運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1994-11-28 第131回国会 衆議院 世界貿易機関設立協定等に関する特別委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成六年十一月二十八日(月曜日)     午前十時開議 出席委員    委員長 佐藤 孝行君    理事 越智 伊平君 理事 川崎 二郎君    理事 小平 忠正君 理事 畑 英次郎君    理事 伊藤  茂君       逢沢 一郎君    小野 晋也君       片岡 武司君    岸本 光造君       久間 章生君    小杉  隆君       斉藤斗志二君    福田 康夫君       二田 孝治君    松岡 利勝君       松下 忠洋君    山本 有二君       井奥 貞雄君    遠藤 乙彦君       古賀 正浩君    鮫島 宗明君       白沢 三郎君    田名部匡省君       高木 義明君    松田 岩夫君       山本  拓君    秋葉 忠利君       遠藤  登君    鉢呂 吉雄君       濱田 健一君    横光 克彦君       和田 貞夫君    錦織  淳君       前原 誠司君    松本 善明君       遠藤 利明君  出席公述人         全国農業協同組         合中央会会長  豊田  計君         東京大学農学部         教授      荏開津典生君         セコム株式会社         取締役副会長  小島 正興君         国民生活セン         ター理事    青山三千子君         東都生活協同組         合理事長    宮村 光重君         全国食糧事業協         同組合連合会会         長       小林 正人君         日本労働組合総         連合会社会政策         局長      徳田 靱彦君  委員外出席者         外務委員会調査         室長      野村 忠清君         大蔵委員会調査         室長      中川 浩扶君         文教委員会調査         室長      長谷川善一君         農林水産委員会         調査室長    黒木 敏郎君         商工委員会調査         室長      石黒 正大君     ――――――――――――― 委員の異動 十一月二十八日  辞任         補欠選任   塩崎 恭久君     小野 晋也君   七条  明君     山本 有二君   田名部匡省君     白沢 三郎君   吉田  治君     高木 義明君   秋葉 忠利君     濱田 健一君   鉢呂 吉雄君     遠藤  登君 同日 辞任          補欠選任   小野 晋也君     塩崎 恭久君   山本 有二君     七条  明君   白沢 三郎君     田名部匡省君   高木 義明君     吉田  治君   遠藤  登君     鉢呂 吉雄君   濱田 健一君     秋葉 忠利君     ――――――――――――― 本日の公聴会意見を聞いた案件  世界貿易機関を設立するマラケシュ協定締結  について承認を求めるの件(条約第一号)  著作権法及び万国著作権条約実施に伴う著作  権法特例に関する法律の一部を改正する法律  案(内閣提出第一一号)  加工原料乳生産者補給金等暫定措置法の一部を  改正する法律案内閣提出第一二号)  繭糸価格安定法及び蚕糸砂糖類価格安定事業団  法の一部を改正する法律案内閣提出第一三号  )  農産物価格安定法の一部を改正する法律案(内  閣提出第一四号)  特許法等の一部を改正する法律案内閣提出第  一五号)  関税定率法等の一部を改正する法律案内閣提  出第一六号  主要食糧需給及び価格の安定に関する法律案  (内閣提出第一七号)      ――――◇―――――
  2. 佐藤孝行

    佐藤委員長 これより会議を開きます。  世界貿易機関を設立するマラケシュ協定締結について承認を求めるの件、著作権法及び万国著作権条約実施に伴う著作権法特例に関する法律の一部を改正する法律案加工原料乳生産者補給金等暫定措置法の一部を改正する法律案繭糸価格安定法及び蚕糸砂糖類価格安定事業団法の一部を改正する法律案農産物価格安定法の一部を改正する法律案特許法等の一部を改正する法律案関税定率法等の一部を改正する法律案及び主要食糧需給及び価格の安定に関する法律案の各案件について公聴会を行います。  この際、御出席公述人の皆様に一言あいさつ申し上げます。  本日は、御多忙中にもかかわらず御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。世界貿易機関設立協定外法案に対する御意見を拝聴し、各案件審査の参考にいたしたいと存じますので、忌揮のない御意見をお述べいただくようお願い申し上げます。  御意見は、豊田公述人荏開津公述人小島公述人の順序で、お一人約十五分以内でお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。  念のために申し上げますが、発言をする際にはその都度委員長の許可を受けることになっております。また、公述人委員に対し質疑を行うことはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきいただきたいと存じます。  それでは、最初に豊田公述人お願いしたいと思います。
  3. 豊田計

    豊田公述人 JA全中豊田であります。衆議院WTO特別委員会において、農業者並び生産者団体を代表して意見を述べる機会を与えていただきましたこと、厚く御礼を申し上げたいと存じます。  まず、UR農業合意関係について申し上げます。  農業食糧生産を第一義としていますが、それにとどまらず、環境国土保全を初めとして多面的な機能と役割を果たしており、食糧供給経済的効率性だけで評価することは大きな誤りであると思います。さらに、農業生産は自然や地理条件に制約されるものであり、世界各国におけるそれぞれの生産条件を無視し、農産物貿易ルール原則関税化としたウルグアイ・ラウンドにおける農業合意内容については、我が国農業者の立場からすれば基本的に反対であります。  関税化は、各国生産条件にかかわりなく競争基本原則にし、農産物市場自由化を招くものであり、生産条件の劣った国の農業を崩壊に導きかねません。経済的効率性が優先される工業製品貿易ルール農産物貿易ルールとしていいのかどうか、強い疑問を抱いております。  くらに、農産物輸出国輸入国の公正さが保たれていない不公正な内容であることも強く指摘せざるを得ません。また、我が国農業基幹作物でありまた主食である米について、関税化の例外を確保したとはいえ、その代償として国内需給動向関係なくミニマムアクセスという膨大な輸入義務を課せられたことは、国内農業の縮小につながりかねないものとして問題があると言わざるを得ません。  一方、地球規模で見た二十一世紀食糧人口環境関係については、爆発的に増加する人口食糧生産は追いつけない、これ以上特定の国、地域での集中的食糧生産を行うということは環境破壊を進行させるものと懸念されております。世界各国がみずからの農業生産資源を適切に活用して持続可能な農業生産を行い、国内自給基礎とした食糧供給安全保障確保していくことは、一国のエゴイズムではなくて、世界全体の課題であると思います。各国農業が多様な条件のもとで存立している事情を踏まえるとともに、世界的な食糧人口環境問題からすれば、各国において自国農業を維持発展させることが可能となる平等がつ公正な新たな農産物貿易ルール確立に向け、早急に我が国政府として取り組むべきであると思います。  WTO国内対策について申し上げます。  ガット・ウルグアイ・ラウンドの結果を踏まえたものが今回のWTO設立協定であり、しかも一部条項の受諾の諾否を選択できない、いわゆる一括受諾方式であると聞き及んでおります。したがって、国会における慎重な審議が行われ、国会においてWTO設立協定の批准がなされるとすれば、それは農業合意内容種々の問題があるということを踏まえた、極めて高度な政治的判断であると私どもとしては受けとめざるを得ないと思っております。  一方政府は、昨年十二月十七日、「影響を最小限に食い止め、その不安を払拭し、安んじて営農にいそしむことができる」ようにするため万全の措置を講じると国民に約束をされました。さらに先月二十五日には、緊急農業農村対策本部において、ウルグアイ・ラウンド農業合意関連対策大綱施策として決定し、地方単独施策を含めれば総事業費七兆二千百億円の財政措置を明らかにされました。また、今回の対策ウルグアイ・ラウンドに伴う新しい事業でおり、従来の農林予算に支障を来さないよう配慮することが政府と与党間で合意されている旨聞き及んでおり、これをたがえることがないように強く求めるものであります。  関連対策事業には、我々が繰り返し求めてきた農家負債農地流動化土地改良負担金新規就農、中山間地域個別品目等々の対策が盛り込まれ、今後の農業再建農村活性化への足がかりになるものと考えています。したがいまして、この対策を実効ある施策として具体的に実施することが肝要であります。  さらに、先進諸国の中で異常に低い食糧自給率の将来的な改善を目指し、国内生産維持拡大基礎とする食糧供給安全保障資源有効利用により将来にわたって生産確保する国内農業持続的発展一極集中ではなくて国土の均衡ある発展に向けた農村活性化を図るべく、これらを内容とした食糧農業農村に関する新たな基本法を広く国民全体で議論する中で制定すべきものであると存じます。  主要食糧法関係についてであります。  現行食糧管理法については、国民食糧安定供給に関し重要な役割を担ってきましたが、自主流通米の著しい拡大経済実態との乖離などの中で見直しの時期にあったと思っております。そのような意味で、今回食糧管理法廃止し新たな法制度に移行することは必要であるとは思いますが、新制度におきましても、国民主食である米の需給価格の安定に国が責任を持つ制度の意義はいくさかも失われるものではないと思っております。  第一は計画制度についてであります。  今回の制度政府計画制度を中心に需給価格の安定を図ることとしており、計画のもとで生産調整の円滑な推進備蓄の機動的な運営、適正かつ円滑な流通確保、輸出入の一元管理が行われることとなっております。したがって、国内産米需給影響を与えないミニマムアクセスの取り扱いとするとともに、基本計画の策定に際して、国民生活地域営農を安定させる観点から、消費者生産者意向十分配慮していくことが必要であります。  第二に、需給価格の安定に向けて、とりわけ重要となるのが的確な生産調整実施です。  今回の制度で初めて生産調整法律に位置づけられたことは評価をいたしますが、具体的にその実効が確保されるかどうかについては運用にゆだねられている部分が大きいと言えます。とりわけ、全国生産者が共同して取り組むことを基本に、地域生産者意向が反映できるような手法確立生産調整参加者が不利にならず、必要な生産調整数量確保できる助成金の体系や水準確保生産調整手法多様化登録出荷業者生産調整関連業務への従事の明確化等について十分生産者団体意向を踏まえていただきたいと存じます。くらに、生産調整推進について行政と生産者団体が一体となって取り組むことを基本とするべきであります。  第三に、備蓄制度運営についてであります。  稲作が自然条件に左右され、豊凶変動が避けられないことから、一定幅を持った弾力的運営を進めることを基本とし、その水準については、百五十ないし二百万トン程度が確保されるべきものと思います。また、政府備蓄実施主体となることを原則とし、これに必要な財政措置国民生活の安定に欠くことのできないものとして確保するとともに、需給状況に応じて民間備蓄調整保管実施せざるを得ない場合には、これに対する助成措置と円滑な販売を可能とする運営方法確立すべきであります。  第四に、流通基本となる計画流通米確保対策についてであります。  米の需給価格の安定のためには、自主流通米政府米から成る計画流通米大宗を占め、登録業者を通じて安定的に確保される必要があります。このため、計画流通米安定流通を可能とする十分な助成措置を講ずるべきであります。また、生産者に対する計画出荷基準数量配分手続や、登録出荷業者自主流通法人販売先等計画流通米について政令以下で定める事項については、生産者団体意見調整を十分行うよう求めるものであります。  第五に、米の価格形成あり方についてであります。  政府米買い入れ価格については、自主流通米価格動向需給動向並びに生産条件等を参酌することとなっておりますが、生産調整参加者からすれば、政府買い入れ価格米価全体の下支えとして機能するものとして考えられ、再生産確保観点を重視して算定方式水準が設定さるべきものであると思っております。また、自主流通米については、価格形成センターにおいて形成された価格取引の指標となることから、センター運営入札取引具体化に当たっては、生産者団体意向を踏まえていくことを求めるものであります。  個別品目でありますが、輸入農産物と対抗するために、私ども生産者競争力強化に不断の取り組みを行ってきたところでありますが、努力にも限界があると言わざるを得ません。今回、米以外の各品目については、既に自由化されている品目についてはさらなる関税の引き下げ、乳製品でん粉等に対する関税化導入等、その存立条件は一層厳しいものとなっております。個別品目対策については、各作目別経営確立するよう、価格の安定と需給調整対策拡充強化環境負荷の軽減、加工流通施設集約合理化、技術の確立普及等作目の特性に応じた多様な対策が各般にわたり講じられるべきものと考えます。  畜産、酪農に関しては、自給率維持向上に向けた生産目標明確化経営安定を図る中長期的な価格政策運用、担い手の育成を図る経営継承対策、生乳の計画生産を円滑に進める支援措置生産性向上させる基盤強化対策が重要と考えており、関連対策大綱に盛り込まれた項目については十分に活用してまいりたいと存じております。また、今回の法改正に関しては、事業団が輸入するカレントアクセス乳製品について、国内生産に悪影響を及ぼさないよう適切な管理運営を行うと聞いておりますが、生産者生産者団体意向を十分踏まえた政策展開を求めるものであります。  でん粉に関しては、畑作地域における基幹作目であり、原料芋生産性向上、工場の合理化等によるコスト削減国産でん粉需要拡大等について道切な対応が必要であり、でん粉政府売り渡し規定弾力化を図るべきであります。したがって、法改正後における政省令の整備について、生産者生産者団体意向を十分踏まえるよう求めたいと思います。  繭糸に関しては、現状においても厳しい生産経営環境にあることを踏まえ、農家経営十分配慮にただくようお願いをいたします。  組織事業関係であります。  農産物貿易の枠組みが新たなものとなる中で、国内農業持続的発展に向け、政策的対応確立するとともに、組合員の負託と期待JAグループとしてどのように対応していくかが重要な課題となっていることも事実であります。JA事業並びに組織あり方に関して種々批判があり、誤解に基づく批判もありますが、率直に耳を傾けなければならない批判もあります。  JAグループとしては、本年九月に第二十回JA全国大会を開催し、二十一世紀への農業再建JA改革に取り組むことといたしました。その内容は、食糧安全保障国土環境保全を図る日本農業再建農村活性化組合員との結びつき、消費者との連携を基礎とした協同活動強化地域づくり推進組合員等期待と信頼にこたえるJA事業組織改革と強靱な経営体質の構築であります。  私どもとしては、みずからの改革と実践が重要であるとの認識のもとに最大の努力を傾注する所存であります。御理解と御指導、御鞭撻を賜りまするように特にお願いを申し上げて、終わります。  ありがとうございました。(拍手)
  4. 佐藤孝行

    佐藤委員長 豊田公述人、ありがとうございました。  それでは次に、荏開津公述人お願いいたします。
  5. 荏開津典生

    荏開津公述人 東京大学荏開津と申します。  WTO協定締結及び関連法案に関して意見を申し上げます。  このような重大な問題に関しまして意見を申し上げます機会を与えてくださいましたことに厚く御礼申し上げます。  まず、WTOに関する協定及びそれに関連します法案及び農業対策でございますけれども、私は、提案は全体として妥当なものであり、速やかに承認されることが望ましい、こういうふうに考えております。  農産物に関しましては、ウルグアイ・ラウンドの結果でございますけれども、米のミニマムアクセス乳製品その他の輸入数量制限の撤廃というようなことは、日本農業にとりまして厳しい内容ではございますけれどもマークアップ率として認められた率や、あるいは関税化されました品目に関しまして認められました関税率などは、私の考えではかなり満足すべきものである、あるいはやむを得ないけれども非常に過酷なものであるというふうには考えられない、こういうふうに判断いたしております。  世界貿易拡大といいますことは、日本のような天然資源に乏しい国にとりましては経済発展必須条件であるのみならず、そもそも国民食糧の安定的な供給と申しますか、確保のためにも世界貿易発展ということが不可欠であります。こういうことを考えますときに、一つの交渉の結果としまして、今回のウルグアイ・ラウンドの決着はほぼ満足すべきものである、こういうふうに私は考えております。  第二に、この結果、もちろん日本国内農業にとりましては厳しい内容があるわけでございますけれども、そしてさらに国内農業は、国境外の問題、国の外からの問題にかかわらず、そもそも若い後継者が不足している、あるいは耕作放棄農地拡大している、こういうような点で、早急で抜本的な対策を必要としておりまして、このままでは次第にじり貧の方向に向かわざるを得ない、こういう状態でございましたけれども、それに対する根本的な対策方向は、平成四年六月に農林水産省から出されました「新しい食料・農業農村政策方向」及び本年の八月に農政審議会から提言されました「新たな国際環境対応した農政展開方向」、こういうものに示されております方向が私は妥当なものである、この方向に向かって進むべきである、こういうふうに考えております。  今回予定されております農業対策事業費ベースで六兆円を超えるもの、こういうふうに私は理解しておりますけれども、この二つの文書に示されました方針に従って、重点的にかつ効果的に実行していただきたい、こういうふうに考えておる次第でございます。  次に、関連する法案でございますけれども、時間の関係上、主要食糧需給及び価格の安定に関する法律案に限って意見を申し上げたいと思います。  現行食管法実態と乖離してさまざまな弊害を生じている、そして抜本的な改正の必要があるということは、既に広く私は認識されているところであると思います。また、私もその委員の一人でございますけれども、先般の農政審議会の提言にもそのことは明らかに指摘されているところであります。今回、WTO関連議題一つとして、食管法廃止と新しい食糧法の制定を奨言されましたことは、我が国農政史上画期的な出来事であり、私は速やかにこの古い法律廃止、新しい法律の成立することを期待しております。  これに関連しまして、二、三新しい法律内容ないし運営に関しまして意見を申し上げたいと思います。  まず第一でございますが、現行食管法廃止のやむなきに至ったということにはいろいろな理由がございますけれども、その一つの大きな理由は、法律が守ることができない、法律違反のいわゆる不正規米流通が公然の事実と化している、法律が守れない法律である、このことが廃止せざるを得ない大きな理由一つである、こういうふうに私は考えております。したがいまして、新食糧法におきましては、それがすべての国民の良識に照らしまして守るべく、守られるべきものである、こういうふうに内容及びその運用に万全を期していただきたい、こういうふうに思う次第でございます。  その具体的な内容といたしましては、計画流通米と申すものが流通大宗をなす、これは私も異存がございませんけれども計画外流通というところを、生産者の中で計画外で米を販売したい、こういう希望を持ち意図を持っている生産者につきましては、その意図に無理な規制を加えないように運用していただけないか、こういうふうに思う次第でございます。  食管法が現代の実情から乖離しまして守ることができない、こうなっておりますのは、もう五十年もたった法律でございますからやむを得ない面がある、こういうふうに私は思いますけれども、現在ここで成立いたします新しい法律ができた当初から守ることができない、良識ある国民判断に照らして守ることができない、こういうことでは非常にそれは問題である。五十年前の法律現状に合わない、これはやむを得ないものでありますけれども、現在つくられる法律がそのできた瞬間から守ることができないような部分が残りましては、甚だこれは問題である、私はこう思いますので、その要点は、計画外販売したい、こういう生産者意図を無理に規制するということのないような運営お願いしたい、これが第一点でございます。  第二点は、米の価格形成流通等が大幅に規制緩和されるわけでございますけれども、去年の不作、ことしの大豊作を考えるまでもなく、米につきましては、天候による大きな変化が避けることのできないものでございます。  今度の法律案を拝見いたしますと、不作による米の不足ないし米価の暴騰というようなことに関しましては、備蓄米ということでかなり万全の対策が講じられているように私は拝見いたします。ところが、豊作による米の過剰及びそれによって引き起こされるかもしれません米価暴落、これに対してはどうも明瞭な対策制度の中に織り込まれていないのではないか、こういうような危惧を抱いております。  米の場合のみならず、農産物に関しましては、豊凶による暴落対策というのは、アメリカでもヨーロッパでも制度の核心をなすものとして農業政策の中に織り込まれているところでありまして、日本農業政策におきましても、当然ながら暴落対策というものを明文化し、制度の中に盛り込むということが非常に大切であると私は思っております。それには、当然ながら財政負担というものが必要でありますけれども、この財政負担も、暴落時あるいは米の過剰時に、その場その場の場当たりの対策として財政負担が行われるのではなくて、制度化された、確立された制度に基づきまして行われるようにしていただくことが、農政がガラス張りと申しますか、国民全体の目によく理解され、支持をされるといった点で非常に重要であると私は思います。  その点で、今回の法律案にはやや暴落時の対策米過剰対策という点が、特にそれに関連します。あるいは必要であります財政負担ということが明示されていないうらみがあるように私は拝見いたします。運用面においてこの点に十分な御配慮をいただく、あるいは、関連します政令省令等におきまして十分な御配慮をいただくようにお願いしたいと思います。  これに関連いたしますが、米の過剰、潜在的な過剰に対処いたします転作ないし減反でございますけれども農政審議会の議論では、これをできる限り生産者の選択、自主的な判断を重んじた減反にすべきである、こういう意見が支配的であったと私は思っております。  ところで、生産者意図、選択を生かすような減反という場合には、減反に参加する生産者にそれなりのメリットと申しますか、それを選択するベネフィットといいますか、そういうものがあってしかるべきでありますけれども、今回の御提案の内容を拝見しまずに、その点もやや不十分である、こういう感じを私は持っております。強制、一律の減反が望ましくないことについてはもう大方の同意が得られていると思いますけれども、もし生産者の自主的な選択を重んじるものであれば、当然ながら、それを選んだときに、選んだ人に対して、何かの意味でのインセンティブと申しますかベネフィットがあることが必要でありますので、その点につきましても十分な御配慮をいただければと思います。  以上、時間になりましたので、簡単でございますが、意見を述べさせていただきました。どうもありがとうございました。(拍手)
  6. 佐藤孝行

