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1995-05-12 第132回国会 衆議院 大蔵委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成七年五月十二日(金曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 尾身 幸次君    理事 石原 伸晃君 理事 金子 一義君    理事 村上誠一郎君 理事 新井 将敬君    理事 北側 一雄君 理事 村井  仁君  理事 早川  勝君 理事 五十嵐ふみひこ君       大島 理森君    大原 一三君       岸田 文雄君    熊代 昭彦君       小泉純一郎君    中谷  元君       中山 利生君    福田 康夫君       堀之内久男君    茂木 敏充君       青木 宏之君    井奥 貞雄君       上田 清司君    太田 誠一君       谷口 隆義君    中田  宏君       中村 時広君    平田 米男君       藤井 裕久君    宮地 正介君       宮本 一三君    池田 隆一君       中村 正男君    永井 哲男君       濱田 健一君    日野 市朗君       渡辺 嘉藏君    田中 秀征君       佐々木陸海君    小森 龍邦君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 武村 正義君  出席政府委員         大蔵政務次官  萩山 教嚴君         大蔵省主計局次         長       武藤 敏郎君         大蔵省主計局次         長       中島 義雄君         大蔵省主税局長 小川  是君         大蔵省証券局長 日高 壮平君         大蔵省銀行局長 西村 吉正君         大蔵省銀行局保         険部長     山口 公生君         大蔵省国際金融         局長      加藤 隆俊君  委員外出席者         大蔵委員会調査         室長      中川 浩扶君     ————————————— 委員の異動 五月十一日  辞任   竹内  譲君 同日              補欠選任               小森 龍邦君 同月十二日  辞任          補欠選任   太田 誠一君      宮本 一三君   濱田 健一君      池田 隆一君 同日  辞任          補欠選任   宮本 一二君      竹内  譲君   池田 隆一君      濱田 健一君     ————————————— 本日の会議に付した案件  保険業法案内閣提出第九三号)  保険業法施行に伴う関係法律整備等に関す  る法律案内閣提出第九四号)      ————◇—————
  2. 尾身幸次

    尾身委員長 これより会議を開きます。  内閣提出保険業法案及び保険業法施行に伴う関係法律整備等に関する法律案の両案を一括して議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。太田誠一君。
  3. 太田誠一

    太田(誠)委員 きょうは保険業法改正のことでありますけれども、きょう私は、新進党を代表して最後のお勤めをするつもりで質問をさせていただきます。  ハーモナイゼーションという言葉がありますけれどもハーモナイゼーションという言葉は、それぞれの国の中で通用するルールとか秩序とかいうものを各国で違うものにしていると、それが何か一方では不公正なものに見え、国際的な競争の中でどちらかが不利になったり有利になったりするということが生じてくるわけでありますから、それぞれの国の中で通用しているルールというものは極力そろえておこう、共通のものにしておこうという意味になっております。  したがって、国際化という言葉ハーモナイゼーションという言葉は違う言葉であって、それぞれの国が国際的な取引に、あるいは国境を越えた取引に進出をしていくということがこれが国際化でありますけれども、それに対してハーモナイゼーションという言葉は、それぞれの国の中で通用する常識とかルール秩序といったものをそろえていこうという考え方でございます。  そういう観点からいいますと、我が国ハーモナイゼーションということが特に強く言われる昨今でありまして、昭和十四年にできた法律というものは、そのときの我が国常識、そのときのそれぞれの国の状態というものを念頭に置いてできた法律でございますし、まずは、国民政府関係というものについての常識がその当時ほかの国でどうであったかは別といたしまして、我が国の場合は、国民政府の間の関係というのがその当時と全く違ってきているはずでございます。新しい憲法前提での国民政府関係というのは、その当時と現在とでは全く違っているはずでございます。  そこで、国会で私、質疑をいたしておりますときにいつも思うのでありますけれども、この国の主権者国民であります。したがって、この国の主権者国民であるから、その国民国民の意思によってみずからを律するルールをつくるというのが法律考える場合の基本でありまして、そうであれば、国会国民にかわって国民みずからを律するルールというものを定めていくというのが、戦争が終わった後の新憲法下の私ども考え方であります。  そういたしますと、法律というものは、自由主義前提とする国では少なければ少ないほどいいわけであります。文言も少なければ少ないほどいいわけであります。そして、政府でなければできない仕事以外の仕事政府はしない方がいい、あるいはしてはならないというのが新しい憲法のもとでの法律についての考え方だと私は思うのでございます。  こういう国民政府関係、そして法律ができて、そうしてその法律に基づいて、つまり国民国民代表を通じてみずからを律するルールをつくるというルールを決めたときに、そのルールが守られるように担保をする、ルールが守られるようにその裏づけとなる執行権、公権力を政府に与えるわけでありますから、そこのところの取り違えを我々はしてはならないと思うのでございます。  昭和十四年の当時の我が国社会常識というのは、主権者国民ではなかったわけでありまして、天皇制度のもとでありますから、政府天皇官僚によって構成をされておった。天皇官僚によって構成をされていたのであれば、みずからは天皇にかわって国を統治をする、天皇にかわって国民を治めるという前提でもって法律ができていたわけでありますから、そこが全く違っているんだと思うのでございます。  こんなところについて、大蔵大臣、どういうふうにお考えなのか。予定していないことでありますけれども、ちょっと御感想を何か言っていただければ幸いでございます。
  4. 武村正義

    武村国務大臣 のんびり構えておりましたら、いきなり口頭試問を受けたような感じでありますが、私もおっしゃるとおりだと基本的には認識をいたしているつもりでございます。  戦争前の昭和十年代でございますから、天皇あるいは天皇制国家がこの国の基本であったと思いますが、今の憲法が定めているような国民主権の国の成り立ちではありません。翼賛会なんか上並んで産業報国会なんという言葉が、団体があったようですが、すべては国に報ずるというか、それが産業目的でもあった。そんな時代の中でこの保険業法も誕生したのではないかというふうに思います。  当然長い歳月がたっておりますし、これだけ国も変わりましたし、国民の意識も経済そのものも変わったわけでありますから、国内だけを見詰めても今回のような抜本的な改正をする必要が出てきたという認識であります。ましてや、国際化といいますか、おっしゃるような意味での国際化にも積極的に対応しなければなりません。  今のお話は多岐にわたっておりますから、こういう答えでは的を射ていないのかもしれませんが、政治基本、そして政治行政関係についても、お述べになった考え方については基本的に同意をさせていただきます。
  5. 太田誠一

    太田(誠)委員 ここ数年の間、金融世界でのさまざまな制度改正を繰り返してまいりました。国会国民代表でありますので、私どもはその国民にかわってさまざまな法改正に関与してきたわけであります。銀行証券制度改正、そしてまたこの委員会ではありませんけれども法務委員会でも、従来のグラス・スティーガル法というものの考え方でできておった証券銀行の間の垣根、特に普通社債の取り扱いについて、我々は従来の考え方を変えて、相互参入できるような道を開いてきたわけであります。そういう一連の制度改正の中で、当面の段階としてはこの保険業法が多分最後のものになると思うわけであります。  既に、例えば普通社債の問題についてはそのような改正が行われた結果、今資金調達世界では普通社債というものが、一時死にかかっておったものが息を吹き返して大変有力な資金調達手段になっているということもございますし、また証券銀行のその他の垣根を取り払うという、垣根を越えるということについても成果が上がっているものと思うわけでございます。  そして、銀行証券制度改正のときにも、今回の保険業法制度改正のときと同様に、自由競争自由化ということを強く打ち出したわけでありまして、それが典型的には相互参入をするということが自由化なんだということであります。子会社方式による相互参入を認めるということが法改正の眼目でありまして、そうであれば、この自由競争というものとそれから法改正というものが、本当にそのような改正目的どおりにいっておるかどうかということを私ども判断をしなければならないわけであります。  私は、現にこの業界で頑張っておられる方々の話を伺いますと、実際に子会社方式によってみずからが初めて子会社をつくって、例えば生保損保会社をつくる、損保生保会社をつくるということでの参入というのは実は大変に難しいだろう。そうして、我々から見ますと、資産の大きさからいいますと生保の方がずっと大きくて、損保の方がそうでもないわけでございますから、生保の方が損保子会社をつくって参入をするということの方がよくあるんじゃないかというふうに一方的に思ったりいたしますけれども、ところが現に損保会社経営している方々から言わせますと、そんなに簡単に損保会社参入することはできない、さまざまなネットワークのための投資というものがあって、それを簡単に乗り越えることはできないんだというふうに強気の見通しを言うわけでございます。  そういたしますと、もし純粋に子会社方式によって新規参入をするということが難しいというふうなことであるならば、これは既存会社子会社にして、子会社化をすることでもって参入するというのが極めて現実的な方法であるということになりはしないかと思うわけでございます。その点についてはいかがでしょうか。どうぞ、大蔵省
  6. 山口公生

    山口(公)政府委員 子会社方式による生損保の兼営をお認めいただきたいという御提案を申し上げておりますが、その趣旨は、生命保険損害保険事業競争促進を通じまして、事業効率化を進め、利用者ニーズヘの的確な対応を図るということにあるわけでございます。この点につきましては、平成四年六月の保険審議会答申にもそういうふうに指摘されておるところでございます。したがいまして、競争促進に資するという観点からは、原則として既存会社買収よりも新規会社の設立、つまり子会社自分でつくるという方が競争単位がふえるという意味において望ましいというふうに考えられるわけでございます。  既存会社買収につきましては、それによって寡占化がされるような場合、つまり、一つそういうことが始まりますと、資本の大きいところあるいは資産の巨大なところほどそういう買収をどんどんやりやすくなるということにもなりますし、そういった寡占化に通じるというようなケースが出るかもしれない、そういった場合にはその認可については慎重にならざるを得ないと思っております。しかしながら、破綻のおそれのある保険会社を吸収するような場合など、つまり競争単位が減ってしまうというような場合には、競争単位の減少を防ぐという意味においてそれは前向きに検討しても差し支えないのではないかというふうに考えるわけでございます。  ただ、実際に認可するに当たりましては、子会社をつくって新しく展開するという保険会社と、そうでない、そういった既存会社買収してという、ケースとしては限られていると思いますが、そういったものとの権衝も踏まえながら、具体的な事案に即して検討していくことになろうかというふうに思っておる次第でございます。
  7. 太田誠一

    太田(誠)委員 今のは見通しをお聞きしたわけです。質問はちょっと違うかもしれませんが、見通しとして、例えば生保損保参入をするというときに、それは既存会社の方を子会社化しようということの方が現実的ではないか。新しいものをつくろうとするのではなくて、既にある会社子会社化しようとする方が合理的なのではないかというふうな見通しについてはいかがでしょうか、経営的に見て。
  8. 山口公生

    山口(公)政府委員 先生指摘のように、経営のことだけを考えますと、その方が手っ取り早い、あるいは簡単にできるということは、やはり経営者としては当然お考えになると思うのです。ただ、今私が申し上げたように、この法律でわざわざ子会社展開でということを認めた趣旨、つまり兼業禁止であったものを認めていくという趣旨が、競争促進して、それで国民のそういった利益の増進を図るということに目的がありますので、そういった観点から行政としてはそこは見させていただく必要があるのだろう、こういうふうに考えるわけでございます。
  9. 太田誠一

    太田(誠)委員 そこで、そこはそういうふうにチェックをする、そういう観点からチェックをするということでありますが、今おっしゃったことは独禁政策上の問題なんです。  独禁政策上の問題というのは、これはどういうふうに考えたらいいのかといえば、結局、そこで合併などが起こっても、その市場競争制限をされるということに直ちにならなければいいわけであって、百あるものが九十九になるということとか、あるいは十のものが九つになるとかいうことをチェックするという話と、二つ企業一緒になったりすると直ちにそのマーケットでもってシェアが三割を超えるとか、そういうふうな段から初めて独禁政策上の話が出てくるわけでありまして、通常は、マーケットに対して数が減るぐら いのことで、それはどうかという話は余り出てこない。  特に今の場合は、生保損保という垣根を越えた子会社化が起きたときに、それが競争制限的になるかどうかというのは大変判定の難しい問題だと思うのですね、実際問題としては。だって、違うマーケットの話なんですから、それぞれのマーケット参加者がリンクされることによって両方の市場の、それぞれの市場競争制限をされている、なかなか判定の難しいことだと思うわけであります。  ですから、原則としては、独禁政策上はよほど大きな会社同士の話でなければ、これは問題にならないと思うわけでありますので、そのような子会社化というチャンス、これは皆がひとしく均等にそのチャンスが与えられているべきだ、もしそれを認めるのであれば。何か特別なつながりでもって特別な立場にある者だけがそれを認められるのではなくて、与えられるものならば、ひとしくだれもが均等な機会が与えられるべきだと思うのですけれども、そこはどうです。
  10. 山口公生

    山口(公)政府委員 先ほど御説明いたしましたように、この子会社展開を認める理由というのは、国民経済的に競争促進利用者ニーズヘの的確な対応につながるというメリットがあるからでございまして、そういう方向で、子会社展開をし、新しく競争単位をふやし、それで競争を通じて国民利益になる、そういう方向でぜひやっていくべきではないか。  既存会社買収することは、企業め論理としては、当然考えとしては出てくるわけですけれども、すべてそれで済んでしまうとなれば、単に資本関係が変わる、あるいは、系列が悪いと決めつけるわけではありませんが、系列がともすればいろいろ競争制限的な動きにつながりかねないというような問題になるわけでございますので、最初に申し上げたような趣旨で、具体的な事案に即して検討させていただきたいと思っているわけでございます。
  11. 太田誠一

    太田(誠)委員 そこで、今言われるとおりでありますけれども、均等にそのような、望ましくなくたって認めているわけだから、それは認めることになったわけでしょう、新たに。今まではそれは認めていなかったのだけれども子会社化というものを認めるということを今回の法改正で明記されたわけでありますから、そこの判断は、あとは望ましいものと望ましくないという判断があって、個別の判断を役所の方でされるということでありますが、ともかく認めることになったわけだから、そこは認めたということの前提で話をしなければならないわけです。  その際に、相互会社株式会社というものは違うんだということで、株式会社相互会社子会社にすることは実際にはできないわけでありますが、逆に相互会社株式会社の方を子会社にすることはできるということでありますから、これは今回の法改正で認められたチャンスというものがだれにもひとしく利用できるわけではなくて、一方は利用できるけれども一方は利用できないという関係にありますから、均等ではないわけです。そこはどうですかね。均等のチャンスが、今生損保という二つ業界の中で、生保はあるけれども損保はないという関係になっているわけですけれども、そこはどうです。
  12. 山口公生

    山口(公)政府委員 先生指摘のように、確かにそういった相互会社制度株式会社制度の違いによって御指摘のような見方というのができることも事実だと思うわけでございます。それは、保険契約者が社員である相互会社ではいわゆる株式という概念がございませんので、子会社化するというのはどう法律をひっくり返してみても不可能なわけでございます。したがいまして、御指摘の点については、そういった事実があるということを前提にすればその見方もできると思います。  しかしながら、子会社方式による相互参入としましたのは、あくまでリスク遮断趣旨からでございまして、事実上そういった現象が起きるということとは別に法律的にどうかということで、例えば損保会社自分の一〇〇%の子会社をつくることができるわけでございますので、そういったいろいろな道もありますし、それからまた、法制的にいかんともしがたい部分というのは現実のものとしてあることは認めますけれども、法制的にいろいろな、例えば株式会社化してというのも、もちろん道は今回開いてあるわけでございまして、そういった法制的な面からいうとイコールではないか、事実の問題と法制的な側面がそこは若干違うのだろうと思います。
  13. 太田誠一

    太田(誠)委員 なぜこの問題に私が執着をするかといいますと、前の銀行証券制度改正のときにも実はそこが大変気になったところでありまして、たびたび当委員会を初めさまざまな場所で私も確認をいたしましたが、子会社方式による参入を認めるということと、既存会社子会社化するという話は、大分違う話であります。そのときのたしか国会答弁でも、それはできれば望ましくない、既存会社子会社化するような形でもって新規参入ということにならないんだ、望ましくないというふうな話でありましたのに、その後、ぼろぼろと大きなそういう子会社化のようなことが出てきたわけであります。  その当時、なぜこういう経営が悪化した金融機関同士一緒になるといったたぐいのことが認められることになるのか、そうならないように、従来の哲学といいますか、銀行証券も、およそ認可によって金融世界の営業を、事業を始める会社は、すべてこれはつぶれてはならないんだ、つぶれることがあってはならないんだという前提でもって法律ができていた。あるいは法律運用が成り立っておったわけだから、それを倒産もあり得るということを法律上ちゃんと想定をして、そのもとでこの自由競争促進しましょうということになっておったと思うのでございます。  そうするとこれは、一方で倒産があり得るという想定をしておって、あるいは、今度の保険業法の場合もそうでありますけれども契約者を保護するというファンドをつくって、そこで最悪の事態に備えておるということを手当てをしておって、一方で経営が悪くなったところに限り例外的に既存企業子会社化を認めるというのは、二つ方向で、ちょっと違うことを言っておると思うのでございます。  そこで、銀行局長にお尋ねしたいわけでありますけれども、先ほどの銀行証券制度改正のときに私たちがやりとりをしたことというのは、その後起こった幾つかの出来事、特に私は、コスモ証券をどこがが子会社化した話、あそこの方がむしろ非常に気になっておりまして、つまりあのときに、わざわざ証取法の方には、申しわけないけれども証券会社がつぶれるということと銀行がつぶれるということは恐らく社会的影響が全く違う話であって、そういうことは想定をしてちゃんと法律に書きましょうということで書いたわけです。  そこに証券会社というものの倒産はあり得るということにしておいたにもかかわらず、その後、コスモ証券子会社化というものを認めるに至った。しかも、ブローカー業務はそこで引き続き当面はということで、まだその状態一つの特権を、吸収した親会社の方は享受するということになっているわけであります。  それは許容限度といえば許容限度なんだけれども、それこそ今保険部長やりとりをしておる内容というものは、来年とか再来年になったらば、それはこういうことで違うんですということになる可能性が非常に大きいと思います。来年、再来年にはならないかもしれないけれども法律の精神はそうかもしれないけれどもそうではないという例外の方がどんどんできてくるという可能性があると思うのですが、その辺について、法律をつくったときのお気持ち合併を認めたときのお気持ちというのは、どういうふうに折り合うのでしょうか。
  14. 西村吉正

    西村政府委員 先般の金融制度改革の際に、子会社方式によって相互に乗り入れていくという措置をとりました基本的な考え方は、利用者の利便 の向上等のために、競争制限というようなことに弊害を生じないような手法をもってお互いに相互に乗り入れていこう、そういう趣旨であのような仕組みをとったわけでございます。そのような趣旨からいたしますと、子会社を設ける場合には、あくまでも原則は新たに子会社を設けて相互参入していくということが基本になるということは、当時もそのように御説明申し上げましたし、今でもそういう考え方で臨んでいるわけでございます。  ただ、全く新しく子会社をつくる方法だけに限るかという点につきましては、先般の制度改正の際にも御説明申し上げ、そのような法律改正をしていただきましたところでございますが、特別な場合においては、金融機関あるいは証券会社経営の危機に陥ったような場合にはそのような手法も講ずることができるという道がとられているところでございます。  したがいまして、私ども運用といたしまして、決してこのような既存会社子会社化するということが原則であるというふうには考えておりませんで、あくまでもこれは市場の混乱の回避だとかあるいは既存利用者保護等観点から、真にやむを得ざる例外的な措置として認めるという考え方をとっているわけでございます。先般のコスモ証券に関します、第三者割り当て増資により大和銀行子会社となりましたケースにつきましても同様の考え方で臨んだものでございます。
  15. 太田誠一

    太田(誠)委員 こういうことなんです。最初に申し上げました。ルールというものはこれは万人にひとしく、ルールが定められたならば万人がひとしくそのルールのもとで行動するということでありますから、ルールという言葉はそもそも相手を特定しない。不特定多数というとあれですけれども、少数であろうと多数であろうと、不特定の企業あるいは経営体に対して設けられるのがルールであります。  ルールの中にこういうことを言葉として我々は認識しておかなければいけないのは、パーソナルなルールとインパーソナルなルールという言葉があるわけでありますけれども、パーソナルなルールというのは、その人の顔を見てこの人ならばそのルールは適用する、しかしこっちの人ならば適用しないというような、個別的な介入というのができるのがパーソナルで、インパーソナルなルールというのは、顔は関係ない、不特定であるという意味で使うわけでございますけれども、そういう意味では、冒頭に申し上げた。国民が我々に託している立法というのは何かというと、それは相手の顔を見てから話が違ってくるというふうなことは望ましくないのであって、それは極力インパーソナルにしておく、だれに対しても同じルールであるということでなければならない、そういうことだと思うのでございます。  そういたしますと、先ほどから言っておる合併についての話は、これは独禁政策上の問題であるならば独禁政策的に見ればいいだけの話であって、それを銀行局で取り扱うときに、独禁政策にかわってやろうということになるのか、そうじゃなくて独禁政策を補完するというふうなおつもりでパーソナルな審査をされるのかということが、従来から私は、そこはどういうふうに整理しておられるのか。独禁政策ならば公取がやればいいのであって、たんたんとインパーソナルにやればいいわけで、それをパーソナルにやっているということの根拠というかお気持ち、どういう姿勢でそれをやっておられるのか。
  16. 西村吉正

    西村政府委員 このような形の子会社を認めるかどうかということにつきましては、委員指摘のように一つ独禁政策、すなわち独禁法十一条の金融会社の株式保有の制限という観点からの例外を設けるについてどのような判断をされるか、こういう問題は一つ基本にあると思います。ただ、私どもは、またそれとは別の観点金融行政上の観点から、子会社としてそのようなものを認めることが金融行政上適切かどうかという別途の、独禁法とは違った面からの判断をしておるということでございます。  ただ、その場合にも必ずしも私ども、パーソナルというお言葉をお使いになりましたが、あるいは恣意的とか我々の判断だけによって決めるというようなことではございませんで、法令上そのようなものを認める基準というようなものもあるわけでございますので、そのような基準及び金融行政金融情勢全般の総合的な判断の中から独禁政策とは別の観点判断をしているというふうに理解をしております。
  17. 太田誠一

    太田(誠)委員 これは金融にかかわる行政だけではなくて、そういうふうに表現すると嫌がるかもしれないけれども、一種産業政策になるわけです。通常我々が銀行局のお仕事を見ていると産業政策になるわけです。産業政策はもちろん通産省も他の省庁もやっているわけでありますけれども、その産業政策のうち独禁政策を超える、あるいは独禁政策とは別の産業政策というのは何だろうか。  それは、今あるものは急になくすとめちゃくちゃになってしまうから、当面今までやってきたことは静かにトーンダウンしていくということが何かここ二十年ぐらいの判断であったと私は思うのですけれども、そのような独禁政策以外の何の政策判断があるのか、パーソナルな審査をやることに。独禁政策を超えた。独禁政策はまさに個別のマーケットの事情に注目するわけでありますから、そこで新規参入がどういう形で行われるかに関心を持つわけだけれども独禁政策以外の正当化さるべき、要するに、国民にかわってルールを定めて、それが一体国民経済にどういう利益をもたらすような政策が、指導があり得るのかということなんです。独禁政策以外のこと。
  18. 西村吉正

    西村政府委員 御指摘のように、銀行行政あるいは金融行政も一種の産業政策であろうかと存じますが、しかし、金融業、銀行業というものは一般の産業とは若干異なる側面も持っているかと存じます。それは公共性というよう宣言葉で普通表現されておるわけでございますが、そのことを法令上明確に定めたものといたしましては、例えば銀行法の第一条、銀行行政目的ということが記されております。  この第一条の第一項では「銀行の業務の公共性にかんがみ、信用を維持し、預金者等の保護を確保するとともに金融の円滑を図るため、銀行の業務の健全かつ適切な運営を期し、もって国民経済の健全な発展に資することを目的とす。」と記されているわけでございますが、私ども行政の根拠はこのようなところにあろうかと考えている次第でございます。
  19. 太田誠一

    太田(誠)委員 銀行法の第一条第一項はそう書いてあるのですけれども、それだけがあると、そのにしきの御旗のもとにさまざまな公的な介入が行われるおそれがあるということをおもんぱかって第二項があるわけでございまして、そうではあるけれども、あくまでもこの国は自由主義の国であって、それぞれの経営は自主的に行うべきだということを定めているわけでございますので、今のお話の公の使命とかあるいは公共的な存在としての経営の安定性ということはあるけれども、それを余りにも強調し過ぎると行き過ぎた介入になってしまうということを、二十年前からずっと、恐れることの空気の方が国民の間には強いということをまず強調しておきたいと思うのでございます。  そこで、さっき申しましたように、法律国民がみずからを練る、国民みずからの活動をみずから縛ることになるわけでありますから、自由主義社会のもとでは法律は少なければ少ない方がいいのです。法律言葉の数も少なければ少ない方がいいわけであります。ですから、特に必要でない限りはもう条文にも書かないでおくべきだというふうに考えております。  そこで、BIS規制という言葉が、もう今は余り使われなくなったけれども、二、三年前には頻繁にこの言葉が使われた。BIS規制というのは何であるかというと、これはバーゼルで開かれた会議で、たしかアメリカの連邦準備銀行の有名な 人が提案をして、そして国際社会での銀行が健全性というものを考えずに無秩序競争をしていることは非常によくないということで、大体このくらいの自己資本比率は保っておくということに、つまり銀行業務に携わる世界じゅうのバンカーはひとしくこのような基準を念頭に置いて行動しようではないかということを提案し、そして、これは国際社会の問題でありますから、BIS規制の自己資本比率についてのルールをどう受けとめるかというのは、個々の資金調達とかあるいは個々の融資とか、それごとに、マーケットに参加する人たちそれぞれが判断することであって、そこにみんなに注目してもらえればいいのだという、言ってみれば自主的な何か申し合わせのようなものであったと思うのでございます。  ですから、そこを前回の銀行証券制度改正のときに条文に入れる、法律の中にそれを書くということに私は大変抵抗があったわけであります。しかし、そういうことはいいことであるということがある以上、文章にしてしまうことにあえて強く反対する理由もなかったのですけれども、この点がさまざまな、先ほど言いましたパーソナルなルール、パーソナルな運用をされるときに、これは余り乱用すべきことではないと私は思っておったわけでございます。そのBIS規制の文章の中に書いたということと今度のソルベンシーマージンの話というのは、多少考え方、ニュアンスは違うと思いますけれども、それにしても共通のものがそこにはあるわけであります。  ソルベンシーマージンという言葉はどこかの国の法律に出てくるのです。それじゃ銀行局長、BIS規制の方はどこかの国の法律に書いてあるのです。
  20. 西村吉正

