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1994-11-29 第131回国会 衆議院 法務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成六年十一月二十九日(火曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 金子原二郎君    理事 斉藤斗志二君 理事 志賀  節君    理事 島村 宜伸君 理事 中島洋次郎君    理事 長浜 博行君 理事 冬柴 鐵三君    理事 山田 正彦君 理事 小森 龍邦君       奥野 誠亮君    梶山 静六君       塩川正十郎君    橘 康太郎君       浜野  剛君    山本 有二君       大口 善徳君    柿澤 弘治君       左藤  恵君    笹川  堯君       津島 雄二君    富田 茂之君       中井  洽君    山岡 賢次君       佐々木秀典君    坂上 富男君       山花 貞夫君    枝野 幸男君       錦織  淳君    正森 成二君       徳田 虎雄君  出席国務大臣         法 務 大 臣 前田 勲男君  出席政府委員         法務政務次官  角田 義一君         法務大臣官房長 原田 明夫君         法務大臣官房司         法法制調査部長 永井 紀昭君         法務省刑事局長 則定  衛君         法務省人権擁護         局長      筧  康生君         法務省入国管理         局長      塚田 千裕君  委員外出席者         最高裁判所事務         総局総務局長  涌井 紀夫君         最高裁判所事務         総局人事局長  堀籠 幸男君         最高裁判所事務         総局民事局長         兼最高裁判所事         務総局行政局長 今井  功君         参  考  人         (早稲田大学法         学部教授)   鈴木 重勝君         参  考  人         (元朝日新聞編         集委員)    野村 二郎君         参  考  人         (日本弁護士連         合会事務総長) 稲田  寛君         法務委員会調査         室長      河田 勝夫君     ――――――――――――― 委員の異動 十一月二十九日  辞任         補欠選任   浜野  剛君     山本 有二君 同日  辞任         補欠選任   山本 有二君     浜野  剛君     ――――――――――――― 十一月十五日  非嫡出子差別を撤廃する民法等改正に関する  請願矢島恒夫紹介)(第五二四号) 同月二十一日  法務局更生保護官署及び入国管理官署増員  に関する請願正森成二君紹介)(第八五五号  )  同(岩佐恵美紹介)(第九三八号)  同(小森龍邦紹介)(第九三九号)  同(穀田恵二紹介)(第九四〇号)  同(佐々木陸海紹介)(第九四一号)  同(志位和夫紹介)(第九四二号)  同(寺前巖紹介)(第九四三号)  同(中島武敏紹介)(第九四四号)  同(長浜博行紹介)(第九四五号)  同(東中光雄紹介)(第九四六号)  同(不破哲三紹介)(第九四七号)  同(藤田スミ紹介)(第九四八号)  同(古堅実吉紹介)(第九四九号)  同(正森成二君紹介)(第九五〇号)  同(松本善明紹介)(第九五一号)  同(矢島恒夫紹介)(第九五二号)  同(山原健二郎紹介)(第九五三号)  同(吉井英勝紹介)(第九五四号)  非嫡出子差別を撤廃する民法等改正に関する  請願金田誠一紹介)(第八五六号) 同月二十二日  非嫡出子差別を撤廃する民法等改正に関する  請願大野由利子紹介)(第一〇四八号)  法務局更生保護官署及び入国管理官署増員  に関する請願佐々木秀典紹介)(第一〇四  九号)  同(坂上富男紹介)(第一〇五〇号)  同(冬柴鐵三君紹介)(第一〇五一号)  同(佐々木秀典紹介)(第一一〇五号)  同(坂上富男紹介)(第一一〇六号)  同(徳田虎雄紹介)(第一一〇七号) 同月二十四日  法務局更生保護官署及び入国管理官署増員  に関する請願枝野幸男紹介)(第一一九六  号)  同(坂上富男紹介)(第一一九七号)  同(錦織淳紹介)(第一二七八号)  同(大口善徳紹介)(第一五〇八号) 同月二十五日  法務局更生保護官署及び入国管理官署増員  に関する請願津島雄二紹介)(第一六五九  号)  同(富田茂之紹介)(第一六六〇号)  同(中井洽紹介)(第一六六一号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 十一月二十四日  法務局職員大幅増員に関する陳情書  (第一  九号)  法務局出張所適正配置に関する陳情書  (第二〇号)  法律扶助に関する基本法制定及び財政措置の  拡充・強化に関する陳情書外四件  (第二一号)  治安維持法犠牲者国家賠償法制定に関する陳  情書外四件  (第二二号)  刑務所内の処遇改善に関する陳情書  (第二三号)  人権擁護のため警察署取調室での弁護士同席に  関する陳情書  (第二四号)  在日朝鮮人人権擁護に関する陳情書外一件  (第二五号)  高齢者自己決定権の確立に関する陳情書  (第二  六号) は本委員会参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  裁判所司法行政法務行政及び検察行政、国  内治安人権擁護に関する件(法曹界綱紀粛  正問題)      ――――◇―――――
  2. 金子原二郎

    金子委員長 これより会議を開きます。  裁判所司法行政法務行政及び検察行政国内治安人権擁護に関する件について調査を進めます。  本日は、特に法曹界綱紀粛正問題について調査を進めます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  各件調査のため、本日、参考人として早稲田大学法学部教授鈴木重勝君、元朝日新聞編集委員野村二郎君、日本弁護士連合会事務総長稲田寛君の御出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 金子原二郎

    金子委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――
  4. 金子原二郎

    金子委員長 この際、参考人各位一言あいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただき、調査参考にいたしたいと存じます。  次に、議事の順序及び発言について御説明申し上げます。  まず、鈴木参考人野村参考人稲田参考人の順に各十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。  なお、念のため申し上げますが、発言の際は委員長の許可を得ることとなっております。また、参考人委員に対し質疑できないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきいただきたいと存じます。  それでは、まず鈴木参考人にお願いいたします。
  5. 鈴木重勝

    鈴木参考人 早稲田鈴木でございます。  話が細かくなると思いまして、レジュメというものをつくってまいりました。これはどうも、子供のときからの癖で、一夜漬けの癖が直らないものですから、ゆうべ仕上げたのでありますけれども、少々ミスプリなどあるかもしれませんが、ひとつ意のあるところをお察しください。  私が意見を述べるように言われましたのは、ここに書いておきましたように法曹界綱紀粛正問題でありますけれども、そのうちの中でも弁護士、法曹三者の中でも弁護士の、しかも、倫理とか綱紀というよりも懲戒の問題に限定しましてお話ししたいと思っております。長いこと懲戒委員会をやっておりまして、その経験がございますので、私にとっては一番ここでは取り扱いやすい問題かと思っております。  まず、今回の続発した巨額事件でありますけれども、これは、ここに書いておきましたように、私ども認識では、どうも今まで私どもが取り扱ってきました懲戒事件とはまるで違う、何といいますか、特殊例外的な事件だろうというふうに、いろいろ考えてみますとそうなると思います。もっとも、同じようなことはございましたけれども、こういうふうに頻発するようなのはみんな共通しておりまして、大体弁護士先生たちが巨額な借金を抱えている、その借金を抱えるために大体ああいうことが出てきたわけでありますけれども、大体このレジュメの2の5に書いてございますように、大体、弁護士が巨額な事件を取り扱うのはこれは日常的でございまして、また、巨額な金額が手元に入ってくるのもまた日常的なんですね。しかるべき時期にしかるべき人に戻されていくというのが日常的でございますけれども、今度の場合には、その人たち、今度の人たちが巨額な借金を抱えていたばかりにそちらに使ってしまった、流用したというような経過でもってこういう事件が頻発したんだろうと思います。  そういう意味で、しかも、巨額な借金を抱えたのは、やはりバブルの時期の雲をつかむような取引の結果、株とか土地とかそれからゴルフの会員権とかというようなことから借金を抱え込んだのでありますので、これが恐らく、もうこれからはこういうような事件というのは出てこないだろう、あるいは二、三出てくるかもしれませんけれども、もうそれは終息に向かっているんじゃないかというふうに思います。ですから、これは特殊例外的、まあ特殊例外的だから大目に見よとかなんとかというんじゃございませんけれども、これはやはり今までの我々が日常取り上げてきた事件とは根本的に違うだろうというふうに思います。  それで、私がむしろ取り上げたいのは、日常的に続発しておる懲戒事件であります。これはもちろん個人的な問題、弁護士さんの個人的な人格の問題でございますけれども、私はやはり、弁護士会の方が責任を負わなければいけない。なぜかというと、綱紀とか懲戒に関しましては弁護士会が独占しているのですね。ですから、ほかの何物も、ほかの国家権力の何物にも介入させないということがございます。ですから、自分責任自分処理しなければいけないところなんでありますけれども、私が長いこと懲戒に携わっておりまして、常々どうも不可解なことがございます。その不可解な手続の中で懲戒がなされているわけでありますけれども、それが今回のような、これからも続発するであろうような不祥事を生むのじゃないかというふうに考えております。  それを七不思議と、まあもっとも七つもございませんけれども、世間に言う七不思議というものですからあえて七つ数え上げてきたのでありますけれども、その重立ったものは、もともと弁護士会責任を負うといいましても、弁護士会機関で動いておりますから、その機関綱紀委員会をおいてないはずなんですね。ところがその綱紀委員会は、もうどういうわけだかよくわからないのですけれども、できる限り行動させない、懲戒問題を大変受動的に消極的に扱うようにしむけられている、つくられているわけですね。  ところが、ここに書いておきましたように、弁護士法の七十条では、「綱紀委員会はこ「会員綱紀保持に関する事項をつかさどる。」と書いてありまして、また、初めのころは各弁護士会もそれを高らかに宣言していたのが、綱紀委員会というのは会員綱紀粛正を図るんだということを言ってあったわけでありますけれども、やがて、今このレジュメに書いてありますように、綱紀委員会にそんなことしたら調査権限役割を与えるじゃないか、だからひいては綱紀委員会がその裁量で会員懲戒事由捜しをすることも許さざるを得なくなるから、もう綱紀委員会というのはそんなものじゃだめなんだ、ともかく受動的な役割しか与えられていないんだということを認識しろということが繰り返され強調されてきたものですから、どういうわけか、懲戒手続を見ましても、なるたけ懲戒しないように懲戒しないようにできているのじゃなかろうかというふうに考えております。  そして、例えば極端な話は、たまたま綱紀委員会なり殊に懲戒委員会で審査しておりますときに新しい事由が発見できる、あるいは今審理している弁護士の別な事件、そっちの方がよっぽど重大なんでありますけれども、そちらが出てきた場合に、我々はそれを取り上げてはならないのですね。建前上は、それは必ず、そういう新しい事件が出てきますと弁護士会会長に報告する、会長はどういうふうにするのか、その辺の後の手続はちょっとよくわからないのでありますけれども、しかしながら、私ども経験では、どうも会長にも報告しないのがある。  だから例えば、ごく最近ですけれども、A、B、Cという事件があったのですね、ある弁護士さんが。Aという事件で今我々審査している。ところが、どう見てもBの方が重大なんですが、本人も、Aでここでとやかく言われるのは大変心外である、Bは言われてもやむを得ないところがある、懲戒されてもやむを得ないと言うのですけれども、Bは取り上げられないのですね。なぜかというと、懲戒請求した本人と大変、何といいますか、共犯と言わないまでも、それがつくり出しているものですから、その本人懲戒請求しない限りはこれを取り上げない仕組みになっておる。この辺がちょっと少し根本的に考え直した方がいいんじゃないかというふうに私は常々言っておりますけれども、今のところはそれができない仕組みなんですね。  建前としては、弁護士法は、懲戒請求人が申し立てたらばそれに基づいて綱紀委員会なり懲戒委員会なりが発動するというのですけれども、大体懲戒事由というのは、弁護士法違反あるいは弁護士会信用とか品位を保持しなきゃいけないところを、それを侵害したから懲戒事件になるわけですね。こういうような懲戒事件は、ですから弁護士会信用とか弁護士会秩序維持のためなんですけれども、それを国民請求だけに任せるということ自体がもうそろそろ考え直させてもいいんじゃないか。  ともかく初めは、建前は、国民一億に、弁護士の、悪いことしている場合にはこういうことを悪いことをしているから懲戒しろということでできたんでありますけれども、しかし、実際に事件の流れを見てみますと、必ずと言っていいほど被害者懲戒請求をやるんですね。ところが、懲戒事件というのは被害者救済じゃ決してありませんので、救済はもちろんしないわけでありますけれども、ともかく申立人請求人というのは必ず被害者、だから、この辺の認識のずれも何とか調整しなければいかぬのじゃないか。つまり一億総告発者だという前提でもってできています。ところが、出てきているのは被害者だけである。この認識からしますと、被害者請求しない場合に、実はもっともっと隠れたものがある。事実、そう思いますけれども、あるのではないかということがあります。  そこで、七不思議一つとして、私は、弁護過誤の一一〇番がないというのはどういうことなのか。弁護士会は、大変苦労しまして、いろいろな活躍をされております。殊に、医療過誤だとか子供人権だとかということについて一一〇番を設けておりますけれども弁護過誤による一一〇番というのはないのです。これは一つは、私思いますには、同僚のそれを取り上げて、同僚をとやかく言うというのは大変苦痛なんだろうと思います。しかし、ほかのところの被害救済するように一一〇番を設けているのに、なぜ弁護士の非行による救済が一一〇番を設けられないのかということは、やはり不思議だろうと思います。  そこで、その対策なのでありますけれども対策としまして、私、今弁護士会なり、弁護士会から出ていきました法律相談所というのがありますけれども、その弁護士会のコーナーとか法律相談所の片隅に弁護過誤苦情処理相談所というようなものを設けたらどうか。どうも弁護士さんも綱紀粛正とか綱紀保持というものにアレルギーを持っておりまして、綱紀と言うともう大変いきり立つところがございますので、綱紀保持じゃないのです。  ともかく、現実も被害者だけの申し立てですから、被害者苦情処理を申し立てる。場合によっては、私ども見ていますと、かなり依頼者誤解もありますので、誤解のあるときは、それは誤解しているよということで説明してやる。ともかく気軽に被害をこうむった者が立ち寄って、そこで実情をお話しして、説明を聞いていく。聞いた方は、その苦情処理相談所の方は、本当は内部に苦情処理委員会というのを設けた方がいいと思いますけれども、そこでもってしかるべく振り分ける。  例えば、これは紛議調停に回した方がいいだろう、あるいはちょっと当の弁護士を呼んで話し合いをやる。出てこないことがあると思いますけれども、今までの経験では、なかなか出てこない人もおります。そうなりますと、実はこういうような事件懲戒請求に当たるよということを通知して、そうして出頭を促して、善処を促していくという形にしていけば、懲戒請求という大変儀式立った、形式張った手続によらなくても、何とかそこでもってかなりの処理ができるのじゃないか。その処理によりまして、被害をこうむっている者は、そのときに簡単に救済できますでしょうし、また、当の弁護士懲戒を避けられるかもしれない。そして、あるいはその懲戒が重大になる前に手を打つことによって、それほど重大にならないかもしれない。  この懲戒の結果というのは、確かに弁護士自治が貫かれておりまして、これは大変厳しい、私ども見ていると、本当に厳し過ぎないかなと思うくらい厳しいのでありますけれども懲戒に至るまでのところがどうも少し手ぬるいんじゃないかという感じがします。ですから、懲戒という結果を避けるためにも、またそういう重大な結果を避けるためにも、苦情処理相談所というものを設けまして、そこで救済を図りながら、弁護士の方の善処も要望していくという形は何とかとれないものだろうかというふうに思います。  それから最後に、私ども大変苦労しておりますのは、弁護士会懲戒規定というのは必ず会則とか、独自に懲戒規定をみんな持っておりますけれども、これが見られないのです。国会図書館にもない。日弁連の図書館、資料室にもない。どこにあるのかといいますと、日弁連調査室ですね。ここはもちろん日常執務をしておりますから、その執務を邪魔しながら、そこの戸棚から持ってくるということであります。何遍かは、大学から見に行きたいのだけれどもと言ったら、それならお前の方で二回ばかり指定してこい、そのうちのどれかをこっちが指定してやるからと言うので、そんなのじゃらちが明きませんので、私が自分で出かけていって、押しかけていって見たことがあります。  何も日本全国懲戒規定を非公開、秘密にしなければならぬ理由は全くないのでありますから、ですから、どこに行っても見られるように、そしてなぜそういうことをするかといいますと、各弁護士会がいろいろ工夫しておりまして、大変独自の懲戒手続を持っております。だから、そういうものを比較検討しながら、現に各弁護士会懲戒委員会もほかの会がどうなっているかということを知ることは大変有用だろうというふうに思いますし、私どものように関心を持っている者にとりましても、そういう手続規定についてはいつでも見られるようにしていただきたいというふうにこの機会にお願いしておきます。  ちょうど十五分でございますので、終わります。(拍手)
  6. 金子原二郎

    金子委員長 ありがとうございました。  次に、野村参考人にお願いいたします。
  7. 野村二郎

    野村参考人 野村でございます。  私、朝日新聞司法記者をやっておりまして、定年で退職した後も引き続き検察庁取材をしております。その経験の上に立って申し上げたいと思います。私、大体趣旨を書いておきましたので、それに従って申し上げたいと思います。  検察暴力事件が相次ぎまして、一連事件につきまして、検察は、組織的なものではない、個人の資質の問題だというふうに終始説明されています。そのとおりだと思います。検察暴力事件を見逃すほどいいかげんな機関ではないと思いますし、それほど乱暴な組織ではないというふうに思います。  ただしかし、組織の運用という点を見ますと、手抜かりとか、あるいは欠陥があったというふうに思います。これは昔の検察、昔と言いましても二十年ぐらい前になりますけれども、当時の検察と現在の検察とを比較すれば比較的明らかになるのではないかと思います。  私が司法記者として取材しておりましたときは、元大臣とか経済界の人が逮捕されたというふうなことがありましたけれども、釈放されて、その人たち取り調べの内容はどうであったかということを聞きますと、極めて紳士的であったというふうな答えが返ってきました。釈放されているわけですから、そういう人たち検察に別にお世辞を言う必要はないわけです。にもかかわらず、そういうふうな話を記者団の前で話すということは、かなり公正な捜査取り調べが行われていたのではないかというふうに私は思いました。この点は弁護士から裏づけの取材をしてもそのとおりであって、その当時は極めてフェアな取り調べが行われたというふうな感じを持ったことがあります。  なぜ、そういうふうな紳士的な取り調べが行われたのかと申しますと、戦後の数々の経済事件、それから政界の汚職事件公安事件を含めてですけれども無罪になった事件がたくさんあります。そういう無罪になった事件に対して、私が取材していたころの検事たちは、検察の恥だというふうな考え、私たちは決して、私たち検事自身ですけれども、私たちは決してそういうふうな誤りは犯してはいけない、きちんとした手順を踏んで、きちんとした事件を起訴し、起訴するからには有罪認定を受ける、そういうふうな捜査をするべきだというふうに自覚していたからだと思います。  当時、確かに一部の人で大声を上げて取り調べ検事がいました。これはいましたということがわかるのは、その当時、私は検事たち取り調べ室に、出入りは禁止されていましたけれども取り調べが始まる前とか夜になってからひそかに入って雑談をする機会があるわけです。雑談をしていると、ほかの検事大声を上げているというふうなことを何回か聞いたことがあります。そういうふうなことがありましたけれども、第一線の検事たちはあの人には困ったなというふうな話をしておりました。そのうちに、その検事はどこかに配置がえになっていなくなったというふうなことがあります。  当時の検察庁指揮官クラスの人には、自白をとらないとかなりひどい調子で検事にハッパをかけるというふうな雰囲気があったことは事実であります。しかし、そうではあっても、一線の検事たちはやはりきちんとした取り調べをするというふうな雰囲気があったと思います。そういうふうな雰囲気があったことで、被疑者参考人から尊敬あるいは信頼されるというふうな雰囲気ができて、それがその後の有罪に結びつく綿密な捜査をすることに連動したのではないかというふうに思います。  そういうふうな過去があるわけですけれども、では、なぜ、今回一連事件が起きたのか、一連暴力事件が相次いだのかということを、これは私の推測と、それから断片的な事実を総合して申し上げたいと思いますけれども、これは本来は法務検察当局が当然調査しなければならない課題でありますけれども、あえて私は申し上げれば、一つ検事経験不足があったのではないかというふうに思います。経験不足というのは、事件の摘発に波があったということであります。  日通事件からロッキード事件というのがありました。日本通運事件からロッキード事件を摘発するまで、約八年間のブランクがあります。それから、ロッキード事件からその後の撚糸工連事件までも、これは十年間のブランクがあります。その後、リクルート事件というふうな事件が摘発されておりますけれども、これはすべて検察が独自に捜査したものではなく、マスコミが先行して、捜査を開始したという経過があります。こういうふうな捜査のブランク、つまり検事取り調べ経験というものが不足した結果、取り調べに自信が持てないのではないか、焦りがあったのではないかというふうな気が私はしております。  それから、検事の不正に対する認識の度合いがあると思います。検事たちは、私が現場で取材していましたころは、やはり我々は正義のため事件を摘発するのだということを言っておりましたけれども、そうした中で適正な手順を踏むのだという意識があったわけですけれども、先ほどお話ししましたような大声を上げるような検事を直ちに配置がえするというふうなことが行われていたわけです。そういうふうなことが行われれば、暴力検事などが出るはずがないと思います。しかし、にもかかわらず、暴力検事が出たということは、我々は正義のために事件を摘発するのだ、部内の多少の気まずいことは余り口に出すのはよそう、そういうふうな雰囲気があったのではないかというふうに思います。  暴力を振るうというふうなことは、わからないはずはないと思います。検事の世界というのは案外情報の世界で、だれが何をやり、だれがどういうふうな考えを持っているのかということは、大体検事同士がわかっているような雰囲気があります。そういうふうなところで暴力検事が出るということは、暴力を振るうような事態になれば大声は出るでしょうし、物音がするはずです。そういうふうなことが検察部内でわからないはずはないと思います。わからないはずがないにもかかわらず、そうしたことが放置され、相次いで三件も暴力事件が起きたということは、そういうものに対して、検事のいわば仲間意識、先ほど申し上げましたように、多少都合の悪いことはもう目をつぶってしまおう、見て見ぬふりをしよう、そういうふうな雰囲気があったからではないかというふうに私は考えております。  それからもう一つは、これは検事の舞い上がりというか、思い上がりというか、そういうふうなものがあったのではないかというふうな感じがいたします。確かに、検事たちは正義のため、政界の腐敗を摘発するという仕事をしているわけです。しかも捜査というのは、これは検事の話ですけれども、とにかく真剣勝負であるというふうなことがあります。そうした中で、捜査が進展しますと、それこそマスコミも全世論もすべてが検事の応援団化するような傾向があります。そういうふうな雰囲気になってきますと、高揚した気分になるのではないかというふうに思います。  高揚した一つの例を申し上げますと、新聞記者との記者会見がありますけれども、その記者会見で、おまえ呼ばわりをしながら新聞記者たちと会見するというふうなことが伝えられております。おまえ呼ばわりというのは、極めて仲のいい間柄ならばいいわけで、別に問題にすることはありませんけれども、そうしたおまえ呼ばわりをするような、それが極めて公式的な会見の席上でそういうふうな非礼かつ思い上がった言い方をするというふうな雰囲気検察内部に充満していたのではないかというふうに思います。こういうふうなことから考えますと、やはり正義というものと、正義に対する認識、それから使命感、そういうものに対する認識にやや誤りがあったのではないかというふうに私は考えております。  そういうふうなことを踏まえて、さらに批判的な意見を申し述べたいと思いますけれども汚職事件を摘発するということは大変重要なことであります。しかし、摘発に意義があるのではなくて、裁判で有罪を獲得するというのが法律家である検事の務めであります。最近は、撚糸工連事件で二審で無罪判決が出ております。それから、リクルート事件では一審で無罪判決が出ております。派生的事件無罪が出るということは往々にしてあり得ることですけれども、中心的な事件無罪が出るということは、検事にとって極めてゆゆしき事態だと受けとめるべきだと思います。  戦後の非常に乱暴な取り調べをして、乱暴と言うとちょっと語弊がありますけれども、かなりずさんな捜査をしていた戦後の時代と違いまして、綿密な捜査、特に人権を考えながら捜査を完結するということが検察の使命である現在で無罪判決が出るということは、検察にとって大変な痛手であるに違いないと思いますし、そういうふうなことに対して、厳しくみずからを見詰める必要があるのではないかというふうに思います。もちろん、この二つの事件は上級審で係争中でありますから、最終的に結論が出ておりません。あるいは、逆転して有罪になるということもあり得ると思います。けれども、一たんは裁判所、裁判官を説得することができなかった、捜査の結果が失敗したという事実が示されているわけです。  そういうふうなことを考えますと、検察は今ここで自分たちのあり方というものに対して真剣に見詰め直す必要があるのではないかと思います。検察の存在感というのは、威信と国民間の信頼にあると思います。検察の威信、信頼というものは、ただ事件を摘発するということではなく、きちんとした適正な手続に従って法律家としての職分を全うすることだというふうに思います。(拍手)
  8. 金子原二郎

    金子委員長 ありがとうございました。  次に、稲田参考人にお願いいたします。
  9. 稲田寛

    稲田参考人 日本弁護士連合会の事務総長、稲田寛でございます。参考人ということではございますが、弁護士会の立場としまして、今回の綱紀粛正の問題を厳粛に受けとめ、日弁連としての決意を中心に申し述べさせていただきたいと思います。  初めに、最近の相次ぐ弁護士非行、不祥事によって、国民の皆さんの弁護士に対する信頼並びに期待を裏切り、また、多くの関係者の皆様方に御心配をおかけしておりますことにつきまして、心からおわびを申し上げます。  日弁連土屋公敵会長を初め執行部は、このような事態を深刻に受けとめ、去る十月十二日、土屋会長は副会長でもある佐伯弘東弁会長ともども記者会見を行い、市民の皆さんに深くおわびするとともに、全国会員を招集し、自粛を促し、自戒を誓い合う決議を行いたい旨を表明いたしました。  これを受けた日弁連理事会は、十一月十五日、相次ぐ弁護士の不祥事は、基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とする弁護士の倫理に著しく背くもので、極めて遺憾であり、国民に対し深くおわびするとともに、綱紀懲戒手続をさらに厳正かつ迅速に遂行するとともに、弁護士倫理の高揚と不祥事の再発防止に一層の努力をする旨を誓い合う決議をいたしました。次いで十一月二十二日、日弁連総会におきまして、全会員により同趣旨の決議をいたしました。  また、日弁連は、理事会決議に先立ちまして、全国各単位会に対しこの決議に賛同する旨の組織的決定を要請し、例えば東京弁護士会におきましては、十一月七日、常議員会におきまして同種の決議を行い、さらに十二月一日には総会決議を行う予定となっております。  加えて、日弁連執行部は、不祥事の再発防止策の徹底強化のため、綱紀委員会に対し、弁護士綱紀の粛正のために日弁連が今後とるべき方策を早急に検討し、答申するよう求めております。また、既に行ってきている各弁護士会等による弁護士倫理研修、新人研修の充実強化とともに、特に倫理研修の義務化を検討するよう名会に要請いたしております。  今回、相次ぎ逮捕または告発され、本年九月から十月にかけて報道をされました四人の弁護士につきまして検討いたしますと、先ほど参考人鈴木先生のお話にもありましたが、その罪名等は横領二、脱税二となっておりますところ、その非行の行われた期間はいずれも一九九〇年から一九九二年にかけてのことであり、またその対象とされている金額が億単位に上っている点に共通点が見出されるものであります。しかも横領の契機が、不動産や株式等に多額の投資をした上へ回収不能となり負債に追われた結果であったり、株式投資で得た莫大な所得隠しであったり、マスコミにも報道されましたように、弁護士自身がバブルに巻き込まれ、非行にまで及んだと言わざるを得ない事例であります。  従来の懲戒処分の理由として典型的なものは、弁護士の職務解怠や受任権限の逸脱といった事例や双方代理等の禁止違反といった職務一般に関する規律違反を理由とするものが比較的多く、また横領事例でありましても、今回のごとき多額の事案は極めてまれでございました。  しかし、一部の事例にせよ、バブルの影響であるとして看過し得ない点は、本来、バブルに翻弄され、事件に巻き込まれたり破産状態に陥った人たちの相談相手であるべき弁護士が、プロフェッションとしての自覚を忘れ、金銭感覚に麻痺し、みずから金銭のみを追い求め、弁護士としての倫理感覚が欠落していたものと言わざるを得ない点にあります。こうした事態を踏まえまして、当該会員に対し、所属弁護士会において除名という最も厳しい懲戒処分に付したことはもとよりでございますが、日弁連としましては、既に申し上げましたように、全会員に対し、弁護士倫理の高揚を訴え、改めて弁護士としての自覚を促し、会員もまたこれにこたえようと誓っているものであります。  日弁連並びに各弁護士会において今日まで取り組んでまいりました弁護士非行の防止策を大別いたしますと、一つは非行の一般的予防ということであり、二つ目には非行の早期発見とその対応でございます。そして三つ目に、懲戒請求事件の厳正迅速処理ということに類型化できるかと思います。  まず、弁護士としての品性と教養を保持するとともに、非行の一般的予防の見地からも、日弁連として長年にわたり取り組んできましたのは、会員教育としての研修制度の継続的実施と弁護士倫理研修の充実強化ということであります。  日弁連は、一九九〇年三月総会におきまして三十五年ぶりに弁護士倫理全文を改定し、これを会員に周知徹底するため、事例設問式の研修教材である「事例集・弁護士倫理」を発行したり、あるいは「弁護士倫理研修マニュアル」を編集し、さらには、現在では「注釈弁護士倫理」を編さん中であり、近々発刊の予定になっております。  こうした倫理研修の一層の強化徹底策の一つといたしまして、日弁連は、このたび各弁護士会に対し、新人研修の義務化とともに全会員に対する弁護士倫理研修の義務化を呼びかけたわけでございます。  また、今後の課題といたしましては、倫理規定にとどまらず、業務規準の明瞭化や執務体制の正常化についても関連委員会等で検討の上、会員の業務処理に当たってのきめ細かい指導要領を策定し、会員の非行予防に役立てていく方針であります。  他方、残念ながら生じてしまった非行事例につきましては、その事案の内容を公表することによって他の会員の戒めとし、同種事例を防止するために、一九九一年十月より、懲戒処分があったときはそのすべてを日弁連機関誌である「自由と正義」に理由を付して掲載し、事案によってはこれを記者会見等で発表いたしております。  非行の早期発見に努めることも、非行を未然に防止するとともに、大きな事件や継続的事件を誘発させないために重要であると認識し、日弁連としましては、名会に対し、会員が非行に及ぶおそれがある場合は弁護士会は積極的に指導に当たらなければならないとし、そのために非行の予防ないし早期発見に努めることを事務局職員に周知徹底するよう求めております。  その具体的な対策一つとして、市民の人たちから寄せられる会員に対する苦情処理の強化とその迅速な処理ということが挙げられます。去る九月三十日、札幌で行われました司法シンポジウムでも、市民の相談窓口の設置推進が検討され、席上、福岡県弁護士会で積極的に市民の苦情受け付けを行いましたところ、苦情申し立ては大変増加したけれども、紛議、懲戒の申し立てがなくなったという例が報告されております。  日弁連が全国の弁護士会職員を集めて毎年行っております職員研修におきましても、今年度は苦情処理についての事務局体制の整備を検討いたしております。  今後弁護士会におきましては、むしろ市民の人たちに対する広報などにおいて、苦情受け付けや紛議の調停を弁護士会が積極的に行っていることを呼びかけ、苦情相談を広く取り上げ、その迅速な処理をしていくことにより、会員の非行のおそれがあれば未然に防止し、また非行を早期に発見すること及び適切迅速な処理を会としても指導し、解決を図ることに努めなければならないと考えております。  また、会員弁護士業務や私生活の面で適切な助言を必要とする場合に、相談に応じ得る会の体制のあり方の検討も今後の課題の一つであろうと思っております。  こうした取り組みにもかかわらず、残念ながら非行を行った会員に対する懲戒処分の厳正迅速な適用は、自治団体としての日弁連並びに各弁護士会にとってみずからに課せられた責務であります。  日弁連としましては、綱紀委員会を中心に会員綱紀粛正のための諸施策を検討しておりますが、各弁護士会綱紀委員会に対しては、綱紀委員会調査期間を原則として六カ月以内とすることの日弁連指針を示し、この指針は名会においても会則化するように指導しております。また、懲戒処分に関しましては、既に述べましたように公表制度が採用されておりますが、加えて業務停止処分の執行強化を図ったり、あるいはさらに懲戒委員会の審査を原則として一年以内に行うよう迅速指針を示しておりますのも、綱紀懲戒手続の適正迅速化の一環であります。  日弁連におきましては、各弁護士会綱紀委員長を集めて定期的に協議会を行っておりますが、たまたま本年度協議会はきのうからきょうにかけて日弁連で開催されております。そこでは弁護士会による苦情処理綱紀保持についてであるとか、懲戒請求事件の適正迅速な処理についてといった協議事項が検討されております。  私どもは、数年来、市民のための司法改革を提唱し、そのためにも自己改革の必要性があることを訴えてまいりました。私どもの提唱している司法改革も、市民の人たちの信頼を得てこそ初めて実現し得るものであります。  また、弁護士人権擁護と社会正義の実現という使命遂行のために、弁護士会に与えられている弁護士自治をみずからの責任において維持するためには、弁護士一人一人がその責務の重要性を改めて認識し、今までにも増してみずからの行動を厳しく律していかなければならないと痛感いたしております。そのためには、弁護士倫理研修や会員の継続的研修の一層の強化もさることながら、弁護士会会務への積極的参加と会務を通じての公的使命の自覚の高揚が何よりも大切であろうと考えております。  刑事当番弁護士や法律相談事業あるいは法律扶助などの弁護士活動を一層推し進め、活性化することによって、市民の人たちの信頼を回復させ、弁護士に対する信用の維持増大に努めなければならないことを大半の弁護士は自覚し、公的活動に積極的に取り組んでおりますことをどうか御理解いただきたいと申し上げまして、私の陳述を終わらせていただきます。  ありがとうございました。(拍手)
  10. 金子原二郎