    佐藤委員長 荏開津公述人、ありがとうございました。  次に、小島公述人お願いいたします。
  7. 小島正興

    小島公述人 セコムの小島でございます。  このような機会を与えていただきましたこと、厚く御礼申し上げます。  非常に光栄に思っておるわけでございますが、第一に、私、お断りしておかなきゃいけませんのは、マラケシュ協定及びその関連法律案等の改正について御検討いただいておる委員会でございますけれども、これから私申し上げます意見は、主として食糧及び農業に関連した問題でございますので、その点まず最初にお断りいたしておきたいと思います。  第二番目に、私、農政審議会委員をずっとやっておりまして、本年二月一日、総理官邸におきまして時の細川総理、畑農水大臣御出席のもとに、ウルグアイ・ラウンドの受け入れに伴いまして、これに対応する対策いかんという御諮問を受けましたときに、私もいろいろ意見をそのとき申し上げたわけでございますけれども、それ以来ずっと農政審議会において集中的にこの問題について審議をしてまいりました。ですから、私の意見につきましては、農政審議会におきます八月十二日の答申に十分に反映していると私は考えておるわけでございますが、私の意見は、そういう点につきましてその線に沿ったものであるということを第二にお断り申し上げておきたいと思います。  それから、その後、この答申に沿いまして、それからまた現在のいろいろ御検討の諸対策につきまして、総合的な農政措置等につきまして政府の御見解、発表されておるわけでございますけれども、これは実はその農政審議会の前からといいま治すか、この答申の前にといいますか、ガット・ウルグアイ・ラウンド受け入れの前、新農政というのの審議をずっとやっていたわけでありまして、その延長線上にあるものというふうに理解しておりますけれども、その作案等につきましても私ずっと参画しておりますので、私の意見はそういう点についての延長線上にあるというふうに考えております。  最後にお断りいたしますのは、私、経済同友会の広報部会長もやっておりますし、それから経団連の農政委員会の委員もやっておりますけれども、私から申し上げます意見はそれらとは全然独立したものというふうにお考えをいただきたいと思います。  まず最初に申し上げたいのは、基本的な考え方についてでございます。  八月十二日の農政審議会の「新たな国際環境対応した農政展開方向」という答申でございますけれども、この点の重点については諸先生方、十分御理解をいただいていると思います。この点につきましては、米の需給環境の変化についてどういうふうに対応していくか、あるいは備蓄等についての考え方、新たにそういう点についての考え方をここに導入した、あるいは足腰の強い農業経営をつくるためにどうしたらいいかということについてもこの中にうたったものでございますけれども、特に国境措置の変更に伴いまして、ウルグアイ・ラウンドの受け入れに伴っての措置につきましては、先ほど荏開津先生からもお話あったような方向でいろいろな提案がそこに行われておるわけでございまして、その点につきまして私はここで細かくは御説明申し上げませんけれども、ここで重要なことは、ウルグアイ・ラウンド対応しての農政審議会の答申の中では、文書にあらわれている背後にいろいろな委員の思いというものが込められているという点につきまして、ぜひ先生方に御理解をいただきたいと思います。  と申しますのは、確かに先ほど荏開津先と言われましたように、今までの食管法自身がいろいろ問題があって、これが法の体系をといいますか規制をなくなくなっているという実情はそのとおりでございます。それからまた、国際的な環境の変化に伴って我々としましては新しい農業ないし食糧に対しての体制をつくらにゃいかぬ、これも事実でございますけれども、ただ、もう一つ重要な点は、世界的に見まして食糧なり農業をめぐる環境は、今後十年、二十年という期間をとって考えますと、やはり今までウルグアイ・ラウンドで七年間討議していたような情勢の延長線上で考えていいかどうかという点についてもう一回考え直す必要があるんじゃないか、この辺についてはぜひこれからの国会審議におきましてもいろいろお考えいただきたいというふうに考えております。この点につきましては、世界的な環境学者におきましてもあるいは資源の問題を論ずる人たちにおきましてもいろいろ言われているところでございますので、ぜひ長期的な視点というものを今後の法律案の検討あるいは政策の検討においてお考えをいただきたいということでございます。  それから、次に申し上げたいのは、六年間の暫定措置ということでございます。この六年間というのは米の部分開放の期間でございます。それが七年目以降どういうふうになるかということでございますけれども、これは先ほど申し上げましたように、二月一日の農政審において私は畑農水大臣に申し上げたわけでございますけれども一六年という期間は非常に短い、新農政におきましても十年、その十年の期間におきまして農地流動化は過去十年間の実績七十万ヘクタールの二、三倍の流動化をやっていくんだ。それについて十年でもなかなか難しいんだ、百五十万ヘクタールぐらいの、あるいは二百万ヘクタールぐらいの農地流動化ができないと経営体の強化というのはできない。しかし、それを六年でやるということになりますと、物すごいエネルギーが必要なわけでございまして、そういう点について六年という期間をもう一回考え直して、十分にこれを達成するためには政策としてどういうエネルギーが要るかということをお考えいただきたいということでございます。  それから、米の七年目以降の問題でございます。これについては、この審議会の答申にも書いてございますけれども、七年たった場合にその時点におきます諸情勢を踏まえて適切な対応を行い得るようあらかじめ複数の選択肢を準備しておくべきだというふうに答申に書いてございます。  本問題というのは、しかし非常に外交的な問題もあるわけでございます。あるいは今後の中長期的な農政展開方向に非常に重要な影響を及ぼすわけでございますけれども、これはよほど注意して考えませんと、この前まで米の一粒の開放もしないという、昭和六十三年でしたか、両院の本会議決議というものがございまして、それが逆にあったためと言うと語弊がございますけれども、そのために、開放が部分的にせよある場合の、あった場合の対策というものについて全然空白状態に置かれたということでございますので、余りにも七年団以降は空白だということだけで考えますと、七年目以降といいますか、あるいは六年間におきます対策というのが実績を上げ得ないということになりますので、そういう点について十分に御検討いただきたいというふうに考えるわけでございます。  いずれにしましても、建前と本音というのはよく議論としてあるわけでございますけれども農業問題につきましてあるいは食糧問題につきまして、こう申し上げては失礼かもしれませんけれども国会の議論というのはえてして建前の議論が非常に多くなっている場合がございます。そういう点につきまして、逆にそういう建前の議論が農民自身のといいますか農業者の政策に対する不信感を呼ぶことになりますし、あるいは逆に、農業者以外の農業に対するあるいは農村に対する理解を非常に曲がったものにする可能性もあるわけでございまして、その点について十分にお考えいただきたいというふうに考えるわけです。  そういう面からしますと、今回の新国内対策として発表されました六兆百億円、地方単独一兆二千億円というような国内対策につきましても、国民一般の感じ方とそれから政府の考え方というものの間には大きなギャップがあるということを率直に申し上げなければならないと思います。一般が考えるのは、一夜にしてといいますか、三兆五千億が六兆百億円になってしまったというように感じておるわけでございますし、それから先生方は、我々の力で三兆五千億が六兆百億になったというふうに御説明になっておるようでございますが、そういうことでなくて、具体的にどういうふうに、これは積み上げたというふうに当局の方は御説明になると思いますけれども、それだったら国民によくその辺をわかるような形で御説明いただかなければならないというふうに考えております。  次に大きな問題は、先ほど荏開津教授も言われましたように、生産調整の難しさ、それからその重要性についてでございますけれども、今回の新食糧法におきまして、過剰状態におきます場合に、いかにしてこの生産調整を実効を上げるような形でやるかということが一番大きな問題でございます。  今までは、これについて誘導措置といいますか、地域に対してのいろいろ、何といいますか、補助金その他においてペナルティーを科するとかというようなことであったわけでございますけれども、これからはなかなかそれができないわけです。しかも、それは専ら、豊田会長おられますけれどもJA生産団体に課せられた問題というふうになっているわけでございますが、本来的に言いまして、やはりもちろん生産調整カルテルでございます、カルテルでございますから生産団体が責任を持つということは当然でございますけれども、ただ、現在のJAそのままの形においてこういうふうな力を発揮させるということが果たして非常に期待し得るかどうかということについては、これから御検討いただかなきゃいけない。  戦前においては帝国農会と産業組合というのがございました。現在においては、産業組合の機能と、それから一部帝国農会の機能をJAが背負っておられるということになっておるわけでございまして、また今までの食管法と違いまして、新しい新食管法におきましては、生産調整を遂行するような、先ほど荏開津教授はメリットとおっしゃいましたが、そういう誘導措置というのは非常に限られたものになるのではないかという危惧を持っておりますので、その辺について十分にお考えいただきたいというふうに考えるわけでございます。  いろいろ申し上げたいことはほかにもあるわけでございますけれども、最初にもちょっと触れましたように、これからの世界農業というのは、今までといいますか、ウルグアイ・ラウンドで考えられていたといいますか、検討されていたように、世界貿易自由化のために農産物を含めてこの自由化を達成するという理念は確かにいいわけでございまして、またこれに対して、これを受け入れるということについては、先ほど来申し上げましたように、私はこのいろいろの法律改正案等が農政審議会の今までの検討の延長線上にあるというふうに考えておりますので、賛成しておるわけでございます。  ただ、今後の世界貿易あるいは世界食糧需給の情勢、特に途上国におきます人口の爆発的な増加だとか、あるいはアジアにおきます急激な経済成長に伴います生活水準の上昇、それによる食糧消費の増加というような点を考慮に入れて、今後の長期的な農業政策といいますか、食糧政策をどう考えるかということをぜひ長期的な目で御検討いただきたい。ただし、これはこの法律案なりあるいは条約の受け入れとは別個の問題でございますけれども、ぜひ長期的な視野からそういう問題についてお考えいただき、最初から申し上げましたように、それによって農業と非農業といいますか、農業以外との相互信頼関係、相互理解関係がいかに進むか、進めるかということをお考えいただきたいということをお願いいたしまして、私の意見陳述にさせていただきたいと思います。  どうもありがとうございました。(拍手)
  8. 佐藤孝行

    佐藤委員長 小島公述人、ありがとうございました。     ―――――――――――――
  9. 佐藤孝行

    佐藤委員長 これより公述人に対する質疑を行いたいと思います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許可いたします。最初に、松岡利勝君。
  10. 松岡利勝

    ○松岡(利)委員 熊本一区の松岡利勝でございます。  きょうは、公述人の先生方には大変御苦労さまでございます。私は、今のお話に対しまして、特に全中豊田会長を中心に御見解を賜ってまいりたいと思います。よろしくお願いをいたします。  ことしの九月でございましたが、カイロで世界人口会議が開かれ、私も参加いたしました。そこで、持続可能な開発ということが決議をされたわけであります。世界人口は、一年に一億人ずつ今増加いたしております。そうなりますと、早晩地球は限界に達する。そこで、したがってこれまでのような経済性追求、利益一辺倒の開発では地球は破滅し人類は滅ぶ、こういう深刻な認識で世界の指導者が一致を見た、その結果の決議だったわけでございます。しかも、その中で、地球環境を生み出す世界のあらゆる地域の農林業を存立せしめるべきである、こういうことが特に強く強調されたわけでございます。この考えが今や世界の潮流であろう、私はこのように思います。  一方、日本はどうかといいますと、世界の流れと反対といいますか、逆行しているような状況にある。その代表が大変失礼ながら日経連の永野会長ではないか、こう思っておるわけでありまして、この永野会長は、効率性の悪い農業は滅んでもよい、こういうことをおっしゃっておる。これは、自己の利益しか顧みない、まくに自分たち工業界、経済界の利益のためには、国民生活のあらゆる面の土台であり、そしてまた地球環境のもとである農林業なんかつぶしてもよいという、恐ろしいこれは認識であります。  例えて言いますと、家を建てるとき、確かに外見、内装も大事でございますが、目に見えないけれども土台の重要性は、これは言うまでもないわけでございます。永野会長は、農林業が国民生活、地球環境といかにこの関係を深く支えているか、全くその因果関係も御理解ないようでございまして、無知蒙昧とまでは申しませんが、どうもそれに近いとしか言いようがない、このように思うわけであります。  そういう人が日本の経済界の代表としておられる、これはまことに世界の潮流と反対の憂うべきことである、私はこう思っておりますが、まずこの点につきまして、農業者の代表であり農業団体の中心のお立場で国民に訴えられます、その全中会長としてどのような御感想をお持ちであるか、まずこのことをお伺いいたしたいと思います。
  11. 豊田計

    豊田公述人 ただいま松岡先生から地球の人口環境食糧問題についての高い見識を伺いまして、私ども心から敬意を表する次第であります。  荏開津先生あるいは小島さんからもお話があったとおりでありまして、中長期的に考えれば、貴重な農耕地を、輸出国のあるいは輸入国農地も、これを大切に、適切に活用していくということがあって初めて人類の将来の繁栄はある、このように思っております。  そういう中で、永野会長のお話でありますが、農業無用論、全く私どもは理解のできないことであります。報道を見た段階では、大きな何かの誤解があって、あるいは間違って言わくったのではないか、このように思っておりまして、恐らく、財界の代表という方でありますから、小島さんのような方がほとんどでありまして、永野さんも今日の段階では、あれは間違ったことを言ったと、このように思っておられるのでなければこれは大変なことだ、こう思っております。  私ども、財界の皆さんにも農業食糧人口についての正しい理解を求めたい、国民運動を起こしたいと考えておりますので、この永野発言については大変遺憾に存じておりまして、抗議の文書等も出した次第であります。そのような間違った考え方が日本の中に大きく広がるというようなことがないように、先生方の御指導をお願いしたいと存じます。
  12. 松岡利勝

    ○松岡(利)委員 よく承りました。本当に憂うべきことでございまして、世界の政治家、また各界の指導者、そういうような認識で、私が先ほど申し上げたような認識が、ああいう人口会議の決議でございました。間違ってもそのような方が日本のある政党の代表なんかになられることはないと思いますが、本当にその点は危惧をいたしております。  次に参りたいと思いますが、水がなければ、これはもう生活も経済活動も、私どものあらゆる活動が一日も成り立たない、そういうことはもう自明の理でございます。この水を確保して供給する、そういう働きを水田が、また森林もそうでございますが、どれほど大きな役割を果たしているかということでございます。また水害、そういった災害を防ぐ働きを、水田はあぜの高くで、ダムと同じような機能で、これをしっかり果たしておる。森林もそうでございます。貯水量一つとりましても、これは水田の貯水量の方がダムの全体の貯水量よりも多い。また、災害を防ぐ能力に洪水調節能力というのがございますが、これも、ダムが持っておるその全体の量三十一億トンよりも、水田の持っておるその能力三十六億トン、五億トンも多い、こういう実態でございます。  そういうことで考えますときに、私は、さらにまた加えて、人々に憩いと潤い、ゆとりと安らぎ、こういったものを与える水と緑と自然、こういうようなことをずっと考えてまいりますと、数えれば切りがない効用というものをこの農業、林業というものは国民生活に対して与えておる、こういうように考えるわけであります。  ことしの水不足でももう既に明らかなとおりでございますが、こういった農林業の、言ってみれば、自然にただ、何といいますか、与えられておるように錯覚をいたしておりますけれども、これはまさに、農林業がきちんと維持をされて、管理をされて、その中から出てくる働きでございまして、このような効用は、これからますます多く求められることはあっても、少なく求められるということはないと思います。  したがいまして、こういった効用をより多く、より大きく発揮していくためにも、私は、ある程度の国民の負担、国民の皆様方の支えというものが必要ではないかと思っております。そのような意味で、そういった効用を一番認識をし、また一番そのことを理解をしておるこの農林業関係、そういう立場から、私は、国民生活の安定、そしてまた発展、また豊かさのためにも、そのことをしっかりと推進していく必要がある。そういう立場に立って、一番の直接の関係者として、国民の皆様方に、大変恐縮ではございますが、国民負担というものも求めるような、そういった一大提起をもうそろそろすべきではないかと思っております。そうでないことには国民生活の土台というものが守られなくなってしまう。  そういうようなことにつきまして、全中として、また農業団体全体として、このことに対してどのようなお考えをお持ちであるか、そのこともお聞きをしておきたいと思います。
  13. 豊田計

    豊田公述人 一反歩の田んぼに一ミリの水が一トン、こういうことでありまして、先生おっしゃるように、水田が、貴重な水を一気に急峻な山から海に流し落とさない、そういう大きな役割を果たしていることはお話しのとおりであります。三菱総合研究所の試算にょりますと、今先生がおっしゃったものを金で計算をしてみますと、四兆七千億円の膨大な額になる、こういうことであります。  さきに水源税というような話が出たことを記憶をいたしておりますが、私どもは、先生おっしゃるような立場で、農林業に対する国の財政措置、いわゆる保護というもの、過保護と、このような批判がありますが、適正な財政措置というものは当然あってしかるべきものと、自然環境国土保全に農林業が大きな役割を果たしておるという立場から、国民の理解はぜひともいただきたいし、いただけるもの、このように思っております。  今回の国内対策の中でもいろいろと御配慮をいただいておりますが、くらなる充実について先生方の御理解と御尽力を賜ればありがたい、このように存じております。
  14. 松岡利勝

    ○松岡(利)委員 ぜひ今お示しをいただいたような方向で、これはもう官民挙げまして、また各界挙げて取り組んでまいらなきゃならない問題だと認識をいたしております。私どももしっかり頑張ってまいりたいと思います。ぜひよろしくお願いを申し上げたいと思います。  次に、ウルグアイ・ラウンド関連国内農業対策の具体的なことにつきまして少しお伺いしたいと思うわけでございますが、六兆百億、そしてまた地方の関係は一兆二千億。七兆二千百億の国内対策、形として見ますと、そういう枠でまとまったわけでございますが、私ども、いろいろとまだまだ不十分な点もありますけれども、これはこれで一定の評価をいたしておるところでございます。  しかし、まだなおいろいろ詰めていかなきゃいけない問題があると思っております。特に農家の負債整理。牛肉自由化、大変な外交交渉の結果、大変な暴落をして、そのことによってふえた負債、こういったものは今もう大変な負担になっております。こういった負債をどう整理するか、重荷をどう軽くして今後に向かっていくか、これが一番基本でございますが、この負債整理についても、私は、今回あれだけの措置をしたけれども、例えば農協の損金処理の問題、非課税枠の問題、まだまだいっぱいあると思っております。  くらに、酪農・畜産対策、中山間対策くらに新食糧法の問題、まあ言えば切りがありませんし、短い時間では到底これは消化し切れないわけでございますが、この点につきまして、今後なお、全中の豊田会長として、ぜひこういった点はなおポイントとして今後さらなるひとつ取り組みをお願いしたいんだ、こういった点ございましたら、要点だけで結構でありますから、お聞かせを願いたいと思います。
  15. 豊田計

    豊田公述人 ただいまお話をいただいて、ありがたくお礼を申し上げるところでございます。  あの六兆百億円、さらには一兆二千億円の国内対策が的確に、しかも従来の農林予算にめり込まない、支障を来さない、こういう合意が政府・与党の中でされた、このように伺っておりますから、そのとおりに実施をされることをまずお願いを申し上げたいと思っております。  畜産の対策、これも、畜産は今、養豚にいたしましても、酪農にいたしましても、驚くべき農家の減少という状況にあります。深刻な状況にありまして、その負債の対策について今回も一定の措置をいただくということで、これを足がかりとして私どもは畜産あるいは酪農の前進を図ってまいりたい、このように存じております。  それから、特にお願いを申し上げたいのは、中山間地対策であります。日本農業の四割は中山間地、このように言われておりますが、この条件不利な中山間地の対策について、これも特別枠、自治省の予算一兆二千億もその中で運用をされるとも思いますが、特定のメニュー方式、こういう形ではなくて、その地域地域実態に合った施策ができるように、市町村の段階の知恵を十分活用ができるような対応について御理解をいただきたい、こう思っております。  以上のような、その他幾つも問題がありますが、私どもは、先生方の御指導をいただいて懸命な努力をしていきたい、こう思っております。
  16. 松岡利勝

    ○松岡(利)委員 そこで最後に、私はこれからの大変長き将来にわたっての問題を、ひとつ三人の先生方に一言ずつ御見解を賜りたいと思うのでございますが、私は、今般といいますか今回のウルグアイ・ラウンド農業合意の結果といいますものは、これは誤ったものであったと思っております。  私どももいろいろな努力をいたしてまいりました。私個人で申し上げますと、アメリカにも三度参りました。そして、三十名近い上下両院の議員の先生方との意見の交換もいたしてまいりました。ジュネーブにも二回参りました。韓国にも三、四回、台湾にも参りました。そして、いろいろこういったことの意見交換をいたしてまいりましたが、やはり今回の結果はいずれ将来は正すべきであると思っております。サザーランド事務局長にも申し上げました、これは間違ったことになると。あなたはやはり世界の将来、人類の将来に対して誤ったことを導いたその責任者ということになるぞということも申し上げました。工業のツケを農業に転嫁していく、そういったことで地球を進めては人類の将来はない、こういうふうに私は思っております。  そこで、次はやはり、もう今回の段階でも申し上げておったわけでありますが、緑のラウンドとも申すべきグリーンラウンド、そういったことで農業の分野は別扱いするのだ、こういうような観点で私は整理をし直すべきではないかと思っております。  大変口幅ったいことで、旧連立の皆様方には耳の痛いことを申し上げますが、自民党がずっとやってきてその延長線上に、結果は一緒だったのだ、こういうことを言われますけれども、私はずっといろいろな形で、当時ジュネーブにもおりましたが、あの韓国の農林大臣を初めいろいろな各国関係の大臣方は全部すっとそこに長くとどまっておられまして、そして最後の最後のぎりぎりした大変な詰めをされた、こういうことでございます。私が行ったら、当時間違われて、あなたが日本の農林大臣ですか、大変失礼なのですが、そうやって言われたぐらい。いやいや、大臣は来ていないのだ、こう言ったのでありますけれども、そういうことであった。したがいまして、最後のあの段階では日本の政治は機能していなかった、まさに役所任せであった、そういうことでございまして、これは私がこの目で、肌で実感をしてきたことでございます。  したがいまして、私は、これはまた政治の力において、これからのやはり人類、地球の将来を考える、その立場に立って、いま一度これは次のラウンドを日本から提案をし、求めて、そしてこの農業合意というものはこれは工業と同一に扱わないような形にもう一遍し直す、これが基本だと思っております。  そういう点につきまして、お一人ずつ、どのような御見解をお持ちかをまずお伺いしたいと思います。
  17. 豊田計

    豊田公述人 ただいまラウンドの合意が誤りであったという先生の御指摘、私ども農業者の本当の気持ちを代弁をいただいたもの、このように考えております。  地球規模での問題提起、私ども全くそのとおりに考えておりまして、ラウンド合意が誤りである、六年後には、先ほども申し上げましたが、農業貿易ルールを見直す必要がある、そうでなければ、人口環境食糧問題という立場から考えると、世界食糧危機は、今もありますけれども、顕在化することは必至である。FAOを初め多くの専門機関あるいは学者の先生方も言われておるとおりでありまして、そのような運動を私どもはこれから地道に、私どもだけではなくて全国民の理解と賛同を得て、くらには国際世論の啓発を図りながら、ぜひとも六年後にはこの農業の不公平なルールというものを改めていただきたい、そのためには、政府国会の先生方の格別の御尽力を賜りたい、お願いを申し上げる次第でございます。
  18. 荏開津典生

    荏開津公述人 農業が工業と必ずしも同じ原理で、貿易によって世界の経済を動かしていくわけにはいかないという点につきましては私も同感でございます。  ただ、私は、先ほども申しましたけれども、今回のウルグアイ・ラウンドの決着は、必ずしも非常に日本にとってひどいものではない、まあまあ我慢できるものであるというふうな理解をしております。それは、確かに関税化はされ、また米についてはミニマムアクセスを認めざるを得なかったわけでございますけれども関税の率及び米について認められましたマークアップの率というのは相当に高いものであって、そのもとで日本農業が全くやっていけないというようなものではないというふうにまず理解しているからであります。  それからもう一点、こういうことを申し上げたいと思います。  今回の合意で、世界貿易はできるだけ自由にやった方がいいということでありますけれども農業はなかなかそうはいかないわけでありますが、それでは国内農業というものをどういうふうにして日本のような条件に恵まれない国で維持していくかということでございます。これまでのように国境を閉じまして、そこでシャットアウトして、中で非常に高い価格を維持していく、こういうことではなくて、日本農業が大事であるということであれば、自由貿易原則というのは尊重しながら、国内農業を守るために財政がお金を負担していくのだ、財政負担ということを明示することによって、日本日本国内農業をこれだけ大事にするのだということを世界に示す、こういうことが大切になってくるのではないかと私は思っております。  これは多分アメリカでもヨーロッパでも同じ動きであるかと思いますけれども、つまり、高い値段、消費者負担による農業保護ないし農政ということから、財政負担による農業保護ないし農政への移行ということ、つまり、これだけのお金を日本は負担するのだということを世界に明示する、そのことによって、なるほど、お金を使っても日本国内農業を大切に思っているのだということをほかの国にも理解していただく、こういう方向へ動いていくべきではないか、こういうのが私の意見でございます。
  19. 小島正興

    小島公述人 最初の先生のおっしゃいました、この受け入れが足かあるいは非かという問題でございますけれども、私は、この受け入れが是か非かと論じる以前に、日本農業が非常な危機に直面していた、それ自身に問題が非常に大きくて、このままでは続けていけなくなってきたのだというふうに認識しておりまして、その点が第一点でございます。  それから第二点につきましては、これは先ほど私も触れましたように、これからの環境問題とかあるいは食糧資源の問題というものを考えますと、我々文明大国としての日本、こういうことを考えますと、食糧の自給の維持といいますか、自給率の低下を抑える、抑制ということ、あるいは足腰の強い農業を維持するためには、やはりそれなりのソーシャルコストといいますか、国民がそれを負うのは当然だと思いますし、そういう面から、そういう合意を国民としてでき得るような、そういうふうな農業、あるいは先ほど申し上げました農業と非農業との間の理解関係の造成が非常に重要な問題になるのじゃないかというふうに考えております。  以上でございます。
  20. 松岡利勝

    ○松岡(利)委員 どうもありがとうございました。時間が参りましたので終わります。  ありがとうございました。
  21. 佐藤孝行

    佐藤委員長 次に、遠藤登君。
  22. 遠藤登

    遠藤(登)委員 大変御多用な中を割いて貴重な御意見を聞かせていただく機会をいただきまして、ありがとうございます。  私は、山形一区から選出されている遠藤であります。どうぞよろしくお願いします。  それで、今もお話ありましたのですが、一つ荏開津先生、学問的な立場で、先ほどもお話あったのですが、二十一世紀にかけて人口の急増問題、それから食糧問題、環境問題、まさに人類の二十一世紀の危機的な推測の状況にあるわけであります。そういう立場から、学問的に先生のお考えになっているいわば食糧問題、農業問題、国際的なあるいは人類的な課題、地球的な規模で考えた場合にどのような状況の推測に立っていらっしゃるのか、先生のお考え方、それに対する世界的なその課題を克服するためのありょうについてのお考え方をちょっとお聞かせをいただきたい。
  23. 荏開津典生

    荏開津公述人 二十一世紀と申しましても、最初のころと終わりの方とでは大分時間が差がありまして、一概には申しかねますけれども、私の考えでは、当面二十一世紀の前半までは、世界全体の人口の問題には十分な注意はもちろん必要でありますけれども、特に日本の立場といたしましては、後進諸国の農業発展による食糧生産の増大ということにどれだけ日本が、まあ援助という格好でありますけれども力がかせるか、こういうことが一番大きな課題ではないかと思っております。  特に、現在、世界の全体を見ましたときに、食糧問題の一番の焦点になりますのはアフリカでありますけれども、アフリカの農業というのは、甚だ惨めな状態に停滞したままになっているわけでありまして、こういうところの農業発展ということに日本がどれだけの力をかせるかという、これは非常に大きな問題である、こういうふうに私は思っております。  日本農政というのとアメリカの農政というのを私、比較してみますと、時々遺憾に思うのは、アメリカは常に、もちろんアメリカの国益ということもございますけれども世界全体の農業食糧人口ということに常に気を配っていると申しますか、それを見渡した上でいろいろなことを考えているように私は思います。日本の場合に、農政は、やや国内の問題、日本の問題というものに焦点が絞られ過ぎている。もう少し世界全体、特に、非常に遠いところになりますけれども、アフリカやあるいは南アメリカのところまで日本は目を配って、そういうところの農業発展に対してできる限りの力をかすべき、そういう立場に日本が来ているというふうに私は思っております。
  24. 遠藤登

    遠藤(登)委員 同じ問題について、小島先生の見解もひとつお聞かせいただきたいと思います。
  25. 小島正興

    小島公述人 世界的な食糧の今後の問題、それから環境の変化等に対してどうするかという問題につきましては、先ほど意見として申し上げたとおりでございます。私としましては、この二十一世紀におきます世界的な食糧需給の問題、それに対して農業供給がどういうふうになるかということは非常に重要な問題だと思います。  確かに、三、四十年前に実はローマ・クラブからの提言がございまして、それによって人口増加に対して食糧供給が追いつかないというような非常に危惧が呈されたことがあるわけでございますけれども、その後におきましては、実は、農業関係におきまして非常に、いわゆる緑の革命というような技術的な大発展がございまして、それによって供給が非常に増加したということと、もう一つは、世界経済が停滞していたということのために、途上国におきます食糧需要というものがそれほど、現在ほど伸びていなかったということもございまして、いわゆるローマ・クラブにおきます心配というのは紀憂に終わったというふうに考えられたわけでございますけれども、現在におきましては、先ほど申し上げましたように、それは全く違う、二十一世紀に向けてはそれはくらに深刻な問題になるということを考えなきゃいけない。先生のおっしゃるとおりだと私は思っております。  以上でございます。
  26. 遠藤登

