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1995-02-17 第132回国会 衆議院 安全保障委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成七年二月十七日(金曜日)     午後一時五十三分開議 出席委員   委員長 神田  厚君    理事 大野 功統君 理事 中谷  元君    理事 町村 信孝君 理事 愛知 和男君    理事 赤松 正雄君 理事 堀込 征雄君    理事 菅  直人君       麻生 太郎君    伊藤宗一郎君       大島 理森君    熊代 昭彦君       塩谷  立君    谷垣 禎一君       中川 秀直君    中山 利生君       浜田 靖一君    平泉  渉君       今津  寛君    佐藤 茂樹君       西村 眞悟君    東  順治君       山口那津男君    山崎広太郎君       石橋 大吉君    土肥 隆一君       早川  勝君    山花 貞夫君       東中 光雄君  出席国務大臣         外 務 大 臣 河野 洋平君  出席政府委員         防衛庁参事官  小池 寛治君         防衛庁長官官房         長       三井 康有君         防衛庁防衛局長 村田 直昭君         外務省総合外交         政策局長    柳井 俊二君         外務省アジア局         長       川島  裕君         外務省北米局長 時野谷 敦君         外務省欧亜局長 野村 一成君         外務省条約局長 折田 正樹君  委員外出席者         宮内庁長官官房         審議官     角田 素文君         消防庁消防課長 猪野  積君         安全保障委員会         調査室長    下尾 晃正君     ————————————— 委員の異動 二月十三日  辞任         補欠選任   金子 一義君     平泉  渉君   大島 理森君     越智 伊平君   熊代 昭彦君     中山 太郎君   塩谷  立君     村田敬次郎君   渡辺浩一郎君     伊藤 達也君 同日  辞任         補欠選任   越智 伊平君     大島 理森君   中山 太郎君     熊代 昭彦君   村田敬次郎君     塩谷  立君   伊藤 達也君     渡辺浩一郎君 同月十四日  辞任         補欠選任   渡辺浩一郎君     伊藤 達也君   不破 哲三君     東中 光雄君 同日  辞任         補欠選任   伊藤 達也君     渡辺浩一郎君   東中 光雄君     不破 哲三君 同月十五日  辞任         補欠選任   渡辺浩一郎君     伊藤 達也君 同日  辞任         補欠選任   伊藤 達也君     渡辺浩一郎君 同月十六日  辞任         補欠選任   渡辺浩一郎君     伊藤 達也君 同日  辞任         補欠選任   伊藤 達也君     渡辺浩一郎君 同月十七日  辞任         補欠選任   渡辺浩一郎君     山崎広太郎君   不破 哲三君     東中 光雄君 同日  辞任         補欠選任   山崎広太郎君     渡辺浩一郎君   東中 光雄君     不破 哲三君     ————————————— 本日の会議に付した案件  国の安全保障に関する件      ————◇—————
  2. 神田厚

    神田委員長 これより会議を開きます。  国の安全保障に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。熊代昭彦君。
  3. 熊代昭彦

    熊代委員 自由民主党の熊代昭彦でございますが、初めに、外交問題のうち北朝鮮の問題を若干御質問させていただきたいと思います。  北朝鮮が新しい体制になられまして、国際社会の中に温かく受け入れる、こういうことが何よりも大切であるというふうに思います。我が国もそのような立場でやっていただいているということでございますけれども、信頼しつつも、しかし、必要な調査、必要な注意も怠ってはいけないというのが外交原則でございまして、そういった意味でちょっとお尋ねをいたしたいわけでございます。  北朝鮮ノドン開発されているというふうに伺っておりますけれども、その射程距離ですね、どれくらいの距離を飛ぶのか、我が国ですと、どの範囲の都市があるいはどの府県がその射程距離内に入るのか、その破壊力は一体どの程度あるのか、そのような点につきまして、外務省さんにお伺いいたしたいと思います。
  4. 小池寛治

    小池政府委員 お答えいたします。  北朝鮮は現在、射程約一千キロメートルとも言われる弾道ミサイルノドン一号を開発中と見られております。我が国のどこがこのミサイル射程内に入るのかとのお尋ねにつきましては、北朝鮮我が国本州の最も近い地点同士距離は約五百数十キロメートルございますので、このミサイルをどこに配置するか、配置位置によっては、単純に計算しますと我が国のかなりの部分が射程内に入ることとなるものと見られます。しかし、具体的な地名を挙げてお答えするのは適当ではないと考えております。  それから、破壊力についての御質問がございましたが、このミサイルは現在開発段階にあると見られており、この搭載重量あるいは弾頭の種類などが必ずしも明らかではございません。このため、このミサイルがどの程度被害をもたらすかということについては具体的に申し上げることは困難な状況にございます。
  5. 熊代昭彦

    熊代委員 ありがとうございました。外務省さんでなくて防衛庁さんでございました。失礼いたしました。  搭載される弾頭がどんなものであるかわからないので被害程度も想定することはできないというお話でございましたが、もしこれが仮に核弾頭としますとどの程度被害になるか、もう一度お願い申し上げます。
  6. 小池寛治

    小池政府委員 先生の御質問の点ですけれども北朝鮮はかねてから核兵器開発疑惑を持たれておりますけれども、また核兵器一個ないし二個を製造するのに十分なプルトニウムを抽出し、あるいは保有しているという報道もございますが、この点については明確なことは申し上げられない状況でございます。したがいまして、核兵器を保有しているかということについては、その物質を保有しているという報道で、この点についても必ずしもはっきりしてないということでございます。
  7. 熊代昭彦

    熊代委員 核弾頭を仮に搭載したならばどうなるかとお伺いしたわけでございますけれども、現在の段階核兵器を保有しているかどうかもわからない、そういうことでございますので、重ねてお尋ねをすることはいたしません。  それでは、軽水型の原子炉援助交渉外務省さんを通して行われていると思いますけれども、現在その交渉がどんな過程にあるのか、その状況を御説明をお願いしたいと思います。
  8. 川島裕

    川島政府委員 お答え申し上げます。  御承知のとおり、昨年の十月に米朝合意ができまして、それを受けでいろいろな準備の作業が進んでいるということでございます。具体的には、米朝合意の想定しておりますのは、KEDOという俗称の国際的なコンソーシアムをつくりまして、そのコンソーシアムが行く行く軽水炉の一連のプロジェクト実施を担当するということでございます。  目下何をやっているかといいますと、そういうKEDO、このコンソーシアムをどういうふうな形で設立するか、国際機関の小さいものをつくるようなものでございますけれども、その取り決めを、目下日米韓三国を中心に詰めているというところが一つでございます。  この間、軽水炉供与するに当たっての具体的なやり方につきまして、これは米朝間専門家会合というレベルでやっております。最近では、ベルリンで先月末から開催された次第でございます。  この会合におきましては、供与の具体的なやり方について進展が見られたと承知しておりますけれども、ただ、導入されます軽水炉の型の問題、それから行く行く供与に当たって支援をどの程度範囲にするか等々について、まだ今後解決されなければならない問題がいろいろ残されたということでございます。  次回のこの会合は、三月にまた開催されるという段取りとなっております。  今後の段取りといたしましては、恐らく三月上旬ぐらいになるのではないかと思いますけれどもKEDO設立取り決めを何とか取りまとめてその発足に至る、その際、なるべく多くの参加を得て、国際社会としてこの北朝鮮核開発の問題に対応するという姿をとることが望ましいのだろうと考えております。  米朝合意自体は、一応四月中には、KEDO北朝鮮の間で軽水炉供与に当たっての、供与取り決めと言っておりますけれども供与契約のようなものを合意して、いよいよスタートする、こういう段取りを想定しております。
  9. 熊代昭彦

    熊代委員 交渉の現段階についてはわかりました。ありがとうございました。  それでは、超御多忙な中を御出席いただいております外務大臣にお伺いいたしたいのでございますけれども軽水炉援助を行うに際しましては、外交というのはギブ・アンド・テークなんだから、ギブがあればテークもあるだろうということで、我が国のほとんどが射程距離内に入るノドンの廃棄を要求すべきではないか、そういうようなことをおっしゃっている防衛専門家がいらっしゃるわけでございます。これにつきまして、それも含めまして、対北朝鮮に対します外交につきまして、大臣の所信をお伺いいたしたいと思います。
  10. 河野洋平

    河野国務大臣 先ほど防衛庁からも御答弁がございましたように、ノドンの性能あるいはこれが具体的に配備されるという状況等については、まだよくわからないところがございます。しかしながら、核兵器開発に対する疑惑もそうですし、こうした兵器の開発について我が国が極めて大きな懸念を持つのは当然のことでございまして、私どももまた、こうしたことが、疑惑であれば解明、払拭しなければならないし、実際にそういうことがあるとすればこれはやめてほしい、やめてもらわなければならぬという気持ちがございます。  そして、日米首脳会議の際に、日米両国首脳がこうした懸念を共有しているということが確認をされたわけでございまして、このことは、我々だけの懸念ではなく、アメリカを含む数多くの国の懸念でもあるわけでございます。  そこで、今議員お尋ねのように、こうした懸念をではどうやって解消するかという問題でございますが、御承知のとおり、我が国は直接北朝鮮交渉を今持っていないわけでございます。したがって、我々がこの懸念を北に直接伝える方法は、現在のところは同じテーブルに着いて話し合うことはできません。この米朝間の協議、そういう面でこうした懸念について先方に伝えるというのが今考え得る一番早い実行可能なやり方でございます。  先ほど申しましたように、日米両国首脳が同じ懸念を共有しているということは、アメリカもまたこの点について懸念を持ち、今議員が御指摘になりましたように、こうした問題を解決するといいますか解消するといいますか、そういう気持ち自分たちにもあるということを言われますので、それは我が国も同様の懸念を持っておりますということを米国首脳にお伝えをした、こういうことでございます。  今回の軽水炉プロジェクトというものは、北朝鮮側アメリカ交渉相手として指定をして、米朝間で行われておりまして、我が国が直接的に北と交渉するという状況に今ございませんだけに、日米首脳会談におけるこうしたやりとりは、今議員指摘の問題を解決するといいますか払拭する、今考え得る方法一つだ、こう考えております。
  11. 熊代昭彦

    熊代委員 どうもありがとうございました。  米国を通しての間接の交渉の道しかないということでございますけれども、その限りで最善の御努力をお願い申し上げたいと思います。  次に、自衛隊災害出動につきましてお伺いいたしたいと思います。  この問題は、既にあらゆるところでいろいろ議論されておりまして、相当防衛庁さんの方でも御検討なさったのではないかと思います。私もいろいろなところで議論には参画させていただいておりますけれども、現在の段階法律改正が必要であるのかどうかというような問題につきまして、どのような検討段階になっているのか、事務当局の御説明をお願いしたいと思います。
  12. 村田直昭

