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1994-11-24 第131回国会 参議院 世界貿易機関設立協定等に関する特別委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成六年十一月二十四日(木曜日)    午前九時三十八分開会     —————————————    委員異動  十一月二十二日     辞任         補欠選任      村沢  牧君     大渕 絹子君      喜屋武眞榮君     下村  泰君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         矢田部 理君     理 事         上杉 光弘君                 須藤良太郎君                 野間  赳君                 稲村 稔夫君                 梶原 敬義君                 北澤 俊美君                 山下 栄一君                 立木  洋君     委 員                 井上 吉夫君                 大木  浩君                 大塚清次郎君                 笠原 潤一君                 木宮 和彦君                 北  修二君                 沓掛 哲男君                 野沢 太三君                 森山 眞弓君                 吉村剛太郎君                 会田 長栄君                 大渕 絹子君                 上山 和人君                 清水 澄子君                 菅野 久光君                 谷本  巍君                 三上 隆雄君                 井上 哲夫君                 河本 英典君                 小島 慶三君                 都築  譲君                 星川 保松君                 刈田 貞子君                 浜四津敏子君                 和田 教美君                 林  紀子君                 下村  泰君                 西野 康雄君    国務大臣        外 務 大 臣  河野 洋平君        大 蔵 大 臣  武村 正義君        文 部 大 臣  与謝野 馨君        農林水産大臣  大河原太一郎君        通商産業大臣   橋本龍太郎君    政府委員        外務省経済局長  原口 幸市君        外務省条約局長  折田 正樹君        大蔵省関税局長  鏡味 徳房君        文部大臣官房長  佐藤 禎一君        文化庁次長    林田 英樹君        農林水産大臣官        房長       高橋 政行君        特許庁長官    高島  章君        特許庁特許技監  油木  肇君        特許庁総務部長  森本  修君    事務局側        常任委員会専門        員        大島 弘輔君    参考人        宮崎県西都市長  黒田  昭君        鹿島建設株式会        社常任顧問    溝口 道郎君        北海道農民連盟        書記長      信田 邦雄君        農民運動全国連        合会代表常任委        員        小林 節夫君     —————————————   本日の会議に付した案件参考人出席要求に関する件 ○世界貿易機関を設立するマラケシュ協定締結  について承認を求めるの件(内閣送付予備審  査) ○著作権法及び万国著作権条約実施に伴う著作  権法特例に関する法律の一部を改正する法律  案(内閣送付予備審査) ○加工原料乳生産者補給金等暫定措置法の一部を  改正する法律案内閣送付予備審査) ○繭糸価格安定法及び蚕糸砂糖類価格安定事業団  法の一部を改正する法律案内閣送付予備審  査) ○農産物価格安定法の一部を改正する法律案(内  閣送付、予備審査) ○特許法等の一部を改正する法律案内閣送付、  予備審査) ○関税定率法等の一部を改正する法律案(内閣送  付、予備審査) ○主要食糧需給及び価格の安定に関する法律案  (内閣送付予備審査)     —————————————
  2. 矢田部理

    委員長矢田部理君) ただいまから世界貿易機関設立協定等に関する特別委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る二十二日、喜屋武眞榮君及び村沢牧君が委員を辞任され、その補欠として下村泰君及び大渕絹子君が選任されました。     —————————————
  3. 矢田部理

    委員長矢田部理君) 世界貿易機関を設立するマラケシュ協定締結について承認を求めるの件、著作権法及び万国著作権条約実施に伴う著作権法特例に関する法律の一部を改正する法律案加工原料乳生産者補給金等暫定措置法の一部を改正する法律案繭糸価格安定法及び蚕糸砂糖類価格安定事業団法の一部を改正する法律案農産物価格安定法の一部を改正する法律案特許法等の一部を改正する法律案関税定率法等の一部を改正する法律案主要食糧需給及び価格の安定に関する法律案、以上八案件を一括して議題といたします。  まず、政府から順次趣旨説明を聴取いたします。河野外務大臣
  4. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) ただいま議題となりました世界貿易機関を設立するマラケシュ協定締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  この協定は、昭和六十一年九月に開始された関税及び貿易に関する一般協定の第八回目の多角的貿易交渉であるウルグアイ・ラウンドの結果、平成六年四月にモロッコのマラケシュで開催された閣僚会合において作成されたものであります。  この協定は、世界貿易機関を設立し加盟国間の貿易関係を規律する共通の制度上の枠組みを提供すること、関税その他の貿易障害を実質的に軽減し及び国際貿易関係における差別待遇を廃止すること等を目的とするものであります。  我が国がこの協定締結することは、我が国世界の主要な貿易国であることにかんがみ、多角的貿易体制発展に寄与するとともに、我が国国民生活に多大の利益をもたらすこととなるという見地から極めて有意義であると認められます。  よって、ここに、この協定締結について御承認を求める次第であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御承認いただきますようお願いいたします。
  5. 矢田部理

  6. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) このたび、政府から提出いたしました著作権法及び万国著作権条約実施に伴う著作権法特例に関する法律の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  この法律案は、知的所有棒貿易関連側面に関する協定を含む世界貿易機関を設立するマラケシュ協定、いわゆる世界貿易機関協定締結に伴い必要となる国内法整備を図ることを目的とするものであります。  世界貿易機関協定については、今国会において別途その締結について御承認をお願いしているところでありますが、その附属書として含まれる知的所有権貿易関連側面に関する協定は、知的所有権国際的保護のための基準及びその確保のための手段を定めるものであり、著作権に関しては、著作権に関する基本条約であるベルヌ条約保護内容の遵守、コンピューター・プログラム及びデータベースの著作権による保護レコード等の貸与に関する権利付与実演家レコード製作者及び放送機関保護等について規定されております。  世界貿易機関協定締結により我が国が負うこととなる義務は、他の締約国における著作権者実演家等権利者に対し、協定に従って所定の保護を与えることであり、今回の著作権法等の一部改正趣旨は、同協定上の保護義務を果たすために必要な規定整備を行うことにあります。  次に、この法律案概要について申し上げます。  第一に、著作権法改正事項としては、世界貿易機関加盟国実演レコード及び放送を、著作権法により保護を受ける実演レコード及び放送に加えることであります。  現行著作権法は、外国著作物実演レコード及び放送について、ベルヌ条約実演家等保護条約など既存の著作権または著作隣接権に関する条約により我が国保護義務を負うものを保護対象としておりますが、このたび、我が国世界貿易機関協定締結することに伴い、世界貿易機関加盟国実演レコード及び放送を新たに保護対象として加えることとしております。なお、世界貿易機関加盟国著作物については、現行著作権法改正するまでもなく保護対象となります。  このほか、世界貿易機関加盟国著作物についてベルヌ条約締約国のものと同様に保護期間相互主義を適用することや、レコード保護条約に係るレコードについての複製権制限に関する経過措置を廃止することなど、所要規定整備を図ることとしております。  第二に、万国著作権条約実施に伴う著作権法特例に関する法律改正であります。  万国著作権条約実施に伴う著作権法特例に関する法律は、万国著作権条約締約国著作物についての特例を定めるものでありますが、ベルヌ条約締約国のものと同様に世界貿易機関加盟国著作物については、同法を適用しないこととするものであります。  最後に、施行日等であります。  この法律施行日については、世界貿易機関を設立するマラケシュ協定日本国について効力を生ずる日の翌日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとしております。  また、世界貿易機関加盟国実演等は、国内実演等と同様、現行著作権法が施行された昭和四十六年以後のものから保護を与えることとしております。  以上が、この法律案提案理由及びその内容概要であります。  何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛成くださるようお願いいたします。
  7. 矢田部理

  8. 大河原太一郎

    国務大臣大河原太一郎君) ただいま議題となりました加工原料乳生産者補給金等暫定措置法の一部を改正する法律案繭糸価格安定法及び蚕糸砂糖類価格安定事業団法の一部を改正する法律案農産物価格安定法の一部を改正する法律案及び主要食糧需給及び価格の安定に関する法律案につきまして、その提案理由及び主要な内容を御説明申し上げます。  便宜、主要食糧需給及び価格の安定に関する法律案から御説明申し上げます。  主要な食糧である米穀及び麦は、主食としての役割を果たすとともに、我が国農業における重要な農産物としての地位を占めております。食糧管理法は、このような米穀等重要性にかんがみ、昭和十七年に制定されて以来今日に至るまで、社会的・経済的実態の変化を踏まえた所要改善を図りつつ、主食を安定的に供給するという機能を一貫して担ってきたところであります。  しかしながら、近年、米穀生産流通消費をめぐる諸情勢は大きく変化しており、生産者創意工夫の発揮、消費者ニーズヘの的確な対応、流通合理化等要請が高まっているほか、最近の米穀不正規流通に見られるように、現行食糧管理制度実態と乖離し、その機能を十分に発揮することができなくなっている点も指摘されております。また、世界貿易機関を設立するマラケシュ協定実施に伴い、新たな国際的規律のもとで国民に対する食糧安定的供給確保していくことが緊要な課題となっております。  このような状況のもとで、新たな米管理システムのあり方について各般の議論が展開されてきましたが、先般の農政審議会において取りまとめられた「新たな国際環境に対応した農政展開方向」においては、食糧管理制度の抜本的な見直しを行い、現下の諸課題にこたえ得る新たな法体系整備する必要があるとされたところであります。  このため、今後とも米穀需給及び価格の安定を図ることを基本としつつ、生産者自主性を生かした稲作生産体質強化市場原理の導入や規制緩和を通じた流通合理化等が図られるよう、食糧管理法を廃止するとともに、新たな制度を構築するため、この法律案を提出することとした次第であります。  次に、この法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。  第一に、計画制度を中心に生産調整中期的観点に立った備蓄運営等を位置づけ、全体需給調整を図ることであります。  政府は、米穀需給の的確な見通しを定め、これに基づき、計画的にかつ整合性をもって、米穀需給の均衡を図るための生産調整の円滑な推進、米穀供給が不足する事態に備えた備蓄の機動的な運営及び消費者が必要とする米穀の適正かつ円滑な流通確保を図るとともに、その適切な買い入れ輸入及び売り渡しを行うこととし、農林水産大臣はこれに必要な基本計画を策定することとしております。  第二に、自主流通米及び政府米計画流通米として位置づけ、その安定流通確保することを基本としつつ、流通規制を緩和することであります。  米穀生産者に関しては、現行政府への売り渡し義務を廃止し、消費者の必要とする数量米穀が計画的かつ安定的に出荷されるよう、その売り渡し先を特定するとともに、計画出荷米以外のものは、その数量の届け出を要件として自由に販売できることとしております。また、自主流通米及び政府米の適正かつ円滑な流通確保するため、その出荷取り扱い及び販売を行う業者については、現行指定許可制にかえて登録制とするほか、自主流通米を計画的に流通させる主体として自主流通法人法律上位置づけることとしております。これにあわせて、その流通ルートについても、流通実態に沿うよう多様化・弾力化することとしております。  第三に、自主流通米価格形成の場を制度化すること等により、需給実勢が反映される適切な価格形成を図ることであります。  入札を通じて自主流通米の取引の指標とすべき適正な価格形成が図られるよう、その機能を担う自主流通米価格形成センター法律上位置づけるとともに、政府米買い入れ価格については、自主流通米価格動向等を反映させるほか、生産条件等を参酌し、再生産確保を旨として定めることとしております。  第四に、民間流通による自主流通米主体とする制度のもとで、政府が、政府米の操作を通じて、備蓄運営及びミニマム・アクセス運用を行うことであります。政府は、備蓄の円滑な運営を図るため生産調整実施者から政府米買い入れるとともに、政府により輸入された米穀等売買差額国際約束に従って農林水産大臣が定めた額の範囲内となるよう、売り渡しを行うこととしております。  最後に、麦等についてであります。国際約束に従って、政府以外の者が関税相当量を支払えば輸入することができるものとするほか、政府により輸入された麦等売買差額について米穀等の場合と同様の規定整備を行うこととしております。  以上が、この法律案提案理由及び主要な内容であります。  続きまして、加工原料乳生産者補給金等暫定措置法の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。  我が国酪農は、農業発展国民食生活改善等に重要な役割を果たしてきており、今後とも、その健全な発達を図っていく上で、国際化にも対応した合理化を推進していくことが重要な課題となっております。  このような中で、世界貿易機関を設立するマラケシュ協定実施に伴い、すべての乳製品国境措置関税化されることとなっておりますが、新たな国際的規律のもとで今後とも我が国酪農が期待される役割を果たし得るような存立基盤確保し得るようにするため、合意内容を踏まえて、畜産振興事業団が行う指定乳製品等輸入に係る調整業務整備する等の措置を講ずることとし、この法律案を提出することとした次第であります。  次に、この法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。  第一に、事業団以外の者が指定乳製品等輸入を行うことができるようにするとともに、これらの者が輸入する指定乳製品等買い入れ及び売り戻しの業務を新たに事業団が行うこととしております。  第二に、事業団が行う指定乳製品等輸入について、現行価格高騰時の輸入のほかに、国際約束に従って農林水産大臣が定めて通知する数量指定乳製品等輸入を行うこととしております。  第三に、事業団指定乳製品等売り渡しについて、価格高騰時及び農林水産大臣の指示する方針による場合に行うこととしております。  以上が、この法律案提案理由及び主要な内容であります。  続きまして、繭糸価格安定法及び蚕糸砂糖類価格安定事業団法の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。  養蚕業は、中山間地域等の重要な作目であり、また、製糸業も伝統的な地場産業として地域経済において重要な地位を占めております。  しかしながら、近年、従事者高齢化輸入製品との競争の激化等により、その生産量は大幅に減少し、極めて厳しい状況に直面しております。  このような中で、世界貿易機関を設立するマラケシュ協定実施に伴い、繭及び生糸国境措置関税化されることとなっておりますが、新たな国際的規律のもとで蚕糸業経営の安定と絹業への生糸安定供給を図るため、蚕糸砂糖類価格安定事業団が行う生糸輸入に係る調整業務整備する等の措置を講じることとし、この法律案を提出することとした次第であります。  次に、この法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。  第一に、事業団以外の者が生糸輸入を行うことができるようにするとともに、事業団生糸価格の安定を図るため、引き続き、生糸輸入を行うことができることとしております。  第二に、事業団以外の者が輸入する生糸について、事業団買い入れ及び売り戻しを行いその価格調整するとともに、実需者需給上必要な量を輸入する場合には、生糸価格の安定に支障のない範囲内でその輸入に係る生糸買い入れ及び売り戻しの対価差額を減額することとしております。  第三に、輸入に係る生糸買い入れ及び売り戻しの対価差額事業団蚕糸業振興資金に充てることとし、蚕糸業経営の安定に活用することとしております。  以上が、この法律案提案理由及び主要な内容であります。  最後に、農産物価格安定法の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。甘しょでん粉及び馬鈴しょでん粉は、我が国畑作物生産において基幹的地位を占めるいも類の主要な需要先であり、また、北海道南九州地域経済において重要な地位を占めております。  このようないもでん粉重要性にかんがみ、従来から農産物価格安定法に基づく価格安定制度を基軸として、でん粉輸入割り当て制度等により、でん粉需給価格の安定を図ってきたところであります。  しかしながら、世界貿易機関を設立するマラケシュ協定実施に伴い、でん粉国境措置関税化されること及びその他のアクセス改善措置実施されることとなっており、近年、でん粉需要停滞傾向にあることと相まって、今後、国内需給が緩和し、農産物価格安定法に基づく政府買い入れを行った場合に、政府の保管する期間が従来より長期化し、国内需給に悪影響を与える等、本制度運用支障を来すことが懸念されます。  このことを踏まえ、新たな国際的規律のもとにおいても、本制度の効果的な運用確保するため、同法の政府買い入れ農産物等売り渡しに係る規定整備することとし、この法律案を提出することとした次第であります。  以上が、この法律案提案理由及びその内容であります。  何とぞ、これら四法案につきまして慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。
  9. 矢田部理

  10. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 特許法等の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。  この法律案は、工業所有権制度国際的調和を図り、世界貿易機関を設立するマラケシュ協定の確実な実施確保するとともに、技術開発成果の迅速かつ十分な保護要請に的確に対処するため、特許法その他の工業所有権関係法律について所要改正を行うものであります。  次に、この法律案要旨を御説明申し上げます。  第一は、特許権存続期間出願日から二十年とすることであります。これまで特許権存続期間は、出願公告の日から十五年または出願日から二十年のいずれか短い期間で終了しておりましたが、これをマラケシュ協定に対応し、出願日から二十年に一本化するものであります。  第二は、外国語書面により特許出願をすることができる制度を創設することであります。本制度により外国語書面提出日出願日として認定され、また、二カ月以内に提出する翻訳文に誤訳があった場合には、一定期間、その訂正を行うことが可能となります。  第三は、特許後に異議申し立てを行う制度を採用することであります。これは、これまで特許付与前に行っていた異議申し立て特許付与後に行い、迅速な権利付与を促進するものであります。  第四は、ぶどう酒及び蒸留酒地理的表示保護強化要請にこたえ、これらの表示を含む商標については、原産地についての誤認混同が生じるか否かを問わず、商標登録ができない商標とすることであります。  第五は、その他制度国際的調和を図るために必要な事項について、所要改正を行うことであります。  以上が本法律案提案理由及びその要旨であります。  何とぞ、慎重御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  11. 矢田部理

    委員長矢田部理君) 次に、武村大蔵大臣
  12. 武村正義

    国務大臣武村正義君) 関税定率法等の一部を改正する法律案につきまして、提案理由及びその内容を御説明申し上げます。  政府は、ウルグアイ・ラウンド交渉の結果合意された世界貿易機関を設立するマラケシュ協定実施等のため、関税率及び関税制度について所要改正を行うこととし、本法律案を提出した次第でございます。  以下、その内容につき御説明を申し上げます。  第一は、農産物輸入制限品目等関税化に伴う措置であります。  農産物のうち現在行っている輸入制限等関税化する品目について、関税率を引き上げるとともに、関税割り当て制度等及び特別緊急関税を導入するなど所要改正を行うことといたしております。  第二は、個別品目関税率等改正であります。  牛肉及び豚肉について関税率を引き下げるとともに、緊急措置を導入するなどのほか、一部の熱帯産品等について特恵税率を引き下げるなど所要改正を行うこととしております。  第三は、関税率体系見直しであります。  現在、実行税率となっている関税率水準を原則として基本税率とすることにより関税率体系見直しを行うこととしております。  第四は、特殊関税制度整備であります。  相殺関税不当廉売関税及び緊急関税について課税期間の上限の設定等制度整備を行うなど所要改正を行うこととしております。  その他、知的財産権侵害物品水際取り締まりの充実、罰金水準調整輸入禁製品追加等を行うため所要改正を行うことといたしております。  以上が、法律案提案理由及びその内容でございます。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  13. 矢田部理

    委員長矢田部理君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。  各案件の質疑は後日に譲ることといたします。     —————————————
  14. 矢田部理

    委員長矢田部理君) この際、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  ただいま議題となっております八案件の審査のため、本日の委員会に参考人として宮崎県西都市長黒田昭君、鹿島建設株式会社常任顧問溝口道郎君、北海道農民連盟書記長信田邦雄君、農民運動全国連合会代表常任委員小林節夫君の出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  15. 矢田部理

    委員長矢田部理君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  速記をとめてください。    〔速記中止〕
  16. 矢田部理

    委員長矢田部理君) 速記を起こしてください。     —————————————
  17. 矢田部理

    委員長矢田部理君) それでは、ただいまから世界貿易機関を設立するマラケシュ協定締結について承認を求めるの件外七法律案の審査のため、参考人の方々から御意見を承ることといたします。  まず、午前中は、宮崎県西都市長黒田昭君、鹿島建設株式会社常任顧問溝口道郎君、北海道農民連盟書記長信田邦雄君の三名の方々に御出席をいただいております。  この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。  皆様には、御多忙のところ当委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございました。議題となっております各案件につき忌憚のない御意見を拝聴いたしまして、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。  なお、会議の進め方について申し上げます。  まず、お一人十五分で順次御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えをいただきたいと存じます。  それでは、黒田参考人からお願いいたします。黒田参考人
  18. 黒田昭

