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1994-11-07 第131回国会 衆議院 税制改革に関する特別委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成六年十一月七日(月曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 高鳥  修君    理事 石原 伸晃君 理事 江藤 隆美君    理事 中馬 弘毅君 理事 町村 信孝君    理事 加藤 六月君 理事 津島 雄二君    理事 二見 伸明君 理事 早川  勝君       甘利  明君    金子 一義君       岸田 文雄君    栗原 裕康君       塩谷  立君    谷  洋一君       西田  司君    野田  実君       藤井 孝男君    穂積 良行君       堀之内久男君    山中 貞則君       安倍 基雄君    石田 勝之君       今井  宏君    上田 清司君       太田 誠一君    北側 一雄君       北橋 健治君    佐藤 静雄君       須藤  浩君    竹内  譲君       谷口 隆義君    村井  仁君       山本 幸三君    山本 孝史君       吉田 公一君    伊東 秀子君       池田 隆一君    北沢 清功君       永井 哲男君    渡辺 嘉藏君     五十嵐ふみひこ君    田中  甲君       穀田 恵二君    佐々木陸海君  出席公述人         慶応義塾大学経         済学部教授   島田 晴雄君         一橋大学経済研         究所教授    高山 憲之君         福井県知事   栗田 幸雄君         慶応義塾大学総         合政策学部教授 丸尾 直美君         日本労働組合総         連合会総合政策         局長      中川 宏一君         社団法人日本自         動車連盟専務理         事       犬丸 令門君  委員外出席者         地方行政委員会         調査室長    前川 尚美君         大蔵委員会調査         室長      中川 浩扶君     ――――――――――――― 本日の公聴会意見を聞いた案件  所得税法及び消費税法の一部を改正する法律の  施行等による租税収入減少を補うための平成  六年度から平成八年度までの公債発行特例  等に関する法律案内閣提出第二号)  所得税法及び消費税法の一部を改正する法律案  (内閣提出第三号)  平成七年分所得税特別減税のための臨時措置  法案内閣提出第四号)  地方税法等の一部を改正する法律案内閣提出  第五号)      ――――◇―――――
  2. 高鳥修

    高鳥委員長 これより会議を開きます。  内閣提出所得税法及び消費税法の一部を改正する法律施行等による租税収入減少を補うための平成六年度から平成八年度までの公債発行特例等に関する法律案所得税法及び消費税法の一部を改正する法律案平成七年分所得税特別減税のための臨時措置法案地方税法等の一部を改正する法律案の各案について公聴会を開きます。  この際、御出席公述人各位一言ごあいさつを申し上げます。  公述人各位におかれましては、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。審査中の各案に対する御意見を拝聴し、審査の参考にいたしたいと存じますので、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  なお、御意見は、島田公述人高山公述人栗田公述人丸尾公述人中川公述人犬丸公述人の順序で、お一人十五分程度お述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。  また、公述人委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきください。  それでは、最初に島田公述人からお願いをいたします。
  3. 島田晴雄

    島田公述人 ただいま御紹介にあずかりました島田でございます。  早速、今次税制改革について所見を申し上げたいと思います。  大きく二つに分けて申し上げたいと思いますが、一つは、今次税制改革関連法案についての評価、いま一つは、今次税制改革が直面している課題の本質的な意味といいますか、本格的に取り組むべき課題といいますか、そういったことについて申し上げたいと思います。  まず、評価については三点ほど申し上げたいと思いますが、一つは、所得税及び個人住民税改正について、いわゆる制度減税でございます。  現行の所得税税率構造が、中堅所得層の階層の税率の急勾配がある、つまり限界税率が非常に高くなっていくということが勤労意欲を阻害するという懸念があったことはつとに指摘されておるところでありますが、今回税率ブラケットを拡大するという形で中堅所得層限界税率の上昇をある程度抑制したということは、働きがいを確保するという意味それなり評価できるというふうに思います。  他方、消費税率引き上げということもありまして、低所得者層への影響を配慮するということから課税の最低限を引き上げておりますが、私は、個人的な意見としては、税は本来万民が広く負担すべきものだというふうに考えておりますけれども、これによって約一兆円程度の減収に抑えているということはそれなり評価ができるのではないかと思います。  第二番目に、消費税改革について申し上げたいと思います。  消費税改革について、その前提条件として大きな問題となっておりますのは益税問題でございます。この益税問題にかかわる不公平がつとに指摘されておりますが、消費税を導入した際の社会的な抵抗感を和らげるために、便宜的な措置幾つかの措置が導入されておったわけでありますが、このことが不公平であるということで、消費税に関する信頼について大きな問題がございました。  消費税率を上げていくというようなことを展望いたしますと、この問題はとりわけ重要な問題になろうかと思いますが、今回の改正では、限界控除制度を廃止する、簡易課税制度適用の上限を四億円から二億円に引き下げる、免税点制度について、特に新規法人条件をやや厳しくするといったようなことで改善を試みているのは評価できます。  私の個人的な見方としては、もっとこれは厳格にしてもいいのではないか、とりわけ免税点制度の中身の問題、業者番号つき税額票を導入するといったようなことまで考えてもよかったのではないかと思いますが、しかし、一応評価できるというふうに思います。  また、もう一つの重要な問題であります消費税率でございますが、平成九年の四月から四%にする、それから地方消費税を加えると五%ということになるわけですが、まず、所得税減税消費税税率引き上げについての一体的な法案化をするということになったことについては、私は大いに評価をしたいというふうに思います。民主主義政治体制というのは税制改革については非常に難しいものを含んでいるというのは、先生方だれよりもよく御存じだと思いますが、選挙民負担増加を受け入れてもらうということがどれだけ難しいかということがございます。その意味で、この一体処理というのは極めて重要な決断であったというふうに思います。  しかし、税率そのものについては今回はこういうことでございますが、将来の税率をどう定めるかについてはまだまだ多くの検討を要すべき課題があるのではないかと思います。適切な税率は何なのかということについて幾つかの条件を明確にしておかなくてはならないかと思います。  一つは、経済成長がどうなるか、それをどう見るかということでございますが、今回の特別減税をどのように扱うかといった問題もこれに密接にかかわります。  また、大きな問題として、国民の共感、賛同を得るために、とりわけ行政改革ということが重要でございます。どれだけ歳費の削減ができるのか、これを国民は注視をしているわけでございまして、全力でこれは進めていただきたいというふうに思います。  それから、高齢化社会に備えてどれだけの社会的費用がかかっていくのかということについてもまだまだ検討余地があろうかと思います。後段、申し上げたいと思います。  そして、もう一つ触れておきたいのは、公共投資財源をどのようにするのかということでございます。今後十年間で六百二十兆円という大枠が出ておりますけれども、これをどうするのか。こういった条件というものを大いに議論をして、明確にルールを定めていただきたい。これは国民全体が望んでいることではないかというふうに思います。  三番目のポイントは、地方消費税の創設に関してでございますが、消費税額の二五%を地方消費税とするということで、今回四%ということになりますと、一%が地方消費税に回るということでございますが、まあ地方分権が重要であるということが言われております。その真意は、責任のある地方自治を実現することだというふうに私は考えておりますけれども、地方自治体が独自の裁量で安定した税源を確保するということはそれなりに望ましいのではないか。  ただ、地方分権、責任ある地方自治というものを支える税制あり方として、本来これが長期的な意味でベストかどうかというと、私は個人的には、地方自治体公共サービスの質を反映するような付加価値に基づいた税といいますか、含めて、事業税をもっと検討する必要があろうかと思いますし、固定資産税あり方住民税とのバランス、こういったものを総合的に将来は大いに検討する余地があるのではないかというふうに思います。  ただ、今次の税制改革は、今申し上げたような三点ほどの理由でそれなり評価をできる、重要な一歩ではないかというふうに思います。  さて、第二番目の大きな話題に入りたいと思いますが、本質的な課題として、一体この税制改革に求められているものは何なのかということでございます。それは一言で言えば、高齢化が進み、産業空洞化懸念されるようなこういう経済社会状況の中で、いかに活力がある社会をつくるか、そして安心して暮らせる社会をつくるかということであろうかと思います。  この点に関して、本質的な問題として二点ほど指摘をしておきたいと思います。  第一点は、負担の公平公正ということでございます。  社会的な費用高齢化に伴って非常にふえていくということは避けられません。それに応じて人々がより多くの負担をしていかなくてはならない、これはもう自明なことでございますが、その中でなお活力を維持していくためにはどうするかということで、一番重要なことは、負担が公平であり公正であるということであろうかと思います。  その意味で、今回の税制改革の中で、中堅所得層負担が過度に高いのではないかという懸念が抱かれておって、そのことに関して、限界税率急上昇を抑制する手段がとられたということも一つでございますが、より大きな問題としては、世代間の不公平の問題、それから水平的な不公平、自営業者給与所得者の間の不公平の問題といったような問題にどう取り組むかということでございます。  これまでのような所得税中心税制でございますと、この矛盾と不公平は拡大する一方であったというふうに思います。そこで、消費税のような税の比重を高めていくということは、この矛盾を解決する、あるいは解決できないまでも緩和するという方向で大いに進めていく必要があることではないかというふうに思っております。  さらに言うならば、資産所得勤労所得の不公平ということも将来考えていかなくてはならない。たまたまそこに土地を持っていたから、あるいは親から遺産相続を受けたからというような所得で朝からゴルフをしても大丈夫というような人々と、額に汗して働く人々との間の格差が税制上あるというようなことがあると、これは将来の日本社会活力として大変な問題でございます。この問題は、土地税制相続税、これらを含めた資産税制の問題だと思っておりますが、本日の課題ではないと思いますので、しかしながら将来これは非常に大きな課題にならざるを得ないというふうに思います。  最後に申し上げたいのは、安心して暮らせる社会をどう築くかということに関して、社会保障の問題でございます。  今回の税制改革につきましては、緊急性の高い老人介護対策少子化対策として〇・五兆ほど計上されているわけでございますけれども、先生方よく御存じのように、本年三月に発表されました厚生省福祉ビジョン、これはこういった問題に関しての公的な非常に数少ない数量的な手がかり一つということが言えようかと思います。これは、今の社会保障体制をいかに改善していくかということについて幾つかのケースを挙げているわけでございますが、その中でよく使われておりますのはケースの1というものでございます。  これについては三つのポイントがございまして、一つは、先般成立いたしました年金改革法の中に含まれておりますように、これまで名目所得スライドしていた年金スライドネット所得スライドさせるという制度合理化、これは大変重要な合理化でございます。それから医療効率化。それから福祉については、これまで以上に介護対策少子化対策を充実させる、こういう方向で組まれたケースでございます。  この方向性は大変よろしいんでございますけれども、税制議論でさんざん問題になりましたのは、二〇〇〇年といったあたりターゲットにいたしますと、こういうことを実現していくだけでも、公費負担増加分が現状の数字で評価いたしまして五・五兆ぐらいの負担増になる、これをどうするのかということでございます。  この点が税制改革との関係で非常に議論されたわけでございますが、このビジョンそのものはむしろ二〇〇〇年よりもターゲットを二〇二五年あたりに、高齢化のピークに置いておりまして、そのときの社会保障給付費国民所得比は、現在が一六%ぐらいであるとしますと二八%にもなるという大変な問題を提起していたわけでございます。  こういった問題をどのように、負担をどのように賄っていくのかということが非常に大きな問題でございまして、少し落ちついて考えるとわかるんですが、これはとても消費税の増額で賄えるような問題ではないのではないかと思います。  一橋大学野口悠紀雄教授が、消費税で賄うなら二けたの消費税にしなければならない、こういうことを言っておられますが、単純に考えるとそういうことになります。したがって、野口先生のような方は、土地資産を活用したいわばリバースモーゲージといいますか、武蔵野市なんかで行われている方法もその一つだと思いますが、そういったことをやってはどうかというくらいの提言をしているわけでございます。  そういったことを考えますと、本当にこの社会保障で安心して暮らせる社会制度的に構築するとなるとどうしたらいいのかという問題が、税制との絡みではまだ、私は大変評価できる一歩だと申し上げましたが、もっと実は国民の関心からすれば議論を詰めていただきたい、こういう感じがいたします。  年金について言いますと、年金積立方式で、保険ではございますけれども、事実上大部分が次の世代賦課をする賦課方式になっているのは万人承知しているところでございます。とすれば、これは事実上の税金でございまして、請求権があるとはいっても、基礎年金部分についてはそれは請求権があるでしょうけれども、報酬比例部分についてまで、請求権がもちろんあるんでしょうけれども、将来の世代との関連でそれが納得させられるものなのか、将来世代が十分にそれを負担しましょうと言ってくれるものなのか、もう一つ明らかでないところが残るんではないかと思います。  したがって、そんなことも考えますと、少なくとも基礎年金部分についてはシビルミニマムでございますから、事実上の税金として負担することはこれは動かしがたいわけですが、報酬比例部分のようなものについてはもっと自助努力があってもいいのかな、私的年金というようなことももっとあってもいいのかなというふうに思います。それこそ土地資産流動化というようなことまでも含めて考えなくてはならないのではないかとすら思います。  また、医療につきましては、老人医療費が非常に高額になるということは周知のことでございますが、これについてももっともっと創造的な改革余地はないのかなというふうに思います。  最後に、福祉でございますが、福祉の最大の問題点は、これが税金で賄われていることでございまして、公的福祉が。したがって、措置主義ということになります。そうしますと、どうしてもセーフティーネットが優先する。そうしますと、これはこれで重要なことなんですが、一般の普通の所得を持っている人たちアクセスが、特に都会地では公的福祉に対するアクセスが極めて限られてくるという現実がございます。  したがって、これをどうするのか。これをすべて公的な施設の拡充で賄おうとすれば、野口先生が言うように二けたということになってきますでしょうし、介護保険ということも本格的に考えなくてはならないかもしれない。しかし、とにかく民間活力を導入するということが重要だろうと思います。そして、特にマンパワーをどう確保するのか、どういうふうな制度整備をしていくのかということが大きな問題でございます。  このように考えますと、厚生省ビジョンは非常に重要な手がかりではございますが、唯一の考え方ではないというふうに思います。したがって、公的負担を重視して、そこに軸足を置いた福祉を展開するのか、あるいは自助努力をもっと重視した形で軸足を展開するのか、あるいはもっとこれまでとは違った社会的な仕組みというようなことを考えるのかといったような問題をぜひ先生方に徹底的に議論をしていただいて、その中で根本理念の違いも浮き上がらせていただきたい、そういう中で国民に選択肢を与えていただきたい、このように思います。  今回の税制改革は、私は、繰り返して申し上げますが、大変難しい状況の中で大変重要な第一歩であったというふうに評価させていただきますが、しかし、非常に大きな問題は将来に幾つも残しておかれたという感じがいたします。そういう意味で、皮肉ですけれども、そういう意味でも重要な一歩であるというふうに思います。大いに頑張っていただきたいと思います。  どうもありがとうございました。(拍手)
  4. 高鳥修