    金子委員長 ありがとうございました。  以上で参考人意見の開陳は終わりました。     ―――――――――――――
  11. 金子原二郎

    金子委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑者にあらかじめ申し上げますが、質疑の際は、まず質疑する参考人のお名前を御指名願います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。斉藤斗志二君。
  12. 斉藤斗志二

    ○斉藤(斗)委員 本日は、参考人の御三方には御多忙の中、国会へお越しくださいまして、貴重な御意見を伺わせていただきましたことをまずもって御礼を申し上げます。  私の持ち時間はわずか五分しかないので、質問を絞って行いたいというふうに思います。  最近の法曹界は乱れているという国民の声があるわけでございます。不祥事が多発し、国民からの信頼が著しく低下している、こういう状況では大変けしからぬ事態だなというふうに思っているわけでございます。法を守るべき人、また法の番人であるべき人が法を犯し、悪事を働くということは許されないことだと思います。  そこで、まず初めに鈴木参考人にお尋ねをいたしたいというふうに思います。  教授は「弁護士懲戒手続の審判対象」という論文を著されるなど、ちょうどきょうお持ちしたのでありますけれども弁護士会綱紀委員会懲戒委員会等についても見識が大変深くていらっしゃるわけでございます。そこで、弁護士会及び日弁連懲戒制度及び現在の運営につきまして、ただいまのお話では機能していないという御指摘だったというふうに思うわけでございますが、その後を受けまして日弁連稲田さんの方からも、今後の日弁連としての対応として幾つか具体的な例示が挙げられたわけでございます。鈴木参考人には、特に具体的に弁護士会による法律相談所のコーナーに弁護士一一〇番というようなものを設けたらどうかとか、このような具体的な御提案をされておられますが、先ほどの稲田参考人の対応では私はまだまだ不十分だと思うのでありますが、その点、さらなる御意見をお伺いしたいと思います。
  13. 鈴木重勝

    鈴木参考人 稲田さんの話を聞きまして、一方、大変心強いと思うのでありますけれども、大体今までの私の印象だと、会長が変わりますと、まず一番先に会員綱紀粛正ということを強調するのであります。毎度期待するのでありますけれども、今度は恐らく期待外れがないだろうというふうに考えております。  先ほどの苦情処理、実は札幌と福岡の実情を私はよく知りませんけれども、少なくとも東京とか関西の方にはそういう弁護士の非行による苦情処理、そういう専門的なコーナーを設けてほしいということでございます。  それから、今質問のあったことでございますけれども、私が一番不満なのは、綱紀委員会しかないことですね。弁護士会は会でありますから、委員会で動くしかないわけでありますけれども、その委員会は、弁護士会の中で綱紀粛正を担当するのは綱紀委員会しかない。ところが、その綱紀委員会にできる限り探索とか、先ほど稲田さんの方から事前に早期発見ということを言われました。何か新聞にもちょっと出ていましたけれども、果たして今の体制のままで、どの弁護士会でも早期発見するように指示しても、果たしてそう動くかどうか。つまり、警察のような探索はもうやらぬのだということを大変強調されておりますので、それがどういうふうにできるのか、本当も言うとちょっと戸惑っております。  それだけではなくて、綱紀委員会で審査、調査中に別な事件が発見できる、これも取り上げることはできないのですね。第二弁護士会はこれを取り上げることができるように仕組みをしておりますけれども、ほかのところはなかなかそうはいかない。それで、早い話が刑事訴訟法ですと訴因を追加するとか変更するとかということができますし、民事訴訟法でも訴えを変更したり追加して審判対象をどんどん拡大したり変更したりできるのでありますけれども、この懲戒手続の場合はどういうふうに発見ができたとしてもそれは見送られなければならない。  しかも、私が一番不満なのは、大体懲戒にかかってくるまでにかなり時間がたっておりますけれども、三年たちますと除斥期間で、もはや未来永劫それが懲戒されることがないのですね。ですから、幾つかはこれはもう既に除斥になっておるということで、審査対象から外されるということがこれまでたびたびございました。  ですから、いわんや、これから、わかったところで会長に報告しろということになっておりますけれども会長が一体どういう手続をとるのか、私ども、今まで会長に報告した経験は一度もないのでありまして、委員長に向かって会長に報告するかと言っても、いや、そのつもりはないと。多分そうだろうと思いますけれども、仮に会長に報告したとしても、それが一体どういう手続でどういうふうにもう一度かかってくるのか、それとも私どものところへ来るのか、その辺の保証も全くない。それが三年経過したらもはや懲戒にかからないという、そういうような構造的な仕組みのまずさというのもあるのじゃないか。この辺でほくそ笑んでいる人もいるのじゃないかと。  だけれども、二言目には、それに対する反論としては被懲戒弁護士の防御権の確保が必要だということを。だから、そんなにやたらめったら、途中で見つけてもそれを連れてきて審査するわけにいかないと言うけれども、私どもが考えますに、その防御権を十分保証してやれば一向に差し支えない。というのは、本人が一番よく知っているわけでありますから、その非行を犯したのは本人でありますので、それに十分な防御権を与えてやれば、私どもの審査対象とすることは一向に差し支えないだろうというふうに私は思っております。  そればかりではなくて、なかなか出てこないのでありまして、大変苦労するのが、懲戒委員会は大抵主査という者がおりまして、その主査の人が大変丹念に対応するのでありますけれども、なかなかうまく折り合いがつかない。先ほど稲田さんの方から一年以内にというのも、本当にやってくれれば大変いいことだなと思いましたけれども、どうしてもやはり二年過ぎることもあるのですね。そのうちだんだん懲戒委員会の方も、何となくムードでもって、懲戒するのほかわいそうだということも出てくるのでありますけれども、それはもう大変よくわかるのであります。  そこでもって、もっと本当に集中的にできるようにするには、本人に、被懲戒弁護士に協力させるような仕組みもつくる。そして確かに、出てこなければそれも一つ懲戒事由でありますけれども、それも厳正に懲戒事由として科懲するということを厳しく日弁連の方から達していただければ、懲戒委員会の方から達していただければそれなりの動き方があるだろう。  私はどうも、もう一度日弁連の方で懲戒手続それ自体を根本的に検討する必要はあるだろうと思います。そのときに、できれば私ども外部の者も参加させてもらえないか。もちろん弁護士自治でありますから外部の者はだめだということなのでしょうけれども、どうも今までのところは隔靴掻痒の感がございまして、もうちょっと意見を反映させてもらえないかというふうに思っております。  お答えになったかどうかちょっとわからないのですが、済みませんでした。
  14. 斉藤斗志二

    ○斉藤(斗)委員 先生、ありがとうございました。  私の時間が参りましたので、以上で終わります。
  15. 金子原二郎

  16. 坂上富男

    坂上委員 参考人の先生方、大変御苦労さまでございます。  二、三点御質問させていただきますが、私の質問時間十五分でございますので、簡略で結構でございますので、問題点だけ指摘をいたしますのでお答えをいただきたい、こう思っておるわけであります。  私は、検事の不祥事件、そしてまた弁護士の不祥事件、いわゆる司法の両翼を担う大事な当事者なのですね。まさに日本の司法制度が始まって以来の不祥事じゃないか。と申し上げまするのは、検事総長が法務大臣から厳重な注意を受ける、それから日弁連会長さんが国民の前におわびをしなければならぬ、こういう事態でございまして、事はやはり私は大変深刻な問題だろうと思って、この委員会の任務も大変重要なのじゃなかろうか、こう思って先生方にお聞きをいたすわけでございます。  まず、弁護士会の方としては、今鈴木先生のおっしゃいましたことに少し補足があるんじゃございませんか。あったら一言どうぞ、言っていただくなら結構ですよ。
  17. 稲田寛

    稲田参考人 お答えさせていただきます。  鈴木先生の御指摘はごもっともだと思いますが、ただ、綱紀委員会になぜ自分の方で立件できる権限が与えられていないかという点につきましては、綱紀委員会懲戒請求がなされた場合に審査をする機関であるために、みずから立件するということは抑制しようというのが法の建前でこのようになっているのだろうと理解いたしております。  ただ、先ほど御指摘のように、余罪が発見されてくる、綱紀委員会の方々が一番先端におって、弁護士の非行を理解しておられるわけですから、その中で別件が出てきたときに早くこれを処理するということは大切なことであろうと思います。そのために、法五十八条二項は、会において懲戒事由を探知した場合には、会として綱紀委員会懲戒請求が、懲戒の申し立てができる旨定められております。したがって、この条文を十分に生かして迅速に対応するということが大切な点であろうと理解いたしております。
  18. 坂上富男

    坂上委員 私も弁護士ですから、わかっておるつもりでございます。ただ、今あらわれた弁護士の不祥事件だけでなくして、今後もまだ出てくると予測されておるようでございますが、これはどうですか。もうございませんか、こういう厳しい問題は。
  19. 稲田寛

    稲田参考人 お答え申し上げます。  大変厳しい問題でございますが、先ほど原因を分析させていただきましたようにバブルの影響であるという観点からしますと、まだ少し事件として表面化してくるんではないか、残念ではございますが、予測せざるを得ない状況にございます。
  20. 坂上富男

    坂上委員 この際やはり徹底的に綱紀粛正だけはしていただきたい、こう思っておるわけでございます。  見てみますると、いわゆるこういう不祥事を起こされておる先生方というのは、大体五十前後のいわゆるベテラン弁護士がこういう問題を起こしておられるように私は思っておるわけでございます。検察庁検事の不祥事については、任官をいたしましてから四年、五年という、いわゆる新進気鋭の諸君が、これから本当に検察をしょって立つという、中堅になるという段階においてこういう問題が起きてきているんじゃなかろうか、こう私は思っておるわけでございます。  そこで、野村先生、いかがでございましょうか、先生大変遠慮なさった御意見じゃないかと思うんですが、組織的ではなくてやはり個人的な問題ではなかろうか、しかし、組織の運営において手抜かり、欠陥があったんじゃなかろうか、こういう御指摘のようでございますが、いろいろの論調を見てみますると、いわゆる検事組織と大事にひずみがあるんじゃなかろうか、こういう指摘がどうも世論の中にあるようでございます。そして、このことが国民意識と徐々にずれていってこういうとんでもないことが起きたんじゃなかろうか、こう言っているものでございまするから、私は、やはり組織上、人事上の問題が出てくるんじゃなかろうか。  金沢元検事の判決を見てみますると、自白をとることによっていわゆる上司から認められる、そして場合によっては特捜入りができるんじゃなかろうかという、言葉は古いのでございますが、出世欲、そういうようなものが自白強要、そして自白強要するためにこういう暴行事件を起こしてきて、本当に人権無視で、私たちにとっては想像できないようなとんでもないことが起きておる。これがひとり金沢君だけの問題ではなくしてほかのところにも起きたことに、私は本当に愕然としたわけでございます。  三ケ月法務大臣の時代に私は予算委員会で、この問題が起きましたとき、こういう問題が起きても検察はひるむことなく、ひとつ特捜は徹底的な汚職の解明というものをすべきであるということを、激励を兼ねて質問したことがあるのでございます。その後、この金沢問題以上に三つ、四つと出てきまして、私も愕然といたしまして、これはもう放置できない、大変組織的な、人事的なひずみが検察の内部にあるんじゃなかろうか、こんなことを大変危惧をしているのでございますが、率直な意見をひとつ先生からも承りたいと思います。
  21. 野村二郎

    野村参考人 人事のことは非常にデリケートで申し上げにくいと思いますけれども検事になった若い人たちが東京地検の特捜部あるいは大阪地検の特捜部に配属されたいという気持ちを持っておることは確かだと思います。それでまた、現場の検事の出身者が、特捜部出身の検事が栄達するということも事実であります。  そういうふうなこともありますけれども、ただ、捜査というのは、私はある意味では職人的なものが必要ではないかというふうに思います。ですから、単なる部内の立身出世、栄達ということを念頭に置いた検事が特捜部に配置されるということは不適切ではないかと思います。やはり素朴な正義感に基づいて、正義を実現していくんだということに専念できるような気持ちの検事の方がいいんではないかと思います。  人事でしばしば指摘されるのは、特捜部出身の検事は大阪高検検事長にしかなれないという言い方があります。しかし、これは見方によって、大阪高検検事長にもなれるんだという見方もできると思います。官庁の組織については、行政官として適切な人と、いわば現場の専門職として適切な人と両方あると思います。そういうものを一緒くたにして、大阪高検検事長しかなれないんだというふうな見方をするのは間違いだと思います。ですから、私は特捜部に配置する検事の適性ということを見きわめながら、また特捜部に配置された後の検事の力量、資質というものを見きわめながら人事をすることが一番いいんではないかというふうに思います。
  22. 坂上富男

    坂上委員 時間がありませんので、急ぎます。  拘禁二法という問題が十数年来問題になっております。特に、私たちがこれに反対をしておる大きな理由の一つは、いわゆる密室において自白強要されて、そして冤罪になるんじゃなかろうかということで、大変危惧をいたして反対をしているわけでございますが、私は、この際、こういう問題が庁内で公然と起きるような事態というのはやっぱりこういう密室のやり方に問題があるんじゃなかろうか、こう思っておるわけでございます。  ただ、現状の予算の関係がち見ますると、代用監獄、こういう制度が現に存在はしておるわけでございますが、本当に人員、施設ともに拘置の施設というものをこの際やっぱり大蔵省からきちっとひとつ理解をしてもらって、予算をとらなければならないなということを、私は本日のこの審議を聞きながら感じていたところでございます。  でありますから、これはまあ弁護士会の立場においても強く反対されておるわけでございまするから、私たちのこれはまた責任でもあるわけです。いわゆる代用監獄をいつまでも放置しておくというこの制度、やっぱりきちっとした拘置所をつくるということが、私たちの国会のまた任務でもあろう、こう実は私思っておるわけでございまして、これはまた日弁連からも御意見を聞きたい、こう思っておるわけでございます。  それから、いま一つどうもこの捜査については限界があって、いわゆる政治家の汚職というものを取り締まることがなかなか困難なために、こういう問題も起きてくるんじゃなかろうか、こんなところに私は政治改革の実現はやっぱりもっと本当に、刑法、いわゆる収賄罪というものをもっときちっと取り締まりしやすくするということが必要なんじゃなかろうかとも思っているわけでありますのでありますから、私たちは今あっせん利得罪あるいは地位利用罪、こういうことを何としても実現をしたい、こう思って、これができない限りは政治改革は実現しない、こういうふうに実は思っておるわけでございます。  そんなような意味で野村先生からは、あっせん利得罪、今のいわゆる贈収賄罪の問題点がありましたら、これの問題とあわせてお聞かせをいただきたいし、日弁連総長からは、今言ったようないわゆる密室捜査における間違いの部分もお聞かせをいただきたい、こう思っておるわけでございます。  それからいま一つ弁護士会、東京なんかは本当に会員が多うございまして、弁護士会が完全に把握できていないんじゃなかろうか。例えば、弁護士会会員が総会に出席しない、これは田舎なんかは綱紀対象になっているんですね。でありますから、僕らも国会と、弁護士会が優先した場合は、許可をいただいて弁護士会の総会に出席している、こういうわけです。欠席をすると厳重に取り調べを受けまして、いわゆる綱紀対象にするほどの大変な厳しさを私らは持っておると思っておるわけであります。  特に、弁護士さん方は公害問題、薬害問題、消費者問題、冤罪問題、本当に献身的な活動をしているのがその大半なんでございます。その一部がこういう事態を引き起こすということに、やはり私たち組織全体の中に大きな何かがあるんじゃなかろうか、こういうものを克服するために、今御説明があったわけでございますが、こういう点を私からも指摘をいたしまして、いま少しひとつ御答弁をいただきたい、こう思います。
  23. 金子原二郎

    金子委員長 時間がございませんので、簡潔にお願いします。
  24. 稲田寛

    稲田参考人 それでは、最後の御質問についてお答えさせていただきます。  確かに弁護士会員が増加をして、特に大単位会の場合には、会員の意思形成であるとか指導監督について非常に困難な面が出てきているのも御指摘のとおりであります。ただ、大単位会におきましては、逆に研修制度を組織化するとかという形で対応しているわけですが、御指摘のように会務に参加しない、あるいは研修にも出てこないという会員がややもすれば問題を起こしやすいという事実もございますので、最近大きな単位会では、例えば公的な活動、いわゆるプロボノの活動に参加することを義務づけることによって、全会員が何らかの形で会務であれ公的な活動であれ参加することによって落ちこぼれていくことを防ごうというふうな点でも努力いたしております。  なお、そういった努力がまだ足りないという面はあろうかと思いますが、今後一層強化をしてまいりたい、こういう覚悟でございます。  拘禁二法につきましては、日弁連といたしましては長年にわたり反対の立場で意見を表明してきたことは事実でございます。ただ、二法についてすべて一括でどうこうという趣旨ではございませんし、考えるべき点は考えた上で対応できるように今後も取り組んでいきたい、このように考えております。
  25. 野村二郎

    野村参考人 贈収賄罪の適用と政治献金の区別というのが非常にデリケートな面があるということはしばしば指摘されております。贈収賄罪、現行のままでいいかどうかとなりますと、やはりさまざまなひずみとか欠陥があるんではないかというふうに私は思います。
  26. 坂上富男

    坂上委員 どうもありがとうございました。
  27. 金子原二郎

  28. 枝野幸男

    枝野委員 新党さきがけの枝野でございます。参考人の先生方には、本日はお忙しい中をおいでいただきまして、本当にありがとうございました。  さて、私は、特に弁護士の不祥事問題に関連いたしましてお尋ねをしたいと思いますが、今回の弁護士の相次ぐ不祥事に対応いたしまして、日弁連が何とか綱紀粛正に当たっていこうという努力をされていることに、まずは敬意を表したいと思います。しかしながら、今回相次いだ不祥事によって害されてしまいました弁護士に対する国民、市民の不信というものを払拭していくためには、さらに弁護士が、そして弁護士会が自己改革を進めていく必要性が大変強いんではないかというふうに思っております。  そうした観点から、弁護士会のあり方といたしまして、特に全国的に影響の大きい首都東京の弁護士会のあり方について、稲田参考人にお話を伺いたいと思います。時間がございませんので稲田参考人にお伺いしたいと思いますが、もし時間がありましたら、お二人の参考人からも御感想をいただければと思います。  御存じのとおり、東京の弁護士会は、会長選挙をめぐる派閥争いが高じまして、大正十一年に分裂をいたしました。そして現在、東京弁護士会、第一東京弁護士会、第二東京弁護士会の三つの弁護士会がその派閥争いの流れのまま鼎立をいたしております。そのために、市民に対する法的サービスあるいは人権擁護活動、こうしたものがおろそかになっているのではないかという批判がなされていますし、市民から見て大変わかりにくく、利用しづらい存在になっているとの指摘がございます。また、先ほど来問題になっております懲戒等の問題についても、三会が鼎立しているということで、それぞれの会によって運用が若干異なっているのではないかという問題もあると存じます。  言うまでもなく現在の弁護士法は、弁護士の使命を人権擁護と社会正義の実現にあるとして、その崇高な使命、弁護活動を国家権力から守るために、弁護士の資格の付与、弁護士の監督、懲戒権を弁護士会が有するという弁護士制度をとっております。つまり、弁護士会は単なる業界団体とは全く異なり、極めて公共性の高い団体であって、弁護士の資格の付与、剥奪という行政処分を行うという意味では、行政官庁、行政機関であるという側面を持っているわけでございます。  このような団体が派閥争いという自分たちの都合だけで分立しているという状態を続けていて、外に向かっては市民のための弁護士会というようなことを唱えるということに対しては、私は同じ弁護士といたしまして、残念ながら差恥の念を抱かざるを得ないと申し上げます。  ところで、現行、戦後の弁護士法制定の際には、この東京の三つの弁護士会一つにまとめようという動きがございましたが、残念ながら、一部に反対者がいたため、新弁護士法の成立を優先させるために、附則の八十九条で、東京三弁護士会は、弁護士法三十二条の地方裁判所の単位で単位弁護士会を置くという原則の例外を設けて、暫定的なものとして東京には三会を認めるというふうになったという経緯がございます。これは、日弁連の発行しております「自由と正義」という雑誌の八巻九号にも残っている記述でございます。  一方、こうした中で、言うまでもなく、日本弁護士連合会には、各単位弁護士会の上部団体として、弁護士法四十五条二項で、その指導監督権がございます。  そこで、日本弁護士連合会として、この例外的、暫定的な存在であります東京の三弁護士会の分立状態をいつまで放置されるお心づもりでいらっしゃるのか、そして、日本弁護士連合会として、東京の三弁護士会に対し、三会は合併を検討すべしという指導監督をなさるお心づもりがあるかどうか、この二点についてお尋ねをさせていただきたいと思います。
  29. 稲田寛

    稲田参考人 お答えいたします。  枝野委員の、弁護士会は一層自己改革を進めていく必要があるという御指摘につきましてはごもっともでございまして、今後、私どもとしても十分に取り組んでまいりたいと思っております。  ただ、日弁連として、直ちに東京三会が合併すべし、合併を検討すべしというふうに指導すべきであるという御見解につきましては、今この場でにわかにお答えすることは非常に難しいかと存じております。  と申しますのは、法八十九条は、確かに三十二条の例外ではありますが、弁護士法施行時に既に存在しておりました東京三会の存在自体を認めた上で成り立っていると解されるからでございます。そして、八十九条二項は、将来の合併、解散を可能としておりますが、合併、解散をもとより義務づけているわけではなく、その三会の会員の意思にゆだねていると解されるのではないかという認識に立っております。  また、御指摘の四十五条二項でございますが、確かに日弁連弁護士会に対しても指導、連絡、監督する権限を認めておりますけれども、「弁護士の使命及び職務にかんがみ、その品位を保持し、弁護士事務の改善を図るためこ行われるとされておりまして、御指摘のように、三会の合併という問題は、東京三会の弁護士会の存立自体に係る問題でありまして、この点につきまして指導監督ができるかということについても疑義があろうかと思うからでございます。  そうしますと、一般的な改善、連絡、監督に基づいて、適法に存立が認められている会の合併まで指導し得るかという点についてはいかがかと解しております。  しかし、いずれにしましても、東京三会において合併が検討されており、またその結果、三会会員の意思によって決定されることにこしたことはないわけでありますから、今後の三会の意思を尊重し決定されることによって、市民の窓口として御迷惑をおかけしないように努めるべきであるとは理解いたしております。  現在でも市民相談の窓口は、例えば当番弁護士制度であるとか弁護士斡旋センターなどの電話窓口は東京三会で既に一本化を図っておりますけれども、新会館に移るに当たりましては、既に三会の協議で共通窓口を一本化して、市民が迷うことのないように配慮をいたすことになっております。また、三会が同じ建物に入ることによって、会員相互の交流が一層密になり、合併の機運が増していくことも十分考えられます。  日弁連としましても、同じ会館に入るわけでございますので、もし市民に対して不自由をおかけする、あるいは迷うというようなことがあるとすれば、その点については十分指導をしてまいりたい、そのように考えております。  以上でございます。
  30. 枝野幸男

    枝野委員 なかなか、日弁連の事務総長というお立場なので、明快なお答えはしにくいとは思いますが、例えば、今お話にもございましたとおり、明年の七月、検察庁跡地という、国有地の中でも最も条件のいい場所を東京三弁護士会日弁連とで借り受けて、新しい弁護士会館ができ上がります。  確かに、今御指摘のとおり、市民の法律相談窓口についてはとりあえず三会一本化ができたようでございますが、例えば、この公共性の高い土地を利用してつくった建物の中に図書館が二つできる、三弁護士会の中での争いで図書館が二つできる。大体、弁護士会で置いておかなければならない書物というものがその弁護士会によって個性が必要であって、二つ必要だなんというばかな話があるはずがないのでありまして、国有地を借りてつくった建物の中でそんなばかなむだなことをやるというのは、ある意味では国民に対する不信行為ではないか、背信行為ではないかというふうにも思います。  入ってみて不都合があったらというのも十分御指摘わかりますが、むしろ、入る機会にこの三会というものを統一していくのがいいのではないか。  また、窓口こそ統一はされますが、法律相談については、東京三会ごとに一般法律相談をそれぞれされております。例えば外国人問題とか、それから離婚問題とか、各三会でそれぞれに、一つの会しかやらない法律相談、特殊な法律相談というものをやっております。そのあたりの振り分けというのは、混乱を少なくしようという努力はわかりますが、混乱がないというのは考えにくいのではないでしょうか。  さらに言えば、まさに日弁連が持っている品位保持等ということでの指導監督権ということであれば、私は、そもそも派閥争いで弁護士会が三つもあるということ自体が弁護士の品位を辱めているのであって、それを指導することについて、この法の予定しているところでないというのはなかなか言いにくいのではないだろうかというふうに思います。  せっかくでございますので、鈴木先生、それから野村先生、今のお話について御感想があれば一言ずついただきまして、最後に稲田事務総長から、ぜひ、今後の検討、前向きにやっていただきたいということで、コメントをいただければと思います。
  31. 野村二郎

    野村参考人 弁護士の不祥事との関連で申しますと、弁護士自体の指導監督ということをもう少し具体的にして、具体的に指導監督できるような体制をとらなければ、今のような問題、今日のような問題はまだまだ起こる可能性はあると思います。
  32. 鈴木重勝

    鈴木参考人 先ほど坂上先生の質問に答えて、稲田さんから答えがあったのに、ちょっと後ほどしゃべる機会があればいいんですけれども。  三会合同にしろという、確かに私ども聞きますけれども、さっき坂上先生は、私どものところはみんな集まるよ、みんな出てくるよ、来なかったら綱紀にかかわるよと。ところが、東京弁護士会、三千人ぐらいじゃないですか、それが一遍に集まる。それでもって千五百も、千人ぐらいですか、一弁、二弁と、それが合わさって、例えば総会をやるとか、そういったことがどういうふうに実効性を持つのか、私は若干むしろ危惧を持っているのですね。  何か決めようと思った場合に、多数決で決めよう。そのときに、それだけの大勢でどうなるのかな。実は、先ほどそれは三会に分かれていること自体が品位にかかわるよというお話でしたけれども、実効性として、会の運営として、ちょっとよく考えたことがありませんので、かねがねそれは大変疑問に思っています。
  33. 稲田寛

    稲田参考人 お答えいたします。  派閥争いでという御指摘もありましたが、七十年前の分裂した時代のお話でございまして、その後数十年にわたって、各弁護士会はそれなりにお互いに切磋琢磨して今日を迎えております。  したがいまして、例えば相談一つ取り上げましても、競って、自分のところでは新たな相談窓口を設けようというようなことで、いい意味での競争もしてまいっている面もございます。そういったメリット・デメリットについて、今三会でもそれぞれ検討が始まっている段階でございます。  私自身も東京の弁護士会員の一人でございますので、それについて決して無関心なつもりはございません。今後、先生の御指摘の点について十分検討してまいりたい、このように考えております。
  34. 枝野幸男

    枝野委員 ありがとうございました。持ち時間になりましたので、また午後、法務省に対してもこの件については質問させていただきたいと思っております。  ありがとうございました。
  35. 金子原二郎

    金子委員長 山田正彦君。
  36. 山田正彦

    ○山田(正)委員 きょうは、参考人の先生方、本当に御苦労さまでございます。  私、改革の、新生党の山田正彦でございますが、今から先生方に質問させていただきたいと思います。  実は、最初にお話いただきました、鈴木先生の「弁護士懲戒手続の審判対象」という論文を読ませていただきまして、大変感銘を受けておるところでございますが、きょうの御指摘についても、実に先ほどから意義深いものだと思っております。その点について、実は今野村先生からも、弁護士がいろいろな犯罪をいろいろ起こしてきている、これを何とかして綱紀粛正と申しますか、襟を正してまじめに弁護士業務をやっていく、そういう意味においては指導監督がなされていないのじゃないかというような、もっと強くなされるべきじゃないか、そういう御指摘もあったと思います。  実は、私ども考えてみますに、この綱紀委員会、また懲罰をする懲戒委員会があるわけですけれども、その中で、まず綱紀委員会が新聞、テレビで知った不祥事、そういったものについてみずからが調査するとか、あるいはそういったことができない、そうなっております。そう言われております。  また、実際に、ある事案について、甲弁護士についての懲戒の申し立てがあって、それを調べていくうちに、B弁護士、C弁護士が共犯であった。ところが、それについてはやはり調査の対象にならない。さらにまた、A弁護士についてある事案を調べているうちに、もっと重大な、もっと悪質な犯罪がわかってきた。ところが、それについても、いわゆる綱紀粛正委員会では調査の対象にならない。  これは、我々国民からしますと大変不条理な感じがするわけでありますが、それについて、日弁連から見えております稲田先生に、ひとつどうお考えか、明確にお答えをいただきたい、そう思っております。
  37. 稲田寛

    稲田参考人 お答え申し上げます。  ただいまの御指摘の、綱紀委員会等で探知した事案についてどのように取り組んでいるのか、取り組みが甘いのではないかという御指摘でございますが、先ほど鈴木先生からも御指摘がございましたように、綱紀委員会で別件、余罪等が探知されたという場合には、会長の方に御報告してもらうという形をとっております。そして、会として、会の意思として改めて綱紀委員会懲戒事由調査を依頼するという建前をとっているわけです。  法文上は、五十八条の二項に、「弁護士会は、所属の弁護士について、懲戒事由があると思料するとき又は前項の請求があったとき」とされておりまして、請求がある場合が通常多いわけでございますけれども、それとあわせて、会が探知した事案についても綱紀委員会に付議できる、こういうことでございます。  したがいまして、御指摘のように、最近では新聞報道が先になされるという例もございます。もちろん、横領等の事案ではあらかじめ被害者から苦情申し立てなりが出ていること、あるいは懲戒請求がなされている場合が多いのでございますけれども、例えば、先般の脱税事犯といったような形ですと、先に逮捕が先行するというふうな事例もございまして、そういった報道によって逆に会が知ったという場合には、速やかに綱紀委員会に付議するということがこの条文によってできるわけでございます。  ただ、今まで会請求としましては、主に行われましたのは、会規違反、例えば、無許可営業を行っている事例であるとか、あるいは会費未納といった例が多かったわけですが、先例としましては、いわゆる悪徳商法と言われた企業の顧問弁護士を対象として綱紀委員会懲戒の審査請求をしたという事例等がございます。  今後一層、この会請求の事例について、日弁連としましては、その請求の基準を明瞭化しなければならないということで、今後の取り組み課題の一つといたしております。  以上でございます。
  38. 山田正彦