    参考人(黒田昭君) ただいま御紹介をいただきました宮崎県西都市長の黒田と申します。  まず、意見を申し上げる前に、私の市の概況について御説明をしておきたいと思います。  人口三万七千人弱、市土の面積は四百三十八平方キロ、農地の面積が四千二百二十ヘクタール、農家三千三百戸、農家率は二八・六%であります。専業率が三八・一%。大体年間の粗生産額は二百八十億から二百五十億ぐらいのところであります。  このようなところの市長を仰せつかっておりますので、そのようなことで今から申し上げる意見をお酌み取りいただければと思います。  私は、長い間、農家とともに米の自由化に反対をしてまいりました。今回のガット・ウルグアイ・ラウンド農業合意の受け入れには強いショックを受けた者の一人であります。もちろん農家の皆さん方は私以上に直接的な大きな打撃を受けたわけであります。農業を基幹とする地域は、農業者の生産意欲の減退、そしてまた、来るであろうと思われます農産物価格の低迷等、非常に不安であります。大きく地域の活性化が低下するのではないかという懸念を抱いておるところであります。  しかしながら、この影響を最小限に食いとめて農業者の不安を払拭して、農業、農村の持つ重要な役割、すなわち国民食糧を安定的に確保するということ、また国土保全を確実にしていく、こういうようなことに対して、国際化に対応する農業の確立のために先ごろ政府から「新しい食料・農業・農村政策の方向」が示されておりますので、これに向かって一生懸命努力していかなければならない、そのように覚悟を決めておるところであります。  そのようなときに、今回、国で決定されましたこのウルグアイ・ラウンド対策としての六兆百億という予算は、非常に積極的なものとして評価をいたしておるところであります。今後、その具体化に向けて確実な予算措置が必要と考えられます。また、この場合、地方公共団体の果たす役割は極めて重要と受けとめております。その責任が十分果たせるように地方財政措置について特段の御配慮をお願いいたしたいと思うわけであります。  現在、対策の具体的な内容について検討がされていると聞いておりますけれども、特定の事業が非常に加速をいたしましてそして他の事業が減速されるというようなことになりますと、これはどうにもならないわけでありまして、既存事業の実施に影響のないような予算措置、予算の編成というものをぜひお願いしたい、そのように思います。  次に、若干中身に入りまして申し上げたいと思います。  六兆百億円の中で最も重点が置かれておりますのは農業農村整備事業の推進であると考えております。この点につきましては、新聞等マスコミでここまでやる必要があるのかというような御意見もあるようでありますけれども、我が国は地形や地理的制約に加えて農地の整備など農村の基礎的条件の整備が欧米諸国に比べまして非常におくれている状況にあります。これを農業者だけの責任にするというのは無理ではなかろうか。水田の整備率から申し上げましても、三十アールの水田の整備率は五〇%、一ヘクタールになりますとまだわずかに三%ぐらいの整備率であります。畑の整備につきましてはもっと低くて、畑地かんがいの整備がしてある率は一五%。農道にいたしましても五六%というような整備状況であります。  こういうようなことから考えますと、生産性の高い農業のためにはその前提となります生産基盤の整備がどうしても必要である、そのように考えております。生産性を高めることによる農産物安定供給や適正な価格によって消費者の需要にこたえることができるはずであります。  特にこの際、条件の悪い中山間地域の対策について御配慮いただきたいのであります。国土の中で最も広い地域であるこの中にあって、農林業を営むことによって国土を保全しつつ地域経済において重要な役割を果たしております。  私の町で言いますと、野菜が中心の町でありますが、ピーマンは年間六十億から七十億を売っております。これが仮に一割価格が下がるということになりますと、六億から七億の所得が減ってくるわけであります。この所得はストレートに市内の第三次産業への影響を及ぼす。極めて直接的な影響があるわけであります。そのようなことで、この振興は地域社会の活性化に最も直接的な影響保を持つものと考えております。  ところが、この地域の下水道、生活道、農道、このような生活環境の整備水準は都市に比べて極めて低く、その格差は拡大しつつあります。そして、その結果が大きく過疎化を促進させておる、こういうふうな状況であります。地域社会の活性化のためにはどうしても一定の定住人口が不可欠でありますので、今回のこの対策によって生産基盤の整備と生活環境の一体的な整備をすることが必要であり、特にそうすることが効率的に事業を進めることになる、そのように考えております。  次は非公共事業についてでありますが、農業構造改善事業等によって生産の効率化と付加価値を高めるためにはどうしても流通施設等の施設整備の積極的な推進が必要と考えます。また、農地の流動化対策、利用集積対策等によりまして規模の拡大を図ると同時に、資質の高い農業者を育成しなければならないと思っております。そうすることによって国際化に対応できる農家群を形成するということができるわけでありまして、今後この点で十分努力をしていきたい、そのように思います。現在、農芸経営基盤強化法に関連します構造改善目標を設定いたしまして、この目標に向かって農家を誘導すべく取り組んでおるところであります。  次に、融資事業についてでありますが、畜産農家を初めといたしまして、多額の負債を抱え苦しんでおります。農家負債につきましては、論議がありましたように、個人の責任に負うところもありますけれども、牛肉等の輸入自由化、長期にわたる円高等によりまして、農家の責任の届かないところによってその返済が予定どおりにいかない面もあるわけでありますので、御理解をいただきたいと思います。  しかし、融資事業の中心は、何といいましても今後積極的に営農に取り組もうとする農家、また新規に農業を始めようとする者に対する資金の援助でなければならないと思っております。  以上、概括的に申し上げましたが、具体的なことにつきましては質問によってお答えをいたしたいと思います。  私ども農山村に居住する者は、国土の最も広い面積を有しております。そして最も自然条件に恵まれていると考えております。この中にあって、消費者に理解される農林業を営み、そして都市と共生できる農山村となるよう懸命の努力をしてまいりたいと考えておりますので、今後一層の御理解と御配慮を賜りたいと思います。  以上で私の意見を終わります。
  19. 矢田部理

    委員長矢田部理君) ありがとうございました。  次に、溝口参考人にお願いいたします。
  20. 溝口道郎

    参考人(溝口道郎君) ただいま御紹介いただきました溝口道郎と申します。私は、昨年二月外務省を退官いたしまして、現在鹿島建設の常任顧問を務めさせていただいております。  ウルグアイ・ラウンド交渉につきましては、かつて外務省の特別補佐官というのに任命されまして、これは現在、国際貿易大使というふうに名前が変わっております。そのポストでウルグアイ・ラウンドの準備交渉を三年間担当させていただきました。また、プンタデルエステの会議には倉成外務大臣のお供をして参加させていただきました。その後は主として海外勤務をいたしましたので直接ラウンドの交渉には関係しておりませんので、交渉の詳細な経緯につきましては必ずしもよく承知いたしておりません。しかし、その前には外務本省あるいはジュネーブでガットを担当しました期間がかなりございますので、本日はこのような国政の場にお招きいただいたものと拝察いたしております。甚だ未熟者でございますが、できるだけのことをしたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。  さて、ウルグアイ・ラウンド交渉は、七年余りの交渉の結果、今春、妥結をいたしました。世界経済にとりましても日本にとりましても大変慶賀すべきことだと存じます。  この交渉の結果が我が国の利益になるところは次のような点があると存じます。  第一に、交渉が不成功に終わりました場合を考えますと、ガットに象徴されます多角的自由貿易体制の信憑性が地に落ち、保護貿易措置世界各地で横行するという最悪の事態となりかねませんでした。欧州は地域主義に走り、またアメリカはお得意の一方的措置に訴えることになりましたでありましょう。これは貿易立国であり自由貿易により今日の繁栄を築きました我が国として懐然とするような事態でございます。幸いラウンドが成功し、このような事態が回避されたことは喜ばしい限りでございます。  第二に、ガットは今回、世界貿易機関、WTOとして初めて正式の国際機関として国際的に認知され、その上、内容的にもサービス、知的所有権などをも対象とするように範囲を広げました。また、紛争処理を初めもろもろの貿易ルールも強化されました。戦後すぐに生まれましたガットが一九九〇年代の世界経済の現状により合致する形に生まれ変わることになりまして、主要貿易国としての我が国の受ける利益は極めて大きいものがあると考えます。  第三に、世界百余国の関税や非関税障壁が下がることは、大輸出国である我が国にとって大きな利益となります。我が国から直接海外に輸出する場合のみならず、海外に設けられました多数の日系企業の第三国への輸出にとりましても大きなメリットがあると存じます。  第四に、我が国自身の関税や非関税障壁が下がることになり、国の施策となっております規制緩和や内外価格差の是正にとりましても大きな貢献があることが期待されます。もちろん、ただいまお話のございました農業を初め若干の産業部門では外国産品の輸入増大の可能性がございます。多くの問題を提起することもあるかと思います。しかし、これも個々の生産者や企業のリストラの努力、あるいは当該産業部門全体の構造改善努力により、また必要がありますれば政府の支援努力などによりまして克服されるものと期待いたします。これらの努力が成功すれば日本経済全体の体質の強化に資するものと考えます。  第五に、ラウンドの成功は、輸出の推進を原動力として急速な経済成長を遂げることに成功しましたアジア諸国にとりまして極めて大きな利益となると思います。アジアの発展は経済的に日本の直接的な利益にもなります。のみならず、戦後一貫してアジアの発展と繁栄を政治や外交の基本目標としてきました我が国にとりまして、政治的、外交的にも重要な意味を持つものと考えます。  以上のような理由によりまして、ウルグアイ・ラウンドの結果は全体として見ますれば、我が国の政治や経済にとり、また国民や企業にとり、多くの利益をもたらすものと考えます。したがいまして、私といたしましては、参議院のWTO特別委員会におきましてWTO関連の諸協定が速やかに先生方の御承認を得られるよう切望いたす次第でございます。  簡単でございますが、私の陳述を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  21. 矢田部理

    委員長矢田部理君) ありがとうございました。  次に、信田参考人にお願いいたします。信田参考人
  22. 信田邦雄

    参考人(信田邦雄君) WTO特別委員会に所属する諸先生方、大変御苦労さまでございます。御紹介をいただきました北海道農民連盟書記長を仰せつかっております信田でございます。  私は、北見で、家内とそして息子夫婦とともに、孫が二人おりますけれども、働く方は四人でございますけれども、三十六ヘクタールの耕地を耕作しております現役の専業農家であります。私は、みずからを農業というよりも百姓ということで、その百姓という言葉を愛している一人でありまして、農業をしておりますと、百姓という、いわゆる自然と一緒にいることによって何か農業をやっているということが実感としてあるということで、百姓という言葉を大事にして、みずからは米を十一ヘクタール、畑作物、野菜、施設園芸等々を二十五ヘクタールで合計三十六ヘクタールをつくって、一年間大体粗収入三千五百万円ぐらいを上げております。しかし、厳しいオホーツク海の環境でございますから、所得率は大体二〇から二五%ぐらいで、特に野菜など入っていますので所得率は年々大きく揺れ動くという状況の中で農業を、いわゆる百姓を行っているわけであります。  私は、百姓のほかに、北海道農民連盟という組織の書記長と、北見における七千ぐらいの盟友を抱えました北見地区農民連盟の委員長も兼ねて仰せっかっておるところでございます。  実は、若干、北海道農民連盟について御紹介申し上げますけれども、北海道農民連盟は、北海道九万農民のうちの七万を私ども組織いたしまして、みずから負担金を納める自主財源を基本といたしまして、自由意思を結集して農民のあらゆるニーズにこたえる運動を現在五十年にわたる歴史を持って行っているものであります。今日の北海道農業があるのも私ども農民の意思による運動の結集の結果ではないか、こういうふうに思っています。  私はきょう、ガット・ウルグアイ・ラウンド農業部門についてあるいはそれにかかわる問題につきまして意見を述べさせていただきますけれども、こういう機会を与えていただきました関係者の皆さんに敬意を申し上げたいと思います。ということは、私ども特に農民の現場の声を聞いていただいてあらゆる対策をされることが基本であろうと思い、大変ありがたく思っておるわけであります。  北海道農民連盟というか道の農民全体、道民を挙げて私どもウルグアイ・ラウンド関係に関する運動を七年間、特にこれは私どものためにならないということで阻止運動を行ってきたわけでありまして、それは日本農業を守るという国民的な闘いであったという位置づけを私はしておりますし、信じております。もちろん私もジュネーブの方へ行ってガット本部に強く阻止行動を行ってきました。  しかしながら政府は、三回の国会決議をほごにして昨年十二月十五日に農業部門も含めたウルグアイ・ラウンドを受け入れたわけであります。本年四月には正式調印をしたという状況にございます。そのことにより全面的な農産物の自由化時代に突入したと私ども思っていますし、農業農政は大きく転換を迫られる時代に入った、こういうふうに認識をしています。  私たちは、大変不満といら立ちの中で、そしてまた批准阻止の声が高まる中で、北海道農民連盟といたしましては万全の事後対策を期すことの方がいいのではないか、そういうことで批准阻止もあり得るという立場の中で事後対策行動の運動をこれまで強力に進めてきたところでございます。すなわち、そのことは農政の大改革を強く求める運動であったわけであります。  そんな中で政府は、緊急農業農村対策本部といたしましてウルグアイ・ラウンド農業合意関連対策大綱を示しました。御案内のとおりであります。あわせて、合計七兆二千百億に及ぶ農業関連対策の別枠予算を示したわけであります。このことにつきましては、一部の国民やマスコミから強い批判がありました。しかし、当時の細川総理が深夜に国民に向けて、農業者の皆さんに不安を与えない万全の対策ということを国民に訴えてこの合意案の受け入れについて理解を求めたことを考えるときに、私は、マスコミ、一部の国民の皆さんから批判を受ける理由は全くない、こういうふうに信じているところであります。  しかし、もしこの政府が示しました対策大綱や対策費が真に農業のためにあるいは地域のためにならないとするならば、これは国民的な合意を得られないばかりか将来の日本農業を破滅の道に追いやることになろう、こういうふうに危惧している一人であります。  時あたかも世界のガット加盟国は今、一斉にWTO設立協定法案の審議に入っているわけでありますが、我が国も衆参に特別委員会が設立され、活発な議論が行われているさなかでありますし、当然ながらそういう中で世界貿易がこれから完全自由化の方向に向かい、日本経済も今、前者がおっしゃられましたように、そういう中で世界に重要な役割を果たしていくわけであろうと思います。とりわけ新たに自由化の方向を強めたいわゆる農産物貿易による日本農業は、極めていろんな意味で大きな影響を受けるのではないか、こういうふうに私は思っております。  したがって、専業農家として、農業を愛する農民の一人といたしまして、頑張っている北海道の仲間や日本の仲間の皆さん、そして家へ帰れば息子夫婦の姿を見ていて、ぜひともきょうは農民の一立場で意見を述べてみたい、こういうふうに思っ一ております。  それで、私ども最も重要に思っている第一といたしまして、まず世界の先進国のように農業部門に対してもきちっと国内法律をつくっていただくことが極めて重要であろう、こういうふうに考えている一人であります。したがいまして、その中で農政審などで審議されました新しい農業基本法の早期制定が最も急がれるのではないか、こういうふうに考えております。  先般、ウルグアイ・ラウンド農業合意関連対策大綱とそれに対する七兆二千百億に及ぶ総事業予算が農民に期待されて示されたわけでありますから、これが国民の合意を得るために、あるいはまた確実な政策として地域に根差した実行がされるためにも、私たちといたしましては、対策大綱を特別暫定措置法として時限立法化してこれを国民に示し、理解をされることが本当であろう、ただ単につかみ金をばらまいたようにとられるようなやり方はこれからは正しくないのではないか、こういうふうに農民の一人としても本当にそう思っているところであります。立法府であります国会がその責任を持つことは当然の使命であろうと思いますし、そのことによってこそ国民の本当の理解が得られるのではないか。ぜひそのように先生方のお力をおかりいたしたいと思うわけであります。  さらに、国だけでそうやっていただけではだめでありますので私ども地方でも活動しておりますけれども、農業農村活性化特別措置法をぜひつくっていただきまして、これは議員立法で結構でございますから「そういう中からさらに地域条例や地域の活性化条例を制定して各市町村が責任を持って、やはり国の出したものをまた地方できちっとさせて本当の意味で地域の独自性を生かして、農民に根差した地方の産業を発展させていくことが極めて重要であると思うわけであります。  さらに、私は北海道に住んでおりますから、北海道役割はこれから大きいと思っています。日本の食糧自給率が下がっていく中で、やはり北海道専業地帯が担うのは私どもとしても責任を持たざるを得ない。だとすれば、やはりその責任を果たすためには国として地域立法を制定して、昔のマル寒法のようなものをつくって専業地帯をきちっと守っていくという、そのことが極めて重要であり、国民的理解を私は得られるものと、こういうふうに考えているわけであります。  次に、ガットの合意によって関連して農政審などで議論されました新食糧法につきましては、私どもとして極めて関心があります。したがいまして、次の点について御検討いただきたいと思います。  主要食糧の定義につきましては、どうも中身が弱まってきておりますので、偽装的な調製品類がどんどん入ってきて実質的なアクセス分すら侵されて、いわゆる関税化でないと言っているうちにそれ以上の自由化にさせられる可能性がありますので、厳格な定義づけの規制をしていただきたい。  二つ目には、基本計画を定めるわけでありますが、この点につきましてはやはり審議会に諮り、その中に農民、生産者も入って決めていくということが極めて重要でありますので修正願いたい。  三つ目には、政府米買い入れにつきましては全量買い入れにしていただかないとやはりこれは中長期的な価格が変動する中で不安なものになりますので、買い入れ申込者に対しては全量買い入れを行うようにしていただきたいし、政府米価格につきましては再生産確保するということになっていますけれども、やはり所得が確保されないと農民は孫子の代までつないでやっていくことが不可能になりますので、再生産と所得を守るというように修正を願いたい。  生産調整につきましては、水田機能を残していつでも米をつくれることを条件にいたしまして、その助成金は所得が補てんされる額としていただきたい。特にこの点につきましては、水田機能すなわちダムや多面的な機能を持つ水田はそのまま残しながら、いつでもつくったり休んだりできる方向が極めて重要であろう、こういうふうに思います。その価値観に対する助成額とした方がいいんではないか、こういうふうに考えています。  また、輸入米の安全性は消費者の強い希望でございますから、この規定については国民の信頼を得るようなところできちっとした規定を図っていくと同時に、検査規格等が最近うわさされているようでありますが、やはり国が責任を持った。買う方の立場でも信頼できる全国統一的な規格が極めて重要でありますので、そういうことがもしないがしろになれば消費者生産者の双方の信頼を失いますので、検査につきましても極めて国が重要な役割を果たす必要があろうと思っております。  次に、私どもが主産地であります麦も食管法に触れますので、今回ガットでマークアップとして認められている外米の輸入差益につきましては、自給率がほとんどなくなりかけている国産麦につきまして、あるいは畑作振興にぜひ目的的な財源として対応していただきたい、こういうふうに思っております。  それから次に、農産物価格安定法が一部改正されるわけでありますが、この点につきましては当然改正しなければならぬと思って、それを反対するわけじゃありませんけれども、ガットの合意によって畑作地帯が最も影響を受けます。あるいは酪農地帯が最も影響を受けるわけでありまして、主要なものにつきまして私どもはぜひ振興を図っていただきたい。  特に芋でん粉につきましては私ども輪作体系の基本でありまして、国土を守る、土地を維持するために極めて重要でありますのでこの対策を強化していただきたいし、それに伴うでん粉工場の合理化が今求められておりますが、もちろん合理化に反対はいたしませんけれども、合理化に伴う請負担については国がこれを負担していただきたい、こういうふうに思います。  酪農関係では、北海道の重要な農業でございますので、乳製品関税化により既に大きな不安を酪農民が抱いて酪農を投げようとしておりますので、ぜひ新たな法体系などを整備して価格安定を図って、そして財源措置を裏づけとしてつくっていただきたい、こういうふうに思うわけであります。  次に、今回のWTOで極めて重要なのは関税定率法であろうと、こういうふうに考えております。この改正に伴いまして私どもは三点について大きな影響を受けるのではないかと思っております。  一つは、雑豆等の関税化に伴うアクセス数量を限定していただかないと、これ以上拡大されるともう北海道には雑豆等などはなくなってしまう、こういう状況になります。さらに現行関税率を内外価格差に相当する水準として維持するために、関税割り当て制度を導入すると同時に、円高による為替変動などの影響を受けない措置をぜひ講じていただきたい。  これはアメリカなどは既に高い補助率の設定をした輸出補助金の策定でさらにダンピングが可能な状況にありますし、国際市況が下落した場合、この関税定率法は、実質的にもう自由競争になってしまう可能性が強く、国産農業が壊滅的な打撃を受けることを想定するわけであります。  さらに、あらゆる関税の中で調製品等々これまでに低関税で入っておりましたものなどが関税率体系見直しでさらに下がりまして、国内の産業が国産を使っての操業ができなくなる。そういうわけでぜひ、国内の産業が空洞化いたしますのでその産業を守るための、農業だけでない、産業を守ることをきちっと早目にしていただかないと、逃げてしまった産業を取り返すことはできないんではないか。こういう意味で、ぜひ関税定率法に基づく国内対策を総合的に急いでいただきたい。  さらに、私どもといたしましては、関連対策に極めて重要なものを申し上げたいと思います。  特に北海道農民連盟としては、今、世界の潮流として、また今回のガットの関税化農業合意が示す本来の農産物状況を見ますと、価格制度からこれは転換をしなければならないということを意味するものだと、ガットの協定は。そういうふうに思っております。もっと端的に言えば、価格政策だけでは国内農業を守っていくことは無理になってきているということをガットではもう既に約束したと言っていいのではないか、こういうふうに思っております。  したがって、農業食糧の多面的な機能と特殊性、または消費者生産者価格で対立しているようなことはもうやめて、日本型のデカップリング政策を早急に確立しなければならない。そして農民には総合的な所得補償を講じて、国土、環境と地方、地域を守っていくことが将来二十一世紀に向けたものであろう、こういうふうに考えております。すなわち都市と農村、生産者消費者、これが共生できるような新たな所得政策が制度化されるべきである、もはや価格政策だけでは農業は守れないことをぜひ先生方に御認識をいただきたいと思います。  もう一つは、国際化対応の農業は必至であり、一定の規模拡大は私どもとしてもこれはしていかなければならない、そのことがこれからの農業を守っていくことになろう、こういうふうに思っております。あくまでも一定ではありますが、土地は流動化します。売買しなければ規模拡大できませんから、そういう場合にぜひ譲渡所得に対する現行行われております特別控除八百万円を特に北海道的には三千万ぐらいにしていただかなければ規模拡大は無理だ、こういうことに現実なっておりますので、そういうふうに税制の改正、さらに税率、得た所得に対する税制の軽減措置、あるいはまた新農政で求めておりますところのいわゆる組織経営体を多く求めようとするならば、農地保有合理化法人等にすべての農地を売った場合についても特例措置の軽減税率をしていかなければ動かないし、新農政は恐らく絵にかいたもちになってしまうのではないかと私ども現場では思っているところであります。  三点目は現行消費税でありますけれども、消費税については極めでいろいろな問題がありますけれども、私ども政府管掌作物をつくっている北海道の主産地といたしましては、今、内税になっておりますが、非常にこれが透明性がないということで農民に不信感を持たれております。したがいまして、ぜひこれを取り除くために外税にしていただきたいと思います。  次に、若干時間をオーバーして恐縮でございますけれども、ぜひお聞きをいただきたい負債対策がございます。  今回の大綱の中で、先生方の御努力でこの面につきましてもつけていただきましたことを感謝申し上げますけれども、北海道は土地購入や規模拡大等々で多額の負債を持っています。大蔵省はこれに対して負債対策は後ろ向き政策だと言っていますけれども、北海道においても負債がなければ農業を続けることに希望を持てます。この負債対策をぜひきちっとやっていただきたいと思っています。  そんな中で、最後に申し上げますけれども、特にこの新しい農業政策、ガット後の農業に最も求められるのは担い手対策であろうと私は思っています。特に北海道においても担い手が非常に少なくなって、御案内のとおり、全国三千余りある市町村で一市町村○・五人であったり、専業地帯でも農協の新規採用職員より少ない、あるいはまたゼロの後継者、これはぜひ解消をしていただきたい。そういう意味で、担い手対策が日本の農業を左右すると思いますので、特に大切なのは後継者に対する、いわゆる新規就農じゃなくて後継者に対する、私の息子も今やっていますけれども、そういう人たちがやめないようにしていくというそういう新しい農業政策をきちっとしていただきたいし、あわせて新規就農者等後継者に対する抜本的な対策として、私は官民あわせたいわゆる返還しなくてもいいような奨学資金制度、教育をしていって返さなくてもいいような方向を官民ともに求めていく必要がある。  さらに重要なのは、担い手が確実に定着するためにぜひ各ブロックごとに後継者の育成研修センター、情報を交換し合って意欲を持ってやっていけるようなそういう研修センターをぜひ御検討いただき、急いで建設をいただいて、各地区で意見交換をしながらやっていけるようにしていただきたいことを最後に、私の農地からの声、そしてまた北海道の地域性と専業農業地帯の組織的な願いといたしまして、歴史的な転換を図る農業農政に対しての希望を述べさせていただきまして、私の考え方を終わらせていただきます。  どうもありがとうございました。
  23. 矢田部理