    高鳥委員長 どうもありがとうございました。  次に、高山公述人お願いいたします。
  5. 高山憲之

    高山公述人 高山でございます。  本日は、税制改革案につきまして意見を申し述べる機会に恵まれましたことを大変光栄に存じます。  今回の税制改革は、所得減税恒久化を実現させる一方、消費税の定着に向けて第一歩を踏み出した点におきましてそれなり評価に値する内容を有しております。取りまとめに当たった関係者皆様方の労を歩といたしたく存じます。ただし、コメントすべき点も少なくございません。  以下、四つのポイントに絞って小生の所見を申し述べます。  第一点目。税負担社会保険料負担とワンセットで考える必要がございます。  社会保険料は、強制徴収の対象となっており、税金と基本的に違いがございません。特に、年金保険料は拠出と給付関係が一対一に対応しておらず、実質的にはそのときどきの高齢者生活をサポートするための主要な財源として機能しております。民間保険の掛金とは明らかに性格が異なっております。負担する者にとって年金保険料引き上げ増税と実質的に変わりがございません。今回、年金保険料をこの十一月分から引き上げることになりました。その引き上げに当たって税制改革との整合性を問題にする動きが国会内において全くなかったことはまことに遺憾でございます。  社会保険料をなぜ問題とするかと申し上げますと、社会保険料の方が消費税よりもはるかに逆進的であり、かつ経済成長阻害度が大きいからでございます。また、今回の年金保険料引き上げにより、民間部門から政府部門へ平年度ベースで三兆円台の資金が移転いたします。恒久減税分の三兆五千億円はこの年金保険料引き上げによってほとんど帳消しになってしまいます。今は景気回復を一層力強いものにすることが最も重要な経済政策のはずでございます。年金保険料引き上げを考慮いたしますと、恒久減税分規模に物足りなさを覚えざるを得ません。  さらに、税負担だけでなく、社会保険料も考慮する一方、年金給付教育サービス医療給付等政府移転を含む再分配後所得を調べてみますと、最近では三十代が最も割を食う形になっております。厳しい生活を強いられているのは年齢別に見ると三十歳代でございます。出生率が低下し続け、早晩技術革新の担い手である若手の労働力が急激に減り始めると予想されている現在、中堅所得層だけでなく出産や子育てで苦労している者に対しても政策的に特別の配慮をするように切にお願い申し上げる次第でございます。  第二点目。消費税率五%の是非についてでございます。  日本消費税には今のところ後ろめたさが何となくつきまとっております。いわば日陰者のような扱いになっており、正当な価値が認められておりません。しかし、消費税にはプラスの評価に値する点が幾つかございます。経済成長阻害度所得課税社会保険料よりも小さいこと、ライフステージ別負担が平準化し世代間負担が公平になること、税収の安定が期待できること等でございます。むしろ今後は消費税税制の主要な柱の一つとして扱っていく必要がございます。  特に高齢化の進行に伴って発生する公的負担増につきましては、主たる財源消費税に求めざるを得ません。今国会で成立いたしました年金改正法ではいわゆるネットスライド制が導入され、事実上費用負担原則が変わりました。高齢化に伴って発生する公的負担増高齢者も現役と並んでひとしく引き受けていく、これが新しい負担原則でございます。日本共産党を除く全政党がこの新しい原則への切りかえを一致して支持なさいましたことは、まさに画期的でございます。税制におきましてもこの新原則をぜひとも御参照なさっていただきたく、切にお願いを申し上げる次第でございます。  今回、消費税引き上げ幅は二%にとどめ、税率を五%にすることが提案されております。しかし、これでは所得課税偏重システムが依然として残ることになります。中堅所得層減税も極めて不十分なものにならざるを得ません。年金保険料引き上げ恒久減税分がほぼ相殺されてしまうことも先ほど申し上げたとおりでございます。恒久減税分を拡大することをさらに検討なさっていただけないでしょうか。  なお、五%の消費税ではこれから必要となる福祉財源を賄うことができません。将来の福祉ビジョンを早急に策定する一方、国際貢献等をも考慮に入れた新しい財政支出計画財政ビジョンに基づいて消費税率見直しを進めていただきたく存じます。  第三点。増税をする際には、あわせて財政スリム化をさらに徹底して進めていただきたく存じます。  申し上げるまでもなく、増税に納得し、それを受け入れるためには二つ条件が必要でございます。一つは、財政支出が適正であること、もう一つは、負担が公平であることでございます。先般の消費税導入に際しましては財政支出見直しか大規模に進められました。旧三公社の民営化を初めとする土光さんの臨調・行革路線国民の広範な支持があり、行財政改革それなりの成果があったことは皆様御案内のとおりでございます。消費税率引き上げに際しましても、財政スリム化財政支出における優先順位の変更を大胆に進めていただきたく存じます。これは国民すべての切なる願いであると存じます。  ところが、最近伝わってまいります話は、部分利益代弁者財政支出をふやすものばかりでございます。財政支出スリムにする具体的な話はほとんど耳にいたしません。部分利益代弁者ばかりが目立つ今日、社会全体の利益という観点から部分利益相互調整政治家皆様に御期待申し上げることは無意味なことなのでしょうか。部分利益の代弁ばかりに熱中していますと財政支出合理化は一向に進まないことになります。結果的に国民は公的な高負担を求められる一方、経済は停滞を余儀なくされます。やがて子供や孫の世代は親の世代より豊かになれなくなる、そういうおそれが強まってまいります。  現に、高福祉の先進国であるスウェーデンでは、経済が三年連続でマイナス成長となり、財政は事実上破綻いたしました。この七月には、スウェーデン最大の生命保険会社であるスカンディアが国の発行する国債の引き受けを拒否するという悲しむべき事態にまで至ってしまいました。  現在の政治システムでは、未来世代の利害が正しく反映されておりません。自分の子供や孫の世代負担にぜひとも思いをはせていただき、財政支出スリム化に積極的に取り組んでいただきたく存じます。  例えば、個別の財政支出を拡大なさる場合、原則として他の具体的な支出項目をどれだけスリムにするかということとワンセットにして御提案なさるという方法もございます。それを政治家皆様の新しい行動原則としてお考えいただけないでしょうか。過去において意味のあった財政支出であっても、時代の流れの中でその存在意義を低下させたり喪失させたりしているものが少なくございません。財政支出の部分的スクラップ化は財政合理化のために避けて通れません。それは政治家皆様の重要な責務の一つだと存じます。皆様方の間で財政支出合理化競争を御展開なさっていただけないでしょうか。  申し上げるまでもなく、財政支出の裏側には財政負担が必ずついて回ります。財政支出を拡大する際には、その財源増税で賄うのか、経費の節減で賄うのかを同時に御議論なさっていただきたい。財政支出の拡大を痛みなしで約束することはもうやめていただきたいと存じます。  第四点目。公的負担の公平化をさらに進めていただきたく存じます。  まず、資産課税の強化でございます。  相続税につきましては、税負担の軽減に向けた大合唱ばかりが聞こえてまいりますが、相続税減税いたしますと、減税分は所得課税消費税増税して穴埋めせざるを得ません。相続税減税することは、所得税消費税増税することと結局同じです。現行の所得課税偏重システムを改めるためには相続税増税することが不可欠です。また、地方住民税負担を軽減するためには固定資産税を強化する必要がございます。さらに、資産課税の強化に当たっては、納税者番号を導入し、資産を適切に把握する必要がございます。  次に、所得課税についても見直すべき点が少なくございません。特に公的年金等控除の制度は問題が大きいと存じます。  高齢者所得年金だけに限られているわけではございません。それにもかかわらず公的年金給付だけを特別に取り上げ、課税上優遇いたしますと不公平が生じることになります。年金受給者の間では結果的に高額年金の受給者が税負担を軽減することができることになります。夫婦で四百五十万円の年金を毎年受給していても所得税負担しないという例が現にございます。所得が四百五十万円であっても年金給付が七十万円で残りが年金以外の所得であるケースでは、当然のことながら所得税負担することになります。一方、若い夫婦の場合、賃金収入が二百五十万円もあれば所得税負担することになるはずです。  世代世代の助け合いとおっしゃいながら、年金受給者を税制上ここまで優遇する必要があるでしょうか。老後生活に対する特別の公的支援に当たっては、一般的な人的控除や支出控除で対応し、公的年金等控除は廃止を含め、御検討お願い申し上げる次第でございます。  次に、消費税の構造改革についても着手なさっていただきたく存じます。  消費税税率引き上げる際には、現行の消費税にまつわる不公平感を払拭しておくことがどうしても必要でございます。今回の改革において限界控除制度を廃止するなど幾つかの点で前進が図られましたが、見直しについての御努力を惜しまずにさらに続けていただきたく存じます。  特に、課税業者証明を最寄りの税務署で発行し店頭表示を義務づけること、業者番号つきのインボイスを導入すること、免税点を引き下げること、簡易課税制度をさらに見直すこと、住宅課税合理化を進めること等につき御検討お願い申し上げる次第です。  中長期的には、消費税率を二けた台に引き上げざるを得ないと存じます。社会保険料を過度に引き上げ、企業いじめをしたり現役のサラリーマンいじめをしたりすると、一部のヨーロッパ諸国の二の舞になります。現にフランスやスウェーデンでは、社会保険料引き上げではなく、その引き下げが最も重要な政策課題一つとなっております。税制改革におきましても、社会保険料問題をあわせて御議論いただきたい、この点を重ねてお願い申し上げます。  以上でございます。御清聴ありがとうございました。(拍手)
  6. 高鳥修

    高鳥委員長 ありがとうございました。  次に、栗田公述人お願いいたします。
  7. 栗田幸雄

    栗田公述人 福井県知事栗田でございます。  諸先生方におかれましては、常日ごろから地方税財政に深い御理解を賜っておりまして、心から感謝を申し上げる次第でございます。また、本日はこのような重要な場で発言をさせていただく機会を与えていただきまして、ありがたく存じているところでございます。  さて、昨年来継続されてまいりました税制改革の論議が結実いたしまして、ここに成案が得られ、法案国会に提出されたわけでございまして、まことに喜ばしいことでございます。  今回の税制改革は、二十一世紀の高齢化社会の到来を控えまして、所得、消費、資産等の間でバランスのとれた税体系というものを構築することによりまして、高齢化社会を支える費用というものを社会全体で負担し合うようにする、そういう仕組みをつくり上げていくことを主眼として行われたものと理解いたしております。  消費税につきましては、これまで各方面から指摘されておりましたいわゆる益税問題につきまして、制度見直しか行われ、例えば簡易課税制度の適用上限を、現行売上高四億円から売上高二億円に引き下げるといったようなことがされているなど、国民にとりましてより公正な税制として受けとめられるのではないか、このように考えております。  他方、今回の税制改革で特筆すべきことは、地方税源の充実にも目が向けられたという点でございます。従来、ややもいたしますと、毎年の税制改革の中で、地方税は国税の陰に隠れていたうらみがあったわけでございますが、高齢化社会の到来はすなわち地域社会の役割の増大であるということでございまして、その意味するところは、地方の住民にとりまして最も身近な地方公共団体が、これまで以上に重要な役割を担うことになるということでございます。こうした中で、時代の要請に沿うよう、今回、消費課税見直しの中で地方消費税の創設が提案されましたことは、これからの地方公共団体の役割の増加に見合うよう、その税源を充実するという政治の強い意思のあらわれであり、大きな意義があるものと考えております。  地方消費税賦課徴収につきましては、当分の間税務署に委託することとされている点につきましては、さまざまな意見があるところでございます。本来、地方税につきましては、地方公共団体みずからが額に汗するというところに大きな意義があると考えられるところでございますが、私どもといたしましては、従来譲与税であったものが新税に組みかえられるという経緯の中にありまして、納税者の事務負担等を勘案いたしますと、地方消費税の導入に当たりましては、当分の間の徴収委託ということを行うのも一つの選択ではなかろうか、このように考えているところでございます。ただ、将来的には地方税本来の姿に戻していただきたいと考えております。  ところで、地方公共団体にとりましては、教育、福祉生活基盤の整備など、その遂行する仕事の性格上、より安定的な税収構造が望まれております。特に私ども都道府県にとりましては、法人関係税に偏った税収構造になっているわけでございまして、かねてからその不安定性が指摘されていたところでございます。地方消費税の導入は、その意味でも、都道府県の税収の安定化に寄与するものといたしましても意味があるもの、このように考えているところでございます。  いずれにいたしましても、私どもは、今回の税制改革は、昨年六月に衆参両院でそれぞれ行われました全会一致による分権決議の趣旨を直ちに具体化していただいたものである、このように感謝をいたしているところでございます。また、これは地方税制にとりまして本格的な間接税の導入を実現するものでございまして、シャウプ税制以来の大きな改革ではないかと考えております。そして、当然のことながら、今回の税制改革が最終目的ではなくて、今後の地方分権の流れに沿った地方税制見直し、地方税源の一層の充実に向けての論議の始まりになるであろうと期待をいたしているところでございます。  地方分権につきましては、外交、防衛、司法といったようなことは国で行われ、またそれ以外のことは地方公共団体に任せていただく、そういう意味での幅広い権限の移譲を我々期待しているところでございまして、その権限の移譲とあわせまして、地方財源の充実というものを期待いたしているところでございまして、今後、地方財源の一層の充実に向けて論議が高められることを期待しているわけでございます。  一方、個人住民税でございますが、はっきり申し上げまして、これだけ地方財政が苦しい中での減税は厳しいものがございます。しかし、日本経済の実情を考えますと、当面の景気に配慮する観点から、個人住民税におきましても所得税と同様の措置を講ずることはやむを得ないものと考えているところでございます。ただし、減税先行に伴う地方債発行等につきましては、その負担につきまして、後年度適切に措置していただくことが何としても必要でございまして、今回の地方財政措置は、その点よく御配慮いただいたものと受けとめているところでございます。  今回の税制改革につきましては、国民の各所得階層ごとの損得が云々されているわけでございます。この点につきましては、税制改革の影響を受ける個々の地方公共団体にとってみましても同じことでございます。しかし、およそ税制改革議論にありましては、二十一世紀に向けての安定した税制を構築していく上で、あるべき税制とは何かという観点から、単なる目先の損得にとらわれることなく考えていくことが必要であると思われます。こうした観点からの税制改革論議が行われることを期待しているところでございます。  ところで、税制改革関連いたしまして、ぜひとも行政改革を推し進めなければならない、このように考えているところでございまして、このことは国・地方を通じて必要なことでございまして、行政改革が進められるということがこの税制改革についての国民の理解を深めることになるわけでございまして、そしてまた、行政改革の実施の状況国民の前に明らかにし、行政改革についての国民の理解を得ることが大事ではなかろうか、このように考えているところでございます。  なお、最後になりましたが、特別地方消費税につきまして、その存廃の議論が出ております。  この税につきましては、平成元年度の抜本改革におきまして、課税対象とされている消費行為と個別の地方公共団体の行政サービスとの間に緊密な対応関係があること等から、地方の独自財源として存続し、税負担の調整を行った上で消費税と併課することとされたものでございまして、地方公共団体にとりまして重要な税収となっているわけであります。また、特に観光県さらには温泉所在市町村にとりましては大きな意味を持っているものでございます。  こうした点を踏まえますと、何らの代替税源の検討なしに単に廃止という議論が行われるようなことにつきましては、我々といたしましても慎重な立場をとらざるを得ないところでございまして、今後地方消費税の実施時までに幅広い視点からよろしく御検討をいただきますようにお願いを申し上げる次第でございます。  今回の税制改正につきまして、法案審議の上、速やかに御決議を賜りまして、安定した地方税制の構築にも資していただきますように心から期待をいたしまして、私の発言とさせていただきます。  ありがとうございました。(拍手)
  8. 高鳥修

