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1995-03-16 第132回国会 衆議院 外務委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成七年三月十六日(木曜日)     午後二時十分開議 出席委員   委員長 三原 朝彦君    理事 小杉  隆君 理事 田中 直紀君    理事 福田 康夫君 理事 東  祥三君    理事 松沢 成文君 理事 松田 岩夫君    理事 秋葉 忠利君 理事 前原 誠司君       安倍 晋三君    石原慎太郎君       柿澤 弘治君    斎藤 文昭君       坂本三十次君    櫻内 義雄君       鈴木 宗男君    二階堂 進君       原田昇左右君    赤羽 一嘉君       今津  寛君    上田 清司君       岡田 克也君   柴野たいぞう君       高市 早苗君    羽田  孜君       広野ただし君    若松 謙維君       伊藤  茂君    上原 康助君       松前  仰君    古堅 実吉君  出席国務大臣         外 務 大 臣 河野 洋平君  出席政府委員         外務大臣官房長 池田  維君         外務大臣官房外         務参事官    谷内正太郎君         外務大臣官房領         事移住部長   畠中  篤君         外務省総合外交         政策局長    柳井 俊二君         外務省総合外交         政策局国際社会         協力部長    高野幸二郎君         外務省総合外交         政策局軍備管  林   暘君         理・科学審議官         外務省アジア局         長       川島  裕君         外務省欧亜局長 野村 一成君         外務省経済局長 原口 幸市君         外務省経済協力         局長      平林  博君         外務省条約局長 折田 正樹君  委員外出席者         防衛庁防衛局防         衛政策課長   守屋 武昌君         科学技術庁原子         力局核燃料課長 泉 紳一郎君         科学技術庁原子         力局核燃料課原         子力バックエン         ド推進室長   加藤 重治君         科学技術庁原子         力安全局原子力         安全課原子力安         全調査室長   片山正一郎君         大蔵省主税局国         際租税課長   小手川大助君         国税庁長官官房         総務課国際業務         室長      田口 和夫君         厚生省児童家庭         局企画課長   吉岡 大忠君         資源エネルギー         庁公益事業部原         子力発電安全管         理課長     三代 真彰君         労働大臣官房国         際労働課長   岩田喜美枝君         労働省婦人局婦         人福祉課長   北井久美子君         自治省行政局公         務員部公務員課         長       朝日 信夫君         外務委員会調査         室長      野村 忠清君     ————————————— 委員の異動 三月十六日  辞任         補欠選任   岡田 克也君     広野ただし君   鹿野 道彦君     今津  寛君   山本  拓君     上田 清司君 同日  辞任         補欠選任   今津  寛君     鹿野 道彦君   上田 清司君     山本  拓君   広野ただし君     岡田 克也君     ————————————— 本日の会議に付した案件  所得に対する租税に関する二重課税回避及び  脱税防止のための日本国政府フランス共和  国政府との間の条約締結について承認を求め  るの件(条約第五号)  原子力の安全に関する条約締結について承認  を求めるの件(条約第七号)  家族的責任を有する男女労働者機会及び待遇  の均等に関する条約(第百五十六号)の締結に  ついて承認を求めるの件(条約第八号)      ————◇—————
  2. 三原朝彦

    三原委員長 これより会議を開きます。  所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国政府フランス共和国政府との間の条約締結について承認を求めるの件、原子力の安全に関する条約締結について承認を求めるの件及び家族的責任を有する男女労働者機会及び待遇均等に関する条約(第百五十六号)の締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。  質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小杉隆君。
  3. 小杉隆

    小杉委員 まず、家族的責任を有する男女労働者機会及び待遇均等に関する条約、いわゆるILO百五十六号条約について質問をいたします。  この条約は既に一九八三年に効力を発生しておりますけれども国会に提出するまで、今日まで十二年間を要したわけでありますが、その理由をひとつお聞かせください。
  4. 高野幸二郎

    高野政府委員 我が国は、一般的に、締結した条約につきましてはこれを誠実に実施することにしておりまして、本件百五十六号条約につきましても、かかる方針のもとに、条約の解釈、国内法制との整合性等につき慎重に検討を行ってきたところでございます。その結果、右検討を経ましたので、締結について今回の御承認を求めることとした次第でございます。  その点、具体的に御説明させていただきますと、本条約につきましては、この趣旨に沿いました育児休業法平成三年に制定されて以来、関連の諸制度が徐々に整備されてきております。また、本年中には育児休業給付制度も導入されることになっておりまして、介護休業制度法制化されることになっております。  このように締結すべき体制が整ってきたということで、今回、本条約締結について国会の御承認を求めることにした次第でございます。
  5. 小杉隆

    小杉委員 外務大臣に伺いますが、この条約日本として締約する意義について、どのようにお考えでしょうか。
  6. 河野洋平

    河野国務大臣 この条約は、家族的責任を有する男女労働者が、できる限り職業上の責任家族的責任との間に抵触が生ずることなく職業に従事する権利を行使することができるようにすることなどを国の政策目的とすることなどについて定めたものであります。  今、政府委員から御答弁を申し上げましたとおり、国内の諸準備が整いましたし、我が国が今後男女共同参画社会を目指すという基本的な考え方を持ってもおりますし、この条約を今国会で御承 認をいただくことは我が国にとって時宜に適した好ましい形である、こんなふうに考えているところでございます。
  7. 小杉隆

    小杉委員 このような条約を結ばなきゃならないというのは、世界的に男女労働者家族的責任を有する労働者に対して差別があったということを示していると思うのです。  そこで、諸外国のいわゆる家族を持っている労働者に対する差別実態とか、あるいは先ほど国内法として育児休業法あるいは介護休業法が整備されたということですが、諸外国のそういった実態並びにその法制度の整備、こういったものについて労働省からお答えいただきたいと思います。
  8. 北井久美子

    北井説明員 それでは、諸外国育児休業介護休業制度状況について御説明を申し上げます。  諸外国について見ますと、まず育児休業につきましては、西欧諸国においては一九七〇年代あるいは八〇年代に法律によって育児休業が認められている国が多くなっております。内容につきましては、国によって相違がございますが、子供が一歳ないし三歳に達するまで男女を問わず休業することができるとしている国が多くなっておりますし、また、アメリカを除きまして、その休業期間中の経済的援助についてもなされている国が多くなっていると承知をいたしております。  また、介護関係につきましては、諸外国につきましては、子供の病気の看護のための休暇について年間数日から六十日程度の休業法制化している国が多くなっております。また、子供以外の親族の関係につきましては、重病の近親者に対するみとり休暇的なものが多くなっておると承知をいたしておるところでございます。  我が国につきましては、先ほど外務省の方から御答弁がありましたとおり、平成四年から育児休業法が施行されておりますし、また本年四月からは育児休業中の経済的援助について雇用保険の方から育児休業給付を出すようになっております。また、育児休業期間中の社会保険料本人負担分の免除についてもこの四月からなされるところでございます。また、介護休業制度法制化を盛り込みました改正法案を今国会に出させていただいているところでございます。
  9. 小杉隆

    小杉委員 外務大臣、先ほど、今度の条約男女共同参画型社会の構築を目指すものだ、こういうお話がありました。そこで関連をして、先般開催された社会開発サミット、いわゆるソーシャルサミット及び今度九月に北京で行われる女性会議、これについて伺いたいと思うのです。  先般コペンハーゲン、私どもはこの社会開発サミットを成功させる国会議員の会というのをつくりまして、総理にぜひ参加をすべきだということを進言をして、副総理の御推挙もあって総理は、推挙というか助言があって行かれたと思いますが、私はよかったと思います。  そこで、村山総理がこのソーシャルサミットで、女性役割重要性あるいは途上国女性支援強化ということを訴えまして、アメリカなどから相当高く評価をされました。それから昨年の十月のカイロにおける国連人口開発会議におきましても、リプロダクティブヘルスというようなことが強調されまして、女性権利役割重要性というようなことが強調されました。それと今度九月の北京で行われる国連女性会議、こういうものへの取り組みについて、私は外務大臣所見を伺いたいと思うのです。  私は、冷戦構造のときには、国の力というのはいわば安全保障というか軍事力評価をされていた、しかし冷戦後は、人権とか民主主義とか女性問題とか、あるいは環境とか人口、こういういわゆる社会経済の面にどれだけ取り組みが進んでいるかによってその国力をはかる、こういう時代に今なったと思うのです。そういう点で、まさにこの間村山総理得意科目だ、こういうことを言われましたけれども、こういう一連の国際会議への取り組みというものについての副総理外務大臣所見を伺いたいと思います。
  10. 河野洋平

    河野国務大臣 昨年のカイロ人口会議、そして先般のコペンハーゲンにおきます社会開発サミット、そして今度は九月に北京で開かれます会議と、こうして世界女性の地位の向上に関する幾つかの重要な会議が開かれるわけでございまして、この重要な会議一つ一つ意味のあるものにするということが極めて重要だと思います。そのために、我が国としても、これらの会議に積極的に参加をすると同時に、意見を述べ、そして女性のためにできる限りの支援をするということが大事だというふうに考えております。例えば、我が国は第四回世界女性会議に向けた国連準備活動支援するために、幾つかの信託基金に対する拠出でございますとかその他支援現実に行っておりますし、また日米首脳会議の際にも、日米両国首脳の間にコモンアジェンダについての合意がなされて、WIDと称する開発途上国にある女性支援するということに積極的に日米両国協力し合おう、こういった合意もしているところでございまして、一層こうした問題については我々として支援をする体制強化してまいりたい、こんなふうに思っております。
  11. 小杉隆

    小杉委員 もう一つ関連で伺いたいのは、先般のサミットで、村山総理からアジア防災政策会議の提唱ということが行われました。これについて、具体的に外務大臣としてどのように取り組むお気持ちかお聞かせ願いたいのと、もう一つ、先般環境開発会議で具体的な条約として気候変動枠組条約が決まりましたけれども、これの第二回は来年で、ちょっと間に合わないと思うのですが、第三回の九七年に行われるこの締約国会議日本誘致したらどうか。例えばCO2の排出というのは、日本は非常にエネルギー効率がいいものですから、こういう面では世界をリードしているわけですから、積極的に誘致を図るべきだと思うのですが、この辺の決意を聞かせていただきたいと思います。
  12. 高野幸二郎

    高野政府委員 後の方でお尋ね気候変動枠組条約締約国会議本邦誘致の件について、まず私の方からお答えをさせていただきます。  議員承知のとおり、我が国はこの条約を他の多くの国に先駆けまして、その重要性にかんがみまして受諾いたしました。それ以降もこの条約効果的実施ということにつきまして、日本として積極的に貢献しているところでございます。お尋ねの第二回目以降の締約国会議につきましては、まだ開催日程等を現時点では決定しておりませんが、我が国としてはこの条約重要性十分念頭に置きつつ、誘致の件についても積極的に鋭意検討してまいりたいと考えておるところでございます。
  13. 河野洋平

    河野国務大臣 先般の社会開発サミット出席をされた村山総理は、その席上、過日の阪神・淡路大震災の際に国際社会から多くの支援をいただいたということを踏まえまして、自然災害発生の際の国際的な連携、協力重要性というものを考えて、そうした意味で今お尋ねアジア防災政策会議について提案をしたところでございます。  このアジア防災政策会議につきましては、昨年五月に我が国がホストをした国際防災の十年世界会議において採択をされた「より安全な世界に向けての横浜戦略」というものを踏まえまして、アジア防災政策会議を開いてはどうか、こういう提案でございました。  現在は、アジア地域閣僚レベル出席を得てアジア地域における防災対策強化のための施策につき検討をしたらどうか、こういうアイデアを持っているところでございまして、現在関係省庁とも、その開催地でございますとか開催時期でございますとか、あるいは具体的なテーマでございますとか出席者の数、レベル、そういったものにつきまして検討をいたしておるところでございます。総理から国際会議で御提案になったことでございますし、私ども先般の災害を踏まえて、この問題は極めて重要な問題だという認識をいたしておりまして、ぜひ地域合意が得られれば実現したいものだと思っております。
  14. 小杉隆

    小杉委員 第二に、日仏租税条約について伺いたいと思います。  今度の条約は、経済グローバル化ということが背景にあって、国際的な脱税防止や二重課税回避のためにつくったわけですけれども、従来もそういう租税条約はあったのですが、今度新たな措置としてどういう点が特徴的か、簡単で結構ですから教えていただきたいのと、それから、既に四十一カ国と租税条約を結んでいますけれども、新たな観点に立った改定ということの見通し、それからEUの中ではギリシャポルトガルメキシコ、アイスランドなどがまだ残っていますけれどもどうするおつもりか、まとめてお答えいただきたいと思います。
  15. 小手川大助

    小手川説明員 私の方から第一点の方につきまして答弁させていただきます。  委員指摘のとおり、まさにいわゆる経済国際化が進みます中で、適正な国際課税を執行していくということが先進国の共通の課題になっておりまして、今回の租税条約におきましても、従来から規定しておりました情報交換規定に加えまして、今回新規に徴収の共助規定というものを規定することになっています。  私どもとしましては、今後ともこのような租税条約上の努力を通じまして、適正な租税の執行に頑張ってまいりたいというふうに考えております。
  16. 谷内正太郎

    谷内政府委員 まずこれからの改定交渉見通しいかんでございますけれども我が国締結しております租税条約改定につきましては、相手国との経済関係状況の変化、あるいは各国で行われております税制改正等を総合的に勘案の上、必要に応じてこれを行っていくという考えでございます。  具体的に申しますと、一九六七年に締結された現行のブラジルとの租税条約、これがかなりの年月がたっておりますので、また最近ブラジルにおいて税制改正があったことなどを踏まえまして、現在ブラジルに対して改定のための交渉開始の申し入れを行っておるというところでございます。  それから、新規締結見通してございますけれども、この租税条約目的についてはただいま御説明があったとおりでございまして、具体的には現在締結交渉中の国としてはベトナムがございます。それからまた、メキシコとの間におきましても近く交渉を開始するということを予定しております。  それから、ギリシャポルトガルについて御質問がございました。今後の対応ということでございますけれどもポルトガルにつきましては先方から条約締結につき正式に要請がなされてきております。我が国といたしましては、同国との経済的、人的交流度合い等を総合的に勘案いたしまして、条約締結必要性につき検討しているところでございます。それから、ギリシャにつきましては、条約締結交渉開始につき正式な要請がなされておりませんけれども要請がなされた場合にはポルトガルの場合と同様に、両国間の経済関係等を考慮しつつ検討してまいりたいと存じております。  以上でございます。
  17. 小杉隆

