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1995-06-07 第132回国会 衆議院 外務委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成七年六月七日(水曜日)     午前九時三十分開議 出席委員   委員長 三原 朝彦君    理事 小杉  隆君 理事 田中 直紀君    理事 福田 康夫君 理事 東  祥三君    理事 松沢 成文君 理事 松田 岩夫君    理事 秋葉 忠利君 理事 前原 誠司君       安倍 晋三君    柿澤 弘治君       斎藤 文昭君    櫻内 義雄君       鈴木 宗男君    二階堂 進君       岡田 克也君    長内 順一君       鹿野 道彦君    羽田  孜君       山田  宏君    伊藤  茂君       上原 康助君    松前  仰君       東中 光雄君  出席国務大臣         外 務 大 臣 河野 洋平君  出席政府委員         外務大臣官房長 池田  維君         外務省総合外交         政策局長    柳井 俊二君         外務省総合外交         政策局国際社会         協力部長    高野幸二郎君         外務省総合外交         政策局軍備管         理・科学審議官 林   暘君         外務省アジア局         長       川島  裕君         外務省北米局長 時野谷 敦君         外務省欧亜局長 野村 一成君         外務省中近東ア         フリカ局長   法眼 健作君         外務省経済局長 原口 幸市君         外務省経済協力         局長      平林  博君         外務省条約局長 折田 正樹君  委員外出席者         通商産業省機械         情報産業局自動         車課長     大井  篤君         外務委員会調査         室長      野村 忠清君     ――――――――――――― 委員の異動 五月三十日  辞任   大矢 卓史君 同日             補欠選任              吉岡 賢治君 六月七日  辞任         補欠選任   赤羽 一嘉君     山田  宏君   若松 謙維君     長内 順一君   古堅 実吉君     東中 光雄君 同日  辞任         補欠選任   長内 順一君     若松 謙維君   山田  宏君     赤羽 一嘉君   東中 光雄君     古堅 実吉君     ――――――――――――― 六月六日  国連機関に勤務する日本人職員の待遇に関する  陳情書  (第二五七号)  核兵器全面禁止廃絶国際条約締結の促進に関  する陳情書  (第二五八号)  核兵器の使用に関する国際司法裁判所の勧告的  意見に関する陳情書  (第二五九号)  米輸入自由化阻止のためWTO協定の改定に関  する陳情書  (第二六〇号) は本委員会に参考送付された。 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件      ――――◇―――――
  2. 三原朝彦

    三原委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田中直紀君。
  3. 田中直紀

    田中(直)委員 国際情勢に関する件につきまして、特に日米関係につきまして、外務大臣にお伺いをいたしたいと思います。  自動車及び自動車部品問題につきましては、日米交渉が決裂をした、こういうことでございますが、その後アメリカの対日制裁候補リストの発表、そしてまたWTOでの日米協議という事態を受けまして、日米関係が良好な中にも極めて深刻な状況になりつつあるという見方もあるわけでございます。担当の外務大臣として、最近の両国関係につきましてどのように認識しているか、御所見伺いたいと思うのです。
  4. 河野洋平

    河野国務大臣 議員承知のとおり、日米関係国際社会の中で、私どもは少なくとも最も重要な二国間関係と考えております。この最も重要な二国間関係という考え方は、アメリカにおいても恐らくそうであろうと我々は考えているわけでございまして、この二国間関係安全保障の問題あるいは政治対話、その他さまざまな文化交流でございますとか人物の交流でございますとか、さまざまなレベル、分野におきまして今非常にいい関係にあると私は思っております。  ただ、経済問題につきましては、これは常にいろいろな問題を抱え、それをお互い努力によって克服をしながら今日まで来ているわけでございまして、今回双方意見がなかなか合意に達しなかったわけでございますが、これらも、日米双方努力によって合意を導き出すというための努力をできる限り続けてきたわけでございます。  私は、日米という、この、言ってみれば自由と民主主義市場経済などという価値を共有している両国でございますから、話し合えば必ずいい結論は導き出せる、こう信じておりましたけれども、しかし、少し時間も長くかかった。双方主張にはまだ隔たりがある。さらに、残念ながら自動車、同補修部品の問題についてはアメリカ側の一方的措置あるいは数値目標についての強いこだわり、こういうことがあったために、それならば日米双方ともども参画をしておりますWTOという国際ルールのもとで問題解決をしようということに今なっているわけでございます。  こうした問題はございますけれども、今議員がお尋ねのように、日米関係を総覧してみれば、両国関係は非常に安定して、なおかつ、十分に理解し合える関係になっているというふうに私は見ておるところでございます。
  5. 田中直紀

    田中(直)委員 日米関係の重要さということにつきましては外務大臣大変認識をし、また対策を講じていただいておるというふうに思っておりますが、ポスト冷戦ということで、今後の安全保障の問題も一方でありますが、当面経済問題につきまして、特に日米協議に臨む我が国姿勢というものをある程度明確にしていただいておく時期ではなかろうか、こういうふうに認識をしておるところでございます。  WTOのもとで十二日以降日米協議が行われる、こういうふうに伺っておりますし、先般の二十九日、三十日のWTO理事会あるいは紛争処理機関会合で、我が国主張しておりますアメリカの一方的な制裁については、各国、日本の立場に支持を寄せていただいておるわけでありますが、一方で、御存じのとおり、欧州等では日本市場閉鎖性についての不満というものも述べられたと聞いておるわけであります。  そういう意味で、WTOという新しい機関のもとでありますけれども、今後の二国間において、あるいはWTOのもとにおいての我が国姿勢というものを外務大臣からお伺いをいたしたいと思います。
  6. 河野洋平

    河野国務大臣 議員御指摘のように、私どもの知るところでは、国際社会の中で、今回の我が国アメリカとの間のWTOにおきます議論というものについては、多くの国が、アメリカの一方的措置についてはWTO精神に反しているということを言っておられるわけでございます。しかし他方で、日本市場についても御意見があるというのが状況ではないかと思います。例えばEU意見も、日本市場に問題はあるように思う、しかしながら、そうであっても、一方的措置をするということは、これはWTO精神に反していると思うから、この問題に関する限り、少なくとも我々は日本主張というものに共感を覚える、こんな言い方をしておられるわけでございます。  しかし、私どもEUに対しましても、我が国が現在行っております規制緩和への努力というものをよく見てもらいたいということを言いまして、これについてはEUは、日本がいい方向に一歩踏み出してきたということは認めていい、規制緩和についても一歩前進したという評価はしているわけでございます。私は、一歩前進とおっしゃるけれども、我々の規制緩和はこれから継続的にやっていくんですよ、例えば毎年白書なども提出をして、規制緩和に向かって我々は継続的に進むんですということなども言っておりまして、お互い理解は深まりつつございます。  しかし、いずれにしても、先ほど申し上げましたように、日米関係重要性というものを我々はやはりしっかりと認識をしなければならないと思います。したがいまして、今月の十五日に行うことで調整をいたしております日米首脳会談におきましては、幅広い意見の交換をすることによって日米関係をさらに進めてまいりたい、こんなふうに思っているところでございます。  WTO手続その他について、御希望があれば事務当局から少し補足をさせたいと思います。
  7. 田中直紀

    田中(直)委員 首脳会議も予定されておるようでありますので、その場でまた幅広く経済問題についても双方理解を深めていただく、こういう努力をお願いいたしたいと思います。  政府間の交渉もございますし、また両国政府といわゆる自動車メーカーといいますか、自動車問題につきましては、民間の動きとのいわゆる兼ね合いというものもあろうかと思うわけであります。  日米協議を進めるに当たって、メーカー対応というものが、きょうは通産省お出かけてありますか、御説明をいただきたいと思いますが、クリントン大統領は、今月二十八日までに両国合意できなければ今出しております五十九億ドルの制裁関税を適用するという決意を述べておるわけでありますが、一方、日本自動車メーカーは、企業の駆け込み需要ということもあろうかと思いますけれども、一部の自動車メーカーについては、今制裁対象車になっておるものについては当面輸出を再開する、こういうことも表明をしておるわけであります。もともと貿易バランスの問題というものが根底にあるわけでありますし、まず日米協議を進める、こういう時期に来ておりますので、ある面、表現はどうでしょうか、メーカーはあえて自主規制のような姿勢というものが見られていいのではなかろうか、これは私個人の考えてありますが、そういうふうに考えますが、通産省はどう考えるか、お聞きしたいと思います。
  8. 大井篤

    大井説明員 お答え申し上げます。  議員承知のとおり、米国につきましては、五月二十日以降の関税精算手続を停止している状況にございます。そういたしますと、もし仮に、将来制裁というものが確定いたしますと、五月二十日以降の通関のものにつきましては一〇〇%の関税がかけられるという状況になっておるわけであります。したがいまして、現在行われている輸出につきましては、いわゆる駆け込み的な輸出という性格のものとは大分違っているというふうに御理解願いたいと思います。  各メーカーは、アメリカにありますディーラーとの関係がございまして、そのディーラーに対する供給責任を全うしなければならないという状況にあるわけであります。他方、一〇〇%の関税がかけられるかもしれない、こういうリスクにさらされているわけでありまして、その両者の兼ね合いの中で、必要最小限のものをリスクを覚悟しながら輸出をしているというような状況にあります。その他、各会社によってまちまちではございますけれども、既に六月以降輸出を絞ってくる、あるいは生産についても絞ってくるというような動きが何社かにおいて見られるというような状況にあります。
  9. 田中直紀

    田中(直)委員 いわゆる供給責任、こういう表現お話がありましたけれども、確かに自動車メーカーとしては流通をすぐにストップするというわけにはいきませんが、翻って考えますと、長年にわたって数量というものをある程度規制してきた中にあって、一般車に比べて高級車というものがある面では我が国自動車メーカーにとっては利益幅といいますか、そういうものも見込めるということで今日に至っているわけでありますから、現状というよりは、長い目で見て、今の状況に立ち至ったということから考えて、確かに自動車メーカー制裁を受けたとしても、全体として自動車メーカーが受ける被害というものは、両論あるわけでありますけれども、当面の問題として、供給責任があるというだけでその行動をしていくということは、ある面では全体の中での一業種としての考え方はいいでしょうけれども、大変大きな産業であるわけでありますが、その辺の認識というものを自動車メーカーはどう考えておるか、この辺をもう少し御説明をいただきたいと思います。
  10. 大井篤

    大井説明員 お答えを申し上げます。  日本自動車メーカーにおきましては、かねてから、現地生産への移行ということで、なるべく日本からの輸出台数を減らしながら対応をしていくということを行っております。現に、アメリカにおきましても、現地生産台数は年を追ってふえてまいっておりますし、また、それに伴って国内からの輸出台数も減少してきているというような状況にあるわけであります。  現在、大変な円高に見舞われているわけでございますので、例えば自動車部品の購入につきましても、なるべく多角的なソースから品質、価格、あるいはデリバリー、こういった要素を勘案して調達をしてくるということになっておりますし、また、海外における生産におきましても、なるべく現地需要現地生産によるというような基本的な考え方に基づいて中長期的な調整を行おうというような状況にあるというふうに理解しております。  ただ、これを急速に行いますと、国内雇用等の問題もございますので、そこら辺をどう兼ね合いをしながら進めていくかということが各社の非常に重要な課題になっているというふうに理解をしております。
  11. 田中直紀

    田中(直)委員 自動車問題につきましては以上にいたしまして、外務大臣お出かけでございますので、先ほどお話がありました十五日に予定されております日米首脳会談につきまして、幅広い議題について双方で話し合われるということでありますが、大変重要な時期でありますし、重要課題についてどのような姿勢で臨まれるか、御説明をいただきたいと思います。
  12. 河野洋平

    河野国務大臣 ことしは日米首脳会談を三回という予定を私の頭の中で考えているわけでございます。それは、一回目は一月の日米首脳会談、そして今回、サミットの折にカナダにおいて二回目の日米首脳会談を行う、さらにもう一度は、APECの折にアメリカ大統領の訪日を想定をして、そこで日米首脳会談がもう一度行われるということを頭の中にかきまして、この三回の日米首脳会談を通じて、ことしの日米関係をどうやっていくか、それはことしだけのことではなくて、いわゆる五十周年ということしを、日米関係をさらに充実強化していくという意味も含めてこの三回の日米首脳会談を考えているわけでございます。  締めくくり、十一月と我々が想定をしております日米首脳会談までの間に、言ってみれば、一月に行い、十一月に想定をする首脳会談というものを考えると、今回はちょうどその真ん中、折り返し点に来ているということを考えて、これまでの日米関係の中で我々がどういうふうに日米関係を考え、これから将来に向かってさらにどう発展をさせていくかということなどを踏まえた首脳会談を考えているわけでございまして、先ほども申し上げましたように、自動車問題という経済問題はありますけれども、それはWTO議論をすることとして、日米関係を、政治対話も深めていく、さらには安全保障の問題についても考える、そういった状況というものをさらに進めるというための首脳会談にしたい、こういうふうに思っているわけでございます。
  13. 田中直紀

    田中(直)委員 首脳会談と並行して、当然サミットに臨むわけでありますし、実質討議ということで、ことしのサミットの焦点につきましてもお話伺いたいと思いますが、特にもう御存じのとおり円高ドル安対策ということで、大方の通貨に関する協調政策というものは、アメリカにおきましては財政赤字削減努力をしてもらう、ヨーロッパ、ドイツでは一段の金利の引き下げの方向、こういうものがあろうかと思いますし、我が国につきましては、先ほど外務大臣からお話がありましたように規制緩和をしっかりやっていく、市場開放という流れと、あと財政のさらなる刺激策、こういうことが一体になっていくのではなかろうか、こういうふうに思うわけでありますが、日米間での協調政策必要性、あるいはサミットにおきましての実質討議で通貨問題まで踏み込めますかどうか、その辺の状況の御所見伺いたいと思います。
  14. 河野洋平

    河野国務大臣 サミット議題の整理は議長国であるカナダがイニシアチブをとって行うわけでございますが、これまでにもシェルパの会合などを通してさまざまな議論をいたしております。  私どもが考えておりますサミットにおきます議論は、一つは、やはり戦後五十年、半世紀ということで、さまざまな国際機関の見直しということについて議論が行われていいのではないかというふうに思っております。そのさまざまな国際機関の中には国連もございますしあるいはIMFもございますし、さまざまな国際機関というものをこの際見直してみてはどうか、こういうことが一つあると思います。それからさらには、今まさに議員がおっしゃったように、マクロ経済についての議論というものがあるだろうと思います。それから、WTOのスタートの年でもございます。貿易問題についても、世界的なあるいは多角的貿易の問題について議論がされるということはあるんだろうというふうに思っているわけでございます。  それで、サミットは、御承知のとおり先進国首脳が集まってそれぞれ幅広い議論を行うということでございますから、政治あるいは経済にわたって議論を行う場所でございますから、それはまあ余り私どもがこの問題、この問題ということをあらかじめ申し上げることは適当でないかもしれませんが、今私どもが考え得るものはそういったことではないかというふうに思っているところでございます。  サミットが特定の二国間関係について議論をするということは余り考えられないというふうに私どもとしては思っております。
  15. 田中直紀

    田中(直)委員 最後になりますが、日米関係につきましては大変重要な問題である、こういうふうに認識をいたしますし、最近アメリカ側からも日米航空協定の問題につきましても動きが出てきておるところでありますし、また日米建設協議ということで、昨年大変、制裁云々状況も回避してきたわけでありますが、その状況というものも、新たに会合が開かれる、こういうことでありますので、日米関係におきまして摩擦が懸念されておるというような状況下での日米首脳会談でありますし国際会議であろうかと思います。日米関係のみならず、大切な、重要な問題は多くあるわけでありますが、特にその辺も解消していかれる、こういうことで臨んでいただきたい、こういうふうに思う次第でございます。その決意のほどをお伺いして質問を終わらせていただきます。
  16. 河野洋平

    河野国務大臣 議員の御質問冒頭お答えを申し上げましたように、日米関係重要性というものをしっかりと踏まえて臨みたいと考えております。幸いにして、アメリカ側におきましても日米関係重要性、この二国間関係重要性というものを十分認識しておられるようでございますし、いろいろ御心配の個別の問題が日米関係全体を悪化させるということのないようにマネジメントしていく必要があるということでは、私と、私の言ってみればカウンターパートになりますか、国務省、クリストファー国務長官どもそういう認識でおられるわけで、私はそういう点十分留意をして臨みたい、こう考えております。
  17. 田中直紀

    田中(直)委員 終わります。
  18. 三原朝彦

    三原委員長 続いて、伊藤茂君。
  19. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 通常国会外務委員会審議も終わりに近づこうといたしておりますが、この際幾つ大臣の御所見を承りたいと思います。  一つは、現在進行中の戦後五十年決議に当たる問題でありまして、私どもの同僚の上原さんも大変御苦労されて、昨夜の状態、伺っているわけであります。また、与党間で激しい議論がございましたが、マスコミで言われていたトップ、党首会談に至らず、一つ案文が策定をされたということでございます。院の決議でございますから、これから尊敬する野党の皆さんとも協議をして一致したものをまとめていかなければならないというふうに思っております。  ただ、この経過を見ますと、考えるべき幾つかの大きな問題があったと思います。また、最終的に「アジアの諸国民に」という言葉、「アジア」という言葉与党案ではまとめさせていただきましたが、これも非常に重要な視点であろうと思います。  この国会、残り少ないのですが、いい決議を与野党一致してまとめなければならない、私ども議員の一人としてそう思っておりますが、そういう進行過程ですから断定的には言いにくいかもしれませんが、外務大臣として、また副総理として、総裁としてどういう感想をお持ちでしょうか。
  20. 河野洋平

    河野国務大臣 かねてから申し上げておりますが、戦後五十年というこの年に臨んで、院としてその年にふさわしい決議をしていただくということは非常に重要なことだというふうに思っております。また、三党合意ということもございまして、与党三党の皆様方が真摯な態度で合意をつくり上げるために努力をなさったという、その努力には心から敬意を表したいと思います。ぜひ、今議員からもお話がございましたように、五十年という年にふさわしい立派な決議が行われますよう心から期待をいたしているところでございます。
  21. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 この議論の中で侵略行為とか植民地支配とかあるいは反省とかいう言葉がキーワードのようになりまして、そしてまたマスコミ、世論の中でも広くさまざまの議論が行われたという経過がございます。同時にまた、その議論を見、それから昨夜の与党案文などを見ましても「歴史観の相違を超えこということがございます。  よく日本ドイツと比較をされますけれどもドイツの場合には戦後四十年、当時ワイツゼッカー大統領演説など、私も非常に感銘を持って見ましたが、また伺いますと、非常にたくさんの人に読まれて、高校とか学校なんかでも、一定部分、あのスピーチの内容を社会科の副読本でみんなで読むということがあったそうであります。やはり一つ歴史に対する国民的なコンセンサスが形成されている。非常に望ましい姿であろうというふうに思いますし、またそういうものが将来のためにも、未来型になるためにも必要なことだろうというふうに思います。  それらを考えますと、私見なんですが、決議自体が五十年に当たりということに趣旨がなっているわけでございますけれども、私どものこの歴史観のいろいろある違いというものを超えるためにはもっと長いタームで考えてみる。例えばですが、日本が明治維新、開国の後、日清戦争日露戦争あるいは朝鮮半島、台湾、旧満州その他いろんなことがございました。その延長線として第二次大戦、パールハーバーから始まった問題もあるということも歴史の事実でございます。そういう長いスタンスで考えてみますと、特にアジアに向けて、ああ日本はどういう歴史を歩んできたのかというコンセンサスは得やすいという面もあるのではないだろうか。もちろんこれは政治が主導でやるべきものではありませんし、国民的なさまざまな議論があってそういうものが形成されていくということが必要であろう。特に、アジア的視点というものが大事ではないだろうかなということをいろいろ御苦労なさった経過を見ながら思いますが、どうお考えでしょう。
  22. 河野洋平

