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1995-02-07 第132回国会 衆議院 外務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成七年二月七日(火曜日)     午後一時開議 出席委員   委員長 三原 朝彦君    理事 小杉  隆君 理事 田中 直紀君    理事 福田 康夫君 理事 東  祥三君    理事 松沢 成文君 理事 松田 岩夫君    理事 秋葉 忠利君 理事 前原 誠司君       安倍 晋三君    柿澤 弘治君       斎藤 文昭君    坂本三十次君       櫻内 義雄君    鈴木 宗男君       二階堂 進君    原田昇左右君       赤羽 一嘉君    鹿野 道彦君      柴野たいぞう君    高市 早苗君       山田  宏君    山本  拓君       伊藤  茂君    上原 康助君       松前  仰君    古堅 実吉君  出席国務大臣         外 務 大 臣 河野 洋平君  出席政府委員         外務大臣官房長 池田  維君         外務大臣官房外         務参事官    谷内正太郎君         外務省総合外交         政策局長    柳井 俊二君         外務省総合外交         政策局国際社会         協力部長    高野幸二郎君         外務省総合外交         政策局軍備管         理・科学審議官 林   暘君         外務省アジア局         長       川島  裕君         外務省北米局長 時野谷 敦君         外務省欧亜局長 野村 一成君         外務省中近東ア         フリカ局長   法眼 健作君         外務省経済局長 原口 幸市君         外務省経済協力         局長      平林  博君         外務省条約局長 折田 正樹君  委員外出席者         警察庁刑事局捜         査第一課長   中島 勝利君         法務省入国管理         局入国在留課長 下野 博司君         厚生省健康政策         局医事課長   今田 寛睦君         厚生省社会・援         護局企画課長  中山 和之君         外務委員会調査         室長      野村 忠清君     ————————————— 委員の異動 二月七日  辞任         補欠選任   若松 謙維君     山田  宏君 同日  辞任         補欠選任   山田  宏君     若松 謙維君     ————————————— 二月七日  旅券法の一部を改正する法律案内閣提出第二  四号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 三原朝彦

    三原委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。福田康夫君。
  3. 福田康夫

    福田委員 外務大臣におかれましては、予算審議もさることながら、この大地震対策で日夜奔走されていらっしゃいまして、大変御苦労さまでございます。そういうことで、きょうはまず、予算委員会でも随分質問がございましたけれども、当方といたしましても兵庫県の南部地震につきまして若干質問させていただきたいと思います。  この兵庫南部地震に対する各国からの支援、それに対する我が国対応について、まず質問いたします。  それに先立ちまして、この地震により亡くなられました方々と御遺族に対しまして深い哀悼の意を表します。また、負傷者避難生活を続けておられる被災者方々に心からお見舞いを申し上げます。  この災害に対しまして、世界のほとんどの国からお見舞いのメッセージが寄せられております。中には、米国のように、議会で哀悼の意を表明する決議を全会一致で採択してくれた、そういう国もございます。また、二月一日現在、六十八カ国の国と地域や国連などの国際機関、さらには多くのNGO方々ボランティア方々により人的、物的そしてその他の支援の申し込みがなされております。支援の形はさまざまで、先進国からは高度の救助技術の提供などの申し出がございました。また、多くの途上国からもその国の特産品などをもって援助の手を差し伸べてくれたところもございます。まさに世界一つという感じがするほど、世界人々のぬくもりを感じるような、そういうふうなときでございます。  中には、スリランカ子供たち小学生、中学生、高校生からの寄附もございました。これは、日本人の里親の奨学資金学校に通っている貧しい子供たちが、スリランカ国民十万人から募金して集めたお金四十万八千円を寄附してくれました。被害に遭った人々が早くよくなるよう祈っておりますという手紙もついていたという報道でございます。まことにほのぼのとしたものを感じる出来事でございました。  これらの多くの善意支援に対して心よりお礼を申し上げるわけでございますけれども、また、そういうふうな支援以外にも、被災した困窮の中にありまして、西宮市の朝鮮総連系初級学校で、民団、すなわち大韓民国民団とかその地域小学生の生徒、父兄などが、民族、政治の壁を乗り越えまして被災者同士の交渉が広がっている、こういうふうな報道もございました。この大混乱の中から何か新しいものが芽生えてきているというふうな感じもいたしました。  さて、このような海外からの善意申し出に対しまして、日本側受け入れ方はどうだったかということになりますと、対応の仕方について問題が数多くあったということは、連日のように報道されております海外からの反響、これは国内反響もさることながら、海外からの反響の物すごさと言ってもいいくらいのものがございました。この点は反省すべき点があったのではないか、このように見受けるわけでございます。  この辺は、予算委員会でもいろいろと例が挙げられまして質問があったようでございますけれども、ごく最近になりましてもいまだにそういうふうな報道がなされている。例えば、二月六日付の日本新聞に掲載されておったのでありますけれども、五日のニューヨーク・タイムズでは、米国緊急用の医薬品を日本が断ったといったようなことも出ているわけであります。この事実関係は、向こうのサイドで言っていることでありますから、日本側でどういう対応をしたか、それはまた別な話でございますけれども、そのように連日にわたる海外からの若干非難めいたような話が伝わってきておるわけであります。  概略しますと、対応がおくれているというのが一番多かったように思います。それから、制度的な問題でその援助を拒否された、こういうふうなことで、これは医師とかそういうふうな関係だと思いますけれども、そういったようなことが内容の海外からの日本行政等に対する批判というものがたくさんございます。  こういうふうな報道は、これはせっかくの好意を無にしているのではないかというふうなことで、中には怒りに近いものをぶつけるような、そういうふうなのもあったように見受けます。我が国政府がこれら海外からの支援申し出を有効に生かし切れていないという指摘でございますので、その点について大臣はどのようにお考えになっていらっしゃるか、まずお尋ねをいたします。
  4. 河野洋平

    河野国務大臣 お答えを申し上げる前に、世界の大変多くの国々から、今回の震災に対して温かいお見舞い、そして援助申し出があったことについて、心から感謝の意を表したいと思います。  今、福田議員からいろいろお話をいただきました。今回の本当に大変な災害というものに対して、日本外国との間に外務省があって、お見舞い援助申し出についてどう対応するかということが一つございます。それから、国際的な論調についてどういう対応をするかということと、この二つを私いろいろ考えております。  ちょっと論調の方から申し上げますと、海外新聞論調その他では、今回の震災について、日本に対して好意的な論調と大変厳しい論調と二つございます。好意的な論調は、災害に遭った方々が非常に我慢強く、そしてお互いに助け合っていくという状況を称賛しておられる、こういう論調一つございます。それから、厳しい方は、対応が非常におくれている、それから支援に対してなかなか反応がはっきり出てこないといったようなことに対する非難といいますか、そういう厳しい論調というのと二つございます。  その厳しい論調の中には、若干事実を誤認しているものもございますので、そういうものについては私どもとしてはできるだけ事実を正確にお伝えする必要があるのではないかということも考えておりますし、それから何と申しましても、御承知のとおり神戸兵庫兵庫県庁あるいは神戸市役所とも災害のど真ん中にあって、なかなか十分な体制でこの外国からの救援に対する対応が、正直迅速にとれなかったこともあるわけでございまして、これらについてはよく御説明申し上げなければならぬというふうにも思っているわけでございます。  一方、具体的に温かい支援申し出があったことに対して、どういう対応外務省として、我が国としてしたかという点でございますけれども、これは予算委員会でも何度かお答えを申し上げましたが、大変迅速にお見舞いをいただき、お申し出をいただいた国もございます。例えば、十七日の早朝の地震に対して、十七日じゅうに既にお見舞いを言ってくださった、そして何かできることがあればと言ってくださった国も幾つかございます。たしかアメリカを初めとして、五、六カ国はあったと思います。こうした国々に対して、私どもも直ちに国土庁、これが事務局といいますか対策本部でございますから、国土庁連絡をし、国土庁から兵庫県あるいは神戸市あるいはその他の自治体にも連絡をして、可及的速やかにこうした援助を受け取るべきではないかということも、私ども気持ちもあわせてお伝えをいたしました。  その中で、正直、外国からの災害救助隊を受け入れるについて体制が整わないといいますか、つまりアクセスが整わないということも含めて多少のやりとりがあったことも事実でございますが、だんだんその体制が整うに従って、必要なものがわかってきた。つまり、水が必要だ、毛布が必要だ、あるいは行方不明の人を捜すためのそうした方法が必要だということがわかってきて、それをその都度お願いして、来ていただくあるいは送っていただくということが徐々にできてきまして、今二十数カ国に物資供与でございますとかあるいは人的な支援お願いしているわけでございます。  我々としては、物資供与申し出てくださっている大変ありがたい申し出に対して、現地ニーズ考えて、これはもうとにかくくださいと言ってどっと物が来てしまって、その善意がうまくさばけないということでもいけません。それから、災害から日を追って現地ニーズも変わってまいります。最初は水が欲しい、毛布が欲しいと言っていたものが、テントが欲しいあるいはその他のものが徐々に欲しいというふうにニーズが変わってまいりますから、そういうことも含めて、順次外国お願いをするというようなこともしておりまして、今二十数カ国の善意を受けているという状況にございます。  少し長くなって申しわけありません。
  5. 福田康夫

    福田委員 この震災が発生して以来、もうさまざまな支援活動がなされております。その中で、民間のボランティアなんかも、みずからの発意によって救助活動に参加するというふうなことをしてくれたわけでございます。  実は二月三日に、外務省JICA医療チームに登録されています医師看護婦二十四名を罹災地に派遣することを決定したということを、これは新聞で見たのでありますけれども、このJICA医療チームというのは、本来、国際緊急援助隊法海外援助活動に限られているということになるのでありますけれども、このような緊急事態にあってどのような対応をとるべきなのかということについてお尋ねします。  まず、村山首相JICA側に特に協力要請していたということで報道されておりますけれども、じゃ、首相はいつからこの要請をされていたのでありますか。それからまた、要請を受けなければこれは出動することがなかったのかどうか。それと同時に、外務省としてどういうふうな指導をJICAに対して行っていたか。この点についてお尋ねいたします。
  6. 平林博

    平林政府委員 お答え申し上げます。  村山総理JICA総裁にお電話をなさいまして指示をされたのは今先生がおっしゃったようなタイミングでございますが、それ以前から我々の方でJICA側と相談いたしまして、法律上は海外、特に開発途上国災害、こうなっておりますが、せっかくなので、できるだけそのお医者さん、看護婦さんを活用したらいかがかという話をいたしました結果、総理の御指示の前の段階で、四十数名の方々がいろいろな、NGOとの関係ども頼りながら現地入りしておられました。  また、国際緊急援助隊は、お医者さん、看護婦さん以外にも、自衛隊消防関係者、それから警察関係者、こういう方々がおられますが、これらの方々はそれぞれの組織の命令によりまして、一時、緊急援助隊待機体制を解きまして、それぞれがまた現地においでになった、こういうことでございます。  また、国際協力事業団の、緊急援助隊とはちょっと違いますが、緊急援助用に備蓄していました物資その他、これは成田の基地にございましたが、こういうものは現地にできるだけ早く送ろうということで現地側と相談いたしまして、一週間ぐらいかかってしまったんだとは思うのですが、それでも現地に参りました。  しかし、今後の問題といたしましては、今の法律はおっしゃるとおり海外災害相手国政府要請を受けて外務大臣総裁指示する、こういうことになっておりますので、そういうことで国内災害に組織的、制度的に対応できる体制にはなっていないということでございますから、これはこれからの事態に備えまして、全体としてどういう方法がいいか、検討を開始したところでございます。
  7. 福田康夫

    福田委員 まさにそういうふうなことだと思うのですけれども、今回のこの医療チームの派遣は、率直に申しまして対応が遅かったかなというふうな感じがいたしておりますので、ひとつ局長の言われる趣旨に沿って今後改善策を講じていただきたい、このように思います。  日本だけで災害が起こっていると思ったら大間違いで、これは今現在、欧州北部で大洪水が起こっている。この被災している人の数が、これは正確にわかりませんけれども、十万人プラス十数万人、合計しますと二十数万人の人が避難をしておるか、し始めたかというふうなことのようでございます。こういうことに対して、日本も何か援助をされたようでございますが、あれで十分だったのか、それからまた、こういうふうなときに日本としてどういうふうな対応をとるべきか、これも極めて大事な、今度は逆に、してもらった分してさしあげる、そういうふうな立場でございますから、極めて大事な仕事であり、こういうことについても十分な対応をとっていただきたいというふうに要望いたします。  それから、自然災害というのは今世紀中に開発途上国を中心に頻発をしておりまして、それによる死者は、この世紀で四百万人を超えるというふうに言われております。四百万人という数字は、これは戦争だとか宗教上の弾圧とか人種とか、そういうふうないろいろな理由における人為的な殺りく、これはいろいろな計算ありますけれども、大体一億八千万人から二億人いるんじゃないかというふうに言われております。それに比べれば少ないことは少ないのですけれども、しかし、こういう自然災害は日常どこでもしょっちゅう起こることでございます。  そういうふうなことで、この各国から今回受けましたいろいろな支援、これを我々は、逆に今度はお返しをしなければいけないというふうなことがあるわけであります。そういう面については日本も随分注意をしてやっているはずなんでありますけれども、この災害救助というふうなことは、我が国のこれからの国際貢献の柱としてもいいようなテーマではないかと私は思っておりますので、そういうふうな観点から、ひとつ十分な対応お願いしたいというふうに思っております。  古い話で恐縮でございますけれども、過去に、例えば一九九〇年にイランで大地震が起きました。これは死者が四万人。これは一九九〇年でございます。五年前でございます。負傷者が十万人、家を失った人は五十万人という大規模なものでございました。フランスは即時に二百人から三百人の規模救助隊を派遣いたしました。当日中に着いたというふうに聞いております。それから、日本は数日おくれて二十四人派遣しました。これは緊急援助隊で、この法律で出動したわけでございまして、そういうことで規模が少ないのはこれはやむを得ないのでありますけれども、しかし、タイミングもおくれたし、規模もそういう意味においては小さかったということで、日本災害援助というふうなことにおいて、国際的にはやはり見劣りするのではないかな、こんなふうな感じがいたします。  また、一九九一年にバングラデシュサイクロンが発生しました。そのときには死者が十三万九千人という大変大規模なことでございました。これに対して、米軍は直ちに六千人の、これは軍隊でございます、兵隊を派遣して、救助活動をしたわけです。日本は、これも緊急援助隊三十八人を派遣いたしました。これは主に輸送業務をしたわけであります。  ただ、日本が行ったのは、サイクロンが四月三十日に発生して二週間後に支援要請が来て、それから成田から出発をし、現地に到着したのは二週間と五日たった五月十八日ということでございまして、これはもう大変そういう意味では、時間的にはおくれておるということでございます。  また、日本は、そのときに二機の消防のヘリコプターを持っていったわけでありまして、そして二機で三十一トンの輸送をいたしました。米軍は、これは軍隊ですから規模が違いますけれども揚陸用のホバークラフトを持っていきまして五十トンの貨物を一回で運ぶ、こういうことをしたんですね。日本の場合には、この三十一トンを二週間ぐらいかけて運んだ。これは小口の輸送ということで現地では便利をしたというふうにも聞いておりますから、それはそれで役に立ったと思いますけれども規模の点で大変な差があるということはもう否定できない、そういうことでありました。  そういうことで、四、五年前のことでありますけれども、こういうふうな災害が起こったときに、では今一体何ができるかということをお考えいただきたい。すぐさま出動できるのかどうか、それは今回、海外からはそういう直ちの出動ということをしてもらったわけでありますけれども日本はそれができるのかどうか、こういう観点からお考えをいただきたいというふうに思います。いかがですか。四、五年前と比べて進歩しているかどうかということですね。
  8. 平林博

    平林政府委員 四、五年前の話は、先生がおっしゃったようなところでございます。しかし、例えばイランの方は、ほんのちょっとおくれただけなのですが、途中商業便を乗り継いで参りましたので、現地へ着いたときには多少おくれたというような地理的なハンディキャップを負った上のことでございます。  最近では、要請があってから四十八時間以内には出発できるようにするというのが一応の目途になっておりまして、大体そういうことでやってきております。また、要請が早く出るように、今回日本もそういうことになりましたが、事故、事件があったときには直ちに先方政府と接触して、早い段階要請を出していただくように働きかけております。  また、先ほどのバングラデシュケースでは、合計五十名くらい行ったのでございますが、おっしゃるようないろいろな不便がございまして、その後、御承知のように国際緊急援助隊法の改正を見まして、大規模自然災害には自衛隊を投入できるということになりました。千名強の方々が常時待機して、そのために訓練をしておりまして、またそれ以降、幸いなことにそれを必要とするようなケースが生じておりませんが、また将来生じた場合には自衛隊が活動できる、また、その輸送機ども使えるように現在ではなっております。  したがいまして、大分当時とは変わって改善されてきているということが言えるかと思います。
  9. 福田康夫

    福田委員 そういう今回各国が見せたような機敏な的確な対応、的確でないものがあるかどうか知りませんけれども、そのような日本として胸を張れるような対応をぜひお願いしたいと思います。  もう時間がなくなってしまったので、社会開発サミット、これは三月六日から十二日までコペンハーゲンで開催されますけれども新聞報道では、総理出席できないというふうなことになっておりますが、もしできないときには河野外務大臣出席される、これは間違いないのですね。ぜひ出席をしていただきたいというふうに思います。  と申しますのは、例の九二年のリオデジャネイロの地球サミット、あのとき以来、各国首脳が顔を出すというふうなことであります。同時に、あのときには日本から首相も外相も出席しなかったというふうなことで、そういう意味では大変日本のイメージを傷つけたのではないかなというふうな感じがいたしますので、これはもうぜひ対応していただきたい、心からお願いを申し上げる次第でございます。
  10. 河野洋平