    西村政府委員 いわゆるBIS規制、自己資本比率を初めといたします、広く言いますと健全性諸比卒基準というような言葉も使われますけれども、個々に行政が適否を判断するのではなく、計数の客観的な基準を設けて、それによって金融機関のいろいろな状況を判断していこう、これは市場経済あるいは金融自由化のもとにおける金融行政一つ方向として望ましいものと考えられておりますし、私どももそのような方向を目指しておるわけでございます。  自己資本比率規制というものも、いろいろな要因はございますが、そのような考え方一つであろうかと存じておりますが、この点に関しまして、御指摘のように先般、バーゼルの銀行規制監督委員会におきまして、世界共通の基準として、先進国共通の基準としていわゆるBIS規制というものが設けられました。そして、その点に関して、これを日本の金融機関が守っていくためにどのような制度にしたらいいかということが検討されたわけでございますが、この点に対して平成三年六月の金融制度調査会の答申ではこのように述べられております。   現在の我が国の自己資本に係る規制は、バー  セル銀行規制監督委員会における合意に基づく  国際統一基準も、国内基準も、ともに通達で規  定されており、法律上の根拠を有していない。  このような状況にあるのは主要先進国の中では  我が国のみとなっていることも踏まえ、金融機  関の経営の健全性を確保するための諸措置の実  効性をより一層確保する観点から、多角的な検  討を行うべきである。こういう答申に基づきまして、金融制度改革法を制定する際に法律の中に取り入れていただくことを、他の国と同じような仕組みにしていただくことをお願いした。こういう次第でございます。
  21. 山口公生

    山口(公)政府委員 諸外国におきましてソルベンシーマージン基準に類したもの、あるいはそのものが規定されております。アメリカでは、各州におきましてリスク・ベースド・キャピタル、RBCという概念で各州の法律で規定されております。それから、EUも統一指令でソルベンシーマージンを採用することにしておりまして、各国で法律でそれぞれ規定しております。
  22. 太田誠一

    太田(誠)委員 そこで、各国は法律で定めておるということでありますれば、それは従来の金融機関に対する監督指導ということは幾つもさまざまな柱があってそれでチェックをしておったと思うのですけれども、そのようにはっきりパーソナルなルールというよりもインパーソナルにそういうルールをつくった以上、それをみんなが見てそこだけを考えておればいいというのが、本来、法改正したならば、規制の簡素化といいますかあるいはインパーソナル化ということであって、初めて私は正当な取り扱いだというふうになると思うのでございます。その点はよくわかりました。  そこで、もう一つ言葉の問題でありますけれども、ファイアウォールという言葉が出てくるわけであります。私は、ファイアウォールという言葉は、それこそグラス・スティーガル法の精神というものを考えたときに、つまり証券銀行の間の相互参入のときにファイアウォールという言葉が出てきているのであって、生損保の話でファイアウォールという言葉はあったのかと実はびっくりいたしたわけでございます。  それは、もちろん親子間の取引、親会社子会社間の取引とその他の取引というものが違っていてはいけない、わかり切ったことは、むしろそれは独禁法の世界の上の話なのです。他の取引自分の内輪の取引を差別してはならないというのは、これは一種独禁政策的な観点になりますが当たり前のことでありますけれども、そういうものを越えて、この場合にファイアウォールという言葉が出てくること自体が私は何かなじまないというような気がいたすのですけれども、そこはどうです。
  23. 山口公生

    山口(公)政府委員 先生指摘のように、銀行証券との間にかなり厳格なファイアウォールが定められております。生損保の場合におきましても、親子の関係でございますので、例えば親子の保険会社の意思決定がほぼ同一人で行われた場合には、親会社が不良融資先を有しておって、子会社に融資させ、そのかわり金で債権を回収とか、極端な例ですけれども、そういうことがあって、利益相反的なものがあってリスクの移転が行われるということが仮に行われますと、子会社というのは、自分資本は持っておりますけれどもあくまで独立した会社でなければいけないわけで、しかも、独立していませんと、生損保の兼営を禁止しておりますから、この関係が独立性がなくなると禁止している意味がなくなるわけでございます。そういう意味で、やはり生損の間でもファイアウォールというのは必要ではないかというふうに思うわけでございます。
  24. 太田誠一

    太田(誠)委員 ただそれは、グラス・スティーガル法想定した世界利益相反のことがあってそういう言葉が出てきているわけで、確かにおっしゃるとおりで、それぞれが認可をされる業種であればおのずからそこには常識的な壁があるのは当たり前だけれども、それを越えてわざわざファイアウォールと言わなければいけないようなことなのかどうかというのは私はむしろ疑問なのです。そこはどうなのです。今やファイアウォールという言葉はあらゆる業種について使われている言葉なのです。
  25. 山口公生

    山口(公)政府委員 おっしゃるように、ファイアウォールは銀証の際に使われまして、そのとき、銀証の方もいわゆるアームズ・レングス・ルールというものがあって、それを導入したときにファイアウォールという言い方をしておったわけでございます。今回、生損の相互参入の際も、このアームズ・レングス・ルールというのは先ほど私がちょっと例を申し上げたようなことを禁止する規定を置いておりますので、そういう関連でファイアウォールという言葉を使わせていただいておりますけれども、ファイアウォールの高さといいましょうか、壁の高さというのは、先生の御指摘のように、生損の間でファイアウォールと言うほどのことがあるかねというような御疑問もよくわかります。  したがって、銀証と比べて生損のファイアウォールというのは、同じ言葉を使いながら同じ高さのものを設定する必要はないのではないか。銀証におけるような利益相反という問題は比較的生 損の間では少ないのではないかというのは、先生の御認識と私どもと余り違わないのではないか。そうなると、おのずとファイアウォールも、同じ言葉ではございますけれども、そこは違ってくるべきではないかというのは御指摘のとおりだと思います。  ただ、言葉の問題としては、ほかに適当室言葉があれば使うことはやぶさかではございませんけれども、一応そういうことで呼ばれておりますので、そういった言葉を使わせていただいております。
  26. 太田誠一

    太田(誠)委員 だから、最初に何で大きな話をしたのかというと、特に強調する必要がないことはもう言わないことがいいのだというのが、法律というものが持っている、国民にかわって国民自身を律するルールだということでありますので、使わない方がいいのです。ファイアウォールという言葉も実はここでは使わない方がよくて、実際、何か違う業態のものであって、それぞれが監督を受けておるという立場からすれば、これはやってはならないというふうなことを明示することで十分であって、法律の精神の中には実はファイアウォールというのはないのだと僕は思うのです。監督をしておるという立場からして、そこはおのずから越えてはならないものがあるのだという程度のことで、ファイアウォールという言葉は使わない方がいいのではないか。
  27. 山口公生

    山口(公)政府委員 生損保は兼業を禁止しておりますので、ファイアウォールという呼び方が適切かどうかは問題がありますが、そこに関しては、やはり独立性がなければ、自分が本体でやっているのと実質的にも同じになってしまうということになりますと、生損保の兼営禁止、諸外国でもその仕組みをとっておりますから、それが意味をなさなくなってくるという危険性があるので、そういった法的な意味からいっても意味があるのではないかというふうに私は考えておるものでございます。  ただ、高さの問題というのは、先生の御指摘のとおりの、利益相反の度合いというのは業態間の諸事情で違ってくるのだろうと思うのでございます。
  28. 太田誠一

    太田(誠)委員 ということは、それこそ、先ほどアームズ・レングス・ルールのようなことは念頭に置いているけれども、それ以外のことについて余りやかましく言うようなことではないように思うのです。ぜひそこら辺は法律というものがこれから先、法律はまあいいんだけれども法律から先の話で、省令とかあるいは通達でもって、これはいけない、あれはいけないという細かいことを言うような世界ではないのだということを確認をさせていただきたいと思います。  もう一つ言葉の問題でありますけれども保険契約者保護基金というものをつくれ、こう言っておるわけです。つくれということを言うのは、普通は政府が何かをせよと言うときには、そのようなことをエンカレッジするために何か金を出すとか税金をまけるとかなんとか、そういうことをやるわけです。それでもって、そのようなやってもらいたいということができるように、あるいはそういうお勧めをするということの何か実際の裏づけがあるのが普通でありますけれども、そこはどうなんですかね。何もないんです。
  29. 山口公生

    山口(公)政府委員 保護基金は、民法三十四条により民間が任意に設立する公益法人でございます。したがって、御指摘のような意見というのは当然出てくるわけでございますが、この審議をお願いしております改正法案では、その基金の行う業務、それから基金の役職員の守秘義務、それから大蔵大臣の適格性の認定等の資金援助の手続など、所要の規定を整備させていただいております。この法律の規定を設けることによりまして、資金援助が救済会社に対してのみ行われる、破綻会社の方に援助金が贈与されるということはない。あるいは大蔵大臣の適格性の認定ということから、恣意的な資金援助の発動は防止できるとかというような点がございます。  それから保険契約者等の保護と保険業に対する信頼性の維持ということで、法律上これが明定してありますと、基金へ保険会社の加入が促進できるのではないかというような効果もあります。それから、株主の代表訴訟等に対しても、法律がきちっとありますればその代表訴訟の乱用等も起きないのではないかというふうに考え、そういうさまざまな効果は法律に書くことによって持ち得るのではないかというふうに思っておるわけでございます。
  30. 太田誠一

    太田(誠)委員 もう時間が参りました。  きょうは幾つか疑問の点だけを申し上げておきましたけれども、要は、ここで法律をつくって、それからその後は各省にゆだねるということになった後どうなるかということをみんながいつも心配するわけでございます。やはり法律に何かを定めたときは、まずその機会は均等でなければいけないということと、それから、法律の段階までは国会のマターですから、余り過剰な介入とか管理にならないようにということはこの段階ではチェックをできるけれども、それから後はもうゆだねてしまうから、皆様の気持ちとか姿勢次第になってしまうわけであります。本当は余り解釈の余地がないように法律をつくる方が、国民としては心配がないからいいのです。  だけれども、そんなことを言っていたって仕事をやりにくいということでしょうからある程度から先はもうおゆだねをするわけでありますから、その立法の精神とか、ここでやりとりをしたことというのは何よりも大切なことでありまして、恐らくこのような法改正を、今はこういうようにしているのだけれども、さらに先ほど言いましたハーモナイゼーションということを考えれば、我々が今までここで通してきた法律の結果、私も十五年になりますが、十五年間通してきた法律というものが、あるいはもう既に世間の気持ちとしては自由化国際化の方に進んでいるはずだと思いながら、逆に運用主体でもって強い規制になって、諸外国に比べてこの国がさらにそういう政府の介入の強い国で、それが公正な競争を妨げているのだというふうに言われてはいないかということも心配をするわけでございます。  どうか今後とも、運用に当たって立法の精神を大切にしていただくようにお願いいたしまして、質問を終わります。ありがとうございました。
  31. 尾身幸次

    尾身委員長 次に、平田米男君。
  32. 平田米男

    ○平田委員 今回の保険業法改正は、五十六年ぶりという全面改正であるということでございますが、時代の変化に対応した。十分それを踏まえた改正であろうと我々は思い、また期待をしているわけでございますけれども、今回の保険業法改正目的というものをまず御説明いただけますでしょうか。
  33. 山口公生

    山口(公)政府委員 お答え申し上げます。  今般の保険業法等の改正を初めとする保険制度改革は、金融自由化国際化等の環境の変化に対応するとともに、そういった自由化国際化対応するとなりますと規制緩和等を進めていくことになるわけですが、そうすると一方で保険業の健全性をよりしっかりと確保することが必要になってくるわけでございます。そういったことを目的として御審議をお願いしているわけでございますが、とりわけこの法律は、昭和十四年に、戦前に制定された保険業法の全部改正をお願いしているものでございます。  この改革の目的といいますか、大きな柱は、今申し上げました規制緩和、自由化の推進、保険業の健全性の維持、それともう一つつけ加えさせていただきますと、公正な事業運営の確保だろうと思うわけでございます。こうしたことで、国民生活の安定、向上及び国民経済の発展に多大な貢献をしていただくよう、保険会社にそういった社会的な役割が発揮できますよう、二十一世紀に向けて新しい保険制度を構築しようというものでございます。  この法案をお出しするまでの間、平成元年から本格的に保険審議会でも御議論をいただきまして、平成四年に御答申をいただき、その後法制的な検討を加え、昨年その最終的な進め方をまとめ た保険審議会報告の御提出を賜っております。  具体的な内容としましては、規制緩和、自由化促進に関するものとしましては、生損保相互参入、商品、料率についての届け出制の導入、生命保険募集人の一社専属制の一部緩和、保険ブローカー制度の導入などでございます。  健全性に関するものとしましては、ソルベンシーマージン基準の導入、経営危機対応制度として保険契約者保護基金を設けるなどの措置、保険計理人制度の拡充でございます。  三番目の公正な事業運営の確保としましては、少数社員権の行使要件の緩和などの相互会社における経営チェック機能の強化、ディスクロージャーについての規定の整備でございます。  若干はしょった言い方になりましたが、目的と概要は以上のようなものでございます。
  34. 平田米男

    ○平田委員 時代に合わせた目的を持って改正をしたという御説明があったわけでございます。  具体的に、今回新しいものとして生損保相互参入というのが認められているわけでありますけれども生保損保子会社方式相互参入することによって何が生まれてくるのか、またそれが国民にとってどのようなメリットがあるのか、この辺の御説明をいただけますでしょうか。
  35. 山口公生

    山口(公)政府委員 生損保相互参入のメリットを、保険会社にとってのメリットと国民にとってのメリットの二つに分けて御説明申し上げます。  保険会社にとりましては、生損保子会社方式による相互参入の実施によりまして、いわゆるクロスマーケティングを通じたワンセットによる商品販売が可能になるなど、経営資源の有効活用が図られまして、事業効率化が高められるというメリットがあるわけでございます。  もう一つ国民にとってのメリットでございます。すなわち、国民経済的な見地からいいますと、適正な競争促進され、事業効率化が図られ、その結果、消費者の多様化、高度化するニーズに幅広く対応できる新しい商品・サービスの開発がこれまで以上に期待でき、商品の選択肢が広がるようになれば、それは大変国民にとってもメリットが大きいのではないかというふうに考えているわけでございます。
  36. 平田米男

    ○平田委員 先ほど改正目的の中で、金融自由化あるいは国際化への対応ということを強調されたわけでありますけれども、今回の保険業法改正というものはそれに十分対応しているのかどうか、私は疑問なしとしないわけでありますが、その辺はどのように考えておいでになるのでしょうか。
  37. 山口公生

    山口(公)政府委員 最初にお答え申し上げましたように、今回の保険制度改革は、金融自由化国際化等の環境の変化に対応させていただきたいという趣旨がメーンの一つになっておるわけでございます。  金融自由化国際化の環境変化への対応といたしましては、保険業の諸機能を十分に発揮する観点から、まず保険会社の業務の範囲を見直し、また規定を置いてございます。具体的には、保険の引き受け、資産運用、それから付随業務、国債の窓販などを書かせていただいております。それから法定他業、公共債ディーリング、社債の受託等を書かせていただいております。これらを明確にしております。  また、こうした環境変化を背景とします運用手法の高度化によりまして、キャピタルゲインとインカムゲインを区別する意義が最近失われてきております。これはキャピタルゲインかなインカムゲインかなというふうに考えたときに、昔ははっきりと分けられておりましたが、今は非常に商品が複雑になっておりまして、キャピタルゲイン的なものをインカムゲイン的に払っていくというような金融商品もございます。そうなってみますと、それを余り区別して、インカムゲインで配当をするというような一見非常にかたい原則を置いておりますので、それを見直しまして、例えば八十六条準備金を価格変動準備金として再構成するというような改革をお願いしてございます。  一方、こうした金融自由化国際化は、逆に保険会社を取り巻く諸リスクの増大をもたらす面もあるわけでございます。いい面ばかりではもちろんないわけで、逆にリスクの増大にもつながるわけでございますので、そうした意味からは、保険会社の健全性を維持するということで、ソルベンシーマージン基準の導入等の法的な手当てを整備しようとしているものでございます。
  38. 平田米男

    ○平田委員 よくわかったようなわからぬようなお話なのですが、自由化国際化の問題は、ではもう少し先にさせていただいて、もう一つ、今我々日本経済を見ているときにさまざまな問題がございますが、大変大きな問題は産業の空洞化と言われているわけであります。ある程度日本の産業が周辺諸国に出ていくというのは、これは時代の流れとしてやむを得ないものかと思うわけでありますが、同時に、日本国内でそれにかわる新しい産業というのを興していかなければいけないのだろうというふうに思うわけであります。それに対して今我々は力を入れなければならないと思うのです。  少し観点は違うかもしれませんけれども、今回の保険業法改正というものは、このような問題に対してどのような取り組みといいますか、今申し上げたような問題点を踏まえてどう対応していると言っていいのでしょうか。
  39. 山口公生

    山口(公)政府委員 今先生が御指摘になりましたように、我が国を取り巻く経済環境といいましょうか、我が国がこれから克服していかなければならない経済上の重大な問題というものとこの法律改正とは無縁なものであってはならないわけでございますけれども、今回の法改正は、昭和十四年の法律を抜本的に変えようという、仕組みの主な変更でございます。規制緩和、自由化あるいは健全性の確保というような目的を主たる内容としておるわけでございまして、産業のいろいろ抱えている問題、先生のおっしゃった重大な問題にすぐこれが対応するための法律というわけではもちろんないわけでございますけれども、従来から保険会社も、中小企業あるいはそういったもの、あるいは海外へ進出する企業等、空洞化に対するいろいろな資金援助等、資金援助といいますか金融の円滑化を図っていただいておるわけでございます。  そういった意味で、保険会社の資金仲介機能といいますか、そういったものがやはり引き続き十分に発揮されていくということが非常に大切なことでございまして、そのためには何よりも健全な経営をやっていただく必要があるわけでございます。  健全性といいますのは、保険契約者のためにはもちろんでございますけれども、そういった運用としての貸し付けあるいはポートフォリオとしてのいろいろな投資としてリスクを負う役割を資産面でも持っているわけでございます。そういった役割、つまり金融仲介の機能を十分発揮するためにも、やはり企業体力をつけていただいて、しっかりとその辺のリスクもとっていただくということが必要ではないかというふうに思っておるわけでございます。  そういった意味では、あながち全く無関係のものをやっているということではございませんで、そういったもののためにもしっかりとした生保経営あるいは損保経営をやっていただくための法改正というふうに認識していただければ幸いでございます。
  40. 平田米男

    ○平田委員 もう一つ金融商品が多様化してきているというふうに言われております。それについていろいろな問題点も出ているわけでありますけれども、しかし多様化の流れはとめられないわけでありまして、保険業界もそれに対して対応していかなければならないと思うのでありますが、今回の改正は、この問題に対してはどのような取り組みになっているのでしょうか。
  41. 山口公生

    山口(公)政府委員 お答え申し上げます。  今回の改正におきまして、規制緩和、競争促進観点から子会社方式による相互参入をお認めいただきたいということでお願いしてございます が、これをお認めいただきますと、代理店あるいは保険募集人といったそれぞれの販売のチャネルにおきまして、生命保険商品、損害保険商品双方の供給がいろいろ多様化し、また拡大し、消費者にとって商品の選択の幅が広がるものと考えております。  その際、各保険会社におきまして契約者ニーズに一国会致した商品が開発、工夫されることが期待され、さまざまな商品を組み合わせました保険サービスが提供されるというふうに考えておりますし、またそれを期待しているわけでございます。
  42. 平田米男

    ○平田委員 次に、高齢化社会というのが先ほどの産業の空洞化と並んで今大きな問題でございますが、年金の問題あるいは介護の問題、これがクローズアップされてきているわけでありますけれども、同様に、今回の改正でこのような問題に対してはどのような対応をされているのでしょうか。
  43. 山口公生

    山口(公)政府委員 お答え申し上げます。  御指摘のように、高齢化社会を迎えまして、公的な社会保障を補完する国民の自助努力の必要性が大変増大してまいっておるわけでございます。特に老後保障、介護保障における民間保険の役割はますます重要になってくると思われます。そうした中で、多様化してまいります国民の生活保障のニーズに対応して、個々の利用者ニーズにマッチした多様な保険商品を提供することが求められているわけでございます。  今回お願いしております保険業法案では規制緩和や競争促進を大きな柱としておりまして、それによりまして保険会社がそういったニーズに迅速に対応して、創意工夫により多様な商品開発を進める結果、高齢化社会に対応した保険サービスの充実がもたらされるようになるというふうに考えておりますし、またそういうことを強く期待しておるわけでございます。
  44. 平田米男

    ○平田委員 大体ずっとポイントについてお伺いをいたしました。  まず規制の緩和、あるいは自由化国際化に対する対応の問題でございます。  今回は生損の相互参入はお認めになりましたが、これまで大きなテーマになっておりました銀行証券等との相互参入は見送ったわけであります。平成四年の六月に保険審議会が出されました答申では、銀行、信託、証券業務についての参入問題は極めて積極的に答申をしておりました。にもかかわらず、その後出されました平成六年六月の保険審議会報告ではこの辺をほとんどネグってしまっているわけでありまして、私ども、この両方の答申を見ますと、文章を見ますと、なぜこんなことになってしまったのかということがよくわからないわけであります。  しかも、先ほどの答弁では、規制の緩和をやるんです、自由化国際化対応するんです。こういうお話がございました。であるならば、今回の生損の相互参入だけを認めた規制緩和というのは極めて不十分、また国際化自由化に対する対応としても極めて不十分と言わざるを得ないのではないか、そういう印象を持っているわけであります。その辺はどのようなお考えをお持ちなのでしょうか。大臣、どうでしょうかび
  45. 武村正義

    武村国務大臣 大改革の中で、規制緩和、自由化の姿勢が必ずしも十分でないのではないかという御指摘かと思います。  これはもう保険部長がたびたびお答えを申し上げてまいりましたが、審議会も当初は全面的な相互乗り入れの方向を答申をいただいているわけでありますが、その方針は否定はしないにしましても、まず第一段階、この改正の中でどこからスタートするのがいいかという議論をいただいて、生損保相互乗り入れという方向を答申をいただいたわけであります。  先ほど太田委員の御意見もございますが、確かに、市場経済であります、資本主義経済でありますから規制はなるだけない方がいい、原則自由がいいということだと思いますが、アメリカなどの改革の経験も参考にしながら、おっかなびっくりでやるわけじゃありませんけれども、まず、大改正ではありますが、この中ではここまでやっていこうという姿勢を今回は打ち出しているというふうに御理解をいただきたいと思うのであります。  そういう意味では、原則論からすればまだまだ将来に期する課題も残ってはいるというふうに私も認識はいたしております。
  46. 平田米男

    ○平田委員 大蔵省はそうやって御説明をされているわけでありますが、今、私の質問に対してはほとんどまともにお答えになっていないわけでありまして、答申は明確に「銀行・信託・証券業務への参入については、これまで培ってきたノウハウ等を基礎に、業務の適正な遂行が見込まれるようになっている。」ここまで断言しておるわけです。しかし、今の御説明では、まず第一段階でという言い方だけしかされなかった。私は、まず第一段階でというのは当然の結論だけをおっしゃっていることであって、なぜ第一段階にしたのかという理由が明らかになっていないのではないかというふうに申し上げているわけであります。  私は冒頭に今回の保険業法改正目的は何かというふうに明確に質問をして、明確にお答えがありました。規制の緩和であり、自由化国際化対応するのだというふうに明確にまたお答えがあった。しかし、出てきたものはそれとはかけ離れたものではないのか、審議会の答申ともかけ離れたものではないのかというふうに、私は素朴な疑問を提示しているわけでございまして、この質問にやはりきちっとお答えをしていただかないと、我々は国民に対して説明のしょうがないわけでございます。どうでしょうか。
  47. 山口公生

    山口(公)政府委員 大臣の御答弁を若干補足させていただきますと、確かに先生おっしゃるように、平成四年の審議会答申、それとその進め方を議論していただいた平成六年六月の審議会報告というもので大分トーンが変わっている、それは事実でございます。  その間の議論等を申し上げますと、実は今回の保険制度改革は、五十六年ぶりの基本法の書きかえという制度の全体的な見直しと、それと同時に競争促進的な要素を織り込もうという、かなり意欲的な内容になってございます。  それで、先輩格であります銀行等を見ますと、昭和四十六年に実は預金保険法が成立しておりまして、これが私どもが御審議をお願いしております契約者保護基金的なものに類似しているもの、それとぴったり同じではございませんが。その十年後に銀行法の改正、これは片仮名法を平仮名法に変えるという歩みでございました。その後、しばらく間があきまして平成五年に金融制度改革法、これは銀行証券の乗り入れ等の規制緩和が中心になったものでございます。  保険の場合、実はこの約二十年間の動きを一挙に実現するということが当初は考えられておったのだろうと思うのでございます。しかし、余りにも急激な変化というものが、かえって保険会社のリスクも増大しますし、その結果、契約者保護に重大な影響が及ぶのではいけないというような配慮もございまして、保険制度改革を意欲的にやるのはいいけれども、やはりそういった銀行等の例を見ながら一つ一つやっていこうということで、そういうステップ・バイ・ステップの考えになったわけでございます。  しかし、かといって少しずつ小出しではなく、銀行証券、信託と保険との関係は今回盛り込むことになりませんでしたけれども、生損の相互参入問題とか、あるいはその他の規制緩和の問題、いろいろな問題がかなり網羅的に入ってございます。  そういうことで結局、「まず、子会社方式による生・損保相互乗入れを含む保険制度の自由化を進めるとともに、健全性維持のためのソルベンシー・マージン基準や新しい経営危機対応制度の導入などの法制化を急ぐことが肝要であり、その定着を見極めた後に」「他業態への進出も含めた制度改革が完了するよう、段階的に行うことが適当である。」という報告を保険審議会自身でお出しいただいておりまして、そういった線に沿って 今回こういった法案の審議をお願いをしているということを補足させていただきたいと思います。     〔委員長退席、金子(一)委員長代理着席〕
  48. 平田米男