    委員長矢田部理君) ありがとうございました。  以上で参考人からの意見聴取は終わりました。  これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  24. 須藤良太郎

    須藤良太郎君 自民党の須藤良太郎でございます。  きょうは、お三人の参考人の方々、本当に急なお願いをお聞きいただきましてまことにありがとうございます。ただいまはまた、本当に貴重なお話をいただきまして感銘しておるところでございます。  早速お尋ねをいたしたいと思いますけれども、まず最初に溝口参考人にお伺いいたしたいと思います。  お話にもありましたけれども、溝口さんは長年ガットに関与され、しかもウルグアイ・ラウンドの命名にも関係されたということでございまして大変造詣の深いお方と、こういうふうに思っておるわけでございます。時間があればいろいろお伺いしたいわけでありますけれども、当面する二、三の問題についてお伺いしたいと思います。  第一は、まずガットの歴史を振り返りますと、国際貿易に関する国際機関、いわゆるITOの設立を目指した一九四八年のハバナ憲章、これが交渉参加国により署名されながら米国議会の批准を得られなかったというために発効しなかったわけであります。このため、ガット一般協定が不完全な形のまま国際貿易に関するルールとして機能してきたという経緯があるように聞いておるわけでございます。  そこで、今回のWTO協定がこれまでのガット一般協定及びハバナ憲章と比べてどういう点で新しいのか、またどう改善されておるのか、この点と、WTO協定においてもまだ解決を見ていない点があるのかどうか。そしてもう一つは、御承知のように、今、米国では中間選挙後にいろいろウルグアイ・ラウンド法案をめぐりましてさまざまな動きがあるわけでありますけれども、今回のこのWTO協定が半世紀近く前のハバナ憲章の二の無となるようなことがないのかどうか。この点について御見解を聞かせていただきたいと思います。
  25. 溝口道郎

    参考人(溝口道郎君) 大変難しい御質問をいただきまして、ハバナ憲章に基づく、流れましたITOでございますが、今回決まりましたWTOと大変似ているところもございます。  ガットと違いまして正式な国際機関として事務局とか組織が非常に詳細に決められております。しかし反面、今回のWTOと違います点は、世界経済がやはり一九四〇年代から今日まで五十年の間に変化しておりまして、例えばかつては関税が一番中心的な貿易障害で、関税を低くすることが大事だという認識がございました。これは戦争前の経験にも基づいてそういう考えがあったのは当然だと思いますが、その後、戦後ずっと見てまいりますと、関税がだんだん下がってきますと今度はそのかわりにいろんな非関税障壁が問題になりまして、それに対してガットで漸次アンチダンピングとか相殺関税とかそういうルールを、アンチダンピング、相殺関税程度はITOにもございますが、そういうルールを非常に詳細に決めました。  また、いろんなスタンダードですとかほかの規定もしっかりしたものができておりますし、それから今度WTOでは非常に立派な紛争処理の手続もできまして、そういう点で非関税障壁の面、あるいはさらには非関税障壁からさらに行きまして国内政策ですね。関税とか非関税障壁は、先生御承知のとおり、波打ち際の措置が多いのでございますが、農業政策とかなんか今度はかなり国内政策に立ち入った規定もいろいろWTOに盛り込まれております。その点で、五十年の歳月の間に考え方がITOに比べてWTOは非常に詳細精緻な貿易関係のルールができていると思います。また、貿易実態がサービスや知的所有権にも拡大しておりますので、そういう面も今度のWTOでカバーしている点、全くITOと趣を異にしております。  それから未解決の点でございますが、もちろんなおたくさんございまして、例えば直接投資なんかは今度のWTOにも取り扱われておりますが、ほんの表面をなでた程度で本格的ないろんな取り決めはまだ今後の交渉にゆだねられていると思います。OECDでもいろいろ研究は行われておりますし、この間のAPECでも投資のガイドラインができたようでございますが、そういう動きが今後進んでいくと思います。  また、いろんな地域主義の蔓延につきましても今度のWTOではあまり直接には取り入れられておりません。ITO、ガットができた後、戦後、欧州共同体を初めいろんな地域のあれができまして、これはガットの中では非常に例外的なものだということでとらえられておりますが、今日は例外的なものじゃなくて非常に世界貿易の中心的な役割を果たしておりますので、そういう点、今後の次の交渉で、そういう地域主義をどういうふうに評価して、どういうふうに規制するところは規制していくかというのはまた問題になってくるかと思います。第二の御質問は、ITOはアメリカの議会で結局承認される見通しがないのでアメリカは批准しなかった、これが今回のWTOについても起こる可能性があるのではないかという御指摘でございますが、アメリカ議会の下院は十一月二十九日、上院は十二月一日に何か表決をする予定だそうでございますが、やはりそれは表決の見通しを断定することは危険だと思います。ですから、そういうアメリカの議会で通らない可能性が全くないとは私も言えないと思います。しかしその点、一九四〇年代のITOのときと情勢は非常に変わっていると存じます。  一つは、当時はトルーマン大統領が政権にあって、共和党がたしか多数を握っておりまして、共和党の中には高関税を求める保護主義的な人もたくさんおりました関係で葬られたわけでございますが、今回は民主、共和両党とも一応ラウンドは支持すると。前のファストトラック法案も両党の支持で通っておりますし、それからウルグアイ・ラウンドが始まりましたときはレーガン政権で共和党政権、レーガン、ブッシュとずっとこの交渉を推進してまいりまして、今度クリントンの民主党政権もこれを支持しておりますので一種の超党派でございます。また、今回の選挙の結果にかかわらず、ドール上院議員とかギングリッチ下院議員とか、両院の議長に来年からなる予定だと聞いておりますが、この人たちもラウンドは支持すると言っておるようでございます。したがいまして、予断は許しませんが、ITOのときとはかなり違っているんじゃないかと思います。  また、世界の情勢も変わっておりまして、ITOをつくりました一九四八年でございますが、当時は戦後間もなくて、ヨーロッパはほとんどまだ輸入制限ばかりでございまして、輸入制限をしていない国はアメリカとカナダぐらいでございました。したがいまして、そのときITOの中に原則は関税以外の輸入制限はしてはいけないというふうになっていながら、その原則の例外が、ヨーロッパは交渉上手でございますので、国際収支理由があるときは輸入制限をしてよろしいとか、それから南米とかなんかの発展途上国もたくさんおりまして、そして発展途上にある国は輸入制限をしてよろしいということで、結局、直接ITOの義務を受けることになるのはアメリカとカナダだけである、したがってアメリカの中で、これは何か不公平ではないかと。  当時の経済情勢からいいましてやむを得ない事情でございましたけれども、アメリカの中にはこれはアメリカとして不利であると、またアメリカの議会の中でも保護主義者のみならず非常に自由貿易主義者の中にもこの協定は不十分である、少しそういう例外が多過ぎるという観点から、ですから右と左と申しますか保護主義者と自由貿易主義者の両方から挟み打ちになって反対になったという事情もあるようでございます。  その点、今日は、ヨーロッパもその後どんどん輸入制限をなくしました。日本も輸入制限をなくしました。そういうことで、アメリカだけという情勢じゃなくて世界各国も完全にラウンドの内容を支持しておりますので、その点からもITOのときと情勢が違っておりまして、アメリカとしてサミットその他でこれを支持するというコミットをしておりまして、容易にこれを拒否することは難しいんじゃないかと思います。
  26. 須藤良太郎

    須藤良太郎君 もう一つは、今回のウルグアイ・ラウンド合意は農業分野にとっては極めて遺憾な結果になったわけでありまして、特に、御承知のように、農業分野で我が国世界最大の輸入国ということでございますけれども、何か輸出国の論理でやられてしまったという感を持つわけでございます。特に輸入障壁とか国内農業保護、こういうマイナスのイメージだけ強調され、あるいはまた大幅な貿易黒字、こういうことで犠牲を強いられたというふうに感じるわけであります。  一方、世界食糧需給を中長期で見ますと、これはもう確実に足らなくなることは明らかであるわけでございます。食糧輸入に相当不安を持っ途上国も多いわけでありますから、もちろん日本としても守るべき農業分野のことはやらなきゃなりませんけれども、ぜひこれから米を含めた食糧援助、こういうもので国際貢献を行っていくという姿勢を積極的に出すべきではないか。ミニマムアクセス輸入米につきましてもできるだけ海外援助に使うというようなことを政府も言っておるわけでありますけれども、なかなか量的に具体的なものも出ない、こういうことでありますので、この件について、簡単でいいですけれども、御所見をお伺いいたしたいと思います。
  27. 溝口道郎

    参考人(溝口道郎君) 農業交渉につきまして、先生の御指摘のとおり、日本は非常に難しい立場に置かれました。  大体、世界農業貿易の混乱の犯人は、アメリカ、特に欧州共同体が莫大な補助金をつけて世界市場に輸出を垂れ流ししていた。欧州共同体は昔は穀物の輸入地域でありましたのに、共通農業政策ということで多大の農業支持をして生産力を増強いたしまして、それで余ったものを世界市場に垂れ流すという非常に悪いことをしながら、今度は農業交渉において日本も何かしろということで、日本からいうと非常に心外であると。大体、日本は一貫して食糧輸入を増大しておりまして、世界最大の輸入国でございます。したがって、農業輸出国から見ますと日本は功労者でこそあれ何も悪いことをしていないわけで、その点は累次の交渉で、今度のウルグアイ・ラウンドはもちろんのこと、日本政府としては声を大にして叫んでまいりました。  ただ、どうしても負担の公平といいますか、先ほど申しましたように、だんだん国内政策に立ち入った約束もしろと、日本もほかの国と同じように農業を支持しているじゃないかと。しかも、今言われましたように、工業品の犠牲になったという面がないとは言えないのでございまして、どうしても日本が工業品で世界市場を制覇いたしましたのでそういう日本が農業面で何もしないのは農業輸出国にとっては非常に不公平であるという、いろんな議論が出てきまして、日本も何かをせざるを得ないということで今回のことになったと存じます。  しかし、依然として基本的には日本がそういう国内農業を守っていくということはほかの国も否定しておりません。これは当然のこととして、日本は今後とも食糧安全保障の観点からあるいは環境政策の観点から農業保護していくことは堂々とやっていくべきだと思います。しかし、どうしても余りにも農産物価格が国際価格と乖離するとか、やはり最低限の国際経済との連動と申しますか、合理化と申しますか、国際化と申しますか、そういう規律も受け入れていく必要があると思いますし、そういうために今度のWTOの協定はよい機会であるかと考えます。  ただ、これは私見でございますが、今までは米の問題とか問題がございまして、ややもすれば日本は農業交渉では受け身でやってまいりました。これは私ども交渉者としては非常に残念でございまして、今後はもっと積極的に交渉していいんではないかと存じます。  例えば日本はミカンの輸出とか今度リンゴの輸出も始まったようでございますが、これは農林省がいろいろ御研究になっておられて大変結構なことだと思いますが、今後は価格は高くてもいい品質の物はやっぱり売れるわけでございます。海外で日本料理のブームもございますので、日本料理関係の加工食品なども非常に売れていくと思いますので、今後交渉においていろんな輸出面の相手から譲許をとることも交渉する必要があると思います。  また、アメリカやオーストラリアに対して穀物とか何かの安定供給を約束させる。かつてアメリカが大豆の禁輸を行って日本は非常に困ったことがございますが、こういうことをしないように安定供給の約束をしろという、いろんな交渉でもっと攻勢に出ていいんではないかと思います。  食糧援助につきましては、これは日本はアジア諸国の農業開発をお手伝いする。かんがいとかダムとか発電所とかインフラの整備とか、農業のいろんな技術援助を通じて援助しておりまして、やはりそういうことが主たる道だと思います。余剰食糧の援助というのは、本当に緊急の災害の場合とか何か例外的なものでないかと私は存じます。
  28. 須藤良太郎

    須藤良太郎君 どうもありがとうございました。  次に、黒田参考人にお伺いいたしたいと思います。  米を守ることは日本農業を守る最後のとりでということでみんな頑張ってきたわけでありますけれども、こういう結果になったわけでありますが、一番心配されるのは、今、既にぐんぐん日本の農業は衰退している、そういう中でこの自由化がさらに拍車をかける、こういうことが一番心配されるわけであります。  そういう中で、市長さんは、先ほどお話しありましたように、本当にみんな農家に取り囲まれて頑張っておられるわけでありまして、今回の協定受け入れについて本当の生の声を、先ほども若干聞きましたけれども、簡単でいいですからひとつお聞かせいただきたいと思います。
  29. 黒田昭

    参考人(黒田昭君) まず私ども、自由貿易で国が成り立っているというこの基本を否定するものではないわけでありますけれども、少なくとも米については、基本主食でありますから、これだけはやはり日本の国の中で自給されるべきではないか、両院ともそういう立場に立って決議がされたものと、そういうふうに理解をいたしておりました。それがこのような形になったわけでありますので、まず国の農政に対する大きな不信というのがそこから起きてきた、それが大きく農家の動揺のもとになっておる、こういうような感じがいたします。  それからもう一つは、やはり高度経済成長期に農村の若者がいっぱい出ていきました。その大きな穴が今、農業をやっている人たちの高齢化になっておる。六十歳以上が四〇%にもなろうとしている状況の中、ここで後継者ができて大きく入れかわらなければならない時期に至っております。そういうときにこのような状況になったということが大きく農村の動揺のもとになっている、そのように受けとめております。
  30. 須藤良太郎

    須藤良太郎君 黒田さん、また信田さんからもお話がありましたけれども、とにかく国内万全対策が出されたわけですが、これを見ておりますと、この対策が出る前はマスコミ等も相当同情的に見ていたわけでありますけれども、一度六兆とか七兆という話で出ますと途端に非難を始める、難癖をつける、こういうことで大変遺憾に思っておるわけであります。  そういう中で私は、今度の対策の予算的にも政策的にも相当大きい部分、生産基盤、農業農村整備に予算がついておるわけでありますけれども、これは体質強化のためには絶対に必要だと。特にヨーロッパ等ではもう九割以上基盤整備等は終わっておって、むしろ価格政策に金をかけておるわけですから、日本の場合は五割未満、こういうことからすると相当急がなきゃいかぬわけでありますけれども、そういう面で今回の国内対策、これをどういうふうに受けとめておられるか。殊にいろいろ問題ありますこの農業農村整備、これについてどういう考えを持っておられるか、簡単にお聞かせいただきたいと思います。
  31. 黒田昭

