○
石井一二君 私は、
新緑風会を代表して、さきに行われた
村山総理の
所信表明演説に関連し、当面の諸問題について総理並びに
関係閣僚に若干の質問をいたします。
この夏、我々
日本国民は暑い暑い長い長い夏を経験いたしましたが、その長い夏の中で一つの熱い熱い戦いが交わされたのでございます。それは、申すまでもない、皆様方よく御存じの愛知県における参議院再選挙でございました。
皆さん、その結果はいかがでございましたでしょうか。数の上では優勢が予想された
自由民主党・
日本社会党連合軍が三十八万票余りの大差で惨敗し、きょう我々は、この場に新進気鋭の
参議院議員都築譲君を我が
新緑風会の代表としてお迎えしているのであります。
皆さん、このことは一体何を物語るのでありましょうか。最近の
政治情勢を見つつ国民の多くは、
日本社会党の
豹変ぶりと政権にすがりつきたさのなりふり構わぬ
自由民主党の
野合ぶりにあいた口がふさがらない方も多いのではないでしょうか。そして、その証拠がこの
参議院愛知選挙区の再選挙の結果であります。
以下、当面の諸問題について順次質問をいたします。
まず最初は、
村山内閣の
基本的政治姿勢についてであります。
そもそも
村山内閣の基盤となっている
日本社会党の唱えてきた
主義主張は、かつて十五代、三十八年の長きに及んだ
自由民主党の政治に対して、何でも
反対社会党といった態度で臨んできたのであります。
古くは
講和条約反対を皮切りに、
日米安保条約反対、
在日米軍基地反対、
自衛隊達意、そして円の丸・君が代及び
原子力発電反対と続き、さらに消費税も反対、
PKO活動に至っては、三十二時間余りの本院における
牛歩戦術に加えて、
村山絵理、あなた御自身を含む百四十一名の
衆議院議昌が辞職願まで出しての反対と、その掲げてきた
基本政策が国内的にも国際的にも非現実的で、
時代錯誤も甚だしいものであったのであります。
しかし、今般、政権が棚からぼたもち的に転がり込んできた途端、
党内論議もそこそこに、全国の党員は
おろか国民に対しても何らの釈明も謝罪の言葉もないまま、これまでの
主義主張をかなぐり捨て、カメレオン的に何でも
賛成社会党へと衣がえされたのであります。
政治評論家の
藤原弘達氏が世界でも珍しい
政策分裂政党だという趣旨の指摘をしているゆえんもここにあるのであります。
総理、なぜ
基本政策を転換されたのですか。非現実的な社会党の政策では通用しないことが明白になったからでしょうか。それとも、政権の座に着くための単なる方便であったのでしょうか。もし総理がそうでないと断言されるなら、今までの
基本政策がすべて間違いであったことを率直に認め、この場をかりて国民に釈明し謝罪することが国民に対してなすべき
必要最小限の責務と考えますが、いかがでしょうか。総理の御本心を伺いたいのであります。
勝負は時の違とも言わね、
村山内閣もいず桐また
我が国憲政史上にその名を連ねた幾つもの内閣と同じように姿を消していくでしょう。
新・新党結成が間近に迫り、その足音が聞こえそうな気さえする昨今、恐らくその日の来るのはそう遠くないはずであります。
この機に及んで、私は
村山総理にもう一つ伺っておきたいと存じます。
それは、一夜にして豹変された
日本社会党ですから、再び下野された暁には、またその翌日からでも、
先ほど例示、列挙いたしました諸問題に対して再び何でも
反対社会党に舞い戻る
おつもりでございましょうか。もしその答えがイエスであったならば、それに振り回された国民こそ大迷惑というものでありましょう。そして、その答えがノーであったならば、これまで長年の
日本社会党の
主義主張は一体何だったのでしょうか。御答弁をいただきたいのであります。
次に、
村山内閣の
外交路線及び防衛問題について質問をいたします。
外交問題のまず最初は、
国連安全保障理事会常任理事国入りについてであります。
河野外相は、去る九月二十七日、
国連総会において演説し、我が国が
常任理事国として責任を果たす用意があることを表明されました。この問題については、さきの国会で
羽田内閣に対し、当時野党あるいは閣外協力の立場をとっていた現在の
村山総理、
武村蔵相が
