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1995-05-10 第132回国会 衆議院 外務委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成七年五月十日(水曜日)     午前十時二十分開議 出席委員   委員長 三原 朝彦君    理事 小杉  隆君 理事 田中 直紀君    理事 福田 康夫君 理事 東  祥三君    理事 松田 岩夫君 理事 秋葉 忠利君    理事 前原 誠司君       安倍 晋三君    柿澤 弘治君       斎藤 文昭君    坂本三十次君       櫻内 義雄君    鈴木 宗男君       二階堂 進君    上田  勇君       岡田 克也君   柴野たいぞう君       羽田  孜君    若松 謙維君       伊藤  茂君    上原 康助君       松前  仰君    古堅 実吉君       大矢 卓史君  出席国務大臣         外 務 大 臣 河野 洋平君  出席政府委員         外務大臣官房長 池田  維君         外務大臣官房外         務参事官    谷内正太郎君         外務省総合外交         政策局長    柳井 俊二君         外務省総合外交         政策局国際社会         協力部長    高野幸二郎君         外務省総合外交         政策局軍備管         理・科学審議官         事務代理    杉内 直敏君         外務省アジア局         長       川島  裕君         外務省北米局長 時野谷 敦君         外務省欧亜局長 野村 一成君         外務省中近東ア         フリカ局長   法眼 健作君         外務省経済局長 原口 幸市君         外務省経済協力         局長      平林  博君         外務省条約局長 折田 正樹君  委員外出席者         防衛庁防衛局防         衛政策課長   守屋 武昌君         大蔵省国際金融         局国際機構課長 大久保良夫君         大蔵省国際金融         局調査課長   内村 広志君         通商産業省通商         政策局国際経済         部通商協定管理         課長      岩井  篤君         外務委員会調査         室長      野村 忠清君     ――――――――――――― 委員の異動 五月十日  辞任       補欠選任   赤羽 一嘉君   上田  勇君 同日  辞任       補欠選任   上田  勇君   赤羽 一嘉君     ――――――――――――― 四月二十八日  平和的目的のための宇宙探査及び利用におけ  る協力のための損害賠償責任に係る相互放棄に  関する日本国政府アメリカ合衆国政府との間  の協定締結について承認を求めるの件(条約  第一七号)  政府調達に関する協定締結について承認を求  めるの件(条約第一八号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 五月九日  西日本海域における韓国及び中国漁船対策に関  する陳情書  (第一七五号)  米国軍用機低空飛行訓練即時中止等に関す  る陳情書外一件  (第一七六号)  北方領土周辺海域における我が国漁船安全課  業確立に関する陳情書  (第一七七号)  核兵器全面禁止及び廃絶国際条約締結に関する  陳情書外一件  (第一七八号)  米輸入自由化の道を食いとめる農業協定改正に  関する陳情書外四件  (  第一七九号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  平和的目的のための宇宙探査及び利用におけ  る協力のための損害賠償責任に係る相互放棄に  関する日本国政府アメリカ合衆国政府との問  の協定締結について承認を求めるの件(条約  第一七号)  政府調達に関する協定締結について承認を求  めるの件(条約第一八号)  国際情勢に関する件      ――――◇―――――
  2. 三原朝彦

    三原委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小杉隆君。
  3. 小杉隆

    小杉委員 河野外務大臣は、去る連休中にクロアチアハンガリーを訪問されたわけであります。紛争勃発以来、この旧ユーゴスラビア地域日本外務大臣として訪問したのは河野さんが初めてだということで、このタイミングといい、また現地指導者といろいろ意見交換をされたということは、私は大変意義深いことであったと思います。  河野外務大臣は初めてこうした地域を訪問されて率直にどう感じたのか、総括的な評価といいますかそれをまずお聞きしたいと思います。
  4. 河野洋平

    河野国務大臣 外務大臣就任以来、旧ユーゴ紛争というものに私は関心を持っておりまして、いつかは私も現地へ直接行って、関係者の話を聞きたい、また我々の考え方も申し上げたいと思っておりました。と申しますのは、やはり旧ユーゴスラビアの問題は、単にヨーロッパの一地域の問題ではない。今や国際社会が一様にこの問題に対して懸念をしている。例えば、ASEANの会議に行っても、この問題は非常に大きな話題になっているわけでございます。これは宗教上のつながりということもあるいはあるかと思いますが、世界各国でこの問題については懸念を持っているわけでございまして、我が国もまた人道支援を行ってはまいりましたけれども責任ある立場の者が現地に行って、我が国考え方を明確に伝える。それは何といっても現地責任者国連から派遣をされている責任者明石さんでございますから、この明石さんの努力をバックアップするということも兼ねて伺ってきたいと思っていたわけでございます。  この問題に関心を持てば持つほど、この問題の背景の複雑さというものには本当に驚かされるといいますか、なかなか理解も難しいという、率直にそういう感じがしたわけでございますが、現地へ参りますと、それぞれの国の指導者はそれなりに責任を負うて将来のことは考えておられるというふうに思いますが、最前線はどうかというと、これはまた大変な近親憎悪があったり、非常な憎しみがあったり、敵意というものも相当厳しいというふうに感じたわけでございます。  もちろんクロアチア首都ザグレブにおきましては、我々が滞在しておりますときにはまことに平和な、のどかな雰囲気すらあって、市民も町にあふれておりまして、クロアチア指導者からは日本からの渡航の自粛をもうそろそろ解除してもらいたいというようなことも言われて、我々も実際はそういう感じがしないでもなかったわけでございますが、我々がクロアチアを離れるとすぐにロケット砲が撃ち込まれるとかいう問題も起きまして、まだまだなかなか簡単ではないなという感じがしたわけでございます。  コンタクトグループと言われるアメリカ、ロシア、イギリス、フランス、ドイツ、こういった国々が懸命の調停をしているわけでございますが、その調停にもかかわらずなかなかそう簡単に合意ができない。それは信頼関係がまことに崩れてしまって、この信頼関係を積み上げるためにはいろいろな知恵が必要ではないかと思うわけです。  ただ、私は参ります前に何人かの方に伺いますと、明石さんは大変苦労していると。国連から派遣されてかの地にいるわけで、それぞれの人たちに話をして、一つにまとめようと思えば、甘いこと、おいしいことは言えない立場で、時に非常に厳しく話もしなければならぬということもあって、明石批判も実はかなりあるようだというふうに聞いてまいりましたが、現地に参りましてそれぞれの指導者にお目にかかってみると、私はそれぞれの方々に、明石さんを信頼して、明石さんの調停にはできるだけ協力してもらいたいということを繰り返し申し上げましたが、それぞれの指導者は、まことにそれはそのとおりで、明石さんは非常によくやってくれている、非常にフェアだ、我々は明石さんの努力協力するつもりだということを一様に言っておられたわけでございまして、やはりコンタクトグループ努力もありますけれども、と同時に、何といってもあそこで責任を負うて行動し、発言をしている明石さんの重みというものも相当なものがある。  私は、明石さんの考え方というものが、それは一つ一つの事象についてはいろいろの国の評価はありますけれども方向については明石さんの努力にまつべきではないかという感じもして帰ってきたわけでございます。
  5. 小杉隆

    小杉委員 今総括的な感想をお伺いしたのですが、確かにこの旧ユーゴスラビア地域は非常に複雑な問題をはらんでいて、宗教あるいは人種の対立という、いわば冷戦後の典型的な紛争一つの姿がこの地域にあらわれていると思います。  そこで、今五カ国のコンタクトグループが一生懸命その調停をやっているというお話ですが、そもそもこのコンタクトグループは、多かれ少なかれこの旧ユーゴスラビアについては、歴史的に見て宗教的なあるいは地理保的な関係が深いわけですし、また政治的な野心とか経済的な利害というものが絡んでいたわけですね。したがって、日本がこの地域関心を持つ場合に大事なことは、やはり我々は政治的な野心とか経済的な欲望というものはまさに持っていない日本として、コンタクトグループと全く同じ行動であってはいけないと思うのですね。やはり日本が旧ユーゴスラビアに対しては比較的中立的な、客観的なスタンスを保っているということは、私は双方から評価されていると思います。私、昨年の九月に訪問したときも双方からそういう評価をいただきました。明石さんに対してバックアップをお願いしたいと前回、質問でも申し上げたとおりで、河野外務大臣がそういう認識を深められたということは私は非常によかったと思います。  そこで、河野外務大臣ザグレブを離れた翌日にクロアチアセルビア人勢力に対する攻撃、大攻撃をかけたわけですね。これについて、私は実際にこの攻撃については、今大変武力の差というのは物すごい格差がありまして、あそこにいたセルビア人勢力相当数難民として、何かそぼ降る雨の中を行列をして今避難をしている、ボスニアの方へ流れ込んでいるといううわさ、話も聞いております。  今度の攻撃発端となったのは、そもそもセルビア人が、これはガソリンスタンドで何か刺殺されたのですね。それに対して逆にまた報復というような形で、この事件というか、この攻撃発端というのはむしろクロアチアの方にあったという意見もあるわけですね。今一応小康を保っているようですけれども、この経緯並びにその後の状況について、これは局長から答えていただきたいと思います。
  6. 野村一成

    野村(一)政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生指摘の小規模な衝突の後、五月一日でございますが、クロアチア軍、大体二千人規模と言われておりますけれども、それがオクチャニ、ヤセノバツという、これは西スラボニアの地区でございますけれども、そこにセルビア人勢力司令部があるという、そこを奪取するという行動に出たというふうに承知しております。それに対しまして、このクライナ地方セルビア人勢力が翌日二日でございますけれどもザグレブに、これは必ずしも私ども直接確認しているわけではございませんけれども情報によりますと、ロケット弾を撃ち込んで、数名が亡くなってかなり負傷者が出たということ。さらには、三日正午には重ねてザグレブに同じように攻撃が行われた、死傷者が出たということでございました。その後、これは明石代表仲介努力によりまして、三日午後その敵対行為の停止ということにつきまして合意がなされたということでございまして、他方先生指摘のように、かなりの数の難民が、セルビア人でございますけれども、避難してボスニア等に向かっているという情報もまたございます。  とにかく敵対行為そのものにつきましては、明石代表等努力によりまして、現在私ども承知している時点におきましてはおさまっているというのが私どもの得ている情報でございます。
  7. 小杉隆

    小杉委員 そこで、旧ユーゴスラビアは今六つ、厳密に言うと五つですけれどもスロベニアクロアチアボスニア・ヘルツェゴビナセルビアモンテネグロ、マケドニア、この六つに分かれているわけですけれども日本政府はいち早くクロアチアスロベニア国家承認をした、そして外交関係樹立したということですが、ボスニアとかセルビアモンテネグロ、この二つの国から成る新ユーゴに対してはまだ国家承認を与えていない、こういう現状ですね。  私から言わせると、クロアチアに対して国家承認したのがちょっと早かったのじゃないか。これはドイツなんかに引きずられて、国連のいろいろなほかの国との関連でやってしまったのじゃないかと思うのですが、実はクロアチアについては九二年、今から三年前にスロベニアと同時に日本国家承認したのですけれども外交関係樹立は翌年、つまり九三年の三月五日まで行われなかったのですね。その理由は、クロアチア政府軍セルビア人勢力の支配するクライナ地方というのですかそこの国連保護地域に進攻するというような混乱がその当時もあったから保留していたわけですね、外交関係樹立は。ことしになってまたクロアチア政府軍が戦闘を再開をして、もちろんセルビア人勢力ザグレブへまた報復したというのは許されることではありませんけれども、そういうような状況を見てみますと、私は国家承認そのものが時期尚早ではなかったかなと思うわけですし、またこの間のようなああいう大攻撃が行われたということに立って、私はやはり外交関係の見直しということが必要じゃないかと思うのですが、その点について。
  8. 野村一成

    野村(一)政府委員 クロアチア国家政府承認につきましては、これは広く国際社会において承認されておるというのが実態でございます。  他方先生指摘のとおり、クロアチアの中にセルビア人勢力居住地域があって、それをめぐって紛争が依然として継続しているというのも、これは重ねて実態でございます。そういう紛争を抱えてはおりますけれども、私どもとしてそのこと自体が国家承認政府承認に直接影響を与えるということは考えておりません。  実は、昨日ここのクロアチアの大使が私のところに今回の事態の説明に参りました。それに対して私は、非常に強くこの紛争解決、自制を求めました。これはやはり外交関係の中で、そういう国と国とのきちんとした関係の中で相手に対してきちんと物を申すべきことを申す。つまり武力によるのではなくて、平和的解決が必要であるということを主張していく。恐らくこれがクロアチアに対して今後日本も、あるいは国際社会全体もとるべき対応であろうか、そういうように考えている次第でございます。
  9. 小杉隆

    小杉委員 お言葉ですけれども、私はやはり国内にそういう民族紛争があるというのは一つ国家承認の大きな要件だと思いますね。新ユーゴスラビアなんというのはクロアチアよりもっと問題としては少ないと思うのですよね。日本政府はいまだにそこも承認していない。それから、ボスニア・ヘルツェゴビナ国内のそういう対立がまだおさまっていないということで国家承認していない。そういうことで、ちょっとクロアチア国家承認については、私はさっき申したような印象をぬぐえません。  そこで、今後のクロアチアとの関係は、やはり批判的な外交関係といいますか、昨日局長注意されたということは非常に結構なことだと思いますけれども、そういうスタンスでぜひひとつ注意を続けていただきたいと思います。  次に、セルビア共和国、これとモンテネグロを含めた新ユーゴスラビア河野外務大臣ハンガリーのブダペストでここの外務大臣などを呼ばれていろいろお話をされたそうですけれども国連によるセルビア共和国、新ユーゴスラビアに対する経済制裁はもう既に九二年五月から丸三年続いているわけですね。しかし、昨年の九月に、私がちょうど訪問した南後に経済制裁が若干緩和されたのです。というのは、それは新ユーゴスラビア政府ボスニア・ヘルツェゴビナにいるセルビア人勢力、つまりカラジッチのグループですね。これに対する支援を中断、つまり断絶を、同じ民族でありながら非常につらい決断だと思いますけれども断絶をしたために、百日間に限って人道的な援助とかあるいは航空機の乗り入れとか、あるいは文化交流とかそういう若干の制裁解除というか、制裁緩和が行われたわけですけれども、その百日が過ぎてまたさらに七十五日間の制裁緩和措置を決めたということですけれども、現在その後の状況を私も調べてみますと、この新ユーゴスラビアの中には紛争地域から五十万人に上る難民を抱えていることもあって、このような長期的な制裁によって国民生活困窮度は一層深刻化している、こういうことであります。  私、前回にも申し上げたように、本来制裁対象から除外されているはずの医薬品とか、食糧などの人道援助物資とかというものも国連制裁委員会の非効率とか非公正のために滞りがちであって、緊急を要する医薬品医療機器ども供給ができないということで、私もボランティアで昨年の暮れに私の息子を何人かのグループ派遣をして、いろいろな医療器具を持っていったりしたわけですけれども、なかなか事態が好転しない。特に乳幼児、妊婦、高齢者、病人など、社会的な弱者の被害が続いているわけです。  日本国連と歩調を合わせて経済制裁に参加しているわけですが、その責任としてこういう実態を徹底的に調査をして、経済制裁が人権とか衛生とか環境などにどういう影響を与えているのかを常に監視して、そういう弱者への負担が過度に重くならないように配慮するということは、村山内閣の人に優しい政治の一つの姿だと私は思うのですね。外務大臣も今回行かれて、難民のセンターまでは見られなかったと思うのですけれども、私はこういう配慮、これは前にも外務大臣にお渡ししましたけれども、「新ユーゴスラビアに対する経済制裁影響調査報告および同地域の平和に関する提言」ということで出しておりますけれども、その点についてひとつ見解を承りたいと思うのです。
  10. 河野洋平

    河野国務大臣 旧ユーゴスラビア地域紛争は、先ほど申し上げたように非常に複雑で、なかなか糸をほぐすきっかけをつかむということが難しい状況にあるわけですが、その中にあって、国連あるいはコンタクトグループ、あるいはその他にも、かってのアメリカバンス長官などがいろいろな調停案をつくったり、大変な努力をしておられるわけです。我が国我が国として、先ほど小杉議員おっしゃるように、これまでこの地域に全く領土的野心があったわけでもない、宗教的な絡みもない、経済的にも大きなやりとりがあるわけではない、そういう歴史的経過を持った我が国が、全く人道的な見地に立って支援を行うということが、かの地では大変信頼をされ、期待もされているということは全くそのとおりだと思うんです。  私は行きますときに、したがって、全く白紙で、先入観がなくて、どの地域がいわばいい人たちでどの地域が悪い人たちでなんという先入観を持たないで、もうみんなに会ったらいいんじゃないかすべての人の話を聞くことが大事ではないかという気持ちもございました。  ただ、そうはいっても、コンタクトグループを初めとする人たち調停というものは、いろいろ問題はあるけれども、その努力がずっとここまで続いてきて、この問題がこうなれば次はこうなるという組み立てが一つずつできてきている、そういう中に日本が全く白紙状況ですと言って行って、みんなに会っていろいろな話をしたことが悪いメッセージを伝えることになる、結局、そうしようと思っていたんだけれども、いや、そうでもなさそうだなというので、考えが変わってしまうということでもいけないということもあって、私はやはり、G7の際にもたびたび、G7に出席するコンタクトグループ人たちは、我々の努力を支持してくれ、こう言って、G7の中でコンタクトグループに入っていない日本とかカナダとかイタリーとかこういった国は、いろいろ検討した結果、コンタクトグループのやっている作業を支持しましょう、こう言ってきた経緯もありますから、我々はコンタクトグループ作業というものにマイナスになるようなことは今はすべきでないということを考えたりしたわけでございます。  クロアチアの話を政府委員から御答弁申し上げましたけれどもクロアチアに対する国際社会評価というものはどういうことかというと、これは議員も十分御承知のとおり、国際社会のほとんどの国は既にクロアチア承認しておりますし、これまた御承知のとおり、クロアチア国連にも加盟をして国連の一員としての自覚も持っておられる。私、参りまして、大統領、首相、外務大臣、それぞれお目にかかっていますが、それぞれの方々はそれぞれの立場で大いに責任を痛感をしておられて、平和的な解決のための努力をするとおっしゃっておられるわけです。  このクロアチア首都ザグレブ国連明石さんたちは居を構えて、本部を置いて、そこでやっている。それはクロアチアからも大いに支援も受けているわけでございまして、これはやはり、確かにクライナ地方との間の関係というものについては、我々十分注意をして、我々もクロアチア政府方々に、武力でというか力で問題を解決しようということはすべきでない、ぜひ国連考え方というものとも十分協力をして問題を解決して、少し時間がかかっても、融合政策といいますか、融和政策をとっていってほしいということを申し上げて、基本的にそういうことを了承しておられるわけで、私はこれから先もできるだけそういう方向に進んでもらうべく我が国としてできるだけのことをするということがいいんだと思います。  さて、その新ユーゴの方ですが、問題は、議員が行って調査をしてこられた経済制裁ですが、このいただいた調査報告書の中にも、御一緒されたんでしょうか、暉峻さんですね、つい数日前のテレビを見ていると、この暉峻さんが大変お世話をされたらしくて、兵庫県の地震で被災された子供たちベオグラードへ招かれて行っていますよね。ベオグラードへ行ってホームステイなんかして、非常に元気よくやっているという姿がテレビに出て、大変乱はうれしくそのテレビを見ましたけれども、そのテレビを見る限りにおいては、ベオグラードの可もなかなか活気もあって、にぎやかだなと見たわけです。  ただ、しかし、経済制裁はやはりもう長期間にわたっていますから、いろいろ問題が起こっている。それは、ただ単に新ユーゴだけじゃなくて、その周辺の新ユーゴとの貿易をしようと思っている国々にも問題はあるわけで、この経済制裁そのものには、それは相当影響があるだろうというふうに思います。  ただ、問題は、だから経済制裁をやめろというのではなくて、経済制裁をされるにはされるだけの理由があったんじゃないか。だから、その理由を取り除くという努力をしなければならないんだろうと思うんですね。  コンタクトグループの中でもいろいろ議論があって、まだ一つ議論がまとまらないようですけれども、新ユーゴがこういうことをやれば経済制裁についてはこうしよう、いろいろなアイデアがあるようですが、あるいは停止するとか価するとかということの提案もしているわけですから、それについてはひとつ新ユーゴ責任者も積極的に応じてもらいたいものだと思うんです。  それはそう難しいことではなくて、新ユーゴボスニア・ヘルツェゴビナとの間の国境線、この国境線は国際的にもう認められているわけで、しかもその国境線には国境監視ミッションというのがいて、それはもうお互いに認めている。我が国はその国境監視ミッションにさらに支援をして、国境監視ミッションを強化するといいますか存続するといいますかそういうことをやりますよということは私は新ユーゴ外務大臣にも申し上げて、それは結構です、やってくださいと外務大臣もおっしゃっておられるわけです。それはもう国境線をある意味では認めているわけだから、それなら国境線を認めるということを明確にされたらどうですかつまり、国境線を認めるということはボスニア・ヘルツェゴビナ国家承認をする、しかもそれは相互承認ですね。ボスニア・ヘルツェゴビナ承認すると同時にボスニア・ヘルツェゴビナに新ユーゴ国家承認もさせる。例えばそういったようなアイデアが出れば、そういうことに前向きに取り組んで、そうしようと。それじゃそれによって経済制裁をどうするかという次の話に進んでいくということがむしろ重要なのであって、今の状況の中でただ経済制裁をやめろというだけでは、どうも全体の問題を解決することにはならない。  小杉議員がおっしゃるように、弱者が大変かわいそうな立場に立っている、それを救わなきゃならぬ、それはよくわかります。その方法というものも考えなきゃいけない。そのために物資を届けようとすると、物資を届けるためには国連軍の存在をどういうふうにするかというようなことも出てくるわけで、これもいかぬ、物資も末端まで届けろということじゃなかなかできないわけですから、その辺のところを十分話し合ってもらいたいということをこの前申し上げてきました。  私は、ぜひこれはそういった提案に新ユーゴが応じて、こうした経済制裁なんという、やはり少し正常でない形というものは直していくことが、早く直すことがいいことだと私は思います。ただ、その直すための前提をぜひ新ユーゴにやってもらいたい、こういうふうに思っております。
  11. 小杉隆

    小杉委員 質問したいことはいっぱいあるんで、ちょっともう少し答弁を短くしてもらいたいんですが。  そこで、いろいろあるんですけれども、まず、これは局長に聞きたいんですが、今回の訪問で経済援助とか人道支援を表明したわけですね。一つは、旧ユーゴスラビア全体に対する食糧援助、財政支援等総額で約十一億円の緊急援助、それからクロアチアに対する難民支援施設の建設、マケドニアヘの五億円の無償資金協力、こういうことでありますが、旧ユーゴスラビアにどのようにこの十一億円の緊急援助を配分するのか。それから、クロアチアのこの難民支援センターというものは、この場所が非常に紛争地域に近くて、クライナ地方ですか、この間も報復攻撃を受けたところで、非常に危険な地域なんですね。こういうところへ支援センターをつくるのが適当なのかどうか。  それから、マケドニアの問題についてはちょっと別のところで質問しようと思ったのですが、ついでにやりますが、ひところ外務省は、マケドニアに対するPKO派遣というのは非常に熱心に言っていたのですが、今回は外務大臣の訪問のときにも一向にその話が出てこないわけですね。そこで、マケドニアのPKOの問題はその後どういう経過になっているのか、そういう点についてちょっとまずお伺いしたいと思います。  それから外務大臣に、二番目の問題として国家承認の問題、これは私はちょっと性急だったような印象を受けるのですよ。というのは、今の経済制裁を解除する条件として、これは国家承認だけではないと思うのですよね。こういう国家承認というのは非常にデリケートな問題で、容易に結論の出せる問題ではないので、しかもこの地域は三年以上紛争が続いていて、いろいろな要素が絡み合っているわけですから、初めての訪問で唐突にこういう提案をされるというのはどうかなという思いがするので、もう少し有効な言い方とかやり方がなかったのかどうか。これはひとつ局長の方から、今の最初の問題とあわせてお答えいただきたいと思います。     〔委員長退席、福田委員長代理着席〕
  12. 野村一成

    野村(一)政府委員 お答えいたします。  先ほどの食糧援助、これは十億円相当でございますけれども、これはユーゴ地域全体ということで、WFPを通じて行うことを考えております。  それからシサクの施設でございますけれども、このシサクの周辺我が国が計画しておるところの一帯、周辺地域には、例えばデンマークなんかも難民収容施設を建設しておりまして、これらの施設が軍事施設に利用されるとかそういったことは考えられないというふうに判断しております。  ただ、先ほど冒頭に先生から御質問いただきまして、それに対してお答えいたしましたけれども敵対行為の停止の合意というのは今の時点では成立しておりますけれども、今後の計画を進めるに当たりましてもやはり現地の情勢を注意深く見守ってまいりたい、そういうふうに考えております。  それから、マケドニアのことにつきましては、マケドニアのPKOに参加することは現時点では考えておりません。  以上でございます。
  13. 河野洋平