    ○山田(正)委員 私の理解では、いわゆる一般国民からの一つ懲戒の申し立てのほかに、弁護士会会長がその調査を命ずることができる、そう理解しておりますが、その中で、実際に、先ほどの鈴木先生の指摘では、綱紀委員会がなかなか会長に報告していない、そういう事実の指摘がございました。  それと、実際に懲戒事例というのは統計が上がっておりますが、今私も手元に持っておりますが、その中で、いわゆる弁護士会みずからが、弁護士会会長が、いわゆるこの事件調査すべきであると、そういった事例の中で今稲田先生の方で企業の顧問弁護士の例を一つ挙げましたが、一体、過去今までに何例あるのか、そして懲戒事由との比較で何%に当たるのか、その辺を少しお答えいただきたい。
  39. 稲田寛

    稲田参考人 お答え申し上げます。  恐縮でございますが、会請求のデータをまだ取りまとめた例はございませんので、お答えいたしかねます。ただ、従来、もちろん通常の請求事件に比べて極めて少なかった点は御指摘のとおりでございます。  今後、会で探知した事例につきまして、積極的に取り上げていくということ、それからまたその迅速化ということについて、日弁連としても指導指針をつくってまいりたい、このように考えている段階でございます。
  40. 山田正彦

    ○山田(正)委員 例えば、日弁連会長からの指摘ではなく、綱紀委員会が、新聞、テレビとか苦情処理相談等を聞きながら、これはひとつ懲戒事由に当たる、あるいは綱紀委員会調査事案に当たる、そう考えて綱紀委員会に、いわばその弁護士会にいわゆる弁護士の不法行為とか違法事とか、そういったことを調査開始させる権限を与えるような考えはないかどうか、それについてお聞きしたい。
  41. 稲田寛

    稲田参考人 お答え申し上げます。  綱紀委員会調査は各弁護士会で行っているわけでございますけれども、各弁護士会で、今御指摘の会探知事項について、当然綱紀委員会の職務権限とするということについては今まで検討してまいったことがございませんが、御指摘の御見解について持ち帰って十分検討してみたい、このように考えております。
  42. 山田正彦

    ○山田(正)委員 次に、この綱紀委員会懲戒委員会において、一たん国民からあるいは被害者から申し立てがなされる、そうするとそれが審査するまでにかなりの長期間かかっている。実際の事例としてはどれくらいかかっているものか、そしてそれの改善策を日弁連としてはどのように具体的にお考えか、その点についてもお聞きしたい。
  43. 稲田寛

    稲田参考人 従来、御指摘のように、綱紀懲戒調査あるいは審査期間がかなり長時間を要した点は、御指摘のとおりでございます。  例えば、お手元にお届けしてあろうかと思いますけれども懲戒請求事件の一覧表がございます。今年度の十月末現在でまとめた数字でございますけれども懲戒処分に付せられた会員が二十一名ございますが、この二十一名の綱紀の申し立てを受けてから懲戒処分までの平均の月数は二十三カ月余でございまして、約二年かかっております。  こうした長期に及ぶこと自体が、やはり国民の信頼にこたえ得ないのではないかという観点に立ちまして、昨年の十二月の段階で、日弁連会長名で「綱紀懲戒の迅速処理指針」というものを名会に細かく提示したわけでございます。それによりますと、綱紀調査期間を六カ月以内で終わるように、懲戒の処分までの期間を一年以内にするという指導を行ったわけですが、今年度のデータの中にそれ以前のものも含まれておりますために、まだ十分な効果を得ておりませんけれども、この迅速な処理ということについて、日弁連としましても今後十分に名会に徹底するように図ってまいりたい、このように考えている所存でございます。  以上でございます。
  44. 山田正彦

    ○山田(正)委員 弁護士の仕事は大変忙しくて、弁護士さんみずからがその自治のために懲戒も担当している。そうなりますと、例えば、この先生の都合はその日に悪いということで、かなりみずからの事由でおくれているのじゃないか、そう私は思いますが、その点、単なる指針を出す、それで事足れりというのではなく、ここは本当に、厳しく弁護士の倫理というものを考えるためには、ひとつ具体的に、例えば、どういう事案が、どういう個人的な事件が入っておろうと、綱紀委員会としてその責任を果たすためには、その日は必ずその調査並びに審判に応ずる、そういうかなり的確な、しかも具体的な指示をし、また決議をしない限りだめじゃないか、そう思われます。参考までに。  それで次に、この四月の十四日から先月ぐらいまでの間に、弁護士不祥事に関する主な新聞記事をまとめてみましたが、十四件、十四名、弁護士さんがいわば不祥事等々で新聞等に報道され、あるいは逮捕されております。そうすると、この中で、かなりの金額、例えば管理資産を担保に金融機関から百十五億円を引き出した、そういう大きな例もあるわけですが、そういった場合に、かなりの金額が今弁護士の不祥事で国民被害を与えている、そういった場合の被害救済ということであります。  例えば保険制度とか、医療過誤の場合には医療保険制度がほぼ私は完備されていると思っております。税理士の不祥事についてはそれなりに補償制度というものがございました。  そうした中で、弁護士が、先ほどの参考人の先生の御指摘のとおり、かなり高額な金額を扱い、しかも土地の権利書とか重要な実印とか、そういったことを扱う例も多いわけであります。そういうときに私どもとしては、損害を与えたことに対する補償というもの、弁護士会はいつも弁護士の自治を主張しておりますが、それなりの責任というもの、それについて稲田先生にどうお考えか、また実態はどうであるか、それをお聞きしたいと思います。
  45. 稲田寛

    稲田参考人 お答え申し上げます。  御承知のように、弁護士会の運営は、会員からの会費のみをもって賄われておりますので、例えば今回のような被害者被害全額を会として負担するということは不可能だと言わざるを得ません。したがいまして、委員御指摘のように、今後、会として保険に掛けて、その金額で補うというふうな制度を速やかに検討しなければならないだろうというふうに一つは考えております。  今までの対応といたしましては、被害を受けた、通常は依頼者でありますけれども、その依頼者に対して別の弁護士をあっせんする、あるいは会を挙げて相談に乗るというふうな労務提供等ぐらいしかやってきておりませんので、甚だ不十分と言わざるを得ないと思いますので、今後そういった補償制度についても前向きに検討してまいりたい、このように考えております。  以上でございます。     〔委員長退席、中島(洋)委員長代理着席〕
  46. 山田正彦

    ○山田(正)委員 前向きに検討したいというお答えであります。  私もかつて弁護士をやっておるときに、実は福岡であった事例でありますが、ある弁護士さんが供託金を預かっていて、三千万ぐらいだったと思います、供託していると言いながら実は供託していなくて、自分で費消しておったという事案でありました。この事案で、私も大変最初は、同じ弁護士同士でございまして、本当に信用しておったわけですが、実際に行ってみると、していなかった。そんな事案の中で、三千万という大金を預けた依頼者、その方がどんなに苦しんだか。  そして、その弁護士さんの実情を私もいろいろお話聞いてみますと、その方はほかのところにもいろいろな負債があって、数億の負債をたしか抱えておったと聞いております。資産というのは小さな家が二戸だけだった。そうすると三千万、なけなしのお金を弁護士さんに預けて、それが全く、幾ら弁護士会から、先ほど稲田先生御指摘のように、弁護士さんをあっせんしてもらっても、幾ら裁判しても取れないものは取れない。その中で、結局泣き寝入りをせざるを得なかったということがございました。  こういう事例を考えてみますと、不動産取引に当たっている不動産業者にしろ税理士さんにしろ、あらゆるところがそれなりの、最低の補償を考え、みずからやってきている。ところが、一番大事な弁護士会そのものがこれから速やかに検討したいというのでは、余りにも遅過ぎる。もう少し、本当に弁護士がみずからの自治というものを考えるのであったら、もっと早く本当の取り組みをしなければいけなかったのではないか。  ただ、私どもの方では、弁護士が任意にそういう保険制度に入っているという例もあると思いますが、それについてはどれくらいの弁護士さんがそのためにみずから保険を掛け、どういう制度があるものか。それだけでも稲田さんの方からお聞かせ願いたいと思います。     〔中島(洋)委員長代理退席、委員長着席〕
  47. 稲田寛

    稲田参考人 お答え申し上げます。  弁護士保険というものが、任意保険でございますが、賠償保険が行われておりまして、現に私どもども保険に加入いたしておりますが、それぞれまだ個人の立場で、個人の資格で加入しているというのが実態でございます。  ただ、会によりましては、公の会務に携わる者が過誤によって迷惑をおかけした場合には、既に保険制度を採用している会もございます。今後、そういった取り組みを全会挙げて行っていかなければならないだろうということを申し上げたかったわけでございますが、御指摘のように、まだこの点につきましては非常におくれているということを認識せざるを得ないと思っております。  以上でございます。
  48. 山田正彦

    ○山田(正)委員 先ほどやはり鈴木先生の御指摘でございますが、いわゆる弁護過誤一一〇番がない、不思議だ、そう言っておりました。医療過誤についてもいろいろな相談がある。そうしますと、この弁護士のいわば第一次的な苦情処理センターみたいなもの、それについてはどうお考えか、ひとつ稲田先生にお聞かせ願いたいと思っております。
  49. 稲田寛

    稲田参考人 その点も御指摘のとおりでございますが、先ほども申し上げましたように、今後の取り組みの一つとして申し上げたわけでございますが、現時点では、先ほども申し上げました福岡を皮切りにして、幾つかの会で窓口の設置を会則によって義務化しつつあります。この会則によって義務化することを、日弁連としましては全会に徹底していきたいということが今後の方策の一つとなろうかと思います。  例えば、その福岡の例をとりますと、この窓口設置の目的は、「弁護士弁護士会に対する市民の要望や苦情等について、適切、迅速な処理を行う」ことを目的として設置され、そのために副会長あるいは会長等の理事者が必ず常勤、いわば当番制をしいて常勤をして窓口相談に当たる。その結果、会員が非行を行っている、あるいは行うおそれがあれば、会長として適切な助言を与える。また、市民に対しましては、紛議調停であるとか綱紀の申し立て等の手続があることを十分説明をして、権利保護を図っていただく。もちろん、未然に指導によって処理できればそれにこしたことはないわけですけれども、あわせて、綱紀懲戒等の申し立ても市民に十分説明をして、それを利用していただくというふうな指導体制になっております。  同じような規定を他の弁護士会においても次々つくっておる段階でございますが、今後一層全会挙げて取り組んでまいりたい、このように考えております。  以上でございます。
  50. 山田正彦

    ○山田(正)委員 福岡の弁護士会のいわゆる「「弁護士業務に関する市民窓口」設置要綱」、これも私いただいておりますし、そしてまた、実際にどういうふうにやっているかということも見聞いたしております。  その中で、大変これは感心いたしますのは、非常に即刻処理する、この規定の中でも一週間以内に、この第三条ですか、「前条の要望、苦情等については、原則として、一週間以内に処理が終了するように努力し、その結果を申出人に通知することとする。」とありますが、しかも、私はこれは非常に効果があると思いましたのは、いわゆる事情聴取等は、副会長、これが直接に当たる、いわゆる弁護士会の幹部が当たっているということですね。必要に応じては事務局長が補佐するとなっています。副会長が不在の場合、この場合には「職員が申出人の連絡先を聞いて、後に副会長から連絡を取ることを原則とする。」そこまで、いわゆる幹部に対して苦情処理をやってもらっている。これは、早いときにはその日のうちに処理が終わるとお聞きしております。  これがあってから、ほとんど苦情、いわゆる懲戒の申し立てもなくなってきたやに聞いております。早期に、未然に、いわゆる弁護士の仕事における過誤、それを防ぐには確かにこの制度が一番いいのじゃないかな、そう思われますが、福岡を皮切りに今鋭意できつつあるというようなお話でしたが、一番依頼者の多い、弁護士の数も多いこの東京はいかがでございましょうか。
  51. 稲田寛

    稲田参考人 私自身東京弁護士会の所属会員でもございますので、東弁の例を申し上げさせていただくとしますれば、確かにまだ会則化については目下検討中という段階でございますけれども、実際上は、東京のような大きい弁護士会は必ず会長、副会長は常勤いたしておりまして、私がたまたま副会長をやっておりました当時から、あるいはそれ以前からと申し上げてよろしいかと思うのですが、苦情処理、苦情相談が参りますと、必ず在席している副会長が窓口で相談に当たって処理をするということは、事実上多くの会で行ってきておると思います。東弁は現にそのように行ってまいりました。そういったことをもっと徹底するために、名会に規則化を促そうという段階でございます。  以上でございます。
  52. 山田正彦

    ○山田(正)委員 きょうは大分稲田先生にばかり質問させていただきましたが、稲田先生が「自由と正義」の中に、事務総長になられるとき「新しく弁護士となられた皆さんへ 初心を忘れることなく」、そういう訓示についての一つのコラムを、実はきのう読まさせていただきました。  弁護士の倫理という問題、先ほど御指摘もありましたが、最初の二十代、三十代の弁護士の先生方は本当に比較的まじめにやっておられる、犯罪を犯す、いわゆる不祥事を起こす弁護士の先生方は四十代から五十代、そう言われておりますが、初心を忘れてしまった、そのために弁護士さんにもう一度、本当にその倫理と、みずからの内部的な意識の中でそれを起こさせるという意味でも、日弁連としては一つの研修制度、そういったものについて具体的なお考えはないのか、それについてお聞かせ願いたいと思います。
  53. 稲田寛

    稲田参考人 御指摘の弁護士研修制度につきましては、当初、御指摘のように新入会員を前提として四月に行っているという例が大半だったわけでございますが、大単位会を初めとしまして、また地方の小さい単位会ではブロックを中心として、会員の研修を定期的に行うようになってまいっております。  日弁連としましては、具体的には五年目を一区切りとして、五年、十年の会員の研修ということを、倫理研修を特に含めて、全会が義務化をしていくという方向で今取り組んでいる段階でございます。  以上でございます。
  54. 山田正彦

    ○山田(正)委員 横浜の弁護士会においては研修を義務づけしているとお聞きいたしておりますが、他の弁護士会において、私どももそうでありますが、研修制度はどうしたって任意に、忙しければ行かない、それが実態のようであります。ひとつここは、医者もそうでありますが、我々弁護士としても、一つの義務づけの研修というものを具体化していただければ、そう考えております。  時間も参りましたが、鈴木先生と野村先生に、今私がいろいろな質問をいたしましたが、それを踏まえながら、最後に、本当に法曹界検事さんの不祥事もかなりございました。そういったことを含めて、それぞれの御見解を改めて一言ずつ御答弁いただければと思っております。
  55. 鈴木重勝

    鈴木参考人 私が日弁連に聞きたいことを先生が聞いていただきましたので、大変助かりました。  ただ、一言申しますと、先ほど会長請求はやらないよと私盛んに言っているのですけれども、しかし法律上は五十八条二項でできるじゃないかということを繰り返しお答えになっておりますのでも、問題はこれなのでありまして、私は十数年一弁の懲戒委員をやっておりますけれども、三件あります。二件は会費請求なのです。会費が滞納しますと困りますので、会長請求をします。あと一件は、大変新聞、テレビに報道されました大きな事件でありますと、早い話が現弁護士よりも元弁護士の方がいいという判断でこれは早々と、もちろん審査したのでありますけれども、ただ、綱紀委員会がありまして、それから懲戒委員会がしかれますので、かなりかかります。  これはなかなかうまくいかないのでありますけれども、それ以上に私が一番言いたいのは、実は、先ほどこれからやりますということなのですけれども、元来、弁護士法ができたときに、各弁護士会が「綱紀委員会は、会員綱紀保持粛正することを職務とする」ということを会則に宣言したのですね。これがやがてだんだん、どういうわけですか削除されていくのです。この辺が姿勢が変わってきたことが大変残念であります。  それからもう一つは、会長請求というものの手続がちっとも中身が保証されていませんので、また表面にあらわれてきませんので、この辺あたりが充実してくると大分変わってくるのではないかというふうに思います。  それから、私いろいろ申し上げましたけれども弁護士懲戒に係る事件は本当に少ないのでございまして、仮に年に五十件あったとしても、名会で、五十幾つありますから一件。ところが、実際はその半分以下でございますので、本当は少ない。ただ一件でも、法律事件を独占しておりますので、その点はやはり弁護士会の方で緊張して対処していただきたいというふうに私は考えております。  以上です。
  56. 野村二郎

    野村参考人 弁護士の不祥事というのはごく、ごくというか一部の人ですけれども、これが継続的に起こるということが問題だと思います。
  57. 山田正彦

    ○山田(正)委員 終わります。  ありがとうございました。
  58. 金子原二郎

  59. 正森成二

    ○正森委員 私は、まず鈴木参考人に伺いたいと思います。  それで、鈴木参考人は冒頭十五分間意見陳述をされましたが、その際に、書面を提出しているのでそれを参考にしていただきたいということでしたので、私は一番最後の質問者ですから、先生のお書きになりましたここに記載されております御意見について詳細に読ませていただきました。  その中で、例えば弁護士会懲戒委員会等が非常に不備である、自分で探知しても調査ができないとか、あるいは懲戒委員会に申し立てできないとか、それは後に稲田事務総長の方から、会長は申し出て、会長はできるというような御説明がございましたが、それらの点を含めて非常に鋭い指摘であります。  その中で、弁護士一一〇番というような御意見もお出しになりましたが、一一〇番そのものには御賛成ではありませんでしたが、稲田参考人も、市民広報を十分に行って、そして苦情を受け付けて未然にこれを防止するというか、適切な、迅速な処理をしたい。後の方では山田先生の御質問に答えて、苦情処理については単位弁護士会にその窓口を必ず置くようにという規則もつくっていきたいと言われましたので、それらの点については両参考人の間に大きな差異はないと思います。  ただ、私が鈴木参考人の御意見を聞いて、これはよくお伺いしなければならぬと思うのは、大きな4という項の中の⑥という点があります。その中で、さまざまな弁護士綱紀委員会懲戒委員会の不備を言った後で、「現行弁護士法以前の旧弁護士法では、検事長が司法大臣の命により、またはその認可を受けて懲戒開始の申し立てを控訴院における懲戒裁判所に行うのであるから、つまり、捜査機関による懲戒請求がなされていたのであるから、第一の②③④のような事態、あるいは第二の①②③のようなことはない。」つまり、自分が言ったこういう点がいかぬじゃないか、こういう点がいかぬじゃないかというようなことはない。「ところが、懲戒請求を、国民に任せたところから、このような事態が生じてしまったのである。」というように書いておられます。  これは非常に重大な意見で、戦前は確かに、弁護士会検事局に附置されているような格好で、弁護士自治というものは全く認められていなかった。したがって、弁護士は公的権力からさまざまの介入を受けて弁護士資格を剥奪される。ある弁護士は、治安維持法事件の弁論をしたら、その弁論自体が治安維持法違反であるというように恫喝されて、弁護士活動に非常に不都合を覚えるというようなことがあったのです。  例えば現在でも、弁護士の隣接業務域に税理士、税理士会というのがあります。これは御承知かどうかわかりませんが、国税庁長官の監督下に入っております用地域ごとにはまさに税理士が相手とすべき税務署長の監督下に入っており、税務署長は、脱税その他の相談を受けたという疑いがある場合には、税理士会に行っていろいろ書類を閲覧したり調査することができるというようになっています。  これはあたかも、弁護士会検事総長の指揮監督下にあって、検察官が担当事件について証拠隠滅等のおそれがあると思えば、検察官がとことこと弁護士事務所へ行って調べるというようなこともできるのと同じことであります。これでは、検察官と被告人が対等で、弁護士はこれを援助して、そして裁判所に審判を仰ぐという現在の新憲法のもとでの訴訟構造が全然崩れることになるのですね。  ですから、私は大蔵委員のときに、税理士法の審議が行われましたときも、弁護士と全く同じにするのは難しいにしても、税理士も、ある意味では相手方である国税庁長官や税務署長の監督を受けるというようなことで、本当に国民の納税上のいろいろの権利侵害や不満を擁護することができるのかということを言ったことがあります。  先生のこの意見を見ますと、これは読み方によりますが、何ら留保がされてないのですね。読み方によったら、今のような弁護士自治はやめて検事長が司法大臣の命によって何か申し立てる方がいいんだというようにとれるのですが、これは容易ならぬ意見で、戦後の弁護士自治の制度を完全に否定するものであるというように思いますが、いかがですか。
  60. 鈴木重勝

    鈴木参考人 むしろそう、何といいますか、少し読んでいただけるかなと思ったのですが、もちろんこういう、もとへ戻るわけがございませんで、またそういう意図もあるわけではございません。  ただ、私がここで一番言いたかったことは、今の懲戒制度が必ず国民側の、これはさっきから稲田さん盛んに繰り返し言っていましたけれども国民側からの懲戒請求なのですね。この懲戒請求を初め、例えば綱紀委員会はやっちゃいけないよ、綱紀委員会自分からやっちゃいけないよという一つの理由に、日本国民全部に、いつでもこういう悪いことをしたということがあればすぐ請求するじゃないか、それだけもう行き渡っているじゃないか、こういうことなのですね。それがなくても会長請求をやるよと、――少なくとも会長請求はないことは確かであります。国民の方からやってくる、そうするといつでもそれを受ければいいんだから、受動的であればいいんだ、こういうことなのですけれども、ところが、およそ弁護士の非行を発見したとしても、そのことのためにわざわざ懲戒を申し立てる、請求するような人はまずあり得ないのですね。  それから被害をこうむった人も、これは相当決意をしないと、相手がプロフェッショナルの弁護士ですから、しかも法律の権化というか法律の神様ですから、それを相手取って法律を盾にとって懲戒請求をやろうとするわけですから、これは並み並みならぬ決意が要るはずですね。あとはマニアックな人、この人は別です。何遍もやる人はおりますけれども、これは別にしまして、しかし、そういうようなずぶの素人に懲戒請求を全部任せるから綱紀委員会はやらなくてもいいんだという仕組みをとったわけでありますね。ところが、私に言わせますと、昔はそうじゃなかったじゃないか。  それから、発見できないという、ちょっともとへ戻しますと、素人が懲戒請求をやれば自分被害を受けたことだけ。しかも、とても大事なことなんですけれども弁護士法は、懲戒請求するには懲戒請求事由の説明だけを添えてやれ、事情の説明だけやれと。ですから、素人ですから、余り細かく厳格にしますとそれを制限することになりますので、何でもいいから言ってきなさいよと。弁護士会によりましては、事情の説明を受けて、会長なりその指名を受けた人たちが一生懸命、それでじゃこういうことだな、ああいうことだな、二つも三つもあるのだなというふうにしまして、綱紀の方へ回す。  ところが、今、書かれているそういう会則は別にしまして、少なくとも綱紀委員会の権限について解説のあるのは、懲戒請求があったらそのままそれが事件の単位であり、それが事件の範囲の決定なんですね、それ以外はやっちゃいかぬというふうにして。ですから、我々がたまたま、もっとあるじゃないか、範囲は広がるじゃないかと言っても、それはにっちもさっちもいかない。  しかし、もしもそれが昔のようであれば、それは直ちに、そういう第一そつのあるようなことはあり得ないわけですから、全部そこに悪いことをしたことは出てくる。本人が一番よく知っているわけですから、出てくる。しかも、本人が認めているときもあるわけですよ、これでやられたらしょうがないよと。だから、これでやれば不満だよと現に本人が言っているわけですから。それさえもできない。しかし、昔だったらそうはいかないだろう。  それが今、国民に任せて、そして一億総告発者という建前でやったために、まあそれも結構なんです、検事長を外したのですから。じゃだれが捜査権を持っているかといったら、捜査権なんかだれにも与えなくていいよ、国民がみんな検事長と同じでいいんだよ、こういう建前ですけれども、そういうのは非現実的だ。それがよくわかってきた現状ですから、それを何とかしなきゃいけないじゃないかということで、そうすると、昔はこうだった、だからそうするとこういうことはなかったのだから、もうちょっとその点はお考えいただきたいということで書いた趣旨でございます。
  61. 正森成二

    ○正森委員 温故知新というのは大事なことですけれども、余りにも昔に郷愁を抱き過ぎて、弁護士自治を事実上破壊してしまうというようなことになれば、これは戦前の暗黒時代に戻る可能性もあるので、私は心すべきことではないかと思います。  それから、先生の御意見を聞いていると、何か除斥期間三年というのがすこぶるよろしくない、これは防御権の関係だと言われるけれども本人は一番よく知っているではないかというようなことを言われましたが、これは権力が行ういろいろなことについても時効や除斥期間というのはあるのですよ。殺人事件についても時効というのはあるのです。脱税についても、時効もあれば除斥期間もあります。ですから、本人が一番知っているからとか、何か弁護士は防御権も言うのはけしからぬというような、そういう印象を与えるのではなしに、やはり重要な事件であれば一定の期間に申し立てをされるという建前で、弁護士だから除斥期間をなくしてしまうというようなのは、あらゆる法制度についても随分乱暴なことじゃなかろうか。  それから問題は、弁護士がさまざまな非行をしないような条件をつくるということが大切で、何か弁護士が初めから悪いことをすることを前提にして、それに対する綱紀委員会懲戒委員会をいかに有能、敏速にやるかというようで、弁護士をしょっちゅう監視していくというようなことを優先させるなら、弁護士はそもそも基本的人権を擁護して、そして社会正義の実現のために尽くす、そのために法曹資格は非常に厳重にされているわけですね。  今、事務総長の説明資料を見ますと、懲戒を受けているのは大体二十件ないし二十五件ぐらいでここ十年ぐらい変更はありませんが、綱紀委員会にかかったのは四百件を超えるというようなことで、その中からいろいろ検討されたということがあるのですね。  それで、私、鈴木さんに言いたいのですが、なかなか国民綱紀委員会にいろいろなことを言うできますよ。例えば私だって、綱紀委員会に言われたことがあるのですよ。私が国会議員に当選して、もう弁護事務はできないから、自分事件を、着手金はいただいているから、もうお金なんかいただいて、他の弁護士にお願いしたいということで譲ったら、おれは正森という人間に頼んだから、だからそれをよその弁護士にかえるのはけしからぬからといって綱紀委員会にかけられて、大阪弁護士会が調べて、幾ら何でもというわけで調査しないということになったのですけれども、そういう例もあるのですよ。ですから、何か言うということが全部正しいということはないんだということを経験に基づいて申し上げておきたいと思うのです。  時間がございませんので、あと一問だけ野村先生に。  検察官の不祥事、これで非常に大事なのは、最近の三件のうち二件までが特捜部に、しかも応援に行った検事の中から起こっているということなんですね。これは、今先生特捜部の気負いというようなことを言われましたが、特捜部の気負いだけでなしに、特捜部に応援に行った検事がここでいい供述をとって男を上げたいと思うと同時に、本来訓練を受けておらない地方の検事がいきなり行くわけですから、特捜の捜査になれておらない、そこで大きな声を出したり、場合によってはぶん殴るということになったので、検察官の教養といいますか、あるいは捜査能力といいますか、特に経済事犯について、経済をよく知らないというようなことからもこういう点が起こってくるのじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  62. 野村二郎

    野村参考人 先生おっしゃるとおりだと思います。ただ、事件の中核になる人たち取り調べというのは特捜部の検事自身がやって、周辺にいる参考人取り調べを応援検事取り調べるというふうなことではないかと思います。  先ほど申し上げましたように、特捜部に行きたいという検事がたくさんいると思われますので、やはりそこで自分の力を発揮したい、そういうふうなことが思い余って非常にきつい取り調べになるということがありますと同時に、先ほどもこれは申し上げましたけれども検察全体が非常に高揚した気分になる、おれたちは正しいことをやっているんだ、すべてが許されるというふうに考え方を間違えるのではないか、そういうところで暴力検事が起こるような雰囲気が出てきてしまうのではないかというふうに私は思います。
  63. 正森成二

    ○正森委員 時間ですから、終わらせていただきます。
  64. 金子原二郎

    金子委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。  参考人各位には貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。  午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時八分休憩      ――――◇―――――     午後一時開議
  65. 金子原二郎

    金子委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、お諮りいたします。  本日、最高裁判所涌井総務局長、堀籠人事局長、今井民事局長兼行政局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  66. 金子原二郎

    金子委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。      ――――◇―――――
  67. 金子原二郎

    金子委員長 法曹界綱紀粛正問題について調査を続行いたします。  これより政府に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。斉藤斗志二君。
  68. 斉藤斗志二

    ○斉藤(斗)委員 本日は、法曹界の不祥事多発する中、綱紀粛正問題ということで、午前中に三人の参考人の先生にお越しいただきまして、貴重な御意見を伺い、そして午後、さらに法務省に対しまして集中審議という運びになったわけでございますが、異例の事態が相次ぐ中、大臣にまず最初お伺いしたいというふうに思うわけでありますが、十月五日、大臣は検事総長に対しまして異例の注意を行っているわけでございます。  報道によりますと、大臣は、吉永祐介検事総長を法務大臣室に呼び、注意を促した。さらに、法務省はまた、東京地検次席検事ら上司三人を戒告とする懲戒処分を行うとともに、暴行した検事を三カ月の停職処分とした。法相が検察のトップに直接注意するのは初めてで、法務検察当局が今回の事態を深く受けとめていることを示している。こういうような報道がなされたわけでございますが、大臣には、実際におかれましては、どのような内容の注意を異例の形でされたのか、その内容についてまずお伺いしたいと思います。
  69. 前田勲男

    ○前田国務大臣 お答え申し上げます。  特に、法曹界の不祥事多発する中で、本日の集中審議をお持ちをいただき、御議論をいただくことにつきまして、おわびかたがたお礼を申し上げたいと存じます。  先生の御質問でございますが、十月五日に検事総長に対して、新聞のとおり異例の注意をさせていただきました。特に、検察官が取り調べの中、参考人に対して暴行を加えるという検察官として自覚を極めて欠きました不祥事が引き続き起こったということは、もうまことに残念なことでございまして、この事態を深刻に受けとめまして、十月五日に検事総長に対して、同種の事案が再発をしないために、職員の指導監督態勢の強化等万全の措置をとるように求め、注意を行ったものでございます。  所管する大臣として、これらの事件は、検察官の職員に照らしましてまさに論外の不祥事でございまして、国民検察官に対する信頼というものを著しく傷つけたことはまことに遺憾で、申しわけなく思っております。  検事総長は、この注意を受けまして、直ちに全国検察庁に対しまして伝達する措置をとるなど、所要の措置をとったというふうに聞いております。検察は、今後とも組織を挙げて不祥事の再発防止、国民の信頼回復に真摯な努力を積み重ねていくもの、そう確信をいたしておるところでございます。  もしあれでしたら、注意を読みましょうか。よろしゅうございますか。
  70. 斉藤斗志二

    ○斉藤(斗)委員 ぜひお読みください。
  71. 前田勲男

    ○前田国務大臣 そうですか。   近時、検察官が取調べ中の参考人等に対して暴行を加えるという検察官としての自覚を欠いた不祥事案が相次いだことは、誠に遺憾である。  検察がその使命を全うするためには、検察の職務に対する国民の信頼と協力を確保することが不可欠であり、検察組織を挙げてこれら不祥事の再発防止に真剣に取り組む必要があると考える。  ここに改めて、検察組織における職員の指導監督態勢の一層の強化を図り、併せて検察官に対し、刑事事件における適正手続の確保の重要性について更に自覚を促すなど再発防止に向けて万全の措置をとるよう求めるものである。  ついては、検事総長において、この趣旨を全国検察庁に伝え、その徹底を図ることとされたい。このような注意を行ったものでございます。
  72. 斉藤斗志二

    ○斉藤(斗)委員 このような異例の事態で、異例の注意ということで、検察当局も厳粛にその事態を受けとめていただいておるというふうに思っておりますが、その際、検事総長は記者会見をされまして、陳謝されるとともに、このようなことも発言されておる。報道を引用させていただきますけれども検事総長は、再発防止及び国民の信頼の確保に万全の措置を講じたい、国民に対してまことに申しわけなく、遺憾にたえないと陳謝したという報道でありますが、同時に、こういうような発言もされておるわけでございます。検察内部に今回の事件につながる体質は全くないと思っている、こういうような発言もされておるわけであります。  これは、さきに金沢元検事の暴行事件の際、検察当局は、個人の資質問題と強調されたわけでありますが、その後二件の暴行事件が相次いだために、事態をより深刻に、そして真摯に受けとめることによって、このような再発防止等々、国民の信頼回復という対応に出られたと思うのでありますが、この記事によりますと、しかしながら依然として、検察内部に今回の事件につながる体質は全くないと思っている、要するに個人的な問題がかなりの重要な部分を占めているのだという認識であられますが、果たしてこの報道が正しいのかどうかということを、まず確認をしたいというふうに思います。
  73. 則定衛

