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1995-05-24 第132回国会 衆議院 規制緩和に関する特別委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成七年五月二十四日(水曜日)     午前十時一分開議 出席委員   委員長 塚田 延充君    理事 亀井 善之君 理事 橘 康太郎君    理事 村岡 兼造君 理事 斉藤 鉄夫君    理事 武山百合子君 理事 西川太一郎君  理事 輿石  東君 理事 五十嵐ふみひこ君       安倍 晋三君    池田 行彦君       栗本慎一郎君    小杉  隆君       七条  明君    御法川英文君       村田 吉隆君    岡田 克也君       河合 正智君    西  博義君       西村 眞悟君    松前  仰君       山下洲夫君    吉井 英勝君  委員外出席者         参  考  人         (明海大学不動         産学部教授) 長谷川徳之輔君         参  考  人         (住宅生産団体         連合会建築規制         合理化委員長)         (大和ハウス工         業株式会社代表         取締役社長) 東郷  武君         参 考  人         (日本ツーバイ         フォー建築協会         国際化委員長)         (東急ホーム株         式会社代表取締         役社長)    三原 松樹君         参  考  人         (経済評論家)         (行政改革委員         会委員)    田中 直毅君         参  考  人         (電気通信事業         者協会会長)         (第二電電株式         会社代表取締役         社長)     奥山 雄材君         参  考  人         (情報産業労働         組合連合会中央         執行委員長)         (全国電気通信         労働組合中央執         行委員長)   梶本 幸治君         参  考  人         (創価大学経済         学部教授)   岡野 行秀君         参  考  人         (全国乗用自動         車連合会理事         長)      伊東 弘之君         参  考  人         (経済団体連合         会輸送委員会委         員長)         (日本通運株式         会社代表取締役         社長)     濱中昭一郎君         参  考  人         (全国商店街振         興組合連合会理         事長)     山本 勝一君         特別委員会第三         調査室長    佐藤  仁君     ――――――――――――― 委員異動 五月二十三日  辞任         補欠選任   後藤  茂君     沢藤礼次郎君   土肥 隆一君     山下洲夫君 同月二十四日  理事土肥隆一君同月二十三日委員辞任につき、  その補欠として輿石東君が理事に当選した。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  理事補欠選任  規制緩和に関する件      ――――◇―――――
  2. 塚田延充

    塚田委員長 これより会議を開きます。  まず、理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い、現在理事が一名欠員となっております。その補欠選任につきましては、先例によりまして、委員長において指名するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 塚田延充

    塚田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  それでは、理事輿石東君を指名いたします。      ――――◇―――――
  4. 塚田延充

    塚田委員長 次に、規制緩和に関する件について調査を進めます。  本日は、本件調査のため、理事会協議に基づき、住宅土地関係情報通信関係及び運輸・流通関係について、それぞれ参考人から意見を聴取し、質疑を行うことといたします。  ただいま御出席いただいております参考人は、住宅土地関係として、明海大学不動産学部教授長谷川徳之輔君住宅生産団体連合会建築規制合理化委員長大和ハウス工業株式会社代表取締役社長東郷武君、日本ツーバイフォー建築協会国際化委員長東急ホーム株式会社代表取締役社長三原松樹君であります。  この際、参考人各位に言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位には、住宅土地関係規制緩和に関する問題につきまして、忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  なお、議事の順序についてでございますが、参考人にそれぞれ十五分程度御意見をお述べいただき、次に委員からの質疑に対してお答えいただきたいと存じます。  それでは、まず長谷川参考人お願いいたします。
  5. 長谷川徳之輔

    長谷川参考人 明海大学長谷川と申します。不動産学部土地政策論という講座を担当しております。この三月まで建設経済研究所常務理事としまして、建設経済に関する研究を続けてまいりました。  本日は、住宅土地に関する規制緩和についての参考意見を述べさせていただきますが、住宅土地に関する個別の項目についての意見より、その前に、規制緩和全体についての考え方等についての意見を述べさせていただきたいと思います。お手元にレジュメが準備してございますので、そのレジュメに従って申し上げたいと思います。  この規制緩和、今に始まった話ではございませんで、経緯は相当長うございます。私の理解するところでは、一般的には、一九八三年の二月の中曽根内閣総理大臣の指示で環状七号線以内の地域高度利用を図れ、それから公共的事業への民間活力導入を進めろ、あるいは国有地や旧国鉄用地払い下げ有効利用しよう、こういう大きな流れがあったと思います。実は、この流れというのは、私の理解では、アメリカレーガノミックスやあるいはイギリスサッチャーリズムの延長として、一つ経済刺激対策として、この規制緩和という問題があらわれたと理解をしております。  イギリスにおいても、規制緩和が八〇年代に出てきましたのは、結局、六〇年代のイギリス都市計画プランナーコントロールでうまくいった。七〇年代になると、プランナーコントロールではうまくいかずに、プランナーとディベロッパーの間の協議という形での都市づくりが行われた。八〇年代になりますと、もはやイギリス経済の中ではそういう規制では開発が進まないあるいは都市計画が進まないという点で規制緩和せざるを得なかった、こういう実は大きな、やむを得ずというか、規制緩和を採用せざるを得なかったという事情が私はあったんじゃないかと思います。  アメリカでも、一九八○年代にレーガンがレーガノミックスの中で、ニューヨークのオフィスビル建築について、一九八五年までに着工したものについては二〇%のボーナスを与える、こういう対策をとりましたが、やはりアメリカにはアメリカなりの、そういうことを経済政策としてとらざるを得なかった、こういう背景があったと思います。  我が国の場合は、このアメリカイギリスサッチャーリズムレーガノミックスがやや破綻しかけたときに規制緩和の議論が始まったような感じがいたします。  一九八三年に建設省が、そこに書いてございますとおり、さまざまな規制緩和方針と申しますか、対応についての方向を決めております。この幾つかの中でやはりポイントは、容積率緩和それから市街化調整区域の中での開発の容認、この二点だろうと思います。すべての規制緩和ポイントはここに来るんだろうと思います。この一九八三年の建設省方針に従って、その後さまざまな制度改正が行われ、改正に関して個別の通達が行われ、個別の優良プロジェクトについて適用が行われたということで、幾つかの規制緩和赤坂六本木のアークヒルズや大川端地区開発等で行われてまいりました。  こういう中で、一九八五年のプラザ合意以降のまさにバブル経済円高誘導金融緩和土地税制緩和、こういう中での国公有地一般競争入札による払い下げ、こういう中で起きたのが御案内のとおり地価の高騰、土地投機財テクブーム、こういうことでバブル経済が発生しました。この時期には、不動産融資規制とか、監視区域導入とか、国公有地払い下げ停止とかという、逆に規制の強化という方向が出たかと思います。  これは一連の土地対策方向としてそういう対策が出ましたが、その後、実は一九九〇年代になりまして、バブルが崩壊する、地価が低落して不動産不況あるいは経済停滞、こういう中で再び規制緩和経済対策景気回復手段として必要とされるということで、土地住宅に関する政策のあり方というのがどうしても短期的な経済政策景気刺激策として取り扱われてきたのではないか。現実にまた、一九九三年以降の経済対策の中で、緊急経済対策の中でもそのような規制緩和が、容積率の割り増しにしろ、宅地開発規制緩和にしろ、経済ビジネスがしやすくなる環境をつくるという点で行われているかと思います。  しかし、私はかねてからそういうことだけでいいだろうかというふうに思っております。その論立ポイントになる点を申し上げますと、三ページ目をごらんいただきたいと思います。  規制緩和そのものは何のための、だれのための規制緩和がということだと思います。  これまでの経緯を見ますと、土地利用規制緩和容積卒緩和、その経緯は基本的には実は投資を容易にする、採算性を高めるというビジネス視点だろうと思います。私はそれもとても大事なことだと思います。しかし、それだけで規制緩和を論じていいだろうか。土地住宅に関する規制というのは、これは本来都市づくりのルールを決めるためのいわば基礎的な条件であって、ビジネスに対する直接的な規制として機能しているものではないのじゃないかというふうに思います。  都市計画土地利用計画というのは都市づくり長期的視点が必要だと思います。都市づくりは三十年とか五十年とかあるいは百年という長期の展望が必要でしょうし、これを短期的な経済政策の道具にする、手段としてのみ見ていいのか、逆に手段として見た場合に本当に効果があるのかどうかという点も実はレビューしてみる必要がどうしてもあるのではないだろうか。三十年、五十年先にその短期的な経済政策のためにゆがんだ町ができてしまうということについての、やはりそういう視点から考えてみる必要があろうかと思います。  現実都市計画をつくる場合には、そういう経済的な手段としてのみならず、むしろそれより優先して、過密の防止とか生活環境の保全とかインフラ整備との関連とか防災などとか、そういった視点がどうしても必要だと思います。都市の将来の地域構造、どういうふうに都市構造があるべきか、住民生活がどういうふうにあるか、こういうふうなことから実は都市計画土地利用計画ができてしかるべきであります。  現実に、東京都の区部容積率現状は、その指定された容積に対して半分も使っておらない、こういうのが現状であります。  それからまた、この規制緩和に対する見方というのは、どうしてもビジネス視点から見ますと、規制緩和をいたしますと土地利用効率が上がる、したがってその場合に地価が高くなる、実はこういう見方になるだろうと思います。  例えば、丸の内地区容積率が今九○○ぐらいでございましょうか、それを倍にした場合に、東京マンハッタン計画をつくった場合に、果たして地価は二倍になるのか、逆に半分になるか、実はこういう見方があります。やはりビジネス視点で見た場合にはどうしても実は、規制緩和をすることによって土地利用効率が上がるというのは結果的に地価が上がるということの期待の反映だろうというふうに思います。  容積率アップというのは、ビジネス視点も大事ですが、それだけではなくて、やはり都市づくりとしてどういう都市が望ましいかという点からまず見ていくべきだろうし、また、開発規制緩和供給者のみならず消費者需要サイド利益本当に保証するかという点にあろうかと思います。規制緩和ということによって本当住宅価格が下がるのか、本当住空間が広がるのか、こういう担保がぜひ必要だと思います。その上で規制緩和というのが位置づけられるべきであって、単に仕事がしやすい、利益が上がるというためのインセンティブに終わっては実はそれはいけない、本質的にはそういうものではないというふうに理解をしております。  しかしながら、都市計画土地利用計画に絶対的な基準はないわけであります。どういう都市計画がいいかということは、これはだれしも決められない。したがって、相対する利害を調整するということで、妥協として都市計画土地利用計画が決まっていると思います。実はこういったものを個別の利害でネガティブに評価すると全体が崩れてしまう。また、そういう絶対的な基準ではないから、実は都市計画というのは、市民参加も含めて、民主的な手続を決めて、決めたらみんなで守っていこうというのが都市計画だろうと思います。これを仕事がやりやすいという視点だけで評価してはいけないかと思います。  しかし、この規制緩和、もう一つ考えなければならないのは、今バブル経済の崩壊で土地住宅をめぐる条件は大きく転換しています。私は地価の再騰は当分ない、ないと思います。また、地価そのものが、かつてのようにキャピタルゲイン、転がしという形で決まるのではなくて、土地の収益の反映として決まってくるはずであります。その中で、やはりバブル時代の傷である、後遺症である不良資産有効利用、さらに地価が下がったことによる都心居住条件整備、こういったものに関して方向づけていく時期でありましょうし、二十一世紀に向かって、住宅住環境本当意味での充実改善のプログラムが必要だと思います。  景気回復のためにも住宅投資の必要は今非常に高うございますが、同じ値段で五割増しの住宅の 広さが手に入るという条件整備されることが需要を拡大する一番大きな要件だと思います。  そういう意味でも、住宅の質を上げ、広さを確保し、なお値段を下げる。こういう意味規制緩和、特に容積率の問題を取り上げ、そういう大きな目標の中で容積率の問題を全体として取り上げていく必要がある。その場合に、容積率のみならず、定期借地権導入なり、あるいは都心住宅に対する公共負担の拡大なり、こういったものと容積率アップをセットしながら、本当意味で豊かな住宅住環境をつくっていくというのがそもそも一番大事なことだろうと思います。  そういう意味で、だれのための、何のための規制緩和か、都市計画かという点をぜひ御検討願いたいというふうに思います。  以上であります。(拍手
  6. 塚田延充

    塚田委員長 次に、東郷参考人お願いいたします。
  7. 東郷武

    東郷参考人 住宅生産団体連合会建築規制合理化委員会委員長をしております東郷でございます。  私どもの委員会は、平成二年より発足いたしまして、会員企業の第一線で従事している人たちからいろいろ業務上の問題点を聞き、整理いたしまして、建設省などにお願いをし、相互理解改善にかなりの成果を上げてまいりました。  昨年三月には、主として社会的規制に関しまして、その規制緩和につきまして二十項目にわたって建設省、通産省、厚生省、農林水産省などに陳情いたしております。また、十月には、さらに四項目を追加いたしまして、緩和お願いをしております。これらのうち、既に四項目についてはほぼ緩和が実施されることになっておりますし、また六項目については前向きの検討をしていただいております。各省の前向きの検討には大変感謝しているところでございます。  また、既に閣議決定方向が打ち出されている項目とも重複いたしますけれども、現在、推進をお願いしている問題点を申し述べたいと思います。  まず、容積率建ぺい率斜線制限等緩和でございますけれども、人口増加率の減少とか、あるいは成熱化した高齢化社会、あるいは一世帯二台の車社会というような、社会状況が随分変化してまいっております。そういう意味で、容積率建ぺい率斜線制限等見直しというのは、これはそういう制限そのもの見直しと同時に、そういうこともございましょうが、例えば、住宅と一体となった駐車場建ぺい率容積率面積算入にできないか。現在、駐車場については五分の一までは容積率算入になっておるわけでございますが、そういう時代背景をもとに、駐車場などは容積率から除外する方法で考えられないか。あるいは各世帯の持ち物が非常にふえておるわけでございますが、小屋裏収納とか、あるいは中間層地下収納などについても床面積に勘定しないような方法容積率緩和ができないかというようなことを申しております。  地下室につきましては、実は昨年に既にこれは用途を問わず、居室でもいいのですが、地下室については容積率の計算から除外するということが決定されまして、既に法制化されております。これは大変我々の業界でも評価されておる問題でございます。  それから、新しい材料構法に関する規制緩和お願いしておるわけでございますが、新しい材料構法を用いる場合は、現在は建築基準法三十八条という、要するに特認という事項がございまして、特別に審査していただいて確認申請がおりるというそういう制度なのでございますけれども、そのためには幾つかの、一般には四件の試行を必ずしなければならないとかいうようなこともございます。そういう運用簡素化お願いしております。これも数年前に、実は住宅については一件の試行でよろしいというふうな緩和をいただいておるわけでございますが、一般にもそういう運用簡素化お願いしております。  それからまた、木造の三階建て共同住宅平成五年に一般地域で建設してもよいというふうに立法化されまして、緩和されたわけでございますけれども、木造三階建て専用住宅は準防火地域でも可能なのでありますが、木造三階建て共同住宅は、まだ準防火地域では建てられないという規制がございます。これはもちろん技術的な問題もいろいろあるわけでございますけれども、さらに、建てられるような検討を今お願いしておるわけでございます。  それから、水道ガス工事など設備工事に対する規制緩和お願いしております。  現在、市町村には水道指定工事店制度というのがございまして、指定店が独占しておるという状況でございます。したがいまして、競争原理が非常に働かないとか、あるいは、市町村によって基準がばらばらでございまして、コストダウンの障害になっているとかいうような問題がございまして、これも厚生省お願いしておりますが、厚生省では合理化方針が打ち出されております。ひとつ早期実現お願いしたいと思っております。  それから、我々の団体にはプレハブメーカーも入っておるわけでございますが、プレハブメーカー工場内で水道配管とかガス配管をしようと思いますと、法令によりまして従来はできないということであったわけでございますが、これもできるような方向お願いしております。現在前向きな回答はいろいろ得ておりますが、これも早期に、そういう工場内配管ができて合理化できるようなことを期待しております。  それから、いろいろな輸入部材について、日本建築基準法では、使う材料はJISあるいはJASを義務づけられておるわけでございますが、当然、外国のものではそれがうまくいかない問題もたくさんありますので、海外との基準相互認証制度お願いしております。これはまた後ほど三原さんが詳しくお話しされるかと思いますので省略いたしますが、そういう国際基準への対応お願いしております。  それから最後に、安全に関する規制の堅持と基準全国統一ということをお願いしております。  まず、全国統一のことについてお話ししたいと思いますが、現在、地方自治体、それからその自治体におられます建築主事によりまして法令解釈が著しく異なる場合がございます。本当に細かい問題からいいますと、窓の採光面積のとり方とか、あるいは屋外階段建ぺい率に対する考え方とか、本当に細かい問題がたくさんあるのでございますが、そういうものがかなり解釈によってはらついておりまして、私ども大変困っておる問題がたくさんございます。そういうことで、ぜひそれを統一していただきたい。  また、確認申請等をもっと合理化していく上において、現在OA化が少し進められつつあるわけでございますけれども、そういう解釈の相違がネックになっておると思います。こういうこともお願いしております。  それから、先ほど申しました水道行政市町村によるばらつき、こういうものの統一も当然お願いしておりますし、また、市町村によって開発指導要綱がこれまた随分ばらばらでございまして、これもぜひ統一的なことをお願いしたい。地方分権のお話がございますけれども、やはり基本的なところは統一をしていかないと、我々メーカーにとっては非常に障害が大きいということでございます。  それから、安全に関する件でございますけれども、今回の阪神大震災でも痛感いたしましたように、安全に関する規制は、やはり十分堅持する必要があろうかと思います。いろいろ外国基準との調整等お願いしておりますが、その前に、やはり安全基準については日本独自のものを堅持しなければならないなというふうに痛感しております。  それからもう一つ、今回の大震災等で私個人非常に感じていることなんでございますが、これは既存適格の問題でございます。  住宅あるいは建築物耐震基準等、過去にいろいろ何度も改正されてまいったわけなんでござい ますけれども、そして厳しくなってきたわけでございますが、法の不遡及ということがございまして、既存適格を基本的には野放しにしてきたのではないかと思います。社会的にも経済的にもこの既存適格をどうするかというのは非常に難しい問題でございますけれども、これを野放しにしてきたということが多くの人命を奪ったのも事実だと思います。  そういうことで、建築規制問題を考える際には、ぜひこの問題も同時に考えていかなければならないのではないかというふうに考えております。  以上、簡単でございますが、私の規制緩和についての説明を終わらせていただきたいと思います。(拍手
  8. 塚田延充

    塚田委員長 次に、三原参考人お願いいたします。
  9. 三原松樹

    三原参考人 三原でございます。  私は、日本ツーバイフォー建築協会国際化委員長をいたしておりますが、業界代表としては、ただいま住団連東郷委員長意見を述べられましたので、私は、輸入住宅建築する東急ホームの立場で、輸入住宅に限定して意見を申し述べたいと思います。  昨今、輸入住宅という言葉がごく普通に使われるようになりました。しかしながら、輸入住宅とは何かという定義めいたものはございません。そこで私は、意見陳述の前提として、私なりに輸入住宅について最初にお話ししておきたいと思います。  第一に、輸入住宅は、元来我が国にはなかった工法、すなわち、輸入された技術と工法によって建てられたものである。例えば、ツーバイフォー工法とかスウェーデンハウスさんのやられているような工法等がそれで、いわゆるログハウス等もこの中に含まれると思います。  第二に、その住宅建築に使われる建材あるいは部品等の過半数が輸入品である。例えば、窓のサッシであるとか、キッチンのキャビネットであるとか、ドアを含む建具、それに構造材となる木材、合板等でございます。  第三に、設計上の考え方と申しますか、設計コンセプトといったもの、あるいはインテリアを含むデザインが主として外国風のものである。もちろん外国人の設計による住宅などはこの範疇に入るかと思います。  私ども東急ホームは、代表的な輸入工法であるツーバイフォー工法を活用しておりますが、この工法は、約二十年前に北米より我が国に技術移転され、建設省によりオープン化された、いわばだれにでも建築可能な工法で、いわば規制緩和の所産ともいうべきものでございます。昨年度は六万六千五百戸ということで、対前年比一七・五%というような伸びを見せた、すぐれた工法であろうと思います。しかしながら、二十年間、今日まで、ツーバイフォー工法による住宅を指して輸入住宅と呼んだことはなく、先ほど申し上げましたように、輸入住宅の三つの要件の一つを満たす、既に我が国に定着した日本工法であると言えると思います。  昨年来、とりわけ本年に入りましてから、単にこの輸入建材あるいは輸入工法にとどまらず、輸入住宅というようなくくりで政策面でも取り上げられるようになりました。我が国住宅に比べ諸外国住宅は安いというような見方による面もございますが、我が国の貿易収支改善の具体策として輸入住宅もまた効果ありとする見方によるものと理解しております。  当社の事例によりますと、例えば、昨年十月横浜市に開設され、先般村山首相も御視察なさいましたジェトロの輸入住宅展示場のケースで、これは五十二坪の中級クラス、例えば坪当たり単価でいいますと四十八万円程度の住宅でございますが、この場合で約五万三千五百ドルの建材、部品、それと約一万五千五百ドルの家具、照明器具等のインテリア用品、合わせて六万九千ドルを輸入いたしました。一軒の家で、今話題の輸出自動車数台分と相殺されるという計算になります。  さらに、先般、建設政務、事務両次官あるいはEU大使を初めとされる大使館関係者が御視察なさいました、これも別の横浜の展示場でございますけれども、ここの場合、仕様のレベルもやや高い、建物もやや大きい住宅ではございますが、一軒当たり合わせて約十万ドルの資材、部品等を輸入しております。  さて、それではこうした輸入住宅をふやすためにはどうしたらいいかということになるわけですが、その方策は数々あると思いますけれども、本日は規制緩和について申し述べたいと思います。  まず、総括的に申し上げて、輸入住宅建築を不可能とするような、いわば輸入住宅が建つ、建たないというような大きな輸入障壁はございません。  先ほど申し述べました輸入工法ツーバイフォー工法は、すべての構造用木材と合板を輸入しておりますが、この二十年間にさまざまの技術改良がなされ、平成五年より、三千平方メートルまでの木造三階建ての共同住宅、いわゆるアパートも、地域の限定はありますけれども建つまでになりました。  また、ヨーロッパ等からの輸入住宅に見られるパネル工法、こうしたものは建築基準法三十八条による建設大臣の承認を要しますが、これは日本国内のプレハブ工法等についても同様であり、輸入工法だけの問題ではございません。  ただ、その承認の手続に要する時間、費用あるいはそれに必要な書類数等については、外国の方々からは、彼らの自国よりも条件が厳しいというふうには聞いております。しかし、どの程度の差があるかはわかりません。この問題は、法そのものよりも運用手続に関することであろうというふうに思います。  次に、各論と申しますか、やや話が細かくなって恐縮ですが、輸入住宅が建つ、建たないというような大きな問題ではなく、輸入建材あるいは輸入部品が使えるのかあるいは使いにくいのかというレベルの問題について申し述べたいと思います。  御承知のように、住宅建築には、例えば柱、はりというような大きなものから電気のスイッチ、コンセントのたぐいまで、そういう小さなものまで非常に多品種の材料を使います。構造材につきましては、我が国の伝統的な在来工法も含めまして、過半を輸入木材に依存していると聞き及んでおりますが、木材の加工品、例えばドアを含む建具あるいは床材、ここはじゅうたんでございますが、床のフローリング等につきましても、輸入品には品質、価格において国産にまさるものもございます。これら木製品については、関税は別にいたしまして、輸入上大きな障壁はございません。  もちろん、日本農林規格、いわゆるJASの認定品を使わなければならないものもありますが、海外のJAS認定工場、これは近年ふえておりまして、地域的な問題はあるかもしれませんが、少なくとも北米に関しては問題ないと思います。  日本工業規格、いわゆるJIS、この認定に関しましては、建設省を中心に推進する二国間の相互認証制度により逐次規制緩和されつつあります。例えば石こうボードなどについてでございます。  以上、大筋において輸入住宅建てる上での障壁はないということを申し述べましたが、規制緩和を望みたいことも二、三ございます。それを二つほどに絞って申し述べたいと思います。  一つは、防火の基準に関することでございます。  先般の阪神大震災におきましても多数の家屋が火災で焼失し、防火に関しては殊さら神経質にならざるを得ないという時期であることはよく承知いたすところでございます。我が国の防火に関する建築基準が欧米に比べてやや厳しいものであるということは知られておりますが、特に準防火地域住宅の開口部には乙種防火戸を設置しなければなりません。外国の木製建具には大変すぐれたものがございますが、この乙種防火戸の認定の取得は、法律上取ることはもちろんできますけれども、事実上大変困難であります。  そこで、この乙種防火戸の認定基準緩和とその手続の簡素化、あるいは視点を変えまして、準防火地域地域指定範囲の緩和を望みたいと思います。  この準防火地域の指定は、東京都の場合、もちろん防火地域を含めてですが、ほとんど二十三区全域に及んでおりますけれども、世田谷区、練馬区など外周部は大変緑も多く、まだら模様の指定が現実的かと思います。  なお、この防火戸の規制緩和につきましては、建設省が、国際標準化機構、略称ISOといいますけれども、その検討結果待ちと仄聞しております。  二つ目は、給水栓、いわゆる水道の蛇口についてでございます。  外国にはデザイン、価格において国産品をしのぐすぐれた水栓金物がたくさんございます。この給水栓につきましては、水道法の定めにより、地方自治体水道局が独自の運用規定を定めておりますが、JIS、日本工業規格認定品というよりは、大半が日本水道協会いわゆるJWWA認定品を使うよう規定されております。  そこで、この給水装置に関する日水協認定基準緩和とその手続の簡素化、また、東郷参考人の御意見にもございましたような指定水道工事店の広域化、例えば関東一円での指定拡大というようなことを望みたいと思います。  この給水装置工事は各地の水道事業者による指定工事店の施工となっておりますが、この日水協認定品にもかかわらず使用を認められないというようなケースもあり、審査の二重機構ともなり、特になじみの薄い輸入水栓、海外で生産された水栓の輸入の障壁となっております。  なお、この給水装置の規制緩和につきましても、本年三月厚生省より知事に対し通達が出されており、既に緩和方向にあります。  私ども輸入住宅建設を推進する者にとりましては、既に各省庁より出されている規制緩和方針、それに沿って、いわば現場の許認可レベル、審査レベル、ここでの手続の簡素化、審査の迅速化、あるいは申請者負担の費用の軽減、そうしたことを切に望みたいと思います。  また、相互認証につきましても、それぞれの国情の違いはございますが、審査あるいは試験方法の厳密なすり合わせ、我が国と諸外国との試験方法の厳密なすり合わせには大変時間がかかることであり、既に建設省が取り組まれている海外規格認知のための海外認定機関との協定、ツーバイフォー工法用建設資材の通則的受け入れ、その実施時期をできるだけ早めていただきたい、そう要望いたしたいと思います。  いずれにいたしましても、住宅は、建築される地域の特性もあり、規制の一律運用が難しいことは十分理解いたしております。しかし、細かな部品レベルの障壁までを一つ一つ丹念に取り除いていくことが結果として建材部品の輸入拡大と輸入住宅の普及につながり、それが貿易収支の改善にいささかの貢献をいたすとともに、いわばGNPに比べておくれていると言われる我が国住宅のレベルアップ、あるいは多様化する国民のニーズにこたえることになると考えております。  最後に、輸入住宅建築できない大きな規制はございません。ただ、建材部品の単体には、現実に輸入しにくい、使いにくい幾つかの規制がございますので、許認可レベルでの規制緩和を望みたいというふうに思います。  以上で終わります。大変失礼しました。(拍手
  10. 塚田延充

    塚田委員長 ありがとうございました。  以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。     ―――――――――――――
  11. 塚田延充

    塚田委員長 これより参考人に対する質疑に入るのでありますが、本日の参考人に対する質疑は、理事会での協議により、最初にあらかじめ申し出のありました質疑を行い、その後は参考人に対して自由に質疑を行うことといたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。五十嵐ふみひこ君。
  12. 五十嵐ふみひこ

    ○五十嵐(ふ)委員 与党三党を代表して、三人の参考人の方々に御質問させていただきます。  本日は、お忙しいところ大変ありがとうございました。貴重な御意見をちょうだいをいたしました。正直言って、どう考えていいのかなと思うこともございます。  私は、この住宅については大変重要だと思っておりますけれども、それは、私ども日本人が一番困っているのは、教育にお金がかかり過ぎるということと、やはり住宅の取得に大変お金がかかり過ぎる、住宅貧乏という問題を解決しない限り日本人は幸せになれないだろうと思っているからでございまして、そのライフスタイルを変えていく大きな一つの足がかりになるのかな、それがこの問題に関する規制緩和ではないかと思っているわけでございます。  長谷川先生が、以前から私はいろいろ御指導いただいているわけですけれども、何のための規制緩和がということをおっしゃられました。まさにこの住宅貧乏を解消し、国民の利便性、消費者を豊かにするということがまず視点になければならないだろうと思いますが、もし家が安く建てられるならば一回り大きい家に住むことができるでしょうし、あるいは、一千五百万あるいは二千万かかる家が一千万でできるということであれば、その五百万、一千万というのは非常に大きく庶民にはプラスになるだろう。買いたい家具がたくさん出てきましょうし、そのほか、生活を豊かにするのに使えます。また、ローンがその分引き下げられれば、これは、金利にかかる部分、最後の五百万、一千万の金利の部分が大きくきいできますので、国民生活にとっては非常に大きなプラスになるだろうと思います。  ただ、私は、税がもっと緩まれば、これも一つ規制じゃないかという形でよく言われるわけですけれども、税に全部解決の矛先を持ってこられるのは間違っているだろうというふうに思っていまして、日本は基本的に都市づくり都市計画というものを考え直さなければいけないのではないかと思っている一人でございます。  今も伺っていまして、国土利用計画の行政、都市計画の行政、建築行政、それから防災に係る行政というものがばらばらに行われていまして、どうも整合性がとれていない。もっときめ細かくこれらのものが整合性がとれた形で行われれば、今の日本でも随分いろいろな形の町ができ、私たちの生活も便利になり、また、その規制の面でもいろいろないい影響が出てくるのではないかなと思っております。  今度の阪神の大震災を契機に、地区で、ブロックで話し合って、そして計画的に建てられるなら、その真ん中に取り残されて普通は価値がなくなってしまうところにもいろいろなことができるように、あるいは容積率をおまけしましょうという制度を、建設省がその仕組みをおつくりになりました。なぜもっと早くこういうものができないのかなということも思っていたわけでございますけれども、建設省土地と農林省の土地がはっきりと分かれていて、いわば建設省の中の土地はどうにでも使える、農林省が支配しているといいますか、監督している土地は全く不自由きわまりない、その間で政治家がうごめいて何とかすると何とかなっちゃうというような、そうしたあり方は変えていかなければいかぬと強く思っているところでございますが、一つ文化の問題というのが出てきて、これの整理をしていかないとこれもなかなかうまくいかないのじゃないか。  すなわち、今、全国で統一してくださいという話が東郷参考人さんなどからありましたけれども、逆に過密都市と地方都市とではきちんと分けて、東京みたいな過密都市では、例えば日照権というものも全国一律で考えるのではなくて、もう日照権は東京の二十三区の一定の地域の中では公園で確保する。日影制限等、そういうような考え方の整理も、これはもう一方的に上から押しつけるわけにはいかないわけですけれども、国民的な議論をした上で、もう二十三区あるいは山手線の内側は逆に規制を強化して、三階以下は建てちゃいけません、あるいは日影規制は外して、これは 公園で補ってください、そのかわり公園はたくさんつくりましょうと。高い建物を建てて再開発をして高層化して、その分オープンスペースをつくっていきますというような考え方に変えていかないといけないのではないかなと思っている次第であります。  ですから、一概にこの土地住宅の問題については、ただ規制緩和をすればいいというのではなくて、強化をしなければならない面がある。しかしその考え方というのは、きちんと整合性がとれた形で、例えば防火についても、高い建物は防火上心配だ、防災上心配だということで規制が、大分緩んできましたけれどもあったわけですが、それよりもはしご車の高いのを買った方がよっぽど合理的だと、強制的に市町村に買わせた方が合理的だと。あるいはそういうこともあるかもしれません。防災も含めて、そうした基準については総合的な見直しというのが必要ではないかというふうに考えている次第でございます。  そこで、参考人の先生方にお伺いをしたいわけでございますけれども、今のような都市計画のあり方で、本当に効果のある、我々が目指している規制緩和なりなんなりの方法で住みやすい町づくりというのはできるんだろうかと。今私が申し上げた、防災計画も含めたいろいろな見直しが、もっと大きいところで先に思想の統一といいますか理念の統一といいますか、そういうものをまず話し合ってからやる必要があるんではないかという点について、それぞれ参考人の先生方からお伺いをしたいと思います。
  13. 長谷川徳之輔