    ○平田委員 当初はそういう大改正をやる予定であったけれども、急激な変化がどう悪影響をもたらすかわからない、こういうのがまた心配になってきたという御説明でした。要するに、バブルの崩壊があって、それで今まで勢いついていたのが少し足がとまってしまった。こういうふうに端的におっしゃった方が真相に近いのじゃないかなというふうに僕は思うのです。  今、日本経済はバブルの崩壊、デフレ経済で非常に萎縮しております。そこの真っただ中で今回の保険業法改正がありました。平成四年の答申では、二十一世紀を見据えてもっと自由化しよう、規制緩和しよう、もう総合金融会社になっていくんだ、こういう発想があったわけであります。しかし出てきたのは、突然、もう生損の相互参入ぐらいでやめておきましょう、経営は健全でなければなりませんと。  バブルの崩壊によってさまざまな弊害が出たことに対する反省という観点からするならば、経営の健全性を守っていこうという姿勢は間違ったごとではないと私は思います。しかし、本当にこの改正が五十六年ぶりになされたものということは、今後五十年間も見据えたものとしてあるのだろうと私は思うのです。そういう改正として、果たして私たち国民に納得できるものなのかどうか。責任持って我々が国民に対して、こう改正いたしましたと申し上げられるものなのかどうかということが今ポイントなのではないかと思うのです。  バブルで失敗したというその反省だけで改正が行われたとするならば、だけでというのはちょっと語弊があるかもしれませんが、それだけにとらわれているならば、日本の将来というものは、いや、保険業界の将来というものは非常に危ういのじゃないのかなというふうに私は思います。  業界の中も大中小さまざまな会社がございまして、利害も違うでしょう、意見も当然違うでしょう。しかし、行政に携わる者、また政治に携わる者は、そういう立場を乗り越えて国民利益あるいは国家的利益というものをベースに置いた判断をしていかなければならないと思うわけでありまして、世界の潮流からするならば、今回の生損の相互参入だけにとどめた改正は余りにも時代おくれになっているのではないのかなと私は思うのです。  生命保険というのは非常に国民性が反映された商品だと言われておりまして、その市場規模というのは大体その国ごとに限定されてしまう。日本では生命保険市場というのはもう成熟したと言ってもいいのではないか。日本には世界トップクラスの多くの生保があります。しかし、もう成熟産業の中で世界一位だ二位だと言っていたって、じゃ、十年後、二十年後、そういう生保がどう生きていくのか、そう考えたときに、未来の展望はないのじゃないかと私は思うのです。  しかも、最近の生保の総資産の利回りの推移という調査結果がありますが、その利回りはもう著しく落ちています。平成二年が六・四二%であったのが毎年一%近く落ちておりまして、平成五年には三・八八%、六年では三%ぐらいじゃないかと言われています。大体五%ぐらいないと生保はやっていけない、こういう話も聞いております。これは今のデフレ経済の中で、三%は一時的なものだという評価もあるだろうと思います。しかし、日本の経済が今後実質四%も五%も、いや名目も、それ以上伸びていくという保証は今ありません。  じゃ、そういう中で生保はどうやって期待される利回りを確保していくんだ。成熟した日本国内だけでやっていくとするなら、私は展望は開けないのじゃないかなと思うのです。そのときに生保が、銀行とかあるいは証券という、そういうツールを持って海外に出ていくことができる、そのようなチャンスをきちっと与えていくということが必要ではないのかと私は思うのです。  アジアの経済は急速に発展をいたしています。しかし、そこの中でひとり日本経済だけが停滞しているわけです。今アジアの経済における日本の地位というのは圧倒的なものでしょう。しかし、十年後果たして圧倒的なものと言えるのでしょうか。私は、その地位はどんどん落ちていくのだろうと思うのです。規模は変わらないと思いますよ、いや、少しずっはふえているでしょう。しかし、圧倒的に他のアジアの諸国の経済力というのは大きくなっていく、成長率は一〇%を超えているわけですから。我々はそこにきちっと日本の生保が入っていくような保険業法改正をやってあげなければ、業界だけではなくて我々生保にお金を出している国民としても大きな損失をこうむることになるのではないか。  日本の生保は海外で証券会社銀行を持てるのですか、どうでしょうか。
  49. 山口公生

    山口(公)政府委員 他業禁止の規定というのがありまして、保険会社生保なら生保銀行証券には国内では今できないわけであります。だから、そういうことでやってないということだと思います。
  50. 平田米男

    ○平田委員 国内でできないから海外でもできないという御答弁です。まさに、世界で活躍する生保、それの手足を縛っているのが今回の保険業法改正じゃないのでしょうか。  将来日本の生保がどうやってもっと大きなグローバルな発展ができるのか、その辺については大蔵省はどのようにお考えなんです。まずその辺をお答えいただけます。
  51. 山口公生

    山口(公)政府委員 確かに先生おっしゃいましたように、この保険制度改革がかなり抜本的なもので、これが今後五十年先までこのままでいくということであれば、先生の御指摘もいろいろな問題を含んでいるということで私どもも同意することになるわけですが、この審議会の報告でも、「当審議会の示した保険制度改革が、できるだけ早期に実現するよう配慮することが望ましい。」ということで、今回やるけれども、できるだけ早期にまた審議会の答申を実現するようにしていこうという方針を出されておりますので、いずれにせよ五十数年ぶりの改正でございますが、これが終わりということではございません。そういったことをまず御認識賜りたいと思うわけでございます。  それから、先生の御指摘の海外等への展開云々の問題でございますけれども、やはり保険業というものがまずみずから足腰をしっかりし、それで余裕が非常にあるということであればまたほかの業態へ進出し、それで体力をつけていくということは、もちろん方向としてはそういう方向になるだろうし、また必要な方向だろうと思うのでございます。ただ、保険業界だけが出ていくわけじゃなくて、これはまた他の業界も今度は保険業界に入ってくるわけですから、競争の非常な激化ということもあるわけでございます。それは頭に入れておかなければいけないということが一つあろうと思います。  それから、海外展開で、例えばアジア等の市場が非常に大きくなってくる、非常に大切なことでございますけれども、今保険業が、生損ともにそれほどまだ活発に本業においても海外進出はしておる状況ではございません。しかし、将来としては、おっしゃったように本業においても活躍をしていく、またその余裕の出てくるようなしっかりした保険会社は、制度改革がもっと進みますと、いろいろな業をまたやって、ますますが国の経済のためにも貢献するということが期待できる。  方向としては、先生のおっしゃるような問題意識は私どももありますし、長期的な視野にはそういうことももちろんあるわけでございます。
  52. 平田米男

    ○平田委員 私の質問にはまともにはお答えになりませんでしたが、間接的には、要するにグローバルな展開についてのチャンスは十分に与えられてないという御答弁だったです。しかし、これはまだ途中の改正です、将来を待ってください、こういうお答えでした。もう一つは、足腰を強くしてからやるんです。こういう話でありました。  ちょっと私は、この足腰を強くしてという御答弁については納得ができない。日本の生保は、もっともっと足腰を強くしなければ海外で活躍できないようなちゃちな生保ではないと私は思っています。それは大蔵省認識がちょっと違うんじゃないかと思いますし、大蔵省の御認識世界の経済人から見ても間違っているんじゃないかなというふうに思います。  それで、これは途中の改正、全般的にやらなければならない改正の一部の改正でしかありませんというそういう御説明だとするならば、何で六年もかけて、しかも明確なる答申が出ているにもかかわらず、しかも時代のニーズに合った改正をしなければならないという要望が強いにもかかわらず、やらなかったのか。これは業界に反対があったのか。私は明確にすべきだろうと思うのです。  先ほどは生保のお話をいたしましたが、損保も、日本には巨大な損保があります。世界に冠たる大会社であります。そういう会社銀行証券が海外で持てない。損保として国際的な展開はもう既にしておいでになります。しかし、巨大金融会社として対立する会社は各国にあるわけでございまして、そういう会社と地球を一つ市場として争っていかなければいけない。そうしたときに、他国の会社は、銀行証券子会社として持つとか、あるいは併営できる、そういうふうになっている。しかし、日本の損保だけはそれはできない。  巨大金融会社としてグローバルな展開をしようとしたときに、まさにボクシングで言うならば、向こうは両手で戦っているのにこちらは片手が縛られていて片手だけで競争をしなければならない、それを日本政府が、日本国が強要している、こういう図になるんじゃないんです。なぜ、こんなことをするんです。規制緩和というのは村山内閣の基本方針じゃないんです。今回の大改正こそいいチャンスじゃないです。大臣、なぜやられないんです。六年もかかってこれだけの改正しかできなかった。銀行証券への相互参入が、果たして六年でできるんでしょうか。私は非常に不安でなりません。  日本の国民は非常に貯蓄が好きだと言われています。銀行だけじゃなくて、生保にも損保にも貯蓄型でみんなお金を入れているわけです。日本の会社が自由濶達に、自由化国際化の中で高利回り、すなわち好成績を上げていただいて我々の資産をふやしてもらいたいと思っているわけであります。しかし、それを政府が活躍の場を制限し、現実に既に利回りは三%近くまでなってしまっている。我々は日本の生保に、日本の損保にお金を預けておいていいのでしょうか。これから海外で、自由濶達に高利回りで運用してくれる海外の保険会社の方にお金を預けた方がいいんじゃないか、こんな不安さえ私は出てくるんじゃないかな。今回の保険業法は、産業の空洞化から今度は金融、保険の空洞化まで進める改正になってしまうんではないか。  そういう危機感に対して、大蔵省はどのようにお答えしていただけるのでしょうか。
  53. 山口公生

    山口(公)政府委員 お答え申し上げます。  銀行証券等の他の業務を扱えるか扱えないかというものは、国によっていろいろと事情があります。それぞれの国情に応じてやはりいろいろな制限を設けております。例えばアメリカのニューヨーク州で申し上げますと、これは本体でも保険会社銀行をやれませんし、また持ち株会社子会社を通じても銀行業務はやれないというふうに制限されております。  そういうふうに各国それぞれにおきまして、例えば銀行と保険との関係におきましても今アメリカの議会でも相当議論がされております。この件については非常にいろいろな法案が出て、兼業を認めるという法案も出ている、兼業は絶対にだめだという意見もあるということで、絶えず問題になっているわけでございまして、現在におきましては、そういったように国によっては全くやらせないということでもあるわけでございます。  我が国においては、保険審答申で一応そういった道を開くということを考えて御答申いただいておりますけれども、そのやり方というのは、やはりそういったものを着実にやっていくためには手順を踏まなければ、ただただ混乱をしていくということになるわけでございます。混乱をすれば、やはり生保損保といえどもそれは大変な、契約者の保護を考えなければならないし、一方で海外展開あるいは他業態への展開、いろいろなことが一挙に起きるわけでございます。それが結果として国民経済的にもマイナスになるということであれば、それは手順を踏んでやっていく方がむしろ実現の可能性が高いというふうに思わざるを得ないというふうに思うわけでございます。
  54. 平田米男

    ○平田委員 国民のために手順を踏むんだという、これが国民利益ですよという御答弁でしたが、私は逆の質問をしているんです。  この厳しい経済情勢の中で、利回りがどんどん悪くなっているそういう保険業界に対して我々は安心してお金を入れておいていいのでしょうかと逆の不安を今申し上げているわけであります。それに対してお答えをしていただきたいとお願いをしたわけでありまして、今までと同じ説明を繰り返ししていただいてもしょうがないわけであります。  もう一度お願いいたします。
  55. 山口公生

    山口(公)政府委員 生命保険損害保険会社にとりましても、現在のこういう低金利といった経済状況は運用環境としては非常に厳しいものがございます。したがって、非常に各社ともリストラをやり、努力をし、お預かりをした先の契約者に、何とかその期待に報いるように、期待に沿うようにやっていくという努力をされておるわけでございます。  経営環境というのは、こういった金利情勢等で変わってくるわけでございます。仮に、例えばドルの金利が高いからといってドル債をどんどん買うとなれば、今度はまた為替の方のリスクがあるわけでございます。それを、じゃ金利をスワップしてヘッジしてしまえば、ほぼ国内の金利の円金利と同じ水準に下がるわけでございます。そうした環境の中で、非常に努力をされ、経費を節減し、いろいろな御努力をされております。  したがって、生命保険会社、損害保険会社ともにそういった国民の期待に沿うように努力しておりますので、私どももそういった努力をできるだけ支援していきたいというふうに思っておりますけれども、今先生の御指摘の、制度の改革で支援するかどうかという点につきましては、そういった手順を踏んでいった方がよろしいのではないかというふうに思うわけでございます。
  56. 平田米男

    ○平田委員 何度お伺いしても同じような御答弁でございますので、我々の、国民の不安というのは解消されません。それは解消されないままでいかざるを得ないのでしょうけれども。  これが手順を踏んでやるんですというお話でございました。ゴールは銀行証券との相互参入です。こういう御説明でありましたが、今急激に経済は変化いたしております。日本経済だけではなくて世界の経済が大きく変化しておって、日本が今までは先頭を走っていたようなのですが、最近はどうも後ろの方に来ているのではないかという不安があります。しかし、変化のテンポは極めて速い。そういう状況の中で考えるならば、これがワンステップだとするならば、次のツーステップには早く移行しないといかぬのではないかというふうに思いますが、どのようにその辺は具体的に日程をお考えなんでしょうか。     〔金子(一)委員長代理退席、委員長着席〕
  57. 山口公生

    山口(公)政府委員 先ほども御披露申し上げましたように、保険審の報告の結論も、こういった改革が非常に、銀行でいえば二十年分の改革をやるわけでございます。その定着を見て、できるだけ早くこの制度改革をその後進めるようにというふうに言われておりまして、今の時点でいつ、では何年後にこうするというところまでには、もう少しこの定着を見きわめる必要があろうかということで、その具体的な年限を申し上げられないこ とを御理解いただきたいと思います。
  58. 平田米男

    ○平田委員 今私たちは、それぞれの保険会社がどのような経営状態になっているのか非常に知りたいというふうに思っていますが、なかなか保険業界経営内容というのはわかりにくいと言われております。それぞれの保険会社生保損保含めて、経営状態というのはどうやったら知ることができるんでしょうか。
  59. 山口公生

    山口(公)政府委員 保険会社経営状況とか資産状況等につきましては、経営情報の開示という問題でございますが、これは有価証券報告書や銀行と同程度のレベルで自主的に開示を行っているほか、保険契約者に対する決算書類の閲覧、交付などを行っておるところでございまして、結果としては銀行等と何ら遜色のない情報開示を行っているところでございます。  項目数で見ましても、損保で百十一項目、生保で百八項目というかなりの項目についてディスクロージャーをし、その開示をしているところでございます。そういったものをごらんいただければ各会社の状況を見ることができるわけでございます。
  60. 平田米男

    ○平田委員 営業所へ行けばそこに書類がある。しかし、一般の保険契約者がそんなところまでやるんでしょうかね。我々一般消費者からすると、銀行は利回りでどれだけ利率があるのかというのは新聞等に載ってすぐわかるわけでありますが、そこの保険会社、保険契約したときに、もう確定利回りになっているという話なんですけれども、しかし銀行経営状態がわからないのと同じように、保険会社経営状態はわからない。私も貸借対照表とか損益計算書、資料を持ってきてもらって見せてもらいましたが、若干そういう書類を見た経験がありますので一応わかりますが、一般の人からするとわからないわけです。  今度いろいろな健全性を保全するための改正をした。ソルベンシーマージン基準の導入をしたというのです。それから、あるいは保険計理人の報告を取締役会あるいは大蔵大臣に提出するようにしたということなんですが、これは両方とも国民には目に触れないようですね、今回の改正を見ている限りは。  ディスクローズするんだ、ディスクロージャーをやるんだというふうにおっしゃっていながら、結局それは業界内の、あるいは大蔵省業界との間だけでの情報公開であって、本当の情報公開というのは国民に対してやるのを情報公開というのじゃないのでしょうかね。その辺、私はどうも言葉が正確ではない、おかしいな、こんなふうに思うのですが、どうでしょうか。
  61. 山口公生

    山口(公)政府委員 先ほど銀行と他業態とほとんど遜色のない情報開示を既にやっておりますということを申し上げましたが、このディスクロージャーの冊子、先生よく御存じのようでございますけれども、これはもちろん各営業所で閲覧できるほかに、各営業所になりますと一社分しか見れませんけれども、これを全社分合本、合わせまして、各地の生命保険協会とか損害保険協会、また消費生活センターにも置いてございまして、そこで閲覧に供されております。保険契約者方々は、これらを見ることによって、各保険会社経営状況を比較してみたりいろいろなことがありますので、そういったものを御利用いただきましていろいろと経営状況を判断していただきたいと思うわけでございます。  ディスクロージャーにつきましては、絶えずその改善について銀行の方も努力しておりますし、保険会社もそういったことに努力をしていくという方向は、先生の御指摘を踏まえて考えていかなければいけない問題だというふうに私も思っておるわけでございます。
  62. 平田米男

    ○平田委員 そういたしますと、今回の改正では、ソルベンシーマージン基準の導入による調査の結果公表とか、あるいは保険計理人の報告書の公表というのは明文化されておりませんが、これは時期を置いて公開をしていこう、こういう方向性にあるというふうに伺っていいのでしょうか。
  63. 山口公生

    山口(公)政府委員 ソルベンシーマージン基準等については、しばしば申し上げましたが、いろいろとその指標だけでその会社のよしあしを判断されてしまうということが仮にありますと、大変営業の面で大きなシフトが起きたりという思わぬ効果が出てまいるわけでございます。  もちろん会社経営というのは、そのほかのいろいろな指標も見ながら判断しなければいけないわけでございますので、今ソルベンシーマージン基準がその試行段階で、まだいろいろな試行錯誤をやっているということも合わせまして、その公開につきましては当面それを差し控えるのが適当ではと思っておりますけれども、将来、ではこれは全く外に出さないことになるのかということについては、私は、やはりディスクロージャーという大きな流れの中でこれは前向きに考えていくべき問題の一つだろうというふうに思っていることは申し上げられると思います。
  64. 平田米男

    ○平田委員 最後、時間がなくなってきましたのでまとめてちょっと質問をさせていただきます。  先ほども産業の空洞化に対応して、新産業に対して力を入れていかなければならないというふうに申し上げたわけでありますが、ベンチャービジネスなどというふうに言われますが、このような新産業に対する融資、生保損保、どのような状況にあるのかわかりますでしょうか。これが一点です。  それから、銀行の不良債権問題については大きくクローズアップされているわけでありますけれども生損保にはこのような不良債権というのはどれだけあるのか、あるいは金利減免債権というのはどの程度あるのか、わかっておれば明らかにしていただきたいと思います。  それから、著しく海外投資をいたしました。特に不動産投資が海外で多かったというふうに聞いておるわけでありますが、その結果、円高とそれから不動産市場の崩壊によりまして多大な損失をこうむった。生損保もそこの中にある、こういうふうに聞いているわけでありますけれども、その辺の損失の状況というのは把握されておりますでしょうか。把握できておれば明らかにしていただきたいと思います。  それからもう一点、最後に、今後高齢化社会の中で年金、介護の問題が大きくクローズアップされてくるわけでありますし、現にクローズアップされているわけでありますけれども生保損保関係で、年金関係の商品で税の取り扱いが違う、こういう問題があるようでございます。  政府税調では、こういう預金をふやすということに対してインセンティブを与えていった方がいいのかどうかということに対しては異論があるようでございます。しかし、同じ商品を売っている生保損保、今回相互参入もするわけでありますし、第三分野は両方できるというふうにしたわけでありまして、そこで、売る会社によって取り扱いが違うということであったならば、私は税の公平という観点からいったら問題がある、こう思います。その辺についてはどのようなお考えなのか、お答えをいただきたいと思います。  以上、四点です。
  65. 山口公生

    山口(公)政府委員 まず、ベンチャービジネスに対する融資でございます。実は融資の中で区分けしておりませんので把握してないことをお許しいただきたいのですが、生損保の中にも融資を行っているところがあるというふうに聞いております。  それから、不良債権でございます。生命保険の場合は、経営破綻先債権及び六カ月以上の延滞債権で四千七百八十一億で、貸出金に占める割合は〇・七五%、損害保険会社では、同じく千六十五億円、同比率が一・五八%で、比較的低いパーセントとなってございます。  それから、円高の影響でございますけれども生保の大手八社の外貨建て資産の残高は約十五兆円でございまして、総資産百三十五兆円の中の約一一・四%を占めるわけでございます。損保の二十五社でも一〇・九%。これらの資産に対してリスクヘッジを行っているものもかなりございます。したがいまして、最終的に円価格が確定して いるものも既にございますので、それともう一つ、通貨別に分散投資をしていることがありますので、少なくともドルの価格変動の幅よりは少なくて、世上言われているほどの大きさではないというふうな感じを申し上げたいと思います。
  66. 小川是

    ○小川(是)政府委員 生損保控除あるいは年金控除についてのお尋ねでございます。  まず一つは、生損保控除のあり方については、今委員指摘のとおり、税制調査会の答申におきましても、結果的には貯蓄奨励税制として残っている、これについてどう考えるか、公平という観点から、あるいは政策税制としてこのまま存置するのはいかがかという問題提起がなされております。  第二点といたしまして、個人年金控除の対象が生命保険関係の年金商品に限られているという点でございます。  これは、国民のニーズと提供される商品が非常に多様性を増している、それでいながら各種の業界ごとに提供する商品の中身が類似性を持ってきているというところから、税としてどのように対応するのが公平であり中立的であるかという問題でございまして、この点につきましては、例えば損保業界、あるいは証券業界、あるいは信託業界から、個別に年金控除の拡大の要求をこれまでも寄せられておりますが、私どもは、この年金控除の存在そのものについても、公的年金、私的年金のあり方と含めて議論をしなければいけない問題であるというふうに思っておりますし、また、一つずつ商品ごとに拡大するというのは、もとより公平、中立、簡素、いずれからとっても問題があるというふうに考えている次第でございます。  いずれにいたしましても、今後の大きな検討課題であるというふうに思っております。
  67. 山口公生

    山口(公)政府委員 申しわけございません。先ほど一点申し述べることを忘れました。  金利減免債権につきましては、銀行と同じように、今の時点ではディスクローズしておりませんので、数字がございません。
  68. 平田米男

    ○平田委員 以上で終わります。
  69. 尾身幸次

    尾身委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時六分休憩      ————◇—————     午後二時十六分開議
  70. 尾身幸次

    尾身委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。谷口隆義君。
  71. 谷口隆義

    ○谷口委員 新進党の谷口隆義でございます。  一昨日、当委員会におきまして、今回の保険業法の政省令の骨格についていただきたいというように申し上げておりまして、昨日いただきました。委員長並びに理事各位の御配慮に感謝申し上げます。  見せていただきましたが、お聞きしますと、政省令の予定が大体百八十ぐらいおありだということで、その一割程度の政省令であったということで若干不満は残るわけでございますが、見せていただいたわけでございます。  ルールとレギュレーションというような問題がありまして、先日、本を読んでおりますと、非常に興味深いところがありました。規則と規制ということでございますが、このルールの根底にはフェアな精神がなければいけない、そういうようなことで、ゴルフの例を出しておったのです。  ゴルフのルールがあります。これはまあ正式に決められたルールがございます。一般的に申し上げますと、ゴルフをやられた方はおわかりだと思いますが、ノータッチが原則でございますが、日本におきましては、例えば芝が傷むということで六インチのリプレースをやったり、早く進まなければいかぬということでオーケーありというようなことでやっているわけでございまして、そういういわゆるレギュレーション。  また、例えば先日七十台で上がった。こういうようなお話があったときに、アメリカの方は、どうも日本はそういうレギュレーションがあって、我々と同じベースでやっておられるのかどうかと  いうことが話題に上るということを言われておったわけでございまして、そういう意味で、ルールとレギュレーションの違いというのが、今、日米の間の交渉事についてそういうようなところが根底にあるのではないか、このように言われておるわけでございます。そういう意味で、今回この政省令の骨格ということを申し上げたわけでございます。  実は、本法のその方向が、このレギュレーショ  ンの方向性と申しますか、こういうふうな方向性に合致しておるということが非常に大事な問題であり、先日払、質問させていただきましたが、例えばソルベンシーマージンにしましても、試行基準でA基準、B基準というようなところがある、実はそれが政省令マターになっておって、どういう方向に決まるかはわからないわけでございまして、その決まり方いかんで若干その方向は変わってくるというようなことがございますので、そういうようなことで、今回政省令の骨格ということで御請求したわけでございます。  そういうことでございまして、今回もまた一時間ほどいただいておりますので、保険業法について、また後、若干の時間をいただいて経済問題について御質問いたしたいと思います。  まず初めに、変額保険についてちょっとお聞きいたしたいと思うのです。  これは、バブルのときに非常に急激に膨らんで、それがバブルの崩壊とともにいろいろ問題を起こしておる商品でございます。保険料を一時払いする、その一時払いの資金を銀行から借り入れをしてやるわけです。その運用の方は、株であるとか債券であるとかこういうようなところで運用をする。バブルの華やかなときは運用益がかなりあったものですから、そういうことでかなりふえたのだと思うのです。いわゆるハイリスク・ハイリターンの商品、こういう商品が変額保険という商品であろうと思うわけでございます。ちなみに、一九九〇年末に契約高は十兆円を超えておるというようなことでございまして、かなりの契約高になったわけでございます。  この一つのポイントは、保険商品と銀行の融資がワンセットになっている、こういうところがこのポイントでございまして、一つは、これが節税商品になっておるというところです。借り入れをすることによって相続税の節税ができるというようなことでこの変額保険が急速に広まった。このように言われておるわけでございます。  ところが、先ほど申し上げたとおり、株価の下落に伴って、解約しても返戻金が保険料を下回る、元本割れしてしまうというようなことが連続して起こったというようなことで、これはちょっとこのデータを見ますと、訴訟が起こっておりまして、これは保険会社の受理分といいますか、保険会社が訴訟の相手方になった分だけでございますが、平成三年に一件、四年に二十二件、五年に八十六件、六年に百三十二件、平成七年に二百四十件というようにずっとふえてきておるわけでございまして、個々の事例を見ますと、非常に悲惨な事例も見受けられるわけでございます。  御存じのとおり、今回のこの保険業法の中にもいわゆる特別勘定で処理するところにこの変額保険が入っておるわけでございます。まず一つお聞きいたしたいわけでございますが、今回商品の認可制から届け出制というように変わったということになっておるわけでございますが、例えばこういう変額保険、これは現在もやっておられるわけでございますが、こういう商品について認可制から届け出制に変わったということについて御見解、御所見をお聞きいたしたいと思います。
  72. 山口公生

    山口(公)政府委員 お答え申し上げます。  先生指摘のように、変額保険はいろいろ訴訟が起きているような問題を惹起した結果になってございますけれども、今回の法律改正でお願いしております規制緩和との関係で申し上げますと、料率あるいは商品の自由化の具体的内容としまして、届け出制移行というのは確かにございますが、以前にも御説明申し上げましたように、契約者保護上、やはり問題がないものから慎重にやら なければいけないということで、こういった主に個人向けのものにつきましては当面届け出に移行するつもりはないということでございまして、大口の企業物あたりからやっていくという手順を踏んで届け出制への移行を図るということでございます。
  73. 谷口隆義

    ○谷口委員 要するに認可制から届け出制に変わったわけです。その際に、この届け出制ということがはっきりわからないわけでございますが、届け出された商品についてはこれはもうそのままでいいよというようなことになるわけです。
  74. 山口公生

    山口(公)政府委員 変額保険のような個人向けについては、すぐに届け出制に移行するつもりはございません。一般的に届け出制の扱いといいますと、通常の処理期間九十日間、九十日間何もこちらから問題を提起しない限り、それは有効になるというものでございます。
  75. 谷口隆義

    ○谷口委員 それで、大体その基準は今おっしゃったようなことが基準になるわけです。その商品の基準です。今おっしゃったように、変額保険については届け出制ではなくて認可制を継続するわけです。
  76. 山口公生