代表質問に立ち、
常任理事国入りについては慎重であるべきだと主張されたのであります。特に
武村蔵相に至っては、
国民投票に値するとまで述べられたのであります。なぜ急に
積極姿勢に転じられたのか、お二方から理由をお聞きいたしたいのであります。また、
村山総理は、就任後初めての
代表質問の答弁で、
常任理事国入りについては
十分論議を尽くすと答弁されておられます。
村山内閣発足後、
本格的論議の場である今国会で十分な論議を尽くす間もないまま、なぜ
河野外相が早々と
国連総会で演説されたのか、これこそ
国会無視の
強権的手法ではございませんか。総理の答弁を求めます。
将来もし、幸いにして不幸にして、
常任理事国入りが実現した場合、世界各国に対して日本は非
軍事貢献しかできないことに対する理解をあらかじめ得ておくことが必要であり、また、国内的には
PKO分担金の増額等今まで以上の負担を国民に強いることにならざるを得ませんが、諸外国及び国民に理解をしてもらえる自信と覚悟はおありなのでしょうか。総理の御所見を承ります。
次いで、
PKO国連平和維持活動について質問をいたします。
政府は、
ルワンダ難民救済のため、
ザイール・ゴマに自衛隊を派遣いたしました。この派遣に先立ち、政府は二次にわたり調査団を送り、また与党も調査団が現地に赴き、それらの報告に
基つぎ派遣の実施や携行装備を決めたとのことであります。
そこでお伺いしたいことは、
事前調査は万全であったかということであります。
現地の共同通信の報道によりますと、
玉沢防衛庁長官、あなたの視察は、車からおりて道路から十メートルほど離れた
難民キャンプの中のテントの一つに入ったものの、だれもおらず、説明を受けただけで制五分間で視察を終えた、一人の難民とも話もせず、難民の生の生活を見ることのない視察に
援助関係者や
外国人ジャーナリストの間から失笑が漏れていたとの報道となっております。あなたは国民の貴重な血税を使って一体何を見てこられたのですか、お伺いをいたします。報道によりますと、
タンザニア側の
ヌガラ難民キャンプでは、旧
政府勢力の急進派による虐殺等、
武力行使がなされているとのことではないですか。また、
与党謝査団に至っては、その
サファリツアーについておもしろおかしく報道がなされているではありませんか。
朝日新聞社発行のアエラをして言わしめれば、
与党調査団の報告書は
派遣期限を十二月末までと区切った以外は外務省の第一次及び第二次ミッションの報告書をなぞっただけと表現されております。
また、
アメリカ側が防衛庁に、運搬のための
米軍機使用拒否通告を
実施計画の閣議決定前日の九月十二日に通告してきたにもかかわらず、防衛庁はこの事実をひた隠しにし内閣に報告していなかったとの朝日新聞はかの報道もあるではありませんか。
総理及び
防衛庁長官は、新聞報道が間違っているとでもおっしゃるのでしょうか。その数二万とも言われる前
政府軍兵士は、
与党現地調査団の報告と違い、実際は武装解除されていないと報じられております。しかも、
ルワンダでは既に
フランス軍が引き揚げ、米軍や
イスラエル軍も九月中に全面撤収し、日本の自衛隊が配置についた十月からは日本と
ザイールが中心となって
難民支援活動を行わなければならない状態であるということをどう認識されているのでしょうか。
御承知のごとく、日本はカンボジアに初めて
組織的PKO隊員を派遣し、一応の成功をおさめました。このとき派遣された隊員は、UNTACの指揮下で活動し、
フランス軍に護衛され、比較的身の危険を感じずに本来の業務に従事することができたのであります。しかし、このたびの派遣は
自己完結型で、他国の軍隊による護衛はなく、独自の判断と能力ですべての救援業務及び自衛も行わなければならないのであります。
村山総理、あなたは
我が国陸海空自衛隊の
最高指揮官であります。
自衛隊達意論から転換して合意論を言い出した途端に、直ちに
はるか海外のかなたへの出動命令をお出しになったのです。
そこで、総理にはっきりとお伺いしておきたいことが三つございます。
一つは、万一危険な状態に陥ったらためらわずに部隊を撤収する勇気と覚悟はおありかということであります。
