○徳田
公述人 連合の徳田と申します。このような場所を与えていただきまして、感謝を申し上げます。
ガット・
ウルグアイ・ラウンドの
協定全般に対してと言っていいのでしょうけれ
ども、連合としましては、長年にわたる交渉の結果として受けとめ、これを支持し、是とするところであります。
これから、私は、
食糧の
安定供給と食料品
価格の内外
価格差問題あるいは
協定の
締結に伴う
国内対策としての
主要食糧の
需給価格安定
法案及び
農業合意関連対策について申し上げたいというふうに思います。
お手元にお配りをしてありますのは、このガットの交渉結果を受けまして、連合の中で検討をし、まとめ上げた要求と提言であります。
御承知のように、連合の労働組合を構成している幅というのは非常に広い幅がありまして、輸出産業を主としている労働組合、それから
農業関連のところでは農林水産省の関連の全農林、あるいは農協の職員の労働組合であります農団労、あるいは
JA連合、こういう皆さんもあります。したがいまして、大変多くの幅広い議論、あるいは対立している議論の中から議論を重ねてくる中で、連合としての一致点としてまとめをしたわけであります。したがいまして、個々の問題でありますとくまざまな
意見が存在をしているところは言うまでもないわけでありますけれ
ども、最大公約数として問題提起をしているということで受けとめをしていただきたいというふうに思います。
まず第一に、
安定供給と
価格の問題でありますけれ
ども、我々連合としましては、自給、輸入、
備蓄というこの三つによって我々の
食糧の
安定供給というものが成り立つというふうに考えております。
そこで、じゃ、一体
自給率を何%にするのか、さんざん議論をしたのですけれ
ども、なかなか難しい問題でありまして、数字を出すまでには至っておりません。しかし、その議論の中で、
自給率という率だけではなくて、自給する力というものをしっかりと持ち続けるというのが大事ではないのだろうかということを
一つ挙げました。
そういう中で、小麦や大豆というような
基礎的な穀物、あるいは中
山間地域における酪農や畜産、こういうようなものについて、今後のことを考えた場合に、
国内の最低限
生産量というようなものを設定をして、そしてそれは
生産地域を指定をして、そこでしっかりとっくり上げていく、これだけは守っていくというような決意というものが必要ではないのだろうか。そうでないと、かつてのように、まくに小麦が消え入りそうになるような状況にまで至る。あるいは品種改良も全く進まないで、再
生産をしようとしたときにはとんでもなくおくれてしまうというような経験を持っているわけでありまして、そういう点を大事にしなきゃいかぬだろうというふうに
一つは考えております。
それから、二つ目には米の
備蓄の問題ですが、連合としましては、もみの貯蔵というものを
基本にして、二〇%程度の回転
備蓄をすべきではないのかということであります。そして、この
備蓄米の
役割としまして、平常時には
現行の標準
価格米の
供給という体制を担ってはどうなのか、あるいは
不作時に緊急放出をするという、その二つの
役割を持ってはどうかというふうに考えております。
備蓄問題というのは、やっとというか、今回の米騒動で
国民合意ができたというふうに思いますけれ
ども、古々米問題を発生をさせないというのが非常に大事な
観点ではないだろうかというように考えておりまして、そういう面で貯蔵方式について慎重な選択が必要ではないかというように考えております。
それから、農畜産物の
価格決定でありますけれ
ども、市場原理にゆだねることを
原則にすべきであるという考え方であります。この大
原則を持ちながらも、一定の
価格政策は必要だろうというように思います。しかし、
現状の
価格政策が
生産者保護という視点がどうも強いのではないかということを感じておりまして、
消費者対策の視点も含めて再編整理をする必要があるのではないのかということであります。
それからもう
一つ、この
価格問題で考えなきゃならぬのは、最近の円高の問題であります。食品産業界では、輸入原料への
期待が非常に強まっているところでありまして、同時に海外に拠点の移転を図るという動きも強まってきているところであります。そういう食品産業界だけではなくて、外食産業も輸入食材への転換傾向というものも強まっております。今日の消費、最終的な消費
動向を見ますと、家庭での消費の伸びよりは、食品産業なり外食産業での消費の伸びというのが
拡大をしているところであります。こういう状況にいきますと、つくっても売れないという事態が考えられるわけでありまして、そういう面で、これをつくっても売れないという最悪事態を避けるという面で、この内外
価格差の縮小というものも絶えず
努力をしていく必要があるだろうというように考えているところであります。