    遠藤(登)委員 それに関連しまして、やはり国内対策ということでありますが、それは、特に中山間の問題一つとらえて御意見をお聞かせいただきたいんですが、現在、大体年間、山間の集落を中心にして、二百五十を超える集落が日本列島から姿を消しているという状況がありますね。それで、国土の約半分を占める中山間ですね。そして、担い手はほとんど山の集落にはいない。高齢化が極度に進行している。山間の集落はほとんど崩壊状況にある。そして、国土の半分を占めるこういう中山間ですね。  それから、ウルグアイ・ラウンドの合意の問題、関税化、開放化の問題。国土の半分を占める、それは環境の悪化を含めて、これは日本国民の将来にとって、環境問題、食糧問題あるいは国土保全問題を含めて、これは国民的な重要な課題だと思うのでありますが、その対策のありようについて率直な御意見をお聞かせいただきたいというふうに思います。
  27. 佐藤孝行

    佐藤委員長 どなたですか。
  28. 遠藤登

    遠藤(登)委員 荏開津先生。小島先生の見解もひとつお聞かせください。
  29. 荏開津典生

    荏開津公述人 中山間の問題につきましては、私は先ほど申すべきでありましたが、時間の関係上申し上げることができませんでしたけれども、私は、農村地域、山村地域の維持保全ということは非常に大切である、こういう考えを持っております。現在、日本国内、山村地域を訪問いたしますと、多くの町長さん、村長さんの方々が、人口の減少に対して非常に一生懸命に抵抗をしておられる。いろんなことを考えて頑張っておられるわけでありますが、これに対しては、私は、国全体として思い切った財政的な支援をすべきではないか、こういうふうに思っております。  その具体的なやり方はまたいろいろとお考えいただかなければなりませんけれども、御承知のとおり、ヨーロッパでは、山間の農業に対してはほとんど全部補助金でこれを賄うような、ある意味で、経済的に見れば非常にロスの多い農業を、ヨーロッパ全体の共通農業政策ということで、十分な補助金と申しますか、一〇〇%補助金というような農業を維持しているわけであります。  ただ、山間農村地域地域社会の維持という問題は、私は、農業政策だけでは維持できない問題である、こういうふうに思っておりますので、省庁、役所の縄張りというようなことにこだわらず、山間の農村社会、農村地域の維持ということを一つの国政上の非常に大きな問題というふうにお考えいただきまして、包括的な立場から、統一的な立場から十分な援助をしていただきたい、こういうふうに思っておる次第でございます。
  30. 小島正興

    小島公述人 中山間地の問題につきましては、ぐきの新農政のときにおきましても非常にこの点議論いたしたのは、先生御承知のとおりだと思いますが、そのときに私申し上げましたのは、中山間地対策というのは金融面における支援だけでは非常に無理がある、だから、その所得を何とか確保するためには、直接的な補償なりあるいは補助というのは必要だということを私はずっと主張しておりましたし、現在でも間違っていないというふうに考えております。  二番目に、中山間地は現在日本農地の四割を占めておるということでございますけれども、確かに定義的にはそういうことかもしれませんけれども、しかし、四割の中山間地ということを考えますと、これについて特殊な措置をするとか、これについて特別な援助をするということにつきましては、なかなか全般的なコンセンサスというのは得られないんじゃないか。もし本気になって中山間地対策をするというのだったら、一割なり二割というような中山間地について、これに集中的に対策をとるということの方が効率的でもありますし、国民的なコンセンサスは得られるのではないかというふうに考えております。  以上でございます。
  31. 遠藤登

    遠藤(登)委員 大変時間もありませんが、まず全中会長さん、大変な御努力をなされていらっしゃいますが、一つは、生産調整の実効確保のために特に留意すべき点についてお聞かせをいただきたいと思います。
  32. 豊田計

    豊田公述人 生産調整の実効確保、極めて重要な難しい課題であると思っております。選択制という言葉がひとり歩きをして、やりたい者がやってやりたくない者はやらないで自由勝手でよろしいというような理解が、残念ながら風潮として今ある。全体として協力をしていかなければ成果は上がらない。  その具体的な方策として、荏開津先生からも御指摘がありましたが、生産調整に参加する者に相当のメリットがある、やることによって、やらない人が得をして、やった者は大損をするというような結果にならないような対応が必要だ。従来もいろいろな規制等の中でもそのような例が数多くあって、これがまた立派な賢いやり方であるがごとき報道等がされたりして、正直者がばかを見る、こういうようなことについての批判農村では非常に多いわけであります。  そういうことにならないような、生産調整に参加する者が、これは全体のプラスのためにやることでありますから、共補償というようなことも我々今日までやってまいりましたが、荏開津先生御指摘のような、私も同じように申し上げましたが、メリットを与える、こういうことが具体的に示されなければ実効は容易に上がらないではないか、このように思っておりまして、その点について、今度の新しい法律あるいは政令、省令の中で、あるいは予算の中でしっかり御配慮をいただきたい、お願いを申し上げる次第でございます。
  33. 遠藤登

    遠藤(登)委員 先ほど荏開津先生から貴重な、いわば豊作、過剰と価格暴落の問題について、政策的に非常に欠陥があるのじゃないかという御指摘をいただきました。そのためのいわば財政投資という問題も指摘をされたわけでありますが、ちょっと具体的に、どういう手だてをしていわば安定した価格を維持することができるかという、かような視点についてちょっとお聞かせをいただきたいと思います。
  34. 荏開津典生

    荏開津公述人 これは、現在提案されております法律の範囲内でどういうことができるか、私には十分わかりませんけれども、私が考えますのには、自由な流通あるいは自由な価格形成、こういう方向へ米の経済を持っていくというのが今回の新しい法律の趣旨でございますので、その場合に暴落したのに対してどういう措置を講ずるかというのは、ヨーロッパないしアメリカの基本的な考え方は二つありまして、一つは、暴落したときには政府がこれを買って買い支える、こういう方向一つあります。もう一つは、政府は買わないけれども、ある価格を設定しておきまして、これは正常の価格よりも少し低い、一割なり二割なり低い価格でありますけれども、その価格よりもくらに下がってしまった場合には、その設定された価格との差額を補助金として出す、これはいわゆる不足払いと申す方法。この二つ以外にはなかなか考えがたいわけであります。  それで、私自身は、買い支えという方法は、これ非常にコストのかかる方法である。特にヨーロッパは基本的に買い支え方式でありますけれども、大変な過剰在庫になるのみならず、政府が経済の中に手を出すということでいろいろな問題を生じる、ちょっとよくない方法ではないかというふうに思っております。  今考えられます方法は、むしろある最低限の価格を設定しまして、それを割り込んで暴落した場合には、その差額を財政によって補てんするという不足払いの方式が望ましいのではないかと考えておりますけれども、今度の新しい法律との関係で、これを何とか実質上不足払いになるような、そういうような運用ができないものか、それができるのが一番いいのではないか、こういうふうに私は思っております。  これにはもちろんある程度の財政負担というものも暴落時に備えて持っていなければなりませんけれども暴落したときに、そのときそのときである程度のお金を出すというよりは、常に制度としてそういうものがあって、たまたま天候のかげん等で豊作になって暴落した場合にはその制度に従って財政負担をするという方が、そのときそのときのその場限りの財政負担よりははるかに国民の支持を受けやすい、こういうふうに私は考えております。
  35. 遠藤登

    遠藤(登)委員 時間が参りましたので終わりますが、やはり足腰の強い農業の問題、小島先生からも指摘ありましたが、大体六年間というのは短い、やはりそれは見直す必要があるという問題とか、それから中長期的な視点で全体的に見直すということも大事だ。あるいは中山間対策についても、我々も議論をさせていただきたいと思いますが、できれば集中的な議論を農政審でもやっていただきたいものだ。こんなことなど、大変貴重な御意見をいただきまして、まことにありがとうございました。  終わります。
  36. 佐藤孝行

    佐藤委員長 次に、古賀正浩君。
  37. 古賀正浩

    ○古賀(正)委員 本日は、三人の公述人の皆様方、お忙しい中に貴重な御意見を賜りまして、ありがとうございました。大変賛同もし、共感もするところもございました。今までのいろいろな御質疑のお答えもございましたが、一部重複するかもしれませんが、ひとつ若干議論を進めさせていただきたいと思います。  まず、豊田公述人にお伺いしたいと思うのですが、戦後五十年、最初食糧不足の時代、農村の荒廃の時代がありまして、農業というのは大変難しいものですから、いろいろな中で農政も苦労し、農家も苦労しながらいろいろなことをやってまいりました。率直に言いますと、そういう中でやはり相当の到達線には来ている、こんなような思いがいたします。ただ、その中身たるや、後継者はいないとか、農業の先に夢がないとか、いろいろな問題が起きてきたわけでございます。  そういう中で、何でここまで農業発展させてくるについてあれがあったかといいますと、例えば農地解放というのが行われました。あるいは食管法というのがございました。その運用の仕方等にはいろいろ問題があったかもしれませんが、この際、忘れてはいけないのは、やはり農協組織の存在だと思うのです。農協組織が存在する、その働きというのは大変大きなものがあったと思います。  もちろん、大きいだけにそれを非常に目の上のたんこぶに思うところもあるでしょうし、いろいろな批判もあったでしょう。しかし、そういう意味では、私は自信を持って農協はおやりになっていいと思います。特に、今回のガットのウルグアイ・ラウンドの受け入れ、大変な時代になってくるわけであります。いろいろな政策をやろうということで、国会も今挙げてその新政策をつくるための努力をしておるわけでございますが、それはやはり農協といわば連携しながらやっていく、これが非常に大事だと思うのです。  そこで、豊田公述人に、農協の今後のやり方についての決意をぜひひとつ聞かせていただきたいと思います。
  38. 豊田計

    豊田公述人 農業協同組合が、産業組合の以前、販売購買信用利用組合、こういうところから歴史的な経過を経て今日農業協同組合があり、組合員多様化している、専業農家が減少して、ほとんどが兼業農家、あるいは農業に従事しない組合員が多くなっている、こういう実態もお話のとおりでありますが、私どもは、協同組合運動は決して誤りではないし、今日の社会の中で大きな、今日までも役割を果たしてきたし、これからも重要な役割を果たすことができるし、やらなければいけない、このような使命感を持って今日仕事に取り組んでおるところであります。  先ほども申し上げましたが、いろいろな批判もあります。中には、反産運動と同じょうに、農協なかりせば、このような意見もあることも承知をいたしておりますが、組合員の生活を守る、生活の手段としての農業を守っていくという大きな役割を、私どもは自主的な組織として今日まで取り組んでまいりましたし、これからも取り組んでいきたい。  なお、事業三段階についての御批判等も前々からございまして、今日では、組織のよりスリム化、効率化、あるいはよりわかりやすい事業運営を実現をしていきたい、こういうことのための努力を、今組織を挙げて取り組んでおるところであります。  三年前の農協大会以来、JA改革、特に自己改革、役職員の意識の改革がまず大前提、基本課題だ、このように考えておりまして、それに従いまして、組織改革という点では、事業組織の二段を目指して、今広域合併、一万数千の農協が今二千六百台にまで合併も進捗をしておりまして、六百余の広域合併ということで、それぞれのJAが自己完結機能を持つ、こういう形にして、事業二段、組織二段を、二〇〇〇年を目途として今鋭意努力をしておるさなかであります。  試行錯誤もございますが、基本的な方向については組織の合意が得られており、予想以上の広域合併の進捗状況でもありますので、先生の御指摘のように、私ども農村農業を守る、二十一世紀に私ども後継者、子弟に着実にこれを手渡していく、こういう使命感に燃えてこれから努力をしていきたい、御指導をいただきたいと存じます。
  39. 古賀正浩

    ○古賀(正)委員 ありがとうございました。  そこで、きょうせっかくあとお二人の公述人がおいでになります。学識経験者及び、財界代表と言ったらなんでございますが、せっかくのあれでございますから、農協に関していろいろな、世の中に思惑、批判、御意見、提言等もあるわけでございます。それについて今、端的に、お考えになっていることがあれば、手短にそれぞれから御披露をいただきたいと思います。
  40. 荏開津典生

    荏開津公述人 農協は非常に広い範囲で活動しておられますのでなかなか手短に意見を申すのは難しゅうございますけれども、私の見ますところ、日本の農協は世界の中で最も立派な成果を上げている、農協としてはですね。日本の農協を範としまして韓国及び台湾にも同じような組織ができておりますし、そういう意味では、私は非常に高く評価できるものだ、こういうように考えております。  今回の法律、変化の中で一番大きなのは米に関するものでございますけれども、米の流通がかなり規制緩和される、自由化されるということは、あるいは農協にとりましては一つのショックになるかもしれない。かなりこれまで自動的に農協の手に集まっておりました米が、農協以外の方向にも流れるかもしれないという余地ができるわけでありますから、一つのショックにはなろうかと思いますけれども、私は、農協がそのメンバーであります稲作の農家にとって十分にその利益を代表し得る組織として活動されるのであれば、それはまた経済的な効率性を持って行われるということであれば、必ずしも農協の手を通る米の流通が減るというふうには考えられない。ふえることは難しいかもしれませんけれども、急激に取扱量が減るというふうには考えられない。むしろ、より効率的な経済事業をこれから目指していかれることによって、農協もあるいはメンバーの稲作農家にとってもより望ましい事態が来ることも十分期待できる、こういうふうに考えております。
  41. 小島正興

    小島公述人 第一に申し上げたいのは、農協につきましては、私のおやじも戦前といいますか昭和の初期からずっと産業組合長をやっておりましたので、子供のころから組合の重要性につきましては十分に私は承知しておるつもりでございます。  今後の問題につきましては、先ほども申し上げましたように、これからの生産調整を中心にしまして非常に重要な役割を担っていくことになるので、そういう面から、農協の組織強化というのは、これは非常に重要な問題になるだろうと思います。  ただ、一つだけ私申し上げたいのは、これは豊田会長ここにおられるわけでございますけれども、現在農協がJA組織強化ということで統合をずっと進めておられる。三千の組織からこれを千以下にずっと、単位総合農協を減らしていくんだということは、これは効率化という面では確かによろしいかと思います。特に販売、購買、金融、そういう面においてはよろしいかと思うのでございますけれども営農指導とか、あるいは今後の経営についてのいろいろ重要な問題が出てくるわけでございますけれども、そういう面から、この統合というものが、地域農業経営と農協との結びつきを薄いものにしないようにしていただきたい。ぜひ濃密な、今までのような組織で、個々の農業経営と各JAが、単位農協が密着してやっていくように統合後におきましても努力していただきたい。  以上でございます。
  42. 古賀正浩

    ○古賀(正)委員 ありがとうございました。  大変貴重な御意見を農協に対していただいたわけでありますが、その対応については、豊田公述人が最初決意の中で具体的にお述べになっております。そういうことも御参考にしながら、今後の新しい事態に対して大いに御努力をいただきたいとお願いを申し上げる次第でございます。  そこで、今度この特別委員会では、食管法を変えて新食糧法というのが審議に入っておるわけでございます。この中で、従来から食管法は大変農協とのかかわりの深い中でやってきたわけでありますが、今度の新しい食糧法がどうなるか、農協にとっても非常に大切な問題でございますし、その食糧法運用に当たって我が国にとっても大変な問題になるわけでございます。  そこで、新食糧法において政府の果たすべき役割として最も重要なものは何かということを、ひとつ豊田公述人にお伺いをいたしたいと思います。
  43. 豊田計

    豊田公述人 政府役割日本国民食糧を安定的に供給をする、安全、新鮮なものを供給をするということは、私どもの責務でもありますが、国の民生安定の重要な柱である、このように思います。自給率維持向上に一層の御指導、御尽力をいただきたい、このようにまずお願いを申し上げを次第でございます。  なお、先ほど来の問題、荏開津先生からお話がありましたように、いろいろと心配な点がたくさんあります。これから政省令の中で、このように言われておるわけでありますが、生産調整手法にいたしましても、あるいは暴落時の問題等々にいたしましても、大きな心配事でありますが、これらは国会の先生方くらには農水省関係の皆さんと私ども十分の話し合いをしていくことによって解決できるではないか、このように思っております。  特に中山間地、これも繰り返してありますが、同じ一律の対応では生きていけない、やっていけない、こういうことでありますから、このことについては、先ほど来お話がありましたが、私も全く同じ考え方で特別の施策を、ぜひともその地域地域実態に合った対応ができる、こういう措置を講じていただきたい、このようにお願いを申し上げる次第でございます。
  44. 古賀正浩

    ○古賀(正)委員 ありがとうございました。  新しい食糧法需給安定それから米作農家の所得の確保、大変大きな問題だと思います。  ところが、今度の新しい食糧法では生産調整が選択制のような形になっておる。国がどこまで責任を負うかまだよくわからないような形になっておるわけであります。せいぜいメリットとしては備蓄の米を買い入れる、その米は生産調整農家から優先的に買うみたいなことはあるようでありますけれども、その他細かいことは一切政省令に譲られているみたいなことで、我々もちょっといろいろな不安を持っておるところでございます。  そのやり方は、アメリカの農業調整法、AAAですか、そのやり方に似ておるわけでございますが、ただ、アメリカと日本の違いは農業生産構造が全く違う。例えばアメリカですと、千エーカー、二千エーカーの農家がたくさんあるわけですから、そういう中で千エーカーはセットアサイドをやろうみたいなことでやるやり方がより有効に機能する場合がある。ところが日本の場合は、○・六ヘクタールとか、何かもう全部やるかやらないかみたいな方が農業構造の中心にいて、そういう人たちの広範な協力を得なければ需給調整がうまく働かぬみたいなことでございますから、そういった意味では本当にうまくいくかなというような心配でもあるんですね。この辺は実はもうちょっと詰めたいという気がしておるわけでございます。  それからまた、そういった意味では生産調整の実効確保の問題、お話のとおりあろうかと思いますし、計画流通米確保備蓄等の面についてまだもうちょっと詳しく、もう時間も余りございませんがお伺いしておかなければいかぬかな、時間の関係もございますから、項目だけでもできたら今御披露いただきたいと思います。
  45. 豊田計

    豊田公述人 生産調整の実効を上げるための基本的な課題としては、先ほど私も荏開津先生からも御指摘があったとおりだ、このように思います。  ただ、具体的にこれから政省令で、こういうことになっておりますが、基本的な取り組みとしては農業団体、生産者の責任である、これ決して過ちではないと思いますが、暴落をして次には作付を放棄をする、こういうようなことになったのでは安定供給を図るということができない、こういうことになる理屈でありまして、そのようなことを避けるためにも暴落時の対策というものが極めて重要だと私どもは思っておるわけであります。生産調整、行政と一体になって取り組む。  それから、やりたい人、やりたくない人の話は先ほど申し上げたとおりでありますが、集落を単位とする営農集団とか集落農業、こういうことが言われておりまして、それが具体的に成功をしている例も決して少なくなく、現にあるわけであります。そういうような先進例を学んで、大規模の農家それと兼業農家、零細といいますか小規模の農家も含めた集落農業というようなものの構築をやっていくという中で、隣の人が生産調整をやらないために大きな収益を得た、こういうようなことで次年度はやめてしまう、こういうようなことが起きないような対応をぜひやっていきたい。そのためにも農地の流動化というものについては重要な課題である。  営農集団、集落農業というものは中核農家を中心として、メンバーとしてそれぞれ参加をして、頼みっ放しということではなくて、メンバーとして参加をしていく、こういうことで初めて永続、持続をするし、あるいは農村らしくを保つことができるものだ。兼業農家がやめて農業とは全く無縁になる、こういうことではいわゆる農村らしくというものが失われてしまうではないか。集団のメンバーとしてできるだけの仕事はし、あるいは経営に参加をするという体制をとって初めて持続ができる。  専業農家と集団とそれから集約的な農業、この三つの組み合わせで私は農村が守っていけるものだ、こういう考え方に立って、生産調整についてもそのような考え方を基本としてやらなければ、現実的に成功をしないではないか、大変な難しいことでありますが、先進例がありますから、その先進例に学んで努力をしていきたい、こう思っております。
  46. 古賀正浩

    ○古賀(正)委員 荏開津公述人にお伺いしたいと思います。  先ほどの大変貴重なお話の中に、新食糧法がやはりかなり無理な統制的なものをやっちゃいけない、それはもう本当にそうだと思います。すべての国民の良識に照らして守るべきものみたいなものがあって、国民の法意識等とのバランスがございますから、言ってしまえば警察比例の原則みたいな形の中でやるべきものだと思いますから、おっしゃるとおりだと思います。  ただ、私が心配しますのは、昨年からの例の凶作に伴う米不足の際に少しずつ後手踏んだみたいな気がするんですね。ことしの三月ごろの農林省の、食糧庁のやり方とか、いろいろな何か、そしてまた一方では、マスコミとかなんかはどういうことだったのかよくわからないけれども、大体それまで食管法があるからこそ、そういう不足時にみんなに食糧を均てんじて家計の安定を図るという、民心の安定を図るということができるという制度であったわけですが、実際は八郎潟の大潟村の人を何かあたかもいい人のように宣伝したり何かするというのは、あれは非常に僕は誤解を招いたという気がするんですね。  結局、私は結論から言いますと、確かに規制は緩和すべきであるというのがございます。しかし、規制というのは、いい規制と悪い規制とありまして、やっぱり緩和すべき規制とそうじゃない規制もあるような気がするんです。そのあたりは、一方的にああ規制はない方がいい、できるだけ最小限がいいみたいなやり方ではない考え方をもっと国民に理解してもらうべきではないかという思いがいたしてなりません。別に先生の意見に逆らっているわけじゃございませんが、その辺については、そのような理解でよろしゅうございますでしょうか。
  47. 荏開津典生

    荏開津公述人 私は規制は何でも撤廃すればいいという意見ではございませんで、むしろ必要な規制はきちんとすべきであるという方の意見でございます。  ただ、米について申しますと、昨年の経験も私も少し分析してみたこともございますけれども、現代では、今日におきましては、私は米という一つ食糧現行食管法のような形で統制するのは必要がなくなっている、こういう判断でございます。  先ほども申しましたが、現代の米につきましては、不足時の暴騰よりもはるかに過剰と暴落の方が深刻な問題であるというのが実情である。余って米価が下がってしまうというのは大変な問題でありますけれども、何十年にあるいは何百年に一度というような不作の場合、必ずしも厳密に統制をして各家庭に毎日一合五勺なり二合五勺なりを配給するというようなことはもはや必要ない。十分なパンもありますし十分な肉もあります。そういう状態のもとでは米は不足時にそれほどの統制をする必要はなくなっている。  むしろ現在の法律ではやはり守るべくして守られる、そういうようなことにすべきであって、良識ある国民がこれは守らなくてもいいと考えるような法律を今つくり、それをそういう形で運用しようとするのであってはそれは甚だ望ましくない、こういうふうに私は考えておるわけでありまして、何でも規制を撤廃する方がいい、こういうような考えではございません。
  48. 古賀正浩

    ○古賀(正)委員 ありがとうございました。  時間があと若干ございますので、一つお伺いしたいのは、三公述人それぞれ、長期的な地球の食糧需給と申しますか、特に有効需要との関係等からすると将来は必ずしも安心できないという御認識であるということでございます。そういうことがあるからこそ、我々はやはり今回のガットのウルグアイ・ラウンドの受け入れについても慎重にならなきゃいかぬという思いもあったわけでございます。  そういう中で、例えば今度の協定の中では輸出国の通報義務とかいろいろなものがございますが、本当にそれだけで足るのだろうかという思いがございます。率直に言いますと、結論から申しますと、例えば昭和四十七年、一九七二年にソ連が突如、世界市場に小麦の買い出動に入りましたね。世界の小麦が大暴騰をいたしました。それで、日本は食管制度があったので消費者は余り関係なく迷惑をこうむらなかったのですが、世界ではもうあちこち大変な迷惑をこうむったわけであります。  それから、昨年は、昨年というかことしでありますが、昨年の秋から、日本の米が不足だということで、日本がタイ初めあちこちに買い付けに入りましたね。米輸入の買い付けに入りました。それが大変な米の価格の暴騰をもたらして、それぞれの国の、それぞれの開発途上国の庶民に迷惑をかけたということがあって、日本はひんしゅくを買ったということもあるわけでございます。  そのようなことを考えますと、長期的なことを考えると、今すぐのことではございませんが、やはり人口が四、五千万もあり、かつ相当購買力もある、有効需要がしっかりある、そういう国は、国際的に、何か輸入できれば全部輸入すればいい、比較生産性食糧を外国から入れた方が安ければもう入れたらいいじゃないかみたいな考え方ばかりとっていいのかな、こういう思いがどうもいたします。やはりある程度のそういう資格を持った国は、国際的にも自給率をある程度は、一たん緩急ある場合に自給率を維持しておかなくちゃならぬ、それは自分の国だけのためではなくて国際的な責任だ、開発途上国などに対する義務でもあるんだ、そのような考え方があっていいんじゃないかな。  ただ、もっとも現在ガットではそういう話は通じません。やるとすればFAOとか国連の機関かもしれませんが、そういうことも通じませんから、すぐこういう話が進むわけにはいかないと思いますけれども、私は、日本の恋としてそういうことを持っておかなきゃいかぬのじゃないかな、こういう思いがいたしております。これについて御見解あれば、それぞれ公述人の皆様方のお話をちょうだいいたしたいと思います。
  49. 豊田計