    長谷川参考人 おっしゃるところ、もっともだと思います。  意見のときには申し上げませんでしたが、例えば市街化調整区域開発の問題にしろ、もっと大きな時代の変化があるんだろうと思います。今、農林省でいえば、米の自由化によって八十万ヘクタール以上の土地が減反させられております。これはいずれ都市土地利用にかかわらざるを得ないわけでありまして、八十万ヘクタール以上の土地というのは、全国の宅地面積に匹敵する土地であります。使い方によっては我々は倍の実は宅地が使える、こういう条件がございますが、しかし、大きなフレーム自体が放置されたまま、市街化調整区域とか市街化区域というそのフレーム自体が、実は前提条件が変わることによって大きく転換するわけでございまして、そのあたり、やはり国土利用構造の大きな転換がこの十年、二十年必ずあるということを前提に国レベルの土地利用計画ができて、それが都市計画の上に整合性を持ってブレークダウンしていくということが必要でしょうし、細かい点になれば、先ほどお話があったような地区計画のように、市町村レベルあるいは住民レベルで計画をつくる、こういう実はプロセスもございます。  ただ、そのプロセスの場合にいつも問題となるのは、それが何のためになるだろうということだろうと思います。今おっしゃられたように、やはり安い、質のいい住宅が供給できる、いい住環境が確保できる、それで国民の生活が上がる、こういうことを前提にした計画づくり、規制緩和であれば私は大いに進めるべきだろうと思いますが、どうしても実はそこにあるのは、商売がしやすいという視点容積率緩和するとそれだけ売り上げがふえるではないか、こういういささか狭い発想でもってこの規制緩和を云々するということは私は狭過ぎると。むしろ、大きな意味規制緩和を考え、その大きな都市づくりの中で規制緩和というものもどう機能さしていくかということにポイントを当てるべきだろうというふうに思っております。
  14. 東郷武

    東郷参考人 都市住宅問題とかそういうものは総合的に考えないとどうにもならないわけでございますが、私は詳しくは知らないんですが、実施した例もございませんので知らないんですが、地区制度という考え方が最近出ておりまして、ある一定の地区についてそういう全体的な計画をしたものは、個々の基準法等で規制されている問題はクリアできると。例えば容積率とかあるいは駐車場の問題とか、そういうことも緩和して、全体としてその地区の景観なり安全性なりを考えた町づくりができるという法律ができておるそうでございまして、本当の詳しいことは知らないんですが。そういう方向がこれから考えられるだろうと思います。  しかし、都市の問題は本当にコンセンサスを得るというのは大変でございまして、阪神の復興の問題にしましても、市あるいは県から一つの案が出ますと、住民から大反対が出たりしましてなかなかまとまらないものでございますけれども。要するに、都市はどうあるべきだという議論を国民間でもっと高めなければならないと思いますし、そういう学問ももっと深まっていかなければならないんではないかというふうに考えております。
  15. 三原松樹

    三原参考人 土地問題は私は専門ではないんで雑駁なことしか申し上げられませんけれども、先生のおっしゃるように、土地を含めた住宅価格を落とすということは、これはもう国民的な課題だろうというふうに思います。ただ、上物だけに関して言いますと、規制があるから住宅が高くなるというようなことは余り考えられないと思います。  ただ、町づくりをする中で、日本の町は個人の意思が強く働いたそういう建て方になっておりまして、日本人がよく欧米に旅行するのも、外国の町並みがきれいだというようなことが一つの理由だと思いますが、そういう点で、戦後、復興という形で、建てることが、まず数を確保することが目的でしたからやむを得なかったと思いますけれども、これからは、むしろそういう部分は規制を強める必要もあろうかなと。やはり美しい町、いわゆる私権と公共の権利との調整というようなことが非常に重要ではなかろうかというふうに思います。
  16. 五十嵐ふみひこ

    ○五十嵐(ふ)委員 まさに三原参考人がおっしゃったとおりだろうと思います。規制を強める要素も実はこの面では必要になってくるだろうと。阪神大震災も、あんな狭い地域に、山と海に挟まれたところに過密都市をつくったことが死者をふやした私は原因だと思っておりますし、もっときめ細かい都市計画街路。都市計画道路もなかなかできないわけですね、整備率がいまだに東京でも大して上がっていない。これはやはり、二十年でできなかったらあれは見直すというかやめることになっているわけでありまして、都市計画をきちんと徹底させる、やり抜くと。その政治的なリーダーシップも必要ですし、また住民の方々にPRをしてよく理解をしてもらう、協議を進める、あるいは業者の方々とも、そういう意味では知恵を出し合っていい町づくりをしていくという姿勢が必要ではないかなと私は思う次第でございます。  値段を下げるという面では、材料の方がやはり僕は要素が大きいんではないかなと。輸入住宅全般というよりは、おっしゃるように材料費の面が大きいんではないかなと。ただ、工賃の問題もありますから、それを含めるとそんなには、先ほど五百万、一千万と言いましたけれども、そんなに大きくは下がらないのかもしれないけれども、きめ細かくいろいろ、例えば電話関係の方々に聞いても、厳しい規格がやはりあって、もっと、三分の一ぐらいの値段材料を仕入れようと思ったら、外国には実はそれほど遜色ないものであるんだという話も伺ったことがあるものですから、JIS、JASの問題がやはり大きいんではないかと。先ほど東郷参考人からも言われましたけれども、JIS、JASの関係でかなり実は材料の費用は一軒当たり下げられるんではないかなという印象は持っておるんですが、何せ印象なものですから、お二人の方から、その辺の材料費の価格差についてどのような数字なりお持ちか、伺いたいと思います。
  17. 東郷武

    東郷参考人 使用材料、我々使います建築の鉄とかあるいは木材について、これは余り大幅なことはなかろうと思っておりますが、しかしそれでも、外国のものがJIS化されあるいはJAS化されたり、あるいは自由に使えるようになりますと、大幅なことはないと思いますが、多少のダウ ンはもちろん可能でございます。しかし、その数字は持っておりません。(五十嵐(ふ)委員「大体何割というような感じは」と呼ぶ)何割というのはなかなかわかりません。  しかし、むしろ差が大きいのは、加工品であるとか器具であるとか、そういうものではないかと思います。しかしそれは、かなり日本と慣習の違うもの、例えばユニットバスなどは外国のものは非常に安いですが、日本へ持ってきますと全く構造が違いますのでそのまま使えないとか、便器とか衛生器具などもそういうものは多少あろうかと思います。そういうものをうまく入れることができたら、かなり安くなっていくのではないかと思います。
  18. 三原松樹

    三原参考人 先ほど申し上げましたように、少なくとも柱、はりとか、そういう構造材については残念ながら我が国の木材の方が高めということで、もちろん地域によりまして、地場のいわば裏山から木を切り出すようなところでは輸入品よりももちろん安いものもございますし、治山治水の観点からも特に杉材を使わなければいけないのですが、輸入工法であるツーバイフォーの場合は、すべて向こうに、輸入品に頼っている。それを林野庁を中心に国産材に代替できないかというような研究もなされておりますが、現状では海外のものが安いということでございます。  それから、細部になりますと、私が先ほど規制を若干緩めていただきたいという中で申し上げた水栓金物なんかですね。これは、日本のものははっきり言って非常に高いということが言えると思います。これは、水栓並びに排水、例えば便器等ですね、そういうものも含めますと、同程度のデザイン、同程度の品質で比較しまして日本のものが八十六万円ぐらい、ある試算によりますと海外のものは四十一万五千円、半分と言えるかと思います。もちろん、その便器の中の、つくっているそのもとは土ですけれども、そういう品質を分析しているわけではございません。我々が使うレベルあるいは実際お住みになるお施主さんが判断して同レベルという比較をしますと、そういうことになります。  もちろん、これはテレビ等の報道でもありますように、その水栓金物、水道の蛇口一つを、例えばアメリカにはホームデポーというか、ホームセンターの非常に大規模なものがありまして、まだ日本はそこまでいっていませんが、そういうところですと、例えば千円を切っているものもある。日本は少なくとも五、六千円はするとか、便器単体でとりましても、通常北米なんか、アメリカ、カナダのものは五、六千円のものも幾らもあるのですが、日本では三万五千円ぐらいは少なくともするというような差はございます。  しかし、それはアメリカで調達したものを今の為替で換算した価格であって、それを太平洋を渡り、さらに、この太平洋の運賃よりも日本の港に着いてからの、我々業界では横持ち、横持ちと言いますが、例えば横浜港に入れたものを仙台まで運ぶとしますと、太平洋を渡る運賃よりも実は高いのですね。そういうものが積み重なってのことでございまして、関税ではございません。関税の高さではございません。  そのこととは別に、御質問の答えになるかどうかわかりませんが、実は輸入に関しては円高というのがありまして、輸出に関しては非常に問題なわけですが、我々輸入している者に対しては非常にこれはプラスに作用しております。  例えば、よくそういう話が車なんかでも出るのですが、円が一円強くなるとしますと、先ほどのように使い方によって、あるいは質、住宅のレベルによって違いますが、大体一円当たり、坪当たり千円から千五百円ぐらい円高差益といいますかそういうものがありますから、四十坪の家としますと、四万円から六万円ぐらい一円当たりあります。ですから、十円、例えば八十七円ぐらいでしょうか、今仮に百円が九十円になったとすると、四十坪程度の家で一戸当たり四十万から六十万ぐらいの円高差益がございます。  以上でございます。
  19. 五十嵐ふみひこ

    ○五十嵐(ふ)委員 ぜひその差益を還元していただきたいものだと思うわけですけれども、先ほどのお話でも、五十二坪の坪単価が四十七万八千円というのは安いなという感じがするわけですね。日本住宅メーカーで、非常に豪華なものになりますと、坪単価が七十万、八十万するわけなのですね。安い感じがするものですから、やはりその辺で輸入住宅のメリットというのはあるのかなと思っていたところでございます。  時間がありませんので、畳み込んで少し幾つか御質問したいと思いますが、三原さんに、先ほど審査の迅速化というものをお願いをしたいというお話があったのですが、現実には今どのくらいがかり、それはどの程度縮めてほしいというお話なのかを簡単にお伺いしたいと思います。
  20. 三原松樹

    三原参考人 例えば防火ドア、これは準防火地域ではそういうものを使わなければいけないわけですが、それの中に乙種、もちろん甲種もあるのですが、乙種防火戸というのを準防地域では使うことになっております。  我々の例で、例えば外国製のドアを海外のメーカーが、小さなメーカーなものですから、あるいは例えばランゲージバリアといいますか言葉の問題もありまして、日本では申請ができない、我々が彼らにかわってそれを申請するというようなケースの場合は、審査がいつもだらだらあるわけではなくて、ある一定のところで締め切りというような問題もございます。  そういうことも含めてですけれども、基本的に、試験センターで試験をし、それの結果をもって建築センターでの承認を得て、それをさらに建設省に持ち込む、そして建設省から最終的に各自治体の建築主事に対してこういうものがいいんだよという御通知をいただくというような過程がございますので、あわせますと、どんなに早くても半年、通常一年というふうに思います。それは防火ドアのケースでございます。  もちろんその中で、先ほど申し上げましたように、申請者負担の軽減というのもありますけれども、その場合、例えば我々が申請したのは日本円換算で現地価格十五万六千円のヨーロッパ製のドアでございますが、申請手続等に、見積もりましたところの段階で最終結果は出ておりませんが、約二百六十万円かかります。
  21. 五十嵐ふみひこ

    ○五十嵐(ふ)委員 ありがとうございます。  それから、先ほど東郷参考人からお話を伺いましたが、既存適格の問題、非常に重要な御指摘だと思って、私もこれから勉強させていただきたいと思います。どのようにこの問題を解決していったらいいのか、どこかインセンティブをつけて直してもらう工夫をしなければいけないのかなと思います。  さて、住宅値段という問題になりますと、先ほどから御指摘がありますように、材料等で輸入をすれば安くなる可能性もあります。確かに安くなるのでしょうけれども、大きなところは、大宗はやはり土地の価格ということだろうと思います。最近、ある大手のビル管理会社の方々ともお話をさせていただきましたけれども、大体土地はもう収益還元率に近づいてきたというか、もうそれを下回っていることも、下回っているといいますか、その水準まで来た、十分に下がったという発言があったわけなのですが、果たしてこの東京で、首都圏で、その土地の水準、そして収益還元率との関係について、どこまで来たのか、あるいはどういう見通しかを長谷川先生に、御専門ですので伺いたいと思います。
  22. 長谷川徳之輔

    長谷川参考人 お答えします。  私は、バブルの崩壊という意味は、世の中の価値の見方が大きく変わったことを意味すると思います。バブルの前まで、バブルの最中は、地価が上がるからまた上がる、買うから上がる、こういうキャピタルゲインというのが中心でございました。しかし、それが崩れたわけでございまして、経済成長の中で地価が決まっていくということになりますと、これからの経済成長は二%あるいは三%という中で地価が決まっていくわけでございますから、当然その収益を還元する、収益を実現 する価値でなければならないというふうになったことだと思います。  商業地が実は売れないのは、今は底だと言っている当人がお買いにならないからでありまして、大手ディベロッパーなりあるいはゼネコンなりがなぜ買わないかといえば、買っても採算が合わないから買わないのだ。その方たちが買わなかったらだれも買う人がいないわけでございますから、その人たちが買える条件が実は売れる条件だということに相なると思います。  住宅地については、アフォーダブル、日本ではこの概念が余りはっきりしませんが、アフォーダビリティーというか、平均的な消費者が買える条件ということをどこで設定するかということだと思います。これは、地価が下がり、建築費が下がり、規制緩和によって値段が下がるわけでございますから、我々が求め得る住宅条件、これをぜひ向上させてもらいたい。  今の誘導居住水準にしろ、すべての住宅の水準というのは、地価が高いときにできております。我々年収五年分の住宅価格も、バブルの最中にできております。さまざまな条件が変わっておるわけでございますから、今住宅水準というのはどういうふうになったら我々にとって生活上いいのか、さらに、二十一世紀に向かった社会資本の蓄積というのはどうあったらいいのかということを含めて実は見てもらいたい。  そのためには、やはり一挙に倍とはいいませんけれども、五割増しくらいの床面積が確保でき、なおかつ年収の五年分以下で購入できる水準に地価が下がることが最大の実は需要拡大の条件でございましょうし、経済が安定して成長していく条件だと私は思っています。その意味では、実はまだまだ大都会の私たちの周りの地価というのは、平均的な人がその利益を享受するまでには至っていないというのが現実だと思っております。
  23. 五十嵐ふみひこ

    ○五十嵐(ふ)委員 私も先生と同感だということを表明させていただいて、質問を終わります。  ありがとうございました。
  24. 塚田延充

    塚田委員長 斉藤鉄夫君。
  25. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 新進党の斉藤鉄夫でございます。  きょうは三人の参考人の先生方、お忙しい中我々のためにおいでくださいまして、本当にありがとうございます。また、貴重な御意見をお聞かせいただき、本当にありがとうございます。  私は新進党を代表して、参考人の先生方に質問をさせていただきます。  この国会で、規制緩和特別委員会でいろいろ議論をさせていただいておりますが、やはり規制緩和の柱となるものは何かという議論になりますと、住宅土地情報・通信そして流通・運輸なのかなというふうなコンセンサスが得られております。今回、参考人の方をお呼びして議論をするきょうの委員会にしましても、この三つを柱にして議論をしていこうよいうふうになったわけです。  ところが、住宅土地の分野についての規制緩和については、ほかの規制緩和とちょっと違うところがあるだろう。先ほどの五十嵐委員からの質問のところでも出ておりましたけれども、ほかの分野のように、ただ競争原理経済原理だけで規制緩和をして経済の活性化を図るという性格のものではない、私の権利それから公、そういうものの調和を図りながら、また、国づくり、都市計画、そういうことをみんなで議論しながら決めていかなくてはいけない、こういう分野だろうと思うわけでございます。  しかし、そうでありながら、規制緩和というと必ず土地住宅というのが柱になってくるその理由には、やはり国民の間に、安い値段で、いい住環境に住みたいという本当に大きな願いがあるからこそ、細かいことはわからないけれども、とにかく今の土地住宅に関する規制には何か不合理なところがあって、その不合理な部分を取り除けば、例えばヨーロッパやアメリカのようにすばらしい住環境の中で安い住宅が手に入る、その不合理な規制を見つけて取り除いてほしい、こういう願いがあるからこそ、常に、規制緩和の話になると土地住宅が一本の柱になってくる、そういうことではないかと思うわけでございます。  そこで、三人の専門の先生方に、日本土地住宅に関する規制外国土地住宅に関する規制、本質的にどこが違うのだろうか、どこが違うから、例えばドイツのようなああいうすばらしい住環境日本のようなみすぽらしい住環境、この差が出てくるのだろうか。長谷川参考人には主に土地の観点から、また、東郷参考人三原参考人からはいわゆる住宅の観点から、日本外国との規制の比較というようなことでもしお気づきの点がございましたら、お教え願いたいと思います。
  26. 長谷川徳之輔

    長谷川参考人 一つは、私は、日本都市計画より規制の強さという点ではアメリカやヨーロッパの都市計画の方が、より規制が強いかと思います。ドイツのBプランにしましても、それからアメリカのゾーニング制度にしましても、これは住民自治という点からも出ているのだと思いますが、建物の高さ、容積のみならず、色や材料や樹木に至るまで実は都市計画が決まる、地域計画が決まるというふうに、都市計画がもちろんつくられております。アメリカの用途規制も、ゾーニングも、非常に細部にわたったゾーニングができております。  そういう意味では、都市計画視点においては、日本制度の方が緩い。日本制度はむしろ現状追認型で、都市計画を引っ張っていくということより、むしろ土地経済的にでき上がった都市にくっついていくというのが日本都市計画現状だろうと思うのです。  私は、その一番大きい理由は、日本地価が先にありまして、それに応じて都市計画を決める、こういう仕組みになっていると思います。それで、地価都市計画都市のあり方ということとは無関係に決まる。したがって、都心に住める、住むべき、住まなきゃいけない人も住めなくなる。したがって、地価に追われて住宅地がどんどん郊外化するということで、それに追随して都市計画が決まるというふうになってしまったのじゃなかろうか。  また、商業地と住宅地についても、そういう土地利用規制が緩いという点から、住宅地に商業地が侵入する、ビルヘ転換する期待を得て住宅地の地価が商業地と同じような上昇をする。こういう規制があったのだと思うのですね。  外国の場合には、土地利用計画都市計画に従って地価が決まる、こういう原則だろうと思います。それは基本的には、収益、その土地から生ずる利益に従って土地値段が決まるんだ、それが取引の条件であるし、買う人の条件だ、あるいは売る人の方の条件だ。実はこういうルールになっているのだろうと思う。  私たちは、土地以外については、日本もこういう概念を持っているわけでございます。事、土地になりますと、そういう概念がなくなってしまう。地価が先に決まって、逆に都市計画が追いつき、また地価が高いから規制緩和をして地価を、まあ半分にならないかというふうに願うわけでございますが、そこは逆だろうと思うのですね。やはり収益に応じて、収益の利回りに応じて地価が決まる、都市計画に応じて地価が決まるという基本的な原則を、実は我々はもう一度確認すべきだと思うのです。  バブルの崩壊というのは、まさにそのことを意味しているのだと思うのです。キャピタルでは地価は決まらない、転がしては地価は決まらないということを実は意味しているわけでございまして、そういう条件が合成就しつつあるわけでございます。規制緩和も、そういう中でぜひお考えいただきたい。我々が四十年間、拝金主義、拝土地主義という中で忘れてきた、そういうごく当たり前の原則を、我々は取り戻すべきだというふうに考えております。
  27. 東郷武

    東郷参考人 住宅本当に安くできる方向が見つかれば、本当に私どももありがたいのです、日夜模索はしておるわけでございますが。  基本的に日本住宅は、団体規定と単体規定というふうに基準法でも分かれるわけでございます が、全体の都市計画的な団体規定については、海外の方がむしろきついのじゃないかという感じはいたしております。細かく比較をしたわけではございませんが。  ただ、日本住宅地は、一つの宅地が四十坪とか五十坪とかいうような狭小でございますが、アメリカあたりに行きますと、二百坪、三百坪、ごく普通でございまして、少々厳しくても非常にいい環境の町ができるという、要するに地価の差という非常に大きな問題がございます。  基本的には、それを解決しないと全体的な住宅のコストは当然下がらないわけですし、いい町もまたできないと思いますが、我々のところではそういうことは簡単にできませんので、いかにして住宅そのものを安く、あるいはまた同じ費用で大きくできるかというようなことを一生懸命考えておるわけでございます。そういう、四十坪とか五十坪というような非常に狭い宅地でもなおかつ豊かに暮らせるような住宅というものを考えておるのですが、日本は単体規定がちょっと厳し過ぎるのではないかと思います。非常に細かいところまで、例えば家の中の手すりの高さ、あるいは採光面積の制限とか、非常に細かい規定がたくさんございます。そういう単体規定はもっと一級建築士に任せて自由にしたらどうかという感じを持っております。その辺も多少はやはりコストに問題があると思います。  それから、そういう狭小敷地を十分生かして大きなあるいは豊かな空間をつくろうと思いますと、どうしても、先ほど言いました地下室とかあるいは三階建てとかいうことになるわけですが、そういう問題について、容積率緩和とかあるいは斜線制限の緩和とかいうことを望んでおるわけでございます。少しずつそういうことをやっていって、日本独特の狭小敷地における豊かな空間というものをつくっていけるのではないかなというようなことを考えております。お答えになるかどうかわかりませんが。
  28. 三原松樹

    三原参考人 私は、規制が原因で住宅が高くなるということよりも、住宅が高いことには複合されたいろいろな要因がございます。  その中でも、規制も若干もちろんございますし、今東郷参考人がおっしゃったように単体規定が巌し過ぎるというようなことであるとか、例えば、これは労働安全衛生法という法律だったと思いますけれども、ワーカーの生命を守るために、労働災害を起こさないために、特に建築中の外部足場、これなんかには非常に厳しい規定がございます。少なくとも北米で見る限りは、そういうものは非常に簡単でございます。これを北米並みでなくてもやや緩和することによって、少なくても住宅価格が坪一万円は下がる。四十坪の家でしたら四十万円程度下がることはほぼ間違いなかろうと思います。  そういうことを除きますと、むしろ住宅が高いのは、日本独特の資材の流通の仕組み、非常にふくそう化した流通形態、これも徐々に競争場裏の中で改善されつっありますけれども、そういう資材流通の階層の多さであるとか、あるいは、もっと問題なのは、日本のいわゆる住宅建築にかかわる技能者の方々の、いわば昔からある伝統的な職種の区分であるとか、あるいは、アメリカなんかは横断的な職種別のユニオンがあるわけですけれども、日本にはそういうものが、なくはありませんが弱いこともありまして、余り組織化されていない。例えば就労時間につきましても、基本的には各人の判断に現場サイドでは任されて、何時から仕事を始めて何時に終わるのか、何時に帰るのか、日曜は働くのか働かないのかというようなことがはっきりしておりません。いわば、言葉は不適切かもしれませんが、余り組織化されたという形になっていないのですね。したがって、どうしても生産性というような、そういう言葉がなかなか理解しにくいような、いわば建築というか、生産形態になっている。  もちろんプレハブ系の住宅メーカーのように、工場の中では車と同じような、非常に生産効率の高いそういう形態をやられている会社もございます。しかし一般に、戸建て住宅の大半は、まだ小型の、年に四戸とか五戸というような、工務店に支えられているのが現状でございますので、特にそういう部分では、そういう場面においてはそういうことが言えるのではないか。  もう一つは、これは一つは住み手の考え方だと思います。  日本住宅をお建てになる方というのは、非常に細かなというか、高い品質基準を要求されるのですね。例えば構造ですと、欧米の場合は、もちろん構造計算されていますから力学的にもてばいい。当然、こういうふうにくるまれてしまうわけですから、中は見えないわけですね。ところが日本人は、それは汚れているのじゃないか、節が多いのじゃないかとか、そういうことに非常に神経を使われます。そういうことがどうしても住宅価格を高くする。  先ほど申し上げましたツー・バイ・フォーのランバーの輸入にしても、日本にはJASSのグレードあるいは各社個別のグレードがありまして、これは北米よりもかなり高い水準になっています。ですから、輸出国のアメリカ、カナダにしますと、日本人はマグロのトロだけ買っていくのか、トロは高いのは当然じゃないか、残る赤身はだれが食うんだというような、言葉は不適切ですけれども、そういうことが言われるくらい、そういうこともございます。ですから、住み手自身も考え方を変えなくてはいけない。  あるいは供給形態としても、北米の場合は建て売りが九割でございます。注文住宅は一割。日本は注文住宅が七割。要は、一戸ずつ建てる場合とまとまって何月か建てる場合は、常識的に考えればコストが違うというようなことがございます。
  29. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 非常によくわかりました。ありがとうございます。ある意味で、日本外国土地住宅に関する規制のあり方、ちょっと差がわかったような気がします。  今回、この三月末に政府が規制緩和推進計画、当初五カ年計画でしたけれども、前倒しして三カ年計画になりました。この政府の出しました規制緩和推進三カ年計画、これは外国からの要望もかなり取り入れた形での推進計画になっておりますが、これが実行されますと土地住宅は少しは安くなるのか、手に入りやすくなるのか、政府の計画に対する評価を三人の先生方にお聞きしたいと思います。
  30. 長谷川徳之輔

    長谷川参考人 規制緩和の問題は出てから既に十年以上たっております。政府の決めた規制緩和の方策は、いわば十年間ずっと論議してきたことを整理をされたということで、なおかつ、それについて若干のプログラムを示されたということだろうと思います。  そのディテールについては私一つ一つ評価できませんが、しかし、何のための、だれのための規制緩和であるかという、精神と申しますか考え方を実はもっと示していただきたいというふうに思います。これによって、まさにおっしゃられたように住宅価格がどうなるのか、都心居住はどうするのか、住むのか住まないのか。  さらに、これ以外に定期借地権の問題等もございましたが、さまざまな仕組みがバブルの後にできました、土地税制にしろ定期借地権、こういったものと連動して規制緩和は機能するんだと思うのですね。規制緩和単体で合成果が上がるというのではないと思いますので、こういったものを含めてぜひ、都心居住について百六十万戸をつくるということでありましたら、ではそれと規制緩和あるいは定期借地権あるいは公共投資、こういったものが一体どう関連しているかということ、そしてそこにできる住宅の目標と申しますか質、広さ、こういったものをぜひ市民に示してもらいたい。  そのことによって実は規制緩和に対する国民の理解が高まるでしょう。ただ言葉を並べてさあこれをやりますといっても、私としては言葉の意味も明確に理解できませんし、それでは実は計画としては不十分ではないか。むしろ、これによって何ができるんだ、どの程度、いつまで、どういう姿 の町なり住宅が供給できるんだということを示してもらいたいし、また示すべきだろう、そうやって市民の理解を得ていくべきだろうというふうに思っております。
  31. 東郷武

    東郷参考人 初めにお話ししましたように、私ども、二十四項目等の規制緩和に対して既に十項目以上について、既に四項目については決定しておりますが、かなり前向きの方策が出されておりまして、いろいろ、閣議決定でもかなり前向きの案が出ております。  我々の住宅に関する規制については、どれをいらえばどれだけという問題ではございませんで、小さな問題が一つ一つ積み上がってコスト等に影響してくるというふうに考えております。  したがいまして、非常に細かいものをいろいろ、合理化案を陳情しておるわけでございますが、そういうものを一つ一つ積み上げていただければ、かなりいい方向へ行くだろう。ただ、これがいつ、どういうふうに何割というようなことは、工法等にもよりましてなかなかわからないのですが、必ずいい方向に行くと思います。  それから、現在既にかなり安くなっているということもぜひ御理解いただきたいと思います。先ほど五十嵐先生が、坪当たり四十七万、かなり安いなと言われましたけれども、ここ一、二年、相当我々も技術開発とかいろいろなことをやりまして、四十七万とかいうのは決して安い方ではございません。そういうものはたくさん出ておりますから、その点も御理解いただきたいと思います。
  32. 三原松樹

    三原参考人 土地絡みのお話については、東郷参考人と全く同じに考えております。  東郷参考人もおっしゃったように、これはもちろん、政策それから行政レベルの緩和方向、こういうものが特に昨年ぐらいからいろいろな部面で声高になったことは確かだと思うのです。そういうことが結果的に、末端に浸透していって我々の仕事がやりやすくなる、結果として安くなるというような仕組みになろうかと思います。  そのほかにもう一つ経済原則が働いておりまして、住宅が安いか高いかのときに年収五倍論というのがよく言われるのですが、東京の例をとりましても、通勤時間一時間半圏にはそろそろ年収五倍で買える、そういう住宅も今現実に販売されるようになっております。  それから、先ほどの坪当たり四十何万の話ですが、これはいろいろな住宅メーカーあるいは工務店も含めて、既に坪三十万を切る住宅もあるぐらいで、建設省のアクションプログラムで二十一世紀までに住宅価格を三分の一にするというような方針が出されておりますけれども、私はそういう方向業界自身も動いているというふうに思いますし、お客様自身がそういうものを承知の上でもっと厳しい選択をなさっているというふうに思います。
  33. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 引き続き三原参考人にお聞きしたいのですが、先ほどのお話の中で、輸入住宅については大きな障壁となる規制は存在しない、ない、もちろん細かいものについてはあるけれども大きなものはないというふうな御意見をお述べになったわけですが、我々のイメージとしては、この間も村山総理が横浜の輸入住宅展示場を見て、こんなに規制がたくさんあるのか、びっくりしたというふうな報道もございます。また、規制のおかげで、輸入、非常に安いにもかかわらず消費者がそれを享受できない、こういうふうなイメージを持っております。  こういう聞き方は申しわけないのですが、その我々が持っているイメージ、大きな規制があるために私たちが輸入住宅を好きに買えないという我々の認識と先ほどの三原参考人の認識と、ちょっと大きなギャップがあるような気がするのですが、そのギャップの原因はどこでございましょうか。
  34. 三原松樹

    三原参考人 御質問でございますけれども、輸入住宅が建つ、建たないというレベルでは大きな障壁はないと思います。もちろん私が法律よりも手続の問題と申し上げましたのは、特にツーバイフォーみたいに既に日本になじんだ工法はもちろん問題ないのですが、新たな工法外国から輸入してそれを建てたい、これはいわゆる基準法の三十八条の認定手続をとらなければなりません。私ども経験がございませんので、それにどのくらいの時間がかかるか、これはケース・バイ・ケースであろうと思いますが、そういう部分に非常に時間がかかる。だから輸入できないではないかという部分は、それはあろうかと思います。  しかし、特に先生がおっしゃるように、輸入すれば安くなるんだということは、我々の力足らずのせいもあると思いますけれども、輸入住宅だから安くなるということは現状ではございません。先ほど申し上げました円高もありまして、国産並みになったということでございます。ですから、これは本当に正直に申し上げて、先ほど四十万台だと申し上げたのは、これは輸入住宅のケースでございますが、私ども同じ会社で、国産品だけのものでは三十二万円から供給しております。
  35. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 ありがとうございました。  長谷川参考人にお聞きしたいと思うのですけれども、規制緩和と直接関係しないかもしれませんが、せっかくですので、このチャンスを利用して聞かせていただきます。  土地の流動化、先生は常々、土地というのは持つものじゃなくて使うものだということを御主張されております。私も全く同感でございまして、そのためには土地の流動化というのが本当に今必要なのではないかと思いますけれども、規制緩和と絡めて、その推進をするにはどうしたらいいか、今どういうお考えをお持ちか、お聞かせ願えればと思います。
  36. 長谷川徳之輔