    参考人(黒田昭君) まず農業実態をもう少し理解してほしいと思うんですが、農業というのは全体的にいいますと極めて個別的な経営になっております。そういうようなことから、ややもすれば農業は個人の経営の範疇において考えられる、こういうようなのがもとになっているのではないかと思われるんですね。  私はもう少し、やはり長い間、経営は個々の経営でありますけれども、それが集まって農村全体を守っておる、伝統的な農村文化にいたしましても、また非常に広い地域を守っておるこの国土保全という立場からいいましても、極めて総体として重要な役割を農村、農家は持っておる、そのように思っておるわけであります。そういうような農業に対して経済効率の面から批判をしてもらうというのは甚だ遺憾でありまして、私どももう少し農村の実態というものをマスコミを通じて国民に理解をしてもらう努力をする必要があるんではないか、そのように思っております。  そういうような面と、それから先ほども申し上げましたけれども、農業生産基盤、いかにもこれが何か農業のためじゃなくて建設業のためのものではないかというような一部的な批判もありましたけれども、そうじゃなくて、やはり私はこの基盤整備というのは農業経営を論ずる以前のものだというふうに理解をしているわけであります。条件が整備された上において初めて今論議になっておりますいろいろな経営合理化というのができるわけでありまして、そうなって初めて私どもは国際的に対抗できる農業というものに日本の農業がなり得る、そのように思っておるわけでありまして、そういう面からいうとまだまだ基盤整備がおくれておる、それをまず少なくとも欧米先進国並みにはして、そして平等の立場に立って、農家の皆さん頑張ってくれというのを言わなければならないんではなかろうか、そのように思っております。
  32. 須藤良太郎

    須藤良太郎君 私もやはりしっかりした農地の基盤に立って初めて農家の創意工夫、努力が生かされていわゆる大きい可能性を持った農業に向かえるのじゃないか、こういうふうに思っておるわけであります。  それはそれといたしまして、先ほどもお話しありましたけれども、これから事業が相当拡大する、しかも事業の公益性なり公共性が非常に大きい、こういうことで地方公共団体に負担をお願いする面がますます大きくなっている。そういう面で今、市長さんはどんなふうにいわゆる地方財源の問題を考えておられるか、簡単にお願いいたします。
  33. 黒田昭

    参考人(黒田昭君) 今の農業農村整備事業というのは、農村全体をどのように整備していくか、生産基盤ももちろんでありますけれども生活環境についても同時に行っていく、それが効率的ではないかと先ほど申し上げたわけであります。  今、農村の実情というのは非常に混住化が進んでおります。かつては農業集落は農家率が七〇%、八〇%でありましたので、農業対策というのは地元負担、農家の負担でほぼ貯えたわけでありますけれども、このように混住化が進んでまいりまして、農業生産基盤であってもその利益を不特定多数のものが受益する、道路につきましてもまた農業集落排水等につきましても、まさにこれは農村に住む人全体が利益を受ける、こういうような状況になっております。  そうなりますと、結局、不特定多数から負担金を取るというのはなかなか困難でありますので、それをかわりまして公益的な性格と位置づけて私ども行政がそれを負担していく、地方公共団体が負担をしなければならない、そういうような状況になっておるわけでありまして、農村の生産環境はもちろんでありますけれども生活環境も整えていって、先ほど申し上げました都市と農村が共生できるようなやはり農村の雰囲気づくりというのをしなければならないのではないか、そのように思っております。
  34. 須藤良太郎

    須藤良太郎君 次に、信田参考人にお伺いいたしたいと思います。  先ほど、大変厳しい、その中にもまた意欲的なお話もお伺いしたわけでありますけれども、私は、もう四十年前になりますが、三十年代の前半に六年ほど石狩平野の、あのとき原野も多かったわけでありますけれども、そこで働かせていただいたわけでございます。いずれにしても、北海道というのは雄大といいますか、非常に豊富な土地資源、水資源、こういう中で、しかも戦後、農家の人の努力もありまた国の投資もあって相当基盤もできておると思います。そういうことからいたしますと、どうしても今後最大の食糧基地として北海道にはぜひ頑張っていただきたい、こういうふうに期待をしておるわけであります。  お話しのように、いろいろ問題があるわけですけれども、一つは私は、今度のこの信田先生もおっしゃる農政の最大の転機において重要なのは、やはり農業の位置づけ、再生をどうするんだ、こういうものが余りしっかりしないうちに対策が出されたということは事実だと思っておるわけであります。そういう意味で私は、日本の農業の再生ということを突き詰めていくと、やはりそれは食糧自給力を向上させる、強化する、こういうことに落ちつくんじゃないか、こういうふうに思っておりまして、この点が若干というか相当ぼやけている面があるというふうに思っておるわけであります。この点について信田参考人の御見解をお聞かせいただきたいと思います。
  35. 信田邦雄

    参考人(信田邦雄君) 先生から大変北海道に御期待をいただけるお言葉をいただきましてありがたいと思いますし、あわせて期待というよりも私どもが責任を持つという姿勢も北海道の農民として見せることが極めて私は大事だと思っています。当然そのことからまた行政なり国民の理解を得ていくということであろうというふうに常々感じていますし、私どもそういう意味でいろんな取り組みをさせていただいておるわけであります。  北海道においてこれまで多額の国費を投じまして基盤整備等々行って、今日、皆さんがお通りになりましたら、ああいいところだなと思うような景観も含めた開発等々がなされてきて、私どもはこれは日本の国として一定のすばらしい効果であろうというふうに思っています。  しかし、今日的に国際的な潮流の中で、価格引き下げあるいは経済効率追求とかあらゆる競争原理が入ってきたところによって、完成しないうちに農民が負債等々で北海道の未完成の中での破壊のようなものが起きたために、私どもとして先ほどのような意見を述べなきゃならない状況になっていることをまず御理解をいただきたいと思います。  したがって、そういう観点から申しますと、先生がおっしゃられるように、国が早く新しい時代の農業基本法をつくってそこに国民の理解を得た自給率をきちっと明示しながら専業地帯の方向づけを中長期的に行うとするならば、北海道はそれを担う意思もありますし、それだけの条件がかなりの部分もうでき上がっている、こういうふうに私は思っております。  特に今回、対策の財源として出てきた中に新たに基盤整備等々も重要な役割と金額があるわけでありますが、私どもは若干そこは戸惑っております。ということは、金だけつぎ込めば農業がよくなるというんでなくて、いわゆる農家負担を持つとすればそれは必ず生産者負担の方に置きかえない限り所得が減るわけでありますから、そこら辺の整合性をきちっとして、基盤整備等々をさらにする場合については農家負担がないという条件の中で農家は最大限生産性向上に向けた努力を自分からできるところをきちっとやる、そういう方向づけがなされるならば、非常に効率的な対策として中長期的にそれは成果を持って北海道食糧基地としての完成がなされるんじゃないか、こういうふうに考えております。
  36. 須藤良太郎

    須藤良太郎君 どうもありがとうございました。  終わります。
  37. 菅野久光

    ○菅野久光君 三人の参考人の方におかれましては、短い期間の中の私どもの要請に対しまして本当に貴重な御意見をいただきまして、心から感謝を申し上げたいと思います。  まず初めに、戦後四十六年にわたって世界貿易を律してきたガットすなわち関税及び貿易に関する一般協定が、WTOすなわち世界貿易機関を設立するマラケシュ協定に移行することになりました。このことによって特に農業分野においては大きな影響を受けることが予測されますので、政府国内農業を守るために総理を長とする緊急農業農村対策本部を設置して対策に当たってきております。  このほど、九五年から二〇〇〇年までの六年間でウルグアイ・ラウンド農業合意関連対策として総事業費六兆百億円、さらに地方単独施策として一兆二千億円、計七兆二千百億円を決定いたしました。事業の内容等についてはもう御存じのことと思いますが、このことについての率直な感想なり御意見をまずお三人の方々から順次お聞かせいただきたい、このように思います。
  38. 黒田昭

    参考人(黒田昭君) このたびの対策につきまして六兆百億、それに単独施策といたしまして一兆二千億、これは私は非常に莫大な予算である、そのようにまず思っております。こういうことが直ちに閣議で決定をされて今審議されておるということにつきまして、非常にありがたく感謝を申し上げておるところであります。これだけの対策を講じていただくならば、私はこれにこたえるべく農村としては頑張らなければならない、そのように思っております。  具体的な方策等につきましては、先ほど来述べてまいりましたが、御質問にお答えしたいと思います。
  39. 溝口道郎

    参考人(溝口道郎君) 貿易交渉の約束に対して国内に対するインパクトを緩和する措置をとるというのは各国の当然の権利でございまして、今回決まりました対策は大変結構なことだと思います。
  40. 信田邦雄

    参考人(信田邦雄君) 先生がおっしゃられるように、ガットが今度はWTOになっていくわけでありますが、まずここの辺で私は若干、もう既に終わったことですけれども申し上げたいんですけれども、元来、貿易関税によって世界の先進国が発展していこうという中に食糧が入っていくということ、これ自体が世界の人類として本当にどうなのか、ここのところを私は若干いまだに不満に思っております。  しかし、先進国は食糧を含めて世界全体を担っていくという役割の中から当然こういう協議がなされ合意がなされたという中で、やはりそれはそれなりに世界の先進国が自国として負うべき責任をそれぞれ自分の国に合ったようにどうするかということは、世界の約束として自国でやれということであるというふうに私は考えるときに、日本がこれまでいわゆるガットで言われた国内支持などの削減に先取りをしていたなどが判明したときに、やはりそれを取り返すという意味じゃございませんけれども、そういうことを反省しながら国内対策に万全な対策をするということは当然である。六兆百億がなされることはむしろ国民の合意でなければならないというふうに考えると、あわせて、先ほど申し上げましたように、この金額についてはぜひ実効ある使い方、国民から批判されないような本当の意味での対策になることを望んで、私はこの対策をされた関係者に敬意を表したいと思っております。  以上でございます。
  41. 菅野久光

    ○菅野久光君 次に、溝口参考人にひとつお伺いをいたしたいと思います。  アメリカでは、WTO協定条約として議会で批准するのではなくて、国内法である実施法の成立てもって大統領が協定実施する義務あるいは権限が生じるというふうにも聞いておりますし、また米国議会の実施法案はWTO協定より優位にあるとの意見もあるなど、法案の内容だとかあるいは協定の解釈や実施に関する国内法規制力についても私どもにとってはちょっと不明な点があるわけです。  さらに今度は、米国議会でWTO協定に対して異論や条件づきの必要性などの意見があったり、今度の選挙によって多数を占めた共和党議員からもさまざまな見解が出されているようでありますけれども、最近のアメリカの議会の動きあるいは異論や意見の内容と動機などについて御説明をいただければ大変ありがたいと思います。
  42. 溝口道郎

    参考人(溝口道郎君) 私も余り法律的なことに必ずしも明らかでございませんけれども、聞いておりますことによりますと、一つは、確かに先生の御指摘のとおり、条約としてではなくて国内法として国会に今回の協定を提出しておる。  これは何か一つにはファストトラック授権といいますか、前に議会で上下両院でファストトラックを行政府に認めるという授権がされておりますので、そのこともありますので手続を簡素化して、国内法というか、行政取り決め並みの何かエグゼクティブ・アドミニストレーティブ・アグリーメントとかいって、何か議会が授権した行政取り決めということでやや簡略な扱いができるようになっておると聞いております。これは今までケネディ・ラウンドにしても東京ラウンドにしてもその合意はすべてアメリカはそういう同じような形で議会にかけておるようでございます。  それから国内法、確かにアメリカはそういうややほかの国と違った取り扱いをしているようでございますが、今回は例えばアンチダンピングでサンセットクローズ等がございまして、五年でしたか、ダンピング防止税をかけてから五年の後には必ずやめなくちゃいかぬということが今度のWTOの一連の合意で決まりましたが、アメリカの国内法では違っておりますので、そういう今までの法律改正して五年にするというのが今度の議会に提出している法案に出ているそうでございます。そういうふうに今までのアメリカの国内法で違っているのは全部修正するということが具体的に明記されておりますので、実際上は全く差し支え、不便が起こらないというふうに聞いております。  それから共和党の中で反対があるんじゃないかという御指摘でございますが、確かにジェシー・ヘルムズ上院議員のように、ヘルムズ議員はこの表決ではどのように出てくるかわかりませんが、かなり激しい方もおるようでございますが、しかしドールさんなどは一定の条件、国内手当てが認められれば支持するとか、今度下院議長になるらしいんですがギングリッチ下院議員もこれを支持すると言っているようでございます。したがいまして、共和党の大勢はやはりこの法案を支持するのではないかと推測いたしております。  いずれにしましても、今のところは議会で年内に表決にかけようというクリントン政権は動きを示しておりまして、年内であれば旧議会で民主党がまだ多数の議会でございます。民主党の多数の方が大丈夫なのか新しい議会の方が大丈夫なのか、そこの点はまた見解の分かれるところだと存じます。
  43. 菅野久光

    ○菅野久光君 引き続いて溝口参考人にお伺いいたしますが、WTO協定世界貿易の自由化ということで、工業製品だけでなく農産物、サービス、知的所有権なども自由化するという原則に立っております。これらはいずれも先進国に有利な側面が強いというふうに思われますが、途上国に対してはどのような配慮がなされているのか。南北問題の解決あるいは南北格差の解消が世界的歴史的に課題となっておりますが、WTO協定はそれにどのように寄与することができるとお考えか、承りたいと思います。
  44. 溝口道郎

    参考人(溝口道郎君) いろんな約束に先進国、先進国とは書いてございませんが、一般、それから発展途上国、それから後発途上国という大体三つのカテゴリーになっていまして、例えばいろんな義務実施が、一つ一つ私は全部あれですが、各協定に共通な事項はその協定によって生ずる義務を、例えば先進国は工業品関税は五年間でやる、農産品の約束は六年間でやるという場合、発展途上国は十年とか後発途上国は十五年とかいうように実施期間が長くなっております。  それから大体今、ガットというのはIMFなんかと違いまして一国一票という考え方でございますので、大きな国も小さな国も少なくとも形式的には平等になっておりますので何か決定するときは、今、ガット百数十カ国の大部分は発展途上国でございまして、発展途上国の頭越しに何かを決めるというのはほとんど不可能な状態になっております。むしろアメリカあたりに言わすと、発展途上国といっても韓国とかシンガポールはもう先進国に近いのではないか、そういう国を途上国ということで義務免除をするのはおかしいという逆の不満もあるぐらいなんですけれども、したがいましてそういう形式的に違う待遇をしております。  これはなお不十分である、サービスなんかでは門戸開放するのは途上国にとって非常に不利であるということで、これも経過期間が長くなっておりますし約束も少し薄くなっておりますが、それでも途上国にとっては不利であるという声も確かにございます。  しかし同時に、全体とすれば世界貿易発展し投資がふえれば途上国も経済発展にとってプラスである。その証拠には、最近は先進国よりもアジアを中心とした諸国はむしろ成長率が高いというような声から、南米やアフリカまでも自由貿易はいい点もあるという認識が、昔と違ってそういう新たな見方が出てきているのは非常に結構だと思います。したがいまして、発展途上国の多くは交渉に参加いたしましたし、そのほとんどはこの協定を受諾するのではないかと考えます。
  45. 菅野久光

    ○菅野久光君 次に、信田参考人にお伺いをいたしたいと思います。  時間が短いために、いろいろなことをもっとおっしゃられたかったのではないかなというふうに推測をいたしますが、特に声を大にしておっしゃられた中に関税定率法の問題がございます。これは現行関税率を内外価格差に相当する水準として維持するために関税相当制度を導入するということになっているわけですが、内外価格差というものが円高によって為替の変動があるというようなことなどもありますし、また輸出国のダンピングの問題があったりあるいは相場が低迷するというようなことで実質的にこのことが効力を発しないのではないかというような御心配があるのではないかというふうに思うんですが、その辺のところをもうちょっとお話しいただければと、このように思います。
  46. 信田邦雄

    参考人(信田邦雄君) 限られた時間でございまして、私ども法律で定められたものとこれから影響を受けるであろうということまですべて言い尽くせなくて先生に御理解をいただけなかったのかなと思いますし、当然私も深く言っていませんのでそうであったのではないかと。  御指摘いただきましたように、農家の現場では、今回ウルグアイ・ラウンドで合意された関税に関するものについてはさまざまありますけれども、それを分析して自分の経営にどうなるかということを即判断しかねる非常に難しい状況に今、追い込まれています。  しかし、政府等々のそれぞれの努力で今日の諸対策はなされているようでありますが、どうもその諸対策と別な方向でこの関税化の影響いわゆる自由化の影響も既に出てきているのではないか、あるいはその対策が業界を含めていろんなことで動いてしまっているのではないか。この対策をしてもらわないと困るということを私どもとしてはぜひ諸先生方にお聞きをいただいて、これからお力をおかしいただきたいと思っておるわけであります。  そういう中で、関税化になったんだからそれですべて大丈夫だ、関税率調整すれば輸入も入ってこないし大丈夫なんだと思っておるとこれは大きな間違いでありまして、私どもの考えとしては、例えばアメリカが合意になった輸出補助金の関係も大変高い率のときの基準年度を設定して合意になっている。特にECなどとの合意によって今回のガットになっている。そうしますと、今出している輸出補助金は低輸出補助金だと。だとすれば、もし日本に売るとするならばさらに輸出補助金をつけてもまだそれはガットに違反しないという状況にある。こうなれば実質的に関税をかけてもそれ以上に安く入ってしまうわけですから、私どもとしてはガット合意後のダンピング輸出とみなさざるを得ない。そういうこともまずあるということを私どもはわかりまして、大変恐れております。  さらに今日の円高を見ますと、関税率の引き下げ以上にどんどん円高になりますと実質的に輸入価格はどんどん下がっていってしまう。こういうことになっていますし、あるいはまた日本の農産物にかかわる業界が、実は開発援助、技術援助等々をして、野菜を含めた農業の関連産業が海外に進出しています。そこに援助をしましてコストの部分をその日本の企業が持つとすれば、これはコストは安いわけですから出てくるものは安くでてきますから、いわゆる開発輸入としてどんどん日本に戻ってくる。こうしますと、量は少ないですけれども、それが大きな影響を与えてくることは既にこれは現実として政府の方では御承知になっていると思いますけれども、多くの問題が出ています。特に野菜などは、私も野菜をたくさんつくっていますけれども、ゴボウなどはもう中国にあれしてだめだと、将来ゴボウをつくってもだめだよと。  例えば一品目ずつそういう言い方になってきている開発輸入の問題もありますし、世界の輸出業者が、大きなメジャーがあるんでしょうけれども、彼らが故意に世界価格操作をしたならば、これはもう既に世界の輸出価格が下がった中に関税をかけても、それは大幅な国内との価格差ができるわけでありますから、これも関税保護されるなどということは夢物語になると、こんなようなことを私ども多く心配しておるために、国内的な対策が極めて重要であるということを先ほど申し上げました。  したがって、私どもとしては、そういう国際的なことを先生方もあるいは行政も一気に世界の中で動かすことは極めて不可能であろうと思いますので、国内対策を関税に伴ったものをやると同時に、日本の農業を別個に考えて日本国内としていかに重要であるかということを基点に置いた対策を立てていくべきだ。それが私どもが言っている、総合的な新たな所得補償で農業、地方、いわゆる一次産業を守っていくということを提案したところでございます。  今、私どもが申し上げたようなことで、ガットで決まった六年間で影響がないというその前提で物を考えるんでなくて別な視点で考えていただくならば、新たな所得補償がいかに大事になってくるかということを御理解いただいて、ぜひ先生方のお力をおかしいただきたいものだと、こういうふうに考えているところでございます。
  47. 菅野久光

    ○菅野久光君 今、最後の方で所得補償の問題がございましたが、これは黒田参考人と信田参考人にもお伺いいたしたいと思います。  いよいよ自由化ということで価格の問題が農家の方々にとっては大変重要な問題になってくるわけですが、農家の所得補償というものがきちっとなされなければ、担い手が集まったりあるいは後継者が後継者として農業をやるという意欲がわいてこないのではないか。  どうすることが農家の所得を補償することになるかということで、農産物価格をそれに見合うだけ上げることが一番いいわけですが、現状としてはそれもなかなか難しいということを含めて私どももこのことについては非常に頭が痛いわけでございますが、これからの価格政策の問題についてはこうあるべきではないかというようなことの御意見をいただければ大変ありがたいというふうに思います。
  48. 黒田昭