    山口(公)政府委員 商品あるいは料率の届け出制への移行で今考えておりますのは、大口企業物件や国際的な取引に係る保険、専門的知識を有する事業者等が契約者となる保険といった。契約者保護に欠けるおそれの少ない保険を定めるつもりでございまして、具体的には、生命保険では年金福祉事業団保険、厚生年金基金保険、国民年金基金保険等の団体保険、損害保険では船舶、貨物及び航空の各保険、各種取引信用保険、会社役員賠償責任保険及び地震拡張担保特約等を規定するつもりでございまして、今御指摘の変額保険はこの最初に省令で定める届け出移行のものには入れておりません。
  77. 谷口隆義

    ○谷口委員 先ほど申し上げたとおり、これはハイリスク・ハイリターンの商品です。ですから、現状、そういう混乱を引き起こしておるわけです。そういうような状況で、この変額保険は認可されて今現在流通しているわけです。いろいろこれから新商品が開発されて出てくるということになります。例えば、これはほんの一例でございますけれども、デリバティブという金融派生商品で資金調達、資金運用をやっているところが多いわけでございますが、デリバティブで運用するような保険ができたとした場合に、これを認めるか認めないかというその判断基準はどういうところに置いてやっていらっしゃるのでしょうか。
  78. 山口公生

    山口(公)政府委員 やはりそういった非常にハイリスク・ハイリターンのものどいいますのは、運用もそういった。先生のおっしゃるとおりデリバティブ等を活用してというのも商品としてはあり得ると思います。その場合に、やはりその契約の相手方というものに着目しまして、先ほど私が申し上げたような相手方のものであればそういった届け出制へ移行できると思いますけれども、個人を相手にするようなものについては認可制でなければならないという事情もあろうかと思います。  そういった相手方、つまり、そういったリスクを十分にもう組織としてもはっきりと当然つかんでいる、また、つかむ能力はもうだれが見てもあるような、そういった方々を相手にする保険でありますればそういった届け出制等の自由化措置の対象に早く移行できる、そうでないものは、ちょっとそれはすぐにはまいらない、こんな基本的な考え方でやってまいりたいと思っております。
  79. 谷口隆義

    ○谷口委員 だから、現行の変額保険というのはこの認可がどういう形で行われたのかはっきりわからないのですけれども、いずれにしても、かなりそういうハイリスクの商品です。私が一例で出しました例えばデリバティブで運用している商品と本質的には余り変わらないのです。そのあたりの、これは認可し、これは認可しないというのを、ちょっと今抽象的な御表現でしたけれども、それは例えば政省令で細かくその判断基準まで書くのです。
  80. 山口公生

    山口(公)政府委員 結論的な申し方をさせていただきますと、相手方によるということであります。したがいまして、大企業等の企業物件からというふうに申し上げているのは、相手方がそういったリスクをちゃんともう理解しているという、つまり契約者の相手方がどういう人であるかあるいはどういう会社であるかということで判断をする、そういったものを基準に考えたいというふうに思っておる次第でございます。
  81. 谷口隆義

    ○谷口委員 変額保険はこのあたりで終わりまして、いずれにしましても、こういう訴訟事件が頻繁に起こっておりますし、そういうハイリスクの商品、特に株式市場がかなり大変な状況になっておりますから、株で運用するような商品です。私は本来リスク遮断という意味から、そういう複合商品がどんどん出てきて、保険のところがポイントになっておるのか、運用のところが、スペキュレーションというのですか、投機的な意味合いのところが主になっておるのかはっきりわからなくて、むしろ変額保険のところはそういう投機性が一つあったと思うのです、これは節税商品ですけれども。しかし、いずれにしても、かなりの高運用、高利率の運用が当時はなされておりましたから。  そういうようなことで、非常に複雑な、複合商品というか、これからそういう商品が出てきたときに、やはり保険はあくまでも保険であるという観点でやっていかないと、そのあたりがどうもどんどん、これまた、今後保険業法銀行証券もというようなことになっておりますので、そうしますと、そういういろいろな商品が出てまいって、これは国民生活に多大に影響を及ぼすことでございますので、そのあたりの状況も十分加味してやっていただきたいというふうに思うわけでございます。  次に、ロイズの関係をお聞きいたしたいと思います。  「特定法人に対する特則」ということで今回盛りまれておるわけでございますが、日英金融協議というのが行われておって、英国は保険市場におけるブローカー制の導入であるとかロイズの参加であるとか保険料と新商品の認可の規制緩和の問題について非常に関心を持っておられたということです。金融協議の十一回会合、平成三年四月三日に東京で行われた会合で、英国は今私が申し上げた何点かについて非常に興味を持っておられたというようなことで、そういうことについて協議をされたというように聞いております。  今回の保険業法一つの柱は金融自由化であり、国際化等の進展に伴う対応ということでございますので、その一環での今回のこのロイズの問題であるというように認識いたしておるわけでございます。このロイズの問題については石原議員の方から御質問があったわけでございますが、もう一度、私の質問はちょっと違う角度でお聞きいたしたいと思うのです。  一つは、今回のロイズの「特定法人に対する特則」でございますが、保険審議会がございますね、保険審議会は大蔵大臣の諮問機関なんです。この保険審議会の答申の中にいわゆるロイズの問題が協議されたようにはないものですから、これは保険審議会の協議事項というか議論の対象にならなかったのでしょうか。
  82. 山口公生

    山口(公)政府委員 御指摘のように、保険審議会でのあるべき保険制度の姿というところでは議論がなかったわけですが、このロイズの問題といいますのは、どうあるべきかという保険制度の政策論というよりは、法律的に非常に難しい問題があったわけでございます。つまり、法人格を与えられている法人あるいは個人でありますれば、我が国の法制上すんなりと免許も与えることはできるわけでございますけれども、ロイズというものがそういった法人でも個人でもないということで、ロイズ独特の仕組みをどうやって我が国の法制上受け入れられるのかということが問題であったわけでございます。したがって、法制的な問題がメインでございましたので、政策的な議論とい うよりはそういった技術論での解決を見させていただいて、今回御審議をお願いしているという経緯でございます。
  83. 谷口隆義

    ○谷口委員 ですから、要するに保険審議会の議論の中にはなかったということです。  ちょっとわかりにくい表現で今おっしゃいましたので理解しにくいわけでございますが、従前からこのロイズの問題については、先ほど申し上げたとおり日英金融協議の中で議論がなされておったのでしょう。それについて、保険審議会の中でこの問題について議論を落としていくというようなことは、今非常に特殊性があったからというようなお話でございましたが、なぜなされなかったかということ、ちょっと済みませんがもう一度お願いいたしたいと思います。
  84. 山口公生

    山口(公)政府委員 若干繰り返しになって恐縮でございますけれども、この問題は政策的な問題というよりは法律的に受け入れる、法律の書き方の問題でございまして、したがいまして、保険制度のあるべき姿というところでは御議論いただかなかったというだけのことでございます。
  85. 谷口隆義

    ○谷口委員 それと、これは先ほど申し上げた石原議員の御質問の中にもあったわけでございますが、ロイズ保険組合が今支払い能力が低下しておって、「新規引き受け業務停止の危機に直面している。」というようなマスコミの報道があるわけでございます。九二年決算で過去五年間の累損が一兆二千億にも上っておるというようなことでございます。  保険部長の答弁を見させていただきますと、十分支払い能力があるから問題ないように思う、こういうような御答弁でございましたが、このあたり、十分な支払い能力があるかないかというようなところをもう一度御答弁をお願いいたしたいと思います。
  86. 山口公生

    山口(公)政府委員 保険という制度自体がロイズから始まったものでございまして、ロイズは三百年以上の歴史と伝統を誇っておるわけでございます。損保業界の中では絶大な信用を有しているという組織でございますが、この長い三百年の歴史の中でも保険金の支払いができなかったということはなかったそうでございます。  今回ロイズを法的な手当てをしまして我が国の法制上位置づけたわけでございますけれども、ロイズ自身としても契約者保護の観点から、保険金の支払いを確実にするためのいろいろな措置をとっております。  それをちょっと御紹介させていただきますと、具体的な引き受けの者でございますネームと呼ばれる人たちの収受します保険料は原則として信託基金と呼ばれる信託財産として管理され、保険金の支払いについてはまずこの信託基金から払われるわけでございます。ここで不足する場合は、各ネームがロイズ協会に預けてあります預託基金と呼ばれる預託金から支払われます。個人ネームは無限責任を負っておりまして、これらの基金からの支払いでも不足する場合には個人ネームの個人資産から支払われるということになるわけでございます。  この個人ネームヘの支払いの追徴といいますか、これが相当な額になるのではないかということが大分言われております。それは事実そういうことが予想されるようでございますが、そのほかにロイズ協会自身として、これは協会でございますが、中央基金と呼ばれる資金を持っておりまして、最終的にはこの中央基金から支払うということで、幾重もの措置をとっているということでございます。  それで、先生の御懸念の向きは、最近の報道あたりからロイズが経営危機ではないかというふうに言われておりましたけれども、私が行って確認したわけではございませんので自信を持って言えるかどうかはわからないというところはございますけれども、イギリスの貿易産業省の資料でも今のところ問題がないというふうにしておりますことを御紹介させていただきたいと思います。
  87. 谷口隆義

    ○谷口委員 ロイズの問題につきましてはその程度で終わりまして、次に、またブローカー制度についてちょっとお聞きいたしたいと思うのです。  今回ブローカー制度が導入される予定になっておるわけでございますが、それについて、自主規制機関として、仮称保険仲立人協会、そういう協会を設立する方向にある、このように聞いておるわけでございますが、それについていかがでございましょうか。
  88. 山口公生

    山口(公)政府委員 今回ブローカー制度の導入をお願い申し上げているわけでございますが、このブローカー制度については次第に関心も高まってきておるわけでございます。ただ、ブローカーに実際なろうという人あるいは法人が具体的にまだ名乗り出てくるまでには至っておらない段階でございます。  今御指摘のブローカー協会につきましては、法律施行に向けて設立の機運が高まることは非常に私どもも結構なことだというふうに思っておりまして、そういうことを期待しておりますし、また行政当局としてもそういった動きがあれば積極的に支援してまいりたいというふうに思っております。
  89. 谷口隆義

    ○谷口委員 それと、登録制ということでちょっとお聞きしたいのですけれども、この登録制は一定期間ごとに更新することを前提とされておるのでしょうか。
  90. 山口公生

    山口(公)政府委員 この保険ブローカーについて、登録制のもとで「保険募集に係る業務を的確に遂行するに足りる能力を有しない者」には登録を認めないとしているほか、賠償資力の確保を義務づけておりまして、契約者保護に十分留意しているところでございますが、この保険ブローカーの登録につきまして、今回、更新制はあえて採用してはおりません。  保険業法案におきまして、毎年事業報告書の提出を求めるなど、保険ブローカーの業務につきまして継続的監督を行うこととしておりまして、改めて登録更新制を採用しなくても適切な制度の運営は図り得るのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  91. 谷口隆義

    ○谷口委員 それでは、この登録制につきまして、ブローカーとしての知識、経験というようなことが当然必須になってくるわけでございまして、この判断基準ですね、適格基準と申しますか、こういう基準をどういうところに求められるお考えなのかということでございますが、先ほど申し上げた仮称仲立人協会はいわゆる研修、試験等も行う予定というように、保険審議会の答申を見ておりますとあったわけでございますが、この機関が行う試験に合格するというところが一つの条件になるということでございましょうか。また、どの程度のレベルの試験と申しますか、まずこの試験そのものを考えておられるのかどうか御答弁をお願いいたしたいと思います。     〔委員長退席、石原委員長代理着席〕
  92. 山口公生

    山口(公)政府委員 ブローカーの能力要件のお尋ねでございますが、具体的には、保険業について一定水準以上の資格または知識を有し、一定期間以上保険業務に従事していることを一つの基準とするということが考えられるわけでございますが、今先生の御指摘がございましたように、保険ブローカー協会がもし設立されました後には、この協会にぜひ試験をやっていただき、その結果、あるいはそこが行う研修の修了を登録審査の際の一つの基準とするのも大変よい考え方ではないかというふうに思っております。  一つつけ加えさせていただきますと、ただし外国の保険ブローカーの場合に若干事情を違えなければいけないかもしれないとは思っております。外国で与えられた一定の資格を有し、一定期間以上ブローカー業実務に従事していることを一つの基準とすることが別に考えられると思います。
  93. 谷口隆義

    ○谷口委員 どの程度のレベルといいますか、これは非常に難しいあれでございますが、かなり重要な立場になるわけでございまして、そういう観点から、資質であるとかまた経験であるとか、実務の従事期間ですか、こういうようなことも経験されて、かなり難しい状況になるのか、そこは割と一般的に、どなたもなりやすいといいますか、 こういうようなものになるのかどうか、そのあたりをお聞きいたしたいと思います。
  94. 山口公生

    山口(公)政府委員 これは、新しい制度を導入するわけでございますので、具体的にどういうイメージを持つかによって大分その考え方も変わってくるかと思うのでございますけれども、もともとこの保険ブローカーというものの存在の性格からしまして、保険会社がその行為について責任を持たないわけでございますので、ある程度そこにはしっかりした知識、経験等が求められるのではないかというふうに思うわけでございます。  そういった観点からそのレベルをどの程度求めるか、もちろん、余り難しくし過ぎまして、何かむしろブローカーにさせないためにやっているようなことになるわけにはいきませんけれども、しかし、ある程度責任を持ってやっていただけるようなレベルはぜひ確保したいなという感じを持っておるわけでございます。
  95. 谷口隆義

    ○谷口委員 それでは、保険業法の関連については大体この程度で終わらせていただきまして、あと、前回からの引き続きと申しますか、経済問題、景気対策についてお聞きいたしたいと思います。  前回もこれをお聞きしたわけでございますが、今回の不況、円高・株安、こういうような問題の中で、根底にある問題として不良債権の問題がございます。不良債権、信託、長信銀、都銀合わせまして十三兆強の債権金額。これは延滞債権と破綻先債権でございますが、それにつけ加えて金利減免債権があると。きょうの午前中の御質問にもありましたが、これについてまだわからないというようなことでございましたが、マスコミの報道によりますとどうも十兆程度の金利減免債権があるんじゃないかと。それにつけ加えて地銀、第二地銀、信金、信組とこのような不良債権がつけ加わって、またあと住専の問題もございます。ノンバンクです。  このあたりの問題をずうっと挙げていきますと六十兆から七十兆というようなことも言われておるわけでございまして、この不良債権が解決しないと景気の活性化がないというように、これは前回申し上げたわけでございまして、一刻も早くこの不良債権の問題を解決しなきゃいかぬわけでございます。  マスコミの報道でございますと、五月十日の日経金融新聞にアメリカのSアンドLの終了宣言が載っておりました。RTC、これは整理信託公社でございますが、RTCのジョン・ライアン総裁代行はこの三月に、SアンドLの危機が一応完了したというような宣言をいたしたわけでございまして、そのRTC六年間の中での教訓、もともとこのSアンドLの危機が発生してから十年になるようでございますが、その中でのこの六年間の教訓について載っておるわけでございます。  これを見ますと、我が国の今の不良債権の状況を見てやはり参考になる、非常に示唆に富んでおる部分があると思うんです。三点ほど大きな項目でおっしゃっておるわけでございます。まず第一点は、もっと早く行動しておったらコストは安く済んだ、このようにおっしゃっております。二点目として、公的資金はやはり必要であったというようにおっしゃっておるわけです。あと三点目で、業務拡大意欲のある銀行に預金の払い戻しを肩がわりしてもらう方が不良資産の処理コストの一部を政府が負担しても安くついた。このように言っておるわけでございまして、このような三点のポイントをこの総裁代行はおっしゃっております。  このようなことについて我が国の状況と比較してどのようにお考えか、御答弁をお願いいたしたいと思います。
  96. 西村吉正

    西村政府委員 不良債権がどれくらいあるかということで先ほど委員の方からお挙げになったケース、私ども、その一部について正確に把握し公表をしておりますけれども、御指摘のような全般ということになりますと、まだこれからディスクロージャーを進めながら把握に努めてまいることになろうかと思いますが、私どもの持っております印象から申しますと少し大きい数字かなという気がいたしますけれども、今後私ども、正確な把握に努めてまいりたいと思います。  ところで、ただいま不良債権の処理につきまして、アメリカの教訓ということでSアンドLの処理の手法についてのお話がございましたが、私ども、五年ほど前に、今のような金融危機が日本においてまだ問題にされていないころに、ちょうどアメリカが今私どもが苦心をしておりますような類似の状況にあって、SアンドLの処理問題を中心に金融危機に取り組んでいたわけでございます。そういう意味では、日本はアメリカの状況の四年ないし五年おくれで同じような問題に直面しておるわけでございます。私ども、アメリカの経験というものを十分に踏まえながら現在の金融問題に取り組んでまいりたいと思っておるところでございます。  そこで、ただいま三点を御指摘になりましたが、もっと早くやっていれば安く済んだではないかという点でございますが、私どもも、この不良債権の処理という問題はできるだけ早く取り組むべき課題である、これはひとり金融問題にとどまらず、経済全般の問題として一日も早く処理を要する課題であるということで、先般政府が決定いたしました緊急円高・経済対策におきましても、「金融機関の不良債権の早期処理」ということで「概ね五年の間に積極的な処理を進め、問題解決の目処をつけることとす。」ことにしております。  それから、そういう中で公的資金についてはどうだという御指摘でございますが、これは、公的資金という定義をどのようにとらえるかという点もいろいろと議論はあろうかと思いますけれども、今アメリカの例を引いての御指摘でございますので、租税を財源とするような資金をつぎ込んだらどうだとこういう意味に解釈いたしますならば、これは非常に大きな問題だと思っております。いろいろな識者から、外国の事例をも引用し、また日本の過去の経験、これは昭和初期あるいは終戦直後の事例もございますけれども、そういう事例をも引いてこの公的資金の利用ということを御指摘の向きがあるのは承知はしておりますけれども、これはなかなか大きな課題であろうかと思っております。  三番目の、他の金融機関に肩がわりをさせる。要は、ライアンさんの言っておられるのは、ペイオフをするよりもどこか受け皿の金融機関を見つけ出してそこに肩がわりをさせる、金融機関を全くもうペイオフでつぶしてしまうという手法をとるのではなくて、ある程度不良債権の処理に公的な資金をつぎ込んでもどこかの金融機関にその業務を引き継がせた方がいいんだというような趣旨の御指摘だったように記憶をしておりますけれども、これもまたいろいろな御意見が分かれるところであろうかと思います。  御指摘の点、それからいろいろな外国の経験も踏まえて慎重に検討してまいりたいと考えております。
  97. 谷口隆義

    ○谷口委員 バブルが崩壊してもう五年がたとうとしておるわけです。どんどん不良債権がたまっていく一方です。ですから、私がまず申し上げたいのは、これは前回申し上げましたが、とにかく早くまず初めに、今現在不良債権がどの程度あるかということを、まだ把握されていないというような御答弁でございました。ですから、まず把握して、本当にいかに早くこの対策を講じるかということが大事なわけでございまして、共国債権買取機構をつくって、見ておりますと今八兆数千億の買い取りがもう終わったようでございますが、まだまだこの不良債権の問題は方向が見えたとは言えないような状況でございます。ですから、一刻も早くやっていかないと、この不良債権の問題が株安を引き起こし経済を悪化させておるというところが非常に大きい原因の一つでございますので、一刻も早くこのような不良債権の解決に対して具体的な対策を講じていただきたいと強く申し上げる次第でございます。  あと、最後になりましたが、証券市場の活性化 の問題についてお聞きいたしたいと思うのです。  最近マスコミを見ておりますと、証券会社が非常に経営危機と申しますか、中にはもう経営破綻寸前な証券会社もあるというように聞いておるわけでございます。証券界は、現在、信用の失墜であるとか、手数料の自由化であるとか、過剰投資のツケというようなこの三つの危機を経験して、本当に厳しい状況にあるというようなことのようでございます。  四十年不況と言われるような証券不況があったわけでございますが、この四十年不況のとき、このピークの六三年から六七年にかけて、一日当たりの東証の出来高が二九%減少しておって、それに対して職員数が四一%減った。このように言われているのです。それから、今回の不況の折に、この一日当たりの東証の出来高が八八年から九四年にかけて六七%減少しておって、それに対して職員数の減少が一七%であるというふうなことで、業界全体が今懸命にリストラに取り組んでおるわけでございまして、一刻も早くこういう証券不況、証券会社経営の悪化の問題について乗り越えていかなければいかぬということで、今取り組んでおられる最中であると思うわけでございます。  一つ指標を見るのに、大手の証券会社の採算の問題で見ますと、東証一部で一日当たりの売買代金が四千億ぐらいが採算ラインである、このように言われているようでございます。それに対して、九四年の上期が大体三千五百億ぐらいになっておって、その結果、九四年の九月期に赤字が出てまいりました。九四年の下期は、この一部、二部合計で三千億ぐらいになっておるというようなことで、そうしますとかなり証券会社経営悪化しているというような状況が読めるわけでございます。  まず初めに、これは、証券局長きょう来ていらっしゃるのでお聞きしたいわけでございますが、大きなところでお聞きしたいわけでございますが、今回のこの証券不況の、いわゆる証券市場の低迷の原因がどこにあるのかというようなことについてお聞きいたしたいと思います。
  98. 日高壮平

    ○日高政府委員 ただいま御指摘がございましたように、いわゆるバブルの崩壊後、市場の低迷が続いている、そういう状況の中で証券会社経営が非常に厳しくなっていることは御指摘のとおりでございます。  例えば本年三月期の決算の状況については、今現在精査中でございますけれども、昨年の九月期の恐らく四、五倍の赤字、これは国内証券会社全体ということでございますが、そういう状況になってくるであろうということでございます。バブルがはじけて、いわゆる御指摘がありました取引高の減少、そういったものが主としてその原因となりまして、証券会社の厳しい経営、そういう状況に追い込まれてきているということはそのとおりでございます。  ただ、株式市場そのものを単独で活性化させるといっても、やはり基本的になかなか難しい面がございまして、何といっても、市場の活性化の一番の大きな原因といいますか対策というのは、経済そのものをよくすることに尽きるということであろうと思います。  景気対策についてはここ数年累次にわたりいろいろな形で行われてきておりますし、それとあわせて証券市場の活性化策についてもいろいろな形で実施をしてまいりました。先般の緊急円高・経済対策の中にも、金融証券市場に対する対策ということで幾つか盛りませていただいておるわけでございます。  私どもとしては、そういういろいろな対策の効果、同時に、いろいろな対策による景気そのものの上向いていくという、そういうマクロ的な面と、証券市場の活性化のためのいろいろな具体的な施策の効果が今後効果をあらわしてくるであろうというふうに期待をいたしているところでございます。  なお、現在のような市場低迷の原因というのは何かということは、一概に申すのはなかなか難しいわけでございますけれども、何といっても、いわゆる資産デフレという言葉代表されますように、景気そのもの、日本の経済そのものがいわゆるバブルの崩壊ということによって落ち込んでいった。その過程において証券市場も低迷を続けだということが一番大きな原因だろうと思います。最近の状況について申し上げれば、それは急激な円高であるとかいろいろなことが挙げられるとは思いますけれども、やはり何といっても、経済そのものの落ち込みが証券市場を直撃したということに尽きるのではないだろうかというふうに思うわけでございます。
  99. 谷口隆義

    ○谷口委員 確かにそうなのですけれども、日本の市場はやはり規制が厳し過ぎるというようなこともあって、御存じのとおり、日経二二五ですか、シンガポールにどんどん移ったというようなことがあるわけでございまして、一つは、今の日本の市場における規制の厳しさというようなところが原因としてある、このように言われておるわけでございます。  今、証券会社は非常に厳しい状況にあるわけでございますが、大蔵省当局としても証券会社経営状況について十分把握されておると思いますが、現実に、具体的に、証券会社経営状況をどういう形で把握され、またどの程度経営状況が悪化しておるかということについてお聞きいたしたいと思います。
  100. 日高壮平

    ○日高政府委員 先ほど申し上げましたとおり、ここ数年、証券市場の低迷ということで、それが原因となりまして証券会社経営が非常に厳しい状況に置かれているということは、今御指摘があったとおりでございます。  証券会社自身、さっき委員も御指摘になられましたけれども、支店数を減らしたり職員数を減らしたりといったような、いわゆる経営の合理化努力に非常に強く取り組んできておられますが、そうした効果ということは当然今後とも期待できるだろうと思いますし、そうした努力は今後とも引き続き行っていただかなければならぬだろうというふうに思うわけであります。  ただ、今の状況は、確かにこの数年の証券市場の低迷によって経営がずっと厳しい状況になっているわけではありますけれども、端的に言えば、いわゆるバブルの時代の蓄えと申しますか、それによりましていわゆる証券会社の純財産額というものもかなり積み上がってきておる、それをここ数年の間に食いつぶしているというような状況だろうと思います。  そういう状況でございますので、本年三月期決算については現在精査中といいますか、報告をいただいているところでありますけれども、本年三月期の決算の状況で見れば、いわゆる破綻といいますか、その破綻にもいろいろな定義があるのだろうと思いますけれども、そうしたような状況になるという報告は、私どものところには参っておりません。  ただ、いずれにいたしましても、証券会社経営をよくするというような、それは経営者自身の御努力ももちろん必要でありますけれども、同時に、先ほど申し上げたとおり、市場の活性化、いわば端的に言えば、取引高がふえていくということが必要になってくるだろうと思います。  ただ、証券会社経営ということを考えたときに、株式市場、株式のいわゆる取引に起因する手数料収入といいますか、それだけではなしに、もう一つの、いろいろな経営を楽にするような手段というものも広げていかなければならないだろうということで、現在私どもとしては投資信託の改革に取り組み、本年一月からそれが動き出しているという状況にあるわけでございます。
  101. 谷口隆義

    ○谷口委員 今度の保険業法にも、契約者保護基金というような問題もあります。銀行関係も預金保険機構というようなものがあるわけでございますが、例えば証券会社経営破綻というような問題が起こった場合に、投資家保護の観点から、どういうようなことを考えておられるのか。  例えば、具体的にいきますと、中国ファンドというような商品があります。これは非常に貯蓄 性といいますか、投資というよりむしろ貯蓄に近いような商品でございますが、そういうような商品に対して、これはもちろん証券会社の扱いのものでございますので預金保険機構というようなことはないわけでございますが、もしもという場合に、投資家保護の観点の対策、対応策、これについてお聞きいたしたいと思います。
  102. 日高壮平