    長谷川参考人 基本的には、私たちは土地をめぐる環境の変化を素直に認識すべきであろうと思うのです。まだ実は、バブルの崩壊の傷におののいて、バブル恋しや懐かしやという向きもないわけではありません。しかし、そういうことであれば土地は流動化しないと思います。バブルの崩壊は、収益、利用することの価値がもともとの値段だということを全員が認識したわけですから、そういう条件をつくることが最も流動化する条件だろうと思います。ミニバブルを起こして、もっと上がるからもう一度ばくちをしようと言ってはくち場に誘い込んでも、だれも入ってこないと思いますね。そういう意味では、やはり素直に現状を認識して、アフォーダブルな水準のものを出していく、これに尽きると思うのです。  ただ、そうしますと、不良資産、不良債権、これが発生します。多分膨大な損失が出るでしょう。しかし、バブルの傷というのはもう一度バブルでは直せないわけです。ばくちのツケをもう一度ばくちをやって直そうということはできませんから、やはりこの不良資産の処理についても、これから二%、三%の低成長の中で着実にこれを解消していかなければならない。そういう苦難の道があるということも実は理解しなければならない。  最後に私は、これは言い過ぎかもしれませんが、不良資産、不良債権、せっかくあのバブル時代に民間が苦労して地上げしてくれた都心のあの土地を使わない手はないと思うのです。どうやってうまく使っていくか、その知恵だろうと思うのです。やはり私は、そのときこそ都市計画あるいは政府というものがどういうふうにそれに貢献するか、都心住宅をつくった場合に今の不良資産や未利用地がどう利用できるか、そのプロセス、仕組みというものを準備して流動化させていくということで、みんな手をこまねいてミニバブルを待っておったのなら永久に流動化しないというふうに思っております。
  37. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 どうもありがとうございました。質問を終わります。
  38. 塚田延充

    塚田委員長 吉井英勝君。
  39. 吉井英勝

    ○吉井委員 三人の参考人の皆様には、きょうはどうも御苦労さまでございます。  お話を伺っておりまして、特に、日本に比べて公有地比率のうんと高いヨーロッパの町がなぜあんなにきれいにうまくいっているのかなと常々思っておりましたところ、日本に比べて都市計画の面では規制がむしろかなり厳しい、そうしてあ の美しい町をつくるということに随分努力をしてきたということを伺って、なるほどなということも思った次第です。  それで、長谷川参考人のお話の中で、新しい土地の供給としては、一つは市街化区域などの農地に着目をしていらっしゃるような印象も受けたのですが、同時に、今もお話ありましたバブル時代買い集めた遊休地もありますし、それからもう一つ日本の産業構造が変わってまいりまして、かつての重厚長大型の素材供給型産業の持っていたところで広大な遊休地が生まれてきている、そういうところにどう着目をしていくかということもあろうかと思うのです。  ただ、私きようここでお伺いしたいのは、それにしても、都市計画とかあるいは土地政策を考える上でも、今日やはり阪神大震災の後、災害から国民の生命財産を守るということが政治の根本問題になってきているというふうに思うわけです。そうしたことを考えましたときに、大都市部における防災というときに、確かに防災のための都市公園を整備するとか、これは焼けどまり線をつくったり避難広場をつくる上で非常に有効なわけですが、ただ、大都市地価が上がってきますと、なかなか財政的にも大変なわけですね。  そうしたときに、きれいにうまいこと残っているわけじゃありませんが、むしろ市街地の農地というものを防災空間という点で着目したときに、防災に要するコストは、新しく用地買収をしてつくるよりも、農地は農地としてできれば続けておいてもらった方がうんとコスト的に安いということもある。それから、農地がありますとため池等がありますから、新たに百トン規模の耐震性の防火貯水槽となるとこれまた用地を購入しなければいけないのですが、逆にため池等の耐震性の補強工事などによってそれを活用することとか、農地がありますと農水路もあるわけですね、消火栓が切断されたときに補助的な水利として確保する道とか、農地というものは、ただ供給するということだけじゃなくて、東京ではかなり難しい面もありますが、日本の大都市部における農地というのは防災空間としての活用というものも考えた、だから、そういう点では土地の利用について必要な規制も含めて考えていくということも一つ大事になってきているのじゃないかなと私は思うのですが、この点についての長谷川参考人のお考えを伺っておきたいと思います。
  40. 長谷川徳之輔

    長谷川参考人 今東京で一番災害の危険の大きいのは、山の手の中野とか杉並だとかあるいは目黒だと言われております。なぜそうなったかといいますと、これはやはり歴史的な過程で、あそこの地も七十年前は広大な農地だったわけです。関東大震災の後に、実は、都市計画がなしのままに、農家が切り売りするままに町ができてしまった。特に、中野の野方とか沼袋あたりを見ますと、環状七号線にどの道路も直接に入っておりません。消防自動車も入れません。これは農地のまま切り売りで宅地化したからああいう形になったわけであります。まさに都市計画の欠落を示しております。  それが、七十年後に膨大な社会資本を要する、防災のための費用を要するというツケになってあらわれているということでございまして、同じことが実は郊外の市街化農地にもあるわけでございまして、中野や杉並、目黒の轍を繰り返さないということはぜひ必要だろうと思うのです。  その場合に、やはり市街化農地について、確かに防災的な機能も要るでしょう。それは、今でも実は防災機能を果たすために市民緑地とか新しい法律ができております。そういう制度を活用すべきであって、そのときに農家の御好意に甘えてとか、そういうのは論外だと私は思うのです。また農家の方も、都合のいいときは農地で、都合の悪いときは宅地だという、いわばそういう姿勢をとると思いますので、農家の御好意に甘えてというのじゃなくて、しっかりした制度をつくり、定期借地権導入するなり、あるいは生産緑地法の中で政府が借り入れるなり買い取るなり、そういうものをしながら防災緑地を進めていく。  さらに言えば、減反農地、これは膨大な減反農地がございますので、このあたり、調整区域の中で減反農地を対象にどうやって長期的に国公有地をふやしていくか、都市開発の種地とともに広大な防災空間を常に持っていくという努力、三十年、四十年できなかったわけでございますが、もう一度グリーンベルトの構想というものを頭に入れて、周辺にそういう裏の農業対策として減反農地を都市土地利用に使う、一つ手段としてそういうことまで考えていくべきだろう、そういうふうな時代だろうと思うのですね。  そういう条件が今準備されつつある。それをしっかりとらえて、おっしゃるように有効な土地利用をつくっていくべきだというふうに思っております。
  41. 吉井英勝

    ○吉井委員 私ももともと大阪の方ですから、ついこの間まで田んぼだったところが乱開発が進んでいる。そういう中で、宅地開発指導要綱を設けたりして、自治体は自治体独自の規制都市計画とともに進めてきているのが実態ですが、そういう点で、宅地並み課税で追い出すというやり方だけじゃなしに、それが防災の助成というやり方になるのか、あるいは防災協力減税みたいな形で税でもって考えるのか、そういったことも含めて、いっときに全部公有地拡大となりますと、これは国も自治体も財政的に大変ですが、やはり農地は農地として続けておいてもらうということが将来にわたっての役割を果たすのじゃないかなという点で、今のお話は大変参考になりました。  それから私は、「土地は、誰のものか。地価再考」ということで綿貫さんと一緒に著していらっしゃるのを読ませていただきまして、大変興味を持っているのです。きょうもお話がありました八○年代の規制緩和論、そのときサッチャーリズムとレーガンの行革等も御紹介していらっしゃいますが、最近、筑波大学の進藤さんの「アメリカ 黄昏の帝国」というのを読んでおりまして、あの時代のやり方というのは、軍拡とレーガン減税と、小さな政府ということで規制緩和と行革ですね、それを徹底的にやって何が生まれたかというと、大量の失業とホームレスと麻薬、売春、殺人、暴力といった、社会の荒廃を招いてしまったという、そこからチェンジを求めていくという、その辺なんかの紹介がありました。  私は、その八○年代の外国で失敗した後を追って、いわば中曽根民活・規制緩和論があるというお話が本にもありましたし、今もありましたけれども、当時の規制緩和論と今日の規制緩和考え方について、長谷川参考人は何か違いというものを見ていらっしゃる、あるいはお考えになっていらっしゃるとしたら、その点も伺っておきたいのです。
  42. 長谷川徳之輔

    長谷川参考人 八〇年代のイギリスアメリカは、私もそれほどつまびらかに知っているわけではございませんが、一つは、規制緩和しか方法がなかったということだと思うのです。財政赤字で政府が支出できない、それから民間は低成長で疲弊している、そういう中で、せめて規制緩和で何とかビルディングの建設ができないかということがそもそもで、選択がなかったということだと思うのです。  ところが、それでアメリカの場合には、中曽根民活が始まったころ、実は不動産のバブルがはじけてビル不況になっておったのです。そのビル不況になったところに、この間新聞に出ておりましたが、日本の企業は一斉に安いといってビルを買いあさったのです。まさにその時代でございまして、その時代に、当時の内閣は規制緩和ということを立てながら民活、民営路線ということで突っ走った。それがまた、実は、アメリカと同じように、アメリカよりさらに巨大なバブルをつくってしまった、こういう結果になったと思います。  それは歴史の流れであって、今さら悔いてもしょうがない話でございますが、今は、バブルがはじけて、またその状況が戻っているときに、規制緩和というのは、そういうミニバブルの期待であるとか、ちょっとだけ商売がやりやすくなるとか、そういう視点で見るのはいささかどうか。むしろ 今、もうあと五年で二十一世紀ですから、二十一世紀に向かって住宅住環境はどういうふうに展開したら日本の国益にかなうのか、あるいは経済成長に寄与するのか、こういう視点規制緩和を位置づけていく、そういう見方だろうと思うのですね。  中曽根民活のときは、どうしてもやりやすいようにと政府は口を出さずに、民間に仕事をやってもらって経済を少しよくしようじゃないかということだったと思います。しかし、今はバブルということを経験し、その考え方も大きく変わっている。ぜひ二十一世紀に向かって、最後のチャンスでございましょうし、住宅住環境改善する絶好のチャンスだと思うのです。その中にこの規制緩和というものを位置づけて進めていくべきであろうというふうに考えております。
  43. 吉井英勝

    ○吉井委員 時間が参りましたので、終わります。
  44. 塚田延充

    塚田委員長 以上であらかじめ申し出のありました質疑は終了いたしました。  この際、委員各位に申し上げます。  これより、質疑のある委員は、挙手の上、委員長の許可を得て発言するようお願いいたします。また、発言の際は、自席にて起立し、所属会派及び氏名並びに質疑する参考人の名前をあらかじめお告げいただきたいと存じます。  なお、発言は簡潔にお願いいたします。  それでは、質疑を続行いたします。質疑のある委員は挙手をお願いいたします。
  45. 河合正智

    ○河合委員 新進党の河合正智でございます。  長谷川参考人にお伺いさせていただきたいと思います。  ただいま土地住宅対策にとりまして絶好のチャンスだというところまで議論が進んでおりますけれども、ただ、日本土地について限って申し上げますと、所有権という、所有を中心に構成されておりますし、また国民の意識もそうなっておると思いますけれども、この辺のネックをどのように乗り越えていったら次の根本的な土地対策になり得るのか、その辺のところにつきまして御教示いただきたいと思います。
  46. 長谷川徳之輔

    長谷川参考人 私たちが土地に執着したというのは決してそんな長い歴史ではなくて、私は、この三十年だろうと思います。  戦前は実は東京住宅事情というのは、七割、八割が借家でございました。土地を持つという意識も余りなかった時代でありました。それは実は、土地は利用するものであって、売ったり買ったりするものではないという意識があったからだろうと思うのです。  戦後この土地神話、拝金主義が生まれたのは、地価の上昇率が金利や経済成長より高いということに尽きるわけでございます。金融資産の方より土地の方が有利だという状況が二十年、三十年続きました。そして、経済成長率というのはかなり高うございましたから、高い地価の上昇を数年でカバーできる。こういう実は土地経済のいわば連動というのが高度経済成長の中だから可能でございました。その中で、私たちは土地が最高の資産だと思い込んでしまった。それは企業も個人もみんな思ったわけでございます。早く買って人に売りつけて利ざやを稼ぐ、最初に一DK買えばあとはただでもって一戸建てに入れる、こういう意識をみんな持ってしまったわけでございます。それは、その条件としてはあくまでも実は経済成長が年率十数%だという時代を経てきたからであります。  しかし、今経済成長は二%、三%でしょう。二%の経済というのは三十五年にならぬと倍になりません。一〇%の経済ですと六、七年で倍になってしまいます。七%でも十年で倍になります。これから、二%、三%の経済というのは、自分の一世代単位、自分が会社に入って定年退職するまで実は給料が倍にならないという社会であります。  そういう社会の中で、地価がかつてのように経済をもってカバーしておるためにどんどんどんどん上がるということはあり得ないということを素直にみんな認識してないわけですね。ところが、これは政府も企業もすべての人がまだミニバブル期待論というのがございまして、まだまだその認識が達していないというところでございましょうし、いい住宅やいい住環境を持つ絶好のチャンスであろうし、それにはやはり、低成長の中でより広い、いい住宅を持っていくためには結局地価が下がらなければならないということを国民的なコンセンサスで得るということが一番肝心だろうというふうに思っております。
  47. 塚田延充

    塚田委員長 質疑のある委員は挙手をお願いします。
  48. 吉井英勝

    ○吉井委員 先ほども伺った続きで長谷川参考人に一言追加的にお伺いしておきたいのですが、民主的プロセスを経たものは尊重されなければならないというお考え、私、この点非常に土地政策都市政策の中で大事な点だろうと思うのですが、実は、先ほども少し触れましたが、メーカーにとっては例えば開発指導要綱というのは障害とお感じになっていらっしゃるというのもあるのでしょうが、しかし住民にとってはこれは、随分過密都市になってきたりとか非常に乱開発進む中でいろんな問題を抱えて、そこから開発指導要綱という方向へ住民運動と自治体の取り組みの中で出てきたと思うのです。  そういう点では、私は、この規制というのは、これは法で守られない部分を独自に取り組んでいる部分であって、この規制というのはかなり尊重をされることがこれからの町づくりの中でやはり大事な部分だと思うのですが、この点、一点お伺いしておきたいと思います。
  49. 長谷川徳之輔

    長谷川参考人 私は、都市計画というのはこうあるべきだというのはないと思います。どういう都市がいいかというのはそれぞれの立場や職業やさまざまな立場によって違っできます。土地を持っている人と持っていない人は当然違ってくると思います。しかし、都市計画は決めなければなりません。したがって、どうしてもそれは、民主的な手続で決めては不満があるけれども、こうでいこうということを決めたのが都市計画であります。容積も、容積率もまた同じだと思うのですね。その容積率について、自分の商売の視点から難癖つけたらこれは成立しないんだろうと思うんですよ。都市計画というのは本来そういうものだ。だからこそ公聴会とかさまざまな民主的なプロセスを経てできたものにしているんだと思う。それは尊重しよう。それを個別の利害で否定したら都市計画は成立しない、これが一番肝心だろうと思うのですね。  そういう意味では私は、規制緩和についても自分の利害だけで言わないということだと思うのです。残念ながらしかし、個別の方は、個別の利害であります。それでは実は、私はこの今の規制緩和のあり方としては逆だろうというふうに思っています。  以上であります。
  50. 五十嵐ふみひこ

    ○五十嵐(ふ)委員 先ほど質問が残った問題で東郷参考人に、既存適格の問題ですけれども、どのように解決をしていったらよいか、お考えを伺いたいと思います。
  51. 東郷武

    東郷参考人 経済的に非常に難しい問題ではございますけれども、やはり公的な補助とか融資とか、そういうことをもっと拡充する必要があるんではなかろうか。  それから、こういうふうに現在の法律には適合するようにしなければならないというような、やはりそういう技術者といいますか、そういう人たちがきちっと青写真をやはり出してあげないと難しいと思いますし、そういう制度も必要ではないかというふうに考えております。
  52. 武山百合子

    ○武山委員 新進党の武山です。  三原参考人にちょっとお尋ねしたいんですけれども、私は、実は輸入住宅というのは日本住宅よりも安いという概念があったんですけれども、先ほどのお話の中ではやはり高いという印象を持ったんですね。  実は私、アメリカに長いこと住んでおりまして、安く建てられるという現状を見ているんですけれども、そこの違いが、水際までは、先ほど十万ドルで入った部分とそれから七万ドルで入った二つの 例を出されましたね。それも何となく、運賃が入って水際まで入った値段なんでしょうか。それとも、それだけでも、私はその部分だけでも高いと思っているんですけれども、それはアメリカから、例えばこちらに入ってくる運賃のコストも入っていて高いのか。それから、今度は国内に入りまして、その流通の問題だとか、それから実際に工事を組む場合の足場の問題だとか、労働日数だとか、そういうことで高くなるのであろうと思うのですけれども、実際は、私日本のよりも安いという印象を持っていたんですけれども、その辺、先ほどお話しされたんですけれども、何か国民の前にわかるようなはっきりした観点を打ち出すには、そこの観点のところをちょっとお話ししていただきたいのですけれども。
  53. 三原松樹

    三原参考人 まず価格についてですが、それは、我々が建築現場サイドに入ったときの価格でございますので、当然現地で買った価格、あるいはそれをデリバリーをいたしますね、向こうで。そういうもの、あるいは日本の港に着いてからの運賃、デリバリー費用、すべて込みでございます。そうしますと、先生がアメリカでお聞きになっている価格よりは当然高くなるということになろうかと思います。  それからもう一つの問題は、我々の輸入住宅で、目いっぱいといいますか、規制で使える範囲の資材を使った場合に、全体の、グロスの量ですが、資材全体の六割まででございます。四割は輸入材が使えません。あるいは使わない方が安く済むということでございます。  例を挙げますと、例えば、住宅には基礎工事というのがありますが、あそこに使われるのはセメント、実際は生コンと言われるものですけれども、それといわゆる砂利みたいな、いわゆるぐり石というものと、それから鉄筋でございますね、こういうものは輸入するよりも国内でやった方が安いということが一つございます。  それから、日本は、先ほども申し上げましたけれども、非常に防火のコードがきつうございますので、隣家からの類焼あるいは自分が出火したときの、自家出火したときに隣家にその火災が及ばないようにという隣地との規制が大変厳しゅうございます。したがって、先生もアメリカでごらんになったと思いますが、アメリカ住宅の外壁、外側の壁はいわゆるウッドサイディングという、日本でも古い家は南京羽目板とかドイツ下見とかそういう言い方でありますように、かつては使われていましたけれども、まあもちろん使えないことはありません、敷地が広い場合に、隣地境界とか南北何メーター、東西何メーターという規定がございまして、使えないことはございませんが、一般的に、東京あるいは大都市で建つような家の場合、そういうウッドサイディングは使えません。したがって、ウッドサイディングなんかは北米などでは非常に安い壁材料でございますが、日本はどうしても防火上、窯業系のもの、要するに燃えにくい、燃えない、そういう材料を使うためにどうしても高くなる。  ですから、輸入住宅輸入住宅と申しましても、全体コストの中の、強いて言えば、これは会社によって違うと思いますけれども、労務費が大体三割から、それはいわゆる在工というようなやり方もあるものですからなかなか区分けが難しいのですが、三割から五割が労務費、残りの五割から七割が材料費になります。資材費になります。そのさらに六割が輸入材ですから、例えば資材費が五割しかないとすれば、その六割、いわば全体コストの三〇%が輸入に依存するということになりますので、中心のところは、そのレーバーコストも含めてやはり日本のコストがかかっているということが、どうしても輸入住宅が欧米並みに安くならない。あるいは現地でつくっての話ですから、もし日本住宅を仮に逆輸出したらどういうことになりますでしょうか、同じようなことが起きるのではないかというふうに思います。
  54. 塚田延充

    塚田委員長 以上で住宅土地関係参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人の方々におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二分休憩      ――――◇―――――     午後一時一分開議
  55. 塚田延充

    塚田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  これより、情報通信関係参考人に御出席をいただき、質疑を行います。  ただいま御出席いただいております参考人は、経済評論家行政改革委員会委員田中直毅君、電気通信事業者協会会長第二電電株式会社代表取締役社長奥山雄材君、情報産業労働組合連合会中央執行委員長全国電気通信労働組合中央執行委員長梶本幸治君であります。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位には、情報通信関係規制緩和に関する問題につきまして、忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  なお、議事の順序についてでございますが、参考人にそれぞれ十五分程度御意見をお述べいただき、次に委員からの質疑に対してお答えいただきたいと存じます。  それでは、まず田中参考人お願いいたします。
  56. 田中直毅

    ○田中参考人 本日は、情報・通信に関する意見を述べる機会を与えていただきまして、ありがとうございます。  私は、今の経済社会の大きな変化の一つが、情報時代というものに入ってきている、このことによって大きな変化が生まれているというふうに認識しております。同時に、我々は今グローバル化、グローバル経済という流れの中にあるわけですが、このグローバル経済という動きと情報化という動きが重なって起きているところが新しいのかなと思います。  これまでも、例えば企業の内部において情報をうまく使おうとか、情報をうまく使うことによって新しい経営形態を確立しようという動きが何度かありましたが、その都度テーマとしては上がりましたけれども、大きな実態の変化は生まなかったというのが実際かと思います。そういう意味では、コンピューターは入れたけれども、果たしてどこまでコンピューターを使いこなしたのか、情報化ということでコンピューターは入れたけれども、その成果は、経営者、例えば社長にとってみますと、必ずしも明確ではなかったという面がございます。  ところが、今日の情報化、そしてグローバル化はまさにあすの企業のありようが変わるということでございますし、国民一人一人の立場からいきますと、自分たちの生活、職場が一挙に変わっていくということでもあろうかと思います。  このグローバル化と情報化をどういうふうに理解したらいいのかということでございますが、これは必ずしも私一人だけの考え方ではございません、多くの方が言われ始めていることでございますが、三層構造になっているというふうに理解したらどうかという考え方でございます。  すなわち、基礎的なところにディストリビューション、配分とか流通とかという漢字を当てるのが普通かと思いますが、機能、役割を具体的に担っているディストリビューションの仕組みがある。これは電気通信でいいますと、線をつないでいった先と、それから交換器を間に入れていろいろなサービスをしていく、これ全体をディストリビューションということになろうかと思います。  ただ、ただ単に線だけではなくて無線の場合もありますし、CATVのように映像も送るということもあるわけでございまして、映像もそれから電波もということになるでしょう。そういうディストリビューションのシステムというものが一つある。その上にプラットホームというものが介在 しているという理解も非常に多いわけでございます。  このプラットホームは何かというと、ディストリビューションの使い勝手というものを飛躍的に改善する一つの共通の基盤というものだと理解したらいかがかと思いますが、ここで重要なのは、情報が交換できる、相互接続が簡単にできる、そしてネットワークというものを組み上げることができる。そこには共通の基準や規格が成立している。このプラットホームというのを間に入れますと、ディストリビューションのそれぞれがまた新たにつながりが出てくるといいますか、さらに広い脈絡の中で意味づけをされる。そういう共通の基盤としてのプラットホームというものがあるという考え方でございます。  このプラットホームの上に、コンテンツというふうに片仮名を振ってございますが、ソフトウェアと言う人もございますし、あるいは本当の価値だというふうに言う方もあります。要するに内容でございまして、共通のプラットホームを使って、したがって共通のプラットホームの根底にはディストリビューションがあるわけですが、それを使って一体何を実現するのだという、この部分がコンテンツと呼ばれるところでございます。  今まででももちろんこういう考え方はあり得たわけですが、あえてこういう図式を出すことの意味は、今付加価値が最も生まれているのはこのコンテンツにかかわるところでございまして、ディストリビューションがもちろんなければこういう仕組みは成り立ちませんが、ディストリビューションのところで新たな価値がどの程度創造されるのかということになりますと、もちろんユーザー、消費者に対して便宜をよくするためのいろいろな技術革新もございますし、いろいろなサービスの提供もございますが、しかし、そこの上に花咲くものはまた別の価値を持ったものだということになるわけでございまして、このコンテンツにかかわるところでどういう経済社会が花開くのか、ここに今ポイントがあろうかというふうに思います。  これは情報化と言われる、情報時代と言われるものの内容でございますが、非常に重要なのは、これが国境という枠組みを越えて成立し始めていることでございまして、このディストリビューションとプラットホームのところは日本の中だけで議論するのはもう明らかに実態とそぐわなくなっております。このプラットホームというのは、まさに国際的に使いこなすことができて当然ということになっているわけです。  消費者レベルでこのプラットホームを実感できますのは、我々がカードを持っておりますと、そこにクレジットカードを持っていきますと、パリでもロンドンでもニューヨークでも、カードを入れて端末を押しますとそのままキャッシュが出てくるわけでございまして、これはまさにプラットーホームとディストリビューションを使いこなしますと、我々は最初に東京を出るときに銀行に行ってお金をかえて米ドル、フランス・フランあるいはポンドを持っていく必要はないわけでございまして、飛行場に着いて、クレジットカードをその機器に入れますと必要なだけのキャッシュが手元に出てくるということで、消費者レベルでもこれは大変なことだ、このプラットホームが整備されたということは、我々の便宜をいかに改善したかということがわかるわけですが、これはもうあっという間にお金が出てくるわけでございまして、両替屋さん、銀行の窓口に並ぶ必要もない。しかも、手数料率は改善されておりますし、明らかに消費者が便宜として受けとめているプラットホームでございます。  これは、衛星を通じてコミュニケーションが自由に行き来する、その値段も安いということがこうしたサービスを生む形になっておりまして、その次に、そこまで整備されるのだったら、その上にもっと大きな内容を盛り込むことができるのではないかということになってきているわけでございます。そういう意味では、このプラットホームの構成もディストリビューションのありようについても、これはもう国際的に統一した基準というものが次第にでき上がってきているわけです。  そう考えてみますと、我々は、例えば通信と放送というものが全然違うものだというふうに受けとめてまいりましたが、考えてみますと、これだけプラットホームとディストリビューションが整備されてまいりますと、通信と放送の垣根というものはもう実際上はなくなるものを提供できる、そんなものはない、原理上はない、制度上はもちろん別の仕組みになっておりますが、原理上は通信と放送は同じ処理方式、同じプラットホームの中で処理できるというところに来ているわけでございます。  このように考えてみますと、新しい時代において、例えば通信について主権概念を持ち出すということはもう時代おくれというよりも実態とそぐわなくなっておりまして、もし国会の場で通信が主権概念とのかかわりで専ら論じられているということになりますと、国会での議論は実態との間で適切ではないのではないかという国民の判断が生まれるのではないかというふうに思います。  そういう意味において、内外はもはやこの新しい時代においては無差別になっておりますし、そのもとにおいて新しいビジネスが起きているということだと理解しております。そして、このような仕組みができてまいりますと、一体どれが最適か、どれが我々にとって選択すべきかというのは、個々の小さな選択の積み重ねが結果として道になる、結果としてこれが代表的な仕組みだというものになるわけでございまして、これが道ですよ、ですからこの道路を通りなさいということをあらかじめ指定する、だれかが何らかの立場から指定するということはもはや難しい、皆がそれぞれに小さな選択を積み重ねる中で、勝者といいますか、結果として生き残るものが道だ、こういうことかというふうに理解いたしております。  このように、社会の情勢を考えてみますと、規制撤廃が、経済規制の撤廃がいかに重要かということになるわけでございます。我が国の電気通信にかかわる分野を考えてみますと、依然として、新たな業務の展開、新たな業務を始めようといたしますと、実施上の需給調整条項がかかっている。そして、通信事業者として新しい仕事をしたいというふうに言いますと、役所がそれを許認可の対象にして、しかもそれは供給過剰になってしまって業者が共倒れになるのではないか、例えばそういう視点からの参入についての考慮がなされているわけですが、今申し上げましたように、結果として選択されるわけですし、そこでは料金がどうなるのか、ユーザーがどういう反応をするのかはやってみなければわからない。そういう中での道筋が国際的にもつくり上げられている中で、我が国のこの電気通信にかかわる行政は、これまで余りにも後退的なものではなかったか、古い基準を持ち込み過ぎていたのではないかというふうに思います。  こういう三層構造の中において最も価値が出てくるのが一番上のコンテンツの部分だというふうに考えますと、その間できるだけ安く、そして最も新しいサービスを備えたものを使って初めてそのコンテンツに一日の長が出るわけでございまして、ここはもう民間事業者の自由な工夫にまつべき領域がと思います。  もちろん、それでは規制は全部撤廃していいのかということになりますと、確かに幾つ規制の必要がある分野があります。それはいろいろ学者も研究しておりますし、こういう分野は規制した方がいいということはありますが、私はそれは、この分野については自由は認めません、許認可が必要ですとかいうことは書き込む。法律に書き込んで、逆に言いますと、法律に書き込んでいないものは全部自由、そういう規制規制として提示し直す必要があるというふうに思います。  例えば、有線テレビ放送法というのは、私はもうこれは要らない法律だというふうに思っていますが、もし必要な規制があるということだったら、その必要なところだけ書き込んだ法をつくる、それ以外は全部自由、そういう仕組みにすべきだろ うというふうに思います、  なぜそういうことを申し上げるかというと、どうも我々は経済の動きに相当おくれ始めているわけでして、特にそれはどういうことで言えるかというと、アジアの勃興が言われまして、アジアにおいて経済活動が盛んでございます。したがいまして、我が国はアジア向けの輸出をふやしておるわけでございますが、アジアの比率は我が国の輸出の中でどんどん高まりまして、四〇%ぐらいにまでなっております。あと十年もすると、これが五〇%にまでなるということが言われているわけです。  ところが、電気通信、情報の分野で考えてみますと、このアジアにおいて成立し始めている規格、基準はもはや日本のものではありませんし、アメリカ基準、実質上自由な競争が行われていく中で、デ・ファクトというふうに呼んでおりますけれども、実質上の基準が米国の企業なり米国のソフトウエア会社が提供するものによってでき始めておりまして、日本勢は提案がなかったわけではありませんが、完全におくれをとっておるわけです。  なぜこういうことになったのかということになりますと、米国における規制撤廃の動きが、この分野において新しい基準競争を各企業がそれぞれ、あるいは企業グループが行うことによって、大変消費者、ユーザーにとっては使い勝手のいいものが登場した。それは、使ってみるとこれは大変便利だということで、ユーザー、消費者がこれを使いこなす、そういう波が既にアジアの地において起きております。  我々は、輸出品で工業化社会というもののリズムを持っていて、その工業化社会の規律というのは、それはそれで尊重すべきものでございますが、新しい時代情報時代になる、情報化と言われる社会を迎えるというときに我々がこれだけ後退してしまったということは、これは我が国の内部におけるこれまでのありようの問題ではないかというふうに思っております。  今後は、例えばシビルミニマムに相当する電話料金等については料金規制は残すべきだと私は思いますが、新しいサービスはすべて自由に事業者とユーザーとの間で、あるいは事業者間の競争ということを前提にして決められるべきものだというふうにもうはっきり、だれにもわかる形で新たな仕組みを書き込むべきではないかというふうに思います。  そしてもう一つ我が国において情報化を進めるために必要なのは、我が国における従来の法制度がこの情報化を阻んでいることでございます。医療とか教育とか、それから商法上、会社の帳票がべーパーレス社会に見合わない形になっているわけですが、医療、教育についてももっと多角的な選択が許されるものにするためには、法の改正が必要なのではないかというふうに私は思います。少しずつ議論も行われ、今国会にもこういう分野における法改正が出ているようでございますが、しかし、根底的なところではまだ十分検討は進んでいないというふうに思われます。そういう意味では、立法府の皆様方に対する国民の期待は大変大きいものだというふうに思います。  そして、政府部門自体がこの新しい時代にふさわしいディスクロージャーを実施いたしますならば、納税者にとって、国民にとって、我々の政府がもっと透明性のある、そして、いろいろな形で、何が起きているかを家庭内端末からも知り得る、そういう社会にすることが望ましいと思われます。そういう意味において、情報化を政府部内においても行われることが、情報時代に我々が備える非常に大きな要因ではないかというふうに思います。  どうもありがとうございました。(拍手
  57. 塚田延充

