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佐川参考人 連合の
佐川でございます。
初めに、本日お招きをいただきまして発言する
機会をいただきましたことに対しまして、
委員長初め
委員の諸
先生方にまず
御礼を申し上げたいと思います。ありがとうございます。
私は、
国民健康保険法等の一部を
改正する
法律案に賛成する
立場で幾つかの点について述べさせていただきたいと思います。
まず、
老人保健制度の
改正についてでございますが、今回の
改正の柱は、何といっても
老人医療費拠出金の算定に用いられる各
医療保険の
老人加入率の上下限の
見直しであります。これにつきましては、先ほど述べられました
加地さんや
市町村会の方から、
老人保健審議会で
上限の
撤廃という形で問題提起をされておりまして、私が
老人保健審議会の
委員をやっている間は決着のつかなかった問題でありますが、新しい
老人保健福祉審議会が昨年十月できまして、私が
委員をおりましたら決着がついた。こういった
課題でございます。
この問題の本質は、既に国民
医療費の三割を占めるに至っております
老人医療費、この
割合は、二十一世紀初頭には四割を超え、場合によっては国民
医療費の五割を超えるに至るのかなというふうに思われますが、この
老人医療費をどうしていくのかということに事の本質があるというふうに思います。
この
老人医療費を見てみますと、現在
老人保健制度で
公費負担が五割になっているいわゆる
介護部分というのは一割弱でございますが、仮に長期入院の場合の
医療費、例えば、これはあえて区分けをいたしますが、例えば六カ月以上の長期入院患者の
老人医療費を
介護相当
部分というふうに位置づけますと、
老人医療費のうち
介護に相当する
部分は三割を占めるということになります。このウエートは、今後さらに
高齢化に伴って高まるだろうと思います。したがって、
老人加入率問題の抜本的な解決というのは、
介護費用をどう賄っていくのか。現在公的
介護保険の創設
検討が各方面でなされていますが、新しい
介護保障
システムの
確立というものを抜きにしては抜本解決はあり得ないんだということだけは、はっきりしているんだろうと思います。またこのことについては、
老人保健審議会でも合意が形成されているという認識を持っております。
ではそれまで待っていいのかとも言えないだろうというふうに思います。やはり、
高齢化の
影響をストレートに最も強く受けている
国保の
財政の
現状というものを放置しておくことはできませんし、また
公費は今
介護基盤の整備に重点的に投入するという政策選択のプライオリティーというものも加味いたしますと、私
ども拠出側にとっては大変つらい面もありますけれ
ども、当面の緊急避難的な
措置、暫定的な
措置というふうに受けとめて、二〇%
上限というものを見直すことはやむを得ないというふうに受けとめております。
ただし、その
見直しの幅につきましては、私
どもはかねてから、
被用者保険の
保険料率の
引き上げにつながらない
範囲とするということが前提だというふうに主張してまいりました。今回の
改正法案では、
平成七年度に
老人加入率上限を
現行の二〇%から二四%にする、
平成八年度以降は二四%以上二六%以下の幅の中で政令で定める傘とされていますが、この
保険料率への
影響を私
ども粗い試算をしてみますと、二〇%から二二%に
引き上げた場合、政管健保は千分の○・四一ということになります。組合健保は
平均して千分の〇・一五、共済組合は千分の○・二八のはね返りというふうに試算をしております。
今回、二〇%
上限の
見直しに伴いまして、
財政支援がさまざまな名目で行われております。例えば、政管健保には特別保健
福祉事業ということで五十五億、共済組合につきましても十一億、健保組合につきましては、給付費等臨時補助金という形で十八億というような
見直しに伴う
財政支援が行われておりますが、それを加味しまして試算をしてみますと、二〇から二二%に引き上がった場合、政管健保ですと千分の○・三四、組合健保ですと
平均して千分の○・一二、共済組合につきましては千分の〇・二三という程度でございます。
また、二〇から二四%に
加入率の
上限を
引き上げた場合には、政管は千分の○・六一、健保組合は