    河野国務大臣 社会開発サミットにつきましては、その重要性というものを私ども十分認識をいたしております。社会開発サミットで論ぜられる幾つかの項目については、むしろ日本が国際的にリード役になってまいりましたし、また、これからもなっていかなければならないものでございます。したがって、その重要性については総理十分認識しておられます。  環境サミットのときといい今回といい、我が国には国会の事情という、余り国際的に通用するかどうかはわかりませんけれども我が国にとっては極めて重要な政治的な事情がございます。そうした事情を含めて、この社会開発サミットに対する出席についても総理もいろいろお考えになっているわけで、まだきょう現在、出席しないと決めたわけではございません。御本人は、極めて重要な会だという認識をこの間予算委員会でも述べておられます。  しかし、国内政治状況、これはただ単に従来と違いまして、震災の復旧、復興という大変大きな仕事も抱えているわけでございまして、そうしたことも十分にらみながら、総理が最終的に御判断になることであろうと思います。総理の御出席が何より大事だと思っておりますが、その判断を私どもはお待ちしているところでございます。
  11. 福田康夫

    福田委員 あと北朝鮮の問題をお尋ねしようと思ったのですけれども、本当に時間がなくなってしまいましたので、私の質疑はこれで終わらせていただきます。ありがとうございました。
  12. 三原朝彦

    三原委員長 続きまして、伊藤茂君。
  13. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 二、三点質問させていただきたいと思います。  一つ災害関係でございますけれども、今もそれについての議論がございました。いろいろ予算委員会などで議論がなされております。一つだけ要望を含めて大臣の決意を、気持ちをお伺いしたいのですが、やはりこの経過を振り返ってみますと、国際的に私どもがよき日本人であり、また、よき国際人であるという評価をしていただけるような対応を、緊急の課題も、これからの問題についてもしなければならぬということを痛感いたします。  そうなりますと、幾つかの問題を考えなければならないわけでありまして、けさも同僚議員から、その問題で現地へ行ってまいりました報告を伺っておりましたが、外国人の方で死亡された方がおととい現在で二百三十一人、まだ遺体の確認のできない方と申しましょうか、四十六遺体あるというようなことも伺いました。いろいろな意味での努力をたゆみなくしなければならないというふうに思います。通訳などのボランティア方々もたくさん参加していただいたようでございますし、また、外国人の皆様へのNHKの放送もございますし、また、外国人の皆様の御相談の相談所も何カ所か設置されているというふうに伺います。  それらのところも行ってまいりました報告を伺いましたら、一つはやはり弔慰金とか義援金とかを差別なくいただけるようにしていただきたい。これにつきましては外国人登録のあるなしとか、これは医師の場合なんかでも、けがをなさった場合にそういうことを区別なく受け付けてやっておられるわけでありまして、そういう手配をお願いしたい。  それから、今後、御商売をなさっておられる方々の金融とか融資とか、いろいろなこともございます。これらにつきましても、民族を超えてと言ってはなんですが、やはり国籍の差を超えて特別の対応をして私どももやっていく。何かやはり、外国人の皆さんに差別があったとかいうことのない手配を、大事なとき、緊急のときでございますから、しなければならないというふうな要望が強かったということを伺っております。  それらについてぜひ積極的にやっていただきたいと思うわけでございますが、いかがでございましょうか。
  14. 河野洋平

    河野国務大臣 私も先週末現地で、神戸におられます総領事の方々を初め何人かの方々からお話を伺ってまいりました。  今、伊藤議員からお話しのように、一つは、兵庫県というところは外国人登録者数が九万八千人というのですから、これは兵庫県全体でございますけれども、それはやはりかなり神戸、その辺に集中しておられるに違いない。相当多数の方々がおられる。そうした方々が今度の災害に遭われた数というものは、大変多数に上っておられると思います。お亡くなりになった方々の数につきましても、実はなかなか数が掌握できずに、兵庫県などに伺うと二百人を超えているというふうに伺っておりますが、まだ残念ながら正確な数が最終的に確認ができずにおりますが、この確認も努力中でございます。  今御質問をいただきましたように、外国人被災者支援ということにつきましては、現在我々が承知しておりますものは、災害弔慰金、災害見舞金、災害援護資金、公営住宅への入居、雇用保険の支給、中小企業に対する災害融資、災害復興住宅資金融資、こういったものについては、外国人であるがゆえに適用の対象から除外されることはないということは確認をいたしておりますが、それ以外に、例えば外国人学校支援をどうするかとか、気がつく範囲、それから現地へ行っていろいろお話を伺って、問題があると思われるものについてはできるだけ拾い上げて、私ども、できる範囲、御支援申し上げたいというふうに思っているところであります。
  15. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 大臣のお話にございましたように、今発生している事態の中ではいろいろ難しい問題がございますが、ぜひ努力をお願いしたいというふうに思いますし、しなければならないと思います。  それにつけましても、神戸でこのような事態が発生をいたしております。もし万が一これが東京、横浜とかに起きた場合なんかは、そういう在日外国人の皆さんとの関係でどうだろうか、それは各国の領事館とか在日公館とか外務省とか警察とかが把握できないたくさんの現実が発生をするということだと思います。それらを考えますと、何かそういう面も含めた国際的な協力のための御相談とかがあっていいのではないだろうか。もし外国で発生した場合には、あすは我が身ということもあるわけですから、そういうことが必要ではないだろうかというふうに思います。  私は、これは政府、それから、こういう災害の非常事態体制をどうするのかということでつくられるであろう方向というだけではなくて、やはり市民的、国民的と申しましょうか、いろいろな諸団体の参加などをいただきながらどうするのかという意味合いも非常に大きいのではないだろうかというふうに思います。そういう問題意識、お持ちでしょうか。
  16. 河野洋平

    河野国務大臣 確かに、コミュニティーといいますか、そしてネットワークのようなものがあるとないとでは大変な違いがあるのだと思います。  例えば、淡路島の北淡町というところへも伺いましたけれども、ああいう町になりますと、本当に軒並み被害をこうむっておられますけれども、そばを歩いているおじさんに話を聞くと、ここのうちには八十幾つのおじいさんがいて、二階の八畳間に寝ていたはずだということまでみんなわかっているというわけですね。したがって、被災すると同時に、だれがいないか、だれがどうしているか、じゃきっとここにいるに違いないというようなことがそれぞれわかるということがあるわけです。他方、都市の中に入ってしまうとそういうことはなかなかわかりにくいわけで、何かネットワークをつくるかしていない限り、なかなかそれは見つからないという問題があります。  しかし、総領事館、総領事の方の話を伺っても、なかなか一人一人を捕捉しているというわけにはいかないという事情もございます。せめて言葉の壁によって御不自由を感じないように、さっき議員お話しのように、例えば電話の相談窓口をつくるとか、あるいはNHKその他を通しまして外国語によるニュースを被災者に対して流すとか、そういうことが重要だろうと思いますし、それから、見てみますと、やはり総領事のところにみんな集まって、一緒に、一番心配のない場所ということで集まっておられるということもございます。もっとも神戸は総領事館があるのが六カ国しかありませんから、恐らくよりどころを求めて大変不安に感じていらっしゃる方もたくさんおられるに違いないと思います。  そうしたことをよく考えて、国際人、国際都市といいますか、国際都市として災害に対してどういう心構え、あるいはあらかじめの準備をしておくかということもよく考えなければならない大事なテーマだというふうに思いました。
  17. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 ことし直面している二、三のテーマについてお伺いしたいと思います。  いろいろな問題がことしございますけれども一つは、戦後五十年の節目、これまでの五十年を振り返りながら、これからの五十年と申しましょうか、展望を考えるという大事な節目、また、その節目にふさわしいさらなる活動を日本政府がなすべきときというふうに思っております。  そういうことを考えますと、私は、NPTもそうでございますけれども、国連の安保理常任理事国問題その他含めまして、やはり大きな世界の歴史的な変動期でございますから、日本日本にふさわしい積極的な努力をしていく。それから、冷戦時代につくられた既成の国際システムあるいは冷戦時代の既成の発想というものを超える、それにトライしていくという意味での努力をやっていく。そういう意味で申しますと、我が国のビヘービアに最もふさわしい点は幾つもあるわけでございます。  一つ、例えばNPTの交渉、七〇年に批准されてスタートをいたしましてから、国際情勢は激変をいたしました。四月のニューヨークの会議に向けまして、さまざまの交渉あるいは準備会議が行われております。過半数、無期限延長で獲得できるのかどうかというふうなニュースなども時々伺います。  考えてみますと、国際情勢は冷戦時代と大いに変わったわけでございますから、一つにはやはり世界の核軍縮を大胆に進める。それから、すべての関係の国が加盟してもらうように、国連のイニシアチブを含めて努力をする。そういうさまざまの努力をお互いにして、何かこの時期にふさわしい積極的な合意のために日本が努力をする。いい意味での時代にふさわしい積極的なまとめ役と申しましょうか、そういう姿勢をとることが大事ではないだろうか。外務大臣も、また村山総理も、国際的な場で、無期限延長支持と同時に究極的な核廃絶を目指して我が日本は真剣な努力をしていくということを言われているわけでございまして、そういう意味合いを含めますと、ベネズエラ案とかなんとかいろいろ出ている、具体的なことまでは論議する時間はございませんけれども、いい意味でのこの時代にふさわしいまとめ役というのか、アメリカともよく相談をしながらやっていくというふうな姿勢が非常に大事ではないだろうか。  もう二月に入りまして、そう時間はないわけでございます。そう考えますと、今までのさまざまのこの問題をめぐる活動から一歩踏み出した努力をしていくということが必要ではないかという感じを深く持つわけでございますが、いかがでございましょうか。
  18. 河野洋平

    河野国務大臣 NPTは、御承知のとおり核不拡散の体制をまずつくろう、そして究極的な核廃絶に向かう足固めをするという意味でも、私は極めて重要なものだというふうに思っております。NPT体制というものが国際的に普遍的な認識というものを得て、今百七十カ国に近い国々が参加をするという状況になっているわけですが、このNPT体制を今度は無期限に延長をするということに、我々今挑戦をしているわけでございます。  この問題は、幾つかの問題が、山がございます。核保有国と非核保有国とのそれぞれの思いというものがある。しかし、それは思いはそれぞれあったとしても、この問題、それぞれが理解しないとやっていけないわけですから、我が国は唯一の被爆国として、この問題については大きな発言権といいますか、あるいは大きく発言すべき立場にいるということをよく踏まえまして、核保有国に対しても働きかけをする、つまり核軍縮についての働きかけをする。少なくとも全面的核実験の禁止ぐらいはまとめてもらわなきゃ困るということを言い、他方、非核保有国に向かっては、やはり一歩ずつ前進をしていこうという呼びかけをするという立場に立たなければならない。私どもとしては、肝に銘じて努力をしたいと思っております。
  19. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 ぜひ積極的な努力をお願いしたいと思います。やはりこういう重要な問題について、この時期に我々日本という国がどのような努力をするのかということの意味合いは非常に大きいというふうに思うわけでございまして、ぜひお願いしたいと思います。  もう一つ伺いたいのは、APEC大阪の問題でございますが、十一月のことですから、ある意味ではまだ時間があるような気もいたします。しかし、先般のジャカルタの首脳会議でも、主催国の方では賢人会議その他、また国内外で大変な御努力をなさってあの成功があったというふうに思うわけであります。私は、日本で開催をされるというのはいろいろな意味で大事なときであり、また日本にとって重要なチャンスではないだろうかというふうな思いがいたします。  けさも、ちょっと読んでおりましたら、週刊東洋経済に、今長銀でやっておられる吉冨さんが、アメリカ重視とアジア重視を両立させる新しい経済外交を考えよう、彼らしいですね、書いておりましたが、アメリカとの包括協議など、苦しいさまざまな努力がございます。一面では、やはりアジアの重要性が高まってくる。対米それから対アジア、我が日本にとりましては二本足、足と言っては表現が失礼ですけれども、両方とも同じように重要な場だというふうに思うわけでございまして、そういう場に向けて、やはり一つは準備と申しましょうか、さまざまな発想を含めたものが練られていくべきではないだろうか。国連や世銀の場でも今までブラント委員会とかシュミット委員会などを始め、たくさんの国際的にいい役割を果たしていただいた、そういう検討の場がございます。アジアあるいは東アジアという部面でも結構だと思いますが、日本がそういう意味でさまざま貢献をする努力、威張らないでお役に立つ努力を組織していくというのは、我が国にとっては非常にふさわしいところであろうというふうに思うわけでございまして、そういうことを考えますと、早い時期にそういうことに着手をする。  吉冨氏は、大阪会議の二つの提案、一つは自由化問題について発展段階別自由化をという考え方を具体化したらどうだろうかとか、それからいわゆるマハティール構想などに関連をして、日本独自の案として、非NAFTA諸国を集めたパシフィック・アジア協議会をつくったらどうかとか言っておりますが、私も、これについては判断がまだございませんから是非は言えませんけれども、何かやはりユニークであり貢献できる、そういうものを持って、せっかく日本で開かれるものを意義あらしめるものにする、それから日本世界の場でいい勉強と努力をするという姿勢をあらわすようにするということが必要ではないだろうかと思うわけでございまして、そういう意味で申しますと、十一月と申しましてもそう時間があるわけではない。そういう準備と検討などをスタートさせることが必要ではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  20. 河野洋平

    河野国務大臣 十一月といいましても、考えてみればもうすぐでございまして、私どもとしてももう準備に取りかかりつつございます。  これはAPECの参加メンバーそれぞれに意見を聞きながら一つの方向性をつくり出していくという仕事は、そう簡単なことではないと思います。この議長国としての仕事をしっかりと日本がやれるかどうかというものは、このことはAPECの中における日本の存在というものを意義づけるために非常に重要だというふうに思っておりまして、一月の村山・クリントン会談でも、APECの会議に対してアメリカの協力お願いしてきたところでございます。  APECには幾つかの問題がございます。昨年、ボゴールでインドネシアがスハルト大統領のイニシアチブで自由化の方向を非常に大胆に高いレベルで方向性を打ち出された。二〇一〇年、二〇二〇年、こういう高い政治的な方向性というものは、おつと我々も思いましたけれども、これはこれから具体的に一つ一つ進めていくということになると、なかなか難しい問題もあるだろうと思います。しかし、方向性というものはもう出ているわけですから、この方向に向かってやはり年一年、着々と進めていかなければならないと思います。  しかし、APECの中には経済の発展段階は随分と差がございます。GNPの比較でいつでも大変な差があるわけでございまして、この発展段階における差をどうやって少し詰めていくかということも考えなければなりません。  したがって、APECに臨むに当たっては、自由化と同時に域内の協力関係、開発に向かっての協力関係、こういうことを車の両輪として進めよう、こういうことを言っているわけでございます。この車の両輪をうまく一定の方向性を持って動かしていくことができるかどうか、各国協力を得つつやらなければならないと思っております。  何回か準備の会合を十一月に向けていたしますが、その一回目の会合を二月十三日から福岡で始めるわけでございまして、この辺から各国の意見を伺いながら、一つの方向性を出していくという考えでございます。しかしながら、せっかく議長国としてやるわけでございますから、日本考え方というものもきちんと提示をしていきたいというふうに考えているところでございます。
  21. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 時間が参りましたから終わりにいたしますが、先ほど社会開発サミットについての議論がございました。トップの参加を含めて、我が国には最もアピールするにふさわしい大事な場でございますから、私どもも努力をいたしますので、先ほどの御答弁のように御努力いただきますようお願いいたしまして、質問を終わります。  ありがとうございました。
  22. 三原朝彦

    三原委員長 続いて、前原誠司君。
  23. 前原誠司

    ○前原委員 きょうは、NPTについて御質問をいたしたいと思います。  四月にこれの二十五年目ということで延長問題が来るわけでございますけれども、百七十カ国、二月にアルゼンチンが入るということでございますので百七十一カ国、過半数が大体八十六カ国でございます。見通しとして、現在、いわゆる無期限延長賛成が六十から七十というふうなことで、ある意味で票読みをされているということでございますけれども、この採決のあり方として、八十六を少しでも上回ればそれでいいというふうな態度で臨まれるのか、あるいは事柄の性格からして全会一致のような形に持っていくべきなのか、そこら辺、外務大臣としてはどのようにお考えになっているのか、ちょっとお伺いしたいと思います。
  24. 林暘

    ○林(暘)政府委員 前原先生御指摘のとおり、いろいろな意見をNPTの延長について各国持っております。四回準備会合をことしの一月までにやりましたが、コンセンサスということで、全会一致で延長期間を決めるというのは状況としては甚だ難しいという状況になってきていると思っておりますが、日本といたしましては、できるだけ大多数の国が賛成するような形の延長というものを探求していきたいと考えております。
  25. 前原誠司

    ○前原委員 今御答弁ございましたように、これは過半数を上回ればそれでいいというふうなたぐいの問題では全くないと私も思っておりまして、あと二カ月余りでございますけれども日本としてもできるだけの努力をしていただきたいと思います。  その具体的な内容についてお尋ねをしていきたいわけでございますが、先ほど伊藤委員からの質問にございました、核保有国が第六条に盛り込まれたような軍縮努力をさらにしていくのかどうか、また安全保障の問題、つまり核攻撃をしかけないとか、あるいは受けた場合のいわゆる援護といいますか核報復というふうな問題まで話を進めていけるかどうかでありますけれども、私は、もっと大きな問題というのは、このNPT自身が核不拡散ではない、つまりNPTを補完するようなものをたくさんつくっていくことが、真に核不拡散の体制強化につながるのではないかというふうな認識でおります。  例えば、現在NPTに加盟をしていない核保有国と称せられている国々についてでありますけれども、南米ですとブラジル、アルゼンチン、またアジアに目を向けましてインド、パキスタン、それから中東のイスラエルというふうな国々に対してどのような縛りをつけていくのかということが、一つ重要なことだと思っております。  きのう、そしてきょうと新聞に載っておりましたけれども、きのうは、エジプトのムーサ外相が朝日新聞社との会見の中で、イスラエルがNPTに加盟をする意思を示さなければエジプトもNPTから脱退をするというふうな発言が載っておりました。それから、きょうの新聞におきましては、エジプト、シリアそれから湾岸産油国六カ国の計八カ国が声明文を出しまして、エジプトに追随をした形でございますけれども、イスラエルがNPTに加盟をする何らかの意思を示さなければ、その八カ国についてはNPT脱退も辞さないというふうな発言がございました。これは非常に大きな問題ではないかというふうに私は思っております。  この二月の八日から十一日までエジプトのムーサ外相が訪日をされまして、河野外務大臣もお話をされるということでございますけれども、この点についてはどういう意見交換をされるのか、少しお伺いをしたいと思います。
  26. 河野洋平

