では思っておるところでございます。     〔委員長退席、鉢呂委員長代理着席〕
  40. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 私が見るところでもありますけれども、ある意味で作業がもっと早く進んでもいいのではないかという気持ちがあるのですね。  作業の進まない理由の一つかなというふうにも感じていることは、国民的な合意を得る作業というのがどうもうまくいってないのではないか。つまり、今回新法をつくるなりあるいは見直しをするなりにしても、国民的な合意を経済界にしても消費者にしても得なければこの意味は半減するというのは、全くそのとおりというか、私自身そう思っているわけであります。それについてはもちろん政治家もその作業を一生懸命しなければいけないし、努力不足だと言われれば、そうかもしれないと反省をして、さらに頑張らなければいけないというふうに思っておりますし、さらに言えば、農業団体ももっと熱心に経済界なんかに語りかけてもいいのではないかという気持ちもあります。さらには、これは質問にもなるのですけれども、農水省自体ももっともっと経済界あるいは消費者の方とひざを突き合わせてかんかんがくがくの議論をする、本格的に始めるということをやらなければいけないのではないか。どうもそれが何か、凶作があって、国民的な合意を得る環境というのは少しずつ実はできてきているにもかかわらず、進まない一つの理由になっているのではないかと思うのです。そのことについて御所見をお伺いしたいと思います。
  41. 大河原太一郎

    大河原国務大臣 新たな基本法については、一番大事な点は、御指摘のように国民的な合意のもとにおける、また農業者のための基本法だけではないのだ、むしろ国民全体のための基本法というような認識を持って取り組むべきだと思うわけでございます。そういう点では、我々としてはやはり今御指摘のような広い範囲、経済界もあれば言論界もある、あるいは消費者の皆さんもある等々、各般の方面に対してこの問題を提起し、その御議論をいただきながら進めなければならないというふうに思っておるところでございます。  ただ、基礎的な資料の収集なり、あるいは海外の調査とか、その他準備的な段階が現在でございますので、委員のお受け取り方のように、まだまだそこで足踏みしているのではないかというような御指摘はまことに残念でございますが、その点については、いよいよこれについて積極的な取り組みをいたしたい、さように思っております。
  42. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 我々も頑張りますから、お役所の方もぜひよろしくお願いをしたいと思います。  実際に農家皆さんと話をしていて、私ども政治家の心にずしりと重く突き刺さる一番の言葉というのは、農政に展望がないと言われることであります。今回、米価の要請を生産者の方々から受けていて、ある若い農家の人が、我々は今回、価格水準を何が何でも維持とかそういう問題よりも、極端な話、展望さえ見えれば、先の見通しさえつければもうそれでいいのだ、それが最大の要請だというふうにおっしゃった方がおりました。私はなるほどなと改めて思ったわけであります。  展望を描く上で大事なことが幾つかあると思いますけれども、一つは、自給率というのをきちっと堅持するということをどこかで明言できないかということ、それともう一つは、農産物の貿易ルールというのが今後どうなっていくのかというのがある程度見えてこないかどうか、そのことだと思うのです。自給率の問題について、その堅持について、今質問をさせていただいた基本法の見直しとか新たな法制定の際にこの自給率の問題についてはその堅持を明らかにしていただきたいなというふうに思うのでありますけれども、その件について大臣の御所見をお伺いしたい。
  43. 大河原太一郎

    大河原国務大臣 委員御承知かと思うわけでございますが、昨年の農政審議会の答申におきましても、先進国に比べて異常に低い自給率、さらに低下をする傾向という点について、これに対して早急な歯どめをかけるというような対策は必要であるということでございます。  それを受けまして、実は平成十七年度を目標とする農産物の需要と供給の長期見通し、これは単なる単純な数字ではなくて、やはり意欲的な見通しを立てたいということでございます。お話にございましたように、生産者の方が意欲を持って農業経営に取り組めるような生産の方向を示すとか、あるいは消費者、実需者のニーズに即した農業生産の対応をするとか、あるいは消費者の皆さん等に視点を当てた、安全とか良質とか、あるいは合理的な価格でこれを供給できるような生産の対応をするとか、そういうような視点を置いた一つの見通しを各作物別に現在作業中でございまして、この秋にはこれを仕上げたい、その結果として自給率というものも出てくるというふうに思っております。
  44. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 もう実は質疑時間がほぼ終了したということでありますが、貿易ルールの問題について、これは質問ではなくて意見として申し上げたいのでありますけれども、もう申し上げるまでもなく、大臣御承知のとおり、ウルグアイ・ラウンドのときは食糧過剰状態でございました。今、環境が変わりました。レスター・ブラウンのような指摘もあります。あるいは、環境保護団体も大分理解を示してくれています。ありとあらゆる場で、ポスト・ウルグアイ・ラウンドに向けた農産物の貿易ルールづくりに向けてより積極的な世界の場での御発言を改めてよろしくお願い申し上げて質問とさせていただきたいと思います。  ありがとうございました。
  45. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員長代理 以上で玄葉光一郎さんの質問を終わります。  続きまして、山原健二郎さん。
  46. 山原健二郎

    ○山原委員 急激な円高と農産物の自由化の中で、今、全国の農村、漁村が大変な苦境に陥っていることは大臣も御承知と思います。  そこで、私は先日、愛媛県のミカンそれから真珠、これは日本一です、それからハマチ、この地帯を回りましたが、輸入ラッシュの中で大変な苦境を味わっておるというのが第一点です。私の県は高知県ですが、ここでも、園芸農業の王国と言われたのですが、ことしは過去三年間に比較して百億円の減収という結果になっておりますし、また、中山間地におけるショウガの問題にしましても、中国からの輸入のために大打撃を受けているという状態がございます。  ところが、二十七日に政府決定しました円高・経済対策諸施策、これを見ましても、急激な円高から日本の農業、漁業を守る施策は何も入っておりません。ないところか、高コスト構造の是正ということで無理難題が押しつけられている、こういう感じがするわけであります。これでは、現在苦境にある農業者、漁業者に早く見切りをつけろということではないのかと感ぜざるを得ません。  この点について、最初に大臣の見解を伺っておきたいのです。
  47. 大河原太一郎

    大河原国務大臣 野菜その他農林水産物の輸入の増加等については、国内あるいは国際的な需給関係とか、品質とか、あるいはその消費の形態が、端境期的なものが周年化するとか、もろもろの原因がございまして、一口で言えば品質なり需給、価格、やはりそういう問題で、それに円高が拍車をかけてきておるということであると思います。  これについては、中長期的にいえば、構造改善と申しますか、生産性を上げることがやはり主眼となりますけれども、委員御指摘の先般の円高対策の中におきましても、農業生産に対する生産資材の円高メリットを十二分に還元するという対策を当面進めなければならぬということで、現在具体的に主要な生産資材等についてその実態を明らかにし、また、当面できるものはしていく、肥料なり農業等についても可能な限りの進め方をいたすということにしております。  他方では、直ちに影響を受けております関係の業界等に対しての低利融資の道も開くことにしておりまして、その応急対策等についてもとにかく万全を期していきたい、さように思っておるところでございます。
  48. 山原健二郎

    ○山原委員 この地域実態とか農村、漁業者の意見とかいうものを申し上げる時間がないものですから。  次にいよいよ米ですね。  これは日本農業の根幹が突き崩されるという問題でございまして、真っ先に切り捨てられるのは条件不利益地帯ということになるわけです。政府は、米市場開放を受け入れる際に、中山間地域対策を重視するということをしばしば言ってまいりましたが、果たしてそうなっているか。今回の米価をめぐる動きを見ましても、地域算定方式ということで、生産費が高くつく中山間地などの農家は最初から除外して算定する方式が今度もとられているわけでございます。これで一体中山間地域対策か全く逆になっているのではないか、新政策で一握りの農家以外は切り捨てるということではないのかという意見がどこからも出てくるわけでございます。  しかも、今の算定方式自体が多くの農家にとっては採算の合わない方式に改悪されているわけでして、十九年前の価格水準のままで農家稲作に安心して取り組むはずがないわけですね。生産者が人並みに生活できる基準で米価算定に当たるべきであって、最低二万円の価格にすべきであるというのが私どもの主張であります。  これについて見解を伺います。
  49. 大河原太一郎

    大河原国務大臣 繰り返して申し上げますが、米をめぐる諸情勢等から見まして、私どもといたしましては、稲作の体質強化ということで、やはり稲作について生産性の高い農家をできるだけ育成していく、あるいは現に生産費調査でも、組織化集団化というようなことによるコスト低減の効果をはっきり示しておりますので、組織化集団化ということを通じて中小農家皆さんにもコスト低減に対応していただくということで、とにかく生産費及び所得補償方式、これについては方式自体についてなお議論がございますが、米だけについてこの生所方式が適用されておるわけでございまして、国民的な合意を得るような価格を決めていかなければ相ならぬということでございます。  それで、今もその点について、中山間地帯等について問題があるとおっしゃったわけでございますけれども、我々としては地域方式というものを採用しておるところでございます。それで、実は政府買い入れ価格については、政府米にしか依存できない地域というようなところがございますが、流通量の大体七割は自主流通米として流通をしておるわけでございまして、農家手取りは、銘柄にもよりますけれども、政府米に比べて三千円、四千円というような、そういう割高な収入が確保されておるということでございます。  政府米依存地域等についてはどうだという御反論もございましょうが、現在はむしろ自主流通米方式、今度の新食糧法では専らこれを中心として流通するという方式でございまして、それによる所得の確保が図られているということでございまして、御指摘のような頭から二万円というようなことについては、我々としてはそのお考えをとりにくいわけでございます。
  50. 山原健二郎