    塚田委員長 次に、奥山参考人お願いいたします。
  58. 奥山雄材

    ○奥山参考人 平素は、規制緩和特別委員会の諸先生方に、大変御懇篤なる御指導をいただいておりますことを厚く御礼申し上げます。きょうはまた、当委員会におきまして陳述の機会を与えられましたことを、感謝申し上げる次第でございます。  さて、現在私が職を奉じております第二電電、DDIは、まさに、いわば規制緩和の申し子として誕生したことは御案内のとおりでございます。ちょうど十年前の昭和六十年、一九八五年に行われました電気通信改革におきまして、それまでの電電公社という公社形態による電気通信市場の一元的、独占的運営が根本的に改組されまして、今日に見るような、あらゆる分野における競争が電気通信市場で実現した次第でございます。その先鞭を切りまして、第二電電はこの競争市場に参入いたしまして、今日十年を経過いたしたところでございます。  こうした経緯にかんがみましてもおわかりになりますとおり、電気通信事業における規制緩和というのは、一にも二にも、まず電気通信市場における競争を、公平かつ効率的に促進していくということでなければならないであろうと思います。この根本原理は、現時点においても全く変わっていることはないというふうに考えております。事実、現在、日本の電気通信市場におきましては、いわゆる自分で回線を設置するところの第一種電気通信事業者と呼ばれる事業者が百十社、既に登場をしております。この百社を超える電気通信事業者によりまして、現在の電気通信事業は支えられております。  この十年の間に、こうした各種の会社のそれぞれの経営努力と、それから立法府におきます諸先生方の御努力、政府の御指導もありまして、おかげさまで、日本の電気通信市場は、この十年間でかつてでは考えられないほど偉大な成果を上げたというふうに申し上げても過言ではないと思います。  例えば、端的な例といたしまして、競争が導入される前の東京――大阪間の昼間の三分間の電話料金は四百円でございましたけれども、現在は百七十円でございますので、この十年間で半分以下の料金水準に下がったということでございます。また、御案内のとおり、各種の大口割引その他のさまざまな割引制度導入されまして、サービスの多様化というものもかなり進んできたというふうに考えております。  しかしながら、他方におきまして、一見華やかに見える電気通信市場でございますが、目を転じまして競争の実態というところに目を向けてみますと、残念ながら、百十社それぞれがかなりの問題を抱えている会社もある反面、一方におきまして、市場における非常にドミナント、つまり支配力を有する事業体が依然として存在しているということが、最大の問題ではないかというふうに考えております。  つまり、電気通信市場が自由化されまして十年たちました、その間、規制緩和特別委員会の諸先生初め、立法府の各委員の方々、それから政府のさまざまな御指導もありまして、確かに、さまざまな公正な条件整備、あるいは公平な競争市場の拡大ということにつきましては、いろいろ御配慮もいただきましたし、進んでまいった部分があることも事実でございます。十年前に比べますと、確かに競争条件というのは整備されてまいりましたが、最後に残った、最大のファイナルな問題と申し上げていいと思いますが、それはやはり、全市場の約九割に及ぶ支配力を持っているNTTという存在がこのままでいいかどうかという、その構造上の問題であろうというふうに孝之ます。  それをもう少し立ち入って申し上げますと、その原因と申し上げますのは、結局、NTTが、長距離事業分野という私どもと競争をする事業分野と、それから独占分野として保有していらっしゃいます地域網、ローカル網と言っていいでしょうか、地域ネットワークの部分とを一元的に運営をしていらっしゃいます、経営していらっしゃいます日本でただ一つの事業者であるということでございます。  つまり、他の、NTTを除くすべての事業者は、私どものような長距離通信事業者であれ、国際通信事業者であれ、あるいは衛星を使う事業者であれ、あるいは携帯電話、自動車電話の世界であれ、 さらにはポケットベルと言われるようなページングサービスの分野であれ、昨今非常に騒がれております次世代の携帯電話と言われるPHS事業者もそうですけれども、すべてが、最終的にユーザーのところ、カスタマーのところ、お客様のところにこのサービスを提供するためには、その最終段階でNTTの地域通信網につなぎ込まなければならない。つまり、NTTの地域通信網に全面的に他の各社が、百社を超える事業者が依存せざるを得ないという構造でございます。この、特異と言ってもいいかと思いますけれども、こうした構造にあることが、電気通信市場の開放後における最後に残された問題ではないかというふうに考えております。  政府におかれましては、このNTTのあり方につきまして、ことしの四月から、電気通信審議会の場を通して諮問をされたというふうに伺っております。したがいまして、私どもの事業者の立場から申し上げますと、この電気通信審議会における審議が、予断を持つことなく冷静に、ファクト、事実のデータに基づきまして市場を分析していただきまして、NTTの地域通信網のあり方、先ほど申し上げました、私どもの用語で申し上げますとボトルネックと言っておりますが、そのボトルネックの独占が排除されるような形で、実効のある競争が出現するような形でこの審議が行われることを強く期待しておりますし、その審議結果を待って、政府で所定の措置がとられることも期待しておりますし、また、いずれ立法府におかれましても、こうした点につきまして御配慮いただければありがたいというふうに考えております。  今申し上げましたような実態にある電気通信事業の世界と、それから、先ほど田中先生もお述べになりました、これからの、いわゆる二十一世紀を展望した社会におけるいわゆるマルチメディアの社会、情報通信の基盤が整備された社会との関係がよく問題にされます。  ある論調によりますと、将来はこういういわゆるマルチメディアの社会、高度情報通信社会が実現した場合には、もはやどこの国もいわゆるシームレス、つまり継ぎ目のない形であらゆる事業が一元的に行われることがむしろ国際競争力上もあるいは研究開発を温存する、維持するためにも必要ではないかという御議論も散見されます。  しかしながら、この点につきましては、確かに、二十一世紀に向かいまして、私どもも高度情報社会が実現し、マルチメディア社会が実現することを期待しておりますし、またそうなることを確信しておりますが、それが実現するための条件といたしまして、やはり市場構造のいびつさというものはどうしても解消していただかなければならないというふうに考えております。このことは、突き詰めてまいりますと、結局一つの巨大な事業者がすべてを一元的に管理運営して事業を行うことが望ましいのか、あるいは非常にたくさんの事業者がお互いに組んずほぐれつ競争市場に参入して、その活力の中からダイナミックな競争を生み出していくのがいいのかという、最後はその選択の問題になるだろうと思っております。もし前者の論をとっていきますと、突き詰めていけば、一つの会社が市内網も独占し、それから長距離網もあわせて行い、そして国際通信もあるいはCATVもすべてやった方がいいという論理になるわけですけれども、さらにもっとこれを極論いたしますと、一つの独占的企業体がすべての電気通信事業をやった方がいいというような極論にもつながる危険な考え方ではないかと思っています。  したがいまして、私どもといたしましては、やはり十年前の電気通信改革の原点にさかのぼりまして、いかにダイナミックで活力のある、実効性の上がる競争を現出し、そうした競争を通じて国際的な競争力も培われていく方途、方策をとるべきではないかと思っております。  そのことは研究開発力においても同じでございますけれども、一つの事業体がすべての研究開発を一元的に行う、つまり大きい研究開発の組織があればそれが有効なかつ強大な国際競争力になるかというと決してそうではなくて、アメリカのATT分割後のベル研における研究開発力のすさまじい上昇力、驚異的な発展ぶりを見ておりましても、むしろやはり、競争が生み出す活力が日本全体の研究開発力の向上にも資するんではないかというふうに私どもは少なくとも考えている次第でございます。  なお、最後に、規制緩和委員会の諸先生方にお願いいたしたい点として、二つ簡単に申し上げたいと思います。  一つは、先ほど田中先生もお述べになりました、電気通信関連法令だけではなくて、医師法であれ、学校教育法であれ、その他労働基準法であれ、現在のさまざまな法令現実のあるいはこれから先に展望するところの高度情報社会の実態にそぐわなくなっている、いわゆるエレクトロニクスあるいはコンピューターと通信とが融合した社会にはそぐわなくなっていることはもう事実でございます。例えば遠隔医療をやろうとしても、診断書には医師の判こがなければならないというような法律が生きているわけでございますので、そういった点はぜひ立法府の諸先生方におきまして、この解消方お願いできればと思います。  それからもう一点は、やはり通信インフラというのは公共の財産でございますので、電力の電柱にせよ、あるいは地下道にせよ、あるいは共同溝にせよ、あるいはNTTの柱にせよ、地上、地下を問わず共通的に電気通信の、例えば光ファイバーをめぐらすような、全電気通信事業者が共通の敷地として使えるような空間あるいは地中につきましては、非常に規制が強うございます、歴史的、伝統的な法制の仕組みから強くなっておりますけれども、こうした共通のウェー、ライト・オブ・ウェーと言っておりますけれども、いわゆる通信の疎通道と言っていいかと思いますけれども、こういったものにつきましては、鉄道敷地それから高速道路敷地も含めまして、ぜひ平等に開放されるような方向規制緩和が行われれば、私ども大変幸いでございます。  大変ありがとうございました。(拍手
  59. 塚田延充

    塚田委員長 次に、梶本参考人お願いいたします。
  60. 梶本幸治

    ○梶本参考人 ただいま御紹介いただきました梶本でございます。  本日、電気通信分野の規制緩和について、私たち情報労連・全電通に発言の機会を与えていただきました塚田委員長を初め各委員の皆様方に、まずもって心から感謝申し上げる次第でございます。  一月十七日の阪神・淡路大震災は、改めて電話が国民の生活必需品として日常生活に欠かすことができないライフラインとなっていることを痛感いたしました。私たちは、春闘のさなかではありましたが、この電話の復旧作業を最優先課題として、全力を傾注して取り組んでまいりました。その際、復旧作業の取り組みに当たって、先生方から何かと御指導、御支援を賜りました。本席をおかりして、厚く御礼を申し上げる次第でございます。本当にありがとうございました。  それにいたしましても、今あの大震災を振り返ってしみじみと感じますのは、NTTが一社であってよかったということであります。あのような危機管理のもとで、ライフラインの復旧を迅速かつ大量、しかも集中的に人、物、金を結集する必要がある場合、そして、さらにそれを現地で受け入れをする体制をどうつくっていくかと考えた場合に、やはりそのような体制ができたのはNTTが全国一社であったからだと感じるわけであります。また、被災地で、消防車やあるいは発電装置など、規格が合わなかったという話を聞くにつけ、NTTが全国あまねく公平でかつ同一の規格でもってサービスをしているというところが極めて大切なことだと感じるわけであります。今日、危機管理の重要性が改めて強く問われている中で、電気通信の改革に当たっては、十分このような点を留意して取り組んでいくことが必要であると感じるところであります。  今日、我が国経済は、バブル崩壊の後、長期の不況、そして急激な円高、産業の空洞化と価格破 壊などを通じて、多くの産業、企業が構造転換を迫られているわけであります。戦後五十年、日本経済を支え発展させてきた繊維、石炭、造船、さらに鉄鋼、自動車、電機などによる経済の発展に陰りが今日生じております。そして、二十一世紀に向けて期待される産業として情報通信産業が位置づけられているのでございます。昨年来のマルチメディアあるいは情報スーパーハイウエーに見られるごとく、国際的にもGIIサミットによって、地球的アジェンダとして取り組まれています。これらはまさに二百年前の産業革命にも匹敵すると言われています。  我が国においても、郵政省の試算に見られるように、マルチメディア産業は二〇一〇年には二百四十三万人の雇用を創出し、百二十三兆円規模の市場を持つと期待されているわけであります。  また、最近の公共投資に対する政府のスタンスも、従来のような住宅、道路、港湾など建設土木型から情報インフラへとシフトしつつあると私は認識をしております。  一九八五年、電電公社から民営化し、NTTが誕生いたしました。この時点から、我が国の電気通信市場は、独占から競争へと大きく転換したわけでございます。しかし、NTT民営化後十年を経た今日、その成果はどうだったのかと問われれば、私は率直に言って、甚だ芳しくないと認識しております。  確かに、NTTの株の売却によって十兆円の財政貢献をいたしましたし、市外電話料金も年間ベースにして一兆円以上の値下げを行いました。しかし、電気通信産業全体を見た場合に、競争を導入したにもかかわらず、それほどパイは大きくなっていないのであります。  このことは、皆さん方のお手元にお渡ししてあります資料、別表一に示しますように、アメリカイギリスとの比較において、その売上高の伸びを見れば一目瞭然でございます。その原因は、電気通信市場における規制緩和が遅々として進展せず、通信競争市場の活性化が図られていないというところにあると私は考えるところであります。  これまで歴代の政権は、規制緩和を原則自由、例外規制を基本に進めてまいりましたが、具体的な実効を上げるに至っていないのが現状でございます。  私は、これからの日本の国づくりにとって重要なポイントは三つあると思います。その一つは自立と自己責任、二つは地方分権、三つは規制緩和であると考えています。  もとより、規制緩和には光と影がございます。規制緩和を促進することによって市場が活性化し、雇用が拡大するという反面、一方では、規制緩和による競争の激化によって大きなリスクを生ずる企業も存在することは否定できません。私たちは、共存共栄を基本にしつつも、そのリスクからくる犠牲、特に雇用不安をどう排除するのか、その手だてと解決策をあわせて確立することが重要であると考えております。特に、今後予想される産業構造の転換への対応は、一企業、一産業では困難であります。したがって、社会的な立場からの雇用の安定的な制度の確立が必要であり、それは政治が果たすべき重要な役割であることをまず指摘しておきたいと存じます。  このことが、私たち連合が提唱する失業なき産業構造の転換の意味であります。あくまでも、私たちの目的は人生を豊かにすることでありまして、決して経済そのものが目的ではございません。そのようなことを改めて銘記しつつ、電気通信分野での規制緩和に積極的に取り組んでまいりたいと存じます。  以下、私は、電気通信分野の規制に係るNTT法、事業法について、緩和すべきとの立場で具体的な見解を申し述べたいと存じます。  まず第一に、会社法に関する規制緩和であります。この十年、NTTは規制下の競争を強保いられ、がんじがらめに締めつけられ、その結果、我が国情報通信産業の発展が阻害されていると思います。  その一つは、大事についてであります。通常の株式会社では考えられないことでありますが、御承知のように、株主総会で選任された取締役や監査役が、郵政大臣の認可を受けなければその効力がございません。電電公社時代には、総裁と副総裁だけが内閣の任命となっていましたが、現行法では平取であっても認可が必要となっておるのであります。その実態は、公社時代よりも規制が強化されているのではないかと思われるところであります。これでは経営者としての当事者能力が損なわれ、事業経営、事業の発展への意欲が阻害されると感じるわけであります。  第二は、事業計画についてであります。毎年度の事業計画及び変更が認可対象となっております。その際、行政指導が細部にわたって行われる状態であると聞かされております。さらに、組織に関する規程を初め、物品の取扱規程、会計、財務に関する規程も、郵政省令によって届け出義務を負わされております。このような状態では、経営者の自主性、経営の改革を進めることは極めて困難な状況に陥ります。  次に、事業法についてであります。  その第一は、料金、サービスに関する規制緩和についてであります。それは契約約款の認可によるもので、ほとんどの料金が認可対象となっています。  私たちは、電話に代表されるユニバーサルサービスについては規制が必要だと思います。しかし、それ以外の料金については、競争原理に基づき、消費者のニーズによって決定されるべきであると考えております。しかし、現状は、料金値下げであっても認可の対象になっております。これでは、競争導入の成果を十分に利用者に還元することに限界が生じできます。  また、新しいサービスについてもすべて認可対象となっているため、認可までの事前折衝を含め一定の時間を要することとなり、新しいサービスをタイムリーに提供することが難しく、事業者も新サービスの提供義務や、あるいは開発意欲をなくしてしまうことになりかねません。資料三にありますように、現に我が国の新サービスの提供時期は、アメリカイギリスよりも大幅におくれている実態にあります。  次に、私は、ここ十年間の情報通信の技術革新の目覚ましい成果が、現行法制度とのギャップによって社会生活に実用化されていないことが多くあることについて考えております。例えば、教育や医療などの分野でも、もっとこれらの技術を使うことができたらコストも低減化されるし、何よりも人の命を救うことができるかもしれません。  個々の事例については、お配りいたしております資料四を御参照願いたいと存じます。  最後に、私は、今後の電気通信市場における競争のあり方について、そのイメージを提起したいと存じます。それは、長距離通信事業者を中心とするクリームスキミング的競争のあり方から複数のエンド・エンド通信業者による対等な競争態様へと進展させることであります。既に分割後十年を経たアメリカにおいて、AT&Tを初めとする通信事業者は、急速に市内、市外、国際のシームレスなネットワークづくりへの連携、再編への動きを見せております。アメリカにおける長距離会社が移動体会社を買収したりしているのもその一つの例でございます。  またドイツでは、本年一月から始まったドイツ・テレコムの民営化と競争の導入に際して、AT&TやBTあるいはC&Wなど外国テレコムの参入でエンド・ツー・エンドのサービスを想定した競争市場の形成を目指しています。これらの動きは、本来、電気通信は端末から端末までが当然のネットワークのあり方であることを再認識させるものであり、日本においてもこのような世界的な競争の方向性を深くとらえ、今後対応する必要があります。  私は、電気通信の規制緩和により自由な競争市場をつくることが我が国産業を活性化させ、自由で活力ある日本が建設されると確信しているものであります。私たちも社会的に価値ある労働運動を推進する立場から、建設的に積極的に取り組ん でまいる所存でございます。大変雑駁な話になりましたが、真意のほどをぜひお酌み取りいただき、徹底した規制緩和お願いしたいと存じます。  以上で情報労連・全電通の規制緩和に関する意見とさせていただきます。御清聴を感謝し、終わります。ありがとうございました。(拍手)     ―――――――――――――
  61. 塚田延充

    塚田委員長 ありがとうございました。  以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。
  62. 塚田延充

    塚田委員長 これより参考人に対する質疑に入るのでありますが、本日の参考人に対する質疑は、理事会での協議により、最初にあらかじめ申し出のありました質疑を行い、その後は参考人に対して自由に質疑を行うことといたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。輿石東君。
  63. 輿石東

    輿石委員 社会党の輿石ですが、私は、連立与党三党を代表しまして質問をさせていただきたいと思います。  田中先生、奥山先生、梶本先生、大変貴重な御示唆をいただき、私どももこれからどのような社会を我が国は目指したらいいのか、そんな点についても御示唆をいただいたというふうに思うわけであります。  また、二十一世紀は情報時代だ、こういう言葉がよく使われるわけですけれども、これは無限の可能性を秘めている分野であり、先ほどもお話がありましたように新たな事業の開拓が期待をされる。また、国境を越えてグローバルな経済社会、そういうものを目指さなければならないというお話も既にありました。そういう観点からも、これからは一方では、情報通信は戦国時代を迎えたとも言われているわけであります。  そうした点で、必然的に国際的にどう勝ち抜いていくか、そんな課題も抱えているのではないかというふうに思うわけであります。特に、三人の先生方から共通して言われた点については、情報通信分野こそ徹底した規制緩和を行い、新たな事業の創出が可能な条件を整えるべきだということでは認識が一致しておられるというふうに思うわけであります。  そこで、私たちもそう考えるわけですが、特にこの分野において、先ほども触れていただいたわけですけれども、ポイントとなる点ほどこなのか、今後その実現に向けてどのようにしていったらいいのかということをまず三人の先生方に再度お伺いをしておきたいというふうに思います。
  64. 田中直毅

    ○田中参考人 日本では、電気通信事業者は必ず郵政省に相談しないとできないという仕組みになっておりまして、許認可が背景にあるからでございますが、こうした仕組みは新しいサービスをつくっ上げたりあるいはユーザーや消費者に最もふさわしい商品を設計開発するに当たって大きな障害になっているというふうに思います。  そうした本来は消費者やユーザーと相談ずくでやらなければいけないことが役所と相談しなければいけないという仕組みになっていること自体が、事業者から意欲を奪い、むしろ日本仕事を展開するよりも海外に出ていって、例えばアメリカに出ていってその仕事をしたいという人が出てきているわけです。  エレクトロニクスの分野の日本を代表する企業のある社長さんと議論したときに、もう日本では新しいことはしたくない、みずからの抱えている最も有能な人はアメリカに出す、なぜならば役所と相談することなくして動けないところでは、私どもでも、その企業といえども最も優秀な人は数に限りがありますから、そういう人を日本に張りつけるわけにいかないというくらい日本の行政に対する不信感が大きいというのが現状かと思います。  そういう意味において、経済規制の撤廃は、これはもうスローガンにとどめおくことはできない、具体的に進めねばならないというふうに思っております。
  65. 奥山雄材

    ○奥山参考人 規制緩和特別委員会の先生に釈迦に説法のようなことを申し上げることは大変恐縮でございますが、規制緩和の最終目的といいますのは、結局市場を拡大し、需要を喚起して経済を活性化することがやはり最終目的であろうと思います。  そういう観点から、電気通信市場における規制緩和の核心は何かというお尋ねにつきましては、端的に一言で申し上げますならば、これは十年前の電気通信改革が実現いたしました際の根本理念でありますところの、まずは競争を有効かつ効果的に実現するメカニズムを創出することである、そのことがひいては、結局、規制緩和の出口になるということでございます。  もちろん個々の、よく言われますように許認可件数が幾つあるとか、何万あるいは何千あるとか、これを減らさなければならないといったことは常によく新聞紙上でも取り上げられますが、これも一つの重要なファクターであることは私どもも否定するものではございませんし、先ほど来お話が出ておりますように、今後とも私どももそれを要望するものでございます。  ただ、そうした中で、そうした数の問題もさることながら、基本的には、電気通信市場におきましては構造上非常にいびつになっているというその構造をまず解消していただきまして、つまり、先ほど申し上げました一つの独占的企業体における地域網のボトルネック独占という問題でございますが、それを解消することが先決でございまして、それが吹き抜けますと、私どもの期待といたしましては、NTTも含め、KDDも含め、私どもの新規参入事業者も含め規制緩和というものはさらに一気に進むのではないかなというふうに考えております。ありがとうございました。
  66. 梶本幸治

    ○梶本参考人 規制緩和の核心は何かということについて私の考えを申し上げたいと思います。  先ほども申しましたように、一つは需給調整といいますか、参入規制を撤廃することだと思います。これは言うなれば護送船団方式といいますか、そういう傾向が現状はなきにしもあらずと思います。したがって、これを撤廃し、自由に参入して、その市場の中で商品が生き残っていくということが最も基本的に正しいのではないかというように思うのです。  二つ目は、先ほども申しましたように、料金の認可についてであります。今日、あらゆる料金が認可の対象になっているわけでありますが、先ほども申しましたように、ユニバーサルサービスというものはどうしても一定の制約を受けてもやむを得ないと私は考えるわけでありますが、それ以外の料金は競争によって最終的にはお客様がそれを判断するというのが正しいのではないか。そのことが業界、競争市場の活性化を引き起こしていくということになると思います。  三つ目は、NTT自身のネットワークを徹底的にオープン化するということが大事だと思います。  あと一点でありますけれども、この競争のあり方は、電話でありますから、電話機から電話機までを一つの事業体とするもの同士の競争ということが展望されなければ、世界の趨勢からおくれていくのではないかというように感じるわけでございます。  以上でございます。
  67. 輿石東

    輿石委員 三人の先生方から、特に田中先生、梶本先生の方から出された問題は、競争のあり方をめぐって、消費者、ユーザーに視点を合わせた競争であり、そうした技術開発規制緩和でなければならないという意味があると思うわけであります。  日本情報通信のおくれは、アメリカとよく比較をされるわけですけれども、十年もおくれている、こう言う人もいるわけですけれども、アメリカも大変な苦難を抱えながら今日を迎えておると思うわけであります。  そこで、アメリカとの比較で、日本がこれだけもしおくれをとっているとすればどういう原因でそうなっているのか、また、アメリカはここまで来るのにどんな困難な点を克服してきたのかという点について、それぞれの先生方から一言お願いをしたいというふうに思います。
  68. 田中直毅

    ○田中参考人 例えばCATVをとると明らかになると思いますが、アメリカでは、CATVの業者はそれぞれの地方で有力な、他の分野でかなり業績をおさめた企業がCATVという有線テレビの分野に入って、それが全国的にいろいろ契約である種の消費者に好まれるものを流す、こういう仕組みができ上がったわけです。  技術的には、我が国は米国よりももっと稠密に住んで、しかも都市区域においてこれだけ稠密に住んでいるわけですから、CATVはアメリカよりももっと日本に発展すべきものであったはずです。技術的にはそうだったはずですが、御存じのようにこれは我が国では全く発展しませんでした。  それは、先ほど申し上げましたけれども、有線テレビ放送法という法律を背景として役所が極めて厳しい、どういう意図があったのかわかりませんけれども、事業分野をどんどん限定する、地域的にも限定するという手法をとり続けてきたおかげで、CATV網というものができませんでした。  現在では、このCATVが、米国の場合は、あるいはイギリスの場合もそうでございますが、これがただ単に映像を送るだけではなくて、それが実質上の電話回線にも使われる、要するに電話通信網に取ってかわる代替的なものとして機能し始めて、これが競争を促進する要因にもなっているわけですが、我が国においてはそれが実現していないということがございます。そういう意味において自由な競争を妨げてきたことが今日を生んでいる。  そういう意味では、我々の問題提起が二十年はおくれたのかな、一九七〇年代の前半に情報通信、電気通信についてはもっと本格的な自由化の議論をすべきではなかったかと私自身も反省いたしております。
  69. 奥山雄材

    ○奥山参考人 アメリカ日本における電気通信事業、さらに広くは情報通信産業の格差でございますが、これは振り返ってみますと、十年前にATTという巨大な事業体が分離分割をされることによりまして、非常に多様な事業者がそれぞれのエリア、それぞれのサービスに応じて競争を繰り広げた結果、現在におけるアメリカの電気通信産業、さらに広くは情報通信産業の活性化が生まれたものであるというふうにとらえております。  そのことは、一つの事業体が二十一世紀の例えは情報通信インフラを整備しようといたしますと、どうしても需要の大きいところから着手いたしますので、持てる者と持てないところ、あるいは僻地のところが立ちおくれるというような状態にならざるを得ません。  ところが、アメリカのように各地域に事業者が分割されますと、それぞれが地域志向型で競い合いますので、都市部から非常に離れたところにおきましても情報インフラが整備されていったという事実がございます。  そのことが競争による技術の進歩と料金の低下、さらにはサービスの多様化にも結びついたというのは事実でございまして、これがやはり今日の日本アメリカとの画然たる力の差になったのではないかと思います。  それからもう一つは、ATTがそれまで一社で巨大な地位を占めておりましたために、技術開発力を自分のお蔵にしまっていた。これは向こうの人の表現でございますが、お蔵にしまっていた。それが公開されたために、全員が平等に競い合ってそのシーズを、種を栄養として技術開発力の強化を図ったということで、この十年の間に日本アメリカとの間の格差がこれだけ開いたものであろうというふうに考えております。
  70. 梶本幸治

    ○梶本参考人 梶本であります。  アメリカとの関係でおくれているとかおくれていないとかという話が幾つか出るわけでありますけれども、その中身として、おくれておるというか違うのは、一つは、田中先生からもありましたけれども、CATVの数が全然違うと思います。これはもちろん国情にもよるし、経過にもよると思うのですけれども、通常アメリカは六千万と言われていますし、日本は百万ぐらいでありますから、圧倒的に数が違うということで、進んでいるというならそれは進んでいるのでしょうと。  それからもう一つは、パソコンの数が、これはちょっと数値はわかりませんけれども、アメリカの方は相当発達している。これは、私たち聞くところによりますと、日本以外の東南アジアも含めて相当幼いころからパソコンにさわる、あるいは幼稚園、小学校ごろから教材に入っているという話も聞きます。そういう国情、教育事情の違いもあって、結局、利用者の量的違いが出てきているのではないかというように感じます。  あと、例えば光ファイバーとかそういうネットワークの質、量の問題については、むしろ日本のNTTを中心とした通信業者の方が進んでいるというように言われていると思います。  以上でございます。
  71. 輿石東

    輿石委員 今、アメリカとの比較で奥山参考人の方から、十年前にATTの巨大な事業体が分割をされてそれからというようなお話もあったわけであります。そして、最初にお話しいただいたときも、一社の巨大な事業体が独占をするということをなくしたから、それをなくさなければという意味のお話もあったように思います。  そうしますと、日本で、NTTとのかかわりも奥山参考人は最初に触れられたというふうに理解ができるわけですけれども、今ちょうどこの平成七年度においてそのNTTのあり方というものが論議をされているということから、情報通信分野の将来を考えた場合に、日本においてはやはりNTTのあり方を論議しない限りある程度の発展もないだろう、そういうふうにも理解できるわけであります。  そこで、このNTTのあり方についてそれぞれどのようなお考えをお持ちか、お聞かせいただければというふうに思います。
  72. 田中直毅

    ○田中参考人 我々の家庭に電線が来ているのは電話線と電力線でございまして、私は、梶本さんが先ほど言われたエンド・ツー・エンドの仕組みをつくるときに、もう現実に電力線が来ている以上、NTTに対抗するものをつくり上げることは恐らくそんなに難しいことではない、問題は、そういう形で例えば電力会社が事業をしたいとしても、それが現実にはいろいろな制約があって認められてこなかったことが大きいのではないかというふうに思います。  もしNTTの内部にある経営資源が十分に生かされてないということになれば、これは国民経済的に見て大きな損失でございます。そういう意味では、NTTの分割は一つの方策として真剣に議論されるべきだというふうに私は思います。ただ、NTTの中の資源が十分に活用されてない大きな理由が、実施をいろいろな規制によって封じ込めることを通じてなされているとすると、そのことの問題点は大きいというふうに思います。  NTT分割の議論の中で最悪のケースは、地域会社というような形で、例えば四国NTTとか九州NTTというような形で地域ごとに割ってしまうのが、分割を議論する上では一番悪いケースだというふうに思います。きょう、三人の参考人の中で多分共通の点があったと思いますのは、電気通信についてはシームレス、内外を区別しない統一的なネットワークこそが重要であって、新たな会社を分野ごとに割るということは競争を妨げる要因でありますから、一番悪いのは地域ごとに割るケースだ。ただ、NTTというのを、では二つか三つにぽんと割ってしまう、何らかの形で、地域でなくて、あるいは業務を固定するのではなくて、そういう方法があるとすればどういうことなのか、それは議論されてしかるべきだというふうに思います。
  73. 奥山雄材

    ○奥山参考人 現在、政府の審議会で審議が行われておりますNTTのあり方に関連いたしまして私どもが事業者の立場から申し上げたい点は、まず何をおきましても現実の市場における事実の問題といたしまして、支配的事業者の力を決して過小評価はできないということでございます。この点につきましては、世界各国、アメリカあるいはヨーロッパを問わず認識は一致しておりまして、 電気通信市場における規制緩和あるいは競争に関しましては、常に支配的事業者の扱いが問題になってまいります。  先ほど申し上げましたように、日本における支配的事業者の問題といいますのは、尽きるところは、やはりNTTが競争部門の長距離分野と独占部門の地域分野を一社で運営しているということでございますので、このボトルネック独占というものはどうしても解消していただかなければならないだろうと思っております。審議会におかれましても、こうした構造上の問題の根本にさかのぼった議論を私どもといたしましてはぜひ期待をしております。具体的に申し上げますと、長距離部門と地域部門、つまり独占分野と競争分野はどうしても分けていただきたい。  それから、地域の独占体制をどうするかという問題につきましては、やはりいろいろな考え方があると思います。例えば最近出ておりますように、地域に競争を導入するためのCATVとか、新しい競争事業者を育成するとかというような方法も確かにありますけれども、それらを二者択一という形で、あるいは三者、四者択一という形でなくて、あらゆる方途、方策を投入することが必要だろうと思っております、それほど地域独占力が強いわけですから。単にそうしたCATVとかなんとかによる競争状態が出現するのを待つだけでなくて、やはりこれを複数の事業体に分割するということは有力な政策の選択肢の一つではないかというふうに考えております。
  74. 梶本幸治

