運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1995-04-25 第132回国会 衆議院 大蔵委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成七年四月二十五日(火曜日)     午前九時三十一分開議 出席委員   委員長 尾身 幸次君   理事  石原 伸晃君 理事 金子 一義君   理事  新井 将敬君 理事 北側 一雄君   理事  村井  仁君 理事 早川  勝君   理事五十嵐ふみひこ君       荒井 広幸君    大島 理森君       大原 一三君    岸田 文雄君       熊代 昭彦君    小泉純一郎君       中谷  元君    中山 利生君       福田 康夫君    堀之内久男君       宮里 松正君    茂木 敏充君       青木 宏之君    井奥 貞雄君       太田 誠一君    竹内  譲君       谷口 隆義君    中田  宏君       中村 時広君    藤井 裕久君       宮地 正介君    若松 謙維君       永井 哲男君    濱田 健一君       日野 市朗君    田中 秀征君       佐々木陸海君  出席政府委員         大蔵省銀行局保         険部長     山口 公生君  委員外出席者         参  考  人         (生命保険協会         会長)     櫻井 孝頴君         参  考  人         (社団法人日本         損害保険協会会         長)      河野 俊二君         参  考  人         (東京大学法学         部教授)    江頭憲治郎君         参  考  人         (上智大学法学         部教授)    猪口 邦子君         大蔵委員会調査         室長      中川 浩扶君     ————————————— 委員の異動 四月二十五日  辞任         補欠選任   塩崎 恭久君     荒井 広幸君   上田 清司君     若松 謙維君 同日  辞任         補欠選任   荒井 広幸君     塩崎 恭久君   若松 謙維君     上田 清司君     ————————————— 四月二十五日  所得税基礎控除の大幅な引き上げによる課税  最低限の抜本的な改正に関する請願岩佐恵美  君紹介)(第八五八号)  土地税制に関すも請願奥田敬和紹介)(第  九〇九号)  共済年金制度改革に関する請願金子徳之介  君紹介)(第九二九号)  同(金子徳之介紹介)(第九三七号)  同(佐藤剛男紹介)(第九三八号)  同外五件(斎藤文昭紹介)(第九三九号)  同(田中直紀紹介)(第九四〇号)  同外二件(根本匠紹介)(第九四一号)  同(三ッ林弥太郎紹介)(第九四二号)  消費税増税の中止、消費税廃止に関する請願(  岩佐恵美紹介)(第九六八号)  同(穀田恵二紹介)(第九六九号)  同(佐々木陸海紹介)(第九七〇号)  同(志位和夫紹介)(第九七一号)  同(寺前巖紹介)(第九七二号)  同(中島武敏紹介)(第九七三号)  同(東中光雄紹介)(第九七四号)  同(不破哲三紹介)(第九七五号)  同(藤田スミ紹介)(第九七六号)  同(古堅実吉紹介)(第九七七号)  同(正森成二君紹介)(第九七八号)  同(松本善明紹介)(第九七九号)  同(矢島恒夫紹介)(第九八〇号)  同(山原健二郎紹介)(第九八一号)  同(吉井英勝紹介)(第九八二号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  保険業法案内閣提出第九三号)  保険業法施行に伴う関係法律整備等に関す  る法律案内閣提出第九四号)      ————◇—————
  2. 尾身幸次

    尾身委員長 これより会議を開きます。  内閣提出保保険業法案及び保険業法施行に伴う関係法律整備等に関する法律案の両案を一括して議題といたします。  本日は、参考人として生命保険協会会長櫻井孝頴君社団法人日本損害保険協会会長河野俊二君、東京大学法学部教授江頭憲治郎君及び上智大学法学部教授猪口邦子君、以上四名の方々に御出席をいただいております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  なお、議事の順序についてでありますが、まず、各参考人にそれぞれ十五分程度御意見をお述べいただき、次に、委員からの質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。  それでは、櫻井参考人からお願いいたします。
  3. 櫻井孝頴

    櫻井参考人 ただいま御紹介いただきました生命保険協会会長櫻井でございます。  本日は、大蔵委員会にお招きをいただきまして、私ども考え方を申し述べる機会を与えていただきましたことに対し、まずもって御礼を申し上げます。  順序といたしまして、生命保険業界の現況、そして今回の保険業法改正案に関する私ども考え方につきまして、順を追ってお話を申し上げたいと存じます。  既に日本における近代的な生命保険事業は百十余年の歴史を有しておりますが、この間、生命保険事業は、お客様信頼に支えられながら、公的保障の補完として、すなわち私的保障の中心的な担い手として重要な役割を果たしてこられたのではないか、かように考えております。生命保険商品の種類からいたしましても、定期保険終身保険といった万が一の場合の保障を重視した商品だけでなく、年金保険のように老後の生活設計の備えとなるような商品、さらには疾病や傷害を担保する商品丁最近では、医師によって余命が一定期間内であると診断された場合に給付が行われる生前給付型の保険、いわゆるリビングニーズと言っておりますが、こういった特約などが発売されておるわけであります。  ここで私的保障担い手としての数字を若干御披露させていただきますと、例えば平成五年度において私どもがお支払いいたした保険金年金給付金は約十一兆三千億円でございます。これは、お国の社会保障給付額の約二割に相当いたすわけであります。また、このうち、入院、手術、障害にかかわる給付金に限ってみましても、私どもがお取り扱いした金額は約六千六百億円でございま して、これは国民医療費のうち、患者負担分のこれまたおよそ二〇%に相当しているといったような状況でございます。  今後の高齢化社会進展に備えて、お客様ニーズ多様化していく中、国民皆様自助努力を支援するという意味で、私ども生命保険事業に寄せられたる期待責任も大変重大なものがあると認識をいたしております。こうした責任を果たすべく、今後も一層の経営努力を行っていく所存でございますが、あわせて私的保障充実促進に向けまして、適切な環境及び体制づくりなどの整備に今後とも御配意をお願いいたす次第でございます。  次に、今回迎える保険制度改革は、今後の生命保険事業を左右する極めて重要な改革であると同時に、将来にわたって予想される社会環境などのさまざまな変化生命保険会社が的確に対応していくためにぜひとも必要な改革である、かように考えております。  今回の保険業法検討に先立ちまして、御案内のとおり平成元年保険審議会がスタートし、二十一世紀に向けた保険事業のあり方について御審議が開始されました。その過程において、私も委員として保険審議会に参加させていただき、意見を述べさせていただきましたが、自来およそ六年の歳月を経て、ここに新しい保険業法の案が提出されているのを拝見いたしまして、まことに感慨深いものがございます。  今回の保険制度改革に関する検討におきましては、保険審議会スタート時より幅広く各界からの御意見が出されてまいりましたが、そのようなさまざまな御意見が取りまとめられた結果、基本的な考え方として示されたものが、規制緩和自由化による競争促進事業効率化と、事業健全性維持、そして公正な事業運営確保といういわゆる三つの柱であります。  その一つ目の大きな柱が、規制緩和自由化による競争促進事業効率化であります。  生命保険会社使命は、私的保障担い手として、何よりまずお客様ニーズに的確かつ十分に対応していくことでありまして、そのためにも、今回の規制緩和自由化は必要かつ適当なものであると考えており、高く評価をしております。また、二十一世紀を迎えんとする時代要請にこたえるためにも妥当な方向であり、時宜にかなった考え方認識をしております。  今回の規制緩和自由化の方策として手当てされる予定のものとしては、子会社方式による生損保兼営などが挙げられますが、これらはお客様利便性を高めるとともに、競争促進事業効率化を通じて、その果実がお客様に一層還元されていくことになります。同時に、私ども生命保険会社にとりましても、自由化時代に向けて経営の選択肢を広げる意味を持つものでございまして、国民皆様ニーズに一層十分にこたえられるよう事業運営に取り組んでいく所存でございます。  このような意味で、今回の保険業法改正案予定されている規制緩和及び自由化については、これをぜひ進めていただきたいと考えております。  次に、今回の保険業法改正案において、規制緩和自由化と並ぶ二つ目の大きな柱が、事業健全性維持のための諸手当てでございます。  事業健全性維持していくということは、規制緩和自由化を進める上での大前提でありまして、万一の場合の経済的な保証を国民皆様方期待されている私ども民間生命保険会社においては、お客様の御期待にこたえていくためには、みずからの事業健全性維持していくということは欠くことのできない柱であると考えております。  本来生命保険事業使命というのは、御契約者から負託された資産を安全かつ有利に運用して、長期にわたって生命保険生命年金等保障サービスを可能な限り低廉に、しかも確実に提供することにございます。そこでは。何よりまず保障提供が確実であるということが求められております。  生命保険というものは、万が一保険会社不測事態が生じた場合に、それまで払い込まれた金額を払い戻せばよいという性格のものではございません。御契約者は、万一の場合に保険金を受け取られることになる御家族の方も含めて、生命保険加入する際は保障サービス提供が必ず受けられるということを期待して御加入されているわけでございまして、仮に保険料が払い戻されたといたしましても、そのときは加入時からかなりの年月を経ている場合が多く、保険料は割高になりますし、また病気等の理由で再加入がそもそも困難であるといった事態が生じているということも十分考えられるわけであります。  今回の保険業法改正案では、このようなことから、保険会社健全性維持を重視する考え方に基づいて、いわゆる自己資本比率規制としてのソルベンシーマージン基準導入されることになるとともに、特に相互会社においても事業経営のための財産的基礎を認めようとする考え方がとられておりまして、私どもといたしましてこれは高く評価しているところでございます。  これまで相互会社は、事業運営の結果生じた剰余を、可能な限り社員である御契約者に配当するという形で還元してまいったわけでありますが、この結果、相互会社においては、現在自己資本に相当する部分が極めて薄くなっている状況であります。とりわけ最近では、円高株式相場低下などの運用環境悪化等から、業績は厳しい状況にございます。しかしながら、各社ともリストラなどの合理化を行い、一層の努力を行うことによって、積極的に資産負債構造の再構築などの体質改善にただいま努めているところでございます。  このような状況におきまして、今回の保険業法改正案で、相互会社においても、相互扶助というその理念は生かしつつ、リスク増大等に対応する意味事業経営のための財産的基礎を強化していくという、いわば従来の古典的相互会社観から新しい相互会社観に基づいて、事業健全性維持、ひいては契約者保護を図っていくという考え方を打ち出されたことは大変望ましいことである、かように考えております。  以上のような考え方は、いわば健全性低下を防止するための事前措置でございますが、今回の保険業法改正案では、こうした事前措置とともに、万が一保険会社不測事態が生じた際の事後的な措置についても手当てが行われる考え方を示されております。この事後的な措置として導入される予定となっているのが、いわゆる保険契約者保護基金でございます。この制度は、保険会社不測事態が起きたときにも、業界各社が協調して御契約者を救済しようという制度であります。  現在の保険業法では、保険会社万が一事態が起きた場合に備えて、強制移転命令という制度がございます。この点については、現在の日本保険会社規模等を考慮いたしますと、破綻会社に生じている欠損の負担救済会社のみに求めること、ひいては救済会社の御契約者にのみめるのは困難であるという考えから、今回、業界各社が応分の負担を行い、契約者保護及び保険制度信頼確保のために、契約を引き継ぐ救済会社に対して資金援助を行う枠組みを設けようとするものであります。  これによって、破綻会社そのもの保護いたしませんが、御契約者保護しようということでございまして、これまで以上に保険制度への信頼度が向上するとともに、契約者保護という観点からは大きな前進ととらえております。  保険業法改正案三つ目の柱は、公正な事業運営確保でございます。  御承知のとおり、今回の保険業法改正案における三つ目の柱に関しましては、公正な事業運営をより一層図るため、ディスクロージャー規定整備相互会社における少数社員権の見直しなど、その実効性確保するための手当て整備されるということでございます。  免許事業として高い公共性を有する保険事業国民皆様から指弾されるようなことがあってはならないのはもちろんでありまた私どもも、常日ごろからそのようなことのないよう、これまでも十分に配慮して事業運営に取り組んでまいりました。この点につきましても、今回の改正案趣旨を十分踏まえつつ、今後とも適切に対応していかなければならない、かように考えております。  今回の保険制度改革保険事業にとって新時代への大きな引き金になることは間違いなく、私どもといたしましても、これを契機として、国民皆様自助努力を支援する生命保険生命年金等役割を一層充実させ、社会からの信頼を高めるべく、さらなる努力を行っていく所存でございます。  また、今回の保険制度改革は、大変広範囲にわたる、私どもにとって歴史的な制度改革であり、生命保険業界といたしましても、御契約者皆様方に無用の混乱が生じないよう十二分に配慮し、着実にこれを進めていくことが肝要と考えております。ぜひこの制度改革を成功させ、今後の生命保険事業のさらなる発展につなげてまいりたい、かように考えております。  以上、簡単でございますが、私ども保険業法改正案に関する基本的な考え方などを申し述べさせていただきました。  私どもといたしましても、今後委員先生方の十分な御審議を経た後、法案が今国会において可決、成立いたしますことを強く期待している次第でございます。委員先生方におかれましては、私ども趣旨をお酌み取りいただきますとともに、今後とも御指導、御鞭撻並びに御理解を賜りますよう、よろしくお願いを申し上げます。  ありがとうございました。(拍手)
  4. 尾身幸次