    ○日高政府委員 万一証券会社経営破綻に陥るおそれがあるというような場合には、私どもとしては、投資家保護の観点から、例えばその証券会社に対し財務の改善あるいは財務内容を是正するような命令を出すというような規定が現在証券取引法上ございます。そういったような状況ではございますが、現在までのところ、そういったところまで追い込まれているという状況ではございません。  それから、御指摘がございました中国ファンドあるいはMMFといったいわゆる投資信託受益証券、そういったものは、通常証券会社が顧客から委託を受けて、いわゆる保護預かりということで行われているわけでありますけれども、そういったものについては、当然のことながらこれは顧客の方が所有権を有しているわけでございますから、万一証券会社が破綻した場合には、そういった保護預かりの証券は、破産財団には属さずに基本的に顧客に返還されるということになるわけであります。  私どもとしては、現在免許制のもとで、万一そのような事態が起こる場合には、まずお客の財産を破綻する証券会社が手をつけないように、つまりお客さんに速やかに返還できるような措置を講ずるようにしていかなければならないと思いますし、現在免許制のもとで、そのような方向での措置は十分可能であろうというふうに思っております。  ただ、もし万一お客への返還が不可能になったような場合には、現在、寄託証券補償基金というのが設けられておりまして、これによって、本来お客さんのものである証券が返還されないという場合にはこの寄託証券補償基金から、一社当たり二十億円ということでございますけれども、その金額を限度としてそれで補償されるという制度がございます。  ただし、この寄託証券補償基金というのは、現在までのところ、実際に発動された例はございません。
  103. 谷口隆義

    ○谷口委員 もう時間が参りましたので、最後大蔵大臣に、全般的な問題として、今回の証券不況、この中で証券会社が非常に経営危機に直面しておるわけでございますが、こういうような状況について、具体的な対策等も含めて御答弁をお願いいたしたいと思います。
  104. 武村正義

    武村国務大臣 大体証券局長がお答えをさせていただいたわけでありますが、バブルのあの時期の証券業界の活況、あれを活況と言うなら、本当に過日の思いがする現状であります。  株価が下がっている、低迷しているということもありますが、何としても取引額ががた減りであるという状況が、証券業界経営を大変苦しくしてきている。当然各証券会社も、ボーナスや賞与から始まってあるいは人員の削減等々、さまざまな経営合理化の努力をされているわけでありますが、それでも、御指摘があったように大変苦しい状況に立ち至っております。  対策としては、基本的にはやはり日本経済を早く本格的な回復軌道に乗せることだと思いますし、特に昨今の経済状況でいえば、この急激な円高をどう反転させることができるかということだと思っております。  しかし、証券業界対策としては、今お答えをしましたように、さまざまな努力を始めているところでもあります。日経三〇〇の投資信託を、たしか今月ですか発売をいたしておりますし、アメリカのNASDAQと比較されるようないわゆる店頭市場についても規制緩和等の努力を進めているところでございます。そういう、直接証券取引にかかわる規制緩和も含めた努力ももちろん必要であるというふうに認識をいたしております。
  105. 谷口隆義

    ○谷口委員 時間が参りましたので、これで終わります。ありがとうございました。
  106. 石原伸晃

    ○石原委員長代理 次に、宮本一三君。
  107. 宮本一三

    宮本委員 きょうは保険業法について質問をさせていただくわけでございますけれども、ちょっと初めに、最近の経済情勢の中で二、三お聞きをしたいと思っております。  まず最初に、円高が先ごろ非常に進んでまいりまして、ただ、この二、三日ちょっと戻しております。きょうは何か八十五円から六円のあたりと聞いていますが、二、三日のこの戻りといいますか、これに関して、大蔵大臣、円高が八十円とか七十九円というふうな行き過ぎがちょっと戻っているというふうにお考えです。それとも、何かアメリカとの貿易交渉あるいは制裁措置の話、こんなことからむしろ円安にこの二、三日動いているのかな。その辺について、大臣どんなお考えをお持ちでしょうか。局長でもいいです。
  108. 加藤隆俊

    ○加藤(隆)政府委員 委員指摘のように、本日の円ドル相場は八十六円挟みの動きとなっております。これは、昨日のニューヨーク市場の流れを受けた動きでございます。昨日の欧州、ニューヨーク市場におきまして、ドルは対ドイツ・マルク、対円で強含んでおります。  その要因といたしまして、市場関係者によれば、欧州通貨内でのマルクの売り戻しあるいはアメリカの資本市場が堅調であるといったようなこと、あるいは、昨日につきましては、アメリカの下院の予算委員会での財政赤字削減に関する共和党の案が可決されたといったことから、ここのところややドルが対円、対欧州通貨で戻す展開となっておるところでございます。
  109. 宮本一三

    宮本委員 株価の方も随分低迷しているのですが、これは、証券局長、どういうふうに今見ています。
  110. 日高壮平

    ○日高政府委員 もう委員十分御承知のとおり、株価というのはさまざまな原因によって動くわけでございますので、一概に低迷の原因を端的に申し上げるというのはなかなか難しいわけでございますが、当面、現在の状況を、最近の時点で低迷している状況の原因を申し上げれば、何といってもやはり景気の先行きが不透明である、あるいは急激な円高の進行が経済にいろいろな悪影響を与えるのではないか、あるいは金融機関の不良債権問題等が基本的に背景にあるのではないか、そういったことがいろいろ取りざたされていることは御高承のとおりでございます。  ただ、先ほども申し上げたとおり、こういった市場の状況を活性化をするためには、基本的にはやはりそういった。いわゆる経済のファンダメンタルズといいますか、経済そのものをかさ上げしていくような対策がまずとられていくことが先決であろうと思いますし、同時に、市場そのものの活性化を規制緩和等を通じていろいろな形で行っていく、その両面から対応していくことが必要であろうというふうに考えているところでございます。
  111. 宮本一三

    宮本委員 今、両局長の方から円高の問題あるいは株価の問題についてお話を伺ったわけでございますが、大蔵大臣「あれでしょうか。一昨日の、補正予算の閣議了解がなされたわけですけれども、こういった円高の問題あるいは株価の動き、そういったものをにらんでの補正予算、そしてまた震災という大きな問題を控えての補正予算だと思うのですが、この補正予算で大蔵大臣としてはかなり手を打ったというふうに考えておられるのかどうか。  ちょっとその点だけお伺いしたいと思います。
  112. 武村正義

    武村国務大臣 この急激な為替の変動、特に円高の進行を深刻に受けとめて、政府としても、この三月、四月そして五月にかけてこの対応に追われていたわけでございます。  一昨日も円高の原因をめぐっていろいろ論議がございましたが、さまざまな要素が絡み合っていると申し上げていたわけであります。実需、思惑という絡み合いもありますが、いずれにしましても、そういうコンプレックスの中で動いていきますから、明快にこれが理由だというふうに割り切 れないところに難しさがありますし、何といっても政府が為替を動かしているわけではありません。巨大な市場で一日世界じゅうで売買がされて、それで上がったり下がったりするわけでありますだけに、この原因を明確に一言で申し上げることは難しいわけであります。  そのことはともかく、先ほどお話しのようにやや円安に戻り始めているということでほっとしているわけでありますが、ほっと油断してはいけないと思いますが、この現象だけは率直に言ってほっとしているわけです。  四月末のワシントンのG7のあのステートメントのときから少し反転、兆しか見えているという意味では、G7そのものは成果がなかったという一方的な御批判も一部にありましたけれども、やはり長年の歴史の中で、明確に、しかも文章で今の状況、為替の状況は正当でないということを言い切って、秩序正しく反転させることが望ましい、反転することが望ましいということを言い切ったのは初めてでございます。  ですから、アメリカもドイツもイギリスも含めて数時間の会議でそういう結論を得たということは、世界の主な国がこの状況を否定して、今のレベルはよくない、そして反転ということでございますから、もとへ戻すべしという合意に達したわけでありまして、もとへ戻る、円でいえば円安の方向に、ドルでいえばドル高の方向に少し戻り始めたということは、G7の合意の方向にここ何日かは動いている。大変注視をさせていただいているところでございます。  ところで、補正予算は、円高に対応する措置として四月十四日に政府が方針を明らかにさせていただいて、来週月曜日に国会に運ばせていただきたいと思っているわけでありますが、円高対策の一つの大きな柱だという認識でおります。  これですべて、あるいはこれがオールマイティーという考えではありませんが、七十兆円を超す今年度の当初予算を実質前倒しをして今の時期に極力執行をしていくということが基本政策でございます。さらに二兆七千億余りの追加補正措置をとらせていただいてこれに上乗せしていこう、このことによって日本の内需拡大、先ほど来議論がありますような、景気の足取りをしっかりしたものにして景気回復を促進させていこうという考え方であります。
  113. 宮本一三

    宮本委員 なかなか大変な御努力はよくわかりますし、大臣、事務当局ともに大変な御努力の結果がいろいろな形で出ていることは了解しております。  ただ、協調介入がオールマイティーとは思わないし、本当に大きな動きの中でわずかなてこしかございませんから、それによって相場の動きにそれなりの大きな動き、是正を期待すること自体も、それはなかなかできないことはわかるのですけれども、何か最近のG7あるいは関係主要国との協調の度合いが従来見られていたよりも何となく弱いような、これは印象ですからわかりませんが、そんな感じがあるということを一言述べたいのと、予算の問題はどうせ予算委員会でまた本格的に来週からあるのでしょうけれども、一昨日発表された内容ではやや規模としてスケールが小さいのかな、もうちょっと思い切った方がよかったのかな、これは私のオブザベーションといいますか意見だけにとどめさせてもらいます。  ところで、保険業法に関する質問ということでございますが、質問に入る前に、きのうでしたか、ちょっと新聞、専門紙を見ておりましたら、アメリカのグラス・スティーガル法というような、見直しを向こうの議会でいろいろやっている過程が出ておりましたけれども、これは銀行と保険の相互参入のお話ですが、アメリカでも見送られる見通しになったということが出ておりました。  これは、銀行、保険の相互参入ということになりますと、事業内容も違う二つですからなかなか克服すべき問題が大きいということから、規制緩和のこんな流れの中でも、アメリカでも慎重に審議を進めているということのあらわれかなというふうに形も受け取ったわけでございます。  それとの関連もありまして、やはり相互参入もなかなか慎重に考えていかなきゃいかぬのかなという印象を持ちましたものですから、以下の質問もそんな点も踏まえてやらせてもらいたいと思います。  子会社方式による生損保相互参入、その際のファイアウォールについてでございますけれども、先ごろ行われた銀行証券相互参入、このときは銀行が、日本の場合特に銀行というのは産業界あるいはいろいろな面で影響力が大き過ぎる、そんなことがあったものですから、いろいろと問題があるわけでございます。  このファイアウォールの問題について、銀行の場合がなり厳しいあれがつくられておりますけれども、一方、今回の子会社方式による生命保険損保会社相互乗り入れの兼営といいますか、これは同じ保険業という、同じ業種であるということ、これは先ごろの銀行証券相互乗り入れと大分内容的にも違った角度で見られるのじゃないかと思うのですけれども、このファイアウォールについて、大蔵省の方は生損保についてはどんな基本的な考え方で臨んでおるのか、ちょっとお伺いしたいと思います。
  114. 山口公生

    山口(公)政府委員 お答え申し上げます。  生損保相互参入に伴いますファイアウォールといたしましては、法律上はいわゆるアームズ・レングス・ルール、それと省令委任規定を設けさせていただいております。  省令以下のファイアウォールの詳細につきましては、今いみじくも先生指摘いただきましたように、生損保の場合は同じ保険であるということですので、銀証のような利益相反といった問題が比較的起こりにくいのではないか、だからあれほど高くする必要がないのではないかという考え方があろうかと思います。それに、親子間の経営資源の有効活用という観点からのいわゆるクロスマーケティングの趣旨というものも大切でございますので、それらを踏まえましてまず考える。  他方、子会社をつくる以上は、それはある程度親会社から独立していることもまた必要でございます。また、それが独立していませんと、いわゆる生損保兼営禁止の趣旨がないがしろになってしまうということもございますので、そういった両面を見ながら、現在の生損保業界の実態をよく見て定めたいと思っておりますが、今先生の御指摘のような銀証との比較でいうと、それよりは少し低くなるのかなというふうに今思っているところでございます。
  115. 宮本一三

    宮本委員 ファイアウォールに関する大蔵省考え方が大体わかりましたが、今回の業法改正の中で、規制緩和それから自由化というのが一つの大きな柱として挙げられているわけでございますが、その中で保険会社資産運用方法を定める条項がございますけれども資産運用方法とか運用割合とかそういったものについて省令でいろ  いろ決めていくのだろうと思いますが、現時点でどんな内容というか、基本的な考え方が形成されているのか、もしこの時点で聞かせていただければありがたいと思います。
  116. 山口公生

    山口(公)政府委員 御審議をお願いしております保険業法案におきます保険会社資産運用方法につきましては、現行保険業法施行規則第十八条を参考にして、有価証券の取得、資金の貸し付け、不動産の取得等を定めさせていただきたいというふうに考えておるわけでございますが、現在の施行規則の第十八条といいますのは具体的に十一項目ぐらいの財産を類別して書いてございまして、例えば国債、地方債、特別の法令により設立した法人の債券、社債または株式の所有、それから二番目に外国の国債、地方債、社債、株式の所有、三番目にその前二号に掲げる有価証券を担保とする貸し付け、四番目に不動産の所有というふうにずっと列挙をしておるわけでございます。そういったものを対象に財産運用を認めている。基本的にはこの形を維持しながらやらせていただきたいと思っています。  それから、もう一つの財産運用の割合につきま しては、現行の保険業法施行規則でいいますと第十九条にございまして、これもこの規定を参考にして保険会社が保有する株式の総資産に対する割合などを定めさせていただきたいと思っておりますが、現行十九条は、具体的に申し上げますと、株式の所有が十分の三、不動産の所有が十分の二、いずれもそれを超えることはできないという規定ですが、三番目に同一会社の社債及び株式の所有並びにこれを担保とする貸し付けが十分の一、同一人に対する貸し付けが十分の一、同一銀行に対する預金または同一信託会社に対する信託が十分の一、同一物件を担保とする貸し付けが二十分の一というふうに、具体的にその財産運用の割合を定めてございます。基本的にはこの十九条を踏襲しながら決めさせていただきたいというふうに考えておる次第でございます。
  117. 宮本一三

    宮本委員 新しい改正後の業法でも実態的には運用方法、割合は現在のベースをそのまま踏襲していくということのように受け取りました。  それでは、例えばある保険会社が他の保険会社の業務や事務を一部代理あるいは代行するということについてですが、これはお互いに経費の節減というか経営資源の有効活用という言葉になりますか、そういった面では非常にいいし、また利用者の立場から見ても便利なことが多いかと思います。  現行の保険業法では損害保険会社相互間では現在も認められておるわけでございますが、今度の改正で、それが生命保険相互間あるいはまた生命保険損害保険の間でも業務の代理や事務の代行を認めることになるというふうになっておるわけでございますが、ただ、その範囲は大蔵省令で限るというふうになっております。これは内容的にはどういうふうに絞っていくのか、ちょっとそれを伺いたいと思います。
  118. 山口公生

    山口(公)政府委員 考え方も踏まえて御説明させていただきたいと思うのでございますが、まず生保生保の間または損保損保の間の業務の代理、事務の代行について申し上げますと、生保会社損保会社とも保険業を営む者として免許を受けておりますので、おのおの独立して保険募集及び保険の引き受け、保険の支払いに係る業務を行うことが原則だと思っております。したがいまして、生保生保損保損保の間においても無制限に業務の代理、事務の代行を認めることは適当ではないというふうに考えております。  しかしながら、今先生も御指摘いただきましたように、例えば外国保険業者の業務の代理等を国内損保会社が行うことは現行法下でもやっておるわけでございまして、生保生保損保損保の間の事業の同質性といいますかそういったことにかんがみまして、外国保険業者であること、その他合理的な理由がある場合には、業務の代理、事務の代行を認める方向で規定の内容を定めることを検討しております。  また、もう一つ生損保間の業務の代理、事務の代行につきましては、子会社による相互参入を認めました趣旨及び生損保の兼営禁止の趣旨からはこれも無制限に認められるべきではないと考えます。しかしながら、例えば経営資源の有効活用、あるいは保険子会社を保有する保険会社とそうでない保険会社のイコールフッティングなどの観点からは必要な場合もあり、合理的な理由がある場合には業務の代理、事務の代行を認める方向で定めてまいりたいというふうに基本的に思っております。
  119. 宮本一三

    宮本委員 今回の法案では、保険商品とかあるいは料率につきまして、これまで認可制だったものを一部届け出制にするということになるわけでございます。認可制から一部届け出にするということは、規制緩和あるいは自由化という今の大きな流れの中で、競争促進するとかあるいは事業効率化を促すという意味で非常に結構なことだと思うのですけれども、一方、今まで認可制だったものを届け出制にするということで、ばあっと一気に届け出がふえたり、それがかえって、便利なだけではなしに契約者側にとっても無用の混乱が生じるようなことになりはしないかなという心配もあるわけです。  認可を一々してもらわなくてもいいわけですから、そういう意味では競争も激しくなるだろうし、時には過当競争になってしまいはしないかな、そんな心配もあるものですから、進めるにしても、余り急激に事を進めないで、段階的にあるいは漸進的に進めていくことが必要ではないかというふうに思うのです。  そんなことで、もちろん大蔵省の方で十分な検討はしているだろうとは思うのですけれども、届け出制にすることについて、そこら辺を踏まえて、どういう対応を混乱を避けるためにやっていくのか。具体的な内容がもし現時点で、認可制から届け出制にしてもここら辺はちょっと締めておかなければいかぬとか、そういう点、もしありましたらお教え願いたいと思います。
  120. 山口公生

    山口(公)政府委員 今お尋ねの商品や保険料率の届け出制の導入につきましては、先生もおっしゃいましたように、諸外国において自由化の結果いろいろな問題が生じたという事例も耳にしております。料率の乱高下があったとか、あるいは引き受け拒否が起こったという事態も見られたようでございます。したがいまして、御指摘のように、契約者保護の観点から慎重に進めていくということが必要ではないかというふうに考えて、そこには段階的なステップというものを踏むべきであろうというふうに考えておるわけでございます。  届け出制の対象となるものは、主として大企業を対象とする大口企業物件や国際的な取引に係る保険、専門的知識を有する事業者等が契約者となる保険といったものから拡大していくこととしたわけでございます。具体的には、生命保険で申し上げますと、年金福祉事業団保険、厚生年金基金保険、国民年金基金保険などの団体保険から始めさせていただきたい。損害保険で申し上げますと、船舶保険、貨物保険、航空保険、各種取引信用保険、それから会社役員の賠償責任保険、地震拡張担保特約等を省令で定めていく方向で検討中でございます。  さらに、その他の分野につきましては、保険知識の普及、それからディスクロージャーの進展、それから契約者方々の自己責任の考え方の高まりなどを十分勘案しながら、先生のおっしゃるような心配にならないように配慮しながら、その適用範囲を拡大していくという方針でいきたいというふうに考えております。
  121. 宮本一三

    宮本委員 今のお話ですと、生保については団体保険とか非常に確かなところから始めるというように伺いました。いずれにしても、新しい試み、前進することは結構ですけれども、十分に一歩一歩足を固めながら自由化を進めてもらいたいと思います。  それともう一つ生命保険の募集人についてでございますけれども、これまで法律で一社専属制ということになっております。これも非常に大事なことでございましたけれども、今回の法案では、生命保険の募集人一社専属制について、例外として乗り合い制度を導入する、こういうふうになっておりますが、これも一社専属制一本であったものを例外を認めるということですから、一体どのような場合に一社専属制の例外が認められるのかな、その内容についてもしお聞かせ願えればありがたいというふうに思います。
  122. 山口公生

    山口(公)政府委員 生命保険募集人の一社専属制の趣旨は、募集人の教育の徹底と募集人の行為につき責任を負うべき会社を明確にすることによって保険契約者の保護を図ることでございます。この考え方でございますので、一社専属制の法益をかんがみ、法令に書かせていただいておるわけでございますが、他方、利用者の立場から見ますと、募集人が複数の会社の商品を扱えない、利用者の商品選択の幅が制限されるのではないか、あるいは既存の販売チャネルの多様化、効率化が図られにくいのではないか、あるいは生損保兼営におけるクロスマーケティング、これを進めるに当たっての障害となるのではないかなどの問題点がございまして、販売チャネルの多様化、効 率化は、利用者の立場、国民経済的見地からも必要となってくるわけでございます。  したがって、この両面の調和を図りながら考えなければいけないわけでございますが、この「保険契約者等の保護に欠けるおそれがないものとして政令で定める」こととしております内容を具体的な文言で申し上げますと、保険募集に係る業務等に関して十分な専門的知識及び経験を有していること、保険募集に係る業務を的確かつ公正に遂行するに必要な人的構成を有していること、さらに、クロスマーケティングの視点から、親保険会社がバックアップしている当該代理店が生保代理店としての適正な業務遂行能力を有していることなどを考慮しつつ、現在その検討を進めさせていただいているところでございます。
  123. 宮本一三

    宮本委員 一社専属制というのは確かにメリットもあったわけで、保険会社が教育投資などを行いやすいという点で、責任もしっかりしているわけでございますけれども、これを緩和す。一方、今の説明でもわかるように、逆にそれがまた利用者から便利な面もあるわけですけれども、これが果たして募集の秩序、今のようにがちっとしているのだけれども、乱れるといったような心配はないです。その点、ちょっと。
  124. 山口公生

    山口(公)政府委員 確かに、生命保険募集の一社専属制という制度を緩和するわけでございますので、今先生のおっしゃったようなことがあってはならないということで、私どもも十分気をつけながらやらなければいけないと思うわけでございます。  秩序が乱れるという場合はどういう場合かと考えますと、やはり保険募集人の資質向上のための教育とか管理が十分でなくなってしまうというようなことではないかというふうに考えるわけでございます。したがいまして、そういった面をさらに充実していく必要があるというふうに思いますので、いずれにせよ、そういった面に力を入れてまいりたいというふうに考えております。
  125. 宮本一三

    宮本委員 しっかりやっていただきたいと思います。  それから、保険仲立ち人についてちょっとお伺いしたいと思うのです。  いわゆる保険ブローカーという、今回の改正で新たに導入されることになったわけですが、これは諸外国との整合性という観点、また、契約者にとって商品の購入ルートが広がるという面で結構なことだと思うのです。  同時に、ブローカーというのは保険会社から独立した存在ですから、ブローカーが契約者に損害を与えたような場合には、これは従来の職員ですと、もう保険会社が責任をとるのは当たり前だとわかるわけですが、ブローカーになりますとそうはいきません。そういった意味からいうと、契約者を保護するという観点からどのような措置がとられるのか、つまり、何か日本ではこの言葉そのもの、ブローカーというと何か頼りない気がします。それだけにしっかりと保証というか、何かしっかりしたものが、保護措置が要るように思うのですが、それについてどのようにお考えです。
  126. 山口公生

    山口(公)政府委員 先生おっしゃいますように、確かにブローカーという言葉が、どうも日本では何となくイメージが余り芳しくないということを言う方もいらっしゃるわけでございますけれども、この機会に、世界で活躍している保険ブローカーというのはどういうものかというのをちょっと御紹介させていただいた方がいいかなと思うわけでございます。  一九九三年の「世界のブローカー上位二十社」という資料を今手元に持ってまいったわけでございますが、一番のマーシュ・アンド・マクレナンという会社、これはアメリカの会社でございますが、従業員で言うのが一番わかると思うのですが、この会社は従業員が二万五千六百人もいるわけでございます。大きな保険会社の本業、本職員といいますか、というのがたしか一万か二万ぐらいだったと思います。だから、それぐらいの規模。もちろん営業職員の方々はもっとたくさんいらっしゃいますけれども、そういった規模だ。それから、二番のアレクサンダー・アンド・アレクサンダーという会社、これもアメリカでございますが、これも一万四千五百十七名と、大変な数の会社でございます。それから、次がセジウィックというイギリスの会社でございます。これも一万五千五百九名ということでございまして、やはり一万人、二万人という規模でございます。もちろん小さいブローカーもございますけれども世界の保険ブローカーといいますと、このような非常に巨大な組織になっておるものがあるということでございます。  二十社のうち、かなりアメリカが多いわけでございます。そのほかに多いのがイギリスでございますし、中にはフランス、オランダ、ドイツの会社も入っておりますが、見るところ、アメリカ、イギリスあたりで非常にこういうような保険ブロー力ーの活躍が見られる、そういったところに育った組織かなという感じがいたします。日本に導入したときに果たしてそういった組織のイメージで見ていいかどうかという問題は確かにございますけれども、いずれにせよ、ある程度企業を相手に大きく商売をやっていくというようなイメージが諸外国の例のようでございます。  しかしながら、保険仲立ち人、すなわちブローカーが契約者に損害を与えるということはあり得るわけで、そのときに保険会社が責任を負わないという形になるわけでございます。保険募集人とか代理店は保険会社が全部責任を持ちますが、保険ブローカーは法的にそういう形になりませんので、契約者保護の観点から、その適格性等の確保を十分図る必要があるということでございます。  お願いをしておりますこの保険業法案におきましては、この保険ブローカーについて登録制をとらせていただいて、それでその遂行する能力というものをよく見て、登録をさせるさせないの判断をするということにしておりますほか、代理店と兼業をしてはならない、これは立場が違いますので。代理店との兼業禁止、賠償資力の確保、それから権限、損害賠償に関する事項を記載した書面を交付する義務を課す、あるいはいわゆるベストアドバイス義務、誠実に最適の商品をブローカーとして示さなければいけないなどのさまざまな行為規制や大蔵大臣の監督規定を設けておりまして、これらによって契約者保護を十分に図る必要があるだろうというふうに考えておる次第でございます。
  127. 宮本一三

    宮本委員 かなり慎重に、登録制からずっと監督されると思いますけれども、とにかく膨大な数になるでしょうからよほど慎重にやっておいてもらわないと、後でまたやっかいな問題を出されても困るというふうに思います。これはやはり、ブローカーというと、正しい意味ではいい意味なのでしょうけれども、我々日本人、昔からやみ市から発生したような言葉という印象を受けておりますだけに、社会もそういうふうにまだまだ心配をして見ている時代ですから、この問題はよほど慎重に監視していただきたいというふうに思います。  それから次に、今回保険会社の健全性を見ていく指標としてソルベンシーマージン基準というのが新たに導入されるわけです。余り聞きなれない言葉なのですが、これは一体どういう基準なのか、ちょっとわかりやすく説明していただければありがたいと思います。
  128. 山口公生