二つは、これだけずさんな矛盾をはらんだ
事前調査にもかかわらず自衛隊の派遣を決断されたのですから、
派遣隊員の生命に万一のことがあった場合あなたはどのような
政治的責任をとる
おつもりなのか。内閣総辞職は当然のことと思いますが、この場ではっきりと明言しておいていただきたいのであります。
本題に関する質問の三つは、政府は何が何でも
常任理事国入りの
実績づくりにこの派遣に踏み切ったのではないかということであります。総理及び
外務大臣の所見を求めます。
次に、防衛問題について伺います。
まず最初は、憲法の解釈についてであります。
戦後最も激変したものの一つに、憲法九条をめぐる解釈があるとも言われております。
憲法解釈論議の中で、かつては想像さえしなかった自衛隊の
海外派遣が今や
国際貢献の名目のもとに日常業粉化されんといたしております。
このことは、かつて敗戦の翌年、一九四六年、
国会答弁に立った当時の
吉田茂首相が、憲法第九条第二項において一切の軍備と国の交戦権を認めない結果、自衛権の発動としての戦争もまた交戦橘も放棄したものであります、と述べておられることを思い起こすとき、まさにその感深さを感じるものであります。そして、良識ある国民の間には、
憲法解釈を限りなく拡大解釈していくと
憲法そのものが解釈上空洞化してしまうのではないかと懸念する向きがございます。
これまでの
日本社会党の自衛隊に対する
憲法解釈上の見解は、違憲であるが
合法的存在であるという極めてわかりにくいものであります。そして、文民統制、専守防衛、徴兵制の不採用、自衛隊の
海外派兵の禁止、
集団自衛権の不行便、非核三原則の遵守、核・化学・
生物兵器等大量破壊兵器の不保持、武器輸出の禁止などの諸原則を確立しながら
必要最小限度の自衛力の存在を容認するという極めて耳ざわりのよいものでありましたが、今風の
日本社会党の
政治的見解の豹変を目の当たりにして、多くの国民は、ただいま述べたこれらの路線についてもなし崩し的な
解釈変更に踏み切るのではないかとの懸念もあるのであります。
そこで、私は、
国連指揮下に属さず日本の司令官の独自の判断で交戦の命令を下し、その行動が国権の発動ととられやすい今回の
ルワンダPKOの実施に関して、現時点における
憲法拡大解釈の限界を確認する意味で
防衛庁長官にひとつお聞きしておきたいと存じます。
例えば、日本の
派遣隊員が
ザイール軍隊または
民間グループであるNGOの人々や
現地住民が
武力行使に遭遇している場面に出くわした場合の交戦は、どのようなケースにどこまで合法と解釈してよいのか、御見解を確認しておきたいのであります。特に、交戦が隊員一個人の場合と隊としての交戦の場合に分けて示していただきたいのであります。
さて、防衛庁は来年度予算の概算要求で対前年度比二・八%増の一千三百億円の増額を要求いたしましたが、〇・九%増、五百億円の増額にとどまり、その差は八百億円となっておりますが、この数字をどう評価しておられるのか、
防衛庁長官の見解を伺いたいのであります。
そもそも我が国の
必要最小限度の自衛力の実力とは、昭和五十一年に閣議決定された
防衛大綱に明記された別表及び平成四年に見直した
中期防衛力整備計画に基づくレベルのものであり、そこに示されている数値は、考えられる脅威、それらに対処するケースを一々想定しつつ陸海空各部隊ごとに積算、算出されてきたものであります。したがって、今回のカットされた数字の穴埋めのため
既定防衛予算のどの部分をカットするのか、それでも
必要最小限度の実力の維持は可能なのか、伺いたいのであります。
次に、税制・財政問題についてお伺いをいたします。
先月二十二日、難産の来ようやく
政府税制政章大綱が決定されました。その中で最も注目すべき点は、何といっても消費税の五%への値上げが含まれていることであります。
かつて本院において、忘れもしない昭和六十三年十二月、
消費税関連法案審議のため延べ二十時間余りの世界に恥をさらした
牛歩戦術を使ってその成立に反対した
日本社会党を首班とする内閣のもとでの大綱の発表であり、その中身については衆目の注視するところであります。特に、税制のあり方は