    高鳥委員長 どうもありがとうございました。  次に、丸尾公述人お願いいたします。
  9. 丸尾直美

    丸尾公述人 資料をお配りしてあるはずですけれども……。
  10. 高鳥修

    高鳥委員長 お配りしてあります。
  11. 丸尾直美

    丸尾公述人 慶応大学の丸尾です。こういう機会をいただきまして、大変光栄に思っております。  資料にありますように、私の考えは、今回の税制改革全般についての評価福祉ビジョン実現との関係の問題、それから国債発行世代間分配に関する問題、三点に関しまして意見を述べさせていただきたいと思います。  まず第一に、今回の税制改革は、欧米諸国において、アメリカのレーガン政権下、イギリスのサッチャー政権下、スウェーデンの保守中道政権下等々で行われてきました税制改革方向に沿うものであり、所得税の簡素化と累進度の緩和、タックスベースの拡大、勤労者資産形成への税制上の助成等の税制改革が欧米諸国では行われてきましたけれども、その背景には、市場機構の機能の回復、政府の市場への規制の緩和、勤労意欲の回復、税制の国際的コーディネーションなどへの要請がありました。我が国の場合にも、同様な要請を持っている以上、この方向への改革ということは必要であり、賛成であります。  このほか、日本の場合には、所得税消費税、資産税の構成比の不均衡を是正すること、世界に例を見ない今後の人口高齢化に対処するための財源の確保というねらいもあるものと理解されます。  以上のような国際的動向を考慮し、また図表一にありますように、我が国の場合、所得税はOECD主要国中最も高く、最も高くというのは構成比ですね、税に対する比重が最も高く、税に対する消費税の構成比が最も低いといったことを考えますと、消費税の構成比を所得税に対して高くする今回の税制改革は妥当な方向への改革であると思います。  次に、次のページを見ていただきますと、しかし、所得と消費の税のバランスの是正という点はこれでいいかと思いますが、資産との関係のバランスがほとんど考慮されなかったという点が遺憾であります。  資産は、確かに税全体の中での構成比は特に低いわけではございませんし、低下しているというわけではございませんが、図表二にありますように、GDPを一としてそれに対する比で見ますと、資産の方は顕著に上昇しています。それに対して消費支出の方は、一九六〇年の五八%から九三年五七%とほとんど動いていないわけです。  そういう点を考えますと、資産のウエートというものがGDPに対して非常に高くなっているということですね。そういうことを考えますと、税の構成比が高まらなくていいのかという点につきまして若干問題があるということですね。バランスの公正とは、税の中での構成比が一定なのか、それとも税の対象となる対象物が非常に大きくなれば、むしろ構成比は変わってもいいんではないか、そういうことです。  しかし、かといって、現在は資産不況であり、逆資産効果と、そして企業におきましても資産の価値低下が不況の原因になっておりますから、こういうときにはむしろ資産に関しては減税が必要かもしれませんが、長期的には資産課税に関しましては、まさに私が言いましたような意味での均衡を回復するような税制上の改革が必要であるかと思います。  資産に対する税制上の不公正を是正するもう一つの対策は、資産に課税するというよりも、資産を持たない人に対して資産を助成するというやり方であります。レーガンの政権下でも、サッチャーの政権下でも、所得税の平準化をして累進度を下げた、その見返りとして、勤労者に対する資産形成を税制上助成しています。特にサッチャー政権はそうです。日本の場合は、そちらが欠けているという点において、欧米の流れに沿っているとはいえ、そういう肝心なところで欠如しておるということを感じます。  そのほか、若干の評価をしますと、企業、特に赤字企業と公益法人に対する課税上の不公正に関して是正政策がまたも見送られたのは遺憾であるということ。税制上の不公正として問題とされる消費税の益税の問題に関しては、具体的に対応策がとられたことは評価したいと思います。  年金課税に関しまして、今高山公述人年金に関しても税金を課してもいいんではないかということですが、私も方向としてはそれでいいと思います。  しかし、その場合には、今回の年金改正法改正されましたスライド基準に関しまして、三ページ目の式に書いてあるように、スライド基準を改めなければならない、つまり、賃金上昇率から賃金の可処分所得の変化率を引くだけではなくて、それに今度は年金の可処分所得の変化率を品さないと、その場合は年金改革法と整合しなくなります。今回の年金スライドがどういう方式でそこまで考慮して行われているかどうか知りませんが、年金税率が高くなる場合、社会保険料含めてですね、その点を考慮することが必要であるということを申し添えておきます。  それから、今回の税制改革は、短期的には所得税減税に伴うその財源を埋めるために景気回復を待って消費税率引き上げるということであります。そのための消費税率引き上げということが要請されているわけでありますが、しかし、所得税減税がどちらかといいますと、税金をある程度以上たくさん払っている方に有利になり、他方、消費税引き上げの方は、すべての人にかかりますし、低所得者の方が相対的に消費の比率が高いから、そういう意味で逆進的だということがよく言われます。  その点を相殺するという意味もありまして、福祉ビジョンがつくられ、相対的に低所得者や高齢者にとって有利な政策を行うというそういうセットになっているわけですね。それに加えまして、規制緩和と行政改革、こういった四つの政策が今回の政策ミックスであると私は理解しておるわけですが、その問題のセットとして行われる福祉ビジョンが、今回の消費税率引き上げで十分かどうかということに若干の疑問があるということであります。  当初七%の消費税率議論されていたようですが、それが五%になるという過程で、あるところの議論によりますと、その二%は行政改革と規制緩和とで公的支出を抑制することによって捻出するということで、それはまことに結構なことで、それができれば一番結構でございますが、どうもそれを具体的に納得させるような改革の見通しが見えていない。国の税調会長の加藤寛慶応大学名誉教授も指摘されておりますように、行政財政改革の効果というのは数年間でそんなに大きく出るものではない。そういうことを考えますと、結局消費税率引き上げ所得税減税の穴埋めをすることで終わり、福祉ビジョンの実現ということが結局ネグレクトされていくおそれがあるのではないか。  そうしますと、三点のセットで、所得税減税、消費税率引き上げ福祉ビジョンの実現という三点セットで納得を得ている今回の税制改革に対する大変な約束の違反になるのではないかと心配するわけです。今年度は何とか予算上の措置が新ゴールドプラン等についてついているようでございますが、この点について懸念があるということです。  恐らく財源福祉ビジョンの実現に足りなくなります。福祉ビジョンの中で中心的なものは老人介護ですけれども、恐らくこの点で消費税引き上げ分を回さないで済ます一つの方法は、介護保険化することであります。しかし、これを介護保険化してしまって、そこで公費が回らなければちょっとうそを言ったことになりますから、仮に介護保険化する場合には、少なくとも介護保険公費負担分を五〇%以上消費税引き上げ等によって捻出される財源から出すということをはっきりとさせていただきたいと思います。  それから、今回の所得税減税、それを埋めるための消費税引き上げは景気の回復を待ってから行うというのは、これはマクロ経済政策として当然のことであります。そのために国債発行が必要になるわけでございますが、国債発行は、人口高齢化等に伴う国民負担率の上昇等と相まって、後の世代に大きな負担を負わせるおそれがあります。そこで、将来の税の負担の上昇等々を考慮に入れて、現代世代と将来世代との分配上のバランスを十分に考慮しておく必要があると思います。  ただ、私の考えでは、五ページにありますように、国民負担率が、二十一世紀福祉ビジョンケースーⅡですと五〇%以上になる可能性が非常にあるということ、社会保障給付費の対国民所得比も二八%から三〇%を超す可能性があるということ、これは二〇二五年ですね。そういう点から計算していきますと、勤労世帯に対する税・社会保険料負担も現在の一六%程度から三〇%近くなる可能性があるわけです。  そういう場合に、果たして勤労世帯は税金社会保険料を払った以後も豊かになっていくだろうか、現在の世代と比べてどうであろうか、そういうことを示したのが五ページの図表です。  それによりますと、今のような場合ですと、大体年平均で実質賃金の上昇率と手取りの実質賃金の上昇率との差額は〇・五五一%になります。ですから、賃金が一・五%で実質上昇しましても、手取りは一%切るわけです。しかし、それでも上昇をし続ける。この計算には消費税率の上昇を考慮に入れておりませんので、ここでは少し多目に見て、消費税率が将来一五%になるという、今の考え方じゃ大変なことですけれども、そういうことを想定して計算も出しておりますけれども、それでも手取りは、実質賃金が一・五%ずつ平均上昇していけば手取りは〇・六二%上昇するという計算になります。このプリント、けさ仕上げてコピーしてきたものですから若干ミスプリがありますけれども、大体今言ったような計算になります。  そういったようなことをある程度頭に置かれまして、税制改革を行う場合には世代間の分配の公正というものを十分考慮する。私の言う公正は、例えば年金に関しまして、払った分と将来の給付の比率がすべての世代について同じにならなくてはならないというようなことではありません。動態的基準と私は呼んでいますけれども、要するに現世代に対して将来世代が実質所得の上で手取り。でも十分豊かになっていく、そして資産も生活の質も向上していくならば、それは決して世代間の不公正ということにはならないという考えですけれども。  少なくとも、そういう観点から見て、将来の世代を窮乏化させないように、将来の世代が着実に実質手取りの所得や資産をふやしていく、そういう展望を十分に明示した税制改革にしていただきたいというふうに思っております。  以上です。(拍手)
  12. 高鳥修

    高鳥委員長 ありがとうございました。  次に、中川公述人お願いいたします。
  13. 中川宏一

    中川公述人 連合の中川でございます。  まず、私どもにこのような機会を与えていただきましたことに厚くお礼を申し上げたいと思います。  お手元に私どもの意見要旨を配付させていただいています。十五分間という時間的制約がありますので十分お話ができないかなと懸念しておりますので、不十分な点は意見要旨を御参照いただきたいと思います。  私どもの基本的な考え方は次のようなものであったわけです。連合は減税を要求してきましたが、景気対策としての減税を二、三年先行させながら、景気動向も見ながら、本格的な税制改革、とりわけサラリーマンの重税構造に抜本的にメスを入れながら高齢化社会福祉負担あり方を含めて十分時間をかけて議論をし、国民的な合意を形成していくべきだ、そうした中で税制改革を実施すべきだというふうな考え方を我々は主張してまいりました。そのために、とりわけ、一体処理と言われ、あるいは財源消費税率アップのみに焦点を当てていく、こういうふうな考え方には基本的には納得できないというふうに考えてきたわけであります。  ただ、お断りをしておきますが、連合は、今日の状況のもとで福祉あり方その他を考えたときに、間接税に一定の比重を置くことに必ずしも反対ではありません。しかし、今国民税制に対していろいろな不満を持っている、不公平税制感じている多くの課題に結論を出すとか、あるいは方向性を明らかにするということがまず先ではないかという立場をとってまいりました。こういう観点から、連合として税制改革大綱や高齢化社会に向けての福祉負担あり方についても論議をしてまいりまして、一定の結論と組織内の合意形成を図っているところであります。そういう立場で旧連立時代にも、あるいは現在の与党政権にも、同じことを申し上げてきたわけであります。  以上の考え方、基本的な立場を申し上げまして、意見陳述の要旨を御参照いただきたいと思います。  その中に、年収別の税と保険料の負担割合の一覧表が出ております。これを見ておりますと、九四年度こそ負担は下がっていますが、九五年度から社会保険料なども上がって、九七年度からは間違いなくあらゆる年収でアップしていくわけであります。年収、年四%増を前提にしているわけですが、これに見合う可処分所得増加が図られなければならないということであります。あるいは社会福祉など国民が払った負担に見合う社会的な還元、住みよい、暮らしよい社会が実現し、社会的公正と実質生活が向上しているという実感が国民に持てることが重要になってきていると思います。労働組合としての連合の役割もまた重要であるということを痛感する次第です。  さて、今回の税制改革について、総括的評価について申し上げたいと思います。  旧連立時代から通じて、確かに幾つかの前進面があります。減税の継続、それから消費税の益税の是正、さらには地方消費税の創設、税率区分を広げ大多数のサラリーマンが税率一〇%から二○%でおさまるということ、旧連立ては最高税率引き下げが検討されていましたけれども、据え置かれたということであります。また、寝たきり老人などへの配慮が見られるなど、村山政権の「人にやさしい政治」ということが若干は見られるというふうに我々も感じております。  しかし、行財政改革福祉ビジョンの具体化が不明確になっていること、国民が一番感じている不公平税制などが先送りとなり、減税財源の担保として消費税五%アップなどが明らかになった、財源対策のみが先行しているという意味では、国民の期待には十分沿い得ていないと考えているわけであります。  そういう意味では、今回の税制改革の目的は、景気対策あるいは国際公約を最優先し、あるいは中堅所得者層、ここの点で政府は中堅を年収一千万円ぐらいを考えておられるようですが、我々の組合員、男子平均では五、六百万ぐらいです。そういう意味ではちょっと中堅所得者層というのについては若干の我々の感覚と違いがありますが、税負担の軽減といったものにしかなっていないと感じております。  また、二階建て減税方式について申し上げてみたいと思います。  先ほども申し上げましたように、減税財源の明記、担保という制約条件を前提にすれば、この二階建て方式も一つの選択肢であると思います。ただ、後述しますように、制度改正の中身を含めてこの問題について連合として納得しているわけではありません。特にこの制度改正の中身では、各種人的控除、配偶者特別控除、特定扶養控除の一律引き上げは女性の社会進出や税の公平、簡素化に逆行しているのではないかというふうに考えております。そういう意味で、基本的には、基礎控除、給与所得控除などを中心に課税最低限の引き上げを図る必要があるというふうに考えております。  四番目の消費税率の五%の引き上げについてでございますが、ここにありますように、また申し上げましたように、五%明記は若干急ぎ過ぎではないかというふうに考えているわけであります。当然、減税財源は、景気回復による税収増や、あるいはこれから抜本的な税制改正をやるために資産課税の適正化や総合課税化、あるいは少し前進しましたが消費税の益税是正、行政改革による歳出削減などで賄うべきであるというふうに考えているわけであります。そういう意味で、今後の検討を期待するところ大でございます。  五番目の地方消費税の創設についてでありますが、これは連合も強力に要求してきたことであり、一歩前進であるというふうに考えております。ただ、地域福祉の担い手である市町村の福祉財源への充当の明確化を連合は求めてまいりましたが、今回二分の一ということになりました。一歩前進として評価をいたしますが、さらに充実が必要であると考えております。  六番目の納税者番号制度の問題であります。これは連合がかねがねから要求してまいりました。今回、与党の税制改革大綱の中では、二十一世紀初頭をめどに導入に向け積極的な取り組みを行う、こういうふうに明記されております。従来より一歩踏み出した表現になっていることを評価をいたします。また、村山首相も導入に積極的な答弁を行っておられますので、政府としても、総合課税に向けて資産課税の強化など環境整備を促進していただきたい。しかも、二十一世紀初頭ということではなく、もっと早目に具体的な検討を進めていただきたいというふうに思います。  それから次に、我々が税制改革を、あるいはこの消費税アップの前提条件として行革や福祉ビジョン、ここにありますように、大変お世話になりましたが、基礎年金の国庫負担問題、こういった問題について明確にしていくべきであるというふうに考えております。  行財政改革の推進による歳出の抑制、これについては、これまでも強調しておりましたし、政府は行政改革推進方針を決定されていますが、その具体化を一層進めていただきたいというふうに思います。特に公共事業では、首都圏では七割が土地代だというふうに言われるように高い地価の引き下げ、この点では、地価税は定着強化という考え方を持っております。さらに公共事業費は、日米比較では三割ぐらい高い、こういうふうに言われています。こういったことについてもっとメスを入れていただきたい、こういうふうに思っております。  それから、福祉ビジョンの問題です。三月に出されました厚生省福祉ビジョンはいまだ一懇談会の報告であります。政府の正式なビジョンになっておりません。政府としての福祉ビジョンの明示と財政計画の策定が必要であります。その点で、早急にビジョンの策定と、それに伴う財源措置の提起を求めてまいりたいと思います。  それから、基礎年金の国庫負担引き上げです。今後、年金保険料のアップに伴ってサラリーマンの保険料の負担は非常に多くなります。そういう意味で、公的年金制度の信頼と安定化に向けて、基礎年金の国庫負担引き上げは重要な課題だと認識しております。連合は次期再計算までに二分の一に向けて段階的に引き上げることを要求しておりましたけれども、この点についての具体化を進めていただきたいというふうに思います。今回の年金改革法案の修正では国庫負担の時期や幅が不明確になっておりますが、ぜひともこの点について御尽力をいただきたいというふうに思っております。  最後に、これまで連合がこの税制改革について基本的な考え方をいろいろ出しておりました。とりわけ、賃金が上がれば税金がそれだけ上がる、それ以上に上がるというふうな仕組みについての是正を特に強調してまいりました。これが物価調整減税制度ということであります。そういう意味で、この自然増税を緩和する物価調整制度の導入をぜひともお願いをしたいというふうに思っています。  また、不公平税制の問題については、具体的な問題が七年度の年度改正に先送りをされております。しかし、消費税率アップを国民に求める以上、国民の税に対する信頼を得るためには徹底した是正が必要であります。昨年は交際費や公益法人への課税の適正化、使途不明金への課税強化、租税特別措置合理化などが実施されました。今年度もとりわけこの点について強力な是正をしていただきたいと思います。  この点について、地価税の緩和の動きがあるやに聞いておりますが、この点については、私どもは、バブルの再燃をしないように、より定着、充実していく方向へ持っていくべきだと考えております。また、租税特別措置法についても思い切って洗い直すことについて、我々としてもぜひとも進めていただきたいというふうに思っております。  最後になりましたが、いずれにしても、納税者という表現になっておりますが、国民税金を払うんだ、タックスペイヤーというふうな意味では、より国民が進んで税金が払えるような環境整備をぜひともお願いをしたいと思います。そういう意味で、申告納税環境の整備と執行体制の整備についてより一層の推進をお願いしたいと思います。  どうもありがとうございました。(拍手)
  14. 高鳥修