    ○山原委員 安全な食糧を安定的に供給するというのが国民に対する政府の任務であるわけです が、この点で、今度北朝鮮の問題が大変クローズアップされておりますが、一昨年百七万トンという米を我が国に輸出してきました中国、今度は米輸出の禁止に踏み切っているわけですね。世界の米需給に重大な影響を与えておるわけですが、主要な生産国であった多くのアジアの諸国が今工業化の問題で米生産の停滞あるいは減少が生まれているわけでして、そういう中で、世界的に見ましても食糧の安定的供給に大きな懸念が生じているわけでございます。  こういう世界の流れを見ましたときに、今カロリーベースで三七%まで落ち込んだ日本の食糧生産力をよみがえらせることは、国民、消費者への責務であろうと考えております。  食糧自給率を大幅に引き上げていく姿勢が政府にあるのかという問題ですが、我が国の自給率を引き上げようと思えば、各国農業の維持発展が図られるよう輸入制限措置を含めた農産物貿易ルールへとWTO協定を改定することがどうしても必要だと思うわけでございます。直ちにこの問題については取り組むべきであって、もともと米を入れるのが間違っておったという声さえ農水省の中からも出ているわけですからね。そういう点から考えまして、WTOの改定についてどういうお考えを持っておるか伺いたいのです。
  51. 大河原太一郎

    大河原国務大臣 お答え申し上げます。  結論から申し上げますと、WTOの協定は本年四月一日から協定の実施がされたところでございます。国内法もこれに伴って行われたところでございまして、直ちにその協定の変更等を求める考えはございません。  今後の問題といたしましては、御指摘のように、世界の爆発的な人口増加あるいは食糧生産の停滞、環境問題等々各般の問題から、各国が自国の農業資源を最大限活用してその安定的な供給を図る、安全保障も確保する、あるいは環境の保全を図る等々の課題に取り組むべきだと思うわけでございまして、今後のポストウルグアイ・ラウンドの交渉等に向けまして、今日ただいまからそれらの農産物についての貿易ルールの修正等については努力をしていかなければならないという点については考えておりますが、直ちに協定そのものの改定というようなことについては考えておりません。
  52. 山原健二郎

    ○山原委員 当面WTO協定に縛られるもとでも、日本農業を守るために、一つの問題として義務輸入米、初年度四十万トンの用途を援助米にすべきであるという見解を私どもは持っておるわけですが、減反しているのに輸入すること自体が矛盾であるのに、その輸入によってさらに減反が強化される。これは農民が納得するはずがないわけでございまして、少なくとも輸入米は援助米に充てる、そういう措置をとるべきだという思いがしているわけですが、この提案についてどのようにお考えになりますか。
  53. 大河原太一郎

    大河原国務大臣 お答え申し上げます。  ガットの規約によりますと、内外無差別の原則と申しまして、輸入した米についても国内の米と同等の取り扱いをしなければならない、すなわち主食なり加工用等々に向けるというわけでございまして、全量を援助その他輸出に向けることは国際的な約束事としてできないということを申し上げたいと思います。
  54. 山原健二郎

    ○山原委員 かみ合うような論議ができないわけでございますが、時間の関係で最後に、高知県が出しております、要請をしているわけですが、農地保全の新制度というのが出ておりまして、これは農業新聞等にも大きく出ているわけですが、これは農地保全の新制度として、採算が合わず耕作放棄された土地を市町村が直接買い上げ、管理する事業に国が助成をするというものでありますけれども、これについてどういうお考えを持っているか。私も、今これを推進せよとかいう立場ではありませんが、こういう一定の提起について、お考えがあればこの際お伺いしておきたいのです。
  55. 野中和雄

    ○野中説明員 高知県の方から、一定の農地を特別保全区域として指定をして、市町村が買い上げあるいは管理をしたらどうかというような御提案が確かにあったわけでございますけれども、私どもといたしますと、この中山間地域の農地の評価でございますが、これはいろいろな多面的な機能を有していることは事実でございますが、地域ごとに定量的にこれを一律に評価をするというような手法が確立をしておりません中で、どういう保全農地をだれがどういう基準でどういう手法で指定をしていくのかというような点、問題があろうと思います。また、仮にこの地域の指定が可能であるといたしましても、その買い上げる経費あるいはその維持管理の経費というのが相当かかるわけでございまして、これがその市町村の負担になってくる、あるいは国等の補助があればそういう負担になってくるわけでございますけれども、そこまでやるということにつきまして果たして国民的コンセンサスが得られるのであろうかどうかというようなことなどの問題があろうかというふうに考えておるわけでございます。  耕作放棄地の維持の問題は確かに重要な問題でございますが、私どもといたしましては、できるだけ地域担い手の方にこれを保全、管理していただくということを基本に施策を進めているわけでございまして、当面担い手がいないところも確かにある。そういうところにつきましては、農地保有合理化法人が中間的にこれを持つあるいは借りて、そして保全、管理を行うというような方策も講じているところでございまして、これに関連をいたしまして、そういうような農地保有合理化法人が保全、管理を行うために行います管理耕作に必要な経費等につきまして利子助成を行うというような措置も、このたび七年度から新たに講じたというようなことでございます。  また、いろいろな地域の実例を見てみましても、都市の住民の方の御協力をいただきながら棚田等の地域を保全をして地域おこしにも活用するというような事例もあるようでございまして、私どもといたしましては、いろいろな今申し上げたような方策をとりながら、耕作放棄地の有効利用、地域おこしへの活用というのを進めてまいりたいというふうに考えているところでございます。
  56. 山原健二郎

    ○山原委員 時間が参りましたので、これでおきますけれども、これは四苦八苦の中で出てきておる一つの方策だと思いますね。そういういろいろな試行錯誤をしながら提案もしていくというのが今の農村の実態ではないかと思いますし、特に市場開放のときには農村に対しては十分なことをやるんだということを言ってきた政府の手前から考えましても、しかしこれを見ても、今度の緊急円高の問題に対しましてもやはり農村対策というのは全く出ていないということでは、これは農民は納得しない、また日本の消費者も納得しないと思いますので、その点を申し上げて私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  57. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員長代理 これで農林水産大臣への質疑は終わります。大変どうもありがとうございました。  続きまして、質疑を続けます。石破茂さん。
  58. 石破茂

    ○石破委員 御苦労さまでございます。  私も米価に携わって十年目になります。農林水産委員会に籍を置いて八年目になりますが、以前からこの日に委員会をやるというのはどういう意味があるのかなという気がしています。つまり、この時間に米審が開かれているわけです。以前は国会議員も米審の委員に入っていたことがありますが、今はこの時間にもう諮問案が出されている。そして米審が動いているわけですよ。ここでの議論というのは米審に何ら反映されるわけでもないのですね。行政価格ですから、農林水産大臣がこれを定むるというふうになっていますから、この議論は反映させなくてもいいという考え方もあるのかもしれない。しかし、これからまた十一月に新しい米価も決めていかなければならぬということであります。  そこで、この議論と、そしてまた米審、米価、こういうものがどういう関係にあるというふうに、これは感想で結構です、お考えで結構です、どのように思っていらっしゃいますか。
  59. 谷津義男

    ○谷津説明員 石破委員のお話のように、ただいま審議会が一緒に開かれでいるわけですね。しかし、これは、答申案をつくるときにおきましても、いろいろな御意見を総合的に勘案しながら答申案をつくると同時に、その答申を踏まえて適正な価格決定するに当たりまして、当然この審議の中身というのも加味されるということであります。
  60. 石破茂

    ○石破委員 官房長、ちょっとお尋ねしたいのだ。これから先、また十一月に決めますよね。確かに今政務次官がお答えになったとおりです。建前はそうでしょう。私が政務次官でもそう答えると思います。ただ、実際にずっと長い間やってみて、実際もう諮問案が出ている。午前五時とか六時とか、そういう時間に出ますよ。実際に報道されているのは、それで決まりだという話だし、それが動いたという話も今まで聞いたことがない。  これから先、十一月にまた決めていく、新食糧法案が動いていくわけです。そうすると、この委員会の場の議論、そういうものがその前にあってしかるべきものじゃないのかなというふうに思う。少なくとも同時並行的に決まっていく。確かに、審議会の答申を経て、そしてまた大臣が決める、形式はそのとおりですよ。実質的な話として、やはりこういうような議論というものをきちんと反映させるためには時間差というものを置くべきじゃないのかなというふうに考えますが、行政当局はどのようにお考えですか。
  61. 高橋政行

    ○高橋説明員 米価決定、その他もろもろ行政価格を決めておるわけでございますが、我々そういう価格決定当たりましては、いろいろな方面からの意見といいますか、御要望あるいは御意見なりも参酌しながら当然価格決定に当たっていくわけでありまして、そういう場合に、国会での御論議、そういったものも十分に我々としては考えていくということは当然のことかというふうに思っております。  それから、ただいまお話がございましたように、今回の場合でございますと、既に政府諮問をしている、そういうような状況においての論議がどういうものかというようなお話がございましたが、これは議会のことでございますので、私が余りとやかく言う話ではないと思いますが、そもそも議会というのは、いろいろな議論を通じながら国民の前にそれぞれの問題なりを明らかにしていくというような観点からいたしますれば、今回の米価なりあるいは価格決定に当たっての政府考え方にどのような問題があるのかないのかということを国民の前に明らかにしていくことも非常に大きな意味のあることではないかというふうに思っております。
  62. 石破茂

    ○石破委員 まことに官房長のおっしゃるとおりなんですよ。けさのニュースを見れば、もうこれで決まったというふうに書かれるわけです。これだけ下げなければいけないのに政治加算がなされたというふうに世間には報道されるわけですよ。実際にやっていらっしゃる行政当局も与党の皆さん方も非常に心外な感じなんでしょう。私も実際にかつていろいろな価格をやっていて、その晩はすごくむなしかったですよ。農業新聞とかそういうものにはまだ不十分だというふうに書かれる。そしてまた一般紙には、政治加算だ、政党の都合だというふうに書かれる。だれも認めてくれないですね。三晩、四晩徹夜してもだれも認めてくれない。別に認めてもらいたくて言っているわけじゃないのです。  要は、官房長が今おっしゃったように、どういう議論を経てこの値段が決まったのかということが国民の前に明らかな議論として出ることがこれから先は絶対に必要なことだと思っているのですよ。見えないところで議論をし、どういう話が闘わされ、どういう形でこうなったのかということが国民の前に見えないからいろいろなことを言われて、結局は、内外価格差がどうしたこうしたというようなあらぬ非難を浴びることになるわけですね。  私は、国会の場でこういうことをきちんと議論をするというのが新しい時代の農政だと思っている。見えないところで議論をして、何が何だかわからない、政治加算だ、政治家の都合だと言われることは、政治のためにもならないし、農家農民のためにもならないし、国益にもならないというふうに思っているのです。ですから、これから新食糧法案で十一月にまた新しい米価というものが決まっていきますよ、その議論はまた後でいたしますが、そういうことをぜひお考えをいただきたい。これは国会の責任でもあるというふうに思っておりますので、強く申し上げておきたいと思います。これは議会の中のことですから要望を申し上げるというようなものではございません。私はそうあるべきであるというふうに考えておるわけでございます。  さて、そもそも論から入ります。  ことしの米価の持つ意味は何ですか。米価というのはどういうような意味合いを持つと思っていらっしゃいますか。
  63. 谷津義男