    小杉委員 日本経済グローバル化ということに関連をして、この条約関連して、私は円高問題と、あとそれに関連する幾つかの問題点を聞きたいと思うのです。  ここのところ急激な円高が進行して、また昨日はニューヨークで八十九円台になった、こういうことでありまして、この急激な円高を契機としてさらに規制緩和必要性がクローズアップされてきていると思うのです。この急激な円高の直接のきっかけとなったのは、メキシコのペソの暴落というようなこと、あるいはヨーロッパ諸国におけるフランスとかイタリアその他、そういうところの通貨がマルクに対して非常に不安定になったということが直接の引き金になったのですけれども、その構造的な背景としてはやはり日本貿易黒字というものがあるわけですね。したがって、市場開放とか、そして規制緩和によって少しでも輸入がふえる、少しでも黒字を減らす、こういうことが非常に大切になってきていると思うのです。  ところが、政府が三月十日に規制緩和中間報告を行いましたね。これは緩和する、あるいは措置したというのが七百項目検討中というのが三百六十六項目、困難というのが四百八十項目、こういうことでありまして、もうアメリカとかEUとかヨーロッパ諸国、そういうところとか、アメリカ商工会議所に対して説明会を行ったようですが、その反応がどうであったのか。私が見るところ、総じて厳しかったと思いますし、また今月末までに最終案をまとめるというのですけれども、私はさらに踏み込んだ規制緩和策を盛り込むべきであると思います。もしそれができないと、日本はまだまだ貿易黒字を解消するという意欲に欠ける、そういうことで円高容認という雰囲気がヨーロッパアメリカにまた広がっていく、そうすると円高がずっとこのまま続いてしまう、こういう危険性をはらんでいると思うので、まずその点について伺いたいと思います。
  18. 河野洋平

    河野国務大臣 規制緩和については政府は極めて重要な問題だと認識をして、総理から再三にわたって、各省閣僚に対して規制緩和協力をするようにという指小がございました。三月十日に中間公表というものを行いまして、各省がそれぞれの検討結果を、中間的な公表を行ったわけでございます。  今議員が御指摘のとおり、外務省としては、この問題で大事なことは積極的な規制緩和と同時に透明度を高めるということが非常に重要だというふうに考えまして、中間公表ではありますけれども外務省におきまして、各国あるいは外国経済団体その他に連絡をいたしまして、説明会を行ったところでございます。  私の記憶では、各国から、十数カ国の大使館、それからアメリカEUの、つまり在日商工会議所ですか、も参加をされまして説明会は開かれたわけでございますが、淡々と説明が進みましたが、それぞれ規制緩和について要望していた箇所についてはやはり特別関心があって、何度か質問が出るという状況であったと報告を聞いております。  ただ、当日はそう高いレベル出席ではなかったものですから、この中間公表についての評価は後日評価をしたいということで、いわゆる正式のコメントはなかったというふうに聞いておりますが、その後、マスコミその他の報道で見ますと、やはりまだまだもっと積極的な規制緩和が望ましいというふうに言っているというふうに承知をいたしております。  私どもといたしましても、国際的な要請、そして国際的なレベルというものを考えますと、努力が必要な部分もあるというふうに思っておりまして、政府として、これは三月末までに五カ年計画をまとめる、こういうことになっているわけでございますから、さらに一段と月末に向けて努力をしなければいけないというふうに考えているところでございます。
  19. 小杉隆

    小杉委員 いろいろと、なかなかこれは政治的に難しいのですね。各省はやはり相当守りがかたいわけですよ。そして、その背後には業界団体も控えていますし、我々も、選挙をやる身としては、業界団体とかあるいは一般の方から、こんなに規制を緩和されちゃ困ると言われると、これは非常に弱い立場にあるわけですね。しかし、大局的に長い目で見ますと、やはりここで日本が思い切って規制緩和をして、我々はこれだけ努力をしている、裸になって皆さん方からのいろいろな輸入の促進とかそういうものにこたえたのだという姿勢を示さない限り、日本全体のプラスにはならないだろう。  そこで、私は外務省とか外務大臣重要性ということをここで特に強調しておきたいと思うのです。まさに外務省というのは、そういう国内利益と、それから国際的な要請とのちょうど接点に立っているわけですね。ですから、外務省というのはほかの省庁と同じようなスタンスではなく て、そういう国内利益守りながら、しかし、国際的なバランスをどう保っていくかという非常に重要な位置にあると私は思うのです。  したがって、今現実のその力関係を見てみますと、守る方は、通産省から、郵政省から、農水省から、非常に強烈な力を持った役所、一方、攻める側というのは、それは公正取引委員会とか、あるいは総務庁とか、あるいは今言った諸外国とか、そういうふうに力関係を比べますと、もう守りの方が圧倒的に多くて、しかし、攻める方は非常に力が弱い。こういう際には、やはり私は外務省なり外務大臣というのが調整機能を果たすというのが非常に大事だと思うのですね。  したがって、むしろ外務省攻撃側というか、調整役として非常に重要な役割を持っていると思うのです。その辺を、私は外務省人たちにもぜひそういう自覚を持っていただきたいし、特に外務大臣は副総理でもあるし、内閣のかなめとして、そういう今の現状を考えて、やはり閣内にありまして、弱きを助け、強きをくじくと言うと語弊がありますけれども、やはりその辺のバランス感覚河野大臣は非常に持っておられる方ですから、我々も今、与党、野党を問わず国会として、これはやはりそういう行政側力関係とか、そういう構造の中でその問題がうやむやにされてしまうのではなくて、我々も政治の立場でこれは出動しなければいかぬなと思っているわけですけれども、こういう点でぜひ野党協力してください。  それで、これからの月末に規制緩和五カ年計画というものをまとめる。これからが非常に正念場だと思うのですね。そういう点で、外務大臣あるいは副総理としての役割というのは私は非常に大きいと思うので、ただ単に横並びでほかの省庁と同じスタンスではなくて、例えば特に輸入の障壁になっている部分とかあるいは円高差益が十分に還元されないために日本の国民がコスト高で悩むとか、そういう点、ただ単に手続の簡素化とか、そういう形式的な緩和策じゃなくて、本当に実のある、本当に国際的に要請されている規制緩和はどういうものなのだということを、むしろ総務庁と同じようなレベル外務省が今度の千数百項目全部について、この規制緩和についてはどうだということを詳しく分析をして、場合によってはこれはひとつ政府部内で強調してもらいたいと私は思うわけであります。これは与野党の問題ではありませんで、超党派で頑張らなきゃいけない問題だと思っております。
  20. 河野洋平

    河野国務大臣 まさにこれは政府・与党が一体となってやるということが大事だと思います。私も小杉議員から御激励をいただきましたけれども、副総理立場として、この問題は極めて重要な問題だと認識をして取り組まなければならないと思っております。  それで、この規制緩和の五カ年計画を発表する、取りまとめるわけでございますけれども、一体この規制緩和の五カ年計画というものはどういう意味があるのか、何を目指しているのかどいうようなことについても、やはりきちっとしたスタンスが必要なのではないか。若干、外務大臣としてのコメントになりますけれども、今議員がお話しになりましたように、輸入の促進あるいは内外価格差の是正、こういった点にも着目をして、ぜひこの規制緩和を進めていかなければならないというふうに思っておるところでございます。
  21. 小杉隆

    小杉委員 もう時間がありませんので、あとは私の意見と、そして最後に一言外務大臣の見解を伺いたいのですが、三つ目の条約原子力安全条約、これについて幾つ質問準備しましたけれども、時間も限られていますからこれは省きまして、それに関連をして、今核の問題、特に核不拡散条約、NPTの関連で伺いたいと思うのです。  現在エジプトのムバラク大統領が見えておりますけれども、エジプトは、イスラエルが加盟しなければNPTから脱退すると言及していますが、それは翻したようですけれども、しかし、イスラエルが入るということに対しては非常に固執をしている、こういう問題があります。  それから、今このNPTの無条件、無期限延長ということを我々は主張しているわけですが、一部にはやはり、核を温存する、核保有国がそのまま温存されるというNPT条約の不平等論というのがほかの国にはたくさんあるわけですね。日本は昨年の国連総会で初めて核廃絶を提案をして、その決議が通ったわけでありますから、このNPT条約の無条件、無期限延長そしてこの不平等論との関連性についてどう考えるのか、この辺をはっきりしておいていただきたいと思います。
  22. 河野洋平

    河野国務大臣 我が国は、NPT体制といいますか、こうした世界のNPT体制というものをしっかりと固めていきたい、まず固めていきたい、その体制を固めた上で核兵器の究極的な廃絶を目指したい、私はこう考えているわけでございます。  エジプト政府は、中東のさまざまな力関係といいますか複雑な国際政治の中にあって、NPTに対しては微妙な対応をしてまいりました。まず、無期限ではなくて期限つきでなければいけないという発言もございましたし、さらには、イスラエルという国がNPTに入らない、例外を認めるNPT体制というものは我々は安心できないではないか、したがって、イスラエルがNPTに入るということが何よりも大事なことだというようなことを言って、そういうことができないというなら自分たちもNPTから脱退をして留保せざるを得ない、こういうようなことを言っておられたわけでございます。  私は、この二ケ月の間に二度エジプトの外務大臣と会談をいたしまして、NPTの問題については随分長い時間をかけて話し合いをいたしました。今議員がお話しのように、今回来日されましたムバラク大統領は、このNPTについて、自分たちはNPTがスタートをするときからのメンバーなんだ、自分たちは、NPTというものは悪いものだと思ってないのだ、これは大事なものだと思っているのだ、しかし、その例外を認めるということについては納得がいかぬのだ、こういうことをしきりにおっしゃってもおられました。  しかし、エジプト自身がNPTを今脱退するということを今回は言ってはおられないわけでございまして、私どもとしては引き続き、NPT体制というものが今重要な体制ではないかと、ぜひエジプトにはとどまっていただき、イスラエルがNPTに入るということをみんなで説得をしようではないか、そして願わくは、この体制をまず固めて、そしてその次のステップとして核廃絶に向かうということを考えた方がいいということを私、外務大臣には申し上げてきたところでございます。
  23. 小杉隆

    小杉委員 残念ながら時間が来てしまったので、終わります。
  24. 三原朝彦

    三原委員長 続いて、秋葉忠利君。
  25. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 ILO百五十六号条約国会承認を求めるという段階になって、大変喜ばしいことだと思っておりますが、ILO条約、これはまだ未批准のものがたくさんあるわけですし、それから、人種問題あるいは人権の問題についての我が国のこれからのさまざまなステップの第一段階にあるというふうに考えております。  特に重要なのが人種差別撤廃条約と呼ばれる条約だというふうに考えておりますが、先日参議院の予算委員会で、河野外務大臣はこの批准に前向きの姿勢をお示しになりましたし、村山総理大臣もその意向であるというふうに伺っております。その点についてもう少し具体的なコミットメントをしていただければというふうに考えておりますが、例えば、次の国会に間に合うのか、あるいは間に合わないとしたら大体どんなタイムテーブルでこのことを考えておられるのか、それから、内容としてはいろいろな問題点指摘されていますけれども、その問題点を乗り越えるために留保をするのか、解釈宣言を行うのか、あるいはそれ以外の方法があるのか、そういったことについてもあわせて、一般的な方向それから期限の問題、少し具体的なことをお答えいただければありがたいと思います。
  26. 河野洋平

    河野国務大臣 この問題につきましては村山総理から、私、法務大臣両方に、積極的に取り組んで問題解決に当たれという御指示がございました。現在法務省と協力をして、この問題をクリアするための努力を懸命にいたしております。  もう少し詳細に御答弁をいたしたいと思います。政府委員から答弁させていただきたいと思います。
  27. 高野幸二郎

    高野政府委員 委員承知のとおり、本件条約批准の障害の中で最も大きな問題は、第四条をどうクリアするかというところでございます。この点につきましては、ただいま議員も言及されましたように、留保もしくは解釈宣言、理論的にはいろいろなクリアの仕方があると存じております。  ただ、従来政府答弁で申し上げていますとおり、第四条というのは本条約の根幹をなすものでございますから、これを全面的に留保するということは考えておりませんで、本条約の趣旨、目的等に照らして、かつ我が国の憲法及び国内法との整合性を保つ上でいかなる手だてが最も合理的といいますか適当であるかということを、我々関係者の間で今本格的に鋭意検討しているところでございます。  御承知のとおり、本条約重要性にかんがみまして、政府といたしましては早期批准ということでやってまいりまして、その意識をますます強めているというところでございます。
  28. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 ありがとうございました。  ますます強められているということですから、前回の十三日よりはもっと速度が速まったんだろうということになりますと、来年にかからないで国会に提出されるのではないか、そんな期待感も持っておりますので、そのあたり何とかよろしく御努力をお願いしたいと思います。  ILO条約について、もう一つ長い間懸案になっているものがございます。それは八十七号条約、消防職員の団結権についての問題です。  この問題について改めてここで歴史をたどる必要はないと思いますけれども、消防職員の団結権、このことが問題になったのは約二十年前でございます。当時の総評がILOにこの問題についての提訴を行っておりますけれども、その後世界的に見ますと、八三年ぐらいの段階では日本とそれからガボンとスーダン、この三カ国が消防職員の団結権を認めていない、これは批准した国の中での話ですけれども。その後九一年にはガボン、スーダンともに団結権を認めて、日本は、これは名誉あると言えるんだったらいいのですけれども、こういう問題については、国際的に日本だけが団結権を認めないというのは非常に恥ずかしい話であるというふうに私は思っております。その九一年に日本側代表が、今後二年間を目標に解決策を見出すよう自治省と自治労との間で協議をするということを国際的に約束をしております。その約二年後にこの外務委員会で質問がありましたけれども、しかしながら、現在でも消防職員の団結権問題がどこに行ってしまったのか、非常に心もとない状態でございます。  改めて、例えば自治省と自治労との間の協議がどうなっているのか、政府としては消防職員の団結権について、どういった方向でこの国際的な孤立状態というものを解消しようとしているのか、その点について現状を報告していただきたいと思います。
  29. 朝日信夫

    ○朝日説明員 消防職員の団結権問題につきましては、今御指摘のような経緯のもとに、かねてより、この問題に密接な関連を持っております私ども自治省と自治労との間で協議を続けてきておりまして、特に昨年の四月からは、消防行政を預かっております消防庁も協議に直接参加いたしまして、具体的に現実的に協議を重ねておるところであります。  この問題は、御承知のように長い経緯と、それと多くの異なる意見の関係者を背景に持つ大変難しい問題でありまして、現時点では、残念でございますが、まだ解決策を見出すまでには至ってない状況にございますが、引き続き精力的に協議を重ねまして、できるだけ早く適切な解決策を見出すよう努力してまいりたいと存じます。
  30. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 この問題について最初の国際的な約束が行われた一九九一年六月十日にそういう約束をしているはずですね。二年かけて何とかめどをつけるということを国際的に約束をしているわけですが、その二年後の九三年には、日本政府としては、その国際的な約束を守れなかったということをILOなり国際社会に対して当然釈明をしなくてはならない立場にあったと思いますが、その時点でどのような釈明をなされたのか、とりあえずその点について伺いたいと思います。
  31. 朝日信夫