    河野国務大臣 国家承認の話で少し誤解があると思いますので、私が唐突に国家承認の話を持ち出したわけではなくて、既にコンタクトグループが新ユーゴボスニア・ヘルツェゴビナに対して、相互に国家承認をするべきではないかしてはどうだという提案をしているわけで、そういう提案が受諾されれば経済制裁については次のステップを考える、この経済制裁をどうするかについてはコンタクトグループの中には大分議論がいろいろあるようでございますけれども、いずれにしても、その相互承認によって次のステップに行くということはコンタクトグループは既に言っておって、これらは新ユーゴにもボスニア・ヘルツェゴビナにも提起済みの話でございます。  私はその話を引用して、自分もそう思う、それは何かというと、これはいろいろ議論があるわけですが、大セルビア主義とかいろいろなことがあって、新ユーゴの方に少し領土的に、歴史的経過を考えればいろいろな気持ちがあるのではないかという不信感もあったりするわけだから、できるだけ早く国境線を定める意味でも、国家承認をするということがお互いの信頼感を培う上で有効ではないか、そのことがあれば、コンタクトグループなどの意見も踏まえて経済制裁について次のステップがあるのではないかということを申し上げたわけで、私が全く私の独自の提案をしたわけではないのでございます。
  14. 小杉隆

    小杉委員 時間がないので余り突っ込めないのですけれども、私は冒頭申し上げたように、日本は政治的あるいは経済的野心のない、本当にいわば中立的な立場でやっていくということが双方に大変な信頼感を受けていますし、大臣も経験されたと思うのですが、私たちが考えている以上に先方は、日本は非常な大国だという意識を持っておられるわけですね。  したがって、今度のこういう国家承認の問題にしても、必ずしもコンタクトグループあるいは国連考え方をそっくりそのまま一〇〇%受け入れていいんだろうか。日本日本としてもう少しセルビア人人たちの考えも聞いてあげる。明石さんはそういうふうに、両方の意見を非常に粘り強く、忍耐強く聞いてあげているわけですね。そこに一つの信頼感の基礎があるわけですから、やはり外務省ももっと、必ずしもコンタクトグループの動きばかりに、追従というのかな、追随するのではなくて、日本としてもっとたくさんの情報というものをとって判断していく必要があると私は思います。  それから、これは意見だけになってしまうのですけれども、食糧援助なんかも、どうも実態を見ていますと平等に配分されていないのですね。どうしてもセルビア人は悪者であるというイメージのもとに、そういう国連の各機関の配分がどうも少ない。その辺はよく注意してやっていただきたいと思うわけです。  マケドニアに対しての説明は大変少なかったのですけれども、今ゴラン高原のことで頭がいっぱいでそこまで手が回らないんじゃないかと思うのですが、この点についても私は、ひところ非常に熱心に言っていた割には最近沈黙してしまっているなという疑念を持たざるを得ません。  それから、もう時間がないので、私はこのボスニア・ヘルツェゴビナの問題、新ユーゴの問題についてはまだ機会を見てやりますけれども、今当面のNPT条約、これが五月十二日、いよいよ期限が来たわけですけれども、今のところは大体無期限延長を支持する国が百四カ国ということで、ほぼこれでいくと思うのですけれども、問題は、これが無期限延長になったとしても、今度の会議の過程で議論されました非核保有国の安全保障をどうするんだ、それから原子力平和利用の技術移転とか、さらなる軍縮への方向性とかそういう問題、あるいはまたイスラエル、インド、パキスタンなどのような未加盟国の核開発の危険性、こういうような問題点については、私たちはやはり引き続き努力をしていかなければいかぬと思うのですが、唯一の被爆国と言われる我が国として、今後こういう問題についてのイニシアチブを実際にどうやっていくのかという点、短くて結構ですから一言決意を伺いたいと思います。
  15. 河野洋平

    河野国務大臣 NPTの無期限延長の提案国として、多くの国々が賛同してくださることを大変うれしく思っております。ただ、ただ単にこれが無期限に延びればいいというのではなくて、今議員がおっしゃったように、この問題には今御提起のような問題があるわけでございますから、とりわけ我々とすれば、核保有国と非核保有国の関係というものをよく考えて、核軍縮に核保有国がいかに取り組むか、あるいは非核保有国の安全保障にどういう態度をとるかというようなことについてはこれから先も大いに、非核保有国そして唯一の被爆国である日本として、先頭に立ってこの問題を進めていかなければならないと思います。  先般の秋の国連総会の折に、究極的核廃絶の決議案を出しましたけれども、恐らくあれは一つの突破口になって、これからこうした種類の決議などは出てくるだろうと思います。そして、そうした決議がやはり核保有国に対する一つの力になるに違いないと私ども思っておりまして、これから先も引き続き努力をいたしたいと思います。
  16. 小杉隆

    小杉委員 残念ながら、終わります。
  17. 福田康夫

    ○福田委員長代理 上原康助君。
  18. 上原康助

    ○上原委員 余り勉強もしてないのですが、少しお導ねをさせていただきたい。  まず、国際情勢の認識について一、二点、基本的なことを安全保障の観点からただしておきたいと思うのです。これは、外務省、防衛庁、多分来ていると思うので、それぞれ簡潔にお答えをいただければと思います。  御承知のように、米国防総有は、今年の二月二十七日、冷戦終結後の東アジア・太平洋における米国の総合的な国防指針を規定した東アジア・太平洋安全保障戦略、俗称東アジア戦略報告を公表いたしました。その報告で、ソ連崩壊後も朝鮮半島や中国をめぐる情勢が依然不安定であることを考慮する。一面、そういう状況下にあるのは私も認識はいたしますが、さらに東アジア・太平洋地域に駐留する在日、在韓米軍を軸とする前方展開戦力約十万人体制を引き続き維持していく方針を明らかにいたしております。  ただ、奇妙なのは、ブッシュ前政権時代の一九九〇年と九二年に発表された東アジア戦略構想では、東アジア・太平洋地域からの段階的な米軍兵力削減がうたわれておりました。今回の報告では、その削減構想を転換をして、同地域での米国のプレゼンスの継続を明確に打ち出している点です。  私がお尋ねしたい点は、米側はそういう構想転換をしているわけですが、冷戦が終結をしている今日、アジア地域の安全保障に大きなかかわりを持つ我が国としても、米軍の削減を求めつつアジア地域の信頼醸成の確立を果たすというのが、若干の不安定要因はあるにしても筋ではないかと思うのですが、米国が示したこの今回の前方展開戦力、いわゆる十万人体制というものについて、外務省、防衛庁はどういう認識をし、これを積極的に支持するとか評価するという意向がたしかマスコミ等を通してあったやに思うのですが、外務大臣の御認識あるいは防衛庁の、この今私が指摘したことについてどういう御見解をお持ちなのか、お答えを願いたいと思います。
  19. 時野谷敦

    ○時野谷政府委員 ただいま先生保御指摘になりましたとおり、ブッシュ政権時代には、冷戦後のこの地域状況に対応しまして米軍のこの地域での存在に若干の調整を行う、こういう方針を打ち出しまして、その結果、一九九〇年当時はたしか十三万人ぐらいの兵力を米軍はこの地域に置いていたと思いますが、その後、この調整という過程を経まして大体十万人、こういう水準に現在立ち至っている、こういう状況でございます。  私どもは、アメリカ側は、先ほど先生も御指摘になりましたような、この地域に依然として存在する不安定な要因、不確実性、こういうことにかんがみて、この調整のプロセスというものはこの段階で終止して、現在の水準でありますところの十万人というものをこの地域に置いておくということがこの地域の平和と安定を維持していく上で重要だ、こういう認識に立っているわけでございまして、私どもは、アメリカ側のそういうこの地域評価というもの、これを評価していいのではないかというふうに考えている次第でございます。
  20. 守屋武昌

    ○守屋説明員 お答えいたします。  防衛庁としても外務省と同様の認識でございます。冷戦構造後の世界をどう見るかということでございますが、このアジア・太平洋地域というものはやはり冷戦構造崩壊後もなお不安定要因を内包いたしておりまして、この地域の平和と安全の維持という問題は依然として大変重要な問題だと考えております。  この観点から、防衛庁といたしましては、米国がアジア・太平洋地域の平和と安定に引き続き関与するということ、それからそのために米軍のプレゼンスを維持するという方針を明確にいたしましたことは、高く評価しております。防衛庁としましては、そのかかる政策をとる上で重要なきずなとなっております日米安保体制の信頼性の維持向上のために引き続き努力してまいりたいと考えております。
  21. 上原康助

    ○上原委員 答えはおおよそそういうお答えだろうということは、期待をしないがわかるわけですが、どうも矛盾があるんですよね。これは今私も与党の立場だから、これは議論を深めようと、いずれ深めなければいけない場合があると思うのですが、安保条約の必要性あるいは重要性ということは、政府立場、日米関係からしてわからぬわけではないけれども、冷戦が終わって潜在脅威、しかも旧ソ連邦の極東軍の増強云々でここまでいろいろな防衛力の充実化を図ってきたわけで、それがなくなって、先ほどのいろいろのお話にあったように、きのうの終戦五十年のを見ても、クリントンとエリツィンが仲よくというか、両方とも余り愛想がないような写真だが、終戦を祝うという、これだけ国際情勢は変化をしてきているのに、一貫して外務省と防衛庁のロジックは変わらないのだ。私はそこに非常に疑問を持つ。これは国民もなかなかそういう言い分では納得しないと思うのです。最近、残念ながら余り突っ込んだ防衛論議、安全保障論議がないので、いずれこれはきちっと議論をして、私は政策転換を図るべきところは図らなければいかぬという主張を、考えを持っているということを申し上げておきたいと思うのです。  そこで、まとめて後で外務大臣の御見解も聞いておきたいのですが、例えば、十万人体制、八九年前後は十二万人だったが、減ったのだと言わんばかりの時野谷局長の答弁なんだが、これもおかしいですね。ちょっと余りにも言いわけ的で。防衛庁も、冷戦終結後の一九九〇年防白では、旧極東ソ連軍の「潜在的脅威」の文字をあなた方は削除したんですよ、今、何か重要性だけえらく独調するが。そして在日米軍、自衛隊など我が国の安全保障上の対応に変化が見られるというふうに言っている。そうしますと、一方では朝鮮半島の情勢が不安定である。これは核開発その他の問題をめぐってそう安定はしておりませんが、しかし客観的に見ても、そんなに我が国にとって著しく脅威になるとかあるいはその対処方法を考えにゃいかないという環境にはないと私は思います、客観的にも主観的にも。  同時にもう一点お聞きしておきたいのは、中国の不安定要因を非常に強調する向きもあるのですね。一方、南沙諸島の問題等を言う。防衛庁とか最近の軍事評論家あたりのいろんな論文などを見ますと、中国の脅威あるいはインドが非常に海軍力を増強しつつあるから日本は引き続きやらにゃいかぬとか、だんだんだんだんエスカレートして、幾らでも防衛力というか在日米軍の維持ということについての理由づけをしてきている。私はこういう口実的な論理というものは、そろそろ日本の安全保障政策なり自衛隊がどうあるべきかということからお互い政治家が発想を転換をして、本当にあるべき我が国の安全保障とか日米関係とか防衛力というのはどうしなければいかないかという議論が必要だと思うのですね。今私が指摘したことについてはどうお答えしますか。
  22. 時野谷敦

    ○時野谷政府委員 例えば先生からただいま中国というようなお話もございましたのですけれども、私どもは中国が脅威であるとか、そういうふうに思っているわけではございません。ただ、日本を含めましていろいろな国から、今後中国というものがどういう国になっていくのかということについて関心が持たれているということは事実だろうと思いますし、またそういう観点から、中国に国際社会責任ある一員としていろいろな役割を果たしてもらいたい、そのために中国との意思の疎通でありますとか相互理解でありますとかそういうことが重要である、こういうことの議論がまた行われているということがあろうかと思います。  いずれにいたしましても、安保条約との関係で申し上げれば、我が国に安保条約に基づきまして米軍が存在すること、駐留すること自体がアジア・太平洋地域の安定要因として作用するという、そういう効果を持っているというのが私どもの認識でございまして、そういうことがアジア・太平洋諸国においてもまさに一般的な認識になっているのではないかというふうに思っております。  私どもが、日米安保体制というのがアジア・太平洋地域の平和と安定にとって不可欠な要因である米軍の存在を確保する役割を果たしているのだということを言っておりますのは、まさにそういう意味での日米安保体制の意義ということを言っているわけでございまして、米軍のこの地域における存在というのがこの地域における一種の安定要因あるいは安心材料、そういう効果を持っているということではないかと思っております。
  23. 上原康助

    ○上原委員 私も、その必要性とか全くそれを前提にしないという立場でお尋ねをしているわけではないのですよ。  そこで、なぜこの米国のプレゼンスが、特に在日において変化をしようとしないのか。これは言わすと知れた日本のホスト・ネーション・サービスというものが非常によ過ぎる。米軍兵舎にしたって、みんなマンション風だとまでアメリカのマスコミは報道しているくらいなんです。そこに大きな、安全保障の必要性というよりも、アメリカ一つの経済を含めての政策――日本におろうが、韓国におってもアメリカへ帰っても、軍隊も家族も生活しなければいけませんから、ここにおる方がもっと彼らにとっては楽だと言っている。そういう冷戦構造の残滓的なものについては、やはり日本は主体的に直していかなければいかぬと私は思うのですよ、外務大臣。少し御見解を聞かしてください。
  24. 河野洋平

    河野国務大臣 冷戦が終わって確かに世界規模の戦争の可能性というものは減っだということは、これはもう上原議員と私は認識が共有できると思います。ただ、他方、世界を見ますと、地域的な紛争というものが全くなくなったかというと、それはそうではない、これもまあ言い古された言葉でございますけれども、世界各地で民族紛争があり、宗教的な背景を持つ紛争があり、あるいは貧富の格差からくるさまざまなもめごとというものはあるわけでございまして、冷戦が終わったということは、この世界から紛争が全くなくなったということは言えないのだと思います。ただ、繰り返しになりますが、世界規模の大戦争が起こる可能性というものは著しく減った、こういうことなんだろうと思います。  そこで、先ほど来政府委員から申し上げておりますように、我が国周辺を眺めてみますと、これは先生から見れば少しそれは心配のし過ぎじゃないか、そこまでほじくり返して何か自分の仕事を正当化するためにそこまで言っておるのじゃないかというふうな御意見のように私は聞きましたけれども、必ずしもそうではないのでございまして、やはり何といっても安全を支えるということになれば、それは少し心配のし過ぎじゃないかと言われるほど心配をするということは、これは当然のことでございまして、ただ問題は、心配し過ぎの余りにまた別のトラブルを引き起こすというようなことは、これは決してやってはならぬことでありますが、何といっても安全とか安定とかというものをどうやって支えるかという縁の下の突っかい棒といいますか支えというものはこれはやはり一日も欠かすわけにはいかないということはぜひ御理解をいただきたいと思うのでございます。  日米安保体制というものは、長い歴史を経て、日米関係の強い信頼のきずなにもなっているわけでございまして、この体制というものは我々は崩してはならぬというふうに思っておりますし、その中でアメリカアメリカで、ボトムアップ・レビューを初めとしていろいろやって、調査をし、分析をし、そして最終的に考え方を述べたわけでございまして、その考え方については、我々としてはそうしたアメリカ考え方評価するというのが我々の現在の立場でございます。  日米関係というものが安保条約によって信頼を深め、さらに日米安保体制というものがアジア・太平洋地域の安全に、あるい低安定に非常に貢献をしているという認識、そういうものは我々日米間で共有できる、こう考えているわけでございます。
  25. 上原康助

    ○上原委員 私は、いずれ政府もそういった従来の、ただ堅持だ、重要性だ、日米関係の支えだということだけで済まなくなる事態が来ると思うのです、これは国民の側から見て。どこにあなた、東京のど真ん中に横田飛行場みたいなものを置いて、空も海も陸もみんな制空権を占拠されているような独立国家というのがありますか。一方、自動車交渉だ。アメリカがいいかげんなことを言って、ドル防衛は全然やらない、円高はやって日本経済はばらばらにする。そういうことについては、やはり戦後五十年もたては、外交も日本日本なりのいろいろの戦略を立てていいと思うのですよ。その点指摘しておきます。  そこで、日米安保は堅持だけではいかぬし、限りなく見直しをすべきだと私は思う、その時代時代に相応して。残念ながら、皆さんは見直しどころか安保再定義を今やろうとしているわけでしょう。せんだっても私が少しこの点お尋ねをしたら、いや、そんな考えはないということなんだが、だんだんだんだん日米安保条約の再定義についての防衛庁見解というのが出ているじゃないですか。報道によりますと、冷戦後の戦略環境のもとで日米安保体制の役割を考え直す、考え直すと言いながら、もっと強化をする方向に持っていこうとしているわけでしょう。  この再定義構想の問題について日米間で話し合われているのかどうかその点だけははっきりさせておいてくださいよ。こういうのを秘密裏にやられたら困るんだよ、国会も知らない間に。
  26. 守屋武昌

    ○守屋説明員 お答えいたします。  日米安保の再定義についての御質問でございますけれども、先ほどから申し上げておりますように、我が国は、我が国の防衛力と日米安全保障条約によって我が国の安全を確保する体制をとっております。この体制は、我が国の安全確保に貢献しているのみならず、アジア・太平洋地域における不可欠の安定要因としての米国の関与と米軍のプレゼンスを確保する最も重要なきずなとしてこの地域の平和と安定に大きく寄与しているものと私どもは理解しております。  冷戦後においても引き続き日米安保体制はこのような重要な意義を有しておると考えておりますが、アジアにおきましては、先ほど私が申し上げましたように、冷戦後もなお不安定要因を内包しておりまして、複雑かつ多様なアジア・太平洋地域における平和と安全の維持への貢献という意義はますます高まっていると思っております。  防衛庁としましては、こういう日米安保体制の信頼性を冷戦後の国際環境においても維持向上させるために米国と各般の話し合いを継続しておるところでございます。日米間で、日米安保体制における日本と米国の協力関係を一層効率的に、どのように対応したらいいかということについて間断のない対話を続けているところでございます。
  27. 上原康助

    ○上原委員 そんな一般論とか、あなた、人の質問には答えないでよう防衛課長が務まるね。私が聞いているのは、日米安保条約の再定義について検討しているかどうかを答えなさいというのですよ。
  28. 時野谷敦

    ○時野谷政府委員 日米安保体制の重要性ということの認識につきましては先ほど防衛庁から御答弁がありましたとおりでございまして、私どももそういう認識を持っております。  従来、再定義と申しますか、日米安保体制の意義、役割、重要性ということについて私どもは三つのことを申し上げてきたのだと思います。それは、一つ我が国の安全を確保していく上での重要性、それから、二つ目にはアジア・太平洋地域における安定要因としての米軍の存在を確保する、それから三番目には、先ほど外務大臣からも御言及ありましたけれども、広範な日米協力関係の基盤としての役割があるのだ、要するにこういうことだと思っておりますが、現在、アメリカ側と私どもは対話の中で、現在の状況下における日米安保体制の意義というのをどういうふうに考えるべきかということについて自由な意見の交換を行ってきております。  基本的には今申し上げたような三つのことに集約されるんだというふうに私ども思っておりますけれどもアメリカ側と話をしておりまして、今申し上げたこと以上にどういうふうに肉づけができるかとか、いろいろな議論が整理ができるのだろうかそういうことを通じて国民の皆様に日米安保体制の意義、あるいは日米安保体制を超えてそういう日米安保体制を基盤とするより広い日米間の安全保障にかかわるいろいろな協力関係、こういうものの意義というのをどういうふうに御説明し御理解を得ていったらいいのだろうかというようなことをアメリカ側と話をしておる、こういうことでございます。
  29. 上原康助

    ○上原委員 私は今のような御答弁ではちょっと納得しかねますけれども、それは恐らくこれから逐次明らかにされていくと思うのです。  そういう協議をやっている中には物品役務相互融通協定、いわゆるACSA、この間三沢長官が訪米なさったときもそういう問題が出たと思うので、こういうことは皆さんは話し合っているわけでしょう、新たな問題として、具体的に挙げると。あるいは戦域ミサイル防衛、TMDのことについてはかねがね協議をしているということがあったのだが、一体こういうことについては現在どうなっているのか。特に、この物品役務相互融通協定というのはどういう内容をやろうとしているのか。簡単にお答えください。
  30. 時野谷敦

    ○時野谷政府委員 まさに先生おっしゃいますように、先ほど私が申し上げました日米安保体制の意義とか役割とかそういうものを踏まえた上で個々の具体的な問題につきまして日米間で協力関係を深められないかこういうことを話してきているということでございまして、そのうちの一つに今御指摘のACSAというものもある、こういうことでございます。  それで、玉沢防衛庁長官とペリー国防長官との会談でもこの問題が取り上げられたというふうに私ども承知をいたしておりますが、どういうふうにしょうかどういうふうに物を考えておるか、こういう御質問でございます。まさに私どもはこれが重要な問題であるというふうな認識を持っておりますが、まだいろいろな側面から検討しておるというのが現段階でございまして、こういうふうにしたいということをこの場で申し上げられる段階には至っていないという状況でございます。
  31. 上原康助

    ○上原委員 それはいつごろまでに煮詰まるのですか。
  32. 時野谷敦

    ○時野谷政府委員 いつごろまでにということを責任を持って今申し上げられません。私どもは、日米間のこういう安全保障にかかわる協力関係一つの項目としまして、なるべく早く政府部内での議論も詰めていきたいというふうに考えております。
  33. 上原康助

    ○上原委員 今の特別協定その他で、日本側のさっき申し上げたようなホスト・ネーション・サービスというのは非常にたくさんの負担を既に国民はやっている。これ以上、こういった物品役務、新たな協定を結んでさらに財政負担を伴うということは私はやはり相当問題があると思うのですね。その点は強く指摘をしておきます。どうも皆さんの安保再定義というものは、国民の気持ちというか米軍基地の重圧に苦しんでいる地域にとっては受けがたい内容を伴っているという点を指摘しておきます。  そこで、沖縄の三事案の問題についてお尋ねしておきますが、何かあしたにも日米合同委員会で決定というか合意に達するやに聞いているのですが、これはいつまでも場所も特定をしないで、ただ予測、推測だけではかえって混乱を招く危険性もあると思うのですね。私は、やはり政府は整理縮小を促進をしていくという意味で、もっと誠意あるアプローチを沖縄側に、関係者にやるべきだと思うのですが、ここでぜひ明確にしていただきたいと思います。
  34. 時野谷敦

    ○時野谷政府委員 三事案についてのお尋ねでございますけれども、三つの問題のうちの那覇港湾施設と、それから読谷補助飛行場の問題につきましては、どういう解決策がいいのかということについてこれまで日米間で話をしてまいりましたし、目下最終的な詰めを行っている段階でございます。  先生、あした何かそういうものがあるのかというお尋ねでございますが、合同委員会の開催の有無を含めまして、その内容についてはアメリカ側と合意の王公表するということとなっておりますので、その点についてこの場で申し上げることは御容赦をお願いしたいというふうに思います。
  35. 上原康助

    ○上原委員 しかし、そうは言っても、既に大きく場所等についても報道されている。  そこで外務大臣、せんだっても申し上げましたが、一応日米間で合意になりつつある、あとは地元側の協力が必要だと。地元がいろいろ、移転される側、移転する側の意見を調整するのはそれは当然でしょうがね。しかし、基地を提供するのは政府責任なんですよね。  そういう意味からすると、私は、やはりこの問題が一定の方向性が出たという段階では、防衛庁長官が行って二、三時間ただ上空から見るというような態度じゃなくして、外務大臣が、歴代の外務大臣一度も沖縄に行っていないのですよ、本当に、これだけ安保の重圧、しわ寄せを与えていながら。この際、そういう面で誠意を持ってこの問題に対処をしていかれるという、私は村山内閣の姿勢を示していただきたいと思うのですが、改めて外務大臣の御決意を聞いておきたいと思います。
  36. 河野洋平

    河野国務大臣 以前にも委員からそういうお話がございました。私、そのときにも申し上げましたが、機会をつくって沖縄へ参りたいという気持ちを持っております。
  37. 上原康助

    ○上原委員 ですから、その機会は、この三事案が日米間の合意を、私は明日、近日中に出るんじゃないかと予測していますけれども、そういう中で、地元の反応などもよくみずから確かめていただいて、それを関係者でさらに促進を図る。そうでもせぬと、あとは沖縄側で協力しなさいといったって、それはそう簡単にいきませんよ。我々もなかなかこれは容易でないと思います。  あと二、三分しか残っていませんが、せんだっても聞きましたが、嘉手納空軍基地の爆音問題で、これは横田基地とか本土の場合は日米間で特別協定を結んでやっているにもかかわらず、沖縄はらち外、区別している。ある面では差別だと言いたい。  これは、この間私が沖特で聞いたとき、外務大臣は、よく検討して善処したいということを答弁なさった。私はこういう問題はやるべきだと思うのですよ。ぜひ日米合同委員会で取り上げて、横田基地並みに嘉手納基地も午後十時から午前六時までは離発着あるいはその他の爆音発生をさせぬという取り決めをやってもらいたい。これも決意をもう一度聞かせてください。
  38. 河野洋平