    河野国務大臣 ムーサ外相とは、昨年二回お目にかかって、いろいろな話をいたしております。つまり、初めて会うわけではありませんから、かなり率直な話ができるだろうと私は思っております。経済問題もございますが、今議員お尋ねのNPTの問題あるいは国連改革の問題、こういった点は、ぜひ外務大臣とはお話をしてみたいというふうに思っております。  何と申しましても、エジプトはあの地の中核をなす国でございます。エジプトの意見というものは非常に重要だと私ども思っておりますので、NPTの問題にしても、よく我々の意見を述べたいというふうに思っているところでございます。  他方、イスラエルの去就というものも、至近距離にあるわけで、大変エジプトとしては深い関心を持たざるを得ない状況であるということはよくわかっておりますが、しかしいずれにせよ、国際的な不拡散体制というものは、世界の平和と安全を考える上で、これは不可欠の問題だと考えておりますので、よくお話を申し上げたい、またエジプトの意向も伺いたい、こういうふうに思っているところでございます。
  27. 前原誠司

    ○前原委員 イスラエルの、いわゆる中東における位置づけといいますか、これは非常に歴史のある話でありまして、これはまあ周知の事実でございますけれども、要は神様がユダヤ人の国をつくり忘れたというふうな歴史からさかのぼって、パレスチナ、アラブに対する不信感というものが非常に根強いというふうなことで、なかなかエジプト、シリアあるいは湾岸産油国等が圧力といいますか、かけても、歴史的な、肌で感じる部分から、イスラエルもなかなかすぐには乗りにくいというふうに私も思っております。  そうした中で、では何か日本がやれることはないのかということでございますが、一つ、二つ御提言を申し上げて、答弁をいただきたいわけでございます。  例えば、四月までに河野外務大臣がイスラエルに行かれて、イスラエルの根っこにひっかかっている部分は何なのか、また、日本がどのように協力できるのかというふうなことを率直に話し合う御用意が、このNPTの延長までにお気持ちとしておありなのかどうかというのが第一点。  それからもう一つは、いわゆるゴラン高原のPKOの問題でございます。ゴラン高原、一九七四年からPKOが派遣をされておりまして、今回カナダの部隊の一部を、輸送の部隊でございますけれども、小部隊でございますけれども日本が肩がわりをしてゴラン高原にPKOとして派遣をしてはどうかという国連からの問い合わせというものもあるわけでございまして、例えば日本がこのゴラン高原に行くことによって、日本は中東の和平について非常に強い関心を持っています、また、兵力引き離しについても、イスラエルの国益を守ることについて十分理解を示しておりますというふうなことで、てこに使えるようなものなのかどうか。いわゆるNPTの延長問題と絡めて、ゴラン高原にPKOを日本が派遣をするということがプラスになるとお考えなのか、てこになるとお考えなのか。その二点を外務大臣にお伺いをしたいと思います。
  28. 河野洋平

    河野国務大臣 私がイスラエルを訪問することがいいか悪いか、できるかどうかは別といたしまして、我が国としては、世界のNPT体制というものを大事にしていきたい、これを進めていきたいという強い希望を持っているわけでございまして、そのために我が国としてできること、我が国の役割としてできることをいたしたい、こう考えておりますので、今の議員の御主張も踏まえて、我々として一番効果的な方法は、我々ができ得る効果的な方法は何かということを考えたいと、まず思います。  それから、イスラエル、まあゴラン高原の問題でございますけれども、PKOをゴラン高原にという国連からの内々の話があったことは事実でございます。  これについては、かねてから申し上げておりますように、我が国はモザンビークでやり、ルワンダの難民支援ということでザイールに自衛隊を派遣をしていたという状況がございまして、一たんこれらの仕事が完結をして、戻ってきてから次の問題を考えようということで、両方から無事に全員帰ってまいりましたから、我々としてはゴラン高原の問題について十分慎重に検討してみよう、こう考えているところでございます。  これらの問題は、政府・与党、十分連絡をとってこの問題に対応したいと考えておりまして、目下検討中でございます。  いずれにしても、イスラエルがNPT体制というものが実効性があるのかどうかということについて懐疑的になっているというところに非常に問題があるわけでございます。こうした点を、本来核保有国がイスラエルに対する説得を行うということが効果的であるわけでございますけれども、先ほどから申し上げておりますように、日本としてもやるべきことは何か、効果的な方法は一体何があるかということを十分考えて、効果的な方法を、最も効果のある方法をとって、やれる範囲内で努力をしたい、こう考えています。
  29. 前原誠司

    ○前原委員 時間が迫ってまいりましたので最後の質問にさせていただきますけれども、今の問題の中で、再度お伺いしますけれども、ゴラン高原に対するPKOの問題の是非というものを、与党の中でも今一生懸命議論させていただいているところでございます。  こういう大震災が起こった後でございまして、自衛隊の皆さん方も一生懸命国内で復旧、復興作業に努力をされているわけでございまして、そういう時期の問題もございます。しかしながら、先ほど大臣、御答弁がありましたように、国連から内々の要請もあるというふうなことでございまして、カナダの輸送の小部隊の肩がわりというふうなものを、国連は日本を当てにしている部分もございます。  そこで、日本がその是非を考える場合に、我々もこれから与党の中でまだ煮詰めていくわけでございますが、その中でこのNPT問題を一つのいわゆるポイントとして、ゴラン高原に日本も、いわゆる中東和平に関心を持っている、そしてもちろん、アラブ、パレスチナの立場もそうでありますけれども、イスラエルの立場というものを十分踏まえて、中東問題に関して積極的に日本が関与していきたいというふうな意思を示す重要なポイントになり得るのかどうか、それをどういうふうに外務大臣として考えておられるか、再度お伺いをさせていただきたいと思います。
  30. 河野洋平

    河野国務大臣 中東和平というのは、国際社会が今大変重く見ているものでございます。我々としても、当然中東に対する関心は高うございます。ぜひこの中東和平について、我々も役割を果たさなければならぬというふうに思っております。  それで、ゴラン高原のPKOがそのことに直接リンクするかどうかということは別といたしまして、ゴラン高原のPKO派遣については、国連からの、先ほども申し上げましたように内々の打診というものがあったことは事実でございまして、私どもとしても、この後方支援業務というものが一体どういう状況であるのかということも十分慎重に検討をし、この問題に対応する必要がある、十分慎重に対応する必要があるというふうに思っているわけでございます。カナダが行っている部分についての交代要員、こういうことでもございますが、そこらをなおよく研究をしてみたいというふうに思っております。
  31. 前原誠司

    ○前原委員 今御答弁ありましたけれども、慎重に検討するということでございますけれども、もともとPKO法をつくるたたき台といいますか、お手本になったPKOでございまして、その部分については信頼性は持てるだろうというふうに思っておりますが、やはり国民の目から見て、日本がどういうかかわりを持てるのかというポイントが一番大切だと思いますので、その点も十分に踏まえて大臣に取り組んでいただきたいということを要望して、私の質問を終わらせていただきます。
  32. 三原朝彦

    三原委員長 引き続いて、東祥三君。
  33. 東祥三

    ○東(祥)委員 新進党の東洋三でございます。  まず初めに、先日の阪神大震災でお亡くなりになりました方々に深甚なる哀悼の意を表しますとともに、また御遺族の方々に弔意を表明させていただきます。そしてまた、負傷された方、今なお被災生活を強いられている方々に対し、心よりお見舞い申し上げる次第でございます。  さらにまた、自分自身も、また家族の方々も被災されておりながら、全力投球で闘って取り組んでくださっております自治体の方々、またNGO方々、さらにまた外国からの、各国政府そしてまた国際機関NGO方々に対し、真心のその支援に対して心から御礼を申し上げる次第でございます。  そこでまず初めに、当外務委員会が直接また間接に所管する事項であろうと思われますこの震災対策との関連で、幾つか初めに質問させていただきたいと思います。  外務大臣が四日の日に現場に行かれて、私は翌日行ってまいりました。私の問題意識は、在日外国人方々がどのような被災状況にあったのか、とりわけ領事館がどのような被害に直面されてしまったのか、このことを若干なりとも調べてみたい、そういうことで行かせていただきました。結果的には、韓国の総領事、そしてまたドイツの総領事にお会いさせていただきまして、とてもいいお話を聞かせていただきました。  韓国の総領事からは、ひょっとしてこの災害があったときに韓国の人たちが差別的な取り扱いを受けるのではないのかと大変心配しておりました、またその懸念が、今回のこの約二週間強に上る被災生活においても全く見られなかった、本当に日本の国民の皆さんに心から感謝申し上げます。さらにまた、韓国の総領事が、震災が起こった、そしてすぐ総領事館に駆けつけていく。ファクスもテレックスも電話も通じない。どのように本国と連絡をとったらいいのか。長田区の方まで自動車で走り出していく。渋滞だ。なかなか電話があるところまで行けない。ほとんど公衆電話はふさがっている。たまたま長田区の警察署が、ぽっと横を見たらあった。そこに駆け込んで身分証明書を見せ、快く東京の大使館と連絡させていただいた。とてもすばらしい協調関係があるなど聞かせていただきました。  また、ドイツの総領事からは、驚いた、何に対して驚いたのですか、日本国民の本当に沈着冷静な姿に大変驚きました、このように申されておりました。初動段階における政府が大変なミスをした、また危機管理体制がなかったから動けなかった。にもかかわらず、やはり日本は国民でもっているのかなということを改めて認識させていただいたものでございます。  そこで、これに関連して改めて幾つか政府にお聞きしたいのですけれども神戸には六つの領事館があって、大阪には十六の外国公館があると承知しております。その被害状況及び現在の業務遂行能力の現状について、まずお伺いします。
  34. 池田維

    ○池田政府委員 お答えを申し上げます。  神戸市には、ただいま東先生御指摘のように、六つの総領事館がございます。韓国、ドイツ、オランダ、インドネシア、フィリピン、パナマでございます。これら六つの総領事館はいずれも、程度の差はございますけれども、被害を受けました。なお、大阪の十六の総領事館については、被害はございません。  この六つの総領事館の状況でございますけれども、韓国とインドネシアにつきましては、損傷は受けましたけれども既存の事務所で執務を再開しているという状況でございますし、一応、全面的ではありませんが、一部機能は再開しております。それから、パナマにつきましては、既存の事務所で業務を再開する準備中ということでございます。それから、フィリピンとオランダにつきましては、かなりの損傷を受けたということもありまして、大阪に暫定的な事務所を設置いたしまして執務を行っているというのが現況でございます。それから、非常に大きく事務所が倒壊して使用不能になっているのはドイツでございまして、ドイツの場合は神戸市内のドイツ人学校で一時執務中ということでございまして、神戸市内あるいは大阪市内の仮の事務所への移転というものを検討中であるというのが大体の状況でございます。
  35. 東祥三

    ○東(祥)委員 ありがとうございます。  次に、日本人の被害者数については、各新聞が警察庁の発表を載せておりまして、ある意味で簡単に知ることができるわけですけれども、在日外国人の被害状況については触れるものが少ないのではないか、このような印象を持っております。当該地域が壊滅的な被害を受けておりますために、これはある意味でいたし方ないのかもしれませんけれども、なかなか日本報道ではわかりづらい、こういう印象を持っております。政府は在日外国人の被害状況を、現在までのところどのように把握されているのか。警察庁の方をお呼びいたしておりますが。
  36. 中島勝利

    ○中島説明員 今回の大震災におきまして、外国人の方も相当数亡くなられております。現在、死亡された方々の、国籍等を含めまして早急に確認作業を進めているところでございますが、まだ少し全体数をきちっと把握するという段階には至っておりません。
  37. 東祥三

    ○東(祥)委員 死亡された方というのはどれぐらいいらっしゃいますか。つまり、判明されている範囲内でどれだけいらっしゃいますか。
  38. 中島勝利

    ○中島説明員 現在、死亡者のうち外国人と確認をされている方は約百名に上っております。しかし、まだもう少しふえるのではないかと思いますけれども、さらに氏名等から外国人と思われる方々を抽出いたしまして、その国籍等の調査を、懸命に確認作業を行っているところでございます。
  39. 東祥三

    ○東(祥)委員 これは警察庁はどこまでやられるのですか。その判明されている方、今百名ぐらいだ、時間がかかればもっと判明してくるかもわからない。そして、その身元判明が種々の状況下において非常に難しい、そういうふうになった場合、その御遺体はどうされるのですか。
  40. 中島勝利

    ○中島説明員 まずいろいろの確認作業を行って、最終的にどうしても確認ができないという場合がございましたら、その場合は当該市区町村の方に、御遺体並びに所持品がございましたらそれをつけましてお送りいたします。
  41. 東祥三

    ○東(祥)委員 その後はわかりますか。最終的な確認作業をして、そしてわからない、市町村に御遺体を引き渡される。その後、市町村はどうするのですか。
  42. 中島勝利

    ○中島説明員 ちょっと、私どもの所管外でございますけれども、死体というものを取り扱っている流れの中で、私の知っている限りを申し上げたいと思います。  まず、私どもが市区町村にお送りいたしますと、市区町村長は、ある程度のまた届け出やそれから確認等が外部からございますので、そういう期間を経て、埋葬をされてそのお骨を管理するということになろうかと思います。
  43. 東祥三

    ○東(祥)委員 新聞報道、またその他の資料を見ますと、二百三十九人の方がお亡くなりになっている。こういう情報もあるのですけれども、今警察庁の説明員の方に説明していただいた情報が、私は一番適切なんだろうと思います。そういう意味で、まだ確認作業が済んでいない。またそれが終わって、市区町村にすべてのデータが渡される段階でぜひ報告していただきたい、このように思うのですけれども、よろしくお願いします。  次に、本来、大使館あるいは領事館の任務には、自国民の利益を保護するあるいはまた援助することが含まれていると推察いたします。ただ、先ほど池田官房長の方からお話がありましたとおり、領事館それ自体が被災に遭って業務遂行不能になっている、例えばドイツの領事館は粉々になってしまって、中にある貴重な資料もまだ取り出せない、こういうふうにおっしゃっておられました。  そういう意味で、自国民保護というそういラマンデートがあるわけですけれども、それが実質的にできない、そういう状況のときに、日本政府として領事館に対してそれなりの支援というものをしているのかどうなのか、この点についてお答え願いたいと思います。
  44. 池田維

    ○池田政府委員 外務省といたしましては、地震発生後、現地に本省から儀典の担当の事務官を派遣いたしまして、各総領事館と連絡をとらせまして実情を把握し、それから総領事館側の要望を聴取いたしました。そしてその要望事項を兵庫県であるとか神戸市に迅速に伝えまして、それからまた、外務省あるいは日本政府全体としてやるべきことについては可能な限りの支援を行っていく、行っていきたいということでやっております。  ただいま御指摘のございました、例えばドイツの総領事館について、入っておりましたビルが一部倒壊して、そこのビルの中の公的な文書であるとか物資がとれなくなっているということで、その点につきましても、兵庫県、神戸市と連絡をとりまして、その後何とかそこから物を出すということで協力をしてもらっております。  そういう意味で、できる限りの情報あるいは支援というものを供与するようにということで努力いたしております。
  45. 東祥三

    ○東(祥)委員 次に、先日の報道では、義援金の中から被災者一人当たりにつき十万円の見舞金が支払われる、これとは別に国から弔慰金として、生計維持者の遺族には五百万円、その他の人には二百五十万円が支払われているようです。報道によりますと、「外国人といえども「住民であるし、「住民」とかき括弧しているわけですが、その住民には弔慰金が支払われているようですけれども、まず、この「住民」の定義は一体何なのか、教えていただきたいと思います。
  46. 中山和之

    ○中山説明員 御説明申し上げます。  災害弔慰金は、災害により死亡した住民の遺族に対しまして市町村が支給するということに災害弔慰金等の支給に関する法律の三条でなっておりまして、その場合の「住民」と申しますのは、その「市町村の区域内に住所を有する者」、その「住所」と申しますのは、「各人ノ生活ノ本拠」を指すということから、災害弔慰金を支給するか否かにつきましては、生活の本拠がどこにあるかによって判断されることになるというふうになっておりまして、国籍は要件とされてないところでございまして、このため、永住、定住の外国人の方はもちろん、企業の駐在員や留学生も一般的には日本国内に住所を有しているというふうに考えられますので、この災害弔慰金の対象になるということでございます。  ただ、外国から一時的に来られました旅行者、それから不法滞在の外国人の方につきましては、一般的に日本国内に住所を有しているとは認められませんので、災害弔慰金を支給することは困難であるというふうに考えております。
  47. 東祥三

    ○東(祥)委員 わかりました。  ビザが切れちゃった人はどうなりますか。
  48. 中山和之

    ○中山説明員 ビザが切れたような方でも、ケース・バイ・ケースで、そこに生活の本拠があるというふうに認められるような場合には当然支給されるというふうに理解しております。
  49. 東祥三

    ○東(祥)委員 同じように、負傷した方に対しての治療あるいは治療費、この取り扱いはどういうふうになっていますでしょうか。
  50. 今田寛睦

    ○今田説明員 医師法の上におきましては、診療に従事いたします医師は、診察治療の求めがあった場合、正当な理由がなければこれを拒んではならないという規定になっております。したがいまして、例えば医療報酬が不払いだというふうなことがあっても、これを理由として診療を拒むことはできないというふうになっております。  以上でございます。
  51. 東祥三

    ○東(祥)委員 診療は拒むことはできないというのはわかるのですが、短期滞在者でたまたま被災に遭ってしまった、お金も持ち合わせがない、国民健康保険にも、健康保険にも入っていない、そういう人たちの治療費はどうなるか。
  52. 今田寛睦