    河野国務大臣 ハウスの作業に私が余りコメントをすることは控えるべきだと思いますが、議員が例示に挙げられましたように、外国の大統領演説は、これはもう大統領演説として立派な演説幾つかございます。それはそれでそれなりの、それぞれの国で評価がなされるものであろうと思います。他方、今回のハウス決議ということになりますと、それはハウスには何百人の議員がおられるわけでございまして、何百人の議員の中にはそれぞれのお考え、お気持ちというものはあるのだと思います。それを超えて決議をする、まさにそういうことであろうと思います。  ただ、歴史的事実というものについては、これはこれで、事実は事実として考えるということはまた必要なことであろうと思います。歴史を直視し、またあるいは歴史に学び、それを将来に生かすということが重要だということが院の決議の中に盛られている大事なお気持ちであろうというふうに私は考えておりまして、決議を拝見をさせていただいているわけでございます。決議の文言とか内容とかについては、私はコメントは控えさせていただきたいと思います。
  23. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 先ほどの同僚議員の御質問の中では、日米関係が主題でございました。私はやはりこれからの日本を考えますと、日米そしてまた日本アジア、これは欠かせない二本の足、しかも結びついているという関係であろうというふうに思います。  どちらかといいますと、やはりアジアに対して本当の友人、信頼関係、あるいはアジアの将来のビジョンというものがなかなか形成されない。それはヨーロッパに比べてアジアは複雑で難しいですから、そういう事情もございますけれども、そういう努力を精いっぱいやらなければならないというのが今置かれているその一つ課題であろうというふうに思います。それらを考えますと、戦後五十年を節目にということも含めて、アジアの皆さんとどういう信頼関係の転機をつくるのかということが非常に大事であろうというふうにも思います。  しばらく前に、当時西ドイツのシュミット前首相が「友人のない日本」という論文を日本の雑誌にお書きになりましたが、そういう状態は早く超える転機をつかまなければならないというふうに思いますが、さまざま複雑なものがたくさんございますけれどもアジア日本といいますか、アジアへの姿勢というものについてはどうお考えになりますか。
  24. 河野洋平

    河野国務大臣 歴代総理大臣が何回もアジア演説をしておられます。例えば福田赴夫総理大臣は、福田ドクトリンなどと言われる演説をかねてなさったことがございます。宮澤元総理も、たしかアジア演説をなさいました。宮澤元総理の演説は、ともに考え、ともに汗を流そうでしたか、そういった気持ちを述べられたと思いますし、福田ドクトリンの中では、心の友としてと言われたか何か、そういったようなお気持ちを述べられたように思います。  私は、確かに近隣諸国との間の信頼関係をしっかりとつくるということの重要性というものを今本当に考えなければならない時期ではないかというふうに思っているわけでございます。とかくこれまで、東西冷戦構造の中で西側に位置して、西側の仲間同士は同じ西側だからということで共通の基盤の上に乗っているというふうに決めていたわけですけれども、冷戦構造というものが終えんを遂げてみると、本当に一国一国の関係を丁寧にしっかりと理解し合うという努力がなされなければならぬという意見もございます。私もそうした意見は十分拝聴をする必要があるというふうに思っております。
  25. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 そういう意味で申しますと、昨夜の与党の案につきましても、「アジアの諸国民に与えた苦痛を認識し、深い反省の念を表明する。」という言葉がございます。やはりこのアジアに向けてということが、国会決議としても、政府の態度としても、一つの大事な節目として、一つのステップを超え、やはり次にはアジアに向けた未来型のさまざまの政策展開をしていくということが重要であろうと思います。そういう意味では、こういう言葉の部分というのは非常に大事なところだろうと思いますが、そう思われますか。
  26. 河野洋平

    河野国務大臣 我が国との歴史的な関係を考えましても、重要なことであるというふうに思います。ただ、他方、最近ではオーストラリ保ア、ニュージーランド、例えばオーストラリアは非常にアジアに向かって懸命に、自分たちもアジアの一員としてというような気持ちを持っておられるというふうに、昔ながらのアジアというものから、新しいアジアといいますか、未来のアジアといいますか、そういうものはまた少し、それはそれで変化を遂げていくということもあるのではないかと思います。  また、アジアの国々の中でも、例えばASEANを中心としてAPECというものに参加をして、アメリカも加わり、さらには南米のチリまで加わるという広い地域の国々の参加によってAPECの議論をするというようなことにも、積極的にその中で発言をしておられるということを見ましても、新しいアジアというものの息吹を非常に強く感ずることがございます。
  27. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 先ほど大臣の御答弁の中で、宮澤元総理のときのことがございました。宮澤さんが総理のときに、一つアジアビジョンと申しましょうか、アジア安保と申しますか、こういうことについて私的諮問委員会をつくられまして、レポートをされまして、私も報道で読んだ限りなんですが、宮澤さんらしい一つ表現がなというふうな思いもいたしております。  と同時に、あれから、あのときにも、いまいちと私は思いましたが、事態も非常に急速に進展をしております。APECもそうですし、それからASEAN地域フォーラムもそうですし、できたら北東アジアに何かシステムをつくりたいというふうな段階に急ピッチでアジアも変動しているというのが今日の状況でございます。  そういう中でまた、大阪APECで主催国である我が国がどういうイニシアチブを、イニシアチブというよりも、私はアジアでも、やはりリーダーになるという姿勢ではなくて、コーディネーターかバランサーと申しましょうか、そういう姿勢の方が日本のとるべき態度であろうというふうに思っておりますが、いずれにしても注目をされている。  私は、それを考えますと、やはり敬意を表されるかあるいは評価されるに足るイニシアチブをどうアジアに持っていくのか、いろいろな面で考えなければならない。個別の問題もそれぞれございます。それから、トータルとしてのこともございます。  これも私の意見なんですが、例えば経済の面でも、どうしてもやはりボゴールの自由化目標のタイムテーブルの具体化ということが一つテーマになります。しかし、それだけが中心でいいんだろうか。さまざまな地域経済構想がございます。ローカルとグローバルと、常に接点を持った構想でなくちゃならぬと思います。  それから、環日本海などなど、そういうものがもう七つか八つぐらいあるでしょうかね。いろいろな地域の、大きなスケールの地域の構想もございます。もっと幅広いさまざまな地域圏の協力もございます。それら全体を含めて、どういう共存共栄のアジアのビジョン、例えば東アジアのビジョンというものを考えるのかということが問われていると思います。APECの賢人会議がございますけれども、聞きますとちょっと転機にあるようでありまして、次の構想も求められている。  私は、社民党の先輩だから言うわけではありませんが、南北問題のブラント委員会とか、あるいは「ワンワールド」のレポートを出されましたシュミット委員会とか、非常に興味ある提言だなというふうに思います。ああいうレベルかスケールで考えるということが必要な時点ではないだろうか。  安保の面でも、ASEAN地域フォーラムもございますし、何とか北東アジアの地域に向けて、今すぐ具体化できるかどうかは別にして、いろいろな提言というものを日本は発信すべき場所であろう。そういう上に、ヨーロッパのCSCEにふさわしいような次の時代を考える。つい数日前に今度来日されたオーストラリアの首相のスピーチがございましたが、そういう趣旨などもございました。そういうことを考える。  私は、これは総理のイニシアチブでも、尊敬する外務大臣のイニシアチブでもいいのですが、そういうやはり構想力とか発想力というものを考えるときではないだろうか。それが、過去を振り返る視点のさまざまな論争というものから先を考えるというためにも必要な一つの柱ではないかな。言うならば、大臣の先輩に当たられます宮澤元大臣のを一歩進めていくということが大事なときでないかなと日ごろ思っておりますが、いかがでしょう。
  28. 河野洋平

    河野国務大臣 北東アジアに対して私は非常に強い関心を持っております。北東アジアの安全を考える、あるいは北東アジア経済の発展のために何かすることはないかというようなことを何度も考え、現在でも考え続けているわけでございます。  北東アジアにつきましては、かねてソ連、現在のロシアでございますが、ソ連時代に、何度かソ連がアジア安保でありますとか北東アジアについて提案をしたりいろいろ発言をなさったということがございますが、それは東西冷戦時代でございまして、そうした提案はほとんどそれ以上話が進むということはなかったわけでございますが、今国際社会がこういう状況下になれば、アメリカもロシアも中国も皆参加をして北東アジアについて考えるということができる状況になりつつある。  ただ、残念ながら、北朝鮮、朝鮮民主主義人民共和国の存在というものをこの北東アジアを考える上でどう位置づけるかということはなかなか難しいわけでございます。しかし、難しいだけに、北朝鮮を国際社会の中に、国際社会の一員として組み込んでいく、発言の場を与え、情報を発信し、受信する場として考えていくということも、むしろ、だからこそ大事だという気持ちもないわけではございません。  いずれにしても、朝鮮半島というものを考えて、それは我が国の安全にも極めて重要でございますし、我が国だけではない、北東アジアの国々、さらには北東アジアにかかわる国々を考えれば、国際社会の安定のためにも極めて重要だと思います。 7 政策的には、北東アジアの国々が持つ、例えば安全保障政策がより透明度を高めるということができればそれは非常に意味のあることでございます。ARF、ASEAN地域フォーラムにおいてその透明性の問題が議論になる、ことしも議論になると思いますが、そうしたことも、北東アジアという地域に限ってそうした議論ができないかというようなことも何度か考えつつはあるわけでございまして、もう少し状況が熟すのを待ちたいというのが今の心境でございます。
  29. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 今の外務大臣言葉の中の北朝鮮に関する部分、私も趣旨は全く賛成であります。そういうことを考えると、いろいろな問題がこれについてはございますし、クアラルンプールの会議がどうなるのか、そんなことが関連いたします。  そういう御趣旨から申しますと、個々の経過のございました日朝交渉再開は、遠くない時期か近い時期か、どんな展望をお持ちでしょう。
  30. 川島裕

    ○川島政府委員 お答え申し上げます。  今北朝鮮といろいろやりとりをやっておりまして、日程、場所を詰めたいと思っております。北からも前向きの雰囲気の回答と申しますか、姿勢が示されておりまして、ただ、まだ具体的にいつ、どこでというところまでは至っておりません。まさに大分途絶えてきた対話でございますけれども、いろいろ物事が動いている時期でございますので、再開に何とかこぎっけたいということでやっている次第でございます。
  31. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 これは大臣にちょっと感想を伺いたいのですが、この間、いわゆる渡辺元副総理の発言がございました。大変な騒ぎになっているわけであります。こういうことがずっと繰り返されている。何か反発を受けて変えるとか取り消すとか。これは相互関係とはいいましても、やはり日本の、我々の、憲法スピリットで進んでいかなければならないと私は思っておりますが、やはりそういう国の名誉からしても好ましい状態ではないと思います。  ただ、国際的にいろいろ問題になっている問題でございますから、一つだけ、「円滑」であったかどうか、日韓併合。これは両国政府間でもこの問題の扱いは大変苦しいさまざまの議論があって、その取り扱いは不明瞭になっているということでございまして、全体の状況から見たらとても「円滑」とは申せませんし、私は、「円滑」という言葉だけは取り消されたようでありますが、本当は、やはりあの方も全文取り消されて、別の意思表示をなさるべきであろうというふうに思いますが、その状況をどう見るのかということについてはどうお考えになりますか、あの状況
  32. 折田正樹

    ○折田政府委員 ちょっと法的側面を私の方からお答え申し上げますと、一九一〇年の日韓併合条約に関しましては、六五年の日韓基本関係条約において、もはや無効であるということが確認されているわけでございます。  いずれにいたしましても、日韓併合条約は、当時の国際関係等の歴史的事情の中で締結されたものであるということに十分留意する必要があるというふうに考えておるところでございます。
  33. 河野洋平

    河野国務大臣 条約局の立場に立って言えば、今申し上げたとおりだと思います。  しかしながら、どういう統治が行われていたかということについて考えますと、道義的な問題というのはどうしても考えなければならないのではないかというふうに思うわけでございます。道義的評価というものは、やっぱりあるんだろうと思うのでございます。官房長官も何度も会見で申し上げておりますけれども、私も、朝鮮半島地域のすべての人々に対して、過去の一時期、我が国の行為によって耐えがたい苦しみと悲しみを体験されることになった、この点についてはやはり深い反省があってしかるべきと思いますし、この点については遺憾の意を表したいというふうに思います。
  34. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 もう時間ですから終わりたいと思いますが、外務大臣に一言だけ要望申し上げておきたいのです。  水も変われば油も変わるという言葉がございます。社会党の会議で首相が言われた言葉でありますが、水と油、四十年の宿敵ではないかと言われた中で言われた言葉でございます、名言ではないかと思いますけれども。やはり、今の時代ですから、さまざまな、連合、連立、いろいろな形がございます。わかりにくい場合もございます。ただ、しかし、やはりお互いに、これは与党、野党も立場は同じだと思いますが、次の時代の理念、政策、ビジョンを目指して、それをどう形成していくのかということが大事であろうというふうに思います。  率直に申しまして、私は、村山さんが言われました、水も変われば油も変わる、こういうのが歴然となかなかあらわれない、そういう意味では、やはり特に与党三党首の皆様、尊敬する皆様の日ごろの不断の御努力というのが非常に大事なんではないだろうか、不断にそれを求めていくのが政治であろうという思いがするわけでありまして、今回の与党間の激しい議論を通じてみましても非常にそう思います。  私どもも、特に総理を支える立場でございますし、与党を支える立場でございますから努力をいたしますけれども、水も油も変わるといいますか、表現は別にいたしまして、新しい展開を図っていくというために一層御努力されるようにお願いを申し上げまして、質問を終わります。  ありがとうございました。
  35. 三原朝彦

    三原委員長 前原誠司君。
  36. 前原誠司

    ○前原委員 政府開発援助に焦点を当てて御質問をさせていただきたいと思います。  まず、北朝鮮に対する米支援問題についてお伺いをしたいと思います。  先ごろ三党の代表団が北朝鮮に行きまして、国交正常化の交渉というものの糸口をつくるという役割を果たされてまいりました。御承知のように、共産主義国家というのは党が政府を指導するという立場でございますので、党が動かないと政府がそれを受けて行動することができないということがございまして、今回の米の問題にいたしましても、与党あるいは国会がどういう対処をするのかというところに大きくかかわってくると思います。しかし、その決定自体が、政府が実際現在の方針に従ってやれるものなのかどうかというところに大きくかかわってくる問題だと思いますので、その点について確認をさせていただきたいと思います。  先般、北朝鮮の国貿促の代表団が来られまして、米の支援というものを正式に表明をされたわけであります。私個人の考え方といたしましては、これは人道的な立場から、余り条件をつけずに支援というものを行える体制においてやるべきであると思っております。しかし、今の流れを見ておりますと、韓国と事前に交渉して、何か南北交渉とリンクさせているような部分があって、逆にこれが米の支援問題で朝鮮半島の新たな、解決の糸口になるかもしれないかわりに、逆にこじれる要因になる可能性もあるというふうに私は思っております。  したがいまして、お伺いしたいポイントというのは、韓国と事前に相談をするということの必要性については私も認識を一致させているわけでございますけれども、しかし、必要以上にリンクさせて話がこんがらかるようなことになってはいけないというふうに思っておりますので、この米問題と韓国とのかかわり合いをどのようにとらえておられるのかといった点がまず御質問の第一点。つまり、どの程度の協議にとどめておくのか、あるいはもっとリンクさせて、あるいはこれを突破口に南北交渉の糸口を日本が結びつけるような意図までお持ちなのかどうかというところがまず一点。  それから、実際に米の援助をするということになった場合に、国家承認をしていない国でございますので、どういったやり方があるのか。  この二点についてお伺いをさせていただきたいと思います。
  37. 川島裕

    ○川島政府委員 結論から申しますと、先生御指摘の心配と申しますか問題意識は、私どもとしてもおおむね同じ感じを持っておる次第でございます。  どういうふうに進展してきたかといいますと、国貿促の李成禄会長という方から二十六日に、米を貸してもらいたいということを党の関係者の方々に申し出があった。その際に、韓国の米も受け入れを検討する用意があるということも言ったわけでございます。これを受けまして韓国政府は、その日、二十六日の夜にはもう直ちに反応いたしまして、何らの前提条件もつけずに、北朝鮮が必要とする穀物を提供する用意があるということを言ったわけでございます。これは韓国側の姿勢でございます。  それで、そうなりますと、今の時点では北朝鮮の側にボールがあると申しますか、まずは北朝鮮側がこの韓国側の支援を行う用意があるという提案に対してどう出るかというのが次の段階なんだろうと思っております。  まさに先生も御指摘のとおり、これは人道的な問題という面はあるわけですけれども他方、まさに取り扱いによっては南北の微妙な話に大いになり得るし、うまくいけば、あるいは南北の和解に行くかもしれないという点も御指摘のとおりでございます。  それで、北朝鮮側が、その韓国の申し出は拒否して、我が国のみの米、我が国のみに支援を要請するということになりますと、それは単に人道というよりも、若干それは、まさに微妙な南北の政治的な考慮というものに関連が出てきちゃうのではないかということが心配されるわけでございます。  そういうことを踏まえまして、まずは、北がこの韓国による無条件のオファーというものにどういうふうに反応してくるのかということを見きわめるのが、今の時点では非常に重要であろうと思っております。  他方、仮に北に出すということに決定した場合に、国内的にどういうことがあり得るか。これは技術的にはいろいろな、相当詰めを要する問題でございますけれども、まだ確たる方向は決めてないという状況でございます。
  38. 前原誠司

    ○前原委員 北朝鮮に対する支援の問題とも絡んできますけれども、ちょっとODAの原点に戻って御質問をさしていただきたいと思います。  北朝鮮とあわせまして、今回、パレスチナの暫定自治政府に対して日本が無償援助を行うということが報道されておりました。誤解を避けるためにあらかじめ申しておきたいのですけれども、前回の委員会でも御質問させていただいたように、パレスチナ支援というのは中東和平のかぎでありますので、積極的にやっていただく分には、それは全く方針としては意を同じくしているわけでありますけれども、しかし、方針が一緒だから例えばODA大綱とかいうものを拡大解釈をする、なし崩し的になっていくということとは全く問題が別だというところで、問題意識を持って御質問させていただきたいと思います。  ODA大綱を見ておりますと、要は開発途上国、国ということが前提条件になっているわけであります。そこには、国家承認をしているかどうのこうのというのは書いてございませんが、では、国という概念は何であろうかということであります。  私も今回、PKOの調査団の中でガザに行かせていただきまして、いろんな話も、また現地も見てまいりましたけれども、まず、徴税体系が成り立っていない。それから、軍とか警察というものについては、もちろん、警察についてはパレスチナの暫定自治政府の警察がありますけれども、大部分の抑止力といいますか、警察力はイスラエル軍というものに頼っているという部分があります。そして暫定自治というものは、前提条件だった選挙もまだ経ていないということで、果たして国として認められるのかどうか。拡大解釈をしてパレスチナ暫定自治政府に対する援助を決めるということについて、ODA大綱のなし崩し的なものにならないかという危惧を持っておりますが、その点についてちょっと御見解をお聞かせ願いたいと思います。
  39. 平林博