    高鳥委員長 ありがとうございました。  次に、犬丸公述人お願いいたします。
  15. 犬丸令門

    犬丸公述人 社団法人日本自動車連盟の犬丸でございます。税制改革特別委員会において発言の機会をいただきまして、厚く御礼申し上げます。  今回の税制改革案関連いたしまして、個別論で恐縮でございますが、主として自動車に関する税制について要望申し上げます。  我が国の四輪の自動車の保有台数は、現在約六千三百万台であり、我が国の経済社会において極めて重要な役割、機能を持っております。しかしながら、我が国の自動車の増加が他に例がないほど急速であったことも原因いたしまして、自動車に関する税制は不合理な面を数多く持っております。自動車関連税金は九種類の多きを数えるとともに、他に例のないほど複雑であり、制度に内在する不合理や不公平が納税者にはわかりにくい仕組みとなっております。  第二に、特に自家用乗用車について見ると、その保有台数は四千百万台と全世帯の九〇%に普及して、庶民の生活の足ともなっているにもかかわらず、税制は自家用車はぜいたく品であるかのごとく、結果として高額の負担を強いられる構造になっております。  第三に、我が国の道路は近年かなりの改善を見ておりますが、道路容量及び質が経済社会活動に対してまだまだ不十分であり、今後高齢化社会の到来を考えるとき、今のうちに立ちおくれを取り戻すため整備を急ぐ必要があります。  以上の諸点につき、以下具体的に述べさせていただきます。  自動車の税金は、まず取得段階において消費税及び自動車取得税の二種類があり、購入後の保有段階では走行キロに関係なく自動車税、軽自動車税及び重量税の三種類、そして使用段階では揮発油税、地方道路税、軽油引取税及び石油ガス税の四種類で、合計九種類の多きを数えており、極めて複雑であるばかりでなく、同一、類似の目的による課税、乗用、貨物、排気量、重量、燃料別等による分類が複雑であり、納税者には極めて難解であります。  したがって、これらを購入段階、保有段階、使用段階で統合、簡素化する必要があります。特に今回の消費税についての税率アップに際しましては、現在の取得段階での自動車取得税と消費税の二重課税という不合理で高負担を解消するため、自動車取得税を廃止して税制の明確化を行っていただきたいと考えます。  また、ガソリンにつきましては、一リッターについて五十三・八円のガソリン税及び地方道路税がかかっておりますが、このガソリン税を含めた小売価格に対して消費税がかけられており、税金に税をかけるという不合理があります。ぜひこれを解消して、消費税はガソリン本体価格のみにかけるという形にしていただきたいと考えます。  次に、自動車諸税の不公平について申し上げます。  自動車の保有段階の税金として自動車税と自動車重量税がありますが、自動車税について見ると、排気量二千ccの自家用乗用車については年額三万九千五百円に対し、二トン積みの自家用トラックについては一万一千五百円となっており、乗用車はトラックの四倍近い税額であります。また、重量税については、車両重量一トン当たりの税額は自家用乗用で一万二千六百円、トラックで六千三百円であり、乗用車がトラックの倍額となっております。  自動車税及び重量税はいずれも道路の利用及び道路損傷に対する受益者負担と考えられるため、このような不公平は自家用乗用車に対する著しい差別、虐待であります。トラックの走行キロは乗用車の走行キロを大幅に上回るものであること、また我が国の道路は今後、維持管理、補修のコストが次第に増大していくことを考えるときに、これらの自動車保有税の不公平は早急に見直し、改善が必要であると考えます。  次に、自動車に使用される燃料課税の不公平について申し上げます。  ガソリンに対する課税としては、揮発油税と地方道路税があり、合計して一リッター当たり五十三・八円となっており、一万軽油に対しては軽油引取税があって、一リッター当たり三十二・一円で、この税額はガソリンの○・六倍となっております。これらの税金はいずれも道路整備を目的とする特定財源であるにもかかわらず、現行のような著しい税格差は産業優先の典型であり、ガソリン車にとっては大きな不公平であります。  欧米諸国ではガソリンと軽油の税率の格差がこれほど大きな例はなく、逆にアメリカのように軽油の税の方が高いという例もあります。  燃料税は自動車諸税の中で唯一走る距離に比例する公平な税であるはずでありますから、この基本となる燃料課税の不公平を改善することがぜひ必要であると考えます。  次に、道路整備の促進について申し上げます。  道路は国民生活及び社会経済活動のかぎを握り、国土発展のための重要な社会資本であります。しかし、その整備水準はまだまだ著しく立ちおくれており、交通渋滞は全国各地に蔓延して、莫大な経済損失を生じさせているばかりでなく、交通事故発生の要因ともなっています。また、我が国は今後急速に高齢化社会を迎えることでもあり、活力ある社会の発展のためには、今のうちに道路整備を急ぐことがぜひ必要であります。  ここで、国及び地方の道路投資額について見ると、平成五年度では国及び地方合計で約九兆五千五百億円であり、これは有料道路への出資金等を含んだものでございます。一方、自動車関係諸税の税収額は合計で同じく平成五年度で七兆六千七百億円であり、また日本道路公団等の高速道路、有料道路の料金収入の合計は二兆三百億円であります。すなわち、自動車使用者の税金または高速料金としての支払い額は合計九兆七千億円となり、道路投資額の九兆五千五百億円を上回ることになります。  このことは、現在の一般道及び高速道路に対するすべての投資額は、現在走っている自動車がすべてを負担していることになるわけで、一般財源の投入は全く受けていないことになります。今後の我が国の経済社会の発展のため、一般財源からも十分な資金を投入し、道路整備を推進していただきたいと考えるものであります。  以上で終わります。ありがとうございました。(拍手)
  16. 高鳥修

    高鳥委員長 ありがとうございました。  以上で御意見の開陳は終わりました。     ―――――――――――――
  17. 高鳥修

    高鳥委員長 これより公述人に対する質疑を行います。  最初に、塩谷立君。
  18. 塩谷立

    ○塩谷委員 自由民主党の塩谷立てございます。  ただいまは、六名の公述人皆様におかれましては、それぞれ大変貴重な示唆に富んだ、また細かい点にわたった要望等、御見解を御披露いただきましてまことにありがとうございました。短い時間でございますので、早速二、三の質問をさせていただきたいと思います。  今回の税制改正につきましては、厳しい不況の中で減税というものが旧連立内閣において決定され、それが先行されて、その減税に伴いまだこれからの高齢化社会活力ある社会をつくるためにどう基本的な税制改正を行ったらいいかという観点で、まずもって第一歩を踏み出したと思うわけでございます。  特に、今回景気対策に対しての減税の継続、あるいはその財源である一体処理、そして累進課税の緩和、さらには消費税率引き上げをもって直間比率の是正、そして地方消費税の導入ということで、いろいろと今回の税制改正については、理念がないとか、あるいはさまざまな批判があるわけでございますが、今申し上げたとおり、はっきりと今回目的に沿って税制改正をやった点においては、さらにこれから進めなければならない問題は本当に多岐にわたってあるわけですが、一応現時点で考えられる税制改正については、我々としては大変大きく評価をして、これをしっかりと国民に訴えるとともに、さらに大きな議論を巻き起こしていかなければならないのではないかなと思うわけでございます。  しかしながら、きょうそれぞれ御意見をいただきました。今回の所得税減税あるいは住民税減税、そして消費税のアップだけでは、将来予想される高齢化社会あるいは国際環境の変化、さらには経済的な大変な変革、そういうものにとても対応し切れないわけでございまして、これからそれをさらに進めていかなければならないわけであります。  例えば、消費、所得、資産の税のバランス、あるいはきょう特にお伺いして感じたのは、消費税という間接税の位置づけ、これが戦後日本税制の場合、所得税に大きく頼っていた、それが経済成長の発展段階では機能していたわけでありますが、オイルショックとかいろんな段階において抜本的な改革が今日までなされなかったことが、今回非常に大きな荷物を背負っていかなければならない、そういう状況だと思うわけでございます。  それに対して、間接税というものがやはりもうちょっと国民にも明確な一つの税の体系としての位置づけをしていかなければならない時代がいよいよ来たんだという実感を得ているわけでございます。特にこれから所得、消費等も含めて、また資産も含めて、まずはこのバランスを考えなければならない。今回、消費税のアップで消費の部分においては約五%ぐらい、大体二二%から二七%ぐらいにアップされる、所得の部分については五四%から五〇%ぐらいに下げられるといったバランス、資産においては大体二三、四%だというバランスがあるわけですが、まずここら辺のバランスの点についてお伺いしたいと思います。  島田先生にお伺いしたいと思いますが、島田先生、やはり消費税をかなり大幅アップということも言われておると思います。例えばサラリーマンに対しての所得税、ここら辺を全くなくして、消費税で、間接税で全部賄えばいいんではないかという割合極端な議論もされているように今まで聞いておりますが、その点、島田先生の方から御意見をお伺いしたいと思います。
  19. 島田晴雄

    島田公述人 ただいまの塩谷先生の御質問でございますが、私は、この税の体系につきましては、まさに塩谷先生御指摘のように、経済社会高齢化し、タックスベースの構造が変わる中で、できるだけ所得税という直接税にかわって消費税のような広く負担される間接税を広げていくということが重要だと思っております。  これは先ほども申し上げましたように、世代間の公平、先ほど高山先生も御指摘になりましたが、現役世代年金世代との将来の公平を確保するためにも、それから自営業者給与所得者の公平を確保するためにも重要な方向であろう、そういうふうに考えております。したがって、長期的には私はもっとこの間接税の比重を高める、そういう税体系が望ましいというふうに思っております。
  20. 塩谷立

    ○塩谷委員 ありがとうございます。  きょうのそれぞれの皆さん方からも、間接税の比率を高めなければならない。これはもちろん今後行政改革とか経済の動向とかによって、必ずしも増税ありきということで考えてはいけないわけですが、いずれにしても高齢化社会というもう現実の大変未曾有の状況が目に見えているわけでございまして、その点において税体系としてやはり間接税が重要な位置づけがされてくるんだと思うわけでございます。  しかしながら、これには、それでは何%ぐらいがいいかというような議論、これで今回もさまざまな議論がされているわけでございますが、この間接税、先ほどそれぞれの公述人から二けたという言葉も出てまいりました。この二けたということが、これから高齢化社会に向かって我々検討していかなければなりませんが、果たして消費税だけでそういう形で賄っていいのかどうなのか。  例えば目的税で国民福祉税というものも出てきたわけでございますが、その福祉に限らず、あるいは国際貢献税とかいろんな新しい税の名前が出てきております。それも含めて、当然間接税という考え方かもしれませんが、今後のあり方として今の消費税を幅を広げていくのか、あるいはこれにかわって何か新しい社会体系の中で賄うべき新しい税制といいますか、そういうものが考えられないのかどうかという点について高山先生にお伺いしたいと思います。よろしくお願いをします。
  21. 高山憲之