    村田(直)政府委員 お答えさせていただきます。  現在の自衛隊法災害派遣規定は、御案内のとおり八十三条に規定がございます。この八十三条は、第二項によりまして、要請による派遣というものを原則として、ただし書きにおきまして、「その事態に照らし特に緊急を要し、前項の要請を待ついとまがない」というような法律規定ぶり、その場合には自主的に派遣をすることができるという規定ぶりになっております。なお、三項におきまして、近傍における災害についての派遣が認められているという構成になっております。  八十三条はそのように要請による派遣原則としておるわけでございますが、今次の大災害のような場合にさらに有効にこれを機能させるためには、例えば東海地震あるいは南関東大地震のような大規模地震を想定しました計画作成段階から自衛隊が密接に関与していくということと、その計画に基づきまして、平素から自衛隊を含む関係行政機関及び関係地方公共団体一緒になりまして実のある訓練を行うというようなことによりまして、自治体と緊密な関係を確保することから自衛隊法八十三条を効果的に運用していくということが重要であると考えておりまして、現時点において特に法制上の問題はないと考えておるところでございます。
  13. 熊代昭彦

    熊代委員 現時点では法制上の問題よりもそれの実施の問題である、実施体制の問題であるというお答えでございます。  それでは少し具体的にお伺いいたしたいのでございますけれども、今御説明ございました八十三条一項の知事等要請に基づく出動、これは第二項の本則による出動でございますが、それと、第二項ただし書きに基づく出動につきまして、出動した場合の自衛隊権限差異があるのかどうか、その点について御説明をお願いしたいと思います。
  14. 村田直昭

    村田(直)政府委員 先生指摘の、自衛隊法の八十三条一項の知事要請に基づく出動の場合と、それから同条第二項ただし書きの、要するに自主的に派遣する出動というような場合の権限の差でございますが、これにつきましては、自衛隊法の第九十四条に規定がございまして、自衛隊法第八十三条第二項の規定により派遣を命ぜられた部隊等自衛官職務執行については、警察官職務執行法及び海上保安庁法の一部の規定を準用するものとしておりまして、八十三条二項の本文ただし書きを区別しておりませんので、この点において要請に基づく派遣自主派遣との間では特段の権限差異はないというふうに規定されております。
  15. 熊代昭彦

    熊代委員 八十三条二項の本文ただし書き派遣は、権限差異はないということでございますので、それは御説明のとおりだと思います。そうしますと、ただし書き出動の場合も要請に基づく場合も同様に行い得るということでございますから、その限りでは、法律改正は直ちには必要でないだろうということでございます。  ちなみにちょっとお伺いします。八十三条の第三項、近傍出動、これにつきましては、法制上の差異は奉るわけでございますね。
  16. 村田直昭

    村田(直)政府委員 八十三条の三項につきましては、「部隊等の長は、部隊等派遣することができる。」ということによって、非常に軽易に、要するに基地あるいは駐屯地の近くにおいて災害が発生したというような状況下において部隊災害出動させるということでございまして、今申しましたように、軽易な派遣が可能になるようになっています。ただし、権限規定については、九十四条等で特に権限が定められておりません。したがいまして、八十三条二項の出動とは異なっておるということでございます。
  17. 熊代昭彦

    熊代委員 八十三条三項は九十四条の適用がないということでございますので、確かにこれは相当差異があるということだと思います。  それで、ちょっと細かいことをお伺いして恐縮でございますが、九十四条に「警察官職務執行法第四条並びに第六条第一項、第三項及び第四項の規定は、警察官がその場にいない場合に限り、」「自衛官職務執行について準用する。」こうなっております。この中身でございますが、どういった権限が付与されるのか、これについて若干御説明をお願いしたいと思います。
  18. 村田直昭

    村田(直)政府委員 九十四条の規定でございますが、先生指摘のように、警察官がその場にいない場合に限り、派遣を命ぜられた部隊等自衛官職務について適用するということでございます。  準用されております警職法の第四条並びに第六条でございますけれども、第四条の方が警告避難等措置ということで、その場に居合わせた者、その事物管理者その他の関係者に必要な警告を発することができる。特に急を要する場合においては、そういう危害を受けるおそれのある者に対して、危害を避けしめるために必要な限度で引きとめ、または避難させることができるということと、それから、その場に居合わせた者あるいはその事物管理者その他の関係者に対し、危険防止のため通常必要と認められる措置をとることを命じ、またはみずからその措置をとることができるということが四条でございます。  それから、六条の関係は立ち入りでございまして、これは危害が人命、財産等に切迫した場合において、その危害を予防し、損害の拡大を防ぐ、あるいは被害者を救助するため、やむを得ないと認めるときに、合理的に必要と判断される限度において他人の土地、建物または船車の中に立ち入ることができるという規定でございます。  なお、海上自衛隊自衛官の場合もございますので、これにつきましては、三等海曹以上自衛官職務について海上保安庁法の十六条が準用されておりまして、付近にある人及び船舶に対し、協力を求めることができるという規定権限として付与されています。
  19. 熊代昭彦

    熊代委員 どうもありがとうございました。  それでは、重ねてで恐縮でございますが、第八十三条三項の近傍の火災、その場合に、先ほど御説明がありましたような警察官職務執行をかわって執行できる、そういう権限が必要でないというのはどういう理由でございましょうか。こういうときにもそういう権限が付与されれば大変役立つような気がいたしますけれども、その点を御説明をお願いしたいと思います。
  20. 村田直昭

    村田(直)政府委員 災害派遣規定は、基本的には、先ほど来申し上げますように、八十三条の一項の規定により要請都道府県知事等から行われ、二項に従って派遣をする、本文に従って派遣をする。その場合に、先ほど言った、例外的に、要請を待ついとまがないというときに自主的に部隊派遣することができる、これが災害派遣の基本的なパターンでございます。あくまで、三項の近傍派遣と申しますのは、先ほど来説明しておりますように、駐屯地近傍あるいは基地近傍におきまして災害が発生し、災害規模的にも小さい、それから派遣人員も、駐屯地のそれぞれの部隊の長が派遣できるような仕組みになっておりまして、全体として規模的にも小さい、場所的にも地理的にも近い範囲という限られた範囲を考えておりますので、規定的には特別の権限を付与しなかったものというふうに考えています。
  21. 熊代昭彦

    熊代委員 ありがとうございました。  その限りで納得いたしたいと思いますが、今度の阪神・淡路島大震災で、自衛隊行動につきましていろいろ批判がございますけれども、私自身は、置かれた状況下においては非常によくやっていただいた、大変によくやっていただいたと高く評価しているものでございますけれども、ただ、置かれた環境下で若干見直さなければいけないところがあるんじゃないだろうか、そういう気もいたします。  それは、御説明いただきました八十三条第二項のただし書きによる出動というのはこれまでも一度もなかったということでございます。一度もなかったというのはどういう理由であるのか。今後の問題でございますけれども、八十三条二項の本文による出動が全く本筋でありまして、それはおっしゃるとおりでございますが、しかし、どうしてもそれができない緊急の場合に、ただし書き出動規定を積極的に活用するおつもりがあるのかどうかという点についてお伺いしたいと思います。
  22. 村田直昭

    村田(直)政府委員 まず最初に、今、自衛隊派遣につきまして先生の御意見の中で評価をいただいたわけでございますけれども自衛隊も、災害発生以来、偵察活動を行う、あるいは三項の近傍派遣を行う、それから要請を受けて出動を行うという手順を踏んで、その時点時点においてあとう限りの行動をとっておったと私ども承知しております。  なお、八十三条二項ただし書きはなぜ今まで使われてこなかったのかということでございますが、まず、八十三条二項ただし書きによる派遣というものも今まで行われてきました。陸上自衛隊のケースは少ないわけでございますけれども航空救難、要するに航空機が事故を起こしたときに直ちに派遣をして、パイロット、乗員等を救出するというようなことが考えられます、その場合のために派遣をした。あるいは海上船舶遭難したという場合にも、これは乗組員を救助するために派遣をする。この場合はなぜそういうふうに適用されてきたかといいますと、派遣パターンが非常に一定化しておるということで、自衛隊自身も、航空機遭難船舶遭難等に対してそういうような意味で備えておりますので、それと同じ類型化ということで八十三条二項ただし書き適用されてきたということでございます。  ただ、陸上自衛隊出動というようなことについては適用されてこなかったのは、それは先ほどから申し上げておりますように、災害というものに対処する体制というものは、地方公共団体災害対策基本法によりまして一次的な責任を有しておる。また、都道府県知事等被害状況を全般的に掌握し得る立場にあることから、こういった方々消防警察等災害救援能力を考慮した上で、自衛隊部隊派遣の要否を判断して、自衛隊がその要請に応じて部隊派遣するということが災害救援活動の上で最も効果的、効率的に実施できるということから、このような考え方に立っておるわけでございます。その法の精神のもとに今までもそういう適用がなかったということでございます。  それから、今後のことでございますけれども、これにつきましては、私どもとしては、最初に申し上げましたように、こういうような大地震の場合に災害派遣を有効に行うためには、やはり東海地震あるいは南関東大地震のような大規模地震規模というようなものを想定しまして計画作成する、そしてその作成段階から各機関がどのような役割をするかというような事柄をきちっと決めまして、そして平素から関係行政機関関係地方公共団体一緒訓練を行っておく、こういうようなことがぜひ必要である。法の改正によってそういうことが充足されるわけではなくて、実態的にそういうことが充足されることがこれからの災害派遣の上でも必要であるというふうに考えておるところでございます。
  23. 熊代昭彦

    熊代委員 現実問題として、事前の打ち合わせ等で十二分に体制を整えたい、それで実効ある対策をしたい、おっしゃることはまことにそのとおりでございまして、繰り返しになりますけれども、私自身自衛隊さんの今度の御活躍は大変に評価している。  私自身も邪魔になってはいけませんので控えておりましたけれどもボランティア方々も大変よくやっていただきましたので、現地に一切御迷惑をかけないということで現地ボランティアの激励に参りました。とある中学校の校庭で、タンクを準備して自衛隊でおふろを準備していただいておりました。きょうは御婦人の入浴の日ですということで、若い隊員の方が一人立っておられまして、やっておられました。大変にありがとう、こんなときに本当におふろはすばらしいあれだということで、ボランティアではございませんけれども一緒に激励をさせていただきました。そういう意味で、私自身は大変に評価いたしております。  局長のおっしゃった、そういう体制がとれることが何にも増して必要でございますけれども、それとともに、やはりただし書きのものも積極的に活用するという検討の方向も必要なのではないかという気がいたします。法律改正は一切必要ないという基本的な考え方で、法文の解釈は、私が局長にお伺いしたとおりで、確かにおっしゃるとおりでありますが、しかし、さらに遺漏がないものかどうかという検討もあるいは必要なのじゃないかなという気は私はいたしております。  最後に、ちょっと具体的なことをお伺いしまして恐縮でございますが、これも防衛問題の専門家の御意見でございまして、御確認を申し上げたいということでございますが、状況が把握できなかったということで、地震が発生したならば直ちにRFファントムを飛ばして航空写真を撮ってくれば被害状況が非常によくわかったのだという説をなしておられる方がいらっしゃいます。それから、火災が発生した場合、飛行艇を飛ばして真水か海水か大量に水を投下したらよかったのだというふうに言っていらっしゃる。それも同じ方でございます。あるいは飛行機とかヘリコプターで、消火弾というのか消火剤というのか、それを投下するということも火災を鎮火するのに非常にいいのじゃないかという提言をしていらっしゃるわけでございますけれども防衛庁の御専門的な見解から、あるいは消防庁さんと両方でございますが、この辺、この意見についての評価をお伺いいたしたいと思います。
  24. 村田直昭