    ○平林政府委員 お答え申し上げます。  おっしゃいますように、ODAは原則として公的な援助でございますので、国から国へということでございますが、事情によりましては国際機関ども通じて行うということも認められているわけでございます。パレスチナにつきましては、完全な国家ということにはまだなっていないというのが国際的な認識でございますが、暫定自治政府ということで、逐次機構、体制が整備されているというふうに理解しております。  特に援助を含めました一定の事柄につきましては、イスラエルとの暫定自治の合意の中にはっきりと国際約束を締結することができる、こういうことになっております。そういう事情も考え、またこのパレスチナ支援につきましては、一昨年来、国際的に支援をしようなぜ支援をするかといえば、中東和平、さらにはあの地域の民主化、全体の繁栄のため、世界平和のためということで、国際的な祝福を受けて国際的な枠組みの中で行われておりますので、そういう点を考えますと、日本政府といたしましては、従来、国際機関などを通じて支援してまいりましたが、今後の課題として、二国間で直接無償資金供与などができるかどうか真剣に考えているということでございます。  そういうことでございますので、まだ決定はされておりませんが、我が国としては、パレスチナに対しましても、ODA大綱はもちろんでございますが、その他諸般の事情を十分に考えまして対応してまいりたい、こんな感じで今考えておるわけでございます。
  40. 前原誠司

    ○前原委員 再度御質問したいんですけれども、パレスチナという中東和平のかぎを握っている地域なので、ODA大綱の例外として行うのか、あるいはODA大綱の中の解釈として、いわゆる国家の体をなしていない地域に対しても行えるという認識、あるいは未承認国家に対しても、もし国と認めた場合行えるという認識なのか、その点をちょっとはっきり定義づけていただきたいと思います。
  41. 平林博

    ○平林政府委員 パレスチナにつきましても、ほかの国、地域につきましても、ODA大綱は適用されるものでございますので、最初の御質問お答えするとすれば、パレスチナについて、ODA大綱の例外にするということではないと考えております。むしろ、先ほどちょっと申し上げましたが、ODA大綱の理念、原則からして、パレスチナに支援することがODA大綱の理念、原則に合致するという色彩が極めて強い、それは国際的にもそのような認識であるということでございます。  未承認国につきまして、一般的に申し上げれば、国際的な約束を締結することはなかなか困難であります。パレスチナにつきましては、先ほどのように一定の限度で認められておりますが、一般的に言えば、国際約束を締結することは困難でございますので、一般論としては経済協力を行うに当たっては一定の制約があるということは十分我々としても認識してやっていく必要があると考えております。具体的な対応につきましては、個々のケースに応じて、どういう援助ならやれるか、どういう援助ならやれないかということをケース・バイ・ケースで考えていくべき問題だろうというふうに考えます。
  42. 前原誠司

    ○前原委員 重大なポイントでございますので突き詰めて、要望も含めて御質問もしたいわけでありますけれども、要は、今、一定の制約はあるけれどもという条件つきで未承認国家に対しても、あるいはまだ完全な国の体をなしていない、地域といいますか、そういう国になりかけているものに対しても、このODA大綱というものの趣旨に照らしてやるということでよろしいんですか。
  43. 平林博

    ○平林政府委員 お答え申し上げます。  一般論で申し上げておるわけでございますが、先ほども申し上げましたように、未承認国につきましては非常な制約がある、援助、協力をする場合には相手方に一定の義務が出てまいりまして、実施をきちんとやる義務、円借款のような場合ですと返済をきちんとする義務、その他いろんなことがありまして、それで、双方が協力して案件をつくっていくということでございますので、未承認国の場合には、そういう面で相当の制約があるということでございます。  そういうことを一般論として申し上げた上で、ODA大綱を踏まえてどうするかということにつきましては、ある程度政策論ということになるのではないかというふうに考えます。
  44. 前原誠司

    ○前原委員 これは委員長に対して申し入れといいますか、要望させていただきたいのでありますけれども、制約はあるけれども例外ではない、しかしながら政策的な判断でということになりますと、言ってみればODA大綱を拡大解釈できる可能性もありますので、未承認国家あるいは国家の体をなしていない地域に対しての統一見解をぜひ政府としてまとめていただきたい、それをぜひ外務委員会で、理事会でも諮っていただいて、委員会としてぜひお求めいただきたいということでございますけれども委員長、いかがですか。
  45. 三原朝彦

    三原委員長 まず、受け付けさせていただいて、まずは理事の間で議論を深めさせていただくことにしましょう。
  46. 前原誠司

    ○前原委員 その理念についてでありますけれども政府開発援助大綱の基本原則の中で、三番目のところには、「国際平和と安定を維持・強化するとともに、開発途上国はその国内資源を自国の経済社会開発のために適正かつ優先的に配分すべきであるとの観点から、開発途上国の軍事支出、大量破壊兵器・ミサイルの開発・製造、武器の輸出入等の動向に十分注意を払う。」ということが書いてあります。  もし理念というものに照らし合わせてということを本当に厳密にやっていくなら、今回の中国の核実験の問題、それからICBMの発射実験というものを考えた場合に、果たして中国に対するODAというものが、歴史的な経緯はあるにしても、妥当なものなのかどうなのかといったところは大きく議論の分かれるところではないかと思います。無償援助をある程度、一定限度削るような御趣旨の発言を官房長官がなさっておりましたけれども、原理原則としては、ODAというものは国民の税金で行われているものでありまして、我々国会議員が予算を認定をして、国民の税金を使わせてもらうということを世間に公表した上で、ODAの使い道を外務省としてやっていただいているわけでありまして、余りこういう理念にもとるような使われ方をされておりますと、我々議員としてはODAに対する予算計上というものに力が入らない、あるいは国民の理解も得られないという、非常に難しい状況になってくるんではないかと思っております。  それから、イランについても核疑惑というのがございますし、また、北朝鮮からミサイルを購入しているということも伝えられておりますけれども、この原理原則に基づいて、中国、イランのODAについて外務大臣としてはどのようにお考えになっているのか、その点をちょっとお話をいただきたいと思います。
  47. 河野洋平

    河野国務大臣 日中関係重要性というものは議員もよく御承知をいただいていると思います。中国がアジアにおけるどういう存在であるか、また、そのことが我が国にとってどういう意味を持つか。これはプラスの問題もあるでしょうし、また、マイナスという言い方はどうかと思いますけれども、我々が十分気をつけなければならない部分というものも考えていかなければならない点もあると思います。  いずれにしても、我が国と極めて近い地理的条件もございますし、また歴史的にも文化的にも深い関係があって、国と国との長い関係のある中国、その中国について、我が国は今後子々孫々に至るまでこの友好を深めていこうと決意をして、日中関係重要性を考えているわけであります。我が国は、中国の改革・開放路線を支持するということを基本として中国に対してさまざまな協力を行ってきている、その協力の中にODAもまたその一つとしてあるわけでございます。  ただ、議員が御指摘のように、そういうふうに我々が考えているにもかかわらず、中国側に我が国の国民世論を逆なでし、それは世論を逆なでするばかりではなくて、国際社会がNPTの延長のための会議でも合意をした一つ考え方にも違う姿勢をとられるということについては我々として極めて残念なことでありますから、我々が中国を支援しようという気持ちがありますよ、しかし、こういうことをやられることになると我々極めて残念なことであって、こういうことはやめてもらいたいということを申し上げ、こういうこれらの、これらのというのはつまり核実験でありますとかその他の、ICBMのテストでありますとか、こういったことが行われるということになれば、我々の援助についてもそれらは視野に入れて考えなければなりませんよということを申し上げたわけであります。  御指摘のように、政府の開発援助、とりわけ無償援助については国民の税金をまさに使わせていただくわけでありますから、国益ということを考えなければなりません。もちろん相手国の民生の安定とか民生の向上とかということも考えなければなりませんが、我が国の国益といいますか、あるいは我が国の安全といいますか、こういったことだってそれは考えるのは当たり前のことでございますから、先方に対してもそのことを申し上げ、しかしそれと同時に、日中関係というものもまた国益上極めて重要なものではないかということもまた、これは当然考えなければならないことであって、このことによって日中関係というものを非常に悪い方に向かって進めるということがあってもいけない、その辺の判断を非常に重要と考えて、丁寧にといいますか慎重にといいますか、我々としてはやっているというのが現状でございます。私どもの気持ちというものもぜひ御理解をいただきたいというふうに思います。
  48. 前原誠司

    ○前原委員 時間が来ましたので、終わらせていただきます。
  49. 三原朝彦

    三原委員長 松沢成文君。
  50. 松沢成文

    ○松沢委員 新進党の松沢成文でございます。  きょうは光栄にも一時間半という十分な時間をいただきましたので、国際情勢、各方面にわたって質問させていただきますので、大臣初め当局の皆さん、ぜひともよろしくお願いいたします。  私は、ゴールデンウイーク明けの五月九日から十四日まで、国連本部、ニューヨークに、アメリカ国連協会の招待で超党派の若手議員という構成で行ってまいりまして、最初に、ちょっと国連の問題について取り上げさせていただきたいと思います。  国連事務局には今多くの日本人の職員の方が働いていらっしゃいますけれども日本の国際貢献を考えるに当たって、もちろん国連への協力というのは大きな方針でありますけれども国連を初めとする国際機関で働いている日本人の方、こうした方にも頑張っていただける、そういう環境をつくっていくということも大変重要だと思うのです。  そこで、まず最初に伺いますけれども、現在日本人の国連職員、国連事務局で働く専門職員数はどれぐらいになっていて、そのうち、これには地理的分配の原則というのがあって、日本国連への貢献にふさわしい人数というのが算定されているそうでありますけれども、それは何人ぐらいで、実質の専門職員数は何人ぐらいなのか、またその傾向は近年減っているのかふえているのか、この辺についてまず伺いたいと思います。
  51. 高野幸二郎

    ○高野政府委員 まず、現時点におきます国連事務局における日本人の専門職職員の数でございますが、それは九十一名でございます。この九十一名は、全体の専門職以上の職員数二千五百五十名のうちの九十一名でございます。  次に、日本人職員の地理的配分等を勘案しての適正規模についてのお尋ねでございますが、これは、事務局の方で職員採用のガイドラインといたしまして、各国の分担率であるとかあるいは人口であるとか、そういうものを基礎といたしまして、御指摘のとおり各国別に望ましい職員数というのを規定しております。日本につきましては、事務局が出しております九四年六月時点における数字でございますが、幅といたしましては百六十五名から二百二十三名、一応真ん中の、中位点という考え方がございまして、その数字が百九十四名ということでございます。したがいまして、その中位点との比較におきましては、百九十四名に対する九十一名という状況でございます。  それからもう一つ、最近の傾向でございますが、全体の職員数、今の九十一名でございますが、これは大筋横ばいという状況でございます。ただ、幹部職員、P5もしくはD1以上の幹部職員の数自体は相当大幅に減っているという状況でございます。
  52. 松沢成文

    ○松沢委員 もう一点お聞きしたいのですけれども、その九十一名の職員の年齢別内訳というか、例えば二十代とか三十代で結構なんですが、どの辺の職員の方が多いのか、それはわかりますか。
  53. 高野幸二郎

    ○高野政府委員 あいにくと年齢別の資料というのは私ども手持ちございませんが、御参考までに申し上げますと、ランク別のあれはございます。いわゆる国連事務局職員の幹部職員と申しますのは、通常我々で言いますP5以上、課長級以上ということでございますが、P5クラスが六名、それからその上のD1クラスが三名、それからD2クラスが三名、この辺が課長クラスもしくは局長クラスでございます。その上の事務次長補が一名。したがいまして、課長級以上の幹部日本人職員の数は十二名、その他の中堅、若手職員が七十八名、こういう内訳となっております。
  54. 松沢成文

    ○松沢委員 今ちょっと数字を出していただきましたけれども日本の望ましい国連事務局での職員数というのは百九十四名でありますが、実際には今九十一名前後、これは横ばいという状況ですね。  今ランク別という指摘がありましたけれども、要するに、課長さん、局長さん、上に行くに従ってかなり少ないですね、九十一名全体の中で。こういう傾向があるのですけれども、こういう傾向になってしまうのは、何か、どの辺に原因があるとお考えでしょうか。
  55. 高野幸二郎

    ○高野政府委員 従来言われてきております一番大きな理由は、終身雇用制等の日本におきます伝統的な労働慣行といいますか、つまり国際機関等で必要とされているような優秀な方々というのは国内でも必要とされておりますし、かつまた、そういう方が一たんその国内のポストを離れると、なかなか帰ってこられないというふうなことがやはり従来から一番大きな理由であるというふうにされております。  そのほかに、昨今は円高等を反映いたしまして、円ベースで見た場合の給与が、日本国内の給与が非常に高い、相対的に国際機関における給与が非常に低いというようなことから、国際機関に就職するインセンティブといいますか、あれが低いというところも昨今はかなり大きな理由となっております。
  56. 松沢成文

    ○松沢委員 今御答弁いただきました後段の部分なんですけれども、その原因の一つに、現在国連日本人職員が置かれている環境というのが大変厳しい、特に昨今の急激な円高によって。この急激な円高で、基本給のほかに国内給与を支給されている日本人の派遣職員との間で格差がかなり広がっていて、プロパーの国連日本人職員の方たちのかなり不平等感というか、こういう意識にもなっていると思うのですね。  例えば、国家公務員が国連にあるいは国際機関に行く場合は国家公務員派遣法という法律があって、また民間の方でも国際事業団等を通じて行く場合は事業団法というのがあって、現地給与のほかに円建ての国内給与が支給されている、法律上こうなっているわけなんです。しかし、国連の採用試験を受けて、合格して入る国連の正規職員の方は、要するにドルベースの基準で支払われる現地通貨の給与のみなんですね。  ひとつここで、向こうで働く国連職員の方にちょっと資料をいただきまして、例えば、派遣法が公布された一九七〇年、当時はまだ固定相場制で一ドルが三百六十円だった。また、過去二十年間における消費者物価の上昇に伴い国連職員の名目給与は二一三%増加したんですけれども、また円も一九四%上昇して、その結果円ベースの名目給与上昇率はわずかに六・五%にすぎない。さらに、その間の日本における消費者物価の上昇率一〇二・三%を考慮に入れると、国連職員の円べ一ス実質給与は実に四七・三%も下落したことになる、こういう数字をいただいたわけなんですね。  そういう状況の中で、派遣組の方と二倍近い格差が働いているというわけなんですけれども、この点について外務省の方は、こういう彼らの主張に対していかが把握してお考えなんでしょうか。
  57. 高野幸二郎

    ○高野政府委員 ただいま議員引用されました数字等については、私ども具体的にチェックはいたしておりませんが、印象としてはおおむねそういうことではないかというふうに私ども認識しております。  こういうことに今なっておりますことについては、先ほども申し上げましたとおり、そもそも我が国としての国際社会に対する貢献、特に人的貢献という観点から、国連におきますいわゆるアンダーリプレゼンテーションといいますか、日本人が少ないという問題は、これは大変憂慮すべき問題であり、政府としても何らかの手だてを打たなきゃいけないということでいろいろ努力しているところでございます。  そういう観点からいたしまして、円ベースで見た場合に国連職員の給与、特に日本人職員の給与が国内の給与に比べて極めて低い、ましてや今御指摘のとおり、派遣法等で行っております日本人職員との間でかなり大きな格差があるということは、これは何とか手当てを要する問題であろうという、問題意識としては私ども以前より大変強く持っております。  ただ、これは委員承知かと思いますが、国際機関といいますか国連の職員の場合、国連憲章百条におきまして、国連の職員というのは本国からの指示等を受けてはいけないという、いわゆる国際公務員としての忠誠義務ということが憲章上明記されております。国連内部の人事規則におきましても、この百条の規定を受けまして、国連職員は本国政府から給与補てん等を受けてはならない、こういう規定が明示的に存在しておるものでございますから、我々としては、先ほど来申し上げておりますような問題意識から、何か具体的な手当てをしたいということは従来からいろいろ考えておりますが、今申し上げたような事情にあるものでございますから、なかなか名案が浮かばないといいますか、まだ手当てがついてないというのが現状でございます。
  58. 松沢成文

    ○松沢委員 日本人の国連の正規職員がこういう状況の中で、もう一度言いますと、急激な円高でドルでもらう給与がどんどん目減りしていく、その上、派遣法等で日本から派遣される職員は現地の給与と日本からの給与ももらっている、こういう中での不平等感。  さらに、彼らはやはり日本人ですから、日本とかかわりを持って生きているし、また老後は日本で暮らしたいと思っている方が多いわけですよね。当然、子供の養育費を日本に送っている方もいますし、親の扶養費を日本に送っている方もいる。あるいは、日本に財産がある方はその税金は日本円で払うわけですね。  こうした中で、大変厳しい状況に置かれていて、今のままの状況だと日本人の国連事務局で働く職員は決してふえないであろう。あるいは、若くして希望に燃えて国際機関に、国連に就職しても、こういう状況の中ではやめていかざるを得ない、こういう窮状を訴えておったのですが、外務大臣として、今国連の現場で働く、日本の国際貢献の一つの大きな役割を担っている人材がこういう厳しい状況にあるということに関してはいかがお考えでしょうか。
  59. 河野洋平

    河野国務大臣 国連に参りますと、日本人の国連職員によくお目にかかることがございます。彼らは極めて意欲を持って仕事に取り組んでおられるというふうにお目にかかって思うわけでございますが、今議員お話しのように、その給料の問題その他については、時折、余り恵まれていないということを漏らしておられるというふうに、それは私も聞いております。  ただ、今政府委員が申し上げましたように、国連職員として国連に対する忠誠とか、あるいは国際社会の中における中立とかいうことは、国連としてはかなり厳しく見ているところがあるわけでございます。例えば国連の職員がどこかの国から表彰を受ける、勲章をもらう、そういったことについても非常に神経質に、特定の国から何かをもらうということについては非常に神経質だというふうにもまた聞いております。事実、どこか特定の国に傾斜をするというふうに思われたのでは、それは仕事はできないわけでございますから、そうした点は我々も、そうした不満や大変な苦心を知りながらも、その点はその点でやはり考えていかなければならないことであろうと思います。  他方、ちょっとこれは表現が適当でないかもしれませんが、言ってみれば、我が国の若い人たちがどんどんそういう国際機関で仕事をしてくれるということはいいことだと私は思いますので、そうしたことができるような環境をつくるということは何か考えなければならないと思います。また若い人たちにも、大いに国際機関などで思い切って仕事をするという意欲を持ってもらいたいという気もいたします。  これらの仕事は、行って金をもうけようと思ったのではなかなかできない仕事だと思いますけれども、しかし、そこへ行って食べられないということではまたこれは仕事はできないと思うのです。その点、どういう方法があるのか。先ほど申し上げましたように、国連には国連の規定もあるわけでございますから、その規定に触れない範囲内で我々としてできることは何かあるかということについては考えなければならないと思っております。しかし、現在の時点では余りいい知恵がない、残念ながらいい知恵がないというのが今の状況だということであります。
  60. 松沢成文

    ○松沢委員 その国連日本人職員の有志がこの問題について具体的な改善策を話し合いたいということで、国連日本人職員日本国連代表部による作業部会の設置というのを要望書では求めているのですが、今当局の方でも大臣の方でも、やはり問題はあろうという御答弁でしたけれども、もし問題があるのであれば、それを改善するために両者、当事者間で話し合う作業部会、この中でどういう方法があるのか話し合っていくことは大変重要だと思うのですが、この作業部会というのはもう設置されて、話し合いは始めているのでしょうか。
  61. 高野幸二郎

    ○高野政府委員 昨年末に、日本人職員皆様方の方から代表部の方に対しまして、この問題についての善処方申し入れの要望がございました。それに対しまして、代表部の方でもこの問題についての認識を申し述べた上で、今後具体的な方策等についてよく御相談していきたいということを日本人職員の方々の方に申し上げ、具体的な段取りとしては、代表部の方でもといいますか、政府サイドでも引き続き考えますが、日本人職員の方々の間でも具体的な方途について皆さんの間でよく御相談いただきたい、双方その成果を持ち寄ってよく相談していきましょうということが起きたわけでございます。  その後のことにつきましては、私が承知しておりますのは、現在それを受けて日本人職員の方々で具体的な案といいますか、御相談をやっておられる。我々としては、それを一応お待ちしておるという状況であるというふうに認識しております。
  62. 松沢成文