    ○今田説明員 その方が在留する資格がある場合は、当然国民健康保険等の適用がなされておりますので、その適用によって対処するということになりますが、不法等で治療費が払えないというようなことが仮にあったとしても、その場合に、その方の治療がどうしても必要だという場合には医師はこれに応ずる義務があるというふうに説明を申し上げたわけでございます。
  53. 東祥三

    ○東(祥)委員 その場合、費用の問題が起こると思うのですね。諸外国でも、日本の方が交通事故に巻き込まれてしまった。それで、観光ビザで行く場合、ちゃんと保険を掛けていけばいいのですけれども、掛けていかないでそういう事故に巻き込まれてしまった人がいる。日本人が例えばアメリカでそういう事故に遭遇したときに、基本的に本人がお金を払う。しかし、そのとき持っていない。その場合は、日本の領事館あるいは大使館が立てかえるか、あるいはまた家族に連絡して家族から送金してもらうか、こういう処置がなされていると思うのですけれども、たまたま想定される例として、不法滞在者の方々も何人かいらっしゃる。それが今回の震災によって、ある意味であらわれてきたということも聞いております。  そういう中で、あるのかないのかよくわかりませんけれども、もしあった場合、お金もない、また本国とも問い合わせがなかなか難しくなってしまう。お話のとおり、治療することを拒むことはできないと言っているわけですけれども、また拒めない、逆を言えば治療を受けられる、しかし現実に状況を見たときに、治療をしちゃった後何も持っていない、これはどうなっちゃうのでしょう。
  54. 今田寛睦

    ○今田説明員 一般的に不法等で当然保険も入っていないという場合もあるわけでございますが、その場合にも治療を施す義務が医師にある以上、その費用をかぶっておりますのは医療機関、こういうことに結果的にはなるわけでございます。  この不法滞在者等の医療機関がかぶってしまっている医療費をどのように取り扱うかという点につきましては、これは今回の災害にかかわらず一般的に存在する問題でございますので、これらについて医療機関に御迷惑をおかけしていることをどのように対処すべきかは、現在検討しているところでございます。
  55. 東祥三

    ○東(祥)委員 これは前向きに検討しているのですか。それとも、後ろ向きに検討されているのですか。
  56. 今田寛睦

    ○今田説明員 不法という状況にはあるにもかかわらず検討させていただいているというふうに御理解いただければと思います。
  57. 東祥三

    ○東(祥)委員 オーバーステイを余儀なくされている人のビザ扱いはどうなりますか。
  58. 下野博司

    ○下野説明員 御説明いたします。  基本的には、地震等による災害によって交通途絶等によって在留期間内に在留期間の更新申請がなされなかったということでございますので、その期間が経過後、出入国管理官署に出頭できるような状態になった時点で、旅行者が最寄りの出入国管理官署においでいただいて申請をしていただければ、特別に更新の申請を受理するという取り扱いにしております。
  59. 東祥三

    ○東(祥)委員 それで、外務大臣にお聞きしたいのですが、外務大臣も現場に行かれて各総領事館の方々ともお会いになったというふうに聞いております。外務大臣にお聞きしたいことは、在日外国人あるいはまた領事館に対しての政府のありようというよりももっと広い角度で、今回一連の予算委員会における質疑、さらにまた集中審議等を聞いていて、基本的に危機管理体制をつくらなければならない、またそれが欠如していた、この点においてはコンセンサスがある意味ででき上がっているんだろうというふうに思います。  その上で、今度は外国支援、これを受け入れるのか受け入れないのか、この問題も国内における危機管理体制をつくるのかつくらないのかということに依存してくると思うのですけれども外務大臣のお立場として、将来危機管理体制をつくる、そのつくる上で外国支援というものを受け入れるということを前提にしてっくり上げるのか、それともFEMAみたいな形で、基本的にお金と物資、それだけを受ける、そして人員は基本的に受け入れない、こういう体制でお考えになっているのか、その点について外務大臣の御所見をお伺いしたいと思うのです。
  60. 河野洋平

    河野国務大臣 危機管理体制をつくるときに、外国からの支援を受け入れることを前提に体制をつくるかどうか、こういうお尋ねだろうと思いますが、外国からの支援というのはまさに善意に基づくものでございますから、善意に基づくものを当てにして、前提にして体制をつくるということはどうかと思うのです。むしろこういう災害、大規模災害があったときには近隣諸国が協力し合おうではないかというような、国境を越えたそういうネットワークといいますか、そういうものをつくったらどうかという御提案であれば、これはまた一つの検討のテーマではないかというふうに思うのですが、緊急体制外国支援を前提とするかどうかと言われると、これはどうも前提としてやりますというふうには言えないだろうと思うのです。しかしながら、今回の経験を踏まえれば、そういう善意申し出があったときに、これにどうこたえるかということはやはり考えておかなければならないことであろうと思います。  今回の私の経験を少し申し上げれば、非常に難しかったのは、国からの支援というよりはNGOといいますか、ボランティアといいますか、そういう外国からの方々をどうやって受けとめるかというのは非常に難しいという感じがいたしました。それは国内ボランティア組織あるいはNGO組織のような受け皿がやはりないと、政府対政府という話ではなくて、NGO対公的機関というものの訓練が正直余りできてないものですから、我が方の公的機関も、NGO、特に外国NGOに対してどう受けとめればいいかということになると、ほとんど経験がないと言っていいかと思います。  これは国内ボランティアに対しても、公的機関がボランティアにどう対応すればいいかということについては、十分なノウハウが今あるかどうかということになると、これも今回の予算委員会での議論にもございましたように、交通費をどうするなんという話から、保険をどうするか、さらにさまざまな問題についてどういう配慮が必要かというようなことは、やはり十分な経験もないし、ノウハウもまだなかったのではないかという気がいたします。  これはちょっと国内の問題ですが、国際的に見まして国際的な支援にどう対応するかというのは、これはケース・バイ・ケースとしか言いようがない。今回のように都市のど真ん中、コントロールタワーに直撃を食ったというような状況と、そうではない、少し外れて、コントロールタワーはちゃんとしているという状況とでもやはり少し違うだろうと思います。  しかし、今回の本当にさまざまな経験を通して、我々がどういう体制があればさらによかったかということは、よく考えなければならない問題だというふうに思います。
  61. 東祥三

    ○東(祥)委員 基本的には、大臣は、外国支援というのは善意を前提にしているわけですから、善意を前提にした支援というものを取り入れた管理体制というのはあり得ない。僕はそのとおりだろうというふうに基本的に思います。そういう意味では、危機管理体制というのは、予想していないときに起きるわけですから、それに対していかに国内的に十分なる体制を整えることができるか、そういう点においては全く基本的に認識を一にする、こういうふうに私は思います。  ただ、今回の震災を通じて、私は、外国からこれほどまでの支援が来るのかと、ある意味で驚いてしまいました。日本というのは諸外国に対して基本的に、まあ戦後間もないころいろいろなところから支援が来たというふうに聞いておりますが、それ以後は基本的に援助国だった。そしてそれが今回の大震災によって、六十数カ国ですか、もっとふえているのかわかりませんけれども世界各国から日本に対して援助申し出があった。これは、ある意味で国際社会は極めて敏感になっているのだな。日本援助国として今日までずっと来ましたけれども、逆にこの問題を通じて、ある意味で被援助国になった、被援助国の気持ちというのもまた、改めて再認識しなければならないということを僕は特に感じました。  この点について、外務大臣としてどのようにお考えになっておられますか。
  62. 河野洋平

    河野国務大臣 先ほど、もう少しお答えを申し上げればよかったのですが、それでは基本的に外国からの善意支援というものを受け入れるのか受け入れないのかというお尋ねもたしかあったように思いますが、私は、善意支援を基本的に受け入れないという判断はないと思っているのです。我が国は、やはり国際社会の一員としてお互いに助け合って生きるということを大事にしていかなければいけないわけで、善意支援は、素直にこの善意は受け入れるという気持ちを持っていることが大事だというふうに思います。ただ、現場の問題とかニーズが合うか合わないかとか、そういう問題はまた別として、善意の申し入れを基本的に断るなどということではないということを、まず申し上げておきます。  それから、今議員がお話しになりました外国からの支援について、国際社会の中で、やはりお互いに助け合うということの重要さというものがある。特に欧米諸国には、個人的にも、ボランティア活動をするということの意味というものを非常に大事に、重要に思い、なおかつ、それは日ごろからそういうことに非常に自然に入っていくという生活態度がある。そういう国が世界じゅうにたくさんあって、そういうふうに日本の国もやはりなっていかなければいけないんだというふうに私は思っております。  これは教育の問題であるといえばまたそういうことでもあるかもしれませんが、ただ単に学校教育というだけではなくて、社会教育といいますか、我々がやはり日常からそういう問題意識を持っているということが重要なのではないかと思います。
  63. 東祥三

    ○東(祥)委員 それでは次の、本題に入らせていただきます。  まず初めに、外交政策全般と申しますか、素朴な質問をさせていただきたいと思います。  ちまたでは、今言われていることではありませんけれども、数カ月前に何人かの方々から、政治家というのは一体何なのか、とりわけ今の政治家は、大臣になってもあるいは総理になっても、何をやるかということが明快ではないのではないか、総理になること、また大臣になることそれ自体が目的になっちゃっているのではないのかということを言われておりました。そのとき、そうかなと私自身思っておりました。また、図らずも今回の大震災を通じて、ある意味でそのことが証明されてしまったということも言えるのかもわかりません。  そういう意味では、私は外務委員会に今回入れていただきまして、外務委員会質疑をさせていただきながら、外交というのは一体何なんだろうということを本格的に、外務大臣と時間のある限り質疑をさせていただきたいな。  また、河野大臣は、長い政治生活の中で、そして今回非常に難しい局面でありますけれども外務大臣の職を受けられた。とするならば、当然、外交という問題に関して、今までの長い政治生活を通じての見識と、そしてまた経験を踏まえてこの職を受けられたのだろう、そのように僕は思うわけです。  したがって、まず初めに、大変ぶっちゃけた質問で申しわけないのですが、外交とは一体何なのか、この点について外務大臣の御所見を伺いたいと思います。
  64. 河野洋平

    河野国務大臣 まず政治について申し上げたいと思いますが、政治をやる心構えというのは、私は、最大多数の最大幸福だというのがまず基本だろうというふうに思っているわけです。  外交ということを議員お話しになりましたけれども、外交にはさまざまなレベルがあって、日本の国の外交あるいは外交目的というものにも、国の力によって徐々にそのレベルが変わってきているというふうには思います。しかし、基本的に、国益を踏まえて国際社会の中で日本の立場というものをどういうふうにつくっていくかということは非常に大事なことだというふうに思います。
  65. 東祥三

    ○東(祥)委員 非常に難しくて、僕もまだ勉強途上ですから、いろいろ本当に素朴な質問をさせていただいて申しわけないのですけれども、ぜひ教えていただきたいのですけれども、百二十二回国会における河野外務大臣の外交演説、これを読ませていただきますと、「外交の目的は、言うまでもなく国際政治の現実を踏まえて着実に国民の利益を図っていくことにありますが、国家間の相互依存が深まる中、」云々とあります。外交の目的というのが書かれているのですね。「国際政治の現実を踏まえて着実に国民の利益を図っていくこと」にある。  今、国益というふうにおっしゃいました。この場合、国益というのは、外務大臣にとってはどのようにお考えになっていますか。
  66. 河野洋平

    河野国務大臣 国益は、国民の利益と言いかえても全く別のものだとは思いません。
  67. 東祥三

    ○東(祥)委員 外交というより、対外政策というふうに言った方がいいのかもわかりません。  対外政策の基本的な構成要素は、一つは外交であり、もう一つは安全保障、そういう問題なんだろう。これがパッケージされて対外政策というものが成り立っているんだろう。その目的は、今おっしゃったとおり、国民の利益なんだろう。  私は、よくわからないのです。つまり、二十世紀後半支配してきた東西冷戦構造が幕をおろされた。そして新しい時代を今現在迎えようとしている。そして当然、外交そしてまた安全保障に携わる人々というのは、この新しい時代にどのように取り組んでいったらいいのか、こういう主体的な問題意識というのが出てきているんだろう。  世界的に見ました場合、共産主義勢力、これが決定的に後退した、そしてまた、アメリカをある意味で中心とする諸国間の協調体制が実現しつつあるのかな、さらにまた、国連の再認識、国連に対しての再評価が行われてきている。  日本においても、ある意味でいろいろなことが起こってきた。つまり、新しい安全保障のあり方ということも当然考えていかなければいけない、さらにまた、国連安保理常任理事国入りの問題についても議論が深まってきているのか、これはきょう質問させていただきます。さらにまた、PKOのあり方についても、さらにまた、アジア諸国の勃興ということをとらまえた上での日本とアジアとの関係、さらにまた、日米安全保障体制の再評価、一連の問題があるわけです。  ところがどうも、教えていただきたいのですが、吉田ドクトリンというのがある。外交方針として、まさに吉田元総理は骨身を削って日本の将来というのを考えた。僕は一九五一年生まれですから、一歳のとき、一九五二年、サンフランシスコ講和条約、まあ多数派講和条約、その年に日米安保体制というのがつくられているわけですね。日本の独立とともに、日本のあり方、対外政策というのはある意味で決定された。そして、その基本的な考え方は、言うまでもなく、これは質問事項を出していませんが、基本的に三つの特徴があった。西側に日本は所属する、そしてまた安全保障に関してはアメリカに依存する、第三番目の特徴として、経済復興に専心していく、簡単に短絡的に言えば、こういうことになるのだろう。  冷戦構造が崩壊した、そして現実に東西のどちらにくみするかというものはなくなったのじゃないか。共通の脅威であった旧ソ連邦というのが基本的に崩壊した。そうした場合、当然日本の対外政策、あるいはまた外交政策というものは変わっていかなくてはいけないのじゃないのか。これを私は河野大臣から、今どのように外交方針というものをとらえているのか、外交方針の目的と、さらにまた、その目的を達成するための手段はどこにあるのか。安全保障に関しては、吉田ドクトリンの場合は日米安全保障体制でした。そして目的は経済復興でした。そしてまた、自由、安全、繁栄、そういう言葉を使っていらっしゃったと思います。それを達成するために、結局経済復興にしのぎを削ってきて今日の状況が得られた。  国際情勢は大きく変化しました。それを踏まえた上で、日本の外交方針というものを、吉田ドクトリンと同じなのか、それとも変化した状況をとらまえた上でどのように河野大臣がお考えなのか、ないのかどうなのか、みんなでつくっていこうとするのか、その辺のことをお聞かせ願いたいと思います。
  68. 河野洋平

    河野国務大臣 日本の外交は、議員お尋ねのように、随分と変わった部分もあります。しかし変わらない部分もあると言っていいと思います。  東西の冷戦が終えんを遂げる。これはもう議員がお尋ねのように、かつては西側、東側、東西にらみ合って、自分が西に帰属しているか東に属しているかということが非常に大きな問題であったわけです。我が方は西側にいて、アメリカとともに西側陣営ということでいたわけです。当時は自分が西側にいるということを鮮明にするだけで、西側諸国との間には信頼関係、友好関係というものは築きやすかったわけですね。  ところが、その東西の冷戦が終えんするということになると、それはもう西側だという言い方はほとんど意味をなさなくなるわけで、かつてのように、自分たちは西側にいる、我々は西側にいるということでできていた秩序というものはなくなった。ということになると、今や一つ一つの国と丁寧に信頼関係を構築する必要ができてきたと考えなければならないと思います。  他方、日米関係というものは、これは我々にとって極めて重要な二国間関係であって、これから先も恐らくこの日米関係というものを基軸にして、日本はアメリカと協力して国際社会のために貢献をしていくという状況は変わらないと見ていいと思います。  吉田ドクトリン、吉田大先輩が日本政治の中核におられて方向性を明確に打ち出された、あのときに比べて、日本の国は経済力という点で全く違う状況になっておりまして、あの当時はまさに経済復興ということがその目的であったわけでありますが、我々は今経済復興を目指しているわけではなくて、むしろ我々、先輩が汗を流して培ってくれたこの経済力をいかに国際社会のために使っていくかということもまた重要な要素になってきているわけです。それは、その意味は、国際の平和と安定あるいは持続的な成長、こういったことまで考えていくという役割を我々は担うところまで成長してきたということを考えなければならないと思います。したがって、経済政策においては、変化もあり、しかし基調として変わらない部分もあるというふうに考えていただかなければならないと思います。  それで、今、国際社会の中でアジア・太平洋の経済というものに大変明るいスポットが当たっているということから、国際社会はアジア・太平洋というものに非常な注目をしていますけれども、我々の周辺、アジア・太平洋の中には、それは華々しい経済成長と同時に、またそうではない部分もあるわけで、我々はアジア・太平洋のために何をしていくかということもまた相当真剣に考えなければならない部分があると思います。  国際社会に我々がどういう役割を担うかということは、その時代その時代に変わってくると思いますけれども、しかし、目指すは国際的な平和と安定、そしてそれが国民の利益に結びつくという考え方であろうと思います。
  69. 東祥三

    ○東(祥)委員 国際社会の平和と安定、これをある意味で目指せる、そういう状況日本はなっているんだ、こういうふうにおっしゃっていると思います。  それを達成するための日本の力、国際社会における日本の位置づけ、安全保障の面に関してはお触れになっていないわけですけれども、基本的には、一九七六年宮澤元総理が言われたと思うのですが、米国から、核の抑止力に日本は依存していい、またそれを受けている、つまり日米安全保障体制そしてアメリカの核の抑止力の中に日本は存在している。この日米安保体制の、再評価なのか見直しなのか、これはよくわかりませんけれども、この点についてはどのようにお考えですか。  その上で、国際社会の平和と安定を日本が達成していける経済力を持ったんだ、国際社会の平和と安定というのは経済力だけでは達成することはできないのだろうというふうに僕は思うのですが、その位置づけをどこに置いていらっしやるのか。別の言葉で言えば、その手段、ツールですね、あるいはパワーというふうに言ってもいいのかもわかりません、それは一体何なのか。  済みません、ぶっきらぼうにまた大上段にこういうことを質問させていただくことは非礼なのかもわかりませんけれども、基本的に、僕の初めての質問でございますので、ぜひ河野大臣にこういう質問からさせていただきたいと思いまして、させていただいております。
  70. 河野洋平