    村田(直)政府委員 今の二点のうち、消防の方につきましては消防庁の方から後からお答え願いたいと思いますが、ファントムの件につきましての御指摘、時間的な問題を考慮しての話を申し上げたいと思います。  今、時間的な即応性というようなことを除けば、非常にファントムというのは偵察機として能力が高うございますから有益であるということでございますが、このRF4Eによる航空写真というのは、一般的に言いますと、今申しましたように被災地の状況把握のために有意義ではございますが、これが、写真を撮ってきてから処理をするまでにやはり相当の時間を要するということなんでございます。したがいまして、例えば今回の場合でも、十一時に百里基地を出発しまして、十三時過ぎに百里基地に帰ってきています。それを百里基地にあります写真の現像機材をもちまして現像をするのに約三時間ほどかかりまして、そしてそれをさらにヘリコプターで東京まで持ってきて見るということになると、ちょうど十六時五十分ごろに我々それを見る機会を得たわけですが、そういう意味で、これは偵察機によって目で見るということができませんので、初度の立ち上がりの状況ということでは、RF4Eを飛ばすということは被害状況を確認するには難しい。  ただ、当然のことながら、そういう写真を累積していくことによりまして、将来の、自後の対策ということでは役立つわけで、そういう意味では、RFというのを私ども飛ばして、その撮った写真をそれぞれの地方自治体なり、我々もこれを見て、次の派遣の参考にしているということでございますけれども、何せ立ち上がりが今回非常に問題があった、その被害状況が非常に大規模であるということがわかりにくかったという状況があるわけです。それのためには、即応性という観点からやや難があるというふうに我々考えておるわけです。  そういう意味ではこれから私どもとしては、政府としてプロジェクトチームを今つくっておりますが、そのプロジェクトチームの中では、むしろヘリコプターを飛ばして状況を把握する、そしてそれを中央に報告するというようなシステムを今考えております。そういう意味では、ヘリコプターの方が立ち上がりの段階では有用ではないかなというふうに考えておるところでございます。
  25. 猪野積

    ○猪野説明員 お答え申し上げます。  消防庁に対しましては、飛行艇による消火、それから消火弾、消火剤散布による市街地火災での消火というお尋ねであったと思います。  飛行艇による家屋火災に対します空中消火に関しましては、消防研究所において実験、研究が行われまして、ある程度延焼は抑止されるものの、延焼を阻止するまでの効果は確認されておりません。したがいまして、飛行艇が市街地火災に有効であるかどうかはなお検討を要しますが、それに加えまして、震災時の火災では、空からの大量放水に伴う要救助者等への危険性が懸念される、それから、大規模火災に対応するためには相当数の消火用の飛行艇を保有、管理しておく必要があるといったことから、その導入については慎重に考える必要があると考えております。  また、消火弾につきましても消防研究所において実験、研究が行われておりまして、屋根貫通型で六畳一部屋程度の小規模な火災に対しての消火効果しか確認できなかったこと、要救助者に対しての安全性が確保されないといった理由によりまして、実用化の研究はその後行われておりません。これも慎重に考える必要があると考えております。  さらに、消火剤を使うとすれば、これは恐らく水ではなくて消火薬剤のことをお尋ねだと思うのですけれども、延焼抑止効果とか安全性、使いやすさ等を総合的に考えますと、現在林野火災の際に自衛隊のヘリで使用されている、水に燐酸アンモニウム等を混合する方式によることになると思われますが、これを市街地火災への空中消火に用いるということになりますと、屋根等の障害物に邪魔されて延焼する可能性のある可燃物の表面に付着しないということで延焼抑止効果がほとんどないだろうということ、それから、ヘリコプター等で空中からまける消火液の量が限られておりまして、あのような市街地の大火災を消火するためには大量のヘリコプターなどを集中する必要がございますので、それ自体極めて危険でまた困難であるということでございます。それから、低空飛行で散布するという場合には、ホバリングの際に発生する下方向の風によりむしろ火勢を強める危険性がある、さらに、消火液の塊の衝撃によりまして要救助者等への危険性も懸念されるということから、これも慎重に考える必要があると考えております。  それでは一体、今回のように消火栓が使えなくなる可能性の高いそういう大震災時にどうするんだということでございますが、今回、神戸の消防水利が消火栓に頼り過ぎであったことは否めない事実でございまして、そういう意味で、私ども従来から消防水利は消火栓に偏らないようにということを指導してまいっております。今後とも消防水利の多様化ということを、防火水槽の整備とか、河川、海水の利用、あるいは民間のプールとか貯水槽、池等の指定消防水利としての活用といったことを積極的に進めてまいりたいと思いますが、特に今回、長田の火災におきましてついには海水を利用いたしまして、これが相当効果的でございました。そういう観点から、これをさらに効果的かつ効率的に使えるシステムとして、海水利用型の消防水利システムというものを推進していきたいということで、現在その整備を検討しておるところでございます。  以上でございます。
  26. 熊代昭彦

    熊代委員 専門家の見解必ずしも妥当ならずということでございます。大変に詳しい御説明をいただき、ありがとうございました。  時間が参りましたので、これで質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  27. 神田厚

    神田委員長 次に、西村眞悟君。
  28. 西村眞悟

    ○西村委員 西村でございます。  本日は、外務省外務大臣に、昨年来我が国、国会等でもはやり始めました「不戦」、戦わずという言葉の意味について見解をお伺いしたい、このように思っております。  ただ、出発点として整理申し上げておきたいと思いますが、例えば大江健三郎氏がノーベル賞受賞式で「不戦の誓い」という発言をされておる。このような発言は、個人の自由の領域に属する発言でございまして、ここで話題にするところではございません。私が話題にしておりますのは、国家が表明主体として「不戦」という話を用いた場合に、国際社会でいかなる評価を受け、その評価が国家全体に及ぼされる、この公の観点からこの話を問題にしたい、このように思っております。  そこで、いかなる使用例があるかと申しますと、公の立場の方ですから、村山内閣総理大臣の発言を引用いたします。  昨年八月三十一日、東南アジア歴訪の後の談話、これはマハティールさんにたしなめられた例の歴訪の後ですけれども我が国の侵略行為や植民地支配などに対し、「深い反省の気持ちに立って、不戦の決意の下、世界平和の創造」に努力していく。  昨年の九月三十日の所信表明では、「過去の過ちから目を背けることなく、次の世代に戦争の悲惨さと、そこに幾多のとうとい犠牲があったことを語り継ぎ、不戦の誓いを新たにし、恒久平和に向けて努力していかなければなりません。」。  本年に入りまして、武村大蔵大臣に託した李鵬中国首相あての親書には、「過去を深く反省し、不戦の決意」に基づき、未来志向に立って日中友好関係の発展に努めていきたい。  公人、国家の内閣総理大臣がこのようにしゃべっておりますから、私はこの際、この意味についてお伺いしたいと思うのでございます。  この使用例の特徴は、我が国のあの大東亜戦争に対する歴史的評価とセットになって使われておるという特徴がございます。ただ、またここで整理しておきますが、歴史的評価というものは個人の世界観、人生観、思想によって異なるものですし、立法府及び行政府においては、歴史探求の機関ではございませんので、これもまた個人の自由な領域に属する。その証拠に、社会党委員長である内閣総理大臣においては、ロシア革命に対する評価、スターリン時代に対する評価は多分変わっておられるのだろう。かくのごとく、我が国の戦争に対する評価も固定して考えてはならないという意味で、ここで問題にする領域ではございません。  したがって、内閣総理大臣が国家の代表として、例えば李鵬中国首相にあてた親書にあるような「不戦」という意味は、これをどういう意味で使われておると外務大臣はお考えになるでしょうか、お聞かせいただきたいと思います。
  29. 河野洋平

    河野国務大臣 お答えを申し上げる前に申し上げておきたいと思いますが、「不戦」という言葉は、別に、流行とか、最近になって急に使われているということではないと私は思っております。  お尋ねの、村山総理が武村大蔵大臣に託された書簡の中で述べておられる気持ちは、日本と中国は再び不幸な、我々が歴史にあったようなことはしてはならない、あってはならないという気持ちを述べられたものだというふうに思います。日中両国は、お互いに今後、未来に向かって友好という気持ちを持って両国関係を発展させていこうということが政治的に極めて重要だというお気持ちを述べられたのではないかと思います。
  30. 西村眞悟

    ○西村委員 大臣のおっしゃるとおりでございまして、「不戦」という言葉は流行ではないのでございます。かって使われてきた言葉です。  歴史的な過去を眺めますと、しかし、この不戦という言葉によって象徴される時代というのはいっであったかなと思うのですけれども、第一次世界大戦後のヨーロッパがそうではなかったかな、パシフイズムという時代でございまして、いわゆる平和を唱えなければ議員は選挙に落ちる。今様な表現で言えば、危機管理という体制を整えるというふうな趣旨の者は好戦論者とみなされる。チャーチルにおいては、非常に好戦論者としてさげすまれておった時代でございますが、その当のチャーチルが、第二次世界大戦が終わってから、あの第二次世界大戦という戦争は避け得た戦争であった、平和主義者が戦争をつくったのだ。また、ミュンヘン会談を学生論文に選んだケネディは、いつ、どのような危機に陥ったときにでも、ただ平和のみを願っておれば戦争になる、断固とした戦う決意をしたときに初めて平和がもたらされる、そして、デモクラシーが守られる、このように書いておるのです。大臣おっしゃるように、流行ではございません。我が国の現在の状況は、第一次世界大戦後のヨーロッパに似ているのではないか、このように思っております。  そこで、もう少し詳しくお聞きしたいと思うのですけれども、「不戦」という話が国際間で使われるようになったのは、昭和三年の戦争抛棄二関スル条約、これから一般化したのではないかと思います。国際法の教科書におきましても、不戦条約という名称でこの条約が紹介されておりますが、この条約について、「不戦」というのは戦争放棄のことである、外務大臣先ほどお答えのように、戦争をしないという、この一般的な意味であろうと思うのです。  しかし、この条約を批准した日本を含む各国は、この条約の文言が非常に難解でありますから、留保をつけました。解釈公文を発して、留保をお互いにつけた。例えば米国は、「本条約は、国家の固有権たる自衛権を何ら制限するものでない」「各国は、いかなる場合にも、また条約の規定関係なく、自国の領土を攻撃または侵入から守る自由をもち、また事態が自衛のための戦争に訴えることを必要とするか否かを独自に決定する権限をもつ」。英国においてはもっと広がりまして、「他国の領土であっても、その繁栄と保全が自国の平和と安全に特別かつ死活的利害関係をもつ地域を攻撃から守ることは自衛の措置である」。日本においても同様にこのような留保をつけたと思うのです。  そこで、歴史的にこの不戦条約、戦争抛棄ニ関スル条約が昭和三年以来ありまして、その条約をつくる場合に、日本を含む各国は、既に解釈公文を発して、今申し上げたような留保をづけたという歴史的経緯がございます。  そこで、「不戦」という話を国家が今後使う場合において、今私が歴史的経緯の中から申し上げた、日本が締結した不戦条約の例によらず、留保なしに「不戦」という話を用いてしまうことは、せっかくつけた留保を消すことにはならないか、このように思うのですが、いかがでございますか。
  31. 折田正樹