    ○松沢委員 この問題で、先ほどおっしゃられましたように、国際機関の中立性があって、国連憲章の百条ですか、国連以外からお給料をもらってはいけないという規定があるということで、こういう国際機関の中に入ったわけですから、国際機関の取り決めには従っていかなければいけないと思いますね。したがって、日本の法的措置で新たに追加の何かフリンジベネフィットを与えるというのは私は非常に難しいと思うのです。  ただ、一つ可能性があるとすれば、こういう国際経済の激変の時代にあって、給料等の問題で全体的にもう少し不平等が起きないように見直すという意味では、国連憲章そのものを見直していくという方向一つあると思うのですね。  今、国連の方では国連改革をやっていて、安保理改組の問題も含めて憲章の見直しということをやっていますよね。例えば日本からこの国連憲章の百条ですか、こういう規定をもう一回見直して、日本やあるいはドイツもそうだと思いますが、こうした急激な為替の変動によってお給料の非常に不平等というか不均衡が起きないような何か提案を、国連憲章改正に向けての提案をしていくのも私は一つ方向ではないかと思うのですが、それについてはいかがでしょうか。
  63. 高野幸二郎

    ○高野政府委員 この国連憲章の百条で言っております国際機関公務員としての中立性もしくは忠誠義務ということ自体は、これは国連に限りませずおおむねすべての国際機関において確立している原則的考え方でございますから、この百条自体を変えるということは恐らく余り現実的な方途ではないんだろうと思います。  ただ、先ほど議員るる御指摘のとおりの問題点というのはございまして、我々としても、という意味は、これは日本だけではございませんで、ドイツその他多くの先進国が抱えている共通の問題でもございますので、今後何か国際的に通用するような手当てで実体的な解決を図りたいというふうに考えておりますので、ただいまの議員の御提案といいますか、お考えについても今後十分に踏まえさせていただきたいというふうに考えます。
  64. 松沢成文

    ○松沢委員 この問題、ちょっと最後の質問にしますけれども先ほど話が出ました、ドイツもマルク高でかなり職員の皆さんの給与への影響が出ているということなんですが、私もちょっと時間がなくて調べられなかったのですが、ドイツが何か工夫をもって対応しているという話は聞いたことがあるのです。  今外務省の方ではこのドイツのやり方というのを御存じなら教えていただきたいし、私自身、給与面で追加給与を日本から出すのは非常に難しいと思うのですが、例えば何年間か国際機関に勤めたら、退職金というのではないのですけれども、十年間奉仕をしていただいたら、退職した時点で少し何かのフリンジベネフィットを差し上げるというような方向であれば国連憲章との対応もできるのではないかと思うのですが、この二点についてはいかがでしょうか。
  65. 高野幸二郎

    ○高野政府委員 ドイツは一九七九年に一つの制度を設けまして、これは国連に限りませず欧州地域以外に勤務するドイツ国籍の人、この人たちに対して在職中に給与補てんを直接行うという制度を一九七九年に設けてやっておりました。その後、これは調べましたが、理由は定かではございません、推測としては国連の場合の憲章百条の忠誠義務との関係があるのかもしれませんが、表向き理由ははっきりしておりませんが、ドイツはそれをやめまして、四、五年前に、在職中給与補てん分を積み立てておいて、退職後まとめて本人に渡すということを始めました。ところが、これまた事情が必ずしも定かではございませんが、それをドイツ国内で再検討いたし始めまして、いまだに国内的に調整がついておりませんで、今申し上げた退職後まとめて払うという制度は昨年来ストップしておりまして、動いておりません。私ども理解といたしましては、この問題の難しさを示す話ではないかなというふうに理解しております。     〔委員長退席、福田委員長代理着席〕
  66. 松沢成文

    ○松沢委員 この問題については、私も行って現地の方々のお話を聞いていると、かなり厳しい状況であるな、もう日本の新聞も自分で買うのもお金が厳しい、みんなで回し読みするしかない、こういう工夫をしながら、厳しい中を頑張っていらっしやる。  確かに国連に入ったのは自分の意思だから、その国連の決まりに従ってやるのは当然じゃないかという考えもありますけれども、やはり日本の国際貢献の中で人的貢献というのは大変重要な部分だと思います。こういう国際機関で働いている方が昨今の急激に変動する経済事情の中でも安心して働けるような環境を整えていただくというのは、私は非常に大切な部分だと思いますので、今後ともこの件については、当事者の皆さんとも話し合って、何かいい方法を見出していただければと思います。これは要望にしておきます。  続いて、同じ国連問題なんですけれどもサミットが今月中旬にカナダのハリファクスで開かれる、その政治討議の最大のテーマ、いろいろあるかと思うのですが、やはりボスニアの問題であろうかと思います。  日本から見ると、旧ユーゴというのは大分遠い国でありますから、直接的な利害関係というのは少ないと言ってもいいと思いますが、今国際社会、特に国連が直面している最大の課題というのはこのボスニア問題だと思います。  停戦合意国連が入っていって仲立ちをしてみたり、あるいは安全地帯をつくってみたりしても、なかなかうまくいかない。そのあげく、国連がNATOと話をして空爆という事態にも発展し、その報復として今度は捕虜をとって、またそれを人の盾に使ってああいう忌まわしい形になっていった。  また、それに対してイギリスやフランスは兵力を増強して対応する。また、アメリカ国内的に難しい状況を抱えながらも、そういう方向になりつつある。大変もう泥沼の状況に今突入をしているのがボスニアの状況だと思います。  そこで、外務大臣、まず初めに、このボスニア問題に対して、どのような御認識をお持ちで、この最悪の事態を打開するとしたらどういう方向性が必要なのか、可能なのか、大変難しいと思いますけれども、この辺についてのお考え方をお聞かせいただければと思います。
  67. 河野洋平

    河野国務大臣 旧ユーゴの紛争は、ことしの一月に四カ月間停戦協定をスタートさせまして、四月の三十日までの間、この停戦の合意がおおむね、完全にとはいかないようでありましたけれども、おおむね、大筋守られてきていたと思います。それが、四月の末、この停戦期間が切れると同時に、また新たな戦火が起こるという状況になりました。  明石国連代表も大変努力をされましたし、コンタクトグルーブも随分と努力をされておられました。私もちょうどその時期現地におりましたけれども、何とか停戦期間を延ばして、停戦期間を延ばすことによって話し合いの環境をつくるということができないかということで、大変努力をなさったわけですが、結果、停戦期間は延びずに停戦期間が切れてしまったわけです。  その後、今お話しのように、各地で戦火が再び起こっておりますことは本当に憂慮にたえないところでございます。さらにまた、国連要員が拘束されるという状況になるに及んで、これはもう本当に、泥沼化といいますか、最もあってはならない状況に向かって進んでいるというふうに言わざるを得ません。  一体どうすればいいのかということでございますが、このコンタクトグループを初めとしてさまざまな提案をいたしておりますが、もうまことに複雑で、そうした提案がどうしても合意というものができないでおるわけでございます。しかし、どんな提案であれ、どんな話し合いであれ、どんなに難しい交渉であれ、話し合いによってその交渉が行われるという原則だけは早くつくり上げなければならない。これは、戦力をもって、武力をもって問題を解決しようとしても、それは解決できるはずがない、そしてとうとい命が失われていく、しかもそれは、その犠牲が市民にまで及ぶということを関係者の政治的指導者がみんな自覚をして、そして話し合いによって問題の解決策を導き出すという、この一点にまず進んでほしいというふうに私は思っているわけです。  国際社会が大変大きな深刻な事態だという認識を持って問題解決に臨んでおりまして、おっしゃるように、もうあと十日後のサミットに参りますれば、恐らく、サミット参加国の首脳も外相もかなりの時間を割いて、このユーゴ問題を正式の議題とするか、あるいは食事のときの議題にするか、食事ももちろんワーキングランチがあるわけでございまして、そのときの話になるのか、あるいはさらに別途この問題で話し合うというようなことがあるのか、よくわかりませんけれども、相当な時間を費やしてこの問題について議論がされるに違いないと思っておるわけでございます。  私も現地を拝見をしまして当事者の意見も聞きましたので、そうしたことを踏まえて、私なりに、話し合いによる解決ということについて、国際社会が一致して提案を支持をして解決に向けて進むというふうにならなければいけないと思っているわけです。  これまで我が国は、コンタクトグループの努力、コンタクトグループの提案というものをずっと支持してまいりました。若干コンタクトグループの中に温度差があるのじゃないか、提案に少しニュアンスの違いがあるのじゃないかなどと言われておりますが、そうしたことではなくて、やはり、このコンタクトグループの提案、国際社会がそれを支持する、これは一枚岩で、こうやっていく、こうやろうじゃないかという強いメッセージが伝わるということが重要なのだろうと思っております。  ぜひ一日も早く現在の状況を脱してほしいと、強く念願をしております。     〔福田委員長代理退席、委員長着席〕
  68. 松沢成文

    ○松沢委員 今の状況を見ていますと、セルビア人勢力とボスニア政府軍の間に国連が入らなければいけないわけですが、そのセルビア人勢力のルール違反がかなりあるということで、セルビア人勢力対国際社会国連という、間に入るべき国連、PKOの存在が完全に敵対関係に入りつつある。これは、かつてのソマリアでの、片方の当事者に国際社会国連が肩入れをしてしまう格好に引きずり込まれていく、こういう状況だと思うのですね。  具体的にお聞きしたいのは、今後のボスニアも含めたPKO活動について大臣がどう考えるかということなのですが、今NATOの理事会、あるいはガリさんを初めとする国連首脳部には、今後どうしていくかについて対立があるように私には新聞報道等では見受けられるのですね。ルール違反をするセルビア人勢力、これはやはり許しておくわけにはいかない、これを許しておいたらもうどうにもならないということで、目には目をじゃないですけれども、それに対しては断固として挑んでいくという形であり、ところがガリさんは、それをやるとソマリアになってしまう、だからPKO本来の任務である仲裁だとか停戦監視、こうした任務にとどめておくべきだ、こういう考え方のぶつかり合いがあるようにも見えるのです。  こういう状況に至って、外務大臣としては、どちらの方向性が正しいのか、二者択一はできないかと思いますけれども、ボスニア問題に関するPKO活動のあり方について、もう少し具体的にお聞かせいただければと思うのです。
  69. 河野洋平

    河野国務大臣 PKOの問題につきましては、私ども日本の態度は、言ってみれば古典的というのでしょうか、従来のPKOのあるべき姿というものが望ましい姿だというふうに思っているわけでありますが、おっしゃるように、ユーゴスラビア、旧ユーゴのPKOはそういう状況でない方向に今進んでいる、つまり第七章に言及されたPKO活動ということになっているわけです。  ただ、本当に現地は複雑でございまして、御承知のとおり国連も、PKO活動を、一つに分けて、クロアチアにおけるPKO活動、ボスニアにおけるPKO活動、さらにそれ以外のマセドニアの予防外交における国連の活動というふうに幾つかに分けてやろうとか、それは本当に苦心惨たん、苦労をして、何とかうまくやりたいという努力をしておられるわけです。  しかし、状況は毎日のように変わっておりまして、まさかと思うような国連要員の拘束、人間の層といいますか、そういう状況が起こってくる。こういう状況が起こると、これはまた、どうも少し対応が違うのじゃないかということもあると思うのです。  さらに、フランスもイギリスも相当大量な人間を投入して、フランスのように三千人、四千人という部隊を投入して、既に三十数人あるいは四十人近い犠牲者を出しているということになると、これはこのままでいいのかという国内世論も起こってくるでありましょう。  本当にどういうスタイルがいいのかといっても、相手の出方、毎日毎日のように、その相手も幾つかの相手の出方等もあるわけですから、なかなかこれを、どの姿がいい姿か、どうなればいいかといっても、それはなかなか書いにくいところがあるわけでございます。  繰り返しになって恐縮でございますが、いずれにせよ、解決策について話し合えるような環境をどうやってつくるかというのが今一番重要ではないかというふうに私は思っておりますが。
  70. 松沢成文

    ○松沢委員 このボスニア問題について今度のサミットで必ず大きな議論になります。そこで、私はぜひとも河野大臣日本考え方というものをぶつけて発言をいただきたいと思うのです。ボスニアは、ユーゴは非常に遠い存在ですけれども、私は日本にとって、この問題に対していかに意見を言っていくかということが大変問われていると思います。それは三つの理由があるのですね。  一つは、カンボジアのときもそうでしたけれども、明石康さんという私たちの同胞を当地の国連の最高責任者として抱えているという日本の立場。  二つ目は、これは新聞報道なんで確かだかわかりませんが、セルビア入の実質的な指導者でありますカラジッチ氏が、紛争の和平工作については日本や中国のように直接利害のない国が仲介してくれるのが望ましい、こういう発言をしているわけですね。当事者間での泥沼の中での話し合いというのは非常に難しい。日本や中国のような直接利害関係がない国が汗を流してくれる可能性はないだろうか、当事者からそういう要望が口に出ているというのが第二番目であります。  三つ目は、日本が今後国連の中で安保常任理事国を目指すのであれば、当然常任理事会の場でボスニア問題というのは大きなテーマになるわけで、そこで積極的に発言をする、また考え方を表明し説得をできる、こういう役割を日本が担えるかどうか、大変重要なことだと思うんです。  私は、以上の三つの理由から河野大臣にこのボスニア問題に対してサミットにおいて積極的に発言をいただいてイニシアチブをとっていただけるような行動を望むわけでありますが、この辺についてはいかがでしょうか。
  71. 河野洋平

    河野国務大臣 先ほどから、G7におけるユーゴ問題は極めて重要な問題だ、相当な時間が費やされるに違いないと私は申し上げておりますが、これは少し私の言葉が過ぎていて、五時間やる討議のうち四時間これをやっている、そういう意味ではないのでございまして、この問題について考え得る時間を恐らく超えて議論があるかもしれないということを申し上げたということを、誤解があるといけませんので申し上げておきたいと思います。  それはサミット、今度は経済議論になるときにはロシアも参加をして議論が行われるということになると、コンタクトグループのメンバーが全部そこに一堂に会するわけで、そのコンタクトグループの人たちはコンタクトグループの人たちで、別途この問題については割合としょっちゅう会って議論をしているということもあるわけですね。そのコンタクトグループの議論に加わってないのが日本であり、カナダであり、イタリーであるわけです。こういうメンバーから議論が出されるとそれに対して議論がいろいろとある、そんなふうに思っているわけです。  話をもとに戻して、お尋ねのように、確かに明石さんが現地の責任者として本当に苦心しておられます。私も現地で明石さんと話をしてみて、それはなかなか大変だ。当事者からは明石さんに対する批判も相当あるというふうに私は実は聞いて出ていったわけです。実際は私にはそういう明石さんに対する批判はありませんでしたけれども、それはきっとあるに違いないと思うのですね。この問題、恐らく日本の昔流の言い方をすれば三万一両損みたいな格好でまとまる以外にまとまりようがないんだろう。そうなると、一両損してもやはり不満は不満だということであれば、そういう提案をする人に対する批判というものは出てくる可能性もあるわけです。しかし、そういうことも承知の上で勇気ある行動あるいはさまざまな発言を明石さんはしておられるわけで、それは大変つらいということになればもう明石さんをサポートする、もう思い切って全面支持するよという国、勢力がなければ明石さんの仕事は進まないと思うのです。  ですから私は、余り日本人ばかりひいきしていると言われることも問題があると思いますけれども、しかし今日の明石さんの努力を見てみれば、仮に明石さんが日本人でなかったとしても我々は思い切ってサポートする必要があるだろうという気持ちで明石さんをサポートしたいと思っていることが一つです。  それから、カラジッチ氏の発言というのを私は新聞で見ました。たしかカラジッチ氏の発言だったと思いますが、この発言には二つ意味があると思うのです。確かに日本とか中国とかというものは手を汚してない、余りこれまでのいきさつに巻き込まれていない、そういうところが出てきてほしい、こういう素直な率直な意見というものも一つあると思います。  他方、恐らくこのコンタクトグルーブの提案について非常に不満がある。だめだよ、ああいう提案はおれたちはのめないよ、ああいうんじゃなくてもっと別の提案を出してほしい、そういう気持ちもあるかもしれません。これは御本人から直接聞いたわけじゃありませんから真意はよくわかりませんが、私はちょっと見た感じでそういう感じもあると思うのです。  先ほどから私申し上げておりますのは、今コンタクトグループの一つの提案が出ている以上はこの提案でぜひ合意をしてほしいという一致したメッセージが伝わっていた方がいいのであって、コンタクトグループはこういう提案をしている、しかし日本は来てこういう提案をしていったと、全然別の提案をしていった。例えば線の引き方もこういう引き方じゃなくてこういう引き方にしろというような別の提案が出てきたということになると、これはコンタクトグルーブの提案の説得力というものを著しく欠いてしまうことになりはしないか。したがって、今日本当てこい、中国も来てくれ、こういろいろ言われて、もちろん我々は関心を持って、何か和平に向かって、それから新しい国づくりに向かって支援はするけれども、その和平のプロセスにかかわってきたコンタクトグループの提案というものを今は我々はサポートするという気持ちがむしろ問題解決を複雑にしないで、もう十分複雑ですけれども、これ以上さらに複雑化させないためにはその方がいいのではないかという感じを持っております。  それから、国連の場で我々が何か重要な役割を果たすためにもこの問題にかかわっておくことが大事だというお話は、我が国が安保理常任理事国になるとならぬとにかかわらず、やはり国際社会の問題を解決するために我々が果たす役割というものを自覚をしてその責任は果たしていくということが必要だと思います。私があえて紛争発生以来初めてクロアチアヘ参りましたのもそういう気持ちがあってのことであって、我々はこの紛争を見て見ないふりをするとか、なるべくかかわり合いたくないという態度をとるということは、とるべき態度ではないというふうに私は思っております。
  72. 松沢成文

    ○松沢委員 いずれにしろ、サミットでの大臣の御健闘をお祈りいたします。  次に、昨今の新聞報道ですが、オーストラリアでのスパイ活動に関連してお伺いしたいと思うんです。  先月末、オーストラリアの有力新聞が相次いでオーストラリア政府の盗聴疑惑について報じたわけであります。一つは、オーストラリア政府がキャンベラの日本大使館の外交、通商上の機密を組織的に盗聴している。二つ目が、オーストラリア、アメリカ政府による中国大使館、キャンベラの中国大使館に対する盗聴事件の問題。三つ目が、以前駐インドネシア豪大使館を日本大使館が盗聴をしていた、こういう何か信じられないような新聞報道、オーストラリアの新聞報道を日本の新聞が伝えたわけでありますが、こうしたスパイ疑惑報道というのは、私なんか外交に疎い者にとっては余り信じられないことなんですけれども、例えば、インドネシアのオーストラリア大使館を日本大使館が傍聴していて、何か、それの証拠もつかまれて公表されたという報道がありましたが、この点については外務省の方、事実を確認しているのでしょうか。
  73. 野村一成

    野村(一)政府委員 先生御指摘のとおり、二つの方向と申しますか、日本がやった、あるいは向こうがやったという形での報道がなされたことは私ども承知いたしておりまして、今御質問のインドネシア云々というのは日本がというケースなんでございますけれども、これにつきましては事実無根であるということをきちんと、そういう立場を鮮明にいたしまして、またあわせて、そうであるわけですから、そういう報道がありました新聞に対しても、きちんとその旨抗議いたしております。
  74. 松沢成文

