○小島慶三君 ありがとうございました。
あと具体的に農業に関する問題、仮に今度提出された新食糧法が
審議の対象としてこれからも続けるという、そういう
お話に承ったわけでありますが、それに関連しての個別的な質問は、ちょっともう時間が残されておりませんので、これはしかるべき時期にまたお伺いをさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。
それで、
経済企画庁長官がお見えでございますので、一つお伺いしたいと思います。
それはどういうことかと申しますと、この
WTOの受け入れということによって
日本の
経済も新しいターニングポイントを回るというか、そういう形になると私は思っておるわけであります。それだけ重要な転機になると思っているわけでありますが、現実の
日本の
経済というものは果たしてそれを受け入れて非常に、何と申しますか、またさっそうと飛び上がるというか、そういうことになるのかというと、私はそうはならないと思うのでございます。
先般の第二・四半期のGNPですか、これはかなりいい数値が出たようでありますが、全体としてことしの
経済見通し二・四%には、成長率はそこまではいかないだろうと私は思っております、ちょっとその辺は
議論になるかもしれませんが。それで、大体その辺が、一%台から二%近くまでのところが恐らく回復期の
日本経済としてはその程度が妥当なところなのではないかというふうに思うわけであります。しかも、それを中長期的に見ても、大体その辺の低成長率というのは持続するようなそういう
日本の
社会経済の体質になってきている。言うならば、
経済の成熟段階というのにこれから突入していくのだろうと思うのでございます。
その一つの理由は人口がふえていかない。何か厚生省の方では、昨年の人口再生産率ですか一・四六というものに対して、それが一番底で、それから人口増加というのにまた転じていくんだというふうなことを発表しておられますけれども、人口問題研究所ですか、そういうふうに果たしてうまくいくのかどうか大変私は疑問に思うわけであります。そうしてみると、やはり中長期的に見れば、人口増加率というのは大きく見れば減衰の方向にあるということで、人口増加率から見た
経済の成長率というのは期待できないということがまず第一点であります。
それから第二点としては、これは
技術の進歩率といいますか、その辺から見ても、これは唐津
先生のような非常な、あるいは石井
先生のような積極論もあるわけでありますが、これからやはり従来のようなわけにはいかないのではないか。従来のように、外国の
技術を入れてきてうまく応用するという、そういう形ではうまくいかない。それに対して、基盤
技術の研究というのは、これはかなり立ちおくれているということがありますので、
技術の進歩率というのはこれからそう急激に上がっていきそうにもない、むしろ停滞する。
産業構造の中身を見ましても、これから一番ふえるのは情報・知識
産業、これが全体の、新
産業の三分の一と言われておりますが、そういうことでは
技術の進歩率を思い切ってここで高めるようなそういう新
産業というのは出てこないのじゃないか。
自動車、エレクトロニクスは既に減衰期に来ている。エレクトロニクスなんかはむしろ輸出よりも
輸入の方が多い、こういうふうな
状況になってきておりますから、これはそう期待すべくもないということになりますと、
日本の今まで隆盛をきわめた工業が今後の
経済を支えていくということにやはり陰りがある。
それから、三番目には空洞化の問題でありまして、空洞化は最近、
金融の空洞化まで言われるようになってまいりましたが、とにかく
日本を取り巻くいろんな情勢の中で円がどんどん押し上げられる、それに伴って
海外へ出ていかざるを得ない、
海外へ出ていけばそれはやがては成熟する、成熟すれば
日本に
輸入として入ってくる。これはブーメラン効果ということで当然であります。
国内の
産業はますますそれによって空洞化する、こういう悪循環を来しておりますけれども、そういう空洞化。そしてこれにまた、先ほど御質問がありましたが
金融の空洞化というものが加わっていくと、やはり
日本の
経済というのはこれからそう楽観を許さない、そういう
状況ではないかと思うのであります。
そうしてみると、今までいろんな政策の前提になってきていた三%とか五%とかというやや高目の成長率をこれから維持するのは非常に困難なのではないか。そういう点で、企画庁の方にはそういった長期計画の修正というか、そういうものを私は今やるべきではないかという御注文を申し上げたいわけであります。そうしないと、シルバープランもそれからいろんな税制改革も絵にかいたもちになってしまうだろうと思うのであります。こういう点について長官のお考えを伺いたいと思います。よろしくどうぞ。