    ○折田政府委員 今委員指摘のとおり、いわゆる不戦条約、これは、正式には戦争抛棄関スル条約でございますが、一九二八年に署名されまして、二九年に効力が発生いたしました。そして、この条約は三条から成る短いものでございますけれども、第一条で、「締約国ハ国際紛争解決ノ為戦争ニ訴フルコトヲ非トシ且其ノ相互関係ニ於テ国家ノ政策ノ手段トシテノ戦争ヲ抛棄スルコトヲ其ノ各自ノ人民ノ名ニ於テ厳粛ニ宣言ス」というのをまずうたいまして、第二条で戦争の平和的解決、第三条で批准、加入のことを規定した条約でございます。  この条約の締結に際して、我が国、その他の国が留保したかということでございますが、厳密に申し上げますと、日本もその他の国も、一般国際法上の厳密な意味での留保を行っているということではございませんが、今先生指摘のように、条約締結の過程で、いろいろなやりとりが各国の間で行われました。そこで公文のやりとりがございまして、今先生もおっしゃられましたように、アメリカ合衆国の宣言とか、いろいろございました。そして、本条約が、締約国の有する自衛権を制限し、また害するものではないということが交渉国間で了解されまして、その了解をもとに、今先生がおっしゃったような公文がお互いに交換されたということでございます。  以上を踏まえますと、この戦争抛棄ニ関スル条約そのものには明文の、直接の規定はございませんけれども、締約国による自衛権の行使までも禁止するものではないというふうに理解されているわけでございます。  そして、「不戦」ということでこれを留保なしに使うということはどうであろうかという先生の御指摘でございますけれども、「不戦」という言葉を厳密に法的に定義するというのは私は困難ではないかと思いますが、先ほど外務大臣が申し上げましたように、これは政治的な一種の決意の表明であるのではなかろうかというふうに思います。そして、厳密な法的な用語ではないものですから、留保なしの「不戦」が何を意味するかということはなかなかお答えしにくいわけでございますけれども、「不戦」という言葉を使いましたら直ちに自衛権の行使を制限するというようなところまでも意味するものではないというふうに考えます。
  32. 西村眞悟

    ○西村委員 条約の専門家の御意見を承っておって、私は専門家ではございませんが、この条文の字句が難解で何がこの中に入るのかわからない状態なんです。ただ、国家の表明として受け取る国民一般の意識としては、私のように選挙をやっている者と同じような意識を持つのかと思うのですけれども、やはり、かつて留保を付して戦争放棄の条約を結んで、今またその留保なしに同じことを宣言するという意味はどういうものなのであろうか、このように考えるわけです。  今お答えになったように、この話句が法的にどういうふうな意味を持つのかどうかという点については難しいところでございましょうけれども、ある意味では、かつての留保を消すということには相違ございません。したがって、自衛権の問題はどうなるんだろうかという国民の質問を受けることは必定だ、このように思っておるのです。  私のそのような疑問の点から再度質問申し上げますけれども、日本国憲法が自衛権を放棄していないということは間違いないことだと思いますけれども、この不戦条約の「不戦」という言葉を留保なしに使うということは、国連憲章と矛盾しないのかな、私はこのように思うのです。  第一に、国連の認める戦争は四つございまして、国連自身の武力行使、個別的自衛権の行使、集団的自衛権の行使、四つ目は敵国条項の発動でございます。  敵国条項の発動はともかくといたしまして、国連憲章に、この「不戦」の意思を国家が表明する、留保なしに表明するという行為は矛盾しませんでしょうか、お答えいただきたいと思います。
  33. 折田正樹

    ○折田政府委員 国連憲章でございますけれども、第二条四項で、「すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない。」と言って、武力行使は一般的には違法とされているわけでございます。  他方、集団的安全保障措置の場合、よく引用されます憲章第五十一条で、この憲章のいかなる規定も、国際連合の加盟国は個別的または集団的自衛の固有の権限を有しており、それを害するものではないというふうに書いてあるわけでございます。  それで、先ほどの「不戦」という言葉とこの国際連合憲章が矛盾しないかという点でございますが、私は、「不戦」という政治的な強い意思を表明されることとこの国連憲章が矛盾するというようなことはないのではないかというふうに思います。
  34. 西村眞悟

    ○西村委員 先ほどたしか、「不戦」という言葉について厳密な法的効果の定義は難しいとおっしゃったと思うのですけれども、法的定義が難しい問題と法的な国連憲章とを比較することはいささかできないなと。  私が質問した背景には、先ほど来申しておりますように、留保なしに使う「不戦」という言葉は、法的効果として自衛権の行使について重大な制約を与える言葉である、このように思うのですけれども、まあこれは筋違いになりますから、自衛権の行使という、「自衛権」という言葉が出てきましたので、日本国憲法は自衛権を否定しておりませんが、この際お聞きしたいと思うのです。  日本国が将来いずれかの時点で自衛権を行使する事態が来るかもわかりません。そのときに、それが自衛権の行使であるか否かを決める主体はどこだとお考えでありますか。
  35. 折田正樹

    ○折田政府委員 現在、国連憲章というものがありまして、私どもはその秩序の中にいるわけでございますが、御指摘のような、まず判断をするのは第一義的には自衛権を行使する国家、すなわち侵害を受けた国家であるというふうに考えます。  他方、国連憲章におきましては、加盟国が自衛権の行使に当たってとった措置は直ちに安全保障理事会に報告しなければならない、これは五十一条でございますが、そういうふうにありますし、また、安保理事会が何らかの決定を行った場合には国家はこれに従うべきものであるということが書いてあるわけでございますので、第一義的には自衛権を行使する国家が判断をいたしますけれども、その後、国連憲章上の手続に従わなければならないということでございます。
  36. 西村眞悟

    ○西村委員 よくわかりました。お答えを明確にいただいてありがとうございました。  次に、自衛権の範囲に移りますけれども、教科書のケースメソッドなどでは、一八〇七年のデンマーク艦隊引き渡し請求事件、イギリスとデンマークの事件。この事件は、ナポレオンにトラファルガーで大勝したイギリスが、ナポレオンが中立国デンマークを侵略してその艦隊をもってイギリスを襲うおそれがあるとみなして、デンマークに艦隊の引き渡しを要求する。中立国デンマークは、その引き渡しに応じておれば中立は保てませんから、当然拒否する。イギリスは、コペンハーゲン市内を攻撃して屈服させ、その艦隊を持ち去った。これがイギリスが主張する自衛権の範囲でございます。また、カーター・ドクトリンがございますけれども、湾岸地域を制圧するいかなる外国勢力においても、我が国の死活的利益を侵害するものとみなし、あらゆる反撃を受けるであろうと。これがアングロサクソンの主張する自衛権の範囲だと思うのです。  翻って我が国の自衛権の範囲は、それはお答えが漠然となると思いますけれども、このアングロサクソンの自衛権の範囲に準じて考えてもいいものだとお考えですか、どうですか。
  37. 折田正樹

    ○折田政府委員 自衛権については、国際法上の側面と憲法上の側面というものがあろうかと思います。  一般国際法上の自衛権でございますが、自衛権は、国家または国民に対する外部からの急迫な不正の侵害に対し、これを排除するのにほかに適当な手段がない場合、当該国家が必要最小限度の実力を行使する権利であって、これは国家に認められた権利でございます。さらに、一般国際法上の観点からいいますと、自分の国が直接攻撃されていなくても、自分の国と密接な関係にある自分の国以外の国に対する武力攻撃も実力をもって阻止する権利、これはいわゆる集団的自衛権というものでございますが、それも国際法上は国家に認められているわけでございます。これが国際法上の自衛権でございます。  憲法上の自衛権ということになりますと、これは憲法九条一項の解釈になりますが、憲法九条一項は独立国家の固有の自衛権まで否定する趣旨のものではなくて、自衛のための必要最小限の武力を行使することは認められている。しかし、先ほど申し上げました国際法上の集団的自衛権につきましては、我が国は国際法上権利を有するにしても、これを行使することは我が国を防衛するための必要最小限の範囲を超えるもので、これは許されないというのが一貫して政府が申し上げてきているところでございます。
  38. 西村眞悟

    ○西村委員 今、国際法上の自衛権の範囲我が国の自衛権の範囲を分けて御説明いただきまして、よくわかります。  ただし、ここで申し上げておきたいのは、日本以外の各国は国際法上の自衛権の範囲を自衛権として、つまりデンマーク艦隊引き渡し請求事件とかカーター・ドクトリンというものを日本以外の国では自衛権の範囲として正当性を認めている、そして現実にそのように行動しておる国があるということを申し上げておきたい。  次にまたお答えをいただきたい問題があるのですが、今、我が国の自衛権の範囲というふうなことをお答えになりました。これは専守防衛、わかりやすい言葉で言えば、我が国の領土に上陸用舟艇等で敵が上陸してきた場合に発動するものである、これが一番わかりやすい。侵入を未然に防止し、既然に排除するということでございます。これを想定しておると思うのですけれども、しかし、科学技術は日進月歩でございまして、我が国に敵兵の姿はあらわれない、しかしマッハ十を超えるミサイルは飛んでくる。これに対する専守防衛はどのようになすべきものなのでございましょうか。今お答えになった自衛権の範囲でお答えいただいて結構でございます。
  39. 村田直昭

    村田(直)政府委員 「わが国に対する急迫不正の侵害」という要件に当たるかどうかということについて申し上げれば、我が国に対する弾道弾等による攻撃につきましては、これをあらゆる手段で防ぐということが第一義的な問題であろうかと思います。ただ、実際問題としてそれが防げないときには、その策源地について攻撃をするということについても自衛権の範囲に入るであろう、今ちょっと私、手元に資料がございませんけれども、そのような答弁は過去政府が一貫してとってきた見解でございます。
  40. 西村眞悟

    ○西村委員 発射する場所に対する攻撃、これは未然にできるのですか。飛ばしたらマッハ十ですから、未然にできるかどうかだけお答えください。
  41. 村田直昭

    村田(直)政府委員 これは、自衛権の行使の三要件の中に「急迫不正の侵害があること」と、それから、それは現に侵害が起こっておるということでございますので、そこのところは、未然に防止という意味で先制的に攻撃をするということについては、そのときの状況いかんによりますけれども、基本的には難しいというふうに考えております。
  42. 西村眞悟