    山口(公)政府委員 保険会社の健全性をはかる指標としまして、ソルベンシーマージン基準、保険会社の自己資本比率と申しましょうか、そういう概念を新しく入れさせていただいておるわけでございます。これは、保険会社が抱えるリスクというものがございます。それが、責任準備金という形で積み上げておるわけでございますが、それを上回るリスクあるいは資金の運用のリスク、そういった予想を超えるようなリスク等を分母にしまして、そういったリスクに対してどれくらいの準備を、支払いの余力を蓄えておるか、一言で言えばそういったものでございます。  それで、若干具体的に申し上げませんとわかり にくいと思いますので申し上げますと、分子になります「保険会社資本、基金、準備金その他の大蔵省令で定めるものの額の合計額こういうふうに書いてございますが、これは、例えば資本の部の合計額、価格変動準備金、貸倒引当金、上場株式含み益の一定割合などを規定しましてその合計額、すなわちいざというときの支払いの余力になるものを分子に持ってくるわけでございます。  分母に持ってきますのは、「引き受けている保険に係る保険事故の発生その他の理由により発生し得る危険であって通常の予測を超えるものに相当する額として大蔵省令で定めるところにより計算した額」ということでございまして、具体的に申し上げますと、保険リスクと資産運用のリスクに分けます。  保険リスクにつきましては、例えば生命保険会社の場合は、保険料設定時に予測できなかった死亡保険金支払いリスクとして、危険保険金の例えは〇・六パーミルなどと、保険数理上の確率論をベースに各リスクを定量化いたします。損害保険会社の場合には、過去の損害率の統計に基づいて一定の確率で得られる予測を超える保険金の支払いを定量化するほか、地震または風水災等の自然災害による巨大災害リスクを定量化するわけでございます。  資産運用リスクといいますのは、これは比較的わかりやすいものでございますが、運用資産の収益率が予定を下回るリスクとして価格変動・金利リスク、信用供与先の倒産等により元本が回収されないリスクとしての信用リスク、その他オフバランス取引に係るリスク及び関連会社への投資に係るリスクなどとして、それぞれ過去の保険会社の実績及び調査機関の統計をベースにそのリスクを定量化した上で、その相当額を分母とさせていただく。  以上のようなことで、分子の合計額を分母の合計額で割りまして、その比率をもって保険会社の健全性をチェックするというようなことを考えているわけでございます。  この制度は諸外国でも取り入れておりまして、こういったもので健全性を見ていく。ただ、これだけで健全性がはかれるものではございませんので、そういった健全性をはかるものの一つの重要なファクターとして使っていくということだろうと思っております。
  129. 宮本一三

    宮本委員 大体わかったようでもう一つわからぬのですが、分子の方はどうにか大体の概念はっかめました。分母の方は、資産運用に関する話は少しわかるのですが、保険リスクの方はなかなかちょっとすぐにはわからぬのですが、まあ要するにリスクを何らかの形で基準をつくって、その支払い能力、対応能力がどの辺にあるかということを見ようとする指数だというふうに理解します。  そのソルベンシーマージン基準についてでございますが、現在試行的に実施していると聞いておりますが、これはやはり、契約者へのディスクロージャーを充実する観点からいうと、できるだけ公表した方がいいのではないかなというふうに考えます。このソルベンシーマージン基準を公表するのかあるいはしないのか、あるいはまたしないで何らかの形で行政指導を行っていくのか、そこらがちょっとわかりにくいのですが、これはどっちなんでしょうか。ちょっとお伺いします。     〔石原委員長代理退席、委員長着席〕
  130. 山口公生

    山口(公)政府委員 ソルベンシーマージン基準の出し方、これは省令に書き込んで公表させていただこうと思っておりますが、それに基づいて各社が出しますソルベンシーマージン基準の具体的な比率になりますと、個別会社事案に係るものでありまして、大蔵省として発表することは適当ではないと思っております。  また、ソルベンシーマージン基準は、試行を今やらせていただいておりますが、またこれは間もないものでございます。したがいまして、これをディスクロージャーという観点で見た場合に、各社の比率を公表した場合には、この比率の大小が会社経営の優劣をあたかもあらわしているのではないかとの契約者認識が生まれ、その結果、比率の小さい会社から大きな会社へ契約がどんどんシフトしていくというような不測の事態が生じかねないということを非常に懸念するわけでございます。そういう試行段階のものが、また今回新しく入れるものがそういった思いがけない影響を営業へ与えるということは、私どもの本意でもございません。当面、当局としては、各社に対しその比率の開示について指導していくことは差し控えさせていただきたいと思っております。  いずれにしましても、この比率を開示させることをどういうふうにしていくか、指導していくかどうかについては、ソルベンシーマージン基準の今後の定着度合いを見ながら、今申し上げたような契約者に無用の誤解が生じないことを確認しながら判断をさせていただきたいというふうに考えている次第でございます。
  131. 宮本一三

    宮本委員 それは個々の会社の率を公表するとなると、確かに内容の悪い会社というか心配があるというふうな会社になればお客さんが逃げちゃって、それこそ大変なことになるでしょうから、その点はわからぬでもないのですが、慎重な運用をぜひお願いしたいと思います。  それと、保険契約者の保護基金というもの、これは契約者保護の充実という観点からいうと非常に結構なことだと思うのですが、同時に、そのためにかえって経営者にモラルハザードを生みはしないかなという心配があります。最近の信用組合の話もいろいろあるわけでございますけれども経営者がしっかりしてもらわなければいかぬわけで、モラルハザードを招くようなことになっては本当に困るわけですが、それに対してどのような対応考えておるのかということ。  もう一つは、これは業界の任意加入というのかな、そういう形になっているように聞いておりますけれども、むしろこれは強制的に全部入れというようなことにしては、支払い保証制度みたいなことにしてはどうかなという考え方もあるのですが、これはなぜそういうふうにしないのか。その点、二つ続けて聞きたいと思います。
  132. 山口公生

    山口(公)政府委員 保険契約者保護基金による資金援助は、契約者保護のため、保険契約の円滑な移転等による保険契約の継続が大切だという観点から導入をお願いしている措置でございます。破綻保険会社の保険契約の移転を受ける、もしくは場合によっては破綻会社合併する、あるいは破綻会社子会社化するという救済保険会社に対して資金援助をしようというものでございます。  恐らく、モラルハザードという先生の御指摘の向きの御懸念は、特に子会社化するような場合に生じるおそれがあるということかなというふうに思うわけでございます。それは、破綻保険会社が存続することになるために経営者経営責任が不明確になるのではないかということではないかと思うわけでございます。  基金の資金援助の対象となる子会社は、子会社化をする方に資金援助をするわけですが、単なる子会社化ではなくて、当該破綻保険会社の業務の健全かつ適切な運営を確保し、保険契約者等の保講を図るために必要な場合にというふうに法令上も限定しておりまして、その際、当然のことですけれども、破綻保険会社経営体制の刷新といった整理及び再建計画の策定を想定しておりまして、御指摘のような経営責任を不明確にしたままやるということはない、またそのようなことがないようにしなければならないというふうに思っております。  また、実際問題として、経営権を取得した親会社、すなわちそういう援助を受ける会社は当然破綻保険会社経営者には責任をとらせるのが普通でありますし、そういった御懸念は生じないと思いますが、また、私どもも生じさせないようにする必要があるというふうには思っております。
  133. 宮本一三

    宮本委員 その辺はしっかりひとつ見ておってもらいたいと思います。
  134. 山口公生

    山口(公)政府委員 申しわけございません。ちょっと任意加入、強制加入のお話を、済みません。  実は、今回任意の形てやらせていただいておりますけれども、強制加入を伴う支払い保証基金につきましては、いろいろと検討すべき問題がたくさんございまして時間をかけて検討すべきマターだということでございまして、保険審議会報告でも指摘を受けております。  今後私どもとしてはできるだけ早期に検討をさせていただきたいというふうに思って、今回は任意の形の援助をとりあえずやらせていただきました。これで十分な措置がとれるというふうには思っておりますが、その法律施行された後には、そういう強制の加入の伴う支払い保証機構のようなものも検討をさせていただきたいというふうに思っておるわけでございます。
  135. 宮本一三

    宮本委員 任意の加入という形でやりかけてみて、様子をよく見ながら次のステップを考えてください。  それから、これは最後になりましたけれども保険会社の場合は相互会社が主流になっておりますし、株式会社における株主総会のような経営チェック機能が相互会社にはないわけでございますが、今回の改正相互会社の社員について代表訴訟提起権が単独権化されたというのですか、一人でも訴訟を起こせるということになったわけで、これはこれで結構なことなんですが、同時にまた大変な乱訴になりはしないかという問題が心配になってきます。どうやって乱訴を避けるか。これは一方では非常に結構なことなんだけれども、実際問題としては大変なことになるんじゃないかなという心配をしておりますので、ちょっとその点。
  136. 山口公生

    山口(公)政府委員 相互会社におきます代表訴訟につきましては、現行法では百分の三以上の社員が訴訟を提起できるという少数社員権となっておりますが、社員数が大変膨大である現在におきましては、行使困難な状況になっております。したがいまして、経営チェックの充実、社員の権利保護の観点から、商法や信金法等の他業態法に倣い、単独権化したものでございます。  相互会社に係る代表訴訟の乱訴防止策としましては、株式会社等と同様に、六カ月引き続いて社員であることの要件や、悪意の訴訟提起に対する担保提供の申し立ての規定を整備させていただいているところでございます。  悪意の訴訟提起に対する担保提供の申し立てという乱訴防止策につきましては、最近、経営者に対する嫌がらせを目的としたような代表訴訟の提起について裁判所が担保提供を命じた例がだんだんふえてきておりまして、それも十分実効が上がるものというふうに考えております。
  137. 宮本一三

    宮本委員 以上で終わります。
  138. 尾身幸次

    尾身委員長 次に、宮地正介君。
  139. 宮地正介

    ○宮地委員 大蔵省の皆さん、また委員の皆さん、大変に御苦労さまでございます。金曜日の午後ということで大分お疲れのようでございますが、あと二人でございますので、お互いに頑張ってまいりたい、こう思っております。  最初に、私は基本的な問題からお伺いをさせていただきたいと思っております。  一九八五年のプラザ合意以来、我が国におきましても金融自由化の本格的な台頭が始まったわけでございます。そういう中で平成四年、ちょうど三年前、一九九二年には銀行証券のいわゆる相互参入相互乗り入れが法律としてスタートいたしました。そして今、三年たちまして一九九五年に、保険業界における生保損保相互参入という新しい段階に入ってきたわけでございます。ちょうどプラザ合意以来、十年が今経過をしたところでございます。そういう中で、我が国の東京国際金融市場も、ロンドン、ニューヨーク、三大国際金融市場として世界経済の中でも大変に重要な位置づけに今なってきたわけでございます。  しかし、こうした十年の経過の中で、一つはバブルの崩壊という大変な激動の変革期を迎えたわけでございます。そうした一つの経済の流れ、金融自由化の大きな流れの中で、こうして保険業界における生保損保相互参入が今国会で議論され、成立の方向に動いているわけでございます。  しかし、今回一番大事な、保険審議会の中で、こうした流れの中で、いわゆる保険業界における損保生保相互参入相互乗り入れと同時に、既に相互乗り入れの実現で発足している銀行証券、この業界と保険業界との同時進行による相互参入、これもやるべきであるということが審議会の中でも答申されているわけでございます。私は審議会の皆さんの良識であろうと思います。先ほど申し上げたような大きな流れの中で、国際化のそうした流れの中で、仕掛けだけは少なくともしっかりつくっておくべきではなかろうか。  いろいろとバブルの崩壊ということで、銀行証券も体力が弱まっております。また、保険業界におきましても、生保などは含み資産の大変な下落によりまして、決して体力が強い状態ではありません。また、景気も低迷をしております。決して、当初我々が考えていたような経済環境ではない。慎重であるべきことはこれは当然でありますが、大きな国際化の流れの中で、金融自由化というこの流れの中で、今回、銀行証券、それと保険業界、この参入について先送りをすることが果たしてベターであるのかどうか、これはもう少し精査をしていく必要があるのではなかろうか。せめて仕掛けぐらいはつくって対応しておいてもよいのではなかったのかな、こんな感じも私はしているわけでございまして、大臣、こうした大きな流れの中で、そうした問題についてどのような見解をお持ちなのか、まずお伺いをしてみたいと思います。
  140. 武村正義

    武村国務大臣 午前中もお答えをいたしましたが、平成元年から保険審議会に御苦労をいただいて、平成四年に御答申をいただいた。さらに今回は、その後法制化を前提としてさらに一層詰めた審議をいただいて、その答申を受けて今回の立法作業にかかった。こういう経緯でございます。  したがって、当初の答申はまさに保険業法改正にかかわる基本的な、かなり長期な視点も含めた考え方をお出しいただいている。当面この改正の中ではどういう姿勢で取り組むかという、より具体的な作業を前提にした答申では、今お話しのように、相互参入については当面は生損保相互乗り入れ、こういう方向をお示しをいただいて、この立法に至っているわけであります。  私、前段の銀行、信託、証券にまで及ぶ広範な相互乗り入れの基本的な考え方が否定されているわけではないというふうに認識をいたしております。部長からもお答えをいたしておりますように、やはりいろいろな影響がございますから、範囲を広げればいい、より徹底すればそっちの方がベターだとは単純には言い切れない。これは規制緩和、自由化についても同じことが言えるわけであります。特に、アメリカのかなり進んだ自由化が過当競争を招いて大変な混乱を生んだ、そういう経験も大いに参考にしなければなりません。確かに範囲を拡大すれば、生損保会社がいわゆる金融や株の売買までやれるというのは、生損保から見れば範囲が広がるから魅力です。しかし、同時に向こうさんも、銀行証券会社生損保に入ってくるわけです。その両面ございますから、広げれば単純にいいというふうには言い切れない中で、今回は生損保相互乗り入れという形でまず踏み出そう、しかし、前段答申をいただいた。もっと広げていくという方針は、その後も将来の、次の段階の課題として見詰めていこうという姿勢であります。
  141. 宮地正介

    ○宮地委員 大臣は混乱を招くということで大変懸念をされているやに私は伺いましたが、銀行局長に伺っておきますが、三年前に銀行証券相互参入を行いまして、いわゆる信託会社証券会社子会社としてつくれる、こういうような一つの方式がスタートいたしました。この三年間の状況として混乱がありましたか。まず銀行証券の例として伺っておきたいと思います。
  142. 西村吉正

    西村政府委員 金融制度改革を進める上で、利用者の利便を増進するという傍ら、過度の混乱を起こさないということにも配慮しながら進めていく必要があるということで、子会社方式という方 式がとられてまいっているわけでございます。  そういう考え方に基づきまして、銀行証券、信託の間で子会社方式で今粛々と制度改革が進められているわけでございますが、そういう中におきましては、現在のところ特段の混乱というものは生じておりません。
  143. 宮地正介

    ○宮地委員 混乱を招くまで至るような状況には、私自身そう懸念はないのではなかろうかという感じがしております。むしろ今大臣は、アメリカの企業進出とかそうしたものに対しても大変配慮されているようでございますが、国際化という、またあらゆる面で今日本の市場の開放、規制緩和ということが世界的に求められている今日的状況の中で、むしろ決断をして仕掛けぐらいはきちっとつくっておいて、我が国としては金融自由化についてはすべて開放経済の規制緩和に踏み切ったんだ、東京国際金融市場はこれからはその活性化に向けて努力をしていくんだというふうな対応も大変大事な視点ではなかろうかというふうに私は考えておるわけでございます。  この点の視点については、大臣、もう一度確認をしておきたいと思いますが、混乱を招くから先送りをしたのか、その辺についてもう少し具体的にお話を伺っておきたいと思います。
  144. 武村正義

    武村国務大臣 先ほど私が混乱という言葉を使いましたのは、この相互乗り入れの範囲を一挙に拡大することを指しているというよりも、アメリカが大変徹底した自由化をしたケースを申し上げたわけであります。  今回商品も認可制から届け出制に変えておりますが、もう届け出も要らないという主張もあるのかもしれません。ブローカー制度の導入もそうでございます。そういう規制緩和、自由化国際化の改革の方向の中で、これは一般論で恐縮でありますが、自由が徹底すると行き過ぎが起こる、これは世の中一般でお互いに使う言葉でありますが、そこにトラブルが起こったり行き過ぎが起こるときにそれをどう調整するか、社会的公正、公平の立場からどう調整するかというために法律が要る、ある種の規制が存在するということになっているわけでありまして、何もかももう裸にして完全に自由にすればいいというわけにはいかない。そこが非常に難しいところであります。  それにしましても、今回の改正は、そういう意味では世界の動向も含めてかなり大胆に割り切るところは割り切った改革だというふうに私どもは思っております。特に保険審議会、もう御承知いただいておりますように、業界代表の方も入っていただいておりますし、専門の学者、経験者もたくさん入っていただいて、何十回となく真剣な議論を積み重ねてこういう方向を出していただいております。そのことを基本的に受けて大蔵省としては立法化をさせていただいたわけでありまして、私は、五十数年たったこの時期の我が国保険業法改正としてはこの辺が一番妥当ではないかと思って御提案をいたしているところであります。  参入の範囲を拡大するということだけで申し上げると、混乱というよりもむしろ過当競争というふうな言葉の方が正しいのかもしれません。
  145. 宮地正介

    ○宮地委員 保険部長で結構ですから、それでは逆に、今後保険業界生保損保相互参入を来年の四月一日から、法律が通れば実施に踏み切るわけでございます。その実勢を見てさらに今後銀行証券との相互参入に踏み切っていくわけですが、このめどとしてはどのくらいの時期を考えているのか。時期というのが難しければ、どういうような実勢の状況が醸し出されれば踏み切るのか、この点については事務方としてはどんな感じで今おられるのか、お伺いしておきたいと思います。
  146. 山口公生

    山口(公)政府委員 事務方の私が申し上げる範囲を超えるかもしれませんけれども、保険審議会の報告、つまり保険審議会答申を具体的にどう進めるという形で出ましたのが今度は審議会の報告でございます。そこで、その進め方を漸進的、段階的に進める必要があるという指摘を受けて、今大臣から御説明申し上げたような形にさせていただいているわけでございます。  実はこの改革は、銀行の例で申し上げますと、銀行の制度そのものの法律改正ないし制度の改革、それと銀行証券あるいは信託等との相互参入というものと一緒にそういった流れが二十年ぐらいかかっておりますが、今度は保険の場合は実はそれを一遍にやってしまおうというところに大変盛りだくさんなものがありまして、そこで規制緩和でも、相互参入だけではなくていろいろな形の、ブローカーも届け出制もいろいろなものがございます。それからセーフティーネットとしての基金の創設もございますし、もういろいろと、ごらんいただくとわかりますように盛りだくさんでございます。  それで、その中にまた銀行証券と保険との乗り入れ問題が、またこれがかなり文化的にも違う、文化的という表現が大変適切でないかもしれませんけれども、そういう環境あるいは考え方の違った業界相互参入をするとなると、またそこにはこなしていくべき課題が大変たくさん出てくるわけでございます。  したがって、そこに余り無理をするとせっかくのいろいろな意味の制度改革、近代化するという意味の改革でもございますし、規制緩和していく、あるいは将来に向けていく、あるいは健全性を確保する、そういったいろいろな盛りだくさんのものが、せっかくやろうとしているのにかえって混乱を招いて契約者に御迷惑をかけてしまう、それでは何のための改革かわからないということで、手順を示していただいたわけでございます。ちょっと長くなって恐縮でございます。そういった経緯がございました。  それで、文章におきましても、「その定着を見極めた後に」という表現がされておりまして、したがって、その定着を見きわめるというのは、今見きわめるわけにいきませんので、やはりしばらくたってまた審議会で見きわめて御意見をいただくとか、そういったことになるのではないかというふうに思っているわけでございます。
  147. 宮地正介

    ○宮地委員 定着を見きわめるというのは大変抽象的な判断が求められているわけでございますが、今保険部長がいろいろと、確かに片仮名から平仮名に、もう抜本的に全面改正ですから、これは中身も相当皆さんが御苦労されたことが本当ににじみ出ておりまして、そういう点では私は大変敬意を表しております。  しかし、金融自由化という一つの大きな世界的な国際的な流れというものを私は見失ってはならない、この視点というのは大変重要な視点である。ですから、その点については今後状況を見ながら、私は、できるだけ早い時期にタイミングを見てさらに一歩進めた方が世界から日本がバッシングされない、そういう大変重要な要素を持っていると思っておりますので、ぜひ今後に期待をしたいと思っております。  今回の改正の中で、そういうような皆さんがおっしゃる中で、例えば第三分野の相互参入の問題については、むしろこれは規制緩和どころか日米協議の中でブレーキをかけているのはアメリカの方ではないかと私は感じているわけです。確かに、子会社方式によってこの三分野に生保損保対応できるようになっております。  しかし、特にこの三分野の中の、傷害・疾病保介護の中で、今後我が国が高齢化社会を迎えるに当たって、ゴールドプランだとか今後のそうした福祉社会を構築していく中で最も大事なのが医療の改革と介護の問題、これはもう皆さん御存じのとおりであります。高齢化社会の最大の問題と言われているわけです。この医療、介護の問題が、子会社方式の仕掛けで進みますと言いますが、むしろ本体でこれを踏み切っていく、こういう姿こそがこうした金融自由化と新しい高齢化社会という国民の求めているニーズに合致していくのではないか、私はこう考えておるわけです。  ところが、日米協議の中で、本体部分においてはもう少し時間をかけて検討していく、こういうことで、むしろアメリカ側から本体参入については大変な懸念、ブレーキがかかったのではないか と私は考えております。当然国内の中小とかいろいろあろうかと思いますが、むしろアメリカの企業の中からのそうした圧力が日米協議に反映して、それが審議会の中でも慎重論となって、本体参入は三分野においては当面これはやらない、子会社方式でいくんだ、こういうふうになったのではないかと考えているわけでございます。  こうした問題は、逆に日本よりもアメリカ側に、そのブレーキをかけてきている、規制緩和に逆行するような対応が働いているのではないか、こんな感じがしているわけですが、この点については、これは大変重要な課題でございますので、大臣としてはその辺どういうふうにごらんになっておるのか、率直にお伺いしたいと思います。
  148. 武村正義

    武村国務大臣 昨年の日米の包括協議の中で、確かにここをめぐってはいろいろ日米間でも意見の違いもありました。  最終合意に達することができたわけでありますが、そういう状況を振り返りましても、今宮地委員の御指摘のような側面がなかったとは言えません。第一、アメリカは各州が州法で保険法を持っているようでございまして、ですから、アメリカがいろいろな意味で進んでいるとは一概に言えない。  先ほどの御主張も、このレベルでは国際的な流れに十分沿ってないのではないかという御心配もありますが、しかし、アメリカを例にとるならば、今回提案しております日本の法律よりもおくれているような州もあるわけでございます。そういうまちまちなアメリカの状況の中で、今御指摘の点については一つの問題提起として承らせていただきました。
  149. 宮地正介

    ○宮地委員 私は、やはり我が国が当然、規制緩和、市場開放、こういうもので今世界からバッシングを受けているわけでございますが、そういう中で政府も、また国会もいろいろ最大の努力をしているわけです。そういう中で、こうしたいわゆる規制緩和に逆行するようなアメリカの意見に対しては、それなりにやはりきちっと物を申していくべきではなかろうか。また、日本のこれからの高齢化社会の大変急激な進捗状況の中で、子会社方式でできるんだからそれで大丈夫だというようなことは考えていないと思いますが、むしろこれからの損保生保のこの三分野の本体における導入というのは生命線ではなかろうかと私は思っているわけでございまして、今後、政府としての御努力、また言うべきことははっきり物を申して今後アメリカとの協議をしていただきたい、この点については、時間も限られておりますので、強く要請をしておきたいと思っております。  次に、もう少しお伺いしておきたいのは、先ほどから出ておりますところの自己資本比率、いわゆるソルベンシーマージンと言われるこの基準の導入は結構でございます。さらに私はもう一歩進めまして、この基準の導入と同時に、今度はこの基準のいわゆる目途といいますか、努力目標といいますか、銀行の場合は、御存じのようにBIS規制というのがありまして自己資本比率は八%、こういうことでそれなりの規制が国際的にも定められているわけでございます。保険においても、今後そうした自己資本比率の国際的な取り決め、方向というものも当然検討されてくるんではなかろうか、こういうふうに考えているわけですが、この点についてはどういうふうに今後考えておられるのか、お伺いしておきたいと思います。
  150. 山口公生

    山口(公)政府委員 先生の御指摘いただきましたソルベンシーマージン基準は、各国、主要国ともに監督の一つの指標として導入を図ってきておるわけでございます。アメリカ、カナダ、EUの諸国等が今御提案申し上げているようなソルベンシーマージン基準というのを導入をしてきているわけでございます。  私どもは、このソルベンシーマージン基準を今後定めまして、いろいろその定着を図っていく必要があるわけでございますが、そうした段階におきます暁には、そういった諸外国ともよく意見交換をし、願わくばそういう国際的な統一的な基準にしていくことも十分考えられますので、そういったことを念頭に置きながらやってまいりたいというふうに考えております。
  151. 宮地正介

    ○宮地委員 分子の方は、これはある程度わかりやすいんですが、分母の方のリスクのところはなかなか我々素人にはわかりにくいわけです。大体リスクが小さい方がいいわけですから、当然一一〇とか一一〇とか、アメリカあたりでも一〇〇を超えた自己資本比率というのがあるようでございますが、今後皆さん方が日本の業界あるいは外国から入ってきた企業チェックをする中において、このリスクのところの一つチェック、これは非常に私は大事だと思うんです。ここが崩れてしまうと、やはり健全な経営というものが危ぶまれてくる。  この辺のチェック大蔵省としての機能、体制、現行のいわゆる保険部の体制、あるいは出先の財務局の体制、これは人的資源あるいはノウハウ、こういう面で大丈夫なのかどうか、確認しておきたいと思います。
  152. 山口公生

    山口(公)政府委員 諸外国、特にアメリカ等では、私ども保険部に当たる人員というのは相当な数、合計しますと何千名といるというふうにも聞いております。したがいまして、私どもとしましては、それは万全を期すためにはもっともっとたくさんの陣容でという願いはもちろんあるわけでございますけれども、ただ、行政のこういう改革の折に、限られた人員で最大限の効果を上げていかなければいけないというのも、また私どもの公的サービスの行政のあり方として、それは与えられた条件のもとで最大のことをやっていく。  そのためには、こういったソルベンシーマージン基準あたりを十分に活用しながらまた非常に効率的な行政をしていく。またそれだけではなくて、会社の中でもみずからそういったものをチェックできるような体制をつくっていただけるように、いろいろな、せんだってからもお話し申し上げている経理の問題等も十分に新しい方法で踏み出していただきますように、それでみずから十分チェックしてそういうリスク管理を行えるようにやっていただくということになりますれば、行政とそういった業界の自主的な努力とが相まちまして、そういった効果を最大限に発揮できるようになるんではないかというふうに考えているわけでございます。
  153. 宮地正介

    ○宮地委員 大臣、この法案は非常に私は重要な法案であると同時に、先ほどから何度か申し上げておりますように、全面改正でございますから、新たな思い切った制度の改革が入っているわけでございます。今私は自己資本比率の問題を言いましたが、これだけではございません。例えばブローカー制の導入をしたということで、じゃこのブローカーのいわゆる資格のチェック、登録は出されたがその中身をチェックをする、これも大変な作業でございます。  今回のこの法案の改正に伴って相当私は大蔵省の保険部の人的強化あるいは出先の財務局の人的強化、またそれなりの資質のある方の人事の配置、こういうものが裏づけをして初めてこの法律が機能していくと思うわけでございますが、この裏打ちの人的な面においてはどのように大臣は考えておられるのか、この問題の人員の確保等については総務庁長官等にはどういうように物申しておられるのか。  確かに立派な法改正はできました。果たしてこの法律の番人である大蔵省が今後行政の上で機能的に運営していく場合に、現状の人的資源で大丈夫なのか、強化するような大事についてはどう対応しているのか、この点の裏打ちはできているのでしょうか。それとも今後どういうふうに考えておられるのか、これは大臣にお伺いしたいと思います。
  154. 武村正義