    ○谷津説明員 ことしの米価につきましては、まず食管法の最後の米価ということが一つあります。それからもう一つは、新法に移行するための、その移行期の米価というような感じを私自身も持っております。  そういう中で米価決定するわけでありますけれども、最近の諸情勢をいろいろと勘案しましても、生産性の高い稲作担い手育成と申しましょうか、農家あるいは生産組織集団、こういうふうな人たちの一層の生産性向上を図る。そしてまた、国民の納得のできるような、そういう米価にしていかなければならないし、安定的に安全な供給ができる、そういう米価であるというふうに考えております。
  64. 石破茂

    ○石破委員 食糧庁、同じ質問をしましょう。米価というもののそもそも持つ意味を何だととらえていらっしゃいますか。  つまり、私の理解では、これだけ、七割が自主流通米なんですよ。米価というものがかつてのように政府米が多くを占めておったときはそういう意味があったのでしょう。だけれども、七割が自主流通米になっている。その中で米価の持つ意味、生産者米価政府が決める意味というのは、これは下支え以外の何物でもなかろう。それ以外の意味を私は余り認めないのですね。下支え、つまり、これ以下には下がりませんというのが米価の持つ意味だ、最後に残された意味だったというふうに思いますが、いかがですか。
  65. 阿部修

    阿部説明員 先生御指摘のように、食糧管理法のシステムにおきますと、最後に政府が全量買い入れのあれがあるわけでございますから、そういった面の価格を決めるということでございますから、先生おっしゃったような下支えの役割を果たしておるというふうに考えます。
  66. 石破茂

    ○石破委員 そうでしょうね。下支えの意味だと思うのですよ。確かに所得補償機能とかいろいろな機能があったのですが、もうそれはかなり意味が失われてきたと思っているのです。要するにその下支えの機能というのが最後に残ったのだろう。これがことし最後の米価として、下支えとして決めたんだということでしょうね。  それじゃ、実質論に入りましょう。  五年産と六年産、これは単純に計算しますとどれくらい差がありますか。
  67. 阿部修

    阿部説明員 調整額のことではないかと思いますが、五年産は三百五十九円、六年産が三百十円、七年産が五百五十一円というような水準になっております。
  68. 石破茂

    ○石破委員 パーセントにするとどれぐらいになりますか。
  69. 阿部修

    阿部説明員 五年産の場合、パーセントで申しますと二・二%、六年産の場合一・九%、七年産の場合三・四%でございます。
  70. 石破茂

    ○石破委員 これは私の聞き間違いかもしれませんよ。五年産は大不作だった、六年産は大豊作だったと。その中で生産費計算をしてみますと一五%ぐらいどおんと下がるんだということを聞いたことがありますが、これは違いますか。
  71. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員長代理 五年産と六年産生産費、単純にどうですかと。
  72. 阿部修

    阿部説明員 どうも失礼いたしました。  六十キロ当たり生産費で申しますと、生産費が一六・二%のダウンでございます。その場合、全算入生産費で一五・六%のダウンでございます。
  73. 石破茂

    ○石破委員 それぐらい下がりますよね。で、それを地域方式におろして三年平均でとってというような作業をその後やるわけですね。で、その生の数字で見れば、五年と六年では一六%というぐあいに下がってくるんだと。それは大豊作と大不作ですからそうなるでしょうよ。で、それを今度は地域方式で九ブロックに落として、そしてまた平均以上のものをとってというような計算をされたわけですね。  統計情報部おいでになっていませんか。——いらしていませんか。通告に入れておいたと思うんだけどな。結構です。それじゃ私の間違いでしょう。いいですか。  そうしますと、それぐらいになるんだと。ところが、それをやった場合に三・四の三角で出てくるんですが。そういうような計算をしますと三・四の三角で出てくるんですか。
  74. 阿部修

    阿部説明員 生所方式でやります場合、前三カ年の生産費をとって、先ほど先生おっしゃいました地域方式でやっておるわけでございまして、それで、そういうような結果先ほど申しましたような三・四%の計算が出ておるということでございまして、統計情報部生産費は五年産から六年産への変化率でございますけれども、私どもが米価計算する場合は、三年間をとりまして、そこの算定農家生産費と申しましょうか、それを評価がえいたしまして計算するわけでございます。
  75. 石破茂

    ○石破委員 その方式はよく存じておりますので、とにかく統計情報部がその数字を出して、それを食糧庁に持っていってそういうふうに直すわけですね。  これ、私の実感からすると、マイナスの三・四というのは、あれ、こんなに小さいかなという気がするんですよ。もう少し単純に計算をしてみるともっと大きな下げ幅になるんじゃなかったのかなというふうに思うんですが、それはもう労賃とか金利とかいろいろなものがあるんでしょうが、どういうような計算をしてマイナスの三・四になるんですか。
  76. 阿部修

    阿部説明員 この計算の仕方でございますけれども、単収のとり方、これで異常な変動を防止するというような係数を使っております。  それから都市均衡労賃でございますが、これのとり方につきましても、ことしの場合、不況ということで製造業伸びが他産業に比べて小さいというようなことがございましたもので、全産業の賃金伸び率で修正しておるというようなことをやっております。  そのほか自己資本利子、これは、御案内のように金利水準が非常に下がっておるわけでございまして、その下がり方を、激変を緩和するというような措置をとっております。  あともう一点は、副産物価格でございます。これも、くず光なりそういったものの副産物価格が急激に下がっておるわけでございまして、直近価格をとるというようなことをやっておるわけでございます。
  77. 石破茂

    ○石破委員 後でもう一回精査をさしていただきたいと思いますが、それでは据え置きで出したわけね、諮問案を。で、三・西下がるはずのものが据え置きになっているということですな。  これは、私どもも据え置いてくださいという要求を出しています。そのとおりにしていただいて結構なことだと思っていますよ。しかしながら、計算するとマイナスの三強どこう出てくるものを据え置きにした。それはどういう理由に基づくものですか。
  78. 阿部修

    阿部説明員 この件につきましては、この十一月から新しい制度に移っていくというようなことが予定されておるわけでございまして、新しい制度への円滑な移行というようなことも考慮いたしまして調整額を加算したところでございます。
  79. 石破茂

    ○石破委員 御苦心なさったのはその理由だと思うんですよ。選挙があるからとか、そんなこっちゃないんだとわかっています、それは。よくわかっていますよ。しかし、そこに本当に、これは国民の税金の話だから、理屈の立つ話でないとまずいんですな。で、それはもうみんなが一生懸命理屈を考えるというこっちゃないんですよ。後から理屈が貨車でついてくるとかそんなことは言いませんよ。だから国民の前に、なぜこれを足したのかということが明確にならなければいけない。そしてまた、この米価が新食糧法案が動くときにどういう意味を持つものであるかということを明らかにしないと、ソフトランディングも何もあったものじゃないんですね。  で、ソフトランディングという話がよくあります。今次長がおっしゃったとおりだが。ところが、ソフトランディングというのはどこからどこへおりるんだということが明らかになってなきゃいけない。今の地点ははっきりしているんですね。しかし、どこへおりるんだということがわからなければ心構えが違うわけですよ。例えば十階から一階に飛びおりるのか、三階から一階に飛びおりるのか、五階から一階に飛びおりるのか、全然心構えが違いますでしょう。ソフトランディングをするというのは、十一月から動く新食糧法案に円滑に移行するためにソフトランディングするということだ。ただ、十一月からどういうふうになるのかということがさっぱりわからないままで移行するといっても、ソフトランディングするといっても、それは非常に内容空虚な話なんですよ。意味がない。よくわからない。  政務次官、どういうところへソフトランディングしようと思っておられますか。
  80. 谷津義男

    ○谷津説明員 これはもちろん、新食糧法移行するに当たりましてしっかりとその辺のところを踏まえながらやらなきゃならぬということが大事でありますが、まず、これに非常に不安を持っている方たちもかなりいるだろうというふうに思うんですよ。そういう不安を取り除く面においても、ガット・ウルグアイ・ラウンド合意後最初のいわゆる米価というだけに、これは据え置くことによってそういう不安も取り除く必要があるだろうというふうにも思いますし、もう一つ大事なことは、これから新食糧法に入るに当たりまして、新しいものに対する一つの施策、これに対しまして、まず、先ほどもお話が出ましたけれども、下支えという話がありましたが、当然これは新食糧法に行ってもその下支えの問題というのは出てくるであろうというふうに思いますね。例えば、買い上げる在庫米といいましょうかそういう備蓄米、こういうものが、一つの政府の買い上げというのは下支えというふうに見られるというふうに思います。  そういうふうな連係を考えた場合に、ここで価格をひとつ据え置くことによりましてその移行をスムーズにやっていくということが大事ではなかろうかなというふうに考えるわけです。
  81. 石破茂