国民生活に大きく影響を与える問題であり、
責任野党として我々はその中身を厳しく検証する責務があると信ずるものであります。
そこで、総理にお伺いいたしますが、かつてのみずからの信念を放棄し消費税、増税を容認せざるを得なくなったことに対して、どのような感慨をお持ちか、まずみずからの御心境を御披瀝いただきたいのであります。
ここで私は、消費税を含む
税制改正に対する我々の立場について一言申し述べておきたいと思います。
すなわち、現在の
野党各党は、細川、羽田両政権での
与党時代から
税制改革を唱えてまいりました。そして、我々の
政治哲学の基本は、いつ政権に復帰しても変わらない政策を主張し続ける
健全野党の立場であります。したがって、
消費税率の
引き上げに
全面的反対のみを唱えるものではありません。我々の考える論じていくべき
税制改革の中身は、どのくらいの財源がなぜ必要かの観点より
福祉ビジョンや
経費節減のための
行政改革の中身を徹底的に正していくということであります。
さて、大綱に盛られた来年の減税は、
制度改正による
恒久減税と
定率減税を組み合わせた二階
建て減税と言われますが、なぜ二階建てですか。なぜ
制度改正分が三兆五千億円で、
定率減税分が二兆円ですか。その理由を説明願いたいのであります。
次に、
税制改正の中身が決定したことで、来年度予算をどのように編成するかがこれからの大きな問題であります。総理は、一体、来年度予算の編成にどのような方針で臨もうとしておられるのでしょうか。
特に来年度は、景気の回復の兆しか見えているものの、税収が大きく好転する可能性は少なく、財源のやりくりに苦労することは不可避と考えられますが、よもや
減税財源としての
つなぎ国債とは別に
赤字国債の発行を考えておられるのではないでしょうか、お伺いをいたします。
また、来年度予算の目玉として一体どんな政策を考えておられるのですか。来年度
予算編成の
基本方針を御披瀝願いたいのであります。
事行政改革に関して、私たちは、細川・
羽田政権下の平成六年度の予算では
国家公務員の
定数削減を懸命に図ってまいりました。例えば、これまで年々約千人の
定数削減が行われてきたが、六年度にはそれを倍増させ二千人を上回る純減を実現させたのであります。
総理は、先日の
所信表明で、
行政改革の断行こそ内閣が全力で取り組まなければならない課題としながら、
特殊法人の改革を挙げたものの、その実施時期や規模はもとより、具体的な
歳出削減軌果についてはまだ述べておられないのであります。
財政ニーズを補うための増税について論ずるに際して我々が常に同時に考慮すべきことは、可能な
歳出削減策についてであり、これは次の二つの観点より分析されなければならないと考えます。すなわち、
行政改革による
歳出削減効果と
既定経費の見直しによる
歳出削減対策についてであります。総理、
歳出削減策についてのお考えを具体的にお示しいただきたいのであります。
次に、消費税五%アップの増税について数点伺っておきたいと存じます。
率直に申しまして、消費税と所得税、住民税をかみ合わせての
増減税一体処理を評価させていただきたいと存じますが、
大蔵大臣、増税の三年ずれについてはどのような
理論的説明をされますか。また、七%ではなしに五%にとどめたことについても同様の説明を求めます。
五%で将来の
福祉財源分が十分賄えると断言できるのでございましょうか。あみいは、
福祉レベルを下げて国民に犠牲を強いる
おつもりなのでしょうか。議論の俎上に上がっていた公的年金の
国庫負担率引き上げは可能なのですか。厚生省がさきにまとめた二十一
世紀福祉ビジョンや新ゴールドプランにも言及しつつ御所見を賜りたいのであります。
また、
村山内閣の
事前アピールでは、減税に関しては
中堅所得者層を中心に
個人所得税、住民税の累進性の緩和や
課税最低限の
引き上げとなっておりました。ところが、大蔵省の標準世帯の税負担の
所得階層別試算では、現在、年収が六百万円以下の世帯では、負担が九八年以降
制度減税を上回り実質増税であると言われております。しかも、今回の大綱では、実施することになっている
消費税引き上げまでの