    ○則定政府委員 おおむね、御指摘のようなやりとりが行われたというふうに承知しております。
  74. 斉藤斗志二

    ○斉藤(斗)委員 私は、今回、この一連事件の中で、確かに個人的なそのような資質の問題というのはかなりのウエートを占めるというふうには思うわけでありますけれども、やはり先ほどお話をいただきました、参考人からのお話の中で、最近の検察を見ているとということで、今昔比較を参考人はされたわけでございます。  その中で、総じて言えば、幾つかの理由は指摘されましたけれども、かなり力が落ちてきているのではないかなというような指摘もございまして、そういう意味では、個人のみならず、そのような組織的な構造的な問題もあるというふうに考えるわけでございます。  そういう中で、再発防止、研修内容の強化等々も具体的に対応されるわけでありますが、実際具体的にどのようにその。ような対応をされていくのか、単に精神論だけではこの事態は乗り切れないというふうに思っておりますので、まず法務省から、その再発防止並びに研修内容の強化、もちろんこれは個人の資質にもかかわる問題でありますが、その点についてお尋ねしたいと思います。
  75. 則定衛

    ○則定政府委員 今回の一連の、三件に上ります取り調べに対する暴力の行使というものにつきまして、私ども法務当局といたしましても、また、検察当局におきましても、大変これを深刻に今受けとめているわけでございまして、先ほど御指摘の検事総長の談話の中で、体質の問題というものではなくて、個人の資質に大きく起因するものであるというふうに論評されておるわけでございますけれども、もともと検察官といたしましては、最近の諸情勢にかんがみまして、大変捜査環境というものは難しくなってきていることは事実でございます。しかし、その中で、やはり適正な手続にのっとり、かつまた、事件関係者の人権及び名誉等にも留意しながら、所期の目的を達するというのが検察官の職員でございまして、いかなる場面に遭遇いたしましても、平常心を持って事に当たるべきものであるというふうに考えておるわけでございます。  そこで、今回の一連事件が相次いだことに対しまして、私ども部内の各級の段階におきます各種の会合、会同その他の機会におきまして、上位監督者から適正な取り調べの実行についてるる細かく、また数次にわたり注意喚起を促しておるわけでございますけれども、それに加えまして、この一連事件に対する監督者を含みます処分におきまして、そういったことについての厳しい見方というものを現場に伝えているわけでございます。  加えて、再発防止の観点から、特に若手検察官に対します教養訓練、その中でも取り調べ過程におきます事件関係者への配慮のあり方、こういったものにつきまして組織を挙げて遺漏なきを期するという観点から、種々訓練、研修を重ねるということが必要であろうと思います。特に、検察の職域に入って日も浅い若手検事に対しまして、今後これまでの研修のあり方を抜本的に見直しまして、来年度からは東京に任官後約二カ月半、集中研修の場を設ける、そこで法曹のあり方、検察官としての職務の執行のあり方を含めまして、オン・ザ・ジョブ・トレーニングも含めて、その後の一線検事としての成長を期するための基礎的な教養訓練を施したい、こういうふうに考えているわけでございます。
  76. 斉藤斗志二

    ○斉藤(斗)委員 今刑事局長からも御指摘いただきましたように、今回暴行事件等々起こした年齢層というのは大変若い世代に属しているということで、やはり未熟なこともあるのだなと思いますし、また同時に、そういった未熟者に対しての指導監督、そしてさらに研修等々が十分対応できてなかったんだという反省があるのだというふうに思います。  今新しい施設を建設中で、今後それを活用していくというお話もいただきました。しっかりとその点やっていただきたいというふうに思いますが、先々週でございましたか、法務委員会といたしまして、和光市にあります司法研修所も拝見をさせていただきました。視察させていただいたわけでございます。そこで司法試験を受かった修習生が二年間にわたりまして研修を行う。まあ最初が全体研修、そしてその後にそれぞれの現場、すなわち裁判所検察庁弁護士会等々へ入りまして実務研修も行う。そして、ローテーションを組んで全部それらを経験するというお話も聞いてきたわけでございますが、きょうは最高裁にもお越しいただいておりますが、この学校を卒業いたしまして司法試験を受かった後の研修が不十分ではないかなという感がいたすわけであります。  建物は確かに立派な建物ができておりました。仏つくって魂を入れずということになっては困るわけでございまして、特にこの暴行に対して、またはそういった司法の倫理について十分な研修が行われていたかどうか、これだけの多くの事件が起きたということを考えますと、そうではなかったのではないかと私ども疑問を感ずるところでございます。  そこで、最高裁から御説明いただきたいと思いますが、この新しい施設をつくりまして、同時に、従来と違ってそういった不祥事が起きないようにとの点に力を入れて研修を強めていくのか、御説明をい。ただきたいと思います。
  77. 堀籠幸男

    ○堀籠最高裁判所長官代理者 司法修習生の修習の目的は二つの柱がございまして、一つは、法律に関する理論と実務を身につけることでございますが、二つ目は、高い識見と円満な常識を養うとともに、委員が御指摘のような人権意識、法曹倫理を涵養するという点でございまして、この後者の点につきましては、最高裁判所としても重要であるというふうに十分認識しているところでございます。  この点につきましては、指導官との人間的な接触を通じて啓発し合うことや、各修習生の自主的努力に負うところが大きいわけでございますが、司法研修所の教官や実務修習の指導官に識見にすぐれた人物を充てまして、また、修習生に対して、高い識見と円満な常識、さらには法曹倫理を養うため、自主的努力をすることの必要性を折に触れて説いていくわけでございまして、法律科目の負担が重くなり過ぎて、修習生が教養を深めるための時間的余裕がなくなるというようなことがないようにも努力しているところでございます。  それとともに、これらの教養等を高めるための一助といたしまして、カリキュラムの中にも、所長の講話でありますとか一流の法曹人や法律以外の分野の専門家による講演、あるいは種々の見学等を織り込んでいるところでございます。  このような講演のほかに、司法研修所では民事裁判、刑事裁判、検察、民事弁護、刑事弁護の五科目について講義を行っておりまして、その際、教官から法曹倫理といった観点からも講義がされておりまして、例えば刑事裁判でありますとか検察、刑事弁護の科目では、人権に配慮をした適正手続のあり方につき、令状主義、違法収集証拠の取り扱い等、具体的な事例に即した議論をし、理解を深めるように努力に努めているところでございます。  委員御指摘の点は、法曹三者にとって非常に重要な点でございますので、これからも司法研修所の研修の際には十分意を用いていきたい、かように考えている次第でございます。
  78. 斉藤斗志二

    ○斉藤(斗)委員 ちょうど十年ほど前に教育の荒廃というのがございました。中曽根内閣のときに臨時教育審議会というのが設置されまして、その教育の荒廃に対応しようといったことがございました。その中の幾つかの問題の中の一つが、実は学校で起きた問題でありますけれども、教員の、先生の資質の低下が見られるということでございました。そのために、対策として初任者研修ということを新たに国としても導入をいたした経緯がございます。  私は、今回、法曹界の不祥事を見ておりますと、何か似ているような感がいたしておりまして、特に初任者といいますか、司法試験を受かった後の研修、並びに先ほど刑事局長もOJTの、オン・ザ・ジョブ・トレーニングの話もされましたけれども、このような若手に対しての教育というのをより一層充実させる必要があるというふうに思うわけでございます。  そこで、今回の暴行事件等々は取り調べ中に起きているわけでありますけれども検察官の執務環境についてお尋ねしたいと思いますが、現在個室化されているわけでございます。そこではベテラン検事の若手検事に対する指導ができないのではないか、十分ではないのではないかという感がいたすわけでございます。昔、お聞きいたしますと、大部屋方式というのがあって、そこで、環境的にはよくなかったかもしらぬけれども、少なくとも先輩のやり方を見聞きし、そして体をもって覚えてきたというような歴史があるというふうに聞いておりまして、それを通して能力の向上を図ったということがあるわけでございます。  初任者研修という教育でのお話を申し上げましたが、例えば若手に対してベテラン検事が一人ついて、後見人システムとかそのような対応もなされてしかるべきだというふうに思うわけでございますが、個室化との関係にかんがみまして、御質問をさせていただきます。
  79. 則定衛

    ○則定政府委員 個人的に申しますと、今斉藤委員がおっしゃいますいわゆる合同執務室というものについてのメリット、これは私も高く評価しておるわけでございます。  現在のところ、執務環境の改善と、あるいは静かな環境で事件関係者からよく事情を聞き取るということ等の目的で、個室で検察官が執務をするというのが大変多くなってきておるわけでございます。今申しましたようなメリットはある反面、逆に、御指摘のように、相部屋方式でございますと、先輩検事のやり方を見よう見まねで身につけていく、あるいは難しい問題についてたやすく助言を得るというような点ですぐれているところがあろうかと思っておるわけでございます。  私ども、今回の事件のこともこれございますので、若手検事の指導育成、特にオン・ザ・ジョブ・トレーニングを合理的に、また効果あるようにやっていきますためには、その検事経験年数でありますとか取り扱っております事件の性質等を勘案しながらも、必要に応じて相部屋方式でも執務ができるような庁舎の設計と申しますか、あるいは調べ室の設置といったものを考えていくべきではなかろうかというふうに考えているわけでございます。
  80. 斉藤斗志二

    ○斉藤(斗)委員 時間の関係もありますのですが、ぜひ二度とこのような不祥事が起きないようにしっかりとした環境をおつくりいただく、その中に研修並びに教育、それから先輩後輩、そのようなシステムの中での対応を図っていただきたいと切にお願いを申し上げておきます。  法曹界の信頼低下というのは、単にそのような不祥事のみならず、人権擁護また名誉に対する取り扱いについてもあるんだというふうに私思うわけでございますが、そのような観点から次のような質問をさせていただきたいというふうに思います。  それは、私は去る六月七日に当委員会におきまして、「東京地検によるゼネコン汚職事件捜査処理に関する報告」、これについて質問させていただいたわけでありますけれども、これについて追加の質問をさせていただきたいというふうに思うわけでございます。  法務当局は、従来から、原則として起訴されていない事案については捜査結果を公表しないということでございます。この報告では、最後のページに起訴されていない二つの事案が記載されておって、なぜこれを載せたのか、またこれはどのように理解したらよいのか、伺いたいわけでございますが、先般のゼネコン汚職事件、今捜査報告ということで話をさせていただきましたが、三井建設元役員のこの件につきまして言及した理由につきまして、一体何だったのかということでお伺いしたいというふうに思います。
  81. 則定衛

    ○則定政府委員 御指摘のように、法務当局におきましては従来から、関係者の名誉、人権の保護や、現在及び将来の捜査や裁判に対して不当な影響が及ぶことを防止するなどの観点から、原則として起訴されていない事案については関係者の氏名を含め、その捜査結果を公表しないこととしてきておるわけでございます。  他方、いわゆるゼネコン汚職事件につきましては、衆議院予算委員会から、その捜査結果、捜査処理の結果につきましてできるだけ詳細に報告されたいとの御要請がありましたので、国会の国政調査権の行使に対して最大限の御協力をするという観点から、法令の許す範囲内におきまして、可能な限りの報告をさせていただいたものでございます。  ところで、御指摘の件につきましては、ゼネコン汚職事件捜査の過程で、三井建設からその役員に対し一定の資金が出金されていたことが判明いたしまして、横領の嫌疑が濃厚になったことから、これを立件して捜査の対象とし、処理した事案でありましたことに加えまして、新聞等で相当程度に具体的な形で国会議員にかかわるさまざまの報道がなされ、これに関する検察権の行使に社会的な注目が集まっておりましたため、御指摘の件にも言及することが国会からの御要請の趣旨にも沿い、また関係者の名誉等の観点からも必要であると考えられましたことから、さっき述べましたような捜査、公判への影響の有無等の観点から、説明の範囲、程度についても慎重な検討を加えた上、可能な限度で説明さしていただいたものでございます。
  82. 斉藤斗志二

    ○斉藤(斗)委員 先ほども申し上げましたけれども、原則として起訴されてない事案については公表しないということだと私は思うのであります。しかしながら、残念ながら今回このような事態になったわけでありますが、引き続いてそれに関連してお尋ねをいたしたいというふうに思います。  この報告の三井建設の元役員の件では、献金を受けていないにもかかわらず、「国会議員」と書かれていたために特定の国会議員名が新聞で報道されるなど、著しく人権が侵害されたというふうに私は思っておりまして、この点について、さらにゼネコン報告の表現において、三井建設と国会議員との間に政治献金をするとの約束があったような印象を受けるわけでありますが、このような約束はあったのかないのか、はっきりこれはさせるべきではないかというふうに思うのであります。いかがでございますか。
  83. 則定衛

    ○則定政府委員 お尋ねの趣旨が、不起訴になりました三井建設の役員に対します。その事件の内容や証拠物、証拠関係を問うということになりますと、具体的にはなかなかお答えできないわけでございますけれども、お尋ねの趣旨が、今問題になっておりますゼネコン捜査に関します報告の中で、三井建設と国会議員との間に政治献金をするとの約束があったかどうか、それについても触れたのかということだといたしますと、率直に申しまして、ゼネコン汚職事件に関します報告はそのような点に全く触れていない、御理解いただきたいわけでございます。
  84. 斉藤斗志二

    ○斉藤(斗)委員 今刑事局長から触れていないんだというような御答弁をいただいたわけであります。  そうしますと、報告中にこのような文章があるわけであります。「同社から国会議員への献金のために現金を預かり保管中こういう記載があるわけでありますが、この記載は三井建設の部内限りの事情を表現したものだというふうに理解してよろしゅうございますか。
  85. 則定衛

    ○則定政府委員 まさにそのとおりでございます。
  86. 斉藤斗志二

    ○斉藤(斗)委員 ただいまの御答弁、引き続いてゼネコン汚職事件に関する報告書によりますと、三井建設の役員は会社から引き出された資金を着服、横領したとの事実が認定された上で不起訴になったというふうに理解いたしますが、このことは、その資金が国会議員の側には渡されなかったことを意味すると理解してよろしゅうございますか。
  87. 則定衛

    ○則定政府委員 御指摘のとおり、三井建設役員が着服、横領した、横領した資金については国会議員側に渡されなかったとの趣旨で報告したものでございます。
  88. 斉藤斗志二

    ○斉藤(斗)委員 ただいまの答弁によりますと、そうすると資金は渡った事実はないんだ、国会議員への支出はなかったということでございますね。したがって、その国会議員は全くの無実の、言いがかりをつけられたということだと私は理解いたしておりますし、そのようだというふうに解釈してよろしゅうございますね。  そこで、お伺いをいたしたい。  というのは、起訴された場合は法廷で争うことができますが、これは反論の場も与えられるということでございます。今回のように不起訴になった場合、侵害された人権や名誉を回復する機会を失うことに不起訴になる場合なるわけで、不起訴とされた事案の中でマスコミの報道により関係があるように書かれた入につきましては、その名誉を回復する必要があるのではないかと私思うわけでございます。  そこで、検察捜査の過程でさまざまな嫌疑があると報道され、名誉を侵害されたものがある場合、どのような名誉回復措置が考えられるのか、お答えいただきたいというふうに思います。
  89. 則定衛

    ○則定政府委員 検察捜査の過程で種々の報道がなされる、その絡みで名誉等が侵害された場合という御質問だろうと思いますけれども、もとより取材及び報道の自由は民主主義に支えられるものとして尊重されるべきでありまして、法務当局が個々の報道について論評を行う立場にもとよりありませんが、一般論として申し上げますと、犯罪事実や捜査状況等に関します報道の中には、関係者の名誉、人権への配慮を欠くと思われるようなもの、あるいは検察当局の行う捜査の遂行や公訴の維持にとって支障となりかねないようなものもあり得るところでございます。  そのような報道により名誉を侵害された方がある場合の法的な名誉回復措置といたしましては、民事訴訟の提起、名誉棄損罪による告訴、人権侵犯事件調査の申告等が一般に考えられるところであると思います。
  90. 斉藤斗志二

    ○斉藤(斗)委員 そこで、現状を見ますと、果たして十分な名誉回復の措置になるのかどうか、こういうようなことになるかなというふうに思うわけでございます。  そこで私は、人権擁護のために、必要ならば国政調査権に基づいて関係資料の提出を求め事実を明らかにしなければならない、そういう事態もあり得るのではないかなというふうに思うわけでございますが、法務当局は、国権の最高機関である国会の国政調査権と検察権行使に伴う守秘義務との関係においてどのようにお考えになっているのか、見解をお聞きしたいと思います。
  91. 則定衛

    ○則定政府委員 お答えいたします。  国会の国政調査権につきましては、国会に認められました立法等の機能を全うするためのものとして、国政の全般にわたってその適正な行使が保障されるべきものと考えておりますが、検察等が捜査の結果として把握しました事実等についてこれを明らかにするということは、単に具体的事件捜査、公判への支障になるというだけではなく、関係者の名誉や人権への侵害の問題、将来における検察権の適正な行使への障害という問題、あるいは司法権の独立に対する侵害という問題もあり得ると思われるところでありまして、そのような意味で検察権の行使については守秘義務が課せられているものと承知しております。  したがいまして、国政調査権に基づきます要求に応じ得るか否か、またどの程度応じ得るか、情報を保持しております守秘義務者の側におきまして、個々の事案ごとに国政調査権の行使によって守られるべき公益と守秘義務によって守られるべき公益とを比較考量して決定すべきものであろうと考えております。
  92. 斉藤斗志二

    ○斉藤(斗)委員 そうすると、ただいまの御答弁ですと、比較考量といいますか、ケース・バイ・ケースになるんだというような意味に理解するわけでありますが、私は、果たしてそれで十分かどうか、もう一度お尋ね申し上げたいわけでございます。  泣き寝入りややられ損のケースがあるのではないかと思っているわけでございます。それを救済し、人権擁護、名誉回復の立場から、刑事訴訟法四十七条との関係、特に四十七条ただし書きとの関係でもっと弾力的に考えてもいいのではないかなというふうに思うわけでございます。  ここで刑事訴訟法四十七条にちょっと触れますけれども、「訴訟に関する書類は、公判の開廷前には、これを公にしてはならない。但し、公益上の必要その他の事由があって、相当と認められる場合は、この限りでない。」こういうふうに規定をいたしているわけであります。その公益上の必要という中に国政調査権も入るわけでございまして、今後、名誉回復等々、人権擁護の立場に応じて私はもう少しこれは弾力的に考えてもいいのではないかというふうに思っておりまして、改めてその点お聞きしたいというふうに思うわけでございます。
  93. 則定衛

    ○則定政府委員 御指摘のとおり刑事訴訟法四十七条ただし書きがあるわけでございますけれども、公益上の必要がある場合でも、相当と認められる場合に当たらないときには捜査資料を秘匿することが要請されているのでありまして、結局は、国会法百四条に基づく要求があった場合でも、捜査資料を保管する検察官が、関係者の名誉、人権の保護や、先ほど申しましたような将来のあるいは現在の捜査、公判運営への支障というような観点から、個々具体的に相当性について判断し、相当でないと認めました場合には資料の提出等に応じることができないというか」とになるものと思うわけでございます。  今また、具体的にいかような資料ということは言及されていないわけでございますけれども、一般に捜査過程で収集した資料そのものを国会の方に提出するということは、これまた一般論でございますけれども、なかなか困難であるというふうに考えているわけでございます。
  94. 斉藤斗志二

    ○斉藤(斗)委員 今回の検察並びに法曹界における不祥事につきまして、国民は、一体真実は何だろうか、また捜査の信憑性についてかなり疑問を持つようにもなったわけでございます。そういう意味で、人権擁護それから名誉回復、こういったことにも十分力点を置かれての対応がなされなければならないというふうに思っておりまして、先ほど触れましたように、マスコミ報道に関しましてもぜひ良識ある対応をお願いしなければならない、そのための指導もやはり検察として、それは当局でございますから、される必要があるのではないかなというふうに思うわけでございます。  著しく名誉を傷つけられた方への対応ということを考えたときに、私はそれぞれの立場で、また法務当局は法務当局、検察検察の立場で対応されるべきだというふうに思うわけでございまして、もしそのような人権侵害等々があったときはそのような対応をしたい、またはすべきだと思いますが、改めて、そのような事態が生じた場合には遺憾の意を表するなりそのような対応をすべきだというふうに思いますが、その点はいかがでございましょう。
  95. 則定衛

    ○則定政府委員 事件捜査とマスコミ報道との関係、ひいてはそのマスコミによります関係者の名誉、人権の侵害のおそれの問題、大変難しい事柄であろうと思います。  名誉、人権を侵害されたとされる立場の方から、仮に国会の場であるいは司法手続の場で検察捜査の過程で入手いたしました資料について提出方の要請があるという場合に、先ほど一般論として申しました困難性ということがあるわけでございますけれども、具体的に問題があった場合には、その時点で適正に検察当局が判断して対応すべきものであろうというふうに考えておるわけでございます。
  96. 斉藤斗志二

    ○斉藤(斗)委員 この名誉回復と実際の国政調査権並びに検察権行使のバランスの問題というのは、改めて、難しいという、微妙な問題もあるんだという御答弁ではございますけれども、この問題につきましては、ぜひとも、先ほど触れましかけれども、これは単に国会議員のみならず国民全体の問題でもありますので、しっかりとした対応をお願いをしたいというふうに思うわけでございます。  そこで、大臣にお聞きいたしたいと思いますが、検察捜査、公判の過程で、これは一般論で結構でございますが、事件関係者や第三者への名誉、人権に対する配慮が欠けているのではないかというような見方を私ども持つわけでございますが、先ほど大臣が冒頭、検事総長への注意を喚起したというお話もございました。この名誉、人権に対する配慮という点で、大臣、お考えをお伺いしたいと思います。
  97. 則定衛

    ○則定政府委員 まず事務当局の方から答弁させていただきます。  検察といたしましては、公共の福祉の維持と個人の基本的人権の保障等を全うしながら刑事事件の真相を解明するという厳粛な使命を負っており、それぞれの検察官は、そのような職員の重大さを自戒しつつ職務に当たっているものと存じておるわけでございます。  従来、公判廷で政治家の方々の氏名が公になったことなどにつきましては、種々の御指摘があったことは承知をしておりますし、刑事事件捜査及び公判廷におきます立証の対象は、問題となっている犯罪事実のみにとどまることなく、適正な科刑を得るために必要な情状にわたる事実、具体的には犯行に至る経過や背景事情、犯行後の状況等にも及ばざるを得ないものでありまして、このような捜査の過程で収集する証拠の中には、当該事件に直接関係のない第三者の名誉等にかかわります事柄が含まれることも少なくないところでございます。  このような、第三者の名誉等にかかわります事柄につきましては、捜査段階においてはもとより、公判の段階におきましても、関連事項を立証する必要が生じた場合にも、その取り扱いには十分な配慮が必要であり、いやしくも、第三者の名誉や信用の保護に慎重さを欠いているとの批判や誤解を招かないようにすべきであると考えております。  いずれにいたしましても、検察は今後とも、第三者の名誉等に対します配慮と捜査情報等の慎重な取り扱いが、関係者の捜査への協力や検察に対する信頼を確保する基本であることを銘記しつつ、職務に精励すべきものだと考えております。
  98. 前田勲男

    ○前田国務大臣 ただいま刑事局長から御答弁申し上げたとおりでございますが、検察権の行使の過程におきましては、殊に刑事事件における適正手続の確保の重要性というものを検察官に深く自覚をさせ、かつ、その中に、特に人権というものにも配慮した観点から、捜査情報等を慎重に取り扱うとともに、事件関係者その他第三者の名誉に対しましても十二分な配慮を行うということ、これは検察国民に対する信頼にもつながるものと確信をいたしておりまして、今後このことを心に銘記して職務に精励してもちいたい、かように考えておるところでございます。
  99. 斉藤斗志二

    ○斉藤(斗)委員 今大臣からも決意をちょうだいいたしたわけでございます。  今回の一連の不祥事の問題、それは特に取り調べ中に起きているということは先ほども指摘をいたしましたが、今後いろいろな事案の中で、取り調べということと国民の意識というものに、かなり信頼問題に問題を生じてくるのではないかと私は思っておりまして、その取り調べにおける信頼性を確保する、また向上させるという観点から、一点お伺いしたいというふうに思うわけでございます。  自白を得るための暴行事件ということで、相次いだわけでございます。取り調べ室というのは、まさしく密室の中で行われるというわけでございまして、自白の強要、冤罪等々なきにしもあらず、そういった危惧をされ、心配されるわけでございますが、同時に、先ほどの参考人のお話によりますと、検察の力が昔ほどではなくなったのではないか。もちろん、世の中の変化もあるけれども、三つほど御指摘がございました。  一つは、経験不足ではないか、二つ目、検事の仲間意識ということが少々放置されているのではないか、それで三つ目、使命感、正義感の認識に誤りがあるのではないかということを、参考人のお一人から私どもお聞きをいたしました。この対応についても多少の時間はかかる、今後立て直しには時間がかかるのではないかという参考人の御意見があったわけでございます。  そういう背景の中で、取り調べの信頼性ということを考えたときに、違法な取り調べが行われることを防ぐための方策といたしまして、特に暴力対策ということを考えたときに、私はテープの録音やビデオ撮影なども考えなければならない時期に来ているのではないかなというふうに考えております。例えば、傷を負わなければ暴行事件として表へ出せないとか、そういったこともあり得るわけでございまして、私は、そういうことを防ぐ意味でも、記録性のあるビデオ撮影などを導入、そしてそのための刑事訴訟法の改正も必要ではないかというふうに思うわけでございますが、いかがでございましょう。
  100. 則定衛

    ○則定政府委員 委員御指摘の参考人の陳述の中におきまして、私どももいろいろとそういった見方があろうな、これをどういうふうに受けとめ、その対応策を考えていくかというふうに今受けとめておるわけでございますが、捜査、特に取り調べの基本と申しますのは、御案内のとおり、それぞれの検察官がその人格をすべて出し切って、その相手方と良好ないわゆる人間関係といいましょうか、ラポールといいましょうか、それをつくって、そこで、この検事なら話してもいい、こういうふうに相互の心が通い合うことを求めていくことが真髄であるというふうに従来から言われておりまして、私どももそうであるというふうに思っておるわけでございます。  残念ながら今回一連事件が発生したということから、委員御指摘のとおり、よくそういうことが起こり得る環境にあるのではないか、こういうふうに御心配をかけておるわけでございまして、この点、まことに残念でございますし、また、そのように見られること、あるいは一連の経過から申しましてやむを得ない点もあるかと思います。この点については、深くおわび申し上げたいと思うわけでございます。  ただ、取り調べの全過程の可視化と申すことになると思いますけれども、いわゆるビデオの導入というのも、一つの考え方としては十分あり得るかと思うわけでございますが、先ほど申しましたように、本来検事取り調べております実相というものは、先ほど申しました伝統的なやり方でございまして、ほとんどの場合、ほとんどといいましょうか、九九%まではそういう姿でやっているものと私ども確信しておるわけでございます。  ただ、仮に、御指摘のようなビデオの導入といったものを考えてみますと、それは供述内容の任意性や信用性をめぐります紛争を回避するという点におきまして、一つの方法ではございますけれども、真相解明を十分ならしめるために、日本の場合にはまた、法律の構成要件上の差異もございますけれども、大変詳細な取り調べを時間をかけて行っているわけでございまして、そういう実情のもとでビデオ録画を実施いたしますと、実務的に見ますと、その再生あるいは反訳等に大変膨大な時間と労力あるいは費用をかけるということになろうかと思います。  一方、現在行われております供述調書の作成の方法は、御案内のとおり、その内容を供述者に読み聞かせて、あるいは閲覧してもらいまして、そこに誤りがないかどうか、また、追加補正すべき点があるかないか、それでまた、あるとするならば、それを加筆いたしまして、その内容を確認、間違いがないことを確認してもらった上で、供述者の署名、押印を得るという手続がとられております上に、公判廷におきまして仮にその供述の任意性や信用性が争われますと、検察官におきまして、その任意性、信用性があるということを立証する責任を負っているわけでございまして、その判断は裁判所の裁量にゆだねるわけでございますが、取り調べの状況の録音あるいは録画をしなくとも、検察官側がそれのために必要な立証を行いまして、供述の任意性、信用性を明らかにするというようなこと等の措置が講じられておりますことから、直ちにそのような制度を導入するということは慎重な検討を要するのではなかろうかというふうに考えているわけでございます。
  101. 斉藤斗志二

    ○斉藤(斗)委員 今、刑事局長は、作成調書の関係で御答弁いただいたかなと思うのでありますが、私はそれとは別に、いわゆる暴力事件が起きたということと、それに対する国民の信頼が著しく揺らいだ、検察に対する信頼が揺らいだという観点から、暴力防止という観点でのビデオの導入というのはあってもしかるべきではないかな、こういうような意味で御質問させていただいたわけであります。イギリスでは既に録音を実施しているというふうに聞いておりますし、またアメリカでは弁護士に立ち会ってもらって被疑者の権利が確立しているというようなことにもなっているわけでございます。被疑者の防御権行使、また違法の取り調べの防止というようなことを考えますときに、無理な状況があってはならないのだというふうに思うわけでございます。  改めてもう一度その点をお尋ねしたいと思いますが、私は、取り調べられる人に対する暴力、手が触れたか触れないか、また傷がついたかどうか、傷害を与えられたかどうかということについて、それはわからないわけでございます。先ほど申し上げましたように、傷がなければ傷害として表に出てきにくい問題なんだということを考えたときに、被疑者の立場を守るという意味では、私はビデオということを申し上げましたけれども、音を入れる必要はないのでありまして、その行為を見るだけでよろしいわけでございますから、そういった音なしビデオの導入を御検討をぜひしていただきたいし、そうすることによって一段と検察に対する信頼というのは高まるのではないかな。その声を入れる必要はないということを改めて申し上げて、もう一度その点について質問させていただきたいと思います。
  102. 則定衛

    ○則定政府委員 音を録取しない映像だけのビデオということでございますけれども、基本的には先ほど申しましたことと同じであろうかと思うわけです。  ただ、重ねて申しますけれども、そのようにまで委員に御心配をかけておるということは極めて残念でございますし、ただ実情は、一般の検事におきましては、先ほど来申しましたように、事件関係者との対話、これをいかに有効にやっていくかということで、日常いわば万般の事件について職務に精励しておるということでございまして、その点につきましては御配慮、御理解いただきたいと思うわけでございます。  音のない映像のみのビデオという点につきましても、基本的には全捜査官の取り調べの過程にそれを導入する上いうことになりますと、先ほど申しましたことにまた同一になるわけでございますけれども、その費用対効果というような問題もございますし、それから心理的にいわば捜査官の士気にどの程度の影響を及ぼすのかどうか、これらの点についてもやはり慎重に検討してみる必要があろうかと考えておるわけでございます。
  103. 斉藤斗志二

    ○斉藤(斗)委員 映像だけのビデオというのは、私は一つの考え方だなと思っております。今のやり方でいいんだという答弁ではありますけれども、費用対効果という理由が一つであるならば、それは予算の問題で解決するわけでございます。  私は、それよりももっと大事なことは、二度と金沢事件を起こしてはならないんだということ、そしてそういった暴力は絶対排除をし、そして初めからないんだということを証明する意味でも、そのような新しい対応を検察は検討されなければならないんだというふうに思います。そのことを強くお願いを申し上げまして、私の質問を終えたいと思います。
  104. 金子原二郎

  105. 山本有二

    山本(有)委員 斉藤委員の関連で御質問をいたします。  本日は午前中、法曹三者の不祥事件、それに関連していろいろ御議論があったわけでありますが、法曹三者、殊に検察官にとりまして、その職員は捜査及び公訴提起、さらに公判維持であるわけでありますが、そんな意味で、仕事に関して十分を期していただきたい、仕事に何かあいまいなところ、判然としないところがあれば、それが不正あるいは社会の批判にたえられないというような不祥事につながっていくのではないかというように思います。そんな意味で、私が疑問とするところ、斉藤委員の関連で御質問いたします。  まず、平成六年六月六日に予算委員会に配付されました「東京地検によるゼネコン汚職事件捜査処理に関する報告」というものがございます。これは、法務大臣と刑事局長がそれぞれ報告を予算委員会にされておられます。この中で、まず法務大臣が「御要請を受けましたので、法令の許す範囲内で、御報告いたします。」と、こうございます。これは恐らく、立法府たる国会の国政調査権と法務省、すなわち捜査中の事件検察行政との相克の中でどこまで開示できるのか、どこまで報告をすることができるのか、また立法府がどこまで要求することができるのかというようなことであろうと思いますが、この法令の許す範囲というのは、刑事局長、具体的にはどういうことでございますか。
  106. 則定衛