    高山公述人 先ほど申し上げましたが、成長率が高い時代、このときには確かに所得税を中心とする税制それなりのメリットがあったということでございますが、低成長に移行し、今後なかなか経済成長を持続していくことが容易でないそういう時代、しかもいずれ高齢者が三人に一人というような時代に突入していくわけですね、そのときに本当に所得課税偏重型でみんなが納得できるかということでございます。確かにその高齢者と現役の人たちの間の負担の公平の問題、これは極めて重要でありますが、あわせて、今後とも経済成長を阻害しないような財源は何かという議論皆様にもなさっていただきたいということです。  国民経済全体で、例えば税金社会保険料がもう四〇%近いわけですね、国民所得比率で。将来的には五〇%にもなってしまう。そのときに財源負担をどう選択するかによってパイのサイズ、経済のサイズがいずれにしても左右されるということです。これは、私は経済学者なんですが、経済学者の間ではこの問題は大変重大視しております。財源の中で何が成長阻害度が大きいのか小さいのかという問題です。所得に着目した課税は残念ながら成長阻害度が大変大きいというのが経済学者の共通の理解でございます。最も阻害度が小さいのは何か、それは消費支出に着目した税制であるということです。これは貯蓄や投資に課税しないからでございます。その点をあわせて考えていただきたい。  EUでは付加価値税の標準税率はとりあえず一五%というふうに設定されているようでございますが、日本もヨーロッパ以上に高齢化が進むということを考えますと、いずれ消費税率は二けた台を展望せざるを得ない時代になるのではないかということでございます。  以上でございます。
  22. 塩谷立

    ○塩谷委員 どうもありがとうございました。  今回の税制改正は、いわゆるシャウプ税制以来の改正ということで、大変な画期的なところもあるわけですが、特にこれから高齢化社会と同時に地方分権というものが叫ばれ、各地域においてそれぞれの責任において地方自治を行うという点においては、どうしても地方税の充実を図らなければならない。そういう中で、今回地方消費税の創設を提案しているわけでございます。  この地方分権については、大変長い間の議論の中で、まだかなり遅い速度で進んでいる段階でございますが、いよいよ、昨年の地方分権国会決議、あわせて、これからの税制、そしてさらには福祉においても地域密着型の地方計画を立てていただき、新しいゴールドプランに反映させていくような形で今進んでいるわけですが、この地方税について、地方税源がさまざまある中で、今回消費税の創設ということで第一歩を進めたわけでございます。  しかしながら、もちろんこれでいいというわけではないと思います。これから地方分権について、ある程度段階的に進めていかなければならない。そういう中で、地方分権の進め方とあわせて、この地方税源、事業税とか固定資産税、今回は議論はされておりませんが、その点について、ある程度の将来的な見通しというものがありましたら、栗田福井県知事にお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。
  23. 栗田幸雄

    栗田公述人 地方税源と税率につきましてはいろいろな議論があるわけでございますが、今回地方消費税が創設されることになったということで我々も高く評価をいたしております。今後も地方分権が進みます場合に、権限と財源が与えられるということが必要でございまして、その意味で地方税源の充実が必要になってくるわけでございますが、要は国税と地方税とのバランスの問題でございますので、今後いろいろな課題があるかと思いますが、例えば所得税の一部を住民税に移譲するといったような方向も考えられると思われますので、そういった点につきましても十分御検討いただきたい、このように考えているところでございます。
  24. 塩谷立

    ○塩谷委員 ありがとうございました。  最後に、いわゆる一番問題な事態、これは明らかに高齢化社会だと思っております。さまざま世界の変化あるいは経済の変化、そういうことをあわせても、この高齢化ということがいまだかつてない重大な事態だと思っております。  それでは、そういう中で公的に、国がどこまで福祉政策あるいはそれにかかわる問題をやっていけばいいかという一つのルールといいますか、そういうものを検討していかなければならない。これがまた新ゴールドプランで今検討しているところでありますが、これはやはり国がどこまでやるかという問題、改めて我々真剣に討議しなければならぬと思うわけです。  そのルールづくりの中で、自助努力とかも含めて、これからの税体系あるいは国民のライフスタイルの中に非常に大きく影響するわけでありまして、その点について、島田先生も先ほどルールづくりが必要だと強調されていましたが、特に福祉の面について、これについては医療、介護等、さまざま関連があるわけです。国がどの程度福祉を進めていかなければならない、あとは自助努力でやらなければならない、そんな、ちょっと漠然とした質問でございますが、ひとつ御示唆をいただければと思います。よろしくお願いします。
  25. 島田晴雄

    島田公述人 税制問題は社会保障問題と実は表裏一体でございまして、年金一つとっても、これが事実上の賦課制度になっているということを考えますと、事実上これは税金でございますね。そう考えますと、高齢社会を見通し、社会構造の変化を見通したときに、今非常に重大な歴史的な選択の岐路に立っていると私は思います。つまり、社会保障福祉を国が全部面倒を見るという考え方がいいのか、それともできる限り民間の力を使い、自助努力を使い、そしてぎりぎり必要なセーフティーネットを国が面倒を見た方がいいのか、この考え方を明確に出していただいて議論をしていただければありがたい。  そのための一つのたたき台として私はこんなふうに申し上げたいと思います。  年金については、基礎年金というのは、これはシビルミニマムでございますから、これは公的な負担というのは当然でございますけれども、それ以上の年金については、果たして本当に国が面倒を見るとなれば、これは非常に大きな問題になる。このところに、一つのたたき台としては、これは民間自助努力ということではないかと私は思います。  それから医療については、老人医療の設計についてはいろいろ問題がございます。この点、もっと合理化できるところがないか。特に、軽度の病気に対しての医療の問題でございます。重度の疾病については、これは徹底的にセーフティーネットを張る必要があるわけですが、軽度のものについては合理化余地がないのか。  それから福祉について言うと、重要なのは、ただいまの公的福祉はある意味では非常に世界の中でもよくできている。つまり、本当に生活の手段・のない方々については十分手厚いセーフティーネットが張られているわけなんですね。しかし、普通の勤労者あるいは普通の所得のある人がアクセスがないという問題がございます。この点について、私は、介護保険とか民間のいろいろな規制の緩和による力の導入というようなことを図るべきではないか、こんなふうに考えます。  一言ちょっと。先般の質問について一言補足させていただきたいのですが、消費税の比重の増大は避けられませんけれども、もう一つ考えることは、高齢化社会というのは資産社会なんですね、ですから、蓄積していく資産を経済活動のためにも、それからまた生活の保障のためにも使うという資産課税の充実強化ということは最大の課題一つになってこようかというふうに思っております。
  26. 塩谷立

    ○塩谷委員 どうもありがとうございました。
  27. 高鳥修

    高鳥委員長 次に、早川勝君の質問に入ります。早川君。
  28. 早川勝

    ○早川委員 十五分でございますので、端的に質問させていただきます。  六人の公述人先生方、大変ありがとうございます。それぞれの観点から今回の税制改革に対する意見を披瀝いただきました。私が聞かせていただいて理解したところによりますと、今回の税制改革を契機にして、事後に残された問題等について精力的に取り組んでもらいたい、こういった趣旨の内容ではなかったかと理解いたしております。  そういった意味で、それぞれお伺いしたいと思いますが、最初に中川公述人にお伺いいたします。  拝見させていただいた「「税制改革法案」に対する意見要旨」の中で、「消費税率五%への引き上げについて」という第四番目に書いてございますが、「現時点での消費税率の五%明記は拙速すぎる。」という表現がございました。先ほど言われたように記憶いたしておりますが、今回の税制改革については、減税と、そしてその財源について責任ある態度をとらなければいけないということで時間差を置きながらも明記したわけでございます。  そういったことを考えますと、この「拙速すぎる。」という中身は、今現在書かなくてもいいという趣旨なのか、前提条件として、現行の不公平税制あるいは行政改革等を含めて精力的に取り組むべきだということが書いてございましたが、その一体処理ということの関連でいえばどういうふうに理解して正しいのかどうか、説明をお願いいたします。
  29. 中川宏一

    中川公述人 お答え申し上げます。  ここに書いてありますように、我々としては、総合的に財源を精査した上で、それで足らなければ消費税という問題が出てくるだろうと思うのですが、基本的に消費税率アップで財源を見ようとしている、その考え方に我々としては納得できないものがあるということでございます。  そういう意味で、ちょっと「拙速」、こう書くと語弊があると思いますが、我々としては、もう少し精査していただくことがいっぱいあるのではないだろうか、こういう考え方を出しているということを御理解をぜひともいただきたいというふうに思っております。で、五%を書かなければ一体処理ができないとは思えないわけです。
  30. 早川勝

    ○早川委員 先ほど来の議論の中に、また中川公述人お願いしますが、見直し規定は御存じのように附則二十五条ですか、今回は書いてございます。二年間をかけて社会保障だとか行政改革を含めて取り組もう、もちろん租税特別措置等の不公平税制にも重点的に取り組む、こういういわば前提が書いてありますが、繰り返しになるかもしれませんけれども、税率消費税率、今三%ですが、この問題についていわば条件をどういうふうに考えているのだろうか、そのアップの問題について。  それから、先ほども質問にございましたが、許容範囲、税率について、消費税率について、何か検討されているのかどうか、もしございましたら教えていただきたいと思います。
  31. 中川宏一

    中川公述人 許容範囲という話がございましたけれども、正直申し上げて、まだ我々許容範囲を検討できる立場にありません。ですから、五%がいいか、六%がいいか、七%がいいか、こう言われても、我々としては総合的な判断の中で考えたいというふうに考えているわけです。  したがって、五%、七%以上といういろいろな考え方の中で五%というふうな案を連立与党が出されたことについて、その努力は一応多といたしますけれども、じゃその五%の前提条件が一体どういうことだったのだろうかというふうになってきますと、若干あいまいではないだろうか。そういう意味で、我々が考えていた税制改革と少しちょっと違ったのではないだろうか、そういう意味でもう少し時間をかけてもいいんじゃなかったのだろうか、こういうふうに思うということでございます。
  32. 早川勝

    ○早川委員 島田先生にお伺いいたしますが、今回社会活力税負担あり方ということで、活力という観点からすると、水平的な公平と、それから世代間の公平を強調されたですね。税制論議をやるときに、従来もそうですが、もう一つ原則で、垂直的公平はどうなんだろうかという問題がございますね。この問題をどう考えられているのか。それは資産課税でカバーすればいいんじゃないかというふうに考えられているのかどうか。  この垂直的公平問題、まあ与党として、また私たちもそうですが、総合課税という議論を重ねてきているわけですが、今回、先ほどの公述の中にはこの垂直的公平という問題に触れられなかったものですから、どう考えられているのかというのが第一点でございます。  それからもう一点は、これからの税負担あり方関連して、この活力という、社会活力との絡みになるわけですが、国と地方との関係ですね。今は国が七割を税源に持ち、そして徴収をしていたという仕組みでやっているわけですが、一体活力との関係でこの税源配分というものは考えられるのかどうか。  この二点をお伺いいたします。
  33. 島田晴雄

    島田公述人 最初の垂直的公平との関係でございますが、これは、所得税の今回の見直しというのはその部分的な調整をしたということだと思います。また、課税最低限をわずかながら引き上げておりますが、その点もこの垂直的公平についての配慮というのがあろうかと思いますが、やはり御指摘のように、基本的には資産課税というものも含めて総合的に考えていくべきだというふうに思います。多くの問題が今回の改革を通じて提起をされているわけで、その点も大変重要なポイントですから、要するに努力をした人に報いられるという基本的な姿が実現できるように鋭意御努力をいただければ、こんなふうに思っております。  それから、国・地方の問題につきましては、先ほども触れましたが、高齢化社会というのは資産が蓄積していく社会でございますので、この資産をどのように生活保障並びに経済活動のために有効に活用するかということが重要だというふうに思っております。  そういう意味では、固定資産税というのは大変政治的にはさわりにくい税目だというのは承知しておりますけれども、長期的将来に向けてはこれを高めていく。もちろんそれとの見合いでは、住民税については引き下げていくということはあるわけですが。そしてまた地価税についても、私はこれは充実強化していく。それとの見合いで土地流動化がもっと進むような税制の工夫を考えるというようなことで、活力を資産の面から引き出していくということが必要だ。  また、相続税については、相続税というのはとにかく軽減の方向ということが言われておりまして、多くの人々はそう思っておるようなんですが、実は本当に相続税を払わなければならない人というのは非常にわずかなんですね。ほとんどの人は払う必要がないんですね、今の状況からいきますと。私はむしろ、先ほど高山公述人が言われたように、これは相続税は強化する方向で、努力をする人にとっては蓄財ができるけれども、ただ親からもらったからということで楽にやれるという社会では、これは活力が失われるというふうに思います。  したがって、貯蓄については、やはり貯蓄が、努力をして勤労所得から貯蓄をするというのが促進されるような税制というものも資産課税全体の中で考えなくてはならない、こんなふうに思っております。
  34. 早川勝

    ○早川委員 高山先生にお伺いいたしますが、やはり垂直的公平の問題についてどう考えられているか、その実現するこれからの手だて、課題についてどう考えられているのかというのが第一点です。  もう一点は消費税率の問題で、一五%というのはEUか東欧の例で多分言われたと思うんですが、二けたにならざるを得ないという表現を先ほど来使われております。二けたといいましても、北欧のスウェーデンの話じゃないですが、二〇%を超えているような税率もありますが、そういった意味で、二けたにならざるを得ないというときにやはり一番問題になるのは、水平的な公平だとか世代間の問題は説明できると思うんですが、垂直的な問題はどう説明できるんだろうか、あるいはどういう手だてでその公平を確保していけるんだろうか、この点をお伺いいたします。
  35. 高山憲之

    高山公述人 お答えいたします。  確かに所得税というようなもの、所得課税あるいは直接税というものを使えば累進税率を採用することができるということでございまして、水平的公平というものに対する配慮がそれなりにできるということでございますが、その消費支出に着目しても、例えば支出税体系をとる、そういたしますとそれは直接税なんですね。今の所得税の中で貯蓄分をただ控除するだけなんです。そこを課税ベースにすれば今と同じように累進税率を残したまま、消費支出を課税ベースとしながらも垂直的な公平というものを達成することができるわけです。ですから、消費支出に着目した税制だと垂直的公平というものがうまく達成できないんではないかということではないというふうに理解をしております。  もう一点は、今や財政支出面からいろいろ対応が必要になるいわゆる経済的弱者については配慮がなされているということなんですね。税金は納めていただくけれども、そこで問題が生じる人に対しては、その支出の面から、財政支出の面からしかるべき対応をとるということでこの問題、いわゆる難点は解消できるんではないかというふうに私は考えております。  以上でございます。
  36. 早川勝

