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椎名参考人 今両
参考人から非常に体系的なお話がございましたけれ
ども、私は、
コンピューター誕生以来四十数年にわたりましてこの業界で
仕事をしてきた人間でございますので、きょうのお話は主として現場に携わる、
コンピューターというのは
情報化の
一つの役割を果たしてきたと思いますし、今後も非常に重要だと思いますので、そういう現場の立場からと、それから、多少立場を離れても一
国民としてどのような
認識を持っているか、この両点からお話しさせていただきたいと思うのです。
まず、提出いたしました紙を一枚めくっていただきますと、「
マルチメディア時代の「
社会」」ということで何か格好いいこと書いてあるのでございますけれ
ども、これは決して、
コンピューター屋がきれい
ごとを言っているとかあるいは夢を言っているというふうにおとりいただくと困るのでございまして、私は、すばらしい
技術が誕生して、これからも非常に応用というものが進んでく
ると思うのでございます。
そうしますと、現在
日本が抱えていると言われている、そこに書いてある問題以外にもいろいろな問題を解決する有効な
手段になり得るのではないか。もちろん、新
技術というのは必ず光と影ということで影の部分もございますから、そういうものは十分注意しなくちゃいけませんけれ
ども、私は、
マルチメディアというのは今の、先日の経団連の使った
言葉をかりれば、現在の経済
社会のみならず何となく
日本の
社会そのものが閉塞状態にあると、こういうものから脱却する非常に有効な
手段ではないか。
それと同時に、海外から
日本を見る目というのが最近非常に厳しくなっているのは御案内のとおりでございまして、いわく
日本は閉鎖的な市場を持っているとかなかなか透明性に欠けるとか、いろいろな批判をいただいているわけでございますけれ
ども、このような
手段を使えば
国際的にも
日本を非常に透明化してわかりやすい国にするということも可能であるという点で、私は、やはり両先生方がいろいろな角度からおっしゃいましたように、非常に大きな転換点に来ている
日本を非常に積極的にうまく転回する
手段ではないかと
考える次第でございます。
そこで、二枚目に移らせていただいて、パラダイムということで申し上げますと、資料一を、これは言わずもがなのことが書いてございますのですけれ
ども、要するに
工業化
社会が持っておりましたパラダイムが
情報社会になるとどのような転換をするかということを羅列したものでございますが、私が申し上げたいのは、
情報という全く新しい、
情報というものは古いわけでございますけれ
ども、
情報化、つまり
情報をうまく体系づけてうまく活用するという
手段、こういうものができるような
時代になってまいりますと、
情報化というものが持っている非常に特性、これを、
工業化
時代に我々が資源として使った人、物、金に加えましてうまくこの特性を使うということが必要ではないのか。
言わずもがなで特性を申しますと、
一つは、
情報というのは時間と距離を超越する、発生したと同時に地球の反対側、あるいは宇宙で発生しても即時に我々が活用することができる、距離には関係ない。それから、いつでもだれでもどこでもという
言葉がございますように、これは
技術をうまく使えばだれでもどこでもいかようにも使えるということでございます。それが人、物、金の資源と違う。それから、双
方向にコミュニケーションできる、つまり一方通行ではないということでございますね。したがって、個人個人が
ネットワークでっなげるということをすれば、今両
参考人がおっしゃったようないろいろな
可能性を秘めているということが言えると思います。
ですから、私が申し上げたかったのは、
工業化
時代の、ちょうど鉄道であるとか空港であるとか港湾の整備あるいは高速道路網の建設というようなものに加えて、
情報の
インフラストラクチャーというものを構築することによってすばらしい未来が展望できる、こういうことを申し上げたかったわけでございます。
三枚目の、「
情報化社会に向けた取り組み事例」ということで、これは米国においてどのような使われ方がしているかということの具体例を申し上げたいわけでございまして、これはもうつとに我が国でも報道されておりますので余り細々と申しませんけれ
ども、スタンフォード大学総長というのが二年前に