    武村国務大臣 まだ具体的な人数まで詰めているわけではありません。新しいこの法案が、法律がお認めをいただくことになりますと、来年の予算編成の中で組織、人員をどうしていくかという課題に直面するわけでありまして、しっかりこの法律施行されるべく対応をしていかなければならないと思っております。  大蔵省としては、日本の財政全体の責任を預かっておりますために、なかなか大蔵省の経費を見たり人員を拡大することがしにくい状況もあるわけでございまして、税務職員の充実、関税職員の充実もそうですし、昨今二つの信用組合をめぐって大変世論の関心も高いわけでありますが、そうなると、銀行に対する検査機能をどう強化していくかというテーマもございます。保険業法ができれば、今度は今お話しのようなそういう基準、ソルベンシーマージンの基準をきちっとつくって見ていくためにも、確かに人的な量質両面から能力を高めていかなければならない、一つの例としてそう認識をせざるを得ません。  具体的な詰めはこの法律の後ということになりますが、しっかり法律施行できるように最善を尽くしてまいりたいと思っております。
  155. 宮地正介

    ○宮地委員 ぜひこれは、法律が通れば来年の四月からでございますから、来年度予算編成の中で、特に大臣が積極的にリーダーシップをとりまして、法律が円滑に運用し、今後やはり大きな金融自由化という流れの中でこの法律が育っていくためにも、その裏打ちとしての人的資源の確保については特段の御配慮また御努力をいただきたい、我々も必要であるならば大いに応援もしてまいりたい、私はこう考えますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。  保険業法の点についてはこの程度にさせていただきまして、時間もありませんので、閣議了解が既に出ました補正予算の問題について若干お伺いしてまいりたいと思っております。  来週十五日に閣議決定され、予算委員会等で議論されると思いますが、今回のこの平成七年度補正予算のフレームを見させていただきました。約二兆七千二百六十億、こういうフレームになっておるわけでございますが、その中身は、一つは阪神・淡路大震災の関係費用、並びに円高対策が中心でございます。  まず、この二兆七千億超の規模について、平成七年度の予算との対比の中でこの大枠の規模で約二兆七千億超にした基本的な考え方、また皆さん方がおつくりになったその算定の基本的な方針、この点について大臣にお伺いしておきたいと思います。
  156. 武村正義

    武村国務大臣 初めに規模があったわけではございません。  御承知いただいておりますように阪神・淡路の大震災対策が、まずこれはもう必然の課題としてございました。昨年度の第二次補正で一兆円余り対応いたしましたが、これは緊急の対応予算でございました。そして、だんだん作業が緊急対策から復旧、復興の段階に入ってきているわけでございます。復興というとまだ地元の最終的プランがまとまっていない段階ではございますが、今の時期に復旧、復興、把握可能なものをこの補正予算の中に盛り込みまして約一兆四千数百億というふうなことに相なりました。あわせて、災害直後から国会でも真剣に御議論いただきましたように、この阪神の地震をやはり全国的な教訓にしなければならないという思いがございます。そんな意味で、一挙に何もかも手がつけられるわけではありませんが、こういう地震の経験に学びながら全国的にやはり防災対策を強化していこうということから、この予算で七千九百億円余りの事業費を盛り込んでいるところでございます。  そこへ円高対応ということで、これは直接的には中小企業、円高で一番苦しんでいただいております輸出関連の中小企業でありますし、あるいはそういう企業で働く方々の雇用対策でありますが、このことを基本にしながら将来の、円高対策の政府のパッケージの中にもございますように、産業構造を転換していくという大きな課題を背負っているわけでございますが、そのための大変重要な分野として科学技術と情報通信の振興対策費を加えまして、三千二百億ほどの予算を編成させていただいたわけであります。プラス、サリン対策も入っております。そういう結果、二兆七千二百六十一億という数字になりました。  過去、宮澤内閣当時から考えましても何回かかなり大型の補正予算を組んでまいりました。緊急経済対策というふうな名称では数兆円から十何兆円という発表をしてきたわけでありますが、その中で一体財政出動がどのぐらいなされてきたのか。過去四回振り返ってみますと、これはもう財政規模そのものもあります。しかし、プラス財投があったり地方単独事業があったり等々いたしまして、全体としてはかなり大きな規模で発表されてきておりますが、実際に真水の財政出動、国の財政出動では過去四回の中では最高が二兆三千億余りだそうであります。それに比べると、今回の二兆七千億はほぼ一〇〇%真水でございますから、あえて申し上げるならば、この大変厳しい財政環境の中で、年度当初の対応としては財源に目をつむりながら精いっぱいの対応をさせていただくことになるというふうに私は思っているところでございます。
  157. 宮地正介

    ○宮地委員 大臣、今大臣は、最初に財政の規模ありきではないのだ、こういみじくもおっしゃいました。恐らく大臣はそっけなくおっしゃったのじゃないかなと思っているのですが、これは大変重要な意味があると私は思うのです。当然、ある程度の規模というものが頭の中になくて、全く、阪神大震災対策とか円高の対策だとか、そうした形で結果として二兆七千億が出たというような、私は事務方の皆さんはそんな考えしていないと思います。  というのは、この平成七年度の本予算というのは、昨年編成するときには一ドル九十八円で編成している、九十八円。ところが編成した後、この四カ月の間に大変な急激な円高になりました。きょうあたりは八十六円ぐらいに戻っておりますが、大体八十三円だとか、少なくとも八十円前半のところまでがんと急激な円高になってきた。大臣、円が一〇%上がりますとGDPが〇・五%下がるというのは常識なんです。今回の円高は、九十八円で試算したときから例えば八十二円でやった場合十五円としましても、これはざっと〇・七五から〇・八%GDPを引き下げてしまう。そうすると、ざっと今我が国のGDPは四百七十兆なんです、四百七十兆。これに〇・七五なり〇・八掛けただけでも三兆円超えるのです。  そういうようなことを考えたときに、やはり私はこの円高というものが、予算の中においても編成時と相当異なっている。本予算をむしろフォローしなければいけない。そうしなければ、当初の皆さん方が、政府が計画した実質二・八%経済成長率、名目三・六%の経済成長率、この三・六%の名目成長率で全部本予算をしっかりつくっているわけです。このことが頭にあれば、補正予算の中でもこのマイナス分についての大枠を頭に入れながら当然補正予算というものが私はつくられていった。恐らく主計局だとか事務方はこのくらいの頭を持って当然これはつくっています。大臣が今、最初に財政規模は考えていないというような御発言は、ちょっと私は大蔵大臣としては軽率ではなかろうかと大変危惧をいたします。主計局次長、来ておりましたらこの点について少し説明いただきたい。
  158. 中島義雄

    ○中島(義)政府委員 このたびの補正予算は、ただいま大臣から答弁申し上げましたように各般の政策的ねらいを込めてつくったものでございまして、大臣から答弁申し上げたとおり、あらかじめ一定の規模を想定してその内訳をつくっていったといったものではございません。それぞれの政策に必要な経費を個々、一つ一つ吟味いたしまして、それを積み上げていったものでございます。その結果が総額二兆七千億円ということになったわけでございまして、それがたまたま、今委員おっしゃったような、GDPに対する比率から見ると〇・七五%といったものに近いものにはなってございますけれども、それと円高の影響などを厳密に対比して数値を定めていったものではございません。  ただ、現時点での補正予算の規模といたしまして、過去の例から見ますと、さまざまな政策的な要請を込めてつくりました場合、おおむねこの程度の規模になるということは、私ども事務的な作 業をやりながら当然想定はしておったわけでございますけれども、それはあくまで結果論でございまして、あらかじめ規模を決めていったということでないことは御理解をいただきたいと存じます。
  159. 宮地正介

    ○宮地委員 私は、あらかじめ規模を決めて、その中で編成をしたかどうかの確認をしているわけじゃない。円高の、この急激なレートの変更、本予算編成前の九十八円という、この一ドル九十八円で本予算を編成した。今、補正予算を編成するときには八十円前半のレートに変わっている、こういうものも視野に入れて補正予算は検討しなかったのかと、ここを聞いているわけです。どうなんです。
  160. 中島義雄

    ○中島(義)政府委員 委員指摘のような急激な円高の影響が懸念されましたために、まさにそれに対応するためのさまざまの措置を盛り込んだというわけでございます。ただ、阪神地域の大震災というのはそれ以前に生じていた事実でございまして、それへの対応というのは別途の要請としてあったわけでございます。そちらの方をできる限り盛り込むことにしました上にその円高を加えたものでございますので、総額規模がこれによって、今般の円高対策としてどういったものであるかといったことをあらかじめ検討したわけではないというふうに申し上げたわけでございます。  ただ、今回の円高の影響が懸念されたということを私どもは真摯に受けとめまして、あらゆる角度から、個々の政策の中身、それからトータルの問題について検討したことは事実でございますので、私が先ほど申し上げました答弁の中で、規模のことは全く念頭に置かなかったというふうにお受け取りになったとすれば、その点は確かに言葉が足らなかったというふうに申し上げたいと存じます。  繰り返しになりますけれども、円高対策については十分、緊急なものについて個々検討いたしまして盛り込んだところでございます。
  161. 宮地正介

    ○宮地委員 円高対策について配慮しているのは、これはもう私は承知しているのです。約五千億円。問題は、本予算のときの、一ドル九十八円で本予算がつくられたでしょう。今回の補正予算のときには、当然この一ドル九十八円で編成する人はいませんよ。当然八十円台前半のレートを視野に入れて補正予算というものを検討したでしょう。結果として二兆七千億になっていますが、そうした姿でもし検討すれば、私は、三兆五千億ぐらいが妥当な規模ではなかったのかと。  これはその辺の中身の問題がありますから詰めませんけれども、私は、補正予算を編成するに当たって、当然この急激な円高のレートというものも積算の中に、視野に入れて検討された。こういうふうに理解をしております。時間がありませんから詰めませんが、もし、それが全く頭の中から離れてこの補正予算のフレームが、中身が検討されたとしたらまた逆に問題であろう、私はこう思っておりますので、あなた。言葉足らずという形でちょっと逃げましたからそれ以上詰めませんが、これは当たり前のことなんです。考えてしかるべきなんです。結果としてまあ差が八千億ぐらいですから、それは中身のいろいろな問題で調整するのは当然でありますけれども、当然視野に入れて補正予算というのは組んだのではなかろうかと私は考えておりました。もし何かの答弁のときがあればそれは答弁してください。  そこで、今回、特例公債約五千六百四十億。今まで、赤字国債は発行しませんと大変に強く大蔵省頑張ってまいりましたが、財源がないといえば財源がないのでしょう、今回この特例公債に踏み切った。余り抵抗もなく、安易と言えば失礼かもしれませんが、財源がないからしょうがないじゃないか生言えば開き直りになるかもしれませんが、この赤字国債発行をした最大の原因は何であったのか。これは大臣にお伺いしておきたいと思います。
  162. 武村正義

    武村国務大臣 先に、先ほどの御意見でありますが、頭に規模があってそして編成したわけじゃないのは事実でありますから、誤解のないよう願いたいと思います。  もう少し申し上げると、大蔵省としては、この平成七年度、補正予算は必至である、その第一次補正予算、大要としては、まず阪神・淡路大震災に対する復旧・復興事業である、プラスこれに全国的な防災対策を加味していこう、さらに、もう円高が三月から始まっておりましたから、当然この急激な円高に対する対応策として中小企業、雇用対策はのせなければいけないな、こういう認識でいたわけであります。  その後、与党の中でもいろいろ議論をいただいて、例の円高緊急対策のパッケージを政府一緒に一体になってまとめたわけでありますが、そのときに与党の側から、この際、そういう大蔵省考え方にプラス科学技術と情報通信振興対策費をのせるべきであるという提案が出てまいりました。これが政府の案になったわけでありますから、私どもはこれをオンした。その結果が二兆七千二百億になったということであります。  もちろん、円高がこういう形で進行しておりますから、景気に対して内需振興の効果がないといけませんから、小さな規模でいいとは初めから思っていません。精いっぱいこの範囲で組もうということで、各省の要求を踏まえて、大蔵省としてはかなり積極的にこの補正対応をさせていただいたわけであります。  ところで、結果としては、歳入面はこういう状況でございますから税収の増を期待することはできない、したがってこれはもう目をつぶって公債を発行せざるを得ないという決断をいたしております。昨年度の第二次補正もそうでございましたが、これはまあ、赤字国債を発行しないという昨今の大蔵省の姿勢からすれば、清水の舞台から飛びおりるような気持ちで、軽々に判断をしたわけでも観念をしたわけでもありません。  大変残念な思いに駆られながら、しかし日本の経済をよくすることがやはりこの際は最優先だ、そのためには目をつぶろうという決断からこういう判断をさせていただいたわけであります。当然、この分だけは我が国の財政をさらに一段と悪化させることになりますから、将来この問題をどうするかという、より重い財政再建への責任を背負うことになろうかと思っております。
  163. 宮地正介

    ○宮地委員 今回の特例公債の発行について、四条債との関係のところに若干、微妙に国民にわかりにくい点も何点がありますので、これはきょうは時間がもうありませんから私は詰めませんが、四条債で発行してもよかったのではないかという内容の項目も我々から見ると少しあるようでございます。皆さんの方の解釈との違いかもしれません。この辺の、四条債と特例公債の厳格な発行に対しての運用、これについては、ぜひ国民から疑念の持たれないようにしっかりと対応してもらいたいと思っておりますので、具体的な問題は、きょうは時間がありませんが、また別の機会に、あればいろいろお伺いしたいと思っております。  そこで、既にこの第一次補正が出た段階で、不見識というのかあるいは第一次補正が物足りないというのか、第二次補正十兆円なんという声がいろいろ自民党内からも出ているやに聞いているのですが、この点について大臣、どんな感じを持っておられるのです。
  164. 武村正義

    武村国務大臣 自民党の一部といいますか、ある人の発言でそういう新聞報道があったのを私も拝見をいたしました。これはその方の見識としてそういう提案をされているのだろうなというふうに思っておりますが、今政府はそんなことを考えているわけではありません。目下は第一次補正に全力で対応をして国会に提案をさせていただくわけでございます。  ただ、政府も景気がこれからどうなっていくかというところを一番心配をするわけでありまして、今はこの二兆七千億の補正もありますが、何といっても七十兆円余り、あるいは公共投資でいいますと、地方や財投も入れますと四十五兆円くらいの今年度の公共投資を、景気がややもたもたしているこの時期にむしろ積極的に執行をしていくことによって景気をしゃんとしてもらおう、こ ういう思いがございます。これが一番基本線であります。それにプラス二兆七千億の補正をオンするということでありまして、幸い年度初めでございますから、この巨大な年間予算をこの時期に集中して執行していくというのが基本でございます。  そうなりますと、もし年度後半になってまだ景気が、我々はよくなることを願っておりますが、まだ景気が低迷する状況が続けば、後半に対する何らかの財政対応、機動的な対応が必要になってくる可能性はあるという認識でございます。
  165. 宮地正介

    ○宮地委員 最後に、小川主税局長質問したいと思います。この次お会いするときは国税庁長官になっているのではなかろうかと思って、最後になりますが、酒税法改正について。  今後当然政府税調とかいろいろなところで検討されて来年度の改正の中に盛りまれてくるのではなかろうかと思いますが、昨年五月酒税法を改正したばかりの状況ですが、特に国際的に、イギリスなどのスコッチウイスキーの関係から、日本のしょうちゅうの税率との格差是正について相当強い要請がイギリス当局からもあちこち来ている状況でございまして、そういう中で、過日、しょうちゅう税率上げかなんということでマスコミに報道されましたが、この問題については今事務方としてはどういうような感じでとらえられておるのか、この点についてちょっと御説明いただきたいと思います。
  166. 小川是

    ○小川(是)政府委員 しょうちゅう、ウイスキーの税率の問題につきましては、委員がただいま御指摘のとおり、前の抜本改革に続きまして、昨年の五月にその後の酒類の消費態様の変化などを踏まえ、また国際的な要請にも配慮しながら改正を行ったところでございます。この際には、しょうちゅうについてはかなり大幅な負担増加を求める一方で、ウイスキーの税率を据え置きましたので、両者の間の税率格差は相当程度、以前は五倍を超えておりましたが三・九倍まで縮小されたところでございます。  ところで、一方、今お話のございましたイギリスからの要請に加えまして、これがEU全体といたしまして、税率格差問題について欧州委員会としてWTOの紛争手続へ進もうという決定をしたというふうに聞いているわけでございます。恐らく、そうなりますと、我が国とEUとの間で協議を行い、そこで私どもはこれまでの経緯あるいはしょうちゅうの我が国における位置づけ、昨年の改正の経緯その他事情をよく説明をして理解を求めていく考えでおりますが、EU側としては、満足のいく結論が得られない場合にはパネルの設置を求めるということになるだろうというふうに記者会見で言っているところでございます。  私どもは、やはりこのウイスキーにつきましては、我が国の酒税制度において酒の各種の種類に応じて担税力を求め、負担を求めてきているというこうした酒税制度を持っておりますし、これまでも努力してきた経緯がございますから、その経緯を踏まえて、仮にそういった形でEUと協議をする場合にも、現行税制が酒税制度として我が国において合理的であること、また、イギリスあるいはECとの関係でこれまで大きな努力をしてきたという実情を説明をし、理解を求めていきたいというふうに考えているところでございます。
  167. 宮地正介

    ○宮地委員 ありがとうございました。終わります。
  168. 尾身幸次

    尾身委員長 次に、佐々木陸海君。
  169. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 私は、議題になっております保険業法案について質問をいたします。  言うまでもなく、私的保険というのは、公的な社会制度が不十分な社会ではそれを補完するものとしても極めて重要な意義を持つものであると思います。それは、そういう意味で半ば公的な性格を持つものでありまして、公的な規制は当然必要とされているものでもあると思います。とりわけ契約者、特に個人の契約者の方も個人の契約者利益が何よりも重視されなければならないということであろうかと思います。  今度の法改正は社会経済情勢の変化に対応するということも一つ掲げられておりますけれども、どんな社会経済情勢の変化があろうとも、こういう契約者利益の保護、この観点があくまでも基本であって、いささかもゆがめられてはならないというふうに考えますが、まずその点について見解を聞きたいと思います。
  170. 山口公生

    山口(公)政府委員 おっしゃるとおり、保険業法におきましても契約者保護ということの大切さをうたっておりますし、我々は、行政としてもそういうことを念頭に置いていかなければならないというふうに思っております。
  171. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 法案の文面の解釈については既にいろいろ質疑もありました。私も、この法案についてもうあと一時間の質疑しかないということですから、主として生命保険にかかわって、現在の生命保険の実態と法案の関係について聞きたいと考えます。  保険募集の取締に関する法律の第十六条にはいわゆる乗りかえ行為の禁止ということが定められておりますが、なぜ乗りかえ行為の禁止という条項が設けられたのか、その理由をちょっときちんと説明をしていただきたいと思います。
  172. 山口公生

    山口(公)政府委員 お答え申し上げます。  乗りかえ行為といいますのは、既に有効に継続している契約を不当に中途で解約させて新しい保険契約に加入させる行為でございます。このような不当な乗りかえ行為が禁止されておりますのは、保険契約の途中解約、特に早期の解約は解約控除率が高く、また新しい契約については改めて付加保険料、すなわち保険会社にとって必要な事務費などでございますが、それが徴されることとなっており、契約者に不利益をもたらすからでございます。また、異なった会社の契約に乗りかえさせてもこのような行為は厳に禁止されております。なお、もちろんのことでございますが、契約者が既に自主的に解約している場合は該当するわけではございません。そういう理由で禁止されているわけでございます。
  173. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 生命保険というのはいかなる場合でも途中解約は契約者に不利をもたらす、だから途中で解約させて新しい保険に乗りかえさせるような行為は厳しく禁止されているということですが、他の会社生命保険を解約させて自社の生命保険契約者にしてよい場合というのはどんな場合があるのでしょうか。
  174. 山口公生

    山口(公)政府委員 契約者御本人の御意向で、そういう場合は問題ないわけでございます。
  175. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 結局、問題は契約者本人の意向ということにかかわってくるわけですが、今ちょっとここにある資料でいいますと、生命保険の個人契約、個人保険の加入ですが、例えば一九九二年度で見ますと、一年間の新規の契約が一千二百九十八万四千件、それから九一年度でいいますとやはり一千二百万少し、それから九〇年度でいいますと一千百七十万というような形で新規の契約があるのです。他方では、同じ年に対応する解約というものが、九二年度でいいますと四百九十七万、それから九一年度でいいますと四百五十三万、あるいは九〇年度でいいますと三百九十四万とかいう形で、新規の契約が年間に一千二百万ぐらいあるのに対応して、解約というものが四百万から五百万ぐらいある。つまり、新規契約の三分の一強の解約があるというのが数字の示す実態だと思うのですが、この解約の中に乗りかえというようなものは一切含まれていないということになります。
  176. 山口公生

    山口(公)政府委員 解約の理由はもちろんさまざまあると思うのでございますけれども、多く見られますのは、特に契約者の保険料の負担が重くなってきて、これを少し軽減したいということで解約をなさるというのが一番多いというふうに聞いておるわけでございます。
  177. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 大分その認識は実態と違うのではないかと思うのですが、ここに日本生命の一つの資料があります。例えば去年の十二月の日本生命の生命保険の解約の内容でいいますと、解約のきっかけは何かというと、解約全体の中で、資金需要がうまくいかなくなって解約したというの が一七・六%、それから日本生命に不満だという理由が一二・三%、その他が一三・九%あるのですが、中心は、新たな保険の勧誘があったことがきっかけでというのが五六・二%、こういうふうにこの日本生命の資料で出しておりますし、ロングラン保険の解約ということになりますと、このパーセンテージがまたさらに上がって五六・九%になっている。つまり、解約のきっかけの五割以上が新たな保険の勧誘であるという理由が挙げられております。  そして、新たな保険に加入した問題についてもここでちゃんと調べて出ておりますが、解約全体のうちの四五・一%が解約した後他社に加入した。それからロングランの解約でいきますともっとひどくて、他社に五八・六%が加入をしている。  それはもちろん本人の自由意思でとかいろいろなことはあるでしょうけれども、しかし実態は、毎年毎年ある四百万から五百万の解約の半分くらいは、大ざっぱな計算ですけれども、募集人に勧められて、今までの社との契約を解約して新しい社との契約を結ぶという形が実際には現実の問題としては行われているのではありませんか。
  178. 山口公生

    山口(公)政府委員 それぞれの事情がさまざまであろうというふうに考えておりまして、一概に解約の数字あるいはそれが他社へ動いているということで最初先生の御指摘になった乗りかえ行為というようなものだとは思っておらないわけでございます。御本人がもう少しいい保険に入りたいあるいはもうちょっと魅力的な保険に入りたいというようなケースもあるでしょうし、また、保険の募集をなさる方々の御説明でそういうふうに御本人が判断を変えられる、そういうケースがあるというふうに思っている次第でございます。
  179. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 もちろん私も、解約して新しい社と契約を結ぶというのが全部この募取法に違反する違反行為の乗りかえでやられているのだというふうに言うつもりはありませんけれども、しかし、実態の問題としては、保険の基本的な性格ですけれども、無形の商品と言われて、特に生命保険の商品のよしあしというのは一般の素人の個人がばっと見てわかるようなものではありませんから、A社の保険に加入している人のところにB社の募集人が来ていろいろ話して、話した結果、それは本人の自主的ということに形の上ではなるのでしょうけれども、今までのものを解約して新しいものに移るということは日常茶飯事のように行われているということは事実としてお認めになりませんか。
  180. 山口公生

    山口(公)政府委員 数字といたしまして先生がおっしゃったようなことがあることは、私どもも否定するものではございません。
  181. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 結構です。  つまり、法律に違反する乗りかえかどうかということは別として、事実上、一つの社から別の社に乗りかえる、乗りかえという言葉が不道切なら別の言葉で言ってもいいですが、しかし、かわるという、こういうことは本当に今普遍的に実際行われている。  これは社の名前は言いませんが、ある社が出している社内限定版の指導者用の機関誌ですけれども、こういうものの中でも指導者用に何を言っているかといったら、「お客さまは多くの保険セールスと接触なさっています。」そういう多くの社のセールスと接触している中でどういうふうにお客様に接近して、そして最後に、「「もし同じくらいの保険料で保障内容がグッと良くなれば変えていただけますか?」とタイミングをみてプッシュしたりこという、そのタイミングをいかにつかんで、いかにうまくほかの社をやめさせて自分の社のものを売り込むかということが中心になって教えるようなものができているわけで、こういうことはずっと行われている、これはもうはっきりしていると思うのです。それは改めてお答えを求める必要はありませんけれども。  もともと、最初にお聞きしましたように、ある社のものをともかく途中で契約を解除するということは、どんな条件があれ、それは本人の自由意思で選ぶのだがらいいといえはいいですけれども、そのお客さんにとっては決して利益になることではない。だからこそ乗りかえ行為というのは禁止されて、その点は自主的な意思であろうとなかろうと変わりはないわけです。
  182. 山口公生

    山口(公)政府委員 今先生の御指摘になりました事実、事実といいますか考え方が、解約したときの要するに手取りと申しましょうか、解約のときと、そのまま続けるあるいは転換、ほかの契約にそのまま転換していくというときの差額というような金銭的な面からいうと、確かに、例えば五年経過したときの解約とすれば、そこは、御本人の損得の金銭的な面からいうとそうかもしれません。しかし、御本人の都合あるいは御本人の意向でやる場合においては、それが不利かどうかというのは、すべて金銭的なものだけじゃなくて、その方の御事情とかいろいろなことがございますので、一概にそれが悪いことだ、あるいは否定されるべきものだということではなかろうというふうに思うわけでございます。
  183. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 いずれにしても、今、個人生命保険の加入数は、民間生保や簡易生保や共済保険などで二億件を超えているわけでありまして、新規の保険に加入させようというのは大変困難であって、だから生保各社は自社のものの転換とともに事実上の乗りかえを積極的に推進しているというのは実際の偽らざる実情だろうと思うのです。  この法案のもとで国民がニーズに合った商品が一層たくさん出るようになって利益を受けると言いますけれども、やはりそう単純ではなくて、保険商品の内容について余りよく知らないままに募集人からいろいろ勧められて、自分にとっては客観的には不利になるのだけれども、それを不利とは思わないで解約するというようなことが今後も、今度の法改正によってますますそういう方向は強まらざるを得ないのじゃないかという危険もあるということははっきり指摘しておかなければならぬと思うのです。  それから、保険の募集人の問題です。  保険の募集人の役割というのは、保険の場合に、先ほど申し上げましたように、国民一人一人が複雑な保険の内容を詳しく理解しているわけじゃありませんから大変重要だと思うのですが、昔から保険の募集人の問題では大量導入・大量脱落ということが言われていますけれども、現状はどんなふうになっているでしょうか。
  184. 山口公生