    ○朝日説明員 お話しのように、平成三年六月のILO総会、この折に日本政府代表の方から、当時の連合会長あるいは自治労委員長の会見をもとにいたしまして、今後二年間を目標に解決策を見出すよう自治省と自治労の間でよく協議していこうということの旨を表明をいたしたわけでありまして、その二年間大変精力的に行ったわけでありますが、その中でまだ結論が得られないということでありましたが、平成五年六月の段階の総会におきましては、引き続き、一つには政府として解決策を見出すことができるよう努力を続けていきたいということと同時に、ILOの関係者を日本国にお招きいたしまして、消防の実情の視察やあるいは関係者からの意見の聴取、意見交換などを実施する用意があることを表明をいたしたわけであります。それに基づきまして、昨年の一月にILOの事務局次長マイヤー氏が来日し、当時さまざまな関係者との会見なり意見交換、あるいは消防の実情視察等を行っていただいたところでございます。
  32. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 時は過ぎてしまったわけですから、九三年の時点に戻して批判することはできませんけれども、もともと二年間という目標を掲げて、それができなかった。それからもう二年たってしまっている。やはりこれは、努力はなされているのだろうと思いますけれども、余りにも時間がかかり過ぎると言われても仕方のないことだと思います。  しかも、国際的な約束というのは、やはりそれなりの意味があると思います。自衛隊を外国に出すことになると国際約束だからといって一生懸命やるけれども、それ以外のことはともかく何かこじつけの理論が出てくればそれで済ませてしまうという態度では、私はこれからの日本の国際的な信用というのはなくなると思います。  外務省もこういった点について当然関心を持たれていると思いますけれども外務省としては、ILO八十七号に関連したこの団結権についてどういう努力をこれからされようとしているのか、一言で結構ですから決意をお聞かせいただきたいと思います。
  33. 高野幸二郎

    高野政府委員 外務省といたしましてはこの八十七号条約の件、大変、議員指摘のとおり、対外関係において重要な問題だと認識しておりまして、国内関係者の間で可及的速やかにコンセンサスが形成されて本件が解決されることを強く願っているというところでございます。
  34. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 さらなる努力をお願いしたいと思います。  次の条約に移りたいと思いますが、これは原子力安全条約、仮称ですけれども、これに関連して、条約そのもので規定をしているのは、締約国が各国の法律的な枠組みの中で原発の安全を確保するような法律をつくる、大ざっぱに言ってしまうとそういう趣旨ですけれども、その次の段階として、この条約に従って法律的な枠組みを整える国々がふえた場合に、各国の間のその安全性を確保する法律の内容、その整合性というのが当然問題になってまいります。法律をつくれば、それがほかの国のある程度客観的な標準から見て十分ではないというような法律が出てくる可能性もあります。そういったところを調整する必要が出てくる、その観点から伺いたいと思うのですけれども、それは何も、例えば新しくそういった法律的な枠組みをつくる国だけではなくて、我が国においてもそういった法律的な不備が発見されるのではないか、いやもうそういう不備があるんだとい う指摘さえ行われてきたわけですけれども、その点について具体的な例を挙げて伺いたいと思います。  条約の精神からいうと、やはり科学的な知見というものはきちんと法律の中に取り込まれていかなくてはいけないわけですけれども、例えば原発の立地条件の中で、活断層からどのくらい離れた場所でなくては原発をつくってはいけない、そういった規定がございます。それで、今回の阪神大震災において、やはり活断層に近いところは非常に危険だという国民的な認識が浸透したと思いますけれども、残念ながら原発の立地というところではまだまだこれを取り入れるまでには時間がかかりそうですが、まず国際的な比較として、アメリカでは活断層からの距離、どのくらいなら安心だというふうに法律的あるいはガイドラインといったような形で決まっているのか。それから、日本においてはどうなのか、ヨーロッパにおいてはどうなのか。わかる範囲で結構ですから、その比較をぜひ願いしたいと思います。
  35. 片山正一郎

    ○片山説明員 御説明を申し上げます。  我が国原子力発電所の立地に際しましては、原子力安全委員会が定めました原子炉の立地審査指針によりまして、大きな事故の誘因となるような事象が過去にない、将来も考えられない、災害を拡大するような事象も少ないこと、こういうことが求められているわけでございます。このために、設置者は、敷地内では設計上考慮すべき活断層を避ける、そういうような原子力発電所のサイト選定を行っているわけでございます。さらに、設計に当たりまして、施設等を耐震設計上の重要度分類いたしまして、特に安全上重要な施設については、過去の地震歴、周辺数十キロ以上でございますが、活動性のある活断層等が考慮されることとなっているわけでございます。  このように、我が国の指針では、周辺の活断層から離隔距離を定めているわけではございませんが、周辺の活断層を十分に踏まえる、そして耐震設計を行うということとなっておるわけでございます。  一方、アメリカにおきましては、御高承のとおりでございますが、原子力発電所に関する立地指針、10CFRパート百でございますが、これによりますれば、表面断層について八キロメートル、五マイルでございますが、以内については、その長さが三百メートル、千フィートでございますが、そういう以上の場合は設計上考慮する必要があるかどうかを詳細に調査をして、その断層による変異が生じた場合、一定の構造物がその機能を保持するという原子力発電所を設計しなければならない、そう規定されているわけでございます。したがいまして、活断層の何キロメートル以内に設置してはならないという規定も、アメリカについても特にないということでございます。  また、イギリス、ドイツ、フランス等の欧州の原子力先進国について、現在手元にある資料で調べた限りでは、活断層の何キロメートル以内に原子力発電所を設置してはならない、そういう規定は見当たらないところでございます。むしろ、各施設を、各地域をゾーンに分けて、それぞれ活断層の考慮ということよりも、地質構造によった耐震設計を行うようにという規定があるというふうに理解をしているところでございます。
  36. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 しかしながら、実質的な問題として、アメリカにおいて八キロ以内に千フィートですか、それを超えるような活断層があった場合にはほとんど原発はつくっていないというのが実情ですね、今そういうふうにおっしゃいましたけれども。このところを確認したい。
  37. 片山正一郎

    ○片山説明員 御説明を申し上げます。  先生御指摘のとおりでございまして、実際に、一定距離、八キロメートルよりも以内にある場合については、データを添付をし、詳細な検討という厳しいチェックが行われるというふうに聞いておるところでございます。
  38. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 私が聞いたのは、チェックをしているかしていないかという前回の説明を繰り返してくださいということをお願いしたわけではありません。実質的にその範囲の中に原発はないでしょうと言っているのです。
  39. 片山正一郎

    ○片山説明員 米国のすべての原子力発電所周辺における活断層の状況について、現在手元に資料はございませんが、チェックが非常に厳重であるというふうには承知してございます。
  40. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 私が知っている限りでは、私の知らない例というのがあるのかもしれませんが、この範囲の中で原発が建設されていることはまずあり得ないというのがアメリカの常識です。ところが、我が国においては、これは八キロ以内ですからかなり広い範囲ですが、我が国の立地条件の場合には、いろいろな場合がありますけれども、原発の敷地から八キロ以内に八本の明瞭な活断層がある。そういうケースが例えば浜岡原発ですし、それから高速増殖炉として建設が行われる、敦賀の方ですけれども「もんじゅ」のすぐそばに活断層がある。何キロという単位ではありません。ちょっと名前は忘れましたが、明瞭に活断層があるというようなケースがございます。確かに、何キロ以内に活断層があるから原発はつくれないという、明示された規則としては存在しないかもしれないけれども、その結果として、実質的にある範囲内に原発が存在しないということは非常に大事な論理的な帰結だというふうに私は思います。そういう点で日本の法規は非常に甘い。  それから、先ほど科学技術委員会でも提起いたしましたけれども、各活断層からどのくらい離れた地点で実際の地震の大きさがどの程度になるかという、安全審査のために使われている式がありますけれども、その式によって計算した地震の大きさを今回の神戸の大震災の場合に当てはめて実際のデータと比較をしてみると、非常に大きな乖離があるといったようなこともございます。  そういった意味で、実は安全条約を結ぶということは第一歩として非常に大切ですし、それから、ややもすると、日本あるいはアメリカのような原発の歴史がある程度長い国ではもう法律の内容について改めて考える必要はないんだ、これはこれから原発の安全ということを考える国にとってこそ有用であるというような議論がなされているわけですけれども、これを機会にやはり我が国においても、原発の安全性について、根本に立ち返って謙虚に見直しを行うべきではないかということを私は痛感しておりますので、ぜひ政府においてもそういった方向で、ともかく国民のためになるわけですから、そして安全性というところでは幾ら慎重になってもなり過ぎることはありませんので、そういった方向での再検討をぜひお願いしたいというふうに思います。  ちょっと時間がありませんので、租税条約について一つ二つ伺いたいと思います。  一点は、租税条約の中で、私も一度この恩恵に浴したことがあるのですけれども外国に大学の研究者、教師等が行った場合に、滞在期間が二年以内であればその国における収入というものが課税されない、そういった規定のある国が非常に多いのですけれども日仏租税条約の場合には、国家公務員の場合にはまた別だと思いますけれども、私立の大学の場合、教師あるいは研究者が外国において研究教育活動を行う際の非課税のステータスというのはどうなっているのか、新しい条約の場合について御説明いただきたいと思います。
  41. 小手川大助

    小手川説明員 今回改定をお願いしてございます日仏条約におきましては、基本的には免税にしてございますが、その条件といたしまして、フランスの本国で課税されるということを条件にしてございます。
  42. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 つまり、今までの措置ですと、例えば日本からアメリカあるいはイスラエルといったようなところに行くと、日本では非居住者だから当然課税されない。行き先のアメリカ、イスラエルといったようなところでも特別の免税措置があって税金を払わなくていい。いわば真空地帯が生じるけれども日仏の場合にはその真空地帯を取り去ったということで、ある意味でそれは公平な、公正な方向に向かったというふうに思えるわ けですけれども、また逆に、我が国の研究者や教師が外国に出て研究活動、教育活動をすることが望ましいから、ともかく税制の面で優遇措置を与えることがいいんだというふうに考えることもできるわけです。  今後の方向として、我が国としては、そういった特別な免税措置のある条約は、今すべてやるということは別問題として、方向としてはどちらかの国で必ず課税されるといったような方向を求める、そういうふうに考えておられるのか。それとも、例外的に幾つかの国についてはこれからも税制上の優遇措置は続けるというふうに考えているのか。そのあたりの方向性を伺いたいと思います。
  43. 小手川大助

    小手川説明員 今委員の方から御指摘がございましたとおり、いわゆる課税の空白というものが生じては公平な課税の原則に反することになりますので、私どもといたしましては、二つの方法があると思います。今回のフランスのように先方の国でちゃんと課税するということを条件に免税の規定を入れていく、あるいは、これは当然先方の国の意向にもよってまいりますが、そもそも教授条項を条約の中には今後は含めていかないという二つの方向で、いずれの場合にしましても、委員指摘のような課税の空白が生じないような方向で頑張ってまいりたいというふうに考えております。
  44. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 もう一点、今度は教育の場で逆の、留学生、教わる立場ですけれども、留学生の場合には、アルバイトをしても一定限度であれば税金を取られないという措置があります。日本の場合には国内措置で、留学生の、あるいは留学生の教育にかかわる費用については百三十万円でしたか、という免税点がありますので、外国から日本に来る人についてはそれで十分措置がされているわけですけれども日本人が外国に行って勉強寸る場合、条約で金額を定めている場合というのが随分多くあるように思います。  例えば、アメリカの場合だと、一年間に千ドルか二千ドルだったと思いますけれども、現在のお金の価値でいうと十万円、二十万円。とてもそれではアルバイトをして免税にしてもらっても意味がない。自然に法律を破って、やみのアルバイトというか、自分の所得をきちんと報告しないような傾向も生まれてくると思いますけれども、物価が上がるたびに、あるいはインフレが高進するたびに条約を改めていくということも大変だと思います。やはりある程度その条約そのものをいじることなしに物価が反映される、あるいはインフレ率が反映されるような方法というのは当然あると思うのですけれども、大蔵としてはそういったところをどういうふうに今後対処しようとしているのか、考え方をお聞かせいただきたい。外務省でも結構ですけれども
  45. 小手川大助

    小手川説明員 学生についての取り扱いにつきましては、今委員の方から御指摘のございましたとおり、従来いろいろな形式でやってきておりますけれども租税条約の中に具体的な規定を入れた場合、具体的な金額基準というのが入っておりますと、まさに時間の経過に伴いましてその金額がどうしても適当でないという状況が生じてきております。そこで、今回の日仏におきましてもこのような金額基準というものは設けないということにしておりますし、それから最近締結した条約におきましては、学生について基本的に、これはOECDのいわゆるモデル条約の規定に準拠いたしまして、この規定を設けないという方向でやってきているところでございます。  今後とも、そのような問題が生じないように、各条約交渉の中でいろいろと考えてまいりたいというふうに考えております。
  46. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 ちょっと、そう言われてしまうと困るので……。今そういう規定を設けないというふうにおっしゃったのは、要するに、留学生に対する非課税措置というものをやめるということではないですね。要するに、それは続けるけれども条約の中に金額を明記することはしない、何らかの方法で留学生がアルバイトをしても税金がかからないということは続けていくけれども条約に金額を書き入れる以外の方法で対処したいということですね。一言ちょっと確認をしておきたいと思います。
  47. 小手川大助

    小手川説明員 まず、一般的な問題としまして、先ほど先生の方からもちょっとお話があったのでございますが、いわゆる国費留学生に対する奨学金については、これは全く非課税になっております。それに加えまして、先ほど先生からございましたような、いわゆる勤労学生のアルバイトに対する給与所得につきましては、これは百三十万円まで現行国内法で免税になっているということでございます。  OECDのモデル条約につきましては、学生について、その生計、教育のために受け取る給付については、その給付が滞在地国の外で生じたものについては、これは租税を課さないというふうになっていますが、一方、滞在地国内での役務提供の所得につきましては、免税とするということはOECDのモデル条約の中では特に規定してございません。したがいまして、私どもとしましては、今後とも、各条約交渉におきまして、先方の意向も十分に勘案した上で、少なくとも、先ほど先生がおっしゃいましたように、具体的な金額を明示するということは規定しない方向でやっていきたいというふうに考えております。
  48. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 OECDのモデル条約がそうなっているということはそれでいいんですけれども、ただ、我が国の方針として外国日本の留学生が行った場合に、例えばその国でアルバイトをする、そういったところはOECDの条約にそういった規定が入っていないからその国において課税されてもしょうがないんだという態度をとってもらってしまっては、留学生にもいろいろな種類の人がいますし、やはりアルバイトをしながら勉強するという形態は外国で勉強する際にかなり有益な方法だというふうに私は思いますので、そこのところは、留学生の現在ある既得権といったらおかしいかもしれないけれども、それをそんなに簡単に奪ってもらっては困るので、ちょっと改めてそこのところを確認しておきたいわけです。  条約に金額は明記しないけれども、ともかくそういった特典を受けられるということは、日本政府として、日本の留学生が外国に行く場合の措置として、条約でもいいですし、あるいは政府間のそれこそ協定でもいいですから、その点はきちんと担保をしていただきたい。その点について、担保をすると一言おっしゃっていただければ、もう時間になりましたので、質問は終わらせていただきます。
  49. 小手川大助

    小手川説明員 本日の委員の御指摘の点を十分踏まえまして、今後ともやってまいりたいというふうに考えております。
  50. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 質問を終わります。
  51. 三原朝彦