    ○石破委員 何に対して生産者は不安を持っていると思いますか。どういう事態を恐れていると思いますか。
  82. 谷津義男

    ○谷津説明員 これは、新食糧法についてのいろいろなこれからの御理解といいましょうか、新しい生産体制に対して今出された、移行期でございますから、いろいろな説明もしておりますし、またいろいろなところでそういった面の会議、また説明等もさせてもらっておるところであります。  そういう中で、今までの米価の決め方の中におきましていろいろな要素をとってやってきました。例えば計算方式、そういうものが、今度は新しい方式によりますれば、当然今までの方式に加味しまして、もう一つは自流米のいわゆる市場価格というものも加味させてくるわけでありますから、そういうふうなもの、新しいものに対するいろいろな不安感というのは私はあるだろうというふうにも考えるのです。  しかし、そういうものをなくすための一つの国としての考え方というのが今回のいわゆる米価という形で答申案になってきたのだろうというふうに思うのですよ。ですから、これからいろいろと十一月に向かいまして議論もし、そしてきょうこの答申案をつくるに当たりまして与党側から出された一つの提案もあります。これも、それを受け入れてしっかりとやっていくというふうな形をつくり上げていかなければ、やはりその不安は取り除くことができないだろうというふうにも考えます。  そういうもろもろのことを考えたときに、今農家の人たちがいろいろと、新しい法律の中におけるところの理解と言ってはなんですけれども、そういうふうに移行していく間における現段階においてまだまだそれのそしゃく、理解し得ないものがある、そういうものが不安につながっておるかな、私自身はそういうふうには今考えておるところです。
  83. 石破茂

    ○石破委員 次官のおっしゃるとおりですよ。要するに、生産者が抱いている不安というのは、何がどうなるかわからないということなんですよ。米価が暴落をするんじゃないかということに対する不安なんです、どうなっていくのか。ですから、もう去年のWTOのときから、暴落防止措置はどうなっておりますか、下支えはきちんと働くんですかというふうにくどくお尋ねしているのはそういうことなんです。  それで、次官がおっしゃいますように、本当に農家それぞれが新食糧法案の目指すものというのをきちんと理解しているかといえば、私はそうじゃないと思っていますよ。それは政府の責任ですよ。これが目指すものというのをきちんと啓蒙していない。何がどうなるかということをはっきり言っていない。私たちにももちろん責任はあります。政府だけに押しつけるつもりはございませんがね。それで、何がどうなるんだということがわからないわけです。それで、再生産は一体だれの再生産を確保するんですかねと聞きましても、お答えはいただけないわけですね。暴落防止措置はどうなりますかと言っても、はっきりしたものは出てこないわけです。だから不安なんですよ。  それで、そういう現状は現状として認識をしなければいけない。私どもが据え置きというふうにお願いをしました一番の理由はそこなんです。農家皆さん方に、とにもかくにも十一月から新食糧法案が動きます、どうなるかお考えいただくという時間、これは与えなければいけない。そして、本当に下がってしまう、暴落してしまうのではないかという不安を払拭しなければいけない。  そしてまた、ミニマムアクセス受け入れでなお百五十万トンの中に、どれだけの割合がは後でお尋ねしますけれども、輸入米というのも入ってくるわけです。そうすると、政府が百五十万トンで暴落防止措置があるというふうに言われて、それが本当にきくのかなという不安もあるわけでして、そうしますと、とにかく農家の方々にいたずらな不安を与えず、そしてまた集荷を円滑にするという本来の目的も達成させるためにことしは据え置きというお願いをしたつもりでありますが、そういう趣旨で理解してよろしいですか。
  84. 谷津義男

    ○谷津説明員 それは石破委員のおっしゃるとおりだろうと思います。
  85. 石破茂

    ○石破委員 そういたしますと、地域方式についてお尋ねしましょう。  ことしも地域方式でいくということでありました。しかしながら、生産者の方から見ると、これではとても償えないというような声が出たようですね。米審に資料として、一体どれだけの農家のコストを償っているのかという資料を御提出になったはずでございます。そのことについて御説明いただけますか。
  86. 阿部修

    阿部説明員 いわゆる米価のカバー率でございますけれども、七年産米価生産費の方は六年産生産費をとったもの、そういう比較になるわけでございますが、いわゆる生産費の概念で申しますと、七年産、戸数で五五%、販売数量で七三%、生産数量で七〇%。それから、ちょっと概念を変えまして、支払い利子と地代を算入した生産費で申しますと、戸数で五二%、販売数量で七〇%、生産数量で六七%。全算入生産費で申しますと、戸数で二四%、販売数量で三八%、生産数量で三六%というような数字になっております。
  87. 石破茂

    ○石破委員 それだけしか償っていないわけですよね、実際問題として。これはおかしいじゃないかという議論は前からあるわけです。平均以上の、要するにそのサンプルになるのは記帳ができる農家ですからね。それでも結構いい農家ですよ。そしてまたその中で平均以上というものをとっていくわけだから、カバー率というのはそういうふうになっていくのでしょうね。それだけしかカバーしていない、おかしいじゃないかという話がある。地域方式ではなくて、もっと全体の生産費、全農家生産費を償うべきだとか、いろいろな話があります。私はそれを正しいと言っているのではありません。やはりこれは平均以上のものをやっていかなければいかぬだろうというふうには思っています。  以前議論したときに、一・五ヘクタールでどうだという話がありまして、とてもそれじゃだめだ、それでいった場合には、ぶっ倒れていくのは、かえって規模の大きい農家の方が倒れていくのじゃないかという話があった。かえって二種兼業農家の方が足腰が強い。実際問題、そうなのですよね、二種兼の方が足腰が強いのですよ。そっちの方が米価が下がってもきちんと残っていくのであって、かえって大規模稲作の方がおかしくなってしまうのじゃないかという話がありまして、一・五ヘクタールというのはやめにしましょう、それじゃ地域方式でどうですか、こういうお話だっただろうと覚えております。  地域方式というのは、これは文句がつけようがないのですよ。なかなかけちがつけにくい。打たれ強いなんて当時は言っていましたけれども、打たれ強い方式ではあるが何を目指そうとしているのかもよくわからない、こういう方式でもあるわけですよ。地域方式を積極的に採用するという論拠を述べてください。
  88. 阿部修

    阿部説明員 地域方式考え方でございますが、地域方式がやっておりますように、各地域平均的な生産性以上の生産性を実現しております農家を選ぶということでございますけれども、それは、各地域におきましては、規模の大小にかかわりなくと言いますとちょっと言い過ぎかもわかりませんけれども、それぞれの各地域の置かれました条件のもと規模拡大なり生産組織化というようなことを、さまざまな工夫をやっておるということで、生産性向上ということで意欲的に農業に、稲作に取り組んでいるというような農家でございまして、そういう農家がそこの地域稲作を実質的に担っておる農家であるというような考え方が一つあるわけでございます。  もう一つありますのは、各地域平均以上というふうに対象農家をとることによりまして、対象農家がある地域に偏るということではなくて、日本の北から南まで分布するというようなことも一つの特徴ではないかなというふうに思っておるわけでございます。
  89. 石破茂

    ○石破委員 わかりました。そういうお答えしかできないでしょう。実際これしかなかったのですよね、今の中では。  それじゃ、観点を変えます。コストを償えないわけですよ、実際、ほとんどの農家において。実際問題としては償えていないわけです。償えていないにもかかわらず、ずっと続けているわけですね。償えないのは今に始まった話じゃない、何年も前から償えていないのですよ。損じながらやっているところもたくさんあるわけです、実際問題として。しかしながら、それでも稲作が続いているのはなぜだと思いますか。
  90. 阿部修

    阿部説明員 幾つか要因があるのではないかと思いまして、私自身必ずしもクリアカットではないわけでございますが、やはりどこの地域におきましても稲作は普遍的なものでありまして、そういった面では、多くの農家が田んぼを持って農業をやっておるというのが日本農業の現実ではないかなというふうに思うわけであります。  その中には非常に大きな農家もあることはもちろんでございますけれども、先生御指摘のような、零細でなかなかコストが高いというようなこともあるわけでございます。そういった日本農業の零細構造というようなものの一つの反映といたしまして、先ほど先生が御指摘になりましたような農家稲作を続けておるというようなことは、一面的に一つは言えるのではないかなというふうに思うわけでございます。  あとほかに、農家を続けておりますと、それは、すぐ田んぼを売り払うとか、人に貸すとかいうのもこれはなかなか難しい問題がある面もあるわけでございまして、そういった面ももちろんあると思います。
  91. 石破茂

    ○石破委員 これは、どなたにお尋ねしたらよろしいのでしょうね。新農政の実現の目標年度というのは二〇〇〇年で間違いないですか。
  92. 高橋政行

    ○高橋説明員 新農政を発表いたしましたときに、おおむね十年後ということで考えておりましたので、今先生がおっしゃった年次を大体考えております。
  93. 石破茂

    ○石破委員 これは何度も議論することなのですが、本当にこれを実現させなきゃいかぬという心構えがあるとするならば、この米価の持っ意味というのをそれにどう生かすかということは、やはりきちんと打ち出していかなきゃいかぬと私は思っているのですよ。  二〇〇〇年といったらあと何年ですか。ことし一九九五年ですよ。その二〇〇〇年のときに、新農政が目指したところの、個別経営体が十五万戸で組織経営が二万戸で、それで稲作の八割を担うのだということ、それを実現させるというのは容易なことではないですよ。しかしながら、これを実現させなければ日本農業にあすはないのだということで、それこそ農林水産省じゅう挙げてこのプランをつくってきたはず。そして、二〇〇〇年という目標を掲げて、こういうことを実現させたいということでやってきた。  そこで、さっき、何でこれだけ償えなくてもやっているのでしょうねというのをお尋ねをしましたが、要はそういうようなところに対して、この米価というものでやっていくとかなんとか、そういうフィクションのお話はもうそろそろやめた方がいいのではないのかなというふうに私は思うのですよ。  そういうところがなぜやっているかといいますと、これは私の理解ですよ、やはり自分の資産というのを守っていかなきゃいけない、そういう気持ちは確かにあるだろうと思う。先祖伝来の田畑である、これを荒らしてはならない、先祖が一生懸命、親やおじいさんが一生懸命ここで米をつくってきた、自分の代でやめるわけにはいかぬ、資産を荒らすわけにはいかぬというような思いがあって、損になるけれども、農外所得でそれを賄おうとも、これは稲をつくっていかなきゃいけない、そういう気持ちが私は根底にあるだろうというふうに思っているのです。そういう場合に、米価がどうのこうのというようなことは、その人たちの念頭には実は余りないのではないかというふうに思う。  大事なのは、兼業機会をいかに確保するかということの方が、集落維持という観点からすればはるかに大事なことだというふうに思うのですね。兼業機会がきちんと確保されなければいけない。これだけ円が高くなって、工場がどんどん閉鎖になっている。中山間地でも、今までは農村工業導入法なんかの効果もありましていろいろな工場が出ていたけれども、円高でとてもやっていられない、これじゃ中国に出した方がいい、こういうような話もありまして、そういうところでは兼業機会すら失われている。兼業機会がなくなれば、当然資産の維持ということも不可能になる。よって、農村というのは荒廃をする。こういうようなことになろうかと思っているのです。  ですから、そういうところに対して、所得政策をすぐ入れてくれというようなことを申し上げるつもりはありません。直接所得補償をしてくれと申し上げるつもりもありませんが、そういうところの稲作をどうやって維持発展をさせるかということを打ち出していかなければならぬのだろう。そのときに、米価というものとそれをリンクさせる考え方というのは、私は本質から目をそらすことになってしまうのじゃないのかなというふうに思っておりますが、いかがですか。
  94. 高橋政行