    ○則定政府委員 刑事訴訟法四十七条と国会法の規定との関係ということでございます。
  107. 山本有二

    山本(有)委員 まさに捜査中の事件の話でありますから、公訴提起した後、公判中でもなお捜査も続いておるようでありますし、そういう意味では微妙なことでございます。したがって、この微妙であることをあいまいにしてはなりません。  特に、国会に報告をするということは、委員会で大臣や刑事局長が大っぴらに言うわけでありますから、傍聴人もございます。あるいはマスコミ、報道等の方々も聞いておられます。そういう中での報告というものには、私は明確な基準というものがなければならぬと思うのです。そうでなければ、勝手に報告をして、それが予断や偏見に基づくものであった場合には、いたずらに無辜の民を害してしまうというような危険が多いわけでございます。  そういう意味において、このことを詳しくお聞かせいただきたいわけであります。予算委員会から一体どのような要求があったか、教えてください。
  108. 則定衛

    ○則定政府委員 当時の衆議院山口予算委員長から、前例に照らしと、つまり具体的にはリクルート事件等の前例に照らし、できるだけ詳しくゼネコン事件捜査処理について報告されたい、こういうことでございました。
  109. 山本有二

    山本(有)委員 その委員長のできるだけ詳しくということに対して、どのような判断、検討をされたか、お聞かせください。
  110. 則定衛

    ○則定政府委員 法務当局といたしましては、予算委員長の御要請を受けまして、国会の国政調査権の行使に対して最大限の御協力をするという観点から、国会からの御要請の趣旨、関係者の名誉、人権に及ぼす影響、将来及び現在の捜査、公判への影響等について、詳細に所要の検討を行いました。その中で、法令の許す範囲内で可能な限度で報告をさせていただいたものでございます。
  111. 山本有二

    山本(有)委員 法務大臣、私はこの国会ずっと眺めておりまして、間々政治的対決が予算委員会に集中すると思います。それは、国の基本を決める予算の審議でありますから当然のことだろうと思います。しかし、その予算委員会が一国の重要な人物の、政権を左右するような人たちのスキャンダルに、これが議論が及んで空転をしたりあるいは長時間その審議にとられたりというようなことで、いわば新聞の社会面の事実をこの国会で審議をしている。本来検察庁がすべき捜査をまるで予算委員会捜査しているような、云々するような時間が多いような気がいたすわけでありますが、私としましては、これはイレギュラーな、憲法やこの国会が、立法府が予想していない事態だろうと思うのです。そういう中でこのゼネコン汚職の報告書が出ました。このゼネコン汚職の報告書、これも何か立法府が、あえて国政調査権を使ったならば、新しい事実が出てきて政権の相手方の首でもとれるのかというようなものの一環に使われているような気がしてならないのです。  ですから、そう考えればこういうことの、書面を出すとか出さないとかいうこと、そして、出すならばその中身についての基準というものを明確にして、今後いわば予算委員会捜査の一環になったり、本来の国の基本を議論する場所から離れたその余の機能を持たせたりという、イレギュラーな機能をさせたりということは、私はこれから戒めるべきではないかというように思うのですけれども、大臣の御所見はいかがでしょうか。
  112. 前田勲男

    ○前田国務大臣 予算委員会の運営の方法等についての、これら御論議を踏まえての基準等を設けたらどうか、こういう御質問でございますが、予算委員会の運営のあり方等について、法務大臣あるいは内閣の一員としてあり方をこうあるべきであると申し上げる立場にないということをまずお許しいただきたいと存じます。  いずれにいたしましても、これは国政調査権と刑訴法四十七条、これのいわば調和点を見出していかなければならないということでございまして、実はこの報告書、中間報告も、予算委員会から従来の例に倣い報告せよ、こういう御趣旨のもとに法令の許す範囲内で御報告を申し上げた、こういうことでございまして、国政調査権とまさに国家公務員の守秘義務とのバランスということ、ここに基準をつくるということはなかなか難しい問題だろう、かように考えております。
  113. 山本有二

    山本(有)委員 まさに政争の具に予算委員会を使われ、しかも政策論議でないスキャンダル論議というのは、私は国民の前には余りありがたい話ではないような気がいたします。法務大臣のこの御見解を踏まえてまた私自身も勉強してまいりたいと思いますけれども、ぜひ大臣も国会の正常化に御尽力をお願いいたしたいと思います。  さて、そういう中でこの報告書の内容をつぶさに検討いたしますと、大体B4判で四ページございます。その四ページ目、最後の半分ぐらいまでにかけて公訴提起した事実及び公訴事実が記載されているわけでございます。これは、新聞等には既に発表になったことでございます。新聞は、むしろ公訴事実につきましては本当に克明に、すべて間違いなしに全部活字にしておるわけでありますが、この刑事局長の御報告では公訴事実も簡略化しております。  そう考えてまいりますと、実はこの報告というのは、既に公訴事実について明らかにされた事実をあえてここに持ち出しているというように思うわけでございます。つまり、国政調査権、予算委員会の命令にしましては、この大半が余り親切ではない報告になってはいないか。つまり、本当はもっと深いことを聞きたかった、にもかかわらず新聞で見る以上のものは出てこなかったというように私は思いますけれども、これで十分なものと考えておられるのかどうか、これをお伺いいたします。
  114. 則定衛

    ○則定政府委員 大変きつい御指摘でございますけれども、私どもといたしましては、先ほど申しましたように、国会からの御要請の趣旨にこたえるために、また冗長にわたらなくて必要なものをできるだけ盛り込む、しかもそれが法令の範囲内ということでございまして、精いっぱいの形で記載させていただいたものだと考えておるわけでございます。  もとより、この公訴された事柄といいますものは、起訴の当時に新聞発表されておりますので、御指摘のように、中身において新鮮さに欠けるのではないかと言われれば、それは否定できないかと思います。ただ、そのほかに、公訴事実以外の当該事件に係ります問題といいますのは、まさにその後の公判立証で検察官が立証すべき事柄でございまして、いまだ証拠も外征出せないというような制約もあることを御理解いただければと思っております。
  115. 山本有二

    山本(有)委員 それはもちろん理解をいたします。いたしますけれども、新鮮味に欠けるという点においては、刑事局長がおっしゃられたとおり、もうだれもがそう思うわけでありますから、その点においてなお何か新鮮味、国会に提出できることを、新鮮味を求めてこの種のことは御努力いただきたいというように思います。  それで、特にこの四ページ目の後段、最後の段に公訴提起されていない事実が記載されております。「最後に、以上申し上げました事実以外の事実に関する捜査結果について付言いたします。」これはいわば新鮮味を求めて法務省が、これまででは新聞発表以上のものではない、新聞発表と違うことを書こうといういわば努力かもしれません。努力かもしれませんが、その事実について予算委員会から要求があったのかなかったのか、お聞かせください。     〔委員長退席、中島(洋)委員長代理着席〕
  116. 則定衛

    ○則定政府委員 先ほど申しましたように、当時の予算委員長から前例に照らしてできるだけ詳細にと、特にそこに具体的にリクルート事件の例に準じて詳細に、こういうことでございましたので、それらの事項を含めて法令の許す範囲内で詳しく報告しろ、こういう御趣旨であろうと受けとめたわけでございます。
  117. 山本有二

    山本(有)委員 それがこの二つの事実になった、こういうことなわけでありましょうが、私は、この公訴提起されていない事実を記載したことが大変今後立法府と行政府、特に検察庁との間で微妙な、極めて揺るがしがたい大きな問題を抱えてしまったように思っております。  つまり、要求がなかった事実をあえて提出されたということ。そうすると、要求がなかった事実は検察庁の方としましては、こういう捜査もあった、ああいう捜査もあった、こんなこともありましたというように、みずからの恣意でいろいろな事実を公にすることができる。しかも、テレビを入れたりあるいはラジオを入れたり、マスコミ、国民衆目の中でこういう事実を摘示することができるというような、私は、少し行き過ぎた点がありはしないか、行き過ぎる可能性を秘めた行為をやってしまったのではないかというように思います。その点、局長いかがですか。
  118. 則定衛

    ○則定政府委員 お答えいたします。  先ほどの御質問で、起訴されていなかった部分については新鮮味を出す観点から加えたのではなかろうが、こういう御指摘でございますけれども、これも先ほど申しましたように、全く新鮮味がないといいましょうか、一連捜査の過程で不起訴処分の発表等がなされていたわけでございまして、特に新鮮味を出す意味でつけ加えたということではございません。  ただ、ではどうしてかということでございますけれども法務当局におきましては従来から、関係者の名誉、人権の保護、あるいは現在及び将来の捜査や裁判に対します不当な影響が及ぶことを防止するなどの観点から、御指摘のように、原則として、起訴されていない事案については関係者の氏名を含めその捜査結果を公表しないこととしておるわけでございます。他方、今取り上げられておりますいわゆるゼネコン汚職事件につきましては、先ほども申しましたような予算委員長からの御要請もこれありましたし、国政調査権の行使に対しまして最大限の御協力をするという観点から、法令の許す範囲内において可能な限りの報告をさせてもらうということでございます。  御指摘の件につきましては、ゼネコン汚職事件捜査の過程で、新聞等で相当程度に具体的な形で国会議員にかかわる種々の報道がなされ、これに関する国民検察権の行使に対する社会的注目が集まっていたわけでございますが、そのようなことから、御指摘の件にも言及することが国会からの御要請の趣旨にも沿い、また関係者の名誉等の観点からも必要であると考えられましたことから、さきに述べました捜査、公判への影響の有無等の観点から、説明の範囲、程度についても慎重な検討を加えた上、可能な限度で説明させていただいた次第でございます。
  119. 山本有二

    山本(有)委員 マスコミから注目され、国会議員の名前が指摘されたとされる二つの事件、この事件のことをあえて報告したわけでありますけれども法務当局が現時点でこのことに対して、今までこの報告をしたことに対して振り返ってみて、今から過去を振り返ってみて御見解、何かありませんか。
  120. 則定衛

    ○則定政府委員 現時点でということでございますけれども、私どもといたしましては、先ほど申しましたように、国会からの御要請の趣旨、それから事件関係者、あるいは報道で取りざたされている方の名誉、人権等のためにも法令の許す範囲内で、限界はございますけれども、三井建設の関係で立件不起訴になったことについて触れた。これはぎりぎり、国会の要請、それから事件関係者その他への配慮、将来の捜査、公判への影響等々を総合勘案いたしまして、選択し得た妥当な対応であったというふうに考えておるわけでございます。
  121. 山本有二

    山本(有)委員 具体的にお伺いしますが、「鹿島建設から元国会議員に対し」というところでありますが、「いわゆる迂回献金が行われていたとの報道がなされ」ている、「贈収賄罪のほか、政治資金規正法違反等の成否についても鋭意捜査を尽くしましたが、何らかの犯罪の嫌疑ありとして訴追するに足りるものを認めることはできませんでした。」この表現ですが、これは私は結論からいうと、灰色をつくってしまったように思います。  つまり、公訴提起するほどの嫌疑はなかったけれども迂回資金はあったような、そんなふうにとられてしまうような私は気がします。迂回資金の事実があったのかどうか、そして、この迂回資金をこのことによって合法としたのかどうか、この点はいかがですか。
  122. 則定衛

    ○則定政府委員 御指摘の報告書の記載自体におきまして、迂回献金の存否というものについては全く触れていないわけでございます。
  123. 山本有二

    山本(有)委員 「迂回献金が行われていたとの報道がなされた」、こう書いてありますから、これは別に法務検察が判断したことではありません。報道がされたという事実は紛れもない事実ですから、ここに検察庁の判断ということを私は申し上げるつもりもないわけですけれども、しかし、犯罪の嫌疑ありとして訴追するに足りるものを認めることができなかったというような言い回しは、非常に後の余韻を残してしまって、私はこれは灰色をつくったというように思うのであります。  そこで、この処分は一体処分と言えるのかどうか。つまり不起訴処分、立件しておって不起訴にしたのかどうか、そしてもし不起訴にしたのだったら、嫌疑なし、あるいは証拠不十分、あるいは無罪、こういうような不起訴の中身があろうと思うのですが、この点、局長いかがですか。
  124. 則定衛

    ○則定政府委員 お尋ねの趣旨はあれでございますか、迂回献金の関係ですか。(山本(有)委員「迂回献金」と呼ぶ)これについては、全くその点は触れておりませんし、現に立件はしておらないわけでございます。
  125. 山本有二

    山本(有)委員 立件していないけれども、そうすると、鋭意捜査を尽くした、こういうことなわけですか。鋭意捜査を尽くした、こういうことですか。
  126. 則定衛

    ○則定政府委員 まあ立件というのは必ずしも法律用語じゃございませんので、いわばわかりにくいところがあろうかと思います。新聞等でもまたいろいろな意味で使われているかと思います。  私ども法務検察として立件する云々、また、今委員御指摘の点もそうだろうと思いますけれども、これは具体的な被疑者について刑事事件捜査として起こすといいましょうか、被疑者を特定して事件として具体的に捜査を始める、こういう趣旨に使っておるわけでございまして、御案内のとおり、一連の特捜部におきます捜査といいますのは、いろいろな関連で幅広く捜査活動を展開するわけでございます。その場合に、いろいろな嫌疑が途中で浮上したり消えたりするわけでございまして、それらはいまだ、今申しました意味での立件という段階には至っていない、こういうことでございます。
  127. 山本有二

    山本(有)委員 そこのあたり、やはりこの報告書というのは丁寧さを欠いていると思うのですよ。やはりそこで立件、捜査、鋭意捜査したというのだったら、普通、用語としては我々は、捜査対象者がいて被疑者がいて、それで検事捜査を尽くした、こういうように読んでしまうんですね。  そうすると、やはり元国会議員というのは悪いやつだな、調べられるだけでも一般社会では悪いわけですから、警察へ呼ばれただけでも悪いというような、御先祖様に顔向けできないというぐらい、田舎へ行ったらそんなふうなものでございますので、そういう意味においては、私はやはりここの点の報告というのは慎重さを欠いているというように思うのです。その点は、質問ではなくて私の意見ですから酌んでいただいて、今後研究していただきたいと思います。  次に、「三井建設の元役員が、同社から国会議員への献金のために現金を預かり保管中、これを着服、横領した」これは、「事実が判明しましたがこと書いてあるのですよ。「事実が判明しましたがこというのは、これは捜査の結果、自白または証拠に基づいて検察官が明らかにした事実であろうと思うのですが、そうですか、そうでないのですか。
  128. 則定衛

    ○則定政府委員 御指摘のとおり、事件関係者の供述あるいは関係証拠で、検察当局が証拠に基づき認定したということでございます。
  129. 山本有二

    山本(有)委員 僕は、ここの点がこれから議論の対象になり、あるいは、ひょっとしたら憲法学者やら刑事訴訟学者やらの研究材料にまでなるやもしれないな、こう思っているのです。  特に立法、司法、行政というのが国の三本柱の権力構造であって、おのおのがそれを尊重していこうじゃないか、こういうのが憲法の建前だろうと思います。憲法のデュープロセス、法令手続の要請に基づいて、刑事訴訟法は当事者主義というのをとっておると思うのですよ。つまり当事者主義というのは、検察官が一方当事者ならば被告人と弁護士が合わさって他方当事者で、裁判官が申立て真ん中で聞いておって、それで初めて真実が明らかになってくるというのが建前なんですね。  そうすると、こういう検察官が判断した、しかも公訴提起をされていない事実、この公訴提起されていない事実がこのような報告で予算委員会に明らかになりますと、これは議事録に残ります。そして、国民大衆にテレビやラジオやマスコミ、新聞で全部流れます。そうすると、この事実が判明したということをどうやって争うか、こうなった場合、公訴提起されたら弁護士がつきます。こんなふうにやられたらだれもつくことができないです。弁護士、だれもつくことができない。そして言いっ放しでやりっ放しだ、こういうことになりますと、これは検察庁があえて、こういう事実が「判明しました」をもしこんな場合にやられた場合に、被害者をあえてつくっていくというようなことにもなりかねないし、そもそも、私が言う憲法や刑事訴訟法が予測した当事者主義とは随分話が違うことになってきやしないかというように思いますが、この点はどうですか。
  130. 則定衛

    ○則定政府委員 三井建設の関係について、今触れたことについてのお尋ねだろうと思いますけれども、これをその報告書で触れさせていただいた理由は、先ほど二回にわたりまして、御質問がございましたので、お答えしたとおりでございます。  検察当局が一方的に収集した証拠で認定した事実に過ぎないじゃないかということでございますけれども、これは確かにいわば確定力がないという意味におきましては、そのとおりでございます。しかしながら、従来からこの種の事件について検察当局が仮に当該立件した事件を不起訴にする、またはそれが事実が認められながらも、いろいろな情状を考えて不起訴にするという場合の事実の確定という問題につきましては、証拠法則にのっとりまして厳格に事実認定をしているというのが実情でございます。  それにのっとりまして、今回の一連のゼネコン捜査の過程で、それに関連するいろいろな報道が取りざたされていたこと等々もございまして、関係者の名誉のためにも、また先ほど申しました国会の御要請にも、そういう趣旨から、私どもとしてはああいう形で触れさせていただいたということでございます。  その場合に、私どもの、あるいは検察当局におきます発表の範囲で正確に報道されますと、その内容自体から直ちに第三者の名誉が侵害されるようなことはないものと思っておるわけでございますけれども、当局の捜査報告に対しまして、一部の報道機関により、特定の国会議員の実名が挙げられたことは承知しておりまして、この点につきましてはまことに遺憾なことであると思っております。
  131. 山本有二

    山本(有)委員 これは大変遺憾なことなのですよ。刑事訴訟法で、公訴提起された事実、罪となるべき事実に対して、攻撃防御ができるというわけです。攻撃防御というのは、反対証拠を提出したり、あるいは無罪であるということを主張する証拠の提出や主張をするというようなことが保証されて、初めて事実というのが明らかになってくる。  日常的にもそうですよ。Aの人の言い分だけ聞いて、Bの人の言い分は聞かなかったら、全体の話はわかりませんから。そういう意味において、検察官が判断した、「判明しました」から、こう書く。そして、書きっ放しで何も言わせないということについて、私は片落ちだと思います。これを片落ちだと思うか、思わないかについて、お聞かせください。
  132. 則定衛

    ○則定政府委員 事件関係者のお立場で、いろいろな受けとめ方があろうかと思うわけでございますけれども、私ども法務当局あるいは当時の不起訴処分を発表いたしました検察当局といたしましては、先ほど来るる申し上げておりますようないろいろな状況を勘案いたしまして、やはり必要であるという考えのもとに行ったものでございまして、その点、御理解いただければと思っておるわけでございます。
  133. 山本有二

    山本(有)委員 そうしましたら、遺憾であるということを言われた以上、私は片落ちだと思うのですが、そうすると、こういう場で、例えば予算委員会でもう一回その方が要求して、攻撃防御、告知、聴聞の機会を得たい、こういった場合、そのことを刑事局長はお許しになられますか、お許しになられませんか。そういう対応をされますか。     〔中島(洋)委員長代理退席、委員長着席〕
  134. 則定衛

    ○則定政府委員 国会サイドから、これはまさに国会の方でお決めになることだと思いますけれども、私どもはあくまでも三井建設役員に係る業務上横領事件について言及しているのみであるということだけは御理解いただければと思っております。
  135. 山本有二

    山本(有)委員 これは問題があるのは「同社から国会議員への献金のために」、こう書いてあるのですよ。こんな文がなかったら別によかったわけですが、「献金のために現金を」と。しかも新聞報道は、特に朝日が一面トップで一月にも数回、二月に至っては社説でるるこう書いてあった。そういう流れの中での六月六日のこの「同社から国会議員への献金のために現金を預かり保管中こですから、そうしますと、これはもうだれかということが明らかになりますし、しかも国会議員への献金というだけでなくて、新聞報道はもうわいろ、贈収賄だ、こう書いて、まさに予見を抱かしているわけですよ。  その中でこういう事実を指摘されますと、御承知のとおり、贈収賄事件というのは必要的共犯なのです。必要的共犯ということは、贈った者があればもらった者がある。それで、贈った側については、お金は着服、横領して、金はかまえておった、こういうわけですから、当然もらう対象者がいたという話になってくるわけでして、新聞報道と相まって、いわば一つのストーリーをここで完結させてしまった。検察官が、検察庁が、あえて法務省がこの報告書でストーリーを完結させてしまったといううらみがあるのですよ。  その点、私は、刑事訴訟法の学問的な問題に加えて、個別の事件についての攻撃防御まで奪って予断だけ加えてしまった、こういうように危険性を持っておるのですが、この点はどうですか。
  136. 則定衛

    ○則定政府委員 贈収賄は必要的共犯だ、こういうことでございますけれども、例の報告書の記載といいますのは横領、つまり他人からその帰属する全員を預かり保管中にいわば使い込む、こういうことでございまして、自由に使える金なのか、そうではなくて、特定の趣旨で渡されているものなのかどうか、これが横領罪の成否を判断する上で必要な要件の一つでございます。そういう意味で、その国会議員に渡すため預かり、保管中その金を使い込んでしまった、先ほど斉藤委員の方からの御質問にお答えいたしましたように、つまり金はその先に行っていないということでございまして、今御質問は何かその先を超えて、いわば私どもといたしましては、文章を読まれ過ぎておられるのではなかろうか、こんな感じもいたすわけでございます。
  137. 山本有二

    山本(有)委員 このことが、この文書が個別事件へ影響を与えることになったと私は思います。  それで、三井建設の元役員というのは、私はこの着服、横領したという事実について、私の調査では認めておりません。会社もこのことについては認めていないというふうに、私の調べではなっております。そうすると、「判明しました」という点が、これがやはり検察官の取り調べだけであるということに限定されてしまっておると思うのです。にもかかわらず、その個別事件、特に新聞報道に対して訴えておる個別の名誉棄損事件での乙考証としてこの書面が出される予定なわけです。そういうことを考えると、立法府が司法府へ証拠をわざわざ提出した。しかも、衆議院予算委員会というオーソライズされた席での権威ある文書として提出されていくということに、私は少し行き過ぎた点があるように思うのですが、この点はいかがですか。
  138. 則定衛

    ○則定政府委員 この報告書の内容をどのように利用されるのか、これは私どもの何とも申し上げられるところではございませんけれども、先ほど来申しておりますように、この国会の御要請でありますとか、事件関係者の名誉の問題でありますとか、その他いろいろとまた社会的な注目も集まっていた状況の中で、最良の選択をさせていただいたものであるというふうに思っておるわけでございます。
  139. 山本有二

    山本(有)委員 私は、これだけいろいろ物議を醸し、そして法務省もこのゼネコン汚職のマスコミ過熱報道に、収束をしたいとしてこの報告をしたという気持ちはよくわかります。気持ちはよくわかりますけれども、個別事件にわたる、しかも公訴提起されていない事件にわたって、しかも事実認定をしていくということの危険性を今後後世に残したような気がいたします。  そこで、今後この種の捜査中の事件、公訴提起されていない事件については、たとえ立法府が国政調査権で要求されても、捜査の密行性やら検察行政の特殊性という形で、私は、出すべきではないという基準を設ければいいと思いますが、この点、御感想があればお伺いしたいと思います。
  140. 則定衛

    ○則定政府委員 先ほどもお答えいたしましたように、基本的には起訴されなかった事件について公表すべきでないという立場は、私どももみずから持っているところでございます。その上で、国会の御要請の趣旨、あるいはその関係者の名誉の保護等々の関係、いろいろと考えていかなければならないわけですけれども、今委員御指摘の点につきましては、今後の対応におきまして十分念頭に置いて考えていくべきものであろうと思っております。
  141. 山本有二

    山本(有)委員 終わります。
  142. 金子原二郎

  143. 富田茂之

    富田委員 改革の富田茂之でございます。  前回、十一月九日の当委員会におきまして、東京入国管理局係官による中国人女性に対する暴行事件について質問をさせていただきましたが、その際、中国人女性の治療状況についての答弁が不正確であったようであります。その点について再度答弁を求めたいと思います。
  144. 塚田千裕

    ○塚田政府委員 十一月二日の朝に、私どもの収容担当の警備課長補佐が被収容者、この問題になりました中国人女性の左目周囲のはれを確認いたしまして、また被収容者からも頭が痛いその診療申し出がございました。そこで、同課長の指示によりまして連れていく病院を手配いたしまして、診療先の手配がついた同日の午後二時十分、近くの外科病院に連れていきまして、左目周囲打撲、治癒まで二週間を要する見込みとの診断を得ました。そして、念のためCTスキャンの検査をするようにとの指示を受けました。よって、同病院から帰庁後の、役所へ帰った後の同日午後七時二十分、CTスキャン設備を有する総合病院の外科に連行した結果、頭部の外傷と診断されまして、外側から診断した状況では眼球に傷等はなく、神経も大丈夫だと思う、目については専門医で受診されたいとの所見をいただきました。  なお、前回の答弁におきまして、私は、この日の午前と午後二度病院に連れていったと申し上げたのでございますが、実際正確なところは、午前中に手配したのでございますが、最初連れていった時間は午後二時十分になりまして、二度目は先ほど申し上げました夕刻の時間になったということでございますので、その点は訂正させていただきます。  その後、この中国人女性の診療状況でございますけれども、四日に眼科、五日に脳神経外科及び眼科、八日に整形外科及び内科、九日に眼科及び脳神経外科の計七回病院に連行いたしまして、眼球、頭蓋骨等の精密検査、レントゲン、CTスキャン等を受けさせましたが、眼球、眼底、頭部及び内科的に異常はないとの診断を受けております。また、十五日には東日本入国管理センターにおいても受診をさせまして、外見的な後遺症は認められない、外見上は治癒と考えられるとの医師の診断を受けました。また、同センター職員によりましても、同日、同人に外見上のあざや、はれはもう全くなくなっていたことが確認されております。  なお、私どもの職員につきましても、前回申し上げたところでございますけれども、左鼠腰部、両大腿打撲等により全治七日の負傷を負いましたが、現在は治癒いたしております。  以上が全体の状況でございます。
  145. 富田茂之

    富田委員 ただいま詳しい治療状況について御説明いただきましたけれども、実はこの女性を弁護されております弁護士さんにちょっとお話を伺ったのですが、この弁護士さんが十一月二日の日に接見した際には、もう左目のあたりがかなりはれ上がっていた、青黒くはれていたというような表現をされておりました。被害者本人は、左目の視力が一・二もともとあったものが〇・二まで落ちているというふうに弁護人の先生に訴えられたようであります。ただいまの御説明では、その視力が落ちたという点について何の説明もなかったのですが、そのあたりは当局は調査されているのでしょうか。
  146. 塚田千裕

    ○塚田政府委員 ただいま申し上げましたとおり、眼科のお医者さんにも何度か見せております。右目は正常でございますが、左目の周囲に、くまといいますか、打撲傷があるその左目でございますけれども、これは視力が低下しているきみがあったのでございますけれども、医者の所見によりますと、検査に対して必ずしも協力的な態度を示してもらえなかったということで、正確な数値は不明ということでございます。したがいまして、医学的に左目の視力低下を裏づける数値的所見というものはなくて、診断は保留という状況になっております。
  147. 富田茂之

    富田委員 言葉の不自由さとかあってはっきりしない部分があるのだとは思いますけれども、前回、この委員会で十一月九日に質問させていただきまして、その後十一月十八日に発売されましたフライデーの十二月二日号にこの女性の顔写真が掲載されました。左目のあたりがかなりあざがあるな、真っ黒になっているような写真が掲載されて、ちょっと私もびっくりしたのですが、大体あざというのは次の日ぐらいに打撲の場合は出てくることが多いわけですから、前回、また先ほどの局長の答弁にもありますように、朝になってわかったのかなというふうに思いたいところですけれども。  この事件に関しまして、代理人の弁護士さんの方が昨日付で東京地検の方に刑事告訴されたようであります。けさの新聞報道でも何組かに載っておりました。刑事告訴に当たって、私の方でもその弁護士さんに、どういう形で告訴されるのか、内容がもしわかるのであれば教えていただきたいとお願いしまして、告訴状を見せていただきました。その告訴状によりますと、前回の答弁と大分経過が違うんじゃないかな。これは被害者側の言い分ですから、当局側はそうじゃないという部分が大分あるかもしれませんけれども、ちょっと何点か確認させていただきたいと思います。  そもそもこの暴行事件が起きた経緯について、前回の答弁では、被害を受けた女性が取り調べの最中に自分の方から反抗的な態度をとって、写真を飲み込んだり、また取り調べ官に暴行を振るうような状況があった、その際に取り押さえる中で暴行が起きてしまったんだ、大筋そういうことだったと思うのですが、どうもこの告訴状によりますと、もともと取り調べの当初から、この女性がテーブルの上に置いた財布を係官の方で手に持って何回も往復びんたをした。それでこの女性はびっくりして、こんな仕打ちを受けたことがないということでかなり驚いて、そこからいろいろな行動に走ったようであります。告訴状ではそういうふうになっております。この事件の発端がどうだったのか、きちんと調査されているか、まずその発端の点ですね。  それと、別室に連れていかれて、後ろ手錠をかけて自傷行為を防いだというふうに前回局長は答弁されておりましたが、後ろ手錠をして暴行を受けた後、この女性は気絶したというふうに主張をされているようであります。気絶したまま約七時間近く取り調べ室のソファーの上か何かに放置されて、夕方になって本人が気づいたというようなことも告訴状には書かれておるようであります。そのあたりの事実関係については、当局の方はどのように把握されているのでしょうか。
  148. 塚田千裕

    ○塚田政府委員 まず、一部始終につきまして、私ども調査結果を御説明申し上げます。  十月の三十一日から十一月一日未明にかけまして、新宿の歌舞伎町の飲食店において、当局と新宿警察署が合同で不法残留等の入管法違反者三十七人を摘発いたしました。このうち二十六人を東京入国管理局の第二庁舎に任意連行の上、調査を行いました。その際、この中国人女性が別人の名を名のって他人名義の外国人登録済み証明書を提示するなど不審な点が見られたため、私どもの職員が当該容疑者の所持品検査を実施いたしました結果、この容疑者名義の旅券や顔写真が発見されたということでございます。  これにのっとってさらに事実関係を追及いたしましたところ、容疑者が突然立ち上がって、写真を口の中に入れて飲み込もうとした。つまり、証拠隠滅をはかろうといたしましたので、調査に当たっておりました職員がこれをやめさせて、写真を取り出そうとしたわけでございます。が、中国人女性の方はこれに対して、暴れ出して職員につかみかかった上、指をかみ、足や腹をける等の行為に出ましたので、取り押さえた。一たんは静かになったのでございますが、再び職員にっばを吐きかけ、職員の腹などをけったので、これを制圧するため職員が容疑者を二回殴打してしまったということでございます。  その後、容疑者が床に頭を数回打ちつけるなどの自傷行為、これは前回も御説明いたしましたが、に及んだことから、同人を保護するため別室に連行した。しかしながら、なおも職員に対し罵声を浴びせ、足や腹部をけるなどしたため、再度制圧するため容疑者を二回殴打してしまったというのが私ども調査の結果でございます。  それと、長時間気絶したまま放置されていたと聞いているがどうかという点でございますけれども、私どもの確認しているところでは、そもそも同人が気絶したような事実はございません。十一月一日の本件が起こりました直後、午前の九時四十分から調査担当官を変更の上、調査を再開いたしました。しかしながら、中国人の女性は身分関係を頑強に否定し続けたため、一時調査を中断しまして、私どものこの調査を行っている警備第二課、そこの事務室の応接セットで休憩させまして、約二時間後の十一時五十八分から調査を再開したところ、十二時二十分になってやっと、自分がこの陶亜萍という人物であることを自認いたしました。  その後、同人の供述に基づき調書を作成いたしまして、これらを読み聞かせまして本人の署名もとっております。納得した上で収容手続を進めました。そして、十六時五十分に同人に対し収容令書を執行したというのが私どもの確認いたしました事実の経過でございます。
  149. 富田茂之

    富田委員 被害者の方が訴えている事実と大分経過が違うようですが、当局の方の調査というのは、被害者本人とかあるいは、本件ではちょっと普通の事件と違いまして、一緒に取り調べを受けていた他の不法残留者といいますか、その方たち事件の現場を目撃している。この方たち被害者の代理の弁護士さんの方にいろいろ目撃証言等を伝えているようであります。そういうところは当局の方では調査されたのでしょうか。
  150. 塚田千裕