平均して千分の〇・四五、共済組合は
平均して千分の〇・六五という程度であり、この程度であれば料率の
引き上げの直接の
影響はないというふうに判断をしております。もちろん御
承知のように、政管健保は現在中期
財政運営の途中でございますから、来年度から料率
引き上げを云々するというタイミングではございませんが、いずれにしましても私
どもは許容の
範囲だというふうに思います。
ところで、諸
先生方に十分御
理解いただきたいのは、これはこれとしましても、
被用者保険の拠出額がここのところ際立ってふえているということについて十分な御
理解をいただきたいと思います。例えば組合健保の場合を例にとりますと、
老人医療拠出金は
昭和五十八年に約三千八百億円でありましたけれ
ども、
平成六年には一兆三千億円、この十一年間で三・四倍以上にふえております。組合員とその家族、これには
子供も含めますが、その一人
当たりで見ますと、
昭和五十八年当時約一万五千円程度の
負担であったものが、今日では四万二、三千円の
負担、二・八倍の
老人医療費負担の
伸びになっております。
この間の
老人医療費の
伸びは、二兆二千八百億円から五兆一千七百億円と二・三倍でございますし、
老人保健制度の
対象であります七十歳以上の
高齢者は七十五万人から百十三万人と一・五倍の
伸びでございますから、いかに
被用者保険の
老人医療費負担の
伸びが大きいかおわかりいただけるんではないかというふうに思います。
被用者保険の
拠出金の
負担というのは、もう能力の限界に近づきつつあるということであります。また、お金を集めるところが使う、逆に言えば使うところが集めるという保険の基本、保険
システムとしての基本から大きく今日
老人医療費の姿は乖離をしてきているという点から見ますと、もはや
老人医療拠出金制度というのは、
制度疲労と言っても差し支えない
状況に立ち至っているんではないかというふうに思われます。したがいまして、公的
介護保険の
検討にあわせまして、ぜひ
医療保険体系と
拠出金制度の抜本的な再
検討をしていただきたい。この
順序が場合によっては逆になるかもしれないというようにも思われます。
それから、昨年の十二月九日、
老人保健福祉審議会が全員一致で厚生大臣に
意見書をお出しをしております。その中で、
拠出金制度は必ず三年以内に見直すということになっています。先ほど
日経連の
高梨さんがおっしゃいましたが、ぜひやっていただきたいというふうに思いますし、それからまた、
老人医療費は中長期的に
公費負担をふやしていくということも全員一致で確認されております。これもしっかり確実にやっていただきたいというふうに思います。
次に
国保制度でございますが、この
あり方については、私
ども連合八百万の組合員のうち、ほとんどが
被用者保険でございますが、
国保制度の
あり方につきましては、
老人医療費を拠出している側として、また退職後の受け皿になっている
制度であるということからしても、私
ども現役の方としましても大きな関心を寄せているところでございます。
今回の
改正で打ち出されております全国単位での高額
医療に係る交付金事業、これは既に健保組合でももう実施していることでありますし、すぐれて当然のことであります。何で全国単位のこの事業が今までやられなかったのかというふうに不思議に思うくらい、すぐれて当然のことだというふうに受けとめております。また、
国保財政安定化のために一般会計から
国保の特別会計への繰り入れという
暫定措置をさらに二年間継続するということも、今日の
国保の
財政状況からして当然のことだというふうに受けとめております。
さて、
保険料、
保険税の
負担の
あり方についてでございますが、これについては、私
ども現役としましても大きな不満を抱いてきたところでございます。一九九二年にゼンセン同盟のOB友の会が
国保の
保険料、
保険税の実態について調査をいたしました。それによりますと、
地域格差といいますか、地域の
保険料格差というのは一対六から一対七も生じております。この
地域格差の中身を見てみますと、確かにその地域地域の
医療費の違いというものもあるわけですが、この
保険料格差を見てみますと、ただそれだけではない、多くの
市町村が均等割
部分、
応益割合よりも
所得割
部分のウエートを大きくしている、
応能負担の