    河野国務大臣 沖縄の県民の皆さんに大変長い間御苦労をおかけしていること、まことに私としてもつらい思いでございますが、基地にはそれぞれの態様があり、あるいは基地にはそれぞれの目的があると思います。私どもとして、それぞれの基地が果たしている役割なども十分考えながら、これは我々だけが考えるのではなくて、米軍がそういうことをおっしゃるだろうと思いますが、十分お互いにそうした問題について考えていかなければならないという認識を持っているということをこの前申し上げたわけでございます。その認識は今も変わりはございません。
  39. 上原康助

    ○上原委員 もちろんそれはおっしゃるとおりでしょう。基地にはそれぞれの基地の施設の目的があるでしょう。だが、それは平等でなければいけない。安保体制下において、日米安保条約で地位協定を同様に適用するというのがあなた方の返還のそもそもの基本だったわけだから、それを差別、区別するというのはもってのほか。  そこで、この件につきましてはぜひ早目に、アメリカ側も日本側から提起があればやると言っているのです、アメリカ側の言い分は、私がいろいろ接触した限りにおいては。それをやってください。  以上で終わります。
  40. 福田康夫

    ○福田委員長代理 前原誠司君。
  41. 前原誠司

    ○前原委員 このたび、ゴラン高原へPKOを派遣するかどうかという与党調査団のさきがけの代表といたしまして現地に行ってまいりました。また、その前後にいろいろ中東政策についても関心を持ち勉強させていただきましたので、その点を中心にきょうは御質問をさせていただきたいと思います。  まず、ゴラン高原へPKOを派遣する意義の問題についてでございます。  今党内でもいろいろと議論をして、最終的な詰めの段階に来ているわけでございますけれども、私個人としましては、現地に行きまして、日本に対する期待、これはPKOだけではなくて、中東へ日本がさらなるプレゼンスをしてほしいというものも含めて強く感じてまいりました。  また、ことしで三年目を迎えるこの法律というものを考えた場合に、やはり人的貢献というものを日本も行っていくべきであろうという趣旨でこの法律がつくられたわけでありますから、ある程度間断なく人を派遣をするということはある意味で当然のことではないか。また、参加五原則というものを満たしている以上は、そしてまた中東に対する意義づけというふうなものを見出せる以上は私は派遣をすべきではないかというふうに考えておりますけれども外務大臣におかれましては、このゴラン高原へPKOを派遣する意義についてどのように考えておられるのか、その点について御所見を伺いたいと思います。
  42. 河野洋平

    河野国務大臣 ゴラン高原のPKOその他御視察をいただいた調査団の調査報告書も拝見をいたしました。随分多くの首脳とお会いになって、非常に的確な議論をしておられたというふうに思います。また、現地についても、なかなか日本で考えている、私自身もまだ現地を存じませんけれどもお話を伺うと、日本で考えていたのとは大分違うというようなことも帰国後いろいろな方にお話を伺いました。まことに御苦労さまでございましたとまずお礼を申し上げたいと思います。  このゴラン高原のPKO派遣については長い議論がございます。昨年の五月から我が国国内ではいろいろな角度からいろいろと議論がそれぞれの部署でされてきたわけでございますが、それはそれとして、ゴラン高原という地域の持つ重要性というものは我々はもっとしっかりと認識しなければならないのだろうと私は思っております。  中東の和平というものがいかに重要なものであるかということは論をまたないと思いますが、とりわけ我が国のように中東地域にエネルギーのかなり多くの部分を依存している、これは恐らくどの先進国よりも多くの依存度をもって中東に依存しているという国から見れば、なおさらのことだと思います。かの地の平和、安定あるいは繁栄というものは我々にとって大きな直接的な関係もありますし、また国際的な、世界的な平和という意味からも大きな問題であろうと思います。  そして、今中東は和平に向かって大きな流れができつつあるという状況でございますから、その中東の和平への流れをできる限り我々としては支援をしていくことが重要だ。既に、パレスチナ人に対する支援でありますとかその他人道的な支援については我が国としてはやっているわけでございますが、今議員おっしゃいましたように、何といっても目に見えるプレゼンスというものを求められるということもまた事実でございます。  しかし一方、我が国にはPKO法という法律もございますし、憲法の許す範囲内という我々が守っているルールもあるわけでございますから、そうしたルールに基づいて、ルールの範囲内で国際貢献を積極的にやろうという我々の決意というものを生かしていくべきではないかというふうに思っているわけでございます。  現在、政府調査団からは報告書が出まして、与党の調査団の報告書はさらに与党三党でその最終的な評価といいますか、判定といいますかそういうものをめぐって御議論が続いているというふうに伺っておりますので、その評価を踏まえて我々としては最終的な判断を下したい、こんなふうに思っております。
  43. 前原誠司

    ○前原委員 今ゴランへPKOを出す意義というものをお話しいただきましたけれども、事前に通告した内容から外れるかもしれませんが、一つだけお伺いしておきたいと思いますが、我が党内にもある議論でありますけれども、要は外務省あるいはPKO本部が国連から要請があったのかあるいは探し出したのか別にして、ある程度既定路線をつくって政治の決定を待つというふうなところに対する反発というものがございます。  この議論というのは私は両面あるなと思っております。それは、そういう部分もあるけれども、しかし議院内閣制において、特に我が与党から一番大きな党の総裁である河野自民党総裁を外務大臣として出している以上、これを逆に言うということは、我々の、逆に言えば内閣、政府に対する統率力が問われているという部分もあって、余りこれを言い過ぎるということは、我々与党が天につばをする発言になるのではないかという気も一価ではしている部分もございます。  ただ、物事の性格上、対外的な信頼性あるいは責任というものもありますし、物事ができる限り速やかに進むような状況を、このゴランの問題に限らず、今後はつくり出していく必要があるのではないかと思っております。  そういった意味で、昨年の五月からというふうなことでございますけれども、五月はまだ現政権下ではございませんけれども、やはりそういう話があった時期に可及的速やかに与党なりあるいは国会なりに御報告をしていただいて、そしてある程度白紙立場議論ができるような環境をこれから外務省としてもつくり出していただきたいという気がしております。  先ほど野村欧亜局長小杉理事の御質問に答えられて、マケドニアについては考えておりませんというふうな言い方をされましたけれども、やはりそういう一方的な言い方だけではなくて、その点についても、例えば与党の外務あるいは内閣、防衛調整会議等々に対しても事前、事後、ある程度相談をしていただく、またそれが逆に言えば物事の決定について円滑に進むことではないかというふうに私は考えておるわけでありますけれども、その点についてちょっと河野外務大臣の御所見をお伺いできればと思います。
  44. 河野洋平

    河野国務大臣 政府・与党は十分連携をとって物事を決め、進めていくべきだという議員お話は、そのとおりだと私は思います。ただ、このPKOの問題についてだけ申しますと、各地のPKOへの派遣要請については、これは何といっても、国連から外務省に打診といいますか、内々の打診がまず来るわけでございまして、その内々の打診を受けて、外務省としては現地状況その他について十分情報をとって、まず最終決定のための資料づくりをするということが必要なのだと思います。  たまたま今度のゴラン高原の問題は、繰り返して申し上げることでありますけれども、モザンビークでありますとかルワンダの難民支援でございますとか、我が国かなりアフリカに向かって人を出していたという状況もあって、この上またさらに出すということはできないという考え方もあって、これは私は、少なくともモザンビークなりルワンダ難民支援人たちが無事に帰ってくるということを待って、それからの作業ではないかというふうに私自身は思っていたところがございます。それが、かなり時間が経過したという理由一つになっているというふうに、ぜひ御理解をいただきたいと思います。  それから、外務省としては、そういう要請があったときに、いわゆるPKO五原則といいますかあるいは三原則といいますかそういうものに当てはまる地域であるかどうか、これはもうそこで当てはまらないなら、これはもうテーブルの上にのせる必要もない、ないというか、のせる前にこれはできませんといってお断りをすべきものでありますから、法律に基づいて、それが判断の材料であるかどうかということを、まずこれは事務的に判断をしていいのではないか。  今回の場合にも、三原則は満たしておる。しかし、残る二原則については若干の問題があるのじゃないかという与党側の調査指摘もございましたが、至急私どもとしては国連に確認をいたしまして、残る二つのポイントについても国連側から、問題はない、我が方からの主張というものが十分認められるという返事が来た。そんなやりとりがあるわけですが、さてそこで、そういう条件が整ったところで最終的な政府の政治的な判断を下す、こういう段取りになっていくのではないかというふうに思うわけです。  ですから、向こうから来たものを全部、さあどうださあどうだ、これも一つのやり方だとは思いますけれども、外務省としては、それが我が方の法律にのっとって対応できるものであるかどうかという判断を考えるということはあっていいのではないかというふうに思います。
  45. 前原誠司

    ○前原委員 今の御答弁のように、まず事務的に法律にのっとっているかどうかというふうな御判断を外務省でされて、それがある程度クリアできたら相談というふうなものをこれからさせていただくという確認ができたということで、この件については前向きに評価をさせていただきたいと思います。  次に、今回中東に行ってまいりまして、PKOの問題だけではなくて、非常に経済的な支援というものの重要性、また要請が強いということを認識して帰ってまいりました。特に、私は、パレスチナの自治がうまくいくかどうかというのが中東和平の一つの大きなかぎではないかと思っております。  ただ、大きな問題なのは、要はイスラエルとの和平路線あるいはユダヤ人との妥協というものに対して反発をしているアラブ、特に原理主義的な勢力が、例えばパレスチナ地域の中でもテロ活動を行う。テロ活動を行うことによってイスラエルが非常に強硬的な態度になって、パレスチナ人が出稼ぎに、大体背は八万人ぐらい毎日出ていたのが、封鎖をして一万人ぐらい減る。  私どもが行ったときには三万人ぐらいに回復しておりましたけれども、それでも経済的に困窮をする、いわゆる日銭を稼ぐ手段というものを剥奪をされる、そういった人たちが、いわゆる原理主義的な勢力、ハマスなどに同調するという悪循環を繰り返すという問題がありまして、いかに民生の安定、向上をこのパレスチナの地域の中において図っていくかということが、自治の成功、そして、ひいてはそれが、まず取っかかりとしてのイスラエルとパレスチナあるいはアラブとの和平の成功のかぎを握っているのではないか。そういう意味で私は、パレスチナ支援というものは死活的に重要な問題であると思って帰ってまいりました。二年間で二億ドルを拠出をするということで、一年分の一億ドルは拠出をされたということでございますが、話を聞いておりますと、一九九三年の十月にワシントンでの会議で、これから世界として、五年間で二十五億ドルのパレスチナに対しての支援を行っていこうということであります。アメリカが五年間で五億ドル、EUが六億ドル、十一億ドルは大体アメリカとEUで賄っていこうというふうなことでございます。第二世銀の融資なども進められて、本当に特例中の特例ということで進められているわけでありますけれども、その目標額としてもまだまだほど遠い。  多分これは、日本が、二億ドルだけではなくて、さらにパレスチナに対して追加支援というものを行うというふうな必要性が出てくるのではないかと思いますけれども、その点について、ちょっと時間がございませんので、簡潔にお答えをいただければと思います。
  46. 法眼健作

    ○法眼政府委員 前原先生、この間アラファト代表などとお会いになりまして、この点について突っ込んだ議論をなさっておられるわけでございますけれども、私どもといたしましても、あの地域が安定するためには、パレスチナが豊かになっていくということがまことに大事なことだと考えておりまして、今おっしゃいましたとおり、二年間で二億ドルというプレッジをいたしまして、既に一億ドルはもう出ておりまして、残りも今年度中に順調に出ていく予定でございます。  そして、その後の追加支援につきましても、私どもは前向きに対処いたしまして、これはもう一生懸命やるつもりでおります。具体的にどのくらいの額がということにつきましては、まだ申し上げる段階にはございませんが、ただいまのような認識に基づきまして、パレスチナ人に対する支援を私どもとしてもできる限りやっていくというふうに私どもは認識しておる次第でございます。
  47. 前原誠司

    ○前原委員 パレスチナは自治政府ということで、正式なオーソリティーを受けていないということで円借款が技術的に難しいという話を伺っております。  その中で、私も初めて今回勉強させていただきまして知ったわけでありますけれども、開発銀行というものが、この中東・北アフリカ地域のみない、唯一ないという地域でありまして、これの設立というふうなものを今一生懸命に議論をされているということでありますけれども、それに対する日本としての方針、日本というかできれば大蔵省所管になりますけれども、それまではやはり外務省が担当されるということでありますので、外務省としての抱負というものをまず第一点としてお伺いしたい。  それから、第二点は、これはアラファト議長も強い調子でおっしゃっておりましたけれども、要は雇用をつくり出したいということで、今、パレスチナ、イスラエル、アメリカが共同して、ガザ地区に工業団地をつくるという話になっておりまして、その一角を何とか日本で受け持ってもらえないかという要請が、正式にございました。外務省としてもそういう話は以前から多分聞いておられると思うのでありますけれども、それについてのお考えというものもまた簡潔に御答弁をいただきたいと思います。
  48. 平林博

    ○平林政府委員 お答え申し上げます。  まず、中東開発銀行の設立問題でございますが、目下関係国において検討中でございます。日本政府立場といたしましては、これは真剣に検討に値する問題ということでございますので、この検討会議には積極的に参加しているところでございますが、ただ、アラブの産油国の方からはかなり消極的な意見が出るとか、欧州諸国からも一部消極論もございまして、まだ多少時間がかかるのではないかというふうに考えております。  それからもう一つ、ガザ地区におきます工業団地構想につきましては、イスラエル、パレスチナ、アメリカの間で検討が進められていると承知しておりまして、我々も関心を持ってフォローしております。何ができるかということにつきまして考えてまいりたいというふうに考えております。  日本政府といたしましては、これも大事なプロジェクトだとは思っておりますが、一般的に、ガザ地区の民間産業の現状とか、特に中小企業の現状、あるいはその育成のための施策、そういうプロジェクトを通じての雇用問題、こういうものには重大な関心を持っておりまして、今それぞれ調査中でございますが、その調査の結果を踏まえまして、できるだけ協力、案件として生かしていきたい、こういうふうに考えております。
  49. 前原誠司

    ○前原委員 次の質問に移らせていただきますが、順序を変えて、イランの問題について先にお伺いをしたいと思います。  アメリカが対イラン制裁というようなものを決めまして、禁輸ということを決めて同調を求めてきているわけでございますけれども、それについて外務大臣の御所見を伺いたいと思いますが、まず、私の考え方を申し上げますと、アメリカというのは、その民族の組織あるいは構成上、やっぱりユダヤ人というものあるいはイスラエルというものに対して非常に肩入れを行う、またその政策決定のロビーというふうなものがきっちりしておりまして、そういったところで、我々は中東に行かしていただいて、なぜ日本に出てきてほしいかというところで、本当にどの国からもはかったように言われたのは、ニュートラリティーという、中立性という言葉とクレジビリティーという、信頼性という言葉であります。  そういった意味から、日本は、アメリカというのはやはりある意味でイスラエル、ユダヤに偏った考え方、また政策決定過程にならざるを得ない部分があり、そういった意味からはニュートラリティーあるいはクレジビリティーはアラブの側からすれば欠けているのではないかという部分で、私は、アメリカとの関係というものは基本であり、非常に大切な関係だと思いますけれども、事中東の問題に対しては、同調するということについては、中東和平というものについて日本が逆の色がついてしまう、そして日本が果たせる役割というものが逆に果たせなくなるという危険性があるのではないかと思いますが、その点について、私は、同調すべきではない、もちろん、ある程度のアメリカの意図というものも配慮しながら、それは現実的に対処をしなければいけませんけれども、基本的には、すべてアメリカが求めているようにするということは、逆に私は和平の逆戻りということにつながるという認識を持っておりますが、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  50. 河野洋平

    河野国務大臣 イランに対しては、国際社会はいろいろな思いを持っていると思います。ただ、言えることは、国際テロへの関与ということについて強い懸念を持っていると思うのですね。この国際テロへの関与ということについての懸念は我々も共有いたしております。ただ、イランが本当に国家としてテロに関与しているかどうかということについては、我が方はまだそれを確認するだけの情報を持っておりません。しかし、もしそうであるとすれば、これは重大なことだというふうに思わざるを得ないと思います。  それからもう一つ、大量破壊兵器、ミサイル開発に対する疑惑、こういうものがあると思います。これは、きょうですか、米ロ首脳会談などがあって、これは恐らく米ロ会談の中でもこうした議論が出るのだろうと思います。この大量破壊兵器やミサイル開発に関する問題というのは、我々もまたこの問題は十分注視しなければならない問題だというふうに思うんです。  それからさらに、もう一点、イランが中東和平に対する反対ということを言っているわけですね。その反対のために破壊作をしているんではないかとかという話もあったわけですが、これはもちろん確認ができているわけではありませんが、先ほど申しましたように、中東和平への流れというものに反対するのではなくて、これはやはり支持してほしいと思いますし、それからテロに対する関与はないということを言葉と同時に態度でもしっかりと示してもらいたいという気持ちを我々は持っているわけです。そういう部分について、アメリカを初め国際社会懸念を持っておられるわけで、その懸念は我々も払拭しろということを強く働きかけなきゃならぬというふうに思います。  ただ他方、じゃ、そのためにイランに対してどういう対応をとるのがいいのか。昨今の情報アメリカの動きなどを見ますと、これはやはり孤立化といいますか、封じ込めといいますか、非常に強い姿勢が読み保取れます。これも一つのやり方、アプローチの仕方なんだと思いますが、アプローチの仕方はそれだけかというとそうではなくて、むしろイランの国内にある過激派に対して、穏健な主張を持った人たち支援するというやり方もあるのではないかということを考えて、我が国はかねてからそういう方法、アプローチの仕方を模索してきているわけでございます。  今回アメリカがああいう非常に強い姿勢をとられて、アメリカからも大使を通じて、同じような姿勢をとってほしいというお申し出がございました。しかし、今申しましたように、我々は懸念は共有いたしますけれども、その懸念を払拭する方法については、我々は我々として十分検討する必要がある。私は、まだそのアメリカからの要請に対してノーと言っているわけでもございませんし、イエスと、育っているわけでもないのでございまして、十分検討する必要があるだろうということを申し上げているわけです。  さっきも申しましたように、我々は中東にはエネルギーの供給源として多くの部分を依存しているということもございますし、それからおっしゃいましたように、民族的な問題とか宗教的な問題とか、あるいは長い歴史的ないきさつとかそういうものを持たない国でございますだけに、我々が我々の考え方というものを踏まえて、どういうアプローチをとるかということは慎重に考えていかなきゃいけないというふうに思っております。
  51. 前原誠司

    ○前原委員 時間が参りましたので要望にとどめておきますけれども、イランが和平に反対をするというふうな考え方がありますけれども、イランの原理主義的な考えに割がしシリアも影響を受けていて、正面切ってはシリアも反対をしておりませんけれども、要は、パレスチナとイスラエルの和平あるいは周辺諸国との和平を注意深く見守っていって、それを成功させることが我々の利益にもつながっていくという感覚を持っております。  そういった意味におきましても、とにかくパレスチナ、そして、時間がなくて質問できませんでしたけれども、要は、バッファーになっているヨルダンとかそういったところの支援をやっていけば、私は援助というものが、キャラメルじゃありませんけれども、一粒で二度おいしいというか二倍にも三倍にも効果的になるような地域だと思っておりますので、今ODAが大体一〇%ぐらいですか何か前は、前年度は円借款が進まずに六%ということでありますけれども、そういう全体的なことも含めて、イスラエルとの和平に努力しているパレスチナあるいは周辺諸国、ヨルダン、エジプト、ぜひ積極的に支援をしていただきたいということを申し上げて、質問を終わらせていただきます。
  52. 福田康夫

    ○福田委員長代理 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時四分休憩      ――――◇―――――     午後一時一分開議
  53. 三原朝彦

    三原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。松田岩夫君。
  54. 松田岩夫

    ○松田委員 四月の中旬から五月にかけて、村山内閣の村山総理を初め大蔵大臣、防衛庁長官、通産大臣、そしてもちろん外務大臣等、それぞれ重要な会議や案件で外遊されました。きょうはこれに関連して質疑をさせていただこうと思います。  順不同になって恐縮でございますが、最初に経済問題ということで、まず、四月下旬、G7等に大蔵大臣が出席されたわけであります。声明を出しておられるわけでございますが、その声明を見ますと「変動を秩序ある形で反転させることが望ましい」、そういう文言が入っております。これについて、新聞報道ですと「かつてない明確な表現で決意を明らかにできた」と大蔵大臣は会議後の会見で満足の意向を示したというようなことが報道されておるわけであります。しかし、円高は全然改善されなかった。  きょうは、なぜということもありますが、外務委員会でございますので、日米あるいは外国との関係でどう我々は対処していったらいいのかというようなことに焦点を絞って質疑をさせていただきたく思うわけです。  例えば、このG7の会合を見させていただきましても、日本側としては大蔵大臣が既に決まっておりました緊急円高経済対策あるいは公定歩合の引き下げ等を御説明され、さらに九五年度第一次補正予算を五月中旬にも、来週には御提出なさるようでありますが、そのことをお話しなさって、内需拡大や輸入増加について日本は最大限の努力をしておるというようなことを一生懸命訴えられたのではないかお話しされたのではないかと思います。  ところが一方、アメリカ側はどうなのかなと見てみますと、アメリカのルービン財務長官は、日本ドイツあるいは国際通貨基金がドル安是正のためにぜひ追加利上げをしろ、こういうことを求めているのに対して、例えばアメリカのインフレは三%以下と低水準にある、今後二、三年も低い水準で移る、物価動向から見ればFRBによる追加利上げは要らない、こうおっしゃっておられる。また、IMFを初めもちろん日本も言っていますが、財政赤字の削減努力といったことをいつも求めてきているわけでありますが、この点についても、GDP比で見た財政赤字比率は先進七カ国で最低だ、アメリカは財政赤字削減に取り組んでいると反論されたというようなことが報道されておるわけであります。  ルービン長官、アメリカ側は、まさにドル防衛の具体的な策も示さず、また日本が打診した円建て米国債についてもその発行を否定される。その反面、日本に対しては、ようやく始まった景気回復もまだ弱いようだと懸念を表明された。そして、武村蔵棚がいろいろやるとおっしゃっておられるが、さらに具体策をまとめるみたいだからそれを見たいと言って一層の努力日本側には要請した。私どもから見れば、ドル下落を事実上放置しているアメリカ政府のドル防衛姿勢こそ最大の問題だと思うわけであります。  G7に私は出席しておるわけではありませんのでわかりませんが、実際に起こったこういったやりとりの全貌を素直に受けとめさせていただきますと、余りにも一方的なやりとりではなかったのかと思われてしまうわけであります。  一体、日本としてしっかりとした対応を大蔵大臣はされたのかどうか。きょうは外務委員会で大蔵大臣がお見えになりませんので、また別の機会にお聞きしたいと思いますけれども、大蔵省の諸君がおられれば、今私が申し上げたことについてどうお考えなのかどう思われるのかお聞きしたいと思います。
  55. 大久保良夫

    ○大久保説明員 最近の急激なドル安・円高は、我が国の経済のみならず途上国を含めまして他の国々の経済にも大きな問題をもたらしておりまして、基軸通貨としてのドルの安定ということは世界的関心となっておるわけでございます。米国自身も、強いドルということを志向いたしまして、そのために米国経済のファンダメンタルズを強化するという姿勢を明らかにしているところでございます。  さらに、先般のG7の共同声明におきましても、御指摘のように、最近の為替の変動は主要国における基礎的な経済状況によって正当化される水準を超えているということ、また、こうした変動を秩序ある形で反転させていくということが望ましいこと、また、内外の不均衡を縮小するという努力を強化するということ、それから為替市場において緊密な協力を継続するということにつきまして、この四点についてG7の共通の認識が明確に述べられているところでございます。  米国を含めまして各国政府は、この声明で明確にされている共通の政策の方向に向けまして、自国の経済状況に応じて適切に具体的な措置を講じていくものと理解しております。
  56. 松田岩夫