それから、食管
制度でありますけれ
ども、食管
制度が、やはり
日本の
農業をどういうようにつくり上げていくかという根幹的な物の考え方のあらわしであるだろうというように思います。そういう面で、非常に大事な
制度だろうというように考えます。
我々連合としまして、この問題を議論をしましたときに、やはりこの食管
制度を思い切って
改革をしなきゃいけないのではないか、抜本的に
改革すべしという論に立ったわけであります。といいますのは、今後の状況を考えますと、
ミニマムアクセスに基づく輸入が次第に
拡大をしていくという状況であります。同時に、二〇〇一年からは新たな段階を迎えることになるというふうに考えております。数量が
拡大になるのか、あるいは
関税化という道になるのか、そのいずれか、いずれにしても、今日考えられない展開もあり得るだろうというように思っております。そういう面で、二〇〇一年を重要に考え、この年を
一つの転機に考える必要があるだろうというように考えております。
同時に、今までの
農政に対して猫の目
農政だとか、あるいは農家が先行きが見えないということで、さまざまな不安や不信感というものがあったというように思います。先行きの厳しくはあるにしても、この際、先行きどういう
方向に行かざるを得ないのか、行くのか、見通しをはっきりとする必要があるだろうというように考えているところであります。そういう面で、二〇〇一年を重視をしております。
その二〇〇一年に向けて、米づくりの大多数を占める兼業農家が、
現状のまま続けていくのか、自給的な農家になるのか、協業化の道を選ぶのか、作業委託や貸付をしていくのか、あるいは
農地を売って離農をするのか、こういうような、各人が今後の
経営の
方向や、あるいは場合によっては子供の就職先もこの数年間の中では選び方を変えていくというようなことが
判断できるような
方向性というものを示す必要があるのではないだろうか。そのことがないと、新
農政で言っているような規模の
拡大というものは困難だろうというように考えますし、
生産構造の
改革というものもできないだろうというように考えているところであります。
そういうことで、二〇〇一年の到達目標として、
政府が関与する範囲を、
備蓄米の買い入れと払い出し、
生産・
流通の情報把握と公表、安全性・品質のサンプル検査と公表、この範疇にとどめる。あえて言えば、
部分管理と言っていいのかもしれませんけれ
ども、そういう
制度に進めていくべきだというように考えております。そういう中で、個々の農家が、どれだけ何を
生産をするのか、あるいはだれに売るのか、こういうことは農家の責任で、あるいは
経営判断ででき得るということが
基本的な構えとしてなければいけないのではないかというように考えております。
したがって、その二〇〇一年に至るまでの過程を移行過程と位置づけをして、
備蓄量の弾力的な
運営だとか、あるいは規制の緩和を逐次図っていくこと、あるいは今日まで規制を前提として成り立ってきております農協だとかあるいは
流通業界、こういう方々も数年間の中でソフトランディングをしていける、そういう
方向性というものをとる必要があるのではないかというように考えております。
そういう意味でいいますと、今度の
法案が、先に行く場所、目標を出して、そこにソフトランディンクということではなくて、これが成立をすればすぐにでも達成をするというところになっているという意味合いで、少し連合と考え方が違うのかなという感じがしております。そういう違いがあるということからだと思いますけれ
ども、私
どもとすれば、今回の
法案は中途半端な状況にとどまっているなという感じがしております。もう少し言えば、連合が提起をしている移行過程にとどまっているのではないだろうかということを感じているところであります。
こういう状況でいきますと、心配しますのは、またぞろ新たなやみ米といいますか、新たな自由米というものが出てくる可能性というものもあるのではないだろうかという心配をしておりますし、二〇〇一年の段階になりますと、またぞろこれは、今の
改革をしたけれ
ども、これまた
実態と乖離をしているなということを言わざるを得ないような状況にいくのではないだろうか。そういう
法律で少しずっいくっくり方というのは、今までややもすると
批判を受けていたような、護送船団的な
農政ではないかという
批判を、またぞろそういう
批判を繰り返さざるを得ない状況の心配もしているところであります。目標をはっきりと掲げて、そこにそれぞれが、いろいろな分野の人たち が知恵を絞って、どう展開をしていくのか、こういう道筋というものをつくっていただきたいものだというように考えております。
それから、総
事業費六兆百億円の
農業関連対策事業についてでありますけれ