    尾身委員長 どうもありがとうございました。  次に、河野参考人にお願いいたします。
  5. 河野俊二

    河野参考人 ただいま御紹介にあずかりました日本損害保険協会会長河野でございます。  本日は、大蔵委員会にお招きをいただき、保険業法改正案に関する私ども考え方を申し述べます機会を与えていただきまして、心よりお礼を申し上げます。  今回の保険業法改正につきましては、平成元年六月に保険審議会総合部会検討が開始されて以来、今日まで六年近い年月をかけて議論されてまいりました。この間、私ども保険審議会やその下の総合部会委員を出し、業界としての意見や要望を申し上げるなど、検討に参画をしてまいったわけでございますが、本日は、そのような経緯を踏まえまして、私ども考え方を述べさせていただきたいと存じます。  私ども損害保険業界は、これまで、時代変化に対応して、国民皆様産業界ニーズに合わせた商品サービス提供することに努力してまいりました。  振り返ってみますと、昭和三十年ごろまでは、戦後の復興経済を支え、海上保険火災保険収入保険料の九〇%以上を占めておりましたが、昭和四十年代以降、モータリゼーションの進展の中で自動車保険自賠責保険主力商品となりまた傷害保険も大いに普及いたしました。昭和五十年代中ごろからは、個人金融資産の蓄積を背景に、補償貯蓄を兼ね備えました積立保険の取り扱いが増加し、今日では、積立保険に係る預かり資産損害保険業界の総資産二十八兆円の半分以上を保占めるまでになっております。  さらに、近年、人口高齢化背景に、介護保険年金商品が急速に普及しており、一方では、台風や地震など自然災害の増加に対応しまして商品内容充実を図ってまいりました。また、経済社会のシステムの変化に伴い、PL保険役員賠償責任保険公共工事履行ボンドなどの商品を開発いたしますとともに、宇宙開発など最先端技術の分野に関する商品開発にも力を入れてまいりました。  このように、損害保険業界は、我が国産業発展国民生活変化に伴って発生するさまざまな危険に対しまして、本来の役割でございます補償提供に力を注いでまいりましたが、そればかりではなく、積立保険年金のような貯蓄性を有する商品や、企業に対する防災診断サービス個人自動車事故の際の示談交渉サービス介護関連など、各種サービス提供することによりまして、安全と安心を総合的にお届けするという社会的な役割を担ってまいりました。それはまさに、発展する経済社会において保険に対するさまざまなニーズが生じ、それに業界が一生懸命こたえてまいった結果と言うことができると思います。  しかし、今日、我が国経済社会はますます高度化、複雑化し、多様でかつ巨大なリスクが増大しております。また、急速な人口高齢化や本格的な国際化進展、さらには金融自由化個人価値観多様化など、我が国経済社会はいまだかつて経験したことのない大きな環境変化の渦中にあります。  このような大きな時代変化に対応しまして、私ども損害保険業界お客様の求めるより利便性の高い商品サービス提供してまいりますには、現行の保険制度枠組みを変革し、損害保険事業の有する補償貯蓄各種サービス提供などの機能をより幅の広い、かつ弾力的なものにしていくことが必要不可欠であると考えております。  以上申し上げました認識に基づきまして、今日私どもに求められておりますことを整理して申し上げますと、次の三つであると考えます。  一つは、申し上げましたとおり、二十一世紀へ向けた経済社会環境変化国民ニーズ変化に的確に対応するということでございます。  二つ目は、金融自由化流れに対応すること。  三つ目といたしまして、国際的調和への要請にこたえることでございます。  今回の制度改革は、この三つの課題を十分に踏まえたものになっておりますことから、私どもといたしましては、その内容に賛成であり、業界を挙げて実現を願っております。  それでは、次に、今回の制度改革の具体的な柱でございます規制緩和契約者保護二つについて申し上げます。  まず規制緩和についてでございますが、今回の制度改革において、生損保相互乗り入れ商品料率規制緩和自由化ブローカー制度導入などが予定されております。  生損保相互乗り入れについて申し上げますと、生損保業界がおのおのの経営資源を十分に活用し、互いに切磋琢磨しながら、消費者によりよい商品サービス提供していけるようになることは、本格的な高齢化社会を間近に控えた今、国民経済的にも大きな意義を有するものと考えております。  また、商品料率規制緩和自由化について申し上げますと、これにより、社会変化に伴って生じてくる新たなリスクに対しまして、迅速かつ的確に新しい商品を開発することが容易になり、利用者利便の向上に資するものと考えております。あわせて、保険会社間の適正な競争がこれまで以上に活発になり、効率化が推進されることによりまして、利用者へのメリットの還元ということも挙げられると思います。  なお、商品料率規制緩和自由化について若干付言させていただきたいと思います。  諸外国、とりわけ米国におきましては、自由化の結果、引受拒否保険料率の大幅な引き上げといった事態が生じ、大きな社会問題になっております。我が国におきましては、このような事態を招かぬよう、消費者自己責任の意識の定着を見きわめながら、段階的に商品料率規制緩和自由化を進めていくことが、消費者保護観点から望ましいものと考えております。  そのほかに、今回の制度改革で、ブローカー制度導入、ロイズの参入が予定されております。これらを含めまして、新しい制度全体が国際的に整合性のとれたものになれば、日本損害保険市場に対する諸外国理解も一層深まり、外国との摩擦も解消するものと考えております。  次に、契約者保護について申し上げますと、損害保険事業は、利用者が万一事故に遭われた際の補償を行うものでございますから、常に十分な補 償ができるように、会社健全経営を心がけていくということが経営者としましての最大の使命であることは申し上げるまでもないことでございます。  しかし、今回の制度改革により、規制が緩和され競争促進されますと、将来的には保険会社経営破綻可能性も出てくると考えられます。私どもにとりましてはい損害保険事業に対するお客様信頼こそが経営の根幹であり、存立基盤でございます。経営破綻が生じますと、破綻会社契約者保護に問題が生ずるだけでなく、損害保険業界全体にとりましても、保険制度そのものに対する信用が失墜することになりかねず、極めて大きい問題であると考えております。  そのような観点から、まず、保険会社経営破綻に陥らないよう、行政当局が日ごろから監督を行う際の指標としてのソルペンシーマージン基準、これは予想を超えるリスクに対しての自己資本の割合を示す指標であり、いわば保険会社健康状態を示すものでありますが、そのソルベンシーマージン基準導入されますとともに、仮に経営破綻が生じた場合でも、保険契約の継続を図ることにより契約者保護するための保険契約者保護基金の創設が予定されておりまして、これらにより、保険制度への信頼性が一層高まるものと考えております。  保険制度改革の具体的な柱であります規制緩和契約者保護についての私ども考え方は以上のとおりでございますが、私どもといたしましては、保険制度における規制緩和を進め、新たな枠組みを構築しますことは、消費者利益の増進につながることはもとより、私どもにとっても活動の場と自由度が広がるわけでございまして、まさに時代流れに沿ったものであると受けとめております。もちろん、業界にとって厳しい面もございますが、損害保険各社が、みずからの創意工夫に基づきさらに発展していけることを期待いたしまして、制度改革に前向きに取り組んでいきたいと考えております。  改正法案が成立いたしました後には、私どもは、新しい保険制度枠組みのもとで、損害保険業界に与えられた社会役割をこれまで以上に発揮して、国民経済発展国民生活の向上に貢献できるよう一層努力してまいる所存でございます。  なお、先般の阪神・淡路大震災に際しましては、業界を挙げて保険金の早期支払いに努めてまいりました結果、地震保険につきましてはほぼ支払いを完了いたしました。  また、これを機に、現在政府において地震保険制度の見直しが検討されておりますが、私どもの方にも契約者の方などからさまざまな要望が寄せられております。私どもといたしましては、今後、地震保険の普及率の向上等を目指して、制度の改善に向け、必要に応じ意見を申し述べてまいりたいと考えております。  以上、保険業法改正案に関する私ども考え方を申し述べさせていただきました。  私ども損害保険業界は、半世紀ぶりのこの改正法案が早期に成立することを切望いたしております。先生方におかれましては、私ども趣旨をお酌み取りいただきますとともに、今後とも御指導、御鞭撻を賜りますよう、よろしくお願い申し上げる次第でございます。  どうもありがとうございました。(拍手)
  6. 尾身幸次

    尾身委員長 どうもありがとうございました。  次に、江頭参考人にお願いいたします。
  7. 江頭憲治郎

    ○江頭参考人 ただいま御紹介いただきました江頭でございます。  保険業法案につき、私見を述べて審議の参考に供する機会を与えられたことを光栄に存ずる次第であります。  さて、現在審議中の保険業法案は、現行の保険業法保険募集の取締に関する法律、外国保険事業者に関する法律が規定する事柄を合わせて一つの法律とする形で、かつ内容も全面改正し、また損害保険料率算出団体に関する法律についても重要な改正を施すという、保険関係法規の抜本的改正であります。  現在こうした法改正が必要な理由として、現行保険業法は制定以来五十数年、先ほど申しました他の三法は制定以来四十数年を経ており、その間の経済社会環境変化に伴う保険の顧客のニーズ等の変化が著しいこと、また、金融制度をめぐる規制緩和国際化の動きが大きいことといった点につきましては、ただいま櫻井参考人河野参考人から詳しいお話があったところでありますので、私から繰り返すことはいたしませんで、私は別の点を、すなわち、現行の保険業法等には、法律制度としても時代にそぐわなくなった。改正の必要がある点があり、改正法案はそうした点についての改正も含んでいるということだけを一言付言いたしたいと存じます。  それは、例えば、現行の保険業法には主務大臣の命令によって既存の保険契約内容を変更できる旨の規定があります。これは例えば現行保険業法の十条三項、それから百四条一項といったような規定でありますが、こうした形で行政権が私法上の法律関係に介入するということは、戦前ならばともかく、今日では甚だ異例であります。そして、提案されている法案ではそれらの条文は削除されることになっております。  それから、例えば、相互会社では現在は例外なく社員総代会が置かれておりますけれども、現行保険業法には総代会に関する規定がほとんどありませんために、総代会が置かれた場合に、各社員、つまり相互会社契約者はどういう権限を持つのかが明らかではないとか、あるいは相互会社社員が代表訴訟を起こすについて株式会社の場合とアンバランスがあるとか、いろいろ改正の必要な点があるわけであります。審議中の改正法案は、こうしたもろもろの点についても全面的な見直しを行っているわけであります。  さて、改正法案の基本的理念といいますか、改正の主要な方向は、提案理由の説明等にもあったかと思いますが、第一に規制の緩和、自由化による競争促進事業効率化であり、第二に保険業の健全性維持であり、第三に公正な事業運営確保であります。これらの理念は、保険業法改正に限らず最近の金融制度改革においては常に述べられている理念でありますが、保険業にはやはり銀行業、証券業と比べて保険業に特有の性格、特有の問題もあるわけでありまして、それが法律に適切に反映される必要があるという点が問題のポイントかと思います。  まず、第一の規制緩和の面でありますが、一つは、保険商品保険料率につきまして、現在は一律に認可制がとられているのを、法案の百二十三条及び百二十五条によれば、「保険契約者等の保護に欠けるおそれが少ないものとして大蔵省令で定める事項」については届け出制に改められることになっておりまた、損害保険料率算出団体に関する法律により、現在の制度では、各損害保険会社にいわゆる算定会料率について、純保険料、付加保険料の双方について遵守義務が課されているのが、改正損害保険料率算出団体に関する法律の十条の六によれば、「保険契約内容保険契約者の保険契約に関する知識、保険契約に係る取引の態様等に照らして」云々の「範囲料率を使用することを要しないものとして大蔵省令で定める保険」については、付加保険料部分につき算定会料率でない独自の料率が使える形に改正されることになっております。  この法案考え方は、保険料率保険商品に関する規制緩和保険契約者等の保護に欠けるおそれが少ない保険の分野から段階的に進めていこうというものでありますが、この法案考え方に対しては、なぜもっとドラスチックに保険料率等の自由化を進めないのかという疑問を持たれる方もあるかと思います。しかし、私は、この法案にあるように、今すぐ料率等の自由化ができる保険の分野と様子を見ながら徐々に自由化を進めるべき保険の分野があると考えております。  というのは、例えば激しい保険料率引き下げ競争が始まりますと、保険会社の間には、コスト削減のために事故率の高い顧客の契約はできるだけ拒絶しようという引受拒否の動きが出てきかねな い。そして、もし例えば自動車保険の分野で引受拒否の動きが出てくると、社会的にも大変な問題になります。  したがって、各保険の分野に応じて規制緩和のスピードを違えるという法案考え方は適切なものだと考えております。言いかえますと、保険業の場合、銀行業あるいは証券業に比べても経済効率一本やりではいかない、社会的公正といいますか、経済効率一本やりでいくと保険保護から締め出されかねない社会的弱者の保護要請も強いと考えております。  規制緩和には、今述べた価格規制の緩和のほかに新規参入規制の緩和があるわけですが、これについては、法案では子会社方式による生損保の相互参入が盛っ込まれております。従来、生損保の兼営が禁止されてきた理由は、主に両事業リスクの違いにあると考えられてきたわけですが、法案は、子会社という形をとることにより両者のリスク遮断を図りつつ相互参入を認める方式であり、これは外国にも例がある形であります。  第二の理念である保険業の健全性維持も、今日ますます重要なテーマになっています。そもそも論をすれば、なぜ一般事業会社と異なり保険会社健全性維持が特に大切かという問いがあり得るわけですが、同じ金融関係でも銀行、証券と違う点を一つ挙げるとすれば、保険の場合、契約者以外の者に対して補償提供する役割を担っている場合が多い。したがって、おかしな会社契約したのは契約者自己責任だという形で突き放せない部分があるからではないかと私は考えております。  ともあれ、保険を含めた我が国金融規制は、いわゆる護送船団方式で、競争を制限することにより健全性維持するという発想に立っていると従来批判されてきましたが、第一の理念である規制の緩和、自由化の理念からしても、今後は競争制限型の健全性維持はできないわけで、そこで新たな制度導入が必要になります。  法案に盛りまれた新しい制度は、一つは、法案の百三十条にあるソルベンシーマージン基準と一般に呼ばれている一種のバランスシート規制自己資本比率規制導入であります。これは諸外国に多くの先例があるもので、我が国でも昨年から試行的に導入されていると聞いております。  次に、法案の二百四十一条以下の「保険契約者等の保護のための特別の措置等」という部分が健全性維持について重要でありまして、この部分は、経営が悪化した会社が出た場合の措置につき現行保険業法の規定を改正しようとするものであります。  この問題に関する現行法の基本的考え方は、経営が破綻した保険会社保険契約は、包括移転または合併の手続により健全な保険会社に移転する形で保険契約者の保護を図る。そして、そのために必要があれば主務大臣は強権を振るう。具体的には、行政処分の形で、健全な保険会社の意思に反してでも破綻会社からの契約の移転を決定できるという規定。これは現行法の百二十四条一項であります。それとか、行政処分でもって保険金額の削減ができる。これは現行法の百四条一項でありますが、そうした権限が主務大臣に与えられております。  法案では、それに対しまして、経営が破綻した保険会社保険契約を包括移転等により健全な保険会社に移転する形で保険契約者の保護を図るという基本的考え方は現行法を維持したままで、ただ、主務大臣の強権発動ということは今の時代にそぐいませんので、契約移転をスムーズに行うため、破綻会社を救済する保険会社に対し資金の贈与、貸し付け等の資金援助を行う保険契約者保護基金が設立されることになっております。これは法案では二百五十九条以下であります。  これが改正案でありますが、こうした法案のスキームで、実際上、当面保険契約者の保護が図れると私も考えておりますけれども、ただ、法案のスキームは破綻保険会社が出た場合の問題の抜本的解決を図っているかというと、そうも言えません。  法制度としては、保険契約を引き継ぐ救済会社が出てこない場合の処理も本当は考える必要があります。つまり、保険契約者には保護基金から一定の保険金額の限度で補償を与えつつ、他方では、一般の会社会社更生手続で行われるように、債権等の一部を切り捨てて自力更生を図るというスキームも用意する必要があります。しかし、破綻保険会社の処理に関しそうした抜本的な制度を整えるためには、破産法、会社更生法等、一般の倒産関係法との十分な調整が必要であります。  つまり、本格的にそうした法制度検討するとすれば、だれがどのような要件のもとにその手続を開始できるのか、つまり、保険会社を含め、金融機関の場合、早い段階でとにかく手を打たなければ間に合わないという点が一般の事業会社と異なる点であります。そういう点とか、債権等を切り捨てると申しましたけれども、債権等を切り捨てる場合の優先劣後関係、つまり、保険契約と一般の債権があった場合にだれの権利から先に切り捨てられるのかといった根本問題の議論を避けて通れません。  そこで、保険審議会の報告でも、この点については、倒産法制との関係を含めて、今回の保険業法改正後、できるだけ早期にこの点の検討が継続されることを強く期待するとしております。私も、今後抜本的制度検討は非常に重要だと考えております。  以上、改正法案の一部についてのみ意見を申し上げましたが、法案は、最後に申しましたような今後の検討課題等を残しつつも、全体として、さきに述べた三つの基本理念につきバランスのとれた解決をしており、したがって、これからの保険事業保険市場の基本的な制度枠組みを規定する法律として適切なものだと考えているということを申し上げて、私の公述を終わらせていただきます。(拍手)
  8. 尾身幸次