    ○塚田政府委員 それぞれ当事者というような立場もございますので、私ども調査は基本的に、取り調べに当たった警備官また警備官の周囲にいた同僚、その辺のところの証言、事実関係についての確認ということに基づきまして取りまとめてございます。
  151. 富田茂之

    富田委員 それでは、この暴行を働いてしまった係官のことについてちょっとお尋ねしますが、事件があってから大体もう一カ月が経過している。この間にいろいろ調査をされたのだと思います。前回の委員会のときにも、調査をずっと進めている、きちんと調査した上でどういう処置をとるか決めたいというような御答弁だったと思うのですが、十一月一日にあった事件について、現在の段階でこの係官に対して何らかの処分なり措置はされているのでしょうか。
  152. 塚田千裕

    ○塚田政府委員 事件の直後から鋭意調査検討を進めておりまして、近くしかるべく処分を行う予定でございます。
  153. 富田茂之

    富田委員 昨日付で刑事告訴されたということで、刑事処分の手続の方も進んでいくんだと思うのですけれども、ちょっと、一カ月たって、近く処分する予定というのは、普通の人、国民の目から見て、何だ、自分たちは仲間だからきちんとしないのかというふうに映ると思うのですね。普通の国民がこれだけ相手にけがをさせる事件を起こしたら、逮捕されるか、逮捕されないまでも、すぐ調べを受けて何らかの処置がされている期間ですよね、もう一カ月たつということは。それに対して、近く処分するという答弁ではちょっと納得いかないのですけれども、一体どういうふうに調べをして、その職員に対してどのような指導をされているのか、この職員は今現実に職務を行っているのですか。そのあたり、お聞かせください。
  154. 塚田千裕

    ○塚田政府委員 この職員につきましては、その日のうちから警備第二課という持ち場から離しまして、警備関係の総務的な仕事をしている別の課に移しております。したがいまして、同じ仕事を続けているわけではございません。  それと、処分の中身についても具体的に検討を進めておりますが、今委員御指摘のとおり、幾つかの動きもございますので、そういうものとの兼ね合いもございますので、それを念頭に置きましてしかるべく処分を行うつもりでございます。  また、タイミングその他で、世間の常識と著しく離れているというようなことのないように十分注意してまいりたと存じております。
  155. 富田茂之

    富田委員 積極的な御答弁をいただきましたので、これ以上の質問はやめたいと思いますが、この女性から起こされた国家賠償請求の裁判が十二月七日に予定されているようであります。また、正式に刑事告訴手続もなされました。強制退去手続の執行に関しましても、このあたりの手続のことを十分考慮されて対処されるように望みたいと思います。  また、先ほどの御説明では、顔面の傷も外見からはもう回復されたというふうな御答弁でしたが、相当心の痛手も負っておるのじゃないかと思います。どうか収容施設の皆さんの方でも、そのあたりに十分な配慮をしてあげていただきたいなというふうに思います。  次に、これもちょっと前回御質問させていただいて、時間が足りなくて中途半端になってしまったのですが、前回、法律扶助制度研究会の発足に当たって、そのあたりのことについて何点がお尋ねしました。前回の際に当番弁護士制度について突っ込んだお話ができませんでしたので、きょうはお時間をいただきましたので当番弁護士制度について触れさせていただきたいと思います。  法律扶助制度研究会の発足に当たりまして、「法務省、日弁連及び財団法人法律扶助協会の基本的了解事項」というのが取り交わされております。その中におきまして、刑事に関しては今回はこの場とは別の場で議論するんだということになったようでありますが、このような了解がされております。   刑事に関する問題は、今回の研究会の研究目的には含まれないが、同研究会における外国法制の調査・研究の場面並びに財団法人法律扶助協会の事業の把握及びその存続につき検討が及ぶ場面において、同研究会の研究目的達成に必要な限りにおいて、刑事に関する議論を行なう。 もう一つ、   法務省及び日弁連は、上記研究会以外の別の場において、当番弁護士制度に関する議論を活発にし、財政問題を含む刑事被疑者弁護態勢・活動についての共通の認識を深めるよう努める。というような表現がされております。一歩前進したなというふうに私自身は高く評価しておるのですが、ここで言われる共通の認識を深める一助になればとの思いから、現在弁護士会が一生懸命取り組んでおります当番弁護士制度の実情について若干御紹介させていただきたいと思います。  当番弁護士制度につきましては、平成二年から各単位弁護士会の方で採用するようになりまして、平成四年十月には全国的に実施されるようになりました。私も、この国会に籍を置かせていただく前には何度か担当になりまして、また、選挙中にも順番が回ってきて非常に困りながらやったなという覚えがあるのですが、平成五年には全国でこの当番弁護士制度の利用件数が九千九百件になりました。またことしは、日弁連の当番弁護士制度運用状況集計表というのがあるのですが、その集計表によりますと、八月までの集計で既に九千百四十八件、年末までには約一万五千件の利用が見込まれるような状況になっております。  この当番弁護士制度につきまして、十一月八日付の朝日新聞の社説が非常に的確な指摘をされております。前回も結論部分のみちょっと御紹介させていただいたのですが、どうか法務当局の皆様、また当委員会弁護士出身でない委員先生たちにもこれをちょっと御理解いただけたらなと思います。この社説は、本当に当番弁護士制度の問題点を鋭くえぐっております。ちょっと御紹介させていただきたいと思います。  当番弁護士制度がいま、財政難から、わが国の刑事司法の中に根を下ろすかどうかの岐路にさしかかっている。   弁護士会によって、弁護士のやりくりの仕方には多少の違いはあるが、被疑者からの申し込みを受けて、四十八時間以内に駆けつける。黙秘権があること、取調官のいうままにならず、事実をありのまま言うことなどをアドバイスし、被害者との示談交渉にあたったり、暴行など違法な取り調べが行われないように監視したりするのが主な仕事の内容だ。先ほど斉藤委員の方から、被疑者段階での弁護権を保障しなければいけないというような鋭い御指摘がございましたが、当番弁護士はその職に当たっているわけであります。社説は次のようにまだ続いております。   だが、制度の普及は同時に、問題点をも浮上させる結果となった。   被疑者との一回目の面会は、各弁護士会から一万円前後の日当が出る。二回目以降の面会には、被疑者がその弁護士を、自分の弁護人として選任しなければならない。その場合、被疑者側が着手金や報酬を出すか、出せないときは財団法人法律扶助協会が、三万円から十万円程度の援助金を支出する。当番弁護士を選任する約四割がこの援助を受けている、と見られている。   逮捕されて弁護士を依頼した場合、起訴かどうかが決まるまでに、通常の事件で二十万円から二十五万円ほどを支払っていることからすれば、弁護士の手弁当によるといえるだろう。   この法律扶助協会の財源が、今年に入って、申請件数の激増で枯渇状態になり、制度の縮小や、選任を断らなければならない恐れのある地域が出てきた。 ここが非常に問題でございます。   わが国の刑事裁判は、法律の建前とは裏腹に、捜査段階での自白調書の内容を確認する儀式の場だと言われて久しい。そのことが、刑事裁判から弁護士の足を遠ざけてきた。その一方で、冤罪が明らかになる度に、自白に頼る捜査が批判されてきたのが実情である。   事件が法廷に移れば、憲法の定めによって国の費用で弁護士が付けられるのと比べると、その差は余りにも大きい。刑事裁判の実態からみれば、捜査段階に弁護士が付くことの意味は法廷段階に劣らない。 この当番弁護士の意味を本当によく理解した指摘でございます。それに続きまして、   しかし、被疑者は、「無罪の推定」を受ける被告人の前の段階であり、被告人以上に人権が尊重されてよい立場にある。冤罪を防ぐためにも、弁護士のボランティアに寄りかかっている現状に、そろそろ終止符を打つべきではあるまいか。 そして最後に、前回御紹介させていただきましたが、   国からの補助も含め、この制度をわが国の司法の中にどう定着させていくか、法曹界だけでなく、国会も含めて真剣に考えるときである。というふうにこの社説は指摘しております。  どうか当番弁護士の意義、また効用等を御理解いただいて、今この社説の最後の方にありましたように、国からの補助とか、あるいはこの制度をどうやって法曹の中に定着させていくのかということに関しまして当局の方にも御理解をいただきたいと思います。  このように弁護士の方は一生懸命頑張っておるのですが、また中にはちょっとこういう当番弁護士制度について疑義を挟むような意見も逆にあることも事実でございます。ある弁護士会の会報に、ある若手弁護士がこんな一文を寄せておりました。これを見てちょっと私もびっくりしたのですが、ちょっと御紹介させていただきます。   弁護士会は自治を認められる。一般人にはない権限も認められる。仕事上、他人に与える影響も大きい。一般人からの信頼も厚い。となれば、それなりの規律維持をしなければなりません。そのための義務が課せられるのは当然でしょう。しかし、法律扶助をやりましょう、当番弁護士をやりましょう、というのは、弁護士の当然の義務とは思いません。私はそこまで進んでやるつもりはありません、という自由は認められるべきだと思います。   今、日弁連のしていることが、本当に日弁連がしなければならないことなのかと、疑問に思うことがあります。それを弁護士がやっていけないとは思いません。しかし、それをやりたいと思った弁護士弁護士会を動かす、というごとに反発を感じます。やりたいと思った弁護士は、同士を募って団体を作って、志を同じくする弁護士だけで活動すればよい。このような投稿が、ある弁護士会の会報に載っておりました。  ちょっと正直言って驚きました。この弁護士さんは勘違いしているのじゃないかなというふうに思いました。民事の法律扶助にしろ、また当番弁護士制度にしろ、弁護士が義務として、あるいはだれかに強制されて行っているものでは決してありません。弁護士の社会的使命というふうによく言われますけれども、私自身は、これは弁護士それぞれ、おのおのがその生きざまというか、自分の信条として献身的に行っているものだというふうに理解しております。  ただ、先ほど御紹介させていただきました朝日新聞の社説も指摘しておりましたように、弁護士の手弁当的要素が非常に強くなっている。本当に若手の弁護士、特に独立したての弁護士等から見ますと、自分の持ち出しになるようになってまで、何でここまでやらなきゃならないんだ。一日待機されて、一回要請があって接見に行って一万円です。これは、事務所を構える弁護士にとってはとてもつらい。一日一万円では、とても事務所経営は成り立ちません。そういうことから、先ほど御紹介しましたような若手弁護士の投稿みたいな意見もまた出てきてしまうのじゃないかなと思います。このあたりの窮状もぜひ御理解いただきたいなと思います。  せっかく利用件数もふえて定着し始めたこの当番弁護士制度というものを、財政的な破綻ただそれだけで無にしてはならないというふうに私は思います。弁護士会も、この当番弁護士制度に関するパンフレットをつくったり、またキャンペーンをいろいろやりまして、この制度の普及、拡充に一生懸命努力しております。ちょっと御紹介させていただきますと、こんなパンフレットで、「当番弁護士をご存じですか?いつでもどこでも。電話一本で駆けつけます。」宅配便みたいなキャッチフレーズでございますけれども、「弁護士がすぐに駆けつけて無料で面会します。」こういうふうにパンフレットをつくったり、資金集めのキャンペーンをやったり、弁護士会はそれぞれの各地域で一生懸命努力しております。ただ、この努力も本当にもう限界にある、財政的に非常に厳しい状況にある、これもまた事実でございます。  そこで、法務省にお尋ねしたいのですが、先ほど御紹介させていただきました基本的了解事項に、「財政問題を含む刑事被疑者弁護態勢・活動についての共通の認識を深めるよう努める。」これは努力規定ではございますけれども、この点について法務省としては具体的に今後どのように対応される御意向なのか、お伺いしたいと思います。
  156. 原田明夫

    ○原田政府委員 お答え申し上げます。  ただいま委員から法律扶助研究会の発足に関しまして、現在弁護士会が取り組んでおられます当番弁護士問題、その運用についての御所見を承りまして、拝聴させていただいたわけでございます。弁護士会におかれましてさまざまな観点からこの問題に取り組んで、財政問題を含めていろいろな当面の抱えている問題があるということも私どもとして認識しているところでございますし、ただいままたその認識を深めさせていただいたと感じております。  法務省が、先ほど御紹介いただきましたように、今回発足させました法律扶助制度研究会は、現行の法律扶助制度の充実発展を図るために、我が国の司法制度に適合した望ましい法律扶助のあり方について調査研究を行うことを目的とするということで、本年度で予算化されて実施することになったものでございます。  したがいまして、その直接的な目的には刑事に関する問題というのは入らないということで一応認識は統一されたわけでございますが、ただいま御紹介いただきましたような経緯もございまして、また当委員会の諸先生方の御指摘もあったと考えておりますけれども法務省及び日本弁護士連合会は、この研究会とは別の場におきまして当番弁護士制度に関する議論を活発にいたしまして、お互いに理解を深めていく、そして弁護士会あるいはこの当番弁護士制度の運用に関してございます財政問題をも含めまして、刑事の被疑者に関する弁護態勢をこれからどのように持っていったらいいのか。また、その活動についても広い範囲から共通の認識を深めるよう努めていくということで、法務省としても合意させていただいたということでございます。  これは広い意味から申し上げますと、被疑者段階における刑事司法のあり方、それに関する弁護人の関与のあり方、そして一方では刑事司法の本来の目的を達するためにやはり正義が行われなければならないというような要請もございます。その他、さまざまな観点からこの被疑者段階における攻撃防御方法のあり方につきまして議論を深めつつ、そして仮にその中で、御指摘いただきましたような形で、被疑者に対する弁護活動について国庫から何らかの援助がなされてしかるべきであるという共通認識ができてまいりますならば、果たしてそれはまたどういう形でやるべきなのかということを含めまして、真剣にこれから討議を深めてまいりましょうということで基本的な合意ができたというふうに考えておりますので、御理解をいただきたいと思います。
  157. 富田茂之

    富田委員 ありがとうございました。できるだけ前向きに検討していただいて、先ほど紹介させていただきました社説が指摘しているような方向に行ければというふうに念願しております。  ただいま御答弁に、被疑者段階の弁護活動がどうあるべきなのかというような御指摘ございましたけれども、ちょっとその件に関しまして、検察庁には耳の痛い質問になるかもしれませんが、当番弁護士制度に関しまして、週刊法律新聞という新聞の平成六年六月三日号に吉永検事総長のインタビュー記事が掲載されておりまして、ちょっと気になる表現がございます。紹介させていただきますと、インタビュアーが、   当番弁護士制度など起訴前弁護の充実化への弁護士会の取り組みをどうご覧になっていらっしゃいますか。また、これに対する検察側の協力については、どうお考えですか。というふうに尋ねたのに対しまして検事総長は、   当番弁護士制度は、これまで必ずしも十分とはいえなかった被疑者段階における弁護活動を充実・強化しようとするものであり、その点では意義があると考えており、各地検で弁護士会の申し入れを受け、適切に対応致しております。 これはもう本当にこのとおりであります。それに続きまして、   しかし、制度の発足から日が浅いためかと思いますが、各弁護士会で対応にも違いがあり、必ずしも全国的に共通の制度となっていないのではないかと思われます。   また、一部には、刑訴法の枠をはみ出していると思われる活動、例えば、刑訴法三九条の「依頼により弁護人になろうとするもの」とはいえない、いわゆる委員会派遣制度や、少数ではありますが、刑訴法の精神を無視ないし曲解していると思われる活動、例えば、被疑者に対して、内容にかかわらず、調書には署名をしないように助言するなどの事例も見られます。   これらの点も含めて、現在、日弁連法務省・最高検の間で、「当番弁護士制度実務協議会」を作って検討しているところでありますから、その成果もみながら、どのような協力が出来るのかを考えてゆきたいと思っております。 というようなインタビューが載っております。  この新聞記事に対して、何人かの弁護士さんから公開の質問状等が出たりしたようであります。それが新聞の小さな記事に載りまして私もこの検事総長のインタビュー記事の存在を知ったのですが、正直申し上げまして、やはり何か弁護士に対する不信感というか、そういうものが大分おありになるのじゃないかなというふうに受け取りました。  先ほども紹介させていただきましたように、年間一万件から一万五千件の当番弁護士制度の利用件数があるわけですから、これを担当したすべての弁護士が本当に理想的な起訴前弁護活動をしているというふうには私自身も思いません。ただ、被疑者に対して、内容にかかわらず調書に署名しないように助言する、こういう弁護士がいるというふうにも、私自身も弁護士ですから、これはまた思えない。当番弁護士の担当になって、留置場なりあるいは拘置所に行って初めて被疑者に会ったときに、こんなことを弁護士が言ったらどうなるか。これを言った途端に、弁護士はその被疑者から信頼されなくなってしまいます。  通常、弁護士が弁護人として被疑者に接見しに行く場合は、大体家族から依頼を受けて、お父さん、お母さんからこういうふうに聞きました、あるいは御主人から、奥さんからこういうふうに聞きましたよということで行って、被疑者本人の身上関係なんかも大体聞いた上で行くわけですね。それで被疑者を安心させた上で事件についていろいろアドバイスする、それが一般の被疑者の弁護活動の取っかかりであります。  当番弁護士制度はそれと違って、全く知らない、弁護士会からの連絡、裁判所検察庁の方が御配慮していただいて、弁護士会の窓口にこういう被疑者が弁護人と会いたがっているという連絡をいただいて、その日の担当の弁護士が飛んでいくわけであります。その弁護士がこのように、ただいま検事総長が言われたようなこういう発言被疑者にしたら、もうその途端に被疑者、弁護人間の信頼関係というのは崩れてしまいます。  ごく一部、あるいはまた検事総長へ報告が上がった中にこういう例がたまたまあったのかもしれませんが、それをこういう新聞、しかも法律新聞のインタビューに取り上げるというのはいかがなものなのかな。それこそ、検事総長がおっしゃっていますように、実務協議会ですか、日弁連法務省・最高検の間で当番弁護士制度実務協議会をつくって検討しているわけですから、そういう具体的な実務者の場で、こんなのがありましたよ、こういうのは注意してもらわないと今後問題になりますよということで出てくるのならいいと思うのですけれども検察庁のトップにある総長のインタビューという形でこういうのが表に出るというのは、その真意はわかりませんけれども、ちょっと問題ではないかなと私自身は思います。  また、ここで御指摘されていますいわゆる委員会派遣制度、各単位弁護士会の方でつくっている刑事弁護センターとかそういうところから、こういう被疑者がいるというのを覚知して委員会から派遣されている弁護士さんがある地域があるそうであります。ただ、これも刑訴法の枠をはみ出しているんだというふうに検事総長が断定してしまうのは、今後その協議をしていこうというのにちょっとどうなのかな。現実をきちんと見ていただいて、その上で実務者の方で具体的な協議を進めるように検事総長には指示していただきたいなというふうに、この新聞の記事を読んで思いました。  そのあたりちょっと、何人かの弁護士さんから公開質問状が出たというのは、私と同じような感じに受け取って、何が言いたいんだということで出てきたのじゃないかなと思うのですね。当番弁護士、一生懸命やっている弁護士から見ると、こういうふうに言われてしまうと、自分たちの活動は何なんだろうというような思いにもなると思いますので、そのあたりはぜひ注意していただきたいなと思います。  そこで、この件に関しまして最後に、先ほど基本的了解事項も御紹介させていただきましたが、朝日新聞の社説等も踏まえて、法務大臣はこの当番弁護士制度、また、日弁連の方はこれを被疑者国公選弁護制度という形で位置づけるべきだというふうにずっと主張しておりますけれども、これについて現段階で大臣の方はどのようにお考えになられているか、御所見をお伺いしたいと思います。
  158. 前田勲男

    ○前田国務大臣 被疑者に対しまして国選弁護人を付する制度を設けるべきであるという御意見、ただいま先生から当番弁護士制度についてるる御説明、またその意義、またその効果等々お話を承ったわけでございますし、かつまた、財政的にも極めて困難な状況を呈しているというお話を伺ったところでございます。さようなこともお伺いし、また、かつ私どもも承知をいたしておりますが、被疑者段階での国選弁護人制度を設けることにつきましては、刑事手続上の全体の構造との関連においてもやはり慎重な検討を要する問題であろうというふうにもとらえておるわけでございます。  いずれにいたしましても、実務協議でお互いに考えるところを真剣に議論し合っていただいて、大きな成果、進展が見られることを期待をいたしておりますし、また、起訴前弁護についての国庫からの補助等々についての広報のあり方等も含め、これまた国民の理解等々も得ていく作業がなお必要であるのかな、かように考えておるところでございます。
  159. 富田茂之

    富田委員 ありがとうございました。  本日の委員会の大きなテーマでございます法曹界綱紀粛正問題、最後にこの点について何点か御質問したいと思います。  午前中、参考人の三人の先生たちからも御指摘ございましたが、本当に弁護士が逮捕されるような事案が相次ぎまして、弁護士に対する信頼が揺らいております。日弁連の事務総長の方からいただいた参考資料にもございましたけれども、各単位弁護士会における懲戒請求の新受件数が九〇年の二百三十九件から毎年増加して、九三年には四百二十九件に達しているというような御指摘もありました。  また、事務総長が午前中におっしゃっておりましたけれども、本当に懲戒事例における被害額の巨額化、また悪質化、こういう進行も指摘されておりました。弁護士が金もうけに走ったあげくに多額の借金を負って資金繰りに困って、自分依頼者をだまして、依頼者から預かったお金あるいは依頼者へ渡すべきお金を使い込むといったパターンが数多く見られるようになっております。弁護士は、本来強い倫理観なしには成り立ち得ない職業だと私自身も確信しておりますが、その意味からも、弁護士また弁護士会の自己改革が強く望まれるところでございます。  私は、法曹の倫理観確立という観点から、司法試験、そしてまた法曹養成制度の改革が非常に重要であるというふうに考えております。先ほど斉藤委員の質問の中で、研修所では一体どういう教育をしているんだというような御質問もございました。研修所の方でも、倫理観を含めての研修をきちんとやっていくんだという御回答もありました。司法試験に合格する段階、また二年間の実務修習の中でどういうふうな教育がなされ、またその教育をどういうふうに受けるかで法曹としてどういうふうに成長していくかということがかなり決まっていくんじゃないかなというふうに感じております。  司法試験、法曹養成制度の改革が叫ばれて久しいわけでございますが、平成二年、一九九〇年になりますか、十月に法曹三者間におきまして「司法試験制度に関する基本的合意」というものがなされました。今、毎年司法試験の合格者数の増加が図られております。このような状況の中で、ことしの八月、日弁連の執行部提案という形で「司法試験・法曹養成制度の抜本的改革案大綱」が発表されました。今、この大綱について日弁連の中でいろいろ協議がされておりまして、十二月二十一日に予定されております日弁連臨時総会での審議がされるというような状況になっております。  この大綱については、日弁連会長見解によりますと、「大綱の策定目的はこ法曹養成制度等改革協議会、いわゆる改革協でございますが、ここにおける「抜本的改革案立案のための協議にあたって、日弁連選出委員の主張すべき基本的指針を明らかにするもの」というふうに説明がなされております。法務省、最高裁は、この日弁連の方が今審議を予定しております大綱について、その内容は既に御存じだと思いますが、現段階で何かこの大綱について評価されるところがありましたらお聞かせ願いたいと思います。
  160. 永井紀昭

    ○永井(紀)政府委員 ただいま委員がお話しされましたとおり、四年前の平成二年に成立いたしました法曹三者の基本合意に基づきまして、平成三年から法曹養成制度等改革協議会が設置されました。この法曹養成制度等改革協議会は、法曹三者のほか大学関係者や学識経験者によって構成されておりまして、司法試験制度や、あるいは法曹養成制度等につきまして国民的見地に立って抜本的改革を検討するというものでございます。最近はこの、改革協と略称しておりますが、改革協におきましては、全体会議ではなくて二つの小委員会に分かれまして、法曹人口問題等検討小委員会とそれから司法試験制度等検討小委員会というもの、二つに分けて議論を詰めているところでございます。  いわゆる法曹人口、どうあるべきか、合格者数をどうふやすのか、減らすのか、こういった議論をいわゆる人口小というところでやっているわけですが、ここに出ておられます外部の先生方は、非常に増員論が圧倒的に多数でございます。やはり国民的ニーズに合わせていくためには、今の法曹全体の人口が少な過ぎるということから、合格者を数千名以上上げるという、こういうような意見もございます。それで、外部委員の多くは、少なくとも現在といいますか、ことしの合格者七百四十名ですが、それの倍ぐらい、すなわち千五百人ぐらいは最低限度上げるべきだという、こういったような意見も強く出ているわけでございます。  そこで、日弁連におかれましても、この夏あたりからそういう議論の経緯を踏まえて、この改革協に出ておられます先生方がどのような意見を述べるかということの指針として、日弁連の中でも会内で大きな方向を定めるという観点からいろいろ御議論が狂った、このように聞いております。  それで、この十一月に行われました人口小委員会におきましても、日弁連の先生方から、十月十二日に改革案の大綱が一応議決されたということの報告がございまして、中身につきましても人口小委員会に報告がありました。それを受けまして、最高裁及び私ども法務省でも、それでは最高裁や法務省はどう考えるのかという議論がまた出ておりまして、いろいろな考え方についていろいろな素案といいますか、いろいろな考え方についてこういう考え方もあるな、こういう考え方もあるなというようなことで今意見表明をし始めているところでございます。  いずれにしましても、外部の先生方、それから日弁連の方向、それから我々法務省、あるいは最高裁におきましても、どういう考え方ができるだろうかということについて、現在いろいろな意見を表明し合っている、そういう段階でございまして、こうした意見表明を踏まえましてさらに協議が続けられる、こういう予定でございまして、今の段階で日弁連の改革案大綱が、私どもどうこうと言うのはまだ、評価をするとかしないとか、そういうようなことは言う立場にはありませんし、まだまだお互いに意見を出し合って具体的な案を考えていこうではないかというところで議論をしている、こういう段階でございます。
  161. 堀籠幸男

    ○堀籠最高裁判所長官代理者 日本弁護士連合会が示されました「司法試験・法曹養成制度の抜本的改革案大綱」につきましては、私どもといたしましては、司法試験及び法曹養成制度に関する一定の方向性を示した案というふうには考えておりますが、必ずしもこの案自体に具体性があるものではなく、今後、日本弁護士連合会内での検討の過程で具体化されてくるものと承知しております。  したがいまして、この段階で意見を述べることは差し控えさせていただきたい、かように考えております。
  162. 富田茂之

    富田委員 「司法試験制度改革に関する基本的合意」成立後の司法試験合格者数また平均年齢の推移ですが、当局の方から教えていただきました数字によりますと、合格者数は、平成三年が六百五人、その後、六百三十人、七百十二人、七百四十人と増加しているようであります。また、平均年齢も、二十八・六三歳、二十八・二二歳、二十八・二九歳、二十七・九五歳と、少しずつではありますけれども下がっているようであります。  この合意後の裁判官また検察官への任官者数でございますが、平成三年以降、裁判官が九十六名、六十五名、九十八名、百四名、ことしは百四名だった。また、検察官が平成三年四十六名、それ以降、五十名、四十九名、七十五名と推移しているようであります。  裁判官、検察官の今後の増員予定、また新規採用枠の拡充予定というものがありましたら、ちょっとお示しいただきたいのですが。
  163. 堀籠幸男

    ○堀籠最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。  判事補の新規採用の枠というものは、私ども必ずしも持っているわけではございません。最高裁判所といたしましては、従前から、裁判官にふさわしい方をできるだけ多く採用したいという方針で臨んでいるところでございます。
  164. 富田茂之

    富田委員 これはもう日弁連意見とかそういうことではなくて、全くの私の私見なんですが、今の御回答をお伺いしても、ちょっと最高裁の方は裁判官の増員について極めて消極的なのではないかなという印象を受けております。  本年四月の裁判官の任官希望者は、百四十名以上もいたというような報告もされております。その中で百四名しか採用していただけなかった。来年司法研修所を卒業予定の、これは四十七期修習生になるのですか、裁判官希望者が百八十名以上もいるんじゃないかと言われております。この百八十名もの希望者が、ことしとまた同じように百名前後しか採用されないということになりますと、司法試験合格者をふやして任官希望者も自然に増員させようという本来の目的からちょっとずれていってしまうんじゃないかなというような感じを抱くところであります。  先ほど永井司法法制調査部長の御説明の中で、今小委員会でいろいろ議論を進めているんだというようなお話がございましたけれども、この法曹養成制度改革協議会の人口問題小委員会の中で、最近、法務省や最高裁の事務当局の検討状況だという断りつきで、司法試験の合格者を千五百人から二千人にする、そういう案がある。  その場合には、今修習期間は二年ですが、それは修習は一年にする。全国各地に分かれて裁判所検察庁弁護士会で修習します実務修習は行わない。この千五百人から二千人の場合は今までどおり有給だというような実と、合格者を三千人にする、修習は一年、実務修習はこれもまたないんだ、この三千人にした場合は財政的に大変だから無給だ、こういうような案が示されて、しかも最高裁の方としては、裁判官の定員増はほとんど考えないというような説明がされたというふうに聞いておりますが、法務省や最高裁の事務当局というのは本当にこのような案を検討されているのでしょうか。
  165. 永井紀昭

    ○永井(紀)政府委員 随分誤って伝えられていると思います。  私ども法務省として、何も意見を統一したわけではございませんし、いろいろ協議会の中ではそれぞれ個人的な意見も述べたりいたします。その中で、ただ法務省としては、いろいろこういうふうに述べた意見の中に、一つは、合格者を千五百人程度としてはどうか、修習期間は、実務修習というのが千五百人までふやしますと非常に難しくなるので、これは実務修習は中止にするけれども、修習期間を短くしなければ実際にはできないだろう、こういう案を出したことがございます。修習期間を少し短くするならば、やはり継続教育というものを義務づけようではないか、こういった案をある機会に述べたことがございます。  それからもう一つの考え方としては、思い切って二千名以上、二千人ないし三千人にしてはどうか。すると、これはもう既に実務修習を現在のように行うのは非常に難しい。ある意味では、実務修習というのではなくて、実務は見学はできるけれども、これは実際に実務修習という形はとれないだろう。言い方は悪いのですが、アメリカのロースクール的に、学者や実務家の座学を中心にしてやっていくような修習というものも考えられないだろうかというような議論をしたこともございます。  したがいまして、具体的に有給か無給がなんという問題も、どの案なら無給でどの案が有給だとか、そういうような議論をしたのではなくて、いろいろなそういう考え方が出てきたということでございまして、そういうものが混然一体となっていろいろ伝えられたのではないかと思っております。  いずれにいたしましても、まだ外部委員のほか法曹三者出身の各委員がいろいろな意見を述べ合っているという段階でございますので、確たる意見というものには固まっていないというふうに御承知おき願いたいと思います。
  166. 堀籠幸男

    ○堀籠最高裁判所長官代理者 改革協の中の人口小委員会で、最高裁判所の事務当局が検討中の案ということで申し上げました点をここで申し上げますと、司法試験の合格者数については少なからず増員すべきであるが、具体的な人数については、修習制度につきまして人的、物的に責任を負っている立場上、その実現可能性をにらみながら今後詰めていきたい、また、増員に当たっては、いわゆる甲案というものを採用すべきであること、修習期間については、継続教育を重視することにより、一年程度でも対応可能ではないかということを申し上げたわけでございまして、これは人口小においてこれからも議論していくことになろうかと思います。  なお、裁判官の定員増の問題につきましては、私どもは、今後の事件の動向でありますとか、審理の運営改善の実施等を基本に考えていくべきものであるという立場をとっておりまして、今後ともそういう立場から裁判官の増員というものを検討してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  167. 富田茂之

    富田委員 先ほど、私は、こういう案が出ているんじゃないかと言った点は、有給、無給等、そういう話は出てないんだということでありますが、今の二人の説明ですと、実務修習を省略していこうというような流れがあるように思えます。期間を短くという、そういうお話もありましたけれども、実務修習がなくなるというのは、実務修習を実際に経験した私の目から見て大問題じゃないかなというふうな感じがします。前期修習とか後期修習の、いわゆる机上の学問で本当に勉強できないことを実務で教えていただいたんじゃないかなというふうに思います。  検察庁での被疑者取り調べ、また裁判所での法廷での審理、弁護士事務所での依頼者との打ち合わせ等、これは、実際にその道に進めばそこで経験はできますけれども、法曹三者あるわけですから、別の道に行った場合にはもう一切経験できない。それをこの実務修習でしっかり教えていただく。また、研修所の教官の先生だけじゃなくて、各地域の裁判官、検察官、弁護士、書記官、事務官、いろいろな人たちに接して、法曹というのは、自分の道を探して、その人たちから影響を受けながら育っていくものじゃないかなと思います。また、そういう中で本当の倫理観というのも育っていくんだというふうに私自身は感じております。  そういう点を、ただ増員論が先に立ってしまいますと、そのあたりが何かちょっと無視されてしまうのではないかな。その行き着く先は、きょう問題になったような綱紀粛正問題というのがまた出てきてしまうのではないか。そういう点に少し思いをいたしていただきたいなと思います。  これはもう全く私見でございますが、国民の信頼を得るに足る司法の実現というためには、裁判官、検察官を現在どれだけ増員する必要があるのか、また、その増員のための財源をどうするのか、増員された裁判官、検察官に対応できる弁護士人口はどの程度であるべきなのか、そういった観点から司法試験合格者数を決めていくべきではないのかなというふうに思っております。  日弁連の協議がどういうふうになっていくかまだわかりませんが、そのあたりも含めて法曹三者で協議していただければなという思いを込めまして、質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  168. 金子原二郎