    ○早川委員 栗田公述人に簡単に一問だけお伺いいたします。  消費税問題、そして税制改革絡みで、また連合の先ほどのレジュメの中にございますが、公共事業の適正化という表現があります。公共事業費で入札談合制度等々を改善すれば五%とか一〇%とか、場合によっては二〇%節減できるといういろいろな議論があります。実際にその行政の責任ある立場に立たれていて実体験を踏まえて本当にこれが実現できるのかどうか、一〇%でも節減できるという可能性があるのかどうか、生の声をお聞かせいただきたいと思います。
  37. 栗田幸雄

    栗田公述人 公共事業の適正な執行ということはもちろん大事でございますが、そういったことを通じまして、どの程度の支出の抑制につながるのかということにつきましては、なかなか難しい問題でございまして、我々は姿勢といたしまして、行政改革あるいはまた公共事業の適正な執行ということに努力をしていかなきゃならない、このように考えております。
  38. 早川勝

    ○早川委員 終わります。
  39. 高鳥修

    高鳥委員長 次に、五十嵐ふみひこ君。
  40. 五十嵐ふみひこ

    ○五十嵐(ふ)委員 新党さきがけの五十嵐ふみひこでございます。  本日は大変貴重な御意見をそれぞれの先生方からちょうだいをいたしまして、まことにありがとうございます。大変参考になりました。  私は、高山先生にお尋ねをいたしたいと思うんですけれども、基本的な考え方、私どもと高山先生とはそう変わっているものではございません。ただ一つ気になりますのは、先生のこのレジュメの中で、社会保険料とワンセットで考えるのは私どもも当然だと思っておりますが、この中で社会保険料の方が消費税より逆進的である、だから消費税を使っていった方がいいんだ、社会保険料が高くなり過ぎないようにしなさい、私は当然そうだと思うんです。ところが、それに伴って年金保険料引き上げ恒久減税分はほぼ相殺されてしまうという議論がございまして、だからもっと制度減税を五・五兆円まで目いっぱい拡大しなさいという御意見のように受け取れたわけなんですが、これは私は、ちょっと直接には結びつかないと思うんですね。  すなわち、今の年金の水準というのは、保険料の支払いの方から見ると、保険財政の方から見ると水準が高過ぎるわけですね。そうすると基本的には下げなきゃいけないか、あるいは課税ベースを広げるといいますか、年金受給者からも税をいただくか、いわゆる年金課税ですね、私も年金課税賛成なんですけれども、年金課税をしていくか、あるいはそのほかの方法で増税をしなきゃいけない、あるいは保険料を引き上げなきゃいけないということなんですが、基本的には今言ったように水準が高過ぎるわけですから、どこかで調整をしなきゃいけない。そのときに、一方でもらう側の立場に立って保険料が高過ぎるから所得税を引き下げるという議論は、実は逆行する議論ではないでしょうか。消費税を上げていくのは、それは自然であるかもしれない、これは程度の問題ですけれども。だけれども、そのために所得税を一方で下げるというのは、私は一方ではちょっと矛盾しているんではないかなと思われるのですが、その辺のところをお伺いをしたいと思います。
  41. 高山憲之

    高山公述人 実は十月二十日、衆議院の厚生委員会における中央公聴会がございました。その席上で私はこの問題を提起させていただきました。年金保険料を今直ちに二%引き上げる必要は必ずしもないんだ、年金財政の健全化という観点からも、そんな必要は全くないということを私は申し上げたわけです。  なぜかといいますと、年金の将来を考えますと、いずれにしても将来の負担は大変になる、若い人にしかるべき費用負担お願いするためには、自分たちは自分の親よりも確実に豊かになるんだという担保がないとだめなんですね。そのためには、ここで景気が憩うございました、昨年、一昨年、確かにベースアップ等があった企業は多いのですが、結果的に時間短縮だとかボーナスの調整がございまして、手取りで見ますと実質的な所得、サラリーマンの所得は実はダウンしてしまったんですね。手取りが減っちゃったんです。手取りが減っちゃった。  今またここで年金保険料を一挙にまた二%引き上げる、本人負担分は一%あります、ボーナスがまた来年の四月からかかるということになりまして、来年それなりに春闘はあるとは思うのですけれども、本当に手取りがふえる保障があるのかどうかということです。たまたま所得減税先行で五兆五千億あります。これも来年は継続していただくことになったんですけれども、その効果が年金保険料引き上げによって事実上相殺されてしまう。他方で年金給付改善はございます。いろいろな制度改善がありました。あるいは年金受給者がふえます。それで年金給付改善はあるんですけれども、年金給付改善は今直ちに年金保険料を二%引き上げなくてもできたはずなんですね。できたはずなんです。そこを私は問題提起をさせていただいたわけです。  残念ながら、私は問題提起をさせていただいたんですが、皆さんには取り上げていただけなかったわけです。結果的に年金保険料は上がることになったということですね。それで、来年その現役のサラリーマンの手取りが本当にふえるのか、実質的にふえるかどうかというところが私は問題なんじゃないかと思うのです。景気回復をより力強いものにさせていただきたい、そのために今何が必要かということでございまして、年金保険料をこちらに、わきに置いておいて、いや、所得減税五兆五千億来年も継続するんだという話だけではやはり済まないんではないかということを申し上げたいわけでございます。  以上でございます。
  42. 五十嵐ふみひこ

    ○五十嵐(ふ)委員 それなりにその御意見はわかるんですけれども、一応修正積立方式ということに建前はなっています。だんだん賦課方式に移動しなければいけないということはもう島田先生のおっしゃるとおりだろうと思うのですけれども、私は、これは徐々にやらなければいけないし、世代間のまさに公平感というのはあるわけですから、今自分の将来のために保険料を積み立てているんだと思っている人が、そのいざもらうときになったらなくなっている、財政の財布は空っぽよという話ではこれはもたないわけですから、やはり年金財政自体を私は豊かにするという、豊かにするという言葉もちょっとおかしいですけれども、きちんと健全化させておくということもやはり必要なんだろうと思います。  それで、その二階建て部分にこだわるわけでございますけれども、先生のおっしゃるように制度減税に全部シフトしてしまいますと、かなり我々は今回でも、中堅所得層は見たと思っているわけです、かなり十分見たと思っているわけですけれども、これ以上やるとなると、実は二千万円以上の高所得者に大減税をすることになる。そうしないと五・五兆円に達さないのです。さらに、それに対して課税最低限をバランス上かなり上げていかないと、これは五・五兆円に達さない。しかもそうなってくると、これは消費税アップ率にやはり影響をしてくるわけでありまして、これは低所得者層にとってはそれこそダブルパンチになるわけですね。課税最低限が上がるから、今後減税の恩恵には浴さなくなる、非課税世帯になるわけですから。そして消費税はアップするというようなことになってくるわけでありまして、私はその消費税のアップ率を下げていく必要がある。  消費税がだんだん上がってくるのは、財政需要が多くなるわけですから必然だと思いますけれども、一挙に上げては、これは私は、逆に先生方がおっしゃるような行政改革もできないんだろうと思うのです。痛税感がない間接税ですから、一挙に上げてしまったら、それは使う側の論理で打ち出の小づちになってしまう。  だから、消費税は上げる場合でも徐々でなければいけないし、大議論をして反対論は出てきていいと思っているのです。大議論をして、そして国民が納得できる水準でそのたびごとに落ちつかせていく、これが私は必要なことだと思っておりますので、ぜひ、消費税が、間接税はただその部分が比重が大きくなればいいんだという議論では済まないだろうという考えを述べさせていただきまして、一言だけそのことについてのお返事をいただきたいと思います。
  43. 高山憲之

    高山公述人 御指摘のとおりでございまして、年金財政につきましては将来ともやはり財源確保ということをしていかなければいけない。年金の場合は、私は、国会議員の先生方の御理解が深まりまして、給付だけでなくて負担も同時に考えるという考え方が基本的には浸透したと思います。  実は、その年金以外の他の、あるいは社会保障以外の他の財政支出、この点につきましても、同じように支出の拡大には必ず財政負担が伴うのだということをあわせてお考えいただいた上で御議論を今後とも進めていただきたい。その中で消費税率がどうなるのかということもおのずから決まってくるのではないかというふうに考える次第です。  以上でございます。
  44. 五十嵐ふみひこ

    ○五十嵐(ふ)委員 その他のことにつきましては、行政改革の必要性等々お教えいただきましたことをまさに肝に銘じてこれからやらせていただきたいと思います。ありがとうございました。
  45. 高鳥修

    高鳥委員長 次に、山本幸三君の質疑に入ります。山本君。
  46. 山本幸三

    山本(幸)委員 大変貴重な御意見をいただきまして本当にありがとうございました。  時間が余りありませんので、はしょってまいりたいと思いますが、最初に、先週の金曜日、地方公聴会がございまして、私は福岡に参ったのでありますが、その席で私の地元の田川市の市長さん、滝井義高さんという方ですけれども、かつて社会党の衆議院議員を長く務められて今は地元に戻って市長さんをやっておられるわけですが、その社会党出身の市長さんが、実は地元の川柳の句でそういう展覧会があったらしいのですが、二つ御紹介したのですが、こういうのがありました。「消費税総理の席で酔いました」、こういう川柳があったというお話がありました。  この川柳、いろいろ意味が深いと思いますけれども、できれば皆さん方全員の方に感想をお聞かせ願いたいのですが、時間がありませんので、島田先生と、地方の立場で栗田知事さんと、そしてまた中川さん、ちょっと感想を聞かせていただければありがたいと思います。
  47. 島田晴雄

    島田公述人 私は、山本先生ほどの文化人でないものですから川柳を解釈する教養がないかもしれませんが、総理のセキというのは、席というのか咳というのか、非常に微妙な解釈だろうと思いますけれども、私も一国民としてこの事態を拝見しておりまして酔った一人かもしれません。  前々から社会党の野党であった時代には断固反対ということをおっしゃっていたわけですから、それが総理になったら、やはりやらねばならぬかのうということでなさったわけで、これはやはり非常に人々がいろいろな意味で酔うパフォーマンスだったかなと思います。ただ、政治はパフォーマンスだけでは困るので、やはり国民は日々の生活がかかっておりますから真剣に見ておるというふうに思うのですね。ですから総理の御決断は正しかったと私は思います。  したがって、これ以上多言を申し上げるつもりはございませんけれども、国民の本当にためになる税制をつくるために責任のある政治をしていただきたいなというのが、そして本当の責任に私ども酔わせていただきたい、こんなふうに思うわけでございます。  ありがとうございます。
  48. 栗田幸雄

    栗田公述人 税制改革を進めます場合に、その時代、その時代の必要性、あるいはまた、受け入れる国民側の考え方というものを的確に反映していかなきゃならないということで、お示しになりました川柳は、恐らくその時代の変遷というものもうかがえる、そしてまた、これから税制として消費税引き上げというものが国民にとって真に国民福祉の向上に結びつくものかどうかといったようなことを、ある意味では皮肉に歌われたものであろう、このように考えております。税制改革というのは常に国民の立場に立って進めるべきものだろう、こういうぐあいに感じたわけでございます。
  49. 中川宏一

    中川公述人 何とお答えしたらいいのか正直なところ困っていますが、ただ、連合も消費税問題ではけんけんがくがくの議論をやりました。高齢化社会に向かってどうしたらいいかという財政負担の問題を出してきたわけです。その中でその間接税問題について一応の方向性を出した、こういうふうになっています。  そんなことを考えますと、時間の経過というものもあると思いますし、新しい課題が出てきたということもあると思うのですね。したがって、これからのことを考えますと、福祉社会あるいは負担に見合った社会からのあれがありましたら、そのことについて労働者の方は何らそのことを不満としないだろうと思うのですね。そういう意味では、今までの税制あり方あるいは負担あり方がどうだったのかということも考えながら、一つの転換期ではないだろうかと。労働組合にしても転換期ですから、当然村山さんも転換期だったんだろうというふうに思うわけです。そういう社会の流れなんではないでしょうか。  そういう意味では、これはお答えになっているかどうかわかりませんが、旧連立の方から政権をとられた場合も同じようなことがあったのではないだろうか、こういうふうにも思います。
  50. 山本幸三

    山本(幸)委員 ありがとうございました。  高山先生に御質問をさせていただきたいと思うのですが、私は、高山先生のおっしゃっていること、本当にそのとおりだというように思います。  まず第一に、景気対策としてこの税制改革が行われたと言われているのですが、。実はこれは非常に私は疑問があるというふうに思っておりまして、まず減税先行しただけでは、それは消費はふえるかもしれないけれども同時に弊害が出てくる。金利が上がって円高になる。これだけの円高を起こしているのはまさにこの政策がもたらす弊害であって、本当はそれに対する対応を何か考えなければ景気対策にならない。それから、御指摘のように社会保険料引き上げを前倒しにやった、これは全く政権としては矛盾している政策をやっているわけでありまして、本気で景気対策を考えているのかどうか疑問に思うぐらいの話であります。一方で減税先行と言いながら、保険料の方では増税先行ということを平気でやっているというわけですから、私は高山先生の御指摘のとおりだと思います。  それともう一つは、税理論上、戻し税の経済効果について先生の御見解をちょっとお伺いさせていただきたいのですが、経済学の上では減税、まあ先ほど申し上げたように、ちょっと弊害も出てくるということも考えなければいけないけれども、はっきりしていると思うのは、その中でも恒久減税は効果があるかもしれないけれども、戻し税というのはこれは変動所得に影響するだけで恒常所得増加につながらない、したがって景気効果はないんだというのが、私は、たとえ所得税減税を景気対策として主張する人でもそれは認めているように思うのですけれども、この点についてはいかがですか。
  51. 高山憲之

    高山公述人 一年限りの戻し税ということであればおっしゃられたような懸念が生じると思うのですが、ことしのいわゆる戻し税を決めた段階でとりあえず一年限りしか規定はなかったのですが、税を見る関係者の常識として、当然この減税は来年度以降も継続するのではないかというふうに考えたと思います。それは、そういう意味では、単なる臨時所得の変化にすぎないというふうな割り切りではなくて、やはり恒常所得に影響を与えるものであるというふうに考えた人も多かったのではないか。  現に、ことしのあの減税によって、夏時に暑かったということもございますが、消費支出に多少の盛り上がりがあったということでありまして、あの減税にしかるべき景気浮揚の効果があったというふうに私自身は認識をしている次第でございます。
  52. 山本幸三

    山本(幸)委員 ありがとうございました。  私もことしのものは恒久減税につながるということで効いてきたのだろうと思いますけれども、これが本当に効くかどうかは、また先ほど申し上げたような弊害のことを最終的には見ないとよくわかりません。  次に、インボイスについてお伺いしたいのですが、私は消費税というのが本物になるためには、やはりインボイスがきちっとしたものにならなければ本当の意味消費税にはならない。益税の問題がいろいろ言われておりますが、やはり本当に定着したかどうかのところの問題というのは、事業者が事業課税と認識するようではだめだ。はっきりと転嫁がきちっとできるということが、本当の意味で定着したことになるし、消費税そのものになるというふうに思うのですけれども、このインボイスをやはりぜひとも早く導入すべきだというように考えておられるかどうか、島田先生と高山先生にお願いします。
  53. 島田晴雄