    尾身委員長 どうもありがとうございました。  次に、猪口参考人にお願いいたします。
  9. 猪口邦子

    猪口参考人 御紹介いただきました猪口邦子でございます。  きょうはこの大蔵委員会にお招きいただきまして、保険業法案及び保険業法施行に伴う関係法律整備等に関する法律案につきまして私見を述べさせていただきます機会が与えられまして、大変光栄に存じております。  私は、平成二年から現在に至るまで、保険審議会委員として、今回の法律案の目指しております保険制度改革の議論に参画してまいりました。しかしながら、私自身は、必ずしも保険学や保険法を専門にしているというわけではなく、国際政治を専門にしております。したがいまして、保険審議会におきましても、現在の我が国保険制度の問題点や今後あるべき姿について、生活者または第三者の立場から、あるいは国際関係論の立場から意見を申し上げてまいりました。その意味で、本日も、今回の保険制度改革につきまして、日常の生活の中で保険というものに接している一般の国民の立場から意見を述べさせていただきたいと存じます。  さて、まず第一に、今般提出されております法律案内容の中心は規制緩和自由化ということであろうかと思います。これは、既に御議論がありましたとおり、これまでの商品料率規制、あるいは業務分野にかかわる規制等を自由化、弾力化することを通じて競争促進と市場の効率化を図りまして、保険会社経営上の創意工夫を生かし、より安価で、かつ国民ニーズに的確に対応する保険商品提供を可能にしていくということを目指したものと理解しております。こうしたことは、昨今の規制緩和流れに沿ったものでありまして、非常に望ましいことではないかと存じます。  具体的に申しますと、例えば生命保険の分野におきまして、高齢化社会の到来によりまして、医療、介護といった。そういう分野の商品ニーズが高まってきております。また、損害保険の分野におきましても、経済社会変化によりまして、わずかここ数年を見ましても、例えば代表訴訟との 関係におきます会社役員賠償責任保険や、製造物責任との関係におきますいわゆるPL保険等々、新しいリスクをカバーする商品ニーズが発生しております。  こうした状況のもと、生損保の相互参入による競争促進や届け出制の導入等を通じて、新しい商品の開発が活発化あるいは迅速化され、保険契約者のニーズに合致した保険サービスが速やかに提供されるということが期待されるわけであります。  もちろん、料率、すなわち価格面でも一層の弾力化が図られることとなると思います。また、販売チャネルの面を見ましても、一社専属制の緩和や保険ブローカー制度導入により、商品の購入ルートの選択肢が今より広がることになりまして、こうした点も契約者に対してメリットがかなり及ぶというふうに期待されます。  それから第二の点でございますが、国際的調和観点でございます。  保険制度は、ある意味では、目立たない存在でありながら、一国の経済の重要なインフラを構成しているものであります。企業にとっても一般国民にとっても、万が一の際には保険が確実に提供されるということを前提としてさまざまな経済活動が積極的に営まれているわけでありまして、その意味では、日本経済が飛躍的な発展を遂げ、経済のみならず社会、文化面も含めてさまざまな分野で国際化進展している今日、第二次世界大戦後五十年を経過しようとしているわけでありますが、保険制度の基盤となる法律は五十六年も前というものでありますが、そのこと自体、今回の法律改正の必要性を示しているものではないかと思われるわけであります。  こうした観点から、新たに保険ブローカー制度導入すること、あるいは諸外国でも既に実施されているソルベンシーマージンという考え方を取り入れること、また、余り目立たない点ではありますが、免許や認可の基準等、法律案の各所において行政の透明性を図るべく規定を整備すること、あるいは国際的調和観点から制度整備して保険業法の近代化を図るということは非常に重要であり、意味がある改正であろうと考えます。  日本の企業の国際経済の中におきます地位は非常に高まっているわけでありまして、それとともに、損害保険会社の活動も非常に国際的になっています。また、生命保険会社におきましても、その資産運用が国際的に注目を浴びるほどになっていることからしても、こうした国際的な観点を踏まえた業法改正は当然のことと言えると思います。  なお、付言いたしますと、国際関係ということからの問題ですが、御承知のように一昨年七月、日米包括協議の優先三分野の一つとして保険分野が日米交渉のテーマに取り上げられてきました。そして、昨年十月に決着いたしました。今回の保険制度改革は、この日米協議の決着内容に沿ったものではあります。しかし、保険ブローカー制度導入を初め、もともと基本的な内容平成四年の保険審議会答申にも盛りまれていたものでありまして、その意味では、決して米国の要求に妥協する形で今回の改革に至ったというものではなく、むしろ今回の改革内容が米国側から追認されたというふうに理解しております。さらに、昨年度の保険審議会の報告に至る審議の中では、外国保険会社等々の御意見もかなり十分に意見聴取いたしております。  以上、規制緩和国際的調和についての私の基本的考え方を申し上げましたが、これはあくまでも基本的考え方でございまして、こうした方向で改革を進める場合にぜひとも念頭に置いていただきたいことが幾つかございます。  それは、欧米の制度はやはり欧米流の社会のあり方、国民考え方に基づいたものであるということでございます。そうしたものを急激に日本社会に持ち込むことは、場合によっては混乱を起こしかねないわけでありまして、特に一国の保険制度といった大きな制度改革していく場合には、一たび混乱が起これはやり直しのきかない面もあり、十分に慎重に進めることが重要であると考えます。  私は、ここで、昨今の規制緩和が是か非かとかいう議論に深く立ち入るつもりはございませんが、例えば最近の論調の中には、欧米並みの大胆な規制緩和が必要といった議論も見受けられます。確かにアメリカでは日本より規制がかなり緩やかであります。しかし、ヨーロッパを見ますれば、日本より厳しい分野もありますし、ヨーロッパの中にも、それぞれの国によって、すなわち文化や社会の違いによって大きな差があるわけです。そういった違いを全く考慮に入れないで、規制緩和なら何でもよろしいという考え方には賛成しかねるわけであります。  特に保険の場合は、歴史的に見てもこれは自由化規制の波を繰り返してきたわけであります。例えば近年のアメリカにおきまして、いわばこれは、残念なことですが反面教師として参考にすべき事態が起きております。これは皆様御承知のことなんでございますが、保険危機と一般に呼ばれる社会問題でありますが、発端は、一九七〇年代にアメリカが自由化流れの中で保険についても大幅な自由化を行ったことに起因しております。  この結果、既に御議論ございましたが、例えば自動車保険の例で申しますと、保険会社事故を起こす可能性の高い人に対しては法外な保険料を要求する、あるいは保険の引き受け自体を完全に拒否してしまうということが起こります。そうしますと、被害者救済の意義ということを喪失してしまうことになります。報道によれば、全米で約一千七百万台もの無保険車が走っているとも言われているわけでありまして、この結果、例えばカリフォルニア州では、一たん自由化した料率を住民運動で事前認可制に戻したという事実もございます。  こうしたことは、実際にその国で生活してみないとなかなかイメージがわかないことだと思いますけれども、私自身、米国で長く暮らしたさまざまな経験からいろいろな問題をかいま見てまいりました。例えば、日本人が自動車保険に入ろうとしても、個人事故歴等のデータがありませんので、現地の保険会社に引き受けてもらうのは非常に困難でありまして、結果的には、つてを頼って、米国に進出している日本保険会社に引き受けてもらうというようなこともあるわけであります。ですから、規制緩和自由化ということを余り急ぎまして日本社会がこういう社会になるとすれば、憂慮すべきことであるかとも思います。  あるいは、日本の場合、保険でよく支払いトラブルが起きると聞いておりますが、契約では出ないのはわかっているけれども、せめて保険会社から誠意の気持ちだけでも示してほしい、したがって見舞金等を要求する事例が多いと聞いております。しかしアメリカの場合は、こういう場合、もう契約を盾にとりまして、契約者保険会社双方が弁護士をつけて法廷闘争がなされるのが一般的でありまして、そのような社会、文化と比べますと、非常に日本とアメリカは違うということが言えるかと思います。  競争社会の中で、企業も個人自己責任を前提としてみずからのリスクで行動をする、アメリカではアット・エア・オウン・リスクというふうに言いますけれども、そういうふうにアット・ユア・オウン・リスクで行動することが当然と考えられている国の制度、そのような制度日本社会に直ちに制度として根づくかどうかということはやや疑問ではないかと思われるわけであります。  こうした観点から、保険制度改革も、基本的には規制緩和自由化の方向を示しながら、日本社会国民考え方、あるいはそれが時代とともに変わっていくのであればそれに応じるような形で、ステップ・バイ・ステップで進めていくというものであるべきであると思います。  ですから、保険審議会におきましても、例えば相互参入につきまして、最終的には保険と銀行と証券を含めた子会社方式による相互参入が実現することが望ましいとしながらも、しかし、まず第一段階としては、保険分野の改革を行いまして、 その定着状況を見きわめた上で銀行、証券、保険の相互参入に向けて法改正を行うのが望ましいという、こういう結論を得ているわけであります。  これはよく考えてみますと、例えば金融の分野におきましては、昭和四十六年に預金保険機構ができまして、続いて昭和五十六年の時点で銀行法が近代化されております。そして、最終的に平成五年から銀行と証券の業態間相互参入が実現されております。この間二十年かかっているわけであります。今回、これに対応する保険契約者保護基金あるいは保険業法の近代化に加え、さらに業態間の相互参入まで一挙に行うといたしますと、銀行、証券において二十年かけて行った改革を一気に実施するということになりまして、余りに影響が大き過ぎるのではないか、そして、場合によっては混乱を起こす可能性も否定できないのではないかと考えられるわけであります。こうしたことを全般的に勘案すれば、やはり銀行、証券と保険の相互参入については次の段階で行うこととし、今回の法律案に盛り込んでいないこともこれもやむを得ないかとも思います。  このほか、今回の法律に盛りまれております他の項目につきましても、行政当局考え方として、例えば商品料率自由化も、十分な判断能力のある企業物件などから徐々に進めていくという考え方というふうに伺っております。法律案についてもそうしたことが可能な枠組みとなっております。  また、新たなブローカー制度でございますけれども、これも登録制などをとりつつ、保険契約者保護のための賠償資力の確保措置等も厳重に規定されているということなどが盛りまれておりまして、自由化の方向に進みながらも、いわばソフトランディングを目指した改革と言えると思います。このような点は十分に評価できる内容ではないかと考えている次第でございます。  今回の法律により、二十一世紀に向けて国民信頼にこたえる保険制度が構築されますことを期待しております。  以上でございます。ありがとうございました。(拍手)
  10. 尾身幸次

    尾身委員長 どうもありがとうございました。  以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。     —————————————
  11. 尾身幸次

    尾身委員長 これより参考人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。井奥貞雄君。
  12. 井奥貞雄

    ○井奥委員 新進党の井奥貞雄でございます。  本日は、五十五年ぶりの業法改正、こういうことでございまして、四万の参考人の方々からそれぞれ御意見の陳述をちょうだいをいたしまして、大変学習をさせていただきました。  限られた時間でございますので、最初に河野参考人にお伺いを申し上げたいと思います。  今回の保険制度改革で、生損保子会社方式相互乗り入れをすることができるようになったわけでございますが、競争制限が取り払われたわけでございまして、競争社会になっていきまして、特に商品とかあるいは価格の競争にまで入っていくというふうに思っておりますが、それぞれが競争のメリットをどのように発揮できるのか。  生損保それぞれの業界としての将来の絵をかいておられるというふうに思っておりますが、一つには、消費者、すなわち契約者にとって具体的にどのようなメリットがあるとお考えになっておられるのか。二つ目でございますが、保険会社にとって、今度は逆でございますが、具体的にどのようなメリットがあるとお考えでございますか、この二点につきましてお伺いをしたいと思います。
  13. 河野俊二

    河野参考人 ただいまの御質問にお答えいたします。  生損保の子会社によります相互乗り入れ消費者にとってのメリットというものはどういうものかという質問でございますが、我が国では現在、欧米には類を見ないスピードで人口高齢化というものが進行しており、二〇二〇年には、御承知のとおり四人に一人が六十五歳以上の高齢者となると言われております。  このような本格的な高齢社会を間近に控えまして生損保相互乗り入れを行うことは、生損保が互いに切磋琢磨して創意工夫を発揮し、よりよい商品サービス提供がより活発に行われることをもたらすと思います。そしてこのことは、保険商品サービスを選択するに当たりまして、消費者利便性が向上するというメリットがまず挙げられると思います。  また、生損保相互乗り入れの際に、親近性のある両事業経営資源の有効活用ということを行いますので、保険商品の販売に当たって、子会社が親会社の販売網を活用する、いわゆるクロスマーケティングを十分図ることになれば、消費者にとりましても、生損保あわせて総合的な保障一つの代理店から購入できるということになり、利便性が増すというふうに考えております。  そうした観点から、生損保相互乗り入れに当たっては、経営資源の有効活用とクロスマーケティングの確保を図ることが、保険審議会の答申でもうたわれておりますとおり、重要なポイントだと思っております。  次に、保険会社にとって具体的なメリットはどうかという御質問でございますが、生損保相互乗り入れは、保険会社の業務範囲が拡大するということになりまして、経営の選択肢がふえるというメリットがございます。  具体的には、火災保険自動車保険に加えまして、人口高齢化に対応して介護保険年金保険、医療保険はもとより、死亡保障に至るまで、契約者の多様なニーズに幅広くこたえることができ、生損保商品を自由に組み合わせた総合的な保障提供することが可能となります。これによりまして新たな需要が生まれることが期待できますとともに、契約者との結びつきがさらにしっかりとしたものになるといったメリットがあるというように思います。  経営資源の有効活用を図ることが可能となりまして、いずれにしましても、先ほど申し上げましたとおり、シナジー効果が高まりますことから、保険会社経営合理化効率化に資するというメリットが生ずることになるなどが保険会社にとってのメリットだと思います。
  14. 井奥貞雄

    ○井奥委員 ありがとうございました。  それでは、櫻井参考人にお伺いをいたしたいと思います。  その一つは、ブローカー制度導入についてでございまして、今回の法改正では、ブローカーというものはこれまでの販売チャネルとまた異なった側面を持っているわけでございまして、保険会社のためではなくて、契約者サイドに立ってさまざまな商品のアドバイスをしたり契約の締結の媒介を行うという、この意味では大変私は結構なことだというふうに思っております。  ただ、少し気になることがございますが、諸外国、すなわち欧米などではブローカーは一般的に存在しているからよくこれは理解ができるわけでございますけれども我が国では全く初めての制度でございまして、果たしてどのような形で定着をしていくのか、この辺が不安なところであります。特に、保険業法の目的であります契約者保護という観点からいたしますと、初めて導入されることになるブローカーが契約者との間で、すなわち契約者の意図したものと全く違うもの、こういった形でのトラブルが起こるようなことはないのかどうか、またトラブルが起きたときに契約者はどのように保護をされる手段があるのか、実はいろいろと考えられると思うわけでございます。  特に生保につきましては、これは息の長い商品でありまして、二十年、三十年先でございまして、現在、入り口はおいしそうでありますが、実際二十年、三十年たったときにそれが全くおいしいものではなかったというふうなことでありまたそのときには、契約者との間で媒介をしてくれたブローカーというのがもういなくなっている、こういったような問題もあるわけでございます。  こういった問題を含めて、生命保険業界としてはどのように考えておられるのか、この点をお伺 いをしたいと思います。
  15. 櫻井孝頴

    櫻井参考人 お答えいたします。  ブローカー制度は、国際的な整合性をとるという角度と、それから利用者利便の向上、販売面の競争促進を図るということをねらいとして導入されると理解をしておりますが、ただいま井奥先生御指摘のとおり、問題は、契約者保護等の角度からいかがなものか、こういうことでございましょう。  私どもが大変懸念しておりますのは、保険会社から独立をした存在でございますので、ブローカーの業務の遂行上保険契約者との間で紛争が生じた場合は、保険会社でなくてブローカーみずからが損害賠償の責任を負わなければならない、こういう点でございます。こういった点を考慮して、今回の保険業法改正案では、例えばブローカーに保証金の供託を義務づけるといったような賠償資力の確保措置というものが設けられておるわけでございまして、それなりに保険契約者等の保護が図られる枠組み確保されるかと思います。  ただ、先ほど先生の御指摘がございましたように、生命保険の場合は非常に長期の契約をお扱いをしているケースが多うございますので、それをブローカーにお願いをした場合は、契約がまだ有効である、一方ブローカーがお亡くなりになった。あるいは廃業をしてしまったといって、仲介業者の存在そのものがなくなってしまうというケースがかなり考えられるわけでありまして、そうした場合にどなたが責任を負うのかという問題が当然起こるかと思います。  したがいまして、こうした問題を踏まえた実際の運営の中では、まずブローカーの適格性というものをしっかり見ていただくということが大事だろうと思います。それから、十分な賠償資力等を確保されるよう監督をしていただきたい。場合によっては、長期の契約を取り扱うというようなことについてのかなりの制限を設けるといったような行政上の御措置といったものが必要なのではないかと思いますし、私どももそういったものを切に希望しているわけでございます。  以上でございます。
  16. 井奥貞雄

    ○井奥委員 それでは引き続きまして、河野参考人に同じ質問をさせていただきたいと思っております。  ブローカー制度というのは、先ほども申し上げましたし、また櫻井参考人からも今お答えをちょうだいいたしましたが、欧米では長い歴史を持っているものでございます。日本においては、生命保険一つは営業職員制度がございますし、また損害保険におきましては代理店制度がございます。欧米と全く違う歴史を持っているわけでございます。この中には、特に、長い期間生保、損保あるいはそれぞれの代理店あるいは営業職員等々が努力をされて、契約者との間に安心と安全という長い信頼関係が築かれてきたわけでございますが、今回の制度改革によりましてブローカー制度が新たに導入をされるわけでございます。  いわゆる信頼性確保、すなわち消費者にプラスになる形で根づくようになるためにはどのような点に配慮をされようとしておられるのか、そしてまた、今も申し上げましたように、ブローカー参入によって、長い歴史と信頼、これを含めてさらに将来どう育てていこうとお考えになっておられるのか、このことにつきましてお伺いを申し上げたいと思います。
  17. 河野俊二