    参考人(黒田昭君) 最近、宮崎県内で約千戸の農家に無作為にアンケ一ト調査がされました。九百八十五の回答を得たところでありますが、この中で、自由化に対する行政への期待をどこに持つかという、複数の回答でありますが、それで一番多かったのは農産物価格安定対策を充実してほしいというのが二六%。二番目が国土保全、過疎地域を守っているということを認めていただいて財政支援をしてほしい、これが一六%。それから規模拡大には低利融資が欲しい、これが一四%。それから生産基盤の負担軽減をしてほしい、これが一〇%。まだずっとありますけれども、一〇%以上の希望のあったものであります。こういうようなところから見ますと、やはり農産物価格安定対策というのは極めて重要なものではないか、そのように思います。  そのためにどうするのかということですが、一方ではやはり土地基盤整備等を積極的にやっていくことによってコストを削減していくということ、そして条件がよくなりますので高品質の作物を導入することによって国際競争力をつけていくというようなやり方、これも選択の一つの道であろうと思っておるんです。  それからもう一つは、先ほどの信田参考人のお話のように、やはり所得補償的なものについてはいつでもついて回るわけでありますから、なかなかこれは現実問題としては難しい。私は、その方法として一つは間接的な補償というのがあるんでないのかと。  一つを申し上げますと農村地域における国民健康保険でありますが、非常に所得が低いところ、しかも高齢化率の高いところにおいては、一般の国民健康保険の制度ではなくてもう少し過疎地域に対する対策があっていいんじゃないのか。それが間接的には保険料を安くすることによって補償することができる。また、山間地域における子弟の教育については、高校のときから既に大学に出すぐらいの学費を要するわけですね。ですからこの地域に住んでいる方について特別な奨学金、先ほど言われたように、返還なしの奨学金であればなおいいわけでありますけれども、その奨学金を与えることによって教育をする、それがいわゆる所得を補償するという形になるという間接的な所得の補償方式があるのではないかということがあります。  それからもう一つは、先ほど来話も出ておりますが、農業の多面的な価値、食糧の安全保障というような意味合いから国民の合意を得て、そして国内農業保護路線というものを構築していく、こういうような方法があるんではなかろうか。全体的にはこのようなことが主流になっていくべきではなかろうか、そのように思っております。
  49. 信田邦雄

    参考人(信田邦雄君) 先生の御質問でまず申し上げたいんですが、食糧をまず消費者としてどう考えるのか、もう一つは農業経営ですね、農家を国民としてどうするのか、ここに一回立ち返ってお考えをいただく必要があるのではないかと思います。  そのうち食糧をどうするかということについては、消費者はやはりいろいろな関心を持たれているんではないか。安全で安定的に、しかもできれば安い方がいい、中身もわかった方がいいと大変欲張りでございまして、私はいつも消費者に言っているんですが、そんなものは北海道農業なら手品師でない限りできない、そういうふうにいつも申し上げているんですが、しかしそれは間違いでありまして、やはり消費者のニーズにこたえていく必要があろうと思います。  安全であることはもちろんでありますし、安定的に、去年のように米のパニックが起きるようなことをしてはならないし、そうかといって農家の保所得を確保するためにべらぼうに高くてもこれは不満が残る。こういう矛盾の中でどういうふうにして食糧消費者確保していくのか、農家のためでなくて消費者のためにどうなのかということをきちっと踏まえていかなければならないんではないかと思います。  そういうときに、やはり食糧生産する人の立場を消費者はどういうふうに考えるのか、ここであろうと思うんですね。いや、もう消費者は、生産者はどうでもいいんだ、機械から出てきてもスーパーから出てきてもおれは食べればいいんだというのであれば話は易しい話でありまして、そうではないんではないかなと私は常日ごろ思っていますし、国民の特に良識ある賢い消費者の皆さんは非常に心配されているように思っています。  したがって、価格政策と食糧、これは要するに消費者価格だけで物を判断した場合、農家とはイコールにならないのではないかと思っています。消費者の皆さんは価格は安い方がいいわけでありますから、生産者は安ければ所得が得られないわけですから、この矛盾点の真ん中にだれが入るかとなれば、やはり僕は議会と行政、政府がそこに入ってしかるべきである。そのことが国民の安定的、安心した食糧確保するところにつながっていくんではないか。それが先ほど申し上げましたような価格政策であろうと思っています。  一方、いわゆる農家という一つの事業体といいますか、私は事業体といっても月給取りの皆さんと同じかなと思っていますけれども、農家という経営体をどうするのかということに立ち返ったならば、限りなく価格で補償していった場合、やはりたくさん面積をつくったりたくさんとった者が優雅になっていきますよね。そのことの考え方だけでは地域での格差ができまして、地域での農家の村づくりに大変支障が起きる。だとすれば、農家という個々の場合は平等に、黒田さんも若干おっしゃられたように、私は総合的に農家という一つの経営体をきちっとしたものにしていく。  例えば農業者年金も国民年金並みにちゃんとしていく、いわゆる年金制度の問題。健康保険も高負担になっていまして、今、重圧を負っていますが、そういう問題についても国民的な平等性を持たす、あるいは優位性を持たせていくとか、農業災害法に基づいて補償されておりますが、これもガットで認められたものでありますけれども、こういう負担も極めて高いわけであります。そういうものについては軽減をしておいて、一方、価格については余り消費者に刺激を与えないような方向で理解を求めて農家経営にイコールにさせていく、こういうことが必要である。  それを私どもとしてはデカップリングといいまして、デカップリングといったらヨーロッパの方にみんな視点がいきますけれども、既に日本はデカップリングをたくさんやっているわけですね。水田営農活性化対策、今はそうなんですが、ああいう補助金とか昔の奨励金等々みんなこれはデカップリングなわけです。ことし乳価で決めた関連対策の二円、三円もみんなデカップリングなわけですね。  そういう本当の意味で農家を守っていくための国民の理解というのは既にたくさんやっているわけですから、やはり消費者に大きく刺激を与えないで日本の中で食糧生産していくために、消費者がやはり必要だという理解を得るための、今、黒田さんがおっしゃられたように、私も直接的よりも間接的にやった方が日本的に合うんではないか。  そういう意味では、日本型のこの所得補償政策、私どもは先ほど言った年金、健康保険、その他農村を取り巻く集落排水も含めた環境整備ですね、そういったメニューはたくさんあります。そういうものも含めて農民に間接的に負担をしなくてもいくようにしておいて消費者に理解される価格であったらいい。これが私ども総合的な所得補一償ということで今、関連対策等々でも入れていただいていますけれども、求めているものでございますので、先生のおっしゃられるように、価格補償政策というものは限りがあるのかなと、こういうふうに思っています。
  50. 菅野久光

    ○菅野久光君 最後に、信田参考人にお伺いいたします。  昨年の凶作で米を輸入したんですが、輸入米約九十八万トンばかりが残っている。ばかりと言ったらちょっと語弊がありますけれども、九十八万トンも残っているわけですね。こういった中で、来年度の稲作の問題でいろいろ御心配な面があろうというふうに思いますけれども、こういったような現実の問題を踏まえてどのように要望されるかお話をお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
  51. 信田邦雄

    参考人(信田邦雄君) 緊急輸入米について私どもの不満を申し上げれば長くなりますので、そこら辺は省きますけれども、WTOとこの緊急輸入米との関係については非常に間接的になるんではないかと思います。  実は、緊急輸入米については国民の要望もございまして、その行為については私どもとしてはやむを得なかったというふうに思います。その背景につきましてはきょうは申し上げませんけれども、いずれにいたしましても、米が余った、輸入した米が余ったと。あわせて農家の皆さんも減反緩和などをして面積を拡大して米をつくったところにさらに天候が、瑞穂の国でありますから足りなかったらうんととれた方がいいよということで、温かい天候になりまして多くとれた。そういう中で、緊急輸入米が四割近くも余るという事態になりました。  私どもは、その推移とそのことについては置いておきまして、これからウルグアイ・ラウンド農業合意後、二〇〇〇年に向けた新食糧法やあるいはまた農業の大幅な見直しをかけようとしているやさきに、百万トン近い米というものは物すごく重圧であります。背中に背負って農業政策の改革やあるいはまた国民の理解やいろんなものを求めていくとすれば極めて難しい問題と、あるいは将来に向けた対策を立てるときにその背負っている重荷のおかげで間違った方向を選択せざるを得ないことになりはしないかと、こういうふうに考えております。  したがいまして、私どもは今、議論される場合、この百万トン近い緊急輸入米についてはないものとする、すなわち緊急的に輸入したんですから緊急にこれは処分をしていただいて、それはないという認識の中で日本の農業食糧をどうしていくかということの議論を先生方にしていただきたいと思います。したがって、これは単年度処理で早く処分をしていただきたい。  私どもとしては、これは海外に輸出してもいろいろとぶつかりますし、あるいはまた完全に投げてしまえと言ったら消費者の皆さんにしかられますし、いろんな問題があることは承知しています。できれば飼料にしたり、一番好ましいのは、できれば理解を得て有機質肥料などにして新たな、安全性の高い食糧生産する方向に年次ごとに向けていくなどいろいろ手法を考えて処理をしていただいた後、今、新聞紙上で議論されているような生産調整等々新たな食糧法に基づく米のシステムについての議論を先生方にしていただかなければならない、こういうふうに考えております。
  52. 菅野久光

    ○菅野久光君 どうもありがとうございました。
  53. 北澤俊美

    ○北澤俊美君 私は、新緑風会・新生党の北澤でございますが、お三方の参考人には突然のお話にもかかわりませず大変有益な御陳述をいただきまして、本当に心から感謝を申し上げる次第であります。  最初に、溝口参考人にお聞きをしたいんですが、私も参考人がお書きになったNHKの本をにわか勉強で読まさせていただきまして、全部読み切ってはおりませんが、冒頭にもこれは大朗報だというふうにお書きになって、長年かかわってきたお立場の方としての気持ちが非常によくあらわれておるように思います。  そこで、先ほど来もお話がありますように、アメリカの議会の情勢が少しおかしいというようなお話の中で日本の対応がそれに付随してどうかと、こうなるわけでありますが、本来ウルグアイ・ラウンドというのは日本側からしかけた話でありまして、それにレーガンが乗って中曽根さんとスタートを切ったという経過がある中で、あわせて一番の利益を得るのは我が国であるという世界的な視点があるわけであります。そういう中で、今日ただいまのような状況の中で、日本が本質的にとるべき態度というのはどんなものなのかなと、こういうことでお聞きをしたいと思うんですが、どうでございますか。
  54. 溝口道郎

    参考人(溝口道郎君) 御指摘のとおり、日本は非常に貿易大国でありますし、非常に大きな利益を受けるということが世界的な認識になっております。それから交渉の経緯からいいましても日本が言い出しっぺの一人であるということもありますので、やはりぜひともこの委員会あるいは参議院全体でこのWTO関連協定を御承認いただいて、一日も早くこれを批准する体制を整えていただくことが大切だと思います。
  55. 北澤俊美

    ○北澤俊美君 今はアメリカのことを盛んに言っておるわけでありますが、ちょっと前へさかのぼりますと、むしろ外国から見たときの日本の政治情勢というのはやはり気になったと思うんですよ。細川内閣、羽田内閣ときたときに野党であられた自民党さん、あるいはまた途中から野党になられた社会党さんからはかなりきつい御意見がありました。あれを外国から見ておったら、これは日本の議会は通らぬじゃないかと。私ども与党の立場におりましてこれは厳しいなと、こう思ったんです。ところが今度、政権がかわりまして今こういう状況で進んでおるわけであります。  国の基本にかかわるような問題というのは、今のような政治状況の中で、国民の審判を受ける受けないということの是非は別にしまして、重い荷物はお互いに順番に担いでみたらこれはなかなか中がわかっていいのかなと、こういうふうに私は今、思っておるんですよ。そういう意味で、この法案の成立には全力を尽くす、その前提として私どもは十分な審議をしなきゃいかぬと、こう思っておるわけであります。  その中で、ややもするとこの法案が農業対策だけに非常に国民の関心を寄せ過ぎておるという部分があるんですけれども、血を流す部分とすれば、もう言い古されておりますけれども、非鉄金属部門だとか繊維分野というのは非常に大きな打撃を受ける。これは仮定で言えば、その業にある中小企業なんかはもう廃業の道をたどらざるを得ない。また小売業なんかにつきましても同じことでありまして、私どものところにも何かいい商売、商売がえをしたいが何かないかと、こういうようなことを盛んに相談される。  そういうことにおいて、溝口参考人農業問題とそういう別の分野で非常に苦境に立たされている人たちとの状況を比べ見たときの感想といいますか、そういったものをお聞かせいただければなと思うんですが。
  56. 溝口道郎

    参考人(溝口道郎君) 御指摘のとおり、例えば繊維産業などがアジアの途上国の追い上げを受けて非常に今、御苦労されていると思います。今回の協定で、いわば今まで農業と繊維が一種の聖域と申しますか、ガットの中で大きな穴があいておりましたけれども、今度の合意で両方ともガットの規律を受ける。  繊維につきましては、主にアメリカあるいはヨーロッパのわがままで、これは日本が長年アメリカと綿製品取り決めとかも化合繊の取り決めで長い苦しい交渉をしまして、当時の日本の繊維業界は大変競争力もありましたので、規制反対、損害なきところは規制なしということで大いに気勢が上がったわけでございます。その後だんだん追い上げを受けて、非常に輸入もふえて業界として輸入制限をすべしという声があったとも聞いておりますけれども、そこはやはり日本は胸を張っていいと思うんですけれども、欧米の中ではただ一つそういう繊維の輸入制限をしなかった。一、二自主規制をパキスタンとか韓国にしていただいている例があるようでございますが、原則的に輸入制限をしなかったということは日本の業界の非常な自制心と御努力によることだと思って世界にこれは自慢していいことだと思います。  今度の協定でさすがに発展途上国から非常に文句が出まして、今後は十年ですか、だんだん今の多角的繊維取り決めを廃止する方向で決めると、それをしなければインドなんかは合意しないというふうに非常に頑張りましたので、アメリカやヨーロッパは泣く泣く今後繊維の自由化をしていくことを約束したわけでございます。これは日本にとりましては今は制限がないのですぐどうということはないんですけれども、将来規制をしたいというときにこういう状況になったことは非常に難しい問題を提起すると思います。ただ、そういう繊維の取り決めがなくなりましても、ガット十九条ですとか正当の理由が、あるいはダンピング行動がございますので、ただいまは例えばパキスタンの綿糸がダンピングを起こしているんではないかということで政府は調査をしております。    〔委員長退席、理事稲村稔夫君着席〕  そういうことで、ガット上認められる正当の防衛手段を用いることは今後も可能でございますので、繊維業界とされましても輸入品に対する体力をつけるように努力していただくと同時に、一方、正当な理由があるときはガットを利用していただく、あるいはWTOを利用していただくということで結構じゃないかと思います。
  57. 北澤俊美

    ○北澤俊美君 時間に制限がありますので、時間が残りましたらまたAPECの方に向けてもちょっとお聞かせをいただきたいと思います。  その前に信田参考人にお聞きをしたいんですが、デカップリングについてお話をされましたのでその辺をお聞きしようと思ったら、先ほどの質問の中で御答弁されて考え方がよくわかりました。  そこで、今度の農業対策について、負債対策について触れられたわけでありますけれども、私は負債対策については一つの考えがありまして、私も長野県の農協団体から強い御支援をいただいて国政に来たわけでありますが、それだけに身近な立場として申し上げたいと思うんです。  農協が農家に新しい事業を勧めていくときの実態は私から詳しく申し上げるまでもないわけでありますが、その結果として経営が行き詰まって元本どころか利子さえも払いがたいという状況があるわけで、これを何とかしてやるということは国家が農業に対する思い入れとして一つの正当性はあると思うんですけれども、それを推進した経済連とか信連も含めた系統農協のところを素通りしてやるということについては、先ほど来、黒田参考人も言われておりましたけれども、国民の批判を受けるところがそこいらにあると思うんです。やっぱりかかわった者たちみんなが傷を負わなかったら国民の理解は得られないというふうに思うんです。このことは私も農水省にも申し上げておるんですけれども、その辺のことについてのお考えはどんなふうに考えておられますか。
  58. 信田邦雄

    参考人(信田邦雄君) 負債対策につきましては御理解をいただいているようでありますが、特に北海道につきましては府県の皆さんよりも規模を急激にここ二、三十年の中に拡大したものが多いため、北澤先生のところよりもむしろ私どものところの方が深刻でございます。  しかし、その事業や携わった経過をたどってみますと、御指摘のようなことが非常に反省されているところでございます。特に私は農協の役員もしていましたのでわかるわけですけれども、生産現場の立場よりも事業を推進することに傾斜をしたやり方が今日までありましたので、このことについてはみずから、みずからといいますか、系統団体やかかわった行政も含めて、そして私ども事業参加をした農民も含めて、総合的にやっぱり反省した上での今後の取り組みが極めて重要だと思います。  そんな中から発生した負債でございまして、それではそういうことなんだからその負債については云々ということも若干あろうと思いますけれども、これまでの国の行政の農業に対する推進のことをとやかく言っていても私はどうかなと。大蔵さんに行ってよく言われますけれども、そうではなくて厳しい新たな農業の方向に向かっためにどうするかの方をより選択していかないと、これからのものすら捨ててしまうことになるんではないか、こういうふうに考えておりまして、今申されたように、これまでの反省をきちっとして二度とそういう国民から批判されるようなことはしないという中で負債対策はぜひしていかなきゃならない。  私も三十六町も経営面積を持っていまして、家内と結婚して二十何年、三十年近い中で急激にふやしたため、土地購入とあわせてどうなるかといいますと、三十馬力のトラクターを五十馬力にしなきゃならない、五十馬力のトラクターを百馬力にしなきゃならない。そうしたら皆さんは前のやつを使えるんでないかと思うでしょうが、大間違いであります。息子などはクーラーつきぐらいのトラクターでないと乗らないわけでありますから、これはもう前のが全部償還が終わっていないのに新たに投資するわけです。そして借金を払ええると思ったら価格は下がるし、所得率はそういうことですから極めて落ちますよね。面積がふえたからって上がらないんですよ。そんなことで苦しくなっています。  したがって、意欲はあるにしろ負債の重圧でやめようかということを選択させないために、後ろ向きでなく前向きの方向に向けた新たな対策、しかし二度と今、先生のおっしゃられるようなことを繰り返さない関係者の決意も踏まえて新たな政策が必要であろう、こういうふうに考えております。
  59. 北澤俊美

    ○北澤俊美君 次に、黒田参考人にお聞きをしたいと思います。  参考人は、お隣におります上杉先生からよくお聞きをしますと、大変に耕地整備、基盤整備を先進的におやりになっておられると。先ほど来お話を聞いておりましてもその自負が言葉の端々にうかがわれるわけであります。  私は、今度六兆百億の対策費を予定しておるわけでありますけれども、今度これだけの国家財源を拠出していくときに相当スタートの段階できちんとした考えを持たなければならぬ、こう思っているんです。それは今日までの農政が猫の目農政だとか言われながら、どうしても国民の理解をなかなか得られなかった。これは社会の状況の流れの中で都市近郊農業がほとんど農家としての実体をなさない中で、それを全部平等にしてきた。農家平等主義というものがはびこってしまった。僕はここに大きな原因があるというふうに思うんです。  もう私からくどくど申しませんが、大変な努力をして耕地整備をされた都市近郊の農地が公共事業の代替地に優先されたり、今日の社会情勢の中で福祉施設あるいはまた地方都市が箱物行政をする中で用地を求めていくと全部これが農地なんですね。大半はその投資したものの返還が中途のところで農地から違うものに変わっていくという現状、こういうところに国家の貴重な財源がどんどん入っている。しかも、それがその目的を達成する半分よりももっと前、三分の一ぐらいの期間のところでやられるというところに国民の理解が得られない農政があったというふうに思うんですね。  そこで、長年苦労された黒田参考人が、今度六兆百億というものが拠出されていくときにその歯どめといいますか、都市近郊、先ほど中山間地のことも言われましたが、これはちょっと置きますけれども、都市近郊農地について農業投資をどういうふうにやっていったらいいかというようなお考えがありましたらお聞かせいただきたいと思うんです。
  60. 黒田昭