    ○梶本参考人 先ほどからも申し上げておりますように、電気通信、つまり電話のことだけを言うと誤解を受けるかもしれませんけれども、電話と電話の競争というのはやはり電話機から電話機でなければ、きせるのがん首と吸い口だけ置いておいて真ん中の竹だけ持ってきたって、これは竹でありまして、きせるでも何でもないのじゃないですか。電話は、子供のときから電話のこれをやっても、セロハンつけて糸を引っ張ってやる。糸だけ持ってきても子供の遊びの電話にもならぬというのが基本だと私は思うのです。そこの糸のところはかり競争しても、私は将来うまくいかないと思うのです。  そういう競争は、少なくとも十年前にNTTが、百年ほどずっと独占してきた、これは世界じゅうそうだったわけであります。それが、競争の取っかかりとして長距離のところだけやるとか、あるいはローカルだけやるというのはあり得たとしても、先ほどから言っていますように、世界的にも一たん離れた、アメリカもそうなってきていますし、私はおとといドイツから帰ったところでありますけれども、私らの国の仲間に聞いてまいりました。やはり向こうはもうエンド・ツー・エンドで、参入してくるのは、BTとか外国資本を入れています。ドイツは、ドイツ・テレコムをそのまま置いておいてやる、参入規制もゼロということで、EUの問題もございますけれども、やっていこうとしておるわけでございます。  したがって、競争を活性化さすという意味においては、土俵に上る上り方がどんな上り方で上るのかということがまず一つあると私は思います。同時に、ここで分割とか経営形態というとおかしくなるので言いにくいのですけれども、あえて言うとすれば、NTTを地域と長距離で切ったところで、地域独占が強まるだけではないのでしょうかというように思うのです。それよりも、田中先生がおっしゃっていましたように、今あるローカルネットワーク、NTT以外もあります。それからもちろん長距離のNCCもございます。それをつなげば、エンド・エンド同士のまともな市場が、正しく競争できるような市場ができ上がるのじゃないでしょうか。そのために、私は何とか先生方の御努力をお願いしたい。  私は、決してNTTの代表でも何でもありません。したがって、日本の国の情報通信なり電気通信をそのようにしていかなければならぬという、私たちは少なくとも、組合であってもそこで働いている当該の労働者でありますから、自分たちの組合の利害というのは全く関係ないわけであります。そういった立場で、日本としての電気通信なり情報通信の現在と将来、競争のやり方はどうしたらいいのだろうかということについて思いを込めて申し上げておるわけであります。大変失礼しました。
  75. 輿石東

    輿石委員 大変貴重な御示唆をいただき、ありがとうございました。  午前中も話がありましたように、何のための、だれのための規制緩和か。その言葉がそのまま、だれのための情報通信か、そういうような視点から、これからもいろいろな論議をしてまいりたいというふうに思います。  貴重な御示唆をいただきましたことに感謝を申し上げ、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  76. 塚田延充

  77. 西川太一郎

    ○西川委員 田中参考人、奥山参考人、梶本参考人におかれましては、御多用の折を御出席いただき、貴重な御意見を賜りまして、まことにありがとうございます。  早速でございますが、新進党を代表して、この分野についてお尋ねをさせていただきたいと存じます。初めに集中的に田中参考人に御質疑をさせていただき、順次奥山参考人、梶本参考人というふうにお尋ねをしていきたいと存じます。  田中参考人にお伺いするわけであります。  先ほど梶本参考人からも数字として示されましたが、マルチメディアの議論が行われますと必ず出てまいります数字が、二〇一〇年には百二十三兆円の市場規模になりますよ、そして二百四十三万人の新規雇用を生み出す。つまり、二十一世紀のリーディング産業になるのである。電気通信審議会が昨年五月に答申を出した際に盛り込まれた、いわゆる経済効果の予測でございます。  こうしたバラ色の予測に対して、お名前を出す必要はありませんが、某民間経済研究所の責任者で有名な方は、単純に計算すると、それは年間一人百万円になるじゃないか、マルチメディアがどんなに発達したってそんなに使うものか、例えば電子新聞などというものを考案したって、その分ペーパーレスになれば紙業業界の供給はとまるし、また販売店もなくなるし等々の経済的なマイナスのファクターもあるのだからそう簡単にいくものじゃないという指摘に対して、そのころの、いわゆる二〇一〇年の所得等を勘案すると、いろいろなものを差し引いたとしても一人当たり六十万程度の支出なんだから、十分こういう数字は成り立つんだと郵政省は言っておりますが、田中先生は、まずこの点、まことに見えにくい先行きでございますが、どういうお見通しか、御教示いただければと思います。
  78. 田中直毅

    ○田中参考人 民間企業の経営者が自分のところのスタッフの人に、例えばマルチメディアの分野でどういうことができるのか、そのために大ざっぱにマーケットの規模を予測してこい、こういうふうに言った場合に、もしその企画担当者が政府の審議会のデータを持っていったら、それはおまえは勉強していないということだと言うのはもう当然でございます。これまで、これはもうあらゆる、通産省もそうですし、その事業を抱え込んだ役所が審議会でつくった数値で多少ともまともだったものはほとんどないわけでございまして、だれもそういう数値は、民間企業ではまともには受けとめていないということでございます。  問題は、ではどうやって、どういう推計をすればいいのかということでございますが、先ほど提示させていただきました三層構造の中で大きく広がるとすると、一番上のコンテンツのところでございます。このコンテンツが我が国においていっぱい出てくるというためには、このプラットホームがまさにユーザーにとって使いやすいものでなければならないわけでございます。  それはどういうことかというと、そこでは料金がどうなるかというのは極めて重要なことでございます。我が国においては、いわゆる電話料金として払っておりますものは、国際的に見て、日本列島の中の遠距離にかけるのが依然としてやはり高いわけでございます。本来の今の技術をもって すれば、日本の中で均一料金というのは当然あり得ることなんですが、実際には我が国の行政が、梶本さん流に言うと線の部分、糸の部分にいろいろな参入があって、それはそれでいいのですが、その参入した会社一つ一つを倒産しないようにさせるために実は電話料金が、遠近格差というものはそういう中からも決まってきているという面がございまして、全国均一料金にすることが論理的にも技術的にも少しもおかしくはないと私は思っているのですが、そういうことがとれない。  それから料金も、使えば使うほど高くなるというのと、各家庭ごとに幾らというのを決めて取る取り方もあるわけですが、その辺の自由度もない。  問題は、新たにコンテンツが日本の中で膨れ上がってくるためには、そうした料全体系、使いやすさ、ユーザーにとってふさわしいものになるかどうかというのは決定的に重要なんですね。役所が、あるいは審議会がつくりますのは、その話は全然抜きにして、光ファイバーを埋め込むための工事費、別に工事が悪いと申し上げているわけじゃないのですが、工事費にいっぱい使われているという数値、この辺だけは、工事費だけは算定しやすいのかもしれませんが、そういうことが中心になっておりまして、コンテンツのところを成長させるための工夫ないし政策が何にもない中で数値ができているというのは摩詞不思議なものでございまして、真っ当なビジネスの人は全く取り合っていない数値だというふうに思います。
  79. 西川太一郎

    ○西川委員 大変きついお答えでございますが、私ども、ただいまの御意見を参考にさせていただいて、よくこれらの数値を検討していきたいと思います。  そこで、ただいまのお話にも関連があるのでございますが、先ほどのいただきましたレジュメの三項目めとも少し関連をいたしますけれども、推進計画において、マルチメディア活用による行政の情報化の促進、各種法律で保存が義務づけられております書類等の電子データ化、こういう事務手続の合理化、また医療における遠隔診断などが盛り込まれているわけでございます。  郵政研究所が昨年の十一月、情報通信の基盤整備による社会的効果についての試算結果というものを出しておりまして、これによりますと、ただいま先生、そういう関係の数字はどうも信用ならぬというようなお話でございますけれども、医療、福祉、教育、行政の四分野で、二〇〇〇年では八千億円程度でありますけれども、二〇一〇年では何と七兆二千億円の費用の負担が軽減できる。また、中央政府、地方政府の関連でも三兆数千億円の経費の節減ができる。こういう分析が出ているわけでございます。  そこでお伺いをいたすわけでございますが、先生の御意見として、いわゆる高度情報化社会構築に伴うこれらの効果の見通しと規制緩和推進計画というものの整合性を先生はどうつかまえておられるか、御示唆をいただければと思います。
  80. 田中直毅

    ○田中参考人 まず法制面でございますが、現在の、例えば商法の改正が必要だということになりますと、日本のこれまでの仕組みは法制審議会というところにかかることになっております。ただ、これは私は本当に不思議な話だと常々思っておりまして、法の改正は立法府がやることになっているのになぜ法制審議会にかかるのかという問題でございます。  法制審議会は、そう言ってはなんですが、大変高齢な方が何人か入っておられます。もう文化勲章受章者クラスの方でございまして、それは別に年寄りが悪いと申し上げているのじゃないのですが、何しろ議論の機動性がないし、現実の認識等においても、やはり若い、二十一世紀を担う人が本来審議に入る、そういうことを真剣に議論すべきなんですが、そういう仕組みにはなっていない。これは立法府でもう少し、審議会すべてそうでございますが、一体どうしてそういう仕組みになっているのかをチェックしていただきたい。  私も半年ほど行革委員を務めさせていただいていますので、そのことは行革委員会の中でも取り上げて勉強してみょうと思っておりますが、何しろ法制面の検討が非常に遅いという問題があろうかと思います。  それから、どのくらいマーケットになるのかということでございますが、医療とか教育とかいう分野において競争の契機が導入されれば、私は、仕事をこういう新たに登場するメディアを通じて選択の自由を広げながら、自分に合った教育、自分に合った医療を、今よりも安い費用で、しかももっと高い質のものを得たいという人はいっぱいいるわけでございまして、まさに教育、医療は我々にとってネックになっていますね、高齢化社会ないし教育の質の低下を考えてみますと。  それに対して、もしそういう分野で全面的な自由化が行われて、いろいろな知恵が投入されて、それで新たな事業者がそれを組織化するということが起きますならば、この分野は非常に発展の余地がある分野。しかし、これは規制緩和が前提でございますし、基本はこういう分野もまた競争が重要だ。競争を導入することなくして質の向上はない。  医療にしろ教育にしろ、いわば配給制度を続けているわけでございまして、何々市何々町に生まれた子供は必ず何々小学校に行かなければいけません。それで、たまたま教師との折り合いが悪いとかいろいろあるわけでございますが、勝手に転校なんかはできない仕組みになっております。要するに、そういう仕組みの中で教育の質の低下が起きているわけで、競争の契機がこの分野に導入されれば、一人一人の国民にとっての価値といいますか幸福も向上いたしますし、産業といいますか、それは当然私的なメカニズムがかなりの程度関与するはずでございますから、マーケットとしても広がる。そういう仕組み、広く選択できる仕組み、質の向上を達成するような仕組みをつくっていけば、御指摘のような大きなマーケットになる可能性はあるというふうに私は思っております。
  81. 西川太一郎

    ○西川委員 あと十二分の持ち時間でございますから、実は田中参考人にまだお尋ねしたいことがたくさんございましたが、また別の機会にさせていただきまして、せっかくでございますから、奥山参考人、梶本参考人にそれぞれ一問ずつ、一ポイントずつお尋ねをさせていただきたいと思います。  まず、奥山参考人にお尋ねをいたすわけでございますが、いわゆる高度情報化社会に向けて通信ネットワークの整備というのは、先ほど来のお話のとおり、不可欠のものでございます。そこで、具体的に申しますと、仮想専用線網の新サービスを行うことにつきまして、この三月にNTT、四月にKDDと基本合意をされたというふうに報じられておりますけれども、相互接続をめぐる規制問題点及び接続の条件、費用の公平なルールの確立、こういうものを図る必要についての参考人の御意見を伺いたいと思います。  また、もし簡単にお答えいただければ、アメリカのモトローラ社のある青年の提案によってこれが実現をしたと、田中先生が国領先生との対談の中で御教示をいただいておりますイリジウム計画の構想についての奥山参考人のお考えを承れればと思います。  一問と申しましたけれども、二つお尋ねして恐縮ですが、時間の関係で、簡潔にひとつ御意見の開陳を願えればと思います。
  82. 奥山雄材

    ○奥山参考人 まず接続をめぐる問題でございますが、ただいま先生御指摘のとおり、接続の問題というと、どちらかというと事業者間のお金のやりとりみたいな、非常に短小化された議論にとられがちなんですけれども、実際は、接続に要する費用をだれがどういう形で負担するかという、非常にユーザーの保護あるいは消費者保護に直結した問題であるというふうに私ども認識しておりますし、恐らく先生の御関心もそういうところではないかなというふうに拝察をしております。  今後、事業者がふえればふえるほど接続形態というのはふえてまいりますので、そういった意味では、消費者保護の見地からもこの接続ルールのあり方、接続料金のあり方というものは重要に なってくるというふうに私ども認識しております。  そういう基本的な考えに立ちまして、ただいま委員御指摘のいわゆるVPN、仮想専用線とか仮想内線電話網とか言っておりますが、こういう高度の知的情報ネットワークを駆使したサービスにつきましては、今後ますます新しい形態がふえてくるだろうと思っております。  その手始めにテストケースになったのが先ほどの御指摘のVPNでございまして、幸いにいたしまして、最終的にことしの三月に決着、合意いたしましたけれども、それまでの過去の経過を考えますと、実は五年にわたる折衝がございまして、それもNTTの地域通信網との接続につきまして私どもとNTTさんとの間でやはり大きな議論があったということでございます。  過去五年の経緯を、私どもも、あるいはNTTの方も、恐らくこれからの教訓にいろいろ生かされると思いますが、それらを総合して申し上げますと、やはり一つはコストと時間の問題でございます。  私ども事業者にとりましては、時間が一カ月おくれれば、一カ月のおくれでなくお客様に御迷惑をかけるということになってまいります。結局、ユーザーの皆様方に提供するサービスがおくれるということは、それだけやはり日本の電気通信を御利用の皆様に御迷惑をかけ、それだけ世界の進運からおくれるということになりますので、時間の問題は余り意識されておりませんけれども、一つの大きな問題と思っております。  それからもう一つ、コストの問題につきましては、最終的にはNTTあるいは新規事業者のだれが負担するにせよ、結局は電気通信に要するコストということでユーザーにはね返らざるを得ないという性格を持っておりますので、NTTの地域通信網の経営が効率的に行われているということが大前提でございまして、そういうNTTの効率的な経営のもとに算出されたコストであれば、私どもも負担するのはやぶさかではございません。したがいまして、コスト算定の過程をぜひ明確にしていただきたいということと、それから私どもが接続に要する技術開示はぜひ積極的に行っていただきたい、そういったことがやはり今後の課題になろうかと思います。  それから、お尋ねのイリジウム計画でございますけれども、おかげさまをもちまして、イリジウム社が中心になって一九九八年のサービスインを目途に現在計画を進めておりますイリジウム計画、日本側の受け皿といたしまして、DDIが中心になって設立いたしました日本イリジウム株式会社が現在日本側の準備体制を整えております。既に日本における、衛星からの電波を受ける関門局と言っておりますが、ゲートウェーの置局、局を置く場所でございますが、ゲートウェー局の場所の選定を終わりまして、今年度中にはその建設が始まる見込みでございます。  また、アメリカにおきましては、イリジウム社に対しまして電波の割り当てが既に完了しております。日本におきましても、やはりタイミングを見て私どもは申請等所要の行政手続をとっていかなければならないと思っております。  いずれにいたしましても、このイリジウム計画といいますのは、世界じゅう、南極であれサハラ砂漠であれ、どんな山間僻地であっても衛星から電波を受けられる。究極の移動通信形態、携帯電話の形態というふうに私どもとらえております。二十世紀の末になりますけれども、私どもはこれが順調にスタートできるように最大限の努力を傾けてまいりたいと思います。  先ほど阪神大震災のお話が出ておりましたけれども、阪神大震災のような場合にも、最後に絶対的な決め手になる電話システムというものはこれ以外にないというふうに私ども考えております。今後とも先生方の格別の御支援をお願い申し上げたいと思います。
  83. 西川太一郎

    ○西川委員 最後になりまして恐縮でございます。梶本参考人一つだけお尋ねをいたすわけでありますが、先ほど輿石先生のお尋ねへの三先生の御説明、御意見を伺っておりまして、これはなかなか難しい問題だなというふうに思います。私が集めました資料も、NTTを分割するべきだ、効率よくするべきだという意見と、いや、アメリカの後塵を拝しているのは、分割にちゅうちょしているからではなくて、この分野に対する参入の規制が厳し過ぎるからであって、むしろ郵政省がその責任をとるべきだという意見と、両方、甲論乙駁、決しがたいような、山のように資料、きょうはその中からよりすぐって持ってきたのですけれども、今ここで御意見を伺いますと、私どもとしても、全くどちらもおっしゃることはもっともだという感じを持つわけでございます。  ですから、これは三人の先生に伺わなければいけないのかもしれませんが、ただいま伺ったことを前提にして、あえてもう一度梶本参考人にお尋ねをすれば、いわゆる電気通信審議会におけるNTTの経営形態のあり方論、機能や地域の分離分割、こういうものが我が国情報通信産業にダイナミズムをもたらすのだということでございますけれども、ダイナミズムというものをもたらす別の方法もあるよというような御意見がございましたら、最後にお聞かせをいただきたいと思う次第であります。  短い時間で恐縮でございますが、あと三分ほどございますので、御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  84. 梶本幸治

    ○梶本参考人 別の方法というのは思い当たらないわけでありますが、やはり言われている話は、NTTの分割で活性化を求めるのか、あるいはそうではなくて、NTTと対等というか相似的なエンド・エンドの業者による、二つであるいは三つで複数の競争をするのかということが基本的な問題の分かれだと思うのです。  私は、今の時点で申し上げれば、規制緩和を徹底的にすることによって新しい商品が生まれてくる、それはマルチメディアにつながっていく話になっていくのではないか。よく例えに出ますけれども、相撲とか野球とかいうスポーツはもともと商売にならなかった、今も野球はなっていないそうでありますが。マルチメディアの世界も電気通信の世界もそうでありまして、いろいろ市場にチャレンジしていって、商品にならぬと、高くてまずいといってやめていく者がおる、しかし、生き残っていく者がおる。そういう商売が今何かというのはわからないと思うのです。そのためには、今規制を取っ払っていろいろなチャレンジができるように、参入できるようにするということが競争の活性化、ダイナミズムを生んでいく、パイを大きくしていくということではないだろうか。順序は私はそうだと思います。最終的には、やはり諸外国がやっていますように、エンド・エンド、そんなことはかり言って悪いですけれども、エンド・エンドのところに到達するはずです。その過程の中では、規制緩和を徹底的にやって、新しい商品といいますか、通信産業の中で生まれてくる何かを求めなければならぬ。そういうことでなかったら、二百四十三万人とか百二十二兆というものが実現されないのではないか。  今のところ、何が商売になるかというのはわかっていないと思います。少なくともネットワークのところは、アメリカもBTもそうですし、NTTもそうですけれども、そこの部分にぶら下がっている人間は減らされて、いや減っていっているという状況でありますから、全体としてふやすためにはほかの新しい商売を編み出すというかつくり出していかなければならぬというように思っております。
  85. 西川太一郎

    ○西川委員 どうもありがとうございました。
  86. 塚田延充

    塚田委員長 吉井英勝君。
  87. 吉井英勝

    ○吉井委員 きょうも田中参考人のお話をお聞かせいただきまして、日ごろユニークなお説をよく読ませていただいておりますが、昨年三月に出されました「日本政治の構想」の中でも、「日本経済グローバル化の三つの流れ」の中で情報通信などについて触れておられて、きょうはかなりその部分を詳しくお聞かせをいただきました。  私、皆さんからいろいろ御質問ありましたので、 ちょっと違った角度から伺っておきたいと思うのです。  昨年の八月号の「東洋経済」、八月何日号でしたか、その座談会の中で、余り断片だけ抽出してお聞きするとあれなんですが、要するに、規制分野だから失業が起きていないだけのことだというお話なんかが全体の流れの中であるのですが、それは規制緩和で失業が生まれるという問題もそこにはあるわけですけれども、これは田中参考人だけじゃなくて、楽市楽座研究会の報告であるとか、または財界人の方のセミナーその他での発言の中でも、規制緩和によって大量の失業が生まれる問題とか、あるいは二千万ぐらい生まれるのじゃないかというお話があったりとかいろいろ出ております。この点で「東洋経済」の昨年の五月の号ではまた、「羽田「短期政権」の採点基準」という書かれたものの中で、政府規制の撤廃によってどれだけ投資がふえるのか、その結果どれだけ職場がふえるのかは、もちろんやってみないとわからない、そういう御趣旨のお説も読ませていただきました。  実際やってみなければわからないということもそうなのかもしれませんが、ただ、政治の分野ではやってみなければわからなくてごめんなさいというわけには我々ちょっといかない、そういう面もあるだけに、私はこの機会に、確かに規制緩和をやると失業も出るけれども、ニュービジネスや新規産業の創出によってもっと大きな雇用の拡大が生まれるんだ、こういうお話があるのもいろいろな規制緩和に関するものを読ませていただいて承知しているわけであります。ただ、新規産業の創造といっても、かつての重厚長大型の素材供給型産業の時代とは違って、だんだん省エネ、省資源型、ソフト中心になってきておりますから、例えば自動車で約二百万、電機で二百万という、関連産業含めてですが、それだけの雇用に見合うぐらいのもの、これが本当に生まれるかとなると、これは簡単にいかないというのが率直なところじゃないかと思うのです。  そこで、私、ここから質問していきたいところなんですが、規制緩和というものを考えるにしても、いわば規制緩和のアセスメントですね、どういう内容でどういう手法でやっていくのかとか、そのアセスの実施例など、例えばマルチメディアについては新規投資三十三兆から五十三兆という話があって、それにそれだけ投資すれば当然これだけの雇用があるだろうという漢としたお話はよくあるわけです。ただ、そういう大ざっぱな推測、計算だけではなくて、やはり規制緩和のアセスとなれば、こういうものがというのを、その点、ぜひひとつきょうはユニークなところでお説を伺っておきたいなというふうに思うのです。
  88. 田中直毅

    ○田中参考人 まず、現実の職場がどのくらい失われるかとかそのことについてどう考えるかという問題なんですが、私は、現在ただいまの職場を維持しようと思ったら、いろいろな方法を通じてできると思うのです。  ただ、そういう現在ある職場が重要で、配転もしない、一切経済的な価値がなくなっても飼い続けるというふうにやりますと、次の子供の世代、孫の世代に何もなくなってしまうわけですね。だから、現在ただいまの職場が、そのときどきに生きている我々としては今の職場はもちろん重要なんですけれども、それがすべてだといったときに、じゃ、あなたの子供が就職するときにはあなたの職場がないですよ、世界の流れから見ても技術の進展からいっても、新しい芽が何もなくて今の職場を維持するというふうにやっていれば何もないですよということに耐えられるのかという問題があるのだと思うのですね。  ですから私は、確かに規制緩和によって競争が激化して、市場から退出する企業が出てまいりますので、その企業にたまたま従事されていた方は仕事を変えるか何か、いろいろな意味でいっときは失業ということが出てくると思うのです。でも、それはやはり我々が次の社会に備えなければ、今も長くは維持できないということからいくと、私はやむを得ないことだというふうに思うのです。  問題は、そうしたら、規制撤廃やった、それで本当に新しい職場はどのくらい生まれるのかというお尋ねでございますが、まず新しい分野に対して企業がチャレンジする、それで財やサービスを提供する、投資をするわけですね、この投資がどの程度の規模になるのか。その投資によって新たな仕事が生まれますから、どの程度投資が生まれるかという、ここにかかってきているわけです。  この投資の規模を考える上で極めて重要なのは、要するに、新たな工夫をした人が仕事ができるためには、もう許認可から始まっていろいろな難しい、もちろん安全とか衛生とか環境とかいろいろなことがありますから全部それは満たしてももわなければいけませんけれども、中小の事業者が新しい仕事をしようとしたときに、新しく獲得しようとするユーザーや消費者の顔を思い浮かべるのでなくて、役所回りをして、ここで環境問題、ここで衛生の問題、ここで労働基準という、ぐるぐる回らなければいけないようでは、そういう人にもう物すごく重い荷物をしょわせて、さあ走ってみろということをやっているわけです。  例えば、これは国会で議論していただかなければいけないと思うのですが、ワンストップショッピングというのでしょうか、小さな事業者がそこへ行けば労働基準の問題も環境の問題も衛生の問題も、最低限のことはここでぽっとクリアできるということになれば、午前中そこへ行ってやれば、新しい事業をやろうというおじさんはそこへ午前中行けば、もう大体基本的にはこれでいいよ、じゃ、これ満たしてないからあした来なさいで二日で済む、例えばそういう仕組みにまでしないと投資をしようという事業者がふえないわけですね。  ですから、投資がどのくらい起きるかとかどれだけ職場が生まれるかというのは、実は、そういう新しく仕事をしようという意欲的な人にそういう環境をどの程度提供できるのかということにかかわっておりまして、特に私は、中小の事業者の人がやれる分野というのは物すごくふえると思うのです。その人たちに商売をしやすい環境をどうやったらつくれるか。もちろんさっき言ったような労働とか安全とか環境基準というのは必要ですから、それは満たしてもらわなければ困る。だけれども、それを猛烈な、欄に書き込んで窓口に持っていって、ここはだめだといってまた突っ返されて翌日持っていくということを何カ所もやっていれば、もう仕事なんかやめだということになるものですから、そこのところが重要だ。そこのところがあれば、我々の今日までの実績から見ると、意欲的に仕事をやろうという人の数は我々の社会の中で非常に多いわけでして、失業が多くなってしまって働きたいと思う人が職場がなくなるというような状況は私は決してあり得ない。  問題はそういう環境をどこまでつくれるかということで、先生方にもその点はよく議論していただいて、簡素な、有効だけれども簡素な規制の体系というものをどうしても社会的規制についてはつくっていただかなければならないというふうに思っております。
  89. 吉井英勝

    ○吉井委員 私も昔サラリーマン時代は物づくりの方の開発をやっておりましたから、大体JIS規格のハンドブックをもってやればかなりもうできるし、それほど行政的規制というのが新しい物づくりの上で不便を感じたということがなかったものですから、それだけに、規制緩和の中で多分こうなるであろうということよりも、むしろ何か規制緩和のアセスメント、雇用がこのことによってこれだけ減ったとしても新しい分野がこういうふうにふえてこうなるというふうな、何かそのアセスメントの手法でもお持ちであったら伺いたかったわけであります。  時間が追ってまいりましたので、せっかくの機会ですから、行革委員もなさっていらっしゃいますので一言お聞きしておきたいんですが、実は、行革OBの加藤さんが「臨調と行革、二年の記録」という中で、これはかつての国鉄の分割のときの話で、ローカル線四十線全部切ったって百五十億じゃないか、政府委託研究も含めて二百億円の補 助金が五大企業に出ているじゃないかという話を受けての話なんですが、青臭いと言われるかもしれませんけれども、李下に冠を正さすて、五大企業も多少そこら辺は考えるべきじゃないか、委託研究費は要りません、国のために必要ならば我々は自分の金でやりますという気概が必要だ、そういう趣旨を加藤さんは述べていらっしゃるんですが、行革というのであればこういうところも問題になってきて、まさに行革の委員長の飯田さんはたしか三菱重工の会長さんだったと思うのですが、委員長に物を言いにくいかもしれないけれども、そういうことをずばりとおっしゃっておられるのかなということ。  もう一つ、「軍拡の不経済学」というのも読ませていただきました。この中で武器輸出禁止と軍縮のことについて論じていらっしゃいましたけれども、最近、この飯田さんなどの三菱重工、あるいは経団連防衛生産委員会の会長も務めておられますが、武器禁輸三原則の緩和ということも主張していらっしゃるんですね。だから、この点ではちょうど田中参考人とかなりあべこべな位置を委員長の方は主張していらっしゃるわけで、特に三菱重工といえば、補助金では年間第一位をずっと続けるぐらい国からはもらっている方ですし、それから防衛庁調達実績も第一位で続いているわけでありますし、そこが武器禁輸三原則の撤廃を言い出しているときですから、行革の中で、行革を主張されるのだったらやはりビッグビジネスの補助金のカットと、むしろ軍縮をこそ、あなたのお説とまるで違う武器禁輸三原則の緩和なんというのはとんでもない、そういうところこそ本当の行革なんだということも主張をされていらっしゃるのかなというふうに思いまして、時間が来たようですからその点だけ最後に伺って、私の質問を終わりたいと思うのです。
  90. 田中直毅

    ○田中参考人 私の認識では、武器輸出禁止をこの際撤廃しろという声が出ているというふうには認識してなかったので、それは何かの間違いじゃないか、幾ら何でもそんなことを今さら言うことはあるまいと私は思っているのですが、まあこれは事実は確かめてみます。  それで、日本における武器生産は、工業生産に占める比率で現在○・六%なんですね。ですから、我が国の場合は戦後大変うまくいきまして、武器生産に従事する労働者の数は非常に少なくて済んだ。問題は、それじゃ武器生産ゼロがいいかということになりますと、何らかの外からの侵略まがいのことがないとは言えないわけですから、最低限のものは維持するということについては国民的な合意があるんだろうというふうに思います。そういう意味では、現在の工業生産に占める武器生産の比率○・六%は、まあまあ国民が一応納得できる範囲におさまっているのかなというふうに思います。問題は、そういう非常に小さい生産規模のものをつくるときに、補助金なしで済むのかどうかということが恐らく関与をしているんだと思います。  スケールメリットが追求できないものを、しかし最小限、国内においてミリタリーインダストリアルベースの最小限のものは要るといったときに、それが例えば形としては補助金になって出てくるというケースが何ぼかはあるかというふうに思いますが、最初の段落でおっしゃいました、民間企業は自己責任の原則でマーケットに立つべきだということは全く私も賛成でございまして、研究開発費は本来もうけから出すべきでありますし、あるいはもうけから出ない場合は、ベンチャーという形で、それに投資しようという投資家にちゃんと自分の生産計画、研究開発計画を売り込んで、よし、それならば危険負担は自分が負ってやろうという人を説得して調達すべき筋合いのものだというふうに思います。  そういう意味で、小さい政府を経済システムの中で唱える以上、補助金依存はそれはもう全然趣旨に合わない、規制撤廃を言う以上はマーケットに対してみずからの責任で立つということはもう当然だというふうに思っております、
  91. 吉井英勝

    ○吉井委員 これは防衛問題懇談会の報告です。  終わります。
  92. 塚田延充

    塚田委員長 以上であらかじめ申し出のありました質疑は終了いたしました。  この際、委員各位に申し上げます。  これより、質疑のある委員は、挙手の上、委員長の許可を得て発言するようお願いいたします。また、発言の際は、自席にて起立し、所属会派及び氏名並びに質疑する参考人の名前をあらかじめお告げいただきたいと存じます。  なお、発言は簡潔にお願いいたします。  それでは、質疑を続行いたします。質疑のある委員は挙手をお願いいたします。
  93. 橘康太郎

    ○橘委員 自由民主党の橘でございます。  田中先生に御質問したいと思うわけでございますが、先ほどCATVの話でちょっとお話がございました。アメリカでは随分発達しておって日本がおくれておるから大変心配だというふうなお話でございましたが、しかしこれから衛星時代に入って、もう衛星から、しかも衛星もディジタルで放送を流したり、あるいは通信網がディジタルで通話可能になる時代に入りますと、余り光ファイバーというものが未整備なことについて御心配になる必要はないんじゃないかなと思うわけですが、それが第一点。  それともう一つは、そういうことになってまいりますと、第二電電さん、あるいはNCCさんですか、いわゆる今の民営の通信会社さんとNTTさんの問題もありますけれども、今後衛星を通じての電話その他の通信ということで考えれば、地域間の問題でそう角を突き合わせ合う必要はないんではないか。むしろそっちの方を早くやられた方が電話は早く通じるんじゃないか。それこそドア・ツー・ドアでやれるのではないかというふうに私は思うのです。  それともう一つ、あと一つ質問があるのですが、NTTさんの分割問題があります。  そうなってまいりますと、私は、NTTさんはむしろ日本の代表的な民間会社として、ATTさんだとかBTさんに太刀打ちできる強大な実力を持った会社として日本側が逆に育てなかったら、そんな分割だとかなんとかと変なことで体力を弱めるより、むしろ民営のNTTをもっと強化して世界に対抗できる立派な会社として育てる必要があるのではないかなという気がするのですが、田中先生、その三つの点についていかがでしょうか。
  94. 田中直毅