    三原委員長 続いて、上田清司君。
  52. 上田清司

    上田(清)委員 同志のお許しをいただきまして、新進党を代表して、上田清司質問させていただきます。  三条約質疑に入る前に、与党の訪朝団派遣について若干の質疑をさせていただきたいと思います。  既に新聞報道でもございますように、韓国などの警戒感、懸念感というのが出ておりますし、KEDOの設立に伴い、日米韓の協調体制を踏まえるならば、ある意味では相当慎重に考えなければならないというふうに思いますので、他党のことではありますが、政府・与党という意味において、大臣におかれましては、この三党共同によります訪朝団の派遣の意義あるいは意味というものをどのようにとらえておられますか、伺いたいと思います。     〔委員長退席、秋葉委員長代理着席〕
  53. 河野洋平

    河野国務大臣 今回計画をされている訪朝団は、与党三党の計画、与党三党で訪朝をするという計画と承っております。申すまでもなく、日本と北朝鮮との間には国交がございません。したがって、政府が直ちに北朝鮮と何をするという状況に今ございません。したがいまして、こうした ときには、我々は、先輩がかつて大変苦労をしながら日本と中国との関係を改善するために努力されたことなどを思い起こしながら、与党の役割というものをそれなりに認識をしているところでございます。しかしながら、与党の中の作業も現在まだ流動的というふうに聞いております。したがって、今ここでこの問題について余りはっきりとしたことを申し上げられる状況ではございません。  ただ、今議員からお話がございましたように、この問題に関して韓国側が懸念を表明しているということの言及がありましたけれども、私どもは、韓国が懸念をしているというふうには承知をしておりません。しかしながら、他方、北朝鮮の核開発問題に絡んで、日米韓三国が中心となって、豪州、ニュージーランド、カナダなども参加してKEDOというものを設立をして、これからまさに北朝鮮との間に軽水炉プロジェクトを進めていかなければならないという場面でございますだけに、我が国は、とりわけアメリカ、韓国などとの間に十分な意思の疎通、そして意思のそごがないように、十分気をつけていかなければならないことは御指摘のとおりだと思います。この点については、私どもはできる限りしっかりとしたスクラムを組んでこの軽水炉プロジェクトには当たってまいりたい、こういうふうに考えているところでございます。
  54. 上田清司

    上田(清)委員 ありがとうございます。  河野外務大臣は、同時に自民党の総裁でもございます。まことに恐縮ですが、まだ訪朝団も流動的で、行くかということを承っておるということでございますが、総裁としてこの訪朝団の御相談にあずかるとか、あるいは相談にあずかった上で指示なりアドバイスなどをなされたかどうか、お伺いしたいと思いますが。
  55. 河野洋平

    河野国務大臣 自民党の総裁職をお預かりをいたしておりますが、私は現在外務大臣として政府の一員でございまして、この問題については、これ以上私が深入りをするということは今この時点ではするべきではないし、これ以上のコメントは控えたいと思っております。
  56. 上田清司

    上田(清)委員 よくわかりました。  それでは、外務省として、この自民党を中心とする与党の訪朝団の訪朝の中身について、事前に何らかの形で情報を収集したり、あるいはどういう中身で訪朝団の成果を上げるべきだという、この中身を、これは大変重要な時局ですので、当然おのずからそういう最小限度の情報交換とかなされているものだというふうに思いますが、どういう視点で外務省として期待されているのか、あるいは期待していないのか、そういう部分をぜひ教えていただきたいというふうに思います。
  57. 川島裕

    ○川島政府委員 大臣からも御答弁ございましたけれども、基本的にはこれは与党の、党の間で進められている話でございまして、しかも依然としていろいろ流動的な部分があるということでございます。ただ、折に触れて党の関係者の方々から事実関係等、今こういうふうに動いておるということは、連絡はいただいております。  それから、仮に訪朝が実現することになって、そして、それが今中断しております日朝間の国交正常化交渉の再開につながるということになりますれば、それはそれで結構なことであろうかと思います。正常化交渉自体、御承知のとおり二年三、四カ月でございますか、中断しているわけでございますが、やはり中断した当時に比べまして朝鮮半島をめぐる国際情勢、随分変わっておりますし、KEDOもいよいよ立ち上がって、ある意味で大変重要な時期に入っているところでございますので、いろいろな意味で対話が日朝間に政府ベースで再開できることになれば、それはそれで結構だと思っております。
  58. 上田清司

    上田(清)委員 もう一つお伺いしたいのですが、情報交換を折に触れてなされているということでございますが、与党の訪朝団が、日朝交渉政府交渉が途絶えているのでそれの再開の糸口として行かれるのか、それとも別個に明々白々の理由があって行かれるのか、その辺については伺っておられるのですか。
  59. 川島裕

    ○川島政府委員 お答え申し上げます。  再開につながる方向で訪朝ができればというお考えはあるようでございますけれども、ただ、何分にもまだ三党の間で打ち合わせをしておられるということのようで、一つに収れんというか、していない状況ではないかというふうに承知しております。
  60. 上田清司

    上田(清)委員 わかりました。  収れんできていないという意味において、その部分についてはとめますが、先ほどから大臣も、政府は直接関与できないというようなことでございますが、一説によりますと、外務省の職員の方が同行されるというようなことも報道筋で出ておりますが、これは、もしそういうことであればどういう資格になるのか、あるいはそれはないのか、あるのか、お伺いしたいと思います。
  61. 川島裕

    ○川島政府委員 仮に訪朝ということになりました場合、これは外交上非常に重要性を持った一つの動きとなりますので、その場合にはアドバイザーと申しますか、外務省サイドとして過去の経緯等々その場でも御説明申し上げる、あるいは外交当局としての考え方をいろいろ現場で申し上げる状況にある方がよろしいかと思いますので、その場合には同行ということを考えたいと思っております。
  62. 上田清司

    上田(清)委員 ありがとうございました。  まだまだ十分煮詰まっていないということで、新たな局面で同僚議員がまたお伺いすることもあるかと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。  そこで、実は先般の欧州委員会で日本とのかかわりについて対日戦略文書という形で安保理の常任理事国入りについての明文化をなされた上で、来月早々にでも閣僚理事会において承認されるような見通しの報道がなされておりますが、日本の安保理における常任理事国入りについて、宮澤内閣以来、細川、羽田内閣と、積極的に意思表明が何らかの形でなされてきて、私が知る限りにおいては、村山内閣に関しては一歩後退、二歩後退というような、そういうイメージでとらえておりますし、また非常に慎重な動きもあったように私は受けとめております。  ただ、一月の月刊誌の「外交フォーラム」に河野外務大臣の常任理事国入りについての文言が明確に文章の中に述べられており、また、EUの期待というものも積極的に生かすこともあるいは日本の国益にとって大事なことではないかなというふうに思いますので、ある意味ではきちっと、対内的には、国内的にはどっちともとれるような話も、それはそれで意味があるのかもしれませんが、外国から見ればどっちともとれるというのが一番よくない話でありまして、一体どっちなの、真剣に考えているの、どうなのという部分を、特に前国連大使の波多野さんなどは、あちこちで御講演されながら日本の常任理事国入りについての熱心な意思表明をなされております。  そういう点をいろいろ踏まえても、これは大臣としてきちっと、このEUの動きも踏まえて明確に常任理事国入りについての決意なり表明なりをなされた方がいいのではないかなというふうな見解を私は持っておりますので、この点について大臣の御所見を伺いたいと思います。
  63. 河野洋平

    河野国務大臣 私は、昨年秋の国連総会におきまして、多くの国の賛同を得て安保理常任理事国としての責任を果たす用意がありますということを明快に、明確に述べております。その後、幾つかの国々がさまざまな場、例えば国連の場、あるいは二国間の場などを通して、我が国に対して常任理事国として国際的な役割を果たすことを期待する旨の御発言もいただいておりまして、国内外においてこの考え方は理解を広めているというふうに感じているところでございます。
  64. 上田清司

    上田(清)委員 そういう部分もお見受けする部分もあるのですが、反面、衆議院本会議での村山総理の発言は、いろいろな国々の論議も踏まえてとか、責任権利についてもしっかり論議してと か、そういうお話をなされ、また外務大臣国連からお帰りになった後の衆議院予算委員会において、重要な一歩だ、立候補宣言かどうかといったらそうとは言えませんというような、ある意味では慎重、ある意味では発言にぶれがあるようなイメージを私たちには与えているような気がいたしますが、その点についてはいかがでございますか。
  65. 河野洋平

    河野国務大臣 もしそういうふうに受け取られているとすれば、私の表現力に問題があるのだと思います。私自身は、国連総会で演説をいたしましたことは、つまり国際社会の代表者の集まる場で述べたことは、そう簡単に出っ張ったり引っ込んだりということをしていいものと私は思っていないのでございまして、村山内閣におきましても、総理大臣の累次にわたる演説で一貫して同じ主張を繰り返しているところでございます。  例えば第百三十一回、すなわち平成六年九月の所信表明演説では、総理は「多くの国々の賛同と国民の一層の理解を得て、安保理常任理事国として責任を果たす用意があることを申し上げたいと考えます。」こう述べておられます。さらに平成七年一月二十日の村山総理の施政方針演説におきましては、「本年は国連にとっても創設五十周年の記念すべき年に当たります。」ということを言われまして、そこでも「安保理改革を初めとする国連改革の議論に積極的に参加をしてまいります。」ということを述べておられます。私は、その同じ日に外交演説をさせていただきまして、その外交演説で、「安保理常任理事国として責任を果たす用意があることを表明いたしました。」これは国連で表明をいたしましたということをはっきりと述べておりまして、村山内閣としてこの考え方にぶれはございません。
  66. 上田清司

    上田(清)委員 大変ありがとうございます。力強い御意見を伺いました。  私は、日本という、ある意味では敗戦国から、驚異と見られるような、絶賛されるような平和国家を実現しながら、なおかつ豊かな国民生活を送れる、そういう国家を実現したこの国が、国連の中で、安保理の中で、常任理事国として明確に意志を持って世界の平和と貢献に果たすことをきっちりとやっていくことそのものが、入ることがある意味では国連改革の主要な改革ではないかなというふうに受けとめておりますので、ぜひ政府としても、あるいは外務省としても、引き続き積極的に安保理の常任理事国入りについての御努力をしていただきたいというふうに御要望申し上げます。  次に、既に同僚議員や先輩議員がいろいろな視点から御議論させていただいていると思いますが、KEDOの設立に向けて、あるいは設立を迎えて、北朝鮮というつい先ごろまでは国際テロ国家という御指名をいただいていたような国とのおつき合いの中で、今後いろいろな意味で大変緊張した局面というものも迎えられるということを予想した上で、国の安全保障について、あるいは外交政策について改めてきちっと押さえておかなければならないなということについて、私は幾つか御質問させてもらいたいと思います。  言うまでもなく北朝鮮の脅威というのは、ノドン一号といういわば中距離のミサイルの開発が成功した、このことが極めて重要なことではないか。既にペリー長官も、昨年日本に来日されたときに、原爆の二発分ぐらいはプルトニウムの抽出を北朝鮮はやっているだろうというような御意見をされて、軍事常識的に見れば、多分原爆の二発ぐらい、あるいは三発ぐらいは保持している可能性が高い。その上に運搬技術も開発した。装着てきるかどうかという技術的なものは問題としても、いずれにしてもそういう脅威ができたという中で、米朝合意がなされたときに、村山総理の訪米のときのコミットメントで、果たし得る意味のある財政的支援をやるとコミットメントされている。それはそれでいいのですが、何らかの形でアメリカに対して、運搬技術の廃絶、運搬技術の廃絶というよりも核の廃絶、もしくはまた化学兵器、細菌兵器もあり得るということを前提に、それの排除に向けてのコミットメントをする必要があったのではないかな。  しかし、どうもなされた様子がないということを前提に考えるならば、今後KEDOの仕組みをつくっていく協議の中で強力にこのことを、条件闘争という言い方は適切かどうかわかりませんが、いろいろな形で財政支援をする、あるいは技術支援をしていく、そういう中身において、きっちりとこの核あるいは細菌、化学兵器の脅威に対して何らかの形で除去をさせる、そういう仕組みというものをつくっていくべきでないかなと思いますが、この点についてどのように防衛庁サイドで考えておられるか。また大臣、お考えがあれば御答弁いただければありがたいと思っております。
  67. 守屋武昌

    ○守屋説明員 先生今御質問のございました、北朝鮮のノドンの関係についてお答えを申し上げます。  北朝鮮は、現在射程一千キロメートルとも言われます弾道ミサイルノドン一号を開発中であると考えております。九三年五月下旬に、北朝鮮は日本海に向けて弾道ミサイルの発射実験を行っておりますが、このミサイルがノドン一号であった可能性がございます。北朝鮮がこのミサイルの開発に成功した場合には、配備位置によっては我が国の過半がその射程内に入る可能性があることから、その開発動向を強く懸念しているところでございます。     〔秋葉委員長代理退席、委員長着席〕
  68. 上田清司

    上田(清)委員 いわゆる脅威であるという認識をしても構わないわけですね。
  69. 守屋武昌

    ○守屋説明員 このミサイルは、まだ現在開発段階にあると見られております。そのため、その搭載重量や弾頭の種類などというものは必ずしも明らかになっておりません。このため、このミサイルがいかなる被害をもたらすのか、日本に対してどのような被害をもたらすかということについて具体的に申し上げるということは、現段階では困難でございます。
  70. 上田清司

    上田(清)委員 防衛庁の基本的な認識の中で、化学兵器や細菌兵器についての把握というのはどのようになっておられますか。
  71. 守屋武昌

    ○守屋説明員 化学兵器とか細菌兵器の把握については、防衛庁としてつまびらかに掌握いたしておりません。
  72. 上田清司

    上田(清)委員 先般松本市でサリンの事件がありましたが、あのぐらいのことはそう難しくない、そういうことは十分考えられます。核弾頭を軽量化したり小型化したりする、そういう技術的な推進力はあるいはまだまだないかもしれないという推測を立てることも可能かもしれませんが、サリン程度のものを装着して飛ばすことは常に可能だというふうに一応念のために考えておくべきではないかなと私は思いますが、いかがでございますか。
  73. 守屋武昌

    ○守屋説明員 お答えいたします。  その場合、弾頭の種類でございますが、どういう弾頭を積めるかということでございます。通常弾頭のほかに、核弾頭や化学弾頭を搭載し得る可能性もあると考えられますのですが、現在北朝鮮が核弾頭や化学弾頭を保有しているかどうかについては不明でございます。
  74. 上田清司