    ○松田委員 私がお聞きしたことだけ答えてくださればいいのです。  アメリカは何もしない。声明とか言葉では今おっしゃった抽象的な考え方が述べられておりますが、実際にとっておる行動は何もない。また、とるようにどの程度強く働きかけたのかそれが感じ取れない。もちろん私は、日本がとっておる政策、日本がとったあるいはこれからとろうとする政策が十分だとは思っていません。しかしこの点は、外務委員会でありますから中身は一々申しませんが、その点についてさらに徹底した対策が必要であることは言うまでもありません。しかし、日本はそれなりに対策をとっておる。それに対してアメリカは何もしていない。そういう状態をどう考えられるのか。こういうことであります。  この点については、外務大臣、所管外とは申せ、しかし外務大臣アメリカに行かれたときにはクリストファー国務長官に対しても関心を表明されておられることを新聞報道で見まして、外務大臣として当然のことだ、通貨問題というのは大蔵省専管などと思っていること自身が大きな間違いだと私は思います。  きょうはそのことをこれ以上議論いたしませんけれども外務大臣として、例えば今申しましたG7における、特に今問題になっておる日本アメリカとのやりとりといったものをどんなふうにお感じになられたのか。お聞きしても答えは想定されますので、問題点だけ指摘させていただいて、ぜひ今後のあり方に当たって考えていただきたいと思うのです。  こういったことを見ますと、アメリカという国は、某軸通貨国としての役割を十分果たしていると自分で思っているのだろうか。あるいは果たそうとしても果たせない状況にいろいろな状況でなってきているということを、意識しているかどうかはともかく、そうなってきているのか、そんなことすら私は思わせていただく昨今の状況であります。かつてポンドが基軸通貨から落ちてドルに移行していくプロセスなどというものを経験したわけでありますが、そんなはしりが今あるのかないのかなとということを感じさせていただくわけであります。  そうだとすると、この辺は議論が大いにありますのは、いずれにしても、今度の円高・ドル安問題を見ておりましてしみじみ感じますことは、日本にとりましても、ドイツの行き方というものを一つの参考にすべきではないか、また参考になるのではないか。ドイツは、ドルが急落し、あるいは逆に言えばマルクが上がりましても、日本のように余りうろたえてはいません。なぜかといえば、マルクを中心にした独自のマルク圏といいますか、経済圏が欧州を中心にでき上がっているからであります。例えば、よく言われることですけれども日本の貿易の円建て比率は、輸出で見ると四割、輸入で見ると二割、こんなに少ないわけでありますが、ドイツの貿易のマルク建ての比率は、輸出八割、輸入でも五割以上がマルク建てであります。  そういう意味で、円も長期的にはマルクがたどった道を進んでいくことが望ましいのかな、あるいはそんな逆を歩んでいけるのかどうかなどということを最近は、多くの方といいますか、関心のある方が議論されるようになりました。私としても、これは外務委員会といいますか、外務省としても、あるいは外交という面からも、この点についての意識はかなり持っていくべき時期に来ておるのではないかというふうに思うわけであります。  アジア諸国との経済の連携を一層深めて、みずから、今も努力しておりますが、さらに輸入をふやして黒字を減らす、輸入決済はできるだけ円を使う、国際市場に出回る円をそういうことを通じてふやす。また、円資金を持った人がその円資金を簡単に運用できるように、簡単にといいますか、運用できるように円の短期国際市場や金融市場を、今もう整備が始まりました、もっともっとしっかりとさせていく。そして、いわゆる円通貨圏というものを地道につくっていく。  アジア通貨は、もちろん経済の実態を反映いたしまして為替相場をドルに連動させております。当然のことです。なぜならば、アジア諸国にとってアメリカが最大の市場だからであります。簡単に言えば、非常に大ざっぱに言ってしまえば、アジア諸国は、日本から機械や部品、生産財を買って、そして物を生産し、その生産したものをアメリカに輸出し、今日では一部をもちろん日本へ輸出しというパターンで、アジアの経済は相互補完の中で大成長、大発展を今遂げておるわけであります。そういう意味で、今のパターンを思えば、ドルとの連携、ドルとの連結というのは当然のことであります。しかし今のままでは、ドルが下落し、アジア諸国にとっても大きな損であります。そういう中で、アジア諸国にもドル連動を再検討しようという空気が出始めておる、準備通貨に占めるドルの比率を下げて円などに乗りかえる動きが静かに進行しているとも言われております。日本が輸入をふやし、円取引を拡大すれば、そういう意味でアジア経済の安定にも役立つわけであります。こうした円の国際化、円経済圏の促進について、政府は一体どう考えておられるのか。  もちろんこういったことは意識して進められる要素もあれば、経済の実態というものがそうさせておるという面もあります。しかし方向として、円の国際化を進め、あるいは、円経済圏というといけませんが、別に閉ざされたものじゃありません。開かれた、しかし円に依存した経済圏ができてくるということはいいことだ、むしろ促進すべきことだと私は今思うわけでありますが、政府はそうしたふうに考えておられるのかどうか。おられるとすれば、一体どんな手だてがあるのか。簡単に、外務委員会ですから。しかし、このことをお互い理解し合うことによって、日本の外交政策の面でもそれなりにいろいろ物の考え方を整理していくという上での大きなバックグラウンドになっていくと思えばこそ、この円高・ドル安で悩む中でこの問題を提起させていただいたわけであります。今の点について簡潔に、私のお聞きした点だけについて、大蔵省ですか、御答弁いただけますか。
  57. 内村広志

    ○内村説明員 円の国際化につきましては、従来より各般の環境整備を通じまして推進してきております。  先生今御指摘のように、例えば貿易取引における円決済の割合を見ますと、輸出については一九八〇年に二九・四%であったものが一九九四年九月には三九・四%まで上昇し、輸入につきましても同様に二・四%から一九・二%まで上昇するなど、着実に円の国際化は進展しているというふうに考えております。  しかしながら、これも先生指摘ございましたように、ドイツの貿易取引におけるマルク建て比率の状況を見ますと、輸出で約八制、輸入で約五割。必ずしも高くないことも御指摘のとおりでございます。  この理由といたしまして指摘されておりますことは、第一に、我が国の主要貿易相手国でございます米国あるいはアジア諸国では米ドルあるいは米ドルとの連動性の強い通貨を採用していること、それから国際商品である原油等の商品がドル建てであること、あるいは、中長期的にこれまで円高傾向が続いてきた中で、我が国の輸入企業が為替差益を得るためドル建て取引の方を志向してきたという理由があると思います。  しかしながら、円の国際化は我が国企業の為替リスクの管理を容易にする等望ましいことであるというふうに考えておりまして、このため従来より各般の環境整備を通じて円の国際化を進めてきているということは申し述べたとおりでございます。さらに、最近でも本年三月未に決定された規制緩和推進計画におきまして、非居住者ユーロ円債、非居住者国内債につきましての許可、手続の弾力化を行いましたほか、非居住者ユーロ円債の還流制限の撤廃、あるいは平成八年一月より非居住者国内債の適債基準の撤廃等を行う予定でございます。さらに、今回決定されました緊急円高経済対策につきましても、円建て取引の推進、あるいはアジア諸国通貨当局との関係緊密化を盛り込んで、これらを一層推進するつもりでございます。
  58. 松田岩夫

    ○松田委員 考え方としては大蔵省も一致しているようでありますから、ぜひ、短期金融市場の整備等を初め、政府でできる手だて、あらゆる手だてをしっかり講じていっていただきたい。  外務大臣、どうでしょう。最初にちょっと時間を費やし過ぎたのですけれども、この円高の中で、外務大臣として、私今ちょっとG7状況についての所感、これからの円の国際化といったことについて所見を述べさせていただいたわけですが、外務大臣としてどんなお感じをお持ちでございますか。
  59. 河野洋平

    河野国務大臣 最近よく言われることでございますけれどもアメリカが少し内向きになっている。そして、我々から見ると、NAFTAの中にアメリカというものは非常にあぐらをかいて、ドルのレートについても、ペソを横目に見ながら大した問題はないというふうに、もし仮にそういうことであるとすれば、これは国際基軸通貨として我々はもう少し頑張ってほしいと思わざるを得ない保と思います。  本当に、言われているように、国際社会に大きな影響力を持つ国々が少し内向きにみんなそれぞれがなるとすると、これは、やはり国際経済あるいは国際的な貿易、どれをとってみても為替その他が極めて不安定、つまり基軸がなくなってしまって不安定になる。それぞれがみんなそれぞれの経済圏を持つということになると、それはそれで一つの問題は片づいたとしても、また別の問題が出てくるのではないかということも言われているわけでございます。  我が国が抱える問題は、もちろん、経済的に輸出輸入それぞれ、為替レートの非常な、急激な変動というものが大きな影響を与えておることは私も大変遺憾なことだと。これは、急激な変動というものは、計画を練り、企業家が本当に努力をして組み立てている経営計画というものがそれによって壊れてしまうということでありますから、大変大きな影響があるというふうに私は思いますが、他方、外務省におりますと、この為替レートというものが、円借款の債務の返済についても大変大きな影響が出てきておりまして、せっかく我が国がその国の経済を支援するという目的で借款を供与しているにもかかわらず、今度は、その返済に当たって、その国の経済にまた別の問題を惹起するということになるという指摘などがあって、これなどは我々、大いに残念にも思っているわけでございます。  レートは、市場が、マーケットが決めるものであって、我々が決めているわけではございませんけれども、しかし、結果としてそうした問題が起こっているということについて我々も非常に残念であり、この問題についてどう対応するかはよく考えなきゃならぬ。しかし、これは安易な対応の仕方というわけにはまいらないわけでございまして、十分、慎重に検討する必要があるのではないかなどと思ったりしております。
  60. 松田岩夫

    ○松田委員 外務大臣としても、この通貨外交、外交としての通貨問題という意識でぜひ真剣に対応していただきたいと思います。  次に、通産大臣。大変御苦労な交渉をされてこられました。私は、さきの一月でしたが、予算委員会でもちょっと取り上げたことがあるのですけれども、日米包括協議というもの、これが難航するたびに日米関係というのが大きく揺れたわけでございます。  思い起こせば、昨年二月の首脳会談で、まさに、個別品目、数値目標というようなことで決裂したときには、日米の危機だとかいろいろ言われました。交渉が行き詰まっていると、そのこともまた円高要因の一つにもなったり、今回もまた自動車問題で同様なことを経験したといいますか。  正直言いまして、世界の二大経済パワーといいますか、日本アメリカ関係全体が実際は悪くはなっていないと思うのですが、しかし、こういった個別の貿易摩擦案件で、ある意味で、外から見ていると翻弄されている、こういう状態というのはいかにも異常でありまして、また不健全であります。  したがって、個別のこういった経済紛争を冷静に処理する何らかの仕組みというものを考えるべきではないか。予算委員会で取り上げたことを思い出していただけるかと思うのでありますが、また同じ思いを合いたしておるわけでありまして、いよいよこれは工夫していかにゃいかぬよというふうに思うわけであります。  あのときにも申しましたけれどもアメリカの友人のブラッドレー上院議員なんかも、あの数値目標はおかしい、何か客観的な第三者によるパネルでもつくってやったらどうだというようなことを上院で、昨年の春でしたか提案しておりました。  しかし、思えば、そういう個別案件を処理する仕組みとしてまさにガットにもパネルができておりました。たまたまガットでは、決定の仕方とか決定の時間もルーズであったりというようなことで実際ワークしなかったから余り使わなかった。しかし、その経験を踏まえて、今度まさにWTOでそれなりにしっかりとした紛争処理手続をつくり上げたわけであります。  これを機会に、個別の貿易摩擦案件というものは、日米間の協議というよりも、まさにできるだけWTOの場に移していく、こういうことをそのときも申し上げたわけだ、予算委員会でも申し上げたわけでありますが、私はきょうここでもまた強く申し上げておくわけであります。  今回の自動車部品問題、これでいよいよ、きょうかあすになるのでしょうか、新聞報道を見ますと、アメリカ制裁リストにというようなことをおっしゃっておられるようでありますが、通商法三〇一条に基づくそういった制裁手続に入るということになったらば、これは仮定の話ですけれども、もしそうなったとした場合には、日本側としては当然WTOの手続で処理するべきものと、今言いましたような私の考え方からすれば当然にそうなってくると思うわけでありますが、そういうことでございますか。仮定の話ですが、通産省。
  61. 岩井篤

    ○岩井説明員 ただいま先生が御指摘ございましたように、経済のグローバル化が進展する中で、通商に関する紛争というのが二国間で発生することがある。こうした二国間の紛争に関しましては、私どもとしましては、まず当該国間で十分議論をし解決をするという基本的立場に立って従来もやってきたわけであります。  ただ、一方、御指摘のように、WTOの紛争解決手続というのが成立をいたしまして、対象範囲が拡大する、また手続の期限が詳細に規定されるというようなことでその実効性が著しく改善されたわけでございます。  そういう意味で、今回の日米自動車問題も含めまして、仮に紛争が二国間の話し合いで解決されないという場合には、このようなWTOの新しく創設されました紛争処理機能、多国間の枠組みというものを積極的に活用してその解決に当たるということが必要ではないかというふうに考えてございます。  仮のお話ということで、一方的制裁措置の発表があった場合ということでございますが、仮の話ということではございますが、仮にそういうことになったとすれば、国際的なルールに基づいて対応していきたいというのが私どもの方針でございます。
  62. 松田岩夫

    ○松田委員 問題は、今回の案件は、アメリカが例えばボランタリープランというものを要求し、その上乗せを要求してきた。このこと自身はアメリカが言ってきて、そのこと自身をすぐ日本側からWTOというわけにはいかないと思うのですが、向こうが制裁措置に入ったということならばWTOに持っていける、こういうことだろうと思うのです。  今後、個別の紛争案件、いろいろな形態があり得ると思うのでありますが、WTOの手続に乗り得るというものは、一般論として、今後の方針として二国間協議、アメリカに限りませんが、しかし、個別の案件について二国間協議をよく言われるのはアメリカがもう圧倒的に多いわけでありますが、できるだけWTOの場で処理させていただく、法制上できるものはWTOの場で処理させていただくという基本的な考え方、基本的な対応の仕方、そのことについてはよろしゅうございましょうか。外務大臣、どうでしょう。
  63. 河野洋平

    河野国務大臣 二国間の問題はまずは二国間で十分話し合うということが基本的には必要なんだろうと思います。二国間で十分議論をしても結論が出ないという場合の一つの方法としてWTOを使うというのは、これは国際的につくったルールでありますから、そのルールにのっとってWTOで判断をしてもらうということは当然のことだろうと思います。
  64. 松田岩夫

    ○松田委員 いや、ちょっと大臣、そこが大事なところなんですよ。個別の紛争案件については、まず二国間で話し合って、そしてそれがだめなときにWTOに持っていく、そういう発想を改めたらいかがですかというのが私の質問の趣旨でございまして、WTOをつくり、紛争解決のための処理手続というものをみんなで合意してしっかりつくりました。二国間ではいろいろ意見が違います、対立します。その場合に第三者も入って公正な立場で、例えば、アメリカの言い分も第三者の前である意味で相対化されるわけでありますが、そういう意味でいい場をつくったわけであります。  したがって、これからはできるだけ、二国間で話し合う、それも当然並行されていいと思いますが、貿易案件、貿易処理手続について貿易紛争の処理手続としては立派なものができたわけですから、それを日本としてはまさに多角的な自由な貿易体制を続けていく、そういう考え方に立った日本としては、WTOを育てる意味でも、また二国間交渉でお互い対立する、しかも、今のフレームワークトークのように、包括協議のように、トップにまでいって個別の貿易案件を議論するなどというような枠組みは使わないで、これはまたさっき言ったところですが、WTOそのものにもっと依存した対応、そして、WTOそのものを育てていく、そういう考え方に立っていくということが大事だということを申し上げているわけであります。この点はよろしいですね。通産省、いいですね。さっき答弁されましたから、そういうことでよろしいですね。
  65. 岩井篤

    ○岩井説明員 大変重要なポイントだと思いますので、私から基本政策という形で申し上げるのは御容赦願えればと思いますけれども一つだけ御参考といいますか、WTOの紛争処理の協議の枠組みの中におきましても、手続としましては、まず最初の段階においては二国間で協議をしるというのが前提になっておりまして、そういう意味で、二国間協議の重要性というのはWTOの枠組みの中においても認められているということだけつけ加えさせていただきます。
  66. 松田岩夫

    ○松田委員 それを含めて私はWTOと言っているのですよ。WTOの枠組みというものを我々として意識しておくということが非常に大事だ。まして、この包括協議のように年二回、そのフォローアップのために両国のトップがお互い相談し合うなどというような枠組みにわざわざしてしまったこと自身、極めて拙劣であったなというふうに私は思うものですから、くどいようですけれども、今後の日米間の友好のためにぜひ考えていただきたい。  さて、その関連でもう一点。そうはいっても、WTOで扱えない個別案件がある。例えば、この前も申しましたが、系列問題なんというのはどうしたらいいんだ、日本特有の問題だとよく言われるが、しかし、ヨーロッパにもそれなりのものはある。系列問題なんというような構造的な問題はWTOでも扱えない。そうかといって、二国間でこういった構造問題をやると、全く仕組みが違うわけですから、向こうの価値観から見ればとんでもないという感じになる、理解すること自身が非常に難しい、こういうようなことも起こり得る。そういう案件、次第に経済関係が密接になればなるほどそういう事柄がふえてくるわけであります。  そういう意味で、私はこの前の予算委員会でも申し上げました。ぜひこれは工夫をしていただきたいと思うのですが、こういった構造問題について、例えば日米二国間というよりも先進国間、日本アメリカ、EU、カナダという例えば四極でその改革を互いに議論する新しい構造協議というようなものを工夫してはどうか。構造問題、先進四カ国であればそれなりに似ている面もある。違う面もあるが、しかし、四極の多様な価値観の中で相互に望ましい姿を探っていける。こういう意味では、二国間でやるよりもはるかに有意義ではないか、また効果も大きいのではないか。お互いに世界の経済の先進四極としてお互いの経済の中をよく理解し合うという意味でも効果が大きい。そういう意味で、私はこうした四極新構造協議といったものをこの前も予算委員会で提案をいたしておきました。きょうもまた重ねて、今後のあり方として御検討していただきたい。WTOの機能をフルに活用しながら、しかしまた、WTOでは扱えないこういった先進国の構造的な問題をお互いによく話し合っていく場を設けていってはどうかというふうに思うわけであります。  さて、自動車部品問題にもう一遍戻りますが、今度のこの自主的部品購入計画の問題というのは、理屈の上では明らかに日本側に理があるわけでありまして、多くの海外の関係者アメリカの非を、アメリカ自身も、さっきブラッドレーの話もいたしましたが、述べております。しかし、例えば、きのうたまたま日本紙に紹介された英紙、イギリスの新聞のフィナンシャルタイムズの記事が紹介されておりましたが、日本政府は米国の要求を拒否したが、それに劣らぬ決意で規制緩和を実行しなければむなしい勝利に終わるだろうと述べているわけであります。私もそのとおりだと思います。日米首脳会談を初め、あちこちで今の村山内閣が約束してこられました。ある意味でもう対外公約と言っていいでしょう、別に外国のためにやるわけではありません、我々日本人のためにやるわけでありますが、この規制緩和を今こそ徹底的に断行することだと思うのです。  外務大臣、改めてかたい決意をお述べいただきたいと思います。
  67. 河野洋平

    河野国務大臣 規制緩和はぜひともやらなければならない、こう我々は考えておりまして、過日、我々の努力の成果というものを発表させていただいたわけでございます。しかしながら、この規制緩和、なかなか一遍にやり切れないものがある。そこで、私どもが申し上げておりますことは、年次にわたっていわば白書とでも言うべきものでしょうか、毎年毎年、規制緩和についてのレポートを出します。そして、そのレポートによって、国の内外から規制緩和の成果といいますか、あるいは問題点といいますかそういったものを指摘していただいて、さらに我々は一層の努力をいたします、こういうことを申し上げているわけでございます。  さらに大事なことは、規制緩和を行うに当たってできる限りの透明性を確保したいというふうにも思いますし、またその透明性という部分についていえば、外国からこの部分についての規制緩和をという御要望もいただいているわけでありますから、その御要望に沿った規制緩和ができる場合、あるいはできない場合にもなぜできないのかということを明確にするということが極めて重要だというふうに考えているわけでございます。こうした作業を我々は、それは、つまり多岐にわたりますので極めて困難な作業であります、でありますけれども、これはどうしてもやらなければならないということで行っているところでございます。  アメリカからはこの日本の規制緩和について幾つか指摘がございました。つまり不十分だという指摘がございました。その不十分だという指摘一つは自動車あるいは部品に関する指摘でございまして、これは私どもからアメリカに対して、目下協議中でございますから、この協議の中でそうしたものは明らかにもなりましょうし、この協議が終わればそこで申し上げた規制緩和策については当然この中に入ってまいりますということを申し上げているわけでございます。その他、何点か指摘をいただいた部分がございますが、この指摘についても我々は十分耳を傾けながら、できるものについては年次計画を明確にして行うし、できないものについてはなぜできないのかということをはっきりさせるという作業をこれから先も行ってまいりたいと思っております。
  68. 松田岩夫

    ○松田委員 つい先日、私も連休を活用させていただいてアメリカに参りまして、アメリカの国会議員の諸君とも、回を重ねてきた会合でありますけれども会議を持ちました。民主党系、共和党系、それぞれ一緒にやるわけですが、党によってそんなに違いはないわけですけれども、しかし、どちらかといえば民主党系の人はこの数値目標型のアプローチあるいはボランタリープラン、特に部品工場を選挙区に持った議員も入っているものですから、大変強くこれを訴えておりました。しかし、多くの議員は、そういうことよりも日本の社会をもっと開かれた透明なものにしてほしい、ですから、日本の社会は閉ざされていると思い過ぎている面もあるわけでございますが、規制緩和ということを徹底してやってもらいたいという強い思いを持っておるわけであります。特に共和党の議員は、それこそが大事だ、数値目標だ何だといってまた行政介入するようなことよりも、まさに規制緩和を徹底して自由な経済社会をつくり上げるということを強く言っておりました。  ついでに申しますと、細川政権の誕生で、古い話になりますが、正直、政治の変化から規制緩和を初めとする経済の改革へ、あるいは政治の変化から、彼らの言葉によれば一層充実した民主主義の、我々は民主主義を実地していると思うのですが、一層の民主主義の実現へと日本の政治は大きく変わっていくと大変大きな期待をかけた、しかし、確かに選挙制度や政治資金の制度は変わったが、その後は見るべきものがない、期待が大きかっただけに実は現在はとても大きな落胆だ、ほとんど異口同音にそう言っておったわけであります。とりわけ今度の、これは外務委員会で言うべきことではないかもしれませんが、自民党と社会党のこの連立政権というのはまさにアメージングで、ある議員の発言ですから別にどうということはない、しかし多くの諸君がそう言ったわけであります、驚きだと。村山内閣は規制緩和一つとっても何一つドラスチックなものがない、結局次の衆議院選まで待たないとだめということか、一体選挙はいつなのかこういった現在の日本の政治、日本の政権に対する、ある意味で残念でありますけれども、さめた見方が非常に一般的であるというふうに私は受けとめざるを得なかったわけであります。日米関係にとって極めて重要なことであります。  いや、そんなことはないとおっしゃる方々ばかりと存じます。そんなことはない、村山内閣において規制緩和を初めまさにトラスチックな経済の改革、行政の改革を進めていくのだ、その点を強く改めてお願いをいたしておくわけであります。答弁を求めましてもまた同じことだろうと思いますが、どうぞひとつ、外務大臣はまた党の総裁でもあります、ぜひ力強く頑張っていただきたい。  さて、通産大臣の外遊に関しましてはこの程度にいたしまして、日米防衛首脳会議というのですか防衛庁長官と国防長官の会議がワシントンでついこの間持たれました。この関係で次に御質疑をさせていただきたく思います。  よく言われますように、冷戦構造の崩壊で日米安全保障体制のあり方、これをめぐる論議が日米両国内、あらゆる分野で大変活発に今行われております。結構なことだと思いますし、まさに国会でもこれから日米安全保障体制あるいは日米安保条約の意義、新しい世界情勢のもとでどんな意義があるのか再確認をしていくべき努力が今待たれているわけであります。私は今度の玉沢長官とペリー国防長官の五月初旬の日米防衛首脳会議では当然このことがまさに徹底的に議論されるのかなと思って楽しみにしておりましたら、さっぱりこのことについては議論をしなかった。私には非常に理解に苦しむことなのでありますが、本当にしなかったのでありましょうか。しなかったとすればどうしてでありますか。いや、したのだということであれば、どんなことであったのか。さっぱり報道もされていないし、いただいた資料にも書いてない。どういう状況であったのでございましょうか。外務省も出ておられたわけでありますが、防衛庁も来ておられますが、では防衛庁から。
  69. 守屋武昌

    ○守屋説明員 お答えいたします。  米国と日本の間で、日米安全保障上の問題につきましては常日ごろから間断のない対話を行っておるところでございます。先生今御指摘の冷戦後の日米安全保障体制の意義づけの話でございますが、この問題につきましても、日米の安全保障関係者の認識をすり合わせているということは大変重要なことでございますので、常日ごろから行っておるところでございます。今回の防衛首脳会談におきましても、冷戦後の新しい時代においてもアジア・太平洋さらには国際社会の安定のためにも日米安保体制が引き続き重要であることが確認されております。  それで、その後のSSC、日米安全保障事務レベル協議というのがあるわけでございますが、その場におきましても、この冷戦後の新しい安全保障環境において日米安保体制の役割をどう考えるか、あるいは安全保障分野における日米防衛協力のあり方をいかなるものにすべきかということについて活発な意見交換を行っておるところでございます。
  70. 松田岩夫