    河野参考人 お答えいたします。  まず、ブローカー制度というのが日本に最初に導入されるということになるわけでございまして、先生御指摘のとおり、消費者あるいは契約者にこれがスムーズに受け入れられるかどうかという問題はあると思います。そういう観点で申せば、やはりブローカーが消費者信頼され選択されるにはどうしたらいいかということになろうかと思います。  先ほど先生の御指摘のとおり、歴史的に見ますと、ブローカー制度は欧米では大変古い歴史を持っております。しかし、よく振り返ってみますと、欧米におきましても大体企業物件というものを中心にブローカーが活躍をしておりまして、個人物件というのは主に代理店、エージェンシーを通じて商売をしているというのが実態でございます。それは、一つには、企業物件というのはそれを扱っている人自体が自己責任があるというか、そういう能力のあるプロであるということがあると思います。  それから、日本でこれからやっていく場合には、まだ定着を見ないわけでございますから、企業とかあるいは個人とかというすみ分けがはっきりできていない、これからつくっていかなければならないということになろうかと思います。こういうものを、徐々にではあるけれども日本の代理店制度と競合しながら、そこに競争が成立しましておのずからそういうすみ分けができてくるのかなと思っております。  いずれにいたしましても、ブローカー制度によってトラブルが起きれば、それは保険会社のトラブルにはね返ってまいりますので、そういう意味で我々も重大な関心を持っておるところでございます。  以上でございます。
  18. 井奥貞雄

    ○井奥委員 どうもありがとうございました。  それでは続きまして、櫻井参考人にお伺いをしたいと思っております。今回の保険制度改革の進め方についてでございます。  今回の保険制度改革三つの柱、ただいま陳述の中で御説明をちょうだいをいたしましたが、一つには規制緩和、そして自由化二つには事業健全性維持三つ目には公正な事業運営確保、これから成っているということであります。  江頭先生、猪口先生もお述べになられましたが、規制緩和あるいは自由化我が国にとっても緊急の課題でございますし、貿易摩擦等々の問題も長期的に見ればこれはすぐにやらなければならない問題でございますけれども、余り大胆にこれを一気にということになりますと、江頭先生も言っておられましたけれども、緊急に規制緩和をする、この問題と、余り早急にやり過ぎると保険会社契約者との混乱ということも含めて、しばらく様子を見てこれを進めていった方がいいのではないかな、こういった御意見も出されたわけでございますが、こういった問題もございます。  こういう問題を含めて、今回、公正な事業運営確保からこういったことになっておりますけれども、この条文案を見てもよくわかるわけでございますが、大変多くの資料でございまして、私どもなかなか読み切れないわけでございます。また、内容につきましても大変広範囲にわたっておりまして、三つの社もそれぞれ重要であるというふうに考えております。  一方、こうした広範囲にわたる制度改革が一気に行われるということになりますと、これはこれで契約者保護という面から、大変私もまた問題が出てくるのではないかなというふうに考えるものでございます。この面につきまして、生命保険業界というのはどういうふうに業界としてお考えになっておられるのか、この点をお伺いをいたしたいと思います。
  19. 櫻井孝頴

    櫻井参考人 お答えいたします。  今、井奥先生の御指摘のとおりでございまして、現行の保険制度は非常に長くこの制度のもとで行われてまいりました。いわば我が国保険事業の中にかなり定着した部分がありますし、それからその制度自体が、例えば一社専業のように、生命保険業界の運営の根幹をなしているという制度的な面も少なからず存在するわけでございます。  先ほど江頭先生、猪口先生両先生からも御指摘がございましたが、やはり欧米と違う点は、我が国においてまだ御契約者皆様方に、大変失礼な言い方になるかもしれませんが、自己責任というものについての哲学といいますか、そういうものが完全に普及しているとは言いがたい。  それから、契約内容の重視という考え方についても、先ほどのお話の中にもございましたように、例えば見舞金とか示談金とか、そういう形で何とか日本的な結末をつけるというような考え方もま だ随分あるわけでございまして、それのよしあしは別として、そういうものが現実に存在をする。片っ方に制度的なものがあり、なおかつ国民皆様の間に今申し上げたようなお考え方があるということを考え合わせていきますと、今回の広範囲にわたる制度改革が一時に、かつ一挙に行われるということについては、契約者保護という側面からも、あるいは生命保険業の運営という面からもかなり懸念する面が出てくるわけでございます。  保険事業健全性が場合によっては損なわれるということも懸念されるわけでございまして、せっかくいい法律をつくっていただく以上は、これを着実に実施するという観点から、なるべく混乱が生じないような形で、そして契約者等の保護に重大な影響を与えることのないように、漸進的かつ段階的に進めていっていただくということが望ましいというふうに考えておるわけでございます。  先ほどの両先生のお話の中にも出てまいりました銀行あるいは信託、証券との相互参入ということについて、今回の制度改革では一応見送りという案になっておるわけでありますが、将来はともかくとして、とりあえず生損保の相互参入、あるいは激化する競争に耐えられるソルベンシーマージン基準導入、あるいは新しい経営危機対応制度導入、こういったものをまずやって、それの定着状況を慎重に見きわめながら次のステップを考えるという段階的な方策が望ましいというふうに考えております。  以上でございます。
  20. 井奥貞雄

    ○井奥委員 どうもありがとうございました。  ただいま櫻井参考人からもお話が出ましたが、ソルベンシーマージン基準導入ということにつきまして、江頭先生にお伺いをしたいと思います。  今回の保険制度改革では、規制緩和と並行いたしまして、保険会社健全性確保するための手当て、具体的にはソルベンシーマージン基準導入が行われることになっております。銀行でいいますと、BIS規制みたいなものだと私は承知をしております。ソルベンシーマージン基準は、保険会社経営破綻に陥らないようにということで行政当局が日ごろから監督する際の指標として、保険会社の抱えるリスクに対して自己資本の支払い余力がどれぐらいあるのか、この割合を見るということでございます。  このソルベンシーマージン基準導入につきましては、保険会社健全性をチェックするために必要であるという見方がある一方で、保険会社に対する監督強化であって、規制緩和に反するという見方もとれぬわけではないわけでございまして、この点につきまして、先生の御意見をお伺いを申し上げたいということ。  それから、冒頭の意見陳述をなさいました中で、やはり規制緩和というのは時代の趨勢でありますし、これは一気にやらなければならない、一気にやるということと、それともう一点は、余りこれを早急にやりますと大変さまざまな問題を起こしてくるのだという問題提起もされておられましたので、その点につきまして、欧米での何か事例がございましたら、ちょっとつけ加えてお話をいただければありがたいというふうに思います。
  21. 江頭憲治郎

    ○江頭参考人 それでは、意見を申し上げさせていただきます。  まず、ソルベンシーマージンの件でありますが、ソルベンシーマージンの導入は、今回の保険業法改正における健全性維持という問題に関しまして大変重要な位置づけを与えられているものであります。保険会社健全性維持につきましては、会計的には責任準備金をとにかく厚く積むというのが一つ、それから含み益を蓄積するというのが従来の考え方であったかと思います。  しかしながら、そうした責任準備金、それから含みのみに頼る健全性維持というのは、今日金利変動リスク等が大きくなっております、そうすると責任準備金の基準も十分ではなくなってくる面があります。それから、株価の変動リスクも大きくなっておりますから、当然に含みに頼る健全性維持というのも難しくなっている。そこで、ソルベンシーマージンという一種の自己資本規制導入されようとしているわけであります。このソルベンシーマージンの考え方は諸外国でも採用されており、適切なものであると私は理解しております。  それで、御質問の点は、ソルベンシーマージンは一種の監督強化ではないかという点の御指摘でありましたが、私の理解するところでは、とにかくソルベンシーマージンというものの基準を満たしておれば、そこから先は基本的には保険会社自己責任で自由な経営が認められる。従来であれば、そういう基準はないかわりに、事細かく、主務官庁の個別の認可等が必要であったものが、このソルベンシーマージンを満たしている限りは相当に自由化されるという点に意義があるというふうに承知しております。  したがいまして、この基準を満たすことは必要でありますけれども、その範囲ではかえって自由化進展であろう、それが満たされる限りは自由化進展に資するものであるというふうに考えております。  それから、余りに急激に自由化を進めますと、保険契約者にとっていろいろな不利益が出てくるという面でありますが、これもとにかくやってみませんとどういうことが起こるかわからないわけでありますが、先ほど猪口参考人もアメリカの例を引いておっしゃいましたけれども、私も実はアメリカに二十年ばかり前に留学しておりましたときに、自動車保険では大変困った経験があります。  というのは、もう二十年前でありますが、アメリカでは車が必需品でありますから、私も向こうで免許を取り、車を買ったわけでありますが、自動車保険を掛けに行きましたところが、対人賠償責任保険が限度額十万ドルしか売ってくれないわけです。十万ドルというのは、当時でいいますと二千万円。日本でもそれよりずっと高い保険が通常、対人賠償はつけられていたわけであります。それで、私、こんなものでは怖くて走れないというふうに代理店といろいろ交渉したんですが、結局だめでありました。これはやはりリスクの高い人間であるというふうに思われたんだろうと思います。  先ほど猪口参考人からお話があったようなそういうことは、やはりこれは国情はいろいろありますけれども日本では好ましくないんではないか。私が先ほど申しました。余りに経済効率一本やりで自由化を進めますと弱者保護に欠ける面があると言ったのは、例えばそういう経験があるから申した次第でございます。
  22. 井奥貞雄

    ○井奥委員 どうもありがとうございました。  それでは猪口先生に、あと限られた時間でございますけれども。  お話がございましたように、余り利潤の追求ばかりに業界が走ってしまうと、契約者とか生活者というものが取り残されていくんだというお話も、自動車の賠償保険につきましてもお話がございました。  あるときには、フロリダだったでしょうか、台風の保険というのは一切引き受けないという、そういうふうな形で、保険会社の側に立って契約者消費者の側に立っていないということで、それぞれの州の事情があろうと思いますけれども、そういったものを含めて、やはりこれから制度改正がなされた後、そういうふうに業界自身が走っていくんではないかな。我が国では大変倫理とかあるいは今までの商習慣、慣習というのがございますけれども、そういった面を含めて、ちょっと先生のお話を聞かせていただければありがたいと思います。
  23. 猪口邦子

    猪口参考人 私は、その点につきまして、我が国の場合はそれほど大きく心配はしておりません。  とりわけ、今回のこの法改正内容等を見ましても、基本原則としては非常に明確なものを打ち出しながら、しかし実施面においてかなり慎重なステップを可能にするような、そういう内容となっておりまして、その辺のバランス感覚といいますか、慎重性というものは、やはり日本社会一つの特質ではないかと思います。  それによっていろいろと、改革がおくれたり時間がかかったりという、こういう問題は残ると思いますけれども、それはやはり費用対効果といいますか、そういう問題を抱えながらも、しかしこの分野におきます特質は、やはり急激な変化、それから一般の国民がわかりにくいような、あるいは非常に戸惑うような、そういう性格のものがあってはいけないし、それから、業界において大きな混乱あるいは信頼性の喪失というようなことが起こっては絶対にいけないという、そういう性格が優先されなければならない分野であると思いますので、その意味では、世界のさまざまな事例を勉強しつつ、日本の風土、習慣に合った慎重な改革ということを目指していただきたいというふうに、私、一市民としても思いますし、そういうふうに政治の方も、あるいは改革にかかわっているすべての方々も理解されているというふうに信じたいと思います。
  24. 井奥貞雄

    ○井奥委員 最後でございますけれども、それでは櫻井参考人にお伺いをいたしまして、質問を終わらせていただきたいと思います。  ソルベンシーマージン基準導入ということでございますけれども業界として、この基準の導入というものをどういうふうに評価をされているのか。先ほども申し上げましたけれども行政当局の監督強化、規制緩和に逆行するんではないかな、こんなことを私も江頭先生にもちょっと御質問をさせていただいたわけでございますが、この点を含めまして御意見をお聞かせをいただきたいと思います。
  25. 櫻井孝頴

    櫻井参考人 お答えいたします。  冒頭の陳述のときにも申し上げましたけれども生命保険会社、特にその中の大宗を占めております相互会社という組織は、今まで、そのときの剰余金はできるだけ契約者に配当してしまえ、つまり自己資本はない方がいいんだ、こういう哲学でずっとやってきたわけです。ほとんどの会社相互会社になったのが昭和二十二年でございますから、戦後五十年間そういう形でやってまいりました。したがいまして、株式会社に比べますと、相互会社自己資本というのは一般的に非常に薄いということが申し上げられると思うのです。  やはりこれからの厳しい競争に対処していくためには、相互会社といえども、今言ったような考え方を百八十度転換して、お客様には合理的な配当基準に基づく配当をしながらも、一方、剰余金の中からかなりの部分を自己資本充実に充てるということがこれからの自由化時代に必要であろう、こういう考え方に基づいてソルベンシーマージンを導入する、こういうことだろうと思います。  したがいまして、監督が強化されるということよりも、むしろ生命保険会社としては、これからの競争に対応できる内部留保をどのように確保していくか、またその適正水準はどの辺にあるかということにこれから重大な関心を持たなければならない。  ソルベンシーマージンが低いということは困ったことですが、逆に言いますと、高ければ高いほどいいということではございませんで、余り高いということは、簡単に言うと御契約者への還元が少ないということになるわけでございまして、それは保険会社経営としていかがなものかという考え方も出てくるわけであります。したがいまして、行政の御当局のお考え方としては、恐らく一定の基準を超えたものについてはそれはよろしいというお考え方に立つんだろうと思います。  それからもう一つは、ソルベンシーマージンをなぜ基準として考えるかということは、いわば企業が破綻するのを早目に見つけようという、アーリーウォーニングといいますか、早期警戒的な指標としてとらえようというお考えが非常にお強くなってくるんだろうと思います。したがいまして、ソルベンシーマージンが徐々に悪くなっているとか、あるいはよくなっているとか、そういう傾向値をつかまえるということが非常に大事なことになってくるんだろう、かように考えておるわけであります。  そういった考え方を総合しますと、監督が強化されて会社経営の裁量が狭められるということよりも、早目に、警戒警報にひっかからないように、経営を自由にある程度まではやらせていただくという自由裁量の余地がむしろふえるという考え方の方が強いのかなということでございまして、この点については、むしろ私どもとしては歓迎する方向としてこの問題を受けとめていきたい、かように考えております。  以上でございます。
  26. 井奥貞雄

    ○井奥委員 どうもありがとうございました。  終わります。
  27. 尾身幸次

    尾身委員長 次に、北側一雄君。
  28. 北側一雄

    ○北側委員 新進党の北側一雄でございます。井奥さんに続きまして、私の方から御質問させていただきたいと思います。  きょうは、大変お忙しい中大蔵委員会に御出席賜りまして、本当にありがとうございます。  先ほど来、規制緩和自由化の問題について、いろいろ御意見を聞かせていただきました。四人の先生方それぞれ、規制緩和自由化について、基本的にはその方向で進むべきではあるが、現状に即してステップ・バイ・ステップ、段階的にやるべきであるというお話を共通してされていたのかなというふうに思っております。  そこで、先ほど猪口先生も冒頭お話の中でされておられましたが、銀行業務等への参入の問題でございます。  御承知のように、九二年の答申では、かなり詳細に銀行等の業務への参入の問題について触れられております。「保険事業と他業態との関係」という項目の中で、基本的な考え方として、「金融各業態間の競争促進により国民経済発展を図るためこ「保険会社が銀行・信託・証券業務に参入できるようにするとともに、銀行等・信託銀行・証券会社についても保険事業に参入できるようにすることが適当である。」さらに、相互参入の方式についてもかなり詳しく書かれておりまして、基本的には「業態別子会社方式によることが適当である。」云々ということで、比較的詳細に他業態との相互参入について記されているわけでございます。  これにつきまして、今回の法案ではこれが先送りをされておるわけでございますが、これに関して恐らく先生方の御意見は賛成であろうとは思うのですが、この先送りをされたことについて改めてどういう御見解をお持ちか。それから、基本的な方向としてこの九二年答申で書かれたことについては変わりはないというふうに今でもお考えか。仮に基本的方向については変わりはないんだというならば、どういう条件が、またどういう環境整備されてきたならば、銀行等の他業態との相互参入についてよしとされるのか、その辺の御意見をぜひお聞かせを願いたいと思います。  櫻井参考人河野参考人、それから江頭参考人、三名の先生方、よろしくお願いします。     〔委員長退席、金子(一)委員長代理着席〕
  29. 櫻井孝頴