    ○高橋説明員 今までの米価でございますが、先ほどから先生がいろいろ御指摘がございましたように、全量管理でほとんど政府米というときにおける米価というものの位置づけと、それから、自主流通米が七割あるいは八割近くまでいくという場合における政府米価の位置づけは、随分違ってきておるということはまず言えると思います。  それで、今度新法になった場合にどういうふうな考え方になっていくかということが重要になってくると思いますが、やはり新法の考え方におきましては、一つの需給事情、そういう需給事情を反映するものとしての自主流通米価格の動きというものを反映した中で価格形成がされていく、それが中心になっていくだろうというふうに思っております。そうしますと、その価格が結局生産者所得なり労働費というものを十分償うものになるかという見地から検討されていかなきゃいけないという問題になろうかと思っております。  そうした場合に、どういうような水準価格維持がされていくかということは、これは需給事情といいますか需給均衡といいますか、そういうものが果たされる中で価格形成がされていくということが一番重要になるのじゃないかと思っておりまして、我々といたしましては、新法のもとでは、やはり需給調整というものを基本にして、それで価格が、恐らくその場合には生産者所得といいますか、そういうものも確保される、そういう価格水準になっていくのじゃないかという考え方で今後運営されていくということだろうと思っております。
  95. 石破茂

    ○石破委員 その問題については、後でお尋ねいたします。  構造改善局長米価規模拡大というのは、どういう関係になると思われますか。  つまり、耕作放棄地が続出してはならぬという話がよくありますね。米の値段が下がっちゃった、もうこれじゃやれないということで規模拡大になれば結構な話であるが、もうとてもやれないわ、受け手もいないわということで耕作放棄地が続出してしまったらこれは困る、だから米価を、という議論がよくありますよ。だけれども、今までずっと朝から御議論があるように、今の米価というのは昭和五十一年の水準だ、二十年前と同じ水準である。そうすると、ほかのものはどんどん上がる、賃金も上がる、しかしながら米価というのはずっと五十一年の水準。まあ上がり下がりはありますがね。  そうなってくると、それと、今耕作放棄地があちこちにあるという話が現場からは聞こえてくる。米価と耕作放棄というのはどういう関係にあると分析していらっしゃいますか。
  96. 野中和雄

    ○野中説明員 お話のように、耕作放棄地が最近非常にふえてきているというのは御指摘のとおりでございまして、この要因といたしまして、私どもがアンケート等で聞き取ったりいたしますと、やはり農業者の方が高齢になる、そしてなかなか農業ができなくなる、それから預けようとしてもその地域にそれを引き取ってやってくれる方がいないというような労働力の問題、そういうことを背景にしまして、基盤整備等の進んでいない条件の悪いところから耕作放棄地になっているというようなことだろうと思いまして、直接的な現象といたしましては、今の高齢化等々の条件というようなことであろうと思いますけれども、もちろんそういうようなところで、実際にそれでは引き受け手がいないかどうか、耕作放棄するかどうかということにつきましては、当然やる方の労働とそれに見合う所得が得られるかどうかということでございますから、そういう意味ではいわゆる米価政府が決める米価というだけじゃなくて、一般的な生産物の価格としての米の価格というのとは一般的には関係があるのではないかというふうに思っております。
  97. 石破茂

    ○石破委員 これはとりあえず生産者米価とはおいて考えましょう、自主流通米の方が主流ですからね。要はその価格政策と構造政策がどのように折り合って新政策を実現させていくのかなということなんですよ。財界の一部が言いますのは、もう値段下げてしまえ、そうしたらばどんどん規模拡大するだろう。今の値段なんかでいるから、みんなちまちました田畑を持っていて規模拡大しないんだ、思い切って値段が下がれば規模拡大する、素人はそんな考え方もしますわな。そんな簡単な話ではないと思っていますよ、それで前段の御質問をしたのだけれども。  しかしながら、値段と規模拡大というのが全く無関係でもないでしょうね。どこかで分岐点というか分水嶺みたいなものがあるのかないのか、価格政策と構造政策はどう相まって新政策というものを実現しようとお考えになっていらっしゃいますか。
  98. 野中和雄

    ○野中説明員 突然のお尋ねで詳しいデータ等を手元に持っておりませんが、ことしの農業白書等あるいはその他の統計データを分析をいたしましても、やはり規模の大きい農家の方とそうでない方というのには相当の生産性の差があるというようなことも出ているわけでございます。  しかしながら、規模拡大につきましては、私どもも累次進めてはおりますけれども、先ほどから御議論がありましたような中で、そう急速に規模拡大を図っていくということはなかなか難しい問題もございます。やはり私どもは、規模拡大のテンポというのがございますので、幾ら生産規模によりまして生産性が違う、つまり規模の大きい方が生産性が高いとはいいましても、規模拡大の速度というものがございますので、やはり規模拡大によりますメリットというものが、一方で価格の引き下げ、価格低下というようなことによりましてとられてしまうということになれば、生産者の方にとっては規模拡大をするメリットがないというようなことになるわけでございますから、当然この価格の問題と規模拡大というようなものは密接な関係がある。つまり、規模拡大が進んでいくテンポというものを見て価格が推移をしていくということが理想であろうというふうに考えております。
  99. 石破茂

    ○石破委員 私が妙な思い入れを新農政に持っているというふうにお思いになるかもしれませんが、やはりこれは二〇〇〇年までに少なくともかなりの部分実現をさせなければいかぬものだと思っているのですよ。それがなければ日本農業というのはあすがないというふうに思っでつくられたと思うのですよ。政務次官で在籍していて、そういうような感じを私は持っていました。そのときに、価格というものは重要な役割を持っていくだろう、それで新食糧法に持っていったと思っているのですよ。食管堅持、食管堅持という声があれだけありながら新食糧法に移したというのは、そういう意味だろうと思っています。  値段が下がっていく、耕作放棄が出るとするならば、それをどう集約していくのかという考え方。もう一つは、いや、そんなことはどうでもいい、どんなに下がろうがおれたちはっくるんだ、先祖伝来の土地だというようなことで。それを別に私は否定しないのです。それはそれで、集落の維持ということではそれでいかねばならないだろう。兼業機会の確保とともに、それでもそこにどうやって足りない分を補っていくかという観点、そういうものもなければいかぬとは思っていますが。  価格が下がることと規模拡大、それで、じゃやめたという人をどうやって集約をしていくかということがまだ見えにくいのですよ。いろんな施策が講ぜられているのはよくわかっています。しかし、それが個々の農家によくわかっていない、だから耕作放棄が十五万ヘクタールも出るわけで。その点につきましては、さらにわかりやすく、あと五年しかないわけですからよろしくお願いをいたしたいと思います。  さて、じゃ値段がどうなるのかということについて今度はお尋ねをいたします。  さっき政務次官が、下支えの機能は働くのだというふうに言われたけれども、私はこれにすごく疑問を持っている。懸念を持っていると申し上げでもよろしい。つまり、今までは全量買い入れであったわけですね、とにかく政府が全部買うということであった。ところが、百五十万トンしか買いませんよ、内外に差があってはいけないからということを大臣が御答弁になったが、ミニマムアクセスで年平均六十万トン入ってくるわけですよ。まず技術的な話から、この中のどれだけが備蓄に回りますか。例えばことし三十八万トン入ってくるわけでしょう。この中のどれだけが市場に流通し、どれだけが備蓄に回りますか。
  100. 阿部修

    阿部説明員 ミニマムアクセス米、内外無差別のあれで扱うということで、食用なり加工用、それから一部には備蓄米にも回るというふうなことでございます。数量自体、まだコンクリートということにはなっていないわけでございますが、数年間でならしますと、十万トンくらいではないかなというふうに思っております。
  101. 石破茂

    ○石破委員 ならすと十万トンとしましょう。十万トンが備蓄ですね。平均すると五十万トンが流通に回るのですね。いいですか、確認しておきますよ。
  102. 阿部修

    阿部説明員 大ざっぱに言っておりまして、あれでございますが、ちょっと考え方でございますけれども、一応考え方といたしまして、全体の備蓄数量が百五十万トンというふうに考えますと、国内需要量が大ざっぱに言いまして一千万トンでございますから、一五%ということでございます。  ミニマムアクセスの輸入量は四十万トンから八十万トンに膨れ上がっていくわけでございますが、これを前提とすれば、おおむね一五%くらいでありますと、十万トンの範囲内くらいの数字になるのではないかということで、極めてラフに申し上げておるものでございます。
  103. 石破茂

    ○石破委員 今えらく売れ残っているのがありますよ。北朝鮮に出す、出さないは別にしてですよ、これは百五十万トンには食い込んできませんね。枠外ですね。
  104. 阿部修