    島田公述人 私は、これは非常に重要なポイントだと思います。基本的には、本格的な多段階の税ですから、きちっと転嫁が行われて、きちっと不透明な益税につながるようなことが全くないように持っていかなければいけない。そうすると、やはり事業者番号を導入して、そしてきちっとしたインボイスで税額票をやりとりして透明にするということが基本的に重要だろうと思っております。
  54. 高山憲之

    高山公述人 インボイスにつきましては日本的な工夫ということの御検討が進められていくというふうに考えますが、やはり島田先生もおっしゃいましたように、何といっても業者番号をつけたインボイスということにすることが避けて通れないのではないかというふうに思います。  やはり消費税、一方で国民負担をさせながら一部の業者がそれを税務署に納めずに一部懐に入れているというような状況は、やはり消費税率引き上げにとっては最大の難点になっているというふうに考えます。ですから、国民も納税者番号を受け入れる方向だと私は基本的に認識をしておりますが、消費税につきましても業者番号つきのインボイスをぜひとも導入していただきたいというふうにお願いを申し上げる次第です。
  55. 山本幸三

    山本(幸)委員 それからもう一つ、最高税率のことについてちょっとお伺いさせていただきたいのですが、中川さんのところでもお話がありました。この最高税率について、これを正さなかったことは評価するということなんですけれども、ここのところをどう考えるかですね。  私は累進税率をとるということはこれは当然のことだと思いますけれども、これもある程度限度があって、ただこれはフィロソフィーの問題ですから理論的にどの辺がというわけにはいきませんけれども、しかし余り高いとやはり経営者は逃げちゃうとか、海外に打っちゃうとか、そういうことも、あるいは勤労意欲に問題も出てくるだろうというふうに思いますし、昨年の税制調査会の答申では五〇%程度が限度じゃないかということも出ているわけですね。これは、やはりそういう高額所得者であるけれども、やはり一生懸命働いて得た所得というようには理解されないのでしょうか。  私は資産所得とは大分違うというふうに思うのですけれども、勤労所得で、重役になってあるいは社長さんになって大いに頑張っていれば、それなり所得をある程度考えてやるということは必要ではないかなという気がしているのですけれども、この点については中川さんと高山先生、お願いします。
  56. 中川宏一

    中川公述人 私どもの方は総合課税を前提にすれば税率を引き下げてもいいという考え方です。したがって、今の段階では住民税を含めて六五%は据え置くべきだという考え方なわけです。ですからその点について、高ければいいというつもりで言っているわけではありませんが、しかし、最近の状況を考えますと、応能負担といいますか、そういう傾向が水平的公平という陰の中にどうもかすれてきているように思うわけです。ですからやはり、所得の高い人がそれなり税金負担していくというのは、再配分機能からいっても非常に重要なことではないだろうかというふうに考えております。  そういう意味で、千八百万まで三〇%になったことは歓迎ですけれども、ただ、ちょっと高過ぎるかな。我々の方の実感からいえば、五、六百万あるいは七百万、一千万円未満で働いているのが圧倒的多数なわけですね。そういう意味で、我々としては据え置きは当然ではないだろうかというふうに感じているわけです。
  57. 高山憲之

    高山公述人 おっしゃいましたとおり、所得税の最高税率をどの程度に設定するかという問題は、国際化が急激に進んだ今、やはり諸外国の実態というものに照らし合わせまして、余りそこで日本との違いがないような工夫というものが基本的に求められているというふうに私は考えております。そういう観点から申し上げますと、今の所得税の最高税率はやはり高いのかなというような印象を私は持っております。  それからもう一点ですが、先ほど来垂直的公平という問題が取り上げられております。これは、高所得者であっても、貯蓄に励んでいる人と、ぜいたくな支出をエンジョイしている人では、おのずから差をつけていいのではないかと思うのですね。所得税という体系の中ではそこのところがうまく処理できません。やはり、支出税の体系を御検討いただくということがその一つの解消の方法ではないかというふうに考えている次第でございます。
  58. 山本幸三

    山本(幸)委員 ありがとうございました。
  59. 高鳥修

    高鳥委員長 次に、竹内譲君の質疑に入ります。竹内君。
  60. 竹内譲

    ○竹内(譲)委員 改革(公明党)の竹内譲でございます。私の方は主に高山先生の方にお聞きをいたします。  今回、税制改革の主要な論点は、視点は、高齢化社会に対応する税体系の構築ということがやはり主要な論点であったと思っております。しかし高齢化社会といっても、やはり経済成長ができなければ全くナンセンスでありまして、配分が来ない。そこで、先生がおっしゃるように、経済成長に対する阻害をどういうふうに考えるのかという意味では、私どももこの一年数カ月いろいろ研究をしたり考えたりしてきた結果、やはりこれからの低成長時代、所得税よりはむしろ消費税の方が、また、社会保険料よりは消費税の方が成長阻害度が高いのだろうという結論に達したわけでございます。  そういう点も含めまして、これからやはり今回の税制改革の中でちょっと欠落していると思っておりますのは、高齢化社会というのは結局裏返せば若年層が少なくなってくるということでございますので、高齢者に対する福祉ということももちろんこれは大事なのですけれども、出生率をどうやってふやしていくのか、また、二十代、三十代の人たちがやはり子供をもっとたくさん産んで、あるいは豊かさを享受しながら消費をふやしていくようにするにはどうしたらいいのかということが、やはり大事だと思うのですね。  私も、先生が先ほど、再分配所得後相対的に見ると相対的に三十代が最も気の毒な状況にあるというふうにおっしゃっていましたが、私ももう三十代でございますので、その代表でございますが、そういう意味からも、やはりこの出産育児支援という観点からの措置というものはやはり重要なんじゃないかな。例えば、出生給付年金制度内に設けたりとか、年金保険料拠出に当たって扶養控除を認めたりするとか、そういうことが必要なんではないか、思い切った対策が必要なんではないかと思うのですが、その辺についてちょっと詳しくお願いしたいと思います。
  61. 高山憲之

    高山公述人 税制問題を議論するに当たりまして、負担の公平という観点あるいは安定財源ということだけでなくて、成長阻害度の大小ということを御議論いただけるようになってきたということは、大変私は望ましい状況にあると思いますので、その点を今後とも御検討を続けていただきたいというふうに最初にお願いを申し上げます。  二点目の御質問でございますけれども、高齢化社会で一体何が一番大変かということに絡む問題だと思うのですね。従来、高齢者がふえることは大変だ、高齢者対策を何かいろいろな形でやらなきゃいけない、年金どうするんだ、医療どうするんだ、介護どうするんだという形での議論関係者が一生懸命やっていたということだと思うのです。  確かに高齢者がふえることは大変で、今のシステム、若者が中心になっていた時代の体制の中でうまくなかったことがたくさんあったことは御案内のとおりでありまして、いろいろやらなきゃいけなかったことも事実でございますけれども、それをやっている最中に、実は出生率が低下をしてきたということでございます。しかも、これが予想外のスピードで進んでおります。昨年の実績によりますと、合計特殊出生率は何と一・四六まで落ちてしまったということでございますね。下げどまる気配を一向に見せておりません。  労働省の推計によりますと、二〇〇〇年から二〇一〇年にかけまして、三十歳未満の労働力人口が、何と三百七十万人も減ってしまうということになっております。三十歳未満の労働者の今の水準で言いますと大体四分の一近い人数でございます。労働力人口全体も間もなく減り始めるんですけれども、その中で特に急激に減っていくのは若い労働者ということでございます。  これは、二〇一〇年までのまだ推計しかございませんけれども、今の低出生率を前提にいたしますと、その先はもっと減っていくということなんですね。働く人の数が全体として減っていく。その中で、中高年の人たちのウエートが高くなっていって、若い人たちが減っていくということでございます。  若い人というのは、やはり新しい技術の担い手です。経済成長というのは、新しい技術が牽引していくものなんですね。その担い手である若いサラリーマンが、数が絶対数で減っていくということでございまして、本当に今後、日本経済成長を持続できるのかどうか、中高年のサラリーマンばかりで本当に経済成長を維持していくことができるかという問題なんですね。  私は、高齢化社会における最大の難問、これは子供の数が減っていくということではないかというふうに実は思っているわけです。今まで高齢化対策ばかりやってきたのですが、そろそろ出産支援だとか子育て支援について皆様の真剣な御検討お願いしたいというふうに考えているわけです。  子供がこのまま減っていっちゃっていいのか。滅びの美学というのがもしかしたらあるかもしれません、それでいいんだという割り切りがあるのかもしれませんけれども、やはり、出産と子育ては個人の責任だ、夫婦の責任だと言う前に、もう少し子供を産みやすい環境、育てやすい環境をつくっていただきたい。それが、先ほど来御提案がありましたけれども、出生給付をもっと何とかならないのかとか、あるいは年金負担に当たって、子供を育てている人と育てない人で多少とも費用負担に差をつけていいのではないかとか、そういう議論につながるのではないかと思うのです。  なぜ出生率が低下しているかということをもう少し原因究明をしていただきまして、それに合った対策を適切にとっていただきたい。  日本社会は、男女平等という点でまだいろいろ問題があると思います。子供が生まれない一つの理由は、子育てが事実上、母親の肩にかかり過ぎているという点にあると思うのですね。もう少し男性が子育てに参加するということをやっていかないと、やはり出生率の下げどまりとか、今後の反転というのは期待できないのではないか。その意味で、いろいろな御検討をしていただきたいということを切にお願い申し上げる次第でございます。
  62. 竹内譲

    ○竹内(譲)委員 ありがとうございます。  大変貴重な、重要な視点がやはり我々の中に欠落していたんではないかなというふうに思います。再度、この点は本当に突っ込んで新たな政策を打ち出していかなければならないというふうに、我々改革としては考えております。  もう一点は、今回の税制改革のねらいがやはり不透明である、理念がやっぱり不明確であると言わざるを得ないというふうに私は思っております。特に、二階建て減税がその最たるものであるというふうに思っておるわけですが、やはり制度減税というものでいくべきだというふうに思うわけです。  やり方は、いろいろそれは知恵の出しようで、五・五兆円もあれば四・五兆円もいろいろあるわけですから、できる限り基本には税収申立で考えて、不足分は、もし足りなければ、それこそその足りないところを行財政改革等でやっていくべきではないのかというように私は思うのです。  その方が本当にすっきりいたしますし、まずやっぱり何でも、人間だれしも数値の一兆円足りないとかいうふうになれば、そこを何とか埋め合わせしようとするものでありまして、あとは年度末までにやりますよとか、そういうことじゃやっぱりだめだと思うのですね。これだけ、数字でこれだけ足りないから、これだけの行政改革が必要なんだというふうに持っていくべきであって、五%はこれはまあいいとして、必要な財政支出がある、足りないという、あと不足分を明確にして、数値で出して、そこからそれに向かって猛烈に突き進んでいくというのがやっぱり政治の使命ではないかなというふうに私は考えておるわけです。  それともう一つは、余り時間がないんですが、経済学の基本でいきますと、やはり景気の悪いときは減税して、よくなったときに増税するということですから、今回も見直しか二年後とかいうふうになっておるのですが、それは私はのんびりした話だというふうに思うのですね。やはり毎年見直して、これは私の個人的見解ですけれども、一年後にはきちっと見直して、景気というのはどうなるかわからないわけですから、景気が上昇過熱しそうであれば早目に増税をしなければいけないでしょうし、三年後なんて言っていたら、今度景気循環の後退期に増税が当たってとんでもないことになる。ですから、そういう意味で、余り硬直的な決定はだめだろう。  ですから、明年やはりこれは見直し、いろんな意味税率と時期をめぐって見直す時期を持ってくるべきだというふうに私は考えておるんですが、高山先生の御見解を拝聴いたしまして、終わりたいと思います。
  63. 高山憲之

    高山公述人 理念が不明確であったという御指摘ですが、これは結局、今回の消費税率引き上げをめぐって、何%にするかという議論がどうも先に結局あったんではないかというふうに思います。そのために、いろいろの無理といいますか、不十分な点というものが出てきてしまったということだと思うのです。やはりいわば消費税自体を税制の中で正当に位置づけていない、あるいはそれに対するいろいろな思いがあって、今回こういうふうな妥協になったんではないかというのが私の推察でございます。  景気対策の話につきましては、これは二年後に見直すということではなくて、一年後に見直して当然いい話ではないかというふうに思っております。  以上でございます。
  64. 竹内譲

    ○竹内(譲)委員 大変ありがとうございました。よくわかりました。
  65. 高鳥修

    高鳥委員長 次に、今井宏君の質疑に入ります。今井君。
  66. 今井宏

    ○今井委員 十分間ということでございますので、先に各先生方に御質問をさせていただきたい、こういうふうに思います。  それに先立ちまして、各先生方の公述をちょうだいいたしまして大変御指導いただきましたことを、重ねて御礼を申し上げるわけであります。  最初に、高山先生にお聞かせいただきたいと思うわけでございますが、高山先生、福祉の御専門家ということで、我々国会でもたびたび御指導をちょうだいしておるわけでございますが、今回の税制改革では大変不十分なところがたくさんあるのではないかと思うわけであります。福祉ビジョンの提示をしないで今回の法案を提案したとしか見えないところもあるわけでございます。とりわけ、見直し規定の附則の第二十五条でございますが、「社会保障等に要する費用財源を確保する観点このように明記されておるわけですが、現時点でどのくらいのものがイメージできるのか、どのくらいかかるのだろうかということを御指導いただきたいと思います。  それから、先ほどの公述によりまして、再分配後所得で見ると相対的に三十代が最も気の毒な状況である、出産、子育ての世代に配慮する必要があるのではないか、こういう御指摘もあったわけでございますが、いま一度、今回の税制改革をどう評価した方がいいのか、また、御指摘あるものにつきましてはお願い申し上げたいと思います。  次に、丸尾先生、恐縮でございますが、御質問させていただきます。  所得税の二階建てという手法でございますが、これもただ単なる税率アップだけの法案ではないだろうか、抜本的な税制改革を先送っているのではないか、したがって中途半端になっておるし、政治的妥協の産物である、こういうふうに指摘もされておりますし、税制改革の本来の目標の優先順位というものが明らかにされていないのではないか、こういうふうに思うわけでございます。  そこで、制度減税は三・五兆円、特別減税は二兆円、こういうことでございますが、特別減税も、これも平成八年度の減税につきましては、特に景気が好転したときには改めて検討するということで八年度ははっきりしていないわけでございますが、消費税については見直し規定がありますけれども、所得税には見直し規定がないわけでございます。こういう明示の仕方につきまして御見解を賜りたい、こういうふうに思うわけでございます。  その消費税見直し規定でございますけれども、大蔵大臣もとりあえず五%と先日この場で御答弁もあったわけでございますが、そのとりあえず五%が非常に根拠があいまいではないか、将来の税率あるいは納税者の負担が不明確ではないか、このように思っておるわけでございます。それで、その見直しの期限を平成八年九月三十日、このようになっておるわけでございますけれども、この期限の設定の仕方につきまして御見解がございますでしょうか。例えば、もっと早急に、早目に、あるいは一年以内で、行革なくしては増税なし、あるいは福祉財源も不明確でございますので、それらを早急に明確にする必要があるのではないか、このように考えておりますが、いかがでしょうか。  それから三点目になりますが、丸尾先生、地方消費税の創設でございますが、これからは地域福祉をいかにしていくか、地方分権の確立をどうしていくかということが重要になってくるわけですが、今後の望ましい地方税制あり方につきまして御見解をちょうだいしたいと思います。  次に、連合を代表しました総合政策局長の中川さんに御質問をさせていただくわけでございますが、先ほど総括的な評価をお伺いしたわけですが、今回の税制消費税率二%引き上げの対価の割には、所得税制の改革は小幅ではないだろうか、このように考えるわけでございますが、中堅サラリーマン層のいわゆる重税感の緩和はこれでされた、こういうふうに思っでいいのかどうか。特に、勤労意欲増加するのだろうか、負担の軽減ができたのだろうか、この辺甚だ疑問にも思うわけでございますが、その辺につきまして御見解を賜りたい、こういうふうに思うわけでございます。  次に、行革でございますけれども、行革のうち、とりあえず特殊法人につきまして、年度内に具体的な法人名を挙げて取り組む、政府は今年度内と明言しておるわけでございますが、中には閣僚の消極的な発言とか、あるいは労働組合の消極的な発言というのも見受けられるやに伺っておるわけでございますが、労働組合を抱える連合の立場から、この特殊法人の整理統合あるいは合理化につきまして御見解を賜りたいと思います。  以上でございます。
  67. 高鳥修