    豊田公述人 ただいま先生のおっしゃることに私は全面的に賛成であります。人口が二〇二五年には八十五億人になるというのがFAOあるいは専門機関の言っておるところでありまして、人口抑制政策が成功をしなければ二〇五〇年には百億あるいは百二十億にもなるではないか、そういう警告もされておるところでありまして、長期的、中長期的に考えるということは、人間でありますから、人間たるゆえんは将来をおもんばかるというところにあるものと、特に政治は国家百年の大計を考える、こういうことであろうと存じます。  そういう立場で先生の御発言と受けとめる次第でありますが、ただいま現在、グルメ、グルメでダイエット産業が繁盛するという状況にありますけれども、中長期的に見れば先生おっしゃるとおりと、こういうことでありますから、私は、一億二千万もいる経済大国日本が金があるから買うことができるという時代はやかでなくなる、こういうしっかりした認識の上に立って長期的な展望に立っての政策の立案、自給率をこれ以上下げない、こういう施策をぜひ確立をいただきたい、このようにお願いを申し上げる次第でございます。  私どもは、今先生がおっしゃるようなことを国民運動として、さらには世界の世論の啓発をして貿易ルール改正、修正というものをぜひとも実現をくしていただきたいし、私ども努力をしたい、こう思っておりますので、よろしくお願いしたいと存じます。
  50. 荏開津典生

    荏開津公述人 関連事項でありますけれども、確かにFAOないしガットないしWTOというようなところで今おっしゃいましたような考えに従って世界の物の考え方をリードするというのは日本の責任であろうかと思いますけれども、それに先立ちましてと申しましょうか、私は、日本食糧ないし農業に関する物の考え方の基本であります農業基本法を早急に新しい時代に即応するように改めていただきたい、こういうような考えを持っております。  これは、世界の物の考え方を、食糧人口農業というようなものに関する物の考え方をリードするのは日本の責任でありますけれども、そのためには、日本がどういう考えであるかということを示しているのは理念法としての農業基本法でありますから、これが制定以後三十年以上たちましてやや現代の時代に即応しなくなっている。この法律を改めまして、先ほどおっしやいましたような基本的な物の考え方を日本の理念法である農業基本法の中に盛り込み、明示するということをまず最初にやっていただけないか、こういうのが私の希望でございます。
  51. 小島正興

    小島公述人 先生先ほど言われました昭和四十七年の問題、それから四十八年の問題。ですから、現象としましては四十八年の春と四十九年の春の問題になるわけですけれども、総合商社がその時期に非常に、仏そのころ商社におりましたので、この委員会室におきまして、買い占め、売り惜しみにつきましてここで各商社の代表が先生方からいろいろ質問を受けたのを鮮明に記憶しておるわけです。ですから、重要な問題であるということは私、十分承知しております。  それから、長期的な視野から物を考えなきゃいけないという点につきましては、先ほど私からるる申し上げたとおりでございますので、重ねて申し上げる必要はないと思います。  以上でございます。
  52. 古賀正浩

    ○古賀(正)委員 ありがとうございました。終わります。
  53. 佐藤孝行

    佐藤委員長 はい、御苦労さま。  次に、松本善明君
  54. 松本善明

    ○松本(善)委員 端的にお伺いいたしますが、豊田公述人、先ほど来農業合意については反対だあるいは間違ったものだ、こういう意見陳述がございました。農業合意を受け入れたときの昨年の全中の抗議声明は、農業者の誇りと夢くえも奪う、農業は崩壊の瀬戸際に立たされているという強い言葉でありました。その流れの中できょうの発言もあったろう、こういうふうに受けとめております。  そこで質問は、ウルグアイ・ラウンド農業合意に関する関連対策について、農業再建の足がかりということを言われ、全面的な評価はされなかったわけですね。そしてしかも、再々述べられましたが、自国農業が維持発展できるような新しい貿易ルール確立が必要だと。これは、関連対策が発表されたときの声明では、不可欠のものだ、こういう表現でも言われております。  私が伺いたいのは、私たち日本共産党は、今これから批准をするかどうかという国会の採決が行われる。一人一人の国会議員が、公約でありますとか国会決議との関係で一人一人試されるわけでありまして、私どもは、この批准をしないで再交渉すべきである、あなたの言われる新しい貿易ルール確立、新しい農業合意ができるような、それを今やるべきである、こういうふうに考えておりますが、国内対策と新しい国際的な農業合意との関係で御見解を承りたいと思います。
  55. 豊田計

    豊田公述人 申し上げましたように、あの農業合意というものは、本来農業問題の中心的な課題は、アメリカとECが輸出補助金を削減をしたい、これが最大の課題であった、このように私は承知をしております。それが、結果的にはそうではなくて、輸出補助金を若干引き下げた、こういう妥協が行われて、しかもラウンド交渉ではなくて、アメリカ対日本あるいはEC対どこそこ、こういうような個別の交渉の結果が農業合意ということで成立をしたという経過等からいたしまして、輸出国のエゴがまかり通った、このような不公正きわまりないものだという認識をしておりまして、そのことは、先ほど来申し上げたような趣旨で、改めなければ、二十一世紀大変なことになる。  そのためには私どもが、私どもだけではありませんが、先頭に立ってあるいは中心になって国民運動を起こしていきたい、このように考えておりまして、六年後、関税化がいいとかあるいはどうとかという議論も聞かれるわけでありますけれども、私どもは、そういうことではなくて、基本的に、農業問題、人口食糧環境問題を考えれば、基本的な修正が農業については必要だ、こういう理解であります。
  56. 松本善明

    ○松本(善)委員 端的にお答えいただきたいんですが、批准をしないで再交渉して修正されれば、それが一番いいでしょうね、もちろん。端的にお答えいただきたいと思います。
  57. 豊田計

    豊田公述人 それは国会の先生方が決定をされることであろうと。私どもは、今申し上げた考え方でずっと七年間運動を続け、今日なお反対の立場に立って、修正をしていきたい、少なくとも二十一世紀再交渉の段階では、誤った貿易ルールは修正されるべきものという考え方でこれから運動をしていきたい、こういう考え方であります。
  58. 松本善明

    ○松本(善)委員 三公述人に伺いたいと思います。  先ほど来、世界的な食糧危機についての議論もありました。それで、日本人に安全な食糧を安定的に供給する、これは日本政府の最も重要な責任であります。米の輸入の自由化をすれば、それが非常に危険になるというので、国会では三回にわたって衆参両院で、自給率向上、米の輸入の自由化反対の決議をしております。ほとんどすべての政党が、米の輸入自由化反対で選挙をやりました。  そういう中で、武村大蔵大臣ははっきり、これは国会決議違反であるということを認められましたし、それから河野外務大臣も、昨年の明らかに国会決議に反しているという自民党の声明、それは自分の考えでもあるということをこの国会で認められました。総理大臣も、これは国会決議に沿わない結果になった、こういうふうに言われております。  三公述人にお聞きしたいのは、この国会決議との関係でどう考えるか。日本人に安全で安定的に食糧供給するというのは主権の問題だと思います。この主権を守るということについて、それぞれどのようにお考えになっていらっしゃるか、お伺いしたいと思います。
  59. 佐藤孝行

    佐藤委員長 公述人に申し上げますが、時間が大分経過しておりますので、手短にお願いします。  最初に、豊田公述人
  60. 豊田計

    豊田公述人 私どもは、国会決議が守られなかったということについては大変残念に思っておるわけであります。今後、先ほど来希望申し上げたような方向で私どもも一生懸命努力をいたしますので、国会の先生方にも、日本農業があるいは世界の人類が繁栄ができる、そういう方途に向かって御尽力をいただき、御指導を賜るようにお願いを申し上げます。
  61. 荏開津典生

    荏開津公述人 国会決議との関係ということになれば、それは国会決議にもとるということになるのではないかと私は思いますけれども、十分にはその点はわかりません。  私の考えでは、現在の状況で日本が十分な食糧を安定的に手に入れるために最も大事なことは、世界貿易体制というものが安定して維持されるということで、これを一番脅かす最大のものは当然ながら戦争であります。日本の立場に立ってみますときに、食糧の危機ということの考えられる最大のものは戦争でありますので、戦争が起こらないようにするということが食糧の安定的な確保という点の最大の眼目であろうかと私は思っております。
  62. 小島正興

    小島公述人 国会決議につきましては、私、国会決議とそれから政策決定がどういうふうに行われるかという点については分明に承知しておりませんので、お答えする力を持っておりません。  ただ、昭和六十三年だったか、はっきり私記憶しておりませんけれども、秋におきます、一日違いにおきます衆議院と参議院の決議が、若干の文面の差異というのはどうしてできてきたのか。それは、特に参議院におきまして、完全自給というものをそこで打ち出しているわけです。衆議院においては、その前日におきまして若干表現が違っているわけでございますけれども、その辺の事情もつまびらかにしておりませんので、意見は差し控えさせていただきたいと思います。  それから全般的に、今後の問題につきましては、自給度につきましては、私は、これから重要ないわゆる文明大国としては、先ほど申し上げましたように自給度を向上していくという責務があると思っております。  以上でございます。
  63. 松本善明

    ○松本(善)委員 終わります。
  64. 佐藤孝行

    佐藤委員長 松本君の質疑は終了いたしました。  次に、遠藤明君
  65. 遠藤利明

    遠藤(利)委員 先ほど来いろいろ質問ありましたので、重複を避けて御意見をお伺いしたいと思います。  先ほどの御意見をずっとお伺いしました中で、小島公述人の最後の言葉に、農業とそれ以外の人々との相互信頼関係が大事だ、私実は、大変印象深くお伺いをいたしました。  実は、私も農家、農村の生まれでありますが、同じ友人が農業をしていて、我々がせっかく国土を守り、環境を守り、食糧をつくっている。それなのに何で我々がと、そういう考え方よく出てきます。反面、都市の皆さんからいいますと、安いものを買えばいいんじゃないか、今の農政農業の所得のために我々の大事な税金を使っているんじゃないか、そういう相互信頼関係どころかむしろ相互理解不足といいますか、対立の構図が一番残念なことではないかと思うんです。  私の地元の農業高校のスローガンといいますか校是は、流汗悟道、汗を流して道を悟る、そんな教育をやっておりますし、そんな思いで必死になって努力をしてきている。それが何ら、今の国の政策の中には受け入れられると思うんですが、評論なんかを見ますと、むしろ全然評価をされない。大変悲しい結果ではないかと思うんです。  本来食糧を自給するというのは、ただ単に生産者だけがということではなくて、国民が一致してなすべきものではないか。例えば、かって油が不足をしたというときに、「油断」という本を見てみんながセンセーショナルに騒いだわけでありますし、同時に備蓄をどうしようと一致して努力をしてきた。それに逆らって食糧についてはどうもそういう状況になっていない、そういうことを考えますと、この相互信頼関係をどういうふうにつくっていくか、これが、私は今具体的な内容そのものよりも意識革命が一番大事な点ではないかなと思っております。  そんなことから、本来農家というのは、今までそういうロマンを持ってつくってきたわけでありますが、本来は産業として成り立ってもいいはずなんです。成り立たなければやめればいい。むしろ国の方が、成り立たなくても食糧は何としてもつくってください、そういうふうにお願いをする立場なんではないか。それが逆に一つくっていらっしゃる生産者の皆さんの方が国土やあるいは環境を守り、日本食糧を我々が自給しているんだ、その責務を感じてやっていらっしゃる。何か本来は逆のはずなんです。  そういうことを考えたときに、私は、その相互信頼関係をどうやってつくっていくのか、その一番大事でありますこれからの進め方、あるいはこれからの取り組み方、どのようにすべきか、まず小島さんにお伺いをしたいと思います。
  66. 小島正興

    小島公述人 一番重要なことは、やはり農業実態についての認識というのを日本の農民だけじゃなくて、農業以外の方々においてもそれを十分に知っていただくことだろうと思いますが、そのためには、農業内部からの発言がもっと大きくならなければならない。しかし、それは単に農業の現在の地位とか利益とかということを擁護するというのじゃなくて、世界的見地に立って、今後の農業食糧あり方はどうあるべきかという点についての意見があってしかるべきだと思います。  それからまた、農業外の問題について農業はもっと発言していいんだ、農業側も発言していかなければいけないと思います。農業外からの農業に対する発言は非常にたくさんございます。先ほど某経済団体の長からの御幸言について御指摘ございましたけれども農業から工業についてああいうふうな発言があるかというと、ないわけでございまして、ぜひそういう点について、相互の意見交流というのはもっとあってしかるべきだという点。  それからもう一つ農業が今後発展していくためには、あるいは農村発展していくためには、経営強化していくためには所得の均衡ということもございますけれども向上ということもございますし、ゆとりある生活ということもございますけれども、一番重要な点は、将来に対する見通しといいますか、期待というか希望というものをいかに農業者が持つかどうかという点が一番重要だと思います。そういう点からも、全国民的な理解というのが必要になってきているんじゃないかというふうに考えております。  以上でございます。
  67. 遠藤利明

    遠藤(利)委員 なかなかこれは一番難しい問題かと思うんですが、やはり先ほど小島さんの御意見の中に、政治家は建前が多いという話がありましたが、三兆五千億が何で六兆百億円になったんだ、そこら辺の遺すがらが見えない。それをはっきり皆さんに明示して言うことが、やはりお互いの信頼関係を結ぶべきことではないか。  その意味では、我々も戒めて、努力をしなければならないんではないかと思いますが、ただ一つ、どうしても今の政策が農家の所得を保証するという観点のみ強調されている。しかし、現実は農家の所得を保証するという面、もちろんこれはあるわけでありますが、前提は、食糧を自給する、あるいは自然や環境を守るために農地農村を維持し、そして国土としてこれからも形成をしていく、そういう観点の論調に本来は戻さなきゃならないんではないだろうか。それがどうしても、農家の所得保証、やはりそんなのに何で我々の税金を使わなければならないのか、そういう観点が強過ぎる。それを我々どういうふうにこれから変えていくか、そこら辺、むしろこれまで農業団体の中でどうしても、農業団体の進め方として当然でありますが、所得保証を余り強調し過ぎて、そういう意味での農地農村というものの考え方が前面に出てこなかった。まあ当たり前がと思うんです。しかし、だからこそ、何か圧力団体というふうなとらえ方だけされてしまう。そんな不幸なことになっているんではないかな。  その意味で、豊田会長に、これからそういう農地農村をどうやって進めていくか、そんな御見解をお伺いをしたいと思います。
  68. 豊田計

    豊田公述人 本来、消費者生産者が対立をするという考え方は基本的な誤りだ、農家といえども、米をつくっている農家は生産者でありますが、酪農品なりあるいは果実なりについては消費者でありますし、消費者あっての生産であり、消費者の立場からすれば、安定的に新鮮ないいものが供給をされるということこそが望ましいことであろうと思います。  対立という構図は、本来あってはならないものが、意図的にかあるいは自然になったのか疑問でありますが、対立、こういうようなことが喧伝をされた経過がありますことは大変残念でありますが、私ども自身も、小島さんから御指摘がありましたように、外に向かって物も言うというところが大変少なかった、このように思っております。  農業農村と都市の消費者の皆さんとの交流ということについては、ここ十年来、私ども組織的に心がけて努力を重ねてまいっておりますし、地方行政の立場からも、そのような御指導あるいは御努力をいただいております。今後とも触れ合いを深める、農村あるいは山村のよさを理解をしてもらうという運動を懸命に努力を続けていきたい、こう思っております。
  69. 遠藤利明

    遠藤(利)委員 そうした中で、実は、先ほど豊田会長のお話の中にも事業組織改革を進めるという話がございました。実は、私も、その中で広域合併というのは果たしていいものだろうか。私も実は農家の息子ですし、准組合員でもありますが、かえって広域合併というのは、やむを得ない部分は私も十分理解はするんですが、官僚化してしまうといいますか、地域と農協といいますか、農業団体の接点が薄くなってしまう。今まで隣の息子から来たから、じゃ、共済に入りましょうか、そういうことがなくなってしまうんじゃないだろうか。  そうすると、何か感覚的に、町の農政があって、それに似たような形で農協が出てしまう。そういう二段階の広域合併、まあ二段階にして広域合併をしよう。効率化というのはわかるんですが、果たしてこれが具体的に農家のためになるんだろうかといいますと、私は、逆に優秀な農家はむしろ離れていってしまうんじゃないだろうかなと。むしろ兼業の零細農家はそこに救ってもらう反面、優秀な農家は離れていってしまうんじゃないだろうか、そういう疑問を持っております。  そうした中で私は、この際、もし機構改革を考えられるとすれば、二段階も大事かと思うんですが、農業機械を売る、そこに金を貸すのも同じ農協です。これはどう考えても理屈が合わないんじゃないかな。売る人と金を貸す人は本来別であるべきじゃないだろうか。そして、営農指導もやっぱり別なんじゃないだろうか。  そうしますと、縦の二段階ではなくて、むしろ営農部門、この営農部門にはむしろ例えば土地改良とかあるいは農業改良普及とか、それから農業委員部分農地の問題とか、そういうものは純粋な指導部門として一つつくってしまう。そして経済団体、購買、販売ですが、これはこれで全く農協商事でもいいですが、そういう形で独立したらどうだろうか。  もう一つは、今信用部門で成り立っているといいますが、信用部門、これはこれでまた独立をして、全く純粋な経済団体として独立したらどうだろう。日本の中で最大の商社が私はできるんではないかと思うのです。そうすれば価格形成あるいはメーカーとの交渉についてももっと強い力を発揮できるんだろう。  そんな意味で、縦の二段階もこれはやむを得ないとは思いますが、一歩進んで、横の三分割といいますか、そういうことを御検討なされる気がないかどうか。最後にお伺いを、これは豊田さんと、それから小島さんにも考え方としてお伺いをしたいと思います。
  70. 豊田計

    豊田公述人 広域合併農協が官僚化をする心配があるではないかという御心配でございます。  そのおそれなしとはしないとは思っておりますが、そういうことがもしあったとすれば農協そのものの衰退あるいは崩壊につながることであり、組合員のための組織でありますから、具体的な運営としては、本所が遠くなるということは間違いがありませんが、支所の機能は従来にも増して強化をするということでなければ、農家、組合員の負託にこたえる事業運営ということになりません。  特に、営農指導については、地域によって営農指導がほとんどない、都市部については営農指導が少ないあるいは足りないとおっしゃるところもありますが、営農指導と販売・購買事業というものは一体として取り組んで今日の農協の歴史があり、これからも総合農協の機能を果たしていく、こういうことが適切、このように思っております。  官僚化というようなことは全くあってはならない話でありまして、そのようなことがないように、そこが役職員の意識改革の原点である。組合員が主人公で、その直接の構成員の単位JAが連合会を組織をする、こういう考え方にいささかも間違いがあってはならない、このように思っております。  なお、農協の仕事はすべて競争相手があることでありまして、米九五といっても五%、県によっては三〇%も、七割しかシェアがないという県もありますし、すべての我々の仕事は競争相手が顕在しておるわけでありまして、その競争相手の皆さんと競争をして、よりいいサービス、より多い所得を農家、組合員に提供ができるということで初めて農協の存在意義がある。農協はあった方がいいのではなくて、なければ困るという、必要を実感される農協づくりを目指して私どもは今懸命の努力をしておりますので、御指導を賜りたいと存じます。
  71. 小島正興

    小島公述人 官僚化するかどうかについては私はつまびらかにしませんし、またそうならないだろうと期待しております。  ただ、購買、販売、金融等の問題につきましては、やはり商社と競争し、銀行と競争するわけでございますから、組合内部におきますスタッフの専門家化、専門家になる専門家化、あるいは理事におきます現在の学経理事に対する制限というようなものについて再考すべきではないかというふうに考えております。  営農問題については、ぜひ地域と密着したそういう営農指導を今後におきましても続けていただきたいというのはお願いでございます。  以上でございます。
  72. 遠藤利明

    遠藤(利)委員 ありがとうございました。
  73. 佐藤孝行

    佐藤委員長 これにて午前中の公述人に対する質疑は終了いたしました。  公述人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございます。厚くお礼申し上げます。  午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二十四分休憩      ――――◇―――――     午後一時開議
  74. 佐藤孝行

    佐藤委員長 それでは、休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、御出席公述人の皆様に一日申し上げます。  このたび、世界貿易機関設立協定外法案に対する御意見を拝聴し、各案件の審査の参考にいたしたいと存じますので、忌偉のない御意見をお述べいただくようお願いいたします。  御意見は、青山公述人、宮村公述人、小林公述人、徳田公述人の順序で、お一人十五分以内でお述べいただきたいと思います。その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。  念のために申し上げますが、発言する際はその都度委員長の許可を受けることになっております。また、公述人委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきいただきたいと存じます。  それでは、まず青山公述人お願いいたします。
  75. 青山三千子