    阿部説明員 枠外というか、組み込まないように考えております。
  105. 石破茂

    ○石破委員 結構です。しかし、十万トンを備蓄に回す、五十万トンは流通するという話ですが、とにかく輸入米というのは売れないですよ。実際売れない。この間人から聞いた話ですが、スペイン料理屋に行った。そうしたらパエリヤが出てくるわけですね。スペイン米かタイ米かと思って喜んで食べてみたら国産米で炊いてあった。これだけ外米がいっぱいあるのに何でと聞いたら、やっぱり食べに来る人はタイ米で炊いたパエリヤじゃ嫌だ、国産米で炊いたパエリヤでなければ食べたくない、こんな話になってきたのですね。やっぱりならそうと思っても、なかなか難しい。それは白米で炊いたらまずいからパエリヤにしたら食べるだろうと思っていたわけですよ。ところが、そうでもないわけですね。  そうすると、五十万トン流したとしても、それが全量はけるとは私にはとても思えないわけです。はけないとすれば、それがやはり戻ってくるのではないかというふうに思いますが、そこはどうですか。
  106. 阿部修

    阿部説明員 外国産米の販売の件でございますけれども、私ども、外国産米の輸入に当たりましては、実需者なり販売業者、加工業者、いろいろな方々の御意見を踏まえまして、その需要をつかまえまして、その需要に即したお米を輸入しようというふうに思っておる次第でございます。  そういった面で、緊急輸入米のときは非常に絶対量が不足したわけでございます。長粒種のお米がたくさん入ったというようなこともありまして、ちょっと需要とミスマッチがあったということは確かでございまして、そういうことはなるべく避けたいというふうに思っております。
  107. 石破茂

    ○石破委員 いや、私がお尋ねしたいのは、余るうが何しようが、それが百五十万には食い込まないのですかと聞いているのです。戻ってくることはないですねと聞いているのです。
  108. 阿部修

    阿部説明員 今は、私が先ほども申しましたような絵をかいておるわけでございまして、大体そういうようなところでアローアソスを持たせて運営ができるのかなというふうに思っております。
  109. 石破茂

    ○石破委員 結局、下支え機能がきかないのじゃないかと思っていますのは、極端に言えば、自主流通米の価格政府米以下になることだってあるだろうと私は思っているのですよ。理論としてはあり得るだろうと思っている。そういうときには、本当に米価が恐ろしく下がってくる事態になるのじゃないかという気がしてならないのです。つまり、百五十万トンしか買いませんよ、そのうち十万トンか何か知りません、十万トンなんでしょうな、これが食い込んできます。そうすると、それだけの幅しか持たないわけですね。それだけの幅しか暴落防止措置というのがなされていない。  そしてまた、転作に参加するかしないかという人間にしてみれば、本当に転作に参加をした人間でなければ買ってもらえないのですね、政府米としては。だけれども、参加をしたとしても必ず買ってもらえるとは限らない。もし転作に参加をしたとして、政府米で買ってもらえなかったとしたならば、それはもう転作に参加することはないのではないか。どんどんつくった方がよかろうということになりますと、薄利多売みたいな話になって、そのときに価格破壊みたいなものが起こっていくのではないか。そうすると、下支え機能というものがきかない。  それと、減反政策。減反にどうやって有効に参加させていくか。奨励金も出すでしょう、そして政府が買うということもあるでしょう。しかしながら、それの限度が明らかになって、それにミニマムアクセスまで入ってくるとなると、その実効性はどう担保されるのですか、農蚕園芸局長
  110. 日出英輔

    ○日出説明員 これからの米の需給状況がどうなっていくのか今の段階で見通すことはなかなか難しいわけでございますが、先生のお話しのように、政府米の買い入れ数量百五十万トンということから即下支え機能云々という話になる前に一言申し上げたいのは、ことし八万ヘクタールの追加的な転作をやっております。あれは、先生も御案内のとおり、昨年の暮れまでは大変な勢いで自主流通米の価格が下がってまいりまして、経済連の仮渡し単価を割るのではないかというぐらいに単協の米の関係者は非常に心配したわけでございますが、生産調整を八万ヘクタール追加してやるということと、あわせて販売をきちんとやるということによりまして、年が明けましてから自主流通米の価格の下がり方がぴたっととまったわけでございます。  今、自主流通米の価格政府米の価格水準の中にかなり大きな格差がございます。自主流通米の非常に力の弱いもの、例えばBランクのかなり力の弱いものが間々需給によりましては、先生先ほどお話しのように、政府米の水準を割るのではないかという議論も一応可能性としてはあることはあると思いますが、大部分の自主流通米が政府米の価格水準を割るということでは、先ほど申し上げましたような米の大変なだぶつきになるわけでございます。  そこで、効果的な生産調整を打ち出し、かつ効果的な販売戦略をあわせてやることによりまして、政府米と自主流通米との格差、もう少し申し上げれば自主流通米に持っていったことによる生産者のメリットを確保するということが、今の状況でございますればかなりの程度確実にできるのではないかということを、昨年からことしにかけましての八万ヘクタールの追加的な転作の実施によって、私どもとしてはある意味ではそういう自信を持っておるわけでございます。  ですから、これからの需給状況、確かに見通しにくいところはございますけれども、今回の八万ヘクタールの追加的な転作の実施をもう少し私ども勉強いたしまして、より確実な実効性のある転作の手法を研究していかなければいかぬというふうに思っている次第でございます。
  111. 石破茂

    ○石破委員 農蚕園芸局長、一人一人の農家にもその責任を負わせるんだということになりますね。これが損か得か、参加するかしないか自分で考えてくれ、こういうことだろうと思うのですよ。やはりつくるからには、そして所得を得るからにはそうでなくちゃいかぬということなんでしょうね。しかし、そこに参加するしないの判断材料というのはどのように与えていかれるおつもりですか。
  112. 日出英輔

    ○日出説明員 今回の八万ヘクタールの例を再度引いて恐縮でございますが、やはり自主米機構の価格の一つ一つの形成された状況、これが昨年の場合には追加的な転作をするかどうかの大きな判断の要素になったようでございます。  私どもからいたしますと、生産者が自主的に生産調整をどのぐらいやるかということのためには、自分たちが生産した米の価格が一体どういうふうな状況になっているのかということがかなりの程度透明性を持った形でわかるということが最大の前提条件であろうというふうに思っているわけでございます。  そういう意味で、これから先、食糧庁は内部で検討しているようでございますが、そういった自主流通米の価格形成機構といいますかセンターのあり方その他なんかも、今先生のお尋ねのような、生産者が自主的に生産調整をやりますときの大きな契機になるというふうに考えている次第でございます。     〔鉢呂委員長代理退席、委員長着席〕
  113. 石破茂

    ○石破委員 センターが今回は法的に位置づけられた理由というのは、一つは、私設市場に対してセンターというものをきちんと法的に位置づけるという意味があっただろうと思っているのですね。しかし、それが本当に今の需給を反映した価格になっているかというと、やはり値幅制限がありますよね。回数も限られている。そしてまた、代金決済機能も持たないわけですね。  そうなってくると、このセンターで形成される価格と正米市場のような私設市場で形成される価格とを見ますと、やはり私設市場の方がより反映しているのじゃないかというような考え方もありますが、センターの運営方法はどのようになっていくと今のところお考えですか。
  114. 阿部修

    阿部説明員 自主流通米価格形成センターでございますけれども、これは、新食糧法もとにおきましては自主米が米流通の主体となるというようなことから、センターにおきます入札取引につきまして需給実勢のより的確な反映ということが一層重要になるというふうに考えておるわけでございます。  そうした面からこのセンターを法律上位置づけたわけでございますが、確かに今まで自主流通米価格形成機構ということで経験があるわけでございます。我々はそれなりの経験を持ってやっておるわけでございます。新しくセンターになってどういうふうにこの運営をやっていこうかというようなことにつきましては、今までの経験も踏まえまして、価格形成機構には運営委員会というような場があるわけでございまして、ここの場も十分に活用いたしまして、価格形成が十分に果たされていくような形でセンターを育ててまいりたいというふうに思っておる次第でございまして、私ども政府といたしましても、センターに対しまして必要な指導を行ってまいるという所存でございます。
  115. 石破茂

    ○石破委員 それが本当に適切な価格を反映するようにやっていきませんと、今おっしゃったように参考にするといっても何を参考にしていいんだということになるわけで、これはまた後ほどの委員会でさらにただしてまいりたいというふうに思っておりますが、そのことはぜひ念頭に置いていただきたいというふうに考えております。  もう一つは、だれの再生産を確保するんだということなんですが、これについては審議会の御審議を経てという御答弁でしょうからこれは結構です。  しかしながら、だれの再生産を確保するんだということ。ことしか最後の米価として地域方式というものが設定されたわけですね。そうすると、やはりそれが、その考え方が新食糧法案における再生産にも生きてくるだろう。そしてセンターの価格を指標としてかな、指針としてかな、再生産を旨とする。だれの再生産だかわからないのですね。  しかしながら、そこにおいて考えられるのは、やはり地域方式というものがかなり色濃く出てくるんだろうというふうに私は予想をしているのです。そのときに本当に、先ほど来申し上げておるような、中山間地、条件不利地域、そこをどう守っていくかということも念頭に置いていただきたい。このことはまた後刻というか後日議論をさせていただきたいと思います。  さて、私どもがお願いをしましたのは、昨日農林水産大臣にもお願いをしましたが、新食糧法の目的が達成されるよう、生産調整の確実な実施、計画流通制度の安定的運用、備蓄、調整保管の円滑な運用に万全の措置を講ぜられたいというふうに申しました。これはすべて金目の伴う話でございます。  六兆百億円のラウンド対策費というのが出ました。これは総事業費ですね。これを単年度で割れば大体一兆円。国費は半分として五千億円。たしか三千八百億円は公共事業費だったと思いますが、残りは千二百億円。つまり六兆百億円の中にこのような対策費は入っていますか入っていませんか。
  116. 阿部修