定率減税の九六年度分については景気が特に好転した場合には改めて検討するものとされており、さらに五%の税率についても
見直し条項を設けており、一たん五%とした消費税を二年後にさらに
引き上げるとか、あるいは景気の好転を理由に
定率減税そのものを取りやめる口実をここに求める可能性がありますが、いかがでございましょうか。このことに関し、
武村大蔵大臣の所見をお伺いしたいのであります。
消費税に関するもう一つの指摘は、かねてから言われてまいりました
現行消費税への欠陥是正が不十分ではないかということであります。
具体的には、業態別にみなし税率を設定した
簡易課税制度について、消費者が払った税金が事業者の手元に残るいわゆる益税の改正が不十分のみならず、加えて消費税が三%から五%に
引き上げられればこの益税の幅も拡大するのではないですか。事業者が納税を免れる免税点も高過ぎるのではないですか。さらに、納税までに一時的に運用益を稼いでいる事業者の
納税回数の是正やいわゆる
逆進性負担も、まだ改善の余地があるのではないでしょうか。
実際に税を負担し公平な仕組みを求める
一般納税者に対し、このような不完全で中途半端な手直しとなった今回の
税制改革大綱をどう評価されているのか、総理の見解を賜りたいのであります。
次に、現在の
景気動向について尋ねます。
経済人のみならず国民の多くが今最も切望していることは、長い長い景気の低迷からの脱却であります。「待ては海路の日和あり」とか「冬来たりなば春遠からじ」などという言葉がございますが、ほっておいて自然に景気が回復するはずはないのであります。
政府は、九月の
月例報告において、景気は緩やかながら回復の方向に向かっていると事実上の
回復宣言をされているが、政府は現在の景気の状況をどう分析、認識し、当面のインフレなき
景気浮揚策としてどのような施策を提言されようとしておられるのか、総理の所見を伺いたいのであります。
政治改革の完遂は、かねてより国民の強い念願でありました。政治に対する国民の不信を払拭し政治が国民の信頼を取り戻すためには、
政治改革関連法の
早期施行を図ることが何より重要であると考えます。このたびの
政治改革においては、いわゆる
区割り法が施行されなければ、
公職選挙法の改正はもちろんのこと、
政治資金規正法の改正、
政党助成法のいずれも施行されないこととされており、いわゆる
区割り法の
早期成立こそが最大のポイントであります。
政治改革の
早期完結に対する総理の決意のほどを承りたいのでございます。
次いで、円高、産業の空洞化及び
少子社会について質問をいたします。
我が国の
景気回復が今なお不透明な状況にある最大の要因の一つは、
バブル経済の崩壊の後遺症に加え、一ドル百円を割り込むほどの急激かつ異常な円高にあることは明白であります。この円高のあらしの中で、
我が国企業は
リストラに次ぐ
リストラを迫られ、過剰設備の廃棄や
事業規模の縮小による人員整理と生き残りをかけた必死の対応に迫られておりますが、この波状攻撃のように襲ってくる円高に対する政府の認識と今後の為替対策について、
先進国蔵相会議より帰国されたばかりの
武村大蔵大臣より御答弁願いたいのであります。
このような
円高進行とともに、
我が国企業は今や東南アジアや中国など
アジア諸国に活路を求めて猛烈な勢いで進出しておりますが、こうした
我が国企業の
海外進出ラッシュを政府はどう認識し、どのような対応を考えておられるのか、お答えを願いたいのであります。
その一方で、
我が国社会は成熟段階を迎え、今後は少子化による
人口減少過程に入ってい岩つつあり、少子化と空洞化という二重苦の中で果たして我が国の社会が活力を維持できるかどうかは極めて重大な局面を迎えております。同時に、このことは将来の我が国の
福祉社会を支えていくことの難しさを物語るものでもあります。
政府は、今後、女性の皆さんに、いや、若人の皆さんにもっと子供を産んでいただき、現在の生涯出生率一・四六を大きく上回ることを可能ならしめる
社会的環境を創造していくための具体策を早急に検討すべきであります。いずれにしろ、現実の問題として、少子化による