    櫻井参考人 お答えいたします。  確かに九二年のときは、銀証の参入についてもかなり積極的なコメントがあったように記憶しておりますけれども、今回、その保険審議会等の審議が六年間に及んだということは、その間に生命保険会社は、言ってみれば天国と地獄を経験したということでございまして、非常に好況で保険事業もぐんぐん伸びているという時代に、諸外国の例を見ますと、お互いに、銀行が保険会社に入ってくる、あるいは保険会社が銀行に入っていく、こういったような状況がございましたので、そういったものも考えて、この際相互参入というものを大幅にやるべきではないかという御意見が強くあったと思います。  しかし、その後やはり生命保険業は、現状でいいますと戦後最大の不況に見舞われているというような状況でございまして、そういった環境変化というものが一つあるのだろうと思います。  それから、諸外国状況、先ほどこれは猪口先生、あるいは江頭先生おっしゃっていましたけれども、一挙に自由化したがゆえに生命保険業界も 弱ったし、銀行業界も弱った。あるいは証券業界も弱ったというふうに、自由化を一挙に進めることによって、関係する業界が全部痛んだというふうな実績もなかったわけではない。  こういった諸外国状況等を考えて、やはり今回は、手がたく生損保の相互参入をまず行って、それから今申し上げたように、自己資本充実が十分でない相互会社自己資本充実を待ち、それから新しい経営危機対応制度導入といったような、真っ先にやらなければいけない制度の実施状況を見ながら次のステップを考えましょう、こういう非常に穏やかな御判断に立ったのではないかな、かように考えておるわけであります。  しかし、諸外国の例を見ますと、最終的にはやはり生損保は銀証に参入するという実績もあるわけでありますし、国際的な整合性というものを考えますと、あるいは日本金融業界国際化という大きな流れの中で見ますと、いずれはこの生損保だけではなくて、お互いにそれぞれの業界子会社方式をもって相互参入をしていくというビジョンは自然な姿として描けるのではないかなと思います。  問題は、いつやるんだ、こういう時期の問題だろうと思いますが、この点につきましては、やはりこの今御提案をしていただいている保険制度改革のまず状況を見ながら次のステップを考えていくということでございまして、いつまでにどうということは今の段階ではなかなか判断しにくいのかな、かように考えております。  以上でございます。
  30. 河野俊二

    河野参考人 お答えいたします。  基本的には櫻井会長がお答えしたとおりでございまして、先ほどお話がございましたように、保険審議会の答申においてはそういうふうにうたわれておりますが、昨年六月の保険審議会の報告では、生損保相互乗り入れを含む保険制度自由化を進め、その定着を見きわめた後に他業態との相互参入を含めた制度改革を段階的に行うことが適当であるというふうになっておるわけでございます。  先ほど櫻井会長も触れましたけれども、ちょうどこのバブルの崩壊時期というものとも重なっておりまして、急激な制度改革というのは予想もできないような事態をもたらすこともあるというようなことでございますので、そういう段階的な制度改革の進め方というものが現実的であるというふうに私ども思っております。  以上でございます。
  31. 江頭憲治郎

    ○江頭参考人 私も、保険会社と銀行、証券、信託銀行との相互参入というものは、これは保険会社にとりましてはこれまでに蓄積した経営資源の有効活用という観点から、それから銀行等が保険業界子会社方式で参入するということは保険業界における競争促進という観点から、基本的には望ましいものであるというふうに理解しております。  ただ、今回の法案にはこの点は含まれていないという点につきましては、これは先ほど猪口参考人からもお話がありましたように、銀行と証券の相互参入にいたしましても二十年かかったという御指摘、それから平成四年の銀行、証券間の制度改正の折には、銀行の海外現地法人、証券の海外現地法人、それぞれ相互参入が海外では相当に進んでいたというようなこともあるのに対して、必ずしも保険とそれら業態の間では海外でも進んでいないという、つまり日本の銀行が海外で保険業をやっているわけではありませんし、そういう現状にかんがみても、現在はまず生損保の相互参入を先行させ、将来、この次の、今後の改正においてそれら他業態と保険業界との相互参入ということを考えるということになったのであろうというふうに理解しております。  それで、どういう条件が満たされれば保険会社と他業態との相互参入が許されるのかという点につきましては、保険審議会の答申にもありますように、まず一番大切なことは、やはり保険会社の側から見ますと、他業態に進出するためには健全性維持というものが一番大切であろうというふうに考えております。したがいまして、ソルベンシーマージン基準の定着。ソルベンシーマージン基準というのは基本的には自己資本比率規制でありまして、この指標だけで健全性が完全に担保されるというわけのものではないわけです。一つ指標にすぎないわけで、保険経済の学者等の間では、現在、特にアセット・ライアビリティー・マネジメントの必要性が強く言われていると私は理解しております。  つまり、キャッシュフローがいろいろな状況を想定した場合どのように変化するかというようなことを想定した上で、負債、資産を総合的に管理するというのがアセット・ライアビリティー・マネジメントであると理解しておりますが、そういうものも健全性維持指標として重要であろうと思います。こうした点、そのアセット・ライアビリティー・マネジメント等につきましては、現在の法案では基本的には保険計理人というものの役割に大きく期待しているというふうに私は理解しております。  そういうふうに、他業態との相互参入の一番重要な問題は、そうした健全性維持、それから、先ほども申しましたが経営危機対応制度、これも早急に検討が必要だと私は考えておりますが、そういうものの整備も必要だと思います。基本的には、そういう健全性維持制度の確立というものが最も大きな条件ではないかというふうに私は理解しております。
  32. 北側一雄

    ○北側委員 ありがとうございます。  猪口先生、この問題でさらにつけ加えて何かございます。よろしいです。
  33. 猪口邦子

    猪口参考人 私も、基本的には、既に参考人先生方が述べたのと同じ考えております。  答申でも指摘がありましたとおり、やはり早期に実施することは望ましいと思います。ですから、次回の法改正機会においては必要な整備がとられることを希望いたします。  どういう時期かということについては、これは、審議会報告にも書いておりますとおり、やはり保険制度の今回の自由化といいますか、それの定着を見きわめた段階。それから、全般的な社会背景といたしましては、やはり非常に強気であった時代といいますか、それが過ぎまして、等身大の改革を積み重ねていく、そういう時代に入ったというふうに理解いたしまして、それは今日の国民サイドの感情とも一致するものではないかというふうに思います。
  34. 北側一雄

    ○北側委員 ありがとうございます。  それでは、同じくこの規制緩和自由化に関する問題でございますが、生命保険募集の一社専属制の一部緩和の問題が今回の法案で規定をされております。  その内容は、生保の一社専属制の規定そのものは本則に残すものの、保険契約者保護に欠けるおそれがない場合として大蔵省令で定める場合については適用除外とするというふうな規定になっております。この生保の一社専属制の緩和の問題につきましては、これは率直に申し上げて、恐らく生保さんと損保さんと若干御意見が違うところなのかなと思いますので、ぜひその辺のところの忌輝のない御意見を、櫻井参考人また河野参考人からお聞かせを願いたいと思います。
  35. 櫻井孝頴

    櫻井参考人 お答えいたします。  生命保険会社は伝統的に一社専属制、これは法律でも決められておるわけですが、これをやってまいりまして、一つ考え方としては、戦後我が国生命保険業がここまで発展をした一御存じのとおり、いろいろな指標をとってみますといずれの指標でも世界一の普及率であります。ここまで発展をした原因はいろいろありますけれども、やはりその大きな理由の一つとして、販売組織が一社専属制をとってきたということにあるのではないかなと思っているわけであります。  お客様のニードが高まるにつれて、保険契約者等に対して十分なコンサルティングサービスあるいはアフターサービスを効率的に提供していく、あるいはそれ以前の、新契約をちょうだいする段階での十分な教育、管理、こういったものは一社 専属制で行うということが最も効率的であるという考え方に基づいて、今まで生命保険会社は一社専属制をとってまいりました。私は個人的には、今後も基本的にはこの一社専属制が維持されるということが望ましいというふうに考えておるわけであります。  しかし一方、今回の保険審議会の答申の中にございますように、利用者利便の向上、販売チャネルの多様化、それからクロスマーケティング、つまり、今まで私どもが蓄積したその販売力というものを生保から損保へ、あるいは損保から生保へという形に効率的に使うという点からいいますと、保険契約者の保護に欠けるおそれがないというような、例えば一定水準以上の保険に対する知識がある、あるいは教育、管理、責任体制を十分具備しておられると思われる代理店といったようなところに対しては、一社専属制の例外として乗り合いを認めていくということは望ましい姿であろうと思います。  ただ、繰り返して申し上げますが、生命保険業界としては、やはりこの乗り合いみたいなものはできるだけ少数、少ない範囲にとどめていただきたいな、あくまでも生命保険の販売については一社専属制の堅持という姿で今後も私どもとしてはやっていきたいと思いますし、御指導等もそのような方向でお願いをしたい、かように考えております。  以上でございます。
  36. 河野俊二

    河野参考人 この法律案では、先ほどお話もございましたが、一社専属制の例外規定が設けられており、平成四年六月の保険審議会答申でうたわれているクロスマーケティングが確保されるような内容になっているというふうに理解をしておりますので、この法案で問題はないと考えております。  いずれにしても、クロスマーケティングと経営資源の有効活用ということが大切なことではないかと思っておりまして、損保の親会社の販売網を子が使えるということにはしていただきたいなというふうに思っております。  以上でございます。
  37. 北側一雄

    ○北側委員 相互参入をしていくということは、恐らく競争条件を同一にしないといけないということでもございますし、そういう趣旨からは一社専属制のある程度の緩和はやはり必要なのかなというふうにも思います。  そこで、江頭先生にちょっとお聞きをさせていただきたいのです。  先生は法学者、法学の先生でございますのでぜひお聞きしたいのですけれども、今回のこの法律の中には、今の問題もそうでございますが、保険契約者保護に欠けるおそれがない場合、このような一般規定がたくさん入っております。この一社専属制の問題でありますと、保険契約者保護に欠けるおそれがない場合として大蔵省令で定める場合ということで、省令にそのおそれがない場合を委任をしておるわけでございます。  この種の規定がほかにもたくさんこの法案にはございまして、規制緩和自由化を進めつつ、一方でこのような一般規定で、その一般規定が働く場合を政省令に委任をする。私は、やはり一方では行政の透明性とか明確な基準とかそういうものが必要であり、そういう要請もあると思います。この点について、この一社専属制に限らず、本法案でこのような一般規定が幾つかあるということについての先生の御意見をお聞かせ願いたいと思います。
  38. 江頭憲治郎

    ○江頭参考人 大変重要な点の御指摘だと思います。御指摘のとおり、この法律には大蔵省令で険契約者等の保護に欠けるところがないと定める場合といったような規定がたくさんあるわけでありますが、この点が行政の透明性という観点から問題がないかという御指摘かと思います。  この点につきましては、今の一社専属制の問題につきましても、どのような場合が保険契約者の保護に欠けることがない場合がは、これはかなり技術的な細かい考慮を要するものでありますので、したがいまして、法律にすべて書き切れるわけではないということから、大蔵省令あるいは政令にゆだねることになっているのは、ある程度やむを得ないというふうに私は考えております。また、これは諸外国でも、法律ではこのような抽象的な規定を置き、規則といいますかレギュレーションで細かい規定を定めている例はたくさんあるというふうに理解しております。  問題は、行政の透明性が担保できるかどうかは、やはり大蔵省令あるいは政令が明確に書かれるかどうかということだと思います。そうでありませんと、やはり行政の裁量といいますか、透明性に欠ける場合が出てくるわけです。したがいまして、政省令は十分明確に書かれる必要があるというふうに私は考えております。  その政省令が明確でありますれば、つまりその要件に当てはまればはっきり結果がわかるということであれば、行政の透明性に欠けるということでもないのではないか。必ずしも政省令の規定が明確でなくて一々事実上個別認可のようなことが必要だということになりますと、行政の透明性が欠けることに確かになりますけれども、そうでなければ、政省令に細かい規定をゆだねていること自体は行政の透明性に欠けるところではないのではないか。ですから、私の希望としては、政省令を明確に書いてほしいという希望を持っているということを申し上げさせていただきたいと存じます。     〔金子(一)委員長代理退席、委員長着席〕
  39. 北側一雄

    ○北側委員 ありがとうございました。  次に、健全性維持の問題で、今回の法案契約者保護基金というものが創設をされます。これは全く新しい制度でございまして、今後これをいかに充実をしていくのかというのが極めて大事なんだろうというふうに思っております。保険契約の場合は、我々消費者の側からいいますと、その保険契約保険会社がどうあれ継続されていく、当初の契約内容がそのまま維持されるということが極めて大事であるというふうに思います。その意味で、こうした契約者保護基金が設けられて、こうした公益法人から資金援助がされていく、包括移転、合併等が円滑になされるようにやるという趣旨は極めて大事なことだろうというふうに考えております。  そこで、この契約者保護基金、これはそれぞれの保険会社が資金を拠出していくことになるかと思うわけでございますが、これについて具体的にどの程度資金を拠出していこうと考えておられるのか、また、御回答が可能な範囲で結構でございますが、この制度をどのように充実をされようとしておられるのか、その辺のところを櫻井参考人河野参考人にお聞かせ願いたいと思います。
  40. 櫻井孝頴

    櫻井参考人 お答えいたします。  今回の法律改正に盛られている趣旨は、会社保護しない、契約者保護する、こういう考え方が基調にあるわけでございます。契約者保護基金というのは、業界としては、その契約者保護するという方向の中で契約を健全な会社に、ある会社が破綻を来した場合にその持っている契約を、お預かりしている契約を健全な保険会社に移転をするということでございますが、破綻を来しているわけですから、当然そこでお金が足りなくなっているわけであります。その足りなくなっているお金を、今までの考え方は、引き受ける健全な会社が全部かぶる、負担をする、ひいては間接的にはそこに御加入いただいている契約者が全部それを負担する、こういうことでやってまいったわけであります。  しかし、現在、保険会社の規模というのはどの会社も非常に大きくなっておりまして、仮にそういったことが起きた場合に、いかに健全とはいえ、一つ保険会社が足りなくなったお金を全部カバーする、引き受けるということは非常に難しい状況になってきている。逆に言えば、そういうことであれば引き受ける会社が出てこない、こういう可能性もあるわけであります。  そこで、業界としては、任意の保護基金をつくって、業界各社がそれぞれ応分のお金を出し合って、そうして救済する会社へそれを寄附するとか贈与 するとか、そういうような形で当面の危機を乗り切ろう、こういう考え方に立っているわけであります。具体的には、生命保険業界としては、昨年の十二月にプロジェクトチームをつくりまして主要な論点について議論を続けてまいりました。主要な論点というのは、例えば金額をどのくらいにするかとか、あるいは負担金のあり方はどうあるべきか、あるいはこの保護基金の設立形態はどういう形態であるべきか、こういったようなことを検討してまいったわけであります。  二、三、例を申し上げますと、資金援助金額をどのくらいにするかということにつきましては、例えば他の業界でこのような任意の形の保護基金のようなものを持っている業界がございます、金融界の中に。そういうところの剰余金の中からの資金の拠出率といいますかそういったものを換算するとか、あるいは現在あります三十社の生命保険会社負担能力の状況はどのくらいが限度になるかといったような、いろいろな角度から検討いたしまして、一つ考え方としては、一経営破綻当たりに二千億円というものを上限として定めてはどうかという提案をしたところでございます。これについては、これをたたき台としてただいま業界の中で議論を進めている、こういうところでございます。  それから、負担金はどうするのか、事前に積み立てるのか、それともそういった拠出をする時期が来たときに事後拠出をするのか、一時で払うのか、分割で払うのか、いろいろなやり方があるわけですが、そういったものについてもいろいろなことを考えておりますけれども、これは実は税制が絡んでまいります。その税制の絡みについてはまだ御当局との交渉も全然行っておりませんで、この辺の絡みを考えながら、どちらかといえば事後拠出を基本に検討していくのではないかな、こういった考え方に今立っておるわけであります。  それから、設立形態につきましては、行政改革流れ、あるいは効率的な組織、人員といったものを考えますと、新しくそういった法人をつくって、そうして何とか基金というような法人をつくることも大事だと思いますが、むしろ現存している生命保険協会を使ってこの実務を行っていくことがより効率的ではないかなというふうに現段階では考えております。人員は協会員との兼務といったような形で、最小限な形で非常に効率のいい運営をやっていく必要があろう、こんなふうに考えているわけであります。  そのほか、まだまだ結論を出すためには細目についていろいろ必要なことは詰めていかなければいけないと思うのですが、これは保険業法改正案内容の御審議等を踏まえながら、検討を同時並行で行っていきたい、かように考えております。  以上でございます。
  41. 河野俊二