    ○西村委員 基本的にはやはり難しいと。  ここで文民統制、シビリアンコントロールのことについて御見解をいただきたいと思います。  話が飛ぶようでございますけれども、これは決して飛ぶ問題ではございません。今までお答えになったように、政治、文民の世界には積み上げた歴史がございまして、緊急事態が起こらなければ一挙に新しい判断を示すということができにくい状態なのがこの政治の世界でございます。  そこで、シビリアンコントロールというのは何か。警察は行政組織の一部分そのものでございますから、警察官を文民統制するということは自己矛盾でございます。軍隊にだけ文民統制という言葉がある。軍隊が行政機関の一部そのものになりますれば、今政府がお答えになったような、現在における政府の見解で縛られた範囲のシミュレーション、その範囲の活動しかできない。  そこで、シビリアンコントロールの前提には、軍政、アドミニストレーションと軍令、オペレーションを分離いたしまして、軍令、オペレーションの部分は時の政府の見解、時の政府の意向とは少々独立した自律的な部分があるのだということを認めながら、軍政の面ではしっかりとコントロールする、これがシビリアンコントロールでございます。今の自衛隊はいささか行政組織の一部に組み込まれ過ぎておりまして、オペレーションの部分の自律がない。  なぜ私がこういうことを申し上げるかと申しますと、現在の時点で予測し得ない侵害がもし起こるとしたら、今局長お答えになったような、敵さんがわざわざ陸に歩いて上陸していただけるような事態ではないであろう。アメリカにおいては、シビリアンコントロールを私が今申し上げたように解釈して、オペレーション、軍令の部分では大幅な自律権、奇想天外なシミュレーションもなし得るような自由の領域を与えておると思うのです。日清戦争後に対日戦争のオペレーションをアメリカはもう始めております。オレンジ作戦です。奇想天外なオペレーションもまた始めております。同時に、イギリスと大西洋で戦うオペレーションもアメリカは始めておったのでございます。これがアメリカの自由な発想、そして我々が戦って負けたアメリカの軍隊の強さでありました。  それで、これは長期的な展望としてお聞きするのですけれども、また具体的な今回の大震災におきましても、やはり先ほどお答えのありましたように、自衛隊法八十三条二項ただし書きにおいては、また八十三条本文自衛隊出動においては、日ごろ兵庫県等々で共同訓練をやっていなかったので非常にまずかった等の意見がありました。しかし、軍隊というのは、軍令、その部分で自由を与えておいて、与えられた条件の中で最大のオペレーションを平時において尽くしさえしておれば、社会党がつい最近まで自衛隊は違憲と言いまして、地方に行けば自衛隊を税金泥棒のように呼ばわる雰囲気がまだあるわけですが、その与えられた中においても、今回の大震災のような防災出動のシミュレーションを尽くしておくことができた、このように思うのです。  質問に戻りますけれども、今の、ミサイルの発射基地をたたくことはできないというのが現在の政府に課せられた政治的限界であるとするならば、文民統制の言葉の真義を私が今申し上げたように解釈されて、自衛隊を把握する全体の法制においてもう少し、例えばアメリカが、イギリスに対するシミュレーションも我が国に対するシミュレーションも、日清戦争後フィリピンを領有した時点から始めたように、自衛隊にもう少し自律権を与える。つまり、三矢事件以来の自衛隊に対する拘束は、文民統制の名をかりて、文民統制を誤解した、つまりがんじがらめにしただけだというふうな観点にお戻りになって御検討を始められたらいかがかなと思うのです。  今、私の文民統制に対する考え方を申し上げた意見に対して、いかが意見をお持ちでしょうか。ちょっとお聞かせいただきたい。
  43. 村田直昭

    村田(直)政府委員 文民統制、これは長く言えばいろいろ従来から政府が述べておる見解がございますけれども、軍事に対する政治の優先というところに本質があると考えております。  そして、先生おっしゃるように、三矢研究というものがたしか昭和三十八年度の統合幕僚の研究ということで行われ、それが四十年に国会で議論を呼んで、その後自衛隊のそういうような運用にかかわる研究なりあるいはそういうものが制約を受けておるのではないかという、もし御指摘であるとすれば、そういうようなことはございません。防衛庁として、有事に備えるあるいは任務に備えるというような研究につきしまては、その後もきちんと行われておるということを申し上げたいと思います。  そして、それはどういうような格好で行われておるかと申しますと、年度の防衛、警備等に関する計画というものを我々はつくっておりますが、それは、その計画の対象とする年度において、万一外部からの武力攻撃、あるいはそのおそれのある場合を含むわけでございますが、並びに間接侵略その他治安維持上重大な事態が生起した際に自衛隊が対処する場合の基本的事項等について定めまして、これを毎年度作成しています。これは、大もとは統合幕僚会議が年度の統合防衛計画ということで作成し、これに基づきまして陸海空の自衛隊が具体的な計画作成し、さらにその細部についてはそれぞれの部隊がそれぞれの対処計画なりというものをつくっておるというシステムで、きちんとした格好でつくっておるということでございます。  それではどこまで許容されるかということについて言えば、それはあくまで現在の我が国でとられておる政策の中で行うということが大原則でございまして、それを逸脱して行うようなことはやはり許されないということでございます。
  44. 西村眞悟

    ○西村委員 私が申し上げたのは、政治が事態に即応して変化しなければならないときもある、そのときに政治が財産としていろいろな手段を持てるということを確保するにはどうすればいいのかという観点から、それは軍事専門家の自己完結的組織である軍隊に軍令の面で自由をもう少し与える方向がいいのではないか、このような観点からでございます。  ありがとうございました。  次に、最後でございます。  今回の阪神大震災に際しまして、皇太子殿下御夫妻が中東訪問に行かれた、そのことについて週刊誌等で皇室批判というふうな記事が、なぜこのときに行くんだというふうな批判記事が出始めまして、私も憂慮をしておったところでございます。そういうところに、文芸春秋で、私もよく本を拝読する江藤淳さんが、ある意味では激烈な記事を書かれておる。これはちょっと黙っておれないので、その弁解というふうな意味で承るという趣旨ではないのですけれども、御見解だけはこの場ではっきりお伺いしておこうと。激烈な批判文でございます。  「あなた方は」、あなた方というのは外務省のことですが、「一体皇族を外務省の特別職員とでも思っているのか。宮内庁の面々にも私は問いたい。」「あなた方の考える皇室とは何なのですか。」そういうふうな激烈な面で、「震災に遭遇し犠牲者の遺体がまだあちこちに埋まっているその最中に、あたかも何も起こらなかったがごとく、皇嗣が外国を歩いておられるとは何事であるのか。」なぜ自分がこれを言うかといえば、「夫れ知って言はざるは不忠なり。知らずして言ふは不智なり。臣等縦ひ不智の謗を受くるとも、決して不忠の臣たるを欲せず」。こういうふうに書かれております、  私は、ある意味では江藤さんの言っておることはわかるのですけれども、皇室は義務を尽くされたのだ、このように思うのです。江藤さんは、「皇室は国民に義務を果たさねばなりません。でなければどうして総理大臣が義務を果たすでしょう。どうして自衛隊が義務を果たすでしょう。」こう書いておりますが、私は、皇室は義務を果たされた、個人において忍びない思いをなさっただろうと思いますけれども、国家においては、平時においても非常時においても継続して果たさなければならない領域がございます、その領域の義務を果たされたのだろう、このように思っております。  その証拠に、江藤さん流にいえば、自衛隊は義務を果たすことができております。内閣総理大臣については、私は義務を果たしたとは思っておりませんが、彼は、憲法九条の擁護、護憲は言いますけれども、憲法第一条「天皇は、日本国の象徴であり」という、あの条文の擁護を言ったことのない政党でございますので……。  それで、二日短縮した御日程で帰ってこられた等々のことがあります。このような激烈な批判も出ております。したがって、淡々とで結構でございますから、今回の訪問に至った点を、もう時間がなくなりましたが、簡潔にこの場でお答えいただいて、私にお聞かせいただきたい、このように思います。
  45. 河野洋平

    河野国務大臣 皇太子・同妃両殿下の中東諸国御訪問を政府としてお願いするに当たっては、大震災の大変な被災状況は認識しつつも、今回の御訪問が昨年十一月の中東御訪問の一環であり、また、御訪問国のうち特にクウエート、アラブ首長国連邦の二カ国については、既に過去二回延期せざるを得なかったとの事情があったことをも踏まえまして、両殿下の御公務として予定どおり実施していただくとの判断をしたものでございます。  その後、御日程の変更の可能性も含め、諸般の情勢を常時慎重に検討いたしましたが、一月二十六日、湾岸二カ国の御試問を予定どおり終えられ、最後の御訪問国ジョルダンに着かれた後、被災地を気遣われる両殿下のお気持ちに対し、ジョルダン側の深い理解と配慮が示されたわけでございます。この結果、ジョルダンにおける御日程のうち重要な部分が終わった段階で、今次三カ国御訪問の目的が達成されたものと認められたので、御予定を二日繰り上げ、一月二十七日夕刻同国を御出発、二十八日御帰国を願うことといたしたわけでございます。  今申し上げましたように、湾岸諸国御訪問は長い間の懸案でもございましたが、大変残念なことに、過去二回、湾岸戦争でございますとかイラク・クウエート間の緊張の高まりなどを受けまして、二回延期せざるを得ない状況がございました。その二回の延期の際にも、先方は皇太子殿下御訪問ということで国を挙げて大変な御準備をなさったということを伺っておりまして、今回もし延期をするということになれば、三回の延期ということにも相なるわけでございます。  私ども以上に、皇太子・同妃両殿下は被災地について心を痛めておられて、御出発間際にもそうしたことを漏らされたということは伺っておりますが、そうした状況をも踏まえまして公務をお務めになられたということでございます。
  46. 角田素文

    ○角田説明員 お答えいたします。  皇太子・同妃両殿下の中東諸国御訪問は、閣議了解によりまして、すなわち政府の決定によりお願いしたものでございます点をまず申し上げたいと思います。  皇太子・同妃両殿下には、御出発に当たりましても、日本を離れられてからも、被災地の状況につきまして深くお心を痛めておられたところでございます。両殿下の中東諸国御訪問は関係国との友好親善の増進に貢献されたと考えておりますが、しかしながら、結果として、両殿下のお心が痛む中、御公務として御訪問をお願い申し上げ、また御訪問中に御日程の変更をお願い申し上げたことにつきまして、まことに申しわけなく思っておる次第でございます。
  47. 西村眞悟

    ○西村委員 このような激烈な批判があるということにも襟を正して今後お進みいただきたい、このように思っております。  終わります。ありがとうございました。
  48. 神田厚

    神田委員長 堀込征雄君。
  49. 堀込征雄

    ○堀込委員 社会党の堀込でございます。  ちょっと通告した質問の順番を変えさせていただきますが、御了解いただきたいと思います。  実は、けさのニュースでございますが、昨年十月の米朝合意によりまして、黒鉛減速炉凍結の見返りに重油をアメリカが提供する、こういうことになっておったわけでありますが、この代替エネルギーで供給されるはずの重油が軍事用に転換をされて、これが米国内を初めいろいろな波紋を起こしているという報道がございましたが、この点は外務省はつかんでおいででしょうか。
  50. 川島裕