    山口(公)政府委員 生命保険の募集体制につきましては、保険契約者利益を保護するとともに、生命保険事業の健全な発展を図るためには、契約者保険会社の接点である募集制度の合理化が必要なことは言うまでもないわけでございまして、それには募集綱の大宗を占めます営業職員のいわゆるターンオーバーの是正と新規契約の継続率の改善などが大きな課題となっているわけでございます。  このために、生保各社におきましては専業営業職員中心体制の強化など募集制度改善に努めてまいったところであり、当局としても、生保会社の自主性を尊重した募集体制に関する整備改善実施計画を作成提出させ、その改善を指導しているところでございます。
  185. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 私はちょっと数字を聞きたかったのですが、まあいいです。こちらから言います。最近の十年間でこの募集人の新規登録は延べ百五十五万九千人、この期間にやめた人が百四十七万五千人、一年未満でやめた人が八十四万二千人、つまり新規登録した人のうちの半分以上が一年未満でやめているということであります。この原因は何だとお考えでしょうか。
  186. 山口公生

    山口(公)政府委員 今私が申し上げましたように、生保各社は、専業営業職員中心の販売体制の強化など、募集制度改善に努めてきたところでございますけれども、最近は景気の低迷や保険料の引き上げ、減配等の影響もありまして、ここ数年、営業職員数の業務廃止数が新規登録数を上回る状態が続くなど、悪化傾向にある生言わざるを得ません。このため、保険各社におきましては、 営業職員の厳選採用の徹底、営業基盤付与の徹底、採用後の指導教育体制の強化によりまして営業職員の定着卒の改善を図り、募集体制の整備改善強化に努めているところでございます。
  187. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 先ほど言いましたように、この募集人というのは保険会社と契約人をつなぐ非常に重要な役割を持っているわけでして、それが、新規登録した人が一年間で半分以上もやめてしまうというような状況では、契約者を保護するとか契約者利益を守っていくといっても、絵そらごとになっていく危険があるわけで、これは本当に解決していく必要があると思うのですが、その点では、言うまでもなく身分の保障が一番肝心なことだと思うのです。  私もそういうところに従事している人と話す機会を持っておりますけれども、実際、こんなものを読み上げることはしませんけれども、手当として支給される額はごくわずかです。本当に成績を上げないとまともに食っていけるような収入が得られないというのがもう普遍的な実態でありまして、最低一カ月に二件以上契約をとらないと食べていけないとか、しかもそれは、他社の契約者を言ってみれば説得して自分の社の新しい商品に、乗りかえという言葉が不適切ならば、自主的にそっちにかわってもらうというようなことをやらなければならぬわけで、募集人になった後、親戚やら知人やらを回って、言ってみればそれまで入っている社のものを乗りかえをやってもらって、それが尽きたら結局新しいところを開拓できなくなって終わるというようなことが繰り返されているのが実態であって、これでは契約者保護などが貫けるはずもないと思うのですけれども、この新しい法案のもとではこういう現状が何か好転するような保証は全くないのじゃないかと思うのですけれども、その点はいかがでしょう。
  188. 山口公生

    山口(公)政府委員 先生のおっしゃるように、生命保険の募集体制につきましては、保険契約者利益を保護するとともに、生命保険事業の健全な発展を図るといった観点からその整備を図っていく必要があると考えておるわけでございます。  具体的には、生保各社において営業職員の定着率の改善を図り募集体制の整備改善に努めるということだろうと思うのでございますけれども、この件につきましては、現行の法律、つまり新法の前の今の法律でも事情は同じで、やっていかなければいけないことでございまして、これは、戦後の長い歴史、試行錯誤をしながら懸命に努力をしている事項でもございます。  新法施行後におきましても、こうした事情は変わらず、引き続きより充実した募集体制が整備されるようにしていかなければならない、私どももそういうふうに指導していきたいというふうに考えております。
  189. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 これもある生命保険会社が出している広報誌ですけれども、この中で、新しい保険業法改正がなされた場合にどうなるかという問題の解説をしているわけですが、その中の結びのところでも、「保険業界は、規制緩和・自由化に向けて大きな一歩を踏み出すことになります。規制緩和・自由化は、同時に新たな競争とリスクをもたらします。」と言っているのですが、まさに、この募集人の地位とか仕事の内容とかいうようなものについて言っても、自由化や規制緩和というものが進む中で一層新しい商品を売り込むための競争、厳しいリスクの中に巻き込まれるという危険性は本当に大きいわけで、この法案を私たちはそういう意味では大変懸念を持つわけです。  先ほど申しましたように、それぞれの社の力を入れている新しい商品をほかの社の契約をやめてもらってもう何としても売り込むということをやりながら、募集人を次から次へと保険会社が入れかえながらやっていくというようなサイクルというようなものが、この法案によって変わるというんじゃなくてもっと激しいサイクルの中に投げ込まれていく。それは募集人の皆さん方にとってみても大変なことであると同時に、やはりそういう保険とかかわっていく契約者の上にもいろいろなトラブルや問題を引き起こさざるを得ないんじゃないか。  だから、規制緩和、自由化というような方向が、ニーズに合った商品を一層国民が得られるようになっていいんだというような見方はまことに甘いんじゃないか。やはりそこのところを監督官庁になる大蔵省は本当に甘くならないようによく見ていく必要があるということを、この問題でははっきりと申し上げておきたいと思うのです。  それから、次の問題ですが、保険の分野の規制緩和や自由化方向が大変危険な実体を持っているというのは、今言ったような点にとどまらない問題を持っているというその方向を示している先例、その典型の一つが、午後、最初にもちょっと問題にもなりましたが変額保険の問題であろうかと思うのです。  この変額保険というのは、一九八六年の十月に販売が開始された保険であることはもう言うまでもありませんが、株式などの有価証券に投資をして、運用実績によって保険金額や解約返戻金が変動す。危険も非常に大きいけれども見返りも場合によっては大きいというハイリスク・ハイリターン、日本では初めてのタイプの保険として八六年十月に販売が開始されたわけです。  ところが保険会社は、この変額保険の仕組み、全く今までなかった新しい仕組みやリスクがあるわけですが、そのことを契約者に正しく説明しないで、九%の運用益が常時保証されているかのようなシミュレーションを示して、かっこれが相続税対策にもなるといって、言ってみればお年寄りをだまして加入を勧めた。さらに、銀行によってローンとセットした保険募集が行われて、加入者に非常に大きな負債を与えるようなことも起こってきているわけです。  そこでお聞きしますけれども、現在、変額保険の被害者が保険会社銀行を相手に起こしている訴訟の件数はどのくらいになっているというふうに把握しておられます。
  190. 山口公生

    山口(公)政府委員 生保会社から報告を受けているところでは、生保会社を訴訟当事者とする変額保険の訴訟件数は、七年三月末現在で二百四十一件提起されているというふうに聞いております。
  191. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 私の調べているところでは、既に二百五十件を超えたというふうに聞いておりますし、それから経済企画庁所管の国民生活センター、ここへ変額保険についての苦情などで持ち込まれた件数はこの六年間に三百七件、去年の末までにというふうに話を聞いています。つまり、一つの種類の保険でこれだけ裁判が起こったり苦情が持ち込まれたりというようなことは今まで例がないのじゃないかと思いますが、既にこの保険の問題では自殺者も出るなど社会問題になっております。しかも、加害者は言ってみれば大手の保険会社銀行という問題であります。  今回の法の改正によって規制緩和がさらに進めばどういうことになるか。国民の多くの保険に対する常識というのは、保険というのは安全性を重視した運用をして、運用の成果が予定利率を下回っても給付が保証されるものだ、そういう今までの定額保険を念頭に置いた国民常識があるわけですが、その常識からかけ離れたこの変額保険のような商品がこれからも次々と出てくる、そして国民に被害をさらに与えていくということが、この変額保険の経験からいうと当然懸念をされるわけです。  そうでないとおっしゃるならば、つまり、こんな被害が出るような問題はこの変額保険が最後なんだ、今度の例がこれが最後なんだというふうに考えられるとするならば、大蔵省はこの変額保険問題への反省と被害者救済に真摯に対応して、契約者保護、弱者保護の立場を明確に示すべきだというふうに私は思うのです。さもないと、保険への信頼はさらに失墜することを免れないということを思うのです。  そこで、具体的にちょっとお聞きしますが、大蔵省はこの変額保険の販売の開始に当たって、もちろん時期からいいますと、その後バブルの崩壊 とかといういろいろな外部環境の変動はあるわけですが、しかしともかく販売の開始に当たって、この保険が消費者に大きな被害を与える危険をはらんでいるということを大蔵省は明確に認識をしていたと思うのです。  当時、保険研究所から出された「変額保険ガイド」、この中で当時の大蔵省銀行局保険部長の関さんが、「もし、正確な理解がないままに顧客に変額保険を売り込むようなことになると、その後において思わぬトラブルが発生し、変額保険のイメージ、ひいては生命保険そのものの信頼に悪影響を及ぼすおそれすらあろう。」ということを昭和六十一年という段階で明確に指摘をしております。  それからまた、これも繰り返すまでもないでしょうけれども大蔵省は同じ年の七月十日付で「変額保険募集上の留意事項について」という文書を各生命保険会社社長あてに出して、ここで、例えば「将来の運用成績についての断定的判断を提供する行為」だとかいうような三つの具体的な行為を挙げて、こういうことは「「保険募集の取締に関する法律」の趣旨を踏まえ、変額保険募集上の禁止行為として遵守・徹底する」必要があるということまではっきり言って、危険性について指摘をしていたわけだと思うのですが、それは間違いありませんです。
  192. 山口公生

    山口(公)政府委員 変額保険につきましては、御指摘のように、昭和六十一年七月に「変額保険募集上の留意事項について」という通達を発しまして、将来の運用実績についての断定的判断を提供する行為などの禁止や無資格者による募集の禁止について遵守、徹底を求めています。
  193. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 さらにもう一つつけ加えておけば、同じ「変額保険ガイド」という本で保険一課が書いた文章の中では、さっき言った三つの行為を禁止行為として定めているけれども、「これらは基本的には募取法十六条に該当するものと考えている。しかし、募集開始後変額保険固有の不適正行為が発生した場合、同条文では解釈できない事例が生ずる可能性もあるため、ケースによっては同法二十条一項二号の「不適当な行為」に該当するものとして解釈する場合も考えられる。」だから、本当にこの法律趣旨をより広く解して、間違った行為が行われないようにしていくんだということまで警告をしていた。これも事実です。
  194. 山口公生

    山口(公)政府委員 おっしゃるとおりだと思います。
  195. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 そういうふうに大蔵省が、もちろんまだバブルの崩壊を予測したわけじゃなかったでしょうけれども、この保険固有の危険としていろいろなことを言っていたにもかかわらず、被害が続出して、訴訟や何かがこんなにも起こってきている。  なぜこんな問題が起きたのか、その原因はどこにあるというふうに今大蔵省考えておられるのか、そこをお聞かせいただきたいと思います。
  196. 山口公生

    山口(公)政府委員 お答え申し上げます。  訴訟の内容等から推測いたしますと、保険料ローンを利用した変額保険契約におきまして、変額保険の運用成績の低迷から元本割れが生じているために、解約した場合には多額の損失をこうむることになることを直接の契機としまして、契約に際しての説明について、変額保険のリスクなど重要な事項の説明がなかったのではないか、あるいは不十分となっていたのではないかというような意見がいろいろと双方から出されている。それから、一定の運用利回り、元本割れがないと確約ないしは保証をしていたのではないか、そういったことの事実関係等が争点になっておるわけでございます。  そういったことを訴訟の具体的な内容から判断しますと、結局そういった客観情勢の話と、それからその募集のときの説明等の話、その二つが組み合わさっていろいろトラブルの原因になっているのではないかというふうに思うわけでございます。
  197. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 その募集のときの説明というのは、もうあらかじめそれがうまくやられない危険性があるということで、大蔵省が通達まで出して重ねて警告をして、法を広く解釈してでもきちんと抑えるよということまで言っていたはずなんで、ちょっと、だからということも不思議なんですけれども大蔵省はこの変額保険の販売にかかわって、この保険募集の取締に関する法律に違反する行為があったとして処分をしたことがあります。
  198. 山口公生

    山口(公)政府委員 それはございません。  生命保険募集人の変額保険の募集に対する募取法違反で処分したということはございません。  ただ、先ほどいろいろトラブルの原因を申し上げましたが、要するに事実関係といいましょうか、その受け取り方、説明をどういう説明をしたのか、どういうふうに認識をされたのかというようなことでございまして、私どもが通達でもって留意事項を発出して、これに沿いながら募集をやっておったわけでございますけれども、その契約者との間での契約の際のお話し合いの中で、どういうふうにそれが聞こえたか、あるいは受け取られたかというようなところは、非常に訴訟上問題になっているわけでございます。  断定的に、だからこれに違反したことをやっていたということではなくて、その事実関係を、今かなり各訴訟におきましても問題になっているということでございます。
  199. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 そうすると、大蔵省としては裁判でそういうことが問題になっていることは知っているけれども大蔵省としてはこの募取法違反に類するような行為がこのトラブルの原因としてあったというふうにはまだ認識はしていないということです。
  200. 山口公生

    山口(公)政府委員 訴訟や苦情を通じて、そのトラブルの背景といいましょうか、どういった言い分がトラブルでお互いに主張されているかということは実態把握に努めているところでございますけれども、もし仮にその中で募取法に違反する事実が本当に明らかになるのであれば、厳正に対応してまいる所存でございます。
  201. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 率直に言って、さっき読み上げましたこの変額保険が売り出される直前の「募集上の留意事項」とかあるいはこの通達だとかいったものでまさに「将来の運用成績についての断定的判断を提供する行為」などがあってはならぬ、それの危険性があるんだということを言っていて、警告していて、それで今こんなにいろいろトラブルが起きてきているという中でも、しかしこういう将来の運用成績についての断定的判断を提供するような行為があったというふうにはまだ認められないというのが大蔵省の今の公式の立場なんです。
  202. 山口公生

    山口(公)政府委員 まだほとんどが係争中でございまして、裁判が確定したものだけで判断するのは軽々かと思いますが、確定したものを見ますと、そういった事実は認められていないということのようでございます。もちろん、まだこれから係争中のものが、裁判が個々のケースごとに出てくるわけでございます。そういったものを私どもも注視しているわけでございます。
  203. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 具体的な例についてちょっとお聞きしますけれども、朝日生命を相手に、東京の方ですけれども、奥さんがその夫が亡くなられた後のことを心配して勧めて、この契約の当事者は夫ですけれども平成二年七月二十日に契約が結ばれたという一つの事例が裁判でも取り上げられておりますが、そこで、この保険会社側の募集人は、本件変額保険契約締結に至るまでの間に、複数回にわたって、自分の社の変額保険の将来の運用成績は九%を下回ることはないという趣旨のことを強調した。  それから、契約を結ぶその当日の七月二十日、募集人がこの人のうちを訪れて、最終的に保険料八千万円の変額保険に加入することを決めた。この際に、募集人からは、この契約当事者とその妻に対して、この変額保険の設計書を渡した。この設計書を使って口頭で保険金額及び解約返戻金は運用実績次第で変動すること、基本保険金が約一 億四千万円であることとともに、運用実績九%の場合の保険金額及び解約返戻金の額が十年後にそれぞれ約二億一千九百六十万円及び約一億五千二百五十七万円になることを鉛筆で該当部分に下線や囲みをつけるなどして強調して説明した。  これは説明した文書も残っているわけですが、設計書の運用実績例のうち、四・五%の場合、〇%の場合についてはあえて触れずに、この生命保険会社運用実績が九%を下回ることはないんだということを前提とする説明に終始をした。それで、結局この契約を結んだというような問題が問題になっているのですけれども、これが事実とすれば、やはりこれは募取法に違反するということになるのではないです。
  204. 山口公生

    山口(公)政府委員 御指摘の判決でございますが、現在控訴審で係争中と聞いておりまして、また個別取引に係る内容でございますので、現時点でコメントは差し控えさせていただきたいと思うわけでございますが、一般論として申し上げれば、仮に募取法や通達に違反するということが明らかになれば、それは厳正に対応するということになろうかと思います。  保険会社は、保険業法に基づく免許企業でございまして、その社会的役割や公共的側面にかんがみまして、法令、通達等を遵守し、顧客との間で無用の誤解やトラブルを生じないよう努めることは当然のことでございまして、当局としては、今後とも適正な業務運営がなされるよう引き続き指導してまいりたいと考えております。  今裁判のことを申されましたけれども、七年三月末までに地裁で十件の判決、高裁で二件の判決が出されております用地裁判決十件のうち七件が生保側から見ての勝訴となっておりまして、二件が一部敗訴、一件が全面敗訴となっております。高裁判決二件はいずれも生保会社側の勝訴となっております。それで、一件は地裁判決で一部敗訴であったものが逆転勝訴となっております。なお、裁判が確定したものは四件でございます。先ほど申し上げたのはまだ係争中、控訴審に上がっているものもございますので、裁判が確定したものは四件でございます。すべて生命保険側の勝訴となっておるわけでございます。  したがって、裁判所としては、事実関係を見ながら、また契約者方々の方がこの保険についてリスクをどう認識されておったかということの事実関係を踏まえながら判断されていることだというふうに思っておるわけでございます。
  205. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 私は先ほど一般論として聞いて、まだ判決の問題は聞いてはいなかったのですが、おっしゃられるように、これは三月二十日に東京地裁で出された判決で、裁判そのものは今控訴をされているようですけれども、しかしこの判決の中でも、今言ったように九%を下回ることはないんだということをもう一貫して説明した。そしてそれが設計書の中にもちゃんと線まで囲ったりなんかして九%の場合しか強調されていないということまであって、判決自体が、募集人の説明が、「「被告生命の変額保険の将来の運用成績が九パーセントを下回ることはない。」という趣旨のものである以上、まさにそれは大蔵省通達が禁止する「将来の運用成績についての断定的判断の提供」にあたるあるいはその疑いが強いものである点で大蔵省通達に違反するものということができる。」という判断までこの地裁の判決では示しているわけです。  今いろいろ裁判のことを触れておっしゃいましたが、そうすると、要するに大蔵省としては、これだけいろいろ事前に警告をしてやっていたんだけれども、その問題について被害者から訴えが出てきた場合には、結局被害者が裁判に訴えて最後に裁判で確定したものでなければ事実としては認めないということになってしまうわけですが、そういう立場なんです。
  206. 山口公生

    山口(公)政府委員 裁判でなくても事実関係が全く明らかになれば、それは私どもとしては厳正な対処ということになろうかと思います。もちろん裁判の中で事実関係がはっきりされれば、それは一つのそういう判断が確定したものとして私どもはそれに基づいて厳正な対応、こういうことになろうかと思います。
  207. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 最初に申し上げましたように、この保険が大きな危険性を持つということを大蔵省認識して、それをいろいろ通達まで出して注意をして、そして場合によったら募取法の二十条まで適用するんだよということまで事前にはさんざん言って、契約者を保護するような、ポーズと言ったら失礼かもしれませんけれども、ことをやってきたんだけれども、しかし実際にそれがやられて、こういうトラブルが続発してきた段階では大変冷たくて、裁判の結果を見守る、それから事実が明確に立証されればそのときは何とかしますというような話なんですけれども、こういう問題について本当に大蔵省最初に懸念を持っていたわけですから、そしてその懸念したとおりのことが起こってきているわけですから、これはもっと本当に積極的に大蔵省として動くべき問題だったんじゃないでしょうか。
  208. 山口公生

    山口(公)政府委員 先ほど私の方から紹介させていただきました判決等の結論等を見ましても、まだ事実関係をよく判断しなければならないという気がいたしておるわけでございます。  いずれにせよ、当局としては通達を出すなどいろいろなトラブル防止のための手当てというのはやってきたつもりでございますし、保険業界に対しましても、そういった国民の信頼を損なわれることがないようにきちんと通達の趣旨を守るなどやっていただきたいというふうに思っております。そのためにも大切なことは、保険募集人の資質の向上のための教育あるいは管理を一層充実していただく必要があろうかなというふうに思っている次第でございます。
  209. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 先ほど挙げたような、九%を下回ることがないというようなことを言われてひどい目に遭っているというような例がほとんどに共通している。特殊な例ではないわけです。裁判にも、また三百七件といったさっきの相談にも共通する訴えなわけです。そもそも変額保険というのは大蔵省が発売を許可した全く新しいタイプの商品だったわけです。そして裁判となっている変額保険の被害者の中心はお年寄りです。そもそも保険というようなものについての知識がないし、ないところでそういう保険を勧められて契約をしたわけです。最初から立場は弱いんです。  もちろん当時バブルの絶頂の時期ではありましたけれども、バブルに乗っかってもうけてやろうというようなことを思って契約したわけではなくて、圧倒的多数の人が相続税対策にもなるんだよというようなことも言われて、保険会社の言い分を信じて、子供たちに家や財産を多少なりとも残してやりたいということを考えて加入してこういう被害に多くの人が遭っているわけです。  こういう被害者の救済に保険会社は極めて冷淡でありますが、率直に申しまして、今の保険部長の答弁も温かいものとは到底言えないという感じがいたします。裁判所によっても、これは確定判決であろうとなかろうと、違法な事実があったということは認定をし始められているわけでして、大蔵省としても行政の立場から、すべての裁判の判決が出るまで待つなんということじゃなくて、この変額保険の被害者の救済に積極的に乗り出す必要があるんじゃないかと思うのですが、その点いかがでしょう。
  210. 山口公生

    山口(公)政府委員 大蔵省といたしましてもこの問題の早期解決が図られることが望ましいとは考えておりますけれども、かなりの訴訟がまだ係争中でございまして、そういう裁判所の判断をよく見ながら十分に私ども考えさせていただくということになろうかと思います。
  211. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 大蔵大臣に一言お聞きしておきたいと思いますが、今後はこういう問題を起こさないという姿勢を明確にする上でも、未曾有の被害を引き起こしたこの変額保険の問題については、大蔵省はもっと積極的に対応すべきじゃないかというふうに思うのですけれども、大臣、いかがです。
  212. 武村正義

    武村国務大臣 お話を伺っておりまして、これ は具体的なケース前提にお話をなさっていますが、ぜひ今後とも、こういう事例も参考にしながら、さまざまな具体的な事例に学びながら、新しい制度の出発に備えていきたいというふうに思っております。
  213. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 具体的な事例と言われますけれども、確かに一つ一つの事例は具体的ですが、最初から申し上げましたように、最初からこういう事態が起こり得る、つまり、バブルの崩壊がまだ予想されない時期であったにもかかわらず、予想されるということを前提にしながらこの保険を許可して、そしていろいろな注意もしてやってきたにもかかわらずこういうトラブルが起こっているわけです。そこには大蔵省の重大な責任があるわけです。  そこのところを認識して、今後は起こらないようにするということではなくて、この起こっている問題について積極的な解決を図る、その方向で努力をするということをはっきり言うべきじゃないのです。
  214. 山口公生

    山口(公)政府委員 先ほども申し上げましたように、二百四十件強の裁判が係争中でございます。それをよく見て判断させていただきたいと思っておりますが、この変額保険自体、商品自体が問題があるわけではございません。そのハイリスク・ハイリターンという仕組みを十分に契約者の方に理解をしてもらっておればこれは問題がない、そういう商品でございます。  したがいまして、募集問題ということでなお一層適正化を図る、またその質の向上を図ることが今後の課題になろうかというふうに思っております。
  215. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 大蔵省の姿勢は、大臣の答弁もされないということで大変残念ですけれども、今度の法案は、規制緩和を進めて、言ってみればこういう保険がもっと大っぴらにまかり通るようになる危険性も率直に言ってあるわけです。もちろん、きちんとリスクも説明すればトラブルが起こらないというふうに今おっしゃいましたけれども、しかし先ほどから申し上げておりますように、保険業界は過当競争の渦中にあって、さらに外国の保険も入ってきて、これからどんどん競争が行われていくわけです。  そして、募集人にしても、少しでも契約をとらなきゃいけない、自分が食っていけないという状況の中に、競争の中にさらにたたき込まれていくわけですね、この法案が通れば。現実にもっとそういう方向に進んでいくわけです。そういう事態の中で、そこのところは気をつけてやっていけばいいのだというようなことでは、とても国民を納得させるわけにはいかないと思うのです。  生命保険文化センターが出した「平成六年度生命保険に関する全国実態調査」というのがありますが、この中で「加入目的」というのを見ますと、生命保険に加入する目的ですが、「財産づくりのため」というのが一・九%、「万一のときの家族の生活保障のため」というのが五七・三%、これは圧倒的なんです。もちろん、いろいろなニーズにこたえるために、一・九%のニーズでもそれは保険会社はこたえていかなきゃならぬだろうけれども、そういう今のこの法案のもとで、もしこれが通って自由化ということが進められていけば、こういう方向がどんどん進んでいく危険性がある。  変額保険というような商品は、加入者だけが変動のリスクを負うものであって保険会社は何も痛まない、保険会社にとって非常に都合のいい商品であります。こういう商品というのは、消費者側の要望というよりも、外国の保険会社の国内参入保険会社側の利潤追求の中で出てきたということを言わざるを得ない、そういう問題であろうと思うのです。  実際に、この変額保険が導入開始されて以来、わずか半年間で十五万六千件も成約があったというのですが、しかし、それだけニーズがあったからという単純な問題ではなくて、これは本当に猛烈な契約獲得競争があったわけであります。  先ほど紹介した文書の中で関保険部長は、「資産運用の成果がより直接に反映する変額保険においては、各社の商品間に格差が生じることは当然である。」ということを言って、競争が生まれることを認めていました。だからこそ外務員は、リスクの説明をまともにしないで、九%の運用益が保証されているかのようなシミュレーションを示して契約獲得を競い合った。これに銀行までかんで、銀行が保険募集を行って、億単位のローンを組むなどして被害を広げるという役割を果たしたわけです。  まさにこれは、保険業の規制緩和と自由化、それからさらには保険と銀行証券間との垣根を取っ払うような規制の緩和、自由化という方向の先取りを、言ってみればこの変額保険はやってきたのじゃないか。その危険性を今我々の前に明らかにして、我々に大きな警告を発していると言わざるを得ないと思うのです。  時間になりましたけれども、いずれにしても、今度の法案で目指されている自由化、規制緩和というような方向、決してバラ色の問題ではなくて、過当競争の中で生命保険の途中で解約をもっともっと迫っていくというような、客観的には国民に不利益になるようなことが行われ、そして募集人も次から次と入れかわっていくというようなことが行われて、そして変額保険というような危険な商品が一層国民に危険な負担をかぶせるような危険性もあるということを、現在の保険業界の実態、これまでの実情に照らして、私はこの法案の問題に関しても率直に指摘せざるを得ない。  このことを指摘して、質問を終わりたいと思います。
  216. 尾身幸次

    尾身委員長 次回は、来る十六日火曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時十七分散会