    ○松田委員 一般的なそういう話はもう何遍も聞いてきたわけでありますし、その程度のことであれば、両大臣が意見交換するほどのこともないわけだと私には思われるのですが、日米安保体制の意義といったことについて、もっと真剣に突っ込んだ御検討をしておられると思うし、されるのではないかと思うのです。  私の理解では、九月にでもまた日米安全保障閣僚会議というものを開かれる。もちろん日米安保条約の意義とか再定義といったことに限らず、さらにその新しい意義を実現するために整備すべきことを含めてお詰めになると思うのです。しかし、やはりその前提となる新しい環境下における日米安全保障条約の意味というものについて、この際しっかりと、国民全部とは申しませんが、一つのしっかりとした認識を持っておくことが我が国の世界における輝かしい生き方をつくり上げる上でとても大事だということは事実でありますから、この安保条約の新しい意義については次回一つ一つ議論させていただきたく思いますが、そういうことをしっかり今検討しておるということはいいですね。  さて、今度の防衛協議では個別実作というものが大変重視されて議論をした。個別案件も大事であります。安全保障条約をしっかり実行していくために、担保していくために、詰めていないところが幾多もあります。そういう意味で、一つ一つしっかりとしていくことも大変重要であります。そのうちの幾つかについて確認をしておきます。  これも今後さらに質疑を通じてしっかりしていかなければならぬ問題でありますが、一つは、ホスト・ネーション・サポート、このことであります。  今度、在日米軍駐留経費の日本側負担分を決めております特別協定が今年度で期限切れになる。したがって、特別協定改定について、もちろん両国政府で今鋭意協議中であるわけでありましょう。この関連で、新聞報道ですからよくわかりませんが、どういう御議論があったのか。  特に、日本の方からは、この米側が要請している在日米軍駐留経費の負担増について、財政事情が厳しい、だから十分なことはできないというようなことも報道されておるわけでありますが、まだ協議中だと思うので、どうなんだと聞いても今検討しておるところです、協議しておるところですと言うことでしょう。しかし、予算というものも大事でありますよ。財政事情が厳しいからという、これはいつも出てくる話なのですが、何が大事か、何をしなければならないかということがまず先決なのですよ。それを議論して、そして必要ならばやはりそれを調達しなければならぬのですよ、もちろん予算を無視してというわけにはいきませんが。  しかし、いきなり、何かこれは新聞を読むと、私は新聞しか知りませんから、財政事情が厳しいのでということが出てきている。私からすれば何を一体議論しているのだと思われてしまうわけでありますが、中身についてきょうここで細かく言うことまではいきませんのであれですが、そういう言い方をしている問題の甘さというものを私は感じたので、あえて申し上げておくわけであります。  したがって、逆にアメリカのナイ次官補などは、必要なものは出していただきたい、必要なものは予算を確保していただきたいと述べておることが新聞でも報道されておるわけでありますが、そのくだりだけで言えば、アメリカの言うとおりだなと私は感じたわけであります。  非常に抽象的なことを申したようでありますけれども、しかし、ここは非常に大事な点でありますから、その点はよく意識して、本当にどういう意味で必要なのか、しっかり詰めていただいて、必要なものは予算上しっかり確保していく。何でもいいから防衛費をふった切れというようなばかなことを言う国会議員は日本の国会議員のレベルからいって一人もいませんから、心配は要らないと思うのであります。そういう意味で、あえて述べておきます。  それから、ACSAのことも議論されている。これはもう当然です。日米安全保障条約ができてこのACSAができていない、まことに恥ずかしい限りであります。言うまでもありませんが、韓国や台湾はもちろん、そればどこでも安保条約に伴ってお互いに燃料や役務などを相互に融通しあうこの取り決めは当然必要なわけでありますが、日本はいまだにできていない。  現在、防衛庁は平時に限ってこうした役務提供などができる協定締結を検討しておられるようでありますが、先般、去年の八月、総理に提出された防衛問題懇談会報告書では戦時も含めた協定を想定しておられるわけでありますから、現在検討しておられるのは平時に限ったものなのか。まさに普通ACSAと言えば当然戦時も含まれるわけでありますが、戦時も含んだものを御検討されておられるのかどちらでしょうか。
  71. 守屋武昌

    ○守屋説明員 お答えいたします。  このACSAといいますのは、アメリカが同盟国の軍隊と物品とか役務を相互に貸し借りいたしまして、任務を円滑、効率的に行うという観点からとられているシステムでございます。  私ども、これを行うに際しまして、米側の意向を在日米軍と私どもの方の統合幕僚会議事務局というところの者の間で、いかなる範囲でこれを行うかということで推し進めているところでございます。先生今御指摘のように、私今現在米側と調整している段階では、話を進めている段階では、平時の訓練を中心としてこういうふうな相互融通を行おうという米側の意向がございますので、その方向で検討を進めていることは事実でございます。(松田委員「平時を中心としてというわけですか」と呼ぶ)はい、平時を中心として……(松田委員「必要に応じ戦時も含むと」と呼ぶ)いや、戦時は対象といたしておりません。     〔委員長退席、福田委員長代理着席〕
  72. 松田岩夫

    ○松田委員 わかりました。  戦時も含めて早急に検討すべきであると私は思います。当然のことであります。こちらが戦争を起こすわけじゃありません。戦争がやむなく起こる、そういうことも想定して対応しておくべきことは当然でありますから、戦時も含めて十分な検討をしておいていただきたい。具体的に条約としてまとまるかどうかはともかく、検討としては初めから戦時を抜くなどという態度、対応の仕方、これまでの日本の生き方からするとわからないではありませんけれども、そういう生き方自身が間違いだと私は思いますので、この点も強く申し上げておきます。  さて、時間も大分使ってしまいまして、まだ総理訪中と外務大臣クロアチア訪問、この二つが残されておりますので、防衛問題はこれでやめます。  さて、先般総理は最も日本にとって大事な国の一つであります中国を御訪問されました。中国との関係というのは、正常化以来大変な深い関係になってまいりました。人の往来もそうですが、今や経済では、まさに日本にとりまして、中国は米国に次ぐ第二の貿易相手でありますし、中国から見ますれば、日本は第一の貿易相手国であります。日中の関係は、本当に今では日中にとってのみならず、アジアにとってのみならず、あるいはまた日米あるいは米中、この三つの関係、世界のためにもとても大事な大事な関係であります。  そういう意味で、今度わざわざ総理が行かれて、こうした中国との間で率直に物を言い合ってこられたと思うのです。未来志向のまさに責任ある日中関係を築こう、中国の首脳部と未来志向の対話といったものが盛んに行われたものと思うのでありますが、余りそれが伝わってこない。どうだったのでしょうか。  そもそも総理の訪中の意義は一体何であったのか。未来に向かって日本と中国が、アジアはもちろん世界のために一体どんな協力関係を築き上げていこうとするのかそんなことについてとても大事なこの二国なのに、そしてそのトップ同士がお話し合いなさったのに、そういうメッセージが全般界に伝わってこない。まして我が日本にも伝わってこない。まことに私には残念至極だ。従来の日本はそうだったということなのかもしれません。しかし、今や日本はそういう日本であってはいけないと私は思うものですから、あえて口幅ったい言い方をいたしましたけれども、そういう気持ちを持って実は総理訪中の成果を残念に思ったわけであります。いや、そうじゃないよということであれば、どうぞ一言お答えください。
  73. 川島裕

    ○川島政府委員 ことしは終戦五十周年ということで、いろいろな意味で過去の問題をめぐって高ぶりやすい年なわけでございまして、その点についていろいろ意味のあるやりとりがあったのですが、ただ、伝わってくるかどうかということにつきましては、残念ながら報道ぶりが歴史の話が非常に重点があったものですから、実はそれ以外にまさに今先生指摘の、日中の経済関係の将来にとって相当意味のある話をいろいろなさったわけでございますけれども、その辺は報道に関しまする限りはほとんど、余り載らなかったということは私どもとしても残念に思っております。  実際問題として、まさに先ほどからのお話の円高が進む中で、円借款の話もございますし、それから、円高が進むということは、一層中国に対して日本の投資が、まさにもっと動くということで、これからの日中の経済関係のマネジメントというのは大変難しくなるだろうと思っております。その辺についても投資受け入れの中国側についていろいろ注文を述べる等々あったわけでございます。  ただ、最初に戻りますが、報道に関しますると、ちょっと歴史の話だけが集中してしまったもので、結果としてメッセージが伝わらないではないかと言われる点があったかと思いますが、その辺は私どもは非常に残念に思っております。     〔福田委員長代理退席、委員長着席〕
  74. 松田岩夫

    ○松田委員 いや、報道があっなかなかったかじゃなくて、実際に一体何をお話しなさってきたのか、外務省の報告書を、メモをいただいても書いてないということを申し上げているのです。後で、いやこういうことを言ってきました、こういうことが出ました、何かありましたかね。ないですね。  さて、では個別の案件についていろいろ御議論があった。それはいろいろ報道されています。そこで、じゃその個別の案件についていろいろ議論したがどうだったのかな。先ほどG7での武村大蔵大ほのお話をいたしましたが、この中国についてもまた村山総理大臣の対応の仕方というものがいかにも不徹底、中国側に対していろいろ言っていただきたいことを思う存分、言っていただいていないところか、中国側に言っても中国側はこちらの言い分を余り聞いていてくれない、逆にこちらには中国側の言いたいことをどんどん言ってきておられる、こういう印象を持って受けとめさせていただく結果ではなかったか。  日中間に考え方の違いがあるのは当然であります。考え方の違いがあるなら、それをしっかりとこちらの考え方を強く受けとめさせてくる。また、向こうの考え方とこっちの考え方が違う場合に、私たち考え方ではこうですよということをしっかり申し上げてきていただく。向こうの考え方が間違っていると思う場合には、あなた方の考え方はこういうことで間違っていますよということをしっかり言っていただく、これがせっかく両首脳が会われたときの当然の行き方でありますが、そういう目で見ましても、今回の総理訪中というものは実にいいかげんなものであったのではないかな。最初にこんなことを言ってはいけませんが、一、二見させていただきますと。  北朝鮮の核疑惑問題へどう一緒になって対応していくのか。その点について日本としては今一生懸命アメリカ、韓国と協力する中でやっております。このことはきょうは時間がありませんのでお聞きしませんが、大変な関心を持って我々見守っておるわけです。中国はどうだ、一緒に入れと言ったら入らない、我々は立場が違う、役割があればやらさせていただきますとただ言っている、それで終わりと。何とも私からすれば中途半端なことだな。中国に対して一体どんな御協力をしていただくように申し上げ、そして中国がどういう約束をなさったのか。一つ一つ聞きますと時間があれですから、全部内し上げまして、後で一括してお答えをいただきたいと思うのです。  先ほど、大臣が言われました円借款の債務負担増問題。今度正式に中国首脳が日本側に、急速な円高で円借款の返済負担が膨らんでいることについて対策を求めた。これは正式に求めたのは今度が初めてだと、新聞によればそう書いてありますが、そういうことでしょうか。これに対して村山首相は何と述べられたのか、これも新聞報道です。「円高は日本経済に甚大な影響を及ぼしており、為替安定に努力している」と述べた。これはわかりません、新聞報道ですから。ただ、それだけなのかな。しかし考えてみれば、先ほど申しましたとおりです。  私どもドル高になったからといったって、ドルの返済、日本の経済が弱かったときには、ドルが上がっていくということもあった、あるいは世界の国であちこちで為替レートが変わる、そのときに一々、レートが変わったから変わった分損したよ、何とかしろなんという話は私は今まで聞いたことがない。逆に、円の価値が上がってきたということならば、どうぞひとつ円を思う存分お持ちください。さっき申しましたとおりです。しっかりとこれは、円が上がったから過去の返済分の負担がふえた、いや持っておられる円の価値は上がっているのですよ、今持っておられる円のことは棚に上げて、過去の返済分だけ何とかしろとおっしゃるのは理に合いませんよ。あるいはまた、もっと円を持ってくださいと言うならまだ話はわかりますが、日本も為替安定に努力しておるとだけ言って帰ってこられた。何か向こうに、また円の負担増があるからということを思わせたのかな。負担増じゃありません、これは。現に持っておられる円の価値は一方で上がっているわけですから。中国の、例えば準備通貨の中で一体円の割合はどれくらいあるのか、これは公表しておりませんからわかりませんが。というようなことを思えば、何もこんなことは事柄の性質上我々の方で負担すべきものではないと私は思っているわけであります。そんなことについて議論された前もない。  核実験の禁止、もうこれはこの前から私は何遍も言っておりますが、中国側は九六年の合意達成、この全面禁止、条約についても合意達成を念頭に置いておる、わかった、すぐやろうなどとは一  NPT、これは今や一日二日の問題になってまいりました。今最後の御努力をなさっておられる。時間がなくなりましたので、これも質問から除きますが、日本は大変な努力を今なさっておられる。何とかひとつ、唯一の被爆国としてNPT無期限延長ということで全会一致で通そうと大変な努力をなさっておられることをかいま見ながら、この点はよく頑張っておられるかな、しかし、まだやることがないかということを聞きたかったんですが、それは今お話ししたことによって質問にかえます。  このNPTについても、中国は順調な延長を支持するなんというようなことで、一体どっちなんですか、あなたは。もうあす、あさって決まるというようなことについてさえ中国はそんな言い方である。それを聞いたまま帰ってきておられる。  核実験の禁止については、すぐやめてください、いやいや、まあまあ、こういうことだ。従来の態度を繰り返すばかりであった。一体何をやられているのか。日本の主張の矛先をていよくかわされてきただけだったというのが事実のようであります。事実でなければおっしゃってください。  中国の国防力、透明性を高めてください、もう何遍我々は言ってきたか。中国の国防力の、軍事費の増加がどれほどアジア・太平洋地域の多くの国々に脅威と不安を与えていることか、その中身をもっと透明にしてください、このこともこれまで何遍も訴えてまいりました。しかし、そのことについて一体どれほど強く総理は述べられたのか。どうも軍事費の増大については懸念を直接述べられた気配がない、書類をどこをひっくり返してみても。透明性についてはあったようだが、軍事費の増大の懸念については言及がなかった。何のことだと私には思える。  一方、日本の軍国主義、これは新聞報道です。江沢民国家主席が、戦争について、日本国内に一部誤った見方をする人がいるが許されないと強調、李鵬首相も、軍国主義の存在を指摘した上で、誤った傾向の抑制を日本側に求めた、こういうふうにある。  しかし、考えてみれば、日中戦争の個々の史実や第二次大戦の性格をめぐって日本国内に論争がある、歴史学者の間でもいろいろ意見が違う。だからといって、日本の軍国主義復活などということを言わしめておかせる、何のことだ。我々こうして最も民主主義の政治を実現し、我が日本が軍国主義、そんなことになるなどとは私は夢にだって思わない、また、させるわけがない。こんなところで一人声を張り上げておってもしょうがないですけれども、そう私は思っておる。皆さんもそうでしょう。なのに平気で、江沢民さんからも、李鵬さんからも、日本に軍国主義復活のおそれありとか一部軍国主義がある。何のことだ。今日の我々の日本の政治、社会構造から考えれば、そんな心配は一切要りませんとはっきり村山総理は言われたのかというと、言われたということも書いていない。  次の問題、中国の人権問題。人権問題は大事だ、アメリカの友人に会うといつも言う。あなた方にとってはそれほど大事かと思うが、だんだん私も大事だと思うようになった。しかし、どうだった、今度。人民大会堂で開かれた李鵬首相主催の歓迎夕食会であいさつし、中国の人権問題について、これは新聞報道ですから、それぞれの国情があるが、人権は普遍的な問題なので中国も努力してほしいと述べたにとどまった。人権問題については、この夕食会でのあいさつで言及しただけであった。まともな会談では一切言及しなかった。  まだたくさんあるんですけれども、時間が来ましたので、この程度に私の気づいたことはとどめておきますが、日中前脳会談において、全体の、日本と中国がアジア・太平洋の未来のために、世界の未来のために、一体何をなし遂げようかというメッセージも全く出なかった。一方、日本と中国の間でいろいろしっかりと主張し合ってきていただきたいことについては、向こうに言われっ放し、こっちの言うことはまあちょろっと触れた程度か全然という感じを今度の訪中で大変強く私は受けさせていただいたわけでありますが、今の見方について、どうですかなんて言うとまた時間がかかりますので、次に、外務大臣クロアチア訪問に移らせていただくわけでありますが、後ほど一括して外務大臣から御所見を賜りたく思うわけであります。  しかし、次のテーマに入ります前に、今の私が申しました総理の訪中について、それなりの成果もあったわけでありますけれども、しかしもっと立派な訪中であってほしいと思う気持ちから、そういう目で、そういう気持ちで申し上げさせていただいたんですが、いかがでございますか。
  75. 河野洋平

    河野国務大臣 野党議員の御質問でございますから、私どもとしては十分お話はお伺いいたしますが、それにしても総理の訪中をいいかげんな訪中という御発言は、甚だ私どもとしては受けとめかねる御発言でございました。  私は、今回の総理の訪中は、中国側の招きに応じて、総理もまたかねてから訪中を望んでおられまして、時期を選んで行っていただいたわけでございます。江沢民あるいは李鵬あるいは喬石、こういった中国の首脳と総理との会談は、両国首脳の間で信頼関係を深めるに十分役立ったものというふうに私どもは理解をしておりまして、中国側の村山総理を迎える歓迎の仕方は、いつになく温かい、しかも盛大なものであったというふうに報告を聞いている次第でございます。  大変多岐にわたって御指摘がございまして、それを全部申し上げると議員の質問の時間を著しく損なうことにもなろうかと思いますが、一、二申し上げておきたいと思いますが、例えば北朝鮮に対する中国側からの働きかけについては、これはかねてから日米間でも、この北朝鮮との関係は極めてデリケートな問題にもなるかもしれない、あるいは非常に難しい局面を迎えることになるかもしれない、そういうときには中国の北朝鮮に対する説得もまたお願いをする必要があるだろうというような話は、日米間ではしておったわけでございます。しかしながら、この話は北側の名誉といいますか、メンツといいますか、というものもございましょう。それから中国には中国の立場がございましょう。公にアメリカから頼まれたからこうした、中国に言われたからこうなったということにはなかなかならない性格のものであろうと思うわけです。もちろん我が国としても、中国との間には十分朝鮮半島の問題について、この情勢についての意見のやりとりはございまして、今回の米朝会談が極めて難しい局面に来ているということも踏まえて、この関係についても総理からは言及をされておるわけでございます。  それから先の問題については、これは控えさせていただくことが事柄の性質上大事だというふうに思うわけでございます。  核実験の問題についても、総理は極めてはっきり明確に中国側に対して述べておられます。中国側は中国側で、核実験の全面禁止条約を一九九六年につくりたいということを言ったのと同時に、核の先制使用は一切しないとか、これはかねてから言っていたところでございますけれども、中国側としても誠意ある対応を見せたというふうに私は報告を聞いておるわけでございます。  NPTを初め幾つかの国際問題についても、日中関係では十分意見の調整をし、中国には中国の立場がある、日本には日本の経験あるいは立場というものがあるが、いずれにせよ国際社会の平和、安定、発展、こういったことのためにお互い努力をしようではないかという両国首脳の合意というものができたということは大変立派な訪中であった。  さらに総理は、中国訪問の締めくくりの記者会見におきまして、繁栄と平和のための共同作業をやるんだ、日中両国で世界の平和と繁栄のための共同作業に積極的に取り組むんだということを述べられました。このことは、今回の両国首脳の話し合いの中で総理保が申し上げ、あるいは総理が得た両国の考え方を踏まえた総理からの御発言というふうに私は見ているわけでございます。  このぐらいでいいですか。御無礼いたします。
  76. 松田岩夫

    ○松田委員 例えば、大臣、そこなんですよね、最後の点なんですよ。総理が首脳との会談を終えられた後、訪問されたその訪問先で、自分の一方的なお話として、今おっしゃる例えば繁栄と平和のためのプランというものをお話しなさる。私はそういうやり方自身がいかにも残念だ。なぜ江沢民、まあ李鵬さんでいいですか李鵬首相とともにそういうことを語り合って、その話り合った結果として、日中両国で今おっしゃるような繁栄と平和のため、世界に向かってかたいメッセージというものをしっかり送っていただきたい、そういうことができる間柄になってきているはずだし、また、これ以上申しませんが、そうすることが大事なわけですよね。そういう意味で、私は冒頭そのことを申し上げたわけであります。私の言葉に言い過ぎた点があったらあれですが、また同時に、私は野党でありますが、野党と思って質問しているわけではありませんということだけ私の方からも……。  さて、時間が非常に進みますが、河野外務大臣が今度クロアチアに行かれた。これは大臣の御発想、こういう言い方をすると妙ですが、事務当局からのあらかじめのあれというよりも、大臣のイニシアチブでございますね。首を振られましたので、そういうことだというふうに承ります。  そういう意味で、正直言って私個人からすれば、いろいろ行っていただきたいところがたくさんあります。しかし、この旧ユーゴ、九一年の紛争勃発後、初めてこうして日本の閣僚として行かれた。そして、欧州各国と比べ、あるいは欧米各国と比べれば、この地域の特殊性からいって当然発言力も弱い日本であってもやむを得ないわけであります。  しかし、そういう中で、日本の貢献、隠れた貢献と言うといけませんが、知っている方はたくさん知っている貢献を今までもしているわけであります。そういう意味で、日本の貢献をある意味で表に出していただいた、その点は大変高く評価いたすわけであります。本人がおられるからここでは褒めておるというわけじゃありませんよ。本当にそう思うわけであります。しかし、同時にまた、野党だからこんなことを言うというわけじゃありません。本当に若干また御意見を申し上げたい、こう思うわけであります。  六月のハリファクスのサミットで、新聞報道であれですが、何か今回の御経験に基づいた発言を行いたいと考えておられるというようなことが新聞に出ておりましたけれども、そんなことはありませんか。  いずれにしても、これは今度のことを契機に、大臣、日本としてどのような貢献、これまで顔の見えない貢献と言うといけませんが、いわゆる資金的な面でいろいろな御協力をなさってこられ、また今回の御訪問でも非常に適時適切に資金的な面でいろいろ御援助もされる約束をしてこられた。それはそれで恐らく現地の皆さんから非常に喜んでいただき、大変いいことであったと私は思うのであります。  さらに、この地域へのせっかくの御訪問ということでございますから、何か顔の見える貢献、もっとわかりいい貰献というものが何かないものかというふうに思うのが人情でございます。外務大臣がせっかく行かれて、そして行かれた限りにおいていろいろ資金的な面でもまた御貢献をなさる、しかしそれっきりだというのでは、せっかく外務大臣がお忙しい中を発意されて行かれたということにしては残念に終わってしまうと私は思うわけでございます。そういう意味で、この後どのような貢献を具体化していくことができるのか。  この点についてそれで思い出すのは、後で同僚の東議員が質問してくださると思いますけれども、ゴラン高原なんというのは決まっておらないわけですけれども、何遍も我が党議員からは御質問が出ているわけでございますが、まだ決まっておらないのですね。  マケドニアへのPKO派遣といったようなことについて、明石氏から今回はなかったようですね。恐らくゴラン高原さえ決まらぬのに、またこんなこと言ってみてもということがあったのかどうかそれは私の邪推ですけれども。それはともかく、例えばマケドニアについて明石氏からそういう要請がこの前あった、思えばマケドニアは確かになあと、今度外務大臣が行かれて私もユーゴについて非常に心を砕く時間をいただいたわけでありますけれども、まさかクロアチアボスニアというようなことは、これはヨーロッパも手を引き、アメリカも手を引きという中で、しかし実際に武力衝突があるわけでなし、このマケドニアのことを思いますと、小規模な要員を派遣、そういったことを支えにして紛争のいわゆる予防といいますか、予防外交を展開しているわけでありますけれども、まさにこのマケドニアなんかは、我が国の法律から見ても問題がないところか願っていることそのものではないかななどとも私は思わさせていただいて、そうか、明石氏の話があったということは前に聞いたが、そういう意味では、このマケドニアへの顔の見える貢献というようなことで人的貢献を考えていく、PKOもその一つかなというようなことを、私は素直な気持ちで事実関係を調べ、そして我が国のPKOの法律もチェックし、現地へ行っているわけじゃありませんから、現地調査までしたわけじゃありませんが、しかし、どうなのかなと思わさせていただきました。  そういう意味で、ぜひ御検討していただくということは価値があるのではないか。検討は既に始めたということであればそれで結構ですが、いや、そもそも検討もしないよということなのか、ぜひ検討ぐらいしていただくといいのではないかいや、もう検討は始まっていますよということならば、ぜひさらに続けていただきたい、私はそんなことを特に思わさせていただいたのですが、それ以外に、外務大臣、私はそれ以上の知恵が今ここで出てきませんが、せっかく外務大臣がこうして行かれて、その後、この地域に対する日本の、わかりやすく言えばいわゆる顔の見える貢献としてどんなことが考えられるのか、そのことも含めてお答えをいただきたい。
  77. 河野洋平