    上田(清)委員 保有していないということを前提に日本安全保障考えられるよりは、基本的にあり得るということを、○・一%でもあり得るということを前提にぜひ考えていただきたいな、むしろもう少し深い調査なり情報収集なりしていただきたいなということだけ私は御要望申し上げたいと思います。  それで、なぜこのようなことを申し上げますかというと、KEDOの設立の仕組みの決定に向けて、今韓国型の炉の導入について北朝鮮の反発等もございます、先行き何一つ明確になったものがございません。これからいろいろな意味での協議が始まっていくわけでございますから、まさにこの協議の場を生かして日本の国益、安全保障というものをそこにきっちり埋め込んでいく作業というのが極めて大事であるというふうに私は考えま すので、ノドン一号という中距離弾道ミサイル、いわゆる危険物を運搬する能力を持った国がすぐそばにあるという、しかもその国は、明確に証拠があるわけじゃないのかもしれませんが、しかし世界的にはラングーン事件についても大韓航空機事件についても北朝鮮のしわざだというふうに認定されていて、なおかつアメリカにおいては国際テロ国家という認定もしたぐらいの国でございますので、これはやはりいろいろな意味で注意深く現状についての認識並びに情報収集をきっちりして、どちらかといえば危ないということを前提に考えていくことが日本安全保障にとって必要ではないかなということをさらに申し上げたいと思います。  それで、同じくまた防衛庁の政府委員の方に質問をいたしますが、米朝合意においてIAEAの核査察が五年後になる、五年間凍結という形をとったわけでございます。この五年間についての見方、非常に残念だなという考え方もありますが、反面、極端なことを言えば、北朝鮮があらゆる可能性の中で別個に核弾頭の軽量化なりあるいは小型化なりに五年の間に成功して、突然核武装宣言というようなことも、これは小説の世界でも何でもない、そういうことがあり得るということを前提に、その五年の間に我々の方でそれの準備をするという、そういう時間だというふうに考えればまた評価できる部分もあるというふうに私は思うわけです。この五年の間にあるいは防衛庁の方で最悪のシナリオ、朝鮮半島有事のシナリオをある意味では描いておられるのかどうか。もし描いておられるとすれば、どういう形でスケジュールができているのか。例えば一〇〇%のシナリオをつくる中で、今は五〇%ぐらい進んでいますよとか、実はまだ三〇%ですとか、そういうお話ができるのかできないのか。また、ゼロだとすればこれは大変困る。少なくとも米朝合意の前までは場合によっては軍事的制裁というところまでいくかもしれないという部分もあったので、ぜひその辺についての明確な御答弁をお願いしたいと思います。
  75. 守屋武昌

    ○守屋説明員 ただいまの御質問にお答えいたしますけれども、昨年十月二十一日の核兵器開発問題に関する米朝合意によりまして話し合いによる解決を図る道筋が築かれておりまして、現在その着実な実施に向けての努力が続けられているところであると理解しております。こういう状況がありますので、御質問のような点につきまして政府として公の場で議論するということはこのような動向に好ましくない影響を及ぼすと考えております。  ただ、防衛庁としてあえて一般論を申し上げれば、防衛庁は我が国の平和と安全を守るという任務遂行のために存在する役所でございますから、必要な研究は当然のことながら常に行っております。事柄の性質上、この研究の内容については公表できないことを御理解いただきたいと思います。
  76. 上田清司

    上田(清)委員 ありがとうございました。意にかなう御答弁があったような気がいたします。  本当に、日米安保条約の六条の事態想定、あるいは、今後日本安全保障理事国として国連の場でいろいろな形で舞台が広がっていく可能性もありますし、北朝鮮を中心とする朝鮮半島の有事の際の日本取り組みということについて、極めて重要な役割もあるかと思いますので、ぜひ研究を深めていただきたいというふうに思います。  それで、KEDOについて一点だけ御質問をさせていただきたいと思います。  一つは、これは科技庁になるのかどうかわかりませんが、軽水炉の供与について財政支援をしていくわけでございますが、協議の中身が今から決まっていくということでありますけれども考え方によれば、原子炉の周辺の整備の部分がたくさんありますので、ちょっとうっかりすると無限に財政支援が行われる可能性が十分高い、こんなふうに私は推察しておりますので、この点について、多分遠藤大使が中心になって協議の場に行かれると思いますが、特に村山総理意味のある財政的役割を果たすというコミットメントが十分生かされるように御要望をまず申し上げておきたいと思います。  それでは、三条約について幾つかの御質疑をさせていただきます。  まず、原子力安全条約でございますが、これは言うまでもなく、背景として旧ソ連諸国の、ロシア、東欧諸国の原子力発電所の安全性について諸外国が懸念をしているという、日本ももちろん当然ですが、世界中が非常に心配しているという、そういう背景の中でこの条約締結され、あるいはまた作成される過程にあったというふうに承っておりますが、このことに積極的に外務省として、政府として取り組んでいただきましたことに、厚く感謝を申し上げたいと思います。  そこで、我が国原子力発電のいわば安全性のレベル、先ほど秋葉議員も御質疑をされておられましたが、基本的には高い安全性を保持しているということが私たちの認識としてございます。そういう中で、国際的なレベルで見ればどの程度、例えば日本は年間にこのくらいの事故があるけれどもアメリカではこうですよ、フランスではこうですよ、そういう意味においてすごくいいのですとか、そういう御見解があればちょっと教えていただきたいと思います。
  77. 三代真彰

    ○三代説明員 原子力の開発利用を推進するためには、徹底した安全性の確保が大事であるということは大前提でございます。このため、原子炉等規制法及び電気事業法に基づき、原子力発電所の設計、建設、運転の各段階において厳重な安全規制を実施するとともに、各サイトに運転管理専門官を派遣するなど、電気事業者に対する厳しい指導監督を従来行ってきているところでございます。これら及び関係者の努力の結果として、我が国原子力発電所は世界的にもすぐれた運転実績を達成しております。  具体的には計画外停止頻度、これは一基の炉当たり一年間に計画停止以外に停止した回数でございますが、これが平成四年の我が国では○・三回であるのに対しまして、アメリカフランス、ドイツ、ロシア等、主要国では○・九回から三・六回でございます。これらは諸外国に比べて極めて低い水準にあると言えます。  通産省といたしましては、今後とも原子力発電所の安全確保に万全を期してまいる所存でございます。
  78. 上田清司

    上田(清)委員 計画以外の停止ということで、それを一つの事例とありましたけれども、ほかに事例はありませんか。
  79. 三代真彰

    ○三代説明員 我が国国内におきましては、いわゆるトラブル件数というのがございます。これは、法律に基づいて報告されるものでございますけれども、これらを国際的に比較するというのは、各国の法律が違いますので非常に難しゅうございます。
  80. 上田清司

    上田(清)委員 わかりました。それはまた個別に、機会のあるときに伺いたいと思います。  そこで、本条約に、前文で「原子力の安全に関する責任原子力施設について管轄権を有する国が負うことを再確認しこと規定してあります。そこで先ほどのKEDOの問題でございますが、米朝合意では「米国は総計二百万キロワットの発電能力を持つ軽水炉計画を北朝鮮に供与するための調整を行う義務を負う。」とあります。二〇〇三年に完成を目標とする北朝鮮の原発の試運転に至るまでの管轄権、これはどのようにとらえればいいのか。これは北なのか韓国なのかあるいはKEDOなのか。これも協議中だという話になるかもしれませんが、一応念のためにお伺いしたいと思います。これは昨日の質問取りで、用意はしていたのですが、ちょっと言わなかったかもしれません。
  81. 川島裕

    ○川島政府委員 でき上がるまではKEDOが全部仕切るということでございますので、管轄権という意味からしまするとKEDOが一義的な責任だろうと思います。実は、でき上がった時点で引き渡すときに、北朝鮮がそれまで凍結しているところの黒鉛原子炉とか再処理施設とか全部破壊す るという最後の詰めの大変重要な部分が生ずるわけでございます。それ以降についてはまだ全部詰め切ってない部分もあるという印象でございますけれども、いずれにいたしましても、これから供給取り決めという契約みたいなもの、文書を詰める段階である程度明らかにしていくのだろうということでございます。
  82. 上田清司

    上田(清)委員 原子力安全条約の絡みでいえば、管轄権がどこだということに関して極めて重要な問題になりますので、ぜひ協議の中で明確にしていかれればいいのではないかなというふうに思っております。  それで、関連でございますが、北朝鮮は本条約の署名国になっておりません。また、原子力事故の早期通報条約及び原子力事故の援助条約にも署名はしているのですが加盟はしていないという状況がございますので、先ほどから私が申し上げておりますように、KEDOの仕組みをつくっていく協議の中でぜひこれも、ある意味では財政的支援のバーターというわけではないですが、一つの保証として、北朝鮮にこの原子力安全条約の署名、そしてまた早期通報条約及び原子力事故援助条約等に署名、加入していくようにぜひ勧めていただきたいということを御要望申し上げて、この原子力安全条約について外務省の皆様方の御努力に敬意を表しながら、北朝鮮との絡みに関しては十分意を向けていただいて、日本安全保障とそしてまた原子力の安全のために頑張っていただきたいと思います。  それでは次に、いわゆるILO百五十六号条約でございます。申し上げると長くなるので時間がもったいないかなとも思いながら、家族的責任を有する男女労働者機会及び待遇均等に関する条約について、若干の御質問をさせていただきます。  本条約は、言うまでもなく、この趣旨に沿って既に育児休業法平成三年から制定されて以来関連の諸制度が整備中であり、本年中に育児休業給付制度も導入され、介護制度法制化検討されているというこの時期に、こうした条約締結されることは大変意義のあることだということをあらかじめ評価させていただきたいと思います。  そこで、最近における大きな問題の中の一つに、いわゆる子供を産まない少子社会になってきている、しかも急激な形でなってきて、将来の社会保障制度の根本の部分についてゆがみが出てくるのではないかとか、こういう懸念が出ております。この百五十六号条約締結を境に、もっと、いわば産めないではなくて積極的に産めるような社会体制があるという環境整備、そういう意味において極めてこの条約意味が出てくるのではないかなというふうに思いますので、こうした仕事をする上での責任家族内における責任、そういう両方を両立させるための支援策について、もちろん十分検討し進めておられると思いますが、改めて担当の省庁に、どういう対策の中でこの条約を受けとめ、今後さらにどういう決意で対策を進めていかれるつもりかについてお伺いしたいと思います。
  83. 吉岡大忠

    ○吉岡説明員 少子化対策についてのお尋ねでございますので、お答えを申し上げます。  御指摘のとおり、我が国におきましては急速な少子化の進行がありまして、これに対応すべく、子供を産みたい人が安心して子供を産み育てることができる子育て支援社会を構築することが極めて重要な課題となっておるわけでございます。このため、社会全体による子育て支援のための機運の醸成を図る、また行政面においても、雇用や保育サービスあるいは母子保健、住宅、教育といった多岐にわたる子育て支援のための施策を総合的に展開をしていこうということで、これらの施策を所管します文部省、厚生省、労働省、建設省の四省におきまして、昨年の暮れに「今後の子育て支援のための施策の基本的方向について」という施策文書を策定をいたしたところでございます。この方針に従いまして、今後四省で少子化対策に積極的に取り組んでいくということにいたしておるわけでございます。  厚生省におきましても、特に女性の社会進出に対応しまして、子育てと仕事の両立の支援をしていくことが重要であるという見地から、五カ年間の目標を定めました緊急保育対策等五カ年事業を策定をいたしまして、その積極的な実施を図っていくということにいたしておるところでございます。
  84. 上田清司

    上田(清)委員 ありがとうございます。  本条約国内法に制約を受けさせるものでありませんが、その施策を展開する中でぜひ本条約の国際的な意味というものを高らかに掲げながら、時と場合によってはこれを理由にぜひいろいろな意味での施策展開の強力な主張に利用されればいいのではないかなということを、大変老婆心ながら申し上げたいと思います。  同じく関連いたしますが、両立支援策ということは、ある意味では日本の雇用政策について大変大事な局面を持っているかと思います。とりわけ女性の社会的進出、あるいは女性の社会的活動の十分な分野を確保するという意味において、本条約の意義というものが大変意味のあるものになってくると思いますので、労働省政府委員の方に伺いたいと思いますが、労働省においても、この条約を受けでどのような形できちっとした支援対策、両立支援対策をなされていくか伺いたいと思います。
  85. 岩田喜美枝

    ○岩田説明員 先生おっしゃいましたように、少子化それから高齢化が大変なスピードで進んでございますけれども子供や年寄りを抱えながら職業生活と家庭生活を両立するための対策を、この条約の批准ということを一つの契機にいたしまして、またさらに拡充してまいりたいというふうに思っております。
  86. 上田清司

    上田(清)委員 ありがとうございました。  男女のいわゆる家族的責任、そして職業上の責任の両立が可能になるような仕組みというものを、政府におかれましても法整備について十分今後も期待するところでありますので、よろしくお願いしたいと思います。  それでは最後に、日仏租税条約についてお伺いをさせていただきます。私は、ちょっと一項だけ、十条二項についてだけ御質問をさせてもらいたいと思います。  いわゆる十条二項の親子会社間の配当についての源泉地国の限度税率を現行条約の一〇%から五%、そして特定の場合には非課税という形で引き下げが行われております。従来よりも引き下げが行われた理由について、あるいは背景について、お伺いしたいと思います。
  87. 小手川大助

    小手川説明員 それぞれの国におきましてはいわゆる配当の限度税率というものを規定してございますが、この場合、一般の配当に比べまして、親子間のものについては一般の配当よりも低い税率を定めております。  この基本的な理由は、日本の会社が海外に進出する場合に、支店の形態で進出するのと子会社の形態で進出するのと、その場合に実質的な税負担の差がないということを図るために、源泉地国におきます限度税率は一般の配当よりも低くしているということでございます。最近では、この考え方に基づきまして、この税率をOECDのモデル条約と同様に五%ということでやってきております。  今回、一定の対象に限定をしまして、五%をさらにゼロ%というふうにしてございます。これはもちろん、日仏両国経済交流の一層の進展を図っていくという観点、それから最近、先進国間の条約例におきましてこれをゼロ%にするという例がだんだん出てきているということ等を勘案いたしまして、バランスをさらに徹底するという観点から引き下げたものでございます。
  88. 上田清司

    上田(清)委員 ありがとうございます。  それでは、時間になりましたので、最後に、必ずしも租税条約とは関係ありませんが、フランスの大統領選挙が近くございます。この選挙の結果について、今からどの候補が云々ということで、とかく言えない部分があるかもしれませんが、い ずれにしても、ミッテラン大統領、二期十四年、ドイツのコール首相と並んでEU統合の牽引車であったことだけは事実だというふうに思いますので、今後EUとの絡みの中でどのような形で全体の動きを考えていかなきゃならないか、一般論でも結構でございます。  それから、日仏間に関して、三人の候補でそれぞれ、この方が出てくればああなるとか、そういうことについて、特に大臣の方、御所見があれば、一般論でも結構ですから、伺って終わりにしたいと思います。
  89. 野村一成

    野村(一)政府委員 今御質問フランスの大統領選挙でございます。  御案内のとおり、バラデュール現首相、それからシラク・パリ市長、それから社会党のジョスパン元国民教育大臣の三人が有力候補者と言われております。欧州統合のプロセスというのがヨーロッパにおいて一番大事でございますけれども、バラデュール候補それからジョスパン候補、いずれにつきましても、選挙綱領の中で欧州の政治経済面での統合の一層の推進ということを掲げております。シラク市長につきましては、たしか今日だと思いますけれども、発表するというふうに言っておりますけれども、基本的には欧州統合プロセスには賛成ということだろうと思います。  日本との関係につきましても、バラデュール候補、これは現在の首相でもございますし、シラク候補も二期にわたってかつて首相を務めたということもございます。また、たしかもう四十回以上も日本を訪ねたことがあるというふうにも承知しております。ジョスパン候補につきましても、日本との関係を積極的に進めましたロカール内閣の大臣を務めた経歴がございまして、基本的にはフランスの対日政策に大きな変更はない、いずれの候補が勝利する場合にもそうであろうというふうに見ております。
  90. 上田清司