    ○松沢委員 それでは、外務省はオーストラリア政府に対して、日本大使館が盗聴されたという方ですね、こういう新聞報道があったのですが、例えば、外務省はちゃんとオーストラリア政府に対して、新聞でこういう報道がされていたけれども、それは本当なのか、照会をしたというふうに新聞には載っていましたが、照会をしたのであれば、それについてオーストラリア政府から何らかの返答があったかどうか、その辺はいかがでしょう。
  75. 野村一成

    野村(一)政府委員 ただいまの御指摘の報道につきましては、早速五月二十五日、これはキャンベラにおきまして外交ルートを通じて照会、申し入れを行っておりまして、あわせて、昨日でございますけれども、若干レベルを上げて、キャンベラでも、また東京におきましても先方に申し入れを今やっております。その結果、オーストラリアが言っておりますのは次の二点でございます。  オーストラリアとしましては、先般キーティング首相が公賓として来日されました。その際、村山総理との間で合意の上、内外に発表、発出いたしました日豪パートナーシップに関する共同宣言というのがございます。それにあるように、日本を最大の友好国の一つとして考えており、このような日豪両国間の友好関係に背馳するようなことを行う意図は毛頭ないというのが一点でございます。二つ目としまして、他方、これは一般論として、豪州政府としては諜報関連の報道に関してはノーコメントの立場を一貫してとってきているわけでございまして、今回の一連の報道に関しても同様の立場を踏襲せざるを得ないので、その点は御理解いただきたい、そういう趣旨の回答を得ております。
  76. 松沢成文

    ○松沢委員 そういう共同宣言がありながらこういう報道がなされるというのは、非常に私たちにとっても不信感をあおるわけなんですが、逆にオーストラリア政府に対して、事実関係調査をしてそれを日本に、日本にというか国際社会に公表するよう、こういう逆に、言うべきことは言った方がいいのではないかと思うのですが、その辺についてはいかがですか。
  77. 野村一成

    野村(一)政府委員 こういう諜報と申しますか、そういう関連の情報につきましてはノーコメントという対応をとっておるわけでございますけれども、豪州政府考え方をそんたくいたしますと、やはり特定の国とか部分的な報道につきましてそれを明らかにするということになると、その波及効果と申しますか、ではほかはどうなんだということで、収拾がつかなくなるという点があろうかと思います。  いずれにしましても、先ほど申しましたようなノーコメントという立場を一方では言っておりますけれども他方日本を最大の友好国の一つとして考えております、両国間の友好関係、協力関係に背馳するようなことを行う意図は毛頭ないということを言っております。私どもは、その点につきましては額面どおり受けとめたいと思っております。
  78. 松沢成文

    ○松沢委員 この一連のスパイ報道に関連してちょっとお伺いしたいのですけれども、冷戦時代というのは、米ソ間、東西間のスパイ合戦がかなり過激に行われていたというふうに私も思ってはおりますけれども、その冷戦が終わって、そういう東西間の例えは軍事情報等のスパイ合戦というのは大分少なくなったでしょう。ただ逆に、それぞれの国が、国益を守るために、大きな極の中ではなくて、それぞれの国が独自に情報収集能力を持って外交をしていく。国益を守る立場からいえば、それは極めて当然なことであると思うのですけれども日本の情報収集能力については、まだ大変貧しいという指摘が内外でなされておりまして、それは大使館が集める情報も極めて少ないし、また、それを集めて分析をする情報機関というものも正式な形で持っているわけではないわけであります。  ただ、今後日本が一国の外交を独自に自立してやっていかなければならないという立場から見ると、この情報収集能力というのは大変重要なものであると思うのです。  そこで、特に海外における情報収集能力を高めるために外務省は何か方向性をお持ちなのか、それとも今で十分だと考えておられるのか、その辺についてお聞かせください。
  79. 池田維

    ○池田政府委員 ただいま御指摘のございました、外務省におきます情報収集あるいは分析機能の強化という課題でございますけれども、私ども外務省の者といたしましては、これは外交を推進していく上で非常に重要な課題であるというように考えてきておりまして、従来ともこの面での仕事というものを重視してまいりましたけれども、今後とも一層強化していきたいというように考えているわけでございます。  幾つかの面でこの課題に取り組んでいくということがございます。まず一つは機構面でございますけれども、例えば、一昨年の八月でございますが、現在の国際情報局というものを設立いたしまして、ここで情報分析機能に特化するという局をつくりました。  それからもう一つは人的な面でございますけれども、これは単に在外公館のみではございませんけれども、本省も含めまして、人的な拡大というものを図ってまいりたいと思っております。これは量的な面も当然でございますけれども、質的な向上というのは外務省自身が省員の研さんのために努力していかなければいけないと思っております。いずれにしましても、人的な面での強化ということをもって情報の関係の業務のレベルアップを図っていきたいということでございます。  それからもう一つは、やはり在外公館の情報収集のための設備であるとか、あるいは通信体制であるとか、そういった面の問題がございます。例えば通信機能でございますと、携帯電話であるとかポケットベルであるとか、あるいはパラボラアンテナであるとか、その他、回線のないところはインマルサットの回線といったようなものを設置するというようなことで、予算的な拡大ということも必要かと思っておりまして、そういう面で、機構とか人事とか予算の面につきまして一層の強化を図っていきたいということでやっているわけでございます。
  80. 松沢成文

    ○松沢委員 ちょっと、その人の面で関連してお伺いしたいのですが、きのうおとといのニュースに、フィンランド大使に高原須美子先生を抜てきするというのが載っておりました。私は、以前から大使、公使、こうした人材に民間人をもっと登用するべき、やはり外務省の中でずっと育ってきた方だけではちょっと対応できない部分があるのかなというふうに思っておりました。  そこで、高原大使の場合はちょっと観点が違うかと思いますが、例えば、日本の海外大使館に、その地域に長く住んでいてその地域の情報をかなりつかんでいる、こういう人を大使、公使に抜てきをするような方法もあるかと思うのですね。私ども海外によく出ていますと、もちろん、大使館の皆さんからいただく情報も大変勉強になりますが、逆に、民間の会社で長くそちらに赴任をしている方の持っている、民間の人たちの生の情報というのは本当にすごいものがあると感ずる部分があるのですね。こういう情報をいい意味で国益に生かしていくというのも私は一つ方向性だと思います。そういう意味で、大使、公使の民間人の活用を積極的に進めるべきだというふうに私は思っておりますが、こういう観点に関してはいかがでしょうか。
  81. 池田維

    ○池田政府委員 ただいまの御指摘の、現地で優秀な人材というものを外務省で採用できないかということでございますけれども、一度に大使に採用というようなことは今まで例はございませんけれども、一般論として申しますと、例えば名誉総領事というような形で、大使館あるいは総領事館がないようなところで、特にその社会に根を持っていて、しかも情報に通じておられるというような人材を名誉総領事という形で採用したことはございます。それから若い人ですと、例えば派遣員であるとかあるいはJICAの青年協力隊で出ていった人、こういう人たちを外務省の本官として採用して、その地域の専門家にするというようなこともございます。それから国連関係でございますと、国連で活躍されている方に公使になっていただいた、そして外務省の人間として一時期仕事をしていただいて、その後また国連に帰っていただいたというようなケースもございました、したがいまして、私どもといたしましては、一般論といたしましてはいろいろな人材をできるだけ幅広く積極的に活用させていただきたいというように考えております。
  82. 松沢成文

    ○松沢委員 ぜひともその方向でお願いしたいと思います。  次に、ちょっと東アジアの問題についてお伺いしたいと思うのですが、昨年の七月二十五日、バンコクのホテルで東アジア九カ国外相会議というのが開催されて、ASEAN六カ国と日本、中国、韓国の外務大臣が出席をしたという情報を得ております。これには河野外務大臣も出席したということでありますけれども、今日の世界情勢が冷戦後多極化また不安定化していく中で、この東アジアの情勢というのも非常に複雑かつ多様化しているわけでありまして、こういう状況の中でこうした会議が開催されるというのは非常に意義のあることだと考えておりますけれども、まず、この会合はだれがどのように呼びかけた会合で、どのようなテーマが話し合われたのか、外務大臣、出席したということなのでお聞かせいただければと思います。
  83. 川島裕

    ○川島政府委員 仰せのとおり七月二十五日に、ASEAN側がホストの場でございまして、そのASEAN六カ国の外相が主催して、日本、韓国、中国の外相を招待したという形の昼食会でございます。これは食事をとりながら自由な意見交換をするという趣旨でございまして、特段のテーマ、議題等を前もってつくるというようなことはなくて、全く自由にアジア地域における最近の動向について意見交換が行われたということでございます。具体的には、例えばEAECの話とかそれから北朝鮮の核の話等々がやりとりのアイテムだったというふうに承知しております。
  84. 松沢成文

    ○松沢委員 その会合では今後このような会合を将来的にも開催すると同意したと新聞報道されておりましたけれども、ことしも開催をされるのでしょうかというのが一点目です。  もう一点は、七月末から八月初めにかけてブルネイでASEAN外相会議と拡大外相会議が開催されるという予定だそうですけれども、こういう機会にまた六プラス三というのですか、この会合を去年に続いてことしも定例化して開催するという方向性なりあるのでしょうか。
  85. 川島裕

    ○川島政府委員 お答え申し上げます。  昨年の、まさにこういう昼食会もASEAN側がホストの場でございます。つまり、拡大ASEAN会議とかASEAN地域フォーラム等の際の昼食会でございます。必ずしも定期的にという話ではなかったわけですけれども他方、必要に応じて、また関係者の都合に合わせてこういうのをやって相互理解を深めるということ、それはそれで結構なことではないかというふうに私ども考えておりますし、そういう雰囲気だったということでございます。  そこで、本年でございますけれども、御指摘のとおりブルネイで八月一日にはASEAN地域フォーラムがあって、その後、二日、三日にASEAN拡大外相会議があるわけでございます。そこで昨年あったような昼食会をまたやるかどうかということは今のところ決まってはおりません。これから全体の日程を詰めていく中で、ホストたるASEAN側がどういうふうに取り進めるかということがポイントになると思いますけれども、詰めていく予定でございます。
  86. 松沢成文

    ○松沢委員 ちょっと話が違いますけれども、昨年の十月に韓国の李長春さん、この方はAPEC大使だそうですが、この方が日中韓三国の対話、すなわち外相会談があるいは首脳会談の開催を提唱しました。中国外務省もこの件については前向きな関心を示しているということですけれども日本はこの提案に対してはどんなふうに考えているのでしょうか。
  87. 川島裕

    ○川島政府委員 日中韓ということにつきましては、三国の中では韓国が関心を非常に寄せているという印象を得ております。これは特に、中韓正常化ができましたのは三年前、九二年でございますけれども、その中国と新たな関係をつくった韓国として、歴史的にも地理的にも近いこの三国の関係を深めたいという思いは韓国内において非常に強いわけでございます。  例えば、金泳三大統領も、日韓首脳会談、どれかの場だったと思いますけれども、この三国に共通するのが漢字と漢方薬と、それから地理的に近いものですから環境問題だ、これについて三国でいろいろやろうではないかといった提案をされたことがございますけれども、そういう流れの中でこの李長春APEC大使も提唱されたのだろうと思います。ただ、これは大使が提唱されたわけですが、それをフォローアップする形で正式に外交ルートでどうこうというふうな形にはなっておりません。ですから、一つのアイデアと申しますか考え方として提起したということだろうと思います。  この種の、確かにサブリージョナルといいますか地域でございますので、いろいろな意味で共通点のある地域がと思いますけれども、ただ、そこの三つだけ集まって閉鎖的に何かやるとかそういう話ではないとすれば、必要に応じて逐次ということはあるのだろうなという気はいたしております。  ただ、やはり地域全体として協力を進めるという観点だと、そこはもうちょっとより大きな、APECとかあるいはASEAN地域フォーラムとかございますし、三国だけでやらないとうまくないというか、ほかは排除というような、余り閉鎖的な形になると、それはいささか問題がなと思いますけれども、隣国の御縁という観点からすれば一つの固まりかなという気もいたす次第でございます。
  88. 松沢成文

    ○松沢委員 これまで東アジアにおいては日本に対する戦争中の忌まわしい記憶というのが残っているわけで、今回の戦後決議の問題でもその点がありましたけれども日本を含めた東アジアの国々の間の対話が非常に難しいというふうに言われてきたと思います。事実そうだったと思います。  ところが、今私が指摘したように、最近ASEAN諸国の方から東アジア九カ国の会談を開催したいと申し出てきたり、既にこれは一回実現しているわけですね。また、日本に対しては特に不信感や警戒心を持っている韓国の方から、日本を含む日中韓の三国の対話を進めたいという提案も出てきている。こうした動きはすばらしいことだなというふうに私は認識をしているのです。特に、こういう提案が戦後五十周年のこの年に出てきたというのは意義深いことだなとすら思っております。  東アジア九カ国が、また東北アジア三カ国がこうした不信感を取り除いて信頼を深めることは東アジア全体の平和と繁栄にとっても非常にいいことだというふうに私は思っております。この点については、外務大臣はいかがお考えでしょうか。  また、こういう会談というのは、EAECだとかAPECだとか、そういうこととは関係なく、こうした地域での対話というのを進めておくということも意義があると私は思うのですが、この点についてもいかがでしょうか。
  89. 河野洋平

    河野国務大臣 信頼関係をつくり上げるために話し合うということは大事なことだと思います。ただ、一つの信頼関係をつくるためにもう一つに不信感ができるということであってはなりませんが、私は基本的に言って、話し合わないよりは話し合う方がよろしいというふうに思っているわけです。  ただ、言うのは簡単ですけれども、何カ国かの外務大臣が時期を合わせて一カ所に集まるということはなかなか難しい、これはやってみるとなかなか難しいことでございます。正直、私も、これは外に出て、どこの国を訪れて、どこと会談をしようと思っても、それはもう本当に一生懸命やっても、できる回数というものは限られているということをつくづく自分で、経験で知りましたが、さらにそれが三つ、四つ、五つと重なると、実現するというのは非常に難しいと思います。  昨年、ASEANの拡大外相会議がございましたときに、昼食を誘われて、私、出てまいりまして、さっき議員御指摘の昼食会に私、出ました。あのときにはもうタイにみんなおりましたから、いよいよ会議が始まる前、直前でしたか、あるいは会議の合間でしたか、そういう会をやるということになると、それは実現が可能でございますから、それから私も全く外務大臣になったばかりでほとんど顔を知らない方ばかりですから、そういう会議に出て顔見知りになっておくことは意味があると思って、私も参加をさせていただいて、非常にざっくばらんな話をしたことを覚えております。さあ、そういうものを定期的に、いつ幾日どこでやるぞと、こう決められると、これはまたなかなか、それぞれの国によって、出られる国もあれば出られない国もあるということになると思うのです。  ですから、何か問題があり、あるいは全然問題がなく、議題がなくてもいいのですけれども、何かの呼びかけでどことどこが集まって話をする。そのことがそれ以外の国に不信の目をもって見られてしまって不信感、溝ができるなんというのは困りますけれども、そうでない限りにおいて、集まって話をするということは、いいチャンスがあれば、それは私は悪いことでは決してない。つまり、テーブルを囲んでお茶を飲むことが、疑念を晴らしたり、もし敵意なんというものがあるとすれば、それを減じていくという非常に重要なことだというふうに私は基本的には思っております。  個々具体の問題になりますと、さっき申し上げたように、それはいろいろ物理的な問題があってみたり、それはそう思わない国があったり、人があったりということがあってはいけませんから、その辺は多少気をつけなければなりませんが、内向きになって、なるべくない方がいいと考えるよりは、むしろそういう場面があれば話し合うということは、一般論からいっていいことだというふうに私は思います。
  90. 松沢成文

    ○松沢委員 これまで私は、この問題に対する質問で、あえてEAECという言葉は使わないで質問をさせていただいたのですね。それは数年前、マレーシアのマハティールさんが提唱して以来、EAEC構想というのが、その実態とか実像がどういうものなのかなかなか解明されないままに、さまざまな誤解あるいは反対、思惑、誤報というのがまじり合って、来てしまったという非常に不幸なこれまでの経緯をたどっているなというふうに私は思うのです。EAECというのは固まった機構でもなければ、APECに対抗するものでもなければ、ただアジアの非常に文化も近い仲間がお互いにまず話し合おうじゃないか、経済の問題、地域の問題を話し合おうじゃないか、こういう発想だと思うのです。  外務大臣はこのEAECというものをどういうふうに把握を、認識をされていますでしょうか。
  91. 河野洋平

    河野国務大臣 EAECについては、今議員がどういうものかわからない、誤解が多いというふうにおっしゃいましたが、このEAECについてはアメリカもどういうものかよくわからない、あるいは誤解もあるという話があって、EAECのメンバーは何人かで集まってアメリカ説明に行ったということがあるようですね。そして、その事務局はこうで、こういう組織で、こういうふうにやるのですという説明をなさった。逆にそういう説明を聞くと、事務局を持ってこういうふうにして、こういう集まりなのだと言われてしまうと、何かそういう形ができるというふうにまた逆に思われたらしいということなどを伺っておりまして、これはなかなか難しいものだと。説明をしないで、ほわっとしたものだと言えば、したものだと言うだけで、何だかよくわからないから説明をしろと言われ、説明をすればしたで、組織図みたいなものがあったかどうか知りませんが、こういうものだと言われてみると、そんなに整理をされたものだ、固まりになってしまうのかというふうに思われるというようなことで、なかなか難しいものだなというふうに私はその話を聞いていて思いました。  いずれにしても、確かに今おっしゃるように、APECの向こうを張るものじゃないよというのは、それはもう全くそのとおりであって、むしろAPECに参加をしている国の中で話し合おう、こういうことなのだろうと思いますが、どうも会議の前にあらかじめ何カ国かで話し合って、多数を擁して主張が出てくるのは困るというふうな話がまた他方出てきてしまったりするものですから、言ってみれば、こういう言い方はどうかと思いますけれども、最初のボタンのかけ違いといいますか、それでどこまでいってもうまく合わないというような状況のようにも見えるのですね。説明を幾らしても、なかなかみんなが気持ちよく、結構じゃないかと言って祝福をされるという状況に今必ずしもなっていないというところが少し残念だと思っているわけです。  EAECの話をおっしゃいましたから、あえて私の方からも申し上げますと、参加するのかしないのかという話があって、それがさらに進んで、日本アジアをとるのかアメリカをとるのかみたいな二者択一論みたいなところまでその話がいってしまうと、これはもう本当に不幸なことで、今日本にとって、アジアをとるかアメリカをとるかなんという二者択一の場面ではないのであって、もちろんアメリカとも非常に重要な二国間関係を大事にしながら、もちろんアジアの国々ともより密接にいかなければならぬ。二者択一ではなくて、みんな一緒に考えていくということでなければならないわけで、ましてことしはAPECの議長国としてホストを務める以上は、APECに参加をして、来られる国が気持ちよく参加をしてくれるにはどうするかということでよく考えていかなければならぬ、そういう場面であろうということを考えて、この問題には慎重な発言をしているわけでございます。
  92. 松沢成文