若年労働力の不足を補い、産業構造の高度化を促進するための技術革新が不可欠と考えますが、政府にその見通しと腹案はおありなのでしょうか。
加えて、これまで産業界の
秩序維持と保護育成のために必要とされてきたさまざまな規制を思い切って見直す
規制緩和が必須の条件であることは明白であります。我々旧
連立内閣が時代を先取りして手がけつつあった二百七十九項目に及ぶ
規制緩和策の
実施計画がこの十一月に策定されると報じられておりますが、
村山内閣としてこれらのほかにどのような独自の緩和策を用意しておられるのか、
具体的事例をもってお示しいただきたいのであります。
さらに、産業の空洞化に対応していくためには、今日企業が進出している
アジア諸国との間で分業体制を初め経済のさまざまな面でどう共生を図っていくかが極めて重要と考えますが、今後の
アジア諸国との共生のあり方について政府はいかがお考えでしょうか、述べていただきたいのであります。
また、この際、アジアのリーダーとして、今後の対中国、対
台湾外交の
基本的考え方を
外務大臣にお尋ねいたします。
次に、
公共料金の扱いについてお尋ねをいたします。
民間企業が円高とともに進行する
価格破壊の中で厳しい
リストラを余儀なくされている状況を前にして、
公共料金の安易な値上げは許されないとの考えのもとに、我々旧
連立内閣は
公共料金の年内凍結を決断いたしましたが、
村山内閣になった途端、早々と
公共料金の値上げを認める動きが表面化していることに、
一般国民はもとより経済界などから異論が噴出していることは御存じのとおりでございます。
公共料金は、単に値上げの幅を圧縮すれば済む問題ではございません。
公共企業等の
コスト意識をどう
高めコスト削減をどう進めるかが重要でありますが、今回の値上げを認めた
高速道路料金について、具体的にどのような
コスト削減を指示し、あるいは実施するのか、お答えください。また、今後予想される
公共料金の値上げ問題にどのような姿勢で対応するお考えか、総理にそのお答えを承りたいのであります。
総理は、特にこのたび
特殊法人の
年度内見直しを
所信表明で公言されましたが、「言うは易し、行うほかたし」ということを、総理、あなたはどの程度理解しておられるのでしょうか。恐らくこのことに反対するであろう自民党の族議員を説得、抑えるだけの実力と自信をあなたはお持ちなのでしょうか。その決意のほどと失敗した場合の責任のとり方について言及していただきたいのであります。
さて、良好な日米関係の維持は、我が国の二国間外交の関係の中でも最も重要なものであります。戦後約五十年、安全保障問題は言うに及ばず、我が国の今日の経済的発展は米国に負うところ極めて大であります。
ここに二、三の事実関係を提示いたしましょう。
例えば、米国は日本にとって最大の輸出市場であり、我が国の総輸出のおよそ三分の一を占め、米国の基幹産業である自動車市場における我が国の市場占拠率は、輸出及び現地生産合わせて約三割になんなんといたします。一方、米国貿易赤字に占める日本のシェアは四五%にも及び、日本の直接投資に占める米国の割合は約四割にも達しております。
このような事実関係を背景に、日米経済摩擦も長い長い歴史を積み重ねてまいりました。その対象が今や、一業種、一業界にとどまらず、政府の政策決定の中身やプロセス、また広く社会制度、社会慣行にまで及んでまいりました。そしてその背景には、何といっても膨大な対日貿易赤字が存在するという厳然たる事実があるのであります。
さて、日米包括経済協議に関して私がここで政府に対してただしておきたいことの一つは、米国政府が刺激の強い通商法スーパー三〇一条ではなく通商法三〇一条を補修用自動車部品だけに適用しましたが、このことを通商交渉戦略上どう評価、分析しておるのかということであります。
質問の二つ目は、客観基準づくりについての日米間の見解の違いについてであります。すなわち、協議終了後、カンター米通商代表は日本政府がシェアの継続的な進展を約束したとし、一方
河野外相は数値目標ではないと発表されていますが、このニュアンスの違いをどう説明されるのでしょうか。
そして質問の最後、三つ目は、今後の残された分野の交渉の予定と見通しについてはいかがでございましょうか。