    河野国務大臣 一月に村山・クリントン首脳会談がございまして、その首脳会談の席上、日米安保体制というものに対する評価、両首脳が非常に高い評価をしたということがございます。これは、昨今日米関係に、経済的な側面に非常に光が当たって、これは、経済的な側面というものは非常にいい場合もあれば非常に悪い場合もある。もっと言えば、一方がよければ一方が悪いという状況もあるわけで、それを少しバイアスをかけて、ぎくしゃくしているというふうにとらえ喧伝される、そしてそれがあたかも極めて不安定な関係であるかのように言われるという状況は、私は個人的に非常に残念なことだと思っておったわけです。  日米関係というのはもっと多様な多彩な関係であるし、そしてまた非常に安定した関係であるというふうに私は思っておりますし、中でもそれは日米安保体制という、安全保障という非常に重要な要素を双方が確認し合うということは極めて重要だというふうに思いまして、今回の日米首脳会談も、そうした点でも非常に意味のある会談だったというふうに私は考えておるわけでございます。  それは、日米安保体制が日米の安定した関係をつくるということは、とりもなおさずアジアの安定に非常に大きな意味があるということを考えれば、それはさらに、少し大げさに言えば、世界の中に安定した部分というものを大きくとっていく、つまり、ここは不安定だ、ここは安定している、ここは不安定だ、ここは安定しているなんということを見ていると、このアジアの安定というものは世界の安定の中で非常に意味のある部分だというふうに思うものですから、このことは非常に重要だと考えております。
  71. 東祥三

    ○東(祥)委員 ということは、基本的には吉田ドクトリン、これは基本的にその構造というのは変わっていない、こういうふうに理解してよろしいですか。
  72. 河野洋平

    河野国務大臣 先ほど申し上げましたように、吉田ドクトリンの中にも大きく変わった部分もある。つまり、経済の部分は大きく変わった部分がある。しかし、日米間の協調という意味では、我々はやはり日米関係というものを重視しようという態度は変わっていないというふうに考えていいと思います。もちろん、アジアを見てみますと、日米二国間だけでアジア全体のことを考えるというわけにはいかない部分もあると思います。中国をどう見るか、その他アジアの国々についてどう見るかということがありますけれども、日米の二国関係というものはやはり日本外交の基軸である、そう考えていいと思います。
  73. 東祥三

    ○東(祥)委員 そのことを前提にしてお伺いさせていただきますが、きょうはあと二つの点について質問させていただきたいと思っているのですが、一つはODA、そしてもう一つは国連の問題です。  今大臣がおっしゃってくださった基本的な日本の外交政策、対外政策というふうに申し上げていいかもしれません、その外交の分野におけるODAというのは、これは一つのツールですか、外交目的を達成していくためのツールですか。そして、国連というものはその外交政策の中でどのようにとらえられているのですか。まずこの二点。
  74. 河野洋平

    河野国務大臣 基本的に、ODAというものは本来はツールではないんだと思います。これは経済力の、経済の発展の進んだ国が開発途上の国に対して支援をするということでありますから、そのことをツールと考えてはいけないのだろうと、まず基本的には思います。しかし一方で、日本の国はアジアの国々に対して、あるいは世界の発展途上にある国に対して、ODAという援助を使って日本の国を理解してもらうという状況になっているということもまた事実だと思います。  したがって、我々は、ODA、これはもう一兆円を超えるという大変巨額な資金を使っているわけで、このODA資金によって日本の国に対する理解あるいは日本の国との間の友好的な関係、そういうものが育っていくということを心から望み、それを行っているというふうに考えております。
  75. 東祥三

    ○東(祥)委員 それでは、そのODAについて質問させていただきます。  政府は、ODA大綱を平成四年六月に閣議決定しております。この中に盛り込まれましたODA四原則に基づいて、基本的にODAの運用を図ってきております。この四原則というのは、基本的には、今外務大臣が言われた国際社会の平和と安定を妨げるような要因がちりばめられたときに、このODAの原則に照らし合わせてみて、ODAをどういうふうに使うのかという判断基準になっているのだろうというふうに思います。  そこで、たまたまパキスタンの例と中国の問題を通して質問させていただきたいのですが、その前に、このODA四原則、これは現在も有効なものとして守られているのかどうか、まず伺いたいのです。
  76. 河野洋平

    河野国務大臣 ODA四原則は、ODAを実施する上で非常に大事な道しるべというふうに思っております。
  77. 東祥三

    ○東(祥)委員 ミャンマーのアウン・サン・スー・チー女史、余りにも有名になり過ぎてしまっているわけですけれども、五年半を超える軟禁状態を強いられている。そして、もちろんこれがミャンマーの国内法に基づいて合法的に行われているのでありますれば、そう非難することでもないのだろうと私は思います。しかしながら、法規的には一月二十日で拘束期間が切れているはずです。  このような状況を踏まえますと、政府はこの点に関していかにお考えになっているのか、また、ミャンマー政府の同女史に対する最近の動きについても伺っておきたいと思うのです。
  78. 川島裕

    ○川島政府委員 御承知のとおり、ミャンマーは軍政のもとにありまして、国際的にもいろいろ人権侵害があるではないかという批判がかねてからなされている次第でございます。  ただ、昨年若干それなりに、政治犯の釈放とか少数民族との和解とかアウン・サン・スー・チー女史との対話とか、前向きの動きが出ていたので、これはうまくいくと前に動くかもしれないという期待感を持った次第でございますが、ことしに入りまして、まさに今先生御指摘のとおり、スー・チー女史が釈放になるのではないかなと思われたのが、結局そのまま軟禁が続いているということは大変残念でございます。  このスー・チー女史の処遇は、まさにミャンマーの民主化、人権状況をめぐる一つの象徴的な問題になっておりまして、我が国としても大変重視している次第でございます。軟禁問題が解決していないのは大変残念なんでございますけれども、とにかく問題のなるべく早い解決に向けた前進を期待している次第でございます。  我が国といたしましては、ミャンマーとこれは非常に伝統的な友好関係はあるものでございますから、そういうものを基本といたしまして、あくまでも対話を通じて、アウン・サン・スー・チー女史の早期解放を含め、ミャンマーの民主化あるいは人権状況の改善を粘り強く働きかけていく、こういう姿勢で対応しておる次第です。
  79. 東祥三

    ○東(祥)委員 ということは、政府は、近々その軟禁状況が解決されるだろう、さらにまた、ミャンマーが近々、我々が心配しているような形でその人権状況がますます悪化していくということではなくて、民主化が進展していくだろう、このようにお考えになっているということですか。
  80. 川島裕

    ○川島政府委員 昨年いろいろと前に動きましたものですから、その意味で期待感を持ったことは事実でございます。そして、ことしについても引き続きその前向きの動きが出るように、いろいろと働きかけをしたいということでございます。  これは言いかえますれば、民主化の目的というものはあるわけですけれども、どういうふうにミャンマーに対してアプローチをすると一番効果的かという観点から、考え方によりますれば、徹底的に締め上げるというか孤立させてしまうとかいうのもあるんだろうと思うのですけれども、我が方といたしましては、あくまでも対話を通じて民主化へ前向きに動くように働きかける、その意味で、全く相手にしないとか孤立化をあくまでも強めさせるというアプローチはとっていないということでございます。ただ、その結果としてどれぐらい進展があるかということにつきましては、確たることは申せないのが残念でございますけれども、引き続き進展を見るということでございます。  ただ、最近一つ、また少数民族でカレン族との戦闘がございまして、これまた心配いたしております。ただ、ミャンマーという国は一九四八年の独立以来、少数民族の鎮撫があの国の大変な課題でございまして、数え方によるのですが、百三十五部族がいるという中で、それをどうやって国をまとめていくかというのが大変な課題でございます。しかし、だんだんそういう少数民族対策等々が進めば、おのずから軍政府といえども、去年見られた民主化の流れをさらに進めるという可能性は大いにあるのではないかと期待したいし、それを期待した上で、引き続き対話を通ずる働きかけを続けるというのが基本姿勢でございます。
  81. 東祥三

    ○東(祥)委員 できるだけオープンにして話してくださって構いませんので、最近少数民族の本拠地でありますマナプロウが陥落された。嫌な見方をするわけではありませんけれども、アウン・サン・スー・チーさんの問題を、国際社会からの関心を引き離す意味でやったんではないのかという嫌な見方というのも存在します。これについてどのように見ておられますか。
  82. 川島裕

    ○川島政府委員 カレン族の戦闘が激化したわけでございまして、これはいろいろな情報がございまして、確たるところはつかみかねておりますが、カレン族の中の仏教徒勢力とキリスト教徒勢力との分裂に起因するものであるということのようでございます。  ミャンマー政府軍自身がどれぐらいこれに実際に関与しているかにつきましては、いろいろ情報があるわけですけれども、ミャンマー政府自体は、これは仏教徒勢力、この仏教徒勢力の方が政府との和解積極派で、キリスト教徒勢力の方が消極派ということのようでございますけれども、この仏教徒勢力の要請に応じて支援を行ったということは、ミャンマー政府自体が発表しております。これを額面どおりどう受け取るかは別といたしまして、ミャンマー政府自身は少数民族との和平努力自体は継続するという立場を表明しておりますので、我が国といたしましても、そういう努力を期待するという立場でございます。
  83. 東祥三

    ○東(祥)委員 そうしますと、問題は、今言われている内容をつぶさに聞いていけばやむを得ないのかな、つまりODAをこのままずっと持続させていくことに対して。  ただ、この四原則を読みますと、「基本的人権及び自由の保障状況に十分注意を払う。」こういう言葉で記されているのですね。だから、文言に書かれているものと、そしてODAの適用というのを定かには、プロでなければ、その現場をよく知っていない限り、民主化は一方において進んでいる、他方においては先ほど局長がおっしゃったとおり象徴的な存在としてあらわれちゃっているわけですね。ある意味で国際政治問題化している。国際社会の関心が非常に熱い。したがって、その問題が解決されない限りだめなんだ、そういう国際世論もでき上がってきている。しかし、現場を 知っている人にとってみれば、それはミャンマー全体の国民の動き、また、軍部が人権に対して今までやってきたことと比べるならば、数段いい方向に進んでいるんだ、そういうものというのはわからないわけですね。  これについて、だから一番初めに僕が申し上げたとおり、ODA四原則というのは現在も有効なのかどうなのか、この文章を読む限り、基本的人権の保障に十分注意を払う、これじゃ読み切れないわけですね。この点についていかがですか。
  84. 平林博

    平林政府委員 ODA四原則は依然として有効だと思いますし、世界的に見ても遜色のないものだと思いますが、基本的人権の動向に十分に注意を払うということにつきましては、そういう観点から、先生承知のように、ミャンマー政府には累次いろいろな点から友誼的なアドバイスを与える、あるいは注文をつけるということをやっておるわけでございます。  そういうことをしながら、しかし全体として基本的人権の遵守状況がよくなる方向でミャンマー政府に努力してもらう、そういう観点から、日本政府といたしましては、目的は基本的人権の尊重ということにありますが、できるだけそれを達成するために一番いい方法として、極力強圧的なあるいは一方的な制裁を極端に科すような政策はとらず、このODA大綱にありますような、二国間関係の全体を見きわめながら、また、総合的な判断を加えて最終的な結論に導くというようなことをやっておるわけでございます。  そういうことでございますので、先方の基本的人権の遵守状況あるいは民主化の状況が少しよくなれば、またこちらもそれに応じでそのような対応をとりながら、さらによい方向での動きを慫慂するというのが政府の政策であり、またODA大綱の趣旨がと存じます。
  85. 東祥三

    ○東(祥)委員 申しわけありませんが、よくわかりません。というのは、「基本的人権及び自由の保障状況に十分注意を払う。」、一方においてアウン・サン・スー・チーさんの問題がある。国際社会は、これで基本的人権また自由の保障状況に問題があるんじゃないのか、こういうふうに言っているわけです。  それで、局長は、これは十分有効であるというふうに言っているんですが、問題は、どのように解釈したらいいんですかということを僕は聞いているんです。したがって、それをちゃんと証明していただかないと僕は理解できない。つまり、五年前、ミャンマーはこういう基本的人権及び自由の保障に問題があった、それが五年たった今日、アウン・サン・スー・チーさんはまだ軟禁されているけれども、あのときから比べるならば明らかに飛躍的なこういう改善があった、そういうことを言ってくだされば、なるほどと僕は納得します。どうですか。
  86. 平林博

    平林政府委員 日本政府が数年前にミャンマーの経済協力政策を見直した際には、先生承知のように、原則は停止する、ただし、政変前から実施中の案件及び緊急的、人道的性格の援助についてはケース・バイ・ケースにて検討していく、こういうような方針でございました。現在でも、アウン・サン・スー・チーさんが釈放されていない状況のもとで、基本的にはこのようなラインでやっております。  しかしながら、先ほどアジア局長からも申し上げましたように、昨年、一定の前進が見られたというようなことがございました。軍事政権とアウン・サン・スー・チーさんの対話も二回にわたって行われました。またそれから、経済政策につきましても相当自由化の方針というか、民生の安定のための措置をとったというようなことがございます。したがいまして、日本政府としては、その程度に応じまして草の根無償援助のような、直接国民の草の根に届くような援助幾つかやったということでございます。  ただし、今のところ、まだ残念ながらアウン・サン・スー・チーさんが釈放されていない、こういう象徴的な事例は変わっておりませんので、円借款のような大型な援助はまだ時期尚早ということでございます。
  87. 東祥三

    ○東(祥)委員 次に、軍事力とのかかわり合いで、軍事支出とのかかわり合いで、今はミャンマーですれども、今度はパキスタンの例を通して質問させていただきたいと思います。  軍事力の増強というのは、近年、東南アジア諸国全体に言えることなんだろうと思っております。特にこの中でも、従来より核開発疑惑国とされているパキスタンにつきましては、昨年の九月、中国から核兵器搭載可能な弾道ミサイルを購入する計画があると米国で表面化いたしました。また、潜水艦を購入したり、戦闘機購入の商談も進んでいると聞いております。  さらにまた、昨年の八月、パキスタンのシャリフ元首相は、パキスタンが原爆を保有していることを確認すると言明しております。従来より、公式的には、核兵器をつくる能力はあるけれども製造しない、こういうふうにしてきましたパキスタン政府の外相であるアリ氏は、そのシャリフ発言を否定しているわけでございます。ただ、一国の元首相が核という重要な問題で根拠のないことは言わないだろう、このように思うわけでございます。核兵器搭載可能な弾道ミサイル購入と、そしてまた原爆保有が結びつけば重大な結果が予想される、このように憂慮の念を抱かざるを得ません。  したがって、まず、政府はパキスタンが原爆を保有していると考えているのかどうなのか、また、その点についての根拠についてお伺いしたいと思います。
  88. 平林博

    平林政府委員 パキスタン政府が原爆を保有しているかどうかにつきましては、いろいろな報道もあり、また発言もなされております。政府といたしましては、その都度先方の最高レベルまでこれを照会、追及することにしておりまして、過去においてもそういうことをやってまいりましたが、一等最近では、今御指摘のような前の首相の発言を受けまして、大使を通じまして、本人にも、また現職であるブット首相にもこの点を照会し、追及いたしました。  その結果、昨年の九月十日付でございますが、ブット首相から村山総理あての書簡におきまして、核兵器を製造する一定の技術はパキスタンはあるが、製造も所有もしていないという手紙が来ております。また、シャリフさん本人も、あれはカシミールで選挙運動中にやったんだけれども、自分の本意が十分伝わっていないということを、当時の村岡大使に言ってきております。  東先生御自身も、昨年の一月、政務次官としてパキスタンを訪問された際、ブットさんにこの問題を提起されましたことがございます。そのときのブットさんの返事は、核開発については平和的利用のみを行うという極めて限定的な政策のもとに実施しているのです、こういう御説明があったというふうに公電で拝見いたしております。  したがいまして、我々といたしましては、いろいろな報道はございますが、政府の責任者が累次にわたりまして否定している以上、また、別途の独立の証明がなされていない以上、技術は持っているかもしれないけれども核兵器は所有ないし製造はしていないという前提で対応していくのが妥当ではないかというふうに考えております。しかし、常時この問題を提起して、先方も十分に意識しているということだけは、我が方の政策の効果として言えるのではないかというふうに考えております。
  89. 東祥三

    ○東(祥)委員 私のことを直接名指しされてしまったので、僕、昨年の二月ですからね。今お話しをしている話というのは昨年の九月ですから、したがって時間の経過がある、そのことだけ明確に言わせておいていただきたいと思います。  その上で、これは四原則の第三番目というふうに言ってよろしいのでしょうか、「大量破壊兵器・ミサイルの開発・製造、武器の輸出入等の動向に十分注意を払う。」こう四原則、言っているのですけれども、この規定に従った場合、パキスタンにはどのように適用されているのでしょうか。
  90. 平林博

    平林政府委員 今申し上げましたように、大量破壊兵器の開発、製造の動向に十分注意を払うということでございますので、文字どおり十分注意を払いながら先方には常時この問題を提起しているということでございますが、今申し上げましたように、核兵器を製造ないし開発しているという確固とした証拠が今のところはないという現状でございますので、先方のいろいろな関係者の発言を一応信用して、他方パキスタンとの関係で、日本とは非常に重要な関係にあるとか、いろいろ重要な地政学的な地位にあるとか、あるいはパキスタンの高い開発ニーズがあるというようなことを踏まえまして、従来どおりやっているということでございます。  ただし、本当に大量破壊兵器の開発、製造が行われている、核を持っているというようなことが起こった場合には、対パキスタンのODA政策を見直すことになりましょうということは、私自身も在京の大使に申したことがございます。
  91. 東祥三