    阿部説明員 ウルグアイ・ラウンド対策でございますが、これは二十一世紀に向けた望ましい農業構造を実現するというような観点から取りまとめられたものでございます。一方、先ほど先生御指摘になりました新食糧法の目的を実現する上で必要となる助成措置でございますが、これはウルグアイ・ラウンド対策とは別に、新制度の円滑な推進を図るために必要というふうに理解しておりまして、このウルグアイ・ラウンド対策には含まれていないものでございます。
  117. 石破茂

    ○石破委員 わかりました。入ってないのですね。そうすると、今の予算の中からやりくりする、こういう話ですな。  しかしながら、これは新食糧法とラウンドと全然別物だと私は思ってないのですよ。別物だとは思わないですね。やはりそれは一体のものだと思いますよ。ラウンド受け入れをして、そしてそれでも日本農業が耐えていけるように、足腰の強い農業をつくっていくために、そしてまた中山間地を守っていくためにという願いを込めて新食糧法案だってあるはずだと思っているのですよ。  六兆百億円が本当に確保されるかどうかは六年たってみないとわからない。これも随分議論しましたが、単年度主義でだめだという話なんですね。だから、毎年毎年概算要求のときにわあわあ言わなきゃいけないというようなことになっちゃった。十二月にわあわあ言わなきゃいけないということになっちゃった。残念なことだと思っていますが、私はこれだってラウンド対策だというふうに思っています。  そして、政府の責任というのはどこまでなのかということなんですね。備蓄、調整保管、これで政府の責任はどこまでか。そしてまた、農協もJAも保管をしていかなきゃいけない。しかしながら、本当にそれだけのお金があるのか。どれだけの割合を担えるのかということ、そのことが明らかになっていかないと、これはそれぞれが農民の負担になるものですから、どこまでが政府の役割であるのかということを明確にしていただきたい。  今ここでお答えをしてくださいとは言いません。隔靴掻痒の感があるのはそこなんです。どこまでが政府の役割で、ラウンドとどのような関連があって、どのような予算が組まれるのかということ、それを明らかにしていただきたい。この米価に当たってはそういうことも勘案をしていかなきゃいけないことだというふうに思っておるわけでございます。  最後に、時間がなくなってしまいましたので、北朝鮮のお話を少しだけ承りましょう。  これは外交問題でございますから、出すのがいいの悪いのというお話はいたしません。ただ、これが今の法律の中でどのような形をとれば可能なのかということなのであります。  つまり、相手は国交のない国家というのかな、朝鮮民主主義人民共和国ですか、そういう国であるということなんですね。そうすると、赤十字を通すとどうやらこうやら、直接出すとどうのこうの。そしてまた、代金決済をどのような形でやるのか。つまり、国家貿易品目ですから、こっちの当事者は国ですよね、日本国ですよね。とにかく結果として日本国が持っておりますお米が北朝鮮に行くわけで、その間にどのようなプロセスを経れば技術的に可能なんですか。
  118. 阿部修

    阿部説明員 北朝鮮への米の支援でございますが、法的な根拠といたしましては、新食糧法に米麦の輸出入に関する規定というような条文がございまして、そこで行うことになるわけでございます。  具体的には、今北朝鮮側と協議をやっておるというような状況でございまして、ちょっと先生がさっきお話しになられたことと関連するわけでございますが、例えば無償でとか延べ払いでやるとか、いろいろそういう方式も含めまして議論が行われておるところでございます。いずれにしても、物を、お米を輸出目的で出すということにつきましては、新食糧法の六十三条の規定で行うことになるわけでございます。  延べ払いによるというふうな場合には、輸出自体は六十三条で行うわけでございますが、米の売り渡しの対価の支払い法は延べ払い法という法律がございまして、そこで決定していくというようなことになろうかと思います。
  119. 石破茂

    ○石破委員 国家として承認していないものが相手方であっても、今の法律で技術的に可能ですか。それだけ答えてください。
  120. 阿部修

    阿部説明員 延べ払いてやる場合は、国家ないしは国家に準ずるものという規定がございまして、準ずるものという形で向こうの一定の機関を、準ずる機関を決めて、そこの機関と延べ払いをやるというようなことは可能でございます。  あと、無償というようなことになりますと、国家間でということは難しいようでございまして、例えば国際機関とか赤十字とか、そういう団体を通していくというような道は可能でございます。
  121. 石破茂

    ○石破委員 時間が参りましたので、まだまだお尋ねしたいことはたくさんあるのですが、午前中小平委員からも指摘があったと思いますが、国民の財産である、政府が持っている米なんですよ。そして相手は未承認国家なんですね。ここに対して援助を行う、行わない。日本人は人道という言葉が出ますとかわいそうにとすぐ思っちゃうわけですが、私は、そのことこそ国会できちんと議論すべきことだと思いますよ。  国民の財産をどう使うかという話、そしてまた、承認していない国家に対して何を行うかという話、これは農林水産委員会のみならず、外務委員会でも、そしてまた予算委員会でもきちんと議論が行われないままに、何だかなし崩し的にどんどん決まっていってしまう。これは私はゆゆしい事態だと思っているんですよ。  先ほど、一番最初に申し上げましたように、この時代に、新食糧法案が動くときに、米審が動いているときにこうやって委員会をやっている。私は、これは自民党時代からおかしいと思っているんです。国会軽視だとある意味では思っているんです。こういう問題についても国会で議論が一度も行われたことがない。それで国民の財産をどう使うかということを議論している。こんなばかな話がどこにありますか。私は、この点は政府に強く反省を求めたいと思っている。  これから先、日本の国がどうなるかというのはそんなに容易なことではないですよ。いろんな議論があります。そして、二〇二五年という年のことを払いつも申し上げるんだけれども、世界の人口は最高になり、そしてまた日本の高齢化はピークに達している。そのときに、日本が本当に今みたいに外貨を持っているとは限らないんですよ。そのときに、きちんと食糧を自給する、少なくとも基礎的食糧だけは自給する、そのための新農政のはずなんです。そういうことをさらに議論を深める。  北朝鮮の問題につきましては、きょう政務次官いらっしゃいますけれども、そのことを政府としてきちんと議論をする姿勢、そのことを最後にお願いをいたしまして、質問を終わります。  ありがとうございました。
  122. 中西績介

  123. 藤田スミ

    藤田委員 午前中に引き続いて、政府の見解をただしていきたいと思います。  山原議員も先ほど触れておりますが、現在の農村状況は極めて深刻であります。私ども日本共産党は、この五月に全国農業調査を実施して、全国の農業、農村状況を見てまいりました。行く先々で一様に、農業従事者の高齢化の進展、後継者が全くいない状況に出会いました。それは、しかも極めて差し迫った問題であります。  私どもは、過去七年前から全国調査をたびたび実施してまいりましたけれども、その深刻度は本当に年々高まってきていると言っていいものであります。もうあと五年も今のままの政府の農業政策を続けていけば、農業の担い手はいなくなってしまうのではないかと私は考えますし、それは決して言い過ぎではない事態だと思います。  ここまで日本の農村、農業を追い込んだのは、政府の農産物自由化政策とともに、内外価格差の縮小を名目とする農産物価格引き下げ政策にあったことは厳然たる事実であります。懇談をした多くの農業者が、今の農産物価格ではとても引き合わないし、やっていけない、子供を大学にやらせることもできない、こんな農業実態なのにどうして子供に農業を継いでくれと言えますかと、異口同音に訴えられたんです。  人並みに働いて人並みの所得が得られるような農産物価格政策に転換する、それが日本農業再建の第一条件ではないですか。そのためにも、農産物価格の中で筆頭と言っていい位置を占めている米価、今後、生産者米価についてはそうした立場で考えていくことが大切ではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  124. 阿部修

    阿部説明員 米価の今後の算定なりをどうしていくのかという御質問ではないかというふうに思うわけでございますが、御案内のように、新しい制度もとにおきましては、政府米の買い入れ価格でございますが、これは自主流通米の価格動向が反映されるということを基本といたしまして、あわせて生産コストなどを参酌して設定していくというようなことでございます。  こうした基本的な法の考え方によりまして政府買い入れ価格決定をしていくわけでございますが、この実際の具体的な算定方式につきましては、関係の方々と十分議論をいたしまして、新しい法律の施行時を目途に鋭意検討を進めてまいりたいというふうに思っております。
  125. 藤田スミ

    藤田委員 そんなことわかっているんです。そんなことを言っているんじゃないんです。しかも、そういうような農産物価格政策では日本の農業は再建できないということを言っているんです。  イギリスが第二次世界大戦前に三七%、今のちょうど日本と同じ食糧自給率にありました。しかし、それを急速に回復させたときも、イギリス政府がとった手段は、農産物の輸入抑制、そしてもう一つは、所得が十分保障できる価格政策の展開にあったのです。また、ECが食糧の輸出国にまでなっていったのも同様に輸入制限と価格政策でした。  日本は、食糧の自給率が三七%まで低下し後継者が皆無の状況に追い込まれていても、まだ政府農業生産者に価格引き下げで農業の展望を奪っていくとすれば、こんな国はもう歴史的にも今の日本を除いてないでしょう。どうして展望が持てるような、農業に従事したいなと思うような農産物価格政策に取り組むことができないのかということを聞いているんです。それを米価で聞いているんです。
  126. 阿部修

    阿部説明員 生産者米価でございますが、これは毎年一定方式によりまして設定するという法律体系になっておりまして、私ども、この法律の精神にのっとりまして適正に決定してまいりたいというふうに思っておるところです。
  127. 藤田スミ

    藤田委員 ちっともまともに答えられないです。政務次官答えてください。  私は、農業に展望が持てるような、かつてイギリスやEC諸国がやったように農産物価格政策というものをきちっと確立をして、そうして本当に政府が真剣に、人並みに働けば人並みの暮らしかできるような保障をしていかなければ、日本の農業はつぶれるということを言っているんです。したがって、そういう農産物価格政策に取り組むべきではないか、なぜそれをやろうと言わないのかということを聞いているんです。
  128. 谷津義男