    川島政府委員 お答え申し上げます。  十六日の米上院軍事委員会におきまして、ラック在韓米軍司令官が行った証言が伝えられたということでございます。その発言の趣旨は、北朝鮮供与された重油はそもそも直ちに軍事転用が可能となるものではないと考えられる、ただし自分、ラック司令官はこの問題を直接担当しているわけではなく、伝聞情報にすぎないが、北朝鮮供与された重油は、あるところで使用されれば、本来そこで使用されるはずだったものが軍事転用され得るのではないかという疑いを持つ余地があると考えられる、我々は北朝鮮側を極めて詳細に観察しており、このようなことを差し控えるように北朝鮮側に求め、北朝鮮側はこれを中止したと承知しているが、これも伝聞情報である、こういう発言を行ったようでございます。  私どもといたしましてはどう見ているかということを申し上げますと、北朝鮮供与されました重油は、技術的に見て軍事利用の可能性の少ないC重油であるけれども、万一北朝鮮が重油を軍事転用した場合には、米国はこれを確実かつ早期に察知することができ、これをやめさせる手段を講じるという説明は、かねてから米側より受けている次第でございます。  いずれにいたしましても、米朝合意に基づき供与される重油はあくまで暖房とか発電用のものでございまして、北朝鮮側供与された重油を他の目的に使用することは許されないということになっておりますので、そういう観点から、今後この米朝合意全般を動かしていく上でも、万一でも軍事転用の疑いを持たれるような形で米側から供与された重油が使用されるということは差し控えられるべきである、これは非常に重要であると思っております。  政府といたしましても、このような問題についても従来から米側と緊密に協議、連絡を保ってきた次第ですけれども、今後とも北朝鮮供与された重油の適正な使用の確保のために連絡を保ちたい、こういうふうに考えております。
  51. 堀込征雄

    ○堀込委員 そこで、米朝合意に基づく北朝鮮軽水炉転換問題につきまして、先ほども熊代議員の方から質問がございまして、KEDOの設立に向けて話し合いが行われ、それを中心にしながら解決をされていくという方向が示されたわけであります。さらには軽水炉の形式につきましても、間にアメリカ企業を入れたりというような報道もなされているわけであります。  そこで、資金の問題についても、これはアメリカ経由であったり、いろいろな報道がなされていまして、外務大臣も予算委員会で、今決定しているはずもないしそういうこともないんだ、これからの話だという御答弁をなされているわけであります。  しかし、これは核疑惑払拭の対価といいますか、いろいろな問題で国民感情があることも事実でございまして、これはKEDO設立後ということになるのかどうか、あるいはその前にそういう交渉が行われ、いつどのように決定をされていくのか、日本政府としてはどのような態度で対応されるおつもりなのか、ちょっとお聞かせをいただきたいと思います。
  52. 川島裕

    川島政府委員 今後の段取りに関する点を御説明申し上げたいと思います。  今準備をしておりますのが、このKEDOという国際コンソーシアムの設立てございます。そのコンソーシアムが設立されますと、北朝鮮との間で軽水炉について供給取り決めという契約みたいなものを詳細に詰めまして、これを何とか四月中には詰め切りたい。そしてそれができますと、いよいよ軽水炉プロジェクトが動き出すということでございます。その段階でいきなり建設というような話ではなくて、まずやらなければならないのは、現地調査とか、どの辺にどういうものを建てるかとかいうことが作業として想定されております。  そこで、財政的にどういうことになるのかというお尋ねでございますけれども軽水炉本体を建設するには巷間四十億ドルとかいろいろな数字が報道等では出ております。実際に調査してみないと具体的数字は決まらないわけでございますけれども、行く行くはその額を決めて、それをどういうふうに負担するかというのを詰めなければならないということでございます。  ただこれは、それに先立って、まずKEDOというものを立ち上がらせて、そこになるべく多くの国が参加してまずはプロジェクトを動かし出すというのが先行するという見通してございます。
  53. 堀込征雄

    ○堀込委員 恐らくそういうことなんだろうというふうに思うのですが、ただ、アメリカのルカー上院議員ですか、十億ドルの負担を求めているというような報道もされ、予算委員会で外務大臣、そういうことについて否定をされましたけれども、しかし、こういうものは一度出ますと何となく、言葉は悪いのですが、相場的といいますか、世論をつくるというような感じがございます。今のような形で決定をされていくのでありましょうが、これは米朝合意の後でございますが、日本政府としても、やはりそれはある程度の負担ということについて腹決めはされているだろうし、また応分の負担について、これはやらなければいけないだろう、こういうふうに思っています。  その辺はあれでしょうか、まあこれは理由づけがいろいろなことで難しいのでございますが、核疑惑解消だとか、あるいはある議論の中では戦後五十年だとかいろいろな問題を絡ませてというような議論もあるわけでありますが、その辺はどのような考え方といいますか、つまり私が言いたいのは、やはり国民にわかりやすくこういうことなんだという説明が要るのではないかというふうに思うのですが、どのように考えていらっしゃいますか。
  54. 河野洋平

    河野国務大臣 北朝鮮の核疑惑を解消するということは、米朝合意に基づいて、米朝合意がその道しるべといいますか、道行きを大体きちんと決めているわけです、その米朝合意にのっとってこれを具体化するということになるわけですが、私どもとしては、米朝合意の具体的実施について、ちよっ生言葉は余り適切でないかもしれませんが、日本が米朝合意取り決めアメリカの手伝いをする、そういう気持ちで私どもは考えていないのでございます。北朝鮮核開発疑惑というものは、我が国にとっても直接的に非常に重大な懸念を持つ事柄でございますから、これは本当に、言葉は適切ではありませんが、他人事で手伝ってやるよというものではなくて、もちろん国際社会全体としての問題であると同時に、やはり我が国、つまり北朝鮮の近隣諸国である我が国にとっても極めて重要な、我が国としても重要な問題だという認識でこれに取り組まなければならない、こう思っておりますから、我が国としても、米朝合意、米朝話し合いの中のアメリカに対して、もう我が国としても応分の負担をする用意があるのだからという我々の考えを持っていたわけでございますが、過日の日米首脳会談におきましては、よく言われます意味のある財政的支援を我が国としても行うということは伝えたところでございます。  では、堀込議員おっしゃるように、それは大体どのぐらいのものなのかということにつきましては、先ほど政府委員から御答弁申し上げましたように、このKEDOに参加する国が日米韓三国だけなのか、あるいはさらに幾つかの国がこれに参加をしてこの問題、プロジェクトと申しますか、このプロジェクトをみんなでやっていくということになるかということもございますし、それから、いよいよ実施段階、その具体的に実施する段階になると、説明がありましたように、フィージビリティースタディーもやって、どこにつくるか、どういうものをつくるかという話をこれからやるわけでございまして、まだその総額というものがはっきりしてこないという段階でございます。
  55. 堀込征雄

    ○堀込委員 我が国の国民も、やはり話し合いでアジアの平和というもののためにもきちんと解決してほしいというふうに思っている国民が大部分だと思います、世論だと思いますので、ぜひひとつ国民に、外交ですからすべてというわけにはいきませんけれども、できるだけわかりやすく、理解が得られるような方策で解決に向かって努力をいただきたい、こう思います。  せっかくでございますから、もう一つわかりやすくやってほしいなという問題があるわけでありますが、国連安全保障理事会の常任理事国の問題でありまして、昨年の九月に、九六年の非常任理事国に我が国が立候補表明をしたということになっておるわけでございますが、過去七期十四年間、日本としては実績があるわけでございます。これはこれで結構でございますし、そういう立場国際社会の責任をやはり果たしていくべきであろうというふうに思います。  ただ、一方では、常任理事国入りも表明をしているわけでありまして、国民の間には、やはりそっちの方はあきらめたのかな、非常任理事国に手を挙げたのかというようなことやら、いろいろな思いというかこの問題に対する考え方が出るわけでありまして、その後報道などによれば、インド、フィリピンなども手を挙げておって、一本化のために表明できなかったのだというようなお話もございましたけれども、やはりこの常任理事国と非常任理事国の問題について、少し国民にわかりやすくすることが必要なのではないかということで、ちょっと答弁いただきたいのです。
  56. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘になりました常任理事国入りの問題と非常任理事国の選挙の関係でございます。  我が国といたしましては、国連創設五十周年を迎える本年におきまして、我が国の常任理事国入りを含めまして、安保理改組の大枠につきまして合意が成立するということを期待しながら、引き続き国連におけるこの問題の議論に積極的に参加しているところでございます。  ただ、国際的にもまだいろいろ解決すべき問題が残っておりますし、一番早いシナリオで、非常に議論が順調に進んだ、そして仮に本年に合意ができたとする場合を考えましても、この国連憲章の改正決議が総会で三分の二で採択されて、さらにこれが効力を生ずるまでには加盟国の三分の二の批准を得る必要があるわけでございます。この三分の二には五大国を含んでいなければならないというふうに国連憲章上なっているわけでございますので、過去の憲章改正の例を見ますと、やはりこの合意ができても、さらに二年程度必要であろうということでございます。あわせて、今からですと三年ぐらいはかかるであろう、しかも、それは最も短いシナリオということでございます。  そこで、我が国は、最近では九二年から九三年まで安保理の非常任理事国を務めてきたわけでございます。我が国といたしましては、この安保理改革にさらに時間がかかるということも念頭に置きまして、その間におきましても、国際の平和と安全のために安保理におきまして貢献を行いたいという考え方から、九六年の非常任理事国選挙に立候補した、こういうことでございます。
  57. 堀込征雄

    ○堀込委員 その問題、特に常任理事国の問題については国民の間に慎重論もあれば反対論もあるというのが現実でございますので、できるだけわかりやすく理解を得ていくという方策をぜひおとりいただきたい。今、国連五十年、戦後五十年、こういう話がございまして、もう一つやはり常任理事国入り問題についても多角的に論議をされるべきだと思います。  もう一つは、国連の平和活動のあり方についてもやはり一つ大きな転機を迎えているのかなという感じが実は私はしています。そういう意味では、これも新聞報道などが中心で恐縮でございますが、例えばアジア・太平洋地域の紛争予防外交やPKO活動のために、ASEANの枠組みの中で、具体的に何か取り組めないかというような議論がされているという話もございますし、あるいはアジア・太平洋地域におけるPKO用の物資の集積だとか情報の収集だとか共同の訓練のPKOセンターなんかもどうだというような話が間々報道されておるわけであります。まだ党内で議論はしてございませんが、私は個人的には、やはりそういう努力をしながら世界の平和に貢献をしていくべきではないか、こういうふうに思うわけでございます。我が国のPKO法の見直しとも絡んで、少し大きな転機にあるこうしたアジア・太平洋の平和の仕組みについて少しく積極的にかかわるべきなのではないかというふうに思いますが、どのような姿勢でどのような対応をされるおつもりなのか、今の、現段階の姿勢をちょっとお聞かせをいただきたいと思います。
  58. 河野洋平