    高鳥委員長 大分多岐にわたっておりますが、逐次お答えをいただきたいと存じます。  最初に、高山さん。
  68. 高山憲之

    高山公述人 第一点目は、社会保障財源、幾らかかるかということでございますが、厚生省の試算によれば、聞くところによりますと、今後新ゴールドプランあるいはエンゼルプランなるものを実施に移す場合、年度ベースで大体八千億円ぐらいの新規の支出増を見込めないと、なかなかそのプランは実施できないというふうに伝え聞いております。  今回の税制改革案では、来年度につきましてはとりあえず一千億円、九六年度につきまして二千億円、九七年度以降五千億円の関係予算を確保したということになっているというふうにお伺いしておりますが、当然そこではお金が足りないということになるわけです。その場合、一体エンゼルプランなり新ゴールドプランの実施をおくらせるのかどうか、あるいはその内容を一部カットしてしまうのかどうか、あるいはその八千億はどうしても必要だから、他の支出を削ってもいいからそこに財源手当てをするのかというような絵が、残念ながら我々には見えておりません。その辺の議論をさらに詰めていただきたいと思います。  今回の税制改革案につきましては、三十代に対する配慮が若干不足しているというのが私の理解でございます。
  69. 丸尾直美

    丸尾公述人 所得税の二階建てですけれども、本来ならば税制改革と言えるような改革、先ほど言いましたように、福祉関係財源計画と財源、そして資産に対する政策、資産に対する政策として一つは資産の、先ほど言いましたように、課税の問題もありますけれども、他方、不公正を是正するための資産の低所得者の所有、それから資産の活用という、資産三政策のようなもの、そういったものと、さらに行政改革、そういったものをセットにして、本当に税制改革と言えるような改革として一段階でやるという方がよかったかもしれない。しかし、今回はそれができなかったから、こういう中途半端なものになったのであろうと思います。  次回、消費税見直しか行われると思いますし、そのときは恐らくまた上がると思いますけれども、そのときには消費税引き上げの三条件ともいうべきもの、今言ったような福祉ビジョン、資産に対するきちっとした政策、行政改革、それとセットにしなければ見直しを上にするということは断じであり得ないというような、しっかりした方針を明確にしておいていただきたいと思います。  地方消費税に関しましては、いろいろなお金がかかるものからだんだんと、大きなお金がかかるものはむしろ中央からではなくて地方の、老人福祉サービスとか、子育ての保育所整備とか、ごみ処理とか、地域の環境アメニティーのいわゆる改善、文化政策、非常に地方にどんどんと移っていきます。ですから、そういう意味で、地方の消費税を導入して財源の面でも分権化を図っだということは、非常に結構だ。  それからまた、総合化がこれからますます必要になります。福祉医療等々の総合化、それを行うためにも地方に持っていった方がいい。そういう意味で、地方の分権化の方向消費税を導入したことは非常に結構なことであり、次回、もし消費税見直しというふうになっていく場合には、地方へ配分する比率をもっと高めていく方がよろしいかと思います。
  70. 中川宏一

    中川公述人 制度改正をもう少し抜本的にやるとすればどうしたらいいかというふうなお話だったと思うのですが、ちょっと私がひっかかるのは、抜本的にやること、所得税減税消費税率アップとがツーペイの関係になっていることに非常にひっかかるわけです。我々としては、総合的な税制改革について、その中で資産、所得、消費のバランスのある総合的な改革、これについては異存はないわけです。しかし、現実の対応はそうなっていないではないかということを強調したいわけです。  したがいまして、ここでも二階建て方式の問題が出されておりますけれども、結局一定の制約条件の中では我々としては一つの選択肢として考えてはいますけれども、それをもう少し大きく額を引き上げるとすれば、結局所得税減税の方は最高税率の引き下げにつながるのではないだろうか、こういうふうに感じるわけですね。そういう意味では、ちょっと私どもいわゆる中堅サラリーマンの立場を代表して考えると、非常に矛盾に満ちたものになるというふうに感じているわけです。  とりわけ課税最低限が、基礎、特定扶養控除、配偶者特別控除など三万円ずつそれぞれ上がっております。しかし、これから女性が社会進出をやっていくという状況の中で、基礎控除なり所得控除、要するにいろいろな控除を収れんさせていく方向を考える必要があるというふうに感じているわけです。ですから、所得控除あるいは基礎控除を一本立てにして、できるだけ共働きであるとかないとかということで問題を立てないようにしたらどうかという提案をしております。そういう意味課税最低限の引き上げを考えているわけです。  それから、行革の特殊法人問題について、非常に労働組合としても悩ましい問題ではあるわけです。  それぞれに労働組合がおります。しかし、我々の方は、そうはいってもこの特殊法人のいろいろな問題をやはり労働組合としても避けて通れないというふうに考えていって、内部でいろいろ検討をしております。しかし、最低限首は守っていただかなければならないということであります。ですから、横断的雇用保障制度の確立ということをまず前提に置いて特殊法人のあり方についてはいろいろ検討させていただきたい、こういうふうにお願いをしているところでありますが、従来こうした問題については、そういう意味では、一つの一番不安になっている問題についてきちんと対応を政策的にも確立をしていただきながら進めていただくということが、非常に必要ではないだろうかと思っております。  我々も、特殊法人の整理合理化だけでなく、行政改革についての中央と地方のあり方あるいは補助金制度の問題について積極的に対応したいというふうには思っておりますが、単にそこの雇用労働者いじめといいますか、そういうことでないようにひとつお願いができたらというふうに思っているところであります。
  71. 今井宏

    ○今井委員 終わります。
  72. 高鳥修

    高鳥委員長 次に、穀田恵二君の質疑に入ります。穀田君。
  73. 穀田恵二

    ○穀田委員 日本共産党の穀田です。  栗田公述人にお聞きしたいと思います。  地方消費税の導入に関連してお聞きしたいのですが、法案によれば、今回新たに地方消費税を府県税として創設するということになっています。その課税標準は消費税額であり、その徴収も当分の間国が徴収するという形になっています。ですから、さまざまな御意見があると先ほどお話ございましたけれども、こういう形になったことについてどのような感想を持っておられるか、これをまず第一にお聞きしたい。  二つ目に、課税標準が消費税額となったことで、府県税として導入されるわけですが、その税率引き上げ等については消費税率引き上げの際にしか検討の対象にならないではないか、つまり国の消費税率とは無関係に独自に地方消費税率の引き上げ等が行われることはないとの意見がありますが、それについてはどのようなお考えを持っておられるか、これが第二点目です。  第三点目は、例の当分の間という問題ですが、起債の許可権限のように、当分の間といっても実際上は半世紀近くも続いているものもございますし、結局ずうっと国が徴収する意味だという意見もございますが、それについてはどうお考えか。この三点についてまずお聞きしたいと思います。
  74. 栗田幸雄

    栗田公述人 まず、府県税として地方消費税が認められたということでございますが、こういう税を創設する場合にどこが課税団体になるかということでございますけれども、考え方としては、府県も取りあるいは市町村も徴収するというやり方も当然あるわけでございますが、事務の簡素化あるいはまた配分の関係等々から、府県税としての地方消費税を設けるということになったわけでございます。それはそれなり評価できるのではないか、このように考えております。  税率につきまして、消費税税率検討の際にしかこの地方消費税税率見直し検討ができないのではないかということでございますが、これらにつきましては、国の税制全般の中で地方消費税がどうあるべきかということでございますので、別個に議論するということも可能は可能でございますので、その辺は政府あるいはまた国会での議論を待ちたい、このように考えております。  第三点の当分の間ということでございますが、我々は今回の導入の経過にかんがみまして、当分の間税務署で徴収されるということもやむを得ないだろうとは考えておりますが、やはりこれが恒久的な制度にならないように、できるだけ早い機会に直接地方公共団体が徴収するという方向検討されることを望んでいる士ころでございます。
  75. 穀田恵二

    ○穀田委員 やはり肝心の、地方団体でいいますと自主財源の拡充という立場から、こういう地方消費税の創設の問題がずっと御意見としてなされたと思いますが、そういう点で、今お話ありましたように、国が徴収する、それから税率引き上げは、実際上今のところでいいますと国が決める以外に手はない、さらに先ほど申しましたように、当分の間というのは半世紀も実際は例の起債の許可権限も続いていますから、なかなかこれは大変だということを率直に言って思います。ですから、自主財源の拡充という角度から見ました場合、公述人はどうお考えですかしら。
  76. 栗田幸雄

    栗田公述人 自主財源の確保という意味で今回の改正は一歩前進である、このように受けとめているわけでございますが、かなり課題としてはまだ残っているので、そういう課題について今後前向きに検討していただきたい、こういう気持ちでございます。
  77. 穀田恵二

    ○穀田委員 では次に、中川公述人にお聞きしたいと思うのです。  先ほどもお話ございましたように、サラリーマンの連合の中でのそういう中心的な部分が五百万から六百万というお話がありました。そうしますと、大蔵省の試算でもそういう部分というのは、現実消費税が値上げされますと差し引きでいいますと増税になる部分ということになりまして、そういう意味では、本当に働いている方々が大変だなということを実感するわけですが、連合の九四生活アンケートによりますと、お聞きするところでは、まだ暫定集計だそうですけれども、「消費税引き上げの前に、行政改革、不公平税制是正、消費税益税解消などをおこなうべき」だと答えた組合員の数が八〇%を超えるという、そんな暫定集計結果が出たとお聞きしています。  先ほどもございましたが、やはり御意見の中に、不公平税制の先送りというのは、非常にけしからぬという言い方はあれですけれども、余り賛成できぬというお話がございまして、私も実はそう思っていまして、ついせんだっても現職の大臣が、大企業優遇の租税特別措置法などについては全面的に凍結ないしは廃止をすべきだ、こういう御意見もございました。  そういう点でお聞きしたいわけですけれども、やはり組合員の皆さんも含めて、行政改革や不公平税制の是正について、やはり望んでおられる、そういう角度から見ますと、私は二つの点があると思うのですね。租税特別措置法の見直しということも含めて大胆にやっていただきたいということと、二つ目に、法人税法の本体を含めて大企業優遇のそういう税制についても見直すべきではないか、そういう点の二つについて公述人の御意見をお伺いしたいと思います。
  78. 中川宏一

    中川公述人 租税特別措置法の問題については、与党内部でもいろいろ御議論がなされているようですし、これからの問題として出てきているように伺っております。我々も、フリンジベネフィットその他の問題がありますが、そのことを聖域としないで検討してみなければいけないというふうに考えております。  それから法人税の問題については、例えば赤字法人が半分以上あるというふうなことになっておりまして、そういうことは少し是正をしなきゃいけないんじゃないだろうかというふうに考えているわけです。ただ、法人税の問題については、これだけ国際化してきておりますので、そういう流れの中でやはり考えていかなければいけないというふうに考えておりますが、租税特別措置法や、いろいろな意味で企業に対する援助が出されていることについて、少し、今日のこれだけの社会情勢ですので、検討していかなければいけないというふうに考えているところであります。
  79. 穀田恵二

    ○穀田委員 では、最後丸尾先生にお聞きしたいんですけれども、先生は「かくしん」とかその他の雑誌で、大体今の税制対策の中で、減税とそれから消費税引き上げ、あわせて低所得者に有利な福祉政策ということを常々おっしゃっておられるということがよくわかりました。  私はその点では、今度の税制改革は実際上は低所得者に対して非常に大変な措置を強いるものだというふうに考えているわけですが、先ほどの島田先生や高山先生もお話がありましたように、財政支出の増大は避けられない、そういう意味で言いますと、このまま推移するならば、消費税税率は二けたのところにいかざるを得ないというお話がございました。  ですから、今回の法案の中には見直し条項がございまして、御承知のとおり、近い将来税率引き上げを考慮したものではないか、こういう点を私は思うのですね。ですから、福祉ビジョンは出されてないわ、それから税率引き上げは予測されているわ、こういうあたりについて、ぜひ先生の御意見をお伺いしたいと思いまして……。
  80. 丸尾直美

    丸尾公述人 御指摘のように、税は重くなっていきますし、どうしても所得税に対しては消費税の比重が高まっていく。これは、税の負担が重くなりますと勤労意欲への配慮が必要になりますから、そういう意味ではやむを得ないわけです。しかし、そのことによる分配上の不公正を調整するために、先ほどから申し上げましたように、福祉ビジョンをきちっと行うということと、資産三政策を行うということが重要だ。これをきちっとやれば、消費税率は上がっていきましても、全体として分配が不公正になるということにはならないということであります。  消費税率は、まあ長期的には勤労所得の世帯、勤労世帯への税課税負担率を今の一六%から三〇%以内にどうしても抑えるためには、二五ないし三〇%に抑えるためには、消費税率を、二〇二〇年代には二けたになるのは必要ではあろうかと私は考えています。
  81. 穀田恵二

    ○穀田委員 ありがとうございました。
  82. 高鳥修

    高鳥委員長 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。  公述人各位には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  これにて公聴会は散会いたします。    午後零時五十四分散会