日本に参りましていろいろな話をしたときに、米国の高等
教育の一番の問題は、ウナギ登りに上っていく
教育コスト、この上昇をどうやって抑えるか、と同時に、残念ながら質が低下している、この質の低下をどうやって食いとめるか。それは、生徒一人一人にパソコンを与えて、それで
教育するということが非常にこの解決の
手段になる。
なぜならば、パソコンを持っておりますと、データベースに入っております先生の講義というものはいつでもどこでも取り出せるわけですね。生徒は学校へ来る必要ないわけです。昼間でも夜中でもスイッチオンすればデータベースに入っている講義は御自分の好きなときに出てくる。しかも
コンピューターは、大きな教室で先生が一方的に講義するのとは違いますから、生徒がどのような理解を示しているかということは、簡単なテストを必ず講義の後にいたしまして、生徒がそこでインプットいたしました答えを見て判断して、そうしてこれなら先へ進んでもよろしい、この判断ではもう一回やり直しというようなことをやりますから、非常に個々に合わせたレベルの
教育ができる。学生の側から見ますと、単に学校へ行かなくてもいいというだけではなくて選択肢が非常に広がります、スタンフォード大学の授業がおもしろくなければハーバードにスイッチオンすればいいわけでございますから。
そういった
意味で、広大なキャンパスを使うこともなく、先生方の時間もフリーになりながら
教育の質を高めることができる。同時に、先生方はフリーになった時間を今度は生徒と一対一の対話を通じて人間的な
教育ができるという
意味で、非常にこれは大きな
意味があると言っておりましたが、現にアメリカではそのようなことが実現しているようでございます。
あと、二十四時間市役所であるとか電子申告であるとかいうようなことは、アメリカの
行政府はもう既にこのようなものを
情報キオスクという形でやっておるということでございます。
それから、
ネットワークによる診療、研究支援。これももう既にアメリカでは、例えばがん研究などの場合に、ハワイ大学も含めた全米の大学研究機関と
衛星通信で結びまして、患者のいろいろなデータ、診療データその他をお互いに交信しながら治療を進めているというようなこととか、それからナショナル・ライブラリー・オブ・メディシンというのは、これはもう非常に有名でございまして、
日本のお医者様も非常に活用しているデータベースの事例でございます。
それでは、最後に、「
日本における今後の具体化に向けて」ということで申し上げたいわけでございますが、私は、一言で申しまして、我が国は
情報大国であっても
情報化は小国だと思います。つまり、
情報ははんらんしているわけですが、それをうまく活用して使っているという面では、残念ながら小国と言わざるを得ないという
認識でございます。
幸いなことに、ことし二月二十一日に
高度情報通信社会推進本部というものが、御承知のとおり村山総理を長にいたしまして、昨年も私も参画いたしましていろいろやりまして、そして報告が出ております。これは実はすばらしい報告でございまして、この
世界では有名なのが、例のゴア副大統領が上院議員のときにつくりましたものをベースにいたしまして、いわゆるNII構想ですね、アメリカのナショナル・インフォメーション・
インフラストラクチャーの構想というものが有名になっておりますが、それに匹敵するということよりもむしろそれを凌駕するような、原則とそれから非常に細かい応用例を出しておりました。これは、我が国の
情報化を進めるバイブルだというふうに私は
認識しております。
そのようなものが決定されましたので、あとはもうやるしかないということなんでございますけれ
ども、このときに、民間主導とよく言われておりますが、
政府の役割というのは非常に大きいということを申し上げたいと思います。
齊藤先生もおっしゃいましたように、インターネットというのは二十五年の歴史がございますけれ
ども、
最初は非常に細々と、アメリカの、しかも国防省がお金を出して、そしてアメリカの大学と結べた
ネットワークが、今や全
世界、三千万人が活用しているというような大
ネットワークになったわけでございます。そのようなことで、やはり種をまくのは
政府でなければいけない、そして、花を吹かせるのが民間だという
認識でございます。
したがいまして、
政府の役割というのは、大変失礼ながら、民高官低と申し上げましたけれ
ども、我が国は政官の