    ○松沢委員 このEAECに対しては、アメリカの当時のベーカー国務長官がかなり激しい反対論をふって、これは経済ブロックを新たにつくるものだとか、APECを疎外するとか、あるいはアジアからアメリカを排除するものだとか、こういうかなり激しい主張のもとに反対論をぶったわけなのですが、ただ、時間がたって、先ほどのEAECを進めたいという国からのアメリカへの説明もあったと思いますし、そういう中で最近例えば私も驚いたのは、五月十八日の報道ですと、国務省のロード次官補が、これは東アジア・太平洋担当だと思いますが、アメリカはEAECに反対はしないし、それに日本が参加するか否かは日本の問題であるとはっきりとおっしゃっているということでありまして、大分その議論がこなれてきたのかなというふうには思っております。  そんな中、河野大臣が先日、これも新聞報道で恐縮なのですが、オーストラリア、ニュージーランドがEAECに加わらないと日本も入れないというような趣旨の発言をしたということでありますが、これはどういうお考えのもとにこういう発言になったのでしょうか。
  93. 河野洋平

    河野国務大臣 ちょっとどの新聞がよくわかりませんが、私、自分でそんな激しいことを言った覚えはございません。  ただ、私は何人かの仲間どこの問題を話し合ったときに、豪州、ニュージーランドが参加されることがいいことだという意味のことを申し上げたことはございます。オーストラリアが今アジアに向かって非常な努力を、つまりアジアの一員としての努力を非常に一生懸命やっておられるというふうに思うのですね。そういうときに、地理的にも極めて近いところにあるオーストラリアを、どういう理由かわかりませんが、これは違うのだ、私たちは私たちで集まるけれども、ここは違うのだよという仕切り方はいかがなものかと私はちょっと思って、豪州も参加してもらってもう一緒にやったらどうかなという意味のことは申し上げたことがございます。  もっと言えば、今EUアジア首脳会議構想というのがございます。これは、シンガポールとフランスが中心になって相当進んできて、来年あたりにEUアジア首脳会議をやろうということが具体化に向けて努力をされているわけですが、この話をするとまた、EU側の参加メンバーはEU加盟国ということでいいのですが、じゃアジア側はだれが参加するのかというと、これはまだその範囲がなかなか難しいという議論もあって、これらについても、EAECがいいかどうかという議論とはまたちょっと違う話でございますけれども、これにはどういう仲間でこの首脳会議に臨むかということの話がまだあるということもあるわけです。  ちょっと話が長くなって恐縮ですが、グループをつくるとか、グループというのはちょっと言葉が強過ぎますが、集まっていろいろ意見交換をするとか話し合いをするというのは、私はそれはあると思うのですね。届け出じゃありませんから、そういうサブリージョナルな会合というのはきっとあるだろうと思うのですが、そのときにはやはり、できれば宗教とか人種とか民族とかそういうものを超えて、集まりやすい地域の人が集まってくる、あそこは入れるとか入れないとかという議論をしないで、集まれるところは集まるという自然な形の集まりというものが割合とみんなに認められるものになるのじゃないだろうか、そんなふうに思っているわけです。
  94. 松沢成文

    ○松沢委員 なぜこういう質問をさせていただいたかといいますと、世界の平和や繁栄を目指して、今世界の中の地域のグルーピングというのは非常に多元的というか、重層的に工夫を凝らして各地域つくっていると思うのですね。  例えば、ヨーロッパの安全保障を考えると、アメリカも含めたNATOがあり、あるいはロシアを今度含めた、名前は忘れましたけれども新しい機構ができた、OSCE、あるいはEUという政治統合を目指した団体もあるわけですね。当然アジア・太平洋地域の経済のグルーピングも、NAFTAというのもあればASEANというのもあればいろいろな形でできているわけなのです。  私、一つ危惧するのは、東アジア、東北アジア、この地域にいろいろな外交的な話し合いができるチャネルがまだ形成されていない。それは、さきの大戦が日本に対する警戒心、あるいはこういう感情の問題を残していますからつくりづらいという部分があると思うのですが、例えばASEAN諸国にしてみても、やはりアジアである以上日本と中国ともっと密に連絡をとりながら新しいグループをつくっていきたい、こう思うのは私は極めて自然であると思うのですね。  そういう意味で、そのEAECをAPECに対抗するものとか、機構であるからいけないとか、そうでなければいい、人種はこれを入れなければいけない、こういうごちゃごちゃした議論の前に、本当に素直に東アジアあるいは東北アジアの外交的なチャネルをつくっておくというのは、私は日本外交にとってこれから大変重要な課題であるかと思うのです。そういう意味質問させていただいたので、先ほど伊藤先生からも質問がありましたけれども、その辺については河野大臣いかがお考えでしょうか。
  95. 河野洋平

    河野国務大臣 目的を持って何人かが集まって、それが国際的なメッセージになるという意味を持つ場合もあると思うのですね。それから、不測の事態に備えて友好関係を積み上げる、そういう考え方で集まるという集まり方もあると思うのです。世界には確かにEUなんというものもあればNATOというものもあれば、それはもうまるで目的も違いますし、次元も違う話でございますが、そういうさまざまなものがあって、それはそれなりの目的を持ち、それなりの意図を持って集まってみたり、それから議論をしてみたり、あるいはメッセージを発してみたりしているわけで、どういう意図で考えるか、どういう目的を持って考えるか、そういったことをよく考えながら我々はやりたいと思うのです。  昨今は、相当たびたび外務大臣同上の電話での話し合いとか、そういうものは割合と頻繁にあるのです。ただし、その電話というのはビジュアルには見えませんから、電話でこういうことをしましたよと発表はしても、それはインパクトは余り強くないかもしれない。やはり会った、集まったということが一つのメッセージになることもあるわけでございますから、そうした何を目的にするか、何を意図してやるか、すぐには何にも成果は上がらないけれどもこういうことはしておく方がいいという考え方もあるかと思いますが、そうしたことをよく考えながら、何かやるとすればやりたいと思っています。  先ほど伊藤議員のときにも申し上げましたが、北東アジアについては私は私なりの非常に強い関心を持っております。ただ、朝鮮半島の問題について、これをどういうふうに位置づけてやるかということは、韓国の方々の気持ちというものも大事にしなければなりませんから、そうしたこともよく考えて、あるいは相談をして進める必要があるだろうというふうに思っているわけです。  よく御意見はわかっているつもりでありますが、具体的な作業としてはそうした注意深さというものも必要だろうと思います。
  96. 松沢成文

    ○松沢委員 最後に、中国の問題をちょっとお聞きしたいのですが、中国の核実験がNPT条約の議論の直後にあって、それに対して日本は無償援助を考え直すという、ある意味で中国に対する抗議の措置をとったわけですが、その直後にまたしても大陸間弾道ミサイルの発射実験があったということで、言い方は悪いですけれども、かなり日本もばかにされているところがあるなというように感じてしまうんですが、日本がやはり核軍縮というのを一つの大きな外交上の政策に掲げている以上、隣国、中国でありますけれども、この場に及んでももう一度しっかり態度を表明しておく必要が私はあるんじゃないか。さもなければ、一回はやって、一回対応したけれども、また二回、三回やられて、今度はほとんど発言しないというのでは、これまた極めて不備だと思うんですね。  この大陸間弾道弾のミサイル発射実験に対する日本対応というのは、今外務省はいかがお考えなんでしょうか。
  97. 川島裕

    ○川島政府委員 ICBMにつきましては、関係当局、防衛庁でございますけれども、によりますると、五月三十日に関連の実験を行ったものと推定されるということでございます。それで、確かに地下核実験に対してはああいうことで、ODAについて無償の縮小ということで立場を鮮明にしたわけでございます。  お尋ねのICBMも核と同じではないか、もう一遍何かやるべきではないかということにつきましては、私どもは、確かに、ICBM等々いろいろな兵器の動向については、これは注意深く見守るべきものと思っておりますけれども、発射実験を一回やったからということで直ちにこれについて抗議という措置をとることは考えておりません。むしろ、中国のそういういろいろな軍備と申しますか、国防体制の状況について、これをいろいろな機会に、二国間対話とか、あるいは域内のASEANリージョナルフォーラムも一つの場だと思いますけれども、そういう場で関心を表明して、中国の国防政策全般の透明性とかそういうものを高める、それから、日本も含めて周りの国が非常に心配をせざるを得ないという事実を中国によく理解させるという行動の方がより重要ではないかと考えている次第でございます。
  98. 松沢成文

    ○松沢委員 この核実験の問題、恐らく来るべきサミットでも議論になるかと思うんですが、フランスもその実験の意思ありということで、このままでは禁止条約締結前に駆け込み実験が幾つも出てしまうという状況があると思うんですね。ぜひとも今度のサミットでこの核実験禁止の問題についても日本からも御発言をいただきたい、そのことを要望いたしまして、質問を終わります。ありがとうございました。
  99. 三原朝彦

    三原委員長 引き続いて、山田宏君。
  100. 山田宏

    山田(宏)委員 外務大臣、御苦労さまでございます。  今、松沢委員の方から中国のICBMの実験についての意見がございましたけれども、私は、フランスのいろいろな動きも報道されているとおりでございますけれども、今度のサミットを機にきちっとした共同声明を出していただきたい。日本が発言をするということだけではなくて、やはり何らかの声明文をサミットを通じて発表をするように努力をしていただきたいと考えております。  きょうの新聞にも、フランスの国防相がフランスでの核実験の再開の必要性を強く進言をするようなインタビューが報道されておりました。全体的には、我々の願いとは裏腹に、駆け込みではないんですが、そういった核保有国の、どちらかというとそれぞれの国益に依拠した、国際社会の流れに反するような行動が大変危惧されるものであります。  そういった意味で、今度のハリファクス・サミットでは、この中国の核実験の問題や、また今後の核保有国の対応等について一定の考え方を示していくべきだ、こう考えておりますけれども、そのような準備は、日本の外務省、外務大臣としてあるんでしょうか。
  101. 河野洋平

    河野国務大臣 核保有国の姿勢は、NPTの延長を決める国際会議において出されているわけです。御承知のとおり、あそこではNPTの延長という議論に基づきまして、核保有国は一九九六年にCTBT条約の審議を終えるということを合意として出しているわけです。そして、そのCTBTの審議が終えるまでの間は核実験等は抑制するということを核保有国の合意に基づいてあそこに書き込んでいるわけです。  私は、そうしたことが書き込まれた直後に中国が実験を行ったということに極めて残念な思いをしているわけでございますが、今回のG7、サミットに参加をする核保有国が改めてそのことを宣言するとか声明文として出すということは、私どもも今求めるというつもりはございません。  先般フランスへ参りましたときに、フランスの外務大臣に私は直接、フランスも十分自制してほしい、それから、核保有国としてフランスからも中国に、核保有国というNPTの中で特別な地位を与えられているものとしてお互い自制していこうよという意味のことは言ってもらいたいということは、ドシャレット・フランス外務大臣に申し上げたことはございます。と同時に、世界の核保有国に対して、我が国外務省は外交ルートを通じてそのことは伝えでございますが、G7の場でこの問題について声明を出すということを今求めるというつもりは目下ございません。
  102. 山田宏

    山田(宏)委員 何かその中で、そういう議論サミットの中でするということに不都合な、国際社会にとって不都合な、または我が国にとってそれが余り適当ではない、こう考える理由があるのかということをお聞きをしておきたいと思います。  なぜかと申しますと、ジュネーブの軍縮会議でも、中国の核実験について他国もかなり強い非難があったように聞いておりますし、日本が、河野外務大臣国連で昨年演説をされたとおり、非核国として自分の特色を生かした活動をしていきたいというようなことを表明をしている我が国ですから、やはりあらゆるところでこういう国際社会での懸念を全体として払拭する努力が必要だと思っていまして、二国間でいろいろな発言をしてやっていくことではやはりまだまだ弱いのではないか、やはりお互い相互監視というか、相互声明というか、そういった姿勢というものをつくるように努力をされたらいかがか、こう思っているんですけれども、御所見いかがでしょうか。
  103. 河野洋平

    河野国務大臣 私としてできる限りの努力をこれまでもいたしてまいりましたし、これからもするつもりでございます。しかし、先ほど私申しましたように、G7、サミットとしてこの手の声明といいますか、宣言と申しますか、そういうものをするということは、私も想定をしておりません。  御承知のとおり、サミットというのは首脳が集まって自由な討議をするということではありますけれども議長国がその議題の整理をするということになっておりまして、議長国たるカナダ首脳の意を体して、シェルパがしきりに各国のシェルパとの間で意見の交換をし、議題の整理などが進んでおります。この議題は、今申しましたように、議長国たるカナダが決めるわけでありますが、と同時に各国の合意が必要でございます。そして、定められた議題に基づいて各国の首脳議論をするわけでございまして、そういう中で、今議員お話しのような宣言、声明というものができる状況に現在ないということを申し上げたわけでございます。  他方、このサミットの期間中にいろいろな場面を通じて、私は私の考え方我が国の国民感情等について説明をする場面があれば当然それはいたしたいというふうには思っております。
  104. 山田宏

    山田(宏)委員 ということは、つまり議題には入ってないからできない、だから非公式な場で機会を見つけてやる、こういうように理解をしてよろしいのでしょうか。
  105. 河野洋平

    河野国務大臣 そのとおりでございます。  ただ、問題はその非公式な場面でどれだけの時間があるかということもございます。御承知のとおり、サミットの場面というものは時間的制約はかなりきついのでございまして、そうした非公式な時間がどの程度あるかということについては十分今ここで確信を持って申し上げられる状況ではございません。
  106. 山田宏

    山田(宏)委員 先ほど外務大臣は、ボスニア紛争について多分思った以上に時間が割かれるのではないか、こういうようなお話がございましたけれども、松沢委員も触れられましたけれども、一点だけちょっとお聞きをしておきたいのですが、先日、NATOとEUで決められました緊急対応部隊の設置であります。  この緊急対応部隊という部隊を設置をして、現在の国連保護軍の効果をより大きく高めようということでしょうが、この多国籍軍を設置するということへの日本政府評価というものをお聞きをしておきたいと思います。
  107. 野村一成

    野村(一)政府委員 先生御指摘のとおり、これは六月三日でございますけれども、NATOとEUの国防相会議がございまして、そのときにフランスから提案がなされました。多国籍緊急部隊というふうに呼ばれておりますけれども、これにつきましては、実はその前にそもそも今ボスニアに展開しておりますUNPROFOR、これの活動のあり方について安保理でいろいろ議論されています。先生御案内のとおり、四つぐらいの考え方が出ておりまして、その中での、恐らくその組み合わせ、これは三番目と四番目でございますけれども、その組み合わせについて意見が分かれているというのが実態でございます。  それで、私どもの得ている情報では、ロシアがこれについて後ろ向きの考え方をとっておるということでございます。私ども、実はこの問題につきましては、ボスニアの現在の情勢につきましては、いち早く五月二十九日に外務大臣の談話という形で立場をきちっとさせておりまして、その中の一番大きな柱は、人質と申しますか、拘束されている平和維持活動要員の速やかな解放というのが今一番の関心事でございまして、とにかく紛争当事者による自制、話し合い、平和、それに通じた解決というのを要請していくというのが基本的な立場でございます。
  108. 山田宏

    山田(宏)委員 私のお聞きしておりますのはこの緊急対応部隊の設置についての日本考え方でして、外務大臣のそのお話は資料をいただいて読ませていただきました。  先ほどから外務大臣お話しになられているとおりだと思いますけれども、今回のこの対応部隊に対する日本評価ですね。支持をしていくのか、それとももう少し考えた方がいいのか。PKOの変質をもたらすのではないか、こういった議論もございますよね。そういった点で、日本考え方をお聞きをしておきたいと考えております。
  109. 河野洋平

    河野国務大臣 この話は大変難しい話だと思います。  どういう状況でどう判断をするかというのは、緊急な場面、ケース・バイ・ケースということであって、一般的にこの話を今進めるということについて、私どもは大変難しい話だなというふうにこの話を読みました。まだ私として正確にこの問題についての日本の判断を下しているわけではございませんが、今議員からのお尋ねがあれば、大変難しい話だというふうにお答え申し上げる以外にはございません。
  110. 山田宏

    山田(宏)委員 これはもう外務大臣がよく御存じのように、ヨーロッパではもう毎日、新聞の一面に載るような大変な話になっておりまして、日本対応が、ただ難しいということではなく、これを支持するのか、それともこのPKOの今後のあり方を含めて、もう少しこの対応部隊のあり方については違った考えがあるのじゃないかというようなことをやはり持っておかないと、多分今度のサミットでもこの問題は大きな話題になるのだろうと私は思いますので、先ほど外務大臣お話しになられたとおりですが、その際日本がどのような態度を表明されるのか大変気になるところなので、ぜひ今の考えを、難しいということのみならず、お話しをいただきたいと思います。
  111. 河野洋平

    河野国務大臣 確かにヨーロッパでは、先ほど申し上げましたように、フランスもイギリスも大変多数の兵員を派遣しておりますから、この問題が大きな話題になっているのは当然のことだと思います。  私どもにとりましても、このPKO要員が拘束されて人間の盾になるなどという状況はまことにゆゆしき問題で、こういうことがあってはならぬことでございます。したがって、大きな関心を持っております。しかし、今私が今の御指摘にお答えをいたしておりますのは、だから緊急の部隊をつくることがいいかどうかということになれば、そのことが直ちに効果的なものであるかどうかという判断は極めて難しい判断だなというふうに、私の立場からいえば今は申し上げるよりほかにないということを申し上げているわけでございます。  フランスは現地の派遣要員の司令官としてフランス人が行っておりますし、そうした人たちの情報その他十分とって判断をなさるでありましょう。しかし、それにしても、そのことが直ちに十分意味のあることであるかどうか、あるいはそれが現実問題としてできることであるかどうかということについていろいろな角度から考えると非常に難しい話だなというのが私の率直な気持ちでございます。
  112. 山田宏

    山田(宏)委員 何か三十分に終えなければならないということなので、もう一点お聞きをしておきますが、この問題に関して、日本は明石代表を全力で支えるというお話がさっきございましたけれども、この問題についての明石代表自身のお考えというものはお聞きになられているのでしょうか。
  113. 河野洋平

    河野国務大臣 私が明石さんと話をしたのはこういう状況になる少し前の段階でございますから、あの当時の明石さんとのやりとりは、今この事態になれば余り参考になることだとは思いません。  今問題なのは、緊急にいろいろな提案が出てきているのは、さっき申し上げたように、ああいう形の人質を解放するかどうかという非常に深刻な、緊急な事態にどう対応するかという問題が一つあるのだと思います。そのためにどういう方法があるか、これは話し合いで解放できるかどうか、あるいはそれができないならば、部隊を派遣することによって解放させることができるのかどうなのかという問題だと思います。  大事なことは、とにかく国連要員というものが拘束をされるという事態をどうやって解決をするかということに絞られた話がまず一つだろうと思います。  それから、旧ユーゴの紛争全体の解決ということになると、またそれとは別の、あるいはそれにプラスといいますか、別のアプローチがあるということではないでしょうか。
  114. 山田宏

    山田(宏)委員 三十分になりましたので、今回はこれで終わらせていただきます。また午後からお願いします。
  115. 三原朝彦

    三原委員長 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三十一分休憩      ————◇—————     午後一時二分開議
  116. 三原朝彦

    三原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。山田宏君。
  117. 山田宏

    山田(宏)委員 午前中に引き続き御質問させていただきます。  北朝鮮からの米の緊急輸入の要請の問題ですが、これはちょっと事実関係だけ確かめておきたいのですが、政府の方は正式の要請は受け取っていない、政府にはそういう要請は来てないということですね。それからまた、これはどういう経緯で政府がこの米の緊急援助の要請を受け取ったのか、ちょっとその経緯だけ簡単にお聞きをしておきます。
  118. 川島裕