部分を大きくしているという実情が明らかになっております。
被用者年金の水準は国民年金の水準より高いということもありますし、しかも年金の
所得というのは非常にしっかり捕捉をされているということもございます。もちろん
所得捕捉が公正であれば、
応能負担一本、いわゆる
所得割一本ということも公平な姿だと思います。しかし、今日、クロヨン、トーゴーサンピンと言われるように
所得の捕捉に不公正が存在する、多くの国民が不公平感を持っているという中では、やはり
応益割合、均等割
部分を
引き上げて、少なくとも
所得割、
応能割
部分とフィフティー・フィフティーにするということは必須の条件ではないかというふうに思います。
今回の
改正では、当分の間、
応益四、
応能六のままでもいいよという若干の不完全さが残ってはおりますが、そうした
方向への、フィフティー・フィフティーへの
方向がなされていますので、一歩
前進と評価をしたいと思います。
このほか、
保険料率については収納率にも不満があります。厚生省の資料によりますと、
平成四年度で見ると、国民
保険料の収納率は
全国平均で九三・九%であります。問題はその内訳でございますが、退職者の場合には九九%、これに対して一般の場合、退職者以外の場合には九三・一%という収納率の格差があります。サラリーマンは現役のときに一生懸命
拠出金という形で
負担をし、退職をしてもまじめに
国保の
保険料を納めている。サラリーマンの一生とは何かということについて、一生を通じて公平な
負担とは何かということについて十分目を向けていただきたいというふうに思います。
もちろん、個々の
保険料の収納率一〇〇%の
市町村も約二百ほどあります。多くの
市町村が努力していることは十分
承知しておりますが、より一層の経営努力を望みます。
また、今日、
国保もある
意味では
制度疲労という
状況ではないかと思います。数千人の規模の
市町村が立派に
国保財政を運営している幾つかの例は十分
承知をしておりますが、保険の単位規模としてはやはり不十分ではないか、基本的には今の枠組みでは無理があるのではないか。これをもう少し広域化をする。都道府県単位の画一的なものが決していいとは思っておりませんが、やはり大きな
市町村に最寄りのところを、小規模のところをひっつけるとか、もう少し弾力的なことも含めて必要ではないかというふうに思います。
それから、
国保間の赤字の支援事業というものを健保組合は行っています。
国保の場合には大規模な
公費が投入されておりますから、それが
財政調整的な役割をしているからやらないということになっている。そういう考えでやられていないと思いますが、もうここまで来ましたら、
国保間の、高額
医療費だけじゃなくて
財政窮迫
国保に対する調整事業というものも必要になってくるのではないかというふうに思います。
これからの
被用者保険の体系の再
検討の際には、サラリーマンOBは
被用者保険の体系の中で考える、もちろん、それは被扶養者という
立場じゃなくて被
保険者という
立場でございますが、そういったことも
検討の
一つに加えていただければというふうに思います。
最後に申し上げたいのは、ふえ続ける
老人医療費をどうするかということは大変大事な問題でありますが、同時に、
老人医療費をふやさない努力、健康を
確保する、疾病を予防するということを戦略的な
対策として位置づける必要があると思います。
その
意味では、現在二七、八%、三〇%を割っております健康保険の健診率を飛躍的に向上させるとか、人間ドックを法定給付化するとか、この場合には確かに一時的に健保
財政は膨らみますが、これをきちっとやれば、早期発見、早期治療をやれば、長期的なスパンで考えれば民間企業の先行投資と同じようにかえっておつりがくるということにもなり得るのではないか。
これを、むしろ健康
確保、疾病予防というものを戦略的に位置づけるということが必要ですし、それからやはり
医療費の、
社会保障の拠出基盤を拡大をしていく。当面必要なことは、景気回復を確実なものにすること、そして構造転換の中で新規の雇用創出を確実に図っていくということが強く求められると思います。
若干時間を過ぎたかと思いますが、申しわけございません、以上で終わります。(
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