    ○東(祥)委員 弾道ミサイルが購入されているということが判明したらどうなりますか。
  92. 平林博

    平林政府委員 中国がパキスタンにそのようなミサイルを輸出しているのではないかという疑念のもとに、アメリカが一時中国に対して制裁を科したことがございます。その後、中国がミサイル技術拡散条約に関して一定のまたコミットメントを行ったために、アメリカはその制裁を撤回しております。  現在では、実は中国政府に照会し、パキスタン政府に照会しておりますが、大量破壊兵器用のミサイルにつきまして開発あるいは輸入を行っているということを先方が否定しているものですから、我々としては、先ほどの核の問題と同様でございますが、現在のところ先方の言い分を信用して先ほどのような援助政策を続けているということでございますが、これにつきましてもまた、本当に深刻な事態ということになりましたら、またそのときはODA大綱に即しましていろいろとパキスタン側と話さなければいけないのではないかというふうに考えます。
  93. 東祥三

    ○東(祥)委員 次に、中国についてでございますが、これは核実験、何度ももう予算委員会でも議論されていると思います。昨年は六月と十月の二回にわたって、また、対中円借款問題を議論されているときに何を考えているのかと思わざるを得ないほどのことをやられているわけですけれども、この問題に対してどのようにお考えになっているのですか。ODAとのかかわり合いでお答えください。
  94. 平林博

    平林政府委員 中国につきましても、ODA大綱の適用がございます。第一点の環境の重視とか三番目の今の先生御指摘の点とか、四番目の民主化とか市場経済化等の努力のすべてにつきまして、いろいろ検討を加えております。  そういう検討を加えた上で、政府といたしましては、日中関係の全体の重要性、あるいは中国の開放改革路線を支持することが、日本のみならず、アジアひいては世界の安定、平和につながるというような配慮、そういうものを全体として総合判断の上、先般のような第四次円借を決めてみたり、また、その他の援助政策を実施しているということでございますが、中国の場合には相当何度にもわたりまして、核実験の禁止、それから核開発のこれ以上の断念ということを言っておりますが、日本援助を始めた以前から一定の核兵器だけは持っていましたので、それを全面的に廃棄するかどうかということにつきましては、これはまた別途の脈絡で議論をするということではないかと思っております。  しかしながら、累次の日本政府の核に対する感情あるいは政策につきましては、中国も一定の理解を示している。どういう理解かと申しますと、包括核実験禁止条約についてはできるだけ早くやりたいということとか、核の全面廃棄は自分たちの政策であるとかいうことを言っており、また、核実験をやるたびに日本が非常に強い抗議をするものですから、そのこと自体に対する釈明等も累次行っております。  その結果が全面的に日本政府の満足のいくようなことになっていないことはまだ残念でございますが、引き続き、日中関係の全体の枠の中ではございますが、ODA大綱あるいは核軍縮の観点から、いろいろな機会に中国政府に対しては申し入れを継続していくということではないかと考えております。
  95. 東祥三

    ○東(祥)委員 時間が来てしまいましたので終わります。  どうか外務大臣、今後とも外務委員会、これは外務大臣にぜひとも要請しておきたいのですけれども、一般質疑で、こういった、ある意味で素朴な問題かもわかりませんけれども、改めて戦後五十年、やはり日本の節目なんだろうと僕は思います。そういう意味で、吉田ドクトリン以来、状況が全然違う。安全保障面に関しては基本的に変わらないだろう、他の日本の国際的な、日本の国際社会における位置づけが大きく変わってきている。そういったことも踏まえた上で、改めて日本の外交政策というものについてもっと自分自身も勉強したいと思いますし、また、外務大臣並びに外交のプロの皆さん方とぜひとも種々いろいろな意見交換をこの場でさせていただきたいな、このように思っております。  そういう意味で、一般質疑の時間を多くとっていただいて、種々の条約の案件もありますけれども、ぜひとも外務大臣、お時間を割いていただいて、そして徹底的に議論をさせていただきたい、このように思っておるのですけれども、この点についての外務大臣の御決意を伺ってやめたいと思います。
  96. 河野洋平

    河野国務大臣 まず最初に申し上げたいと思いますことは、いろいろといい御指摘をいただいたことをお礼を申し上げたいと思います。  冒頭にやりとりをお互いにさせていただいたように、外交は国際政治の現実をまさに踏まえていかなければならないことでございます。例えば今、経協局長からもいろいろ御答弁を申し上げましたが、ミャンマーの問題などは、我々がどういう対応をするかによって、相手に間違ったシグナルを与えるということ、間違ったメッセージを出すということは非常に気をつけなければならないことだと思います。軍事政権に対してあるいは少数民族に対する対応等、よく実態を、本質を我々としても確認をしながら、少なくとも間違ったメッセージを出してはいかぬというふうに一方で思い、一方では、ああした国ができるだけ早期に民主化を遂げて、そして経済的にも成長してほしいという気持ちがございます。  他方、中国につきましては、日中関係重要性、それからアジアにおける中国というものの存在をどういうふうに見るか、考えるか、そしてそれは、二十一世紀にどういう中国を我々は想定をしているのかということもよく考えながら、この問題に一つ一つ対応していかなければならないのではないかなどと考えているところでございます。  外務委員会日本の外交政策にとって極めて重要な場であるということは十分自覚をしているつもりでございます。また他方、国際的な外交の場で物を言うことも大事、あるいはそういうところへ参加することも大事、そういったこともまた、皆さんにも御理解を時にいただかなければならぬかと思いますが、ぜひ双方理解をし合って、日本の外交を進めていきたい、このように考えております。
  97. 東祥三

    ○東(祥)委員 終わります。
  98. 三原朝彦

    三原委員長 引き続いて、山田宏君。
  99. 山田宏

    山田(宏)委員 河野外務大臣、御苦労さまでございます。それでは、お時間を委員会からいただいておりまして、何点か御質問させていただきたいと思います。  先ほど、前原議員の方からゴラン高原の問題についてお話がございましたが、昨日の新聞報道によりますと、ゴラン高原のPKOについて、国連の方からそのPKOについてはもう協力の必要はない、こういう通知が来た、こういう報道がございました。もう日本のここでの協力は必要ないので、イラク・クウエートの方のPKOに協力をしてほしい、こういうような報道でございましたけれども、これは事実でしょうか、どうでしょうか。
  100. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 ゴラン高原のPKOにつきましては、たしか昨年の五月ごろでございましたが、そのころからいろいろ、私ども事務当局といたしましては、PKOにつきまして国連の事務局と意見交換等をやっておりますが、その中で非公式な打診があったわけでございます。御承知のとおり、国連側の考えといたしましては、現在ゴラン高原に展開しておりますPKOの中で、カナダが後方支援の部門を担当しておりますけれども、そのうちの一部、特に輸送の面を担当してはどうかというようなことを言ってきたわけでございます。  その後も国連の事務局とはいろいろ接触をしておりますが、伝えられましたようなことはございません。ゴラン高原のPKOについてはもう必要ないんだというようなことを言ってきたという事実はございません。そういうことはございませんで、今も接触を続けております。また、一時我が国国内でいろいろな慎重論があるというような報道もございましたので、そういうことについて国連の事務局から問い合わせがございまして、それに対して答えたということはございますけれども、必要がなくなったということを言ってきたということはございません。
  101. 山田宏

    山田(宏)委員 事実ではないということでございますので、きょうの本題に入りたいと思います。  米朝合意について何点がお聞きをしたいと思います。  もちろん、当委員会でも昨年から何度か議論されておりますし、また、予算委員会でも議論になりました。安全保障委員会でも議論になっておりますから、多少重複をお許しをいただきたいと思いますが、一つの結論の筋道の中でお聞きをすることですから、なるべく簡潔にお答えをいただきたいと思います。  希望に燃えているときに余り最悪の状況の話をするというのはだれも考えたくないし、なるべく希望的な状況が上手に進んでもらいたいと思うのがそれは人情だと思っております。しかし、一月末の何回かにわたって開かれましたアメリカの下院や上院の外交委員会や安全保障委員会での公聴会の質疑を見ても、やはりかなり厳しい懸念が、アメリカの委員会の中でも表明をされているということであります。  この合意をずっと見ておりますと、いろいろ今まで外務大臣も御説明いただいておりますし、大体はわかっているわけですけれども、今まであめ・むちでやってきたものを、あめ・あめになりつつある。あめ・あめだから、とにかく北朝鮮はこれをのむことはそれほど苦しくはなかった、こういうふうに思うわけです。  去年の十月二十一日に合意をされて、まず北朝鮮側は、五メガワットの実験炉を凍結をする、また五十メガワット、二百メガワットの建設計画を中止をする。また、放射研究所、これは再処理の関係の施設ということですが、これも凍結をするということをまず行いました。その後アメリカは、貿易や投資の障壁を多少この間引き下げました。重油も五万トン韓国から送りました。ここまでは、北朝鮮がやってアメリカがやった。  次はどういうことが来るかというと、領事関係とかその他外交窓口をつくっていくという流れが一方でありますが、もう一方でKEDOによる軽水炉契約を半年以内にということで、四月の二十一日がその限度、これに向かって今進んでいるわけです。その契約をしたということを条件に、今度は凍結外の施設、凍結されてない施設の特定・通常査察を認めましょう、こういう北朝鮮の譲歩というんですが、これは私は、譲歩にも何にもならないんじゃないか、これは当たり前のことだ。もちろん、特別査察についても保障措置から見れば当たり前のこととは言えますけれども、この凍結外施設というのは一体どういうものが対象になるのでしょうか。
  102. 川島裕

    ○川島政府委員 お答え申し上げます。  旧ソ連が供与いたしました研究炉、それから旧ソ連が供与いたしました臨界実験施設、それから燃料貯蔵施設であると承知しております。
  103. 山田宏

    山田(宏)委員 これはアメリカの方の考え方だと、これらの施設というのはどういう疑惑というか重要性とか査察が必要なものがあるとか、ちょっと具体的にお聞かせをいただきたいと思いますが、わかりますか、わからなければいいです。
  104. 川島裕

    ○川島政府委員 ちょっと、私も原子炉の詳細になりますといささかあれなんでございますけれども、俗に、要するに凍結の対象となっております原子炉に加えまして、寧辺にありますいろんな核関連施設がありまして、それを全部やはりIAEAとしては、これは既に北朝鮮が申告した施設でございますので、それらについて保障措置協定の中で特定・通常査察を行うということが当然のこととして想定されているというふうに理解しております。
  105. 山田宏

    山田(宏)委員 だから、これは僕は、そんなに問題になっていなかったものが、何か契約の条件のようになっている。アメリカの上院の議論を聞くと、ステップ・バイ・ステップで、ワンステップとったら次はこっちがワンステップ、こっちがワンステップとったらこっちがワンステップ、こういうことをやって、きちっと信頼に基づくものではなくて、お互い検証に基づくものだ、こういう説明をペリーさんとかクリストファー国務長官が言っておられますけれども、これはそんなに北朝鮮の譲歩というようなものの価値に値しないんじゃないか、こう私は思うわけです。  なぜそう申し上げるかというと、この契約の後何が起きてくるかというと、まず外務省の方のお話を聞いたら、アメリカ側からは、去年からの一年以内に重油がさらに十万トン輸出される。もちろんただで輸出される。さらに領事関係、大使館まで、大使の交換までは行かないでしょうけれども、領事関係の話がどんどん出てくる。さらに、二年目以降は年五七万トンの重油が送られる、軽水炉の建設も始まる、こういうことでずっと半年以降進んでいくわけです。どこでこれが北朝鮮のステップにかわるかというと、軽水炉計画の主要部分の完了というところでいわゆる特別査察を認めなさい、こういうことが可能になってくるわけです。  これは、この間の委員会質問でも約五年後だ、大体主要部分の完了というのは五年後だと想定されている。しかし、この合意文書を読んだだけでは特別査察の特別も何も出てないわけです、文字としては。完全な履行だとか、すべてのそういう査察だとか、こういう言葉は入っておりますけれども、この間の委員会でも議論になりましたけれども、北朝鮮はこれまで、今までの未申告の二つの施設については軍事施設と言っていたわけですから、これは関係ない、軍事施設だと言っていたわけですけれども、その辺でまたもたもたするのではないか。本当にそこまできちっとこの主要部分の完了後にできるということ、そう理解していますという外務省の理解じゃなくて、米朝できちっとそのことまでは詰めてあるんですか。その点はどうでしょうか。
  106. 川島裕

    ○川島政府委員 書き方は、御指摘のとおり、特別査察という言葉は使っておりませんけれども、まさにこれは特別査察を意味するということが米朝間の交渉では明らかにされているというふうに承知しております。
  107. 山田宏

    山田(宏)委員 これは五年後になるかどうかはわかりませんが、五年後ぐらいにそういうふうになってきたとする。そこまでうまく進むんだろうと僕は思います。五年ぐらいたってこの問題が出てきたときに、初めて北朝鮮にとっては致命的な譲歩を迫られる、特別査察を。それまでは、何とはないということはないけれども、いろいろな交渉もあるでしょうけれども、しかしこの五年間、五年とは決まってないのですが、主要部分の完了までに、この五年間の期間の中で我々が北朝鮮に与えるものはただで、アメリカの負担でしょうけれども、石油を渡す、貿易や投資の障壁も下げる、二つの軽水炉の建設も着手をしている。さらにアメリカとの外交窓口をつくっている。北朝鮮はもう孤立を避けたいわけですから、アメリカからちゃんと認知をされたい。そういう立場で、韓国ともある程度外交の関係のバランスをとりたい、こういう思いで、大使部分まで何とかやりたいと思うでしょうね。多分来年のクリントンの再選までに何とか重要な部分まで詰めたいと思うでしょう。クリントンの再選がもしないとすれば急ぐし、クリントンに対してかなりの譲歩を多分してくるだろう、この二年間ぐらいは。だから、その辺は我々は非常にうまくいったなと思うかもしれない。しかし、五年間に与えてきたものはそれだけにかかわらず、露骨にNPTに違反をした、国際的に認められているのを我々は黙認をしていかなければいけないということも一つの結果として残ってくる。  もし、五年後の時点で北朝鮮が特別査察を拒んだり、または何かこれは軍事施設だ何だと、二年間の間に八回も約束を破っているわけですから、またそれをやり始めたら日本はどんな状況に直面をするのか。アメリカの議会の質問を聞いていますと、もし、そういうことでステップを踏まないならば去年の六月時点に舞い戻るんだ、こういうことですね。六月時点といったら大変な危機的状況にあったわけです。こっちの極東側の司令官はさらにアメリカ軍の一万人の増派を要求していたわけです、ペリー国防長官の話だと。そうすると、五年後再び去年の六月の時点に舞い戻るということになった場合、本当に日本はまたそのときにちゃんとした対応ができるのかどうか。アメリカ側ではそういうふうに考えているけれども日本でもそういうふうに考えていますか、どうですか。
  108. 河野洋平

    河野国務大臣 これからの五年間、今山田議員がおっしゃるように、米朝双方が合意に従って五年間進むといたしますと、私は、冒頭山田議員がおっしゃったように、この時点で壊れたときの話をするということは余りいいことだと思いませんが、あえて申し上げれば、五年後にまた今の時点に戻るといっても、朝鮮民主主義人民共和国、いわゆる北朝鮮がこの五年間の間に国際的な依存関係の中に身を置く。例えば、五年間の間に、重油はアメリカを初めとしていわゆる米朝合意の相手方に依存関係ができるわけですね。その依存関係が、一方で重油というエネルギーは依存をする、核施設は凍結をしている、この状況が五年間続いて、そこで不調に終わったから五年前に戻るといって、今と同じ状況に戻るかどうかということは、これは私は今と同じ状況に戻るというふうには思わないのです。  北朝鮮の現在の体制がこれから少なくとも三年なり五年なりの間、国際社会に窓をあけて工事が始まるということになれば、あるいはフィージビリティースタディーを始めると言えば、それなりの人が入って調査をする。工事が始まるということになればそれだけの技術者、さまざまな人が積極的に出入りをして工事をする。その中から北朝鮮の人たちとの接触もあるでしょう。そうしたことを考えますと、これに踏み切っだということは、北朝鮮自身が国際的な依存関係の中に足を踏み入れるという意味で、私は大きな考え方の変化というものが起きてくるのではないかというふうに思うのです。  先ほど、我々が五年間一方的に譲歩を続けて、五年目にだめだったら、何かまるっきりこっちが損じゃないかというようなお話にも聞きましたけれども、五年たって、まあ五年というか、中枢部の機械を運び込むかどうかという段階で次のステップヘ進むわけで、向こうが進まないというなら中枢部の機械が入らないということで、結果、五年間北側は相手方にエネルギーの依存をしたまま、結局そこで重油の供給も終わってしまうし、それから、つくりかけていた原子炉もそれ以上はできなくなるしということになるわけです。五年目にだめだったら今に戻る、それは形式的には戻ると思いますけれども、形式的にはそのとおりですが、私はそうではないのではないかというふうに思っているわけです。
  109. 山田宏

    山田(宏)委員 将来の話ですから、相互依存関係がうまく構築されていけば、いろいろな、今外務大臣おっしゃられたこともあり得るだろうと思います。  今、原子炉も途中になってしまうのでなかなかそれはあり得ないかもしれない、こういう御趣旨のようにお聞きしましたけれども、まあそのとき、五年後にもし何かまた特別査察を拒むようなことになっていった場合、例えば、凍結施設は再び再開をされる、また抜き取られた八千本の燃料棒からはプルトニウムの再処理とか、こういう問題が再び、施設は壊されないし、抜き取られた燃料棒もずっと北朝鮮に存在しているわけですから、そういう意味では五年後も危険性は全く変わっていないのではないか。  今管理下にあるとされる八千本の燃料棒というのですか、これは大体幾つ分の原爆に値するのかということはわかりますか。
  110. 川島裕