    ○川島政府委員 政府ベースでは来てないということでございます。これは、北朝鮮の国貿促の方が五月二十六日に訪日していて与党の方々と会った際に、米が足りない、一時的不作で足りないので貸してもらいたいという話があったということでございます。政府は、そういうやりとりがあったというのを与党からその日の午後に承った。そして考え方としては、韓国の理解を得て人道的観点から考えるというのが政府サイドの整理でございます。今のところは韓国も無条件で北に提供する用意があるという姿勢を表明しておりますので、それを北が受け取るべく動き出すかどうかというところをまず見きわめる必要があるということでございます。
  119. 山田宏

    山田(宏)委員 報道によりますと、自民党、社会党、さきがけの代表者の方々が北朝鮮の方から金書記の書簡を受け取った、こういう報道がございますけれども、これはちょっと、考えてみますと、これから大事な北朝鮮とのさまざまな問題の処理という面では、自民党、社会党、さきがけ、とりわけ自民党のある議員の事務所を経由をされていろいろと交渉が行われるという可能性があるのではないかということが危惧されておりますけれども、そうなりますと、外務省としては、結局外交が二元化していくんじゃないかと私は大変危惧をしているわけです。  米の問題にしても、確かに人道的で、国から国へは援助できませんが、どちらにしろ日本の国が持っている米を何らかのルートで出す、援助するとなると、出すわけですから、そこには国家の判断が入るわけですが、そういうものにかかわる話が国に直接入らないで交渉が行われるとすれば、ゆゆしきことだ、私はこう思っているのです。今後はきちっとした外交ルートで要請をしてくるべきだということをやはり言うべきではないか、こう思っているのですけれども、その点についてはいかがですか。
  120. 川島裕

    ○川島政府委員 お答え申し上げます。  行く行く、仮に日本の米を動かすということになりました場合には、最後まで党ベースで話が動くということであるはずがなくて、どこかから先は政府が自身の対応として動かしていかなければならないだろうと思っております。  ただ、具体的に供与の方式等々について政府として何が可能かということは、これは若干勉強はしておりますけれども、まだこれでいこうというような方向は決めておりません。他方、まずは今やっておりますのは、先ほど申しましたとおり、北と南、つまり北朝鮮が韓国の米のオファーというものに対してどう対応するかということについて見きわめようということで対応しておる次第です。
  121. 山田宏

    山田(宏)委員 いろいろなルートで北朝鮮を国際社会の、舞台に乗せていくという言い方はちょっと失礼なのですが、入ってきていただくというような方法をとるという方針に私は賛成でありますが、この問題は、やはり今お話しあったとおり韓国との関係が非常に大事であります。  新聞に載っていましたけれども、防衛庁のある研究所の人の提案では、例えばそれほど人道的な面での援助ということであるならば、やはり日韓が共同して援助をする団体をアメリカや中国も入れてつくって、コンソーシアム方式みたいな形で北朝鮮の食糧事情に対応したらどうか、こういうような提案もあって、私は大変おもしろいのではないか、こう思っておりまして、日本が独自でやる、韓国もまた別、タイも中国もと別々でやるより、国際社会の中にしっかり入ってきていただくということを考えた場合には、そういう方式で人道的な援助に対応するということも検討されたらいかがか、こう思っておりまして、そういう感想を持ってこの記事を読んだわけでございますけれども、どういう御所見をお持ちですか。
  122. 川島裕

    ○川島政府委員 KEDOと同じで、多数国間でという構想であると思いますけれども、確かに非常に興味深い点もございます。それから、基本的には今先生言われましたように、人道的な話ではあるけれども、こういう機会に北朝鮮がなるべくその国を開いていく方向、さらに言えば、南北関係が前に動く方向につながれば、それは大変結構なことだと私ども思っておるわけでございます。  ただ、まずは、韓国が無条件でオファーしている米、それに対する北の対応というものが前に動き出しますかどうですか、そこのところが今のところ見えてこない段階ですので、それから先についてどういうやり方があるかというところについては、まだ整理と申しますか、詰めを進められる状況にはちょっとないというのが現状でございます。
  123. 山田宏

    山田(宏)委員 そうすると、局長、それは一つの提案としては検討に値する、こう認識しておられるというふうにとらえてよろしいですか。
  124. 川島裕

    ○川島政府委員 お答え申し上げます。  実際問題としてはかなり難しいのではないかと思います。というのは、まずは、韓国が無条件で提供しようという米が仮に北に受け入れられます場合、実際にどういう形で動き出すかどうかということ、かなりこれは南北間のデリケートな面を含んでおりますので、そこのところが実はどうなるかちょっと見えないわけでございます。やはり、そこにはいろいろなメンツとか、これまでの行きがかりが南北間にはあるものですから、それの整理を見ないと何とも言えないわけでございますけれども、私の印象では、韓国は同族であると、同族であるから、あくまでも南北だけでやりたいのだという姿勢が非常に強いという印象を得ております。
  125. 山田宏

    山田(宏)委員 聞くところによりますと、きょうお昼過ぎの朝鮮中央通信によりますと、クアラルンプールでの米朝協議が調ったという報道がなされた、こう聞いております。その内容について外務省は把握をされておられるでしょうか。
  126. 川島裕

    ○川島政府委員 お答え申し上げます。  結論的に申しますれば、まだ合意に達したという段階ではございません。これは五月二十日からやっておりまして、相当長きにわたった作業でございまして、基本的には軽水炉供与プロジェクトの実施、なかんずく供与される炉の問題について相当米朝間で調整を要する問題があって、当初予想以上に時間がかかったということで、引き続き作業が続いているという段階でございます。  何とか収拾しようという作業が行われていることは事実でございますけれども、またこれでセットというところまではいっていないというふうに承知しております。
  127. 山田宏

    山田(宏)委員 今申し上げた朝鮮中央通信の報道というのは、外務省は認知をされていますか。
  128. 川島裕

    ○川島政府委員 朝鮮中央通信で、原則的合意が達成されたと発表したということは承知しておりますが、実態についてどうだというお尋ねでありますれば、今申しましたとおり、合意でもってもうこれで決着したという段階には達していないという認識でございます。
  129. 山田宏

    山田(宏)委員 アメリカの方からは、この点については何らのそういう連絡等が来ているということはございませんか。
  130. 川島裕

    ○川島政府委員 いろいろやりとりをしておりまして、ただ、まさに交渉の最後の詰めの段階でございますので、こういうふうに収れんしつつあるという詳細を申し上げることは、交渉の最後の段階でございますので、差し控えさせていただきたいと思います。
  131. 山田宏

    山田(宏)委員 いろいろと行きつ戻りつで、交渉決裂かと言われることが時々報道されておりますので、一応きょうの段階での外務省の御認識は、今局長お話しになられたとおり、大詰めに来ている、こういう認識でよろしゅうございますか。
  132. 川島裕

    ○川島政府委員 まさに御指摘のとおり行きつ戻りつでございまして、きのうは北朝鮮側が席を立ったという報道も流れた次第でございますし、事実非常にデリケートな交渉なものですから、もうまとまるかなと思うと俄然壊れそうになったり、そういう状況がずっと続いているものでございますから、本当に決着するまでは、大詰めという表現は使えると思いますけれども、これで大丈夫ですとかいうようなことはなかなか言い切る気持ちにはならない状況でございます。
  133. 山田宏

    山田(宏)委員 内容は、外交交渉でぎりぎりのところなので、それはお答えになりにくいだろうと思います。  決着するかしないか、まだ大詰めのところだということですが、アメリカの追加重油供給というのは、次はおおよそいつ予定していると考えておられますか。
  134. 川島裕

    ○川島政府委員 これも、今般の協議の枠組みの中でいろいろな、重油の供給しかり、それからプールの中で冷えております燃料棒の処理の仕方等々、本件に関連しますいろいろな話を全部詰めてしまおうという作業でございますので、重油の供給だけ、これはこれでこう決まったという状況にはないというふうに承知しておりますが、これは近々、二回目になると思いますけれども、重油の供給をやろうという準備をしているということはそのとおりでございます。
  135. 山田宏

    山田(宏)委員 聞くところによりますと、軽水炉問題が満足いく形で、今回うまくいけばいいわけですが、決着をしなければ追加供給はしない、また連絡事務所も開かない、このように五月十八日、アメリカの上院でクリストファー国務長官が公聴会でお話しになられております。その中でクリストファーさんは、十月に重油供給を一応予定しているというような答弁をされているというふうに私は記録で読んでおりますけれども
  136. 川島裕

    ○川島政府委員 最大のポイントは、交渉が決裂して、その結果として北朝鮮が例えば五メガワットの原子炉に燃料を再装てんするとか、あるいはプールで冷えている燃料棒からプルトニウムを抽出するという再処理を始めてしまうとか、そういう物理的というか具体的な行動に出ますと、これは交渉が全部切れてしまう。そういう状況のもとでは、重油供給とか国交正常化とか、そういう話になるのは極めて難しいというか、あり得ない話なんだろうと思います。  他方、そういう北の凍結解除、凍結を破るという行動に出ない限り、話し合いが続く限りは、それはそれで若干時間がかかっても双方の納得する合意というものを見つける努力は続くことが望ましいし、それは、ですから五月二十日から今回も三週間近くやっていることなわけでございます。  ですから、まずは交渉をどういうふうに今回大詰めで収拾するか、その中で重油の話もしかり、使用済み燃料の処理の形とかやり方とか、いろいろなのを全部一通り決着するべく努力しているというのが現状でございます。
  137. 山田宏

    山田(宏)委員 では、この問題は置いておきますが、朝鮮中央通信の発表は認識をされている、きょうそういう報道があった、さらに、完全決着とまではまだ言い切れないけれども、いいところまで来ているのではないか。今局長お話だと、百里の道も九十九里をもって半分とする、そういうことわざを思い出しますけれども、そんなようなところだろうか、こう認識をしております。うなずいておられますので、次へ行かせていただきます。  ゴラン高原の問題についてお聞きをしておきます。  ゴラン高原の問題は、政府の中でも、また与党の中でもいろいろと議論になって、河野外務大臣、随分頑張っておられる。我々も最大限その外務大臣努力に賛意を表しております。ぜひこの問題はきちっと決着をつけていただきたいと思っておりますけれども、一応準備に六カ月間ぐらいかかるのだということで、今回は十一月派遣は政府としても正式に断念した、こう考えてよろしゅうございますか。
  138. 河野洋平

    河野国務大臣 かねてから申し上げておりますように、準備に六カ月程度を要するというのが私ども関係者の話し合いで出てきておりまして、その期間を縮めて云々ということは今考えておりませんので、おっしゃるようなことになろうと思います。
  139. 山田宏

    山田(宏)委員 そうすると、次は二月ということで、まさか二月がだめだったらまたその次というような、こんなことをやると国際的な信頼はまさに地に落ちるというふうに思います。  これまでも当委員会で何度も外務省の方々が御答弁されておりますとおり、何ら問題がない、こういうことでありました。ですから、外務大臣としては、当然なるべく早くこのゴラン高原への自衛隊のPKO派遣を達成していきたいというのが念願だと思いますけれども、二月、最終待ってもここが最後だろうと思いますけれども、二月にはきちっと派遣をしていきたいという考えでありましょうか。
  140. 河野洋平

    河野国務大臣 私は、十一月に派遣をするということを申し上げたことはないと思うのです。そうした何月にどうということを申し上げるよりも、むしろ我が国としてこのゴラン高原へのPKOの派遣についてどう考えるかということを真剣に議論をすることが大事だし、それが行われておりますということを申し上げてきたと思います。そして、外務省、外務省といいますか政府から派遣をいたしました調査団の報告を見れば、五原則等は十分満たしておるということを報告書の中で言っておるわけでございます。何ら、何ら問題はないというのは少し、ちょっと私が申し上げると少し言い過ぎになると思いますからそうは申し上げませんが、政府調査団の報告から見れば、五原則は十分満たしておるという旨の報告が出ておることは事実でございます。
  141. 山田宏

    山田(宏)委員 この問題も要請があって一年間たっております。もちろん三党の合意も連立政権ですから大事でしょうけれども、国と国、国際社会日本という関係から見ると、こういうようなことがずっと続くと、やはり日本のいろいろな発言、行動に対しての信頼が著しく傷つくことになると大変危惧をしております。そういう意味では、国益と連立与党合意外務大臣として、間に立たれて、やはり国益を優先して、きちっとした方針をこの国のために発表していくべきだ、しっかり述べていくべきだ。その点を一番よく御存じなのは外務大臣なのですから。  我々としてはもうなるべく十一月で派遣をしてほしいということを申し上げてまいりましたけれども、こういった事情でまた先延ばしになったということで、二月派遣というのがもう最後だ、こう思っておりますので、そういう御決意をやはり国民にきちっと語りかけていく、そういったことも非常に大事じゃないか。  内側の議論も大事ですけれども、今お話しがあったとおり、ほとんどと言っていいほど問題がない、こうこの委員会でも外務省の政府委員の方々が御答弁されてきました。一体これから何を与党内で検討していくのかよくわからないところでありますけれどもサミットに立たれる前に政府ではまとめられるということですが、外務大臣としてこの辺の見識をぜひ御披露いただきたいと考えております。
  142. 河野洋平

    河野国務大臣 三党合意と国益は全く矛盾をしないと私は思っております。三党合意にも国際社会への貢献は積極的に行うということが書かれておりまして、この点で三党合意を優先するか国益をとるかなんということはないのでございまして、三党合意を誠実に実行していけば、それは国益に合致するというふうに私は思っております。  ただしかし、国際貢献にはさまざまな国際貢献があって、すべてができるというものではないわけでございます。そこで五原則、五条件、そういったものが満たされているかどうかということも十分考えて、三党で合意されております国際貢献ができるかどうかということを確認をして、できることであれば国際貢献は積極的に進めていくということだというふうに御理解をいただきたいと思います。  もうここで何回も御質問をいただいて何回も御答弁申し上げておりますように、中東和平プロセスに我が国がどういうふうにかかわってきたか、また国際社会が中東和平というものをどのくらい待ち望んでいるか、その中東和平プロセスの中で、このゴラン高原のPKO活動というものもまたその中東和平プロセスを支える重要な役割を担っているというようなことを私は考えまして、政府としては派遣できる条件は満たしておるというふうに考えているわけですが、いつでも、つまり条件が整っていれば全部出すか、出せるかというと、それはそういうことにはならない場合もあるのであって、行政的に見て条件が整っていても、それは最終的に政治判断というものもあるわけでございます。  例えばゴラン高原の問題は、十分条件が整っていたとしても、例えば昨年の今ごろはモザンビークにも相当多数の派遣がなされている。あるいは夏以降にはルワンダの難民支援のために出ている。そういったような他の条件を考えれば、政治的にこれは待てということであったろうと思うわけでございまして、行けないという条件はほとんどないわけですから、あとは政治的な判断をどう下すかということだというふうに思っているわけです。
  143. 山田宏

    山田(宏)委員 ちょっと納得がいかないのですが、モザンビークとかルワンダは去年の話であります。ゴラン高原の問題は、せめて外務大臣としては、十一月派遣ができなくなったことは大変遺憾であるというふうに御発言なさることがやはり本当の道筋ではないか。いろいろな政治判断でできないと言われても、どうなのですかこれ、何度も何度も議会でもここでも答弁されているとおり、今まで外務省は十一月派遣に向けて一生懸命やってこられたじゃないですか。  そういうことを考えておりますと、これもまたしょうがないということでは済まされない。この十一月派遣については、外務省としては大変遺憾なことであるということはやはりきちっと表明をなさった方がいいのではないか、こう考えております。この点については再度、もつ一度外務大臣に御決意をお聞きしておきたいと思います。
  144. 河野洋平

    河野国務大臣 PKO活動で海外に日本の人材を派遣するということは極めて重要な、重大な問題でございます。できる限り政府与党一体の認識を持って判断を下したいというふうに考えるのは、これは当然のことだろうと思っているわけでございます。  他方政府としては、外務省は外交問題に、大蔵省は財政問題に、通産省は商工問題、毎日毎日ルーチンの仕事がございますから、そのルーチンワークの中で感じておりますさまざまな、例えば対外的な視点あるいはその他さまざまな分野でさまざまな問題についての実感というものがあって、それをまた与党に伝えるということもあるわけでございます。PKOばかりではありません。さまざまな分野で、政府与党がそういう意味でやりとりやりとりをしながら意見を集約をしていくということはあるわけでございます。  私は、このPKOの問題については十分政府与党は一体となって、同じ時期に調査団を派遣をし、その調査団がそれぞれ報告書を出しているわけでございますから、十分議論をして結論が導き出せないことはないというふうに考えておるわけでございまして、引き続き与党の皆さんにもお考えをいただきたいというふうに思っているわけでございますが、先般来私は政府として一つ方向をお示しをして、さらに与党の皆さんにも御議論をいただきたい、こう考えているわけで、いつまでにできなかったから遺憾だとかどうだとかということを私は簡単に申し上げるつもりはございません。
  145. 山田宏

    山田(宏)委員 その点についてはちょっと意見を異にいたしますが、次に、もう時間があと十分しかないので。  先日ちょっと中途半端になりました。もう期限が迫っておりますので、国連決議に基づく国際司法裁判所からの核兵器の使用の違法性について、我が国考え方についてもう一度お聞きをしておきたいと思います。  これは御承知のとおり、インドネシア決議と言われる、いかなる場合においても核兵器による威嚇またはその使用は国際法上許されるか、こういう決議に基づいて、国際司法裁判所にその判断を、判断というか勧告的意見を問い合わせたものでありまして、それに基づいて司法裁判所が各国にその考え方を問うていることであります。  六月二十日がその期限ということで、またそれは時間がありますけれども、この点についての考え方は、政府の方で確定をしているのでしょうか。
  146. 河野洋平

    河野国務大臣 おっしゃるように、六月二十日が提出の期限でございます。  目下、慎重に検討をいたしておるところでございます。
  147. 山田宏

    山田(宏)委員 前回は議論がいろいろありまして、WHOのときですね。この核兵器の使用は、「純粋に法的観点から言えば、今日までの諸国の国家慣行や国際法学者の学説等を客観的に判断した場合、今日の実定国際法に違反するとまでは言えないがここの部分が削除をされて、何かわけのわからない文章になって提案をされたと私は思います。  核兵器の使用は、国際法の思想的基盤にある人道主義の精神に合致しないということのみを記入して前回は提出をされましたけれども、国際法の精神に反するから、要するに、この問いだと、国際法上許されない、こういうふうに理解をしていいのか、国際法の精神に違反するので、当然国際法上許されないと判断するのか、それとも、国際法上必ずしも違法と言えないというのか、精神に反するから違法なのか、精神に反するから違法とは言えないのか、その辺の結論をお聞きをしておきたいと思います。
  148. 河野洋平

    河野国務大臣 目下検討中だと先ほど申し上げたわけでございまして、この問題、慎重に検討をいたしております。
  149. 山田宏

    山田(宏)委員 私は、いろいろな速記録を読ませていただきましたけれども、もちろん、それぞれの委員の方々の意見はなるほどと思うところもあります。しかし、政府が、国際法上、実定法上、必ずしも違法と言えない、こう言うことも一面大事だと思っているわけです。なぜかというと、それは、我が国が、核兵器を使用することが違法ではない、だから使っていいんだというようなことを言っているのではなくて、そういう部分が不備なんだ、だから、そういう部分についていろいろな面で埋め合わせをしていくべきだ、こういう結論につながっていくものだと思います。  ですから、この辺の判断はあいまいにすることなく、違法なら違法、違法でないなら違法でない。だから、今度は、その不備を埋めるために、違法でないとは言えないというような中途半端な状況を埋めるために、埋め合わせるために何らかの国際法上の措置をとっていくという行動につながっていくんだろうと思いますけれども、この実態の把握が何となく不明朗なまま推移をしていってはならないのではないか、こう考えていまして、ぜひその辺の判断をきちっと外務省として固めていただきたいと思います。  去年の柿澤外務大臣の御答弁、または羽田前内閣総理大臣の御答弁は、「純粋に法律論として申しますと、国際法上、実定法としてこれが国際法違反だというような形の法律の定めがございませんので、実定法上の判断としては国際法違反とはならないというのが、法律解釈として今まで日本政府がとってきた立場でございます。」今までの日本政府はこういう考えでやってきました、こういうことでありますが、河野外務大臣になって、この考え方を変更されるのか、それとも、再びこの場所では従来の立場を踏襲されていくのか、この点についてお聞きをしておきたいと思います。
  150. 河野洋平