    上田(清)委員 どうもありがとうございます。時間が参りましたので質疑を終わらせていただきますが、EUの絡みも、日米問題等を考えるときに、いろいろな意味で牽制の材料として、イギリスやフランス日本との連携が、時と場合によってはアメリカの独断専行に対して抑えになるときもあるかと思いますので、そうした意味において、ぜひ良好な関係を維持していただきたいなということを申し述べまして、質疑を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  91. 三原朝彦

    三原委員長 続いて、高市早苗君。
  92. 高市早苗

    ○高市委員 新進党の高市早苗でございます。よろしくお願いいたします。  まず冒頭に、本日の朝刊に掲載されました記事に関しまして、大臣にコメントをお願いしたいのです。  現在、軽水炉転換支援の枠組みづくりなんかも進んでおりますし、また北朝鮮から訪朝団招請状が届くなど、我が国と北朝鮮のかかわりは深くなってきておりますけれども、三月十二日の朝鮮中央通信によると、国連特別委員会で北朝鮮の代表が演説をして、「「敵国条項」を削除し日本の罪をぬぐうなら、侵略と犯罪を美化する日本の行為を正当化し、国連憲章を踏みにじることになる」と反対したということになっているのですけれども、北朝鮮によるこの指摘を正しいと思われますでしょうか。
  93. 河野洋平

    河野国務大臣 議員の御指摘の前段、いろいろあって日本と北朝鮮との関係が深くなっているというふうにおっしゃいましたが、いろいろ言われておりますけれども、まだ全く作業は実施されていないわけでございまして、現在は深くなっているわけではございません。  それから、敵国条項についていろいろ国連で御議論がございますが、我が国といたしましては、国連に加盟をした段階で、この敵国条項が我が国に対するものということを考える必要はそう多くないというふうに実は思っているわけでございます。我が国国連に加盟をしたという段階で、我が国国連加盟国としてすべての権利義務を持っているわけでございます。しかしながら、我が国としては一貫して、国連が敵国条項という条項を持っていることについてはもう意味がないではないかということを言い続けてきているわけで、この我が国の主張についてはおおむねの合意ができているというふうに考えまして、我が国の主張は国連加盟国の大多数の理解と賛同が得られていると思います。しかし、世界には多くの国もございますから、さまざまな御主張、御意見があるということもまた事実であろうと思います。  しかし、今の議員の御指摘が、北朝鮮の演説を正しいと思うかどうか、こういう御質問だというふうに伺いましたけれども、私は、北朝鮮のそうした指摘は、我が国の現在の姿勢からいって当たらないと思います。
  94. 高市早苗

    ○高市委員 私自身は、敵国条項というのが国連に加盟した段階で我が国と余り関係がなくなっているというふうには思っていなかったわけです。非常に屈辱的な条項だと考えておったわけです。  今大臣、北朝鮮の指摘が正しいとは言えないといった方向のコメントをしてくださいましたけれども、この言葉ですね、「侵略と犯罪を美化する日本」とまで言われているわけなんですけれども、北朝鮮に対して政府から何らかの意見をされましたでしょうか、もしくはされる予定がおありでしょうか。
  95. 河野洋平

    河野国務大臣 我が国は侵略を美化していることはございません。しかし、国連の場でさまざまな意見が述べられることに対して、その一つ一つをとって我が国がその議論の場で反論をする場面がいただければ反論をすることは可能だと思いますが、それ以外の方法を今考えておりません。
  96. 高市早苗

    ○高市委員 先ほど、まだ北朝鮮とのかかわりは深くないとおっしゃいましたけれども、確実に深くならざるを得ない方向に進んでいるんじゃないかと私は感じます。事実、この委員会でもKEDOの問題が取り上げられておるわけでございますのできたら考え方を改めていただく努力をすべきだと思います。私たちの血税が幾らかでも使われる、北朝鮮にかかわる部分で使われるわけでございますし。  このような北朝鮮の考え方というのが今後の日朝関係に何らかの影響を与えるとお考えでしょうか、また、考え方を改めてもらう努力をされる予定はおありでしょうか。
  97. 川島裕

    ○川島政府委員 お答え申し上げます。  日朝はいまだ国交が正常化されていないという状況にあることは御承知のとおりでございまして、中断される前の国交正常化交渉におきましても、そういういろいろな過去に関する認識等についてはやりとりがあったわけでございますし、これから仮に国交正常化交渉が再開された場合には、北朝鮮にしてみれば北朝鮮のいろいろな過去に関する受けとめ方というのは当然あるわけでございまして、その辺のやりとりというものも正常化交渉一つのやりとりの部分になろうかと思います。  それで、いずれにいたしましても、まずは対話、正常化交渉という形で対話を重ねていくことが、それ自体いろいろ意味があろうかと考えている次第でございます。
  98. 高市早苗

    ○高市委員 今の問題についてはこれで結構でございますけれども、次に、日仏租税条約関連いたしまして、移転価格税制の運用についてお尋ねをしたいと思います。  昨年の十二月三十一日の日本経済新聞によりますと、移転価格税制に基づいてアメリカのIRSの追徴課税を受けながら、その後日米相互協議が決裂して日本からも還付が受けられずに、結局二重課税になってしまった日本企業が数社あるということがわかったそうなんですけれども、事実であれば、これらの企業にしてみましたら、必要以上に税金を払わされたことになって、納得のいかない思いだと思います。  守秘義務の問題もあって答えられない点は結構でございますので、答えられる範囲でこの事実関係を御説明いただきたいんですけれども、まず、二重課税になってしまった企業の事例は存在いたしますでしょうか。
  99. 田口和夫

    ○田口説明員 お答えいたします。  お尋ねの、相互協議において合意に至らず、その結果として経済約二重課税となってしまったという企業の数でございますけれども、これにつきまして、相手国との関係もございまして具体的な数字を私どもから申し上げることは差し控えさせていただきたいと思いますが、御指摘の新聞記事にございました四社あるいは五社という数字につきましては、あえて否定するものではございません。
  100. 高市早苗

    ○高市委員 企業の具体名をおっしゃっていただくというのは難しいと思いますけれども、数もだめなんでしょうかね。二重に払わされた税金のあらかたの金額を教えていただきたいと思います。
  101. 田口和夫

    ○田口説明員 今ほどお答えしましたように、企業の数が四社、五社という非常に少ない数でございますので、金額という点につきましては、個別の課税事案にかかわる点もございますので、答弁は差し控えさせていただきたいと思います。
  102. 高市早苗

    ○高市委員 では、必要以上に税金を払わされた企業に対して、何らかの救済措置というものは考えておられますでしょうか。
  103. 田口和夫

    ○田口説明員 相互協議手続について一般的に申し上げますと、例えば、米国当局が我が国の企業の米国における関連社、すなわち子会社等について課税を行った場合には、そのままでは経済約二重課税が残りますから、その当該企業は二重課税を排除するために租税条約に基づき日米税務当局間の相互協議の申し立てができることになっております。その相互協議におきましては、租税条約の規定上、日米両当局間で合意を目指して努力をするということとされております。  したがって、我々、両当局の間で合意のための最大限の努力をするわけでございますが、個々の事案によりましては、事実認定等の点で二国間の見解がどうしても一致しないという実態がございます。その場合には、相互協議は合意に至らず、結果として二重課税が排除されずに残るということになるわけでございますが、この租税条約上の相互協議は、国内法上の救済措置、通常の救済手段とは別途に、それに加えて認められておるものでございまして、相互協議で合意に至らなかった場合でありましても、企業は国内法上の訴訟などの救済手段に訴えることができるということでございます。  いずれにしましても、私どもとしましては、相互協議に際しましては、極力二重課税が排除されるよう合意に向けて最大限の努力をしておるところでございます。
  104. 高市早苗

    ○高市委員 ちょっと今わかりにくかったんですが、結局救済はされるということですか。
  105. 田口和夫

    ○田口説明員 私申し上げましたのは、制度として、租税条約の相互協議の手続以外に国内法上のさまざまな救済手段がございます。さまざまと申しますのは、いわゆる行政上の審査請求とかあるいは裁判、通常の裁判でございますね、こういった救済手段がございます。したがって、納税者はこちらの方を選択することができるということを申し上げました。
  106. 高市早苗

    ○高市委員 それでは、ILOの第百五十六号に関連しまして、パートタイムの労働者についてお伺いしたいと思います。  昨年のILO総会におきましてパート労働者保護条約が採択されましたとき、我が国政府条約、勧告ともに棄権をし、労働者側は条約、勧告ともに賛成をし、使用者側は条約は反対、勧告は棄権、そういった違う態度がとられたようなんですけれども我が国政府、使用者、労働者の三者でこの条約、勧告に対する対応がそれぞれ違う、この違う対応をした理由がどこにあるのか、お伺いしたいと思います。
  107. 岩田喜美枝

    ○岩田説明員 パートタイム労働条約、勧告の採択に当たりまして、政府、労働組合、使用者団体がとりました態度についてのお尋ねでございますが、労使のとりました態度についての背景を私の方から御説明する立場にはございませんが、政府につきましては、先生がおっしゃいますように、棄権をいたしました。  それは、条約の採択に当たって、その条約が国際条約として、したがいまして開発途上国の現状なども念頭に入れまして、国際的な最低基準としての条約として適正かどうか、十分に弾力性があるものかどうか、それからさらには、将来的に我が国が批准をするということを考えた場合に、それが可能かどうかといったようなあたりを総合的に勘案いたしまして、関係省庁と協議の上態度を決定したということでございます。
  108. 高市早苗

    ○高市委員 この例でもわかりますように、我が国国内におきまして、政府、使用者、労働者側、かなりパートタイム労働者の保護ということに関して大きな意見の食い違いが見られるように思うのですが、今後どのような調整がされていくか、政府としてどのような調整を考えてパートタイム労働者の保護ということを考えておられるか、その辺をお伺いしたいと思います。
  109. 岩田喜美枝

    ○岩田説明員 パートタイム労働対策につきましては、一昨年だったかと思いますが、いわゆるパートタイム労働法を施行いたしまして、現時点ではその浸透を図っているというところでございます。もちろん、状況の変化等見ながらさらにまた有効な対策を常に検討していくというのが原則でございますが、当面は、最近導入されたばかりのパートタイム労働法の周知徹底、定着を図るということが最大の課題かというふうに思われます。  また、ILOパートタイム条約の批准の問題との関連でございますけれども、これはパートタイム労働条約に限りませず、すべてのILO条約の批准に当たりましては、条約要請の内容が国内法制等におきまして十分に担保されているかどうかということを慎重に検討いたしまして、国内法制条約要請水準に到達をしている、あるいはそれを超えているということが明らかになった段階で批准の検討をするということになろうかというふうに考えられるところでございます。したがいまして、具体的な条約批准の検討をする予定は、今のところはございません。
  110. 高市早苗

    ○高市委員 ちょっと話題を変えまして、また大臣にお願いしたいのですけれども外務省設置法によりますと、外務省日本国政府を代表するものであり、大使館の長というのは特命全権大使であるとなっております。また、ウィーン外交関係条約第三条によりますと、使節団の任務は接受国において派遣国を代表するものとされております。つまり、大使の地位にある人は、接受国において日本国を代表するものと考えてよろしいでしょうか。
  111. 池田維

    ○池田政府委員 仰せのとおりでございます。
  112. 高市早苗

    ○高市委員 できたら次から大臣にお願いしたいのですけれども、三月七日にワシントンDCで粟山駐米大使が記者会見して、国会の謝罪決議に関連して話された記事を新聞で読んだのです。粟山大使は、「「日本がきちんと第二次世界大戦にいたった歴史を見据え、その反省のうえに立って戦後の日本があることを忘れてはならない。若い世代もこれを知っておかねばならない」と強調し、何らかの形で「反省」を明確に打ち出す必要があるとの考えを明らかにした。」と記事に書かれてあるのですけれども日本国政府としての考え方は粟山大使のおっしゃった方向だと考えてよろしいでしょうか。
  113. 河野洋平

    河野国務大臣 大使の記者会見を私、詳細承知しておりませんので、今それについてコメントをするだけのものを持っておりません。しかし、大使が記者会見で述べる問題につきましても、すべて国を代表して述べているというふうには私ども思ってはおりません。
  114. 高市早苗

    ○高市委員 しかし、先ほど確認させていただきましたとおり、大使というのは国を代表する存在で、それも何かプライベートな会合でお友達に言ったというのじゃなくて、わざわざ記者会見を開いておっしゃったことなんですから、外務大臣として外務省職員の公的な場での発言には責任を持っていただきたいと私は思います。  大使が外で記者会見を開いて何を言っても、それは別に国を代表することじゃない、関知しない というお考えになるのでしょうか。
  115. 河野洋平

    河野国務大臣 会見のすべてをそうだとは思っていないと申し上げております。
  116. 高市早苗

    ○高市委員 それにしても、国会での決議に関連してのことですから、非常にこれは政治的な問題について、また外交上も深く関連のある問題についての公式な発言だと私は解釈いたしましたけれども、この栗山大使が言われた「第二次世界大戦にいたった歴史を見据え、その反省のうえに立って」という部分ですね、戦争に至った歴史の中で反省すべき点というのは具体的に何だろうとお考えでしょうか。
  117. 河野洋平

    河野国務大臣 栗山大使の発言に触れて御質問があるなら、どうぞ大使に御質問を願いたいと思います。
  118. 高市早苗

    ○高市委員 栗山大使にここで質問できないものですから、大使というのは日本国を代表するものであり外務省の職員ですから、大臣がだめでしたら外務省の方に教えていただきたいと思うのですけれども
  119. 池田維

    ○池田政府委員 ただいま河野大臣の方から御答弁がありましたとおり、私ども、栗山大使がどういう文脈でどういう発言をされたか、ちょっと明確には承知いたしておりません。したがいまして、至急取り寄せて調べてみたいと思います。
  120. 高市早苗

    ○高市委員 新聞にかなり大きく出ていた記事でございますし、多分ごらんになっていたと思うのですけれども、先ほどからの御答弁のように、大使が外で言った発言、それに対して質問して、大使に聞いてくれ、そんなこと言われたってどうしようもないわけですし、それでしたら、大使というのは、接受国において勝手に記者会見を開いて日本の政治、それも外交に深くかかわる問題について私見をどんどん述べて、それは日本の国の意見でも何でもない、勝手な個人的な意見だ、これからそういうことになるわけでしょうか。
  121. 河野洋平

    河野国務大臣 少なくとも国会決議について国会議員でない者が述べるということについて、それはそれぞれの人がそれぞれの意見を述べるということはあったとしても、国会決議がどうなされるか、国会決議をどうするかということについては国会がお考えになることであろうというふうに思うわけでございます。  私ども、栗山大使の会見というものを承知しておりませんので、目下、これについて解説をしたり答弁をする能力がございません。
  122. 高市早苗