    河野国務大臣 アジア地域にPKOセンターといいますかPKO訓練センターといいますか、そういうものをつくってはどうかという御提案がかねてから何人かの方からなされているということは承知をいたしております。  このことは直接常任理事国入りと関係するものではないわけでございますが、いずれにせよ、アジア・太平洋地域の域内協力という観点でありますとか、アジア地域におけるこうした施設の必要性がどのくらい高いかとか、あるいは国連の考え方といいますか、国連がこういうものに対してどういう見方をとるか、あるいは、まあ言ってみれば費用対効果がどういうことになるかなどなど、検討すべきものがあると思うのです。しかし他方、PKO活動に参加をした人たちの話を聞いてみますと、国際的な協力とか国際的な協調の訓練といいますか、やはりそういったものの必要性をおっしゃる方もございます。  さまざまな意見がある中で、国際平和協力業務の実態を総合的に見ながら関係省庁間で検討するということになろうかと思いますが、私としては、ASEANがASEAN地域フォーラムというものをつくって昨年からスタートをしたわけでございますが、このASEAN地域フォーラムなどの場でさらに議論がされるということが一つ重要なことなのかなと思ったりもいたしております。問題意識は持っておりますが、これはやはり一国で決められることではございませんで、そうした関係国がどういう見解を持っておるかということなどもよく伺わなければならないことかと思っております。
  59. 堀込征雄

    ○堀込委員 時間なので終わります。
  60. 神田厚

    神田委員長 菅直人君。
  61. 菅直人

    ○菅委員 同僚議員の方から北朝鮮軽水炉支援についてはいろいろとこれまでも質問があったわけですが、昨年の大変緊張した時期があって、その後幸いにして米朝合意ができ、一つのレールが敷かれた、そういうふうに感じております。同時に、昨年の暮れ、日朝の間での何らかの直接の国交回復を目指す打開ができないかということで、政府あるいは与党の中でもいろいろ議論があったり、若干の動きがあったわけです。やや今その動きが、あるいはこの震災問題も若干国内的には影響があるかもしれませんが、表面から少し消えているわけですが、外務省としてはあるいは外務大臣としては、この軽水炉支援という問題と並行してかあるいは前提としてか非常に微妙なところでしょうが、日本と朝鮮との国交交渉の再開についてどういうふうな見通しなり見解をお持ちか、外務大臣の見解を伺いたいと思います。
  62. 河野洋平

    河野国務大臣 米朝合意というものは、北朝鮮核開発疑惑を払拭するといいますか、あるいは解明するといいますか、そういうことでございますけれども、この包括的な米朝合意というものは、ただ単に核施設をどういうふうにするかということにとどまらず、例えば米朝が連絡事務所をお互いに持ち合おうとか、南北の対話というものがこの米朝合意の中にも重要な要素として書き込まれております。もっと言えば、この米朝合意というものが誠実に実施されてこのプロジェクトが完成するころには、北朝鮮というものが少なくとも現在よりは国際社会の中で経済的な依存関係を持つ、あるいは国際社会の中で国際的な関係を今よりは持つことになると考えられます。  私どもは、米朝関係というものが今より進んでいく、さらには南北の対話が行われていく、そういう状況の中で、日朝関係というものもやはり当然進むことができるような環境というものが整っていくだろうというふうに見ているわけです。これまで日朝の国交正常化のための交渉というものがございましたけれども、その中で幾つかの障害があって進まないうちの一つは、この問題、つまり核開発疑惑というものが障害の一つであったわけですから、この合意が具体的に誠実に実施されていくということになれば、障害の一つが取り除かれるということになるわけで、そうした中で日朝関係というものは正常化に向かって進む可能性があるというふうに私は見ております。
  63. 菅直人

    ○菅委員 このKEDOの支援の具体的な問題がだんだん進んでいくわけですが、その進展と、今大臣非常に全般的にというか多少抽象的におっしゃいましたが、この日朝の直接的な関係の改善というものが、極端に言えば片方が進まないでも、日朝の国交の改善というものが今と余り変わらないでも、この軽水炉支援を進める上では、何といいましょうか、それほど影響がないとお考えなのか。例えば相当の資金の提供ということもいろいろ報道されておりますが、少なくともそういう段階までには、ある段階での国交の、何といいましょうか、正常化が進んでいることが前提となるというふうにお考えなのか。その関連性を、何かお考えがあればお聞かせをいただきたいと思います。
  64. 河野洋平

    河野国務大臣 このプロジェクトが進んでまいりますと、国際コンソーシアムの中には日本は当然入っていくわけでございますし、その中で行われるであろうフィージビリティースタディーなど、我が国が技術でありますとかその他もろもろのものを提供するといいますか、そういう場面もあるかもしれません。そういったことで、直接間接の関係というものはできてくる可能性があるというふうに見ているわけでございます。  先ほども申しましたように、このプロジェクトというものは包括的に見て北朝鮮国際社会との関係を広げるという意味で大きな意味を持つというふうに考えておりまして、その中で我が国北朝鮮との間の関係というものはできてくるであろう、これは今ここで具体的にこうなるというようなことは、相手のあることでございまして申し上げられませんが、私は方向性としてはそういうふうに考えております。
  65. 菅直人

    ○菅委員 大変微妙な問題でもありますからこれ以上は細かくは申し上げませんが、やはり日本国内から見ても、ある種の財政的な負担をもし国民の皆さんにお願いをいただくとすれば、そのことが一つの形としても日朝の打開につながってほしいと願う気持ちには当然つながってくると思いますし、あるいは相手の朝鮮の方もそういう日朝間の打開がある程度進まなければなかなかこの軽水炉支援の問題も順調に進まないという認識にもし立つとすれば、それもまた打開の一つの糸口になる、双方にそういう可能性を持った時期だと思いますので、ぜひそういった点、十分考えられているとは思いますが、考えた上でお進めをいただきたいと思います。  もう一点、金日成主席が亡くなられてかなりの日数がたつわけですが、北朝鮮内部の権力移譲といいましょうか、そのことが形としてはまだきちんとした形がとられていないわけですが、その問題について何らかの見通しをお持ちでしょうか。
  66. 川島裕

    川島政府委員 お答え申し上げます。  何分にもあの国の中でどういうことが起こっているかというのは、通常の国よりもちょっとわかりにくい点があることは御理解いただけると思いますが、おおむね金正日さんへの権力移譲という方向で基本的には動いているのではないかと受けとめております。  金日成主席の死去の後でも、例えばその後に米朝合意が全部できたわけですし、それから、その米朝合意に基づいていろいろな動きを、北朝鮮当局としては非常にきちんとした意思決定を続けているという印象を持っております。  ただ一点、よくわからないのは、就任式と申しますか、正式な就任というものが、当初は九月だ十月だとかいろいろ言われて、結局現在に至るまで起こっていない点でございますね。これも北の関係のいろいろな説明ぶりを聞きますと、実質的にはもうリーダーなんだから、就任という正式なものはおくれても何ら黒とするに足りないというような説明も聞こえてまいりますし、喪に服す期間が非常に長いんだということ等は聞いておりますけれども、そこのところが、名実ともに主席就任と申しますか、いつごろになるのかというのは、ちょっとその辺はわからないというのが現状でございます。
  67. 菅直人

    ○菅委員 ちょっと話題をかえまして、ロシアのコズイレフ外相が近く訪日をするというような報道も出ております。大臣としては、この外相が来られた場合には当然会談をされると思いますけれども、今の日ロ関係の中でどういうことを特に議題とされようとしているのか。  若干唐突かもしれませんが、天然ガスの問題なども古くから言われながら、なかなか旧ソ連時代から経済的な関係というものが必ずしも進まなかった。こういう長期的な、何といいましょうか、経済的な関係性を、特に天然ガスというのは日本にとって現在非常に有力な燃料、いわゆるエネルギー源になっていることも考えて、直接パイプを引いたらいいじゃないかなんという議論も大分出ておりますが、そういうことがすぐに議題になるかどうかは別として、コズイレフ外相の訪日について見解を伺いたいと思います。
  68. 河野洋平

    河野国務大臣 ロシアの外相の訪日については、まだ具体的な日程が最終的に固まりませんが、いずれにせよ、訪日を実現してほしいと考えております。  今申し上げたように、まだ具体的な日程は決まりませんが、訪日されるとすれば、当然私は外相会談を相当な時間をかけて行うということになるだろうと思います。  その際、私自身考えておりますことは、昨年、サスコベッツ第一副首相が訪日をされまして、そのときは主として経済問題について議論がございました。私は、今回コズイレフ外相がお見えになる際には、やはりどちらかといえば、経済問題ではない部分について十分な議論がなされてしかるべきだろうというふうに思っているわけです。  しかし、これはまあ先方のお考えもございましょうが、日ロ二国間関係もそうでございますし、国際情勢あるいはロシアの国内問題等々、我々の関心事項については議論したいということを、まだまだ仮定の問題でございますけれども、申し上げたいというふうに思っておりまして、先方には先方のお考えもございましょうから、その中からどういう議題が選ばれるかということはまだ定かではないわけでございます。
  69. 菅直人

    ○菅委員 時間ももう余りありませんが、ちょっと質問の通告に入っておりませんが、若干私の見解を申し上げて、あるいは御意見があればお聞きしたいのですが、先日、ルワンダからPKOが帰られて、PKOといいますか、救援活動から帰られた報告を私どもも伺いました。  その中で、私も実はルワンダ、ザイールには行きませんでしたけれども、その少し前にモザンビークとか、あるいは一昨年はカンボジアに出かけて、PKOの現場を拝見をさせていただいて、いろいろ話を伺いました。  今回の報告を聞いて、それぞれのその部隊部隊長さんがおられるわけですが、同時に、同じ宿営地の中に連絡調整のための何人かの、多分制服の皆さん、必ずしも自衛隊ということではありませんが、メンバーがおられて、いわゆる日本との連絡調整とかいろいろな国際機関との連絡調整をされたということを聞きました。  それで、これは今回の地震の場合もそうですが、日本の行政組織というのは縦割りで、ボトムアップのシステムだと思うのですわ。ですから、確かに縦割りでボトムアップで、だんだん上がってきて、例えば普通の問題で言えば、次官会議か何かにかかって、閣議になるときには、決まればもうすっとおりていくというよりは、全部決まっているわけですが、地震のように本当はトップダウンで何かやらなければいけないときは上がってこない。つまり、上がってくるのに時間がかかるシステムですから、なかなか動かないということが反省材料ではないかと思います。  実は、PKOの現場の問題も、大きな問題が余り起きなかったから、あるいは起きても何らかの調整ができたのかとも思うのですが、どうも本来の部隊の責任者とそういう連絡調整というものが、逆に言えば二重になければ物事がなかなか判断しにくい。つまり、それはもしかしたら制度そのものがまだ不十分なのかもしれませんが、PKOの活動については非常に制約を強くしている分だけ、逆に言えばいろいろな問題を一つ一つ本国に聞かないと、日本に聞かないと判断できないために、そういう判断まで自衛隊員である隊長さんに判断を依存するのは非常にきつい話ですから、そこで、そういう連絡調整のための別の、事実上のヘッドクオーター、現地ヘッドクオーターのようなものを設けられたのかな、報告を聞いていてそんな感じもしたわけであります。  そういう点で、これは今後のPKOなり救援活動を考える上で、確かにある種の制約なり限定は必要だと思いますが、大きいところの限定はきちんとしておいて、しかし、ある幅ではかなり自由に状況に合わせて対応できるような、これはちょうど今回の震災の問題ともよく似ていると思うのですが、何かそういう工夫が必要じゃないかな、そんなことを報告を聞いて感じたものですから、若干意見を申し上げてみました。  もし何か大臣の方に御意見がおありでしたら、お聞きして終わりたいと思います。
  70. 河野洋平