    ○田中参考人 CATVについては、我が国でCATVが発達しなかったがゆえにNTTに対抗する可能性がないわけですね。アメリカの場合は、CATVが相当程度発達していますから、複数の通信ネットワークになっていく可能性があるということです。  衛星について言いますと、衛星は確かにおっしゃいますように大きな可能性がありますし、NTT自身が……(橘委員「複数の場合も通信でできますから、マルチは幾らでもディジタルでできますから」と呼ぶ)  いや、ただ光ファイバーを各家庭といいますかそれぞれに敷くということは、これは大容量、高速そして高い質の通信ネットワークでございますから、ケーブルがそれぞれの末端まで行っているということはこれはまた別の……(橘委員「ディジタルでできますよ、幾らでも」と呼ぶ)CATVというか、ケーブルの持つ意味というのは私はやはり非常に大きいというふうに思います。  ただ、先生が言われましたように、衛星を通じてのコミュニケーションの重要性といいますか、これが持つ衝撃というのはNTTがもう十年も前に実感していまして、御巣鷹山で事故が起きたときにあの山の中に衛星を通じて回線をすぐ確保したわけです。そしたら、結局今まで日本じゅうに線を張っていたことの意味は一体何だったのか、そういう技術の発展が、今までのディストリビューションといいますか仕組みを一挙に変えていくという可能性は先生おっしゃるようにありまして、そのこと自身この分野における大きな競争になってきておりますので、そういう競争要因があるということは極めて重要なことだというふうに思います。  NTTをどうするかというときに、先生はもっと支援して立派な会社にしてやれというふうにおっしゃいましたけれども、これはもう自分でやることであると私は思っておりまして……(橘委員「分割しなくていいんじゃないですか」と呼ぶ)ああ、分割するなということですか。分割すべきかどうかのポイントは、NTTが持っていますいろいろな資源が、今の経営形態のもとでどの程度本当に効果的に使われているかどうかということだと思うのです。もしその点について、例えば巨大性のゆえに十分その経営資源が生かされていないということだったら、それはやはり分割不可避ということに結論はなるのだと思うのです。  問題は、だからNTTの内部において経営資源がどの程度、これはやはり相当ちゃんとしたスタディーをしてみないとわからないことなのですが、私はポイントはそこだろうというふうに思います。  競争条件からいけば、他の手法でもってNTTに匹敵する、あるいはNTTが潜在的な脅威を感ずるであろうネットワークを、別の形で、もっと可能性があるはずですから、その可能性は競争ということからいくとそちらの可能性をもっと確かめてみるべきだというふうに思っております。
  95. 岡田克也

    ○岡田委員 新進党の岡田克也でございます。  田中参考人に一言お聞きしたいと思うのですが、先ほど医療分野における規制緩和の必要性についてお話しになられたと思うのですが、この問題を考える際に、医療の分野の特殊性というものがどうしてもあるかと思います。  というのは、サービスを受けるのは国民である、しかしお金を払うのは、最後は国民だけれども基本的には国が払う、そういう仕組みの中で、医療の分野での規制緩和というものをどういうふうにお進めになろうと考えておられるのか。医療保険制度そのものを変えるということであればあるいは道はあるかもしれませんが、その辺について少しお話を聞かせていただきたいと思います。
  96. 田中直毅

    ○田中参考人 医療そのものの問題と、それから電気通信における診療、診断にもっと使えるようにするという意味で医療法の問題、医師法の問題を言ったわけですけれども、医療そのものに関して言うと、これはおっしゃいますように、我々が持ち得ている医療に割くべき、割いている資源をもっと有効に活用する余地というのは私はあるだろうと。それは大変、まあデータ的にはっきりしているわけですが、終末医療にかかわるところで非常に多くのお金が使われておりまして、結局のところ我々は自己の尊厳を、何といいますか維持しながら死を迎えられるかどうかという、これは一人一人の判断になりますので、押しつけることができない世界でございますが、しかし、保険制度の中では、もっと本気になって、終末医療にかかっている医療資源が多過ぎるということはもう少し明白に議論された方がいいというふうに私は思っておるのです。情報通信との関係でいうと、診療等においてもっと選択の余地があっていいのではないかということでございます。
  97. 塚田延充

    塚田委員長 以上で情報通信関係参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人の方々におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  それでは、御退席いただいて結構でございます。  ちょっと速記をとめてください。     〔速記中止〕
  98. 塚田延充

    塚田委員長 速記を起こしてください。  次に、運輸・流通関係参考人に御出席いただき、質疑を行います。  ただいま御出席いただいております参考人は、創価大学経済学部教授岡野行秀君、全国乗用自動車連合会理事長伊東弘之君、経済団体連合会輸送委員会委員長日本通運株式会社代表取締役社長濱中昭一郎君、全国商店街振興組合連合会理事長山本勝一君であります。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位には、運輸・流通関係規制緩和に関する問題につきまして、忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  なお、議事の順序についてでございますが、参考人にそれぞれ十分程度御意見をお述べいただき、次に委員からの質疑に対してお答えいただきたいと存じます。  それでは、まず岡野参考人お願いいたします。     〔委員長退席、斉藤(鉄)委員長代理着席〕
  99. 岡野行秀

    ○岡野参考人 お手元に三枚のレジュメと、それから別に、昔私が書いたものですが、B4で二枚の小さいエッセーをお手元にお配りしたと思います。そこに書きましたとおり、私は、昭和六十二年の新行革審の公的規制の在り方に関する小委員会委員、主査代理として参加いたしまして、運輸業以外の産業規制にも携わりまして勉強いたしました。このレジュメに沿って簡単に私の意見を申し上げようと思います。  これまでに実施された運輸業の規制緩和でありますが、新行革審では、審議期間の制約のために物流だけを取り上げまして、貨物運送事業の参入規制、営業区域規制、運賃規制緩和を提言いたしました。これは道路運送法から貨物運送を切り離した貨物自動車運送事業法として緒実いたしました。そのほか、倉庫業についての料金弾力化、利用運送業についての弾力化等を提言いたしました。ただ、こういう規制緩和に対する反対もかなり強く、十分に緩和されたとは申し上げられません。  旅客運送につきましては、このときには物流だけしか取り上げられなかったものですから、その後、平成四年六月の臨時行政改革審議会の第三次答申でタクシーの規制見直しが提言されましたのを受けまして、運輸省の運輸政策審議会でタクシー事業特別委員会を設けて、今後のタクシー事業のあり方について審議いたしました。たまたま私、その特別委員会委員長代理とワーキンググループの座長を務めました。答申は、当面、東京、大阪の二大都市を対象に、新規参入規制の即時緩和まではいきませんでしたけれども、免許制による需給調整を廃止し、既存の事業者の台数規制緩和、同一地域同一運賃制度を廃止して運賃の多様化を認めろ、こういう提案をいたしました。  他の交通手段につきましては、航空運送の場合には、航空路線のダブル、トリプル化が行われておりますし、運賃の多様化、弾力化等も最近見られるようになりました。スピードは速くありませんけれども、進行していると思います。それから、内航海運の場合も、新行革審でも言及はいたしましたけれども、最近、時期は明示されておりませんが、船腹調整事業、いわゆる船腹カルテル廃止の方向が決まりました。  このように、運輸業は、非常に規制の範囲それから量が多いと言われておりましたけれども、遅まきながら少しずつ緩和が進んでいると思います。  この運輸業の規制緩和につきましての物の考え方でありますが、まず、鉄道にかかわる政府の諸規制、これは一八八七年のインターステート・コマース・コミッションができたのは鉄道の規制にあったわけですが、この運輸業の規制は、大別して、参入規制、これは通常、免許によります。二番目に、運賃・料金規制、これは通常、認可によります。それから三番目に、安全性を中心とするサービスにかかわる規制、この三つに大別して分けられると思います。  一と二は経済規制、これは英語では、イギリスあたりではこのことをクオンティティーライセンシングと呼んでおります。それから三は、社会的規制でクオリティーライセンシング、新行革審の答申では量的規制と質的規制という名称で答申が書かれております。今日、先進諸国の原則は、一、二の廃止ないし大幅緩和それから三の合理化、適正化であります。  運輸業の規制は、鉄道独占時代の独占規制から始まったんですが、その後、新しい交通手段が 次々と登場するとともに、まず、他の交通手段との競争から鉄道を保護する競争規制、独占の規制から競争規制へだんだん変質いたしました。今日では、国際、国内運送のいずれにおいても、輸送市場はごく一部を除きまして大変競争的になってきておりまして、経済規制緩和して競争を刺激することによって運送事業者のコスト節減、サービス向上、運賃多様化による利用者の増大のインセンティブを刺激すべきであると考えます。これまでの規制は、全体の輸送需要量、これをパイに例えますと、パイの大きさを所与としまして、そのパイを各交通手段間に適当に政策的に分配する、さらに各業界内で事業者間の分配を人為的に図る、こういうものであって、パイ、輸送量そのものを大きくしようとする努力が忘却されておりました。  それから、運賃・料金規制につきましては、競争が十分働かない市場の部分を除いて、私は上限価格規制にもっと移ってもいいのではないかと考えております。このことがいろいろと事業の活性化につながると考えております。問題は、こういう規制がずっと続いております業界の経営者がとかく規制によって許されている範囲内の企業戦略しか考えなくなりまして、革新的な経営をしようということが薄れる、これが大きな問題だと思っております。  それから一方、最後になりますが、社会的規制でありますが、社会的規制は、これは安全性の確保等のために必要ではありますが、これは不可欠な範囲、程度にとどめるべきでありまして、場合によっては経済規制のかわりをする、社会的規制の名をもって経済規制の役割を果たさせるというようなことが起きておりますので、こういうことがないようにしなければならないと考えます。  最後に、一言ですが、流通に関する意見をちょっと申し上げたいと思います。  伝統的な商慣行、多段階の複雑な流通制度、これは昔の日本社会を前提にしますと、それなりの意味があったわけでありますが、交通、通信が飛躍的に発展している今日ではもはや非効率になっておりまして、改変の時期を迎えていると考えます。  大店法につきましては、新行革審でも提言いたしましたけれども、この問題については、私は中小の零細な小売業でも対抗する道はあるというふうに考えております。  それから、再販規制につきましては、これは私は当然やめてしかるべきものと考えております。  以上で私の意見開陳を終わらせていただきたいと思いますが、現在規制緩和が盛んに議論されておりますけれども、しばしば、自分にとって都合のいい規制はそのままにしてくれ、自分にとって都合の悪いものだけを緩和ないし廃止してくれ、こういう点が産業の中にも幾つかございます。一つだけ例を挙げますと、大店法でもそうでありまして、既に店を開いてしまったところはむしろ大店法があった方がいい、新しい大きな店が来ることがないからというような形で、一方では緩和を訴え、一方では緩和に反対する、こういうようでは困るわけで、公平にそして一般的な規制緩和をしなければいけないと考えております。  以上をもって終わらせていただきます。(拍手
  100. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員長代理 次に、伊東参考人お願いいたします。
  101. 伊東弘之

    ○伊東参考人 全国乗用自動車連合会の理事長の伊東でございます。本日は、規制緩和に対するタクシー業界の見解につきまして御説明する機会を与えていただきまして、まことにありがとうございます。  最初に、タクシー事業が今どういう状況にあるか簡単に御説明申し上げます。  まず、お客様の数ですが、年間輸送人員が三十億四千百万人、国内交通機関の九%を分担しております。昭和四十五年に四十三億人を輸送しておりまして、このときをピークに年々下がってきておる、こういう状況でございます。  年間の営業収入でございますが、二兆七千億円でございまして、陸上の交通機関の二六%を分担いたしております。  現在、国内に法人が七千百事業者、個人が約四万七千おりまして、合計いたしまして約二十六万台の車両が全国を走っております。法人事業者のうち車両数が百両を超える事業者というのは五%弱でございまして、ほとんどが中小零細な事業者でございます。法人企業には四十二万人の従業員が働いておりまして、そのうち三十六万人が運転者でございます。ちなみに女性の運転者は六千人弱で、まだ一・七%程度でございまして、大体六十人に一人が女性ドライバーという形になっております。  運転者の労働条件よくありませんで、ほかの産業に比較いたしまして年間労働時間は三百十二時間多い反面で、平均年収は百三十八万円も低いという状況でございます。なお、タクシー事業はコストの約八割が人件費という典型的な労働集約型の産業でございます。  続きまして、規制緩和に対する私どもの見解を申し上げたいと思います。  タクシーは、国民生活に密着した極めて身近な乗り物といたしまして、お客様が安心して快適に利用いただけますよう日夜努力しておるところでございまして、こういう中にありまして平成五年五月、先ほど岡野先生のお話にもございましたが、運輸大臣の諮問機関であります運輸政策審議会から「今後のタクシー事業のあり方について」という答申が出されております。この答申は、タクシーというものを公共輸送機関であるというふうにお認めいただきました上で、運賃・料金の多様化、増減車の弾力化といった規制緩和方策を提言しておられます。また、昨年の十二月には運輸省から規制緩和方策といたしまして、乗り合いタクシーの積極的推進と事業区域の拡大についての通達が出されております。  業界といたしましても、運政審答申ですとか運輸省の御指導に従いまして規制緩和に向けて最大限の努力をしておるところでございまして、例えば増減車の弾力化につきましては、一昨年東京におきまして一千両のタクシ「、三百両のハイヤーについて自主的な減車を行いました。  また、今回の東京地区の運賃の改定に際しましては、遠距離割引、時間指定料金、ワゴン料金あるいは時間制運賃というふうなものを導入いたしまして、運賃・料金の多様化に努めたところでございます。  また、乗り合いタクシーにつきましても、現在、各地におきましていろいろな形で百十のルートで既に運行が行われておりまして、これからもお客様のニーズに合わせて運行を拡大したいと考えております。  業界といたしましては、規制緩和というものはこれからも推進されるべきものと考えておるわけでございますが、私どもは、女性、お年寄りといった交通弱者が深夜でも安心してタクシーを御利用いただきまして、目的地に着かれましたら値段の交渉をすることなく、メーターに表示された運賃を支払えばそれでいいという、安全で、安心、わかりやすい、世界的にも評価の高い日本のタクシーのこのすばらしいシステムが維持できますのは、事業の免許制、運賃の認可制に負うところが非常に多いと考えておりまして、このような基本的な枠組みはこれからも堅持していただきたいと思っておるところでございます。  以下、個別の問題について申し上げます。  まず、事業の免許制の緩和でございますが、タクシー事業の免許制を全く自由化してしまえという御意見がございます。そうなりますと、お客様が乗ろうとされるタクシーにつきまして、そのタクシーが信頼できる事業者なのか、信用できる運転手なのか、安全な運転をしてくれるのか、良好なサービスを提供してくれるのか、全く保証がないわけでございますから、お客様は常にびくびくしてタクシーに乗らなきゃならない、こういうことになろうかと思います。これは好ましいとは考えておりません。  そこまで自由化することはないにしても、お役 所によります需給調整をやめて、いわば事業の許可制を導入したらどうかという御意見もございます。そういたしますと、事業者の信頼性というのは一応担保されるわけでございますが、需給のバランスが保てないということになりまして、例えば過疎地域におきましては幾ら呼んでも幾ら待ってもタクシーが来ない、こういう状況が生ずるおそれがございます。逆に都市部におきましては、供給過剰、過当競争が生じまして、そうなりますと、事業者の経営が悪化をいたしまして、運転者の賃金が引き下げられまして、お客様といたしましては古びた車両に乗せられ、サービスの悪い運転手に乗せられ、こういうことで、事故もふえるということで、結局最終的にお客様が御迷惑をこうむられる、こういうおそれがございます。また、過当競争によりまして事業者の倒産が引き続くということになりますと社会問題にもなりかねません。そういう観点から、需給調整をお役所によってやらない、いわゆる事業の許可制化につきましても慎重な配慮が必要であろうかと考えております。  次に、運賃の規制緩和でございますが、運賃を全く自由化いたしますと、お客様が利用されようとするタクシーにつきまして事前に運賃がわからないわけでございますから、お客様は乗車の都度運転手と運賃・料金の交渉をしなければならない、こういうことになるわけでございまして、雨天の場合、深夜の場合あるいはお客様が女性の場合には不当に高い運賃を請求されるおそれがございます。したがいまして私どもは、タクシーというのは、運賃がまずタクシーメーターに表示され、その運賃を支払えばそれでいいという現在の明快なシステムというのはどんなことがあっても堅持しなければならない、こう考えておるところでございます。  そこまで運賃を自由化しろという意見はまずは出てこないのではないかとも思っておるところでございますが、運賃規制を少し自由化して、例えば上限運賃制、プライスキャップ制を導入したらどうかという御意見がございます。そうなりますと、事業者は上限運賃の範囲内で自由な運賃設定ができましてある程度の競争が可能になりますし、お客様が不当な運賃を請求されるというおそれはなくなるわけですが、お客様が路上でタクシーを拾われます場合には、まずは来たタクシーに乗るということでございますので、事実上選択の余地がございませんでして、運賃が高いか安いかというのが全く偶然性に支配をされるということでございまして、お客様としては不安であり、不満であろうかと思います。  また、タクシー乗り場におきましては、安い運賃のタクシーを求めてタクシーの奪い合いというか若干の混乱が生じまして、道路交通にも支障を来すおそれもあろうかと思います。また、事業者の間でコストを度外視した値下げ合戦が生ずるおそれがございまして、そうなりますと事業者の経営が悪化をいたしまして、先ほどの免許制の緩和のときに申し上げましたように最終的にはお客様が御迷惑をされる、こういうことを心配しておるところでございます。  運賃規制につきましては、先ほどの運輸政策審議会答申におきまして、既に同一地域同一運賃制から、運賃・料金の多様化の方向に向かいつつございます。そういう観点から、私ども事業者も同一地域同一運賃というものに必ずしも固執をするものではございませんが、運賃が違いますと、先ほど申し上げた問題もございますし、やはり同一地域同一運賃制というのが、お客様にとりましてもわかりやすく現実的であるということでございますので、あえてばらばらとなるような運賃の申請にはなかなか踏み切れないという情勢でございます。  この点につきましては、東京の乗用旅客自動車協会でお客様にアンケートをいたしましたが、お客様の六五%は、やはりタクシーの運賃は同一地域では同一運賃がいいというお考えでございまして、特に女性の場合には、七七%の方が同一地域同一運賃がいい、こういうお考えでございます。私どもは、今回の東京の事例のようにさまざまな工夫をしながら、またお客様の理解を得ながら、着実にかつ徐々に運賃・料金の多様化に向けて努力をしていくというのが、混乱も少なく現実的な方向であろうと考えておるところでございます。  最後になりましたが、せっかくの機会でございますので、私どもがお願いをしておりますタクシードライバーに必要な二種運転免許の取得機会の拡大について、若干御説明を申し上げます。  タクシーが今後とも健全に発展してまいりますためにも、若くて優秀な乗務員の確保というのが必要でございます。そういう観点から、普通二種免許につきまして、指定教習所で実地試験が受けられるようにというふうなお願い、それから、二種免許の取得年齢をもう少し引き下げてくれというお願いをしておるところでございます。よろしくお願いいたします。  以上で私の御説明を終わります。どうもありがとうございました。(拍手
  102. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員長代理 次に、濱中参考人お願いいたします。
  103. 濱中昭一郎

    ○濱中参考人 濱中でございます。  私どもの物流業につきましては、非常に規制の強い業界であるということで、もう相当言われてきております。ただ、そういう意味合いでは、きょう委員会に呼んでいただきまして、いろいろ規制緩和について御配慮いただけるということについて、大変ありがたいことだと思っております。  ただ、現状規制緩和の問題を申し上げますと、そこのレジュメにもございますが、今まで貨物運送の取扱事業、我々の仕事は、例えば船で運ぶ場合、私どもが船を持って運ぶわけでなくて、郵船であるとか大阪商船三井船舶であるとか、いわゆるキャリアというふうに言っておりますが、船会社にお願いをして運びますし、それから飛行機についても、いろいろな飛行機会社の飛行機に載せて運んでおるということで、我々自体が実運送をやっております部分はほとんどトラックだけでございます。したがいまして、業界としてはそういうのを運送取扱事業と称しておりますし、最近ではフォワーダーというふうな言い方もいたしております。  それの、運送取扱の部分について、今まで縦割りの、業法ごとに、道路運送法それから通運事業法、航空法、海上運送法、それから内航海運業法というふうに五つの法律でこの取扱事業をそれぞれ規制しておりました。その縦割りの部分が全部統一をされまして、貨物運送取扱事業法というのに一本化をされました。それから貨物運送の部分については、これは貨物自動車運送事業法ということで、実運送の部分を規制する部分でございますが、この二つのいわゆる、我々も物流二法というふうに呼んでおりますけれども、これができまして、相当大幅に緩和をされました。  これによりまして、今まで物流業につきましては、一般的には参入規制、いわゆる需給調整条項による参入規制というのはこれが一番物流業における規制ということでやかましく言われていた部分ですが、この需給バランスを調整するという部分がなくなりまして、今までの免許制が許可制になるということで、一定要件を備えればだれでも可能であるというふうに変わりました。そういう面で、現在、この物流二法によりまして、今までの参入についての壁が取り払われたということで、かなり今、現状は進んでいる状況でございます。  その後いろいろ緩和そのものが進められているわけですが、私どもで、最近の、業界としても政府関係に出しております規制緩和、これを集計しますと大体五十九件ぐらいございますが、そのうちの措置済みないしは平成七年度中に実施をするというものは、その中で二十六件ございますので、大体四四%でございます。それから、平成九年度までに緩和をするという部分が六件ございますので、これが一〇%、両方合わせて五四%ということでございます。実施の予定がないというのはただし二十七件ございます。これは四六%でございます。  ただ、四六%というのは多いように見えますが、 手続に関するものはその二十七件のうちで九件、それから市街化調整区域に関するものは三件、車両に関するものは十一件、その他が四件ということで、ほとんど手続に関するものが多うございます。そういう面では、経団連で出しました、ここ最近三年間ぐらいで出しております物流規制に関する要望が三十九件ございますが、そのうちのほとんど措置済みないしはこれから七年度中にというものが二十九件ございますし、それから、実施を検討するというのが三件、やらないというのが七件ございます。したがいまして、総体として見ましたら、かなり規制緩和は進んでいるというふうに評価してよかろうと思います。  ただ、現状残っておりますのは、例えば、この前トラックの二十五トン、今まで総重量が二十トンということでずっと長いこと来ておりましたが、これが二十五トンということで単車としましてはやっと外国並みになったわけですけれども、規制緩和になったわけですが、この二十五トンが現実に通れる道路が非常に少のうございます。それから、そういうところを、日本の全部通行できる地図を見ますと、日本国じゅう通行できる青い線が走っておりますので、どこでも行けそうに見えるわけですが、我々が届けますのは、戸口から戸口までお届けするのがトラック事業でございますので、戸口まで届けることができなければ困るわけで、そういう点は非常にまだ制限が多うございます。そういう点の、二十五トン車についてのそういう問題であるとか、それから車検制度、これを、一年を二年ということでお願いをしておりますが、ここらの問題もなかなか今難しい状況でございます。  それから、トラックにしろ飛行機にしろ、いろいろ荷さばき場が必要でございます。これを市街化調整区域につくるという問題で、今はトラックの特積みについては認められておりますが、それ以外のものについては認められていないということで、ここいらの緩和お願いをしております。  それから危険物について、今特に海底トンネル等はまず通れませんので、相当迂回をして運んでおります。そういう問題もお願いをしたい。  それから、これはアメリカの方からもよく言われることなのですが、海上コンテナにつきまして、いわゆるISOの国際基準によります重量で申し上げますと、海上コンテナの四十フィートで中に積む積み荷量は三十・四八トンございます。ところが、日本の今の規制でいきますと二十四トンしか積めません。したがいまして、この三十・四八トンと二十四トンとの差の六・四八トンというのを、全部わざわざ四十フィートに入ってきた荷物からその部分、はみ出した六・四八トンだけは港でコンテナからおろさなければいかぬわけですね。おろしてその分軽くして持っていく。したがいまして、おろしたものについてはまた別のトラックで持っていく。これをアメリカの方は非常に強く言っております。ここいらも、やはり今国際化を進めなければいけないときに非常に問題になる点であろう。ただし、これは道路その他にも非常に関連をいたしますので、そういう問題。  それから、海運の関係については船腹調整の問題、これが今かなり進んできておりますが、やはり海上の問題については船腹調整の問題が非常に大きい問題だろう。  それから、航空の関係につきましては、むしろ我々考えておりますのは、航空の問題については規制の問題というよりはインフラの問題であろうというふうに考えております。  少し時間があれしましたので先を急ぎたいと思いますが、二番目の「物流業の今後の課題と規制緩和」ということでございます。  したがいまして、「物流コスト低減への課題」としまして、まず物流業の主体はトラックでございます。これはトンベースでいいますと、日本の全体輸送量の九〇・五%はトラックで運んでおります。これは平成五年度の実績でございますが、トンキロベースで見ましても五一・五%ということで、我が国の物流の主力はやはりトラックであろう。ところが、そのトラック事業の主体は中小企業がほとんどでございます。これは特別積み合わせですらも八二・六%、それから一般区域につきましては九九・九%が中小企業という状況でございます。  それから、トラック事業のコスト五〇%が人件費ということでございますが、時間当たりの賃金については全産業平均の七七%ということで、必ずしも賃金水準が高いわけではございません。したがいまして、物流コストの削減は一人当たりの生産性の向上が不可欠だということで、生産性向上策として一台当たりの積載量の向上、これは大型化ということで、これは長い間懸案でありました車両総重量の二十トンが二十五トンに改正をいただきました。ただ、通行できる道路が非常にまだ規制をされている。それから、一年ごとに通行許可をいただかなければいかぬということで、こういう問題。それから、トレーラーの海上コンテナの問題等先ほど申し上げた問題がございます。  それからもう一つは、やはり一回当たりの積載量を向上させるということでの効率化が必要であろう。こういう面では、今の少量多頻度配送、こういう日本的な商慣行ももちろんございます。効率化の問題についてはございますが、さらに共国運行、共同集配等を進めていく、これは我々の業界としてもやはり努力をしなければいかぬ問題であろうということで考えております。  それから、Bの「環境にやさしい物流の構築」ということでございますが、日本の物流はトラック輸送に偏り過ぎております。したがいまして、都市間であるとか拠点間輸送、幹線輸送はモーダルシフト、大量輸送の手段であります鉄道であるとか船に持っていきたいということでおります。  ただ、その受け皿としてのJR貨物等、運賃の弾力化がまだできていないとかそういういろいろな問題がございますので、そういう点の御配慮をいただければ大量輸送が相当伸びてくるというふうに考えています。  それから二番目に「都市内物流の効率化」、これはまだまだ日本都市は物流についてのいろいろな障害が多うございます。そういう面での今駐車の問題であるとかその他いろいろやられております。そういう面が一つ問題であろう。  それから、Cの「国際物流の円滑な対応」という点でございますが、これは現状経済のグローバル化、これは物流のグローバル化に即つながっておりますが、この海上コンテナの国内輸送という問題については、これは極めて非国際化の現状でございます。ここいらはひとつぜひ御配慮をいただければと思います。それから通関手続等の簡素化、迅速化、これは今いろいろ大蔵省とも話を進めておりますので、近くかなりの程度まで進んでいくであろう。  三番目の「総合的物流システムの構築」でございますが、この経済規制の原則廃止ということは、我々としてもぜひそういう方向お願いをしたい。それから、社会的規制についてのミニマム化ということ、これはやはり最低限のものは必要だろう。それからもう一つ、これは即規制そのものではございませんが、やはり物流の問題については、省庁個々の視点でなくて、国としての総合的な視点からの御配慮をぜひ賜りたいと思っております。  若干時間が超過したようでございますが、以上でございます。(拍手
  104. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員長代理 次に、山本参考人お願いいたします。
  105. 山本勝一