    河野参考人 お答えいたします。  保険契約者保護基金につきましては、現在国会審議に並行しまして細かい点を詰めていきたいというふうに思っておりますので、現段階での骨子ということでお答えさせていただきます。  この設立につきましては、契約者に基金に加入しているかどうかというものがわかるような何らかの手当てを講じたいというふうに思っております。そして、全社が加入するということを目指したいというふうに思っております。また、危うくなってから加入するとか、危ない会社があるから、そんなことはありませんが、脱退するとかということのないような対策も講じていきたいというふうに思っております。  次に、援助額につきましては、どの程度の規模の経営破綻が想定されるか、また各社負担力はどうかというようなことを勘案いたしまして決めたいと思っておりますが、現時点では三百億円程度というふうに考えております。  また、負担金の拠出方法でございますけれども、諸外国でも一般的に行われていますように、現実に破綻が起きた後で負担金を拠出する方法を考えております。負担金を各社でどのように分担するかにつきましては、営業の規模を示す保険料あるいは契約移転の対象となる責任準備金等を基準にして公平な基準をつくりたいというふうに思っております。また、各社が必ず負担金を拠出するということを確保するために、有価証券等を基金に預託させるというようなことも考えたいと思っております。  また、基金の運営につきましては、できれば損保協会で業務を行うということを基本にしたいというふうに考えております。  以上でございます。
  42. 北側一雄

    ○北側委員 時間が参りましたので終わります。  貴重な御意見を本当にありがとうございました。
  43. 尾身幸次

    尾身委員長 次に、岸田文雄君。
  44. 岸田文雄

    ○岸田委員 自由民主党の岸田文雄でございます。  本日は、参考人皆様方におかれましては、本当にお忙しい中この大蔵委員会に御出席いただいて、意見を聞かせていただきますことを心から感謝申し上げます。本当にありがとうございます。  私は、まず最初に、ソルベンシーマージン基準、これについてひとつお伺いさせていただきたいと思います。  最初に江頭先生にお話しいただければと思ってお伺いさせていただきますが、今回の改正におきまして、健全性、体力の指標としましてソルベンシーマージン基準導入されますことは、これは大きな意義があると思うわけでありますが、しかし、この意義の大きさは、このソルベンシーマージン基準というものの信頼性、あるいは保険会社リスクの大きさをいかに反映するか、実態をいかに反映していくかということにかかっていると思うわけです。  これは、ソルベンシーマージン基準の算式におきましても、想定されるリスクに力点を置くか、資本に力点を置くか、あるいは準備金に力点を置くか、それによりまして数字は変わってくるわけです。現在、この算式につきましては、大蔵省の方で欧米等の例を参考にしながら一応案をつくられ業界の方に提示されて、業界の方で今検討されておるということを聞くわけであります。  それで、今検討中ということであるわけでして、その数式については一般に公開されていないものですから、私自身、これがどうなるか、非常に関心を持つわけでありますが、江頭先生のお立場、第三者の立場として、今大蔵省あるいは業界の中で検討されておられますこのソルベンシーマージン基準の算式、これにつきまして注文なり御意見なりお考えがあればお聞かせいただきたいと思うのです。よろしくお願いします。
  45. 江頭憲治郎

    ○江頭参考人 ソルベンシーマージンの基準はどうあるべきかという御質問であります。これは実は大変難しい御質問でありまして、私、保険審議会総合部会の専門委員というのを三年ばかりやっておりましたのですが、このソルベンシーマージンの具体的基準につきましては、保険審議会総合部会の下に保険経理小委員会というものがつくられ、またその後は保険経理フォローアップ研究会というものがつくられて、そこで審議されていたわけであります。それで、私はそこに参加していたわけでもありませんし、またこれは正直言いまして、会計の指標でありますので、私は会計の専門家ではありませんので、細かく問題点を知っているわけでは実はありません。  ソルベンシーマージンの基準というのは、基本的には今岸田委員から御指摘がありましたように、分子に自己資本に属する勘定をとり、それから分母に保険リスクそれから資産運用リスクのいる。いろな指標をとり、その比率でもってソルベンシーマージンをあらわす。かつ、これも御指摘にありましたように、一番難しいのは分母の側のリスクをどう考えるかという点であるというふうに私も聞き及んでおります。  ただ、具体的にこれがどういうものであるべきであるかということにつきましては、今申しましたような技術的な問題でありますし専門外でありますので、正直言って、深く知っているわけではありません。  それから、先ほども申しましたけれども、このソルベンシーマージン基準というのはあくまで自己資本比率規制でありまして、これだけで完全に、健全性のパーフェクトな指標になるわけではありませんで、ほかのいろいろな指標とも組み合わせて健全性を判断していくことが必要なのであるというふうに認識しております。
  46. 岸田文雄

    ○岸田委員 続けてもう一つソルベンシーマージン基準のことでお伺いさせていただきたいと思います。  これは櫻井参考人河野参考人、お二方にちょっとお伺いさせていただければと思います。  今、江頭先生おっしゃったように、このソルベンシーマージン基準というものは大変難しい、算式の決定につきましても大変難しい問題を含んでおるわけです。ですから、いろいろ関係者の皆様方のお話をお伺いしますと、とりあえずこのソルベンシーマージン基準を決定して導入したとしましても、しばらくの間は試行錯誤を続けていくのだろうということをお伺いするわけであります。そしてそのために、当面はこのソルベンシーマージン基準というのは一般には公開されずに、大蔵省の内部において参考資料として使われるということをお伺いしております。  しかし、今回の法改正の大きな柱であります規制緩和ですとか健全性維持あるいはディスクロージャー、こういった大きな流れを考えた場合に、将来的にはこのソルベンシーマージン基準というものは一般国民に公開されてしかるべきものではないかということを私は考えております。しかし、試行錯誤の段階でいきなりこれを公開するということになれば大変な混乱を招いてしまう、業界に大変な混乱を来してしまうということも理解をされるわけであります。この辺の兼ね合いが非常に難しいと思うわけです。  これらの兼ね合いを考えた上で、公開のタイミング、時期、またいつごろそういったことが可能になるだろうか、そういったことを業界の方でどのようにお考えになっておられるか、お聞かせいただきたいと思うのですが、櫻井参考人河野参考人、お願いできますでしょうか。
  47. 櫻井孝頴

    櫻井参考人 お答えいたします。  ソルベンシーマージンの基準というのは、ただいま江頭先生からお話がございましたけれども、やはりこれを導入するという段階では、保険会社が引き受ける保険契約リスクとそれから資産運用のリスク、これが分母に来るわけでございまして、今までのように、契約は幾らでも引き受けた方がいいとか、資産は多ければ多いほどいいとかいうふうな経営のあり方、よしあしは別として、そういうものではなかなかこのソルベンシーマージンの改善というのはできないという方向になっていくのだろうと思うのです。  それから分子の方には、仮の数字としては、例えば株式とか土地の含み益のようなものが一部算入されるやに承っておりまして、こういったものがどのくらい内部にあるかというようなこともソルベンシーマージンの数字をはじき出す面でかなり大きな要素になってくるわけであります。そういった大変複雑な要因というものを公表した場合に、どれだけ御契約者理解していただけるかということが一つ問題になってくるだろうと思います。  それからもう一つは、ただいま江頭先生のお話の中に繰り返しございましたように、支払い能力という点からいうと、ソルベンシーマージンだけではない、例えば保険料収入とか解約の状況であるとか、あるいは資産の中身の健全性の問題であるとか、あるいは資産の流動性の問題とか、いろんなものを総合して初めて総合的な支払い能力というようなものを検討すべきだろうと思います。  それから、支払い能力という観点からだけ申し上げれば、必要な責任準備金を積んでいれば基本的には問題がないということになるわけでありまして、ソルベンシーマージンというのは、それ以上の支払い能力がどのくらいあるかということでございます。そういったものでございますので、ソルベンシーマージンが大きいから契約者還元力が物すごくあるというわけでも必ずしもないわけであります。  重ねて申し上げますが、そういったことを御契約者がどのくらい正確に御理解いただけるだろうか、こういう点が一つ危惧されるところであります。  仮に公表するということになると、当該基準が保険会社健全性を示すただ一つ絶対的なものだというふうに契約者皆様が誤解する可能性はかなりあるという気がするわけであります。そうしますと、比較的ソルベンシーマージンの基準が劣る会社の御契約者が、みずからの契約が危機的な状況にあると誤って御判断をされますと、大量の解約が出てくるというようなことも予想されるわけでありまして、かえって業界全体の支払い能力が低下するというふうなことがあるかと思います。したがいまして、ソルベンシーマージン基準は、あくまで行政監督上の指標というふうに位置づけるべきものであって、その開示については今後とも慎重に検討していただきたいと考えております。  なお、参考までに申し上げますと、アメリカでは、リスク・ベースド・キャピタルというソルベンシーマージン基準に相当するものがあるそうでございますが、これは、全米の保険監督官協会のモデル法によって、保険会社、ブローカーなどがこの比率について、水準を開示するということを禁止しているというふうに承っているところでございます。  以上でございます。
  48. 河野俊二

    河野参考人 お答えいたします。  先ほども先生からもお話があったように、今回初めて導入されるということでございますので、具体的内容については、施行後も行政当局による検証、検討を通じて定着を図りたいというふうに伺っております。したがいまして、この基準は、定着を図っていくということが重要であると思いますので、また、先ほどからお話があるように、この基準のみで保険会社健全性が判断できるものではないということから、契約者に無用の混乱を起こしてはいけないというふうに思いますので、慎重にいきたいというふうに思っております。  それでは一体いつになったらばということになりますが、将来の定着の見きわめにかかわるということでございますので、現在時点では申しかねるところで、御容赦を願いたいと思います。  また、先ほど櫻井さんも触れましたが、海外でもこの点は公表していないというふうに我々は理解しております。  以上でございます。
  49. 岸田文雄

    ○岸田委員 ありがとうございました。  時間がなくなってまいりましたので、最後に一つ契約者保護基金につきましてお伺いさせていただきたいと思います。  今回の法改正の大きな柱としまして規制緩和というものがあるわけでありますが、規制緩和自由化を進めるということになりますと、それとともにリスクの増大ということが当然出てくるわけでありまして、リスクが大きくなりますと関係者の自己責任の原則というものを考えていかなければいけない、これは当然のことだと思うわけであります。  今回の改正におきましても、規制緩和によりまして競争促進される、それによってリスクが大きくなる、そのリスクを回避するという意味合いから契約者保護基金というものを考えておられると思うわけであります。保険会社がそれぞれの負担でこの基金をつくられて、それぞれのコストでリスクを回避しようという動きにつながっているんだと思うわけであります。いわば、保険会社自己責任の原則を追求された一つのあらわれだと思うわけです。  しかし、今回の法改正の精神を追求して規制緩和を推し進めるならば、単に保険会社自己責任の原則を追求するというところでとどまっていていいのかなということを私自身考えるわけであります。契約者自己責任という部分にまで触れる必要がないのだろうかということを考えるわけで あります。  特に、昨今の日本社会を見ておりますと、先日の東京の二つの信用組合の問題にしましても、金融機関の責任追及とともに、預金者の自己責任の原則をどこまで追求して、どこまで責任を負わせるか、それによって救済方法がどうあるべきかということが論じられておるわけであります。それと同じようなことが、今回のこの法改正においても考えられるべきではないのかなということを思うわけであります。  契約者自己責任の原則の追求というものは、一遍にやるということはなかなか難しいというのは理解できるわけでありますが、一応今回の法改正においても、その部分についてどのように考えたらいいか、どのように考え方を整理したらいいかということは頭に入れておかなければいけないと思うわけであります。  今回、契約者保護基金の設立に当たって、とりあえず保険会社負担によってこの基金をつくるわけでありますが、そのコストを最終的には契約者に転嫁する必要があるのかどうかということが具体的に考えなければいけない部分ではないかと思うわけであります。今回、契約者保護基金の設立にかかりますコスト、これは保険会社の中で吸収してしまうものなのか、それとも全額契約者に転嫁するつもりなのか、あるいはそれぞれ折半される、分担されるおつもりなのか、その点につきまして、具体的にはまだまだだと思うのですが、考え方を教えていただければと思うわけであります。  これは、櫻井会長さん、河野会長さん、それから大変恐縮なんですが、猪口先生、ちょっと質問時間がなくなってしまったものですから、この点につきまして御意見があれば加えていただければと思います。よろしくお願いします。
  50. 櫻井孝頴

    櫻井参考人 お答えいたします。  確かに、ある保険会社が破綻をした場合に、その会社を選択した契約者自己責任があるじゃないか、こういう理念、これは否定するものではございません。しかし、先ほどから申し上げておりますように、生命保険契約というのは非常に長い契約でございまして、例えば二十年前に御加入になった契約者に、そのときは大変いい会社だった。しかし二十年たってみたらいろいろな事情があって経営破綻が起きたといったような場合に、自己責任を問えるのかといったような問題、細かいことを申し上げるとなかなかこれは仕切りが難しいなという感じがしております。  しかし、この保険契約者保護基金ですべての破綻を救えるかということになりますと、これは、突発的に大きな破綻が起きた場合に、資金援助金額にはおのずと限度があろうかなと思いますので、今回の保険業法改正案においては、制度的には包括契約移転、合併時の任意の保険金削減というものが規定されるわけでありまして、そういった点で、最悪の場合には、その意味でやはり契約者自己責任というものがある程度追及されるということはあり得るというふうに理解をしております。  さらに、ただいまの、負担金を保険料の中に転嫁すべきではないか、契約者からちょうだいすべきではないかということでございますが、これは、例えば各社事業費を削減するといった経営努力によって捻出すべきだという考え方もあるわけでございまして、一方、その制度導入による受益者は会社ではなくて御契約者ですから、これは保険粋の設定に当たって幾ばくかの御負担を求めるのが筋だという考え方もあるわけでございます。  現在この点については検討を始めた段階でございまして、皆様方の御意見を承りながら業界の中で議論を進めてまいりたい、かように考えております。  以上でございます。
  51. 河野俊二

    河野参考人 お答えいたします。  契約者保護基金の創設の目的というのは、契約者保護保険制度信頼性維持という二つにあるということは先ほどお話しのとおりでございますが、諸外国でも、米国のNAIC、保険長官の構成される団体でございますが、そのモデル法には保険料への転嫁が規定されておりますが、ニューヨーク州、カナダ、イギリスでは保険料への転嫁というものが規定されていないということで、区々でございます。  損害保険業界では、現在のところ、現実に破綻が起こった後に負担金を拠出する事後拠出の方法を中心に考えておりまして、コスト負担につきましてもまだ十分な論議を行っておりません。今後、諸外国の例も参考にして引き続き検討をしていきたいというふうに存じます。  以上でございます。
  52. 猪口邦子