  169. 長浜博行

    長浜委員 けさほどからずっと、法曹界綱紀粛正問題についてということで、参考人の先生方のお話も聞きながら、きょう質問される先生方を拝見をしてみても、ほとんどと言っていいのか、弁護士資格を有される多くの委員の方々が質問をされているわけでありまして、その中においても私がちょっと感じますことは、朝も法曹界綱紀粛正という問題について比較的時間を費やしたのが、弁護士の問題についてというような印象を深くしているわけであります。  大臣もその模様を、多分御報告が行っているというふうに思うのですが、私も、幸か不幸がという言い方がいいのかどうかわかりませんが、弁護士の方にお願いをしたようなことが今までないものでありますから、なかなか身近に弁護士の存在というのを意識することはなかったわけであります。ただ、そういった中において、もちろん政治家の一人として、政治改革が進む中において政治家として身を処していかなければいけない。  いろんな会で怒られるわけでありますが、このごろ言われることは、今の尊厳を一番よく知っているお医者さんが殺人事件を起こしてしまったり、法律を遵守しなければいけないのを一番よく知っている法曹関係者の方々が法律の違反をする、何か大変な世の中になってきたねというようなことまで私に言われてしまうような現状があるのも事実であります。  特に、私も素人ながら大変勉強させていただきながら感じたことは、弁護士の自治組織といいますか、例えば検察官は法務省、裁判官は最高裁の方が、コントロールと言ってはおかしいですが、いわゆる問題が起きたときにはきっちりと対応するというような状況の中にあって、弁護士さんというのは、弁護士さんの自治組織だかあるいは弁護士会、いろいろある弁護士会、東京のことについて言えば、朝の枝野委員の、聞いていて随分激しいなと思った、その三つに分かれたそもそもの理由とか、そんな説明を聞きながら、いま一つ弁護士の団体とか弁護士のまとまり、そして、その方々が何か悪いことをしたときに訴えればいいじゃないかと言われても、一番最初に申し上げましたように、そもそもがおつき合いかない弁護士さんのことを訴えるなどということが一般の人にはできないものでありますから、その点についてちょっと御質問をしたいなというふうに思っております。  先ほど申しましたように、いわゆる最高裁とか法務省の管轄ではないと言われてしまうかもしれませんが、お答えになれる範囲でお願いをしたいわけでありますが、いわゆる弁護士の不正行為ということにつきまして、例えばどんな犯罪とか、どんな特徴とかあるいは傾向とかあるのか、おわかりの範囲でお答えをいただければと思います。
  170. 則定衛

    ○則定政府委員 弁護士が不正行為をする、これがいろいろな分野に分かれているんだろうと思いますけれども、私ども、必ずしもその全体像を把握できる立場にないわけでございます。  刑事事件という観点から見ますと、最近、既に種々報道されましたように、依頼者からの預かり金あるいは依頼者に交付すべき預かり金等を着服、横領するという形態が相当あるように思います。必ずしも統計的に正確ではございませんけれども、あと考えられるといたしますと、例えばいわゆる文書にまつわる不正行為、それが場合によりますと偽造罪その他、変造罪というようなこともあり得るのかなというふうな感じがいたしますけれども、いずれにいたしましても、ごく限られた刑事事件の受理、処理の観点から申しますと、そういう感じを持つわけでございます。
  171. 長浜博行

    長浜委員 わかりました。  トラブルと言ったら、これは言葉もちょっと不正確ですが、例えば依頼者弁護士間のトラブル、こういったものも含めて、懲戒請求ですか、そういう制度ということが言われておりますけれども、例えばこの懲戒請求の問題を含めて、弁護士法という法律の中において、いわゆる取り締まると言ってはなんですが、弁護士の活動自体を法務省か最高裁のアンダーコントロールの中に置いて規定をするというようなものがあればお教えをいただきたいのです。
  172. 永井紀昭

    ○永井(紀)政府委員 戦後の弁護士法は議員立法でつくられたものでございまして、その中には、最高裁判所法務省が監督をするという権限は一切ございません。
  173. 長浜博行

    長浜委員 そうしますと、やはり最初に申し上げましたように、いわゆる弁護士さんの問題は弁護士さんで考えなければいけないというようなことが、今さらのように明らかになってきているというふうに思うのでありますけれども、この法務委員会の場の中においても、弁護士さんの問題を質問しようとしたときに、朝であればもちろん日弁連の事務総長さんがおられましたから、おわかりになる範囲でお答えをいただける場合があるのですが、なかなか尋ねることも難しいといいますか、実務上困難になっているような状況があるように思うわけです。  そういったことも含めて、今まで犯罪が少なかったから、あるいはいわゆる訴訟件数が少なかったから、弁護士さんはほとんどの方がいい方だったからというような中において問題が明らかにされていなかった部分があるのかもしれませんが、今回の法曹界綱紀粛正問題について、これほどまで弁護士問題に関する、いわゆる参考人に対する質疑時間を含めて注意を喚起するような状況になっている今、今申し上げた、つまり弁護士の問題は弁護士会あるいは弁護士さんの間で解決をしなければいけない問題がほとんどだな、そういう問題に関して法務大臣の御見解を例えればというふうに思います。
  174. 前田勲男

    ○前田国務大臣 先生も御承知のとおり、弁護士法は、弁護士会及び日本弁護士連合会が十分な自治能力、自浄能力を有することを前提とした上で、その職務の独立性を確保するために、弁護士会及び弁護士会連合会に制度として独自の自治権を認め、まさに行政庁に該当する権利を認めておるわけでございまして、不祥事に対しましても、みずから国民の信頼、負託にこたえられるように携わられることを法務大臣として期待をしておるところでございます。
  175. 長浜博行

    長浜委員 今大臣の御答弁にありましたように、前提条件がつくわけでありますから、その前提が崩れるようなことになってしまっては、いわゆる行政庁と同じような形での自助努力といいますか、自浄作用といいますか、こういったものに疑義を挟まざるを得ないわけでありますから、今の御答弁を、ある意味で弁護士の問題について考えるときには忘れることができないと私自身強く認識をしたわけであります。  それと、何人かの方が御質問しましたが、弁護士になるために、司法試験が受かって、その後研修といいますか司法修習を受ける、そしてそのまま弁護士になっていく。しかし、なってしまったら資格は永久でありますから、いわゆるその研修も、例えばいそ弁と言われるように、大きな事務所に入って法律的な実務は学ぶのかもしれませんけれども、やはり倫理の問題を含めてどこかの機関で、これがまた弁護士会の中のそれぞれ所属する弁護士会の自主採用ということも午前中の質疑をお聞きしてわかってきたような気もするのですが、この弁護士の研修というものも私は必要になってくるのではないかなというふうに思います。  もっとさらに言えば、いわゆる弁護士の数をふやさなければいけないというのが質問の中でも明らかになりましたが、果たして司法試験さえ受かれば極端な話、弁護士になってよろしいのであろうか。弁護士資格を得る前に、例えば、素人考えと笑われてしまうかもしれませんが、検察官なりあるいは裁判官なりというような形での研修じゃないですが、実務経験を経てから弁護士にするとか、あるいは何かほかのいわゆる弁護士の資格、司法試験合格、そして自分弁護士を希望すればそのままなれる、これ以外の方法を御検討されているところがあるのかどうか、関係の方がいたら御答弁願います。
  176. 永井紀昭

    ○永井(紀)政府委員 現行の司法修習制度は、先ほど来お話もございましたとおり、司法研修所において法曹としての倫理教育も行われておりまして、また実務教育が今現在一年四カ月行われておりまして、その間で実際に現場へ出て、そこで先輩の指導を受けるという過程で教育を受けているわけでございます。そういったことでございますので、その二年の修習を終えた段階でさらに何らかの研修をするかどうかという問題は、新たな問題になろうかと思います。  これにつきましては、裁判所検察庁ではやはり新任者の研修というものを厳しく行おうという考え方でございまして、また日弁連におきましても当然、司法研修所を出た方につきましては、登録の前後におきましてそれぞれ倫理的なものを含めまして研修を行っておられまして、これは多くの会では必ずしも義務的ではないのですが、事実上義務に近い形で必ず研修を受けておられる、こういうふうにお聞きしております。  では、それ以上にさらに何らかの研修を、社会的な訓練を受けるための研修をどうするかということについては、これは、それぞれのその後の継続教育ということで、裁判所検察庁でも従来、一年目には行いますし、三年目、六年目、十年目というようなことを裁判所検察庁で行っております。  また、日弁連あるいは各単位会におきましても、夏の期間に研修を、これはむしろ実務研修が多いのですが、そういうことで、いろいろな法律の改正が新たに起きた場合にこういうことを考える、あるいは民事暴力対策はどうしたらいいかとか、いろいろな形で各単位会でも、あるいはブロックといいまして、それぞれ大きなまとまりごとの研修を日弁連主催で行ったり、いろいろなそういうことをやっております。さらにそれ以上のという研修は、現在のところ行っていないということでございます。
  177. 長浜博行

    長浜委員 せっかく参考人から貴重な御意見もいただいたわけでありますから、ぜひその意見を生かしてこの問題に対処していただきたい、そのように思うわけです。  別の問題に移りますが、不法残留外国人について、前々回ですか、私、質問の際に、広島アジア大会の選手の方々で御帰国をされていない、つまり不法滞在になってしまうおそれのある方々がいるというような質問をいたしましたが、その方々は、以降どうなっておられますか。
  178. 塚田千裕

    ○塚田政府委員 広島アジア大会のときに所在不明となった十五名の選手等の所在は、依然として不明でございます。これらの者につきましては、引き続き広島アジア大会組織委員会に対しまして身柄の発見と早期出国方の措置をとるよう要請しておるところでございます。
  179. 長浜博行

    長浜委員 なぜ伺ったかといいますと、実はサッカーのワールドカップというのがございまして、ワールドカップ開催を二〇〇二年日本にということで運動している一人でありますけれども、そのワールドカップ開催のための政府保証として、こういった広島アジア大会も同じなんでありますが、開催のための政府保証として国籍、人種、宗教にかかわらず役員、選手、報道に無条件で査証を発給をする、こういった政府保証がのまれないとこういう大会を日本に招致をすることができないというような規定があるわけであります。  私は、もちろん今申し上げましたようにこういう大きな大会を日本に呼びたい。しかし、そういう中において、いわゆる不法残留外国人問題についての対処という仕方が果たして十分に行われているのかどうか、こういった問題を強く危惧をするわけであります。これは、大変よくできた犯罪白書を拝見していても、何しろ副題が「犯罪と犯罪者の国際化」、そしてこの間も申し上げましたように不法滞在、つまり、滞在期間を伸びて滞在をしている、果たして犯罪と言えるのかなと言葉を詰まらせる部分があるのですが、いずれにしろ、法律に違反をしているから犯罪である、こういう形の国際化が犯罪面においても急速に進展をする中において、対応が十分に行い得ているのかどうか、こういう部門に危惧を抱かざるを得ないわけであります。  そしてまた、特に出入国管理基本計画を平成四年の五月ですか、策定をされる中において、不法就労というか、不法滞在をするイコール、広島アジア大会のときも言われたのですが、いわゆる不法就労をするために残っていたい、賃金格差が及ぼす悲劇だと思いますけれども、そういう理由が一番多いわけであります。  その中でも、例えば不法就学生というようなことで、就学、勉強する目的で来日をしながら、実際は出稼ぎのようにお金を稼いでいる、これが二万四千人くらい、不法滞在者自身は二十数万人いると言われておりますが、そのように言われている。こういった中において、不法就労、就労目的の不法就学生に対して、法務省が今月何か新たなる方針を出されたというふうにもお聞きをしておりますが、その点についておわかりになる方、御説明を願います。     〔委員長退席、中島(洋)委員長代理着席〕
  180. 塚田千裕

    ○塚田政府委員 委員御指摘のとおり、就学生がそのまま不法に残留するというケースが非常に多くて、それが本年の五月一日現在で約二万四千名に上っているというのは事実でございまして、入管行政上も看過し得ない問題でございます。  そこで、私どもといたしましては、本来日本語を学ぶべく就学生としてやってくる、これは非常に結構なことでございますが、問題は、就学生を装って入国して就労しようという者が多い。それを排除するために、従来とも入国・在留審査の厳格な実施に努めてきたわけでございますけれども、さらにより合目的な措置を考えてみたいということで、有識者の意見も徴した上、ごく最近、新しい措置を発表いたしました。  そのエッセンス、概要は二つございまして、一つは、就学生が勉強する日本語教育施設、その教育施設におきまして、不法残留者の発生する割合が低いところ、これはその学生の募集選抜方法あるいは在籍管理面から判断して適正な運営をしていると認められるわけでございますが、そういうところには提出書類を必要最小限度にする。不法残留者を多く発生させている教育施設については、学生の在籍管理に欠陥があるわけでございますから、これには抜本的な見直しを求める、それで改善が図られない場合は、日本語教育施設として法務大臣告示に定めている、そこから削除する、そういう措置をとって学校の方を選別していきたい、そう思っております。  二つ目の措置は、就学生のうち、不法残留者を多く発生させている国、地域がございます。そういう国、地域からの就学希望者につきましては、日本語を真に習得する意思と能力を持っているかどうか、また、学費や生活費の支弁を確実に行う手段を有している者であるかどうかについて特に丁寧に見ていきたい。この二つをポイントとした新しい措置を発表いたしました。これでもって就学生の適正化を図っていきたいと考えております。
  181. 長浜博行

    長浜委員 今のお答えにもございましたように、この学校ならばいいということで、外務省、法務省、文部省あたりが審査をして就学生を受け入れるというようなこと、ある意味でこの学校は余り評判がよろしくないから発して調査が入るのだと思いますが、そういった状況の中で、この学校には受け入れられないというような判断をした場合、個人でやっている場合はともかく、私の記憶では以前上海か何かであったと思うのですが、いわゆる入国関係書類を、例えば売買をするとか、あるいは組織的に就労を目的としてそのダミーとして就学をさせるというようなブローカーの存在も、以前の質問で私は行ったと思います。  こういった問題に関しても、せっかく平成元年に入管法の一部を改正して不法就労助長罪ですか、これを新設をするなどして努力をされていることは認めますが、そういった、いわゆるブローカーが学校を紹介したというような範囲の中においてはこの法律は適用できない、直接この会社にこうしたら勤められるというような部分にまで言及をしないと、いわゆるからくり、ノウハウを教えただけではこれは適用されないというようなことも伺っておりますから、なお一層巧妙化する国際的な犯罪と言ってはなんですが、日本に滞在をし、そして働きたいという部分に関して、個人的な心情としては、早く整備をして働きながら学べる環境をつくるというのも、私は十分理解をするところでありますが、しかし、いわゆる違法行為に関しては十分検討を続けていただきたい、そのように思うわけであります。  次の問題に移らせていただきますが、いわゆる凶悪犯罪への対応ということでございます。  長野のサリン事件とか、それから盛んに短銃、ピストルを使用した犯罪、あるいは非常にやるせない、横浜港で母子三人の遺体が見つかったこととか、あるいは愛知や岐阜や大阪などで少年が連続して殺人を起こす、こういった問題に関して、やはり犯罪白書の中においても、殺人の認知件数あるいは検挙件数及び検挙人員は「昭和六十一年以降平成三年まではいずれも減少傾向にあったが、四年に引き続き五年においても、いずれも比較的少数ながら増加し、前年と比べこ認知件数も、もちろん検挙件数も検挙人員も「増加となっている。」強盗においても同じでございます。平成元年までは減少傾向にあったが、「二年にいずれも増加に転じ、最近四年間は急激な増加を示している。」放火においても同じであります。誘拐においても同じ。こういった凶悪犯罪の激増に関して、法務大臣はどのような御所見をお持ちになっておられるか、御答弁をいただければと思います。
  182. 則定衛

    ○則定政府委員 法務当局としてまずお答え申し上げます。  御指摘のとおり、殺人、放火あるいは強盗といったいわゆる凶悪犯罪がこのところ増加傾向にある、その中でまた銃器の所持、あるいは銃器、いわゆるけん銃でございますけれども、これらを使用いたしました犯罪が増加傾向にある、これは、今後の我が国の法治上ないし治安情勢を考えるときにおきまして、大変深刻に受けとめなければならないと考えているわけでございます。  検察といたしましては、もとより直接それらの検挙、取り締まりに当たるわけではございませんけれども、これらの事犯を受理し、適正な捜査を行いまして事犯の真相を解明した上、裁判所にも的確な立証活動で臨む、そこでまた、情状面においても十分立証、主張いたしまして、当該犯罪者についてのいわゆる特別予防、それからそういった犯罪について国として厳罰に処するという意味での再発防止を図るいわゆる一般予防の観点から厳正に対処していく必要がある、こういうふうに考えているわけでございます。
  183. 前田勲男

    ○前田国務大臣 検察といたしましても、ただいま刑事局長が申し上げたとおりでございますが、警察等第一次捜査機関との緊密な連携のもとに、迅速的確な事犯の解明と、情状面にも十分配意した証拠収集に努め、捜査処理に遺漏なきを期するとともに、起訴した事犯については、厳正な科刑の実現に意を用いていくところでございます。  かつまた、凶悪の中で、昨今けん銃を用いた凶悪な犯罪が頻発をしておりまして、極めて憂慮される事態であると思っております。こうした犯罪を防止するために、特にけん銃におきましても、関係機関、九省庁ほどございますが、一層緊密に連携して、密輸入、不法所持に対して取り締まりの強化をすると同時に、けん銃不法所持あるいはこれを用いた殺傷事件については厳正に対処することによって、これらピストルに関連する事件を行うと厳罰に処せられるという一般の認識をさらに深めて、その予防に努めてまいりたい、かように思っておるところでございます。  なお、追加して申し上げれば、昨年改正されました銃砲刀剣類所持等取締法も適切に、また積極的に運用をしておるところでございますし、裁判においてもこの種の事犯の社会に及ぼしております極めて大きな影響、これを効果的に主張、立証して、量刑面においても反映させるように努めてまいるということなど、一層厳正に対処してまいりたいと思っております。
  184. 長浜博行

    長浜委員 いわゆる凶悪犯罪がふえるということは、社会的な公正とか、まあ社会のたがが緩むというような部分において、政治家の一人として深く責任を感ずるわけでありますが、しかし、今おっしゃったような中において、ちょうど二十六日、総理府の発表した死刑制度に関する世論調査の結果、第六回目ということでありますが、それによりますと、死刑もやむを得ないと答えた方が、調査の方法は別にしまして、七三・八%、前回の平成元年は六六・五%ということでありますから、七・三%の上昇。どんな場合でも死刑は廃止すべきだというのが一三・六%、前回平成元年は一五・七%でありますから、二・一%の減少。死刑の存続を求めた人の大きな理由として、死刑がなくなったら凶悪犯罪がふえる、こういう理由が多数を占めているというようなことでございます。  こういった死刑制度と凶悪犯罪の抑止効果について、今の大臣の答弁の中においても、ピストルの問題を含めて、犯罪を犯したら極刑になるのだ、もちろん摘発するのは警察かもしれませんが、いわゆるその予防効果としての死刑制度、現実にこの総理府で行われた世論調査の結果を踏まえて、大臣から御所見をいただければというふうに思います。
  185. 則定衛

    ○則定政府委員 死刑制度の存廃につきましては、国民の世論に十分配慮しつつ、社会におきます正義の実現等、種々の観点から慎重に検討すべき問題でありまして、凶悪犯罪の抑止力の観点のみから議論すべきものではないと考えますし、また、死刑の犯罪抑止力を統計的に証明することは困難でありますものの、一般に、刑罰は犯罪に対する抑止力を有するもの、また世論調査の結果を読みましても、今御指摘のとおり、死刑にもこのような抑止力が強く認められると広く認識されているわけでございまして、さらに死刑制度の存在が、長期的に見た場合の国民の規範意識の維持に有用であるという点についても、御指摘のとおり否定しがたいと思います。  そういうようなことで、死刑制度は凶悪犯罪の抑止のために一定の効果を有しているものというふうに理解しております。
  186. 長浜博行

    長浜委員 もし大臣、可能であれば御意見を。
  187. 前田勲男

    ○前田国務大臣 ただいま刑事局長が申し上げたとおりでございます。
  188. 長浜博行

    長浜委員 最後に、報道と人権という問題について、時間も限られてまいりましたので、一言だけ。  先ほど申し上げました、横浜港で起きました母子殺人事件のときの報道の、特にその被害者となられたお母様の報道等を見ておりますと、もちろんこれは国民の側の知る権利、それからマスコミの側の報道する権利が、ちょっと角度は違いますが、先ほどの斉藤委員の質問にもありましたように、いわゆる権利として保障されているわけでありますが、しかし、あくまでもある種の、これまた倫理規定と言ったらいいのかどう言ったらいいのか、もちろん法務省や最高裁から指示をすることができない分野でありますけれども、度が過ぎているような部分があったのではないかなというふうに、私自身はあの一連の報道を見ていて思ったわけであります。  もちろん、その背景にあるものは何かというのは、事件でありますから捜査をするということは大切なことでありますが、いわゆる興味本位といいますか、その段階での、いわゆる語弊があったら申しわけないのですが、例えば視聴率の問題、あるいはスクープの問題等々含めて報道しなければならない、報道したいという部分があるのかもしれませんが、ある程度こういった部分の事件、特に被害者のプライバシーに関して、私は十分に注意をするようなことが必要なのではないかなというふうに思っております。  民主主義が成熟する中において、政治家とか、あるいは今言ったような、一つの脚光を浴びたような事件の中の登場人物とかいうものに関して、この報道をしたら、みんなが知りたがっているのではないかなという気持ちは十分よくわかるわけでありますけれども、成熟した民主主義の中においては、あくまでも報道と、それから知る権利と、それから報道される側の人権、こういう問題に特段の配慮が必要になってくる。大変難しい問題であることはわかっておりますので、特に大臣の御答弁は求めませんが、こういう問題についても、十分これから法務委員会としても気をつけていかなければならないなと痛感をしております。もし、何かあれば。
  189. 前田勲男

    ○前田国務大臣 最近のマスコミの犯罪報道に対する現状の御認識のお話でございますが、一般論として申し上げれば、犯罪報道については、特に国民の関心が高く、また、公益にかかわるものとして報道の自由が尊重されるべきではございますけれども、報道の対象となる被疑者被害者、それら家族のプライバシーに及ぼす影響、人権に対する配慮等、十分に配慮することが必要であろうと感じております。  特に、マスコミ、ワイドショーなども、私も見ておりますと、まさに一億総レポーターと申しますか、一億総探偵のような感覚で、個人の人権、プライバシーに関することが画面に多く登場しておるということを現実に見ておりますときに、人権というものをやはりお互いに考えていかなければならない問題であるというふうに思っております。  特に、犯罪報道については、人権擁護上の問題があると考えられるわけでございますが、ただ、難しいことは、報道の自由、表現の自由というこれまた大きな問題もございまして、この報道の自由等について、法務省を初めとした公的機関が直接関与するよりも、マスコミ業界みずからが自主的に御検討いただけることが望ましいのだ、かように基本的には考えております。
  190. 長浜博行

    長浜委員 質問を終わります。
  191. 中島洋次郎

    ○中島(洋)委員長代理 小森龍邦君。
  192. 小森龍邦

    小森委員 最近の検察官の暴行を伴う捜査、さらに一部弁護士の腐敗が顕在化した事件など、私は、今日の法曹界の人材の養成制度にその原因の一端があるのではないかと思っています。  そこで、尋ねますが、司法試験制度、司法修習制度は、いわゆる資格試験なのですか、それとも採用試験なのですか。医師は資格試験で、自由社会の一員として人間の命を預かる大事な仕事をしておりますが、大学の医学部の卒業者の七〇%、八〇%がこの資格試験にパスしています。司法試験は、今おおよそ何%ぐらいの合格率ですか。急いでください。時間がありませんから。
  193. 原田明夫

    ○原田政府委員 本年度、司法試験の出願者数は二万二千五百五十四名でございましたところ、合格者数は七百四十名でございましたので、合格率は三・二八%でございました。小森委員「資格試験ですか」と呼ぶ)資格試験というふうにとらえられておりますが、全体の中での合格者数の均衡等もございまして、競争試験的な要素のある試験というふうに考えられております。
  194. 小森龍邦

    小森委員 勝手に競争試験的要素と言われてもいけないので、法律的にはそういうことは決めてないと思います。しかし、それはきょうの本題ではございませんから、私の所見の一端だけ申し添えておきたいと思います。  そこで、弁護士という仕事は自由業であり、資格を取得するそういう試験にパスした者ができるというのが本来の建前でありますが、今の我が国において弁護士総数はどれくらいになっていますか。難しい試験をパスして弁護士たるの社会的地位と作用を向上させることは、一面非常に大事なことですけれども、複雑に社会が人間関係を肥大化し、展開をしておる今日の現実を考えるときに、今の弁護士の総数で社会的需要にこたえられるものとなっていますか。     〔中島(洋)委員長代理退席、委員長着席〕
  195. 永井紀昭

    ○永井(紀)政府委員 我が国の弁護士数は、ことしの七月一日現在で一万五千二百三十二人でございます。  これが果たしてこの数で社会的需要に対応するものとなっているかどうかということについてでございますが、これは先ほどもお答えしたのでございますが、法曹養成制度等改革協議会において今調査研究、検討がされている段階でございます。その協議の過程におきましては、現在協議中でございますが、大学関係者、あるいは一般の経済界、あるいは市民代表といいますか主婦連の方々からは、弁護士人口はやはり少ない、国民のニーズに本当の意味でこたえていない、やはり国民の目線に合った弁護士像としては必ずしも十分ではないという、こういう指摘がされております。こういうことで、現在議論をしているというところでございます。
  196. 小森龍邦

    小森委員 そんなことと関係いたしまして次の質問が出てくるわけでありますが、日弁連綱紀委員会にかけられ、その弁護士のとった行動が処分に値するとなった事件数を掌握されておりましたら、お知らせいただきたいと思います。概略で結構です。  また、本年六月、第二東京弁護士会綱紀委員会懲戒相当との判断をされた皆川という弁護士にかかわる事件については、マスコミも多く報じているところでありますが、裁判所法務省、双方において御存じでしょうか。
  197. 永井紀昭

    ○永井(紀)政府委員 綱紀委員会あるいは懲戒委員会等に付された事案につきまして、私ども日弁連の監督官庁ではございませんので正確には把握しておりません。  ただ、日本弁護士連合会におきまして発行しております日弁連新聞には、懲戒事件処理状況報告というものが出されておりまして、そういうものを通じて私ども把握しておりまして、把握といいますか、知るというだけでございますが、最近におきましては、懲戒請求事件が従来二百件台だったのが三百件台を超えて四百件台になっている、ただ、調査の結果、懲戒相当とされたものにつきましてはほとんど変わりがないという、そういう状況であるというふうに認識しております。
  198. 涌井紀夫

    ○涌井最高裁判所長官代理者 御指摘のありました具体的な事件でございますが、実は弁護士会の方でおとりになります懲戒処分の中には、業務停止とかあるいは除名とかいったように弁護士としての活動自体ができなくなる処分がございます。そういった処分がございますと、裁判所での訴訟活動もできないことになりますので、そういった処分がありました場合には、弁護士会の方から裁判所の方に御通知をいただくという扱いになっております。  ただ、先ほど御指摘のありました事件は、どうも現段階ではまだ弁護士会の内部手続であります綱紀委員会での処理が終わった段階でございまして、最終的な処分に至っていないようでございますので、裁判所の方ではその事件のことはまだ通知を受けておりませんので、内容についても我々の方では承知しておりません。
  199. 小森龍邦

    小森委員 司法試験制度あるいは司法修習の制度、両面から見て、もう少しこういったことに対しては関心を払っておられないと、本当の意味の将来の制度改革に備えた知識をそれぞれの関係者が持つということになりませんので、そういう意味で質問をしたわけであります。  私の調査したところでは、この人は、弁護士倫理の最も重要と思われる双方代理禁止の条項に違反していると思いますし、このことは世間の一般的な、我々のごく常識的な道徳的規範からしても、また民法上の規定からも厳に双方代理というのは慎まなければならないことだと思いますが、皆川弁護士はそれをあえてやっていると思います。法務省は、その双方代理禁止を弁護士がやった、しかも司法試験というものをつかさどる役所であるということから、どんなお考えでしょうか。
  200. 永井紀昭

    ○永井(紀)政府委員 ただいま委員御指摘の案件につきましては、ことしの夏の新聞等で報道された事件のことと思いますが、私ども、報道されている綱紀委員会での議決の経緯あるいはその中身については、新聞報道以上には承知しておりませんし、またその事実関係を十分わきまえないで、これが本当に双方代理の禁止に触れているのかどうかということも、私ども判断できないというところでございます。
  201. 小森龍邦

    小森委員 先ほど私、申しましたように、やはり司法試験制度というものを管轄する役所というのは、今弁護士がどういう欠陥を持っておるかというようなことを知っていないと、その場逃れのことになる。そんな意味で指摘をしておるわけでありますから、もう少しこんなことに対しては重大な関心を払っていただきたい、かように思います。  このような双方代理禁止の規定に違反したこの人のことを、私、分析をしてみるのに、二つの大きな特徴があります。  一つは、この皆川弁護士という人が、飯高という会社から会社の持っておる土地の信託的運用といいますか、そういうものを任されておったわけでありますが、その土地を弁護士が双方代理をしたために、ついに下手を打って差し押さえられ、競売に付され、しかもこれを依頼した当時の飯高さんという会社の代表取締役は裸一貫にされたという事実であります。  そして、時期を一にしてこの弁護士は莫大な財産というものをつくっておる。ここにもう一億円ぐらいする自動車の写真も持っておるし、その自動車も何台もであります。そういうことを、実は委員長の許可を得て写真も皆さんに見ていただきたいが、時間の関係がありますので、御関心を持たれる方にはまた後ほどごらんに供したいと思います。  そこで、つまりその土地の運用をめぐって、その土地というのは約五千二百坪でありますが、その土地を自分が信託されておるのに、双方代理のもう一つの方の会社の便宜のために、融資を受けるために担保に入れまして、百十五億円という莫大な金額でありますが担保に入れて、それが世間で言うところの質流れになってしまった。そんなむちゃくちゃなことをしておるのに、二十七億円も八億円もその信託されている自己の裁量で報酬を受け取っておる、まさに許しがたいものがあると思います。  法務大臣、あなたは法務行政全体を担当されて、司法試験の問題についても担当の大臣ということになりますが、こんなことはどうでしょうかね、人間として許すべきことだと思われますか。
  202. 前田勲男

    ○前田国務大臣 先生からただいま新聞報道を含めた、当該弁護士に対しての考え方をお聞きでございますが、新聞報道によりますと、この弁護士は、現在懲戒手続が開始をされていると伺っております。  先ほど来も出ておりますが、弁護士法上、弁護士の指導監督、懲戒の権限は日弁連及び各弁護士会の自治にゆだねられているところでございまして、現に弁護士会が行っております懲戒手続については意見を申し述べることは差し控えたいと存じますが、いずれにいたしましても、社会正義を実現していただく弁護士会全体の信頼すら失墜をしておる、極めて憂慮される事態だと思っております。
  203. 小森龍邦

    小森委員 ひとつそんな感覚で法務大臣も、この種のことについては、司法試験制度を関心を持って充実するようにしてもらいたいと思いますが、私は冒頭に申しましたように、これはやはり弁護士と一般社会との需要供給の関係で、手近なところに弁護士があれば、こいつは悪徳弁護士だと思ったらすぐに簡単にかえるということの選択ができるわけですね。そういう意味で私は、冒頭に司法試験制度のことを尋ねたわけであります。そういうことで、最高裁も今度は修習制度に関係がありますので、そういうことはひとつ十分に考えて問題と取り組んでいただきたいと思います。  そこで、もう一つ尋ねますが、この人にかかわって刑事告発が行われておるということを私は聞いておりますが、法務省は御存じでしょうか。
  204. 永井紀昭