    ○高市委員 国会決議の問題を国会議員以外の者が公式な場所で発言する、これは全然関係ないことだと言われたらそれまでですけれども相手国にとっては、少なくとも相手国の国民にとっては、日本を代表する立場の人間だと思ってこれを聞くわけですから、要らぬ期待もされるわけでございます。  そういうことだったら、アメリカにおいて日本国政府を代表していると考えられる方がこういった種類の、自分の手の届かない種類のことについて発言するのを今後もう慎んでいただきたいと私は思います。  栗山大使の発言、また調べてからということなんですけれども、私、手元にございますのでもう少し紹介させていただきます。  憲法と反省の関係について言っておられることなんですが、「日本国民全体の反省があるから戦後の平和憲法に対する国民の熱心な支持がある。また、新憲法の下で政治的自由、民主主義体制の支持があるのも反省があるからこそ。日本国民は反省をきちんと持ち続けなければならない」と、日本国民全体の反省があると決めつけておられるのですけれども、少なくとも私自身は、当事者とは言えない世代ですから、反省なんかしておりませんし、反省を求められるいわれもないと思っております。  新聞社の世論調査では、謝罪すべきではないと答えた人が四七%、謝罪すべきだと答えた人が四三%でございまして、まさしく現在国論が謝罪ということについて真っ二つに割れている状態なんですが、このような状態のまま、国会での多数決で、わずかに多い方の意見を日本国民の総意として国際社会に示すことこそが民主主義への冒涜であり、また国民の代弁者たる国会議員の越権行為だと私は考えますので、私自身は、このような歴史の問題というのは国民一人一人の思想や価値観にもかかわることですし、国会決議にはなじまないだろうなと思っているわけですが、民主主義という言葉を記者会見で持ち出した粟山大使自身が民主主義を軽んじているんじゃないか、私は彼の発言を新聞記事で読んでそう思ったのですけれども、大臣自身はこの問題についてどうお考えでしょうか、御見解をお聞かせください。
  123. 河野洋平

    河野国務大臣 私は議員と全く見解を異にいたします。
  124. 高市早苗

    ○高市委員 どのように違うんでしょうか。
  125. 河野洋平

    河野国務大臣 過去の戦争について全く反省もしない、謝罪をする意味がないという議員の御発言には私は見解を異にすると申し上げました。
  126. 高市早苗

    ○高市委員 じゃ、謝罪をすべきだ、反省をすべきだというお考えなんでしょうけれども国会におけるこの謝罪もしくは不戦の決議、こういったものについて、外交上のメリットとデメリットは何だとお考えでしょうか。
  127. 河野洋平

    河野国務大臣 繰り返しになりますが、国会においてどういう決議をするかということは全く院の問題でございまして、その院の問題について行政の立場からとやかく申し上げることは控えたいと思います。
  128. 高市早苗

    ○高市委員 この場では、例えば自民党総裁としてとか、それから一国会議員として大臣自身の価値観をお伺いすることはできませんでしょうか。
  129. 河野洋平

    河野国務大臣 今委員長からも河野外務大臣という御指名で私は答弁席に立っているわけでございまして、いやしくも外務大臣として指名をされて答弁をするのには、やはり一定の限度を踏まえなければならないだろうと思います。
  130. 高市早苗

    ○高市委員 先ほどの私の質問なんですけれども、外交上のメリット・デメリットということを申し上げました。ですから、院の問題だからということをおっしゃるのですけれども、その院でそういう決議がされた、国際社会に表明されたということを想定されて、じゃその後それが、外交上メリット・デメリット、どういったものがあるか、外務大臣としてお答えいただきたいと思います。
  131. 河野洋平

    河野国務大臣 院の御決定があれば、それは院の御決定として院の意思ということでありますから、その院の意思を踏まえて我々はこの作業に臨まなければならないものだと思います。
  132. 高市早苗

    ○高市委員 ですから、院の決定があったとして、それが外交上どのようなメリットをもたらし、もしくはデメリットをもたらすだろうということの分析をお伺いしたいのですけれども
  133. 河野洋平

    河野国務大臣 ですから、繰り返して申し上げることですが、院がどういう決定をなさるか、どういう決議をなさるか、それがわからなければ申し上げようがないというわけでございます。
  134. 高市早苗

    ○高市委員 それでは、予算委員会で村山総理に御質問申し上げたときのことなんですけれども、原爆投下について謝罪しないということをブッシュ前大統領が発言しているが、アメリカに「謝罪を要求されるお気持ちなどはございませんか。」といった質問をしましたところ、村山総理は、「これはもう講和条約で決着がつけられておる問題ですからこということで、アメリカに対して謝罪を求めるとか、そういった考えがないということをおっしゃいました。それに対しまして、私は、「それでは、日本責任については、講和条約等では決着はついていないとお考えなのでしょうか。」と聞きましたら、総理は、「どういう意味で決着がつけられているのかどうかという、あなたの御質問もよくわからないのですけれどもこと答えられ、「例えて言えば従軍慰安婦のような問題とか、そういう問題がまだまだ決着がついたとは言えないこ「反省を踏まえた償いになっていくのではないかというふうに思っております」と答弁をされました。  この中で特に気になったのは、「反省を踏まえた償い」という言葉なんですけれども、細川政権 それから羽田政権のときも、アジアに対する反省、謝罪の表明というのはございましたけれども、同時に、賠償等は講和条約で決着済みといった見解も明らかにされていたわけです。村山総理になって初めて償いの意図を明言されたものだと思います。  例えば、一九九一年の十二月六日に、太平洋戦争犠牲者遺族会の元従軍慰安婦の方々が一人当たり二千万円の補償を求めて東京地裁に提訴されております。このような事例幾つかあると思うんですけれども、村山政権、政権としては元従軍慰安婦への補償にも積極的に取り組むという、償いに積極的に取り組むと考えてよろしいんでしょうか。
  135. 河野洋平

    河野国務大臣 従軍慰安婦の方々は去る戦火の中で筆舌に尽くしがたい悲惨な体験をされたわけでございます。戦争が終わって、国と国との関係は、先ほど総理が述べられたと引用されましたけれども、国と国との関係は講和条約あるいは二国間条約できちんと片がついておりますけれども、人間一人一人の心の中の問題というものにはひっかかる人も多いと思います。それは、加害者として心の傷を、痛みを感ずる方もおられるでしょうし、被害者として深い傷をまだまだ感じておられる方もあると思います。それは人間としての傷であり、人間としての心の痛みだろうと思います。国と国との問題については条約その他で片がついたとしても、人間の心の痛み、心の傷というものが残っていて、それをひどく痛く感ずる人と余り感じない人とは、それは個人差があるのだと思います。  それで、現在村山政権におきましては、総理の御指導などもありまして、こうした問題について、国と国との関係ではなくて、それから個人補償をするという意味ではなくて、何か従軍慰安婦の方々のあの苦しみというものに報いる方法はないかということを検討をしてきているところでございます。
  136. 高市早苗

    ○高市委員 個人補償するということではないという御答弁でよくわかりましたけれども、この慰安婦問題、かなりいろいろ難しい局面に入ってきているように思うんですが、これも一月十日の毎日新聞の記事なんですけれども、クマラスワミ国連人権委員会特別報告官、この方が、女性の人権侵害全般についての予備報告書の中で、従軍慰安婦問題を犯罪と認定する立場を表明したという記事がございます。これはまだ最終報告という形になるまでには時間があると聞いておりますけれども、これまで日本政府としましては、これに適用する国内法もないということで処罰問題というのは避けてこられたようなんですけれども国連がこうやって調査に乗り出して、また、慰安婦に対する行為は国際人道法のもとで犯罪と認定されねばならないとこの報告官が主張されておりますし、戦時暴力への処罰も厳しく要求しているということで、これは処罰の問題というのが出てくるように思うのですが、この問題について大臣の御所見を伺いたいと思います。
  137. 高野幸二郎

    高野政府委員 この件につきましては、ただいま委員からお話しございましたとおり、確かにクマラスワミ女史、これはスリランカの方でございますが、昨年の第五十回国連人権委員会におきまして、これは慰安婦問題についての特別報告書ではございませんで、人権委員会の主要議題の一つでございます女性に対する暴力という議題がございまして、この問題についての特別報告者ということで任命されております。この特別報告者として任命されましたクマラスワミ女史は、ことしの人権委員会、本年一月三十日から三月十日まで開かれました第五十一回人権委員会におきまして、第一回の報告書を予備報告書として提出されました。同女史の任期は三年でございまして、今回出ました第一回の予備報告書に続きまして、一年後には中間報告書、最終的には三年目、任期が終わったところで最終報告書が提出されるということになっております。  ところで、第一回に出ました予備的報告書の中で慰安婦問題が取り上げられたことは御指摘のとおりでございます。ただしこの予備報告書は、今回の人権委員会におきまして、内容的に支持されたとかいうことではございませんで、予備報告書としては了知されたということでございます。  同女史は引き続き任務をこれから遂行するわけでございまして、ただしその任務というのは、繰り返しになりますが、女性に対する暴力問題ということについての報告書を出すという任務を遂行するわけでございます。ただ、慰安婦問題も同女史の関心事項でございまして、それも踏まえまして、日本その他の関係諸国をことしの前半に調査のために訪問するという意向と承知しております。同女史の方から訪日の申し入れがございましたので、つい最近でございますが、日本政府としてはこれを喜んで受け入れるということを同女史に回答したばかりでございます。
  138. 高市早苗

    ○高市委員 外務大臣に対してはあと一つだけお伺いしたいのですけれども、今取りざたされています不戦決議なんですけれども、不戦という言葉が自衛のための戦争、自衛権も放棄してしまうのかどうかといったことで随分マスコミをにぎわしたり、国会の中でもいろんな意見が聞かれるのですけれども、対アジア外交という観点から、この自衛権の定義とか必要な軍備というのはある程度日本も明らかにしていかなければいけないように私は感じております。私自身は、国民の生命と国家の主権というものを守るためには自衛権というのは当然の権利であり、場合によったら自衛のための交戦権ということ、これも守られるべきじゃないかと思いますので、不戦決議ということを国会で扱うときに自衛のための自衛権の放棄と受け取られるようなことでは、これは困ることだなと感じております。  ただ、過去に中国が中越戦争での奇襲攻撃まで、ベトナムの脅威を感じだからという理由で、自衛戦争と位置づけてしまったこともありまして、そういったことになりますと、アジア諸国の不安に配慮して、日本なりの、日本考えている自衛権はこういうことなんですよといった定義ないし必要な軍備といったものを明らかにする必要があるんじゃないか、こう思うわけです。対アジア外交という観点から大臣のお考えを聞かせてください。
  139. 河野洋平

    河野国務大臣 不戦決議という言葉がひとり歩きしているように思います。繰り返し申し上げますが、国会において不戦決議を行うのだという意味の報道が大変あちこちで見られますが、これも院の問題で、基本的に私がとやかく言うことではありませんが、強いて申し上げれば、不戦決議という春葉がひとり歩きして、どこにも不戦決議というものは今存在をしない、形としては存在をしていないと思うのです。これは院でいろいろな方がお集まりになって、どういうものにするのか、あるいはどういうものをやるのかやらないのか、これから御相談になることであって、私どもが聞いておりますのは、五十周年の節目に何かやろうではないか、何かやるべきではないかというお話があるということは伺っておりますけれども、それが不戦決議であるというふうには私はまだ承知をしておりません。  これは、繰り返し申し上げますが、院の問題で、私、行政の立場からとやかく言うものではないということを前提に申し上げているわけでございまして、したがって、余り私どもは不戦決議、不戦決議と言われても、その不戦決議なるものがどういうものであるかということについても、まだ全く形のないものだというぐらいにしか承知をしていないところでございます。  そして、仮にそれはそれとしてこちらに置くとして、議員お尋ねの後段の問題について言えば、私ども国会の決議というものが法的なものであるのか、政治的な決意を示すものであるのか、そういったこともあるのではないかというふうに思うわけでございまして、もし御希望があれば条約局長からもう少しく御説明、御答弁をさせたいと思いますが、御希望によっていたします。
  140. 高市早苗

    ○高市委員 結構でございます。  日本の議院内閣制という制度のもとで非常に難しいことだと思うのですね。行政の立場国会の問題には口を出せないと、外務大臣の場合はかなりいつもお立場を明確にされているように、いろんな場所での御答弁を聞いていて私、そう思います。ただ、そうじゃない方もいっぱいおられるように思うのです。外務大臣の場合は自民党の総裁でもあり、一国会議員でもあり、そして外務大臣である。総理の場合も、社会党の委員長であり、国会議員でありと、この辺が対外的な公式の場でもうごっちゃになっている感じがしております。  例えば村山総理ですね、昨年二度の所信表明、これは当然総理大臣としての所信表明ですが、さきの大戦への反省と過去の侵略行為ということに二度触れられまして、ことし三月に入って、これは国会決議に関して述べられたのですけれども、別に過去の侵略行為を謝罪するとは言っていないということを、総理大臣でありますけれども国会決議に対してそういった方針変更ですか、前に言った所信表明からはちょっと違ったニュアンスのことをおっしゃって、その直後、またコペンハーゲンに出かけていっての記者会見では、不戦決議は謝罪を含むかどうかについて、反省の中にはそういったものもすべて含まれると理解してもらってよいと、またまた方針転換をされたと私は思ったのです。もちろん国会決議は国会のことですから、これは社会党委員長としてのお答えだったのかもしれませんけれども、五十嵐官房長官も、官房長官でありながら、不戦決議ということならと、前向きな発言をされております。  こういう場所で質問申し上げるにも、閣僚によって御自分の立場国会議員にしたり党の代表にしたり、閣僚に戻ったりと、非常にややこしくて、私たちはどれが政府としての見解なのか、内閣としての空気なのか、さっぱりわからないわけでございます。これに関してはもう大臣がそういった姿勢を貫かれておりますので、大臣に対して何を質問しても仕方ないと思いますので、また割としゃべってくださる村山さんや五十嵐官房長官に聞くチャンスがあったときに、またの質問機会に回したいと思います。  時間があと少しございますので、原子力安全条約についてお願いしたいと思います。  我が国原子力発電所の使用済み核燃料、これが再処理されて、今その廃棄物がイギリスのパシフィック・ピンテール号で我が国に向かって輸送されているのですけれども、もちろんその航海の無事を心から祈るものなんですが、危機管理という観点から、もしもの場合を想定してその対応も当然御検討されていると考えているわけです。もしも万が一何かの理由でパシフィック・ピンテール号が事故を起こして海洋汚染等の被害をもたらすことになった場合、その責任はどの国にあるのでしょうか。再処理をしたフランスなのか、この船の国籍があるイギリスなのか、この放射性廃棄物が帰属する日本になるのか、お答え願いたいと思います。
  141. 加藤重治

    ○加藤説明員 御説明申し上げます。  先生御質問の、今行われておりますフランスからの高レベル放射性廃棄物の返還輸送につきましては、運んでおります輸送船は国際海事機関の国際基準を満たしておりますし、廃棄物を収納しております輸送容器につきましては国際原子力機関のこれまた国際基準を満たすというようなことで、安全確保のために万全の措置を講じた上で行われているということをまず御説明申し上げたいと思います。  なお、万が一事故が発生いたしまして原子力損害が生じた場合、この損害賠償の費用負担の責任はどうなるかということでございますが、これにつきましては、今回の輸送に関係いたしまして、日本の電気事業者とフランス核燃料会社との間で締結されている契約、それから我が国の電力会社と日本原燃株式会社の間で締結されております契約、この二つの契約によりまして、原則として、日本領海到着まではフランス核燃料会社が、それから、日本領海に入ってから、日本の陸上においては日本原燃株式会社が原子力損害の賠償の費用負担の責任を負うということになってございます。  それで、こういった関係者は、日仏それぞれの原子力損害の賠償に関係いたします法令の定めに従いまして、損害賠償責任をカバーする保険に加入しておるわけでございます。  そういうことで、このような手当てがされておるわけでございますので、もし万々が一第三者に原子力損害が発生したとしても、被害者の救済は適切になされるというふうに考えてございます。
  142. 高市早苗