    参考人(黒田昭君) 私ども中山間地域の整備を進めておりますので、いわゆる都市近郊の整備について確かにそういうような競合がある、これをうまく制度化しようというやり方に緑濃住の計画というのがありまして、住宅もそういう公共用地等が必要であるならそれも事業の中に入れて、そして農業部分とそういう部分を一体的に整備しようではないか、こういうようなやり方で進めた時期もあるわけでありますけれども、なかなか土地の価格の問題等があります。農業側に区分をされたところは土地はなかなか上がらない、都市の方に決められたところは直ちに値段が上がる、こういうようなことがありまして、計画は立てましたけれども、なかなか事業の実行に移らなかった。  それで、一般的な基盤整備の中で今、都市近郊においてもやられているわけでありまして、おっしゃるようにありますけれども、一つの手続としては、国家投資については大概の場合に補助金返還というのはないことになっていますが、土地改良区その他自己負担の分については決済金という形で処理をして、そしてそれはやむを得ず他の目的に利用しなければならないときには整理をして、それがそうなることによってほかの人に負担がしわ寄せにならないような形での処理はしているわけであります。  そういう面からいいますと、土地改良事業が公共用施設の造成に貢献をしているというような見方もできないことではないんじゃないのか、このように思っております。    〔理事稲村稔夫君退席、委員長着席〕
  61. 北澤俊美

    ○北澤俊美君 再び溝口参考人にお聞きしたいんですが、このWTO機構がきちんとされた後、来年また大阪でAPECが開かれるわけであります。このAPECの方では、我々がウルグアイ・ラウンドの中でアメリカに対して持っておったような感情を逆にAPECの諸国が江本に対して持つんではないかという懸念があるわけでありますけれども、私はそのときに我が国が臨むべき立場、どういう態度で臨むかということは大変重要なことだというふうに思っておるんです。  最近ところどころで、福田ドクトリンが大変に生き生きとして今よみがえってきているんではないかというようなことを言われるんですけれども、これは三つの条件をお出しになっておりまして、特に最後のところで平等に同じ立場でということを強調されておりますけれども、この辺について、もう時間がございませんから簡単に一言御感想をお聞かせいただきたいと思うんです。
  62. 溝口道郎

    参考人(溝口道郎君) APECでは、表決をいたしませんでコンセンサスで事を決めるということになっております。そういう点では福田ドクトリンの平等というのが貫かれていると思います。  日本といたしましては、例えばオーストラリアとかアメリカとかややもすると途上国を強引に引っ張っていこうという傾向がございますけれども、日本はやはりいつもそうなんですが、ちょうど中間にありまして、アジア諸国、特にASEANのマレーシアとかインドネシアとか非常に東洋的と申しますか、非常に慎重な国もありますので、そこを全体の意見がまとまるようにということでコンセンサスづくりをいつも第一にするという方針でやっている。私も多少関係したことがございますが、そういうふうにやっていると承知しております。
  63. 北澤俊美

    ○北澤俊美君 どうもありがとうございました。
  64. 立木洋

    ○立木洋君 早速ですが、時間が限られているものですから質問させていただきますが、最初に溝口参考人にお願いいたしたいと思うんです。  今回のマラケシュ協定について、これで私は本当に国際的な貿易秩序のあり方が正しく進むんだろうかという大きな懸念を持っているんです。私、先般の東京ラウンドのときもこの国会で審議をさせていただいたんですけれども、大体それぞれの国の発展段階が違うんですね。それからまた、それぞれの国における産業の分野の構成にしろその強弱にしろ、それぞれ異なっているわけですね。そういう中ではやはり貿易の自由を広げていくということはもちろん賛成なんですけれども、しかし一方では、それぞれの国の主権を十分に尊重するということを兼ね合わせて進められないと、本当の意味での国際的な貿易の正しい秩序のあり方、公正公平なあり方ということは前進が望まれないのではないのかというふうに考えているわけです。  現行のガットの場合も、参考人十分御承知のように、結局それぞれの国において国民の生活やあるいは国の経済にとって極めて不利益にある問題に関してはそれを留保するという権利がありました。しかし今回の場合には、マラケシュ協定では一括方式なんですね。それから前回の場合では、結局ガットに加入する以前にあった国内法が優先して、ですから祖父条項と言われる条項がありまして、その問題についても当然その国のあり方というのが留意されたわけですけれども、それも今回は撤廃された。  そういうふうになってきますと、こういう仕組みが極めて大きく変わった、そうすると今の状況の中では発展途上国なんかの問題が将来どうなっていくのか。あるいは日本なんかのような先進国であっても、先ほど来お話がございましたように、農業の分野だとか、あるいはこれはまだ出されておりませんけれども、中小企業やなんかにおけるさっきもお話があった繊維の分野だとかいろいろありますけれども、そういうところの問題の行く末はその国の主権が保持されて本当に前進できるのかどうかという点について非常に危惧を感じるんです。また、食料品の問題ですね。国民の健康や生命を保持するという立場からの基準の問題等々も、これも詳しくは述べられませんけれども、大きな問題がある。  こういう点から考えて、条約法に関するウィーン条約を見ても、条約に加盟するのはその国の自由意思に留意されなければならないということが国際法でも認められているわけですから、主権の尊重というガットのこれまでの性格を大幅に変えるという点については大きな懸念を持つんですけれども、そういう道では専門であられていろいろ携わってこられた参考人の御意見をお伺いしておきたいと思います。いかがでしょうか。
  65. 溝口道郎

    参考人(溝口道郎君) 御指摘のとおりだと思いますのは、ある意味ではガットは非常にいろいろ問題もございましたけれども、基本的に成功してきました。戦後、自由貿易の枠組みのおかげで問題がありながら非常に世界貿易が拡大いたしました。世界の経済成長を上回る非常なスピードで貿易が拡大しましたので、各国の貿易依存率がどんどんふえております。  ある意味では、ガットの成功そのものが今度問題を起こしたのは、貿易がふえる、それに続いて今度は投資がふえる。すると、それによって国境が、いわゆるボーダレスエコノミーと申しますか、それから通信とか運輸の発達もございます、そういうことでだんだん世界が小さくなったと申しますか、ということで、ある意味ではガットの成功そのものがまたいろんな問題を起こしてきて、波打ち際のいろんな関税とか非関税障壁が減ってきたら今度はさらに国内措置がいろいろ問題になる。  各国で弁護士登録をどうするかとか政府調達をどうするかとか、従来の貿易交渉ではなかった、戦争前は少なくともなかったことを、あるいは戦後直後はなかったことを、だんだんこのごろは人の懐に手を入れておまえはこうしろああしろといって、昔だったら、先生のおっしゃるとおり、内政干渉だということで非常に怒るところなんですが、何しろどの国もこのごろは内政干渉をやっているわけですね。それほどどこかで何か起こるとそれはすぐ世界的に影響をする。ペルーの沖でアンチョビーがとれなくなると大豆が不足するとか、何かおけ屋の話みたいに。そういう情勢でやっぱり世界経済は変わっているので、そういうふうに違ってくるんです。  途上国もその点を認めて、本当なら従来はガットに批判的だった国も、貿易によって例えばASEANが躍進をしているということで、ASEANが躍進したら今度はベトナムや中国も貿易を大いにしようと。中国はガットにも入りたい、ロシアもガットに入りたいということで、やはりガットに発展途上国も旧共産圏も入りたいということを見ますと、問題があるけれども利益があるということを認めておるということだと思います。
  66. 立木洋

    ○立木洋君 確かに第二次世界大戦前のように経済的な対立が戦争になるなどというようなことは人類は望んでおりませんから、そういう意味では経済的な対立も話し合いによって一定のルールのもとにやっていくということで、そういう意味での貿易の自由を広げるという点について、これは反対しているわけじゃないんです。  しかし、今申し上げましたように、主権の問題ですね。本当に今の状態を見てみますと、私が大変懸念しているのはアメリカなどの態度なんですよ。結局、先ほどおっしゃいました反ダンピングの問題等で極めて、何といいますか、今まで乱用が行われたというふうな問題が大きな問題になりました。  先ほど参考人がおっしゃいましたように、これはもう長年そういう状態が続くのを五年間に規制するということになりましたけれども、もともと乱用防止規定が強い要求で挿入されたにもかかわらず、アメリカの強力な反対でこれがまた削除されてしまった。問題が残っているんですね。あるいはNAFTAの問題なんかでも原産地規制なんかで一定の優遇措置がある。本来、ガットの内外無差別の原則から見るならば、これもやっぱり問題ではないか。  それから先ほど来お話がございましたWTOの諸協定では、WTOの紛争処理手続によらない一方的な報復措置は発動してはならないということになっているんですね。そしてアメリカの国内法で、先ほど言われましたように、やっぱり三〇一条についてはこれはWTO規定にかかわらないというふうなことが国内法規に明記されているわけですし、それからこのWTOの紛争処理の手続という問題と、その問題に入らない分野の問題についてはこれを行使することは認められるんだというようにアメリカのカンター代表なんかも公然と述べておりますね。こういう問題が依然としてある。あるいはアメリカの貿易相手国に対する輸入拡大の押しつけなんかも今度の協定対象外になっていますし、もちろん禁止はされていない。挙げるとさまざまな問題がたくさんあり得るんです。  今回のWTOがアメリカの主導で進められてきたということはもう承知の上ですし、こういうアメリカのやり方が本当になっていくと、今でさえ日本がなかなか大変な状態にある、これはいろいろな諸条約の背景があるということはありますけれども、そこまでは申しませんが、今後、本当に公平平等、そして国際貿易秩序が発展していく上で、こういうような一方的な勝手なやり方をWTOでは規制をするといいながらアメリカだけは別だというふうな態度をとるというのは本当にいかがなものか。これで本当に未来が安心できるんだろうかというふうなことを懸念せざるを得ないんですが、もう時間がなくなりますので簡単で結構ですが、こういうのがいいとおっしゃるのか、やはり直していく必要があるというふうにお考えなのか、ちょっと済みませんが。
  67. 溝口道郎

    参考人(溝口道郎君) 戦後直後のITOなんかは非常にアメリカが交渉の中心的な役割を果たしました、当時の世界の中でアメリカが圧倒的な力を持っておりましたから。しかし今日は、アメリカと並んでヨーロッパ、日本、あるいはインド、ブラジルとか発展途上国の中にもチャンピオンがおりまして、なかなかみんなアメリカの言うことを一方的には聞きませんで激しい交渉をやっております。したがって、各国の利害のバランスがとれたものが今御承認いただくために出している協定でございますので、決してアメリカだけのあれではございません。  それからスーパー三〇一条は、確かにアメリカは持っておりますし、今度の国内法にも出しておるようでございますが、ただアメリカは確かにWTOの手続は踏むということで、したがってその法律があること自体を日本はガットで争うことはできません。ただ、スーパー三〇一条に基づいてアメリカが例えばWTOの手続をとらないとか、あるいは報復措置として何かWTOで約束している譲許を侵害するというような事態がありましたら、日本は当然WTOに訴えてそれを争うことはできます。そういうことで、先生のおっしゃるアメリカの横暴に対する歯どめは十分入っていると存じます。
  68. 立木洋

    ○立木洋君 黒田参考人、信田参考人にもお尋ねしたかったんですが、私は持ち時間が十分間なものですから、済みませんけれども、これで終わらせていただきます。  どうもありがとうございました。
  69. 下村泰

    下村泰君 二院クラブの下村と申します。  私が国会へ来た理由というのは、重度障害者でありますとか難病でありますとかこういった方々の声が国会に届いていない、何とかして直接届けてくれというような後援をいただいてここへ来たものですから、こういう問題は余りよく理解していないんです、私自身が。ほかの委員の方とダブるかもわかりませんけれども、黒田、溝口、信田各参考人に一つずつ伺わせていただきます。  まず黒田参考人には、農村における高齢化対策として今後どういうことをすべきかということを伺いたいと思いますけれども、今後、経済の成長はかつての高度成長していたときのようなぐあいにはいかないと思います。二度とああいうことにはならないと思うんですね。そうしますと、定年退職者が農業に専従するという高齢者農業家がふえているということも聞いております。したがいまして、この高齢社会における農村の役割はどういうものか、これを伺いたいと思います。  それから溝口参考人には、日本では障害者雇用については割り当て制度というのがあります。アメリカは絶対に障害者の就職を断ってはいけないということになっておりますけれども、日本の場合には断ることもできるようなんですね。ですから納付金制度なんというのがあります。企業がそうしたマイノリティーの人々に対する雇用のコストをどういう形で出してくるのか、こういう点についていずれ日米間にこの問題は出てくるのじゃないかというふうに危惧しているんですけれども、これをどういうふうにお考えでしょうか。  それから信田参考人には、農業市場原理を適用すれば国際競争力を持つように成長するという意見が学者の間にあるのですけれども、これをどうお思いになりますか。それから土地に制約がありますから、こういった土地に制約のある農業に市場メカニズムは十分機能するのかどうか。  この点をお一人ずつに伺いたいと思います。
  70. 黒田昭

    参考人(黒田昭君) 農村における高齢化対策でありますが、私ども西都市は過疎地でありまして、既に六十五歳以上の比率が二〇%に達しました。まさに超高齢化社会と言ってもいいんではないか、そのように思います。そういうようなときに、国が出されましたゴールドプランに従いまして老人保健福祉計画をこのほど作成したところであります。これに従って今後の高齢者対策をやっていくわけでありますが、この計画に盛ったものを全部やるという話になりましたら到底今の地方財政の中ではやっていけない。何とかこれに対する国の財政措置がなければ農村における老人保健福祉計画というのは実行ができない、私はそのように思っております。  もう一つは、高齢者対策としての農業というのはどうかという御質問でありましたが、私どもは経営としての高齢者の農業というのは考えられない。副的な作業として参加するということはあり得るわけでありますけれども、経営主体者としてはもう少し若い人たちが中心になるべきであろう。むしろ生きがいとか健康とか、そういうような意味合いで農業の持つ役割というのは非常に大きいというふうに思っております。ですから、高齢者の生きがい等について農業の立場から十分対応していかなければならない。その点では我々の地域というのは非常に恵まれているんではないのかと、そのように思っております。
  71. 溝口道郎

    参考人(溝口道郎君) 過去におきましてアメリカは日本に対して、例えば日本の労賃が低い、だから日本の企業はダンピング輸出をしているとか、あるいはその後、労賃が上がりましたら、日本は環境対策が不十分である、したがってこれも一種のダンピング輸出なので日本製品を輸入制限すべきだと、時代とともにそういうようないろんな要求をしてきましたが、私の知る限り、今までは少なくとも日本の福祉政策が不十分だから日本に対して制裁をするとか輸入制限をするということを言ったことはないかと存じます。  それに関連いたしまして、WTOでも来年以降どういうことをするかということについて、アメリカは労働問題を取り上げたいと。そしてこれは発展途上国から見ますと、労賃が低いとか労働三権がない国に対しては輸入制限をしてもよろしいということをアメリカは主張するんじゃないかといって非常に警戒をしております。同様に、アメリカとかヨーロッパは環境問題をやはりWTOでやろうと。それにつきましても発展途上国は非常に警戒をしておりまして、環境対策が不十分な国に対して何か輸入制限をすることの準備ではないかと非常に警戒しております。  今まで福祉政策まで立ち入ったそういう提案はございません。
  72. 信田邦雄

    参考人(信田邦雄君) 先生から御指摘の市場原理の関係なんですけれども、もう御案内のとおり、先に不可能と言っておきますけれども、日本では今日の円高における経済、さらにまた土地の価格、そしてまた賃金、そして農業においては特にコストになる部分、いわゆる肥料、農業その他生産資材はすべてなんですけれども、それは日本で生産したものを今使っているわけですからすべてそれはもう不可能に近い、国際的な中で不可能に近いわけですが、日本の中の市場原理では別で、世界的な中での市場メカニズムに入りますと、それはもう農業はひとたまりもないというのが実情ではないかと思います。  ただ、今の価格の中で、若干の人々、意欲的に早く大規模化その他に取り組んだ場合、今の価格体系の中ではその人たちは若干このメカニズムに乗っての恩恵は受けるでしょう。しかし、それは本来望むものではないわけですから、どんどん価格、所得が下がっていった中で日本の中での市場原理での農業というものは不可能に近い。  北海道においても大体同様でございまして、一部の人たちが今、大規模にやっている部分で負債など償却をしていた人で今はこのメカニズムで若干恩恵を受けている人がいるという状況で、内地を含めた日本全体となれば無理と、こういうふうに私は思っております。
  73. 下村泰

    下村泰君 ありがとうございました。
  74. 西野康雄

    ○西野康雄君 新党・護憲リベラルの西野でございます。お忙しい中、参考人の皆さん、ありがとうございます。  まず溝口参考人にお伺いをいたします。  手前どもの方にもいろいろとファクスが送られてまいります。WTOに関するアメリカの態度というもの、例えば「ドール議員、WTOの監視機関の設立を提案」というふうなことで、「WTOが厳しい貿易紛争処理の規定によって、アメリカの貿易関連法の修正を求める権限を持つことを危惧する十から十五人の共和党上院議員の意見を代弁している。」、「アメリカの貿易規定に対するマイナス影響への対応が強化できるとともに、WTOの紛争処理委員会に対してアメリカ国内の行政手続きの違いとWTO規定の厳密な解釈を喚起できるとしている。」というふうなことでWTOの監視機関の設立を提案しております。  先ほど溝口参考人、またいろんな議員が、こういうふうなことは日本のプラスにもなるんだ、日本の利益にもなるんだ、こういう趣旨の御発言をなさっておいででございますが、それはアメリカという国の国益が損なわれない、あるいは日本の利益がアメリカの利益にもつながる場合のみにWTOというものが有効に機能するのではないだろうか。ですから、この検討監視機関の設立の中に「WTOからの脱退を勧告することもありえる。」、こういうふうな文言が入ってございます。  アメリカという国、大豆の禁輸措置でも先ほどおっしゃっていましたけれども、あれもアメリカの大豆生産者が出荷をストップしているにもかかわらずあのときの大統領は何を言ったかというと、日本の商社が買い占めをしているからだということで、記憶にもございましょうけれども、商社の大豆担当係長とか課長あたりが随分とアメリカの畜産業者に締め上げられましたですね。僕は、アメリカという国は基本的に信用してはならない国ではないだろうか。アメリカの国益そのものが一番大事なもので、日本の国益だとかそういうものはしんしゃくしていないんじゃないか。このWTOの運用というものを見たときにもそういうふうな面がうかがえるんではないだろうか。  WTOとアメリカの出方みたいなものを少しお聞かせ願えればと思います。
  75. 溝口道郎

    参考人(溝口道郎君) アメリカの議会の表決で今一つ心配なのは、WTO自体についてはドール議員を含め大多数の方は賛成、支持の立場にあると聞いておりますが、ただ、一つ小さな問題起こっているようでございまして、何か関税を下げるとそれだけ財政収入が減る、向こう五年間で百三十億ドルの収入が減る。それは財政均衡法に基づくと問題であるという何か別の観点から言いがかりがついていて……
  76. 西野康雄

    ○西野康雄君 三百十億ドルではないでしょうか。
  77. 溝口道郎

    参考人(溝口道郎君) そうですか、三百億ドルですか。失礼しました。訂正いたします。  ただ、何か十年になるともっと多くなる。その観点から手続的におかしいということで反対する議員が出る可能性があるということで非常に心配されておりますが、WTO自体が悪いという人は非常に少数だと聞いております。  それから日本の立場はあくまでも自由貿易が国の根幹だからこれを支持するということでございますし、またアメリカ市場も日本にとって重要な、日本の二五、六%以上の市場ですから、アメリカ市場を開いたものにしておくことは日本の利益になります。また、世界各地でアメリカの企業と協力して投資するなり貿易することも重要でありますので、ぜひとも日本としては、WTOを支持するのみならず、アメリカがWTOに入ってその有力メンバーであることも日本の利益になると考えます。
  78. 西野康雄

    ○西野康雄君 先ほどおっしゃったのは百三十億ドルじゃなくて、サーモンド上院議員がドール議員に表決の延期を要請したときに、「アメリカの九四年国家予算決定を侵害するうえ、さらに三百十億ドルの赤字を加算する」という、この部分ではないだろうかと、こう思っております。  さらに溝口参考人にお伺いをいたしますが、大和総研の理事長の宮崎勇さんが、WTOは下手すると経済発展が進んでいる国により有利になってしまう、こういうふうな御趣旨の発言をなさっておられます。経済発展の段階がいろいろ違っております。そういう中で、同一政策を同一時点で要するに用意ドンでやりますから、そうするとそういうふうなことがかなり起きてくる。APECの中でもかなりそういうふうなものが起きてくる可能性があるのではないだろうか。そういったときに日本はどう対処するのか、あるいはそういう可能性というものを御否定なさいますか、それとも肯定をなさるでしょうか、どちらでしょうか。
  79. 溝口道郎