    河野国務大臣 私のクロアチアハンガリー訪問についていろいろ御関心を持っていただいてまことにありがとうございます。  確かにおっしゃるように、クロアチア、旧ユーゴスラビア紛争というものは、ただ単にヨーロッパの一部で何か起こっているというのではなくて、もう今や国際的に大きな問題になっているわけでございまして、我が国からも、これまで人道支援その他資金援助はしてきたわけでありますが、まさに顔の見える支援ということになかなかなりにくかった嫌いがございました。  私、今回参りまして、幾つかのことをお約束をしてまいりました。一つは、クロアチア難民センターをつくりますと。これは、デンマークがデンマーク村というかなり難民センターをつくって、千人規模の難民を収容しているところがあるわけですが、大体そうしたものをイメージしながら、我が国もつくりますと。それは、行ってみると、日本のNGOがやはりかなり現地で活躍しているのですね。しかし、このNGOの人たちは拠点を持たないのです。私は、その難民センターをつくって、そのNGOの方々に運営その他については大いに活躍をしてほしいという気持ちもございまして、さらにクロアチアの首脳と話をしてみると、やはりこの難民問題、一番頭が痛いということもおっしゃる。そこで、私はこういう難民センターをつくりますということをお約束を申し上げてきたわけでございます。  マケドニアの問題についても御関心をお持ちいただいているようでございますが、マケドニアについては、OSCEがマケドニアにミッションを出しているわけでございまして、そこに我が国からは既に三人の人が行って、研究をしたり分析をしたり調査をしたりしてくれているわけでございます。そのことはやはり非常に先方からは評価をされて、ありがたい、日本からもそうして人を送ってくれていることは大変ありがたいというお話でございました。  マケドニアは、現在、経済的に非常にまだまだ不十分な状況でございまして、これはブダペストにマケドニアの外務大臣にもおいでをいただいていろいろな話をさせていただきましたが、今何が一番お望みでしょうかと申し上げると、やはり経済的な支援をぜひやってもらいたいという強い御要望もございましたので、その御要望にできるだけこたえたいと思って、これから先も引き続き会議を持ちたい、こういうことを申し上げておきました。  今回、新ユーゴ外務大臣ともお話をいたしましたけれども、それらいずれも引き続き話し合おうではないかということを言ってきたわけでございます。これまでなかなかパイプもないし話し合うということもなかったわけでございますけれども、私が今回訪問をしたことをきっかけに、これからやはり現地責任ある立場方々と大いに意見の交換をするというきっかけをつくることができたというふうに思っておりまして、引き続きこうした話し合いは行ってまいりたいというふうに思っております。
  78. 松田岩夫

    ○松田委員 時間が参りましたのでこれで終わりますが、せっかくの訪問を契機にしていただいて、ぜひお話し合いを続けていただきたいと思うと同時に、言わなくていいことかもしれませんが、我が国にとって重要な国、地域というのはまだたくさん、あまたあります。  私は、今度の連休中に、与党の方は閣僚の外遊を何か制約されたようなことを新聞で知ったのですが、その奥意をはかりかねておるわけであります。常日ごろしっかりと仕事をしておられれば外遊されることは何ら差しさわりがないと思うし、まさに今こそ日本の国は各閣僚がそれぞれの分野において世界各国方々と一緒に世界人類のことを考えていくべき役割が各閣僚の役割ぐらいに私は思うわけであります。  そういう意味で、これは最後につけ加えておきますが、外務大臣からも、皆さんが国会が休会中で行けるというときに、国内の事情もありましょう、国内のことはしっかり常日ごろなし遂げておいていただいて、ぜひ一人でも多く閣僚が海外の皆さんとしっかりとやっていただく、今度の河野外務大臣のこのクロアチア訪問のように、まさにみずからの発意において、イニシアチブにおいてそれぞれ活動していく、そういう姿をつくり上げていくことが一つのまた政治の改革であると私は思うものですから、一層の御活躍をお祈りして、私の質問を終わります。
  79. 三原朝彦

    三原委員長 引き続いて、東祥三君。
  80. 東祥三

    ○東(祥)委員 新進党の東祥三です。一時間半にわたりまして国連改革について、そしてAPEC関連について、そして米国の対イラン経済制裁我が国の対応について質問させていただきます。  本題に入る前に、総理訪中そしてまた外相のクロアチアハンガリー訪問について御質問させていただきたいと思っていたのですが、小杉議員、また前原議員、そしてまた同僚の松田議員の方から同様の質問がありましたので、ただ一点だけ総理訪中に関連して、先ほど松田議員の方から肺腑をえぐるようなまさに鋭い御指摘があったわけでございますが、報道を見ている限りにおいては、日中関係、首脳会談において本当にダイアローグが、対話が成立しているのかな、一方通行になっちゃっているのじゃないのかな、日中関係安心なのかな、信頼関係はちゃんと生まれているのかな、どうなのかな、こういうさまざまな憶測を呼ばざるを得ない、そういう印象を私自身も持っております。  その意味におきまして、外務大臣の方から、今、日中関係がどうなっているのか、今回の総理の訪中によって本当にダイアローグが成立し、またお互い言いたいこと、言わなければならないことがちゃんと言えるようなそういう信頼関係がちゃんと樹立されているのかどうなのか、この点についてぜひ外務大臣の御所見を伺いたいと思います。
  81. 河野洋平

    河野国務大臣 村山総理が訪中をされて中国の首脳の方々とお会いになったという話は先ほど松田議員に申し上げましたが、例えば江沢民さんあるいは喬石さん、こういった方々は村山総理にとっては二度目の会談でございます。やはり初めて会って話をするのと、回を重ねて二回目になるとそれは随分と、正直打ち解けた語といいますか最初から核心に触れる話ができるようになったに違いないと、私は同席しておりませんのでわかりませんが、そう思います。それは、帰ってこられた村山総理のお話を伺いますと、喬石さんについては、これは日本でいろいろ語をしたのだから非常に打ち解けた話だったというお話でございましたし、江沢民さんの場合には、ジャカルタで一度会っておられるということもあって、これもまたスムーズな話であったように伺いました。  私は、日中関係というものは、非常に先輩の御努力によってしっかりと基盤ができて、その基盤の上に次々と各世代の方々が交流を重ねて、そして少なくとも日中二国間関係というものは非常にしっかりとした基礎ができてきたというふうに私は見ております。  ただ問題は、これは日中二国間の問題だけではなくて、マルチの関係の中で中国がどういう立場に立つか。例えばWTOに中国が入るに際してどういうことになるかとか、こういうマルチに、中国がどういう時期にどういうきっかけを持って温かく迎えられるか、あるいは御自身が積極的に入る意思を述べて入られるかというようなことは、やはり我々注目しなければならないと思います。我々としては中国がWTOに参加することについては賛成でございます。これを支持したいと思っております。しかし、入るには入るだけのルールがあり、資格がございますから、その資格をどう満たすかということについては中国にもぜひ努力をしてもらいたいというふうに思いますと同時に、国際社会に対しても、中国が入る意思を持っているこのモメンタムが失せないうちに中国とは十分話し合って、その問題がクリアできるような、そういう状況をつくるべきであるということを言ったりしているわけでございます。我々としては、中国は改革・開放路線というものをとって経済的にも逐次成長を遂げてきているわけでございますが、まだまだ国際社会の中に透明性を持って入って活躍をするという状況にもう一歩踏み出してもらいたいという気持ちは我々持っているわけでございまして、これはもちろん中国側もそうしたことは考えておられるに違いないと思います。  さらに中国は、台湾の問題に対してどう対応するか、香港の問題についてどう対応するか、あるいは南沙群島の問題についてどういう考え方を持っているか中国が地える、抱えるといいますか中国のこれらの問題にどう対応なさるかということは、いえ、もう基本的な考え方はわかっているわけでございますが、実際の問題としてどういうふうに動いていくかということなどについては、我々も注意深く見なければならぬというふうに思っておるわけでございます。  もちろん我が国立場は、日中共同声明の精神を体して、日中関係というものは揺るぎのないルールが、原則ができているわけで、この原則を我々はたがえるつもりはないわけでございまして、そういう意味で我々は我々自身を律すると同時に、中国に対しても、先ほど松田議員からも御指摘がございましたように、例えば核実験の問題でございますとかその地やっぱり国際的な一つの流れというものには乗ってほしいし、それから国際社会の中で胸襟を開いた話し合いをしてほしいという我々の希望というものも伝えたいというふうに思っているところでございます。
  82. 東祥三

    ○東(祥)委員 それでは国連改革について質問させていただきます。  まず第一点目が、もう既にこの委員会においても何回か取り上げられている問題ですが、日本国連安保理入りについての質問でございます。  国会の場での我が国の常任理事国入りの問題についての議論はまだ十分ではないと私は考えております。それはやはり政府首脳、そしてまた外務大臣のお考えというのがもっと明確に国民の方に伝えられる必要性があるんではないのか、お考えになっていることが十分に伝わっていないのではないのかそういうこと。それからまた世論調査を見ても、やはりこの問題に関してはもっと広く国民的な議論が行われるべきである、そういう調査結果も出ている点に依存いたします。  そこで外務大臣、ちょっと古くなってしまうのですけれども外務大臣にお聞きいたしますけれども、大臣は就任当初、本問題についてはある意味で慎重派であったのではなかろうか、このような印象を持っております。実際、昨年の六月三十日の初閣議の後の記者会見で次のように述べられております。国連の改組について国民が議論し、常任理事国に進むべきか進まざるべきか十分理解して判断する必要がある、そうした理解なしに物事を急いで決めるということには、いささかこの問題は大き過ぎると発言いたしております。しかしながら、同年九月二十七日、今度国連総会におきまして、わずか二カ月足らずでございますが、九月二十七日の国連総会におきましては次のように大臣は表明しているわけです。つまり、多くの国々の賛同を得て安保理常任理事国として責任を果たす用意がある、このように言われました。大臣就任から三カ月ちょっとの間に、私にはそれほど大きな状況の変化あるいはまた国民の意識の変化があったとは思われません。言葉は適切かどうかわかりませんけれども、大臣は慎重派から推進派に変わったのではないのかこのように思われます。明らかに大臣のスタンスが変化した。またことしの二月、この委員会におきまして同僚議員が同様の質問をしたときにも、大臣のスタンスの変化がうかがわれたわけでございます。  私は、この経過を大臣から説明していただくことは、冒頭申し上げましたとおり、やはり国民の議論をさらに深めていただく上でも極めて貴重な材料を提出することになるのではないのか、このように思います。この点について、まず河野大臣の御所見を伺いたいと思います。
  83. 河野洋平

    河野国務大臣 我が国国連の常任理事国に関心を持つ、あるいは常任理事国入りを果たすということは、これは我が国外交にとって極めて大きな問題であろうと思います。それは私は今でもそう思っております。五十年前、敵国条項までつくった国連の中で、我が国がその後国連入りを果たし、今回常任理事国問題の中で、先ほど議員がお述べになりましたような文言を九月の国連総会で言うということは、相当大きな問題だというふうに私は今でもそう思っております。  したがいまして、今お読み上げをいただきましたが、私はあのときの演説も相当に慎重な文言、言い回しで私の気持ちを述べているということにお気づきだろうと思います。恐らく人によっては、なぜこう回りくどい言い方するんだ、もっとストレートに入りたいとか言ったらどうだ、こういうふうに私に言ってこられた方も何人もいらっしゃいますが、私はいろいろなことを考えて、ああいう文言をとりました。  他方、御理解をいただきたいと思いますことは、国連が創設五十周年をいよいよ迎えるわけです。この五十周年を迎える国連は、この五十年間、ほとんど安保理の本格的な改組に手をつけずにまいりました。これはもう何回もここで繰り返しましたので、あるいは申し上げるのは適当でないかもわかりませんが、国連スタート時点に比べると、今日の国連のメンバー数などを考えれば、その代表性を考えてみても、今の安保理がこういう状況でいいかどうかということについてはいろいろ議論のあるところでありますが、しかし、それは安保理の改組、国連憲章の改正というものはそう簡単にできることではなかったわけですが、いよいよこの五十年、半世紀を迎えた今、この安保理の改組問題というのは現実の問題になる可能性があるということを昨年の九月の総会のときに我々は考えたわけでございます。今ここで国連改組の問題について触れる必要があるし、それは非常に重要なことだというふうに考えて、私は今議員がおっしゃったような文言をあの席で申し述べたわけでございます。  じゃ、六月から九月までの間に何があったのだ、こういう議員のお尋ねでございますが、ごらんをいただきますと、六月から九月までの間には、かなり新聞、テレビなどで安保理の問題については御議論があったことはおわかりいただけると思います。これは与党の中でも議論がありました。政府の中でも議論がありました。新聞その他の世論調査の中にも、それらの数字は割合としばしば出てきております。こうしたことを我々注意深く見ながら、機は熱しつつあるなというふうに考えだということは御理解をいただきたいと思います。  その後、国連では、もう御承知のとおり、これはいずれ御質問がございましょうが、ワーキンググループなどができていよいよこの問題に取りかかる、しかし、取りかかってみたけれども、これがうまくいくかどうかについてはまだまだその見通しは立たないわけですけれども、我々が考えていたように、五十年という節目にいよいよこの問題に取りかかり始めたことは間違いないわけでございまして、あの場面でああした発言をすることが、十分慎重に考えた上で必要というふうな判断に達したということでございます。
  84. 東祥三

    ○東(祥)委員 大臣がおっしゃられるとおり、九月の総会での発言内容も極めて練られていて、慎重な表現にとどまっているだろう、このように私は個人的には思っているのですが、六月から九月の間に、一つ議論が活発化してきた、もう一つは機が熟した。揚げ足をとるつもりではありませんが、六月の段階においては、先ほど申し上げましたとおり、常任理事国に進むべきか、進まざるべきか十分理解して判断する必要がある、そうした理解なしに物事を急いで決めるということには、いささかこの問題は大き過ぎる。ニュアンスが違うのですね。そのとき何か考えていたはずで、機は熟している、議論が活発化している。では、議論が活発化していたとしても、河野大臣の頭の中を潜めている、この問題に関してはより慎重でなければならない、どれだけの理解を得られればいいのかそういうことは一切この段階においては多分考えてなかったのだろう。しかし、三カ月の間に確かに議論の回数はふえてきた。  では、理解が深まったのか。理解が深まらない限りそういう判断はできないはずですね。それとも、大臣という一つのポストが与えられて、国連総会に行って発表せざるを得ない、そういうところで、本来自分自身の意見とは違うのだけれどもこういうふうに言わざるを得なかったのか。僕はそうじゃないと思うのですね。その部分を教えてくださることは、陳述していただくことは、まさにこの問題について多くの国民の方々が心配されている、悩んでいる、判断しかねている、そういう問題に僕は抵触してくるのだろうと思う。いかがですか。
  85. 河野洋平

    河野国務大臣 私ちょっと質問の意味が十分理解できませんが、六月未に外務大臣に就任をいたしまして、その後G7に出席をし、帰ってまいりまして、さらにASEANの拡大外相会議などにも出席をいたしまして、随分多くの外国の外務大臣などとも接触をし、話し合う機会も多うございました。私の頭の中にいろいろなものがそこでインプットされたこともあったと思います。他方、それはそれとして、やはり国内議論というものもやはり成熟してくるということはやはり気になることでありました。それらについても十分視野に入れながら考える必要があると思いました。  国連総会におきます演説が私の気持ちと違う演説をしたかと言われれば、それは全くそうではなくて、私は、外務省の優秀な方々はいろいろと原稿を書いてくれますけれども、恐らく私は一番原稿を直す方であろうと思います。自分なりに何度も何度も書き直してみたわけで、恐らくプレスの人たちも最後まで演説の、これは細かい言葉遣いですけれども、固まらぬとお思いになったかもしれませんが、私なりにいろいろ考えに考えたあげくの原稿でございまして、御理解をいただくように相当慎重な言い回しをし、前提をつけ、こういう前提をつけこういうことであれば国民の皆さんにも御理解がいただける、共感していただけるであろうという文言にしたつもりでございます。それらについて、あの前後にも相当議論もございましたから、さらに多くの方々の検討の、何といいますか材料にはなったのではないかというふうには思います。
  86. 東祥三

    ○東(祥)委員 次に行きます。  安保理常任理事国になることによって、利点として挙げられるのは何なのか。波多野前国連大使は、常任理事国になれば入ってくる情報の質、最が格段に違うとして、常任理事国になった場合の利点の一つを挙げられております。  実際、ニューヨークの国連本部に行く、そして安保理の会場を見る、そしてその裏側の方にP5のいわゆる秘密会議場がある。その場面を見ただけでも、やはり安保理のメンバーであることと安保理のメンバーでないこと、また、常任理事国であるか非常任理事国であるか差は厳然としたものを感ずるわけですね。そういう意味では、まさにこの波多野前国連大使の言われることは、現実味を帯びて感じられるわけです。ところが、全国民の方々に、あそこに行っていただいて見ていただければ、この部分は感得していただけるのだろうと思うのですけれども、それは物理的に不可能である。  実際、現在は日本は安保理の非常任理事国メンバーでもないわけですね。非常任理事国であったときとないとき、まさにこの波多野前国連大使が言われる情報の最、質に厳然と差が出ておりますか。まず、この点について質問させていただきます。
  87. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 ただいま先生が触れられました波多野前大使の御経験に基づいた点もございます。  情報の量という点で申しますと、確かに現在は非常任理事国にもなっていないわけでございますので、安保理事会で審議され、決定される重要な事項につきましては、いわば周りから、現在のメンバーに取材をしませんとわからないという状況でございます。平素の国連代表部でのつき合いがございますから、いろいろ教えてはいただいておりますけれども、実際の審議には加わっておりませんので、そういう面で若干、隔靴掻痒の感があるという事実はございます。  それから、それ以前の問題といたしまして、これは当然のことでございますけれども我が国がメンバーになっておりませんので、安保理で行われる重要な決定について、我が国意見なり考え方を反映するということができないという状況がございます。一例を申し上げますと、御案内のとおり、カンボジアのPKOをやっておりましたときには、たまたま我が国は非常任理事国として入っておったわけでございます。そういう立場から、このPKOの問題のみならず、カンボジアの和平につきまして、いろいろと意見を言い、またそれを反映させることができたわけでございまして、そういう形でカンボジアの和平に大いに貢献することができたと思います。そういうような例から見てもわかりますように、やはり中に入っておりますれば、そこで我が国考え方が、反映でき、また貢献ができるということが言えると存じます。  それから、これはいろいろなところで波多野前大使もおっしゃっていることでございますけれども、最近の国連安保理というものは、狭い意味の平和と安全ということのみならず、難民の問題でございますとかあるいは紛争後の関係国の安定の問題でございますとか人道の問題、非常に広くいろいろな問題について審議し、決定するようになっている。それから、よりさかのぼって、御案内のとおり、安保理というものが、国連で唯一加盟国を拘束する決定が行える、そういう重要な機関であるということも挙げられると思います。
  88. 東祥三

    ○東(祥)委員 大臣、国連安保理入り問題に関して、一つのコンセンサスができているとすれば、こういうことなんじゃないかというふうに思うのです。先ほどの大臣のお話にもありましたけれども、結局、日本は第一次世界大戦後、国際社会のある意味で潮流である国際連盟から脱退していってしまった。その後、あの第二次世界大戦にずっと突入していく。そして、国際社会全体として、どぎつい言葉で言えば、あのナチス・ドイツ、そして日本の軍国主義、再びこの世の中にこういうものを起こしてはならない、生ましてはならない、そのための一つの集団安全保障措置と今日言われるああいうものをちゃんとビルトインさせた国際連合というのをつくった。すぐには入れなかった。しかし、日本がこの国際連合に入ることによって、ある意味で、今議論されておりますけれども、いわゆるその不戦の決議というのをあそこで基本的に日本はやっているわけですね。  そしてまた、戦後、私たちの世代、また戦争体験された世代も、結局あのかつての苦い歴史、不幸な歴史を再びやりたくない。そのためにどうしたらいいのか。日本は一国だけでまた孤立して生きていくことはできない。国際社会がやはり安全で平和でなければならない。日本はそれなりに、何らかの形で役割を、国際社会の安全と平和、また繁栄に関して役割を果たすことができるような国になったんじゃないのか。ここまでは多分コンセンサスができているんだろう。  そして、国際連合というのがある。五十年たった。多分雨漏りがしてきて、窓が割れているかわからない。あるところはシロアリに食われているかわからない。これを改革する必要性が出てきている。ある方々は、新しい国連をつくるんだというふうに言っているわけですね。これはまさに至難のわざだと僕は思いますね。このある意味で古い家の中に、日本は二度と同じ間違いをしないという誓いを持って国連に入って、そして今日までやってきた、一メンバーとして頑張ってきた、それなりの役割も果たしてきた。そして、この古くなった家を、ある意味では改築しかできないわけですね、新築はなかなか難しいのだろう、改築ですら難しい。では、そこでどういう役割を果たしていったらいいのか。国連加盟国からも、やはり日本はもっとそれなりのポストを得て、責任を持って、この家を改築していってくださいよ、こういうところまで来ているのだろう。また、この部分に関しての国民的なコンセンサスというのはできているんじゃないのかこういうふうに私は認識するのですが、まず河野大臣いかがですか。
  89. 河野洋平

    河野国務大臣 おおむね御意見、私も納得いたします。おおむねというのは少し失礼な言い方ですが、我が国は既に国際社会の中で相当大きな貢献をしていることは、もう議員も御承知のとおりでございます。  例えば、経済的な支援という意味では、世界各国、百何十カ国の中で、援助国としてはこれはずば抜けた一位でございます。こうした援助国としての我々の国際的な貢献というものに対する評価というものは、私は相当高くあると思います。さらには、技術的な支援もそうでございますし、それ以外にも我々が国際社会の中で果たしてきた役割というものがあって、あるいは、アジア・太平洋地域を見回しても、この地域で五十年、半世紀の間、民主主義あるいは基本的人権の尊重という価値観というものをずっと持ってやってきたということに対する評価というものは、私は国際社会から与えられているというふうに思います。  また、したがって、逆に言えば、そういう国際社会から与えられている信頼にこたえる役割も我々はまた果たしていく必要もあるかもしれないというふうに考えているわけでございます。
  90. 東祥三

    ○東(祥)委員 そこで、アンケート調査によれば、国連安保理入りに関して、非軍事なら賛成とするのが七〇%、軍事なら反対とするのが五七%。僕にはよくわからないのですが、この非軍事、また軍事という、こういう考え方ですね。国連憲章を読めば、あの国連憲章どおりに物事がうまくいけば、日本が安保理の常任理事国メンバーになって、そして国連決議で、それなりの制裁をしなくちゃいけない、こういう決定をするとする、しかし、決定には参加するけれども、直接軍事的な行動、それに必ずしも常任理事国が参加しなくちゃいけないだとかそういうことは一切書いてないわけですね。だから、そういう意味では、この非軍事、軍事というとらえ方は非常にあいまいもことしておりますし、これはアンケートをする方に問題が僕はあるんだろうと一方では思います。  しかし、他方においては、多くの方々はやはりそうはいかないんじゃないのか。この世の中が、この国際社会が、将来にわたってますますその国連の決議が漸減し、なくなっていく、つまり平和を回復する、あるいはまた、ある地域紛争が起きて国連安保理での議論をし、そして制裁措置、そういったものを出さなくてもいいような状態になれば別ですけれども、そういう状況がふえてきた場合、常に日本は、決議に対しては賛成するけれども、軍事的な問題に関しては常に関与することができないという形でずっと済むんだろうか。ここに一つの大きな危惧があるんだろう、こういうふうに僕は推察します。  したがって、今の国連憲章においてそういうことは一切心配要りませんというふうに言われたとしても、今の時点ではいいわけですけれども、その後わからなくなる。しかし、そのときには、日本として明確なる決断をとって、もしそれで国際社会がだめだと言うならば、私たちはそれ以上できませんと言う覚悟を持った上でこの国連常任理事国入りを考えているんですよということを発信しておかなくちゃ、国民の皆さんは理解してくれないことなんだろう、こういうふうに僕は思うのですが、大臣、いかがですか。
  91. 河野洋平

    河野国務大臣 先ほどから何回も申し上げて恐縮でございますが、私の国連での演説にもそのことはきちんと申し上げたつもりでございます。つまり、我が国には憲法があって、この憲法。許す範囲内で我々は国際貢献をいたしますということをまず前提として申し上げているのはそのためでございます。  それからまた、詳細、政府委員からも御答弁させますが、国連に加盟した、その時点で既に国連の一員としてなすべき役割といいますか義務といいますか、そういうものはあるのであって、理事国になったからその義務がふえるということには私はならないというふうに思います。  さらに、まあ、そうはいうけれども、モラルとして、決定に参画しておいてやらなくていいかということをおっしゃる方もありますけれども、それは我々がどう考えるかという問題であるし、それから、現実に先般の、あれはハイチですか、ハイチなどには、例えばP5の国でも参加をしない国がございますし、国連で決議をしたから、安保理で決議をしたからといって、その決議のための実際の行動に参加をするかしないかというのはまた別の話だということはちっとも、今考えなきゃならぬ、まあ皆さんには申し上げなければならぬという意味ではよくわかりますけれども、我々はそれはもう当然のことだというふうに思っております。
  92. 東祥三

    ○東(祥)委員 問題は、それはある意味で静的なというか、静かな議論、分析であるならば、僕は大臣の言われることでいいんだろうと思うのです。僕もいいんだろうというふうにずっと思っていました。ところが、動いているのですね。そのときに何が欠けているのかというと、例えば、武力を提供してくださいよ、日本は提供できないんです、それはまさに大臣のおっしゃるとおりです。では、非軍事の分野でもって一生懸命頑張ります、非軍事というのは、これはまた大変なんですね。人道国家という言葉がありますけれども、今日本でPKO二千名まで出せる、PKOで二千名だけでもって非軍事の人道活動というのはできるのか僕はそうは思わないわけですね。  ある意味で、日本の構想として、メルヘンの世界になってしまうかわかりませんけれども、十万人あるいは二十万、三十万という形でもって、そういう武力を使った活動はできませんけれども、それにかわるこういうものをできますよ、こういうものをやろうと思いますよ、何年かかってでもこういうことをやろうと思いますよ、そういうものがもし出てくれば、それはそれなりに一つの説得力としてあるのじゃないのか。そういうことが議論されないままに、今状況が出てきて、機が熟して、そして安保理入り云々という議論をしてしまっている。そこに、いつまでたったとしても、もっと国民的な議論をしたらいいのじゃないのか、堂々めぐりを常にしているのですね。  そういう意味では、先ほど大臣のお言葉にありましたが、国連の一メンバーであることと安保理常任理事国のメンバーになるというのは、会社に例えれば、ある意味で社員であり、それが課長になり、部長になり、そういうとらえ方をしてはいけないのかわかりませんけれども、エグゼクティブになるわけですね。それはそれなりのやらなければならない種々の責任というのも当然僕はふえてくるのだろう。また、その人が何を一体言っているのかということが国連加盟国にもちゃんとわかるようなそういう人、国柄でなければいけないわけですね。  そういう意味では、やはり今まさに五十年たって、日本としてどういう国連における役割、こういうものを考えているのか。国連像ではありませんよ、これはまた後で質問しますけれども国連安保理における役割を果たしていこうとするのか。こういうことについて大臣はお考えになっていますか。その点について御所見を伺いたいと思います。
  93. 河野洋平