    河野国務大臣 前回、昨年、ICJからも、少し性格が違うかもしれませんが、同じ問題についての問い合わせがあったときに、今おっしゃるような御議論があったというふうに認識をしておりますが、そのときに提出をした、いわば我が国考え方と申しますか、そういったものも含めて慎重に検討をする必要がある、こう考えて、目下、慎重な検討を命じているところでございます。
  151. 山田宏

    山田(宏)委員 昨年WHOからICJへ問い合わせがあって、そこから、各国に陳述書を提出してください、こういうことだったのですが、何カ国が陳述書を提出して、そのうち何カ国が違法と明確に述べているか、その資料はございますか。
  152. 折田正樹

    ○折田政府委員 私ども承知しておりますところ、三十五カ国が陳述書を提出したというふうに承知しております。  そこで、国際法上の意見として違法であるというふうに、いろんな表現があるものですから、なかなか割り切りにくい面もあるのでございますけれども、我々が見て違法というふうに言わんとしているかなというふうに考える国が二十一ございます。他方、違法とは言い切れないという国が六カ国でございますし、どちらかちょっとよくわからないという国が八というふうになっております。
  153. 山田宏

    山田(宏)委員 今の分類でいくと、我が国はどこの分類に入りますか。
  154. 折田正樹

    ○折田政府委員 我が国は、第三番目のカテゴリーに入れて計算しております。
  155. 山田宏

    山田(宏)委員 よくわからぬということですね。先ほど核兵器の問題を申し上げましたけれども、そう一刀両断にいかないし、いろいろなバランスもあると思いますけれども、基本的な立場だけはやっぱりしっかりさせておかなければならない。ですから、そういう意味で、現実の客観情勢を、どうしっかりこれをとらえるのか。国際法の精神に違反するという言い方は両方とれるわけですね、今お話しのとおり。ですから、その辺の考え方はやはりこの際きちっと定めておいて、今後、核兵器についての使用、威嚇についての我が国の国際的な行動の一つの基準にしていただきたい、こう思うわけです。  この問題については、今外務大臣から、慎重の上にも慎重に検討しているという御答弁でございましたけれども、六月二十日がその提出期限であります。いろいろ議論を呼んだ問題でもありますので、この提出後は、その内容について当委員会にぜひ報告をしていただきたい、こう思うわけでございますけれども、いかがでございますか。
  156. 林暘

    ○林(暘)政府委員 先ほど大臣から御答弁申し上げましたように、今検討中でございますが、提出した暁には、御報告をいたします。
  157. 山田宏

    山田(宏)委員 それでは、最後に、日米安全保障条約について一点だけお聞きをしておきたいと思います。  村山内閣も日米安保条約堅持ということを、去年表明をされました。しかし一方で、アメリカも、経済問題とも兼ね合って、この安全保障条約について見直しをすべきだということもいろいろなところで論議されるようになりました。まさにタブーがとれてきたわけであります。  その中の一つアメリカの有力な外交論文誌でありますフォーリン・アフェアーズでは、この片務的な条約を双務的に変えるべきではないか、こういうような議論も掲載をされたということで、大きく報道されたところであります。我が国としてやはり、安全保障条約堅持はいいんです、私もそれは賛成でありますけれども、今後安全保障条約が、これまでのようにずっとこれでいいのか。今アメリカ議論になっているようなことも含めて、日本としても、この安全保障条約のいろいろな問題点、または新たな課題というものについて検討すべきではないか、こう思いますけれども、その点については外務省はどのようにお考えでしょうか。
  158. 時野谷敦

    ○時野谷政府委員 ただいま先生が言及されました、アメリカの一部において表明されておりますところの安保条約そのものの修正にかかわるような種類の意見ということにつきましては、アメリカ政府はそういう意見ではございませんし、日本政府もそういう意見を持っているわけではございません。私どもは、現行の安全保障条約の修正ということは全く考えておりません。  しかしながら、先生御指摘のように、私ども日米安保体制というものの円滑な運用のために日米両国がそれぞれどういうことをなし、どういうふうに協力していくか、そのために将来にわたってどういう分野があり得るか、こういうことはきちんと議論をし、話をしていかなければいけないというふうに思っておりまして、まさにそういう趣旨によりましてことし一月の日米首脳会談合意されましたその重要性、新しい時代においても日米安保体制というのが重要なんだという共通の認識に立って、私ども対話と申しておりますけれども、そういう協力関係を深めるための作業、こういうものを進めている次第でございます。
  159. 山田宏

    山田(宏)委員 例えば、仮定の話で申しわけないのですが、この安保条約は簡単な文章なので非常に読み方が難しいと思うのです。  日本の防衛と極東の防衛とをアメリカは負っているわけですが、日本もその防衛について協力をしていくわけです。極東の範囲はこれまでも国会でいろいろ議論をされておりまして、フィリピンだとか台湾、韓国、日本海周辺、こういうところが入っていくわけですが、例えば朝鮮半島で何か有事が発生したとき、または台湾海峡をめぐるいろいろな有事が発生したとき、そういうときに、この条約だと、アメリカが極東防衛をした場合日本が共同でその防衛義務を負う。また、アメリカ軍が現在日本に四万五千人でしたか、五万人でしたか、滞在をしておりますけれども、そういった人たちが運ばれるときに、日本の艦船等の提供が求められたら一体どうするのかとか、この辺の議論は余りきちっと決まっていないのではないか、こう思います。  そういう点について、もし極東の有事発生のときに、日本が戦闘行為を行うということは憲法上あり得ないのですが、アメリカ軍の輸送を求められたとき、日本の艦船の提供は憲法上可能なのかどうか、この点についてはどういうお考えを持っておられますか。
  160. 時野谷敦

    ○時野谷政府委員 ただいま先生おっしゃいましたことのうちで、日米共同で、何といいますか、防衛のための行動に当たるというのは、日米安保条約の五条に定めてございます日本の施政のもとにおける領域において武力攻撃が行われる、こういう場合でございますが、そうではございませんで、今先生がおっしゃるような日本の周辺、極東の地域において何事かが起こり、それに対応するために米軍が行動する、その場合に日本としてどういうことがなし得るかということにつきまして、私ただいま先生がおっしゃいましたような具体的な状況について、こういうことがあり得るのではないかということを申し上げる用意はございません。当然のことながら、日本の憲法あるいは現行の法体系のもとでそういう場合に対応するということでございます。  全く一般論を申し上げれば、我が国アメリカとの間で日米安保体制、日米安保条約、こういうものを持っておりますので、この日米安保体制が円滑に機能する、こういう視点に立って日本としての対応の仕方を決定すべきものだというふうに心得ております。
  161. 山田宏

    山田(宏)委員 それでは、質問の時間が終わりますので、これをもって質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
  162. 三原朝彦

  163. 東中光雄

    東中委員 戦後五十年のいわゆる国会決議についてお伺いするのですが、昨年の自民党、社会党、さきがけ三党の合意では「過去の戦争を反省し、未来の平和への決意を表明する」という国会決議をやろう、時期は戦後五十年になるのだから、こういうことでございました。ここで言っている過去の戦争というのは、五十年前にポツダム宣言を受諾して終結したあの戦争のことだと私は理解しておりますが、国内的に言えば一九二二年九月十八日から始まった中国への侵略、いわゆる十五年戦争ですね、あるいは太平洋戦争と言われるかもしれません。そういうものに対して反省し、未来の平和への決意国会として表明するということだと素直に聞いておったのですが、自民党総裁としてその点ほどうなんでしょう。
  164. 河野洋平

    河野国務大臣 三党合意、三党合意と言われているのは、日本社会党と新党さきがけと私ども自由民主党三党による合意でございます。  私があれこれ言う立場ではないといつも申し上げていることですが、その三党の合意についてだけ申し上げれば、三党の合意による五十年という節目の年に当たっての決議を行うという合意がございまして、それは今申し上げた三党の合意であって、その三党の合意がどういう意味であるかということを、共産党の方がこれはこういう意味だろうとおっしゃられても、それはそう簡単にそうですとかどうですとかと私も申し上げるのもどうかと思いますが、共産党の定義とか共産党のお考えと三党での合意とはおのずから、三党合意の、理屈っぽい言い方をすれば有権的解釈は三党がなすべきであって、他党にしてもらうというものではないと思います。
  165. 東中光雄

    東中委員 だから、三党がやるべきだというから自民党総裁としてのあなたに聞いているわけです。  問題は、「過去の戦争を反省しこというふうになっているから、これは天下に発表されているわけですよ。しかも与党なんですよ。その過去の戦争を反省すると言っている過去の戦争というのは、当然、戦後五十年と言っている、その前の戦争を言っているのじゃないですかということ。我々が合意したのじゃないから、我々の解釈を言っているのじゃなくて、そうなんじゃないですかということを当事者のあなたに聞いているわけですから。
  166. 河野洋平

    河野国務大臣 当事者と言われるのもどうかと思いますが、今三党の合意を取りまとめて懸命に作業をしておられるわけですから、もしお尋ねならば、どうぞそこで御質問をいただきたいと思います。
  167. 東中光雄

    東中委員 いや、三党のうちの一番大きな自由民主党の、しかも代表者である総裁に聞いているので、これ以外に聞くところないですよ。それをまともに答えないというのは、それは本当、河野さん、事は国会決議ですし、戦後五十年という節目なんだからということでやっている以上は、これははっきりすべきじゃないですか。  それはそれとして、三党がまとめられたということで、「歴史を教訓に平和への決意を新たにする決議」案というのが先ほど議院運営委員会理事会にも提示をされました。それで、私もそこへ行ってきたのですけれども、これはどういうことだろうなと率直に思っています。  こう書いてあるのですね。「世界の近代史上における数々の植民地支配や侵略的行為に思いをいたし、我が国が過去に行ったこうした行為や他国民とくにアジアの諸国民に与えた苦痛を認識し、深い反省の念を表明する。」だから、植民地支配や侵略的行為は世界の近代史上では数々行われてきたことに思いをいたす。世界の近代史上というと、これは十八世紀からいっているのですか、十九世紀からいっているのですか、結局、そういうことで数々やってきた。  それで、「我が国が過去に行ったこうした行為」と書いてあるのですから、これは、ほかの国がやっておるのと同じように我が国も過去に植民地支配や侵略的行為をやったということを言っているのだと思うのです。それを具体的に言えば、朝鮮半島や台湾に対する植民地支配をやったでしょう。それから侵略的行為は、中国あるいは東南アジアに対して、侵略的行為どころか侵略戦争をやったというのが私たちは歴史的事実だと思うのです。  ところがそのことを、ほかの列強と、ほかの列強とは書いてありませんが、近代史上数々あったという、どこのだれがどうした、いつやったということじゃなくて、こういうふうに一般化してしまうということで、なぜ五十年前に終わった過去の戦争に対する反省になるのですか。全く問題を一般化し、そらしてしまっている。  過去の戦争ということ、別に十五年戦争なりあるいは太平洋戦争なりというのは、日本軍国主義が行った侵略戦争ということを深く反省して、そういう政府の行為によって二度と戦争の惨禍が起こることのないように決意したという、あの憲法上の、そういう平和への宣言をするというのが当然じゃないか、すらっと見て、当然のことじゃないかと私は思うのです。世界の近代史上になったり、我が国のこうした行為などというものを国会決議でやるというのは、これは世界から見たら何をやっているのだということになると思うのですが、どうでしょう。
  168. 河野洋平

    河野国務大臣 議運に院の決議として提出をされている文言についてのお尋ねは、どうぞ議運で御議論をいただきたいと思います。私が御答弁をするのは少し筋が違っているように思いますので、御答弁は控えさせていただきます。
  169. 東中光雄

    東中委員 自民党を含む案として出されておるわけですから、そういう点でお聞きをしているわけであります。  六月二日に提示されたという自民党案、この決議案の中身に、「列強が他国への侵略的行為や植民地支配を競い合った一時期、我が国もその渦中にあって、自国の安寧を考え、ついには、多くの国々と戦火を交えた」というふうに書いてありました。日本が多くの国々と戦火を交えたことの目的は自国の安寧にあった、そういうものだということがこの自民党案にはあったわけです。大東亜戦争は自存自衛の戦争だと言うた詔書を持ってきていますけれども、これと全く一緒なのですね。  今度は外務大臣としてお伺いします。  あのいわゆる大東亜戦争をやったときの戦争だ。その戦争目的が、今もなお、日本国憲法のもとでも、日本国は、あの戦争は正当な自存自衛の戦争なんだということを世界に向かって言う、そういう立場でいいのですか。日本外務大臣として、今の日本の立場というのはそういうことでいいのでしょうか。
  170. 河野洋平

    河野国務大臣 繰り返しで恐縮でございますが、院が決議をするということについて、さまざまな考え方が寄せられて、結局一つの案にまとまって正式に院に提出をされているわけでありますから、その正式に院に提出された文言についてはどうぞ議運ででも御議論をいただきたいと思いますし、そのプロセスでさまざまな考え方が出たということについて、私がそれについていろいろと申し上げることは控えさせていただきたいと思います。
  171. 東中光雄

    東中委員 日本の立場はどういうことなのかということについて聞いているわけです。  五十年前に、日本はポツダム宣言を受諾しました。そのポツダム宣言の第六項は「吾等ハ無責任ナル軍国主義ガ世界ヨリ駆逐セラルルニ至ル迄ハ平和安全及正義ノ新秩序ガ生ジ得ザルコトヲ主張スルモノナルヲ以テ日本国国民ヲ欺瞞シ之ヲシテ世界征服ノ挙二出ヅルノ過誤ヲ犯サシメタル者ノ権力及勢力ハ永久ニ除去セラレザルヘカラズ」御承知のとおりであります。  要するに、前の戦争は無責任なる軍国主義が日本国民を欺瞞して、そして世界征服の挙に出るに至らしめた、だからそういうものは排除せにゃいかぬということで、これを受諾したわけです。だから、結局その上に戦後国際政治というのは成り立っているわけでありますから、日本軍国主義による世界征服の挙に出た、その勢力を除去するということは受け入れたわけですから、そういう立場に立つべきじゃないのでしょうか。戦後国際政治の原点ではないでしょうか。いかがでしょう。
  172. 折田正樹

    ○折田政府委員 委員が今引用になられましたポツダム宣言の六項の中に、先生が今読み上げられた文章がございます。これは、連合国が当時の政治状況の中で強い政治的意図を表明した文章であろうと思いますけれども、この六項を含むポツダム宣言を我が国は降伏文書により受諾いたしまして、日本国軍隊の連合国に対する降伏を布告するに至ったものでございます。  国会の中の決議の御議論につきましては、私どもがあれこれ申し上げるものではございませんけれども、さまざまな歴史的事情、背景を考慮して議論がなされているのではないかと私は思います。
  173. 東中光雄

    東中委員 連合軍からの強い要請があって、ポツダム宣言の六項は降伏文書で受け入れた。だから、それは認めているわけでしょう。そうじゃないのですか。
  174. 折田正樹

    ○折田政府委員 先ほども申し上げましたけれども、六項はその当時の連合国側の政治的意図を表明した文章でございますが、この六項を含むポツダム宣言を我が国が降伏文書において受諾いたしまして、それにより連合国に対して日本は降伏をしたということでございます。
  175. 東中光雄

    東中委員 だから、その六項の内容は受諾したのでしょう。だから、そういうことで物事は進んでいるのじゃないですか。そういう立場とは、今——じゃ、また別の言い方をしましょう。  日本がサンフランシスコ条約十一条で受諾した極東軍事裁判所の判決、これは大変膨大なものでありますけれども、その中ではこういうふうに言っていますね。本裁判所の意見では、日本が一九四一年十二月七日に開始したイギリス、アメリカ合衆国及びオランダに対する攻撃は、侵略戦争であった。これは挑発を受けない攻撃であり、その動機はこれらの諸国の領土を占拠しようとする欲望であった。「侵略戦争」の定義を述べることがいかにむずかしいものであるにせよ、右の動機で行われた攻撃は、侵略戦争と名づけないわけにはいかないこれは、極東軍事裁判所速記録の第十巻、百八十一ページに載っている文言であります。  それから、  一九二二年には、かれらは中国に対する侵略戦争を開始し、満州と熱河を占領した。これも同じ速記録の七百九十三ページの中に書いてあります。  だから、日本の中国への侵略戦争というのは判決文の中で何回か出てきています。その判決を、これも平和条約で受けていますね。  だから、日本は、いわゆる過去の戦争は、中国あるいは東南アジアに対する侵略戦争であったということは、国際的にはもうはっきりしているわけじゃないですか。そういう点でいうと、それに対する反省をして、二度とそういうことを起こさない。これは、日本国憲法の原点でもあるし、国連憲章の原点でもある、私たちはそう思うのですが、そういう点についてはどうでしょうか。
  176. 折田正樹

    ○折田政府委員 今委員がお述べになりました極東国際軍事裁判所の裁判でございますが、そこにおきましては、被告が、平和に対する罪について、個人的な責任があるものとして起訴をされまして、判決の中で、七カ国に対して侵略戦争が行われたものと認定して、二十五名の被告を有罪としているところでございます。  法律的観点から申し上げますと、委員も今御指摘のとおり、サンフランシスコ平和条約第十一条におきまして、極東国際軍事裁判所の裁判を受諾しているわけでございます。  侵略戦争云々、さきの大戦の認識につきましてはさまざまな御議論があるところでございますけれども、今のような点を含め、さまざまな歴史的な経緯、背景を踏まえて議論がなされているものと承知しております。
  177. 東中光雄

    東中委員 私が言うのは、侵略戦争というものについては、定義がどうのこうのと、いろいろあるのは知っています。この判決も、それについてはいろいろあるとしても、日本の軍国主義のやった侵略戦争というのは認定できるということを言っている。それを受諾したんでしょう。受諾しておって、その刑の執行の問題というのは、また十一条の後段の部分ですから、判決を受諾するということをした以上、国際的にはそういう関係になっているじゃないですか。  時間がありませんから、その点を指摘すると同時に、外務大臣に聞いておくのですが、後藤田さんが朝日に、昨年の五月二十五日ですか、述べております。満州事変以来、太平洋戦争に至る一連の経過をみた時に、侵略戦争でなかったという認識は、通りませんよ。  当時「満州は日本の生命線だ」といわれていた。しかし、満州は中国の土地であり、人民なんですよ。よその国の領土と国民が、日本の生命線だといって、その権益が侵されたと、満州全土を占領する。これは文字通り侵略ですわな。こう言っております。これは、もうだれが考えたってそうですよ。  だから、こういう状態のことを、それを認めない。そして、列強がやっておったんだから、日本もそれの一環でやったんだと。そうすることによって、侵略者も被侵略者も同じようにする。それで、侵略戦争に対する合理化の提案になっている。非常に許されないことだと私は思っているのですが、外務大臣の見解をお伺いして、時間ですから、終わります。
  178. 河野洋平

    河野国務大臣 共産党の御意見は御意見として伺っておきます。  ただ、この手の御意見は、先ほど申し上げましたように、ぜひ議運の議論の場でお願いを申し上げたいと思います。
  179. 三原朝彦

    三原委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後二時七分散会