    ○青山公述人 御紹介いただきました国民生活センターの青山三千子でございます。よろしくお願い申し上げます。  諸先生方におかれましては、日ごろ、国民生活の安定、向上に関連いたしまして種々御尽力をいただきまして、まことにありがたく、厚く御礼申し上げたいと思います。  本日は、主要食糧需給及び価格の安定に関する法律案につきまして、私、一消費者の立場から考えを述べる機会をいただきましたことを大変幸せに存じます。  この法案は、消費者が久しく望んでいた主要食糧を自由に選択することができる社会に第一歩を踏み出す画期的なものであると私は考えております。この法案の成立を心から期待するとともに、その運用などにつきまして、この際、三つほどお願い申し上げたいことがございます。  第一点は、新しい制度実施するに当たって、消費者の利益を優先していただきたいというお願いであります。  この法案は、第一条「目的」に、「国民生活国民経済の安定に資すること」をうたっております。現行食管法におきましては、「国民食糧確保国民経済ノ安定ヲ図ル」という言葉を明記しておりますが、そのために需給価格を調整し、流通を規制するという、いわば統制の思想とでもいうべきものが前面に打ち出されたものと考えております。  その現行法に比べますと、この法案は、需給価格の安定を図って国民生活の安定に資するということを目的とするものでございまして、その国民生活の安定という考えが前面に打ち出されていると考えます。その点、生活優先の方針を本法案の目的に既に読み取ることができると考えております。このことは、単に言葉の問題にとどまりませんで、主要食糧需給調整方針が抜本的に変わるものと私は期待しております。  その変化にょってどのような生活への影響が出るのでしょうか。その点を、例えば平成米騒動と言われる昨年産米の凶作による暮らしの混乱について考えてみたいと思います。  平成米騒動と言われる米不足に際しましては、国民生活センターで相談を処理しておりますと、消費者の悲鳴にも似た声が上がってきたと考えていいかと思います。国民生活センターは、全国各地の消費生活センターを結んでPIO-NETというオンラインシステムを運用しておりますが、このPIO-NETの中には既に百五十万余件の消費生活相談、特に苦情でございますが、消費生活トラブルが蓄積されてデータになっております。  このPIO-NETというオンラインシステムの中には、米に関する相談がこれまでにも年間に二台件から三百件ほど集まっておりましたけれども、九三年度にはその十倍以上、三千二百件余りの米に関連する主として苦情が急激に増大しております。米の不作が明らかになった九三年九月から急増し、その後、一時期、緊急輸入米の措置などが周知徹底されるに及びまして苦情は減りましたけれども、九四年三月になりますと、一カ月にまた千六百件という、いまだかつてない消費者相談が米に関して寄せられてまいりました。  その内容は、どこのお店に行っても米がない、売ってくれないなど、消費者がパニック状態に陥っていることをうかがわせるに十分な相談でありました。緊急輸入米が店頭に出始めますと、ブレンドやセット販売の苦情と変わりまして、続いて品質の苦情、安全性の苦情、値上がりの苦情というふうに内容は次第に変わっておりますが、九四年四月以降になりますと急速に消費者の苦情がおさまっております。  消費者の苦情の推移を見ますと、この間の米の消費者に対するパニック的な影響というものがなぜかという点をよく知ることができるように思います。  平成米騒動と言われているこの事態につきましては、いろいろな見方が発表され、いろいろな考え方が述べられておりますけれども、私は三つの点で現行食管法に問題があるのではないかというふうに考えております。  一つは、制度の硬直性による問題であります。昨年の凶作は、天候不順という不可抗力があったとはいえ、流通規制が小売店の流動的な対応を阻むなど、現行統制がマイナスに働いて、制度が目的とする食糧確保がかえって不安になり、生活安定を妨げることになったのではないかと思っております。  二つ目には、食糧管理に対する消費者生産者との依存心がいつの間にか高まってしまって、自立的な経営判断や生活判断ができなくなっていたのではないかということであります。  また、三つ目は、何よりも情報不足がこの平成米騒動を深刻化したものと考えております。国が食糧安定供給の全責任を負い、消費者が受け身でそれに甘んずる時代は既に去ったのではないでしょうか。これからは情報を適切に活用してみずから行動する段階にあると言えます。情報の問題は、いざというときにこその食管法がかえって役立たなかった最大の原因になったものではないかと思っております。  新しい法律は、流通規制を緩和し、市場原理の導入を図るなど、これらの問題を解決するためにきっと役立つものになるのではないかと考えております。  新法では、政府の機能を備蓄ミニマムアクセス運用という政策目的を持つものに特定し、その範囲を狭めたように見えますが、実は、かえって責任が重大になったと考えていいのではないかと思います。政府の新法の運用が問われると思います。  規制緩和による自由化は、政府生産者消費者流通業者それぞれに自己決定責任を重くするものであると考えます。その自己決定責任のキーポイントになるものが消費者利益を優先するという考え方ではないかと考えております。  お願いいたします第二点は、新たな価格形成に当たっては内外価格差の解消に向けて一層の努力をしていただきたいということであります。  この法案は、政府が毎年、米穀の需給及び価格の安定に関する基本計画を定めることになっています。政府基本計画はあくまで生産者流通業者、消費者の自主性を生かす、そのためのものであることが重要ですが、とりわけ価格に関しては、高値安定は消費者として大変困ります。食糧は私たちが生きるためになくてはならない必需品でありますから、価格の乱高下は望ましくありません。価格が安定的であるということは消費者にとって重要な要件であると考えます。しかし、生産者の利益を守るための安定ではなく、本法案六十一条三にあるように、そしてそれは現行食管法の精神を受け継いだものでもありますが、「消費者の家計を安定させる」という点に重点を置かれるものでなければ、新しい法案価格形成のシステムの意味がないと思います。  今、家計調査によれば、消費者は四人家族で一カ月平均十一・四五キログラムのウルチ米を購入し、五千四百五十五円、平成五年ですが、の支出をしています。消費支出に占める米類の購入価格比率は一・六%にすぎません。昭和四十年に七・〇%、五十年三・○%、六十年に二・三%でしたから、次第に減少しています。  米の家計に占める割合が低いことと、平成米騒動のときに消費者が値段に構わず国産米に執着したことをあわせて、消費者は米は高くてもおいしいものがいいという人がいますが、私は必ずしもそうではないと思います。最近の消費者価格に極めて敏感になっておりまして、バブル後、家計もリストラをし始め、生活の質の豊かさを求め始めたからであります。米に対しても納得のいく価格を求めるようになると思います。消費者は、平成米騒動で緊急輸入された外国産米に関連して、その味、質と同時に、外国産米の価格が安いということも体験上知っております。  内外価格差は消費者が納得しにくいものの一つであります。米など主要食糧の内外価格差も例外ではありません。米はおいしければ高くてもいいのか、米の内外価格差はやむを得ないと思っているのか、果たして米には価格弾力性はないのかなと、米の価格に関する消費者意向はこれからは変わるのではないでしょうか。とりわけ高齢化に伴う高齢者の支払い能力の問題も無視できないのではないでしょうか。  もちろん消費者は安さだけを求めるものではありません。米について言えば、おいしくて、安全で、あした働くエネルギーとなる質が高いことなどを求めます。外国とは米生産条件が違うこと、コストダウンが難しそうであることも知っていますが、このままでいいとは思っていません。そのための方策としてウルグアイ・ラウンド農業合意関連対策に稲作生産体質強化が行われたものと思います。私たち消費者は、日本農業が国際的な競争力をつけるため、コストを下げるため、そして日本農業の置かれている悪条件を克服するために国が強化対策を進めてほしいと願っています。私たち消費者日本の米を愛していると言っていいと思います。生産流通に従事する人々に頑張ってほしい、国際的な競争力をつけてほしいと思います。  最後のお願いは、新たな制度運用に当たっては農業生産者と消費者の共生を目指すということであります。  ことしの八月に農政審議会が「新たな国際環境対応した農政展開方向」を取りまとめました。農政審議会は、その中で、農業農村に対する国民期待の大きいことを示して、農村については、都市と相互に補完し合い、共生じていくことを基本としつつ、農村地域のゆとりと安らぎを期待すると述べています。  消費者農業者とは、農業の維持発展食糧安定供給などを通じて共生じ、相互の信頼、協調を強めなければなりません。そのために、消費者生産者との情報アクセスを拡大する必要があります。  これまで消費者は、農業及び農業生産者や流通関係者と余りにも遠く離れ、ただ農産物の買い手としか扱われてこなかったように思います。日本農業がどんな問題を抱え、生産構造がどのように変わり、農家経営がどうなっているかなどについて、消費者は、一部産直などの活動をしている人々を除いて、ほとんど知りません。食管法廃止して新食糧法が成立しようとしていることも、その中で消費者生産者の共生がうたわれていることも、一般の消費者は知らないのではないでしょうか。少なくとも、消費者が受けとめることのできるような情報が消費者に届くように配慮された情報提供するシステムでなければなりません。  平成米騒動も内外価格差問題も情報提供に問題がありましたが、消費者農業生産者との共生は、情報アクセスなしにはあり得ません。消費者日本農業にとって最も強力なサポーターであると考えていただきたいと思います。消費者にとって、田園は心のふるさとであり、だれも荒れることを望んでいません。この法律が成立した後は、消費者生産者との共生を目指して施策を進め、十分に情報を提供して、生産者消費者の顔の見える関係をつくる努力をしていただきたいものと思います。  御清聴いただきまして、ありがとうございました。(拍手)
  76. 佐藤孝行

    佐藤委員長 ありがとうございました。  次に、宮村公述人お願いいたします。
  77. 宮村光重

    ○宮村公述人 東都生協理事長の宮村光重でございます。本WTO設立協定等特別委員会の公聴会における公述人として私の意見を開陳いたします。  初めに、私の立場と意見基本を申します。  WTO協定とその締結を前提としました一連の法律案は、内外にわたる規制緩和、市場・競争原理の適用であるがゆえに、提案理由の文書によりますと、「我が国国民生活に多大の利益をもたらす」として提出されております。しかしながら、私は、それは全く逆であり、日本消費者国民、とりわけ生活協同組合の立場からとらえますと、将来にわたって、著しい国益の損失、国民の心配、社会不安、嘆かわしい事態を導くものであると考えます。したがいまして、少なからざる消費者、生活協同組合員の願いと主張に即して、国会は、WTO協定承認をなすべきではなく、また関連法案を成立させるべきではないという立場でございます。  初めに、日本の生協と東都生協の米輸入自由化、ガット合意反対の意思について御紹介したいと思います。  最近のマスコミは、米輸入自由化、ガット農業合意に関しましても極めて偏った報道をしており、全国地域で草の根の運動として粘り強く広がっています自由化、ガット合意に反対する世論と運動を、全くと言ってよいほど伝えません。請願署名が連日国会に届けられているのに、マスコミの黙殺姿勢は目に余ります。そのためだけとは申しませんが、国会議員の皆さんも十分に事態を承知しておられないのではないかと拝察いたします。  ところが、多くの消費者、生協組合員は、やっぱり日本のお米が食べたい、豊葦原の国日本主食であるおいしいお米がたくさんとれるのに、なぜ外国からお米を輸入しなければならないのですか、お米を輸入しておいて田んぼの減反をするのは理が合わないじゃないですか、日本農業を粗末に扱わないで大事にしてください、もうこれ以上輸入をふやさずに食糧自給率を高めていきましょう、安全性の保障できないお米や食糧を食べたくありません、日本の自然、国土条件を生かして、おいしくて心配のない食べ物が欲しいのです、孫子のためにも日本農業を守りましょう。このような気持ちと切実な要求が随所に満ちあふれております。  こうした状況の一端を、生協について簡単に申し上げます。  私ども東都生協は、全国千七百万人を超える生協組合員をまとめて組織されております日本生活協同組合連合会の一会員生協であります。  ことしの第四十四回通常総会におきまして、日本生協連は、今回のガット・ウルグアイ・ラウンドでの米部分自由化に反対する立場に変わりはありませんとする態度を表明しています。会員生協は六百五十余りですが、それぞれの総代会でこうした立場と意を同じくする決議が採択されております。米輸入自由化反対、食糧自給卒向上の決議が七十八生協。ガット・ウルグアイ・ラウンド国会批准反対、国産米安定供給を求めるの決議が六十一生協。米自由化反対、日本農業を守る決議二十二生協。暮らしを守る決議の中に米の安定供給日本農業を守る項目を挿入した生協が五十二生協。計二百十三でありますが、これは日本生協連の調べでありまして、重複はございません。なおまた、生協全体の米穀事業は、アバウトですが三十五万トン、千四首億円前後に上り、重要な供給産品であるだけに極めて関心が高いわけであります。  ところで、日本生協連は、消費税問題とはいささか違って、現段階では全国的なガット批准に待ったをかける取り組みをしておりません。  そこで、日本生協連の米輸入自由化の立場に、より忠実に、もっと積極的に推進したいと願う地域生協が相寄り、相集まって、それぞれの地域において独自に、もしくは生協以外の住民団体、農民組織、農協や漁協や森林組合などと、米と日本農業を守ろう、ガット合意の国会批准をやめさせましょうという合い言葉で、署名活動、集会、勉強会などを積み上げております運動を大きく一まとめにしまして、くら発展させようということで、十月二十日東京で、米の輸入自由化に反対し、ガット農業合意国会批准をやめさせる生協交流決起集会を開きました。マスコミにも無論御案内いたしましたが、大新聞、テレビなど全く報道しませんでしたので、日本農業新聞、赤旗新聞などをお読みでない方々は御承知ないかなと思いますのでありますが、ともあれ、それは六百八十二名の参加者を得て、大変に充実した盛り上がった集会となり、その後の跳躍台となりました。  集会を主催した実行委員会生協は、三府県連二十五生協、その傘下の組合員数は三百七万、実行委員以外で当日参加したのは九府県連十六生協で、その傘下の組合員数は四百四十一万、合わせますと十二府県連四十一生協で、七百四十八万に及ぶわけでありまして、それだけの広がりを持つ生協が、今日我が国におきまして、ガット合意結構ですよ、日本農業行く先心配ありませんよと、そんなふうにおいそれとは思っていないということなのであります。  さて、私ども東都生協について申します。  創立二十一年たちますが、東京都内全域で事業と運動を展開しており、十一月二十日現在で組合員十四万五千三百二十八人、班の数が三万五千百三十三班、ブロック数が二百七十九、物品の供給高が十月単月度で共同購入約三十二億円、店舗約二千三百万円台、そのうち食料品のたぐいは七七・一%を占めております。  東都生協は、設立趣意書及び定款の前文で、日本農業、漁業を発展させることを通して、あるいはそれと結びつけて組合員の命と暮らし、とりわけ食生活を守ることを明確にし、農民、漁民と直接手をつなぐ産直の方法をもって、組合員が必要とする安全で質のよい、より安い物資を供給するという基本的な方針を持って今日に至っております。  したがいまして、東都生協で扱う供給食料品は、一部を除きまして国内産の農畜産物であります。加工食品につきましても、原料を国産とすることにこだわっておりますから、パンやめん類や菓子にしましても国内産の小麦を使っています。豆腐、納豆につきましても国産大豆で、価格関係の厳しい中でも加工業者の皆さんの御尽力を得ながら、組合員の要求にこたえるべく頑張ってきております。  当然のことながら、お米につきましても国産米に徹底的にこだわっております。東都生協では、土づくりをベースに省農業・有機米を、現行食管制度を活用して産地指定米の供給を提携生産者、農協から受けてまいりました。昨年の大凶作、米不足は私たち生協組合員に大変な困惑を及ぼしました。何とか日本の水田稲作を保持しつつ、安心できるお米を食べたいと願っておりますので、昨年十二月、細川内閣がガット受諾の方針を決めたのを受けてそれの撤回を求めるとともに、東都生協は、緊急輸入した外米を扱わない方針を立て、何とか日本全体の米輸入量を少なくさせたい、代替食で頑張っていき、農業生産者に落胆しないで米づくりに励んでいただこうということで臨んでまいりました。  詳しい経過は申し上げられませんが、本年五月の総代会では、お米の供給を一時休止してまでも国産米にこだわりました。特別決議で、ガット合意の国会批准を行わないこと、食糧管理制度の根幹を守り、責任を持って米の安定的生産供給を図り、ゆとりのある備蓄をすること、食糧自給率を高め、日本農業発展を図ることを決議したわけでありまして、この組合員の総意を国会請願署名として十一万四百三十七名分集約して提出しょうといたしました。米輸入自由化反対の三たびにわたる国会決議と選挙公約に期待をしておりましたのに、現政府・与党も旧連立諸党派の議員諸氏はだれ一人紹介者になっていただけずに、結果として日本共産党議員と参議院の無所属議員だけの紹介となって、残念でなりません。  さて、WTO協定問題でありますが、以上申しました東都生協の立場、見解に即して私の反対する論拠を開陳いたします。  WTO農業協定は、いわゆるミニマムアクセスを約束するものですが、これは結局日本の米市場の外国への全面開放、したがって、我が国稲作の崩壊を導くものであります。同時に、日本民族の食文化を根本から脅かすものでありましょう。  一九九五年から二〇〇〇年にかけ六年間、およそ四十万トンから八十万トンの米輸入が義務づけられます。現政府意向にかかわらず、価格面で国内米価を引き下げるでしょう。消費者にとっていいことのように見えますが、減反面積の拡大とともに、稲作が廃れ、やはり日本のお米を食べたいという消費者の願いから反していきます。  他方、特定銘柄米は一般消費者には手が届かなくなるように、米の流通場面にさまざまな企業資本が入り込んでくるに違いありません。昨年来の米騒動のときに、あれほどやみ米業者が大きな顔をして振る舞っていたではないですか。  WTOの特別措置関税化そのものが免れたわけではありません。六年後のミニマムアクセスを継続するにせよ、しないにせよ、米の輸入が恒常的になり、当面その量は確実に増大する事態となるでしょう。取り返しのつかない措置は今おやめなさいと申し上げておきます。  次に、ガット農業合意は、米だけではなく、脱脂粉乳、バターなど酪農製品、でん粉、雑豆、落花生、コンニャク芋、繭、生糸などの関税化が図られます。そして豚肉、牛肉、オレンジ、果汁、アイスクリーム、マカロニ、スパゲッティ、ビスケットその他、たくさんの食料品の関税率が下げられます。私は、これを称して日本の農畜産物の根こそぎ自由化と言いたいと思います。日本農業を丸裸にさせるWTOの受け入れを政府国会議員の皆さんは恥ずかしくないのでしょうか。  なお、つけ加えますが、WTOは農産品だけでもなく皮革や繊維の広い分野にわたっていることも重大です。つまり、地域経済、地場産業をめちゃめちゃにしてしまうのであります。こうした市場原理の適用を迫るWTOは、今日立脚すべき環境保全食糧の不足対応、民族の生存権、経済活動の民主主義などの見地から根本的に拒否されなければなりません。日本は自由貿易体制の利益を受けてきたとよく言われますが、農産物自由化は今に始まったわけではなく、一九六〇年代から一貫して進められ、日本農産物輸入大国です。そして、国際的な経済摩擦がそれによって解消されたでしょうか。むしろ対外矛盾は激しくなっています。日本の輸出大企業のあり方にこそ問題があると理解すべきです。  ところで、東都生協の成り立ちは、天然牛乳を安く飲む会にあります。そういう点で、関連法案にありますところのことを考えますと、今後の酪農製品、酪農業が立ち行かなくなるということに大きな危惧を持つものであります。  くらにもう一つWTOの問題は、衛生植物検疫措置、いわゆるSPSと暗くれるもののバーモニゼーションに関して極めて重大な協定があります。  食糧農産物等の安全性の基準を、日本の自主的な検討結果をベースにするのではなく国際基準に合わせてしまう。必然的に、レベルの低い、したがって安全性の乏しい内容となるおそれがあります。  WTOのほかの諸協定と同じく、このSPSも加盟国を拘束することになっております。これは、これまで消費者団体が食品添加物あるいは残留農薬、ポストハーベストなどで積み上げて厚生省等にとらせている成果を台なしにしてしまうでしょう。  SPSでは、非政府組織の自主的な基準も対象とされることになっています。外務省や厚生省は、これには消費者組織、生協などは含まれないとの解釈をとっているようでありますが、英文を見ますと、「ノンガバメンタル・エンディティーズ」というふうになっておりまして、政府等行政的ではない実体のある事業体を意味すると解することができます。そうなれば、地方自治体とともに生協などが対象とならないという保証はないと考えます。国内農産物にこだわって産直の東都生協としては大変に不安であります。そこまでWTOが介入することは、人々の自主的な考えに基づく協同そして自由と民主主義を否定するもので、とてもとても受け入れるわけにはまいらないのであります。  さきの国際基準の設定がコーデックス・アリメンダリウス・コミッティーの作業による点も重大であります。事実上、多国籍企業、大資本の利益から科学的な根拠が揺るがせられることは、これまでの経緯に照らして明白であります。  最後に、WTOの受け入れを唯一最大の前提として立案されたいわゆる新食糧法について簡単に述べます。  現行食糧管理法制度実態が乖離しだからという説明がなされておりますけれども、これは事実経過に照らしますと違います。つまり、乖離される実態をつくり出したのは、まさに一九六〇年代後半からの自主流通米制度の導入、二重米価制度の否定、流通規制の緩和の行政にほかなりません。そして何より、WTOによって輸入米を恒常的に受け入れ、価格形成需給実勢を反映させる、つまり生産農民の再生産や消費家計の安定を基本、これは現行食管法の三条、四条の規定でありますが……
  78. 佐藤孝行

    佐藤委員長 宮村公述人、結論を急いでください。
  79. 宮村光重

    ○宮村公述人 わかりました。はい。  こういう仕組みづくりは不適である、政府の責任を後退させるものであるということに新食糧法の本質があり、私は到底是とするわけにはまいりません。  以上をもって私の陳述を終わります。  時間を超過して、委員長、御迷惑をおかけして、失礼いたしました。
  80. 佐藤孝行

    佐藤委員長 御苦労さま。  次に、小林公述人お願いいたします。
  81. 小林正人

    ○小林公述人 ただいま御指名を賜りました全糧連、全国食糧事業協同組合連合会の小林でございます。  日ごろから、私ども業界につきましては何かと御指導、御鞭撻を賜っておりまして、ありがたく御礼を申し上げる次第でございます。なお、この特別委員会で意見を述べよという御指示を賜りまして、喜んで参上いたした次第でございます。  私ども全糧連組織は、戦前戦中の食糧営団、食糧配給公団を経まして昭和二十六年に民営に移管され、自来今日まで、食糧管理制度のもとで、我が国主食であります米の安定供給と安定価格の維持に努めてまいりました。また、昨年産米の未曾有の大凶作に際しましては、政府生産者団体の協力を得まして、一方、外国産米の取り扱いには相当の苦労をしながら、安定供給確保に最大限の努力をいたしたところでございます。本日の公聴会におきましては、私は職掌柄、当委員会において現在御審議中の新食糧法案に関連し、意見を述べさせていただきます。  このたびの新食糧法案につきましては、これまでの食管制度とその実態との間の乖離を補正し、規制緩和の方向づけの中で、需給価格の安定を図り、生産の安定と消費者に対する供給の安定を確保しようとするものであると評価いたしております。  ただ、現在提案されております新食糧法案は、新しい管理システムの骨格を明らかにしたものであり、細部につきましては、今後同法に基づきまして政省令、通達等が整備され、新制度の全貌が明らかにされることと存じますが、本日は、現段階においての意見なり要請を申し上げたいと存じます。  第一に、新法の目的は、米穀の生産者から消費者までの計画的な流通を図り、需給価格の安定を確保することとされております。私どもは、長年、主食である米を安定した品質と価格消費者にお届けすることを社会的使命と考えて取り扱いをさせていただいております。そのためには、米の需給、特に流通量が毎年安定したものであることが強く要望されるのであります。  つきましては、この法律の施行に当たっては、基本計画に沿って生産調整実施されるほか、政府による買い入れ、輸入及び備蓄が的確に実行され、さらには流通大宗をなす計画流通米計画どおり出荷され、消費者まで混乱なくかつ安定的に供給されるよう、米の流通秩序が確保されなければならないと考えます。  第二に、備蓄について特に申し述べますと、備蓄は、不足時の対応としても、また需給調整の上からも、一定量を国が保有することは、食糧安定供給確保する観点から必要であると痛感いたしており、新法に明確に定められることは極めて当を得たものであると評価いたしております。しかし、その備蓄水準についてはおのずから適正な水準があろうかと思われます。特に、備蓄した国内産米主食用として次年度に売却、処理することになりますと、最近における消費者の品質嗜好や消費拡大推進にも留意する必要があり、主食用に仕向けられる数量には一定の限度がありますし、そのときの価格についても適正に定められなければならないと考えます。  第三に、自主流通米価格形成について申し上げますと、新法に基づく米流通自主流通米を主体とすることとされていることから、その価格形成が、より一層透明性を確保しながら、需給実勢を適切に反映されたものとなることが必要であると考えております。  つきましては、まずもって、売り手と買い手は対等な立場で対応し得る場でなければならないと考えます。具体的には、価格形成センター運用に当たって、入札回数、上場銘柄及び数量、値幅制限、基準価格の設定、決済機能の導入等現行制度の改善、充実強化を図る必要があると考えます。  第四に、ミニマムアクセスによる外国産米の輸入についてでありますが、この外国産米の輸入は、主食用として低価格での特定な用途に需要があろうと思いますので、ニーズに合ったものを計画的かつ安定的に適正な価格供給していただく必要があると思います。また、品質と安全性の検査には万全を期されることを要望いたします。  第五に、新法では、規制緩和を通じた流通の合理化を図るとの観点に立って、取扱業者に対する登録制の実施流通ルートの多様化弾力化を図るとされております。このため、競争条件がこれまでにもなく要求されることにより、集荷、販売段階を活性化するとともに、消費者の選択機会が増大され、ニーズに合ったサービスの提供が期待されております。その意義は、私ども販売業界として十分認識しているところであります。同時に、現行制度から新しい法律に基づく制度への移行に際しましては、生産流通等に混乱がなきょう、慎重な対応が必要と考えるものであります。  したがいまして、新制度の構築、運用に当たりましては、いわゆる川上の生産段階から出荷段階に至るまで、計画制度に基づく計画流通が的確に実現され、登録販売業者が卸、小売の流通秩序を確保しつつ、米流通の本流を担当して、大口需要者を含めての消費者への安定供給ができますよう、特段の御配慮お願いする次第であります。  なおまた、特に卸売業者の体質強化を図るため、施設整備、合併統合をより一層推進していかなければならないと考えております。つきましては、国におかれましても、施設整備、合併統合等に対する所要の助成や税制特例等の措置を講ぜられんことを切望いたします。  最後に、私ども、これまで五十年の長きにわたり、現在の食糧管理法のもと、食管業務に従事してまいった販売業者といたしましては、今後とも、従来以上に消費者ニーズにこたえるべく、最善の努力をし、みずからの体質も改善し、新食糧法の意味するところを十分に理解し、制度基本に真摯な姿勢で取り組んでまいる所存、決意であります。つきましては、私ども流通業者が新制度に対して期待している姿が如実に実現されますよう、特段の御配慮お願いする次第であります。  今後とも、何分の御指導を賜りますよう、この機会お願いを申し上げまして、私の意見とさせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)
  82. 佐藤孝行