    ○永井(紀)政府委員 所管は違いますが、最近刑事告発がされたということは聞いております。詳細なことは私ども、ちょっと現実に告発状等読んでおりませんのでわかりかねます。
  205. 小森龍邦

    小森委員 今回はこういうふうな集中審議的な、午後は一般質問でございました。検察の暴行ももちろん、弁護側のこういった腐敗した弁護士というものに対しても、国家的なみんなの力を結集して、そういうことのないようにして国民の利益を守らなければならない、こういうふうに思っております。そして、裁判官も一部ちょっと問題があるわけで、きょうはそれに言及することが時間の関係でできませんでした。  私が最後に申し上げたいことは、刑事告発が行われておるということは承知しておるということでございます。また、私もある方面からそれはニュースとして入れておりますが、このような、本来国民の権利を守らねばならない立場の職員にある人がこんなことをやられたのでは、国民は本当に困るわけでありますから、どうかひとつ、そういう告発が行われて、やがて捜査の段階に入り、あるいは既に入っておるかとも思いますが、厳正なる捜査を行いまして、社会悪に対する抑止効果のある措置をとられることを期待して、私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  206. 金子原二郎

  207. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 社会党・護憲民主連合の佐々木です。  きょうは午前中から、検察官の不祥事件それから弁護士をめぐる不祥事件についてのお話でしたけれども、今小森委員御指摘のように、法曹三者の中には最も主要な裁判官の問題もある、裁判所の問題もあります。私はきょうは、裁判所あるいは裁判官の問題について集中的に質問させていただく、こう思っております。  法曹三者いずれも、その資格を得るためには司法試験という難関の試験を通って二年間の司法修習を受けて、その間にさまざまな訓練も経ながら、裁判官、検察官、弁護士として実社会において仕事をしていく。それぞれが非常に重要な役割を持っていることは言うまでもありません。それだけに、単なる法律知識だけではなくて、人格的にも、それからまたさまざまな見識においても世上の信用を博し、その能力を発揮していくということでなければならなかろうと思います。  そこで、司法試験に合格し二年間の修習を終えると、この法曹三者いずれにもなる資格があるわけですけれども、しかし、検察官、裁判官については任用制度があって、本人が希望しても、場合によったら、その資格などいろいろ検討された上で採用にならない、任用されないということもあるわけであります。私の聞き及んでいるところでは、例えば裁判官の場合に、新任判事補としての志望を出しながら、しかし実際に任用されなかった、本人が志望を撤回したというなら別ですけれども、つまり、俗に言う不採用になった、任用を拒否されたという事例が、昭和四十四年以降の統計で五十二名ぐらいに上ると実は聞いております。  それらの人々が周囲から見て、あるいは他から見て、これは欠格者だ、こういう人に裁判官になってもらったら困るというような人があるいは中にはいるのかもしれない。しかし、昭和四十四年以降で任用を拒否された人々、この人々はやむなく弁護士になっているわけですけれども弁護士になってからの人々の相当数というのは、私は人間的にも知っておりますし、それから、中には一緒に仕事をやってきたということもあります。  それらの方々の私の知る限りでは、多くの方々が弁護士としては非常に立派な活動をされて、当事者からも信用がある、弁護士会の中でも大変評価が高いという人が多いのですね。だとすると、こういう人々がなぜ裁判官になれなかったのだろうか、弁護士として立派にやっている人が裁判官としてはうまくやれないなんというはずはないじゃないか、そんなふうにも思えるわけであります。  ところで、これは具体的にお聞きするのですけれども、ことし司法修習を終えて新任判事補を希望した中で、一名だけが任用を拒否されている。具体的に名前を言ってもいいと思いますけれども、神坂直樹君という人ですけれども、ほかの人たちは全部任用されているわけですね。ところが、この神坂君だけが任用を拒否された。こういう事例について従来裁判所は、その不採用の理由というのは人事の秘密なんだということで、一切公表はしないところではなくて、本人がその理由を尋ねても、本人が場合によったら社会的な不利益をこうむることも覚悟した上で、どうか理由を開示してもらいたいということを言っても開示をしてこなかったというように聞いております。  実はこの神坂君が、新聞でももう報道で御案内のように、その不採用、任用拒否を、これを一つの最高裁判所による行政処分だということで、この判事補の指名拒否処分について取り消してもらいたいという訴訟を東京地方裁判所に起こして、これが平成六年の(行ウ)第二一一号事件として東京地方裁判所の十一部に係属していると聞いておるわけであります。  ところが、この事件については、係属部、東京地裁の民事十一部において口頭弁論の期日の指定をしていない。そして訴状は、これはもう提出されているわけでありますけれども、それに対する答弁書もどうも出ていないようだというようにお聞きをしているわけであります。ところが、それだけではなくて、ことしの去る九月二十一日にこの地裁の民事十一部は、判決の言い渡し期日を翌日の九月二十二日の午前十時と指定している。しかし、この指定についても当事者、原告あるいは原告の代理人にも通知がなかったということも聞いておるのです。  こういうことは、私どもが習った民事訴訟法の原則からいくと、まことに異例のことだと思うのですね。民事訴訟法の第百二十五条は、必要的口頭弁論の原則というのを定めていて、もちろん、この中にはただし書きで例外として、決定をもって完結すべき事件については裁判所は口頭弁論をなすべきか否かを定むということになっており、そしてまた第三項において、別段の規定のある場合においてはこれを適用しないということになっています。けれども、これは極めて限られておりまして、例えば民事訴訟法の二百二条で、これは訴えを却下するべき場合には口頭弁論は不要だ、これは、訴えを却下すべき場合というのは、訴え自体が不適法であって、その不適法性、これは欠鉄があるから、欠陥があるからだということになるわけですけれども、その手続的な欠陥については補正ができない、不能である場合に限るというふうになっているわけですね。しかし、どうも本件の場合にはこの二百二条には当たらないと思うのです。  そこで最高裁判所にお伺いをいたしますが、最高裁判所がこれは被告になっているわけですから、処分庁でもあると同時に、であるからこそ被告になっているわけですけれども、最高裁判所が本件についての訴状の送達を受けた日はいつなのか、受けているのかどうかも含めて。それから、訴訟代理人についての指定はしていたのかどうか、しているのかどうか。それから、答弁書の作成はしたのかしないのか、依然としてしていないのかどうか。それからまた、東京地裁の当該部から答弁書を出しなさいという催告状の送達は受けているのかいないのか、この辺のところをまとめてひとつお話をいただきたい。
  208. 堀籠幸男

    ○堀籠最高裁判所長官代理者 委員御指摘の、事件における当事者としての最高裁判所は、平成六年七月十九日に訴状の送達を受けております。  一般に、最高裁を被告とする訴訟が提起され訴状が送達されたといたしましても、口頭弁論の期日が指定されるまでは特に対応を行っていないのが実情でございます。  本件につきましても、現在のところ口頭弁論期日がされておりませんので、訴訟代理人の指定と答弁書の作成等の対応はいたしておりません。  それから、東京地裁の当該部から答弁書催告の送達は受け取っておりません。  以上でございます。
  209. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 それともう一つ、先ほど私が指摘しましたように、九月の二十二日が判決の言い渡し期日だということですね。この連絡は受けていますか。
  210. 堀籠幸男

    ○堀籠最高裁判所長官代理者 委員御指摘の、期日の通知は私どもは受けておりません。
  211. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 私も、弁護士に登録してからもう三十年になるのですけれども、議員になって国会に来てからなかなか法廷にも立てないものですから、ここのところは実際の訴訟事件に関与する経験も少なくなっておりますけれども、少なくとも二十数年間はいろいろな事件をやってまいりました。民事訴訟、行政訴訟も随分やりましたけれども、少なくとも、口頭弁論を一回も開かないで、しかも訴状を出したのに答弁書も提出されないで、それでいきなり結審で判決なんという例は、私は今までにない。法律的にはできないではないとしても、これはいかにもおかしいと思うのです。  今は被告である最高裁判所にお尋ねをしたのですけれども、同時に、最高裁判所司法行政の統轄者でもあるわけですね。恐らくこの事件は最高裁判所に対しての報告事件という扱いになっていると思うわけですが、まずその報告事件であるかどうかと、報告事件であるとすれば、今の訴訟の仕方などについても、なぜ口頭弁論期日を指定しないのか。なぜ答弁書の催告をしないのか。それは事件の性格からくるものなのか、先ほどの民訴法の例外規定との関係でのことなのか。その辺についての報告をどういうように受けているか、あるいは裁判所の方から当該部に対して釈明などを求めたりしているのかどうか、その点をお尋ねいたします。
  212. 今井功

    ○今井最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。  今の事件は、行政訴訟ということでございます。私どもは、行政訴訟につきましては、訴訟が提起された場合に、こういう事件が提起されたという報告を司法行政の立場で受けております。これは、例えば予算とかいろいろな資料を配ったり、いろいろな関係で必要だからということで受けておるわけでございます。  この今問題になりました事件で、そういう意味で報告を受けておりますのは、この事件が東京地裁に提起されたということを、ことしの八月三十日に行政局に対しまして訴状の写しか送付されて、こういう事件が提起されたという報告を受けたわけでございます。それ以外には、何もこの事件については報告を受けておらないということでございます。  したがいまして、先ほど御質問のございました口頭弁論期日の指定だとか、当事者の呼び出し、そのようなことについては一切報告は受けておりません。
  213. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 形式的にはそういうお答えになるだろうとは思うのですけれども、しかし何にしても、私どもの感覚からいうとこれは非常に異例だと思うのですよ。普通あるべき裁判の姿とはかなりかけ離れていると思うから、お尋ねをしておるわけであります。最もこの手続においても司法手続において厳格をたっとばなければならない最高裁判所あるいは裁判所において、あるいは法理的な根拠があるかもしれないけれども、だれしも納得できるような理由もないままに異例の形で、全く口頭弁論を開かない、つまり法廷も開かないで、そしてまた訴状に対して何も回答を出さないで、もちろん証拠調べもしないままに判決が出されるなんというのは、どう考えたって私どもとしては納得がいかないことなのであります。  それでは、一体こういう例が今までもあったのかどうか。地方裁判所段階で結構だと思いますけれども、民事行政裁判でこのように一回も口頭弁論を開かないままに判決を言い渡したという事例はあるのでしょうか。それをお伺いしたいと思います。
  214. 今井功

    ○今井最高裁判所長官代理者 今御質問の点は、民訴二百二条ということで、不適法な訴えてその欠缺を補正することができない場合には口頭弁論を経ないで却下することができる、こういう規定でございます。これを平成五年度、昨年一年間についてとりあえず調べましたところ、地方裁判所における民事第一審の通常訴訟と行政訴訟事件、判決は全部で六万四千九百九十七件あるわけですけれども、そのうち今申し上げた条文によって口頭弁論を開かないで却下された件数というのは三百七十六件ということになっております。
  215. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 お話しのように、口頭弁論を経ないで判決をしたというのは、民事訴訟法の二百二条を根拠にしているということが今明らかになったわけです。  そうすると、本件の場合には、補正不能な欠缺がどんな形であるのか。この点については、少なくとも当事者である最高裁判所としてどういうように見ておられるかということと関係する、あるいは欠缺の補正が可能かどうかということについては、係属部の裁判所から訴状を提出した原告に対して釈明なり求釈明なりがあってしかるべきだと思うのですけれども、その辺について当事者である被告である最高裁判所はどう考えているのか。それからまた、当該部からはその点についての司法行政上の報告は受けているのかどうか、これをひとつ明らかにしてください。
  216. 堀籠幸男

    ○堀籠最高裁判所長官代理者 当事者としての最高裁判所といたしましては、当該具体的事件を担当しております裁判体の方で期日の指定があった場合にそれに対して対応していこうということで考えておりますので、この段階で当事者としての最高裁判所の見解を述べることは差し控えさせていただきたいと思います。
  217. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 時間があればこの込もう少し質問もしたい、お尋ねしたいのですけれども、もう時間が来たようでございます。まことに残念ですけれども、ですから、その辺のお尋ねは割愛せざるを得ない、また機会を改めてということにせざるを得ないと思っております。  しかし、それにいたしましても、私は今のようなしゃくし定規な態度でいいのかなという思いがいたします。司法研修所で二年間修習を一生懸命してきた修習生、司法研修所を管轄しているのも最高裁判所であります、いわばその教え子である人だと思うのですね。  聞くところによりますと、これはその本人の担当教官も言っているらしいですけれども、法律関係についての成績というのは、この神坂君の場合には非常に優秀だった、むしろ上位にランクされているくらいだったというように言われているというようにも聞いているのですね。ただ、彼の修習中の態度といいますか、そういうところで、いろいろな裁判あるいは裁判関連の書式を書くのに、日付については元号を用いないで西暦を用いたというようなことだとか、あるいは修習の仕方において他の一般の修習生とは違ったやり方を多少したことがあるとか、司法試験に合格する前にある行政事件についての原告の輔佐人をしたとか、それからまた、修習中に国会に係属したある法案について反対のチラシを配布したとかなどなどということがある。恐らくそれらのことがその任用拒否の実質的な理由になっているのではないかというように取りざたをされているのですね。  一方裁判所では、思想、信条などを理由にする不採用ということはやっていないというようなことも言っておられるようなんですけれども、そういうことを含めて、むしろ、せっかくこういう裁判が出たのですから、それは裁判の場においても明らかにできることとできないことがあるにしても、やはりそういう疑問点についてはできる範囲で解明していくというようなことが、私は裁判所にとっても望ましいことではないのかな。あれもこれもしゃくし定規に、口頭弁論が開かれることがないから、通知がないから対応はしないというだけでいいのだろうかという思いがするわけであります。もう少し血の通った考え方をしていただいたらどうなんだろうかな。  全人格的にと言われるけれども、確かに法律家というのはすべての面でそれにふさわしい人でなければならないとは思いますけれども、しかし、少なくとも難関の司法試験に合格して二年間の修習をやっている間に、そういうことについても、これは仲間同士のあるいは評価としても、あれはどうかということは大体出てくるものなんですよね。  先ほど私が言いましたように、今まで任官拒否をされた人たち弁護士としては立派にやっていっている人がいるわけですから、少し大所高所に立って、私はむしろそういう拒否された人たちを見ていて、うわあ、こういう人が裁判官になっていてくれたらよかったのに、裁判所はいい人を失って残念だな、もったいないなと思うようなことだってあるのですよね。余りしゃくし定規に考えないで、少しおおらかな気持ちでお考えになったらいかがかなと思っております。  そういう新任判事補の任用の基準の問題だとかなどについても、本当はきょうは議論をしたかったのですけれども、残念ながら時間が参りました。また改めてお尋ねをし、議論もしていきたいと思っております。  何にいたしましても、きょうの午前中からのお話のように、法曹三者それぞれがやはり心して不祥事のないようにしなければいけないし、しっかりした法曹というものが確保できなければならない、こんなふうに思っておりますけれども、それは形式的な問題ではなくて、やはり人間としての法曹というものをどうやってつくっていくか、またお互いにそのことをわきまえていくかということに関係していくことなんではなかろうかな、こんなふうに思っております。  法務大臣からお答え結構でございますので、その辺もお含みおきいただいて、検察官の養成あるいは採用についても十分心がけて、心していただきたいということを申し上げて、質問を終わります。  ありがとうございました。
  218. 金子原二郎

  219. 枝野幸男

    枝野委員 新党さきがけの枝野でございます。  午前中日弁連の事務総長にお伺いしたのに引き続きまして、東京三弁護士会が鼎立をしているという問題についてお尋ねをしたいと思います。  まず事実関係からお尋ねを申し上げますが、明年の七月、日比谷公園に面した旧東京地検跡地に東京三弁護士会日本弁護士連合会の合同の弁護士会館ビルが完成をいたしますが、この用地は国有地であるということを確認した上で、その地代がどうなっているのか、お教えください。
  220. 原田明夫

    ○原田政府委員 ただいまお尋ねの敷地は、国有地でございます。行政財産の使用に関します諸法令の規定に従いまして適正な対価を算出いたしまして、各年度の月額使用料を決定することとなるというふうに承知しております。
  221. 枝野幸男

    枝野委員 現段階で、最初の地代は確定していないわけですか。
  222. 原田明夫

    ○原田政府委員 現段階においては確定いたしておりません。
  223. 枝野幸男

    枝野委員 本来であれば、地代が幾らになるのかという話をお伺いして進めたかったのですが、というのは、地代の交渉を日弁連弁護士会法務当局、大蔵当局でしている云々という話は私も弁護士会に属しておりまして知っておりますので、具体的に現段階ではおっしゃれないのであればそれで結構なんですが、いずれにしても、まさに東京のど真ん中の一等地の国有地を弁護士会は借りて建物を建てる。これは、まさに弁護士会の建物というものが官公庁の建物に準ずるぐらいの公共性があるからでなければ、これは国有財産の使い方として、これだけの一等地でございますから、許されない話であると思います。  ところが、そのまさに国民の税金に基づいている大切な国有地の上に建てられる建物の中に、午前中の質疑でもお尋ねをいたしましたとおり、図書館が実は二つできます。東京弁護士会と第二東京弁護士会は合同で一つの図書館にしようということになりましたが、第一東京弁護士会が何を血迷ったか図書館を一緒にしては嫌だということで、同じ建物の中に、弁護士会に置く図書館でございますから法律関係の書物、ほとんど同じものが重複して図書館としてでき上がる、この事実は把握していらっしゃいますでしょうか。
  224. 原田明夫

    ○原田政府委員 現在建設中の会館の中身に関しまして、種々論議があったということは仄聞したことはございますが、その中身の詳細については承知しておりません。
  225. 枝野幸男

    枝野委員 今指摘をいたしましたのは、確認をしていただければ間違いのないことでございますので。  確かに、弁護士会には弁護士自治というものがございます。それから、国有財産といえども、貸し渡した後の使い方に対して一つ一つ全部細かくチェックをしなければならないというものではない、むしろ貸した以上はある程度自由に使っていただくというのは原則であるとは思いますが、まさに今のようなむだなスペースの使われ方をしているということは、私も、弁護士としての側の立場からいえばいろいろ理由はあるにしても、国民の側、納税者の立場からすれば黙って見ていていい話なのかどうかということになるのではないかというふうに考えております。  この東京に三つの弁護士会が存在して、一つ弁護士会の会館の中に入って、非常にむだなスペースを使って、そして午前中も指摘しましたとおり、市民のための弁護士会といいながら、市民から受ける法律相談を東京三会で振り分けをしてやっていくという、非常に非効率で市民にとっては不親切なことをやっております。  そしてまさに、本日朝からずっと一番の問題になっております綱紀粛正等の問題についても、懲戒処分を現実に行うのは各単位弁護士会でございますので、東京に三つの弁護士会があるということは、三つの弁護士会がそれぞれの独自の判断で自分の会に属している弁護士懲戒処分を行うということでございます。合理的な区分でこの三つの弁護士会が分かれている、例えば地域ごとに分かれているとかという話であれば、一種の地方自治的な発想で合理性があるとは思いますが、東京の中でたまたまどこの弁護士会に属したか、私の場合は東京に三つ弁護士会があるということ自体知りませんでしたので、たまたま私が指導を受けた弁護士が第二東京弁護士会でありましたのでその弁護士会に属しておりますが、そうした形で、たまたま属していた弁護士会懲戒処分の対象になる、何か起こったときに。  そこで、懲戒の処分が、やはり人のやることですから、組織が違えばある程度のぶれが出てくる。例えば、懲戒処分は、被害救済のためではございませんが、おかしな弁護士によって、被害を受けた側からすれば、たまたまAという弁護士会であれば除名になったものが、Bという弁護士会では除名じゃなくて退会処分かもしれないというふうなことが可能性としてあるということは、これは理不尽であるというふうに言わざるを得ません。  確かに、弁護士会の問題は弁護士自治という問題が大切ではございますが、それは自治という以上は、みずからきちんと律することができることが前提としての自治であると私は考えております。大正時代の派閥争いの名残を引きずって、ばらばらで非効率なことをやっているこの点一点に限って言えば、現在の弁護士会は、東京の三弁護士会は、私も属している以上、みずからを省みながら自治に値する自律をしていないのではないかと言わざるを得ないと思います。  そしてもう一点、弁護士自治といいます以上は、そして弁護士会が行政機関としての意味を持っております以上は、やはりだれからもノーチェックでいいということではない。確かに、弁護士自治の議論をされますときには、国家権力から弁護士の自由、権利擁護者としての自由を守るという言われ方をしておりますが、弁護士会が行政機関一つであるという側面を持っているということを考えれば、この国家権力というのは行政機関との関係で、弁護士会内部の問題について介入をされない。例えば、司法や立法との関係ではこれはノーチェックであるならば、むしろ弁護士会だけが三権分立の中での特権的な地位を得ているということになると思います。  そうした意味では、これから法務省が直接指導監督ということは、これは私も弁護士の端くれとして弁護士自治に反しておかしいと思いますが、弁護士会と関連する役所としての法務省とそして私ども立法機関とが、この弁護士会のあり方について、自治のあり方について、特にこのような東京三会の鼎立のような非合理な問題について議論をする場といいますか、そういったものをつくっていかなければならないのではないかというふうに考えております。そのあたりのところについて、法務省の御見解をお聞かせください。
  226. 原田明夫

    ○原田政府委員 委員御指摘の点につきましては大変難しい問題でございまして、法務省の立場でにわかにお答えするのはいかがかという感じもいたします。弁護士の自治ないし弁護士会の自治にかかわる問題でございまして、直ちに一つの方向でもって云々するということは差し控えさせていただきたいと存じますが、この問題をめぐりましては、国会におきましても、当委員会におきましても、過去いろいろな形で御論議があったということは承知しておりますし、ただいま委員御指摘のような御関心あるという点につきましては法務省といたしましても承知いたしまして、今後また法務省としても司法全体の問題として考えてまいりますよすがにさせていただければと存じます。
  227. 枝野幸男

    枝野委員 特に東京三会の問題は、一見小さな問題のことのように見えますが、まさに、例えば綱紀粛正懲戒処分等にも絡んでくる問題でもあると言えますし、まさに弁護士が、弁護士会国民の信頼を失わない、回復させるという意味で大切な問題であるというふうに理解をいたしております。  今私が私見を申し上げましたとおり、弁護士の自治という問題との複雑な兼ね合いはございますが、それだけに、委員長初めこの法務委員会同僚、先輩の議員の皆様方にもぜひ御認識をいただきたい。例えば、弁護士会が行政処分を行う行政機関としての側面を持ちながら、そのことについて日弁連から話を我々立法機関として伺うのが参考人としてという形しかできない。本来であれば、最高裁からもその最高裁の行政サイドの側面から、呼べば来ていただける、いつでも来ていただけるという形で、私どもが事実関係、状況を把握することができるのに、行政機関の行政処分の一翼を担っている日弁連弁護士会がそれができないとかという運用について、ぜひこれから私も含めてこの委員会としても考えなければいけないと思います。  そして、法務省におかれましては、今官房長から御答弁いただきました難しい問題はございますが、まさに弁護士自治に介入をしない範囲の中で、どうやったらこの弁護士会のあり方というものをよくしていけるのかという検討、御努力をお進めいただきたいとお願いを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。  ありがとうございました。
  228. 金子原二郎

  229. 正森成二

    ○正森委員 私は、最近相次いで起こりました検察官の取り調べ中の参考人あるいは被疑者に対する暴力行為事件に伴う問題について、まず伺いたいと思います。  ある新聞にこういう記事が載っております。「最近、裁判官の間から「検事調書を見る目が変わってきた」という声が聞かれるようになった。これまで裁判官には、同じ法律家である検事の調書は、暗黙のうちに作用する傾向があった。それが「従来より慎重に評価するようになった」という。相次ぐ検事暴行事件の波紋の深刻さをうかがわせる話だ。」という記事であります。  同じくこれは、法律関係のジュリストという雑誌の十一月十五日号に載っている記事ですが、検察幹部の一人の話としてこういう記事が載っているのです。この間のリクルート事件の藤波判決に触れて、「あの藤波判決は論旨が一貫せず、筋が通らないということに尽きる」こう言うた後で、「「ただ、ねえ」と付け加えた。「暴行検事の問題は影響していないとは言い切れない。審理対象の事件と直接の関係はないけれど、裁判官の心証形成に(検察からみて)微妙にマイナスの方向に作用したことは考えられるよ。困ったことだ」」というのが法律関係の雑誌に載っているのです。  そこで私は申したいのですが、検察官が取り調べ参考人被疑者に暴力を振るうなどということは、その方に対する人権を侵害するという上でも、もってのほかであります。また、司法権に対する国民の信頼を失うという意味でも、あってはならないことであります。  しかし同時に、刑事局長が来ておられますが、検察自身にとっても裁判上、ここに書いてあるように非常にマイナスで、刑事訴訟法三百二十一条のいわゆる検察官面前調書、その信頼性を実際上非常に揺るがせることになるという影響を非常に大きく与えると思うのですね。ですから、こういう問題についてまず検察当局はどう考えておられるか、刑事局長から伺いたいと思います。
  230. 則定衛

    ○則定政府委員 お答えいたします。  今委員御指摘の三点にわたります影響というもの、私どももその第一、第二の点について特に深刻に思いますし、法律実務の面、特に公判立証の面で、今御指摘のような受けとめ方があるとするならば大変重大なことであろうと思うわけでございます。  しかしながら、個々の事件につきましての提出された証拠について裁判所がどういうふうに判断するのか、これは御案内のとおり、それぞれの具体的な裁判過程で、その取り調べの状況その他綿密に審査、審理された後に裁判所が判断されることでありまして、検察官といたしましては、事案の解明を行う過程で種々関係者から事情を聞く、その聞いた結果が任意性のありかつまた証明力の高いものを担保しなければならないということで日夜苦労しているわけでございまして、それらの成果と申しますか、捜査過程で収集いたしましたいわゆる検察官調書等が裁判所で正当に評価されるということを私どもは信じて疑わないわけでございます。  しかし、かりそめにも今御指摘のございましたような受けとめ方がそういう一部の法律関係者にあるということについては、これは謙虚に受けとめなければならないというふうに思っておるわけでございます。
  231. 正森成二

    ○正森委員 もちろん、個々の検察官調書の証拠能力の信用性については個々に判断すべきことであって、二件、三件こういうことがあったから全体としての調書の信憑を否定的に見るということは慎まなければならないと思います。  また、私は立法府の一員ですから、裁判所の判決についてとやかく言うことは避けたいと思いますが、藤波判決についても、私どもが選挙区へ帰りましたら、選挙民の感情と非常にかけ離れております。例えばあの判決の中で、合理的な疑いが残るという言葉があっちでもこっちでも出てまいります。これは、我々が講学上習いました、有罪とするためには合理的な疑い以上の証明がなければならないという考えで、法律家としては当然のことであります。あの判決は、個々の事実や個々のわいろ性の評価について、ここでも合理的な疑いがないとは言えない、こっちでも合理的な疑いがないとは言えないというのを二遍も三遍も使って、そして結局無罪だと言っているわけです。  例えば、得たお金が私的な建物の建設に使われた、これは倫理の問題だと片づけているんですが、そういう三つも四つもの点を総合すれば、果たして全体として合理的な疑いが残らないかどうかという点については一言も触れていないという点で、ちまたではわずか三十万、五十万もらった下級公務員は収賄罪で有罪になるけれども、毎年毎年一千万円というのを三回も四回ももらえば、前にももらっておったんだからといってわいろ性が否定される。株も少しぐらいもらったのならともかく、一万株ももらえば、同僚の政治家ももらっておったんだからこれだけがわいろ性を認識したとは言えないというようなことで無罪になるなら、たくさん金をもらい、株もぎょうさんもらえばもらう方が得じゃないかというのがちまたの意見であります。  問題はそういうことではなしに、たとえふだんならよくないことだけれども企業献金として許されるものであっても、職務権限のある地位についているときはどうかという点が問題であるのに、その点について深刻に考えたような兆候が見えないというのが、私たちの友人の弁護士などでも言われていることであります。しかし、現に係属中の事件ですから、立法府の一員として多くは申し上げませんが、そういう点があるということを申し上げておきたいと思います。  そこで、検察官に申し上げたいんですが、これも最近の東京新聞に載っていたんですが、検察取り調べは「被疑者の信頼を得た上で、供述を引き出し、地道に間接証拠を積み重ねるという姿勢が法の番人としての検察の本来の姿。」というのが出ています。これはそのとおりだと思うんですが、なかんずく私が指摘したいのは、この三つの刑事事件のうち、二つまでは特捜が非常に忙しいときに地方から応援に来た検察官がこういう暴行事件を起こしている。  午前中に私が質問しましたらある同僚委員が、応援に来た人間だけでなしに、特捜部プロパーだって大きい声出して盛んにやっておるよというようなことを言う人がおりましたから、特捜部の本来のプロパーの人も余り上品な調べはしていないと思いますが、特に応援に来た人が、自分は特捜の仕事になれておらない、特に経済事犯になれておらない、しかし上の方からは自供をとれ、自供をとれと言われる。だから、つい焦って、口よりも先に手が出るというようなことになったんではないか、これは想像ですが。  ですから、特捜部か何か知りませんが、余り自供をとるようにハッパをかけるとかいうのでなしに、おのずから自供がもし有罪の場合には、やった場合にはとれるように経済的な問題についてもよく勉強して、そして客観的な証拠あるいは間接証拠が十分にそろって、これでは認めざるを得ないというような方に持っていくような、そういう捜査があるべき姿ではないかというように思いますが、それについての御意見を伺いたいと思います。
  232. 則定衛

    ○則定政府委員 お答えします。  いわゆる知能犯あるいはホワイトカラー犯罪等についての取り調べの基本的なあり方は、まさに委員御指摘のとおりであろうと思います。間接証拠その他を積み上げまして、それでそれについて当該関係者から事情を聞く、そこでいろいろと矛盾がある場合にこれをただしていくということであろうと思います。  従来から、基本的にはそういう取り組み方で特捜部においても捜査を展開してきたことと思いますし、また、応援検事を求めるというときには、そういった適性のある者ということを中心に人選していると思うのでございますけれども、今回遺憾にも現実にあのような事件が起こったという点につきましては、これを材料といたしまして、今後その人選あるいは指導教育等について万全を期してまいりたいと思っております。
  233. 正森成二

    ○正森委員 そろそろ時間ですが、一分だけ申し上げたいと思います。  裁判所に、同僚委員が司法試験の抜本的な改善の点についてはもう詳細にお聞きになりましたので、私は質問として通告しておりますが、時間の関係もあり全部省略させていただきます。  ただ、一つ申し上げたいのは、弁護士の数をもっとふやしたらどうだとか、あるいは試験を受けた人員の中のせいぜい三%ぐらいというのはおかしいので、ほかの試験では五〇%も七〇%も通っているのがあるじゃないかとか、アメリカではどうだというような意見があるんですが、それも言う前に、裁判官の人員が今の国民のニーズやあるいは裁判の遅滞からいってふえていないのではないかという説が、例えばこの間新聞に載りましたが、法曹人口問題を考える日弁連有志の会の代表の方から述べられております。  例えばこれを見ますと、欧米先進国に比べて日本は四万五千人に一人の裁判官、アメリカは九千人に一人、イギリスは千五百人に一人、ドイツは四千人に一人だ。この約四十年間に裁判官は四百人しかふえていない、それに対して弁護士は六千人から一万五千人へふえておる。あるいは予算の点について言えば、一九五五年、四十年前は国の当初予算の〇・九%であったが、現在わずか〇・四%である、法律扶助費に至っては欧米の百分の一以下である、こういうことが指摘されております。  こういうような状況の中で弁護士をたくさんふやせふやせといいましても、これは非常にアンバランスで、むしろ過当競争で今言われた問題を惹起する可能性もあります。ですから、今まで裁判所の答弁は聞いておりましたけれども、非常に消極的な意見で、必要性があればその時点で裁判官の人員を考えていきたいということですけれども、もう歴然たる統計の上にあらわれているんですね。多くの弁護士は期日を入れる場合でも、裁判官が少ないから、もう三カ月から六カ月先にしか期日が入らないというようにこぼしていることは御承知のとおりであります。ですから、時間の関係で答弁は求めませんが、そういう点があるということを御記憶の中に入れておいていただきたいと思います。  これで終わります。
  234. 金子原二郎

    金子委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時十分散会