続いて、農業政策について質問をいたします。
我々人間にとって食糧は生きていく上で必要不可欠な物質であります。腹が減っては戦はできぬと申しますが、食糧の安定供給のためには健全で活力に満ちた国内農業が存在することが基本的な前提となるものであります。このような状況下で、細川・
羽田内閣の農業政策の基本は、昨年十二月の細川内閣の閣議了承にもあるごとく、農業者の不安を払拭し安んじて営農にいそしむことができるようにするというものでありました。
そこで、私は、以下数点にわたりお伺いいたします。
一つは、食糧の自給率についてであります。
我が国の平成四年度の食糧自給率は四六%と主要先進国の中では最も低く、これ以上の低下は決して望ましいことと思いませんが、その維持向上策について農林水産大臣の所見を伺いたいと存じます。
次に、来年度から導入される米のミニマムアクセスとして一定量の米の輸入が義務づけられておりますが、そのことについての考え方、特にその運用方針を伺っておきたいと存じます。
三つ目は、食管制度の改善についてでありますが、本制度については検討をすべき課題も多いわけでありますが、今後の食管制度改革の基本方向、特に生産調整参加者からの買い入れ制限、買い入れ価格決定の方法と、その理論的根拠、米の備蓄政策等について農水大臣の答弁を求めます。
二十一世紀に向けての我が国のあるべき農業政策の基本は、規模拡大、農地の集約・流動化、生産基盤の積極的整備による大規模化・効率化、専業的担い手を中心とする新しい農業・農村構造の実現等々であるべきでしょうが、今後の農業政策の基本理念について総理の見識ある御所見を向いたいと存じます。
ウルグアイ・ラウンドの結果まとめられた世界貿易機構設立協定の批准承認について、政府は近く七本の関連法案を国会に提出されるとのことですが、批准承認について国会の同意を得る自信を総理はお持ちなのでしょうか。
自由民主党は、いち早く本年六月二十三日、日比谷野外音楽堂で約三千人の全国代表が集まって催された農業者・JA代表者集会で、党を代表して総合農政調査会長が批准反対・阻止を約束されましたが、閣内の意見統一の自信を総理はお持ちですか。御所見を伺います。
もし、自民党も賛成だから心配ないとおっしゃるなら、あのときの自民党の発言はうそだったと理解していいのでしょうか、農水大臣の所見を伺いたいのであります。
私の質問の最後の最後に、国家補償に基づく原爆被害者援護法について、他の戦争関係被害者との公平性の確保という観点も含めて、総理の御所見を伺っておきたいと存じます。
村山総理、あなたの率いる
日本社会党は、直近の平成五年七月の衆議院議員総選挙で百三十四議席から一挙に七十議席に転落、大敗を喫しました。この選挙では、最も目減り率の高い政党であったと言えましょう。そのあなたが、今、政利政略、党利党略に利用され、我が国の国権の最高権者の座に堂々と座っておられるのであります。座り心地はいかがですか。失礼な表現ながら、御自慢のまゆが長過ぎて見通しが悪く日本の未来が見えていないのではないかなどと、ユーモアを入れた陰口も聞かれる昨今でございます。
総理、今あなたが一番なすべきことは何か、あなた自身がよく御存じのはずであります。それは、言わずもがな、区画法案の成立て
政治改革に一応の区切りがついた後できるだけ早い機会に衆議院を解散して、国民に対して
村山内閣に対する信を問うことではないでしょうか。
選挙に際し我々は公約を掲げ選挙戦を戦う、そして選挙後は勝った党も負けた党も選挙公約に基づきその実行に最善を尽くしていく、それが真の民主主義の原則でなければならないのであります。総理、そうではございませんか。
かかる観点から、私は過ぐる総選挙の際の
日本社会党の選挙公報を見るにつけ、その文言を絶句なしには眺められないのであります。そこには、墨痕鮮やかとでも言いたくなるような大文字見出しで「自民党の金権政治にサヨナラ」と書かれているではありませんか。総理、あなたの横に副総理として座っておられる方は一体どこのどなたでございましょうか。
総理の英断を期待しつつ、私の質問を終わります。(拍手)
〔
国務大臣村山富市君登壇、拍手〕