    ○山本参考人 全国商店街振興組合連合会理事長の山本でございます。きょうは、特に私ども商店街でございますので、大店舗法の扱いにつきまして発言の場をいただきまして心から御礼を申し上げます。  大店舗法は四十八年ですから、まあ日本流通関係で昭和三十年の後半からセルフ方式ということでアメリカで行われた業態でございますが、それを取り入れて大型店がかなり出店をされてきたわけでございますが、その間、いわゆる百貨店法が廃止になりまして大店舗法が制定をされ、その法によって調整を行ってまいったわけでございま すが、まあ九〇年代に入りましてから日米構造協議ということでいろいろ規制緩和ということが行われたわけでございまして、その間三回にわたりまして規制緩和が行われました。特に、昨年の五月というのは非常に大幅な改正でございまして、現在出店に対してはそんなに支障になっていないというところまで緩和をされたわけでございます。したがいまして、その緩和によりまして従来の四倍の出店が行われ、その間約四千店舗というものの出店を見たわけでございます。  私ども商店街におきましても、国のいろいろ施策、通産省によりまして近代化をするようにということで予算等をいただきまして今懸命な努力をいたしておるわけでございますが、しかし、流通業界全体から考えますと、国際的な観点から欧米に比較しましてかなり過剰であることは事実でございますので、時の流れとして多少淘汰されるのもやむを得ぬではないかと思うわけでございますが、最高時におきましては、五十七年でしたか、百七十二万ございました商店でございますが、六年の調査によりましては百五十万を若干切っておるというような状態まで整理が進んできておるわけでございます。  そういうような意味におきまして、こういう時代として規制緩和ということはまあ私どもとしましても非常にいたし方ないというふうに受けとめて、その中でどう生き残るかということで懸命な努力をいたしておるわけでございます。特に先般、産構審、中政審の流通の審議会で御検討をいただきまして、ある程度方向づけをいただいたわけでございますが、しかし、今円高による国内の空洞化あるいは内外価格差、これをどう解消するか。内外価格差におきましては、基本的には地価が高い、それから名目賃金ということになりますけれども、やはり賃金が世界一の賃金になっておる、その他の公共料金におきましてもかなりの額に達しておるということでございますので、我々だけが努力してもなかなか内外価格差の解消は難しいわけでございます。  大型につきましても、昨年来価格破壊ということでいろいろなものを直接輸入してどうこうとございましたが、ビールなんかにおきましても、昨年一時的には多少成功したということでございましたが、これもどっちかというと失敗したというような現象でございまして、そういう面に総合的に対応しなければ、内外価格差の解消は難しいのではないかというふうに思われるわけでございます。     〔斉藤(鉄)委員長代理退席、委員長着席〕  その中におきまして、百貨店を初め大型スーパー等々におきまして約十四、五万の店舗が展開されておるわけでございます。ここ二十年ぐらいの間に構造的にもそういう変化が来ておるわけでございまして、それだけに中小がシェアを失っておるということでございます。これは、中小におきましては非生産的だというような御批判もございますし、いろいろ時代にそぐわないというような御指摘もいただいておりますので、そのような観点からは、大いに努力をして、大型のできないようなあり方を研究して、消費者の皆さんに奉仕してまいりたいということで努力をいたしておるわけでございますが、いずれにしましても、四年間に近い不況が続いておりまして、百貨店あるいはチェーン、大型店におきましても、前年比依然としてマイナスという月が多いわけでございます。これは一般的な景気でございますのでどうしようもないということでございますが、しかし、いずれにしましても、そのような景気の悪い中で今しのぎを削って競争が行われておるわけでございます。  ただ、そういった申し上げましたような価格の破壊ということは、日本全体がいわゆる高コストになっておる、メーカーにおきましてもそのコストをクリアしたということで価格をつくられるということになるわけでございますので、一番大きな問題は、やはりそこの解消を何とかしていただかぬと価格の引き下げには限界がある。一時的にディスカウント等が行われますけれども、これもどちらかというと一過性ではないかというふうに思うわけでございまして、長期的にいいものを安くということは、一つにはその方面に努力をしなければなりませんが、円高を利用して外国製品の輸入をする、それを安く売れるというような面もございますけれども、必ずしも外国製品が日本人の消費者にマッチしておるかどうかというような面もあるわけでございます。  かてて加えまして、製造物責任問題とか労働時間の短縮とか、いろいろな今の環境の変化がございまして、それを受けて我々はどう対応するかということで努力をしておりますし、純粋の経済問題として考えれば、確かに規制緩和、自由で結構だ、自由市場で大いに競争するということが理想かと思われますけれども、しかし、本当に自由放任になったときには一体どうなるのだろう。自由の中に必ずいろいろな障害が出ております。  先般審議会でも話になりましたけれども、プライベートブランドを大型店が注文して、それが一○○%売れない、ですから返品するというような現象が下請に対しての問題で出ております。したがいまして、今消費者がワンロットを安く買ったからといって、必ずしも全部売れるとは限りません。そうすると、そのリスクはどこがしょうのだということになりますと、百貨店なんかでいけば、委託販売ということになれば卸メーカーがリスクをしょう。買い切ってしまえば買い切った方がリスクをしょう。アメリカの百貨店で買い切りで専門にやっておったところがつぶれましたよね。結局は、コストは安いけれども売るまで品物をかえない、そうすると消費者がよう来ぬ、ということになると残品になってしまった、アウトレットでたたき売りをする。  ですから、日本の流通のあり方というものは、我々何百年もかけて知恵と努力で積み重ねた問題でございます。したがいまして、百貨店でいけば、委託販売でやって、残ったものは返品する、返品された方の卸商はそれをほかの地区へ行ってまた売るとか、そういうような面で流通で回して処分をしていくということを行っておるし、メーカー自体でも、恐らく委託でいけばリスクをしよう、返品をどこかで処分するというような形態になっておるわけでございまして、あらゆる商品が、飲食関係はともかくとしまして、物販関係におきましては一〇〇%売り切れるという時代ではございませんし、消費者のニーズが非常に多様化しております。  そういう観点から、消費者に喜んでいただくように、ニーズを的確にとらえて、売れ筋を懸命に探して努力はしておるわけでございますけれども、いずれにしましても、この努力もある程度限界があり、余り絞り込めば商品の量において少量な陳列しかできないというような面も出てくるわけでございます。いずれにしましても、いろいろな面で私ども努力しておりますけれども、今ここへ来ると、むしろ社会的な現象において若干弊害が出てきておるわけでございます。  私ども商店街におきましても、地方の十万、二十万都市におきましては、大型店は、こういう時代でございますのでローコストの店舗を求める。ということになりますと、やはりどこかの工場の跡地とかの遊休地とか、あるいは郊外関係で安い土地でコストを下げて店をつくる。ということになりますと、旧市街地にあったところのお客さんがそちらへ行かれる。特に甚だしいのは、地方の郡部なんかの場所では、例えば駐車場におきましても、二、三千台の駐車場を設けてただで、無料で駐車ができる。都心部におきますと駐車料を払うにも一時間三百円、五百円ということで、そういう面からもいわゆる中心部が空洞化をしておるわけでございます。  したがいまして、こういう問題につきましても、地方自治体が町づくり、都市計画というような視点から取り組んでいただく必要があるのではないかなと思うわけでございます。自由にすれば、自由放任でいけば、恐らくそれ以上のそういう社会的な現象でマイナス面が出てくるのではないか、極端なことを言うならば無政府状態になってしま うのではないか、そういう結果において、今の日本人の程度でいきますと、オウム教じゃないですけれども、どんなことをやるやらわからぬということもあるわけでございますので、そういう観点で考えますと、適正な行政による指導があくまでも必要ではないかというふうに私は思うわけでございます。  アメリカは全く自由国家でございますけれども、あそこは多民族国家で移民国家でございます。したがいまして、連邦政府が下手なことに介入すればとんでもないことになるということで、州政府等である程度きめの細かい政治が行われております。大店舗法関係につきましても、アメリカにしろ欧州にしろ、あらゆる国が何らかの名前の、形は違いますけれども、ある程度規制と指導が行われておるということは事実でございます。したがいまして、我が国におきましても、大店舗法という名前が悪いので、規制緩和というとマスコミがすぐしょっぱつに大店舗法だということを言われておりますけれども、そういう点も十分御配慮いただいて御指導いただかねばならぬというふうに思っておるわけでございます。  酒の販売におきましても、非常に自由化されて、一万平米以上は酒の販売ができる。これも価格競争で価格破壊に入っておりますけれども、当然これは税収にも響くのではないかなと思われますし、また、今度は自販機がなくなりますけれども、今テレビでもビールの宣伝が非常に多いわけでございまして、ビールを飲まぬのは人間じゃないというような感覚がふえてくると、未成年者までビールを飲んだりする。それを一体放置していいのか、これをどう指導していくんだということを考えますと、やはり一定の基準の、社会的な規制といいますか、指導があって当然だと思うわけでございます。その点に対しても御配慮をいただければありがたいと思っております。  以上、時間が参りましたので、終わります。ありがとうございました。(拍手
  106. 塚田延充

    塚田委員長 ありがとうございました。  以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。     ―――――――――――――
  107. 塚田延充

    塚田委員長 これより参考人に対する質疑に入るのでありますが、本日の参考人に対する質疑は、理事会での協議により、最初にあらかじめ申し出のありました質疑を行い、その後は参考人に対して自由に質疑を行うことといたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。橘康太郎君。
  108. 橘康太郎

    ○橘委員 連立与党を代表いたしまして、自由民主党・自由連合の橘康太郎が御質問をさせていただきます。  まず最初に、参考人の岡野先生、伊東先生、濱中先生、山本先生、お四方、きょうは大変お忙しい中、わざわざお越しいただきまして、貴重な御意見を拝聴させていただきまして、まことにありがたく、高い席からではありますが、厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。  まず最初に、岡野先生にお伺いさせていただきますして、順次、またお伺いさせていただきますので、よろしくお願いを申し上げます。  岡野先生にお伺いしたいのは、先生の御理論は、きょう拝聴させていただきまして少しわかったような感じでございますけれども、ただ、きょう御出席の伊東参考人の御意見とは多少違ったところがあるわけでございまして、その点につきまして、お伺いをしたいと思うわけでございます。  私もちょくちょく海外へ参ります。ロシアヘも参りますし、アメリカヘも参ります。御存じのとおり、ロシアは、五年前、はっきり申し上げまして、非常に規制の厳しい国でありました。タクシーなんかは完全に規制でありまして、きちっとメーターをつけてやっておりました。  ところが、最近、市場経済導入によりまして、経済がかなりインフレ状況になってまいりました。もちろん、タクシーはメーターもつけているのですけれども、それでも、そのほかに白タクシー、それから普通のタクシー、みんなおるわけです。ところが、みんな、はっきり申しまして、そのメーターどおりの料金ではとても走ってくれないのです。どこそこへ幾らで行くかという交渉をしなかったら、どんな車でも走ってくれない。  で、先ほどの先生のお話ですと、この種の事業はできるだけ規制緩和をして、できるだけ自由化の方向へ持っていきたいというお話なんですが、私は、ロシアでこれだけ痛い目に遭いますと、本当に自由化したときには、さっき伊東参考人がおっしゃいましたように、乗るときに一回一回タクシーと交渉していく。そうすると、かなり高い料金でないと走ってくれない。絶対に走らない。これでは、自由化というけれども、本当に自由化したときにはこういうぐあいになるのかなというような感じで、私はロシアで大変痛い目に遭ったわけです。先生のお話ですと、自由化すると非常に結構なようなお話でございますが、日本本当に自由化したらこういうことになるんではないかなという心配を私は実感として持っておりますが、その点について、いかがでございましょうか。
  109. 岡野行秀

    ○岡野参考人 ただいまの御質問にお答えいたします。  私がもっと自由にしろと言っているのは、規制緩和しろと言っているのは、全く自由にしろと言っているわけではございません。  まず、参入規制については、実は、ここに持ってまいりましたけれども、「今後のタクシー事業のあり方について」という答申の中でも、当初は、新規参入、つまり、これからでもタクシー業をやりたいという人がいれば、その人たちにも免許を出すべきじゃないかということまで議論したのですが、当面、それまでいくのは、とても業界の反対が強くてできっこない。それでは、まず、現在の事業者の中で増減車を自由にしよう。これによって、需給調整をする必要がなくなります。  それから、運賃につきましては、これも全く自由にしろと、昔の、私たちが子供のころのように円タクですべて交渉するというようにしろとは一つも言ってないわけでありまして、メーター制はもちろん残す。ただし、プライスキャップ制にする。そして、上限運賃になります。実は、ロンドンのタクシーは固定の運賃のように思われていますが、あれは上限運賃でございます。  ロンドンのタクシーは大変評判がいいわけですが、あれはどこが違うかといいますと、タクシーの免許ではなくて、タクシー運転手の免許になっているわけです。したがって、運転手は、もしまずいことをやりますと、運転手の免許を取り上げられてしまいます。取り上げられてしまえば、彼は営業できなくなるわけですから、したがってちゃんとやるということになります。  私は、ワーキンググループでは、タクシー運転手の免許制――実は、この答申を出す前にパリとロンドンを改めて調査に参りました。やはりロンドンのシステムがいいと思いまして、それを主張したのですが、これは、事業者の方はやはり昔の大変景気がいいときのように、わんさともうかるときの夢が捨て切れず、もし運転手の免許制にしたならば個人タクシー化していくだろう。現に、確かにロンドンはそうなっていますけれども、それによってうまみがなくなる。それから、労働組合の方も、代表者は、これは多分、専従の労働者は、労働組合の代表は今度は食えなくなるということがあるのかもしれませんが、精神においては賛成だけれども、最後は反対ということになりました。  私が考えておりますのは、やはりロンドンのようにプライスキャップ制ですが、実は、ロンドンの場合には、キングズ・クロスの駅を中心に六マイル以内だけは完全に地図を知らなければいけないということになっていまして、その間では、プライスキャップ制がありますけれども、ほとんど実際に割り引く人はいません。ただし、ヒースローに行くというようなことになりますと、私、実際に経験があるのですが、タクシーに乗りまして、タクシーの運転手の呼び込みのようなところを訪問したのですが、そのときに、いつ帰るんだと言いますから、今度の日曜日、パリに行くと言いましたら、それじゃ、今予約しないか、今予約す れば五ポンド引くよ、そういうふうに申し出があるわけでして、一向に問題がないわけです。  結局、悪くなるというのは、タクシーの運転手が違法のようなことをやっても、それでも通るからであります。タクシーの運転手の免許制がはっきりちゃんとしていれば、彼らの地位もしっかりしますし、それから非常に安い賃金で雇おうとしても、そういう人たちは当然ほかへ行ってしまいますから、あこぎな事業者はそういう人たちを雇えなくなるという形でずっとよくなると思います。  したがって、私が申し上げておりますのは、完全な自由化、要するに、規制緩和といいますと、何か全部自由にしてしまうということがありますが、そうではないわけでありまして、一定の枠組みはある。その枠組みをつくったときに、それに従って行動するときに、そこでまずいことが起きないように、また、よりよくなるように制度をつくるというのがいいというのが私の見解でございます。
  110. 橘康太郎

    ○橘委員 岡野参考人に再度御質問いたします。  私はアメリカヘ行ってまいりました。アメリカは、あれだけ規制緩和をしているにもかかわらず、タクシーは免許制である。イェローキャブという、きちっとメーターをつけて、きちっとした料金でやっておるわけですが、これは何の問題もない。非常に立派にやっておるわけでありまして、なぜ日本においてプライスキャップを導入しなければならないのか。その辺は、先ほど伊東参考人がおっしゃったとおりでありまして、そのような問題は恐らく起こるのではないかなという気もします。  なぜここでプライスキャップにしなければならないかというその具体的な理由もよくわからない。アメリカでもきちっと現在のメーター制で、免許制でやっておるにもかかわらず、なぜ日本だけがそういうふうにしてロンドンみたいにやらなければならないのか。私は非常に何かその辺に不自然なものを感じますが、いかがなものでございましょうか。
  111. 岡野行秀

    ○岡野参考人 アメリカと申しましても、ニューヨークは確かに昔から台数規制をやっております。これは、いろいろ調べますと、裏には実はマフィアも絡んでいるというようなことがありまして、要するに、台数の制限をしますと事業者はもうかります。もうかっているところを何も台数をふやしてまでやる必要はないわけでありまして、そういう圧力があるというのを、私がシカゴ大学にいたときの先生、フリードマンが私たちに講義をしてくれたことがございました。それから、ワシントンは規制をしておりません。自由なんですけれども、しかしそれでもメーターはつけて、メーターどおりやっております。したがって、それは免許があるか規制がどのくらい厳しいかによるのではなくて、どのようにそれを運用するかということであるわけです。  私が心配しておりますのは、この間の三月十八日に値上げがございました。その後二十日間の実績を見ますと、東京、横浜地区で実車キロは二・八%減っております。ただし、運賃収入は六・九%ふえております。これは確かに、需要の弾力性が小さいところで値上げをして、それでお客さんは減っていく、そしてタクシーは多過ぎるという議論をするのですが、業界自身がそうやってお客さんを失いながら収入だけふえていくという格好でいくわけですから、当然実車率は下がり、タクシーが余計になるということですので……(橘委員「私は、なぜプライスキャップにしなきゃならないか、その理由を聞いているわけです」と呼ぶ)  プライスキャップについては、実はこの前の不況のときもありました。だんだん長距離のお客さんがなくなっていきます。とりわけチケットを使うお客さんが減っていきます。そうしますと、タクシーの運転手の中には、個人タクシーは実は若干割り引いて運賃をとっている人がいました。これは個人タクシーだからできるわけです。要するに、一万何千円するところを一割か一割五分でも引いて、どうせだったら一万円で行くよと言えばお客さんは乗ってくれるわけですから、したがって、プライスキャップで、お客さんがいない日、条件が悪い日にはそうやって下げてお客さんを乗せるということの方が事業者にとってもいいわけであります。ただし、これは今の制度では事業者の場合にはできないわけですね。事業者の場合ですと、タクシーの運転手が勝手に値下げといいますか、割り引きをしますと、それは事業者の方には、ポケットに入れたりなんかするというようなことになりかねませんからできないわけです。  要するに、現在の仕組みの中でのプライスキャップがまずいというのは、実はほかの関連するところも同時に修正すればそれはうまくいくというのが私の考え方であります。
  112. 橘康太郎

    ○橘委員 岡野先生とやっていますとこれはあしたの朝までやっておっても時間がないので、この辺で一回ポイントを変えまして、濱中先生にお伺いいたします。  実は、今のプライスキャップ制なんですけれども、これは今運輸省関係がいろいろとチェックをかけておるところなんですけれども、参考人はいかがお考えですか。
  113. 濱中昭一郎

    ○濱中参考人 今、特にプライスキャップ制が我々のところでいろいろ議論されておりますのは、JRのところでございますね。仮に今までの運賃決定をプライスキャップ制によった場合と現状の運賃の推移を見ますと、これは物価上昇率ということでやっておりますが、プライスキャップ制による方がJR運賃の上昇率を下回っております。したがいまして、一つの根拠としては、プライスキャップ制にしてやっても物価上昇率を上回ることはないし、そこで一つの歯どめができるだろうということと、もう一つは、やはり総原価方式で原価を積み上げてまいりましてコストがそのまま反映されるようなことは経営努力という面でいかがなものかということで、我々自体もプライスキャップ制についてはやはり取り上げるべきであろう。  ところが、業界によりまして若干違います。私鉄等においてはこれはまた背景が違っておりますので、経団連の輸送委員会という立場の中では、そこの調整は非常に苦労しています。(橘委員「経団連の輸送委員長で来たわけですね」と呼ぶ)はい。そういう考えでございます。これは、調整をしていかなければいかぬ問題であるというふうに思っております。
  114. 橘康太郎

    ○橘委員 大変聞き方がまずくて、申しわけありませんでした。きょうは参考人は経団連の輸送委員長としてでもお越してございますので、その意味でお聞きしたわけでございます。聞き方が悪かったのです。大変どうも恐縮いたしました。  そこで、ざっくばらんに申し上げまして、プライスキャップと積み上げ方式では、いろいろな点でやはり運賃の算定に難しい点がある。と申しますのは、例えば航空運賃。航空運賃のかなりの部分は空港の離発着料。これが関西空港なんかの場合は物すごく高い。そこで今、真水を入れるかどうか、いわゆる公共投資を入れるかどうかとやっておるわけですけれども、公共投資を入れた場合、さっきの私鉄の話と同じなんですが、鉄道と私鉄では全然コストが違うわけですね。そういうところの中で、政府の真水を入れたところが相手を目がけてプライスキャップでがばがばと戦いを挑んできたときには、やられてしまう。非常に不合理なところもあるわけで、岡野先生がおっしゃるように簡単に、何か非常に格好よく皆さんプライスキャップがとかなんとか言っておられますけれども、もっとよく慎重に考えていただかないと、いろいろと政府の公共投資部分いかんでは異なったものが出てくるといった場合があるわけです、例えば鉄道と私鉄の場合。いろいろとその辺のところも考慮してやりませんと、プライスキャップというものについては、今これは検討段階なんですけれども、簡単にどうのこうのと言ってもらっちゃ困るな、これはよほど慎重な発言をしていただきませんといかぬのじゃないか。これは生意気な言い方で恐縮でございますけれども、先ほどからいろいろお話を聞いておりながらそのように感 じておる一人であるということでございます。  再度岡野参考人にお伺いしたいわけでございますが、レジュメを見ますと先生の場合はプライスキャップを御推奨のように思うわけでございますが、やはりどうあってもそれでいかなければならぬわけですか。私はその理由がどうもいま一つはっきりのみ込めないわけです。お聞きいたします。
  115. 岡野行秀

    ○岡野参考人 先ほどプライスキャップ一般で申し上げましたけれども、プライスキャップというのは、理論的に言いますと、非常に一般化しますと実はフェア・レート・リターン・レギュレーションと変わらなくなるところもあるわけです。私は、プライスキャップの長所をいいますのは、例えば鉄道の場合ですと、競争的な区間、競争的な企業においてはむしろもっと自由にしてもいいだろう、ただし、大都市の通勤通学のようなところでは、鉄道が運賃を上げたからといって我々はすぐにマイカーに移るというようなことはできないわけですから、大体やはり鉄道は使わなければならない、そういうところでは規制は必要だろう。その場合でも、特に大都市圏の収入についてプライスキャップをかけるということをすれば、例えば通学と普通の運賃の関係をどうするかということは、これは事業者の方で決められる。そういうふうに、プライスキャップというのは、関連するサービスをバンドルにして、そのバンドルの中では全体としてキャップをかける、中の構成については事業者にゆだねる。そうすると、当然事業者はその中でできるだけお客さんに乗ってもらって収入を上げるようにする。そういうことになるわけですから、プライスキャップ一般と現在の積み上げ方式の運賃体系とをただ直接に比較するというのは実は意味がないわけであります。  ですから、プライスキャップについては、もう少しプライスキャップというものの中身について、その長所というものがどういうところにあるのかということについて我々ももう少し物を言ったりする必要があるかと存じます。
  116. 橘康太郎

    ○橘委員 どうもいま一つ先生のお言葉の中にはプライスキャップでなければならないという本当に確たるものがないということで、ちょっと私は心配しております。例えば、今おっしゃいましたけれども、さっきも言いましたけれども、JRの方に政府は真水を入れた、私鉄の方は全然入れていない。それで、片一方のJRの方がおかしなことをした場合は、私鉄はまともにやられてしまうというふうなことで、非常に不公平だな、何て不合理なことをするのだろうという感じが私はして仕方がありません。したがいまして、この問題につきましてはやはり慎重に検討されるべきであろう、このように私は感じておるわけでございます。  では、もう一つ山本参考人にお伺いしたいと思うわけでございますけれども、私、去年北海道へ規制緩和の問題で視察に参りました。北海道のちょうど真ん中の辺の帯広、あの辺の商店街の人たちが、あれは夏でございましたから五月に大店舗法が施行されてすぐ後でございましたけれども、やはり今の参考人のお話のように大変嘆いておられる。参考人から今お聞きしてわかったわけですが、やはり何らかの格好で長期的な視野のもとで都市計画であるとか、そういうふうないろいろな計画の中で慎重に自治体の方も立ち上がってもらいたいというふうなお話でありました。それはそのとおりに聞いておいてよろしゅうございますか、お聞きいたします。
  117. 山本勝一

    ○山本参考人 今の御質問でございますけれども、商店街でいろいろ取り組んではおりますけれども、結局大手でいきますと、資本力とかいうような面でおやりになるという面もございますが、九〇年代の大店法の見直しのときに高度商業集積という法もおつくりいただいて、地方の自治体と一体になって、大型と一体になって、商業集積を構築するというような緑もございまして、地方自治体におきましても、そういう面で店舗を展開して商業集積を構築したというところもございます。  その対応の仕方はいろいろあるわけでございますけれども、近ごろ中小都市で、昔ですと二次産業を誘致して地区の活性化ということがございましたけれども、今日ここまで来ると、逆に今度は大型店を誘致して活性化をしようというような姿もあるわけでございます。そうすると、国とか地域全体で余りむだな投資をして競争をし合って、場合によるとこれは淘汰されたりというようなことがございますし、大型店につきましても、都心部で駐車場がないとかお客さんが少ないといって撤退して郊外へお出になる、いろいろなケースがあるわけでございますけれども、基本的には、やはり地方の自治体が商業集積というものを、私は何か商店街のエゴでお願いしておるようでございますけれども、各市の商業集積というのは市民の憩いの場であり、生活の場なんですよね。  そうすると、やはり各市が住宅環境をどうとか工業団地をつくって工業を誘致するというのと一緒で、商業につきましても、各市がやはり市の商業集積として、市民の憩いの場として、生活の場としてどう構築し、どう維持するかということにおいても、やはり公共性のある問題でございますので、一歩前へ出て指導をしていただきたいというふうに願うわけでございまして、現状でいきますと、はっきり言って大型店による町づくりという方向に進んでおるような感じでございますので、そういう面からも地方自治体なり国からもある程度そういう御指導をいただいてまいりたいと思うわけでございます。
  118. 橘康太郎

    ○橘委員 規制緩和の問題につきましては、現在、政府で五カ年計画を三年に前倒ししまして、それで十二月までに見直しをかけるということで今政府は一生懸命やっているのです。来年の三月までに成案を得たいということでやっておりますので、私は諸先生方からお聞きいたしましたお言葉につきましては十分伝えまして、そしてできるだけ間違いのない、我が国にとって何が最も大切なのか、ただ規制緩和という声だけでいいのかどうか、あるいはまた、戦後五十年我が国がいろいろと規制をかけてきたことについてむだなものはないか、直すべきものは何なのか、一方、規制緩和しなければならないのは何なのか、慎重に検討しながら、政府に物を申し上げて、何とかいい結論を生んでいただくように政府にお願いをしていきたい、こういう立場でおりますので、御理解を賜りたいと思うものでございます。  委員長、ありがとうございました。
  119. 塚田延充

    塚田委員長 岡田克也君。
  120. 岡田克也

    ○岡田委員 新進党の岡田克也でございます。  いただきました時間の中でそれぞれの参考人に御質問をしたいと思いますが、若干率直にお話をさせていただきますので失礼なこともあるかもしれませんが、お許しをいただきたいと思います。  私は、規制緩和の問題というのは基本的に生活者、消費者の立場をどう考えるかという問題だと思っております。もちろん、規制があればそれに守られている人もあるし、その規制を撤廃したり緩和をすればそれによって影響を受ける人は当然出てくるわけでありますので、そういう方々に対して何らかの手当ては必要な場合も当然出てまいります。しかし、そういった事業者の皆さんの問題として規制緩和をとらえている限り、規制緩和を強力に進めていくという発想は出てこないわけでありまして、規制緩和をすることが、それが消費者や生活者にとってプラスであるかどうかという、そこがまず第一であって、そこで規制緩和の必要性について議論をすべきである。そして、先ほど言いましたように、影響が出る場合には、それに対して国として手当てを講じ、その影響がなるべく少なくて済むようにしていく、それが基本ではないか、このように思っておりますので、そういう観点で御質問させていただきたいと思います。     〔委員長退席、斉藤(鉄)委員長代理着席〕  まず、タクシーの問題であります。  伊東参考人にちょっとお聞きしたいのですけれども、日本のタクシーのサービスの程度でありますけれども、例えば第三次産業で小売店でありますとか、あるいは銀行、証券などの金融機関でありますとか、そういうところと比べてタクシーの サービスというのはどの程度のものであるのか、その水準について率直なところをお聞かせいただきたいと思います。
  121. 伊東弘之

    ○伊東参考人 極めてアバウトな感じてお答えいたしますが、銀行、百貨店等のサービスに比べてやはりかなり見劣りするのはやむを得ないかなという感じがいたしております。日本のタクシー、世界的に比べますとかなりレベルが高いと思いますが、国内のほかの産業と比べたときに、いろいろな方の御意見を伺っておりまして、かなりお客様の御不満も多いということで改めるべき点が多いと思います。そういう意味では、おっしゃったデパート、銀行のサービスに比べたらかなり見劣りがするなという感じはしております。
  122. 岡田克也

    ○岡田委員 例えば、買い物に行ったり金融機関の窓口に行きますと、まずいらっしゃいませという言葉から始まるわけですね、お客さんをお迎えするのに。物を買ったり用事が済みますと、ありがとうございましたという言葉がまず間違いなく返ってまいります。タクシーの場合に、自動ドアになっておるのはほかの国に余りないですね、プラスのサービスかと思いますが。タクシーに乗ったときに、いらっしゃいませということをまず聞いたことがありませんし、それが必要かどうかという議論は当然あるかと思いますが、お金を払ったときにありがとうございますという、そういう言葉もまず聞かないわけであります。その辺は枝葉の話かもしれませんが、例えば、どこに行ってください、こういうふうにお願いして突然車が動き出す、わかりましたとか承知しましたという返事もないまま動き出すというのも決して珍しいことではないような気がいたします。  もちろん、そんな車ばかりではありません。大変気持ちのいいタクシーもたくさんあるわけでありますが、そういうサービスの現状にある。今、伊東参考人みずからお認めになったわけですけれども、これはどこにその原因があるとお考えでしょうか。
  123. 伊東弘之

    ○伊東参考人 お答えいたします。  まず、サービスが悪いという点についてはかなり御指摘のとおりでございますが、今それを改めようとしていろいろ努力をしておるということをつけ加えさせていただきます。今タクシーにお乗りいただきますと、エコーカードというのが非常にとれるようになっております。これは、お乗りいただきましたタクシーの運転手の接遇についていろいろ苦情があればこれを書いてそれぞれの会社へ送ってくれ、こういうはがきでございまして、例えば、おりたときにお礼を言ったかとか、行き先について返事をはっきりしたかとか、そういうふうなことをチェックしていただいて、お客様がもし気に入らなければ、それぞれの会社あるいは配車センターにはがきを出すというふうなことをしておりまして、おっしゃった点については徐々に改めていきたいと考えております。  それで、どうしてそんなにレベルが低いのかということを言われますと、なかなかお答えがしょうがないのですが、なるべく御指摘のようなことがないように、少しずつ改めるように努力をしておるということを申し上げたいと思います。  以上でございます。
  124. 岡田克也

    ○岡田委員 私は、やはり規制がそういうサービスの不在を生んでいるのではないか、そういう気がするわけであります。例えば社会主義国ではサービスが非常に悪い、これは常識でありますけれども、規制によって守られていることによって消費者の方、お客様の方を向いていない、そういう営業がまかり通っているのではないか。それは、幾らそういうカードでいわば事後的にチェックする、そういう問題ではなくて、もっと根本のところに原因があるのではないかな、こういう気がするわけであります。それは例えば、規制によって本当意味での競争がない、だからお客様に対してそういう扱いになる。本当に競争していれば、お客様を失うわけにはいきませんから当然ありがとうございますということも自然に出てくるのではないか、もっと気持ちよくお客様に使っていただけるようにするのではないか、そんな気がするわけでありますが、この点についてはいかがでしょうか。
  125. 伊東弘之

    ○伊東参考人 規制があるから運転手のサービスが悪いという御意見でございますが、必ずしもそういうふうな理解はしておりませんで、やはり会社、事業者の従業員に対する教育が不十分である、そういうことによるのかと思っております。それについては、タクシー近代化センター等を設けましてサービスの改善に努力をしておるところですが、まだまだ一般のお客様から十分なお褒めをいただけない状況にあるのはまことに残念でございますが、規制があるからサービスが悪いということではないと思っております。
  126. 岡田克也

    ○岡田委員 これは証拠が何もあるわけではありませんので、この辺にしたいと思いますが、私は別に、運転しておられるドライバーの方だけの問題ではなくて、会社も含めて、規制があって自由に競争がなされないためにそこに力が入らないのではないか、幾ら上から業界団体やいろいろなところを通じて指導されても本気でそれをやろうということになってこないのではないか、そんな気がするわけであります。  いろいろお話しになった中で、一つは事業の許可制の問題、お触れになりました。ここに書いてありますように、事業の許可制にすると需給が不均衡となってタクシーサービスの提供が受けられないようなそんな地域が発生するのだ、こういうお話であります。ちょっと私勉強不足でよくわからないのですが、そうすると、現在は、地域によっては採算が合わないところでもあえて無理に営業させているというそういう地域があるのでしょうか。
  127. 伊東弘之

    ○伊東参考人 タクシーにつきましては、事業区域制というのがとられておりまして、事業区域というのがタクシー事業者の営業の根拠でございまして、その事業区域ごとにお役所、運輸省の方で需給バランスをチェックをいたしまして、それで免許をいただいておるということでございますので、それぞれの地域を見ますと、需給バランスが一応保たれるという措置が現在は講じられておるはずでございます。
  128. 岡田克也

    ○岡田委員 私の質問は、ここで、需給が不均衡になってタクシーサービスの提供が受けられない地域が発生するというふうに書いてありますので、ということは、逆に読みますと、とにかくタクシーのニーズが少ない地域において今無理にあなた営業しなさいということでお上が命令を発して営業しているような地区があるかのような、そういうふうに読めますので、そういうことがあるのですかというふうにお聞きしたわけであります。
  129. 伊東弘之

    ○伊東参考人 タクシー事業の免許は事業者の申請に基づいて与えられておりますので、無理に仕事をしろというふうな形でやらされておることはございませんです。  ただ、ここに書いておりますのは、事業区域ごとに需給バランスを見て免許をしておるわけですが、やはりもうかるところともうからないところがございまして、もしその規制を撤廃いたしますと、少しもうからないところで細々やっている事業者ももうかるところへ行ってしまって、もうからない地域についてタクシーがなくなってしまうのではないか、こういうふうな趣旨で書いております。
  130. 岡田克也

    ○岡田委員 つまり、事業者の数が一定である、そういう前提での御議論だと思うのですが、そもそも事業者の数が一定であるかどうかというのは、これまた規制の問題でありまして、必ずしもそう考える必要はないような気がするわけであります。  では、他方で、供給過剰、都市部においては供給過剰の状態が予測されるということで、経営が悪化したり、運転者の賃金が引き下げがあったり、安全上の問題が出てくるというふうに書いてありますが、こういう問題はタクシー事業に固有の問題であるのか、一般に三次産業について言えることではないか、そういうふうな気がしますけれども、タクシーに何か固有の問題があるのでしょうか。
  131. 伊東弘之

    ○伊東参考人 決して固有の問題ではございません。参入規制を撤廃いたしましたら、もうかるところに参入して過当競争が起きる、供給過剰が起きるというのは当然出てまいろうかと思います。その場合に、タクシーにつきましては、やはりそういう状態が起きますと、最終的にお客様が迷惑をされるということにおいてやはりほかの産業と若干違うのではないか、こういう気がいたしております。
  132. 岡田克也