    猪口参考人 つけ加えることもさほどないのでありますけれども、この保護基金の原資といたしましては、やはり経営効率化によってそれを賄っていただくということを国民としては希望したいと思いますが、ある程度自己責任が今後は国民の側、契約者の側に回ってくるということも、自由化を打ち出している以上はやむを得ないというふうに考えます。  ただし、これから日本社会もかなりの高齢化社会に移っていきますし、そういう意味では、例えば高齢者の側における情報収集力等に場合によっては非常に制約があるということも考えましたり、あるいは、先ほど述べましたとおり、アメリカのようにすべて自己責任を前提として、アット・エア・オウン・リスクでいろいろ判断しなさいという長年の社会風土がある国とは我が国は違いますので、その点においては、やはり契約者自己責任ということも余り一気に極端に推し進めることは適当ではないというふうに考えます。  以上でございます。
  53. 岸田文雄

    ○岸田委員 時間が参りましたので、以上で質問を終わらせていただきます。  きょうは本当にありがとうございました。
  54. 尾身幸次

    尾身委員長 次に、濱田健一君。
  55. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 時間がございませんので、早速猪口参考人から御意見をいただきたいと思うのですが、先ほどからお話があっていますとおりに、今回の法案につきましては、規制緩和自由化をその目的にしているわけでございます。そして、子会社方式によって生損保の相互参入ができることとする、このような措置を講じているわけですが、他の業種、銀行や証券というここの部分は認められていないと。  先ほど、ソルベンシーマージンの定着度等を見ながら、これも将来に向けて規制緩和自由化の方向性は審議会の中でも出されているということでございますが、どのような条件が整うようになったらこれらの規制緩和の方向性も認める時期が来るのかどうか。その辺、御意見をお持ちでしたら御披露いただければと思うのです。
  56. 猪口邦子

    猪口参考人 既にさっきの質問等でも一部お答え申し上げましたが、私は、保険と他業態の相互参入につきましては、既に答申でも指摘がありますように、やはり基本的には早期実施ということが望ましいと思います。ですから、先ほども申し上げましたが、次回の法改正のときにおきましてはぜひ必要な整備をとられることが望ましいというふうに思います。  そしてそのタイミングは、これも審議会報告で書きましたとおり、やはりまずは保険制度の今回のこの大きな自由化ということの定着を見きわめた後にということで、一気にすべての、万能の改革を信じた時代から、先ほど申し上げましたとおり、やはり等身大の改革を地味ではあっても積み重ねていくというそういう改革方式の方が、これからの時代、特にこの分野においては望ましいのではないかという感じがいたします。  で、ソルベンシーマージン比率等については、これは先ほどいろいろと御説明もありましたとおり、これの公表等については、契約者がそれをどういうふうに理解できるかという問題、それについてやはり時間がかかるであろうと思われること等を考えますと、社会に誤解が発生する、例えばそれの順位で会社経営の優劣が一気に決まっているのではないか、それを意味しているのではないかというような誤認があると非常にいけません ので、ソルベンシーマージンの比率については導入することになると思いますけれども、その公表ということは、いつということ自体を今のところ私としては特に考えているということはなくて、これは公表する性格のものかどうかということについても十分な議論が必要であろうというふうに思います。
  57. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 これも同じような内容なんですけれども、第三分野への参入なんですが、やはり消費者契約者としては、この激変緩和の部分で大手の保険会社の参入が棚上げされているという状況が今回の法律の中ではあるわけですが、これも同じような御意見になるのかもしれませんが、どのような条件が整えば規制緩和として許される時期が来るのかなと。  よろしければお願いしたいんです。
  58. 猪口邦子

    猪口参考人 いわゆる第三分野という分野でありますね、傷害だとか介護の分野で。これについては、その答申でも述べられておりますとおり、経営環境の急激な変化、これをやはり緩和しながら検討しなければならないということ。特にこの分野、既によく御承知のとおり、外国保険業者がかなり入っておりますし、また中小の保険が多いわけで、そういう分野へのこのような中小及び外国保険業者の依存度が高いということ等を考えますと、やはりこの激変緩和措置ということは当面やむを得ないというふうに思います。私としてもです。  いつかということについては、まず、そのような第三分野に該当するような保険社会ニーズというものがどこまで今後出てくるだろうか、それから、そのような既にそこに参入しておられる会社外国保険業者も含めてどの程度の競争力を確保できるような体質になっているだろうか、そのような両サイドの方向から検討して見きわめていくことが必要だろうというふうに思います。  また、これは外国保険業者も入っておりまして、日米包括協議等の中の合意として、合意といいますか、その決着内容に沿う形で今回取り決めたというふうに私理解しておりまして、やはりそのような配慮というものも、これからの国際関係を考えますときにやはり非常に重要であるというふうに考えます。
  59. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 もう一点、済みませんが、猪口先生に。  ソルベンシーマージン、いわゆる自己資本比率を導入するに当たっては、行政の内部的監督指標として位置づけられておりまして、数値は公表しないということでございます。  これも先ほどの質問と少しダブるんですが、やはり規制緩和自由化という方向性を模索するのであれば、消費者契約者自己責任原則の前提として、客観的な数値をディスクローズして、各人にこれを契約するかどうか、この保険会社契約を結ぶかどうかという判断基準を与える方向性というのが大事だろうというふうに思うのですが、その辺いかがでしょうか。
  60. 猪口邦子

    猪口参考人 既に江頭先生が随分御説明されましたとおり、経営状態というのはソルベンシーマージンだけでは決して把握できるものではない。むしろかなり総合的な指標によって、あるいは判断によって考えられなければならないということで、ソルベンシーマージン、これは数値で出てくるわけですから、そういう意味では非常にわかりやすいし、優劣を一気につけやすいものであると思います。  それで、もしそれがまた、直接的に例えば会社経営の優劣を意味しているものであるというふうな受け取られ方がされますと、まあ、そういうことはあるかないか、ないような契約者の側の成熟があるというふうに信じたいとは思いますけれども、しかし、それを見て、非常に極端な場合資金シフトが一気に起こるとか、そういうことが発生しますと、やはりこの分野全体の秩序に大きな揺らぎが発生するのではないか、不必要な混乱を業界サイドにも招くことになるのではないか。  そういうことを考えますと、また諸外国などで、既に紹介がありましたけれども、アメリカの場合はそれは公表をしていないというのが基本原則でありますので、先生のおっしゃるとおり自己責任には情報が必要であり、その情報は提供されなければならないという基本原則はありますけれども、その情報はかなり包括的に、バランスよく提供されなければならないし、それを分析する、理解する能力というものも高めなければならないという、これのタイミングとテンポとバランスが非常に肝心であると思います。  ですから、そういうふうなできるだけ全般的な情報開示あるいは規制緩和という一つの方向性は、今回の法改正でも全般的といいますか基本的な方向性は出ておりますが、具体的にどういうバランス感覚でそれを実行していくかということは、今回のこの改正だけではなく、今後連続的なプロセスとしてその定着ぐあいを皆さんで見守っていくということをお願いしたいと思いますし、また国民サイドもその責任があろうというふうに理解しております。
  61. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 江頭先生に御意見をいただきたいのですが、機関投資家としての巨額の資金を運用して、金融市場に大きな影響力を持つ保険会社です。その資金運用が、今回のソルベンシーマージンの導入によって、数値基準の達成を重視する余りに、リスクウエートの軽いもの、例えば国債ですね、それらの投資への偏重、逆にリスクウエートの重たいもの、証券とか株式とか米国債、これらの投資への抑制の制約を受けるのではないかというようなことも考えられるのですが、そしてまた、株式市場や為替市場に対する影響というのも、その運用のやり方によっては大きく市場を揺り動かしていく。これらは可能性としてはどういうお考えを持っていらっしゃいます。
  62. 江頭憲治郎

    ○江頭参考人 御指摘の点は、いわゆる自己資本規制の欠陥といいますか、そういう点から指摘されているところであると思います。つまり、ある指標ができますと、それに合わせるために、先ほどおっしゃいましたようなある特定の投資物件に偏るとか、そういう問題は従来から指摘されているところかと存じます。  したがいまして、私としましては、重ねて申しますように、ソルベンシーマージンというのは単なる一つ指標にすぎず、健全性をあらわす他の諸指標を総合的に見ていくべきものであろう。また、主務官庁による保険監督もそうあるべきであろう。そして、総合的に見るということになりますと、非常にデリケートな判断が必要になりますので、改正法案はそれを特に保険計理人の役割期待しているのではないかというふうに私は理解しております。
  63. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 時間がございませんので、最後に一問だけ、櫻井参考人に御意見をお伺いしたいのですが、四月二日付の読売新聞に、平均株価が九四年九月末の一万九千五百六十三円から九五年三月末には一万六千百三十九円に落ち込んだことで、生保各社の含み益は軒並み減少、大手八社合計では、九四年九月未の十一兆六百七十九億円から四兆四千五十億円と、約四〇%の水準まで落ち込み、大手三社については既に含み損を抱えているというような内容の記事が出ているわけです。  株式市場の下落による保有株式の含み益減少及び円高による外国証券投資の為替差損、これらが保険会社経営契約者保険料等に及ぼす影響についてどのように考えていらっしゃるか、もし御意見がございましたら。
  64. 櫻井孝頴

    櫻井参考人 生命保険会社は、従来から株式を総資産の一五%から二〇%の間ぐらいで保有をしておるわけでございまして、その規模は、東京証券取引所の規模で申し上げると、東証に上場されている株式数の約一二、三%ぐらいではないかなというふうに考えております。それがかなり大きな投資軍団であることには間違いがないわけであります。  資産の運用に当たっては、安全かつ有利に運用するということは当然のことですが、しかし、金融仲介業という商売ですから、リスクをとれないお客様から保険料をお預かりして、銀行も同じですが、それでリスクをとって、そしてその利ざや を還元する、こういうのが本来の金融仲介業の仕事でございますので、全くリスクをとらない資産運用というのはあり得ないわけであります。  そういった面から、従来からも、今申し上げたような株式の運用であるとか海外の債券投資といったようなものをやってまいりました。これは、今御指摘のとおり、最近の円高や長引く株価の低迷といったようなことで少なからず影響を受けておるわけでございまして、こういったものが保険会社のさらなる事業合理化といったような方向に向けられているわけであります。  しかし、こういう枠組みの中で生命保険業が約百年間仕事をしておりますので、これから先どんどん株を売って、未来は株は持たないよとか、あるいは海外投資は一切やらないよとか、そういうわけにはまいらないだろうと思うのです。海外投資についても、国内に蓄積された黒字を海外に還流するというものの一つの有効なパイプであることには間違いがないわけでありまして、それはやはり、今申し上げたような株価の低迷や円高というものの環境の中で、よく経営の先行きを見きわめながら適宜投資を行っていかなければならないだろう、かように考えております。  東証上場の一二、三%を持っているということ自体が、やはり資本市場の資金調達の枠組みの中に生命保険業が既に大きな存在として組み込まれているという事実でございますので、それを一挙に全額売ってしまうというようなことはとてもできるわけでもないし、そういった判断というものは、あくまでも日本経済全体の流れ金融環境の全体の流れの中で、一方で経営健全性を追求しながら応分の投資を行っていきたい、かように考えております。  以上でございます。
  65. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 どうもありがとうございました。
  66. 尾身幸次

    尾身委員長 次に、五十嵐ふみひこ君。
  67. 五十嵐ふみひこ

    ○五十嵐(ふ)委員 さきがけの五十嵐ふみひこでございます。  前略でやらせていただきますが、今度の保険業法改正、私は、規制緩和を進めることによって新たなビジネスチャンスを拡大するという意味で、このような金融面での規制緩和、ぜひ必要だろうと思っておりますが、それには前提として、先ほど来語が出ておりますけれども自己責任原則の確立というのが一つは必要だろう。もう一つは、公正な取引、ディスクロージャーも含めた公正な取引というものが、やはりこれは確保されなければならないだろうという二つの側面があると思います。  公正な取引という面からいきますと、一つはディスクロージャーの問題が大きいのですが、日本保険業界は過当競争という側面を、一方ではもう既に持っているわけでございます。これが子会社による相互参入、それから外国への開放という意味でさらに進む可能性も、一方では、ビジネスチャンスの拡大とは別に出てきかねない。いわゆるダンピングというものが出てくる。  そうすると、やはり公正取引委員会をどう使うかという問題も出てくるのでしょうけれども、ダンピングを助長しないかという心配、反ダンピングといいますか、ダンピングをどう防ぐかという問題も出てくるのではないか。これはひいては契約者保護にもつながってくるのではないかと思うのですが、その点について両参考人櫻井参考人河野参考人のお考えを伺いたいと思います。
  68. 櫻井孝頴

    櫻井参考人 保険業界は過当競争であるという御指摘でございますけれども、むしろ今回の規制緩和、相互参入という形で、新しい需要を喚起するという面も少なからず出てくるのだろうと考えております。  それから、今までのような、人口が増加をし続けて、常に新たに保険に入る若者が少しずつふえていく、こういう時代ではなくて、高齢化社会といいますか、人口の伸び率は横ばいあるいは何年か先には下がってくる、比較的高齢者がふえる、こういう人口構成の変化というようなことも、これからの保険業界としては注意深く見ていかなければいけないのだろうと思います。  そういった中で、これからの保険業界というのは、お客様が今までは生存保険とか死亡保険とかいったような比較的簡単な保険に御加入いただいていた段階から、医療とか介護とか傷害とか、いろいろ非常に細かい分野への保険の開発とそれのお勧めという形で、諸外国の、例えば高齢化社会に突入した諸外国保険事情といったものも調べてみますと、それはそれなりにやはり保険発展をしているわけであります。  それから、これからの、例えば公的資金を使った公的な年金とかあるいは介護等も御検討をいただいているようでございますが、そういったものについては、やはりそれにすべてを依存するのではなくて、豊かな老後というものは、国民皆様がそれにどれだけオンして、自助努力で、公的ないろいろな援助というものに上乗せすることができるかということで、むしろこれからいろいろな面での、損害保険生命保険も新しいニード、それから保険の販売というものはこれからもっと伸びていくという期待もあるわけでございまして、そういう中で閉塞状況の中におけるダンピングというようなことは、余り私は考えなくてよろしいのではないかな。  それから、料率については、一部届け出制という御判断があるようでございますけれども、あくまでも、今五十嵐先生御指摘のように、契約者保護に著しく問題が起きるようなものについては、届け出制ということよりもむしろやはり認可制というものを貫かれるというふうに理解をしておりますので、業界としては、当然のことながら、こういった過当競争によってお客様に御迷惑がかかることのないよう十分の配慮をしてまいりますが、それと同時並行して、やはり保険料等の算定については、お客様に御迷惑のかからないようなお考えで御認可をいただくなり届け出制を進められるなりしていただければよろしいのではないか、かように考えております。  以上でございます。
  69. 河野俊二

    河野参考人 御指摘のように、損害保険の場合には、相当期間経過しないと原価が出ないというような面もございまして、価格のダンピングというのが行われやすいというのは、他の商品にはない特性であろうというふうに思います。そのために、洋の東西を問わず、保険会社間の過当競争というのが繰り返されている歴史があるわけでございますが、我が国においても、保険契約者、特に先ほど御指摘のように個人契約者自己責任意識はまだまだ十分とは言えないのではないか。  したがって、今回の法改正におきましても、契約者保護等に十分配慮した上で段階的、漸進的に規制緩和が行われることになっておりまして、そういう意味では、私どもとしては大変望ましい方向であるというふうに評価しておるところでございます。  以上でございます。
  70. 五十嵐ふみひこ

    ○五十嵐(ふ)委員 公正な取引という意味ではディスクロージャーが大切だということを先ほど申し上げましたけれどもソルベンシーマージン基準についてはなかなか公表できないという事情はよくわかりました。  しかし、一方で、例えば日本金融界についてはディスクロージャーがまだ足りないと一般的に指摘をされております。現在進んでいる土地デフレ、資産デフレでございますけれども、これについても、保険会社の子会社についても、かなり不良資産を抱えている、それが公表されていないじゃないかというような指摘もあるかと思うのです。  保険会社のディスクロージャーについてどのようなあり方を求めるか、ソルベンシーマージンは出せないとしても、それではどのようなものを求めていくのかという点について、江頭先生にお話を伺いたいと思います。
  71. 江頭憲治郎