    河野国務大臣 ちょっと私がお答えをすることはどうかと思いますが、議員のお持ちのお考えというものは、受けとめて、正確にしかるべき場所に伝えたいと思います。
  71. 菅直人

    ○菅委員 どうもありがとうございました。
  72. 神田厚

  73. 東中光雄

    東中委員 ことしの一月にワシントンで日米首脳会談がありました。共同記者会見で村山総理は、日米安保体制の必要性については完全に一致を見ている、単に日米だけの問題ではなく、アジア・太平洋地域全体の平和と安定のために日米安保が果たしている役割は大変大きいものがあり、さらに維持していく必要がある、こういう趣旨のことを言われました。  外務大臣もこの間のこの委員会における所信表明で、日米安保体制はアジア・太平洋地域の平和と安定にとって不可欠の要因である米国の存在を確保する役割を果たしていると、同じ趣旨を言われているようなんです、アジア・太平洋地域の平和と安定のためには日米安保体制及び米国の存在を前提としていろいろ努力していくんだと。  言われるのは、アジア・太平洋地域の平和と安定。今まで安保条約についてはそういう言葉は出てこなかったのです。日本の安全、それから極東の国際の平和と安定のためにというふうなことだったですね。これが皆、アジア・太平洋地域の平和と安定のためにというふうになっているのです。外務大臣の所信表明では「米国の存在」と言われているのですが、これは、米軍の日本における存在は、プレゼンスはアジア・太平洋地域の平和と安定にとって不可欠だ、こう言われておるのだとしたら、何で日本に米軍がおることがアジア・太平洋地域の平和と安定にとって不可欠になるのか、どうも私よくわからないのです。お考えを承りたいと思います。
  74. 河野洋平

    河野国務大臣 日米安保体制というものが極めて重要なものであるという認識は私どもはっきりしておりまして、今回の日米首脳会談におきまして、そのことをしっかりと双方の首脳が確認し合うことが重要だというふうに考えたわけでございます。  昨今、日米関係というものは、ともすれば経済的側面にスポットライトが当たって、その経済的側面がどうもしっくりいってないではないかということを言われて、その結果、どうも日米関係そのものに多少のひずみがあるのではないかというふうに、そのことだけが拡大して言われるということは、日米両国のみならず、この地域にとって決していいことではない。むしろ、日米両国の間には安保条約というしっかりとしたものがあって、これで大変厚い信頼関係を持っておる。そして、日米関係がしっかりしたものになっているということが、とりもなおさずこの地域周辺の安定に大きく寄与するものだという気持ち、考え方を持っているということでございます。
  75. 東中光雄

    東中委員 米国の存在、米軍の日本における存在が、すぐアジア・太平洋地域の平和と安全というふうに拡大している。もともとは、安保条約六条による米軍の駐留の目的は、日本の安全を脅かすものに対して安全を守る。それから、極東地域というふうに非常に限定されておりましたね。極東における国際の平和と安全でしたね。今度はぼうっと物すごい広がっている。これは非常に問題だ。拡大しているというふうに私は思うわけであります。安保体制が重要だと思っている、そういう判断をされていること自体をとやかく言っているんじゃなくて、目的が変わってきているということを指摘しているわけであります。  ところで、アジア・太平洋地域における米軍の展開について、ブッシュ政権は、東アジアの戦略的枠組みというのを発表しました、九〇年、九二年に。そのもとで、在日・在韓米軍の段階的削減を打ち出して実行してきました。クリントン政権は、新たな東アジアにおける戦略見直し構想というものを今取りまとめておって、二月中にも発表するというふうなことが言われておるわけであります。この新しい戦略構想では、アメリカは在日・在韓米軍は少なくとも十年間は戦力を現状維持にするという方針をとろうとしているんだということが言われておるわけであります。  日経新聞によると、ジョセフ・ナイ国防次官補は、「(在日・在韓米軍などを)削減するという考えを完全に廃止する。前方展開戦力の枠組み内で若干の”微調整”はあるだろうが、現在とほとんど同じ戦力を維持する。戦力規模を維持する期間としては、最低でも十年間を考えている。」記者会見でそう言ったということが報道されております。  今クリントンになって方向を変えようとしているんだということだけははっきりしているわけです。ナイ氏は昨年の十一月に日本にも来ていますし、いろいろと折衝されていると思うのですが、村山内閣としては、在日米軍の削減、基地縮小という方向を要求しておられるのか、それとも今新たに出されているように、引き続いて十年間駐留してほしいというふうなそういう立場に立っておられるのか、その点お伺いをしたい。
  76. 時野谷敦

    ○時野谷政府委員 大臣がお答えになります前に、先生がおっしゃいました事実関係について若干のことを申し上げさせていただきたいと思います。  今先生が言及されました、アメリカの国防省が近く報告を取りまとめるのではないかということがございましたが、私どもも、近く国防総省がその種の、今後のこの地域における米軍の存在のあり方についての報告書を提出するというふうに聞いております。具体的にいつということまでは承知しておりませんが、そのように聞いておりまして、その中では、先生今おっしゃいましたように、この地域におきまして今後、十年間と申しておるかどうか私承知いたしませんが、今後、現在の水準の兵力、すなわち約十万の兵力というものをこの地域に維持していくということを言うものというふうに理解をいたしております。  ただ、このことは、今回新しいことをクリントン政権として言うということではございませんで、御承知のとおり、昨年クリントン政権が出しましたボトムアップ・レビューの中でも、この地域において約十万の水準を維持していくということを申しているわけでございます。  最後の点は大臣からお答えがあろうかと思いますが、御質問の点のお答えは、既にこの前の日米首脳会談で総理が、まさにこの地域における米軍の存在というものあるいは関与というものを日本として歓迎するのだ、こういう立場を表明されておる、こういうことを御紹介させていただきたいと思います。
  77. 河野洋平

    河野国務大臣 今北米局長が御答弁申し上げたとおりでございますが、日米首脳会談におきまして、米国側もこの地域に対するコミットメントを継続するということを表明されたと記憶しております。
  78. 東中光雄

    東中委員 そうすると、やはり米韓、米日の関係で米軍十万、現状と同じように継続していくということを日本政府も認めていく、そういうことですね。減らしていけというのじゃない。逆だ。  ところが、安保条約のあるいは安保体制の意義といいますか、目的といいますか、それについて、これは冷戦後の日米安保体制のあり方を再定義する必要があるということを言っていますね、アメリカ側も言っている。それから、河野さん自身も、外交フォーラムを見ると、これは九五年の一月号への寄稿文ですが、「これまで日本が政治・安全保障面での行動をとるにあたっての価値基準の一つであった、東側に対抗するうえでの「西側の一員」といった概念がもはや内実を失ったことを意味し、やはり日本の外交にとって大変重要な変化をもたらした」、こう言われています。だから、今までの安保条約は、東西対立しておって、そして日本の安全を守る、在日米軍ですよ、極東における国際の平和と安全を守るんだ。そんなことないと言っても、まあ我々はそう言っていたわけですが、そういう対立関係がなくなって、だから定義を変えなければいかんようになっているわけですね、西側陣営の一員としてということではなくなったと河野さん自身が言っているのだから。  そうすると、安保条約は安保条約でも、これは質的に変わってしまうわけですよ。そういうことになったら、それで極東の平和と安全じゃなくて、アジア・太平洋地域という非常に広い地域の平和と、今度は安定、それでそのために日本に米軍が四万、韓国含めて十万おることが不可欠なんだ、これはどうしたって筋が通らないというふうに思うのです。事務レベル協議も、十八、十九日やっておられる。それから、今度のAPECのときに日米首脳会談やって、再定義についての新共同宣言をやるとかやらぬとかというような話まで報道されていますね。これはもう体制を変えるのではないかというふうに思うのですが、どうでしょう。
  79. 河野洋平

    河野国務大臣 冷戦が終わりましたけれども議員も御承知のとおり、我が国周辺地域におきます不安定要因というものはまだまだあるという見方が大きいと思いますね。冷戦が終わったから我が国周辺は全く不安定な要素、要因はないと言い切れるとは思いません。そうしたことを考えてこの周辺を見たときに、我が国の安全というものを考えれば、どうすればいいかというのは、冷戦が終わったからもう安保体制は要らないではないかということには、我々はそういう答えは出さないところでございます。  むしろ、これは議員に誤解があるといけませんので申し上げておきますが、日米首脳会談においては相当世界全体についても議論をいたしましたし、国際社会の中で日米両国が共同して行えるものは何か、これは誤解のないように、つまりこれはコモン・アジェンダとか、つまり人口問題とか環境問題とか、そういうことについても議論をいたしたわけでございまして、それと同様に、我が国周辺のまさに安全とか安定とかということを考えるときに、何が今重要かということを我々としては極めて重く考えているところでございます。
  80. 東中光雄

    東中委員 そこが大分遣うんです。安全と安定じゃ、えらい違うんですね。今も不安定要因がいっぱいある。それはそれぞれの国、不安定要因があるでしょう。中国もありますし、朝鮮もあるし、ロシアもあるし、日本もあるし、アメリカだっていっぱいありますよ、いろいろな問題が。それは不安定要因、安定の問題なんですね。日米安保条約の六条にしましても、あるいは目的にしましても、安全じゃないですか。要するに、安全に対する脅威に対応するという格好で規定されていますよ。それを不安定要因があるから米軍が依然としておって、そこでどこへでも出ていくという格好になっている。これは米軍基地がフィリピンから撤去され、ヨーロッパでも減っているのに、日本の場合は強化していますね。機動部隊が、第七艦隊が母港でおるというのも日本だけでしょう。揚陸艦があったり、海兵隊が師団としておる。これは全部戦闘体制ですがな、安定とかいうような問題じゃありませんがな。だから、情勢が変わっているんだと言っておりながら、言葉を極東における国際の平和と安全からアジア・太平洋地域の平和と安定、それから秩序が乱れたら出ていくんだ、要するに憲兵ですよ。そういう格好になっているということで、私は、同じ安保条約の中で内容が変わってしまっているということで、もともと持っておった安保条約の違憲性なりいろいろな問題がありますが、それ以上に一層強化されているということで、強く安保条約に反対しておられた社会党の委員長を首班にする内閣として、それからハト派だと言われてきた河野外相がこういう方向へわっと持っていくというのは本当に遺憾だということを申し上げて、質問を終わりたいと思います。
  81. 神田厚

    神田委員長 以上で本日の質疑は終了いたしました。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時八分散会