    ○川島政府委員 つくり方にもよるのだろうと思いますけれども、通常八発分ぐらいと言われております。
  111. 山田宏

    山田(宏)委員 八個分ぐらい。日本では何かそういう計算はなかなかできないらしいので、多分アメリカの計算だと思います。  これからの五年の間に、アメリカでは二回の大統領選挙があります。北朝鮮の体制もどういう体制になるかまだよくわからないという状況で、やはり五年後、外務大臣のおっしゃるような、うまく進んでいくということでいけばまたそれもよし、それはもうそれにこしたことはないと思いますけれども、一方で、今申し上げたようなことは全く可能性として存在しないのか、あり得ないのか、この国はそういう意図は持とうとはしないのかということになってくると、やはり一抹の不安が残ると思います。  この間の、一月二十六日のアメリカ上院のペリー国防長官の速記録を丹念に読みましたけれども、昨年の六月の時点に戻るということをきちっと表明しています。まあ今、五年後にそういうことはない、こういうことなのですが、アメリカでの話ですからわかりませんが、去年の六月というと、一体どういう状況にあったのか、どういう状況だったのか、ちょっともう一回詳しくお話を伺っておきたいと思います。もちろん前の政権だと思いますが、まあ外交は継続しているというので、多分それは御説明できると思います。
  112. 川島裕

    ○川島政府委員 去年の六月と申しますと、五メガワットから燃料棒を強引に引き抜きまして、危機感が一気に高ぶって、そして安保理におきましては、制裁の動きが始まったという時点でございます。  ただ、ちょっと今までのやりとりに若干戻らせていただきますと、そのとき一つ大変心配いたしましたのは、制裁を発動いたしますと、これはある程度時間が要るだろう、この間に黒鉛炉が、大きなものが完成し、それからあの当時、再処理施設の拡大工事が進んでおりましたので、プルトニウムの生産能力がある意味で野放しになってしまう、そうすると、それは制裁がきいて、行く行く北朝鮮が特別査察を受けるというのが最も望ましいシナリオであり得るのですけれども、その間プルトニウムが非常に大量に蓄積されてしまうということはやはり大変心配であるなというのを、あの当時、問題意識として持ったわけでございます。  そこで、五年後か六年後か、特別査察の問題をめぐって、もしまた北朝鮮がこれを受けないというような態度に出た場合には、まさにそういう観点から、また去年の六月と同じ事態、つまり、持っているプルトニウムを再処理するとかいうような動きに出る可能性があるのだろうと思いますけれども、ただそれは、少なくとも米朝合意のとおりにいけばそういう危機は避けられるわけだし、その意味では米朝合意をやってみる価値はある。何も、これから米朝合意の実施が完了する十年間そのとおりにいくだろうと決めてかかるというのは、もちろん私どもとしてもしておりません。
  113. 山田宏

    山田(宏)委員 それでいいと思うのですね。私も、この合意を破棄しろとか、これは全く不届き千万だ、こう申し上げているわけでは全くございません。ただ、全く一色で歓迎すべきものかというと、少なからず、やはり我が国の国益にとってみれば不十分な点が多々あるな、こういう認識で物を考えていた方がいいのではないか、こう申し上げたいわけです。  何回も議論されておりますけれども、例の過去の核疑惑の解明について、今特別査察のお話なんですけれども、施設は二つあるわけですが、その施設自体はいいとしても、今はその施設というのは全く何にも手つかすというか、監視のもとに置かれているわけじゃありませんね。
  114. 林暘

    ○林(暘)政府委員 御指摘の二施設につきましては、まさに御指摘のとおり、特別査察を北朝鮮が拒否をいたしましたので、査察という形では何らチェックはされておりません。
  115. 山田宏

    山田(宏)委員 非常に素人の考えで申しわけないのですが、その二施設なんですが、例えば五年後に特別査察を受けたとして、多分そこの中に入っているものというのは、今想像されているのは、再処理のとき出た廃液だとか廃棄物だとか、こういうものが保管されているのではないか、こういう疑惑だったのですね。  そうすると、その五年間の間にこれらがどこかへ運び出されちゃったり、どこかへ隠されちゃったりした場合は、過去の解明といっても、特別査察を受けても、全く過去の検証はできなくなるのではないですか。そういう可能性はありませんか。
  116. 林暘

    ○林(暘)政府委員 可能性の問題として、今御指摘のとおり、そこに入っているものが運び出されたらどうかということでございますけれども、もしそういう事態になった場合に十分な査察ができないということはあり得ると思いますが、今IAEA、米側等が考えておりますのは、またそういうことがありますと、それはそれなりにわかるものですから、もともとの形からいいましても、その二施設を調べれば必ず過去のことがすべてわかるという保証はもともとなかったわけでございます。  したがいまして、過去の疑惑についての査察をするという場合には、その二施設ないしは必要な書類その他を、過去の運転記録その他を含めて北朝鮮の方から出してもらうというようなことも含めて査察をするということでございますので、御指摘のとおり、今の二施設の部分が運び出されたら全くわからなくなるんじゃないかということについては、それだけではなくて、ほかのものも見るし、もし運び出されているとすれば、それがどこに行ったかということについても照会をして、そこを調べさせてもらうということをやらざるを得ないであろうというふうに思っております。
  117. 山田宏

    山田(宏)委員 今の御答弁のとおりで、やっぱり過去の核疑惑については、下手をするともうやみの中にほうり込まれる可能性が非常に高い、また高いとは言わなくても可能性はある、こう私は思います。  それで、アメリカの方の議会では、この過去の核物質の抽出疑惑についてどれぐらい抽出されたかというと、一キロから八、九キログラム程度、こういうお話。それで大体原爆二個分、うまくやれば二個分ができる、こういう答弁をはっきりペリー国防長官はされております。  この合意のもとで、過去の核疑惑というものがひょっとするとやみの中にそのまま、五年後特別査察があるから大丈夫だ、こう言っていても、今のお話のとおり、わけがわからなくなってしまう可能性がある。そうなったときに、先ほども、これはもう最悪の状況で、人を悪く悪く見てもいけないと思うので、この合意をしっかり遵守をしてお互いに検証していくことが大事だという前提に立ってお話を申し上げれば、もしそうなったときに、気がついてみれば北朝鮮の手の中には経済的、外交的な特典があって、一方で時間稼ぎをした上で名実ともに核兵器国になっているというような、あっと驚く、あけてみればそうなっているということは、やはり余り考えにくいことですか。それとも、可能性としてあると思いますか。  可能性の問題ですから、いろいろなことを考えておかないといけないと思うのですが、そういうところが、何もこの合意をどうしたいというのじゃなくて、やはりいろいろ考えているといろいろな疑問が出てくると思うので、その点をお聞きしたいだけのことでございます。
  118. 河野洋平

    河野国務大臣 私は、その米朝合意というものは幾つかの意味があると思うのです。  この米朝合意が完全に実施されれば、山田議員も先ほどからおっしゃっておられるように、米朝間の外交関係というものもできる、それから南北の話し合いも行われる。そういうことがこの米朝合意の中の一つの条件の中に入っているわけですから、米朝間の外交関係もできるし、南北の話し合いもできるし、そういうことはとりもなおさず、国際社会の中に窓を開く、門を開くということになるのだろうと思うのですね。  そういう外交関係とか国際関係というものを持つということは、今のような体制の中に固定的に封じ込めることと比べれば、私は、話し合いによって、あるいは相互の信頼関係を育てる糸口をつくるという意味でも、意味はあるのだろうと、まず思います。これは、こういう言い方だけすると、その部分だけとると、やや楽観的、楽天的とあるいはとられるかもしれませんが、しかし、これはある意味で非常に大事なことなのだろうと思います。  それから他方、核兵器にまつわる部分については二つあって、一つは、過去の問題も確かに重要です。しかし、これから先できないということをはっきりさせるという意味も非常に大きい。この点も評価しなければならないと思います。  それから、そうは言うけれども過去の問題があるではないかという心配は、私も共有いたします。しかし、これ以前の問題について言えば、それは仮に核兵器ができていたとしても、それは十分な運搬手段を伴うものであるかどうか、あるいは十分な運搬手段によってそのものがはっきりと威力を発揮するものであるかどうかということについては、専門家の間に相当議論のあるところですね。つまり、実験が行われているのであろうかどうであろうかとか、あるいは運搬手段というものがまだはっきりでき上がっていない状況でどれくらいの大きさのものができているのかとか、そういった核兵器そのものと運搬手段との開発の関係というものがどういうものであるかなどなど、専門家の間の議論を聞きますと、これはむしろ、あの合意ができたことによる意味の方が、やはり私は大きいのではないかというふうに見ているわけです。  そのことと同時に、北との、何といいますか国と国との関係というものをお互いがしっかり持っていくという努力をするということが、今我々に考えられる大事な作業だろうというふうに私は受けとめております。
  119. 山田宏

    山田(宏)委員 今の外務大臣の御見識は、それはそれで本当にそのとおりだと思っておりますが、やはりあらゆる可能性、あらゆる最悪の事態というものは、事相手が、今までやはり余りつき合いがなくしかも国際社会全体の常識から見ればかなりいろいろな約束事を平気で破ってきた、こういうところですから、そして、アメリカは今まではテロリスト国家と言っていたわけですから、その国を。こういう国のことですから、やはり慎重になるのは、慎重になり過ぎてもなり過ぎることはない。この合意の持つ意味はもちろん理解しておりますけれども、しかし我が国にとっての国益といった点では、万歳をして、この合意がもちろんきちっと遵守されるようにしていかなければなりませんが、やはりあらゆる事態を想定しながらアメリカとも交渉し、また韓国とも連絡をとり合い、必要があれば他の諸国とも連絡をとり合ってやっていくことが一番重要だと思うから、今のようないろいろな可能性のことについてお話を申し上げたわけであります。  財政の問題について、ちょっと時間がなくなってきてしまったので急ぎますが、このKEDOに対する費用の負担の問題で、何度もここでも議論されておりました。約四十億ドルと見積もられていますが、アメリカ政府は現在のところ、自分、アメリカ政府がどれぐらい負担をすると見込んでいるかというと、ちょっと御答弁いただきたいのですが、こちらでお話ししてしまいますと、先日の一月二十六日のクリストファー国務長官のお話は、一年で二千万ドルから三千万ドルの負担、十年間で二億ドルから三億ドルの負担、こういうふうに何度も答弁をされております。それで、四十億ドルのうちアメリカが、三億ドルとしても三億ドル、もうちょっとふえるのかもしれませんが、こういう数字をきちっと議会に示して答弁をされているわけです。  その計算基礎は、私はわかりません。なぜアメリカ政府がそういう数字を出されているのかよくわかりませんが、そういう数字を出す根拠が多分あるのだろうと思っているのです。それは、いいかげんに、ただ頭の中で大体これぐらいだろう、何割ぐらいだろうというようなものでは多分ないのだろうと思っております。  そういう意味では、なぜアメリカが、多分これからふえるかもしれませんが、今現在これくらいの負担をするということがわかっていて、日本はどうかと聞くと、まだ決まっておりません、こういう答えになっていますが、私は、多分その交渉の間に大体のものができているんだ、こう思っているのです。だから、アメリカの議会でも、そういう数字を挙げた答弁が公聴会でされるわけだと思うのです。  それで、日本の負担について、私は多分打診があったと思うし、その後またそういう話もできてきて、アメリカではそういう数字が出て、なぜ日本でそういうのが出てこないのか。新聞の中では十億ドル、十億ドルという言葉だけが進んでいるけれども、その辺について、もうちょっと明確に議会に対してお話ができませんか。
  120. 川島裕

    ○川島政府委員 軽水炉自体につきましては、巷間確かに、十億ドルあるいは全体で四十億ドルとかいうお話はございますけれども、これは、累次答弁申し上げておりますとおり、確たる額で決まっているわけではございません。  ただ、アメリカが数千万ドルというのがどうしてかということにつきましては、これは、KEDOの役割といたしまして、軽水炉のプロジェクトを進めることに加えて、その間の代替エネルギーとしての重油の供給とかがございます。重油が年間五十万トンぐらいまでの供与になるわけですけれども、そういうものとか、若干ある程度算定できる費目もあるわけでございます、重油とか、それから行く行く燃料棒を処理する費用とか。  ただ、いずれにしましても、全体の、重油がこれこれ、処理費がこれこれという全部の明確な費用があって、そこから数千万ドルということが出てきたのではなくて、米行政府としてこれくらいは出すべきであるという政策判断で決めた数字が数千万ドルであろうというふうに私どもは理解しております。
  121. 山田宏

    山田(宏)委員 そうすると、日本の方の政策判断としてはどれぐらいというものが大体必要だとお考えなんですか。アメリカでもそういう判断がされているわけでしょう。
  122. 川島裕

    ○川島政府委員 日本といたしましては、ですから、軽水炉については、恐らくこれはアメリカが負担する額よりも軽水炉プロジェクト自体については大きいのだろうと思いますけれども、それが全体のどれくらいの比率になるか、あるいは具体的に額がどれぐらいになるかにつきましては、一つは全体の額が決まっていないということと、それから、何と申しましても、どれくらいの国が参加するかということにもある程度かかわる話でございますので、現時点では確たる数字までは詰め切っていないということでございます。
  123. 山田宏

    山田(宏)委員 これは、私が先ほどから申し上げておりますとおり、それは希望の土地に向かってこぎ出しているわけです。それは希望の明るい土地かもしれません。しかし、わからない、この船が途中でしけに遭うかどうか。それにこれからみんな乗って、日本も一定の費用負担をしていくわけですから、わかりません、わかりませんと言って、だって、これからKEDOが軽水炉の契約を四月二十一日までにするわけでしょう。じゃ、日本がこの費用を出さなければいけないというのはいつごろから生じるのでしょうか。
  124. 川島裕

    ○川島政府委員 まさに巷間四十億ドルとは言い条、実際の現地調査やなんかをやらないと具体的な額というものは決まらないと思いますので、KEDOが設立されまして最初に手をつけるのは、まずその辺の調査というところだろうと思います。  それからその前に、まず北朝鮮との間で供給取り決めと申しますか、どういう義務をお互いに負うかということをもう一遍きちっと詰めた文書をつくらなければならないものですから、その辺で相当の時間は要るのだろうと思います。そこは、実はそのやりとり自身が紛糾する可能性すらあろうと思います。その意味で、なかなか具体的な額が見えてくるというのは若干時間がかかるというのが私どもの印象でございます。
  125. 山田宏

    山田(宏)委員 まあやめておきますけれども、じゃ、そこで紛糾すると、さっきの主要部分の完了というのはもっと延びる、なぜあれは五年になっているのですか。そういうものが順調にいくと五年ということですか。五年という数字が勝手にひとり歩きしていますけれども、その辺でまたがたがたしていくとどんどんそれが先延ばしになるという可能性はありますか。
  126. 川島裕

    ○川島政府委員 これは、まさに五年たてば自動的にということではございませんで、主要部分が完了してということですから、それは進展の速度によって若干延びるということは大いにあり得ると思います。
  127. 山田宏

    山田(宏)委員 私がお聞きしているのは、五年というのはやはりうまくいったときのことをいっているわけですね。だから、いろいろな不安定要素があるから、早くて五年、こういうふうに見て、もっと延びる可能性がある、こういうことですね。
  128. 川島裕

    ○川島政府委員 五年より延びる可能性はあると言えると思います。
  129. 山田宏

    山田(宏)委員 この費用負担の問題はもうちょっとやりたいのですが、ちょっと外務大臣が昨年の安全保障委員会で、議事録もちょっと読んだのですが、新聞の引用で申しわけないのですが、北朝鮮との国交正常化交渉の再開について、「重要な問題は話し合わなければならないが、交渉再開にあたっては前提条件をつけなくてもいい」、こういうお話で、その前後の速記録を読んでみますと、それは何も李恩恵の問題とか核疑惑の問題を殊さら最初の条件としてつけるのではなくて、また北朝鮮の方もこれはやらないよという条件を出すということも認めないんだ、こういう意味だったように読めたわけですが、この日朝国交正常化について、そのときの質問は、なるべく早くやれ、こういうことなんです。私は慎重にやれ、こう考えている者なんです。  それで、この中の前提条件になっている、前提条件という言い方はちょっと言葉がひとり歩きするので、李恩恵ですか、こういうこととか、過去の核疑惑の解明、こういうのをこれまで日本は強力に主張していたわけですが、こういうことの主張というのは主張としてきちっと、これからも北朝鮮とのいろいろな話し合いの中では存在をしているということでいいわけですね。全く話さないというわけじゃないわけですね。
  130. 河野洋平

    河野国務大臣 私は、北朝鮮との話し合いは、何を話をするのでなければだめだとか、何については話さないとかということを言わないで、全く無条件でテーブルに着いて話を始めましょうと。それで、テーブルに着いて話を始めれば、それは国交正常化に向かってお互いが理解し合わなければならないいろいろな問題はあるでしょう。それらについては話し合うことにきっとなるだろうと思うけれども、最初からこういう問題を話し合うならテーブルに着かないとか、こういう問題を最初のテーマとしない限りは話し合わないとかということを言う必要はないんじゃないか。とにかく、お互いに全く無条件でテーブルに着いて話し合いを始めたらどうですかということを申し上げているわけです。
  131. 山田宏

    山田(宏)委員 そうすると、こういう理解でいいのですね。話し合いには応ずる、だけれども、そのときに、国交正常化へ向かっての問題としてはこれは話し合いますよ、これが話し合われなければテーブルに着きませんよというのじゃなくて、テーブルに着いた後、今申し上げたような核疑惑の問題やいろいろな人権問題、そういう問題を日本が討議することを放棄したわけではない、こういうことだと認識してよろしいですか。
  132. 河野洋平

    河野国務大臣 一つ一つのテーマを、私がこれはいいとかこれは悪いとかと言うべきでないのかもしれません。国交正常化に向けて話し合うべきものは全部話し合うということでございます。
  133. 山田宏

    山田(宏)委員 全部ということは含まれるということですが、その中で、非常に微妙な問題なんですが、少し問題になっているので取り上げさせていただきますけれども、この間の南北の分断の責任の問題について、村山首相の答弁がいろいろと変わって、結果としては責任がないということになっていますが、外務大臣としてもそういう考えで臨む、こういうふうに理解してよろしいですね。
  134. 河野洋平