    ○高市委員 今後輸送されるプルトニウム及び放射性廃棄物の量、並びに輸送回数はどれぐらいになるのでしょうか。
  143. 泉紳一郎

    ○泉説明員 御説明申し上げます。  海外に再処理委託をすることによって回収されますプルトニウムでございますが、二〇一〇年ごろまでの累積量で約三十トンと見込まれております。これらは、基本的には、欧州におきまして軽水炉用の燃料、MOX燃料と称しておりますが、これに加工いたしまして、我が国に返還輸送し、軽水炉で利用する計画になってございます。しかしながら、輸送の回数等の具体的な点につきましては、まだ決定されておらないというところでございます。  他方、放射性廃棄物も返還されてくるわけでございますけれども、このうち高レベルの放射性廃棄物はガラス固化体の形態で返還されるわけで、現在、先生今お触れになられましたパシフィック・ピンテール号で二十八体が第一回の輸送として行われているわけでございますけれども、今後、大体年に一、二回程度、十数年間で合計三千数百本が返還される予定でございます。  それから低レベルの放射性廃棄物につきましては、返還時期、具体的な数量等については今後事業者の間で調整を経て決められることになっておりまして、現在のところ、まだ具体的な決定には至っておらないということでございます。
  144. 高市早苗

    ○高市委員 それでは、もうぼちぼち時間ですので私の質問を終わらせていただきますけれども、本日の御答弁いろいろ伺っていまして、やはり気になったのは、冒頭に申し上げましたように、外務省設置法によって日本国政府を代表する立場である大使が言ったこと、それも非常に政治的な問題が、これは日本国の、日本国政府としての意見ではない、また大使が海外で記者会見まで開いて言われたことで新聞に出ていること、これが事実かどうか把握していない、こんなことでは非常に国際社会の中で日本が誤解される、こういった問題にもつながりかねないし、いろいろな政治的な動きに影響も与えることだと思いますので、ぜひこの栗山大使の件は詳しい情報を私に改めていただきたいと思います。  また、同じようなことだと思うのですけれども、海外に出ていってコペンハーゲン村山総理がしゃべった話、これも、国会、院のことだから閣僚としては、また行政の立場では関係ない、これが外務大臣考え方であるにもかかわらず、いろいろなところで院のことに対して官房長官なり総理なり皆さんおっしゃっているわけでございます。この辺のことも大変いろいろ混乱を引き起こしているのじゃないかと思いますので、ぜひこういったことへの明確な内閣の姿勢というものをつくり上げていただきたいなと思っております。  以上御要望申し上げまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
  145. 河野洋平

    河野国務大臣 高市議員の御質問の粟山大使に関する部分については、今資料を取り寄せましたので、御答弁申し上げておきたいと思います。  この粟山大使の発言は、大使の会見の後、質疑応答の中で、国会でいわゆる不戦決議について議論があるが、これをどう受けとめているかという質問があったわけです。その質問に答えて、大使は、国会であるいは各党間で議論されている決議が具体的にどのような文言を念頭に置きつつ議論されているかにつき必ずしもつまびらかにしていないので、決議そのものに対しコメントはしにく い、こういうふうにまず述べているというのが事実でございます。  さらに、質問の中で、国会で意思表明するということについてどう考えるかという質問について、大使は、これは各党の話し合いの中で国会国会の意思として決められることであって、そのことの是非、当否を自分が差し出がましく申し上げることではないと思う、こういうふうに大使は答えておられます。  事実は、そういうことが事実でございますので、ひとつ事実を踏まえて御質問もいただきたいというふうに思います。
  146. 高市早苗

    ○高市委員 委員長
  147. 三原朝彦

    三原委員長 もう時間ですから、次のときにお願いします。
  148. 高市早苗

    ○高市委員 いや、委員長お願いします。  事実じゃないと。それでしたら、私が引用した部分は一切大使の御発言にはなかったということでございましょうか。それでしたら、これを報道した三月八日、産経新聞でございますけれども、御抗議されるなり、それなりの手を打っていただきたいと思います。非常に多くの国民がこれで誤解をすると思いますし、できましたら、大使の会見の内容を私にいただけたらありがたいと思います。  以上で終わります。
  149. 三原朝彦

    三原委員長 古堅実吉君。
  150. 古堅実吉

    ○古堅委員 原子力安全条約第八条の規制機関は政府ではどこになりますか。最初にお尋ねします。
  151. 林暘

    ○林(暘)政府委員 この条約上の規制機関と申しますのは、各締約国について、許可を付与し及び原子力施設の立地、設計、建設、試運転、運転または廃止措置を規制する法的権限を与えられた機関をいうことになっておりまして、我が国におきましては、科学技術庁原子力安全局並びに通商産業省資源エネルギー原子力発電安全企画審査課及び原子力発電安全管理課がこれに当たります。
  152. 古堅実吉

    ○古堅委員 条約第八条の二項は、「規制機関の任務と原子力の利用又はその促進に関することをつかさどるその他の機関又は組織の任務との間の効果的な分離を確保する」、そういうことが求められています。  やはり原子力を利用促進するそういう政府機関とは別に、原子力安全局よりももっと強い規制権限を持ち、スタッフも資金もある安全規制機関をつくるのが条約要請にこたえる道ではないか、そのように考えますが、いかがですか。
  153. 林暘

    ○林(暘)政府委員 今御指摘のとおり、八条の二項におきましては、「効果的な分離を確保するため、適当な措置をとる。」という規定がございますが、どういう形で効果的な分離が図られるかというのは、それぞれの締約国がそれぞれの国内の行政機関のあり方として決めることでございまして、別の組織をつくらなくちゃいけないとか、同じ組織の中ではあってはいけないというようなことはここに決められておりませんで、具体的に各国が適当と判断する、効果的に分離ができると判断できる形で分離がされていればいいというふうに我々は理解いたしております。
  154. 古堅実吉

    ○古堅委員 確かに、具体的には、条約が指し示した、そういう形にはなっていないんだが、条約の求める趣旨に照らして、強い権限を持つ規制機関が必要だという認識の上でつくられた、そういう受けとめをするがゆえにお尋ねしたわけです。ぜひ、そういうことをも含めて御検討いただきたい、こう考えます。  次に、ILO条約についてです。  ILO百五十六号条約は、家族的責任男女労働者の双方にあることを明記し、その上で、家族責任を有する男女労働者の平等な待遇を求めています。  それで、二、三お尋ねしたいと思います。  第一条二項で言う「近親の家族」というのは、第九条に規定された方法で決められることになっておりますけれども政府はどういう規定をされようとされるのか、最初にお答えください。
  155. 高野幸二郎

    高野政府委員 お尋ねの第一条第二項に言われております「近親の家族」、これの定義は本条約上具体的に定められておりませんで、むしろ一条三項におきまして、各国がそれぞれ定めることとされております。  そこで、我が国の法制上の定義でございますが、これは一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律の第二十条というところがございまして、それによりますと以下のとおりとなっております。「配偶者、父母、子、配偶者の父母その他人事院規則で定める者で負傷、疾病又は老齢により人事院規則で定める期間にわたり日常生活を営むのに支障があるもの」ということに相なっております。
  156. 古堅実吉

    ○古堅委員 関連して質問を進めさせていただきますが、今も引用をされたことに関係しますけれども、昨年九月に制定された一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律では、介護の対象は、父母、子、配偶者の父母等となっております。それに従う人事院規則では、同居する祖父母、兄弟姉妹、それも対象にされております。  そういうことを踏まえますというと、育児休業法の一部改正でもこの到達点を維持するのは当然だというふうに思いますが、いかがですか。
  157. 北井久美子

    北井説明員 今国会に提出を申し上げております育児休業法改正法案は、民間企業における介護休業制度法制化を図ること等を内容としているものでございます。  そこで、労働者権利として付与する介護休業で対象とする家族の範囲につきましては、制度利用者の実態等から見て、配偶者、父母、子供、それから配偶者の父母を基本としているところでございますが、審議会での議論も踏まえまして、父母と子供に準じます一定の範囲の親族も対象にすることといたしております。  具体的には、今後また関係審議会等で御議論をいただいて、労働省令で決めてまいりたいと考えているところでございます。
  158. 古堅実吉

    ○古堅委員 条約の第一条二項では、介護又は援助が明らかに必要な他の近親の家族」というふうにございます。  この「明らかに」というのは、同居していなくとも、介護と援助を必要としている近親者であることが明らかであれば介護対象にする、このように解釈できるのではないかと考えますが、いかがでしょうか。
  159. 高野幸二郎

    高野政府委員 御質問を正しく理解したかどうかちょっと自信がございませんが、被扶養者である子に対する責任ということになりますと、具体的には、病気になった場合の世話、あるいは保育園への送迎等、それからまた、介護または援助が明らかに必要な他の近親の家族に対する責任、これの具体例といたしましては、家庭での医療、療養上の世話や身の回りの世話、入院中の身の回りの世話等が考えられるということでございますので、委員指摘の、仰せのとおりかなというふうに考えております。
  160. 古堅実吉

    ○古堅委員 そうだとしますというと、祖父母や兄弟姉妹についても、同居していなくても介護対象にしていいのではないかというふうにも考えますが、いかがですか。
  161. 高野幸二郎

    高野政府委員 先ほど私が申し上げました趣旨からすればそういう解釈も可能かと思いますが、御承知のとおり、現在の人事院規則におきましては、同居中の祖父母及び兄弟姉妹ということで規定内容は定められているということでございます。
  162. 古堅実吉

    ○古堅委員 確かに、おっしゃるように、人事院規則では、同居するというのがかぶっています。しかし、条約ではそれが外されていまして、同居する云々はございません。  そういうことですから、この条約の大きな精神に基づけば、そのように広げていくことこそ解釈の方向ではないか、このように考えますけれども、もう一度。
  163. 高野幸二郎

    高野政府委員 前の答弁で申し上げましたとおり、一条二項におきましては近親の家族について の条約上の定義というのは存在しておりませんで、一条三項において定められているとおり、各国がそれぞれ定めるということになっております。したがいまして、御指摘問題点につきましては、我が国の置かれました経済的、社会的状況等を踏まえて、我が国独自で判断すべきものというのが条約上の解釈になると存じます。
  164. 古堅実吉

    ○古堅委員 条約がそのように、第九条で、それぞれの国で定める方法をもってということはあるんだが、同居するなどとかいうような形で狭く解釈しようなどという方向ではない、そういう面を持っておるだけに、ぜひ今後の問題としても検討をいただきたい。要望申し上げておきたいと思います。  第三条は、極めて重要な規定だと考えています。家族的責任という点では男女に平等に求められておりますけれども、具体的に育児や介護になるというと、一般的には女性が休暇をとる事例が圧倒的に多いように思われます。それは一つには、夫が妻より給与が高く、どうせ無給なら給与の安い女性が休暇をとった方がその家族にとっての負担は小さいという理由があります。もう一つには、夫は残業、長時間・過密労働で休暇がなかなかとりにくい、そういう理由もございます。  大臣にお聞きしたいんですが、このILO百五十六号条約は、こうした性別による差別をなくし、平等を実現することをこそ求めているところだと思いますが、御見解を伺いたいと思います。
  165. 高野幸二郎

    高野政府委員 今日、世界的に見ましても、女性の地位、役割の向上、女性の人権問題ということが大変重視される時代でございまして、今般のILO百五十六号条約国会の御承認をお願いいたしましたのも、まさにそういうことを背景といたしまして、我が国国内におきましては、男女共同参画型社会の実現ということで、軌を一にする話でございまして、私どもそういう方向で国内的にも対外的にも努力しているところでございます。
  166. 古堅実吉

    ○古堅委員 大事な、政治的なことにもかかわる問題ですから、ぜひ大臣からも御所見を伺いたいと思います。
  167. 河野洋平

    河野国務大臣 ただいま政府委員が御答弁申し上げましたが、私どもとしても、先ほど来この委員会でも申し上げておりますように、我が国の今後行くべき道の一つに、男女共同参画社会というものを目指していくということを考えているわけでございまして、そういう意味でもこの問題は極めて有意義であると思っております。
  168. 古堅実吉

    ○古堅委員 次に進みます。  特に女性労働者機会及び待遇を改善することがこの条約の義務となる点で重要であります。今問題になっている一つが、女性の採用、昇進、昇給での格差、差別の問題があります。賃金格差でいうと、日本は男性労働者の五二%にすぎません。フランスが八九%、ドイツの七三%、それに比べても余りにも格差が大きいし、低率であります。この原因は、昇給、昇格における女性差別にあります。このような事態に照らしても、男女機会均等法を実効あるものに改正強化することを目指す必要があるんではないか、このように考えますが、いかがですか。
  169. 北井久美子

    北井説明員 お答えを申し上げます。  男女雇用機会均等法の抜本的改正という御指摘でございましたけれども男女雇用機会均等法の改正、あるいは女子労働基準規則の女子保護の規定についての問題につきましては、婦人行政の中の大きな課題の一つと位置づけられておりまして、今後引き続き関係審議会の方で検討をする課題であると認識をいたしております。
  170. 古堅実吉

    ○古堅委員 この問題についての所管庁の責任者として、大臣にもお伺いしたいと思います。  今申し上げたような立場を踏まえて、男女機会均等法の実効ある改正、その強化、そういう方向で女性差別撤廃条約及びILO百五十六号条約責任者として、大臣からも、他の関係省庁とも相提携しながら強力に進むべきそういう責務があるのじゃないかというふうに考えますので、御所見を伺いたいと思います。
  171. 河野洋平

    河野国務大臣 今日の社会情勢の現実というものも踏まえながら、しかし、この条約が示すその方向というものをしっかりと見据えていかなければならないと思います。関係各省とともに努力をいたしたいと思います。
  172. 古堅実吉

    ○古堅委員 以上で質問を終わりますが、本日提起されております日仏租税条約については、これまで同類の租税条約に反対してきたそういう立場を踏まえて、この条約には反対させていただくことを表明して、終わらせていただきます。
  173. 三原朝彦

    三原委員長 これにて各件に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  174. 三原朝彦

    三原委員長 これより各件に対する討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  まず、所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国政府フランス共和国政府との間の条約締結について承認を求めるの件について採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  175. 三原朝彦

    三原委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。  次に、原子力の安全に関する条約締結について承認を求めるの件について採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  176. 三原朝彦

    三原委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。  次に、家族的責任を有する男女労働者機会及び待遇均等に関する条約(第百五十六号)の締結について承認を求めるの件について採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  177. 三原朝彦

    三原委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました各件に関する委員報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  178. 三原朝彦

    三原委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  179. 三原朝彦

    三原委員長 次回は、来る三月二十九日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時十八分散会