    ○岡田委員 その辺よくわからないところでありますが、ほかの産業でも若干のそういう迷惑は発生するかもしれません、個別に見れば。しかし、全体として見たときに、自由に競争することによるメリットの方が大きいというのが一般的な考え方ではないか。タクシーに固有の理由というのが特にあるとは私には理解ができないわけであります。  もう一つの、プライスキャップ制、今議論になったところでありますが、ここで読む限り、一つは、流しのタクシーを拾う場合に選択の余地がないから不公平が出る、これなどは表示をきちんと大きくっければ済む話でありますし、しかも、安くしたところはまさしくほっといてもそういう大きなネオンでもつけて車を走らせるわけでありますから、それは余り本質的な議論じゃないような気がいたしますし、それから、タクシーの乗り場でトラブルが生じる、これは別に、車が並んでいるときに、客に、安い車があれば順番後でも優先的に選択できる、それは当然のことだと思うのですが、そういう形にすれば別に混乱することもないような気がするのですが、その辺についてはいかがでしょうか。
  133. 伊東弘之

    ○伊東参考人 まず最初の話ですが、道でタクシーを拾うときのことを考えていただきたいのですが、大体普通ですと、来たタクシーに乗られるわけです。そのタクシーが、最初に来たのが安い、次は中くらい安い、その次が少し安い、そういう形で来られますと、お客様は大体来たタクシーに乗られるということであれば、やはり安い、高いというのは偶然性に左右されるのではないか、こういう趣旨で書いております。  それから、タクシー乗り場で、仮に運賃が普通の運賃と一割安いタクシーがあったとすれば、お客様の心理としては安い方に乗ろうということで、そこにいるタクシーの台数にもよりますが、やはり高いのをのけて次の安いのに乗りたいというお客さんが殺到いたしますと、やはり路上ではトラブルが起きるし、私の番なのにあの人が乗っちゃったとかそういうことで混乱が生じるのではないかという趣旨で書いております。
  134. 岡田克也

    ○岡田委員 なかなか議論がかみ合わなくて、ちょっと考え方が大分違うかなという気がいたしますが、急ぐ人はそれは高いものも乗るでしょうし、急がない人は、少し二、三台やり過ごしてでも選ぶんじゃないかという気がいたしますし、それから、乗り場で混乱が生じるというのは、事業者の方、タクシー会社の側から見ると、それは高いのはいつまでたってもお客さんがつかなくて困られるかもしれませんけれども、客の立場からいえば自分が選べるわけで、別に混乱でも何でもないような、そんな気もするわけであります。  この辺でやめたいと思いますが、以上につきまして、岡野先生、何かコメントがありましたらぜひおっしゃっていただきたいと思います。
  135. 岡野行秀

    ○岡野参考人 タクシーの問題につきましては、たしか昭和四十年だったか、朝日新聞で、当時の乗用車協会の藤本会長、副会長でしたか、賛成と反対で競い合ったことがございましたが、なぜタクシーがそう過剰になるか。業界の方とこの前も話をしたのですが、規制緩和をしたら必ず台数がふえると言うのですね。私たちの考えでは、台数がふえて実車率が下がれば収入は上がらない、何でふやすのだと言ったら、やはりふやすと言うのですね。それは、過去において常に需給をきつめに免許を与えていた。大体八割という話なのですが、そうしますと、大体実車率が非常に高くなります。したがって一台当たりの収入もふえます。そういううまい目があったときには、実際に新しくタクシー業をやる人あるいは台数をふやしたいタクシー業者はどうしたかといいますと、新しく免許がおりないためにほかの事業者から車を買う。そうすると、ナンバー権というのがそれについていまして、ナンバー権というのは、要するにタクシーを一台ふやすために、他から買うときに権利がついているわけであります。今、船腹調整の方でも買い取り船についていますけれども、それはまさに需給がきつく規制されていたがために起きているものである。そういう状態がありますと、今度は、もし自分が不況になってきまして、ちょっと車が多過ぎる、ここでもし数を減らす申請をして廃止した、減らしたとしますと、次にふやしたいときに今度は規制のためにふやしてくれないのではないか、お前のところは前に減車したではないか、何で減車したものを今度増車するのだ、そういうふうになりますから、今は多過ぎても頑張っていよう、そうしないと次に間に合わない、そういう形なのですね。  したがって、私が増減車について自由にしろというのはそういう意味であって、事業者は景気が悪くなって台数が多くなったと思えば減らせばいい、また調子がよくなってきて需要がふえてくればふやせばいい、そういうことであれば、実は自動的に需給バランスが成立するはずであります。  この点でよろしいかと思いますが、ほかに何か。よろしいですか。
  136. 岡田克也

    ○岡田委員 それでは次に、濱中参考人にお聞きしたいと思いますが、今お触れにならなかった点なのですが、車検の問題がございます。車検の規制緩和は少しずつ進んできているようには思っておりますが、営業車検は一年ごとにやる、こういうことに基本的になっていると思います。私の考えでは、まさしく営業でやられる方というのは自己責任、当然ですね、事故が起きれば会社の信用にも傷がつくわけだし、損害の補償の問題も出てくるわけですから、当然自動車のメンテナンスはきちんとやられるから、毎年毎年やらなくてもせめて自家用ぐらいに延ばしてもいいのではないか。幾ら距離が多いとか使う頻度が高いといっても、私はもう少し業者の方を信用していいのではないか、こんな気がするのですが、この点についてどうお考えか。  それからもう一点は、先般来の日米交渉の中で自動車部品の問題を議論する中で、車検場と修理工場を分離すべきだ、こういう主張がアメリカ側からなされました。分離することでアメリカ製の部品が使われる可能性も出てくるのではないか、そしてまた、分離することが全体の車検の費用を下げることになる、だから日本の国民のためにもなるのだ、こういう主張があったわけですが、この分離の問題についての御意見を聞かせていただきたいと思います。
  137. 濱中昭一郎

    ○濱中参考人 最初の、車検の期間の問題でございますけれども、現状の車両に対する信頼性であるとかそういうこと自体から、車検は現状の一年は二年でよかろうということが一つございます。  それから、業界としましてはかなり、仕業点検であるとか終業点検であるというふうに、車両の点検は三カ月点検とか六カ月点検、十二カ月ということでなくて毎日やっております。ですから、やはりそういう面もひとつ十分御配慮いただいて今の車検制度緩和していただく。これが費用的にも結構かかっております。もちろん、そういうことで生活している方も多いわけですが、我々としては、今の車検の期間を延ばすと同時に点検項目等の削減ということもやはりお願いをしたい。点検項目が多ければその分車両がとめ置かれるということになりますので、むしろ車両が一日遊ぶ、二日遊ぶということは非常に我々にとっては痛い点でございまして、そこいらのこともぜひ御配慮いただければというふうに考えております。  それから、二番目の車検の分離といいますと、どういうこと……。
  138. 岡田克也

    ○岡田委員 具体的に検査をするところとそれからその車検について整備をするところを別に、同じでなくてもいいようにするということなのです が。
  139. 濱中昭一郎

    ○濱中参考人 通常は、我々のところも自家でそういうのを持っておりますが、整備と車検というのはほとんど一体でやっておりますので、これはやはり分離をしない方がよかろう、そういうふうに考えます。
  140. 岡田克也

    ○岡田委員 恐らく自家用の場合と営業で大分話が違うのだろうと思います。  それから、山本参考人にお尋ねしたいと思いますが、大規模店の問題で、いろいろお話しいただいたのですが、一方で小売店のこれからの生き残りあるいは消費者のニーズに合わせて変えていくための助成策というものを当然国としても考えていかなければいかぬだろうと思うのですが、それについて具体的な御要望がありましたらぜひお聞かせをいただきたいと思います。
  141. 山本勝一

    ○山本参考人 基本的には、流通業界は個人の努力といいますか、そういう面で時代の要請なり消費者ニーズの変化に対して対応するというのが基本でございます。公共性というのは、各地の商業集積、これは市民の憩いの場でございますので、その中に大型と我々中小が色分けをして、使い分けをして、カラーを出し合って消費者のために貢献をしていくという方向で進んでおるわけでございます。こういう時代になりますと、はっきり言って人間の程度によりまして対応できない人も出てくるのではないかということでございますので、そういう方は厳しい状態でございますので淘汰されるということもあり得るかと思いますけれども、私、組織の立場におきましてはそういうことは言いにくいということでございますので、何とかみんな生き残っていくということを願っておるわけでございます。  ただ、正直に申しまして、さっきも申し上げましたけれども、全体の量は欧米と比べますとやや過剰である。日本経済が今後本当にどの程度成長できるのだ、特に中国を中心にして東南アジアの時代に入ったということになりますと、国内の空洞化、二次産業の海外シフト等々考えると、一体どの程度の経済のあれができるのだろう。そこの中にどう生き残るかというと、ある程度やはり淘汰されるものも出てくるが、それを全部ひっくるめて施策を講じていただきたいということは、やはり国の税金をいただくということにもなりますので、余り無理なことは申し上げられません。  いずれにしましても、各地と一体になってその地区の人口等に合わせた商業集積をどう構築するか。そこでやる気のある方が参加してやっていただく。従来の商店街におきましても、何とか生き残ってしっかりやろうという方々中心にやっていただくより方法はないのではないかというふうに思うわけでございますので、商店街で全部で何とかせい、何とかしてくれといっても、ちょっと難しい時代ではないかと思うわけでございます。中小企業庁小売課長もきょう御出席いただいておりますけれども、そういうような時代にマッチした方向で具体的な施策も講じていただいて、それを中心にして何とかやっていきたいと思っておりますので、よろしくお願いを申し上げます。
  142. 岡田克也

    ○岡田委員 終わります。
  143. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員長代理 次に、吉井英勝君。
  144. 吉井英勝

    ○吉井委員 私は、先ほどの伊東参考人のお話、それからまた私の知人の中にもタクシーの運転手をやっている人もおりますし、そういう話なども思い浮かべながら先ほどのお話を聞かせていただいておりました。  かつて大阪タクシー汚職というのがありまして、これはたしか免許とかそういうことをめぐっての汚職だったと思いますが、ああいうのは論外として、しかし同時に、私も、随分昔、若いころですが、神風タクシーとか白ナンバータクシーが走っておったころに、これに乗るとおりるまで値段がわからなくて本当に不安ということもありまして、やはり運賃がわからないというのは大変不安なものであるということを今改めて思い浮かべておるところです。  規制緩和をやったらどうなるかということで、タクシー分野について言えば、過当競争になる。そこに二つの問題があると思うのですね。一つは、働いている人たちが、過当競争ですから、水揚げをふやそうと思ったらどうしても長時間頑張らなければいけない。これは、健康破壊の問題もあれば、同時にやはり事故に遭遇する確率が非常に高くなってくるという問題があります。それからもう一つ、会社としては、コストダウンを図ろうと思ったら整備補修部門のコストダウン、極端な言い方をすれば手抜き、まあ手抜きとまではいかなくてもそこへ行き着かざるを得ないわけで、安全の欠落ということがやはり一番心配される。ですから、我々利用者からすれば一番怖いのは事故ですから、そういう点では公共交通については安全、安心が一番ということが考えられなければならないのじゃないかなと思うわけです。  そこできょうは、岡野参考人に伺っておきたいのですが、他の物流部門の問題は少しおいておきまして、タクシーの規制緩和ということについては、当然改善したり是正したりしていかなければいけないのはどういう分野だってあるわけですが、必ずしも規制緩和一本やりということにはならないのじゃないか。もちろん、先ほど参考人のお話を伺っておって、そういう御趣旨でないというふうにも思うのですが、この点、一言で結構ですから御意見を伺っておきたいと思います。
  145. 岡野行秀

    ○岡野参考人 再三申し上げましたけれども、安全の問題は当然社会的規制でやるものであって、車両の安全性の確保はそれでやらなければいけないわけですが、とかく経済規制までが、安全という我々利用者にとってアキレス腱を口実にして規制をやるというのが今までかなりあったように思います。そして、そこをしっかり分けまして、例えば、もうかるようにすれば安全になるんだ、もうからないような状況だから競争になって安全が欠落するんだ、そういうような見解がしばしば主張されるのですが、それは全く誤りであって、利益が上がるか上がらないかと安全を欠落させるような事業者がいるかいないかは別の問題である。これはしばしば耳にはするのですけれども、私も確固たる証拠を全部持っているわけじゃありませんが、事故を起こしがちな会社は大体決まっているというような話も聞きます。つまり、事業者の問題であって、私たちが考えまして、タクシーの業界でも、いい事業者が残り、まずい事業者が減ってくれる方がやはり国民にとって望ましいということなのであります。この間、NHKの五月七日の放送で江別市のあるタクシーを取り上げましたけれども、そこの会社はこの前の運賃値上げをしておりません。そして、衛星を使って自分の会社のタクシーが今どこにいるかを全部チェックしてありまして、電話によって注文を受けると、一番近くで空車でいる車をすぐ迎えにやらせる。そのために、利用者にとっての待ち時間が減った。しかも、新しく団地ができますと、チラシと何か簡単なものを持って、ぜひうちを使ってくださいうちは値上げもしませんという形で実はセールスまでやっているわけですね。こういう事業者がだんだんふえていって、そして、ただ運転手をこき使って利益を上げようという事業者が減ってくれる方が国民にとっては望ましい、そういうプロセスをつくるのはやはり競争じゃないか、そのように私は考えているわけでございます。
  146. 吉井英勝

    ○吉井委員 サービス、営業活動の改善というのは当然どういう分野でも必要だと思います。ただ、私も、興味、関心があるものですから、ほとんど二十四時間タクシーの運転をしていらっしゃる方にぴたっとつくぐらいについてみたりとか、それからトラックの運転をやる方についてもぴたっとついてみたこともあります。それはなかなか大変なことですね。それで、経済規制社会的規制のお話がありましたけれども、しかし現実には、ドライバーの立場からすると、一定の水揚げを上げようと思ったら、これはやはり長時間走らせる以外に、お客さんと遭遇する機会は減るわけですから、そう簡単にはいかないというのがこの世界の実態だということを私は実感としてつかみました。  それから、トラックの分野についてはきょうはおいておきますが、荷主の方から零細なトラック業者がコストダウンを言われてくると、これはやはり過積みに走るか、いろいろ無理をしないといけない。これは事業者の問題もありますが、ドライバーに随分負担、がかかってきて、これは比較的大きいところですが、かつて道交法違反をやらないとタイムスケジュールがこなせないぐらいの、これは全部ドライバーにツケが来るわけですね。こういう点では、ドライバーにツケが来るだけではなくて、それはお客さん、利用者にツケが来るわけですから、公共交通なり大量輸送の分野では安心、安全ということをやはり第一に据えたものにして考えていかなければならないのじゃないかなと私は思うわけです。  次に、山本参考人に伺っておきたいのですが、九州トヨタが進出したときに、向こうの方で、トヨタが来ればお客さんがふえるということで商店街が随分期待されたところを私、見にいったことがあります。ところが現実には、期待に反して大スーパーが来たのですね。そうすると、商店街の方は伸びるどころか売り上げが落ちてしまったのですね。そこから何が起こったかというと、地域のお祭りといったってみこしの担ぎ手がなくなってくるとか、消防団活動といったって日常的にいる人が支えなければいけないのですが、結局地域社会の崩壊、それで、安全が保たれなくなるとますます過疎の方向へ行ってしまうという問題があります。この点では、商店街とか中小小売店の問題というのは、ただそこの経済の問題だけじゃなしに、先ほども少しおっしゃっておられましたが、町づくりとか都市計画なども含めた全体の中で考えていかないと、大スーパーは進出しても、適当に花代ぐらいは出すかもしれないけれども、別にみこしを担いでくれるわけじゃなし、消防団の団員を引き受けてくれるわけじゃなしという問題があるわけです。そこのところは、これまで中小小売店の皆さん、商店街が地域社会を支えてきたという、また違った角度からの検討というものがやはり必要なのじゃないか。これは、単純な規制緩和論、大店法の規制撤廃だけじゃうまくないのじゃないかと思う面があるわけです。  たしか山本参考人は、かつて、アメリカの弱肉強食社会と違ってヨーロッパのようなバランスのとれた社会をということで、その中での中小小売店の姿を見てもこられて、雑誌の対談か何かで言っておられたように思いますが、そういった感想なども含めた御意見を、あれば聞かせていただきたいと思います。     〔斉藤(鉄)委員長代理退席、委員長着席〕
  147. 山本勝一

    ○山本参考人 今、いろいろな意味において日本は変化をしております。特に、産業構造の転換とか、いろいろ工場が外地へ出るとか、立地を求めて、企業においても何か土地の安いところ、コストの安いところで物をつくろうというようなことで、そういう面からの移転、移動がございますが、これに商店街がどう対応するかということなんです。  地区によりましては、企業が来てプラスになるというところもあれば、撤退してマイナスになってこれはどうするんだというようないろいろな動きがございます。これは、時の流れとしてはやむを得ぬのではないかなと思われますけれども、これに対応するのは、大体商店街というのは、地域に定着して、地域の文化、防犯、あらゆる面に協力をして、町と一体になってやってきておるわけでございます。大型店は、そこへいくと、どっちかというと企業主義というかもうけ主義というか、もうからなければ撤退するというようなこともあるわけなんです。ですから、これは本当に自由で勝手にやれということになったら、ばらばらになってしまって大変なことになります。日本の国自体がおかしくなるのじゃないかなというようなことを考えますと、やはり地域地域の、地方の時代だと言われておりますけれども、地方で町づくり、都市計画、そういうものをもう少しきちっとして、それで消費者人口がどれだけあって、可処分所得がどうなんだ、そこの中にはどの程度の店舗が必要だ、業者はどうなんだというようなことで真剣にこれから取り組んでいただく時代に来たのではないか。  ということは、私ども申し上げますと、日本は貿易立国でございまして、今まで物をつくって輸出をして外貨を稼ぐ。だから、物づくりは大事だけれども、売るのはどこでもいいじゃないかというようなことで、余り商業関係に対しての施策がなかったのですね。ここへ来て、九〇年代、日米構造協議によって規制緩和なんかということで、多少は援助をしてやらぬといかぬなということで、私も予算をいただいて、お願いして、対応しておるわけでございます。  しかし、それも数やいろいろなことを考えると、こういう景気が続くと、百五十万からおって、家族、従業員、六百何十万、下手をすると、はっきり言って、これは潜在失業のたまり場になるのではないかというふうに思うのです。  ですけれども、他に転向する業種もない。今新産業とかベンチャー企業とか、新しいものが求められておりますけれども、これは机上論ではあっても、現場に行くとそうは簡単にあるものではございません。そうすると、そこの中でひしめき合って生きておる。売れなければ生活を落とすというようなことで対応しておるのです。  だから、そういうこと全体を考えると、経済の合理性ということばかりじゃなしに、先生方は政治家でございますので、政治の面から一億二千万の国民がどう生活できるんだということも御配慮いただいて、いろいろ御指導をいただかなければならぬというふうに思うわけでございますので、よろしくお願い申し上げます。
  148. 吉井英勝

    ○吉井委員 時間が来ましたので、終わります。
  149. 塚田延充

    塚田委員長 以上であらかじめ申し出のありました質疑は終了いたしました。  この際、委員各位に申し上げます。  これより、質疑のある委員は、挙手の上、委員長の許可を得て発言するようお願いいたします。また、発言の際は、自席にて起立し、所属会派及び氏名並びに質疑する参考人の名前をあらかじめお告げいただきたいと存じます。  なお、発言は簡潔にお願いいたします。  それでは、質疑を続行いたします。質疑のある委員は挙手をお願いいたします。
  150. 西川太一郎

    ○西川委員 新進党の西川太一郎でございます。  伊東参考人に……。  私は、タクシーは庶民の足として大変重要でございますからどうぞ充実をしていただきたい、こう思いますが、昭和五十年代の中ごろだったと記憶しておりますけれども、シカゴヘ参りましたときに、ジェーン・バーンズというシカゴの当時の女性市長が、日本で一番すばらしいものはタクシーのシステムだ、こういうふうにおっしゃっておられました。古い話ですけれども、御紹介をしておきます。  私は、ロンドンもすばらしいけれども、東京のタクシーも決して――問題はいろいろあることはよく承知をしております。私の家の隣がタクシー会社ですからよく知っておりますが、それでもどうぞ頑張っていただきたいというふうに思います。  ところで、それはそれとして、この間ロンドンヘ参りましたら、物すごい派手な広告をタクシーが、屋根の上にこんなでっかい看板は乗っているし、ドアはピンク色に塗ってあったり、広告をしているのですね。日本のタクシーは、中にはたくさん広告のたぐいはありますけれども、表にはない。これはやはり規制があるのでしょうか。  それから、岡野先生はお詳しいのでございましょうけれども、ザ・タクシー・オブ・ジ・イヤーとか、ステッカーがやたらに張ってありますね。やはりああいう褒賞制度というか、褒めてやるという仕組みもあちらではあるようでございますけれども、日本ではそういう仕組みはございませんね、個人の運転手さんには無事故無違反等のあれはあっても。そういうような、いじめることばかりじゃなくて、誇りを持って働ける、そういうような環境をつくることが大事がな、こう思うので す。  思いつきでお尋ねして恐縮でございます。簡単で結構ですから、教えていただければと思います。
  151. 伊東弘之

    ○伊東参考人 まず、タクシーの広告の話でございますが、御指摘のように、車内にはステッカー等で若干の広告がございますが、車外には余り目立った、けばけばしい広告はございません。これは規制があってやっているということではなくて、やはり余り目立って、けばけばしいのはタクシーの品位を損なうということで、まず自主的にそういうふうな形になっていないということで御理解いただきたいと思います。  それから、優秀なタクシー事業者、タクシーにはいろいろメリットを与えるべきであるというのはまさに御指摘のとおりでございまして、私どももお役所にそういう方法で何かないかということで若干お願いもしておるところでございます。  以上でございます。
  152. 武山百合子

    ○武山委員 新進党の武山です。  素朴な質問を岡野先生にちょっとしたいと思います。  私は車を持っていない国会議員なものですから、国会から高輪までよくタクシーを利用します。いわゆる初乗り六百五十円、普通の車ですね。それで、よく利用するのですけれども、今たくさん空車が多いわけですね。いわゆる空車が多いのにもかかわらず、減車しないわけですね。  それでサービスの面で、先ほど我が新進党の岡田さんも質問をされたのですけれども、サービスの点で、大変利用するものですから、岡田さんの質問の内容のように、ありがとうございますとか返事なんというものはまずほとんど聞かれないわけですね。それから、いわゆる道がわからない運転手さんが多いのですね。最近とみに、一カ月前に来たとか、三カ月前に東京に来たとか、新しい運転手さんが大変多いということに驚きました。やはり運転手さんの定着率が低いのだなという感想なのです。  その中において、いわゆるタクシー料金というのは上がるばかりですね。それで、市場原理からいきますと、空車が多くなって利用者が少なくなれば料金は下がるというふうに、単純な発想を私なんかするのですけれども、ますます何か上がっていく方向に、逆の方向に行っているような気がするのです。その辺の素朴な、矛盾といいますか、その辺をちょっとお聞かせいただけたらと思います。
  153. 岡野行秀

    ○岡野参考人 誤解があるといけないと思うのですが、私、別にタクシー業界をいじめようという気は全くございません。タクシー業界が繁栄してくれることを望んでいるわけです。もっとよくなってほしいということだけでございます。  空車がたくさんあるというのは、先ほど申し上げましたように、タクシー業界というのはまず特殊だと伊東さんはおっしゃいましたけれども、確かにそういう点がございます。景気が悪くなって、方々で失業が出たりしますと、一番簡単に転業できるのは実はタクシーの運転手で、二種免許さえちゃんと持っていればいいわけです。したがって、景気が悪くなれば悪くなっただけに多少安い賃金で雇えるというような状況があるものですから、そういうふうに残っていると思うのです。先ほど申し上げましたように、やはり市場の状況によってタクシーの需給が調整される方が望ましいだろうというふうに私は考えております。  それから、サービスレベルにつきましては、これは今のところ、私も業界のことを多少知っているものですから、空車で来ても、何色のタクシーには余り乗るまいとか、そういうことがあるわけですけれども、そういうことは、要するに国民といいますか利用者にはわかっていないわけですね。  もう少し競争が出てきますと、今はマスコミもタクシーのそういう点はほとんど扱いませんけれども、どこどこは事故が多いとか、どこどこはサービスが悪いというのは、今度は実は情報として売れるようになりますから、我々が週刊誌等々見ても、先月のどこどこは事故が多かったとか、どこのサービスが悪いというような評価が出ますと、当然利用者はそれを選択するようになります。  チケットを使って乗る場合とただつかまえて乗る場合では、運転手のサービスの水準は明らかにかなり違います。これはチケットの場合には決まったお客ですから、今度は自分のところの契約をやめられたら大変なものですから、サービスは明らかに大変よろしいのです。ちょっと近い距離で普通につかまえますと、かなりひどい運転手さんがおります。ですから、こういう点はやはり今までの規制があってもこういうことが起きているわけですから、これを改善するにはどうしたらいいかということを考えるべきだと考えております。
  154. 村田吉隆

    ○村田(吉)委員 ただいま岡野先生と我が党の橘康太郎君とのプライスキャップ制についての御議論をお伺いをしておったわけですが、橘君は、非常にこういった方面についての知識が豊富でございまして、心配をしている向きがあったかと思いますが、我が自由民主党の場合についても、このブライスキャップ制の導入について、できるかどうか今検討を開始したばかりのところでございまして、必ずしもこれについて否定的な結論を持っているわけでも何でもありません。ただ、業界あるいは運輸業界の形態、あるいは同じ業界でも各社則でこの問題についてのいろいろな考え方があるなと、非常に難しい問題だということを心配しているんだろうと思いますが、今検討中であるという一とを御指摘をさせていただきたいというふうに思っております。  ところで、話は変わりますが、規制とは全く別に、小売業等の問題に絡めて、税制等の取り扱いの違いの問題ですね。例えば、生協とか協同組合と、それから一般の企業との関係で、法人税についての差別的な取り扱いがかねて行われておって、しかし、そういうところもあって、かなり購買事業等において生協等が伸びてきて、いろいろな競争が行われておるということなんでございますが、私考えるに、規制緩和どこうした法人税上の取り扱いの差別化というものの慣行といいますか、これまでの政策ということについて、岡野先生、一体こういう事態においていかなる評価をすべきか、御意見がございましたらお伺いをいたしたいというふうに思っております。それが第一点。  それから第二点ですが、伊東先生にお伺いをしたいのですが、バス業とタクシー業の相互乗り入れについてどういうふうにお考えになっておられるのか。つまり、バスの小型化、あるいはあらゆるところで簡単にとまる、あるいは路線のやや自由化ということ、それからこれは反対に、タクシーの大型化ということで、交通手段において相互乗り入れを行うことについての御見解がございましたら、お教えをいただきたいというふうに思います。  この二点をお伺いいたしたいと思っております。
  155. 岡野行秀

    ○岡野参考人 流通の問題につきましては、私は料理が好きですので、自分で買いに行きます。その場合にも結構パパママストアで買うことが多いわけですが、パパママストアというのは、例えばお肉屋さんでも、何をつくりたいんだけれどもどういう場所がいいかとか、それからどう料理をしたらいいかとか、あるいは焼き豚にすると言いますと巻いてくれたり、そういうサービスがあるわけです。そういうよさというものがあるものですから、多少高くても。それから逆に、非常にいいものはちゃんとした専門の肉屋さん、小売店の方が持っているというケースもございます。したがって、そういうものにつきましては、私は小売商はもう少し元気を出してもいいんじゃないかなと。  ただ問題は、なぜ皆さんが大きな店に行くかといいますと、それは、一通り歩いできますと必要なものが全部買えるという点であって、小売店ですと、商店街のように全部集まっていますと、そこを一通り歩いてくれば全部そろうんですけれども、そのうち一軒の店が抜け、二軒の店が抜けと歯抜けのようになってきますと、結局そこを通っただけでは全部はそろわなくなる、そういう事態 になるわけですね。そういう事態になりますと、特別なもの以外は大きな店で買うということになりますし、それから、これは国民の方の違いもあるわけで、昔なぜそれほど小売商がたくさんあったかといいますと、私も子供のころからよくお使いに行きましたけれども、交通の便は、まず歩いて行くか、せいぜい自転車であります。その範囲に店がなければ買えないわけですから、したがって、その範囲で小売店が必ず地域的に成立するわけです。ところが、現在のようにほとんどの人が車を持っているような状況になりますと、簡単に行動できますから、したがって、物は大きな店へ行って、街道筋の店で買うというようなことになるわけです。  それから、あとは消費者の方の選好が違ってきまして、最近ではまないたを持たない家庭もあるそうであります。それから、魚をさばくなんということはとてもできない、魚というのはすべてパックに入って切り身になっているものしが食べないという人がふえてきました。こういう人がふえたために、本当に魚を食べたい人が、買いたいと思っている魚屋さんがなくなっていくという現象は、これは私は被害者でありますけれども、やむを得ないのかなという気もいたしますけれども、そのよさというものはやはりこれからわかってくるんじゃないか。魚屋さんで実際に魚を見、そして多少手でもつっくことができればもっとはっきりわかるわけですが、小売店の商売の仕方というものが、そのよさがわかればそのまま生き残っていけるのではないか、そのように思っております。  ただし、標準的な商品で、しかも大量に仕入れれば安くできるようなもの、要するにどこで買っても同じもの、これについては皆さんは安いところへ行って買うでしょう。ただし、アフターサービスが必要なもの、もし故障したならばすぐ修繕に来てくれるようなものというのは、割合に、意外と電気屋さんでも近くで買っている人が多いわけであります。そういう点の違いというものを考えて商店街をつくり、そしてその商店街でまたそういうサービスの研究をすれば、マーケティングをしますと、まだ十分やっていける道があるのではないか、私はそのように感じております。
  156. 村田吉隆

    ○村田(吉)委員 ちょっと岡野先生、私の質問を誤解されたようなので、もうちょっとはっきり言いますが、要するに、例えば、私の地元でも生協のストアが構えていて相当な規模で急速に伸びている、その向かいで民間のスーパーがやっておるという形で、そういう問題が一つある。  それから、今私どもも与党で検討してまいりましたが、例えば全労済という組織が自賠責に参入をしたい、そうすると、保険業、損害保険業の一部に参入したいということになる。だけれども、法人税は厳然として違いがあるわけですね。  だからそういう、みずから組合員を絞りますよ、あるいは農協でも、組合員以外には、できるだけ非組合員の活用を抑えるということをしながら、自分でみずから縛りながら、一般ではないよと言っていろいろな特権を享受して一般業界に入っていって、いわば不平等な条件で競争をする実態というものがいっぱい出てきて、かつそれが結構大きくなっているという事態についてどういう評価をなされますかということを申し上げたのでございます。
  157. 岡野行秀

    ○岡野参考人 税制による違いということであれば、税というのはできるだけ中立的でなければいけませんから、これはむしろ税制の方で条件について同じにするということをするのが本筋だと思います。
  158. 伊東弘之

    ○伊東参考人 先生おっしゃいましたように、バスとタクシーの垣根、かなり低くなっております。例えば、過疎地におきまして、路線バスというふうな、ずうたいのでかいバスで運行いたしますと非常に採算が悪いという場合に、非常に小回りがきき、経費の安い乗り合いタクシーを導入する場合がございますし、また、深夜の団地におきまして、駅から路線バスがなくなった時間帯にお客様が結構おられるわけなので、それをタクシーでピストンするというのも効率が悪いということで、乗り合いタクシーというのを運行するというふうな形が進んでおりまして、バス、タクシーという規制にとらわれることなく、お客様のニーズに合わせた運行を考えていくというのも規制緩和の姿ではなかろうかと思っております。  それから、バスとタクシーに関連いたしましては、タクシーもバスと同様の公共交通機関でございますので、現在バスに認められております優先レーンにつきまして、タクシーも優先レーンの通行を認めてくれというお願いもしておるところでございますので、よろしくお願いをいたします。
  159. 塚田延充

    塚田委員長 以上で運輸・流通関係参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人の方々におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時二十分散会