ども、
消費者、納税者の立場ということで、率直に感じているところを話をさせていただきたいというように思います。
自民党が単独で政権を担っていた時代と比べますと、最近の状況は率直に申し上げて政策の決定過程が飛躍的に明らかになったということで、私
どもまことに結構なことだということで喜んでいるところでありますけれ
ども、今回の政策決定というのは、そういう面からすると、もうちょっとわかるものにしてもらいたかったということがまず第一であります。
残念ながら、
国民一般はマスコミを通じてしかこの情報を得ることはできません。今回のマスコミ情報をずっと見ている限りでいいますと、どうしてもこの年間一兆円というような数字だとか、あるいは総額六兆というような数字が先行していくというように受けとめざるを得ませんでした。もちろん、さまざまな角度から検討をされた結果だというように思いますけれ
ども、やはり
消費者、納税者の立場から見ると不透明であったなという感を否めないわけであります。
折しも、税制
改革の論議が活発になされて、消費税の引き上げ問題も大きな焦点になっていると。きだけに、この
関連対策というのは認めつつも、なかなかすとんと落ちないというのが率直な感じでありました。
いずれにしましても、農家も
消費者も、ガットの合意という今回の経過、あるいは米不足というこの二つの大きな経験を今回持ったわけでありまして、そういう面でこの
食糧問題について真剣に
国民全体が考える
機会になっただろうというように思います。
農業の先行きをどうするのか、あるいは
国民がどこまでコストの負担にたえられるのか、そういう面で合意形成を図るチャンスだろうというように思います。
今回の予算の検討に当たって注文をつけたいのは、農林水産省の従前からの予算、従来予算の配分と使途をこの際全面的に再検討をする必要があるのではないかというように考えます。今までお金をいろいろ投入してきましたけれ
ども、なかなか変わらなかったということ、率直に言ってあるわけでありまして、そういう面で全面的にここを改めて検討をし直すということをまずしていただいて、そのことで足りないものはここなのだ、このためにこれだけのお金を必要とするのだということで
国民に提起をしていただきたいなということで、既に相当な状況まで来ておりますけれ
ども、残された時間、さらに
努力を
お願いをしたいというふうに考えているところであります。
それから、今後六年間の
対策でありますので、当初の
計画を
国民にやはりわかるように、何をどう変えるのかということを明確にしていただきたい。同時に、二年に一回、あるいは三年になるかもしれませんけれ
ども、中間で、この目標に対してどこまでこの
計画が達成をしたのか、どういう状況になっているのかということを明らかにしていただきたいというふうに思います。そういう中で
国民と農家の信頼
関係というものが本当の意味で生まれてくるだろうというふうに考えているところであります。
それから、中
山間地域・
条件不利
地域対策でありますけれ
ども、時間がなくなりましたので、簡単に申し上げたいというように思いますけれ
ども、今までの
農業とか林業とかこういうサイドだけの
対策ではもう限界ではないかという気がします。同時に、その農山村の社会を構成をしていますのは、商店も必要でありますし、あるいは土木
事業で働く人たちも必要でありますし、そういう多くの人たちがいて初めて社会形成ができるわけでありますから、そういう面で、連合として例示で年金の問題やあるいは奨学金の問題について出しておりますけれ
ども、こういうような社会政策の側面も含めながら、総合的に検討をしていただくことが大事ではないかというふうに考えているところであります。
ややもすると、
消費者というのはスーパーから向こう側というのが見えないわけでありまして、物を語るときにスーパーからこちら側で物を語ったり、あるいは考えたり、問題提起をしているのが
現状でありますけれ
ども、今までのそういう状況を何とか埋めるような、そういう面で
政府もくまざまな広報活動を強めていただきたいというように思いますし、私たち連合も、
消費者の立場だけじゃなくてみずからが
生産者でありますから、
生産者と
消費者の立場、もっと住みやすい、より豊かな
日本、社会的な公正が図られる
日本をつくるためにさらに議論を深めていきたいというふうに思っているところでございまして、決して連合、厳しいことを言っておりますけれ
ども、
日本の
農業がどうなってもいいとか、なくなってもいいとかいうことではなくて、本当に農家に、次の世代、働く人たちが都市並みの賃金、給与と労働時間で本当に自信を持って働けるような、そういう姿をつくり出さなければならないというふうに考えておりますので、よろしく
お願いをしたいと思います。
以上です。(拍手)