    河野国務大臣 村山総理が御自身の真意を述べられたわけで、これはどなたの質問でしたか、予算委員会総理が述べられたことで私も結構だと思います。
  135. 山田宏

    山田(宏)委員 わかりました。  それで、もう時間がございませんが、要するに今の理解というのは、分断には責任はない、こう総理が答弁されたものでいい、こういうことですね。よろしいですね。正確に。
  136. 河野洋平

    河野国務大臣 総理は、我が国が朝鮮半島を過去の一時期に統治したという歴史的経緯があって、その後、韓国とは国交正常化を果たしたが北朝鮮とはいまだに国交正常化に至っていないという現状を踏まえるならば、北朝鮮の核兵器開発問題に対処するに当たっても、我が国国民感情として朝鮮半島と我が国との間の歴史的関係の深さを忘れることはできないというのが総理の真意であるというふうに言われております。
  137. 山田宏

    山田(宏)委員 難しいな。そういう答弁でしたっけね、最後。予算委員会での最後、二日目か三日目が、前の日の答弁に対して、責任があると言ったことについて、責任があるというのはおかしいじゃないかということで、責任はない、こう明確にお答えになったように記憶をしているのですが、違いますか。
  138. 河野洋平

    河野国務大臣 朝鮮半島の南北分断は、東西対立を基調としてきた国際環境などに起因するものであって、我が国が朝鮮半島分断に責任を有するとは認識していない、こういうふうに言われたと思います。
  139. 山田宏

    山田(宏)委員 わかりました。  これから米朝の関係は、当分北朝鮮の側がアメリカとの外交の窓口をなるべく大きくして、そしてできればクリントン政権の間に何らか大きく前進をさせたいと多分思うだろうと思うし、多分それに日本がついてくるだろう、こう思っているんじゃないかなと、これは推測ですが。それに、韓国も余り、少し憤りを感じつつも南北対話も推進をされてくると思いますが、一番警戒しなければいけないのは、アメリカとやる、日本とやる、韓国とやると、こう北朝鮮がそれぞれを競争させて交渉に当たるという可能性があるのではないか、こう思うわけです。  そういうときに、日本がもし韓国の頭越しにそういうことをやったら、今後はやはり大変な問題が起きてくる、こう思いますので、ぜひ韓国の南北対話をバックアップするという形を、日朝国交正常化ということももちろん大事ですけれども、そういうところの進展ぐあいによって考えるという方針をしっかりと持っていただきたい、こう思っているのですが、その点についてはいかがですか。
  140. 河野洋平

    河野国務大臣 この北朝鮮の問題は、我が国としてはアメリカ、韓国と十分緊密な連絡をとって対応をしてまいりましたし、これからもこの問題、そういう態勢で対応してまいりたいと思っております。
  141. 山田宏

    山田(宏)委員 また、韓国の中では、APECに北朝鮮も加えてもいいじゃないかというような議論があるように聞いておりますけれども外務大臣としてはどうお考えですか。
  142. 河野洋平

    河野国務大臣 APECは、実は参加をしたいという希望を持つ国は随分たくさんございます。  しかしながら現在は、APECはシアトルで行われたときに、向こう三カ年間は新しいメンバーを加えないということの合意ができておりまして、来年までは新しいメンバーを加えるということはしないという方針になっております。  そういう状況の中で、しかし、新しいメンバーはAPECに非常な関心を持っている国々もありますから、そうした国々について、我々はよく考えを聞いたり、研究をしていかなければならないと思います。  例えば、南米でチリが参加しているけれども、ペルーは参加していない。なぜチリは入れるけれどもペルーは入れないんだという議論もございますし、それは随分あちこちで、非常に強く積極的に参加を希望して、例えばワーキンググループにだけでも入って仕事をしようとおっしゃる国もあるわけですが、それについても、入れるか入れないかはかなり加盟国の中ではセンシティブな議論が行われてきたりする状況でございます。  したがって、今すぐに北朝鮮の参加、結構だということを答弁するわけにはいかないという状況でございます。
  143. 山田宏

    山田(宏)委員 ペルーとチリの関係とちょっと違って、やはり北朝鮮というのは特異な存在です。この間、先ほどから外務大臣おっしゃられているように、なるべく依存関係をふやし、なるべくオープンの門戸を開放させていくということは、一面すごく大事だと思っておりまして、もしそういう要望があれば、私個人は積極的に考えてしかるべき話だ、こう思っておりますけれども、もう一度お考えを、河野外務大臣の見識に沿ったお考えをちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  144. 河野洋平

    河野国務大臣 例えば、ロシアもAPECに関心があるというふうにもたしか聞いたことがございますが、それぞれの国が本来のAPECが目指すものといいますか、APECの考え方というものを理解をし、そしてそのメンバーになろうという積極的な気持ちがあるかどうかということは非常に重要だと思っております。  北朝鮮が希望するなら入れたらいいじゃないかという山田議員の御意見は、御意見として承っておきます。
  145. 山田宏

    山田(宏)委員 どうもありがとうございました。
  146. 三原朝彦

    三原委員長 続いて、古堅実吉君。
  147. 古堅実吉

    ○古堅委員 短い時間ですが、二つの問題についてお尋ねしたいと思います。  最初に、スミソニアン航空宇宙博物館の原爆展問題についてです。  ワシントンの国立スミソニアン航空宇宙博物館で予定されていた原爆展は、一月三十日のスミソニアン協会の理事会の決定で、原爆投下機であるエノラ・ゲイの展示に限る、こういうことになりました。  これは、議会、空軍協会や在郷軍人などの政治的圧力の結果ですけれども、同時に、見過ごすことができないのは、クリントン大統領もゴア副大統領も、理事会のとった行動を確固として支持しているという問題です。  この原爆展についての米国における昨年来の激しい論争で明らかなように、広島の原爆資料館に貸し出しを要請していた被爆資料は一切展示をやめて、原爆投下機のB29だけを展示するということは、クリントン大統領の支持のもとで原爆投下を正当化する以外の何物でもない、このように言うべきです。  大臣、唯一の被爆国日本外務大臣として、黙っていていいのかということが問われている問題だと考えます。正式の外交ルートを通じて、抗議の意志を示し、原爆投下機を展示するなら被爆資料の展示もするよう求めるべきではないか、こう考えます。御所見を承りたいと思います。
  148. 河野洋平

    河野国務大臣 議員もおっしゃるように、我が国は唯一の被爆国、原爆の悲惨さとこれが繰り返されてはならないという強い思いをだれしもが持っていると思います。政府としては、そういう願い、そういう気持ちを後世に伝えることが重要だというふうに認識をいたしております。  他方、スミソニアン博物館の決定というものは、これはスミソニアン博物館の決定であって、その具体的な展示内容について、スミソニアン博物館がかなり長い時間さまざまな議論を積み重ねた結果の決定でございますから、そのことに我が国が注文をつけるといいますか、発言をするといいますか、そういう立場にはないというふうに私は考えております。
  149. 古堅実吉

    ○古堅委員 人類の絶滅につながる悪魔の兵器、核兵器と人類は共存できません。その核兵器の広島、長崎への投下を正当化させないための努力は、唯一の被爆国日本政府の避けてはならない責務ではありませんか。  今回の出来事で痛感することは、被爆の実相とその恐ろしさを知らせることの重要性です。政府はこの五十年間、世界に向かって、なかんずくアメリカに向かって、その知らせる努力、どういうことを一体やってきたのでしょうか。今回の出来事を契機に、アメリカの全議員やこれに圧力を加えた在郷軍人会などの人たちに、広島、長崎の写真集などをつくるなどして、それを送り届ける、かかる努力を一歩でも展開するということを検討してみてはどうかというふうに考えますが、いかがですか。
  150. 河野洋平

    河野国務大臣 五十年前のあの悲惨な状況は、忘れることはないと日本人ならだれしも思っていることだと思います。我々は、そうした過去にきちっと目を向けるということは極めて重要だと認識をしておりますが、それは過去の一部分だけを見るのではなくて、我々が過去の歴史というものを認識するということの重要さというものをしっかりと認識しなければならないのだろうと思います。  私は、核兵器の廃絶に向けて私自身は努力をしてまいりました。この私の気持ち、私の考え方は今でも変わっておりません。そうしたことをどういうチャンスをとらえ、どういう場面でどうすることが最も効果的であるかということを静かに考えているところでございます。もちろん、人それぞれ込み上げるものがあるかもしれません。しかし、今はこの問題について感情的になるよりは理性的になって、静かに、こうしたことが二度と起こらないためには何をなすべきかということを考えることが重要ではないかというふうに思っております。
  151. 古堅実吉

    ○古堅委員 感情的にならず冷静になることが求められていることであればこそ、人類を絶滅に導くこういう悪魔の兵器というものと真正面から対峙し、それを許さぬという姿勢こそ、唯一の被爆国、我が国の政府に求められる大事な責務ではありませんか。  時間がありませんので、その点を厳しく指摘して前に進みます。  二番目に、在日米軍経費の対象拡大問題についてであります。報道によりますと、昨年の日米安保事務レベル協議でアメリカ側が、一、労務費と光熱水料の水準の維持、二、提供施設整備の柔軟性向上、三、訓練移転費の負担などを求めたとのことであります。米軍特別協定は来年三月で期限切れでありますけれども日本の負担は毎年膨大なものがありました。我が国は今、かつてない不況に加え、阪神大震災の復興財源の確保など財政上の困難に直面しています。かかる状況のもとで、引き続きアメリカの求めに応じるとすれば、とんでもないことだと申さねばなりません。  米軍特別協定の期限切れに対して、政府はどういう方向で検討しようとされるか、基本姿勢について伺いたいと思います。
  152. 時野谷敦

    ○時野谷政府委員 ただいま先生御指摘のとおり、私どもがアメリカとの間で結んでおりますところの特別協定は来年三月末をもって切れる、こういうことでございまして、そのことを視野に入れまして、先ほど先生御指摘のとおり、昨年五月の私ども事務レベルのアメリカ側との協議におきましてもそのことが話題になりました。ただ、そのときに話題になりましたことは、今後、三月末に現在の協定が切れることになるということを踏まえてこれから日米双方で話をしていこう、こういうことが話題になったということでございまして、そこで突っ込んだ議論をしたということではございません。  いずれにいたしましても、そういう状況でございますので、かつ私どもは、この駐留米軍経費負担というものが米軍のこの地域における存在、これを支えていく上での非常に重要な要素だ、こういう認識に立っておりますものですから、そういう認識に立ちまして、現在少しずつ、特別協定が切れました後の駐留米軍経費負担のあり方ということにつきまして話をしている、こういう状況でございます。
  153. 古堅実吉

    ○古堅委員 それじゃ、少し具体的な.問題について尋ねたいと思います。  一九七〇年八月十八日の衆議院内閣委員会で、当時の山上防衛施設庁長官が、米軍滑走路の補修費用負担問題で、「飛行場の滑走路を延長する工事、そういったような費用、その他もろもろの費用は米軍自身が負担してつくる。」と答弁しています。提供施設整備費のアメリカ負担の問題は決着済みの問題ですが、この答弁の立場はこれからも堅持されるか、念のために確認を求めさせていただきたいと思います。
  154. 時野谷敦

    ○時野谷政府委員 私、ただいまその答弁を承知しているわけではございませんが、一般的に申し上げまして、私どもが従来から国会で御説明してきております立場と申しますのは、施設、区域の提供、施設、区域の整備につきましては、アメリカ側の希望を聴取し、他方におきまして、安保条約の目的達成との関係でありますとか我が国の財政負担との関係とか、あるいは社会経済的な影響、そういうものを総合的に勘案いたしまして、地位協定の範囲内で個々の具体的な事例、これを踏まえまして我が国としての判断を行っておる、こういうことでございまして、今後ともそういう方針で対応していくべきものだというふうに心得ております。
  155. 古堅実吉

    ○古堅委員 この第二条一項(a)の基地の提供にかかわる問題ですよね。基地を提供するについて、それは我が国の負担においてやるんだが、それを実際に運用するについて必要な経費というのは、日本側がやるんじゃなしにアメリカ側がやるんですよ、そこははっきりしているよというふうな答弁なんですよ。間違いないですか。
  156. 時野谷敦

    ○時野谷政府委員 ただいまの先生の御質問を踏まえまして、先ほど私が申し上げましたことを若干敷衍して申し上げたいと思いますが、地位協定によりますと、二十四条の二項におきまして、すべての施設、区域はこの協定の存続期間中、合衆国に負担をかけないで提供する、こういうことが書いてございまして、これが日本側の一般的な義務、こういうことになっているわけでございますが、実際にそれではどういうものを整備してアメリカ側に提供することになるのかということになれば、それはやはり個々具体的に、それが安保条約に照らして、安保条約の目的達成、そういうこととの関連においてどうなのかということを見なければいけませんし、また、我が国の財政事情ということもございますし、それから個別の特定の施設整備をやることに伴う社会経済的な影響、こういうこともございますものですから、そういうことを総合的に勘案いたしまして、個別の事例に即して判断をしている、こういうことでございます。
  157. 古堅実吉

    ○古堅委員 時間がないので前に進まざるを得ませんけれども、次は、米軍の訓練演習費の日本負担問題についてです。  申すまでもなく、地位協定に対して、日本側の負担はそれはできません。現在、米空母艦載機が硫黄島でNLPを実施する際に、自衛隊のC1あるいはC130が米軍人と機材の輸送を行っています。今度はこれをさらに訓練移転費として、米軍機の燃料代の日本負担をアメリカ側から持ちかけられているというふうに報道がされているわけです。この問題は、沖縄米軍の県道一〇四号線越え実弾射撃演習の中止要求に対して、移転費用を日本側が負担すれば他地域で実施してもいいと米側が表明していることに関連する問題です。この演習は米海兵隊による核、非核両用りゅう弾砲の演習で、即時無条件に取りやめるべきものであります。場所を移せばよいなどというもの、解決できるなどというものではございません。  そこで、次の点を明確にしていただきたい。  米軍の訓練、演習はまさしく米軍自身の問題であるから、米軍地位協定上、この費用を日本が負担することはできないという点です。御確認いただけますか。
  158. 時野谷敦

    ○時野谷政府委員 ただいま先生がおっしゃっておりましたことは、先ほど御議論がございました現在の特別協定が三月末に切れた後どうするかという駐留米軍経費負担のあり方との関連で御提起になっていることだというふうに承りましたが、そういうことでありますれば、現在、先ほど申し上げましたようにアメリカ側と少しずつ話をしているという状況でございまして、私どもとしてはあり方の具体的内容、これは米側との協議を待って判断することとしたい、こういうことでございまして、現時点でアメリカ側との話の具体的な内容を申し上げる段階には至っていないということについては御理解いただきたいというふうに思います。  それから、そういうことを離れまして、先ほど先生が御議論になっておりますところの訓練の移転費用、こういうお話でございますけれども、これも実は今硫黄島というお話もございましたけれども、そういう具体的な話を目下のところアメリカ側としている状況ではないということもございますけれども、先ほど、どういう経費を負担するかということにつきましては個別具体的な事例に即して判断する必要があるということを申しましたが、まさに一般論を申し上げれば、今先生が御提起の問題についてもそのことが当てはまるのだろうというふうに思います。  移転費用と申しましても、それは一体どういうものなのかということは実はわからないということだろうと思いますので、仮にそういうことが日米間で話題になるということでございますれば、その具体的な内容に即して判断をしていく必要があろうというふうに考えております。
  159. 古堅実吉

    ○古堅委員 アメリカ側から、県道一〇四号越え演習にかかわる問題で、もっと具体的に言えば富士山ろくでやってもいい、それでその移転に要する費用は日本側が負担してほしい、そういう趣旨の話というのが持ち込まれているんじゃないのですか。そういうことについて具体的に検討し、何か結論を出そうなどという方向にはないのですか。
  160. 時野谷敦

    ○時野谷政府委員 沖縄の県道一〇四号線越えの実弾射撃演習、これは沖縄におきまして非常に重大な問題ということで従来から指摘をされておりまして、私どももこの解決のために努力をいたしておる、こういうことでございまして、そのためにアメリカ側とも話し合いをしております。話し合いをしておりますが、この場で、今どういう話し合いの段階にあるのか、あるいはその話し合いの具体的内容、これを申し上げるということは、アメリカ側との関係もございますし、今後の話し合いの取り扱いということもございますものですから、申し上げることは差し控えさせていただきたいというふうに思います。  ただ、問題の重要性ということは私ども十分認識をしておるつもりでおりますので、解決に向けて努力をいたしておるつもりでおります。
  161. 古堅実吉

    ○古堅委員 特別協定は来年の三月で期限が切れます。それとの関連で申せば、常識的にはそれに向けて予算要求、概算要求などという時点が参ります。ですから、年の半ばあたりまでにどうするかということについての結論を出すなどという見当になりましょう。いつごろまでに、その検討についてのまとめをなされるおつもりですか。
  162. 時野谷敦

    ○時野谷政府委員 御指摘の点はよくわかります。来年の三月末に切れるということでございますから、私どもはその後のことについてなるべく早くアメリカ側との間で合意を遂げたいと思っておりますが、先生が御指摘のような予算の問題とか、いろいろございますものですから、政府部内で関係各省とも協議をする、こういうことも必要でございまして、現在のところ、アメリカとの関係もございますし、我が政府部内での調整ということもございますし、具体的にいつまでということはちょっと申し上げかねる状況にございますので、その点は御理解をいただきたいと思います。
  163. 古堅実吉

    ○古堅委員 もう時間が参りましたので終わりますが、はっきりしたことは何一つ説明していただけないのですけれども、いずれにしても、これまでも膨大な負担をしてきた特別協定に基づくそういう関係をこれからも続けるということを前提にしていろいろと検討しておる、そういう方向に考えられます。  世界は軍縮の方向、あるいはそれを模索しています。そういう時代に、日本がアメリカとのその関係において、そういう日本政治情勢に照らしても特別に重大な困難な時期を迎えている、こういうときに、今の米軍への負担を引き続き進めていく、そういう方向というのは時代に逆行するも甚だしい、こう申さねばなりません。即刻やめるべきであるということを申し上げて、終わらせていただきます。
  164. 三原朝彦

    三原委員長 次回は、来る二月九日木曜日午後二時二十分理事会、二時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時三十六分散会