情報化というのは大変おくれ
ております。それは資料の二と三を御参照いただきたいと思いますが、このチャートでごらんのように、これは通産省の関係であります団体が出しました資料でございますけれ
ども、このようなことでも明確になっておりますように、政官の使い方というのは、民に比べますと大変おくれております。細かいことは先ほど両先生方がおっしゃいましたので申しませんけれ
ども、要は、
政府とそれから公
官庁が率先してこの
情報化を進めていただきたいというのが切なる
お願いでございます。
そのためには、そのような動きがあるということは新聞報道でもございますけれ
ども、
情報化というものにどのぐらいお金を使っているかということを現在、
政府の方でつかんでいないということを、驚くべきと言っては失礼なんでございますけれ
ども、私、昨年知りまして、愕然としたわけでございます。民間では、もう何十年の歴史の中で、
情報化にどのくらいの金を使っているかということは、トップマネジメントは必ず知っております。
ところが、
政府や
官庁ではこれをつかんでいないということが非常に端的に証明しているように、何かもう非常におくれた
世界にまだいらっしゃるんじゃないか、大変失礼でございますけれ
ども、という
認識でございますので、どうかひとつ、
情報化にどのくらいのお金を使うかということを
認識していただくと同時に、大変失礼なんですけれ
ども、大幅に予算をつけていただきたい。それも、一けた増ではなくて二けた増ぐらいの額でやりませんと追いつきませんぞと申し上げたいわけでございます。
それから「
情報化推進
政策」ということで、「人材
育成 コンテンツの充実」「新規
産業の送出」というのは、いかに
コンピューターがばかだということの証明でございまして、ソウシュツと仮名で入れたら送り出しと出てしまいまして、これはクリエーションの方でございますので、まことに恥ずかしい、
コンピューター屋として恥ずかしい文章でございますが。
最後に申し上げたかったのは、両先生もおっしゃいましたように、現在この
インフラを進めるに当たって、法
制度の大幅な見直し、これは二月二十一日付の
高度情報通信社会推進本部の決定にもきちんと書いてございますが、法
制度は、失礼ながら、
情報化の、大変昔、ないころの、私はまあか
ごとわらじの
時代と失礼ながら言っておりますが、その
時代の法律が生きております。したがいまして、
医療であるとか
教育であるとか、いろいろ我々の
生活に密着しているようなことを今
コンピューターの
ネットワークでやろうとしても、
規制があってできません。ですから、あるいは電子ショッピングなんということでやりましても、いろいろなことがいろいろな
規制でできないことになっておりますので、これをぜひ改めていただきたいということ。
それからもう
一つは、地方公共団体には多いのでございますけれ
ども、オンライン結合の禁止規定というのが、何とこの二十年の間に随分ございます。
これは、住民のプライバシーの保護であるとか、いろいろな観点から設けられたということは
認識しておりますが、しかし、現在の
ネットワークの
時代で、プライバシーの保護とかデータを守るというようなことは
技術的に可能でございます。そのような
時代に、オンラインしてはいけないというような条例がまだ残っているということは、これはもう大変な危機と私は感ずる次第でございますので、このような面をすべて含めまして、
日本において今後の具体化に向けての
お願いは、どうかこの、バイブルと私申し上げましたけれ
ども、
高度情報通信社会推進本部の御決定にあるようなものを踏まえた上で、
政治の
世界、
政治家の先生方が強力なリーダーシップを発揮していただいて、我が国を、
情報大国を
情報化大国にしていただきたい。
コンピューターの
世界での経験でございますが、
コンピューター化というのは、民間
企業が自然にやったように今ではとらえておりますけれ
ども、決して自然にはできませんでした。必ず、嫌がる現場をトップが強力な命令をいたしまして、使っているうちに割と便利だなという
認識があって、
日本の民間の
コンピューター化は進んできたわけでございます。したがいまして、大変申しわけないのでございますが、先生方がどうか強いリーダーシップを発揮していただいて、我が国を
情報化でも
世界をリードする大国にしていただきた。いというのが切なる
お願いでございます。
以上でございます。