    ○江頭参考人 先ほど来、ディスクロージャーが契約者自己責任の前提ではないかという御指摘がありました。それはまことにそのとおりであろうというふうに存じます。それで、この法案につ きましても、ディスクロージャーに関しましては銀行法に類似した規定が盛りまれまして、ディスクロージャーの強化ということは図られる方向にあるというふうに考えております。  そして、先ほど来、ソルベンシーマージンを公表すべきかどうかという議論が出ておりますけれども、これは先ほど来各参考人の方からお話がありましたように、これが唯一の健全性指標だと誤解されるという懸念もありますので、私もこの公表は慎重にすべきだというふうには考えます。  それではどうすればいいのかということになってきますが、日本社会制度というのは、非常に政府に対する信頼が強いといいますか、何でも政府に、ディスクロージャーの面でも頼ろうとするという面はあるのではないか。やはりこういう点は、社会全体が変わっていかなければいけない面はあるのではないかという気はしております。そういう面があるから、政府がソルベンシーマージンという規制導入すると、そればかりが重視されるということになるのではないか。  アメリカなどでは、私の聞いておりますところでは、例えば生命保険会社に格付というのが結構普及しているようでありまして、これは格付ですから、民間の格付機関がそれをするということであります。日本でも、最近は社債の格付というのは一般化してきましたけれども、政府のお声がかりでないそういった形のディスクロージャーというのも、今後発展していく必要があるのではないかというふうに考えております。
  72. 五十嵐ふみひこ

    ○五十嵐(ふ)委員 貴重な御意見、ありがとうございます。  そこで、自己責任原則という話になりますと、ブローカー制度との関係がちょっと心配になってくるわけです。ブローカーが要するに契約者にとって一番いいものをお勧めするというのではなくて、自分にとって、ブローカーにとってマージンが高いものを勧めるようなものが起きないかという心配が一つあるわけですが、これに対しては、ベストアドバイス義務というのが付されるようでございますけれども、そういうトラブルが心配になる一方で、契約者保護は当然として、何でもかんでもブローカーがいけないんだということになって、逆に契約者自己責任原則があいまいになってくるおそれというものも、その兼ね合いが難しいのですけれども、起きてくるのではないか。その辺のところを猪口先生にお伺いをしたいと思うのですが、どういうふうに考えたらよろしいでしょうか。
  73. 猪口邦子

    猪口参考人 今回のこのブローカー制度導入によって、これが国民の中で広く理解されるように、まずそういう啓蒙活動といいますか、実際の仕事の定着ということを見ていかなければならないと思います。また、自己責任についても、ブローカーの責任契約者責任、そして事業者の責任ということをきちっと分けて考えられるような、そういう広い意味での啓蒙活動、それから日本社会におきます、今後自由化規制緩和していく中で、個々の市民がどのような責任をとりまたどのような情報収集する責任を持つのかということを学習していくということではないかと思います。ですから、そういう大きな歴史の変化の入り口に立ったのではないか。  その意味では、事業者だけでなく、あるいはこの改革にかかわるいろいろな方々だけでなく、ある種の市民の情報責任それから自分の判断責任ということを向上させていく、そういう大きな変革の中のこれは一部の変革であるというふうに理解しております。
  74. 五十嵐ふみひこ

    ○五十嵐(ふ)委員 ありがとうございます。  ブローカー制度が成熟するまでの間、やはりいろいろなトラブルや苦情というものが起きるのではないかということが予想されるわけでございます。ブローカー協会というのをつくるという案もあるかと伺っているわけですけれども、それが成熟するまで、ブローカーの皆さんが資格を持って集まってくるまでの間はやはり数の少ない期間があるわけで、その間、損保協会なり生保協会なりがその間をつなぐような、苦情処理といいますか相談窓口といいますか、そういうことはお考えがあるのかどうか、協会のお二人の会長さんにお伺いしたいと思います。
  75. 櫻井孝頴

    櫻井参考人 お答えいたします。  生命保険協会は、現在保険契約に関する相談窓口等を設けでいろいろな苦情の御相談等に応じているわけでございますけれども、ブローカーについては、その性格上、現状では保険会社が十分に管理できないという状況でございますので、それに関する苦情や相談の対応については、現在では生命保険協会が行える体制ではないというふうに考えております。  ただ、今五十嵐先生御指摘のとおり、ブローカー制度が成熟するまでの間の保険契約者の保護という点から見るとやはり必要ではないか、こういうお考えもごもっともでございまして、この点については今後検討していきたい、かように考えております。  現在のところ、ブローカーの資格試験制度、これに関しましては、生損保協会が現行の募集人等に関する試験制度をもとに協力するといったようなことは十分考えられるというふうに考えております。  以上でございます。
  76. 河野俊二

    河野参考人 現在のところブローカー協会はございませんし、そういう意味では、何かつなぎが要るのではないかという先生の御指摘はごもっともだと思います。  ただ、先ほどの櫻井さんのお話にもあるように、保険会社の協会というものがこのブローカー協会の苦情を受けるということも多少問題があるというふうに思います。ただ、先ほど櫻井さんも後段で言われたように、ブローカーの教育とか資格試験とか、そういうものについては、損害保険協会のノウハウを、役立つ部分がございますので、ぜひ協力をしていきたい、そういうふうに思っております。  以上でございます。
  77. 五十嵐ふみひこ

    ○五十嵐(ふ)委員 まだまだいろいろ、例えば農業の共済あるいは全労済との関係、イコールフッティングの問題、税制上の問題、それから第三分野の問題等々、いろいろな問題がございますし、また先ほど江頭先生がおっしゃいましたように、救済会社が出てこなかった場合どうするかという、今の二倍組問題のような問題もあるかと思いますが、時間がなくなりましたので、同僚議員に譲って、今回の質問はこれで終了いたします。  ありがとうございました。
  78. 尾身幸次

    尾身委員長 次に、佐々木陸海君。
  79. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 日本共産党の佐々木陸海でございます。時間が限られておりますので端的にお答え願いたいと思いますが、端的な質問をさせていただきたいと思います。  最初に江頭先生と猪口先生にお聞きしたいと思います。  今度の法案では、保険業の公共性ということが明確にうたわれております。高齢化社会進展とかあるいはいろいろなリスクの拡大とかいった面からいって、ますます保険というものが国民にとって大事なものになってきているという意味で、この公共性がうたわれるということは大変当然なことだと思うのですが、その公共性をうたいながら、同時に、それを保険各社商品料率自由化とかあるいは資産の運用の自由化とかいう、企業間の言ってみれば競争によって実現していこう、さらに進めていこうという、率直に言いまして一つ大きな矛盾を最初から抱えているようにも思えるわけです。アメリカの例なども出されましたが、これは、性急に進めたからああなったという面も確かにあるかもしれませんけれども、もっと内在的な、本質的な矛盾というものもそこにあるのではないかというふうにも私には思えるわけです。  ですから、そういう、自由化の方向をさらに進めて保険業が銀行業やあるいは証券業、こういう方向にも進んでいこうという、一時は目指されていたような方向、ちょっと今度の法案ではその方向になっておりませんけれども、そういう方向に まで進んでいくことを、この公共性という観点から見ても積極的に足とされるのかどうか、その点についてのお考えをお聞かせ願いたいと思うのです。
  80. 江頭憲治郎

    ○江頭参考人 御指摘の点は大変重要な点だというふうに思います。  公共性につきましては、先ほど来私申しましたように、保険というのは弱者救済の要素がありますし、それから実質経済的には第三者のために掛けているというような点を考えまして、公共性というのは非常に大切であろうというふうに考えております。しかしながら他方では、そうした伝統的な保障ニーズのほかに、最近は貯蓄ニーズというものへの国民ニーズも増大しているというふうに理解しております。例えば年金等のニーズがそのあらわれであります。したがいまして、そうした収益性の要求も無視できないところから自由化という問題が出てきているのであろうというふうに理解しております。  この自由化公共性のバランスというものが非常に大切であるということは、私も非常に痛感するところであります。
  81. 猪口邦子

    猪口参考人 江頭先生の今のお答えで尽くされているかと思いますけれども、私は、日本のこの分野の制度は、他の民主主義国と比べましたときに、かなり弱者救済それから契約者保護ということに、非常にそれを重要にとらえ慎重に改革を進めようとしているように見受けております。  それで、先生の御指摘のとおり公共性の重要性は当然あるわけでありまして、自由化の進め方にしても、例えば商品料率自由化等も、まずは企業物件等々から徐々に進めていくというような判断の余地がとれる内容にもなっておりますので、比較的慎重に自由化を進め、最も重要な点はやはり最も弱い人々が必ず守られるという社会であるというふうに考えております。
  82. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 櫻井さんと河野さんに次にお伺いしたいと思います。  先ほど櫻井さんは、バブルの時期から今日に至るまでの時期に天国と地獄を業界は体験したということを言われました。この天国と地獄は、何か回り灯籠のように自然現象として来たわけではないという面もあるわけでありまして、天国の時代業界がはしゃぎ過ぎて少し羽目を外したという問題もあろうかと私には思えるわけです。私などの体験したところによりますと、変額保険の被害者などの切実な声も随分聞いておりますし、そのバブルの時期の業界の対応という問題について今業界がどう考えておられるのか、それについての反省といった点ほどんなふうに考えておられるのかということをお伺いしたいと思うんです。  先ほど来語も出ておりますように、バブルの時期には、皆さん方の業界は銀行業や証券業にも早く参入させるというかなり意気高い進軍ラッパも鳴らせていたかのように思えるんですが、先ほどからの御意見によれば、今度の法案の方が大変妥当な線だというふうにも言っておられるわけですけれども、そこは何か条件が変わったからというだけでなくて、みずからの業界の反省としてもそういう問題があってしかるべきだというふうに私は思うんですけれども、その辺の反省という観点ほどんなところがあるんでしょうか、お聞かせ願いたいと思います。
  83. 櫻井孝頴

    櫻井参考人 お答えいたします。  天国と地獄という言葉は大変文学的な言葉でございまして、この場にはそぐわない発言だったかもしれませんが、具体的に申し上げますと、八九年の十二月末に我が国の株価は最高値をつけました。この三月三十一日に近年にない安値になったわけでありますが、その間に、例えば私ども会社の株式の含み額というものは十分の一近くに減少しているということでございます。  こういったものを全く防ぎ得なかった責任というのはいかがなものかということでございますが、やはり生命保険業界というのは、例えばことしの三月末で資金量が百八十兆ぐらいになるわけでございまして、それ自体が金融界の中での一つの大きな仕組みとして、あるいは存在として来ておりますので、例えば、八九年の十二月末に株が最高値であった。じゃそこで株を全部売っちゃってそれで大もうけしようかというようなことは、それ自体が証券市場に大きな混乱を及ぼすというようなことが起きるわけでございます。そういったことから、ちょっと機敏に身動きができないという業界になっているということは事実でございます。  しかし、それは長期的に見れば金融界の安定、信用の維持ということにつながっているわけでございまして、その間における、自然現象ではないバブルの崩壊についてどういう責任を感じるかという非常に難しい問題でございますが、個別の各社の中では、例えば契約者配当の減配というような形をとっているわけで、これは責任をとったことにならないといえばそれまでの話ですが、現実にその減配した額というものは、我が国の市中金利の低下、それに伴う運用利回りの低下という、生命保険業界だけではどうにもならない一種の経済現象の中で、その利回りの低下に伴う減配をせざるを得なかった。  この間に、例えば銀行の預金金利も随分低下しましたし、長期信用銀行の金融債の利回りも随分低下したということでございまして、その中にあって生命保険業界だけがウルトラCの運用をするということはほとんど不可能であります。そういった面から、責任を全く逃げるわけではございませんけれども、やはりここは日本経済全体の流れの中で避けられない天国から地獄への業界環境変化というものがあったということはあろうかと思います。  しかしこれを、業界は個別に、例えば経営者の給与の削減であるとかあるいは賞与の削減であるとか、個別な対応をしてこられているようでございますが、従業員へのしわ寄せという形で行ってきたというようなことはないと思います。  先ほどちょっと御質問があったように、自由化を進めるとか競争の激化を促進するとか、規制緩和を行うということの反面、契約者の利益にならないのではないかという面と、もう一つは、そこに働く人間にとってどうなんだという問題が出てくるんだろうと思いますが、現実に生命保険会社が大量の従業員の退社を求めるというようなことはまだ起こっておりませんし、むしろ仄聞するところによれば、新たにお入りになる職員についての入り口の少し採用人員を減らすというようなことは行われているようでございます。  それから、システム化を推進するとかあるいは店舗の統廃合といったようなことによって業務効率の改善に努めているというところでございまして、そういった問題は、むしろ生命保険業界全体の雇用の問題というよりも我が国全体が今直面している産業構造の変化、雇用構造の変化、こういうものの中での一環としてとらえるべき問題ではないかな、かように考えておる次第でございます。  以上でございます。
  84. 河野俊二

    河野参考人 お答えいたします。  バブル時代における金融機関の責任という御指摘でございますが、これは基本的には各社の投融資に対する姿勢というものの業務運営の問題ではございますけれども金融機関の一翼を担っている損保業界としては、今回の経験を糧にしていきたいというふうに考えております。  以上でございます。
  85. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 今回の法案で定められている一つの問題として、これが競争が激しくなって、場合によってはつぶれる会社も出てくるという場合にも、会社はつぶれても契約者は救済するということもお話に出たわけですけれども、これはもちろん極端な例でしょうけれども櫻井さんのお話の中にはリストラを進めているという話もありましたが、今櫻井さんの話にも少し出ましたけれども、今後のこの法案の方向への対応の問題として、何よりもそれぞれの業界、自分たちの会社で働いている、自分たちのところの労働者の安定とかいったような問題についてはどう考えていらっしゃるのか、ちょっと見解をお伺いしたいと思います。
  86. 櫻井孝頴

    櫻井参考人 ただいまちょっと申し上げましたことで尽きておると思うんですが、やはり会社経営というのは、まず契約者が一番大事、これは間違いがないわけですが、それと同時に、会社自体の健全性、存続の問題、それとそこに働く職員の方々のいってみれば雇用の安定ということが大事なんだろうと思います。それは今までも、どの会社もそういった観点経営を進めてこられたと思いますし、今後もその点については十分の配慮をしながらやっていかなければならない、かように考えております。  以上でございます。
  87. 河野俊二

    河野参考人 経営の根幹というのは、やはり従業員にあるわけでございまして、従業員の働きというものによって会社は成り立っておるわけでございます。また片っ方においては、営業というものは、お客様といいますか契約者によって成り立っておるわけでございまして、我々はそのどちらということではなくて、両方に対しましてそれぞれの立場で努力をしてまいる所存でございます。  以上でございます。
  88. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 もう時間もないと思いますけれども、最後に櫻井さんにちょっとお伺いしたいと思いますが、ブローカー制度の問題で不安、懸念が多いということも言われました。私もその不安や懸念を覚えるものでありますし、それから一社専属制の緩和の問題についても、櫻井さんは個人的には余り賛成でないというようなニュアンスの発言もおありだったと思いますが、そういった制度が今度の法律で導入される、その理由や背景はどういうふうにお考えになっておられるのか。つまり、御自身、懸念が多いとか賛成できないとかいうようなものについて、結構であると言われるその理由は何かをお聞かせ願いたいと思います。
  89. 櫻井孝頴

    櫻井参考人 一つは、やはり御契約者というか、これから保険に入る方々の利便性という点からいって、この規制緩和自由化は推進しなければならないと思います。  それからもう一つは、やはり国際的な整合性という点からいって、我が国だけが一社専業等に固執するというのはいかがなものかという御指摘についても首肯すべきものがあろうかと思います。  先ほど、個人的には一社専業制が一番いいというようなことを申し上げましたが、しかし、だからといって、一部の乗り合いを認めないということではございませんで、今まで生命保険業界がここまで発展をしてきた原動力の大きな一つとして一社専業制があるということを強調したかったわけでございます。  そんなことから、いろいろ問題はあろうかと思いますが、しかし、そういうものを乗り越えて規制緩和自由化を進めていくということは、時代流れからいっても、我が国の将来の生命保険業あるいは損害保険業を展望する面からいっても大変大事なことであり、ぜひ実施に移すべきことではないかというふうに考えております。
  90. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 終わります。
  91. 尾身幸次

    尾身委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位におかれましては、御多用中のところ御出席の上、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、厚く御礼を申し上げます。  次回は、来る五月九日火曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時四十一分散会