    佐藤委員長 ありがとうございました。  次に、徳田公述人お願いいたします。
  83. 徳田靱彦

    ○徳田公述人 連合の徳田と申します。このような場所を与えていただきまして、感謝を申し上げます。  ガット・ウルグアイ・ラウンド協定全般に対してと言っていいのでしょうけれども、連合としましては、長年にわたる交渉の結果として受けとめ、これを支持し、是とするところであります。  これから、私は、食糧安定供給と食料品価格の内外価格差問題あるいは協定締結に伴う国内対策としての主要食糧需給価格安定法案及び農業合意関連対策について申し上げたいというふうに思います。  お手元にお配りをしてありますのは、このガットの交渉結果を受けまして、連合の中で検討をし、まとめ上げた要求と提言であります。  御承知のように、連合の労働組合を構成している幅というのは非常に広い幅がありまして、輸出産業を主としている労働組合、それから農業関連のところでは農林水産省の関連の全農林、あるいは農協の職員の労働組合であります農団労、あるいはJA連合、こういう皆さんもあります。したがいまして、大変多くの幅広い議論、あるいは対立している議論の中から議論を重ねてくる中で、連合としての一致点としてまとめをしたわけであります。したがいまして、個々の問題でありますとくまざまな意見が存在をしているところは言うまでもないわけでありますけれども、最大公約数として問題提起をしているということで受けとめをしていただきたいというふうに思います。  まず第一に、安定供給価格の問題でありますけれども、我々連合としましては、自給、輸入、備蓄というこの三つによって我々の食糧安定供給というものが成り立つというふうに考えております。  そこで、じゃ、一体自給率を何%にするのか、さんざん議論をしたのですけれども、なかなか難しい問題でありまして、数字を出すまでには至っておりません。しかし、その議論の中で、自給率という率だけではなくて、自給する力というものをしっかりと持ち続けるというのが大事ではないのだろうかということを一つ挙げました。  そういう中で、小麦や大豆というような基礎的な穀物、あるいは中山間地域における酪農や畜産、こういうようなものについて、今後のことを考えた場合に、国内の最低限生産量というようなものを設定をして、そしてそれは生産地域を指定をして、そこでしっかりとっくり上げていく、これだけは守っていくというような決意というものが必要ではないのだろうか。そうでないと、かつてのように、まくに小麦が消え入りそうになるような状況にまで至る。あるいは品種改良も全く進まないで、再生産をしようとしたときにはとんでもなくおくれてしまうというような経験を持っているわけでありまして、そういう点を大事にしなきゃいかぬだろうというふうに一つは考えております。  それから、二つ目には米の備蓄の問題ですが、連合としましては、もみの貯蔵というものを基本にして、二〇%程度の回転備蓄をすべきではないのかということであります。そして、この備蓄米役割としまして、平常時には現行の標準価格米の供給という体制を担ってはどうなのか、あるいは不作時に緊急放出をするという、その二つの役割を持ってはどうかというふうに考えております。  備蓄問題というのは、やっとというか、今回の米騒動で国民合意ができたというふうに思いますけれども、古々米問題を発生をさせないというのが非常に大事な観点ではないだろうかというように考えておりまして、そういう面で貯蔵方式について慎重な選択が必要ではないかというように考えております。  それから、農畜産物の価格決定でありますけれども、市場原理にゆだねることを原則にすべきであるという考え方であります。この大原則を持ちながらも、一定の価格政策は必要だろうというように思います。しかし、現状価格政策生産者保護という視点がどうも強いのではないかということを感じておりまして、消費者対策の視点も含めて再編整理をする必要があるのではないのかということであります。  それからもう一つ、この価格問題で考えなきゃならぬのは、最近の円高の問題であります。食品産業界では、輸入原料への期待が非常に強まっているところでありまして、同時に海外に拠点の移転を図るという動きも強まってきているところであります。そういう食品産業界だけではなくて、外食産業も輸入食材への転換傾向というものも強まっております。今日の消費、最終的な消費動向を見ますと、家庭での消費の伸びよりは、食品産業なり外食産業での消費の伸びというのが拡大をしているところであります。こういう状況にいきますと、つくっても売れないという事態が考えられるわけでありまして、そういう面で、これをつくっても売れないという最悪事態を避けるという面で、この内外価格差の縮小というものも絶えず努力をしていく必要があるだろうというように考えているところであります。  それから、食管制度でありますけれども、食管制度が、やはり日本農業をどういうようにつくり上げていくかという根幹的な物の考え方のあらわしであるだろうというように思います。そういう面で、非常に大事な制度だろうというように考えます。  我々連合としまして、この問題を議論をしましたときに、やはりこの食管制度を思い切って改革をしなきゃいけないのではないか、抜本的に改革すべしという論に立ったわけであります。といいますのは、今後の状況を考えますと、ミニマムアクセスに基づく輸入が次第に拡大をしていくという状況であります。同時に、二〇〇一年からは新たな段階を迎えることになるというふうに考えております。数量が拡大になるのか、あるいは関税化という道になるのか、そのいずれか、いずれにしても、今日考えられない展開もあり得るだろうというように思っております。そういう面で、二〇〇一年を重要に考え、この年を一つの転機に考える必要があるだろうというように考えております。  同時に、今までの農政に対して猫の目農政だとか、あるいは農家が先行きが見えないということで、さまざまな不安や不信感というものがあったというように思います。先行きの厳しくはあるにしても、この際、先行きどういう方向に行かざるを得ないのか、行くのか、見通しをはっきりとする必要があるだろうというように考えているところであります。そういう面で、二〇〇一年を重視をしております。  その二〇〇一年に向けて、米づくりの大多数を占める兼業農家が、現状のまま続けていくのか、自給的な農家になるのか、協業化の道を選ぶのか、作業委託や貸付をしていくのか、あるいは農地を売って離農をするのか、こういうような、各人が今後の経営方向や、あるいは場合によっては子供の就職先もこの数年間の中では選び方を変えていくというようなことが判断できるような方向性というものを示す必要があるのではないだろうか。そのことがないと、新農政で言っているような規模の拡大というものは困難だろうというように考えますし、生産構造の改革というものもできないだろうというように考えているところであります。  そういうことで、二〇〇一年の到達目標として、政府が関与する範囲を、備蓄米の買い入れと払い出し、生産流通の情報把握と公表、安全性・品質のサンプル検査と公表、この範疇にとどめる。あえて言えば、部分管理と言っていいのかもしれませんけれども、そういう制度に進めていくべきだというように考えております。そういう中で、個々の農家が、どれだけ何を生産をするのか、あるいはだれに売るのか、こういうことは農家の責任で、あるいは経営判断ででき得るということが基本的な構えとしてなければいけないのではないかというように考えております。  したがって、その二〇〇一年に至るまでの過程を移行過程と位置づけをして、備蓄量の弾力的な運営だとか、あるいは規制の緩和を逐次図っていくこと、あるいは今日まで規制を前提として成り立ってきております農協だとかあるいは流通業界、こういう方々も数年間の中でソフトランディングをしていける、そういう方向性というものをとる必要があるのではないかというように考えております。  そういう意味でいいますと、今度の法案が、先に行く場所、目標を出して、そこにソフトランディンクということではなくて、これが成立をすればすぐにでも達成をするというところになっているという意味合いで、少し連合と考え方が違うのかなという感じがしております。そういう違いがあるということからだと思いますけれども、私どもとすれば、今回の法案は中途半端な状況にとどまっているなという感じがしております。もう少し言えば、連合が提起をしている移行過程にとどまっているのではないだろうかということを感じているところであります。  こういう状況でいきますと、心配しますのは、またぞろ新たなやみ米といいますか、新たな自由米というものが出てくる可能性というものもあるのではないだろうかという心配をしておりますし、二〇〇一年の段階になりますと、またぞろこれは、今の改革をしたけれども、これまた実態と乖離をしているなということを言わざるを得ないような状況にいくのではないだろうか。そういう法律で少しずっいくっくり方というのは、今までややもすると批判を受けていたような、護送船団的な農政ではないかという批判を、またぞろそういう批判を繰り返さざるを得ない状況の心配もしているところであります。目標をはっきりと掲げて、そこにそれぞれが、いろいろな分野の人たち が知恵を絞って、どう展開をしていくのか、こういう道筋というものをつくっていただきたいものだというように考えております。  それから、総事業費六兆百億円の農業関連対策事業についてでありますけれども消費者、納税者の立場ということで、率直に感じているところを話をさせていただきたいというように思います。  自民党が単独で政権を担っていた時代と比べますと、最近の状況は率直に申し上げて政策の決定過程が飛躍的に明らかになったということで、私どもまことに結構なことだということで喜んでいるところでありますけれども、今回の政策決定というのは、そういう面からすると、もうちょっとわかるものにしてもらいたかったということがまず第一であります。  残念ながら、国民一般はマスコミを通じてしかこの情報を得ることはできません。今回のマスコミ情報をずっと見ている限りでいいますと、どうしてもこの年間一兆円というような数字だとか、あるいは総額六兆というような数字が先行していくというように受けとめざるを得ませんでした。もちろん、さまざまな角度から検討をされた結果だというように思いますけれども、やはり消費者、納税者の立場から見ると不透明であったなという感を否めないわけであります。  折しも、税制改革の論議が活発になされて、消費税の引き上げ問題も大きな焦点になっていると。きだけに、この関連対策というのは認めつつも、なかなかすとんと落ちないというのが率直な感じでありました。  いずれにしましても、農家も消費者も、ガットの合意という今回の経過、あるいは米不足というこの二つの大きな経験を今回持ったわけでありまして、そういう面でこの食糧問題について真剣に国民全体が考える機会になっただろうというように思います。農業の先行きをどうするのか、あるいは国民がどこまでコストの負担にたえられるのか、そういう面で合意形成を図るチャンスだろうというように思います。  今回の予算の検討に当たって注文をつけたいのは、農林水産省の従前からの予算、従来予算の配分と使途をこの際全面的に再検討をする必要があるのではないかというように考えます。今までお金をいろいろ投入してきましたけれども、なかなか変わらなかったということ、率直に言ってあるわけでありまして、そういう面で全面的にここを改めて検討をし直すということをまずしていただいて、そのことで足りないものはここなのだ、このためにこれだけのお金を必要とするのだということで国民に提起をしていただきたいなということで、既に相当な状況まで来ておりますけれども、残された時間、さらに努力お願いをしたいというふうに考えているところであります。  それから、今後六年間の対策でありますので、当初の計画国民にやはりわかるように、何をどう変えるのかということを明確にしていただきたい。同時に、二年に一回、あるいは三年になるかもしれませんけれども、中間で、この目標に対してどこまでこの計画が達成をしたのか、どういう状況になっているのかということを明らかにしていただきたいというふうに思います。そういう中で国民と農家の信頼関係というものが本当の意味で生まれてくるだろうというふうに考えているところであります。  それから、中山間地域条件不利地域対策でありますけれども、時間がなくなりましたので、簡単に申し上げたいというように思いますけれども、今までの農業とか林業とかこういうサイドだけの対策ではもう限界ではないかという気がします。同時に、その農山村の社会を構成をしていますのは、商店も必要でありますし、あるいは土木事業で働く人たちも必要でありますし、そういう多くの人たちがいて初めて社会形成ができるわけでありますから、そういう面で、連合として例示で年金の問題やあるいは奨学金の問題について出しておりますけれども、こういうような社会政策の側面も含めながら、総合的に検討をしていただくことが大事ではないかというふうに考えているところであります。  ややもすると、消費者というのはスーパーから向こう側というのが見えないわけでありまして、物を語るときにスーパーからこちら側で物を語ったり、あるいは考えたり、問題提起をしているのが現状でありますけれども、今までのそういう状況を何とか埋めるような、そういう面で政府もくまざまな広報活動を強めていただきたいというように思いますし、私たち連合も、消費者の立場だけじゃなくてみずからが生産者でありますから、生産者消費者の立場、もっと住みやすい、より豊かな日本、社会的な公正が図られる日本をつくるためにさらに議論を深めていきたいというふうに思っているところでございまして、決して連合、厳しいことを言っておりますけれども日本農業がどうなってもいいとか、なくなってもいいとかいうことではなくて、本当に農家に、次の世代、働く人たちが都市並みの賃金、給与と労働時間で本当に自信を持って働けるような、そういう姿をつくり出さなければならないというふうに考えておりますので、よろしくお願いをしたいと思います。  以上です。(拍手)
  84. 佐藤孝行

    佐藤委員長 ありがとうございました。     ―――――――――――――
  85. 佐藤孝行

    佐藤委員長 これより公述人に対する質疑を行いたいと思います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許しますが、質疑者も同様に与えられた時間を守っていただきたいと思います。  最初に、久間章生君。
  86. 久間章生

    ○久間委員 どうも、公述人の皆様方には、お忙しい中に本法案等の参考のために公述していただきまして、ありがとうございました。  先ほどからお話を承りながら、今までの食管法等の役割、現況については似たような感じを持っておられるのかなと思いましたが、ただ若干私は、この昨年の不作というのは、本当に百年に一回あるかないかぐらいの日本にとっては大不作だったわけでございますが、それにしてはうまく切り抜けたのじゃないかな、上手に切り抜けたなというふうに実は思っているわけです。  それはやはり、何やかんや言われますけれども、この生産から流通に至るまでの、特に米についての流通あり方というのがうまく機能しておったから、そういう制度ができておったからできたんじゃないかというような、そういう気も実はするわけなんです。青山公述人におかれましては、その辺若干いろんな悲鳴も聞こえてきたという話がございましたけれども、私はそういうふうな見方もできるんじゃないかと思う。  もっと、石油ショックがあったときなんかあれだけのパニックになりました。それと比べたら、それに負けず劣らずの大不作だったのですけれども、あれぐらいで済んだというのは、やはり主食であります米についての、需要から供給生産から消費者に至るまでの流れが基本的にきちっとできていなければ、ああいうふうにはならなかったんじゃないか。裏を返せばこれから先も、今の実態との乖離はあるにしても、やはり基本的にはそれを見ておく必要があるんじゃないかと思いますが、これについて青山公述人、また、特に卸その他について、小売について一番タッチしておられる小林公述人の方から、この感想についてお聞きしたいと思います。
  87. 青山三千子

    ○青山公述人 私の意見を述べさせていただきます。  今先生のおっしゃったとおり、私も、だれが担当してもあれ以上の大凶作に対する対応策はとれなかったのではないかというふうに、当局の対応については評価しているつもりでございます。  ただ、先ほども申し上げましたように、国民生活センターの相談の増減傾向を見てみますと、やはりしかるべき情報が提供されるかどうかによってかなり変わってくる。十二月から一月にかけまして悲鳴のような声が聞こえなくなったのは、緊急輸入についての情報が周知徹底したからだ、しかし、三月になりますと、さらにそのおくれなどの情報が十分に徹底しなかったこともありまして、悲鳴に似たパニック状態が起きた、こういうふうに先ほど申し上げたつもりでございまして、全体的な見方としましては、先生とほとんど同一でございます。  よろしくお願いいたします。
  88. 小林正人

    ○小林公述人 昨年からことしにかけましてのいわゆる米騒動というのがあったわけでありますけれども、私ども業界といたしましても、大変難しいと承知しながら、やはり食管制度のもとで与えられたものを消費者に食べていただくということで、一生懸命やったつもりでございます。  しかし、何せ消費者の皆さんの、これはいい意味でやはり国産米に対する愛着といいますか、それが非常に強かったものですから、逆に緊急輸入米についてはちょっと誤解を生じたような点があったかと思います。特に、ミニマムアクセスで来年あたりから四十万トン弱からずっと、少量から始まるとすればこれは問題ないと思うのですけれども、去年からことしにかけての緊急輸入米は、それこそ緊急のものであったがために、やはり欲しいときに入ってこなかったり、それから消費者が好むものが入ってこなかったり、いろいろと思わざる結果もあったわけでありますけれども、しかし、何とか急場をしのがくせていただいた、そういう認識でいるわけであります。これもひとえに、やはり政府の御指導と、それからやはり消費者の御理解があったせいであろう、そう考えている次第でございます。  以上でございます。
  89. 久間章生

    ○久間委員 やはりそういう意味では、消費者も含めまして、何らかの、米については一つ基本的な、今のような厳しいがんじがらめの食管制度ではないにしても、一つのきちっとした食糧供給体制が、あるいはそれにつながる流通の機構があってほしいというのが消費者の気持ちじゃないかなというふうに思っているわけでございます。  ただ、その中で、先ほど青山公述人さんがちょっとおっしゃられましたが、米の内外価格差の問題ですけれども、確かにこれはございますが、この内外価格差は、これから先埋めようとしても、私は、結局日本の場合は埋まらない、そういう気がします。生産性を仮に同じにしましても、例えば一ドル三百六十円の時代が今九十円台に、百円になっておりますと、約四分の一ぐらいにもう違っておりますから、それだけでも四倍の差があるわけで、これは内外価格差をなくしますなんというのがそもそも無理だろうと思うんですよ。  ただ、そういう中で見ましたときに、私はやはり横並びの価格の高いか安いかの感覚の問題じゃないかと思うんです。そうすると、今の米が、御飯を食べるのに家計の中で、先ほど一・六%というふうに青山公述人おっしゃられましたけれども、今のお米を食べている人がパン食やほかの外食をしている人と比べたときに、米が高いという意識が果たして本当にあるのだろうか、そういう率直な感じがするのです。私余り、米が高い、米が高いとは、そう消費者の方をひっくるめまして実感として家庭で思っておられないんじゃないか。ただ、内外の価格差が余りにも大きいものですから、それで非常に米が高いんじゃないかというような、そういう意識を持っておられるのじゃないかなと思うんです。これは米だけではなくて、例えばタクシーに乗りましても、あるいは漫画の本一冊買ってみても、コーヒー一杯飲んでみても、内外価格差は同じように開いているんじゃないかというふうな素朴な気持ちを持っておるのですけれども、それにつきまして、もしよろしかったら青山さんの方からでも結構でございますが、御意見を聞かせていただきたいと思います。
  90. 青山三千子

    ○青山公述人 私も、内外価格差がまるで同じになるような社会は望ましい社会だとは思っておりません。ただ、政府の物価レポートなどを見ましても、もちろん内外価格差は為替レートに大きく左右されるわけでございますけれども、生計費の内外価格差という情報がございますが、食料品は全体平均といたしまして一・六二倍、ニューヨークに対して高いわけでございますが、その中でも、穀類だけをとってみますと一・九五倍というような形になっております。  くっきおっしゃいましたように、あちこちで買う値段そのものを比較するというような形で、購買力平価という考え方で見ますと、穀類で見ますと一ドルは二百十五円程度に相当するというような例が出ておりましたわけでございますけれども、まるで同じになることはあり得ないというふうに思っておりますが、それにしても、ほかの内外価格差の中でも米などは高い方に入るということでございますので、これはやはり公平性の見地から、一層の切り下げの努力をしていただきたいというふうに思っております。  おっしゃるとおり、先ほども御説明しましたように、米は一・六%の比率しか占めておりませんこともございまして、また、凶作のときにあれだけ国産米を高値でも買ったという傾向もございまして、米は高くても消費者は買う、こういう考え方が一般化しておりますけれども、私は先ほど申し上げましたように、少しずつ消費者が変わってきた、とりわけこれから高齢化社会ということを考えますと、その支出能力に関連する対策をやはり値下げという点で見ていかなければいけないのではないかというふうに申し上げたわけでございます。  以上です。
  91. 久間章生

    ○久間委員 それから、時間がありませんので端的にお願いしますが、小林公述人にお聞きしたいんですけれども、先ほどからのお話を承っておりまして、ちょっとはっきりとお聞きしておきたいんですが、これから先、飯とかあるいは小売で新規参入をどんどん認めるようなことにしていくというのは、それは時代の流れでもあり、ニーズだと思います。しかしながら、例えば、特に卸なんかにつきまして、新規参入するにしても登録制をとるにしても、やはり施設要件をきちんとしておかないと、去年みたいに米が特になくなった場合、余っているときはいいかもしれませんけれども、前金まで取って、あるいはまた、去年つき合っておったからそこからもらおうと思ったら、もうことし行ってみたら、なかった、ほかのところへ行ってみたら、あなたのところはつき合いかないじゃないかというように言われたら、小売にも困るわけなんですね。だから、きちっとしたやはり施設要件を厳格に守らせて、そういう中での競争競争といいますか新規参入を認めるようにそういうことはやはりやらなきゃいかぬのじゃないかと思うんですが、それについての御意見を伺いたいと思います。
  92. 小林正人

    ○小林公述人 新法の内容でありますけれども、卸、小売とも許可制から登録制に変わるという内容であるかのようでありますけれども、卸につきましては、先生合おっしゃいますように、施設要件を中心にしっかりした業者をつくらないと、しっかりした業者でないと、やはり今度の新法の精神に基づきますところの的確な流通というのは期しがたい、そう考えておりますので、この辺、お互いにそういう方向で行きたいと考えております。
  93. 久間章生

    ○久間委員 時間がないので、徳田公述人に御要望しておきたいと思いますが、先ほどから御意見聞いておりまして、本当にすばらしい考え方で、私どももかなり共鳴するところがございます。  これまで、どちらかというと、労働政策その他につきましてはいろいろと意見等も伺っておったことがございますが、こういう席しかなかったもので、農業政策についてもこれだけの立派なお考え等を持っておられれば、政府・与党とも絶えず、やはり連合というあれだけの大きな組織ですから、意見交換をされながら政策に反映さしていただければ大変ありがたいんじゃないか、こういう法案をつくる前にでももっともっと述べていただけたらと思うんですが、最後に、今度出ている法案については、賛否の点でどのようなお考えなのか、聞かせていただきたいと思います。
  94. 徳田靱彦

    ○徳田公述人 連合の「要求と提言」は六月に決定をしまして、総理にもこういう内容でさまざまな提言をしているということで要請をしてありますし、各省庁にも要請をしてあったところであります。自民党さんの場合はどうだったか、ちょっと、ことしはやらなかったですね。従前、意見交換をしてきた政党の皆さんには総体的に連合の「要求と提言」をお話をしてきたところであります。それが最後の場面でこういうことになって、私ども残念に思っておりますけれども、今後はいろんな機会を通じてお呼びいただければ、出席をさしていただきたいと思います。  率直に申し上げて、法案どうかということで、イエスかノーかということではなかなか答えにくい面ありますけれども、私どもからすれば、もう少し一歩先に行っていただきたいというのはあります。基本的に、二〇〇一年の我々が言っている姿を描いて、そこに行く行き方というのはさまざまあっていいんだろうし、そのテンポもあっていいだろう。例えば農協さんの第一次集荷の問題にしましても、連合の二〇〇一年の姿は、自由にしたらどうかという考え方であります。しかしそれは、来年から自由に全部するぞと言えば、それは農協、七転八倒、倒れてしまうということになりますから、そういう面では一番最後のところまで例えば残るかもしれません。  そういう中でもう一つは、農家から自由に米を売る場合に、そういうところの調整をしていきながら、新たなニュービジネスもその中で生まれてくるんではないだろうか。あるいはこの改革をしていく中で、農地は出てきたけれどもやり手がいないという、場合によればそういう状況も出るのかもしれません。そういうときに農協が、よし、その農地を使って生産活動をしようじゃないか、こういうこともあるかと思うんであります。さまざまな、そういう改革に向かっていくところの時間的な余裕を数年間の中でなし遂げたらどうなんだろうかということで考えておりまして、方向性としては是とするものでありますけれども、もう少し先に行っていただきたいというのが連合の考え方であります。以上です。
  95. 佐藤孝行

    佐藤委員長 久間君の質疑は終わりました。  次に、遠藤登君。
  96. 遠藤登

    遠藤(登)委員 本当にお忙しい中を割いて、貴重な御意見をお聞かせいただく機会を得まして、心から感謝申し上げたいと思います。  青山先生、地球規模で二十一世紀人口問題それから食糧問題、環境問題についての先生のお考え方をちょっとお聞かせをいただきたい。
  97. 青山三千子

    ○青山公述人 何か大変難しい質問をちょうだいいたしまして、恐縮しております。  地球環境問題で消費者が今大きく変わろうとしていることは確かでございまして、先生御存じのとおり、世界的にグリーン・コンシューマリズムという新たな消費者主義が起こっているわけでございます。生協なども中心にいたしまして日本でも、地球環境を考えて暮らしを見直そうとしているところでございます。  今いろいろな点をおっしゃいましたけれども、特に農業に関連して、とりわけ米について考えますと、私は、消費者の立場から、自由に輸入米が食べられるということは基本的に消費者の権利を守ることになると考えておりますけれども人口の問題もただいま先生がおっしゃいましたとおり、爆発的にふえていくというようなことを考えますと、国内自給率をさらに一層維持し、さらに高めていくというような努力が必要だというふうに考えております。  以上でございます。
  98. 遠藤登

    遠藤(登)委員 大変な、これはいろいろ国連においても推測をされておりまして、二十一世紀のいわば中間年には人口が百億を超えると。人口対策をどうするかということと、食糧問題も、現在はこれは耕地がもう地球上から年々大幅な減少をしてきている、食糧生産が減少している、飢餓人口拡大をしている、こういう状況がありますね。  それで、国内のいわば自給体制はどうなるのか、農業農村実態はどうなのかということについてはいろいろ調査もされておりまして、実態を把握をされていると思いますが、大変な状況の中でこのガット問題が対応せざるを得ないという状況に今立っている。  それで、特に私は、先生のお考えになっている、もちろん消費者優先、共生の時代ということだと思いますが、生産者実態も、どのような状況にあるのかということについて、それは先生御案内のとおりだと思いますが、農業の担い手が極度に減少を重ねている、それは何なのかということが大きな問題になっておりますが、それから特に中山間、山間、超高齢化だけで日本列島から年々二百五十を超えて山村の集落が姿を消している、こういう状況があるわけでありますが、先生はどういう認識に立っていらっしゃいますか。
  99. 青山三千子

    ○青山公述人 私は、現在の日本農業生産従事者が大変苦労しておられるということにつきまして、消費者としてかなりの人々が認識をしていると思います。それは、今先生がおっしゃいましたとおり、担い手問題が最も敏感に消費者の心にも響いてくるところであるからであります。  それで、担い手がどうして減少していくのかということにつきましては、やはり農業というまくに地球環境問題に密接な関係のある事業に取り組むその楽しくというか意気込み、生きがいといったようなものが欠如するような状況に今なっているからだというふうに思っております。  私は、新しい食糧法ができまして一歩自由化が進んでまいりますと、一人一人の自発的な取り組み方というのが重要になってまいりますので、少しずつ、今までとは農業従事者の意気込み、考え方もビジネスチャンスを求めて違ってくるというふうに考えております。  また、地球環境問題に対応する農業従事者の取り組み方というものが消費者に伝われば伝わるほど、これからの新たな仕事の分野としてむしろふえていく可能性があるのではないかと思います。  先ほど、グリーン・コンシューマリズムと申し上げましたけれども、ヨーロッパでは、聞くところによりますと、グリーン・ツーリズムというような形で、消費者農業生産地に出かけていって、みずから農業生産に従事して休日を使うというようなこともふえているようでございますので、これからは担い手が育成されていく、その過渡的な段階では、都市の消費者がむしろ農業者の手伝いをしていくというような考え方も進めていく必要が、また可能性があるのではないかと考えております。  以上です。
  100. 遠藤登