    河野国務大臣 先ほど政府委員からもちょっと申し上げましたけれども、安保理そのものが果たす役割というものが随分変わってきているということに着目をする必要があると思います。  私どもは、国連改組ということを話題にすれば、これは何も国連というものは安全保障理事会だけが問題ではなくて、経社理も非常に重要な役割を果たさなければならないし、あるいはまたそれ以外にもそうした国連が果たすべき役割というものが新しく出てきているので、そういうことにもっと着目をする必要があるのじゃないかということは我々議論はいたしますけれども、他方、安保理それ自身がかなり幅広い分野について議論をするようになってきているということも考えなければならないと思います。  思えば、五十年たって、ただ単に代表性だけが問題ではなくて、果たすべき役割の分野、それも極めて重要だというふうに思うのですね。我々が安保理に仮に、全く仮にとしか今申し上げようがありませんが、仮に安保理に参加をするということになれば、どういうポジションであるかということにもよりましょうが、さらに我々が関心を持つ分野について議論をするということのチャンスが出てくるということは我々にとって非常に重要だと思います。
  94. 東祥三

    ○東(祥)委員 確かに安保理は、冷戦構造が崩壊後というのは著しくその活躍の回数というのはふえているわけですね。そういう意味では、具体的に聞きますけれども日本の安保理における投票態度という側面から見た場合、日本の投票態度の基準というのは一体どこにあったのか、御所見を伺いたいと思います。
  95. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 安保理のメンバーになっております場合には、御承知のとおり安保理の決議の作成段階におきましていろいろ協議にあずかるわけでございます。決議案の作成段階でその作業に参画するということになるわけでございます。  したがいまして、こういった調整に参加した後に決議案が実際に投票に付されるということになりますれば、その投票に付される決議案に我が国意見がどれだけ反映されているかということによってもいわば投票態度が変わってくるわけでございますが、そういう点も含めまして、一つ一つの決議案が国際の平和と安全の維持にどれだけ役に立つのか、また我が国の国益等から考えてそれがいいのかどうかということも総合的に考慮して投票態度を決定してまいったわけでございます。  最近の状況を見ますと、実は冷戦後は安保理保の決議が全会一致で採択される場合が多うございますので、そういう意味では我が国の投票態度が特にほかの国と違うというようなことは、前回非常任理事国として入っておりましたときにはそういうことは余りございませんでした。  いずれにいたしましても、先ほど申し上げたような総合的な考慮をいたしまして投票態度を決定してまいったということでございます。
  96. 東祥三

    ○東(祥)委員 ある方々は、我が国の外交姿勢というのは米国追随じゃないのかこういうことを言われる方がいらっしゃる。米国追随でも日本にとって利するものであるならば別に悪口の根拠というのは希薄なものなんだな、こういうふうに私は思っているのです。ある意味でまさに日本として、アメリカと違う国ですから、また日本の安全はアメリカによって守られているという国でもあります。そういう意味において、米国の意見、また物の見方、考え方、こういったものは当然尊重しておかなくてはいけないだろう。それを自主的にすべて判断していかなくてはいけないだとか、そういうのはまた極端な議論だな、こういうふうに私は思います。  そういう意味で、国連史上初めて核廃絶に向けての採択が、これは安保理ではありませんけれども、第一委員会ですかで採決され、そして総会においてもこれが採択された。これは画期的な、日本のイニシアチブで採決され採択されたということは評価すべきことなんだろう。ただ、現実の国際政治を見れば、核廃絶というのはあくまでも軍縮ですから、結局戦争発生の主要因であるものはやはり武器なんだろう。武器を究極的に廃絶していかなくてはいけないのだろう。大量破壊兵器、さらにまた核兵器を含めた形でそちらの方向に向かう動きなんだろうと思うのですね。  ところが、現実のP5は核保有国ですね。したがって、今米ロで一生懸命やっておりますけれども、しかしこれは軍縮というよりもある意味で軍備管理なんじゃないのか。管理であるということは、いかにして軍備の均衡を保つか、ここに軍縮と軍備管理の差があると私は理解しているわけです。しかし、そうであるとするならば、日本はまさに核廃絶に向けて理想的なことを言っているわけですが、当面はなかなか、その目標を達成するのは相当な時間がかかり、ある意味では国際政治をより知っている人々にとってみればインポッシブルドリームに近いのかな、こういうふうに思わざるを得ない。  第一発は投げた。では二弾、三弾、政府としてこの核の究極的な廃絶に向かってどういうことをやられようとしているのかということについて、まず……。
  97. 杉内直敏

    ○杉内政府委員 我が国は唯一の被爆国としまして核兵器の究極的廃絶に向けて核軍縮を着実に進めていくことが必要であるというふうに考えておりまして、その意味で、近年米ロ間の核軍縮合意の実現、全面核実験禁止条約交渉の進展と核軍縮についての具体的進展が見られることを我が国としても歓迎しているところであります。このような動きを一層促進していくことが重要ではないかというふうに考えている次第でございます。  そのような考え方に立ちまして、昨年の国連総会におきまして、先生指摘のとおり、我が国は究極的核廃絶に向けた核軍縮決議案を提出いたしまして、圧倒的多数の賛成を得て採択されたところであります。また、我が国といたしましては、全面核実験禁止条約交渉の早期妥結に向けての貢献、それから旧ソ連諸国の核兵器廃棄支援といったようなこと等をこれまで行ってきたわけでございますが、我が国といたしましては、米ロ問のSTARTⅡの早期批准、その後一層の核軍縮の進展を期待しているわけでございます。  今後とも、核兵器国に対しまして一層の核軍縮を促していくとともに、このような核軍縮へ向けての国際努力に尽力してまいりたい、このように考えております。
  98. 東祥三

    ○東(祥)委員 確かに日本は唯一の被爆国である、それはだれでもが認めることです。それはよくわかります。  そしてまた、今回のこの核廃絶を目指す採決に当たって、残念ながらアメリカは棄権しているわけですね。棄権でいいというそれなりのちゃんとした根回しが行われたのだろうと僕は思うのです。  他方において、日本というのは、日本の安全を守るために、三木総理のときに明確に言われているとおり、日本アメリカの核の抑止に依存するということを明言しているわけですね。そして、そういう状況でありながら、日本は核の廃絶に向かって高らかに訴えているわけです。だから僕は、問題は極めて難しいというふうに思わざるを得ないのです。ただ、そちらの方向日本としてできる限りのことをやっていかなければいけない。アメリカはこれに賛成していないわけですから、棄権しているわけですから。  そういうことを踏まえた上で、難しい質問で申しわけないのですが、今後どのように取り組まれていこうとされているのか、御決意を伺いたいと思うのです。
  99. 河野洋平

    河野国務大臣 この問題は、何か一つ一つを具体的に進めていく必要があるのだと思うのですね。例えば核実験の全面禁止条約をつくるためには、核実験が行われたか行われなかったかを検証する技術というものが確立されるかどうかということも極めて重要だと思います。私は、先般のNPTのあの国連総会の演説の中で、我が国は全面的核実験禁止条約の早期の成立を期待していますと述べると同時に、そのために我が国がやることは、地震学などをもっと進めて、核実験が行われたかどうかの検証ができる技術を我が国でもつくり上げると同時に、世界各地にそうした技術を移転させて、どこからもチェックをするということを考えておりますということを申し上げたわけです。  核実験をまず全面的に禁止するということは、新たな核兵器の開発に歯どめをかけるという意味で非常に意味のあることだと私は思っているのです。そのためには、実験が行われないということをはっきり検証する技術といいますか仕組みといいますか、そういうものをぜひ持つということも一つ重要ではないかというふうに思いまして、我が国が貢献をするとすれば、そういう技術的な貢献というものが一つできるであろう。  それから、核保有国が核を持つ必要がない信頼関係というものをどうやってつくり上げていくかということもまたあるのだろうと思います。これはまさに、米ロ首脳会談などはそういったことに非常に大きな意味のあることであろうと思いますし、これから先核保有国の首脳同上のさまざまなやりとりもありましょう。それから、非核保有国との間の話し合いも積極的に行っていく必要があるだろうと思います。そのためにも、今回のNPTの無期限延長につながります、まあ決議になりますか何になりますか、ここの議論を我々は非常に注目をしているところでございます。
  100. 東祥三

    ○東(祥)委員 唐突な質問で恐縮なのですが、安保理の常任理事国のメンバーになるということは、今こういう形で議論している核廃絶へ向けての日本の発言権を増すことになると思われますか、どうですか。
  101. 河野洋平

    河野国務大臣 少なくとも今P5は全部核保有国でございますから、全くこれは先ほどから申し上げているように、仮にでございますが、どの国であるにせよ新たなメンバーが加わるとすれば、非核保有国が恐らく加わることになるだろうと思います。それは、核保有国だけで話し合っていることとは少なくとも状況は違ってくるのではないかと考えるのが普通ではないかと思います。
  102. 東祥三

    ○東(祥)委員 安保理の規模について質問させていただきます。  今、政府は安保理の規模についてどのようにお考えになっておられますか。
  103. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 安保理の拡大の規模につきましては、作業部会でもいろいろな議論が出ているところでございます。我が国は、二十台の少ない方、これは拡大した後の数でございますけれども、そういうような言い方をしております。  御案内のとおり、安保理の拡大が必要だということ自体につきましてはコンセンサスに近いものがございますけれども、その規模とか態様につきましてはまだ議論が収れんしていない状況にございます。  概して言いますと、五大国あるいは先進諸国は、どちらかといいますと安保理の大きさというものは余り大きくなってはいけない、ある程度コンパクトなものでないと迅速な審議、決定が行い得ないという意見でございます。  これに対しまして、いわゆる非同盟諸国の多くは、それよりもどちらかといいますと代表性というところに着目いたしまして、若干大きくなっても構わないのではないかというようなことを言う国が多うございます。非同盟諸国が出しましたペーパーというのがございますけれども、これはたしか二月に出てきたものでございますが、そこでは二十六カ国というような数字を出しております。ただ、これも絶対にそうでなくてはいけないというようなものではないと思いますが、一つのめどとして二十六というような数字を出しております。その他二十といったり二十五といったりいろいろな数が出ておりますが、大体そのような範囲の数字が議論されているということでございます。
  104. 東祥三

    ○東(祥)委員 拒否椎についてお伺いいたします。  河野外相は、昨年九月のNHK討論番組で、全体が常任理事国に拒否権を与えるということであれば、日本は要りませんと言う必要もない、このように述べられている。国連加盟国の同意があれば、拒否権を持った常任理事国になることを目指す考えをお示しになった、このように理解します。その後、村山首相も、常任理事国の中で拒否権を持つ国と持たない国があるというのもおかしな話だ等拒否権を持つのが自然であるとの考えを示されておられますが、これらの発言は政府の公式見解と受け取ってよろしいですか。
  105. 河野洋平

    河野国務大臣 私のテレビの発言を公式見解というのもどうかと思いますけれども、しかし基本的に、恐らく総理は国会の答弁でおっしゃっておられるのではないかと思いますが、国会で総理がおっしゃれば、それは政府の公式の見解とお受け取りをいただいて結構かと思います。
  106. 東祥三

    ○東(祥)委員 米国の国連政策に大きな影響力を持つと言われる米国国連協会のエドワード理事長という方が、昨年、日本が拒否権を持ったら大変きつい政策決定を迫られるだろう、日本の拒否権ですべてがストップしたら日本は他の国から圧力をかけられ、米国と立場が輿なったら日米関係に問題が生じるかもしれない、このように述べられているのですけれども、この点について、いかがお考えですか。
  107. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 ただいま読み上げられましたものがどういう文脈の中で言われたものかよく承知しておりませんけれども、いずれにいたしましても、拒否権というものにつきましては両面あるわけでございまして、国連での議論を見ましても、これは非民主的な制度であるというような批判がある一方、現実の国際政治の世界を見ますと、やはり影響力のある、いわゆる大国の協力を得るためには拒否権制度というものも一定の価値があるというような考え方もあるわけでございます。  ただ、いずれにいたしましても、拒否権というものは非常に強い機能でございますから、決定に際しまして非常に重い、真剣な決定が必要になってくるというのは一般論としては事実だろうと思います。  ただ、日米関係についてどういう影響があるかということにつきましては、これは将来の仮定の問題でございますけれども、その時々の、どういう決定をするか、どういう決議案について賛成するか反対するかというようなときに、ケース・バイ・ケースで考えざるを得ない問題であろうというふうに考えます。
  108. 東祥三

    ○東(祥)委員 国連改革で終わってしまう感じになるので、ちょっとやめます。  一つだけ。最近、米国の国連離れという印象を受けるのですが、やはり国連に、強くて信頼できる国がどかんと座っておいていただかないと、国連それ自体が果たせるものも果たせなくなってしまうのじゃないか、こういう心配を私はしております。  結論から質問させていただきますが、アメリカ国連離れらしき印象を与える状況に対して、国連離れさせないようにするために、日本としてできることは何がありますか。
  109. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 ただいま先生がおっしゃいましたアメリカ国連離れの傾向というものが、率直に言いまして、特に議会の中に見られると思います。  端的に申しまして、具体的な例といたしましては、いわゆる国家安全保障再活性化法案というものが下院を通ったわけでございますが、これによりますと、アメリカが、平和維持活動等、あるいは多国籍軍のような活動をも含むわけでございますが、そういうものに自発的に拠出した分を義務的な拠出金から差し引くというような内容の規定が入っているわけでございますが、このようなことになりますと、国連のPKO活動に重大な影響があるというふうに思われます。  そこで、私どもといたしましては、アメリカ政府はもとよりでございますが、議会の関係方々に対しましても、国連にとってアメリカの存在は、先ほど先化もおっしゃいましたとおり非常に重要なものである、アメリカの貢献というのは非常に大きいんだということを強調いたしますとともに、こういう法案の含む問題点につきましてはいろいろな機会に申し上げているところでございます。
  110. 東祥三

    ○東(祥)委員 APEC関連に移ります。やり残している国連の問題は、また別の機会にやらさせていただきたいと思います。  アジア・太平洋地域の、文化的にも、また地理的にも、また経済状況においても多様な国々を構成国としておりますAPECが、その創設以来今日まで、経済問題に特化して政治問題に触れないという姿勢をとってきたことは、ある意味で賢い選択だったのだろう、このように私は思います。  近年、この地域の多くの開発途上国が目覚ましい経済発展を遂げつつあることに伴って、これらの国々の政治の視野が必然的に国外にも大きく伸ばされるようになることは当然想像できることだと思うのです。APECとして、非政治の原則を短期・中期的に維持しつつ、その次には必ず政治イシューが登場する。そのときに備えてちゃんとした準備をしておかなければならないんだろう。  実際、二年前には、非公式ながら首脳会議の制度が設けられました。その意味では歓迎されるべきことなんだろうと思います。首脳会議は、緩やかな協議体であるAPECがよきにつけあしきにつけ変容していく過程の一つのきっかけであることには間違いない、このように思います。  そこで、APECを重視する日本としては、大臣、しっかりと政策を持って取り組んでいただきたいと同時に、特にことしの十一月のAPEC大阪会議を大成功させていただきたい。  ところが、このAPECに影を落としている幾つかの問題がある。その一つがEAECなんだろう。このマレーシアのマハティール首相が提唱しているEAECに対する我が国の態度について、まずお伺いしたい。  政府はEAECに参加しない方針を固めたとの新聞報道がありましたが、まず、これは事実なのか事実でないのか、EAEC参加問題についての政府の態度は固まっているのかどうか、お伺いしたいと思います。
  111. 川島裕

    ○川島政府委員 EAECに参加しないという決定をしたのかというお尋ねでありますれば、決定はしておりません。検討中ということでございます。
  112. 東祥三

    ○東(祥)委員 EAEC構想は、マハティール・マレーシア首相が九〇年に提唱して以来、もう既に約五年近くたっているわけです。我が国のアジア・太平洋外交を揺さぶってきた問題であると思います。  なぜ政府は参加、不参加の態度決定ができないのか、EAECのどこに問題があるのかその点について説明していただきたいと思います。
  113. 川島裕

    ○川島政府委員 お答え申し上げます。  EAECはかなり長い経緯がございまして、当初、マハティール首相が提唱しましたときは、実はEAECの前にEAEGというのがございまして、これは、ヨーロッパで経済統合が進み、北米ではNAFTAが進み、そういう中で東アジアもひとつ経済グループをつくろうではないかという構想だったわけでございます。その当時の日本考え方は、ブロックと申しますか、地域別に経済的に固まっていくというのは日本は戦後とってなかった方針であるし、やはりそれはあくまでも地域主義ではなくて、開かれた方向に持っていくべきであろうというのが基本的考え方だったわけでございます。  その後、EAEGを、そういう経済的な一つ地域主義よりもむしろ地域の相互理解の促進といった形に、やや、よりやわらかいといいますか、そういう感じになったのがEAECでございます。これにつきましては、ASEAN側といたしましては、まさにAPECの枠内の協議体と位置づけているわけでございます。ただ、そういうことではございますが、まだAPECの域内の諸国の間でもう一つEAECについて理解が得られていないというのが現状でございます。  そして、例えば豪州とかニュージーランド等は、戦後、アジアの一員であるとみずからを位置づけて、事実、経済的にも非常に緊密な関係を持っているわけでございます。これが例えば外されているということは、やはり納得できないという雰囲気がございます。そういうふうにAPECの枠内で仮に動かす場合に、結果としていろいろ釈然としないという向きが方々にありますと、やはり私どもはAPECというのは非常に重要なものだと思っておりますから、その辺の関係国の理解が進む上でEAECが発足するというのが順番だろうと思うわけでございます。その点で、EAFC構想につきましては、依然としてAPEC域内の主要国の理解を得るに至っていない状況なものですから、我が国としては最終的な決定を行うに至っていないというのが現在の状況でございます。
  114. 東祥三

    ○東(祥)委員 EAEC構想にはNAFTAをつくった米国が反対している、また米国は、日本がEAECに参加することにも反対しているのではないのかこういう印象を私は持ちます。なぜ米国は反対しているのですか。それを外務省としてどの辺まで把握されておられますか。
  115. 川島裕

    ○川島政府委員 アメリカ立場が反対、賛成というよりも、やはりアジアかアメリカかということではなくて、アジアとアメリカが、この場合東アジアでございます。東アジアと北米が一体となって作業を進めるというのがAPECでありましょう、それがアメリカの某保本でございます。そうすると、そういう中に何がしかの、例えばEAEC等、サブグループと申しますか、固まりができて、結果としてAPECを分断するようなことになっては、せっかくAPECをつくったのに元も手もないと申しますか、決して望ましいことではないのではないかという危惧があることは事実でございます。  ただ、むしろ、反対か賛成がということになりますと、それよりも私どもはもっと近い話として、例えばオーストラリアとかニュージーランドとか、いわば太平洋のこっち側にありながら、これは参加を認められないんだというような形でEAEC構想が今のところ動いておりますので、そういうような国の受けとめ方等も、例えば日ロ豪関係との脈絡でも考えなければなりませんし、総合的にいろいろ考えなければならない点があろうかと考えております。
  116. 東祥三

    ○東(祥)委員 米国の主張に対しては、マレーシアを初めとして、すべてのASEAN諸国じゃないわけですが、幾つかの国々は、NAFTAをつくっている米国がEAECはいけないと言うのは米国のわがままなんじゃないのかこういうふうに反論いたしております。それぞれの立場を今ここで議論したとしてもこれはしょうがないのですが、多分、問題の本質はどこにあるのかというと、EAECというのは一体何なのかまたなぜ必要なのか、さらにまた、必要だとして、我が国の参加が重要なのか重要でないのか、また、先ほど局長が言われたとおり、APEC内のまさに枠内機関、APECの内部機関と言ってもいいのかわかりませんが、一つとして、APECではできないけれどもEAECではできる話し合いといったような議題があるのかどうなのかこういうところに問題の本質があるのではないのか、こういうふうに思うのですが、いかがですか。
  117. 川島裕

    ○川島政府委員 お答え申し上げます。  EAECは経済交渉をやるとかAPECでただいまやっておりますような作業と同じようなことをやるのかというふうなことについてはまだ詰まっていなくて、まさに、内容的には非常にふわふわというか、相互理解の促進といったことで、かっちりした作業計画でこれでいきましょうという話は余り詰まっていない段階でございます。その辺のところを詰めれば、その中でEAECというものがもう少しはっきりしてきて、乗れるか乗れないのかわかるかということはあるのでございますけれども、それよりも、やはり今APEC域内の諸国で、例えばオーストラリア、さっきから申しているわけですけれども作業は何をするかではなくて、だれは入れる、だれは入れないというところに非常に釈然としない向きがあるということでございます。
  118. 東祥三

    ○東(祥)委員 茫漠としていてまだわからない、そういうお話だと思います。そうであれば、まさにEAECの問題を通して、何か、日本がアジアなのかアメリカなのかという、こういう形での議論が進むことに関して物すごく危険だな、二者択一の危険性というものを感ぜざるを得ない。そうであるとすれば、やはり日本がイニシアチブをとってそれなりのまとめといいますかクリアにするというかそういうことをされていいのじゃないのか、このように私は思っているのです。  昨年、ベーカー元国務長官が来られたときに、国務長官と、なぜアメリカは反対するのですかと。局長が言われるとおり、まさにブロック化しています、閉鎖的です、こういうふうに言われておりました。NAFTAは違うんですね、NAFTAは違います、日本が入ったければそれなりのちゃんとした条件を踏めばそれは入れますよ、原則はそういうふうになっています、じゃ、ベーカー元国務長官、EAECというのは開かれていれば別に反対しないんですね。それだったら別に反対する根拠はありません、このように言われておりました。ただ、二人の会話ですから。  そういう何か日本としてできることがあるのではないのか、そういうことを考えますと、まさに今のお話を聞いていても、ある意味で茫漠としている、実態がよくわからない。にもかかわらず、その実態を通り越した形で別の政治的なイシューとして議論がされているところに危なっかしきを私は感じざるを得ないのです。したがって、EAECが発足しても、構想のままずっとくすぶり続けていくとすれば、それはAPECというまさにこの大切な協議体に傷をつけることになるのじゃないのか、APECのきずなを弱まらせてしまうことになるのじゃないのか、そこを危惧せざるを得なくなる。  そうしますと、提案ですけれども、ことしの秋に聞かれますAPEC大阪会議の議長国として日本がいるわけですから、EAECに関するアジェンダをつくられたらどうなのか。そして、米国もマレーシアもオーストラリアも参加した形で加盟十八カ国、地域すべてが納得のいく限り議論が行えるような環境を用意すればいいのではないのか、このように私は思いますけれども、提案させていただきますが、別の解決の方策があるとすればそれを教えていただきたいのですが、いかがですか。
  119. 川島裕

    ○川島政府委員 先生の言われたことに非常に同感する部分が多うございまして、日本にとって、この地域の経済の話でそもそもアメリカかアジアかという踏み絵を踏まされる事態というのはあり得ない話で、政策的には意味のない話だと思っています。ですから、APECの意味合いがそこにあるわけで、その中でどうやって開かれた形でみんなが理解するような方向に持っていくかということの重要性に尽きるのだろうと思います。今の提案につきましては、非常に貨重なものとして受けとめさせていただきます。
  120. 東祥三

    ○東(祥)委員 もう一つの問題として、APEC首脳会議への李登輝台湾総統出席問題があります。四月十九日に李総統のお父様が九十五歳で亡くなられました。この場をおかりして弔意を表明します。  一昨年の米国シアトルでの首脳会議、昨年のインドネシア、ボゴールでの首脳会議の際に、李総統を台湾代表として迎えるかどうかについて大変神経を使う問題となってしまいました。ことしも大阪で首脳会議を開催することとなっておりますけれども、また同じ問題が出てきている。どのように対処するのですか。政府の方針を伺いたいと思うのですが。
  121. 原口幸市

    ○原口政府委員 APECの大阪会議におけるチャイニーズ・タイペイ、いわゆる台湾でございますね、台湾の出席問題でございますが、これにつきましては一昨年のシアトル及び昨年のボゴールの先例を踏襲するつもりでございます。
  122. 東祥三

    ○東(祥)委員 先例といいますと、シアトル・モデルを使うということですか。
  123. 原口幸市

    ○原口政府委員 さようでございます。
  124. 東祥三

    ○東(祥)委員 シアトル・モデルというのは、李総統に招待状を出して、李総統が米国の立場を考慮してみずからの参加を取りやめて、代理として閣僚級の経済建設委員会主任委員を出席させた、これがまさにシアトル・モデルという原型です。そうしますと、政府は李総統に招待状を出すのですか。
  125. 原口幸市