    参考人(溝口道郎君) 私は、どちらかというと発展途上国の方が得をすると。今、貿易の拡大の率が先進国はほどほどなのに、中国とか韓国とかASEAN諸国はすごい勢いで貿易が伸びております。そのためにまた繁栄をしておりまして、したがってWTOの結果はだれが得をしてだれが損をするという評価は難しいんですが、発展途上国はやっぱり非常に大きな利益を受けると思います。
  80. 西野康雄

    ○西野康雄君 ありがとうございました。
  81. 矢田部理

    委員長矢田部理君) 以上で三名の参考人の方々に対する質疑は終わりました。  参考人の方々には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時三十一分休憩      —————・—————    午後一時三十四分開会
  82. 矢田部理

    委員長矢田部理君) ただいまから世界貿易機関設立協定等に関する特別委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、世界貿易機関を設立するマラケシュ協定締結について承認を求めるの件外七法律案議題とし、参考人の御意見を承ります。  午後は、農民運動全国連合会代表常任委員小林節夫君に御出席をいただいております。  この際、参考人に一言ごあいさつ申し上げます。  参考人には、御多忙のところ当委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。議題となっております各案件につき忌憚のない御意見を拝聴いたしまして、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いをいたします。  なお、会議の進め方につきまして申し上げます。  まず、十五分で御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。  それでは、小林参考人にお願いをいたします。小林参考人
  83. 小林節夫

    参考人(小林節夫君) 小林です。私は、長野で稲作をしておる農民として、WTO協定に反対の立場から意見を陳述させていただきます。  米の輸入自由化というのは、三度にわたる国会決議、それから各党が公約をしてやらないということを言ってきたわけです。これが公約違反であり国会の決議に反するものであることは、この間のWTO委員会の方で総理も大蔵大臣も農林大臣も認めたところであります。  非常に私たち農民として意外であり、かつ怒りを覚えるのは、例えば河野外相は、昨年細川内閣が受け入れを表明したときに党としての糾弾声明を読み上げた人であります。それからその後、畑農林大臣に対して問責決議案を読み上げたのは今の大河原農林大臣だったんです。それが今、ことごとく正反対の態度をとっているというこの事実は、民主主義の原理からしてもあるいは私たちの願いからする問題としても、絶対に私たちは許すことができない、そういう気持ちを持つわけであります。  さて、一体WTOでどういう被害が予想されるかという問題です。これは牛肉・オレンジの自由化、その結果で証明済みだと思います。  例えば酪農について言いますと、もともと非常に多くの数千万円という負債を抱えている酪農民、これの副収入として非常に多くの位置を占めていた子牛の価格が暴落するというようなことが起きました。日本で最大の酪農地帯と言われる北海道の別海町では、こうした状況の中で産まれた子が売れない、そして売れないところかもっといけば赤字になるというような中で川に捨ててしまうというようなことで、町や農協から自粛するようにというような要望も出たくらいです。  その後このことはなくなりましたが、そうしたならば今度は各地で廃牛を山に捨てる、一頭一万円にもならないような肉、ホルスタインをそういうふうにして山に捨ててしまうというやり方、こういう状況がある。その状況というのは今でも変わっておらないし、そして今では毎週一戸ずつ酪農地帯で酪農をやめていくという、そういう事態が相次いております。  この上、乳製品輸入自由化されたらどうなるか。全面的な崩壊であることは明らかです。国民はやがて乳を飲むことができなくなる。一昨日の委員会の答弁を聞いておりますと、対策をとっているから大丈夫だ、セーフガードをやった、あるから大丈夫だということを言っておりましたけれども、例えば一時的に輸入制限するというような事態、そういうことが一度でもとられたのか。それは余りにも事実上適用できないようなやり方。しかも、そういう事態が昨年起こっても、ついには発動しなかったという事実があります。そういう事態の中で、これからも大丈夫だという大河原農林水産大臣のあの答弁をどうして信用できるでしょうか。  さて、稲作について言えばどうか。これは岩手の自治労連が調査したことです。かなり綿密な調査でありますが、米が輸入自由化されたらどうするか。そうしたら自由化されても稲作を続けるという農民、これは五四・六%にすぎないわけです。それもその多くは自家用の飯米をつくるだけだ、こういうふうに言っております。農民の多くは自由化はやめてほしい、減反をやめて米を増産させてほしい、そういうふうに政府の言っていることとことごとく反対のことを要望として持っているわけです。このように農民はお米をつくることをあきらめる方がかなりふえるという中で、これでは食糧確保も思うに任せない、そういうことは明らかです。  そして、そういう量の問題だけではなくして、WTO協定に加わるならば食糧の安全性にも大変大きな問題が出てくる。  第一は、国際基準に合わせろということで日本の基準よりも数倍もの残留農薬が許されるということになる。あるいは添加物、日本で今、認めていないものが七十九種類あると言われております。その食品添加物が認められるようにならざるを得ない。  第二の問題として、輸出国の方で安全だと言えば、日本で根拠のない限り、今までよりふえたからといってこれをただ拒否することはできない。  ついこの間問題になりました、今でも問題になっているオーストラリア産牛肉です。大変な問題になりました。文部省でも給食用に使用するのを注意しろと、こういう警告すら出したところであります。ところが先日、井出厚生大臣は、いや、しかしそれは継続的に食べない限り大丈夫だというように答えております。今でもこういう態度です。ましてWTO協定が結ばれたらどうなるのか。普通ならばこういうような厚生大臣は罷免さるべき、それほどに重大な問題だと思うんです。ですから私たちは、今の大臣がそのような態度をとることについて大きな不安を覚えざるを得ないわけです。それが反対の理由であります。  では事後対策はどうなのか、こういう問題であります。六年間で六兆円の事後対策をとるから大丈夫だ、そう言うけれども、しかし私はこれはごまかしたと思います。  第一は、通常の予算、そのほかに別枠としてこの六兆円が計上されるんだと、今までそう言われてきましたけれども、総理や大蔵大臣は何と言っているかというと、一昨日、昨日の中では別枠ではないということを言明しています。それは全く私たちの今まで聞いてきたこととは違う問題であります。  第二に、この六兆円というのは水増しであって実際に国が支出するのはその半分にもならない。使い道はどうか。その半分の三兆五千五百億円というものが公共事業に使われる。農業予算ではないんではないか。  第三に、対象になる農民はどうかという問題です。ラウンド後も農業を続けるという考えの者に対してこの事後対策なるものがすべて適用されるというならまだ話はわかります。そうではなくして、実際に今言われているところでは、新規に投資をして規模拡大する者と認定された者が対象になるだけだというわけであります。それは一市町村にしてみれば十人足らずです。日本じゅうで全部やってみたところでたった三万です。  そして、さらに規模拡大が唯一の切り札であるかのように言いますけれども、これまで新政策では、例えば年間八百万円の所得が補償されるようになるんだ、だから規模拡大やれと、こういうふうなことを指導してきました。実際、各県の計画というものを見ますとほとんどが八百万円を年間の所得だということでやっていますが、その計算の根拠は何かと言えば現行の米価であり、現行農産物価格でやっている。今度この六年間に三〇%引き下げるというのが農水省の考えてあります。そうしてこれからもどんどん引き下げるという方向であるにもかかわらず、一体これでいいのか。  米で言うならば一俵一万六千円のものが一万三百円になる、そして十年後には半値だ、こういうふうなことが行われる。どうしてこの規模拡大でやっていけるのか。本当に担おうとする者に対してこれはごまかしてはないか。しかも、それ以外の農民に対してあるいは中山間地域に対してほとんど対策が講じられないということになればこれはどういうことになるのか。例えば国内で出回っているお米の量は、いわば政府の言うところの切り捨てに該当するところの五ヘクタール未満の農家が売っているものが九二%です。農林省の統計で明らかです。そういうふうな状況の中で食糧が足りるわけがないということを私は言いたいわけです。後継者がおらないで、しかもこのような米価について言うならばさらに引き下げられる。  新食糧法がその対策の一つとして出されました。しかしこれは、新食糧法案というのは食管制度を廃止し米を輸入自由化するためのものであり、大企業に悪徳商法の自由を保障するものであります。  悪徳商法といえば、皆さんは信じるかどうか知らないけれども、これは私たちの事務所のある池袋に、あきたこまちと中国米を大特価で売るという、こういう事態が出ているわけです。あきたこまちに中国米をまぜれば、まぜてもわからない、そういうことを麗々しくうたって売っている。そういうふうなことが今日、米が余っている状況の中で行われているわけです。政府がブレンドをやれという中でそういうことが行われているわけです。大企業に悪徳商法を奨励するやり方です。  新食糧法、これは農民に対しては減反を強化して米価を引き下げるというものです。何かつけたりにいろいろと言っておりますけれども、例えば再生産を補償すると言っています。しかし、中心は自主流通米センターで決め、そしてたたくだけたたいて国際価格に限りなく近寄せるというためのものです。それでは消費者にはどうかといったならば、今言ったようなにせ銘柄米あるいは外米の押しつけということにならざるを得ない。今、世界でも米が足りない、食糧がやがて足りなくなるというときに、こういうふうな国内状況でどうしてこの米のパニックがまた続いてこないか、そういうことがやがては体制的なものに構造的なものにならぬか、そういうことを憂えるわけです。そういう意味で私たちは反対するわけであります。  こういうWTO協定、事後対策も結局、世界的に見るならば、ただ競争力、競争原理、効率と、そういうことだけで貫いている。これがガットで決められた、議論された内容です。しかし、そういう問題は世界食糧農業を危うくするものであって、これはもう衆議院の委員会を聞いても皆ひとしく二十一世紀は食糧問題が重大だということを言っている。にもかかわらず、今のような状況の中でどうして私たちはそれを認めることができるか。こういうふうな世界的に効率でやり、そして日本の国内でも、あるいは国際稲研究所、ここで今の米の七割の増産が必要だと言っているときに、このような態度をとり、日本の農民の生産意欲を失わせ、それで果たして今後もやっていけるのか。私は、こういう中で、こういうやり方は世界的規模でも日本の中でも必ず破綻するものだと思います。  今、こういう問題で、公約、国会決議、こういうふうなものを無視するというやり方、これは歴史の法廷で必ず裁かれるだろうし、私たちはそういう点でこのことを確信するとともに、決してこういうふうな乱暴なやり方に屈しないで、あくまでも国民食糧と健康を守るという立場から日本の農業を守り稲作を守る、そのために総力を挙げてやっていきたい、それが私の決意であり、私の意見であります。  以上であります。
  84. 矢田部理

    委員長矢田部理君) ありがとうございました。  以上で参考人からの意見聴取は終わりました。  これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  85. 大塚清次郎

    大塚清次郎君 自由民主党の大塚でございます。  ただいま小林さんから農業現場の長い御経験、あるいは農政問題について非常に御造詣深い中から、いろいろ今度のWTO問題を中心にして御意見を聴取いたしました。  やっぱり私どもも、今回のWTOの条約に至る経過等につきましては、いろいろこれは国政に携わる者としても努力不足な面は多々あり、おしかりはもう当然かと、こう思うわけでございます。  そこで、お尋ねする前に、実はこれは東京ラウンドが終わりましたときに、ひとつこの次はということで何を目指してウルグアイ・ラウンドが始められたかというと、輸出補助金が貿易歪曲の元凶だ、これは何とかカットしないといかぬというところからの国際的な合意の中でこのマルチ交渉が行われたという経緯があるわけでございます。  それで、日本は議院内閣制という一つの政治形態でございますので、アメリカ等と違いまして非常にこの種の外交問題による国際条約、契約ということは、総理大臣、国会議員という、政府、議会とある面じゃかかわりがある、そういう面では非常にやりにくい点もあります。利点もあるかもしれませんが、むしろそういうことからいたしまして、三度にわたる国会決議を無視して政府が一義的にはドゥニー調整案を去年の暮れ受け入れたということがおしかりを受ける一つなのではなかろうかと思います。  したがって、参議院も良識の府としてこれに対してひとつ、自由民主党は畑農林大臣の問責決議案を出しましたが、不幸にいたしまして採決でそれが通らなかったということがあるわけでございます。そういうものを背負いながら、そういう経緯を背景のもとに今度の批准という問題になったわけでございます。  そこで、こうなればもう最小限、ひとつ牛・かんのとき以上の国内対策をしっかりしたものを立ててやる以外はなかろう、外交の継続性あるいはいわゆる国際信義の問題、こういうものもこれあり、今の事態に至っておるわけでございます。したがいまして、目下、WTOと国内対策とそれから関連国内法、この三点セットの中でひとつこれはやっていかざるを得ないということで今、論議が衆議院であり、ここで事前審査が始まろうとしておるわけでございます。  一つお伺いしておきたいのは、実は先ほどおっしゃいましたいわゆる競争原理、経済的な競争原理。特に世界食糧供給国の中では、アメリカのように企業的な経営、日本は家族経営、全く対照的でございます。それが同一視されておるということがある。だから競争原理が働きますとやっぱりそこに非常な乖離が出てくるわけです。  それからもう一つは人口問題ですね。これがこのガット・ウルグアイ・ラウンドの中に盛られてはいない。表書きではありますけれども、内容はない。それから国土保全に対する問題、最近非常にやかましくなっております環境についての問題あるいは安全性についての問題、いわゆる鉱工業製品と同じような序列で扱われている、しかも自由競争原理の中で。  これについて、今後もしラウンドがウルグアイ・ラウンドの後にまた起こるとすればどういうような貿易体制がいいのか、その辺をひとつ学のあるところでお聞かせいただきたい、こう思っております。
  86. 小林節夫

    参考人(小林節夫君) お答えする前に、外交の継続性のことを言われましたが、あれは例えば羽田前外務大臣が調印に行ったと言われておりましたけれども、あれは文言の確認だけだった、したがってそこで受け入れを約束したわけではないということをたしか国会で河野外相が答弁したはずです。  私が言いたいのは、三度にわたる国会決議を無視して政府が受け入れること自体が大問題だと。さらに今度はそれを追認するとするならば議会の自殺行為ではないかということであります。そして、国際的な信頼とかあるいはいろんなお話がありますが、国際的な信頼で言うならばアメリカはどうだったのか。今度の場合でも例えば輸出補助金は、今おっしゃるとおり、輸出補助金が東京ラウンドで問題になったと言われましたが、輸出補助金の制度そのものはちゃんと残したのではないか。額を削っただけのものだ。国境措置制度の問題だという点では全然違うと思うわけであります。  その意味で、実際には輸出補助金は残した、しかも日本が新規にやろうとすれはそれが禁止されている。そんな不平等なばかな話はないし、アメリカがウエーバーの問題をこれでも行使するという可能性が十分ある。国内法で九月二十七日に、WTOよりも国内法が優先するというような法律案を出す。そういうこと自体これが信義に反するものではないか。アメリカやECが行ったあのずる賢いやり方や、あの信義を我々が疑わざるを得ない状況というものがあるということを一言申し上げたいと思います。  さて、もしやるとするならば、まず私はその前にやらないのが一番いい、今度批准しないのがいい。まだしてしまったんじゃないから、これからまず第一に批准に反対すべきであると思います。それから私たちが今、そういう点で六年後を待たずして再交渉してほしいと思うのは、日本の国の経済主権、各国の経済主権をきちんと守るようにしてほしい。いろんな問題はその上であります。  以上であります。
  87. 大塚清次郎

    大塚清次郎君 時間が参りましたので、これで。貴重な御意見として承っておきたいと思います。
  88. 上山和人

    ○上山和人君 参考人、大変御苦労さまでございます。私は、日本社会党・護憲民主連合の上山和人でございます。  先ほど小林さんのお話をお伺いしておりました。ウルグアイ・ラウンド交渉合意の農業に対する影響を中心にお述べになりながら、総じてWTO関連法案に反対の趣旨の御意見だったと理解いたしました。  そこで、今度の合意内容農業ばかりじゃございませんでしたので、参考人ウルグアイ・ラウンド交渉合意につきましてどのように総体的に評価をなさっていらっしゃるのか。メリットは全くないとお思いでしょうか。それとも一部にはメリットもあるのか。そしてデメリットは、今、農業に対する影響を中心にお話しになりましたけれども、ほかにもどのようなものがあるとお考えなのか。  私は、きょうは十分間の時間をもらっておりますので、貴重な機会でありますから参考人の御意見だけを特にお聞かせいただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。
  89. 小林節夫

    参考人(小林節夫君) WTO全体について私はよく存じません。しかし、例えばフランス自身がこんなものは反対だというものを除外したではないか、自国にとって不利なものを除外するのは当然だと。しかも塩飽審議官、交渉に当たったあの塩飽さん自身が、日本はこの農業問題について言うならば米の問題で加わるべきではなかったということをはっきり言っております。  それから今、農業問題というふうに言われたことについて言うならば、農業問題だけではなくして、例えば衛生植物検疫措置の問題についての協定があります。これは農業協定ではありません。しかし、その文言を見るならば非常に重大だと思います。  例えば衛生植物検疫措置の適用に関する協定、その第十二条には、「加盟国は、自国の領域内の非政府機関及び自国の領域内の関連団体が構成員である地域機関がこの協定の関連規定に従うことを確保するため、利用し得る妥当な手段を講ずる。更に、加盟国は、当該地域機関、非政府機関又は地方政府機関がこの協定に反する態様で行動することを直接又は間接に要求し又は助長するような手段を講じてはならない。」、つまり輸出国の方で安全だと言ったことについてこちらの方で、例えば政府だけではなくして地方自治体、さらには非政府機関といいますか生協や婦人団体、消費者団体が検査をして、そしてこれは危険だからいかぬというようなことを言ってはならないと、そういうことを言っておるんではないか。非常に重大な問題です。ですから私はこれは単なる農業問題だけではないと思います。  それから農業問題農業問題とおっしゃいますけれども、実際問題として、先ほどの委員の方もおっしゃいましたが、環境問題についても非常に大きな問題がある。その意味では何も一括してやるということはない。ましてアメリカでもそのように言っております。だから私たちは再交渉をせよと。しかも、私が非常に疑問に思うのは、訳文が十月二十一日にやっとできた。それは日本に関する文書だけだった。各国の文書はまだ翻訳すらされていない。今後もやる気がない。どうしてそれで世界のWTO協定の全貌を私が知ることができましょう。議員の皆さんだって恐らくそうではないか。なぜかと言うならば、元農林大臣をやった人がその文書を見て、ああこんなにあるのか、いやそれは知らなかった、おれも欲しいなと言ったそうです。それも何と十一月十七日のことです。  そういう状況の中で、あれほど膨大なものを、しかもアメリカがそういうようないろんなウエーバーやその他の問題についてあれこれいろんなことを言っているんだから、そしてヨーロッパにおいては、ある種の畜産物については今度は関税化だと言ったけれども、実はラウンドが始まるときの基準年次からどんどん上げておいて、そしてその後下げたといっても事実上関税が前より高くなっているというものすらある。非常にずるいやり方でやってきた。そういうふうなことを我々がちょっと仄聞するだけでもそういう大問題がある。ならば各国のものも翻訳した上で、それをちゃんと調べた上で、それでどうだというふうにすべきじゃないでしょうか。私がどうしてそれを知ることができましょう。  以上であります。
  90. 上山和人

    ○上山和人君 それでは、もうあと時間が四分しかないんです。せっかくでございますから、これから私どもはこの関連法案の審議をすることになるわけでございまして、それに先立って今、参考人から貴重な御意見をお伺いしているところでございますから、どうかそういう趣旨で御意見をお伺いできればと思いますので、もう一つだけ、もう時間がございませんが。  参考人はいろんなことを今お話をし、大変参考になる御意見をお聞かせいただきましたが、WTOについてこれからどうあってほしい、つまり詰めて申し上げるとWTOの理想像とでもいいましょうか、WTOというのはこんな姿であってほしい、そういうものについてどのようにお考えでしょうか。
  91. 小林節夫