    遠藤(登)委員 それから、食は命なりという言葉がありまして、それは当然消費者の立場から重大な問題として受けとめられていらっしゃると思いますが、この食の安全性の問題がいろいろ問題提起されておりますが、その安全性の確保についての先生のお考え方をちょっとお聞かせをいただきたい。
  101. 青山三千子

    ○青山公述人 昨年の緊急輸入に際しまして、先ほど悲鳴のような苦情がふえたと申しましたけれども、先ほど申し上げませんでしたが、その中には外国産米に対する安全性への不安というものが、これはマスコミ情報もありまして、かなり消費者に高まってきたということが挙げられるわけでございます。  先生御指摘のとおり、食糧の安全問題については、消費者は第一義的に重要な分野だというふうに考えております。その点は、先ほど連合の公述人もおっしゃいましたように、これからの政府の大きな役割ではないかというふうに考えております。  また、消費者も、食品の安全性についての国民生活センターに寄せられる苦情相談の傾向を見てみますと、かなり最近は減ってまいりまして、政府のいろいろな対策、安全対策が、国際的な整合性も含めましてマイナスの面もないわけではございませんけれども、非常に真剣に対応をとって、その結果、安全不安は相談統計から見る限り明らかに減少しつつあるというふうに考えております。ただ、今後とも一層政府の責任はそういう点で重大になるかと思っております。  以上です。
  102. 遠藤登

    遠藤(登)委員 次に、徳田先生、御苦労さまでございます。今回、この資料を拝見いたしまして、もみ備蓄と回転備蓄の御提案がなされていらっしゃいますことに私も高く評価をいたしたいというふうに思います。   まず、古々米をなくする、もみ備蓄で回転をして命ずり米で消費者に届けるということは非常にコストが若干高くなるということになるわけでありますが、そういう古々米をなくすという意味では極めてこれは、やはり昔からの知恵として、特に農村などにはとられてきた歴史があるわけでありますが、このもみ備蓄の、非常に私らも重要な課題として提起をしてきた経過がありますが、コストの若干高くなるという面についてやはり国民的な御理解をいただくということが前提だと思いますが、その点のお考え方などもちょっとお聞かせをいただきたい。
  103. 徳田靱彦

    ○徳田公述人 私ども素人なものですから、それを幾ら、一体どういう方法になるとかかるかというのはわかりません。  それから同時に、今回議論されている中でも、冷蔵庫の冷蔵貯蔵ですか、もみとか、そういう場合にどのくらいのコストがかかるのかということをやはり国民に提起をしていただきたいと思うのです。そういう中で、例えばもみと冷蔵とを組み合わせをするとか、こういう、このレベルでいったらこれぐらいのコストがかかるぞという、そういう問題提起をしていただいて、国民も納得の中でやはりっくり上げるのがいいのではないかというように思います。
  104. 遠藤登

    遠藤(登)委員 それから、先ほど先生の方から六年間の移行措置、七年目が転機だ、確かにそうだと思いますが、農政審答申のようないわば構造改革農業の分野でやる。それは大変な問題で、いわば新しい、例えば果樹の場合でも、新しく植哉すれば少なくても収穫にいくまでに七年もかかる、五年も七年もかかる、こういう代物なんですね。やはり自然の恵みの中でそれを成長を促進をさせても、それぐらいな時間がかかる。こういう産業をどのように改革して新しい時代に対応するような体制強化を図っていくかということは、相当な私は、したがって、これは五年計画、十カ年計画、十五カ年計画、長いスパンの中でやはり目標を明確にして対応していかなければならない課題だと思いますが、そういう点についてのなおひとつお考え方を改めてちょっとお聞かせをいただきたいと思います。
  105. 徳田靱彦

    ○徳田公述人 おっしゃられるとおり、規制緩和、連合としても議論しているのですけれども、時間的なものをどう考えるかによって規制緩和に対しても、もう絶対反対論から、いやそのぐらいであれば何とかなるかなという議論があるぐあいに、やはり時間というのは必要だろうというように思います。そういう面で、農業がかなり時間を要する産業であるというのは承知はしているところであります。  問題は、今までの日本農業というのは米を中心にして、今ある食管制度というのがこれが中心に座って、それを前提にしたすべての農業予算の組み立てたとかいう展開になっていたのではないかなというように思っているところであります。そういう面で、先ほど来、食管制度が、まずこれをどうするかというのがかぎだということで申し上げている点はそういう意味でありまして、これを一体どうするのかということを、この旗をこの柱をしっかりと掲げていただきたい。そういう中でソフトランディングという道をさまざまな姿で持っていくことが大事だろう。  そういう組み立てになった場合に、じゃ数年間で達成ができるものは何なのか、もっと時間がかかるものは何なのか。そういう区切りをしながらめり張りのきいた農政というのを展開をしないと、先ほど護送船団という言葉は悪いですけれども使いましたけれども、何となくすべての農家がまたぞろ連れていってもらえるのではないのかな、そこそこ兼業農家でくっついていけばそれなりにお金になっていくのじゃないのか、機械の負担はボーナスで買えばまあ何とかなるのじゃないか。いつまでもこの姿でいくことが本当の意味でいいのかということになりますと、少し厳しいかもしれませんけれども、何らかの判断を個々の農家がこの際下して、そういう方向性が一定程度出ていく中で宣言うような例えば十年計画でということも考えられるのではないのか。まずは柱を立てることが大事だろうというように考えております。
  106. 遠藤登

    遠藤(登)委員 時間が参りましたので終わりますが、食糧問題、農業問題、これは国民の命にかかわる重大な課題だと思いますので、消費者生産者国民全体の課題としてお互いに真剣に対応していきたいというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。  どうもありがとうございました。
  107. 佐藤孝行

    佐藤委員長 遠藤君の質疑は終了いたしました。  次に、前原誠司君。
  108. 前原誠司

    ○前原委員 新党さきがけを代表いたしまして、公述人の背くん方に御質問させていただきます。本日は、四名の公述人の皆さん大変御苦労さまでございます。私の米、農業に対するまず基本的な考え方を申し上げてから御質問をさせていただきたいと思います。  農家の皆さん方の立場に立ったなら、今までの農業というのは、米づくりというのは、もちろん時間的な経緯、時代の変化というのもございますが、基本的にころころ変わる、猫の目のように変わる農政であったというふうなことは言われても仕方がないのではないかと思っております。  例えば、秋田県の八郎潟、もともとは湖でありましたけれども、干拓をして大規模化を進めるというふうなことで、脱サラをして米づくりというものに情熱を燃やして入植をされた方々というのもおられたわけでありましたし、全国でもそういうふうな方向性で大規模化、そして自由につくってくださいということが行われました。そうすると今度は食生活が変わってまいりまして、米の供給過剰という中で減反ということが出てきまして、減反に強制的に参画をしてくださいというふうなことになってまいりました。減反に参加をするということは米の自給、国内生産が守られるだろうということで思っておられたと思いますけれども、結局それが今度は外国から米を輸入するということになって、農家の方々からすれば農政に一貫性がないというおしかりを受けるのは至って当たり前、当然のことではないかと思います。  ただ、じゃ行政が悪い、政治が悪かったのかといえば、私はこれは業界側も含めての政官業の自己崩壊的な構図もあったのではないかというふうに考えております。言ってみれば、政治力が非常に強過ぎたというふうな部分があるのではないかと思っております。じゃ、農業の方々の意向を酌んだいわゆる保護政策をやってきて果たして米農家というものが発展したかどうかといいますならば、結局発展してこなかったわけであります。内外価格差が拡大をしてきたということが皆さん方からも指摘がございましたし、また一番大きな問題というのはやはり後継者不足だろうというふうに思います。人がいなくなったら、日本の米を守るといいながら、だれが守ってくれるのか、あるいはだれがつくってくれるのかというふうなことになってもいたし方がない。  ですから、死んだ子の年を数えても仕方がありませんけれども、できれば外国から米の輸入というふうなものの枠をつくる前に、外圧ではなくて自己改革という形で国内流通でありますとか生産というものの改革ができたら一番よかったし、その後に輸入自由化という話になっても少々自信が持てて話は大分変わってきたのではないかというふうな私は気持ちを持っているわけでございます。  そういうところでこれからの話をしないといけませんので御質問に移らせていただきたいと思いますが、私は、今後はやはり中山間地の問題と平野部の問題をまず分けて考える必要がある。中山間地の問題に対しては、農業ということよりも、重要なのはやはり治山治水という観点からいわゆる社会資本の整備でありますとか、あるいは地場産業の保護という観点からそれなりの財政措置をとっていくということは必要不可欠ではないかと思っております。ただ、平野部のことに関しては、やはり生産なり流通というふうなものの自由化ということをある程度認めていって、そしてやはり自己競争力をつけた分野にしていくということがまず大切なんではないかと思うわけでございます。  そこで、今回の新しい食管、新食糧管理の制度でございますが、いわゆる計画外流通というものを設けました。いわゆる生産調整に乗らない、そして自由に売買ができる、そういう計画外流通というものができましたけれども、私はこれは政府がいかにお金を使うかどうかでいわゆる計画外流通の比重というものが変わってくると思っております。  つまり、インセンティブは、減反に関するインセンティブがなければいわゆる減反政策に乗らないということになりますから、減反政策のインセンティブを高めようと思えばそれなりの財政措置でお金を使わなきゃいけないということになります。つまり、お金を使えば使うほど減反政策というものの実効性が上がってくるという形になると思います。そうした場合に、じゃ、いわゆる自由に流通する米の市場というものが狭まる、そうすると市場原理というものが反映をされにくい、物の値段が上がる、米の価格が上がるというふうなジレンマに陥ってしまうわけであります。  非公式に話を伺っていますと、食糧庁は大体一千万トンの供給の中で七百万トンぐらいは管理をしていきたいというふうな話を党の説明では受けたわけでございますが、この点について公述人の皆様方、お伺いしたいのは青山公述人、小林公述人、徳田公述人のお三方に伺いたいわけでありますが、この減反政策を実効あらしめるためにはお金を使わなきゃいけない、そしてお金を使ったらそれだけまた価格が上がるかもしれないというジレンマ、この点をどうとらまえておいでになるか、その点をお三方にお伺いできればと思います。
  109. 青山三千子

    ○青山公述人 政府がお金を使ってその結果が最終価格に反映しなければならないかどうかについては考え方によるのではないかというふうに思っております。反映していただいては困るし、お金は使わなければならないということではないかと思っております。  以上です。
  110. 小林正人

    ○小林公述人 要は、やはり減反政策をちゃんと立てて、ちゃんと実行されるということが一番肝要じゃないでしょうか。そのほかいろいろあろうかと思いますけれども、そう思います。
  111. 徳田靱彦

    ○徳田公述人 減反の必要性というのは今日の状況ではあるというように考えております。それをどういうようなやり方をしていくかということですけれども基本的には選択的減反という提起をしております。選択的減反といっても非常にまた難しさはありますけれども基本的にはやはり価格で、最終的な価格でそれぞれの農家がどれをどれだけ生産をするのかというのは農家の判断というところに基本的にはゆだねていく姿が最終的にはとるべき方法だろうというように思います。  しかし、現状の状況でそこにあっという間に行こうとすればそれは大変な混乱になりますし、価格の面でもまだ見通しがつかないということですから、少し時間をかけながら、今日までの一定の対策はとりつつ、徐々に行かなければいかぬのではないか。その場合も、問題は先々いつごろにはこういうことにするぞということを明確にして、そしてそれぞれがそういう観点で自分のところの作付やいろいろなことを考えていけるような、そういう時間的なものが必要だろうというように思います。当面する必要なコストは当然あるだろうというように思います。
  112. 前原誠司

    ○前原委員 ありがとうございました。  徳田公述人の御意見には非常にバランス感覚あるいは現実性も帯びていて、ぜひさきがけから議員になっていただいてやっていただきたいぐらいの思いで今聞かせていただいておりました。  きょうのこの公述人の事情を伺うというのは、別に農業に限ったわけでございませんで、WTOという全体の貿易をどうしていくかということについて話を伺うということになっております。したがいまして、ちょっと農業から視野を広めまして、全体の問題について御質問したいわけでございます。  私は先日、これは総理に対しても御質問したのでございますけれども、いわゆるより自由な貿易というものが行われる、そして制限というものがなくなってくる、そしてその制限がなくなった場合に比較優位の産業については成長する可能性があるし、またその反対の部分についてはだめになっていく可能性がある。特に、この農業なんかはそういうふうな可能性のある分野ということで非常にけんけんがくがくの議論がなくれているわけであります。しかし、トータルで考えた場合に、果たして、今自分たちには関係ないというふうに思っている産業についても結局将来的に大きな影響が及んでくるのではないかというふうなことも考えておかないと、やはり政治の責任としては不十分であろうというふうに思っています。  例えば、今貿易黒字、日本側から見ましての貿易黒字というものが非常に問題視をくれているわけでございますが、このWTO日本も加盟することによって、可能性としてさらに貿易のインバランスというものが拡大をするということも十分に考えられるわけであります。そうなったときに、じゃ三〇一条なんかもWTOの枠内においては発動できない、枠外なら発動できる、枠内においては発動できない、あるいは二国間協定というものもできないということになれば、そういったノーガードの殴り合いというものを防ぐというのは、ある程度為替というものになってきて、いわゆる円高というものがさらにこのWTOに加盟をする中で加速をしていくという可能性もあるわけでございまして、そうしたときに、農業だけではなくて日本全体の産業、特に製造業に及ぼす影響というものが大分深刻になってくるのではないかというふうに私は思っております。  そうなった場合、総論としてはWTO日本も加盟すべし、私もそう考えておりますが、そういうふうな可能性、危険性というものをとらまえて、じゃ具体的にほかの施策として日本はどのようなものに同時並行として取り組んでいったらいいのかというふうなことをぜひ公述人の背くん方からお知恵を拝借できればというふうに考えておりますが、時間もございませんので青山公述人、そして徳田公述人のお二方に、御自身のお考えで結構でございますので、お述べいただければと思います。
  113. 青山三千子

    ○青山公述人 私は、この国際化時代に国際的な協調を無視することは不可能だというふうに思っております。そのために、今まで保護されてきた各製造業または生産者流通者たちが非常に図られることになるかもしれないということも考えております。バブルがはじけて、私たち消費者の家計もリストラをしておりますけれども、やはり、この機会日本全体の製造業のあり方といったようなものを再総点検して対応するべきときなのではないか。それを防御するような新たな対策を立てるというよりも、むしろ個々が独自に判断することではないかなというふうに考えております。
  114. 徳田靱彦

    ○徳田公述人 大変難しい質問で、なかなか答え切れないと思いますけれども、今回のWTO全体のところについて、連合としてもまだ検討は不十分でありまして、きょうも局長会議の中で、サービス貿易等と知的所有権の問題等、もっと連合としても検討を深めていかなければいかぬなということで議論をしましたけれども、そういうことで、非常に途中のところであります。  今感じておりますのは、いずれにしましても、長い間に議論をしてでき上がったこの新たなルール、やはりこれをしっかりと受けとめていかなきゃいかぬだろうということであります。そして今、現状ではなかなか描き切れないものはたくさんあると思うのです。この例えは農業関連の問題にしましても、今の農業関連の生産資材の価格現状のままずっといくのかということになりますと、例えば今製造業のところでも生産財の輸入が相当程度、かつてでは考えられないぐらいの勢いで進行しているところでありまして、そういう面で、規制緩和全体も含めますと、新たな価格体系というような、国内においてもそういう状況が生まれてくる可能性があるのではないか。  そういう規制緩和とか、あるいは物価総体も卸売物価も含めまして新たな体系が出てきますと、そこにはまた新たなビジネス、新たな産業が生まれてくる可能性というのはあるだろうというように思います。現状なかなかそこが見えてこないものですから、不安の中でどちらかというと保守的になりがちでありますけれども、少し乱暴な言い方かもしれませんけれども、ある面で川を渡りながら、そして新たな日本の産業の展開というのを考えていかないと、今までの守りだけではこれは総体的に沈没するおそれもなきにしもあらずではないかというように感じているところであります。
  115. 前原誠司

    ○前原委員 ありがとうございました。  私もこういうWTOに加盟をした際に及ぼす影響というものをまた政府がきっちりとシミュレーションをした形で、そして、先ほど青山公述人からも再度お話がございましたけれども、情報提供として国民に知らしめて、そして実は自分に関係のないだろうと思われているところも、そういう情報を見ながら、実は関係していたんだというふうなことを事前に知り得るというふうな環境をつくることが大変必要なことだと思いますし、そういう状況については、政府・与党としてもしっかり取り組んでいかなきゃいけないと思っておりますし、政府についても要望を重ねているところであります。  また、今徳田公述人がおっしゃいましたように、やはり一方通行の貿易ということじゃなくて日本も受け入れる。つまり、非関税障壁あるいはそれの代表的なものであります規制というふうなものを、もちろん時間をかけながら、または選別をしながら、痛みの伴う改革においてもそれを勇気を持ってやっていくというふうなことが、私はトータルとして、このWTO日本が加盟したことに対するプラスの評価が出てくるのではないかというふうに思っておりますので、さきがけといたしましても、行革そして規制緩和というふうなものに積極的に取り組ませていただきたいというふうに思います。  本日は、どうも公述人の皆さんありがとうございました。
  116. 佐藤孝行

    佐藤委員長 前原君の質疑は終了いたしました。  次に、山本拓君。
  117. 山本拓

    山本(拓)委員 きょうは御苦労さまでございます。何点か、きょうは公述人としておいでいただいたわけですからできるだけ多くしゃべっていただこうと思って、私は質問は短目にさせていただきます。  そういう中で、今回先ほどからお話が出ておりますように、WTO日本にとって大きな利益をもたらすかわりに、逆にデメリットももたらす可能性も強い。まあ、いい方は、ほっといたって極端な語いいわけでありますが、デメリットをいかに少なくし、またそれを逆に転換するかということがまさしく我々議論をいたしているところでございまして、きょうおいでの皆さん方で、今回のWTOが設立また日本がそれに参画するに当たって、日本にとって一番、最もそれぞれの皆さんが心配すべきデメリットというものを一つ、頭の中にあるやつを一言ずつ教えていただきたいと思います。  公述人の皆さんは、この人、この人と指名するより、せっかくおいでいただいたわけですから、お一人お一人、四名の方にお尋ねしたいと思います。
  118. 青山三千子

    ○青山公述人 WTOのデメリットという御質問でございますけれども、私はやはり、島国という表現はよくないかもしれませんが、今までよい環境の中で育ってきた日本の体質が、国際化の荒波の中でかなりの衝撃を受けるであろうというふうに考えております。したがいまして、先ほどお話もありましたような規制緩和などの対策を抜本的に、真剣に取り組まなければ、かなりのダメージを受ける部署も出てくるかと思っております。
  119. 宮村光重

    ○宮村公述人 WTOは、基本的に輸出大国の利益が中心になっているという点が最大の問題だと思います。とりわけ日本は、食糧についていいましても輸入大国であります。これが著しい影響を受けるということが一つであります。  それから、基本的な国際的な貿易ルールが、ガットでは、御承知のとおりに、農産物等についての適用除外があってきたわけですが、それがなくなるという、つまり鉱産物についても農産物についても同等に扱われるという原理が作用する。果たしてそれでいいかどうかということが最大の問題だと思います。土地生産であるという農業の、農産物の特殊性、これを考えなければ、先ほど来出ておりました環境問題とか食糧の不足に対する問題とかいうことが対応できないんじゃないかというふうに思います。  あわせて、基本的な問題で言うと、日本の、日本だけとは申しませんが、それぞれの国、諸民族の自主的な生活の仕方というものに規制が加えられる、国際的な規制緩和という名でありますが、実は規制が強化されるという面があるということを注意しておかなくちゃいけないというふうに思います。
  120. 小林正人

    ○小林公述人 私、米の販売業者でありますので、その立場でお答えしたいと思いますけれども、やはり米の輸入に関連しまして、規制の緩和ということも十分あり得ると思いますけれども、その規制の緩和のために、全体の流通といいますかが思わざるような結果になるということがないようにやはり考えていただきたいと思います。そういうことになれば一つのデメリットじゃなかろうかと。最初からデメリットということには考えておりません。  以上であります。
  121. 徳田靱彦

    ○徳田公述人 メリット、デメリットというとらえ方はできないと思うんです、率直に申し上げて。どういう影響を受けるのかという観点でしかとらえられないだろうというように思います。そういう面では、最大のやはり影響は、農業影響を受けると思いますし、またこれから詳細に見ていった場合に、知的所有権問題というのはいろんな分野で問題になってくる可能性があるんではないのかなという感じがしております。
  122. 山本拓

    山本(拓)委員 今徳田さん確かにおっしゃるとおりだと思うんですが、例えば、一点だけ徳田さんにお尋ねすると、労働組合の場合、雇用確保というのが大変大きな使命だと思っております。規制緩和をやり、今回の輸入、WTOというのは、どちらかというと輸出産業はどんどん伸びるわけですね。輸入の場合は、これ、関税をだんだん五年間撤廃していくわけですから、大体今まで関税であったのは国際競争力がないところにあったわけで、それが撤廃されれば当然その業界は壊滅的になる。繊維を初め非鉄とかいろいろ心配されているものがありますが、もちろんこれは、いい悪いは別として、連合としての事実認識ですね。そういった極めて関税が撤廃されるその業界、また当然そこは空洞化が予想されますね。それは何を意味するかというと、いわゆる失業率、雇用の場が失われる。もちろん一方では新しい雇用が生まれる要素もありますが、それはやはり質の違う雇用の場が多い、そこらの対策というんですかね。ましてや、規制緩和でもいろいろ、大企業の規制緩和と地元の規制緩和、中身違いますし、消費者が言っている規制緩和と生産者が言っている規制緩和と中身違いますし、そこをどっちをとるかということ。  もちろん規制緩和は全般的にやっていきますが、むしろこれは青山さんですか、規制緩和、大事だとおっしゃいますが、社会的規制はこれは逆に強化になると思うんですが、自分たちにすべての規制緩和、全部が受け入れることができるか。絶対これは、これから我々が進める規制緩和に対しては、みんな喜ぶ規制緩和はないと思うんですね。これはもう規制緩和については一〇〇%受け入れます、反対はない、しないというような認識が皆さん方の周りにあるかどうか。お二人にちょっと別々にお聞きしたい。
  123. 徳田靱彦

    ○徳田公述人 具体的な例では合板のところが、関税の引き下げによってかなり競争力的には大変になるのではないかなというようなこともあります。そのほかさまざまあると思いますけれども、規制緩和問題全般が、これは今回のガット関連だけじゃなくて、これから規制緩和を議論をすればするほど、雇用の問題あるいは労働条件問題をどう位置づけ、どういう対応対策をとっていくのかということが重要、重大になるだろうというように思います。  まだ、具体的な点で、やはりこの規制緩和問題も各論の点を詰めながら、そして個々の雇用問題がどういう姿にあらわれてくるのかという点を押さえないと具体的には出てこないわけでありまして、そういう面ではまだまだ検討が不十分な段階にとどまっておりますけれども、やはり一つは、今までの何というんですか、これからの構造転換をしていくときに暗いイメージだけではいけないんじゃないのか。例えば雇用保険、まあ失業保険という言葉から変わりましたから、従前のあれから変わりましたからまだいいんですが、何となく雇用保険というとやはりイメージが暗いんですね。あるいは職業訓練ということもやはり暗いイメージだと思うんです。そういう面では、そういう呼び方というのか、もうちょっと制度あり方をある面で今までの、失業したから対策をとるという観点から、雇用調整時代における制度としての確立、あるいは職業訓練というような言葉も、生涯教育の一環の中で、職業教育というような言葉遣いの中で物を描いていく。そういう何となくこう暗いイメージ、何か、何となく世の中から落後したんじゃないのかというような形ではなくて、そういうような対応というか、総体的なとらえ方が必要ではないかなというように思います。  もう一つは、これから規制緩和問題、どこまで議論がなってどの程度具体化されるかありますけれども、やはり政府が主導的にいわゆるつなぎのというのか、当面する雇用対策、雇用需要というものをどう創出をするのかということもこれ大事な課題ではないのかな。そういう面では、介護問題が大変議論になっておりますけれども、こういうところも新たな視点の一つとして位置づけをしなければならない人だろうというように考えているところです。  連合も近々、最近の失業状態がなかなか、景気回復の兆しはあるというものの好転をしないという状況の中で、近々百万人の雇用創出というようなプランを、問題提起をしたいというように思っております。そういう面では、雇用の面も一時的な、過渡的には政府の政策誘導というのが必要ではないかというように考えております。
  124. 青山三千子