    ○原口政府委員 シアトルにおきましては、閣僚会議の方には財政部長、それと経済部長が出席いたしまして、非公式首脳会議の方に経済建設委員会主任委員という方が出席されたわけでございます。実態においてはこういうことでございますので、こういう点を念頭に置いて私は先生がおっしゃったシアトル・モデルということに従うというふうにお答えした次第でございます。
  126. 東祥三

    ○東(祥)委員 そうすると、李総統には招待状を出さないということですね。
  127. 原口幸市

    ○原口政府委員 形式につきましてはこれから検討すべき問題だろうと思っております。
  128. 東祥三

    ○東(祥)委員 報道によりますと、過去二回の首脳会談と違って、今回の大阪での首脳会議に台湾は李総統の出席を大きな目標としている、こういう報道がなされております。事実だとすれば、形式の問題はともかくとして、もしそのシアトル方式を使えば、台湾が自主的に李総統の出席をやめて代理を送るというこのモデルを継承するには非常に困難が伴ってくるのではないのか。外務省としてどんな感触をお持ちですか。
  129. 河野洋平

    河野国務大臣 今政府委員が御答弁申し上げましたように、大阪においてはシアトルあるいはボゴールでの会合を踏まえて行うということはもう既にジャカルタのAPECの閉幕のときに申し上げてあるわけでございます。その後たびたび国会におきましても総理からそうした旨御答弁を申し上げているわけでございまして、突如としてそういう新しい考え方を申し上げているわけではございません。これはもう昨年のAPECが終わった時点からこうした考え方を申し述べているということがまず一点。  それから、台湾はこのAPECに参加をしておられて大変活発に議論をし、APECの一員としてさまざまな分野での作業をこなしておられます。恐らく台湾はAPECにおける経済問題についての議論というものを非常に重要視しておられるというふうに私は考えておりまして、そのことを考えれば、別の理由で台湾がこれまでと違う態度をおとりになるというふうには私は現在想定しておらないところでございます。
  130. 東祥三

    ○東(祥)委員 台湾が李総統の代理として徐副委員長の出席を申し入れてきた場合、政府はどうされますか。
  131. 原口幸市

    ○原口政府委員 今ここでお答えできることは、先ほども申しましたようにシアトル及びボゴールの先例に従って対処いたしたいということでございます。
  132. 東祥三

    ○東(祥)委員 原則論をお伺いさせていただきます。  首脳会議、正式にはAPEC非公式経済首脳会議という名称を政府は使っておりますけれども、どのような目的で開催されて、どのような人たちが集まるものなのですか。
  133. 原口幸市

    ○原口政府委員 御承知のとおり、APECにおきましては、当初からあったものは閣僚会議でございまして、非公式首脳会議というものはシアトルからアメリカの提案でアドホックにできた会合でございまして、これからずっと毎年毎年行われるという保証が、合意があるわけではございません。  そこで、例えばシアトルあるいはボゴールでどういうことが行われたかといえば、その地域、メンバー国の大半の国の場合においては首脳が出席されて、また一部の国についてはいろいろな理由からほかの方が出席されて、これは事実関係でございますから必要に応じて情報は後で提供させていただきますが、そこで域内の経済問題について幅広い関心事項を議論した。しかし現実には、例えば昨年のボゴールではその関心はほとんど専ら域内の貿易・投資の自由化をどうやって進めていくかというような問題について議論があって、その結果として二〇一〇年あるいは二〇二〇年までに域内の投資及び資本の自由化を達成するという政治的な合意ができたということでございまして、またことし大阪で非公式首脳会議が行われることになっておりますが、その主題はボゴール宣言の実現のための行動指針をみんなで議論する、そういうことでございます。
  134. 東祥三

    ○東(祥)委員 今局長がおっしゃった線に乗って考えた場合、台湾の李総統の出席が現在及び将来において望ましいものなのかどうなのか。原則論です。また代理で事足りるものなのですか。
  135. 河野洋平

    河野国務大臣 APECの会議の前に我が国と中国との関係というものがございまして、日中の原則というものはきちっとしているということが一つございます。  それから、APECはAPECとしてどういうやり方をするかということについては、先ほど来申し上げておりますように、我が国は過去二年間の実績を踏まえて行うということを申し上げているわけでございまして、過去二年間の実績というものはそれぞれ立派な業績を上げておられるというふうに私は思います。
  136. 東祥三

    ○東(祥)委員 首脳会議への台湾代表の出席問題というのも、局長の話ですと今後続けられるかどうかわからないということですけれども、基本的には首脳会議が開催されていくのだろうと推察します。そのたびごとに、議長国にとってこの問題はまさに頭を悩ませる問題になってしまうのではないか。そういうことを考えますと、ある意味で大阪首脳会議で決着させるようにはいかないのか。  先ほど一番初めに外務大臣にお聞きいたしました日中関係、ダイアローグできるのですか信頼関係あるのですか。バイにおいてはあります、マルチにおいてはいろいろと問題があります。まずバイでこの台湾の李総統出席問題について、この問題はAPEC全体の問題として考えるべきだ。そしてまた、中国と台湾でまず括し合うべきじゃないのか。そして、外務大臣、それを加盟国全体で承認するといった方式がとれるように日本としてリーダーシップをとることはできませんか。
  137. 河野洋平

    河野国務大臣 中国は台湾と幾つかのレベルで話がなされている、この問題ではなくて一般的な話でございますけれども、という過去の例もございます。全く中国と台湾が話し合わないということは、あらゆる分野、いずれの分野でも全く話し合わないということではないと思います。  ただし、この問題は、中国の立場に立ってみれば、台湾に中国政府と全く同じ、同等の国際的地位を与えるかどうかということになるとすれば、これはやはり極めて難しい話だというふうに私は思います。
  138. 東祥三

    ○東(祥)委員 それは中国がお考えになられることであって、私が今申し上げているのは、日本が中国とそして台湾に、この問題については、議長国がとやかくやるという問題じゃなくて、APEC全体の問題として、まず中国と台湾でお話し合いをされて、そしてそれをもとにしてAPEC全体で話し合うということにしたらどうですか、こういうことを提案させていただいているわけです。日本が中国に対してこういうことも言えませんか、いかがですか。もし言って、何かおっかないことが起きますか懸念すべきことが起きますか。こういうことは提案されたことがあるのですかいかがですか。
  139. 河野洋平

    河野国務大臣 日中国交正常化以来、我が国一つの中国という原則はかたくなに守ってきているわけでございます。今御提案の話が、先ほど申し上げたように国際社会の中で二つの中国ということになる、あるいはそういう誤解、あるいはそういう先鞭になるということであれば、これは中国との間の、極めて親しい関係にある我が国として、そういう提案をするという状況ではないと思います。
  140. 東祥三

    ○東(祥)委員 どうしてですか。外務大臣、するとどういう問題が起きますか。
  141. 河野洋平

    河野国務大臣 繰り返しになりますが、我が国は中国は一つと言っているわけであって、国際社会の中で二つ目の、いわば二つの中国を認めろ、あるいは認めてはどうかということを言うことにつながるのではないかと思います。私はそうした提案をする意思はありません。
  142. 東祥三

    ○東(祥)委員 一つの中国、二つの中国というのは、こういう提案をしたからといってにわかにそういうふうになるとは私は思えないのです。今APECで台湾の代表も来られている。そして、首脳会議というのを開く。そして、そこに李総統が出たい。この問題に関して、どうか中国とお互い話してください、そしてAPECの問題として加盟国全体でもって承認したらどうですか、こういうことを議長国である日本として提案されたらどうなんですかリーダーシップをとったらいかがなんですか。何も一つの中国が二つの中国になるということを日本が認めよということを言っているのではなくて、こういうことをされれば、この問題、最終的にどうなるかわかりませんけれども、決着できるのじゃないのですかと提案させていただいているわけです。だが、それは外務大臣はやる気はないと言う。なぜですか。
  143. 河野洋平

    河野国務大臣 繰り返して申し上げますが、そうした提案が、国際的に台湾に、言ってみれば二つ目の中国としての地位を与えるということになるのではないか、こう考えて、そうした提案をする意思はないということを申し上げているわけであります。
  144. 東祥三

    ○東(祥)委員 時間が来ましたので、ありがとうございました。
  145. 三原朝彦

    三原委員長 続いて、古堅実吉君。
  146. 古堅実吉

    ○古堅委員 五月三日の日米安保事務レベル協議では、ことし十一月の日米首脳会議で、日米安保条約の再定義に関する共同声明をまとめるということを申し合わせたというふうに報道されています。どういう話し合いであったのか、説明を求めます。
  147. 時野谷敦

    ○時野谷政府委員 三日に行われましたあの日米安保事務レベル協議の内容でございますが、これは日米安保体制、あるいは日米安保体制を中核とします日米間の安全保障分野での協力、これをどういうふうに進めていくかということについて、いろいろな意見交換を行ったということでございます。  今先生から、十一月に想定されております日米首脳会談の際に、共同声明と申しますかあるいは何らかの文書を出すのではないかということのお尋ねがございましたけれども、十一月の日米首脳会談で何らかの文書を出すというようなことが現時点で決まっているということではございません。ただ、そういう可能性を排除する必要ももちろんないのだと思います。それは、いずれもっと時期が迫りまして決められるということだろうと思います。  今回の日米安保事務レベル協議での話し合いの内容との関連で申せば、これは間断なき対話ということを私ども申しておりますが、今後こういう対話を進めてまいりまして、それでもし十一月にそういう何らかの文書を出すというような決定が行われるのであれば、そういう成果を盛り込んだものを出すということが想定されるのではないかというふうに思っております。
  148. 古堅実吉

    ○古堅委員 村山総理は、一月十一日の日米会談で、アジア・太平洋の安定と秩序には日米安保が必要だと述べましたが、日米安保再定義の内容はその村山発言の具体化ということになるのでしょうか。これは大臣から伺わせていただきたい。
  149. 時野谷敦

    ○時野谷政府委員 ただいま先生がおっしゃいました日米安保の再定義ということが、先ほど私申し上げましたように、日米安保体制をめぐる日米間の協力、あるいはより広く日米間の安全保障にかかわるいろいろな協力関係、こういうものをいかに進めていくかという、もしそういう作業のことをおっしゃっておられるのだとすれば、まさに私ども先生おっしゃいますように、一月のワシントンで行われました日米首脳会談でのそういう安保体制の重要性、それから日米間での安保体制にかかわるいろいろな課題について協力関係を深めていく必要があるという、そういう認識の一致を踏まえて私どもは現在そういう作業を行っている、こういうことでございます。
  150. 古堅実吉

    ○古堅委員 日米安保条約の目的について伺います。  岸元総理は、一九六〇年五月十日の衆院安保特別委員会で、この条約締結が米極東戦略の一環として日本を縛りつけるという前提は間違っている、この条約はあくまで日本の平和と安全を確保するためのものであり、また現行条約の不合理を改めようとするものであると述べています。また、同年七月に、外務省情報文化局が出した「新しい日米間の相互協力・安全保障条約」という小冊子、それがございますが、そういう中でも同様の趣旨が明記されています。  つまり、政府は安保条約の目的が日本の平和と安全の確保にあることを明言してきたわけであります。ところが、村山内閣はこの安保条約にアジア・太平洋の平和と安全の維持のための役割を持たせようとしているのであります。それは安保条約を改定でもしない限りできるものではありません。大臣は、安保条約の目的がそういうものだということについての認識はございますか。大臣からお聞きしたい。
  151. 時野谷敦

    ○時野谷政府委員 ただいま川片総理の御発言等を御引用になりましたが、私だだいまつまびらかにはいたしませんが、もちろん日米安保体制の中核というものが日本の安全を確保するためのものである、それから日本の安全と切っても切れない関係にあるところの周辺の平和と安定の確保にある、こういうことであることは間違いのないことでございますし、現在においてもそのことが妥当しているということだろうと思います。  ただ、そういう意義のほかに、私ども申し上げておりますのは、日米安保体制というものが、アジア・太平洋地域における平和と安定に非常に必要な米軍の存在、米国の存在、こういうものを確保していく上での極めて重要な柱の一つになっている、こういう認識を申し上げている次第でございまして、そのことは安保条約を改定するというようなことではもとよりない、こういうことだろうと思っております。
  152. 古堅実吉

    ○古堅委員 担当大臣であられる河野大臣にもお伺いしたいのですが、日米安保条約はあくまでも日本の平和と安全のために締結したというのが政府の解釈であったし、説明でありました。アジア・太平洋の平和のために機能するということは、現行安保には当てはめられないということではないかということを念を押して伺っておきたい。
  153. 河野洋平

    河野国務大臣 今政府委員御答弁申し上げましたように、今日、つまり冷戦が終わった後、日米安保体制の意義というものを考えますれば、我が国の安全を確保していくということは、先生指摘のとおり、これが安保条約の目的であるというふうに私は思いますが、この日米安保体制は、国際社会における広範な日米協力関係の政治的基盤になっておるということも考えなければなりませんし、さらに今政府委員御答弁申し上げました、アジア・太平洋地域における安定要因としての米国の存在を確保して、この地域の平和と繁栄を促進するためのものという点にも着目をする必要があると思います。
  154. 古堅実吉

    ○古堅委員 ソ連が崩壊し、政府がこれまで安保必要論のよりどころとしてきた日本への侵略という論理そのものが崩れた現在、日米安保条約を廃棄し、新しい日米友好条約締結する、これが筋だと思うし、当然だと考えます。ところが、政府地域紛争があると言って安保が必要だということを強調し続けています。  大臣にお聞きしますが、海外で紛争があったとして、それがどうして日本の安全が脅かされるということにつながるのか、説明を求めます。
  155. 時野谷敦

    ○時野谷政府委員 非常に一般論のお尋ねだと思いますので、一般的なお答えしか私もできないのだろうと思いますが、やはりこういう相互依存関係というものが非常に高い水準にある国際社会で生きていく日本ということでございますので、日本の安全ということは、先ほども申し上げましたけれども周辺の平和と安全あるいは安定ということとは切っても切れない関係にあると思いますし、やはりそういう日本あるいは周辺の平和と安定を確保していく上でも、国際社会全体の安定、平和、そういうものが確保されているということがこれまた重要なことなのではないかと思います。  そういう意味で、私どもとしては各般の努力を通じまして、そういう今先生がおっしゃいましたような地域紛争、それはどこの地域紛争かとかいろいろあり得ると思いますが、一般論を申し上げれば、そういう地域紛争、そういったものの抑止に、各般の外交努力等を通じて防止していくということが必要なのじゃないかというふうに思います。
  156. 古堅実吉

    ○古堅委員 地域紛争云々ということと、日米安保条約がこれからも必要だということを結びつけてこれまでずっと言い続けていますけれども、米軍は安保条約第六条によってペルシャ湾までも作戦行動を既に展開してきたわけで、米軍の役割という点でいえば、安保条約の再定義など必要がないはずであります。にもかかわらず、日米安保再定義を行い、アジア・太平洋の平和と安全の維持のための役割を担わせようというのは、自衛隊をアジア・太平洋の安全に関与、機能化させることを考えているのではないかというふうに指摘せざるを得ません。  例えば、今検討中とされる物品役務協定もアジア・太平洋に作戦展開する米軍の補給などの便宜供与を行うことによってアジア・太平洋の安全に寄与することになると思うが、安保条約の再定義という問題はそうしたことをも含ませられているのではないか、このように考えますが、その問題について所管の大臣であられる河野大臣からお伺いしたい。
  157. 時野谷敦

    ○時野谷政府委員 再定義と先生おっしゃっておりますけれども、私どもが先ほど申し上げました日米間の作業と申しますか対話を通じてやっておりますことの一つは、この日米安保体制が今日の国際社会において妥当しておる、重要だということの理由、これは私どもは午前中も申し上げましたのですけれども我が国の安全を確保していくために引き続き必要であるということ、それからアジア・太平洋地域における安定要因としての米東の存在を確保する上で重要だということ、それから広範な日米間のパートナーシップと申しますかそういう協力関係の基礎としてそういうものがある、こういうことを申し上げてきているわけですが、そういうことをよりよく説明できないものかということでアメリカ側とも意見の交換をしてきておるということが一つございます。  そういうことを私どもはやってきておるわけでございますが、お尋ねのACSAはそういうことと直接関係があることではございませんで、ACSAというものは、かねて申し上げておりますように、日米安保体制の円滑な運用を図っていく上でこういうものがあれば有用なのではないかこういう観点から現在検討を行っているものでございます。
  158. 古堅実吉

    ○古堅委員 大臣に念を押して今のものにかかわってお伺いしたい。  米軍の機能強化というだけのことであれば日米安保の再定義など不要です。自衛隊の役割というものを考えているのではないかというふうに考えて先ほどの質問も申し上げたのです。大臣、伺わせていただきたい。
  159. 河野洋平

    河野国務大臣 先ほど来から申し上げておりますように、端的に結論を申し上げれば、自衛隊云々という議員の御心配、御指摘は当たっておりません。我々はそうしたことを考えておらないことをはっきり申し上げたいと存じます。  日米関係というものは、議員もよく御承知のとおり、民主主義あるいは自由主義、基本的人権の尊重、市場経済、さまざまな分野で価値観を共有することができる、そういう二国関係でございます。APECの話が先ほどから出ておりますけれども、アジア・太平洋地域、多くの国々がございます中でも、こうして長い間、民主主義のもとでさまざまなレベルでの日米関係が構築をされ、はぐくまれてきたわけでございますが、日米安保条約というものは、そうしたものの中にあって、非常に強い一つのきずなになっているということもぜひ御理解をいただきたいというふうに思っているわけでございます。
  160. 古堅実吉

    ○古堅委員 次に、沖縄米軍用地の新たな強制使用手続問題について伺います。  昨日の官報に村山総理による沖縄米軍用地強制使用認定の告示が出されています。その問題を現地の新聞もこのように大きく取り上げて問題にしています。一九八七年の自民党政府が強行した独制使用認定手続のときには社会党も断固反対したものでした。戦後五十年の節目のこの年に、今度は自民党と社会党が一組になった村山内閣が県民の土地を奪うために襲いかかってきたのであります。  私は三月二十七日の沖縄北方特別委員会河野大臣にこの問題について質問いたしました。大臣は覚えていらっしゃると思いますが、「住民の皆様の気持ち、要望というものもでき得る限り踏まえて対応するということが必要であろうと思いますが、でき得べくんば、円満かつ双方にとってよりよい方法で処理されることが望ましいことは当然であろうと思う」と言われました。  大臣は村山内閣責任の重い副総理です。きのう告示の強制使用認定について、大臣は何の心の痛みも感じないのか県民が納得するとでもお考えなのか、しかと御所見を伺いたい。
  161. 時野谷敦

    ○時野谷政府委員 ただいま先生御提起になりました点は、責任ある答弁は防衛施設庁からお聞き取りをいただきたいと思いますが、ただいま御指摘の措置をとりましたのは、日米安保体制のもとにおいて米軍にとって必要不可欠な施設、区域を確保していくためにやむを得ずとった措置だったというふうに私どもは理解をいたしております。  もちろん、先生ただいま言及がございましたように、よりよい措置によってそういうことが確保されればそのことの方が望ましかったということなのだろうというふうに思いますが、日本政府立場としてとらざるを得ない措置であったということだと思っております。
  162. 古堅実吉

    ○古堅委員 大臣の御所見を伺っておるのです。
  163. 河野洋平

    河野国務大臣 ただいま事務当局申し上げましたように、この問題、私、直接かかわり合ってはおりませんが、思いますのに、随分長い間のいきさつがあったことであろうと思います。  私、繰り返しますが、地元の皆さんの思いというものを考えますと、それはなかなかつらい思いをされた方も多くおられるであろうというふうに思います。  しかしながら、事の性格上、こういう結果になったことについてぜひ御理解をいただきたいと思います。
  164. 古堅実吉

    ○古堅委員 手続上は確かに所管は防衛施設庁だと思います。しかし、先ほども申し上げたように、大臣は村山内閣における責任の重い副総理です。そういう意味で内閣の責任ある一員でいらっしゃる、そういう大臣にお伺いを続けているわけです。  沖縄は戦後の五十年にわたり米軍のもろもろの野蛮な仕打ちをなめさせられてまいりました。戦後五十年の節目に当たって、沖縄県民が切実に願い求めていることは、安保の堅持やそれに基づく広大な基地ではありません。核兵器も基地も演習もない、平和な沖縄こそ県民の切実な願いです。政府がまともであれば、世界に誇る平和原則を定めている日本国憲法のもとで、米軍用地確保のためのかかる強制使用認定手続はできないはずであります。決してあってはならない問題です。  私は、抑えがたい憤りを込めて、沖縄県民の名において、政府の今進めている手続に対してこの場をかりて抗議を表明させていただきます。あわせて、同時に、その独制使用手続を直ちに取りやめるよう強く要求もいたします。  直接の所管ではありませんが、村山内閣における副総理としての重要なポストにもいらっしゃる、そういう立場からお答えをいただきたい。
  165. 河野洋平

    河野国務大臣 我々政治に携わる者、国民の皆さんの願いを願いとし、その心を心としなければならないと思います。さらにまた政治にかかわる者、理想を持って、その理想を実現するためにその方向に向かって努力をするというのも当然のことであろうと思います。  したがって、今議員がおっしゃいました地元の皆さんの思い、そしてその願いというものを考えますときに、それが直ちに実現することができればそれにこしたことはない、だれも苦労はしない、だれもつらい思いはしない。先ほど来申し上げておりますように、それは地主の方々にも大変厳しい、つらい、長い年月を送っていただいたということに私は心痛む思いがいたしますけれども、しかし、同じ日本人としてこの仕事に携わっている事務方の思いというものにもまたぜひ御理解をいただきたい。彼らは決して違うことを考えてやっているのではないのでありますので、ぜひひとつ御理解をいただきたいと思うわけでございます。  したがって、長いいきさつを持ち、長い努力の積み重ねの上で行った手続でございますので、議員からのせっかくのお話でございますが、この手続を撤回する、そういうことは今私は総理に進言をするつもりはございません。
  166. 古堅実吉

    ○古堅委員 戦後五十年です。日本国憲法が、第二次世界大戦の痛苦の教訓の中から、中央の政治でも地方の政治でもどうして生かされないか、そこが問われています。その憲法のもとで、アメリカに基地を提供するために強制使用などということは断じてあってはなりません。改めて怒りを込めて抗議を表明して終わります。      ――――◇―――――
  167. 三原朝彦

    三原委員長 次に、平和的目的のための宇宙探査及び利用における協力のための損害賠償責任に係る相互放棄に関する日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定締結について承認を求めるの件及び政府調達に関する協定締結について承認を求めるの件の両件を議題といたします。  これより政府から順次提案理由の説明を聴取いたします。外務大臣河野洋平君。     ――――――――――――― 平和的目的のための宇宙探査及び利用における協力のための損害賠償責任に係る相互放棄に関する日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定締結について承認を求めるの件政府調達に関する協定締結について承認を求めるの件     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  168. 河野洋平

    河野国務大臣 ただいま議題となりました平和的目的のための宇宙探査及び利用における協力のための損害賠償責任に係る相互放棄に関する日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  政府は、アメリカ合衆国政府との間で、平和的目的のための宇宙探査及び利用における協力のための損害賠償責任に係る相互放棄に関する協定締結するため、アメリカ合衆国政府と交渉を行いました結果、平成七年四月二十四日にワシントンにおいて、我が方栗山駐米大使と先方ワース国務次官との間でこの協定に署名を行った次第であります。  この協定は、宇宙分野における日米両国間の協力を促進するため、損害賠償責任に係る相互放棄の枠組みを確立することを目的としたものであり、日米両政府政府機関等の協力の当事者及び関係者は、協定の定める共同活動について、損害賠償責任に係る相互放棄に同意すること等を定めるものであります。  この協定締結により、日米間における宇宙分野での共同活動における損害賠債に係る紛争を回避することを通じて、両国間の宇宙分野における協力が一層円滑に進展し、ひいては日米間の友好協力関係のさらなる発展にも資することが期待されます。  よって、ここにこの協定締結について御承認を求める次第であります。  次に、政府調達に関する協定締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  この協定は、昭和五十四年に作成され、昭和六十二年に改正された現行の政府調達に関する協定にかわるものであり、ウルグアイ・ラウンドと並行して行われた交渉の結果、平成六年四月にマラケシュにおいて作成されたものであります。  この協定は、政府調達に係る法令、手続等について、締約国の産品、サービス及び供給者に対し内国民待遇及び無差別待遇の原則を適用することを目的とするものであり、適用対象となる機関が拡大されていること、サービスの調達も適用範囲に含められていること等の点において、現行の政府調達に関する協定よりも一層充実した内容を有するものであります。  我が国がこの協定締結することは、政府調達の分野における国際的な競争の機会を増大し、貿易の一層の拡大を通じて世界経済の発展に寄与するものとして有意義であると認められます。  よって、ここにこの協定締結について御承認を求める次第であります。  以上二件につき、何とぞ御審議の上、速やかに御承認いただきますようお願いいたします。
  169. 三原朝彦

    三原委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。  次回は、来る五月十二日金曜日午前十時理事会、午前十時十分委員会を閉会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時三十三分散会      ――――◇―――――