    ○谷津説明員 端的に言わしていただけるならば、再生産に結びつく価格政策というふうにおっしゃるんだろうというふうに私は思うのです。この価格政策につきましては、特に今回の米価等につきましても、諸般の勘案をしまして答申案をつくり上げたわけでありますけれども、これも御案内のとおり、かなり生産費その他を勘案しましてみますと三・四というようなものが出たわけでありますが、しかし、それをやはり調整をしまして、再生産に結びつけるようなということでこれを平準化した中で、何と言ったらいいんでしょうか、前年並みということにしたわけでありますけれども、その辺に価格の一つの方向をつけたというふうに御理解いただきたいと思います。
  129. 藤田スミ

    藤田委員 やはりちょっと違うんですね。大分すれ違っているんです。それほど政府は、農産物価格政策という、その概念さえも淡いものかというふうに私は言いたいわけでありますが、しかし、自民党の総合農政調査会長も、WTO時代に農家が安心して営農に取り組むためには価格政策が極めて重要だ、こういうふうに言っておられますから、私が言っていることは全く的外れな話じゃないと思いますが、また別の機会に議論をしたいと思います。よく考えてください。  それじゃ、生産調整についてお伺いします。  昨年の十一月三十日のWTO特別委員会で私は、主要食糧法における減反問題で、減反は自主性を尊重する、そういうものを重視する手挙げ方式だ、そしてもうペナルティーはやめると政府は言うわけだけれども、法律にそのことが明記されていなければ何の保証もない、将来にわたってそういうことはしないという保証はどこにあるのかと大臣に質問をいたしました。大臣は、基本方針として自主性を尊重していくと答えられたわけでありますが、その点は間違いありませんね。確認です。
  130. 日出英輔

    ○日出説明員 そのとおりでございます。
  131. 藤田スミ

    藤田委員 であるならば、減反助成金についても助成体系は自主性を尊重することを前提としたものにすべきであります。減反に応じないことによって周りの人たちに迷惑がかかるような仕組みを減反助成に仕組むべきではありません。  例えば、ある農家が減反に応じなかったことによってその農家の属している地域の減反助成金の水準が落ちる、全員が減反に応じているほかの地域に比べて減反助成金の支給水準が低くなる、こういうことになれば、周りからいろいろ言われて仕方なく減反に応じていかなければならないということになるわけでありまして、これは自主性の尊重にはならないことになるわけであります。いかがですか。
  132. 日出英輔

    ○日出説明員 私どもも生産調整の実施に当たりまして、生産者の自主性の尊重ということが大変大事だということを昨年申し上げたわけでございます。その中で私ども申し上げましたのは、五十 三年からとられておりますいわゆる公平確保措置、あるいは六十二年からとられております国の補助金の採択要件に生産調整の実施ということを要件とする、この二つのものがいわばかなり強制的な側面を持つということで、これを取り上げて、何とかこれではない形での生産調整の実施を考えようというふうに申し上げたわけでございます。  生産者の自主性を尊重するということは私ども大変大事なことだと思っておりますが、例えば先生の今挙げられました例の中で、生産調整では、例えば連担してみんなで一緒にやった、あるいは団地化をして一緒にやったものが生産調整の中身とすると、質的に高いということで、例えば加算等がつくわけでございます。こういったものにつきましては、確かに生産調整に参加する方と参加しない方で、結果的に連担でありますとか団地化というものの実現ということができる、できないということがございますが、私どもとすれば、こういった問題と生産者の自主性の尊重の問題は少し議論として違うのではないかというふうに思います。  ただ、いずれにしましても、まだ、私どもとすれば、どういうような助成の体系がこの生産者の自主性の尊重ということに合うのかということにつきましては、今検討を急いでおるところでございますので、確たることをちょっと申し上げる段階ではないことをお許しいただきたいと思います。
  133. 藤田スミ

    藤田委員 これからの検討課題と言われるわけですが、先ほどからも、正直者がばかを見るというようなそういう言い方がありましたけれども、私は、地域が全部が減反に応じれば減反の助成の支給水準が上がり、その中から抜けた人が出ている地域があればそれは低いというような、そういうことで結局は自主性を奪っていくというやり方は絶対にやってはならないということを申し上げておきたいと思います。  生産者団体の生産調整にかける意気込みというのはどこにあるのかというと、それは自主流通米の価格の下落を何としても防ごう、ここにあるわけであります。その点では私は、政府の責任は極めて大きい、責任を問われていると考えるわけです。つまり、自主流通米価格の下落を防ぐ、そういう下支え機能を明確に政府が打ち出さなければ、こういうふうに生産者団体を生産調整にますます駆り立てていくことになるわけであります。  その点では我が党は、自主流通米価格形成センターに最低保証価格制度を導入し、当面二万円とすることを求めたわけでありますが、政府として、自主流通米価格形成センターにこのような下支え制度を導入すべきであるという点については、いかがお考えですか。
  134. 阿部修

    阿部説明員 自主米の価格形成センターにおきます価格形成の件でございますが、自主米が実態的にも米流通の主体となることになってまいりまして、需給実勢の的確な反映というのをセンターの方で図られていくということを我々期待しておるところでございますが、そうした場合、この価格水準需給事情や市場の評価に応じまして変動するわけでございまして、この変動が極端なものというふうになりますれば、稲作農家、消費者家計、大変に影響を及ぼすことも考えられるわけでございます。  したがいまして、生産調整なり、それから備蓄の運営を通じまして、とにかく需給の調整をきちんと図っていくというようなこと、それから計画流通制度によりまして、時期的にも偏りのない安定流通を図っていくということ、それから価格形成センターでの価格でございますが、適切な値幅の範囲内で価格形成を図っていくということ、このような多面的な方策を講じまして自主米の価格の安定を確保していきたいというふうに思っておる次第でございます。  具体的なこのセンターにおきます入札取引の仕組み等につきましては、自主米の価格形成機構の運営委員会等の場で十分今から議論して決定していく必要があるというふうに考えておりまして、政府といたしましても必要な指導を行ってまいるつもりでございます。
  135. 藤田スミ

    藤田委員 多面的な対応と言って今並べられた中には肝心のことが入っていないんです。あなた方は現場の状況がどうなっているか、本当にっかんでおられるんですか。全国の農村では、これから米の価格がどうなるかということは最大の関心事です。それも自主流通米が二万円を切るようになると、もう営農はあきらめようか、そういうところまで追い詰められているんです。  中でも認定農家は最も深刻なんです。規模拡大して、機械も投資して、引き返すに引き返せないところまで来て、市町村に提出した経営改善計画では、二年前の自主流通米、二万二百円を前提に計算させられているんです。農家が勝手にその数字を使ったんですか。違うんですよ。結局、あなた方が指導して、こういう数字で計算をして計画を出しているんです。二万円以下に下がったら、たちまち経営改善計画自身が破綻してしまうじゃありませんか。あなた方が育てようという、規模拡大を目指す農家がもうできなくなるんです。だから、自主流通米の価格の下落をどうしても防いでいかなければならない、そのためには下支えの制度を導入するべきだということを申し上げているわけです。一体どう責任を持つというのですか、価格の下落に対して。
  136. 阿部修

    阿部説明員 自主米の価格の安定なり、そういうことでございますけれども、価格の安定の一番大切な条件といたしまして、需給を安定させていくということが一番私は重要ではないかなというふうに思っておるわけでございまして、そうした面で、先ほど生産調整なり備蓄のオペレーションというようなことで適切な需給調整を図っていくということがまず重要であるというふうに申し上げた次第でございまして、先ほど申しましたように、値幅の範囲内でマーケットの価格をそこに維持しようとすれば、そういった需給操作と申しましょうか、需給を安定にするということで、その一定のバンドの中に自主米の価格を入れるようにしていくというようなことが重要ではないかなというふうに思っておる次第です。
  137. 藤田スミ

    藤田委員 どうも本当に困ったものだと、村山さんじゃないですけれども言いたいわけですね。まともに、本当に、私たちの言っていることをどうして次長は答えていこうとされないのですか。  あなたは、価格の安定のために需給の安定ということが一番重要だ、だからきちんと生産調整するんだ、そういうことを言っているから、生産者団体はもう本当に生産調整ということで減反に駆り立てられていって、政府が言う自主的な減反への取り組みと自主性の尊重ということも崩されてしまっているのです。値幅制限ではどうにもならないのです。大体、下支え機能を価格形成センターにつくることは技術的に不可能なんですか。そうじゃないでしょう。そうじゃないはずなんです。  ことしからミニマムアクセス米は四十万トン輸入が始まります。他方で、自主流通米の価格低下を防ぐという名目で生産調整を行う。それは結局、米の生産基盤を掘り崩すことになってしまうのです。それだけではありません。何遍も言いますが、減反に応じなければみんなに迷惑がかかるというような仕組みが持ち込まれていけば、農村の中に疑心暗鬼の事態を招くことになりかねず、農村の人間関係も取り返しのつかないような状態になってしまうのです。そしてその面からも米生産、日本の農業の基礎的な部分を弱体化させるということになるわけです。だから、自主流通米の最低価格制度を確立し、安定して、安心して米生産に従事できるような環境政府が責任を持ってつくっていく、このことが何よりも大事であります。そして減反については、生産者の自主性の尊重を第一に置いて、十分な助成金を担保させるべきであります。  最後に政務次官の御答弁を聞いて、質問は終わります。
  138. 谷津義男

    ○谷津説明員 藤田議員のただいまのお話、よくわかるわけであります。これからも、そういうものも主張の中に入れていろいろと対応を考えていきたいと思っております。
  139. 藤田スミ

    藤田委員 時間が参りましたのでこれで終わりますが、どうぞ私の言ったことを、食糧庁次長、もう一度よくあれして、よくわからなかったらもう一回私のところへ来てください。よくお互いに話し合って、もうちょっと焦点をぴしっと合わせて、こっちが合わせているのにおたくが合わせへんのですよ。余りそらさないようにして、そして本当に真剣に取り組んでいただきたいと思います。  終わります。
  140. 中西績介

    中西委員長 本日は、これにて散会いたします。     午後一時四十五分散会