    ○青山公述人 先生のおっしゃるように、規制緩和と一言に言ってもいろいろな面があると思っています。とりわけ消費者の立場からいいますと、暮らしの安全を守る規制につきましては、とりわけ農産物などにつきましても先ほど来お話がありますように、安全性はかなり規制をきちんとしてほしいと思っているのが一般的であろうというふうに考えております。  消費者保護関連諸法、八十幾つもございますから、ほとんどの法律といっていいかもしれませんけれども消費者保護に関連する諸法につきましては緩和してもらいたくないというのが偽らざる意見でありますが、しかし、大方の流れから見ますと、むしろ、がんじがらめの規制の中で暮らすのではなくて、みずからが自己決定する能力を高めていくのが国際化社会の中で日本人にはとりわけ重要になってくる課題ではないかというふうに考えております。  したがって、消費者保護に関連いたしましても、これからは自立する消費者をどのように支援していくかという形で対策が請われるべきではないかというふうに考えております。以上です。
  125. 山本拓

    山本(拓)委員 再度ちょっと徳田さんにお尋ねしますが、これからは、やはり日本の鉱工業生産物は、これは世界のコストに勝ち抜いていかなければあきませんから、材料はとことん安くしても、要するに人件費がかなり抑えていかなくてはならない。すると、今まで日本は年功序列を是としてきた。当然それは、連合の組合としてはそれを改めることは容認するということなのか。  それともう一つは、どう言うのですかね、中高年層が非常に行くところがなくなるんですね、中間管理職というか。特に年金が今度六十五ということになると、その中高年の――若い人は何だかんだ言ったって頭がまだ若いですから、サービス業とか情報とか、いろいろな新分野に積極的に登用されると思うのですが、ちょっと年いった、我々以上のような人というのは、なかなかそこは、こっちの職種あるから行けといったって行けない。そしてまた、営業時間が深夜に延びたから深夜に働けといっても、なかなかそういうライフスタイルにはなじまない。だから、そこらの、要するに労働環境も悪くなる。そしてまた、そこへ外国人労働者の競合問題も入ってくる。だから、その外国人労働者の対応ですね、組合として。当然、同じ仲間として今後一緒にやっていくのか。そこらをひとつお聞かせいただきたいと思います。
  126. 徳田靱彦

    ○徳田公述人 外国人労働者の関係につきましては、くまざまな今の現状、合法的な部分と非合法の部分とありますけれども、受け入れの基本的な連合としての考え方は、国内雇用との調和という点、それから商環境の整備の問題、国民的合意の問題、人権の尊重、この四原則を前提にして具体的な基準をつくってはどうなのか。  そういう面で、具体的な策定に当たっては、国内の雇用や労働条件に悪影響を及ぼさないということ、雇用主の責任が明確にされるということ、教育を含め労働者が十分な職業能力を有して安全衛生を確保するための最小限の知識を有すること、それから社会的コストの負担が明確にされること、関係する国内労働者及び労働団体の意見が十分反映をされる、そういうようなことを踏まえて対応をすべきだというような原則を持っているところであります。  今後、国内的な雇用の問題も、今日の状況でいくと、この円高状況でいきますと、五%程度ぐらいの失業率というのは当然になっていくのではないだろうかという見解もあります。あるいは、今まで最先端の日本が強いと言われていた産業も急速に力が衰え、どちらかといえばアジアとの、東アジアというんですか、アジア総体的な、中国にしてもインドにしても相当な急成長をし力がついてきたということで、そういうところとの価格競争になっていくという側面、こういう中でそういう言われ方もしておりまして、雇用問題でいえば楽観はできない問題だと思いますし、御指摘のように、中高年がそこで一番問題になってくるということは承知のところでありまして、具体的に、ではこれをどういうことにという点で具体論を今連合として持ち合わせているところではありませんけれども、雇用問題に対する具体町な提言を今行おうということで、議論も相当スピードを上げてしているところであります。  いずれにしましても、ある面でほっておいても、今の状況からするとそういう心配もありますし、またもう一つは、規制緩和という問題を、より推し進めれば進めるほど出てくる。あるいは農業の問題にしても、先ほど申しましたように、兼業農家がこれからの農業を自分がやるのかやらないのか、そういう判断をしてくると、兼業農家から勤労者、サラリーマンへの完全な転換という状況が生まれてくる。一方では、農山村のところも空洞化によって雇用不安が始まりつつあるような状況、こういう状況だけに、先ほど申し上げたように、総体的な、国として、この間の日本全体の構造改革というのですか、それに対する政府としての雇用創出の視点というものを打ち出していく必要があるのだろうというふうに考えているところであります。
  127. 山本拓

    山本(拓)委員 それでは、ちょっと主要食糧についてお尋ねいたしますが、政治的に見ますと、軍事的な以外に国際戦略としては食糧とか情報とかいうものが、今までの歴史を見ますと戦略上使われてきたのも事実であります。日本が戦争で負けて、沖縄にアメリカ軍が入ってきて、一番最初、米軍がやったところは、沖縄の水田を全部つぶしてしまって自給できないという形にしたという経過などもありますけれども、そのように有事のとき、万が一のとき、国民食糧をどう確保するか。先回、米不足のときに緊急輸入いたしましたけれども、天候のみならず、今後さまざまな要素が含まれてくる。一方では、それに備えて備蓄率で対応しろという話もございますが、それにはなかなか限界があることでございます。  そこで、現在の穀物自給卒というのは極めて、カロリーベースでも、また実体ベースでも三割切っていますし、カロリーベースでもかなり、過半数切っているというところでございまして、そういう点、ひとつ皆さん方が日本人としての食糧主要食糧自給率についてどのようにお考えになっておられるのか。  また、いわゆる食糧安保論というのは昔から、古く言われておりますが、それに対して、要するに背くん方は国民としてもう古いという考え方か、それはある程度政策的に考慮すべきという考え方か。  その二点について、お一人お一人、お尋ねをしたいと思います。
  128. 青山三千子

    ○青山公述人 消費者として日本の米、日本の野菜に関連して、最も情報を的確に伝えられ、また知ることも容易であるという点からも、安心して食べられるものだというふうに考えております。そういう点で、食糧戦争などが起こるか起こらないかはともかくといたしまして、日本自給率が低いことについてはほとんどの消費者が心配をしておりまして、自給率を高めてほしいという声が一般的であります。  ただ、国際化の中で、他の国々の野菜、米といったようなもの、とりわけ果物などが入ってくることによって私どもの食卓が思いがけず豊かになったような感じがしていることも事実であります。  以上です。
  129. 宮村光重

    ○宮村公述人 食糧自給率は自然に下がってきたわけではないということを、まず認識する必要があると思います。これは政策的な事柄が基本にありまして下がってきているというふうに理解しなければならないと思います。  それから、とりわけ米について申し上げますと、御案内のとおりに、圧倒的な米の国際的産地というのはアジアでございます。九〇%台であります。そして国際市場に出回っている米の量は、総生産高のせいぜい三ないし四%ぐらいということですから、国際的な商品としては非常に小さいものである。しかも、意見で述べましたような、日本の米穀生産基盤というものがあるわけですから、これを輸入するということは著しく自給率を下げることになるだろう。御案内と思いますけれども、現在、食料需給表で言う穀類の消費仕向け量というのは四千万トン弱であります。そのうち、日本の米生産で支えているのはほんのわずかな二十数%しか支えておりません。しかし、水田が大変な生産力を持っておりますから、米も大事でありますけれども米以外の穀物もっくるということで、国民が必要とする穀物生産日本農業生産で整えていくというような基本的な施策が大事だ。そのことによって穀物自給率を引き上げることができますし、食糧自給率全般に寄与するであろう、そういうふうに私は考えております。
  130. 小林正人

    ○小林公述人 穀物の中の米については自給は可能だと思っておりますけれども、その他も入れての自給率を高めるということになると、これはやはりそれ相応の経費その他も考慮しなければいかぬでしょうし、ということはやはり、何といいますか、国民の認識といいますか了解といいますか、そういったものを得た上でそれ相応のことをしないと難しいのじゃなかろうか、そう考えております。
  131. 徳田靱彦

    ○徳田公述人 自給率を一〇%アップするためには六千億円ぐらいかかるというようなお話も聞いたことがありますし、コスト負担と率という問題をどこで国民的な合意形成ができるかというのが非常に大事なところだろうというように考えております。  それから、世界生産量なり在庫の問題としては、八〇年代の過剰基調から九〇年代に至ってタイトになり、そして最近の在庫率を見ると少し安定在庫率を下回るというような状況にあるというように認識をしておりますし、これからの人口増等を含めて考えた場合に、そう世界の穀物の生産状況というのは必ずしも楽観できない状況にあるのではないのかなというように受けとめております。  そういう面で、先ほども冒頭申し上げましたように、自給力、力の維持ということについて大事にしなければならないのではないのかな、それはかなりお金がかからないでできることもあるというように思います。  例えば、小麦の品種改良が非常におくれて、そして戦後アメリカを通じてオーストラリアに渡り、オーストラリアで改良された品種が今日日本で最も好まれている小麦の粉だ。その間、同じ品種を日本は後生大事にそのまま抱えてきて、品が悪くてだめだなというように言われている。そういう面では、自給力という面でいきますと、そういう研究的なあるいはそういう基礎的なものを、本当の意味でいつでも立ち上がっていけるものをどう持続的に力として持っていくことができるかというのが大事な課題ではないかというように考えております。  それから、安定輸入を図るという面で、国際的な地域分散をするということと、それから中長期的な二国間の輸入協定締結をしまして一方的な禁輸措置がとれないようなそういう方策をとる必要があるのではないか。それを、協定を結ばないという国とは、そういう国からは輸入ができないというようなそういう措置も、これだけ輸入量が多くなってきますと考えないと危ないのではないのかなということで考えております。
  132. 山本拓

    山本(拓)委員 日本食糧、特に米なんかはつくってコストで世界と勝てるかというと物理的に勝てるわけがない。だから、自給率とか、万が一のことを考えて、ある程度消費者の立場からすると食糧確保のための保険料という認識で少し税金の賄いをしていただかなくてはならないかな。  具体的にここでお聞きしたいのは、例えば皆さんの御意見の中では、大概ある程度自給力は必要であるという認識、だからそういう中で、そのためにはお金がかからないといったってやはり最低限行政がやる場合にはかけざるを得ないですね。消費税一%分かけるか、二%分かけるかという話まで出ておりますが。  そこでお尋ねしたいのは、皆さん国民の、消費者の立場からして、どの程度の食糧確保の、日本人としての確保に保険料としてどのくらい負担すべきか。わかりやすく言うと、消費税一%で二兆円という数字が一つの目安として、一%分ぐらいは年間、それともその半分ぐらいはという、そういうアバウトでいいですからひとつお聞かせいただきたいのと、そしてもう一つ農政批判と農協批判といろいろごちゃまぜになっておりますので、皆さんから見てよく話題になる農協に対して、ここが悪い、そしてもう農協をつぶした方がいい、また農協から金融部門だけ取り去った方がいいとかいういろいろな農協に対する批判もありましたら、ちょっと教えていただきたいと思います。
  133. 青山三千子

    ○青山公述人 せっかくの御意見ではありますけれども消費者はこれ以上何のための消費税という名前の税金を負担する積極的な希望はないというふうに言っていいのではないかと思います。むしろ、予算の内容を再点検し、リストラして、農業に振り向ける部分を捻出してほしいというのが私の意見、多分ほかの消費者もそう思っておるのではないかと思っております。  農協についてはいろいろな意見があることは知らないわけではありませんけれども、もとはといえば協同組合、もとはといえばではなくて、もともと協同組合でありまして、お互いに生産者、どういうふうにやっていくべきかということを考えながら仕事をしておられるものと考えております。いろいろ問題がある点はこれからぜひ直していただきたいというふうに考えております。ただ、農協だけに頼るのではない、流通自由化などの新しい方針を新しく考えていくべきときだというふうには思っております。  以上です。
  134. 宮村光重

    ○宮村公述人 先ほど来備蓄の考え方があったと思うのですが、備蓄はお米の粉といいましょうか、でき上がったものを蓄えるという考え方、これももちろん大事なんですけれども、そのベースになるもの、一つは水田でありますね。これは強調も多少されてきていますけれども。もう一つは、その水田を耕して米をつくるという農業生産者がいるということ、ここが確保されていなければ備蓄にはならないというふうに私は思うのです。  農業生産者が米をつくって割が合う、あるいはその他の農作物とあわせて農家経営が成り立つという、これの基本になるものはさまざまありますけれども価格制度だと思うのです。農業保護であるというような考え方から価格制度を今日までずっと削減してきておりますけれども、それをやはり改めるべきだ。  御質問の、どのくらいの金額がという御質問、端的にというふうに言われましたのですが、私どもいろいろな場で研究的なことをしますと、例えば四千億とか五千億とか、もしそのくらいかけるとすればかなりのことはできるというふうに思っております。もちろん使い方があります。  それから、農業協同組合につきましては、多くのことが問題としてあると思いますが、やはり農協は農業協同組合でありますから、農業生産をする農民の協同ということが成り立たなければ農協にはなりません。今それが非常におろそかになってきているということを抜本的に正していくということをしなきゃいけないのじゃないかというふうに考えております。
  135. 徳田靱彦

    ○徳田公述人 農業にどの程度の負担をということで、数字的には非常に難しいと思います。もう一つは、国民の側も判断をするのに率直に言って今の状況では判断しかねるというように思います。  例えばそれは、農業基盤の整備事業にしましても、国道の近くにかなり立派な二車線の歩道つきの真っすぐの道路がある、いやすごい道路があるねと、この間も富山に行ったとき言いましたら、いやこれは農道だと。そういうもの、あるいは過疎地の山村に行きますと体育館がありまして、その体育館のところには何とか構造改善事業とかという看板がかかっている。これも農業対策なのかな。  そういうところまで含めて日本農業生産を維持をしていく費用だということで考える場合と、そうではなくて、より直接的なところでの点では非常に違いがあるのではないのか。そのことが国民の目から見ますと一緒くたになりまして、何が何だか率直に言ってわからないということであります。そういう面で、できるだけそこはひとつ区分けをしていただきたいなというふうに考えているところであります。  それから、農協くんも最後の方に組合とつきまして、連合も最後の方に組合とつきまして、それぞれ人格を持った団体でございまして、なかなかこういう場所で率直に連合も、例えば連合はこういうところがけしからぬと言われても、もうちょっと別な場所で言ったらいいのじゃないかということに思う面もありまして、控えさせていただきます。
  136. 小林正人

    ○小林公述人 農協の問題なんですけれども、今度の新法で、新法がうまくいくかどうかという問題、これは上の方ではいわゆる備蓄だとか減反の問題、これが第一だと思いますが、下の方の流通段階ではやはり、私ども卸の段階から小売、消費者といきますね、そういった品質の問題、その他銘柄の問題、それからいろいろな種類の問題、価格の問題、これを今まで以上にやはり卸が農協さんとよく話し合いをして、消費者はこういうことを望んでいる、そういう情報化の必要があるんじゃなかろうか。  ということは、既に始まっております産直、こちらの方がきめ細かくいくんじゃないかという説もありますけれども、産直とそれから普通の我々の流通どこの二つで、やはり生産者といいますか農協といいますか、改めて情報を交換し合って、それで米の流通をうまくやっていくということもやはり新法を成功させる一つの考え方じゃなかろうかということもありますので、そういった方向で考えていきたいと思います。
  137. 山本拓

    山本(拓)委員 どうもありがとうございました。
  138. 佐藤孝行

    佐藤委員長 山本君の質疑は終了いたしました。  次に、松本善明君
  139. 松本善明

    ○松本(善)委員 まず、宮村公述人にお伺いいたします。  きょうは東都生協の理事長という資格で公述をいただきましたが、公述人日本女子大学の名誉教授でもいらっしゃるのではありませんか。
  140. 宮村光重

    ○宮村公述人 今言われましたように、私は、ことしの三月まで日本女子大学の家政学部におりまして、専門は農業経済でございます。東都生協からぜひ力をかしてほしいということで、現在、理事長でございます。
  141. 松本善明

    ○松本(善)委員 先ほどは生協の中での運動の広がりについて公述をされましたけれども、主婦連合会でありますとか、日本青年団協議会でありますとか、あるいは日本婦人有権者同盟とか、農業団体以外に非常にこの反対の運動が広がってきている実情について、簡潔にお述べいただきたいと思います。
  142. 宮村光重

    ○宮村公述人 生協だけではないといいましょうか、むしろ農業団体なり地域住民の団体なりが、この間、全国地域でガットの問題を考え、日本農業の問題を考えるということで運動が進んでまいりまして、その盛り上がりの中で、いろいろ大きな集会が東京でもまた地方の都市でも行われました。  こういう一つのまとまりとして、せんだって、十一月二十五日でありますけれども、世話人団体として、日本青年団協議会の会長、主婦連の副会長の方、日本有権者同盟の会長の方、全国食健連の代表の方、そして私、生協の米問題に関する懇談会の世話人の立場で呼びかけ人になりまして、全国団体、四十団体の方々の御賛同を得まして、緊急な署名で、WTO協定承認をやめてもらいましょう、日本のお米と農業を守っていきましょう、これを広く国民、そして国会議員の皆さんにもお訴えさせていただきたいというアピールを採択したところでございます。
  143. 松本善明

    ○松本(善)委員 先ほど食品の安全性の問題を言われましたが、発がん物質の亜硝酸ナトリウムは生協の中では扱っていないところが多いということを聞いております。それが今度は一・七倍ぐらいになる。生協で扱っている食品の中の安全がどうなるかということについての具体的な心配を簡潔にお述べいただきたいと思います。
  144. 宮村光重

    ○宮村公述人 先ほどの意見陳述の中で申しましたが、日本生活協同組合連合会は、これまで、食品添加物の問題について特別の研究検討委員会を持っておりまして、非常に個別的に食品添加物の是非といいましょうか、安全の度合いというのでしょうか、これを自主的な研究者の力のもとでやってまいりました。  今御指摘の添加物につきましても、これ問題あり、危ないというものについては使わないようにしょうということで、生協で取り扱います加工食品には入れないという措置をとって今日にまで至って、またくらに問題があればそれを広げていくという、そういう取り組みをしているのが今日の生協でございます。
  145. 松本善明

    ○松本(善)委員 四人の公述人にそれぞれお伺いしたいと思います。  一つは、今も自給率の問題でお答えがございましたが、参議院でやはり参考人という形で公述された、意見を述べられた方のお話でありますが、岩手の労働組合の調査では、この米の輸入の自由化が進みますと、稲作を続けるという方が五四・六%、そしてそれもほとんどが、大部分が自家用米にする。これは、この問題は農業の問題であると同時に、消費者にとっては最も切実な問題だということを端的に示しているのじゃないかと思います。  この傾向が全国的にきますと、去年のようなことが起こりますと、一番困るのは消費者だと思います。そういう点での、日本政府が安全な食糧を安定的に供給するということが最も重要な政府の責任ということで、だからこそこの国会で三回も決議をして、そして食糧自給率向上、そして輸入の自由化反対、こういう決議をしておるわけであります。  先ほどここの公聴会では、農協中央会の会長がやはり、これをやった場合に、農業合意については反対だ、間違いだ、これは変えてもらわなけりゃならぬということをここで強調していかれました。生産者がそういうふうに言っているわけです。自給の問題、消費者がいつでも安心して食糧が食べられるという問題について、それぞれの公述人がどのように考えておられるか、これが一点であります。  もう一つは食品の安全性にかかわる問題であります。これはコーデックス委員会といいまして、今度の協定でこの基準に合わせられるという問題なんです。これはつい先日国会に提出をされました。全部英文であります。いまだに翻訳が提出をされません。ですから、日本国内ではほとんど知られていないだろう。厚生大臣も読んでいないというお話でございました。これは非常に心配なことでございます。消費者の中では食品の安全性の問題は非常に大きな問題で、アメリカではこの問題で反対運動が非常に大きくなっております。この食品の安全性の問題についての各公述人の御意見を伺いたいと思います。このコーデックス委員会の基準を読まれたか、恐らく読んでいらっしゃらないと思いますが、それも含めまして御意見を伺いたいと思います。
  146. 青山三千子

    ○青山公述人 最初に自給率の話でありますけれども、前に申し上げましたように、消費者として、生産者が米をつくるのをやめてしまうというようなことがないように、新食糧法案は対策を講じるべきだというふうに思っております。とりわけ体質強化対策費などを今後とも十分に使って、やめないように話してもらいたいというふうに考えております。  それから、食品の安全性につきましては、確かに外国での規制がどのようになっているかという情報は極めて乏しく、また昨今の米の問題での輸入米の不安というようなこともありまして、外国の食糧の方に不安材料があるというふうに考えているのは事実ですし、また外国との整合性を求めて、今先生がお話しになりましたように、新たに日本の食品添加物の規制が緩和される、緩和されるといいますか、食品添加物がふえるといったような傾向もないわけではないと考えております。  ただ、食品添加物に関しましては、御存じのとおり表示が物質名で行われるというような形になっておりまして、私は、新たな食品添加物についての情報提供というものが十分に政府から国民に対して行われる必要があると考えております。その情報次第で消費者がその添加物の入っているものを買うか買わないか、それは外国製品であろうと日本製品であろうと変わりのないことではないかというふうに考えております。  以上です。
  147. 宮村光重

    ○宮村公述人 生協の立場で言いますと、農業生産者、そしてその方々は大部分は農協にいらっしゃいます。したがって、生協の組合員が安心できていいお米を食べたいというこの要望は、生産者や農協の方たちと手を携えていきたいということでこれまでもやっておりますし、今後もこの方向で、つまり農協と生協、協同組合の間の提携をもっともっと強めていくという方向自給率を高めるということもできるであろう、そういう考え方をとっております。  それから、コーデックス委員会につきまして、今委員の御提示のものは私ももちろん見ておりませんが、これまでいろんな情報で知っている限りで見ますと、翻訳された紹介もありますが、多国籍企業のメンバーが非常に力を持っているということがどうも事実のようでございます。そして、科学的な安全性の根拠というものをめぐっても、非常にそれをクリアするのが難解な手続が要るように読み取れるわけでございます。ですから、この問題については、やはり日本の科学者、日本の科学水準のレベルにおいて自主的に判断できる、また公開をしていく、こういうことが大きな原則的な柱にならないと当てにならないといいましょうか、わけのわからない食品、不安なものを日本国民の口の中に入れてしまう、こういうおそれが非常に強いというふうに考えておりますので、そういう意味でWTOのハーモニゼーションというのはよろしくないというのが私の考え方でございます。
  148. 小林正人

    ○小林公述人 米の輸入の問題でありますけれども、おっしゃるとおり安全性につきまして特にやはり注意を払っていかなきゃならぬ、そう思っております。ただ、需要の問題でありますけれども主食用にも需要がございますし、それから当面は加工用の方に回すとか、あるいは備蓄の方に回すとか、いろいろ研究の余地があろうかと思っております。  それから、これは私の考えでありますけれども日本の米の品質、食味、これは日本人からいいまして外米には負けない、そういうふうに考えております。
  149. 徳田靱彦

    ○徳田公述人 先ほど五四・六%の人が米作を続けるというお話ですか、これからの米づくりが、今まで担ってきた人たちがそのまますべてそのままつくり続けていかなきゃならぬとは考えておりません。協業化ということもありますし、あるいは規模の拡大をしてつくるということですから、今の数字でもって固定的に、その物の考え方で展開することはいかがなものかというように考えます。  もう一つは、そういうためにも備蓄という問題を初めてしっかりと位置づけをすることになったというように考えます。過去の備蓄というか、古米問題、古々米問題が起きたときには、備蓄という位置づけではなくて在庫がふえ続けたという結果でありまして、そのことが、問題を起こしたような二十六万トンという数字まで低まってきていたんだろうというように思います。そういう面で、備蓄という制度でそこはフォローをしていくことが可能だろうというように思いますし、同時にもう一つは、二十六万トンのところでもなぜ大きな問題にならなかったかというと、これはかってであれば大変な問題だったと思いますけれども、やはり情報の公開と輸送力の、安定的な輸送ができるということが国民の安心感につながっていたんだろうというように思います。そういう総体的に含めて困らない体制づくりというのをしていく必要があるだろうというように考えております。  それから安全問題でありますけれども一つは、お願いをしたいのは、厚生省と農林水産省にこの安全管理の体制がまたがっているというところに非常に弱点があるというように思いますので、まあ連合は食糧基本法の問題提起をしておりますけれども、そういう安全問題も含めた農業基本法的なものをつくりながら、そして縦割り行政というものを解消していただきたいというように考えております。  もう一点は、ガット交渉での検疫衛生措置に関する協定のかかわりでございますけれども、国際基準の尊重原則ということと同時に、科学的正当性がある場合、高いレベルの保護基準を採用することができるということが合意をされているというように考えております。そういう面で、例えば日本の米という位置づけと外国の米では摂取量がこれは段違いに違うわけでありますから、日本における米の摂取量に合わせた日本の基準というもの、正当なる基準というものをつくっていただいて、そしてこれは科学的な正当性があるというものについて国際的な了解を求めるということをやっていただきたい。これは、今回の輸入が拡大をする状況にあって非常に大事な原則だろうというように考えております。
  150. 佐藤孝行

    佐藤委員長 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。  公述人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございます。当委員会を代表して、厚く御礼を申し上げます。ありがとうございます。  これにて公聴会は終了いたします。  なお、次回は、明二十九日火曜日午前九時三十分理事会、午前十時委員会を開くこととし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時三十七分散会