    参考人(小林節夫君) こういうWTOはない方がいい、これが最善の策だと思います。
  92. 上山和人

    ○上山和人君 そうおっしゃるとなかなか後はもう御質問ができなくなるんですけれども、私どもの方の御意見を申し上げる場ではないんですけれども、私どもはやっぱり人口とか食糧問題とか環境問題とかあるいは労働問題等を含めて、これからはそういうものに重点を置いた国際機関になるように、我が国が国際的なイニシアチブを発揮してそういうものになるようにできたらな、そんなふうに思っていることをちょっとつけ加えまして、御意見は大変参考になりますが、もう一つだけ農業に対する影響との関連でお尋ねいたしたいんです。  今、地球上で約八億人とも言われる飢餓に苦しんでいる人たちがいることを御存じだと思いますけれども、こういうものとWTOとの関係につきましてどのようにお考えでしょうか。
  93. 小林節夫

    参考人(小林節夫君) 世界に八億の飢えた人がいる、それからまた二〇二五年には人口が八十五億になってそれ以上はどうやっても生産が間に合わないという事態があることは私も承知しております。そういうこととWTOとの関連で言うならば、やはりそれぞれの国で農業がやっていけるように世界の人口を養えるようなそれだけの環境や農業、そういうことを考えて総体的にやっていくべきだろうと思います。  ところが今あるのは、とにかく国際価格で安い、日本で言うならば国際価格が高い、そういうことだけであります。けれども、私はもし日本のそれが高いと言うならば、では私たちの扱っているトラクターはどうなのかと。私たちが買うときは一馬力十万円です。けれども輸出されるのは幾らか。二万円か三万円です、馬力当たり。三十馬力のトラクターを買えば、私たちは最低でも三百万出さなきゃ買えないんです。ところが輸出されるところを見ると幾らか。六十万ぐらいです。そういうふうな問題があります。  例えば硫安にしてもそうです。肥料にしても私たちが買うときには七百五十円からします。輸出されるのはどうか。少し前、二年ほど前の統計で百四、五十円です。そういう局いものを売っておきながら日本の農民のものを高い高いと言う。  十八年前の米価で、そしてそういうことを私たちに要求しているわけですが、そういうふうなことをやっているならば、それを下げろ下げろ、国際並みにしろということであれば、大企業そのものに対する規制はどうなっているのかということも言いたいじ、そういうことを全く抜きにしてただ世界的に比べて、あるいは自由貿易の恩恵にあずかっているからと言うけれども、自由貿易にあずかっているのはトヨタであって、トヨタの輸出額と農産物の輸出額とそう余り変わらないというこういう事態、これこそもっとグローバルに見るべきではないか。  そういう上に立って、私はやはり各国がそれぞれ自主的に、例えば食糧援助してそのためにそこの農業をつぶすということでなくして、本当に自主的な農業発展できるように、競争力の原理ではなくしてそれぞれの国がやはり地域で自分たちの食糧を一番近いところで自分たちが自給するという、これがやっぱり本来のあるべき形であろうというふうに私は思います。
  94. 上山和人

    ○上山和人君 時間が参りましたので終わります。ありがとうございました。
  95. 星川保松

    ○星川保松君 私も山形県の農村の出身でありますので、小林さんが先ほどからWTOに対するいろんな御心配をお述べになりまして、私もいろいろと心配な面はあるわけであります。  我が国はいわゆる資源のない国でありまして、世界じゅうから資源を買い集めてきて、またエネルギーを買ってきて、いろいろと加工をして製品にしてこれを世界じゅうに売って国を立てておる貿易立国だと言われておるわけでございます。  そういう中で、貿易を自由にしようということでこのWTOがつくられるわけでありますけれども、そこで問題が出てくるのは、貿易を自由にした場合に、貿易というのは売り手と買い手があるわけでありますから、売り手に立っている国々はそれは大いに自由化を進めるべきだということになると思いますが、売るもののない買い手に立っている国々はこれでは困るということになって、そこで利害相反してくるんじゃないかと思います。  我が国を考えてみた場合は、いわゆる工業製品は世界じゅうに売っておりますけれども、農業の分野では何も売っておらないわけでございます。飼料を初め大変な農産物を買っておるわけであります。したがって、我が国の場合は農業と工業、商業との売り手と買い手の立場の相違から問題が生じてくるのではないか、こう思うわけでございます。そうなりますと、商工業の方は大いに貿易自由化すべきであるということになりましても、農業の分野としては買わされるだけでありますか保らこれは大変困るという事態が生じてくるのではないか、こう思うわけでございます。ですから、ただ日本にとって貿易の自由化はいいことだ、日本にとってメリットがあるというような言い方は私はちょっと乱暴ではないか、こう思っているわけです。  そういうことで、先ほどから小林さんがおっしゃいますように、農業では米づくりの皆さんも畜産農家も酪農家もそれぞれみんな大変な打撃を受けるということなわけであります。世界の百二十五カ国もこのWTOでいこうということになった場合に、日本が各国の皆さんと歩調を合わせていくということになれば、これはやはり打撃を受ける農業の分野においてしっかりした対策を国で打ち出さなければならないのではないか、こう思うわけでありますが、この私の考えに対して小林さんはどのようにお考えでしょうか。
  96. 小林節夫

    参考人(小林節夫君) 工業製品を売ってようやく立国していると言うけれども、それは非常に日本が過度な輸出をして、そして黒字大国になっていることで問題になっていることは御承知のとおりです。それはやはり長時間過密労働、非常な低賃金で使っているという、そういうもとでの現象であって、そういうふうなことは先刻決まっていることである。  そして、特に私は、失礼でありますけれども、ここで申し上げたい問題があります。それは星川さんが山形の選挙区で公約されたところに、「私は農民運動に携わったことがあり、農家の方々の気持ちはよくわかります。まず私は米の自由化に反対します。国民主食である米の安定供給を図るため、食管制度の根幹を維持し、生産者消費者の合意による、安全、安価で安定した食糧需給構造をつくらなくてはなりません」とあります。  私は、この前の参議院選挙と昨年のあの受け入れから今日に至るまでの事態、根本的に変わっているとは思いません。貿易構造、例えば日本が貿易立国であるということもそれも何も急に始まったことではない、前から決まっていることです。  私はやはりその意味では、各国が歩調を同一にするというけれども、まだ調印した国はたしか二十数カ国だというふうに聞いております。なぜ十分審議をしないで十二月の今回の臨時国会の中で仕上げてしまおうとするのかということに私は非常に疑問を感ずるわけです。どういう対策を立てるべきかというけれども、私はこういうふうなガットの問題はやり直すべきだと、それ以外にない。私は何でも一方的に自分の国のエゴだけを貫き通せばいいということを言っているのではありません。  しかし、日本が資源のない国だからというけれども、実際に資源がないとはどういうことなのか。例えば石油を持っているアラブの諸国の人たちが日本の大臣から、あなたの国は資源があっていいですねと言われたときに、そこの国の人たちは何と言ったかといったら、何を言っているんだ、自分たちのところは何の作物もできない、一番豊かな資源を持っているのはあなた方じゃないかと言われたそうですが、そういう赤面するようなことを私たちは言ってはならないと思うんです。  その意味で、私はやはり工業の製品を売っていくことも大事だと思います。だからといって、農業を犠牲にしなきゃならぬというけれども、農業で全部受け入れて、米を例えば全部自由化してみたところでどれほど貿易の黒字を消すことになるのか、全然問題にならないと思うんです。その意味からしても、私はやはり公約どおり皆さんが実行してくださることが一番最善だろうと思います。  以上です。
  97. 星川保松

    ○星川保松君 私たちはいろいろな考えを持ってきょうまで運動はしてきておるわけでありますけれども、私たちの意向どおりに世界や日本の経済が動いていくということにはならないわけなんですね。そして今、現時点における世界の経済情勢、それから国内の情勢というものを踏まえてそれぞれ私たちは対応していかなければいけないのではないかというふうに考えておるわけです。そうした場合に、ただWTOもない方がいいと。それは願うのは結構ですけれども、それでなくならない場合どうするかということをやはり対応策として考えていかなければならないんじゃないか、こう思っているわけです。  それから国内対策についても、小林さんはこれはまやかしの対策だと、そう御指摘なさるのもわからないわけではないのですけれども、果たしてこれからどのような具体策を出していけばこの日本の農家の自由貿易下における打撃を少なくすることができるかという、その足元のことも我々は考えていかなければならないと思うんですね。  そういうことで、国内対策は無意味だと言ってしまえばそれまででありますけれども、そうおっしゃらずに、こういうふうにすればいいということもいろいろ小林さんから提言がなされればそれは非常に皆さんの参考になることではないかと、こう思いますので、ひとつそのことについての御提言がありましたらお聞かせをいただきたいと思います。
  98. 小林節夫

    参考人(小林節夫君) 私は、やはり第一に必要なことは、やる気のある農民があったらやってほしいと思うんです。ぜひそれを本当の意味で農業が振興するように対象にしてほしいと思うんです。  農家が農業をやる気をなくしたと言うけれども、そういう問題について農林省がよくそう言いますが、私は非常に大きな怒りを覚えます。なぜなれば、農業だけでやっていけないということで、高度成長以来ずっと兼業農家がふえた。その兼業農家がふえたときに農家はどうしたか。もうからない農業農業外から金を出してつき込んでそして機械化をし、農業を維持しようとしたんです。幾ら農民でも、どれがもうかってどれがもうからないかは百も承知の上です。それでも農外収入から農業につき込むというのは、農業をやっていたい、ひたすら続けたいというこの熱意があったからじゃないかと思うんです。  それを過剰投資だとかなんとか言う前に、過剰投資ならば、高かったら安いものにしたらいいじゃないか。大企業がつくっている生産資材は安くしているんじゃないかと思うんです。そういうことは抜きにして、全然別個なんです。  それは別に置いても、農民がやる気がないと言うならば、なぜそれに対してやる気が起きるようなことをしないのか。私たちは、例えば米価で言えば、農産物で言えば、世間並みの労賃をくれと、そういうことを言っておるわけです。それからまた、環境保護で言えば無償の環境保護役割を果たしているわけです。  私は長野ですけれども、急傾斜地域で、そこで石垣を反ごとに仕切ってやれるように小さな田んぼが次から次へと段々にあります。もしそういう田んぼをなくしたらどうなるのか。環境保護だって重大ではないか。効率は悪いかもしれないけれども、例えば今度の基盤整備の問題にしても二十一世紀事業にしても、なぜそういうところを全く相手にしないのか、そういうところを相手にしてほしいと思うんです。  例えば長野県の飯山市の北の方に栄村というところがあります。そこは非常に効率の悪い山村、まさに山間の農業です。そこで一反歩、例えば十アールが十数枚の田んぼだとそれをせいぜい三、四枚にしてほしい、そういうふうな土地改良をやろうと。それを県が融資をし村が補助をして、しかもいわゆる農水省がやっているような県営圃場整備というような一律のやり方でなくして、その地域に合ったやり方をしている。  それで、そこでは普通ならば長野県土地改良区連合会が設計すれば十アール当たり単価が百二十万円もかかるところで、それほど不便なところでありながらそれが最高四十万を超えたことがない。したがって、農民の自己負担というものは十数万円であって、六十過ぎの者がやっても数年で返せるという範囲のものです。そういうふうな自主的な地域に合ったやり方、なぜそういうものをやってくれないのかと。これはまさに関連対策事業であるとするならば、中山間の事業とするならば、そういう地域に合ったやり方が幾らもあるはずです。そういう要求はたくさん出ているはずです。ですからそれでやるならば農業を放棄しなくて済むし、環境を守ることもできるわけです。  だから私はそういう意味で、政府の認定するような十ヘクタール、二十ヘクタールというような、大きな規模のものだけを、しかも新規投資をし規模拡大をするものだけを認定すると限るようなそういうやり方ではだめだと。私が反対しているのは、そういうことではなくしてむしろそういうところにもっと光を当てたらどうかと、そういうところで自主的な土地改良ができるようにし、そういうところでも環境保護に役立つような農業はできないか、考え方の問題としてはそういう問題があります。  あるいは価格の問題でもそうです。いろんなやり方がありましょう。そういう意味で私たちは、価格問題についてあるいは生産をふやす問題で言えば、例えば今度の米価の問題でも幾つかの党の方から質問をされたところが、何と言っているかというと、農林水産大臣生産を刺激するような価格対策はとらないと言っているんです。これは次から次へと下げるということを意味している。  これは何も我が日本だけではありません。この前の一九九〇年のガットの閣僚会議がブリュッセルで開かれましたが、そのとき開かれた世界農民大会で、例えばフランスのFNSEAという業種団体がありますけれども、そういう国を初めとしてほとんどすべての代表から、価格補償があってこそ家族経営がある、家族経営のようなそういう農業があってこそ環境が守られると。これは三つのキーワードだということを私はつくづく感じました。どこの国でもこの問題を言いました、家族経営が古いなんというのはうそです。世界じゅうでそういうことをやっているわけです。ですから、私は何もECやEUのまねをしろとは言いません。しかし、日本には日本に合ったようなやり方が幾らもあるはずです。そういう意味で、私は今言ったような山間の一つの例を挙げました。  それからまた、手不足であると。それならば共同でやるために一律のやり方ではなくしてもっといろんな形で助け合いができるような、農村の共同体がこれからも立派に安心して暮らしていけるような共同体の推進の仕方が幾らもあると思います。  私は今、栄村の一つの例を挙げました。時間が恐らく超過していると思いますから、私は具体的な例として以上のことを申し上げて終わります。
  99. 星川保松

    ○星川保松君 どうもありがとうございました。
  100. 林紀子

    ○林紀子君 本日はありがとうございます。日本共産党の林紀子でございます。  今、いろいろ御意見をいただきましたが、もう少し詳しくお聞きしたい点がありますのでお尋ねをしたいと思います。  それは新食糧法案、主要食糧需給及び価格の安定に関する法律案、私たちもけさその趣旨説明をこの委員会で聞いたわけですけれども、ここは大変問題点がいろいろあると思います。  まず輸入をうたう。これは祖父条項が廃止されて、ガットの加入時にあった国内法まで全部改正または廃止をしなければいけないという状況になったためにこういうことになっているわけです。その新食糧法案の中で、特に政府の米の全量管理というのを放棄いたしまして部分管理にした、そして米価は市場原理にゆだねるということになったわけですが、今もお話がありましたが、米価が市場原理にゆだねられたら農家の暮らしは一体どうなるか、この辺を現状に即してどういうふうにお考えになっているかというのが一点。  済みません、私も時間が限られておりますので、続けて質問させていただきますが、もう一つは減反の問題です。  ことしは豊作で、またまた減反面積がふやされるのではないかというおそれもあるわけですが、今回のこの新食糧法案には減反、生産調整ということが明文化されました。そして手挙げ方式でやる、生産者の意思を尊重するということは言っていますけれども、法案の中にはこれは明記をされていないわけですね。減反の問題について果たして今後強制減反というのがなくなるかどうか、どういうふうにお考えになるか。  そして三番目は、緊急時には農家に米の売り渡し義務づけていて、この義務をきちんと履行しなかったら罰則がかけられるということも明記されております。この罰則規定というのは農家の皆さんにとってどんなふうにお感じになるものか、どのようにお考えになるか。  この三点をお聞きしたいと思います。
  101. 小林節夫

    参考人(小林節夫君) これ以上輸入で安くなるというならば今でさえやっていけないのに続出するということは、先ほど私申し上げました岩手の自治労連の人たちの調査でもわかるように、それでは暮らしていけないということがもう非常にはっきりしていると思います。  特に政府が言うところの規模拡大したら何とかやっていけるだろうというのも、先ほど申しましたとおり、それは今までの米価があっての話であって、その算定基準は各県とも全く共通しているのが特徴です。年間八百万の所得だとか、県によっては山形あたりは七百万と言っていますけれども、大体それだけのものが皆、現行価格であると。だからそういう意味で言えば、私はやはりとても暮らしていけない。農業を農家がやめざるを得ない。それではやはり食糧がどんどん足りなくなっていくという点で、私は農家自身もやっていけないし、国も大変だし、消費者も大変だと思います。  それから手挙げ方式の問題ですが、私は明確にこれは強制減反だろうと思います。なぜなれば、これは法律には明記していないけれども、実際問題として農協関係者その他のところと農水省が折衝してやったときに、例えばお米を扱うところでは減反を指導しろということが義務づけられるとかというふうな話も承っております。特に希望者は政府に申し出ろ、約束すれば減反に応じると言うけれども、政府に何のメリットもない。米価が自主流通米センターで買いたたかれる。それよりも安くなるのか高くなるのかと聞いても、それについてはきのうの答弁でも、高くなるとも安くなるとも言えない、むしろ下支えはないというふうなことすら言っているわけですから、そういうところに、政府に売りたがる者は余りいないと思います。  では減反をしなければどうなるのか。例えば減反をしなかったら、じゃ政府は買わないよと。農協は自主流通米価格を引き上げるために減反せいと言う。おまえ、そんなことなら買わないよと言われたらどうなるか。そう言われたならば農民はいや応なしに減反せざるを得なくなる。政府買い入れない、農協も減反に応じなければ売ってやらないと言う。そうなったならば農民はこれは受け入れざるを得なくなるという点で、私はやはり手挙げ方式とは言うけれども、明確に減反を強制するものではないかというふうに思います。  まして初めに約束したとおり、例えば政府にはこれでは売らない、自分が売るならいい、どこへでも売りなさい、ただし売り先を明示してこれこれしかじかだと届け出ろと。その届け出とおりにいかなければ政府に売らなくても農協に売らなくてもいいけれども、自分で売れるところがあったなら売ってみる、そのかわり届け出ろ、そのとおりやらなかったならば罰金だと、科料だというふうな、そういうことは私は文句なく強制そのものだろうと思います。その意味で、私は許せない問題だろうと思います。  以上です。
  102. 林紀子

    ○林紀子君 それからあと自給率の問題ですけれども、輸入がふえれば自給率は下がるというのは、これはだれが考えても当たり前のことだと思うわけですね。しかし今、政府の方は、先ほどの六兆百億円の対策も含めまして、自給率を上げていくんだということを盛んに言っているわけですが、先ほど岩手自治労連のアンケiトなどでもお示しくださいましたけれども、今後自給率がこういう体制で本当に上げていけるのかどうか、農家の方たちはどういうふうに考えているか、その点をお聞きしたいと思います。
  103. 小林節夫

    参考人(小林節夫君) 減反の問題で、例えば豊作で米が余っているというふうなことが盛んに言われますが、今現在、外米が売れないでいるのが百万トン近くある。ことし作況指数が一〇九だとすれば約九十万トン余分にとれる。とするならば余っているのは外米であって、国民はやっぱり日本のお米を食べたいと言っているわけですから、その意味で言えば、私はやはり余っているのは外米であって国産米ではない。豊作であっても決して余っているとは言えない問題だと思います。  なぜ今、減反を強制するのか。自給率を下げてまでなぜ減反を強制するのか。それは結局のところはミニマムアクセスでもって四十万トンから八十万トン、そして六年以降はさらにそれをふやせ、あるいは完全自由化しろ、そういうふうな問題であると思います。  そういう意味で言うならば、今やられているのは、例えば食料自給率で言うならば、今でさえ危ないのにこれから要りもしない外米をどんどん入れるというようなことで、これによって下がる。それからこれまでいろいろやっていたものもカレントアクセスでこれが義務づけられている、そういうことになればいや応なしに下がらざるを得ないと思います。  そういう今の政府の方針からいって、自給率を上げるなどということは全く夢物語というか、たわ言というかごまかしというか、何と言っていいかわからない状況だと思います。その意味で私は、今のような状況のもとで減反を強制し、そして罰則を加えてまで減反をさせるというのは、自給率を下げるための強力なてこ以外の何物でもないというふうに思います。  こういうふうなやり方、公約を守らず、そして国会決議を踏みにじった、民主主義を根本から踏みにじったという、こういうやり方は私はやはり歴史に長くとどめられるべきだと思います。
  104. 林紀子

    ○林紀子君 どうもありがとうございました。
  105. 矢田部理

    委員長矢田部理君) 以上で参考人に対する質疑は終わりました。  参考人には、貴重な御意見を述べていただきましてまことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。  本日はこれにて散会いたします。    午後二時三十六分散会      —————・—————